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1978-10-19 第85回国会 衆議院 災害対策特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年十月十九日(木曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 川崎 寛治君    理事 有馬 元治君 理事 高鳥  修君    理事 矢山 有作君 理事 湯山  勇君    理事 広沢 直樹君 理事 神田  厚君       稲垣 実男君    越智 伊平君       後藤田正晴君    斉藤滋与史君       谷  洋一君    谷川 寛三君       津島 雄二君    中島  衛君       中村  直君    森   清君       山崎武三郎君    渡辺 秀央君       伊賀 定盛君    伊藤  茂君       池端 清一君    佐藤 敬治君       新盛 辰雄君    瀬野栄次郎君       武田 一夫君    古川 雅司君       山本悌二郎君    津川 武一君       山原健二郎君    永原  稔君  出席国務大臣         建 設 大 臣         国土庁長官   櫻内 義雄君  出席政府委員         国土庁長官官房         審議官     四柳  修君         国土庁地方振興         局長      佐藤 順一君         農林水産大臣官         房審議官    佐々木富二君  委員外出席者         参議院災害対策         特別委員長   川村 清一君         大蔵省主税局税         制第一課長   水野  勝君         文部省管理局教         育施設部指導課         長       大井 久弘君         厚生省公衆衛生         局結核成人病課         長       大池 真澄君         農林水産省構造         改善局建設部防         災課長     高田 徳博君         林野庁指導部治         山課長     江藤 素彦君         気象庁観測部参         事官      末広 重二君         建設省河川局水         政課長     安仁屋政彦君         建設省河川局治         水課長     川本 正知君         建設省河川局砂         防部砂防課長  小藪 隆之君         建設省住宅局建         築物防災対策室         長       上田 康二君         消防庁防災課長 千葉  武君         消防庁震災対策         指導室長    大竹山龍男君         参  考  人         (東京大学地震         研究所教授)  宇津 徳治君         参  考  人         (東京大学地震         研究所教授)  茂木 清夫君     ――――――――――――― 委員の異動 十月十九日  辞任         補欠選任   伊賀 定盛君     新盛 辰雄君 同日  辞任         補欠選任   新盛 辰雄君     伊賀 定盛君     ――――――――――――― 十月十六日  地震災害対策充実強化等に関する陳情書外一  件  (第一一四号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  天災による被害農林漁業者等に対する資金の融  通に関する暫定措置法及び激甚災害に対処する  ための特別の財政援助等に関する法律の一部を  改正する法律案参議院提出参法第一号)  地震対策及び活動火山対策  災害対策に関する件  地震対策強化に関する件      ――――◇―――――
  2. 川崎寛治

    川崎委員長 これより会議を開きます。  参議院提出天災こよる被害農林漁業者等に対する資金融通に関する暫定措置法及び激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律の一部を改正する法律案議題とし、提案理由説明を聴取いたします。参議院災害対策特別委員長川村清一君。
  3. 川村清一

    川村参議院議員 ただいま議題になりました天災による被害農林漁業者等に対する資金融通に関する暫定措置法方及び激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその要旨を御説明申し上げます。  御承知のとおり、わが国世界でも有数の災害国であり、毎年自然災害により幾多のとうとい人命と貴重な財産が失われておりますことは、まことに遺憾にたえないところであります。  特に、六月十二日の宮城県沖地震、六月中旬から下旬に至る梅雨前線豪雨及び高温による激甚な災害発生し、振興著しい仙台市とその周辺地域及び新潟県等において、中小企業者農林漁業者等はきわめて甚大な被害を受け、今日の社会経済情勢変化の中で、その生活再建はきわめて深刻な事態となっているのであります。  このような被災者に対する救済策としては、天災融資法及び激甚災害法がありますが、最近における農林漁業者中小企業者等経営の動向及び経済規模拡大等から見て、現行の被害農林漁業者被害中小企業者等に対する貸付金限度額では、災害時に必要とする経営再建のための資金需要に対して必ずしも十分に対応し得ている状態とは言いがたいのであります。  以上の観点から、今回の激甚災害を機に、農林漁業者中小企業者等災害による資金需要増大に対処するため、これらの者に貸し付けられる資金にかかる貸付限度額引き上げ等内容とする法律案を提出することとした次第であります。  次に、法律案要旨について御説明申し上げます。  まず、天災融資法改正でありますが、第一点は、被害農林漁業者に貸し付けられる経営資金貸付限度額引き上げについてであります。すなわち、従来、都府県にあっては八十万円、北海道にあっては百四十万円、政令で定める資金の場合は二百万円、政令で定める法人に貸し付けられる場合は千万円、漁具購入資金の場合は二千万円と定められている貸付限度額を、いずれも二倍の額に引き上げるものとし、それぞれ百六十万円、二百八十万円、四百万円、二千万円、四千万円とすることであります。  第二点は、被害を受けた農業協同組合森林組合水産業協同組合等に貸し付けられる事業資金貸付限度額引き上げについてであります。すなわち、従来、単位組合にあっては千万円、連合会にあっては二千万円と定められている貸付限度額を、いずれも二倍の額に引き上げるものとし、それぞれ二千万円、四千万円とすることであります。  次に、激甚災害法改正でありますが、その第一点は、激甚災害における天災融資法特例措置に関する規定を改め、激甚災害の場合の経営資金及び事業資金貸付限度額について、いずれも従来の二倍の額に引き上げるものとし、経営資金につき、都府県にあっては二百万円、北海道にあっては三百二十万円、政令で定める資金の場合は四百八十万円、政令で定める法人に貸し付けられる場合は二千万円、漁具購入資金の場合は四千万円とすることとし、事業資金につき、単位組合にあっては四千万円、連合会にあっては六千万円とすることであります。  第二点は、中小企業者等に対する資金融通に関する規定を改め、従来、激甚災害を受けた中小企業者については四百万円、協業組合及び中小企業等協同組合その他の団体については千二百万円と定められている貸付限度額を、いずれも二倍の額に引き上げるものとし、それぞれ八百万円、二千四百万円とするとともに、その貸付金利については年六・二%の利率を年六・二%を超えない範囲内において政令で定める利率に改めるものとすることであります。  なお、経過措置といたしまして、昭和五十三年六月一日以後に災害資金融通措置を講ずべく指定された天災または災害につきまして遡及して適用するものとすることといたしております。  以上が、この法律案提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上速やかに御可決くださいますよう、お願い申し上げます。(拍手)
  4. 川崎寛治

    川崎委員長 以上で提案理由説明は終わりました。     —————————————
  5. 川崎寛治

    川崎委員長 次に、本案について質疑、討論に入るのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  本案賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  6. 川崎寛治

    川崎委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書等の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 川崎寛治

    川崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  8. 川崎寛治

    川崎委員長 次に、災害対策に関する件、特に地震対策及び活動火山対策について調査を進めます。  本日は、参考人として、東京大学地震研究所教授宇津徳治君及び東京大学地震研究所教授茂木清夫君のお二人に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に申し上げます。  本日は、御多用中のところ御出席をいただきまして、ありがとうございました。  当委員会におきましては、目下地震対策等について鋭意検討しておりますが、審査参考にいたしたいと存じますので、何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の整理上、御意見の開陳はお一人十分程度に取りまとめていただき、その後、委員質疑にもお答えいただくようお願いいたします。  それでは、宇津参考人
  9. 宇津徳治

    宇津参考人 地震研究所宇津でございます。  私は地震活動研究をやっておりますので、災害対策と申しますと地震予知というような面で関係がございますので、地震予知につきまして一般的な問題を御説明したいと思います。  日本地震予知計画が公式に始まりましたのが十三年前の昭和四十年でございますが、当時は、地震がなぜ起こるのかというようなことについても統一的な解釈が確立しておらない状態でありまして、地震予知が可能なのかどうかはっきりしなかったわけですけれども、その後、この計画が第二次、第三次と進んでまいりまして、ことしの七月には来年度から始まります第四次計画につきまして測地学審議会から建議が提出されまして、そういった状態でかなり進んでまいっておるわけでございます。地震予知計画というのはその最初から、前兆となるいろいろな異常現象、たとえば地震活動状況とか地殻のひずみだとか、あるいは電磁気的な現象、あるいは地球化学的な現象、その他いろいろな現象を適当な方法で観測をすることによって発見いたしましてそれに基づいてするという方針をとっておりますけれども、データが次第にたまってまいりますと、こういった異常現象というものも非常に複雑なものでございまして、なかなか一筋なわではいかないということがわかってまいりました。  中国では幾つかの大地震予知に成功しているわけでございますけれども、そういった前兆的な異常が広い範囲にわたってかなりはっきりとあらわれるようでありますけれども、どうも日本では、もちろんその観測の不足というようなこともございますけれども、前兆としての異常に対しまして地震とは関係のない似たような異常変動、いわゆるノイズでございますが、それもかなり大きいようでありまして、単純にあるデータに異常が認められたからといいましてすぐ予報を出しますと空振りに終わってしまうということが多いのではないかと思われるわけです。  こういった予知のための観測というのは現在もちろんまだ不十分でございますのでこれを充実しなければなりませんけれども、またそういったいろいろなデータを迅速に集めまして解析するというシステムというものを整備する必要もありますけれども、こういったデータによって予報を出すか出さないかという判断を行う場合を考えますと、その判断は非常にむずかしいことが多いのではないかと思われるわけであります。場合によりましては非常にはっきりとした前兆現象幾つかあらわれまして相当の確信を持って大地震が起こると判断することができる場合もあるかもしれませんけれども、そういった場合でも大地震が起こるということはわかったとしても、いつ、たとえば数時間以内に起こるのか、あるいは二、三日以内ぐらいか、あるいはもっと先なのかというような判断はこれまた非常にむずかしい問題であろうかと思います。  こういった場合、適切な判断を行うのに基礎になるのは、結局地震現象に対する基礎的な知識、つまり地震学そのものが大切でありまして、観測強化とともにその方面の基礎的な研究を進める必要がございます。日本では地震関係研究者あるいは技術者の数というのは限られております。これも急にふやすというわけにもいかないという事情もありますし、いろいろな問題がございますので、そういったいろいろな制約を考えた上で、その第四次計画というのは関係者が大変長い時間をかけて協議をしてつくられたものでありますので、私どもとしましては来年度からの第四次計画が完全に実施されるということを特にお願いしたい、そう思っておるわけでございます。  それでは地震予知という話になりますと、これができるのかできないのか、あるいはマグニチュード八以上ならできるのだけれども七ではむずかしいのじゃないかとか、 こういうふうにできるかできないかというふうに、白か黒かと割り切って考えるようなことがございますが、地震予知というのは本来そういったものではございませんで、すべて確率的なものでございます。それで、もちろんその観測を充実して研究を進めていけば予知できる地震の率というのは徐々に高くなっていくものと思いますけれども、これだけのたとえば観測を整備すれば予知は完成する、そういった性質のものではございません。それで、そういった予知確率というのは対象とする地震性質によって、たとえば海の方に起こる大地震、内陸の地震とかその他いろいろ地震性質によって非常に違うものだろうと思われるわけであります。  それから、いま予知確率と申しましたけれども、これには二通り意味がございまして、一つは予報を出したときその何%が当たるかといういわゆる適中率と、それから被害を伴うような大地震の何%が予知されるかといういわゆる予知率、この二つがあるわけです。  この二つというのはお互いに相反する性質を持っておりまして、予報空振りになることを恐れて非常にはっきりとした前兆があらわれるときだけ予報を出すようにしますと、適中率の方は高くなりますけれども、予知される地震の率は下がります。逆に見逃しを恐れてちょっとでも心配なときはすぐ予報を出すというふうにしますと、予知率の方は上がりますけれども外れる率が高くなりまして、適中率は下がるわけであります。これをどういうふうに調整したらいいかというのは、予報を出したときに社会がどう対応するかということによるものでございまして非常にむずかしい問題でございますが、とにかく今般大規模地震対策特別措置法ができまして、場合によりましては予知情報が出る、警戒宣言が出されるということになったわけでございますが、観測強化地域マグニチュード八クラスの大地震が起こる場合ですと、かなりはっきりとした前兆現象観測される可能性が大きいと思いますけれども、一方観測に大きな異常があらわれたからといって必ず大地震が起こるとも言い切れませんので、空振り可能性も結構あるのではないかと思われます。  地震予知というのはこのように本質的に確率的なものでありまして、大地震が起こるのか起こらないかと断定できる性質のものではなかなかないわけであります。ですけれども、そのように当たり外れがあっても長い目で見れば予報というのは防災上大変有効であろうと思うわけですけれども、とにかくそういった予知情報が出された場合の対策ですか、そういった地震予知性質というのを十分御理解の上対策を立てていただきたい、そう思っているわけでございます。  それから、この法律にも観測強化とか研究体制の整備、研究の推進、それからその成果の普及というようなことも取り上げられておりますが、これは大変結構なことだと感謝しておるわけでございます。最近では新聞やテレビなどでも地震に関する解説がふえてまいりまして、内容も以前に比べますとかなりよくなってまいりまして、国民地震に対する知識というのがふえつつあると思うわけですけれども、予知情報を出すとしましても、そういった情報を受ける側に正確な予備知識があるかないかということによりましてその効果というのが非常に違ったことになると思われますので、予報の発表の仕方とかそういったことも研究する必要がありますけれども、国民に対するふだんの地震に関する知識の啓蒙というのが非常に大切ではないかと思われるわけです。日本人というのはとかく確率的に物を考えるというのになれておりませんで、白か黒か割り切って考える性質があると言われておりますけれども、地震予知というのはそういうのとなじまない性質なものですから、そういう点、特に教育が大切ではないかと思っております。  以上のお話はいわば短期的な予知地震直前予知お話でございますが、それとともに長期的な予知、つまり数年とかあるいは十年、二十年、三十年先の大地震発生を考える長期的な予知も、これは短期予知の成功のためにも、それからそれ自身震災対策のためにも大変重要でございます。地震予知連絡会では先ごろ特定観測地域の見直しを行いまして、二、三以前のものを改めたわけでございますが、これは一種の長期予知的な要素を含んでおるものでございます。特定地域日本国土のちょうど四分の一ぐらいになるようにしぼりましたため若干無理したような感じもありますけれども、これは現在の地震学知識から見まして妥当なものだと思われるわけです。こういったものも、今後測量観測、それから歴史的な地震のいろいろな史料の調査なども非常に大事でありますが、そういったものを進めて長期予知精度も高めていく必要があると思われます。こういった問題も第四次計画の中に含まれておりますので、この第四次計画の実現、よろしくお願いしたい、こう思っているわけでございます。  以上でございます。
  10. 川崎寛治

  11. 茂木清夫

    茂木参考人 私、東京大学地震研究所茂木でございます。  ただいま宇津教授から地震予知計画全般にわたりまして御説明がありまして、さらにつけ加えることは特にないのですが、二、三の問題について私の意見を申し上げてみたいと思います。  まず第一に、地震予知は一体可能であるのかどうかということでございます。現在、地震地殻の勇断型の脆性破壊であるというふうに考えられております。そこで脆性破壊予測というものは非常にむずかしいから、地震発生予測することは無理であるというふうに考えている方もおるようであります。確かにガラスのように一様な構造を持ったものでは突然急激に壊れますので、その発生予測することはほとんど不可能なわけであります。もし地球の表層、つまり地殻ガラスのように均一、一様なものでできていたといたしますと地震予知というのは本質的に不可能であるというふうに言ってよろしいと思います。  ところが、実際の地殻ガラスのようなものとは違っておりまして、たくさんの割れ目、それから断層そういうものを含んだ非常に複雑な構造をしております。そこには弱いところと強いところが不均一に分布しているわけです。そういう不均一な構造を持ったものに力を加えていって破壊させます場合には、まず弱いところが先に壊れる、すべりやすいところが予備的にすべる、そういうことが起こることが実験でわかってきております。つまり前駆的な小破壊変形が進行してから最終的な破壊に至るわけであります。したがって、この前駆現象をとらえることによって主破壊、つまり大きな地震を未然に予知できる可能性は大いにあるということであります。  時間的な尺度で申し上げますと、前駆現象には長期的なものと短期的なものとがございます。長期的なものは力が次第に増加することによって起こる地震活動のパターンの変化とか地殻ひずみの増大といったものであります。短期的なものはそういう大きい破壊が起こる直前の前駆的な微小破壊に関連して起こるものでありまして、前震とか地殻変形水位変化ラドン含有量変化といったもので、これは短期的予知の手がかりになると考えられます。  御承知のように、中国ではこういう前兆現象をとらえることによりまして幾つかの大地震予知に成功しております。日本に起こった過去の地震を調べてみますと、もし今日の水準の予知技術をもってすれば予知することができたに違いないという地震幾つかございます。したがいまして、地震予知できる可能性は大いにあるということは間違いのないことであります。もっとも前兆のあらわれる程度も、それからあらわれ方も地殻状態によって違いまして、決して単純なものではないようであります。そういう資料は次第に蓄積されつつありますが、さらに観測強化して、どこではどういう前兆がどういうあらわれ方をするかというきめの細かい研究をもとにして初めて精度のよい地震予知が達成されるようになるというふうに考えております。  次に、地震予知の現状と今後の地震予知の進め方についての私の意見を述べてみたいと思います。  第一に、地震予知を現実に行うには各種のデータをできるだけ大量に得るということが絶対的に必要であるということでございます。地震長期的予測基礎となる国土地理院による測地測量、それと気象庁によって行われてまいりました大中小地震観測については、わが国では明治以来非常にしっかりしたデータが蓄積されておりまして、大地震長期的予測に役立っておるわけですが、これはわが国地震予知の独自の強みでありまして、諸外国の追随を許さないところであります。したがって、巨大地震の非常に大まかな長期的予測は大体できるという状況にあると言っていいと思います。  問題は、さらに一歩進めて、大地震の起こる場所、それから正確な時期を予測するということであります。そのためには、地震に先行する異常をとらえる必要があるわけでありますが、一般に地震前の異常の起こる広がりというものは地震が大きいほど大きいわけです。また逆に言いますと、地震が小さいほど小さいわけであります。したがって、ある大きさの地震前兆現象をとらえるには、それにふさわしい観測密度を必要とするわけであります。  マグニチュード八クラスの巨大地震の場合は異常の広がりは百キロメートルとかあるいは二百キロメートルとか、そういう非常に広い範囲に及びます。それから異常のシグナルも十分大きいことが予想されます。過去の例は、不十分なものしかないわけでありますが、そのことを示しております。しかもこういう巨大地震が一たん起こりますと、その災害は非常に大変なものでありますから、それを予知することは非常に重要なわけでございます。  東海地域では長期的な地殻活動状況からこのクラスの、つまり大地震が起こる可能性が考えられますので、その前兆をとらえて正確な予知をしようということで常時監視体制をとっているわけでございます。  こういう巨大地震については、現在の観測網をある程度積極的に充実していきますれば、前兆現象をとらえて直前予知可能性がかなりあるというふうに考えております。もちろんこういう海溝沿いのこの種の巨大地震前兆現象を詳しく観測したという例は世界でもこれまでありませんので、どういう前兆がどの程度起こるかということについてはわからないことが多いのでありますが、南海地震とかそれから東南海地震の場合の幾つかの報告から類推しているわけでございます。  マグニチュード七クラスの一段小さい地震も、それが都市近傍で起これば大災害をもたらす可能性は大きいわけでありますから、その予知もまた重要であります。しかし、このクラスの地震前兆をつかまえて正確な判断をするには、現在の観測網は密度が粗過ぎるのであります。そのためにはさらに密度の高い観測がぜひ必要となります。  ことしの一月十四日に起こりましたマグニチュード七の伊豆大島近海地震を例にとって、この問題についてお話ししてみたいと思います。  この地震については、四年ほど前から伊豆半島中部で群発地震地殻の異常隆起など各種の地殻の異常活動が認められまして、大きい地震の前ぶれの可能性もあるとして、手持ちの観測計器をほぼ総動員して観測を続けてきたわけです。そういう集中観測を継続していて、実際地震が起こったということで、これまでにないたくさんのデータが得られ、幾つかの前兆現象もとらえられたのですが、なおかつ確定的な判断をしようとするためにはデータの不足を痛感したのが実情でございます。  たとえば、短期的前兆をとらえるのに有効であると思われます地殻ひずみの観測点、そういったものが異常地域にぜひ欲しいと思っておったわけですが、実際は設置することができなかったというような状況にあります。つまり、判断を下すために必要と思われる理想的な観測がなかなか臨機に実施できないという状況にあるのが、現状ではないかと思います。これは経費の問題もありましょうし、また人員も必要とすることで、大きな問題であると思いますが、実際にこれから地震予知を実施していくということになりますと、何とかしていかなければいけないことではないかと思います。その点、中国の取り組み方は非常に積極的でございまして、そういう場合に必要と思われる措置を直ちにとれるようになっていて、大きな成果を上げているようでございます。  以上、観測の充実の重要性について申し上げましたが、次に基礎研究の促進が地震予知の達成のために不可欠であるという点について申し上げたいと思います。  前にも申し上げましたように、地震地殻破壊というきわめて複雑な現象でありまして、前兆のあらわれ方、そのあらわれる程度など、場所により、それから時によって違うわけであります。したがって、観測データの解釈が重要であり、それをうまく生かすことによって、同じデータから大量の重要なインフォメーションを得ることができるのであります。つまり、地震の起こる機構や前兆現象の起こる機構についての実験的、理論的研究によって、観測データの有効な活用が可能となると考えられるのであります。  また、現在地震予知に有効であることがわかっている各種の観測方法が幾つかありますが、さらに別の有効な方法も開発してそれを活用していくという努力が今後も常に続けられなければならないということは申すまでもありません。そのための基礎研究を促進する必要が非常に重要なわけであります。  以上述べましたように、現在までの観測データをもとに大局的な予測をしながら、必要な地域について観測網を充実させていく。観測を充実させますとさせるだけ予知判断精度は間違いなく向上するわけであります。この観測の充実と、ただいま申し上げました基礎研究の促進とが車の両輪として調和を保ちながら、地震予知は推進されていく必要があるというのが、私の考えでございます。  中国地震予知では、これまでややもすると経験則だけに頼ってきたというきらいがあったようでありますが、最近そういう地震発生過程の物理に基礎を置くという基礎研究が重要であるということがやはり認識されてきておりまして、強力にそれが推進され始めたようでございます。こういう考えは、われわれがこれまで一貫して進めてきた考えと同じでありまして、そういう方向に進むのが健全な地震予知計画の進め方ではないかと思います。  以上でございます。
  12. 川崎寛治

    川崎委員長 以上で参考人からの御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  13. 川崎寛治

    川崎委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高鳥修君。
  14. 高鳥修

    ○高鳥委員 宇津先生、茂木先生、大変お忙しいところありがとうございました。  私ども当委員会におきましては、常に大規模地震対策などについて非常に大きな関心を持ちまして、勉強もさせていただいたり、論議もいたしておるところでありますし、先般はまた、地震対策のための予報を出すというようなことにつきましても、法律を制定するというような取り組みもいたしたわけであります。  そこで、まず宇津先生にお伺いをいたしますが、私どもはいつも、気象庁なりあるいは科学技術庁なり、あるいはまた文部省なり、いろいろな担当省を督励いたしまして、地震予知対策について積極的な取り組みをするようにということで進めてまいりました。いま第四次計画ということについてお触れになりましたが、今日までの地震対策の進め方についてはここ数年来画期的に進んだのじゃないかと私ども思いますけれども、どのような評価をしておられるか。それからまた、今後第四次計画を推進するとするならば、先生もこれをぜひしっかりやりたいということでお話がございましたが、どのような点を最も配慮してやるべきなのか、そういう点についてお話しいただけましたらありがたいわけであります。  それから、長期的な予知の問題に関しまして、私どもの承知をいたしております限り、マグニチュード八というような大きな地震があるとすれば東海地域ではないだろうかというような、各種のデータから見て判断がされておるように承っておりますが、関東にはかねてから一定の期間を置いて確実に関東大震災が、マグニチュード七であるかあるいは六・五であるかはともかくといたしまして、相当大きな地震があるという周期説というものを聞かされておるわけであります。この関東における周期説というものについてどのようにお考えになっておられますかという点、以上二点について、まず宇津先生にお伺いをいたしたいと思います。
  15. 宇津徳治

    宇津参考人 現在までの地震予知計画状況でございますけれども、私はかなりよく行われてきたと思っております。ただ、地震現象というのは、大地震は特にまれな現象でございまして、一般にわれわれの仲間のうちでは、内陸の地震では大体マグニチュード七以上ぐらい、それから海の沖合いの地震ではマグニチュード八ぐらいを予知の対象にしようということにしておりますけれども、実は、十三年前に地震予知計画が始まってから、それに該当する地震は一回も起こっていないわけ、です。海の方ですと、十勝沖地震マグニチュード七・九というのが最大でございました。それから陸では、この前の伊豆大島近海の地震が、これはちょうど七ぎりぎりでございますが、陸に近い、完全に陸ではございませんで、震源は海ではございましたが、完全に陸なのは、たしか岐阜県中部地震の六・六というわけです。昭和の前半にはマグニチュード八あるいは七、陸では七以上が非常に頻繁に起こりまして、私の記憶では、たしか死者が何百人あるいは何千人と出た地震が、福井地震以前に昭和になってから八回あったと記憶しておりますけれども、地震予知計画が始まってからは幸いなことに、そういった非常に大きな震災というのはなかったわけでございます。それで思っていたほどデータが集まらない、そういう気味もございますけれども、とにかくわれわれのたとえば研究者あるいは技術者の人数とかいろいろな状況を考えますと、よくやられていたのではないか、やれることはやったのではないか、全般的にはそう思っております。  ただ、もちろん問題がないわけでもございませんで、そういった点は第四次計画をつくるに当たっていろいろ配慮をしてございまして、第四次計画の中にも盛り込んであると思いますけれども、たとえば長期予知のためにぜひ必要な、主として国土地理院によります測量の繰り返しがそれほど予定どおり行われていなかったとか、それから観測施設はかなりできたわけですけれども、それを運営していく人、定員が不足ぎみである。それで観測関係の人は観測データをとるのに忙しくて、それを分析して研究をする余裕が足りなかった傾向があるというようなこととか、若干反省すべき点もございました。そういう点は第四次計画の中に含まれておると思いますが、特に私が申し上げたいのは人材の問題でございまして、関係官庁あるいは大学等の定員をふやすというのは非常にむずかしい問題であろうとは思いますけれども、結局こういった事業をなし遂げるためには人間の力が大切だろうと思います。人材というのは、一挙に定員をふやしたからといってそれで済むわけではございませんで、徐々に時間をかけて養成していかなければならない問題でございますので、そういう点に今後特に配慮していかなければいけないのではないかと思っております。  それから、特に関東地方の大地震の件でございますが、マグニチュード八クラスの巨大地震ですと、歴史的なデータもかなりございまして、大体の見当はつくわけでございます。そういう意味で、大正十二年の関東大震災と同じような地震が関東地方南部に、相模灘でございますけれども、起こるとはほとんどの関係者は考えていないと思います。というのは、まだ五十数年しかたっていないからでございますが、しかしそれよりもマグニチュードが一つ小さい、マグニチュード七クラスになりますと、これはいろいろなところに起こる可能性がございます。たとえば相模湾付近を見ましても、歴史的に見ましても大体七十年くらいの間隔で何回か続けて起こっているような傾向も見えます。以前、河角先生が六十九年周期説というのを出されまして、非常に有名になったわけでございますが、この河角先生の理論そのものに対しては若干の批判がございますけれども、大体七十年といいますか、六十九という数字はともかくとしまして、大きな地震がありましてから五、六十年以上たつと次の地震が起こる可能性が高くなるということは、間違いなく害えるのではないかと思います。  ただ、六十九年プラス・マイナス何年の間に起こる、それを過ぎればまた安心になる、そういう意味に理解すると正しくないのかもしれませんけれども、関東南部に大地震が起こってから数十年経過した現在では警戒をする必要があるということは間違いないことだと思うわけでございます。それで、七クラスの地震に対してもなるべく予知ができるようにいろいろ観測研究を進めていく方針で進んでいると思います。八に比べますと前兆現象のあらわれ方、広がり等がかなり弱くなりますし、たとえば東京周辺のように非常に雑音が多く観測が乱されるようなところでは、前兆現象をとらえにくいというようないろいろな問題がございますので、そういった地震に対して予知観測研究を充実するのも必要でございますけれども、いつ起こるかもしれないという心構えで対策を進めていく必要があるのではないか、そう思っております。  以上でございます。
  16. 高鳥修

    ○高鳥委員 どうもありがとうございました。  もう一点茂木先生にお伺いしたいと思いますが、具体的なお話がございましたが、その中で、東海地域についてはマグニチュード八クラスの地震が起こる可能性があるという御意見、これはわれわれもそういうことで、いわば観測強化地域ということで検討いただいておると理解をいたしておりますが、これは非常に判断しにくいことではありましょうけれども、いまの観測データからいって、長期的にはそういうものがあるということは予測をされるにしましても、先ほど、さらに細密な観測をしなければ時期的に限定していくことは非常にむずかしいというような御趣旨のお話がございましたが、私どもとしては、やはりここしばらくは大丈夫だとかあるいは非常に近づいているとか、その辺によりましてやはり政治的な対処の仕方というものもおのずから違ってくると思うのであります。その辺についてはどのようにお考えになられますかということが一点であります。  それからもう一つ。いま宇津先生からも、東京など大都市においては観測データを得るのにいろいろな現象に非常に妨げられてむずかしいというお話がございましたが、私どもの立場からいたしますと、地震が起きるかどうかということも非常に大きな問題ではありますが、大都市周辺において非常に激烈な地震が起きることが及ぼす副次的な災害というものもわれわれとしては非常に対処をしなければならない重要な問題であるわけであります。そこで特に関東地方、特に東京並びにその周辺五十キロないし百キロ圏内でありますが、その地域における現在の観測状況というものを先生はどのように評価をされておられるかということが一点であります。  それからもう一つ。これは全然違うので大変恐縮なんですが、けさのニュースであったと思いますが、朝鮮半島、韓国で震度四クラスの地震があって、今日まで韓国ではほとんど地震がないということを前提にして建物などほとんど設計されておる、いわゆる耐震設計にはなっていないというようなことから、これは非常に重要な問題だというふうに報道がなされておりました。  そこで、ある地域でいままで地震が全くなかったのに、急にそのようなことで起きやすくなるということがあり得るとお考えになりますか。そういうことだと、韓国のビルはうっかり入れないというようなことにもなりかねないわけでありますが、その辺のことについて、私はテレビの報道で聞いただけでありますが、先生はどのようにお考えになりますか、少しお漏らしいただけたらと、このように思います。
  17. 茂木清夫

    茂木参考人 東海地域につきましては長期的な予測を私どもやっております。その根拠は、一つは、広い意味の地震空白域になっているということです。関東地震が東の方に起こっている。それから西の方は東南海地震が起こっていて、その間があいている。そこで予想される一番大きい地震としてはマグニチュード八ぐらいであろう。あるいはもっと小さいのが起こる可能性は大いにあるわけですが、それが一つの判断するデータでございます。  もう一つは、国土地理院がやっております水準測量、それから三角測量、そういうひずみの蓄積状態が徐々に進行している、明治以来そういう観測がございますが、それが前の安政のときの地震以来継続しているとかなりの量に達しているはずであるということで、非常に要注意の段階にあるということでございます。東海地震がもう近づいているということを示すようなデータは直接はないわけでございます。ただし、しばしば大きい地震の周辺で、そういう大きい地震の前に活動的になるということは、過去の例でございます。そうしますと、大島とか伊豆半島とか、地震活動が近年活発になっておりますので、私どもは、一つの可能性として、それも徴候でないとは言えないという見方をしております。実は、そういう中期の予測は、そういった状況証拠によるものでありまして非常にむずかしいわけです。やはり直前前兆現象を逃さないでつかまえるということ以外には、ちょっとそれ以上この地域について物を言うことは非常にむずかしいのではないかということで、常時監視体制を充実していく、そして二十四時間監視を続けていくということで対処するのがいいのではないかということでございます。それが第一点であります。  第二点の、東京地域の観測体制はどうかということでございますが、先ほど宇津教授からお話がありましたように、東京周辺は、そういう観測という点からは非常にやりにくいところでございます。地震観測するにいたしましても、非常にノイズが高い。それで、そのためには深い井戸を掘って感度を上げた観測をする必要があるわけですが、そのために防災センターが岩槻に井戸を掘って、それから船橋に現在進行中でありますが、こういう観測がぜひ必要だ。これは非常に重要だと思います。そういう計画は現在三カ所ですけれども、私個人の感じでは三カ所では十分ではないので、そういう深井戸観測による精密な観測が大いに充実される必要がある。それに加えて、必ずしも深井戸でなくとも、地表でやれる観測がいろいろございます。そういう点は現在必ずしも十分ではないと思います。それを第四次計画ではかなりの計画がそのために盛り込んでありますので、その両方、深井戸観測それから地表での地震その他ひずみ観測、そういったものを積極的に増強していくということはぜひ必要ではないかというふうに思います。  それから、第三番目の、朝鮮半島でいままで地震がなかったのに急に起こり出したという問題でございますが、これは、おもしろいというと語弊がありますが、私も、これを聞きまして非常に興味を持ったわけですが、実は、朝鮮では一七〇〇年台まで非常に地震があったのでございます。それ以来急になくなりまして、ほとんど有感地震がなかったのですが、最近起こり出したということでございます。その一七〇〇年ごろあったのになくなったというその変わり方が、これは私個人の調べたことでちょっと恐縮でございますが、中国大陸ですが、河北省とか、あそこでの地震活動変化と非常によく対応しているのですね。それから日本の活動ともかなり対応している。と申しますのは、一七〇〇年前後というのは、中国大陸でもマグニチュード八クラスが幾つか集中して起こっています。それから、日本でも宝永の大地震、元禄の大地震という、日本の史上最大の地震が起こった時期でございますが、そのときまで朝鮮では地震が非常にたくさんあったのです。日本から朝鮮、北支にわたる活動が一段落したとたんに朝鮮で活動がばたりとなくなった。最近唐山でマグニチュード八近い地震が起こったり、中国では活発化しているようでありますが、あるいはそれと符合しているのかどうか、朝鮮で起こっているということはこれから注目していった方がいいのじゃないか。そういうことで、非常にタイムスケールの長い活動の変化というのは実際あることでございます。だから、百年間ないからといって地震がないというものではなくて、そういう長い目で見る必要があるというふうに思います。
  18. 高鳥修

    ○高鳥委員 どうもありがとうございました。
  19. 川崎寛治

    川崎委員長 湯山勇君。
  20. 湯山勇

    ○湯山委員 時間の関係もございますので、簡単にお尋ねいたしたいと思います。  お二人の先生はきょうは主として予知の問題についてお話がございましたので、特に予知の問題にしぼってお尋ねいたしたいと思います。と申しますのは、大規模地震対策特別措置法を当委員会において審議いたしましたが、それは主として、予知できて、その予知されたものについて総理大臣が警報を出す、それに対応して各省庁あるいは地方自治体その他のものがどう動くかというようなことが中心でございまして、一番肝心な予知の問題については、予知できるものということが前提になっております。そこで、その当時いろいろお聞きした中では、先ほど茂木先生からございましたように、いやとても予知はできない、この法律にあるような体制がとれるというようなことになるのは今世紀のことじゃなくて、来世紀のことじゃないかというようなことを言われたこともありました。私どもは、昨年の五月ですか、東大の研究所も委員会として見せていただいたのですが、そのときにも、予知ができるのは非常に遠い先のことというようなお話もあって、現在使われているいろいろな機械等も見せていただいたわけですけれども、そこで、いまのお話で、予知というのは確率の問題だというお話、それはよく理解できましたが、予知できる、できないという判断でございますね、一体それはどの程度確率判断できるか、これなら予知できるんだというのは、どの程度確率になった場合が予知できるんだというように、これは学者の先生方それぞれで違っておりますし、行政当局には別な判断があると思いますけれども、お二人の先生はどうお考えになっておられるでしょうか。  それから、宇津先生から、第四次体制の問題もお触れになりましたが、さて、第四次のいまのような予知計画ができたとして、大体これなら予知できるんだろうというようになるのはいまから何年くらい先になるでしょうか。非常に大ざっぱな質問ですけれども、そういう点についてお聞かせいただければ大変ありがたいと思います。  なお、一括してお尋ねいたしたいのは、先ほど来何といってもデータを活用するのは人であるし、ただ、データの処理、観測だけにいまのところでは人手がとられている、それを分析して判断するということができなければ、データが生きて使えない、これはごもっともですし、そうでなければならないと思いますが、そうするために直接研究者を養成していく立場にあるのは大学だと思います。そうすると、先生方の大学あるいは研究所等を通してみて、一体先生方の後継者、それはいまの状態ではだんだん底辺が広がっていっているのか、狭まっていっているのか。将来にわたっておっしゃっているようなそういう研究体制、つまりデータを正確に集める、それを正確に判断するというような体制が一体いまの日本の大学、そのあり方でできるとお考えになっておられるか、どうでしょうか。もしそれについてそれはこういうふうにしなければならないというようなお考えがあればそれもお聞かせいただきたいと思います。  第三番目は、私どもかねがね気象庁なりあるいは文部省、国土地理院あるいは科学技術庁というように地震等に対してのいろいろな研究観測体制というものは必ずしも統合されていないということを指摘もいたしますし、統合しなければならないということを申してまいっております。他の研究機関、気象庁を中心としてその他の研究機関に対して、先生方の目からごらんになって、どこはもっとどうあるべきだ、大蔵省で金を出せというような問題は別として、もう少し御専門の立場から他の研究機関、特に公的なそういう研究を担当しておる役所、そういうものに対しての、こうあるべきだ、こうあってほしいという御意見があればそれをお聞かせいただきたいと思います。  以上三点、お二人の先生からお願いいたしたいと思います。
  21. 宇津徳治

    宇津参考人 最初のは地震予知の確立の問題でございまして、たとえば何%当たるようになったら予知が完成したかというようなことですが、これはなかなか言うのがむずかしい問題でございます。たとえ一〇%しか的中率がなくても予知をしたらいいんではないかという考えも成り立つだろうと思いますし、九割くらい当たらなければ、むやみに予知を出すのは人心を騒がせるだけであるという考えもあるかと思います。結局どの程度確信があったらば予知を発表すべきで、それ以下ではすべきでないという境目は、発表したことによって生ずる利益と、それから発表したのに外れて生ずるいろいろな混乱その他の損害、あるいは発表しないのに突然襲われてしまったための損害、そういうのを勘案して決めなければいけない問題だろうと思うのですけれども、これは非常に複雑な問題でございます。それから人間の心理というものも関係してくると思います。わかっているのに言わないのはまずいという考えもあるわけですね。ですから一つの案としては非常に確かであるとかあるいは半々ぐらいの確率であるとか起こる可能性はそれほど高くはないけれども、少し心配なことがあるといったような確率的な表現をつけた予報の発表ということも考えられるわけでございますけれども、こういうことは非常に社会的な問題がありますので、しかるべき社会心理とかあるいはいろいろな関係の専門家が研究した上で決めるべきことではないかと思います。私ども地震そのものの研究者としましては、ちょっとそこまでのことについて余りうまい言葉が浮かばないわけでございます。  それから、もちろん、いろいろな観測研究を進めていけば平均的に見ましてそういった確率が高くなることは疑う余地もないわけでございますが、これも地震性質によりまして、ある種の地震ですと、たとえばかなり浅い地震前兆現象が非常によくあらわれるということもありますが、深さがたとえば三十キロ、四十キロ、東京の直下あたりにはそういう地震が起こる可能性がなきにしもあらずですが、深くなりますと、被害も小さくなりますが、前兆のあらわれ方も非常にとらえにくくなると思われます。そういったわけで、地震によって、将来非常に進んだとしても予知のしにくい、予知のできない地震は残るだろうと思いますし、これも一概に、たとえば何年たてばマグニチュード七以上は八〇%は当てるようになるということは言いにくい状況でございまして、その辺の数字を言うのはちょっと御勘弁願いたいと思うわけであります。  二番目は、人の問題だったと思いますけれども、私ども大学はそういった研究者の養成を第一の使命としてできておるわけでございます。たとえば、地震関係研究者は、予知計画の始まる前に比べましておそらく二倍あるいはもっとふえたのではないか。というのは、関係官庁あるいは大学のポストがふえまして、そういったところに就職できるようになったわけでございます。たとえば地震学会での研究の数なども十年前に比べれば三倍ぐらいになって、その中には非常にすぐれたものも出てきておるわけでございまして、全般的に見まして大変順調に伸びているという感じはいたしますが、やはり現在をとってみましても、地震学などをやったのでは大学を出ても就職がないんじゃないか。特に基礎的な問題、理論的な問題をやりますと、東京大学では比較的少ないのですが、私の前におりました名古屋大学あるいは北海道大学では、いわゆるオーバードクター、地球物理関係をやっても就職先がないということがそろそろ出かかってきておりまして、せっかく地震学を勉強した優秀な学生が意に反して民間会社に就職して自信を失ってしまうというようなこともたびたびあったわけであります。  そういうわけで、現在のところ、もう少しそういう地震関係のポストをふやしても供給不足になるということはまだございません。これが一遍に五倍も十倍もなればまた問題でございますけれども、現在では問題はないわけでございます。それで地震学研究して災害防止に役立ちたいという学生も、そういう志願者は非常に多いわけでございますので、そういう人たちの人材確保というのも大事な問題だろうと思います。  それから第三番目は、予知計画に関連しまして、大学以外の官庁に対する注文というようなことだったと思いますけれども、地震予知の事業というのは非常に専門の違ったものを組み合わせてやっておりまして、測量というものと地震観測というものは、非常に違った技術でございます。それから最近ですと、化学的なものだとかあるいは地質学というようなものも非常に大きなウエートを占めてまいりまして、違った専門のものの力を合わせてやっているわけでございます。そういった点では、現在までのいろいろな関係機関、官庁間、あるいは大学等の関係というのは、こういった事業としては非常によくいっているのではないかと私ども思っております。  ただ、それぞれの機関に行きますと、たとえば気象庁ですと、気象庁というのは大体天気予報をやるところであって、地震というのはほんの添え物にすぎないという感覚が以前はございまして、恐らく気象庁全体の一%か二%ぐらいしかウエートを占めていなかったと思いますが、最近ではだんだん地震関係も拡張されてまいったようでございますけれども、まだ課が一つか二つあるだけでございまして、部にもなっていないということで、外から見ますと、非常に重要な仕事をやっているわりには苦労しているのではないかと思っております。同じようなことは、たとえば国土地理院もそうでして、国土地理院は地図をつくるのが専門であって、測地学的な地震予知のための測量というのは従の仕事、従来はそうだと思うのですが、あるとき地震予知の仕事に携わって成果を上げたような方が、非常に長い目で見なければいけない仕事であるにもかかわらず、そこを外されて別の部門に行かれるということもありまして、外から見ておりますと、何かもったいないような気がすることもございます。  ほかの官庁についても、やはりそれぞれ地震というのはその官庁の専門ではなくて、わき道のような仕事でありますので、そういった感じはいたしますけれども、といって、これをいま急に、そういった関係者だけを一つに集めて何か官庁をつくったら果たしてうまくいくかどうかということは、これはやってみなければわからないことでございます。非常にむずかしい問題があるのではないかと思っておりまして、いずれはそういった地震に関する専門官庁というのが必要なことは明らかでございますけれども、そういったものは慎重につくるべきではないか、そう感じております。  以上でございます。
  22. 茂木清夫

    茂木参考人 ただいま宇津教授からお話しがありましたのと、私全く同感でありまして、繰り返し述べる必要もないような気がいたします。  最初の問題につきましては、地震はいつごろになったら予知確率が非常に高くなるかということでございますが、これは先ほども申し上げましたように、地殻構造とか、そういうのに非常に関係しておりまして、ある種の地震は非常に予知しやすい、ところがあるところで起こる地震は非常にむずかしい、そういうことがわかってまいっております。それはそういう地域があるようであります。非常に前兆を伴いやすい地域、それから非常にそういうのがかすかにしか出ない地域、そういう地域があるようです。ですから、ある地域では予知確率は急速に高くなる可能性はあるけれども、ある地域で起こる地震はなかなか予知できないということが将来とも続くのではないか。それは中国地震が非常に予知しやすいというようなことを言う方もおられます。そういうことと関連していることだろうと思います。そういう地域性がありまして、そういうことをつかんでいく必要があるということで、全体としてはなかなかお答えしにくいということであります。  それから、そういう地震学地震予知研究する人たちは一体最近ふえているのかという点でございますが、先ほど宇津教授からお話がありましたように、若い元気のいい研究者が近年非常にふえている、この地震予知研究計画が非常にいい刺激になりまして、若い研究者が非常にふえております。東京大学の大学院の人たちが、地球物理の中でいろいろな分野を志望するわけですが、そういう希望者で地震を希望する人が近年非常にふえております。ということで、地震予知地震学が非常に重要であるということがやはり学生にも刺激になって、そういう研究者はふえているので、これは非常に好ましい傾向であるというふうに思っております。現在のところはそういう状況であります。  それから、各官庁の現在の活動状況といいますか、組織についてはどうかということについては、宇津教授からお話がありましたようなことと私全く同感でありまして、やはりもう少し各機関で地震予知を積極的にやるように、組織も人員も大きくなる必要があるのではないかと思います。気象庁もそうですし、それから国土地理院は長期的な地震前兆を担当する重要な機関でありますが、相当じっくり腰を据えてやっていかなければいけない、そういう機関であるわけですが、地震予知を担当する方が非常に頻繁にそのポストがかわるというようなことがあります。そういう点はやはりじっくり腰を据えてやれるような状況になるのが望ましいのではないかというふうに感じております。
  23. 湯山勇

    ○湯山委員 最初の問題は少し質問の方が漠然としておったと思いますが、私の気持ちとしては、大規模地震法律をつくるときに、マグニチュード八以上の地震であれば予知できるということを前提にしてつくられたわけでございました。ですから、現在強化地域でマグニチュード八以上の地震というものについての予知ということを前提としてお答えいただければ、あるいはそれは第四次計画が完成すればできると思うとか、いまの確率の問題はそれぞれ先生方の頭の中におありでしょうから、その数値は抜きにして、先生方が漠然と考えておられる予知、それはマグニチュード八以上という限定かあればできるだろうとお考えになられるかどうだろうかということについて、簡単にひとつお答えいただければと思います。
  24. 宇津徳治

    宇津参考人 東海地域マグニチュード八の地震が起こる場合を考えますと、前兆現象はかなりはっきりと出る可能性が強いのではないかと思われます。したがいまして、たとえば前兆現象が出てすぐ起こってしまうというような非常に時間的な余裕がない場合は除きますと、現在でもかなり予知の成功する可能性は高いと思われますが、もちろん、そういう状況でありますから、何もそういった成果を利用しない方法はないわけでありまして、今回の法律は大変結構なものだと思っております。  何度も申しますように、空振りあるいは見逃しという可能性もありますので、そういうことをなるべく少なくするために観測強化をもちろん続けていかなければいけないわけでございますが、つまり失敗ばかりしていればない方がましでありますが、現在でもそれよりはましな状態にある、そういうふうに思っております。  それから、これは第四次計画が過ぎればますますいい方にいくだろう、ただ第四次だけやればこれですべでオーケーというわけにはいかないと思います。
  25. 川崎寛治

    川崎委員長 広沢直樹君。
  26. 広沢直樹

    ○広沢委員 それでは、両参考人に若干お伺いしたいと思います。  さきの国会で大規模地震対策特別措置法ができましたが、これによりまして観測強化地域、それから特定地域、こういうものを決めて事前に十分な対策を講じておこうということで大きなメリットがあると思いますが、お話がありましたように、やはりこれは予知ということが大前提、これが支えになっております。  そこで、宇津先生は、確率の問題で二通りある、的中率、予知率、どちらも相反している問題であるけれども、二つのことを考えていかなければならないというお話でございました。そこで、これは参考意見ですから率直にお伺いしたいと思うのですが、やはり的中率を中心に考えれば予知率が落ちるし、予知率を中心に考えれば的中率が落ちるというのですが、現在の体制ではどちらにウエートを置いてお考えになっていらっしゃるのか。このどちらにということは、大体予知連、またそれを判断される皆さん方も予知連に入っていらっしゃると伺っておるのですが、それによってその方向というものをはっきりしていかなければ、その点が予知については非常にあいまいになるのじゃないか、こういうふうに考えられますので、ひとつお伺いしておきたいことと、もう一つ、参考意見の中で、予知情報を受ける国民知識の啓蒙が大事だ、これは具体的にはどういう啓蒙をすべきなのか、予知の側に立った皆さん方の御意見をお伺いしておきたいと思います。
  27. 宇津徳治

    宇津参考人 的中率と予知率、つまり空振りと見逃しをどの程度にしたらいいかというのはむずかしい問題でございますが、一方ばかりを特に優先するというわけにはいかないのではないかと思います。というのは、空振りばかりしておれば結局は信用を失いますし、見逃しが多いということはそれだけの損失があるので、適当な空振りもあるけれども、見逃しもなるべく少なくなるようにしたい。予知連絡会などで何か情報を出すのにも、もちろん正式な予知をしているわけではございませんけれども、両方のことを勘案して、その場合場合に応じてこの辺が適切ではないかということを言っているのではないかと思っております。たとえば中国などですと、空振りは一向に心配しないでどんどん予報を出す、むしろその傾向の方が強いわけであります。ただ、野外に避難すればいいという場合でしたならばそれは有効でありますけれども、日本のような非常に複雑な社会ですとなかなか問題がありますので、一概にどちらというわけにもいかないから、両方半々ということになるのではないかと思います。
  28. 広沢直樹

    ○広沢委員 それから茂木先生は、大量のデータ、また観測網の密度を上げるべきだと言われました。これはおっしゃるとおりだろうと思うのですが、観測強化地域あるいは特定観測地域、こういったものはこれからもそういうものを上げることによってどんどん位置的にもわかってくると思うのです。しかし、大震法にあります。判定会から気象庁に入って、気象庁から連絡を受けて総理が警報を出す、こういうところになりますと、いまお話がありました的中率というのですか予知率というのですか、確率の問題、確度の問題が問題になってくるわけですね。したがって、現状であれば警報を出すというところまでの確度で予知体制が十分できているかどうかということが一つ問題だろうと思うのです。先ほど申し上げたように、地域指定やいろいろして事前の準備をするためには、いま言うようなことをやってまいりますと大体見当がついてくると思うのですが、その点は現状ではどういうふうにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  29. 茂木清夫

    茂木参考人 現在特定地域を指定しておりますが、これは過去のデータから、現在起こるとすればこの地域が可能性があるだろうというところを指定しておるわけであります。そういうところでこれから観測を充実していきませんといけないだろうというのが特定地域でございます。今度の法律が適用される地域は一段しぼった、そういう巨大地震が起こるような地域を指定しようということでありますが、これは恐らく東海地域を想定しているわけですが、その地域では現在の観測体制というのはかなり整備されておるわけです。それをこれから充実していけば予知できる可能性は大いにあるだろう、結論だけ申しますとそういうふうな感じを持っております。
  30. 広沢直樹

    ○広沢委員 それから茂木先生は中国の問題を大分例に引かれておりましたので、もう一点お伺いしたいのですが、さきの十月六日の朝のNHKのテレビで、中国地震予知は非常に進んでいるという対談がございました。その中で、大規模地震は九〇%の的中率である、小規模地震は一〇〇%の的中率である、こういう報道がなされておったわけであります。先ほど先生は、中国側は大体経験則に頼り過ぎている、基礎的な研究というものをこれからやっていかなければならないとおっしゃいましたが、これは確かにそうだろうと思うのです。しかし、そういう論理的、科学的ということよりも経験を重んじている中国の方では、むしろ小さい地震の方が一〇〇%当たっているということなのですね。わが国状況を見ましても、何も大規模地震じゃなくても、小規模地震でも、所によっては活断層の問題とかいろいろな問題がございまして大きな被害を出しておるわけです。ですから、予知体制の中で、こういう経験を重んじていくということといまの論理的、科学的な体制を整備するということとが相マッチしていかなければ、先ほどの的中率だ、予知率だということを言ってみましても、これは本当に、正確にこうだということでもうわかるというはっきりしたものがつかめていない以上は、こういった総合体制というものができていかなければならないんじゃないだろうか、そういうふうに感ずるのですけれども、確かに、科学的、論理的データを重んじていかなければならないことは言うまでもありませんが、やはり経験や感じというものですか、そういう総合体制を予知体制の中でどれだけのウエートで考え、どう扱っていくのかということをこの予知の中ではお考えになっていらっしゃるのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  31. 茂木清夫

    茂木参考人 最初にちょっとお断りしますが、中国では大きい地震予知には相当成功しておりますが、小さい地震が一〇〇%だというのは、私ちょっと寡聞にして聞いておりませんので……。大きい地震予知にかなり成功しているということは伺っております。     〔委員長退席、湯山委員長代理着席〕  どうも、伺いますところによりますと、前兆現象のあらわれ方が日本と比べまして非常に大きい、シグナルが大きいように思われます。それで、これは今後の検討課題ですが、先ほど来述べております。日本と比べますと比較的予知のしやすい地域ではないか。  それから、中国では、人海戦術で、観測点、測定点、そういうものが非常にたくさんございます。そういう点では、日本観測点は、先ほどから申し上げておりますように、ちょっと粗過ぎる。そういう点で、観測網の充実が必要であるということを痛感するわけであります。  それから、中国の人たちは幾つかの地震予知には成功したわけですが、たとえば唐山地震という非常に大きい地震予知に失敗しているわけです。そういう教訓から、単なる経験則では非常に大きい過ちを起こすことがあるということで、そういう反省から、そういう基礎研究も非常に重要である。経験則というのは、結局データをたくさん積み重ねてそれを判断するということで、それと、そういうものをうまく解析して、そういう法則性を見出しながらやっていく、これは面々相まって進める必要があるということでございます。
  32. 広沢直樹

    ○広沢委員 時間がありませんので、先ほど宇津先生に質問いたしましたことは、一点は、予知情報を受ける国民知識の啓蒙というのについては、具体的にどういうふうな啓蒙をすべきなのかという御意見、これをちょっと後からお聞かせいただきたいのと、もう一つは、地震予知推進本部が昨年出しましたいろいろなことを書いたパンフレットがございますが、その中で、いま最大の問題になっております。東海地域に大地震可能性があると言われていますが、どういう根拠なんでしょうかという自問自答のあれが出ているのですけれども、それによりますと、この地域では百年から二百年の間隔で地震が繰り返されているということが第一点と、それから、ひずみのエネルギーが残っている、したがって、駿河湾に大地震が起こるのではないかという説と、いや、そのひずみは東南海地震でもうエネルギーは解放になっているので、そういうのは起こらないんじゃないかという説がある。さらに、この状況の中で、先ほどもちょっとお話がございましたが、現在までの観測結果によれば、発生時期を予測できる前兆現象と思われるものは全く見出されていない、こういうことになっております。     〔湯山委員長代理退席、委員長着席〕  やはり空白の問題だとかひずみの進行だという問題はあるのかもわかりませんけれども、この空白の問題を言いますと、先ほども福島沖ですか、これに空白が出てきたという話がまた最近の新聞に載っておりましたが、そうなってまいりますと、このいまの根拠というのがどの程度確率を持って考えられているのかということがちょっと疑問になるものですから、その点、どちらの先生でも結構ですが、お答えいただければと思います。
  33. 宇津徳治

    宇津参考人 さっきの国民の啓蒙の点についてお答えいたします。  たとえば天気予報が、まあ予報当たり外れということがあるわけですけれども、テレビなどを見ますと、毎日毎晩天気図で解説をやっているわけです。低気圧が西から進んできて、こうなって雨が降るというようなこととか、冬は西高東低になるとか、そういった知識は非常に広く国民の間に広がっているだろうと思うわけです。ですから、たとえば外れたとしても、低気圧の位置の動き方がこうなったから外れたのであるとか、ここで突然低気圧が発生して雨が降ったなどということがわかるわけですけれども、地震もやはり、たとえば地震の起こり方とか、各地に起こる地震性質だとか、地震前兆はどういうものがあるとか、そういうのが、たとえば何か異常があっても起こらないこともしばしばあるのであるとか、そういった知識が知れ渡りますと、たとえば予報が、こういった状況であるからいま予報を出したのであるというようなことを説明するときに非常に受け取りやすくなる、あるいは少しむずかしいことを言ってもわかってもらえる、そういうことになるのではないか。現在では、たとえば地震度とマグニチュードの混同が起こって非常に混乱が起こるのだというようなことも、何かこの前の伊豆大島近海地震の後のデマ騒ぎ、パニック騒ぎなどということもありますが、ああいうのも地震現象の本質についてある程度知識があれば防げる可能性があるわけで、そういった意味で、いろんな機会を通じて地震知識の普及をしたらいいのではないか、そう思っているわけです。
  34. 茂木清夫

    茂木参考人 東海沖地震と福島沖地震をどういうふうに考えているかということですが、東海沖につきましては、安政の地震が起こりましてからもう百三十年たっておりますので、陸地に近い、それから非常に人口稠密な地域である、それから測量の結果もゆがみの蓄積を示している、そういう状況がかなりそろっているわけで、これを第一に取り上げるというのは非常に妥当な措置ではないかと思います。  福島沖につきましては、前回起こりましたのが一九三八年でございます。以来四十年経過しておりますが、前回はマグニチュード七・八程度地震が起こっておりますから、起こるとしても、私の感じですが、一段小さい地震ではないかというふうに思っておる。しかし、この前の宮城県沖地震マグニチュード七・四でございますが、あれでああいう被害が起こっておりますので、やはりこれから監視は大いに続けていった方がいいだろうということで、特定地域として監視を続けようということになっている、そういう位置づけでございます。
  35. 広沢直樹

    ○広沢委員 どうもありがとうございました。
  36. 川崎寛治

    川崎委員長 神田厚君。
  37. 神田厚

    ○神田委員 両先生には大変貴重な御意見をありがとうございます。二、三お伺いしたいのでありますが、まず宇津先生に御質問申し上げます。  先ほどほかの委員の方からもお話がありましたが、中国地震予知というものが非常に的中率が高い。それで、中国予知できて、どうして日本予知ができないのだろうか、先ほど茂木先生からちょっと御説明があったようでございますが、この点は、そういう地震性質だけなのか、それとも、そういう一つの予知体制、システムの方に問題はないのか、この辺はどういうふうにお考えでございますか。
  38. 宇津徳治

    宇津参考人 中国予知に何回か成功していることは、これは事実でございますが、同時に大分空振りをやっているらしいということも伝わってきております。  それで中国地震は、私は直接中国へ行ったわけではございませんけれども、いろいろな方からの話を聞きますと、何度も申しますように、前兆が非常にはっきりと広い範囲にわたって出ているので、いわば技術的にやさしいタイプであるということも言えるかと思います。しかし、やはり非常に密な観測と、それからその観測を集めて判断をする能力と、そういった組織がなければもちろん予知はできないわけでありまして、そういった点でよく行われているということは確かでございまして、われわれ見習う必要があろうかと思いますが、現在日本では公式に予報を発表することは、東海地域を除いては行われておりませんので、予知ができない、あるいは当たったとか外れたとかということは余りないわけでございますけれども、将来、観測研究強化とともにそういった組織づくりをしていく必要がある、そういうふうに思います。
  39. 神田厚

    ○神田委員 地震の特徴と同時に組織の問題が非常に大事だと私も思うのですね。それで民間の情報というものが非常に効率的に集められて処理されている、こういうふうな話も聞くわけでありますが、日本の場合、民間のいわゆるそういう情報というものを集めて、そこで判断をするような、受けるところを設けることができるのかどうか、そういうふうなシステムとして、いわゆる情報として非常に価値のあるものになっていくのかどうか、その辺のところをどういうふうにお考えでございますか。
  40. 宇津徳治

    宇津参考人 民間の情報の中には非常に貴重なものがあることは間違いないと思いますが、非常にいろいろな種類のものを含んでおりまして非常に扱い方がむずかしいかと思います。私聞きますところでは、気象庁ではそういった報告があれば整理をして検討しているという話を伺っておるわけでございます。私どものところにもしばしばいろいろな手紙などが舞い込んでくるわけでございますが、何月何日に地震があるというようなことを書いてくる人もございますが、ほとんどは当たらないわけです。たまにそれに近いようなことも数多い中にはあったこともございますけれども、非常に扱い方がむずかしいわけであります。何かうまくそういったデータを組織して、いわば玉石混淆なので、玉だけを捨い出して——しかもその玉と石を見分けるのが非常にむずかしい状況なのです。そういったものは量が現在でも非常に多いわけでありまして、いわゆるアマチュアの人の中には非常にまじめな方もおられますし、中には名前を売るための手段として使っている方もございますので、非常にむずかしいわけでございますけれども、もちろん地元で直接物を観測しているということは非常に大事な情報を提供する機会があり得るわけですから、うまい利用方法を考えていく必要があろうかと思っております。
  41. 神田厚

    ○神田委員 そうしますと、民間というのは非常に玉石混淆でむずかしいという面が多少あるということでありますが、先ほど茂木先生の方からも、マグニチュード七の観測の体制としては少し観測が粗過ぎる、これをもう少しきめ細かいものにしていくというふうなことが話されましたが、私は、これはいろいろなやり方があると思うのでありますが、たとえば各地域に学校がございます。この学校のクラブ活動なり何なりに地震観測というものを一斉にやらせる、それをどこかで統括して全部データを集めていく、こういうふうなことをやれば、その地域としての埋め方というのはできると思うのですね。ただ、それをどういう課題を与えてどういうふうに運営していくかというのは非常にむずかしいと思うのですけれども、私は、これは民間の情報ももちろんとるし、それからそういう学校なら学校のクラブ活動の一環なら一環として、その協力を文部省等に要請をしてうまくやっていく。そのことは同時に地震の一つの啓蒙にも非常に大きな役割りを果たしていくと思うのです。ですから、この辺のところのシステムをうまく使えないかどうか、その辺は茂木先生はどういうふうにお考えでございますか。
  42. 茂木清夫

    茂木参考人 おっしゃることは私もごもっともで、たとえば学校などでそういう地震についての関心を持っていただくということで、一つのいい考えではないかと思います。  ただ、中国でアマチュア、アマチュアと言っておりますが、最近行ってこられた方の話によりますと、どうもいわゆる単なるアマチュアではないのがほとんどらしいんですね。ある役所のそういう技術的な仕事をやっておられる、そういうところに委託してその観測をやっているということで、かなり高度の観測技術を持っている。ただ、地震専門の観測点ではない、そういう点を非常に積極的に利用しているということのようであります。しかも、万一そういうところで何かシグナルがあれば地震観測所と緊密な連絡をとってそれをチェックするというようなこともやっているようでありますので、これは非常にうまい方法ではないか、技術も十分保障されるのではないかと私思いましたので、そういうことができればそういう観測点を充実するという一つの助けになるのではないかと思います。
  43. 神田厚

    ○神田委員 学校は小学校から大学までありまして、それぞれ専門の先生がおられるわけです。地震についてもやはり物理の先生やいろいろおられますから、かなり専門的な知識を持っているわけです。ですからそういうものを一つの観測体系としてうまくシステム化していく方法、特に地震強化地域などではそういうふうなやり方というのは私は非常にこれから考えてやっていかなければならない問題ではないかというふうに考えているわけであります。そういう点につきましては宇津先生はどういうふうなお考えでございますか。
  44. 宇津徳治

    宇津参考人 直接地震研究者ではないけれども、そういった科学的な素養のある方が各地において観測をしていただくということになれば、それから得られるデータというものは非常に信頼があるデータが得られる可能性があるわけでして、非常に役立つことではないかと思うわけです。ですからそういうことを考えてみる必要が大いにある、そう思うわけでございます。
  45. 神田厚

    ○神田委員 いろいろ御質問したいのでありますが、時間もありませんので、最後に一つ都市防災の問題ですが、この地震、いわゆる東海強化地域でもそうでございますけれども、強化地域に指定されているところが現在のような形で都市の膨張が進んで果たして心配ないのだろうかというようなことも私ども大変心配をしているわけであります。  いろいろ問題はたくさんありますけれども、たとえば東京などについての地震の指定地域の問題いろいろありますが、特に決められております東海について、いわゆる非常に危ない状況が出てきているという中で、果たしてあの地域の過密都市というのは現在何ら行政的な指導というものをしなくていいのかどうか、何かいまの段階でしなければならないものがあるのかどうか、その点をお聞かせをいただきたいと思うのですが、茂木先生いかがですか。
  46. 茂木清夫

    茂木参考人 東海地域につきましてはそういう可能性がかなりあるわけですので、やはりそれに対処するような、地震が起こった場合に最大限震災を少なくするような措置がぜひ講ぜられる必要があると思います。先ほど来述べられておりますように、地震予知というのはうまくいくかもしれないけれども失敗する可能性もあるわけでありますから、これに全面的に頼ってほかの手を打たないということは非常にうまくないのです。具体的にどういう対策かということになりますと、私、ちょっとそちらの方の専門でありませんのでいまお答えできませんが、そういうことが起こってもこれに対処できるような対策を図るべきであろう、少なくとも東海地域についてはそう思います。
  47. 神田厚

    ○神田委員 宇津先生、この問題で何か名案ございませんでしょうか。いまの段階で行政的に何かとりあえずやっておかなければいけない、処置しておかなければいけない、そのようなことは何かございますでしょうか。
  48. 宇津徳治

    宇津参考人 関係の地方自治体でも、防災会議その他でいろいろ考えておられることと思いますので、私、ちょっと専門の違う方からそういうことに——特に名案と申しましても、いままでそういった方々が考えも及ばなかったような名案があるわけではございませんで、やはり全般的に震災に対する対策を予算、人員、時間をかけてしていただきたい。予知に余りウエートをかけてそれに頼るという姿勢はとらないでいただきたい、そういうように思うわけでございます。
  49. 神田厚

    ○神田委員 終わります。
  50. 川崎寛治

  51. 山原健二郎

    ○山原委員 きょうはどうも御苦労でございます。  私は、主として茂木先生に対する質問になりそうですか、先生は中央防災会議地震防災対策強化地域指定関係専門委員会委員をされております。  それでお伺いしたいのですが、大規模地震対策法に基づく強化地域の指定の要件をどのようにお考えになっておるかということでございます。それと同時に、対象地域を専門家としてどういうふうにお考えになっておるか、この二つを最初にお伺いします。
  52. 茂木清夫

    茂木参考人 一つは、現時点で指定するわけでありますから、現在のわれわれの予知技術でかなりのことが言えるということが前提だろうと思うのです。それで、現在われわれが行っております観測密度、それから観測精度、そういったことから考えまして、マグニチュード八クラスの地震ならばかなりの確度で言えるのではないかということで、少なくとも現時点ではマグニチュード八クラスの地震を対象にする。しかし、これは観測密度観測精度あるいは方法の開発、そういうことが進むにつれまして予知の確度が進むことになりますから、もちろん次第にマグニチュードのリミットを下げていくという方向に進むべきだろうと思いますが、現時点ではマグニチュード八クラスということが一つの要件と考えております。  それから、地域の指定を空間的にどういうふうにやるかということでございます。私ども余り情報を持っていないわけですが、これを判断するのは、一つは、これまで地震が起こっていない地域がしばしば次の大地震が起こる地域であるという過去の経験がございますので、これまで起こった地震はどこまで起こっているか、残っているところはどこかということ。それから、地殻ひずみの蓄積を示す地殻変動の範囲はどの範囲であるかということが一つ。それから、過去にそこで起こった大地震は一体どういう地域に起こっているか、震源域はどういうふうに延びているか。その三つくらいを土台にして次の地震としてはこの範囲を考えたらいいのではないか、基本的にはそういう考えで作業を進めることになるのではないか、こう思います。
  53. 山原健二郎

    ○山原委員 かなりのことが言い得る観測体制というお話でございますが、たとえば今回の宮城県沖地震の場合を含めまして、そのような観測体制はどういうふうになっておるのかということが一つ。  もう一つは、先生が十月十一日に名古屋における地震学会で発表されましたいわゆる地震空白域の問題でありますが、長期予知の立場から福島沖が要注意というふうな御発表をなされておるわけです。この点につきまして、私は四国でございますが、振り返ってみますと昭和二十一年に南海地震が起こりまして、私の県だけでもあのときに七百名の犠牲者が出ております。大変な地震であったわけですが、あれからもうすでに三十年経過しておるわけですね。そういった点から、これらの地域に対する研究体制はどうなっているのであろうか、考えてみると決して安全なところとは言えないと思います。そういう点から考えまして、今回の先生の地震空白域の御発表との関係においてどういうふうに判断したらいいかということですが、その点はいかがでしょうか。
  54. 茂木清夫

    茂木参考人 第一番に、宮城県沖に地震が起こったわけですが、そこでの監視体制はどうであったかと申しますと、震源は海であったわけですが、残念ながら現在そういう海底に起こる地震についての監視体制は非常に不十分でございます。陸地の方は東北大学の観測網がございますが、海の沖合いに起こる地震については現在非常に大ざっぱなそういう空白域がある。そういう空白域がありますとそこで地震が起こるという法則性のようなものがございますので、そういうところは次の地震の起こる可能性のある地域として一応言えるわけですけれども、そういう直前予知をするような体制にはとてもないわけでございます。東海についてはそれでは困るというので、気象庁で海底地震計を沖の方に延ばして、そして観測を開始したというのが現状でございます。したがって、将来、海の地震といえども陸にかなりの被害を及ぼす可能性があるわけですから、海底の地震監視体制を強めるということはこれからの一つの大きな課題であろうと思います。  それから福島沖につきましては、二つの点から注意した方がいいだろうと申し上げたわけですが、一つは、日本海溝沿いのあの辺の地震は、北で地震が起こると次はその南に起こる、また南に起こるというそういう癖がございます。宮城県沖にマグニチュード七・四という地震が起こりましたので、それで、南の方はそういう意味で警戒すべき地域であるというふうに考えられるわけですが、同時にそういう空白域、地震活動が異常に低いという空白域があるということが認められましたので、そういう要件がそろっているということで監視を、まあこれは陸からの監視ということになりますけれども、できるだけの監視をやった方がいいだろうということで、特定地域に指定して観測強化しょうということになったわけでございます。  四国につきましては、あの辺の地震は過去大体百年ごとくらいに繰り返して起こっておるわけでありますので、そういう意味では南海道地震が起こりましてからまだそれほどたっていないということで、非常に近い将来また南海道地震のような大きい地震が起こるだろうというふうには考えておらないわけです。ただし、あそこでは、そういう百年ごとに非常に規則的に起こる癖がありますので、いまから準備してあそこの監視を進めるべきであるということは私どもも考えております。ある程度観測網は整備してあるわけでございます。  以上であります。
  55. 山原健二郎

    ○山原委員 どうもありがとうございました。
  56. 川崎寛治

    川崎委員長 永原稔君。
  57. 永原稔

    ○永原委員 大分時間が過ぎましたので、簡単に  一、二点伺いたいと思います。  先ほど茂木先生のお話を承っておりまして、予備的破壊と主破壊の問題それから中国における経験依存のいろいろな測量、こういうようなことについてもう少し基礎的な研究が必要だというお話も承りながら、笠原先生の文章を思い出しました。あの中で、予知の着眼点として、第一は地殻のひずみの状態が限界にあるかどうかを知る、これが一つの着眼点であり、第二は主破壊に先行する異常現象を捕捉する、これが第二の着眼点だ。いわば第一の方は状況証拠を推測するというようなもので、どこでどのようなという定量的なものについてはある程度判断ができるだろう、しかし、いつというような時期については定性的なあるいは長期的な予知の域を出ないというようなお話が出ておりました。第二の主破壊に先行する異常現象を捕捉する、こういうような中で短期の予測ということを言われているのですけれども、東海地域は第一の状況証拠に基づく地域指定である、こういうように考えていいでしょうか、それとも予備的な破壊がすでに部分的には起こっている地域、こういうような見方をしていいでしょうか、どちらでしょうか。
  58. 茂木清夫

    茂木参考人 結論を申しますと、もちろん主破壊直前のそういう前兆観測されていない段階でございます。その限界ひずみに着目して、地震の起こるのがどの程度近いかということを予測するという方法は長期的な予測に私ども利用しているわけですが、かなり限界ひずみというものはばらつきがございます。したがって、長期予測のための一つの目安である。そのほかに地震活動とか、それから前の地震が起こってから何年たっているとか、そういうものを総合して長期的な予測をしようというわけでございます。現在東海地域を指定しているのは、そういうのを総合して観測強化地域に指定しているというのが現状でございます。
  59. 永原稔

    ○永原委員 たとえば東海地域については、この八月に起こってもおかしくないような状況にすでになっているのだというようなお話もこの前伺ったのですけれども、それほどエネルギーがたまっているとすれば、予備的現象というのは何か起こるのじゃないでしょうか。
  60. 茂木清夫

    茂木参考人 限界ひずみとか地震活動のパターンとか、そういう長期的な情報からは、八月に起こっても不思議はないということは言えるでしょうけれども、起こってもいいはずだというようなことは言えないんですね。それほどの時間的な確度はとてもないので、この地域は起こる資格がある、それくらいの感じでございます。  そういう直接の前ぶれがいつごろ起こるかということにつきましては、非常にデータが少ないですね。短期的な前ぶれについてのデータは非常に少ないのですが、むしろ直前の非常に差し迫った前ぶれということについては、ある程度データがあるわけでございます。したがって、きょうないからといって非常に先であるということにはならない。急にそういう前兆があらわれ出して破壊が起こるということも十分あり得るので、やはり二十四時間監視によってそれをつかまえるということになるのだろうと思います。
  61. 永原稔

    ○永原委員 いろいろデータお話が出ましたけれども、土地の異常隆起の統計、これは去年ですかおととしですかの予知シンポジウムで出ていたと思いますが、過去五十年、水準測量によって前兆と見られる隆起が九回あったというように聞いております。その間に被害地震が七十回、異常降起が先行した例は被害地震の一二、三%であった、こういうように聞いております。また本震が起こる前の前震、これは有力な予知の手がかりでしょうけれども、海城地震のときは予知が当たっている。これは前震状況がいろいろ詳しく調べられていた中ではっきりできたのでしょうけれども、中国地震考察団の資料によりますと、前震を伴う地震予知すべき地震の一割ないし二割、こういうのが資料から読み取れる、こういうように聞いているのですが、そういう前兆の出現率というのは、そうしますと、いずれにしても一割ないし二割。これは中規模のものが入っているでしょうから、大規模になればあるいはもう少し確率が高まるかもしれませんけれども、その程度の出現率というようにとらえられているように思いますけれども、いかがでしょうか。この出現率はもう少しはっきり高まっていく可能性があるのかどうか、その辺について承りたいと思います。
  62. 茂木清夫

    茂木参考人 前震につきましては、確かに日本データでも、前震を伴う地震は全体の何%というデータでございます。ただし、これは観測感度の低いときのデータですので、最近の高感度の観測網での観測によればもう少しふえるだろうと思いますが、いずれにせよ全部の地震が前震を伴うということはありません。非常に感度のいい観測をやったにもかかわらず全く前震がなかったという地震はたくさんございます。したがって、前震だけから地震予知することはもちろんできないわけで、歩どまりがかなり悪いことは確かでございます。  それから、地殻変動についても恐らく同じようなことが言えるのではないか。地殻変動については、検討の仕方がいろいろむずかしいのです。陸地での地震だけを対象にしているわけですが、陸地ではそれほど大きい地震は頻繁に起こっておりませんので、データはかなり小さいものを含んでいるということで、そのパーセントはそういう目で見ないといけない。もし非常に高密度でひずみ計のようなものを置いていたらもっと出ているかもしれません。しかし、そういうことを総合しても、場所によっては非常に出にくいところがあるのではないか、ある場所ではかなり出るのではないかと思われます。そういう地域性が非常に顕著ではないか。  ただ、非常に大きい地震については、いろいろな状況証拠、それからいま問題になっております東海地震、来るとすれば東海、それと一番似ている地震だと思われる東南海、南海、この両地震の前には、明らかに地面が変動したというデータがあるわけでございます。したがって、そういう巨大地震地殻で起これば、地殻変動の異常が恐らくとらえられるであろうというふうに私ども考えております。
  63. 永原稔

    ○永原委員 終わります。  どうもありがとうございました。
  64. 川崎寛治

    川崎委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人の方々には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。      ————◇—————
  65. 川崎寛治

    川崎委員長 この際、地震対策強化に関する件について決議をいたしたいと存じます。  本件に関しては、先般来、各党の理事間におきまして御検討願っておりましたが、その協議が調い、案文がまとまりました。  便宜、委員長から案文を朗読いたし、その趣旨の説明にかえたいと存じます。     地震対策強化に関する件(案)   我が国における最近の地震による被害は、都市化の進展による過度の人口集中、危険物の増加等によりますます広汎なものとなり、国民生活等にも甚大な支障をもたらす傾向にある。   よって、政府は、これら地震災害を防止し、軽減するために、早急に次の諸点について適切な措置を講じ、地震対策強化を図るべきである。  一、地震予知のための常時観測の実施、測量の強化、各種データの集中管理をはじめとし、地震に関する研究観測を総合的かつ計画的に推進するため、必要な予算及び人員の拡充強化を図るとともに、震災対策の強力な推進を図るため、地震防災に関する総合的かつ機能的な行政組織の強化を行うこと。  二、大都市地域における建築物の不燃、耐震化、避難地、避難路の整備等各種防災緊急事業の計画的推進を図るため、特別な税財政上の措置を講ずること。  三、地震時における危険物の安全の確保、危険箇所の整備、電力、ガス、水道等生活維持施設の安全性の強化等総合的な震災対策の強力な推進を図ること。  四、地震による個人財産の被害の救済を図るため、地震保険制度の充実と早期改善に特段の配慮を行うこと。 右決議する。 以上でございます。  お諮りいたします。  ただいま読み上げました案文を本委員会の決議とするに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 川崎寛治

    川崎委員長 御異議なしと認めます。よって、本件は本委員会の決議とすることに決しました。  この際、本決議に対し、政府より所信を求めます。櫻内国土庁長官
  67. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 わが国世界でも有数の地震国であり、本年に入りましても、一月に伊豆大島近海の地震、六月に宮城県沖地震と、二度にわたり相当な被害を伴う地震に見舞われております。このため、地震対策の確立は緊急の課題であり、政府としても大規模地震対策特別措置法の制定等を初めとし、鋭意その推進に努めてきたところであります。  ただいまの御決議につきましては、関係省庁ともどもその趣旨を尊重し、今後とも地震対策強化充実に最善の努力を尽くしてまいる所存であります。
  68. 川崎寛治

    川崎委員長 ただいまの決議について、議長に対する報告及び関係当局への参考送付等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  69. 川崎寛治

    川崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう取り計らいます。      ————◇—————
  70. 川崎寛治

    川崎委員長 この際、御報告申し上げます。  本委員会参考のため送付されました陳情書は、宮城県沖地震に伴う被害対策に関する陳情書外二件であります。念のため御報告申し上げます。      ————◇—————
  71. 川崎寛治

    川崎委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。  災害対策に関する件について、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  72. 川崎寛治

    川崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会中審査委員会において、参考人出席を求め、意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人出席を求めることとし、その人選及び出席日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 川崎寛治

    川崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、閉会中の委員派遣に関する件についてお諮りいたします。  閉会中審査案件が付託になり、審査のため委員派遣の必要が生じました場合には、議長に対し、委員派遣の承認申請をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 川崎寛治

    川崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、派遣委員の氏名、人数、派遣地、期間、その他所要の手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  75. 川崎寛治

    川崎委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  この際、暫時休憩いたします。     午後零時五十分休憩      ————◇—————     午後一時五十二分開議
  76. 川崎寛治

    川崎委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  災害対策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。新盛辰雄君。
  77. 新盛辰雄

    新盛委員 活動火山対策特別措置法の成立に基づいて、国土庁を初め関係各省において前向きの姿勢でお取り組みをいただいていることに対して冒頭感謝申し上げます。特に桜島火山活動に関する諸問題で、時間が三十分しかありませんから締めくくりというか、いままで議論されておりました問題について整理をしながら確認をしてまいりたいと思います。  まず、火山活動による降灰量の観測を今後どのようにしていくかという関係であります。  大規模な、また大変多量に降る灰の観測が、現在のところ鹿児島の中央測候所を中心にして行われているわけでありますが、この観測体制の整備ということがきわめて重要になってきているわけであります。各市町村の段階でそれぞれ自主的に観測をしておられるわけでありますが、この桜島降灰量がそれぞれの地域にわたって、また指定をされている地域を主点にして観測がされております。しかし、これはそれぞれの降灰量のとり方によっては非常にまちまちになっているんじゃないか。特に降灰の基準をどの点に引くかということによっては、道路の降灰除去の作業を行うにしても基準を一応一定的に決めてあるわけですが、この降灰がたとえば桜島町を例にとって申し上げますと、一平米当たり四万九千八百九十一グラム、こうしたデータが出てくるし、あるいは同じ関連の鹿児島市の段階におきましては、最近特にひどかった吉野台地でありますが、ここで一万九千七百十二グラム、こういうぐあいで、確かに相当な差は出てくるわけでありますが、あるいは風向きによって変わりは出てくるわけです。しかしながら、そうした観測状況が一カ所の中央測候所を中心にして行われておって観測体制という面から見ますと非常に脆弱ではないか、したがって、広域的かつ正確な観測体制の確立のために、少なくともこのほかに鹿児島市やあるいは垂水市、桜島町などに観測地点を設けてそこに体制を配備するということはできないものかどうか、この件について気象庁として今後どういうふうに対処されるのか、ただ単に市町村の火山対策委員会とか、あるいはそれぞれの機関にお任せすることのみで事足りると思っておられるのか、そのことについてお聞かせをいただきたいと思います。
  78. 末広重二

    ○末広説明員 御説明申し上げます。  降灰公開観測につきましては、私どもではただいま御指摘の鹿児島地方気象台において昭和三十年以来の観測を継続しております。一方、ここ二、三年の桜島の活動度の高まりを契機といたしまして、鹿児島県及び建設省等で桜島周辺約五十点において公開観測がすでに実施されております。  ただいま新盛先生御指摘の、果してその観測値が正確であるかどうかということでございますけれども、これは御指摘のとおり風向き等によって場所で非常に違うということは、これは自然現象としてやむを得ないことでございまして、問題は、はかり方がきちっと統一されているかどうかということでございます。  それで、公開観測そのものはそうむずかしいことではございませんので、お互いに方法さえきちっと約束をして決めておけば、そこから上がってきました観測値は均質なものが得られるということは、これは容易でございますので、鹿児島県には防災対策協議会という大変強力な機関がございまして、歴史的にも長く活躍しておられますので、この場を通じまして、こういうふうに観測をしますという方法をきちっと決めまして、五十点でやっておりますので、ここから上がってまいります資料は信頼に足るものである。それからまた、数も五十点ございますので、現時点では一応の防災に結びつく資料が得られる、こう考えております。
  79. 新盛辰雄

    新盛委員 今後ともこのはかり方の統一というような形で積極的な指導をお願いをしたいと思います。  次に、防災対策の推進強化についてお尋ねをします。  もうすでに今日まで、五十三年から五十五年度まで三カ年計画として四十三億程度の処置をされておられるわけでありますが、活動火山周辺地域防災営農施設整備計画、これを新たに九市町を加えて、現在は五市三十八町、対象範囲の地域指定は、これからまた風向きによってあるいは拡大をしていくということになりましょうが、これは県なりそれぞれの地域からの要請に従って地域指定は図らなければならないことになるかと思います。  その中で特に問題になりますのは、もう前々からも議論がされているわけでありますが、果樹共済制度のあり方です。特に収穫量における基準収穫量の特例として一応方向づけをされながら、五年の範囲の中で三年以上か以下かという問題の標準数量の取り扱いについて、前回もこの委員会でいろいろ議論があったわけですが、その後検討されていると思われますので、この見直し、検討の経過をお聞かせをいただきたいと思います。  それと、この防災営農整備計画の中で、ミカンとかビワとか、こうした果樹にわたるいわゆる降灰防除のために硬質のビニールをかぶせるというような措置を今後おとりになるようでありますが、園芸共済を今度新しくつくったわけですけれども、施設的なもの、いわゆる覆いをかぶせるということも大変でしょうが、もっと一考を要する面があるんじゃないかと思います。その面のこの五十三年から五十五年までの間における実施計画の中における今後のそうした施策について、どういうふうにされていくのかをお聞かせをいただきたいと思います。  そして三つ目に、いま申し上げました各種の整備計画に伴って、この鹿児島の五市三十八町の耕地面積は七万四千九十八ヘクタールで、果樹が二千六百八十三ヘクタール、お茶が三千四百四十六ヘクタール、こういう状況の中にあるわけでありますが、五十四年度の予算編成期にも来ているわけですけれども、全体的にいまのような予算措置、補助政策によって可能であるのかどうか。これは県の方から要請がなければその取り扱いはなかなかむずかしいという一面もありましょうが、現実の桜島における降灰状況が、各種作物にもはや壊滅的と言われる影響を与えているときだけに、それらの資金計画について、これからの将来の展望も含めて、これは農林省なりあるいは大蔵省の段階においてもぜひひとつお答えをいただきたい。  以上三つを続けてお願いします。
  80. 佐々木富二

    ○佐々木政府委員 お答えいたします。  第一点の果樹共済の基準収獲量の見直しの問題でございますが、これにつきましては、先般も当委員会でお答えをいたしましたように、現在は過去五年の中の中庸三カ年の単純平均を基礎にするということにいたしておるわけでございますけれども、これにつきまして、たとえば異常被害年次を除いた最近五カ年中中庸三カ年の単純平均を基礎とするというような方法によりまして若干の改善を見ることができるのではないかというふうに考えまして、鹿児島県と具体的に協議、検討をしたいというふうに考えておるわけでございます。基準収獲量の設定につきまして鹿児島県と具体的な協議、検討に入りますのは、本年産の温州ミカンの収穫量の実績が来年の二月ごろには取りまとめられる予定になっておりますので、本年度末を目途に結論を出しまして、昭和五十四年度の引き受けに支障のないように取り運びたいというように考えているところでございます。  それから、第二点の防災営農計画の問題でございますけれども、御承知のように五十三年度から新しく五十五年度を目標とする防災営農整備計画ができたわけでございますけれども、特にミカンの対策につきましては、樹体保護のために土壌の酸度調整の事業を実施するほか、比較的降灰に強いビワへの自主転換を行う。それからさらに、これは新しい問題でございますけれども、新たにミカンの降灰被害に対する簡易ビニール被覆施設の整備事業も行う。この事業につきましては、本年度実証試験というのを実施しておりまして、その結果を勘案しまして来年度から本格的に実施するということにいたしたいというふうに考えておるわけでございます。こういった施策によりまして果樹農家の降灰被害の軽減防止に努めていきたいというふうに考えている次第でございます。  それから第三点は、計画の予算上の問題であったというふうに存じますけれども、本年六月に策定されました防災営農施設整備計画によりますと、全体計画が四十三億七千四百三十八万五千円、こういうことでございまして、これを五十三年度から五十五年度まで三カ年間で達成をしていくということでございます。従来の計画に比べますと、単年度当たりの事業費も相当大幅に増額を見ておりますし、さしあたってはこの防災営農計画が期限の五十五年度までに完全に達成できますように予算の編成その他の面で努力をしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  81. 新盛辰雄

    新盛委員 努力は認めますが、活動火山周辺の地域防災営農対策、あるいは畑作振興、深層地下水の調査、あるいは団体営土地改良、あるいは今後の問題として桜島火山降灰被害の恒久的な対策関係する研究をしていくという、こうした面では新しい課題も地域の方では提起されているわけです。そうした面を含めてそれぞれ予算要求が出されているでしょうけれども、本年度から五十五年度までの四十三億七千四百三十八万、国が二十一億八千六百六十九万、県が十億一千九百五十一万というような形の中だけでこの防災営農という関係を処置されないで、五十四年度の段階でも新しい研究のいわゆる恒久的な対策という関係を含めて今後御配慮していただきますようお願いします。  さらに、降灰被害調査をおやりになっていると思いますが、わせ温州とか普通温州とか普通ナツミカン、ポンカンとかアマナツとか雑柑、小ミカン、あるいはビワ、これは特に桜島町ですね、こういう中でことしの九月現在の被害数量は一万二千七百二十トンの被害です。金にして十億二千百三十六万というふうに地元では計算をしているわけであります。こういう状況でありますし、一平米当たりのこの地域における四万九千八百九十一グラムの降灰量という状況ですから、きわめてその被害度というのは高くなっているという面からも、一段のひとつ御努力をいただきたいと思います。  そこで、時間がどんどんたちますので、砂防、治山事業の関係についてお聞きしますが、林野庁や建設省、それぞれに関係があると思います。いま計画をされている内容をお聞きしましても、現地の野尻川周辺の砂防工事、土石流によって毎年決壊をするという状況がいままであったわけであります。こういうように、いわゆる導流堤などをおつくりになって例の雨季に備えるということでありますが、現実的にはどうもつくっては流され、つくっては流されるというような状況がいままであったわけですから、もっと強力なものをおつくりになる必要があるのではないか。主として予算枠の拡大、そして今日の現状はどうなっているのか。また、今後これらに対しての対策を砂防の方ではどういうふうにお考えになっているか。さらに、治山の関係におきましても、降灰によって相当山も荒れておりますし、あるいはまたそのことによって樹木に与える被害も大きいわけでありますが、それらのいわゆる森林保護という面にわたる段階におきましても治山事業体制として林野庁でもいろいろお取り組みをいただいていると思いますが、現実の問題としてこれらの諸工事にわたる予算あるいはそれに対するこれからの拡充強化ということについてどのようにされるのかという面をお聞かせいただきたいと思います。
  82. 小藪隆之

    ○小藪説明員 桜島の砂防事業につきましては、昭和二十一年度から鹿児島県におきまして補助事業として長谷川等の十河川に実施してまいったわけでございますが、被害の激甚性にかんがみまして、昭和五十一年度から野尻川ほか七河川につきまして直轄施工区域として土石流対策に積極的に取り組んでまいったわけでございます。  今後建設省といたしましては、桜島につきましては治水五カ年計画の中でさらに積極的に事業を実施し、活火山地域における土石流対策として砂防ダム、流路工あるいは導流堤を設置いたしまして、重点的に整備を図る所存でございます。  特に御指摘の野尻川等の砂防工事につきましては、昭和五十年までに砂防ダム七基、床固め二基、流路工及び導流堤等を設置しておるわけでございまして、土石流災害に対処するため直轄事業として取り上げ、既設砂防ダムの増補強を行いまして土石流災害の防止を図るとともに、流路工の改修、土石流のはんらん防止に努めておるところでございます。野尻川は御承知のように上流部では桜島の噴火による降灰、噴石の落下がありまして、下流部では頻発する土石流の危険性がありまして、工事の実施に際しましてはかなりむずかしい面もございますが、今後は砂防ダム等の設置、流路工の改修等を進めて土石流災害の防止に努める所存でございます。
  83. 佐々木富二

    ○佐々木政府委員 桜島の治山事業についてのお尋ねでございますけれども、治山事業につきましては、桜島では昭和三十年ころから着手をいたしまして、その後拡充強化を図ってまいっておるところでございます。  最近の火山活動は昭和四十七年から次第に活発になりまして、地震や降灰の堆積、噴石等によりまして山容が変貌するほどの状態になり、山地災害発生する危険性が非常に高くなっております。このために桜島地区を昭和五十一年度から国の直轄治山事業で実施することにいたしまして、現在では直轄地区の中でも最も重要な地区の一つとして積極的に事業を実施しているところでございます。  この地区におきます四十六年から五十年度までの五年間の年平均事業実施額は平均して八千六百万円でございますが、国が直轄事業として実施することになりました昭和五十一年度は四億一千八百万円、五十二年度は八億百万円、五十三年度は八億九千四百万というぐあいにその事業費は大幅な伸びを示しておるところでございます。  今後につきましては、第五次の治山事業五カ年計画によりまして緊急かつ計画的に事業を実施し、二次災害の防止に万全を期するように対処してまいりたいと考えておるところでございます。
  84. 新盛辰雄

    新盛委員 時間があと六分しかありませんから、続けてあとの部分についてそれぞれの関係者からお答えいただきたいと思います。  避難施設についてでありますが、計画によりますと——計画になっているのかどうかわかりませんが、これは運輸省関係で避難港四カ所あるいは消防庁が管理する退避舎四カ所あるいはこれも同じ消防庁になりますか、退避ごう三カ所あるいは建設省の避難道、こうした事業計画等も今後策定されていかれると思いますが、こうした場合の避難ということについて、これは地震の場合でも予測せざる場合における取り扱いとしては当然消防庁としても万全を期していかなければならないし、この救助対策について、消防体制として現地に消防分署があるわけですけれども、そうした面の救助対策という面についてどういうふうな体制をとっておられるかをお聞かせいただきたいと思います。  次には降灰と税金の関係でありますが、これも何遍となく議論されました。  個人の住宅に降っている灰は、降灰除去として個人が家の外に持ち出して、それを除去作業によって持っていくという形をとっているわけでありますが、最近ではといに詰まった灰を落とすための商売ができております。一平米大体平均二千円程度、学生がアルバイトをやっているというふうに聞いているのでありますが、個人の負担もばかにならないというので、この補償措置を何とか考えてほしいという声も強まってきております。これでなければ降灰に対して政府が本当に身をもってやってくれたとは考えられないというのは当然のことでありまして、このことについてどうお考えになっているか。  こうしたことなどを含めて減額方式による税の申告制で、いわゆる雑損控除という形でお取り扱いを行政指導としてしておられます。それは店舗や事務所、工場あるいは降灰に伴い雨戸や空調施設がだめになったら減価償却資産が傷んだための廃棄処分の申告制、あるいはこの耐用年数をおおむね一割以上引き上げるとか云々と、いろいろな取り扱い、減価償却資産の耐用年数短縮の承認申請書を出せばいいというような、いわゆる減税申告によって減額方式でお取り扱いされておるようでありますが、これはそういうふうなことをされてもばらつきが出て、知らない者は損をするというようなことも生まれる。雑損控除的な申告制ではなくて、少なくとも一定額を、所得税からの減免を図るべきじゃないかということを考えるのでございますが、これは大蔵省にぜひお聞かせをいただきたいと思います。  それと厚生省の関係で、実は南日本新聞社会部が編成しました「火山灰に生きる」というこの本は、関係者はお読みになっていると思います。今日の降灰状況、そのことがよくとらえられておるわけでありますが、特に「健康への不安」、健康調査について実はさきのこの委員会での質問でわが党が調査団を送り出して、その団長柴田さんの方から質問があった際に、国が二百万円、県が二百七十六万円ぐらいで、研究費であるのか本当の健康管理のための調査費になっているのかどうか知りませんが、話にもならない金額で、これで、どういう調査をされていたのか、そしてまた結果はどうだったのか。最近現地でその健康診断が行われているわけです。そのことについても、出かせぎが多くて本当の実態がつかめない、あるいは昼間ほとんど鹿児島の方に出ていて御主人はいない、あと残った老人とか奥さんたちが中心になるというふうなことでありました。職場でも健診をしなければならない状況が生まれているのではないかと思うのです。  この「健康への不安」で、阿蘇も火山帯でありますが、昔から火山灰が多年にわたって降っている個所では、風土病的に骨腐り病とか、これは火山性の地帯で起こると言われているのですが、これが起こっていて、あのイタイイタイ病みたいなもので、こうしたような状況やけい肺、そうして目に来る関係、目までやられるというような状況で、こういうふうに書いてあります。「桜島の降灰が引き金になって、ゼンソク発作を起こすことは十分考えられる。だれでもというわけではないが、アレルギー体質の人にとくにその心配が強い。したがって体質的改善はもちろんだが、できれば降灰の少ない所へ転地療養するのが一番。」もう逃げ出せ、こういうふうに公害衛生研究所の橋口所長も言っているわけでありますが、この状況等をとらえて、厚生省は健康管理の面でどのように取り扱っておられるか。また、最近の桜島における現地調査の結果についてお知らせをいただきたい。以上立て続けに申し上げましたが、そのお答えをぜひひとつ正確にお願いしたいと思います。
  85. 千葉武

    ○千葉説明員 お答え申し上げます。  まず最初に、桜島周辺におきます防災体制の問題についてでございますが、消防庁といたしましては、さきの通常国会で改正されました活動火山対策特別措置法に基づきまして、さらに万全な防災体制をしくよう関係地方団体に対して指導したところでありますが、御指摘の救急体制を含めました警戒避難体制、あるいはそれの前提になります火山現象に関する情報の伝達体制、こういうものについて特に整備を行うよう指導をしたところでございます。現在、地元におきましては、こういった考え方に基づきまして防災計画の見直しをやっているところでございます。  また、御指摘ございました避難施設の整備の関係でございますが、現在まで退避ごう二十九カ所、退避舎十六カ所など、避難施設の整備を行ってきたわけでございますが、五十四年度におきましても、退避ごう三カ所、退避舎四カ所の整備を計画しているようでございます。私どもといたしましては、こうした地元の計画あるいは要望に基づきまして十分な協力をいたしたい、このように考えております。
  86. 水野勝

    ○水野説明員 お答え申し上げます。  御承知のように、家屋、家財といったものに損害がございましたときには、先生御指摘の雑損控除の適用があるわけでございまして、そういった制度がありますことにつきましては、税務当局といたしましてもいろいろな機会にPRをして、知らない方が損をなさることのないようには努力をいたしておるところでございます。  それから、個別的な申請でなくて一律にという先生のお話でございますが、やはり損害につきましては、それぞれの方それぞれの損害の状況があるわけでございますので、個別的に申告をお待ちして、それによりまして税務署の方で個別的に事情を把握申し上げて具体的に減額を図るというのが、税金を具体的に計算して申告をしていただく現在の申告納税制度のもとにおきましては、やはりそういった御協力、お手数はお願いをいたしたいと思っているわけでございます。
  87. 大池真澄

    ○大池説明員 お答えいたします。  桜島の降灰による人体への影響の問題につきましては、ただいま御指摘の点も含めまして、医学的に明らかでない点がまだ多うございますので、調査研究費を本年度国におきましては二百万、県におきましては二百七十六万円組みまして、住民健診等の調査研究に着手しているところでございます。鹿児島県からの中間的な連絡によりますと、住民健診につきましてはすでに十月十二日から着手をして、百七十八名ほどの健診をすでに実施したところでございます。引き続き同様な健診を十月下旬、さらに十一月前半と続けて行っていくわけでございます。なお、この健診の結果を検討いたしまして、必要なものについてはさらに精密な検査を行うというような手順で、一定の調査研究計画に従ってこの問題に対応しているところでございます。当面、現在着手している範囲内では特記すべき所見はまだ見出されておりませんが、今後の健診成果を十分踏まえまして、県とよく連携をとりながら必要な対応をしていくこととしております。
  88. 新盛辰雄

    新盛委員 お答えいただいた部分では非常に不満な面もございますし、まだ議論をすべき必要がありますが、時間がございませんので、桜島降灰によりいま住民は非常に厳しい状況下に置かれており、連日噴き上げているわけでして、今後とも関係者の一段の御協力と、またこれに対する対策方をお願いして質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  89. 川崎寛治

    川崎委員長 武田一夫君。
  90. 武田一夫

    ○武田委員 宮城県沖地震につきましてお尋ねするわけでありますが、その前に、通告なしで申しわけございませんが、北海道虻田町の有珠山の火山灰の汚泥による被害が緊急にして非常に重要な問題であるということが地元のわが党の野村光雄議員から報告がありました。私もかつてその被害状況を視察に行ったということで、これは二次、三次災害が心配されるなと思っておりましたら、案の定十六日に三十ミリほどの雨が降りまして、それが温泉街の住民の家屋等に大きな被害を与え、今後これ以上の雨が降ったらどうなるんだという非常に心配な事態がございますので、この点につきまして二、三お聞きしたいと思うのでありますが、当局といたしましてはその状況をどのようにつかみ、かつ対策を講じておられるか、まずこの一点をお伺いしたいと思います。
  91. 四柳修

    ○四柳政府委員 ただいま御指摘の有珠山周辺のせんだっての降雨による泥流の被害につきまして、私ども国土庁ばかりでなく関係省庁、特に建設省あるいは林野庁と地元の方からもいろいろ事情を伺っておりますけれども、とりわけ今回の降雨によりまして、昨年来いろいろ施行してきた各種の施設の容量をオーバーしまして、泥流が市街地に流れてきた。しかも、温泉の中心街が非常にどろだらけになったということにつきまして、抜本的に、やはり従来の物の見方では不十分ではないかどいうことで、地元の町を初めとし、道庁その他が具体的な調査なり物をある程度検討中でございまして、それらのものにつきまして、関係省庁の方ともさらに具体的な計画見直し等の詰めに入りたいということを私ども伺っております。
  92. 武田一夫

    ○武田委員 ここは四十ミリ、五十ミリというのは普通降るようでありますが、もし今後そういう雨が降ってきた場合に、さらに現在の規模以上、あるいは数十倍にわたる地域に危険が及ぶのではないか。そうして、人命にかかわるような問題になったらどうするのだということを考えたときに、まあ現地に係官等も派遣しているんじゃないかと私は思いますが、もしなされていないとするならば直ちに行い、最善の対策を講ずるように至急手を打たなければならない問題であろうか、こう思うわけでありますけれども、その件につきましてお答え願いたいと思います。
  93. 四柳修

    ○四柳政府委員 現地の状況でございますけれども、降灰の除去につきましては、地元町の要請によりまして現在、自衛隊等の協力によりましてそれを除去しております。その除去した降灰といいますか、どろ状のものでございますけれども、これをどこに置くかということにつきましても、とりあえずの措置で珍古島の先の埋立地に置いておるような状況でございます。  そこで、道庁の方もそういった泥流のある程度の処理状況を見ながら、具体的な計画をつくるに際しまして関係省庁ともよく連絡をしたいということでございますから、それらの泥流の排除状況あるいは計画のための必要な調査の進み状況等を見ながら関係省庁、それぞれ一応来週中に地元の方からそういったものも持っていきたいという話で一生懸命詰めておる状況なものですから、いま御指摘のように直ちに参りましても、実はどういう形で恒久計画がつくれるかということが非常にむずかしゅうございますから、それらの点を現地と十分な連絡をとりながら、適切な時期に関係者が参れるように検討したいと思います。
  94. 武田一夫

    ○武田委員 その点、ひとつよろしく御配慮いただきたいと思います。  次に、地震の問題につきまして二、三お尋ねします。  私は地元の仙台でたまたまあの地震を経験こまして、上下左右に揺れ動いたあの地震のすさまじさというものを体験した一人でありますけれども、それ以降ずっと一カ月、二カ月と歩きましてしみじみと感じたことは、天災こわしといえども、それ以上に人災のこわさというものをあらゆる場所で痛感した一人でございます。これはいろいろな面で防災について心がけてきたとはいいながら、われわれがそうした大きな問題に当面しなければ考えもつかなかったような問題も出てきている。特に高層マンション等がたくさんできているいわゆる都市型としまして、仙台市が貴重な一つのデータを提供したのではないか。国からいろいろと御配慮いただきまして復興も着々進んでおりますけれども、あれ以来、依然として四十回ほどの体に感ずる地震がある。さらにまた上下の直下型の地震が来ている、いわゆる震度四くらいのものが最近来まして、農村地帯で特にそれを感じたというようなことでございまして、防災地震対策というのは一層国の大きな施策としてなされなければならないことを痛感しておるわけでございます。  政府としまして多くの専門の方の調査をいただき、そして調べた結果のいろいろな教訓があったのではないか、それを踏まえてかくしなければならないという対策等もお考えではながろうかと思います。特に、こうした都市型地震に対する今後の対策として教訓を受けた問題は何か、簡潔で結構ですから、その問題をお話し願いたいと思うわけであります。
  95. 四柳修

    ○四柳政府委員 今回の宮城県沖地震によります被害は、御指摘のように地震動によるものが大きく、まず人的被害につきましては、ブロックべい等の倒壊による圧死が非常に目立っております。また、物的な被害につきましては、市街の各地におきまして導管が破裂して断水するとか供給施設の破損等によりまして停電、ガスの供給停止が長い間続いた、あるいは瞬間的な交通の渋滞が生じたというかっこうで、市民の日常生活に大きな支障が生じております。このほか、石油タンクからの油の流出あるいは鉄道線路の損傷、宅地造成地の盛土の崩壊、さらには高層マンション等の外装の損傷等、いわゆる御指摘のような都市型災害の典型的な状況を示しております。  これらの被害の原因につきましては、現在、各方面で詳細な調査を進めておりますけれども、軟弱な地盤を十分考慮した設計方法や造成地の耐震性等について今後検討を進めていくとともに、各施設の施工方法の適正さの確保と申しますか、こういう点につきましても十分配慮していく必要があるのではないかと考えております。  また、老人や子供がブロックベイ等の倒壊によって圧死なさいましたけれども、これらの点につきましては、もちろん設計、施工上の問題もあろうかと思いますが、地震時におきます行動について、日ごろから十分啓蒙、教育していくことが必要ではなかろうかということを感じております。同様のことが仙台市の医師会の調査等によりまして、四分の一ほどの方々が瞬間的に自損行為のような形でけがをなさったということから見ましても、やはり瞬間的な行動というものは、日ごろからよほど気をつけておかないとうまくコントロールできないのではないか、こういう感じがいたします。  今後は、このような地震被害の実情と原因を踏まえまして、耐震設計基準の見直しを初めとする各種の建築物、工作物等の耐震性の向上に努めるほかに、事前対策強化によりまして、これらの地震のとうとい教訓を今後の震災対策の上で十分生かしてまいりたいと考えております。
  96. 武田一夫

    ○武田委員 いまお話を伺いましたが、こういう災害等に携わったいろいろな専門家のお話を聞きますと、そういう教訓というのは教訓として受けとめているようだけれども生かされていない、まことに残念であるというのが大方の方々の御意見のようでございます。今回も、これから二、三例を申し上げますが、たとえば学校災害などにしましても、十勝以降何度もそういう心配がありつつそれが十分になされなかったのではないか、そういう現実を踏まえたときに、私は、どうかひとつこの教訓が十分に生かされた防災対策強化していただきたい、こう要望して個々の問題に移らせていただきたいと思います。  いまブロックべいの話が出ましたが、建設省ではいろいろと通達あるいはパンフレットなどを出されましてその指導強化ということに手を打たれているようでありますけれども、いま復興に取りかかっておりまして、ブロックべいがまた新しく建てられるあるいはまた石の門柱ができておる、大谷石という重たい石でもってへいがつくられているというのが随所に見られるわけであります。ときどき歩いてみますと、どうもその通達が十分守られていないのではないかというような風潮、またそういうことを聞くわけであります。  ブロックべいでは、明らかに欠陥であるというのがわかっていながらどうしようもない、自分の子供や年寄りが死んだことに単なる天災としてあきらめきれない、これは本当にそのとおりだと思いますが、訴えを起こしている者も二、三あるわけであります。  このブロックの問題については、特に建築基準法施行令の第六十二条の八に、かくすることが必要だというものがあるのでございますけれども、それを一〇〇%守っていなかった方がたくさんいたという現実、また技術的にも非常に未熟な素人がそういう仕事に携わっていたことから凶器となったのだ、これは私は明らかに人災の典型ではなかろうかと思うわけであります。これは仙台市の場合だけでなく、私は東京を歩いてみて、もし宮城県と同じくらいの地震があったら恐らくこんなものではなかろうというのが随所に見られるだけに、もう一度そうした指導の徹底、そういうものを施工する方々に対する技術の再訓練、教育というものが必要ではなかろうか、この点についての対策は大丈夫であるかどうか、これはお聞きしておきたいと思う問題であります。どうでございますか。
  97. 上田康二

    ○上田説明員 ブロックべい等の安全上の問題でございますが、先生先ほど御指摘になりましたように、住民用のもの、あるいは施工者向けのパンフレットをつくりまして、正しい施工方法あるいは補修方法の普及に努力しておるところでございます。  具体的な方法としましては、九月一日の防災指導週間を一つの出発点にしまして、この安全対策に重点を置きまして、地方公共団体あるいは民間の建築関係団体等の協力を得まして、講習会あるいは説明会、相談所の開設、巡回指導、そういったことを、今後長期的に、計画的にやっていくようにということで、全国的な安全運動を展開しておるところでございます。九月一日から始めたといいますのは、それなりの資料をつくり、印刷物をつくるための準備が必要であったためでございまして、それ以来一カ月以上たちますけれども、これらの対策が直ちに効果をあらわすということを期待することは非常に困難な状況でございます。むしろ、こういうやり方を選びましたのは、長期的な観点に立って、全国的にこの安全対策が十分に浸透するように真剣に取り組むよう地方公共団体を指導しているということから、必ずしも現在の段階で全国津々浦々までこの対策が浸透するところまでいっていないという状況ではなかろうかと思います。  そこで、現在防災指導週間を中心にしてどういうふうな対策を講じ、どういう運動をやっているかという実施状況を、各公共団体から中間的な報告として集めておりますので、これらの報告を集計いたしまして、その結果、あるいはいままでの各公共団体の取り組みから出てくる御意見等も参考にしながら、各地域の実情に応じた効果的な方法を今後とも推奨しながら安全対策を進めていきたいと思っております。
  98. 武田一夫

    ○武田委員 それじゃちょっとお尋ねしますが、いろいろと指導をしながら、新しい基準に応じた耐震度を考えた、そういうものをやっているわけですけれども、それが不徹底のまま、業者もいままでのようなものを建てて、また、施主の方もそれでやって、事故が起こって、それによってこの間のような死者が出たというような場合、もし出たら、これはどういうことになりますか。いまは、これは欠陥と明らかにわかっていながらどうしようもない。どこに訴えたらいいのか。どこに聞いても、これはおれの責任じゃない。市の方は、おれたちはそんなことまでチェックできない。建てた方は、おれたちは前の基準のとおり建てているんだというようなことで業者は業者で、市は市で、そういうふうな責任が、どこにいってどうなっているんだかわからないというのでは、これは建物でもそうだと私は思うのですが、これはどういうふうに考えたらいいのか。あれは天災だからあきらめろと言えるものかどうか、これはどうなんでしょうか。
  99. 上田康二

    ○上田説明員 ブロックべい等が倒壊しまして死者が出たような場合に、だれの責任かというお尋ねでございますが、これは個々具体的なケースによって違うと思います。しかし、いずれにしましても、安全なブロックべいをつくるためには、建築主はもちろんのこと、施工者あるいは関係者全員が安全について十分な理解を持たなければ正しい施工は行われないというふうに考えているわけでございまして、そういう意味で、先ほど申し上げましたように、パンフレットをつくるに当たりましては、建築主用のもの、施工者向けのもの、それぞれ内容を変えてつくりまして、両者に徹底を図っていこうということでございます。
  100. 武田一夫

    ○武田委員 それじゃわからないですよ。要するに、市の方などは人手が足りなくて厳しくチェックはできないというのです。であるとするならば、業者の良心と腕とを信用する、あるいは建てる方の方々のそういう防災に対する考えというものをいま言ったようにきちっとやると同時に、しかるべき措置を考えるような方向でいかないと、いま言ったようなあいまいな答弁になってしまうのです。市の方では、おたくよりももっとひどい、当事者ですから。これはぜひ検討してほしいのです。必ず二度、三度同じことを繰り返すと私見ています。特に東京あるいは大阪、名古屋等の地域は、もう歩いてみればそういう凶器がごろごろ転がっているということを考えたときに、そういう教訓として踏まえたものをやはり教訓らしく検討するのが大事じゃないか。これは人命尊重の上から特に私は要望しておきます。  学校建築についてお尋ねしますが、これはまた問題だと思うのです。子供さんがたくさんいます。しかも、いざ災害になると、校庭があるということで避難場所としてそこに逃げるというケースが想像されると思うのです。ところが、あの十勝沖地震で、学校がもろかった。三沢の高校などは、本当にみごとに壊れてしまった。今回も、仙台市の図南高校などは、行ってごらんになったとおり、本当にみじめなものです。東北工業大学、地震の、あるいは工学研究の権威の方々がいる学校があのとおりでございます。さらに、新しい基準でできたといえども、あの県立泉高校などは、やはり亀裂が入っている。こういうことでして、これは大きな代表的な例ですが、恐らく、もし今後、あの程度でなくても、ちょっと小さな地震が来ても、この間の地震のとばっちりから、いろいろなところの亀裂があって、それがまた大きく広がり、あのような大きな被害となる個所は何カ所もあるのじゃないかとわれわれは見ているのですが、学校の建築につきましては、構造の面、特に耐震構造の面について、文部省あるいは建設省として、力を入れて、十勝沖地震の教訓を踏まえて、あるいは伊豆地震等の教訓を踏まえての研究というものは十分になされているのかどうか、その点お尋ねしたいのです。
  101. 大井久弘

    ○大井説明員 今回の宮城県沖地震におきましては、御指摘のとおり鉄筋コンクリート造校舎につきまして柱の勇断破壊による被害が多く発生したことは事実でございます。文部省といたしましては、昭和四十三年に発生いたしました十勝沖地震におきまして鉄筋コンクリート造校舎の柱が剪断破壊によって破壊したということが多く見られたことから、その後学校施設の耐震対策に関する調査研究を鋭意行ってまいりましたが、その結果を踏まえまして、都道府県の教育委員会あるいは施設担当者に対する指導に当たりまして、耐震性に留意するような指導を行ってきたところでございます。十勝沖地震被害状況にかんがみまして建築基準法施行令の一部が改正されまして、鉄筋コンクリート造の剪断補強に関する規定強化されたことは御案内のとおりでございますが、この勇断補強に関する規定強化される以前の建物が今回の地震によって半壊の被害を受けたものでございまして、先ほど御指摘になりましたもののうち、泉高等学校につきましては改正後において建設されておりますが、これは半壊ではなく、大破にとどまっております。しかしながら、学校建物の態様から見て、さらに構造計画という面につきまして研究を要するというふうに私どもは今回の経験から強く考えておりまして、今後五十四年度以降につきましては構造計画面についての調査研究を進めてまいりまして、さらにきめ細かな指導をしてまいりたいと考えているところでございます。
  102. 武田一夫

    ○武田委員 ちょっとお尋ねしますが、GSKシステムというのがございますね。それから、パルスクールというのがあるのだそうですか、御存じですか。
  103. 大井久弘

    ○大井説明員 GSKシステムと申しますのは、学校建物の部品をできるだけ工場生産化いたしまして、それの組み立て方法によって建物を完成しょうといういわゆる省力化を目指すと同時に、質的な向上、さらに価格の引き下げをねらいとしたシステムであるということでございます。これにつきましては、現在千葉県におきまして実施したものが数校ございます。  パルスクールということにつきましては承知いたしておりません。
  104. 武田一夫

    ○武田委員 このGSKシステムというのは、聞きましたら非常に評判が悪いのだそうですよ。後で調べてくださいよ。これは文部省の施設部指導課が指導担当している。ところが、文部省は任せっきりで余り力を入れていないじゃないか。そのために部分的には確かにいい物をつくるのだけれども、全体としてそれがいいという保証はない。また、業者にやらせると、採算が合わないと言うのですね。そういうところに一生懸命力を入れている。  パルスクールというのは知らないそうですか、パルスクールというのも学校の耐震を中心に研究された一つの建物だそうですから、専門家が知らないと言うのですが、特に地震の大変な地帯についてはどういう建物が安全な建物かということで一生懸命研究もしているのだし、探しているわけですから、やはり専門家の人はもう少し勉強してもらいたいなと思います。  そこで、構造的に長手方向、いわゆる壁のない部分が非常にやられているわけです。学校というそういう構造的なものから考えますと、窓がたくさんありますね。そういうようなところでこれをどうするかという研究、これは後で出てくるマンションの場合も同じです。ついでだからマンションの問題も申し上げます。高層マンションですが、玄関の周りの非構造壁が非常に破壊されてドアがあかなくなった。これが非常に多い。マンションの場合なんかも、住んでいる住民のいざという場合の逃げ口は窓しかない。一階、二階は飛びおりてもいいが、三階なんていったらとても——下がコンクリートだ。これは命にかかわる問題を抱えている。そういうようなところの場所であってもやはり地震の力は加わる。そういうようなところの研究はなされてきたはずなんだろうと私は思うけれども、余りにも多かった。耐震度の問題でこれから改めていくと言いましたけれども、そういう壁の問題あるいはまた非構造壁、はりの問題、この問題については特にいまマンションブームですから、何か東京圏では五万戸ぐらいがことしは売れるのじゃないかというふうに、若い人が特にマンションの方に目を向けているというだけに、御承知のサニーマンションに事故があってから、墨田、江東の地域から毎日どうなんだという問い合わせが来ているが、一向らちが明かない。こういう点を踏まえて構造的な、耐震度に対する見直しをもっと厳重にして、しかも安心して住めるのだというものを鋭意研究していただきたい。この点、もう一度決意と、マンションも出てきましたけれども、マンションについても、どなたが担当かわかりませんが、その点についての取り組みについてお伺いしたいと思います。
  105. 上田康二

    ○上田説明員 いま御指摘になりました学校のような壁の少ない建物、これは学校に限らずほかにもございますが、こういう建物の危険性はもう数年前から指摘されておりまして、この対策は、四十七年以来新しい設計方法の開発に着手して、現在成案を得ているわけでございます。  それから、いま御指摘の非耐力壁といったものは、ある程度変形を少なくすることによって破壊を防ぐ、こういう対策が必要なわけでございまして、これも建物全体の構造、設計方法の基本的な問題と絡んでいるわけでございまして、両方の問題を含めまして新しい設計方法を、すでに案はできておりますので、これを建築基準法の施行令の中に取り入れていくための作業を現在検討中でございます。できるだけ早くこれを施行令の改正という形で取り入れていきたいと考えております。
  106. 武田一夫

    ○武田委員 時間が来ましたので、最後に、長官がおいでになっていますし建設大臣でもありますのでお尋ねしますけれども、地震予報が幾ら当たって、来るとわかっても、やはり肝心の防災が不十分であればこれはどうしようもないというのが現実でございます。建築防災の面からいろいろな方に聞きますと、行政的な問題が一つ。これは規制という問題だと私は思います。それから技術的な面での防止に力を入れるべきである。さらにもう一つは、安全教育の徹底という、この三つが三位一体となることが防災の一つの大きな柱ではないか。こういうことを考えましたときに、建物が大きな災害のときの一つの中心になってくるように思いますので、こういう方向に対する新たなる見直しをもう一度して、防災体制といいますか、防災研究水準は日本はトップクラスだと言いますけれども、地震の多い国であることを考えたときに、一層力を入れていただきたいということをお願いするわけでありますが、大臣のお考えをひとつお聞かせ願いたい。
  107. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 宮城県沖地震でいろいろ教えられましたが、特に地域全体をながめて、軟弱地盤を十分考慮する必要がある、あるいは造成地の耐震性に考慮を払う必要がある。そういう点から、耐震設計基準の見直しを初めといたしまして各種の建築物、工作物の耐震性の向上に努めて、事前対策強化を図る必要がある。ただいま行政面、技術面、安全教育面を考えるようにということでございますが、まさにそのとおりだと思います。
  108. 武田一夫

    ○武田委員 時間が来ましたので、以上で終わります。
  109. 川崎寛治

  110. 山原健二郎

    ○山原委員 最初に、災害時における個人の受ける被害の救済の問題でございますが、現在地震保険法の改正といいますか、この問題につきましてこの委員会でも、先日の大蔵委員会でもずいぶん問題になってまいりました。  そこで、私は水害の保険制度の問題について——私の県なとは例年のように水害を受けるわけでございますが、その際に、個人の受ける被害というのは甚大なものがあるわけです。これを何とか救済するということを考えますと、一つは、水害保険の問題が検討されてよいのではないかというふうに思うわけでございますが、この点について建設省で検討されておるかどうか、もし検討されておるとすれば、制度上の問題点はどういうところにあるか、あるいは諸外国ではどういうふうになっておるかということを、時間の関係もありますので、きわめて簡明で結構ですから、一言検討しておるかどうか、その内容についてお伺いをいたします。
  111. 安仁屋政彦

    ○安仁屋説明員 建設省では河川局におきまして、洪水等によります住宅、家財等の個人の財産上の損害をてん補するための水害保険制度につきまして、その実現の可能性を探るための調査研究を外部の学識経験者の参加を得まして行っております。現在やっております調査研究内容としましては、水害被害の現状、水害被害救済てん補制度の現状、それから外国における制度、それから水害危険の特殊性、水害保険制度の基本的問題点、こういったものについて検討しております。その検討の過程で、水害保険の問題点というのが明確になってきておるわけでございますが、その大きな問題点としましては、まず地域的、地理的条件の相違によりまして、水害危険度というのはかなり極端な差がございます。また、水害というのは、その土地柄によりまして受けるか受けないかという予測が比較的容易であるため、これを実施しました場合、危険度の高い物件だけが保険に加入する、いわゆる逆選択と呼ばれておりますが、そういった傾向が高いのではないか、さらに、一たん水害が起きますと、その被害地域が非常に広範囲に及び、かつ被害額か非常に巨額に上る、巨大集積危険と申しておりますが、そういったことがございます。そういったことから水害危険は、保険の基本原理でございます大数の法則に乗りにくいのではないかといったようなことが浮かび上がってきております。こういった点につきまして今後時間をかけまして、さらに詳細に検討を加えてまいるというのが現在の状況でございます。
  112. 山原健二郎

    ○山原委員 いまおっしゃったような困難性ということは私もわかるわけでございますけれども、いま御検討なさっておるのは、水害保険法というものをつくろうという立場で検討しておるのかどうかという問題です。困難性はわかりますけれども、現在個人の受ける被害について全く救済措置がないというわけではありませんけれども、しかし、ほとんどないと言っても差し支えないのですね。そういう状態の中で考えてみますと、確かに制度化することにはいろいろな問題がある。また、保険制度がなじむかどうかも問題はあると思います。しかし、とにかく個人被害の補償をしていくあるいは防災強化していくという立場から考えますと、どうしても作成をしていく、法律化していく、そういう気構えをもって検討されておるのではないかと思いますが、その点は建設省どうですか。
  113. 安仁屋政彦

    ○安仁屋説明員 水害保険につきましては、昔からやったらどうかという意見はあったわけでございます。それに対しまして、いま申し上げましたようなむずかしい問題点があるために現在制度化されていないということでございます。しかし、本当にむずかしい点がどこにあるのか、そこをもう少し突き詰めてみたらどうか、こういう立場で検討を始めたわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、現在段階では実現の可能性を探るための研究ということで、成否のほどは現段階ではちょっと申し上げられないということでございます。
  114. 山原健二郎

    ○山原委員 もう一つ。研究をされておるということでございますが、その研究の結果と申しますか、大体の問題点の指摘といいますか、そういったことは近い将来に発表されるというお考えでしょうか。
  115. 安仁屋政彦

    ○安仁屋説明員 建設省におきます検討につきましては、少なくとも今年度いっぱいかかる、仮に制度化するとなりますと、国全体の問題でございますし、保険という問題で審議会等の関係もあろうかと思いますので、仮に実現するにしても相当の時間がかかるのではないか、このように考えております。
  116. 山原健二郎

    ○山原委員 検討の段階で、今年いっぱい検討されるということでございまして、その先の問題になると思いますが、私は、こういう災害の現状から見まして、ぜひ検討と同時にこれをつくっていくという方向でさらに検討を進めていただきたいと思います。  二番目の問題は、都市における水害防止の問題でございますが、まず都市を流れる河川の流域に住宅地ができてまいります。そして乱開発あるいは遊水地が消滅をするというような問題が至るところに起こるわけです。その上に、海岸の埋め立てが行われます。さらには、地震等によりまして地盤の沈下が出てまいります。そして水はけが悪くなる、高潮が襲いかかる、こういう事態が起こっているわけですが、その中で問題点としましては、河川改修がどうしてもおくれるということ、それから膨大な用地費が要るということ、それからさらに工事費が要るということ、そして自治体の財政が貧弱であるということ、しかもその対策として、河川改修あるいは高潮対策、下水道等、これを別々の行政機関が別々の計画を立てて対策を実行していく、こういうことになっておるわけです。この点はいつも問題になるわけでございますけれども、もっと抜本的な調査に基づいて総合的な水害対策を推進する必要があるのではないかということでございます。これはしばしば言ってきたところでありますけれども改めてもっと基礎的な調査に基づいて総合的な計画を立てて、防災対策をもっと機能的に推進をしていくということができないものかどうかということでございますか、この点はいかがでしょうか。
  117. 川本正知

    ○川本説明員 先生がただいまおっしゃいました都市部の河川の治水対策ということに対しましては、建設省といたしまして実施しております河川事業といたしまして、中小河川改修事業であるとか、あるいは高潮対策河川事業であるとか、いまおっしゃいました地盤沈下に対しまするその影響による水害から守るための地盤沈下対策事業とかいろいろなものをやっておりますが、それぞれの事業目的に応じてその事業を実施しておるということでございます。しかし、たとえば高潮対策と一般の河川改修との関連ということになりますと、これはすべて水系を一貫しました計画をまず立てまして、それの個々の事業計画を策定いたしまして、相互の関連をとりながら事業を進めておるというところでございます。また、ただいまおっしゃいました下水道等との関連も当然あるわけでございますが、都市の面的な排水は下水道が受け持つ、またそのさらに下流といいますか、受けざらとしてそれを河川が治水対策として受け持つという関係にございます。相互の事業の進行、そういったものの調整が当然必要でございますし、そのために下水道との関連ということで、都市におきます総合排水の調査をしておりまして、その結果に基づきまして、下水道部門とも申し合わせをいたしまして両事業の管理分担を定めまして、技術基準的な整合を図りながら事業を推進してきておるところでございますが、場所によりましては事業の進捗度が必ずしも合致していないところも確かに見受けられるわけでございます。そのためには、今度とも両部門で調整をとりながら整合を図るようにさらに努力をしていきたいと考えております。
  118. 山原健二郎

    ○山原委員 これと関連して、防災集団移転の問題でございます。今回の概算要求で、現行の五百三十万円を都市部においては九百四十万円にするという要求をされておるわけでございますが、これはもちろん概算要求で、次の通常国会で審議されると思いますけれども、枠の拡大、そしてこの適用範囲を広くしていくということをぜひ実現をしてもらいたいと思っておりますが、これについてはどのような御見解を持っておりますか。
  119. 佐藤順一

    佐藤(順)政府委員 お答え申し上げます。  防災のための集団移転促進事業につきましては、その内容について年々充実を図ってまいっておるわけでございます。特にその内容に当たります補助単価と申しますか、補助限度額につきましても年々拡充を図ってまいっておるわけでございますが、ただいまお話がありましたように、最近におきます災害発生の実情にかんがみまして、明年度以降さらに一段と拡充をすべく努力をいたしておるところでございます。
  120. 山原健二郎

    ○山原委員 次に、地震の問題について伺います。  一つは、大規模地震対策特別措置法の施行令の問題でございますが、これはいつ出る御予定でしょうか。
  121. 四柳修

    ○四柳政府委員 御指摘の大規模地震対策特別措置法につきましては、御案内のようにその附則で、公布の日から起算して六カ月以内ということでございますから、遅くとも十二月十四日までに施行するよう、現在、必要な政令、布令等の作成の作業を進めております。
  122. 山原健二郎

    ○山原委員 国の補助規定につきましては、来年度から事業を発足させる用意があるでしょうか。
  123. 四柳修

    ○四柳政府委員 御指摘の点は、強化地域が指定された場合に当該地域内において行います各種の地震対策事業に対する財政措置の強化の問題だろうと思いますけれども、ただいま申し上げましたように、十二月半ばまでに施行し、当然のことながらその規定によりまして中央防災会議に諮問をして、具体的な地域指定の問題は一応本年度末までに指定したいと考えております。そういたしますと、指定を受けました関係地方公共団体等でその具体的な計画をつくるわけでございますが、その具体的な計画に基づきます各種の事業の積み上げ、あるいはその結果としての必要な財政負担なりその能力といいますかあるいはその年次計画といいますか、そういったものは一応明年度前半に作業がある程度固まると思います。そういう状況を見ながら必要な予算措置についてもその後の問題として配意してまいりたいと思います。
  124. 山原健二郎

    ○山原委員 そうしますと、この委員会で静岡県の知事等参考人を呼んで審議をしたわけですが、静岡県だけでもずいぶん、あのときはたしか五千億の被害というようなことで地方自治体としてはとても負担し切れないというような問題も出まして、この補助規定の問題が、いわば大規模地震対策特別措置法を作成するに当たっての、地方の要望としては一番の目玉であったと思うわけですが、その点については、いま審議官おっしゃいましたように、補助規定を含めて検討しております。こういうふうに受け取ってよろしいわけですね。
  125. 四柳修

    ○四柳政府委員 私どもの方では、大変恐縮でございますけれども、関係法律の施行に伴います政省令の整備ということはやっておりますけれども、具体的な財政負担ということにつきましてのいま山原委員お尋ねのいわば財政特例措置的な問題につきましては、関係省庁の方でそういう方向も検討しておりますけれども、ただいま御答弁申し上げましたのは、具体的な財政負担とその負担能力というものは実は五十四年度のスタートする段階ではわからな冷そこら辺の状況を見ながら、やはり御指摘の点、関係省庁ともどもどういう対応をしたらいいのかということも検討してまいりたいと思います。
  126. 山原健二郎

    ○山原委員 対象地域の問題がかなり論議されてきたわけですが、たとえば南関東を入れるとかそういったようなことについてはいま検討されておるところですか。
  127. 四柳修

    ○四柳政府委員 地域の指定につきましては、正式には法施行後中央防災会議に諮問する形になりますけれども、それでは間に合いませんものですから、実は先般中央防災会議の専門委員の先生方を委嘱いたしまして、今週の初めに第一回の初会合を開きましたけれども、その会合におきまして、特に、とりわけ東海地域を中心にしてM八程度のものを前提としての作業ということと、御指摘のようにもっと範囲を広げるかあるいは規模を下げるかとか、そういった御議論もあろうかと思いますけれども、とりあえずは、きょう参考人からお聞きのとおり、やはり緊急を要するものにつきましてできるだけ早目にそういった作業ができるようにということを私どもの方はお願いいたしておりますし、いずれは、今月末にもさらに今後の会議が開かれると思いますけれども、そういう御審議の中で段階的にものが出てくるのだろうと思います。
  128. 山原健二郎

    ○山原委員 最後に、宮城沖地震の場合もそうですか、常に問題になります激甚災指定の基準の問題でございます。私は前々からこれはもっと緩和すべきであるというふうに考えてまいりました。宮城沖地震で激甚災適用が強く要望されておりますけれども、公共土木については基準に達しなかったといういきさつがあるわけです。そしてそのためにずいぶん地元の要望に対してはこたえ得ないという面が出てまいったことは御承知のとおりであります。考えてみますと、この基準は、昭和四十七年以来すでに六年間経過しておりますけれども、いまだに改正をされておりません。特に都市を襲った災害の場合は、標準税収額が大きいために、よほどの損害がないと適用が困難である、こういうのが実情でございます。そのために非常な被害が起こりましても、特に都市の場合におきましては適用から除外されるという問題が一つあると思います。それからもう一つは、この現行のものはいわゆる水害が中心であるものと思います。地震に対しては適合しない面があるわけでございまして、この点を含めて検討されておるかどうか、それを最初に伺いたいのであります。
  129. 四柳修

    ○四柳政府委員 御指摘のように、激甚災の指定基準につきましては、四十六年のたしか十月に局地激甚の基準を若干緩和したという経緯以降、現在まで直しておりません。私ども、この基準をお預かりしておりまして、御案内のように、一つは被災地方公共団体側の財政負担の軽減という問題がある、二番目に、大きく言いまして、被災なさいました国民、特に農林漁業者、あるいは中小企業者等の負担の軽減という問題があるということが大きな二本の柱だろうと思いますけれども、前段の公共団体の負担の軽減という問題につきましては、御案内のように、いまの法律の仕組みが公共土木等は財政力に応じていわば補助率が逓増になってまいりまして、その上になおかつ激甚災という形になる。あるいは仮に激甚災にならなくても、その裏というものは全額起債で見られまして、しかもその償還というものは交付税で見られるという形でございまして、実は公共団体サイドの負担という問題につきましては、どちらかといいますと、いわばそのときどきの資金繰りの問題ですとか、あるいは予算運用上の問題という形で、直接的な負担についての御不満ということは私どもは余りないのではないだろうかというふうに受けとめておりますけれども、後段の住民側の方の負担の問題につきましては、やはり今回午前中の法律改正の御決定によりまして基準額を上げるとか、あるいは利率を下げるとかという形で及ばずながら対応しておるわけでございますけれども、それで十分なのかというおしかりもあろうかと思いますけれども、今後ともそういった点につきまして、やはり他の制度との関連もこれございますものですから、それらの整合性を考えながら今後の宿題として研究させていただきたいと思います。
  130. 山原健二郎

    ○山原委員 終わります。
  131. 川崎寛治

    川崎委員長 永原稔君。
  132. 永原稔

    ○永原委員 いま大規模地震対策特別措置法の施行についてはお話がございましたけれども、これは関係する政令、一斉に十二月十五日を目標に制定なさるのでしょうか。それと、地震防災対策強化地域の指定の時期、これはどういうようにお考えになっていらっしゃるか、そういう点をちょっと補足して伺いたいと思います。
  133. 四柳修

    ○四柳政府委員 現在、十二月中旬の施行を目標にということで、大規模地震対策特別措置法の直接関連ございます政令あるいは布令等につきまして作業を進めておる段階でございまして、御案内のように、これに関連しまして各省庁がそれぞれの保安規程等の改正の問題等もありますけれども、それらの点、可能な限り間に合わせていただけるようにお願いするところでございますけれども、一斉という形につきましては、ちょっといまの段階では正確にお答えできかねる状況でございます。  それから、後段の地域指定の問題につきましては、先ほども申し上げましたように、正式に御諮問申し上げるのが十二月の中旬ぐらいになろうかと思いますけれども、御案内のように関係都道府県知事の意見も聞かなければいけませんし、あるいは、知事は市町村長の意見も聞かなければいけないという過程がございまして、地方側の意見を聞くタイミングというのは、やはりそれぞれの地元の議会等の御事情もあろうかと思いますものですから、できる限り本年度末、つまり三月までにそれらの地域についての指定が間に合うよう作業を進めたいという状況で進めております。     〔委員長退席、湯山委員長代理着席〕
  134. 永原稔

    ○永原委員 政令のテンポが非常に遅いのではないかという気が私はするのです。あれだけ短時日で上げた画期的な法律ですけれども、これは政令が定められないと動かない、こういうような状況になっております。もちろん施行の関係があるわけですけれども、それ以外でもあらかじめ準備を進めなければならないものがあるわけです。第五条の防災基本計画、これは中央防災会議が作成するということになっておりますけれども、それを基本として、今度は地方においては防災強化計画がつくられなければならない。しかし、その第六条の一項二号、三号など、こういうものについての政令、こういうものが特に制定されなければ、また基本計画ができなければつくりようがない。ところが、それを受けて今度は応急計画をつくるということになりますけれども、一体だれがつくるのかということになりますと、これも作成者については政令で定めるもの、こういうことになってしまいますし、しかもその一番末端にある作成者は、これは地域指定があった日から六カ月以内に応急計画をつくれというようなことが指示されております。そういうような段階から見てきますと、各省が一斉にこういうものについてテンポを合わせて政令が発布できるような方向に進めるのが窓口としての国土庁のあり方ではないか、こう思いますけれども、そういう点についてはどうですか。
  135. 四柳修

    ○四柳政府委員 御指摘のように、私ども、若干おくれぎみということにつきましてやや焦っているかもしれませんけれども、各省庁等の御協力を得まして、できるだけ関係政省令等が間に合いまして、末端で御心配のようなおくれとかあるいは不十分さとかそごがないように努力いたしたいと思いますけれども、そういう過程に備えるためにも、私ども、今後のこういった計画づくり、あるいは地域指定の問題に関連しまして、各省庁や関係の都道府県の方々にも、その作業の進行過程中にできるだけ連絡をとりながら、それらのことがないように配慮してまいりたいと思っております。
  136. 永原稔

    ○永原委員 ぜひそういうような方向で進んでいただきたいと思います。  いま各地において防災訓練が行われております。これは災害対策基本法に基づいていろいろやられていますけれども、何かマンネリズム化したような気がしてしようがない。この地震対策特別措置法の関係では、これは二十四条で、起こった場合に緊急輸送の確保のためとか、あるいは避難が円滑に実施されるためとか、あるいは防災従事者、この人たちのために公安委員会が歩行者とか車両の通行を禁止または制限する、そういうことができるようになっておりますけれども、その条文を受けて、やはり防災訓練も政令の定めるところによって歩行者や車両の通行を禁止しながら訓練をすることができるように決められております。本当に非常事態が起こった場合に、交通が一たんストップしたならば、これは防災の立場と一般生活の立場が違いますし、これを技術的にどういうように手際よく管理していくか、大きな問題だろうと思いますので、本当に一度は訓練をしておかなければならないのではないか、こういう気がするのですが、これも政令ができていないからやりようがないと言えばそれまでです。しかし、本当に事態はいつ起こるかわからないというような状況の中で、やはりこういうものについても、すでに省令の審議過程あるいは検討過程の中で各都道府県に連絡をとりながらいろいろ指導なさっているようですが、こういうものについては消防庁は一体どういうようにお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  137. 大竹山龍男

    ○大竹山説明員 御指摘のとおり、震災時に交通渋滞が発生いたしますと緊急車両の通行不能とかあるいは避難場所への避難の阻害等が想定されるわけでございまして、これに備えまして、現在東京都とか静岡県等では交通規制を加えた防災訓練というものも実施いたしております。たとえば、東京都におきましては、九月一日あるいは九月八日におきまして、東京消防庁が管下の消防職員、消防団員等を集めた大がかりな防災訓練を実施したわけでございまして、各地方団体それぞれに独自の立場においていろいろ努力はいたしております。  なお、御承知のように大震法の二十四条、三十二条の規定もこれあり、今後地震災害を想定した防災訓練を実施する場合は、都道府県公安委員会と十分に連絡を密にいたしまして、効果を上げるように指導してまいりたい、このように考えております。
  138. 永原稔

    ○永原委員 この防災訓練は県境を越えてやる必要があると思うのです。そういう中で、やはり各県の公安委員会だけではなくて、横の連絡をとりながらやっていかなければならないと思いますけれども、こういうものについても消防庁がある程度リードして指導していかなければいけないと私は思いますので、特に御配慮をいただきたいと思います。  それと、先ほど財政の問題についてはお答えがございました。特例措置について各省がいろいろ検討しているというようなことでございますけれども、やはり政令を非常に急ぐというのは、警戒宣言がもしも発せられたような場合に、住民は非常に心理状況、動揺いたしましてパニックを起こすおそれもある。交通渋帯を起こす可能性もある。そういう中で、この前の審議のときにはマニュアルをつくって指導するんだというようなお話もございましたが、そういうものもまだできたように聞いておりません。地震予知防災の一手段にすぎないと思うのです。防災事業を急いでやらなければならない。それについてはやはりいろいろな計画がまず先行しなければならない。たまたま来年度の予算編成期に際会している。そういうことを考えますと、どうしても政令の制定を急いでいただきたい、私はこういう気持ちなんですが、先ほどのお答えで満足できない点、この点を一、二御質問いたします。  被害地域を広域的に考えていきますと、その対策の根幹になるものは中央防災会議ではいろいろ考えていかなければならないでしょう。基本計画の中で、作成し、その実施を推進するということが決められておりますけれども、国の経済動脈である幹線道路あるいは県域を越える輸送道路の確保、また大規模な地すべり地帯の整備、こういうようなものについては、国の計画の中で、国みずから防災事業を実施するんだというような考え方が必要ではないか、こう思います。いまのままの行き方だとすると、恐らく一般公共事業の傾斜配分になってしまったり、あるいは災害が起こってから復旧費を重点的に配分するんだということになりかねない。それでは本当の防災事業になりませんので、こういう点について、国みずから直轄事業でいま申し上げたような地帯について御配慮をいただきたいと思いますが、大臣、こういう点についてはいかがお考えでしょうか。
  139. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 永原委員の御意見、ごもっともなことでございまして、基本計画作成に当たりましてはそれらの点も十分踏まえてやるべきだと思います。
  140. 永原稔

    ○永原委員 自分の県のことでちょっと恐縮なんですけれども、私の県に由比・蒲原地帯というのがございます。薩た峠という山を控えているわけですが、あそこに大規模な地すべりが起こっているのは大臣も御承知だと思います。まだ百万立米に近い土砂を排土しなければならない、こういうような状況になっておりますけれども、あの地帯は、その山崩れの地域から海岸まで二百メートルから五百メートルの幅しかございません。そういうところに幹線道路が集中しているわけです。道路だけではございません。鉄道もやはり新幹線あるいは東海道一号線、さらに東名高速道路や国道一号線、こういうものが集中しております。まさに日本のボトルネックになっている、こういうように思いますけれども、こういうところは事前に手をつけませんと、一度起こってからでは大混乱になるのではないか、こういう気がするわけです。こういう点について、やはり防災的な見地から国直轄でいろいろ仕事をやるんだというようなお考えをぜひとっていただきたい、こういう点について大臣、もう一度お考えをお聞かせいただけませんか。
  141. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 由比・蒲原地区の地すべりの状況は、私も視察もさしていただきました。また、御指摘のように鉄道あり新幹線あり、高速道路あり、国道が通っておるということで、ここで一たび災害が起きますならば、その影響ははかり知れないものがございます。したがって、現に地すべり事業として鋭意対策を講じておるわけでございますか、今回の大地震法に伴いまして、さらにこの対策強化するということにつきましては、私も同感でございます。     〔湯山委員長代理退席、委員長着席〕
  142. 永原稔

    ○永原委員 国の仕事と自治体の仕事と分かれます。地方自治体の行う地震防災緊急整備施設あるいは事業、こういうものについてはまだ政令が出ていないと言えばそれまでです。しかし、現に二十九条では補助の道か開かれている。こういうものに対して、新年度ではそれぞれ各省が考えるんだというのでは、これは余り意味がないのではないかという気がするのです。集中的に事業を実施したときの財政負担ということを考えますと、やはり新しい国庫補助の高率化の立法措置が必要ではないか、こういうように思います。そういう点についてのお考え、それと次に、ここで政令にどういうものか規定されますか、経過的な内容は私も承知はしておりますけれども、主要危険地帯の整備とか、あるいは緊急輸送道路、輸送の港、こういうものを確保したり、重要な防災拠点施設というものを計画的に実施しなければならない、こういう使命を持っておる地方団体としていままでのような助成措置で果たしてこなしていけるだろうかということに疑問を持ちますが、こういう財政的な問題について主管省としての国土庁はどういうようにお考えになるのか、そういう点を伺いたいと思います。
  143. 四柳修

    ○四柳政府委員 前段の財政特例的な問題につきましては、先ほど私、関係省庁ともどもということで申し上げたわけでございますけれども、具体的にどこの省庁ということにつきましては、やはりそれぞれの事業のまとまりぐあいもあるかと思いますし、あるいは地方団体の指導をされます自治省の方の立場もあろうかと思いますし、それらの点につきましていま国土庁としてどうということにつきましては、それら関係省庁ともども、やはりそういったところを御相談申し上げてどういうふうに調整するかということでございまして、私の方は特にイニシアチブをとるとか、こうでなければならぬということは、いまの段階ではお許しをいただきたいと思います。  それから、後段の政令等による事業云々ということでございますけれども、御指摘のような、各施設を整備する場合に、国、県、市町村あるいは民間がそれぞれの計画の整合性といいますか施設整備の整合性といいますか、そういった点もあろうかと思いまして、できる限りそういった点が配慮できますよう、国でつくります防災基本計画の方につきましても、関係委員さん方の御意見を聞きながらそういう過程の中で対応してまいりたいと思っておりますし、またその委員会につきましても、関係省庁あるいは関係地方公共団体の方々もできるだけ聞いていただきまして、そういったことの準備にも万遺漏のないようにお願いいたしたいと考えております。
  144. 永原稔

    ○永原委員 すぐ関係省庁ともどもというお話が出てきちゃうので非常に整合性に欠けるという批判をしたいのですけれども、中央防災会議の仕事は国土庁が中心になってやっていらっしゃるのでしょう。国土庁が中心で中央の基本計画もおつくりになる、そしてみずから責務としてこれを推進しなければならないというように決められているわけです。窓口の国土庁が各省庁ともどもと言うのではなくて、やはり防災計画というものができ、それを推進するという立場である程度各省庁と意思統一をしていかなければいけないのではないか、むしろリードしていかなければならないのじゃないかというように思いますけれども、そう  いう点について大臣はどうお考えでしょうか。
  145. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 災害対策基本法によりまして現に防災計画の実施などもしておりますし、また地方自治体の費用についても対策を講じておるわけでございます。それらのことによって対策を進めていく上にさらに不十分である、こういうような点につきましては、これは審議官から関係省庁ともどもと申しましたけれども、実際上国土庁の窓口だけでは末端のことまで十分に手が届きませんから、こういう問題もある、こういう問題もあるということを受けながら、そしてわれわれの方で推進申し上げる必要のあるものはやる、こういうことだと思うのでございまして、これから政令あるいは布令などに伴いましていろいろ不十分な点や御注文の点が出てくると思いますから、われわれもそれは当然受けて行動していく考えでございます。
  146. 永原稔

    ○永原委員 観点を変えまして、避難地とか避難路の整備、消防、給水、病院、備蓄庫など、それぞれ地域には特色があります。実情に即した防災体系を考えるときに、何か地域の総合整備事業というようなものが必要と考えられますけれども、メニュー方式で消防庁はこういうものについて何か補助をするお考えがあるかどうか、予算要求が八十億に及んでいるようですけれども、こういうものの内容をどうお考えになっているか、あるいは補助率等についてお聞かせいただければありがたいと思います。
  147. 大竹山龍男

    ○大竹山説明員 震災発生に備えまして避難地、避難路、消防施設等寸地震防災上緊急に整備すべき施設等の整備を行うべきであるということは、私どもも常々痛感いたしております。消防庁といたしましては、強化地域等におきます震災対策整備事業を早急かつ円滑に推進されるようメニュー方式の補助金について現在財政当局と折衝中でございます。この内容は、簡単に申し上げますと、指定避難地、避難施設等の誘導標識等の設置あるいは非常用給水施設、無線通信施設、備蓄倉庫、非常用設備、資機材とございまして、一応補助率は三分の二ということを考えております。
  148. 永原稔

    ○永原委員 防災というのはやはり国とか地方自治体に頼るのではなくて、最終的には個人が自分の生命、財産を守っていかなければならない、こういうように思います。個人だけではなくて、やはり地域が一体となってお互いに助け合うということも必要でございましょう。こういう中で新しいコミュニティーが必要になってこようと思うのです。避難広場をつくり、備蓄倉庫をつくりあるいは資機材の倉庫をつくり、そういうような設備を市町村がしておきながら、さらにそこを利用する人たちが平常時にコミュニティーをより強めるために利用できるような施設、こういうものが必要ではないかと思いますが、こういうコミュニティーセンター構想について消防庁は何かお考えがあるように聞いておりますけれども、どういうような対応をなさろうとしておるのか、この点を伺いたいと思います。
  149. 千葉武

    ○千葉説明員 お答え申し上げます。  災害に対しみずからの地域社会はみずからの手で守るという御指摘については、私どもも全くそのとおりに考えております。特に大規模な地震発生に際しましては、公的機関の活動がいろいろな面で制約されることも考えられますので、情報の収集、伝達でありますとか初期消火でありますとか救出救護活動あるいは避難活動、こういったことをやはり住民みずからの手でやっていただくということが必要じゃないかと思います。こうしたことのために日ごろから地域住民に対して、防災知識の普及でありますとか防災訓練でありますとか、こういうものをコミュニティー活動の一環として、あるいはそれとタイアップしてやる必要がある、このように私どもも考えております。このため、私どもとしましては従来からこういった指導を地方団体に対して行ってまいったわけでございますけれども、今後はさらにたとえばコミュニティー防災センターというようなものを地域につくるということで、これに対して何らかの助成措置をやれないものかということで現在考えております。当面はモデル事業として行いまして、おいおいはこれを全国的に普及させていきたい、このように考えております。
  150. 永原稔

    ○永原委員 モデル事業ですから個所は多くないと思いますけれども、逐次こういうものを強化していただくことによってやはり地域のコミュニティーの強化になるというような気がしますので、ぜひこういう点について、補助率についても十分配慮しながら事業の拡大をお図りいただきたいと思います。  最後に予知体制ですが、先ほど私は予知防災の一手段にすぎないと申しました。防災事業をやはりしっかりやっていかなければ住民の生命、財産を守る道というのが貫けないからですが、予知ももちろん必要なんです。大事なんです。実は午前中にいろいろお話を伺いましたけれども、予知研究体制の整備、これは三十三条に国がみずからの責務として示していらっしゃるところです。こういうものについて現在の体制で十分だろうか、どういうように整備をなさろうとしておるのか、予知推進本部は科学技術庁に所属していますけれども、そこの内容は総合的に検討されたのではなくて、各省各庁のそれぞれの構想をただまとめたものだけではないか、本当に整合性のある総合的な観点に立ったいろいろな計画だろうか、こういうところに疑問を持つわけです。やはり研究体制の一元化、整備というようなことを急かなければならないと思いますけれども、この地震予知推進本部でまとめたものを見ますと、文部省、通産省、運輸省、建設省、郵政省それぞれに所属している考えがそこに出されているだけでございまして、何か一体になっていないような気がする。こういうものに国はどういうように対処しょうとなさるのか、その国というのは一体だれが中心で考えようとするのか、そういう点についての御意見。それから研究の推進とその成果を普及するというように三十三条には決められておりますけれども、国といっても一体だれがおやりになるのか。予知の問題だから地震予知推進本部がやるのでしょうか、国土庁がやるのでしょうか、そういう点についてはっきりしたお答えがいただきたいと思うのです。  こういうことを申し上げるのは、もう時間が来ていますのでお答えをいただけばそれで終わりますけれども、大臣に特にお願いしたいのは、防災が、法律ができたというだけで終わってしまうのではなくて、これを有効に働かして生かしていかなければいけない、効果があるようにしなければいけない。そのためには意思の統一が必要だ、やはり組織の一元化ということがどうしても必要だ、こういう気が私にはいたしますので、そういう気持ちを心の中に抱きながら質問をしているわけです。どうか大臣もこういう点について十分御配慮をいただきまして、効果のあるような道というのをお考えいただきたいと思います。  前段のことについてお答えをいただきたいと思います。
  151. 四柳修

    ○四柳政府委員 御案内のように、地震予知というものはまだ研究開発すべき部分も多いため、大学及び国の試験研究機関等がそれぞれの固有の業務等に関連しまして、それぞれの特色を生かした多岐にわたる研究あるいは観測というものが行われておる状況でございます。こういったそれぞれの機関の研究あるいは観測の成果の中から、予知に係る部分のみを切り離しまして御指摘のような一元的な組織にするという考え方も一つあろうかと思います。しかし、現実にはまだ完成していないもの、しかも平常業務に並行して行われているものを切り離しますことは非常に大きな困難が伴うかと思います。しかし地震予知に関します中長期の分野につきましては、地震予知連絡会という場におきましてそれぞれの研究成果というものを持ち寄りまして十分な連絡、検討を行うことによって専門的、総合的な判断を行う体制をずっと続けておるわけでございます。  また、特定地域ではございますけれども、短期直前予知につきましても、御案内のように気象庁に各種のデータを集中することによりまして、そのデータ判断なり、情報の一元的な管理ということが行われておるところでございます。  そういう状況で、先般の測地学審議会の第四次の御答申の中にも、特に組織について云々という御提言はございませんでしたけれども、今後の問題としまして、こういったような地震予知技術の進展に合わせまして、御指摘のような予知体制の一元化を考えながら体制を整備するということの一つの御提言でございます。そういうことはどこの責任かということでございますけれども、いまの仕組みとしましては科学技術庁がお預かりしております地震予知推進本部において、関係省庁の計画等を調整される仕組みになっておりますので、その点につきましては科学技術庁の方にもよく伝えておきたいと思います。
  152. 永原稔

    ○永原委員 ありがとうございました。
  153. 川崎寛治

    川崎委員長 池端清一君。
  154. 池端清一

    ○池端委員 まず最初に、昨年八月七日以降の有珠山の災害に際しまして、降灰の除去を初め農地の復旧、治山、砂防等の応急工事が関係機関によって速やかに実施をされましたことについて、心から感謝を申し上げる次第でございます。  しかし、有珠山の噴火活動の現状は、総体的には鎮静化の方向に向かっていると言われておりますけれども、依然として地震、隆起、表面活動、これは続いております。六月の三日に噴火活動が再開をしています。自来今日まで噴火活動は大小数十回に及ぶ、こういう現状でございます。そのために、地殻変動によりますところの外輪山の崩壊また降灰によるところの山腹への堆積物が膨大な量になっておりまして、降雨等によって泥流災害が起こるのではないかということが懸念をされておったわけであります。その不安が、実は残念ながら現実のものとなってあらわれました。  これまでも幾たびか泥流被害があったわけでありますが、特に先ほどもちょっとお話がありましたように、十月十六日の降雨は、雨量はせいぜい二十ミリから三十ミリ程度でございましたが、この雨によって蛇田町、洞爺湖温泉街を初め、有珠山山ろくに過去最大の泥流が押し寄せてまいりました。特に、温泉街のほぼ全域が泥流の直撃を受けたわけであります。幸い、死傷者はございませんでしたけれども、本当に噴火以来の最大の被害、こういう状況になったわけであります。  今日まで、各省庁においてそれぞれ治山対策なり砂防対策が十分講じられておったはずなのに、こういうような被害が出たということは、今日までの工事に問題があったのではないかというふうに思うわけでありますが、今日までの対策、どのように進めてこられたのか、建設省、農林省、林野庁、それぞれの責任者の方々から、これまでの対策についての概要をまず最初にお伺いをいたしたいと思うのであります。
  155. 小藪隆之

    ○小藪説明員 お答えいたします。  昭和五十二年八月の噴火以来、たび重なる噴火によりまして、有珠山周辺では大量の火山灰が堆積したわけでございます。これらの火山灰の流出に伴う二次災害を早急に防止するために、林野庁と連絡調整を図りながら、砂防事業といたしましては砂防激甚災害対策特別緊急事業で対処することといたしまして、五十四年度完成目標に着手したわけでございます。  有珠山におきます砂防事業は、堆積した火山灰の流出を抑制するために上流部に砂防ダムを設置し、また下流部では流出した土石流を完全に下流まで流下させる流路工を設置しまして、火山灰の流出による二次災害を防止すべく、蛇田町、壮瞥町及び伊達市にかかわる西山川等八渓流におきまして鋭意実施中でございます。  すなわち、全体事業費は二十九億三千七百万円によりまして、ダム工十二基、土固め工一基、流路工三基の計画を策定いたしまして、五十二年度には八カ所、総額四億四千七百万円、五十三年におきましては十二カ所、総額十二億六百万円を実施いたしまして、五十四年度には総額十二億八千四百万円を投じて、当初の激特事業計画を完了する予定でございます。
  156. 高田徳博

    ○高田説明員 農地、農業用施設の災害復旧事業についてでございますが、昨年の有珠山噴火の直後の八月十五日から担当官を現地に派遣いたしまして、復旧の工法等につきまして指導を行いまして、査定も緊急に行うことといたしまして、昨年の八月二十三日から査定を実施いたしまして、十月三十日までには全部の査定を終了いたしました。  それで復旧事業でございますが、復旧事業の方につきましては、被災後の八月二十五日から直ちに着手いたしまして、農地の復旧につきましては、営農の面から実施時期をおくらせました一部を除きましては、今年の春作に支障のないようにすべて復旧を完了してございます。  復旧工法につきましては、農地の荒廃の状況、それから営農等から検討いたしまして、排除工法それから撹拌工法等、適切な工法で実施してきたところでございます。  また、農地保全の対策といたしまして、降灰等の流出によります再度の災害防止のために、農地保全施設の新設等を実施することにいたしまして、農業用施設につきましては、早期に復旧を進めておるところでございまして、五十三年度末にはおおむね全工事を完了する予定でございます。
  157. 江藤素彦

    ○江藤説明員 治山事業関係についてお答え申し上げます。  治山事業につきましては、昭和五十二年八月の噴火以来堆積いたしました火山灰が、降雨等によりまして泥流化し、人家、公共施設等に被害を与えるおそれのある荒廃林地につきましては、緊急治山事業等によりまして、泥流防止のための谷どめ工あるいは土どめ工、流路工、緑化工、そういった工法をもちまして、緊急に実施してまいったところでございます。  すなわち五十二年度について申し上げますと、緊急治山事業及び二次にわたります補正予算をもちまして、伊達市ほか三町村におきまして八十七カ所、総額にいたしまして十三億七千万円の治山事業を実施したわけでございます。  また五十三年度につきましては、建設省等関係省庁と連携をとりまして、治山激甚災害対策特別緊急事業等をもちまして、三十三カ所、六億八千万円の治山施設を実施してきたわけでございますが、本年六月中旬の降雨によりまして、新たに発生いたしました荒廃林地につきまして、七カ所ございましたわけですが、一億五千万円の緊急治山事業を実施いたしまして、二次災害の防止に努めてきたところでございます。  以上でございます。
  158. 池端清一

    ○池端委員 いま関係省庁から、これまでとってこられた対応策についてお話があったわけでありますが、実は今度の泥流被害では、通称全日空の沢というふうに言われておるところがあるのですが、この全日空の沢と木の実の沢の二カ所が実は泥流源になっているわけであります。この全日空の沢の真下にあります五階建ての町営住宅では、一階のベランダのすぐ下まで完全に土砂で埋まっている。付近には一抱えもあるほどの岩石や流木が横たわって泥流のすさまじさを物語っておるわけであります。住民の皆さんからお話を聞きますと、ごうっという音がした途端に泥流が押し寄せてきて、外へ避難する時間的余裕もなかった、こういうお話であります。このことはいまるる対策が言われておりますけれども、当初の道や国のとってきた災害防止工事に見込みの甘さがあったのではないか、こういうふうに思われるわけであります。泥流防止対策の根本的な見直しが今度の被害によって迫られているというふうに私は思うわけでありますが、これについて、また各省庁から今後の対策についてお尋ねをしたいと思うのであります。
  159. 小藪隆之

    ○小藪説明員 御指摘の十月十六日の土砂流出によりまして、これは現在行っております砂防激特事業の実施途中におきまして起こったものでございますが、昨年の噴火以来たび重なる噴火活動、地殻変動によりまして、特に有珠山北斜面において著しい降起状況変化が生じてきたわけでございます。このために現在有珠山周辺の渓流につきまして、火山活動による地形変化、降灰量、土砂流出の実態等の諸調査を実施中でございまして、その結果を踏まえまして早急に砂防ダム等の施設計画の見直しを検討いたしまして、流出のおそれのある火山灰につきまして排土工等の応急対策を実施するとともに、再度災害の防止を図るべく重点的に整備を進めてまいりたいと考えております。
  160. 高田徳博

    ○高田説明員 今回の泥流の被害につきましては、農業施設でございますが、北海道庁からの被害報告によりますと、農業用施設、これは排水路が二カ所、四百五十メートルの埋没、それから農地につきましては十・八ヘクタールの埋没という報告を得ているところでございます。  対策といたしまして、直ちに私どもの方の係官を現地に派遣して、道庁の方とともに被害の実態を把握させますとともに、応急復旧工事の指導にも当たらせたわけでございます。  応急対策といたしましては、埋まりました排水路の土石排除を早急に実施すること、それから泥流災害による被害を最小にとどめるために、すでに決定しております土砂だめの施設を早期に実施するというようなことで、指導をあわせて行ったところでございます。  今後の泥流防止対策につきましては、関係省庁及び地元関係者と協議いたしますとともに、学識経験者等の意見参考にいたしまして、その対策について検討してまいりたい、こう思っておるところでございます。
  161. 江藤素彦

    ○江藤説明員 有珠山の噴火活動につきましては、先生御指摘のとおり、本年八月に入りまして再び活発となりまして、これに伴いますところの地殻変動も生じてきておるわけでございまして、荒廃林地の状況変化を来したとの報告を受けまして、林野庁といたしましては、実は去る九月四日から六日にかけまして、林野庁治山課あるいは国有林担当の業務課の担当官を現地に派遣いたしまして、状況の把握あるいは復旧工法の指導に当たらせましたとともに、現地で関係省庁と防災工事についての調整を行ったり、当面するところの緊急な対処方針を決定したわけでございますが、現地ではさらに十月四日、五日の両日にかけまして担当者の調整会議を開きまして、具体的な工法調整につきましての協議を行ってきておるわけでございます。  この結果として、林野庁におきましては、火山灰の堆積、あるいはまた山地荒廃の状況とか、地形的因子、保全対象との関係を考慮いたしまして、国有林、民有林ともに、とりあえず緊要な個所について緊急治山事業で対処するということで実施してきておったわけでございます。しかしながら、またごく最近になりましての火山活動の実態につきましては、ただいま先生から御指摘をいただいたとおりでございまして、依然として地殻変動等をもたらしまして、いままでやってまいりました既定の計画の見直しを必要とする個所もあるというふうに思われるわけでございまして、さらに私どもといたしましても十分な調査をいたしまして、関係省庁と連絡を密にしながら重点的に治山投資を行いまして、災害の未然防止に努めてまいりたい、このように考えております。
  162. 池端清一

    ○池端委員 いま見直しが必要だというお答えをいただいたわけでありますが、これから何回も雨が降るわけでありますので、緊急にその見直しを行っていただいて、抜本的な対策を講じていただきたいと思うのであります。  そこで、建設省にひとつお尋ねをするわけでありますが、全日空の沢では高さ八・五メートル、長さ七十メートルと九十五メートル規模の大型砂防ダム二基があるわけでありますが、この合計貯砂量が約四万五千立方メートル、こういうことになっておるわけでありますが、今度の泥流被害でこのダムは土砂を支え切れなかったわけであります。降雨のたびに山はだが変化をいたしておりまして、泥流の危険個所が次々にふえているというのが現状でございます。このほかにも伊達、壮瞥、いろいろ二次災害が予想される危険個所があるわけであります。  そこで、砂防ダム中心の現在の治山工事だけでは今後の泥流発生の防止に対処できないのではないか。むしろ学者の方などの意見では、有珠山ろくに大規模な沈砂池を設ける、こういうような方法をとって泥流対策を講ずべきではないか、こういうような意見も言われているわけであります。この点については建設省としてはどのようにお考えでございましょうか、お尋ねをしたいと思います。
  163. 小藪隆之

    ○小藪説明員 御指摘の今回の泥流につきまして、先ほど申し上げましたように現在調査中でございまして、最も適切な方法で今後の対応策を考えてまいりたいというふうに考えております。  なお、具体的な問題につきましては、調査の結果を待ちたいと思いますので、よろしく御指導いただきたいと思います。
  164. 池端清一

    ○池端委員 二十ミリ、三十ミリ程度の雨でこんな状態なわけでありますので、もっと多量の雨が降ったらどういう状況になるのか、想像するだに身の毛のよだつ思いがするわけであります。  いろいろ御苦労願っておることは、地元ですから私も十分承知をしておるわけでありますが、率直に申し上げて、国有林は林野庁の業務部が担当している、民有林は同じく林野庁の指導部、農地関係は農林水産省の構造改善局の建設部、一般の砂防関係は建設省の河川局の砂防部、それぞれこの担当がばらばらになっておるわけであります。どうも地元の声を聞きますと、一元的になっていない。どうも対策が統一がとれていない、こういうきらいがあるのではないかという話もあるわけであります。  そこで、やはり何といっても国土庁が各省庁間の連絡調整をやるセクションでございますので、国土庁が中心になって各省庁間の連絡調整を図るとともに、一元的な対策を可及的、しかも抜本的に進めていくべきではないか、こういうふうに私は思うわけでありますが、国土庁はどうでしょうか。
  165. 四柳修

    ○四柳政府委員 御指摘の点、先ほど林野庁の方の御答弁の中にもちょっとございましたけれども、現場の具体的な施工方法ですとか、そういった問題につきましては、とりわけ砂防関係につきましては林野、建設両省庁が一緒になりまして、現地での折衝をいままでやってきたわけでありますけれども、なおかつ御指摘のような問題も起きているわけでございますから、私どもの方も実は道庁の方の関係各部課の御連絡ということもお願いしなければならないと思いますけれども、各省庁それぞれ現在調査をお進めになっておる状況でございますから、それらと道庁の調査状況あるいは連絡状況を見ながら、私どもの方でできることがございましたならば、そういったことにつきましても連絡調整の場を設けまして御協力申し上げたいと考えます。
  166. 池端清一

    ○池端委員 事柄は緊急を要する問題であり、事人命に関する問題でもございますので、早急な対策をひとつ講じていただくようにお願いをしたいと思うのであります。  そこで、気象庁にお尋ねをしたいのでありますが、有珠山の火山活動の今後の見通しについてであります。  最近の火山予知連絡会現地総合観測班のコメントによりますと、総体的には沈静化に向かっている、こういうことが発表されておるわけであります。しかし先ほど申し上げましたように、実際には依然として地震、隆起、噴火、表面活動、これが続いているわけであります。地元の住民の皆さん方としては、一体有珠山は今後どうなるだろうかというような不安な気持ちと、有珠よ早く静まれというまさに祈りにも似たような気持ち、これが交錯をしている毎日の生活を続けておるわけでありますが、有珠山の火山活動についての今後の見通しについて、ひとつお尋ねを気象庁にいたしたいと思うのであります。
  167. 末広重二

    ○末広説明員 御説明申し上げます。  最初に結論めいたことを申し上げさせていただきますと、ただいま先生御指摘になりました火山噴火予知連絡会の本会議が来週の月曜日に東京で開かれることになっておりまして、そこで大学で研究の先生方も交えてさらに詳しく検討いたしまして、恐らく統一見解という形になるかと存じますが、現在私ども関係者一同の間の判断は、有珠山の活動は沈静化に向いているということでございます。  先生、具体的に隆起、地震、表面活動等お挙げになりましたので、若干数字を挙げさせていただきますと、火山活動の度合いの基本的な尺度になります地震活動及び火口原内の新山オガリ山の隆起速度、ともに現在は昨年に比べますと十分の一に鈍化しております。それからまた、山ろくにおきます水平方向の変動も、昭和新山方面では現在停止したままでございます。  ただし、御指摘の表面活動が七月以来若干活発化いたしました。これは地下のマグマの上昇そのものは鈍化したのであるけれども、その一番上のマグマの面が表面にやや近づいたために、表面活動が一時活発化したということでございまして、これも九月以降鈍化いたしまして、十月は半ばやっと過ぎたところでございますが、表面現象は現在まで二日しかございませんでした。でございますから、表面現象も鈍化しているわけでございます。  こういった諸現象に基づきまして、冒頭申し上げましたような判断を私どもしているわけでございまして、今後基本的な状況変化のない限り有珠山は沈静化に向かうと申し上げてよろしいかと存じます。  なお、当然ではございますが、有珠山は活火山であることには変わりございませんので、今後とも常時監視ということは厳重に続けてまいるつもりでございます。
  168. 池端清一

    ○池端委員 次に、国土庁にお尋ねをいたしますが、地元関係市町村では、活動火山対策特別措置法に基づく例の避難施設緊急整備地域の早期指定を望んでおるわけでありまして、これまで再三国及び道に対して早期に指定をしてほしいという要請活動を続けているところであります。しかしいまだにその地域指定がなされていないわけでありまして、非常に残念なことだと思っておるわけであります。これでは仏つくって魂入れずということにもなりかねないのではないかと思うのでありますが、一体何が問題点なのか、検討の現状と指定時期の見通し等についてひとつお答えをいただきたいと思うのであります。
  169. 四柳修

    ○四柳政府委員 御指摘の活動火山法によります避難施設緊急整備地域の指定の地元の御要請につきましては、私ども十分承知しております。  何が問題点かというお尋ねでございますけれども、御案内のように、具体的に指定することになりますと、指定すべき地域の範囲をどうするかという問題が一つございます。これは現在指定しておりますのが桜島と阿蘇山でございますけれども、いずれも関係市町村の、いわば字単位に区切りまして、必ずしも行政地域全部という形で指定しておりません。ここら辺が、有珠山の周辺の関係市町村、御要望の市町村全部なのかどうなのかという問題が一つございますし、同じような市町村の中でも区域によっては外れるところがあるのではないだろうかという点につきましての地元関係市町村あるいは道庁との詰めが必ずしもまだとことんいっていないのではないだろうかという感じがいたします。したがいまして、その関係区域の中で整備されます施設の事業計画というものが、いわば目玉商品というような形での特定の道路の整備ですとか、幾つかの代表的な施設のお話は伺っておりますけれども、関係地域の計画的な施設整備というものがまだ固まっていないのだろうと思います。  そういった点につきまして、私どもの方も、せっかくの地元の御要望でございますから、これは御案内のように、指定いたしますと計画は道の責任において知事さんがおつくりになるわけでございますから、そういう意味で道庁の方とも十分御相談した上で、できるだけ地元の御要望に沿えるような方向で連絡してまいりたいと思います。
  170. 池端清一

    ○池端委員 時間がございませんので最後に長官にお尋ねをしたいと思うのであります。  先ほどから有珠山の泥流災害について申し上げたわけでありますが、噴火は天災でございましても、二次災害ということになればこれは天災ではなくて人災だ、こう思うわけであります。地元の住民は昨今避難訓練を繰り返す毎日だということでございまして、地元住民の不安を取り除き、そして地元の住民の皆さん方の生命、財産を守る、これが今日非常に重要になってきておるわけであります。昨今有事立法論議なんかも盛んでございますが、私はかねがね申し上げておりますように、真の国防というのは災害から国土を守り、住民の生命、財産を守ること、これがもう真の国防ではないか、こういうふうにも思うわけであります。そういう意味で、先ほど来関係省庁の前向きな答弁がございましたけれども、二次災害防止対策について長官としての所信を最後に承っておきたい、こう思うのであります。
  171. 櫻内義雄

    ○櫻内国務大臣 有珠山の降灰に伴います泥流災害はあらかじめ予測されておる事態でございます。私どもも現地を視察して、どなたもその事実を指摘しておりました。ただ、今回の泥流災害にかんがみまして、その対策が十分な成果を上げなかった、これはまことに申しわけないことであって、関係省庁がこの対策について一生懸命やったことは事実なんですけれども、きょう御質問の中でも明らかなように、予測したことと実際との乖離があった。こういう点につきまして今後十分な対策を講じて、地域住民の皆さんの御心配のないように努めるべきである、対策にせいぜい努力をいたします。
  172. 池端清一

    ○池端委員 終わります。
  173. 川崎寛治

    川崎委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十五分散会      ————◇—————