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1978-10-12 第85回国会 衆議院 公害対策並びに環境保全特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年十月十二日(木曜日)     午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 久保  等君    理事 相沢 英之君 理事 池田 行彦君    理事 登坂重次郎君 理事 林  義郎君    理事 島本 虎三君 理事 水田  稔君    理事 中井  洽君       高村 坂彦君    戸沢 政方君       西田  司君    橋本龍太郎君       福島 譲二君    土井たか子君       馬場  昇君    坂口  力君       東中 光雄君    工藤  晃君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 山田 久就君  出席政府委員         環境庁長官官房         長       正田 泰央君         環境庁企画調整         局長      上村  一君         環境庁企画調整         局環境保健部長 本田  正君         環境庁大気保全         局長      山本 宜正君         環境庁水質保全         局長      馬場 道夫君  委員外出席者         内閣官房内閣審         議官      末次  彬君         特別委員会第一         調査室長    綿貫 敏行君     ――――――――――――― 九月二十一日  水俣病問題総合調査法案馬場昇君外二名提出、  衆法第一号) 十月二日  水俣病認定業務促進に関する臨時措置法案  (坂田道太君外九名提出衆法第二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 十月九日  公害監視等設備整備事業に対する国庫補助の拡  充強化に関する陳情書  (第九一号)  二酸化窒素環境基準緩和反対に関する陳情書  外二件(第  九二号)  伊勢湾・三河湾の赤潮防止対策に関する陳情書  外一件(第九  三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  公害対策並びに環境保全に関する件(水俣病問  題)      ――――◇―――――
  2. 久保等

    久保委員長 これより会議を開きます。  公害対策並びに環境保全に関する件、特に水俣病認定に関する環境事務次官通知について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。馬場昇君。
  3. 馬場昇

    馬場(昇)委員 石油ショック以来、政府公害環境行政後退後退を重ねておるというような批判がございます。特に、山田長官の最近の環境公害行政につきましても、後退をしておるのだという批判があるわけでございますが、私は、まず第一点として、大臣水俣病行政についての基本姿勢についてお尋ねをいたしたいと思います。  大臣水俣病ネコ実験のフィルムをごらんになったことがございますか。ネコが発狂したようにぴょんぴょんはねながら狂い死にをした、その模様がはっきり出ております。水俣地方漁民は、きのうまで一生懸命漁をしておりながら、ときに私のような大きい体の漁民も私は見ましたけれども、一日に五十回も六十回もけいれんを起こすのですよ。布団から落ちるようなけいれんをして、そして最後には死んでいきました。  胎児性水俣病患者を、大臣ごらんになったことがありますか。生まれながらにして、お父さん、お母さんも何も言えない、耳も聞こえないのですよ。目も見えない。まさに生けるしかばね、植物人間と言われながら生きてきて死んでいったわけでございます。こういう事実を大臣ごらんになったことがあるのか、どう考えておられるのか、まず感想を聞きたい。
  4. 山田久就

    山田国務大臣 ただいま映画等お尋ねがございましたが、書き物その他では、いろいろの困難、苦境にある状態、その他私も詳細読ませていただいて承知いたしておるつもりでございます。  この水俣病公害の原点、こう言われておりますが、まさに水質汚濁というものによって起こされた非常に悲惨な、そして真剣に患者の身になって考えなければならない重要な一つ公害事例であったというふうに私は認識いたしております。  したがいまして、この水俣病患者に対しましては、無論、まず第一にその治療というものを行って、そして早くその苦痛を取り除いてあげるということが本来ならば出発点の第一でなければならない、こういうふうに考えまするけれども、残念ながら今日までの科学知識努力というような点によりましては、適切なる治療方法というものがまだ見出されていないという状況でございます。こういうことに対処するために、水俣病研究所等もつくって、何とか少しでも治療方法の手がかりでもという努力をいたしておりまするけれども、結果が出ていないことは御案内のとおりでございまして、これは非常に残念なことだと考えます。そうなれば、いまの患者救済ということに重点が置かれなければならないということは当然でございまして、公正な、そしてできるだけ早い時期において患者救済というものが実現されるようにやらなければならない、私もこのことについては常々憂慮しているところでございます。  ただ、実際問題として、あらゆる方法を考えておりまするけれども、救済という点になりますると、健康被害補償ということについての支払いの基本的なたてまえというものもございますし、そういうことになってくれば、やはりこの認定ということも当然介在してこなければならない、結局、経済上の負担を課するという問題になりまして、その点、政府の方としてもその義務を課せられているわけでございますけれども、(馬場(昇)委員「そこまで聞いていないのだ、一つ一つ聞きますから」と呼ぶ)十分それに対処し得ない点は遺憾でございます。この間において、無論行政としては……(馬場(昇)委員「いやそれは後で聞くのですよ、知っているかどうかということを聞いている」と呼ぶ)そういう点はいま申し上げましたように、私は詳細読みまして承知いたしております。
  5. 馬場昇

    馬場(昇)委員 悲惨な状況書き物で知っておる、一口で言えばそういう答弁でございました。私は、そこから水俣病行政の間違いを犯しておるのではないかと思うのです。  大臣昭和三十一年ですよ。昭和三十一年の五月にチッソ付属病院が熊本県の保健所に奇病発生の報告をしておるのです。三十一年です。今日、それから実は二十二年たっておるわけでございますが、その間、国や県や市は何をやったか。水俣病を隠蔽しただけじゃなかったですか。患者を差別した、あるいは運動を弾圧した、その歴史であったと言っても私は言い過ぎではないと思うのです。三十一年に奇病発生が報告されましてから何と七年たちました三十八年の二月に熊本大学が、水俣病原因有機水銀化合物であるというような統一見解を発表いたしました。これまで七年かかっているのです。それから、四十三年五月になって初めて、十二年たって初めてチッソ水俣工場はアセトアルデヒドの製造を中止しているのです。そして四十三年九月に政府厚生省が、水俣病原因チッソ水俣工場排水中の有機水銀である、こういうような政府統一見解を発表しております。これまで十二年間かかっているのです。原因究明まで七年、政府統一見解まで十二年かかっている。  これは石原環境庁長官も言ったのですけれども、本当に政府対応が、行政対応が適切であり、熱心であり、親切であれば、患者は百人で済んだかもしれない。それが、行政の打つ手がまずくて、千人になりあるいは万人になる、こういう状態政府が引き起こした、行政が引き起こした。そしてまた今日、その深さ、広さというのは、はかり知れない、その実態さえもわかっていない、こういう状態なんですよ。長い答弁は要りませんけれども、石原長官も言いましたように、政府行政対応がしっかりしておれば百人で済んだかもしれない、それがそうでなかったから千人にもなりあるいは万人にもなろうとしておる。責任を痛感しておる、こういうことを石原さんは言いましたが、山田さんはこれについてはどうですか。
  6. 山田久就

    山田国務大臣 私は、いまから顧みて当時のことをとやかく言うことはあるいは差し控えたいとも思います。しかしながら、行政対応というものが必ずしも十分でなかった、顧みてそういうような点があったかと思います。そういうことから生じた事態というものに関しては、その反省に立って、そうしてこれに処置をしなければいかぬ。むろん、この間、科学進歩というものがそういうところへなかなかいかなかったという点もあろうかと思います。また、決定というものがもたらすいろいろな法律上の責任、その他、他人の権利義務関係ということからいうと、考えてもこれについてはなかなか慎重を要せざるを得なかったという事情もあったかというふうにも思います。ただ顧みて、繰り返しのようですけれども、もっとこうできたんじゃないかという点は、やはりよく反省してみる必要があるという立場に立って対処していかねばと思っておる次第でございます。
  7. 馬場昇

    馬場(昇)委員 あなたはいま、反省はしておるということは言われました。しかし、科学進歩云々だとかあるいは慎重に云々だとか、こういうようなことを雷われましたけれども、実際問題として、奇病といわれたときにチッソネコ実験をやったわけですよ。このネコ実験チッソ行政ぐるになって隠蔽したじゃありませんか。隠したじゃありませんか。  次に、長官政府原因究明に当たって御用学者等を使って、チッソ原因はないんだ、あそこに戦時中爆弾を落とした、その爆弾がどうかしてこうなったんだろう、そういうような結論を出してみたり、原因究明をサボッたじゃありませんか。隠蔽しようとしたじゃありませんか。こんなのが科学ですか。科学進歩関係がありますか。漁民がその恐ろしさをはだで感じて、チッソからの排水だと思ってチッソに押しかけた。その漁民に対して刑事弾圧を加えていたじゃありませんか。これが慎重ですか。科学と何の関係がありますか。  寺本知事は、これは知事ですけれども、見舞い金契約というものをチッソ患者に結ばせて、人の命の値段を四十万円にして、その見舞い金契約の後に何と書かせたか。原因チッソにあったにしてももう文句を言いません、これが慎重な行政ですか。そのころもうちゃんと原因チッソだとわかっていた。なのに、チッソ原因があるとわかっても見舞い金協定で四十万円で命の値段をつけて、原因がわかってももう文句を言いませんという見舞い金契約書を書かせたじゃありませんか。  さらに、厚生省はどうしました。その補償の問題が出た。厚生省は、この補償問題は厚生省に一任しなさい、そうしたら補償問題を解決してやるぞ。そのために厚生省に一任するか一任しないか患者は迷い、患者は分裂したじゃありませんか。そしてまた行政は、県も市もあなた方も一緒になって患者を幾つかに分裂させた。チッソぐるですよ。それで一部の患者だけに、たとえば東京陳情に来るのに旅費を払ってみたり、一部の患者には全然見向きもしない、申請の手続も教えない、こういうことをやったじゃありませんか。  こういう中で患者さんたちがみずから民事訴訟を起こした。そして東京駅の前のチェソの本社に座り込みながら、鉄格子を閉められながら補償協定の闘いをやって、いま適用しておるのは法律じゃないですよ。みんな患者さんみずからとった補償協定補償は行われておるのですよ。行政が何を、どの法律がいま患者救済をやっていますか。  そしてまた、抑えられて抑えられて申請できなかった。それが申請を始めて五千人もいまたまっておる。それを認定制度という壁で抑えて、遅々として認定が進んでいないじゃありませんか。そのことは裁判所から、行政がやるべきことをやらない、不作為の違法だという判決を受けておるじゃありませんか。こういうことをやっておる。そして石油ショックが出た後、第三水俣病、これを行政の力でシロときめつけて、それからこっちずっと水俣病行政後退させておるじゃありませんか。こういうことがあなたが言う慎重ということか。科学的にどうもそこまでいかなかったということとこのことが合致しますか。このことについては、三木環境庁長官石原長官もその非を認め、反省をし、責任を明らかにして、患者国民の前に陳謝をしますと言って陳謝したではないですか。  もう一回聞きますけれども、あなたは行政の非を認め、反省をし、責任を認めるのか。多くは言いません。責任を認めるのかどうか、この経過に踏まえてはっきりお答えいただきたいと思うのです。
  8. 山田久就

    山田国務大臣 この水俣病に対処するその間の経過において、行政上の対応が必ずしも適当でない面があった、顧みてそういう面があったということについては、その反省について先ほどお話し申し上げたとおりであります。しかしながら、これは協定と申しまするけれども、その前提としては、やはりどうしても認定というものなしにその私法上の責任というものを課するということは、元来、こういうものの根本に対処する方法として健康被害補償法というものを政府がつくり、そして行政としてこのものに対処をする道も開きながら進んできた政府措置の一環としては、やはり残念ながら通らなければならない道であったという点については御了解いただけるのじゃないか、こう思うのです。したがいまして、この間において認定促進ということ、このことはわれわれ自身も非常に悩んでおって、したがってそれに対応すべき措置というようなこともいろいろ苦慮いたしております。多くの事実上の難関というものがいろいろ重なっている点を超えてということで、たとえば新しい法律措置によってこの間の突破口を開く等の措置もやってきておりますし、さらにわれわれの協力といたしましては、先ほど申し上げました研究所設置、あるいは症例研究班設置、あるいは新しい測定器械、あるいはこの間における器械というものをいろいろ入れる等、細かい点ではございまするけれども、対応可能な点についてはできるだけこれに対処しようということで進んできているつもりでございます。  いまの段階において、全面的に責任というものを認めてやるかどうかというその問いでございまするけれども、われわれはこの点についての対応方法反省もし、そういう意味においての責任というものも感ずる点がある。しかしながら、そういうところで対処しようというのがいまの私どもの態度であるという点について御了解を得たいと思います。
  9. 馬場昇

    馬場(昇)委員 私が言っておるのは、さっき時間をとりましたけれども、多くの例を申し上げました。そして、結論として押しつぶすような態度をとったじゃないかというようなことを質問の中で私は言ったのです。あなたのいまの答弁を聞いておりますと、通らねばならない道であったとかなんとかちょっと言われたわけですけれども、問題は、はっきりここで質問しますけれども、三十一年から二十二年たっている。この二十二年の経緯の中であなたは反省すると、いまはっきり言われた、これは了解いたします。しかし問題は、行政責任というのがあるのかないのかということをはっきり聞きます。あるならあると答えてください。ないと思っておったらないでも結構です。だから、この二十二年間の経緯について行政責任があるのかないのか、そのことだけ端的に答えてください。
  10. 山田久就

    山田国務大臣 いまから顧みて、先ほど申し上げましたように、対応にもっとこうすればよかったというような不足した点、そういう点を責任と言えばそういう点はあったかと思う。  ただ、先ほど御指摘がありました、あえてチッソと結託してこれを隠そうとしたじゃないか、つまりそういう意味故意責任というようなものがあった、これは私はその点の過去の経緯はそのようには聞いておりませんので、それは私は行政に対する過大な非難じゃないか、こういうふうに思います。これは事実の問題でございまするので、後刻またそういう面についての解明の機会というものをひとつ持つことが適当かと思いまするけれども、そういう積極的にこれを回避し、遷延しという行政上の故意責任というようなものはなかったんじゃないか。その間においては、なるほど足らざるという点について、顧みてそういう面では私は善意についての責任は感じておる点はあろうと思います。しかしながら、いま御指摘のあったような積極的な面での責任ということを仰せられるなら、そこまでのことは追及するのは無理なんじゃないかということを申し上げたかったわけでございます。
  11. 馬場昇

    馬場(昇)委員 あなたはいま行政がやるべきだというようなことでやらなかったという、足らない点があった、それには責任を認める。しかし、チッソぐるになりあるいは行政がやるべくしてやらなかった、押しつぶした、こういう点はなかった、だから責任を感じない、こういうような答弁をいまなさったわけでございますけれども、長官、それでいいんですね。
  12. 山田久就

    山田国務大臣 見方によってとりようということもあろうかと思いまするけれども、しかしながら、私が今日まで説明を受けている点は、そういう積極的な故意というものはなかったというふうに了解しておりまするので、その点を素直に私が申し上げたわけでございます。
  13. 馬場昇

    馬場(昇)委員 時間がありませんからここで一々申し上げませんけれども、では大臣、あなたは積極的に押しつぶしたとか、あるいはいろいろ不作為とか、こういう点には責任はないとおっしゃったわけですけれども、個々の点がたくさんあるんですが、これは時間がありませんから言いませんけれども、ではいまから私が一つ一つ事例を持ってまいります。それについて責任があるかないかということをあなたに問います。きょうは時間がないから、この問題については、いまから私が一つ一つ事例をあなたに持ってくる。それについて、あなたが私並びにこの委員会責任があるかないかという点についてお答えをいただきたいということについて、あなたにここで約束をしておいていただきたいと思うのですが、どうです。
  14. 山田久就

    山田国務大臣 誤り、それが事実であれば、そのことについてわれわれの対処する道を講ずる、これは当然だと思います。事は事実の認定に関する問題のようでございまするので、その点については十分わが方としてもわが方の資料で隔意なくその間のものを照らし出してみるということについては、無論私は全く異存はございません。
  15. 馬場昇

    馬場(昇)委員 時間がありませんので、これは個々の事実について大臣責任問題を詰めるという約束がとれましたのでこれで打ち切りたいと思いますが、そこで大臣にもう一つ。  あなたが大臣になられました後、四月に、私はこの委員会で、水俣病行政というものは患者の心の上に行政を打ち立てなければ行政は進展しないんですよ、二十二年の歴史というのはこれを物語っておりますということを言いまして、それで、患者の心を知るということは、水俣にあなたが行って患者とじかに接して心を知ることが行政の一番基本です、環境庁長官としての基本姿勢ですよ、行きなさい、行ってくださいと私は言いました。あなたは四月に、水俣に早い機会に私は行きます、それで患者の心をもって環境庁行政をいたしますと私に約束された。行かれないんですよ。私はそのことを患者さんに言いましたよ。山田長官が来ると言っておられる、あなた方の心を話してくださいと言いましたよ。待てど暮らせどあなたは来ない。そこで私は、六月の十六日の本委員会で再び、あなたは行くとおっしゃったじゃないですか、まだ約束を守っていない、行きなさいよ、いつ行くんですか、こういうことをあなたに質問したところが、あなたはできるだけ早い機会に現地に参りますということを再び私に約束された。これは六月十六日でございました。国会も終わったんですよ。あなたは今日まで水俣に行っておられないのです。私に対する約束、本委員会国民約束をしたことを守らないじゃないですか、あなたは。約束を守らないような人をだれが信用しますか。守れなかったならば、何で私に、あるいは水俣患者さんたちに、住民に、あるいは国民に対して、こういうことで行けなかったんですよと謝らないのですか。私はそのことについてあなたのお考えも聞きたいし、ここで再び患者の心の上に立った行政をする、すべきだというあなたの強い決意を聞いておきたい。
  16. 山田久就

    山田国務大臣 水俣に出かけてまいりまして、そうして患者皆様方と話し合う、その機会をぜひ持ちたいという気持ちは今日においても変わりありません。ただ、その話し合うということは、ただ会うということが目的じゃなくて、その心というものを虚心坦懐に話し合える、そういう環境条件が必要であろうか、私はこう思います。国会関係その他の関係でずれておりましたにもかかわらず、私はその気持ちは変わらなかった。しかしながら、東京で起こった不幸な出来事、そのことのために、いわば患者の一部の人であるかどうかわかりません、しかしながら、そうやって素直に会って話せるような、つまり環境というものが保証されていないという判断の中に立たされた。これは残念なことであったかと思います。行く以上は、すべての人にそういう環境で会いたい。しかしながら、会ってくれるであろう人だけに会って、会わないであろうあるいはけんか別れのところには会わない、そういうことであってはならないし、いわばそういう点についてどう対処すべきかということは私自身も非常に悩んだことの一つであったけれども、そういう環境というものそのものが、つまり、まだ心が閉ざされて、開かれるということが、話し合いができるという状態が保証されていなかったということがこれを妨げたことであった。この点は、私自身も今日も非常に遺憾だと思っております。
  17. 馬場昇

    馬場(昇)委員 あなたは何ということを言うのですか。自分の行かなかったのを、約束を破ったのを、相手に、患者責任をなすりつける。何事ですか、あなたは。私はそういう物事の解決のために行けと言ったのじゃないじゃないですか。何もみやげを持つとか解決の舞台を持たなくてもいいのですよ。三木さんだってそうじゃありませんか。いまの条件よりまだひどいような条件だったですよ。あの人は行ったじゃないですか。石原さんだってそうでしょう、行ったじゃないですか。あなたは三木さんや石原さんより特に忙しいのですか。話し合える条件がないとは何事ですか。三木さんだって石原さんだって、みやげはほとんど持っていきませんでしたよ。そうして、攻撃されようが非難されようが当然のことですよ。それで、ひざ突いて話し合おうが、たくさんの人が押しかけようが、そんなことを——それも心じゃありませんか。それで行かれたのですよ。あなたは行ってないじゃないですか。それを話し合える状態がなかった——何です。話し合えないような状態も心なんですよ。だから、あなたがいままさに行かなかったという責任患者になすりつけるのは許せない。約束を、私に対する約束もした。実行できなかった、済まなかった、申しわけないと謝りなさい。
  18. 山田久就

    山田国務大臣 私は行くつもりであるということは率直に申し上げました。そういう意味において、それが果たされなかったということは私自身も非常に残念に思っておりますし、それを約束と受け取っていただいて、あれしなかっての私に対するいまの御批判、まさに私の不徳のいたすところと思って、この点は深甚なる謝意を表したいと思います。  ただ、私、会えば実りある環境でと、いわば交渉というようなことで生活をしてきた長い過去の自分の考え方から固まったもので物を判断したのかどうか知りませんけれども、話す以上は実りあるものを保証された環境で、この気持ちが、自分というものを、この約束を実現させないでいったということを率直にいま申し上げたわけであるので、この点はひとつ御理解いただきたいと思います。
  19. 馬場昇

    馬場(昇)委員 理解はできない。行けば実りある——二十二年間も実りがないのですよ。あなたが行って実りあるとはどういう条件ですか。私が言うのは、実りあるなんかで行けと言っておるのじゃないですよ。実情を見なさいと言っているのですよ。あなたは何ですか、ちょうど外交交渉に行くような気持ちじゃないですか。この前、あなたにはそのことを注意したはずですよ。患者さんといろいろ話し合いをする、あなたの話を聞いていると、外交交渉みたいだ。私は大きい声を出して言ったでしょう。患者は日本人ですよとあなたに言ったじゃないですか。あなたは確かに行かなかったのはまずいと謝られました。これはいいと思うのです。しかし、いまあなたがつけ加えられましたのを聞いておりますと、交渉に行って実りあるものを持ってこいと、それがないから行かなかった。そんなつもりで私は行けと言ったんじゃないですよ。本当に実情を知ってくれ、対策を立てる必要なんかないですよ、あなたの目と心で見てくださいと言っただけの話ですよ。そのことを誤解しないでください。そういう意味で、あなたはいつまで続くか知らぬけれども、もう議論したってしょうがないけれども、行きますか。いま私が言ったような条件気持ちの中で、行きますか。聞いておきます。
  20. 山田久就

    山田国務大臣 実りあるということを申し上げたのは、ちょっと誤解があるんじゃないかと思う。私は何も、何かのみやげができなければ、そんなことを考えているのじゃありません。率直にその状態を見るなり、そういう状態であっても、そういうことがやはり、たとえそれが非難に終わろうとも、そういう意味で素直な皆さんの気持ちが感じ取れるような環境、こういうことを申し上げたので、その点はどうか御理解いただきたいと思います。
  21. 馬場昇

    馬場(昇)委員 もういいから、行きますか。行くかどうか答えてください。
  22. 山田久就

    山田国務大臣 今日においてもその気持ちは、行こうという気持ちには変わりがありません。
  23. 馬場昇

    馬場(昇)委員 大分あなたは行く条件をいろいろ言ったけれども、それは納得できないけれども、時間の関係で、行くという気持ちは変わりないという話だから、行ってください。  そこで、次に移りますけれども、この間、五十三年七月三日の時点でいわゆる新次官通達が出ました。この新次官通達を出した目的は何ですか。
  24. 本田正

    ○本田政府委員 ことしの七月三日に、御指摘のように、新しく水俣病認定促進についてという次官通知を出したわけでございますが、昭和四十六年八月七日でございましたか、初めて認定に係る次官通知を出したわけでございます。それ以降、いろいろな機会にいろいろな形で明らかにいたしてまいりました水俣病の範囲に関しますところの基本的な考え方というものを、ここで次官通知を出すことによって再度確認いたしたい、そういう目的で整理、統合したことが一つでございます。  それから、去年、いろいろ学者の先生方の御意見を集約いたしました後天性水俣病の判断条件というものを環境保健部長の名前で通知いたしました。去年の七月でございます。一年たちまして、その経験を踏まえまして、通知によりますと、これを参考にされたいという通知でございました。これを次官通知に格上げすることによりましてこの判断条件にのっとらせるという目的が一つございます。  それから、処分に当たって留意すべき事項を再度明確にする必要がございますので整理したものでございます。
  25. 馬場昇

    馬場(昇)委員 いまの答弁と、その新次官通達なるものの前文に「再度明らかにするので」ということを、いまも使われましたし、前文にも書いてあるが、そして、これは従来の通知を再確認するということと、格上げをするということ、そういうことで再度出したのだというようなことを言われたのですけれども、そうしますと、この新次官通知というのは従来の通知と変わらないのですか、変わるのですか。
  26. 本田正

    ○本田政府委員 水俣病の範囲に関します基本的な考え方につきましては、変わりはございません。
  27. 馬場昇

    馬場(昇)委員 そういたしますと、いまあなたも言った昭和四十六年の次官通知、同年の保健課長の文書、さらに五十二年の保健部長の「後天性水俣病の判断条件について」という通達文書、いま三つ挙げました、これと変わっていないのかということをもう一度。そして、その三つの通知は現在も生きておるのか、生きていないのか、これをお答えください。
  28. 本田正

    ○本田政府委員 四十六年の通知と昨年出しました判断条件についての通知と今回の事務次官通知につきましては、もちろん表現が変わっているところはたくさんございます。たとえば医学的な用語を統一したとか、あるいはその考え方をその後の医学の進展を踏まえて整理したということはございます。しかしながら、申し上げましたように、水俣病の範囲に関しましての基本的な考え方については変わってないのでございまして、その点お含みおきいただきたいと思います。
  29. 馬場昇

    馬場(昇)委員 範囲については基本的に変わっていないということをいまおっしゃいました。表現は変わっておる、こういうぐあいにおっしゃったわけでございますが、もう一つ話を進める前に、いまお答えがなかったのですけれども、前の三つの通知とか文書、これは生きておるのですか、死んでいるのですか、そのことを聞きたいのです。
  30. 本田正

    ○本田政府委員 四十六年の通知は、新法と言っております現在の救済法ができる前の通知であったわけでございます。今回まとめました七月に出しました次官通知は、当時旧法から新法に変わりますときにその必要があったわけでございますけれども、それにかわると申しますか、次官通知でございます。申し上げましたように、一番重要な水俣病の範囲に関します基本的な考えを変えておりませんので、旧次官通知は生きているのか死んでいるのかというお尋ねでございますならば、現在も生きておりますが、新次官通知に実質的には包含しているものと解しております。
  31. 馬場昇

    馬場(昇)委員 これは保健課長の通知、部長の通知、これも生きておって今度の中に含まれておる、いま次官通知だけおっしゃいましたけれども、課長のものも部長のものも生きておって現在の中に入っておる、こう考えていいのですか。
  32. 本田正

    ○本田政府委員 説明を落としましたけれども、昭和四十六年の事務次官通知の直後に解釈をめぐりましていろいろ混乱がございまして、当時の公害保健課長通知というものを出して考え方を整理いたしました。その後にいろいろとまた医学の進展等もございまして、申し上げましたように昨年の七月に「後天性水俣病の判断条件について」という部長通知と今度の次官通知、この四つの次官、課長、部長、次官というふうな通知があるわけでございます。  それぞれの通知と申しますのは、その時点、時点におきましていろいろな疑義があったことにつきまして、また、水俣病の範囲に関しましてのいろいろな知見をその時点なりに取りまとめたものでございます。そういったことにおきましては、過去における通知の内容というものは現在の新しい次官通知の中にすべて包含していると存じております。
  33. 馬場昇

    馬場(昇)委員 この新次官通達が出ましたときに、信澤次官は、あなたはまだいま答弁をしていないけれども、前のいろいろな通達があった、これだけじゃなしに、大臣国会答弁などを整理しということを次官として発表なさっておるのです。大臣国会答弁などを整理したということを信澤さんは言っております。あなたのいまの答弁には出ていないのですけれども、これはどうですか。
  34. 本田正

    ○本田政府委員 昭和四十六年から現在に至ります水俣病の範囲の基本的な考え方については変わらぬと申し上げましたけれども、その間に実はいろいろ経緯がございまして、これを概略御説明させていただきたいと思います。  四十六年に通知を出しましたのは、それまで旧救済法の法の精神というものが十分に審査会等に徹底されていなかったというきらいがございまして、四十六年に次官通知を出したわけでございます。その中で幾つか問題になったものの中の一つの大きなことにこういう表現がございます。「当該症状が経口摂取した有機水銀の影響によるものであることを否定し得ない場合においては、」という文言がございまして、この「否定し得ない場合」という文言につきまして、実は当時大変な誤解といいますか、とりようによっていろいろ誤解があったわけでございます。「疑わしきは救済」ととられましたり、あるいは「疑わしきは救済」ということに相なりますと水俣病でない人が水俣病認定されているのじゃないかとか、いろいろ問題があった。そこで、先ほど申し上げました一カ月後に公害保健課長通知を出しまして、この「否定し得ない」というものはこういう意味だということをその課長通知で言っているわけです。「認定申請人の示す症状の全部または一部が「有機水銀の経口摂取の影響によるものであることを否定し得ない」」こういう言葉につきまして、どうするかということについては、「水俣病に関する高度の学識と豊富な経験」によるのだ、いわゆる医学的な判断によるんだという通知がこの課長通知でございます。そういうふうに四十六年通知を補完したといいますか、説明した、そういうことに相なっている。それでもなおまた、その後現在に至りますまでいろいろ疑義が渦巻いておりまして、考え方がなかなかすっきりしない。各学者、それから……
  35. 馬場昇

    馬場(昇)委員 経過は私は知っているのです。だから言いたいのは、大臣国会答弁を整理したとおっしゃったから、そうですかということを聞いているのです。
  36. 本田正

    ○本田政府委員 失礼しました。そういう背景がございまして、そしてその疑義を解くために、四十七年の三月でございますが、当時の大石長官国会におきまして「疑わしい」という言葉の解釈につきまして御答弁をなさっていることを先生いま御指摘だと存じます。いわゆる「疑わしい」という言葉には、医学的な疑わしいという言葉とそれから俗に使う言葉がある。少なくともこの通知で示している……
  37. 馬場昇

    馬場(昇)委員 私は、大臣答弁を整理したかしないかということを言っているだけですよ。まだ中身を聞いていないのです。したならした、せぬならせぬでいいんですよ。時間がたつだけだよ。
  38. 久保等

    久保委員長 端的に答えてください。
  39. 本田正

    ○本田政府委員 失礼しました。大臣答弁及びその後の国会答弁を整理いたしまして、今度の事務次官通知に入れております。
  40. 馬場昇

    馬場(昇)委員 そうはっきり言えばいいんです。  じゃ聞きますけれども、いつの大臣答弁を整理したのか、何月のいつの答弁だと言ってください。
  41. 本田正

    ○本田政府委員 昭和四十七年三月の国会における大石長官答弁でございます。
  42. 馬場昇

    馬場(昇)委員 じゃ、その四十七年の大石長官答弁を整理したのが、この新次官通達のどこに載っていますか。
  43. 本田正

    ○本田政府委員 大石長官答弁は「否定し得ない」ということの解釈を述べられた答弁でございます。その答弁の趣旨は、今度の次官通知の中には、その答弁そのものがもちろん載っておりませんけれども、高度の学識と豊富な経験によって総合的に水俣病というのは判断するのだ、そしてその「蓋然性が」という言葉を使っておりますけれども、それが高いと判断された場合に水俣病認定する、そういう言葉に置きかえられております。
  44. 馬場昇

    馬場(昇)委員 あなたの答弁は間違っているのです。大石さんは四十七年の三月十日、この公環特で答弁をしていますけれども、あなたが言ったのはこれを整理していないですよ。あなたたちが整理したというのは五十二年の三月十一日、予算委員会の分科会で当時の野津部長が答弁したのをそのまま書いているじゃないですか。あなたはいま大臣国会答弁を整理したと言っております。大臣国会答弁は整理しなくて、野津部長の国会答弁をそのまま載せておるじゃないですか。違うじゃないですか。
  45. 本田正

    ○本田政府委員 大臣国会答弁は四十七年の三月、その後にいま御指摘ございました五十二年の三月に政府委員からの答弁がございまして、そこに蓋然性という言葉が初めて出てくるわけでございますが、大石長官の御答弁の内容は、蓋然性という言葉こそお使いになっておりませんけれども、先ほどからちょっと長くなって、おしかりを受けながらも申し上げましたゆえんのものは、否定し得ないから、大石長官答弁、それが蓋然性ということに、言葉の表現は違いますけれども、蓋然性という言葉は後で出てまいりましたけれども、そういう意味においてつながっている。したがって、大石長官の御発言、御答弁というものも蓋然性の中に含まっている、同じことである、端的に申し上げれば同じことであるという意味でございます。
  46. 馬場昇

    馬場(昇)委員 あなたは間違いを答弁しているんです。私はこういうことがあるからと思って念を入れて質問しているんですよ。大臣答弁を整理したかと言ったら、あなたは整理したと言う。整理していないのですよ。大石さんの答弁には蓋然性という言葉は出ていない。四十七年ですよ、大石さんは。五十二年になって野津さんが蓋然性というのを初めて使っているんですよ。これは大臣答弁の整理ではなしに野津部長の整理じゃないですか。それは間違いなんですよ。  それから、あなた方この通知を出したのに、後でちょっと質問いたしますけれども、促進するということを言っておるんですよ。大石さんの答弁をこれに整理すれば促進になるかもしれない。ところが野津さんの蓋然性という抽象的な言葉を使ったら促進にはならない。そこであなたが、精神は変わっていないけれども表現が変わっておると言うのは、ここで物すごく精神が変わっておるのです、あなた方の今度の通達というのは。  ちなみに申し上げますが、大石さんは何と言ったかといいますと「私が疑わしきものは救済せよという指示を出したのでございますが、これは一人でも公害患者が見落とされることがないように、全部が正しく救われるようにいたしたいという気持ちから出したのでございます。」疑わしいしいということは、医学的には「三%とか一〇%というものは疑わしいという範囲には入りません。まず五〇%、六〇%、七〇%も大体こうであろうけれども、まだいわゆる定型的な症状が出ておらぬとかなんとかいうような、そういうものが疑わしいという医学用語になるわけでございます。」こういうことを四十七年に大石さんは答弁しておるんですよ。だから、大臣答弁を整理したというならば、この大石さんの大臣答弁が一番はっきりしている、これを整理してなぜ書かないのです。それをあなた方は、いまあなたが言ったのは、野津さんの言葉を使ってそのとおりの文章になっている。「水俣病に関します高度の学識と豊富な経験を基礎として見まして、医学的に見て水俣病の蓋然性が高いということにつきまして」云々と、こういうことは五十二年に野津さんが言っているんです。だから、本当に促進するという意味で、あるいは世間にいろいろな誤解があるというようなことをあなた方も言っているわけだから、この蓋然性なんか言ったらまた誤解が出ますよ。それを使って、野津さんのを使っておる。大臣答弁を整理していない。なぜ大石さんのこの具体的な大臣答弁をここに整理しないのですか。どうです。
  47. 本田正

    ○本田政府委員 申し上げましたように、言葉そのものは使っておりませんけれども、確かに先生御指摘のように「蓋然性」という言葉が出てきたのは後でございますけれども、四十六年の事務次官通知におきますところの「否定し得ない」ということと、それから大石長官答弁と、それからその後の政府委員答弁というのは意味は全く同じでございます。大石長官答弁とそれから後の政府委員答弁の中身が違うということには私どもは解しておりません。
  48. 馬場昇

    馬場(昇)委員 それでは、私がいま質問しているのは、あなたのいまの答弁では、大石さんの説明とそれから野津さんの説明、これは中身は同じだというようにいま言われました。そうしたら、なぜわかりやすい方を使わないのですか。認定促進すると言っている。誤解があると言っている。なぜわかりやすい方の大石さんの方を使わなくて、しかもあなた方は、信澤さんはこれを発表するときに、大臣国会答弁を整理したと言っている。だけれどもそれはうそじゃありませんか。この裏には、抽象的にして、そうして結局あなた方の意図もそうかもしれない、切り捨てる。しかしいま切り捨てると言わぬだろう。しかしこの言葉が——あなた方はもうすぐやめる。この間も企画したらすぐ役人がやめてしまった。この通達がひとり歩きをしたときには、蓋然性というようなものは切り捨てにつながるんです。大石さんのようなことを書いておれば、だれが見てもはっきりするわけです。なぜ大石さんの言葉を使わなくて野津さんの言葉を使ったかということについて、もう一遍答えてください。
  49. 本田正

    ○本田政府委員 この「蓋然性」という言葉を通知の上で出してまいりましたのは今回が初めてでございます。しかしながら、蓋然性ということは物の確からしさということであると解しておりまして、そういう意味において、大石長官がおっしゃったことと、それからその後の政府委員答弁申し上げたこと、そういったことについては内容において変わりはないと言っておるわけでございまして、「蓋然性」という言葉で、この水俣病というのは非常に複雑な症状の組み合わせであるわけでございます、定型的な症状で統一されるような疾病ではないわけでございますので、そこに「高度の学識と豊富な経験に基づいて総合的」に判断して、そして医学的に見て——医学的に見てということは疫学条項等もしんしゃくしながら見て、そしてなおかつ「蓋然性が高い」と判断される場合に水俣病の範囲に含む、こういうことでございますので、大石長官の御答弁を「蓋然性」に置きかえることで、むしろ蓋然性ということの方が端的にそれを表現し、かつは高度の学識と豊富な経験に基づくということとの絡みにおきまして端的に明快になっているんじゃなかろうかと私どもは解しております。
  50. 馬場昇

    馬場(昇)委員 一方的にあなた方は明確になっていると言うけれども、ここのところを患者さんとか国民は心配しているじゃないですか。一番混乱のもとがここになっているじゃないですか、「蓋然性」という言葉に。これはあなたはそう言うけれども、後で私は蓋然性という問題につきましては具体例を挙げて質問しますけれども、一つ聞いておきます。四十七年の大石さんの国会答弁の中身を変えて「蓋然性」とここに使っておるのは、四十七年三月十日の大石長官答弁の中身を変えてこうでございますということを周知徹底させる文書を出しますか。
  51. 本田正

    ○本田政府委員 大石長官の御答弁は、疑わしいあるいは否定し得ないというものについての解釈を言っておられるわけでございます。通俗的には疑わしいという言葉はいろいろな意味に使われる。しかしながら医学的には確からしさというものが——確からしさという言葉は使っておられませんけれども、五〇%、六〇%、七〇%以上あるものを医学的な疑わしいというものであるという御答弁かと存じます。そういう意味におきまして蓋然性というものは一つの確からしさでございます。これは端的にパーセントであらわせるかどうかということはまた疑問でございますけれども、その「蓋然性が高い」ということは、そういう意味で大石長官の五〇、六〇、七〇ということと全く同じというふうに解しております。
  52. 馬場昇

    馬場(昇)委員 私は特別その解釈を聞いているのじゃないですよ。たとえば大石さんも、否定し得ない、疑わしいというのはこういうことだ、野津さんも、否定し得ないというのはこういうことだ。あなたは同じと言うけれども、いま国民患者さんたちは蓋然性というものにものすごい疑いを持っておる。蓋然性とは四十七年に大石さんが答弁したこれですよと、そういうことを文章にしてでも説明をしますかと私は言っているのです。
  53. 本田正

    ○本田政府委員 蓋然性につきましては、水俣病というきわめて複雑な疾病、症候の組み合わせでございますが、そういったものについて数量的にこれを五〇とか六〇とかと言うことはできません。ただ概念上そういう表現で大石長官は御説明なさったのであるわけでございます。蓋然性をどうやってだれが判断するかということは、申し上げましたように、高度の学識と豊富な経験を有する水俣病に関する専門家がそれを判断することでございまして、その蓋然性を解釈する通知というものは、したがってこれは通知を出すとしますならば、数量的なことになろうかと思います。そういったことは、この水俣病の判断に関してはあらわせない。したがって、高度の学識と豊富な経験によって総合的に判断し、しかも医学的に蓋然性が高いという言葉を使わざるを得ない、それをもって説明できていると私どもは解しておりますので、通知は出す必要はないと存じます。
  54. 馬場昇

    馬場(昇)委員 あなたの話を聞いていると、違うから出したがらないのじゃないですか。同じだとあなたはさっきから言っているでしょう。同じならこれを説明していいじゃないですか。野津さんが言うのも大石さんが言うのも同じだとさっきから何回もあなたは言っているでしょう。なぜ同じですよという文書を出さない。国会で私がいま言っているじゃないですか。だからその辺について大石さんが言っているものを、豊富な経験とか高度の知識とかそういうことを言って、蓋然性を否定し得ない、疑わしいとはこうだと、大石さんの前提にもそれは入っているのですよ。野津さんのにも入っている、そこを言っているのじゃないのですよ。蓋然性というと大石さんが言ったのと同じだということをあなたはさっきから言っているから、同じだということをなぜ文章でもってあらわすことができないのですか。あなた方は必要ないと言うけれども、患者さんと国民はそこを心配しているじゃないですか。これは大臣どうですか。同じことならば説明を出してもいいじゃないですか。
  55. 山田久就

    山田国務大臣 先生の言われるのも常識的にはもっとものように感じます。ただ、これ、医学上の判定の問題でございますので、(馬場(昇)委員「これは医学上のことを言っているのですよ。何で常識と言っていますか。」と呼ぶ)したがって、医学的な判断ということから言うと、数量的な説明の六〇%、七〇%というようなことでは表現しにくいという専門家の判断でございますので、それならそれによって考えざるを得ないのじゃないだろうか、こういうことを申し上げたかったわけでございます。
  56. 馬場昇

    馬場(昇)委員 大石さんもそういうことを言って、医学的にこういうんですと説明しているじゃありませんか。これと同じだという答弁もしたのですよ。あなたはしたじゃないですか。同じ答弁をいましておいて、同じですということがなぜ文章に書けませんか。そこが結局違うから書けないのじゃないですか。違うのを同じですと言い通そうとしている、そういう魂胆があるから書けないのでしょう。素直に同じですと書いたらいいじゃないですか。どうですか、大臣
  57. 山田久就

    山田国務大臣 素直に言えばそういうことだろうかと思います。しかしながら、通牒ということになりますと、これは医者の判断の、専門家に対するいわば指示ということになる場合に、通常の場合で使う言葉と専門家に対する指示というものについては一概にそうはいかないのだというような、医者の判断というものが入ってきますと、さあそれですぐ通知を出していいのだとはちょっと言いかねるような点がございますので、この点の解釈については医者の判断に私は任したいと考えているわけであります。内容は違ってないということはそのとおりであります
  58. 馬場昇

    馬場(昇)委員 内容が違わないならば、内容が違わないということを言うと、何で医者は混乱しますか。これはあなた、おかしいですよ。内容が同じのを医者が混乱する必要はないじゃないですか。同じですよと言ったら、なお混乱せずにすっきりするじゃないですか。違うから医者が混乱する。大石さんが言うたのとこの蓋然性とは違うのだ。これを同じだと出すと、もともと違うのだから医者が混乱するから困る、こういう意図じゃありませんか。だから、その同じだということを何らかの方法で通知、徹底させるという措置をとっていただきたい。これは長官、どうですか。
  59. 山田久就

    山田国務大臣 別にそのことを、違うから何か隠して言わないのだ、私はそんな立場では全くございません。ただそこで、それが同じなら同じように言うというのも、一般の素人に対する話とそれから医者の判断に対する指示というものとは一概にそういかないのだ、こういうことを言いますので、いまその医者の意見をちょっとお聞きいただきたいと思います。
  60. 馬場昇

    馬場(昇)委員 とぼけたことを言いなさんな。医者というのは審査委員会の医者でしょう。それに対して何ですか。これは部長じゃないですか。何が医君ですか。医者であるかもしれませんけれども部長じゃないですか。それを責任ある大臣が、神聖なまじめな議論をしているときに、医者に答弁させますとは何事ですか。取り消しなさい。
  61. 山田久就

    山田国務大臣 彼は部長です。しかしながら、医師ということの資格を持った専門家でございますので、その専門家の考え方というものを取り入れながら、われわれは行政の処置を対処しているわけです。決してあなたの言うことについて私が実質的にとやかく言っているのじゃないのです。そういう立場から、同じだけれども使う用語については、専門の医者に言う場合にはこういうあれを使わないとぐあいが悪いからという意見を言っていますので、なぜぐあいが悪いかという点について、もう少し寛容の精神を持ってお聞きいただきたいということを訴えているわけです。
  62. 本田正

    ○本田政府委員 説明が回りくどくて申しわけございませんが、大石長官の発言と変わらないという趣旨は、実は今度の事務次官通知にこういうふうに表現させていただいております。「その後、主管課長の通知、国会における環境庁長官の発言等により明らかにしてきたとおり、」という言葉を使わせていただいておりまして、それが蓋然性の前段の説明に実はなっているわけであります。決して中身が違うから通知が出せぬとか、そういうことではございませんで、この水俣病の判断というものは個々患者によってずいぶんと違うみたいでございます。たとえば手足のしびれ、それに歩行障害という組み合わせだけではだめかもしれない、それにまた患者によっては症状が重く、暴露歴というものをあわせて判断する。そういったいろいろな一人一人の患者について、患者が持っております幾つかの症候を見、かつはその組み合わせを見るためでございます。中身が違うから通知が出せないということじゃございませんで、そういう蓋然性を個々患者に当てはまるような説明ができないから通知が出せない、こういうことでございます。
  63. 馬場昇

    馬場(昇)委員 大体あなた方は二点——一点は、大臣答弁を整理したと言って、大臣答弁を整理していない。第二点は、同じだと言っても同じだということを文書にして出そうとしていない。  これについて、私はどうしても了解できません。しかし、時間が限られておりますので、この点については質問を留保して、また後で皆さんと詰めたいと思うのです。委員長、この点についての質問を留保したいと思います。
  64. 久保等

    久保委員長 どうぞ。
  65. 馬場昇

    馬場(昇)委員 そこで、次に移りますけれども、四十六年の通知と今度の通知は変わらない、文章は変わったけれども精神は変わらないと言われました。文革が変わったというのは私は中身が変わったと判断しておるのですが、それは後で議論いたします。変わらないとおっしゃった。  そこで、もう一点質問しておきたいのですが、四十六年の次官通知にはこういう前文がございます。「法の趣旨の徹底、運用指導に欠けるところのあったことは当職の深く遺憾とするところであり、」そういう前文をつけてこの次官通達が出ておるのです。ところが、今度の次官通達には、全部は読みませんけれども、「なお一層努力しなければならない実情にある。」こういうことが前文に書いてございます。四十六年次官通達が出たころ、このときに、当時の次官はこの認定の問題について、法の趣旨の徹底とか運用指導に欠けるところがあったことは非常に自分の遺憾とするところでありますと反省の意思を表して、この次官通達を出しているのです。ところが、今日まさに不作為の違法という状態のもとにあります。並み並みならぬ状態です。五千人以上もひしめいておってどうにもならぬという状態になっております。そして裁判所が、これはやるべくしてやらない行政の不作為の違法だということで判決が出ておる並み並みならぬ状態でございますが、この文書を出すに当たって、不作為の違法状態に対する反省というか責任というのが一つも出ておりません。このことについて私は、この文書の持つ意味というのがここでも読み取れると思うのですよ。認定促進どころか、棄却促進、切り捨て促進の通達だろうと思うのです。  いずれにしても、ここで質問いたしておりますのは、不作為の違法状態について、これは本当に申しわけない、何とかしなければならない、責任がある、だからこういう通達を出して——あなた方は通達を、整理しただけではなしに促進するということで出しているのですよ。だから、この不作為の違法状態についてどういう責任を感じておられるのか。今度の次官通達の前文なんかにその反省を出せば、受け取った側も心がやわらぐ点もあろう。しかし一言も書かない。前の次官通達にはそういうこともあったのですけれども、書かずにやった。この不作為の違法状態に対するあなた方の認識、責任というものについて、これは大臣、どうですか。
  66. 上村一

    ○上村政府委員 四十六年の次官通達について、「遺憾」と書きましたのは、御案内のように、その直前に、熊本県知事認定棄却処分に対しまして環境庁長官がそれを取り消す、もう一度よく審査をしなさいという裁決をしたわけでございます。その過程におきまして、環境庁長官としては、あるいは環境庁事務次官といたしましては、水俣病の判断について熊本県においてわれわれの指導とは必ずしも一致しない点があった、そういうこともございまして、本来認定さるべき人が認定されなかったということで遺憾の意を表明したということでございます。したがいまして、通牒と裁決との間にほとんど時間的な差がございません。そういった裁決を頭に置いての通達であるわけでございます。  それから、今回の事務次官通達につきましては、根底はいま御指摘になりましたように五十一年十二月の不作為が違法であるという判決、これに熊本県知事は服したわけでございますが、それによりまして認定促進するための協議を重ね、それから一年半以上たちましたのがこの通達でございまして、それまでにもいろいろな措置を講じてまいりましたからここでは改めてそういうことを言わなかった、むしろ通達の中で遺憾を表明した方が例外であるとお考えいただきたいと思います。
  67. 馬場昇

    馬場(昇)委員 経過は知っております。大臣に聞きたいのですが、経過等も含むのですけれども、いま独立して考えた場合でも、不作為の違法状態に対する国の責任をどう感じておられるのですか。
  68. 山田久就

    山田国務大臣 この点についていろいろ政府として考えております。であればこそ、その間においてなし得る努力を行い、そしていまもこの点については、各党の協力も得ながら最善の道を尽くしたいという気持ちでやっておるつもりでございます。
  69. 馬場昇

    馬場(昇)委員 はっきり聞いておきます。責任を感じておるといま言われました。結局、不作為の違法状態の判決というのは熊本県知事に出された判決ですけれども、機関委任事務でございます。そして、次官通達等で指導しておるのは環境庁でございます。もともと国の行政のはずです。それを機関委任事務で熊本県知事にやらせておるわけでございます。そこで、いまあなたはこの不作為の違法状態責任を感じておるというようなことをおっしゃいましたね。改めて確認いたしますけれども、この不作為の違法状態に対して国に責任があると素直に考えておられるのかどうか、再び念を押しておきたいと思います。
  70. 山田久就

    山田国務大臣 責任を国としても感じ、したがってその後の認定促進のいろいろな措置をとって、少しでもこの点の責任を果たすという具体的な措置があらわれたのはその結果にほかならぬ、こう考えております。
  71. 馬場昇

    馬場(昇)委員 責任を感じというのと、あるというのは、私は違うと思う。責任を感じておるのですか、責任があるのですか、どっちですか。
  72. 山田久就

    山田国務大臣 これは先ほども申し上げましたように裁判の決定でございます。したがって、そのことにおいて国が責任があるということはまさにそのとおりだと思います。
  73. 馬場昇

    馬場(昇)委員 いまのところだけえらい明快にお答えになりましたね。責任があるということは当然だということでございますので、それはもうこれ以上追及いたしません。  そこで、時間も非常に足らないようなぐあいですけれども、次に移りますけれども、この通達で信澤さんは一番最後に発言として、認定業務促進に役立てるためこの新通知を出したのだ、こういうことを信澤次官は表明いたしております。そしてまた五十三年六月二十日の閣議了解事項の第一の第一項に「環境庁から関係知事及び市長へ認定業務促進にかかる通知を発する。」ということがございます。これは認定促進するという意図でこの通達を出したのかどうか、お伺いします。
  74. 本田正

    ○本田政府委員 認定審査に当たりまして、県ともいろいろ打ち合わせをいたしておりますけれども、一番問題になるのがやはり認定がはかどらない、こういうことです。この中でも、審査会において保留されるという件数が、これも中身はいろいろございますけれども、多うございます。そこでいろいろ学者の意見を聞いて、昨年判断基準を出したわけでございます。そして、それをさらに取りまとめ、新次官通知を出したわけでございます。そういう意味におきまして、保留にどう対処するかということにつきまして、保留の解消ということがその中で最大の急ぐべきことでございますので、その判断をめぐります考え方を明確にしたわけでございますから、これをもって認定促進の一助にする。これだけをもって認定促進になるとは考えておりませんが、そういうふうに解しております。
  75. 馬場昇

    馬場(昇)委員 そこでちょっと聞きますと、この次官通達は前の次官通達と変わらない。前の次官通達で認定が遅滞しておるわけです。変わらないやつを出して、どうして促進することになりますか。いまあなたの答弁を聞いておると、保留のものについては、それだけじゃないけれども、その部分については特に促進になるといったならば、前の通知とそれは変わっているのじゃないですか。どうですか。
  76. 本田正

    ○本田政府委員 水俣病の判断に関しまして、先ほどから申し上げておりますように、できるだけ認定と申しますか、救おうということになりますと、当然それはどちらにするか、認定か棄却かというときに、水俣病の疾病の特殊性から非常に迷うことが審査会の中でも多かろうと思います。それと審査請求件数がふえるということと両々相まって、保留がふえてきているわけでございます。その辺を、判断条件を明確にすることによって振り分けられるものは——あくまでも医学的にでございますが、そういったものを判断条件を示したわけでございますが、それにのっとるケースについてはいずれかの認定ができるわけでございますので、促進になろうかと存じております。
  77. 馬場昇

    馬場(昇)委員 そうしたならば、四十六年通達と今度の通達は変わっているじゃないですか。どうですか。
  78. 本田正

    ○本田政府委員 医学のその後の進展ということはございますけれども、水俣病の範囲に関する基本的な考えについては変わっておりません。ただ、数がふえて審査を要する事例がふえたということにつきましては、これは申請件数の増、それから非常に判断困難な症例が水俣病の特殊性から多いということ、そういったことによってでございまして、四十六年の通知とは変わっておりません。
  79. 馬場昇

    馬場(昇)委員 変わっていなければ促進できないじゃないですか、これまたやっておったんでは。あなたの答弁は筋違いですよ。促進するために出したと言うのだったら、前のものと変わらないと言うのだったら、促進するはずがないじゃないですか。促進すると言うのだったら、どこか変わっておらなければ促進できないじゃないですか。この辺について、私、まだ相当質問があるものですから、水かけ論をしておったってしょうがありませんから、いま委員長に申し上げますけれども、前の通知とこの通知は変わっていないと言っているのです。ところが促進すると言っておるのです。促進できるのは、変わっておらなければ促進できるはずはないのです。だから、こういう意味について変わっておるのか、変わっていないのかということについて答弁がはっきり出ないわけですよ。だから、これについてはここでやっておったって時間がございませんから、政府の、変わっておるのか変わっていないのか、それとのかかわりにおいて、促進になるのかならないのかという統一見解を出していただきたいということで、これはまた保留さしていただきますが、その統一見解を出していただくことについて、委員長の方から御了承を受けておきたいと思うんです。
  80. 久保等

    久保委員長 委員長の方からちょっとお尋ねしたいと思うのですが、新次官通達というものが、少なくとも前次官通達に比べて、保留になっておるような問題について、これを促進することに役立つというふうに判断をして今度の通達を出されたということであれば、一体どの部分が、前回では非常に不分明であったけれども、今回の場合には、こういった点については明らかにしたがゆえに、今後は認定促進されるであろう、何かそういった点があるのじゃないかと思うのですが、そういったことについて少し的確に御説明願いたいと思うのですが、ここで御答弁願えますか。
  81. 山田久就

    山田国務大臣 そのようなふうに処置をいたします。
  82. 本田正

    ○本田政府委員 認定促進に役立つという意味は、何でもかんでもさばいてしまう、そういう意味じゃ決してございませんで、先ほど申し上げましたように、去年の七月に「後天性水俣病の判断条件について」という通知を出したわけでございます。これは従来水俣病というものが、繰り返し申し上げておりますように幾つかの症例があって、その組み合わせ、暴露歴、そういったものとの総合的な判断によらなくちゃいけないということをこの判断条件というもので取りまとめて、それを参考にされたいといったのが一年前の七月でございます。その後の一年の経緯を踏まえまして、と申しますのは、各県の審査会におきまして、この判断条件にのっとりまして事実上審査が進められてきた。その示した判断条件の中身というものはいろいろな組み合わせを言ってございます。そういったことが明らかになったということにおいて、委員会における判断がしやすくなった、こういうことでございますので、お含みおきいただきたいと存じます。
  83. 馬場昇

    馬場(昇)委員 納得できません。ちゃんと組み合わせがいろいろ明らかになったというのは、たとえばこれが七月に出る前、そういうのはわかって審査をしているのですよ。いまも、六月も、五月も、四月もやっているわけです。だからあなた方は、変わらなかったといったら促進にならないのです。促進になるといったら変わっているのです。変わっているところは後で指摘します。しかし、その辺につきましては、さっき委員長にお願いしましたように、変わっているのか変わっていないのか、そして、どこで促進になるのかということの政府統一見解を文書で出していただきたいと思います。
  84. 山田久就

    山田国務大臣 そのようなふうに処置いたします。
  85. 馬場昇

    馬場(昇)委員 そこで、現実の問題で促進になるかならないかということについてお尋ねをいたします。  熊本県知事は、ことし九月の熊本県議会でこういうことを言っております。これは後でもちょっと触れますけれども、私が新次官通知を出してくれと言った事実はありません、これは県会の本会議答弁です。そして、熊本県の審査会も昨年七月の判断条件に沿って審査を行っており、通知以後もその処理に何ら変更があってならないのはもちろんでございます、こう答弁しております。この審査主体である熊本県の知事が、審査会も前と全然変わらないということを答弁しておるわけです。促進になるはずはないじゃありませんか。そしてまた、熊本県の審査会自体がこう言っております。熊本県の審査会はこの通知に非常に不満がありますし、反対もあります、混乱するだけだということで、不満と反対が熊本県の審査会にあります。そして審査会の人たちは、患者さんたちとの話し合いの中で、新次官通知の必要性も認められず、従来どおりの審査を行うということを、熊本県の審査会は言明をいたしております。  そしてまた、これは非公式ですけれども、大事ですから申し上げておきますが、皆さん方の環境庁のある役人が熊本県の審査会に対して、新次官通達は考慮せず従来どおりやってくれ、こういうことを言っている事実もございます。こういうことからいって、この新次官通達が、事業主体の熊本県知事並びに熊本県の審査会がこういうことを言っている、これで審査の促進になるのかならないのか、どう判断しますか。
  86. 本田正

    ○本田政府委員 いまおっしゃいました「水俣病認定に係る業務の促進について」という通知は、繰り返し申し上げますように、判断条件にのっとりということ、そして認定すべきものは速やかに認定しなさい、こう言っているわけでございます。それからまた棄却すべきものは棄却する、これが法の趣旨でございます。その法の趣旨にのっとりまして業務が促進されるということを期待しているものでございます。  繰り返しますと、認定すべきは認定し、棄却すべきは棄却するということの判断において、その判断条件というものが役に立つ、こういうふうに理解しております。
  87. 馬場昇

    馬場(昇)委員 あなた、質問をそらしなさんな。  今度は大臣に質問します。  熊本県知事は、いま言いましたように県会の本会議で、繰り返しになりますが、さっき言ったとおり、従来の、昨年七月の判断条件に沿って審査を行う、今後も何ら変わらない、変更があってはならぬ、審査会も迷惑だと言ってこの新次官通達の必要性も認めない、従来どおりの審査で行う、従来どおりでやるということを知事も審査会も言っている。この新次官通達に対してこういうことを言っているわけですが、そういうときに審査が進むと思われますか。政治判断してください。
  88. 山田久就

    山田国務大臣 新次官通知を出した趣旨ということは、先ほどから部長の方から申しております。したがって、これは促進ということに役立つとわれわれは考えております。その理由は、先ほど申し上げたように、改めてお示しすることにいたします。
  89. 馬場昇

    馬場(昇)委員 役立つと言ったって、実際、事務を委任している熊本県や審査会が従来どおりやって、これではやらない、従来どおりでやるのだと言っている。それが審査に役立つというのだったら、役立つようにまたもう一遍言わなければだめじゃないですか。ところが、実際は、それはいやだと言って、従来どおりやると言っているわけですから、促進にならないじゃないですか。  また、これはさっきもあとで答弁、通知をいたしますとおっしゃいましたけれども、そこで申し上げたいのは、これは長官によく知ってもらいたいのは、かつて認定促進のために一斉集中検診というのを環境庁と熊本県が一緒になってやったのですよ。検診の十分な体制がないから、九州大学の黒岩教授を座長にして一斉集中検診をやった。これは、検診すると審査がはかどるということにはなるでしょう、理屈の上から。ところが、そのやり方が患者の心をとらえずして、そうしてお医者さんたちが、血が出るように針を刺して知覚障害なんかを調べる。痛くないと言うと、どんどん刺して、痛かろう、痛かろうと言って血が出るまで刺してやった。あなたたちは金目当てに検診に来ているのだろうとか言った。いろいろなことがありまして、結局そのために三年間審査会が中断したのですよ。患者の心を知らなくて、たくさんの人を検診できる、認定促進するだろうという形式的な判断でやって二年間中断して、実は促進が遅滞をしたのです。全く今度も同じなんですよ。  こういう患者さん方がいやがる、世間の批判があるこの文書、促進になるはずはないのです。そういうことであなた方は、裁判なんかになったときにその文書を出せば、われわれは不作為違法解消でこういうことをしたのですと言えるかもしれない。しかし、そのことで実態はまたおくれてしまうのですよ。そういうことを考えて行政するのが患者の心の上に立った行政じゃないですか、長官はそういうことについてどう考えますか。
  90. 山田久就

    山田国務大臣 およそ人間社会の行うこと、行政も含めて、やはり人の心が通い合うということが非常に大事であると思います。  これを実行するにつきましては、実はわれわれの方の環境庁の人間と地元ともいろいろな交流、意見の交換をしながら進めてまいったわけであります。その間において足らざるところがあるからそういう結果が出たのか、また、別の角度でそういう見解を表明しているのか。いずれにしても、要は促進ということでございますので、われわれの見解をお示しいたしますと同時に、足らざる点をよく検討して、どういうふうにするかという点もあわせてわれわれとしては検討いたしてみたいと思います。
  91. 馬場昇

    馬場(昇)委員 大臣促進にならないというような状態を予想したのかどうか、どう分析しておるのかということと、促進にならないという事態が起こった場合には、この次官通知は撤回するのか、出し直しするのか、どうですか。
  92. 山田久就

    山田国務大臣 いまなおこの次官通知そのものに撤回を要するというようなことは認めておりません。  ただしかし、いまお話しのようなこと、実際に先方の受け取り方、これはどういう原因でそうしているのか、よく検討してみたいと思います。  一例といたしましても、判断条件、これを参考にするという自由裁量から、これにのっとって行うということは、確かに問題の判断を明確にして促進する、少なくともそれには役立つということも申し得ることであろうかと私は思います。実情はさらに検討も加えたいと思います。
  93. 馬場昇

    馬場(昇)委員 言っておきますけれども、これは促進になりません。このことで混乱が起きて、そして遅滞をするし、水俣病行政全体に大変な影響を及ぼしてくると思うのです。いまそういう予想質問には答えないとあなたは言うかもしれぬけれども、そういう事態がくる可能性がある。そういうときには、その前もですけれども、予想されるのだから、この次官通達というのは出し直すか撤回をしなければならぬということだけを申し上げ、最後にそういうことについては詰めをいたしたいと思うので、次に移ります。  次に、水俣病の範囲について少し質問をしておきたいと思います。新通知では、「申請者が水俣病にかかっているかどうかの検討の対象とすべき全症候」とありますね。「全症候」とここに書いてありますけれども、この全症候というのは、ハンター・ラッセル症候群のことを言っておるのですか。
  94. 本田正

    ○本田政府委員 水俣病患者が示す、いろいろ患者によって症候の組み合わせが違うと思いますが、去年の七月の後天性水俣病の判断条件の記の1に示しておりますが、たとえば四肢末端の感覚障害に始まり、運動失調云々というのがございます。そういった症候すべてを指します。
  95. 馬場昇

    馬場(昇)委員 そこで、また蓋然性にちょっと戻りますけれども、「医学的にみて水俣病である蓋然性が高い」ということは、蓋然性というのは、私が聞いた範囲では九〇%、そのくらいを蓋然性と言うのだという言葉が、法的にも行政的にもよく使われておるわけです。  そこで、この蓋然性というのは、たとえば水俣病の全症候、さらにそのハンター・ラッセル症候群が五つある、こういうものを総合的に判断して、やはり蓋然性というのは九〇%ぐらいじゃないと水俣病として認めないのかどうか、この辺についてお聞きしておきたいと思います。
  96. 本田正

    ○本田政府委員 ハンター・ラッセル症候群という言葉が出ましたけれども、この判断条件の記の1に示しております水俣病患者が示すであろういろいろな症候、こういったものをごらんいただきますと、ハンター・ラッセル症候群もございますし、それ以外の症候もこれに加わっております。確かに先生御指摘のハンター・ラッセル症候群だけでずっと昔は審査していた経緯もあるとは聞いておりますけれども、この判断条件、あるいはもっとさかのぼりまして四十六年の事務次官通知に示しております症候は、ハンター・ラッセル症候群だけではございません。  それと、蓋然性が九〇%とかおっしゃいましたけれども、蓋然性というのは、およそパーセントであらわせるかどうかということは、確からしさでございますから、あらわせないこともないとは思いますけれども、その蓋然性というものは、あくまでも高度の学識と豊富な経験をもって総合的に判断した結果、医学的に蓋然性が高い、そういうふうに判断される場合でございまして、これは九〇%というものではございません。     〔委員長退席、島本委員長代理着席〕  ちなみに、大石長官の言葉と同じと申し上げましたのは、もし蓋然性がパーセントで表現されるとすれば、それは五〇%以上であろう、こういうふうに解しております。
  97. 馬場昇

    馬場(昇)委員 念のために質問しておきますけれども、四十六年通知の(4)の「認定申請人の現在に至るまでの生活史、その他当該疾病についての疫学的資料等から判断して当該地域に係る水質汚濁の影響によるものであることを否定し得ない場合においては、」「当該影響によるものであると認め、すみやかに認定を行なうこと。」と書いてあるわけでございますが、この生活史、疫学的資料、そういうもの、そして否定し得ない場合というのは、さっき言った、大石長官は五〇、六〇、七〇と使ったのですが、こういうことで、蓋然性という言葉は、いま読んだ文章は蓋然性に当たるのですか。
  98. 本田正

    ○本田政府委員 いまの新しい言葉で言いますならば、端的に申し上げますならば、これが蓋然性に当たります。厳密に言いますならば、医学の判断のことでございますので、もう少し「高度の学識」云々という言葉が入りますけれども、まず同じと解していただいて結構だと思います。
  99. 馬場昇

    馬場(昇)委員 中身について、ちょっと時間がございませんので、まだたくさんございますけれども、次の機会にいまの判断条件については譲ることにいたしまして、次に、「処分にあたって留意すべき事項」について質問をいたしたいと思います。  これにこういうことがございます。「認定審査会の結論が得られない旨の意見が出され、かつ、今後も認定に資する新たな資料を得ることが見込めない場合には、」「申請者を法的に不安定な状態におき、行政庁に対する不服申立のみちをとざすがごときことのないよう所要の処分を行うこと。」となっております。この「所要の処分」というのはどういうことですか。
  100. 本田正

    ○本田政府委員 棄却でございます。     〔島本委員長代理退席、委員長着席〕
  101. 馬場昇

    馬場(昇)委員 この言葉は四十六年次官通知にありましたか。
  102. 本田正

    ○本田政府委員 四十六年次官通知にはこの言葉はございません。が、次官通知の趣旨は、速やかに認定するということ、あるいは当然棄却するものもあるわけでございますが、そういう判断することでございますので、こういったケースは保留という形でとどまっていると存じますけれども、四十六年にはございません。
  103. 馬場昇

    馬場(昇)委員 四十六年通知になかったのが出てきておるわけでございますし、事実も違うのです。四十六年通知では、あなたがいま言ったとおりに、これは保留。ところが、今度あなたが明快に言明したように、棄却となっている。四十六年次官通知と明らかに違っておるということがここに出ておるわけでございます。このことについてはさらに後で質問いたしますけれども、ここに言う「行政庁に対する不服中立」は何を指しているのですか。
  104. 本田正

    ○本田政府委員 行政不服審査のことだと思います。
  105. 馬場昇

    馬場(昇)委員 ここで資料のないものは棄却せよ、切り捨てろという新次官通達が出ております。これは環境庁の次官が、資料のないものは切り捨てなさい、こういうことを豊富な経験と高度な学識を持っておるお医者さんで形成された熊本の審査会等について指導しておるわけでございます。資料のないものは切り捨てなさいと指導した。その前に、行政不服の道を閉ざすのはかわいそうだ、こう言っておられる。そして、行政不服は環境庁に持ってくるわけですね。あなた方は切り捨てなさいという指導をしておって、資料がないから切り捨てたと持ってきたものを、どうやって行政不服審査で患者救済しようとしておるのですか。
  106. 本田正

    ○本田政府委員 いまの最後の文章だけお読みいただきませず、事務次官通知の4の(2)の当初からぜひごらんいただきたいと思いますけれども、万般尽くしてなおかつ資料がないとき、こういう意味でございますので、その辺はしぼっておとりいただきたいと存じます。  確かに、熊本の審査会でたとえば審査を受けまして棄却になった者が環境庁に対しまして不服の申し立てをいたします場合に、いろいろ資料を県当局等からとりまして、申し立て者からもとって審査に当たるわけでございますけれども、熊本県で棄却したからそのとおりに環境庁が棄却する、そういうことではございません。できますならば、いろいろな医学的な判断がございますので、熊本県の審査会以外の先生方にもそういう意見を聞くこともございます。そういったことによって別の角度からの審査ということになりますので、必ずしも自動的に切るというようなことはいたしておりません。
  107. 馬場昇

    馬場(昇)委員 万般手を尽くし、しかも高度の知識、豊かな経験を持った、熊本大学を中心とするお医者さんたちがやる。それでもだめなときには切り捨てなさいと指導しておる。そこを、環境庁が不服を持ってこいと言ったって、熊本県の審査会以上に豊かな経験や高度な知識を持った医者が東京におりますか。  いままで、不服審査が出ました場合、熊本県の審査会よりも権威のあるどういうお医者さんに聞いて、どのようなかっこうで不服審査をやっているのですか。
  108. 本田正

    ○本田政府委員 不服審査の制度は、先生よく御存じだと存じます。県で棄却したときの資料、それから申請者からの申し立て、それに対する弁明書等々いろいろございます。東京にとおっしゃいましたけれども、東京だけではございませんで、だれというわけにはまいりませんけれども、水俣病を研究しあるいは経験を持っておられる方々はほかにもございます。そういった方々の御意見も必要に応じて聞きながら審査に当たっているところでございます。
  109. 馬場昇

    馬場(昇)委員 そういう豊富な経験とか高度な知識を持っておるお医者さんがたくさんおるのだったら、そういう人たちを審査会の中に入れて熊本県はどんどんやればいいじゃないですか。このことは結局、熊本県が棄却したならばもうあなた方も棄却する、そのうらはらじゃないですか。それで、いい言葉だけ使って、行政不服の道を閉ざすのはかわいそうだから棄却して中央に持っていきなさい——中央に持っていけば棄却するに決まっているじゃないですか。事実、この通達が出た後、七人あなた方は棄却したじゃないですか。一人も認定せずに棄却した、そういうこともあるわけでございます。だから、このことは患者切り捨て以外の何物でもない。何でこんなのを変える必要がありますか。従来どおりやっていけばいいじゃないですか。  もう一つは、行政不服審査の道を閉ざすとかわいそうだからと言うが、患者は病人なのですよ。この病人がどうやって行政不服の申し立てをしますか。どうやって裁判所に訴えますか。自分で字も書けないような人もたくさんおるわけですよ。そういうときには行政が指導せいと言う。行政というのは切り捨てた行政じゃないですか。切り捨てたやつを、相手側の弁護士を使うようなことじゃないですか。実際問題、この悲惨な患者が精いっぱい申請をして、検診を受けて、審査にかかって、もう何年もかかって大変なのですよ。それに中央に不服審査を出せなんと言ったって、実際は出せないのですよ。事実、いままで棄却したものは五百何人熊本県におります。何割が不服審査をしましたか。実際は、このことは切り捨てだということ以外の何物でもないわけでございます。  そしてまた、環境庁をだれも信用しておりません。事実、二十年たってこの病状の解明もせぬような環境庁でしょう。そして申請主義といって、本当に申請するというのはどんな苦労か、あなた方知っているのですか。まず親きょうだいが申請したら子供が嫁にも行けない、あるいは就職もできない、漁民から村八分にされる、行政から白い目で見られる、そういうのを押して申請するわけですよ。そして何年もたって、あなた方が事前に何もしないでおいて、不服審査を出しているからおまえらは助けてやろうなんと言っても、だれも信用していないのです。  そこで、こういう議論をすると時間がありませんので、一つだけ具体例を申し上げたいと思うのです。  たとえば水俣市の月浦に田上秀義さんという人がおった。この人は五十年に申請をいたしました。これは申請をしたけれども、検診も全然行われませんでした。だから審査ももちろん行われなかったのです。そしてことしの三月に亡くなられました。ところが、熊本県はどうしたかというと、亡くなった一週間後に検診センターから、予備調査に行きたいからといってはがきが来たわけです。死なれた後ですよ。審査会なんか、重症患者とかお年寄りは早く回すとかなんとか言っておりますけれども、この人が死んだのも知らなくて、一遍も検診もせぬで、死んで一週間後に検診センターから、予備調査に行きますという手紙が来た。こういう理不尽なことがありますか。審査をしてやるとか検診をしてやるとか言って、死んだのも知らぬ。これがいまの審査の状況じゃないですか。あなた方の今度の新次官通達に照らしますと、この人に新しい資料がなければ棄却をして不服審査にやれと言っているのですが、新しい資料というのは田上さんにはあるとこの次官通達では判断しますか、いや、こういう人はもうないと判断しますか、どうですか。
  110. 本田正

    ○本田政府委員 個々のケースについてどういう状況かということはわかりませんで、あるともないとも言えませんが、少なくとも、この通知にも示しておりますように、できるだけの努力を払って資料を集めるということをいま御指摘の前段に言っておるわけでございます。したがって、亡くなられるようなケースでありますならば、亡くなられた後の解剖という手が一つございます。それから、亡くなられるぐらいの疾病でありますと、どこかの医療機関にかかっておられるかもしれない。そういった資料を集める努力は当然最大限にしなくてはいけないと思います。そういうケースであれば、たとえば入院して死亡なさったならば入院のときのカルテ、通院であれば通院、自宅であれば往診、そういった資料があり得ると思います。そういうものを万般手を尽くして探します。そして、探した上になおかつということでございますので、その辺はまたお含みをいただきたいと思います。
  111. 馬場昇

    馬場(昇)委員 あなた方の行政を聞いていますと実態を知らない。見てないからわからないのでしょう。たとえば、いま解剖という言葉が出ました。解剖というのはどんなものかわかりますか。いま解剖は熊大でやっている。水俣から何キロありますか。あなた、熊本だから知っているでしょう。亡くなるという大変な状況、それで解剖するのに、熊大が果たしてあいているのかあいていないのかもわからない。百キロも運ばなければならぬ。また、田舎では患者は白い目で見られている。解制するのに親きょうだいが賛成するかどうかわからない。解剖などということはもう至難のわざですよ。解剖すればいいじゃないか、こんな簡単なことで水俣病患者救済は成ると思うのですか。これは議論ですから申し上げませんけれども。  そこで、いまお答えが出ましたが、この田上さんの場合には、病院にかかっておられたであろう新しいカルテは資料として使える、あれば使えるとおっしゃいました。この人には病院のカルテがあります。それから、五十一年の八月に総合学術調査団のお医者さんがこの人を診ております。そのお医者さんは、田上さんを診た場合に、視野狭窄があり、有機水銀中毒の疑いがある、当面は動脈硬化が考えられる、こういう診断をしておるのですよ。  具体的に聞きますけれども、さっき言った病院のカルテ——これもお医者さんです。一種のカルテでしょう。こういうものは新しい資料として使えるのかどうかということをお聞きしておきたいと思います。
  112. 本田正

    ○本田政府委員 診断書も含めまして、病院のカルテにいろいろ症状が書いてあるのが通例でございます。そういった資料を入手いたしますと判断に当然使えるものでございます。
  113. 馬場昇

    馬場(昇)委員 実は審査会の検診というものじゃないと資料に使わないというぐあいに私は聞いておった。ところが、いま部長は、こういうカルテとか診断書を新しい資料として使える、こうおっしゃいました。この田上さんのような場合、さっき言ったように、学術調査団の視野狭窄があって水俣病の疑いがあるという診断書もこの人にあります。それで病院のカルテもあります。これを使うといまおっしゃいましたので、ぜひ使っていただいて、あなた方の言う新次官通達の一番末尾の棄却ということに、直ちにそこにいかないように取り計らっていただきたいと思うのです。  次に、もう一つ浜田作平さんという人がおります。実はいま私ここに一覧表を持っておるのですけれども、あなた方の言葉を使わなくて平たい言葉で言いますと、わからないと言って審査会が知事に答申した、そして知事が、そういうことだから処分保留をしておる。これがいま六十七名おるのは御承知のとおりでございます。その中の一人に浜田作平さんという人がおるわけでございます。この人は四十六年に申請をいたしました。申請から七年たっているのです。ところが、この人は申請して、この人はもう非常に申請番号が早くて二百七番ですから、そしてもう七年前ですから、そのころは申請者が少なかったころですが、二年のうちに実は処分保留になっております。そして、その処分保留中の四十八年に実は死亡したのです。四十六年に申請して処分保留になって、四十八年に死亡いたしました。しかし、この人は、現在わからないという答申が出ておって知事の処分保留にしておる中の一人でございます。この人は、たとえばあなた方の通達によりますと、もう七年たっているのです、まだ資料を集めてやれというのですか、それともこういうような人は棄却をせよというのですか、どっちですか。
  114. 本田正

    ○本田政府委員 ちょっと個々のケースについてよう勉強いたしておりませんけれども、通知の4の(2)のところをごらんいただきますと、こういうことが書いてございます。「検診が未了のうち死亡し剖検」解剖でございます、これも「実施されなかった事例等所要の検診資料が得られないものについては、」後天性水俣病の4に示したとおりということで引用させていただいております。つまり、その暴露状況とか既往歴とかそれから現疾患の経過、その他の臨床医学的知見について資料を広く集め、そして総合的に判断せよということでございます。死亡後ずいぶんと時間がたっておられるみたいでございますけれども、現在、県におきまして検診センターあるいは県の職員そのものが、暴露歴等の調査、それからいろいろ、つまり疫学調査でございます、それからまた主治医等の医療機関からの資料の収集ということを鋭意行っております。それにもしひっかかれば資料になると思います。しかしながら残念なことに、このケースはわかりませんけれども、もし資料が万般手を尽くしてもどうしても見つからないという場合には、この(2)の後段の事例になろうかと存じますけれども、ちょっと個々のケースでございますので、どうなるかということをここではっきり申し上げることはできませんので、お許しいただきたいと思います。
  115. 馬場昇

    馬場(昇)委員 それでは、この浜田作平さんの場合も、いまの答弁によりますと、さらに万般手を尽くして、新しい資料があればそれでまた判断をすべきだ、こういうようなことのようでございます。  そこで、念のために聞いておきますけれども、この人には熊本大学の第二次研究班の資料が実はあるのです。そして医師のカルテもあります。これを使ってさらに審査をする、そういうような資料があれば審査をする、こういうケースになりますね。
  116. 本田正

    ○本田政府委員 4の(2)に書いてございますように、とにかくいろいろな手を使えということを今回、指示の一つにしているわけでございます。それで、そういう資料を、繰り返し申し上げますように検診センターとか県の職員とかが、疫学的な条件もございます、そういったものを集めまして、片やいまおっしゃったような臨床データといいますか、カルテといいますか、そういったものをできるだけ集めてやれと言っているわけであります。くどいようでございますが資料になり得ると思います。ただし、資料があるからといって、一つ出てきたからといって、それはまた御判断いただくわけでございますので、資料があるから認定と、こういうふうにつながってこないことは、蛇足でございますがお含みおきいただきたいと思います。
  117. 馬場昇

    馬場(昇)委員 問題は、ここに六十七名の氏名があります。わからないという人たちの氏名があります。いまおっしゃいましたように、私はいまの答弁だけは前進だと思う。いままでは審査会がみずから検診しなかったならば資料に使わなかった。ところがあなたは、広く資料を集めてやれということですから、それは前進だと思うから、こういう人たちについても、いまあなた方の次官通達が出たからといって直ちに棄却をするのではなしに、万般そういう手を尽くせというように指導していただきたいということを要望しておきたいと思うのです。  そこで熊本県の知事がここで言ったのは、六十七名のことを一番先に言ったわけですね。そしてあと今度は千二百くらいの答申保留がある、このことを何とかしてくれということを盛んに熊本県は国に陳情しておったわけでございます。ところが出てきましたのは、いま万般手を尽くすとおっしゃった、それは結構です、尽くしてもらいたい、しかし資料がない、棄却ということになるわけでございますけれども、熊本県の知事は棄却を求めたのではないのです。ほかに何かの方法で、いままでと違った方法でこういう人たち救済する方法はないか。いままでの次官通達以外の抜本的な方法を考えて、こういう人たちを処分——処分というのはいわゆる認定も含めてですよ、方法はなかろうか、別途方法を国で考えてくれというのが熊本県の要望であったはずです。ところがあなた方は、これにこたえるに棄却をもって実はこたえておるわけでございます。だから、少なくとも私は、いまのこの新次官通達でいけば、万般手を尽くしても、これは全部棄却になる、あなた方のところに不服審査に行ってもこれは棄却になる、これは切り捨てになるのだ。そういうことですから、ここでこういう人たちを、後でもちょっと申し上げますけれども、やはり棄却というのでなしに、こういう人たちを何らかの別の方法救済するという方法を考えないかどうかということをちょっと聞いておきたいと思うのです。検討しないかどうかですね。
  118. 本田正

    ○本田政府委員 ただいまの、現在の認定制度というものは、水俣病につきましては、先生も御努力いただきましたチッソとの協定に基づくところの補償ということでやらせていただいているわけでございます。おおよそ水俣病を判定いたします場合には、認定か棄却ということを法の前提にしているわけでございまして、その中間に新たなランクを設けるということにつきましてはいささか問題があろうかと思います。そういった意味において現在では考えておりません。
  119. 馬場昇

    馬場(昇)委員 私が言っているのは、それは誤解してもらっちゃ困るのです、認定か棄却、その範囲内で、いまの審査会方式でどうにもならなかったという事態が出ておるのですから、認定、棄却の範囲内で何らかの方法はないか。そして、これは認定、これは棄却。たとえば、もう極端に言いますと、私の生まれた地域に女島というところがありまして、あそこに経堂村というのがありますけれども、ほとんど全戸患者が出ておるわけですね。そして、網元だったとかなんとかということで、いろいろな事情があって申請できなかった。周囲はほとんど全部患者。ただそこに一軒二軒残っておった。みんな生活歴も同じだった。その人が何かの都合で申請せずにいま申請して、たとえば死んで、こういう資料がないということでここに入っている。そういうのは疫学的に見て、これはもう資料がなくても認めていいじゃないか、そういうような指導というものを、方法というものを考えないかというようなことを私はいま言っているのです。
  120. 本田正

    ○本田政府委員 ちょっと質問の御趣旨を誤解するかもしれませんが、疫学的判断のみによって認定したらどうかという御意見だといたしますならば、判断条件にも——この判断条件は、繰り返し申し上げましたが、その道の専門家が二年かかって従来の知見をまとめ上げたものでございます。そういう判断条件にも示しておりますように、水俣病に関します症状のいろいろある組み合わせ、それと暴露歴というものをかみ合わせて判断する、こういうことになっておるわけでございます。これを暴露歴だけをもって認定するということは考えておりません。
  121. 馬場昇

    馬場(昇)委員 いまの認定制度というものは、熊本県の担当者、公害部長さえ破綻しておると言っておるのです。事実、五千人以上もあそこにまだ審査待ちの人が入っている。月々百人ぐらいふえてきておる。こういう人をいまこんな狭い針の穴を通すような方法で、法で言う速やかな救済ということになるのですか。不作為の違法状態が解消できるのですか。大臣、いまの方法でやって、法の速やかな救済というのにかなう自信があるか、不作為の違法を解消する自信があるか、お答えいただきたいと思います。
  122. 山田久就

    山田国務大臣 第二班の審査会の設定、医者の増員、いろいろな点は、実は御指摘も受け、われわれも苦慮して対処しておるところでございます。  さらに、こういう状況で何か方法はないかという点については、われわれもいろいろな点を検討して考えております。まだここでどうと申し上げる段階にはなっておらない。これは残念でございますけれども、いろいろわれわれも苦慮して対処方針を検討しておるわけでございます。
  123. 馬場昇

    馬場(昇)委員 これはまた後でもちょっと申し上げますけれども、ここにグラフを描いてきたのですが、一九七〇年から七七年まで、物すごい滞留状況ですよ。ごらんになれると思います。いまの認定制度というものはもうこれで破綻しておるのです。これを考えないというのは行政をする資格はないと私は思うのです。ぜひこの認定制度というものを、患者側に立って抜本的に考えていただきたいということをまず一つ申し上げておきたいと思うのです。  次に、時間が余りございませんけれども、この新次官通達に対して今度大臣にいろいろお聞きいたしますけれども、物すごい政治的意図を私は感じます。だからこの新次官通達の政治的な意図についてお聞きしておきたいと思う。  その前に、新次官通知はどこで発議されたのかということをお聞きしておきたいと思うのです。
  124. 上村一

    ○上村政府委員 環境庁事務次官通知でございますから、当然のことといたしまして環境庁の企画調整局でございます。
  125. 馬場昇

    馬場(昇)委員 いつごろからこの新次官通達を出そうということの検討に入られましたか。
  126. 上村一

    ○上村政府委員 御案内のように、五十一年の十二月に不作為違法確認の判決が出まして以来、政府におきましても関係閣僚会議を数回にわたって開きまして、この認定促進方につき努力をしてまいったわけでございますが、さらに五十三年になりましてから熊本県議会等の動きもございまして、今年の春ころ熊本県事務当局と認定業務促進策につき協議を進めながら、一方でその認定促進するための臨時措置法案が自由民主党の方で検討される過程を踏まえまして、そこで六月十六日関係閣僚会議を開催し、水俣病対策についての申し合わせを行い、三十日、閣議了解をいたしまして、それに従いまして事務次官通達を出した、こういう運びでございます。
  127. 馬場昇

    馬場(昇)委員 それじゃ、もう少し具体的に聞きますけれども、環境庁で新次官通達発議をしたというのを春ごろからだとおっしゃいましたね。春というといつごろですか。
  128. 上村一

    ○上村政府委員 五十三年の三月の末ごろから五十三年の五月の末ごろまでかけまして、熊本県事務当局と認定業務促進策につきまして協議を重ねておったわけでございます。そのころのことを意味しておるわけでございます。
  129. 馬場昇

    馬場(昇)委員 念を押して聞いておきますけれども、五十三年の三月ころからこの新次官通達の検討を始めた、こういうことですね。
  130. 上村一

    ○上村政府委員 認定業務促進策につき検討を始めておるわけでございますから、この事務次官通達というのも認定業務促進についてという通達でございますから、当然そこに始まりがあるというふうにお考えいただきたいと思います。
  131. 馬場昇

    馬場(昇)委員 この国会で私は四月の末にこの問題について質問をしておるのです。これに対して環境庁は、四十六年次官通知は、変えるというようなことにつきましては検討もしていない、考えてもいないという答弁がございました。四月二十一日です。いまあなたの言う答弁と違うのであります。
  132. 上村一

    ○上村政府委員 四月二十一日のこの委員会におきまして、出時の部長からいま御指摘になりましたような答弁をいたしております。その答弁の内容は、あくまでもあの通達を変えるというようなことにつきましては検討いたしておりませんというふうにお答えしておるわけでございます。
  133. 馬場昇

    馬場(昇)委員 これは私がいろいろ質問をしたわけですよ。そして新次官通達を出すか出さないかということで、そして要綱というのが出たから、それを知っておって言ったわけです。だから私の質問というのは、そういう新次官通達を出すなという質問の中でこういうことの話が出ているわけですよ。そのときに、考えてもおらぬ、検討もしておらぬというような答弁があっているのです。だから私が言いたいのは、そしてあなた方と私は、ここで余り言いませんけれども、あなた方の方のいろいろの人と話をして、こういうのは出したくない、混乱するだけだと、それは言いませんけれども、この時期にはあなた方の口からもたくさん聞いているのですよ。だから、あなた方の方はそんなに早い時期に検討したわけじゃないという事実を私は知っております。ところがいまになって検討したと言うことは、私は、この国会を表でごまかしておる、こういうぐあいに思います。  そこで、閣議決定事項について、これは官房の方にお聞きしたいと思いますけれども、「水俣病対策について」という閣議了解が五十三年六月二十日に出ております。これはどういう過程でこの閣議了解事項ができ上がったのか。関係閣僚会議なんか知っておりますし、その担当を官房の方でなさっておりますので、その閣議了解事項がどういう経緯ででき上がったかということを簡単に御説明願いたいと思う。
  134. 末次彬

    ○末次説明員 水俣病に関します補償問題につきましては、認定問題をめぐりましていろいろ問題があったわけでございますが、この水俣病に関する関係閣僚会議は、昭和五十一年、先ほどお話が出ておりました認定業務不作為違法確認訴訟におきまして熊本県が敗訴する、熊本県議会ではこれを機に機関委任事務を返上すべしというような意見があったわけでございまして、こういう情勢を踏まえまして、当時の沢田熊本県知事は、昭和五十二年三月石原環境庁長官に対しまして、国として何らかの打開策を講ずるようにという要請がございました。これを受けまして、石原環境庁長官から三月二十五日の閣議で、認定促進及びチッソ株式会社の経営再建につきまして政府としての対応策を見出すために関係閣僚会議設置してほしいという提案がございまして、了承されたわけでございます。第一回が昭和五十二年三月二十八日でございまして、ことしの六月十六日に第六回を開いておるわけでございます。この間、認定業務促進、それからチッソの経営健全化、それから地域経済への影響、こういった面を考慮いたしまして、関係各省からこういった関連のいろいろな施策の提案がございまして、これを政府として総合的に水俣病対策を実施するための閣議了解ということで取りまとめたわけでございます。  閣僚会議は六月十六日でございますが、当時そこで口頭で報告がございまして、六月二十日の閣議で正式に閣議了解という運びになったわけでございます。
  135. 馬場昇

    馬場(昇)委員 この閣議了解事項は「認定業務促進」というのが第一です。第二は「チッソ株式会社に対する金融支援措置」、こういうことで、第三、第四というのもございますけれども、少なくともここで聞いておきたいのは、この新次官通知というのと、それから自民党が提案しております特別立法とチッソ救済、この三つはセットで考えておられるのですか、あるいは独立して考えておられるのですか。この閣議了解事項の理解の仕方を聞いておきたいと思うのです。
  136. 上村一

    ○上村政府委員 非常にお答えしにくい、と申しますのは、独立してもおり、それからセットにもなっておる。と申しますのは、認定業務促進は、先ほど来お話しに出ております五十一年の不作為違法の判決等も踏まえまして、とにかく患者さんを不安な状態に置いてはいけないという問題意識に立って努力をしておるわけでございます。そのため通達が出され、それから自由民主党の方でも、国も手伝えという趣旨の法案を準備されておる。一方、チッソ自身は、これまでの補償費の支払いというのも相当な額になってきておるわけでございますし、それからその事業自身が、不況の影響もございまして不振であるということから、だんだん金繰りが苦しくなってきておる。そこで、チッソ自身救済をしなければ補償金の支払いも滞る心配があるということで、金融支援措置というのが講ぜられたわけでございますが、認定促進を進めれば進めるほどその必要性が高くなってまいるわけでございます。したがいまして、別個、独立であると同時にセットになっておるものだというふうにお答え申し上げたわけでございます。
  137. 馬場昇

    馬場(昇)委員 たとえば、新次官通達を撤回をするということがもしあったとすれば、県債発行はできなくなるのか。たとえば、自民党の特別立法が通らない、これを撤回するということになった場合に、チッソ救済の県債発行はできないのか。そういう絡みはどうですか。
  138. 上村一

    ○上村政府委員 県債の発行自身は、申し上げるまでもございませんが、熊本県当局並びにこれを審議されます熊本県議会の問題でございます。したがいまして、いまお話しになりましたような条件が満たされない場合にどうなるかにつきまして、環境庁から、こうなるおそれがありますということを直ちに申し上げるということは困難でございます。
  139. 馬場昇

    馬場(昇)委員 では、時間がないものですからはっきり言いますが、これは県が考えることである、だから、関係があるかないかということは環境庁では考えないということですか。これは閣僚会議には大臣も出ておるわけですから、大臣答弁を考えておいてください、あとで質問しますからね。県が自主的に考える、県が絡んでおると考えれば絡むのだ、絡まないと考えればそれでいいのだ、それは県が考える問題である、こういうことですか。
  140. 上村一

    ○上村政府委員 本質問題としてそういう問題であるということを申し上げたわけでございますが、一方県議会からは、県債の発行に絡みまして、いまお話しになりました条件を早く達成してもらうような要請が出ておることも事実でございます。
  141. 馬場昇

    馬場(昇)委員 要請が出ておるのはあなたから聞かぬでも知っている。大臣、これは閣議了解事項だからあなたも出ておったと思うのですよ。いま具体的に私が質問しましたその三つのものの絡みというものについて、あなたからはっきり聞いておきたいと思います。
  142. 山田久就

    山田国務大臣 ただいま局長からも話がございましたが、これはそれぞれ独立のものであると思います。しかしながら、同時にまた相関関係を持っているものとも言える、こういうのが実情じゃないかと思います。
  143. 馬場昇

    馬場(昇)委員 あなた、ちょっとわからないのですよ。たとえば、この新次官通達があろうがなかろうが、前のと変わらないのですから、県債は勝手にやっていいじゃないですか。自民党の特別立法ができて、どんどん患者がふえれば、県債の量もふえる。しかし、県債は一年出すのではないのですよ。四年間ということになっているのじゃないですか。全然関係はないじゃないですか。県債は県債でやればいい。これと絡ませると大変な問題になってくるのですよ。独立したものだから、できるじゃないですか。これは大臣どうですか。あなたは前と後と違ったことを言ってさっぱりわからないのですが、できる問題じゃないですか。これは県債を出してチッソ救済をすればそれでいい。四年間かかる、あと続くかどうかわからぬけれども四年間出せ、そのときに保留があり、チッソの経営状況を見ればいいわけだから、出せるわけでしょう。特別立法が通ろうが、新次官通達は従来と変わらないというのなら、あろうがなかろうが県債と関係ないじゃないですか、どうですか。これは大臣に、さっきの続きで、わからぬから聞いている。
  144. 山田久就

    山田国務大臣 県債は県の判断でやるものでございます。むろんそれは中央の大蔵当局その他いろいろ関係がありますが、県がやるものでございます。しかしながら、県が、県会の方でどのようなことを考慮に入れるかという問題は、これはわれわれの方で確と言い得ない問題で、そこら辺のつながりは、県会の方の態度というものを見てみれば、これは独立であるけれども関係があるとも見えるということを素直にお答え申し上げているわけでございます。
  145. 馬場昇

    馬場(昇)委員 これは私にはわからないのです。そしてやはりこれは二つあるのです。確かに関係があってセットだということを主張している人がずっとおるのです。全然関係ないと主張しておる人もおるのです。熊本県にも両方おる。だから、これについて環境庁の意見を聞くのですけれども、両方ともだなんて、そんなばかなことはないですよ。これについてはまた後で統一見解を出していただきたいということをお願いしておきたいと思うのです。よろしゅうございますか。
  146. 山田久就

    山田国務大臣 私が申し上げたように、発行するについては県はいろいろな条件をすでに言っておる。このことは御承知のとおりでございます。だから、そういう意味においてはこれは関係があるのです。しかしながら、県債そのものは元来一つの独立の行為だから、本来はそういう行為であるけれどもしかし関連を持っているものであるということを申し上げておるわけであります。
  147. 馬場昇

    馬場(昇)委員 わからないのですから、わかるような答弁を再度求めるということで保留をしておきたいと思います。  そこで、時間もございませんけれども、私の見解を申し上げたいわけですけれども、この新次官通達というのは、いままで聞いたけれども、大部分質問も保留いたしました。はっきりしない点が非常に多いのです。しかし、私がいろいろ、私も二十年近く水俣病にタッチしております。これはもうはっきり言っておきますけれども、絶対に認定促進にならないし、ただ、あなた方の不作為違法の顔づくり、形式づくり以外の何物でもないし、このことで認定は遅滞し、そして患者救済できない、こういうことになることは間違いない、こういうぐあいに思うのですけれども、その背景について、私、こういう事実をたくさん知っております。  知事が言ったのは、先ほども言いましたように、この保留の問題、わからない、こういう問題を、やはり棄却とかあるいは認定、こういう中で何か別な方法を国で考えてくれということだったのですけれども、あなた方から出たのは、蓋然性とかあるいは棄却とかいうことで切り捨ての通達で、この熊本県の要望を逆に抑えつける方向でこたえたわけですけれども、実は先ほど言っておりますように、このことはやはり閣議の問題、自民党筋の問題、いろいろとあったわけですよ。  たとえば、内閣官房筋がこういうことを言っているのですよ。チッソ補償金総額がわからぬ状態では国民の血税は使えませんよ、認定、棄却は厳重にやってもらわなければ困る、こういうことが、先ほど言われました春段階から盛んに言われておったことは、報道もされておりますし、私も聞いたことがあるのです。  それからさらに、内閣官房や自民党筋から、水俣病患者補償のためチッソ救済を県債でしのぐなら、認定条件を厳しくして患者の増大に歯どめをかけておく必要がある、こういうことが話し合われておるのです。  そしてさらに、官房筋からも自民党筋からも、政治的保留と医学的保留を区別するような通知を出すことで環境庁も了承した、こういうことが出ているのです。熊本県知事もこういう新次官通達を出すなと言っておったのです。環境庁も本当は出したくないと言っておったじゃありませんか。それを、このような意図の中の閣議了解事項にこぎつけるまでのいろいろな自民党とか各省の話し合いの中で、いま言ったような背景の中でこの新次官通達が出てきたということは、これは明らかなのです。そういうことについて、きょうはもう時間がございませんから、一つ一つ質問に答えを受けませんけれども、総括して後で答弁してもらいたいのですけれども、たとえば信澤さんは何と言いましたか。要綱が表に出てまずかった、どのような目的で、どのような条件のもとでどうこうという点が抜けて、結論だけ出ている、あれだけ見れば患者さんたちが心配するのも否定できない、こういうことを信澤さんなんかは、要綱が漏れたときに、自民党にあなた方が要綱を持っていったときに、関係閣僚会議に出せと言われてあなた方が要綱を持っていったときに、それが報道された、そういうときに、こういうことを信澤さん自体も言っておるということは事実でございます。  だから、こういう点で、少なくともさっきのセット問題等につきましても、チッソ救済の県債発行とか新次宮通知とか自民党の特別立法、これは切り捨てという考え方ではセットなんですよ。それの一環としてあなた方が出しておるわけですよ。こういう行政の意図というのははっきりしております。このことは、二十年本当に苦労して苦しみ抜いて、最初私が言ったように、みずからの力で自分を守るために闘ってきた患者さんなんかは、もうすぐその裏は見抜きますよ。そうしてはだで感ずるのです。このことは完全に患者切り捨てという以外の何物でもない。このことはもう明らかに言えると思うのです。そのことがさっき言ったように混乱を起こし、促進にはならなくて遅滞を起こすということになるのだ、そのことを知らずに行政をするということは、かつて黒岩検診体制で二年間審査会がとまった、このことに通ずるのだということをはっきり私は申し上げておきたいと思うのです。  このことについて、いま熊本県の状況を御存じですか、長官患者さんたちは熊本県庁前に、この新次官通達の撤回を求めて、もう二カ月以上も座り込んでおるのですよ。吉本モモエさんという人がおりますけれども、この人は認定患者です。そうして一回けいれんが来ますと三日間ぐらい寝なければ動けないような人ですよ。この人の御主人は水俣病患者だったとだれも思うのだけれども、申請もせずに死んでおります。そうして長女は患者として認定されているのです。次女はいま熊本地方裁判所の第二次原告団になっているんですよ。それで、長男はいまもう体が動けなくなって自宅で療養している。その長男が申請中で、いま保留になっているのです。この通達を見たときに、この不自由な体で座り込みにこのような人たちが来ているのですよ。こういう人たちが、この次官通達は切り捨てだということでもって撤回を求めていま熊本県庁前にいっぱい座り込んでいる。こういう事実をどう見るのですか。  さらに、あなた方は、ひとり勝手なことを先ほどから答弁しておるけれども、要綱が出たときから、この新次官通達が出た、その後の報道機関の報道を見てくださいよ。どこの報道機関も例外なく、これは患者切り捨てだ、それでチッソ救済に名をかりてここで患者切り捨てをする、みんな報道機関は口をそろえて言っておられるじゃないですか。そうして、このことについては新聞の社説等でも書かれております。これは世論じゃないですか。これが本当の鋭い目で公平な目じゃないですか。そうしてまた、この国会におきましても、患者さんたちが全野党に質問をいたしました。自民党にも質問があった。全政党に質問いたしました。ところが、社会党、公明党それから共産党、新自由クラブから回答があっております。民社党から回答が来ていないようですけれども、この政党は——民社党もあったのですかね。(「ぼくのところへ来なかったよ」と呼ぶ者あり)それは失礼いたしました。  そこで、すべての政党が口をそろえて、この新次官通達は疑わしきは救済するという四十六年次官通知の原則を崩すものである、この新次官通達はそういうものであるということを野党全部が言っておるじゃありませんか。これが大体本当の目じゃありませんか。そうして具体的なあらわれとして、この新次官通達が出た後、不服審査七名が全員棄却になっているのですよ。それまで不服審査があって全員棄却になったということはないじゃありませんか。そういうことから見て、あなた方環境庁がただひとり、これは変わらないのだ、切り捨てじゃないのだと言っても、すべての人たちが、これは患者切り捨てになっている、そういう働きをするということを言っておるのですよ。これについて長官、あなたはやはりこれでも、こういうあらゆる角度から見て——あなたはさっき患者の心の上に立った行政をすると言った。これはこの上に立っていない。すべての人たちの意見が切り捨てだと言っておる。これをあなたはどういうぐあいに判断しておるのですか。あなたの見解を聞きたい。
  148. 山田久就

    山田国務大臣 先ほど、いまの救済業務に対するわれわれの方針、態度、御説明したとおりであります。  今日、患者救済、このことが健康被害補償法のたてまえから言って、認定というものなしで救済をしろというところにいくわけにはまいらない。このことは先生も御了解のところであろうと思います。しからば、その認定という枠内においてできるだけ判定条件というものをはっきりさせ、あらゆる資料に関する努力、こういうものについても熱意と献身を示してやるという以外に方法はない。いろいろな判断、誤解を招いているとすればはなはだ遺憾でありますし、この点については、われわれもなさねばならぬことはいろいろ多いかと思います。しかしながら、基本的には判定しないで救済するというわけにいかぬということがある以上、この問題に対して努力をせざるを得ないし、その立場でわれわれとしては努力してまいったつもりでございます。この上ともそういう点について努力を重ねたい、このことをひとつ心から申し上げておきたいと思います。
  149. 馬場昇

    馬場(昇)委員 ピント外れの答弁はなさるなよ。  では具体的に言います。患者さんたちが反対をしていま座り込んでおる。そして、すべての患者さんがそのような気持ちなんですよ。しかし、この問題についてははだで感じて、十派の人たち、三千五、六百人の人たちが皆一致して反対、撤回を求めておる。そして座り込んでおる。この状態を何と考えるかということが一つ。  もう一つは、報道機関、報道関係の人がみんな患者切り捨てだと言っている。この報道関係のこういう批判に対してどう考えておるのかということ。  もう一つは、各野党がこれは患者切り捨てだと言って、全部そういう考え方を持っている。これに対するあなたの考え、どうですか、具体的に言ってください。
  150. 山田久就

    山田国務大臣 繰り返しになって大変恐縮だと思いまするけれども、患者に十分に理解されない、あるいは報道機関にも誤解を与えておるというような点があれば、われわれとしてはその誤解を解くよう全力を尽くすというほかないのじゃないか、こう思います。  われわれがいま認定という問題を越えて救済の道を考える、枠を越えることはできない、そういう意味においては、われわれの足らざるところについて真剣に反省し、十分の理解を得るような努力をやりたいということを申し上げたいと思います。
  151. 馬場昇

    馬場(昇)委員 いま私は、あの認定を越えてせいということを言っていないのですよ。いまそこは全然言っていない。時間も余りありませんけれども、誤解だとあなたは言っている。それはひとりよがりですよ、独善ですよ。そして患者の心の上に立ったことをやると言うけれども、そういう考え方はあなたの頭には片りんもない。では、誤解があったら解かなければならぬでしょう。患者に対してどういう措置をするのか。私はここで申し上げますけれども、あなたは独善的な考え方をもって誤解と言うけれども、誤解じゃないんですよ、基本は。しかし、理解していただくために、理解と協力なしに行政はできない、新しい新々次官通達でも出して、誤解があったら解くべきじゃないですか。あなたの考えでも誤解はあるのだ。われわれの考えは本質が違う。だから撤回をして本当の理解がある方法をとるべきだと思うのだけれども、誤解があると考えたにしても誤解を解く措置はとらなければならぬ。新々次官通達でも出して誤解を解く方法をとるかどうか、お尋ねしたい。
  152. 山田久就

    山田国務大臣 誤解を解くための方法、われわれとしてもいろいろ考えて善処したいと思います。
  153. 馬場昇

    馬場(昇)委員 いろいろということでは答弁にならないわけです。私は具体的に、たとえば新次官通達というならば、誤解があって、これによって認定行政がとまるという状況だということを私は訴えているのです。地元だから知っているのです。だから、新々という言葉を使ったけれども、この次官通達で誤解があり、これで混乱すると思うならば、また新しい次官通達を出して、そしてこれで誤解を解いて、納得と理解を得た行政をしたらどうか。だから、これに対する新しい次官通達を出す考え方があるかどうかということについて具体的に聞きます。
  154. 山田久就

    山田国務大臣 現在の次官通達を撤回する意思はございません。別の方法によってできるだけ誤解を解くために善処いたしたいと思います。
  155. 馬場昇

    馬場(昇)委員 撤回をしなければ撤回せぬでもいいですよ。もう一つ出せばいい。これはどうですか。
  156. 山田久就

    山田国務大臣 対処の方法についてはいろいろございますけれども、いまそのことについてわれわれが確としたことはお管えいたしたくありません。
  157. 馬場昇

    馬場(昇)委員 誤解を解く方法を別に考えるということをおっしゃっております。だから、考える別の方法というようなものが出なければ、この問題についての質問を私は終わるわけにもいきませんし、了解するわけにもいきません。だから、そういう点については保留をしておきたいと思うのです。  そこで、私は委員長にもお願いいたしたいのですが、われわれは公害環境特別委員として、この問題にも一生懸命、各委員さんに取り組んでいただいておるわけでございまして、私はこの問題の解決がなければ水俣病行政は進まない、こういうぐあいに思いますので、ぜひ各党話し合いをするというようなことで、この処置をどうするかというような機会委員長さんにつくっていただきたい、これはお願いしておきたいと思います。
  158. 久保等

    久保委員長 そのことについては、また理事会で別途十分に相談したいと思います。
  159. 馬場昇

    馬場(昇)委員 そこで、最後に長官、もう時間があと二、三分しかございませんけれども、非常にくどいようでございますけれども申し上げておきます。  たくさん質問を保留いたしました。そしてあなた方は新しい方法も考えると言われたわけですけれども、ここで俗に害われておりますボタンのかけ違えというようなことがあったら、これはずっと大変な問題になっていきます。私は、あなたの環境行政は本当に後退しておると思っているのです。そして国、政府全体の環境行政後退しておりますよ。そして水俣病というのも、石油ショック以来、第三水俣病がシロにされて以来本当に後退しておるのです。ところがいまからやらなければ——石原さんも言いました、私も言ったのです。この問題を完全に解決しなくて二十世紀を人間は終わらしてはならぬ。世界の公害の原点と言われる水俣病問題を完全に解決せずして、人間が二十一世紀の文明を語ってはならぬ、そのくらいの重大な問題だと思うのです。そしてまだ病像の解明さえもできていないじゃありませんか。本当に広さ、深さの総合調査もできていない。社会党はいま総合調査法もここに出しております。これについても環境庁はどうですか。自民党の出された特別立法には、自民党でもないのに通してくれ、通してくれと言ってあっちこっち局長以下回っておる。何事ですか。社会党が出した本質的なものには一言も言うておらぬじゃないですか。あなた方は自民党ですか。そういうこともやっているのです。しかし、各党各派ありますけれども、問題は、本当に基本的にいま原点に返ってこれをやらなければ大変なことになるということだけを言っておきたいのです。  そういう意味におきまして、私はここでひとつ提案をして終わりたいと思うのですけれども、この問題で一番詳しいのは、私が言っても水掛け論になりますが、やはり私は熊本県の審査会が一番苦労しておると思うのです。そういう意味において、私は、熊本県の審査会の先生、そして熊本知事もいいでしょう、苦労しておる知事、こういう方を国会に参考人として呼んで、この人たちの意見を十分聞いて、全然解明できませんでしたからそれを基礎にしながら、さらにこの問題については議論をしていきたい、こういうことを申し上げ、委員長に、熊本県知事なり審査会の長年苦労した権威ある先生方をここに呼んで御意見を聞きながらこの認定促進の問題についての議論をする場をつくっていただきたいことをお願いしておきたいと思うのですが、どうでしょうか。
  160. 久保等

    久保委員長 お答えいたします。  いまの馬場委員の御要望につきましては、理事会等でもひとつ十分に御相談をいたしたいと存じます。
  161. 馬場昇

    馬場(昇)委員 それでは、時間が参りましたので、いままで保留した分は残しまして、きょうの質問はこれで終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  162. 久保等

    久保委員長 次回は、明十三日金曜日、午前十時理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時三十一分散会