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1978-10-14 第85回国会 衆議院 外務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年十月十三日(金曜日)委員長の指名 で、次のとおり小委員及び小委員長を選任した。 多国籍企業等国際経済に関する小委員       稲垣 実男君    大坪健一郎君       奥田 敬和君    川田 正則君       佐野 嘉吉君    塩崎  潤君       毛利 松平君    井上 一成君       河上 民雄君    土井たか子君       渡部 一郎君    渡辺  朗君       寺前  巖君    伊藤 公介君 多国籍企業等国際経済に関する小委員長                 奥田 敬和君 ――――――――――――――――――――― 昭和五十三年十月十四日(土曜日)     午前十時十二分開議  出席委員    委員長 永田 亮一君    理事 大坪健一郎君 理事 奥田 敬和君    理事 塩崎  潤君 理事 毛利 松平君    理事 井上 一成君 理事 土井たか子君    理事 渡部 一郎君 理事 渡辺  朗君       石井  一君    石原慎太郎君       鯨岡 兵輔君    竹内 黎一君       中山 正暉君    浜田 幸一君       岡田 春夫君    佐野  進君       高沢 寅男君    安井 吉典君       瀬野栄次郎君    中川 嘉美君       曽祢  益君    寺前  巖君       伊藤 公介君    楢崎弥之助君  出席国務大臣         外 務 大 臣 園田  直君         通商産業大臣  河本 敏夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 金丸  信君  出席政府委員         防衛庁防衛局長 伊藤 圭一君         防衛庁人事教育         局長      渡邊 伊助君         防衛庁装備局長 間淵 直三君         外務政務次官  愛野興一郎君         外務大臣官房長 山崎 敏夫君         外務省アジア局         長       中江 要介君         外務省アメリカ         局長      中島敏次郎君         外務省欧亜局長 宮澤  泰君         外務省経済局長 手島れい志君         外務省経済協力         局長      武藤 利昭君         外務省条約局長 大森 誠一君         外務省国際連合         局長      大川 美雄君         大蔵大臣官房審         議官      天野 可人君         農林水産大臣官         房長      松本 作衛君         農林水産省畜産         局長      杉山 克己君         食糧庁長官   澤邊  守君         林野庁長官   藍原 義邦君         水産庁長官   森  整治君         通商産業省通商         政策局長    宮本 四郎君         通商産業省貿易         局長      水野上晃章君         資源エネルギー         庁石油部長   神谷 和男君         資源エネルギー         庁石炭部長   高瀬 郁彌君  委員外出席者         環境庁長官官房         参事官    日下部甲太郎君         外務省欧亜局外         務参事官    加藤 吉弥君         外務省情報文化         局文化事業部長 大鷹  正君         通商産業省貿易         局輸出課長   松田 岩夫君         通商産業省貿易         局為替金融課長 小川 邦夫君         外務委員会調査         室長      高杉 幹二君     ――――――――――――― 委員の異動 十月十四日  辞任         補欠選任   木村 俊夫君     石井  一君   佐野 嘉吉君     浜田 幸一君   河上 民雄君     佐野  進君   正木 良明君     瀬野栄次郎君 同日  辞任         補欠選任   石井  一君     木村 俊夫君   浜田 幸一君     佐野 嘉吉君   佐野  進君     河上 民雄君   瀬野栄次郎君     正木 良明君     ――――――――――――― 十月十三日  北朝鮮在住日本人妻安否調査等に関する請願  (中尾栄一紹介)(第一四九四号)  同(三池信紹介)(第一四九五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  日本国中華人民共和国との間の平和友好条約  の締結について承認を求めるの件(条約第一  号)      ――――◇―――――
  2. 永田亮一

    永田委員長 これより会議を開きます。  日本国中華人民共和国との間の平和友好条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高沢寅男君。
  3. 高沢寅男

    高沢委員 私は、きのうもわが党の委員から申し上げたのでありますが、今回、この日中平和友好条約がまとまったことに対する、外務大臣を初めとしてそれぞれ外務省担当皆さんの御努力に対して、まず敬意を表する次第であります。その上に立ちまして、この条約問題点について以下御質問をいたしたいと思います。  まず、日中平和友好条約は、これは戦後処理条約ではない、こういうことが繰り返し表明されているわけであります。そこで、その戦後処理という関係で言えば、結局サンフランシスコ条約がある。それから日華平和条約がある。さらには日中共同声明、こういうものがあるわけで、そこでその三者の関係についてお尋ねをいたしたいと思います。なお、私、国際法とか国際条約については全く素人でありますから、見当違いのことがありましたらひとつお許しをいただきたいと思います。  まず、戦争終結条項でありますが、サンフランシスコ条約の第一条(a)項では、「日本国と各連合国との間の戦争状態は、」「この条約日本国当該連合国との間に効力を生ずる日に終了する。」こういうふうにはっきり規定されております。ただし、このサンフランシスコ条約調印に当たりましては、当時の中華民国、それから中華人民共和国、これはともに当時は参加していなかった、こういう経過があります。その後、日華平和条約が結ばれまして、この第一条で「日本国中華民国との間の戦争状態は、この条約効力を生ずる日に終了する。」こういうふうになっているわけであります。その後、今度は昭和四十七年の日中共同声明でありますけれども、この中ではこういう戦争終結条項はどうなっているかということで見ますと、前文の中では、「日中両国は、一衣帯水の間にある隣国であり、長い伝統的友好歴史を有する。両国国民は、両国間にこれまで存在していた不正常な状態に終止符を打つことを切望している。戦争状態終結日中国交正常化という両国国民の願望の実現は、両国関係歴史に新たな一頁を開くこととなろう。」こういうふうにありまして、あと第一項の中で「日本国中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態は、この共同声明が発出される日に終了する。」こういうふうになっております。  それでお尋ねしたいのでありますが、サンフランシスコ条約とか日華平和条約は、これはもうこの文言から見て戦争終結ということがきわめて明瞭であります。ところが、この共同声明の中のいま私の読んだ部分は、戦争終結であるともとれる、あるいはまた国交正常化であるともとれる、その辺が大変まじり合っているという感じがするわけですが、この規定をどう見るべきか、ちょっとそれを御説明願いたいと思います。
  4. 大森誠一

    大森政府委員 先ほど先生がおっしゃいましたように、サンフランシスコ平和条約第一条というものがございます。このサンフランシスコ平和条約には中華民国は参加しなかったわけでございます。そこで先生も御指摘のように、当時の中華民国わが国との間で平和条約を結ぶ、こういうことになったわけでございます。わが国といたしましては、ポツダム宣言を受諾しました、そのポツダム宣言に参加している中国というものが中華民国政府であったというような諸事情も勘案しまして、当時わが国としては中国という一つの国を正統に代表する政府といたしましては、中華民国政府をそのような政府として承認するという立場から、日華平和条約を結んだ次第でございます。  したがいまして、この中華民国との平和条約第一条によりまして、中国という国と日本国との間の戦争状態は、その条約効力を生ずる日に終了した、これがわが方の一貫した法的立場なわけでございます。  そこで、次に、日中共同声明の先ほど先生がお読みになりましたくだりでございますけれども、昨日も私から申し上げたところでございますが、当時、かかるわが国法的立場ということに関連いたしまして、中華人民共和国政府は別の見解をとっておりました。すなわち、日華平和条約というものは当初から不法、無効なものである、このような立場をとっていたわけでございます。しかしながらわが国といたしましては、日華平和条約中華民国わが国との間の平和条約というものは、わが国政府わが国憲法上の規定に従いまして、国会の御承認も得た上で批准したものであり、かつ憲法第九十八条の規定により、これらの条約、この条約を含めまして、条約というものは誠実に遵守するという義務も定められているところでございまして、わが国としては、先ほど申し上げましたような法的立場を崩すわけにはまいらぬという経緯があったわけでございます。  このように、日中間におきまして戦争状態終結あるいはその他の戦後処理の問題をめぐりまして、法的立場相違があったわけでございますけれども、この相違を、日中間国交正常化するという大目的のために、これらの困難を克服して日中共同声明文言に合意したという経緯がございます。  そのような経緯を反映いたしまして、日中共同声明前文では、先生指摘になりましたように、「戦争状態終結」という言葉がうたわれているわけでございますけれども、本文の第一項におきましては、これらの問題一切をひっくるめまして、日中間のすべての過去の不正常な状態は、この共同声明が発出される日に終了する、つまり戦後処理の問題は、すべて、この日中共同声明によって最終的に処理する、解決するという趣旨で、このような文言で合意に達した次第でございます。
  5. 高沢寅男

    高沢委員 いまの御説明によれば、つまり戦争状態終結も、それから国交正常化も、この共同声明の中で、言うならばもうあわせて一木でこの中に盛り込まれておる、こういうふうな御説明だったと思うのですが、ただし、この共同声明の段階で、これによって日華平和条約存在の意義を失う、これはもう当時大平外務大臣も明らかに述べられたわけであります。  そうなってまいりますと、日本政府戦争終結の根拠としていた日華平和条約存在しなくなる、こういうことになるとすれば、後、日中共同声明の中でそれが今度は内容として実現されておるということになれば、この日中共同声明はその意味で非常に重要な意味を持つということになれば、国会承認という手続もとられるべきものではなかったか、私はこう思うのでありますが、過去にさかのぼっての問題でありますが、ひとつ評価をお聞きしたいと思うのであります。
  6. 大森誠一

    大森政府委員 日華平和条約の中には、戦後処理を解決するという通常平和条約に見られます処分的な性格の条項があるわけでございます。これらの処分的な条項につきましては、この日華平和条約効力を発生した日をもってすでにすべて決着を見る、こういうことでございます。  それから、先ほど申し上げましたように、わが国としては、不法、無効であるという中国政府の法的な立場にはくみし得ないという立場を当初からとったわけでございます。したがいまして、日中共同声明が発出された時点におきましては、日華条約、特に処分的条約を持っている条約規定につきましては有効に存続していたという立場に、当時日本政府は立っていたわけでございます。しかしながら、ただいま先生仰せのように、共同声明の中ではございませんが、共同声明調印後の記者会見において大平大臣がこの条約について述べられたというくだりは、そのとおりでございます。
  7. 高沢寅男

    高沢委員 きのうの大森局長答弁の中に、こういう戦争終結条約でなくてやった前例がないわけじゃない、こういう答弁がありましたが、参考のためにそういうケースをちょっと聞かせてもらいたいと思います。
  8. 大森誠一

    大森政府委員 お答え申し上げます。  昨日私が申し上げましたように、戦争状態終結というものにつきましては、一般的に申し上げまして、当事国間の平和条約締結で終了するのが通常でございます。しかしながら、それ以外のケースというものも先例としてあるわけでございます。幾つかの例を申し上げますと、たとえば、これはいわゆる第二次大戦前の古い時期にさかのぼりますが、単純な戦争行為の終止ということによって戦争が終了したという例といたしましては、一七一六年のポーランド・スウェーデン戦争、一七二〇年のフランススペイン戦争、一八〇一年のロシア・ペルシャ戦争、一八六七年のフランス・メキシコ間及びスペイン・チリ間の戦争といったような例がございます。  また、戦争状態終了宣言ということでもって、つまりいわば戦勝国の一方的な宣言という措置によって終了した例もございます。たとえば、一九一九年九月十五日の中国による対ドイツ戦争終了宣言、あるいは一九二一年七月二日の米国上下両院合同決議によるドイツオーストリア及びハンガリーとの戦争終了宣言、このような例がございます。それからまた、一九四七年九月十六日の英国のオーストリアに対する戦争状態終了通告、こういう形をとった例もございます。  以上のとおりでございます。
  9. 高沢寅男

    高沢委員 はい、わかりました。  いまそういう実例の御説明がありましたが、言うまでもなく、第二次世界大戦日本と戦った連合国、その中でも一番比重の大きいのが中国であります。したがいまして、この中国との戦争状態終結は、そういう国際上の先例があるにしても、やはり正規な条約の形をとり、そして国会承認を受けるというような取り扱いをすべきものではなかったか、私はこう思うのでありますが、これはもうすでに済んだことでありますから、一つ評価の問題として申し上げておきたいと思います。  次に、台湾帰属の問題についてお尋ねしたいと思うのであります。  これもサンフランシスコ条約の第二条(b)項では、「日本国は、台湾及び澎湖諸島に対するすべての権利権原及び請求権を放棄する。」こうなっております。それから日華平和条約の第二条では、「日本国は、」サンフランシスコ条約第二条に基づき、「台湾及び澎湖諸島並びに新南群島及び西沙群島に対するすべての権利権原及び請求権を放棄したことが承認される。」こうなっております。それで、今度の日中共同声明の中では、「中華人民共和国は、台湾中華人民共和国領土不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」こうなっておりますが、私の考えでは、この台湾帰属については、少なくもこの日中共同声明の中にある、中国が「中華人民共和国領土不可分の一部である」、こう表明したのに対して、日本国政府はこの中華人民共和国立場承認する、こういう表現に当然なるべきだったのではないか、こう思うわけですが、それがそういうふうな明確な表現ではなくて、「理解し、尊重し、」そして「ポツダム宣言第八項の立場を堅持する。」こういうふうな、何かやはり奥歯に物がはさまったような表現になっておりますが、この関係の御説明をひとつ願いたいと思います。
  10. 大森誠一

    大森政府委員 ただいま先生指摘のように、台湾の問題につきましては、日中共同声明第三項にはっきりと述べられているとおりでございます。  この点につきましては、この日中共同声明が発出されました直後の、昭和四十七年十月の大平外務大臣による外交演説に次のようなくだりがありますので、参考のために読ましていただきたいと存じます。  台湾地位に関してでございますが、サンフランシスコ平和条約により台湾を放棄したわが国といたしましては、台湾法的地位につきまして独自の認定を行なう立場にないことは、従来から政府が繰り返し明らかにしておるとおりでございます。しかしながら、他方、カイロ宣言ポツダム宣言経緯に照らせば、台湾は、これらの両宣言が意図したところに従い中国に返還されるべきものであるというのが、ポツダム宣言を受諾した政府の変わらない見解であります。共同声明に明らかにされておる「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」との政府立場は、このような見解をあらわしたものであります。 これが大平外務大臣外交演説くだりでございまして、これは現在も変わらざる政府立場でございます。
  11. 高沢寅男

    高沢委員 いま条約局長からその大平外務大臣言葉紹介されたわけでありますが、大平大臣の言うカイロ宣言ポツダム宣言中国に返還するという表現ですが、カイロ宣言の文書をごらんいただけば、「中華民国ニ返還スル」、こうなっているわけであります。中華民国に返還するということと、今回の「中華人民共和国領土不可分の一部である」というこの関係というものは、一体どういうふうにつなげる考えなんですか。
  12. 大森誠一

    大森政府委員 御指摘のように、カイロ宣言それ自体の文言は「中華民国」という言葉になっております。この点につきましては、先ほど私が申し上げたことに関連するわけでございますが、ここで言っている中華民国というものは、中国という国を正統に代表している中華民国政府が参加した宣言ポツダム宣言ということからきているところでございまして、したがって、カイロ宣言には「中華民国」という表現がございますけれども、その意図いたしましたところは中国ということでございますので、先ほどの大平大臣演説該当部分がそれについて述べられているわけでございます。
  13. 高沢寅男

    高沢委員 次へ進みますが、請求権の問題です。  請求権の問題では、サンフランシスコ条約の第十九条では、日本国及び日本国民のすべての対連合国請求権の放棄が規定されておりますし、日華平和条約第三条でもまたそのことが規定されて、特にこの日華平和条約では、「日本国政府中華民国政府との間の特別取極の主題とする。」請求権の問題、こうなっていますが、この特別の取り決めというのはその後何かやられたのですか。
  14. 大森誠一

    大森政府委員 ただいま先生指摘日華平和条約規定につきましては、これはわが方と台湾との間の財産請求権問題についてはサンフランシスコ平和条約第四条(a)項により、他の分離地域の場合と同様に、わが国台湾施政当局との間の特別取り決めによって処理されるべき旨規定されているわけでございます。しかしながら、わが国台湾施政当局間の特別取り決めによる処理実現に至らない状況で日中国交正常化実現いたしました結果、台湾施政当局との間でこのような処理を行うことができなくなったというのが実情でございます。
  15. 高沢寅男

    高沢委員 いまの条約局長の御説明で、結局その本質は出たと私は思うのですが、日華平和条約でこういう特別の取り決めを行うという、条約でうたって、しかしその後今回の中華人民共和国との国交正常化までの間、この取り決めという処理がなされなかったというこのことに、結局中華民国政府というものは中国を代表できる政府でないということの、その本体というものはそういう形で示されているんじゃないのか、こう私は思うわけです。  したがいまして、今度中華人民共和国国交正常化されたというこの立場は、要するに中国を代表するのは中華人民共和国政府であるということを認められたからそういう日中の共同声明も結ばれた、そして今度の日中平和友好条約もひとつ締結された、こういうことではないかと思うのですが、この点についてはひとつ大臣見解をお聞きしたいと思います。
  16. 園田直

    園田国務大臣 御発言のとおりでございます。  ちょっと委員長、この際お許しをいただいて……。昨日、曽祢委員質問に対して、私が中国側に正当な効果のある通告をするのかと確認してまいりましたというこの通告は、手続という言葉に訂正させていただきます。
  17. 高沢寅男

    高沢委員 そういたしますと、つまりいまの大臣お答えでは現在中国正統にまた有効に代表するのは中華人民共和国政府であるということをお認めになったわけですが、これは私の考えでは、現在のみならず、すでに一九五二年、わが国日華平和条約を結んだあの当時でもすでにそうだったということではないかと思うのです。なぜかと言えば、当時でもすでに台湾中華民国政府というのは、中国本土から追い出されて亡命して、そして台湾という全く中国全体から見れば一部分にしがみついていた地方政権にすぎないというような存在であったことは、あの当時もいまも何らの変わりはないわけであります。  そういたしますと、現在中華人民共和国政府正統政府であるということをいま政府が認められたということは、一九五二年のその当時、中華民国政府をそういう政府と認定して、そして日華平和条約を結んだ立場が間違いであったということをみずから認めたということになるんではないか、こう私は思うのですが、大臣のお考え、いかがでしょうか。――大臣に聞いています。
  18. 大森誠一

    大森政府委員 大臣お答えになります前に、事務的な面だけに限りまして私からお答えさせていただきます。  先ほど大臣が、高沢先生指摘中華人民共和国政府中国正統政府であるということを日本は認めている、この点につきましては、日中共同声明第二項に「日本国政府は、中華人民共和国政府中国の唯一の合法政府であることを承認する。」ということがございまして、その点はきわめて明確にされているところでございます。  なお、一九五二年当時にわが国中華民国中国を代表する正統政府として認めていたことにつきましては、これはいろいろな当時の情勢ということもありましたけれども、いずれにいたしましても、それは厳たる事実でございまして、その点についてのどう評価するということは、これはまた別の問題であろうかと存じます。
  19. 園田直

    園田国務大臣 現実の判断は別といたしまして、中華人民共和国中国を代表するただ一つ政府であるということは、共同声明のときからの正式な意思の表明でございます。
  20. 高沢寅男

    高沢委員 一九五二年と言えば吉田内閣であります。その当時にさかのぼって、当時の日本の選択が間違いであったということを私はいま認めるように大臣に求めているわけですが、まあ大臣はそこまでは言えないと、こういうことであろうと思いますが、しかし恐らく腹の中ではそのことを大臣も認めておられるのじゃないか、こう私は思うのであります。  しかし、ここで、私は一つ歴史的な教訓があると思うのです。一九五二年に、当時すでに中国を代表できなくなっていた中華民国政府と、あたかもこれが代表であるかのごとく扱って日華平和条約を結んだ。これでこの戦争状態終結は終わったと、こういうふうな立場日本政府がとったわけですが、そのことの現実との食い違いの誤り、それがその後日本外交にとって、あるいは相手の中国にとってもどんなに大きなマイナスを与えたかということは、私はこれは歴史的に否定できないと思う。その大きな間違いあるいはマイナスというものを調整するために、今度の日中共同声明、これでまたどんなに皆さんがそこら辺の国際法つじつまを合わせる、現実国際法つじつまを合わせるために苦労されたかということも、恐らく内心認めておられると思うのです。中江さん、うなずいておられます。  そうであるとすれば、これは私は、大きな歴史の教訓として、今後こういう間違いを二度と繰り返してはならぬということを、日本外交立場としてしっかり確立をしてもらいたい、こう思うのであります。今度の日中平和友好条約も、これは今度はこれからの日中間の問題ですが、この条約の扱いにつきましても、したがって、同じように将来、何年かたってあるいは何十年かたって、これはまずかったというふうなことのないような、ひとつそういう運営をぜひお願いしたい、こう思うわけでありますが、これは私の見解を述べたので、別段答弁を要求するものではありません。  それで、次へ進みたいと思いますが、今度の日中平和友好条約の第一条の二項では、「両締約国は、」「相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決」する。そして、「武力又は武力による威嚇に訴える」ことはしない、そういうことを確認すると、こうなっております。このことは、私、素人考えですが、お互いにそういう武力の行使はしないということをはっきり約束をしているということは、これは日中間にいわゆる不可侵条約というものができたというふうな、そういう内容と受け取っていいのかどうか、それをちょっとお聞きしたいと思います。
  21. 大森誠一

    大森政府委員 ただいま先生は不可侵という言葉をお使いになりましたが、不可侵という意味は、昨日アジア局長答弁にもございましたように、いわゆる戦争といったような伝統的な国際法のもとにおける概念をもとにしての相互不可侵条約的なものということであれば、若干意味合いを異にするかと思いますけれども、この日中が日中間で相互不可侵ということを誓約し合ったという点につきましては、第一条二項ということからもそれは読めるところかと存じますけれども、第一条第一項において明確に相互不可侵ということをうたっているわけでございます。したがいまして、この日中平和友好条約は、その意味におきまして相互不可侵の面も持った条約であるということは申せると存じます。
  22. 高沢寅男

    高沢委員 私もそうだろうと思うのであります。そういたしますと、もう今後日本中国の間で二度と戦争をするような事態があってはならぬということを、お互いに確認したということだと思うのですが、それを私は大変評価しながら、ただ、この場合に心配になることは、日本中国の間に朝鮮半島があるわけであります。その朝鮮はいま南と北に分断されている。そのことによって朝鮮半島で戦争現実に起きる危険性というものがここに現実存在している。このことは、私は否定できない現実のアジア情勢だと思うのですね。  そこで、これはあってはならぬことですが、まさに万々万一の可能性として、朝鮮半島において戦争状態が起きる、こういうときに、御承知かと思いますが、朝鮮民主主義人民共和国とソ連、それから朝鮮民主主義人民共和国と中国の間に相互援助条約というものがあります。いわゆるソ朝相互援助条約あるいは中朝相互援助条約というものがあります。この相互援助条約では、朝鮮民主主義人民共和国が他国から武力攻撃を受けたときは、ソビエトもあるいは中国も、武力的な手段も含めてあらゆる援助をする、こういうことがこの条約の中に規定されているわけであります。そうなりますと、このことを考えてみると、日本中国の間ではこれから絶対に戦争しないということが有効に成り立つためには、朝鮮半島においても絶対に戦争があってはならぬ、こういうことがなければいかぬじゃないか、私はこう思うわけですが、まずその認識の問題について大臣にひとつお考えをお聞きしたいと思います。
  23. 園田直

    園田国務大臣 その点は、御発言のとおりに私も認識をいたしております。
  24. 高沢寅男

    高沢委員 御認識が一致した上に立ってお尋ねするわけでありますが、いま有事立法ということが盛んに議論されております。これから防衛庁長官にもお聞きしたいと思いますが、その有事立法ということが出てくると、私たちはいわゆる三矢計画というものがすぐに頭に浮かんでくるわけであります。これは、昭和三十八年から、当時の防衛庁の制服グループの人たちが秘密のうちにそういう計画を作成していたということが昭和四十年の国会でわが党の岡田春夫議員から暴露されて、そして追及されたという事実があったわけであります。この三矢計画というものを振り返ってみますと、一言に言えば、要するに朝鮮戦争に対して日本の自衛隊も参加する、こういう内容であったわけであります。この想定によれば、朝鮮の軍事境界線を越えて朝鮮民主主義人民共和国と中国の軍隊が南へ攻め込んでくる、こういうことが起きたと想定をして、それに対して、それは日本にとっても緊急な事態であるということで、日本の内閣総理大臣はそれに対して、国民に向かって共産勢力との戦いを呼びかけるというふうな事態があって、そしてその戦争状態に備えるために、今度は国内体制を臨戦体制にしなければならぬから、そこで、八十七本の立法をやる。その立法は、緊急、必要やむを得ざるときは委員会の審議も省略して直ちに本会議で成立させるとか等々の内容になっていた三矢計画はよく御承知かと思うのでありますが、この計画は、一言で言えば、さっき言いましたように日本が朝鮮と戦争をやる、こういうふうな想定に立った計画であったわけであります。  そうすると、今度また福田総理大臣の指示によって有事立法の検討を進めるというその検討がどういうふうに進むか、私は今後の問題だと思いますが、私の見方では、必ず三矢計画の焼き直しのようなものになるのじゃないのかという危惧を抱くわけでありますが、この点について、金丸防衛庁長官どういうふうにお考えか、お聞きしたいと思うのであります。
  25. 金丸信

    ○金丸国務大臣 ただいま防衛庁で実施いたしております防衛研究という問題は、専守防衛という立場で、朝鮮半島に紛争が起きたというような特定の想定のもとに研究は絶対いたしてはおりません。
  26. 高沢寅男

    高沢委員 いままで日本における安全保障の一つの概念として釜山赤旗論という言葉があることは御承知かと思います。朝鮮においてその戦争状態というものはあってはならぬわけですが、仮に万一起きて、そして朝鮮民主主義人民共和国の方が釜山まで制圧をしてくるというような状態になると、釜山にも赤旗が立つ、こういう状態になると、これは即日本の安全が脅かされる事態だ、こういう一つの認識があって、そういうふうな状態を避けるには今度は日本から打って出るべきだ、あるいは出なければならぬ、こういうふうな考え方が現実にあったことは、私はこれは否定できない事実だと思うのであります。いわゆる佐藤・ニクソン共同声明の中で、「韓国の安全は日本自身の安全にとって緊要である」ということを言ったのも、私は実際上そういう内容を意味しているのじゃないのか、こう思うのであります。いま防衛庁長官から、そういうふうな想定は断じてしない、またあり得ない、こういうお答えがあったのですが、このいわゆる釜山赤旗論ということについてお考えをひとつ聞きたいと思います。
  27. 金丸信

    ○金丸国務大臣 平和憲法を踏まえておる自衛隊は、絶対向こうへ打って出るというようなことは考えておれない。あくまでも専守防衛ということであります。
  28. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、くどいようでももう一度確認したいと思いますが、仮に万々一朝鮮にそういう事態が起きて、そして朝鮮民主主義人民共和国の勢力が釜山まで及んでくるというふうなことがあったとしても、それはあくまで朝鮮の内政問題である。したがって、それに対して日本から軍事的にどうこう発動するような対象ではないということを私はこの際はっきり確認をしてもらいたい、こう思うのですが、これは防衛庁長官及び後外務大臣にひとつお願いします。
  29. 金丸信

    ○金丸国務大臣 その場合、防衛庁は打って出るということは絶対ありません。
  30. 園田直

    園田国務大臣 憲法及び安保条約の体制からいってもそれは断じてやってはならない。できないことでございます。
  31. 高沢寅男

    高沢委員 その点はよくわかりました。  そういたしますと、この関連でぜひまたお尋ねをしなければならぬのは、今度は日米安保の関係ということになると思うのであります。  つい最近、ことしの三月ですが、いわゆるチームスピリット78という演習が行われました。この演習は、やったのはアメリカ軍及び韓国の軍隊の合同演習ということでありますが、アメリカ軍は、朝鮮半島で緊急事態が起きたという想定に立って、アメリカ本土からその機動力をフルに活用して日本の沖繩の嘉手納あるいは東京の横田あるいは岩国、三沢というふうな基地へ空輸によって部隊を送って、そして今度は日本から韓国へ向かって発動していく、こういう演習をやったわけであります。そのときの演習の想定は、これははっきり新聞も報道しておりましたが、軍事境界線を越えて北へ進撃する、朝鮮の北へ向かって進攻する、こういう想定に立って、米軍とそして韓国軍の合同演習が行われたわけです。それがいま言いましたように日米安保の関係からすれば、日本の基地を使ってそれが行われる、こうなるわけであります。  そうなりますと、この場合には、これは例の事前協議の関係にもなりますが、日本政府の意思としてそういう事態をイエスと言うのか、そういう事態に対してノーと言うのか、この問題が出てまいります。これについてのはっきりとした見解をお聞きしたいと思うのです。
  32. 中島敏次郎

    ○中島政府委員 先生よく御承知のとおり日米安保条約第六条におきまして、アメリカは「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、」日本における施設区域の使用を許されております。したがいまして、アメリカが極東における国際の平和安全の維持のための活動を施設区域を使って行うこと自身は、安保条約上認められているところでございます。  そこで問題は、そのアメリカの施設区域の使用の仕方が日本国の基地から戦闘作戦行動を発進される、そういうような場合には、先生も御指摘の事前協議にかかるわけでございまして、事前協議がありました場合に日本政府のとるべき態度は、日本国の国益の確保という見地から日本の安全を考えながらイエス・ノーを決する、こういうことでございます。
  33. 高沢寅男

    高沢委員 大変に乾いたいまの御答弁であったと思うのです。  私はもう一方お聞きしたいのは、今度そういうチームスピリット78という演習が行われた、その演習に日本の基地を使用することは、これは日本政府が了承して行われたと思うのでありますが、その演習をやるのにすでに日本政府はイエスであったわけです。そうすると、そういう事態が万々一、本当に起きたそのときもイエスだということになるのじゃないのか、私はそう思わざるを得ないのですが、この点は大臣、どういうふうにお考えですか。
  34. 園田直

    園田国務大臣 演習の場合は事前協議の対象になっておりません。したがって、あの場合はイエスもノーもないわけであります。現実にそういう事態が起きた場合には、これは日本立場は非常に微妙でありますから、その段階で国益を守るためにイエスかノーかを決定すべきときであると考えます。
  35. 高沢寅男

    高沢委員 私は、そのチームスピリット78のようなことが実戦で行われて、そして朝鮮半島へ日本の基地から米軍が出動して、しかも軍事境界線を越えて北へ向かって進撃するというふうな事態は、実戦の問題として起きた場合にはもう断じてイエスがあってはならぬ、ノーの答えがなければならぬ問題だと思います。そうであるとすれば、この演習に対しては条約上はイエス・ノーはない、これは全く言うならば形式的な答えであって、実際の現実政治の問題としては、演習であってもそのときは日本政府としてはそういう演習は困る、やめてもらいたいということを当然言うべきじゃないかと私は思うのです。これが政治の問題じゃないか、こう思うのでありますが、大臣、いかがでしょうか。
  36. 園田直

    園田国務大臣 あの演習が実際に朝鮮半島並びに大陸に対する侵略攻撃の演習であるか、あるいはあの演習をやることによってアジアの国々の不安を除き、均衡による平和を望むものであるか、こういう両面の考え方がございますけれども、この前のような演習の場合に、いま米国もソ連もともに均衡による平和ということを考えている時期でありますから、その点は、御意見とは同じではございません。
  37. 高沢寅男

    高沢委員 朝鮮の方に朝鮮労働党の労働新聞という新聞が出ておりますが、この新聞では、チームスピリット78の演習のときもそうであるし、それから今回日本で有事立法という議論が盛んに行われている、これに対しても向こう側の認識は、これはアメリカと韓国の軍隊そして日本の自衛隊、この三者が一緒になって自分たちの方へ攻めてくる、そういう準備をしているのだというふうに向こう側は認識をしているわけです。そういうことから、労働新聞では繰り返してそういう日本の態度に対して批判の声を上げている。このことは外務大臣も恐らく御承知だろうと思うのです。そういたしますと、朝鮮民主主義人民共和国の向こうの人に対して、一体あなたはどういう方法で相手に対して、そういう心配はないのだということを説明なさるつもりですか、お聞きしたいと思います。
  38. 園田直

    園田国務大臣 ただいま行われておる有事の際の体制あるいはこれに基づく立法の研究論争というものは、そのような場合のことではなくて、全く切り離して、国内の防衛の体制を研究されておるものであることは間違いないと存じます。  なお、その新聞に書かれたからといって、私は、格別これに対する弁解をする段階ではないと存じております。
  39. 高沢寅男

    高沢委員 日中条約調印された後、外務大臣、あなたは、これからの問題としては朝鮮に対して、つまり朝鮮民主主義人民共和国に対してもその関係を前向きに進める段階に来たということを表明されているわけであります。そうすると、このことを実際にはどういう段取りでおやりになるつもりか。その具体的な段取りの中に、いま私の申し上げた、相手が非常な不安を感じておる、非常な日本に対する疑いを持っておる、このことを解きほぐすためにどういうふうなことをおやりになるつもりか、それをお聞きしたいと思います。
  40. 園田直

    園田国務大臣 日本外交の今後の大きな課題は日ソ関係を、友好をさらに緊密に進めていくこと、それから朝鮮半島における平和と安定、そして両国が平和的な話し合いの上に統一されるということに対する国際環境づくりの努力が必要だと考えております。したがいまして、今後は、人的交流あるいはその他いろいろな問題が起こっておりますが、事あるごとにそういう機会をとらえて、まず相互理解を深め、交流を積み重ねていきたい、そして逐次目標の方に前進したい、こう考えておるわけでありますが、いまの問題で新聞の論評に書かれたからといって、特別これを外務大臣が弁明、釈明等をすることは、かえって痛くない腹を探られる、他の国に対してもそういうものであると考えております。
  41. 高沢寅男

    高沢委員 私は、新聞に出たからすぐどうこうということじゃなくて、私の考えでは、これから対朝鮮関係を前向きに進めるということになれば、まだ国交はありませんけれども、何らかの政府ベースの、日本側と朝鮮民主主義人民共和国の間の接触やアプローチは当然あるべきだと思うのです。そういう接触やアプローチの中でいまのような問題を相手が非常に不安を持っておる、疑いを持っておるということに対して、それをほぐしていくという具体的な問題は、新聞に出たからということではなくて当然に必要になってくる、私はこう思って実はお聞きしたわけです。  この点について私の評価を言えば、きのうから議論されている全方位外交、この全方位外交というのは、要するに全方位ですから四方八方全部、三百六十度ですね。三百六十度というのは形に表現すれば丸い円になるわけです。日本外交はこれだということになると思うのですが、ただ、その丸い円の中に一つ軸が通っておるのです。その軸がつまり日米安保だと私は思うのです。その軸の先をよく見るとやり先がついておる。そのやり先が、いま私が言ったように、どうも朝鮮を向いているということじゃないのか。そうすると、この段階で朝鮮の方を向いているこのやり先は、ここでは取り除くべきだというふうに私は思うのです。  そうなってこそ全方位外交という本来の趣旨になる。さらには、軸の日米安保も当然取り除くべきだというのはわれわれの考えですが、いまはそこまでは言わないにしても、少なくともその先のやり先は取り除くということが必要ではないか、こう思うのですが、この総合的な判断についてひとつ大臣のお考えを聞きたいと思います。
  42. 園田直

    園田国務大臣 全方位外交とは、いまおっしゃったように、平面的なものではなくて球であることは事実であります。立体的なものであります。しかもなお、その中で一部まだ欠けておるところは二、三ございますが、こういう点を埋めるために努力をすることは当然だと考えております。
  43. 高沢寅男

    高沢委員 では次に進みたいと思います。  この条約が、日中間の戦後処理日中共同声明で済んだ、こういうことで、その上に立って、しかもなおかつ今度の日中平和友好条約を結ぶということになったのは、そこにはやはり覇権反対という問題が非常に大きな目的であったということではないかと私は思うのであります。この平和友好条約がまんじゅうであるとすれば、覇権反対はそのあんこであるというふうな関係ではないかと思います。それほど重要な覇権反対なんでありますが、きのうのわが党の安井委員質問に対して、では具体的に覇権とは何なんだ、こういうことに対する御説明が、一つは抽象論で、自国の意思を力によって他国に押しつけるというような行為で国連憲章の平和の原則に反する、そういうものは覇権行為だ、これは大変抽象的な御説明であります。  そこで安井委員から、それでは今度は具体的に、たとえば北方領土の問題とか、竹島の問題とか、尖閣列島の問題とか、あるいは日米安保の問題とか、こういう実例を挙げて、これはどうなんだとこう聞いたところが、一つ一つの問題になると、それは必ずしも覇権とは規定しないとか、それは覇権とは考えていないとかいうようなことになるわけであって、具体的な問題になると覇権という概念はどうもあいまいじゃないのか。そうすると、これほど重要な問題として、日中条約の一番のいわばあんことしてつくった覇権条項というのが具体的な問題になるときわめてあいまいもこで、どうにでも解釈できるというようなことになってくるのでは、これは余り意味がないのじゃないのかという感じになるのですが、この点は大臣のお考えはいかがでしょうか。
  44. 中江要介

    ○中江政府委員 覇権の具体的な内容あるいは覇権に反対するということの持つ意味につきましては、いま高沢先生が御指摘になりましたように、昨日そういう趣旨の説明政府側からございました。それで、そういうことではあいまいで意味がないではないかという御批判でございますけれども、昨日も申し上げましたように、覇権に反対するというのは一つの原則を表明したものだ、一般的な原則を表明したものである。しかも、日本中国も覇権を求めないということがまず骨子にある。日本は覇権を求めないし、中国も覇権を求めない、これが第二条の骨子でありまして、日中双方がそれぞれ覇権を求めない以上、第三国が地球のいずれの地域におきましても覇権を求めることには反対である、これもまた当然の立場であろう、こういうふうな認識で、そういうものを子女孫々までの恒久的な平和友好関係一つの基礎に原則として据えるというのがこの条約の真意であろうと私どもは受けとめております。  その原則が具体的にいかように適用されるかという問題は、これからの将来の問題として日中それぞれが慎重に対処していくことになろうということでございまして、内政不干渉とか主権尊重とか、いままで国際社会にはいろいろそういった原則がございます。これは抽象的な原則であるからといって意味がないかというとそうではなくて、そういう基本的な考え方をはっきり打ち出すということにまず意味がある。この原則に従って具体的な事象にどう対処していくかということは、それぞれの国がその具体的な問題に対して慎重に検討してその態度を表明していく、こういうことを昨日来申しておったわけでございまして、いま起きている事象に直ちにそれを当てはめてどうだというような御質問に対しては、私どもとしては慎重に考えなければいけない。いわんや、新しくこういう原則を打ち立てたいまの段階でございますので、いまどれがどうということはむしろ申し上げない方がこの原則を守っていくゆえんではないか、こういう考えすらしておるわけでございます。
  45. 高沢寅男

    高沢委員 そうすると、具体的なケースで、相手が中国でありますから、その中国との関係で言いますと、これももう何度も議論されたことですが、いわゆる安保の台湾条項の問題についてもう一度お尋ねしたいと思うのです。  この台湾条項は、あの台湾地域においてもし紛争が発生したときは、日本から米軍が台湾地域へ出動していくということなんでありますが、その出動していくときは米軍の戦いの相手はだれかと言えば、これは当然中国が相手だ。台湾が相手じゃないのですね、中国と戦うために出動していく、こういうことが日米安保の台湾条項であったわけです。それが今度は日中平和友好条約ができた、こういう事態の上に立って、その台湾条項はもうなくなるのが当然じゃないかという形で、私たちはいままでもこの外務委員会で何度もそれを問題にしたけれども、政府側としては、日中関係がそうなったにしても、しかし日米安保の台湾条項には変化はない、こういうふうに答えられてきたわけです。  ただその場合には、情勢としてはもうそういう心配はなくなったのだということがその前提にあって、したがって条約上変化がない、こういうふうな言い方をされてきたわけですが、私としては、情勢としてそういう心配がないということになってくればなおさら、そういう条項はある必要がないということになるのであって、したがって、こういうものはこの際外すべきだ。先ほどの全方位の例で申し上げれば、安保という軸の先のやり先を見ると、いままでは朝鮮だけではなくて中国にも向いていた。そのやり先をこの際外すということが妥当な取り扱いの態度じゃないか、私はこう思うのですよ。  ただ、これについては、中国側もそういうものがあってもいい、こう言っておるということが伝えられるわけであります。昭和四十七年ですか、日中共同声明ができて、そして田中総理が北京から東京へ帰られて、その帰られたときの新聞記者会見外交青書に載っております。この中でこの安保の台湾条項が問題になったとき、田中総理は記者団の質問に答えて、いや、そういうものは中国だってあってもいいと言っておるのだ、だから問題じゃないのだ、こういうような答弁をされたわけですが、今度、外務大臣がこの八月に中国との交渉をされて、その中でやはりそういうようなやりとりをされたのかどうか、これをお聞きしたいと思います。
  46. 園田直

    園田国務大臣 今度の会談では、正式にも非公式にも、台湾に対する話は両方から全然出ませんでございました。したがって、六年前の共同声明もそれから今度の条約も、それにはかかわりなく締結されたものでございます。
  47. 高沢寅男

    高沢委員 それでは、今度はなかったというのは大臣のお話のとおりに受け取って、そういたしますと、共同声明を結ばれるときに田中総理が、中国側もそういうものはあってもいいと言っておる、こう言われるその中国側というのは、一体だれがそういうことを言われたのか。これは大変重要な問題ですから、ひとつ確認をしておきたいと思うのです。これをお聞きしたいと思います。
  48. 中江要介

    ○中江政府委員 当時の記録をちょっと手元に持っておりませんので、はっきりした御答弁が申し上げられません。後刻、調べまして御返事いたします。
  49. 高沢寅男

    高沢委員 それではこの点は後へ保留いたしまして、最後に、今後の日ソ関係ということでお尋ねをしたいと思います。  いま、日ソというと、何といっても善隣協力条約という問題が問題になっています。それで、この関係でことしの二月の予算委員会において、わが党の岡田委員外務大臣との質疑応答の中で、ソ連側から善隣友好条約の草案が渡されたけれども、これはもう検討する対象とか外交ルートにのるものじゃないのだ、こういうやりとりがあって、では、そういうものなら返せばいいじゃないかというふうに岡田委員質問された。それに対して園田大臣は、いや、これは二国間の問題で、何かの役に立つこともあろうから返しませんというふうな答弁をされております。この何かの役に立つこともあろうというのは一体どういうことを意味するのか、説明をお願いしたいと思います。
  50. 園田直

    園田国務大臣 善隣友好条約案は日本平和条約案と同様、こちらから出した平和条約案は儀礼上預かるだけだ、私の方も善隣友好条約は儀礼上預かるだけだ、こういうのが最後の結末でございます。そこで、昨日申し上げましたが、今度ニューヨークでグロムイコ外務大臣と会ったときにその話は出ました。そこで私は、日本は重要な隣国である貴国との友好関係を従来どおり積極的に進めていきたい、そのためにはいろいろ話し合いをしたい。善隣友好条約は、あなたの方も預かっただけ、私の方も預かっただけだということになっておるが、あなたの方は外交慣例を無視して一方的に公表をされた、こう言ったら向こうは、公表しないという約束はしなかったじゃないか。まあ、これはこれで終わって、そこで善隣友好条約に対する私のグロムイコに対する返答は、わが国は従来どおり、未解決の問題、北方四島の問題を含めて、平和条約締結が先である。それができたら友好条約、これを拒否するものでは決してない、話し合いには乗る、しかし、いま出されておる善隣友好条約の内容には反対であります。こういう返答をしておいたわけであります。
  51. 高沢寅男

    高沢委員 私は前に外務委員会において、ソ連側が善隣友好条約の案を向こうでは発表した、そうすると、日本平和条約の案を向こうへ渡してあるわけですから、こちらもこちらの案を発表したらいいじゃないかということをお聞きした。しかし、その際大臣は、それは発表する考えはない、こういうお答えであったわけですが、私はもう一度、発表したらいいじゃないか、こう思うわけです。  ただ、その内容として一つお聞きしたいことは、恐らく政府が主張されている四島返還という内容はその中に織り込まれているのだろうと思うのですが、その場合にこの関係はどうなりましょうか。その四島以外の千島それから南樺太、これについては日本側が渡した平和条約の案の中には、これはもう日本のものではない、ソ連の領土であるということがはっきり書かれているのかどうか。私がそういうことをお尋ねするのは、実は外務大臣もおやりになった宮澤喜一さん、この方と私、自民党、社会党の政治討論をやりましたときに、宮澤喜一さんから、四島の返還は要求するけれども、それ以外の千島、さらには南樺太、これはサンフランシスコ条約で放棄しているのであるから、これの返還要求ということは、政府立場としても、自民党の立場としてもそういうものはもうないのだということをはっきり断言されているわけですが、この平和条約の案の中にはそういう内容の規定がされているのかどうか、お尋ねしたいと思うのです。
  52. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 園田大臣が先方に渡されました日本との平和条約の草案につきましては、これは外交文書としてソ連側に私どもが渡したものでございますから、その内容についてここで触れることは控えさせていただきたいと思いますが、日本政府の対ソ主張は一貫して四島の一括返還ということでございますので、この点は当然日本側の主張するところでございます。  なお、その他の点につきましても、ただいま申し上げました理由で、先方に渡した案の中に入っているかいないかという点ではなくて、そういう点については触れることは控えさせていただきたいと思いますが、この点につきまして日本政府見解は、ただいまお述べになりましたように、宮澤外務大臣が申しましたとおり、桑港条約におきましてすべての権利権原を放棄しております。そのような立場でございます。
  53. 高沢寅男

    高沢委員 じゃ、もう時間が終わったと催促されていますから、もう一つやって、それで終わりたいと思います。  私は、日ソ間の善隣協力条約とそれから平和条約、これについては、私見でございますが、むしろ並行審議をやったらどうか、こう思うのであります。並行審議で交渉を進めて、妥結については、同時妥結ということもあろうし、あるいはまた、片方のめどがついたときには多少時間の前後があっても片方も妥結できるというようなこともあろうかと思うのですが、そういうやり方はどうかと思うのです。そして善隣友好なり平和条約なり、そういう中で、いまこれほど覇権問題がやかましいときでありますから、したがって、今度はソビエトと日本と、この両者の関係においてともに覇権を求めないということを確認し合う、こういうような内容を入れる、そういうことでひとつ前向きに取り組まれたらどうか、こう思うのですが、いかがでしょうか。それをお聞きして終わりたいと思います。
  54. 園田直

    園田国務大臣 日本の基本方針は先ほど申し上げたとおりでありますが、相手があって交渉することでございますから、ただいまの御意見は重要な参考意見として承っておきます。
  55. 高沢寅男

    高沢委員 それでは以上で私の質問を終わります。
  56. 永田亮一

    永田委員長 石井一君。
  57. 石井一

    石井委員 私は日中平和友好条約を歓迎する立場から、約三十分の質問をいたしたいと存じます。特に大臣との話し合いが多くなるであろうかと思うわけでありますが、昨日かなりの問題が出ておりますので、重複を避けて、明快に、また補足的に御答弁をされるべきところはしていただきたい、こう考えるわけでございます。  そこで、最初に基本的な見解を申しておきますが、明治百年の歴史を顧みて、中国大陸に起こった問題は日本の経済政治体制に大変な影響を持ってきた。第一次大戦、第二次大戦を交えたこの両国が画期的な友好条約を結んだということは、これはひとり両国の問題でなく、世界的な評価を受けるものであり、また、社会体制の違った両国が、特に覇権条項において、これも批判のあるところでありますけれども、要は、超経済大国と超軍事大国がアジアにおいて自粛をするという自己規制を大きく内外に示した、そういうふうな意味でも、非常に質的にも違った条約である、こういうふうに評価いたしております。  それからまた、大体、条約政府が進んでやるものでございますが、この条約締結の過程におきまして、わが党では松村謙三、藤山愛一郎諸先輩、また田中総理の厳しい決断などを経まして、長い時間がかかりましたけれども、議員外交を中心に推進をしてきた。政府を督励しながら今日まで持ってきた。野党も非常な積極的な意欲を示した。そういう意味では、一部の反対はわが党の中にもございますけれども、国民的なコンセンサスをある程度得たという形で、した。しかも最後の段階で野人外相と申しますか、あなたが画竜点睛を欠くことなく、決断と勇気をもってこれを締結したということに対しても、ひとつ敬意を表したいと思います。  そこで、最初はごくごく事務的な問題でございますが、条約の第五条で十年の期限がついております。こういう内容のものについては非常になじみませんし、前例も少ない。そこで、理由は結構でございますが、十数回の交渉の中でどちらがこの十年の期限を提示したのか、どちらのサイドであったかということを、まず簡単にお答え願いたい。
  58. 中江要介

    ○中江政府委員 交渉の経緯、特に個々の案文につきましてどちらがどういう案を出して、他方がどういう反応を示したかというようなことは公にできないことになっておりますので、ただいまの御質問に対して的確にお答えはできませんが、この第五条は、日中双方の事務レベルで話し合った結果、円満に妥結したものであるということだけは申し上げることができるわけです。
  59. 石井一

    石井委員 そういう答弁だと、それについてそれ以上追及はいたしませんが、この点は、この条約の性格にも影響のある、非常に重要な問題であろうかと思います。何ゆえに十年の期限をつけなければならなかったのか、何か大臣としてのコメントがありましたら、ひとつお願いしたいと思います。
  60. 園田直

    園田国務大臣 これは事務折衝の中で両方が話し合った結果、こういうふうにしたわけでありますが、御発言のとおりに、未来の長きにわたる協定というのは、期限なしでやるか、あるいは廃棄の通告だけ規定しておくかというのが慣例だと思いますが、話し合いの結果、まあ十年一昔ということもあるから、十年たった上で廃棄の通告ができる、こういうことにしよう、こういう意味でやったものでございます。
  61. 石井一

    石井委員 尖閣列島の帰属問題でございますが、これは平和条約を結ぶのであるから、領土問題ぐらいはきっちりしてもらいたいというのがやはり国民の声であったと思います。しかし、大臣の内輪話などを聞いておりますと、御苦労のほどもわかるし、今回の鄧小平副首相とのトップ会談で実質的な解決は得られておる、今後の問題は少ないと私たちは判断いたします。ただ中国が領有権を放棄しておるかといいますと、これは問題がある。しかしこれはトップの会談でもありますし、相当の国際法的な効力もあるということも認める。私は、オール・オア・ナッシングという解決がありますが、条約を生かすためにここまで持ってきて精いっぱいだ、万やむを得ぬというふうに考えるわけでございますけれども、ただ、あなたは講演の中等で、正式に認めたわけではないがこれ以上できなかった、だからがまんして年々実績を積んでいくことが帝国海軍を持たない日本外交のぎりぎりの線ではないか、ここまではっきり物を言っておられる。がまんして年々実績を積んでいくということは、何もせずにじっとしておくということか、どういう実績を積もうとしておるのか、これについてお答えをいただきたい。
  62. 園田直

    園田国務大臣 当時の主なる――主なるではなくてそのままを申し上げますと、私は尖閣列島の問題についての日本立場を主張したわけであります。続いて、この前のような事件があっては困る、これは絶対に慎んでもらいたい、強い要請をいたしました。これに対して鄧小平副主席が手を触れながら答えた言葉は、この前のようなことはやらない、ああいう事件は絶対にない、二、三回繰り返されて、いつまででもいまのままでもよいではないか、こういう言葉があったわけであります。  そこで、私としては正直に言って一番恐ろしかったのは、私が日本立場を主張したについて、それに反論があるとかあるいはそうではない、これは中国のものだという主張をされれば、そこでこれが紛争地帯になってきて、正式の会談でありますから、これが今後平和的に解決をしなければならぬという道を残すわけでございます。それが一番こわかったわけであります。したがって、向こうから日本のものだと認める言葉一つもございませんでしたが、いつまでもいまのままでよい、この前の事件は絶対にしない、公式の会談でこういうことさえ聞けば、あとは日本は古来の領土であるというちゃんとした主張も明文もあります。現に固有支配をしているわけでありますから、これはもう日本の固有支配、日本のものであるという実績が年限とともに固まってくる、こういう意味でございます。
  63. 石井一

    石井委員 そこで、そのままの議論はもう十分理解した上の、今後どう対処されるかということを聞いたわけでございますが、まあまあニュアンスとしてはわかりました。この中国側の発言は、領有権は放棄しないということでございますが、放棄すると言えないという苦しい政治的立場があるように思います。現時点でこれを詰めるということは台湾問題にも大きな問題がひっかかってくる、台湾中国の一部であるということを言っておるわけですから。このもともとの発言は台湾の領有権の主張ということから問題が始まっておるということになりますと、将来、台湾問題が解決したときにはこれは正式に文書を交わすとかなんとかしてこの問題のけりをつけなければいかぬと思いますが、そのときまではそっとしておく、こういう感じですか。
  64. 園田直

    園田国務大臣 向こうでは、いまお言葉にありましたけれども、領土権や領海権は中国が捨てるという発言はなかったわけで、私が言ったとおりであります。したがいまして、これはわれわれが言っているとおりに日本固有の領土であるというあれでございますから、日本領土として日本がこれを支配していけば、これはもうこちらから持ち出して解決すべき筋合いのものではない、こう私は存じます。
  65. 石井一

    石井委員 私は、確実な百点満点の回答ではないけれども、領土問題、この尖閣問題に対しても相当の前進がある、それは評価をしながら、今後の対処についての一、二の問題点指摘しておいたわけでございます。  そこで、時間がありませんので覇権の問題についてお伺いをしておきたいと思います。  これは覇権条項が入ったということは、そもそも覇権というのはわが国の国是であります。武力を持たない、資源を持たない国が覇権を求めてどうなるかということになります。そして、長期的に見て、やはりこれは世界的な平和に貢献するという意味でも私はこの基本的な考え方というものを評価をするわけでございますが、ただ、二条と四条との関係で、まず二条では、中国側の強硬な覇権姿勢に日本が乗らざるを得なかった、こういう評価国際的にはあります。しかし、四条を挿入することによってある程度色を薄めた、こういう評価もあることは確かでございますけれども、ただ最近の中国の発言を見ておりますと、かなり厳しいものがあるわけですね。そうすると、二条と四条とを第三国はどう見て、どう評価するかということになりますと、そこにはやはり中ソの関係の険悪さということから、どうしても日本が誤解されたり、それらの紛争に巻き込まれるという危険性は客観的に十分ある。  鄧小平副首相の新華社を通じての中ソ条約、軍事同盟の破棄なんというのも、これは宣戦布告じゃありませんけれども、相当厳しいソ連に対する一つの対決姿勢の打ち出しだろうと思います。たとえば八月十四日の人民日報に「目下、世界で暴虐をほしいままにしている覇権主義に反対することは、中日平和友好条約中の重要な内容でもある。中日平和友好条約調印は、ソ連社会帝国主義の干渉と破壊の陰謀の恥ずべき破産を宣告した。」日中はこれを結んだことによってソ連の陰謀を破壊したとまではっきり書いておる。それは相手国対ソ連のことではございますけれども、第三国との立場もあり、日本はやはり日本としての見解、コメントを第三国にはPRする必要がある。この点はいかがでしょう、大臣
  66. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御発言は、そのとおりだと考えております。交渉の経過においても、議事録に載っておりますが、この点は明確に私は中国には言っております。今後そういう不安や誤解を与えないように努力するのがわれわれの責任であると考えております。
  67. 石井一

    石井委員 それでは、ソ連との外交というものがわが国の最も懸念すべき新しい課題である。ソ連と中国に対しての全方位外交において濃淡はないなんて言われますが、もう中国に対しては相当の濃の部分を示したのですから、ソ連と生まれた新しい問題点、デメリットをいかにこれからカバーしていくか、これは日本外交の基本的姿勢でなければいかぬと思います。  そこで、これは善隣友好条約締結ということを申しますと、必ず政府的な見解答弁が出てまいりますので、これは昨日の曽祢さん、いまの高沢さん等の議論も出たところでございますから、私はただ、考えますのに、四島返還と日ソ平和条約一本やりの日本外交姿勢というのには少し弾力性が欠けるんじゃなかろうか、硬直過ぎるんじゃなかろうか。それではわれわれはもちろん、国民的コンセンサスとして四島返還は絶対に譲るべきではありません。その大原則は、いかなることがあっても下げることのできない大原則でございますけれども、それかといって、それだけを振り回しておって、いま非常に厳しくなってきたソ連との外交をどうして打開するか。  そこで、いろいろのことが考えられるわけでございますけれども、たとえばわれわれの立場考えずにソ連の立場になったら、あれだけ反対しておる日中の条約日本は結んでおるじゃないか、領土問題だって、四島と尖閣とは比べものにならぬ、月とスッポンほど違いますけれども、これはわれわれの主張であって、領土問題だってある意味においては未解決ではなかろうか、そういう状態でそういう条約を結んでおきながら、われわれに対してはなぜそうかたくなな態度で出てくるんだ、こういうふうに考えられても仕方がない。  私はそういうふうなことを考えましたら、同時審議というふうなこともありましたけれども、要は、まだ向こうはある程度リベラルな姿勢を示しておる。日ソ善隣協力条約に対して日本側が対案を出せば、名称のいかんを問わず検討の用意があるとまで言っておるし、経済協力に対してもいろいろなことを言っておるというのが向こうの姿勢です。私は、ある意味においてソ連側の態度というものを評価すべきである。そこで私は、善隣友好条約を結べとは申しませんけれども、少なくともソ連との交渉に入り、領土問題は継続協議として今後やるという合意を結びつつ何らかの糸口を見出してこなければいかぬ。園田さんほどの人がソ連に対して余りにもかたくなな姿勢をとり過ぎておると思うのでございますが、いかがですか。
  68. 園田直

    園田国務大臣 二国間の利害が相反する問題あるいは共通する問題があるわけでありますが、そういう義務、権利、国益に関する問題でありますから、基本的な方針は先ほど申し上げたとおりでありますけども、今後よく話し合い、機会をつくり、相互に理解し合い、いろいろ検討したいと考える、ただいまの御意見も重要な参考といたします。
  69. 石井一

    石井委員 ソ連側から提示された善隣友好条約、これはだめだというような御発言、御意見があるようでございますが、これは検討された後にだめだというふうに結論を出されたのか。また、だめな場合はどの点がだめだとお考えになっておるのか、お伺いしたい。
  70. 園田直

    園田国務大臣 いま出されたものの内容は賛成はできませんが、ということで言ったので、向こうもそれ以上聞きませんし、私もそれ以上具体的には触れませんでした。
  71. 石井一

    石井委員 四島問題と平和条約にこだわり過ぎておるために、これはわれわれとしてこだわらざるを得ないわけでありますけれども、その問題の内容についても頭からだめだという姿勢は、かえってこちらからソ連に対して門戸を閉ざしておるという感じにさえ見えます。私は、北方の漁業操業を見ても、日本海におけるソ連の軍事的な脅威というふうなことを考えても、今後の日本外交というのは、ソ連に注意し過ぎても注意し過ぎることはないくらい重要な段階に入っておる、その時点においてソ連にまだそのような、こういう形でのいろいろのプロポーズのある段階において、もう少し柔軟な姿勢をとっていただきたいと思う。  そういう意味において、善隣友好条約を先行させるとか、平和条約をどうせいとかと言いませんけれども、いろいろとその交渉をしておるということだけでなく、もう少し具体的な詰めというものをやっていただきたいと思いますが、この点は大臣の御所見はいかがでしょうか。
  72. 園田直

    園田国務大臣 友好条約日本の案を出せというのは情報でありまして、正式に日本に持ち込んできておるわけではございません。そこで、このような問題はやはり潮どき、時期、いろいろありますので、これは十分検討して、かたくなな姿勢ではなくて、基本方針をなるべく守りつつ、話し合いを進めていきたい、こういうことでございます。
  73. 石井一

    石井委員 それでは一歩前向きの御答弁が出たと思いますので、この点はこの程度にいたします。  そこで、最近、本年三月に公布されました中国の新憲法、これに、真正な中国領土である台湾省を必ず解放する、祖国統一をなし遂げる、こう書いてあるのですが、これまで中国の、こういう特に憲法前文、象徴的なとろに、こういうものが新しく明記されてきたということはどういう意味なのか、これをどういうふうに外務大臣は理解されておりますか。
  74. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいま御指摘の本年三月五日採択されました人民共和国憲法前文の一節でございますが、これは中国憲法でございますので、中国がとっておる立場に基づいてこういうことが公にされたということは言うまでもないことでございます。中国がそういう立場を、つまり台湾というのは中華人民共和国不可分領土の一部であるというのは、これは日中共同声明の中でも中国側立場として重ねて表明されているところであります。したがいまして、このことについて、日本が、その中国立場を十分理解し、尊重するという立場をとっております日本立場から、この前文の一節についてコメントするということは、これは一般の常識として適当なことではないと思います。  で、これはどういうふうに受けとめるかというと、私どもは、この文字どおり受けとめるほかはない、こういうことだろうと思います。
  75. 石井一

    石井委員 どうもあなたの答弁は専門的で、議論がかみ合わなくなりますが、わが国の一部には、中国は好戦的な国であり、非常に危険な国家であるという考え方がございます。そこへ持ってきて、これまで言わなかったようなこういう文面が憲法前文に出てまいりますと、これはますますもって、台湾を武力解放する、こういうふうに考えられると思うのですが、私は、そこにはっきりとした武力という明示もなければ、中国が一部であるという年来の主張も正しいし、これを解放するのだという意欲と自信のあらわれではあるけれども、できればこれは平和的に解決する、そういうふうに読む、意欲だというふうにとりたい。これは願望であるかもわからぬけれども、また、客観的な情勢といたしまして、最近のブレジンスキー補佐官の中国訪問におけるあの演説、また陳全国人民代表大会の常任委員中国台湾問題に対する中国の三条件等々、米中の間にかなりの話し合いが進んでおる。台湾問題を解決するということは、やはり米中関係ということになると私は思うのであります。  そこで、大臣、日中条約締結される事前にもアメリカと協議をされてまいったということでございますけれども、この台湾を平和的に解決するということは、やはり日本とアメリカがしっかりせねばいかぬということだと思うのであります。日本とアメリカとの対話、日本中国との対話ということによってこれを平和的に解決する。また、そういうことが射程距離に入ってきた。いまや中国が、あれほどの大国が、どうして台湾に対して武力を使うか、これは非常に時代錯誤もはなはだしいと思うのでありますが、この考え方について、あなたは同調されるでしょうか。いかがですか。
  76. 園田直

    園田国務大臣 友好条約を結ぶ前にアメリカと十分協議したという御発言でございますが、これは全然ございません。私が外国の指導者に向かって、時期は明確ではないが遠からず友好条約締結すると言ったのは、ソ連のグロムイコ外務大臣が初めてであります。アメリカにも、近く結ぶことになるであろうということを言っただけで、協議をしてはおりません。  それから、米中関係は、上海共同声明以来、米中が盛んに努力をして、前向きにいっておるようでありますが、どの程度進んでおるかは私はよくわかっておりません。ただ、私は、外務大臣として言えることは、あの地域において武力紛争が起こる可能性はないということだけは確信をいたしております。
  77. 石井一

    石井委員 中国側台湾の同胞に対しての思いやりのある発言が最近たくさんございます。また日本にとっても台湾は古い友人だと思うのであります。また、日本にとって生命線である台湾海峡ということを考えましたときに、あの地点の安全を考える場合に、日本はもう少し積極的にアメリカとも中国とも話し合いをする必要がある。  それからまた、台湾を安全に確保するというのは、米、中、日のトライアングル、三角形の中に台湾を置く、こういうことによる以外に、緊張を高めてこの安全を守るというわけにはまいりません。私は、そういう意味でも日中平和条約評価したい、そういうふうに思うわけでございます。  時間がありませんので、もう一点、中国への技術協力、軍事協力が今度大きくなる。軍事協力はやられぬと言われますが、最近の新しい科学技術の進歩の中で、これが軍事か非軍事かわからぬというふうなことも起こり得る。われわれがもしそういうフィロソフィーあるいは一つの基本的なガイドラインというものを守るのであれば、何らかの形で、これはやはり外務、通産等が中心に、一つの基本線を検討しなければいかぬ時期が来ておると思いますが、この点はいかがでございましょう。
  78. 園田直

    園田国務大臣 軍事協力はできませんということは明確にいたしておきました。それがどのような程度のものになるか、これはココムなどもありますから、仰せのごとく、そのほか中国との経済関係においては排他的にならないように、あるいは集中豪雨的にならないように、お互いが繁栄できるように、通産省とよく相談をいたすことは、発言のとおりにいたします。
  79. 石井一

    石井委員 時間がありませんから、ひとつあなたの感触だけを伺っておきますが、もう一つ問題として残っておりますのは朝鮮半島でございますが、最近韓国とソ連との接触があった、そういう事実がございます。これを歓迎されておるのか、複雑な気持ちで見ておられるのか、またこの動きに対してわが国の政策は何らかの変更があるのか、一言で結構ですからお答えをいただきたい。
  80. 園田直

    園田国務大臣 日本がどこの国とも話し合いを進めて相互理解をすることはよいことであると同様、私は、お隣の韓国がいろいろな国と交流をされることは結構であると考えております。日中友好条約締結及びこのことによって日本の韓国に対する方針は変化はございません。
  81. 石井一

    石井委員 私は、きょうは、これを推進し賛成する立場から、尖閣の帰属あるいは覇権問題の第三国に対する影響、また対ソ外交に対する積極的姿勢の要請、また台湾海峡の問題等について問題を提起しておきました。日中平和友好条約を結んだからこれで万全、すべてが終わったということでなしに、日本外交の展開はこれからだ、いよいよ厳しい大勢にある、そういうことで日中平和友好条約は新しい日本の全方位と申しますか、自主外交の始まりである、こういう考え方で、この条約締結にとられたような積極果敢な姿勢を外交政策において展開していただきたい、こういう希望を申し述べまして質問を終わりたいと思います。
  82. 永田亮一

  83. 石原慎太郎

    ○石原委員 今回締結されました日中友好条約に対するいろいろの評価があるようでございます。私も慎重派の一人でございましたが、引き続いて私の友人の中山委員浜田委員質問されますから、私はピアニシモに、後にフォルテが高らかに鳴ると思いますので……。  さきにいろいろ実務協定が締結されておりまして、それが先行して、友好条約が後という逆な順になりましたが、私も慎重派ではございますけれども、これがこの時点で締結しないとなると中国政策をめぐって国内の分裂が非常に深まったのではないか、ある意味では一つの潮どきであったという気がいたします。ともかくも条約締結されまして、日中関係、ひいてはアジアの国際情勢に新しい大きなページが開けたという感じは強くいたします。そしてまた、世界の国際情勢全体にも非常に大きなインパクトになったという感じがいたします。お読みかどうかわかりませんけれども、いま評判のNATOの将軍が書きました架空の第三次大戦の小説の中にも、一九八〇年代の東西対立に対して日中共同体制が非常に大きなインパクトになるというふうな想定で書かれております。  ただいろいろ不明な点がございます。御承知のように締結前の日本の世論は、特に尖閣列島への侵犯事件が行われました後、慎重にというのが圧倒的な過半の意見でございましたし、自民党、与党内でもそうでございましたが、そういう人たちがいまひとしく抱いている疑問点について二、三お尋ねしたいと思います。  第一は、きのう塩崎委員も的確に指摘されておりましたけれども、この条約の性格がどうもよくわからない。その締結後も、日中両国あるいは外国のこれに関心を持つ人々の、条約に対する評価なり力点というものがみんなばらばらでございますが、日中間にこの条約に対する評価、力点の微妙なあるいは大きな違いが現在もあるというふうにお考えになりますでしょうか。
  84. 園田直

    園田国務大臣 しばしばお答え申し上げましたとおり、この友好条約というものは、締結後この友好条約に基づいて日中が本当にアジアの平和と繁栄のために、ひいては世界の平和のためにその責任を果たすかどうかということにあるわけでありまして、むしろ今後非常な責任があるわけで、いま御発言のとおり十分注意をしながら、この友好条約の本旨に従い、各国に対する外交を展開していかなければならぬと考えております。
  85. 石原慎太郎

    ○石原委員 おっしゃいますとおり、食い違いというのは明らかにあるわけでございまして、それに対して日本側が日本側のイニシアチブでこの条約にはっきりした性格をつけていくという努力を不断に行わるべきだと私も思います。  第二は、先ほども高沢さんの方からも御質問がありましたが、覇権ということに対する思惑や解釈というものに違いがどうもあるような気がいたします。キッシンジャーは、七二年の上海米中共同声明の反覇権条項両国の対ソ政略ということからしてもあくまでもソビエト一国に限られているが、今回の、覇権を求めるいかなる国にも反対という条文になると、国際情勢いかんによっては、中国の判断いかんによっては、アメリカをも反覇権の対象にし得るという危険があるということを言っております。日中間の覇権条項を議論し、ああいう形で条文の中におさめる際の最低限のアイデンティティーということからして、これは非常にやぼな質問かもしれませんけれども、先ほども高沢さんから、幾つか具体的に例を引かれて、これが覇権に該当するかしないかという質問をされましたが、私も同じ質問をしたかったのですけれども、たとえば尖閣列島の問題について鄧小平副首相が、ああいった事態は今後起こさないと言われたことは、あれが偶発的な事件であったか、作為的なものであったかということは、実は世界的ななぞでございますが、少なくともああいう行為が今後繰り返されたならば、これは中国側一つの覇権行動である、そういう意味の反省を込めた鄧小平副首相の発言であったと解釈してよろしいでしょうか。
  86. 園田直

    園田国務大臣 鄧小平副首席は、この前のような事件は、あれは偶発事件であるが今後は絶対にやらないと公式の会談で明言されたわけであります。これは議事録に載っておりますから、ああいう事件は今後はないと存じます。
  87. 石原慎太郎

    ○石原委員 好ましくない事件であるから今後起こさないということでございましょうが、たまたま一番重要な核心である覇権の問題について議論が沸騰した中でああいう形で条約が結ばれたという際に、尖閣に触れて鄧小平のああいう発言が行われたということは、覇権という問題について日中間のみならず世界の重大な関心が集まっているときに、さきに偶発とはいえ行われた行為というものが、覇権という思惑がらみで中国にとっても日本にとっても好ましくないという判断だと私は思いますけれども、その点いかがでしょう。
  88. 園田直

    園田国務大臣 好ましいとか好ましくないとかいう問題ではなくて、日本の古来の領土でありますから、私は日本立場を主張して、ああいう事件は起こさないようにという強い要請をしたのに対して、今後はああいう事件は起こさない、こういうことでございますから、それで結構だと思っておるわけでございます。
  89. 石原慎太郎

    ○石原委員 問題をちょっと移しますが、恐らく今度の国会でも圧倒的多数であるいは全会一致でこの条約が批准されるのでしょうが、しかし、これはまだ未確定のことでございまして、それが決まらぬうちに、批准書交換に相手側の第一副首相がやっていらっしゃるということは、国会というものの権威にいささかかかわるような気がしないでもないのですが、この点どう考えるかということはあえてお聞きしません。  ついでに、よけいなことかもしれませんが、鄧小平副首相は、来日された際いまロッキード事件で非常にお忙しい田中元総理とお会いになりたいということだそうでございますけれども、フォード政権下で問題になったニクソン大統領を北京が呼びましてフォード政権の顔を逆なでした。これは私は中国にとっては余りいいことじゃないんじゃないかという気がするのです。これも私見でございますけれども、政府や与党にはいろいろな立場がございましょうから、北京にはずいぶん親身な野党の方々もいらっしゃるようで、ひとつ日本人の心情について御忠告なさったらどうかという気がいたします。念のために申し上げます。  日中条約はアジアの安定にきわめて役立つという評価がございますけれども、私も、日中友好条約によって中国の近代化に日本が手をかすということ、それが結実していくということは、日本にとっても非常に歓迎すべきことだと思いますけれども、しかし、国際政治のバランス・オブ・パワーと申しましょうか、均衡の中で、中国日本の技術なり経済力によって近代化されていくということが、他国にとっては、いろいろな、非常に微妙な国際関係のバランスを変調させることにはなると思います。たとえば、中国とパキスタンは非常に近しい。そのパキスタンに、中国経由で何か日本の影響力が及んだときに、パキスタンとインドの関係が変わるでしょうし、あるいは中国と北鮮との関係からしても、それによって日本と韓国の国際関係が変わってくる可能性もあるかもしれない。また、ベトナムに対する日本のいろいろな援助というものを、中国は恐らく歓迎しにくい立場にあると思いますが、そういった問題について、これは非常に先のことでありますけれども、しかし、必ず現実になってあらわれてくる問題であります。非常に概観的な問題でございますけれども、そういう予測について、外務大臣いかがお考えでしょうか。
  90. 園田直

    園田国務大臣 まず第一に、批准書交換の予定表には、おしかりを受けないように、批准が完了しておれば二十三日と予定する、こういうことを書いております。  それからもう一つ、鄧小平副主席がぜひ田中前総理にごあいさつをしたいという強い要望でありますが、私は、石原議員と違って、実はずっと前でありますが、マッカーサー元帥が連合軍司令官を辞任して米国に帰るときに、これに対する感謝決議が国会に出たことがございます。私はそれには欠席をいたしました。ところが、マッカーサー元帥が、その後数年たって、無役になってから日本の飛行場に立ち寄ったことがございます。そのときに、日本政府並びに国会の方で出迎え、見送りはございませんでした。私は見送りに行ったわけでありますが、私はむしろ、田中前総理のところへ中国が表敬に行かれるということは、いろいろ批判もありましょうけれども、中国の方の礼儀というか信義というか、義理に強いということで、りっぱなものだなあと、こう思っておる感じでございます。  それから次に、アジアを中心とするほかの国々に対する態度は、御承知のとおりに、大部分の国はこれに歓迎をし、高い評価をしておるわけでありますが、やはりかすかな、日本中国が手を握って強大になるということに対する不安があるし、それから、アメリカ、EC等は、中国の経済、貿易を日本が排他的に独占するのではないかという不安等もございます。その点は十分留意をして、各国に説明をし、あるいはまた、今後の日中両国が責任を持って、実行によって、これが本当にアジアの平和と繁栄のためだという実証を示す必要は、おっしゃるとおりであると考えます。
  91. 石原慎太郎

    ○石原委員 鄧小平副首相の田中元総理の表敬訪問は、私ここで個人的に云々いたしませんけれども、巷間それに対していろいろ意見があるようでございますが、中国にとって、田中元総理がいま抱えられていらっしゃる非常に重大な問題、その窮地というものの本質的な理解というのはなかなかしにくいことでございましょうけれども、そこら辺は社会体制も違いますから、これからも、日本中国に対するイメージ云々ということからしても、老婆心でそういう巷間の印象というものをちょっとお伝えしたわけでございます。  四つの近代化に協力する、この四つの中には軍事が入っているわけでございますが、先般の御答弁でも、軍事協力はしないということですけれども、先日中国の副参謀長が、今後制服組の交流、交歓もしようというオファーをしたようですけれども、これに対して防衛庁は、実際にこの制服組の交流、交歓を考えていらっしゃるのでしょうか、あるいはどういう次元ならば、どういう問題に関してならば制服組の交歓、交流があり得るとお考えでしょうか。
  92. 金丸信

    ○金丸国務大臣 防衛庁は、軍事協力というような問題については考えてはおりません。また、中国解放軍との交流につきましては、具体的な計画は全然いまありません。なお、どういう場合あるのかというようなことにつきましては、先々のことでありますからわかりません。また、張副参謀長は、防衛庁へ見えました。これは、防衛庁独自の考え方ではなくて、これは外交的な問題で、外務省の判断によって、統幕議長、事務次官、陸幕長……。私は会っておりません。
  93. 石原慎太郎

    ○石原委員 先ほど石井委員からも御質問がありましたけれども、私は石井さんと今度の新憲法の中の台湾解放の部分というのは解釈がちょっと違うのです。それは、実際にできないでしょうし、また、中国にとっての利害関係からいって、いますべきでないという判断だと思います。現に中国共産党の対外連絡部長の張香山は、内部文献でございますけれども、はっきりと、当分台湾は蒋政権と米国に貸しておくんだというふうな表現をしておりますけれども、私は、それはやはり中国にとって一番スマートな判断じゃないかという気がいたします。  私は、今度の日中友好条約というものが米中の正常化というものに大きな引き金になるんだという評価もございますけれども、これは非常に反対といいますか、そうは思いませんが、現にブレジンスキーという人の意見というものは、米国の政府の中である意味で少数意見だと思いますし、私は個人的にブレジンスキーを知っておりますが、彼のパーソナルヒストリーということからしても、どうも対ソのあの人の政治判断というものは非常にある形をとらざるを得ないような気がするのです。御承知と思いますけれども、カーター大統領が大統領に当選して就任式の前に、ワシントンのジョージタウン大学でしたか、中国の専門家を集めて、ブレジンスキーもたしか参加したと思いますけれども、数日間討論した結果、結局出た結論は、台湾はノータッチにせざるを得ないということだったようでございますけれども、それを基本的に覆す国際情勢というものはその後アメリカにとっても起こってないと私は思いますが、一言外務大臣にお確かめしたいのですけれども、日中友好条約は、私は、台湾の位置というものを損なってはならないし、また損なうものではないと思いますけれども、いかがでございましょうか。
  94. 園田直

    園田国務大臣 第一に米中の関係でありますが、日本中国が友好条約締結したことが米中関係に影響はないということを考えております。  それから台湾の問題については、今度の会談では双方から全然出ませんでございました。
  95. 石原慎太郎

    ○石原委員 重ねてお伺いしますけれども、日中友好条約が、その結果、つまり台湾地位を脅かすものではないと思いますし、また脅かすべきものでもないと思いますけれども、いかがでしょう。
  96. 園田直

    園田国務大臣 中国の方はわかりませんが、わが国は、友好条約締結によって台湾地域との態度に変化はございません。
  97. 石原慎太郎

    ○石原委員 私もそうあるべきだと思いますし、そのとおりだと思うのです。とにかくアメリカの政略的な観点からしても、日中友好条約というものをアメリカが歓迎するのは、つまり現時点で米中の正常化が不可能に近いということからの理由だと私は思うわけで、そこから当然導き出されてくる台湾に関する結論というものは、外務大臣がいまおっしゃったとおりのものであるべきだと私は思います。  それから最後に、尖閣列島の領有権の問題でありますけれども、いろんな方がいろんな角度で質問いたしました。先ほども外務大臣、改めて鄧小平副首相がいつまでもいまのままでいいではないかということを言われた、そして昨日の委員会でもそれが非常に権威のある、国際関係の上で一つのレジテマシーを持つ発言であるという答弁政府委員の方からもなされましたが、どうもそれでもなお、この友好条約締結の際に領土問題というものがああいう形でしか上らずに、ある人たちから見ればバイパスされたという感じは何かぬぐいがたい気がいたしますし、巷間の識者たちもそういう指摘をしておりますけれども、これが事実上のたな上げとは私は思いたくございませんが、しかし事実上のたな上げであるという論も非常に多くあるようでございます。せんじ詰めると、中国日本の尖閣列島に関する領有権というものを暗にあるいは明らかに認めたという傍証、確証というものは、結局先ほど外務大臣がおっしゃいました鄧小平のあの発言ということになるわけでございましょうか。
  98. 園田直

    園田国務大臣 鄧小平副主席との会談で、尖閣列島が日本の領有権であると認めるような発言はございませんでした。私が先ほど報告したのがそのままの報告でございます。われわれは、尖閣列島は紛争地帯であるとは考えておりません。日本固有の領土であるという明確な確信と、固有支配をやっておるわけでございますから、この前のような事件さえないという約束をとればそれで結構だと思ったわけでございます。
  99. 石原慎太郎

    ○石原委員 しかし、米国は最近尖閣についての中国の言い分というものを追認、確認しているわけですね。これはやはり非常に大きな問題でして、実は私、先月ですかマンスフィールド大使と話し合いましたときに、沖繩返還後の尖閣に関するアメリカの姿勢というものは非常に日本にとって迷惑というか、あいまいで、大変困る、アメリカにとっては日本がバイタルなインタレスト、要するに致命的な価値を持つ存在ならば、この日本にとって欠かすことのできない大きな埋蔵資源を持っていると目されている領土帰属について、当然アメリカがはっきりしたコメントをすべきではないかと言いましたら、大使もこの問題については非常に言を左右し、要するに当事者間で決めることだと言われまして、私はきわめて不満の意を表しましたら、多分あなたがそう言うだろうと思ったと言って笑っておりましたが、これは笑い事では済まないわけで、鄧小平副首相は外務大臣との討論の席では先ほどのような発言をされたということはそのとおりでしょうけれども、しかし一方、鄧小平副首相は一貫して、尖閣について中国の領有権というものを主張しているわけでございます。  という事実を踏まえますと、私はやはりこの尖閣の領有の問題につきまして、今回いろいろな判断からそれがあの形で済まされたならば、近い将来実効支配というものを徹底するだけではなく、何らかもう少し波及効果のある、中国に対して効力のある日本の主張というものがなされるべきだと思いますけれども、その点いかがお考えでしょうか。
  100. 園田直

    園田国務大臣 マンスフィールド大使とのお話はどうであったかわかりませんが、米国が尖閣列島は中国のものであると認めておる事実はございません。  それから次に、尖閣列島の問題でありますが、これは現在支配し、現在わが領土だと確信をしておりますから、いまのままで結構であると思います。
  101. 石原慎太郎

    ○石原委員 それでは、最後にもう一つ尖閣についてお伺いいたしますが、やはりこの歴史的な日中友好条約締結の責任者であられた外務大臣、いろいろなお話し合いをそのついでにされたと思いますけれども、尖閣がいまおっしゃったような形で、あそこに放置されているとは申しませんけれども、ほとんど放置された形でしかないままにあるということでこれが近い将来――近い将来と言っても条約の期間が十年に限られておるわけですから、向こう十年の間に、あるいはそれが何かの形で失効した後に、十年後に失効するかどうかわかりませんけれども、近い将来あるいは中くらいの将来、尖閣のそういう形の存在というものが日中関係の促進というものの障害に絶対ならないという自信が外務大臣としていまおありでしょうか。
  102. 園田直

    園田国務大臣 私は、そのように確信をいたしております。
  103. 石原慎太郎

    ○石原委員 終わります。
  104. 永田亮一

    永田委員長 中山正暉君。
  105. 中山正暉

    ○中山(正)委員 お許しをいただいて、材料ばかりたくさんありまして時間がないのでございますが、本来から言えば、賛成派の人はもう黙っていていただいて、この条約日本の運命に大変大きな悲劇になるだろうと私は感じております。きのうからこの委員会が始まりましたわけでございますが、個人的なことを申しまして恐縮でございますが、私のおやじがおとといの晩、徹夜で見守っておりましたが、きのう朝七時五十五分、飛行機でここへ参り、この委員会に出席して、そして帰りましたときには事切れておりました。  私のおやじは、実は二十四年六カ月国会に籍を置かせていただきましたが、政務次官にも大臣にも何にもなっておりません。それはなぜかと言えば、大政翼賛会に入ることを拒否いたしました。永井柳太郎という前の文部大臣のお父上でございましたが、永井柳太郎先生の、いまで言えば仲間といいますか、子分といいますか、グループといいますか、そういうものに入っておりましたが、私が子供の時代、私が生まれたときにおやじが初めて国会議員に当選したのでございましたが、昭和七年でございまして満州事変の翌年でございました。その永井柳太郎先生が夜中によく電話をかけてこられて、君も大政翼賛会に入りなさい、もうこれが時代の流れであると言うのに対して、私のおやじは頑迷固陋に、アメリカという日本の二十六倍ある国家を相手に戦争をしてはいけない、そういうことを言い続けておりました。大政翼賛会から非推薦になりまして、警察に囲まれた選挙をいたしました。私は、そのおやじが家の中にひそむ警官を追い回す姿を子供心に覚えております。ピストルを持った右翼の人が自動車で迎えに来て連れていかれるおやじをおふくろがさびしく見送るのをこの目で見ております。そのおやじが、きのう目をつぶりました。周りの人も、もう行かないでどうですかと言いましたが、おやじの死に顔を見ていると、おまえは行ってこいという何か声が聞こえたような気がいたしました。  特に、保身の術というのがありますが、これは中国の人に言わせると、保身の術というのは哲学を明らかにして身を保つ、明哲保身というのが本当の言葉だそうでございまして、保身という言葉の上には哲学を明らかにせよ、たとえそれで私がおやじのように、二十四年も国会に出られるかどうかわかりませんが、消えていっても構わない、私の政治生命は短くても国家の生命が長ければそれでいいという気持ちで、反対の立場で、これは総務会でも申し上げておりますので、あそこにおられるわが刎頸の友といいますか、盟友といいますか、浜田幸一代議士と私は総務会で、本会議でも反対をするということを、欠席をするのではなしに、出席をして反対を表明したい、何ならば討論をいたしたい、このぐらいのことを実は考えてこの場に立っておるわけでございます。  外務大臣が有田次官から、これもまた不思議な因縁で、廣田弘毅内閣のときに大島という大使をどうにもできなくて、ついに日独防共協定というものに入っていった有田八郎、後に革新系から知事に出た方の息子さんがいま次官でございます。五男。この方も政治の世界を見てこられた方だろうと思いますが、その有田外務次官が、外務大臣に、八月八日にいらっしゃい、末広がりでございますとおっしゃったそうでございます。国会の審議が始まりました昨日は、私にもそうでございましたが、文字どおり十三日の金曜日でございます。日本の悲劇的な運命を象徴するには大変ふさわしい審議の始まった日であるなということを、私は実は感じるわけでございます。なぜそんなことを言うかというと、ここに持ってきておりますが、日独防共協定とまことに内容がよく似ております。いまのナチスは中華人民共和国だと私は思います。恐ろしい国でございます。  ここにモスクワ放送の記事が載っておりますが、フランスの週刊誌「エクスプレス」、ジャクト・クルジーノ・ブルガイエルという、音訳だそうでございますが、この人が書いているものの中に「どのようにして生きながらえているか、という質問に答えることに努めている。」「若干の農民はなんとか生きながらえるために再び幼い娘を売り飛ばすようになり、」――赤線を引いたところだけ読みますが、「乞食は珍しいものでなくなった。外人でさえも、もし目を閉じないなら、たとえばレストランに入ると、貧しい身なりをした中国人が、客が食べ残して席を立つのをいまかいまかと待っているという光景を見ることができる。」文化大革命だ、整風事件だ、批林批孔だ。娘に訴えられておやじが殺されるという事件も起こったわけですが、「一定のワイロをもらうと、二年間の予定で当局によって農村に送られてきた青年が早く都市の家族の所に帰れるようにしている農村の指導者のことがいま盛んにいわれている。」それから「犯罪が増えていることは中国を訪れる外国人にひた隠しにされているが、国内では公然と認められている。武装犯人による略奪や闇売り、性犯罪はよく裁判所の判決に出てくる。」ここは法律をつくるところでございますから、特にここは強調したいのでございますが、「一九七六年に発表された布告によって、二人の兵士あるいは三人の民警によって現行犯を押さえられた人は、裁判なしにその場で射殺される。裁判でも基本的権利が守られていない。被告には弁護人がつかない。なぜなら、文化革命まで存在していた弱体な弁護士団も解散させられたからである。それに、いかなる法律も存在していないのだから、弁護団があっても何にもならない。」こう書いてございます。  その国とどういうわけかアメリカが頭越しに、日本の上を超えて中国へ行ったわけでございますが、その中国とアメリカが何にもせずに、なぜ日本条約を結ばなければならないのか。一体、どんな利点があるというお見通しで物を見ておられるのか。  宮本武蔵の「五輪之書」という本の中には、物事をするときには観と見、ここに本があるという見る、それと観音様の観、観音というのは音を見る神様ですから、形のないものを想像せよということでございます。「五輪之書」の中に「観見二つの目付のことは観の目強く見の目弱く」と書いてございます。見えるものは見るな、見えないものを見ていけ、こう書いてございます。その意味で、外務大臣は観の目はどういうふうに一体これからの将来の日本の運命を見ていらっしゃるのですか。お答えを願いたいと思うのです。
  106. 園田直

    園田国務大臣 まず、お答えする前に、お父様の御逝去にもかかわらず公務に精励される中山議員に敬意を表します。  次に、お互いに信念があり、お互いに判断があるわけであります。国を愛する愛し方にもいろいろあるわけであります。同じ党であっても意見や考えが違うこともあると存じます。平素からよく承っておりますが、きょうも心してあなたの御意見を承りたいと存じますが、その中で個人の名前が出されましたが、これは私としては遺憾でございまして、だれがお父さんであろうと、だれがお母さんであろうと、りっぱな者はりっぱな者でありまして、私の直接指揮しております有田次官は、外交官としては最優秀であり、国を愛し、きわめて信念を持ってやっていることだけは御了解を願いたいと一言釈明をさせていただきます。  均衡による平和を保っておる今日、いろいろ矛盾も錯誤もあります。しかし、矛盾と錯誤を繰り返しつつ世の中は必然性の方に向かって前進すると考えております。いまどこの国にいたしましても、たとえばソ連にいたしましても米国にいたしましても、軍備縮小の実績は上がっておりませんが、それにしてもお互いに注意しながら、火を噴かないように、均衡による平和を願い、これを取り巻く世界の国々は、やはり心に願うものは戦争のない社会、平和な社会で、困難で厳しい問題であるが、これに必死の努力をするというのが方針であると考えておるわけでございます。  そこで、日中友好条約を結んだのは、第一に、両国間の約束がございます。六年前共同声明で、友好条約締結するという約束があります。約束は守らなければ国家間の信頼と信義は保たれないし、また外交はそのようなものではないと考えます。  第二番目には、かつて中国のみならず、世界の歴史は、隣国と侵し侵されつつやってまいりました。それがいままでの歴史でございます。したがって、興亡盛衰に従い、隣の国から脅威を受け侵される、あるいは一方が強くなり、また一方を侵す。これに政治、外交はほとんど努力をして、国民の繁栄と国家の繁栄、世界の繁栄はいたく阻害をされております。  今日の世界情勢はその歴史から反省しながら、もう一歩われわれは二十一世紀に向かってどうやるべきか、いろいろ矛盾がありましょうけれども、隣国に対する信頼関係を築き、お互いに相手の国を弱くしようとか撹乱しようといういままでの歴史ではなくて、相手の国の繁栄を願い、これに協力し、その繁栄を分かち合うということを、今後長い期間を要するものであるが、われわれは真に願わなければならぬ。  こういう観点から、日本中国は過去悠久、何千年の間には御承知のとおりお互いに脅威を受けたり脅威を与えたり繰り返しております。そういうことではなくて、本当に信頼と友好によって道を進むならば、日中間ばかりでなく、アジアの平和と繁栄というものは――どのようにASEANの国々、アジアの国々が安心してやっていけるだろうかという観点から私はこの条約交渉を結んだものでありまして、したがって、条約交渉の劈頭に私が言ったことは、二国間交渉というものはお互いに利害関係を主張し合って、勝った負けたという外交交渉であるならば、あくまで前の歴史の、力の世界の外交交渉に終わる、私は中国立場になりますからあなたも日本立場になって、お互いに真の平和と安定と繁栄を築くように議論するうちに最高の道を探すのが今後の外交交渉である、こういう信念を申し上げたわけであります。  長くなりましたが、以上のような気持ちで私は締結をいたしました。
  107. 中山正暉

    ○中山(正)委員 外務大臣からもまくら花をおやじにいただきましたことを、こんなところでございますがお礼を申し上げておきたいと思いますし、皆さんからも悔やみの言葉をいただき大変恐縮をいたしております。  いま個人の名前に触れたというお話がございましたが、私は何も外務次官個人を非難も何もしておりません。かつての歴史の中で、有田八郎という方が大島という大使の言うことを聞いて日独防共協定というものを結んだときに、今度は独ソ不可侵条約というものをドイツが結んだことで、平沼騏一郎という人が、世界情勢奇々怪々と言ってやめていった。ところが今度はドイツに対して、ソ連に対する仲介を秘密協定でやっていたり、大変複雑な状況の中から、今度は日独伊三国同盟というのが昭和十一年から昭和十五年の四年の間に結ばれております。私はいま、この日中条約がかつての日独防共協定とよく似た性格であると言うのは、ソ連を対象にして、やっぱりドイツもかつて社会主義国でございましたが、相手も社会主義国で日本条約を結んだ。特に中国建国以来、自由主義国とは全然条約を結んでおりません。特に社会主義国との間も十三年間結んでおりません。それで今度日本と結んだわけで、ヨーロッパの方では、フランスも英国もどの国もみんな、アメリカの戦略体系の中に入れられたと、こう言っております。  その意味で私は外務大臣に申し上げて、心配をいたしておりますのは、ここにいまカーターという、華国鋒とよく似ておりますが、一地方の知事で、こんな者が大統領になるはずがないと思っていた男が大統領になった。そして中国でも華国鋒という、どこにいるのかわからないような、さっきから中国へ行った方の話を聞いておっても、華国鋒なんか会ったことなかったと言う。ところが、華国の矛先と、名前だけかっこうのいい名前でございますが、そのアメリカのカーター大統領を、いまソビエトにまで金を貸しているデビッド・ロックフェラーという世界金融資本の大将にロンドンのホテルで紹介をしたブレジンスキー、この男は十八年前まではポーランドのユダヤ人でございます。それがおかしなことに十八年で、日本では若い町長さんとして御苦労なさった方がいま外務大臣をやっておられますけれども、十八年前にアメリカ人にくらがえをした男がカーター大統領の側近ナンバーワンで、この人が書いている本の百六十二ページには、「中国問題は、また別なかたちで日米を突如として分断させる可能性がある。」と、こう書いてあります。おかしなことは、さっき石原先生質問の中でアメリカと相談をしたかなんという話がありましたが、不思議なことに日本とアメリカの、中華人民共和国との共同声明第七項目は全く同じ文章です。何でこんなに同じ文章が違う国で出てくるんですか。
  108. 園田直

    園田国務大臣 共同声明は、日本では過去六年前のことでございまするから、私はそのいきさつは詳細に存じておりません。しかし、今度友好条約を結ぶのでは、米国に相談をしたり協議したり、あるいは米国の相談をいたしておることは絶対にございません。
  109. 中山正暉

    ○中山(正)委員 不思議なことでございます。実に不思議なことでございますが、私はアメリカは何か裏で取引をしておると思っています。それはソビエトの北方領土返還の話が出てきますが、何で北方領土を返さないのにアメリカが沖繩を返したんだろうとまず考えてみる必要がある。それから、なぜ中国は核防条約、これも私は後でお答えをいただきますが、中国に核拡散防止条約を批准をしてもらいたい。これは要求をしていただかなければいけません。ソビエトはとにかくやっています。  そんないろいろ不思議なアメリカがなぜ、ロッキード事件、チャーチという男も、御承知のように三十一歳までCIAのメンバーで、中国とビルマとインドにいて、三十一歳のときにアメリカに帰って、彼も上院議員に出ておりますが、この部屋でロッキード委員会がしきりにやられましたが、あのときに、二月四日に日本関係のことをばらしたチャーチという上院議員は、二月十七日から十九日まで世界ユダヤ人大会のアメリカ代表で出ております。そしてそのことが日本のマスコミには一行も出ません。私はフランスのル・モンド紙を翻訳してもらって取り寄せて読んでみましたら、非常におもしろいことを言っておりますが、どうもそういう、特に、時間がないのでまことに残念でございますが、これは「今日のソ連邦」という本でございます。創刊二十周年号。おもしろいのはここに「いわゆる“ユダヤ人問題”の真相」というのをソビエトが載せております。大変傑作なのは、ソビエトにはイスラエルがある、こういうんですね。「一九三四年五月に政府の決定により、ソ連極東にユダヤ自治州が創設された。これは、この二千年間における最初のユダヤ人国家組織である。」なんて、おれの方が元祖だと言っているんです。「この自治州の面積は三万六千平方キロメートル。日本の九州よりやや小さい。」イスラエルは京都府よりやや大きいんです。「人口は十九万四千人で、州都はビロビジャン。このようにユダヤ人は、ソビエト国家の他の諸民族と同様に、初めて民族自治権を得た。しかし圧倒的多数のユダヤ人は大都市に住むことを希望し、大都市人口の三-四%(モスクワ、レニングラード、キエフ)から七-一二%(オデッサ、キシニョフ)を占めている。」そして、ソビエト最高会議以下、約三万五千人のユダヤ人がいる。そうすると、十八年前にユダヤ人だった男がアメリカへ来て、それが何か裏でつながっているムードがあるんですね。  その中で、ブレジンスキーがこの間ホルブルックを使って中国へ行っていますが、おもしろいことを言っている。ブレジンスキーが、有益であり、重要であり、建設的である。五月二十日からその後、帰りに、私が総理大臣にその話をした後、総理大臣がブレジンスキーに会っておるわけです。そして私が話をした、七年前にあなたは赤坂のマンションに七カ月もいて奥さんを連れて、そしてこの本を書いた。その七年前に書いたのといま言っていることは違うじゃないですかと、私が総理大臣に申し上げておいたら、総理大臣が聞かれたそうでございます。頭をかきながら、翻訳を変えてもらわなければいかぬな、こう言ったという。  五月二十日から二十三日までブレジンスキーが訪中をして二回の宴会であいさつをしているのがおもしろい。米中両国の友好関係は共有する関心に基づいており、長期の戦略的見地から導き出されている。米中は戦術的な手段とは考えない。戦術ではない、戦略である、こう言っているわけです。もうあと五分になってしまいました。非常に残念でございます。  それから二番目にこう言っています。世界的、地理的覇権抵抗の中国の決意を認め、共有をする。そして三番目に、米中の友好は世界平和に重要であり有益である。それから、小さな方の二には、安定した強力な中国は米国の利益である。すごいですね、本当に。三番目が、強大で自信に満ちた、世界的にかかわりを持つ米国は中国の利益である。日本なんかとうに飛び越えておる。米中両国は相互の利益を大幅に増進する。  カーターがメッセージを書きました。大統領は強い中国との友好関係を望み、上海コミュニケの枠組みに沿って、関係正常化のため障害を克服する決意をすでに固めている。これは台湾を捨てるということです。  くしくも中国が十三年ぶりに憲法に書いたことが、私が七年ぐらい前に手に入れておりました日本解放工作秘密指令書というのにはうまいこと書いてございます。最後に。中国憲法に書いたとおり書いてある。   台湾の解放は、最終的には武力戦の行使、又は少なくとも、武力解放戦の準備完了と言う背景が必要である。なぜならば、これは、一国内の人民解放戦であるからだ。   思想、政治戦は、蒋一派を孤立せしめ、その戦力を弱める効果は生むが、武力行使なくして蒋一派を屈服せしめ得るとするのは、敵を知らざるものである。   国家権力を手中にしている独裁者は、ただ武力によってのみ打倒されるのであり、しかも最後には、外国への亡命と言う保身で、屈服を拒否するものである。 これです。グエン・バン・チューと同じ運命です。蒋一派を台湾からアメリカへ亡命をさせて台湾を渡すという計算がアメリカの背後にある。それは蒋介石と宋美齢が結婚をしたとき、宋慶齢を孫文に嫁にやり妹の宋美齢を蒋介石の嫁にしたところから、実は世界を一本化する工作は進められていたといううわさも聞きます。  「我が党は、もとより、台湾解放に十分なる武力をすでに保有している。だが、戦いを急ぐ必要はない。三~五年を出ずして、我が党による日本解放が実現するとすれば、そのあかつきには、日本国現有の一切の戦争工具」なぜ中国がこのごろ自衛隊を認めてきたか、防衛局長。なぜしきりに自衛隊を中国へ招待するかというと、あなたの管理していらっしゃる自衛隊を戦争工具として取ろうという。桜のマークを赤い星に変えようというわけだ。だから調子のいいことを言う。そうすると態度が変わったりする党があるわけだ。「日本国現有の一切の戦争工具及びその製造能力は、あげて我が国の使用に供せられ、戦わずして蒋一派をして海外逃亡のほか道なしと自認せしめるに足る、圧倒的な戦力の差が生じるからである。日本解放の第四の意義は、ここにある。」これは大変おもしろい文章でございます。  そして日本の解放はどうするかというと、わが国との国交正常化、これが第一期工作、二番目が民主連合政府の樹立、それから三番目が日本人民民主主義共和国の樹立と天皇を戦犯の首魁として処刑をする。その中でおもしろいのは、日中条約を結んだらもう自民党は要らぬ。後は、おあつらえ向きに総裁選挙があるから、それで各候補の対立を激化させて、中間派は今度は総裁選の推薦に入らないと決めましたから、自民党はばらばらに分解をしなさい。右と左に分けたらいかぬ。青嵐会みたいなのがまた人気が出てきて、盛り返ってくるから、自民党は二つに割らずにたくさんに分断をしろと書いてございます。これは実によくできた文章でございまして、本当に舌を巻くといいますか、このとおりになっております。国民はパンダでぼけさせられて、いつ子供を生むかなんて、そんなことはどうでもいいのです。そんなにかわいかったらあのおりの中に入ってみればいい。あれは猛獣でございます。クマの中でも一番どうもうです。だから中国なんというのはおりの中へ入れて飼っておかなければいけない。  そんなことを言っていますと、時間がたってしまいまして大変残念でございます。たとえば覇権は何と考えておられますか。先に言っておきますが、覇道というのは王道の裏側でございます。中国の朱元璋という赤軍の創始者、千三百年代の人でございますが、これは明の太祖の洪武帝でございます。この人が――中華というのは、北狄、それから日本のような東夷、それから南が南蛮、そして西が西戎、それに対して自分は真ん中の華であるというのが中華というのは御承知のとおりでございますが、その北狄が、朱元璋、明の太祖の洪武帝のときに馬で攻めてきますから、それに対して朱升という賢人に聞いたわけでございます。そうしましたら、高くかきねを築いて――万里の長城です。広く食糧を積んで、ゆっくりと王道を唱えなさい、こう言っています。  この言葉を毛沢東が大好きでございまして、毛沢東が中国革命史の中にこれを引用しまして、今度は核戦争ですから、深くほこらを掘って、広く食糧を積んで、これは同じでございます。そして覇を唱えず、こう言っております。覇は唱えないというのは、覇は唱えないけれども、実はゆっくりと王道を唱える。毛沢東の王道理論というのは何かと言えば、第一の革命がソビエトで起こり、第二の革命が中国で起こり、第三の革命が日本で起こる、それが世界革命の導火線である。フランスフランスのマルシェに任せなさい、イタリアはエンリコ・ベルリングエルに任せなさい、スペインはカリリョに任せなさい、日本は宮本顕治に任せなさい。そして全部出そろったときに、あなたが大将とソ連を決めるのが覇権である。日本の天皇は衣冠束帯を着て、美しい女性をそばに従えて、細い刀を差しておられましたが、よろい、かぶとに身を固めた徳川家康、豊臣秀吉、武田信玄、だれも天皇の位置は侵しませんでした。あなたが大将と決めるのが覇権。だから、革命が出ろったときにソビエトを大将と決めるのは間違いですよ、私の場合もありますよと中国が言っておるのが私は覇権だと思うのです。  それに対して英国の王様のように、親類縁者全部ロンドン塔へ幽閉して、全部殺して自分が王になる、これが王道でございます。恫喝によって相手を力で屈服させる、それが覇権ならば王道は何でございますか。
  110. 園田直

    園田国務大臣 日本では覇道、王道という言葉がございます。特に近くは中国の孫文先生が、日本戦争を始めていよいよ神戸を去られるときに、神戸で、力をもって国を動かすを覇道と言い、人心をもって国を動かすを王道と言う、こういうことを言っておられますが、王道についてはそれ以前の日本言葉ではしょっちゅう出てくる言葉でございます。中国との関係で言いますと、中国ではその後これを正式の議題にして、覇道をとらざるところ、王道もまたとらざるところという決定をしております。共産主義国家でありますから、王道というのはなじまぬのは当然であります。その点は私は中国にも、王道、覇道という言葉日本になじむが、覇権という言葉はなじまない。そこで共同声明直後の日本の新聞を全部ごらんください。覇権に対するごうごうたる論争が起こっている。六年の間に、覇権ということに対する日本大多数の人間の気持ちは定着をしている、こう答えてきたところでございます。
  111. 中山正暉

    ○中山(正)委員 議論をする時間がありませんので議論ができませんが、外務大臣、これ何と書いてありますか。(「本日大売出」の紙を示す)これは中国の人は、大臣の方から見て右の方から読みますから、出売大日本日本国売り出したということになるわけです。言葉というのはこのくらい違うということです。おすし屋さんの前に行きますと、出前迅速、こう書いてございます。あれは中国の人の前では絶対に言ってはいけない言葉であります。――――――――――――――――――――――そのぐらい同文同種といいましても、たとえば盗難予防と書きましたら盗みが予防しがたしということになるわけであります。(「これは不穏当発言ですよ」と呼ぶ者あり)はい、それでは取り消します。いま個人の名前を出しちゃいかぬというのをうっかりとふだんの御好意に甘えてお名前を引用いたしましたことを深くおわびを申し上げますが、実は華国鋒にしましても、彼は壁新聞で総理大臣になっています。何が理由になったかというと、毛沢東の六つの字、「ニイ創事我放心」あなたに任せると心配ない、これが華国鋒が総理大臣になった理由であります。  ところが実は華国鋒は毛沢東の親戚だといううわさがあります。いま批判されている四人組、王洪文、これは十一人あった江青の愛人のだれかの落とし子だと言われております。江青は毛沢東が抱いて寝た女でございます。それからもう一人姚文元、これは延安である女性に毛沢東が産まして姚将軍に預けた毛沢東の実子である。ということは、四人組の中で張春橋以外みんな毛沢東の何かはだのつながりがある、これが批判をされているということは、特にさっきのモスクワ放送の最後のところにもありますが、実は中国では四人組なんては言っていない。五人組と言われている。間もなく毛沢東が批判を受けたら、毛沢東に、あなたに任して心配ないと言われたこの男、これが一体失脚をしないのか。  鄧小平は何で失脚をしたかというと、ソ連のスパイだと言われる国境から入ってきたヘリコプターをすぐ返してやったんでしょう。そしてその人たちにパーティーまでしてやって、それが毛沢東のげきりんに触れた。ソ連と同じことをやっている連中が何でソ連と仲が悪い、実におかしいのです。  これは一ドル紙幣です。いろいろなものが出てきますが……。日本は全方位外交と言っていますが、この間の総理大臣がサウジアラビアに行かれたのなんかでもナンセンスです。アメリカの一ドル紙幣の裏は、ここにエジプトのピラミッド、その上に、拡大しますと、こういうふうに神様の目玉というのが入っています。そしてこっちはイスラエルのダビデ王が戦場で持って走った盾、そういう背景の中で、イスラエルとエジプトに行かない外交なんてお笑いぐさですよ。この間総理が行かれたサウジアラビアは台湾と非常に深い関係があります。九九・六%が中国領土でございますが、台湾は〇・四%しかありませんが、台湾を認めている国が幾つありますか。それを否定して本当に全方位外交なんですか。  必ずいずれは日本とアメリカと中国の三国同盟にこれから入りますと思っていると、ソビエトのチェスとかいうゲームはいかに裏をかくか、いかに相手をだますかというゲームですから、私がいま言った鄧小平とか華国鋒という人はソ連系の人ですから、彼はカン澤高と言って、プリント博士、油印博士と言われて、フランスに留学しているときにはソビエトの文章を翻訳して印刷して配っていた男です。いずれ中国とソ連がばっと組んで、日本が社会主義化してこちらにおられる方々が政権をとられたときに、実は仲がいいんですよと言って、日本の技術と力を使ってアメリカに最後の戦争をいどむ。ソビエト、中国日本という三国同盟ができても日本は悲劇です。その場合はアジアが戦争の導火線になって、それがヨーロッパに飛び火する。だからシュミットは中国との条約、結構ですねと言うはずでございます。日本が結んでくれれば、アメリカの兵隊が韓国に一個師団しかないものが四個師団あるヨーロッパに移せるから。日本のばかやろう、日独防共協定のときには、ソ連を攻めてくれと言ったときには第三次近衞内閣で、北進論の松岡だけを総辞職して首切って、アメリカとの戦争ばかり考えていた豊田貞次郎を外務大臣に据えて間違いを起こしている。  この間、私はソビエトへ招待されて行ってまいりましたが、ブラーツクというところで日本の捕虜がドイツの兵隊から攻撃を受けたという……(発言する者あり)耳が痛いですか。
  112. 永田亮一

    永田委員長 中山君、時間が来ましたから……
  113. 中山正暉

    ○中山(正)委員 最後にしますが、海外に抑留された日本の人たちがドイツの捕虜から暴力的なさたを受けた。それは、日本が攻めてくれたらソビエトのような安物の国に負けなかった、こういうことであります。  また再び間違いを起こさないように心から祈念をいたします。ひとつ日本の長い将来のためでございます。反対なことを言うやつも一人くらいおっていい。全会一致というのはうそだということでございますから、反対をしたやつもいたということがかえって中国に、日本にもまだいろいろな考えをしておるやつがおるな――情けないことに、外務省から出ている「日中画報」、中国の本なんかは「中國畫報」と書いてありますが、相手の国の名前を入れている本なんというのは日本の外務省だけです。
  114. 永田亮一

    永田委員長 時間が参りましたので、中山君、御注意願います。
  115. 中山正暉

    ○中山(正)委員 失礼をいたしました。つい長話をするものですから……。  ありがとうございました。
  116. 永田亮一

    永田委員長 ただいまの中山君の取り消された不適当な発言については、速記録を調べた上、委員長において処置をいたします。  午後一時から委員会を再開することとし、休憩いたします。     午後零時四十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時八分開議
  117. 永田亮一

    永田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。浜田幸一君。
  118. 浜田幸一

    浜田委員 この機会に、園田外務大臣並びに政府を代表される方々の姿勢をただしたいと存じます。与えられました時間が限定されておりますので、明快に御答弁を賜りたいと存じます。  質問に入らしていただく前に、まず私の立場を明快にいたしておきたいと存じます。私は、残念ながら本条約締結については、自由民主党の一議員として反対の立場を貫くものであります。まず、反対の立場を貫きます場合の基本的な問題点を明確にいたしておきたいと存じます。  まず第一の問題は、今日まで外務委員会において検討され、あるいは予算委員会において検討されました政府、野党のいろいろな質問のやりとりを聞いておりますると、大事な点が明確にされておりません。それは国家安全保障という問題についてすべて避けて通っているきらいがあります。それはどういうことかといいますと、この問題は、外務省が、日中条約締結する前に、日本の防衛庁との間において国家安全保障の問題点の詰めが行われていないと私は考えているからであります。少なくとも、現在のような国際情勢の中において、日本国は、二国間軍事同盟、あるいは平和友好条約締結をしまする場合には、締結の事前において国家安全保障上の見地からこの条約についていかような態度をとるべきであるかを明確に協議をしなければならない問題であると私は考えております。しかし私の調べました段階の中では、本問題について防衛庁と外務省の間で、今後のあるべき姿について真剣な討議がされておられるようには見受けられません。すなわち国家安全保障を無視したような形で行われる条約締結は、感情的には非常にプラスのように見えますけれども、本質的に国家の将来と国民の利益を守るために私は不利益な形になると思いまするので、この問題をまず第一の問題点として反対をいたすものであります。  第二番目の問題は、先ほど園田外務大臣は、六年前に田中訪中が行われて、その際行われました取り決め、これを守るために行うのだということを言われましたが、そのときにわが国は、北京からこのような要求を受けました。日本中華民国の中にある条約というものは早く放棄すべきであるという要求を受けました。そしてわが国はこの問題を放棄いたしまして、一つ中国という形で中華民国を切り捨てまして、一つ中国の北京を選択する道を選んだわけであります。  しかし、今回もし仮にそのような北京の要求をのむとするのであれば、この条約締結に当たって、来年の四月になればそういう問題は破棄すると鄧小平が言ったから認めるのだというような甘い考え方ではなく、二国間が同じ立場外交交渉をするならば、日本国が対等の外交を行おうとするならば、中国とソビエトの中にある軍事同盟条約の第三条、すなわちわが国を敵視しているその条項あるいは米国に対する敵視条項、そういうものの廃棄を中国に対してなぜ求めなかったのか。この問題について各政党のすばらしい先生方が質問いたしておることに対して、外務大臣が一貫して答えておられますことは、その問題については来年四月になったら鄧小平が破棄を宣言するあるいは有名無実のものであるからと言っているから。それならば台湾との問題のときに、条約は結んであるけれども、それは有名無実のものであるということをなぜ北京に言えなかったのか。こういう問題のとらえ方が非常にあいまいであるからであります。  中国わが国とは異なりまして、中国の政治体制は一党独裁政治であります。毛沢東が死んだ後、鄧小平が出てまいりまして、わずか一年間の間にがらりと変わりました。物の考え方がみごとに変わった。ちょうど中国問題に対する日本共産党の態度と同じくらいくるくる変わるところであります。この問題について外務大臣、きちっとお考えをいただかなければならないのは、なぜそんなに変わるのかということです。政治体制が不安だからであります。政治体制が不安であるとすれば、その政治体制の不安の中から生まれてきた一人の代表が、ましてや副主席であります。彼が来年の四月には放棄すると言ったらそのことを信じて、二国間の信頼関係を大切にしなければならないからということで、われわれを敵視しているその問題に対して、なぜ交渉以前に破棄をさせなかったのですか。もし破棄をしてもらうことが国家主権に対して、われわれの国家主権の行為であると私は思っていますが、そのことが相手に失礼だと思うならば、なぜ来年の四月にやりましょうということを言わないのですか。こういう問題を通じて非常に危険な点があるから、私はこの問題を明確にして、第二番目の反対の理由といたします。  すなわち、私が反対する理由は後世にも明確にいたしておかなければなりませんのでもう一回言わせていただきますが、われわれの国を敵だと呼んでいる国と、その敵だと呼んでいることをやめさせないままに仲よくしなければならないというほど、日本民族の質は低下したのかどうか。このことは間違いであると考えまするので、反対をいたします。  第三番目の問題は尖閣列島の問題であります。  尖閣列島問題は、鄧小平が園田外務大臣に再びあのような不祥なことを起こさせない、だから御心配のないようにと言ったからあなたは了解したと言いますが、とんでもないことであります。もちろんです。それはどういうことかと言えば、尖閣列島がわが国の領有下にある場合には、北京の船が入ってきたとき、外務省はもっと明確に、それだけりっぱな答弁をするのなら、撤去行動を少なくとも行うべきです。二十四時間以内に撤去しなかった場合にはなぜ自衛隊を出動させ、撤去させなかったのですか、三日間も十日間も。それで日本国家の主権がわが国家に存在するのですか。その行為が明確に行われていれば園田外務大臣答弁は生きるのです。しかしトラブルの起こることを恐れ、国家主権の行為というものを正当に主張しないままに、向こうが一方的に退去していったのをいいしおに日中をやって、そしてその問題のあいまいさを露骨に示そうとしている。  かつて鳩山一郎内閣総理大臣がソビエトとの交渉において北方領土を質に入れた。河野一郎さんが行かれて、これも外務省のやったことでしょう。玉虫色の解決。そして日韓問題において、竹島の問題についてもどちらのものかわからないように、現在では竹島は韓国軍隊がこれを支配している。この問題に対しても外務省は明確な態度を示していない。なぜならば、彼らは銃砲をもって竹島を占拠しているではないですか。同時に今回の尖閣列島またしかり。過ちを三たび犯すことになる。すなわち、わが国家の領土の主権行為は、政府が守らないで一体だれが守ろうとするのか明確でないので、この機会に、そのような状態の中で行われる条約は、隣国との間に平和友好条約が結ばれることによって受ける国益よりも、日本民族の統一した国境に対する考え方あるいは領土に対する考え方あるいは国家主権の主張に対する基本的な考え方、そういうものを失う方がより大きいと考えて、反対の第三点の論拠とするものであります。  同時に第四点は、私がここで読み上げると時間がなくなりますし、もうごらんをいただいておると思いますが、この中で台湾条項に触れないと言われた、外務大臣は鄧小平との会談の中において、台湾問題には一切触れないと言った。それではあなたは日本外務大臣ではない。日本中国国交回復していかなければならないとき、かつて一つ中国として選択していた中華民国の問題を全然取り上げないままに、台湾問題を取り上げないままに条約締結をしたとすれば、あなたは自由民主党の党員ではない。なぜかと言えば、自由民主党の党議は六年前田中首相が訪中前に決定をしている。その党議決定の場においてはこう言っているのです。台湾との経済文化交流は依然としてそのまま堅持し、日中平和友好条約の推進をすべきであるというのが党議決定なんです。  そのことはそちら側に置いておいて、その憲法前文をごらんください一台湾は神聖なるわが中華人民共和国領土であると書いてある。そうでしょう。それもあなた認めたのでしょう。しかしそれは武力において解放するとも言われている。もし台湾に武力解放が起こった場合に、あなたの行われた日中友好条約というものは二つの中国を認めないけれども、一つ中国を選択するけれども、台湾との文化経済の交流は依然としてそのままで行うという党議、このことをあなたはその憲法条文を見る中で当然犯したということになる。私は、そういう条件の中で実際問題として行われている今回の日中友好条約締結は、物質文明だけにおぼれてきた日本人に対して、もう一つ大きな失うものを与える結果になる。それは国家に忠誠を誓う、国家を守ること、国家の前進のためにすべてをかけて努力をすること、そういう問題がばかばかしいことのように見えてくる危険性がある。  あなたは、あなたの先ほど中山先生に対する答弁でこう言われました。あなたの国の愛し方とわれわれの国の愛し方とは違う、愛し方にはいろいろある、国家に忠誠をする仕方はいろいろあると言われたけれども、私も暗にそのとおりだと思います。しかし、いま日本国会の中ですべての者がこの日中の問題に賛成しようとしているときに、私は私の同僚中山正輝君と二人で、彼の指導を受けながら伸びてきた者として、私は二人で反対をする。反対をする論拠があいまいであってはなりませんので、いままでの反対の理由を申し上げたわけであります。  この問題はすでに中江局長に私が文書で出して、答弁をもらっていますが、この答弁にはうそが多い。すなわち台湾に武力侵攻が出た場合にどうするのかという、先ほどの社会党の方々の質問に対しても、あなた方は日米安全保障条約の基本的な理念に触れるものを避けて通っている。たとえば、台湾に問題が起こった場合どうするのか、韓国に問題が起こったときは憲法の範囲内で、それは日本の自衛隊は出さないにしても、日本に駐留するアメリカ軍が日本の基地から飛び立って戦うのはあたりまえの行為である。そういう問題について、国民が聞いているとわかりにくいような答弁ばかりしておる。私は、そういう条件の中に行われる日中友好条約というものについて賛成するわけにはまいらない。このことを前提として、あと九分間ありますので、質問さしていただきます。  ただいままで申し上げたのが反対の理由であります。まず園田外務大臣にお伺いしますが、ソビエトの防衛予算は幾らであるか御存じですか、お答えをいただきたい。――外務大臣からお答えください。
  119. 園田直

    園田国務大臣 私は記憶しておりません。
  120. 浜田幸一

    浜田委員 これは異なことを言われる。天下の国会議員であると同時に、一国の外務大臣が、われわれが一番関心を持っているソビエトの軍事予算を知らないで、全方位外交だとかあるいは冷戦構造の緩和だとか、よくそんなのんきなことが言えますね。一体あなたは何を中心にして全方位外交というものを考えておられるのですか。わが国の国家安全保障に対して、隣の国と仲よくだけすればそれでわが国の安全が保たれると思ったら大間違いです。時間がないようですから、USダラーで一千二百億ドルです。  アメリカは幾らあるか御存じですか。
  121. 園田直

    園田国務大臣 記憶しておりません。
  122. 浜田幸一

    浜田委員 全くのんきな外務大臣です。われわれは日米安全保障条約を結び、日米の小委員会の中であなた方の部下が、日本とアメリカの中でいろいろな交渉をしているときに、アメリカの国防予算を知らない外務大臣日本外務大臣であるなんて、こんなナンセンスな話はありませんよ。  当初予算で幾らであるか、外務省、どなたか答えてください。笑い事じゃないですよ、あなた。
  123. 加藤吉弥

    ○加藤説明員 正確な資料を別途検討いたしますが、私の記憶によりますと、アメリカの軍事予算は年間約一千億ドル。それに対してソ連の予算は、ただいま先生がおっしゃったとおり大体千三百億ドルと承知しております。
  124. 浜田幸一

    浜田委員 いまの数字も間違っています。アメリカの国防予算は当初予算において一千百五十億ドルと言われています。ソビエトは五百億ルーブルということでありますが、CIAの情報その他いろいろな形で検討する結果、一千二百億ドル。一ドル三百円の計算でした場合に三十四兆五千億円と三十六兆円の戦いなんです。日本の防衛予算の一兆九千億の何倍に当たるかは、これは時間がないから言っておられませんけれども、その冷戦構造が緩和しているという考え方が日本の国内にありますけれども、ソビエトの軍事予算とアメリカの軍事予算は日に日に膨張していっているのです。アメリカがB1を追加したら百億ドルかかるという。カーターも初めはやらないと言ったけれども、それをやらざるを得なくなってくるでしょう。そういう状況にあって、覇権とは何か。そんな文章の解釈じゃない。目の前に強大な国家がある。その国家はわれわれと軍事同盟は結んでいない。危険性があるからどうするかということが中国日本に対して接近した問題点であろうと思うのですけれども、その点、外務大臣、数字は覚えておらなくてもいいのですけれども、この問題はやはり国家安全保障を度外視して考えることのできない問題ではないでしょうか。その点ひとつお答えをいただきたい。
  125. 園田直

    園田国務大臣 御意見のとおりと思いますが、外務大臣の仕事は、国家安全保障に関しては力をもって守る方ではなくて、そういう事態を起こさしてはならぬ、こういうことが私の任務であると考えております。
  126. 浜田幸一

    浜田委員 この国は非常にのんきな国家ですね。これは外務省の皆さん方、アメリカ局長をやられた官房長もそこにおられますが、もう一回同じことに答えてください。官房長、もっと偉いのですか、あの人。答えてください、あなた。外務省を代表して答えなさい。大臣が代表して答えができないなら、あなたが答えなさい。そんなばかな話がどこにある。
  127. 山崎敏夫

    ○山崎政府委員 大臣お答えになったことに私がつけ加えることはございません。ただ外務省の任務は、広い意味での国家の安全保障に大きな寄与をする任務を持っておると思っております。外交的努力を通じて国家の安全保障を強化することであると心得ております。
  128. 浜田幸一

    浜田委員 最も苦しい答弁をされておりますので、それでいいでしょう。しかし、それならば外務大臣に対するレクチュアを、庁内の教育をもっと徹底しなさい。有田さんを初め優秀な人たちがいるんだから、日米安全保障条約を基調として外交の展開がされている以上、アメリカの持っておる軍事力と対立するソビエトの持つ軍事力と、世界全体のバランス・オブ・パワーについて、せめてミリタリーバランスぐらいのものはきちっと大臣に、つまらぬことを勉強させなくてもいいからそのぐらいのことはきちっと勉強さして、こういうところで一々役人に聞かなくても答えられるような外務大臣をつくりなさい。このことは要望しておきます。  同時に、今回の場合、これは外務大臣、あなたが言われた問題の中で幾つか矛盾していることがあるよ。たとえばソビエトの問題です。あなたはこう言っています。北方四島は五年後に返る可能性がある。新聞に出ました。いまのような国際情勢の中で、ソビエトが黙って五年間で北方領土を返しますか。あなたはソビエトへ行って帰られたときにそれを言っていますが、本当ですか。
  129. 園田直

    園田国務大臣 これは前の委員会でも明確にいたしておりますが、ただいまのような状態で、何年以内に返るなどという確信があるはずはありません。これは常識であります。
  130. 浜田幸一

    浜田委員 そこで、もう簡単に戻されるような錯覚が起きるといけませんから申し上げますが、大臣、広島に落ちた原爆がありますね。広島に落ちた原爆、その原爆の何倍の破壊力をソビエトが持っているか御存じですか。どなたか答えてください。防衛庁でもだれでも結構です。これは時間がかかりますから――いいですか、答えてくれますか。――答えられませんか。答えられなければ答えられないで結構ですが、アメリカが持つ破壊力は七万数千倍と言われている。広島の七万数千倍の破壊力を持ったメガトンを持っているわけですな、あの原子爆弾の。ところがソビエトは十四万七千倍持っているのですよ。  そういう中で対決をしているのに、日本という国が置かれている立場考えるときに、簡単に言葉のやりとりだけで、覇権はどうだ、覇権条項をなくしたからということだけで、自由主義国家陣営と社会主義国家陣営の力の対決の問題を避けて通ることなんかできませんよ。覇権という言葉をなくしたから、ああ、われわれの国は安全になったのだなんということを国会で議論しているようでは、この国会は国民に対して忠実な政治をやっていたということにはならない。当然、一歩前進するからには、それに後から来る責任というものを果たさなければいけない。  しかし、軍事問題については話し合わなかった、中国とも話し合わなかった。あなたもうそを言っている。日本中国の間では軍事的な問題のやりとりは一切やらない、近代化に協力しない、うそです。私が防衛庁の政務次官のときに、派遣するからということがありましたから、私は派遣してはならないということで反対して、やらなくなった。今度の場合は志摩君という優秀な青年を中国に派遣して、防衛協力の問題について中国を視察したり、向こうからも視察団が来ているじゃないですか。ましてやその答弁がもっとおかしいと思うのはどういうことかといいますと、経済協力で中国中華人民共和国を経済的に豊かな国にすればおのずから軍事力に手をかしたことになるでしょう。われわれが手をかさなくたって、金さえ出せば、フランスも西ドイツも、きょうの新聞にも出ていたけれども、どんどん軍事的な協力をする、武器を売るということになっている。日本だけがおかしな国だから、武器輸出しないなんてばかなことを言っているけれども、よその国はみんな売ろうとしているのですよ。中国を最大の武器の市場として考えているのに、そういう愚かな答弁を平気でしているのですが、本当に軍事協力しないのですか。
  131. 園田直

    園田国務大臣 中国の近代化に対して、軍の近代化には協力できないということをはっきり申し上げてまいりました。
  132. 浜田幸一

    浜田委員 そうすると、もう一つお伺いしておきますが、これはその問題とは違いますが、北朝鮮と韓国との間に紛争が起こったときに、中華人民共和国が北朝鮮に対して軍事援助もしくは戦争協力した場合に、わが国はどのような態度をとられるか、お答えをいただきたい。
  133. 園田直

    園田国務大臣 将来起こるべきことに対してここで具体的な返答をするのは、誤解を受けますから申し上げませんけれども、少なくとも、友好条約締結について朝鮮半島は対決が逐次緩和していく方向にはまいると存じます。
  134. 浜田幸一

    浜田委員 それでは、私はこの際立場を明らかにしておきますが、あなたは一国の外務大臣ですから、仮定の問題については国民の前で正しく説明できないとは存じますが、私が私なりに考えて非常に矛盾が多いと思うことは、朝鮮半島、韓半島に問題が起こりました場合には当然わが国は韓国に対して絶大なる協力をするということになるわけであります。また、そうしなければ日米安全保障条約の完全なる契約国としての責任を果たしたいということにはならない。ところが、中華人民共和国が朝鮮に肩入れをするということになれば、仲よくしようという者同士が二つに分かれて紛争に介入することになる。この問題についても、今後の問題としてよく国民にわかりやすく説明できるようにしておいていただきたいということをお願いをいたしておきます。  それからもう一点。中国は覇権主義国です。これは私が質問するよりも野党の方々が質問した方がいいと思いますが、あなたが考えて、ベトナムは中国よりも強い国ですか、弱い国ですか。大きい国ですか、小さい国ですか。お答えをいただきたい。
  135. 園田直

    園田国務大臣 中国よりも小さい国であると考えます。
  136. 浜田幸一

    浜田委員 そうだとすれば、ベトナムがあのような状態になっているときに、現在の華僑の総引き揚げの問題やあるいは経済援助の打ち切り問題は、世界の中に中国が覇権を唱えるために、もっと具体的に言えばソビエトとの社会主義圏同士の闘争を激化するために行われている覇権行為ではないですか。日本中国の間の覇権行為の問題を取り上げないにしても、われわれが条約を結ぼうとした中国そのものが、現在、アジアにおいて一番経済的に疲弊しているベトナムに対する覇権国とあなたはお認めになりませんか。
  137. 園田直

    園田国務大臣 ベトナム問題については中国と私の意見が相違をいたしました。いろいろベトナムに対する過去の経緯あるいは中国の方針、それから、日本がベトナムに協力することはむだであるという話がありましたから、私は最後に、いかような理由であろうともアジアの一角において中ソの対立が火を噴くことは困る、こう言っておいたわけでありますが、ベトナムはベトナムで、互角で中国と言い合いをやっているわけでありますから、これは紛争であると考えております。
  138. 浜田幸一

    浜田委員 私は、予定の時刻が参りましたので質問を打ち切らせていただきます。二十分間の予定でございまして、ただいま二十五分になりました。五分間は、大坪委員、まことに恐縮でございますが、この私に時間を貸与さしていただいて、野党の方々には御迷惑をかけないようにしていただきたいと存じます。食い込んだ分だけは自民党内で処理をさしていただきます。  最後に申し上げます。  大臣、イスラエルに御訪問をされる、エジプトに御訪問をされる、この問題、中山正輝先生が言われましたけれども、イスラエルとエジプトを度外視して全方位外交と言っても、それはナンセンスです。このことはどういうことかといいますと、私は過般イスラエルにも行ってまいりましたけれども、スエズ運河の効率的な運用という問題を考えれば――輸入をしたい物資も実は運賃単価だけで二倍になります。そういう問題を考えるときに、イスラエルの訪問は早い方がいい。ユダヤの話を私の指導者である中山君が言うと、みんなが笑いながら聞いているけれども、日本の政治のみならず、世界の政治家の中からユダヤの存在を除いて政治はあり得ないし、アメリカ合衆国の政策の中にもユダヤを除いた政策はあり得ないと思います。この問題についてはよくお考えをいただきたい、このことを最後にお願いをいたしておきます。私はイスラエルに行ってほしいと言っているのです。同時にエジプトにも行ってほしい。全方位外交という言葉を主張するならば、油が買えなくなるからイスラエルには行かないのだ、そんな細かいことで外交ができるわけはないと思います。  最後にもう一点だけお願いをしておくことがございます。それは国家安全保障の一部分外交であるということであります。このことをお忘れのないようにお願いをいたします。  私は、一日も早く園田外務大臣外務大臣の席を離れることが、日本国民にとって利益が増大することであることを、国会の名において、私自身の名において明言をして、私の質疑を終わらしていただきます。
  139. 永田亮一

  140. 大坪健一郎

    ○大坪委員 クラウゼヴィッツの言葉にもありますように、軍事というのは政治の一手段でございます。私どもが個々の外交問題を議論しておりますのは、いま同僚の浜田議員が言われましたように、軍事的な諸条件というものを十分事前に条件として考えておかなければならぬということは事実でございますけれども、私は必ずしも浜田議員と意見を同じうするものではございません。むしろ軍事の問題を包括して議論するより、政治の一手段としての軍事が発動しないように、いかにして外交的な問題を進めていくのか、いかにして外交問題を平和的に解決していくのかということに腐心をすべきであるという考えを持っております。そういう意味で、日中国交ができまして日中平和友好条約が結ばれまして、私は非常に結構なことだと存じております。  アメリカが米中の共同声明を一九七二年の二月二十八日に出しまして、その年の五月二十九日には米ソが両方の国の関係について基本原則を大統領と書記長の話し合いで決めております。そういうように一つの国の関係は他国との関係について必ず影響があり、また他国の関係についても手を加えなければならぬという問題があるわけでございます。  私は、日中平和友好条約が結ばれました機会に、日ソ関係についてあるいは日本とASEANの関係について、全方位外交というような単なる言葉上のというと語弊がありますけれども、上手な言い方だけではなくて具体的な修好の関係をつくり直すべき問題点が出てきておるのではないか。中山議員が言われましたように、あるいは石原議員が言われましたように、むしろ今後のこの条約に基づく各国間の関係の修復が問題であろうかと思いますが、外務大臣の所見をお伺いいたしたいと思います。
  141. 園田直

    園田国務大臣 各国との友好関係の上に、間違いがないように、友好条約を契機にして、いろいろ相互理解を深めていくという御意見は、全く私も同意でありまして、それぞれの国々にそれぞれの手段で努力をしてはおりますが、今後ともさらに努力は続ける考えでございます。
  142. 大坪健一郎

    ○大坪委員 そこで、先ほどもちょっと話が出ておりましたが、日米との関連で、日中平和友好条約ができます場合に、外務大臣中国の黄華外交部長とお話しになって、アメリカの国会内のいろいろな事情との関連で、日中平和友好条約を結ぶことが、アメリカの国会の空気をよくすることにも参考になるだろうというようなことを言われたように聞いております。外務大臣がいろいろ裏話をされるのは非常に結構でございますけれども、これはやはり誤解を招くもとになるのではないかと私は思いますが、御所見はいかがでございますか。
  143. 園田直

    園田国務大臣 私のその発言は、確かに日中友好条約締結が米国で相談をし、あるいは米国との関連性にあったかのごとき印象を与えますので、そういう点は、今後十分注意をいたします。
  144. 大坪健一郎

    ○大坪委員 理事会のお約束で自由民主党にいただきました時間を、同僚議員の多少の超過で相当消費いたしましたので、あと二点だけ簡単な質問をさせていただきます。  条文の内容にわたります。  一つは、第一条の「武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。」「武力による威嚇」という問題でございますが、先ほどからの議論を承っておりますと、紛争の処理に武力を使うという問題と覇権という問題とを混同して議論されているように思います。覇権というのは国家のヘゲモニー確立の問題でございますから、小さな局所的な問題に武力を使うこととは違う問題だと思いますけれども、この第一条の「武力による威嚇に訴えない」という紛争の平和的手段による解決、これには、たとえば尖閣列島で中国が漁船という名目で大変多くの船を動員された、その船に機関銃が積まれておった、こういうのは「武力による威嚇」に該当するのではないかと私は思うわけです。したがって、こういうものは将来使わないのは当然であると思うのでございますけれども、その辺はどうでございましょうか。
  145. 大森誠一

    大森政府委員 ただいま先生指摘の、条約第一条の「武力又は武力による威嚇に訴えない」という点でございますが、この点につきましては、その前にあります「紛争を平和的手段により解決し」、また国際関係で「武力又は武力による威嚇に訴えない」ということは表裏一体の関係で密接に関連しているものでありまして、国連憲章第二条の第三項及び第四項にそれぞれ規定されているところでございます。  ただいま先生は、先般発生いたしました尖閣列島の領海侵犯事件ということとの関連の御質問でございますけれども、この点につきましては、必ずしもあれが武力または武力による威嚇に訴えた行動というふうには言えないことであろうと存じます。  しかしながら、条約の別の第一条の個所におきまして「主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、」というような規定もございまして、そういう点につきましては、わが国立場からすればそういう点には問題があるのではなかろうかというところでございます。
  146. 大坪健一郎

    ○大坪委員 少し解釈が甘いように思いますけれども、それはよろしいといたしまして、次は第二条の覇権の問題の中で「国又は国の集団による試みにも反対することを表明する。」この「国の集団による試み」の中に、たとえば東南アジアの諸国なり何なりが条約締結しまして、その条約の発動として行われる行為が覇権行為に該当するというような議論が起こった場合に、これはどういうふうに考えるべきであるか、それをちょっとお話しをいただきたいと思います。
  147. 大森誠一

    大森政府委員 この条約第二条に述べられております「国又は国の集団」という点でございますけれども、これは特定の条約等の関係によりまして、集団として組織化されたものだけを言うとは必ずしも限らないところでございまして、この条約規定に言うところは、要するに、複数の国が集まって共通の意思によって覇権を確立しようとする試みを行えば、ここに言う「国の集団」ということに該当する、このように考えております。
  148. 大坪健一郎

    ○大坪委員 いま質問いたしました意味は、たとえばベトナム三国が連合をつくって、名前を挙げるのは必ずしも穏当でございませんけれども、アジアで新しい行動を起こされるとか、あるいはASEAN諸国に大国が加盟をされて何らかの行動を起こすというようなことが、この「集団による試みにも反対する」という条文との関連でどうなるかということをあらかじめお伺いしておいた方がいいのではないかということでございます。  それから、ついでに、第二条の一番最後に「表明する。」ということになっておりますが、これはいわば宣言規定でございますか。それとも何か両国の共同行動をあらかじめ両国で事前に相談をした上で行動をとるということでございましょうか。
  149. 大森誠一

    大森政府委員 ここで、第二条の末尾に「表明する。」という言葉を置きましたのは、この第二条に述べられているような日中両国立場を内外に宣明するという意味で「表明する。」と書かれているわけでございますけれども、そこに書かれていること自体について、この言葉があることによって特に法的な意味合いが異なるというものではございません。
  150. 大坪健一郎

    ○大坪委員 そうすると、この第二条に関連して、あらかじめある問題が起こったときに、両国が事前に相談をして、共同の意思を表明するとか、共同の意見を発表するとか、そういうことはありませんか。どうでしょうか。
  151. 大森誠一

    大森政府委員 そういうことは考えられていないところでございます。
  152. 大坪健一郎

    ○大坪委員 それでは、もうそれこそ時間がなくなってまいりましたので、最後に、第三条の平和五原則に基づく両国関係の緊密化、経済関係及び文化関係の一層の発展、両国民の交流の促進という問題がございます。この交流の具体策について、これは関係官庁にわたることと思いますけれども、外務大臣の決意をもしお持ちならば、やや具体的にお述べいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  153. 園田直

    園田国務大臣 文化交流を初めといたしまして、人間の交流、学問あるいは芸術あるいはその他のことで相互理解を深めることから先立って、これに続くいろいろな近代化、経済問題が出てくるわけでありますが、まだ各省と相談して具体的には決めておるわけではございません。
  154. 大坪健一郎

    ○大坪委員 終わります。
  155. 永田亮一

    永田委員長 岡田春夫君。
  156. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 若干御質問いたしてまいりますが、まず第一に、条約締結に全力を尽くされました園田外務大臣に敬意を表します。  八月十八日に、締結後最初の外務委員会で冒頭演説を行われまして、この中に、「本大臣は、」「この機会に、この歴史的な外交文書がこの世に生まれるについては、この条約締結のために」不断の努力を惜しまれなかった日中両国の「数多くの先輩、同僚諸兄、友人各位のことを決して忘れてはならないことを強調したいと存じます。」こういうように井戸を掘った人といいますか、こういう人についてもいろいろ敬意をささげられたわけでございますが、まず第一に、この文章の中で「この歴史的な」文書、こういう点を使われておるわけですが、歴史的な文書という意味はどういう意味でお使いになったのか、この条約歴史的な意義というのはどういう点にあるのか、こういう点から伺ってまいりたいと思います。
  157. 園田直

    園田国務大臣 中山議員の質問に対して私の信念の一端を申し述べたわけでありますが、私は、この日中友好条約というものが長い間の先輩、同僚各位の御努力の結果出てきたこともそうでありますけれども、単に問題の多かった友好条約締結されたということではなくて、この友好条約こそは力と力の関係から、そうではない社会に移していこうという努力の出発点である。もっと言えば、行き詰まった世界がまかり間違うと混乱の渦中に陥る、その混乱を乗り切っていく新しい道を開くのだ、こういう意味で私は歴史的と書いたわけでございます。
  158. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そういう新しい転機になるんだ、その転機になるべきものは、私はやはり第二条に覇権条項が入った、このことが一番重要なこの条約の中心点だと思いますが、この点はいかがですか。
  159. 園田直

    園田国務大臣 今度の交渉で覇権問題についていろいろ論議があったということをよく質問されますが、反覇権ということについては全然論議がございません。むしろ私の方から進んで、反覇権ということはこれはもう取り上げるべきことであるという主張をいたしたわけでありまして、主張の論点は、特定の第三国ということが論点になったわけでございます。この覇権ということが条約の中に入った、社会通念であり、すべての国々が願うことではあるけれども、それを条約に入れたということも、私は、一つ歴史的なことであると考えます。
  160. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それで、条約の性格について若干伺っておきたいと思いますけれども、この平和友好条約前文の中のフレーズは第三、この中に「前記の共同声明に示された諸原則が厳格に遵守されるべきことを確認し、」云々、これは前文規定としてあるのですが、この「諸原則」というのは具体的に何を意味するか。
  161. 大森誠一

    大森政府委員 ただいま御質問になりました日中平和友好条約前文にありますところの「前記の共同声明に示された諸原則」という点につきましては、この日中間共同声明の特定の項を指して言ったものではなくて、あの共同声明に示されている日中間の今後の友好関係のあり方についての指針とも言うべきもの、そのようなものの総体をここで「諸原則」という言葉表現している、かように考えております。
  162. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうすると、「諸原則」というのは、共同声明の中の各項がありますね、各項だけではなくて、前文を含めてすべてのことを意味する、そういうことと理解して間違いありませんか。
  163. 大森誠一

    大森政府委員 全体として申し上げれば、そのように御理解いただいて結構でございます。強いて日中間の友好関係を今後とも律していく規定という観点から申し上げれば、今度の日中平和友好条約においても採用されておりますところの日中共同声明第六項の規定などはきわめて典型的な規定だろう、このように考えます。
  164. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 実は、先ほど高沢君の質問の中でも大分出た問題でありますが、この諸原則というのは全体の精神から出ている、しかもこの共同声明全体をここで確認をするということになってまいりますと、平和友好条約という、その平和という意味がここにあるんだ、すなわち、戦争終結といわゆる平和条約関係、このことは条約前文、いまの「諸原則」という中でうたわれているということになるのであって、何かどうも歯切れが、政府側の答弁を聞いていると、戦争をすべて終結をして、法的な関係をここで確立をするという点を何かためらって答弁をしているという印象を受ける。共同声明で全部済んだのでこれには関係がないんだ、むしろ平和友好条約で今後の友好関係を中心に考えているんだ、こういうような言い方の御答弁の印象を受けますが、私はそうじゃないと思う。やはり平和友好条約ですから、前文の中で戦争終結国交回復の問題を共同声明という政府間の協定から、これを法的な関係として確立をするという事実関係がこれによって決められたのだと思う。そうして、第一条以降の各条において今後の友好関係をどうするかというものが書かれているのであって、そこの点はやはり明確にしておかれませんといけないのじゃないかと思いますので、この点を確かめておきたいと思います。
  165. 園田直

    園田国務大臣 いまの御発言はそのとおりだと私も考えております。
  166. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そこで、いろいろこれに関連した問題はあるのですが、時間の制約もありますので、若干覇権問題その他に入ってまいりますけれども――ちょっと忘れておりました、問題をもとへ戻しましょう。  先ほど私は冒頭演説を、一部分を読みました。そして井戸を掘った人に対する敬意を表する、こういうことを言われているのですが、これはアジア局長、ちょっとあなたに苦言を呈したい。あなたがお書きになっている「経済と外交」これを読んでみますと、いまの外務大臣の御意見と大変そぐわなく感じることを印象づけられる。たとえばあなたが書いておられるのは「「日中条約締結交渉から学んだもの アジア局長中江要介」ここの一部分ですが、見出しとしては「誰が交渉を難しくしてしまったか」という見出し、見出しはあなたがつけたのじゃないんだと思うけれども、この中に「従って難しいことは何もなかった。しかるに三年九カ月もかかった。誰がこんなにこじらせたのか」という設問をあなた自身がやっている。そしてその後で、交渉が始まったのに一カ月足らずで日本の新聞が、円滑に進んでいないのは、反覇権条項中国側が入れたがっているからだということを報道したのが実は発端である、そしてこういうことを不用意に新聞に漏らした人、あるいはそれを国益を顧みずに報道した人は、ともにだれだか知らないが猛反省を促したい。なぜならば静かに交渉をしておれば円満に早期妥結ができるとわれわれは考えていたんだから……。これを見ると、これはだれであるか私はわかりませんよ。だれであるかわからないけれども、何かいままで努力をしてきた人の変なおせっかいをするなという印象を与える。井戸を掘ってきた人に対して水をかけるような態度に、これは読んでいる者にとっては印象を与える。やはりこれは園田外務大臣考え方とあなた違うと思う。もっと率直に言いますれば、ここに日本外務省の官僚外交の性格があらわれていると思うのです。おれたちにやらしておけばいいのであって、ほかの者が要らぬことをするから三年九カ月もかかったんだ、こういう言い方ですよ。あなた自身の主観はそうでなかったのかどうかそれはわからないが、やはりそういう態度はとるべきじゃない。率直に言うのは、あなたはまだ若いのでこれから外国にも大使として出られる人なんだから、やはりそういう言い方は十分御注意になった方がいいということをあえてあなたに申し上げておきますが、何か御感想でもあればあなたの御意見をお伺いしますし、少なくとも、外務大臣の発言とあなたの書いている文章との間に考え方の違いがあることを感ぜざるを得ない。余り私も大人げなく言う気はないけれども、あなたの将来のためにも十分ひとつ考えておいてもらわなければならないし、日本外交のあり方としてひとつ十分、御意見があるならばあなたの所感をお伺いしておきたいと思います。
  167. 中江要介

    ○中江政府委員 どうも私の書いたものについて非常に誠意をもって苦言をいただきまして恐縮しております。  いま先生も、これは書いている中江の気持ちではないかもしれないが、読みようによってはこうなるとおっしゃいました。その点はまさしく私が井戸を掘った人たちのことを念頭に置いて言っているものでは全くないわけでございます。にもかかわらず、そういうふうにお受け取りになる余地を残したとすれば、私の表現の不足ということで今後反省してまいりたいと思います。  私は、決して井戸を掘った人たちのことを忘れているばかりでなく、そういう人たちの御努力があったればこそ、最後の政治的決断にまで積み上げられてきたという点では、園田外務大臣と全く考えをともにしておるわけでございますので、その点はぜひそういうふうに御理解いただきたいとお願いいたします。
  168. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それでは覇権問題に入りますけれども、大分覇権問題についてもいろいろ意見が出てまいりました。ただ、どうも第二条の覇権問題については皆さんの御答弁、まだ釈然としない。そういう点で若干問題を詰めてまいります。  その前提として、先ほども質問がございましたが、全方位外交という言葉あるいは全方位平和外交ですか、総理大臣が盛んに使うのでございますが、これに対して外務省としてはどういう観点に立っているのですか。その態度をとらないかのごとく、とるかのごとく、どうもはっきりしないのですが、この点はいかがですか。
  169. 園田直

    園田国務大臣 総理がお使いになっておる全方位外交とは、私が国会の冒頭で申し上げましたとおり、遠近、大小、政治形態のいかんを問わず、どの国とも友好関係を進めていきたい、こういうことでございます。それを全方位外交と総理は言っておられるものと考えております。
  170. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうすると、全方位外交というのは一定の外交路線というよりも方法論ですね。たとえば、一定の展望を持って外交路線をやっていくという一つの基本方針ではなくて、どことも仲よくするという一つの方法論にすぎないんじゃありませんか。
  171. 園田直

    園田国務大臣 言葉が誤解を受けるかもわかりませんが、どこの国とも仲よくするということではなくて、どこの国とも交際をやり話し合いをする、こういう意味でございます。
  172. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それはまあ話し合いをする。しかしまさか、そういう言い方になってくると、伺いますが、覇権主義国というものがあったとして、覇権主義国とも話し合いをして外交関係を続ける、こういうわけですか。
  173. 園田直

    園田国務大臣 それは現実状態では外交関係を断つこともあるでしょうし、あるいは話し合いをやめることもありましょうが、一つの問題が起きたときにはその問題をめぐって話し合いはする、こういう意味であります。
  174. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 結局私が言いたいのは、全方位外交などというのは実は方法論であって、何か事新しそうに言うのはむしろナンセンスだというのが私の感じです。それでいま私もちょっと言ったように、覇権主義国とも交流をするというのか、しないのか、断絶することもあるのだろうが、そうしたら全方位でなくなるということにもなるのだし、そういう全方位なんというのはむしろナンセンスだと思っています。やはりここで重要なのは、先ほど御答弁もあったように、覇権に反対するという基本的な態度を堅持するということが日本外交として非常に重要な点、私は先ほど共同声明全体を含むのかどうかと聞いたのは、実はこの点なんであります。と申しますのは、ここで共同声明を持っておりますが、この中に特に重要な点は、「日本側は、過去において日本国戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する。」この基本点に立って初めて覇権主義の問題が定着できる。この点が、今後世界における情勢の中で日本外交がとるべき基本点として考えなければならない点、これはまた同時に憲法前文にある点でもある。憲法前文の点もここで改めて申し上げるまでもないのでありますが、日本の基本的外交の姿勢というのはここへ置かれたことによって、今後世界における日本の位置づけというのが決められていく問題になるのだ、こういう点を明確にすることが一番大切なんだということを私は言いたいので、これについてもひとつ外務大臣にこの際御見解を伺っておいた方がいいと思いますので伺います。
  175. 園田直

    園田国務大臣 ただいまおっしゃったことは、私も全く徹底してその考え方に徹しておるわけであります。したがいまして、その方向に向かうスタートが今度の日中友好条約だ、こう解釈していることも間違いないところであります。全方位外交というのは、総理が円満に使われた言葉でありますから、私としてはまああれで結構だ、こう思っております。
  176. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そこで、この点が一番釈然としないポイントだということを私は感じたのですが、覇権の概念という点が明確になっておらない。こういう点を何度かいままでの委員会でも質問応答があったようでございますが、私はまだあれでは不十分だと思う。やはり覇権の概念、十八日の委員会では、公明党の渡部委員質問大森条約局長が答えておりますけれども、ついきのうですか、きのうもどなたか答えておりましたが、覇権の概念という点をひとつもう一度御説明をいただきたい。
  177. 大森誠一

    大森政府委員 これまでもたびたび申し上げておるところでございますけれども、いわゆる覇権という点につきましては、これは国際的に広く受け入れられている概念でございまして、この条約におきましては、特に覇権とは何かという点は定義しなかったわけでございますけれども、覇権に関するわが方の考え方につきましては、先般の日中条約交渉の過程におきまして、わが方から、一国が他国の意思に反して力により自己の意思を押しつけようとするがごとき行為は覇権を求める行為であり、国連憲章の原則にも反するものであるというふうに考えるという旨を中国側に明確に述べてございまして、この点について中国側との間に見解相違はないものと、かように考えておる次第でございます。
  178. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それに対してどういう答えがありましたか。相違がないものと思いますというのはあなたの主観ですか。
  179. 大森誠一

    大森政府委員 先般の日中平和友好条約交渉におきましては、先生も御案内のように、当初いわゆる佐藤・韓念龍会談というものが前後十六回にわたって開かれたわけでございます。その過程におきまして、ただいま私が述べたような日本側の覇権に関する姿勢その他、日本外交的な基本方針について数々の見解の表明を行いました。それに対しまして中国側からも中国側見解の表明がございました。きわめていろいろの意味で濃密な会談が行われたわけでございますが、ただいまの日本側の発言につきまして中国側から異論を差しはさむということは一切なかったわけでございます。  そのようなことにかんがみまして、日中間にただいま私が申し上げましたような覇権についての考え方に差異はない、かように考えている、こう申し上げた次第でございます。
  180. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃ、いまの御答弁によると覇権の概念では日中両国間に差異はない、こういうことですね。
  181. 大森誠一

    大森政府委員 そのように考えております。
  182. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 その場合の力によるというのは、どういうことを意味しますか。
  183. 大森誠一

    大森政府委員 力と申しますのは文字どおり力でございますけれども、これは必ずしもいわゆる武力というものには限られない、いろいろの面における力というもの、それが一国の意思が他国に対して、その他国の意思に反するような行為を強制させるという形をとるに至るがごとき力というものであれば、それは必ずしも武力というものに限られないものである、かように考えております。
  184. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 まあそうだろうと思うのですが、そうすると言論による力、そういうものも含むわけですか。
  185. 大森誠一

    大森政府委員 ただいま先生は、言論による力という表現をお使いになりましたけれども、やはり覇権というものを考えていきます場合には、個個の具体的事例に即して判断していかざるを得ないわけでございまして、一概に言論による力ということがここに言う力に入るかどうかということについては的確に申し上げることはいたしかねる、かように考えます。
  186. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 国連憲章における、第一条の規定ですね。武力行使の問題、これの場合と、いまの覇権の中における力という問題と二つを対比した場合に、覇権の場合の力というのはもっと範囲が広いわけでしょう。
  187. 大森誠一

    大森政府委員 先生ただいま国連憲章の第一条ということを御指摘になりましたけれども……。
  188. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いやいや、第一条じゃなく、それは条約の一条にもあるがということです。
  189. 大森誠一

    大森政府委員 条約の第一条にもあるという関連で申し上げれば、第一条に言っております国連憲章の原則と申しますのは、国連憲章第二条を具体的には指しているわけでございます。
  190. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 だからその範囲、武力行使というものと力というものは、もっと範囲が広いんでしょう。
  191. 大森誠一

    大森政府委員 この国連憲章の第二条第四項に設けられております「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、」「慎まなければならない。」この規定に言う力という点と対比いたしますれば、先ほど申し上げました力というものは広い概念であろうとは思いますけれども、この国連憲章の趣旨、精神というものにおいては同じことを言っている、国連憲章のこの原則、精神には即しているものというふうに考えております。
  192. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 原則、精神の問題じゃなくて、同じものならば覇権の問題を書く必要はないじゃないですか。もっと広い意味で使われているんじゃありませんか、覇権主義というのは。これは外務大臣の方がいいでしょう。
  193. 園田直

    園田国務大臣 これはもっと広い意味であると双方が理解をいたしております。  先ほど言論の話が出てまいりましたが、覇権行為にも大小あり、覇権主義、覇権的考え方、覇権的態度、こういうことがだんだん出てくるわけでありまして、同じ言論にいたしまして自国の主張を言う場合の言論と、大国であるという背景を持って威力を示しつつ相手に言論するかどうかによって、私は判断すべき問題であると考えております。
  194. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃ、外務大臣答弁になりましたが、交渉中、たしか五月か六月だったと思いますけれども、あなたがタイのバンコクへ行かれて、その当時にソ連が非常に強硬な発言をしましたね。これに対してあなたは恫喝的な言辞と思われるこのような発言云々ということを言われましたね。あのときのソ連の発言というのは、これは覇権主義に入りますかどうですか。
  195. 園田直

    園田国務大臣 覇権とか恫喝というのは、言う方もあるし、聞く方の心構えもあるわけでありまして、聞く方がそれに恫喝されなければよいわけでありますが、私は少なくとも高飛車な物の言い方であるそういう物の言い方は抵抗するところでございます。これは今度ニューヨークでもグロムイコ外務大臣に、まず話し合いを始めるについてはもっとお互いにやさしく話し合おうじゃないか、こういう話をしてまいりました。
  196. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 やさしく話せばということは、しかし恫喝的な発言という、大国を背景にした発言があれば、これは覇権主義そのものと言わないにしても、覇権主義的な言辞であったということは言えるんじゃないかと思う。そういう意味だから、あなたは恫喝的な云々と言われたんじゃないかと思うんです。そういうように私はあのとき理解したんだが、あなたはそういうことをお考えになっていたんですか、どうなんですか。
  197. 園田直

    園田国務大臣 私の発言した言葉をそのまま理解していただければ間違いないと存じますが、いまや日ソ友好関係を進めようというときに、過去のことを繰り返して断定することは私は適当ではないと存じますので、あの言葉でそのまま御理解を願って結構でございます。
  198. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この覇権の問題ですが、きのうの答弁の中で、覇権に対して共同の行動をすることはあり得ない、これは私もそうだと思います。しかし、共同の意思表明をすることはあり得るんじゃないですか。  先ほどのどなたかの御答弁を聞いていると、別にそれについては打ち合わせをするわけじゃない、こういう話だったが、覇権問題について反対をするということは、さっきアジア局長だったと思うが、まず第一点は、日中相互間において覇権を求めないということが基本点である、そして、第三国もこれを求めるべきではないということを明確にすべきである。これならば、むしろ今日覇権的な行動が起こってきた場合において、日中間において、共同行動ではないですよ、意思表示について、共同して発言することはあり得るんじゃありませんか。
  199. 園田直

    園田国務大臣 拘束するものではありませんが、あり得ることもあると存じます。
  200. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この条約の精神から言えば、むしろそういうことだと思いますよ。それぞれの国が判断をするということもあるが、そうでないとこの条約の条文をつくった意味をなさないじゃないですか、あなた。両国間でこれは合意したのでしょう。両国間で合意をするならば、覇権主義であるという認定をして、それによって、これについて、アジア太平洋においてこのような覇権主義はとってもらいたくないということをこの条約に基づいて発言をすることはあり得る。そういう一般的な形としては、共同で、何も共同声明を両外務大臣が並んでやるという意味ばかりじゃありませんよ。あなたが日本で発表する、中国中国で発表するということだって共同の意思表示だと思うのだが、そういうことはむしろノーマルな形ではありませんか、どうなんですか。
  201. 園田直

    園田国務大臣 そういう場合もあり得る。特に、友好条約の本質的な問題、アジアの平和、安定に関係する問題は、お互いにどうだということを話すことはあり得ると思います。
  202. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いや、ちょっとそこら辺食い違いがありますね。私はノーマルだと言っているのです。あなたは、そういうこともあり得るだろう、こういうお話の程度なんですが、私は、それがむしろノーマルだ。そのことは共同の行動を意味するということにはなりませんね。その点ちょっと確かめておきましょう。
  203. 園田直

    園田国務大臣 これはそのとき現実に起きた問題で判断すべきことではありますけれども、そういうことはあり得るということでお答えをしておきます。
  204. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それから、これも確認をしておきますが、第四条ですね、これは第二条を拘束するものですか、どうですか。
  205. 大森誠一

    大森政府委員 この第四条の趣旨につきましては、これまでも申し上げているところでございますけれども、まず、この条約のいかなる規定によっても、わが国について申せば、第三国との関係に関するわが国立場にいささかの影響も及ぼされることはないということを確認的に述べていることが第一でございます。  この点につきましては、この条約前文の末尾にございますように、「両国間の平和友好関係を強固にし、発展させるため、」とこの条約の目的が明確にうたわれているところからもおわかりになりますように、いかなる国をも敵視するためにこの条約を結んだものではない、また、わが国が、先ほど大臣が申されましたようなわが国外交の基本的立場というものが、この条約のいかなる条文の規定によっても影響を受けないということを明確にしているところでございます。これが基本的な趣旨でございます。
  206. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 どうも大森さん、いろいろ考えながらあなたは答弁しているようだけれども、あなた、私の質問と意識的にすれ違いにさせているのかどうか、それは知らぬけれども、私の言っているのは、四条は二条を拘束するか、こう言っているのですよ。
  207. 大森誠一

    大森政府委員 第四条は第二条を拘束する、そういう性格のものではございません。しかしながら、この第四条の規定は、先ほど申し上げましたように、この条約のいかなる規定、これは第二条を含むわけですけれども、この第二条を含むいかなる条文の規定によっても、先ほど申し上げましたようなわが国立場というものはいささかも影響を受けないということを確認している規定でございます。  先生がおっしゃった、第四条が第二条を拘束するというその意味合いが私にはよくわかりかねるわけでございますけれども、私の見解はいま申し上げたとおりでございます。
  208. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 私の言いたいのはこういうことなんですよ。  この条約を結んで、反覇権条項をはっきり両国間が合意したですね。だからといって、その合意をした日本なら日本が他の国においていろいろな外交関係を継続するということについては、これは継続することは自由なんですよ、その国の主権事項として当然なんですよと、これが第四条でしょう。したがって第二条は、あくまでもその外交関係を各国とやっていく、その場合の基本点としては、覇権主義反対という第二条は日本としては生きている――生きているというか、根本的にそれを基調にしている。そういう上で各国とやるのであって、何かほかの国と交渉をする場合に、覇権主義と言いたいのだけれども言わないようにしてやるのですよと、こういう意味ではないんでしょう、こういうことを言っているのですよ。だから、これを拘束するということになりますかと端的に聞いたわけなんです。その点はどうなんですか。
  209. 大森誠一

    大森政府委員 第二条に表明されている立場というものは、これは日本国中国とが厳粛に誓約しているところでございまして、その立場を第四条が消しているという性質のものでは全くございません。第二条の趣旨をもあわせて明確に確認しているということでございます。
  210. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 わかりました。  若干具体的に伺ってみましょう。日ソ関係ですが、防衛局長見えていますね。――きょうの新聞に出ておった対馬海峡のソ連の艦隊の通航、こういう問題は非常に重大なんですが、それ以外に三つの海峡、対馬、津軽、宗谷、こういう付近に最近ソ連の艦隊が通峡している現状等を含めて、ひとつこの機会にお答えをいただきたいと思います。
  211. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 昨日対馬海峡を通りましたのは、カシン級の駆逐艦等四隻が通航いたしております。  御承知のように、ソ連の極東の海軍力というものは、この十年間にトン数にして七十万トンから百二十万トン、きわめてふえているわけでございます。その中で隻数は五百八十隻が七百五十隻ぐらいでございますから、そのトン数に比較して隻数がそうふえていないということは、大型化しているということだろうと思います。ということは、いわゆる従来の沿岸警備の艦隊が外洋艦隊に変貌しつつあるということだろうと思いまして、御承知のように一九七〇年に入りましてからは、太平洋におきます演習等が多くなってきております。その関係で艦艇の三海峡の通峡というのもふえているわけでございますが、私どもが監視しております状況によりましても、たとえば対馬海峡なんかは年間百二十隻程度が通峡いたしておりまして、これはインド洋に参るものの交代あるいは沖繩からグアム付近におきます演習、これは昨年とことし行われております。それから、津軽海峡が年間約五十隻程度でございますが、宗谷海峡は百十隻程度、これは御承知のようにペトロパウロフスクという海軍の基地が非常に強化されておりますので、そことの行き来ということでございまして、それに伴いまして、当然のことながら貨物船等の通峡なんかもふえているというのが実情でございます。
  212. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 この機会にもう一点、領空侵犯その他の問題ですね、こういう経過についてちょっとお答え願いたい。
  213. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 この領空侵犯につきましては、実は、最近は年間三百五十回程度、すなわち一日に一回ぐらいは上がっているわけでございますが、そのうちの三分の二程度は北の方でございます。しかしながら、スクランブルで上がりますのが即領空侵犯ということではございませんで、私どもが領空侵犯措置をするようになりましてから現在までに、六回領空侵犯が行われております。これはいずれも北の方が多いわけでございますが、四十二年ごろから礼文島あたり、それから五十年代、最近になりましては伊豆諸島、それから例のミグがございました。それからことしになりまして、対馬から五島列島の付近で、ことしの三月と去年の九月に領空侵犯が行われております。これは実は領海が十二海里になった関係もあるのではないかと思うのでございますが、御承知のように対馬海峡というのは領海が非常に狭くなりました。したがいまして、その後通過するについては、海上に艦艇を置きながら、注意はして通っておるようでございますが、なれない時期に領空侵犯が行われたということでございますが、依然としてスクランブルに上がるのは年間三百回を超えているというのが実情でございます。
  214. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 スクランブルは三百回ぐらい、その中で明らかに領空侵犯というのが六回という場合に、その明らかに領空侵犯であった場合に、当然抗議の措置をおとりになっておるのだろうと思うが、これはどうですか。
  215. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これはその都度外務省を通じまして抗議の措置をとっておりますけれども、中には返事がないのもございます。それから、計器が壊れていたための侵犯をした可能性があるというような返事があったこともございます。
  216. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それから、最初の方でお答えになったソ連海軍の増強、これは日本にとって脅威ではありませんか。
  217. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 これはたびたび申し上げておりますように、いわゆる脅威というのは、いわゆる潜在的な軍事的な能力と意思というものが絡み合うものだと思っております。その意味では、現在意思と結びついた脅威というふうには考えておりません。しかしながら、現実に軍事力が強化されているという事実につきましては、私どもも注意しているところであるわけでございます。
  218. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 いまの注意をしているというお話ですが、先の方の問題、これは外務大臣にも伺っておきたいのだが、主権侵害があって、これに対して抗議をしているということになると、これは覇権との関係はどうですか。覇権主義じゃないですか。
  219. 中江要介

    ○中江政府委員 覇権の定義につきましては、前から申しておりますように、自分の意思を相手の意思に反して力で押しつける。したがって、領空を侵犯したということは、事実は領空侵犯でございますが、その領空侵犯が、国家の意思としてわが国の意思に反して何かを押しつけようとしているかどうかということの問題になろうかと思います。
  220. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 他国の意に反して力で押しつけたのでしょう。力というのは明らかに武器も含む全部でしょう。そうしたら、その力で侵犯した、主権を侵害したのでしょう。他国の主権を侵害した、これは明らかに覇権じゃないですか。そう言わざるを得ないと思うのだが、これは多分に政治的な問題ですが、どうですか、外務大臣
  221. 園田直

    園田国務大臣 領空侵犯には、計器の故障の場合もあるし、操縦士の誤りのある場合もあるし、あるいはある国家が日本に特に脅威を与えるためにやった場合もありましょうから、その都度判断すべき問題であると考えております。
  222. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 しかし、それはあなた、計器の故障にしようが何にしようが、主権を侵害したのは事実でしょう。そうしたら、あなた、さっきの覇権の概念規定から言ったら明らかに反するじゃないですか。相手の国の意思に反して押しつけたということで、少なくともあなたの御答弁で言えば、覇権と断定できないが、覇権的危険性が非常にあるという御答弁くらいあってしかるべきだと思うのだが、その点は、あなたが覇権というものをあくまで堅持されるかどうかという心構えに関係することだと思うのだが、そういう点についてはいかがですか。
  223. 園田直

    園田国務大臣 覇権的行為があれば、日本立場でそのときの状況でこれに対して抵抗することは当然でありますが、領空侵犯が必ずしも力によって、相手がいやだというのを押しつけてやるのではなくて、間違って入った場合もあるし、あるいは計器の故障の場合もありますから、すべてを覇権と断定するわけにはいかぬ、こういうわけであります。
  224. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 どうも、そういう場合もあるでしょう。しかし、それに対応する対抗措置として、必ずしも力によって対抗するということではないのです。覇権に対する反対という意思表示ということも当然あるわけですから。しかし、少なくともそういう危険性のあることが再三にわたって行われているということは事実です。  それから、どうもあなた方の答弁でわからないのは、北方領土について、あれは覇権ではないとおっしゃる点はわれわれ納得できませんね。なぜならば、これは大臣に伺っておきたいのだが、私たち社会党としては、千島全島を日本の本来の領土規定しておりますが、あなた方の議論によっても、たとえば北方四島は不当にソ連が占有しているわけでしょう。不当に占有しているという事実は主権の侵害じゃないですか。どうしてこれが覇権主義でないとおっしゃるのですか。
  225. 中江要介

    ○中江政府委員 その点は昨日も御質問がございまして、私が申し上げましたことは、覇権主義でないと言ったわけではございません。ないとは言ってなくて、日本政府としてあれが覇権であるかどうかということはまだ言っておりません、こういうことを申し上げたわけでございます。
  226. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 まだ言ったことはないのなら、この際、これは高度の政治性を要する問題ですので外務大臣に伺いましょう。  これはどうですか、主権の侵害でしょう。主権の侵害なら、侵害をして、力によって、さっきの概念規定ですね、相手の国のあれを抑え込む。こういう力によって抑え込んでいる、現実にそうなっているんじゃないですか。それならあなた、覇権主義じゃないですか。
  227. 園田直

    園田国務大臣 不法占拠でありますから、これは覇権前の問題だと考えます。
  228. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 しかし、今日、以前の問題とおっしゃるのは、もっと大変な問題だ、こういう意味ですか。
  229. 園田直

    園田国務大臣 そうです。
  230. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それではそうお答えください。
  231. 中江要介

    ○中江政府委員 そのとおりでございます。
  232. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それ以前ならば覇権を当然含むわけでしょう。覇権主義を含むでしょう。それよりももっと重大な問題だ、こうおっしゃるんでしょう。そうしたら覇権はおろか、覇権というものであるのみならず、もっとひどい問題なんだ、こういう意味ですか。
  233. 園田直

    園田国務大臣 それを不法占拠と言っているわけであります。
  234. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そういう意味ですか。覇権の問題も含んで、それのみならず、もっと不当な問題……。
  235. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりであります。
  236. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 わかりました。これは覇権主義の一つの例がここではっきり出たわけであって、そういう点ではソ連の今日の北方領土の不当占拠、この点については、もちろん覇権主義であるということ、もちろんですね、そういう見解政府がおありであるということを私は確認しておきたいと思いますが、それでよろしいんですね。
  237. 大森誠一

    大森政府委員 私は、先ほど来の大臣及びアジア局長答弁で言われている趣旨は、覇権以前の問題であるという意味は、第二次大戦中のいろいろの経緯を経て、今日に至って引き続きソ連がわが国固有の領土である北方四島を不法に占拠している状態が継続している状況である、そういう立場に立ちまして、この問題については両国間の最も重大な懸案事項として、覇権という観点からよりは、むしろただいま申し上げましたようなわが国固有の領土の返還を粘り強く今後とも求めていく、そういう立場で対処すべきものであると考えます。
  238. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたは覇権と返還交渉とを緒に突きまぜてごまかしちゃいけないですよ。外務大臣の方がもっと明確ですよ。外務大臣は覇権であるばかりでなくもっとひどいのだ、こういう意味だと言ったのだから、これはいまさらお取り消しになるはずもないと思うし、私はそうだと思うのだが、さっきのは返還交渉の問題も全部一緒にしてごまかしてしまおうという大森条約局長の意見ですが、私は納得できません。
  239. 大森誠一

    大森政府委員 私はごまかしているつもりは毛頭ございませんで、覇権以前の問題であるという本来の意味は、従来の数々の経緯に照らして、ソ連邦がわが国固有の領土である北方四島を不法に占拠している、この状態が続いていることをわが国としてはぜひとも日ソ両国間の重大な懸案事項として解決しなければならない、このように覇権という観点からよりは、ただいま私が申し上げたような立場からこれに対処していくことが筋である、かように考えるわけでございます。
  240. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 あなたは、覇権とどう関係するのかと聞いているのに、返還要求の問題を言ったってだめですよ。
  241. 園田直

    園田国務大臣 私から一言答弁いたしておきます。  私が先ほど申し述べたとおりであります。ただ、返還交渉をする場合に、これを覇権行為ときめつけてこれに抵抗した方がいいのか、どう進めていくかというのは別の問題でございます。
  242. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 ですから、いま言われたのは交渉のときの態度の問題です。だけれども、本質は覇権以上のものだ、その中には当然覇権というものも入っているのだという理解を私はいたしてまいります。  時間があと十分しかなくなってしまったので、若干質問の中心を変えてまいります。  一つは、今度あなたが行かれたときに華国鋒主席にお会いになりましたね。そのときに日本訪問の問題が出た、華主席の来日問題ですね。これは大体いつごろという感触を得ておられますか。
  243. 園田直

    園田国務大臣 はっきりこの席でいつごろという判断はできませんけれども、そのとき言われた言葉は、田中総理が来られてからそのお返しをしていない、借金だ、だから一遍は訪問したいと思うが、年内は鄧小平副主席が行くようだから、こういう返事でございましたから、ことしは無理かもわからぬという程度でございます。
  244. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうすると、ことしは無理でも来年可能性もあるという意味ですか。
  245. 園田直

    園田国務大臣 そう判、断して帰ってまいりました。
  246. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 外交というものは相互主義ですから、そういうことが来年行われるとするならば、当然それに相前後して、こちらから日本政府を代表する者が行かなければなりませんね。そういう点について何らかのお話し合いがありましたか。
  247. 園田直

    園田国務大臣 その話し合いはございませんでした。これは将来検討すべき問題であります。
  248. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 鄧小平副総理がこちらへ来るとすれば、これは単に批准書の交換だけで済ますべきものではないと思う。総理との会談も何回か行われるわけですが、当然その問題が出てくることを考えなくちゃならない。これに対してどういう――そのときの総理が福田さんであるかどうか私はわかりません。ほかの人かもしれません。しかし、それにしてもともかく、日本政府を代表する総理が行くことは当然考えなければならないと思うが、これについてはどういう御見解ですか。
  249. 園田直

    園田国務大臣 そのときは福田総理でないかもわからぬし、私も外務大臣でないかもわからぬ、将来の問題でありますけれども、外交慣例としては向こうから招待されて、それから話が起こる問題であると考えます。
  250. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それから、鄧小平副総理来日に当たって、やはり何か具体的な日本側としての提案があるだろうと思う。たとえば、単に批准書の交換だけで終わるのじゃなくて、この委員会でも再三質問が出ているように、経済交流その他の問題がいろいろ問題になってきてる。そうすると、それは単に話し合いだけでなくて、経済の協定というかあるいは通商条約といいますか、こういうものを具体的に提起をすることも考えなければいけないのではないのか。あるいはまた、この点は前から聞いておって非常に聞きづらかったので、あなたの方で御注意いただきたいのだが、いま四つの近代化と言っておりませんからね。四つの現代化です。これはことしの春からはっきり変わっていますから。四つの現代化を進める意味でも、これは科学技術の交流協定というのを考える必要がある。こういう協定を結ぶという何らかの提案を今度の来日に当たってお考えになっておられるのですかどうなんですか。
  251. 園田直

    園田国務大臣 首脳者会談は、御承知のごとく両国の事務当局が積み上げてきて大体了解を得た議題について論議されるところでありますけれども、私が向こうへ行っていろいろ話した感覚からいたしますると、やはり現代化の問題、特に技術協力の問題、そういう問題は話題になるのではなかろうか、これは想像でございます。
  252. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それは具体的にまだ発表されるところまで至っていないのですか。
  253. 園田直

    園田国務大臣 議題についての詰めはまだ最後までは行っておりません。
  254. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それは非常に強く要望しておきます。やはり長期の交流問題ですから、政府間の協定が特に必要だと私は思う。相手の場合が特に政府でありますし、民間がないわけでありますから、経済関係を含めてあるいは科学技術、文化、人事交流、こういうものにおける協定をぜひ締結をされた方がいいと思います。それは希望として申し上げておきます。  それから、もう時間がないから二、三分だけで終わりますけれども、ソ連の問題、善隣条約です。私はことし二月ここで取り上げたのですが、あなたの御答弁を聞いていると、条約の内容についても納得できない点があるというのを、きのうときょう二度言われているのですが、その点は条約の条文上どの点なんですか。善隣条約、このについてひとつ具体的な内容を伺いたいと思うのです。
  255. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 善隣条約につきましては、御承知のとおりの経緯で、これは日本政府として検討しないということで、大臣は儀礼的にお受け取りになったわけでございますが、それを渡しますときに、先方から、日本政府の言うような意味での平和条約の交渉はできないから、かわりにこれだということでそれを出したわけでございますので、日本政府のやりたいと考えておるような意味での平和条約の内容と全く異なったものを中に盛っておりますので、検討はいたさない、こういうことでございます。
  256. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それは宮澤さん、平和条約と善隣協力条約の内容は全然違いますよ。だから、そういうことを私聞いているのじゃないです。条約の中、あなたの方は金庫に入れてあるそうだけれども、向こうはイズベスチヤで発表しちゃったんだから、皆さん内容も検討して、この点は困る、この点は困るということがあっていいはずなんですよ。その点はどうなんだと聞いているのです。それが一つ。  それからもう一点は、あの経過はどうなんですか、私、もう一度ここら辺は確認しておきたい点なんだが、領土問題について日ソ両国間の意見が違う、そのスタンドポイントが違うのだから領土問題に関しない問題として善隣協力条約、いわば向こうの方はこういう言葉を使っていますね。平和条約に至る前の中間的な条約、こういう言い方をしていますね。そういう言い方で向こうの方が善隣協力条約を提起してきたのですか、あの前後の経過は一体どういうことになっているのですか。
  257. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 ソ連側があのような条約の提案をいたし、最後にテキストを渡しました経緯といたしましては、日本政府の言うような基盤の上での平和条約の交渉はできないから、それに至るまでの、いまおっしゃいました中間的というのは、大分前に三木外相が行かれたときにもう出た言葉でございますが、日ソ間の関係を改善するために何か考えてはどうかという趣旨でございまして、今回、向こうが出しました場合も、日本政府の言う立場、これは園田大臣がその場で言われたわけでございますが、そのような立場に立っての平和条約はソ連政府として結ぶ用意がないから、こういうものをかわりにソ連としては提案したい、こういうことで向こうが出したわけでございます。
  258. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 それじゃ宮澤さん、領土問題は、これについては善隣条約は全然ないということですね。
  259. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 園田外務大臣と話しまして向こうがテキストを出しましたときには、そのような表現でございました。
  260. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 そうすると領土問題は決まらない、だから善隣条約を結ぼう。こっちの方は領土問題を決めろ、こういうことでしょう。ここに意見の対立があるわけですね。そうすると、善隣条約だけの交渉をしているが、これでは領土問題の解決にはならない。あるいは善隣条約で並行審議をしようという話も出ているが、これは本来領土問題に全然なじまないというか、違う善隣交渉をやってみても、領土問題と並行審議しても並行審議にはならないわけですね。そういう意味ですね。
  261. 宮澤泰

    ○宮澤政府委員 日本政府考えでは、領土問題さえ解決すればほとんどソ連との間に残されている問題はないわけでございますから、おのずから友好親善の関係は生まれる。しかも、それに至りますまでには、共同宣言ということで実質的な友好親善の内容は盛られているわけでございますし、さらには、いわゆる田中・ブレジネフ共同声明の中にもその趣旨のことがいろいろございますので、日本政府が必要とするものはただ領土問題解決をした平和条約あるのみ、概論すればそういうことでございますので、日本政府といたしましては、こちらの必要とするものと全くそぐわないものをいま結ぶ用意はない、こういう意味でございます。
  262. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 まだ若干私の質問ありますけれども、時間が参りましたのできょうはとりあえず終わります。
  263. 永田亮一

    永田委員長 この際、三時十分まで休憩いたします。     午後二時五十四分休憩      ――――◇―――――     午後三時十三分開議
  264. 永田亮一

    永田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。瀬野栄次郎君。
  265. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 日中平和友好条約は、本年七月二十一日より北京において日中両国交渉代表団の間で交渉が開始され、八月八日最終的に妥結し、八月十二日に日本国中華人民共和国との間の平和友好条約が署名調印されたわけで、この条約締結により日中両国間の友好関係を一層発展させるための基礎が築かれ、両国間の友好関係が長期にわたり安定的なものとして確保されることは、アジア及び世界の平和と安定に貢献するものと期待されるものであります。すなわち、今回締結された日中平和友好条約は、一九七二年の日中共同声明に盛られたすべての諸項目を最終的に完結し、平和の諸原則を日中両国が確認し、ざらに発展させようとするものであって、わが党としても日中平和友好条約締結を高く評価するとともに、中国はいままで近くて遠い国でございましたが、このたびの締結によって近い国がますます近くなったわけでございます。この条約がアジアばかりでなく世界の平和に貢献すべきであると私は考えるものでございます。  申すまでもなく、中国は太平洋戦争の戦後処理に当たって、わが国に対し賠償要求がなく、かつ、抑留者の早期帰還ができたことはわが国にとって永遠に忘れることのできない慶事であります。  そこで、私は、この歴史的な日中平和友好条約締結に対する審議に当たり、幾つかの提案を交え政府見解を求めるものであります。  政府は、このたびわが国の米の過剰について五百三十万トンに上る政府古米在庫の取り扱いが大きな問題となっているので、農林水産省はその処理計画を検討しておるようですが、その中で、海外に輸出するほか食糧難の発展途上国への無償援助にも振り向ける等処理計画を固めておられるようであります。  さて、中国は農業、工業、国防、化学技術の四つの現代化を柱とし、特に農業については食糧自給の向上が重要課題であり、農産物の輸出意欲は基本的にはないとも言われております。ところが一方、小麦八百万トンの輸入があり、また米についても聞くところによると、百ないし百三十万トンを東南アジア等に輸出しておるとも聞いておりますが、定かではございません。中国は、現在年間食糧生産は二・九億トンであるが、これを一九八五年までに四億トンにする計画であるということが明らかであります。なお、中国は五、六年前までは食糧が不足していたことは事実でありまして、備蓄の必要性が叫ばれ、備蓄を実行したが、二、三年前の大飢饉でそれも消費されたと聞き及んでおります。長期的に見て、中国の人口は近い将来九億になるとも言われております。  そこで、私は、日中平和友好条約を機会に、将来のため中国が必要とするならば、交渉をして日本の超過米を中国に百万トンでも二百万トンでも十年または二十年の期間、延べ払い方式で貸与するなど、新しい提案をいたすわけでございますが、仮に穀物借款というようなことを行ったらどうかと考えるわけでございます。借款と言えば、金を貸与する場合に通常使っておりますけれども、あえて穀物借款と提案したわけでございまして、今後日本に不足している大豆、マイロ、トウモロコシなど国際価格で米と引きかえに価格を換算をしまして日本に入れるなど、この際積極的に考えてはどうかと、かようにこの機会に考えるわけでございますけれども、政府のこれに対する所信をまずお伺いする次第であります。
  266. 澤邊守

    ○澤邊政府委員 ただいま先生指摘ございましたように、中国は米の輸出国としてタイとアメリカに次ぐ第三位、年間約百万トンずつぐらい毎年輸出をしておる反面、麦につきましては、八百万トンないし一千万トンぐらい毎年輸入をするというような穀物の貿易構造になっておるわけでございます。したがいまして、私ども現在中国日本の米を輸入する必要がある、あるいはそういう希望を持っておるというようなことは伺っておりません。ただ、中国は最近の人口増に伴いまして、反面、穀物全体、米、麦あるいはトウモロコシ、大豆等を入れまして全体の生産がやや停滞しておるという点で、一部に食糧事情は今後一層輸入を必要とするというような見方もあるようでございます。反面、先生指摘がございましたように、一九八五年までに四億トンまで四ないし五%の年率でふやしていくというような計画があるやに聞いておるわけでございます。  そのような事情でございますので、わが国の米の過剰問題につきましては、早急に計画的な処理に着手すべき時期に来ておるというふうに判断をいたしておりまして、種々検討しておりますので、わが国のそういった米の需給事情を考えますれば、もし中国側でそういう要請があるということならば、両国にとって好都合であり、日中友好促進にも役立つというように思いますので、検討すべきではないかと思いますけれども、現在のところそういう具体的な話は何ら伺っておらないわけでございます。  かつて過剰米処理につきまして、現物貸し付けというのを韓国と、当時パキスタンでございます。やったことがございます。この際には等質等量のものを返してもらうというような考えでやったわけでございます。先生がただいま御提案になりましたように、将来もし話が進むようであり、中国に対しまして米を貸し付け、大豆なりあるいはコウリャンですか、そういうものをかわりに返すということは一つの御提案だと思いますけれども、かつて行われましたのは、同じ米で等質等量ということでやっていました。米につきましては国家貿易をやっておりますし、大豆とかマイロは民間貿易でございますし、仮に食管で貸し付けるということになりますと、食管は、大豆とかマイロを扱うことは現在いろいろ問題がございまして扱っておりません。そういうような制度上の問題もございますし、また中国の輸出余力という点からいたしますと、大豆は若干でございますけれども、マイロについては最近は日本にはほとんど入っておらないというような事情もございますので、今後の検討としては研究はしてまいりたいと思いますが、現在、具体的な問題としてはまだ検討するには至っておらないわけでございます。
  267. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 一次過剰処理として、いまも若干食糧庁長官がお触れになりましたが、韓国並びにパキスタンに対して昭和四十三年から四十五年に七十五万トン、延べ払い方式で、四十五年から四十九年にわたってインドネシア、韓国、パキスタン、フィリピン、バングラデシュ、マダガスカル等に二百十一万トンの米を、据え置き十年、支払い期間二十年で貸与している実績があるわけでございます。そういったことから、中国に対してもそういう事情があれば、当然こういった穀物借款というようなことができると私は思う。こういう新しいパターンといいますか、こういうことを考えて善隣友好を図る、また、わが国の農業も守っていくということで、この機会にこういったことについて大いに積極的に進めていくべきである、かように思います。昨日、農林大臣並びに園田外務大臣にもいろいろ申し上げましたように、農林大臣がきょうは所用でちょっと欠席しておられますが、このことについては外交問題にも関係するわけでありますから、園田外務大臣からも閣僚の一人としていろいろ答弁をいただくようになっておりますので、外務大臣からも所信を承っておきたいと思います。
  268. 園田直

    園田国務大臣 いま食糧庁長官から詳細に申し上げたところでありますが、緊急援助あるいはその他についても食管会計の関係上事務的になかなかむずかしい問題があるようでございます。しかし、そのようなことがあれば前向きで検討するように努力したいと存じます。
  269. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 食糧庁長官にお尋ねしますけれども、聞くところによると、主として大豆でありますが、先ほども若干触れられましたけれども、輸出専用の農産物基地等、中国においていろいろ建設が進められておるようであります。また農産加工品その他についても建設が進められている、こういうふうに聞いておりますけれども、この点はどう把握しておられますか。
  270. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 ただいまお話がございました農産物の輸出施設の整備につきましては、広州交易会等に出席した者の話でそういうふうなことを進められておるというようなことも聞いておりますけれども、具体的内容について私どもまだ十分には把握をいたしておりません。
  271. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 私たちの聞くところによると、中国においてはすでに農産物基地、農産加工品基地の建設が進められておるということでいろいろ情報として受けとめておりますけれども、そういうことでございますので、こういう日中平和友好条約締結を機会に、十分今後積極的な前向きの取り組み方をしていただいて、日本の飼料についても将来の検討課題として十分積極的に扱っていただきたい、かように思います。  次に、日中間の農業の技術協力でございますけれども、これについては今後どういうふうに進めていかれるか、政府考えをお伺いしておきたいと思います。
  272. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 日中間の農業技術交流につきましては、すでに四十八年以来政府ベース及び民間ベースにおきます技術の交流を進めておるところでございます。  政府ベースにおきましては、四十八年以来日本から八チームの技術団を派遣いたしまして、野菜の育種でございますとか、豚の育種でございますとかいうような具体的な技術についての技術者を派遣をしておるところでございますし、一方におきましては、中国から林業等の二チームを受け入れまして中国側の技術についての受け入れをいたしておるというようなことで、技術交流を進めておるわけでございます。このほか日中経済協会等を通じまして民間ベースの技術協力につきまして政府も助成をいたしまして、その促進方を図っておるところでございますが、今後ともこのような政府ベース及び民間ペースにおける農業技術交流につきまして、一層進めてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
  273. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに将来のため、農林水産加工品の公社的なもの等考える必要が起きてくるのじゃないかと思いますけれども、こういう点については全然まだお考えはございませんか。
  274. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 従来までのところは、ただいま申しましたように農林業等の生産部門における技術交流にとどまっておりますけれども、今後の推移を見まして、ただいま御指摘がありましたような加工面等についての技術交流が必要であれば進めていきたいというように考えております。
  275. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 また一方、将来において農産物取引の競合化が懸念されてまいります。たとえば生糸なんかがそうでございますが、中国の合作社または農学会などを対象として、わが国の農業団体との意見交換、人事交流といったことが今後頻繁に必要になってくる、こういうふうに思っておりますけれども、言うまでもなく日本農業を守るためにも当然必要が起きてまいります。こういった点についてはどういうふうに今後対処される考えでありますか、あわせてお答えをいただきたい。
  276. 松本作衛

    ○松本(作)政府委員 先ほど申しましたように、日中間の農業技術の交流につきましては、民間ベースにおきましてもすでに行われておりまして、中国農学会等のメンバーをお招きしまして交流をしておるところでございますので、今後このような民間の農業団体等についての交流がますます促進される必要があると思っております。現在も農協等の農業団体が中心になりまして、中国の農学会のメンバーの方々をお招きして、ただいま日本を視察をしておられるような実態にもございますので、このような農業団体間の技術の交流ないしは農業交流というようなものもますます進めていく必要があるというふうに考えております。
  277. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 この機会にもう一点お伺いしておきますが、口蹄疫の問題です。これはたびたび問題になってきているわけですが、条約締結を機会に、私は前向きに検討をお願いしたいと思うためにお伺いするわけです。  中国からの牛、豚等の動物の肉等の輸入については、口蹄疫の関係から家畜伝染病予防法により輸入が禁止されてきました。この口蹄疫の問題については、日本から昭和三十二年、四十年、四十一年の三回にわたり民間の調査団が中国に行ったわけであります。中国で口蹄疫が撲滅されたとの十分な確認が得られなかった、こういうように報告されておるわけですが、その後わが国は、昭和四十三年以降中国に対し口蹄疫の撲滅の具体的経過やワクチンの製造方法等を問い合わせてきましたが、現在に至るも中国からは何ら返事がない。したがって、解禁はされないというふうになっております。  以上の点にかんがみまして、日中間平和条約締結批准後も、日本側から中国政府ベースの調査団を積極的に派遣する用意があるのかどうか。また、現在のところ中国政府からもこの問題に対して具体的要請は出ておらないやに聞いております。今後要請が出れば、日本側でも考えるのかどうか、その点もこの機会に明らかにしていただきたいと思います。
  278. 杉山克己

    ○杉山政府委員 いま先生御自身が言われましたように、中国産の食肉の輸入解禁問題につきましては、かつて民間調査団による調査が三回行われております。その結果につきまして、わが国の家畜衛生専門家の総合的な検討も行われたわけでございますが、中国の家畜衛生関係の改善されている事実は認められますものの、口蹄疫について十分安心できるという点までまだ確認できない、不明な点も残されているということで、問題が今日まで持ち越されているわけでございます。  まあ何も中国ということに限らず、私ども輸入解禁につきましては、家畜衛生の制度でありますとか、伝染病の発生状況でありますとか、輸出入についての検疫制度、こういったものの具体的なやり方等について資料の提供を受けることといたしておるわけでございます。今日までそれらの点について十分な資料の提供がないわけでございますが、先生がいま言われましたように、中国側から改めてこういった問題について検討もして日本側と話し合いたいということであるならば、私どもの方は十分検討する用意がございます。
  279. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、中国の二百海里問題について伺います。  日中漁業協議会の招きで来日した中国漁業代表団の肖鵬団長は、十月十一日、報道記者との記者会見で、「中国は二百海里水域の実施を検討中で、遅かれ早かれ二百海里宣言を行う。また、水産物の対外貿易を円滑化するため、水産品輸出入公司を設置する準備を進めている」など日中漁業関係に大きな変化を与える中国側考え方を明らかにしております。特に、二百海里問題については「ある問題について解決しなければならないが、十分に話し合えば解決できる」と発言し、尖閣列島問題は大きな障害にはならないことを示唆しておりますが、わが国としてこの発言をどのように受けとめておられますか、政府見解を伺います。
  280. 森整治

    ○森(整)政府委員 二百海里の問題でございますが、中国はかねてから二百海里の問題について支持をするという姿勢を示しておりまして、先生いま御指摘のように、中国が二百海里の水域を設定することにつきましては、時間の問題というふうにわれわれも見ておるわけでございます。  ただ、現在は日中間の漁業問題につきましては、日中の漁業協定に基づきまして漁業の操業が行われておるわけでございまして、これにつきまして、先般その修正を協議しようという申し入れがございました。これにつきましても、われわれもそれを両者で協議するその日程を相談している最中でございます。したがって、いま直ちに二百海里を引くのかどうかにつきましては、私どもちょっと判断できないわけですが、仮に中国が二百海里を設定するという場合には、私どもも中国側と十分協議を行いまして、漁業の円滑な継続に支障を来さないよう十分、できる限り努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  281. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 このことについて二百海里宣言中国は準備中であるということでございますが、こういった政府要人が明らかにしておるのは今回が初めてだ、こういうふうに私たちは受けとめております。  そこで、わが国に対して、公式にしろ非公式にしろ、この二百海里問題について今回話がございましたか。その点はどうですか。
  282. 森整治

    ○森(整)政府委員 肖鵬団長が来日をされまして、われわれ接触をする機会を持っておりますが、その際にも同じような発言が私どもに対してございました。ただ、それはいつやるとかそういうことは、要するに確かに遅かれ早かれという表現は使われたと思いますが、それをいつやるかということについては言明はいたしておりませんでした。
  283. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 農林大臣がきょうは欠席しておられる関係で、これはまた外務大臣に、農林大臣になりかわって閣僚の一人としてお答えいただきたいのですが、日中平和友好条約締結を機に、上百海里問題等については友好的な話を積極的に進めていくべきだ、こういうふうに思っております。政府もせっかくの努力をしていただきたい。また日本漁業を守るためにも重要な問題でございますので、政府もこれにひとつ十分な対処をしていただきたい、かように思うのですが、外務大臣からもあわせて御答弁を承りたいと思います。
  284. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの御発言の数々の問題は、農林省当局からもお答えしたとおりでありますけれども、農林省とよく相談をして、前向きに努力をしていきたいと考えております。
  285. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 次に、日中漁業協定の問題でありますけれども、御承知のように、一九七二年の国交回復に基づき、従来の民間協定の満了に先立ち一九七五年十二月二十二日政府間協定を締結し、効力が発効して今日に至っております。  内容は民間協定とほぼ同様でありまして、協定本文と附属書より成りまして、適用水域、機船底びき網漁業、まき網漁業の規制について規定しているのであります。協定の有効期間は三カ年でありまして、現協定はことし十二月二十一日に期限が切れるわけでございますが、現段階では十一月中に改定交渉を行うことで両国が合意してはおりますものの、日程、場所等についてはまだ決まっていないのであります。期日も迫っておりますけれども、条約締結を機に、早急にこの交渉をすべきである、かように思うわけですが、見通しについてはどうでございますか。
  286. 森整治

    ○森(整)政府委員 御指摘のように、本年の十二月二十一日に期間が一応満了するということでございます。九月二十日に中国側から日中の漁業協定の修正につきまして政府間協議を行いたいという通報をいたしてまいりました。私どもとしてはできる限り早い機会に協議を行うということで、現在中国側と具体的な日程等につきまして折衝を行っておりますけれども、具体的に十一月ということはまだ正式には聞いておりません。しかし、いずれにいたしましても、中国側は資源問題につきまして非常に関心を深めておると思われますが、私どもとしましては、この協議を通じまして、わが国の漁業にとってできるだけよい結果が得られますように努力するつもりでございます。
  287. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 水産庁長官はよい結果が出るように努力するということでございますけれども、中国としてはタイショウエビの漁獲量の規制強化と現行保護区の拡大を要求すると見られております。協定は恐らく期間延長だけで終わるのじゃないかということが一部の識者の中で話されておりますが、そうであると、日本としてはこれは大変問題である、かように思うわけです。そういったことから、この点については決して楽観は許されないと思うのですが、どういうように検討しておられるか、またどういうように見ておられるか、その点もあわせてお伺いしておきたい。
  288. 森整治

    ○森(整)政府委員 従来日中の共同委員会がございまして、その席でもいろいろ問題になっていた点がございます。いま先生指摘の問題もその一つでございますが、タイショウエビの漁獲枠をつくりたい、あるいは底びきの保護区を拡大したい、マサバの保護につきましてもいろいろ御主張もあるようでございます。その他日本漁船の操業位置の資料を提供してもらいたい、こういうような問題がございます。したがいまして、いま先生指摘のように、従来のままの延長という形でなしに、もう少し実質的に、資源問題等につきまして突っ込んだ意見が出てくるのではなかろうかというふうに推察をいたしておるわけでございます。
  289. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 いま水産庁長官から答弁がございましたが、将来の中国からの水産物の輸入等を私は大変心配いたしております。御承知のように中国からの輸入は、タイショウエビ、ハマグリ、ウナギの稚魚、ニシンの卵、その他クラゲ、サワラ、イカ、タコ、食用海草、すなわちコンブ等が主なものであります。  輸入金額が、五十年が二百二十七億、五十一年が二百四十八億、五十二年が二百億となっております。その中で、特にエビの場合は五十二年の一月から八月期で三十六億八千万円、これがことしの一月から八月期で八十九億九千八百万円、これは単価が高まったために額が相当上がっております。  ニシンの卵の例を見ましても、五十二年一月から八月期で五億二千百万円、五十三年の一月から八月期で十六億三千七百万円、ウナギの稚魚は五十二年一月から八月期で十億四千三百万円、これがことしの一月から八月期では二十一億五千四百万円と倍以上になっております。  こういう現状でございますが、今後の見通しとしては、中国の輸入水産物の単価が高いということが言われています。それと、日本が必要とする品目、大衆魚、すなわちアジ等がないこともあり、また聞くところによると、中国はまき網漁業がまだ発達していないということ等がございまして、中国自体の水産物需要の増大等から、急激な増加は見込まれないと推測されるところでございます。  そこで、今日、先ほど申し上げましたように二百海里問題は時間の問題である、かように水産庁長官お答えになりましたが、水産物の輸入増大については、今後、この日中平和友好条約締結を機に、日本政府としても積極的に努力しなければならぬ、かように思っておるわけです。この点について長官はどういう考えで、また決意でおられるか、さらにお答えをいただきたい。
  290. 森整治

    ○森(整)政府委員 先生指摘のように、現在でもタイショウエビ等水産物の有力な日本への供給国になっておるわけでございます。従来から水産物の輸入国といたしましても八番目ないし九番目の地位を占めておる重要な供給国でございます。今回来日しました肖鵬団長のお話を伺いましても、相当意欲的に水産物の貿易を今後やってまいりたい、また、そのための体制づくりをやってまいりたいということを強調されておりますが、いま先生指摘のように急に何か変わるということはまずないと思います。しかし、今後条件さえ整えば、日本との間で貿易が拡大していくということにつきましては、私ども非常に結構なことではなかろうかというふうに思っております。
  291. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 外務大臣、いまの件について、二百海里問題また中国からの水産物の輸入問題、さらには先ほど申し上げました日中漁業協定の問題等ございますが、九州は特に中国とも関係が深いわけでございますので、これらを総括して、大臣からも所信を承っておきたいと思う。
  292. 園田直

    園田国務大臣 農林省と水産庁ともよく相談をして、前向きに検討していきたいと存じます。
  293. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 本日は時間がずいぶん厳しい制約の中でございますので、問題の指摘ではしょった質問になりますけれども、最後に林業問題で数点お伺いしておきたいと思います。  次に申し上げることは私の提案でございますけれども、日中友好条約締結を機に善隣友好、日中の平和を永遠にするためにも、日中で話し合いを進めて日中平和友好記念林または日中友好の森という記念植林を設定したらどうかと考えるわけであります。  申すまでもなく中国は広大な面積があり、山はかなり荒廃しております。治山治水上からも、少なくとも四十年、五十年と子孫に残るものであり、長く善隣友好のきずなとなり、歴史的な記念となることは言うまでもないと考えます。したがって、積極的に中国側と話し合いを進めることについて提案するものでありますが、林野庁長官はどういうふうに考えておられますか。この点についてお答えをいただきたい。
  294. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いま先生から中国に日中友好の森をつくったらどうかというお話がございましたが、先生御存じのように木を植えるということはその地域の土壌、地質それから気候等々に非常に影響されます。そういう中国の林業の事情あるいは森林の事情、そういうものもいまのところ接触が少ないために私どもも余りつまびらかにいたしておりません。そういう問題に加えまして、中国側の意向も当然必要な問題でございますし、この点につきましては、今後、外務省その他関係省庁と十分連絡をとりながら、慎重に検討してまいりたいと思います。
  295. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 これも園田外務大臣にお伺いします。  いま林野庁長官から答弁がございましたが、外務大臣も熊本出身でございますが、現在熊本においては数年前から民間ベースで、主として杉でございますけれども、中国に杉苗を送り、植林を進めております。現地の成績もなかなかよい成績でございまして、そういう事実があるわけでございます。外務大臣は閣僚の一人として昨日農林大臣とも協議いたしていただきましたが、特に日中平和友好条約締結に努力されたわけでございますので、農林大臣がきょうは欠席しておられるので、あえてこの機会に閣僚の一人として大臣からもお答えをいただきますけれども、こういう、長く日中の善隣友好のきずなとして残る記念林をつくることについてぜひ進めてもらいたい、私はかように思っておるわけです。熊本の杉苗を送っている事情はよく御存じだと思いますが、所信を承っておきたいと思います。
  296. 園田直

    園田国務大臣 友好条約締結並びに批准に関していろいろ考えている問題があるわけでありまして、批准交換と同時に中国では記念切手を出す。これには中国の風物と富士山があしらってある。日本の方でも考えたわけでございますが、私の方が手おくれでございまして間に合いませんので、日本の郵政省では記念スタンプを出してもらうことにいたしておるわけでございますが、未来永劫に残るものを残すことも非常に大事なことでございますので、貴重な意見として承り、検討したいと考えております。
  297. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに政府当局にお伺いしますけれども、これまた提案でございますけれども、歴史的なこの機会にわが国においても記念林を設定して、国民に長く記憶にとどめ、かつまた造林の推進を図ることについて検討したらどうか、こういうふうに思うのですけれども、政府はどういうふうにお考えですか、所信をお伺いしておきます。
  298. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 いままでに明治の森あるいは昭和の森というものを記念行事として進めた事例がございます。今回日中平和友好条約の記念につきましては、先ほど外務大臣からお話がございましたように、いろいろな政府全体の検討の中で進められる問題と考えておりますし、そういう中でそういう方針が出れば、われわれとしても積極的に取り組みたいと思っておりますけれども、現時点ではまだそこまでは考えておりません。
  299. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 さらに、中国に対して今後林業技術協力については惜しむべきではない、かように思っておるのですけれども、林野庁長官、どういう対処方針でおられますか、あわせてお答えください。
  300. 藍原義邦

    ○藍原政府委員 林業の技術協力につきましては、すでに四十八年に中国から十一名の林業使節団が来た事例もございます。それから四十九年には、中国側の招聘でございますか、農林技術交流代表団の中に林業班を設けまして中国を視察してまいったという事例もございます。しかしながら、われわれといたしましてもいままで中国の森林、林業事業については十分つまびらかに事情を聴取、把握いたしておりませんし、今後そういう方面につきましても十分その把握に努めてまいりたいというように考えておりますが、さらには、中国側の意向も踏まえまして、必要ならば今後関係省庁とも十分協議いたしまして、検討を進めてまいりたいというように思います。
  301. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 最後に、日中渡り鳥条約締結についてお伺いいたします。  私は、財団法人日本鳥類保護連盟の理事並びに評議員をいたしておりますし、衆議院の鳥類保護議員懇話会の世話人をいたしております。北京に動物研究所がありますが、ここは研究が主体でございまして、渡り鳥の事業は農林総局でやっておると聞いております。中国側は渡り鳥の日本のリストをいただきたいと言っているようでありますが、このことについて鳥類専門家の交流を図り、技術協力を行い、さらに、日中平和友好条約締結を機に日中渡り鳥条約締結すべく積極的に対策を講ずるべきである、かように考えるわけですけれども、政府はどう考えておられますか。環境庁からお答えいただきたい。
  302. 日下部甲太郎

    ○日下部説明員 先生指摘のように、渡り鳥の保護につきましてはやはり国際間のいろいろな協力がなければその目的を達し得ないわけでございます。そういった意味におきまして、中国との間におきましても渡り鳥の保護に関する専門家といろいろの面で交流を図っていくということは大変必要なことであろうと思います。たとえば、知識、情報を交換するということでございますが、そのほかに渡り鳥の渡りの状況を把握いたしますには、たとえば鳥に足輪をつけまして、そして双方でいろいろそれを捕らえて行動を確認するというようなことも必要でございますので、そういったような技術面あるいは双方の渡り鳥の生息地の調査といったような必要がございます。そういった意味におきまして中国側のいろいろの御事情もあろうかと思いますが、日中間の渡り鳥の専門家の交流に関しましてどのようなことが実施できるか、またどのようにすれば効果的であるかというようなことについて今後十分対処してまいりたいと考えております。
  303. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 環境庁が掌握している日本から中国への渡り鳥と中国から日本への渡り鳥はどういうものがあるか、その主な種類、数をひとつ簡潔にお答えください。
  304. 日下部甲太郎

    ○日下部説明員 先ほど申しましたように、まだ日中間におきまして十分な情報の交換が行われておりませんのでこれはあくまでも推測でございますが、たとえばガン、カモのたぐい、あるいはサギのたぐい、あるいは白鳥、そういったものを含めまして、おおむね二百数十種類はいるのではないかという推測が専門家の中では言われております。
  305. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 外務大臣にお伺いしますが、ただいま環境庁から答弁がありましたように、渡り鳥が二百数十種類あるわけであります。そこで、日中の渡り鳥問題について、将来早い機会に、技術協力を進めながら条約締結を進めることに努力をしていただきたいと考えるわけですけれども、大臣の所信をお聞かせいただきたい。
  306. 園田直

    園田国務大臣 中国側の御意向も聞きつつそういう方向に検討したいと考えます。
  307. 瀬野栄次郎

    ○瀬野委員 歴史的な日中平和友好条約締結を機会に、限られた時間で農林水産にわたって、若干の点はしょって、提案を踏まえて、私かねがね考えていた点も含めて、大臣を初め各省庁の意見を聞いたわけでございます。なかなか将来に残す問題が多いわけでございますし、このほかにもたくさん問題がございますが、これらを含めて、せっかくこのような歴史的な締結をするときでもありますし、いままで近くて遠い国であった中国と、いよいよ近くて近い国になるわけでございますので、こういった問題をひとつ積極的に対策を講じて検討をされ、一日も早く解決ができて、両国の善隣友好がますます深まってまいりますようにせっかくの努力をお願いしまして、私の質問を終わります。
  308. 永田亮一

  309. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私は皆様方に具体的な問題でお伺いをしたいと思いますが、御答弁を伺っておりまして、多少混乱やら、それから言い過ぎやら、エラーが先ほどから続出しているように私なりには思うわけであります。将来に禍根を残すといけませんので、二、三点まず申し上げまして、御答弁の穴のところを救済措置をとりたいと私は思っているわけであります。よく御注意の上御答弁をいただきたいと思います。  まず覇権の問題でありますが、今条約によって反覇権の意思表示はわが国として行われたわけでございますが、この反覇権の項目というものは世界の条約の中で初めてわが国が盛り込んだ、言ってみれば中国から強いられて行ったというものではもうこの段階ではなく、日本として新しい外交の基本方針として、世界の前で日本外交の特色として表示しなければならぬものだと存じます。したがって、これに対する見解というものはきわめて整理されていなければならないと思います。いままでは交渉場裏の問題として反覇権のテーマは言われていたわけでありますからいろんな言い方が行われましたが、さあ、いまからは、日本政府として、反覇権とはどういうことか、そして具体的にはたとえばどれとどれを覇権と指すのか、そしてそれについては中国側と、具体例については意見が相違することが当然なのか当然でないのか、その辺をきれいに、わかりやすく、ごちゃごちゃしないようにもう一回お答えいただきたい。さっきの御答弁でしたら後々の外務委員会にたたるようなお答えになるでしょう。どうぞ。
  310. 中江要介

    ○中江政府委員 おっしゃいますように、今度の日中平和友好条約の中に、第二条といたしましていわゆる反覇権条項が挿入されまして、これは日中両国の合意したものとなったわけでございます。この反覇権条項には二つの点がございまして、第一点は、その前段にありますように、日本中国もいずれも覇権を求めない、これが第一点でございます。第二点はその後段でございまして、当然のことでございますが、いかなる国または国の集団であれ、アジア太平洋地域のみならず、いずれの地域におきましても、そのような覇権を求める試みがあればこれには反対するということをはっきり表明している、これが第二点でございます。ただいま申し上げましたことについては一点の疑義もない。  そこで、その覇権とは何かという点でございますが、これは先ほど来答弁で申し上げておりますように、ある国が自分の意思を力によって相手の国の意思に反して押しつける、そういう行為が覇権と呼ばれる行為でありまして、これは国際連合憲章の原則に反するようなものである、この認識については、日中間に意見の相違はありません。したがいまして、そういう行為をしない、またそういうことを確立しようとする試みには反対であるということにつきましては、日中間にははっきりした合意がありますが、さて具体的にどうかという問題は、これは具体的な事例に即してこれから適用、実施されていくわけでございまして、あらかじめ抽象的な行為について、何が覇権であるか、何が覇権でないかということは、日中双方ともにこの交渉の経過におきまして議論したこともございませんし、例示したこともないわけでございます。  もう一つ覇権反対条項につきましては第四条というものがございまして、これがどういうふうな関連があるかということが議論されますが、覇権を求めず覇権に反対であるということは、これは第四条のあるなしにかかわらず、はっきりした原則でございます。第四条で言っておりますことは、覇権反対条項に限らず、この条約締結したことによりまして、いろいろ日中間のこれからの外交政策が実施されるに当たりましても、この条約があることがそれぞれの国の第三国に対してとっております立場に影響を及ぼすものではない、つまり、第三国に対していかなる外交政策をとるかはそれぞれの主権行為である、これはお互いに干渉せず尊重し合うということがはっきりしている、これが第四条の趣旨である、こういうことでございます。
  311. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そういたしますと、もう一回伺いますが、竹島あるいは尖閣列島あるいは北方四島等、現在わが国が抱えております領土的な国際的な紛争状況に関し、形態はいろいろ違いますが、これらの諸国の相手国を指して、覇権国家あるいは覇権的行為であると認められますか、認められませんか。
  312. 中江要介

    ○中江政府委員 この条約規定あるいはこの条約の交渉を通じて、そういう問題について日本政府の態度を明らかにしたことはない、こういうことでございます。
  313. 園田直

    園田国務大臣 これについては私先ほど答弁をいたしましたので、これについて申し上げておきます。  先ほどは、北方四島の問題から出てきた問題でありますが、ソ連を覇権国家と断定したり覇権国家と考えたことの意味ではございません。なおまた、理論的にはそうでありますけれども、先ほど言ったとおりでありますが、日本全国民の最大の悲願は北方四島の返還であります。これはきわめて重大でありまして、現実問題としては、先ほど言ったとおりに、これを覇権と断定をしてこれに詰め寄って交渉することは必ずしも有利ではない、こう考えておりますので、現実の問題としては、覇権であるかないかということよりも、覇権以前の問題であると申し上げましたが、それはソ連がわが国北方四島を不法に占拠している事態を、覇権という観点からよりは、戦後日ソ間の最大の懸案として解決すべきものであるということで現実問題には処理していくべきであると考えております。
  314. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまの御答弁は、私は修正改訂版だと思いますが、もう一回改訂されないようにもう少し念を押しますと、ソビエトの北方四島に対する態度を覇権的行為であるとか覇権行為であるとか、あるいはソビエト連邦を覇権国家であるということは決めたわけではないと、言葉を選んで言われました。そして、そういうふうにきめつけることは交渉上有利でないと言われました。そして、覇権以前の問題であると言われ、この不法状態両国間の懸案問題である、こう言われました。ですから、いまの大臣の御答弁は三つの部分から成り立っております。そうすると、同僚議員が一生懸命に詰められた問題ですから、恐らく私がもう少し質問することを求められていると思いますからかわりに申しますが、どこかの国を覇権国家と、あるいは覇権行為というものを具体的にわが外務省としてはまだ決めていないという、まず意味ですか。
  315. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりであります。
  316. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、これからいろんな行為があったりなにかいたしますと、それは覇権国家であるとか覇権行為が行われたとかいうのは、十分慎重に相談して、そして改めて意思表示をする、こういう意味でございますか。
  317. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりでございます。
  318. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると、北方四島の占拠については、覇権以前の問題で、不法占拠の状況であると言われましたが、覇権以前の問題という表現も、ちょっと、覇権行為あるいは覇権国家との認定という観点から言うと、言葉意味が今後十分討議の対象になる可能性があります。覇権以前とはどういう意味なのか。前なのか後なのか、外なのか内側なのか、どっちが大きくてどっちが小さい範囲概念であるか、こういうことはわが外務委員の熱烈なる興味の対象となり、政府答弁に窮すると思われます。いまの改訂版ももう一回改訂されて、覇権行為あるいは覇権国家と認定することの表現を削除されて、不法占拠の状況である、両国間の懸案であるということのみに大臣答弁を変えられた方がいいのではないかと私は思いますが、思わないなら思わないで結構、それなりに議論しますし、思うなら思うで結構ですが、ちょっと御相談になったらいかがですか。
  319. 園田直

    園田国務大臣 私が先ほど申し上げましたことで繰り返しますと、第一は、ソ連を覇権国家と断定し、あるいは考えるということではないということが第一。第二番目には、現実の問題で理論的に言えばそうなるわけでありますけれども、しかし現実の問題として、これを覇権行為ときめつけて北方四島返還を要求するべきではなくて、それは覇権前の問題、いわゆる不法占拠ということでこれは交渉すべきことである、こういうことを申し上げておるわけであります。いまおっしゃったと同じ趣旨でございます。
  320. 渡部一郎

    渡部(一)委員 私がいま申し上げている間にもう一回詰め直しをされた方が賢明だろうと私は思います。なぜかというと、覇権国家であると決めてはいない、理論的にはそうですがと、大臣はいま重ねて言われた。理論的にはそうですがと言われたのは、理論的にはソビエトは覇権国家でありますがという意味合いになってしまいます。それならそれでいいのです。それなりに一つの見識ですから。ですから、いまの答弁は、先ほどわざわざ休憩時間まで私が皆さん方に差し上げた上でこう質問しているのに、答弁としてそういう答弁なら、ソビエトの北方四島に対する態度というのは覇権行為である。そしてそれは理論的に覇権行為である。その理論的に覇権行為を侵したソビエトに対してはわれわれは大きな怒りを持っておる。そしてそれについて交渉の上では覇権行為だとか覇権国家と言うとまずいから仮に言わない。だから覇権国家とか覇権行為であるとかいう表現はとりたくない。だから決めないのだ。こういうように論理が逆転して形成されているように思いますね。もう少し上手に言われた方が後でやりやすいのじゃないですか。私はいまやっつけるために言っているのじゃなくて、日本外交のこれからのやりにくさ、それはどんな表現をしたってやりにくい点がある。明らかに北方四島の占拠は異常状態である。これに対してわれわれは強い意思を表示したい。ですから、われわれ非常にいま気をつけていることは、中ソ対決の中で、中国の肩持ちするのでないというふうにわれわれはソビエト側に対して一生懸命説明している真っ最中である。そしてこの条約ができてきておる。その苦心さんざんやったのにもかかわらず、いまそうやって決めてかかっていくならかかっていくだけのものはある。理論的にはそうなのかもしれない、そういう態度ですかと私は確認しておる。だからいま日本政府の方針は非常にむずかしいところに来ておる。私は心配して聞いておるのです。計算は十分なされなければいけない。もしまずいならきょう答弁せぬでもよろしい。あさってあるのだから。あさってたっぷり時間がある。しあさっても、その次も何日もある。よろしゅうございますか。
  321. 園田直

    園田国務大臣 第一に、先ほどの答弁の中にはソ連を覇権国家と言った意味は全然ございません。ソ連は覇権国家であるという考え方は全然ございません。これは明瞭でございます。  次に北方四島の問題でありますが、覇権以前ということに関して誤解が生ずるようでありますから、覇権以前という言葉は訂正をさしていただきたいと存じます。私が申し上げたのは、ソ連がわが国北方四島を不法に占拠している事態を、覇権という観点からよりは戦後日ソ間の最大の懸案として解決すべきものという趣旨で、覇権であるかないかという意味で申し上げたのではございません。ソ連の四島占領が覇権であるかないかの決定は、非常に大きな政治的な現実的な意味を持つわけでありますから、ここでこれに対する、覇権であるかどうかの私の答弁は避けたいと存じております。
  322. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまの御答弁では、覇権行為に関する不法占拠の事態、北方四島については不法占拠の事態であると指定されて、戦後最大の懸案と認められる。そしてこれに対しては、覇権であるかどうかを決めるのは政治的現実的な意味合いを持つので、今後十分慎重に考えていくという戦略を述べられたわけです。私はこれなら筋が通ると思うのです。これならこれなりに筋は通る。それと同時に、ちょっとこの話は横へ置いておきまして、もっとごちゃごちゃしますから、では、竹島と尖閣列島についてはどう評価されますか。これは覇権行為ですか、覇権行為でないですか。相手国は覇権国家ですか、覇権国家でないですか。
  323. 中江要介

    ○中江政府委員 そのことはいままで何回も申し上げておるとおりですが、ます尖閣諸島から申し上げますと、尖閣諸島は平穏無事に、日本の固有領土に対して有効支配を継続しておるわけでございますので、これに対して何の支障もない。そこで覇権行為があるかないかと論ずるまでもない状況だというのが私どもの認識であるわけです。過般の中国漁船による領海侵犯は、これは過去に韓国船、パナマ船、台湾船によって行われたと同じような領海侵犯、漁業不法操業、こういうことでございまして、それが覇権であるかどうかというようなものとは無関係のもの、こういうふうに認識しております。  竹島につきましては、これは従来申しておりますように、戦後の朝鮮半島の独立を承認いたしましたサンフランシスコ条約以降のあの地域の国際政治環境の推移の中でマッカーサー・ライン、李承晩ライン、それから日韓正常化交渉、そういう過程の中から出てまいりました両国の紛争の対象になっている島であって、日本は、これが固有の領土であるということについては一点の疑いもないわけですけれども、事実上韓国によって不法に占拠されている。したがって、これを話し合いによって平和的に解決する努力をしているということですべてが説明され得ると私どもは考えておるわけでございます。
  324. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いまのお言葉は非常に丁寧に言葉を選んでいるわけです。言葉を丁寧に選ばれると今度はとんでもない話になってくるわけです。尖閣列島については実効的支配が完成しているのですから、実効的支配が完成しているエリアについて中国政府に言うことはない。交渉の途中で、私の財布は私の財布ですねなどと向こうに見せる必要がどこにありますか。それをわざわざ言うたというのは外務省始まって以来の失敗ですよ。それは、いろいろな事情があったことは察するに余りあるけれども、大臣が薄氷を踏む思いで交渉されたことも漏れ承ってはおるのですけれども、尖閣列島については聞くのが悪い。変な確認をすることが悪い。むしろ問題の禍根はそこにある。実効的支配が完成しているものを何相談に行くのですか。論理的にはこっちのもので実効的支配が完成してない竹島には文句を言いに行く。そればあたりまえです。そこのところは論理が逆転しておる。それが一つ。それをいま尖閣列島の解釈のところで中江局長はみごとに言われたわけだ。平穏無事にこれは実効的支配を完成しているとおっしゃるなら、交渉したのは全く失敗だと認められていることになる。それが一つ。  そして竹島の方については紛争対象地であり、固有の領土不法占拠されている。これは侵略されているのです。侵略されている。明らかです。一番えげつない状況にあるわけです。これをなした行為を覇権行為と言わなかったら何だと言いたいほどの覇権行為ですね。これもまた、それはまだ決めてないというお立場であるとおっしゃるわけですか。ソビエトについては配慮のあることはわかりました。韓国についても同様の配慮をなさるのですか。
  325. 中江要介

    ○中江政府委員 まず尖閣諸島につきましてはるる外務大臣も御説明されておりますように、中国と尖閣諸島の領有権問題について話し合ったということはないわけです。その点はいま渡部先生がおっしゃいましたとおりの立場に立っておるからそういうことは起こり得ないわけでございます。そして中国との間で今回話が出ましたのは、この間のような事件は日本では非常に関心を呼びましたので、日本国民が心配しておるので、そういうことは再び起こらないだろうなということを念を押した、こういうことに御理解いただきたいわけでございます。  竹島につきましては、これは日本戦争が終わりまして外交権を回復しましたときに、すでに日本の実際上の支配が及ばない状況になっていたということでございまして、この竹島の韓国による不法占拠というものが行われたその経過、それからその後、日韓交渉で紛争のある地域として話し合ってきたその経緯、その結果として紛争の解決に関する交換公文という形で、これを話し合いによる解決の主題として残している、こういうことでありますので、いま行われておる韓国の不法占拠を覇権であるかないかということを、いまここで日本政府が決めなければならないかということにつきましては、政治的に考慮すべき点があろうかと思いますので、再々申しておりますように、日本政府としては、これが覇権であるかないかということについては何ら意見を表明していない、こういう状況でございます。
  326. 渡部一郎

    渡部(一)委員 そうすると大臣、まことに奇妙なことになってくるわけです。日本は反覇権を高らかにうたったけれども、政治的な事情をいろいろ考えると、覇権と言える国はないということになるのですよね。特にわが国関係すると覇権と言えなくなってくる。あそこも覇権かどうかは言わない、こっちも覇権と言わない。覇権という用語はよほど慎重にやらなければならぬということになりつつある。それは事なかれ主義でやればそういうことにはなるでしょうけれども、この問題はどうしても問題として残ってくる。これは十分考えていただかなければならぬテーマになると私は思います。  それから尖閣列島の問題については、確認したんだという言い方もあるけれども、もし先方が、いいえ、これはわが国領土ですとあの瞬間に一言言ったら、条約は結べなかったでしょう。そしてその禍根というものは、条約が結べないだけでなくて長く残るところでした。鄧小平氏のあのときの表明に最も感謝したのは外務大臣であろうと私は思いますし、そのときの複雑なあのやりとりというのを後で伺えば伺うほど、私ははらはらするような気持ちでそれを見ていたということを申し上げておかなければならない。ですから、党の中の一部のやかましい議論に屈してああいう外交的冒険をなすべきではない。この際は、私は同僚の諸氏のお許しもいただいて発言をしているわけでありますけれども、あえてこういう冒険は二度とすべき冒険ではないと申し上げておきたいと思うのです。  竹島について言うなら、事実上の不法占拠の状況について、紛争解決に関する交換公文があるなどという説明は、当時の交渉を一番よく知られている局長から伺おうとは思えない。あれは事実上紛争をたな上げにするための交換公文であったということは、すでに当委員会の数々の論議の中で明らかです。だからそういうやり方でなく、この問題に対する紛争の処理のために、今後新しい方法で、新しい考え方で、決意で取り組まなければならぬだろうと私は思うのです。  いま申し上げたことは、だれが答えたとしても非常にむずかしい答弁になったことは私は察するに余りがある。一番めんどうなことを私は伺ったわけだから。だけれども、私はこれ以上聞こうとは思っていない。ただ、この問題に対していまの御答弁程度の答弁を用意しておいて問題が済むかというと、済まぬということだけは今後の警戒として申し上げたい。その点を御理解いただいておきたいと存じます。答弁は要りません。  次の問題にいきます。次の問題は条約局長に申し上げます。条約局長はきのう、きわめて危なっかしい答弁一つなさいましたから、ひとつ申し上げておきたいと思うのです。  それは、同僚議員との間で日華平和条約について言及された際、共同声明の第三項、「中華人民共和国政府は、台湾中華人民共和国領土不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」ここのところを説明されました。ところが、そのポツダム宣言第八項というのをめくってみますとどういうことになるか。これは「「カイロ」宣言条項ハ履行セラルベク又日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国並ニ吾等ノ決定スル諸小島ニ局限セラルベシ」。では、カイロ宣言にはこれに関することは何と書いてあるか。カイロ宣言には「右同盟国ノ目的ハ日本国ヨリ千九百十四年ノ第一次世界戦争ノ開始以後ニ於テ日本国が奪取シ又ハ占領シタル太平洋ニ於ケル一切ノ島嶼ヲ剥奪スルコト並ニ満州、台湾及澎湖島ノ如キ日本国中国人ヨリ盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国ニ返還スルコトニ在リ」と明示されております。それではこの「中華民国」はというので、けさ微妙な応酬がありました。この「中華民国」というのは、当時われわれが相手にしていたのは中華民国だ、中国全体を代表している中華民国という意味合いで「中華民国」と書いてあるのだというようなニュアンスの御答弁でございました。私はそこが少し不正確かと存じます。なぜだというと、もしこれが、現在では中華人民共和国を表示するものですというニュアンスの方向で答弁されると、われわれはもう一回もとへ戻って、戦後処理の問題として、台湾澎湖諸島を中華人民共和国に返すというお手伝いをさせられる可能性が論理的に出てくる。ですから、そういう論理ではこれは読むことはできない。また、これは「中華民国」なんだから、中華民国へ返したんで何が悪い、中華人民共和国はあるけれども、もう一つ政府は現に存在しているのであって、われわれはその立場を堅持しているのだというふうに共同声明を読んだとしたら、これまた奇妙ないきさつになる。わが外交のとらざるところ、いままでの交渉方針でとらざる微妙なポイントがあると思うのです。そこをもう少しきちんと御答弁いただいておいた方がいいのではないか。第八項の部分に関しての局長の御答弁に追加の御答弁を私は求めたい。
  327. 大森誠一

    大森政府委員 これは先ほども御答弁申し上げたところでございますけれども、この日中共同声明台湾に関する項に関しましては、日中共同声明が発出されました直後の国会におきまして、昭和四十七年十月二十八日、大平外務大臣外交演説の中で明らかにされております。その点をもう一度読ませていただきます。  台湾地位に関してでございますが、サンフランシスコ平和条約により台湾を放棄したわが国といたしましては、台湾法的地位につきまして独自の認定を行なう立場にないことは、従来から政府が繰り返し明らかにしておるとおりでございます。しかしながら、他方、カイロ宣言ポツダム宣言経緯に照らせば、台湾は、これらの両宣言が意図したところに従い中国に返還されるべきものであるというのが、ポツダム宣言を受諾した政府の変わらない見解であります。共同声明に明らかにされておる「ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」との政府立場は、このような見解をあらわしたものであります。 以上が大平外務大臣外交演説台湾に関するくだりでございます。  けさほど私が申し上げましたのは、カイロ宣言を続みますと、なるほど「中華民国」という言葉が使われておりますけれども、この点は、先ほど渡部先生も御指摘になりましたように、当時わが国は、中華民国政府中国を代表する正統政府として承認いたしておりましたし、また、ポツダム宣言に参加しておりましたのは中華民国政府であったわけでございます。したがいまして、ここに言っております「中華民国」と申しますのは、中国というもの、英語で言えばチャイナと申した方がいいかと存じますが、この中国というものを意味していると解しているわけでございまして、したがいまして、ここは、広い意味における中国という国に返還されるべきものである、これがわが国立場である、こういうことでございます。
  328. 渡部一郎

    渡部(一)委員 今度は正確に言われたと私は思います。これはわが国立場が微妙でありまするだけに、この辺の表明を部分的に述べられると非常に危険なテーマになると思いますし、いまのは意識的なあれではありませんのですから、今後そういう問題を扱われるときは、一遍初めから全部述べられるという態度でいかれた方がいいのではないかと、これは私、お勧めをするわけであります。  次に、時間も余りありませんから、私は外務大臣に、全方位外交について伺いたいと思うのです。  この前、総理は全方位外交という言葉を使っておられるが、私は全方位外交という言葉を使っておりませんというようなニュアンスで当委員会でお話しになりました。ということは、全方位外交というものについてちょっと前書きがあるのではないかという感じが私はしているわけであります。どうして外務大臣はわざわざ総理との間で一本線を引くような表明をなすったのかという奇妙な感じが一つはしている。  それからもう一つは、本条約説明文あるいは政府の質疑における条約説明文の中に、日米関係を基軸とした日本外交とか、そうしたような用語がすでに盛られております。これはなぜ日米関係を基軸としたという表明をわざわざつけて、全方位外交という方向性のむしろない表明に対して、日米関係を基軸にしたというのが何度も何度もこの文章には出てくるわけでありますが、言われるのであるか。  また、園田大臣がわざわざ全方位外交という言葉を使っていないというふうにそれを打ち消されたのか、この辺に外務省のさまざまな苦心がおありだろうというニュアンスがする。それを、簡略で結構ですから御説明いただきたい。
  329. 園田直

    園田国務大臣 日米安保体制を基軸にすると申しますのは、今日の国際情勢は均衡による平和というか、抑止力による平和というのが現状であって、これを起点にして真の平和を求めていくわけでありますから、日米外交を基軸にしてと、これは防衛ばかりでなくて、その問題も含みつつ言っておるわけであります。  全方位外交という言葉を私使わなかったというのは、私はただ、いままで全方位外交という言葉を使ったことがありませんから事実を申し述べただけでありまして、総理と私の考え方の中に一線があるわけではなくて、むしろ総理の使われる全方位外交という常識的な言葉に誤解を与えないようにああいう申し上げ方をしたわけでございます。
  330. 渡部一郎

    渡部(一)委員 いま日米安保を基軸としたと言われましたが、あなたの御説明は「これにより、わが国としては、日米関係を基軸としていずれの国とも友好関係を維持し発展させるよう努力するというわが国外交の基本的立場を将来にわたって確保した次第であります。」と、四条の説明文であります。ということは、いまのお話を伺っていると、全方位外交というのはすべてのところと外交するというだけで、仲よくするともけんかするとも何も言っていない。方向が全方位であるというのは外交にとっては当然のことで何も意味をしていない。戦争をしているところとだけは外交しないというならまだしも、全方位外交なんというのは最も拙劣な外交方針である。だから、今度の日中条約に対する東南アジアの諸国の新聞を見てみますと、全方位外交をうたい上げた新聞なんというのは一枚もない。シンガポールでさえも全方位という言葉を翻訳しなければわからなくなって、妙な翻訳が行われておる。これは余り適切な用語でない。むしろ園田大臣が言われたこの用語の方が、長ったらしいけれどもわが国外交方針を忠実になぞっていると言った方が私はいいかと思う。だけれども、日米関係を基軸としてどこの国とも仲よくするというだけじゃまだ日本のこれから何をしようとしているかについては明快ではない。私は、日米関係を基軸とし、日中関係を基軸とした新しい外交にいまや変わってこようとしているこの条約の審議の際に、日米関係だけを基軸とするとしかうたい得なかったこの外務省のニュアンス、この方向性というものに疑いというか疑問がある。ですから私は、むしろここで全方位外交というのは余り適切な用語ではなく、政府の具体的な用語でもなく、一定されてない用語である、特定されてない、そのときの一時的な説明の用語として用いられたということを明らかにされた上で、日本外交の方向をどうされていこうとしているか、もう一回日中関係を含めて考えて述べていただきたい、こう思うのですけれども、どうでしょうか。
  331. 園田直

    園田国務大臣 全方位外交という言葉は、私がしばしば申し述べます外交方針を、総理が常識的に一言にして言われた言葉であって、総理の全方位外交と、私が言っておることとは相違はない、こう考えております。  私が、自分は全方位外交という言葉を使ったことがないと言うのは、総理の全方位外交に対する私の批判ではございませんから御了解を願いたいと存じます。  なお、今後どのようにやっていくか、日米関係を基軸にしながらと、こういうことは、ソ連でも、中国でも私はっきり申し上げましたが、現段階において均衡による平和が保たれておるということ、防衛のみではなくて、すべての問題についてやはり日米外交というものが中心になって新しい時代の本当の平和を築きたい、こういうのが基本方針であることを申し上げるわけであります。
  332. 渡部一郎

    渡部(一)委員 総理の言われたことを閣僚として批判されるわけにいかないというお立場がありますから、言いにくいのはわかりますが、常識的用語という御批評は当たっていると思います。総理の常識的用語によって日本外交はいま方向性を見失いつつあるのですから、どこが基軸で、どこが基軸でないのか、もう一遍よくお考えになりませんと、日米関係だけ基軸だとかいう用語それ自体が非常に刺激的であります。なぜかと言えば、ソビエト側は、明らかに今度の日中条約は日米関係を基軸とした反ソ包囲網の完成であるというような評論がすでにあらわれているからです。  私たちは、日本政府立場として、この条約だけでなく、日本外交の基礎方針が今回論議されておる、これを私はわからないといけないと思います。そのためには、用語も特定されていないぐらい余り考えないでおられますと、そこの点に疑惑が集中する可能性がある。したがって私は、明後日総理もお出ましになって当委員会がまた開かれることでございましょうから、そのときもお伺いしたいと思うのですけれども、この点十分に思いをいたされまして、これは日本外交一つの勝利ではありますけれども、まさに日中条約を結んだ途端に無数のたくさんの問題がいま生じつつある。それに対する一番基礎的な対応策として日本外交の方向、これでいいかという打ち合わせをしていただく必要があるのではないか。私は戦略についても、戦術についても練り直すときが来たのではないかと思うわけであります。  きょうは私は、通産大臣が後ほどお越しになるそうですから、通産関係の御質問はそちらにゆだねさせていただきますけれども、どうかその辺を十分お含みいただいて、日本外交の方向に誤りなきを期していただきたいと要望いたしまして私の質問といたします。
  333. 永田亮一

    永田委員長 渡辺朗君。
  334. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 なかなか緊張が高まっていたようでございますので、私は静かにいろいろと外務大臣初め関係各位にお尋ねをいたしたいと思います。  ただ御質問申し上げる前に、いままで長い間かかって交渉してこられた、その間異なる世界観を主張し合う、そういう中で結ばれた今回の平和友好条約である、また、その交渉の中におきまして、私は、日中両方が本当の気持ち、本音をぶつけ合うということであったし、また日本側の粘り、あるいは堂々たる交渉の姿勢というものに対しては高い評価をするものでございます。これはやはり園田外相初め関係各位に敬意を表さなければならぬ、こういうふうに思っております。  さて、そうした大変に重要な条約である。それから、先ほど外務大臣も、歴史的な意味を持つこの条約だというふうにおっしゃっておられました。この間、国連総会に外務大臣お出になりました。そのときに外務大臣は、日本政府立場に立って国際情勢に対する演説をしておられる。ところが、日中平和友好条約調印後のわが国の基本姿勢というものを説明するべきであったと思うのでありますが、いささかもそれについて触れておられなかったのはどういうわけでしょうか。まず、その点からお尋ねをいたしたいと思います。
  335. 園田直

    園田国務大臣 日中友好条約締結は重要な問題でありますので、私も最初はこれに触れておこうかと準備をしたわけでありますが、触れなかった第一の理由は、関係諸国には交渉に入る前から、それから交渉の経過、終わってから、詳細に連絡をとり、詳細に説明を行い、かつまたニューヨーク滞在中、アジア・アフリカその他の関係国の各大臣には、二十数名に会ってじかにこの点は説明をしたことと、それから二番目には、今度の国連総会における私の演説は、いままでと趣を異にいたしまして、政治的問題よりも経済的問題を重点にして、国際社会が当面する緊急かつ重要な諸問題について取り上げ、それぞれの問題についてわが国見解を申し述べ、そのためにわが国が行うべき責任とやるべきこと、国際社会に貢献する点ということを明らかにするということに重点を置いて演説を構成をいたしたわけであります。     〔委員長退席、毛利委員長代理着席〕 しかし、そこでそれぞれの地域、国についての問題は取り上げておりません。ただ、いま現に紛争を起こしておるインドシナ半島と、それから朝鮮半島の問題だけは関心が深いわけでありますから取り上げたわけでございます。
  336. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 その間の事情はわかりました。ですが、やはり残念だったと思うのです。といいますのは、この日中条約というのはアジアの平和と安定に役立つというふうに、繰り返し外務大臣あるいは総理、国内においては述べておられる。にもかかわらず、そういった国際的な場においてその点をお触れにならなかった。私はまことに残念だったなあという感慨を持っております。  と同時に、この総会では、ソ連の外務大臣は、この日中平和友好条約を批判しておられるし、暗に日本を非難もしておられる。また、中国の黄華外相は、国連の場において覇権反対の意義を非常に強調しておられるというような一場面も出てきたわけであります。そういう点、過ぎたことではありますけれども、ここでやはり私は残念だったということをまず申し上げておきたいと思いますが、その際に、せめて救いは安倍国連大使の答弁権を使っての反論がございました。この措置は非常に賢明だったと思います。よかったと思いますが、いまからお考えになりまして、外務大臣、ここら辺はどのようにお考えになりますか。
  337. 園田直

    園田国務大臣 十分反省をして、率直にいまの御意見は承ります。
  338. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いま国連の問題を私話しましたので、関連いたしまして外務大臣、日中交渉でたしか八月の十四日だと思いますが、鄧小平副主席、黄華外相にお会いになっておられて、国連憲章の旧敵国条項削除についてお話し合いをされたと伺っておりますけれども、いかがでございましたでしょうか。
  339. 園田直

    園田国務大臣 いま事務当局とも確認をいたしましたところ、黄華外交部長に私の方からその話をしております。
  340. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 事務当局の方、関係各位の方で結構でございますので、その中身はお話ししていただけますでしょうか。特にこのことは、国連の非常任理事国にいま立候補もしております日本でございます。それだけに国連憲章の旧敵国条項がそのまま残っているというのでは、これは大変に不名誉な話でもございます。それだけに中国側がどのような反応を示したのか、伝えられるところによると、何か中国側日本の主張に対して理解を示した、こういうふうにも伝えられておりますけれども、差し支えなければ中身をひとつ教えていただきたい、このように思います。
  341. 園田直

    園田国務大臣 話のやりとりの内容は詳しく申し上げるわけにまいりませんけれども、中国側が申しましたのは、あの項はすでに時代おくれである、いまの時代に通用するものではない、この条項は現在の国際情勢を反映したものではないので改正の必要があるという考え方を示されました。
  342. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そうすると、国連憲章の改定ということについても一緒に話し合いをされたわけでございますか。
  343. 園田直

    園田国務大臣 改正の内容については、そこまで話はいたしませんでしたが、向こうのそういうお考えに対し、なかなか困難な問題であるが、ぜひ御協力をお願いしますと、こういうことでございます。
  344. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 わかりました。  それでは、先ほどいろいろと論議されておられました点について私もわからぬことがあるものですから、一、二確かめたいと思います。  いまの覇権主義という言葉でございますけれども、これは外務大臣、支配主義ということと同じでございますか、どうですか。
  345. 中江要介

    ○中江政府委員 華国鋒主席がピョンヤンに参りましたときにもそうでございました。また、八月の半ばにルーマニア、ユーゴスラビアの方に旅行されましたときも話題に上った用語の問題でございますが、支配主義といい覇権主義といい、その実体については変わりがないというふうに中国側は理解しておるように私どもは聞いております。
  346. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 一つお伺いをしたいのです。  華国鋒主席がルーマニアを訪問されたときは、共同声明の中で支配主義という言葉が使われている。北朝鮮に行かれたときも同じ支配主義という言葉が使われている。日本に対して覇権主義という言葉が使われている。実体において同じであるならば、そのような言葉に切りかえても何ら変わりがなかったということにもなるわけだと思いますが、その点はいかがでございますか。
  347. 中江要介

    ○中江政府委員 御質問の趣旨は、日本中国との間で使う場合に置きかえてもよかったのではなかろうかという御趣旨だといたしますと、日本中国との間には、一九七二年の日中共同声明によりまして、その第七項にはっきり覇権を求めないあるいは覇権を確立しようとする試みという形でこの言葉が使われておりますので、それをそのまま使用することに何ら支障がない、こういう考え方であったわけでございます。
  348. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 重ねてお聞かせいただきたいと思いますが、なぜ中国は、ルーマニアに対してあるいは北朝鮮に対して、支配主義という言葉にそれでは切りかえたと御判断されますでしょうか、それを容認されたとお考えでございましょうか。御判断をお聞かせいただきたいと思います。
  349. 中江要介

    ○中江政府委員 これは大変むずかしい問題、つまり御説明するのがむずかしい問題だと思います。と申しますのは、これは日本の問題ではなくて、中国と北朝鮮、中国とルーマニア、中国とユーゴスラビアという、第三国間の問題でございまして、その両国、当該国の間でいかような話し合いで、いかような考慮によってこういうことになったかということは、私どもとしては推測する以外に方法はないし、仮に説明を求めましても、それが果たして両国間の話し合いの実態であったかどうかということについては確認のしようのない外交上の問題でございますので、先ほど私が申し上げましたように、実体については違いがないという認識を中国側が持っているようだ、そういうふうに私どもは考えているということでとどめさしていただきたい、こう思うわけでございます。
  350. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 その御判断を聞くのは差し控えましょう。ただ、その際に、今度は、いまさっき問題になりました定義の問題でございます。この覇権主義の中身の問題ですけれども、社会制度のいかんを問わず、他国を統制しようとする考え方、行為、そのような国、これを覇権といい、あるいは覇権主義国という、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  351. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいま先生の申されました考え方といいますか、説明は、私どもが、未確認ではございますが、北朝鮮側の説明として聞いているところではそういう説明がなされているということは聞いておりますが、それを確認するあるいはそれ以外の説明があるかどうかということについては承知しておらない、こういうことでございます。
  352. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ただ、先ほどから同僚議員の方方、この中身は整理しておく必要があるということを皆さん主張しておられました。それだけに私もお聞かせいただきたいと思って質問したわけでありますが、そういう考え方でいいのか、どうなのか、定義の仕方でございます。そこら辺はっきりしておかないと混乱が生じてくるんではあるまいかと思いますので、聞いているわけでございますが、重ねていかがでございましょう。そういう定義、それで間違いはない、何か足らぬところはございますでしょうか。
  353. 中江要介

    ○中江政府委員 先ほど申し上げましたように、日本中国との間では覇権を求めるべきではなくあるいは覇権を確立しようとする試み、そういう形でしか言葉を使っておらなくて、支配主義というような言葉は全く使っていないわけでございます。したがって、その覇権を求める行為というものはどういうものかということにつきましては、先般来繰り返して申しておりますように、自国の意思を力によって、相手の意思に反して押しつけようとする行為であって、国連憲章の原則に反するようなものである。この点につきましては、今回の交渉中一貫して日本中国との間でそういう認識のもとに交渉が行われたということを御説明しておるとおりでございまして、それ以外のいろいろの説明なり違った用語がございましても、日中間は私どもが申しております認識と用語で統一してまいる、こういうことでございます。
  354. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 この点も深く突っ込みませんが、ただ、ルーマニアにしろ、あるいは北朝鮮にしろ、あえて覇権という言葉を避けたということ、ここら辺にやはり問題があろうと思うのですね。     〔毛利委員長代理退席、委員長着席〕 覇権というと、日中間ではこれはよろしいのですけれども、しかし、それにしても、中国側の方で言っている覇権というのが、どうしてもソ連というもの、これを具体的に指す。そういうふうな形の言葉として定着しつつある。日本側の方は、より一般的なものとして定着させようとして努力しておられる。この間の食い違いというのは、単にターミノロジーだけの問題ではなくて、今後問題が起こりはしないだろうかという不安感を私は抱いていることだけをまず申し上げておきたいと思います。  さて、次に私お尋ねをしたいと思いますのは、この平和友好条約前文のところでありますが、「アジア及び世界の平和及び安定に寄与する」ということを念願としてこの条約が結ばれている。先ほども申し上げましたように、外相もその点を各地域で、世界各国でも強調しておられる。どのような形で、それでは、アジアの平和と安定、これに寄与できると考えておられるのか。やはり何らかの構想をお持ちであろうと思うのですけれども、いかがでございましょう、構想がおありでしたら、ひとつ示していただきたいと思います。
  355. 中江要介

    ○中江政府委員 この日中平和友好条約の一番もとになっております要点といいますのは、日本中国が恒久的に平和友好関係を維持し発展していくということであるわけでございます。アジアにおきまして、御承知のように、経済的に、特に経済的に発展を遂げました日本と、いま大きな国土と国民を抱えて近代化に邁進しております中国との間に、過去一世紀近い間に起きましたような不幸なことが再び起きないようにすること、つまり日中両国が相争わないということが、これはまずそのこと自身がアジアの平和にとって貢献しないはずはない、こういうふうに考えます。  次に、日本中国がいまアジアにかかわり合いを持っている度合いというのは、これは私から御説明申し上げるまでもなく、日本とASEANとの関係あるいは日本とインドシナ諸国との関係日本と朝鮮半島との関係、これを顧みましても明らかでございますし、他方、中国中国で、インドシナに対していま持っております政策あるいは東南アジア諸国との間に持っておる関係、朝鮮半島とのかかわり合い、それぞれ完全には一致しておらないわけでございます。  したがいまして、アジアにおける日本中国が、このアジアの問題について、より一層安定した政治的基盤の上に意見を交換し、この平和と安定を維持し、もし緊張要因があればこれを除去することについて話をしていく、相互理解を深める、このことは、その次に求められるであろう役割りであろうと思います。  そういうものを背景にいたしまして、具体的な構想があるかといいますと、それはまだそういう段階にまで至っていない。日本中国との間にはまだまだ相互理解の足りないところがある。それをこの条約締結によって、安定した政治的基盤の上にさらに深めていく。最も日本に近い、しかも緊張要因が完全には除去されておらない朝鮮半島の情勢につきましても、韓国と北朝鮮との対立の背後にある日本中国というものの間に、この条約に基づいて一層突っ込んだ話し合いができるということは、やはりそこに何らかの期待が持たれても不思議ではない、こういうふうに思います。  のみならず、世界の中の日本と最近言われますが、中国はもうすでに社会主義陣営の中においては世界的に重みを持っております。日本中国が、この条約締結によって平和友好関係を子々孫々誓い合っていくというその姿が世界全体の平和と安定に貢献し得る、そういう素地をつくったものであるというふうな認識のもとに両国ともこれから努力していこう、これは条約締結によってできるのではなくて、締結された日中関係を出発点として双方で努力していこうという話が、過般北京で両国首脳の間で行われた、こういうことでございます。
  356. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 まだ構想はないけれども、これを出発点として、そうしたアジアの平和と安定というものをこれから構想したいんだという形で受けとめたいと思います。  外相、国連総会出席中に黄華外相とニューヨークでお会いになりました。あのときに、日中条約の最大の意義というのは二つあって、日中両国がともに覇権を求めないんだということを誓い合ったんだということが第一。第二番目には、日中両国関係だけではなくて、アジアと世界の平和と繁栄の新秩序づくりに積極的に貢献することにあるんだ。そのときに新秩序づくり、こういうふうにおっしゃいましたが、新秩序という言葉はいま中江局長のおっしゃったような中身と理解してよろしいのでしょうか。新聞にはそう出ておりました。
  357. 園田直

    園田国務大臣 黄華部長とお会いしましたのは友好条約締結の直後でありまして、会談の中でいまおっしゃったようなことは言ったように記憶しておりますが、ニューヨークでの私と黄華部長との会談はほとんど具体的な問題ではなくて、お互いに労をいたわるような会談でございまして、いま言われたことは新聞には出ましたが、ニューヨークではなくて、会談の経過の中で出てきたことはございます。
  358. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ニューヨークでなくても、会談の経過の中で出てきたとおっしゃいましたけれども、私、その新秩序というのが実は聞きたいわけでございます。どういう新秩序なのかということ、そこら辺の話し合いの中身、差し支えなかったら新秩序の構想というもののアウトラインでも示していただけませんでしょうか。
  359. 園田直

    園田国務大臣 私がその際言いましたことを概略申し上げますと、過去の歴史を繰り返しておっては世界の人類は生き延びる道がなくなってきておる、いまや世界は行き詰まっておる、この行き詰まった中で世界の人類が生きていくという、人類生存の再秩序をつくろうではないか、こういう言葉を私は使ったように記憶いたしております。それは本委員会で先ほどから申し上げましたとおり、お互い隣国が侵し侵されず、お互いに繁栄を図り、それを基礎にして世界の平和と安定に貢献していくことだ、こういう意味のやりとりでございます。
  360. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 そうすると、いわば理念的なものであって、具体的にどうしようというものではないというふうに理解してよろしいですね。
  361. 園田直

    園田国務大臣 そのときは友好条約を結ぶについての両国の心構えを話し合ったときでありますから、理念的なものが主でございます。
  362. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 ちょっと古くなります。一九七二年でございますけれども、これは外務省の方で考えておられたというふうに聞きますが、中国を含めたアジア諸国会議開催を計画するということを私は読んだ記憶がございます。このことは米ソを初めとする軍縮委員会の協力を求めようとする動きでもございまして、ジュネーブの軍縮委員会に当時の西堀大使から提案もされている。それは武力不行使宣言、アジア諸国の軍備管理、こういったものを軸にした一つのアジアの地域安全保障の構想であったというふうに理解をしております。一九七二年三月でございますと、ニクソン訪中の後の新しい政治情勢、これを踏まえての構想であるというふうに思っておりますが、こんな考え方というものはいまなお外務省当局ではお持ちでございましょうか。むしろ先に中江局長にお尋ねをいたしたいと思います。
  363. 中江要介

    ○中江政府委員 ただいま先生が言及されましたアジア諸国会議構想というたぐいの構想は、その一九七二年という年がいま申されましたようにニクソン訪中と相前後する、アジアにおいては一種の激動期に直面していたときでありましたので、いろいろの構想が出されました。日本では第七十一国会の当時の田中総理の施政方針演説の中に「戦火に荒らされたインドシナ地域の復興、建設のため、できる限りの努力を尽くすとともに、ようやくできかけた和平を定着させるため、アジア諸国をはじめ太平洋諸国を網羅した国際会議の開催の可能性を検討したいと考えております。」こういうくだりがありまして、非常にいろいろの議論がなされた時期でありました。ところが、この米中接近といいますか、ニクソン大統領の訪中を契機とするアジアの情勢の変化は、特にインドシナ半島におきましては当初期待したようなものにはなかなかまいらなくて、一九七三年にやっとパリ協定ができましたけれども、それも真のベトナムの民族自決と言われておりましたものを保障し得るに至らずに、一九七五年にプノンペン、続いてサイゴンの陥落という形で終末を迎えたわけでございまして、一九七二年当時考えられておりましたようなアジア情勢の進展ではなかったわけであります。したがいまして、当時考えられておりました、インドシナ半島がああいう形で結末を迎える前に何か相談してできないだろうかという構想は、ついに構想で終わったというふうに私どもは受けとめております。  したがいまして、インドシナ半島の情勢急変後のアジアにおきましては、当時考えられておりましたようなアジア諸国あるいは太平洋アジア諸国が集まって何かやろうという構想はいまのところはない、こういうことでございます。
  364. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 確かに情勢の変化の中でついえ去った構想であったかもわかりませんが、これはなかなか意義があると思うのです。私は、今日においても再度検討してみる価値があるんじゃあるまいか。武力不行使宣言とアジア諸国の軍備管理を軸とした一つのアジアの地域における安全保障の構想、私は、日中の新時代を迎えた後の一つの問題として当然検討すべき価値があるように思いますが、外務大臣いかがでございましょう。
  365. 園田直

    園田国務大臣 ただいま局長が申し述べましたとおり、ただいま具体的な計画こそはございませんけれども、先般の福田総理のASEANの国々訪問、首脳者との会談、私のASEAN外相会議に対する出席等は、この構想の実現をねらいつつ逐次その方向に行きたいという願いを持っておるわけであります。  ただ、いま御発言中に、その際の主要課題としてアジアの安全保障という問題が出てきましたが、当時はその事実はなかったようでございます。
  366. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 この日中条約がアジアの平和と安定ということを願っている、そしてそこからつくられているという言葉を空語にしないためにも、それを出発点とするということは是といたしますが、これから本当にそういう構想を具体的にいろいろ考えていかなければいけないのではなかろうか。特に最近のインドシナ半島を見ましても、中国がカンボジア支援、ソ連がベトナム、ラオスへのてこ入れ、こういう図式がどうも深刻な問題を引き起こしているということ一つ見ましても、このまま放置しては大変だ、これまた、やはり当然日本の責任として、そういう地域における平和、安全保障、こういった問題を考えなければならない。他方、先般来多くの方々が指摘しておられるように、やはりアジア最大の国家、これが二つ手を結んだという形になるわけでございますから、小国と言ったら語弊があるかもわかりませんけれども、他のアジアの国々というのは、有形無形の、大変な期待感もあるかもわからぬが、同時に不安感もある。こういった不安感を取り除くことは、やはり日中両国の責任にもなってくる。こういう意味で、これは外相に、ぜひ今後いろいろな構想を真剣に取り上げていただきたい。これは要望いたしておきたいと思います。重ねてその点、大臣、何かありましたら……。
  367. 園田直

    園田国務大臣 私も御発言のとおりであると思いますが、また一面、ASEANの国々は、やはり過去における歴史考えを及ぼして、日本からイニシアチブをとられるとかあるいは支配されるというかっこうに対する非常な警戒心があるわけでありますから、その点も十分考慮しながら、ASEANの方々と相談をしてそういう方向に努力をしていきたいと考えております。
  368. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 先ほど中江局長は、この条約の意義を、日中戦わずというところにあるというような発言をされました。そうすると、この条約は、一つの不戦条約、日中不戦条約というふうに位置づけてよろしいでしょうか。その辺いかがでございましょう。
  369. 中江要介

    ○中江政府委員 私は、日中戦わずとは申さなかったつもりで、日中相争わずと言ったと思います。これは、日本のいまの憲法下の体制で、日本が不戦条約を結ぶ資格があるかどうかということ自身もすでに問題だろうと思います。それはともかくといたしまして、この条約の趣旨は、恒久的な平和友好関係を強固にし発展させるということでございまして、その具体的な姿として相争わないのだということを申したつもりでございます。もしそれが不戦条約的なニュアンスでお受け取りになられたといたしますと、それは私の本意ではなかった、こういうことでございます。
  370. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 中江局長、もう一度お尋ねをいたします。  それでは、この条約は相互不可侵をうたったものでございますか。
  371. 中江要介

    ○中江政府委員 条約の第一条には、相互不可侵といういわゆる平和五原則の原則がそのまま入っておりますから、相互不可侵を原則として両国関係の平和友好を強固にし発展させる、こういうことでございますから、不可侵であることは認めておりますが、先般も申したと思いますが、いままでは、いわゆる不可侵条約という名前で不可侵だけを約束する条約というのは、ほとんどが軍事力をもって相手の領土、主権を侵すというようなことをしないという、多分に軍事的色彩を帯びた条約として受けとめられることが多かったために、私としては、この条約を不可侵条約かというふうにずばり御質問を受けますと、そうであるとはちょっと言いにくい、こういうことでございます。
  372. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 この点で、園田外相、そのような解釈でよろしいのでしょうか。
  373. 園田直

    園田国務大臣 そのとおりで結構だと存じております。
  374. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 日中共宣言が発表された後でございますが、私の記憶しておるところでは、故周恩来総理が、平和友好条約締結後の将来において両国間の不可侵条約の可能性、これに言及されたということを記憶しておりますが、これは私の記憶間違いでしょうか。
  375. 中江要介

    ○中江政府委員 ちょっと私もはっきり御答弁できるほどの記憶はないのですけれども、そういうことを耳にしたことがあるかなという程度でございまして、なおよく調べてみたいと思います。  補足になりますが、第二条の第一項の、日本が覇権を求めない、中国も覇権を求めない、それは今回の首脳の間の会談でも出た話ですが、中国日本に対して覇権を求めないのみならず、中国自身に対しても覇権的な行為を行うことには反対するんだ、こういう説明まであったぐらいでございまして、日本中国に覇権を求めない、中国日本に覇権を求めない、そういうところを取り上げれば、もし周恩来前総理がそういうことをおっしゃっていたといたしましても、そのことはこの第二条によって実現されているのではないかという感じもいたしております。
  376. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 この問題は別の機会にでもお尋ねしてみたいと思っている点でございますが、時間の関係で関連してちょっと先に進ましてもらいたいと思います。  私、率直にお尋ねをいたしますが、外務大臣中国は核保有国であり、核パワーだというふうにお考えになりますか。いかがでございますか。
  377. 園田直

    園田国務大臣 核保有国であると存じます。
  378. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それでは、現在どの程度の核を保有している、核戦力を持っているというふうに認識をしていらっしゃいますでしょうか。どなたか、防衛庁の方でも外務省の方でも結構でございます。
  379. 中江要介

    ○中江政府委員 一九七九年度版の国際戦略研究所の資料によりますれば、「中国の核戦力はすでに作戦可能な状態にある。ソ連、アジアの大部分に到達可能なものである。すなわち、運搬手段としては、すでに実戦配備されている準中距離弾道弾(六百ないし七百マイル)は、中距離弾道弾(千五百ないし千七百五十マイル)にかえられつつあるし、さらに限定射程の大陸間弾道弾の幾つかも配備されている可能性がある。また、核爆弾の保有数は数百発と見られており、核兵器の保有量は急速に増加する可能性がある。」これは一九七九年度版の国際戦略研究所の資料でございます。
  380. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 中江局長、重ねてお尋ねいたします。  それを事実として認識されますか。そしてまた、そのことはいわゆる非脆弱な、第二撃能力を保有している状態だというふうに認識されますか。
  381. 中江要介

    ○中江政府委員 私は不勉強でございますので、正確にそれを判断する能力がございません。
  382. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 その判断がないと、これは私は、外務省としていろいろな外交も安全保障の対策も出てこないのではないかと思います。数字の是非はともあれ、中国は現在非脆弱な第二撃能力を持っているというふうにお考えかどうか、この点外務大臣はどのように認識しておられますか。つまり、どこかから攻撃を受けたときにこちらの方でもう一遍反撃ができる能力を核戦力において中国はいま持っているかということでございます。
  383. 園田直

    園田国務大臣 残念ながら詳細については私承知いたしておりません。また、今後どの程度の速度でどれくらいふえていくかということも、詳しく存じておりません。
  384. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 大変申しわけありませんが、この点でちょっと防衛庁の方おられたら呼んでいただけませんか。いらっしゃいませんか。――私はこういう問題をあえて聞かしていただきたいと思うのです。というのは、私どもも日中の平和友好、大変賛成でございます。と同時に、しかし国民の中にやはり率直な疑念や不安というものがある。あるとすれば、これは中国が巨大な核国家になるのではあるまいか、大きな軍事国家ではあるまいかという懸念でございます。そこであえてこの問題を率直に聞くことが、そして日本国民の不安感をなくすことが友好の基礎になるだろうという気持ちで聞かしていただきたいなと思っております。重ねてお尋ねいたしますけれども、今後五年ないし十年の間にどの程度の核戦力を保有するというふうに見通しを立てていらっしゃいますでしょうか、お聞かせいただきたいと思います。
  385. 中江要介

    ○中江政府委員 これも非常に抽象的なお答えを申し上げておしかりを受けるかと思うのでございますけれども、中国がどういう政策のもとで原子力開発をこれから行っていくか、それから、四つの近代化の中の国防の近代化というものにどれだけの重点を置いて実施していくだろうかということによって異なってこようかと思います。したがいまして、たとえば十年後どの程度であるかということを予測することは困難ではないか、こういうことでございます。
  386. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私はやはりそこら辺はアジア局長にぜひ知っておいていただきたいなと思いますし、その認識は持たれた上で対アジア外交なり対中国政策なりが始まるのだと思うのです。  その点、たとえばこういう記事がございます。中国解放軍首脳部が、先月のたしか八日でございましたけれども、日本の報道各社の論説責任者が中国を訪問したときに、中国解放軍側で明らかにした。これは五-十年で中国の陸、海、空軍の武装を完成させる。それからまた、軽武器の近代化はすでに解決した、核開発は自力更生で行ったが、先進国からの軍事技術導入と自力更生は矛盾しないということを言って、そして、米ソが持っているものはすべて中国も持つ、すでに偵察衛星を含む人工衛星を何度も打ち上げた、中距離ミサイルを持ち、大陸間弾道弾を持つ方向に努力している、こういう一節がございます。こういうことが事実だとすると、それを前提にして、私、外務大臣にお尋ねをしたいと思うのです。こういう状態になりますと、これは素朴な感情といたしまして、日本の方は非核三原則を貫いております。堅持しております。したがって、そういう核兵器や何かを持っておらない。他方中国の方は、米ソの持つものはすべて持つぞということで、大陸間弾道弾なんかも開発中であるということになるならば、また先ほど中江局長の言われたような核戦力を持っているとするならば、これは日本にとって脅威というふうに見るのが当然ではないでしょうか。外務大臣、どのようにお考えになります。
  387. 園田直

    園田国務大臣 脅威という意味は、日本に対する直接の脅威ということよりも、そういうことによってアジアで中ソの対立が激化をして、これが火を噴く可能性が出てくるという意味において脅威であると考えております。
  388. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 私はその点で、アジア各国や何かも非常に懸念するのではあるまいか。たとえばこの問題について、外務大臣、日中でお話し合いをされたときに、何らかの協議、討議をされたでしょうか。核軍縮に対して日本側の主張、これを強く言われる、同時に核の中国における開発の状況に対して何らか歯どめでもかけたいという願望なり意見なりは言われたでございましょうか。
  389. 園田直

    園田国務大臣 今度の友好条約締結の際の会談では、正直その話は私いたしませんでした。ただNPT条約というものがありますが、これにフランス中国が入ってないわけであります。入ってないからといって、中国がこの条約の外にあるからこの条約存在意義がなくなるということが必ずしもすぐ言えるわけではありませんけれども、しかし中国がこの条約に参加をして、この条約が目的としておる核軍縮の推進を誠実に行うことが望ましいと考えておりましたので、軍縮総会でフランス及び中国に対してこれに対する加盟を強く訴えたわけでございます。
  390. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 いまのお話、強く訴えられたと言われますけれども、国連の総会においても軍縮特別総会、これにおいても、外務大臣は非常に強い姿勢で核廃絶を目指して格段の努力を核保有国に要請するということを言っておられる。あるいはまた日本代表はジュネーブの軍縮委員会の中でも、包括的な核実験禁止を訴えるということを初めとしまして、軍縮問題について非常に積極的に取り組んでいる。こういうことを背景にいたしますと、きのう外務大臣お答えになった答弁の中で、中国の軍備については他国のことであるから干渉はできぬ、ただ日本側としてはそれに手はかしませんよというふうにははっきり言っているということをおっしゃいましたけれども、外務大臣どのようにお考えになります。今日まで世界各国に外務大臣が訴えてこられた言葉と、それから歯どめがちっともかかっていないという事態、これはまことに残念だと思うのです。何か中国に対してはその点を遠慮しておられるようにも感じられる。その点いかがでございましょう。
  391. 園田直

    園田国務大臣 私が申しましたのは、中国が自分の国を守るために軍の現代化をすることについて協力、干渉はできない、こういった意味でありまして、世界の軍縮の立場から実効的な軍縮措置の実現に向かって努力する観点から言えば、中国に対してもかかる立場で今後臨んでいきたいと考えております。
  392. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 それでは、いまおっしゃったNPTに中国参加の要請をされたのですけれども、それに対してはどのような返事がございましたでしょうか、あるいは見通しを立てておられますでしょうか。
  393. 大川美雄

    ○大川政府委員 中国は従来から、NPTいわゆる核防条約に対しましては、これは米ソの核独占を維持するための陰謀をあらわすのだ、この条約のもとでは米ソの軍備拡張は自由である反面、非核兵器国が自己の防衛のために核兵器を開発する権利を奪っているのだという立場をとっております。これは一九七三年の国連総会における中国代表の発言の中にあらわれているNPTに対する中国政府考え方でございます。そこで、先ほど大臣が言われましたことしの軍縮総会における呼びかけもございますし、そのほかに日本自体が核防条約の批准書を寄託いたしました際の政府声明がございます。これは一昨年六月八日に出された声明でございますけれども、その中におきましても「日本国政府は、この条約を真に実効あるものとするため、核爆発能力を有すると否とを問わず、できるだけ多くの国がこの条約に参加することを希望するものである。特に、核兵器を保有しながらこの条約に参加していないフランス共和国及び中華人民共和国がこの条約に参加することを強く希望する。」ということを申し述べたわけでございます。これをまた各国にそれぞれの首都におきまして、日本の在外公館を通じまして通報したわけでございまして、中華人民共和国政府に対しても同じく在北京の日本大使館を通じてこの趣旨を申し入れたわけでございますけれども、先ほど御説明申し上げた中国政府立場でありますので、中国政府としては積極的な反応を遺憾ながらしてこなかった、こういうことでございます。
  394. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 外務大臣、この核防条約というのは、いま中国立場からするならば、米ソによるところの核の独占形態であるということで、これはにせの核軍縮である、にせのものである、こういうふうな批判的立場をとっているのはよく知られているところであります。と同時に心配なことは、日本はこれに加盟している、批准国である、このNPTの存在というものは、中国があるいはフランスが巨大な核戦力を開発するということになりますと、これは中身が空洞化してしまってその存在理由すらなくなってしまうものになりはしないだろうか、この点を懸念をしておりますけれども、このような見方というのはいかがでございましょう。
  395. 園田直

    園田国務大臣 いまの御発言の点からしても、今後粘り強く中国には参加を要請する所存でございます。
  396. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 外務大臣、前に国連の軍縮特別総会で演説された中にこういう言葉も使っておられることを私は記憶しております。マンモスがおのれのきばのゆえに絶滅した、こういう言葉を使われまして、核保有国に対して強く自制を訴えておられる。そうであるならば、その姿勢で中国にも、これは中ソ対決の中における核戦力の開発、これに対する願望もよくわかります。わかるけれども、にもかかわらず、やはり私は歯どめをかけること、したがって新たな安全保障というようなアジアにおける体制をも、日本がともに検討するという中で粘り強くやってもらわないと困ることだと思うのです。これに関連しまして外務大臣は、中ソに対して核不使用協定の検討をしてみたい、こういうことを発言しておられますが、そのお気持ちはいまでも変わりませんか。
  397. 園田直

    園田国務大臣 いまでも変わりはございません。
  398. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 中国側の方も、これは前々から幾度か実験をやっておりますし、核開発をやっている中で、常に言っているのは、初めに自分は使わないということと、それから非保有国に対してはこれを使わないということを言っております。そうするならば、たとえば、つい最近のこの国連総会において提案されたのか、あるいはされようとしているのか存じませんが、ソ通例の方が非保有国に対する核攻撃の禁止、これをうたった協定、条約を提案をしております。これについてはいかがでございましょう。  まずお尋ねいたしますが、外務大臣、真剣に何かお考えになっておりますでしょうか。
  399. 大川美雄

    ○大川政府委員 ただいま開かれております第三十三回の国連総会に、ソ連からいまのような議題を追加議題として出しております。その趣旨は、条約案も添えておりますので、その第一条から引用させていただきますが、この条約に入った核兵器国は、核兵器の製造と取得を拒否し、自国領土または陸上、海上、空中宇宙空間たるとを問わず、みずからの管轄と管理のもとにあるいかなる場所にも核兵器を持たないこの条約に加盟した非核兵器国に対しては、核兵器を使用せず、または使用するとの威嚇は行わないという誓約を行う、こういう趣旨の条約でございます。  私どもももちろんこれをただいま検討いたしております。国際の平和と安定に資する提案でありますれば、いかなる提案ももちろん日本として真剣に検討する用意がございます。ただし現在の国際情勢におきまして、ソ連が提案いたしておりますような条約締結することは、核の相互抑止に基づく地域的な安全保障の枠組みに影響を及ぼすおそれもあるかと思いますので、十分慎重に検討する必要もあろうかと思っております。
  400. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 またそのことに関連いたしまして、私は、確かにおっしゃるように、ソ連の提案するような国際協定をつくることになりますとさまざまな問題もあるかもわかりません。出てくるでありましょう。ですが、これは価値あるものあるいは核軍縮を一歩でも進めるもの、あるいは不安感を幾らかでも薄めるということであるならばまず真剣に取り組んでいただきたい。  第二番目に、それがまたなかなか実現できないとするならば、少なくとも中国日本の間だけでも、中国もすでに言っていることでありますから、非核兵器保有国、これに対しては核兵器は使わない、こういう旨の、単なる宣言ではなくて、何らかの形で協定、条約、こういう形のものをつくるべきではないかと私は思いますが、いかかでございましょう。日本中国の間でございます。
  401. 中江要介

    ○中江政府委員 一つ考え方としてあるいはそういうことは検討する必要があるかという感じがいたしておりますが、いま政府部内でまだそこまで具体的に考えていない、こういうことでございます。
  402. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 重ねてお尋ねいたします。  この日中平和友好条約の第一条第二項に「武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。」そして「すべての紛争を平和的手段により解決し」こういうことになっておりますが、これは核によるところの攻撃は行わない、こういうことをうたったもの、核不使用の中身であるというふうに理解してよろしゅうございますか。
  403. 中江要介

    ○中江政府委員 これは特に核兵器が入るか入らないかということを中国側と議論した結果というわけではございませんけれども、この武力の行使または武力による威嚇というときの武力の中に、核兵器というものが入ることは当然の解釈である、こういうふうに思います。
  404. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 当然の解釈というふうにおっしゃいましたけれども、私は先ほどからも申し上げておりますように、単に日本だけではない、アジア諸国に対してあるいは近隣諸国に対して、中国がいまどんどんと核戦力を開発していくということは大変な脅威をもたらすということを懸念いたしますので、私は、それに歯どめをかけることと同時に、そうしなくても中国側の方が不安感を持たない、こういうような形の安全保障のあり方というものを地域的に考えていく必要がありはしないか、この点をぜひ検討していただき、打ち出していただくことを期待しつつ、私の質問を終わりたいと思いますが、最後に大臣、どのようにお考えになりますか。
  405. 園田直

    園田国務大臣 日中間に核が使用されないことは、この友好条約前文等から見ても、これは当然のことだと考えまするけれども、不安を持っているASEANの国々、その他の地域、核を持たない国に対する核を使わないという中国の約束をいただくことは、これは真剣に検討すべき問題だと考えておりますので、御発言の趣旨に従って真剣に検討したいと考えます。
  406. 渡辺朗

    渡辺(朗)委員 時間が参りました。どうもありがとうございました。
  407. 永田亮一

    永田委員長 寺前巖君。
  408. 寺前巖

    寺前委員 昨日は、条約の第二条について、日中両国が第三国の覇権行動に対して何らかの共同行動を義務づけられるかということについて、ありませんということを大臣から確認をさせてもらいました。そして、一般的な覇権に反対するんだ、義務的拘束はないんだというお話でありました。  ところが、その条約を結ばれた相手国の中国は、反覇権というのが特殊な外交路線の理論的基礎となっていることは御存じだと思うのですが、有名な三つの世界論がその基礎になっております。  十月三日の当衆議院の予算委員会で、総理が、三つの世界論を知らないとお答えになりました。私は、これほどの大きな問題について、相手国の基礎理論になっているものについて知らないということは、非常に不見識だと思う。外務大臣は、この三つの世界論について知っておられるのかどうか、どういうものか、ちょっとお考えを聞かしていただきたいと思います。
  409. 園田直

    園田国務大臣 この前の委員会で御説明がありましたから、承知をいたしております。
  410. 寺前巖

    寺前委員 三つの世界論というのは、簡単に言いますと、世界を勝手に分類して、第一世界は米ソの超大国、第二世界は日本、ヨーロッパなどの資本主義国とソ連を除く東欧諸国、第三世界は中国を初めアジア、アフリカ、ラテンアメリカの発展途上国として、第三世界が中心になって第二世界を引きつけて、第一世界、なかんずくソ連に反対する国際統一戦線をつくろうというのがその主要な内容であります。しかも、この特殊な路線というのは中国の大会の報告の基調にもなっております。すなわち人民大会や党の大会です。しかも憲法にも決められているものです。中国の七八年三月五日採択の新しい憲法では、三つの世界の理論に従って、最も広範な国際統一戦線を結成し、社会帝国主義、帝国主義の超大国の覇権主義に反対するという規定まで明確にされているのであります。その中国の三つの世界論を基礎とした特殊な外交路線、これが相手方にあるんだ。その相手方との間に条約を結んだわけですが、外務大臣はこの路線に対して、外交路線としてわかりました、支持しましょうという態度をとられるのか。一体どういうことになるのですか。
  411. 園田直

    園田国務大臣 いま説明されました路線は、若干の修正変更等はございますが、中国が以前から言っている路線であり、あるいは反覇権という言葉をソ連に向けて使っていることも、これも従来からの方針であって、友好条約締結したからといって日本がこの路線に協力すべき筋合いのものではないということは、条文を読まれても、会談の経過においても明確になっておるところでございます。
  412. 寺前巖

    寺前委員 この路線は反対ですか、賛成ですか。
  413. 園田直

    園田国務大臣 日本外交方針が中国外交方針と同じであるべきはずはありません。
  414. 寺前巖

    寺前委員 この条約締結を出発点として米日中の準軍事同盟化が始まり、国民は大国間の力の立場に立つ外交に組み込まれつつあるとする見解が生まれております。  九月六日の日本報道各社論説責任者訪中団に対する鄧小平副首相談話を見ると、反覇権という共通の言葉が日中双方にできたことは国際的に重要な出来事である。私たちは同じ脅威に直面しており、共同の危険に備えなければならない。私たちはずっと備えてきたし、日本が自己防衛力を持つことに賛成している。いまでも私は世界戦争はいつか勃発すると思っているが、反覇権で私たちが連合すれば戦争をおくらせることができる、と述べています。また九月二十八日の国連総会一般代表演説で黄華外相は、日中条約の反覇権条項を指して、このような条文が国際的に盛られたのは初めてである、日中条約はアジア太平洋地域の平和と安全の防衛に非常に重要なものである、とも述べられた。  お聞きしたいのは、この条約に軍事的意味あるいは安全保障的意味が少しでもあるのかどうか。
  415. 園田直

    園田国務大臣 全然ございません。
  416. 寺前巖

    寺前委員 しかし米中首脳陣は、たとえばホルブルック米国務次官補は、安全保障の観点からは中国日本、ソ連、米国、この地域の四大強国間に今日存在している戦略バランスは、明らかにわが国の利益になっている、米中日がこの安定性を維持することに利益を分かち合うということを本年六月十六日、ホノルルの西部知事会議において述べているし、鄧小平副首相は、東では中日両国が共同し、西では西欧とアメリカが共同してそれぞれソ連に反対することが必要であるということを、三月二十三日、ツイアーマン西ドイツキリスト教民主・社会同盟連邦議員団第一副委員長一行との会談で述べています。  中国はこの条約を日中同盟の第一歩としようとしているとも解されるのですが、重ねて政府のこれに対する見解をお伺いしておきたいと思います。
  417. 園田直

    園田国務大臣 そのような懸念は全くないばかりでなくて、むしろわが日本は、中ソの対立が激化の方から少しでも緩和の方向へ向くことを期待するということを明確に言ってありますし、また中ソの紛争に日本は介入する意思は全くない、こういうことを言っております。米国でもいまおっしゃったような意見もあるし、あるいはブレジンスキーが帰国後発言なされたこともありますけれども、それはごく一部の意見でありまして、やはり米国政府の意見というのは、アジアで中ソの対立が激化をすることは好んでいないわけでありまして、米中、それから日が提携をしてソ連に当たるというようなことは全然話もございませんし、あるいはそういう懸念もございません。
  418. 寺前巖

    寺前委員 昨年の十一月九日に栗栖当時の統幕議長は、締結及び締結しない場合について、わが国に与える軍事的影響を統幕として研究しているということを会見で述べておられます。調印された今日、防衛庁は軍事的影響についてどういう研究内容を持っているのか、説明を願いたいと思います。
  419. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 御承知のように、防衛庁にはそれぞれの部局に情報を担当している部局がございます。統幕にも二室というのがございまして、情報を集め、これを分析、判断している部局があるわけでございます。それぞれのところで常時情勢の判断というものはいたしているわけでございますが、結局アジアにおきます情勢というものは、軍事的に見ますと米中ソの三国によりますいわゆる三極構造というのがあるわけでございます。しかもアメリカの強力な軍事力というものが現実に極東にあるわけでございます。そういうことから考えますと、極東といいますか、アジアにおきます大きな紛争というのは起こらないというふうに判断をしているわけでございます。
  420. 寺前巖

    寺前委員 私の聞いているのは、軍事的影響を統幕として研究している、ところが調印された、それじゃ今日どういう研究内容をやっているのか、その内容についてお聞きをしたい。
  421. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 いま申し上げましたように、統幕としてやっているというのは、統幕の二室がそういった情報を集め、情勢を分析しているということでございまして、現時点におきまして大きな軍事的な変化はないというふうな判断でございます。
  422. 寺前巖

    寺前委員 時間の関係がありますので次へ行きますが、条約調印後最初に公的日中関係が生まれたのは中国の副総参謀長がやってきたという問題です。日中制服間の交流がこれから盛んになるのではないか、今後どの範囲でこの交流が行われていくのか、どういう点を留意して考えているのかということについて説明を願いたいと思います。
  423. 金丸信

    ○金丸国務大臣 中国解放軍との交流につきましては、具体的な計画というものは全然ありませんし、また将来につきましても、こういう問題につきましては慎重に検討してまいりたい、こう考えておるわけであります。
  424. 寺前巖

    寺前委員 日本中国の間に軍事情報の交流や軍事技術開発への協力というものがあり得るのかどうか。
  425. 金丸信

    ○金丸国務大臣 日中友好条約は軍事同盟ではありません。友好条約でありますから、そのようなことはないと御理解いただきたい。
  426. 寺前巖

    寺前委員 最近防衛庁の元技術幹部、新聞によりますと、防衛庁技術研究本部、元幹部である航空機担当だった田中元空将、ミサイル担当の尾沢元開発官、戦車担当の大河原元陸将の三氏が中日友好協会から招待を受けたようですが、こういう技術協力は今後していくのか。中国は四つの現代化の一つとして軍の現代化でも日本の協力を期待しているようだ。この点について日本政府はどういう方針で対処していくのか、御説明をいただきたいと思います。
  427. 金丸信

    ○金丸国務大臣 日本は民主主義国家であります。OBをどうするこうするということはできないような状況になっていることは御案内のとおりであります。しかし、防衛庁のいわゆる軍事的な問題をどんどん向こうに提供するというようなことについては、これは考えなければならぬ問題であるとは私は思うわけでありますが、しかしそれを行動をとめるということができるのかできないのか、そういう問題は今後も検討しなくちゃならぬ、こう考えております。
  428. 寺前巖

    寺前委員 通産省おりますか。――通産省はこの件に対してどういうふうに対処されますか。
  429. 小川邦夫

    ○小川説明員 お答えいたします。  技術輸出につきましては外国為替管理法、外国為替管理令に基づきまして許可を必要とすることになっておりますが、御指摘の武器製造技術につきまして仮に許可申請が出てまいりましても、通産省といたしましては武器輸出に関する政府の方針に準じまして取り扱うことにしておりまして、武器輸出と同様武器製造技術の輸出につきましても慎重な態度で処理することにいたしております。
  430. 寺前巖

    寺前委員 重ねて聞きますが、私が提起したのは、中日友好協会から、こういうふうに元技術幹部である防衛庁の諸君たちを次々と、軍の現代化のためにやってきてくれということを要求されている。これに対して、向こうの軍の現代化のために協力をするということを通産省としてもやるというのか、やらないというのか、はっきりしてもらいたい。
  431. 小川邦夫

    ○小川説明員 お答えいたします。  防衛庁職員の派遣問題につきましては、通産省としてはかかわりない点でございます。
  432. 寺前巖

    寺前委員 初めから聞いておらぬのかな。防衛庁としては、元技術幹部だから、私の方は民主主義国家だからあれだけれども云々という答弁が、これからそういうことはちょっと問題だし考えてみなければいかぬと防衛庁長官は言った。それじゃ今度は民間人になったのだからといって、通産省の方はこういう防衛庁の元技術幹部が、民間人だからといったって元は違うのだから、軍の近代化のためにそういう人を派遣することを積極的にやるというのか、やらないというのか、どうなんだと聞いているのだ。
  433. 小川邦夫

    ○小川説明員 お答えいたします。  民間人を中国に派遣する場合、それが技術役務の提供の内容を持つものでございますと、技術役務の提供につきましては、先ほど申し上げました外為法上の運用に抵触いたしますので、そういう内容を持つものであれば慎むことにいたしたい、かように考えております。
  434. 寺前巖

    寺前委員 外務大臣、どうですか。これは技術的な能力を持っている人を派遣して、向こうの軍の近代化のために協力をする内容を持っているのだ。それを許していくのか、許していかないのか。防衛庁長官、答えますか。
  435. 金丸信

    ○金丸国務大臣 まあOBと言えば民間人になっておるわけでありますが、向こうに参りましてそういうものを提供した、そういうものが証拠として出たということになりますと、いわゆる秘密保護という中で、自衛隊法の五十九条にあるわけですよ。自衛隊員がやめても守秘義務は守らなくちゃならぬということでありますから、それには罰則もあることですから、そういう面も踏まえまして今後検討しなくちゃならぬ、こう私は言っているわけであります。
  436. 寺前巖

    寺前委員 外務大臣としては、この問題についてどういうふうに、日中条約の経過を経て、先ほど私が言ったように危惧を感じている人が問題を提起している。中国は四つの現代化を言っている。その一つに軍の現代化に対する協力を、まず日中条約が結ばれた途端に生まれてきているということになってくると、こういう外交に対して、日本として中国の軍の現代化に対して、いろんな内容があるでしょう。軍の現代化に対する協力というものはやるのか、やらないのか。
  437. 園田直

    園田国務大臣 いまのお話、詳しくは知りませんが、少なくとも派遣するのではなくて、中国から招待をされたものだと私は承知をいたしております。その場合、技術的な協力をするかしないかは、先ほどから防衛庁長官、通産省が言っているとおりでありまして、軍事に対する協力はいたしません。
  438. 寺前巖

    寺前委員 現代化に対する協力はしないということを明確にされたと私は理解します。  それでは、新聞や雑誌の報道によると、中国側日本の武器製造能力に重大な関心を寄せている。中国を訪問した元自衛隊高官によると、中国側は特に三菱重工業の戦車製造技術と潜水艦能力について高い評価を与えている。中国側からは軍艦発注の打診もあったというが、実情はどういうことになっているのか、御存じかどうか御説明いただきたい。
  439. 松田岩夫

    ○松田説明員 ただいま先生指摘の具体的な案件については、私ども承知いたしておりませんが、先ほど来から申しておりますように、武器の輸出につきましては従来から輸出三原則を設定いたしまして、きわめて厳格な態度で運用しております。したがいまして、そのような武器でございますれば、私どもとしては従来どおり厳格に運用してまいりたい、かように思っております。
  440. 寺前巖

    寺前委員 知っているのかどうかということを聞いているのに、ほかのことは答えることは要らないことです。元自衛隊幹部が兵器産業の分野においては顧問になっているというケースがきわめて多うございます。兵器産業界は対中国取引を通じて武器輸出三原則撤去の道を開こうとしていることが世上指摘されております。それだけに、私は、先ほどの外務大臣中国の軍の現代化のために協力しないという発言と理解をしましたが、日本政府中国への武器輸出については明確に従来の三原則を守り通すんだということを重ねてもう一度御答弁いただきたい。
  441. 松田岩夫

    ○松田説明員 先ほど申しましたように、従来から政府のとっております態度はそのまま堅持いたします。
  442. 寺前巖

    寺前委員 日本国憲法の精神からして、どこの国に対しても直接間接を問わず軍事協力はすべきものではありません。真に自主的、平和的外交を進めていくために、今後この中国との関係においてもどういう点に留意していかなければならないと、この軍事協力について外務大臣はお考えになりますか。
  443. 園田直

    園田国務大臣 中国の軍の現代化に直接役立つようなことは差し控えなければならぬ、やってはならぬ、こう思っております。
  444. 寺前巖

    寺前委員 私は、次に話を進めたいと思います。  最初に二つの点について外務大臣に確認をとりたいと思います。  その一つは、当衆議院の中で三日の日に開かれた予算委員会における総理の答弁です。この条約で言う覇権というのは、一国が他国に武力による押しつけという分野だけではなくして、大国主義、自国の運動のパターンを押しつけるなどの政治的干渉を含めて覇権というのは存在するのだ、だからそういう覇権は許されないというふうに、覇権についての確認を総理はされました。先ほど外務大臣も、覇権については広く武力によるだけではないのだという御意見でしたが、この総理の答弁を確認されますか。
  445. 園田直

    園田国務大臣 総理の答弁はそのとおりだと存じます。
  446. 寺前巖

    寺前委員 第二に、同じく外務大臣は、中国へ行かれたときに向こうの外務大臣に対して、「成田空港反対運動は、やがて反体制運動にいたり、いまではゲリラ運動に変って、日本共産党すら反対している。にもかかわらず、反対運動を指導する委員長まで招いて歓迎し、激励までされるとは何ごとですか。これをみて日本の国民が、中国は内政不干渉の原則を守っていると思いますか。」そういうふうに述べて今後の注意を促したということについて向こうは納得したものと思うということで御答弁になっています。外務大臣は、今後もこの種の干渉問題について毅然とした態度をおとりになることは当然だと思いますが、改めて御確認をしたいと思います。
  447. 園田直

    園田国務大臣 条約締結前の姿勢を申し述べたものでありまして、これは今後守られると確信をいたします。
  448. 寺前巖

    寺前委員 私は、この種の問題は長年にわたって存在する問題だと言わなければならないと思うのです。  一九七二年三月二十九日に、故周総理が、戸村一作らの訪中団に対して、暴力破壊行為をほしいままにしている連合赤軍について、日本の新左翼はすばらしい、「よど号」事件についてもこれは非常にすばらしいと持ち上げています。こういう話はたくさんあります。たとえば一九六七年の羽田事件のときに、日本の青年は暴虐を恐れない英雄的気概を示したと激励することもありました。こういうことを挙げたら切りがないほど系統的になされてきました。  七一年の三里塚訪中団に対して、日本共産党左派、これは共産党と何ら関係のないにせ左翼暴力集団のことですが、この日本共産党左派は、初めあなた方の三里塚闘争に接近することを恐れていました。左派の人たちに、恐れないで接近し援助してはどうかと話し合ったことがあります。そうしたら皆さん、それからは左派は三里塚でやるようになったでしょう。こうやって周総理がみずから指図をしたことを、訪中団の報告書の中から見ることができます。一国の総理がこういうようなことをやっておいて、日本国政府として放置していいものかどうか。これは明らかに内政干渉だ、覇権行為とも言われるべきものではないのか。  先ほど外務大臣は、毅然たる態度で臨んでいくことを、この間の交渉の態度としても明らかにされたわけですが、今後はこのような問題に対してどういうふうに処理をされますか。
  449. 園田直

    園田国務大臣 いまおっしゃったような問題があっては真の友好関係は生まれないし、友好条約締結の前提が崩れるわけでありますから、今後はこのようなことはなさないようにということを言い、これに対して反論はございませんでした。したがって今後そのようなことはないと確信いたしますが、万々一あった場合には毅然たる態度で向こうに交渉を行います。
  450. 寺前巖

    寺前委員 これは単に行った代表団に対する問題だけではありません。向こうの国営放送であります北京放送、広く日本国民に放送されているわけですが、この北京放送の内容についても聞き捨てにするわけにいかないと思います。  たとえば、一九六七年十月二十三日、新宿駅騒乱事件のとき、数万の警察機動隊の警戒を破ってデモを行い、石や火炎びんを武器とし、角材、ヘルメットで武装して肉迫戦を繰り広げた。意気盛んなデモ、怒濤のような勢いで勝利のうちに発展している、と、鼓舞激励する放送をしておりました。  一九七二年一月二十七日、沖繩返還のとき、暴力集団を、労働者、農民と結びつく道を歩み、労働者、農民とともに生活し、ともに闘い、米日反動派に反対する突撃隊となっている、として、これまた鼓舞激励をしているのであります。  去年の七月十一日、暴力革命の用意を整えなければならない。すべての革命的人民は武力で国家権力を奪取することに立脚点を置くべきだ。鉄砲から政権が生まれる、これは全く正しい真理である。こうやって日本国民に呼びかけているのであります。  こういうような放送が、日中平和友好条約が今日結ばれ、お互いに平和五原則でいきましょうということを確認をして、きてこれが依然として続くということになるならば、明らかに政治的干渉であり、覇権行為と見なければならないことになると思うのですが、大臣はこれについてどういう見解を持たれ、今後どういう対処をされますか、重ねて聞きたいと思います。
  451. 園田直

    園田国務大臣 先ほど申し上げたとおりでありまして、そのようなことが今後はないように、そのようなことをされてはこれは内政干渉である、こういうことをはっきり言ってきましたから、今後はそういうことはやらないということを、前提の会談でそれぞれ確認をして条約交渉に入ったものであります。万々一そういうことが起こった場合には、先ほど申し上げたとおりであります。
  452. 寺前巖

    寺前委員 九月三十日に外務大臣は参議院本会議でわが党上田議員の答弁に立たれた内容として、中国日本共産党員のビザを拒否してきた問題について、「入国の査証は一国の主権に属することでありますので、それを拒否したからといって内政干渉だとは考えません。しかし、日本外務大臣としては不愉快でございますから、日本共産党の方は正しい方であるから、今後拒否しないようにと努力はする」とおっしゃっておりました。私はここには外務大臣が、主権問題という形式では済まない、論理に合わない姿が存在しているということをお認めになったればこそ、こういう言い方をされたのだろうというふうに思うわけであります。実態が平和友好の関係を確立する姿にはならないことがきわめて明らかだからおっしゃったのだろうと思うのです。この日本共産党員の入国拒否問題というのは、中国共産党と日本共産党という個別の関係問題で済ますわけにいかない性格を持っていると私は思う。なぜなら、中国政府が、中国の特定路線を支持しないというところから、日本共産党に対する対処が生まれているからであります。これは具体的に幾つかの例を挙げて検討してもわかることですが、たとえば一九六六年八月、日本の教育事情視察訪中団が中日友好協会の会長である廖承志と会ったときに、日本の一部の人たちは中国日本人民に武装蜂起を押しつけるのでけしからぬと言っているが、私たちは日本人民に武装蜂起を勧めるのは、日本人民にとって武装蜂起の戦術が唯一の正しい戦術であるという確信を持っているからなんだ、だから当然われわれはそういうものに対して対処していくのだ、こうやって不当な干渉を毅然として日本の代表団にやっているわけです。私どもは、そういうふうに日本の国内における運動のあり方についてとやかく言われる筋合いのものでないし、それは毅然たる態度で、われわれがわれわれの日本の運動をどう進めるかの問題であると言って対処をしてきました。決して屈することをしませんでした。屈しないからといって、自分の要求を押しつけるためにビザ問題でもって拒否をする、こういう事態というのは明らかに覇権行為である、そういうふうに言わなければなりません。  四年前に日中航空協定に基づいて東京-北京定期航空路開設記念として訪中飛行が行われましたが、わが党の当時の梅田代議士だけが入国を拒否されました。これは、国会が決めた代表団構成に対する露骨な干渉だったわけです。  地方議会でも同じようなことがあちらこちらで起こりました。入国を申請した者について入国を許可しないだけでなく、議会代表団の招待、あるいは代表団の選出構成の際に、直接間接に共産党議員だけは入れないといって事前に排除を要求してきているのがそれらの事実でありました。もともと議会が外国との交流のために自分たちの代表団を派遣するに当たって、その構成を決めるのは議会の自主的行為ではありませんか。これに干渉することは、わが国の内政問題であって、決して許されるべき性格のものではないと思うのです。大臣が、条約が結ばれた今日、このように議会の自主的行為として編成についてつかまえるのはあたりまえであって、決して干渉すべきものではないということを明言することができますか。
  453. 園田直

    園田国務大臣 わが国も、友好条約を結んだ中華人民共和国から訪日される場合に、あるときにはその入国を拒否したことがいままでございます。それぞれの国が自分の国の立場から各国から来る入国を拒否した例はあるわけでありまして、これはあくまでその国の主権に属することであります。  しかし、友好条約も結ばれたときであるし、また一部の人が除かれることは、やはり正当に認められた日本共産党の方々が拒否されるということは、外務大臣としては歓迎すべきことでありませんから、この点は今後中国にもよくお話しをしたいと思いますけれども、またこれは相互関係でありますから、どうか日本共産党の方も中国から拒否される口実が余りないように、願わくは中ソの対立が緩和の方に向かうように、日本共産党と中国共産党の対立も緩和していくように願っておる次第であります。
  454. 寺前巖

    寺前委員 それはほかのことでありますし、質問の内容についてもまた正しく御理解をいただいておりません。私は改めて事実をもって最近の問題について指摘をしたいと思います。  ことしの三月十日、大阪府議会代表を中日友好協会が招待したい、こういうふうな問題が出ました。ところが、その大阪府議会代表を構成するときに共産党は排除してくれというお話があったということが伝わってきました。そこで大阪府議会として、これが中国の真意であるのかどうか、直接七月三日、中国領事館に照会をいたしました。そうしたら返事は、共産党議員の入国については認められない、文書で提出できないが、中国の態度ははっきりしているという返事がやってまいりました。ビザ発給申請の前に訪中代表団の内部構成をどうするかということを自主的に議会が相談をする。ところが、中国側がそれ以前に、その構成をつくるときに共産党議員は排除せよなどと言うことは、文字どおりの政治的干渉ではないでしょうか。出したものを拒否すること自身も、外務大臣がおっしゃったようなこと、それ以前の干渉に対して断じて許すべきことではないのではないでしょうか。これについて大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  455. 園田直

    園田国務大臣 日本共産党の御意見はわかりましたけれども、ビザの問題は先ほど申し上げたとおりでありますが、中国が招待するというわけでありますから、自分が招待するお客さんに条件をつけることが内政干渉であるとは私は考えません。
  456. 寺前巖

    寺前委員 府議会代表として国民から正当に選ばれた代表です。その代表を、どれが代表になるかという問題と、私的にだれかを呼ぼうという問題とは性格が違うじゃありませんか。府議会が代表は何だということを決めるのは府議会自身の問題じゃありませんか。それは中国が、あなたのところの府議会というのはこれこれの構成ですよ、こういうふうに決めてかかるということ自身は干渉じゃありませんか。重大な干渉でしょう。構成をどうするかということは自分のところの問題です。こういう人を除く府議会議員さんを呼びたいという話とは違うでしょう。議会代表をどうするかということはこっちの問題ですよ。議会自身の問題じゃありませんか。議会自身の構成についてとやかく言われること自身が問題じゃないか、私はそのことを指摘するわけです。いかがですか。
  457. 園田直

    園田国務大臣 現実の状況は詳しく存じませんけれども、議会の構成に干渉したのではなくて、議会で決められた方でこういう方々はお客さんとしては迎えがたい、こういうわけでありますから、内政干渉とは思いません。
  458. 寺前巖

    寺前委員 私はもう一度事実を冷静に御検討いただきたいと思います。本当に。  議会代表をどうするかという問題と、府議会のこういう党派の人においでくださいという呼びかけをやるのとは性格は違う。私は、この問題についてはこれ以上引き下がるわけにいきません。それはそうでしょう。国会はどういう構成にしなさいと言われて、はい、わかりましたと引き下がるわけにいかないでしょう。国会の構成をどうするかというのは、その国会を構成している人間の自主的判断に任されるべき性格でありますよ。それを、その構成はこうしなさいということになったら、これは性格の違う話です。条件をつけるべき性格じゃないと思います。こういう議員さんを招待したいというのとは違うのだから、それが議会の代表としてふさわしいかどうか、これは違うと思うのですよ。議会構成に対する干渉というのは、何人であろうともそれは干渉すべき性格のものではない、独自の問題だ。しかとこれは大臣自身も確認されなかったら許されることではないと私は思います。いかがでしょう。
  459. 園田直

    園田国務大臣 議会または地方議会で構成せられることに対する干渉なら別でありますが、決められた中でこういう方々はお座敷に上がってもらいたくない、こういうことは内政干渉ではないと私は考えます。
  460. 寺前巖

    寺前委員 私はこの問題については、提起した問題について保留をします。時間の関係もありますから。このままにしておくわけにはいかないと思います。  私は、外務大臣が先ほどから申された、先日の本会議での、個人的不愉快であるという問題について、解決のためにやるのだとおっしゃったことについて、積極的におやりくださることを要求しますし、また、そういうふうにして特定の路線を共産党が支持しないからといって、それに対して主権行為だということで拒否をしてくるということは、まさにそれは覇権行為だというふうに見られるべき性格だというふうに思います。  私は、本当に日中両国の友好関係を確立する、平和五原則で条約をつくり上げていくんだというふうに確認をしてこられた以上は、友好関係の確立のためにも、言葉で平和五原則を言っているだけではなくして、内容としても五原則に反する内容があった場合には毅然たる態度をとる、即刻そういう行動をとるということによって初めてこの条約が生きてくる、平和五原則が生きてくるというふうに言えると思うのです。  私は、中国の側が今日踏みにじってきたところのこの平和五原則に反する行為、それを批判するだけではなくして、日本の側も毅然としてそれに対処してこなかったところに、また日本の側の問題があったと言わざるを得ないと思います。それだけに外務大臣がこの問題に対する毅然たる態度を即刻今後はやるようにするという態度をとられるのかどうかを最後に聞いて質問を終わりたいと思います。
  461. 園田直

    園田国務大臣 過去の日本中国関係にけじめをつけたということはおっしゃるとおりでございます。いまの問題についても、私は本会議の席上で努力をいたしますと言いましたから努力はいたしますが、そのかわりまた、おいでになる日本共産党の方も、招待されて中国に行かれたからには、日中友好の障害になったり、これがまたひびが入るようなことは十分注意をしてやっていただきたいということがなければ、私は、私が努力をして、入られた、入って帰られてからどえらいことになったということでは、日本外務大臣が責任を持てないわけでありますから、この点はあわせて私からお願いをいたします。
  462. 寺前巖

    寺前委員 いまの発言は一体どういうことですか。われわれが日中友好関係においてひびを入れるという、何かやったとおっしゃるのですか。私は取り消してほしいと思います。向こう、中国の諸君たちが特定の路線を押しつけることに対して、毅然たる態度をとったということだけでありまして、それは中国に対してわれわれは一度なりとも干渉をやったことはありません。一体何をもって中国に干渉したとおっしゃるのか。われわれが干渉したというのだったら、それは友好関係にひびをもたらすことになるでしょう。しかし、われわれは干渉しない。中国の諸君が干渉してきている。干渉をやめなさいということをわれわれは言っているんだ。路線が違っても干渉がされなかったならば、それはまたそれぞれ論議をして発展をする国際関係が生まれるでしょう。私は、党と党との関係の問題については、これは別の党の論としてやりますけれども、中国政府から、日本の共産党が内政に干渉して、そうしてこの友好関係を破壊したという事実があるならばお示しをいただきたい。
  463. 園田直

    園田国務大臣 質問をされる劈頭に、日本共産党が日本中国関係にどのように努力をしてきたかということは十分承っております。ただいまの議論は、私も注意しなければならぬが、私は、飛躍し過ぎると思う。私は、日本共産党が日中関係に干渉したとか、中国に干渉したとかと一言も言っておりません。私も努力をいたしますから、皆さん方も気持ちよく帰れるようにしてください、こういう希望を言っているだけであります。
  464. 寺前巖

    寺前委員 障害になることをやってくれるなと言われたから、私は聞くのです。一体何の障害になることをやったのか。障害というのは、向こうの政府から――干渉をあちらの国に対してやらない限りは障害でないでしょう。
  465. 園田直

    園田国務大臣 私は言葉遣いが下手でありまして、日中友好関係に悪いような影響を与えることはしないで、気持ちよく、よく話し合ってきていただきたい、こういうことは、いままで干渉したとか障害を与えたとかという日本語ではないと私は解釈をいたしております。
  466. 寺前巖

    寺前委員 それでは外務大臣は、日本共産党が日中友好関係に障害を与えるということは、それはさっき言われたことについては取り消ししますね。
  467. 園田直

    園田国務大臣 速記録を御点検を願います。私は、日本共産党が障害を与えるとは一言も言っておりません。
  468. 寺前巖

    寺前委員 それでは、障害になるような行動をやめてもらいたいとおっしゃったでしょう。これは事実でしょう。
  469. 園田直

    園田国務大臣 それは事実でございます。
  470. 寺前巖

    寺前委員 障害を与える行動がない党に対して、現に何もないのに、やめてもらいたいというのは一体どういうことですか。何かあるからやめてもらいたいと言うのと違うのですか。
  471. 園田直

    園田国務大臣 私は、そういう意味日本語は使いません。私は、将来に対する希望が、過去の事実を言い出すものではない、こういう考え方でありまして、干渉という言葉は使っておらぬと思いますけれども、やはりいま日本共産党と中国共産党の中で意見が相通じていないことは、これは事実であります。そこで、しかし意見の相違があることは、これはもう構わぬと私は思いますが、そういう話し合いを気持ちよくやっていただきたい、こういうふうに訂正をいたします。
  472. 寺前巖

    寺前委員 日本共産党がどういう処置をとるかという問題は、政府からとやかく干渉を受ける筋合いのものではございません。私どもは、初めてから言いましたとおり、真に日本中国の友好関係を確立するために、戦争のときからも戦後の事態も一貫してやってきた党であります。それは自負をしております。それだけに、私どもは真剣に考えればこそ言いたいことをきっちり言っておかなければだめだ、そういうふうな態度を日本政府自身もとらなかったら、真の友好関係はできないよということで、私は強くこのことを問題にしてきたのであります。正しいものは正しいものとして評価もいたします。いま外務大臣がずっと話をしてきたならば、最後じゃ希望的な話であったと、こういうふうにだんだん話はずっと薄らいできました。  私は率直に日本共産党が、いまも言ったとおりです。それは日本共産党と中国共産党の問題ではないんだ。日本の国民全体が干渉を受けるというようなことに対しては毅然たる態度をとって、考え方が違ってもお互いの友好関係は確立することができるんだ、その基礎は平和五原則を大切にすることなんだ、干渉しなさんな、それは共産党と共産党との関係の問題ではなくして、日本国中国との関係の友好のために必要なんだという立場で言っているのであって、中国共産党を批判するために、ここでこの場を使ってやっているとか、そういう宣伝とか、そんなものとは関係ありません。本当に日本政府が平和五原則をしっかり守りなさいよ、侵しているという事実に対してしっかりしなさいよ、これがなかったならば真の友好関係は確立しないよということを、私はるる指摘をしてきたのであります。素直に外務大臣は受け取っていただきたい。
  473. 園田直

    園田国務大臣 ただいま言われたことは、質問の冒頭に言われたことと同じ趣旨でありまして、外務大臣は一言も反論はいたしておりません。  なお、私がお願いするということが干渉であると言うならば、これは誤解を解いてもらいたいと思いますが、私は、お願いはお願いであり、その願いは聞けないとかあるいは聞くとかこういうことであって、お願いすることを干渉とおっしゃるならば、これは自覚症状が強過ぎるのじゃないか。
  474. 寺前巖

    寺前委員 何だって、もう一回言って。
  475. 園田直

    園田国務大臣 お願いしたことを干渉だとおっしゃるならば、干渉ということに対する自覚症状が敏感過ぎるのじゃないか。私はあくまでお願いしたわけでありますから、日本共産党にこうしてということじゃありません。言葉は違いますが、あなたのおっしゃることと私の言っていることはそう変わっていないと思うわけでありまして……。
  476. 寺前巖

    寺前委員 時間が参りましたので、私はこれ以上もう論をやりません。やりませんけれども、節度を持って物事というのは処理されるように、私は、もう一度議事録を見直されて処理をしていただきたい、そういうふうに思います。  改めて申し上げますけれども、平和五原則で両国関係を確立をしていく。そのためには、侵された問題に対しては、率直に毅然として対処をするということを政府としておとりになることが重要だということを重ねて申し上げておきます。
  477. 園田直

    園田国務大臣 友好条約締結された今後も、内政干渉あるいは正しいからざることがあれば毅然としてこれに対処しよう、こうおっしゃることは私もそのように考えております。
  478. 寺前巖

    寺前委員 時間が来ましたのでやめます。
  479. 永田亮一

  480. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 昨日も申したとおり、日中間にはしばらく不幸な時代がありました。しかし、本来日本中国は一衣帯水の間であり、過去長い伝統的な友好の歴史を持った隣国であります。この中国平和友好条約締結することは、両国の子子孫々にわたる友好に向けての新しい時代に入るとともに、今後の日本外交の新しい幕明けであると思うのであります。そのためにもわれわれは、日中以後の外交を重視をするわけでありますけれども、まず日中平和友好条約締結の対中国との関係であります。日中平和友好条約締結を契機といたしまして、今後の日本経済に、今後の日中経済関係に大きなはずみがつくであろうと私は思いますし、経済交流あるいは経済協力を通じて日中両国のパイプを太くしていく必要性は恐らく政府も感じていられるところだろうと思うわけであります。  日中間には、民間協定でありますけれども、本年の二月に、八年間に貿易総額二百億ドルという長期貿易取り決めが結ばれたのを初め、プラント輸出の商談や石油あるいは石炭等の貿易開発への協力交渉など飛躍的に増大をしているところであります。しかし従来の日中経済関係は、国交正常化以前からいずれも政治的に先行してきた、つまり民間ベースで進められてきたと私は思うわけでありますけれども、日中平和友好条約締結をされて、政治的な基盤が確立をされた時点では、今後政府間による経済協力を推進するために、として具体的な協力案件を恐らく検討をしていられる、こう思うわけでありますが、いかがでしょうか、通産大臣お見えですからお尋ねをいたします。
  481. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 今度条約締結されましたのを機会に、従来の両国間の経済関係をさらに飛躍的に拡大をしようという、こういう動きが出ておりまして、いまその方向に向かっていろいろ話し合いが続けられておりますが、まず先ほどお述べになりました八年間の貿易の枠二百億ドルというこの数字、八年間でありますから大した数字ではありませんので、これを拡大しよう、それを基礎としていろいろな具体的な話を進めていこう、これが一番の基本だと思います。  それから、両国の貿易の枠を拡大をするためには、石油の取引量が拡大をしなければ進みませんので、石油の取引をどのように拡大をするかということが非常に大きな課題になっております。石炭もございますけれども、石炭は石油ほど大きな数字にはならぬと思います。もっともこれらの協力を円滑に進めていきますためには、その背景として金融問題とかあるいはココムの問題とか技術協力とか、こういう幾つかの問題を解決していかなければなりませんが、そういう諸問題を並行して解決をしながら、両国間の貿易並びに経済協力の枠を拡大していこうというのがいまの取り組み方でございます。
  482. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 中国の探鉱開発に国際協力事業団を活用して、官民一体の経済協力体制の方法を用いる、こういう報道がされているわけでありますが、この件について中国側と交渉をしていられるのか、また、中国側はどのような態度をとっていられるのか、お尋ねを申し上げます。
  483. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 この問題は日本政府から持ち出したことはございませんが、先般、民間の経済代表が訪中をいたしましたときに、中国政府との間にいまお話しの経済協力基金の問題が出たようであります。先方はこの仕組みが十分わかりませんので、この仕組みを研究してみたいので何か資料が欲しい、こういうことで民間代表からは資料を手渡したそうでございますが、現在の段階はその程度でございまして、それ以上には進んでおりません。
  484. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 条約調印をされた後、九月に河本通産大臣が訪中をされました。経済問題について閣僚会談を通じて貿易政策や実務上の話し合いが行われております。報道によりますと、日中長期貿易取り決めの五年間の延長と貿易枠の拡大、石油、石炭、電力、アルミニウムなど、資源エネルギーでの日中共同開発の推進などについて中国側と合意をされたようでありますけれども、河本通産大臣の訪中で日中間で具体化したものをお聞きしたいと思います。
  485. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 私が先月訪中をいたしましたのは、この条約で経済関係の発展を図る、こうなっておりますので、総理の指示を受けましてこの問題について話し合うために行ったのでございます。  先ほども申し上げましたように、何と申しましても貿易の枠そのものが拡大をいたしませんと前進をいたしませんので、ことしの二月に長期取り決めが、民間の経済団体を窓口といたしまして締結をされましたが、この長期取り決めの枠を拡大することを話し合いましたが、どのように拡大するかにつきましては、民間の専門家に積極的にこれに取り組んでもらおうということで、先般、日中経済協会の稲山会長が訪中をされましていろいろ話し合われたわけでございます。やろうということは決まりましたが、まだ具体的には何倍になるか、そこまでは詰まっておりません。来年早々二、三月ごろに先方から代表が来られまして、さらに第二回の会談が行われる、こういう予定になっておるようでございます。  日本政府考え方といたしましては、これまでも、この二月にできました貿易取り決めを円滑にこれが進みますようにできるだけ支援をしていこうということと、将来拡大するようにこれまた支援をしていこう、こういう基本姿勢でございますから、具体的な数字がまとまりますと、それがスムーズに進みますようにいろいろ政府の方も援助をしていくつもりでございます。  なお、これと並行いたしまして、いま御質問がございました石油開発、それから石炭開発一それから電力開発、非鉄金属の開発、こういう幾つかの経済協力案件について話が出ましたが、いずれもこれらのものにつきましては日本側から専門家のミッションを送りまして、いま先方と話し合っておるところでございます。
  486. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 河本通産大臣が訪中前に、中国との貿易拡大に伴って日本中国の原油を大量に受け入れる能力があって、六十年には五千万トンに輸入量を拡大したい、こう表明をされました。それに基づいて今回の貿易枠の拡大を約束されてきたと思うわけでありますけれども、これに対して石油連盟の石田会長は、中国原油の重油質にコスト高を理由に、輸入拡大反対を実は公式に表明をいたしております。石田会長の公式的なこの発言を、大臣はどのように受けとめられていらっしゃるでしょう。
  487. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま中国との石油取引の枠は、ことしから昭和五十七年までの五カ年が数字が決まっております。ことし日本が引き取ります量は約七百万トンでありますが、五年後には千五百万トンになっております。これは原油設備を中心に考えておりますので、数字が比較的少ないのでありますが、私が参りまして話し合いましたことは、昭和五十八年以降、つまり六年目以降は、日本は相当大幅にこの千五百万トンという数字が増量されても引き取る用意があるということを私から申し述べ、先方も千五百万トンを大幅に超えて供給する用意があるという話が出まして、基本的には増量について合意をいたしましたが、さてそれでは五十八年以降の数字をどのようにするか、これは双方の専門家の間で具体的な数字を話し合ってもらおう、こういうことになっております。  ところが一方で、石油業界の対応が必ずしも前向きではないではないかというお話でございますが、現在までのところは確かにそういう傾向があるのです。なぜかといいますと、重質油であるということ、必ずしも値段が日本側の期待するような価格ではない、この二つの理由からでありますが、しかしながら、いま世界の石油の大勢は重質油が非常にふえるという傾向に進んでおります。いまは世界全体が不況でありますから、石油の需給関係は非常に緩んでおりまして買い手市場になっておりますけれども、こういう情勢はそんなに長く続くはずはありません。でありますからこそ、アメリカなども昨年から大規模な国家備蓄を始めておるわけでありますが、だから現在のような情勢はそう続かない。しかも世界は重質油の傾向になりつつあるということでございますから、油の一つもない日本が余りわがままをいつまでも言っても、それは通るものではありませんので、やはりわが国といたしましては、重質油に対応するような諸準備が必要かと考えております。  業界も、政府がそのような準備を進めるということでありますと、必ずしも反対するというわけではありませんで、何もやらぬで買えと言いましてもこれは困ると思うのですけれども、それではどういう準備を進めておるかといいますと、まず日本では重質油についての知識がきわめて不十分なのです。そこで、重質油の専門家を集めまして、まず重質油懇談会というものをつくりました。これを中心にいろいろ研究をしていただいておりまして、その研究の内容は、一つは重質油を分解精製する技術の開発であります。それから重質油からのいろいろな副製品がございますが、それらの需要の開拓、この二つが一番大きな課題になるわけであります。この二つの問題を中心にいたしまして、政府の方はいま積極的に準備をしております。  いま、アメリカとヨーロッパへも技術の調査団を派遣いたす準備をいたしておりますし、万般の対応を進めておりまして、これは政府も民間も協力して重質油に対応できるような用意が必要だ、こう思っております。そういう用意を進める過程におきまして、民間の皆さんも十分理解をしていただけるものだと確信をいたしております。
  488. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 重ねてお尋ねしたいのですが、どうも石田会長の御発言等を見ておりますと、関係の業界と十分な詰めができていずに、中国と具体的な約束をしてきたということも懸念をされるわけでありますが、今後具体的に中国の原油の輸入についてどういう方向で進まれるのか、重ねてお尋ねをいたします。
  489. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 先ほども申し上げましたように、六年目以降の数字につきましては、私の方からは具体的には何も言っておりません。私自身としては、具体的な数字は頭に描いておりまして、国内ではいろいろな数字を言ったことはございますが、両国間の正式の交渉の場において具体的な数字を言ったことはございません。これは専門家に詰めてもらおう、こういうことにしておるわけでございます。  それからもう一つ申し上げたいことは、ことしはわが国の石油の消費量は二億九千万トンでありますが、総合エネルギー調査会の中間答申によりますと、昭和六十年には一〇%以上の節約をいたしましても、なお四億三千万トンの石油の消費が見込まれております。需要が必要になっております。そういうことでありますから、ことしよりも一億四千万トンも需要がふえるわけです。その場合に、先ほども申し上げましたように、日本は軽質油しか買いませんよ、重質油はいやです。そういうことを言っても通用するものではありませんので、世界全体が重質油の傾向になりつつあるわけでありますから、これからのふえます一億四千万トンにつきましては、一部はどうしても重質油を買わなければなりません。一部は軽質油が買えると思いますけれども。だから、いまの石油の需給関係が非常に緩んだこの状態で、勝手気ままなことをいつまでも言えるものではない。長期的にはエネルギーの安定供給ということが、わが国の総合的な安全保障という面から非常に大事でありますから、やはりいろいろな角度からこの問題は考えていかなければならぬと思います。また、それだけ政府の方も積極的に対応できるように、いろいろ援助もしなければいかぬと思います。  そういうことを十分話し合いながら、この問題は私は必ず解決できる、また解決しなければならぬ課題だと思っております。
  490. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 中国は、四つの現代化に国家の運命をかけ、対外貿易の拡大に最近とみに積極的に臨んでいるわけでありますけれども、中国はここ二、三年のうちに百億ドルものプラント輸入をする、こう言われているわけでありますが、この中国からの原油の輸入が、政府の意図するほど拡大ができないということになりますと、日中間の貿易のアンバランスが当然予想されるわけであります。中国側の支払い能力への不安を含めて、貿易の摩擦の可能性ということも心配をされるわけでありますけれども、こうした問題については政府の方針はいかがでしょう。
  491. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 貿易の問題は、日本立場は、グローバルな形でバランスがとれればよろしいというのが基本的な姿勢でありまして、二国間では必ずしも完全な均衡がとれなくてもいいという考え方でありますけれども、不均衡は非常に大きな数字になって、しかもそれが長続きするということになりますと、どうしても両国間の関係はうまくいきませんので、できるだけ均衡を図っていくという努力が必要だと思います。  そういう場合に、やはり中国との関係は、一番の決め手は、石油取引の拡大ということが一番の問題点だと私は考えております。先方にはどんどんいろいろな品物を売り込んでいく、先方から買うものはいろいろな条件を言って買わない、こういうことでは私はよくない、こう思います。でありますから、先ほども申し上げましたように、工夫をすれば必ず道は開けると思いまして、技術開発とそれから副製品の需要の拡大、この二つの面でいまいろいろ取り組んでおりますし、来年度の予算にも、それに対応するための予算要求も出しておりまして、何とか解決をしなければならぬと考えております。
  492. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 通産大臣への質問を終わりますので、どうぞ……。  次に、留学生の問題でお尋ねしたいのでありますが、中国からの教育使節団と、文部、外務、法務、労働四省の留学生問題についての話し合いが七日に外務省で行われましたけれども、中国の申し出に不明の点もあり、十三日に再度話し合うことになったということであります。七日に外務省で行われた話し合いで中国からどのような要望が出されたか、また、どのような点が不明なのかをまず御説明をいただきたいと思います。
  493. 大鷹正

    ○大鷹説明員 おっしゃいましたとおり、中国の教育使節団との話し合いは、七日と十三日とやりました。七日の会議で実は時間が足りなくなったもので、十三日、それに続いてやったわけでございます。  この七日の会議におきましては、中国側から、これは先般北京及び東京においてもそういう話が出たのでございますけれども、中国の近代化に役立つ人材養成のため、理工系を中心とした留学生を派遣したい、その点について日本政府の協力を得たい、そういう話がありました。中国側としては、とりあえずは大学院レベル以上の進修生、それから研究生を派遣したい、それから、学部留学生につきましては、中国での予備教育を終えた後に派遣したい、こういう話をしました。わが国といたしましては、中国との留学生交流は両国間の相互理解を深め友好関係を増進するという見地から、受け入れ大学の協力を得て、中国留学生の受け入れが可能となるようできる限りの努力をしたいと考えておりますし、中国側にもそういうふうに話をしました。  本邦大学への受け入れに当たりましては、留学生の専攻科目、具体的な研究の希望内容等詳細な情報を必要といたしておりますし、中国での予備教育の実施等についても準備が必要ですので、今後引き続き日中間の協議を行って詰めを行っていきたい、こういうふうに思っております。
  494. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 理工系学生の留学生を中国側は年内にも実現を希望しているようでありますけれども、専攻科別の人員及びわが国の受け入れ体制がすでに十分できているかどうか。また、中国は大学学部留学生について予備教育を行ってから送り出す考えでありますけれども、そのための日本語あるいは数学、理科の教師の派遣を要請してきているということであります。わが方でこれに対応できるかどうか、まず、その点どうお考えになっているか。  続けてもう一点御質問いたします。  日中友好協会で毎年中国へ留学生を派遣しております。ことしも九月の下旬に十二人送り出しました。これら日本人留学生は毎月、現地の中国のお金で百元、日本のお金で一万一千円ぐらいと思いますけれども、奨学金を支給されております。中国人の労働者の賃金が平均六十元というように聞いておりますので、かなり待遇はいいということになるわけでありますが、政府中国からの留学生に対してどのような処遇をされるおつもりなのか。
  495. 大鷹正

    ○大鷹説明員 いま先生がおっしゃいましたように、確かに、学部以上の、すなわち進修生、研究生については、なるべく早いうちに、できれば年内にでも日本で受け入れてくれないかという話はございましたけれども、先ほど申し上げましたように、いろいろと準備が必要でございますので、これらの進修生、研究生についても、受け入れば来年の四月以降ということが適当ではないかということを日本側も話しまして、中国側の了解を得たというふうに考えております。  それから、学部留学生につきましては予備教育をした上でこちらに派遣するという中国側考え方でございまして、これに対しましては、日本側としては基本的に協力する方向で関係機関で検討を進めております。  おっしゃいましたように、中国側としては、派遣前に日本語だけではなくて数学、物理、理科等も勉強させて派遣したいという考えのようであります。  それから、最後の御質問でございますけれども、今度教育使節団が来まして話し合いました中国の留学生は、中国政府が派遣するいわば自費の留学生でございまして、したがって、日本政府がこれら留学生に対して奨学金を与えるというような問題は起こらないわけでございます。
  496. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 次に対ソ外交についてお尋ねをいたします。  もう本委員会でも繰り返されてまいりましたように、北方領土の返還ということは、今後の日ソ友好関係の上でもわが国にとっては欠かすことのできない問題でありますけれども、北方領土諸島はわが国民が父祖伝来の地として受け継いできたものでありますから、もちろん、いまだかつて一度も外国の領土となったことがないという意味からしても、これは紛れもないわが国の固有の領土であるというふうに私も思うわけであります。しかし、ソ連は解決済みだと言ってきているわけでありますけれども、現状は一向に解決の進展が見えない。既成事実のみが積み重ねられているわけでありますし、これに対して政府は単に、いろいろな審議を通して見ましても、粘り強く折衝を続けるということに終始をしているわけであります。  たまたまことしの夏、九月でありますけれども、本委員会同僚議員とともに私も北方領土の視察に行ってまいりました。現地の方々の要望は、領土返還あるいは二百海里問題等で大変な関心を持つと同時に、地方自治体に対しては、視察も重なっておりますし、負担も非常に重なっているということをひしひしと感じたわけであります。特に啓蒙宣伝活動には非常な力を入れておりまして、印刷物の発行であるとかあるいはテレビ放送、北方領土展の開催、これに要する経費も非常な多額なものを使っているというふうに、現地の皆さんの声の中に私たちも感じて帰ってきたわけであります。釧路、根室地方の戦後三十年の歴史はまさに北方領土問題だ、あるいは漁船の拿捕、二百海里問題、現地では大変な御苦労をされている。これを解決するためには北方領土問題解決以外にはない、私はこういうふうに思うわけであります。  懸案の日中平和友好条約締結をされました。しかし、残された外交課題は日ソ間の未解決の問題、すなわち北方領土という問題を今後どうするかということがますます重要な問題になってきたというふうに思います。  このような環境で、単に北方領土は粘り強く折衝をしていくというだけではもはや済まされないところに来ているのではないか。政府は四島一括返還の具体的な方法を論じなければならないときが来ていると私は思いますけれども、外務大臣の御所見を伺いたいと思います。
  497. 園田直

    園田国務大臣 北方四島は全国民の悲願であり、特に生活権のかかっておる地域の方々の心中は察するに余りあるものがございます。にもかかわらず、この運動を熱心に展開している方々に対しては胸が詰まるような思いがいたします。もちろんこの北方四島が日ソの間に横たわるただ一つの懸案事項でありますから、粘り強くやりたいという方針は一貫しておりますが、これに対して具体的にどのようにやるかは十分検討をし、ただいまの御意見も承っていきたいと考えております。
  498. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 粘り強く折衝をと言いながら、具体的な目標を示さないまま善隣友好条約はだめだ、こういう御主張を本委員会でもずいぶんされてきたわけでありますが、もちろん私どももこの善隣友好条約を見せていただいても、問題はある。国民はこの条約自身を見られれば、いろいろな問題があると当然お考えになると思うわけでありますけれども、しかし、ソ連が提案をしてきたこうした善隣友好条約について拒否をするというだけでは問題の解決にならないと思うわけであります。日中後、日ソがきわめて大事だということはもう御議論の中にあったわけでありますけれども、今後具体的に日ソ関係は、何らかの形でこの膠着状態を脱していかなければいけないというふうに思うわけでありますが、重ねて外務大臣の御所見を伺います。
  499. 園田直

    園田国務大臣 日ソの間では、未解決の問題以外は共通する問題が非常に多いわけであります。そういう問題等も回を重ね、話し合いを重ねてやっていくうちに、何らかの変化、解答を一応探したいと苦心をしているところでありますが、私はニューヨークで会ったときに、友好条約は拒否する、こう言っておりません。まず未解決の問題を含む平和条約の解決が先であって、その次に友好条約という順番がある。必ずしもこれを拒否するものではない。ただし、いま出されておる善隣友好条約の内容そのものには同意はしかねる、こういう返事をしておるところでございます。
  500. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 善隣友好条約を足がかりにして、硬直した現状を模索してみる必要があるのではないかというふうに私どもは思うわけでありますけれども、改めてまたこの議論についてはお伺いをさせていただきたいと思います。  最後に、私は外務省の機構について一点だけお尋ねしたいのであります。  わが国外交は、総理の言われる全方位平和外交ということでありますけれども、どこの国々とも相互信頼関係を築いていこうということであろうと思います。私が国会に初めて出させていただいて、外務省の予算説明を初めていただいたときから、私は大変不思議だと思ってきたことでありますけれども、特に私も海外に五年ほど生活をしておりまして、実は中南米地域というものが非常に重要な地域だと思ってまいりました。ところが、外務省の機構では、中南米地域の局というものがないわけであります。中南米地域は、御承知のとおり、銅、鉄あるいは鉱物資源、穀物、食肉等の食糧資源に恵まれておりますし、わが国にとって資源の供給先としても今後きわめて重要な地域であろうと思います。まして、二十七カ国を擁する中南米地域は、今後国際社会における比重はきわめて高くなるのではないかというふうに私は想像いたすのであります。  さらに、九十万に及ぶ日系人社会が存在をし、存在をするだけでなしに非常に現地では活躍されております。本年、皇太子、同妃両殿下のブラジルあるいはパラグアイ御訪問、近々メキシコ大統領の来日等、友好関係はますます緊密度を増しているわけであります。こうした状況を考えますと、このような地域をアメリカ局の一部として事務処理をするということはどうかというふうに思うわけであります。もちろん行政改革等の必要性は私も考えないではないわけでありますけれども、きわめて今後わが国にとって大事な、こうした地域に対する外務省の内部における局の問題は、十分検討に値するのではないか。聞くところによりますと、中南米局の設置要求については、五十三年度は設置を見送るということでありますけれども、来年度には設置可能であるかどうか、外相の御所見をお伺いしたいと思います。
  501. 園田直

    園田国務大臣 私は先般、参議院の予算委員会だと思いますが、申し上げましたが、外務省自体は戦争中は閉店休業の状態にございました。その後終戦連絡事務局みたいなかっこうになって、逐次機構を拡大して国際情勢に即応する体制をとらなければならぬ時期に、一般官庁と同じような制約を年々受けているわけでございまして、行政改革は確かに必要でありますけれども、これを一律にやらずに、うんと減らすものと、必要なものはふやすものと、こういう配慮があってしかるべきだと考えておりますが、すでに外に出ております在外公館の数、館員の数等も主要国の最下位にあるわけであります。特にいまの中南米局はどうしてもつくらなければならぬと考えておりますので、明年度の予算の最重点事項に入れて実現を期しておるわけであります。今後とも御協力をお願いいたします。
  502. 伊藤公介

    伊藤(公)委員 質問を終わります。
  503. 永田亮一

  504. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 先ほどの伊藤委員質問と関連しますから、冒頭に通産大臣にお伺いしておきます。  先ほどの御答弁の中で、今後の日中貿易の展開上いろいろと乗り越えなければならない問題がある。そのうちの一つにココムを挙げておられました。今後の日中貿易において、このココムの取り扱いはどのような方向で解決をされようとしておるのか、お伺いいたします。
  505. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 日本といたしましては、ココムの条件をできるだけ緩和させる、そういう方向で努力するつもりでございます。
  506. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 御承知のとおり、近い将来にフランスの対戦車ミサイル、あるいは英国の垂直離着戦闘機を中国が輸入する、そういう展望のある中で、アメリカの方はこれを支持する、そういう形の中でこのココムの撤廃の方向を見ておるということが言われております。それで、武器輸出はもちろんやるべきではありませんけれども、軍事物資以外は当然緩和というよりも撤廃の方向に向かうべきではないか、再度お考えをお伺いします。
  507. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 最近はずいぶん対象品目も減っております。そして特に国際情勢の変化、それから科学技術の進歩、こういう条件を十分考慮して条件を緩和する、こういうことになっておりますので、いま日本が一番大きな課題として取り上げておりますのは、上海の宝山製鉄所、これは新日鉄がつくろうとしておるものでございますが、これを中心に、ほかに二、三ございますけれども、全部条件を外すようにいま極力交渉しておるところであります。
  508. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 さらに中国原油の輸入問題が今後の日本の安全保障上非常に重大であるという認識は、私はまことに同感であります。私がきのう農林省試案の、食糧が全面ストップしたときの国民生活に与える影響を披露しましたのは、今度の臨時国会の論議のやりとりを聞いておって、この有事問題で一番欠落しておったのは、有事というのは専守防衛をとっている以上戦場は日本の本土内ですよ。そのときに自衛隊が対応する、そのことよりもむしろ一体国民はどうなっておるのか、国民の生活はどうなっておるかの方が国民にとっては関心が深いわけです。私は福田総理の演説の仕方、答弁の仕方を聞いておっても、自衛隊は有事に対してあるものだから自衛隊が有事のいろいろな法制あるいは対応する準備をする、あるいは研究するのはあたりまえだ、どうも何か自衛隊だけがそのとき戦えばいいのだというような感覚ですね。これは総理大臣としてはまことに重要問題が欠落しておる。私はそれを指摘したかったためにきのう出したわけです。  それともう一つは、有事になったときに自衛隊が対応する際は、法制的にも憲法を超えるものが当然出てくる。ところがこれは自衛隊だけの法制の問題じゃないのですよ。きのうも言ったとおり、もし食糧がストップしたら代替のものをいろいろつくらなければならぬ。そのためには超憲法的な対応を考えざるを得ない。自衛隊だけじゃないのですよ。各省庁にわたってそれは言えることなんだ。それを自衛隊だけねらってというか中心になっている。ここに大きな論議の盲点がある、私はそのように思うわけです。  それで、さらに石油問題も含めてやりますからひとつ通産大臣も、私の時間は少ないですからちょっと聞いておっていただきたい。  ここに海上幕僚監部防衛部防衛課分析班が出した研究がある。防備研修所の資料だったら、あなた方はすぐ個人的な資料と言いますけれども、これは最初確認しておきますけれども、昭和四十八年六月二十一日の内閣委員会で、私の質問に対して当時の久保さんがこう答弁しております。私は防衛研修所の資料を出してやったところが、こういう答弁でしたよ。「防衛研修の場合には、それぞれがいろいろな担当を持ちまして個人的に勉強しておるということで、それがわが内局の行政のほうに直ちに反映するといったものではございません。」ただし「実務といたしましては、」「統幕の一部、あるいは内局で申せば官房の法制調査官の手元であります。したがって、行政事務レベルで検討するという場合には統幕、及びいま申し上げた法制調査官のところであります」だから、まさにこれは海幕がやっておるのだから、行政レベルで権威づけられたものになっている。これは当然そうだろうと思うのですね。研修所の資料ではない。私はこれは非難しているのじゃないのですよ。後で言いますけれども、もし海上自衛隊で何か守ろうとすれば当然この種のことはあなた方の立場からすれば検討しておくことが国民に対する責任でもありましょう。  それで、海幕OEG報第五〇-一号、標題は「国民生活に基づく所要輸入量に関する研究」昭和五十年九月一日、本文は百十二ページから成っている。この中でどういうものが主要な輸入物資であるかという選定をしておる。いろいろ言っておる中で、結局は石油と鉄鉱石と食糧だ。この三つを主要な輸入資源に挙げておる。四十七、八年の統計でいけば、この三つだけでわが国の総輸入量の四分の三、総輸出金額の約四〇%を占めておる。しかも輸入量は、原油が二億五千百六十六万トン、鉄鉱石が一億三千四百七十二万トン、大豆、小麦が八十三万九千トン、原油が九九・七%輸入している、鉄鉱石が九九・五%、大豆、小麦が九三・三%、これはほとんど輸入ですね。これが何らかの都合でストップしたときには一体どうなるのか、国民生活にどういう影響を与えるかという研究であります。  そこで、「研究成果の概要」としましては、まず、原油と鉄鉱石を挙げまして、  一体、わが国民がパニックに陥ることなく生き延びて行くためには、どのような物資を最低限いくら輸入する必要があろうか。海上輸送が万一何かによって制約をうけたり、止ったりした場合は、我国の国民生活は、どのような影響をうけるであろうか。このような場合、一億一千万人に達する国民の生活を維持するためには、どのような物資を、どれだけ確保すべきであろうか。まだそのために確保しなければならない船舶のトン数はいくらであろうか。 こういうことですね。  それで、このときの国民生活に支障のないように、最低どのくらい輸入すればいいかというときの国民の最低生活の保障水準に要する輸入量、その基準は、四十八年から四十九年度の最低生活保護基準に置いているわけです。  紹介をしておきますと、四十九年十月の、これは四十九年度予算の補正後でありますけれども、大都市及びその周辺地域を基準にした四人世帯、標準世帯ですね、この生活保護費、これは八万円です。このときの住宅扶助は五千五百円、いま四人家族で五千五百円の家賃、どこにありますか。まさにこれは最も考えられぬほどの少ない生活費を基準にして、そしてそれに必要な物資を輸入する際にはどれだけ要るかという最低のものですね。もう最低の最低です。  それで、これは結論だけ言いますと、原油と鉄鉱石の場合は、こういう「まとめ」になっています。  国の安全保障上最も重要なものである国民の生活基盤を維持し、その不安を生ぜしめないために、いかなる場合でも絶えることなく確保すべき最小限の輸入量として、対象年にもよるが、一億七千万トン(原油)、一億九千万トン(鉄鉱石)である。 これは総額ですね。それで、  その内訳は原油が七千六百万トン-八千四百万トン、鉄鉱石三千四百万トン-三千九百万トン、その他食料品等が六千万トン-七千万トンである。これに要する船舶量としては、タンカー十二万トン-十五万トン(仮定)で月当り四十隻-五十隻、貨物船二万五千トン-三万トン(仮定)で二百六十隻-三百隻の計、三百隻-三百五十隻である。この検討では国民の生活基準として、昭和四十八年-四十九年の最低生活保護基準を基礎として、輸入物資から得られる各種製品は、全国民に適正に配分されることを前提としている。 どうせ統制になっていますから、それが前提になっている。そして、  物資の代替性は考慮していないが、「有事の最小限の所要輸入量として十分意味のあるもの」と思われる。 これが原油、鉄鉱石の研究の「まとめ」です。  次に、今度は食糧の方です。これは五十一年九月一日付になっていますね。同じく海上幕僚監部防衛部防衛課分析班。それでこの食料編については「研究成果の概要」として、   食料については高度成長時代以降、その経済性から米を除いては小麦、雑穀、大豆等の国内自給率が急速に低下している。又日本国民の重要な蛋白源である魚介類も、経済水域二百海里の問題があり、その生産が懸念されつつある。   このような状況において、海外への依存を急速に高めている食料の供給に万一制約が加えられるような事態が発生したとき、我々が国民の生存のために確保せねばならない食料とは一体何であり、そしてどれだけの食料を確保せねばならないのであろうか。   本研究においてはこれを踏まえて、食料輸入が削減された場合における国民生活に及ぼす影響を明らかにするとともに、約一億一千万国民の生活を確保するために必要な最低限の食料輸入量を求めるものである。 そのための船がどれだけ要るか、こういうことになっているのですね。  それで、たとえば一〇%削減された場合、三〇%削減された場合、五〇%削減された場合、全然来なくなったとき、そのように段階に分けてずっと分析されております。時間がありませんから結論を言いますと、輸入食糧、これは食糧のみですね。  輸入食料が三〇%削減までの範囲であれば、昭和三十年当時の栄養水準はおおむね確保できる。   食料のみが半分削減された場合には、四十七年度の栄養水準の約八割となり、みそ汁は毎食一杯飲んでいたものが半分となる。   食料のみが一〇〇%削減された場合は、国民平均一人一日当りの栄養をみると、熱量においては昭和四十七年度実績に比し三八%減である千五百四十五カロリー、蛋白質、脂肪においては同比四二%減の四十五・二グラム及び三十三グラムとなり、敗戦間もない昭和二十三-二十四年度の栄養水準さえも大きく割りこみ、特に熱量においては昭和二十一年度の栄養水準近くまで低下してしまい、飢餓の状況を呈することになる。   この場合の食生活は、みそ汁は一日半杯、パン食は小麦が全然入らず、パン抜きとなろう。野菜とコロッケは現在と同量期待できるが、肉は飼料が不足して、ほんの小指程の十三グラムしか食卓に上らない。蛋白質の魚だけは必死に確保されているだろうが、醤油、砂糖の調味料の激減に伴い、味もそっけもない食事となりそうである。 しかし、有事の場合、食糧だけが輸入を削減されるとは考えられないわけです。他の資源も当然削減される。そこで、   いま、原油と輸入食料とが昭和四十七年度実績の五〇%づつ同時に削減され、さらに遠洋漁業が全面的に停止せざるを得ないような場合の食卓に与える影響を献立で考えると、国民平均一人一日当りの栄養状況は、熱量において千百九十九カロリー、蛋白質三十三グラム、脂肪二十五グラムとなり、昭和二十一年よりもさらに低い深刻な厳しい状態になる。  この場合の食生活は(一人一日の食事)ごはんは一日一杯半(〇・九合)、みそ十グラム、みそ汁は一日半杯、パン四十グラム、野菜とコロッケ、肉は現在の半分、醤油十六グラム、卵は一個の三分の一、魚は現在の五分の一の二十一グラム。 最後に、   「これらの状況は我国に絶えて無かった栄養失調者が国中に溢れ、本土が飢餓列島と化することを彷彿とさせるものである。」  今度は、国民の体位にはどういうふうに影響するかというと、十一歳の男児で見てみますと、「原油と輸入食料が五〇%削減、さらに遠洋漁業が全面停止した場合、蛋白供給量が三十三・三グラムとなり、男子十一歳の身長は百二十九・五センチ相当水準となり、四十七年度より一一・六センチも低く、体位的にも敗戦直後よりはるかに厳しい状態であることを示すものである。」こういう結論になっているわけですね。  そこで、これからさっき言ったような基準を求めなければいかぬ。その基準は昭和五十年三月、厚生大臣に対して「日本人の栄養所要量等について」という栄養審議会の答申が行われておりますので、それを使う。これも非常に低い水準です。そうすると、結局は二年後の昭和五十五年を想定してやった場合に、所要の輸入量は二千二百万トンから二千七百万トン、船は一カ月について六十一隻から九十隻、こういう数字が出ているわけですね。  そして、一番最後の「あとがき」ですね。   本研究の対象としたような事態が生起しないことを切に望むものである。しかし万一の場合に備え、行政官庁、諸研究機関等において予めこの種の研究をしておく必要があり、そして行政立案の参考のためにもその成果の交流が望まれよう。   本研究がこの種の研究の端緒となり、「有事日本における一億総飢餓からの脱出」がさらに広く真剣に検討されることを期待する。 これはまじめな研究だと思いますよ。だから、有事になったら自衛隊がどう戦うよりも、有事になったら国民の生活はこのようになるのですよと、どうして総理大臣説明しないのです。秘密がばれたらなんだから、処罰が少ないから何とかする、そんな次元の問題じゃないのですよ、私が言いたいのは。これを守れますか、この輸送路。いまベルンや湾の石油、これは四十日かかる。食糧をアメリカから持ってくる、二カ月かかる。これを往復三十日と仮定して、そうしたら三百五十隻というのが海上に毎日浮いている。潜水艦、飛行機で守れますか、ちょっと御答弁をお願いします。
  509. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ただいま先生のおっしゃいました研究というのは、いろいろな公刊されました資料に基づいて研究をしたものでございます。その三百五十隻ないし四百隻というものを常時護衛する能力というものはないわけでございます。
  510. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうでしょう。アメリカ海軍も守れないということを、一九七三年一月二十二日、アメリカ上院の国内・島嶼委員会で当時のズムワルト米海軍作戦部長が証言をしております。アメリカ海軍も守れません。自衛隊の方も守れないという答弁を私に過去やりました。  あるいはまた、何ぼでも証拠があります。四十八年五月二十九日と三十日に第八回の日米安保事務レベル会議が行われて、日本側から外務省、防衛庁が相談をして説明資料として出したものがある。マル秘になっている。この中にもオイルロードは知れないと書いてある。自衛隊はこの輸送路がいま言うとおり守れない。自衛隊は何を守るのですか、私はそれを言いたいのです。結局は、軍備では国民の生活を守れませんよ。自衛隊はどこを守るか知らないけれども。国民の生活はいま言ったような状態になる。だから物の発想が、有事になったら日本本土の決戦だから、有事になったらどうするかじゃもう遅いのです。そういう事態が起こらないようにすることがいままさに問われておる。だから、日中貿易における石油の問題はそういう意味でも非常に重大なんです。そのほかの大事な問題もありましょう。石炭の問題もありましょう、エネルギー源。そういう意味で、日中貿易が日本の安全保障上に非常に重要な地位を占めるということで私は一生懸命やってもらいたい、こういうふうに思うわけです。  そこで、日中条約後、安保条約について外務省と防衛庁は完全に一致していますか。日中条約後の安保体制でもいいでしょう、認識が一致しているでしょうか。
  511. 園田直

    園田国務大臣 日本の防衛について外務省と防衛庁はいろいろ意見の交換をしておりますから大きな食い違いはないとは存じますが、ただ防衛庁と外務省は防衛についての立場と責任が違うわけであります。外務大臣から言えば、先ほど言われたとおりに、日本の農村に行っては牛馬が少ない、耕運機で農業をやっている、小さい漁村に行っても発動機であります。そこで、どこかに紛争が起これば農業、漁業を初め一切日本の経済活動というものは停止をする、そういうことでありますが、問題は外務省としては、安保体制と日本の防衛とのつながりが外務省の持ち前だと考えております。  したがって、いま一番先に論議しなければならぬことは、私は有事の体制よりも、日本の防衛という基本的問題について論争すべきだと考えるわけでありまして、それは日本の安全保障、いわゆるこれに基づく安保条約日本の提携の仕方が、戦いをするものであっては断じて日本の生きる道はない。均衡維持によって平和を何とか守っていくということ以外には日本の生きる道はない。現に米ソの戦争があった場合には、もう何も理屈なしに考えられません。そういうことでありますから、日本は、わが外務省としては、安保条約の方向あるいはこれとの協議会等において、十分国際情勢に留意をして油断をしてはならぬ、こういう考え方であります。  なお、いまの有事の体制の研究については、これは国内の防衛庁の担当でありますから反対はいたしませんけれども、その基本点と、それからもう一つ憲法と、それからもう一つは、平和外交を訴えておる日本外交に隣国が不安を持たないように注意をしながら研究を進めていきたいと希望を持っているだけであります。
  512. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 外務省は、外交青書を見ましても、日米安保体制あるいは安保条約を今後とも基調としてやっていくのだということのようですが、防衛庁もそうですか。簡単に。
  513. 金丸信

    ○金丸国務大臣 ただいま外務大臣が申し上げましたようにそのとおりでありますが、私も自衛隊というものは有事がないようにするということをまず最初に考えなければならぬ、そしてあなたがおっしゃるように、日本の国民の永遠の存続ができるということを考えるということは、食糧という問題、全般の安全保障という問題、そういう問題も十分に研究しなければならぬ問題だと思っております。
  514. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ところで、きのうも出しましたけれども、この講義資料七三LO軍の三「軍事政策概論 一九七三年」。だから日中正常化後一年たっている。ましてやいまの時点では条約締結されたのですからよりそうなりましょうけれども、これでは現場の方はこうなっているのですね。「わが国の防衛政策を顧みるとき、米ソ冷戦構造を背景にした日米安保体制基調の時代は終わりを告げようとしておる」、こういう認識になっておる、防衛庁の方は。「終わりを告げよう」。では、これは一体どういう時代が始まろうとしているのか、防衛庁の立場説明してください。
  515. 伊藤圭一

    伊藤(圭)政府委員 ちょっといまの先生のお話正確につかんだかどうかわかりませんけれども、いわゆる東西の対立というものは終わりを告げているわけでございますけれども、日本の安全保障の面でいわゆる日本の防衛力と米国の軍事力、その日米安保体制というものはやはり日本の安全保障全体の中でも役立っているというふうに考えているわけでございます。
  516. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、安保条約なり安保体制の考え方、これが「終わりを告げようとしておる」。もし私の言う意味だったら理解できる。どういう意味かと言うと、いわゆるもう日中不戦条約ができた、脅威がそれだけ少なくなった。それでこの安保体制というものも、結局安保条約が軍事的な対応として有事に備えるものではなくして、安保条約が経済協力の面に重点を移していくとか、最初は経済協力と名前はなっているのだから。あるいは抑止力といいますか、そういうものに変わっていくのだ、使わない、戦争が起こらないように、これが基調になっておる。それならあなた方の立場に立ってわからないでもないのです。  恐らくあの中国が安保条約評価するという点も、これは安保条約を使ってくださいという意味でないと思うのです。やはり戦争が起こらないようにするための抑止力としての評価中国はしているのではなかろうかと私は思うのです。その点については中国側と議論したことはあります。私はその見解に反対でありまして、安保条約これはやはり危ない。日本関係のない戦争に巻き込まれる可能性があるという立場で私は反対ですけれども、そういう意味だったらわかる。あなた方の立場から言えばわかるのです。  そこで、この日米安保条約を中心にして、アメリカと日本は依然として共通の利害に立っている、そういう認識でいいですか。
  517. 園田直

    園田国務大臣 安保条約締結当時と、国際情勢は大いに変化してきておりまして、アメリカもやはり事を起こしたくないという希望においては一致していると存じます。
  518. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、日本とアメリカは共通の利害に立っている、そういう認識でいいですか、安保条約を軸として。
  519. 園田直

    園田国務大臣 抑止力による平和を願うという点について共通の利害に立っていると存じます。
  520. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 五月二十日にブレジンスキー大統領補佐官が訪中しましたときに、アメリカと中国はやはり共通の利害に立っている、そうすると、日本とアメリカは共通の利害に立っておる、アメリカと中国は共通の利害に立っておる、私どもが中学校のときに習った定理でいけば、AイコールB、BイコールC、したがってAはC、こうなるのです。そうすると、アメリカと日本中国は共通の利害に立っている、軍事的は別として。議論はあります。政治的といいますか、経済的といいますか、そういう認識ですね、これは。
  521. 園田直

    園田国務大臣 他国のことでございますから差し控えたいと存じますが、ブレジンスキーの発言が米国行政府の代表的な意見ではないと存じます。
  522. 永田亮一

    永田委員長 楢崎委員、お約束の時間が経過しております。
  523. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私の時間はわずかですが、ちょっと過ぎたくらいでどうして私だけそうおっしゃるのでしょうかね。――いや、いいですよ。小さい政党だからそんなにおっしゃるのだったらいいです。あなた、ほかの人に言いましたかそんなこと。何分過ぎてますか。二分しか過ぎてない。
  524. 永田亮一

    永田委員長 お続けください。
  525. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それで軍事面はのけて、日本とアメリカと中国、この三国は政治的に見ていわゆる協商体制に入ったと他国が見てもこれはやむを得ませんね。それはいいですね。
  526. 園田直

    園田国務大臣 事柄次第ではそういう点もあると存じます。
  527. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 最後、一問だけにします。  ブレジンスキー補佐官が中国に行ったときに、アメリカとしては三つの基本的な信念を言っています。そのうちの二番目に、安全で強大な中国はアメリカにとってこれは有利である、こういう認識を持っています。日本の場合はどうでしょうか、アメリカのこの認識と。中国が安全で強大な中国であることは日本にとってはどうなんですか。
  528. 園田直

    園田国務大臣 私はそのことについては具体的な話をしたことがございます。中ソは対立をしておる、その中ソの対立によってヨーロッパの方にソ連が軍を集中しないということはあるけれども、この対立を外交に使うことは冒険であって危険である、わが日本はとらざるところ、こういうふうに言っております。
  529. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 いや、協商体制に入っていると他国が見てもこれはしようがないですねということを言っているのです。
  530. 園田直

    園田国務大臣 それは先ほど言ったとおりでございます。
  531. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そこで、私はやはりどの文献を見ましても、今後のいわゆる覇権問題の中心はソ連だ、こうなると思うのですよ。どんなにあなた方が強弁しても、防衛庁の対応もそうですし、時間がないが、あればたくさん資料を出しますよ、そういうことで演習をしていることが。だから、先ほども議論が出ましたけれども、この覇権条項こそがまさに画期的な日中条約意味だ、そのとおりだと思うんです。だから、これは単なる日中間の問題を乗り越えて、非常に国際的にも重要な、貴重な意味を持っておる、こういう指摘になると思うのですね。だから、中国側はそんなことを言うからしようないわ、覇権反対は条約に書いたけれども、しかしそういうものは本当はないのだとか、あるいは指摘するのはまずいとか、そういうことであれば、ただ単に文章として入れただけにしかならぬじゃないですか。何の意味もなくなる、この覇権条項は。だから、このアジアにおける覇権行為というものがもし起こったらば、明確に私は指摘をして、それに対する反対の、軍事行動ではなしにいろいろな外交的な対策を講じるべきである。これが私の見解です。  以上で終わります。
  532. 永田亮一

    永田委員長 岡田春夫君。
  533. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 河本通産大臣質問を留保しておりましたので、十五分だけ御質問することにいたします。  それに入る前に、実は先ほどの私の質問の中で園田外務大臣から御答弁をいただきました。その後、公明党の渡部一郎委員への御答弁、二様の答弁が行われている。その問題は何かというと、現在不法に占領されている北方領土、この現状認識について、これは覇権主義であるのかないのかという問題について二通りの答弁があった。私はいまここで答弁は求めません。なぜならば、これは速記録をわれわれも読みまして、慎重に答弁を検討した上で御質問をしたい。というのは、二つの答弁、非常に違っているのです。私の認識では違っているので、こういう点では私に対する答弁は現在も生きている、こういうことでございますので、これは後で速記録を拝見いたしました後で、もう一度外務委員会の席をおかりいたしまして問題をはっきりさせてまいりたいと思います。この事実、二つの答弁が食い違っている答弁である、しかもこの点についてはきわめて重大な問題であるだけに、後で委員会で御質問をいたしたいと思いますので、それは外務大臣、いまからひとつ私としてもお願いをしておきますし、ぜひその機会をつくっていただくようにしてもらいたいということを委員会にもお願いしておきます。それが一つです。  河本通産大臣、時間がありませんから簡単に伺ってまいりますけれども、実はこの間あなたは訪中をされて向こうでいろいろお話をされた。ところが、あなたの御意見というわけではありませんよ。これは一般的な感じとして、最近、四つの現代化という問題について、何かそういうものを突出して問題を考えている日本の全体の傾向がある。ところが、この四つの現代化という問題がいつ出てきたかというのは、これはおわかりでございましょうけれども、ことしの二月の二十六日に第五回の全人代が行われて、そのときに華国鋒主席から、新たな時期における全般的な任務という形で問題が提起された。この全般的な任務というのは、四つの現代化だけを言っているのではないのです。この点ははっきりしておくことが、やはり今後日中関係を進める意味で重要ですから申し上げますが、第一段は、プロレタリア階級の独裁のもとにおける継続革命の見地。第二の点は、階級闘争、生産闘争、科学実験という三大革命運動を繰り広げる。第三点として、今世紀中に、つまり二十世紀のうちに中国を農業、工業、国防、科学技術の現代化した偉大な社会主義強国に建設するということが目標なんだ。ですからその三つの点を統一的に把握しませんと、これは何か四つの現代化で、中国が、いよいよ二十世紀の末に資本主義の花が咲くというようなものでは全然ないんだということを、まず最初に申し上げておきたいと思うのです。  そこで通産大臣に伺いたいのですが、向こうで経済的なお話をされた、そういう点から感じて、二十世紀末における中国のイメージといいますか、こういう問題をやはり日本としてはイメージとして持って、そしてそういう中へどう協力するんだという問題が出てこなければならないと思うのですが、そういう点についての御意見を伺いたい点が一つ。  それからもう一つは、先ほども大分話が出ておりましたが、河本さんの先ほどもちょっと言われた御答弁の中で、ことしの二月の民間長期取り決め、これでは不十分である、自分個人としては一定の考えを持っているんだというお話で、これはいま関係者の間で検討してもらっている、こういうお話でした。大体あなた個人としてこの民間長期取り決めというのはどれぐらいの点を構想しておられるのであるか、その点が第二点です。  第三点は、その場合に当然問題になるのは、特にプラント輸出なんかで問題になるのですが、資金計画というのが問題になってくるわけですね。さっきもちょっとお話しになりました。金融という形でお話しになったのですが、資金の問題がどうなる。その資金の場合に、今日の日本の金利の問題などがいろいろな支障になってきているわけですね。これは余り細かい点は、私も質問する時間がないですから申し上げませんが、ここら辺に対する構想は一体どういうようになっているのかという点。  この三つの点だけひとつ伺っておきたいと思います。
  534. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 中国は、御案内のように李先念副首相が経済関係の総責任者でございますが、私がお目にかかりましたときに、現在中国が取り組んでおります十カ年計画の現状と見通しについてこういうお話がございました。十カ年計画は一昨年、一九七六年からスタートいたしまして、一九八五年を目標にしておりますが、スタート当時は実際はうまく行ってなかった、発表はうまく行ったように言っておったけれども、実際はそうでなかった、しかし政局も安定をして昨年来ようやく軌道に乗るようになって、いまでは大体うまく行っているように自分は判断をしておる、こういうお話でございましたが、実は私たちも行く前にいろいろ調べて行きました。ほぼ同じような認識でございます。昨年来、中国の国家建設十カ年計画はようやく軌道に乗った、こう判断しておりましたが、現地に参りましてもその印象を強く受けたのでございます。また欧米諸国も同じ認識だと思います。中国の十カ年計画はようやくエンジンがかかってきた、こういう感じを持っておるようであります。相当大規模な野心的な計画でありまして、一例を挙げますと、鉄は現在二千五百万トンの生産を六千万トンの生産にしたい、こういう計画でございますが、私は、この十カ年計画は完全に達成されるのではないか、こういう感じがいたします。また、ある分野では目標をオーバーするのではないか、こういう感じを持っております。  それから第二点の問題でありますが、これはいま専門家の間でいろいろ話し合っておりまして、第一回の会談は先月北京でありました。第二回は二、三月ごろに東京で行われることになっております。専門家が一生懸命に取り組んでおられますので、実は私自身は大体のアウトラインは持っておるのですけれども、これを言いまして専門家の話の障害になってはいかぬと思いまして、何回かかりましても専門家の話し合いに任せたいということで、意見はしばらく申し上げないことにしたいと思います。その方がむしろ両国間の関係がスムーズにいくのではないか、このように思います。  ただ、両国の経済関係を拡大をいたしますためには支払い関係を解決することが必要でございまして、この支払い関係につきましては、私も話し合いをいたしましたが、いま輸出入銀行が窓口になりまして、先方と鋭意話し合っておられます。大体基本原則では意見は一致してきたのです。ただ円建てにするか、ドル建てにするか、この問題が残っておりまして、いまこの問題を詰めておるところでございますが、私は、双方は何とか解決をしたいという点では一致しておりますし、それから先方も輸出入銀行の金を使いましょうということを言っておりますから、もうしばらく時間をかしていただければ解決するのではないか、こう思っております。
  535. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 もう余り時間がないので、また幾つか並べて御質問します。  もう一つは、さっきも楢崎委員からも御質問のあった点ですが、ココムの問題ですね。これは実はココムというものの生成過程、特に日本にとっての問題というのは、これは非常に問題があるのですよね。しかし、ねらっている趣旨は、軍事的な製品に対して一定の制限を加える、こういうことが一つのねらいだ。そういう意味ではわれわれはよくわかるのですけれども、これはやはりさっきも御答弁のあったように、技術の発展というのが、日々発展するわけですから、軍事的な意味を除いて、技術の発展というものがココムによって不当な制約を受けているという場合がずいぶんあるわけですね。  そこで、私は、むしろこの際日本政府としては、ココムを根本的に再検討する必要があるのじゃないか。チンコムの問題もありますね。しかしチンコムは既成事実としてまさに名亡実亡になっちゃっているんで、こういう点を含めてやはりこの際日本政府がココムの再検討というのを考えるべきではないか、そういう点では反覇権主義の立場に立って、いろいろな点があると思いますので、やはりここで私が希望したいのはココムの再検討を願いたいという点が一点です。  それからもう一つは、さっきもお話のありましたように、経済交流では政府がいろいろな世話をしなければならない。そうするとここで問題になってまいりますのは、やはり政府間の経済交流の協定というようなものが必要になってくるのだと私は思うのです。特に相手は政府を相手にするわけですから、こういう点はやはり政府間の経済交流協定というようなものをひとつ検討してもらう必要がある。この点についても恐らく河水さんは向こうに行かれたときにいろいろお話になったんじゃないかと思うのですが、こういう点について、実は先ほどあなたいらっしゃらないときに外務大臣にお伺いしたら、いや、そういう点は検討すべきだという御意見もありますので、この機会に、そこで思い切ってそういうことに踏み出すことを検討されてはどうか、これが第二。  第三は、これはココムにも関連するのですが、わが社会党がこの間訪中いたしましたときに鄧小平さんにも提案をしたのです。やはり科学技術の交流協定、これを結ぶことが必要じゃありませんかという提案をしたら、鄧小平さんは、これは重要だから前向きで検討しましょうという話でありました。しかし、これは民間のわれわれが結ぶべき問題ではなくて、やはり政府間でやってもらわなくちゃいけない問題なんです。  そういう点も通産省の関係に主たる問題がいろいろあるようでございますので、この三つの点だけを伺って、これでもう七分になりますので私は質問を終わりますが、ひとつ三つの点に対する御答弁を願います。
  536. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 ココムの問題は、先ほどもちょっと申し上げたのでありますが、現在中国と経済交流を積極的に図っておりますのは、日本だけではございませんで、欧米諸国、特に英国、フランスドイツが非常に熱心であります。アメリカも大変熱心であります。そういうことでありますから、私は、このココムの問題は、一遍に何もかも解決するということはむずかしくとも、大勢としては、大体中国との貿易、中国との経済協力に支障のないような方向で進んでいくのではないかと期待をいたしております。そういう方向で努力を続けてまいりたいと思います。  それから第二点は、これから経済交流も非常に大規模になろうと思いますので、その場合にはやはり何らかの政府間の接触が必要だと思います。定期協議にした方がいいのか、あるいは問題が起こった都度政府間で協議をするようにした方がいいのか、工夫は必要だと思いますが、何らかの形の話し合いは必要だと思います。とりあえずは、来年李強貿易部長が日本においでになることになっておりますので、できるだけ早く日本に来ていただきまして、ここで日本側との話し合いが、日本政府との話し合いが進むことを私どもは期待をいたしておるところでございます。  それから、技術交流の問題でありますが、やはり経済関係を拡大をいたそうとしますと、技術交流が必要になってきます。中国側もこの技術交流の協定締結につきましては非常に熱心でありまして、検討したい、こういうことを言っておられますので、日本側も外交ルートを通じまして締結すべきだと私は考えております。そしてまた、中国も技術交流を進めるためには特許問題等に対して前向きに対応しなければなりませんので、特許パリ条約に入ることも検討したい、こういう話でございますから、それだけ熱心であれば私はこの問題も解決するのではないかと考えております。
  537. 岡田春夫

    ○岡田(春)委員 終わります。
  538. 永田亮一

  539. 渡部一郎

    渡部(一)委員 河本大臣にはお忙しいところわざわざ戻ってきていただいて恐縮でございます。質問がたくさんございますが、もう時間もございませんし、重複するところもございますから、ほんの数点申し上げたいと存じます。  まず、日本は、平和条約第十四条(a)項によって、日本軍によって占領されかつ被害を与えられた国国について、その損害並びに苦痛に対して賠償を支払わなければならぬことになっておりました。したがって、原則として中国日本に対して賠償請求権があったと思います。しかしながら、日華平和条約の議定書の一の(b)の規定から、かつて蒋政権は賠償請求権を放棄した経緯があります。また、今回の共同声明第五項において、中国平和条約第十四条(a)項により対日戦争賠償の請求を放棄しておりますが、この関係を外務委員会で後にまた詰めさせていただきたいと思いますので、きょうはこの部分はカットいたします。  ともかく、日本中華人民共和国に対して賠償を支払わない立場にいま立っておるわけであります。ところが、日本の戦後は、戦いをしたたくさんの国々に対して賠償金を払ってまいりました。それは多くの国々に対して払ったのであります。あるときば現金で払い、あるときは有償無償の援助という形で払い、さまざまな経済協力の形で払い、あるものには現金を払うというような形で払ってまいりました。結局、こうした点を考えますと、一つは、中国との賠償はゼロであるとしても、これをただゼロであると済ましておくことは、日本外交としてきわめてバランスを失するものになるだろうと存じます。したがって、私は、念書はどういうものになるかはわかりませんけれども、中国の新しい発展と経済の自立のために、私たちは、日本の経済協力あるいは援助あるいは有償無償のさまざまな形において、こうしたことは今後十分に配慮すべきではないかと思いますが、いかがでございますか。
  540. 園田直

    園田国務大臣 ただいまの発言は、十分これを拝承して検討したいと考えます。
  541. 渡部一郎

    渡部(一)委員 ただいまの外務大臣の御発言は、これを前向きに検討する御意向だろうと私は存じます。  そういうように受け取って、今度は中国側の最近の貿易の状況を見ますと、中国は一九八五年までの十カ年計画について李先念副首相の発言によれば、所要資金が一兆元、約六千億ドルになると述べております。関係者の分析によりますと、八年間の国家予算規模で純投資額として五千億元、約三千億ドル強と見積もられております。これに対して資金は、中国の貿易総額が百四十三億ドル。毎年の黒字がここ二年で十億ドルずつ。手持ち外貨は二十億ドル程度と思われます。そうしますと、この大量な投資あるいは大量な所要資金に対して明白な資金ショートが起こっているということが言えると存じます。中国は生産分与方式を希望しているわけでありますけれども、日本の方は、製品の質が不明であること、品物によっては供給過剰になるという点を考慮し、品物の取引が問題になっているわけであり、結局は中国の石油というところに取引の決済がゆだねられている形になっております。先ほど借款の問題について、通産大臣は、ドル建てにするかあるいは円建てにするかということで輸出入銀行との間で相談が続いておるということでございますが、これは速やかに決着をつけていただくとともに、このような大規模な資金ショートあるいは急激な現代化に伴う必要資金、所要資金の状況を見ますとき、先ほどの御提案と絡めて、わが国としては特別の配慮をなすべきではないかと考えるわけであります。  つまり、時間がありませんから結論を先に申し上げてしまいますけれども、ある意味で賠償というのはわが国にとっての大きなマイナスであるだけではなく、インドネシアその他の国々に対する戦後のさまざまな日本の経済協力というものは、日本の国内産業の大きな景気刺激効果も持ちましたし、また日本の工業規格、さまざまなシステムをその国に広める大きな効果もありましたし、決してマイナスばかりではない。特に日本においては構造不況業種に対して現在さまざまな措置がとられておりますけれども、この構造不況業種に対するさまざまな措置はまことに巨額な費用をかけまして、たとえば繊維産業などにおきましては、五十二年度に着手いたしましたのが、通産省の生活産業局によれば、絹織物業、くつ下製造業、綿スフ織物業、化合繊長繊維織物業等に関しまして設備共同廃棄事業に六百七十八億円、うち事業団の費用として六百四十四億円、また昭和五十三年度から着手するものといたしましては、輸出綿製品製造業、メリヤス製造業、エンブロイダリーレース業、撚糸製造業、かさ高加工糸製造業等々一兆一千百五十八億、うち事業団の融資によるものが一兆五十六億六千万というような膨大な金額に上っております。すでに一昨年から、私の所属する県におきましても織機が二十五万円で引き取られていってはぶち壊されていった例を見ております。  こういうような構造不況業種あるいは共同廃棄事業、造船においてもはしけ等においてもスクラップ・アンド・ビルド事業が続いておるわけでありますが、こうしたものも、先方がもし希望するならという前提で差し上げたらどうか。また、日本に先方が熱烈に希望している、たとえば肥料製造業であるとかあるいはセメント、あるいは重工作機械、あるいは人工皮革等々の諸事業について、このあるものを無償経済協力その他の形で供与してはどうかと私は思うわけであります。それは日本にとって、経済協力の質がよくないと国際的に非難され続けております日本外交国際外交における比重を高めると同時に、不況産業に対する需給ギャップを埋めることになるし、経済援助というものに対する日本の態度を示すことになり、日本の平和外交に対する質をはなはだしく上昇せしめるものになるのではないかと思うわけであります。これは国政の基幹的方針でありますし簡単にお答えしにくかろうとは思いますけれども、きょう両大臣そろわれているところで、ひとつこうした諸問題に対する御見識を承りたいと思うわけであります。
  542. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 まず中国との金融関係でありますが、いま話になっておりますルートは三つございまして、一つは、輸出入銀行のいわゆる普通の延べ払い金融であります。もう一つは、資源エネルギーなどの開発金融であります。これは条件が非常によろしゅうございまして、金利も安いし期間も長期になっております。それから民間の金融預託、この三つの方法がいま話し合って進んでおります。さっきも申し上げましたように、私どもは、これは近く必ず妥結をすると期待をいたしております。  それから、貿易の枠を拡大するための背景としての石油問題も、これは六年目から思い切って拡大しようということでありまして、対応する時間は十分ありますし、かつまた日本は毎年大量の油をふやしていかなければならぬという状態でありますから、これも必ず解決できると考えております。  そういう貿易の枠の拡大を背景といたしまして、先方からは石油開発、石炭開発、それから揚子江、黄河等の発電所の建設、非鉄鉱山の開発計画、鉄道の近代化、その他幾つかの国づくりの基本的な計画に対して日本の協力を要請されておりますが、日本といたしましては、これは全面的に協力を進めていこうという考え方で対応しております。石油開発のための第二回ミッションも今月の九日に北京に到着をしておりますし、石炭関係のミッションもいま交渉中でございます。それから、電力関係の調査団も日程を調整中でございまして、近く先方に送れると思います。それから非鉄金属関係もいま対応を進めております。話のありました各分野では着々具体的に進行中でございます。  それから、構造不況業種の廃棄すべき機械を、先方の希望があれば無料で出したらどうかという話でございますが、先方の計画は、あらゆる分野で最も近代的な産業をつくり上げたい、こういう希望であります。たとえば上海の宝山製鉄所の計画などを見ましても、日本での最新鋭の製鉄所の内容とほとんど同じでございまして、非常に進んだ計画になっております。もっとも先方は十年先のことを考えてそういう最も進んだ計画を進めておられるのだと思いますが、そういうときに、日本が廃棄いたします機械というのは比較的古いものでありますので、そういうことはかえって迷惑ではないだろうか、こういう感じもいたします。もっとも、強い要請でも出れば話は別でありますが、近代産業の建設にかえって足を引っ張る、こういうことになってもいかぬのではないか。全体を整合性を持って進められておりますので、むしろそういうことよりも、さっき申し上げました幾つかの協力要請が出ておりますので、その協力要請に対しまして、日本として金融問題も含めまして積極的に対応していく、こういうことが望ましいのではないかと思いますが、せっかくの御提案でございますから、なお十分検討をすることにいたします。
  543. 園田直

    園田国務大臣 いまのお話は詳細に承りましたが、無償供与、それから特恵待遇、こういう問題についてはわが方にもいろいろ問題があるわけでありますが、いままでは中国が気位が高くてこれを受けようという強い意思が必ずしもなかったわけであります。ところが本年十月、豪州、ニュージーランド、だと記憶しておりますが、特恵待遇の決定をしたようであります。中国の希望も大分変わってきているように感じますから、十分話し合って検討していきたいと存じます。
  544. 渡部一郎

    渡部(一)委員 それでは時間がいっぱいでございますから、お話は後で詰めさせていただくとして、特にこの枠の中で、お話し合いの中で日本に対する石油の輸入に関して、大臣が御出発の前に電力業界が反対を表明するというようなことが続いており、これは今後の長期貿易取り決めをした途端にこういうことがあるわけでありますから、大臣の御力量を疑う者は先方にはおらぬとは存じますが、この長期貿易取り決めというのは、単なる民間人が取り決めたというだけのものではなく、日本としても重大な関心を持ち、その遂行に当たらなければ、両国関係に非常に大きな打撃を与えるばかりか、日本外交そのものの質が問われるということになろうかと思います。この問題について、政府を代表してコメントしていただくのは恐縮でありまするが、すでに各方面において通産大臣が述べられたことを要約し、石油輸入問題に対する取り組みをお話しいただきたいと思います。
  545. 河本敏夫

    ○河本国務大臣 いま電力業界の話が出ましたが、電力業界はいま石油類をおよそ八千万トンぐらい使っております。原油の生だき、それから重油、ナフサ、こういうものを主として使用しておりますが、ただ、これからは新しい石油火力発電というものはほとんど計画がございませんで、大部分が石炭火力、LNG発電、原子力発電、地熱、水力、こういうものになっておりまして、油はできるだけふやさない、こういう方針で来ておりますので、全体の現在の総使用量がふえませんから、そういう意味でおのずから協力には限度があります。ただ、しかし、日本全体の石油の消費量は、相当節約をいたしましても一九八五年、昭和六十年には四億三千百万トンという需要が必要でございますので、これから一億四千万トンも輸入を毎年ふやさなければならぬという事態が発生をしますので、その中のごく一部を中国から買おう、こういう考え方でありますから、政府といたしましてはこの問題の解決はさほどむずかしいことではない、日本の需要はふえないということでありますと、ほかのところをカットしなければなりませんから、これは大変でありますけれども、需要が相当ふえますから、その中の一部を中国から輸入していこう、その対応を進めていこうということをいま懸命に取り組んでおりますので、必ず解決できると確信をしております。
  546. 渡部一郎

    渡部(一)委員 時間ですから、終わります。
  547. 永田亮一

    永田委員長 次回は、来る十六日月曜日午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後八時二十七分散会