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1978-10-13 第85回国会 衆議院 決算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和五十三年九月十八日)(月曜 日)(午前零時現在)における本委員は、次のと おりである。    委員長 楯 兼次郎君    理事 宇野  亨君 理事 國場 幸昌君    理事 葉梨 信行君 理事 森下 元晴君    理事 馬場猪太郎君 理事 原   茂君    理事 林  孝矩君 理事 塚本 三郎君       天野 光晴君    津島 雄二君       西田  司君    野田 卯一君       早川  崇君    村上  勇君       高田 富之君    村山 喜一君       春田 重昭君    安藤  巖君       山口 敏夫君    麻生 良方君 昭和五十三年十月十三日(金曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 楯 兼次郎君    理事 國場 幸昌君 理事 葉梨 信行君    理事 森下 元晴君 理事 馬場猪太郎君    理事 原   茂君 理事 林  孝矩君       津島 雄二君    西田  司君       野田 卯一君    村上  勇君       高田 富之君    村山 喜一君       春田 重昭君    安藤  巖君       甘利  正君    山口 敏夫君     —————————————  出席国務大臣         農林水産大臣  中川 一郎君  出席政府委員         大蔵省理財局次         長       迫田 泰章君         農林水産大臣官         房長      松本 作衛君         農林水産省経済         局長      今村 宣夫君         農林水産省構造         改善局長    大場 敏彦君         農林水産省農蚕         園芸局長    二瓶  博君         農林水産省畜産         局長      杉山 克己君         農林水産省食品         流通局長    犬伏 孝治君         食糧庁長官   澤邊  守君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   森  整治君  委員外出席者         行政管理庁行政         管理局管理官  渡辺  修君         国土庁計画・調         整局計画課長  星野 進保君         国土庁地方振興         局山村豪雪地帯         振興課長    羽鳥  博君         大蔵省主計局司         計課長     石井 直一君         文部省体育局学         校給食課長   坂元 弘直君         自治省税務局固         定資産税課長  渡辺  功君         会計検査院事務         総局第四局長  岡峯佐一郎君         農林漁業金融公         庫総裁     中野 和仁君         決算委員会調査         室長      黒田 能行君     ————————————— 委員の異動 九月三十日  辞任         補欠選任   春田 重昭君     矢野 絢也君 同日  辞任         補欠選任   矢野 絢也君     春田 重昭君 十月四日  辞任         補欠選任   春田 重昭君     浅井 美幸君 同月六日  辞任         補欠選任   浅井 美幸君     春田 重昭君   安藤  巖君     不破 哲三君 同日  辞任         補欠選任   不破 哲三君     安藤  巖君 同月十三日  辞任         補欠選任   山口 敏夫君     甘利  正君 同日  辞任         補欠選任   甘利  正君     山口 敏夫君     ————————————— 九月十八日  昭和五十一年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十一年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十一年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十一年度政府関係機関決算書  昭和五十一年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十一年度国有財産無償貸付状況計算書 は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  昭和五十一年度一般会計歳入歳出決算  昭和五十一年度特別会計歳入歳出決算  昭和五十一年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和五十一年度政府関係機関決算書  昭和五十一年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和五十一年度国有財産無償貸付状況計算書  (農林省所管農林漁業金融公庫)      ————◇—————
  2. 楯兼次郎

    楯委員長 これより会議を開きます。  国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。  すなわち、決算の適正を期するため、本会期中において  一、歳入歳出の実況に関する事項  二、国有財産増減及び現況に関する事項  三、政府関係機関経理に関する事項  四、国が資本金を出資している法人会計に関する事項  五、国または公社が直接または間接補助金奨励金助成金等交付しまたは貸付金損失補償等財政援助を与えているものの会計に関する事項 以上の各事項につきまして、関係各方面からの説明聴取、小委員会の設置及び資料の要求等の方法によりまして国政に関する調査を行うため、議長の承認を求めることにいたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 楯兼次郎

    楯委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 楯兼次郎

    楯委員長 昭和五十一年度決算外二件を一括して議題といたします。  本日は、旧農林省所管について審査を行います。  まず、農林水産大臣から概要説明を求めます。中川農林水産大臣
  5. 中川一郎

    中川国務大臣 昭和五十一年度農林省歳入歳出決算につきまして、大要を御説明申し上げます。  まず、一般会計歳入につきましては、収納済歳入額は一千四百五十九億五千五百二十三万円余でありまして、その主なものは日本中央競馬会法に基づく納付金であります。  次に、一般会計歳出につきましては、支出済歳出額は二兆四千九百六億一千六百九十三万円余でありまして、この経費の主なものは、国民食糧安定的供給確保といたしまして六千三百四億二千一百十一万円余、農業構造改善といたしまして八百六十三億二千四百五十三万円余、農産物の価格の安定と農業所得確保といたしまして八千八百八十三億八千八百三十五万円余、農業地域計画的な整備開発といたしまして五百八十七億五千三百一万円余、食品流通加工近代化消費者対策充実等といたしまして六百三十九億五千三百四十二万円余、農業技術開発と普及といたしまして六百八十六億八百八十四万円余、農林金融の拡充といたしまして六百一億七千六百二十四万円余、農業団体整備強化といたしまして一百八十一億一千三百三十九万円余、森林林業施策充実といたしまして一千七百四十二億七千五百七十九万円余、水産業振興といたしまして一千二百十九億二千四百八十九万円余、その他災害対策等重要施策といたしまして三千七十八億四千一百九十三万円余の諸施策実施支出したものであります。  続いて、農林省所管の各特別会計決算につきまして申し上げます。  まず、歳入につきましては、収納済歳入額は、食糧管理特別会計勘定合計において七兆五千五百六十七億七千二百三十八万円余、国有林野事業特別会計勘定合計において四千一百七億五千八百七十五万円余、農業共済保険特別会計勘定合計において一千五百七十三億九千八百十万円余、漁船保険及漁業共済保険特別会計勘定合計並びに森林保険自作農創設特別措置中小漁業融資保証保険及び特定土地改良工事の各特別会計の総合計において一千三百八十六億八千八百七万円余であります。  次に、歳出につきましては、支出済歳出額は、食糧管理特別会計勘定合計において七兆五千五百九億九千三百七十九万円余、国有林野事業特別会計勘定合計において四千一百五十四億八千一百万円余、農業共済保険特別会計勘定合計において一千四百八十二億八千四百六十三万円余、漁船保険及漁業共済保険特別会計勘定合計並びに森林保険自作農創設特別措置中小漁業融資保証保険及び特定土地改良工事の各特別会計の総合計において一千五十九億九千七百四十八万円余であります。  これらの事業概要につきましては、お手元にお配りいたしました「昭和五十一年度農林省決算概要説明」によって御承知を願いたいと存じます。  これらの事業の執行に当たりましては、いやしくも不当な支出や非難されるべきことのないよう、常に経理の適正な運用について、鋭意努力をいたしてまいりましたが、昭和五十一年度決算検査報告におきまして、不当事項等として指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に存じます。指摘を受けた事項につきましては、直ちに適切な措置を講じましたが、今後とも指導監督を一層徹底いたしまして、事業実施適正化に努める所存であります。  何とぞよろしく御審議のほどをお願いいたします。
  6. 楯兼次郎

  7. 岡峯佐一郎

    岡峯会計検査院説明員 昭和五十一年度農林省決算につきまして検査いたしました結果の概要説明申し上げます。  検査報告に掲記いたしましたものは、不当事項二十四件、意見を表示しまたは処置を要求した事項八件及び特に掲記を要すると認めた事項一件でございます。  まず、不当事項について説明いたします。  検査報告番号一〇号は、関東農政局におきまして、邑楽頭首工を操作する管理事務所等の完成時期など工事施行計画が適切でなかったため本来必要のない仮電気設備室及び管理人室工事等を施行し、また、国が負担する要のない管理委託費用を負担したもので、これらの工事費管理委託費用が不経済となったと認められるものでございます。  検査報告番号一一号から二六号までの十六件は、公共事業関係補助事業実施及び経理が不当と認められるものでございます。  これらは、土地改良災害復旧造林及び漁港修築等公共事業関係補助事業を施行するに当たりまして、造林当該年度に全く行われていなかったり、舗装工事の設計に際し、調査、検討が適切でなかったため、舗装厚を過大に設計していたり、監督及び検査が適切でなかったためコンクリートブロック擁壁が設計どおり施工されず不安定となっているのに、設計どおり施工されたこととしていたり、事業計画が適切でなかったため事業を中止しまたは設置した施設が遊休していて補助目的を達していなかったりなどしていたものでございます。  検査報告番号二七号から三二号までの六件は、公共事業関係を除く補助事業実施及び経理が不当と認められるもので、事業実施するに当たりまして、計画が適切でなかったため施設等が全く利用されていなかったり、事業費を過大に精算したりなどしていたものでございます。  検査報告番号三三号は、農業改良資金貸し付けが不当と認められるもので、この事業都道府県が、国からの補助金自己資金等によって造成した資金農業者等に対して無利子貸し付けているものでありますが、同資金貸し付け対象にならないものに貸し付けていたり、借り受け者が貸付対象事業費より低額で事業実施していたりなどしていて、道府県貸付金運営が適切を欠き、補助目的に沿わない結果になっていると認められるものでございます。  次に、意見を表示しまたは処置を要求した事項について説明いたします。  その一は、農用地造成工事における掘削運土費積算について処置を要求したものでございます。  関東ほか二農政局昭和五十一年度に施行しました塩那台地開拓建設事業農地造成工事ほか十三工事は、いずれも丘陵の未墾地農用地に造成するため多量の土砂を掘削運搬するなどの工事でありますが、これらの工事予定価格積算について見ますと、掘削運土費農林省が定めた標準歩掛算定表を適用して、使用する機械の機種を運土距離に応じてブルドーザー及び被牽引式スクレーパー等として算定しています。  しかし、本件各工事のようにブルドーザー使用して多量の土砂を掘削運土する場合には、その運土距離が長くなるほど作業能率が著しく低下するので、このような作業にはスクレープドーザー使用する方が効率的であると認められ、ブルドーザーにかえてスクレープドーザー使用することとして掘削運上費積算いたしますと、積算額相当程度低減できたものと認められました。  このような事態を生じましたのは、さきに申し上げました標準歩掛算定表の中にスクレープドーザー適用基準及び作業能力算定式を定めていないことなどによると認められます。  この種の工事は今後も引き続いて多数施行することが見込まれますので、速やかに適切な積算基準を定めて予定価格積算の適正を期する要があると認められるものでございます。  その二は、国営印旛沼干拓事業事業完了について処置を要求したものでございます。  関東農政局昭和二十一年度に着工した国営印旛沼干拓事業は、四十四年三月に工事完了し、干拓造成地の大部分についてすでに五十年五月までに土地配分を行っていて、その配分を受けた者は四十五年以降毎年無償で耕作し相当の収穫を得ている状況でありますのに、同農政局では、造成地内に無断で占用され係争中のため土地配分ができないものがあること、また、計画変更によって不要となった工事用地の未処分地があることなどを理由に、事業完了手続をとっていないため土地改良法に基づいて事業完了受益者から徴収すべき負担金徴収がまだ開始されていないものであります。  なお、この事業借入金利息相当累積していて、これは国が全額を負担することとなり、このまま事業完了が遅延すればさらに利息が増加する結果となります。  つきましては、この事業はすでに工事完了し、造成地の大部分は四十五年から耕作が行われていることを勘案して、未配分地を分離するなどしまして速やかに事業完了手続をとって、負担金徴収を行い、借入金償還を開始する要があると認められたものでございます。  その三は、都道府県が行う市町村等への補助に対する国庫補助金交付について処置を要求したものでございます。  農林省が、農政局等を通じて栃木県ほか十四府県交付している補助金のうち七十一費目四百八十五億円について、これら府県がこれを財源として行う市町村等への補助金(いわゆる間接補助金)の交付状況調査しましたところ、補助事業者としての府県は、市町村等が行う事業進捗状況に応じて国に対し補助金請求を行い、国から補助金を受け入れた後は、市町村等から提出された概算払い請求書等審査を行って間接補助金交付を行うこととなっておりますのに、事業実績見込みを十分把握しないで所要額を大きく上回る概算払い額を国に請求して受け入れていたり、国からは概算払い補助金を受け入れながら市町村等へは年度末などに一括交付していたり、市町村等からの請求審査等事務が遅延していたりしていて、そのため、国庫補助金府県が受け入れてから、市町村等交付するまでに、請求書等審査に通例三十日程度かかるとしても、これを大きく上回る六十日以上国庫補助金府県に滞留する結果となっていて、国の補助金支出効果を減殺していると認められるものが五十九費目百三十九億五千三十二万円に上っている状況でありました。  したがって、農林省において補助金交付額及び交付時期の適正化を図るための措置を講じるとともに、間接補助事業進捗状況等の把握に努めるなどして国庫補助事業の円滑かつ適正な遂行を図る要があると認め処置を要求したものでございます。  その四は、農地保有合理化促進特別事業費補助金経理について処置を要求したものでございます。  農林省では、農地保有合理化を図るため農用地等の買い入れまたは借り入れに要する資金県公社に無利子貸し付け事業を行っている社団法人全国農地保有合理化協会に対して多額国庫補助金交付しています。この補助金は、同協会貸し付けに必要な財源に充てられるほか、協会農林中央金庫から貸付資金財源として借り入れている借入金利息支払い金にも充てられるものでありますが、同協会では、貸付資金農林中央金庫から四半期ごとに一括して借り入れているため、各県公社貸付金を払い出すまでの間、資金協会に滞留することとなりまして、この間における支払い利息分についても国庫補助金交付する結果となっています。  つきましては、同協会は、借入金による貸付金を各県公社に払い出すまでの間、事前に借り入れて留保しておく格別の理由も認められないのでありますから、借入資金の調達を貸し付け実態に即して行うことにより、資金の滞留を減少させるよう努め、もって国庫補助金のなお一層の節減を図る要があると認められるものでございます。  その五は、農業協同組合等補助事業実施する農業施設等建設製造請負契約における最低制限価格制について処置を要求したものでございます。  農林省では、農業協同組合等実施する農業構造改善事業等について、都道府県補助金交付する場合、都道府県に対して補助に要する費用について補助金交付していますが、農業協同組合等補助事業実施する農業施設等建設製造請負契約入札に当たりまして、最低制限価格制を採用しているものが相当数見受けられ、この中には、最低制限価格予定価格に対して八〇%以上九〇%未満に設定しているもの、さらに九〇%以上に設定しているものがございます。これらの入札におきましては、予定価格に近い最低制限価格を設定したため、入札者のうちには相当数失格となっていたり、工事経歴等から見て契約内容に適合した履行が十分可能と認められる者が失格となっていたり、最低制限価格趣旨誤り予定価格と同額の申込者契約していたりするなど、競争契約における適正な取引価格の形成を阻害していると認められる事態が多数見受けられました。  つきましては、今後も農業協同組合等においては、農林省補助を受けて行う農業施設等建設製造が多く見込まれているのでありますから、農業協同組合等実施する補助事業に係る契約実態都道府県を通じて十分調査し、いたずらに競争の利益を阻害して不経済となるような契約が行われることのないよう適切な処置を講じて補助金の効率的な使用を図る要があると認められるものでございます。  その六は、補助事業により導入した施設等利用について処置を要求したものでございます。  農林省では、農林畜水産業振興を図るため農業構造改善事業等補助事業を推進して、市町村農業協同組合等導入する集荷、選別などを行う建物、米麦乾燥調整施設等農業施設及びトラクターなどの農業機械について毎年多額国庫補助金交付しております。  これらの事業において導入した施設及び機械利用運営状況等その事業効果について調査いたしましたところ、導入に当たって事前調査が十分でなかったなどのため施設等をほとんど利用していないものがあったり、利用困難なため施設等無断で処分しまたは他の用途に転用したりしていて、補助目的を達していないと認められるものが相当数見受けられました。  このような事態が生じましたのは、事業主体のうちには事前調査が十分でないまま事業計画を策定しているものや導入後の管理運営が適切でないと認められるものがあることなどによると認められます。  つきましては、都道府県等に今後、これら施設等導入について適切な事業計画を策定するよう指導させ、導入後の管理運営については財産台帳を備えつけるなどして適切な指導監督を行わせるとともに、補助金交付する際には施設等無断処分などした場合国庫補助金を返還させる旨の条件を明確にさせることとし、また、農林省におきましても事業計画審査及び指導を十分に行いまして、補助効果を上げる要があると認められるものでございます。  その七は、農業改良資金貸し付けについて処置を要求したものでございます。  農業改良資金は、農業改良資金助成法に基づいて都道府県が国からの補助金自己一般会計からの繰入金により特別会計を設け、これを財源としまして、農業者またはその組織する団体に、技術導入資金農家生活改善資金または農業後継者育成資金として無利子貸し付ける制度でございまして、昭和三十一年度から五十一年度までの貸付累計額は千九百六十七億余円に達しています。  これらの貸し付けの大半を占める技術導入資金につきましては従来から本院でその貸し付けの適否及び借り受け者の貸付金使用状況調査してきたところであり、その結果、貸し付けが不当と認められ、国庫補助金相当額補助目的に沿わない結果になっていると認められる事例については、昭和四十年度から五十年度までの決算検査報告に掲記いたしましてその是正について注意を喚起してまいりましたが、本年においても、さきほど不当事項のところで御説明申し上げましたように、同様な事例が見受けられまして、いまだに改善の跡がうかがえない状況でございます。  つきましては、都道府県を通じて、本資金趣旨内容についての理解を徹底させるとともに、審査体制充実を図る措置を講じさせるなどして貸し付けの適正を期す要があると認められます。  また、現在は、借り受け者が弁済期限までに償還金を支払わなかった場合、または一時償還すべき金額を期日までに支払わなかった場合だけ違約金徴収することとなっていますが、本資金融資が無利子となっていることを考慮して、借り受け者が故意に事実と異なる報告をした場合にも違約金徴収することができるように措置を講ずる要があると認められるものでございます。  その八は、製品生産事業実施について改善意見を表示したものでございます。  林野庁では、国有林野事業として、国が直用立木素材にする製品生産事業同庁製品事業所等で行っておりますが、この直用作業による素材生産実施について見ますと、相当数事業所において毎年生産性が低下する傾向が見られ、五十一年度においてもその生産性同庁素材生産に当たっての生産性の指標として事業所別に定めている標準生産性に比べてかなり低くなっているものが見受けられる状況でございます。  そして、生産性標準生産性の五〇%以下で、素材の販売による損失が著しいものが三十八事業所ございまして、その五十一年度素材生産量は、約十三万立米となっていまして、この数量標準生産性基準にして算定した生産量の三三%にすぎませんし、また、これを生産するのに必要な延べ人員は、同基準をもとにして算定すれば約五万一千人となりますが、実際には約十五万二千人が作業に従事している状況であります。  一方、直用による素材生産実施するに当たりましては、各事業所ごとに年間の計画生産量を定めており、三十八事業所計画生産量は約二十一万立米となっています。これは、前年度計画生産量実績生産量等に当年度作業条件の変化を加味して実行可能な数量として定めているので、標準生産性基準として算定した数量相当下回ったものとなっておりますが、約十三万立米という数量はこの計画生産量の六三%にすぎません。  この原因は、賃金の支払い形態出来高制から日給制に変更することなどについて労使間の交渉が行われている間、立木の伐倒等の主作業が停止したこと、作業者の一部が休暇等のためセット人員が欠け他の作業者が安全を保てないと主張して主作業を停止したことなどに対して、適切な作業管理を行わなかったことによると認められます。  その結果、生産量が減少しているにもかかわらず作業の延べ人員が増加しているものがあったり、主作業に従事する延べ人員が著しく減少しているにもかかわらず主作業の付帯作業を行う副作業のための延べ人員が逆に増加しているものがあったりしている状況であります。  このように製品生産事業における生産性が低いため素材生産原価は著しく割り高なものとなっていまして、その販売価額を上回っているほどでございます。  つきましては、最近の国有林野事業特別会計の財務状況直用による製品生産からの収入が、この特別会計の主要な財源となっていることから見ましても、今後直用により製品生産事業実施する際には作業管理を適正にして生産性の向上を図り、必要によっては直用作業にかえて部外に請け負わせて行うことなどについても検討を加え、最も経済的な生産方法をとるなど業務を的確に行う処置を講ずることが特に緊要と認められるというものでございます。  次に、特に掲記を要すると認めた事項について説明いたします。  これは国営干拓事業の施行に関するものでございまして、農林省が施行している国営干拓事業は、多額事業費相当年月の工期とを必要とするものでありますが、事業の施行状況について調査いたしましたところ、すでに工事完了しているのに造成地配分されないで全く利用されないまま長期間にわたって遊休の状態となっていたり、事業の中途で長期間工事を中止し、再開のめども立たない状態となっているものがございます。  このような事態を生じた原因としましては、工事完了後の社会情勢の変化もあって、新規開田抑制政策により稲作を畑作に転換することや、他の目的利用することについての対策を立ててこれに対応しようとしましたが、地元関係者との意見の調整ができなかったことなどが挙げられます。  このような事態は、社会情勢の変化や地元との関係などから、関係当事者の努力にもかかわらず、問題が解決されず今日に及んでいるのでございますが、このままの状態で推移いたしますと、これまでに投下した多額事業費が全く効用を発揮することができないばかりでなく、借入金利息支払い額も累増の一途をたどることになりますので、特段の配慮が望まれるところでございます。  なお、以上のほか、昭和五十年度決算検査報告に掲記しましたように漁港公害防止対策として実施する廃油処理施設整備事業実施について、また、四十九年度決算検査報告に掲記しましたように水路トンネル工事の設計積算についてそれぞれ処置を要求いたしましたが、これらに対する農林省処置状況についても掲記いたしました。  以上、農林省決算について検査しました結果の概要説明を終わります。
  8. 楯兼次郎

    楯委員長 次に、農林漁業金融公庫当局から資金計画事業計画等について説明を求めます。中野農林漁業金融公庫総裁。
  9. 中野和仁

    ○中野説明員 昭和五十一年度における農林漁業金融公庫の業務の概況について御説明申し上げます。  昭和五十一年度においては、国の農林漁業施策として、国民食糧安定的供給確保や水産物を含めた総合的な食糧政策が積極的に講ぜられました。こうした国の諸施策の展開に即応して、当公庫は、業務の運営に当たりまして関係各機関との緊密な連携のもとに、農林漁業の生産基盤の整備及び経営構造の改善のための融資を一層推進するとともに、多様化する資金需要に対処して、融資条件改善も含めて融資の円滑化に特に配慮してまいりました。  昭和五十一年度における貸付計画について申し上げますと、当初貸付計画額は四千九百十億円を予定しておりましたが、その後、冷害等対策の一環として、貸付計画額を二百億円追加いたしました。  これに対する貸付決定額は五千二十二億千二百八十四万円余となり、前年度実績と比較して九百六十八億七千九百九十二万円余と、二三・九%の増加となりました。  この貸付決定実績を農業、林業、漁業等に大別して申し上げますと、一、農業部門三千六百十八億九千七百六万円余、二、林業部門六百三億九千十七万円余、三、漁業部門七百九億四千四百十二万円余、四、その他部門八十九億八千百四十八万円でありまして、農業部門が全体の七二・一%を占めております。  また、この貸付決定実績を委託貸し付けと直接貸し付けに分けて申し上げますと、委託貸し付けによるものが、全体の六八・三%に相当する三千四百二十九億二千四百十五万円余であり、直接貸し付けが残りの三一・七%、千五百九十二億八千八百六十九万円になっております。  次に、昭和五十一年度貸付資金交付額は四千六百二十億六百七万円余でありまして、これに要した資金は、資金運用部からの借入金四千百三十億円、簡易生命保険及び郵便年金の積立金からの借入金二百億円、並びに貸付回収金等二百九十億六百七万円余をもって充当いたしました。  この結果、昭和五十一年度末における貸付金残高は二兆三千六百三十二億千三百五十二万円余となりまして、前年度末残高に比べて三千三百二十二億九千四百七十一万円余、一六・四%の増となっております。  貸付金の延滞状況につきましては、昭和五十一年度末におきまして、弁済期限を六カ月以上経過した元金延滞額は三十五億三千四百十三万円余でありまして、このうち一年以上延滞のものは三十億二千百五万円余となっております。  次に、昭和五十一年度の収入支出決算状況について御説明申し上げますと、収入済額は、収入予算額千四百七十九億四千三百万円余に対し、千四百六十七億三千三十四万円余となりました。また、支出済額は、支出予算額千五百九十億千五十三万円余に対し、千五百八十二億四千二十三万円余となり、収入に対し支出が百十五億九百八十八万円余多くなっております。  最後に、昭和五十一年度における当公庫の損益計算の結果について申し上げますと、貸付金利息等の総利益は二千六十億九千八百三十四万円余、借入金利息等の総損失は二千六十億九千八百三十四万円余でありまして、利益と損失が同額となりましたため、利益金はなく国庫納付はありませんでした。  これら業務の遂行に当たりましては、常に適正な運用について、鋭意努力してまいりましたが、昭和五十一年度決算検査報告におきまして、農地等取得資金貸し付けにつきまして不当事項として指摘を受けたものがありますことは、まことに遺憾に存じております。指摘を受けました事項につきましては、直ちに適切な措置を講じましたが、今後は、このようなことの再び起ることのないよう業務運営適正化に一層努める所存であります。  以上が、昭和五十一年度における農林漁業金融公庫の業務の概況であります。  何とぞよろしく御審議のほどお願いいたします。
  10. 楯兼次郎

    楯委員長 これにて説明の聴取を終わります。     —————————————
  11. 楯兼次郎

    楯委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森下元晴君。
  12. 森下元晴

    森下委員 私は、山村振興対策を主にしてお尋ねしたいと思うのですが、農林大臣また林野庁長官にお尋ねする前に、国土庁の関係の方々に二、三まずお尋ねしたいと思います。  初めに、昨年の秋に策定されました三全総、すなわち第三次全国総合開発計画での山村の位置づけについて簡明に御説明を願います。
  13. 星野進保

    ○星野説明員 御説明申し上げます。  御案内のように、三全総におきましては、国土の利用をどのようにしていくかということが基本的な課題でございます。その中で、これも先生御案内のように、森林であるとか原野であるとか、そういう国土面積が全体の三分の二を占めております。それに対しまして住宅地あるいは工場用地等いわゆる宅地と言われるものが百二十万ヘクタール程度で、実はその少ない宅地等の中で住民の活動あるいはいろいろな産業活動が非常に密度が濃いわけでありますが、それをよく考えてまいりますと、いわゆる原野あるいは森林というところが、緑であるとかあるいは水であるとか、それから土壌であるとか、そういうような、国土資源と私ども申しております基本的な国土の資源の供給あるいは管理をしておる地域である、そういう認識を基本的に持っております。そういうことを考えてまいりますと、そういう密度の高い活動が行われている地域というのは、実はそういう国土資源を管理、保全しておるところにはぐくまれているのだという基本的な認識があろうかと存じます。  そこで、これも先生御案内のように、いわゆる定住圏構想というものを考えまして、流域単位ぐらいに物を考えて、そこの農山村と都市地域というものを一体として、いま申し上げましたような国土資源の管理であるとか、それから片一方町場での産業活動であるとか、そういうものが今後うまく調和していくような方向というものを考えていったらどうだろうかということを考えまして、その中で初めて山村の位置づけというのがそういう観点できわめて重要な役割りを果たしていくんじゃないだろうかということで、三全総の中でも実は、文章をそのまま引用させていただきますと、「山村地域は、農林産物の供給、水資源のかん養、国土の保全等重要な機能をもっている地域であるが、経済の発展から立ち遅れ、人口の減少が続いている。この地域がこれらの機能を発揮していくためには、山村住民が定住し得る条件を総合的に整備し、過疎化を防止していくことが重要である。」という基本認識に立ちまして、以下省略させていただきますが、細々といろいろな対策を書いたというのが経緯でございます。
  14. 森下元晴

    森下委員 ただいま御説明で、山村振興が三全総の中でいかに大事な部門を占めておるか。三全総は国家百年の計を策定したものでございます。いわゆる国土開発の中で、限られた国土資源、山村等の水資源とか森林資源、これをいかに守っていくかということが三全総のかなりのウェートを占めておるように思います。  そこで、ことしの九月十九日に山村振興対策審議会が意見書を出してあります。その趣旨も三全総の中に織り込まれた精神を生かしておりまして、結論的にこういうふうに書かれております。「国土の約半分を占める山村は、山村住民の生活の場として重要であるとともに、農林産物の供給、国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全等の面で重要な役割を担っており、都市化の進展するわが国において、国民が潤いのある豊かで安全な生活を営む上で、かけがえのない地域となっている」こういうふうに書かれております。それを受けまして、この山村振興対策は昭和四十年から始まっておりますし、もう二期目がほとんど消化されんとしております。この三期の山村対策が、五十四年度の予算で、いままでと違った意味で、いわゆる三全総の趣旨を十分に生かして、山村振興対策審議会の意見を十分生かして策定をされようとしておりますけれども、この第三期の山村振興対策、これについて簡明にどういう方向でやられておるかということの御説明を願います。
  15. 羽鳥博

    ○羽鳥説明員 お答えします。  ただいま御指摘のありましたように、山村振興対策につきましては、昭和四十年度から第一期、続きまして四十七年度から第二期の対策を実施してまいっておるわけでございますが、これも明年度をもちまして計画の樹立が終了する見込みでございます。これまでの対策を通じまして、山村におきましても生活環境の整備がかなり進展いたしましたし、また農林業等の産業の面でもそれなりの改善が見られたわけでございますが、人口の減少は若年層を中心にいたしまして依然として続いておりますし、所得及び生活環境の整備の面での格差はいまだ解消されてない等、山村にはなお多くの問題があるわけでございます。このような状況にかんがみまして、ただいまお話ございましたように、山村振興対策審議会におきましては、第二期対策後の山村振興対策の方向につきまして検討が進められてきたわけでございますが、その結果が、先ほどお話ございましたように、意見書として取りまとめられまして政府に提出されたわけでございます。  その内容につきましては、ただいままたお話がございましたが、私どもはこの意見書を受けまして、特にその意見書の中では今後の新しい山村振興対策は山村住民の立場からする格差の是正の要求と、全国民的な立場からの山村の役割り、すなわち先ほどお話がございましたような農林産物の供給の面とかあるいは国土の保全、水源の涵養、自然環境の保全というような面で大変重要な役割りを果たしておりますから、そういった役割りを一層高揚するというような要請、これをともに満たすために山村におきます定住条件の整備を進める、それで人口、特に若い人々の定住を図ることを基本的な目標とすべきである、このようにしております。  国土庁といたしましては、この意見書の趣旨を体しまして、関係省庁と十分協議いたしまして五十四年度から山村の第三期対策を発足させる方針でございます。  以上でございます。
  16. 森下元晴

    森下委員 そこで、農林大臣にお尋ねいたします。  国土庁は、山村問題だけではなしに国土の均衡ある発展、また限られた国土資源をいかに利用するか、こういうことをやられておりますけれども、やはりこの山村とか森林政策について、三全総の中でもかなり戦略的な部門を受け持っておるように思うのです。それに反しまして、農林省のいわゆる林野庁におきましては、どうも技術官庁としての域を脱し切れない。何か戦略は国土庁にあって、戦術が農林省にある、これでは私は一貫した山村の行政ができないんじゃないかという気がするわけですね。だから、幾ら林野庁長官ががんばりましても、いわゆる戦術段階しか、それ以上のことはなかなかやりにくいという一つの枠もありまして、そこに山林対策、林業対策が非常にむずかしいし、せっかく天皇陛下が国事行為として毎年どこかで植樹祭に御臨席される。また最近は、去年皇太子殿下が、大分県の育林のお祭り、これまでおいでになった、植えっ放しではいけませんので、いわゆる木を育てるためにも皇太子殿下がお出ましになって国事行為に参加されておる。それぐらい大事な森林対策でありながら、予算の裏づけを見ますと、国有林の特別会計を入れましても大体五千億程度でございます。非常に微々たるものですね。これでは私はせっかくの国家百年の計でございます山村対策、また森林対策はでき得ないと思うのです。ただいま国土庁の方からの御説明もお聞きになったと思いますけれども、山村のあり方、また山村経済を担っております林業のあり方、これについて私は大臣から御所見をいただきたいと思うのです。  たとえば里地農業の場合は農工一体でございます。農だけでは生活できない。所得は得られない。だから縫製工場とか電子工場がありまして、それでワンセットになって農が営まれております。山村におきましては、従来は農と林がワンセットになって山村に定住した。それが残念ながら林業がだめになったものですから、たばこをやりましても、酪農をやりましても、それからシイタケをやりましても、果樹をやりましても中途半端で、結局は一生懸命つくった林道を通って山村の人は都会に出ていってしまう、こういうような悪循環が現在出ておるわけなんです。  そういうことになりますと、山村における経済の主体であります林業の発展、森林政策の発展というものは、山村の振興に非常に大きな影響があるということを私は申し上げたいわけでございますけれども、まず大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  17. 中川一郎

    中川国務大臣 山村の持つ使命というものは非常に大きく、国土の保全あるいは環境の保全、資源の保全、今日過密問題のあります日本にとりましてはきわめて大事なことであろうと存じます。  したがいまして、国土庁においては山村振興法というようなものもつくり、それに基づく計画の樹立、これにはもちろん農林省関係省庁も参画いたしますが、第一次、第二次とやってまいりまして、さらに使命が重要でございますから第三期計画も立てようといたしております。その中における林業の占める位置というものはきわめて強いのでございますが、近年木材価格の低迷あるいは外材の輸入圧、こういったようなことから、林業の占める地位が重要であるにもかかわらず、非常に問題が出てきたということで、昨年来国有林野もその一つでございますが、改善をしなければならない、あるいは一般の森林についても林道はもとより育林、造林といったようなことについても積極的な施策を講じなければならない、こういう姿勢で取り組んでおるところであり、さらには林業が農村と一体でなければならないというところから、御指摘のありました山村振興法に基づく山・村振興計画につきましては、農業振興対策あるいは林業振興対策等の一般施策のほか地域の特性に応じた農林業の振興、生活環境の整備等を内容とします山村地域特別対策事業というものを進めまして、御指摘の点に対処いたしておるところでございます。  今日までもやってまいりましたが、ただいま御指摘のとおり、いよいよ山村におきましては人口の減少、所得格差の問題あるいは生活環境の格差等多くの課題が残っておりますので、わが省といたしましても九月に出されました山村振興対策審議会の意見を踏まえまして、山村における定住条件を整備するため、農林業の振興、生活環境の整備の施策の強化拡充という方向で第三期山村振興対策特別事業を検討しており、一般施策とあわせまして、山村、なかんずく林業の振興に努力してまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  18. 森下元晴

    森下委員 現在の山村の実情は、非常に経済的に圧迫されておりまして、都市と比べて非常な格差が出ております。これがますます過疎化の原因になっておる。  そこで、次に林野庁長官にお尋ねしたいのですが、最近、山村林業振興大会、こういう会が全国で行われておるのです。従来でございましたら、林業大会ということで、非常に狭い次元でやられておったのですが、やはり山村の経済森林政策、すなわち林業発展につながるのだということで、山村の町村長さん方が先頭になりまして、そして、林業はしっかりしてもらわないといけない、後で申し上げますけれども、外材の問題とか間伐、林道の負担金の問題、いろいろな要素が重なり合いまして、山村の経済はよくない、だんだん過疎化が激しくなる、町村長が先頭に立って何とか林業対策をやってもらわなければいけないということで、山村林業振興大会という言葉であらわされるくらいの行政的な、労働問題からすべてを含めた総合的な一つの大きな運動に変わりつつございます。  その実態も御承知だろうと思いますけれども、そういう意味で、国土庁自身もそういうような一つの新しい見方でやっております、もちろん林野庁と御相談はしていると思いますけれども。林野庁長官としても、ただいまも大臣からいろいろ御答弁いただきましたけれども、長官からも、山村がそういう情勢になっておるのだ、また林業の使命がそこにあるのだということについて、簡明に御答弁をまずお願いしたいと思います。
  19. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま先生御指摘になりましたように、最近各地方に、特に県を中心にいたしまして、林業山村振興大会あるいは林業決起大会というものが持たれておるということは十分私も存じております。  山村の振興を図る中核的な産業と言えばやはり林業であるのは先生おっしゃるとおりでございますし、私どももそういうことを中心にいたしまして、従来から林業構造改善事業等々を中心にいたしまして、さらにはその他公共事業、林道、造林等々を進めまして、山村の産業の発展ということを考えてまいったわけでございますが、特に近年、また山村の生活環境整備というところにも手を加えまして、林業ばかりではなくて、林業にまつわります生活の整備ということにも手を加えておる次第でございます。  さらに、ただいま先生御指摘のように、木材価格が非常に低迷いたしておりますし、木材の需要もそう大きく伸びておりません。今後こういうものをどう打開していくかということが、日本の木材需給の関係とあわせまして、山村の振興にもつながるということから、私どももこの問題には真剣に取り組んで、対応してまいりたいというふうに考えております。
  20. 森下元晴

    森下委員 各論に移りますけれども、そこでまず、間伐材の問題でございます。ちょうど二十年くらい前に、林野庁の方針で密植造林をやりなさい、十五年、二十年すれば必ず間伐によって収穫は得られるでありましょう、元が取れますよ、集約林業は密植から始まるのです、こういうように指導されました。それが、ちょうど十五年、二十年になっておりますけれども、残念ながら間伐材のような小径木は現在ほとんど売れません。切っても売れない、切らなければもやしの林になってしまう。ちょうど大根のようにときどき間引いてやらないと、後に残る木は活力がございません。ちょうど金魚ばちに金魚を入れまして、小さいうちはいいのですが、だんだん大きくなりますと、全部の金魚が死ぬか病気になってしまうように、五年、十年して景気がよくなって間伐いたしましてももうそのときは手おくれでございまして、後に残された木は力枝がほとんどございませんから、いわゆる活力のない病気の森林でございまして、雪折れする、また台風が来ればすぐに折れてしまう。適当な時期にいわゆる間伐をしてやらないと困るわけです。しかし、所有者が直接間伐をやるにしても、赤字になるものですからそのままほうっておく。  外材問題では、いろいろ大きな目で見て、外材が安いうちはどんどん外材を入れてその間に国内材はダムに貯水するように置いておけばいいじゃないか、いずれ木は大きくなって、外材がなくなったときに国産材を使えばよろしい、こういう理論が成り立つし、われわれもよくわかります。いま六五%は外材でござ、いまして、東西南北から、アメリカ材はもちろん、カナダ材、南米材、ニューギニアあたりからも来ておりますし、ソ連材ももちろん来ております。世界各国から日本の港々に外材が来て使われておるわけなんですが、結局国産材をその間に活力ある森林として保存していく、その保護対策がまだまだ非常に薄いのじゃないだろうか。  政治もそうでございますけれども、経済も非常に心理的な面がございまして、将来よくならないということになりますと、木も植えない、手入れもしない。よくなると思うと一生懸命木を植えて、五十年後、百年後を楽しみに、孫のために木を植えていこうという心理が働くわけでございますが、残念ながらいま森林に対する意欲というものがほとんどない。  国有林の経営状況を見ても大きな赤字でございまして、いま五十一年の決算をやっておりますけれども、これでも五百億の赤字ですね。五十二年が八百三十億、五十三年は恐らく一千億を超すわけです。来年ももっと超すであろう。国有林のようなところの経営も悪いわけですから、民有林とかその他の林業がよくあるはずがない。経済ベースからかけ離れてしまっておる。そこでやはり対策が必要であると私は思うわけです。そういうことで、まず間伐材の問題。  もう一つ、ついでに林道の問題も申し上げます。  スーパー林道とか大規模林道、それから広域林道、いろいろ一般林道がございますけれども、非常に負担金が高くてとうてい受益者負担ができない。これはかなりやかましくなっております。所有者に負担金を求めるのは林道だけです。ほかの業態ではほとんど求める例がございません、貿易港にしても、国道にしても、県道にしても、受益者にそういうような負担を求めることは。有料はありましても、その他の公共道路は求めない。ところが、これは昔の習慣で求めておる。町村も負担金が取れぬものですから結局町村負担になって、町村の財政が非常な圧迫を受けておる。もうスーパーも要らない、また大規模林道もこれまでじゃないかという心配が出ております。もちろんこれは林道といっても山村のりっぱな道でございますから、完全に行政道であって、当然県とか国が全額やるべきである。しかも、自然保護、環境保全という立場から、林道的な性格以上に工費をぜいたくに使わされる傾向もございまして、これも全部負担の対象になっておりますから、こういう面で何とか林道法を定めるか負担率を変えてもらわないと、負担率が同じでは、率が低くても負担金はどんどん上がっていきます。十年前と立木価格はほとんど変わっておらない、しかし林道費は十倍ぐらいになっておりますから、負担金はかさんでいって、しまいには返上、町村も負担できないというような事情もございますので、まず間伐材と林道の負担問題について、これも時間がございませんので、簡単で結構でございますからお答えを願います。
  21. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま先生から間伐の問題と林道の問題の御指摘がございました。  ただいまの林業の停滞の原因、いろいろあろうと思いますけれども、その大きな一つとして間伐材がなかなか売れないという問題、そのために間伐が進行しないという問題、そして森林の活力が非常に低下しておるという問題、これは非常に私どもとしても大事な問題である、ゆるがせにできない問題であるというふうに考えております。そのために、ただいま昭和五十二年度から一般の林道よりも工事内容の簡単なものを間伐林道として取り上げまして、積極的に造林地内に林道をつくり、間伐の生産費の減あるいは労働軽減という意味からの間伐林道の推進をいたしております。  そのほか、間伐材を計画的に、そしてまた継続的に売っております森林組合等に対しまして、その連合会がそういう売り払いをやります場合の価格変動準備金の造成、こういうものに対しましての助成もいたしております。  それからさらには、小径木を利用いたしまして高度加工いたします利用技術、こういう問題に対しましての高度化利用事業というものを考えておりますし、また間伐材を使いましていろいろ製品をつくった場合の展示、そういうものに対しての助成もいたしております。それから間伐材を使いまして新しい家をつくるというような新工法、こういうものの開発、この努力もいたしておりますし、さらには日本住宅・木材技術センターというものを設置いたしまして、ここで間伐材を含めました木材の利用についての需要開発、技術開発を現在進めております。  そのほか融資面におきましても、林業改善資金の中に間伐のための作業路あるいは必要なのこ、こういうものの設置に必要な融資ということも考えております。こういうことで総合的な対策を現在講じておりますけれども、私ども昭和五十四年度に向かいましてもさらにこういうものの拡充に努めてまいりたいというふうに考えております。  それから林道の問題でございますが、御指摘のように林道につきましては受益者の負担をいただいております。これは林道の性格上、やはり林道をつけますと地価が上り、木材価格も上がる、そして産業の振興に役立つという形から、そういう経過をたどっておるわけでございますが、ただいま一般の補助林道の中で広域基幹林道あるいは普通林道、こういうものを合わせますと、国から平均五五%の助成をいたしておりますし、さらに都道府県が平均約二八%、これに対して助成をいたしております。したがいまして、町なり地元の受益者の方々の負担というのは平均一七%にはなっておるだろうというふうに考えております。さらには本年度、大規模林道につきましては受益者の負担にならぬような努力をいたしましたし、五十四年度に向かいましても、非常にむずかしい問題でございますが、スーパー林道について受益者の負担が軽減されるような方途を現在大蔵省に予算要求いたしております。  そういうことで、私どもも、林道をつくることがこれからの林業振興に基盤として一番大きく役に立つわけでございますから、林道につきましては十分今後の施策等につきまして努力をしてまいりたいと考えております。
  22. 森下元晴

    森下委員 そこで、大臣にお聞きしたいのですが、今村経済局長がまたジュネーブへ東京ラウンドの交渉に行くようでございます。オレンジとか牛肉の問題で内外から非常に厳しく責め立てられておりまして、私ども大臣に同情するわけでございますが、木材関係はもう完全に十数年前から開放経済の線で、いわゆるストリップ状況になっておりまして、非常に外圧には強いはずでございますけれども、国有林さえ大赤字になるような事態でもございますし、現在は大変な苦境に陥っておる。だから、果樹の連中とかそれから牛肉関係の連中はよく大会なんかでも、広島のレモンがそうであったとか、また林業関係でも、開放経済いわゆる自由経済になって外材がどんどん入ったために結局はだめになってしまったじゃないか、そういう例に挙げられておるわけですね。だから、開放経済にしてもいいんだ、自由経済にしてもいいんだ、枠を全部取り払っても、万一外材が入ってきても、重要な山村振興につながる森林資源は絶対に守ってやるんだという姿勢がないと、ミカンの業者も畜産の業者も林業はどうだと言うだしに使うということをわれわれはときどき聞いて、非常に残念に実は思っておるわけなんです。  話は前後しますけれども、実態は、港に揚がった、海をはるばるやってきた大きな木材が大きなトラックで、いまの話の林道を伝って山の奥まで入っておる。山の上の家まで、外材を運んでいってつくっておる。とにかく節がないものですから、大工さんが将来のことを考えずにつくっちゃうわけですね。林業地帯の山の神様の山門まで外材を使うという、まことに罰の当たるようなことも実際やっておるわけです。一生懸命構造改善で林道をつくっても、その道を伝って山の人がどんどん里に出てしまう。そうして大きな材木が逆行して山の中に入ってしまう。そして裏山から出すときには木材引取税という税金がかかっておる。しかも目の前の林道を通ってくる外材には一銭の木材引取税もかけられてない。もう保護どころか完全にこれは逆現象でございまして、こういうところに森林振興意欲とか林業の意欲が沈滞しておるわけでございますから、ひとつ林野庁だけに任さずに農林省全般で、よく国土庁とも連絡していただいて、そして三全総とか山村振興審議会、こういう中で森林対策問題を取り上げてもらいたい。これはまあ要望も含んでおりますが、簡単にひとつ大臣から……。あとまだ一問残っておりますから簡単で結構です。
  23. 中川一郎

    中川国務大臣 今日林業を取り巻く状況森下委員指摘のとおりでございます。先ほども申し上げましたように、国内需要の低下、それに逆行するように輸入による圧力というものがあって大変な事態を迎えております。一方、木引税もございまして、木材関係業界においては非常な御不満のあることも知っております。  そこで、輸入に対しては、十分話し合いによって、不当な輸入が行われないようにできるだけ調整を図っていきたいと思いますし、木引税についても、できるだけひとつこれはそろそろ解決の方向で努力をしてみたいと思っております。  なお、生産面におきましても、山村振興に関連をして前向きで取り組まなければなりませんし、あるいは林道の補助率、間伐材の利用等、各方面の施策を総合的に樹立いたしまして、何とかこの難局を乗り切りたい、こう思っておる次第であります。
  24. 森下元晴

    森下委員 それでは最後の質問に移ります。  それば、国有林関係、まあ林野庁関係の退職された方々は非常な技術を持って五十五歳で、また五十三歳あたりでやめてしまっておるわけなんです。それに関連していろいろ整理の問題もございまして、まあそれも結構なわけなんですが、やはりせっかくの技術をかなり大事にすべきである。ちょうど昔の軍隊のようにいわゆる現業者は退職年限が早いようでございます。しかし、最近は非常に道路が発達したり交通機関も発達して、私は、かなりの年齢まで技術というものは生かされるような気がしております。  それをひとつ前段で申し上げておいて、これから砂漠の緑化の問題を、これと絡み合いがございますので申し上げたいと思います。  日本は非常に森林に恵まれておりまして、森林があるから水が保続的に供給できる。水が一年じゅう保続的に供給できるからこの狭い国に一億一千万の国民が住める、こういうことでございます。先般は東京とか福岡県では非常な日照りが続いて東京砂漠とか福岡砂漠と言われました。よく考えると、山国であって山が七〇%ありながらよく一億の国民が住めるなと感心はしておりますけれども、なぜ住めるのだろうかということを考えておる人は余りいないのです。それは水がいつもあるということです。水がなくなればそう住めません。その例はインドでございますし、また中東のあの砂漠地域です。大きな地域を持ちながら人が住めないというのは、水が安定的に供給されない。だから、韓国の方や中東の方が日本に来て驚くのは、水がいつもあるということであります。それから山に木があるということであります。そして、あれだけの集中豪雨があったり台風が来ても急傾斜の山の土が流れないということ、これには彼らは驚いておるようですね。韓国の山なんかは、平地でもいつも豪雨のたびに土が流れる。  私もいろいろ砂漠のことを研究してみましたら、雨が降らないために砂漠になるという例もございますし、雨が降り過ぎて砂漠になるという例もございます。これがインドなんです。インダス川の上流、お釈迦さんの生まれた地域は、昔は物すごい森林で、お釈迦さんが菩提樹に向かって拝んでおったそうです。日本の仏像画を見ますと、菩提樹を背にして拝んでおりますけれども、本当は仏教の発祥の土地では常に森林を拝んだ。そこで大慈大悲の一つの宗教的なイデオロギーが生まれたのだ。木というものには霊があるのだ。それが皮肉なことには、二百年ばかりしてアショカ王の時代に、八万四千のお寺、これはお経の数と同じらしいのですが、それを建てた。土を掘って、そして木を切って焼いて、れんがをつくった。非常に皮肉なものでございまして、その森林地帯、お釈迦さんの生まれた地域が全部はげ山になってしまった。こういうことがインダス文明の滅亡していった原因だと言われております。一年のうちの半分は非常に雨が降りながら、結局木が生えないというのは、雨によって土が流されてしまうという不思議な現象ですね。だから、砂漠というのは決して雨が降らないから砂漠になるのじゃなしに、雨が降り過ぎて砂漠になる。その点日本という国はありがたい国で、岐阜県あたりでも揖斐川の上流で大洪水がございましたけれども、これも山が緑に覆われておったからあの程度で済んだのだという意見の方もおります。本当は、木がなければ山の土は溶けて流れるはずなんです。山が溶けて流れますと川は埋もれまして、結局は川の位置が定まらないために人は定住できない。定住圏構想も川を治めないとだめなんです。そのためには山を治めなくてはいけない。  いま、余ったドルを何に使うか、いろいろ飛行機を買ったり、ウランを買うという考え方と同時に、ひとつ海外援助を二倍にしようじゃないか。先般中東に総理おいでになりましたが、中東の砂漠緑化、アブダビというところの、通産省の所管の砂漠緑化をしておりますけれども、それとても非常にちゃちな緑化なんです。そういうところへどんどん海外援助をして、そして森林をつくって気候風土まで変えるようなチャンスもあるわけでございます。もうすでにインドには、福岡県の杉山さんという昔の陸士を出た方、この方のおじいさんは孫文先生なんかと革命運動を起こした方でございますけれども、そういう方がインドへ行って現在植林をやっております。そういうところに林野庁の退職された優秀な技術者を派遣する方法がないであろうかということです。  同時に、よそへ行けば、日本という国はいかに水に恵まれ、森林に恵まれたところであるかということがよくわかるだろうと思うのです。ドルは余っております。そういうことを考えました場合に、せっかくの技術者も、一遍その地位から離れると消えていってしまう以外にない、山に行くだけでもなかなか大変なことでございますから。そういう意味で、私は、砂漠の緑化の問題を通産省とか建設省に任せずに、大いに農林省林野庁が進んでやってもらいたい。ただもう国内国内で、一定の枠に入って、特にブラジルのパルプ材なんかでも実は通産省の所管になっておりまして、本当の技術屋がおりながらこういう方面に出ていくチャンスがないということで、私は非常にさびしい気持ちでございます。余った人はやめてもらっても結構ですが、そういう人をどこかで活用できる方法をぜひ農林大臣にお願いをいたしまして、これは答弁は結構でございますから、私の質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  25. 楯兼次郎

    楯委員長 この際、國場幸昌君から関連質問の申し出がありますので、これを許します。國場幸昌君。
  26. 國場幸昌

    國場委員 いま御案内のとおり、わが国における松造林においてのマツクイムシの問題なんですが、いまのままでいけば、ほとんど壊滅状態に至るのではないか、こういうことを言われております。このマツクイムシは、さかのぼって沖繩の復帰前、いまから十年ぐらい前から、戦後に入ってきたのですが、沖繩でずいぶんマツクイムシが松造林に対して害を及ぼしておるわけなんですが、林野庁として、このマツクイムシによるいまの被害をどう防除しようとしているものであるか、調査して、その結果は研究されておるかどうか、これをひとつお尋ねしたいわけなんです。
  27. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま御指摘になりましたように、マツクイムシにつきましては、ここ数年非常に猛威をふるいまして、全国の松が相当枯損しておるという実態です。私どもそのために、昨年度マツクイムシのための特別防除法案というものを制定していただきまして、空中散布によりますマツクイムシの予防に積極的に取り組んでいる次第でございます。  しかしながら、本年度は非常に天候が続き、高温なために、確かに非常に松の枯損が目立っております。先生御存じのように、マツクイムシでやられます松は、マツノマダラカミキリというのが媒体になりまして、マツノザイセンチュウを運んで松の生活をとめてしまうというのが原因でございまして、枯れたものを切り倒すということは、結局病気にかかったものを治すという形になりますけれども、その前の予防をしませんとますますばっこするということから、まず予防に全力を注ごうということで、空中散布をやることに決めたわけでございます。  しかしながら、空中散布をやります場合、やはり薬の問題その他がありまして、人家のそば、あるいは農耕地のそば、あるいは養魚池のそば等については薬が散布できません。したがって、どうしてもそういうところの松については予防が手おくれになる、そのために枯れる量も多いという事態もございます。私どもことしの結果につきまして大体秋ごろ、、いまごろからその枯れが目立ってくるわけでございまして、、ことしの状況につきましても十分把握して、さらに対策を詰めてまいりたいというふうに考えております。
  28. 國場幸昌

    國場委員 時間がございませんが、その点に対しまして、いまさっきの森下委員の方からの造林に対しての国民の認識といいましょうか、こんなに安くなったのではどうにも費用が償わないということで意欲を失っております。そのさなかにおいて、泣き面にハチといいましょうか、いまマツクイムシで相当なる被害が起きておるわけなんですが、その点は何と申しましても予算の裏づけがないと、防除関係に対しましては完全にできないと思います。これは十年前から始まっておるとはいえども、しかしそれが今日に至ってますます猛威をふるいつつあるわけなんですね。でありますから、その点に対しましてはたんまりと予算を、何としてでも優先的に防除に対しての、駆除に対しての予算をつけていただきまして取り組んでいただきたい。これを希望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。大臣ひとつその姿勢をお願いいたします。
  29. 中川一郎

    中川国務大臣 マツクイムシが近年大きな被害を与えていることはよく承知しておりますし、先般も筑波学園都市に林業試験場が移設になりまして、行ってまいりまして、あの近辺での被害状況、試験場においてもいろいろと研究をして、媒体がカミキリムシであることも突きとめておるようでございますので、空中散布等によってこの媒体のカミキリムシを退治する等、予算的には十分したいと思いますが、薬剤散布についていろいろとまた問題もあり、公害というのですか、散布公害というようなこともあり、なかなかむずかしい点はありますが、今日の被害状況を見るときには、思い切ったことをしていかなければいかぬ、こう思っておりますので、最善を尽くしたいと存じます。
  30. 國場幸昌

    國場委員 ありがとうございました。
  31. 楯兼次郎

    楯委員長 次に、馬場猪太郎君。
  32. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 最初に、宅地並み課税のことについて大臣にお伺いいたしたいと思います。  このごろ「黄金の日々」で有名になりました堺へ人がたくさん出かけるようになったのです。堺で調べてみますと、A農地で二十五万百円です。C農地でも八万八百円かかる。すぐ隣の方へ行きまして八尾、今東光さんで有名ですが、八尾でもA農地で二十三万四千三百円、B農地で十二万円というふうに、宅地並み課税の評価を五十一年度でいたしますとこういうふうな非常に高額な税がかかることになっております。いまのところは五十一年度の特別な措置で、特定市街化区域農地の固定資産税の課税の適正化に伴う宅地化促進臨時措置法という非常に長い法律で、還元措置でそれぞれの市町村が返還をする措置をとっておりますから何とかいっておりますが、何らかの法律改正等がなければ、ことし限りでこのままかかるとすれば、さらに固定資産税の評価がえの年でもありますし、こういう状態の中で農業を続けようという意欲を持っておっても、続けることができませんね。  そこで大臣にひとつ、どういうようなやり方をしたらこういうふうな中ででも農業が続けられるような条件があるのか、お教えいただきたい。
  33. 中川一郎

    中川国務大臣 御承知のように、宅地並み課税は、市街化になったところ、あるいは十年以内に市街化されるところについてやろう、これは他の宅地を持った方との税のバランスあるいは市街化の促進というような政策的意図を持って昭和四十七年に法律ができ、それに基づく課税が行われておる。ただ経過規定として、全面やるのではなくて、都市区域であるとか大都市圏だとかあるいはA、B、Cだとかというようなことで差をつけて今日に至っておりますが、五十三年度からはさらに一層これを進めたいということになっておるわけでございます。  さて、これをどうするかということでございますが、基本はこれは変えるわけにはいかぬのではないか。しかし、これから営農をどうしても続けていきたいという農家の意向、あるいは市街化がどの程度進んでいるかというようなことをいろいろ勘案して、いかようにするか、これは法律は決まっておりますし、法律は変えられませんが、運用によってどの程度農家の実態に合うようにするか、いろいろいま工夫をし、市街化区域の目的も達成しつつ、さらにはまた農家の皆さんの希望も聞きながらやって、しかるべき案をつくりたい、こう思っておるわけでございます。  ただ言えることは、市街化区域としてのメリット、すなわち宅地を高く売るメリットももらいたい、また税金も安くしてもらいたい、これではちょっと困るのではないか。やはり営農するならば営農ということがきちっとしていかなければなりませんし、また宅地化するというなら宅地化するだけの責任を果たしてもらう、こういうことを基本として、いかにするか考えてみたい、こういうわけでございます。
  34. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 原則的なお話をおっしゃったわけですが、新聞によりますと、五日に国土庁、建設省、そして農林省も一緒になってある程度協議をなさったというようなことが載っておったのですが、そして骨子が載っておったのですが、農林省も当然その協議の中にお入りになって、国土庁は国土庁の立場、建設省は建設省の立場で当然宅地供給ということを言われるでしょうし、農林省農林省で農業を守る、そしてまた自給率を高めるという立場で主張なさったと思うのです。その三省の間で、あるいはひょっとしたら自治省も参っておられるかもわかりませんが、協議をなさったならばその経過なりその内容について、わかる範囲でひとつお知らせいただきたい。
  35. 大場敏彦

    ○大場政府委員 市街化区域内の宅地並み課税の問題につきましては、いまいろいろ新聞等で報道されておりますが、政府全体としてまだまとまった成案というものは決まっておりません。もちろんその過程におきまして、これは自治省が主管庁でありますから、そこが中心になりまして、あるいは国土庁それから建設省それから私ども農林水産省と、寄り寄り話はしております。  わが省の基本的な立場といたしましては、いま大臣が御説明申し上げましたように、やはり都市計画区域内の農地というものは近々宅地化されるというようなことでありますから、それに対する宅地並み課税という基本的原則というものは維持しながら、しかし、さはさりながら現実には当分の間農業を継続せざるを得ない、こういう客観情勢が都市施設の未整備だとかその他の情勢からあり得ることも事実でありますから、いかなる仕組みで、いかなるケースのときにそういうものについて特例を開くかどうか、こういった観点でいま検討している、こういった状況でございます。
  36. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 この間骨子なるものが発表されておりますが、あそこの程度まで詰めておられるわけですか。
  37. 大場敏彦

    ○大場政府委員 検討の過程でいろいろな試案というものが議論されているということは事実でございますが、ただいま御答弁申し上げましたように、まだ固まった案というところまでは各省とも行っておりません。
  38. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 大阪市内あたりはA農地五十三万四千二百円かかるのです。どんな農業をやったって、これは引き合いっこないと思うのです。しかも大阪市内のようなところでも、今日のように都市化がどんどん進んでいるところであっても、あくまで農業をやりたいし、そしてまたかたまってあるということ、そしてまたそれぞれの自治体が還元措置を講じておるということは、相当長期間にわたってやはり農業が継続できるという条件があるところだと思うのです。ですから、市街化区域内にあるから機械的にこれは原則的な態度をもって臨むのだ、しかしごく一部の例外だけ何とか考えなければならないという態度というのは、農林省としてはおかしいのじゃないですか。建設省なり国土庁の立場で物を言われるならこれはまたわかります。しかし、農林省としては、ちょっとでも多く農地が残るということが好ましいわけなんでしょう。国自体の六十年までの計画でも、まだ新しい農地をふやしていかなければならぬという立場でしょう。新しい農地というのは、結局余りできがよくないのですよ。いままでにある、これから宅地化されるかもわからないというような土地の方が、三百年、四百年の歴史を持って、長い間培ってきた農地なんでしょう。そうすると、そういうところを残さずに新しいところを幾らふやしてみたってどうにもならないと思うのです。だから、農林省としてはあくまでそういうところを残すのが本当は基本的な態度ではないのでしょうか。
  39. 大場敏彦

    ○大場政府委員 農林水産省としては、当然優良農地はあくまで保全するという立場は貫いているつもりであります。  ただ、その優良農地を保全する仕方として、むやみやたらにどこもかしこもという態度をとるのは必ずしも適切ではない、やはり土地の利用としてはいろいろ多面的な利用が、これはもちろん先生御存じのとおりあるわけですから、都市的利用という側面からどういうふうに利用したらいいか、あるいは農業的土地利用の面からすればどういうふうに利用したらいいか、こういったことがあって、その接点を、いわゆるゾーニングといいますか、土地利用区分というものをつくってお互いに使い分けている、こういったことであります。  そこで、都市計画法に基づく市街化区域内の農地は、これは先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、原則として十年以内に宅地化していく、あるいは都市化していく、都市的利用に供する、こういったところで線引きされているわけでありますから、それはやはりそういった原則に基づいて運用していくべきものだと思います。  ただ、現実に具体的な広がりを、これは農振地域とするかあるいは調整区域とするか、都市計画区域とするか、市街化区域とするか、こういった問題につきましては、これは都道府県知事が市町村長、具体的には農民の方々の意見もあわせ聞いて線引きしているわけでありますから、そういった形で現実的な土地利用区分というものを設定している。しかし、土地利用区分が、それは永久不変ではもちろんございません。いろいろな過程において見直しすることがありますし、五年に一遍は見直しするわけでありますから、そういった見直しということも私ども協議に応じて、この都市計画区域は過大であるという場合には、これは優良農地として保全すべき地域に入れるべきである、こういった対応もしております。また逆に、市街化区域に入れるべき土地であるというところは、これはあんまり固定観念なしにやはり入れる、こういった弾力的な態度で対応しているというような、こういった現実であります。
  40. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 四十六年の市街化区域と調整区域に分けた新しい都市計画法に基づいてやった線引きについては、当時はまだ調整区域の意味、そして規制措置、そういったものについて十分知らなかった面も多いと思うんです。確かに実情に合わない点もたくさんあると思うのですね。そういう意味では、恐らく農林水産の立場から言えばもっともっとやはり良田は残そうとしましたけれども、四十五、六年当時というのはどんどん都市に人口が集中し、むしろ世論として開発優先というような時代であったと思うのです。そういう時代に押されてどこの都市計画地域の線引き自体も、むしろ農民側の発想よりも都市生活者側の発想の方が強く世論として働いた、そのために実情に合わないところがずいぶん出てきた。だから、それぞれの自治体が二ヘクタール以上まとまっておればひとつ振興地域にしようとかというような形で、市街化区域の中であっても風穴をあけて、そこは宅地並み課税を適用しないような措置をとってきたと思うのですよ。そういう意味から考えれば、線引きが本当に正確に行われたものならいいですけれども、そうでなければ、必ずしも大臣が言われたように市街化区域というふうに限られずに、それぞれの自治体そしてまた農民の方々が、ここはもうずっと農業を続けるべき土地でありそしてそういう意欲もあるんだ、後継者もあるんだというようなはっきりしておるようなところ、一目値上げだけを待っておるんじゃないというようなところは、当然今後も引き続いて宅地並み課税というものをずっとやらないんだということをはっきりさせなきゃいけないんじゃないかと思うのですが、ひとつ局長の方からお答えいただきたいと思います。
  41. 大場敏彦

    ○大場政府委員 私どもの考え方は、一つは土地利用区分としての線引き制度というものを随時見直していく。これはもう固定不変的なものとして運用していかない、実情に即したかっこうで直すべきところは直す、こういう態度が一つと、それから都市計画区域内にしかし農地が入っていることは事実でありますから、その農地をどう取り扱っていくか、これは非常に多面的な形で考えなければなりませんが、しかし現実に考えてみて、都市化すべき地域でありながらいろいろと都市施設、生活環境施設等の立ちおくれのために現実にはなかなか農地が多目的に転用されない、こういうケースがあることも事実であります。それで農地として使われているということも事実であります。そういう意味で、従来からいわゆる生産緑地制度とか、あるいは地方公共団体等におきまして減額調整措置をとっているわけでありますが、今後五十四年度以降それが切れるわけでありますから、それをどうするか。先ほど御答弁申し上げましたように、市街化区域内にはありながら現実に当面農地として利用せざるを得ないという農地がかなり存在することも事実でありますから、それをどういう仕組みで、全部農地というわけにはもちろんいきませんから、どういうようなケースのときにそれを特例として拾うか、こういったことについて具体的な詰めをいま急いでいる、こういった段階であります。
  42. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 自治省にお伺いいたしますが、いま三大都市圏で課税をするが一応還元しているというのと、それがもし法律改正なり制度改正をやらずこのまま適用されたらどういうふうになるかということを、現況とそして改正されなかった場合にはどういうふうになるかということについて、ひとつお知らせいただきたいと思います。
  43. 渡辺功

    渡辺(功)説明員 ただいまお尋ねの特定市街化区域内農地の減額措置が五十三年度に切れるではないか、この税負担は相当激増するはずだというお尋ねでございます。  私ども現在、確定した数字としましては五十二年度の数字しか持ち合わせませんが、それによりますと、いわゆる宅地並み課税、特定市街化区域農地という名前で私どもこれを呼んでおりますけれども、これにかかります固定資産税額は約百七億ということになっております。その中で、ただいま御指摘のありました地方税法において規定がありまして減額措置が行われているもの、これが六十億ございます。したがいまして、ただいまお尋ねのようにこの減額措置が切れますと当然この六十億の減額措置がなくなるわけでありまして、特定市街化区域農地に対する本来の固定資産税額といいますか、本則の固定資産税額百七億ということになるわけでございます。  この点につきましては、そういう大きな激増になることについてどんなふうな状態だと認識しているかというお話でございますが、これは金額的には土地にかかる固定資産税は全体で約一兆円ございますから、そういう総体の中での議論は別といたしまして、個々の特定市街化区域農地そのものの負担増という意味では相当大きなものだというふうに認識しております。もちろん土地にかかる固定資産税の負担は、宅地、農地それぞれに応じましてやはりそれ相応の御負担をいただくというのが税務の立場からの基本的な考え方でございますから、それは別といたしまして、ただいま農林水産省の方からも御答弁がありましたけれども、市街化区域内におきましても現在線引きの影響その他の理由からやはり農業を継続しているという状態が相当あって、したがって、現在の制度におきましてもこういう減額措置をとっているわけでございますので、これが五十三年度に期限切れになる今後の課題につきましては、関係各省の御意見等も十分伺いまして、税務の立場からもよく検討してまいりたい、こういうふうに考えているところでございます。
  44. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま五十二年度で百七億、そして減額が六十億と言われたのですが、五十二年度から五十三年度で評価は大体どれくらい変わっておりますか。そしてまた、来年は恐らく評価がえの年でもありますので来年のことはわかりませんけれども、五十二年度と五十三年度の評価額はどれくらいの割合で変わっておりますか。
  45. 渡辺功

    渡辺(功)説明員 ただいま御指摘のように、五十三年度にはどのくらい伸びるかということでございますけれども、固定資産税の評価額といたしましては五十一年が基準年度で、現在はその基準年度における評価によってやっております。したがって、大きく変化するといいますか、大きくはないと私ども思っておりますけれども、五十四年度が次の基準年度でございまして、五十四年一月一日に向けて評価がえの作業をやっている最中でございますので、その辺は現在不明でございます。  五十三年度につきましては評価がえのない年でございますので、五十三年度に向けてはただいま申し上げました特定市街化区域農地のうちB農地だけが負担調整で漸次率を上げてきております。それの最終年度になっておりますので、その分について若干の増があるということでありまして、ほとんど五十二年度の趨勢で御判断いただいて差し支えないのではないか、こんなふうに考えております。
  46. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 評価がえは三年に一遍ですけれども、課税標準額というのは毎年毎年上げていっているのでしょう。そういう上がりとか、そして前回の評価がえがあったときと前々回と、どれくらい上がったというような比率はわかりますか。
  47. 渡辺功

    渡辺(功)説明員 ただいま御指摘のように、特定市街化区域農地につきましては漸次負担額を調整するという手段を講じております。したがいまして、A農地につきましてはすでに五十二年度におきまして評価水準に達しておりますので、五十二年と三年は全く変更がございません。五十二年と五十三年の変更がございますのはB農地でございまして、これは五十二年におきましては〇・七という率を乗じております。これが五十三年には一・〇になっておりますから、この点が、先ほど申し上げましたように差となってあらわれるだろうというふうに考えております。
  48. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いずれにしても、五十四年度は評価がえの年でもあるし、五十二年度でも先ほどのような、農地として農業をやるについては非常に過酷な税金がかかっておるわけですから、これはもう農家にとってみれば非常に意欲をそがれることだと思うのです。去年から行われました例の減反政策そのものでも、農民側にとってみれば農業に対してずいぶん失望を感じているわけですから、この宅地並み課税の動向も非常に大きな影響を与えると思うのです。農林水産省として何か、そういう心配をしなくてもいいですよという、農家、農民の方々が安心するような、今後の交渉いかんでしょうけれども、各省庁の協議によるでしょうけれども、局長の方でそういうことをひとつ言ってもらえないかどうか、お答えをいただきたいと思います。     〔楯委員長退席、原(茂)委員長代理着席〕
  49. 大場敏彦

    ○大場政府委員 各省間の意見調整ということをいま鋭意やっております。やっておりますが、当然その過程で農林水産省としては、農民の方々、それから農協を初めとする団体の方々、特に市街化区域内で農業を営んでおられる農業者の代表の方々とは随時意見を交換しながら、私どもが言うべきことというのは農協の方々に対しても言っておりますし、また意見を聞くべきところは謙虚に聞いております。そういった形で意見を聞いておりますので、意見を反映しながら対処していきたいと思っております。
  50. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 新聞によれば、一応この骨子の中では、市街化区域内の農地にかかる固定資産税及び都市計画税の課税の適正措置として、いままでと大体同じような特例措置というものが考えられるというふうに言っておりますが、本当はそれでは足りないのですよ。線引きそのものが正しかったか正しくないかということについては議論があると思いますよ。しかし、残すべきところは当然こういう制度そのものを撤廃しなければいけないのじゃないかと思うのです。そこまでの姿勢を本当は示さなければいけないのじゃないかと思うのです。いつまでも残すべき農地というものは、こういう制度そのものをやらせないのだというような姿勢を農林省としてははっきりお持ちになっていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。これは本当は大臣に聞くべきことかもわかりませんがね。
  51. 大場敏彦

    ○大場政府委員 線引きが適切であるかどうか、広いか狭いか、こういった議論はあり得ると思うのです。しかし、都市計画法に基づいて利用区分を決め、、ここは市街化すべき地域、あるいはここは調整するべき区域というふうに決めたら、そういった土地利用区分に応じて農地というものは使っていくということが原則ではないかと私は思います。そういう意味で、市街化区域内の農地というものは原則として宅地化していく、都市的利用に使っていくのだ、この原則というものは否めない事実であります。  そういう意味で、税金がどうなるかということになりますと、もちろん税金問題だけに議論が集中するというのは正確ではないと私は思うので、本来的には都市施設の整備ということが一番大事なことだろうと思いますけれども、税金の点について申し上げれば、周辺の宅地を持っている方々との税負担の均衡の問題もあります。それから、農業継続が客観的にどの程度できるか、そういった問題もありますし、それから宅地需要というものが現実にどの程度発生するのかどうか、そういった都市化の進展の度合いということもあります。そういったことから考えて、それは宅地並み課税という原則は原則的には維持すべきものだと思うわけであります。  しかしながら、現実には先ほど申し上げましたように宅地需要の伸展の度合いの遅さ、速さ、こういうこともありますし、それから現実に農業をやらざるを得ない客観情勢ということもいろいろ都市施設の整備との関係でありますから、そういう場合にそれをどうするかということが問題ではないかなと私は思っておるわけでありまして、やはり市街化区域内に編入された農地につきましては、農家の方々を決していじめるとか、そういう意味から申し上げるのではなくて、土地利用区分という基本原則からいたしまして、税金の点につきましても現在ある宅地並み課税の原則というものは維持する。それを具体的に適用する場合にどう調整していくかということはあるのじゃないかと思いますが、原則というものは維持すべきものではないかと私どもは思っております。
  52. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 線引きの調整そのものについてはまだまだ余地はある。しかし現実に、いまそれぞれの自治体がこれはもう課税すべきじゃないというところを判断して決めておるわけですね。ですから本当を言えば、調整区域と市街化区域とは画然と、近い将来に宅地化するというところはもう当然市街化区域に入れるべきだと思いますし、そういう整理をして、そしてずっと農業を継続した方がいいというところはもう絶対にやらないのだ、これをはっきりさせることの方が本当はお互いにはっきりしていいのじゃないでしょうか。そうでなければ、自治省自体だっていまいろいろ事務的な手間をかけ、そして市町村自体もまた還元措置というむだな行政をやらなければならぬということですから、そういうものは原則に返るということも一つの方法じゃないかと思います。そういう意味で、いま残されているところについては少なくとも将来とも農業継続にふさわしいところが大部分だ、私はそういう角度から言っているものですから、それが原則であるべきだという主張をしているわけです。  それからまた、負担の公平と言われるけれども、農地としての負担と宅地としての負担、その他の利用の負担とは、これはやはり比較できないと思います。それから都市全体としても、やはり全部が都市化してしまうということはいかにも味気ないことでありますし、したがって、これは山林であり緑地であり、そしてこれは住宅地域であるというふうな、そういう負担区分についてもこれは十分考えていかなければならぬと思いますし、農林水産省の姿勢としては、あくまでも農民を守る立場で今後の各省協議の中でひとつ強く主張をしていただきたいということを御要望申し上げておきたいと思います。  次に、輸入牛肉の問題に入りたいと思います。  大臣いまちょっと退席されておりますので、後でお聞きいたしたいと思いますが、円高差益の問題がこのごろ非常に世論の高まりを見せました。そして御承知のとおり、電力料金とかガス料金、政府にかかわるものについては、まだまだ不満ではありますけれども、ある程度還元措置というようなことを考えるようになりました。同じ政府にかかわるものの中で、小麦や牛肉についてもそういう措置を講じてもらいたいというのが非常にたくさんの国民の声だと思うのです。ところが、これはなかなか制度的にむずかしいというようなことで実行に移されておりませんけれども、大臣就任なさった当時には、その就任後の新聞の記事によりますと、できるだけ輸入牛肉をふやして牛肉を安くして大衆化するのだというようなことを発言されておるのですが、実際には逆の方向に行っておりますし、そして直接還元措置というものはとられておらない。現に五十一年、五十二年だけでも五百三十億の調整金あるいは価格差益金がたまっておりますし、ことしは三百九十二億くらいが予想されておりますが、それがほとんどと言っていいほど非常に微々たるものしか直接消費者に対する流通対策というものは考えておられないのですが、農林水産省として、何らかの方法でこれの還元措置を考えるというお考えはございませんか。
  53. 杉山克己

    ○杉山政府委員 牛肉の価格につきましては、円高差益の還元の問題をめぐっていろいろ議論が行われておりますが、いま先生が御指摘になりましたように、今年度の——今年度と申しますのは、五十二年決算におきますところの事業団の差益額は約二百九十三億円ということになっております。この中で円高によるメリット分は約三十億円ということで、一部を占めているわけでございますが、私どもは、円高差益の還元ということよりは全体としての牛肉の差益の処理問題ということで、これを牛肉価格の安定のためにできるだけ使っていくということで考えておるわけでございます。  そこで、牛肉の価格状況を申し上げますと、確かに目立ってそれほど二割も三割も安くなったということにはなっておりませんが、一般的に物価が前年に比べても若干は上がっている、三、四%上がっておる状況の中で、まあ畜産物一般もそうでございますが、牛肉も小売価格は前年に比べ、あるいは前々年に比べ、わずかではありますが下がってまいっておるわけでございます。東京都の小売価格で、前年百グラム三百十五、六円しておったものが今日では三百十円を切っているような状況でございます。下がり方は確かにわずかではございますが、ほかの物価が上がっておる。それから牛肉に対する需要が全体として一割くらいふえてきております。そういう需要の強い中で、しかも国際価格は、円高メリットはありますが、反面価格も上がっておるというようなことでコストアップになっておる段階で、いま申し上げましたように牛肉の小売価格が下がっているということは、これは私どもとしては何も政府がやったからそのためだというようなことを申し上げる意味ではございませんが、幾分そういったことにも努力しておるわけでございますし、幾分そういう効果もあらわれているのかと思いますので、ひとつ御理解いただきたいと思います。  それから、具体的に今年度について差益の中から消費者に直接還元するような方向は考えられないかというお尋ねでございますが、私ども、生産者対策、消費者対策というふうにはっきり区分して考えるというよりは、全体を通じて牛肉価格の安定に貢献するというふうに考えておりまして、生産者対策として生産性の向上のために出す奨励金は、これはやはり生産コストを引き下げる、そういう効果を通じて牛肉価格の安定に貢献し得ると考えております。そういうこと等もございまして、本年度は三月の畜産物価格決定の際に安定帯価格を据え置いたというような措置をとったわけでございます。したがいまして、生産者対策に出した金だから消費者に役立たないというようなことではなくて、それなりに、間接的になりますが牛肉価格に貢献し得ているものと思います。  ただ、なかなか御理解いただきにくいということもございますし、それから消費者の皆さん方の御要望も十分私ども承っているわけでございますので、できるだけ直接還元できるような方途も考えていきたいということで、特にこの春以来消費者対策として、たとえば東京都におきますところの安売り対策でありますとか、これは小売の共同仕入れによって価格を一割程度下げるようにモデル的なケースをこしらえるという安売りルートの新設事業でありますとか、それから産直の販売方式のモデルの開発でありますとか、週にあるいは月に特定日を決めて特別販売事業をこれは国産牛肉について行うとか、それから特に比較的効果を上げているかと私ども思っておりますが、指定店に対する輸入牛肉のコストを下げての販売というようなことでモデル的な目安価格による牛肉販売というようなことを指導いたしているわけでございます。  そのほか、、これはいま計画中でございますが、五十三年度、五十四年度にわたりまして、流通のパイプを太くするということで部分肉センターをつくるということを考えておるわけでございます。これら各般の対策を通じまして牛肉価格の安定を図る、もって消費者にそういう全体的な姿で還元をいたしたいというふうに考えておるところでございます。
  54. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 直接できるだけ消費者にわかるようにといっても、返ってくる答えはいつも日本の畜産を振興することによって間接的にと、そうおっしゃるのですが、やはり消費者の皆さんにしてみればこれでは納得できないと思うのです。  先ほども申し上げましたように、先ほど二百九十二億と言われましたけれども、五十三年度は三百九十二億ですね。価格差益及び円高と両方合わせてそれだけのものがここ二年ほど三百億を超えてずっとあるわけでしょう。そうしたらそのうちで直接消費者にどれぐらい返ってきておるだろうと思うのは、一般国民の立場から見れば妥当なことなんですが、実際に直接目で見、はだで感ずるような消費者対策というのにはどれぐらい使っていますか。
  55. 杉山克己

    ○杉山政府委員 先ほど差益の額、先生御指摘のように百億間違えて申し上げましたが、三百九十三億でございます。  それから、出している金の中で直接流通対策というものはどれだけかということでございますが、五十年は二億五千万、五十一年は五億八千五百万、五十二年は決算見込みでございますが、二十六億七千四百万ということになっております。それから五十三年につきましてはまだ計画中でございますし、特に一番大口となると思われますところの部分肉センターにつきましては額が確定いたしておりません。部分肉センターについての額が確定すれば、これは全体としては百億を相当超えるような規模になるというふうに考えております。
  56. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま五十二年の流通対策として二十六億と言われておりますが、予定額は三百四十億組まれたけれども二十六億であります。そしてその二十六億の内訳はと聞いてみますと、結局これは直接消費者じゃないですよね。各府県への出資、公社への出資ですね。そしてまた全体の中で、三百七億の中で、そのほかに一%あるわけですから、三十億ほど別に、民貿の分もあるわけですから、約三百五、六十億の中で二十六億。直接と言われる分もそれだけしかないんですね。しかもその直接も実際の直接じゃなしに、それぞれの公社への出資ということなんでしょう。全くほとんどないと言ってもいいじゃないですか。それではやっぱり消費者の立場としては納得しないのが当然じゃないでしょうか。
  57. 杉山克己

    ○杉山政府委員 二十六億の内訳は、国産牛肉の特別販売事業が四億九百万、それから牛肉値下げルートの新設事業が六億四千四百万、それから食肉の技術関係の研修等のための出資が十二億、あとは流通段階の重要な機能を果たします食肉公社への出資が三億四千万、こういった内訳になっておるわけでございます。  それから、何度も申し上げるようではなはだ恐縮でございますが、この額だけで消費者に対する対策ということでなしに、私どもは生産者の段階でもって安定帯価格の中で生産に安心して励んでもらうということのためにはそれなりのてこ入れが必要であると考えておりますし、もしそういうことがなければやはりコストアップになって、それがはね返って安定帯価格もなかなか維持できないというような事態の出てくることも懸念されるわけでございます。そういう意味におきまして、肉用牛、乳用牛、これらに対する助成は牛肉価格の安定に貢献し、何を直接と考え何を間接と考えるかということはございますが、やはり消費者に対して還元は果たされているというふうに考えております。
  58. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 その朝市一つ例にとりまして、それじゃどれぐらいの影響を与えて、どれだけ消費者に還元したかと、はだで感ずる人はわかりますか、これ。金額的に言っても総額のうちでことしのように三百九十億のうち果たしてどれだけ直接消費者に返っているかということはもう微々たるものだと思う。結局はだで感ずるような方法で考えなければいけないんじゃないでしょうか。方法ないのですか。
  59. 杉山克己

    ○杉山政府委員 全体の差益の額は大きくても、これを全部の牛肉の価格をそのまま下げさせるための財源として補助するというような使い方をいたしますと、これはきわめて薄まってしまって、効果としてもそれほど大きくないと思います。私どもはむしろそういうことよりも、流通の改善合理化も図る、関係者のサービスも促すということでモデル的な売り方をする、取引についても合理的な取引の仕方をするということによりまして、それが全体の刺激効果を働かせて、安売りといいますか、全体の価格水準引き下げに貢献するということをねらっているわけでございます。直接引き下げるということももちろん、一部指定店に対する販売などはまさにそういうことを考えておるわけでございますが、指定店自身がまた核になって全体の流通業界に刺激効果をもたらすということを期待しているわけでございます。
  60. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま言われた生産振興以外で方法を考えられませんか。いろいろ方法あるじゃありませんか。考えられませんか。たとえば調整金の使い方、いまちょっと触れましたけれども、たとえば指定店にいままで、もとは二五%ぐらい割り当てでしたね。いま二千三百店にふやされて最近は三三%輸入牛肉を割り当てていらっしゃる。少しずつでもふえていっておりますよね。さらにこれをふやしていって、安い牛肉が、これは輸入牛肉の一つのルートとして、本意ではないかもわかりませんけれどもそういう方法によって安いものが少しでも消費者に届く方法というものは拡充することができるわけですか。そういう方法はひとつ考えられませんか。
  61. 杉山克己

    ○杉山政府委員 指定店に対する牛肉の販売、これにつきましては、ただいま先生も御指摘ありましたように、一昨年までは八百店であったものを、昨年の段階で二千二百店から本年の段階さらに二千三百店にふやすというように対象を広げてまいったわけでございます。  また、これに伴いまして、これに対する輸入牛肉、主としてチルド牛肉ということになりますが、これの売却量もふやすという措置をとってまいりました。ただ、やはり需給の状況に応じて年間調節をするということもございまして、直ちにこの数量を飛躍的に増大させるということは、全体需給への影響もありましてなかなかむずかしゅうございますが、私どもとしては、特にこれから年末にかけて一般的に物価の高騰が懸念されるそういう時期には、売却量をふやしてできるだけ牛肉価格の安定を図ってまいるようにしてまいりたいというふうに考えております。  なお、指定店の活用につきましては、そういう量的な拡大だけでなしに、その機能をフルに発揮させる、世の中一般の方にも十分御理解、御活用いただくと同時に、関係者に対する刺激効果を一層効果あらしめるように、モニター等による監視、運用についての一層の適切な運用ということを図ってまいりたいということを考えております。
  62. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いま指定店も八百から二千三百店にふやされた、それによって国内価格に大きく影響がありましたか。
  63. 杉山克己

    ○杉山政府委員 先ほど申し上げましたように、国内の牛肉の小売価格は五十二年の初めから安定化しておりまして、特に五十三年に入ってからはおおむね百グラム当たり東京の小売価格で三百十円を切るというような水準にございます。それ以前の五十一年、五十二年に比べて若干下がっておるわけでございますが、こういったことは何も指定店ということだけでなしに、全体的な対策なり業界の努力なりがやはりそれなりに効果を上げている面があるのではないかと思います。指定店の効果だけを抜き出してどれだけかとカウントすることはむずかしゅうございますが、指定店で輸入牛肉が売られている状況を見ますと、かなりよくコストに基づいた目安価格が守られております。そういう価格が守られているということは、そういう指定店におきますところのその他の牛肉、輸入牛肉でもチルド以外のものも扱うこともありましょうし、それから一般の国産牛肉、そういったその他の牛肉の取り扱いについてもやはり価格面で努力をするということを強制するようになると思います。  それからまた、地区内でのモデル的な店がそういう販売をしているということによって、地域全体にやはり刺激的な効果をもたらし、価格の安定の上に、量的に測定することは困難でありますが、相当程度貢献しているのではないかというふうに判断いたしております。
  64. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 私いま申し上げましたのは、輸入牛肉がどっと一遍に入ってくれば、国内の畜産を刺激して、子牛のうちから売ったりして非常に国内畜産業を圧迫する、そして、それがまた将来の暴騰につながるというようなことが起こっておりませんかということです。そういうことないですよね、ふやしていっても。ですから、とりあえずいまやれることからやっていこうとすれば、この指定店なんかを年々、二千三百を二千五百にし、二千八百にする。そうでないと、いま消費者の皆さんは、この輸入牛肉、安い牛肉がほとんど限られた地域、大都市周辺の地域だけ、その大都市周辺の中でも限られた地域だけしか当たらないのですよね。小売商の皆さんに聞いてみますと、六千軒のうちで三千軒くらいは皆やっていらっしゃるそうですね。ですから、まだまだ足りないのだと言っているのです。消費者も、買いに行ってもなかなか量が足りないのだ。消費者もそして小売店の皆さんも、もっとふやしてほしいという希望があるわけです。しかも、それが一番心配していらっしゃる国内産の畜産にどれだけ価格的な影響を与えるかということも、そんなに影響を与えておらないとすれば、もう少しふやす余地もあるのじゃないでしょうかと、こう言っているのです。  ですから、徐々にでもやはりふやしていく。農林省の方針としては、国内の畜産というのは一定の限度しか自給率は保てない、あとは生活の伸びによって、一〇%収入がふえれば一六%牛肉が伸びるというふうな統計が出ておるそうですが、その分は結局輸入に頼らなければならぬでしょう。特に農林大臣も苦心をなさっているアメリカやオーストラリアからの輸入牛肉についての量の拡大ということは対外的には非常に大きな影響を与えると思うのですが、そういう意味では国内畜産にさえ余り影響を与えなければ少しずつでも徐々にふやしていく、その一つとして指定店の指定をふやすあるいは量をふやすというようなことは考えられませんかと、こう言っているのです。
  65. 杉山克己

    ○杉山政府委員 指定店に対するチルド牛肉の割り当てということもその一つでございますが、先生の御質問の趣旨は、全体的な輸入牛肉の数量をふやしていくことは考えられないかというふうにむしろ私の方は受けとめたいと思います。と言いますのは、やはり指定店はモデル的な効果、一部の刺激を通じて全体的な波及をねらうというところにございますが、基本的には安い輸入牛肉を相当程度ふやしていって、そしてこれが国産の牛肉に悪影響を与えないという見きわめをつけながら調整を図りつつ価格の安定を図っていくというところに、これからの政策運営の基本があると考えるわけでございます。その意味では、私ども先ほども申し上げましたように、牛肉の需要ばかなり安定的に増加の傾向をたどっております。そして、この増加を全部国産で賄うというわけにはまいらない、当然輸入牛肉の数量は今後、これはいろいろ見方に幅がございますが、ある程度ふえていくというふうに考えております。できるだけ対外的な配慮もしながら、国産牛肉の農家に悪影響を与えないという配慮もしながら、そういう方向を目指してまいりたいというふうに考えております。  なお、指定店につきましては、そういうモデル効果をねらいながら、特に重点的にこれを扱っていきたい。その意味では、従来もチルド牛肉の中で指定店の占める割合は四分の一程度でありましたものを、現在すでに三分の一程度にこれをふやしているわけでございます。全体の数量の中で指定店に渡しますようなチルドの牛肉をどうするかというようなこともありますが、全体チルドもフローズンも含めて、今後需要に見合った輸入を確保してまいるということを考えてまいりたいと考えております。
  66. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 大臣、途中でお立ちになったんですが、大臣が就任なさったときには確かに、ひとつ牛肉はできるだけ安く抑えて大衆化をして皆に喜んでもらうのだ、輸入もある程度ふやしてでも喜んでもらうのだと、こういうふうにおっしゃったんですが、その後なかなか円高差益あるいは価格の差というものが反映するような状態になっておりませんね。ですから、畜安法のたてまえもあるでしょうけれども、そういう熱意はいまもお持ちなのか、やはり制度が非常にむずかしいからもうそれはやめたというふうにおっしゃるのか、大臣のお考えを伺わしていただきたいと思います。
  67. 中川一郎

    中川国務大臣 牛肉が高い理由は二つあるわけなんです。一つは生産費が高いということ、もう一つは流通経費が高いということ。そこで安い牛肉を食う方法は、これまた二つあって、外国の牛肉をどんと入れてしまって日本国内の牛肉をなくしてしまう方法が一つ、もう一つは日本の国内の牛肉を安くする方法はないかということだろうと思うのです。  そこで、日本の牛肉をなくしてしまって外国のものだけ食うというわけには、これはとても農林省を預かる私としてはできない。やはり残された手段はただ一つ、国内産の牛肉が安く生産され、安く流通されるようにしたい。これを基本として、ことしも少なくとも価格を上げない、そして畜産振興事業団のお金はもとより、それ以外のいろいろな金を、一般会計の金も使いながら生産コストの低減を図る。特に流通コストについては思い切った改革をやりたい。  いままで牛肉の流通はそれなりの効果は果たしてまいりましたけれども、何分にもこれは歴史が浅いわけで、もう戦後といってもいいくらいの歴史しか持っておりません。したがって、複雑なところもある。そこで産地に産地流通センターというものをつくり、これを全国ネットワークをつくろう、そしてこれの受けざらとして消費地に部分肉センターというものをまず東京につくりたい。そうすれば産地と消費地が直結をする、こういうことによって消費者価格が下がる、そのことによって消費拡大を図っていく、足りない分は外国から入れる、消費が拡大されれば外国から入る余地も多かろう、こういう政策でございます。  そこで、こういうことが一遍にできるかというと、私が大臣に就任したときに、あしたから牛肉が下がるみたいにお受け取りになったのですが、それはなかなかできない。しかし、長期的にはそういう方向でやっていきたい。大して下がっていないじゃないかと言うのですが、去年に比べて三%、四%下がっている。一般消費者物価が四%程度上がっている中に三、四%下がれば、六、七%ぐらいは下がってきたのではないか。こういうことをかなり長期的にやっていけば、一〇〇%私の言ったとおりのことにはならなくても、そういう方向はかなり改善できるのではないか。  でありますから、私が大臣になりました際に申しました気持ちは一つも変わらずに、厳しくはありますけれども最善を尽くしていきたい、こう思っておるわけでございます。
  68. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 しかし、いま言われたように、国内の畜産をそんなに飛躍的に増大させて、そんなに飛躍的に安くやるということは、生産の立場でもそうでしょうし、そしてまた流通の整備にもなかなか時間がかかると思うのです。そういう意味では、いま直ちに消費者の目に映るのは輸入牛肉でしょう。その輸入牛肉が、四百円から五百円で買えるものが、調整金がそれを上回るようなものがついておるわけですから、今度入札制度になったとはいうものの、実質は余り変わりないように思うのですが、そこからでも改めていただけないか。そのためには、ことしの三百九十三億に及ぶような調整金も、どうも生産者対策、これは将来は結局は消費者対策になるのだと言われるけれども、しかしストレートに消費者にももっと及ぶような方法も考えてもらえないだろうか。額も余りにも少な過ぎるのじゃないかということをいま申し上げているのです。そしてその輸入牛肉については、必ずしも国内の暴落を招くような、そういう直接的な刺激を与えないような方法がいろいろ考えられるじゃないですか。そのためには、指定店の数をもっとふやして、輸入牛肉の安いのが消費者に直接もっと渡る方法もあるだろう。現にいままで数をふやされたけれども、それが国内価格の暴落を招くような結果にも至っておらない。ですから、需要の伸びの部分だけ徐々にそういうことを考えていく方法もあるじゃないですか、そういうことを考えていただけませんか、一つはこういうことを申し上げているのです。  もう一つは、やはり質の向上という面もあるだろうと思うのです。たとえば、加工食品なんかに使われる牛肉というのは、市場のテーブル食品とまた違って、それが幾ら入ってきたところで余り影響がないと思うのです。ハム、ソーセージの皆さんに聞いてみますと、ハム、ソーセージになるような原料については、もとは五万トンぐらいあったそうですね。それがいまや一万トンしかないのだ。ということは、いままで乳雄として廃棄しておった分が、ハム、ソーセージに回っておった分が大体肥育牛に回った。原料がなくなって結局輸入牛肉に頼らなければどうにもしようがないのだ。     〔原(茂)委員長代理退席、委員長着席〕 そうすると、その輸入牛肉が、もとは国内産で大体五万トン程度あったのがいま一万トンぐらいしかないのだから、せめてそういった枠がふえれば加工食品なんかは安いものでいける。ハム、ソーセージなんか見ますと、ヨーロッパやアメリカあたりでは、豚や羊肉やその他いろいろなものをまぜて、つくっておりますけれども、そのうち大体三〇%ぐらい牛が使われておる。日本はもとは七、八%ぐらいから一〇%ぐらい使っておった、いまや三%しか使っておらないというふうなことも言っておるわけなんですが、質の面で消費者に奉仕をするということもあると思うのですが、そういう方法は考えられないのでしょうか。
  69. 中川一郎

    中川国務大臣 第一番目の方を私の方からお答え申し上げますが、確かにいまの差益を生産者にだけ返しているのでは消費者は納得できない、もっと消費者に直接還元できるようにしたらどうかという意見が非常に強うございますので、これはやはり差益金に限度がありますけれども、だんだん消費が拡大されることによって輸入数量も多くなってくる、そうすれば調整金も多くなってくる、それに着目をして、流通段階にも何とか還元の方法はないか、私もいま頭をしぼっておるところであり、畜産当局にも研究してくれ、生産者に返す方法も間接的には消費者に返すことだが、消費者にストレートで返す工夫はないかな、そういうこともやって、また拡大されればそれだけ輸入牛肉もふえる、還元する金も多くなってくるというようなことで工夫しているということだけ申し上げて、中身その他についてはまた成案を得ましたら御報告しますが、そういう気持ちは私も持っておりまして努力しておるところであります。  二番目の問題は、局長から答弁させます。
  70. 杉山克己

    ○杉山政府委員 指定店に対するチルド肉の販売が、量がふえても国内産の牛肉価格に影響がないではないかというお尋ねのようでございますが、これはむしろ全体の調整を通じて影響のないような措置をとってまいったからということでございまして、ほうっておけば、私はかなり影響があると思います。現にこの春、一、二、三月ごろ、チルド肉を全体量として前年より若干ふやしましたところ、その効果というか、その影響があらわれまして、卸売価格なり産地におきますところの子牛あるいは成牛価格がかなり下がったという状況がございました。そこで、その後また価格の若干の調整等もいたして、価格の安定を図っているというところでございます。  それから、加工用向けの牛肉についてでございますが、確かに日本の場合、ハム、ソーセージ等におきます牛肉の使用割合は、牛肉が高いということもありまして、比率が低うございます。ただ、これは価格だけではなくて、むしろ日本人が豚のロースハム、高級品を非常に好むといったようなことなども相当影響しているのではないかというふうに思われます。  ただ、加工肉についてもう少し枠をふやすなり、あるいは扱いを考えるべきではないかということでございますならば、確かに今後の需要の動向としましては、特にハンバーグといったような大衆嗜好品的な食品の需要が大きく伸びているというような状況もございますので、加工用向けの牛肉の需要は、全体の需要の増の中でもかなり大きな割合を占めるようになると思っております。  そういう意味で、全体をふやしていくことができる中で、加工肉に対する配慮は当然していくべきだと思っておりますし、それから扱いの面におきましても、これは昨年来加工業界を対象とする特別な売却の仕方も考えておりまして、すでに実行に移しておるところでございまして、枠という形ではございませんが、加工向けの畜産振興事業団による販売も行っているところでございます。
  71. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 いままで提案申し上げましたのは、調整金の使い方も一つあります。そのほかにも指定店をもっとふやすということもあるでしょう。それから質を向上するために、加工の問題をいま言いましたね。あるいはいまの入札制度、今度チルドも入札制度をおとりになったけれども、これの工夫もあるでしょうし、それからいまの芝浦のセンターの市場の機構の問題、これの処理能力の問題等々もございますでしょう。そういったことをいろいろお聞きしたいのですが、もう時間が来ました。  一つだけ最後に、去年のちょうど九月ごろ、指定店に対してモニターでもって調査をやると言われておるのです。これは御報告をいただいたのですが、四月、五月、七月だけなんですね。六月は選定がえをやったのでない、これは理由はわかります。それ以前の数字というものはいただけないのでしょうか。
  72. 杉山克己

    ○杉山政府委員 最近時点ということで、その三カ月をお出ししたのだと思いますが、その以前の時点についても数字はございますので、別途提出するようにいたします。
  73. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 私どもの見た限りでは、これによりますと、大体表示なんかも九六%、プライスカードも九五%、非常に成績がいいのですが、価格だとかあるいは販売のところについては、この二月、三月ごろ、私どもの調査によりますと、フローズン等について、現物のないところが、四六・三%があって五三・七%がない。あるいはチルドも、七一%あるけれども二八%ないというような低い数字のところも出ておるのです。ですから、これはどうも余り成績がよ過ぎるように思うのですが、しかしその資料を出していただいて検討いたしたいと思いますので、今後とも、もちろん国内産の畜産の振興ということについては食糧の安全保障という立場からも非常に大事だと思いまするし、積極的に農林水産省として努めていただきたいと思いますけれども、同時に、やはりこれから消費者を抜きにしてこの畜産行政あるいは国内の食糧生産は考えられないわけですから、今後とも消費者対策ということにもっと積極的な姿勢をおとりいただきたいということをお願い申し上げて、終わりたいと思います。最後にひとつ大臣の決意をお聞きいたしたいと思います。
  74. 中川一郎

    中川国務大臣 私ども農村を守らなければならない立場にございますけれども、最近、牛肉の輸入、オレンジの輸入等を通じて消費者にも非常に大きな声があることはよく承知しておりますので、消費者対策にも十分配意しながら農村を守っていきたい、こう思う次第でございます。
  75. 馬場猪太郎

    ○馬場(猪)委員 終わります。
  76. 楯兼次郎

    楯委員長 原茂君。
  77. 原茂

    ○原(茂)委員 久しぶりに農林大臣に御答弁を願うわけですが、きょうは国有林、特に木曽谷の国有林の問題、それから北富士演習場に関する農地問題、この二つをお伺いをいたします。  最初の国有林問題、木曽谷問題に関しては、長官もおいでになっていますが、主として大臣からお答えをいただくように質問をしたいと思います。北富士の問題に関しては担当の局長あるいは大蔵省の理財局の御答弁をいただきますが、必要に応じて大臣からも御答弁をちょうだいする、最後にはもちろん大臣の理解のある決意のほどをお聞きして終わりたいと考えているわけです。  二つの問題に入ります前、最初に大臣に、これはいきなりですがお伺いしたいと思いますのは、ある意味ではおかげさまで日中平和条約の批准もいよいよ二十三日に行われるスケジュールが決まりました。大変喜ばしいことだと思うのですが、わが国の農林水産政策の上から、中国との国交回復というこの事態を踏まえて今後どんなかかわり合いが持たれるようになるのか。すでに通産大臣はもうこれを踏まえてある程度積極的なアクションを起こしました。農林水産大臣としてもやはり何かの感懐がおありだろうと思いますし、特にいろいろな問題が含まれております日中間の、しかもわが国の農林水産行政を一体日中友好の上にどうメリット、デメリットを考えて展開していくかということは非常に大事な問題だと思うのです。後、当分機会がないかもしれませんから、最初にいまの日中平和友好条約を踏まえて、いま言った二つに分けた大臣の所信をお聞かせいただきたい。
  78. 中川一郎

    中川国務大臣 日中平和友好条約がいよいよ二十三日に批准、発効するということになるわけでございます。その中で農業問題にどう関連するかということでございますが、わが国としては御承知のように自給度の向上ということも政策の第一番目にいたしておりますし、また足りないものは外国から入れるということになっております。この基本方針は中国とも当てはまるであろうということでございます。  そこで、わが国として中国からもし技術なりあるいは試験研究なり等々の協力要請があれば、これは農林省としても対応して御協力申し上げていきたい。特に農業国でございますから、中国の政策でも農業政策は重点のように聞いておりますので、もし御要請があればおこたえしたいということであります。  そのほか、魚の問題もわが省としてはございますので、中国沿岸でもお世話になっておりますから、いまあります協定をベースにして友好関係を深めて、さらによりよい水産関係を持っていきたい、基本的に言えばそういう考え方でございます。
  79. 原茂

    ○原(茂)委員 どうかひとつ、待ちに待った好機が来たわけですから、いままでの戦争中のいろいろな迷惑をかけたことも振り返りながら、いま大臣の言われた方針で、わが国にも当然利益がなければいけませんが、同時に中国に対してもある程度寄与できるような友好関係を増進するように、これはぜひ私からも切望しておきたい。  そこで本論に入りますが、最初に申し上げましたように国有林野関係、それに関連いたしまして、後、北富士の問題に入るわけですが、大臣は先月の二十二日の閣議で、赤字経営に悩んでおりますいまの国有林野事業を抜本的に改革する合理化案として、国有林野改善計画、これを報告いたしております。  言うまでもなく、国有林野事業というのは外材の流入と長期不況による住宅需要の伸び悩みなどの理由で五十年度以来赤字を続けまして、昨年度は九百六億円の損失を計上いたしております。国会においても本年の六月でしたか、国有林野事業改善特別措置法を成立させました。もちろん赤字解消のためいわゆる改善計画の決定、当然のことを閣議に報告をされたわけであります。  そこで、その内容を見ますと、林業要員のうちの技官、事務官、作業員、常用作業員、季節作業員を含めましてこの十年間で実に二万五千人を削減、そして現在の十四営林局、三百五十一営林署を十局、三百十六署に削減することになっているわけであります。こういう徹底した合理化実施をする理由というのは国有林野事業の赤字が口実になってはおりますが、その赤字の原因というのは国有林野施業に関する基本的誤り、また外材流入、需要減少というようなことにあることは言うまでもないと思うのであります。これは何も国有林野事業に限定されることなく、いわゆる国営、公営あるいは民営に共通した要因ということも言えると思うのであります。今後のわが国の林業経営の収支の展望及び林野事業の雇用率の変化、こういうものの予測を、大臣が言えるのならお答えをいただきたい。
  80. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 ただいま国有林のみならず林業全体がいろいろな意味でむずかしい時期に当面していることは、先生御指摘のとおりでございます。  これからの木材の需要がどうなるか、そして供給がどうなるか、この問題については四十八年に計画を立てたものがございますけれども、ただいまその後の日本の経済状況の変動等々によりましてその計画もある意味で乖離を来しております。したがいまして、こういう問題も今後煮詰めまして、これからの林業経営なり日本の森林林業がどういう方向に行くべきかということについてただいま検討を進めておる最中でございまして、いま先生が御指摘になりましたような問題につきましては、この検討と相まちまして検討してまいりたいと私どもは考えております。
  81. 原茂

    ○原(茂)委員 先ほども大臣が答えておられましたが、いまの林業経営というものは全体が非常に困難だ。しかも経営を利潤を中心に考えると、ほとんどそれにいま期待がもてないような非常に困難な経営状態にあるということが言えると思いますが、大臣はどう思いますか。
  82. 中川一郎

    中川国務大臣 今日民有林が厳しいのと同じように、国有林も林業を扱っている性質上非常に厳しい状態にある、国有林も例外ではないということがはっきり言えると存じます。
  83. 原茂

    ○原(茂)委員 ここで私は、先ほど申し上げました木曽谷の山林を対象として伺います。  木曽谷の土地利用面積比率は、御存じだと思いますが、九三・八%が森林です。この森林は、歴史が示すように、ほとんど藩有林から国有林に引き継がれたものであり、九万八千九百四十二ヘクタールの国有林、これは五八・七%ですが、この国有林で覆われているわけであります。民有林が三五%、農地は、一・八%。国有林の占有率が高かったために低開発地域が非常に多い。国有林と山村経済が互いに結びついていかなければいけないという宿命に置かれて今日に至ったわけであります。  藩有林から御料林、それから国有林、特に昭和二十二年には林政統一がなされ、新しい林政が始まったわけでありますが、この国有林の経営目的としては、国土の保全や水源の涵養、国民のための保健、休養、観光などに役立たせたり、動植物その他自然保護など森林の持っている公益的機能を最高に発揮させながら、重要林産物の持続的な供給源としてその需要と供給及び価格の安定に貢献し、木材関連産業の振興あるいは地元農山村の住民に対する福祉の向上に役立つように経営することを目的としていることは当然であります。しかるに、かつての美林であり貴重な財源であったいわゆる木曽谷も、近年の乱伐、皆伐、手抜き等々によりまして、林政統一がなされて二十年目の昭和四十二年度から昭和四十六年度までの木曽谷経営計画、第三次経営計画における経営方針の大綱の重点方針を次のように改めなければならなくなりました。  それは、木曽谷は歴史と豊富な森林と名声を持つ有名林産地であるが、風倒木発生以降、木曽材資源の減少、造林未済地、造林不成績地の増加、山腹崩壊、渓流荒廃などが顕著になってきた。  したがって、一つは、木曽ヒノキの安定供給、人工林のヒノキについては良質建築材に生産目標を置くことにし、二つ目に、地域社会における国有林の位置は経済的にも社会的にも相当高い。森林のいわゆる保続的な施業、風土の保全のため各河川流域の安定を積極的に推進しなければならないとし、三つ目に、生産基盤を拡充するために造林未済地の解消、拡大造林の推進、林道網の拡充などを重点にせざるを得ない森林施策の転換期を迎えるようになったのが現状であります。古い歴史は申し上げません。  すなわち、木曽谷経営計画、第三次経営計画の経営方針の重点項目を挙げているにもかかわらず、それに反して現在やっていることは、一つには木曽森林資源の減少を指摘し、人工林ヒノキについて良質建築材を生産目標にしていながら、現実の実行結果はカラマツの重点植栽を行いました。二つ目に、山腹崩壊の各河川の流域安定を指摘しながら、木曽川第二治山事業所の廃止をしている。また三つ目に、造林未済地の解消、造林の推進拡充を明らかにしながら、各署に見られますように、上松署その他の場合、四十年代に不成育造林地というおびただしい多量の面積をつくりました。特に、不成績造林地を指摘しながら逆に不成績造林地が経営計画後拡大しているということは、最も注目しなければいけないことだと思うのです。特に、王滝その他各署において優良ヒノキ特産地を多量のカラマツの植栽に変えています。今後の木曽の資源について重大な問題を投げかけていることを警告せざるを得ない、それが現状であります。  いまこそ林業百年の大計の上に立ちまして、現在の天然林の蓄積、人工造林の樹齢、植種を精査して、今後の生産基盤というものを林地の保全、森林の公益的機能を重視し、統合的に判断する、その時期に来たと私は思うのであります。したがって、当然のこととして、今日までの木曽谷国有林の収益を木曽ヒノキの長期的安定供給のため地元造林育成と造林保育費に還元して、人工林の育成と価値の増大に寄与させなければいけないと私は思う。その道が国土保全、住民福祉に通ずることをいまこそ重視するときだと私は思うのであります。  今回、木曽谷、特に妻籠営林署の廃止をもくろんでおりますが、林野庁の年間収支における木曽谷国有林収支の割合を見てみますと、二十六年から五十一年の二十六年間、林野庁全体の収入は三兆四千二百四十七億円、支出は三兆三千二百六十五億円、収支差純益は九百八十二億円となっている。この期間における木曽谷国有林の収支差というものは、、収入が千五百九十二億円、支出が八百十一億円、収支差純益は七百八十一億円であります。これは木曽谷十署の特別会計収支差、二十六年間ですが、これが林野庁全体の八〇%を占めたことを意味しています。林野庁全体の八割であります。林野庁がいかに木曽谷国有林から大きな収奪を行ってきたかがこの数字にあらわれているわけであります。  しかし、長野局全体としては赤字の営林署が幾つもありますので、木曽谷の収益はプールされまして、局としての収支差純益というものは減っている。収入が二千二百三十二億円、支出が千九百六億円、純益は三百二十六億円となっています。  ここで特に注目すべきことは、木曽ヒノキで、基準材の立米当たりの販売価格は、四十九年、最高時ですが、二十一万六千七百八十円、昭和十五年を一といたしますと四千四十倍になっているのであります。四十九年度林野庁素材販売立米当たり平均単価が三万一千九百七十二円ですから、実に木曽ヒノキは全国平均の七倍にもなっているわけであります。  次に、木曽谷の国有林の崩壊を見てみますと、木曽谷国有林の伐採量は戦後一千百万立米、大変なものを伐採いたしております。戦後であります。伐採の基礎となるいわゆる年成長量はこの間二百六十万立米でございますから、四・二倍の乱伐をあえて強行してきたわけであります。特に昭和三十九年度の伐採量は、成長量の九・七倍に達する無法な乱伐であったのであります。これはまさに法正林思想の否定につながるものであります。  伐採面積は、高度成長期の中で飛躍的に拡大されました。人工林面積は、明治四十一年当時の十倍を超える結果となりました。その反面、造林手はこの二十年間で二〇%に減少している。八割が減っているのです。当然のこととして、不良造林地が増大したわけであります。これはあたりまえであります。労働組合の実地調査では、二十年生以下の若い造林地の四〇%が不良造林地となっているのも当然と言わなければなりません。  林地、渓流における崩壊地は、この十七年間で実に四倍から五倍に拡大したのであります。木曽谷国有林だけの話であります。  また、木曽谷住民の被害をたどってみますと、南木曽町の国有林は、五十年度営林局直轄治山事業所合理化閉鎖以来、とかく林野庁に対する住民の不信が高まってまいりまして、今回の妻籠営林署廃止通告に関連しましては、南木曽町当局、住民の反感を一層あおりたてているのが現状であります。  この主たる原因は、直轄事業所廃止に関連して地元と当局、組合と当局の間で約束した年次計画を明らかにしていないことにあると確信ができました。地元議会や住民、労働組合を納得させる当局の南木曽治山プランは何ら示されていないからであります。その計画、地元と約束した計画とは、当然単に治山事業というだけではなく、伐採方法、造林事業など総合的なプランであったはずなのに、当局が今回発表したプランはまさに学者の論文にしかすぎない。  また、南木曽町は、天保十四年、尾州藩直轄の伐採事業で与川国有林の崩壊がありまして、伐採などの労働者が当時百八十名死亡いたしました。その後大災害、明治三十七年の大水害で三十九名も死亡する、昭和十九年の水害、伊勢湾台風、四十一年、四十二年の連続大水害、常に国有林の犠牲にさらされてきたのがこの町の実態であります。  そこで、いまこそ木曽谷の収益七百八十一億円、とにかくこれだけの大きな利益を上げてきたのですから、これを山に返す、緑と林地、河川の保全、これを早期に計画して緊急実施すべきときではないかと思いますので、この点大臣がどうお考えになるかを第一に。  第二に、この南木曽の治山、不良造林地、木曽谷国有林には六千ヘクタールの不良造林地がありますが、この回復を図る具体的な年次計画費用をも明示した、前に約束した地元へのこの計画というものを示すべきだと思いますが、先日出したあんなものではなくて、具体的な造林計画等を含めたプラン、計画、これを早期に示すことが今回皆さんの考えている問題の解決の糸口になるというふうに考えますが、お出しになりますかどうか、二つ目。  三つ目に、いまやこの完全な治山等、長い間痛めつけた国有林の復旧に全力を挙げて後に営業、経営、施業、これを考えるべき状態だと私は思う。妻籠の営林署の廃止などはもってのほかと言わなければいけない。この間も行ってまいりましたが、当然この営林署の廃止は撤回すべきではないかと思う。せめて地元住民の納得のいく措置をして、その後に、この問題に対する当局としての計画を推進していくべきだと考えますが、この点どうお考えでございましょうか。一度決めたものはどんなことがあってもやっていくんだ、こういう考え方で力で強行しようとなさるのか。南木曽に至っては、日本一の荒廃した国有林であります。住民の納得もいかないままに、ただ十署の廃止を決めたから、その一つだから、発表したんだからやらなければいけないんだ、このような力による強行を考えないで、やはり住民による納得というものを前提にする、こういう考え方でおいきになるかどうか、三つ目。大臣にこれもお聞きしたい。  最後に、十一月、来月の初めですが、妻籠の営林署の廃止を前提にして、この妻籠の職員に対して配置転換の希望を申し出るようにすでに発言がされているのですが、こんなばかげたことをやっていたずらに刺激をして、そうして事業のあるいは計画の遂行を考えるというなら、これは地元にもまたわれわれにも異常な決意が必要になります。こういうことは直ちに取り消しをさせるべきだと思います。円満に出すべき計画が出されて、住民の納得がいって、そうして計画を進めるという前提に立って、そのことが納得され、了解を得られた段階における署の職員の配置転換を考える、当然の順序を逆立ちして、いま十一月の初めまでに希望するいわゆる転換を申し出よというようなことを発言していることはもってのほかだと考えますが、いかがか。  四つに分けて大臣からこの問題をお聞きしておいて、後、ほかに移ります。
  84. 中川一郎

    中川国務大臣 原先生からいろいろと御指摘がございましたが、この際、なぜ営林署の統廃合を行わなければならないかという基本的なこともちょっと触れておきたいと思うわけでございます。  先ほどお答え申し上げましたように、国有林が今日の林業の持つ苦しみから逃れることはできないという厳しさがありますが、それでは国有林が今日厳しいのはそれだけかというとそうではない。やはりいろんな意味で改善をしなければならぬところが多いのではないか。これには、労使関係がこれでよかったのだろうかという反省も必要だろうと思います。あるいは経営そのものが本当にまじめだったのだろうかというような、いろいろなことを反省しなければならない中の一つに、経営体として適正な人員の配置だったのだろうか、あるいは今日三百五十一も営林署を抱えていなければならないのだろうかというような反省、いろいろな反省をしなければならない。そして、今後いかにあるべきかということを考えていかなければ国有林野事業というものはやっていけないというところから、まず合理化計画改善計画というものを立ててみよう、その上でさらに国が、国土保全あるいは環境保全といったような公益性もあることにもかんがみ、一般会計からも資金導入して国有林の健全化を図らなければいけない、あるいは財投からの資金の繰り入れもかなり長期にやらなければいかぬ、こういった総合的に国有林がいかにあるべきかというときに、いま御指摘がありました三百五十一のうち一割ぐらいの営林署は統廃合してもいいのではないか。そこで今回、九営林署、北海道におきましては五つの営林局が一つに統合する、これも合理化上必要であるということで、前回の国会において御承認をいただき、明春から実行することになっておるわけでございます。  その一環として、これは農林省設置法との関係ではなく、国有林野の合理化のための一環として九営林局について各一営林署を今年度やってみたいということで御提案申し上げたのが、長野営林局では妻籠営林署ということになるわけでございます。  妻籠営林署をお願いしましたゆえんは、一つの町村の中に二つの営林署がある、しかも距離がたしか五キロぐらいしか離れておらぬのではないかというところから、管理部門がわずか五キロ離れた一つの町村の中に二つもある必要があるだろうか。特にあの地帯は今日までも国有林に協力してくれた、七百八十一億も入れてくれたという実態もよくわかります。ということはありますが、あの辺も特に治山等は今後積極的にやっていかなければいかぬ、あるいは不良造林地もやっていかなければいかぬ、そういうことを前向きでやるためにも管理部門を一つにして、事業所とか担当区とかいうものを減らすのではなくして、いろいろな事業をやっていく上にも管理部門は一つにしていいのではないか。決してあの付近がいままで国有林野として悪かったとかあるいはこれからやらなくてもいいかとかということではなくて、さらによりよい林業経営を行っていく上において、一つの町村に二つ、しかも五キロというようなところに所長さんが二人おったり、課長さんが二人おるという必要はないのではないか。そういう経費があるならば、むしろ治山なりあるいは造林なりあるいは不良林地などの改善に使うべきだ。こういうことから、前向きに進めるためには合理化した方がむしろ地元のためにも、林野全体のためにも役立つのではないか、こういうことからお願いしておるところでございます。  もちろんそのことによって生じますのは、営林署があったところがなくなる。なくなるといいますか、統廃合で移りますから、なくなればそこに過疎問題が出てくる。その過疎問題についてはできるだけの町村との話し合いもしなければならない。そういう点については十分地元と話し合いたいが、林業経営上から言うならば、国有林はただ使用者側だけが責任があるんじゃなくて、労働者側も責任があるんじゃないか。私は今回の合理化改善計画というものは労使一体でやる気にならなければできないものだと思っているのです。この合理化計画の一環であります営林署の統廃合についても、もし労働組合が全体的に納得できない、全国運動をするようでは改善計画は実効が上がらぬ。それならば根本的に見直して、また新たな林野対策を考えなければならぬのではないかというぐらい今回の改善計画は重要であると同時に、労働組合の皆さんも協力が必要であるというふうに考えます。労働組合の皆さんにも、林野が全体としてよくなるということのためにやっておるんだ、決して林野がだめだから、あるいは木曽谷の山がだめだから、あるいは妻籠の山がだめだからだめにするためにということじゃなくて、よりよいものにしたいという観点でやっていることをまず御認識いただきたいと存じます。  ただ、具体的に、いままで貢献したんだから七百八十一億返せと言われましても、これは気持ちの上では功績があったことは十分多としなければなりませんが、国有林として会計を行い、事業を行っております以上、営林署ごとあるいは地域ごとの独立採算制ではございませんから、それを返すということにはまいりませんが、気持ちは、功績のあったことは十分考えながら対処していかなければならない。  二番目に、不良造林地の解消問題とかあるいは施業計画とかいろいろな具体的なことをもっと示せということについては、もうできるだけのことを、後で林野庁長官からも具体的に地元の皆さんが納得いくようにこの委員会なりあるいは地元でも説明をいたして御協力をいただきたいと存じます。  それから三番目に、一度決めたことは必ずやるという姿勢でしゃにむにやるのかということですが、それはもう国会でも答弁いたしておりますように、いま申し上げているようなことを労働組合に、あるいは地元の過疎問題については地元の皆さんに十分説明をして、大方の納得を得たところでやりたい。これは変わっておりません。ただ反対のための反対で、何でもかんでも反対だという措置をとられたんでは物事はできない。これはお互いが前向きに話し合って合意を得て決めていきたい、こう思っておる次第でございます。  四番目に、配置転換の希望等を聞いたのは間違っているんじゃないか。このことについては、どういうことになっているのか林野庁長官から答弁さしたいと存じます。
  85. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 職員の配置転換につきまして、職員にそういうのを聞くのはけしからぬというお話でございましたけれども、今回の改善計画につきましては、いまの私どもの計画としては一月一日に実行したいという計画を一応持っておりますので、そういう計画に従いまして職員の意向を聞いてみたということでございます。したがいまして、それで強制するということではございませんし、営林署を統廃合する場合にはいま先生御指摘のございましたような地元にいろいろの説明をする、これも必要でございます。さらに、労働組合と十分話し合いをすることも必要でございます。そのほか、それに伴って必要なものについては並行してできるだけ対策をし、円満にいくように努力していきたいという過程でそういう問題があったと思いますけれども、誤解のないように対応していきたいと思います。
  86. 原茂

    ○原(茂)委員 これだけに余り時間がとれませが、大臣の言われたことをすらっと聞いていると、事情を知らないとなるほどなと思う点が多々出てくる。大臣、まだ行ってみない。本当はいつか行ってみていただけばよかったのですが、あの南木曽だけは一度ごらんになった方がいいんじゃないかと思うのですよ。妻籠の営林署の廃止をする、何か過疎問題が起きる、そんなことは心配していません。過疎はすでに起きている。かつて小学校二クラスあったものがいま小学生が七人しかいない。過疎はもう行きつくところまで行きついちゃったという状態にまでだれがしたのか。とにかく産めよふやせよではありませんが、あの時代、とにかく材がほしい、物がほしいというのでヒノキをカラマツにかえるは、育成の六十年伐期見直しで間伐をしていけばやっていけるはずだというような、いまから考えると間違ったやり方でどんどん間伐で大体やっていけるという方向でやってきた。そうしていまあの日本一の崩壊率というひどい状態になってしまった。かつて一町村の中に二つの営林署が必要なほど乱伐、皆伐をやってきた。そうしてもうけまくってきた。林野庁全体の八割という利益をあそこだけで、木曽谷で上げてきた。それほど取れるだけ取っちゃっていま崩壊のしっ放しになっている。現在のままで後の崩壊がないとしても、七十年以上かからなければあそこはできませんよ。もとのとおりに治山復旧はできない状態になっている。荒らすだけ荒らしちゃって、食うだけ食っちゃった。そうしていまになって一町村に二つあるのはおかしいから一つなくして過疎対策は別にやるんだ。その管理費を、所長をなくし、何をなくしというわずかな人件費で治山をやっていく。現在のままで崩壊が新たにないとしても七十年以上かかる。そういうやり方でいいのかというと、絶体そんなことでできる状態ではない。日本一なんですよ、崩壊の状態が。ですから、いまはもうあそこで経営だ、木を切るんだということよりは、それは一時やめても治山だけに専念しなければならないという状態になっているときに、人手を減らす、管理者を減らす、間接費がそれだけ減ったなどというばかげたことで、スズメの涙のようなものでその手当てができるかというと、絶対できる状態ではないんだ。ここは特殊事情なんであります。  したがって、住民感情からいってもあのプランでは絶対に納得ができない。そこでせめて、かつて治山事業所を廃止するときに約束をしたいわゆる具体的な治山に対してはこういうふうにやっていきます、造林はこうする、あるいは不良造林地、不良育成地に対してはこういうふうに手当てをいたしますという具体的なプラン、そのためには林道も開設が必要です。とんでもないところでいまとまっている。その林道を開きます。治山もやります。植林もやります。人手はどうするんだ、人手はこういうふうにふやしますというようなプランがなければ、もう人手はふやさないんだ、これは国家の方針だ、これでずっと押しまくっていける状態ではないというのが現状であります。  この現状の中で、先ほども聞いたように、決めたんだからやっていくんだ、どこまでも話し合いをして納得してとおっしゃるのですが、組合だからといって、当然わが国の大事な山林を育成することに反対ではないのです。どころか、いまの状態では余りにもひどい、体裁よくあれもやるこれもやると言いながら、あの国有林は放棄するのじゃないかとすら疑いを持たれるほどにひどい状態になっている。林野庁長官はあそこに最近おいでになってみたかどうか知りませんが、一度は行ってごらんになる必要があるのじゃないか。いま大臣の答弁されたようなそんななまやさしいことであの復旧ができるとお思いになるかどうか。私のような素人でも絶体にこれは不可能だと思う。  私は、組合だの地元が反対をしているからその反対にくみして何でも反対をしようという考え方はさらさら持っていない。何の問題に関してもそういう態度をとりません。そういう考え方をしたことがないのです。ですから、私は、どんな問題でも実際に現地を見ます。現地を見て、素人の私が、これはひどい、どう大ざっぱに考えても、とてもじゃないがこれは何十年待たなければ——さんざん皆伐だ、乱伐だとやった後のまあこれならという整地をするだけでも何十年もかかるというような状態を見てきますと、いま大臣が言ったようなことになかなか納得はできません。  しかし、いま大臣は、約束したプランなり何なりはできる限り林野庁を通じて出すし、地元とも話もしたい、また何が何でもというのじゃない、どこまでも説得をし、納得をした上でやっていきたいという答弁がありましたから、その点に私はある程度頼らしてもらって、この問題はまた後日に譲らしていただきますが、いま長官の言われたような、ただ聞いてみたんだ、どこかへ行きたい、同じ転職をするならどういう方法を希望するかを聞いてみたんだ。効果はなくて、いたずらに刺激をして、ばかにするなという気持ちだけを与えて、何の効果もない。いまのような状態の中で、地元が納得どころかまだ話し合いの席にも着かないという状態の中で、その職員全体に、もし妻籠の営林署がなくなったとするならどういうところへ希望するか十一月初めまでに言ってみろとひそかにあるいはちょっとけびいてみたんだというにしては余りにも大人げない、ばかげた、百害あって一利ないことをやったというふうに私は思う。いまの段階でやるべきではありません。という意味でいまの御答弁を聞き、私も私の考えていることをそのまま申し上げて、この問題は終わります。  そこで、第二の北富士の農地問題に入らせていただきます。  きょうは主に農林水産省の多分構造改善局長が主体になると思う。大蔵省の理財局次長がおいでになっているそうですが、必要に応じて大臣からその都度また御意見を伺います。  言うまでもなく、私がここで北富士問題といたしておりますのは、昭和四十八年三月三十日閣議了解「北富士演習場の使用に関する措置について」に基づく民生安定のためと言われる国有地二百十四ヘクタール払い下げに関する法的、行政的問題についてであります。  周知のように、政府は昭和五十二年九月二十四日、林業の用に供すべきものとした用途指定を付しまして、随意契約で山梨県にこの二百十四ヘクタールを売却いたしております。  これまで私は、この国有地で実際に三十有余年にわたって継続耕作をしている農民、あるいは戦後一貫して当該土地上に入会権の存在を主張し続けている農民などの存在を踏まえまして、法的にも行政的にも納得のいく処理がなされなければならないと強く主張をし続けてまいりました。また私は、払い下げ以前に政府が当然処理すべき法的責任論の上からも幾多の問題があることも強く指摘してきたわけであります。このことは、昭和五十二年八月二十三日の本委員会における議事録に明らかであります。  そこで、私は、農林水産省所管の開拓財産の処理問題、東富士有料道路の予定敷地に当該払い下げ地が入っている問題などを指摘いたしまして、その処理を完全に済ませた上でなければ払い下げさるべきではないということを強く警告を含めて論じてきたわけであります。  きょう私は、この開拓財産の問題を中心にいたしまして農林水産当局にお伺いをしますが、私が昭和五十二年七月十五日及び八月の二十三日に指摘した開拓財産がどのようにいま処理されているのかいずれお伺いするということを前もって断ってありました。  これまでの大蔵当局の答弁では、当時は農林省ですが、農林水産省は何年か前からこの開拓財産について打ち合わせをやってきたということでしたが、これは昭和五十二年の八月二十三日、当時の大蔵省の川崎理財局次長が答弁をしています。議事録にあります。その何年も前から打ち合わせの経過を含めまして、五十二年八月二十日、旧所有者あて通知を発するまで、この返還国有地二百十四ヘクタールに関しましてどのような調査、何年もかかった打ち合わせを行ってきたのかをここで明らかにお伺いをしたいのであります。  また、その通知発送後今日に至るまでの経過をも明らかにしていただきたい。前回、やがてお答えをいただくというお断りをしてありますので、きょうはいい機会ですから、まずこれに対する御答弁をいただきたい。  ついでに、この広大な返還国有地のうちその大部分にかかる格子じまの部分だけが開拓財産になっていることに何ら疑問を感じなかったのではないかと思うのですが、この点についても調査、検討、打ち合わせがなされているのかいないのか、これを確認しておきたいと思う。  以上四点。
  87. 大場敏彦

    ○大場政府委員 いま北富士演習場内に所在いたしました開拓財産の処理についてのお尋ねがございましたが、私ども開拓財産という形で保持しておりましたのは、北富士に所在する開拓道、水路九・九ヘクタールということでございまして、残余の大部分の当地につきましては、これはいわゆる自作農創設のための開拓財産という形で保持していたというふうには考えておりません。そういう意味で、これは別途大蔵省の方からお答え申し上げるべきものかと思いますけれども、通常の普通財産という形で国有財産法の規定等に基づきまして処分をした、こういう経過と了知しております。  なお、私どもがその保管の責任を負っております開拓財産につきましては、道、水路九・九ヘクタールというものがございましたが、これは農地法の所定の手続に従いまして旧所有者に売り払ってきたわけであります。もちろん旧所有者が所定の期間内に買い受け申し込みをしなかったというケースにつきましては、これは山梨県に売り払いを行った、こういった経過になっております。
  88. 原茂

    ○原(茂)委員 答弁をお聞きしていてわかるのですが、大蔵省が言うように何年もこの問題に関して打ち合わせをしてきたとかいう内容の答弁じゃないですよ。そういうことがはっきり言えない。やってない。委員会さえ通れば何とかなるだろう、あとはその日かせぎで、ずっと何とか済ませたい、こういう気持ちがありありで、何らやってない。しかも、九・九ヘクタールに対しまして返還要求があったものに対しては云々という答弁がありましたが、それが全部済んだわけですか。その内容もいま御答弁がされない。その点だけでももう一度お答えをいただきましょう。  それから一つ注文がある。大場さん、まあまあ紳士的ないい声なんですが、もうちょっと大きい声を出すかマイクヘロをつけないと、半分私に聞こえない点があります。構わないからかみつくような声でお願いします。
  89. 大場敏彦

    ○大場政府委員 開拓財産九・九ヘクタールにつきましての処分状況につきましてお答えいたします。  ただいま申し上げましたように、旧所有者が所定の期間内に買い受け申し込みをしなかった場合には山梨県に売り払いを行ったということを申し上げたわけでありますが、旧所有者に売り払いました面積は八・三ヘクタール余りであります。それからこれの単価は平米当たり二百三十一円七十銭ということでありまして、これは国有農地等の売払いに関する特別措置法に基づきまして、いわゆる時価の七割という形で売ったわけであります。それから旧所有者に対しまして通告あるいは公告をしたわけでありますけれども、その日から起算して三カ月以内に買い受けの申し込みをしなかったわけでありますが、そういった場合には、国有農地等の売払いに関する特別措置法の規定に基づきまして山梨県に売ったわけであります。これは残りの一・六ヘクタール余りでありまして、これにつきましての単価は平米当たり三百三十一円ということであります。これは文字どおり時価の十分の十、こういう形で売って、九・九ヘクタールにつきましては売り払いの手続完了いたしております。
  90. 原茂

    ○原(茂)委員 この問題の処理も何年もかかって打ち合わせなんかしてないことはわかりましたが、この問題を、前に、去年指摘したときに、よくお考えいただくと非常に大きな問題を含んでいることに簡単に疑問をお持ちになったはずだと思うのですが、これから徐々にその点の解明をしていきます。その疑問を持たないで淡々と、九・九の処理をいたしました、八・三だけ何とか返還ができましたというようなことを言っているような、そういう何らの疑問を持たなかったような答弁に対しても、大変長い間打ち合わせをしたのじゃない。あなた方のような偉い専門家が長い間打ち合わせをしたら、そんなばかな答弁をされているわけはないし、何らかの手当てがすでに他に行われていたのではないかと私は思います。徐々にこれから、その点がわかるかどうか質問をしていきたいと思います。  御承知のように政府は、いまの図面で格子じまになっているところですね、九・九が格子じまになっているところです、この開拓財産を除きまして二百十四ヘクタールを随意契約で林業の用に供すべき用途指定を付して山梨県に売却をしたわけです。これはわかっていますね。  だが、当該国有地はそもそも民有地であったが、昭和二十二年十月二日、政府が自作農創設のため同特別措置法第三十条の規定により未墾地として買収したことにより初めて国有財産、開拓財産となったものであります。これは当然御承知だと思います。  したがって、政府は自作農創設法の趣旨にのっとりまして未墾地買収後、当該土地に対しまして漸次海外からの引き揚げ者あるいは地元増反者を入植せしめ、国策としての食糧増産と引き揚げ者等に対する失業対策とをあわせ持った緊急開拓事業の用に供さんとしたもので、本件土地はきびすを接して昭和二十三年九月、占領米軍に耕作を禁止され、次いで二十四年七月には米占領軍演習場用に供すべく占領接収予定地に指定され、さらにそれに基づいて二十五年一月二十七日、命令番号JPNR−四二二三号の調達命令が出されまして、同年二月一日付をもって米軍に演習場として引き渡されてしまったのです。これは間違いないでしょう。ここに自作農創設のために同地を供することができない状況が生じてしまったわけであります。  しかるに、二十五年二月一日、すなわち演習場用地としての引き渡しの日に、政府、この場合政府とは山梨県知事それから同県の農地委員会ですね、政府は以上のような事態が発生し、未墾地買収時とその事情が全く異なるに至ったにもかかわらず、自作農創設のためとして所定の方針どおり当該土地を入植者に売り渡しているわけであります。ここに法的に検討しなければならない重大な問題が存在するのであります。  すなわち、当該地の入植者への売り渡しは、以上のごとく自作農創設の目的に供することができないという事態のもとで行われた点にかんがみまして、よし自作農創設法第四十一条が未墾地の売り渡しにつき行政機関の裁量にゆだねているものであるとしましても、社会通念上、自作農創設などの目的に供し得ないことが客観的に明らかな場合、その客観的基準を無視した行政機関の売り払いに関する裁量というものは違法であり、無効たらざるを得ないのではないかということなのであります。非常に大きな問題をいま提起しているわけであります。  そもそも自作農創設の目的に供することができないという事態のもとで、しかも自作農創設の目的で売り渡すというのであるから、その売り渡し自体がいわゆる背理たらざるを得ないと私は確信をいたします。  占領接収による演習場としての囲い込みの指定時、それは昭和二十四年七月です、あるいは少なくともその調達命令が出たとき、すなわち昭和二十五年一月でありますが、それ以降は、自作農の創設等の目的に供しないことを相当とする事実が生じた場合といってしかるべきだと思う。かかる事情のもとでの売り渡しは無効であることは当然だと私は思うのであります。  占領接収によるいわゆる囲い込みの現実というものは、当然のことながら農地としての使用と著しく矛盾、抵触するものでありまして、かつ売り渡しの年が朝鮮動乱の勃発した昭和二十五年であることを想起すれば、北富士演習場の使用頻度も察するに余りあるものがあると思います。大変な使い方をされておりまして、事実それは営農を完全に不可能にするほど激しいものでした。よって、入植者は売り渡された土地を再び買い上げるよう政府に陳情、申請し、政府も昭和二十九年三月六日、これを売り渡し価格より相当高く買い上げることによって、いわゆる離農資金とさせたのがあの当時の現実であります、事実であります。  自後、該地は買い上げにより、総理府防衛施設庁所管の提供財産とされまして、次いで昭和四十八年四月十日、米軍からの返還をもって大蔵省所管普通財産となったものであります。  しかるに、ここにおいて注意を要するのは、実は該地のすべてが入植者に売り渡されていたものではなくて、昭和二十二年十月の開拓事業実施要領に基づきまして、道路、灌漑、排水等、重要な基幹工事だけは全額国費をもって行うことになっていたのであって、該地においても該工事を施行すべき土地はなお農林省所管開拓財産として管理されたものであり、まさしくこの部分が格子じまの部分なのであります。九・九ヘクタールであります。  したがって、政府は、当該土地については大蔵省普通財産と農林省開拓財産として管理していたのでありまして、普通財産は山梨県へ、開拓財産は旧所有者へと売り払っていることになるのであります。すなわち二十五年二月一日の入植者への売り渡しは違法、無効であるにもかかわらず、法的には大蔵省所管の普通財産とされていた該地は、当然農林省所管開拓財産であるべきところであり、したがって、政府は、格子じま模様の農林省所管開拓財産、道路予定敷地等として入植者に売り渡していなかった土地と同様に、農地法第八十条の規定に従いまして旧所有者に売り渡すべきものであり、旧土地所有者は政府に対して売り払うべきものと考えます。事実、該地は占領接収を承知の上で、しかし一たん入植させてしまった入植者の処理の一方策として、単に手続的に売り渡し、買い上げというような操作が行われました。いわゆる該操作をもって入植者の離農資金捻出が行われたものと言うべきであります。仮に、そうでないといいましても、結果的には自作農創設という目的のために該地は供されることはなかったのでありますから、道路等の予定敷地のためにたまたま手続的には売り渡しがなされず、そのまま開拓財産として農林省管理してきた土地とその実態はいささかも異なるところはないと思うのであります。  私は、このようにあえてその疑問とするところをあらかじめ提示いたしまして、これからまた徐々に質問をするというのも、本件事案というものがすでに四半世紀以上も過去のことであるがゆえであります。質問の意図を明らかにすることによって、いたずらに疑心暗鬼をもって抽象あいまいに答弁していただきたくないからであります。  以下に、このような特殊性をも私は勘案しながら、歴史をたどりながら、開拓問題一般を交えてお伺いをしてまいります。  第一に、本件土地がそもそも開拓地として適当であるかどうか、きわめて疑問であります。一般に開拓適地として未墾地買収されたはずであるから、開拓適地であったに違いないと言われます。だが、果たしてそのとおりでありましょうか。かかる主張は「はずだ論理」に支配されております。何々のはずだと言い、正確な推論を進めているつもりでも、実は余り頼りにならない常識やあやふやな資料を前提にしているのがかかる議論であると私は考えます。「はずだ論理」であります。  そこで、私はめんどうでも、この開拓にかかわる重要な施策の歩みを振り返りつつ質問をしてまいります。  開拓主要年表をたどってみますと、昭和二十年八月農商務省が廃止されまして農林省が復活をし、同年十月には農林省に開拓局が設置されています。そしてすぐ、同年十一月には緊急開拓実施要領という閣議決定がなされています。明けて昭和二十一年十月、ちょうど一年くらい後ですが、自作農創設特別措置法が制定、十二月にはそれが施行され、これに基づき未墾地買収が一斉に開始されています。申すまでもなく、私がいま問題にしている土地はこれによって買収された土地なのであります。昭和二十二年になりますと、開拓者資金融資法と同特別会計法が一月には成立をいたしました。開拓者に対する若干の援助も考慮されるに至っております。そうして同年十月には、緊急開拓実施要領と言われた敗戦後三カ月日に出された閣議決定が、その緊急という頭文字を取って、ただ開拓実施要領というものに変わっています。つまり、さきの要領が余りにも混乱に混乱を重ね、その混乱の影響がすこぶる甚大であったということとともに、入植者の営農がうまくいかない、たとえば入植者二戸当たりの経営面積が不足で営農不可能ということが判明するに及びまして、経営面積の規模の拡大とか開拓という新しい土地開発に加えて、土地改良ということも含めた考慮がなされた上で、この新しい実施要領が制定されたのであります。  言うまでもなく、このころまでは復員者、疎開していた人たち、そういった人の住む場所、生活する場所を確保することを重点に考えて未墾地買収は行われていたのであります。やむを得なかったと思います。ちょうど、この昭和二十二年十月に本件土地は未墾地買収されているのであります。そして昭和二十三年になりますと、さらに科学的に開拓地の土壌調査事業というものが始められているのであります。昭和二十四年になって初めて開拓適地選定基準というのが設定されまして、それに基づいて未墾地買収がなされるというようになっています。  このように、本件土地が未墾地買収され、それが入植者に売り渡されるまでの間の諸施策の一連の流れを見てもわかるように、緊急開拓の開始及び開始時における未墾地買収並びに開拓の進め方というものは、特に混乱期でもあり、事業のいわゆる実施要領が先に決まり、未墾地買収が開拓適地選定基準も何もないまま行われたということが事実なのであります。つまり、昭和二十年代前半というのは開拓事業の創設時代で、走りながら考え、考えながら走るという試行錯誤の繰り返しの時代であったと言っても過言ではありません。この点はよくわかります。諸事体系的に整わないままにとにかく未墾地買収、そして開墾と、結果的には事業量は非常に伸びているが、多くの問題をはらんでいたのであります。つまり、適地選定基準とか計画の立て方とかが未墾地買収後に決められているのであります。あるいは土壌調査が後から行われているといったぐあいで、すべて順序が逆であったのです。それが当時の事情からすればいたし方がなかったにせよ、その後の開拓というものに、あるいはその管理等について非常に大きな悪影響を及ぼしているということは事実だと思います。たくさんあります。  そこで、確認をしておきたいと思いますのは、いま私が申し上げた事項、特に昭和二十二年十月ごろは適地選定基準などはなく、したがって、土壌調査など、荒蕪地が農地に転換可能かどうかなどの科学的調査もなく、ただ開拓予定地として次々に買収していったのが事実ではなかったかということでありますが、事実に照らしてこの辺をまずお答えをいただきたい。
  91. 大場敏彦

    ○大場政府委員 いま詳しく歴史的経緯につきまして御指摘になりましたが、そういうことだろうと思います。  そこで、問題になりました土地は、実は先生も御指摘になりましたように、性格が二つに分かれるわけでありまして、確かに二十二年に旧自創法三十条の規定によりまして未墾地を買収した、その中で議論になっております道、水路敷地九・九ヘクタールを残しまして二十五年に増反あるいは入植という形で自創法の規定に基づきまして売ったわけであります。それがその後、二十九年になりまして、米軍演習場の拡張に伴いまして開拓地を国において買収するということになりまして、これはもちろん転用を目的とする所有権移転の農地法上の手続を経たわけでありますけれども、国において買収した。そういうことになって、その時点において私どもの理解といたしましては普通財産という形に変わってきている、こういうぐあいに理解しておるわけであります。  もちろんそれは四十八年五月に返還されて後の問題でありますけれども、そういうふうに変わってきているということでございまして、そういった財産の性格から大蔵省所管財産として御存じのとおりの経緯を経まして山梨県に売って、林業の経営という観点から分収林契約を地元の恩賜林組合等と結びまして使う、こういう経緯になっているわけであります。  そこで、しかしながら一部の九・九ヘクタールにつきましては、これは道、水路敷地として買収したまま国が保管しておきましてずっと今日まで経緯しておりました関係上、これはいわゆる自作農創設維持のためにわが省が保管すべき開拓財産、こういう性格を持っておりますので、農地法八十条の規定に基づきまして、先ほど御答弁申し上げましたように原則として旧所有者に返還する、申し出がなかった場合には山梨県に売り渡した、こういった経緯をたどっているわけであります。  それから、その当時の事情といたしまして……(原(茂)委員「大場さんもうやめてください、後で聞きます」と呼ぶ)その当時の経緯といたしまして、問題の緊急性からして、未墾地の買収の土地の選定について、、土地の適格性、そういったものが十分であったかどうか。土壌調査あるいは適地の選定基準が後からできて、先行していなかった、こういった経緯につきましては、欠陥といいますか問題点があっただろうと思います。その当時の事情を私も現在の時点でつまびらかにしておりませんので、その点につきましてはよく調べたいと思います。
  92. 原茂

    ○原(茂)委員 大場さん、時間の都合もあるので、こういうふうにやったから山梨県に払い下げたのだなどというのは、いまそういうことを論じようと思っていませんから、余りそういうことに時間をかけないでいただきたい。質問したことだけに答弁をいただきたい。その方がいいと思います。最後に結論的にあなた方がどういう決断をされるかは、また後でお伺いします。いまおっしゃたように、昔のことはずっとその場にいるのでないとなかなかわからないのでいますぐ結論が出ないとおっしゃるのだが、それは後の問題。繰り返して二百十四ヘクタールを払い下げたのが悪いんだとか何だかんだと前みたいに言おうと思っているのではないのですから。いいですね。  したがって、私はいま未墾地取得に関する不手際をあえて問題にしようとしているわけではないのです。当時、敗戦直後にして、経済的機能というのはほとんど壊滅状態にあったわけですし、さらには幾百万の戦災者、復員者を抱えていたわが国ですから、まさに混乱期そのものだったのです。問題は、その未墾地取得後の処理についてである。私もこの国有地の払い下げを機に、まず農民の方々から、そして今度は旧土地所有者の方々から、その払い下げが違法、不当だと訴えられるに及びまして、いろいろな角度からこの払い下げ問題を改めて考え直さざるを得ないといま考えているわけであります。  戦後開拓のうちで、この緊急開拓と未墾地取得とは私に最も強烈な印象を与えております。先ほど来申し述べてまいりましたように、緊急開拓は敗戦後わずか三カ月後の昭和二十年十一月に閣議決定をされたのであります。その内容は、五年間に実に百五十五万町歩を開拓する、百万戸入植という壮大な計画だったのです。それが三カ月という短期間で策定されたわけです。そして昭和二十二年には、昭和二十三年度末までの一年半足らずの間に百四十万町歩の土地を取得する方針に改められているのであります。大変なことです。したがって、その方法は、その実を早急に上げようというので、各府県別に取得面積を割り当てるという、いわば非常手段すらとっていたのが実情であります。かくて緊急開拓という大目標は、農地改革の勢いに乗った未墾地取得という強硬手段に支えられ、戦後二カ年という短期間でほぼその基礎を固めてしまったのであります。  それでは、三十一年たったいま、このスタート時の計画はどんな結果になっているのか、その実績は一体どうだろうか、これを私は知りたいと思うのです。二十二年自創法が公布されて以来今日までの未墾地取得面積、現在の開拓農地面積及び入植農家戸数の実績、これをできるならここでそれぞれ明らかにしてもらいたい。
  93. 大場敏彦

    ○大場政府委員 詳しい資料は足りなければ後から提出させていただきますが、現在、未墾地として従来も買収しております面積は百六十六万一千六百ヘクタール、これが買収面積の計であります。それから、五十三年度当初の現在管理しております面積は二万四千百五ヘクタール、こういったことになっております。
  94. 原茂

    ○原(茂)委員 未墾地取得の面績が百六十六万町歩ですか。そうですね。そうすると、政府が計画したものよりずっと上回ったわけですね。百六十六万町歩というものをとにかく取得いたしました。そして、開拓した農地の面積をもう一度言ってみていただけますか。
  95. 大場敏彦

    ○大場政府委員 いまお答えいたしましたように買収面積が百六十六万ヘクタールであります。それから、いま現在管理しておりますのが約二万四千ヘクタールであります。この差が約百六十四万ヘクタール、これは開拓として利用された面積というふうにわれわれは推定しております。
  96. 原茂

    ○原(茂)委員 そうすると、開拓農地面積が百六十四万ヘクタールということになるのですか。これは間違いないですか。あなた方がいろいろなものに出している資料によりますと、一番少ないもので二十九万ヘクタール、多いもので五十四万町歩ですよ。それがいきなり百六十四万町歩。これは間違いないですか。こんなに達成率がいいのですか。
  97. 大場敏彦

    ○大場政府委員 未墾地買収面積ということで百六十六万ヘクタールということを申し上げましたが、これは正確に申し上げますれば、一たん売ってまた買い戻した面積というものも入っております。ダブリがありますから、そういう意味では全部がいわゆる買収した面積のトータルと言うのは当たらないわけでありますけれども、考え方としては、その差、先ほど申し上げました現在管理している面積との差がおよそ開拓として利用された面積というふうに推定しております。
  98. 原茂

    ○原(茂)委員 およそでたらめですから、もう一度調べ直して私のところに持ってきてもらいます。そんなばかなことはどこにも出ていない。そんなことばありません。あなた方は本職だからよく知っているはずだけれども、これはいきなり聞いたからわからないのは無理もないと思いますから結構です。後でもっと調べてください。差し引いても五十四万町歩以上にはなっていません。この数字はいろいろな統計から出たものを持っていますが、これは時間の都合で読み上げませんが、どうかもう一度調べて私のところにお持ちいただくということをお願いしておきます。  要するに、私の調査した統計によりますと、未墾地取得面積は約百五十一万町歩なのです。後で調べていただけばわかる。開拓面積は二十九万町歩なのです。別の統計では五十四万町歩というのがありますが、これは私にもどっちかわかりません。入植者農家戸数は九万二千戸。これが戦後未墾地買収地における開拓の実績であります。およそけた違いにあなたの言っている数字とは違う。達成していない。なるほど未墾地買収面積百五十一万町歩、私の言ったのが正しいとして、百五十五万町歩開拓の前提としてほぼ計画どおりと言ってもいいかもしれません。しかるに、百五十一万町歩のうち開拓されたのは何と二十九万町歩しかない。間違いありませんから。このことは、未墾地の八〇%が開拓されなかったということになっているのですよ。いいですか。開拓されているのが百六十四万町歩だと言うなら、その内訳をぜひお見せいただきたい、年代別に示していただきたい。そんなことは絶対ありません。  一体こういう状態の原因というのは何だろう。それは言うまでもなく、買収未墾地のうち開拓不適地が相当多く含まれていたということを示すわけであります。それにしても、緊急開拓が五カ年に百五十五万町歩開墾、百万戸入植と銘打っているのとは余りにも大きく食い違うと思うのであります。ほかにもいろいろと原因を挙げることは可能だと思いますが、少なくともその最大の原因の一つに、開拓不適地が挙げられると考えるが、これは一体どうお考えなのかを一その数字が違っているからいま質問してもだめですから質問をしませんが、私は開拓不適地が非常に多かったのだと思うのです。実際にわずかな土地を見てもなるほどなと思います。特に北富士を見たら、あの開拓地が二十九万町歩あるのは不思議だと思うのです、あそこはゼロに等しいのですから。  この買収未墾地は、自作農創設特別措置特別会計に所属していることは御承知のとおりであります。たとえば、会計検査院の昭和三十九年度決算検査報告によりますと、「自作農創設特別措置特別会計に所属する財産の管理が適切を欠いており、その根本的是正をはかる必要があることについては、昭和三十三年度、三十五年度および三十六年度検査報告に掲記し、また、三十七年六月是正改善措置を要求し、さらに、三十七、三十八両年度検査報告に掲記したところであるが、四十年において、」「財産管理状況調査したところ、その後事務体制を強化し、財産管理適正化および財産処分の促進等をはかっており、」是正を要する管理は減少しているが、「なお農林省指導方針が十分徹底しないなどのため管理が適切を欠いているものが次表のとおりあり、一段と管理体制の強化をはかり、これらを是正することが緊要である。」と指弾されている。長い間かかってちっとも直らぬではないかと検査院が指弾をしているのですね。特に、昭和三十六年度から四十二年度までの指摘は大変厳しいものであったはずです。  私は、さきに、すべて順序が逆になって行われた未墾地買収にその原因があることを指摘しておきました。かかる会計検査院の繰り返し執拗に行われた指摘というものは、特殊にして異例であります。農林水産当局は、この原因をどう考えるかもここでお答えをいただきたかったわけですが、これはもうお答えはできないでしょうからする必要はありません。  この点に関しては大臣にもお伺いをしておきたいと思うのです。というのは、大臣は北海道庁の開拓部に勤務をされておりました。開拓の実態をよく御存じ。だからお聞きするのです。北海道と内地とは事情がちょっと異なります。しかし、あなたの当時の任務というのは企画室の計画係だったと思います。「団地別に入植可能面積と入植可能戸数、いままでに入った戸数や開墾された面積、土地改良が必要かどうかなどを整理した台帳」、「戦後開拓史」中川一郎随想にあるわけですね。六百三十四ページに書かれている。そういうものをつくることがおれの仕事だったんだよというふうに書いてあります。体験的にもよく御存じだと思うからお伺いをするわけであります。  開拓適地かどうか、入植可能面積はどれだけなのかなどなどは「いまから考えると全くいいかげんなもので、」これは大臣が書いた本ですよ。「いまから考えると全くいいかげんなもので、測量してるわけでもなし、土地面積も、土地改良実態も、すべて役場吏員の勘でつくられたもの」と言っても過言ではない。その随想に書いてある。そのような趣旨の貴重な体験的随想を物されているのであります。  私は、いま開拓適地選定におけるそのようなずさんなやり方それ自体を非難しているものではありません。私もまた事実そうたらざるを得なかったのではないかと確信します。ひとつ経験を踏まえた上でのざっくばらんな御答弁を、当時ここに書かれたとおり、勘でやったもので、ずさんなもので、科学的な何もないのだ、それで決めたんだ、こう書かれているのをいま思い出しても、やはり、うん、そうだったんだよとおっしゃるのか、忘れちゃったと言って逃げるのか、どっちでもいいから答弁してください。
  99. 中川一郎

    中川国務大臣 私が九州大学を卒業しましたのが昭和二十二年の秋でございます。就職いたしましたのは昭和二十二年の十二月二十四日、北海道庁開拓部に勤務いたしました。実際出かけましたのは、昭和二十三年一月四日の御用始めから仕事についたわけですが、そこに書いてありますように、戦後、開拓が始まって、全国の開拓団地計画というのを地区別、町村別にまとめるようにという仕事に最初につきました。  北海道は十四の支庁に分かれておりまして、そのうち私が担当したのが、たしか石狩地域と空知地域で、係長さんの命令を受けまして、各町村に行って何々団地何町歩、開墾可能地幾ら、土地改良面積が何ぼ要って排水が何ぼ要って、金目ではどれくらいかかるというのを役場の開拓担当官から聞き取り調査をして、約十日間ぐらいでこれをまとめて、足し算、引き算、掛け算をして北海道はかくかくになりますと、たしかその年の、私のやつはわりあい、十日ぐらいでできましたが、全体をまとめるのにかなり時間がかかって、二十三年の三月末ごろ東京に持ってきた。  そういうあわただしい中に団地計画をやったことは事実であり、戦後、引き揚げ者がどんどんと出てくるあるいは戦災者が職を失うで、北海道にも年四千戸からの緊急入植者がございましたから、それらを町村別にあるいは団地別に割り当てをするのにはどうしてもそれだけの作業を急がなければならなかったということも事実だったろうと思いますし、したがって、測量したわけではなし、現地に行ったのかどうかなと考えられるくらいずさんなものであったことだけは間違いないなあ、私の勘から言って、率直にそう思っておるところでございます。
  100. 原茂

    ○原(茂)委員 言うまでもなく、いま問題にしているこの北富士の土地、これは富士山麓に位置しています。標高一千メートル、平均傾斜が五ないし十度、土性は酸性、火山灰土になっている。土質は富士焼礫という立地条件で、また平均気温は十三度、初霜は十月中旬、晩霜は五月中旬までという気候条件にあります。昭和二十五年十一月山梨県が発行しました「山梨県開拓組合便覧」梨ケ原の項を参照していただくともっと詳しくわかります。  地元農民の方々ですら、かかるところに農作をするためには、土性改善を初めとして、その開墾、整地等数年かけるも多くの収穫は望めない、五、六年じゃ多くの収穫は望めないということをもう口々に言っています。現にこの近隣に小作地を有している農民というのは、それこそ開墾三十六年のいまにしてようやく収穫を望み得る土地に改善することを得たと証言しているのであります。これは、「北富士新屋開墾永小作権者連盟「畑が林地にされようとしています。三十五年の汗の結晶を守って下さい」」、五十二年八月十九日の文春によって書かれています。  また、ある農業専門家は、この地では放牧を中心とした酪農しかやっていけないとすら言っているのであります。現に西富士開拓では酪農へと転換をしているのが事実です。  そもそも戦後すぐの徒手空拳のとき、言語に絶する食糧難に加えて、農具も資金も肥料も何もかもないない尽くしそのものであったときに、いかに開墾せんとするも、火山礫で固まっている土地を開墾できるわけがない。ちょうどこの開墾状況につき、本年の七月十二日、甲府地方裁判所において以下のような証言が行われています。証人は当時農民組合の顧問をし、農地解放の先頭に立っていた天野重知という人でありますが、次のように証言しています。「その当時、日本の開墾というのは、今のようなブルトーザーというようなものはないんですから、いわゆる唐鍬でやるわけです。あの地域の開墾の唐鍬というものは一体いかなる唐鍬でなければならないかということは、これは一見わかるわけですね。処が、その唐鍬の資材すらもないんです。……本当の開墾は、これはもう一日米一升喰べるという重大な労働なんです。……」と、その食糧すらないということを訴えています。それでも生きんがために、食糧を確保せんがために、この地に生きるすべを求めて入植させられた人々はいかに大変であったかは察するに余りあるものがあります。  確かに、昭和二十三年買収直後から同年春にかけて入植した人々は懸命に開墾に着手しております。だが、どうしてかかるところで一年や二年で農産物の収穫を期待できましょうか。また、どのようにして生活ができるというのでしょうか。できないのです。私は、ここに政府の棄民政策をかいま見るような思いがするのであります。  しかし、それはそれとして、この土地には別に大きな問題が存在していた。すなわち、この土地の近隣が旧陸軍演習場であり、その施設、区域を米軍が占領接収していたという事実であります。  昭和二十三年、占領米軍は、いち早く山梨軍政部覚書第百三号によりまして、本件土地の全面的な耕作禁止を命令しております。昭和二十四年七月には占領接収の予定であることを示しまして、その指定に従って、翌昭和二十五年一月二十七日、同年二月一日付をもって演習場に強制編入することを通告しました。同日をもって演習場としてしまったのであります。  私は、開拓不適地に入植し、半歳もたたないうちに占領軍から耕作禁止を命ぜられ、さらには演習地に編入されてしまった入植者の方々には、まことに同情を禁じ得ない。これは少なくとも国が責任を持って別途生計の道を保障してやるべきであったとすら私は考えるのですが、それはなかった。  さきの速記録に「米軍相手の闇ドル買い等米軍関係の商売」という証言があります。また、当時の状況は、事実、子供の目にも異様に映りまして、その純情な心を痛めていることが、当時小学校六年だった少年の作文でもよくわかります。  それは「昔と今」という題で、「美しい富士のすそのに、僕たちの山中はある。昔は日本のだいじな観光地だった。別荘に避暑のお客さんがやってきた。村は殆んど農家で、火山灰地のため農作物の収かくは少なく、冬の寒さのきびしい村。いまは、米軍のだいじな演習地だ。昼は大砲の音、飛行機のばく音、戦車の音がひびき、すぐそばで戦争をやっているようだ。夜は米軍の兵隊とパンパンとレコードがさわぎ、米軍の村になったようだ。」というようなことを、元木瑛一君という当時六年の子供が嘆いているのであります。  また、当時小学校六年の少女が次のように訴えざるを得なかった状況なのでありますが、「富士に近い村」という松本華子さんの作文は、時間の関係で省略をいたします。悲惨なまでに痛ましい生活実感が描き出されているのであります。  このように開拓不適地であるということは別にしても、問題は、演習地編入という事実が明示しているように、客観的に営農ができないことが明らかな場合に、果たして自作農を創設するためにとして入植者に当該土地を売り渡すことができるかということであります。  そこで、念のために伺いたいが、自創法で入植者に開墾地を売り払うことができる場合、言いかえれば自創法で自作農創設の用に供するため強制買収した土地を政府が売り渡すことができるのは、政府の全くの自由裁量なのか、それとも、裁量であるとしてもあくまでも農業に精進する見込みのある者に売り渡さねばならず、その限りでは鶴来裁量であるのか、自創法第四十一条の解釈をここでお伺いしておきたい。
  101. 大場敏彦

    ○大場政府委員 目創法で強制買収した土地の処分につきましては、あくまで法律の目的どおり、自作農創設の目的に供し得ると認めた場合に売り渡すというふうに規定されておりますので、これは完全な意味での自由裁量とは判断しておりません。
  102. 原茂

    ○原(茂)委員 まさに覊束裁量行為なんですね。これは昭和四十六年一月二十日の大法廷判決にもそのことがはっきりと出ています。  これまで述べてきたことから明らかなように、自作農創設の用に供すべき土地すなわち農地となるべき土地が演習場になってしまうということは明らかな状態なのであります。もっとも、米軍接収地であっても演習地でなければ、米軍の意向次第で農地の用に供することも可能であろうし、そもそも米軍接収それ自体が永続的なものというべきものではないのであるから、かかる事情を十分踏まえて自作農創設の用に供すべきものとして売り渡すことも可能であろうと思います。また逆に、こうすることで、接収地であるがゆえに耕作しつつそれを米軍に賃貸することによって何がしかの賃貸料を開拓者側に得せしめることにもなります。当時にしては生活を支える一助となることも考えられないわけではないのであります。  だが、本件土地は、かかる事情が存したというべき例外的な地域には決して入らない。第一に、占領米軍は昭和二十三年にすでに耕作を禁止する覚書を出している。第二に、それを一時的に使用させたとしても、それをもって営農できる状態であるとはとうてい言い得ない客観的状況が存していました。  事実、入植者たちは、「昭和二十五年朝鮮戦争が勃発するや、朝鮮より徴用した数万の朝鮮兵は、アメリカ軍と合流して私たちの開拓地内に侵入し、日夜増強導入された戦車・砲車並びに兵隊は……あらゆる農耕設備を蹂りん破壊し……開拓地は一朝にして瓦礫と化してしまった」と主張しておるのであります。当時の三木首相にあてた請願書を参照していただくとよくわかります。  かかる状態が明らかに予見され、かつ演習場に組み入れられることがわかっているのに、編入日と同じ日に自創法第四十一条に基づいて売り渡すことができるとはとうてい言い得ないと私は思うのであります。ここが問題であります。  もちろん、かかる演習用地の編入は政府の意思と反することであったかもしれません。しかし、占領軍の強制的意思であります。そこでここでは占領下という特殊な問題が存するのであります。かかる占領のもとでは占領軍イコール内閣という線が政治の中心となり、国会に満足な議事録も存しておりません。占領軍イコール内閣。  したがって、ここでは純粋に国内法の問題として、これと同じような事実、たとえば自創法の第三条によって買収された土地が、買収後土地区画整理事業地区内に編入されまして早晩宅地化されるということが明白な場合、かかる事情変更が存する場合に、なおそれを自作農の用に供するためとして売り払うことは有効と言えるかどうかということになるのであります。有効か、それとも無効か、これまでの裁判例、行政実例等を踏まえて、自創法第四十一条の解釈として農林水産省の見解をまずここで明らかにしていただきたいと思う。
  103. 大場敏彦

    ○大場政府委員 売り戻す対象になるその売り渡しが、耕作目的にはとうてい使えないということが客観的にも明白である、そういった場合には、やはりその売り渡し処分につきましてはかなり根本的な瑕疵があったと考えざるを得ないわけであります。  いま御指摘のありました、土地区画整理事業というものが行われて、それに使われるということが客観的に、だれが見ても明白だという場合にという設例でございますが、これは具体的な事例に即して判断するべきものというふうに考えております。  それから、本件の土地につきましては、確かに自創法による売り渡しが米軍による接収と並行的になったことは御指摘のとおりでありますけれども、その当時、県知事が機関委任事務として買収、売り渡しをしていたわけでありますが、その県知事が自作農創設の目的に供し得ると認めて売り渡したものということでありまして、また演習場として、利用が禁止されたということでもございませんで、演習場として接収した後も耕作は許可されておりましたので、そういう意味からして、本件売り渡し処分に無効となるような根本的な瑕疵があったというふうには、現在時点においては考えていないわけであります。しかし、何分古い時点の話でありますから、私ども、いま御指摘のありましたような事情につきましては、さらによく調査をしてみたいと思っております。
  104. 原茂

    ○原(茂)委員 古いことだからよく調べると言うのだから、それでしょうがないと思いますが、いま大場さんの言ったようなことは、まるで逆立ちの論理なんです。演習禁止じゃないのです。米軍は接収すると同時に耕作禁止を命じたのです。占領軍が耕作禁止を命じたのだ。国内法が優先して、知事が大丈夫、開拓ができる、可能だという判断をしたというようなことで、占領軍の耕作禁止というものも覆り、それから知事が耕作は可能だ、開拓は可能だと言ったことが事実だとしても、事実私がいままで述べてきたように、いまでも耕作ができるのか、三十何年たった今日、現に耕作が可能な土地なのかという現実を踏まえてみると、いまの大場さんの答弁なんというのは、およそ正鵠を得ていない。後で調査してというお話ですから、いまはこれで矛をおさめておきます。  申すまでもなく、この演習地への編入というのは、占領軍の意思に基づくものなんです。いま答弁をいただいたような国内法相互の相違に由来するようなこともないわけです。あるいはまた演習禁止というような間違った指示もなかったわけであります。  そこで新たに考えていただきたいのは、占領軍の命令と国内法が矛盾してくるような場合に、いずれを有効とするのかという問題が出てきます。したがって、この点につきまして農林水産省の見解をお聞きしたいと思いますが、御承知のように、本件土地が未墾地買収された昭和二十二年から売り渡しをされた昭和二十五年は、言うまでもなく戦後憲法の開始期にあり、敗戦、ポツダム宣言受諾、占領を契機として旧憲法と現行憲法の交代、現行憲法の理念のもとに新しい法体系の整備が行われた時期に相当しているわけであります。しかし、未曽有の戦災とその廃墟の中にあっては、現行憲法も現実には単なる文字にすぎなかったのであります。  たとえば、憲法第二十五条の「すべて國民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」という規定なども、さきに述べたように、当時東京の食糧の遅配、欠配は数十日といった状況であったわけですから、ただの飾り文句にしか映らなかったのが、ほとんどの国民の偽らざる心情であったと思う。私もそうだった。  ある大学の憲法の先生が、この条文に出てくる「健康」とか「文化的」というのは一体どの程度の生活を指すのか、その点に対して講義をするのに、「健康」とはとにかく医者にかからない程度ということだ。受講していた学生が、自分のじいさんは健康なままきのう死んじゃったとつぶやかざるを得なかったという笑い話があったほどの状況であったわけであります。  このように、憲法に対する規範意識も理解もほとんど欠如している状況にあって、しかも占領下にあるのです。当時ほど国民の一人一人が、国際政治のふるう巨大な力と、国際政治の吐く荒々しい息吹を身近に感じたことはかつてなかった時代であります。当時いかなる家庭の主婦も、海のかなたのトルーマン大統領の一つの演説が、彼女の家庭における朝晩の食ぜんに文字どおりつながっていることを思い知らされたものであります。  つまり、降伏後の当時の日本は、連合国の占領管理下に置かれ、降伏条項実施から、この占領管理体制が法的に終了する講和発行のときまで、日本は法的には主権国の地位を失い、国際法で言う半主権国家の地位にしかすぎなかったのであります。敗戦、戦災、未曽有の食糧難、そして法的には半主権国家といった状況にあったわけであります。  日本の占領は、ヘーグ条約の予想している占領の目的を超えたものであったけれども、何ら法的根拠のない恣意的なものであったわけでは決してありません。日本の占領は連合国の占領であり、連合国の国際協定として相互に国際法上拘束力を持っているポツダム宣言がその占領の基本法であったことは申すまでもありません。そして、このポツダム宣言を受諾し、降伏文書に署名している以上、日本の政府も法律も占領軍の制約下にあることは国際公法上の原則であり、その占領軍の意思が法律を否定するものであっても、あるいは日本国憲法を否定するものであっても、また、その意味において占領軍の意思としての勅令、命令が超憲法的であったとしても、これは決して超法規的なものではなく、国際法的にも有効であるということに異説を見ないのであります。だれもがこれはがえんじざるを得ないのであります。そして、占領後期には、ソ連に対抗して、米国による占領行政の転換が明らかにとられたということも、現在何人も否定し得ない事実であります。  そのような状況下において、本件土地を演習地として使用するとする占領軍の意思と、自創法による農地として使用するとする政府の意思とが相違し、矛盾してくるに至ったのであります。  しからば、いずれの意思が法的に有効であるのかということでありますが、これはもう明らかであります。いままで申し述べてきたとおり、広義の国際的合意あるいは協定とも言えるポツダム宣言受諾、降伏文書署名を基礎として、日本の政府も法律もすべてその制約下にあったところだからであります。  そこで、農林水産当局にお伺いしたいのは、事買収未墾地の処理にあっては、かかる占領軍の意思を否定することができるという何らかの法的根拠を有していたと言えるのかどうか。それとも他の憲法以下すべての法令と同様に、占領管理体制の枠組みにおいてしかその処理はできなかったというべきなのか、いずれなのかを明らかにされたいと思う。  また、当時の占領下の命令というのは、憲法の規定にかかわりなく、現在も有効であると言わざるを得ないと思うがどうか。この二点を明らかにしていただきたい。
  105. 大場敏彦

    ○大場政府委員 占領軍の命令といいますか、あるいは調達命令、それと日本の国内法との関係でございますが、本件事件に即して申し上げますれば、二十五年に確かに開拓財産を増反、入植用に売り渡したわけでありますが、先ほどお答えいたしましたように、その当時におきましては、確かに調達命令による演習場の拡大によってその開拓地が接収されたということは事実でございます。  しかしながら、これも御答弁申し上げましたが、耕作は許可されておったということでございまして、そういう意味で、開拓地として耕作をするということと、それから演習場として接収するということとは、これは両立し得る状態にあった、こういうふうに判断して、当時の県知事はその売り渡しをしたものと私どもはいまとなって判断している、こういうことであります。ですから、その売り渡し当時におきましては両立し得た。その後におきまして、これも先生から御指摘がありましたように、二十八年でございますが、行政協定に基づきまして、日米合同委員会で議論されまして、梨ケ原開拓地の耕作は禁止された、こういった経過になっているわけであります。
  106. 原茂

    ○原(茂)委員 あなたの言っているのはよく聞こえない点があるのだけれども、耕作禁止命令が出たという時点とそれから耕作が可能であるというふうな答弁のあったその時点、そこをもう一遍わかるように……。
  107. 大場敏彦

    ○大場政府委員 恐縮でございました。  もう一回繰り返しますと、開拓財産を入植あるいは増反用として売り渡した時点とそれから開拓地を米軍が接収したという時点は、確かに御指摘のように並行的に行われたということであります。同一の日付で行われたということであります。しかしながら、両者はその当時においては矛盾はしていなかった。確かに接収はいたしましたけれども、耕作は許容されておったということでございますから、そういうぐあいにわれわれは理解しております。そういう意味でありますから、開拓地の接収利用ということとそれから耕作として利用するということは両立可能な状態にあった、そういう判断で当時の売り渡しがなされた、こういうふうに理解しております。
  108. 原茂

    ○原(茂)委員 その点はいままでも言ってきたように、それからこれからも言いますが、あなたの記録なり記憶の間違いです、と私は思いますから、調査をしてもらって、いまの答弁ではいけないと私は思いますから。いまの局長の答弁というのは、耕作禁止命令が出たことを全然ネグっているんです。したがって、それとのかみ合わせでいま言ったような答弁ができるかどうかを、もう一度よく調べていただきます。恐らく答弁が違ってくると思いますが、調べてこれも答弁してもらいます。後で、委員会を待たないで答弁をしてもらいます。  そこで、いまの二つ目の質問をした、いわゆる占領下の命令というものは憲法の規定にかかわりなく現在も有効である、こう言わざるを得ないと思うがと私が言ったのは、たとえば昭和二十八年七月二十二日、最高裁の判決で、占領法令は日本国憲法にかかわりなく、憲法外において法的効力を有するという判決が出ているのです。それに基づいてすべてをいま解釈されているのですが、この点も調べた上でひとつお答えをいただきたい。大事なことですから、後のためにお答えをいただきたい。  この問題について、本件土地を山梨県に払い下げている大蔵当局に、ちょっと関連してお尋ねしておきたいのです。この答弁が終わったらお帰りいただいて結構です。  これまで私は当時の状況を振り返りつつあえて長々と本件土地の未墾地買収時からの経緯を申し述べ、きわめて問題のある処理がなされていたことを指摘してまいりました。つまり、当然旧土地所有者に返戻さるべきであったにもかかわらず、そうするとつまり、本件土地が旧土地所有者のものになると基地行政が思うように進まない、そういったことで、あえて売り渡して買い戻しをする、またその方が入植者の方も離農資金が捻出してもらえるということで、八方丸くおさまるということで、違法、無効な処理がなされてまいりました。ただ知らぬは強制買収された土地所有者だけであります。というのであるが、大蔵当局はかかる事実を承知した上で払い下げを行ったのかどうか、二百十四ヘクタールですが。それとも、まさかこのようなことがなくきちんと適正な手続で国が所有権を取得していたのであると確信して払い下げを行ったのか。そのいずれかをひとつここでお答えをいただきたい。
  109. 迫田泰章

    ○迫田政府委員 ただいま農林省の方といろいろ議論がございました。問題は、自創法に基づいて買収した土地を開拓農民に払い下げた、それがいいか悪いかという話でございますが、私、大蔵省といたしましては、それは適正な払い下げがなされた、こういうふうに考えておるわけでございます。したがいまして、今回普通財産を山梨県に払い下げましたけれども、それは特別調達庁が自創法の規定ではなくて、通常の売買で開拓農民から買収をした土地を払い下げたわけでございますので、その段階では、現在の農地法の八十条の買い戻しの規定は働かない、こういうふうに考えて、昨年売買契約を締結をしておるわけでございます。  繰り返しますが、当時の農林省が自創法に基づいて売り払ったということは、適法になされているものだ、こういうふうに考えております。
  110. 原茂

    ○原(茂)委員 迫田さんはいきなりだからそういう答弁をなさったんだと思うのです。農林省は古いことだから研究をしなければいけない部分もあるような答弁をしているのですが、あなたははっきりと、自創法四十一条あるいは自創法そのものがとにかくいままで私が言ったような状況あるいはいきさつにあっても有効だというふうに言い切ったのですが、ずいぶん乱暴な強い答弁をされた。そのことをいま論じているわけです。そうかといって、理財局の立場で考えてみると、どうもわからない、ちょっとおかしいと言ったのではえらいことになると思ってそうじゃないように答弁をしようというのも立場上無理もない、わかるのだけれども、かといって余りずばりと、自創法のいわゆる処置というのはすべて適法だ、占領下にあって、占領軍の命令なり下令がどんなものがあろうとも、とにかく国内法が生きるのだ、優先するのだと言わんばかりの答弁というのは、これは少し行き過ぎではないかというふうに思う。  したがって、これをいま論じてもしようがないと思うので、これも理財局がもう一度速記録を見た上で、私のいま言ったことも勘案しながら、ひとつその見解というのをまとまり次第に私のところに出していただく。そして両方合わせてみて私が全部総合して再度改めてこの問題に取り組んでいきます。絶対にいまのような答弁は通らない。承服しかねるということだけ申し上げておきます。それをひとつもう一度調査の上、速記録を見た上、いままでの論議、私たちの展開した意見というものを総合した上で、自創法、国内法それから半主権国家であったあの占領下における米軍のいわゆる命令というものとのかみ合わせで、一体どっちなんだろうということをきちっと整理をした上で、もう一度御答弁を、これは委員会を待たないでちょうだいをしたい。いかがですか。
  111. 迫田泰章

    ○迫田政府委員 先ほど申し上げましたのは、昨年売買契約を締結する際、戦後すぐ自創法に基づいて農林省の方で開拓農民に売り払ったということがどうかなという疑問は一切持っていなかった、こういうことを申し上げたわけでございます。いろいろ御議論ございまして、その点については勉強させていただきます。
  112. 原茂

    ○原(茂)委員 そう思っていなかったのなら結構です。この問題は実は非常に重大な問題なので、いまの再度の御答弁で一応先に進みます。  私はいままでにちょうど九点について農林当局から意見を聞いてまいりました。そのいずれも基本的には私の考えるところと実は余り違っていないのであります。そこで、私はこれから私の本件問題に関する見解を申し述べまして、農林当局の速やかな是正措置が行われるように要求をしておきたいと思うのです。  この問題は、昭和二十一年十月二十一日、連合国総司令部、当時言うGHQでありますが、その強い要請に従って、二十一年六月、GHQの政府に対する農地改革の徹底に関する勧告と、それに応じた同年七月二十五日の閣議決定、いわゆる農地制度改革の徹底に関する措置要綱などをごらんいただくとよくわかると思うのですが、政府が自創法を制定、公布したところから実は始まったことは、いままでしつこく言ってまいりました。言うまでもなく、この自創法というのは、従来から開拓事業にとっては最大の課題であった開拓用地の確立、確保を国が直接強制的に行うことを可能ならしめたものであり、所有者の意思いかんにかかわらず開拓用地などを買収できるとしたのが自創法であります。     〔委員長退席、國場委員長代理着席〕  昭和二十二年十月二日、政府は自創法に基づきまして山梨県南都留郡山中湖村大字山中字梨ケ原、以下本件土地といいますが、ここを同法第三十条の規定により未墾地として買収しています。したがって、政府は、本件土地を自創法第三十条の立法趣旨に従いまして、戦後食糧難に対する食糧増産事業と終戦による海外からの引き揚げ者に対する授産事業としての性格をあわせ持った自創法創設という行政目的のために用いなければならないことは当然であり、このことは、仮に売り払ってしまった後でも、入植者などが自作農創設の目的に反するような土地の売買等を行う場合は、政府はこれらの者に対しいわゆる先買い権を有し、この先買い権により再び「農地を取得したときは、」「遅滞なく自作農として農業に精進する見込のある者に当該農地を売り渡さなければならない。」とし、繰り返し自作農創設を試みるとして、同法第二十八条はその性格を端的に表明しているものであります。  なるほど政府も、買収直後は本件土地をこの自創法の目的たる開拓の用に供すべく、満州からの引き揚げ者あるいは地元増反者等を漸次入植させ開拓事業に従事させたことは事実であります。しかるに、連合国の一つの米国の「降伏後における米国の初期の対日方針」昭和二十年の九月六日、米大統領の連合国最高司令官マッカーサーに対する指令、同年九月二十二日公表に基づく一連の基本的命令の一つであった「農地改革に関する覚書」、昭和二十年十二月九日、これを起点とした農地改革は、前述のごとき強制的土地収用をも可能とした自創法を制定したものでありましたが、昭和二十三年ごろより、より明らかとなっていった冷たい戦争を背景にいたしまして占領政策そのものが転換をしまして、ついには米占領軍の日本の軍事基地化政策の強力な推進となり、これに反する一切の政策はいわゆる軍事基地政策に最優先的に道を譲ることを余儀なくされたのであります。  まさしく本件土地も、さきの開拓用地から北富士演習場用地へと強制的に変更させられていったのであります。すなわち、本件土地は、初期の対日方針に従った民主化の一環としての農地改革政策に沿った未墾地買収の対象地として昭和二十二年十月二日、強制買収をされ、暫時開拓作業のための入植者が入り開拓の用に供されたものでありますが、すでに二十三年九月には耕作禁止命令が出され、次いで二十四年七月、米占領軍の軍事基地拡張政策のために接収予定地に指定をされ、土十五年一月二十七日の調達命令によって、同年二月一日をもって完全に演習の用に供さるべき土地となってしまったものであります。しかるに政府は、本件土地に関する事情が未墾地買収時とは全く変化し、もはや本件土地は開拓の用に供することが完全に不可能あるいは少なくとも相当とすべきではなくなった場合であるにもかかわらず、あえてこれを開拓の用に供し得る、あるいは少なくとも供し得る土地として昭和二十五年二月一日、売り渡しの決定とその認可を行い、同年三月二日付をもって売り渡し期日とする売り渡し通知書を作成、各入植者に交付しているのであります。  言うまでもなく、自創法は憲法、法律、命令といういわゆる憲法体系下に属する法規範の一つであり、その枠内においては完全にその効力を有するものであるといいましても、敗戦直後の日本にあっては、ポツダム宣言を具体化する連合国司令官等の命令等占領法体系にいわゆる劣位するものであったことは、敗戦、占領という歴史的事実のもとにこれを承認せざるを得なかったものであって、最高裁判決もまた、これら占領法令をもって、日本国憲法にかかわりなく憲法外において法的効力を有するものと論じているのであります。  したがって、土地に関して昭和二十三年九月軍政部覚書第百三号、もしくは昭和二十四年七月連合国司令官、具体的には山梨軍政部のステッソン中佐でありますが、その演習場予定地としての指定は、自創法に矛盾抵触するものといえども、同法にかかわりなく有効にして、かつその指定をもって自後もはや開拓の用に供し得ないことが客観的に明らかになったと言うべきものであり、またしからざるといえども、昭和二十五年一月二十七日の演習場用地としての接収命令は、もはや完全に開拓の用に供し得ないことが確定されたことを意味するものであると言わざるを得ないのであります。繰り返し指摘するまでもなく、当該占領接収命令などは自創法よりも優位する法的効力を有するものであるがゆえに、本件土地を演習場の用に供するという目的に矛盾抵触するがごとき以後の処分、すなわち開拓の用に供するための売り渡し処分は無効たらざるを得ないと言うべきだと思うのであります。  そもそも自創法第四十一条に「農業に精進する見込のある者」に売り渡すべく規定してありますのは、単に入植者の人的資格に限定して論ずべきいわれはなく、その売り渡すべき土地が農業用地として利用され、かつ営農の基礎たり得るものであるかどうかをも当然の前提として規定されているものと言うべきだと思います。  敷衍いたしますなら、自創法第四十一条は、未墾地の売り渡しについて行政機関の裁量にゆだねたと言うべきでありましても、その「農業に精進する見込のある者」に売り渡すとの規定は覊束裁量にして、かつ当該土地との関係において農業に精進する者いかんの認定をなすべきであるということを規定しているものであり、本件土地のごとくその売り渡すべき土地が客観的に農業の用に供し得ない事情が確定された場合にあっては、もはや同法第四十一条によっても売り渡し決定をすることができない場合であり、未墾地の売り渡しに関する該裁量権の行使はその範囲を逸脱し、しかもその瑕疵は重大かつ明白であると言わざるを得ず、違法、無効の処分であると私は確信をするのであります。  このことは、演習場の用地に編入されることが指定もしくは決定されることによって、もはや本件土地については自作農の創設等の目的に供しないことを相当とする事実が発生したものと言うべきであって、たとえば自創法第三条による買収農地が買収後土地区画整理事業地区内に編入され、先ほど言ったようにいわゆる仮換地指定がなされ、早晩宅地化されるというがごとき事情の変更が存する場合に、なおそれを自作農の用に供するためとして売り払うは無効であるとする判決、これは四十六年七月一日の浦和地裁でありますが、これに照らしても首肯せざるを得ない結論であると考えます。この点についてのさきの答弁もまた、やはり再検討をしていただかなければいけないというふうに思うのであります。  以上、本件土地の売り渡し処分は、第一に、占領法令に反する一切の国内法令に基づく処分は、その矛盾抵触する限度で無効たらざるを得ないという理由をもってその効力を有せず、第二に、自創法第四十一条規定の売り渡し法規裁量の範囲を超え、かつその瑕疵が重大にして明白であるという理由をもって、いずれの理由をもってするも違法、無効だ、かように確信をするわけであります。  このように、私は私のつたない調査をもってしても確信することができているのですが、私は違法な処理によって国民の権利が侵害されているとすれば、これは速やかに回復されなければならないと考えている者の一人であります。農林水産当局にあっては、私の指摘した事実を速やかに再度調査の上、適法、適正にこの問題が解決されるように強く要求していきたいと思います。まずは調査、検討の決意を中川大臣からここでお伺いしたいと思います。  また、最後に大臣にお伺いしたいのですが、本件土地は御承知のように昨年九月、地元民生安定のためとして山梨県に払い下げられています。本日の冒頭、大臣は林業経営がもたらす経済効果、なかんずく雇用効果はきわめて厳しいというような意味の答弁をなされました。私も全く同感であります。  この点につきまして、私は、この払い下げ二百十四ヘクタールを中心に、林業経営が地元関係住民にもたらす経済効果を分析し、昭和五十二年五月二十日、北富士演習場返還国有地の山梨県への払い下げは同国有地の払い下げを決めた閣議了解に反するから、白紙還元し、閣議了解の目的とする地元民生安定を確実に実現する方向で再検討すべきであるとした意見書を出しておきましたが、さきの国有林野事業改善に関する計画内容と私の意見書とは、その認識を同じくするものであると考えます。  しかるに、あえて、この林業事業方式が地元民生安定になるのだとして、何らの変更を加えることなく払い下げが行われていますが、仮にこのことを不問に付すとしても、本件土地には三十六年にも及ぶ開墾永小作権を主張する農民たちが存在しております。現在、山梨県はこの畑になっている土地を林地にしようとしています。しかも、それは一方的に農民の権利を否定し、暴力的に行わんとするものでもあります。  大臣も御承知かと思いますが、かかる土地には農林水産大臣の農地転用許可が必要であります。さきに引用させていただいた随想にも、「弱い人、底辺にある人のために頑張りたい」と大臣は書かれていますが、全く同感であり、敬意を表しますが、大臣におかれても、この転用許可をどうか慎重に検討をされて、新屋永小作権者連盟の農民たちが大臣に提出している昭和五十二年十二月二十八日の山梨県北富士県有地内中ザス・土丸尾地区の農地について、農地転用許可を与えないことを求める陳情書の意を十分にくみ取られまして、弱者の保護を十全ならしめるように強く要求をいたしたいと思います。  この二点について、まず大臣から御答弁をちょうだいしたい。
  113. 中川一郎

    中川国務大臣 ただいまの御指摘につきましては、当時、農業に精進することができる状況にないにもかかわらず売り渡しを行ったことは間違いではないかという御指摘かと存じますが、確かに今日から見れば、占領下、演習地の中で農業をやれと言っても農業ができないではないかという推測ができることは当然かと存じますが、当時は何分にもああいった異常事態で、私ども北海道の中でもこれで農業ができるのだろうかというところを払い下げた例もずいぶんございます。したがって、やり方としては後で妥当を欠いていたのかなということではありますが、当時の情勢として、そこは農業ができないと知りつつ売り渡しを行ったものであるかどうか、その辺になりますと、そうではないのではないか。その当時としては、占領下ではあるけれども入植された方々はここで農業をやっていってもらうより方法がないという認定のもとに自創法の示すところによって売り渡しをしたものとは思いますけれども、せっかくの御指摘でもございますから、その当時の事情はいかがであったか等について振り返ってみるということはやぶさかではございません。  それから、二番目の問題については、若干聞き取れないところもありましたし、また物の性質を十分判断しないまま回答することはいかがかと思いますので、局長より答弁させます。
  114. 大場敏彦

    ○大場政府委員 土丸尾の問題だろうと思うのですが、永小作権があるかどうか、この辺については、率直に申し上げますれば、実はわれわれは違った見解を持っているわけであります。確かに耕作していることは事実でありますし、現況が農地であることも間違いないわけですが、われわれの見解としては、永小作権という形ではなくて、権原がない形での耕作だというふうに理解しております。これは認識の、あるいは意見の、地元の方々との違いがあります。もう少しそこは私どももいろいろ研究はしてみたいとは思っております。  しかし、国全体の方針としては、あそこの土地を恩賜林組合等と分収林契約を結びまして、林業的利用に供するということは方針として決まっておりますので——ただ、これにつきましては、地元においては賛否両論いろいろあるわけでありますから、できるだけ地元の御了解を得ながら、理解を得ながらやっていくということはもちろん望ましいわけでありますから、これは山梨県にも連絡してそういうような努力はしていきたいと思っております。  いずれにいたしましても、よく話し合いはしていく必要があるだろうというふうに思っております。
  115. 原茂

    ○原(茂)委員 基本的には局長のその考え方にも賛成ですが、私の大臣にお願いあるいは要求をしたのは、中ザス・土丸尾のあの三十六年にわたる耕作地がようやく畑になった、そこがいま林業の用に供するように農地の転用が必要になって、その許可願いが山梨県から農林大臣に出されたか、出ているはずなんであります。それに対して、どうかひとつ、むやみに転用の許可をしないようにしていただきたい。きょう私がいままでいろいろ論じたこともあわせて、基本的に問題の整理がつかない限り、にわかに一部またやるまたやるということは、それが過ちの繰り返しになるおそれもあるということも含めて、この永小作権者連盟の諸君が大臣に陳情をしているいわゆる農地転用の許可をしないでほしいといったことに対しては十分に調査、検討をしていただくように、これはぜひ強く私から要望をしておきたい、こういう意味のことを言ったわけですから、それに対して大臣からは、さきの問題でやはり問題が問題だから調査、検討もするとおっしゃるのですが、この農地転用の許可に関しても、これらの問題の解決のないままに、私が基本的にいま論じているような、いわゆる開拓の困難なところに開拓を行い、畑にした、あのときにせっかくその目的で払い下げが行われたわけですから、それを林地に転用するための転用願いが出てもにわかにその許可を出さないでほしいという彼らの要望に対しては、私は実は満腔の賛意を表しているわけですから、これに対して大臣からやはり明快な御答弁をちょうだいしたい、こういう意味です。
  116. 中川一郎

    中川国務大臣 当該土地内における農地に対して林地への転用願いが山梨県から出た場合——実はまだ出ておらないそうです。慎重にやるようにという御指摘でございまするが、こういった問題もありますし、出たからといって早急に認めるというようなことではなく、十分慎重に対処してみたいと存じます。
  117. 原茂

    ○原(茂)委員 前から実は陳情を受けていたのですが、きょう新聞に出ておりますように、山梨県の忍野村忍草の農業長田三男さん、この方から、県に払い下げられた旧国有地内に、昭和二十二年の農地解放の際、未墾地として買収された長田さんの旧所有地が三筆一・五ヘクタール含まれている。長田さんは北富士演習場内に入会権を主張して基地反対闘争を今日まで続けている忍草入会組合の一員なのです。その長田さんが国は売り戻す義務があるとする根拠は、農地解放後の売り戻しをめぐって起きた農地売り戻し訴訟の最高裁判決。愛知県稲沢市小池正明寺町、林源一さんが国を相手どって、農地としては使われていない買収地は旧地主に旧価格で売り戻すべきと訴えたのに対し、最高裁は四十六年一月に、自作農創設などの目的に沿わなくなった買収保有地はすべて旧地主に売り戻すべきだとし、さらにことし七月にも同じ林さんの別の訴訟に対し、売り戻し価格は時価の七割とした国有農地等の売払いに関する特別措措置法は適法との判決が、二つとも示されました。  長田さんは、国から払い下げられた二百十四ヘクタールは、県が造林地として使う計画ですでに植林などが始められており、将来とも農地として利用されないのははっきりしていると、最高裁判例どおり時価の七割で四年半の年賦で売り戻してほしいと申し入れました。  この土地は、昭和二十二年、農地改革の際、地主五百十四人から三・三平方メートル当たり十一銭五厘で国に買収された。その後旧満州からの引き揚げ者に払い下げられ、さらに米軍演習場として接収された。その後米軍から返還され、自衛隊演習場になっていたが、五年ごとの使用協定更改を前に昨年秋県に国から払い下げられ、県は地元の恩賜林組合と利益を分け合う分収造林事業を起こしている。  それでどうしてもこれは納得できないからというので、いわゆる農地法八十条に照らしまして、もとの地主に売り戻すべきだとして、十二日に国有財産買い受け申し入れ書を中川農林水産大臣に送りつけたとあります。前から話は聞いておりましたが、送ったかどうか知りませんが、これを十二日に送りつけた。  これは四十六年一月と去る七月に相次いで出された最高裁大法廷の、自作農創設の目的に合わなくなった買収農地は旧地主に売り戻すべきだとの判断に基づいているんだそうですが、どうでしょうか、この十二日に郵送か届けたのか知りませんが、大臣、これ御存じでしょうか。
  118. 中川一郎

    中川国務大臣 まだ受け取っておりませんし、局長も受け取ってないというのですから、まだ着いていないと存じます。
  119. 原茂

    ○原(茂)委員 これはやがて大臣の手元に届くと思いますが、実はこの長田さんの言っていることと私がきょう長々と皆さんにお聞きをいただきました趣旨とはぴったり合った問題でございますので、どうかこの速記録をごらんをいただくと同時に、この問題に対する処置もお考えをいただくように。同時にこの問題に関してはどうか速記録を十分検討した上で、先ほどから十分な調査、検討をした上でという回答のあるいろんな問題と絡めてこれにどう対処するのかもあわせて私までお聞かせいただけたら非常にありがたいと思いますが、いかがですか。
  120. 大場敏彦

    ○大場政府委員 長田さんですか、その書類まだ受け取っておりませんので、いただきましたらしさいによく検討してみたいと思います。  しかし、いま御紹介になりました限りでは、きょう先生がいろいろ御指摘になり、それから私どもお答えした、過去の買収した農地を売ったこと、それから後になって国が買ったこと、そういったことの有効か無効か、こういった法律論に絡む問題でございますので、私どもは、お伺いした限りでは直ちにその御議論に同意するわけにはいかないと思いますが、さらに検討はしてみて、いろいろ今後対処はしたいと思います。
  121. 原茂

    ○原(茂)委員 これで終わりますが、大臣に最後に申し上げておきたいんだけれども、私はいまの福田内閣の閣僚中、中川一郎なるものが農林大臣になったときに、これは一点花が咲いたと思ったし口に出してきたんです。いまの国有林の問題もそうなんですが、この問題に関しても実はずいぶん長い歴史があるんです。恐らく片々としてはお聞きになっていると思うのですが、だれかやはりこの政治に対するあるいは政府に対する信頼というものを常に求めさせるような中心的な役割りを果たす人が閣僚にいませんと、もう何か、まあまあ保守政府だからというので、いろんな偏った考え方で物の解決をしかもどんどん強行していくような、私に言わせるとこの北富士演習場二百十四ヘクタールの払い下げなんというものはまことに法があって法はなきに等しい。実に何か切歯扼腕という感じで、ついこの間も冗談に言ったんですが、やはり国家権力を握らなければだめだ、二十六年も万年野党でいてくたびれたよ、こう実は言ったことがあるんです。事実権力を握っているというその権力こそ、最も至誠、至高、公平にいろいろの物を裁いていきませんと政治も偏っていきますし、また国民自体が政治に対する信を失っていくわけでございますから、この点ではやはり一番若いし、ある意味ではいい意味の蛮勇をも持ち合わせている中川大臣なんかが、余り既往にこだわらないで、大変でしょうが、御自分でやはりある程度勉強もされてみて、一つぐらいは何かこれが正しいんだということに猪突邁進をしていくというくらいのことが、まあまあだれにできるかというなら中川大臣以外には余り期待ができないんだろう、こう私は思っているんです。どうかひとつ、農林水産大臣として大変なアメリカとの折衝を行い、あるいはまた水資源の問題など、大変だろうとは思いますけれども、いずれの政治の場に直面をしましても、本当に野党である私たちですら、とにかく福田内閣の中でやればあの人はとにかく何かやるだろう、こう期待していることは事実なんですから、その期待にこたえるように、正しいことは正しい、曲がったことは曲がったこと、一つぐらいすぽんと大臣在任中に実績を残していただいて、次に中川総理大臣の足場をつくっていただくようにぜひひとつお願いをしたいと思う。最後にその決意をひとつ述べてもらって、終わります。     〔國場委員長代理退席、委員長着席〕
  122. 中川一郎

    中川国務大臣 先ほども御指摘がありましたように、私は大学を出るとすぐ開拓の仕事一筋で生きてきたわけでございます。昭和三十四年役人をやめるまで大体開拓のことをやっておりましたので、先ほど来御指摘のありましたいきさつや当該問題についても理解できないところはございません。しかし、私も行政の長でございますし、やはり行政を預かる者としては法律が優先でありませんと、ただ感情やあるいは単なる政治感覚で物を処するわけにはいかない面もございます。この件だけで終わる問題ならばあるいはということもありましても、やはりそのことが他の事案に大きく影響していく場合がありまして、単に感情的に処置するわけにはいかない立場にはありますが、十分勉強いたしまして、いかようにすべきか判断してみたいと存じます。
  123. 原茂

    ○原(茂)委員 じゃこれで終わります。
  124. 楯兼次郎

    楯委員長 次は、春田重昭君。
  125. 春田重昭

    春田委員 最初に、日米農産物交渉につきましてお尋ねしてまいりたいと思います。  さきのワシントン会談ではお互いの主張は相入れないままに物別れになっているわけでございますが、農畜産家にとりましては、これにより、ますます不安が増大しているわけでございます。今後の見通しというものをまず大臣にお聞かせいただきたいと思います。
  126. 中川一郎

    中川国務大臣 農産物の輸入問題に対処する基本的な方針としては、わが国総合食糧需給体制を確立する、第二番目には農家経済を守る、この二つの柱を損なわない範囲内で対処したい。ことし一月、ストラウスさんとの間でとりあえずアメリカとの農産物調整をいたしましたのも、その基本線に従ったものであります。したがいまして、現在アメリカとの関係あるいはオーストラリア、ECとの関係いろいろございますが、その基本線だけは守っていきたいというふうに考えております。  そこで、御指摘のアメリカとの関係におきまして、これはMTN、東京ラウンド、長期的な自由貿易体制というものを守っていくための、短期的なものではない一九八七年に向かっての長期的な取り決めの作業でございまして、先般アメリカで交渉いたしましたが、残念ながらアメリカ側の言い分は先ほど申し上げた線を損なうものであるというところから、妥結に至らず物別れに終わっております。そして、当座はストラウスさんの代表と私の代表とがジュネーブにおいて話し合うことに合意ができ、十六日から話し合われるわけでございます。この場合におきましても、私としては粘り強く説得をして、先ほど申し上げましたわが国の総合食糧政策というものを、そして農家経済に影響を与えない、こういうことで交渉し、妥結に持っていきたいと思っておるわけであります。
  127. 春田重昭

    春田委員 いま農畜産家にとりましては、いま大臣がおっしゃったように十六日の予備交渉というのは非常に注目しておるわけでございますが、あのワシントン会談におけるストラウスさんの強い姿勢からして、今後の交渉というものは、やはり自由化をたな上げにして交渉することは非常にナンセンスではないかという声もあるわけでございますが、大臣がワシントン会談を行いましたその感触として、この自由化という問題、どのようにお考えになっていますか。
  128. 中川一郎

    中川国務大臣 私も交渉いたしておりますが、ストラウスさんも決して日本の農業がどうなっても構わないのだという認識ではないのであって、われわれの説明あるいは国会からもいろいろな先生方も行っていただいておりますし、あるいは農業団体等もこの間の事情をよく説明しておりまして、伝えられるような残酷な、何でも自由化して日本の農民はどうなっても構わない、こういう姿勢とは私は受けとめておりません。事情はわかる、わかるが、この程度ならできるはずではないかということで、私の基本的な考え方とそう変わってはいない。ただし、向こう側の言い分が向こうの言うとおり農家経済に影響を与えない言い方かどうかということになると、私としては責任がとれないということでありまして、まだ幅はありますけれども、向こうも何でもかんでも自由化に、牛肉もオレンジも皆農産物は自由化してというような立場にはないということは、私はそういう受けとめ方をいたしております。
  129. 春田重昭

    春田委員 大臣のいまの答弁からしてある程度の幅があるということでございますが、そのような趣旨のことを大臣は帰国後、十日ですか、おっしゃっております。この新聞によりますと、両国の考え方に基本的な違いがあり、円満解決までには一層の努力が必要だとしながらも、私としては詰めのポイントはこの辺かなという感じはつかめたということでおっしゃっておりますけれども、いわゆる微妙な言い回しになっておりますが、この詰めというのは、即時自由化は別として、いわゆる量を拡大すれば、増大すれば、ある程度の解決がいくんではなかろうか、このように大臣は思っておられるのですか、どうでしょうか。
  130. 中川一郎

    中川国務大臣 交渉事でございますから内容は申し上げかねるわけで申しわけないと思いますが、当座は枠の拡大ということで対処し得る、自由化については、これは私の方としてはでき得ないという立場を貫きたいと、こう思っておるわけでございまして、何かつかんだという中に自由化は入っておるかと、こう言われますと、入っておりますというような段階ではなくて、自由化だけは避けて通る、こういう解決をいたしたいなと思っておるわけでございます。
  131. 春田重昭

    春田委員 それから、自由化とともに関税の引き下げの問題が出ておりますね。豚肉とか鶏肉、それからタラなどの三十七品目ですか、これは一律六〇%引き下げの問題も出ておりますけれども、この辺の感触はどうでしょうか。
  132. 今村宣夫

    ○今村政府委員 アメリカからの関税の引き下げにつきましては、ただいま先生がお話しになりましたような品目を含めましで、プライオリティーリストということで特に重点を置いた品目というのが三十七品目ほどございます。しかしこれは、農産物の関税は工業製品のように一律にフォーミュラでカットいたすわけではございませんで、相手がリクエストし、こちらがオファーをしていくという、そういう形で交渉が進められるわけでございますし、それぞれの農産物につきましてそれぞれの特性があるわけでございますから、その辺のことを十分考えまして、引き下げ得るものは、これはMTNの一環の交渉でございますから引き下げてまいらなければなりませんが、あるいはまた物によっては若干の引き下げが可能なものもございまするし、また物によっては引き下げるということが困難な状況にあるものもございますから、その辺のことは十分相互に話し合って対処してまいる所存でございます。
  133. 春田重昭

    春田委員 さきのボンの首脳会議では、この問題につきましてはいわゆる東京ラウンド、十二月十五日ぐらいまでに解決していきたい、こういう話し合いが行われたそうでございますけれども、十六日から事務レベルの予備交渉があるとしても、成り行きによると思いますけれども、どうですか大臣、十二月十五日という土俵が一応決まっておるわけでございますが、この辺までで解決すると見ておられますか。
  134. 中川一郎

    中川国務大臣 交渉事でございますから相手の対応によってどうなるか見通しが立ちませんが、私どもとしてはできるだけの歩みをしたい。これはMTNが避けて通れる問題ではありません。避けて通れるものなら避けて通りたい気持ちでいっぱいでございますが、何とかぎりぎりの解決をしたい。しかし、交渉事ですから、今回でうまくいくはずであるというところまでいけるかどうかというと、いきたいなという希望だけであって、どうなるか、まあ五分五分ではないか、こう思う次第でございます。
  135. 春田重昭

    春田委員 最後にお尋ねしますけれども、先日来日しましたフランク商務省海洋大気局長が、農産物の交渉がうまくいかなかったならば、いわゆるこれから行われるアメリカとの二百海里の漁業交渉、これは相当規制するぞ、割り当て量を減らすぞ、こういうおどしもやっているみたいでございますけれども、大臣としては、漁業、農業両方抱える大臣として非常にむずかしい問題だと思うのですよ。相当の決断が必要じゃないかと思いますけれども、この辺の絡みをどのように御判断なさいますか。
  136. 中川一郎

    中川国務大臣 最近、二百海里問題はわが国にとっては非常に厳しい、まあ攻められる立場というのですか、守る立場にあるものですから、ニュージーランドにおいてもそういうことがありましたし、アメリカでもはっきりと言っておるかどうか、そういうにおいもないわけではありません。やはり漁業も守らなければならぬ、農業も守らなければいかぬ、そしてまとめていかなければいかぬということで厳しく受けとめて、そのためにはやはりこちらの事情をあらゆる機会を通じて理解をしてもらう、これ以外にないと思いまして、先般もアメリカに渡りまして四日間、十時間以上ストラウスさんと話し合いができたということで、話し合いは十分できておりますから、必ずや漁業も農業も、さらには今度のむずかしい交渉もすべてが解決できるようにと最善の努力を尽くしたいということでございます。
  137. 春田重昭

    春田委員 大臣としてはそのような答弁しかできないと思います。いずれにいたしましても、伝統ある農業を守るためにもひとつ粘り強い交渉をしていただきたいことを要望しておきます。  きょうは質問が六本立てでございますので総花的になりますけれども、ちょっと急いでやりますので、この質問はこれで終わりたいと思います。  続きまして、宅地並みの課税の問題でございます。この問題につきましては先ほど質問が出ましたので、重複を避けるために簡単に私なりに一、二点御質問をさしていただきたいと思います。  六日に朝日新聞に公表になりました税制改正の問題でございますが、骨子という形になっておりますけれども、最終の詰めは時期的に見ていつごろになるのか、これは自治省の方に聞いたらいいと思いますが、自治省の方お見えになっておりますか。大体いつごろまとまるのか。
  138. 渡辺功

    渡辺(功)説明員 先般新聞に骨子という形で出たので、そういった内容はどういうふうな詰まり方になるだろうかというお尋ねでございますが、あそこに出ました内容自体も、何か固まったことのようには出ておりますけれども、私どもとしましてはそれがまとまったものとしては聞いてございません。現在、来年度の税制改正についてはいろいろな要望といいますか考え方を、順次各省からそれぞれの所管に応じまして自治省においても内容を聞かせていただいておりますが、土地税制関係についてはまだその中に入ってございません。したがいまして、例年どおりそれぞれ関係省におきまして内容が固まった段階で私どもの方にお話があるものというふうに考えております。したがって、それがいつごろになるか私どもの方でちょっとつまびらかにしておりませんけれども、恐らくは例年と同じようなベース、つまり普通の予算編成の進度であれば、税制改正につきましても、ややそれと並行しあるいは少しそれより早い時期に詰めてまいりますので、そういった時期に同じようにこの問題につきましても案が出されまして、それに応じて検討が行われていく、こういうことになるだろう、こんなふうに考えているところでございます。
  139. 春田重昭

    春田委員 趣旨の問題につきましては先ほども大臣から話がございましたけれども、一つには周辺の宅地とのバランスの問題ですね。二番目は宅地化の促進というものが大きな柱になっているのじゃなかろうかと思います。  この二番目の宅地化の促進、三大都市圏には非常に住宅は足らないわけでありまして、これは重要でございますけれども、宅地並みの課税という制度をしいたことによって二番目の宅地化の促進につながったかどうか、この辺が問題ではなかろうかと思いますけれども、これはどうなんですか、趣旨どおりいっているかどうか、お答えいただきたいと思います。
  140. 大場敏彦

    ○大場政府委員 市街化区域内の農地に編入されている農地の全面積はかつて三十一万ヘクタールあったわけであります。それが宅地化されたのは、ラウンドナンバーで申し上げますと八万ヘクタール、まだ二十三万ヘクタール農地が残っている、こういったことであります。ですから、かなりの農地が宅地化されているということは言えると思いますが、いま御議論になっていらっしゃる宅地化促進ということとの関係で税制を申し上げれば、基本的には宅地化の促進というのは、いろいろ都市政策、都市環境だとか都市施設、そういったものの整備というものが根本であって、税制というものももちろん無関係ではない、その一翼は担うという機能は確かに持っておりますけれども、税制ということが宅地化促進の主な手段であるというふうには必ずしも認識してない。税制としてはやはりそれはそれなりのバランスというもので担い方はする必要があると思いますけれども、それが真っ先に立って宅地化を促進するために引っ張っていくんだ、そういう事柄であるとは認識しておりません。根本的にはやはり都市施設等の整備を中心とする都市政策の充実強化ということが基本であろうと認識しております。
  141. 春田重昭

    春田委員 確かに局長おっしゃるとおりですよ。しかし、自治省から出ている概要からすれば、その趣旨というのは宅地化の促進というのは大きな目玉になっているし、柱になっているわけですよ。これは自治省のいわゆる案ですけれども、それは局長がおっしゃるのはわかりますが、宅地化の促進が大きな柱ではなかろうかと私は思います。  そこで、順序がまた自治省の方になりますけれども、この制度は昭和四十八年から実施されているわけですね。ところが、実効面からいったら必ずしもその趣旨どおりにいっていない面があるわけでございます。先ほども質問がありましたように減免とか減額制度がございますし、地方自治体においてはいろいろな条例等をつくりましていわゆる減免とか還元措置を盛っておりますので、なかなかその趣旨どおりはいっていないということで私たちは理解しているわけでございます。こうして五十三年度まではそういう形で進んでおりますけれども、いよいよこれから見直しというものがされるわけですね。いま各地においてはこの見直しが強化されようという形で、非常に農業に従事する方たちの反対運動が高まっているわけでございます。この辺の空気は自治省としては十分察しられていると思いますけれども、検討中でございますが、この辺のいわゆる見直しの時点で、例年どおりの措置をやっていくのかどうか、いまの時点で何らかの見解、何らかの腹をお持ちだと思いますけれども、御説明できますか。
  142. 渡辺功

    渡辺(功)説明員 まず第一に御指摘のありました事柄は、現行制度の中に相当大きな減額措置が行われていて、それによって本来の趣旨にそぐわない形になっているのではないかというような御指摘がございました。この面についての私どもの考え方は、現在、減額制度そのものの法律に書かれている制度でございまして、全体としての市街化区域の広いとかどうとかいう線引きの問題は別といたしまして、いろいろな事情があると思いますけれども、現実にはやはり市街化区域の中に相当農業を継続していくという姿のものがあることば事実でございます。そこで、そういった問題はあるいは線引きのあり方によっては生じなかったのかもしれませんけれども、また、市街化のスピードがもっと速ければ生じなかったのかもしれませんけれども、現実にそういうことが生じている以上、税務の立場で、税制の中でその問題点を調整するといいますか、そういう制度としてありますものですから、これが制度の本来の趣旨にそぐわない形の減額とは考えておりませんで、むしろ本来この制度の中に当然その調整として必要な制度だというふうに現行制度を理解しております。これが五十三年で切れるわけでございますので、これが切れますと減額制度がなくなって税負担が急に相当ふえるという問題になるわけでございます。  今後の問題でございますが、今後の問題につきましては先ほども農林水産省当局の方からもお話がございました。私ども全く同感でありまして、土地政策は単に税制だけじゃありません、金融であるとか補助金であるとか、いろいろなその他の政策の一環として税制もあると思います。また、税制自体の中にも、単に宅地並み課税だけではありませんで、譲渡所得の問題もありましょうし、その他の税制問題全体の中で宅地並み課税の問題も考えていかなければならぬ、こういうことに位置づけられると思います。  そこで、現在の状態を考えますと、やはりこの制度をつくりました基本の考え方というものはこれを堅持するといいますか、変える理由がないというふうに考えております。したがって、また同時に減額制度あるいはそれと見合うといいますか、それにかわるようなもっといい制度があるかどうかというような問題はこれからの問題でありますので、関係各省の御意見も十分承りながら十分検討してまいりたい、こんなふうに考えている、これが現状でございます。
  143. 春田重昭

    春田委員 最後に、私は宅地並み課税は反対という立場で大臣にお尋ねしたいわけでございますが、都市農業の重要性ということは大臣も御存じのとおりでございます。近郊の都市へ生鮮食品を安定的に送るという役割り、また、災害等が起こった場合のそういう緑地保全という面でも非常に重要な位置づけがあるわけですね。こういう点からしていま非常に農業に従事する方たちの反対運動が各地で行われておりますけれども、特に私大阪でございますから、あちらこちらずいぶん呼ばれていくわけでございますが、会場に入れば非常に異常な雰囲気の中で行われている。現行制度そのものがいろんな形、必ずしも趣旨どおりいっていないという面からして、この制度は相当慎重に考えていかなければいけないと私は思うわけでございますし、大臣もそういう農業者を守る立場の大臣でございますから、この辺のところは各省が協議しているわけでございますけれども、そういう立場で発言をしていただきたいし、進言していただきたいと思うわけでございますが、これに対する大臣の御見解を最後にお聞かせいただきたいと思います。
  144. 中川一郎

    中川国務大臣 この制度は、昭和四十七年に住宅が欲しいという一般大衆の声が非常に強かった。住宅を建てたくても、日本では住宅問題は土地問題だ。土地問題は農地問題になっていくというところから、都市化あるいは十年以内に都市化するところはとりあえずの食糧供給はするけれども、宅地化していくというところはどこだろうかという線引きまでしてああいう仕組みができたわけでございます。しかし、農家の方のことも考え、いろんな減額措置を講じて今日に至っております。  そこで、今後どうするかということですが、農業を本当にやっていきたい、しかも宅地化が進んでおらないというところは守っていってあげなければならないのではないか。これは耳を十分かす必要がある。しかし一方、宅地化をしたいんだけれども、農地の美名に隠れて、そして課税制度にも協力しない、こういう人はやはりこの際御協力いただくということで、農業を守りつつまた宅地化にも協力する、こういう日照権と建物の関係みたいなもので、両方とも理屈はあるが、両方とも歩み寄って協力していく、こういう姿勢で今後取り組んでいきたい。農林省は農家を守る立場ですから、善良な農業をやっていきたいという人には十分対応できるようにしていきたい、こう思うわけでございます。
  145. 春田重昭

    春田委員 私は農業を守る人には善良も悪玉もいないと思います。すべて善良な人ばかりであると理解しております。そういう立場になって進めていただきたいと思います。  自治省の方、結構でございます。  続きまして、特殊法人の問題について若干お尋ねしたいと思いますが、農林省所管の特殊法人は現在幾つあるのか、まずお答えいただきたいと思います。
  146. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 農林省所管の特殊法人といたしましては、ただいま十八ございます。
  147. 春田重昭

    春田委員 その中で整理合理化対象となったいわゆる法人名は、どういう団体法人なのか、御説明いただきたいと思います。
  148. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 整理廃止の対象になっておりました政府機関については、八郎潟の事業団と魚価安定基金の二つは、すでに廃止をいたしております。
  149. 春田重昭

    春田委員 「行政改革の推進について」、五十二年の十二月二十三日閣議決定されています。この中に糖価安定事業団というのがございますが、この糖価安定事業団は「引き続き検討を行う」という形になっておりますが、この糖価安定事業団は昭和四十五年ぐらいの行政監理委員会からも何回も意見が出されておりますけれども、この昭和四十五年ぐらいは廃止に持っていきなさいということになっていましたが、今日におきましては「引き続き検討」という形になっております。整理合理化対象はいま農林省所管では漁業共済基金だけなんですよ。これは「検討」ということになっておりますけれども、「検討」ということは、要するに整理合理化の中からはみ出ておりますので、これはもう全く考えていない。しかし、これは昭和四十五年当時は整理合理化ないし廃止、こういう声が相当強かったわけでございますが、今日にしてこういう形に変わってきた理由というものはどういうことか、御説明いただきたいと思います。
  150. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 糖価安定事業団について申し上げたいと存じます。  糖価安定事業団は御承知のとおり二つの目的を持っておりますが、その一つは輸入砂糖につきまして価格調整を行い、国内におきます砂糖の価格を安定させる。それからもう一つは、国内で生産されます砂糖につきまして価格支持を行うことによりまして、国内産糖企業の健全な発展ひいては甘味資源作物をつくる農家の経営安定を図るということでございます。  この二つの目的を持つ事業団でございますが、国際的な砂糖の価格が非常に変動をいたしておりまして、最近におきます国際糖価の動向を見ますと、昭和四十八年末から非常に暴騰をいたしました。四十九年の十一月に、これが現在の価格で国際糖価を比較いたしますと約五倍ぐらいの価格に高騰をしたわけでございます。その後価格は低落をいたしまして、国際糖価を見ます代表的な指標としてロンドンの砂糖取引所の価格がございますが、トン当たり百ポンドないし百十ポンドで現在は低迷した動きをいたしております。  糖価安定事業団が検討の対象になりました時点、この時点ではちょうどその国際糖価が高騰しておりました時期でございまして、輸入砂糖につきまして価格調整をする機能が十分果たせない状況でございました。糖価安定事業団は国際価格が安いときに、一定の水準以下で推移するときには糖価安定資金として資金を積み立てをいたしまして、価格が高騰いたしたときにこれを放出するという仕組みになっておるわけでございますが、その高騰時におきまして糖価安定資金が底をつくということで業務が一時停止をした。ちょうど検討の対象になった時期がその業務を停止しておりました時期にあったわけでございます。  しかしながら、その後先ほど申し上げましたように国際糖価が低下をし再び業務も開始をいたしておりまして、昭和五十一年の十月から輸入砂糖の売買業務を行ってきております。最近の年度で申しますと五十二砂糖年度、昨年の十月から本年の九月まででございますが、この間五千百三十六件、二百四十八万トンの輸入砂糖の売買業務を行いまして、所要の価格調整を通じまして国内糖価の安定に努めております。  また、糖価安定事業団のもう一つの目的であります国内産糖について申し上げますと、最近は生産が増大しておりまして、この国内産糖につきましては事業団による売買操作によりまして価格支持を行っておりますが、その売買数量もふえてきております。五十二砂糖年度におきましては、てん菜糖三十三万六千トン、甘蔗糖二十七万トン、合わせまして約六十万トンの売買を行いまして、国内産糖の価格支持を行っておるわけでございます。  以上のような最近におきます業務の状況からいたしまして、糖価安定事業団の機能は重要になってきておりますが、「引き続き検討」ということについての御指摘でございますが、そのような重要な業務、重要な機能を果たしておるのでございますが、やはり国際糖価が非常に変動いたす、そのような状況の中で、事業団のあり方について現在の形でいいかどうかということについては、現時点ではその機能を十分果たしているものの、長期的に見た場合どうであろうかということについての検討をするということでございます。
  151. 春田重昭

    春田委員 行管庁が来ておりますのでお尋ねします。  行政改革というのは福田総理就任のときの大きな柱でございますし、最近の厳しい不況の中で国民の厳しい批判の声が起こっているわけでしょう。そういう中で、十八法人対象にいろいろやっておるわけでございますが、この糖価安定事業団は、農水省の方からすれば必要であるというような答弁がいま返ってまいりました。ところが、五十年十二月の閣議了解でも「検討」になっておるのですよ。さらに五十二年度もまた「検討」になっているわけです。何かすっきりしないのです。残すものは残すとはっきりしたらいいわけですよ。ヘビの生殺しみたいになって、検討、検討でそのまま引き継いでいくような感じがしてなりません。昭和四十五年には皆さん方の行政監理委員会から、農産物の価格安定に関する総合的機関を設置してこれに吸収するものとして改組統合するという形で一応意見が出てきておるわけですよ。それが今日こういう形になっているのは、何を検討しているのか、かすんでしまって、私としては全然わからない。  行政改革は国民の方たちが大きく注目しておるわけでございますし、一般消費税という問題が最近話題になっておりますけれども、一般消費税の問題を出すと必ずこれが出てくるわけですよ。まず政府自身がそういう行政改革をやらなかったら、その導入なんてできるはずがないじゃないかという声があちらこちらから起こっております。そういう問題からしてこの行政改革というのは非常に必要だと思うのですよ。行管庁、一体どうなのですか。検討ばかりしておりますけれども、本当にやる気があるのですか。
  152. 渡辺修

    渡辺(修)説明員 先生御指摘のとおり、行政機構、特殊法人も含めましてなるべく合理的に、経費も節減し、それからまた同じ機能を果たすならばいかに効率的に果たしていったらいいかという見地から絶えず見直しをしていかなければいけないと考えております。  この糖価安定事業団に関しましては、いま農林水産省の方からお答えがありましたように、五十年十二月の時点で閣議了解という形でその取り扱いをどうするか、一応の方向を出した。それが国際糖価の動向を勘案しつつ糖価安定制度及びその運営の検討の一環として事業団のあり方についても検討する、こういう方向を出したわけでございます。この間の国際糖価の動向については、ただいま農林水産省の方からるる御説明があったとおりでございまして、きわめて変動の激しい国際糖価の状況といいますか見通しの困難なそういう実態がございますし、何らかの価格調整機構が必要であろうと私どもも考えまして、価格が高騰したときの事業団のあり方といったようなことも含めまして糖価安定制度全般のあり方について、主管省である農林水産省を中心に長期的にそのあり方を検討していただく必要があるのではないか、こういう趣旨が、いま先生も御指摘の五十二年十二月に引き続いて検討するということにされたゆえんのものだろうと思っております。基本的には先生のおっしゃるとおり、行政改革は進めていかなければならない。しかし、この糖価安定事業団につきましてはそのように考え、またそれが政府の方針になっていると了解しております。
  153. 春田重昭

    春田委員 基本的には決まっていながら実際できなかったら、これは絵にかいたもちになってしまうわけですから、要するに、勇断を持ってやっていただきたいと思うのですよ。時間がございませんので、その問題は終わります。  次に、漁業共済基金というのがありますね。これも五十二年十二月の閣議了解では一応整理、合理化対象になっております。この文章を読みますと、いわゆる「漁業共済、漁船保険及び任意共済の三事業に係る事務の共同化の推進について試験実施状況をみつつ、」という形になっておりますけれども、これはどういう業務をやっていくのか、どういう試験実施をやっていくのか、その辺のことを御説明いただきたいと思います。
  154. 森整治

    ○森(整)政府委員 先生御承知のように、漁業に関する保険共済制度は三つございまして、漁船保険組合が行っておる漁船保険、漁業共済組合が行っております漁業共済、全国の水産業協同組合共済会の行っております共済、この三制度がございます。これらにつきましてその統合一元化という問題が出されました。その仕組みについていろいろ検討を行った結果、ともかく直ちに統合一元化を行うのは困難だ、しかしその方向でいろいろ物を考えるべきだろうということで、検討会の結果中間報告が出まして、それに基づきまして保険と共済の団体都道府県の保険共済共同推進センターというものをつくりまして、そこで保険と共済の各種事業を共同化しまして、団体事務合理化を図るというようなことでいろいろ試験的に事業実施いたしておるわけでございます。五十二年度から三カ年計画で秋田県ほか四府県の保険、共済団体が国の補助を受けてこの事業実施しておる、その検討の結果を見まして、今後この問題に対処したいということで考えておるわけでございます。
  155. 春田重昭

    春田委員 三年後どういう結論が出るか見守っていきたいと思うのです。  最後に、大臣にお尋ねいたしますけれども、いずれにしましても、農林省所管の特殊法人というのは、通産省に次ぐ非常に大きな数になっておりますし、規模になっております。農林省というのはとかく補助金行政ということで、その補助金も有効に使われていないのじゃなかろうかという声もありますし、会計検査院の報告でも一番不当事項が多いのは農林省なんですよ。そういう面からも、農林省というのは、一般国民にとってみれば何か非常にすっきりしないような感じを持っております。そういう点だけに、先頭立ってこういう行政改革をやっていけば、私は、農林省、よくやったなという一つの大きな評価の声が上がってくると思うのですよ。そういう面で、いわゆるこの二つの特殊法人、今後いろいろ検討していくということでございますけれども、そういう方向でやっていただきたいと私は要望するわけでございます。大臣としては当然残したい、こういうお気持ちはあると思いますが、ひとつ農林省が先頭立って行政改革をやっていくという立場に立って大臣の決断を促したいわけでございますけれども、どういうようにお考えになりますか。
  156. 中川一郎

    中川国務大臣 今日、例の付加価値税、一般消費税に絡みまして、行政機構を改革すべきだという国民的声がありますから、これに十分対応しなければならないと思います。  ただ、農林水産行政というのは最近非常にむずかしくなってきて、砂糖の問題でも、肉の問題でも、生糸の問題、魚の問題、むずかしくなってきただけに、またそれに対応するいろいろな機構が必要であるという一面もありまして、先ほどの宅地並み課税と同じで、一方の要請と一方の要請がなかなか一致しないという面はありますが、農林行政に支障のない機構というものは必要でありますが、これからはむだな機構ということは許されませんので、その批判には十分こたえながら対処してまいりたいと存じます。
  157. 春田重昭

    春田委員 行管庁の方結構です。  どんどん前へ進みたいと思います。  次に、農村物資等の安定的な供給の確保として、公益法人による備蓄対策がございます。その中で、飼料穀物の備蓄対策がありますけれども、この事業につきまして若干お尋ねしたいと思いますが、この機構が五十年の二月に社団法人として認可されております。この事業は順調に行っているのかどうか、まず御説明をいただきたいと思います。
  158. 杉山克己

    ○杉山政府委員 飼料穀物の国際需給は時によって大きく変動をいたします。全般的な作柄ということもございますが、そのときどきの輸送条件あるいは港湾ストといったような事故もございまして、変動がはなはだしい。国内的に配合飼料について安定的供給を果たしていくために、その備蓄を相当程度持ったらいいではないかという話がございまして、いまおっしゃられるように、現在では配合飼料供給安定機構によりまして、一カ月分程度を目標にトウモロコシ、コウリャン、それから国によりまして直接飼料用大麦、これの備蓄を計画的に推進しているところでございます。  そこで、その目標の数量でございますが、トウモロコシ、コウリャンにつきましては五十万トン、大麦については四十五万トンということにいたしておるわけでございます。現在までの実績はどうかといいますと、本年度末までにはトウモロコシ、コウリャンで三十五万トン、それから大麦で三十八万トン、合計七十三万トンとなる見込みでおるわけでございます。さらに、これを来年度において、おおむねそれぞれ一カ月分、合計九十万トン程度の備蓄量を達成したいということで、五十四年度の予算要求をいたしているところでございます。  今日まで参ります過程におきまして、入れ物、サイロの関係等もございまして若干おくれがちでございましたが、最近では計画にかなり接近した実績を上げてきておるわけでございまして、来年度の実行を通じてできるだけ計画どおりの達成を図りたいと考えております。
  159. 春田重昭

    春田委員 一覧表の資料を提出していただきましたけれども、これを見ますと、サイロ建設は五十一年度末で計画が十八万七千トン、実績が十八万七千トンと、計画どおり行っているわけです。五十二年度計画が四十万二千トンで実績が四十万二千トン。五十三年度は四十六万九千トンに対して四十七万トン。サイロ建設は順調に進んでいるわけですよね。  ところが、飼料穀物でございますが、五十一年度末では十万トンに対して六万四千トン、五十二年度が三十万トンに対して十七万三千トン。目標の六割か、六割強ですか、それしか行っていないわけですよ。五十三年度は三十五万トンの目標を掲げておりますけれども、五十三年度は何とか達成しそうだという話がございましたけれども、五十一年度、五十二年度、サイロ建設は順調に進んでいながら、建物は建っていながら物が不足してきた、いわゆる実績が伴ってこなかったということは、どういう理由なんですか。
  160. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いま申し上げましたように、備蓄を進めるには入れ物としてのサイロの整備が先決であるということで、サイロの建設に対して助成を行って、計画的に容量といいますか、収容できるようなサイロをつくっていくということにいたしたわけでございます。計画に対しまして、民間のこれに対する対応も順調に出てまいりまして、実績も上がってまいったわけでございますが、この段階での実績といいますのは、工事に着工する、これでもってサイロがつくられるということがはっきり確認された段階を実績と言っておったわけでございますが、実際にサイロができ上がりますまでには、工事期間もございますし、それからでき上がったサイロについて検査等種々の後の措置がございます。さらに、そういったでき上がったものを対象にして具体的な荷さばきを行うというようなことになりますと、サイロの工事が始まってもでき上がるまでに時間がかかる、またサイロができても若干のタイムラグがあるということで、サイロと中身とは必ずしも直ちに一致するというわけではなかったわけでございます。  ただ、でき上がりまして、ある程度の期間も経てきたというようなことから、本五十三年度におきましては、計画三十五万トンの数量に対して九月末の実績で三十万一千トンと、能力に比べ、計画に比べてかなり近い水準まで備蓄の実績が達してまいっているわけでございます。今後、なお一層努力して、計画どおりの達成を果たしたいと考えております。
  161. 春田重昭

    春田委員 サイロ建設が先行しなかったら穀物を買っても仕方がない、これはわかりますよ。ただ、私が言っているのは、いわゆる実績というものは計画あって実績があるわけでしょう。ところが、計画は五十一年が十万トン、五十二年が三十万トンと計画を立てながら、いわゆるサイロ建設工事着工が遅かったとか間に合わなかったとか言うのは通らないのじゃないですか。そうしたら最初から計画を立てなければいいわけであって、そういう計画のずさん性というのはやはりあるのじゃないですか。まあ、五十三年は何とか行きそうだということでございますけれども、私はいわゆる計画の立て方そのものがずさんであるのじゃなかろうかと思いますけれども、どうですか。
  162. 杉山克己

    ○杉山政府委員 サイロの建設は、用地の選定、それから資金繰りの事情そのほか、企業としてはかなり困難な理由がいろいろあって、必ずしも計画どおりには達成できなかったというような事情もあるわけでございます。そういうことを見通して、おくれるならおくれるで、サイロの建設計画を、そこら辺、実績がある程度見通せるようなものにしておくべきではなかったかという御指摘、御批判もございましょうが、これは一つは、努力目標的にできるだけ積極的に建設をしてもらうということで民間を督励するというような意味もありましたので、当初の計画は、そういう意味では民間の実力等からすれば若干おくれざるを得ないような、努力目標的なものを描いておったということはあるわけでございます。
  163. 春田重昭

    春田委員 これ以上論議しようと思いませんけれども、努力目標だからといって、そんな実績が少ないといったら通じないと思うのですよ。努力目標だったら七割か八割、九割ぐらい行ったらいいですけれども、六割ないし弱ですから、これは。五十四年度の最終目標というのは、どれくらいのトン数になるのですか。
  164. 杉山克己

    ○杉山政府委員 備蓄数量はどのくらい持ったらいいかということになりますと、収穫変動等に伴う大規模な世界的な供給不足、これに対応するにはよほど大きな数量を持たなければならないと思います。しかし、それは現実可能な、可能なといいますのは、収容力なりあるいは財政負担なり総合的に考えて、どこまで持つかということになりますと、この計画を検討いたしました当初の段階では、おおむね日本の国内需要量の一カ月分程度持ちたいということにしたわけでございます。五十四年でもって計画達成がおおむねできると先ほど申し上げましたのは、トウモロコシ、コウリャンにつきましても、それから飼料につきましても、安定機構によりますところの公的備蓄、それから特別会計によりますところの政府の備蓄、これが合計いたしまして、全体の数量の約一カ月分相当は用意できるということで、一応の水準に達することになるわけでございます。  それだけでいいのか、それから先どうするのかということにつきましては、さらに国際的な需給の事情なり国内流通の状況なり、財政負担の問題等もこれから検討していく課題であるかと考えております。
  165. 春田重昭

    春田委員 諸外国に比べて自然牧草が非常に少ないわが国だけに、この飼料の備蓄というのは非常に重要だと思いますので、、経営の安定のためにもひとつ鋭意これから努力していただきたいと思います。  続きまして、過剰米対策につきまして若干お尋ねいたします。  本年度の稲作の作柄が先ごろ発表がございましたけれども、政府目標をかなり上回る予想であったと私は聞いておりますが、その背景、原因ですね、それから、どれくらいの量になったのか、簡単に御説明いただきたいと思います。
  166. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 農林省の統計情報部の九月十五日現在の調査によりますと今年度の作況指数は一〇七%ということでございます。平年作に比べますときわめて豊作である、良好な作況でございます。  その要因でございますが、技術的な要因その他種々ございますが、何と申しましても天候が御承知のように夏非常に酷暑であったということは、稲作にとっては大変恵まれた気象条件であったということが最大の要因であるというように見ております。
  167. 春田重昭

    春田委員 政府はことしより三年計画で減反政策を進めておりますね。この兼ね合いをどう見ますか、ことしの豊作と。
  168. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 今年度は三十九万一千ヘクタールの転作目標面積、数量にいたしまして百七十万トンということで計画を立て、生産農家の御協力をお願いしたわけでございますが、最近把握しております転作実績は、面積では一一%ばかり上回ったというふうに把握をしております。したがいまして、面積におきましては非常に計画を上回った好成績であったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、それを相殺するようにいたしまして非常な豊作であったということでございますので、百七十万トンという数字自体は達成はむずかしいという現状でございます。したがいまして、十カ年計画の第一期として今年度から発足したわけでございますが、計画はあくまでも平年作を前提にしてやっておるわけでございます。来年からも引き続いて今年と同様御協力を得てやっていきたいというように考えております。
  169. 春田重昭

    春田委員 全国平均が一〇七ですね。その中で北海道は一一三という形で抜きん出ていますね。減反政策との絡みで北海道をどのようにお考えになっていますか。
  170. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 北海道は九月十五日でたしか一一七%ではなかったかと思います。全国でも作況指数が一番高位であったということでございます。したがいまして、北海道の生産は予定いたしましたよりははるかにふえてくるわけでございますが、私どもは、今後計画を進めます場合にはあくまで平年作を前提として推進をしてまいるということでございますので、今年度発生いたします過剰の累積は北海道に限らず全国ベースで避けられないわけでございますが、それらにつきましては特別な処理も検討していかなければならないというふうに考えております。
  171. 春田重昭

    春田委員 そうでなくて、北海道は減反政策が政府の目標どおり進んだかどうかということをお聞きしているのです。
  172. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 私の直接の所管ではございませんので、正確には記憶しておりませんが、一〇〇%はもちろん上回っているわけでございます。
  173. 春田重昭

    春田委員 そこで、ことしの大豊作によりまして、古米、古々米の在庫量が相当ふえると思いますけれども、どれくらいの量になるのか。
  174. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 米穀年度は十一月から始まりますので、この十月末の五十三米穀年度から五十四米穀年度に繰り越す場合の古米の在庫ということで申し上げますと、先般の米価審議会等の機会に、私どもはおおむね五百三十万トンぐらいという推定を申し上げたことがあるわけでございます。その後、この夏の暑さで、これは米だけではございませんけれども、パンを含めました主食の消費は、特別な事情でどうしても例年より減退をいたしております。それから反面、ことし天候が非常によかって豊作であるということは、作期が一週間ないし十日早まっております。したがいまして、通常ならば十一月以降出回るものが一部繰り上がって現年度中、十月末までの間に出回っておる。正確には数量は把握できませんけれども、そういう傾向が見られますので、私ども五百三十万トンの古米の持ち越しと推定いたしましたのを、それを二、三十万トン上回るのではないかという推定を現段階ではいたしております。
  175. 春田重昭

    春田委員 減反政策によりまして百七十万トンのいわゆる減量を見たわけでしょう。それがいま言ったような原因でさらに上回った。古米も五百三十万トンの予定が二、三十万トンオーバー、新聞報道等によると六百万トンをオーバーするのではないかという形で載っております。この前の報告の中には青田刈りとかいろいろあるから、差し引けば二、三十万トンということだと思いますけれども、政府側の理想とする古米は大体二百万トンというふうに私たちは聞いておるわけでございますが、このような古米が今後相当出てきそうでございますし、この処理というのは相当大事になってくるのじゃないかと思うのですよ。資料もいただいておりますけれども、昭和四十—四十五年がピークで、昭和四十五年には七百二十万トンあったわけです。それが四十六年に五百八十九万トン、四十七年に三百七万トンからずっと下がってきて、昭和四十九年には六十二万トンまで下がったわけでございますが、その後ずっと上昇気味で、五十二年が三百六十七万、五十三年が五百五、六十万、こういう形でまた上昇の機運になっているわけでしょう。  そこで古米の処理は農水省としてもいろいろお考えになっているようでございますけれども、いわゆる六百万トン近くなる古米の処理にはいろいろなアイデア等も考えておられるみたいでございますが、よほど真剣に考えなかったら相当大きな問題になってくるのじゃないかと思うのですよ。農水省としては今後ふえていく古米の在庫の処理をどういうふうにお考えになっていますのか。
  176. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 今年度十月末で五百二、三十万トンを上回るのではないかという見通しを申し上げましたが、ことしの豊作は実は来年の十月末の古米の持ち越しにストレートに影響するわけでございます。そういたしますと、このままじっと処理をせずに放置しておきますれば、六百万トン台に乗るということが当然予想されるわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、過剰米につきましては計画的な処理に何らかの形で早く着手すべきではないかというふうに考えております。その際仮に六百万トンと来年の十月末想定いたしまして、そのうちで政府はかねて二百万トンの古米を新年度に持ち越すという計画を備蓄の意味を含めていたしております。したがいまして、仮に六百万トンということを想定いたしますと、備蓄計画を前提といたします二百万トンを引いた四百万トン程度が過剰部分であるということになるわけでございます。先ほど御指摘になりました七百数十万トンの四十五年末の過剰の処理は、当時数年かかりまして、約一兆円弱の経費をかけてやったことがあるわけでございます。私どもといたしましても当時は結果的には七百四十万トンの処理をしたわけでございます。それはすでに処理を終わっておるわけでございますが、それとの比較では、私どもは、四百万トン程度に来年十月末になる、それが一応対象になるというふうに考えております。  そこで、処理の仕方でございますが、これは何の用途に振り向けるかということがまず問題になるわけでございます。前回は輸出用あるいは国内の飼料用、それから国内の加工原料用、みそだとか米菓とかそういったものにそれぞれに振り向けたわけでございますが、今回はそういう意味では最近ベトナム等の話はございますものの、前回よりは輸出環境としては条件はよくないのではないかというふうに思いますし、また飼料用に処分するという場合におきましても、飼料価格は御承知のように非常に下がっておりますので、それだけ損が出るというような条件があるわけでございますが、しかし大量にはくということになりますと、それらの用途が主になる。しかし、単位当たりの食管の損失額という点から見ますと、国内原料用に売るのが他の用途に比べれば、比較的一番高く売れるということでございますので、価格の決め方いかんにもよりますが、その辺を最優先に考えながら、残る部分は他の用途でやっていくというようなことを考えていくべきではないか。  それからまた、処分の期間をどのくらいにするか。前回は法律改正をいたしまして、損失は処分後それぞれ七カ年間繰り延べることができる、七カ年間で赤を埋めていけばいいというような特別立法をしていただいておるわけでございますが、そのような対策が必要かどうかということも現在検討中でございまして、いずれにいたしましても計画的な処理に着手をしなければいけない時期に来ておるというふうに考えております。
  177. 春田重昭

    春田委員 ここに新聞がございまして、古米の処理は来年から十カ年計画で約一兆円つぎ込んでやりたいということが報道されておりますけれども、このような具体的な検討は進められておるのですか。
  178. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 そのような具体的な検討は決めておりません。検討に着手をしておりますけれども、十カ年計画とか一兆円というようなことは申し上げたことはありませんし、固まっておりません。  ただ、これも七月の米価審議会の際に委員の方から御質問がございまして、非常に前提を置かなければ何とも申し上げられませんと、当時は五百三十万トンの持ち越しという前提で二百万トン引いた三百三十万トンが過剰という計算で、五十二年産米、去年できた米でございますが、それを一気にばっと処分するとすればどの程度の損失になるか、仮定の数字でもいいから感じを聞かせてくれということがあって、一兆円ということを申し上げたことがございますけれども、古米といいますのは二年古米、三年古米によってすでに評価を落としておりますので、そういうものについては単位当たり新米の場合ほどの損失は発生をしないということがありますので、処理の方法によって数字はかなり動くので、その辺を現在検討しておりますので、一兆円というようなことを固めたというところまでは至っておりません。
  179. 春田重昭

    春田委員 昭和四十五年当時の過剰米を七年間で処理したその方法として、工業原料とか飼料とか輸出という話がございましたけれども、それらを含めてその他という話がございましたね、答弁でその他の方法と。これはどういうことなんですか。
  180. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 あるいはその他と申し上げたかもしれませんが、それならば誤りでございまして、三つの用途が現在想定されるわけでございます。
  181. 春田重昭

    春田委員 そこで私は、輸出ではなくして、海外援助というのも一つの策じゃないかと思うのですね。確かに輸出の面においては、国内価格との差がございますし、相当開きがあるみたいでございますから損になるわけでございますけれども、海外援助という形で、特に東南アジア等では、災害、水害がベトナムで起こりましたし、いろいろな不作等で非常に米がない、飢餓状態にもあるという報道がされておりますので、日本は海外援助が非常に厳しい、諸外国に比べればGNPに対する海外経済協力が非常に少ないのじゃないかという批判の的になっておりますから、いわゆる第三国の米をもって援助するのではなくして、わが国で米がこれだけ余ったのですから、それを援助するというのも一つの方法じゃないかと思うのですね。こういう点、考えてみたらどうですか。
  182. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 確かに御意見かと思いますので、そういうことも検討いたしたいと思っておりますが、ただ一般的に申し上げますと、東南アジアの輸出国、タイその他は米の輸出ということで経済が成り立っている面がかなりございますので、それらに対する配慮は十分加えた上で慎重にやらなければいけないというふうに考えております。  ベトナムの話はごく最近の話でございまして、必ずしも実態が明らかでございませんので、現在、鋭意調査を始めておりますので、それらの問題、緊急の問題もありましょうし、今後の問題もありますので、十分検討してまいりたいと思っております。
  183. 春田重昭

    春田委員 それから、処理方法としてはいまやっております学校給食、文部省の方がお見えになっておりますけれども、いわゆる米飯給食ですね。いま所によっては週五回やっているところもあるようでございますが、大体一回が多いみたいでございます。この米飯給食を週二回という案があるわけでございますが、これはこの前やったとき五十六年までですか、そういう決議がなされているということを聞きましたけれども、週二回をさらに広げて週三回ないし四回やっていけばもっと処理がなされるのじゃないかと思うのですね。それから、まだ米飯給食を行ってないところがかなりありますから、そういう小学校、中学校にも対象を広げていく、これらの米飯給食も積極的にやっていくべきじゃないかと思いますけれども、文部省としてどのようにお考えになっておりますか。
  184. 坂元弘直

    ○坂元説明員 御承知のとおりに、米飯給食につきましては、昭和五十一年度から学校給食の主食としての中身を多様化するということと、それからバランスのとれた正しい米飯のとり方を児童生徒に認識していただくということと、それからもちろんわが国の食糧事情を考慮するというその三つの理由で正式に米飯給食を導入いたしまして、いま先生御指摘のとおりに、昭和五十六年度を目途に週二回の米飯給食を全国の完全給食を実施しておる学校で達成していただこうということで、現在計画を推進しておる最中でございます。この計画を立てました段階で、私ども週二回というその回数につきましては、給食関係者の全体の合意を得てこの回数を決めておりますので、現段階といたしましては、私どもとしましては、いま立てております計画をとにもかくにも達成させるということにせっかくの努力を傾注してまいりたいというふうに考えております。  ただ、その結果、この計画を達成した以後、どういうふうに米飯給食の回数について対処していくかということは、これからの検討課題ではなかろうかというふうに考えております。
  185. 春田重昭

    春田委員 それでは時間がございませんので、大臣にこれは一応お聞き願いたいと思います。  いわゆる古米の在庫量がふえることによって、倉庫の保管料が非常に膨大な額になっていっているわけでございます。御存じだと思いますが、昭和五十年では二百四十三億円の保管料を出しておるわけです。五十一年が三百三十六億円、五十二年が四百八億円出ております。これが当然五十三年度はさらに上回ると思うのですよね。そういう点で、相当倉庫の保管料というものが莫大な額になっていっておりますので、これは本当に古米の処理というものは相当積極的にやっていかなかったら、こういう面においても影響が出てきているということを御認識いただきまして、鋭意努力していただきたいと思います。この問題につきましては質問を考えておりましたけれども、もう一つ事項がございますので改めて質問させていただきたいと思いますが、一応大臣にこういう現況をよく御認識いただいて対処していただきたい、このことをお願いしておきます。  あと十分しかありませんのでもうざっといきますけれども、本格的な二百海里時代に入って日本は二年目になったわけでございますが、わが国を取り巻く国際環境が非常に漁業に関しては厳しい状態になっておりますのは御存じのとおりでございます。五十二年度の漁業白書がございますけれども、この漁業白書を見れば、五十一年度の実績があるわけでございますが、諸外国の二百海里内での日本の漁獲量というものが出ております。アメリカがトップ、ソ連が第二位、そしてニュージーランド、韓国、中国という形になっておりますが、全体的に言って日本の総漁獲量のうちの約三五を占めているわけですね。そういう点で、この外国の二百海里内のいわゆる割り当てというのは非常に今後重要になってくるわけでございまして、農林省としても鋭意努力なさっておりますけれども、その漁業交渉のほとんどがことしの秋から年末にかけて行われると聞いております。そこで、一つ一つ聞いていきたいわけでございますが、時間の関係で全部聞けませんけれども、聞ける範囲内で、時間の範囲内で聞いていきたいと思います。  まず、中国でございます。中国、これはまだ二百海里を設定しておりませんけれども、大体いつごろになるのか。  それと尖閣列島の問題ですね。これは、今回の平和友好条約の締結の際にたな上げにして問題にしないということになったらしいのでございますけれども、漁業に関してはどういう形で解決されたのか、この辺のところを簡単に御説明いただきたいと思います。
  186. 森整治

    ○森(整)政府委員 中国の関係につきましては、二百海里は引いておりませんが、日中の漁業協定がございまして、今年いっぱい十二月二十二日までで期限が満了する。そこで、この協定の見直し、修正につきまして政府間協議が行われるという予定で、その日時等につきましては今後両国で協議するということになっております。  二百海里の問題につきましては、中国側は、一応世界の大勢であって、それはいずれ中国としても二百海里を引く意思があるということをただいま見えております肖鵬団長が申しておりまして、ただそれは遅かれ早かれいずれそういうことになるでしょう、その場合に円満によく話し合いをすれば、いろんな問題は解決できるのではないかという考え方を私どもに言っておりました。それがいつになるかということを中国の政府が決める時期がいずれ来るということは申しております。ただ、今後の交渉でそういう問題が直ちに出てくるというふうには私どもまだ受け取っておりません。(春田委員「尖閣の問題は」と呼ぶ)  私ども直接交渉に当たったわけではございませんからつまびらかにいたしておりませんけれども、現在と何ら変更は生じないというふうに考えております。
  187. 春田重昭

    春田委員 尖閣あたりは、この問題はどういう形で解決されたのか、もう一回ちょっと、尖閣列島周辺の漁ですね。
  188. 森整治

    ○森(整)政府委員 現在、一時問題もございましたけれども、その後尖閣周辺の漁業については私ども支障なく操業をいたしておるというふうに理解しておりますし、今後の交渉で特に従来と取り扱いを変えるつもりはございません。
  189. 春田重昭

    春田委員 二百海里未設定でございますけれども、この一、二年で遅かれ早かれ設定されるのじゃなかろうかということじゃないかと私は思うんですね。  次に、韓国の問題でございますけれども、韓国もまだ二百海里未設定の国でございますが、この辺の見通しですね。  それから同じく竹島周辺での漁の問題、この問題につきましても御答弁いただきたいと思います。
  190. 森整治

    ○森(整)政府委員 韓国との間では御指摘のように二百海里を設定をしておりませんで、日韓の漁業協定によって相互に入り会って操業をしておるというのが現状でございます。現在いろいろ北海道沖の操業あるいは中国——中国というのは山陰の沖あたりでいろいろ韓国船の操業に伴います問題がございまして、両国の水産庁の次長同士で政府間の話し合いを行っておるわけでございますが、まだ明確な答えが出てまいっておりません。ただ、これは精力的に話し合いを続けたいというふうに思っております。  それから、竹島の問題につきましては、先般の閣僚会議におきまして漁業紛争防止の精神で対処するということが確認されておるわけでございます。イカの漁場がまだあの周辺には形成されておりませんで別段特にいま問題が生じているというふうには思っておりません。
  191. 春田重昭

    春田委員 時間が参りましたので、そのほかニュージーランド、オーストラリア、それからアメリカ、ソ連と聞きたかったわけでございますけれども、時間がございませんので最後に一点だけ確認しておきたいわけでございますが、いずれにいたしましても今後国際漁業というのは非常に厳しくなってくると思いますし、外国距岸の二百海里内の操業というものも非常に入漁料とか超過負担とかいう問題も出ておりますし厳しくなってくるのじゃなかろうかと思います。そこで当然その見直しとして、いわゆる国内の漁業の開発、また未開発国の二百海里のそういう新しい開発ですね、こういう面も見直していく必要があるのじゃなかろうかと思いますけれども、いわゆるこうした先行き厳しい中にありまして国内の漁場、未開発の国の漁場に対しましてどういう手を打っているのか、お答えいただきたいと思います。
  192. 中川一郎

    中川国務大臣 御指摘のとおりでございまして、二百海里時代はわが国にとりましては非常に厳しいことでございますので、これを契機として、既得権を確保すると同時に、最大の水産外交を展開すると同時に、わが国の二百海里、すなわち前浜の利用ということもこの機会に見直さなければいけないという基本方針のもとに、資源調査とかあるいは魚礁の設置、増養殖事業あるいは沿岸整備事業等々前向きに資源を確保する措置を講じていきたい。同時にまた、わが国では魚の利用ということについても少し無神経であったのではないか、この辺のところも反省して、利用面でも高度化していく、こういう両面を通じて対処してまいりたいと思います。
  193. 春田重昭

    春田委員 いずれにしましても、わが国のほとんどの人たちがたん白源を魚に頼っておるわけでございまして、この問題につきましても、今後相当厳しくなると思いますけれども、粘り強い交渉をやって、それなりの一定の成果を得ていただきたい、このことをお願いいたしまして、ちょっと中途半端になりましたけれども、これで終わりたいと思います。また機会がございましたら、残りの問題等も質問させていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  194. 楯兼次郎

    楯委員長 安藤巖君。
  195. 安藤巖

    安藤委員 最初に、先ほどちょっと話がありましたベトナムに対する緊急援助の問題について、大臣にお答えをいただきたいと思います。  十一日の閣議で、一億円の緊急援助を日赤を通じて行うという提案があって、それが決められたわけですけれども、園田外務大臣は、さらにこのほかに米の緊急援助も行いたいので協力を願いたいという発言をされたというふうに聞いております。ただいま農林水産省当局の方から検討するという御答弁を聞きましたけれども、余剰米の処理の一部にもなるし、国際連帯の実を上げるということにもなるわけですが、大臣としてはこれに対してどのように対応していかれるのか、お伺いしたいと思います。
  196. 中川一郎

    中川国務大臣 確かにベトナムは大問題だそうで、約一億円の援助をしたそうですが、そのほかに食糧援助、米の援助もという声があることも事実でございます。ただ、何分にも金額が多くなりまして、二百万トンぐらい足りないのではないかということになりますが、もし二百万トン対処するというと三千億かかるのではないかという大変なしろものでございます。仮に十万トンとしても百五十億ぐらいかかるのじゃないかということでございまして、気持ちとしては差し上げたいのでありますが、何分にも大変な財政負担であるということが一つ。  それからもう一つは、まだ実態がよくわかっておりませんで、どの程度、どういうものが、どの時期にということがわかりませんので、財政事情あるいはまた向こうの事情等もよく検討いたしまして、いかにするべきか考えてみたいとは思いますが、財政的にも大変な負担であるということだけは間違いないのでございまして、頭を痛くしておるところでございます。
  197. 安藤巖

    安藤委員 いろいろ財政問題も含めて問題があろうけれども、検討はしていくというふうにお聞きしていいわけですか。
  198. 中川一郎

    中川国務大臣 緊急の問題と長期的な問題、両面あるようでございますが、いずれにしても、過剰処理という問題もわが国にもありますから、検討は十分していきたいと思っております。
  199. 安藤巖

    安藤委員 そこで、野菜生産の出荷安定問題についてお尋ねをしたいと思います。  野菜生産出荷安定法という法律がありまして、これに基づいで野菜生産の出荷安定事業が行われておるわけです。価格の著しい低落があった場合に、生産者補給金を交付するという制度があります。これは水田利用の再編対策が実施されておる現状からいたしまして、野菜への転作が行われるということは当然考えられることでございますので、野菜の生産、出荷の安定を図るというこの制度は、効率的に利用されることが一番必要だというふうに思います。そういう観点から二、三お尋ねをしたいと思います。  野菜の指定産地として指定をされている生産地域、ここの登録出荷団体が、出荷野菜について野菜供給安定基金から生産者補給金の交付を受ける対象にするために、基金との間に契約、これは予約と言った方がいいかもしれませんが、それをするわけです。これは御承知のとおりですが、その野菜の契約数量について、一定の枠が決められているという話を聞いております。  この補給金の資金は、御承知のように、国の助成金、それから県と出荷団体負担金から成り立っておるわけですが、たとえば秋、冬の重要野菜の場合ですと、国が七五%、それから県、出荷団体がそれぞれ一二・五%、こういうふうに国の方の予算措置が必要になっているわけなんです。だから、そういう観点からいたしますと、この契約数量の枠を広げるということになると、国の助成金も増加する、枠を広げなければならぬということで、この数量枠の拡大に対して、農林水産省の方が消極的になっているとかあるいは規制をするというようなことは、これまでもなかったのかどうか、将来もそういうことはあるのかないのかという点を、まずお伺いいたします。
  200. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 指定野菜の価格補てん事業については、ただいまお話しのとおりでございまして、野菜の価格を安定させるために、野菜が非常にとれ過ぎて価格が暴落した場合の農家経営が受ける悪影響を防止をするという趣旨実施をいたしておるものでございます。  この価格補てん事業がそのような機能を果たしておる重要性にかんがみまして、私ども行政当局といたしましては、できるだけこの価格補てん事業対象として重要野菜、特に指定野菜につきましては重点的に考えてまいりたい、かように考えております。  ただいま御指摘のございました登録出荷団体からの補てん予約申込数量につきまして、一定の枠をはめておるのかというお話でございますが、これまでのところ、正確には五十二年度までは、申し込み数量について国が承認をいたします際に、それを削減をしたということはございません。本年におきましては、昨年の秋から野菜の価格が非常に低落をした、また一方水田利用再編から出荷数量相当ふえるのではないか、そのために価格が低落をするのではないかという懸念から、申し込み数量が、前年と比較いたしますと非常に増加いたしております。それにつきましては、私どもとしては、水田利用再編対策の円滑な実施という見地から、できるだけこれに対応をしていこうということで実施をしてまいっておりまして、本年度につきましては、野菜指定産地が集まりまして生産出荷協議会というのを開催いたしますが、その出荷協議会におきまして、指定消費地域の需要見通しに対応するよう関係者が協議をいたしまして樹立いたしました出荷計画数量というのが出てまいりますが、それにつきましては全量引き受けをするということで承認をいたしたところでございます。本事業の重要性にかんがみまして、今後とも予約数量の増加に努めてまいりたいというふうに考えております。
  201. 安藤巖

    安藤委員 いまの御答弁で基本的な姿勢はわかりましたが、いまの予約申し込み数量を決めるについて、いまお話があった生産出荷協議議会で行われているのじゃないかと思うのですけれども、これは全国的に行われているかどうかわかりませんので、愛知県の場合、出荷団体の過去三年の共同販売実績を出すように求められているわけなんです。そしてそれに九〇%掛けて、九〇%に抑えるということなんですが、そういうふうに行われているということを聞いておるのですが、これは農林水産省の方針だというふうに伺ってよろしいのですか。
  202. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 農林水産省の方からそのような指導をいたしたことはございません。各県あるいは各出荷団体がそれぞれの実態に応じて申し込みがされておるというふうに私どもは承知をしておるわけでございます。過去三カ年九割ということにつきまして、私どもも該当県につきまして照会をいたしましたけれども、そのような事情についてはつまびらかにいたしておりません。
  203. 安藤巖

    安藤委員 照会をされたということですが、これは私の方で聞いてきた話ですが、愛知県の東知多の農協の場合です。この農協の冬キャベツの共同販売実績がぐっと毎年伸びているわけです。昭和四十九年度で五千九百九十七トンが、五十年はちょっと減っておるのですが、五十一年になりますと六千七百九十三トン、それから五十二年七千六百四十二トン、そして五十三年度計画が七千七百三十トン、こういうふうに伸びているわけです。ところが、いま申し上げましたように過去三年間の共販実績ということで、その九割掛けというようなことで、昭和五十一年度には六千七百九十三トンの共販実績に対して予約申し込み数量の枠は四千トンということになっております。三年越しにこの農協の人たちがいろいろ要請をした結果、やっと昭和五十三年度から一千トンふえて五千トンになったということなんですが、七千七百三十トンの生産出荷計画を持っておって五千トンですと、七〇%未満ということになります。だから、これで生産補給金が出ても、七〇%しか来ません。しかし、共同出荷は七千七百トンいくわけですから、これをならしますと、結局農協としてはならさざるを得ないということになりますと、せっかくの生産補給金というのが十分農家の役に立っていくということにはならぬのじゃないかということになるわけです。  だから、こういうふうに生産そして出荷が急増している地域にとっては、特にいま申し上げましたようなことが行われているということになりますと、その枠によって対応できない。せっかくの制度が十分活用されていないということになっていくわけなんです。そういう考えは農林省としては持っておられない、照会したところそういうのは見当たらないというお話でございますが、実際問題として私が聞いたところではこういうように行われているというのです。だから、そういうようなことではない、もっと枠を拡大する、あるいは利用してもらうという方向で御指導いただくことが必要ではないかというふうに思うのですが、いかがでしょう。
  204. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 毎年の出荷計画と予約申し込み数量との関係につきましては、出荷計画が単に農業者から出荷するということではなしに、共同出荷をする、それから指定消費地域に出荷されるものであるということから、一定の制約がございます。しかし、その要件に合致するものについてはできるだけ対象にしていくというふうに考えておるわけでございます。  ただ、一つ考えられますことは、毎年の予約数量が毎年毎年変動するということにつきましては、これはこの事業の安定性ということからいろいろ検討すべき点が現地においてあるのではないかというふうに推察されるわけでございます。と申しますのは、先ほどお話のございましたように、予約数量に応じて負担を出荷団体及び県が国費以外の部分については持つわけでございますので、年によって作柄というのは変動をいたします。そうしますと、目いっぱい掛けるということになりますと、作柄の変動で対象数量が減った場合には、むだな金を積んだということがございますので、やはり一定の安定率というものを見て掛けるというような考え方があり得るのではないか、私どもそういう指導はいたしておりませんが、そういうことがあり得るのではなかろうかというふうに考えられます。  そういうことは別といたしまして、私どもといたしましては、要件にかなった出荷計画でございますれば、できるだけ対象にしていくということで指導をしてまいりたいというふうに考えております。
  205. 安藤巖

    安藤委員 次に、これは秋、冬の季節の重要野菜の計画生産出荷特別事業、これとの関連で、農家に対しまして予約概算金というのが支払われるという制度がございますが、これはいわば農作業の準備金というような趣旨だと思います。これは説明することは不必要だと思いますけれども、たとえば冬キャベツをつくって出荷するという場合に、これは重要野菜の趨勢値の価格の三〇%ということもわかっておりますから後で説明いただかなくてもいいのですが、九月に農家へ渡る。この冬キャベツ、十一月、十二月、年内に出荷をする。この概算金の支払い期日が年を越して一月の半ばごろになっている。十一月、十二月に出荷をして、価格が安定をしておれば代金が入りますから、返済は可能だと思うのですが、価格が下落をしていわゆる生産補給金を受け取るというようなことになりますと、この生産補給金の交付されるのが早くて三月の中旬というのが常例になっているそうです。これですと、予約概算金の返済に間に合わないわけです。これはもちろん国の方が利子補給をしているわけなんですけれども、概算金の支払いができないというので農協が立てかえるという事例も出ているという話を聞いております。これは恐らく全国的にもあるのじゃないかと思うのです。  だからそういう意味で、この概算金の支払いの時期を、補給金の支払いを受けた後、だから三月中旬以降、年度が変わりますけれども四月以降というふうにしていただきたいという要望が非常に強いわけなんです。こういうふうにこれは改善をしていただきたいと思うのですが、いかがでございましょう。これは国の利子補給の関係がありますので、いろいろおありだろうと思うのですけれども、これは予算措置としてきちっと前もってやっていただければできることだと思うのですが、いかがでしょう。
  206. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 予約概算金の返納の時期のことであろうかと存じますが、予約概算金は先ほどお話のございましたように、趨勢値価格の三〇%でございます。価格が非常に低落したときといえども、平常価格の三〇以下に下るということはまずまず考えられない。つまり販売代金としては三〇%を超えた額が出荷団体には払われておるというふうに考えられるわけでございます。  問題は、販売代金を予約概算金の返納に充てるのか、あるいは農家に対する農薬、肥料の売り掛け代金の返済に充てるのか、それは系統内部でどちらを優先して考えるかということになろうかと思います。系統内部におきます取り扱いとして、これはやはり自主的に検討されるべき問題ではなかろうかと考えておるわけでございます。
  207. 安藤巖

    安藤委員 いまおっしゃったように、系統内部で考えるべきだというお話もわからぬでもないのです。しかし、それは農協がいろいろ立てかえておった肥料代等々を差し引いていくので、結局は農家の方へいくのが少なくなるというようなことになろうかと思うのですが、これは国の方からきちんと利子補給をして、利子補給の期間をもう二カ月か二カ月半ぐらい延ばせば、それだけ負担になるわけですけれども、これは対処できるのではないかと思うのです。そういう方向で善処をしていただく、これはなかなか強い要望だと思うのです。予約概算金を受け取って、それは農作業準備金ですから、そのために使うというのが趣旨であろうともちろん思います。しかし、農家もいろいろ苦しい財政状況があるものですから、いろいろな使途もあるわけですね。だから、使ってしまってもうないというようなときに、まだ生産補給金は出てこないというようなときに困ってしまうという事例がたくさん出ている、こういう話を聞いているのです。だから、基本的に予算措置を講ずるということでそういう場合の農家の人たちの窮状を救っていただく、そういうような方向でお考えいただくわけにはまいらぬかと思うのです。  これは大臣にお答えいただかないと無理じゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
  208. 犬伏孝治

    ○犬伏政府委員 予約概算金の返納と価格補てん事業の補てん金の時期との関係がございますので、私からお答えを申し上げたいと存じます。  予約概算金については、やはり一定のルールに従って支払いをし、それが計画どおり出荷されない場合には返納していただく、これは予約概算金の性格上どうしてもそのとおり実行いたさなければならない性格でございます。問題は、その返納の時期の問題と、それから返納が必要な場合には一方では価格補てん金の支給が行われるということでございますので、その両者の関係をどうするかということで、検討をさせていただきたいと存じております。  と申しますのは、価格補てん金の交付の時期につきましても、交付の時期を早めるについての制約要件が二つございます。一つは制度的な仕組みからくるものでございます。もう一つは、事務員が非常に多いということからくるわけでございますが、後者の問題についてはコンピューターを入れるとかということを実験的にもう始めておりますが、そういうことによって交付時期を早めるということによりまして、予約概算金の返納の時期との関係についてうまいぐあいに解決ができるかどうか、それを含めた上での検討をさせていただきたいと存じます。
  209. 安藤巖

    安藤委員 予約概算金の返済期間の問題は、補てん金の支払い時期とも関連がありますので、私はこれから補てん金の交付時期をもっと早めてほしいという質問をしようと思っておったのですが、先にお答えをいただいたのです。これもいままでの実績からしますと、確かにいまおっしゃったように、技術的に、荷受け機関から送られた仕切り書を全部手作業で照合しておられるということですので、いまおっしゃったのは、その辺のところをコンピューター化してもっと作業を早めようということをお考えだというふうにお聞きしました。とにかくこれも相当強い要望で、冬キャベツ、十一月、十二月に出荷したものに対する補てん金は二月初めごろまでにはどうしても交付してほしいというのが全般的な強い要望でございますので、引き続き御努力をお願いしたいと思います。  そこで、最後に、これは多年の懸案でございますけれども、農業委員会の経費の補助金の問題についてお尋ねをしたいと思います。  農業委員の報酬につきましては国の補助基準がございまして、これは後から質問をいたします関係で申し上げるわけですけれども、年十五回委員会を開催するとして、会長は一回出席ごとに二千五百七十円、合計して年に三万八千五百五十円、委員が同じく二千二百四十円、合計して年三万三千六百円、これが国の基準になっております。  ところが、そういうことでは実際に委員さんに役目を果たしていただくことはとても不可能だということで、たとえば名古屋市の場合ですと、これは年に十二、三回程度委員会が開催されておるわけですけれども、会長さんに対しましての報酬は一回当たり一万二千円、だから年にしますと十四万四千円になります。委員の場合は一万円で、年にしますれば当然十二万円ということになるわけです。これは名古屋市ばかりではなくして、これは特殊事情があろうかと思うのですが、たとえば福岡の場合は会長さんは月に六万五千円、委員さんは二万九千円、神戸の場合は会長さん二万七千円、委員さんが一万八千円、大阪の場合は二万円と一万四千円、こういうのが現状なのです。こういうことからいたしますと、この委員の報酬については地方公共団体相当な超過負担をしているというのが現状でございます。  もう一つ、農業委員会の職員の問題を一緒にお尋ねしますけれども、農業委員会の職員の人件費補助相当低いということが前から言われておるわけですけれども、最近農林水産省の方でこれを調査された結果、これまで各農業委員会当たり一人の職員で十分だという形で人件費が補助されておったわけですが、調査した結果としても一人では無理だということがわかったので、相当前向きな措置がとられるかと思ったら、〇・一六人分追加するということで一・一六人分になったわけです。〇・一六人分というと腕一つぐらい追加したようなものなのですね。これじゃとても追いついていけません。  現実の問題としては、たとえば名古屋市の場合でいきますと、委員会に職員が一人というところもございますけれども、五人、六人あるいは四人というところもありますし、二人以上は十の行政区になっておるようなわけなのです。  だから、こういうことからいきますと、もちろんこれは一人当たりの単価、額も少ないわけですけれども、一委員会当たり少なくとも二人以上はどうしても必要じゃないかと思います。〇・一六人分追加という非常にみみっちい話ではなくて、この人件費補助を増額すべきだと思うのです。これも名古屋市の場合ですけれども、農業委員会の会長さん、委員さん、それから職員の人たちに対する人件費の関係で、一年に一億一千百六十二万円、これだけ超過負担をしているわけなのです。これは前々から強い要望が出されているのですけれども、善処されたのは職員の〇・一六人分ということでは話にならないと思います。だから、そういう点でこれは緊急に増額の措置をとっていただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  210. 今村宣夫

    ○今村政府委員 先生お話しのように、現実に市町村支出しております農業委員会の手当と国庫補助の間には相当の差額がございます。これは御存じのように農業委員会法では六条一項で法令により処理をしなければならない必須業務というのがございまして、それが補助対象に相なっておるわけでございます。そのほかに二項で任意業務で処理することができる業務というのがございますが、これは補助対象になっておりません。したがいまして、農業委員会によりますれば、一項業務のみならず二項業務に相当力を入れておるところもございますし、またそれほどでもないところがございまして、いろいろ濃淡がございます。  したがいまして、農林省といたしまして法律的に処理をしてもらわなければいけないものを補助対象にして、これに対して補助をいたしておるということでございますから、どうしても現実の支給額と補助額との間にはギャップがございます。しかし、御指摘のように、必須業務を行いますときにおきましても、たとえば会長の単価であります二千五百七十円が必ずしも高いとは私も言えないと思います。  したがいまして、逐年これにつきまして相当程度引き上げをいたしてきたわけでございますけれども、必ずしも十分でないということは、私たちもそう考えておりまして、今後におきまして委員手当の増額につきましては特段の努力をいたすつもりでございます。  それから同時に、第二点の超過負担の問題でございますが、これにつきましては逐年職員の号俸アップでありますとか先ほどの員数の増加でありますとかあるいは補助対象にいろいろの事項、たとえば災害手当その他を含める等の措置によって対処してきたわけでございますが、これにつきましても超過負担解消問題というのが非常な要望があることも十分承知をいたしておりますので、この改善につきましても今後とも十分に配慮してまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  211. 安藤巖

    安藤委員 終わります。
  212. 楯兼次郎

    楯委員長 次回は、来る十七日火曜日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十三分散会