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1978-11-10 第85回国会 衆議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年十一月十日(金曜日)     午前十時三十二分開議  出席委員    委員長 橋口  隆君    理事 中島源太郎君 理事 武藤 嘉文君    理事 山崎  拓君 理事 山下 徳夫君    理事 岡田 哲児君 理事 渡辺 三郎君    理事 松本 忠助君 理事 宮田 早苗君       鹿野 道彦君    島村 宜伸君       渡辺 秀央君    板川 正吾君       加藤 清二君    加藤 万吉君       後藤  茂君    上坂  昇君       清水  勇君    中村 重光君       長田 武士君    工藤  晃君       安田 純治君  委員外出席者         公正取引委員会         事務局取引部長 長谷川 古君         公正取引委員会         事務局審査部長 妹尾  明君         警察庁刑事局保         安部防犯課長  柳館  栄君         経済企画庁調整         局長      宮崎  勇君         法務省刑事局刑         事課長     佐藤 道夫君         国税庁直税部法         人税課長    山本 昭市君         農林水産省食品         流通局商業課長 宇賀神治夫君         通商産業政務次         官       野中 英二君         通商産業大臣官         房長      藤原 一郎君         通商産業大臣官         房審議官    島田 春樹君         通商産業大臣官         房審議官    原田  稔君         通商産業省産業         政策局長    矢野俊比古君         通商産業省基礎         産業局長    大永 勇作君         通商産業省生活         産業局長    栗原 昭平君         資源エネルギー         庁長官     天谷 直弘君         資源エネルギー         庁公益事業部業         務課長     上杉 一雄君         中小企業庁長官 左近友三郎君         労働大臣官房参         事官      清水 傳雄君         労働省労働基準         局賃金福祉部企         画課長     小田切博文君         労働省労働基準         局賃金福祉部賃         金課長     花田 達郎君         労働省職業安定         局雇用政策課長 白井晋太郎君         自治大臣官房企         画官      横田 光雄君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ————————————— 委員の異動 十一月十日  辞任         補欠選任   武部  文君     加藤 万吉君 同日  辞任         補欠選任   加藤 万吉君     武部  文君     ————————————— 十月二十日   一、エネルギー使用合理化に関する法律    案(内閣提出、第八十四回国会閣法第七八    号)   二、下請代金支払遅延等防止法の一部を改正    する法律案松本忠助君外三名提出、第八    十四回国会衆法第一〇号)   三、小規模事業者生業安定資金融通特別措置    法案(松本忠助君外三名提出、第八十四回    国会衆法第一一号)   四、伝統的工芸品産業振興に関する法律の    一部を改正する法律案松本忠助君外三名    提出、第八十四回国会衆法第一二号)   五、通商産業基本施策に関する件   六、中小企業に関する件   七、資源エネルギーに関する件   八、特許及び工業技術に関する件   九、経済計画及び総合調整に関する件  一〇、私的独占禁止及び公正取引に関する件  一一、鉱業と一般公益との調整等に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済計画及び総合調整に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 橋口隆

    ○橋口委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済計画及び総合調整に関する件並びに私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中村重光君。
  3. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、天谷長官お尋ねをしますが、イラン政情不安が原油の輸入にあるいは価格の問題に影響が相当あるのじゃないかと考えられるのだけれども、分析はどうですか。
  4. 天谷直弘

    天谷説明員 日本イランからの石油輸入でございますが、全体の輸入に対しまして一七、八%くらいの割合を占めております。それからまた、世界全体の油の生産の約一〇%くらいがイラン石油でございます。  そこで、政情不安のために、はっきり情報がつかめなくていろいろ説がございますが、現在のところ、普通ならば五百六十万バレル・パーデーでございますが、これが百五十万から二百万バレル・パーデーくらいに生産が落ちておるという状況でございまして、それではこれがもとに復帰するのが一体どれくらいかかるのかということでございますが、これはやはり政情の問題というのはどうも予測がつきませんので、はっきりしたことは申しかねるわけでございますが、NIOC、イラン国営石油会社では、生産もと回復するのにそんなに時間はかからない、こういうふうに申しておりますし、他方、いろいろな筋では、時間がかかるという見方もございます。したがいまして、はっきりしたことは言えませんが、そういうことで、イラン政情がいまのところで安定すれば、世界石油需給にそう大きな影響を与えることはないというのが大体大方の見方であります。  しかしながら、イラン政情等を反映いたしまして、現在の石油スポット価格は、公示価格に対しましてかなり上がっておるというのが実情でございます。イラン政情不安が続きますと、十二月のOPEC総会におけるOPEC石油価格決定にやはり何らかの影響があるのではないかというふうに考えております。
  5. 中村重光

    中村(重)委員 メジャーから一〇%削減通告というのか、連絡が入っているのじゃありませんか。
  6. 天谷直弘

    天谷説明員 メジャーのうちでBP、シェル、こういうところがイランからの輸入量が多いわけでございますので、こういうところは日本会社に対しましてフォースマジュールクローズ、不可抗力条項の発動ということを通告してきております。それから、米系メジャーは、そういうこともあるべしという予告を発してきておるという状況でございます。何%かということにつきましては、現在のところまだつまびらかにいたしておりません。
  7. 中村重光

    中村(重)委員 新聞報道では一〇%削減通告があったというように伝えられているわけなんで、何%といったことの情報は入ってないというのだけれども、やはり新聞報道というものは長官もお読みになっていらっしゃるのだろうし、それなりにその真偽をやはり調査をされる必要があるのではないか。調査をされた上でのいまのお答えであれば別なんです。  来月OPEC会議があるわけですね。その会議でいま長官が懸念された価格の問題というのは、それは今後の政情が安定するかどうかということによって左右されるというように理解していいわけですね。
  8. 天谷直弘

    天谷説明員 十二月十五日にOPEC石油大臣会議があるわけでございますが、その際、イラン石油生産回復に向かっているかどうか、それからまた、サウジアラビア等増産に転じているという情報がありまして、かなり確実であろうと思っておりますが、このサウジアラビア等増産がどの程度行われているか等々の見通し、いまのところ必ずしも確定できないいろいろな要素がございますが、このイラン情勢が悪化して生産が減少に向かっている、少しも回復の兆しがないというようなことであれば、かなり悪い影響があらわれるであろうというふうに思われます。
  9. 中村重光

    中村(重)委員 精製メーカーあるいは石油卸業者が、今回のイラン政情不安を利用して価格操作等、かつて石油ショックが起こったときまではいかないにしても、それに近いようなことをやるのではないか。本質的にそういう性格を持っているわけなんだから、敏感であるべきだと私は思うのだけれども、その点に対してはどうお考えになっていらっしゃいますか。
  10. 天谷直弘

    天谷説明員 前回石油危機の際の価格の暴騰は、やはり需給関係に著しく動かされたというふうに思われます。供給の方は石油危機によりましてパイプが締まってくる、それから需要の方は、今度はそういういろいろな情報に踊らされて買いだめ、思惑買い等々が横行いたしましたために、市場の需給が非常にタイトになってしまったということが価格高騰の大きな原因であったと思います。  今回につきましては、需要状況を見てみますと、現在そのような思惑動きは全くございません。イランからの日本石油輸入というものは十三万キロリットル・パーデーくらいになりますけれども、これに対しまして、日本の一日の油の使用量は大体八十万キロリットル弱、七十五万キロリットルくらいでございます。この七十五万キロリットル・パーデーの約九十日分を現在備蓄で持っておるわけでございますから、したがいまして、このイランの十三万キロリットルが仮に半分に減るとか四分の一に減るといたしましても、その分は備蓄でもって十分に対処することが可能でございますから、需給の逼迫などということは、よほどの長期間イラン政情不安と油の減産が起こらない限り、そういうことは起こるはずはないというふうに考えております。  思惑買い等が起こらなければ、石油会社価格を上げようと思ったってできるはずもないことでございまして、現在の状況におきましては思惑買いに走るなどということは全く誤った行動である、こういうふうに考えておる次第でございます。
  11. 中村重光

    中村(重)委員 論理的にはそのとおりなんで、前回だって、現在ほど備蓄もなかったし安定の度合いは違うにしても、あのように石油ショックというものが起こる必要はなかった。余りにも思惑を働かした。だから、かつての山下次官石油業界は諸悪の根源であるということをあえて言わなければならなかったということによって、石油業界の持っている性格というのか、そういう本質的なものがあることをお考えにならないと、あなたは非常に理論家で、論理的に物を考えていくという長官であるわけだから、石油業界の持っている性格的なものは警戒はしておく必要があるということを私はあえて申し上げておきたいと思います。  それから、濃野次官が、短期的にはいまあなたがお答えになったようなことで心配はないけれども、しかしこれは楽観を許さない、中長期的には対策を講ずる必要があるということを記者会見の中で触れておられるわけですが、あなたとお話し合いをされての結果であろうというようにも考えるのでございますけれども、濃野次官記者会見内容に対するあなたの考え方はどうなんですか。
  12. 天谷直弘

    天谷説明員 中長期的に楽観を許さないと申しますのは、イラン政情について楽観を許さないという意味でございます。イラン政情についてはまだ情報が不足でございまして、日本のみならず、諸外国もイラン政情が安定してくれることを皆心からこいねがっておるわけでございますけれども、しかし、だれもイラン政情は大丈夫ですと言うわけにはまいらない。したがいまして楽観を許さない、こういうわけでございます。  イラン政情混乱をいたしますと、どうしても石油供給ということに響かざるを得ない。イラン政情の悪化が長期化する、そしてイラン供給混乱が長期化するといたしますと、イラン世界石油マーケットにおきまして一〇%のウエートを持っているわけでございますから、どうしても石油供給不安定化ということが生ずるであろう、そういう意味楽観を許さない、こういうふうに次官は発言をされているわけであります。
  13. 中村重光

    中村(重)委員 橘湾並び長崎上五島洋上備蓄、いろいろな動きがあるようでございますが、いまエネ庁が入手しておられる情報といいますか、最近の状況はどうなのですか。
  14. 天谷直弘

    天谷説明員 タンカー備蓄に関しましては、九月積みの十隻は到着をいたしまして、硫黄島海域にいま漂泊中でございます。それから、十月積みの十隻は、逐次本邦に到着して、補給を受けてまた硫黄島方面に向かいつつあるというところでございまして、この十月積みの十隻分につきましては、できれば橘湾錨泊をしたい、こういうことで、その錨泊について地元との意見調整が現在進行中でございます。地元県知事、県が中心となりまして、橘湾漁業組合との間で意見調整を現在進めているというふうに承知をいたしております。  他方上五島恒久備蓄につきましては、先般も発表しましたとおり、四カ所候補地を挙げておりまして、その四カ所のうちの一つに入っておるわけでございます。この四カ所を選定いたしました基準といたしましては、地元の県が推薦をしておること、それから五十七年までに備蓄事業が完成するというようなこと等を基準として、幾つかの候補地の中からこの四つを選択いたしまして、その中に上五島も入っております。上五島につきましては、今後さらにこれが国家備蓄として適切な地域であるかどうかということをよく審査をいたしたい、その上で正式に決定をするという運びになろうかと存じます。
  15. 中村重光

    中村(重)委員 この洋上備蓄の問題について、国家備蓄法律案審議をするときは、長崎県の上五島洋上備蓄だけではなくて、洋上備蓄は元来国でやるというお考え方でなかった。上五島の場合は、三菱重工さんがメーンになって、三菱商事、新日鉄、そういう関係業者が共同してやるという形であったわけです。ところが、国家備蓄法が成立をすると、途端に今度は国がやるんだという態度に変わってきたわけですよ。だから、当初からそういうことを考えておったのではないか、そうであったとするならば、これは大変重大な問題であると私は思う。この洋上備蓄を、新技術なんで、そういう入れ物まで国がつくる必要があるかどうかということについては、慎重の上にも慎重を期していく。私は適当でないという考え方を持っていますから、きょうはそのことについては触れませんけれども長官の方でもそれらの点は十分検討をして、慎重な態度をおとりになることを提言をしておきたいと思います。  それから、橘湾のことについては、関係十五協が、知事出席をしたようでございますけれども消極的賛成という態度を打ち出した。しかし、その十五協の中でも四つ五つ漁協は大勢に押し切られたという感じです。実際は反対なんですね。そういうことですし、十五の漁協消極的賛成なんということを打ち出すということは、一般漁民考えていなかった。恐らく慎重に対処していくという態度が決まるのではないかというようなことであったようです。ところが、消極的賛成なんということが打ち出されたもので、今度は一般漁民が怒っちゃって、反対運動が組織化されつつあるということを十分お考えにならなければいけないということを申し上げておきます。  天谷エネ庁長官におなりになる前、橋本長官のときもそうでしたが、上五島あるいは橘湾の場合においても、これはここだけではなくて他のところにも同じようなことでなければいけないと思うのでありますけれども漁民だけではなくて周辺住民反対がある以上は強行するようなことはないということを態度として表明をしてこられたわけであります。そうあるべきであるというように考えます。これは単なる利害関係ではなくて、環境問題とか安全の問題とか、漁民だけの問題ではなくて一般地域住民に及ぼす影響というものもあるわけだから、それらの点も十分調査をし、反対があるならばその反対に対応するような態度で、従来言明をしてこられたその態度を変えることがあってはならないということを私は申し上げたいわけでありますけれども長官態度をお変えになるようなことはありませんね。
  16. 天谷直弘

    天谷説明員 地元意向に関しましては、県知事ともよく相談をした上、地元意向を尊重していきたいと考えております。
  17. 中村重光

    中村(重)委員 どうも質問するたびにあなたの答弁は後退する感じがする。橋本長官が私の質問に対して答弁をされたことは議事録に載っているわけだし、あなたも一人でも反対というのではというようなことを言われたこともあるのだけれども、続いての私の質問に対して、やはりそういった周辺住民反対というものがある以上は強行することはないというように受け取られる答弁をしてきたわけでございますから、従来の態度をお変えになることはないかどうかということについて、なければないということを簡単にお答えになればよろしいわけです。どうですか。
  18. 天谷直弘

    天谷説明員 従来から、地元意向をよく尊重して、物事を強行せずに穏やかに進めたいというふうに考えております。
  19. 中村重光

    中村(重)委員 穏やかに進めたいという願望ではだめなんだよ。知事に私が言うと、久保知事は、地元意向というのは、関係町村長賛成をしているんだから、これが住民地元意向だ、こう解釈すべきだということなんだね。とんでもないと言うのだ。そんな子供だましみたいなことで話にならぬ。やはり地元住民地元住民なんだ。  それはあなたがおっしゃるとおり、一人か二人か反対があると、それまでこれは地元住民反対だからというので、もう大半というかほとんどの住民賛成をしているのに、わずか数人の反対によって地元反対があるからというようなことは、これは常識的に考えても、あなたが常識的に民主主義の論理によって対処していくというように言われたのはそういう意味であったわけでして、いまあなたが言われたように、まあ逃げようというようなことではないのだろうけれども、何かしら用心して答弁しようとしているんだな。そういう用心した答弁ではなくて、どうあるべきかということについては、抽象的な言い方ではなくて、もっと親切に答弁したらどうですか。いかがです。
  20. 天谷直弘

    天谷説明員 親切に答弁しろとおっしゃるのでございますが、私も誠心誠意答えておるつもりでございます。ともかく国家的な目的に従いまして仕事は進めなければなりませんし、また地元の御意向というものも十分尊重しなければいけない、こういうふうに考えております。
  21. 中村重光

    中村(重)委員 従来の態度通産省エネ庁は変えるものではない、これは大臣お答えになっているのだから、通産省態度を変えるものではないということをそのように理解をして、次に御質問いたします。  ともかく、三重県でタンカーから五十キロリッターの石油が流れたという報道が昨日あったわけですね。ああいったことからして、住民の不安というものも非常に高まっているということを考えなければなりません。私は、その原因等についてもお尋ねをしたかったわけですが、時間の関係もございますから……。そういうタンカー備蓄に対する不安というものが漁民も含めた住民の中に非常に強いのに、あのような事故が起こりますとその不安がさらに高まってくるということになるわけですから、そのような点を十分考えられて対処していかれる必要があるだろう。  それから、イラン問題等ああいった事態が起こってまいりますと、備蓄の持つ意義というものはこれは十分評価しなければならないというように思います。思いますが、石油需要というものも非常に減っているわけですから、だから無理をなさらないように、私どもがいつも言っている製油所であるとかあるいは産炭地なんかに現在遊休地というのがある、住民の抵抗というものもないし、土地も十分あって、十分な保安設備もできるというところもあるわけです。そういったときに、この経済水域二百海里の問題の中で沿岸漁業振興というものは非常に重要な段階にあるわけです。そういう場合に、私は、長崎県のような水産県に、何ぼ大臣知事との間にうまく話し合いが行われるからといっても、慎重を欠くようなやり方をやられるということについては十分考えられる必要があるということを重ねて申し上げておきます。ともかく無理をすべきでないということなんです。  次に、矢野局長お尋ねするのですが、特定不況産業安定臨時措置法が実施されてから半年になるわけですね。最近の関係業界の動向というものはどういうことなんでしょう。  それから、あの法律案審議いたします際に、私どもは、不十分な点があって、これを修正をしたりあるいは附帯決議をつけて通過をさしたりしたわけなんですが、これは非常に重要な修正点でありましたし、労使の間のトラブルというものが起こってはならないという考え方でありましたから、そういう修正点あるいは附帯決議の趣旨を十分周知徹底させるということで対処しておられるのかどうか、それらの点についてひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  22. 矢野俊比古

    矢野説明員 構造不況業種の最近の業種状況ということの御質問でございます。  御承知のように、平電炉合繊、それからアルミ製錬、造船というのがすでに不況業種指定をしておりますし、そのほか、化学肥料紡績、フェロアロイは候補業種という指定が終わっております。その中でフェロシリコンが本日付でいわゆる不況業種指定をいたしました。したがいまして、造船を含めて五つ業種でございます。  平電炉について申しますと、いわゆる安定計画もすでに基本計画ができておりまして、現在は市況におきまして大体採算がとれるという水準を維持しております。  合繊につきましては、現在把握しているところにおきましては、なお不況カルテルが来年の春までございますが、基本計画もいまのところ進行していくという状況でございますし、採算割れではございますが、やや明るさを取り戻しつつあるというふうな判断をしてございます。  それから、アルミ製錬におきましては、最近の円高が非常に影響をいたしまして、いわゆる輸入アルミ地金価格との関係ということと日本コストとの絡み合いにおきまして、アルミ製錬はいまだに非常な苦境が続いておるという実情でございます。  それから、フェロシリコンにつきましては、同じような円高による輸入価格の下落が影響いたしまして、現在でもコスト割れ水準ということ、稼動率も五〇%をいま割っておるという状況でございます。  それから、候補業種につきまして、いわゆる化学肥料でございますが、アンモニア、尿素につきまして見ますと、国内価格はほぼ採算に見合うということでございますが、輸出が大幅に落ち込んでおり、最近中国あたり輸出というものが成約ができつつあってやや明るさはございますが、全般的には大幅な採算割れということでございます。  それから、紡績につきましては、綿糸については何とか採算に見合う水準に十月にはなってまいりましたが、梳毛糸につきましてはいまだにコスト割れということで、この法律の実施におきまして、二、三の業種におきましては、安定計画あるいは不況カルテルと、いろいろな突っかい棒におきまして明るさのものがございますけれども、やはり中長期的に見、かつ、それ以外の業種につきましてはなお今後ともいろいろと十分に考えていかなければいけないのではないかという考え方でございます。  それから、この法律通過のときに当たります国会附帯決議あるいはそのときの修正、こういつたことにつきましては、この法律の施行が五月十五日でございましたが、その後、私どもとすれば、七月四日の政令指定の間に各地区の説明会というところで十分にその内容その他を御説明して遺憾なからしむることを期する、こういうことで業界説明を進めてございました。
  23. 中村重光

    中村(重)委員 商品取引は島田審議官がお答えになりますか。——細かい点は流通小委員会の中でお尋ねをいたしますが、基本的な点についてお尋ねをしてまいります。  最近の紛議の状況内容はどういうことなんですか。
  24. 島田春樹

    ○島田説明員 お答え申し上げます。  まず、最近の紛議の状況でございますが、当省所管の各取引所に対しまして一般の委託者からいわゆる紛議の調停の申し出のあった件数を申し上げますと、昭和五十年度は当省関係で十三件でございます。それから五十一年度が三十九件、五十二年度が六十四件、それから五十二年度の四−六でございますが、これが十二件という数字になっております。  それから、その紛議の内容でございますけれども、紛議の内容は案件によりましていろいろ異なっておりまして、一概に申し上げにくいわけでございますが、委託者からのどういう理由でという申し出の理由別に紛議の……(中村(重)委員「細かい点は流通小委員会でやります。時間の関係がありますから」と呼ぶ)では、傾向だけ簡単に申し上げます。紛議の理由別の件数を見ますと、やはり過当勧誘を理由にしているものが最も多いようでございます。
  25. 中村重光

    中村(重)委員 紛議の起こる原因はどうつかんでおりますか。
  26. 島田春樹

    ○島田説明員 いま申し上げましたように、紛議の理由を見てみますと、いろいろな理由があります。それから逆に考えました場合に、最近で一番多いのはやはり過当勧誘が理由になっておりますので、そういう意味で、取引員の勧誘の仕方に起因するところが多いのではないかというふうに考えております。
  27. 中村重光

    中村(重)委員 いま紛議の起こる原因として、過当勧誘、取引員の勧誘のやり方、そういったことが法に触れる、紛議になるということでしょう。  そこで、取引員の姿勢が悪いのか、それから、取引員は十分教育はしているんだけれども、外務員の勧誘の姿勢が悪いのかといった点は、審議官、十分お考えにならないといけない。なぜに外務員が過当勧誘をやるのかということです。  私は、これは給与関係のあり方も問題があると思う。固定給というものがこれはもうほとんどない。すべて勧誘によって得た件数であるとか金額であるとかそういったようなものによって、能率給的な形になっている。とすると、どうしても無理をすることになるんだね。  だから、それらの点はどう把握をし、また、改めさせなければならない点があるとすると、これを改めさせるためにどのような努力をしているのかという点です。ただ過当勧誘、取引員の勧誘の態度というものが紛議の原因になっているという、それではわからない。取引員は十分まじめに指導しているんだけれども、外務員が過当勧誘をやっている。ならば、なぜに外務員が過当勧誘をしたのかということについて、そこまで入っていく。だから、それらの点を直していくというようなことでないといけない。それはどうしているのか、また、だれがそういうことについて指導をしなければならないのかという点、いかがですか。
  28. 島田春樹

    ○島田説明員 お答え申し上げます。  いま御指摘のありましたように、紛議の問題につきまして、私ども日ごろから、これを減少するにはどういうようにしたらいいかということにつきましてはいろいろ勉強もし、業界にも指導しているわけでございますが、いま御指摘ありましたように、やはりもう一歩原因の中に立ち入って考えていかなければいかぬというのは御指摘のとおりであろうかと思います。  いまの給与の問題につきましては、固定給と歩合給を併用しておるのが一般のようでございますが、これらにつきまして、紛議がその関係で、それが原因、要するにたとえば歩合が主であるというようなところから無理をして勧誘をする、その結果いろいろ問題が起きるというようなケース、それからそれ以外のケース、いろいろあろうかと思います。したがいまして、私どもといたしまして、個別の取引員の紛議の実態というものを見まして、その原因がどこにあるか、それによりまして取引員の経営の姿勢というものにつきまして指導をしていかなければならないと思っております。  また、指導につきましては、これは取引所も非常に重要な役割りを担っているわけでございますが、取引所それからまた私どもの方ということで指導をしていきたいというふうに考えております。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 これからの願望ではなくて、いままで何をやっているのか。いわゆる教育、指導というのはどういう方法でやっているのです。
  30. 島田春樹

    ○島田説明員 外務員につきましては、御案内のように研修をやっておるわけでございます。それからまた、いまちょっと御指摘がありました給与の問題につきましては、かつて私どもの方といたしましては、固定給をふやすように指導をした経緯もございます。取引所におきましても同じような指導をしたというふうに承知しております。
  31. 中村重光

    中村(重)委員 私は、いま申し上げていることは何回も触れているので、まあ当然それに対応した指導をおやりになるということがあたりまえなんだからね。  そこで、私は、全商運と全協連の組織の問題、果たす役割りということが非常に重要になってくると思う。この全商運、全協連の組織はどうなっているのですか。また、改めなければならないとはお考えになっていらっしゃらないか。いかがですか。
  32. 島田春樹

    ○島田説明員 もう御案内のとおり、全商連は全国の十八取引所の中央機関ということで、四十二年に社団法人の認可を受けて設置された団体でございます。それで全商運は、御承知のように、事業としては取引所相互間の連絡調整あるいは広報、調査研究、外務員の研修等の事業をやっておるわけでございます。  一方、全協連でございますけれども、これは各取引所単位に設置されました商品取引員の協会を会員としましたいわゆる法人格なき任意団体でございます。会員たる商品取引員の取引秩序の維持、意思の疎通、連絡調整というような活動をしているわけでございますが、いま申し上げましたように、全協連というのはいま任意団体という性格でございます。運営が会員の自主的な運営に一応任されておるということでございます。  したがいまして、直接私どもとしてこれを指導するというのは、ちょっと直接指導するという関係ではないわけですけれども、実際いまやっておる仕事というものから見まして、運営にいろいろ問題がありましてその結果業界の秩序が乱れ、ひいては会員である取引員がやっております商品受託業務の円滑な運営というものに支障が生ずるというようなことになりますと、これは非常に問題でございます。したがいまして、私どもとしましては、もし必要があるならば運営を適正にやっていくという面につきまして助言を行うというような姿勢で臨みたいと考えております。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 任意団体であるということは承知している。だから直接通産省あるいは農林省が指導すべきものではない、そう簡単に片づけられないのだな。  かつて直接役所と全協連とのたくさんの話し合いがあるという事実を私は知っている。ただ一つの例を挙げると、零細業者対策として看板調整をやってきましたよ。単一の看板であっては取引ストップなんかになった場合のこと等もあるわけなんで、だから複数でなければならないということで、零細な業者に対して複数の看板を与えるというような方向でいままでずっとやってきたし、また今後もやっていくであろうと私は思っておる。  ところが、全協連がその看板に対して三千万から五千万の手数料を取るという態度を打ち出した。一つの看板に対して取引所は二千数百万円の加入金を取るわけだ。それで終わりであるべきだ。にもかかわらず、今度は全協連が、例の補償会社に金を出すのだとかいったところに大義名分は求めておるようだけれども、三千万から五千万でしょう。取引所側に対する加入金プラスそういう金を取ることになってくると、これは零細な業者ですから相当無理な金繰りをしなければならぬ。これを譲るという場合は、五千万出したのは一億、一億五千万というようにシートを売買するということにつながってくる。これも正常ではない。また、無理な金繰りをしてそういう三千万、五千万という金を出すと、今度は結局経営圧迫になってくるわけだから、好ましくないところの過当勧誘という形になってくる。紛議が起こる。  そういうでたらめなことをやってはいけないということで、私は農林、通産両省に申し入れをやったことがあります。しかも、大蔵省はこれに対しては税の免税措置まで講ずるというような態度をおとりになったわけです。ところが、通産省は好ましくないという態度をおとりになったが、農林省は必ずしもそういう態度をおとりにならなかった。だから、農林、通産両省はこの点については考え方が食い違っておったのです。それで全協連に対して直接指導なさいましたよ。通産省もお呼びになったはずなんです。全協連に対して指導をやっているのですよ。当然のことなんです。だから、全協連の組織というのは任意団体だから直接役所が介入すべきではないというような、そういう態度で済まされないということがあると私は思う。  全協連は全体の取引員の集合体であるならば、理事長を選ぶにいたしましても、全部の取引員が集まって、総会等を開いて役員の選任ということをやることが民主的なあり方であると私は思う。現実にはそうなっていない。どこからかこの理事長は決まってくる。だから、取引員と理事長との間に血が通っていない。親睦、融和といったようなこともない。お互いが隔意なく十分意見を交換し合う、悪い点をなくする、いい点を伸ばしていくといったような、そういう場にこの全協連の組織はなっていないのですよ。それを役所が知らないのだといったような態度では済まされない。怠慢であると私はあえて申し上げたい。  この商品取引というものは、大衆の参加によって、取引員のやり方いかんによっては大きな損害を与えてくるということになるわけだから、慎重の上にも慎重な態度をおとりになることが私は当然だと思う。今後そういう組織のあり方等についてどう対処なさるのか、通産、農林両省ともこの点についてのお考え方をお示しいただきたい。
  34. 島田春樹

    ○島田説明員 私どもといたしましては、いま申し上げましたように、全協連の組織の性格というものもありますので、その点は十分考えなければいけないというふうに思いますが、ただ、実態的にその運営について問題がありまして、その結果業界の秩序が乱れて、ひいては取引所の商品取引、受託業務の円滑、健全な実施に支障を生ずるというようなことになりますれば、それは非常に問題があるわけでございますから、そういうようなことが生ずる場合には、その点につきまして私どもとして事実上いろいろ指導をしていく、助言をしていくというようなことは必要であろうかというふうに考えております。
  35. 宇賀神治夫

    ○宇賀神説明員 先生御指摘の件につきましては、基本的な考え方通産省お答えのとおりでございます。農林水産省といたしましても、自主的な団体でございますから、助言、指導と申しましても、これは限界があるわけでございますが、その範囲内において必要な限りにおいて助言を行い、適正な運営が図られるように助長してまいりたい、そのように考えております。
  36. 中村重光

    中村(重)委員 四十六年に許可制に移行して、来年いっぱいで許可更新の時期が来ると私は思っているのだけれども、その許可更新の基本的な方針は固まりましたか。
  37. 島田春樹

    ○島田説明員 お答えいたします。  許可更新の方針が固まったかというお尋ねでございますが、御案内のように、四年ごとに許可を見直すということで、財務内容、それから営業姿勢の向上というのを図ることを目的にしておるわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、そういう制度の趣旨に照らしまして厳正に審査をしていこうということでございます。したがいまして、今回の審査に当たりまして財務内容と営業姿勢をチェックすることになるわけでございますが、特に最近の紛議の状況というようなものから見まして、営業姿勢の審査というものにも特に重点を置いていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  38. 中村重光

    中村(重)委員 農林水産省の方も必要により発言を求めて答弁をしてくださいね。内容が全く同じですから、別に私の方から何省と言いませんから、必要によりお答えをしていただくということでお願いをしておきます。  四十六年の許可制移行によって許可をしたわけですが、その許可のやり方は評価できますか、この点まずかったなというようにお考えになるような点はありませんか。  ということは、島田さん、あなたは初めてだから前のことを尋ねると答弁に困るのだろうと思うが、A、B、Cによってランクづけをやったわけです。紛議の最もないのがAになり、紛議があって一番悪いのがCになったわけだ。ところが、いわゆる優等であったとしてAクラスにランクされて、許可制移行によって許可をしてもらった業者が、ばたばたと倒産をするという結果になった。だから、これは私から申し上げるが、営業姿勢に重点を置いた、これは営業姿勢を重視をするということは私は否定しないのです。大切なことなんだ。ところが、人の金を預かるのだ。これは大切な仕事なんだよ。いま言った過当勧誘などということによって紛議を起こし、またそのことがいろいろ処分をされ、信用を落とし、倒産につながっていくのです。その倒産は、委託者に対して最大の損害を与えることになるわけだ。だから、営業姿勢を重視したことは理解できるけれども、財務内容というものを軽視したということなんです。これがやはり問題であったということだ。  だから、今度の更新に当たっては、営業姿勢というものは重視しなければならないけれども、財務内容に重点を置いた更新でなければいけない、私はこう考えるのです。そのためにはどうすべきかという問題も起こってまいりますから、それらの点についてお考え方を、これは簡潔にそれぞれひとつお聞かせをいただきたい。
  39. 島田春樹

    ○島田説明員 お答えします。  前回の許可のときにいま御指摘のようなランクづけを行った経緯というのは、私も聞いております。今回の許可更新に当たりましては、一応私どもとしましては、前回考え方を踏まえて、営業姿勢というものに重点を置いて慎重に審査をしたいと考えておるわけですが、確かに御指摘のように、営業といいますか、財務内容というものに問題があって、その結果許可をしたものが経営が不健全になるというようなことがあってはもちろんなりませんので、その点にももちろん配慮しなければならないということで考えていきたいと思います。
  40. 宇賀神治夫

    ○宇賀神説明員 農林水産省におきましても通産省と全く同様な考え方でございまして、財務内容だけとか、あるいは営業姿勢だけという一方に偏った審査ということは不適当であると考えておりますので、両方とも勘案いたしまして許可更新を推進してまいりたい、そのように考えております。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 営業姿勢というものも、これは紛議の件数というもののみによって考えていくことは適当ではないのです。取引が多いということは、これはもう当然の比例として紛議も多くなるわけだ。ただあの会社は、あの取引員は紛議が何件だ、こっちの業者は紛議はこれだけだ、件数が違う。それは取引が多いのと取引が少ないのと比較すると、当然、好ましいことではないのだろうけれども、紛議の件数もふえていくわけだよ。だから、件数によって営業姿勢ということを一概に決めてはいけない。その紛議の内容は何かという内容、そういったようなことも十分加味しながら営業姿勢に対する評価というものをしていかなければならないということを申し上げておきます。これはもう常識だろうと私は思うから……。  それから、最近財務面で行き詰まっておる業者がいるのではないかということを私は風聞として聞くわけですが、これは時間の関係があるから私の方から申し上げますが、財務面が悪いということが表に出るということになってくると不安を起こすということなんです。だから、あなた方の方では、監査をする場合に、もう財務面が悪いという業者はわかっているから、そういったところは監査を避けていくとか、処分にも手かげんをするとかということをせざるを得ないような形に追い込まれる。意識してそうやっているかどうかわからないのだけれども、これは倒産してしまったらどうにもならないという心配があるわけだ。だから、たとえば一週間停止をしようとする場合にも、そこまでやったらこの業者は倒れるかもしれぬといったら三日にするとか、余りその内容は悪くはないのだけれども、この会社は五日間くらいやったって大丈夫だろうというところでぽんとやる。そういうようなことをやらざるを得ないようなことに追い込まれる可能性がないということは私は言えないと思う。  それから、財務面で行き詰まっているということになってくると、委託金の支払いの請求というものがある。私は、財務面で行き詰まっている業者があるということを裏づけるものとして申し上げるのですが、委託金の支払いは請求後何日に払わなければならないということになっているのだ。ところが、払えないのだ。払えないから、今度は取引所が乗り出して、分割払いにしてくださいと言って直接委託者を説得している。そして分割払いにしておる。だから表に出ない。それはそういう努力をなさることは私は評価をいたします。いたしますが、財務内容が悪いということがいかにいろいろな問題を醸し出すかということを皆さん方は参考にお考えにならなければいけないということ。そういったことに手をかぶせておりましても、しょせんは財務内容が悪いのだから、これはもう倒産という形に追い込まれざるを得ないということになるでしょう、この不況の中であればなおさらのこと。だから、許可更新に当たってはそういった点を十分お考えになって対処していかれる必要があるということを私は申し上げるわけなのです。  それから、委託証拠金の問題ですね、委託証拠金というのは完全に分離をする必要があるということを私は申し上げたい。これは前からそう言っているのですが、補償会社をおつくりになって、それで二本立てでいくのだからということで対処しておられるのです。ところが、委託証拠金というのは建て玉だけでこれはやるのですよ。建て玉によってやる。ところが実際は、取引員が委託者から取引を頼まれた、金は預った、預ったけれども、玉を建てなければその金はその取引員が黙って握っているのですよ。そうしてそれを運用するのですよ、人の金で。ところが、建て玉に対してのみ証拠金というものが出るわけだから、その会社が倒産をしてしまったならば、その証拠金というものは、委託者から預っただけの金は比率によって証拠金として積み立てていないのだからして、その委託者がもらえる金はない。いや、一方、補償会社があるから大丈夫だ、そうはいかない。倒産続出ということになってまいりますと、三十億や四十億のこの補償会社の補償金なんというものは底をついてしまう、どうにもならないという結果になります。  したがって、そういう証拠金のあり方ということについても十分検討していかれる必要がある。ヨーロッパの国々は建て玉によってやっているのじゃないのです。もう預った金は全部証拠金としてこれを委託することになっているのだから、先進国家においてやっているいいことは、これを取り入れていくということでないとだめなのです。どうお考えになりますか。
  42. 島田春樹

    ○島田説明員 いまの問題につきましては、現在、いま御指摘がありましたように、一つは受託業務保証金というかっこう、それからもう一つは指定弁済機関であるいまですと商品取引受託債務補償基金というものの代位弁済というかっこうでやっている、二本立てというかっこうになっておるわけであります。したがいまして、私どもとしましては、いろいろ分離保管の問題につきましては前から議論があることは承知いたしておりますが、一応こういうかっこうでいくのが現実的ではないかというふうに考えておりますが、いま御指摘の点につきましての御議論につきましても、いまの制度でなお問題があるかどうかという点につきまして考えたいと思います。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 私は、許可制移行の際に実は提言をいたしまして、余りずうたいが大きくなり過ぎると管理が行き届かない、余り小さいといわゆる財務内容が悪いということになりまして、委託者に損害を与えるという結果になりかねない、したがって、分割をしたり統合をしたりさせる必要があるであろうということを提言いたしまして、当時、両角企業局長のときであったわけでありますが、農林省は森部長であったと思います。話し合いをされて、分割、統合という方法をおとりになった。私はこれは評価できると考えているのです。だから、今度許可更新の際に、やはりそういった点は参考としてお考えにならなければいけない。  ところが、ここで申し上げておきますが、役所の便利という立場からおやりになってはだめなのです。それは役所は、できるだけ東京に本社があって、さあ名古屋だ、大阪だ、神戸だなんというようなことになって、ずっと関係会社がありますと、行政指導をするときにめんどうくさい、できるだけ一緒にさせることがこれは便利になる、窓口が少なくなるわけだから。それは役所の便利。余りそういうのを、何か関係があるからこれは一緒にさせなければならぬということになってくると、もうすべて今度は中央に、大都市に本社が集中することになってくる。一社の占めるところの占拠率の割合というものは非常に大きくなって、これは独禁法上も好ましくないという姿があらわれてくる。それから今度は、通信費、交通費というものがたくさんかかる、それから管理がうまくいかない、そういうような弊害が醸し出されてまいりますから、役所の便利ということだけによって整理統合なんということをお考えになってはいけない。だから、いわゆる委託者の利益、取引員が委託者に被害を与えないようにするためにどうあるべきかということをお考えになって対処していかれないと非常に弊害が出てくるということを私は申し上げておきたいわけです。その点いかがですか。
  44. 島田春樹

    ○島田説明員 許可更新に当たってどういうふうに具体的にしていくかという問題につきましては、まだこれから検討すべき問題でございますので、具体的にどういうことでということはいままだちょっと私ども申し上げかねるわけでございますが、いまお話しになりましたような考え方、非常に私貴重な御意見だと思いますので、そういう点も御意見を十分承って、これからの許可の際に考えるに当たりまして、その一つの貴重な御意見として承りたいと思います。
  45. 中村重光

    中村(重)委員 農林水産省からもお答えをいただきますが、どうも役所が二つあって、やっている仕事は全く同じだけれども、必ずしも意見が一致しないような点があります。無理に一致させるのではなくて、お互いに意見が違うところはお互いに意見を出し合っていくということは、私は行政がいい方向に進むであろうということでそれなりに評価する点もあるというふうに考えるわけですが、この点は重要ですから、課長からもお答えを……。
  46. 宇賀神治夫

    ○宇賀神説明員 許可更新に当たりましては、基本的な方針は、通産と協議いたしまして全く一致した基本方針で対処したいと思っておりますが、先生御指摘の点につきましては、通産省同様、私どもにおきましても十分検討させていただきまして、そういう方向を勘案しつつ許可更新を進めてまいりたい、そのように思っております。
  47. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、時間がまいりましたからまた改めてお尋ねをすることにいたしますが、中小企業庁長官、まとめて数点私の考え方を申し上げて、お答えをまとめてやっていただきますが、来年度の予算の概算要求を大蔵省にお出しになっている。これを見てみますと、マル経資金にいたしましても、それから一般貸し付けの場合もそうなんですが、利率が非常に高い。通利は七・一%のままになっている。低金利時代ですから、私は当然この金利は下げるべきであると考えている。マル経資金は六・六%、金額にいたしましても若干改善はしております。償還期限も半年だけ延ばしている、運転資金に対して据え置き期間を三カ月置いているというふうに前向きな点もありますが、何しろこれは、いい制度なんだけれども、貸し付ける金額が少ないということと、それから償還期限が非常に短い。三年や四年では、零細企業というものはこれはもう本当に負担できないのです。もっと大蔵省と折衝して期間を延ばすようにしなければならぬ。  それから、厚生省と、農林省も同じなんだけれども、この特殊金融に対して通産省と違うわけだ。たとえばマル経資金の償還期限に対しては厚生省は前から五年、あなたの方は三年ということだったんです。足並みがそろわないんだよ。厚生省の方が私は正しいと思うのだけれども中小企業庁の方が短い期間で概算要求をするものだから、大蔵省の方はそっちの方に足を引っ張られてしまうということになる。こんなことは、中小企業庁としてもっと熱意を持って、中小企業全般の問題は、これはそれぞれの省の所管にはなっているだろうけれども、十分に連携を密にして中小企業を守っていくというやり方じゃないと、長官としての任務を果たしたことにならないと私は思う。  それから、経営指導員の給与にいたしましても、厚生省の場合は現在十三万円、その引き上げの額の適否は別といたしまして、今度は二十四万六百円の概算要求をやっている。これも中小企業庁と大分違う。そのように、同じような仕事をするものがどうも概算要求の場合において大変違っている。たくさんこういう事例がありますけれども、こういったことではだめなんだから、十分連携をとって対処していかれる必要があるであろう。  それから、商工会館の建設について、センターの場合に二十カ所を六十カ所にする、それから一般の商工会館を八十カ所を九十カ所にするということで、この方は十カ所しか伸びていない。ところが、建設単価が全く同じなんだ。五十三年も五十四年の概算要求も同じ。ところが、今日公共事業中心で政府が不況対策をやっているものだから、建設資材が非常に上がってきている。同じではどうにもならぬ。経営改善普及事業というものは、これは国と県とで全額を見るということがたてまえである。こういうことでやってまいりますと、商工会自体の持ち出しが多くなってきて、商工会の経営というものは十分行われないということになってくる。その点は十分考えられる必要があるということ。  それから、記帳指導員の場合もそうなんです。記帳指導員は、三年間で全部これは給与制に変えるということであった。ところが、なお一万人ぐらい記帳指導員のアルバイトがいる。それを今度は八百人だけ給与化しようというふうにお考えになっていらっしゃる。いつになったら給与制に切りかえてしまうのか。三年でやりますということを言明しながら、なおかっこういったようなことでは、もういつになるのかわからない。こういつたような点も改めていく必要があるということなんです。  ともあれ、環衛法の改正というものが出てまいりましたが、これは環衛業者が、中小企業庁はどうも自分たちを冷遇しているというような反発等もあって、環衛法の改正なんというような形に発展をしてまいりました。ともかく中小企業庁に対しては、私どもは、省に格上げをしろとか、閣議に中小企業庁長官出席させろとか、その地位を重視する点からいろいろ意見を申し上げてきているわけなんです。にもかかわらず、あなたの方が省が違うからということで十分連携をとっておやりにならないと、こうした問題というものはさらに拡大をしていくであろうと考えるわけなんです。  時間がありませんから以上の点にしぼってお尋ねをいたしますから、簡潔にお答えを願いたい。
  48. 左近友三郎

    ○左近説明員 お答え申し上げます。  まず、予算要求の内容について、各省似たような内容のものについて足並みがそろっていないじゃないかという御指摘でございますが、われわれの方も極力合わせるように努力をしておったわけでございますけれども、結果としてこうなりましてまことに申しわけないと思っておりますが、これは今後十分注意をいたしまして、そういう点も改善をしていきたいと考えております。ことに環衛業種というようなものについてわれわれの方が従来から施策が足りなかったのじゃないかという御指摘もございますが、サービス業対策というような点につきまして今後十分力を用いるように考えているわけでございます。  それから、マル経資金その他の金利の問題でございますが、実はこの五十三年度に金利を相当改善をいたしまして、現在の段階では、政府系機関の原資であります財政資金の金利等もございますので、来年度の要求としては、金利については据え置く、ただし期間その他については改善をするという方針で現在要求をしておるわけでございますけれども、金利問題については、また今後の推移を見て十分いろいろ考えていきたいと考えておるわけでございます。  次に、商工会館の問題でございますが、この商工会館につきましては、五十三年度におきまして単価を二千万円から二千五百万円に引き上げたばかりでございますので、五十四年度については単価は据え置いたわけでございますけれども、建設の件数を倍増するという形でもってまいっております。したがいまして、来年度は建設の件数をふやすということに重点を置いて要求しておるわけでございます。しかし、また後年度に至りましては御指摘のとおり単価の値上がりというものがあると思いますので、そういう点については次年度以降において配慮いたしたいというふうに考えております。  それから、記帳指導員につきましては、実は過去三年間に大体毎年八百人ずつ、合計二千四百二十人の専任化を果たしてきたわけでございますけれども、今後もそのテンポを続けまして、大体予定といたしましては、将来四年間に三千人の専任化を果たしたい。それで、大体この三千人のうちの四分の一ということで、来年度は八百人の専任化をやっていくということでございます。したがいまして、専任化につきましては、この来年度要求の八百人で終わることなく、今後四年間で先ほど申しましたように三千人を専任化してまいりたいということで進んでおるわけでございます。  以上のようなことでございますが、予算については、いまの御指摘の点も十分われわれも頭に入れまして、今後予算の要求の実現化あるいはその実施の円滑化について十分努力をしてまいりたいというように考えております。
  49. 橋口隆

    ○橋口委員長 清水勇君。     〔委員長退席、山崎(拓)委員長代理着席〕
  50. 清水勇

    清水委員 まず最初に、十月二十三日に産構審のアルミ部会の今後のアルミ製錬業のあり方についての答申が通産大臣に出されておりますが、これについて通産当局としてはどのように受けとめておられるか、一言で受けとめ方をお答え願いたい、こう思います。
  51. 大永勇作

    ○大永説明員 アルミニウム部会の答申の線に沿いまして、アルミ不況対策に全力を挙げたいというように考えております。
  52. 清水勇

    清水委員 ところで、この答申によると、アルミの需要の見通しについて、世界的には年率五%くらいの割合で上昇する、五十五年に千三百万トン、六十年に千六百六十万トン、こういうふうに示しておりますが、通産としても同様な見方をされておりますか。
  53. 大永勇作

    ○大永説明員 アルミは、鉄に次ぐ第二の金属として、その需要につきましてはかなり底がたいものがございまして、今後におきましても、先生の御指摘のような形で、需要につきましては順調にふえていくというふうに考えております。
  54. 清水勇

    清水委員 そうした順調な需要の伸びという見通しについて、供給の方は現在千二百八十万トンである。さらに、今後製錬工場の建設というようなことを考えた場合に、建設コストがはね上がっているためにそう思うようには伸びない、せいぜい三%くらいじゃないか、こういう見方をされていて、結局のとこ々五十五年から五十七年ごろに需給関係が逼迫期を迎えるのではないかというふうな部会の見方があるわけでありますが、この点はどうでしょうか。
  55. 大永勇作

    ○大永説明員 現在のアルミ価格を前提といたしますと、御指摘のように、投資意欲が海外におきましてもなかなか出てまいらないものでございますので、供給能力の増加が需要の増加を下回るという状態になっておりまして、御指摘のような形で将来は需給がタイトになってくるというふうに考えております。
  56. 清水勇

    清水委員 ところが、産構審のアルミ部会は、去年十一月でしたか、中間答申という形で、アルミ製錬業の国内生産体制については百二十五万トン体制で臨む、こういう答申をしているわけですね。その後まだ一年もたたないのに、先般、百十万トン体制で十分ではないか、こういう答申をしている。なるほどこの間急激な円高というような特殊の事情があったにせよ、世界的な需要の見通しと思い合わせて考えるときに、どうもこの見通しはいささかずさんに過ぎはしないか、こういうふうに思うのですが、この点はいかがでしょう。
  57. 大永勇作

    ○大永説明員 いま先生が御指摘になったわけでございますが、昨年の十一月の答申におきましては、御指摘のように、百二十五万トンという国内生産を予想しておったわけでございます。そのときには、先生御指摘のように、為替相場がなお二百七十円程度という前提であったわけでございますが、その後、円が急激に上がりましたために、輸入価格がうんと下がりまして、アルミの国際競争力が一層むずかしいポジションになったということでございます。  そこで、国内の製錬工場につきまして内外のコスト差等を調査いたしました結果、百十万トン程度のものにつきましては、今後対策を進めていけば四、五年後には競争力を回復し得るけれども、その他のものにつきましては競争力を回復することは困難である、こういう判断に立ちましたので、これらの設備、まあ大体五十三万トンぐらいになりますが、につきましては凍結ないしは廃棄をするという形で、その分の需要につきましては輸入によって賄うということを考えざるを得ない、こういう事態に立ち至ったわけでございます。
  58. 清水勇

    清水委員 先ほど世界的な立場での需要の見通しを尋ねたわけですけれども、一方、国内の需要について見ると、大体六十年まで平均年率六・八%の需要の拡大が期待できる、こういうふうにアルミ部会では見ているわけですね。これは通産も同様な見方をされておると思うのだけれども、そういうこととの兼ね合いで言えば、たとえば他の構造不況業種と異なって、アルミ産業というものは需要が一貫して拡大基調にあるという、そういういわばいい見通しの上に立っているわけですから、なるほど今日的に急激な円高等による一時的な輸入地金の増加といったような特殊な事情が招来をされているにせよ、どうも一年足らずで百二十五万トン体制を百十万トン体制に縮小する、現在の百六十四万トンの規模を約三分の一削減をするということは疑問を感ぜざるを得ないのですが、もう一回その辺についてお答えを願いたい。
  59. 大永勇作

    ○大永説明員 アルミにつきましての問題は、先生もこれは篤と御承知のことと思いますが、アルミのコストで一番大きいウエートを占めますのが実は電力費でございまして、トン当たり大体一万四千キロワット・アワー使いますので、仮に八円といたしますと十万円を超える電気代ということになります。ところが、海外のカナダとかあるいはその他の国におきましては、ニュージーランド等もそうでございますが、これは水力発電を使っておりますので、安いところでは一円台、高いところでも三円台ということで、電力コストに非常に大きな差があるわけでございます。今後海外におきまして建設いたしますアルミ工場につきましては、電力代も若干上がってまいりますが、同時に、工場の建設コストが相当高くなりますので、先ほど申し上げましたように、わが国のアルミ工場につきましても、いままでにつくったアルミ工場を使っていく限りにおきましては、設備も古くて償却も相当済んでおりますので、電力のコストの高さをある程度カバーして、数年後には競争力が出るに至るであろう、こういうことでございますが、全体として見ますと、国際競争力からいたしますと、電力コストの差によりましてかなり弱いということでございます。  確かに需要につきましては、今後とも五十二年から六十年までを見ますと六・八%程度伸びていくわけでございますが、現在の自由貿易体制を前提にいたします限り、これを全部国産で賄うということは、競争力の点からいって不可能だというふうにわれわれとしては判断しておるわけでございます。現在でもすでにアルミの地金の輸入は約四十二万トン程度になっておるわけでございますが、今後の需要増分につきましては、いわゆる海外からの開発輸入、現在わが国もアサハンでございますとかブラジルに海外投資をいたしまして、現地でアルミ生産をする計画を進めておりますが、そういった開発輸入を含めまして、海外からの輸入で手当てをせざるを得ないであろうというふうに判断をいたしておる次第でございます。
  60. 清水勇

    清水委員 先ほど局長もいみじくも触れられているように、アルミニウムというものは今日鉄に次ぐ第二の金属である、欠くことのできない重要な基礎資材である、こういうふうに見られているわけでありますが、そうであればあるほど、政策的な努力も含めて、できる限り国内の生産体制というものを重視をしながら需要に対する必要な安定的供給を確保する、こういうことが国策上重要な課題なんじゃないか、こういうふうに思うのです。しかるに、仮に昭和六十年なら六十年という時期を想定をすると、いま指摘のあった開発輸入、無論これも含まれるでありましょうけれども、全体として輸入地金で需要の半分以上を賄わざるを得ない、つまり輸入地金に相当部分を依存をしなければならない、こういうような結果になるわけなんです。  私は、電力コスト等の問題については後で少し詳しく触れますけれども、たとえばコストの面で競争上対抗ができないという面がありとするならば、そういう重要な基礎資材であるという観点からいって、そこに初めて政治というものが働いて、ある面で安定的供給が確保できるような国内の生産体制をどう維持するか、こういうことがなければならないのではないか、こう思います。この点についても少し見解を問うておきたいと思います。
  61. 大永勇作

    ○大永説明員 先生も御承知だと思いますが、アルミ地金は国内でさらに圧延加工されまして、サッシとか日用品等々に幅広く使われるわけでございます。この場合に、輸入品と比べまして国産品につきましてはいわゆる安定供給メリットというものがありますから、若干国産品の方が輸入品よりも高くても、圧延業界その他の需要業界はこれを使ってくれるわけでございます。しかし、そこにはおのずから限度がございまして、余り高いものに国産品がなってまいりますと、これを強いて使いますといわゆる製品のコストが上がってまいります。そうしますと、今度はこの製品の輸入という問題が出てくるわけでございます。  したがいまして、一つのところにかきねをつくりますと、次々とかきねをつくらざるを得ないということになってくるわけでございますので、アルミ地金につきまして輸入を防ぎたいという気持ちは十分わかるわけでございますが、そういう波及性の問題を考えますると、やはりそこにはおのずからなる限度があるというふうに考える次第でございます。
  62. 清水勇

    清水委員 これから申し上げる点は野中政務次官にお聞きをした方がいいのかもしれませんが、最近河本通産大臣は、全国各地の遊説といいましょうか演説の中で、産業政策や構造不況対策について、これまでは後ろ向きに終始をしていた感があるが、この際前向きに対応する必要があるということを言っておられます。この点は、私もかねがね構造不況法案等の審議の際に意見として述べてきたとおりでありますから、同感であります。また同時に、大臣は、わが国において現在雇用安定対策が最重要課題であるとも述べておられるわけでありますが、これも全く私は同感であります。  そこで、そういう前提に立ってアルミ産業の中長期にわたる安定対策といったものを考える場合、私は、大臣の言われるような前向きな姿勢で取り組む、前向きな角度で取り組むということが必須の要件ではないか、こういうふうに思うのでありますが、いかがでしょう。
  63. 野中英二

    ○野中説明員 これから私たちも先生が御指摘のように中長期的な立場に立ちまして、需要をにらみ合わせ、あるいはまた安定供給という面あるいは雇用の面、それを総合いたしまして抜本的な対策を考えてまいりたいというふうに考えております。
  64. 清水勇

    清水委員 局長はどうでしょうか。
  65. 大永勇作

    ○大永説明員 先ほど申し上げましたようないわゆる設備の凍結ないしは廃棄等をやりますと、いろいろ雇用問題とか地域問題につながってくる問題が生ずるわけでございますが、地域経済あるいは雇用に与える影響を最小限にとどめながら、話し合いの上で処理をしていくように指導してまいりたいというふうに考えております。
  66. 清水勇

    清水委員 ところで、先ほど局長も触れておられましたが、今日アルミ業界が直面をしている危機的な要因は、一つは円相場の急騰による輸入アルミ地金の急落、そしてこれに引きずられて国内の市場価格も急落をする、これが言ってみればコスト割れを来している。同時に、るる先ほど述べられたような電力コスト、この点に尽きるのじゃないか、私はこういうふうに思うわけなんでありますが、そうだとすれば、中長期にわたる安定計画をどう立てるかということと同時に、当面の応急対策をどうするか、これが重大な課題になるのじゃないか、こう思います。すなわち、ここ二、三年非常にシビアな環境にある、これをどう乗り切るか、こういうことが重要な政策課題だと思うのです。  そこで、これは一つの私見にすぎませんが、現実にはもう今日の状況というものは企業内の努力をもってしてはどうにもならない、こういう現実があるわけなんですから、そうだとすれば、アルミ産業安定対策臨時措置法、そういったようなものをたとえば法制化をする、そしてこれによって需給計画であるとかし安定価格政策というようなものはもとより、今日ネックの一つである販売面での過当競争をどう解消するかとか、場合によれば、アルミ部会の答申では共販会社というようなことも指摘をされておりますが、一歩進めて販売公団といったようなものを設けてたとえば一元輸入する、さらには電力コストについてその軽減策をどうするか、こういった抜本的、応急的措置を臨時的に講ずるということは、将来の需要の増大に備えた安定的供給をどう確保するかという観点からいっても非常に重要な課題なんじゃないか、ごう思いますが、いかがでしょう。
  67. 大永勇作

    ○大永説明員 いま先生の御指摘の構想と内容的に必ずしも一致するかどうかは存じませんが、この春ごろ、業界におきましても内部で法案の検討をされたことがあるやに聞いておるわけでございます。それは要するに、一元輸入をいたしまして、それで国産品と輸入品とをミックスしまして、それで国内に販売する、そのための組織、公団あるいは事業団のごときものをつくるという内容であったように存ずるわけでございます。  ただ、こういう形でやってまいりますと、一つはどうしても輸入制限ということに相なります。輸入制限の問題につきましては、先生御高承のように、現在東京ラウンドというふうな問題との兼ね合いもありまして、なかなか対外的にむずかしい問題を含んでおります。  それから、輸入品と国内の高いアルミ地金とをミックスして国内で売るということになりますと、やはり地金価格が上がりまして、先ほど申し上げましたように、サッシでありますとか、なべ、かまその他の日用品の価格にも影響してくるということで、国民経済への影響、あるいは先ほどちょっと申し上げましたが、物によりましては海外からの製品の輸入というふうないろいろなところに波及してくる問題がございますので、私どもといたしましては、アルミのような工業製品につきましてこういった一元的な輸入販売といったような管理というのは、必ずしも現在の時勢にそぐわないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  68. 清水勇

    清水委員 その他の点はどうですか。いま一元輸入だけ私は申し上げたんじゃないから……。
  69. 大永勇作

    ○大永説明員 その他の点でございますが、共販会社の問題につきましては産構審でも触れておりますが、これは私どもとしてはぜひやりたい。もちろん独禁法との兼ね合いの問題がありますが、ぜひやりたいというふうに考えております。  それから、電力問題でございますが、これは私の方からお答えするのが適切かどうかわかりませんが、確かに電力がコストに占めるウェートが一番高いわけでございますから、これを何とかしたいというのはわれわれも共通した認識でございます。  ただ、アルミの場合には、電源構成を見ますと、大体半分は共同自家発でございます。それから残りの半分のうちのまた半分は自家発でございます。したがいまして、電力会社から買っておる電気は二〇%強ということでございますので、必ずしも電力会社の電力料金だけで問題が片づくわけにはまいらないわけでございます。  しかしながら、これにつきましても、たとえば現在昼間の電気の使用を夜に持っていきますとか、あるいは夏場のピークに電力会社に協力するというふうないわゆる特約によります料金の低減策がございますので、そういったものを最大限に活用いたしまして電力コストを低減を図るとか、あるいは自家発、共同自家発につきましては、毎年一回とめまして定期修理をやるわけでございますが、これの合理化によるスピードアップを図るというふうな措置をとりまして、昨年あたりに比べますとかなりな電力コストの低減にはなっております。  そのほかに、いわゆる自家発等におきましては輸入油の価格の低落がございます。それから買電につきましても、先般のいわゆる差益還元措置等による料金の低減がございます。そういうことでかなり下がっているわけでございますが、今後とも特約制度の活用あるいは一部再検討といったようなことにつきましては努力をしてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  70. 清水勇

    清水委員 エネルギー庁、来ていますか。——では、ちょっとこれから……。  いま局長からも電力料金のことに触れてお答えがありましたけれども、確かに最近の円相場の変動によって多少電力コストが下がってきている。しかし、企業にとってこれがやはり相変わらず大きなネックであることは間違いない。そういうことを考えてみた場合に、なるほどこれは政策的に単にアルミ産業だけを考えればいいということでもありませんから、複雑な要素を織りまぜなければならぬわけですから簡単ではないにしても、やはりこの際アルミ産業についての政策料金制といったようなものを検討すべきときに来ているのではないか。  そういたしませんと、先ほど来指摘をするような需要の伸びが期待をされるけれども、安い電力を使って外国で生産をされる輸入地金とはとうてい太刀打ちができない。企業内のなすべき合理化というか努力というものは相当程度に進んでいるけれども、これだけはどうにもならない、こういうことだと思いますので、この辺、エネ庁としても余りかたくななことだけを言っているのではなしに、この際国家将来のことを考えながら検討してしかるべき時期に来てはしないか。いかがでしょう。
  71. 上杉一雄

    ○上杉説明員 電力を非常に多く使う基礎産業の最近の不況につきましては、公益といたしましても非常に心配をしておるわけでございます。  ただ、電気料金につきましては、先生も御承知のように、その設定の原則としていわゆる原価主義とそれから公平の原則、この二つのルールが現在の法律上もうたわれておるわけでございます。原価主義と申しますのは、その名のとおり原価に見合う料金を設定する、それから公平の原則といいますのは、特定の人に対して有利または不利な扱いをしない、こういうことでございまして、この原則というのは、やはり電気料金というものを考えます場合には非常に適当といいますか、正しいルールではないかと私ども考えるわけでございます。そういう意味からいいますと、特定の産業について特に優遇するというのは、料金面からいいますといかがかというふうに考えております。  ただ、先ほど大永局長も触れられましたよううに、電気の使い方を工夫していただく、つまり負荷調整をやっていただくという場合にはそれに応じたコスト低減のメリットを還元するという制度が現在もございまして、特約制度でございますが、これにつきましては従来からアルミも大いに活用していただいておりますし、また、その制度の拡充につきましては、私ども現在もまた今後も大いに努力して拡充したいというふうに考えております。これによって何がしかのコストの低減が図られれば幸いだと思っておりますが、ただ、これを超える部分につきましては、これは料金ということではなくて、別途の政策によって補っていただくのが適当ではないかというふうに考える次第でございます。
  72. 清水勇

    清水委員 局長エネ庁の御意見は御意見としていま承りました。これはまた別途さらに検討を求めるような議論をしなければならぬと思いますが、それはそれとして、いずれにしても電力コストが割り高なるがゆえに産業それ自体が疲弊をしている、これはもう紛れもない事実だ。だから、たとえばこれは一つの発想ですけれども、関税割り当て制度なんかを活用しながらある程度カバーをしてやるといったような工夫ですね、そういったことなども検討されてしかるべきなのではないかと思いますが、いかがでしょう。
  73. 大永勇作

    ○大永説明員 御指摘の関税割り当て制度の拡充強化の問題につきましては、答申におきましても、関税割り当て制度につきましてはたてまえといたしまして五十三年度一年限りということになっておるわけでございますが、その後の円為替の急激な変化というような事情変更を踏まえますと、これはやはり今後延長拡大すべきであるという答申を部会でいただいております。われわれといたしましても、その線に沿いまして現在大蔵省と相談といいますか、交渉を始めておるところでございますが、今後そういうことで対処してまいりたいと考えておる次第でございます。
  74. 清水勇

    清水委員 さてそこで、百十万トン体制というものに関連をして、たとえばアルミ部会の答申を読んでみますと、約千人の現場作業員の過剰が出てくるというふうな見方をしておりますが、これについては、雇用の確保に万全を期せよ、こういうことも指摘をしております。  そこで、通産としては余剰人員の雇用確保についてどういうふうな具体策をいま考えておられるか、あったらお聞かせいただきたいと思います。
  75. 大永勇作

    ○大永説明員 百十万トン体制にいたします場合に、五十三万トン程度の設備につきまして凍結ないし廃棄が必要になるわけでございますが、どの工場のどの設備を凍結ないし廃棄するのかということにつきましては今後の問題でございまして、しかも雇用対策につきましては、個別の工場によりましてかなり事情が異なってくると思います。そこで、個別の工場ごとに労使間で十分話し合いをして、雇用に不安のないような形で円満に収拾ができるようにわれわれとしては企業を指導するつもりでございます。  御承知のように、アルミ企業というのはアルミだけやっておるのではなくて、他の品目もやっておる企業がかなりございます。そういう場合には、そういった企業グループの中で円滑に吸収をしていくというふうなことも当然必要になってこようかと思いますし、あるいは地域によりましては、いろいろ会社に工夫をしてもらいまして、新しい仕事をそこに持っていくというふうな工夫もしてもらう必要があるというふうに考えております。そういうことで、個別の問題に即しながら会社側と十分よく話し合ってまいりたいと考えておる次第でございます。
  76. 清水勇

    清水委員 話が前後するようですけれども、百十万トン体制をとれば当然過剰設備が出てくる。答申は、これを第三者機関が買い上げる、必要な資金はさっき言うような関税割り当て制度の延長拡大というものを使っていく。それはそれでいいと思うのですけれども、ただ問題は、造船などというような先ほども触れた他の構造不況産業とは異なるわけですから、一定の見通しがあるわけなんですから、今日的には電力コストのネックといったような問題も無論あるにしても、これはこれで最善の政策努力その他を通して極力解消、克服をしていくような努力をじていくということを踏まえて考えると、いわゆる過剰設備をスクラップにしてしまうということは、将来展望からいってもこれはもったいないというか惜しむべきものであるし、やがて需給の逼迫という状況を迎えて禍根を残すというようなことになる。  だから、私は、一時的にたとえば企業の固定費負担を軽減をする、あるいは緩和をするためにこれを買い上げるという手だてを仮に講ずるとしても、これは廃棄つまりスクラップにするというのではなしに、凍結ということで、昨年十一月の答申では凍結ということでいこうということになっているわけですけれども、そういうことで極力、百十万トンと固定せず、状況が許せば百二十万トン体制といったようなことで配慮をしていくことが重要なんじゃないか、そう思うのですが、この点はどうでしょう。
  77. 大永勇作

    ○大永説明員 競争力の点から申しますと、われわれといたしましては、五十三万トン全部が競争力がないというふうに判断をしているわけでございます。ただ、その場合に、それではその五十三万トンについてどういうふうにするのか、具体的な設備の処理の仕方として凍結ないしは廃棄というふうに書いてありますが、どういうふうにしていくのかということでございますが、コストの点を考えますと、凍結したばかりでございますると、保安点検の費用等々が凍結期間中かかるわけでございますので、本当に競争力がなくて将来とも使われないというめどがあったものにつきましては、廃棄した方がいわゆる経営上はベターなわけでございます。  ただ、それでは全部廃棄してしまうかという点になりますと、廃棄いたしますために必要な資金が非常に膨大になるという問題もございまするし、先生御指摘のように、将来の競争条件につきましても非常に変化の激しい経済の中における問題でございますから、一部につきましてはやはり凍結をしておいた方がよろしいのではないかというふうに考えております。具体的な振り分けにつきましては今後の問題でございますが、五十三万トンのうちの大体半分程度は廃棄して、半分程度は凍結しておいたらどうだろうかというのがわれわれの基本的な考え方でございます。
  78. 清水勇

    清水委員 私は、さっきたとえば百二十万トン体制というようなことを言ったわけでありますが、仮に少々の需給ギャップが出たとしても、たとえば三万トン出るか五万トン出るかわかりませんが、その程度のものは将来に備えて備蓄制度を設けて備蓄をしていくというようなことがあったって、一つのベターなものとして許容される範囲ではないか、私はこういうふうに思いますので、ぜひそういう点も検討しておいてもらいたい、こう思います。  さてそこで、労働省からも来ておられると思いますが、まだ通産ではアルミ産業についての安定基本計画をつくるという段取りにはなっていないと思いますね。いままた局長の見通しから言えば、非常に流動性の激しい業界だけにどうするかというような一面模索の面もなしとしない、こういう状況の折なのですが、将来展望ということはさておいて、当面企業が大変だということのために、もうすでに一部企業にあっては雇用合理化政策を先行させて、いわば労働者の犠牲でこの事態を乗り切ろうというような動きが出てきている。  これは、たとえばこの春の通常国会で構造不況法の成立の際に、雇用の確保、失業の予防、こういう点には特段の力を入れるという通産大臣なり労働大臣なりの言明があるわけなんですけれども、そういう角度から見ても、私はどうもそうした余剰人員を吐き出すという点にまず取りかかるというやり方は当を得ないやり方ではないか、こういうふうに考えるわけでありますが、どのようにその辺を見ておられるか、まず基本的にお聞かせいただきたいと思います。
  79. 清水傳雄

    清水説明員 お答え申し上げます。  最近の厳しい雇用情勢のもとにおきまして、労働省の雇用対策といたしましては、できるだけ失業者を出さない、失業の予防ということに重点を置いて行ってまいっておるわけでございまして、そういったことのために、昨年の十月に発足させました雇用安定資金制度、これをフルに活用をいたしまして、一時的な休業に対する対策でございますとか、あるいは事業転換なり規模の縮小に伴います教育訓練なりあるいは休業なり、こういつたものにつきまして助成措置を講じつつ、基本的にはいま申しましたようにできるだけ失業者を出さない、こういうような方向でもって対策を進めていきたい、こういうふうに思っておるところでございます。
  80. 清水勇

    清水委員 基本的にはできるだけ失業を出さない、失業の予防に重点を置いていきたい、こういうことだと思いますが、しかし、現実に、その前にお聞きをしておきますが、通産省も労働省も、たとえば昭和電工が十月五日でしたか、組合に提示した特別人員対策というのは御存じですか。
  81. 大永勇作

    ○大永説明員 内容は、その後会社側から聞いております。
  82. 小田切博文

    ○小田切説明員 いま先生御指摘の十月五日に昭和電工が組合側に対しまして提示いたしました特別人員対策と称する合理化案の内容につきましては、私ども承知しております。
  83. 清水勇

    清水委員 御存じのようでございますから、内容は私から申し上げませんが、昭和電工の会社の提案をしている特別人員対策の中身というものは、各商業新聞がそれぞれ具体的に取り上げ解説を加え、これは明らかに指名解雇提案と同様である、こういうふうに言っているとおりだと私も思うのです。  そこで、いま労働省からの答弁によると、政府としてはまず失業の予防に力を入れたい、それがためには、昨年十月からやっている雇用安定資金制度などを活用さして失業者を出さないようにする。無論さっき局長が言うように、昭和電工には他の部門もある。なるほど内容のよくない部門もあるけれども、ペイしている部門もある。つまり、たとえば雇用安定資金制度などを活用しながら企業内で吸収し得るものは吸収する、吸収できないものはたとえば他社への出向といったような形で、要するに人員整理と呼ばれる直接生首を飛ばすというような失業という状態が起こらないような、そういう措置を講ずることがまず先決なんではないかと思うのですけれども、それをやらずに、一部並行しつつと言ってもいいかもしれませんが、いきなり相当量の長期にわたる休業、これはどうも私は当を得たやり方ではないんじゃないか、こう思いますが、どういうふうにお考えでしょう。
  84. 清水傳雄

    清水説明員 お答え申し上げます。  いろいろ会社の御事情もおありになるだろうと思うわけでございますけれども、長期にわたる休業というものをどういうふうに評価するか、非常に私どもの方もむずかしい問題だと思うわけでございますが、そのことによりまして結果的に休業に耐えかねて失業者が出てくるというような事態になれば不幸なことではなかろうかと思うわけでございますけれども、いずれにいたしましても、そうした余りに長期にわたる休業につきましては、雇用安定資金制度において十分に対応できないようなことも制度的な制約から出てまいる、こういうこともございます。それについての直接的な指導等はなかなかまいりかねるとは思いますけれども一般的にその制度の活用によって失業者の予防を図るというような見地から、そうした面については十分に会社の方にも地元の機関を通じて接触をさせて、失業の予防ということに重点を置いた指導は十分にやってまいりたい、このように思っておるわけでございます。
  85. 清水勇

    清水委員 内容は御存じだそうでありますから触れてまいりませんが、いずれにしても、昭和電工の場合に、当初二年半にわたって賃金は六〇%、一時金は五〇%、その間ベースアップはしない、こういうことで特定の者を指名した形で休業に入らせる、こういうことなんですね。  ところが、八月一日から日本重化学工業で、二年間にわたって六五%の賃金でいわゆる長期休業に入らせたという前例がある。ところが、八月一日から今日までというのはまだ半年たちませんが、もう休業を指名された労働者の大半は、耐えられなくて退職を余儀なくされるというような状況になっている。  したがって、たとえば昭和電工がいま私が言うような形で長期に何百人という労働者を指名休業に入らせるということは、いみじくも「日経連タイムス」というので指摘をしているとおり、長期の休業の間にその対象労働者の退職を期待をする、こういう性質のものなんですね。だから、どんなにソフトなやり方だと言ってみても、現実には半年一年足らずの間にそれだけの者がやむなく退職に追い込まれる。しかも、その場合には任意退職という形になるわけですから、退職金の加給も必要ない。こんなやり方はいささか企業側としても卑劣に過ぎはしないか。そういうような人員整理の仕方がまかり通るというようなことになれば、これはゆゆしい雇用問題の新たなる問題点になってきはしないか、こういうふうに思うのです。  そこで、私はあえて昭和電工の場合にはどうすべきだこうすべきだということを特定して申しませんが、一般的にそういうことが好ましいと思えないことはもうはっきりしているわけですから、具体的に失業を予防するために、雇用の安定を図るためにたとえば雇調金制度を使うなら使う、そういう中で一時帰休であるとか、全社が今日経営危機に直面しているのだとすればいわば全従業員がその負担を分かち合うというような形で、できるだけ早い時期に立ち直っていくような、そういう施策を講ずることがベターなんじゃないか、私はそういうふうに思っておるわけですが、いかがでしょう。
  86. 清水傳雄

    清水説明員 まず前提といたしまして、やはり会社の存続なりそうしたものにもかかわる問題でもあろうかと思うわけでございまして、そういった意味合いにおきまして、労使の間の話し合いというものが十分に行われていくということが前提であろうかというふうに思うわけでございますけれども、雇用安定資金の適用につきましても、やはりそのことを前提にいたしておるわけでございます。そしてまた、そういう休業に入った段階におきましては、先ほど申しましたような雇用安定資金制度の活用ということを、これはもう十分私どもの方も積極的に活用していただきたい、こういうふうに思っておるわけでございます。  ただ、御指摘のアルミの第一次製錬の関係につきましては、ことしの一月でございますか、事業転換等雇用調整事業ということにつきましては業種指定を行っております。景気変動雇用調整事業、これは雇用調整給付金でございますけれども、こちらの方は業界の申請主義のたてまえになっておりますので、現段階におきましては対象業種指定にはなっておりませんが、その点につきまして申請がございました場合には、われわれといたしましても前向きに検討をして、その周知なり適用を図ってまいりたい、このように思っておるわけでございます。
  87. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 関連して加藤万吉君から質疑の申し出がありますので、これを許します。加藤万吉君。
  88. 加藤万吉

    加藤(万)委員 これは基礎産業局長にお伺いしますが、不況業種に対するいろいろな特別措置法ができました。その中に、御承知のように組合と協議をしてという課題が幾つかある法ができていますね。組合の意見を求めるないしは協議をするとかあります。私は、アルミニウムの場合、安定基本計画がつくられる前に、事実行為としては、本来組合と協議をして、百十万トン体制なら体制に伴うそれぞれの企業側の計画といいましょうか、それがあってしかるべきだと思うのですね。ところが、いまおっしゃられましたように、業界としては安定基本計画がまだできない。したがって、個別の企業の体質の脆弱によってその企業間で雇用問題が先行して、合理化問題として発展をしておる。この間の問題を一体どのように見られているのかというふうに聞きたい。  本来私は、アルミニウムにいたしましても、フェロアロイにいたしましても、あるいはソーダにいたしましても、それぞれの合理化計画というもの、いわゆる全体の安定基本計画、その中に個別企業、そしてその中における脆弱な立場で労使間の話が出てくるなら、これは話の筋としてわかるわけです。そうではなくして、おれのところはひどいのだから、全体のことはしばらくおいて、まずとりあえず余剰人員問題だけひとつ話し合おうじゃないか、こういうことが各分野、不況業種全般にわたってそういう先行状態がある。現実には先行しておるわけですね。一体この事情をどのようにお考えになるのか。特に国会でそれぞれ不況業種に対する特別措置が審議をされるという経過と相まって、この辺のことをどうお考えになるのか、お聞きしたい。  それから、労働省にひとつお聞きしたいのは、いま日本重化学工業の問題が同僚の清水議員から提起されましたが、御承知のように、この会社は、かつては半官半民で東北振興事業開発のためにできた会社との合併してできた会社ですね。この中に二年間の労働基準法を盾にした休業措置をとって、事実上解雇するという、こういう状態が起きたわけですよ。私は、本来労働基準法というものはそういう性格のものではないと見ておるわけです。しかも半官半民、その後合併したとはいえ、そういう企業の中にこれが全産業不況業種のトップを切ってあらわれて、しかも労働基準法上会社の責めに帰すものだから六〇%だ、こういう中でそれが今日昭和電工にも出ました、あるいは全産業的に蔓延する可能性があると思うのですね。表面的には解雇ではございませんから、何となくソフトに聞こえますけれども、事実上は解雇という条件を中身は伴っている。日本重化学工業の場合には明らかにそうですね。  一体、労働基準法がそういう形で、いい意味じゃ私はないと思うのです。労働基準法というものを悪用するような形で事実上の解雇という条件を生み出しているその状況、しかもこれは全産業的に蔓延する可能性があるわけですから、この辺に対する労働省の行政指導としてどうお考えになるかお聞きしておきたい、こう思うのです。
  89. 大永勇作

    ○大永説明員 先般の産業構造審議会での審議及び答申に当たりましては、組合の委員の方にも委員になってもらいまして、いろいろ御相談をした次第でございまするし、それから、今後つくります安定基本計画につきましても、これは先生御承知のように、当然組合の意見を聞くことになっておりますので、よく聞いた上で尊重しながらやっていきたいと思います。  ただ、五十三万トンの凍結、廃棄でございますが、これは全部一度に一時期にやるものではございませんので、各工場工場によりまして凍結しあるいは廃棄する時期も異なってまいります。したがいまして、個別にどういうふうにするのかという点につきましては、個々の会社と組合とで十分よく話し合っていただくということで、その時期を一線にそろえるということはむずかしいかと思いますが、われわれといたしましては、いずれにしても十分よく話し合いをしながらやっていくように会社側を指導してまいりたいと思う次第でございます。
  90. 加藤万吉

    加藤(万)委員 私の言っているのは、安定基本計画がまだまとまらない段階に、そういう雇用問題だけが先行しているのはどうかということを聞きたいのです。
  91. 大永勇作

    ○大永説明員 五十三万トンの問題につきましては、いま先生御指摘でございまするけれども、大体各企業とも五十三万トンという目標になった場合にどういうふうに自社の体制の整備を考えていったらいいかということをそれぞれ考えながらやっておりまするので、企業によりましては、いま先生御指摘のように、安定基本計画のできる前に先行いたしましてやっておるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、産業構造審議会での答申作成に当たりましても、組合側とはよく話し合っておりますので、基本的には、五十三万トンの問題につきましては、組合側の考え方も、まあやむを得ないのじゃないかという認識でおられるのではないかというふうに考えております。
  92. 小田切博文

    ○小田切説明員 基準法を悪用するような形で長期の休業を行うことについてどう考えるかというような御質問かと思いますが、いずれにいたしましても、いま問題のアルミ業界というような産業界におきましては、先生先ほど議論になっておりますように、円高問題等ございまして非常に厳しい環境に置かれている、そういうことから、いろいろ合理化のための努力をしなければならない状況に置かれているということは言わざるを得ないのかと思いますが、その際に人員面についてどういうような対処の仕方をするか、どうしてもぎりぎり余剰というような問題が出てくるのかどうか、その辺は十分会社側にも配慮していただきたいと思いますが、余剰というような形が一時的にせよあるとした場合に、それを休業というような形でいくか解雇というような形でいくかにつきましては、それは個別の事情を十分承知しております当該企業の労使で十分話し合っていただくより仕方のない問題ではないかというふうに考えるわけです。  ただ、それにしましても、休業というような形をとります場合には、先生御指摘のように、使用者の責めに帰すべき休業でございますから、基準法の法定最低基準でございます平均賃金の六割以上の休業手当が出ているということは必要でございます。その辺で基準法違反にわたるような内容であるかどうかという点については、十分私どもチェックしてまいりたいというふうに考えております。  それから、長期の休業ということであると、自然任意的に退職していくという実態だというお話でございますが、昭和電工のいま労使の間で話し合われております合理化案の内容について承知しているわけでございますが、この内容ですと、四十歳以上の者については退職金優遇措置というようなことで、選択定年制を採用するというような内容になっておるようでございますが、これで私ども判断する限りにおいては、四十歳以上の方については、こういう休業措置をとられておる方ということになるのでしょうけれども、仮に自発的に退職するというようなケースがあったとしても、選択定年制ということで定年扱いというようなことで、退職金制度上では一番有利な支給ということを予定しているのではないかと思いますが、少なくともこのケースについてはそのようなことになっているようでございます。  いずれにしましても、一般的に少なくとも基準法違反があるような雇用調整というようなことではもちろんまずいわけでございますから、私ども労働基準監督機関といたしましては、それにつきましては十分注視してまいりたいというふうに考えております。
  93. 清水勇

    清水委員 時間が参りましたから、最後に一言だけ申し上げて終わりにしたいと思います。  いずれにしても、労働省も雇用の確保という観点から、時間の短縮であるとか週休二日制、こういう面でたとえば余剰人員を吸収していく、こういう方策についてことしの五月次官通達も出しておられる。にもかかわらず、たとえばいま問題になっておる昭和電工の場合には、同一産業の他社の平均の労働時間と比較をしてみて、日勤者の場合も交代勤務者の場合も、三十六時間ないし三十七時間それぞれ長い。年間労働時間が千九百八十時間前後になっている。それをそのままに放置しておいて、余剰人員があるから整理をするというようなやり方を許容するということでは、なるほど基準法上違反行為がないと言えるかもしれないけれども、しかし、雇用政策上、とりわけ今日労働省等が、構造的な不況業種をどう再建していくかという意味通産省と一緒になって、裏表の関係で雇用の安定に力を尽くそうと言っているのだけれども、これがかけ声倒れに終わってしまう。ですから、やはりそういう非常に長時間労働を行っているようなところは、まず時間の短縮をしながら余剰人員をある程度吸収するような努力をする。  それから、昭和電工等の場合には、今度の減量経営を通して来年度は復配をしようというのが目標なんです。会社側がにっちもさっちもいかなくなっているという状況ではないのです。そういうことを会社側が組合に提案をしているわけですね。だから、そういう状況であればなおのこと、少なくとも一時帰休なりの方法で当面をカバーしていく、これがあるべき姿じゃないか。ですから、そういう意味で、通産省としても労働省としても、さらに会社に対して助言なり指導なり必要な方策を講じていただきたい。  この点について最後にそれぞれお答えを願って終わりにしたいと思います。
  94. 大永勇作

    ○大永説明員 いま労使間で話し合われております具体的な問題につきましては、われわれといたしましてその中に介入する立場にはないかと存じますが、いずれにいたしましても、雇用問題というのは非常に重要な問題でございますので、十分よく話し合いの上やるようにという話を会社に対していたしたいと存じます。
  95. 小田切博文

    ○小田切説明員 私どもといたしましては、いま先生御指摘もございましたように、労働時間短縮のための行政指導を進めているわけでございます。この労働時間短縮のための行政指導のねらいといたしましては、当然時間の短縮そのものが労働者の福祉の向上につながるという点はあるわけでございますが、それに加えまして、長期的、マクロ的に見た場合には、労働時間の短縮は雇用の維持、確保の上でプラスの効果があるという判断の上にやっておるわけでございます。  一般的にはそういうようなことで啓蒙、指導を行っているわけでございますが、個々の具体的なケースにつきまして、とりわけ労使間で具体的な話し合いが行われているというケースにつきまして具体的なことをとやかく言う立場にないと思いますが、長期的、マクロ的に見てはそういうねらいのもとに私ども労働時間短縮の行政指導を進めているということを、労使ともに理解していただきたいというふうには考えております。
  96. 清水勇

    清水委員 終わります。
  97. 山崎拓

    ○山崎(拓)委員長代理 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後一時三十四分開議
  98. 山下徳夫

    山下(徳)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松本忠助君。
  99. 松本忠助

    松本(忠)委員 きょうは私は、昭和五十四年度の予算の概算要求を直前にしておりますいまの時期において、当面の経済情勢、特に景気の問題、これに関連しまして一般消費税導入の問題、さらにはまた年末を控えての中小企業対策、そうした問題も伺いたいと思いますし、特にまた、最近社会問題化しておりますところの金の先物取引について関係各省にお伺いをいたしたいと思っております。  そこで、午前中も同僚議員から商品取引の問題の質疑がございました。私がこの場で取り上げようとしております問題は、午前中の議員の質問とは若干違いまして、金、いわゆるゴールドの取引の問題でございます。  御承知のように、金の取引が自由化されておりまして、現在、デパートあるいは貴金属店の店頭におきまして現物と現金引きかえの取引、これが行われているわけでございますが、そのほか、商品取引と言われております砂糖あるいは穀物取引所などで行っておりますところの正規の取引とは異なりまして、いろいろ調査してみますと、大体十分の一程度の金で先物取引をさせる、いわば金の先物取引の問題でございます。  この被害は全国的に発生いたしておりまして、その被害層は、非常に弱い立場にある人、主婦であるとか、それも御主人にないしょでやっている方が大分多いようです。それからまた、退職されたお年寄り、いわゆる相場というものに対して全く縁のない人たちが食い物にされている、そういう状況が多いわけでございます。でございますので、単に金を損したというような状態に終わっておりませんで、また一歩それが進んで家庭崩壊につながる、ノイローゼになっておかしくなってしまった、こういった悲惨な状態が各所で現出をしている状況でございます。  これはことしの十月五日の読売新聞の記事でございますけれども、これによりますと、業者の甘い勧誘に乗せられて金の先物取引で大金を失った人たちが、十月四日、金取引被害者同盟、小椋正二代表、これを結成した。会員は被害に遭った七十八人で、ほとんどが相場の知識に疎い主婦と老人である。被害者七十八人のうち一千万円以上失ったのは三人。兵庫県豊岡市の主婦三十四歳は、ことしの一月、株券を担保に金を十キログラム予約購入、一カ月後に、十万円もうかりましたという業者からの電話があり、もっと買い足しなさいというふうに持ちかけられまして、さらに十キロを注文した。金の相場が下がりますと、損を取り戻すために買い足せ、保証金を追加しろ、こういうふうに責められまして、結局半年で千三十四万円の損害、いま離婚話が持ち上がっている、こういう報道でございます。  もう一例は、兵庫県豊岡市の元中学校の校長、六十二歳の場合は、業者が一年間に五十五回も勝手に売買を繰り返したために、手数料だけで千三百万円に達し、二千万円の退職金がそっくり消えてしまった、こういう記事が読売新聞十月五日号に載っているわけでございます。これらの七十八名の方々の被害総額というものを概算いたしましても約二億四千万円、これは大変な問題であると思うわけでございます。  なお、この後の調査によりますといろいろ出ておりますが、特に私が問題にしたい何件かを申し上げてみたいと思いますけれども、千葉市に住むところの七十四歳の退職老人、この方は被害金額百十四万円、それから香川県の三十二歳の主婦、この方は九百五十万円の被害、それから東京都品川区の主婦、この方も百五十万円の被害、それから神奈川県の相模原市にお住まいのガソリンスタンド経営者の方が被害額が百万円、その他いろいろとわれわれの調査によります資料にも出ているわけでございまして、こうしたことが今後続々と表面に出てくる傾向があるのではなかろうかと思うわけでございます。ただいま申し上げました分なども氷山の一角ではないか、このように思うわけでございます。  そこで、通産当局に伺いたいわけでございますが、これらの金の取引行為というものは公に認められた市場におけるものであるかどうか。あたかも通産省監督のもとにある市場においてなされたもののごとく言っているものもある、こういうふうに聞いておりますので、この点はどうなのか、まずこの第一点を伺いたいわけでございます。
  100. 島田春樹

    ○島田説明員 お答えを申し上げます。  公に認められたものではございません。
  101. 松本忠助

    松本(忠)委員 公に認められたものでないということになりますと、いわゆるやみ市場というか、私設市場というか、そういうものではなかろうかと思うわけでございますが、そうした業者の種類あるいは数、こういったものが全国でどれぐらいあるものか、通産省としてそれを握っていらっしゃったら、ひとつお聞かせを願いたい。
  102. 島田春樹

    ○島田説明員 お答え申し上げます。  公に認められたものではない、要するにわれわれの方としてたとえば許認可とかなんとかのかっこうで把握、規制をしているものでないものでございます。したがいまして、なかなかこれの実態というものは把握しにくうございます。いわゆる金の取引市場、延べ取引と通常呼ばれておりますが、延べ取引市場と称するものにつきましては、非常に離合集散が激しい、きわめて流動的なようでございます。したがいまして、なかなか把握は困難でございますが、いわゆる市場数としては、私どもの把握している感じでは、いまのところ全国で十数団体に上っているという状況でございます。
  103. 松本忠助

    松本(忠)委員 いわゆるやみ市場といいますか、そうしたものが現出しているわけでございまして、いまお答えを聞きまして、その数の多いのに非常に私も心配をするわけでございます。  彼らの手口は一体どうなのかということでございますけれども、彼たちが言うのには、財産の目減りのしない金の延べ板を買いませんか、こういうふうに言葉巧みに持ちかけてくるわけでございます。そうして値が上がった。そうしたらば当然これは利幅が出てくるわけですから、売って手じまいしたい、こう思いまして電話をすると、担当者が不在だと言って電話口へ出てこない。また再再電話をすると、転勤したとか、ついには会社をやめた、こんなことを言ってお客さんに対しては全然もうけさせない。とにかくお客さんが出した金銭を何やかやと言って決して返さない。その間に勝手に売買をしている。いまの中学校の元校長先生の例もありますように、勝手な売買をしまして骨の髄までしゃぶり取る、こういうわけでございまして、悪質の商品取引と全く同じでありながら、彼たちは現物延べ払い取引だなどと言っているわけでございます。  通産省は、こうした商いの手口、こうしたものをどのように認識していらっしゃるのか。私は、これは完全な先物取引とみなしているわけでございますけれども、この点に対して通産省はどのように認識をしていらっしゃるか、伺いたいわけであります。
  104. 島田春樹

    ○島田説明員 お答え申し上げます。  いまの実態でございますけれども、私どもの方にもいろいろ金取引に関するいわば相談というのが寄せられております。被害を受けたということで相談があります内容につきまして私ども聞いているところでは、いろいろな形態のものがございまして一様ではございませんが、たとえばいまちょっとお話が出ましたけれども、将来の引き渡し時点における価格の下落というものに伴う解約の危険性を回避するための予約金というものの積み増しを要求する、その要求にたえられずに取引をやめる、すると多額の違約金を払わされるというようなケース、あるいは予約金を払い込んだ後で連絡がなくなってしまったというような被害の訴えがあるわけであります。  この取引の実態なんですけれども、いろいろな形態があるようでございますが、私どもが最近把握しているところでは、いわば約款を見ますと、転売、買い戻しによる差金決済は行わないというような旨が記載されておるものがほとんどであるようでございまして、そういう意味では、約款を見る限り先物取引には入らないもののように思われます。
  105. 松本忠助

    松本(忠)委員 通産省でこういう取引が実在しているという実態を初めて認識したのは、いつごろのことですか。
  106. 島田春樹

    ○島田説明員 お答えいたします。  正確ではございませんが、およそ二年ぐらい前一からではないかと思われます。
  107. 松本忠助

    松本(忠)委員 二年前はいま審議官が言われたような約款などというものは全く提示も受けてない、そして巧みに言われて金を出させられている例があります。約款などもできて現物延べ払い取引だと言われるような傾向になったのはごく最近のことだ、われわれはこう思っているわけでございます。通産省が実際の声を聞いたかどうか、その辺なんです。われわれが私たちのところへ訴えてくるものを聞きますと、いずれもそういう約款などは見ておりませんし、そういういま審議官が言われるようなことではなく、被害者の声というものは全くの先物取引だ、こういうふうに認識をしているわけでございますが、その辺はいかがですか。
  108. 島田春樹

    ○島田説明員 お答えいたします。  私ども、若干の事例につきまして、実態調査といいますか、ヒヤリング等でできるだけ実情把握に努めているわけでございますが、それを見ておる限りでは、契約の形式としては先ほど申し上げましたようなかっこうでございまして、いわゆる法律上言う先物取引には該当しない契約になっておるということでございます。
  109. 松本忠助

    松本(忠)委員 ですから、問題は、二年前はどうだったかということなんですね。現実にそういう話を聞くのは最近ですよ。われわれがこの問題を国会で取り上げたのは、御承知のように五十二年のことですが、その時分にそういう約款があったとか、いわゆる現物延べ払い取引だなどということはなかったわけでして、全くの先物というふうに解釈し、そしてまたその解釈を妥当としていたのが通産当局ではなかったかと私は思うのです。ごく最近そういう約款などを見せられて、現物延べ払い取引だ、こういうふうな解釈に立っているのじゃなかろうかと思うわけでございます。民間のいわゆる被害者の被害の回復、そしてこれの撲滅運動をどうしてもやらなければいけない。そうして悪徳商法被害者対策委員会、こういうところへ寄せられました訴えを見ましても、われわれが調査をしてみたものを見ましても、いずれもこうした手口が先物取引であるということは明らかでございます。  改めてお伺いしますけれども通産省はこの問題に対してどういうふうに二年前から取り組んできたのか、その辺を私はお伺いしたいと思うのです。  実態調査というものを通産省でやっているとするならば、その説明を願いたいと思いますし、また、やらないで放任しておいたとするならば、余りにも無責任のそしりを免れないのではなかろうか、私はこう思うわけでございます。一体被害がいつごろから多くなったのか。われわれの調査では特に五十三年以降です。ところが、現実には五十二年ごろからそういう問題が起きているわけでございますので、通産省はそういうものを耳にしたときに、これはどうもとんでもないことになるぞというようなお考えがなかったのか、それともこんなものはほっぽっといても大丈夫なんだというような投げやりの、放任の、そんな考えできたのかどうか、その辺をしかとお答えをいただきたいと思います。
  110. 島田春樹

    ○島田説明員 お答え申し上げます。  この件についてどういうふうに対処してきたかということでございますが、金の取引につきまして、現物が適正な流通経路で取引されるというようなかっこうである限り問題はないわけでございますが、いまお話しのように、先に決済するというようなかっこうで、延べ取引と呼ばれておりますが、そういったようなかっこうで行われるということになりますと、非常に危険が大きいということになるわけでございます。特に一般の大衆にとっては危険が大きい。したがいまして、私どもとしましては、そういうものは非常に危険であるので、一般の大衆がそういうものに近づかないようにという啓蒙をしていくということが一番大事であろうかというふうに考えておるわけでございます。  したがいまして、私どもとしましては、こういった金取引に伴う被害を防ぐためにその実態把握に努力をしてきたわけでございます。ただ、何せ先ほど申しましたような非常に流動的な実態でございます。なかなか把握がむずかしいわけでございますが、実態把握に努めると同時に、一般消費者に対しての注意、先ほど申しましたような意味での注意を喚起するということに努力をしておるわけでございます。  具体的には、若干の事例を挙げますと、私どもで出しております「消費者ニュース」というのがございますが、それにおきまして消費者に対して繰り返しこの問題につきましての注意を喚起するというようなかっこうで、五十一年の十月、五十二年の五月、五十三年の二月というかっこうで、それをアピールしてきております。  また、その商品取引所の関係者であります全国商品取引所連合会、それから全国商品取引員協会連合会に対しまして、いわゆる金取引が商品取引所法に基づく取引ではないという点で、その点についての消費者の誤解を防ぐことを指導をいたしまして、この結果、関係者全国紙数紙にそういう意味意見広告を掲げておるというようなことも行われております。  そういうことで、先ほど申しました趣旨のPRというものに力を入れてきておるつもりでございます。
  111. 松本忠助

    松本(忠)委員 いまも「消費者ニュース」の話が出ましたけれども、その「消費者ニュース」に載った話は、決算委員会かでわが党の林君がことしになって取り上げている問題でございます。その林君の会議録を見ましても、一体何回やったのかわからぬし、第一、「消費者ニュース」なるものがどれぐらいの発行部数があって、それが一カ月に一遍ぐらい出て、それで全国に徹底できるとも思えないわけです。どうもその辺が甘いのではないかと思うわけでございます。  林君の質問を読んでみましても、一方では「消費者ニュース」へ出したからいいのだと言っているけれども通産省でなおそれに今度は反しまして、どうも全然また反対のことをやっているというようなことが、「消費者ニュース」にあることと別に「通産ジャーナル」ですか、そういうものに対して広告を出しているなんということで、誤った認識でやっているというようなこともありまして、「消費者ニュース」でやったからそれで万全だとは思えないわけでございますが、一体何回ぐらいその問題をやったわけでしょうか。
  112. 島田春樹

    ○島田説明員 お答えいたします。  「消費者ニュース」に出したのは、先ほど申しましたように三回でございます。
  113. 松本忠助

    松本(忠)委員 実際にそれが万人の目に、特に私が指摘しているような弱い立場の人の目に入るとは私は思えません。新聞広告ならいざ知らず、通産当局で発行している「消費者ニュース」なるものが、われわれもなかなか要求をしなければ手元へ届かないようなことですから、そうしたものが私が先ほど言ったような弱い立場の人の手に届き、あるいは目に触れる、こういうことはなかったろう、こう思うわけでございます。  警察庁の方に御出席でございますからお伺いしますが、警察庁では、こういう問題がどうも最近はびこってきた、それに気がついていろいろと調査をしたのではないかと思いますけれども、そういうことについて本当に警察庁としていつごろおやりになったのか、ちょっとお伺いをしてみたいと思います。
  114. 柳館栄

    柳館説明員 お答え申し上げます。  各都道府県それぞれ非常に多数私ども下部機構として持っておりますので、いつごろから把握したのかということはちょっとわからぬのでございますけれども、昨年の二月ごろ、北海道警察本部におきまして金の取引をめぐる詐欺事件ということで検挙、立件いたしております。したがいまして、やはり二年近く前から関心は持っておったものだと考えております。
  115. 松本忠助

    松本(忠)委員 確認いたしますが、そうすると、五十一年ごろからそういう問題に対して関心を持っていたということですね。大体五十一年の何月ごろのことでございますか。
  116. 柳館栄

    柳館説明員 どうもはっきりいたしませんけれども、五十一年の後半ぐらいになろうかと思います。  それから、ちょっと訂正させていただきますけれども、私、先ほど北海道警が検挙いたしましたのを二月と申しましたけれども、八月でございます。
  117. 松本忠助

    松本(忠)委員 確かに五十一年後半からこの問題が起きてきて、特に被害者が続出してきているというのが五十二年からことしにかけて。そうした問題から、大蔵委員会で取り上げられましたのも昨年の三月二十九日でございますし、そうした問題が取り上げられて以来いろいろその対応策というものがただされながら、通産省の対応ではどうも甘過ぎるのではないか。いまの「消費者ニュース」にわずか三回取り上げた程度ではなかなか不十分ではないかと思うのでございます。非常に甘い対応ではないか、効果を上げない、こういうふうに私は思うわけでございます。ということは、現実に被害が減っていない、累増する傾向にある。そうなってまいりますと、どうもその問題に本気に取り組んだのかどうか、私は通産当局の態度というものに非常に疑問を持っているわけでございます。率直な言葉で言えば、怠慢のそしりを免れないのではないか、ここまで私は思うわけでございますが、いかがでございますか。
  118. 島田春樹

    ○島田説明員 お答え申します。  「消費者ニュース」だけではないかというおしかりでございますけれども、私ども、先ほど申しましたように、できるだけこの啓蒙普及に努めるということは大事だというふうに考えておりますので、先ほどもちょっとお答えしましたけれども、商品取引所の方を通じましても、ことしの、これは五十三年の九月でございますが、から、全国紙に意見広告を出すというようなことを指導して、出しておるわけでございます。これはなかなか効果のほど正確にはわかりませんが、相当やはり反響を呼んでおるようでございまして、これも一つのやり方でございますが、さらにいろいろ工夫しまして、こういった実態を知らせ、そういうものについての被害が起きないように、啓蒙普及にはさらに私どもも知恵をこらしたいというふうに考えております。
  119. 松本忠助

    松本(忠)委員 努力をしているんだというお話でございますが、どうも私は、その努力を残念ながら認めるわけにはいきません。  そこで、警察庁にお伺いをいたしますが、いまもちょっと御答弁の訂正でまたあったわけでございますけれども、昨年の八月十一日に毎日新聞で私は拝見をいたしましたけれども長崎の県警、それから八月十八日には同じく毎日新聞でございますが、これは北海道警、これがいずれも商品取引所法違反容疑ということで捜査をしております。それが新聞のニュースに載っているわけでございますけれども、一体これはどういう内容のものであったのか、この新聞記事のとおりなのかどうか、お伺いをいたしたいわけでございます。
  120. 柳館栄

    柳館説明員 昨年北海道警が検挙した事案の内容でございますけれども、これは貴二貿易の社長、同社北海道支店長らが共謀いたしまして、昭和五十一年十一月十八日ごろから五十二年三月三十一日ごろまでの間、金取引の顧客四十八名に対して、全国貴金属取引協会中央金市場の立会人でないのに同市場の立会人であるかのごとく装い、かつ、金地金は値動きが激しく営業性の薄い商品であるにかかわらず、金は換金性が強く着実に値上がりするなどと事実に反することを申し向けて欺罔し、保証金、追加保証金名下に六千五百八十四万五千円をだまし取ったものであるという事案でございます。  また、長崎県の事案でございますけれども、ここれは現在捜査中でございますので、答弁を差し控えさせていただきたいと思います。
  121. 松本忠助

    松本(忠)委員 一応北海道の例はお伺いしておきますが、確認しますけれども、捜査に踏み切った段階では、商品取引所法違反というふうに私は理解しておるのです。取引所法違反であるがゆえに、そうした容疑があったからして入ったと私は思うのでありますけれども、その点はどうなんですか。
  122. 柳館栄

    柳館説明員 お答え申し上げます。  その捜査に私どもが着手した時点におきましては、同法の八条違反の容疑があるという考えで着手いたしたのでございます。
  123. 松本忠助

    松本(忠)委員 いまお答えがあったように、確かに商品取引所法違反ということで捜査に踏み切られたというふうに認識しているわけでございます。  そこで、その問題はそうとしまして、法務省と通産省お尋ねいたしたいと思うのでありますけれども、この問題が国会で取り上げられましたのが昭和五十二年の三月二十九日、ここでもいろいろとお話があったわけでございますけれども、このいろいろな問題点を何とかしなければいけないという認識はお互いにお持ちになったのだろうと思うのです。警察にしてみてもあるいは法務省にしてみても。そうした段階において、国会で取り上げられまして以降、一つのテーブルに着いて打ち合わせをするとか話し合いをするとか協議するといったことがあったのかなかったのか、また、しなければいけないとお感じになったのか、そんなことをする必要はないとお考えであったのか、その辺をひとつ明確にしてもらいたいと思うのです。
  124. 島田春樹

    ○島田説明員 お答え申し上げます。  私どもの方は、この問題につきましては、必要に応じまして警察当局とはいろいろ連絡をとってきております。
  125. 佐藤道夫

    ○佐藤説明員 お答え申し上げます。  金の取引をめぐりまして犯罪を構成する案件につきましては、検察当局といたしましても厳正な態度をもって捜査処理を行っておるところでございますけれども、犯罪を構成しない案件につきましては、われわれの立場としては何ら申し上げることはできないことを御了承いただきたいと思います。
  126. 松本忠助

    松本(忠)委員 それでは、警察庁と通産省ではお打ち合わせをしましたか。
  127. 島田春樹

    ○島田説明員 お答え申し上げます。  いろいろ連絡をとり合っておるということでございます。
  128. 松本忠助

    松本(忠)委員 それでは、警察庁の方はその連絡をとり合った事実をお認めになりますか。
  129. 柳館栄

    柳館説明員 お答え申し上げます。  連絡をとり合いました。
  130. 松本忠助

    松本(忠)委員 その結論はまだ出ていないのだろうと思いますけれども、五十二年の三月二十九日の会議録を見ましても、警察庁の柳館説明員という発言が載っております。これはあなた御自身だと思うわけでございますが、前の方をちょっと除きますけれども、「商品取引所法第八条違反というものはほうっておいてもなかなか申し出てくる者はないだろうと思いますので、この法律に照らして違反になるものは摘発をしてまいりたい、」こういう御答弁があったわけでございますから、当然おやりになっておると思いますし、また、通産省の鷲沢説明員の答弁でございますと、「取引所法の上場商品でないために、その実態を把握することはきわめて困難であるという実態が従来ございました。しかしながら、当方といたしましても、この問題につきましては、それを放置するという態度ではなくて、先ほど申し上げましたように、あらゆる方法を通じましてできるだけ早急に実態を把握の上、もし第八条に抵触するというようなことがあった場合は、しかるべく処置をしてまいりたい、かように考える次第でございます。」こういう御答弁があったわけでございます。  このように、この三月二十九日の国会答弁で見る限りにおきまして、お互いに情報を集め、実態を把握し、しかるべき処置をしなければならないというふうにお考えにあったように思いますけれども、こうして次々と被害者が出てくる、いまではサラ金問題と同様に社会的な問題になってしまった。具体的な被害者が、一家心中であるとか、あるいはまた奥さんが御主人に知れてしまって大変だということから蒸発してしまったとか、こういった事件、被害が具体的にあらわれているわけでございます。このまま放置しておきますと続発することはもう目に見えていると思うわけでございますが、この五十二年の三月二十九日から、暦を繰ってみましても、もう一年七カ月も経過しているわけでございます。こうしたことを考えますと、いかにも対応がなまぬるいように思うわけでございますが、その点はどのようにお考えでございましょうか。
  131. 島田春樹

    ○島田説明員 お答え申し上げます。  私ども先ほど、従来のとってきた措置につきましてはもう御説明したわけでございますが、やはり私設金市場における取引の危険性というものにつきまして今後ともPR、啓蒙活動を強化するということがまず第一に必要であろうかと思います。また、この金取引の問題というものは、いまはそういう被害を受けたという観点からの問題があるわけでございますが、さらに広く考えますと、取引というものを適正にしていく、あるいは消費者保護あるいは公共の秩序維持、いろいろな観点から考えなければいけないということで、今後とも関係方面といろいろ調整をしていかなければいけないというふうに考えておるわけでございます。
  132. 柳館栄

    柳館説明員 お答え申し上げます。  今後とも、詐欺罪等犯罪にあるいは法令に触れる行為があれば、厳正に取り締まりをしてまいりたいと考えております。
  133. 松本忠助

    松本(忠)委員 いろいろ警察庁あるいはまた通産省からもお答えがございました。しかし、本当に一年と七カ月もこうした問題が、対応策が十分に練られないままに今日に至っている。本当に私は、これではいま口にされた消費者保護であるとか、犯罪の事実があれば摘発するんだというようなことをおっしゃっても、どうも何か投げやりにしているんではないかというような気がしてならないわけでございます。  通産省お尋ねいたしたいのですが、きょうは御出席になっておりませんけれども、河本通産大臣が、ことしの二月十五日の予算委員会で、わが党の権藤委員質問に対して答弁されておりますが、これを読みましても、大臣は非常に前向きにやるんだという意気込みを示しているわけです。  答弁を要約して申し上げますと、これは五十二年二月十五日の会議録の四段目のところに出ているわけでございますが、「最近、金の自由化が具体化してまいりましたので、先物取引と称して、いま御指摘のような大変いかがわしい取引が行われておることは事実であります。」大臣もお認めになっているわけでございます。「そこで通産省といたしましては、商品取引所の会員に対しまして、こういうことのないよう会員としては厳に慎むように厳重注意を喚起いたしております。しかし同時に、取引所の会員がそういうことをしなくても、それ以外にもこういういかがわしい仕事をする者がたくさんおりますので、やはり一般の国民の方方に対してもよほど徹底したPRが必要かと考えております。」  確かに鶴田、審議官がお答えになったように大臣考えておられる、そしてまたそういうことをやろう、こうおっしゃっているわけでございます。  その点は私も了とするわけでございますけれども、なおもう一つ、これはことしの四月二十一日の決算委員会におきまして、わが党の林委員質問に対しての通産大臣お答えでございますが、これもやはり、「金の先物取引につきまして詐欺行為またはそれに類似の行為が後を絶たないようでございますから、通産省に与えられました権限をフルに発動いたしまして、できるだけの調査をし、そしてまた、それを防止するためのできるだけの対策も考えてみたいと思いますが、必要とあらば警察出局とも十分連絡をいたしまして対処をいたします。」こういうふうに通産大臣が重ねて二回にもわたって言っておられる。  それを体して警察にいたしましてもまた通産省当局にしてもやっているわけと思うわけでございます。しかしながら、どうもまだなまぬるい、そのうちにどんどん被害が出てきている、こういう状況でございます。  いまの答弁を私聞いておりまして感じますことは、どうもそう言っては余り酷な言い方かもしれませんけれども、だまされる者が悪いのだという考え方が根底にあるんじゃないかとも思うのです。だます方がもっと悪くて、これを取り締まるのがあたりまえではないかと私は思うわけです。それを踏まえて、通産省、警察においてどう対処していくのか、もう被害が続出している状態から見て、これをこのままで放任できない、こう思いますので、再度この点について、通産、   両者の御意見、お考えを、対応策をお伺いしてみたいと思います。
  134. 島田春樹

    ○島田説明員 お答え申します。  私どもとしましても、いまのいわゆる金私設市場における金取引による被害というものが発生している、こういうものを放置しておくべきでないということは申すまでもないわけでございますので、先ほど申しましたように、そのための対策として一番大事なことは、やはりそういう取引の実態というものをできるだけ把握し、それからそういうものについての消費者の認識を深めるということで、そういうことにならないように未然に防止するための啓蒙普及というのにまず力を入れてまいりたいというふうに考えております。  それからもう一つ、観点はやや違いますけれども、やはりこの金の取得というのが財産保全の一つの有効な手段だというふうに考えられているというような背景というものはそれなりに考えられるわけでございますので、それは逆に言いますと、安全に現物が取引されるというようなことができる、そういう現物市場というものができてくるということが、ある意味でそういった被害を防ぐ上でも非常に重要な役割りを果たすであろうというふうにも考えております。したがいまして、そういう問題につきましても、今後関係方面ともよく相談をし、直接われわれとしても必要な支援をしていくというふうな考え方で臨みたいというふうに思っております。
  135. 柳館栄

    柳館説明員 お答え申し上げます。  先ほど申し上げましたように、金の取引をめぐりまして詐欺罪その他の法令違反がありますれば、厳正に取り締まりをしてまいりたいというぐあいに考えております。
  136. 松本忠助

    松本(忠)委員 お二人のお答え、型どおりの答えでございますので、私、全くそれじゃそれでいいのだと言えない。本当に不幸な事態が次から次と発生しているこの現状を、少なくとも御両者とも認識はしているわけでございますので、この問題に対して十分対応してもらいたいと思っているわけでございます。手ぬるいことはもう許されない段階だ、このまま放置はできない段階だ、こう思っておりますので、お願いをいたしたいと思います。  そこで、国税庁にお尋ねをいたしたいと思いますが、このようないわゆるブラックマーケット及び業者、この業者たちは一定の時期が参りますと、ほとんど例外なく倒産をしている。たとえて言いますと、最近でもカネカ通商あるいは昭和貿易、サンジャパン等、こういった会社の被害者が大変多い。これらの企業は倒産をしております。彼らの取引を見てみますと、いわゆるのみ行為を行っている可能性が高い。つまりお客さんが損をしていることは会社がもうかっている、そういうことになるわけでございます。そしてこの課税漏れというか、申告漏れ、こういうものも平気のことなんです。いわゆる申告をしない、当然またそこでなかなかその把握ができないから、国税庁としても課税ができないということになるのであろうと思いますけれども、こういう問題に対して、国税庁としてはもっともっと積極的に対処すべきではないかと思いますけれども、この点をどのようにお考えでございましょうか。
  137. 山本昭市

    ○山本説明員 お答え申し上げます。  法人に対します税務調査につきましては、法人から提出がございました申告書の内容、それから法人の業態、業界における同類業種との比較、その他もろもろの情報等を総合勘案いたしまして、必要と認めます場合には適正なる調査をいたしまして、適正な課税の実現に努めておるわけでございます。  ただいま先生お尋ねのいろいろ倒産その他の例の御質問があったのでありますけれども、そういった事実もすべて総合勘案いたしまして、最終的に適正な課税が行われますように努めているわけでございます。
  138. 松本忠助

    松本(忠)委員 せっかくひとつ努力をしてもらいたいと思うのです。こういう悪徳商法で私腹を肥やしている、そういうものを見逃しておきますと、本当に汗水たらして一生懸命働いて、そうして税金を払っているいわゆるサラリーマンあるいは労働者、こういう方々は政治に対して不信を抱くと思うのですね。そういう面を考えていただいて、いわゆるネズミ講の天下一家の会に対しましても断固たる処置をおとりになったようにこれをやっていただかないと、本当にまじめに働く舌がいやになってしまうと思うのですね。そういったことで積極的にひとつ対処をして調査をし、そしてまた課税をする、そういう方向へ進んでいただきたい。特に国税庁に対して要望を申し上げておきます。  それから、公正取引委員会においでいただいていると思いますので、お伺いをいたしたいことがございます。  通産省、警察庁からそれぞれいろいろの御答弁がございました。私は、それは決して責任の所在をはぐらかそうとか、適当にしてしまおう、こんな考えではないと思いますけれども、この事態をそのままにしておくということは許されないことだと思いますので、公正取引委員会といたしましても、独禁法上の摘発、たとえば十九条の六項あるいは十項、こういう不公正な取引方法の中の不当な価格の誘引、優越的地位の乱用、こういったものでも取り締まれるのではないかと私は思いますけれども、公取としてはいかがな御見解をお持ちでございましょうか。
  139. 長谷川古

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  私どもは、この件につきましては新聞、雑誌等で若干承知している程度でございますので、いまだ具体的に検討したことはございません。したがいまして、感じだけでございますが、私どもの独禁法と申しますのは、いわゆる通常の経済活動を前提といたしまして、その中における公正な競争を確立するというのが私ども法律の目的でございますので、ただ、いま伺いましたところの感じと申しますと、このようなる取引というのは、むしろそういう形の取引そのものが否定さるべき問題じゃないか、したがいまして、私どもの観点からいいますと、一体どういう分野の公正な競争の確保に必要なのかというふうな問題も起こってくるかと思います。いずれにしろ、実態を全然把握しておりませんので、いま少しく実態の把握をいたしました上で、そのような問題点を検討いたしたいと思っております。
  140. 松本忠助

    松本(忠)委員 公取の御意見もわかりますけれども、まあ公取としては全くいままでそういうものに対して調査をしていないということでございますので、ここでこうやりなさいと私から言っても、それは無理な話かもしれませんけれども、現にもういわゆる新聞紙上に大々的にこの問題は出ているわけでございます。そうした点を認識されまして、やはりこれに対して公取としても、通産省、警察庁のやっていることに対して並行的にぜひこの調査を進めていただきたい、私はこう要望するわけでございます。  それでは、政務次官が参りましたればこの問題のけじめをつけたいと思っておりましたけれども、まだ見えておりませんので、やむを得ませんからその問題は後にいたしまして、一応この金の取引の問題につきましては、関係者の国税庁、法務省、警察庁、公取等御退席いただいて結構でございます。  引き続きまして、当面の経済問題について、通産省あるいは経済企画庁等にお尋ねをいたしたいと思っております。  それでは、当面の課題でございます景気の問題、あるいは年末を控えての中小企業の問題、こういうような問題についてお答えをいただきたいと思います。  まず、通産省それから経企庁にお尋ねをいたしたいと思うわけでございますけれども、景気の先行きについて、私どもは非常に不安の材料を多く見受けております。  福田内閣の国際的な公約とも言えるところの七%成長というものが、とうてい不可能かと思われるわけでございます。そこで、通産省としては現在でも七%成長が可能と考えているのかどうか。そしてまた、第二次補正予算の編成というものを通産大臣はにおわせておりますけれども、これについて編成すべきではないかと私は思っておりますけれども、現在通産省としてはどうお考えであるか。経企庁もこの問題について、同じように七%の成長達成が可能かどうか、あるいは第二次の補正予算を編成するべきであるかどうか、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  141. 矢野俊比古

    矢野説明員 七%成長の達成が可能かどうかということのお尋ねでございます。  私どもは、最近、いろいろ経済団体あるいは研究機関というようなところで、七%は非常にむずかしいのではないかというような御発言あるいはまた御見解があるやにも伺っておりますけれども、現在雇用情勢が非常に厳しいという実態がございますが、物価は比較的安定をたどっておりますし、今後、先般お願いいたしました二兆五千億の補正予算、こういった実行というものを通じて七%成長の達成ということに努めていかなければならぬという覚悟でございます。  最近、御承知のように、一時いわゆるドル安というものが大きく動き出したわけでございますが、ドル防衛策もとられておりまして、いわゆるドル安円高の方向が、少し潮が変わってきた。また、最近の金融機関、それからいずれ私ども調査の結果が出てまいりますが、民間設備投資が前期に比べまして、今回の調査はいわゆる上方修正するであろうという見方もございます。そういった流れもございますし、また、私どもの鉱工業生産指数というものが、御承知のように九月は前月比一・一%、十月の予測ではいま二・三という高い数字がございます。これが十月実調にどう出てくるかは今月の末でないとわかりませんけれども、こういった明るい現象もございまして、私どもとすれば、七%達成ということは現在の努力をもってすれば可能ではないかと見ております。  しかし、万一そういった事態が非常にむずかしくなる、もう少し時間をかしていただいて景気の指標を見させていただきたいわけでございますが、常に大臣が申しておりますように、現在のような経済の混迷の時期には、いわゆる追加策というものについて大胆かつ機動的に動かさなければならぬと申しておられます。仮に見通しに暗いものが出れば、いわゆる機動的かつ大胆な追加策を固めまして、いわゆる七%成長を達成させるという考えで進めるべきだ、こう考えております。
  142. 宮崎勇

    ○宮崎説明員 お答えいたします。  基本的に当面の経済情勢につきましては、ただいま通産省から御報告がありましたのと認識は同様でございます。本年度の経済政策の目標といたしまして一番中心に考えましたのは雇用の改善でありまして、あわせて国際収支の黒字を減らす、こういうことで実質成長七%というものを設定したわけでございます。  その後の動きを見ますと、ただいまお話しのように、在庫調整も順調に進んでおりますし、また、景気回復の主導力としての公共投資も順調に支出をされておりますし、そういうようなことから、内需におきましても強弱まちまちはございますが、それぞれ個人消費、住宅投資あるいは設備投資等について政府が七%成長を予想しましたような内需の動きを示しております。内需に関する限りはかなり堅調でございますが、これも御指摘がありましたけれども、最近の急速な円高というようなことが輸出入両面においてデフレ効果を与えるというような懸念もございますが、諸般の経済統計指標を注意深く見守りまして、機動的に今後の事態に対処し、ぜひ七%成長を達成したいというふうに考えております。
  143. 松本忠助

    松本(忠)委員 矢野産業政策局長お答えも、それから経企庁の宮崎調整局長お答えも、全く軌を一にしたように、政府側の答弁としては満点だと私は思うわけでございます。しかし、現実に日本経済を左右している財界の首脳も、七%の達成には非常に危惧の念を持っているわけですね。これは私から御指摘しないでも、しばしば新聞紙上に出てくるいわゆる財界の大物たちの考え方、そういったものを考えてみたときに、本当に生きた経済を運営している人たちがあそこまで言うということは、全く七%成長というものに対して、とてもとてもこれはできないことだ、希望的観測を言っているにすぎないのだ、こういうふうに私は受け取っているわけですよ。  ですから、御両所の答弁は、政府の当局としては当然の話だと思います。もういまから七%成長はだめでございますなんということをおくびにも出しても言えつこないわけですから。しかし、現実の生きた経済を運営している人たちがあそこまで言っているということを、一体どのようにお考えですか。
  144. 宮崎勇

    ○宮崎説明員 先生御指摘になりましたとおり、また、最近財界その他民間の調査機関でも、七%成長は大変問題があるというふうに指摘されております。  その七%成長の中身についていろいろ検討いたしますと、内需につきましては、私どもは設備投資あるいは個人消費等について大体想定のように動いているというふうに考えておりますし、先ほどちょっと通産省からも指摘がありましたが、設備投資等につきましては、若干従来の投資調査を上方修正するというような状況になっております。したがって、そういう内需の強さということも反映いたしまして、一時停滞しておりました鉱工業生産指数も八月、九月とプラスに転じております。  ただ、財界等が懸念しておりますのは、非常に急速な円高によって実質的に輸出の数量がすでに減り始めている、そのことが恐らく心理的に国内に多方面にマイナスの影響を与えるだろうということを懸念し、そのことがあるいは消費者マインドを冷やして消費を鈍らせるとか、あるいは設備投資をさらに先に引き延ばさせるというようなことを懸念しているかと思われます。さらにまた、急速な円高によりまして最近輸入面で製品の輸入がふえておりますが、製品の輸入がふえるということ自体は、国際的な観点から考えましても歓迎されるべきことではありますけれども、国内の競合産業に対しましては非常に大きなデフレ的な影響を与えるわけで、そういう円高を中心にして不安が非常に多いというふうに考えております。  したがって、財界その他から表明されております不安材料ということにつきましては、私どもも全く同じような懸念を抱いているわけでございますが、先ごろ、十月に決定いたしました補正予算を確実に実行するということのほか、これからも機動的に対処することによって十分政府の目標を達成できるというふうに考えております。
  145. 矢野俊比古

    矢野説明員 いま宮崎局長から御答弁ございました。最近の財界首脳の御発言というようにいまお話がございました。これに対しては、私ども大臣大変残念に思っているというのが心底のお気持ちだろうと推定をいたしております。  現在、何といいましても雇用情勢はむしろ悪化しつつあるということでございます。したがいまして、いまのようなままで成長ができないからそれもやむを得ないじゃないかということで考えるべきではなくて、やはり何とか七%成長を達成して、いわゆる雇用機会の確保ということを図るべきだ、そういうためにはむしろ私どもにも御叱咤、御鞭撻もいただくべきでありましょうが、民間の方々も、それを実現するにはどうしたらいいか、積極的な民間の経済運営と申しますか、民間ベースにおいても考えていただくべきではないかというふうにも私ども思います。  そういうことで、少なくとも総合して雇用の情勢悪化というものをできるだけ改善していくということのために、私どもあらゆる手段を尽くさなければいけませんし、その結果は七%達成ということを可能性といいますか、達成を実現させなければいかぬということへの努力を努めたい。同時に、その間における財界その他からのいろいろな御指摘、問題点、そういう点は謙虚に伺ってその改善も図る、こういうふうに努めていきたいと思います。
  146. 松本忠助

    松本(忠)委員 もちろん私も、七%の成長は非常にむずかしいのじゃないか、いずれは下方修正をしなければならぬのじゃないか、こう思いますよ。しかし、七%成長ができなかったことを手をたたいて喝采を送るというような気持ちは私もありません。全く国民の一人とすれば、一国を代表するところの総理大臣が国際的な公約をしているのですから、当然その七%の達成というものは現実に数字の上ではっきりと見せてもらいたいと私も思います。しかし、それがどうもいまのような状態でいったときに、本当にできるのだろうか。いろいろと御答弁がありました。しかし、あくまでも生きた経済という観点からいって、長年の経験とそして現場に臨んでいろいろな国際情勢やら何やらをやはりお役所と同じように情報をキャッチしながらいるあの財界の首脳のメンバーがあそこまで言われるということには、私たちも耳を傾けなければならないと思っておりますので、あえてこの問題について何とかして達成してもらいたいたいという希望を踏まえまして、一層の努力をしていただきたい、こう思うわけでございます。決して七%達成ができなかった場合の下方修正などということが現実になりませんように、ひとつお願いをいたしたいと思っております。  それから、経企庁にお尋ねいたしますが、先般米国のドル防衛策というものが発表されまして、一時円高が落ちついたというふうにも思われますけれども、またこの先行きは全くわかりません。きのうあたりの模様を見ましても、また上昇をしているのではなかろうかと思います。そういうことを考えまして、政府は米国のドル防衛策というものがどの程度有効と見ていらっしゃるのか、ひとつ経企庁からお答えをいただきたいと思います。
  147. 宮崎勇

    ○宮崎説明員 日本政府だけではなくて、各国の政府が、ここしばらくの間、世界の通貨情勢ということに大変注目をしておりました。特に、アメリカのドルが恒常的に下落をするということが国際通貨市場あるいは通商市場に非常に大きな問題を投げかけておりますので、ぜひそれを安定してほしいというふうに各国とも願ってきたわけであります。その点をボン・サミットで福田首相も強く訴えられたところでありますし、各国ともそういう要求を出しました。  その後、アメリカ政府は一連のインフレ対策あるいはエネルギー対策というようなことからドル防衛に乗り出したわけでございますが、率直に申しまして、しばらくの間とっておりましたアメリカのドル防衛対策については、ややなまぬるいのではないかという感じを私どもは持っておったわけです。つまり、アメリカ政府が為替の安定として基本的に考えておりましたのは、経済の基本的な条件の改善にあるということであったわけです。しかし、何分にも変動がひどい相場でございますので、もう少し強力な手を打てないものかというふうに私ども考えていたわけですが、そういう点で今度の十一月一日に発表されましたアメリカのドル防衛対策は、かなり積極的な市場への介入、それも各国との協調によって介入するという強い態度を見せておりますし、国内政策といたしましても公定歩合を一%引き上げるなど、かなり強力だというふうに考えております。したがって、ここ当分、この新しいドル防衛対策によって市場は安定するというふうに考えております。  先生御指摘のように、昨日、それから午前中の東京市場の円の相場はまた若干高くなっておりますけれども、基本的にはこれで安定していくというふうに考えられます。もちろん、相場のことでございますし、基本的な各国の基礎条件の改善ということについてはなお時間をかさなければいけませんので、来年、さらにその先ということになりますと、これだけで十分かどうかということについては問題があろうかと思いますが、当面はこれで安定するというふうに考えております。
  148. 松本忠助

    松本(忠)委員 今回の米国のドル防衛策というものも非常に隠密のうちに行われましたし、効果があるであろうということを私も期待するわけでございますが、当面とおっしゃっているのはいつごろまでのことを言っているのですか、当面は落ちつくだろうというその当面というのは。どんなお見込みでございますか。
  149. 宮崎勇

    ○宮崎説明員 何月何日まで当面ということは申し上げられませんが、少なくとも基本的な経済条件が変わらない間はという意味でございます。つまり、たとえばこれも全く仮定の問題でございますけれどもOPECが非常に大幅に石油の値段を上げるとか、あるいはいま交渉が行われておりますヨーロッパの通貨制度というものがうまくいかないとか、そういうような特殊な状況が突発すれば別でございますが、そうでない限りは安定化の方向に向かうと考えております。
  150. 松本忠助

    松本(忠)委員 いま中小企業の人たち、特に輸出の問題をやっております方々は、もうどうにもならない状態でございまして、とにかく安定してほしいという希望は各人が持っておるわけです。とにかくこう上がったり反落したり、また上がったりということではなくて、何とか安定してもらいたい。じゃないと計画が立たない。こういうことをしばしば言っておりますので、こういう点について、決してそれは調整局長調整するわけではないのでありまして、むずかしいことはわかっております。しかし、何とかして一つの安定的な方向に持っていって、そして輸出問題に携わっている人たちが安心感の上から仕事ができるようにしてあげたい、われわれもこう思いますので、あえてお尋ねをしたわけでございます。  それから、官房長がいらっしゃっておりますので、引き続きましてお伺いしたいと思いますが、一般消費税の導入の問題につきまして、先般各省の官房長を大蔵省でお呼びして、来年度の予算についての基本方針を示されたというような新聞の報道がございます。このときにも一般消費税についての考え方を示したと言われておりますが、報道によりますと、大蔵省は、この一般消費税の導入に反対するならば代案を持ってこい、こういうような姿勢であったと言われているわけでございますけれども、この会議の模様といいますか、内容といいますか、御出席であったと思うわけでございますので、許される範囲で官房長からお答えをいただきたいと思います。
  151. 藤原一郎

    ○藤原説明員 お答え申し上げます。  お話のございました大蔵省の主計局長が招きまして、各省官房長が集まりまして一昨日大蔵省で会議を開いたわけでございますが、こういう種類の会議、実は毎年概算要求の前に、概算要求を各省が出すに当たりまして、大蔵省の方からひとつよろしくお願いしたいという一種のセレモニー的な会合を例年やっておるわけでございます。一昨日行いました会議もややそれに近いわけでございますが、ただ通例、もう概算要求は八月末で出しておりますので、今後予算査定というのを行いますに当たりまして、ことしは歳入面その他非常に厳しいので、深刻な状態になっておるのでよろしく御協力を願いたい、こういう趣旨の会議であったわけでございます。  一般消費税につきましては、その機会を利用してといいますか、大蔵省の担当審議官の方から、特に深く突っ込んだお話ではございませんで、財源もこういうことでございますのでひとつ御協力願いたいという趣旨でございまして、内容について議論をしたということは一切ございません。一応そういうふうな予算折衝に当たりましての大蔵省の協力要請、それに伴います財源措置の一端としての一般消費税についていわば余り反対しないでほしい、こういう御意見であったと理解しております。
  152. 松本忠助

    松本(忠)委員 新聞の報道には、一般消費税についても反対なら代案を示してほしいと各省庁に迫った、そして早期導入について強い意欲を示した、こういう報道があるわけですが、こういった事実はなかったわけですか。
  153. 藤原一郎

    ○藤原説明員 いまお示しのような新聞論調、やや非常に誇大でございまして、そういうのを示して迫ったということではございません。確かに、言葉のあやといたしまして、代案もなしに余り反対されても困るというふうなことはございましたが、これは言葉のあやでございまして、それで迫ったというふうな筋のものではございません。
  154. 松本忠助

    松本(忠)委員 言葉のあやか本音かたてまえか、それは御本人に聞いてみないことにはわからぬのでありますけれども、どうもわれわれとしますと、そう簡単にこの一般消費税を導入するなんということはとても許されない、こう思っておるわけでございますが、政務次官出席でございますから、通産省の立場として一般消費税についてはどうお考えなのか。事務次官が前に、一般消費税の早期導入については好ましくない、こういつた見解があったようにも私も記憶しておりますが、野中政務次官としてはどのような御見解でございますか。
  155. 野中英二

    ○野中説明員 財政再建のためには税収を上げていくという方向があると思っておるわけでございます。しかし、税収を上げるためには、新税を考慮すべきであろうか、あるいはまた景気を浮揚して産業界に活力を与えてそして税収を上げていくか、まあざっと考えていってもこうした二つの考え方があるというふうに考えております。  そこで、この財政のことを考えるのは大蔵省でございまして、私どもとしては、やはり産業界あるいは国民のニーズにこたえていかなければならない、したがって、産業界、流通界等々の意見のコンセンサスを得ていくということが必要だろう、かように私は考えておるわけでございます。過般、公明党の長田議員さんでございますか、大臣お答えを申し上げておりますが、大臣も同じような考え方に立ちまして、一般消費税については今後の景気の動向あるいは関係業界影響等を十分考慮して配慮していきたい、こういうふうなお答えだったというふうに記憶しておりますが、私もかような立場をとっておる次第でございます。
  156. 松本忠助

    松本(忠)委員 本音とたてまえ、いろいろございますので、この場で本音を言うこどもなかなか不可能だと思いますが、しかし、私は、こういう一般消費税のようなものを導入したときに、経済界は本当に活動が停止してしまうのではなかろうかという危惧の念があります。まだまだ財源を発掘して、そしてまた役立てるためには、いわゆる税制の不均衡の面の是正をしなければならない、そういう面もございますので、こういう面を先にやるべきであって、そういうものに手をつけないで一般消費税の導入を早期に図ろうなんというのは、ちょっと不届きな考えではなかろうか、こう私は思うわけでございます。  そこで、中小企業庁の左近長官お答えをいただきたいことでございますが、先般の臨時国会で成立いたしました特定不況地域中小企業対策臨時措置法、これにつきまして、特定不況地域指定作業の進捗状況、どのようになっているか、それからそれをいつごろ発表できるのか、そしてまた、おおよそどれくらいの地域の数になるのか、この点お答えをいただきたいと思うわけです。
  157. 左近友三郎

    ○左近説明員 先般の臨時国会で御審議をして議決していただきました特定不況地域中小企業の臨時対策法につきましては、現在政令の作業中でございまして、御案内のとおり、法律でこの地域指定の要件が列挙されております。その要件に従いましていま候補地域について要件に合致するかどうかの選定作業をやっております。  それで、作業の進捗状況でございますが、目標をなるべく早くということでやってまいりましたが、何分やはり相当膨大な地域についての御希望もございましたので、一生懸命やりましたのですが、大体来週の後半ぐらいに閣議決定をいたしまして、政令公布の手順に取りかかるというふうな段取にいたしたいというふうに考えております。  それから、地域数でございますが、これにつきましても、実はまだ最終的に決まっておりませんことと、それから、市町村単位で指定いたしますが、大きな市があり、そのすぐ隣に小さな町村がございますと、親企業と申しますか、そういうものが共通な場合には、これを一括して政令の項目にするというふうな必要もあろうかと思いますので、若干出入りがあろうと思いますが、まず考えまして三十前後ぐらいに相なるのではないかというふうに考えておるところでございます。
  158. 松本忠助

    松本(忠)委員 いまの指定地域の数に私は余りこだわりたくはないのでありますけれども、やはり三十前後ということは、三十の上か下か、その辺のことなんですけれども、われわれは、臨時国会においてもこの面についてはかなり強く皆さんの質問の中で御要望申し上げてある経緯がございます。私どもは、少なくとも三十以上ということは当然の話だと受けとめているわけでございますけれども、三十五、六、その辺まであるのではなかろうかという期待を抱いているわけでございますけれども、三十前後ということは二十九の台もあるということでございますか。
  159. 左近友三郎

    ○左近説明員 それについてはまだ検討中でございますので、確実なことはちょっと申し上げかねるわけでございますが、先ほど申しましたように、指定に値する市町村の数と政令でそれをどういうふうにしぼって書くかということ等によりまして、市町村の数と政令の項目の数とが若干異なることが予想されますけれども、市町村の数で言えば三十を下回ることはないというふうに考えております。
  160. 松本忠助

    松本(忠)委員 それから、この間特定不況地域中小企業対策緊急融資の金利の引き下げが行われたわけでございますが、今後の状況いかんではさらに金利の引き下げが行われるかどうか、その御意思があるかどうか、この点はいかがでございましょうか。
  161. 左近友三郎

    ○左近説明員 御案内のとおり、金利につきましては、当初九月に発足したときは六・三%または六・八%でございましたが、国会の御審議の経過にもかんがみまして、十一月六日から条件を改善いたしまして、金利を六・一%または六・六%というふうに改善をしたわけでございます。したがいまして、現在金利を引き下げたばかりでございますので、いまのところこの金利でやらせていただきたいというふうに考えております。     〔山下(徳)委員長代理退席、中島(源)委員長代理着席〕
  162. 松本忠助

    松本(忠)委員 それから、円高の問題がさっきも出ましたけれども中小企業為替変動対策緊急融資制度、これは非常に効果があったというふうに私ども思って喜んでおるわけでございますが、この融資制度の期限はさらに延長を要するのではなかろうかと私は思っておりますが、これはどういうふうにお考えでございますか。
  163. 左近友三郎

    ○左近説明員 円高緊急融資の期限は、御指摘のとおり十二月末ということになっておりますが、これは円高状況を見て決めるということになっておりまして、従来も二回ばかり延長をしております。したがいまして、現在の状況は若干小康状態を保っておりますけれども、この状態をよくながめまして態度を決めたいと思っておりますが、必要があれば随時延長をいたしたいという基本的な姿勢で考えております。
  164. 松本忠助

    松本(忠)委員 わかりました。延長してほしいという強い要望を私ども耳にしておりますので、ぜひそのようにしていただきたい。この円高問題はなかなか根が深いわけでございまして、現実に非常に困っていらっしゃる方がたくさんいるわけでございますので、特に中小企業庁長官としてもこの延長について十分な配慮をひとつしていただきたいと私は御要望申し上げるわけでございます。  それから、円高対策法あるいは不況地域対策法、こういったものがいままで制定されました。しかし、さらに中期的あるいはまた長期的な視野に立って地場産業の育成強化を図らなければならない、こういうことが重要な問題であろうと私は思っております。そうしたところから、報道によりますと、通産省といたしましても中小企業の産地振興臨時措置法、こういったものを検討中というふうに聞いておるわけでございますが、これはやはり来通常国会に御提出の御意思でございましょうか、その中身がいままでどの辺まで詰まっているのか、お答えをいただきたいと思うわけでございます。
  165. 左近友三郎

    ○左近説明員 御指摘のとおり、構造不況あるいは円高というふうないろいろな側面で中小企業が非常な危機に陥っておりまして、これに対しましては、いまお話にありましたように、円高対策、特定不況地域対策、あるいは一般的に申しましても倒産対策というふうないろいろな措置を緊急に講じてまいったわけでございまして、また今後も必要に応じてその緊急措置を継続し、かつ、その措置の内容を改善していきたいというふうに考えております。  しかし、こういう緊急対策だけでは、中小企業、ことに産地を形成しております中小企業にとって、当面の支えにはなりますけれども、やはり将来の発展という点については不十分じゃないか、そういう反省に立ちまして、中長期的にそういう産地の中小企業が新しい情勢下において活路を開くような対策を講じたいというのが基本的な考えでございます。  また、われわれが円高等につきまして各産地について調査をいたしましても、各産地も自主的にいろいろな対策をいま考えておられるのを承っております。したがいまして、そういう各産地の盛り上がった自主的な活路を開拓しようという意欲をわれわれは応援したいということで検討しておりまして、来年度予算にも、金融面あるいは税制面でいろいろな要求をしております。事態の推移によりますけれども、できましたら、またこういうものを一つの法案といたしまして御審議を仰ぎたいというふうに考えております。  ただ、この内容につきましては、実は事務的にもいままでは特定不況地域対策等々に主力を注いでおりましたので、これから具体的に法案の内容を固めたいという段階でございますので、どういう形になるかというのはちょっとまだ申し上げられません。しかし、考え方としては、やはり地元のそれぞれの産地産地の自主的な改善計画といいますか将来計画というものを尊重して、それを支援するという形での法律をつくっていきたいというふうに考えております。
  166. 松本忠助

    松本(忠)委員 もう一問でございますが、最後にお伺いしておきたい点は、いよいよ十一月も中旬でございますし、年末ももうあと四十日そこそこということになってまいりました現段階におきまして、やはり中小企業の方々にとりましては、年末資金、これを何とか確保しなければならない、非常にむずかしい経理の状態の中でも何とかして従業員の方々にはもち代だけでもやりたい、こういう気持ちに駆られて、中小企業のおやじさんたちはいま年末の金融対策に飛び回っているという状態でございます。これから日を追うに従って、それはもう大変な熱を帯びてくることと思うわけでございますが、こういう中で、各都道府県におきましても年末融資、こういうものについて考えているようでございますが、政府としても当然強力な対策が必要だと思うわけでございます。  そういった意味から、この年末の融資の貸出金利の問題あるいは貸出原資の問題、こういうものに対して特段の配慮が必要となってくると思うわけでございますが、毎年のことでございますけれども、この点について中小企業庁長官としてはどのように配慮されるおつもりか、お伺いをいたしておきたいと思います。
  167. 左近友三郎

    ○左近説明員 中小企業庁といたしましても、中小企業の経営の安定を図るために、中小企業に必要な賞金を随時確保していくという方針でまいりまして、毎年年末に対しても対策を講じているところでございますが、本年も、実は五十三年の第三・四半期の政府系の中小企業三機関の貸出枠につきましては、一兆三千八百六十億円というものを用意いたしておりまして、これは前年の枠の二二%増と、相当余裕を持って組んでおるわけでございます。しかも、最近の状態は資金需要も比較的落ちついておりますので、現在この貸し付けの枠で年末の対処ができるかどうかということを検討中でございます。相当量はございますけれども、しかし、なお余分の必要があればそれに対処したいということで、実は最近いろいろ検討を続けておりまして、この十一月の末あたりには結論を出したいということでございます。基本的な態度は、必要なものは十分準備するという態度でやってまいりたいと思っております。  それから、民間金融機関に対しましても、企業の年末資金需要に対しましては、毎年貸し出しの増加目標額というものを掲げるというふうなことによりまして円滑な資金確保を図っておりますので、今年もそういう例にならって考えていきたいと思っております。  なお、金利面でございますが、これは昨年四月以来五回にわたりまして金利を引き下げまして、現在三機関の基準金利は、民間金融機関の長期貸し出しの最優遇金利でございます。一%にまで下がってきておりますので、こういうことで今年はいきたいと思っておりますが、なお、円高とか倒産とか、また今回の特定不況地域中小企業とか、こういうふうな特に問題のあるところについては、さらに一段と低い金利を設定して実施をしておるわけでございます。  さらに、御承知のとおり、不況業種に属します中小企業に対しては、既応金利の引き下げ対策というのをやっておりますが、この措置を来年の四月まで延長いたしましてやるということにいたしておりますので、そういうふうな対策によりまして、この年末金融面で中小企業に心配をかけないように実施をしてまいりたいと考えております。
  168. 松本忠助

    松本(忠)委員 貸出枠も存外ふえておりますし、また民間の金融機関に対してもそれぞれ御協力をお願いするようにしているということはわかるわけでございますけれども円高倒産というのが非常に顕著に今度はあらわれている数字がきょうの報道でありました。本当に中小企業の方々は去年からことしにかけて踏んだりけったりという状態でございますので、何とかこれに対して温かい手を差し伸べていただきたい、こう思うわけでございます。  問題は、窓口が本当に中小企業の方々に対してやってくれるかという問題があと残るわけですね。確かに枠もふえて、金利も引き下げになっていいのですけれども、現実にやってくれる窓口が、一日一日と大みそかが寄ってくるにもかかわらず、何ともどうも対応がなまぬるい、なかなかその時期にさっと出してくれないという悩みがあります。これは毎年聞いていることでございますので、その辺も十分にひとつ御考慮願いたいと思うわけでございます。  最後に、政務次官にちょっと。  先ほど私、金の取引の問題について質問しました。実はこの問題は非常に前々から問題になっているわけでございまして、五十一年の後半からこの問題が出てまいりましたし、国会におきましても大蔵委員会で取り上げ、また、本年の予算委員会、さらにはその後の決算委員会等々で取り上げられまして、この金の取引という問題に対して被害が続出している状態から、弱い立場にあってこれらの被害にかかった人たちを何とか助けなければいけない、そういうものに巻き込まれないようにしなければいけないということで、きょうは質問をしたわけでございます。  河本通産大臣も、ことしの二月十五日の予算委員会、四月二十一日の決算委員会等で、この問題に対しては前向きに取り組まれている御答弁があったわけでございますけれども、要するに、商品取引の主務官庁としてこの被害を見逃しておいてはいかぬと私は思いますので、被害を何とかして絶滅するために、通産省としてもまたそういうようなものが起きないようにいろいろなPRをやっているということは、しばしば審議官からお答えがありました。しかし、通産政務次官として、この金の取引というような、わずかの金で甘い汁を吸おうとして、甘言にひっかかってとんでもないことになっている人たちに対して、このままではおけないと思いますので、この問題についてどのようにお考えであるかをお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  169. 野中英二

    ○野中説明員 金の取引につきましては、消費者擁護という厳粛な立場からいたしましても、被害防止のためには全力を挙げなければならぬということを痛感しておる次第でございます。したがいまして、通産省としても速やかにかつ前向きに善処してまいりたいと思っております。
  170. 松本忠助

    松本(忠)委員 終わります。
  171. 中島源太郎

    ○中島(源)委員長代理 後藤茂君。
  172. 後藤茂

    ○後藤委員 きょうは、主として新日鉄の今度の合理化提案に関連をして、鉄鋼産業の問題、さらには日鉄鉱業の釜石鉱山が閉山という大変深刻な事態を迎えているわけでございますが、この閉山合理化と関連をいたしまして、ひとつ政府の見解をただしてみたいと考えるわけです。  そこでまず最初に、鉄鋼産業にいたしましても、あるいは前臨時国会審議をいたしました非鉄金属関係の際にも私は申し上げたわけですが、金属鉱山も両方とも円高問題というもので大変大きな影響を受けているわけです。先般のアメリカのドル防衛策等によって円の急騰が一息ついた、こういうように言われておりますし、先ほど松本委員質問に対しましても、経済企画庁は、どうもいままでのアメリカのドル防衛対策というものはなまぬるくてしょうがなかった、しかし、今回の対策は相当強力だと思うし、市場は当面安定するのではないか、こういうように答弁されているわけです。  そこで、特にこういう鉄鋼産業あるいは金属鉱山等々の対策を日夜検討し、その行政を進めておられる通産省といたしまして、為替市場はどの程度安定的に推移をしていくのか、あるいはまた下落をさらに急速に進めていくのか、高騰を始めるのか、どのように見ておられるか、その見通しについてまず最初にお伺いをしておきたいと思います。——政務次官、いかがですか。
  173. 野中英二

    ○野中説明員 どうも失礼しました。  大変むずかしい質問でございまして、これからの国際景気の動向であるとか、いろいろ諸条件がございます。しかしながら、私どもといたしましては、ぜひ二百円ないし二百二十円程度で安定してくれることを望んでおるわけでございます。
  174. 後藤茂

    ○後藤委員 大変むずかしい問題でも、これからの通産省がその行政を進めていく上においては、その都度その都度的確に円の、つまり為替レートの動向というものは把握しておかなければならないし、いろんな条件を織り込みながら見通しを立てていかなければならないだろうと思うのです。そうでなければ、この鉄鋼産業、後ほどまた御質問申し上げますけれども、鉄鋼産業にいたしましてもあるいは国内金属鉱山にいたしましても、企業経営、一体どういうようにしていけばいいんだ、果たしてもっと厳しい合理化を進めていくべきなのか、あるいはこれからは少し投資等も強化をしていきながら将来の発展を期待していくべきなのか、そういう見通しが全く立たないだろうと思うのです。  そういう意味で、いまの政務次官答弁、私は大変不満でございますけれども、先ほど企画庁の方は、当面市場は安定的に進むのではないか、こういう見通しを立てておられるわけです。そういう見通しを通産省としてもお持ちなのかどうか、こういう点で私は一応質問をしてみたわけでございますが、企画庁の問題見通しだけではなくて、産業政策当局としても、通産当局としてもこの問題はひとつしっかりと的確に踏まえておいていただきたい。そうでなければ、各産業界もどうしていいかさっぱりわからぬということになってまいりますので、ぜひひとつこれは要望申し上げておきたいと思います。  第二番目に、私は、これは基礎産業局長に申し上げたいのですが、世界の鉄鋼の需給見通しというものを一体どうごらんになっておられるだろうか。  最近は、スペインだとかあるいはブラジルとか韓国とか、中進国の追い上げというものも徐々に強まってきている、こういうように言われておりますので、もちろんこういった中進国の追い上げというものもこれからの需給見通しの中で織り込んでいかなければならぬだろう、こういうように考えるのですけれども、一方、アメリカの鋼材輸入の傾向は今後も微増といいますか、少し強気で続いていくのではないだろうか。  あるいはまた、日中平和友好条約が締結されました。それと前後いたしましてたくさんのミッションが出かけていっているわけですね。そして新日鉄等も、上海の宝山製鉄所あるいは最近の報道によりますと河北省の巽東製鉄所、これの建設等についての協力、もちろんECの鉄鋼界も虎視たんたんとこの市場はねらっているわけですから、すべてが日本に落ちるということではないかもわかりませんけれども、こういった大きな協力市場というものが出てまいっております。さらには渤海湾の海底油田の開発についてもいろんな協力要請等も出てまいってきております。最近の報道を見ますと、上期二百五十万トンの鋼材輸出の成約ができた、年間五百万トンくらいの鉄鋼の中国との長期輸出契約が可能である、こういうように見られております。  あるいはソビエトも、日中との関係をにらみながら、やはり日本との経済協力、とりわけシベリアにおける大型の開発プロジェクト等も検討されている。これまた日本との関係というものは、その立地から見て大変有利に展開していくんじゃないだろうか。  こういうことを織り込んで見てみますと、これからの世界の鉄鋼の需給というものは、私はいまのままの推移よりも少し上向いていくんではないだろうか、こういうように見るわけですけれども、基礎産業局長、どのように需給見通しを立てておられるか、お伺いをしたいと思います。
  175. 大永勇作

    ○大永説明員 なかなかむずかしい御質問でございますが、先般アメリカで開かれました世界各国の鉄鋼業界の集まりがございますが、ここでの議論等では、先進各国においては、大体今後しばらくの間の鉄鋼需要の伸びは二%程度と考えるべきでなかろうかという意見が多かったようでございます。ただ、先進各国の中で、実はアメリカにつきましては稼働率が相当上がっておりまして、九〇%程度になっておりまするので、二%ずつ着実にふえてまいりますと、そこで若干の新規の設備投資というものは出てこようかという感じがいたします。  それから同時に、いま先生御指摘になりましたように、韓国、台湾、ブラジル、スペインといったいわゆる中進国の鉄鋼の増産、これはかなり今後やはり行われるのではないか。さらに中国におきましても、現在の約二千五百万トン程度と言われております鉄鋼生産を、六千万トンまで引き上げようという計画が先生御承知のようにございまするので、こういった中進国あるいは共産圏各国におきましては、生産及び需要がかなりふえてくるのではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  176. 後藤茂

    ○後藤委員 日本でも、鉄鋼の設備増強が大変短期間に集中的に始まったのは、やはり鉄鋼自体の設備投資、つまり鉄が鉄を呼ぶという状況が生まれたからだと思うのです。中国も、今度は宝山なりあるいは巽東製鉄所なりというものがこれから本格的に建設過程に入りますと、その建設過程においてはやはり鉄が鉄を呼ぶという状況が生まれるのではないだろうか。先ほど年間五百万トン規模というように言われておりますが、私は、本格的に四つの近代化が集中して始まってくると、むしろ鋼材の需要というものが大変高まっていくように実は思えるわけです。そういうような見通しというものがいまの局長答弁に加えて見通せるのだろうか、それとも、いや大したことないんだというようにお考えか、これはこれからの長期政策を考えていく上におきましても大変大切な問題だと思いますので、せひひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  177. 大永勇作

    ○大永説明員 中国への輸出の五百万トンと申しますのは、これはノーマルな輸出ということでございまして、上海の宝山製鉄所の関係のたとえばくい打ちのための鋼管でございますとか、そういうものは外数でございますので、そういったものは数十万トン程度は別途また期待できょうかと思います。そういうことで、中国向けの輸出については今年度におきましてもかなり増加するものと見込まれますが、ただ、対米輸出あるいは対EC輸出等がかなり落ちておりますので、わが国全体として見た場合の輸出量というのは今年度約三千二百万トン程度ということで、昨年を若干下回る水準にならざるを得ないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  178. 後藤茂

    ○後藤委員 今年度の見通しと先ほどの局長答弁では、外数としてさらに若干加わるであろう。私もそのとおりだと思いますが、途端に最後のところで、昨年度に比して今年度は若干下回るんじゃないかと、非常にミクロにとらえておられるわけです。それでは鉄鋼のようなこういう装置産業というもののこれからのビジョンといいますか、ビヘービアも確立できないだろうと思うのです。きょうこれからもお答えをいただきたいのは、余り短期にミクロにとらえるんではなくて、少し長期に物を見ていただきたい。短期のところは、企業の分析にいたしましてもあるいは日々の新聞報道等にいたしましても、大体承知ができる。これは恐らくそう極端に需要が拡大していくということにはならないと思います。  実は私がこのことを申し上げますのは、鉄鋼の需給見通しというのは、つまり政府の需給見通しというのはこれまでいつも当たっていないんじゃないか。歴史的に見ますと、常に政府の見通しよりも需要が上回っている、こういう傾向があったのではないだろうか。ただ、今回の石油ショックというのは、確かに見通しを大きく狂わして、むしろ見通しよりも需要が大変落ち込んだというのを例外といたしまして、私はそういう面があるだろうというように思えるわけです。  この間も、十一月の四日でしたでしょうか、新聞に高炉製品の相場が急騰をし始めた−急騰というのはちょっとオーバーな見出しかもわかりませんけれども、つまり厚板にいたしましても狂乱物価当時の水準に来ている、あるいはH形の形鋼も史上最高値をつけた、つまり減産あるいはそのことによる品薄、需要回復というものが相当落ち込んできておったのを支えてきたんではないだろうか、こういうように思う。しかも在庫調整が大体一巡をしている、あるいは自動車だとか家電の内需が比較的好調に推移をしている、さらには公共投資が増加をしてきている、こういうような背景がもちろんあるだろう。私は、これはそう一時的な現象としてとらえる必要がないんではないかと考えるわけです。  そこで、通産省の五十三年度の産業構造の長期ビジョン、これを見てみますと、鋼材の個人消費は大体横ばいをするだろう、それから民間の住宅投資はやや増加をしていくだろう、政府の固定資本形成は増加をするだろう、輸出は、プラントは増加をするが、造船の減少あるいは自動車の伸び悩み等で若干減少するんじゃないだろうか、こういう見通しを立てているわけですね。  その中で問題は、民間の設備投資なんです。横ばいないし微増というのがこの長期ビジョンの中にも一応触れているわけです。この間、企画庁の法人企業の投資動向調査の九月分の調査の発表を見てみますと、前年に比べて一四・〇%の増加、こういうように、当初見通し三月段階では二・九%の増加というのが大幅に修正をされ始めてきている。つまり、この設備投資関係というものは、これから下期あるいは来年の上期というところまですぐに出てくるかどうかわかりませんけれども、大分上向いてくるんじゃないだろうか、こういうように考えますが、局長、どうごらんになっていらっしゃいますか。
  179. 大永勇作

    ○大永説明員 各需要項目につきましての最終需要見通しにつきましては、もう先生御指摘のとおりであろうと思います。ただ、最近の傾向として問題でございますのは、鉄のGNP離れと俗に言われておりますが、GNPの各項目がふえましても、そのわりあいに鉄の需要がふえないということでございまして、たとえば公共事業の場合におきましても鉄の原単位が減ってきておる、あるいは民間設備投資につきましても、鉄を大量に使用しますいわゆる重化学工業での設備投資が総体的には減少しておるというふうなことに起因しようかと思いますが、対GNP弾性値というものが非常に不安定かつ低くなっておるというところに今後の鉄鋼需要を占う上で問題があるのではなかろうか。各需要項目につきましては、先生御指摘のとおりであろうかと思います。
  180. 後藤茂

    ○後藤委員 私は、いまの長期ビジョンにも触れている、また局長も指摘をされたところはそう大きく違わないだろうと思うのですけれども、ただ、こういうように思うのです。つまり賃金上昇が名目上昇率をここ三年ばかり下回ってきているわけですね。さらにまた、減量経営がずっと続いてまいりましたから、そのためにコストが下がってきていると思うのです。さらには金利がこれまた相当下がってまいりました。したがって、この金利負担部分というものが企業は相当軽減されているわけですね。そして、円高の一つのメリットとして原材料費、コストが下がってきている。こうなってまいりますと、これまでの企業収支バランスというものが、この四、五年の間相当苦しんできたわけですけれども、収支バランスがよくなり始めてきているんじゃないだろうか、設備投資の方向に回っていくというふうには考えられないんだろうか。内部留保等も少しふえてきた、あるいは高い金利の借入金は支払った。不確実性の時代だから、まだよく様子がわからぬから手をこまねいて見ているということではなくなっていくんではないか。問題は、冒頭に申し上げましたように、為替レートがどういうようになっていくんだか、あるいは政府の見通しというものがさっぱりはっきりしないというところに、企業の投資意欲というものがもう一つ出ていないのではないかと思うわけです。  そういう意味で、いま私が申し上げたようなつまり設備投資の方にこれからは回っていくような傾向、ポテンシャルはあるわけですから、それに中期の見通しは立てられているんですけれども、もう少し長期の見通しをどう持っておられるのか、特に鉄鋼産業についての長期見通し、現在設備能力が粗鋼で一億四千万トンとか四千五百万トン、それが一億トン前後に推移しているわけですけれども、これがここ昭和五十年の中後半以降どういうように設定をされているのか、もうさっぱりそういう点はわかりませんということなのか、ひとつお聞かせをいただきたい。
  181. 大永勇作

    ○大永説明員 鉄鋼の今後の長期の需給見通しにつきましては、実は現在当省といたしまして策定したものがないわけでございます。ただ、今後の問題といたしましては、OECDにおきます鉄鋼委員会世界需給見通しを策定することになっておりまするし、それから、経済企画庁が中心となって策定しておられます中期の経済見通しの作業もございますので、今後われわれといたしましても、中長期の見通しにつきまして真剣に取り組む必要があろうかと思うわけでございます。  ただ、先生いまおっしゃいました五十五年時点ということを考えてみますると、一億四千万トンの能力があるわけでございますので、その時点では、まだいわゆる粗鋼の生産能力としては余裕があるという状態であろうというふうに考えるわけでございます。  ただ、その間におきましても、申し上げるまでもございませんが、省エネルギーの設備投資でございますとか、あるいは老朽化したもののリプレースのための投資でございますとか、補修のための投資でございますとか、そういったものは当然行われることと思うわけでございます。それから、基礎産業関係におきましても、たとえば化学工業等におきましては操業度は七十数%程度でございまするけれども、商品、誘導品の中のあるものにつきましては能力がいっぱいに近くなるとかそういうようなことで、ここ数年の間は民間設備投資が非常に活発になるという想定はございませんが、その山を越せば、漸次設備投資意欲が基礎産業分野についても出てくるのではないかと期待をいたしておる次第でございます。
  182. 後藤茂

    ○後藤委員 これまで鉄鋼業は、平電炉等は大変に深刻でしたけれども、一応がまんをずっとしてきたわけです。さらに若干の期間がまんの時期が続くだろうと私は思う。そこで今回新日鉄という世界鉄鋼界のトップレベルにある企業が合理化提案をされているわけです。私は、これから中長期の見通しでどんどんまだ悪くなるということが想定されないときに、ここまでがまんをしてきて、ぎりぎりどうにもならなくなったという事態でないときに合理化提案がなされていることに対して、若干の疑念を持っているものの一人なんです。そして、ブルータスお前もかじゃないですけれども、この新日鉄が合理化提案をしていくということになると、これからも、大手の内部経営としては比較的いい企業も、この際ひとつ減量経営に入っていかなきゃならぬということで、そういう合理化ムードを誘発しやしないかということを私は実は心配するわけです。  ことしの三月期の新日鉄の有価証券報告書を見ましても、投資有価証券の売却益というものの操作があることもありますけれども、経常利益を上げているわけです。つまり、黒字経営というものを一応やっておる企業が、ここに来て——先ほどからの議論の中で一つ引き出せるのは、まだ鉄鋼市況というものはずっと悪くなるということはどうも当たってない、むしろ横ばいもしくは若干いい方向にこれからは進んでいく展望を持てるのじゃないかというときに、今度の新日鉄の合理化提案がなされた。しかも当期利益も百五十八億というような計上もされているし、内部留保につきましても比較的手厚くされている。さらに、今度の中間決算でも、今度は有価証券の売却益というような操作をしないでも黒字になっていくのではないだろうか、こういうように伝えられているわけです。  この問題に対して通産行政として、今度の合理化——もちろん、労使の問題あるいは企業の論理というものに政府がそう介入すべきじゃないと私も思います。ただ、それはもう企業の判断だから行政府としてはあずかり知らぬところだということでは済まない問題だ。つまり、こういう合理化ムードを誘発していく問題、あるいは通産大臣が特に最近強く言っておる雇用、この雇用の観点から見ましても、やはり見過ごしておけない問題だろうと思う。つまり、黒字を計上している、そしてトップレベルにある企業、さらに企業の社会的責任等々考えてみますと、この新日鉄の合理化問題をどのようにごらんになっていらっしゃるか、お伺いをしたいと思います。
  183. 大永勇作

    ○大永説明員 先生も十分御承知だと思いますが、五十二年度の決算は相当無理をした決算でございますので、これは余りノーマルではないと思います。ただ、御指摘のように、近く発表されると思いますが、この九月期の中間決算におきましては、若干ではございますけれども、経常利益が出るものと考えております。  ただ、これは会社の方針でございますが、会社として恐らく一番懸念いたしておりますのは、一つは今後の輸出がどうなるかという問題でございます。本日でございますか、トリガープライス、一−三月の分がアメリカで発表になったようでございますが、七%程度のアップということでございますので、かなり輸出に大きく影響するのじゃないかという懸念も出てまいっておるわけでございます。それからさらにコスト面では、今後生ずるであろうエネルギー関係コストアップの問題でございますとか、人件費のコストアップの問題でございますとか、そういうものを絡み合わせまして今後数年間の会社経営を考えた場合に、やはりこれはある程度合理化を進めていかなければならないということに立ち至ったのであろうというふうに思う次第でございます。  ただ、御指摘のように、申すまでもありませんが、その場合に地域経済との関係、雇用との関係をいかに調整するかということが非常に重要な問題でございますので、合理化をいたすにいたしましても、これらの点に十分配慮しながらやることをわれわれといたしましては会社側に対して要望いたしたいというふうに思う次第でございます。
  184. 後藤茂

    ○後藤委員 産構審の中にも一つの業種としてわざわざ鉄鋼部会等も設けられている。あるいは通産省も、これまでも設備投資については、どちらかというと過剰設備を排除するための投資抑制で行政指導をなさったわけですね。私は、今回の場合も、企業に行政が介入することはもちろん避けなければならぬと思いますけれども、しかし、適度の行政指導といいますか、非常に影響が大きいだけに、なさるべきじゃないだろうか、こういうように実は考えるわけです。それほど鉄鋼産業というものは大変大きな重要な基幹産業として、地域経済に対しましても、日本経済に対しましても、雇用の問題についても、大きな影響を持つ。ですから、先ほど局長は歯切れは必ずしもよくない答弁でございますけれども、ぜひひとつ御要望申し上げておきたいわけです。ただ新日鉄の企業の論理である、だからそれが余り摩擦なく進むように祈っておるだけだということでは、どうも行政当局としては能がないのではないか、こういうように考えますので、そういう立場からこの問題に積極的にひとつ取り組んでいただきたいと思うわけです。  この新日鉄の合理化と大変関連している大きな問題は、私は釜石にあると思うのです。今度の新日鉄の合理化は、八幡、光、それから広畑、釜石という四製鉄所がその対象になっておりますが、私は、新日鉄当局といたしましても、それぞれの工場の休止等についてのその後をどういうようにしていくか、いろいろ構想を練っておられると思う。また、会社側の言われる地域に合った立地、設備を考えていきたいということを私は額面どおり受け取っていきたい、こう思うわけですけれども、ちょっと釜石はそうはいかないように思うのです。  この間も私調査に行ってまいりました。そして、御承知のように、安政四年ということですから、約百二十一年ばかりの洋式高炉を入れて古い歴史を持っている、日鉄鉱業の現在釜石鉱山になっているその鉱山と製鉄所がまさに一体となって、あの釜石の地域経済といいますか、地域産業の中心になっているこれが大型工場の休止、そしてさらには五十七年度巻きかえの時期を迎えると言われる高炉のこれまた休止というのですか、これをやめてしまう、つまり一貫メーカーから単圧メーカーになっていくのではないかという心配、こういう実態を私は見てまいった。  エネルギー庁の長官もお見えですので、後でお伺いをしたいと思いますけれども、この新日鉄釜石の合理化の問題については、どうも企業の論理だけでは済まない面が、特に地域経済に対する影響が非常に大きいだけにあるだろうと思うのです。どのようにこの対策をお考えになっていらっしゃるか、これもひとつ様子を見ておこうということなのか、お伺いをしたいと思います。
  185. 大永勇作

    ○大永説明員 今度の新日鉄の合理化計画でございますが、これが全体の生産削減するというような問題でございますとか、あるいは全体の設備をさらにふやすといったような産業全体に影響を与えるような問題でございます場合には、これは当然通産省として必要に応じましてしかるべき行政指導ということになるわけでございますが、現在新日鉄が計画しております合理化計画というのは、全体の生産レベルは変えないで、その中でいわゆる生産施設のレイアウトの変更によりまして合理的な体制をつくろうというものでございますから、そういった会社の内部の合理化措置に個別に介入していくということは、われわれのたてまえではなかろうと思うわけでございます。  ただ、先生御指摘のように、これが地域経済にどういう影響を与えるかということが一番の問題でございまして、われわれといたしましては、地域経済に悪影響の生じないように、地元の方々、労働者の方々、あるいは下請の方々の意見を十分よく聞いて対処してもらいたいという要望を従来からいたしておりますし、今後ともそういった点を強調してまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  186. 後藤茂

    ○後藤委員 私ども調査に行きまして、釜鉄の責任者にこの製鉄所の経営内容等についても質問をしたわけですけれども、明確にはお答えをいただけなかったのですが、お聞きをするところによると、釜石製鉄所は現在の操業で黒字である、こういうように言われているわけですし、私も特に東北という立地を考えてみまして、あの大型工場というもののバックグラウンドは大変有利な条件にあると思うのですね。特にこれからは三全総等の実施ということをもし仮に進めていくとすれば、おくれた東北地方における公共投資等については、ほかの地域と比べて大型工場の製品の市場というものは高いのではないだろうか、こういうように私は考えるだけに、今回のようなレイアウトの変更という程度のとらえ方ではなくて、むしろ、もっと東北の、つまり釜石というこれまでの立地条件なりあるいは市場を考えてみまして、これを積極的に発展をさしていくべき性格のものではないだろうか、こういうように私は考えているわけです。  もちろん、何回も申し上げますけれども、企業の合理化の個々の内容についてそれが悪いとかいいとかいうことは、行政当局が入っていくべきではないと思いますけれども、しかし、企業の社会的責任ということが言われて、この企業の社会的責任というものは企業論理を進めることなんだ、もしそれをやらなければ元も子もなくなってしまう、そのことの方がもっと地域経済に与える影響が大きいということだけでは私は済まないように思う。それがありますので、これ以上局長に明確な答弁を求めても言えないと思いますが、この問題は、城下町釜石ということを考えてみますと、そして長い歴史と伝統とそれによって発展をしてきた町ということを考えて、十分にひとつ対処をしていただきたいと思うわけです。  そこで、長官お見えでございますので、長官にお伺いしたいのですけれども、この新日鉄の合理化と全く密接に、日鉄鉱業の釜石の来年三月の閉山、そしてさらに、新会社で三年は稼働するけれども、その三年稼働した後は、また今度は本格的に閉山をする、終山するのだ、こういう内容になっているわけですけれども、これは新日鉄の合理化と本当に密接につながっているわけです。  ですから、私は局長にも実は申し上げたわけですけれども、この日鉄鉱業の釜石鉱山の閉山問題、せっかくこの間の臨時国会で金属鉱山対策を、画期的な対策をつくっていったにもかかわらず、そのこととは全く関係なしに進んでいることに対して、長官、どういうように見ておられますか、お伺いをしたいと思う。
  187. 天谷直弘

    天谷説明員 釜石鉱山の問題は、非常に困った問題でございます。釜石鉱山は古い鉱山でございまして、相当山を掘ってしまいまして、特に銅鉱石につきましては、現在の水準で稼行いたしますとあと三年、昭和五十六年で全部掘り尽くしてしまう、銅鉱石を掘り尽くしてしまいましてあとは鉄鉱石と鉄、銅がまじった鉱石が残る、こういう形になると聞いております。そういたしますと、銅鉱石もあわせて掘って、鉄と銅を併産するということでいままで何とか、まあ赤字なんでありますけれども、赤字の幅を小さ目に食いとめることができたのでありますけれども、銅鉱石を掘り尽くしてしまいまして、あとに残った鉄の単味等で操業いたしますと、これは大変な赤字になってしまうということで、会社としてはもはや三年後に、五十七年以降の操業ということにつきましては断念せざるを得ない、そういう気持ちになっているようであります。  この間の臨時国会で通していただきました制度は、現在はアブノーマルに世界の銅市況が悪くなっておる、こういうアブノーマルな状態のもとで山をつぶしてしまっては、正常化したときにその山を生き返らせることができないから、このアブノーマルな事態が数年間続くと仮定いたしまして、そこを切り抜けるための措置、この間そういう制度をつくっていただいたわけでございます。  ところが、釜石鉱山の場合には、いま申し上げましたように、会社の基本的な判断は、あと三年しか命がない、生き返る可能性というものが非常に薄いという判断をしておりますから、いままでのところ融資の申請を会社は出していないというような状況でございます。基本的な問題は、やはり新しい鉱床を発見するということが必要であろうかと思いますので、私どもは探鉱の助成ということは今後とも続けていきたいというふうに考えております。
  188. 後藤茂

    ○後藤委員 先ほども長官が、融資の適用を受けようとしていない、それは三年で閉山になってしまうからということのようですけれども、私どもがいただいた資料によりますと、必ずしも三年というように区切るほど鉱量が枯渇しているとは実は思えない。ただちょっと心配なのは、減耗産業ですから、掘った鉱石というものは新しく見つけていくという努力がなされていかなければならない。そのための探鉱の制度というものがある程度整備をされているわけですけれども、私は、この探鉱意欲というものが非常に後退しているようにこの間調査に行って実は思えたわけです。  ですから、これは長官にぜひお願いしたいのですけれども、事業団の広域探鉱あるいは精密探鉱等においても、もっとこういった地域に重点的に探鉱に取り組んでいく。もちろん幾らやっても当たらぬということもあるでしょうけれども、しかし、数少ない資源ですし、とりわけ鉄鉱石というのはあの釜石鉱山一つなんですから、そこの探鉱調査というものをもっと徹底的にやってもらいたいということが一つ。  それからもう一つは、日鉄鉱業も撤退していくという姿勢になってしまっているようですけれども、そうじゃなしに、企業探鉱ですか、これは大手ですから融資になると思うのです。私は何回も申し上げますけれども、金属鉱山というのは、いまは大手、中小の区別というものはないんじゃないだろうか、ですから、少なくとも探鉱に対しては一〇〇%助成という決意を持って臨んでいただきたい、こういう姿勢をぜひとってもらいたいわけですけれども、いかがでございましょうか。
  189. 天谷直弘

    天谷説明員 釜石地区における探鉱につきましてより積極的にやるようにという先生の御指摘は、まことにごもっともであると存じますので、そういう方向で会社を指導したいというふうに考えております。  他方、融資を補助金に切りかえるという問題に関しましては、やはり大企業に対してそういう補助金を出すということに関しましては、財政当局の横並びの問題もあると思いますので、これは今後とも検討さしていただきたいと思います。
  190. 後藤茂

    ○後藤委員 確かに大企業ですけれども、釜石鉱山が累積四十三億円の赤字を持ってこれ以上掘ってみても、つまり赤字が累増していくものを掘っていくことになるわけですから、探鉱意欲というのは出てこないだろうと思うのですね。ですから、これは大手であるから、大企業であるからということではなくて、探鉱の問題はぜひ考えていただきたいと思うわけです。  それと関連いたしまして、銅なり亜鉛等については関税あるいは還付等の制度があるわけですが、鉄鉱石を関税によって守っていくというのはないわけですね。鋼材一トン当たりの原単位というのは、聞くところによりますと一・一だ、こう言われている。そうしますと、一億トンからの粗鋼生産ということになりますと、その一・一ということになれば、約一億一、二千万トンの鉱石を使うわけですが、釜石鉱山はわずかに五十万トン、つまりコンマ以下の鉄鉱石なんですね。これが関税の面において、あるいは何らかの制度的支えによって守っていけないんだろうか。私は、ここには政策的な手を伸べていく余地がたくさんあるだろうと思うのですが、いかがでしょうか。
  191. 天谷直弘

    天谷説明員 先生御承知のとおり、釜石鉱山の品位は三〇%という非常な貧鉱でございます。外国の鉱石と比べて、含有量が大体半分しかないというような状況でございます。それから生産コストも、外国の生産コストに比べて大体倍かかるというような、非常に条件の悪い山でございます。現在、鉄鉱石の山としては、日本国内にはこの山一つしかない、こういうようなことでありますが、他方、わが国は、外国から大量の鉄鉱石を輸入しておるわけでございます。  これは現在、関税ゼロという無税で入っておるわけでございますが、この無税を有税に変えるということは、これはやはり国際経済上大変な問題であると思いますので、日本のオーストラリアその他との対外関係も配慮いたしましてやらなければならない問題である。この釜石を救うために関税を操作するということは、資源エネルギー上としてはともかく、通商局なり外務省なり全体の問題がございますので、これはきわめて困難な課題であろうかというふうに存じます。
  192. 後藤茂

    ○後藤委員 農業政策を引き合いに出すことを私は申し上げているんじゃなくて、わずか五十万トン程度の、しかもそれにすがってといいますか、それによって生活を維持し、地域経済を確保しているところ、これに対して何らかの政策の手が打てないということは私はないだろうと思う。先ほども三〇%以下の低品位鉱と言われた。かつては二五%の低品位鉱だって掘っておったわけですね。これからはもう二九%以下は捨ててしまうと言う。福田総理の言う資源有限時代に、こんなもったいない話はない。  新日鉄が、確かに長官が言われましたように、国際的には非常にコストの高い、約五割増も高いものを、いままでは日鉄鉱業釜石鉱山と新日鉄釜石製鉄所という関係で、好意といいますか引き取っておった面はあるだろうと思うんですけれども、これが新日鉄の合理化が進んでまいりますと、先ほども言いましたように、高炉まで仮にとめるということになってまいりますと行き先はないわけですから、それを見越して今度の釜石鉱山の閉山計画というものは連動していると思うのですが、探鉱を進めていく、そして低品位鉱だけれども日本の自給率をわずかでも確保していく、そのためには、新日鉄の釜石だけにすべての責任を負わせるということでなくて、各高炉メーカーにこの低品位の鉄鉱石を引き取らしていくという政策手段というものは考えられないんだろうか。そういうことが全く考えられない、ただ市場原理だけで動くと言うんなら、私は通産行政なんか要らないだろうと思う。いかがでしょうか。
  193. 天谷直弘

    天谷説明員 釜石鉱山の救済ということにつきまして、たとえば鉄鋼企業の間で何らかの合意でもできて、これを助けてやろうというようなことでもあればともかく、関税とかあるいは財政資金ということでこれを救済するということは、なかなか困難なことではないかと存じます。
  194. 後藤茂

    ○後藤委員 いまの長官が前段に言われた各鉄鋼が、何といっても日本の鉄鋼産業発祥の地ですし、その釜石の鉱石によって近代的な日本の鉄鋼産業というものが育ってきたわけですから、この釜石鉱山の産出する品位の悪い、確かに品位の悪い鉱石ですけれども、これをそれぞれが受け取っていく、消化をしていくというような努力をぜひひとつ考えてみていただけないだろうか、これはひとつ要望として申し上げておきたいと思います。  時間が大分迫ってまいりましたので、あと二点ばかり、せっかく労働省お見えいただいておると思いますので、お伺いをしたいと思います。  日本は急速に高齢化社会に入ってきているわけです。これはもう確実に入るわけですし、最初から見通しが立てられる問題なんですね。とりわけこの中高年の雇用というものは非常にむずかしい問題を抱えております。今度の新日鉄の合理化、あるいはこれからそれに続いていくのではないかと心配しておる合理化は、つまり自然減、定年退職を待って新規採用を見合わせていく、こういう中身になっているようですけれども、その自然減の大部分が定年退職者、あるいは下請関連等は低とんど全部中高年齢層になるわけですね。こういった雇用、特に中高年層がこれから高齢化社会の中で非常に雇用不安に陥っていくという問題を抱えておる、この雇用政策をこれからどういうように考えていかれるのか。  いわゆる雇用問題につきましては、企業から出ていったのには、失業保険なりあるいは職業訓練の手当なり職業転換なりあらゆる手を尽くしているので、もうこれ以上やる手がない、こういうことなのか。もっと新たな事態に立ち至った、つまり高齢化社会に突入していく、その中高年層の雇用対策、これについてもっと積極的な対策が講じられてしかるべきではないかと考えるわけです。  これとあわせて、通産省、どなたにお答えをいただいたらいいのか、そのためのつまり産業政策、こういうものにつきましても、これはぜひひとつお答えをいただきたいと思います。
  195. 白井晋太郎

    ○白井説明員 お答えいたします。  先生おっしゃいましたとおり、今後高齢化社会を急速に迎えていくわけでございますが、高齢者の問題が雇用政策上重点の課題であるというふうにわれわれも考えております。  こういう雇用失業情勢の中で、高齢者の就職ということは非常に困難をきわめているわけでございますが、従来、法定雇用率の問題とか、それから高齢者の定年延長の問題とか、そういうようなことで各種奨励金等によります施策を講じ、または高齢者の雇用計画等の作成等につきましても行政指導等を加えているわけでございますが、これらの施策を強化しますとともに、本年から進めております中高年齢者を雇い入れる事業主に対します賃金助成等の措置につきましても、指定期間の延長、それから支給要件の緩和等を図ることによって今後それらに対処してまいりたいというふうに思っております。さらに中長期的には、いま申し上げましたような定年延長の問題とか労働時間の短縮によるワークシェアリングの問題とか、いろいろあると思いますが、それらの点についても十分検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
  196. 後藤茂

    ○後藤委員 政務次官がお見えになったので、いまの点もう一度ちょっと申し上げておきたいのですけれども、高齢化社会に入って、特に中高年雇用という問題が非常に深刻になってきている。今度の鉄鋼の合理化等を見ますと、やはり自然減の大部分が定年退職、中高年に入る。これは第二の人生をまた働きながら歩んでいかなければならぬ人々になるわけです。それから、特に下請関連が深刻な影響を受けるのですが、これが大部分が定年退職後の新しい雇用市場として働いておられる方々。こういった雇用情勢を、通産大臣は盛んにいま完全雇用の問題を政策提起をしているわけですけれども、政務次官、産業政策としてこの雇用対策をどういうように進めていこうとされておられるか、大変むずかしい問題ですけれども、ひとつその決意のほどをお聞きをしておきたいと思います。これから考えていく、あるいはこれからこういうようにしていきたいのだということをお聞かせいただければ、大変結構です。
  197. 野中英二

    ○野中説明員 雇用の安定というものはきわめて重要な問題でありまして、これに対しては十分な配慮をしてまいりたいと思っておりますが、特に通産省といたしましては、景気対策等によって雇用の機会の創出に最大限の努力を傾倒していきたいということを考えておりますし、かつまた、八〇年代のビジョンとしても、われわれとしてはこの雇用の問題を重視いたしまして、今後対策を練ってまいるつもりであります。
  198. 後藤茂

    ○後藤委員 時間がございませんので、最後に一点だけ、自治省お見えになっていらっしゃいますので、お伺いをいたしたい。通産省もあわせてお伺いをしたいと思います。  今度の臨時国会で特定不況地域中小企業対策臨時措置法が成立をしております。あるいはまた離職者対策の臨時措置法も成立をしているわけです。しかし、どうも私は、釜石の例を取り上げるわけじゃないですけれども、これでは有効に働いていかないんじゃないだろうか、つまり、日本経済がいま迫られております産業構造転換を大きな摩擦なく進めていくためには、政府も自治体も望ましい地域経済の産業構造ビジョンというものを持たなければならぬじゃないかと思うのです。  これは産業政策の問題になると通産省だということだけでは済まない面もありますし、そういう意味で、自治省といたしましても、これは国土庁の方になりますけれども、三全総等の定住圏構想、これをせっかく提起をしながら、その定住圏構想を崩すような事態がいま起こってきているわけです。こういうものに対して、ただ公共事業の重点配分程度では、企業の新たなる誘致もできないでしょうし、さらにまた、これからのその地域における社会不安というものもなくならないだろう。つまり、その社会的コストというものをだれがどこで負担をしていくのか、企業内で負担をしていくのか、政府が負担していくのか、自治体が負担をしていくのか、そういうことについて長期の展望を持っていただかなければ、ここへさあ法律ができました、少し助成をいたします。あるいは税金や融資の面でめんどうを見ますというだけでは、地域経済というものは成り立っていかないんではないかという心配を実はいたしております。  そういう意味で、自治省としては、もちろん他の省庁にまたがる問題だと思いますけれども、どういうようにお考えになっているのか。この点は通産省基礎産業局長がきょうはお答えいただけるというようにお聞きいたしておりましたのでお伺いをしたいと思いますが、つまり、この前の臨時国会でも私は申し上げました。通産行政が企業あるいは産業政策に陥っておる。地域経済の観点というものをこれまではどうも、軽視はしてなかったでしょうけれども、十分に対応していなかった。これからはその地域経済という面を相当中心的に取り組んでいく、そのことによって、私は企業に対しても、企業の社会的責任というものを負わせていくことができるのではないか、こういうように考えますので、自治省と通産省からお答えをいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  199. 横田光雄

    ○横田説明員 地域経済問題につきましては、先生御指摘のとおり、雇用対策あるいは企業に対する対策だけではなかなか完全を期せないという面があるわけでございます。その点につきましては、やはり地元状況を最もよく知っておる地方団体が行政の総合的主体となって何らかの措置をしないことには、現在経済の浮揚とかあるいは地元住民の皆様方の生活の安定に万全を期せないということは、私ども認識しておるわけでございます。     〔中島(源)委員長代理退席、委員長着席〕 現在、地方財政というものも非常に厳しいわけでございますが、同時に、そういうような地元の皆様方の救済ということも非常に重要だということも考えまして、地元との協力の上に今後とも万全を期せるよう十分慎重に検討してまいりたいと私ども考えておるわけでございます。
  200. 原田稔

    ○原田説明員 従来から通産省におきましても、こういう地域経済問題というのは重要な政策の中心点であるということで努力をいたしておるわけでございます。たとえば産炭地振興というような問題をとりましても、これは先生御案内のとおり、私どもとしましてはかなりな成果を従来まで上げてきているのではないか、こういう感じを持っております。  最近のいろいろな産業構造の変動に伴いまして地域経済にいろいろ大きな影響がある、こういう状況でございますが、特に通産省におきましては、産業構造のビジョンというのを全国単位で従来からつくっておりますが、これを地域単位でさらにつくっていこうということで、この一、二年その地域別の産業構造のビジョンというものをつくってまいっているところでございますが、こういった地域別の産業構造のビジョンをより具体化していく、それに沿って各地域ごとのきめの細かい対策を講じていくということで努力をしてまいりたい、かように思っております。
  201. 後藤茂

    ○後藤委員 釜石の鉱山と製鉄所、ダブルパンチを受けております釜石の問題は、これからの地域経済政策を進めていく上において非常にいい教材を提起していると思いますので、その点重ねてひとつ重点的に取り組みをしていただくように要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  202. 橋口隆

    ○橋口委員長 宮田早苗君。
  203. 宮田早苗

    ○宮田委員 質問に入ります前に、局長十分御存じと思いますが、関連がございますので、一言考えておりますことを申し述べたいと思います。  どこの国でございましても、その国の経済の発展過程は鉄鋼の生産量、その設備の規模と比例をして発展を遂げておるということ、特にわが国におきましては、世界が目を見張るほどの経済大国になった最大の原因も、鉄の生産、それに伴う規模というふうに思っておるところでございます。かつての造船王国と言われましたことも、自動車が今日これだけの発展をした、電機が世界一と言われるほどの発展をしたということも、基本はこの鉄だというふうに思っておるところでございますが、ところが、石油ショック以降、低成長という路線転換を余儀なくされたわけであります。この鉄鋼だけにかかわらず、基礎的な素材産業はいずれも大幅な需給ギャップを抱えて構造不況に苦しんでおるわけでございます。この点は御承知のとおりでございます。政府といたしましても、これの打開にいろいろの対策をされたことも私ども十分知ってはおります。  そこで、総理大臣初め経済閣僚の方々すべてといっていいほど、いまによくなるんだ、トンネルを出て明るい兆しが見えるんだということを何回も言い続けてこられたわけでありまして、その考え方に非常な期待を持ってまいりました。ところが、一向に言われるほどの明るい兆しが見えぬわけでございまして、こういう状態ということになりますと、やはり自分自身でその対策を考えなければならぬということも当然なことでございまして、今度一連の基礎産業が合理化ということでいろいろ問題を提起しながら取り組んでおりますものも、それを考えてのことだと私は思っておるところです。  このままの形で推移いたしますと、構造不況業種と言われます産業は根底からだめになりはしないか、こういう憂慮をするような気持ちも底辺には非常に大きくなっておるのではないかというふうに思っておるわけでございまして、何としてもこの打開ということがいま業界では中心課題でございます。やはり存立基盤といいますか、これをどうして確立するかということに目を向けられるのは当然じゃないかと思います。もちろん、政府として実態に即したいろいろな配慮、対策は立てられて努力をされておりますけれども、なかなかその効果があらわれぬものですから、これからさらに小まめな対策あるいははっきりした見通し、こういう関係を十分整えていただいて主導していただきたいということをまず最初に申し上げる次第であります。  まず、私が最初に質問いたしますのは、将来の見通しの問題についてであります。さきの質問の御答弁にもございましたように、先進諸国はいずれも二%程度と予測をしておるわけでございますけれども、わが国における予測についてひとつ聞かしていただきたいということなんですが、少し小まめに区切った形で御質問をいたしますので、御答弁していただきたいと思います。  まず、先進諸国と言われますアメリカなりEC諸国、これらの国の一人当たりの年間使用量をどの程度に見ておいでになるかということをお聞きいたします。
  204. 大永勇作

    ○大永説明員 いま手元の数字を探しておりますが、大体七百キロくらいで、日本、アメリカ、EC、ほぼ同一レベルであろうというふうに思っております。
  205. 宮田早苗

    ○宮田委員 そこで、もう一つ少し小まめな質問をするわけでございますが、アメリカなりECあたりの一人当たりが持っております蓄積量ですね、これは日本の蓄積量と両方ございましたら、御説明願いたいと思います。
  206. 大永勇作

    ○大永説明員 蓄積量につきましては、わが国はまだ少のうございまして、一人当たり日本が四千七百キログラムに対しまして、アメリカは一万一千四百キログラム、西独が八千八百キログラムといった状態で、半分あるいはそれ以下という状態でございます。
  207. 宮田早苗

    ○宮田委員 そこで、その蓄積量の違いといいますか差といいますか、消費量そのものはもうトップに来ておると思いますけれども、その蓄積量がアメリカの三分の一あるいはECの半分ということなんでございますけれども、この蓄積量は比較して何でこう低いのか。  たとえて申し上げますならば、道路に対する鉄の使用量が違うとか、あるいは個人が持っております家——ビルは同じでございましょうけれども、個人が持っております家そのものに対する鉄の使用量が違うとか、そういうことについてお考えになっておることがあるか、あれば、どこに鉄がまだ回っていないかということについてお考えがあれば出していただきたいと思います。
  208. 大永勇作

    ○大永説明員 これは、日本の鉄鋼業が三十年代から四十年代にかけまして非常に高度成長をいたしましたために、諸外国はそれ以前からすでに鉄鋼生産が相当なレベルにあったという歴史的な差であると思います。特別にどの部分にということではないのではないかと思います。
  209. 宮田早苗

    ○宮田委員 そういう観点を含めまして、これからの国内におきまする予測量がおのずから考えられる問題だと思うわけであります。先進諸国の年間の伸び率が二%程度ということではございますけれども、いまのような質問答弁の中で考えますと、わが国におきましては、二%の伸びということより以上に伸びる余地が出てきはしないかと思います。もちろん、具体的な鉄の需要に対する政策はこれから考えていただかなければなりませんが、そういう問題を考えますと、この政策のあり方いかんによっては、先進諸国が持っております二%の伸び率ということよりは、わが国はそれ以上の伸び率、そういうふうに思うのですが、いま局長の方でお考えになっております将来の鉄の予測需要量、こういう点についてはどうお考えか、お聞かせ願いたいと思います。
  210. 大永勇作

    ○大永説明員 現在、われわれの方といたしまして、たとえば昭和六十年度といったような中期あるいは長期の鉄鋼の需要予測は持ってないわけでございまして、ただ、現在企画庁で進められております中期経済計画あるいは今後OECDの鉄鋼委員会での作業もございますので、これから鋭意検討していく必要があろうかと思います。ただ、先生御高承のように、現在一億四千万トン程度の粗鋼の生産能力がございますが、昭和五十五年ぐらいの時点を考えますると、まだかなり余裕があるのではないかと思う次第でございます。
  211. 宮田早苗

    ○宮田委員 関連の質問でございますが、設備投資について、民間の設備投資については余りにも冷え込んでいるものですから余り期待できないと思いますが、いま業界等で期待をしておりますのは、公共投資に対する期待が非常に大きいわけなんです。ところが、一向に鉄を呼ぶというような傾向になっておりませんが、徐々にはそういう傾向が出ておるのじゃないかと思いますので、その現状について御説明できれば少ししていただきたいということと、それから、今後の投資活動によります鉄鋼の需要について、現状とこれからの投資活動に対する予測といいますか、そういう問題についてはどうですか。
  212. 大永勇作

    ○大永説明員 民間の設備投資が現在落ち込んでおりますので、先生御指摘のように、公共投資に対します鉄鋼業界の期待はかなり大きいものがございます。ただ、最近の事態で一つ問題になりますのは、公共投資単位当たりの鉄鋼需要の原単位というものが相対的に言えば下がってまいりつつあるということでございまして、鉄の需要喚起という点からいきますと、今後は鉄をかなり大幅に使うようなプロジェクトの推進ということが必要になってまいるのではなかろうかと思います。  それから、民間設備投資でございますが、四十八年のオイルショックごろに鉄も一億二千万トンくらい使われたわけでございますが、これはそのころの非常に大きな民間設備投資を反映した数字でございます。それで、その時点でかなり各産業とも過剰設備能力を抱えましたので、現在は民間設備投資は非常に低調になっておる状態でございます。鉄にいたしましても、恐らく償却額以下の設備投資しか現在のところは行われていないというのが実態ではなかろうかと思います。ただ、現在は鉄にいたしましても七割、化学にいたしましても七十数%というふうな基礎産業における操業率でございますが、今後需要が少しずつふえてまいりますれば、稼働率が次第に上がりまして、何年か後には設備投資意欲が出てくるというふうなことではなかろうかと考えておる次第でございます。
  213. 宮田早苗

    ○宮田委員 ちょっと具体的な問題に触れてみたいと思いますが、さきに発表されました来年度石油備蓄基地の関係、これには鉄も相当な期待をするわけでございます。これは鉄の問題だけに限りますが、仮にあの四カ所を設備することになるとどの程度の鉄を呼ぶことになるか、わかりませんか。
  214. 大永勇作

    ○大永説明員 数字は現在手元にございませんが、ただ、備蓄基地の中でも例の上五島の海洋備蓄、あれなんかは船と同じような構造でございますので、鋼材所要量は相当なものになるのではないか。容積として、たしか一基積載量が八十万トンでございますから、鋼材所要量がそれだけ要るというわけではございませんが、その程度のものを五、六基つくる計画であったように記憶している次第でございます。
  215. 宮田早苗

    ○宮田委員 素材産業全般について、政府固定資本の形成とそれから輸出に、いろいろむずかしい面はございましょうが、これからもかなり依存せざるを得ないのじゃないかと考えるわけでありますが、この点についてはどうですか。
  216. 大永勇作

    ○大永説明員 鉄鋼の輸出につきましては、今年度は大体三千二百万トン程度と見込んでおりまして、昨年度よりは若干下回らざるを得ないと思います。市場別で見ますと、今後中国その他東南アジア地方に対しましてはかなりな増加が期待できると思いますが、アメリカとかECに対します輸出が伸びないという事情がございますので、横ばい程度と今後輸出を見るのが一般的な見方ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。
  217. 宮田早苗

    ○宮田委員 鉄鋼の需要を高める対策として一つ問題がございますのは、さきの平電炉関係につきまして、おかげさまで一応立ち直るきっかけができました。これは製品の海外に対する無償供与ということが相当大きく立ち直るきっかけをつくったのじゃないか、こう思うのですが、これをこの小棒ということだけでなしに、鉄鋼製品全般の問題について海外的な援助は当然やらなければならぬわけでございます。低開発国が各国とも一番欲しておりますのは、素材、中でも鉄だというふうに私どもは認識しておりますだけに、そういう構想というものが出てこなければならぬのじゃないか、またそうしていただきたいという希望もあるわけです。その点どうですか。それが結果として鉄鋼需要を高める非常に大きな原因になるというふうに思いますので、お考えを聞かしていただきたいと思います。
  218. 大永勇作

    ○大永説明員 高炉製品の無償援助の問題につきましては、従来検討したといいますか、そこまで考えが及んだことがなかったわけでございますが、これは予算の規模の問題、それから無償援助は相手国の希望によるものでございますから、そういう海外からの要望の問題等々あろうかと思いますが、研究さしていただきたいと存じます。
  219. 宮田早苗

    ○宮田委員 その点については通産省だけでというわけにいかないと思いますが、十分にひとつ検討して、実現するように御努力をお願いいたします。  そこで、関連中小企業の問題についてお伺いするわけであります。  まず、わが国の産業構造について、特に基礎素材産業が今日需給ギャップを抱え、不況に苦しんでおるわけであります。ところが、産業構造を考えますと、不況業種のすそ野というのが非常に広いわけでございます。しかし、反面考えてみますと、この前もちょっと申し上げたと思いますが、これだけの円高で、アメリカなりECなりの産業であったならばもう一たまりもなく倒産というような傾向にもかかわらず、日本の産業というのが、どうやらこうやらでございますけれども、生き延びてきておるということをまず考えていただかなければならぬ。それだけに関連業、また下請業の能力、技術は非常に高いものがあろうかと思っておるわけでございまして、その点をもう少し考えていただきますならば、これを無視するわけにはいかないと思うわけでございます。そういう面について、非常に抽象的な質問になるわけでございますが、政府としてのお考えをまずひとつ聞かしていただきたい、こう思います。
  220. 大永勇作

    ○大永説明員 非常にむずかしい御質問でございますが、日本の企業の場合には、経営サイドにおきましても、労働サイドにおきましても、いわゆる不況というものに対する努力といいますか、適応力といいますか、そういったものが強いのではなかろうかというふうに考える次第でございます。それから、やはり生産維持という観点にかなり重点を置きまするので、不況になりましても、いわゆる資本の論理で簡単には投げ出さないというふうなこともあるのではないかというふうに考えておる次第でございます。
  221. 宮田早苗

    ○宮田委員 私が申し上げたかったのは、いまのことを前提にして考えますと、世界に誇るほどの能力、技術を関連下請というのは持っておる。ところが、今日の基礎産業自体がこういう形になりますと、当然それらの方々に大きなしわが寄る。また寄りそうな傾向になってきておるわけでございますので、これを何らかの形で生かす政策というものが特に必要になってきたのじゃないか、こう思うのです。  そこで、これから新しい産業というものがいろいろ出てくるわけでございますが、それに対応するだけの教育その他ということについても当然なことでございますが、さしあたりの問題としてプラントの輸出ですね。設備を完備した、ところが、残念ながら、その設備が産業構造の違いから完全に機能しない。それから、建ててあげる、設備をつくってやるということだけで事が終わったということでなしに、その設備が完全に機能するという方法までもやはり親切に日本国が考えてやらなければ本当の援助にはならないのじゃないかと思います。その辺に、優秀な関連下請ですね、これだけたくさんおいでになり、あるわけでございますから、そういう面について考える工夫はないか、その点、局長考え方をひとつ聞かしていただきたい、こう思います。
  222. 大永勇作

    ○大永説明員 先生御指摘のとおりでございまして、鉄鋼業におきましては、いわゆる技術輸出もさることながら、最近ではプラント輸出、それも鉄鋼業界が製鉄所をつくるという形で、運転まで指導するということで非常に積極的にやっておられるわけでございます。現に上海の宝山製鉄所でございますとか、あるいは今後ブラジルのツバロン製鉄所の計画等々があるわけでございますが、上海製鉄所の場合につきましても、恐らくピーク時には千人に近いような人が現地に行くのではないかとも言われておるわけでございます。  下請をそこに使えるかどうかという問題につきましては、職種にもよってかなり変わってこようかと思いますけれども、御指摘のように十分その余地はあるのではないかというふうに考えております。
  223. 宮田早苗

    ○宮田委員 さきの前者の質問の中でもいろいろ出ておりましたが、鉄鋼産業に限らず、造船産業その他不況業種のございますところの地域経済に与えます影響というのが非常に大きいわけでございます。規模が縮小されましてある程度の余剰というものが出すと、それを何らかの形で処置しなければならぬ。ところが、地方行政という立場から見ますと、それを他に流出ということは余り好まない、また本人もよそにということにはなかなか同意できないという問題も間々起きてくるわけでございます。そうすると、それだけの優秀な人々でございますので、その人を何らかの形で、言葉は悪いですけれども、活用をする、その技術を生かそうということが自然出てくる、これは至極当然なことと思います。それを可能にするためには企業誘致という問題が当然に出てくるのじゃないかと思います。  企業誘致といいましても、その地域地域の特異性というものもあるわけでありまして、さらに立地条件というものも考えなければならぬわけでございます。特に釜石市の問題がいままでいろいろ問題になってきておるわけでございますが、この釜石市特有の立地、釜石市特有の置かれておるいろいろな別の産業もあるわけでございますから、そういう面を十分に考慮したところの新しい企業の誘致ということについて考えていただきたい。考えていただきたいというのは、これから当然そういうことについて通産省あたりに対して希望なり要請というものがあるというふうに私は推測するわけでございますので、そういう面について何かお考えがありましたら、ひとつ知らせてほしいと思います。
  224. 原田稔

    ○原田説明員 確かに、より長い目で見た場合に、こういった構造不況産業を抱えた地域におきまして、その地域に見合った産業を誘致してくるということは非常に大事なことであるわけでございます。  御指摘がありました釜石市でございますが、釜石市につきましては、すでに非常に小規模ではございますが、幾つかの工業団地も造成されております。また、ある程度範囲を若干広範にとりますと、釜石市だけではなくて少し遠距離にはなりますが、広範囲にとりますと、さらに幾つかの工場団地等もあるわけでございます。  こういったようなことを念頭に置きまして、かつまたその地域に即した企業誘致を行うということで、従来から工業開発指導員という制度がございまして、各地域に見合った工業につきましての専門家、エキスパートを団を組みまして派遣して、地域の工業誘致につきましてのきめの細かい指導なり御相談なりをしているところでございます。こういつたような制度を活用するとかそういうことで各地域に応じました工業の誘致に一層努力をしてまいりたい、かように思っております。
  225. 宮田早苗

    ○宮田委員 次に質問いたしますのは、今度成立いたしました不況地域指定の問題について、労働省の方もお見えになっておるわけでありますが、通産省両方の方々にお聞きしたいと思います。  釜石市とか北九州市ということで、これに対する考え方をお聞きするという意味じゃないのです。その釜石市とか北九州市にございます関連企業、下請企業といいますのは、案外に直接の関係が多いわけであります。ところが、間接的な関係にある中小企業といいますのは、大概のところがその周辺の市町村ということが多いわけでありまして、たとえば北九州市で見ますと筑豊地区、特に直方とか中間とか水巻とかいう市町村があるわけでございまして、その辺が単なる鉄鋼産業の下ということでなしに、造船関係の仕事もなさっておるわけでございますので、そういうところの企業というのが実は一番困っておるわけでございますが、その点について今度決められた指定地域に対してどういうお考えを持っておられるか。また、労働省の方は例の職業安定所単位ということになっておるわけでございますので、そういうことから周辺市町村に対する指定考え方をひとつ聞かせていただきたいと思います。
  226. 左近友三郎

    ○左近説明員 さきの臨時国会で御審議をして成立させていただきました特定不況地域中小企業対策臨時措置法では特定不況地域というのを指定いたしますが、この特定不況地域というのは、その地域内にその経済の中核となる事業所があるその地域でございます。ただ、いま御指摘のとおり、その中核的な事業所と密接な関連のある事業所、いわば下請等は、必ずしもその所在市町村にあるとは限らないということがございますので、そういう特定不況地域と密接な経済的な関連があって、しかも特定不況地域に所在します中核事業所と密接な関連を有する企業が所在しております地域は関連市町村ということで指定をいたしまして、その関連市町村に所在いたします中小企業につきましては、大体特定不況地域の中にあります中小企業者と同等の恩典を受けられるというような措置がしてございます。  ただ、そういう関連市町村というのは、先ほど申しました特定不況地域の近隣ということで周辺の市町村という法律の定義がございますので、余り距離が離れますと、その関連市町村の指定もなかなかできないというケースも出てまいります。  そこで、そういうふうな相当距離が離れた地域をどうするかという問題でございますが、これにつきましては、この法律が、先ほど申しましたように、俗称企業城下町と言われたように、主として構造不況業種に属する中核事業所の所在する市町村にございます中小企業の救済ということを目的として定められたものでございますので、そこまで遠い地域まではやれないということでございます。したがいまして、これについては、実はわれわれの方といたしましては従来からありますいろいろな中小企業対策もございます。それからまた、ことしの十月から新しい地域対策ということができます融資制度もできましたので、そういう制度を活用してケース・バイ・ケースに問題の処理に当たっていきたいということに考えております。  したがいまして、繰り返しになりますが、関連市町村という制度で周辺のものは救う、それからある程度距離の離れたものは、また個別の対策としてケース・バイ・ケースに対策を講じていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  227. 白井晋太郎

    ○白井説明員 お答えいたします。  いま通産省の方からお答えございましたように、特定不況地域が市町村で指定されまして、それを含めます安定所単位で労働省の方は指定してまいります。したがいまして、安定所が必ずしも通勤圏内単位だというふうには明確には申し上げられませんけれども、ほぼ通勤圏内の安定所の地域を定めますとともに、そこの地域内の事業所へ通っていました離職者の方、通勤していた方についてはこの法律の対象にするということで考えております。  ただ、いま通産省がおっしゃいました関連地域につきましては、そういう法のたてまえでございますので、必ずしもそれで安定所の管内に含まれるかどうかという点につきましては、含まれる地域もございますし、含まれない地域も出てくるということになります。しかし、その業種自体が特定不況業種であれば、またそれに関連する第一次下請であれば、従来の特定不況業種離職者臨時措置法によって救われるということになるわけでございます。
  228. 宮田早苗

    ○宮田委員 特に周辺地域指定については、できるだけ法律の適用をして手を差し伸べるように配慮をお願い申し上げておきます。  それから、次に雇用問題について、さきの国会で成立いたしました特定不況業種離職者臨時措置法ですか、この適用状況について、まず室蘭とか釜石とか北九州周辺ですね、わかっておる範囲内で結構でございますから、ちょっと説明してもらいたいと思います。
  229. 白井晋太郎

    ○白井説明員 御質問の特定不況業種離職者臨時措置法に基づく手帳等の発給状況でございますが、本年九月末現在で、全国では休職手帳の発給数が四万四千百五十一人ということになっております。それからなお地域別には、御指摘の室蘭公共職業安定所管内では三百九十七人、それから釜石では現在のところ一人でございます。それから、北九州市内には安定所が五つあるわけでございますが、この五つを合計いたしますと、手帳の発給状況は二百六十一名ということになっております。
  230. 宮田早苗

    ○宮田委員 最後にお問いいたしますのは、さっきもいろいろ質問が出ておりましたので余り多くの説明は要りませんが、アルミ製錬企業の問題についてです。答申に基づいていろいろ御配慮されておるということを聞いておるわけでありますが、確認の意味で、いまどういうことをお考えになっておるか、その考えておられることが実行された場合には、アルミ業界が考えておりますように一応の軌道に乗せることができるかどうかということを含めてお願い申し上げます。
  231. 大永勇作

    ○大永説明員 さる十月の二十三日に産構審アルミ部会から答申を受けたわけでございますが、その骨子は、現在百六十四万トン程度ございます設備のうち、五十三万トンの設備につきましてこれを凍結ないしは廃棄をする、そのための資金手当てといたしましてTQ制度を延長拡大いたしましてその資金の拠出を受ける、こういう骨子でございまして、われわれといたしましては、その答申の線に沿いまして鋭意努力いたしたいと存じておる次第でございます。  その効果でございますが、こういった過剰設備の処理をすることによりまして、現在は輸入品とかなり競争力の格差がございますが、五年後には、おおむね残った設備については競争力を有するに至るという判断を持っておる次第でございます。
  232. 宮田早苗

    ○宮田委員 終わります。
  233. 橋口隆

    ○橋口委員長 安田純治君。
  234. 安田純治

    ○安田委員 本日、私は、現在の経済環境の中で大企業の横暴によって非常に地域経済混乱を来しておるという側面の問題と、同時に、こうした状況の中で農家の婦人や退職者などこれを対象にした悪質な商行為について問題にしてみたい、こういうふうに思うわけです。  まず、通産省に伺いますけれども、作業用手袋、いわゆる軍手と呼ばれている手袋ですね、この産業についてですけれども、この業界は今後需要が大きく伸びる見通しがあるのかどうか、生産体制が間に合わずに新規参入が期待される業界と言えるのかどうか、その見通しを伺いたいと思います。
  235. 栗原昭平

    ○栗原説明員 いま御指摘の軍手でございますが、この用途は作業用に使われる手袋でございまして、需要が特殊なものでございますし、ここ数年の生産動き等を見てみますと、大体横ばいで推移しております。したがいまして、今後非常に大きな需要の伸びが期待されるというような品種ではないというふうに存じております。
  236. 安田純治

    ○安田委員 実は昨年来、福島県の郡山市に事務所を持つミノル貿易と称する会社が、テレビ、新聞を使って、一般消費者を対象に作業用手袋、くつ下の製造者を募っております。その仕組みは、機械つまり編み機ですけれども、これはミシンなど関連資材、糸を一括して売りつけまして、製品はミノル貿易が買い上げる、こういう仕組みであります。ところが、売るときには言葉巧みに宣伝、説得するのですが、やり始めてしばらくすると、買い上げ価格は一方的に値下げし、原料の糸は値上げをして、もうかるどころか赤字になるのであります。  いま福島県下でも二百人以上の方がこの商法の被害に遭いまして、私のところに訴えてこられているわけですけれども、さて、この商法の問題点の第一は、原料糸の安定供給と値段についてであります。糸は綿糸八ミリ半でありますが、品不足で糸が入らなかったということでそういうことがあったり、九月一日から一俵一万四千五百円が一万六千五百円に値上げをされておる。この製品価格の方は一ダース三百三十円が三百五円に値下げされております。そのやり方も一方的通告でありまして、糸の綿糸の値段は少ししっかりしているようでありますけれども、半月以上にわたって糸が供給されないで糸不足である。それで機械を遊ばせている方が多い。こういう状況も生まれておるわけです。  そこで、通産省に伺いますが、それほど業界全体として糸不足が生じているのでしょうか。
  237. 栗原昭平

    ○栗原説明員 現在、綿糸の需給でございますが、ひところに比べては多少は需給は締まってはおりますけれども供給が途絶するというような状態には全くないという感じでございます。
  238. 安田純治

    ○安田委員 次に、第二の大きな問題は、編み機の値段についてであります。  この編み機は、和歌山市の島精機製作所のもので、SFG−7型というのですが、ミノル貿易から消費者が買う価格は百二十九万円、これは五十一年の十二月当時ですが、いまは百六十一万五千円であります。ところが、メーカーの島精機から直接買えば、たった七十五万円で買えるわけです。私が島精機に直接聞いてみましたけれども、島精機は需要家への直接販売を原則としている、したがって個々人へ七十五万円で直接売る、こういう話なんです。そしてミノル貿易には売っていない、みのる産業という会社に売っている、こういう返事なんですね。このみのる産業というのは栃木県の宇都宮市にありまして、会社の代表者は郡山市に本社のあるミノル貿易と同じ人物であります。つまり同系会社を転がして価格をつり上げているわけであります。  実は、この企業はいま昭和・ミノル・グループと名のっておりまして、昭和紡績株式会社、山梨県甲府市、昭和物産株式会社、千葉県千葉市、東急みのる繊維株式会社、宮城県仙台市、みのる産業株式会社、栃木県宇都宮市、ミノル貿易株式会社、福島県郡山市、それから古田商事、これが埼玉県の行田市、こういうふうになっておるわけで、それぞれが法人登記をしておりますけれども、代表者はすべて古田稔という人になっております。  このグループ会社を転がして機械の値段をつり上げて、いわば素人の農家などに法外な高い価格で機械を売りつける。そのかわり原料も供給して製品は全部買い上げる、こういうことですけれども、この種の商法についてどう考えるか、大臣に伺いたいところですが、いま大臣はいらっしゃいませんので、政務次官にお伺いをしたいと思います。
  239. 野中英二

    ○野中説明員 法的にはどういう見解になるか、明確でありませんけれども、商道徳の点からいきまして、はなはだ許しがたいものだというふうに考えております。
  240. 安田純治

    ○安田委員 実は、軍手編み機のメーカーは日本に二社しかない、これは通産省のお話であります。したがって、業者は編み機が七十五万円であることはだれでも知っている、つまりプロはだれでも知っているわけです。したがって、百六十万なんという倍以上もするような値段で買うなどというのは素人だからこそであります。まことに悪質と言わなければなりません。  しかも問題は、編み機の値段だけではなくて、糸やはけ、その他関連副資材も市価の一・五倍から十倍の、いわばむちゃくちゃな値段で売りつけるわけであります。たとえばナイロンゴム糸一キログラム千三百五十円、普通に買えば八百五十円であります。ことしの九月一日からミノル貿易は値下げをして、それでもなお千三百五十円、これまでは二千円だったのであります。ほかに、たとえば編み針二十二円五十銭のものが五十円、糸ルーバー百五十円のものが一千五十円の実に七倍、ゴム糸ルーバー、これは四倍、はけが四倍、ジャックというものが十三円が八十五円で七倍近い、こういうような状態で売るわけです。こうした部品六十点ほどありますが、すべて法外な高価格でありまして、しかも取引方法として、糸、部品はミノル貿易指定のものを一括購入することが条件になっているわけであります。  この点問題はないかどうか、不公正取引に該当しないかどうか、公取委員会の見解をお伺いしたいと思います。
  241. 妹尾明

    ○妹尾説明員 独占禁止法で、不当な対価をもって取引すること、あるいは不当な利益をもって顧客を誘引することは、これが公正な競争を阻害するおそれがある場合には、不公正な取引方法に該当するということになっておるわけでございます。  先生御指摘の商法は、伺っておりますと、確かに社会通念に照らしまして非常に問題のある行為ではないかと思われるのでございますが、社会通念上不当であるからといって、実は直ちに独占禁止法上不当とはなりませんので、要するに、公正な競争にどういう影響があるか、競争秩序にどういう影響があるかという観点が非常に重要になってくるわけでございまして、ただ値段が高いだけであるとか、あるいは顧客を誘引する手段が単に社会通念上不当であるということだけでは、ちょっと独禁法との関係ではにわかに問題としがたい。いままでお話を伺った限りでは、どうも特定の企業の商法として問題があるという感じはいたしますが、競争秩序との関係では十分な関連性というものはわからないわけでございまして、その限りではちょっと問題としがたいのではないか、こういう感じがいたします。
  242. 安田純治

    ○安田委員 さらに、新聞広告では安定収入というものを非常に強調しておるわけであります。新聞広告を見ますと、色刷りで「安定収入」と書いてあるのもありますし、そうじやないのもありますけれども、すべて大きく「安定収入」とうたっておるわけでして、「編み機三台で最低十六万円の収入があります」、こう明記して新聞、テレビなどで広告しておるわけです。しかし、実際には、私の調べたところ十五万円がどうも最高のようでありまして、加えて、先ほど申し上げましたように、糸が入らないために収入は安定どころか五万円以下、機械を遊ばせておけばゼロ、こういう現実で、機械だけを二倍以上の値段で買わされたという結果が生じている人もたくさんおる。また、業界最高の原料糸であるというふうに宣伝しておりますけれども、実際は最も質の悪い糸であります。  機械を売りつけるときには言葉巧みに説得して、幾種類ものパンフレットを発行して、そのパンフレットには、取引先はいろいろ官公需とか大会社の名前を挙げたり関連会社を数社挙げまして、しかも資本金は実際四百万円なのに一千万円と偽って書いたり、こうして数々のうそを重ねて信用させて売りつけるわけであります。中には、こうしたことから、会社勤めをやめてこれを本業にしようと乗り出す人もいますし、子供さんの貯金をはたいてしまった人もおられます。ことに許しがたいのは、「農家の方、退職した方、独立心に燃え自営を企画の方などを求めています」と書いてあるのです。いまこうした経済環境のもと会社をやめざるを得ない、なけなしの退職金を今度はこれにつぎ込むということを明らかにねらっているような退職の方というのを表示しているわけです。大体三台から五台の購入ですから、百六十万くらいしますから、二百万から三百万以上の投資をしたあげくの結果がいま申し上げたようなことで、こういう方が福島県下だけでも二百人を超えているわけであります。  ことに私がこの事態を重視するのは、すでに数年前にも石川県で同様のケースがありました。一昨年も秋田か山形でもあったようであります。加えて、この昭和・ミノル・グループは、いま新潟で軍手の、それから福島ではくつ下の製造業者を募集しておりまして、さらに軍手、くつ下で今後北海道、四国、九州にも進出する計画を発表しているからであります。一地方の問題ではない。全国的に被害者が及ばないうちにはっきりとした制裁を加えておく必要を感ずるからであります。少なくとも、悪質な商行為の実態が明らかになった以上、現行法で何とか規制できないのか、法上やや問題があるにしろ、行政指導でできないか、いずれにしろよく調査、検討をお願いしたいと思うわけであります。  この広告の中身なんか見ますと、本当に素人がひっかかるような中身でございますから、会社合理化で退職した人が今度は退職金をこれで失ってしまうなどということは、もう本当に人道上も許しがたい問題だと思うのです。これも政務次官に所見を伺いたいと思います。
  243. 野中英二

    ○野中説明員 先ほどもお答え申し上げましたように、退職なされる方あるいは農民の方々、そうしたまだ経験もない方々に過酷なマイナスをつくるということは、道義的にも許すことができないということを申し上げたいと思います。
  244. 安田純治

    ○安田委員 次に、この事例とも関連して公取に少し伺っておきたいのですが、現行の不当景品類などの防止法、いわゆる景表法は、一般消費者の保護を目的としておることはそのとおりだと思うのですが、その第四条で不当な表示を禁止しております。先ほどの事例で、事業者の表示などに問題があっても、編み機を買う人を一般消費者と言えるのかどうかということが法律解釈上問題になると思います。私は、法文をすなおに読めば拡大解釈も可能ではないかとも思うのですけれども、今後ともいろいろ新しい商法が登場してくる可能性は強いと思います。できるだけ広く適用する方向で運用するように検討していくことを要望したいと思うのですが、今後の運用について検討する用意があるかどうか、お伺いをいたします。  それから、時間がちょっとあれですので質問を続けさせていただきますけれども、もしこのグループの一社でも資本金が一千万円を超えておれば、下代法の言う親事業者に該当すると思いますけれども、これはこのミノル・グループを見ますとすべて一千万円以下であります。うまく考えたと思うのですが、つまり下代法の適用を免れるために資本を分散していると言わざるを得ない。  ところで、下代法第二条の五項で、子会社をつくって法規制を免れることは許さないということになっております。この第二条の五項を法文上明記した目的は、脱法行為を防ぐことにあるというのは明らかだと思うのですが、どうでしょうか。もしそうだとすれば、法規制を免れる目的で、この意図をより徹底させて全部を一千万円以下の会社にしてしまう、全部代表者は本人一人ですけれども、こういうことでいま問題にしたような事例のような場合には、いわばより徹底して悪らつな方法をとれば法の規制を受けないというようなことであれば、この下代法の二条五項の精神に反するというふうに考えざるを得ないわけであります。明らかにその意図があると認定できれば、これを拡大解釈した運用を検討すべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  245. 長谷川古

    ○長谷川説明員 お答えいたします。  まず、不当景品類及び不当表示防止法の問題でございますが、御案内のように、景表法第四条は不当表示の対象を一般消費者に限定しております。これは、一般消費者が一般的には非常に誤認、不当表示に引っかかりやすいということから特別な保護を加える必要があるというために、特別な簡易な手続をとりまして迅速に保護しようとしたわけでございます。ただ、実際にわれわれの運用において経験しますところでは、確かに一般消費者と限定した場合にはかなり運用上問題が生ずる場合があるということは十分承知しております。しかしながら、さてこれをどこまで広げるかとなりますと、余り広げ過ぎますと今度は一般の独禁法本来による不当誘引との差がほとんどなくなってしまいます。そうしますと、特別な手続を適用する範囲を広げますと、景表法自体の存在意義がやや薄れてくるのじゃないだろうかというふうな問題もあろうかと思います。われわれとしましては、いわゆる一般消費者でなければ四条に言う一般消費者とは読めないというふうに狭くは解しておりません。極力広く解釈すべく努めておりますけれども、本件の場合につきましてわれわれ検討したのでございますが、何しろ物を買ってそれをつくって、しかもそれを売る目的で継続的につくっているという場合に、これまで一般消費者に入れるというのはややむずかしいのじゃないかというふうに思っております。  それから、下請法の二条第五項の問題でございますが、確かにこの会社の場合は、あるいは二条第五項を意識してそういうふうな一千万円以下の資本金にしたのかもしれません。そして、一千万円以下の資本金に会社を分散させた場合には、現行の下請法ではいささか対象になりにくいということも事実でございます。この件につきましても実はいろいろな場合が想定される場合でございます。これは今後の課題といたしまして検討さしていただきたいというふうに思っております。
  246. 安田純治

    ○安田委員 いま申し上げたようなこのミノル貿易などのやり方は、家内労働法の対象となるかどうかを労働省に伺いたいと思うのです。なるとすれば、こうしたミノル貿易などは同法上の手続、たとえば家内労働手帳の交付その他をやっておるかどうか。この宣伝のパンフレットなどを見ますと、はっきり工賃と書いてあるのもあるし、工賃もしくは買い取りというふうな文章を使っていますが、買い取りであっても、中身によっては家内労働法の二条の二項ですか、それに当たるというケースもあると思うのです。この二点をお伺いしたい。当たるかどうかということと、当たるとすれば家内労働手帳などの交付をやっておるかどうか。
  247. 花田達郎

    ○花田説明員 お答え申し上げます。  先生御質問の事例につきましては、地元の監督署を通じて調査しているところでございますけれども、現在までに把握いたしました資料によりますと、先生御指摘のように、家内労働の中心は物品を提供してそれを加工して納品させるというのが主体でございますけれども、売り渡しさらにそれを買い戻すという場合も家内労働法の適用があることになっております。したがいまして、ほかの条件が充足されますと、この事例についても家内労働法の適用があるという可能性が非常に強いというふうに思っております。  現在まで地元の監督署を通じて調査したところによりますと、家内労働法上のたとえば委託状況届の提出あるいは家内労働手帳の交付はなされていないようでございます。そこで、署といたしましても、家内労働法の適用があるということでそういう問題が起こっているということでございますので、近く家内労働法に基づく監督をいたしまして、もし法違反があれば是正をさせるというふうに考えております。
  248. 安田純治

    ○安田委員 時間がなくなりましたので続けて申し上げますけれども、かつて共産党が提出した下代法の改正案において、こうした事態もあり得ると考えて、一千万円以下の企業に対しても法の規制が及ぶようにしております。また、ずいぶん古くなりますけれども、昭和四十年の当商工委員会附帯決議で、「親事業者の範囲について、引き続き検討を加え、資本の額または出資の総額が一千万円以下の法人たる事業者をもその実態に即し親事業者として規制しうるよう、速やかな措置を講ずること。」ということが言われておるわけでありますが、この決議についてどう検討されたのか。先ほどの通産省なんかのお答えですと、どうもはっきりしないのです。ことに「その実態に即し」というのは、まさに私がいま指摘したような事例が考えられるわけですから、この点について今後十分関係法規の整備拡充をやっていただきたいということを強く主張しておきます。  それから、先ほども少し触れましたけれども、こういう経済情勢のもとにおいて今後ますます中高年齢者がふえることもあって、その層を対象にした新手の商法が次々出てくることは十分予測されることでありますから、本日例を挙げた個別の案件にとどまらずに、ぜひ法の拡充強化あるいは行政指導の強化を要望しておきたいと思います。  私は終わります。
  249. 橋口隆

    ○橋口委員長 関連して工藤晃君から質疑の申し出がありますので、これを許します。工藤晃君。
  250. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 八月に日鉄鉱業の釜石鉱業所の閉山計画、それから十月二十六日に新日鉄の合理化計画が明らかにされて、共産党は私を団長としまして二日にわたり釜石市に調査に入りました。  御存じのことだと思いますが、八月十七日に釜石市は市議会の全員協議会を設けて、そしてこの二つの合理化を回避するという方向での運動が、市挙げての運動となっております。市としての対策本部も設けられております。市長から伺ったところによりますと、岩手県知事は十月十七日に総理にもこの問題についての要請を行っている。こういう問題になってきているわけであります。  さて、この問題を考える場合に、釜石市は鉄鉱石を出す山と製鉄所に強く依存した鉄の町であるということは言うまでもありません。市の純生産額の八割近くがこの鉄鋼と鉱山であります。しかも歴史的には、東海製鉄所への配転、合理化ということがあったときに、ここでは著しく市の人口が減りまして、商業などが打撃を受けたわけであります。たとえば一九六二年に人口が九万一千六百六十四名、それが七七年には六万八千五百六十七名と二万三千人減りましたし、六四年から六八年に商店数が二百六十四減った。こういう歴史があり、こういう歴史があるからこそ、また市民は非常に深刻に受け取っているわけであります。  しかも、市の行った調査があります。この調査はアンケート調査に基づいた非常に丁寧につくられた根拠のある調査でありますが、それによりますと、今回発表されたこの計画が行われた場合に、離職者が二千九百八十七人、家族を合わせると一万人を超える、そういう数が出ております。そして転廃、規模縮小は二百六十五に及ぶ。また、いわゆる関連企業だけでなしに、商店街などで九百六十五名の従業員減少というのを見込んでおります。言うまでもなく、市税その他にも大きな影響が出るわけであります。  ところが、この合理化計画、特に新日鉄の合理化計画というのは、あそこの一番大きな中心部分である大形圧延工場の休止ということであります。そうすると、この大形圧延工場の休止であるがゆえに、製鉄所として大きな変貌を遂げる。縮小に向かうというだけでなしに、このままいくと、第二高炉の方の五十七年度の改修で果たしてこれを続けるのかどうかということが問題になっております。私は副所長に対してこの問題について突っ込んで聞きましたが、五十五年度まではともかく続けると言うけれども、それ以後については言えないと言って、明らかにこの方向をにおわしているわけでありますから、もしここでそういうことになるならば、東北ただ一つの一貫製鉄所というのが失われることになるわけであります。  それに加えて、私もいろいろ調査してつくづく感じたわけでありますが、釜石は、それこそ安政年間から、大島高任がここで近代製鉄をつくり出して以来、百年を超える製鉄の町として、そして最も古い歴史があるわけでありますが、市を挙げて製鉄の発展のためにいろいろ犠牲をこうむり、協力させられてきた。市が余りにも製鉄に依存し過ぎると言われても、そうせざるを得なかったし、そうさせられてきたというのが実情であります。  これは、戦前はそれこそいやがおうでも協力させられましたし、戦争中は、それこそもう終戦、敗戦の直前に艦砲射撃で七百五十名の命が奪われ、市は壊滅、これはみんな製鉄所があったからである。戦後の歴史を見ましても、埋め立て、そして漁業権を失う、専用桟橋をつくらなければいけない、あらゆる面で協力させられてきた。山の多いところですが、平たん部の八〇%が製鉄所その他の関連ですから、何かほかの関連、ほかの業種の企業を誘致するといったって来る空間さえない。いやがおうでもこういう状態で来たところ、そうしていろいろ犠牲をこうむって製鉄所の発展に協力してきたあげく、突然このように製鉄所を失う、そして一万人に及ぶ人口減も起こるかもしれないこういう合理化が企業の私的な決定として行われる、こういう性質の問題になったわけであります。  したがって、この問題は決して一地域の問題ではない、また一私企業、これは日鉄鉱業を含めれば二ということになりますが、その問題ではなしに、明らかに国政の場で当然取り上げなければいけない問題じゃないか。第一に、それは企業のそういう決定地域経済に先ほど私が申したような重大な崩壊と言っていいような状況をつくり出す、それが許されていいのかどうか、そういうことにかかわる問題ではないか。  また、この問題は東北挙げての強い関心を呼んでいると聞いております。というのは、これまで東北を発展させると言ってきたけれども、それこそ高度成長期には出かせぎ、それで奉仕させられてきた。いわゆる低成長という時代になると、ただ一つの重工業の基地、一貫製鉄所を東北から奪ってしまう、こういうことがやられてしまう、これが許されていいのか、こういう問題になると思います。  また、私は、十月十八日の商工委員会では特に、大企業の方が人減らし合理化をどんどんやって、一年間に二十万人も三十万人も人減らしをやっている、こういうものを放置していたんじゃ、幾ら公共事業で雇用をふやしますと言ったって、雇用政策なきに等しいではないかと強く申したわけであります。  こういう雇用政策、国全体としての不況政策という見地からいきましても、この釜石の問題というのは国の経済政策において重視すべきでありますし、特に鉱業、製鉄、ともに監督官庁は通産省でありますから、やはり通産省としましても雇用への影響地域経済への影響、この問題を重視して、市や岩手県の協力も得まして調査して、何らかの対策を立てるべきではないかと考えるわけでありますが、その点について、きょうは大臣はおられませんが、政務次官答弁をお願いします。
  251. 野中英二

    ○野中説明員 企業城下町という言葉がございますけれども、企業が一自治体と密接な関係を持ち、地域住民と切っても切れないような関係になっております。特にいま先生から御指摘のありました釜石につきましては、その密度が非常に濃いというふうに考えておるわけでございます。  御存じのとおり、新日鉄の方は配置転換をするということでございまして、漸次自然退職で補うということでございます。あるいはまた、マイニングの方の釜石鉱山の方は三年しかないというようなこともございまして、会社の事情もこれあることかと存じておるわけであります。しかしながら、地域社会に及ぼす影響というものを十二分に考慮いたしまして、今後企業とも、新日鉄ともよく連絡をとりまして、慎重にこの問題を検討してまいりたい、そして指導してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  252. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) 企業に対してそういう指導をやられるということは、ぜひ積極的にやっていただきたいわけでありますが、新日鉄の場合、自然減であるということでありますが、この釜石製鉄所の例一つとりましても、釜鉄の本工は三千七百九十八名でありますが、関連は四千四百三十九名と上回るわけであります。したがって、関連がまず切られていくということは真っ先に出てくることであります。これまでもそうでありましたし、もうすでに大型工場、ピーリングでそこが休止ということになれば、すぐにその影響が出てくることがはっきりしているわけであります。そして、それに加えまして、それだけ労働者、職員の収入が減る、人口が減るということから、商店の転廃業が起きるということになって、またそこからもいろいろな事実上の失業者が出てくる、離職者も出てくる、こういうことになって進むわけであります。  そういうことからもう一点確かめたいのですが、いま私申しましたように、これは先ほど政務次官言われたように、確かに密度が濃い、そういうことでありましょうが、地域経済への影響が非常に大きい例であり、また歴史的にも先ほど申しましたような長い経過がある地域であるだけに、ぜひこの調査を、企業その他への連絡、指導ということに加えまして、市や県とも協力を得ながら、そのいろいろな影響、実態の調査についても政府としてもいろいろ関心を持っていただきたいと思うわけでありますが、それについて答弁お願いしたいと思います。
  253. 大永勇作

    ○大永説明員 会社からもいろいろ事情を聞いておりまするし、それから県、市当局等からもいろいろ陳情その他の形で現地の事情をよく聞いておりまするので、これらを十分踏まえまして、新日鉄に対しまして、地域経済への影響あるいは雇用への影響に十分配慮しながら計画考えるようにというふうに要請してまいりたいと存ずる次第でございます。
  254. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) これは十月二十日、参議院の商工委員会におきまして安武洋子議員の方から質問がありまして、特にこれは特定不況地域の問題でありますが、大変不安におののいております下請中小企業あるいは関係自治体に対しいろいろな企業が大きな影響を及ぼすような合理化計画を持っているときには、合理化計画を事前に協議するよう御指導なさる必要があるのではないかということに対しまして、中小企業庁長官の方が、これに対して、「そういう中核の産業の今後の改善対策というものが地域経済に非常に大きな影響があるということは御指摘のとおりでございますので、そういう点で、地域と密接に連絡をとるようにやっていくように、中小企業庁としても要望したいというふうに考えております。」このように答弁されております。  まさにこの釜石の問題、もちろんこれに似た問題はいろいろ数多くあることは存じておりますが、特に釜石の場合はまず下請関連企業に来る、あるいは商店街に来る、こういう形でもこの影響が出てくるだけに、こういう問題についてやはり企業がこういう計画をいきなりばっと出して、さあやっていくぞという姿勢ではなしに、やはり釜石市、近隣市町村、そしてまた岩手県という自治体とよく協議しながら慎重な態度をとるというふうに中小企業庁としても指導すべきではないかと思いますが、それについて御答弁をお願いしたいと思います。
  255. 左近友三郎

    ○左近説明員 いま御指摘のとおりに考えておりまして、実はこの特定不況地域中小企業安定の臨時措置法につきまして現在いろいろ検討を進めております。ただ、釜石につきましては、事態が計画もまだ決定していない段階でもございます。したがいまして、絶えず市町村、県あるいは通産省の中の関係原局ともよく相談をしながら事態を見守ってまいりまして、そして必要なときが参りますれば、たとえば不況地域指定というようなことも検討いたしたいというふうに考えておりまして、今後十分地方公共団体とも連絡をとりながら、状況の推移を見守ってまいりたいと考えております。
  256. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) いまの私の質問は、特定不況地域指定ということに関連しないで、まさに特定不況地域になっていくことを予防するという見地から、そういう影響のある合理化計画をいろいろな企業が進めようとするときには、当然、そこで犠牲をこうむる、影響をこうむる自治体と事前に十分協議して慎重な態度をとらせるようにということでありましたし、これは安武洋子議員の質問の趣旨もそういう点であったわけでありますが、その点について最後にもう一度御答弁願いたいと思います。
  257. 左近友三郎

    ○左近説明員 その点につきまして、現状から今後の推移を見まして、必要な対策はその都度打ってまいりたいというように考えております。
  258. 工藤晃

    ○工藤(晃)委員(共) では、時間が参りましたのでこれで終えますが、ともかく新日鉄といえば昨年までは日本一の大企業でありますし、世界の鉄鋼業の重鎮でありますし、今度の合理化計画も言ってみれば大変ぜいたくな合理化計画であり、華麗なる合理化計画である。しかもそれがそういう地域社会へ重大な影響を及ぼすのを顧みずにどんどん進めるということは、国の政治において絶対許されてはならないと思います。それは地域経済の立場からも、また雇用を守っていく、そういう立場からも絶対に許されないことだと思います。今後こういう問題について、われわれ共産党・革新共同は大いに取り上げていかなければいけないと思いますし、釜石問題も具体的に取り上げてまいります。  これをもって私の質問を終わります。
  259. 橋口隆

    ○橋口委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十三分散会