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国務大臣(村山達雄君) いま二つの問題について御
指摘がございまして、
予算編成に当たりまして基準為替相場二百六十二円、これは実勢に反しておるのでそもそもこの
予算編成そのものがいまの基準為替相場から言うと崩壊するんじゃないかというような御心配でございますが、これはそんなことはございませんので、いわば外貨建てで支払うものについてどのような
一つの基準を立てておくかということでございまして、
予算の中ではもうごくわずかな数字でございます。しかもこれは、いままでは三百八円で立てておりましたが、最近非常に円が変わってきましたので、ローリングシステムで
予算編成直前の六カ月の平均値によるということで、機械的に二百六十二円にしたのでございます。実際の支払いのときにはそのときの相場と二百六十二円、この差額は渡すわけではございません。あるものは剰余金として残りますし、あるものは不用として残るわけでございますので、そういう非常に技術的な問題でございますので、
予算の根本に関する問題ではないということを第一に申し上げておきます。
それから第二番目の、いままでの円高に対して
政府は無策ではないかと、こういう御
指摘でございます。私たちしばしば申し上げておりますように、為替相場というものはやはりそれぞれの為替市場の需給によって決まるわけでございます。言うまでもなく、それは経常収支のみならず資本収支も含むわけでございます。その相互の関係を見ますと、それぞれのインフレ率であるとか、あるいは購買力平価説という言葉であらわす人もありますし、あるいは競争力もありましょうし、いろんな理由で出るのでございます。
日本の場合何が基本的であるかと申しますと、やはりいままで内需の拡大がないために、競争力のついた
日本の企業が外にずっと向かっていった。で、アメリカの方は逆に多くの石油輸入を中心とする貿易収支の大幅な赤字、その問題から起きていることは当然なのでございます。したがいまして、基本問題といたしましては、やはりそこの市場関係の、実需関係の均衡を図るということが何といっても中心でございますので、基本
政策としまして内需の拡大を挙げておるわけでございます。それが今度の
予算編成にもあらわれておりますし、またこの間の公定歩合の引き下げをやったのもそのためでございます。また緊急輸入をやらなくちゃならないといっていま輸入をやっておりますのも、やはり基本的にその方向に向かっておるのでございまして、内需の拡大それから縮小均衡を来さない、こういう基本的な姿勢で向かっておるわけでございます。
それから第二の問題が、いまお話しになりましたそれにしても、短期的にいろいろ為替が変わることに対して一体どれぐらい変動為替相場の中で相対的安定が保てるか、これはおっしゃるように、それぞれがある程度中央銀行がそれぞれ乱高下がないようにやっておることは御
承知のとおりでございまして、
わが国もまたやっておるわけでございます。また緊急避難といたしまして、先般、外資の流入に対しましてかなりの措置をとりまして、それはそれなりに実効を上げておるということをこの前御報告申し上げたわけでございます。
それから第三の問題は、この際主要国の間、特に
日本、アメリカの間で原因は原因としてさらに何らかの認識の統一と、そして共同的な姿勢、心構え、そういう合意が得られる
余地があるんじゃないか。特に好むと好まざるにかかわらずアメリカは基軸通貨であるわけでございますから、これがアメリカとしてはいろんな言い分がありましょうけれども、もしそれが揺らぐということになりますれば世界の通貨不安を起こすということは当然考えられ得るわけでございますし、またほかの方々の国では石油の値上がりにつながるんじゃないかという心配さえしているわけでもあるわけでございましょうし、また、いろんな経常収支だけじゃなくて投資感情から言いましてもドル離れというようなことがひとり起きてきたら、ドルが私は十分機能しているとは思いませんけれども、もしそのようなことになったらいまよりもさらに悪い状態になることは当然だろうと思うのでございます。したがって
日本は
日本として、先ほど申しましたような長期、短期の
政策もやっておるけれども、アメリカも基本論ばかり言わないで、やはり問題は非常に心理的に影響もあるわけでございますから、アメリカはアメリカとしてこの際努めるところはあるんじゃないか。その辺のところで大体お互いに認識が深まりつつあるんじゃないかということを申し上げているわけでございまして、私たちは常時、機会あるごとにその種のことを言っているわけでございますが、この上とも進めてまいりたいと、こういう国際協調面、これが私は第三の
政策であろうと思っているのでございます。
いま吉田
委員から無策であったというおしかりを受けたのでございますが、私たちはそういう基本的な
考え方に立ちましてできる限りのことはいたしたつもりでございますし、今後もいたすつもりでございます。