○竹田
四郎君 私は、日本社会党を代表して、
昭和五十三年度予算三案に対して反対の討論を行います。
第一は、国際経済上の観点からであります。
政府答弁を通じて明らかになったように、予算編成の前提たる五十三年度経済見通しの算出基礎の基準価格は一ドル二百四十五円とのことであります。それか今日二百二十円をさえ割っている異常な円高になってしまっており、本予算の土台は全く崩壊してしまっております。これは七%の成長達成が困難になるだけでなく、経常収支六十億ドルも実現できず、景気回復の足を引っ張り、
国民の不安を一層強めております。私どもは特に円高対策を最重点として
政府の対策をただしてきたわけでありますが、
政府は、明確、有効な対策を示すことなく、見通しも確固たる腹構えも語らず放置していることは無責任きわまるものであり、強く難詰せざるを得ません。
総理の今日の態度で内外経済を運営していく限り、国際間に保護主義を助長し、日本への非難か集中し、国際経済の中で孤立を強め、日本経済の困難を深めるものと言わざるを得ません。
第二は、
総理の国内経済運営に対する姿勢であります。
総理は、円高のあらしについてこれを読めなかったとみずからの不明を白状されました。
財政政策についても脱兎のごとくその
財政信条を放棄し、ひたすら大
企業優先、産業偏重の景気回復を企図していることであります。いまや、内外情勢から新しい時代の流れに対応する経済社会の
あり方を求めるべきでありますが、
総理も、本予算も、数量的景気回復を求めることになっております。新しい発想の転換を図ることを私どもは強く求めてきたのでありますが、
総理か口で何とか言っておりましても、現実は高度成長時代への復帰、人間性無視、各階層の格差
拡大へ突き進むだけであろうと思います。
総理の経済理念は明治時代の発想にとどまり、経済の
福田も色あせたばかりでなく、全く運営を誤った予算と言わざるを得ません。
第三は、
政府及び
総理の
政治姿勢であります。
総理は、協調と連帯を本年も引き続き貫くことを施政方針で強調されました。事前に野党各党首と会談をされ、野党党首も明確に景気回復、雇用、福祉、減税、外交等について
政策転換を要求しました。一兆円減税、福祉年金のかさ上げ、生活関連公共事業などについて本予算は考慮を払っていないのであります。逆に、
国民に対し増税攻勢をかけてきております。こうした態度は、内需
拡大、不況克服、経常収支の黒字減らしにならないだけでなく、失業、中小
企業倒産、中高年齢層やハンディキャップを持った人々の不安をかき立てるだけであります。民主主義を無視し、官僚独善、大
企業本位、福祉切り捨てと言わざるを得ません。
第四は、中長期の展望を失った予算と言うべきでありましょう。
高度成長から安定成長軌道へ乗り移ろうとして模索を続けている日本経済にとっていまほどその
方向づけ、その中長期的展望が求められているときはありません。このことは世の識者のみならず、現に
企業を背負っている経営陣の一致した要求であります。これなくしては内需を駆り立てる設備投資も雇用の創出も在庫の積み増しも動き出しません。私たち社会党は、昨年の暮れ、党首会談において
政府に中長期の
財政計画の提示を求めたのもこの意味であります。しかるに、
政府側から示されたものは単なる試算数字の羅列であり、
政策的意図を明らかにした
政治的意味内容を持ったものではありませんでした。かかる子供だましのような官僚的試算を国会に提出するとは、
財政計画、経済計画の持つ意味合いについてことさらに目をつぶるものとしか思えません。
現在、
政府が国会に提出している国債の償還計画なるものが果たして
財政法第四条の要求している精神にマッチしているということは言い得ません。
政府が
財政再建を
国民とともに
考えるというのであれば、まずこのあたりから猛省をすべきであると
考えます。
第五は、
政策目標、内容に関してであります。
経済成長率七%、経常収支六十億ドルは本予算の至上命題であります。しかし、この数値は信憑性かなく、
政府の
政治的願望が先行した目標数値にすぎません。民間の九つの研究機関がこぞって実現不能と断定していることもゆえなしとしません。経常収支目標の達成いかんがあすの円相場にすぐはね返ってくる国際通貨状況から、いいかげんな目標では済まされないことは、
政府自身五十二年度の実績から見て身にしみているはずであります。
さらに問題は、七%達成のための
政策手段が相も変わらず公共投資一辺倒で、昨年来野党各党か叫び続けている減税による消費喚起策に一顧だに与えていないことは断じて承服いたしません。公共投資の景気浮揚に及ぼすいわゆる乗数効果は、高度成長時代に比べて少なくなっているというモデル数値が検出されているにもかかわらず、減税を採用しないことは、
福田総理の二宮尊徳的勤倹貯蓄至上の明治三十八歳の前時代的経済観のなせるわざとしか
考えられません。
政府は重要な目的として雇用の
拡大を掲げていますが、旧態依然たる後追いの労働
政策に終始し、前向きの雇用創出計画を
政府みずからが実施しようとせず、もっぱら民間の経済活動に依拠しようとする姿勢は、今日の厳しい雇用情勢、勤労者の置かれた
立場を
理解する
政府の態度とはとても申せません。
その他、
国民福祉の軽視、地方自治に逆行した
財政対策、憲法空洞化をますます助長する防衛
政策等について触れなければならない点がたくさんありますが、最後に、
政治と経済を混迷に陥れ、かつまた国際的信用をさえ失墜した
福田首相は速やかに挂冠し、民主的にして
改革的、大きく未来を展望し、決断力のある者に政権を素直に引き渡すことをお勧めいたしまして、私の反対討論を終わります。(拍手)