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1978-04-01 第84回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月一日(土曜日)    午前十時二分開会     —————————————    分科担当委員異動  四月一日     辞任         補欠選任      久保  亘君     大木 正吾君      向井 長年君     井上  計君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         中村 太郎君     副主査         竹田 四郎君     分科担当委員                 岩動 道行君                 下条進一郎君                 大木 正吾君                 井上  計君    国務大臣        大 蔵 大 臣  村山 達雄君    政府委員        大蔵大臣官房会        計課長      村上 哲朗君        大蔵大臣官房審        議官       米里  恕君        大蔵省主計局次        長        山口 光秀君        国税庁直税部長  水口  昭君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 中村太郎

    主査中村太郎君) ただいまから予算委員会第二分科会を開会いたします。  分科担当委員異動について御報告いたします。  本日、久保亘君及び向井長年君が分科担当委員を辞任され、その補欠として大木正吾君及び井上計君が分科担当委員に選任されました。     —————————————
  3. 中村太郎

    主査中村太郎君) 昭和五十三年度予算中、大蔵省所管を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 大木正吾

    大木正吾君 二つのことについて主としてお伺いいたしたいのでありますが、最初は政府関係特殊法人労使関係についてでございますが、大臣、きのうの新聞にまた役人の方の天下り問題がちょっと新聞記事になっておりまして、三十九年以来最高の百九十七人、その中で大蔵省関係の方方が圧倒的に多くて四十九人と、こういう数字がございます。これに対する感想はいかがでしょうか。
  5. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 役所のいわゆる天下り問題というのが、役にも立たぬのに前のポストを利用していわゆる天下ってそれで効果も上げないで給与をもらっているというような実態でありますとこれは非常に問題だと思いますし、また、一方では、いろいろな共済年金をもらいながらまた高額をもらっているじゃないかと、そういう角度からの二つ批判があるのじゃないかと思うわけでございまして、私は、もしそういう点にあるとすれば、そのあとの問題は制度問題でございますのでこれは十分検討しなけりゃならぬ。それから能力もないのに漫然といわば一つポストとしてというようなことであれば、これもまた考えにゃならぬと思うのでございます。しかし、そうでなくて、非常に有能でその問題をこなすのに適当であるというのであれば、まあ現在はこういう時期で、一番実質的にそれぞれの公団、公庫なりが本当に仕事をやらなくちゃならぬわけで非常に必要性があるわけでございますので、その点はもっとプラクティカルに実質的に考えていくべきではないか。むしろ世間の批判というのが前の二点に置かれているのじゃないかと、こう思うわけでございますので、今後はそういう批判を受けないようにこの上とも自戒しなければならぬと、かように思っておるところでございます。
  6. 大木正吾

    大木正吾君 財政、経済、あるいはすべての問題がしばらくは財政主導型で行かざるを得ぬと思うのですが、そういう際でございますから、なるべくそういう因果関係感じとして与えるような形はぜひ自粛してもらいたい、こういう気持ちがいたします。  そこで、本論に入りますが、いま申し上げたこととも背景としては関係がないわけじゃありませんが、政府関係外郭団体でつくられています労使関係のそれぞれの組織がございますが、これは私も実は国会議員になる前に大変扱いに困った問題なんでございますけれども政労協という労働組合一つ連絡協議会がございまして、また逆に使用者側の方も政府関係特殊法人連絡協議会というものがございまして、九十法人ほどあるわけでございますが、実はこの労働組合組織されています根拠法律が、一般労組法適用と、こういうふうに概してなっておりまして、まあ俗に言う団体交渉権が認められているわけですね。そういう点では、よく問題にされます公労協とは違いまして、ストライキ権その他団交権等労働三権がそのままほとんど認められているわけなんです。ところが、この労使関係が、どうしても賃金など労働条件を決める際に大蔵省など所管庁予算関連を受けるものですから、まあ言えば余り実効が上がらない、こういう問題がございます。これについて、昨年の五月の十七日の衆議院社会労働委員会におきまして、石田前労働大臣が、こういうふうに答えておられるんです。業務内容等について公務員に近いか公共企業体に近いかという問題などは別にいたしまして、労組法適用下組合でございますから、労組法を守る立場でもって労組法に重点を置いて問題と取り組みたい、こういうふうに答えておりまして、解釈の仕方では一歩前進というこういう傾向の答弁をしておりますが、大臣、これは御承知でしょうか。
  7. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 労働大臣が前向きにお答えになったという話は聞いておりますが、いま委員のお話を聞いてさらに具体的にわかったわけでございます。話は聞いておりました。
  8. 大木正吾

    大木正吾君 そこででございますけれども、この問題が団体交渉権といいましてもほとんど幅がないということもございまして、いまから五年ほど前でございますけれども、四十七年五月三十日に政府見解がございまして、大蔵省労働省中心としながら関係省庁との調整を図りまして労使関係をはっきりさせろと、こういうような研究会的なものが実は始まったのですけれども、これについての進行の状態について、これは政府委員の方で結構ですから、お答えいただきたい。
  9. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 特殊法人職員給与決定方式の基本問題の検討につきましては、まず関係労使百四十四団体、これは八十三法人と六十一組合でございますが、これに対しまして労働省が主体となりましてアンケート調査を行いました。百四十三団体——八十三法人、六十組合から回答を得ておるわけでございます。出されましたさまざまの意見のうち代表的な意見や重要と思われる意見につきまして、再度労働省中心になりまして面接によって労使の具体的な見解を聞くというやり方意見を聞いておりまして、現在までに二十三法人、七組合意見聴取を終えているところでございます。
  10. 大木正吾

    大木正吾君 その内容については、少しく特徴的なことがございましょうか。
  11. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 各労使から出されました意見は大変さまざまでございまして、統一的にこれといって整理できる、あるいは集約できるような状況でございませんので、この意見を集約し、何らかの方向を出すためには、なお残り法人あるいは組合につきまして意見を聞く必要があるのじゃないかということで聞いているわけでございます。そういう意味で、なお引き続いて意見聴取を行いたい、多少時間がかかっても意見聴取を行いたいということでございます。
  12. 大木正吾

    大木正吾君 どうもお答えとしては不満でございますけれども、時間もありませんから話を進めますが、大臣、これは仕事中身が、高速道路の切符を切る方とか、あるいはいま景気対策で熱心に仕事をしている道路関係とか住宅関係公団の方とか、そういった方々が入っている労使でございまして、やっぱり、働く側からしますれば、使っている方も働く方も活力がないといいましょうか、少し明るい希望がないと、仕事に対する熱意が失われていくわけなんでございますけれども、いま山口次長がおっしゃったような状態で、実にこれは七二年の五月三十日の政府見解でございますから約六年近くたっておるわけですから、そういう意味合いでもって、私は、まあ団体の数も多いですし、法人の数も多いですから、なかなか大変だと思うのですけれども、とにかくこういった不況期における仕事を円満にやるためにも、従来の労使関係を一歩進めるお考え方で指導してくださるお気持ちはないでしょうか。
  13. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 実は私の方は余りそっちは専門家でないものですから、私たちの一般感じしか申し上げられませんが、一方労働三法適用がありながら、一方はまた別の規制がありまして予算に制約される、その意味でまた主務大臣の認可とかあるいは大蔵大臣協議が要るというそういう二重の縛りになっておって、一体どうなるんじゃというところに最大の問題があるような気がするのでございます。したがって、実際上、公団の総裁なり理事長なりというようなものが予算その他の関係当事者能力はほとんどないという実情にあるのじゃないかと想像するわけでございます。したがって、労働三法がそううまく働いてこないのだろうと思うのでございまして、このことは、もっと大きく言いますと、いま公労協の方でも盛んに経営あり方等検討されておるわけでございまして、特殊法人の問題だけではなくて、それ以上にいまの国鉄だとかあるいは電電とか専売公社とかそういったものの経営あり方との関連においてそれらの問題を解決したいということで、あの方は非常に精力的に検討が行われているように伺っているのでございます。したがって、お答えになるかどうかはわかりませんけれども、これはこの問題として検討を進めてまいりますけれども、やはり一つの手がかりは三公社五現業の問題をどうするのかということが非常に高度の専門家が入って精力的にやっておりますので、こちらも進めることはもちろんでございますが、同時並行的に進めて妥当な結論を得たいものだと私は個人的には考えているわけでございます。どうしたらいいのかということは、なかなか私にはいい知恵がいま持ち合わしていないということでございます。
  14. 大木正吾

    大木正吾君 大臣、いい知恵がないとおっしゃったんですが、大臣は聡明な方ですから知恵があろうと私おもんばかるんですが、いまおっしゃられた公労協の問題は、これは公労法で明らかにスト権は現在は禁止されておるわけですね。しかし、団体交渉は、労働時間とか、あるいは業務の態様の問題とか、いろいろな意味合いでもって労働協約ども結ばれておるわけです。そして、賃金の問題になりますと、昨年が非常にいい例なんですが、実は公労協は三カ月ぐらい交渉をいたしまして、どうにもならぬということで業を煮やして、三月の末ぐらいから四月の初めに、まあ批判を受けたのですけれどもストライキの構えをしたんですね。途端に今度政府の側の方でも実は相談されまして、決着じゃなかったんですが、有額回答というものを自主的な交渉の中でもってお出しになったわけですね。ですから、労働法的に根拠を言いますと、公労協の方がむしろ制約条件が強い。特殊法人の方はこれは労組法の完全な適用下組合である。しかし、公労協自主交渉でもってゼロ回答から有額回答に出ていきましても、政労協に対しましては依然としてゼロ回答と、これはどうも逆になっている感じがするのでございますが、どうでしょうか。
  15. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 法制的に言いますと、ただいまおっしゃいましたように、特殊法人の方は労働三法適用があるということでございますし、それから公労協の方は公労法でやっているわけでございますから、ただいまおっしゃったようなことになろうかと思いますが、しかし、片方で、これもすべてではございませんけれども予算統制を受けている特殊法人、これは国とかあるいは地方が出資をしておる、それから活動自身も国の補助金などによってやっているということで、つまり税負担活動をしているというような団体が多いわけでございます。そういう団体につきましては、やはり民間と全く同じ扱いでいいかというと、公務員に近いやり方で運用してほしいというのが一つ考え方ではないかと思うわけでございまして、法令的には、主務大臣給与について監督しております。主務大臣の監督の際に大蔵大臣協議するということが行われているわけでございますので、そういう大蔵大臣への協議ということを通じましてやはり公務員に準拠した取り扱いをすべきではないかというのがわれわれの考え方でございまして、従来そういうことでやっているわけでございます。したがって、三公社と同じように春闘で決着するということにはならないのじゃないか、公務員の方が決まってこないと決めにくい事情にあるのじゃないかというのが私ども考え方でございます。
  16. 大木正吾

    大木正吾君 公務員の決まり方の問題もございますけれども、私ども立場からしますれば、労組法がありまして、そして政策的に考えていきますと、住宅公団とか道路関係とか、これは大手の土建関係建築関係のデベロッパーが仕事はやるでしょうけれども、やっぱり元締めのところがやる気がなかったらば仕事伸びませんわね。大臣、そこのところを申し上げているわけですよ。私は、だから、いま山口さんおっしゃったように基本的に来年も再来年もどうするかということは、さっきおっしゃった公労協に対して——大体、公労協経営形態を議論することはナンセンスです。私自身が長くその問題でもって田中内閣それより前からやってきましたからね。ですからよくわかっていますけれども、しかし、私は、現時点では、この予算が今月の初めにはもう上がるわけでございますから、ゼロという予算になっていないことはきょうは数字は申し上げませんけれども承知なんですからね。ですから、道路関係とかあるいは住宅関係とか、まとめて百幾らの法人とか、あるいは何十の組合とか、それに対してすぱっと回答が出ないかもしれませんけれども、できる条件のあるところはやっぱり私は出す方がそれが政治というものだと思うんですよね。ですから、大臣、どうでしょう、スムーズにもしも公共事業等をやろうとおっしゃるならば、民間の力を借りるその元締めになるところのあるいは監督するところの関係特殊法人方々労使ともども気持ちのいい形でもってやらなきゃいかぬでしょう。もしこれがこじれて人勧が八月だと、そしてさらにこじれて今度は実施補正予算に絡めばまあ年末かもしれないと、そんなことをやっておったら、労使ががちゃがちゃやりおったら、欠陥道路欠陥住宅がまた出てきてしまう心配もなきにしもあらずなんですよ、少し大臣の政治的な決断で——私は別に大変な進歩とは考えませんが、法的には山口さんがおっしゃいましたがどっちが優先するかということは余り明確ではない、こう考えていますので、やってやれないことはない、こう思うのですが、大臣見解を承りたいのですがね。
  17. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) まあ率直の感じを申し上げさしてもらうと、ベースアップとかなんとかということについては、どうもいまの予算制度等を考えますと、急に変えるということは無理じゃなかろうかという感じがいたすのでございます。そういうものに触れない範囲で、執務体制であるとかいろいろな多くの問題が私は内部にあるだろうと思うのでございます。予算とは直接関係しない範囲でもって、執務環境のあれとか、あるいは超勤の話とか、いろいろあるだろうと思うのでございまして、その方はやはり三法の適用があるわけでございますから、活発にやっていただくことは本当に結構だと思うのでございますが、ベースアップの点までということになりますと、まあ前向きにとこうおっしゃっても、私は財政当局を預かっていますので、なかなか踏み切りにくいという感じを率直にいたしているわけでございます。
  18. 大木正吾

    大木正吾君 これはもう時間がありませんから、社労委員会の方でもってまた大蔵関係の方においでいただきましてやることにいたしますが、とにかく、私が申し上げたとおり、予算が四月四日に成立をしますればお金はあるんですよね。一応国の方に関係省に払う金は出てくるわけですよ。ただ、それを全部払えと私は言っているわけじゃないんで、当然組合交渉する権限が一番賃金ということは大事な問題ですからございますのでね。それに対して、公労協などの経験からいたしましても、自主回答有額回答、そういった中で政府ストライキをやめろと、こういうふうに言ってきたわけですからね。政労協というのは、ことしの公共事業関係についてきわめて関係の深いところの労使関係がもたついていますと、それがひいては非常に大きな民間の力をお借りする分野に響かないというまあ言えば保証はないわけでございますから、その辺について、ことしの場合には、全部とは申し上げませんが、特に関係が深いところについては自主回答をやっぱりやるべきだと、公労協と前後しても結構ですから、金があることは明確なんですから。そういうふうに私の意見を申し上げさしていただいて、この問題を終わります。  次に、これも衆議院で問題になったことでございますけれども同和関係について若干の御質問をいたします。  本年度同和関係予算の総額は一千八百四十三億円と記憶いたしておりますが、よろしいわけですか、それで。
  19. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) そのとおりでございます。
  20. 大木正吾

    大木正吾君 これをずっと経過を追って九年間を見てまいりますと、だんだん予算がふえてきてはいるんですが、物価の上昇もございますから中身がふえたかどうかということもございますが、ただ、一つ私はこの九年間の経過を振り返ってみて感じますことは、九年前の日本国民の同和問題に対する理解度といいましょうか、そういう問題については非常におくれがございまして、そして、前半の三、四年間というものは、ほとんどもう同和問題というものは一体何だろうかという立場での政府内部の御意見とか、あるいは一般民間の諸団体意見もそういう面が強かったと思うのですね。ということは、前半の四、五年間というものは工事が十分に関係組織が期待し得る状態じゃなかったと、こう考えますが、大蔵省、どうでしょうか。
  21. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 同和対策事業特別措置法制定されました四十四年度以降、同和対策予算は大変な勢いで伸びたわけでございます。四十四年には六十二億でありましたのが、先ほど申し上げましたように五十三年度予算では千八百四十三億でございまして、これは平均伸び率は、年平均でございますが、四七%伸びでございます。この間における一般会計伸び率は一九・九%が平均伸び率でございますので、非常に著しい伸びを示しております。特に、前半法制定後の状況は高い伸び率を示しておりますので、ただいまのようなお話しの感じではないのじゃないかというふうに思います。
  22. 大木正吾

    大木正吾君 それは、山口さん、少し見方が私と逆になるのでございますけれどもね。大体、同和問題の歴史は古いわけですが、政府予算を組みまして対策に取り組んだのは、これは大阪あるいは奈良、九州等で大変ないろいろないわば市民運動等がありまして、そういう結果、やむを得ず予算も組み、しかも法律もつくったと思うのですね。ですから、法律制定のときにも、政府の発意じゃなしに、各政党との相談もあった経過も御承知だと思いますけれども、となりますと、初めて予算をつけるときにはたとえば調査費から入っていくでしょう、大体大蔵省の場合には。ですから、伸び率が何%だから云々という言い方は、それは専門家山口さんの御意見としては私には聞きましても少し納得のできない意見になるんですね。ですから、むしろ、大体四十九年、五十年ごろですね、まだ部落全体が資料によりますと一千部落ぐらいしか把握ができていないと、こういう話も資料にございますけれども、その程度が基盤となって、各省要求大蔵査定という問題が初めてまあ万点じゃありませんけれどもどうやら七、八割の捕捉状態になったかどうか、この辺を基点でもって物を考えてみないと、伸び率がこういったから大変だと、こういう見方はちょっといただけないと思うのです。
  23. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 確かに、おっしゃるように、伸び率だけで判断してはいかぬと思います。その需要を満たしているのは実額そのものでございますから、そういうことでございますが、私が申し上げましたのは、努力のテンポと申しますか、そういうものが大変なものであったということを御理解いただきたいということなのでございます。
  24. 大木正吾

    大木正吾君 そういうような表現ならば、これはある程度その意のあるところは認めてあげてもいいわけですけれども、ただ一般予算伸び率との比較論でたくさんつけてきましたと、こういうふうに言われますと、私どもの方でもちょっと大蔵省考え方に違いありませんかということを申し上げたくなるのですが、本年の場合でも、一千八百四十三億ですと、中身は細かく一々申し上げませんけれども仕事は相当残っていく。しかも法律は本年度いっぱいですね。こういった問題について非常に私自身が心配しているわけなんですね。ですから、その辺について大蔵省の所感というか所見がありましたらちょっと伺いたいんですが。
  25. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 仕事残り方と申しますと、恐らく、五十年に事業量調査をやりました、その調査残事業のことをおっしゃっておられるのではないかと思うわけでございます。五十年の事業量調査は、その当時におきまして地方公共団体が五十年度以降実施を見込んでいる計画物的施設にかかわる同和対策事業計画、これを集計したものでございまして、この調査は、その地方団体計画がそうでありますように、五十四年度以降の分も含んでいるものでございます。したがって、五十年調査残事業量があることはおっしゃるとおりでございますけれども、五十四年度以降についても何らかのかっこうで実施していけるよう今後の検討課題ではないかと思います。
  26. 大木正吾

    大木正吾君 大臣にこれはずばり伺いますけれども衆議院予算委員会総括質疑の際の総理答弁、ここにその内容がございますけれども大出俊君の質問に対しまして総理が答えておるわけでございますけれども、その中身を見ていきますと、どうも政府自身はこの国会関係法案延長等について政府側として提出をするというような面が少しくぼけている、こういう感じがするのでございますけれども大蔵省はこの法案延長がなくてもいま山口さんが答えられた残事業に対しては支障はないのでございましょうか。
  27. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 残事業があるということについては計数的にも明らかになっているところでございますから、残事業につきましては今後やはり進めていくということになるだろうと思うのでございますが、それと法案の延期との関係が一体どうなるかという問題だろうと思うのでございます。総理残事業の問題について焦点を当てられたのかとも思いますが、これは本来各党べースでもって話の始まった問題でございますので、また現在いま各党でも精力的に話が進められておるから、その協議の結果を踏まえてそして決断していきたいという前向きの答弁をしているところでございます。また、いまずっと記録を調べてみますと、この方は政府では総務長官所管事項、事柄としてはやっているわけでございますが、稻村総務長官も同趣旨の話をし、延長問題についても触れておりまして、各党協議がつけば延長問題も前向きに検討したいと、このような趣旨のことを言っておるわけでございますので、われわれ財政当局といたしましても同様にそれに対処してまいりたいと、かように考えているところでございます。
  28. 大木正吾

    大木正吾君 特別措置法の第七条に助成の項がございまして、この中には、同和対策事業に対しまして「予算範囲内で、三分の二の割合をもつて算定するものとする。」と、こういうことがございますね。これは過去の九年間の実績の中では、関係省庁が要求します予算が、まあ他の予算でも例としては同じなんでございますけれども、要求どおり認められていることはないわけですね。そうしますと、根拠法律がなくなっちまいますと、ますます各省庁が要求しましても、大蔵省残事業があることは認めていながらも、なたがふるいやすい、こういうことにならぬでしょうか。
  29. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 先ほど私が五十四年度以降でも何らかの方法でと申し上げましたのは、法律が仮に延長されなくてもそういうことを一生懸命やっていくんだといういわば姿勢を申し上げたわけでございまして、法律延長されないという事態を予想しているわけではございません。法律延長問題につきましては、先ほど大臣がお話しになりましたように、各党間の話し合いがつきますればという例の総務長官の御答弁のとおりであろうかと思います。
  30. 大木正吾

    大木正吾君 要するに、主計局なり事務当局としますれば、法律があった方がやりやすいことは間違いないですわね。これはよろしゅうございますね。  大臣、再度伺いますけれども、実はきのう本会議を通過いたしました税制関係法案の中で非常に賛否が伯仲した状態がございましたのは、やっぱり特別措置に絡む問題に対する不満ですね。これは特に医師の優遇税制ができました昭和二十二、三年ですか、二十九年ですか、あのときにもあれは政府の発議じゃなかったんですよ。私も税調の委員を六年やっていましたからね。それで各党協議でもってできた法律案なんです、あれは。そして、大臣の御都合のいい立場に立つものはなるべく——あれは税調なんか五、六年も十年も前から文句をつけて直せ直せと言っているわけでしょう。武見さんがこわいわけじゃないでしょうけれども大臣の選挙に関係ないですからね。だから、ああいうようなものについてはなるべく残しておく。今度、こういうような同和対策という、私は社会的にあるいは同じ日本人として恥ずかしい問題といいますか、大事な問題だと思いますよ。こんなものについては、それは各党協議だからという立場政府としてはとるべき立場じゃないと思うんですよ。ある程度の話し合いがあってもいい。しかし、その中の政府としての立場としまして、やっぱりきょう総務長官はどこかでこの問題をやっているはずでございますけれども、とにかく政府の側のいわば主導的な見解というものが自民党内に示され、そして自民党の中がまとまり、そして社会党、民社党、公明党などがまとまっていくということが筋でございますから、そういう点で、都合のいい法案はとにかく各党協議でもってできたものであっても自分たちは延ばしていく、あんまりしたくないというものとかそういう問題についてはどうも逃げていって今年度で終わればそれでもって知らないという、各党協議の方に預けてしまうという、そういう態度は私は政府としてはとるべきではないと、こう考えているんですが、これは所管じゃありませんから、大臣感じ方で結構ですから答えてください。
  31. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 実は私はそういうふうにとっていないのでございまして、同和対策特別措置法延長の問題については、従来の経緯から言いまして各党間で行われたのでございまして、恐らく、まあこれは予測を申し上げるのはあれでございますが、そういうことから言いますと、各党間でお話し合いになればおのずから方向は決まってくるのじゃないだろうかと政府は予測しておるわけで、これは政府というか私が予測しているわけでございますので、むしろ各立法府に敬意を表するという意味でその協議がまとまってからということでございまして、私の予測で申しますと、恐らくどちらに固まるかということはおよそ推測はつくわけでございますから、そういう予測を持ちながら、とにかく立法府を構成しておる各党間で御協議願うのが筋じゃないかと、こう申し上げておるのでございます。  医師の優遇税制の話は、もう何遍も話は出まして、いままで政府提案ができなかったというのは、御案内のように政府・与党が一致しないと出ないのでございまして、実際問題といたしまして政府・与党の完全なる合意が得られないままになかなか政府提案ができなかったという実際上の経緯を踏まえまして、そしてこの五十三年度予算でも精力的にやったわけでございますが、与党の方でも決断いたしまして今年度限り廃止するという決意を表明して、実はネックはわが党と政府の間にあったわけでございますので、大きな壁がとれた。いずれ、どういうことになりますか、その提案の場面で各党とお話し合いになるのか、あるいはその前に党としては各党の御意見も聞くということになるのかわかりませんが、いずれにしても実際問題として政府・与党間の意思の一致が見ないというところに政府提案ができなかったという経緯を踏まえているわけでございますので、形で言いますと、いま委員がおっしゃったように妙な話じゃないかと、こういうのですが、私は実際問題の解決の仕方としてはやっぱりこんなことになるのじゃないかなという感じがいたしておるのでございます。
  32. 大木正吾

    大木正吾君 繰り返すことになりますけれども、医師の優遇税制については党内のコンセンサスがどういうようになるかわからぬけれども、直す方向でと、こういうお話があって、そして特別措置法延長問題についても、ちょっとニュアンスがはっきりしませんですけれども何らかの前向き的なニュアンスの発言があったのでございますが、私自身がむしろいま自民党の党内のことなども仄聞しますに、必ずしもそうなっていないという感じがするものですから、これは非常に重大な問題なんですよ。大変な巨額な事業を残して、そして兆単位の仕事を何年間かで仕事をするというときに根拠法律がなかったら、できないことは明らかですよ。ですから、大臣は、この法律についていまおっしゃられた感触はむしろ後退的な感触じゃなかったのですけれども、党内の合意というものについてはどういうお感じ方なんですか。
  33. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 残念ながら率直に申し上げましてその辺の事情は余り承知しておりません。しかし、政府側答弁をずっと見ましても、総理あるいは総務長官答弁を見ましても、かなり前向きな姿勢がうかがわれるわけでございますから、逆に私は党内の奥の方から党内の情勢を推測しておったのでございますが、恐らく真剣な討議が行われておるのじゃないかなと思っておったところでございます。
  34. 大木正吾

    大木正吾君 これはそのお答えの中に必ず総務長官総理もおっしゃっていますことは、各党協議が前進すればというか、まとまればと、こういうことが必ずつくわけですよね。そこで、私、しつこく担当ではない村山さんに申しわけないのですが伺っているのですけれども大蔵省財政的な措置を講ずることが非常に大きい問題でございますので伺うのですが、とにかく政府自身として、お金を出す側の財政担当の大臣としては、この法律があった方が出しやすいことは事実ですね、これは。そう考えてよろしゅうございますか。
  35. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) この法律がなければお金が出せないというものではないと思います。つまり、いろいろな面でこの法律があったために同和対策予算が国民の理解を深めたと申しますか、あるいは予算計上に当たっての各省の理解を深めたという効果はあったかと思いますが、ないからその計上がうまくいかないということにはならないと思います。
  36. 大木正吾

    大木正吾君 これは余り院内におきましてのお互いの発言の問題でのしりをとったりはしたくはないのですが、山口さん、さっきの話の中では、事務当局なり主計局等ではあった方がやりやすいと、こういうふうに私は受けとめておったのですが、いまのお話ですと、なくても予算をつけることはできると、こういうふうな言い方にまた変わってきているわけですがね。あなた御自身は同じことをおっしゃっていると、こういうふうに感じるかもしれませんが、これは重要な問題なんですよ。たとえば最近の全国特殊部落地名年鑑の問題とかね、稻村長官が担当でございますからそのことを私は取り上げたくはないのですけれども衆議院予算委員会における失言の問題が大分大きな問題になったことは御承知でしょう。ですから、そういうようなことを考えたときに、私は前職は労働団体の役員であったわけですが、自分自身が、この問題を労働界もやっぱり考えて、そして職種職業につく差別をなくすためには労働組合自身がもっと啓蒙するべきで、こういうことを書き込んだのは、実は四十九年ですから、大体昭和四十九年から五十年ですね、そのころにやったんですよ。だから、この法律ができて四年目に私が自分の団体の方針に書いたんですよ。それぐらいこの問題については、一部の地域は市民運動が盛んでしたけれども、おくれてきたことは事実なんですよ。ですから、大蔵省とすれば、こういった問題について残事業があることも十分に御承知だし、もっと同和問題の基本問題ということを、やっぱり日本人の中に存在する結婚の悲喜劇とか、あるいは職業的差別とか、教育問題とか、社会的な差別をなくさなければ困るわけでしょう、結局。そこのところを私たちはもっと注目するものですから、そのためにこの法律がまあ言えば物的には若干のことで前進はしましたけれども、物質的なものでもって国全体が仕事を転がしていきながら、こういった地名年鑑などを買って職業的な差別をするような企業の側にも物をわかってもらわなきゃいけないと、こういうふうにもいくでしょうからね。だから、社会的な問題と物質的なものは私は無関係ではないと思います。そういう観点で、細かなことをきょう聞きたいことはたくさんあるんですが、一番これが基本のところですから、大蔵省としては延長があった方がまあ言えば予算がつけやすいということは間違いないでしょうね。
  37. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 真正面からのお答えにならないかもしれないわけでございますけれども、私ども気持ちといたしましては、法の延長そのものに対してどうこう申し上げているわけではございません。これは総理それから関係大臣お答え申し上げておりますように、早急に各党協議を進めていただき、その結果を尊重したいということではなかろうかと思うわけでございますが、私どもは、仮にその法律延長されなくても、同和事業に対する認識と申しますかあるいは重要性についての考え方というものは各省も持っております、それから私どもも持っておるつもりでございますので、予算計上がそれによって非常に支障を受けるということにはならないのじゃないか。逆の方から私どものいわば同和対策予算に対する熱意といったようなものを申し上げた方がいいのじゃないかという意味で申し上げたわけでございます。
  38. 大木正吾

    大木正吾君 堂々めぐりを何時間やってもこれは尽きない問題でございまして、いまおっしゃられたお気持ちをさらに裏返しをしますれば、法律があった方がやりやすいことは間違いない、日本は法治国家ですからね。法律がないと、ルールある法治国家の流れは出てこないんですから、あった方が予算はつけやすいことは間違いありませんね。
  39. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) なくてもやらしていただきますというふうにお答え申し上げているわけでございます。
  40. 大木正吾

    大木正吾君 あった方がやりやすいことは常識なんですよね。だから、山口さん、なくてもできるという話は物の裏返しの話なんで、しかもこの法律の中に言えば数字的な根拠あるいは国の責任なども書いてございますから、そういったことがなくてもできますという言い方と、あった方が根拠は明確でもって予算がつけやすいということについて、あった方がいいことは間違いないでしょう、これは。同和問題についても何についても同じことを言っているんですよ。他の問題でも同じなんですよ。ちゃんと交付税率なども率が決まっていまして、補助金ども決まっているでしょう。そういったすべてのものを含めて、法的根拠があった方が大蔵省財政措置がしやすいことは間違いないでしょう。
  41. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 気持ちと申しますか、精神の問題としては、先ほど来申し上げているとおりで、法律が仮になくても熱意を失うことはないであろうということを申し上げているわけでございますが、もっと技術的と申しますか事務的な話として申し上げますと、法律に書いてありますことの相当部分が、いわばその法律に書かなければならない事項では必ずしもないわけでございます。特に予算措置の部分なんかでもそうだろうと思いますので、それはなくても可能であるということを申し上げているわけでございます。
  42. 大木正吾

    大木正吾君 たとえば、部落の数が、まあ正確にこれは細かな数字までは申し上げませんが、大体一千ぐらいですね。当該関係協議会からの出した資料とは違いますし、各省にまたがる予算の要求を大蔵省がそのとおり認めないで、これは各省ですから、各地方自治団体ですから、そこが出したものを大蔵省が査定していくでしょう。ですから、その査定をする、あるいは補助金をつける、最終的に関係公債をどうします、そういった問題になりますと、どうしてもこの特別措置法というものがあるかないかが、国会の議論にしても、関係団体の皆さん方がお話をするにいたしましても、これがやっぱり物を言うといいますか、効力を持つことは明らかなんですよ。だから、たとえば補助金の率が抑えられますわね、そういったときなんかも、この法の解釈問題をめぐる議論が起きてきますからね。ことしでもって切れてしまったものを、来年関係団体がこれだけの仕事をしてもらいたいと、さらに小切って地方自治体が少し減らしていく、各省が不満だけれどもこの辺頼むと持っていく、大蔵省がそれをさらにまた切るといったときに、そのときに根拠がなかったら関係団体はどうにもならぬじゃないですか。そういうふうにお考えになりませんか。
  43. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) 多少議論がかみ合わないので恐縮でございますけれども法案延長に反対しているとかなんとかということを申し上げている、そういう意味ではないのでございまして、純技術的に申しますと、法律の中の、どうしても法律で規定しなければやれない事項というのもございますが、この法案はそういう事項は少ないのではなかろうかと思います。特に財政関係ではそうだと思いますので、法案がなくても同じようなことをやれるのじゃないかというふうに思うわけでございます。
  44. 大木正吾

    大木正吾君 これは第六条、第七条と見てまいりますと、一般的規範に関することもございますが、七条の場合などでは、「予算範囲内で、三分の二の割合」とか、いろいろ書いてあるわけですよ、数字が。だから私はしつこく言っているんですけれどもね。こういうものが法律でなくなりましたら、いまでも要求から見れば三分の一ぐらい、各省庁が出したものとの関係では大体逆に半分か六割ぐらいに切られますわね。そういったことがますますこの残事業というものを、見積もりにおいても違うし、同時に残してしまうということが心配なんですよ。むしろ私は山口さんに同情して申し上げているんですがね。そういうときに、限られた予算の枠内でもって省内でもって議論するときにも、これはこういう法律に基づいてやっているんだからやっぱり次官も大臣も了承してもらいたいということをあなたに同情して私がやりやすいでしょうと申し上げていることについて、余りはぐらかさないで、ただ、ぼくは、法律延長することを、ここでもって、あなたは担当じゃないから、延長することをやりますということを主計局次長に申し上げているわけじゃないんでして、やっぱり法律があった方がそういった省内のまとめとかあるいは各省間の調整等についてはやりやすいのじゃありませんかと同情して申し上げているわけですから、答えをひとつ明確にしてくださいよ。
  45. 山口光秀

    政府委員山口光秀君) おっしゃいますように、法律国会の意思がはっきりしておるということは、確かに同和対策関係予算を計上いたします場合、結局ほかの経費との優先性の見方の問題になるわけでございますから、関係者にとって一つの支えになることは、それは間違いないと思います。
  46. 大木正吾

    大木正吾君 大臣、いまの次長の答弁、繰り返していただくことはありませんけれども、そのとおり受けとめてよろしゅうございますね。残事業消化の際に法律根拠があった方がやりやすいと、こういうことで山口次長は答えられましたけれども、これはよろしゅうございますね、そのとおり解釈して。
  47. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 関係者にとりましては、恐らくいま次長が言ったようなことは常識ではないかと、かように思うわけでございます。
  48. 大木正吾

    大木正吾君 これまた質問の仕方を間違うと話がちっともいけませんから、要するに、委員長、確認いたしますけれども、同和問題についての残事業の消化あるいは地名年鑑という新しい問題が出てきていることとか、私はむしろこれからまだまだこの問題については社会的な差別というものを考えていきますと、不況下でございますから、つい最近東京都の清掃事業の関係方々の募集が百二十人、応募者は三千人ですからね、そういった状態等を見ていきましても、ここに資料がございますが、きょう時間がないからもうこれ以上やりませんけれども、とにかく差別が拡大する傾向にあるでしょう。私は自分の仕事労働団体におりました関係もありましてそういったことを大阪とか東京なんかで目の当たり見るわけです。同じ学歴で、しかも高校のときにはかえって頭のよかった子供が、内偵された調査によってむしろ途中でもって——スタートは同じで入っていきますよ。三年、五年たって少し任用が変わってきますと、明らかにその人が仕事ができながらも、残念ながら任用的にはおくれていく傾向が見られるわけですね。そういったことがあっては、本当にこれは日本の恥なんですよ。そういったことを考えまして、これから不況ですし、失業者もふえていきますから、こういった問題について、いま仕事も根本的に社会的差別をなくすことが基本でありますから、そういった問題を重視した立場でもって申し上げているわけなんで、ぜひ大臣のいまの見解と次長の見解というものが政府内部におきまして後退することのないようにお願いいたしたいし、同時に、委員長に特にお願いいたしますけれども、自民党、社会党、民社党、公明党等が話し合っているようでございますから、ぜひ本委員会の理事の皆さん方にもこの問題について党内のコンセンサスが速やかに得られまして、今国会でもって延長の実現ができまするように特段にお願いをいたしまして、私の発言を終わります。ありがとうございました。
  49. 井上計

    井上計君 私は、大蔵大臣初め当局側にきょうは主として中小企業の税制問題等につきましてのお尋ねをいたしたいと、このように考えております。  まず最初に、すでにわが党から大蔵大臣あてに現行の基本通達等についてのいろいろと提案をいたしておりますが、取引相場のない株式すなわち非公開株式の相続上の評価に関する問題でございます。これにつきましては、先般衆議院予算委員会あるいは衆議院の大蔵委員会におきましてもわが党の委員から大蔵大臣質問をいたしました。さらに、先般当院の予算委員会一般質問でも私からも大蔵大臣質問をし、またその時点でのお答えはちょうだいいたしておりますけれども、きょうは、さらに詳細にお尋ねをいたしてまいりたいというふうに思います。お聞きいたしますと、わが党から従来提案し、あるいはまた質問等をいたしまして、現行の基本通達を大幅に改正をお考えいただいていると、このように承っておりますけれども、現在時点でどういうことになっておりますか、また、改正の案等につきましてひとつ御説明をお願いいたします。
  50. 水口昭

    政府委員(水口昭君) 取引相場のない株式の評価の問題でございますが、これにつきましては、ただいま先生からお話がありましたように、去年の春以来いろいろ問題になっておるところでございます。国会でもいろいろ論議がされましたし、また質問主意書等もちょうだいしておるわけでございます。  そこで、先生御承知のことでございますが、現行の取り扱いでございますが、ごく大まかに一言だけ申し上げますと、取引相場のない株式の評価というものは、大会社については類似業種比準方式、小会社については純資産価額方式、それから中会社につきましてはいま申しました二つの方式の併用方式によるということになっております。そのように、その株式の発行会社の実態に即するように評価することとしておるところでございます。また、従業員株主などの零細株主の取得株式につきましては、課税上の特例として例外的に配当還元方式によるということにいたしております。  現行の取り扱いは以上のとおりでありますが、昨年の春以来いろいろ国会でも論議がございました。そこで、国税庁といたしましても、これをどういうふうにすべきかという検討を重ねてきたのでございます。また、昨年の暮れからことしの初めにかけましてこの問題に関する学識経験者の皆さんにもお集まりをいただきまして、どういうふうに改正をしたらいいかというお知恵を拝借したわけでございます。この問題につきましては、御承知のように大まかに申しますと二つの指摘がございまして、中小企業者の非上場株式の評価、これが一般的に言って高い場合があるじゃないかということと、それからもう一つは、税務当局が一定の値段で評価をしながら物納をしたいという申請があった場合にこれを認めない場合が多いと、これは不合理ではないか、この二点に要約できるかと思います。そこで、国税庁といたしましては、いま申しましたような手続を経まして、近くこの評価に関する通達を改正したいということでございます。  その改正の要点でございますが、非上場株式の株主の中におきましても、いわゆる少数株主でございまして、会社の経営に深くタッチしていない、まあ配当をもらうだけというのが実態であると、そういった株主がおられるわけでございますが、そういう方に焦点を当てまして評価を軽減するという点が一点。それからやや細かくなりますが、類似業種比準方式につきましていろいろ調整する計算方式が書いてあるわけでございますが、その辺を若干緩めまして有利なようにするといったことも考えております。そういったように少数株主の評価を軽減するという点がポイントでございます。  それからもう一つは、取引相場のない株式の物納の点でございますが、これにつきましては、相続財産のほとんどが取引相場のない株式である、その株式以外に物納に充てる財産がない、また金銭で納付することが困難である、こういった条件の場合には、従来のお取り扱いよりもやや弾力的にいたしまして、将来の売却見込み等を勘案いたしまして適当と認められる株式につきましては物納を認めるという方向に踏み切ったわけでございます。
  51. 井上計

    井上計君 いま御説明を伺いましたし、また若干資料も事前にちょうだいをして私なりに検討いたしました。従来から見ますとかなり前進した改正案であるということについて評価はいたします。ただしかし、いろいろと厳密に検討いたしますと、まだまだ十分でないというふうな幾つかの点があるわけでございます。  そこで、私のそのような検討の結果についてなおお聞きをいたしたいと思いますけれども、非公開株式と一概に言いましても、その中には大法人の系列にある完全子会社の非公開株もありますし、あるいはもう純然たる大会社であって非公開というのもまだあります。特に、その中で、純然たる中小企業の同族法人、これらについて私の考えを申し上げていろいろとまた御所見を伺いたいと思っておりますが、中小企業の経営者というのは、特に創業者社長、創業者経営者ですね、これらの人たちがずっと行ってかなり業績が上がっておる。しかし、その業績の上がっておる理由の中には、その創業者の経験であるとか、あるいは長年の業界あるいは取引関係におけるところの顔であるとか、あるいは人間的な面の信用であるとか、あるいはそれらに基づいての交友の範囲であるとかというふうな無形のものが大変大きく左右して、それらのものが事業の経営上非常に大きく役立っておる。ところが、そういうふうな経営者が死亡いたしますと、いま申し上げましたような無形の資産といいますか、それらのものが完全に消滅するということになりまして、その時点での帳簿上の純資産というふうなものは計算上は出てまいりますけれども、その死亡以降を考えると、それが果たして厳密に言ってそのような従来と同じような業績がただ資産上の面からだけで業績が上がるであろうかどうかというふうな、これはもう大変重大な問題があるというふうに思うのですね。だから、それらの非常にむずかしい、まあ言えばケースごとによって異なりますから、これをいま直ちにどういうケースはどうとかこうとか言うわけにこれはもちろんいかぬと思います。いかぬと思いますけれども、そういうふうな面をぜひ配慮していかないとなかなか公平を期しがたいというふうに考えております。特に、最近は、大型倒産でも見られますように、非公開株式の場合はなかなかそのようなことが顕著にわかりませんけれども、上場株式等においても、オーナー社長、創業者社長が亡くなりますと、途端に株価が一挙に下落をしておるというふうなケースもありまして、それらのことをもっと配慮していかなければどうも十分でないではなかろうかという気がいたすわけでありますが、それらの点については改正案の中にも取り入れ、お考えいただいたと思いますけれども、どういうようなふうに検討されましたでしょうか、お伺いいたします。
  52. 水口昭

    政府委員(水口昭君) 先生のおっしゃることはよくわかるわけでございます。先ほど、昨年の暮れからことしの初めにかけて本件に関する学識経験者にお集まりをいただいたということを申し上げましたが、その先生方の中からもいまおっしゃったような御趣旨の御意見がございました。それで、そういう点も考慮する必要があると思いますが、なかなかこれを計数的に通達の中に取り入れるのがむずかしいという点が一つございます。  それから先生もいまおっしゃいましたように、非上場会社と一口に申しましても、資本金が百億を超えるような堂々たる大企業から、個人企業とほとんど変わらないそういった零細企業があるわけでございます。先生は中小の方を中心におっしゃいましたが、中小会社となりますと、その中でも特に小会社の方は個人経営の企業と実質的にはほとんど変わらない、それが法人組織になっただけであるという会社も多々あるわけでございます。したがって、そういった小会社の評価をするに当たりましては、やはり個人企業の方の相続税等とのバランスということを崩すわけにはいかないという点もございますので、そういったいろいろな点を勘案しながら、少しでも先ほど申しました少数株主の負担を軽減しようと、こういう気持ちで今回の改正を行ったわけでございます。
  53. 井上計

    井上計君 いま、お答えの中に、個人企業とのバランスという重大なお答えがございました。私も、そのことについては、非常に重大だし、またむずかしい問題があると承知をしておりますが、個人企業を含めての問題はちょっと後でまたこの点については意見を申し上げたいと思いますが、そこで、今度の通達の改正案、あるいは従来のもの等から見ると、若干改善をされておりますが、ただ、そこで、持ち株割合が五%未満の言えば同族でない株主ですね、零細株主、それについては配当還元方式、これはもう当然であるというふうに思います。そこで、同族株主の中でも配当還元方式を適用すべきだという株主がやはりいるんですね。また今後発生するわけですね。具体的に例を挙げますと、従来、兄貴が社長で、弟が専務あるいは常務であったと。兄弟一緒になって大変努力をしてある程度会社は発展をしてきた。その弟さんが死にますね。死んだ場合、弟の遺族というのは、奥さんであり、あるいはその場合に娘さんだけだと。その娘さんもすでに他家に嫁いでおると。その他家に嫁いでおる娘さんの配偶者というのはもちろんもう全然別個であって、会社の方に入るとかどうとかいうふうな意思もなければ、そういうふうな可能性も全くない。あるいはまた、男の子があっても、身体的にいろいろと問題がある。したがって、会社の経営陣にはもう絶対ならない。あと、言えば亡くなった主人が持っておったところの株主としてのこれを相続して配当による生計維持とへこういうケースも実はありますし、今後起きると思うのですね。ところが、その場合、持ち株比率五%以上であるということと、もう一つはいま言う同族株主であるというふうなことから、こういうケースでも配当還元方式が適用されないということになると思うのですが、そうでしょうか。
  54. 水口昭

    政府委員(水口昭君) 実は、先生御承知のように、相続税の基本通達、これは近く改正をする見込みでございますが、まだ改正をしておりませんので、その内容について詳しく申し上げることはいかがかと思いますが、いずれにいたしましても、現行の通達では、同族会社の場合には同族株主については一切配当還元方式は適用されない、こういうことになっておるわけでございますが、先生ただいまお話しのように、同族株主であっても、中にはそれほど会社の経営に関与しない人もいるということを考えまして、ある程度そこを緩和しようということで、余り一遍に大きく崩すわけにはまいりませんので、懇談会でもどの程度が適当であるかという御意見をいろいろ伺いまして、非常に硬軟いろいろな意見がございましたが、まあこの辺ではなかろうかというところで現在は考えておるところでございます。
  55. 井上計

    井上計君 いまお答えを聞きまして、近く基本通達を改正するというふうなことで伺いました。大いに期待をしております。ぜひ、いま申し上げましたようなケースは特にこれから多く発生すると思うんですね。したがいまして、それらのケースについても十分ひとつ勘案をしていただきますように強く要望をいたしておきます。  それからもう一つですね、基本通達の百八十八の六に表示されておりますが、清算所得に対する法人税等の税額に相当する金額を控除した金額というふうなことになっておりますが、これは会社が解散をしたときの一株当たりの還元額を示しておると、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  56. 水口昭

    政府委員(水口昭君) 株式会社等の評価でございますので、まあ将来解散もあり得るということで、したがって清算所得に関する課税分を調整しようと、こういう趣旨でございます。
  57. 井上計

    井上計君 そこで、ちょっとお伺いしたいのですが、ちょっと私のこれは疑念なんでありますけれども、そうすると、現在の通達に基づいての各資産の評価ですね。その場合、総資産から控除する負債の評価方法が実際はやはり問題が起きておりますが、また起きてくると思いますけれども、その場合、具体的に申し上げますと退職金の計算ですね。現在では、自己退職の場合と、会社の事情によっての退職という場合と、これまた大幅に当然違っております。ところが、実際に退職金の引当金として認められておるのは、二分の一ぐらいしかないということですね。実際に従来のなにからいきますと認められておるのが。そういうケースが多いと思います。ところが、会社都合で退職ということになりますと、計算上その四倍くらい出すということになります。ところが、この純資産の退職金の負債控除は認められておる範囲内ということになりますと、これはいまちょっと申し忘れましたが、前提としては、先ほど申し上げましたような創業者社長が亡くなって、もう必然的に事業規模を縮小する、したがって事実上清算に近いような形での縮小が行われるという前提としてですがね。その場合に、退職金の負債控除が大幅にふえるということ。それからたな卸し資産あるいは設備等の評価額が簿価よりか相当また低くなる。縮小ですから、設備についても、事業規模をこのままやっておりますと使える設備でも縮小のためにはスクラップになるということもあります。それからたな卸し資産にしても相当減額される。あるいは、売掛金等について、これまた縮小ということになりますと、事実上回収ができない、あるいは半額回収というふうなケースも事実ありますけれども、そういう場合の純資産が相当違ってくるわけですね。ところが、現在の通達等によりますと、これはやはり認められていないということになるかと思いますが、その点はどうでしょうか。
  58. 水口昭

    政府委員(水口昭君) 相続税の基本通達と申しましても、やはり法律の下にある基本通達でございますから、現行の税制で認められている範囲内で通達も認めるということになっておるわけでございます。
  59. 井上計

    井上計君 これはいまそれらについて事細かく今後どうとかこうとかいうふうなこととちょっと違いますけれども、先ほどお話しいただきました基本通達、さらにまた近く改正をしていただくということであります。そういうふうな改正の中にも、いま私が申し上げましたような点も十分織り込んでいただきますように御検討をあわせてお願いしておきます。  そこで、大臣にちょっとお伺いいたしたいと思いますが、租税特別措置法の農地等についての相続税の納税猶予という点がございます。まあその租税特別措置法の農地の納税猶予がなされましたとき、現在とは食糧事情あるいは日本の農業政策も大分変わっておりますけれども、現在でも中小企業から見ますと農地相続については相当な恩典が与えられておるわけでありますけれども、現在時点においてこの問題については大臣はどういうふうにお考えでおられますか、御所見を伺いたいと思います。
  60. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま、農業につきましては、相続の場合あるいは生前一括贈与の場合に、納税猶予が認められているわけでございます。その考え方は、一つは農地法、それから一つは農業基本法の関係でございます。農地法は御案内のように所有者と経営者の分離を原則として禁止しておりまして、農地の所有者は経営者でなければならぬということを明らかにしております。しかし、農地法によりましていわば非常に面積の小さい自作農がたくさんできたわけでございます。民法の相続法が変わりましていわば均分相続になったわけでございますので、したがいまして、農地がこれ以上細分されたら農業経営が成り立たぬことはもう常識であるわけでございます。いまのままの経営面積でも世界の農業に比べまして反当たり収量は非常に多いにもかかわらず生産量当たりのコストは世界の何倍というところに日本の最大の農業問題があるわけでございます。したがいまして、農業基本法におきましては、いまの民法の相続関係をも考慮して、そして農地の分割が事実上行われないようにという趣旨を踏まえたのが農業基本法の基本精神になっているわけでございます。その問題はやはりわが国の農業の特性であるということは遺憾ながら認めざるを得ないのでございます。  その点に立脚いたしまして、相続の場合、贈与の場合に、いかに措置すべきであるか。贈与の場合には、だんだん後継者が都会に行くという状況がありますので、お父さんが目の黒いうちに長男に譲りたいというときに贈与税をかけますと、これはもう大変な話になるわけでございますので、その間猶予をしようと、こういうことにしているわけでございます。  それから相続の場合の問題はやや違う角度の問題がございまして、一つはかつて土地ブームのときに現に農業を営んでいるにもかかわらず宅地価格の値段が農地に全部及んだのでございます。当然その場合にその農業を営んでいる人に相続が起きます。宅地化を反映した値段そのままで評価いたしますと大変な値段になるわけで、東京近郊では坪六十万とか八十万とかいう金額になるわけでございます。一町五反ぐらい経営をしておる場合を考えますと、そんなもので評価されたら恐らく税金で七割ぐらい持っていかれることになるわけでございます。当然農地を分割して譲渡しなければ納められない。こういう非常に宅地化の傾向によるところの農地の価格を相続のときにどういうふうにやるべきか、その調整問題としてできましたのがいわば農家の相続税の徴収猶予制度でございまして、御案内のように、二十年間もし続けるのであれば、一応は時価で計算した税額を一方に出しまして、他方においていわば農業投資価格と申しますか、農業として成り立つ価格、それを一つ別に計算いたしまして、その差額を納税猶予をいたしましょう。そのかわりに、それは二十年間やってください。もしその二十年間の間に二割以上を超えてやった場合には、徴収猶予を取り消して、差額については本税並びに利子税いただきますと、こういう徴収猶予の基本的な制度をつくったのでございまして、現在でもやはりそれはいまの農業政策との整合性から申しまして十分な理由があるのじゃないだろうかと私は考えているわけでございます。
  61. 井上計

    井上計君 農地の相続税の納税猶予等については御所見伺いました。  そこで、多少異なる点もありますけれども、いま特に大臣お答えいただきました農業の総合政策から考えると整合性があると、したがって現在でもこれは当然必要であるというお考え、私もこれについては異論ございません。そこで、中小企業政策ですね。中小企業政策との整合性ということも、これは個人、法人を問わず、中小企業の相続あるいは生前贈与というものがもう少し特例がつくられてもいいのではなかろうかと、こういう考えでおるわけでございます。といいますのは、中小企業基本法からまいりましても、あるいは近年十数年来の中小企業近代化促進法等からまいりましても、零細な企業ができるだけ共同あるいは合併等していく、そうしてある程度の企業規模を備えることによってさらに合理化、近代化を推進していく、こういうふうなことが非常に強く政府の政策として掲げられ、またそういう方向に向かって中小企業者は努力をいたしておるわけであります。ところが、実際に現在の相続等から考えてまいりますと、農地が細分化されることを防ぐということが一つの大きな農地の相続の特例でありますが、このままでまいりますと、中小企業の要するに経営が細分化される、あるいはまた事実上経営ができなくなるというふうなケースがこれまた発生しておるんですね。  これは大臣よくおわかりでございましょうが、具体的に例を申し上げますと、ここに一つこういうふうなケースを想定してみたいと思います。戦前からおやじさんが一生懸命努力をして、ある企業を営んでおる。まあ法人、個人を問わずでいいと思いますが、その方がいまもうかなり老齢である。仮に八十歳といたしましょうか。そうすると、二十年前六十歳ぐらいから第一線を退いておる。その長男がおやじさんを助けてというより、むしろ二十年来この長男が中心になってこの事業をやっていた。相当発展をした。しかし、日本の家族制度等の感じからいきまして依然としておやじさんが亡くなるまではおやじさんの名義にすべてなっておる。しかし、実際にはその事業は長男がやって発展させてきたと、こういうケースがありますね。ところが、おやじさんが亡くなると、民法上相続の均等配分等からいきまして、次男なり三男なり、学校を出て他の職業についておる、この二十年来全然というか、もうずっと生まれてから家の事業の発展には全く寄与していない、あるいは娘の場合には他家に嫁いでおる、そういう人たちも、二十年来あるいはもっと長くおやじさんと一緒に発展に寄与した長男も、実は同じ相続権があるわけですね。きょうだい仲が大変円満で、いやもう兄貴が一生懸命やったんだから、当然兄貴が全部継承すべきだ、われわれは相続権の放棄をしようというふうなことであれば問題がありませんが、最近往々にしてそういうふうなことは少なくなりまして、当然自分も同じように権利があるんだと、だから直ちにそれらのものを処理して平等に相続をさせろと、こういうふうな要求が強くなって、やむを得ず店舗を売ったり、あるいは事業を縮小、解散をしたりというふうなケースが実はあるわけですね。やはり今後こういうふうなものが発生すると思います。そこで、そういうふうな問題についての配慮も私はこれからぜひしていかなくてはいけないではないかというふうに考えますが、大臣はどうお考えでございましょうか。一つのケースとして申し上げたのですが、この類似したケースはずいぶんたくさんあると思うのですが、どうお考えか、御所見をお伺いしたいと思います。
  62. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) そういう場合が絶無だとは私は申し上げないのでございます。ただ、税制とのかかわり合いがどこに出てくるかという問題になりますと、中小企業の場合と農業の場合の生産手段というものが全く違うわけでございまして、片方は何といっても農地が生産手段の中心をなすわけでございます。しかも、農地法におきまして所有者と経営者の分離が原則として禁止されている。しかも、相続によって分割相続を現物でされますと、これは大変な話になるわけでございます。そういう点を踏まえての相続税法あるいは贈与税法の特例を設けているわけでございます。  そういう観点にしぼって申しますと、いまの中小企業の場合、所有と経営の分離というものが別に禁止されているわけではございませんし、むしろ方向から申しますれば、どちらかと申しますれば、企業の合理化というのは規模を拡大することによりましてそして競争力をつけていくという方向にあるわけでございます。したがいまして、農業とは違うわけでございますし、また生産手段も別に農地というようなものがないわけでございます。したがいまして、会社経営であれ、あるいは個人経営であれ、その場合は農地とは基本的に法制のたてまえが違っているわけだろうと思うのでございまして、相続を契機にして相続人の間で争いが起きるということまでそれを税法上考慮せいということはなかなか無理ではなかろうかと思うのでございます。  なお、相続の評価一般につきましては、御承知でもございましょうけれども、これが財産を財源にしておる税でございますので、それだけやはり非常にかた目に評価していることはもう御承知のとおりでございまして、恐らくいまの土地等につきましては公示価格の六掛けか七掛けぐらいになっているのじゃないかと思いますけれども、そういった現実的な問題として全体として無理がかからないように評価をさしていただいているということで、農業のような特例を中小企業あるいは二次産業、三次産業にも設けにゃならぬということには直ちにつながらぬのではなかろうかと思うわけでございます。
  63. 井上計

    井上計君 大臣のおっしゃることは私わからぬわけじゃないんです。また、いまお話しいただきました中でのすべてが相続争いというふうなことになるということを私も考えておりませんが、しかし、そういう場合が往々にしてあり得るし、また、核家族というふうな形の中で従来のような家族制度というふうなものが相当大幅に違っておりますし、また、違っていきますから、そういうケースがふえるであろうという一つの前提のもとに、今後こういうことの対策もやはりあわせ考えていく必要があるのではなかろうかと、こういうことを申し上げているわけですね  いまお話しいただきましたように、所有と経営とが分離されるということがある意味では好ましいというお話がありました。これはある意味では好ましいというふうに思います。ところが、現実に所有即生産というふうなケースが中小企業に非常に多いのですね。たとえて言いますと、一等地の目抜き商店街に店舗を構えている者が、これがどうしてもやっぱり均等相続のためにこれを売らなくちゃいかぬ、自分の相続分だけで同じ営業をやろうとしても、これはもう二流、三流の商店街に行かなくてはいかぬということになりますと、そこに大幅に生産といいますか営業実績が変わってくる、これはもう明瞭であります。製造業の場合でも当然そういうようなことがあり得るわけでありますから、この問題についてこれも余りまた詰めておりますと時間もありませんし、また非常にむずかしいケースがありますし、また予測しがたいケースがあるわけでありますから、今後ぜひこれらの問題を含めて御検討をいただきまして、私は、中小企業の後継者育成政策というものがもう早くから政策として示されておるわけでありますから、そういうような育成政策のためにも後継者に対する特別控除制度といいますか、そういうようなものも一つ考えてもいいのではなかろうかというふうに思いますし、また、農地と同じように、さっき申し上げましたようなケースで、事実上は長男が本当に過去十数年来、二十数年来中心になって事業を発展さしたというふうなそういうもの等については生前贈与の特例等についても設けてもいいのではないかと、こういう考えを持っておりますが、非常に重要な、またむずかしい問題でありますので、ぜひそれらのことにつきましても今後の検討課題としてぜひともお取り上げをいただきたいというふうに思いますが、いかがでございましょうか。
  64. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 井上さんのお話でございますので、検討は今後続けさしていただきたいと思います。  いまの相続税法は、御案内のように、課税最低限の問題がもう中心問題でございます。恐らく、私たち見ておりますと、全体の相続件数のうち、いま二、三%ぐらいが課税ケースになっておって、九七%はほとんど非課税の相続の問題でございます。国際的の態様から申しますと、日本の相続税は、まあそれは財産との相関関係がございますけれども、それほど課税最低限の関係で申しますと重いとは考えていないのでございます。そうしてまた、日本の相続税法は現行の相続法との関係を非常に考慮しておりまして、財産が決まり、そのときの相続人の数が決まりますと、自動的に総税額が決まってしまう仕組みになっております。そうして、それは実際には長男にみんな譲ってしまったということになりますと、それは長男からいただく。それから実際にはまた相続分のとおりにはいかなかったということになりますと、総税額を決まったものを実際の取得価格に案分していただく、そうしてその間連帯納税義務でつないでいくという仕組みでございまして、世界でもこんな相続税法は非常に珍らしい。ということは、日本はいろいろな財産制度について民法が余り規定しておりませんし、そういう慣習がないところから、日本の現実の相続のあり方、現実の形態に即してできた相続税法であろうと、このように評価しておるのでございます。  やはり相続を機会にいたしまして企業がつぶれるというようなことは本当に好ましいことではございません。できるだけ配慮をして、いまの相続法あるいは民法の改正という問題もすでに法務省においてやられておるわけでございまして、それらの点等あわせながら並行的に今後とも検討を進めてまいりたい、かように考えております。
  65. 井上計

    井上計君 ありがとうございます。大蔵大臣は大変御専門家でおられますだけに、非常に前向きにいろいろとお答えいただき、また御検討いただくというふうなお答えをいただきまして、大いに期待をいたしております。  そこで、先ほど直税部長からちょっと御説明をいただきました延納制度についてであります。一、二希望を申し上げておきたいと思いますが、先ほど私が申し上げましたような零細株主ではありません。それからもう一つは、同族株主であって零細でない、しかし、実際にも役員となる可能性も全くないという相続した株主が出てきますね。さっき申し上げましたように女であるとか、あるいは身体的に若干障害がある、ただ残された遺産としての株を持って若干何がしかの配当を会社から受けながら生計を維持していくというケースが出てくるわけですね。そういう人たちに対する株式を担保としての延納ということ、これは今度認められるわけであります、長期の延納が。これは大変結構でありますが、その場合の利子税が、若干不動産の割合等によって違いますが、五・四ないし六・六ということになってまいりますが、そこで、中小企業の同族法人の配当というのはせいぜい年一〇%ぐらいですよね。そうすると、一〇%で利子税を六・六%払うと事実上残るものはないと、こういうケースも出てくると思いますので、これはきょうお答えということじゃなくて結構でありますけれども、今後の御検討の中でこの利子税についてのこれももう少し配慮する必要があるのではなかろうか。大変細部にわたって恐縮でありますが、これが一つ。  それからもう一つは、今度は物納の場合の処理方法、先ほどお話がありました物納の場合の処理方法、これをぜひ慎重にやっていただくということと、ある程度そこに規定づけたものをあらかじめおつくり置きいただかぬと、これは大変なことが発生するという気がいたします。当然それは縁故関係に対しての買い戻しといいますか、そういうふうな売却処理ということになろうかと思いますけれども、その場合に、縁故関係とは何ぞやということもになってまいりますし、それからまたその処理いかんによりましては会社乗っ取りというふうな形にもまたこれがエスカレートするというふうな懸念もあろうかと思いますが、そのときには十二分にその会社の経営者の意見なりあるいは意思なりを尊重する。そうして、願わくは、そのときに、現行法ではちょっとやや問題があるかと思いますけれども、会社がそれらのものを買い取るというふうなこともあわせて検討課題の中に入れていただいたらどうであろうかと、こういうふうに思いますが、直税部長、いかがでございましょうか。
  66. 水口昭

    政府委員(水口昭君) ただいま延納の場合の利子税と、それから物納と、二つのお尋ねがございました。  前者の利子税につきましては、これは税法で何%というふうに決まっておるものでございますから、執行官署としてはそのとおりやらざるを得ないと、こういうことであろうかと思います。税制の問題であろうかと思います。  それから後者の方でございますが、これは先生御承知のように、この物納に関しましては物納財産を収納するのは税務署でございますが、これを管理し処分するのは財務局でございます。そこで、国税当局だけの問題ではないということで国税庁におきましても本件につきましては大蔵省の理財局といろいろ相談をしながら進めておるところでございます。それで、従来に比べて弾力的に取り扱うということは先ほど申し上げたとおりでございますが、ただいま先生御指摘の点については、これも一つの問題点であるということで国税庁から理財局ともよく相談をしておるところでございます。
  67. 井上計

    井上計君 次に、五十三年度の税制改革の中にあります投資促進税制についてお伺いをいたしたいと思います。これも先般の一般質問の中で私は大臣にちょっと簡単に質問いたしました。大臣からそのときのお答えは、もうかっているものにボーナスをやるということについてはかえっておかしいという論理もあるんだと。それらのことを考えると、私が提案をいたしました初年度特別償却、これは中小企業と限定して申し上げますが、特別償却との併用は全く考えていないと、こういうふうな、はっきり申し上げると味もそっけもないような御答弁でありましたが、これは蒸し返しをして恐縮ですけれどももう一度お伺いしたいと思いますが、そこで中小企業の投資促進税制が五十三年度は行われるわけでありますが、それについて当局としてはどれぐらいの減税額といいますか、どれぐらいを予想しておられますか、お伺いいたします。
  68. 米里恕

    政府委員(米里恕君) 投資促進税制でございますが、私ども一応見込んでおります五十三年度の減収額は約千百六十億円でございます。一方、もしこの投資促進税制を行わないということになりました場合には、この対象機械の中で特定設備等の特別償却の適用がございますので、その特定設備等の特別償却の金額を計算いたしますと、約七百八十億円になります。したがいまして、千百六十億円マイナス七百八十億円ということで、今回の投資促進税制によります減収額は実質三百八十億円というふうに見込んでございます。
  69. 井上計

    井上計君 いま御説明いただきました千百六十億円というのは、中小企業だけじゃなくて大企業を含めてでございますね。
  70. 米里恕

    政府委員(米里恕君) 全体でございます。
  71. 井上計

    井上計君 そうすると、この千百六十億円のうち、中小企業分についてはどの程度と予想しておられますか。
  72. 米里恕

    政府委員(米里恕君) 今回の投資促進税制の対象になります機械設備の中で約三分の二が中小企業関係でございます。
  73. 井上計

    井上計君 そういたしますと、三分の二といいますと大体約八百億ぐらいですか、中小企業関係はね。そこで、いま、投資減税がないとすると特別償却は七百八十億円と、こういうお話でありましたが、この七百八十億円のうち中小企業勘定はどれぐらいという見込みですか、これは全部ということですか、ちょっとそれをお伺いいたします。
  74. 米里恕

    政府委員(米里恕君) 中小企業だけを取り出しまして特に計算をしていないわけでございますが、一つの御参考といたしまして中小企業等の機械装置の特別償却に伴います減収額は三百九十億円でございます。ただ、それ以外に、一般的ないろいろなその他の特別償却の中で中小企業部分が入っておりますから、厳密に言いますと、それぞれそれをピックアップしてこの三百九十億にさらに足さなければならないということになろうかと思います。
  75. 井上計

    井上計君 これは、大臣ね、率直にお伺いをしたいと思うのですけれども、私は、いま御説明いただきました数字を見まして、もちろん財源の問題もこれは一つ理由があると思いますが、同時に、先般お答えをいただきしたもうかっているものにボーナスをやることはけしからぬという考えがあるということがあるようです。私、それはちょっと違うという気がするんですね。といいますのは、おととしあるいは去年度ですね、五十一、五十二年度におきまして中小企業が先行き不安ということから実は設備の更新をうんと手控えをしているわけですね。ところが、ここで投資減税が出る。一つはこれによってかなり景気浮揚効果があるというふうなことで期待をしておるものが相当いるわけでありますが、現在のところからまいりますとそれほど大きな効果がない。中小企業に対してこういうふうな優遇措置をとるから、景気浮揚のためにもぜひともこの際入れろというふうなどうも奨励するような効果がないのではないかという気が私はするわけなんです。  そこで具体的に、これは私の計算でありますから若干違うかもしれませんが、まあ中小企業と言ってもそれはピンからキリまでありますけれども、現在の時点で一番多いのは税引前利益が一千万円程度の企業が非常に多いわけです。それらの企業が実は設備更新、設備投資というふうな意欲を一番持っておるわけです。その税引前利益一千万円という企業が仮に三千万円の設備を購入をしたと考えますね。その場合に、投資減税によっての実は恩典がどれくらいになるかということをざっと計算すると、この席上で計算したので若干ずさんですから違うかもしれませんが、大体三百十万円ぐらいの納税額になるんですね、一千万円の利益といたしますと。そうすると、二割でありますから、二割を超えてはいけませんので、大体六十二、三万円の減税額になるということになります。そこで約二百五十万円の納税額になるわけですね。来年またもう二割、三年間繰り越しですから、三年たちましても実はこれが三千万円の一〇%である三百万円の減税の恩典を十分使いこなせないというケースが出ると思うのですね。それはことしそういう設備を入れたから来年もっと利益があるということもありましょうけれどもね。ところが、特別償却、五十三年度から六分の一になりましたけれども、六分の一の初年度特別償却を使いますと、三千万でですから単純に言って五百万円が特別償却される。そうすると、税引前利益が一千万が五百万に減るということになると、五百万の納税額というものが大幅に下がっていく。これは、片方は繰り延べですし、片方は減税ですから、その性格は違いますけれども、とりあえず現在の時点、今年度あるいは来年度だけ考えたら、特別償却の方がいいなあという計算が出てくると思うのですね。それで、本当に景気浮揚ということをお考えをいただき、また現在の不況の中で苦しんでおる中小企業に少しでも合理化、体質改善というふうなことを考えると、私はいま一度特別償却と投資減税との併用ということをお考えいただく必要があるというふうに思うのですが、大変しつこいようですけれども大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  76. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) この問題は政府の税制調査会におきましてももう賛否両論ありまして、まあいかに景気対策が重要と言ってもこの種の永久免税はやるべきではないという主張も半ばに近くあったと聞いているわけでございます。しかし、一方におきまして、こんな不徹底なことではいかぬので思い切って投資減税をやるべきだという意見もありまして、いろいろやった一種のまあ税制調査会のコンセンサスが、こういう、何と申しますか、負担の公平に留意しながらしかし景気対策上設備投資減税を一部取り入れようという考え方になっています。その場合、いわば大企業とか好況業種に対してメリットを与えるものは困るということが対象設備の選定になりまして、省資源エネルギーとか、あるいは公害防止とか、中小企業は何でもいいだろうと、こういうことに決まったと理解しているのでございます。したがいまして、そういうことから申しますと、いろいろな場合があると思うのでございます。いま井上さんがおっしゃったようなケースも場合によって考えられないことはございません。その場合は、委員自身もおっしゃいましたけれども、最終免税とそれから繰り延べでは全く違うわけでございまして、いわゆる繰り延べというものの本当の減税効果というのは、法人税に対する利子部分だけは最終免税になっていると言わざるを得ないのでございます。最後まで計算いたしますれば償却額は同じになるわけでございますから、毎年毎年の法人税に対する利子税分だけが事実上軽減されるということになるわけでございます。今度の分はこれは永久免税であるわけでございますから、その比較をとるときにどういう比較をとるかということで大分違うと思います。もちろん、いやそんな先の話でなくてことしが大事なんだという……
  77. 井上計

    井上計君 私が言うのはそれなんです。
  78. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 中小企業の方はそういうこともあると思います。ただ、なかなかそういう個別事情について税というのは小回りがきかぬものでございますからグロスで見ているわけでございまして、先ほど政府委員から答弁いたしたのでちょっと見ますと、今度のグロスの減税額のうちの三分の二は中小企業だ、一方特別償却による減収額というのは三百九十億プラスアルファといいますから、差し引きどっちがメリットが多いかというと、中小企業の方がグロスでは多いはずでございます。ですから、税としてはこの辺が限界かなという実は感じがいたしておるのでございます。意見は私は両方あるだろうと思います。設備投資減税をもっと勇敢にやれというのと、いやしくも不公平税制を是正していくという基本的方向に反しておるんだから今度のようなものもやるべきではないという主張と、税調内部でも両方ありまして、最後の合意がここに達したということで、御理解賜るようお願いいたします。
  79. 井上計

    井上計君 大臣のお説またお考え、よくわかるわけでありますが、先ほどちょっと大臣も言われましたが、中小企業はこのような不況の中で、切実な問題としてよく引くことわざにありすけれども、先のごちそうよりきょうの茶づけの方がありがたいんだというふうな感じも非常に強うございまして、あえてそういう声が非常に強いということを私が申し上げたということでございますが、当面の問題としてはいろいろとお説のような考えも当然私も理解できますが、特にこの際一体今後の税制改正等の中でさらに五十四年度はどうなるかということはもちろん問題があろうかと思いますが、御検討いただきたいというふうに思います。  時間がなくなりましたので、幾つかお伺いしたいことがたくさんあったのですがかいつまんで申し上げますと、五十三年度の税制改正要綱の中に「その他」の中に「減価償却資産の一部について、耐用年数を実情に即するよう改める。」と、このように記載をされております。そこで、製造業の機械等の耐用年数の問題でありますが、事実上は現実的に照らしますと非常に長いというふうなものが相当あります。これは大臣のお立場でまた違う御意見があるかもしれませんが、私どもは実際に中小企業団体の運営をし、中小企業の指導をいたしておりますと、実は五年ぐらいで陳腐化して更新をする。ところが、まだ償却資産がずいぶん残っている。そのために新しいまた借入金が発生して自己資本比率がますます低くなる。こういうふうなことで経営が悪化しているというケースが非常に多うございますが、今後の改正の検討の中でやはり実情に近づいたような法定耐用年数をぜひお考えをいただきたい。これは要望いたしておきます。  それからその次に、中小企業に対する課税の適正化ということも、これまた不公平税制という面からやはり重要な問題だというふうに思います。小さな問題でありますけれどもちょっと申し上げますけれども、中小企業団体が設置いたしますところの福祉施設、これが、まあこれは税と違いますけれども、高度化資金並みの貸付利率に当然してもいいと思うのですが、現在かなり高い利率になっておりますが、これの引き下げについての御検討をお願いいたしたいと思います。  それから同時に、それらの中小企業団体の設置する福祉施設については、不動産取得税あるいは登録免許税、まあ地方税の関係でありますが、固定資産税、これらは当然免除されてしかるべきではなかろうかと思いますが、現在課税されておりますが、これについてのすぐ御検討もお願いいたしたいと思います  それからもう一つは、さらに中小企業団体中央会、これは法に基づいての団体でありますが、これが固定資産税をかけられておるんですね。ところが、一方、商工会議所あるいは商工会、商工組合連合会は固定資産税が免除されておるんです。似たような目的でありますが、これはやっぱり不公平ではなかろうか、こういう論理もありますのでこれもひとつ御検討をいただければというふうに思います。  それからもう一つ、さらには、これも長年われわれが主張し、要望しておりますが、若干の改善がなされましたが、いまだになされていないのですが、中小企業団体の専務理事、常務理事という役員がおります。ところが、それらの中には性格が二つありまして、最近はやはり実務家というふうな面が重要になってまいりますから、職員から上がったいわば事務局職員がそのまま専務理事になっておる、常務理事になっておるというふうなケースが多いのですね。ところが、それらの人たち、使用人同様の役員に対しての賞与あるいは退職給与引当金等は損金算入を認められていないわけですが、これについては当然損金算入を認められるべきだというふうに考えております。  それから中小企業の体質を改善をするためには、倒産防止、あるいは事業転換、景気変動等のための積立金制度を創設して一定限度額を損金扱いにぜひすべきである、こういう考えも持っております。  それからちょっと関連いたしますけれども、中小同族会社の内部留保に対する留保課税、これもやはり中小企業の育成、体質改善というふうな国の政策との整合性から考えますと、この時点で検討を要する問題ではなかろうかというふうに思います。  それからもう一つは、商工中金や信用保証協会に対して抵当権の設定が非常に多いわけですが、これらについての登録免許税は減免されてしかるべきではなかろうかと思いますし、さらに地方公共団体であるとか政府系の金融機関等に対して中小企業者が契約します場合に金銭消費貸借契約書の印紙税ですね、これらもやはり免除されてもいいのではなかろうかというふうに考えております。  時間がなくなりましたので、ずっと私の要望点を申し上げました。五十三年度のもちろん問題ではございません。時期的にそうではございませんけれども、当然今後不公平税制あるいは税の適正化でいろいろなものが検討されるわけでありますが、五十四年度には、そういうふうな多くの中小企業者の長年の要望がずっと出ておりますが、改善されていない面等につきましてぜひ御配慮をいただきますようにお願いして私の質問を終わりますので、総括的に大臣の御所見をお伺いできれば大変幸せでございます。
  80. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま井上委員の仰せられたことにつきましてはわれわれは絶えず検討しているところでございますが、引き続き検討してまいりたいと思います。  ただ、御承知願いたいのは、地方税も含めてでございますが、たとえば登録税、印紙税、固定資産税、不動産取得税、これはみんなバランスの問題が非常にあるわけでございまして、一つ崩しますともう全部崩れてしまうという性質のものでございます。何と申しますか、所得税のような所得課税と違いまして、一種の流通税であってみたり、あるいは資産の保有課税であってみたり、あるいは取得課税であってみたりする関係上、そうなるのでございます。ですから、まあ平たい言葉で申しますと横並びの関係が非常にむずかしいということはひとつ御理解賜りたいのでございます。検討は引き続きやってまいりたいと思います。
  81. 井上計

    井上計君 どうもありがとうございました。
  82. 中村太郎

    主査中村太郎君) これにて大蔵省所管に関する質疑は終了いたしました。  以上をもちまして本分科会の担当事項であります昭和五十三年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、経済企画庁、科学技術庁、大蔵省及び通商産業省所管に関する質疑は終了いたしました。  これをもって本分科会の審査を終了いたします。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを主査に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  83. 中村太郎

    主査中村太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。   午後零時一分散会