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1978-03-28 第84回国会 参議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十八日(火曜日)    午前十時開会     —————————————    委員の異動  三月二十七日     辞任         補欠選任      福間 知之君     松前 達郎君      渡辺  武君     小巻 敏雄君      山田  勇君     下村  泰君  三月二十八日     辞任         補欠選任      玉置 和郎君     浅野  拡君      小巻 敏雄君     山中 郁子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鍋島 直紹君     理 事                 戸塚 進也君                 内藤誉三郎君                 中村 太郎君                 宮田  輝君                 竹田 四郎君                 吉田忠三郎君                 多田 省吾君                 内藤  功君     委 員                 浅野  拡君                 岩動 道行君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 小澤 太郎君                 亀井 久興君                 亀長 友義君                 熊谷  弘君                 下条進一郎君                 田代由紀男君                 成相 善十君                 林  ゆう君                 真鍋 賢二君                 三善 信二君                 八木 一郎君                 山本 富雄君                 高杉 廸忠君                 野田  哲君                 松前 達郎君                目黒今朝次郎君                 安恒 良一君                 相沢 武彦君                 太田 淳夫君                 矢追 秀彦君                 矢原 秀男君                 小巻 敏雄君                 立木  洋君                 山中 郁子君                 井上  計君                 下村  泰君                 柿沢 弘治君    国務大臣        大 蔵 大 臣  村山 達雄君        文 部 大 臣  砂田 重民君        厚 生 大 臣  小沢 辰男君        農 林 大 臣  中川 一郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        労 働 大 臣  藤井 勝志君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       宮澤 喜一君    政府委員        経済企画庁調整        局長       宮崎  勇君        経済企画庁物価        局長       藤井 直樹君        経済企画庁総合        計画局長     喜多村治雄君        経済企画庁調査        局長       岩田 幸基君        大蔵省主計局長  長岡  實君        文部大臣官房長  宮地 貫一君        文部省初等中等        教育局長     諸澤 正道君        文部省大学局長  佐野文一郎君        文部省管理局長  三角 哲生君        文化庁次長    吉久 勝美君        厚生省医務局長  佐分利輝彦君        厚生省社会局長  上村  一君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        厚生省保険局長  八木 哲夫君        厚生省年金局長  木暮 保成君        社会保険庁年金        保険部長     大和田 潔君        農林大臣官房長  松本 作衛君        農林大臣官房技        術審議官     川田 則雄君        農林省農林経済        局長       今村 宣夫君        農林省構造改善        局長       大場 敏彦君        農林省農蚕園芸        局長       野崎 博之君        農林水産技術会        議事務局長    堀川 春彦君        食糧庁長官    澤邊  守君        林野庁長官    藍原 義邦君        通商産業大臣官        房長       宮本 四郎君        通商産業大臣官        房審議官     山口 和男君        通商産業省貿易        局長       西山敬次郎君        通商産業省立地        公害局長     左近友三郎君        資源エネルギー        庁長官      橋本 利一君        労働大臣官房長  石井 甲二君        労働省労働基準        局長       桑原 敬一君        労働省職業安定        局長       細野  正君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        文部省体育局審        議官       宮野 禮一君        農林大臣官房審        議官       佐野 宏哉君    参考人        全国高等学校長        協会大学入試対        策委員会委員長  長谷部正治君        社会保障研究所        第二部長     地主 重美君        全日本農民組合        連合会会長    足鹿  覺君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○分科会に関する件     —————————————
  2. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。  本日は、お手元の質疑通告表のとおり、教育社会福祉及び農業問題に関する集中審議を行います。  それでは、これより教育問題に関する質疑を行います。内藤誉三郎君。
  3. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 まず最初に、長谷部参考人にお尋ねしたいんですけれども、私は最近の試験地獄を見ておって、もう日本教育は崩壊するんじゃないかと思うほど真剣に考えているんです。それは、御承知のとおり、塾が繁盛していま全国に五万と言われているんです。乱塾時代という。では学校とは一体何なんだろうかと思うほどで、それが極端に言いますと幼稚園、小学校から受験勉強です。人間形成というものが私はやられてないんじゃないかと思うんです。  六・三制は、教育機会均等ということで単線型に踏み切ったわけなんです。これは御承知のとおり戦前は複線型だったんです。ですから中学校へ行った者は全国でわずか八%です。その八%の中で大学高等学校専門学校へ行ったのは四、五%です。ですから、ほとんど大した競争はなかったんです。ところが、教育機会均等という名のもとに単線型に踏み切ったわけなんです。いまでもヨーロッパは複線型、アメリカ単線型です。それで見ておりますと、とにかくいま高等学校進学率が九三%です。それでこれが全部大学に押しかけているんですから、しかもなるべく有名校に行きたいというんですから、高等学校までは本当に試験地獄大学へ入ったら、私は勉強してないんじゃないかと、ほんとに思うんです。そういう意味で、もしこの入試問題ができないなら、これは大臣も聞いていらっしゃるけれども、私は六・三制を根本的に再検討すべきだと思う。そうでなかったら、日本教育は私は失敗すると思うんです。  そこで、最初アメリカがやったのは進学適性検査です。この進学適正検査は、結局、二次試験をやるために二重負担だということでついに廃止になっちゃったんです。その後、これは私も文部省にいたころ、実は能研テストをやって大学入試改善をしようと思ったが、当時、日教組の反対と大学の非協力でこれはつぶされたわけです。非常にいい成績を得たんです、これも。そこで、今度、入試センターを設けて共通テストに踏み切ったわけなんです。ところが、いろいろ問題があるんです。そこで、高等学校側としてはどうしてもらいたいのかということを、まず最初にあなたからお答えいただいて、その後、文部大臣も見えていらっしゃるから、質疑をしていきたいと思います。お願いします。
  4. 長谷部正治

    参考人長谷部正治君) 長谷部でございます。  いまの内藤先生の御質問でございますが、高等学校としましては、これまでの教育大衆化という中で、入試というものが非常に高等学校生徒の心身をむしばむといいますか、障害を与えているという状況になりつつありますので、これを何とか改善をして、本来の高等学校教育が正常に行われるように、そしてまた高等学校生活そのもの高校生が豊かに伸び伸びと送れるようにということの念願のもとに、大学入試制度というものを改善してほしいということを年来持ち続けてまいったわけでございます。  その趣旨といたしましては、一つには、方法論的には統一テストということをやっていただきたい。これはもう実は七、八年前の校長会の総会などで取り上げられた問題でございますけれども、その統一テストを行っていただきたいというようなこと。それから、学校から提出されます調査書というものを尊重してもらいたいということ。あるいは大学当局専門入試担当機関を用意してほしいというようなことを骨子とした要望を多年続けてまいってきたわけです。そういう中で今回の共通一次テストということが取り上げられ、実施という運びになったわけでございますから、私どもとしては、高等学校側としては、この共通一次テスト方式そのものについて基本的にはこれに賛意を表し、それを高く評価して、これが改善に資するものであろうという考え方のもとにこれに協力をしてまいりたいというふうに考えるわけでございます。  ただ、その実施に当たりまして幾つかの問題点がございます。たとえば共通第一次試験の問題で申しますというと、まず教科科目数五教科六ないし七科目ということでございます。これは大学の方のお考えからいたしますと、非常に広い範囲試験をやることの方が本人適性が見られるんだというお考えがあると思います。これは当然そういう考え方はございますが、いかんせん近年のこの受験生活といいますか、高校生受験に対する姿勢ということで考えますと、やはり何といっても科目数が多いということはそれだけ負担が大きいということにならざるを得ません。そういう意味で、私どもは、理科社会をそれぞれ二科目いま要求しておりますけれども、これをそれぞれ一科目ということにして、英語、数学、国語、社会理科五教科科目ということが高等学校としては適切ではないか、また、この五科目で十分に大学教育を受けるにふさわしい適性測定できるであろう、こういうふうに考えますので、この五教科科目ということを私どもは主張をしたい、お願いをしたいと思っております。  それから、第二次試験につきまして申しますならば、第二次試験は、御承知のように、第一次の方は共通第一次学力試験という名称でございますし、第二次試験の方はただ第二次試験と、こういう名称でございます。したがいまして学力に関しては第一次の方で徹底的にといいますか、十分に手厚い測定をしていただいて、第二次試験の方ではもっと学力以外の本人適性なり能力なりというものを測定をしていただき、そして従来は学力一本の選抜でございましたけれども、もっと多面的、多角的に本人能力適性を十分に一次と二次との両方を合わせて測定をしていただき、そして将来有為な学生選抜をしてもらいたい。したがいまして第二次試験につきましては、学力試験を課する場合におきましては、できるだけ専門的な、もうごく少数必要最小限の、せいぜい一ないし二科目程度のところにとどめておいていただきたい。そしてその他の能力面接なりあるいは小論文なり、あるいは技術を要するものにつきましては技能のテスト等を加えて多角的、多面的にやっていただきたい。  第三に、高等学校から提出されます調査書というものを十分に御利用願いたい、こういうようなことを願っております。  第四番目に申し上げますのは、従来の一期、二期校の問題がございまして、これが共通一次試験を行うに当たりまして一本化するという条件になっております。これにつきましては、きわめて素朴な要望でございますが、生徒なり父兄なりの考えの中には、もう一回の機会というものが従来あったのにそれが失われるということで何か非常に狭められた感じが与えられる、こういうことを申しております。これは一次、二次両方に合格してどちらかに入学せざるを得ないんですから、数学的に言えばこれは問題はないんだという専門の方はおりますけれども、心情的には、二回のチャンスが一回になったということは、これは確かに受験をする生徒にとりましてはかなり問題になることであろうと思います。そういう点を解消といいますか、幾らかでも機会を与えていく方法としまして、二次募集という制度をできるだけやっていただけないものか、こういうことを高等学校の方では考えます。  恐らく、合格を発表し、入学の手続を各大学がいたしましたときに欠員ができるに相違ない。その欠員状況を、これまではどのくらい欠員ができたかということを私ども承知することはできません。また、その欠員補充ということを各大学は行っていたかどうかも私どもにはわかりませんが、この欠員ができた場合に、それを公表していただいて、不幸にして第一回のチャレンジに失敗をした学生があった場合には、その補欠といいますか、欠員大学にもう一度の機会を与えられるということがありますならば、これは大変に幸せなことだろうと思います。現在、そういうことを計画をされている、考えておられる大学幾つかはございますが、きわめて少数でありますので、これをひとつ明確にしていただきますと、高等学校生徒には大変ありがたい制度になるのではないかというふうに考えます。  足切りの問題というのがよくございます。これは第一次のテストについて、あるいは第二次に関係することでございますが、足切りの問題につきましては、これはやはり私ども基本的には試験の平等な機会を与えるということ、一回の試験で、二回目の試験が受けられないということでは平等性が欠けますので、平等の機会を与えるということ。あるいは一次と二次と両方資料で、複数の資料選抜資料にしてもらいたいという、こういうような考え方からしますと、基本的には足切りというものはない方がよろしいんであります。ない方がよろしいんでありますが、しかし、実際問題として、多数の生徒一つ大学に集中した場合には、やはり二次試験選抜の業務が非常に煩瑣になるし、その結果、正確な選抜が行えないというようなことになるといたしますならば、これはある程度やむを得ないであろう。基本的にはない方が望ましいわけでありますけれども、具体的な場面になりましたときには、こういうこともあるいはやむを得ないかというふうに考えておるというところでございます。  また後ほど申し上げます。
  5. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 いま長谷部参考人から、一次の学力テスト五教科科目ということでしたが、これについて文部大臣いかがですか。
  6. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 長谷部参考人の御意見を承っておりまして、私ども、以前から高校側のこういう御要望十分承知をいたしているところでございます。もう内藤委員承知のとおりに、この共通第一次入試テストというのは大学入試制度大改革でございます。これはもう私が申し上げるよりも内藤委員の方がよく御存じのところでございますが、それだけに大学側が自主的に実に長い時間をかけて検討検討を重ね、その間、高校側の皆さんとも意見交換をする場を持ちまして、高校側の御意見も承りながら文部省もそれに参画をしてだんだんだんだん煮詰めてまいりまして改革された入試の新しい制度でございます。  高校側から、ただいま長谷部参考人からも、第一次の五教科科目五教科科目にする方が望ましい、こういう御意見があったわけでございますが、私どもも、そういう声を承知いたしておりますけれども、第一次は、参考人もお述べになりましたとおりにまさに学力テスト重点でございますし、内藤委員もうすでに十分御存じでございますけれども、つくってまいります試験問題そのものが、高校教科を基礎的に基本的に完全に理解をしていれば、及第点の取り得る試験問題に限定をしてかかるわけでございます。新しい改革された入試制度の一番大きな根幹になることでございますので、それだけに大学へ進みました後も高校生にとっては当然身につけていなければならない範囲試験問題を出すわけでございますから、五教科科目でという、大学側検討結果の長い年月の間研究研究を重ねた上での五教科科目ということで五十四年度初めてのこの共通テスト実施をしよう、そういう腹を固めたわけでございます。  このことに限りませず、冒頭に申し上げましたようなこれは大改革でございますから、今日いまなお大学側におきましては、大学協会において、あるいは入試センターにおいても、いろんなところで改革と今日いまなお取り組んでいる状態でございます。一回目の五十四年度が実施をいたしましたら、そのやり方がそのまま固定するものでもございません。結果を見ながら、さらに改善の道を進まなければなりませんことは当然のことであると考えているものでございます。
  7. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 大改革と言うが、まだ改革でないんですよ、大臣。また失敗するかもしれない。私は、このままいったら進適二の舞になりやせんかということを懸念しているんですよ。ですから新学制をしいたときに進適をやればよかったんですよ。これができなかったという、同じことを繰り返しちゃいかぬことをいま私は申し上げたいんです。そこで、もしこれができなかったら六・三制の根本的改革をやるかという、そこまで追い詰められているんですよ。そういう意味で私はこれは文部省も真剣に考えてほしい。  いまお話しの、これ二次試験ですよ。二次試験というのは、あんた一次で五教科科目がいいとおっしゃるなら、もう学科試験やらなきゃいいんですよ。なぜ二次試験学科試験をやるのか。私は学科試験をやる必要はないと思っておる。それは二次試験をやるのは能力適性を見るんであって、能力適性を見るんなら、まず一つ内申書、それから小論文面接、必要があれば音楽とか体育なんかは実技が必要だと、これだけでいいんですよ。なぜ二次試験をやるのか。私は学科試験をやる必要はない。これだったらもうまた試験地獄で、その試験が結局見ておると、難問奇問をいままでのように出したら、これはもうやめた方がいいですよ、失敗だと私は思う。そういう意味で私は二次試験はやめてほしい、全部やめてほしい。一次で五教科科目はわかるんですけど、いまのように平均三・九科目の二次試験をやるんだったらこれは失敗ですよ。大臣いかがですか。
  8. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 私ども文部省自身も長い間取り組んで検討検討を重ね、いまの教育の現状がこのままでは相ならないという気持ち内藤委員と何も変わらない気持ちを持っているわけでございますし、ただ、従来の大学入試制度というものがいまのままであっては断じていけない。これは教育をいたします側だけが考えていることではございません。先般の新聞の世論調査内藤委員承知でございますけれども、いろんな不安を持ちながらも、いまのままでいいとしている意見はきわめて少数意見でございます。何らかの改善が必要であるというのが圧倒多数に要求をしている受験生側の態度でもあるわけでございます。  いま、第二次試験のことで非常に厳しい御指摘があったわけでございますが、それぞれの受験生は、もう御承知のように、学部学科限定をいたしまして入学希望をしてくるわけでございます。大学側といたしましても、その受験生が選んでまいります、自分でこの道へ進みたいという決心をして志望してまいります学科なり学部なりの特性に応じて、必要な能力適性等をやはり見る必要があるという考えを持った大学が多かったわけでございます。小論文なりあるいは調査書十分重視をいたしますことが総合選抜趣旨でございますから、そうあらなければならないという原則を私どもは貫きたいと思いますけれども、それぞれの大学の自主的な判断の中には、大学によりましてやはりそういう学部学科特性に応じた能力というものも第二次試験判断をしたいと考え大学もあったわけでございまして、また中には、いま内藤委員指摘のような小論文なり、あるいは調査書なり、あるいは個々の面接なりで、それぞれの受験生特性を考慮をして入学を決定しようと決心をした大学もございます。  将来、大学入学後の学習にも必要なということを前提にしての二次試験学力試験がある大学において行われるわけでございますから、ここに難問奇問が出ることはこれは許しがたいことでございますし、大学当局側も同じ考えを持って、この第一回目の五十四年度の新しい試みに参加をしてきているわけでございますから、二次試験学科がまた難問奇問になるということを実は考えておりませんし、大学協会の中で検討しておられることも、やはり一次試験難問奇問から受験生を解放しようという趣旨で言っているのに、二次試験難問奇問で、高等学校で勉強しているだけではとても足りないということでは改革の意義がないということは大学当局が十分もう自覚をしていることでございますから、二次試験学力試験についても高等学校で決められた学習内容を理解しているということを前提にして、その限界の中での試験問題が各大学においてただいま検討されているところと、さように承知をいたしておりますし、さような指導、助言を続けてまいるということにいたしておるものでございます。
  9. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 従来は高等学校教育と言っても、もう高等学校学生たちはその大学の特殊なものをねらって受験勉強をしているんですよ。ところが、今度は共通一次テスト高等学校の全教科をやるんですよ、これは大変な負担ですよ。それなら大学の二次試験をやめてほしいんですよ、これは二重負担なんです。私はこれ、大臣、またあなたはそうおっしゃるけれども、あなたは三年も五年もやらないけどね、改革までやってほしいんですよね。私は必ず進適二の舞になると言っているんですよ。二重負担になる。  そこで、ことにこれは国立大学だから文部省指導権を持てばいいんですよ、国立学校ですよ、私立学校じゃないんですよ。ですから、二次試験については面接小論文ぐらい、あるいは内申書、必要があれば実技もいいですよ、その程度指導すべきですよ。平均三・九科目というのは文部省指導していない証拠ですよ、私は文部省の怠慢だと思う。大臣どうですか。
  10. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) お言葉ではございますけれども高等学校教科内容の全科目を修得することは高校生としてはするべきだと私は考えます。ただ、いままでのもう大学入学試験の問題というものが高等学校の全教科をマスターしても、それだけでは足りないところに非常に大きな弊害を生んできたわけでございます。長年の間、大学入試の問題というものがだんだんゆがめられてきたところに問題があったんではないでしょうか。もちろん進学率、進学する学生数もふえたこともまた一つの原因ではありましょうけれども高等学校の全教科をマスターしても、それでも大学入学試験には耐えられないというような状態を改善することを目的としているのでございますから、いまから、内藤委員文部大臣が断言しているけれども、だめだぞというきめつけ方は御勘弁をいただきたいと思うんです。  やはりこれは真剣に取り組まなければならない、本当にこれは大事な場でございます。大事な場だ、本当に大事な場です。受験生のみならず、国の将来にとってももう重大な時期でございますから、私どもも真剣に取り組んでまいりますし、国立大学のことでございますから、強い指導、助言を続けてまいりまして、国会の場でもいろいろ御議論があったことでございますから、国会の各党の先生方の御主張等も大学側にも反映させることも努力を続けてまいりますけれども、そうは申しましても、文部省のことであり、国立大学なのだから、言うことを聞かしてしまえということはちょっときつ過ぎはしないかという感じがするんです。やはり大学当局の自主的な判断というものも尊重しながら、もしも意見の一致を見なければ、議論に議論を重ねて、この制度の理想とするところを貫くということは、意見の一致点を見出しながら、文部省としては強い姿勢でひとつ改善に取り組みたいと考えます。
  11. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 文部大臣は余り教育御存じないんですよ。あなた、なぜ塾へ行っているの。高等学校の課程を全部マスターしていれば入れるんじゃないんですよ。もう進学教室を見てごらんなさいよ、真剣ですよ、これへ行かなければ大学へ入れないんですよ、いまのところ。それはあなた非常に甘いですよ、考え方が。  それで、私は、選抜ということは、これは何も学問の自由と関係ないんですよ、だから文部省が強い指導をしてほしいの、私は。国立大学でなければともかく、あるんだから、指導してほしい、これが一つです。  それで、いま小中学校の自殺者は多いし、乱塾時代で、あなたは本当に教育がこれでいいとお考えなのか。私は本当に情けないと思うんだ、日本教育。私は六・三制の失敗だと思って反省しているんです。だから私は罪滅ぼしのために国会に出ているんですよ。さもなければ、国会なんか来る必要はないですよ。ですから、これはひとつ真剣に取り組んでほしいんです。  あと時間がないから一つだけお願いしたいのは、この間から新聞にも出ているように、なぜあれをしないかと言うんですよ、子供たちに結果を知らせないか。私はこの間あなたの御答弁を聞いておって、学校差がある——あるのはあたりまえですよ。あるから進学しているんで、大学にも高校にも何十年、何百年の歴史があるんだから、それによって学校差があるのはあたりまえですよ。しかし、その学校差というのはいつも変わりつつあるんですよ。変わっているんだから、一生懸命やれば必ず学校差はなくなってくるんですよ。そういう意味で、私はやっぱり子供におまえ何点だということをはっきりわかったと、そうしたら何点ならどこの学校へ行っても無理だということを自分で考える。さっき高等学校足切りはいかぬとおっしゃるけれども足切りしなきゃたくさん来て困るですよ、これ。志願者が全部入っちゃうのですよ。そんなばかなことはできないんだから、たとえばうちの学校は九十点以上でなければ入れないと、いいですよ、それで。ぼくは定員の二倍か三倍ぐらいにしぼって、その中で能力適性をしっかり見てほしいんですよ。  いま、あなた、マル・バツですよ、これはどこだってマル・バツですよ。こんな試験をやっているところ、おかしいですよ、国立大学で。これでどこで能力適性を見れるかと私は言いたいの。ですから、ぼくはやっぱりきちっと点数は知らしてやって、それで自分が希望している大学にはこれは無理だと、無理なら無理であきらめればいいんですよ。どこへでもみんな行きたいところへ行くわけにいかないんだから。足切り高等学校は反対していらっしゃるけれども、私は仕方がないと思うんだよ。そうじゃなかったら選抜できないですよ。それから大学の方も全部知らしたらいい、子供に。それで過大な欲望を持っちゃいかぬですよ、みんな自分はできたと思っているからね。この点ちょっと最後にあなたにお聞きしたい。
  12. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 文部大臣教育をおまえ知らぬえというきめつけをなさいましたけれども、素人は素人なりに玄人がいままでやってきたことに批判を持つものでございます。いまのような塾のはんらんしている状態は絶対に許すべきではない。小学校、中学校高等学校生徒たちがいまのような受験地獄に置かれていることを絶対に放置してはならないことだということは、素人だときめつけられようと、教育をおまえ知らねえときめつけられようと、内藤委員と私はちっとも違った気持ちを持つものではありません。断じてありません。  それだけに真剣に取り組む決心をいたしておるものでございますけれども内藤委員のいまおっしゃいました足切りの問題も、原則的には足切りが好ましいものとは私は考えません。しかし、いままでの大学入試制度が長い間続いてきましたそれを受けて全く新しい制度をスタートさせることでございますから、大学によっては、やはりどれだけの受験生が来るのかということを、受験生高校側と違った意味での不安感も大学側にあることはもう現実問題としては否めない事実でございますし、非常に集中するであろうと考え大学が、従来の経験からして、やはりいまの五十四年度から行う新制度といえども足切りはやらざるを得ない。むしろその方がいい選考ができるという考えを持ちますことも否定もできないことであろうと思います。しかし、足切りが好ましいものではないという指導文部省としては今後も続けようと考えております。  さらに最後に、恐縮ですが、何でしたっけね、最後にこの点とおっしゃって私御質問いただきましたのは、何の点でございましたか。
  13. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 子供に知らせるやつ。
  14. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 一人一人の受験生たちに試験結果を全部通知ができて、自分の成績が明確にはっきりすることが私は好ましいことだと思います。しかし、それを行いますのに非常にむずかしい点が少なくとも五十四年度にあるわけでございます。  それは、一つは、いま大学に格差があってあたりまえだとおっしゃいましたけれども、やはり大学がそれぞれ特色を持った大学に生まれ変わる、むしろ私は生まれ変わってという言葉を使いますけれども、その努力をしてまいりましたし、五十三年度予算には相当大きな大学の側の特色を出すための努力をいただくための予算計上もいたしておりますように、大学の間の差というものをなくしていく、それも一つの大事な方針でございますから、そのことにも絡んでまいりましょう。  もう一つ申し上げますと、高校側の御要望がございましたので、第一次の入試の時期を後ろへずらせました。それで十分かどうかという御議論はまたあるかもしれませんけれども高校側の御要望にやっぱり大学側も沿って受験時期をずらしたわけでございます。そういたしますと、二次試験との兼ね合い、私学の受験シージンとの兼ね合い、こういう時期を考えますと、一人一人の受験生にその試験結果を全部通知することは時間的にもまた非常に危険を伴うことになってまいります。受け取れない受験生も出てくる可能性もあるわけでございます。したがいまして五十四年度から直ちに一人一人の受験生にその試験結果を通知をするということはいたさないという決断をせざるを得ません。  しかし、試験結果を発表いたしますのに、先般の試行のときに行いましたように、最低点と最高点と標準点だけを発表したのでは、これは試験を受けた受験生たちが、自分がどれくらいの試験結果を得たか、どの辺に自分が位置するかということすら判断することがむずかしいのは事実でございますから、ただいま大学協会並びに入試センターでそれの改善検討いたしてもらっております。そしてグループ的な点数といいますか、そういったものを、最低点と最高点と標準点のほかに、一緒に発表ができないものか。そういうことによって受験生が自分たちがどの辺に位置するかということが判断しやすいような発表の仕方をただいまさらに改善検討をしている段階でございます。
  15. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 時間がありませんから、あと一つだけ。  国公立は大体二割ですからね、あと八割は私学なんですよ。ですから、高校側にとっちゃ国立大学だけが大学じゃない。ですから、私学全部にこれをやらなきゃ入試改善にならないのですよ。試験地獄の解消にならぬから、私学に対してどうするかということを、簡単でいいから……。
  16. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 国公私立通じての共通一次入試テストというものが実行できるのがわれわれの目指すところでございます。私大側とも、なお今日ともに検討をいたしておりますけれども、もうここまでまいりますと、五十四年度に私学を参加させるということは不可能な時期になってまいりました。  さらに、たとえば医科でありますとか歯科医大であるとか、私立でもそういうグループで共通一次入試のこの制度に参加していただくのが望ましいことですけれども、これは私立大学——医科系、歯科系の大学側もいま真剣に検討をいたしてくれておりますが、グループとしてでなくても、個々の医科大学、歯科大学で五十五年度から参加したいというところもありますから、グループ、グループということに余りこだわらないでひとつ受け入れていこう、そういうところから私学へのこれの参加の道を開こう、そういう決心をしているところでございます。
  17. 内藤誉三郎

    内藤誉三郎君 ありがとうございました。(拍手)     —————————————
  18. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、松前達郎君。
  19. 松前達郎

    松前達郎君 ただいま共通一次テストについていろいろと質問があったわけでございますが、これについて私も後から御質問することにいたします。  まず最初に、先日成田空港で過激派による管制塔の破壊という、こういうことが起こったわけでございます。国民の税金がまた使われるということになるわけで、非常に遺憾であると思いますけれども、従来こういう種類の事件が各地で起こっておるわけです、その規模はいろいろあるにしてもですね。文部省として、これらの過激派の中に学生がいると思うのですけれども、これらについての情報なり、あるいは大学の中における現状なり、そういうものを調査されたことがありますかどうか、その点についてお伺いいたします。
  20. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 大学の中に大学生の自治会があり、こういう自治会の中にそういう過激派集団があることは承知をいたしております。たとえば、京大のしばしば国会でも御議論のございます暴力事件でありますとか、施設の占拠事件であるとか、こういうことも過激派学生によって行われていると思われることもあるわけでございまして、そういう問題が起こりますと、その都度調査をいたしているところでございます。後ほどまた大学局長からお答えをいたします。  成田の問題は、成田の開港を機として相当な過激派の動員が行われているように聞いておりましたので、事前に実は大学当局文部省と接触を持ちまして、こういった大学以外の場所での過激的な行動の拠点でありますとか兵たん地だとか、そんなことに大学がならないように、そうしてまた、大学にはもう先生御承知のように、いろんな薬品類があるものでございますから、そういったものの万全の警備体制をとってまいりました。何か異常な事態があればすぐ警察へ連絡するとか、文部省大学局にすぐ御連絡をいただくように、そういう指導大学当局にしてまいりました。大学当局もたしか二十五日の晩は徹夜状態で警備をしておったようでございますが、成田の事件はあのようなことになりましたけれども大学側にただいま申し上げましたような心配したような事態は起こりませんで、立て看板が二つの大学で立てられたという程度で済んだわけでございます。
  21. 松前達郎

    松前達郎君 大学の中でこういったことが起こる、そのことだけが対象だというふうなことだと思いますけれども、やはり教育の中の一環として、大学外においてもこういった活動があるということについて、大学側としてしっかりした調査をしてその実態をつかんでおく必要があるのじゃなかろうか。これも教育と大きな関連があるわけですから、その点について、いままでそういう調査について文部省として大学側に何らかの意思表示をされたことがございますか。
  22. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 現在成田において暴れている過激派の中に学生がどのくらいいるかという実態については、私どもはまだ把握をいたしておりません。昨年の春以来いままで成田で逮捕された者の中に学生は二五%弱おります。そういうことから考えまして、今回もその程度学生が参加をしているのではないかと危惧をいたしております。御指摘のように、学外の学生の行動でございましても、それについて大学側ができるだけ配慮をする、日常の学生教育面あるいは補導面でのケアというものをさらに十分に行わなければならないということはそのとおりでございますから、そういった点につきましてさらに大学指導してまいりたいと存じます。
  23. 松前達郎

    松前達郎君 これはどうも大学の自治という名前、こういう呼び方が非常に最近言われておるのですけれども、そういう自治という言葉の裏に、何かマンネリ化したような大学運営というのがあるのじゃないか。たとえば、これは過激派ではないかもしれませんが、東大の精神病棟の問題ですとか、その他大学によっては校舎の一部をいまだに占拠をされている。大学がコントロールできないような状態にまでなっている。こういうことなんで、もうちょっと大学の方としてもやはり実態そのものも十分調査し、文部省の方でも調査されてひとつ指導していただきたいと思うのです。まあかつて大学の運営に関する臨時措置法というのがございました。これは五年の時限立法ですから、いまではこれは生きていないという解釈なんであろうと思いますけれども、これについて、それ以後大学の施設が管理体制外にあるようなケースがいろいろと起こっておるわけなんですが、この法律について廃止手続をしていないというのは何か意図があるのでしょうか。
  24. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 臨時措置法は五年の時限立法でございまして、法制局見解と、法律的にはやはり廃止をするという立法をしなければあの法律は生きているという法律論をなさるわけでございます。  ただ、これはもう私の率直な気持ちをお答えしたいと思いますが、法律的に言えばあるいは廃止措置をしておりませんから生きている法律であるかもしれませんけれども、延長もまたしてないわけでございますから、今日ただいまあの臨時措置法をそのまま実施に移すという考えは、私には適切ではないものとしか考えようがございません。
  25. 松前達郎

    松前達郎君 これはちょっと古いような話でございますけれども、しかし問題としては非常に重要な問題ですから、この点についてもまた今後十分御検討いただきたいと思うわけでございます。  さてそこで、最近特にこれは大学生まで入ってきたものですから、中学生高校生の暴力行為ですとか、あるいは非行、自殺、こういうものが目立ってきたと申し上げたいところですが、大学生までどうも含めなければならないのじゃないかと、こういう感じがするわけですが、どうもこれは教育が非常に大きな壁にぶつかっているのじゃないかというふうな感じを私は持っておるわけです。特に教育の中で余りにもハードな面だけが追求されてきている。もっと端的に言いますと、知識集中型の教育であるとか、こういうふうな面が強調されて、いわゆる心の触れ合いとか、そういうものを含めてのソフトの部分がどうもないのじゃないか、少なくなってきているのじゃないか。こういうふうな面が欠けてきているために、まあいろいろとこういった暴力、非行、自殺が出てくるのじゃなかろうかと私は思うのです。特に中学生あたりの自殺を見てみますと、原因がわからないという、これはもう父兄もみんな含めてですけれども、原因がどうもわからない、思い当たるところはないという新聞記事がずいぶん多いのですね。この思い当たるところがないというのが非常に問題なんですね。それは思い当たるところがなければ自殺するわけはないのであります。やはりこの辺がソフトが欠けていると私は考えていいのじゃないかと思うのです。  五十三年の三月二日、これはもうすでに何回か言われたことだと思いますが、警視庁の発表は十分御承知のことでしょうが、昨年一年間で二十歳以下の少年の自殺というのが高校生の場合二百四十二名、最も多いわけですね。そして、その動機が何であるかと言いますと、入試が苦痛だとか、あるいは入学試験失敗したとか、あるいは授業についていけないとか、またさらに進学について、進路の問題ですね、これについて悩んでいる、こういうふうな原因といいますか、自殺の原因だろうと推定されるものが二百十九人で二七・九%である、こういうふうに発表されておるわけなんですが、これについて文部大臣の受けとめ方と、それから教育的見地からのお考えをひとつお述べいただきたいと思います。
  26. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 児童生徒の自殺原因は、原因不明というのが一番多いことはもう先生御指摘のとおりでございまして、自殺等がございますと都道府県教育委員会等を通じましてその背景調査をいたすのでございますけれども、いろんな問題が複雑に絡み合っておりまして、どうも原因不明というふうなことが多い。あるいは見る人によって、原因がこういうところにあったという、これはいずれも推測でございましょうけれども学校の先生の見方、警察の見方、家庭の見方、それぞれ違う原因を表明になることがあったりいたします。  こういうことを基本的に、私はやはり教育の問題がハードウエアの面はいろいろやってもきたり議論もされたけれども、ソフトウエアの内容についておろそかになっていたんではないか。私は先生の御指摘を甘んじて受けざるを得ないという気持ちがいたすわけです。余りにもこれはもうすべてのことが絡んでまいりまして、実力よりは卒業証書の方に月給を決める価値があってみたり、指定校でなければ入社試験を受けさせなかったり、そういう学歴偏重社会に端を発していま御議論になっております大学入試の問題、さらに小中高校教育学習指導要領の内容が余りにも知育重点にあり過ぎた詰め込み主義、詰め込み主義で、暗記力ばかりを駆り立てていく。そこで私どもは知育、徳育、体育のバランスをとった学習指導要領に学習指導要領そのものを変えなければいけないということから、小中の改定を終えまして、いま高等学校学習指導要領の改定と取り組んでいるところでありますけれども、果たして知、徳、体のバランスということだけでいいのかどうなのか。音楽に親しむとか、人を愛するとか、花を愛するとかという、いわば情操にかかわる問題が、これを徳育と呼んでいいのかどうか。やはり知、徳、体のバランスのとれた教育と、情操教育というその教育の内容を、ソフトウエアのことをもっと充実させてまいりませんと、私は困ったときに、判断に迷うときにだれに相談をするかと子供たちに聞きましたときに、友達に相談するが五十数%あって、両親に相談するが十一、二%ぐらいしかなくて、先生に相談するのは一割もない、このような状態はやはり学校の教師の側にも責任があったし、教師が取り組んでまいっております学習指導要領の中にも問題があった。みんなで反省をして、それぞれの責任範囲の中で反省の上に立っての改善を、じみちな仕事でありますけれども取り組んでまいりませんと子供たちが救われない、こういう気持ちが非常に強くいたしておるものでございます。
  27. 松前達郎

    松前達郎君 そこまで大臣として考えておられるのでしたら、いまのたとえば中学校あるいは高等学校ですね、中学三年、高等学校三年、入ったと思ったらすぐ卒業で、また高等学校受験勉強をやり、高等学校に入って三年たったらまたすぐ大学受験勉強に取りかかって、そうして卒業して大学試験を受けると。三・三というのが非常にこの連係がどうもうまくいってないんじゃなかろうか。本来この時期の少年たちは、非常に感情的に不安定な時期であろうと私は思うのですね。やはり自分が将来どういう方向に進むかと、あるいはどういうことをやりたいのかと、こういうことを十分考えたりするそういう時期がこの時期だろうと本当は思うのですけれども、どうもその時期が受験勉強に没頭しなければならないような現状なんですね。  そこで入学試験に関して改革を行うとか、いろいろなことが出てくるわけですが、その逆に、いわゆる学校制度といいますか、中学、高等学校の三年、三年という制度について考えてみなきゃいけないだろうと私は思うのですが、いい悪いは別として、これについて何かそういった点の御見解をお持ちでしょうか。文部大臣にお伺いします。
  28. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 六・三・三の制度そのものを変えるべきだという御議論がいろいろあることを承知をいたしております。また世間に御議論があるだけではなくて、四十六年の中教審答申の中にも先行的指導をもって取り組めということの御答申をいただいているわけでございます。しかし、六・三・三という制度そのものを改めるとなれば、いま先生は六・三・三の持っております悪い点をお挙げになりました。しかし六・三・三の制度の持っているいい面もあるわけでございます。完全にと言っていいほど制度そのものは定着をいたしましたのもやはり教育機会均等ということから明治以来発足した六年の小学校、さらにその上という制度が私は国民の大勢の中で受け入れられた制度だと考えております。いま三年、三年と非常に成長の早い、心身の発達が非常に変化をしてくる時期に三年置きに入学試験という過酷な地獄に突き落としている、こういう御指摘があったわけでございますけれども、それでは六・三・三をある方々が御主張なさっておりますように六・五に変えたらどうなのか、それはそれでまた非常に大きなデメリットも出てこようと考えられるわけでございます。たとえば小学校六年を終えていまの中学校の一年からいまの高等学校の二年生まで、これだけ心身の発達が変わってしまう生徒たちを一つ学校の中に果たして置いて、一年生と五年生の心身の発達状況の違う、もう格段の違いが出てくる生徒一つ学校の中に集めておいていいか悪いか、一つだけしか申し上げませんが、いろんなそういう問題も出てくるわけでございます。直ちに制度改正に踏み切ることができません。  そこで私どもといたしましては、四十六年中教審答申を受けまして国立学校の付属小、中、高等学校等、あるいはその他の公立学校等に委嘱をいたしましてこの問題の研究を続けているところでございます。これはいろんな角度からの子供たちの心身の発達状況の変化等、あるいは児童心理学であるとか、いろんな学問的な観点からよほど見きわめてかかりませんと、拙速的に取り組めることとではございません。そこで、いまの制度の中でこのような試験で苦しめるあり方を改めるべきだということから大学入試制度高等学校入試のあり方について、いまの制度の中での入試地獄から子供たちを解放する、そしてソフトウエア的に、どう申しますか、知に走らない教育ということを考えて取り組んでいるところでございます。
  29. 松前達郎

    松前達郎君 いまも地獄という言葉が何回か出てまいりましたけれども、この入学試験による地獄がなぜ出現するんであろうか、入学試験制度そのものの改革とか、そういうものはそれなりの一つの目的であろうと思いますけれども、基本的問題としてなぜ地獄が出現するか、これについて文部大臣の御見解を伺いたいと思います。
  30. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 余り長く答弁をいたしていますと御迷惑でございますから、簡潔に申し上げますならば、やはり私は学校というものが社会から隔絶したところだけであるものではないし、生徒たちも卒業後はもちろん、学校におりますときも社会生活がそれぞれの生徒にまた学校生活のほかにあるわけでございます。社会的風潮というものが高度経済成長が始まりましてから何か学歴偏重的な傾向が激しくなってきた、そのことを受けてある特定の大学に入らなければ一流企業に働けない、何かそういうところに生きがいを求めていかれる、あえて申しますならばそういう両親がふえた、これも一つ社会的風潮でございます。子供たちにそういう進路を選ばせる、選ばせられる青少年たち、そして特定の大学に入ろうと思いますと、そこには高等学校の授業の内容を幾ら完全にマスターしても、とてもそれだけでは耐えられないような難問奇問という入学試験が待っている。こういう状態がまさに地獄とマスコミが言われますけれども、そうだという感じを私は持ちます。ただ、入試の競争というものはこれはいつまでも私はあっていいものだし、あるべきだと思うのです。人間の人生のある時期にそういう競争に耐えていくということはやはり大切なことだと思いますけれども入学のための正しい競争はありましても、地獄は私はやはりこれは一つの暴力とでも言えることで、ここから、こういうところからは青少年たちを解放したい、こういうことをもう真剣に願いながら努力をいたしているものでございます。
  31. 松前達郎

    松前達郎君 いまの地獄の問題ですが、この原因の一つに学歴社会の問題があるんだろうと私は思うのですね。その原因の一つが学歴社会だと言いましたが、見方によってはどうも国立大学がこれをつくり出しているんではなかろうか、こういうふうに私は考えておるわけなんですが、この学歴社会をつくり出す要因というのはいろいろあると思いますけれども、この際企業側も積極的な努力が必要なんだろうと、こういうふうに私は思うわけなんですが、この点について通産大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
  32. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 通産省で上場企業におきましてどの程度学歴を重視しておるかということにつきまして調査をいたしましたところ、ほとんどの業種は実力主義である、学歴を重視しておる企業というものは非常に少ない。これは統計がございまして、いま統計を持っておりますからお知らせをしてもいいわけでございますが、実力を中心に考えておる、こういうことでございます。
  33. 松前達郎

    松前達郎君 どうも実力と言われてもそれはもう非常に無難な選別の方法で、実力試験と言えばそれっきりかもしれませんけれども、わが国がいま直面しておる問題で産業構造の転換という問題があるわけですね。特にいままでの経済発展を見てみますと、これは技術革新に負うところが非常に多いんじゃないか。まあこの技術革新が今後新たに次のステップに踏み出されない限り、どうも日本の経済そのものを守っていくというのは非常にむずかしいんじゃないかと思うのですが、そういう場合に、やはりこれから必要なのは独創的な頭脳、これが必要なんだろう、こういうふうに私は考えておるわけです。その独創的な頭脳育成に対して、これはやる立場として考えますとこれは教育の仕事である、そういうふうになるわけでありまして、この点について、非常に資源エネルギーのない日本にとって基本的な問題だろうと私は思います。これは通産省であるから教育のことを全然考えてないんだということでは困るので、やはりこういった面についても通産省としても十分お考えいただきたいと思いますけれども大臣の方からひとつ文部大臣に対して、こういった教育に対しての要望なり何なりございますか。
  34. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) その前に、先ほどの問題でございますが、御参考までにちょっと申し上げたいと思います。  これは昨年の十一月、上場企業千百社に対して調査をいたしましたところ五百四十社から回答が参りました。つまり管理職に昇進させるための基準としてどの程度学歴を重視しておるかという調査でございますが、本人能力をまず中心に考えておるというのが八三・一%であります。それから本人の業績が九・七%、それから社内、社外での資格三・二%、勤続年数二・二%、学歴一・三%、その他〇・四%と、こういうことになっておりますから、企業といたしましては、やはり激しい競争に打ちかっていくためには学歴よりも本人能力を中心としなければこれはやっていけないと、こういう調査結果が出ております。  それから、いま産業構造の転換が非常に大きな課題になっております。この背景といたしましては、オイルショック以降の世界の産業構造の変化、省エネルギー、あるいはまた公害対策が重視される、そういう時代を迎えて、さらにまたわが国の近隣諸国からの追い上げ等がございますから、産業構造の転換が最大の課題になるわけでございますが、やはりこの産業構造の転換を順調に進める前提条件として私どもは二つのことがあると思うのです。その一つは、経済がある程度の活力を持っておらなければいかぬということ。気息えんえんたる経済ではとても産業構造の転換などはできるものではございません。それからもう一つ、やはりすぐれた人材というものを擁しておらなければいかぬわけでございます。創意工夫によって新しい分野へ進出していくわけでございますから、これには力もさることながら、やはり創意工夫によって仕事をやっていこうという、やはりこういう教育が必要である、そういう人たちが必要である。でありますから、産業政策の立場から文部省にお願いをしたいことは、こういう創意工夫を常に発揮できるような、そういう人材を養成をしていただきたいと、こういうことでございます。
  35. 松前達郎

    松前達郎君 独創的な頭脳を養成してくれと、一言で言うとそういうことだと思うのですが、いまのデータの中でおっしゃったのは、どうも管理職に上げるときにどういう考えで上げるかということであって、私が問題にしているのは、指定校をつくるとかいう問題、採用の時期の問題、この点についても時間がございませんからこのぐらいにしておきますけれども、ひとつ今後強力な指導をお願いいたしたい、かように思っております。  そこで、先ほどから話題になっております共通一次テスト、これについてお尋ねいたしたいのです。これは参考人にお尋ねいたしたいと思いますが、この制度が、率直に言って果たして日本における大学入試制度大改革につながるものかどうかと、これについて御意見をひとつお伺いしたいと思います。
  36. 長谷部正治

    参考人長谷部正治君) この大学入試制度改善ということについては、かなり長い年数をかけながら、しかも各方面からいろんな分析が行われてきていると思います。そして、かつては能研テストとか、あるいはその他の心理テストのようなものをまじえたそういった制度も導入されたりということで、工夫されてはきておりますけれども、なかなかその決め手になるようなものは生まれてきておりません。今回の共通一次テストの方式というものも、これが最善のものであるかどうかということについては、これはまだ未知数な部面が多いだろうと思います。しかしながら、やはり私どもは何とかして、いままでお話に出ておりました、大学入試は諸悪の根源であるという言葉すら生まれてきたここに取り組んでいかなければならないだろうと。私ども教育現場にありまして、目の前に見ております生徒の実態を見ますと、やはりこのままでいいというわけにはいきません。現状よりも一歩でも半歩でも前進しているものにいどんでいく、そしそれを実施していく過程の中でさらにその問題点指摘して改めていく、こういうことで歩一歩進めていくという、そういう態度、姿勢というものが私どもは大事であろうというふうに考えまして、今回の共通一次テストにも高校現場からいたしますと幾つかの改善を要する問題点はございますけれども、それはそれとして、今後関係当局とのお話し合いを詰めてまいる中で改善をし改めていくという、そういう考え方のもとに、この共通一次テストにその評価を与え、これを手がかりとして一歩の前進というふうに考えてまいりたいというのが現在の考え方でございます。したがって、これでいいというわけではございませんので、さらに新たな改善された方式というものは、今後検討もされていかなければならないだろうと思います。  そういう意味で、実は入試センターの中に研究部門というものもあるそうでございます。これは単に共通一次テストの狭い範囲研究部門にとどまらないで、今後の新しい大学入試のあり方というものはどういうものであるかということについて、諸外国の例などもひとつ十分御研究になられ、そしてわが国のこれからの教育の姿、あるいは国家の発展のためにどういうふうに役立つものであるかということにまで、ひとつ思いを広げて御研究になることを私どもは希望もいたしますし、また現場としても、それにできる範囲の協方は幾らでもいたしたいというふうに考えております。
  37. 松前達郎

    松前達郎君 共通一次テストについて、いろいろ改良、改善をしていくんだと、こういうことを先ほどから言われておるわけでございますけれども、どうも、改善するという作業をすればするほど従来の入学試験制度に近づいてきているんじゃないだろうか、だんだんその意味が薄れてきているんじゃないかと、こういう感じもなきにしもあらずなんですね。結局何にもならなかったんじゃないかというようなことになりはしないかという危惧を抱いておるわけなんです。たとえて言いますと、国立大学の過半数が一次テスト足切りに使う、こういうことが言われておるわけですが、大学側にとってみますと、東大などで従来実施してきた一次試験と同じような意味を持つようになってくるのではないか、こういうふうに考えるわけなんですが、足切りの問題、これは非常に大きな問題だと思います。これについて、今後どういうふうに指導あるいは文部省として対策を講じていくのか、その点についてお伺いいたします。
  38. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 共通一次テストを、長谷部参考人がただいまお述べになりましたように、私どももこれが最善のものだというような思い上がりは持っておりません。さらに改善に懸命に取り組まなければならないと考えております。  足切りの問題でございますが、昨年七月に各国立大学が公表いたしました内容におきますと、いわゆる二段階選抜実施するものは、大学全体で実施をいたしますのが二十三大学七十四学部学部学科の一部で実施するものが二十三大学で五十四学部、計四十六大学百二十八学部となりまして、その実施率は、大学単位で見ますと五二・八%と半数をちょっと超えたものになってしまっております。学校単位で見ますとそういうことでございますが、学部単位で見ますと三九・八%になるわけでございます。これらの大学の中には、二次試験実技検査、面接小論文実施をいたしまして、新しい入学者の選抜方法を意欲的にやろうという気持ちは持っておりますので、このような場合に二段階選抜を行うことも、先ほど内藤委員にもお答えいたしましたが、この段階では、一度目の五十四年度の実施の段階ではやむを得ない面もございます。一概にこれを悪いとは言えませんけれども、志願者の動向が判然としていないという大学側のまた不安もあることでさような決定を見たと見られるものもございます。ただ、今後志願者をどう受けていけるかという大学側判断によりまして、かなりの大学学部がこの足切り実施しなくて済むようになるであろう、このように見ているわけでございます。  文部省といたしましては、このたびの入試改善趣旨が、一発勝負から総合的な評価へと考え方を変えたわけでございますので、各大学に対してこの趣旨に反するような安易な足切りは極力実施をやめていただきたいという指導をしてまいりましたが、昨年秋の国大協の総会でも、二段階選抜実施についてはさらにこれは検討しなきゃいかぬという声が、国大協自身で出ているわけでございまして、この確認に基づきまして、たとえば岩手大学において工学部実施すると公表いたしておりましたものを再検討の結果、工学部足切りはもうやらないということを決めております。各大学が改めて二次試験の内容や方法を決定、公表することにことし七月になるわけでございますが、それまでには足切りをやらないという大学がさらに増加することを期待をいたしておりまして、文部省といたしましてはそういう方向で指導をしてまいりたい。なお一言つけ加えますと、衆参両院の文教委員会の御決議もございますので、その趣旨指導を強めてまいりたいと考えております。
  39. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 時間が参りました。
  40. 松前達郎

    松前達郎君 終わります。(拍手)     —————————————
  41. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、矢追秀彦君。
  42. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 時間の関係で、基本的な問題を中心に御意見を伺いたいと思いますが、まず参考人に。  ことしも入学試験が大体終わりまして各誌にいろんなデータ等が出てきておりますが、これは近年の傾向ですけれども、私立の高校を出た人の方が、たとえば東京大学を取り上げましても非常に多いわけでして、ことしについても、週刊朝日の資料によりますと東大合格のランキングの中で、ベストテンの中で国公立の高校はわずか国立が三校、県立が一校、あと六つは私立になっておるわけでして、五十位のうち半分近くは大体私立と、こういうことになっておるわけですけれども、この傾向はもうずっと最近ふえるばかりでして、それだけ公立の高校入試戦争ということだけを取り上げますと劣っておると、この原因はどこにあると思われておりますか。一つは、これは六・三・三制、先ほども議論が出ておりましたけれども、大体一貫教育を中学校から高校までやっておる。しかも受験にすべてを充てて教育をしておる。この辺が大変問題になるわけですけれども、父兄から見ますと、結局これは学費の負担になりますし、どうしてもそこへ入れようということになって大変無理をして学校へやる、こういうふうなことになってくるわけです。予備校も問題ですし塾も問題ですけれども、公立の力が一体どうなっておるのか。私は大阪ですけれども、大阪の方はまだ公立がいわゆる国立大学、特に京都なんかはわりあいまだ行っておるような傾向でございますけれど、特に東京あるいは京都といったような、どちらかというと学問の都と言われたようなところの方が私立が台頭している、こういう現象をどうごらんになりますか。
  43. 長谷部正治

    参考人長谷部正治君) いま御指摘のように、確かに公立高等学校と私立の高等学校との特に目立った有名大学ということの合格の数だけで比較していきますと、いま御指摘のようなことが目立って見えているように思います。その原因がどこにあるかということでございますが、先生もいま御指摘になりました、つまり私立の学校が主として中学高校一貫の形の中でそういった形態がとられているということが一つあろうかと思います。しかしそれだけではございませんが、私立の教育の方向がやはり大学受験ということにぴたりと焦点を合わせて、そして進められていくということ、そしてそれがまた可能であるということ、公立学校の場合は公教育という立場がどうしてもございますために、受験一点張りということが、何というか、表に出してなりふり構わずということがなかなかやりにくいということが一つあろうかと思います。  ただ、理論的に申しますならば、公立高校といえども学校教育課程を完全にマスターをしてしっかりと教育をしておればどういう大学にも入れるはずであります。入れるはずでありますが、現在までの入試の現状はかなり入試技術といいますか、そういうものをやはり必要とします面があるようにも思われるわけで、そういう点で公立学校は先ほど申した公教育的な考え方の中から、どうもやはり歯がゆいような教育の仕方がそこに生まれてくるということはどうも否めないのではないかと思います。しかし、そういう私立の高校が非常に大きく合格率を占めていくという、こういう形が非常に望ましいということではないと思います。やはり今後共通一次テストという形態をとりながら大学入試制度改善をされるという中で、もっともっと正しい高校教育を行う、そうした中でこの大学入試というものが実施されていき、それに合格をしていくという姿が今後望まれるというふうに思いますし、私どももそれを期待をしているということでございます。いま御指摘の点は確かにございますけれども、いまのようなのが私のいま感じておるところでございますが、いかがなものでございましょうか。
  44. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 またある雑誌によりますと、これも最近の傾向としてあるかと思いますけれども、いま高校の現場で能力別あるいは学力別の学級編成ということが議論になっておる、現実にもうやられておるところも各府県で出てきておる。こうなりますと、いま先生の言われた公立高校のあり方が、私立の受験一本やりに引っ張られてまたそちらの方も予備校化していく、こういう傾向が出てくると思うのですが、こうなりますと、もう果たして高校教育というのは一体何なのかということになってくるわけです。その点についての御意見
  45. 長谷部正治

    参考人長谷部正治君) いま能力別編成というお話がございましたが、少なくとも私どもの公立関係の高等学校では、能力別編成というものについては、必ずしもその方向に逐次移行していくという方向にはいまのところはまだいっていないと思います。やはり能力別編成の中で、もっとそれよりも私ども高校現場で非常に問題になりますのは、むしろ大衆化されてきた高校実態、つまり全国的には九三%か四%、大都市では九六%ぐらいまで入ってきております高校生の非常に能力の多様という形の中で、大学受験というためのではなくして高校教育をどのように充実させるかという観点から、多様化されている生徒適性能力というものをよく見てそれに合った教育を行わねばならない。これは教育課程の改定の中でも、一人一人の能力適性をよく見きわめてそれを伸ばすという、そういう意味でゆとりと充実というような形での教育課程が現在考えられているわけでありますけれども、むしろ大学受験を目指してのことよりも、現行の高等学校生徒の多様化されている中で、これをどう効率を上げて教育効果を上げていくかという観点に立っての能力適性を見た教育のあり方を研究をし、進めていかねばならないというのが私どもの今日の大きな問題でございます。したがいまして、いま御指摘のありましたように、公立高校までが能力別編成にどんどん移行していって、受験体制化していくであろうという御懸念につきましては、まだまだ冷静さを公立学校は持っていると考えております。
  46. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 文部大臣、この問題についてはいかがお考えですか。
  47. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) いま長谷部参考人がお答えになりました、これからの高校というものが非常に多様化してきた生徒たちのその適性なり、あるいは能力なりにそれぞれにこたえていく高校、これが実は一番大事なところでございます。高等学校学習指導要領の改定といま文部省も取り組んでおりますけれども、この学習指導要領改定の一つの重要な、これが最重点と言っても過言ではございません。やはり高等学校の低学年では、中学校から上がってきて、さらに重ねて基礎、基本を把握させる、高等学校の二年、三年で、いま長谷部参考人が御指摘になりましたような、非常に多様化してきた生徒たちのその適性能力に合った受け方ができる高等学校を目指して学習指導要領の改定と取り組んでいるところでございます。長谷部参考人のただいまの御意見は、これからあるべき高等学校の真の姿を把握されたお答えだと私は考えます。
  48. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は先日の予算委員会でも問題にいたしましたが、いわゆる受験産業と言われるものです。余りにも、参考書にしても、いろんないわゆる教育産業といいますか、企業の方がかえってあおり立てている。こういった週刊誌に、各大学はどの高校から何人入ったということは発表はしないというふうなたてまえになっているにもかかわらず、マスコミの強力な取材陣によってつくり上げられたと思いますけれども、今週の週刊誌は全部どこの高校から何人どの大学に入ったかというのが出ていますし、各府県別の生徒の名前まで出ている。こういうことがますます私はあおっていると思いますけれども、その前に私が取り上げた参考書の問題一つを取り上げましても、参考書の種類も非常にたくさんあるし、まあ私は昭和二十七年に大学に入りましたが、まだ高度成長の前でしたから、そんな本もございませんでした関係もあるかと思いますけれども、そんなに参考書をたくさんやらなくても何とか自分の目指す大学へは入れたわけでして、英語一つを取り上げてもたくさんの参考書を使ったように思わないし、本を読んだにしても、原文の安い本を買ってきて読んだ程度でして、いまの参考書を見ますと、別に入試だけではなくてふだんの授業の中にも相当参考書が必要になってきている。私は、子供がいま中学生高校生ですけれども、見ておりますと、教科書がインデックスで参考書が実際の教科書、試験のためにはまた問題集と、これだけやってもまともにやらなければいい成績はとれない、こんな状況です。したがって、教科書、参考書、この辺をどうしていくのか、教科書だけきちんとやればちゃんとある程度の成果で大学に入れるというのが私は本当だと思うのですけれども、その点はどうお考えになっているか。それが、この今度の共通一次テストでそういった点がうまくいくのかどうか、その点はどうお考えになりますでしょうか。
  49. 長谷部正治

    参考人長谷部正治君) 指導内容が非常に豊富であり、そして高度であるという、そういう反省の上に立って現在文部省教育課程の再編を考え、また指導要領にゆとりを持たせようということでいっているようであります。もっともこのゆとりというのが、ただ暇ができるという解釈ではないと私は思います。ゆとりは必ず充実のためのゆとりであるべきなんでして、ただ暇があって遊ばせればいい、程度を低くし、中身を少なくしてということではないであろうと思いますけれども、御指摘のように、教育の内容が非常に幅が広がっておるし、それから高度であるということへの反省は現にいま教育界の中でも強く行われているわけです。現実的にはいま先生の御指摘のように、一人一人の生徒は参考書やら問題集やらであっぷあっぷしているというのが現状でございますが、これは先ほど来の御審議の中でも取り上げられておりましたように、やはり競争社会といいますか、競争の原理というものが余りにも露骨に出てきている社会です。これは受験ばかりではございません。あらゆる社会の構造の中で、すべての部面で競争の原理が露骨に出てきておると思います。もっとも、基本的には競争原理というものはやはり人間を向上させ社会を発展させる一つの基本原理かもしれませんが、これがしかし余り露骨になり、また極端になってくると互いに傷つけ合うようなことにもなってまいりまして、これがやはり欠点にもなってまいります。そういうわけで、いまの参考書の問題なども、あるいはそうした競争の原理というものにあおられているということもあるのかとも思います。  いまの最後の御質問の共通一次試験との関連は、その問題はどうであるかということですけれども共通一次試験といえども厳しい選抜でございまして、入学の合格者の数というものは従来とほとんど変わりはないわけでございます。受験者の数は膨大であります。そういう意味では競争率はきわめて厳しいということにもなりますし、決して共通一次テストになったから大学に大変入りやすくなった、やさしくなったというふうに安易に考えてはならないものだろうと思います。ただ、問題の性質が、共通一次試験の場合はもうすでに四回の国大協の基本調査によって見ましても、私どもの現場の専門の者が見てもまずは妥当なものであろう、無難なものであろうということで、しかも、本人学力測定はできるであろうというふうな判断もしておりますので、これがいわゆる難問奇問のために苦しめられる従来のような形で競争を激化していく、あるいは生徒受験地獄を激化していくということは避けられるのではないか。もっともそのためには、ひとつ入試センターの方の問題作成については十分に検討をしていただいて、りっぱなよい問題を出してもらわなければなりませんが、そういうことで、いまの御質問のことも逐次共通テストという形の中で消化されていくことを望んでいるというふうに思っているところでございます。
  50. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 もう時間がありませんので最後に。  やっぱりこういった受験戦争、いろいろあると思いますけれども、どうも私考えますのに、結局は高度成長、こういったものがこういうふうに生んでしまった。やはり三十五年以降、特に四十年に入って後半あたりからめちゃくちゃになってきたわけで、しかも、いまそのためには高校だけではなくて、中学から小学校、幼稚園、果ては三歳児をどうするかまでいま出ておりまして、新聞等では三歳児のための英語教育、ここまでもでかい新聞の広告が出ている。こんな状況で一体どうなるか、こういうふうな私は大変心配をしておりまして、結局あおられているのは子供じゃなくて親の方でして、しかも最近の家計簿調査を見ますと、教育費の大変な負担増、こういうことも言われておるわけですので、ぜひこういった改革をしていかなければならないと思います。  最後に文部大臣、いろいろ受験の問題を言われておりますけれども、それはそれとしてやることは必要ですが、もう一つ大学のあり方を徹底的に考え直さなければならない。大学とは一体何なのか、どこの大学へ行くことがその人にとっては将来にプラスなのか、また大学院をどうしていくのか、この辺がもっともっと議論されなきゃならぬと思うわけです。かつて日本教育というのは、大学も含めまして、時代の先取りをやって、むしろ教育が将来の国家をどうしていくかということをある程度、是非は別といたしまして、その方向がよかったか悪かったか、そのときの政府の姿勢なりイデオロギー等が関係しておりますから、その辺は別といたしまして、何らかの形での先駆的役割りをしたと思うんですが、いまの大学のあり方というのは後追いですから、だから、たとえばいまお医者さんがもうかるから、歯医者さんがもうかるからといってわっと行っているわけですけれども、これで十年もしたら、お医者さん、歯医者さんがいっぱいあふれて、結局就職難が出る可能性ももうぼつぼつ始まっているわけです。また、私たちが大学へ入るころは、工学部の応用化学が大変脚光を浴びておりました。ところが、いま公害産業ということで余り応用化学には行かない。全部後になっているわけです。後手後手になっているわけです。学校の先生もいまあふれている状況です。これではしようがないんでありまして、やはり大学をどうするかということから私は手をつけていただきたいと、こう思うんですが、時間の関係で簡単でございますので、簡単に答弁いただきたいと思います。
  51. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 御指摘のとおりに、大学のあり方について私どもも真剣に進めてまいらなければなりませんが、簡単に申し上げますが、やはり大学院のあり方を含めて、大学というものを、ただいま社会的要請にもこたえ、青少年の人間形成、そして青少年の知識吸収、さらには日本人の民俗文化の伝承、こういうことに真に役立つ大学になってまいらなければなりません。それは、ややもすれば閉鎖的であった大学を新しく大学院というようなもので開放的にしていく、大学間相互の単位の互換制等を含めまして、大学のあり方についてさらに改善の努力を努めてまいります。
  52. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 終わります。(拍手)     —————————————
  53. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、小巻敏雄君。
  54. 小巻敏雄

    小巻敏雄君 文部大臣にお伺いします。  去る二月十二日に滋賀県の野洲中学校級友殺傷事件ということがございました。私は、事件後現地に赴いて県教委、教職員団体等から事情を聞き、また今後の対策を聞いてまいったわけですが、当該事件は全く悲劇的な事件であるにとどまらず、決してこれは偶発的、例外的な事件ではなくて、今日の深刻な、言われるところの教育荒廃の問題を、これを原因とした、どこの学校も安全とは言えないという深刻な事件と受けとめておられたわけであります。文部大臣は身をもって調査をされたのか、この件についてどのように受けとめていられるのか、偶発的な問題と見られるのか、根本的な対策を迫る問題と見られるのか、そこのところをお伺いしたいと思うんです。
  55. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 滋賀県の野洲中学校におきまする中学生の殺傷事件というものは、事件の異常な態様から見ましてきわめて心の痛みます遺憾な、残念な問題でございます。直ちに県の教育長に文部省までおいでをいただきまして、文部当局が詳細に御報告をちょうだいをいたしました。さらに、小巻委員承知のように、ちょうど受験シーズンにぶつかっておりまして、私は直ちに、私自身が国会にくぎづけでございますので、政務次官をすぐ派遣しようと思ったのですが、ちょうど同級生たちがみんな受験の真っ最中でございましたので、同級生たちに迷惑をかけたくないと思う気持ちから、少し時期をずらせまして政務次官を派遣をいたしまして、先生方にもお目にかかり、学校の管理者側にもお目にかかり、警察からも、また家庭訪問も政務次官にさせまして、詳細その報告を受けたわけでございますが、現在なおその原因、動機等、明確な関係機関の調査を解明をしていかなければならない点がまだ残されております。学校におきます生徒の実態の把握でありますとか、生命尊重の教育のあり方でありますとか、こういうものは、先生御承知のとおり、先生方も大変な御努力をいただいているところでございますけれども、やはり学校だけでこういう事件が防止ができなかったんではないだろうか、家庭なり社会なり、それぞれの立場で反省をしていただかなければならない点が多々あったように考えられるのでございまして、中の生徒の一人は、そのクラスで人気投票で一番になっている子供でございます。また、学級委員の選挙にも同級生の支持を受けて当選をした生徒も中にいるわけでございます。そういう生徒たちがどうしてあのような事件を起こしたか。実は、学校側から政務次官がお聞きいたしましたお話と、警察側から聞きました話と食い違っている点もまたあるわけでございます。その真相の解明はもう少し時間をかりたいと思いますが、学校教育の場でのこのような事件防止の努力は、現場の先生方ともども文部省も真剣に取り組んでまいる決意をいたしております。
  56. 小巻敏雄

    小巻敏雄君 一学校の責任というよりはもっと根の深い問題だと、こういうふうに文部大臣も把握をしておられるという点は私も同感をするわけであります。こういう状況の根本解決のために何をなすべきかということが、各界の反省と言われましたが、私は文部大臣の反省をひとつ聞きたかったわけであります。  この状況を受けて、現地の先生方は真剣に討論をして、まず第一に言っていることは、やっぱり一人一人の子供にもっと手の届く教育をやらなければならぬ、それから教員の教育的な指導能力を向上させなければならぬ、そのためにみずからの力量を高める努力を引き続いてやると言っておりますし、現地ではよくそのことを、事件が起こるまで自覚をして、こういうことが運動として進められているという過程の中に、不幸にも教師の努力を上回って、いわば教育の病状が広く速やかに進行しておる、こういう状況の中で起こった事件だと見ざるを得ないわけであります。先生方はこうして努力をしております。と同時に、先生方が異口同音に訴えるのは、何としても、受験地獄が犯人だと言えばこれは飛躍があるけれども、六人の関係の子供たち、これはいずれも数の少ない高校進学をしない子供、高校進学をするけれどもいわば先生方の指導で普通課程に進めない子供と申しますか、職業課程を選んでおる子供がすべてであるというようなのは一つの特色であるわけです。先生方が異口同音に言うことは、受験地獄の解消というのは先生の力だけではどうにもならぬということですね。もう一つ高校格差の解消、もしくは緩和ということですね、少なくとも。これは何とかならないものかということを言っておりますし、事件の直後に教育長が新聞談話で発表しておるところでも、事件は単純なものでない、高校進学を控えて受験戦争にむしばまれ、孤立化していく子供、ドロップアウトする子供、こういう背景のもとで生まれてきた問題だ。これは教師と家庭との断絶等が言われるけれども、教師だけの努力に任せておいて済む問題ではないということで、これらの根本背景に行政の措置を期待する声を上げておるわけです。これはほとんど国民の声ではなかろうかと、こういうふうに思うわけです。少なくとも、高校の格差是正、一人一人の子供に対する行き届いた教育というのは、少なくとも定数改善等が引き続き行われる、この二つの背景なしに有効に進むものでない。高校の格差是正、これらの問題と、それから定数改善についての文部大臣意見を聞きたいわけであります。
  57. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 高等学校の格差是正という問題は、普通高校なる職業高校なりの実態が地域によって大変さまざまでございます。社会の高学歴化の傾向等を反映いたしまして、一部に普通高等学校偏重というような、職業高校に対する軽視の風潮があることは、これは残念な事実でございます。高等学校におきます職業高校の充実についてさらに一層の努力をしてまいらなければならないところでございますが、産業教育審議会からいただきました報告でございますとか、それらを十分踏まえまして高等学校進学率の上昇に伴います生徒能力適性や興味、関心の多様化、進路選択時期の変化などの事態、これを踏まえた高等学校の職業教育につきましても、職業に関する専門的な学習の基礎的段階であることを一層明確にいたしまして、実験や実習の実際的、体験的な学習を重視をして、基礎的、基本的な内容に重点を置くことでありますとか、各学校における地域や生徒の実態に応じて教育課程を弾力的に編成できるようにいたすことでありますとか、学科のあり方について過度の専門分化を避ける方向等もとって、大学入学選抜制度改善と相まって高等学校の職業訓練というもの、教育というものがこれまで以上魅力のあるものになるように、五十三年度予算でも現実的にもう取り組んで努力をしているところでございます。さらにこれの努力を続けてまいらなければなりません。  なお、定数の問題につきましては、教員の定数改善も進んでまいりましたので、小中学校におきます悉皆調査もいたしますことでございますから、これらのことも受けて、その後において重要なことでございますから、真剣に検討を進めてまいりたいと考えております。
  58. 小巻敏雄

    小巻敏雄君 いまの答弁は、やっぱりずばり問題の核心に当たっていないと思うんです。各県はそれなりに、たとえば東京都の学校群、京都の独特なあり方と、さまざまな努力を重ねておるわけであります。しかし、同時に並行して全体的に進まなければ、一県一県では非常にやりにくい点があるわけであります。この点については二十年ほとんど政府は無策であったと言わなければならぬ。今日の答弁も職業課程の充実というふうに言われますが、普通課程自身の中で、一流から六流までとかいうような強烈な輪切りと格差がつけられておるという点にはほとんど触れられていない。こういった格差自体の解消についてその問題を目標として検討をされる気持ちは持っておられるのか、おられないのか、これが一点。  それから、定数の問題についてはいままで四次計画、二十年絶えることなく実施をされてきました。結果は不十分とはいえ、そうだ。ところがこれが初めて第四次から第五次までに一年空白をつくる、その初めての大臣にあなたはなりますか、この二つの問題について御答弁を聞いて終わりたいと思うのです。
  59. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 野洲中学の生徒のことに関連しての御質問でございましたので、先ほどのようにお答えをいたしました。普通高校へ行かない子供たちがあの中にいたことも事実でございますし、そのことを校長先生が激励をいたしましたときにもう非常に喜んで、一生懸命やりますと言って、非常に素直ないい子に校長先生が見受けられた子供が事件を起こしたところにむずかしい点があろうかと思うわけでございます。これらのことも頭に置きまして、高等学校の正しいあり方にこれからも努力をいたします。  定数の問題につきましては、できるだけ早く悉皆調査を終えまして、できるだけ空白が出ないようにこれの改善と取り組む決意をいたしております。
  60. 小巻敏雄

    小巻敏雄君 終わります。(拍手)
  61. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、井上計君。
  62. 井上計

    ○井上計君 参考人にもお伺いしたいのでありますが、時間がございませんので文部大臣に主としてお伺いいたしますので、参考人には御了承をいただきたいと思います。  先ほど来いろいろと御質問があり、また御答弁がありました。すべて大学入試一本やりというふうな形の現在のいわば小学校からのずっと教育の課程、ここらに大きな問題があるというふうに感じます。したがって、その大学へ入ってしまえば長い間押さえつけられたいわばストレスが一遍に解消して、そのはけ口がいろんな形での問題をかもし出しておる。過激派学生が非常に多い、それらの問題等についても、それらの原因がなしとしないという感じもいたしておるわけであります。そこで、もっとやはり学校教育そのものに社会秩序を守るとか、あるいは社会道徳を守るとかいうふうな教育がなされておるようでありますけれども、全くと言っていいほど現在では等閑視されておる。ここらにも大きな問題があるというふうに思います。  そこで、私はそれに関連をしてお伺いいたしますが、余りにも枝葉末節なことに何か文部当局は力を入れ過ぎておられるというふうなことが幾つかあるのではなかろうか。私ども考えますと、どうでもいいというふうなことになぜこれほど大きく精力を費し、また大きな問題の起きることを考えないでやっておられるかというふうなことがあると思います。  その一つの例でありますけれども、昨年の七月二十三日に、文部省告示百五十五号で、「小学校学習指導要領」の中で、低学年向けでありますが、九百九十六文字の教科書体の標準化というものが発表されました。これについて、その当時、私ども当時の海部文部大臣にもお目にかかり、あるいはまた担当の局長、課長にもずいぶんと強くいろいろな意見をあるいは異議を申し入れたわけでありますけれども、告示をされた後でありまますが、そこで、その後の状況を聞きますと、親が教えてくれた字を学校へ行って書いたら、先生がこれは違っていると言ってバッテンをつけられた。家へ帰って、お母さんの教えてくれたとおりに書いてなぜ間違ったか、間違ったことを教えてけしからぬと、こういうふうないわば一種の家庭騒動が起きておるという事実もたくさんあるようであります。これについて若干お伺いしたいと思っておりますけれども、時間がありませんから率直に伺いますが、大臣、この「発言者席」の「言」という字ですね、これは正しいと思われますか、どうですか。これは大臣はおわかりにならないと思う。担当の局長もお見えでありますから、局長からお答えいただけば結構です。
  63. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) いまの「言」という字ですが、私も素人でございますけれども、一番最初の画をこういうふうに立てるのと、こう横へはねるのと両方あるわけでございますね。そのことをおっしゃっているのじゃないかと思います。私の記憶では、それはどちらでもよろしいということになっているかと思います。
  64. 井上計

    ○井上計君 局長はいまどちらでもよろしいとなっておるということでありますが、実際に現在小学校の低学年の指導は、この「言」という字を書くと、これは間違い、バッテンになるんですね。それからちょっとこれをお借りしますが、糸山委員の「糸」という字ですね。これは、局長、どうですか。
  65. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) これも私も素人でございますが、こうやるのと、こうはねるのと両方あるはずでございます。
  66. 井上計

    ○井上計君 局長も実ははっきり確信を持ってお答えできないほど実は微妙な問題なんですね。この「糸」という字は従来七画なんです。従来はこれであったんですが、これが今度六画の字になっていますね、指導要領では。したがって、これは間違いだということになっておるわけです。このようないわば全く枝葉末節なことまでなぜ一部の人たちの考え方でそうして一部の人たちの意見によってこのように変えなくちゃいけないのか。そのために非常に混乱をしておる。特に、これは教科書体についてはこのような指導要領がなされておりますが、ところが他の教科書ですね、算数であるとかあるいは社会であるとかというものについては何ら従来どおりで差し支えがない。  こういうふうなことが非常に大変な混乱を巻き起こしていると思いますが、過去のことは過去のこととして、今後こういう問題等につきまして、文部大臣はどのようにお考えでありましょうか、お伺いをいたします。
  67. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 幾通りもの書き方があることの方が子供たちに混乱を与えるということから、これはいま初中局長が答弁をいたしましたけれども、初中局長は少々はっきりした答弁ができなかったようでございますが、これは担当しております文化庁の方からお答えをいたしたいと思います。
  68. 吉久勝美

    政府委員(吉久勝美君) 字体の問題につきましては戦前からの検討もございますが、特に井上委員も御承知のように、戦後におきまして当用漢字表ないしは昭和二十四年の当用漢字字体表におきまして、字体の不統一等につきましても統一をするということで、また字画のきわめて複雑なものにつきましては、点画の整理等をするということを進めてまいっておるわけでございます。で、今日におきましても、昭和四十一年に文部大臣から諮問をいたしまして、戦後のそのような改革の実績に基づきまして、どのように今後考えるかという再検討をいたしておるわけでございますが、現在国語審議会におきましては、現在までの検討結果を昨年の一月、新漢字表試案ということで天下に公表いたしまして、各界の御意見を聞いて検討いたしております。  字体の問題につきましては、ただいまのところ審議会の意向も大体従来の考え方を踏襲していいんではないかということでございますし、また各界の御意見等もおおむねそういうような方向でございますが、なおいろいろな御意見もございますから、慎重に検討いたしまして、来年の三月までには字体の問題も含めて答申を得たいというふうに考えておるわけでございます。
  69. 井上計

    ○井上計君 時間がありませんので、もっと詰めた実は質問もしたいと思っておりましたが、なくなりました。  そこで、文化庁にもお願いし、特にまた文部大臣にも要望しておきますけれども、私どもから言いますと枝葉末節だと、あるいはもう枝葉末節以前の問題で、極端に言えば字というのは人が見て間違っていないと判断すればいいではないかと、こういうことが一つ基本であろうというふうに思います。したがって、余り細かいことをいじり倒して、かえって現場で、あるいは家庭で混乱が起きないように、ぜひそうお願いをしたいと、こう思います。  それでもう一つ、最近、中国略字の導入等が大分話題になっておるようであります。日本にはすでに当用漢字千八百五十、人名漢字九十二字、仮名が百七十三、要するに中国にない仮名文字というのが日本にあるわけでありますが、まして当用漢字千八百五十の中にも、かなり従来の略字というものが入っております。これ以上また略字をふやすことについても大変問題があるというふうに思いますが、最後に、それについてどのような御所見であるか、お伺いをして、終わります。
  70. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 現在世間で通用しております字体を軽々に動かすことには非常に大きな問題があると思います。中国が略字を非常に数多く最近つくっておられることは承知をいたしておりますけれども、大分事情が日本の場合は異なると思います。たとえば字を知っている人の人口の中に占める割合が全く違うと思います。さらに常用漢字と申しますか、圧倒的に中国が多い。日本は幸いにいたしまして明治以来これの整備をやっておりましたので余り数は多くはない。あるいは伝統的思想との断絶ということを余り考えない体制にある中国と、やはり民族の伝統文化を継承していくというわが日本民族とでは考え方が異なっていいはずだ、このように私は考えます。
  71. 井上計

    ○井上計君 どうもありがとうございました。(拍手)     —————————————
  72. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、下村泰君。
  73. 下村泰

    下村泰君 文部大臣に伺いますが、昨年の読売新聞三月二十一日付に全盲の学生さんが東大をパスしたという発表がございます。「全国の国立大でも五人目の快挙」という記事です。それから五十三年三月八日の朝日新聞の記事には、全盲で普通高校を卒業して大学入学が決まった。いま一つは、仙台の高校に全盲の少女が合格が決まったと、こういう記事が出ております。大変これはすばらしいことでもあり、これからこういうお子さんたちに道が開けていくという意味でまことに喜ばしいことなんですが、実はこの朝日新聞の湘南版の方を拝見いたしますと、神奈川県の横須賀市にあるしらかば保育園で、全盲の定家陽子ちゃんという六歳の保育園を卒業した園児がおります。この陽子ちゃんが普通の小学校に入ろうと思って、御両親も入れたいと思って努力をした。ところが普通学校には入れず、平塚にある盲学校入学するしかできない。ところが、ここまでは二時間という道のりを経なければ学校に入ることができない。かといって、全寮制というところへ入っても六歳の幼児が一体どうするかと言うんですね、小さい子供さんが。で、この文部省の初等中等教育局長通知で、昭和三十七年十月の十八日に全国学校に出されている文書があります。「学校教育法および同法施行令の一部改正に伴う教育上特別な取扱いを要する児童・生徒教育的措置について」、「1教育的措置」、「学校教育法施行令第二二条の二表」——別表になっておりますが、「盲者の項に規定する程度の盲者(強度の弱視者を含む。)は盲学校において教育すること。」、これは聾唖者においても同じである、こういう通達が出されております。  そうすると、せっかく、こういう新聞にこれだけすばらしい明るい記事が出ておりながら、片方でこういうふうに人間の完全に差別を裏づけるといいますか、完全に差別しているということで果たして真の教育日本にあり得るのだろうか。また仙台の高校入学した場合、中学の担当の先生は、本人の努力もさることながら周りの努力も大変なものであった。ですから、必ずしも全部が全部の盲者がこういうふうにいくわけにはいかない。全盲の方が全部そうはいかない。それから宮城県の県教委の方の話としては、これはあくまでも特例である。私ももちろん事情はわかります。特例の枠を外せと言うのではありません。しかし、大変人情家でもあり、三根耕一さんの後輩でもあり、ディック・ミネさんに話をよく承りました。砂田文部大臣は大変情の厚い方である。もちろん情で政治はできないでしょうけれども文部大臣として、こういう子供たちに対する明るい前途を開くというお考えはおありでしょうか、お聞かせください。
  74. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) やはり障害を持っているお子さんの教育の義務化というのは、都道府県なり市町村なりがそういう障害を持っておられるお子さんを受け入れる学校を設立する義務が課してあります。それからそういう障害を持っておられるお子さんの保護者はそういう学校へ通学させる義務がございます。これが原則であります。  いま先生御指摘のありました文部省の通達はその原則を説明をした通達でございます。しかし、最近のあの仙台の尾形君のような、私はすばらしい例だと思います。こういう原則ではない、いま下村委員もお使いになりました言葉でございますが、特例という言葉をお使いになりました。そういうレアケースの例外は当然起こってくることでございまして、御本人、御両親の希望あるいは学校側の受け入れる体制があるかどうか、先生方にそういう準備があるかどうか、あるいはそういう施設があるかどうかという、いろんな各種各様のそれらの条件を克服して、そういう例外がまたあるわけでございますから、各市町村を、全市町村をカバーできる予定でつくっております進学指導委員会等がそういう判断を下して、そういう特例は認めていく。原則は原則としてやはり貫かなければなりませんけれども、そういう特例があってしかるべきと考えております。
  75. 下村泰

    下村泰君 どうもありがとうございました。(拍手)     —————————————
  76. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、柿沢弘治君。
  77. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 時間の制約がありますので、幾つかの点についてまとめて御質問をいたします。長谷部参考人文部大臣、それぞれからまとめてお答えをいただければ幸いでございます。  先ほど文部大臣は六・三制は定着しているとおっしゃいましたけれども、私は、むしろ六・三制が崩壊している、変容していると考えております。なぜならば、三・三の細切れの教育制度というものが無用の負担入試の関係で生徒にかける。それを望まない父兄なり生徒が私立校への選好という形で私立校へ流れているのではないだろうか。その意味では、私たちが提案しておりますように、後期義務教育を六・五の五という形でまとめるということが一つの解決策である、受験に対する負担を解消するためにも必要だと思いますが、いかがでございますか。  それから第二の問題点は、共通大学入試制度の問題で、これを私立大学にまで早急に拡大すべきである。先ほど長谷部参考人共通入試のメリットについてはおっしゃいました。それならば、国公だけではなくて私立にどうしても拡大をすべきだと思いますが、その点についての御意見とそれへのタイムスケジュールをお伺いしたい。  第三は入試の時期でございますが、一月にするか二月にするか、それによって高等学校教育がどのくらい阻害されるかという問題になっておりますが、私ども大学入学時期を九月にすべきである、卒業の後、入学テストを受けて大学に入るということを主張しておりますが、その点について参考人文部大臣の御意見を伺いたい。私たちは、できれば、いまのように就学時期が幼稚園から大学までつながっていて、あとは、社会へ出たからもう学校とは無関係というような、就学時期と労働時期の分離よりも、学習時期と労働時期とのリサイクルといいますか、そういうものが望ましいのではないか。むしろ中国での、最近是正をされてますが、下放のような問題、そういう勤労期間というものが高校大学の間にあっていいのではないかというふうに考えておりますが、その点についても御意見を承りたいと思います。  時間がございませんのでそれだけお伺いをいたします。
  78. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 六・三・三の問題、私は定着するという言葉を確かに使いました。現に六・三・三という制度が私は定着しているという確信は持ちます。制度自体は定着をしております。中に抱えている問題が問題であるということは認識をともにします。  ただ私は、新自由クラブが御提言になっております六・五・五という御提案の内容もよく承知をいたしております。カナダの心理学者のゴードン・R・ロウ博士の文献等も拝見をいたしまして、そのことはそのことなりに理解をいたしているつもりでございますけれども、いま直ちに六・三・三という制度そのものを崩していいかどうかは、これはやはりメリット、デメリット、いろいろな各方面から深刻な検討が必要でございます。ただいまそれの研究と取り組んでいる今日でございます。私立校に子供を行かせたがる御両親が多いことも承知をいたしておりますが、やはりこれも、六・三・三の制度そのものを否定なさっているのか、それとも入学試験の状態を否定をなさっておられるのか、このことに問題があると思います。一連の改革についてはもう省略させていただきます。私立の共通入試は五十四年度はもう困難になってしまいました。五十五年度からの私立の参加を目指してただいま私学側と話を進めているところでございます。  大学の九月の入学、九月から大学が始まるということにつきましては、そのメリット、デメリットについて、文部省の中にプロジェクトチームをつくりまして、ただいま検討と取り組んでおります。
  79. 長谷部正治

    参考人長谷部正治君) 学校制度の問題は、教育改革を進める上で、教育内容の改善とともに、教育制度の問題も十分に研究すべきことであります。これ両々相まちませんと、内容、教育課程を幾ら考えても、あるいは入試制度考えても、これは実を結んでこないのではないかというふうに私は基本的に考えます。そういう意味で、この六・三制についてもやはりそろそろ考える時期に来ているのではないかというふうに私は思います。それで、高等学校校長会でも実はこの点についても研究が進められてはおりまして、結論はどういうふうにということまでは行ってはおりませんけれども、ただ、六・三制の持っているよさ、それからまたその問題点ということについては研究すべき時点に来ているということは言えるだろうと思います。六・五制につきましてはもう少し研究をさせていただきたいと思います。  私立大学入試改善共通テストヘの参加の問題ですが、御承知のように受験生の約八〇%は私立大学受験いたします。そういう意味で、私立大学が取り残されてまいりましたならばこの入試制度改善ということは実を結ばないと思います。そういう意味で、私立大学のいろいろの御事情はありましょう、私立大学にはいろいろの団体があるそうでございますが、それぞれのお考えがあるというふうに伺ってもおります。それからまた私立大学そのものの経営の問題等のいろいろな問題点がおありでしょうけれども、やはり広い立場で、国家の英才を教育するという立場から参画していかれるわけでありますので、私立大学もぜひ大学入試制度改善という方向で踏み切っていただきたい。それが直ちに共通一次テストへの参加という形になるか、あるいはこれをどういうふうに私立大学に向いた形で御利用になるかはこれからの御研究だろうと思いますが、ぜひひとつ私立大学もこの際踏み切っていただきたいというふうに思います。  三番目の九月入学のことにつきましてでありますが、これは私ども共通一次試験の時期を当初十二月の二十三日、二十四日ということで決められた際に、高等学校教育の正常な運営を進める上で非常に障害になるという、こういうことを大きくお願いをいたしまして、これは国大協の方でもお考えくださったし、それから入試センターあるいは文部省の方もお考えくださって、実は一月の十三、十四日ということに下がったわけでございます。これについてはまだ私どもは実は不十分であると、実は二月の初旬以降にしていただきたいということを申し上げたわけですが、その条件としては、ただ繰り下げろと言ってもそう長くはまいりません。そういう中で、実はただいま御指摘の九月云々の入学の始期の問題についても御検討願う時期ではないかということは私ども付言をしておるわけでございます。ただ、それが九月が適切であるかどうかということにつきましては、これはやはり九月のよさと、それからまた問題点等もあるようにも私は事実考えます。九月になりますと、まず第一にいい点は、教育課程が高等学校は完全に消化できます。そして余裕を持って受験に対応できるであろうと思います。そういうことで、高等学校教育の充実の上から申しますと大変よろしいのではありますけれども、一方また受験の時期といいますか期間というものが大変長期化する、一年五カ月ぐらいが受験期間になってしまいはしないかというようなこと、あるいは九月入学までの遊休期間という、高校を卒業して、いわゆる浪人ではございません、学校が決まるでしょうから浪人ではないかもしれませんが、遊休期間というものが非常に長くなって、これの教育指導をどこでどんなふうに取り扱うのか、たくさんの何といいますか公認された遊休高校卒業生がいっぱい出てしまって、それをどういうふうに処置したらいいか、また暴走族がふえてしまっても困りますし、妙な形になっても困りますししますので、生活指導面等の問題点もあろうかと思います。あるいは社会全体が三月の会計年度というものを一つの基盤にして進行をしている中で、大学だけが九月ということでうまく調和されるのかどうか、そのためには社会全体の構造も多少修正をする必要もありましょうし、あるいは小学校、中学、高校入学の始期の問題にまでかかわってくることではないかと思いますので、大学の九月入学ということにつきましては、制度として大変にメリットはございますけれども、やはりかかわってくる問題点もございますので、そういう点を十分研究をさせていただいて、私どもも積極的にひとつ考えてまいりたいというふうに思います。
  80. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 どうもありがとうございました。(拍手)
  81. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で教育問題に関する質疑は終了をいたしました。  長谷部参考人には、本日は大変御多忙中にもかかわりませず本委員会に御出席をいただき、まことにありがとうございました。ここに委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)  午後一時から委員会を再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時十分休憩      —————・—————    午後一時八分開会
  82. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十三年度総予算三案を一括して議題とし、社会福祉に関する質疑を行います。真鍋賢二君。
  83. 真鍋賢二

    ○真鍋賢二君 去年の厚生白書にも、そしてまた先般の参議院の社会労働委員会でも厚生大臣は、わが国の社会保障制度についての御意見を申しておるわけでございますが、日本社会保障制度も欧米諸国の水準にやっと肩を並べるようになったと、そして、医療にせよ、年金にせよ、すべての国民の毎日の暮らしの中に組み込まれて大きな位置を占めるようになってきたということを申しておるわけでございます。その中で、わが国は高齢化社会の入り口に立っており、今後は世界に類をみない急速な人口の老齢化の進行に伴い、社会保障に対する国民の需要と期待が高まるとともに、その内容も多様化していくものと思われるということを述べておるわけでございます。しかしながら、このことは同時に若い人々の負担増につながる問題であるので、今後は長期的観点から給付と負担の両面を配慮しつつ国民生活に適合した社会保障の発展の道を求めていく必要があるということを言っておるわけでございます。すなわち、国民の自助の精神と社会連帯の精神を強調いたしておるわけでございますが、私はここできょうは社会保障研究にすぐれた知識を持っておられる地主重美先生に、厚生大臣と大蔵大臣から私の意見に対しまして御答弁をいただきながら、ひとつ地主先生の御所見をお伺いできればと、かように思っておるわけでございます。  まず、最初に大蔵大臣にお伺いいたしたいのでございますが、ここ十年間社会保障予算の伸びが毎年一般会計予算の増加よりは前年比で上回ってきておるわけでございます。本来ならば一般会計予算の中でその伸びの方が大であってほしいと戦後は思ったわけでございますが、この十年間はそういう推移をたどったわけでございますが、今年になりまして一般会計予算すなわち前年比の伸びが二〇・三%であるのに対して、社会保障関係予算が一九・二%の伸びにとどまって逆転いたしたわけでございますけれども、この逆転した理由、原因がどこにあるのか、その点を御指摘いただくと同時に、この傾向が今後このような形で続いていくのかどうか、その辺の見通しを聞かしていただきたいのでございます。
  84. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 社会保障の充実の必要性につきましては、従来とも、また今後も、やはり重要性が高まっていくだろうと思うのでございます。ただ、その年々の伸びを見ておりますと、いわゆる五万円年金ということがやかましく言われましてそれが確立したときには最も伸びたのでございます。あの二、三年間は恐らく社会保障がもう格段に伸びまして一つの体系ができたわけでございます。その後はいわゆる物価スライド制等が採用されまして、自後着実の伸びを見ているわけでございますが、しかし、新規政策も同時に取り入れていることは御案内のとおりでございます。  御質問の、ことし平均の伸びが二〇・三%であるのにどうして一九・一なのかと、こういう端的な御質問でございますが、これは、何と申しましても、ことしが、公共事業関係、これはまあ臨時の措置としてうんと伸ばしたわけでございまして、その結果として平均より伸びないということなのでございますけれども、いわゆる経常収支の中ではもう格段に伸びていることは御案内のとおりでございます。昨年の当初予算を見ましても、やはり経常収支、いわゆる経常的な経費の中では社会保障が最も伸びておりますし、平均よりはちょっと下回っているということでございます。そういう全く一言で申しますれば平均値を押し上げたのは公共事業関係であると、このように御理解願いたいのでございます。  それから今後の見通しでございますが、これはいま厚生省を中心にいたしまして基本構想懇談会が持たれておりますし、また社会保障制度審議会等でも各種の提言が行われております。こういうものを踏まえまして、今後あるべき社会保障制度あるいは年金のあり方について十分な討議が行われると思っております。それに即応してまいりたいと思いますが、先般の財政収支試算でお示ししたように、あれは経済の今後の中期見通しと整合性をとったのでございますが、あの試算でいきましてもやはり経常の中で最も伸びているのが振替所得でございまして、これは公共事業よりもよけいに伸びているという試算が示されておるわけでございますから、中期経済計画におきましてもこの問題が非常に重視されているということは試算の中でも御理解いただけるだろうと思うのでございます。
  85. 真鍋賢二

    ○真鍋賢二君 厚生大臣にも大体似たような御趣旨のことをお聞きいたしたいわけでございますけれども、このところ社会福祉予算が非常に伸びてきたということで日本の福祉も欧米並みになってきたという好ましい状態になったわけでございますが、ただ単に社会保障を求めるというだけでなくして、年金にせよ、医療にせよ、このところ非常に大幅に自己負担といいましょうか、その年金、医療に必要な財源を確保せなければならないわけでございますけれども、そういう点において国民に対して先ほど申しましたように自助と社会連帯の精神を植えつけていかなければならないと思うわけでございますので、そういうものを踏まえてこれからの予算というのが一般会計予算の中で社会保障予算がどの程度のところまでいけばいいのか、国としてはどの程度まで援助してその他は個人負担を求めていかなければならないかというような点について大臣の御所見を伺いたいのでございます。
  86. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 私は、個人の生活というのは、本来みずからの責任によって維持向上さるべきものである、これが自由社会においては原則であるべきだと思うのでございます。しかし、社会保障というのはみずからの力では対処できないものを公的に共同してカバーしていこうと、こういうことでございますから、したがって、国民の自助と社会連帯の精神というものが基礎になるというものでありますけれども、同時にみずからの力で対処できないものを公的な力によって共同してカバーしていくものでございますから、そういう精神を社会保障全体の中で十分貫いていくべきじゃないか、ここで実は今年いろいろな所得の低い人にできるだけ効率的に社会保障関係費を使いたいという気持ちを若干でもあらわすようにいたしてまいっておるわけでございますが、一体どれぐらいの予算の伸びがあったらいいのか、あるいは振替所得としてどの程度諸外国と比べてあったらいいのかということについては、これは私ども社会保障の長期計画というものの見通しをつけた上でないとなかなか判断がいまできません。しからば、社会保障長期計画というものをいま厚生省が持っておるのかと。遺憾ながら実は長期的な展望に立った青写真というものを明確なものを持っておりません。したがって、社会保障の中の一番大きな柱であります年金と医療保障についてどうしても長期的な構想というものをはっきり決めていかなきゃいかぬだろうと思っておりまして、社会保障長期政策懇談会の先生方やあるいはまた年金、医療のそうした専門学識経験者の方々に対して御意見を承り、厚生省としてもいろいろな角度から検討している最中でございます。まあ多々ますます弁ずというのが社会保障のことでもありましょうけれども、しかし、今日のような厳しい経済情勢では、やはり私どもは配分の公平というものも十分考えながらいかなければなりませんし、同時にある程度国民の負担というものも求めていかなければ、これからの老齢社会に全部いわば税金だけで対処していくことはできないだろうと思いますので、いろいろいま申し上げましたような考え方て長期計画を早く立案をいたしまして、その中で負担のあるべき姿というものを決めまして国民の合意を得たいと、かように考えておるところでございます。
  87. 真鍋賢二

    ○真鍋賢二君 長期計画はなかなかむずかしいということでございますが、やはり先進諸国、たとえば北欧なんかではどの程度の自己負担があるかというようなことで日本との比較にもなるかと思うわけでございます。そういう点で、特に地主先生には北欧関係の社会保障についてお詳しいわけでございますので、いま大蔵大臣と厚生大臣がお答えになった両方意見をひとつ基礎にいたしまして、これから日本社会保障がどのように進展していくであろうかと、そしてその中において、いま言う自己負担と申しましょうか、個人の責任においてというところを示していったらいいか、その点についてのお考えを聞かしていただきたいのでございますが。
  88. 地主重美

    参考人(地主重美君) ただいま非常に多岐にわたる御質問が出たわけでありますけれども、ひとつ整理しながら順々に私の意見を申し述べさせていただきます。  まず最初に、今年度の予算をめぐって、今年度の予算で社会保障の予算の伸び率がどうもいままでと違いまして一般会計予算の伸び率を下回ってしまったと、これはどういうわけかという御質問がありまして、大蔵大臣から、ことしは公共投資の予算が大幅に伸びたことによるものだと、こういうふうなお答えがあったかと思います。私も、結論を先に言いますと、全くそのとおりだと思うわけです。社会保障の予算の伸び率そのもので見ますと一九・一%ですから、たとえば昭和四十年以降の平均伸び率ということで考えてみますと、それほど低い伸び率ではないどころか、かなり高い伸び率で推移したと思うわけでございます。ところが、今年度は特に不況回復というところに政策のアクセントが置かれておりまして、しかもその不況の回復というものを消費ではなくて投資によって行う、公共投資によって行うということで、いわば公共投資に非常に傾斜した予算が組まれておるわけでございます。この予算の内容を経常とそれから投資的な経費に分けて見ましてもその間の事情というのは非常にはっきりしているわけでありまして、経常部門ではことしは一七・一%の伸び、ところが投資部門では三一・二%の伸びという、投資中心型の公共投資主導型の予算が組まれているわけでございます。公共投資の拡大によって景気の回復を図るということで公共投資に大きな予算をつけたわけでありますから、まあ当然のこととして消費的な経費といいますか、あるいはまた所得の移転にかかわるような、つまり社会保障がこの中心でありますけれども、そういったものとの比較で見ますと、その方が相対的に低くなるのはある意味では当然のことであるわけですね。ですから、ここでの問題は、理由というか、そのような公共投資主導型で危機を突破するということの評価にかかわる問題だと思うわけです。つまり、公共投資でやるのがよいのか、あるいはまた政府消費でやるのがよいのかということになるわけでありますが、政府の予算ではまさに公共投資でやっていこうと、こういうわけですから、理由はまさにそこにあると、こういうふうにお答えできるかと思います。  それから今後の見通しでありますけれども、これは人口の老齢化というのは着実に進むわけでございますから、それだけを取り上げましても社会保障費というのはどうしても拡大せざるを得ない。さらに、御案内のように年金制度がこれから急速に成熟していくわけですから、そういう意味でも経費は急速に増大していくということでありまして、よし仮に長期的な計画というものを持たない、現行の制度のままでいくにいたしましても、この社会保障費の対国民所得比というのはかなり大幅に伸びていく、恐らく一八%あるいは二〇%近くになるのではあるまいかと、こういうふうに考えられるわけでございます。  それから次に、こういうふうに社会保障の費用が今後拡大していくということに伴いまして、その財源をどういうふうに確保するかということが最大の問題になるということは、これも申すまでもないわけでございまして、ただいま御指摘いただきましたように、これをその考え方として自助の精神というものをいわば基底に置きながら社会連帯の思想で対応していくためにはどういうふうなやり方を考えたらよいかということが問題になると思います。もともと、社会保障というのは、この自助というものをぼくは原則にしていると思うのです。何人もみずから立つということを否定する人間はいないわけでありまして、ただみずから立とうとしてもできない、そういう人も多いわけでありますから、そういういわば自立の可能な条件を整えるというのがこれがまさに社会保障ではないか、自立を可能にするような条件を整えるというのが社会保障ではあるまいかと、こういうふうに考えるわけでございます。まあそういうことで考えてまいりますと、社会保障というものにはおのずからある種の限度があるというふうに私は考えるわけでございます。その限度というのは何かと申しますと、自立のための可能な条件でありますから、それはやはり将来の生活不安を解消するに必要にしてかつ十分なものにどうしてもならざるを得ないし、またそこに限定すべきだということになるわけでございますね。そういうふうに考えてまいりますと、社会保障に対する負担の問題についてもおのずからいろいろな答えが出てくるだろうと思うわけです。おのずからと申しましたのは、現在の日本社会的な経済的な状況の中でということでございますけれども、これをすべて国費でもって国庫負担でやっていこうというふうな考え方もありましょうけれども、そういうようなやり方で安定した社会保障の将来の運営を可能にさせるとは私は思えないわけでございまして、私の考え方を率直に申し上げますと、やはり社会保障というのは中心は社会保険、保険料ではないか、保険料を中心に据えるということ、財源の上ではそれを中心に据えるということは、これはまあ避けがたいと考えるわけでございます。ただ、その場合に、一体その社会保険料でどの程度のものを賄えるのか、あるいはまた公費負担でどの程度のものを賄うかということになりますと、これについてはこうあるべきだというふうな配分比率というものはぼくはないと思うのです。しかも、先ほどの御質問の中にも出ておりましたけれども、西欧諸国におきましてもそのやり方が皆違うわけでございます。つまり、国費にアクセントを置いたような国もありますれば、社会保険料にアクセントを置いたような国もある。そのいずれがよいか、これはいろいろメリット、デメリットがありまして、これがあらゆる見地から見て正しいというふうな答えはなかなか出てこないわけでございます。私は、やはり財源確保の安定性ということも社会保障の費用を確保するために重要な条件になると思いますので、そういう意味では社会保険料を中心に据えるというふうな考え方、これがある意味では自助と連帯の両方の条件を満たす財源確保の方法ではあるまいかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  89. 真鍋賢二

    ○真鍋賢二君 社会保険料を中心とした社会保障ということを申されたわけでございますが、これは時間がございませんので、余り多くを申し上げられませんが、イギリスの社会福祉失敗を、ロブソンさんという方が、著書の中で、物や金の分配でなく心の持ち方だと、地域社会での助け合いの心を育てていくことが大切であると、これが真の福祉であるということも言われておるわけでございまして、その点は今後私は配慮して社会保障を考えていただきたいと、かようにお願いをいたす次第でございます。  余り総論的にもなりますので、次に、これは私事にわたるかとも思うわけでございますが、若干私の経験を通して御質問をいたしたいわけでございますが、私が長年御交誼をいただいております方で高田馬場のところに本間一夫さんが経営しておる日本点字図書館という日本で一番大きい図書館があるわけでございますが、この方が昭和十五年から自分が盲人になったということで私費を投入して図書館をつくった、日本の点字図書館の草分けであるわけでございますが、その図書館が、図書館を増設するにいたしましても、なかなか個人の負担では限界があるということでお困りになっておったわけでございますが、やっと盲人の点字図書館を充実さそうということで昭和二十九年から厚生省の点字図書の製作事業の委託を受けて、その後東京都からも三十七年から委託を受けるようになったわけでございますが、全国の点字図書の半分以上をこの日本点字図書館で賄っておるわけでございますけれども、この点字図書館は、ほとんどが、民間の浄財と申しましょうか、そういうお金とか奉仕員の汗のにじむ努力によって維持しておるというのが現況でございます。ちなみに、ここの職員が七十四人おるわけでございますけれども、その中で厚生省の公費負担と申しましょうか、東京都と厚生省の方から出ておる人が十七名おるわけでございますけれども、その十七名のうちで専任職員が六名で、あとが賃金職員というような形になっておるわけでございます。御承知であろうと思いますが、賃金職員は五十万であって、年間収入でございますが、専任職員が二百五十万という額になっておるわけでございまして、やっておる仕事は全く同様なわけでございますけれども、そこに大きなアンバランスがあるということで、数少ない職員でございますので、その奉仕の本当に充実した場所にそういうようなアンバランスを生じてはならないということで、こういう面の待遇をもよく考えていただきたいと思うわけでございます。そして、私は、この中でこういうように本間さんの善意が実ってくるわけでございますが、やはり民間人の熱意とか経験が福祉の上でも大きく寄与してくると思うわけでございます。そういう点から申しましても、厚生省——中央でなかなか仕事をやってもデスクプランになりがちなんでございますが、そういう委託事業をするにいたしましても、そういう民間の意見をどんどん吸収していただきたいと思うわけでございます。  また、私の出身の香川県の善通寺市にも香川小児病院というのが国立であるわけでございますが、昭和四十二年ごろまでは国立の結核の療養所としてその任務を果たしてきたわけでございますが、もう結核の病気も国民の脅威的な病気でないということで、その小児病院に切りかえるときも私自身が厚生省に参りまして、当時の療養所課長の加倉井さんに——亡くなられた方でございますが、いろいろ説得して、小児病院というような形でオープンいたしたわけでございます。そういうことで、やはり民間のそういう運用につきましては地域の意見を十分聞いていただきたいと、かように思うのと、先ほど本間さんの点字図書館でございますが、週に二日間、無料で、途中で失明した人とか能力を失った人たちに対して職業訓練指導やまた盲人に対するいろいろな教育をいたしておるわけでございます。この香川小児病院にいたしましても、子供の病気をなくそうということで始めたわけでございますが、その当時日本一の新生児の死亡率を香川県は持っておったわけでございますが、この病院ができると同時に、いまやもう全国のランクでも半分以下の状態になってきたわけでございます。そして、子供の病気を治す過程におきまして、その国立病院の中に県立の養護学校をつくっていただいて、その子供の健康状態に応じて教育をさすというような本当に血の通った手当てをいたしておるわけでございます。  そういうことを私は考えてみますると、どうしてもただ単に一律的に学校をつくりなさいとか、病院を充実させましょうとかいうのでなくして、その地域の経験豊かな創造力のある力を厚生省自体としてもぜひ使っていただきたい、かようにお願いをいたす次第でございます。  また、現在厚生省が実施しておりますシルバープラン、老人向けのいろいろなサービスでございますが、一県に一カ所ということで、なかなか全国要望するところはたくさんあっても割り当てられないというのが現況じゃないかと思うわけでございますが、厚生省の事業として厚生省と県と地元市町とが三分の一ずつ分かち合って費用を出し、実際の運営はその地元の市町村にお任せしようというような形でやっておるわけなんです。そういうことでこれは香川県ではいま丸亀市というのが一つ実施されておるわけでございますが、また高松市においてもその要望が今年も出てきておるというようなことで、こういうことは要望するところがあったらもうどんどん一県に一つなんて言わずに弾力的にやっていただきたいと、そしてこのときに私は感ずるのでございますけれども、北欧、欧米諸国においても社会福祉サービスというのはほとんど地方公共団体等にゆだねておる。そうすることによって内容も充実するし、異なった状況においてその特異性を発揮していくというようなことをやっておると聞いておるわけでございますが、先ほどのシルバープランにいたしましても、香川の小児病院にいたしましても、点字図書館にいたしましても、そういう地域の熱意というか、そういうものをぜひくみ取ってこれから厚生行政の指導に当たっていただきたいということを思うわけでございますが、厚生大臣、いかがでございましょうか。
  90. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 本間さんの点字図書館の例をお挙げになったり、あるいは小児病院の香川の例をお挙げになったり、シルバープランについてのお話がございまして、私も本当に同感でございます。それで、できるだけ国も民間のそういうような方々の奉仕の仕事に、余りこうしゃくし定規に規則やその他にとらわれないで、できるだけの援助を申し上げて、そして自発的にそういうような運動が全国に行われてくることを期待いたしておるわけでございます。  それからシルバープランにつきましては、五十三年度予算であと九つ追加したいと考えておりますが、高松については他にも熱心な御推進をいただいておる方々が多いわけでございますので、県庁所在地でもございますから、ぜひ御要望にこたえたいと、かように考えております。  おっしゃるように、確かに社会福祉事業あるいは社会保障のいろいろな事業については、地元の国民のニーズによってその地域によっていろいろ条件等も違いますので、やはり、地方の発意というもの、熱意というもの、あるいは創造力というものを大いに活用していかなきゃいかぬだろうと思います。ただ、一般的に言って、やはりそれだけではいかぬと思いますので、国民全体を通ずる一つの最低限の保障だけは共通にやっぱりしていかなければいけない。ただ地方の人気取りによって地方の為政者がいわゆる世に言われております——われわれはそうは一概には考えませんが、ばらまき福祉等のそういうようなことで体系を乱されても困りますけれども、しかし、原則的にはおっしゃるように地方のそういう創意工夫、情熱というものについては大いにこれを尊重して、国はむしろそれに援助の手を差し伸べていくということが基本的な考え方ではなかろうかと思いますので、拳々服膺いたしまして今後もがんばります。
  91. 真鍋賢二

    ○真鍋賢二君 大臣の非常に好意ある御回答をいただいたわけでございますが、私の提言といたしまして、そういう小児とか盲人とか老人とかを対象にして今度いろいろなセンターをつくるならば、まあこれは仮称でございますけれども、療育センターであるとか職育センターであるとかというものをつくって、各府県でぜひそういう人たちの福祉に寄与していただきたいとお願いをいたす次第でございます。  最後に、前国会で成立しました健康保険法の改正も、厚生省と医師会の間に対立があるやということで方々にうわさされておるわけでございますが、現実に昨日の新聞紙上等にも医療保険制度の改正問題につきまして日本医師会の御意見も出ておったわけでございますが、いずれにいたしましても、先般の改正時に、これは今回限りにして、速やかに医療保険制度の抜本的な改正をすることにしたいという厚生大臣の御返答であったわけでございますが、この点につきまして、大臣、いつごろこれを軌道に乗せるか。一応これは審議会の答申も得なければならないわけでございますけれども大臣としての心づもりをお聞かせいただきたい、かように思うわけでございます。  また、参考人の地主さんにも、専門家として、これは専門外になるかもわかりませんが、厚生省と医師会がいま唱えております医療保険制度問題点についてお考えをお聞かせいただければ幸いに思うわけでございます。
  92. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 抜本改正の第一段階として今国会で改正案をお願いいたしたいと思っておりまして、審議会等の手続等もございますものですから、なかなかいま直ちに私からいつごろ提出するということをはっきり申し上げられませんけれども、できるだけ早く御審議を関係委員会で願って、国会の事情等も考えますと、来月にはどうしても出さしていただきたいと考えておるわけでございます。  その大体の基本的な考え方は、給付の平等化をまず図りたい、それから負担の公平化を図るようにいたしたい。それと、中小企業、大企業等のいろいろな関係もございますので、所得の再配分の機能を若干でも加えさしていただいて将来の理想的な国民平等の保険制度に向かっての一歩を築きたいと、これらの考えが中心になっておるわけでございますが、その他、医療の機会の公平といいますか、お互い被保険者側も医療担当者側もむだを排除していくような努力もしていただかなければいかぬと考えておるわけでございますので、これらの考え方をもとにしまして、もう近く党との調整も終わりますと審議会におかけいたしたいとも考えておるわけでございます。
  93. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 時間が来ておりますので簡単に。
  94. 地主重美

    参考人(地主重美君) いまの抜本改正で一番重要なところは、やはり給付の面における公平性の問題、あるいはまた給付の平等と言ってよいかもしれませんが、そういう制度間の格差の問題ですね。それからもう一つは、一番必要なところに金が流れていく、あるいは医療サービスが流れていく、こういうふうな仕組みにしなければならないということであろうかと思うのです。今度の抜本改正の案というふうに新聞紙上で伝えられているものを拝見いたしますと、まさにそういう点では非常に期待にこたえているものだと思います。医師会側が非常に強く反対しておりますのは、要するに、いままでの労働者中心の組合健康保険でありますとかそういうものをこのままにしておくというのは国民皆保険の現状には合わないのではないかと、こういうふうな指摘でございまして、それをもう少し国民——勤労者であるとかあるいはまた自営業者であるとかというふうに分けないで、それを一緒くたにしたらどうだ、こういうふうなことで、その間の意見の対立があるのだろうと思います。この問題はなかなか厄介でございますが、その両方考え方にやはりメリットもデメリットもあると思うわけでございます。しかし、現状を踏まえながら制度の改正をやっていくということにいたしますと、なかなか抜本的と申しましても、何もかも全部崩しちゃえというわけにはいかないわけであって、そこにはおのずからステップがあるわけですから、そういうステップということで考えますと、新聞で伝えられているような抜本改正というものはかなりわれわれのかねてから主張してきた要請にこたえている、こういうふうに私は評価しております。
  95. 真鍋賢二

    ○真鍋賢二君 終わります。(拍手)     —————————————
  96. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、安恒良一君。
  97. 安恒良一

    ○安恒良一君 昭和五十三年度の一般会計予算では、いまも真鍋さんも触れられましたように、公共事業費が対前年度当初比で三四・五%という史上最高の伸び率を示している。これに対して社会保障費は一九・一で、一般会計全体の伸び率二〇・三%を下回っています。私はこのことを大変に重要視するのですが、その理由の一つは、社会保障費の対前年度の伸び率が、昭和四十九年の三七%をピークといたしまして、五十二年に一八%まで下がっていまして、しかし、四十七年以降絶えず一般会計の対前年度伸び率を上回っていたのに今回一つ下回ったということ、これが一つであります。  それから第二番目には、このことは、物価調整減税を含め所得減税が見送られた。もちろん衆議院で五野党の修正で三千億円ということが考えられておりますが、私は今年度予算が景気浮揚予算だと言われていますが、その点から見てもマイナス効果が非常に大きいと、こう思います。これが第二点。  それからしばしばこの国会で議論をされていますが、わが国の貯蓄率の問題でありますが、石油ショックの後、狂乱物価の中で四十九年度に二四%という異常な高水準にはね上がりまして以来、今日まで二二から二四%の高水準を保っております。しかも、注目しなければならぬことは、四十九年に消費者物価上昇が対前年比で二四・五%に達した中でこの高い貯蓄率があったということであります。これは、率直に言って、国民がこの先何が起こるかわからない、やはり蓄えが必要だと、こういういわば防衛本能から起きたことだというふうに私は思うわけであります。そして、国民にこのような生活防衛意識を抱えさしたものは、一つには何といっても政府の社会保障政策に対する基本的な不信感があるからだというふうに私は思うわけであります。  そこで、以下関係大臣並びに参考人でありますところの地主先生にも御質問したいのですが、まず関係大臣にお聞きしたいのでありますが、長期の社会保障計画、それから社会保障の基準、水準、国民的なナショナルミニマムについてどうお考えになるのか、もしくは、今日まで検討されておりましたならば、このような点を検討していると、こういうことについてお答えを願いたいと思います。厚生大臣、労働大臣、経企庁長官、大蔵大臣に、以上二つの点について、長期の社会保障計画社会保障のナショナルミニマムについて。  この点でちょっと付言しておきますと、たとえば七十歳以上の老齢福祉年金は、千円から始まりまして、ことしの予算では一万六千五百円と、うんと高くなっていると言われますね。その限りにおいてはそうだと。しかし、今日の物価上昇の中において老齢福祉年金の一万六千五百円というのは、まあ孫のあめ代ぐらいにはなると思いますが、生活ということから考えるとほど遠いものがある、こういうことがあるんですから、私はやはりどうしても国民が安心するためのナショナルミニマムというか、社会保障の基準、水準ということが必要だと考えますが、以上の点について各大臣の御所見を承りたいと思います。
  98. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 社会保障の長期計画、あるいはナショナルミニマムについての見解というお尋ねでありますが、私ども、遺憾ながら先ほども御答弁申し上げましたようにまだ長期計画というものを持っておりません。まことに残念だと思いますが、今年に入りまして社会保障長期計画懇談会等の御参集をいただきまして、これはどうしてもつくらなきゃいかぬというのでいま鋭意作業をいたしておるところでございます。ただ、その大きな柱は、先ほど申し上げましたように、所得保障と健康保障の両面だろうと思うのでございまして、これについてはぜひ今年中にひとつ長期的な理想像というものをつくり上げまして大方の御批判を得たいと考えておるわけでございます。  最初に言われました社会保障の予算といいますか、そういう経費がどうもだんだん下がってきておるのじゃないかというお尋ねでございますけれども、私どもは必ずしもそう思っていないのでありまして、昭和五十四年が振替所得の国民所得に対する割合というものが八・四%でございまして、あるいは社会保険負担の国民所得に対する割合、それらを見ましても、五十三年が振替所得の国民所得に対する割合というのは一〇・八ぐらいに見込んでおりますので、しかも、五十一年が九・四、五十二年が一〇・一ということで毎年国民所得の中における社会保障費の割合というものは逐年率が上がってきておりますから、ただ当面の予算だけで見ていただかないで、全般的に社会保障関係の全体の費用というものが国民所得に対する割合がどうなっているかという推移を見ますと、まあまあ一応順調に推移してきているのではないかと、かように考えております。
  99. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 労働省は、申し上げるまでもございませんけれども、労働者の生活の安定、福祉の向上という、こういったところにその使命があるわけでございます。したがって、労働者の一番困る問題は失業あるいはまた労働災害と、こういったことでありますから、そのことに対しましてはいわゆる雇用保険制度、こういったことで支え、あるいはまた労災保険によって支える等、毎年内容を充実してきておるわけでございます。お尋ねの福祉計画という問題については、先ほど厚生大臣からも御答弁がございましたけれども、いろいろ内容は多岐にわたり、また長期的なプランのもとに進められなきゃならぬと思いますが、われわれとして一応考えられるのは、雇用対策法に基づく雇用対策基本計画、それから労働安全衛生法に基づく労働災害防止計画、こういったものを策定いたしております。これはもうすでに御承知だと思いますけれども、計数的なものではございませんで、一つの基本計画というものを立てて、それに沿うて逐年具体的な政策を打ち出しておると、こういう状況でございます。
  100. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいまのお尋ねにつきましては、政府の五十年代前期経済計画では肯定的に考えておりまして、計画によりますと、「長期的目標の達成を目指すため、社会保障長期計画を早期に策定する。」と、こういうふうに述べております。この点は、そのような形でこの計画は閣議決定をいたしておるわけでございます。すでに厚生大臣が言われましたように、社会保障長期計画懇談会が今日までたしか数十回の会合を重ねておられまして、各方面について詳細に検討を進めておられるというふうに承知をいたしております。
  101. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) これから本格的な老齢化社会を迎えるに当たりまして、社会保障の長期ビジョンあるいはその仕組みをどうするかということは最も緊要な問題であると思うのでございまして、先ほど厚生大臣も基本構想懇談会その他各種の意見を参酌いたしまして鋭意検討するということでございますので、われわれもその考え方に対しては基本的に賛成しているところでございます。
  102. 安恒良一

    ○安恒良一君 私のお聞きしたことについて一つしかお答えになっていない。私は長期社会保障計画を持つ必要があると思うが検討したのかどうかということ、これは大体お答えになったのですが、それと同時に、社会保障の基準、水準といいますか、ナショナルミニマムというものをやっぱり国民に明示しなければいけないじゃないか、でないと国民は安心しないじゃないか、このことについてはどの大臣も触れられませんでした。これは時間をとりますからどなたでもいいですから一人代表してそこのところちょっと触れてみてください。
  103. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 先ほどお答えしましたように、実はそれを明確に把握をしたいというのでいろいろ先生方の意見を聞いている最中でございまして、まだ確定的な見解を持つに至っていないのでございます。残念ながらそういうことでございます。
  104. 安恒良一

    ○安恒良一君 いま大臣に御質問しましたが、どの大臣もまだ長期社会保障計画社会保障の基準、水準については検討中と。しかし、それではやっぱりいけないのじゃないか。低経済成長に入っていまやわが国が大きく曲がり角に来ているときに、このことを速やかに明確にすることが一番必要だ。たとえば宮澤大臣が言われました五カ年計画、ここに持っておりますが、この中にでも年次計画が示されておりませんし、その計画の途中の達成率がこれでは明らかになっていません。それから年金等について政府は水準として西欧段階には見劣りしないということが強調されていますが、未成熟の、成熟していない段階の受給権者等の救済について具体的な計画はこれには触れられておりません。ですから、これは長期計画と事社会保障に関しては私は言えないと思う。ですから、速やかにそういうものをつくっていただきたいと思いますが、そこで以上の二つの点について地主先生の御見解を承りたいと思います。
  105. 地主重美

    参考人(地主重美君) 第一点のナショナルミニマムでございますけれども、現在社会保障制度の中でいわゆるナショナルミニマムと言ってよいもがございます。これは生活保護の基準であろうかと思います。ただ、この生活保護というのは、これは現に貧困状態にある人に対する最低保障の水準でありますので、これと社会保険の対象者、これは現在貧困状態にないけれども、しかし、そういう貧困状態にいつ陥るかわからないという生活不安は同じように持っているわけでありますが、そういう人に対するナショナルミニマムの水準というものを同じように考えてよいかどうかというのが一つの大きな争点ではないかと思うわけでございます。これは非常に厄介な問題ですけれども、今度のたとえば社会保障制度審議会の提言というか中間報告の中に、一つそれに匹敵するような考え方が出ていると思うのです。基礎年金と申しましょうか、基本年金と申しましょうか、それについての水準を明示しているわけですね。それがナショナルミニマムとして適正かどうかということ、これはなかなかむずかしい問題であろうかと思いますけれども、話は、つまり生活保護の基準と社会保険における最低の基準というものをどういうふうに考えるかということで、これを一本化すべきだというふうな意見もあろうし、いや、やはりその二つの間には違いがある、こういうふうに考え意見もあろうかと思います。これは実は将来の社会保障の計画と密接に関係があるわけでありまして、将来の社会保障というものが現在のこの老齢化あるいはまた低成長下でどの程度社会保障の規模が伸びていくか、それをどういう形で負担するかということにもよってくるわけでありますので、そこら辺の財源の調達の可能性というものも同時に考えてやはり決定さるべき問題ではないかと思います。  それから第二の点は、これは将来の長期構想……
  106. 安恒良一

    ○安恒良一君 長期計画
  107. 地主重美

    参考人(地主重美君) 長期計画でございますね、長期計画の必要性がいまどうしてこれだけ議論されているかということでございます。この点やはり考えてみる必要があると思うわけでございます。ぼくは、一つは医療の側面、医療保障の面、もう一つは所得保障の面だと思います。医療保障の面で言いますと、どうしてみんながこういろいろ不安を持っているかと言いますと、その一番大きな問題の一つとして取り上げられているのが、入院すると大変金がかかると、つまり保険外の負担が非常にかさむと、これでは社会保険というのは何のためにあるのか、医療保険は何のためにあるのか、こういうふうな不安が非常に強いということではないか。これが直接のきっかけではないか。同時に制度間格差に対する不満があるということもありますが、格差以上に直接不安として深刻なのはまさに病気になったときに大変金がかかる、入院したときに大変金がかかる。外来のときはいいけれども、入院すると金がかかる。しかも、それが保険外負担になっている。こういうことで、これをどうかしてもらいたい、こういうことが一つのきっかけではないか。  それから年金につきまして申しますと、御承知のようにある共済組合のごときは財政が非常に悪化しておりまして、もういまにもパンク寸前でございます。これをどうするのか。どうするのかというときに、制度間でいろいろな格差がある。格差をそのまま是認したままで、いやそれなら国庫負担をそこに投入しましょうというわけにはまいりませんので、やはり制度の全体というものを見直してみることが必要になってくるわけであります。そういういわば直接いま長期的な計画の必要性を迫られているような問題があるわけでありまして、それをきっかけにして将来計画をつくるということが必要ではあるまいかというふうに考えております。
  108. 安恒良一

    ○安恒良一君 長期計画の必要性は認められたのですが、現実にこれはやはり急いでつくらなきゃならぬと思うのです。  そこで、今度は長期計画のうらはらになる財源論についてお聞きしたいのですが、御承知のように厚生省は推計ということで五十二年度の国民総医療費が八兆六千五百億、五十八年度が二十兆二千八百億、二・三倍、対国民所得に占める割合が五・四から六・四に変わるということを過日発表しておりますし、また、わが国における人口構造の急テンポな高齢化問題にどう対処していくかということについては、これまた財源上非常に重大な問題になると思います。御承知のように、昭和七十五年になりますと、老齢人口の占める割合が二一・七%で、生産年齢人口五人に対して老人人口が一人になる、こういうことになるわけであります。そこで、これらの社会保障費の財源問題についてどうお考えになっているかということをお聞きをしたいのであります。これはなぜお聞きをするかというと、いまや財源問題は百家争鳴の形をしています。たとえば、年金懇の提言があります。それから社会保障制度審議会の皆年金下の新年金体系の提言があります。それから老人保険医療問題懇談会の提言があります。その他、提言はありませんが、この国会に出されました大蔵省の試算の中でA、B、C、D、Eということで振替所得の問題が出されておりますし、宮澤長官が触れられた長期計画の中におきましてもやはり厚生福祉部門については二十二兆一千五百億ですか等が五十年度価格で出されています。いまやまさに百家争鳴の形に財源問題はなっておるわけです。そして、中には率直に申し上げて目的税的な構想も出ている。制度間の調整構想も出ている。もしくは公費負担という構想も出ている。そして、公費負担と国民と事業主負担というようないろいろな構想が出ているわけです。私は、こういう問題について、もう国民に一つ考え方を示す、そして国民的なコンセンサスを得るべき時期に来ていると思いますから、この問題につきましては、厚生大臣、それから大蔵大臣、そして経企庁長官に対しましても経済計画との関連からどう考えるか、こういう財源問題について三大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  109. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) わが国の社会保障制度の総収入、その中に占める国庫負担の割合というものは、一九七一年の例でちょっと古いのですが、これを見ましても諸外国には余り劣っていない。西ドイツが二五・二%、スウェーデンが二八・七%であります。日本は、もちろん最近の年次でございますが、それでも一九七一年には二五でございまして、一九七五年、二年前には二八・三でございますから、国庫負担の割合というものは私は相当大きいのじゃないかと思うのです。それから保険料の社会保険負担を見ますと、一方においてこれは圧倒的に日本は低いわけでございます。一九七五年の統計では日本は五・九、七六年で六・三、イギリスが九・七で、フランスが二一・六、西ドイツ一八・六、スウェーデン一三・六でございますから、日本社会医療保険料負担というものは一九七五年ないし七六年で見ますと非常に低いわけでございます。ただ、私どもは、社会保険負担であっても税金であっても、これは全部国民の負担だと思っております。したがって、どっちの方で負担を願う方がいいのか、やはり相扶共済の社会保険制度をとって社会保障を考えている場合には、社会保険料というものをある程度国民の合意を得て負担を増していかなければ、一概に国庫負担だけでいくということはできないのじゃないかと思うのでございまして、結局同じ負担なんですけれども負担の仕方の方法論になってまいりますと、国民の合意を得て、できるだけ社会保険の負担をふやしていかなければならぬだろうと思っておるわけでございます。ただ、その場合に、社会保険の効率的な合理的な使用ということについては私どもはやっぱり責任を国民に対して持っているわけでございますので、そういう面の点は国民の合意を得る前提として十分合理的な効率的なものにするだけの努力は十分していかなければいかぬと考えております。
  110. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) いま安恒委員が言われました財源問題をはっきり見通しを立てるということの必要性、これは私は長期計画とうらはらになるほど大事な問題だと思っているのでございます。ただいま国庫負担の割合、あるいは保険料の関係の各国比較につきましては厚生大臣がお述べになりましたから省略さしていただきます。  問題は、長期計画というものがどんな仕組みでつくられるか、それとの整合関係をもって財源が国民的の合意を得られなければならないと思うのでございます。医療について仮に申しますれば、保険でどこまで持つのか、あるいは自己負担はどの程度がいいのか、医療費全体を効率的にするためにそういうことも考えられましょうし、また公費負担は一体どこまでやるのか、こういう問題が制度の問題と絡んで恐らく国民的な論議の対象になると思いますし、また年金の問題につきましても同じようなことが言えるわけでございまして、今後の老齢化社会を迎えましてどういうことになるのか、保険料部分と国庫負担の問題、あるいは世代間の公平の問題、こういうものを考えまして、やはり全体の基本的な構想と整合性を持ったものでぜひありたい。私はいま安恒委員が財源の重要性についてお述べになったところにつきましては全く同感でございます。
  111. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 国民所得に対する社会保険負担は、ちょうど五十年度で六%程度でございますが、先般計画の試算をいたしましたときに、五十五年で七・五%ぐらい、あるいは五十七年度になりますと八%程度になろうかという試算がございますが、それにいたしましてもほかの要素を含めましてこの前期計画自身がある段階で国民負担の増高を考えませんとつじつまが合わないようなことになっておるわけでございますから、ただいまのお尋ねに対しましては、やはり両方からということを計画は示唆しておるものと考えております。
  112. 安恒良一

    ○安恒良一君 いま大臣からの御答弁があったのですが、もうこれだけのたくさんの提言が出ていますから、財源問題についても、たとえば保険で持つべきもの、自己負担のもの、それから必要に応じて老人問題なんかは場合によれば目的税ということも考えなきゃならぬ段階にあるかもわかりません。それからいわゆる国が持つべきもの、こういう問題についてこれまた長期的に展望を示すべきではないだろうか。たとえば、宮沢企画庁長官も言われましたところの五十年代の前期経済計画に見ましても、計画の諸政策の考え方社会保障費等それぞれの主要経費については言及されているのにもかかわらず、その計画目標は振替所得としてだけしか示されていませんから、これではやっぱり国民はわからないわけです。それから大蔵省がはじき出されましたこのA、B、C、D、Eのケースも、振替支出としまして五十四年度、五十七年はこうなるということで、しかもこれもケースが違っていますからばらつきがあると言っても、余りにもばらつきがあるわけですね、ケースのとり方によっては。これでは国民はどういうことをしていけばいいのか全然わからないんですよ。そして、毎年毎年の予算はそのときだけ予算として示される。それでその次の年はまたその次の年で。これでは国民が私が言ったようにどうしても自分の社会保障に対して不安を持って、個人消費の拡大ができないんですよ。  ですから、私が三大臣に主張したいことは、長期構想と同じように財源問題についても、それぞれ大臣のニュアンスの違いはありますけれども、私は政府として意思統一をして明確に示してもらいたい。そういう中でたとえば五十三年度予算をどうするかという議論をしないと、どうも日本の予算というのは単年度にぶつ切りでどうするのかこうするのかと、また予算関連法案についても賛成か反対なのかと、これではいけないと思います。そこで、この財源問題について地主先生の御見解をひとつ承りたいと思います。
  113. 地主重美

    参考人(地主重美君) 財源問題というのは、言ってみれば給付の規模がどのくらいになるかということに大きく支配されるわけでありますので、その給付の規模について将来のはっきりした見通しが立ちませんと、なかなか財源をどこに求めるかということについての具体的な答えというのは出てこないだろうと思います。そういう意味でも長期計画が必要だというふうに考えるわけです。  御承知のように、わが国の社会保障の負担というのは、これは大体三者負担というか、それぞれ三分の一ずつ持つというふうなほぼそういう割合になっております。そのことの是非は別としましてそういうことになっておるわけです。しかしながら、先ほど来お話にもありましたように、日本社会保障関係の保険料の負担比率というのはまだ非常に低いと。非常に低いということにつきましても、これは低いからけしからぬという意見もあろうかと思いますが、しかしながら、一方ではまだ老齢化がそんなに進んでいないと。だから低いのもやむを得ないということにもなるわけでありますし、また、この制度の成熟がおくれているからそれで負担も低い、こういうこともあるかもしれません。ですから、そういう前提条件の違いというものを出していきませんと、ただ横に並べて高い低いという議論は余り実りのある議論とは言えないわけでございます。ただ、非常にはっきりしていることは、老齢化がこれから急速に進みますから、それによって負担が急速に増大する、これはもう避けられないわけでありますから、これをどういうふうな形で調達するかということにつきましてただいま詳しい御説明というか、御質問の中に御説明があったわけでございます。すでに幾つかの提案が出ているわけであります。  ただ、私は、これを考える場合にも、たとえば保険料でどのくらい見るか、一般財源でどのくらい見るか、一般財源の中でもたとえば付加価値税でどうする、あるいは富裕税を新設してどうする、こういう議論はありますけれども、それだけではちょっとまずいと思うわけです。つまり、それは直接的にどこから持ってくるかということであって、これがどういう形で最終的にだれによって負担されるか、つまりどういう形で転嫁されるかというその点についての考慮が必要だと思うわけでございます。ですから、たとえば保険料といいましても、本人負担するのか事業主が負担するのかということでこれはおのずから経済的な効果は違ってくるわけでございます。ですから、事業主の負担というのはぼくはある意味では間接税に似通ったものだと思います。それから本人負担というのは直接税に似通ったものだと思います。ですから、事業主負担を強化することがよいのか、あるいは別の形の間接税でもって調達した方がよいのかということも一つの選択問題になるわけでありまして、そういういわば全体の経済的な機能に即して見なければならない。ということは、つまり財源の選択に当たりましては、まず第一に財源そのものが安定しなければならない。いつでも景気の変動によって始終財源の規模が変わってくるというのじゃ困るし、またほかのいろいろな政策目的と競合するようなそういう形のものでは困るわけでございますが、それから第二は、やっぱり公平といいますか、公正といいますか、そういったものが保たれなくちゃいかぬ。つまり、ある意味での再分配を行うわけですから、そういう再分配効果をやはり考慮しなければなりません。そして、第三に、物価に対する影響というものをわれわれは十分に考慮しなければならない。ですから、物価に対して非常に悪い効果を与えるようなそういう費目はまあ別の意味で好ましくないと、こういうことでありまして、そういうことを検討した上で財源調達のありようを考えなければならないだろうと、こういうふうに思うわけです。
  114. 安恒良一

    ○安恒良一君 いま地主先生からも御指摘がありましたように、財源問題を考えるときに横並びの比較論というのはやはり私も間違いだと思う。たとえば老齢人口の度合いというのがこれからは大変になるにしても、いまはまだわが国は老人国とは言えないわけですから。それからいま一つ重要なことは、財源問題のときに、どのようにして調達をするかということと同時に、その調達された財源がどう効率的に使われるか。たとえば、医療保険におけるいわゆる薬づけと言われているむだの問題とか、検査の過剰の問題とか、機械化の過剰の問題等々。ところが、どうしても政府のやり方というのは財源論になると何となく収入面だけを考える、こういう点があると思いますからまあ時間がありませんし、これらはいずれまた分科会なりいろいろな関係委員会の中で議論していきたいと思いますが、どうか関係大臣にお願いをしておかなきゃならぬことは、長期構想と財源問題についてできるだけ早い機会に国民にお示しを願いたい、そして国民としていろいろ議論を始めなきゃならぬと、こう思いますから、そのことを重ねてお願いをしておきます。  続いて、河本通産大臣にお伺いをしたいのでありますが、円高で原油の円建て価格が非常に安くなったことによる電力九社の為替差金が五十二年度は一千億、五十三年度は一千四百億というふうに一応計算されているというふうに私は聞いています。そこで、通産大臣にお聞きしたいのですが、これを電力を使っている全世帯に還元しますとこれはわずかな金額になりますから、私は、この際、社会保障、社会福祉の関係で、たとえば生活保護世帯、それから失業者世帯、身体障害児・者世帯、それから原爆被爆者の世帯、こういういわば低所得者もしくは社会の片すみで大変困っていられる世帯に対して電力料金を割引する、三〇%割引、こういうことをやったらどうかと、こういうふうに考えますが、その場合には大体どのくらいの財源が必要とお考えなのか。と同時に、そのことについての御見解を賜りたいと、こう思います。
  115. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 円高によりまして電力業界は相当な為替差益が出ております。いま数字をお述べになりましたが、あるいはそれ以上出ているかもわかりません。しかし、これはことしから新しい電力料金を設定する予定になっておりましたが、その設定を中止いたしまして、つまり値上げをやめまして、一昨年新たに決めました現行の価格をあと一年ないし二年据え置く、そういう方向で還元をするようにいま指導をしておるところでございます。  それからなお、福祉料金につきましては長官から答弁をいたします。
  116. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 現在の電気事業法のたてまえからいたしますと、御指摘のようないわゆる福祉料金制度というのは導入できないたてまえになっておるわけでございます。ただ、要生活保護世帯等に三〇%値下げすればどうかと、幾らぐらいになるかという御指摘でございますので、いろいろな前提を置きましてあえて試算いたしますと、いわゆる要生活保護世帯というのは七十一万世帯ほどあるようでございます。それから失業者の数が百二十六万人、失業者一人当たり一世帯という前提で置きますと、対象が約二百万ぐらいになるのじゃなかろうか。それぞれの世帯が一カ月百二十キロワット・アワーを使うといたしますと、東電の場合月間二千円程度になるかと思います。したがいまして、年間通じて約五百億、その三割ということになりますと、約百五十億円ぐらいになろうかと思いますが、冒頭に申し上げましたように、電気事業法の関係から特別の料金制度というのは導入できないということになっております。
  117. 安恒良一

    ○安恒良一君 もう時間が来ましたからやめたいと思いますが、電気事業法をその部面は改正すればできることだし、為替差益が大きく出ておるということは大臣もお認めになりましたし、私はせいぜい二百億からまあ最大考えても三百億もあれば十分にこういう方々にできると思いますので、ぜひひとつ御検討を願っておきたいと思います。  時間がありませんのでこれで終わります。(拍手)     —————————————
  118. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、矢原秀男君。
  119. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 かつての高度経済成長政策、まあこの効果も認めざるを得ない状況でございますけれども、反面、その行き過ぎが国民生活に不平等、不公正などのひずみをもたらしたことは明らかでございます。いま国民福祉優先への政策転換、これは佐藤総理、そうして田中総理、三木さん、福田さんと続きますけれども、しきりにこの点は強調されました。ところが、予算面においては経済の動向によって極端にその数字が増減いたしておることは明らかでございます。いずれにいたしましても、社会保障の充実という面は景気がよくても悪くても当然これはなしていかなくてはいけない大きな政治に課せられた至上の命題であることは間違いないと思います。  ところが、五十三年の予算を四十七、八年から見ておりましても、実質的にはむしろ後退をしている、こういう基本的な問題について、先ほどからもいろいろと質疑がございましたけれども、重ねて厚生大臣にこの点をお伺いしたいと思います。
  120. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 先ほど来申し上げておりますように、なお十分とは言えないと思いますけれども、それでも社会保障費全体が国民所得に占める割合は逐年順調に一応増加してきております。したがって、私どもは、たとえ経済情勢が厳しくとも、必要な福祉というものは国民のために確保していかなければならぬと考えますので、今後とも努力してまいりますが、なお長期的な計画等を急ぎまして、少なくとも十年ぐらいの長期にわたるいろいろな見通しについて、給付と財源等の見通しについて関係方面とも十分相談をしてつくり上げたいというので、鋭意努力をいたしておる最中でございます。
  121. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 厚生大臣、これは国、地方自治体いずれもそうでございますが、長の考え方によって非常に大きな影響力があるわけです。私はいま社会保障関係費の六、七年間のデータを見ておりまして、最近の私が名前を出しました四総理大臣のうちで、あなたが一番社会保障の関係について理解力があったなと思われる総理大臣はどなたでございましたか。
  122. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 政府・与党はどなたがなりましても、政府・与党全体の方針で進んでいただいておりますし、厚生大臣が何人かかわりましたが、みんな社会保障で熱心にやってこられましたので、甲たりがたく乙たりがたく、兄たりがたく弟たりがたきと、こう思っております。
  123. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 本当に根の着いた答弁ではないと思うわけですけれども、ここで地主参考人にお伺いをしたいと思いますが、先進国に比べてわが国の社会保障の渋滞あるいは後進性というものについては種々の要因があると思いますけれども、いまここでお伺いをいたしたいことは、憲法第二十五条に規定する理念、これに基づいた社会保障の定義、このことについてどの程度の位置づけを参考人はされていらっしゃるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  124. 地主重美

    参考人(地主重美君) 私、冒頭にも申し上げたわけでございますが、社会保障と申しますのは、自立のための可能な条件を整えることに最大の目的がある、こういうふうに見るわけでございます。その可能な条件を整えることによって、みずから立つことができるということでございまして、そこに社会保障政策の目的がある、こういうふうに考えるわけでございます。  日本社会保障が非常におくれているとか渋滞しているというお話でございますけれども、これにはいろんな要因、渋滞といいますか、その渋滞という意味社会保障の対国民所得費が小さいということをおっしゃることでございましたら、これにはいろんな原因があろうかと思うんですが、その一つは、やはり人口の年齢構造が違うということであって、これを政策の責任にすることはなかなかできないと思うわけです。つまり、われわれがしばしば社会保障の対国民所得を横並びで比較するというようなことをやるわけでございますが、これは重大な誤りを私は犯していると思うわけです。それは第一には、いま言った人口の構造でございます。第二は、やはり家族の形態という、家族の構造というものも西ヨーロッパ社会日本では非常にこう違っておるわけでありまして、なるほど日本の家族の仕組みも非常に急速に変わってはおりますけれども、しかし西ヨーロッパとは非常に違った形態を持っておるわけでありますから、そういったことを考慮に入れて評価いたしませんと、正当な評価にはならないと私は考えるわけでございます。  そういうことで言いますと、これから人口の構造が急速に変わるわけだし、また家族の仕組み、これは好むと好まざるとにかかわらず私は変わっていくだろうと思うのですね。そういうことになりますと、どうしても社会保障の側面からその生活安定のために充実した政策を打ち出していくということが必要になるわけであって、そういうことによって対国民所得比も当然上がっていく、こういうふうにわれわれは考えたいわけでございます。
  125. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 そして、参考人、憲法二十五条の存在というものですね、この点について。
  126. 地主重美

    参考人(地主重美君) 健康にして文化的な生活というもの、これは一つの理念として存在するわけでございますが、その理念に具体的な内容を盛り込むというのは、やはり社会のいろんな条件、経済のいろんな条件によって、あるいはまた国民の意識の変化によって変わってくるものだろうと思います。つまり健康にして文化的なモデルといったものはどこの国にもないわけで、それぞれみずからの社会の変化の度合いに応じてつくっていかなければならない、こういうふうに考えるわけでありますが、そういう見地から、さてこの日本社会保障がその意味での健康にして文化的な最低限の生活水準を保障しているというふうに言えるかどうかというのが恐らく御質問の趣旨であろうかと思います。  これはなかなかむずかしい問題であります。現に、私個人の意見といたしましても、日本社会保障にはいろいろ問題もある。問題があるからこそ長期計画というものがいま叫ばれているわけでありまして、いろんな問題はあるわけであります。それから、社会保障を先進国の軌道に乗せると言っても、その乗せる乗せ方について、それをもっともっとスピーディーにやるべきではないか、こういうふうな意見もあろうかと思いますけれども、しかし、同時に、先ほど来申し上げておりますように、社会の仕組み、家族の仕組みというものが、これがやはり西ヨーロッパの社会と違う、つまり文化が違うということがあるわけでありまして、そこら辺に対する考慮をしませんで、それこそ横並びにこの水準だというものはなかなか出てこないというふうに私は考えるわけでございます。
  127. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 私は、戦後三十数年間たっているわけですけれども、やはり憲法ができた段階の中で、この二十五条というものは社会保障の面からも本当に真剣に取り組んでいかなくちゃいけない、そういう面から考えますと、政府の国民に対する怠慢というものも非常に感じるわけでございます。  わが国に欠けているのは、長期的に見れば、先ほどまで質疑が交わされましたように、社会保障の整備というものについては五カ年計画あるいは十年計画、そういうものを作成をして、そうして国民の前に公表をしていく、そうしていろんな意見をいただいていく、そういう形のものがなくてはならないわけです。ところが、戦後いまだに明確でないという点については明らかに私は政府の怠慢である、こういうふうに断言せざるを得ないわけでございますが、この点について、厚生大臣、先ほども質疑があったわけでございますが、なぜこういうふうに戦後三十数年間も、経済がよければ四〇%もぱっとつける、悪ければ一九%、こういうふうにどんぶり勘定の考え方ではいけないわけです。政府には大臣を初め役人の方々すべてエリートであり優秀な方が、なぜ国民の文化的な最低水準、一生懸命こういう長い年月の中で明示がされなかったのか、こういう問題については本当に私も残念に思うわけでございますけれども、厚生大臣、この点についてしかとお話を承りたいと思います。
  128. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) ここ四、五年前までの昭和四十七年ぐらいまでは、私は欧米先進国に劣らないようなあらゆる面における社会福祉の増進といいますか、そういうものに一生懸命になって努力をしてきた時代だろうと思うのです。ところが、オイルショック以来、やはり社会保障といえども経済と密接に関連を持ってくるわけでございますから、今後の国のあり方、日本経済のあり方についての見通しが立ちませんと、社会保障の長期計画をつくるといっても、なかなかこれはいま言った財源面でのいろいろな見通し、あるいは経済がこういうような時期になりますと、社会保険によって国民の負担を求めようにもなかなかいろんな制約が出てまいりますから、したがって今日まで実は確たる——私は社会保障というものの長期計画といいますと、ちょっと普通の道路やその他の港湾の計画、公共事業の計画と違いまして、五年という単位では短過ぎると思いますので、十年ぐらいの一応見通しを立てなければ長期計画とは言えないだろうと思うのでございます。ところが、果たして一体日本の国民所得あるいは経済の推移というものをここで十年間の見通しをつけて、安定的な見地からそういうしっかりした経済計画が成り立つかといいますと、なかなか私は困難だろうと思うのでございます。  しかし、一応、それとは何といいますか切り離して、私どもは特に年金と医療につきまして、この二本の大きな柱の長期的な見通しも立ててみたい。少なくとも国民がなるほど将来にはそうなるのかというような姿、まあ理想像とまでは言わないにしても、そういうような形を何とかつくり上げて、それに対して国民の理解を得、負担もある程度御理解をいただいていかなきゃいかぬなあというふうに思いまして、今年いっぱいかけて何とかその方向を見出していきたい、かように考えておるところでございます。
  129. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 ぜひ、五カ年と言えば懸念性もあると思いますので、いずれにしても十年計画か七カ年計画か、とにかくその作業にもっと力を入れなくちゃいけない思います。その点よろしくお願いします。  で、厚生大臣、いま年金の積立金は五十三年度末で何兆円になっておりますか。
  130. 木暮保成

    政府委員(木暮保成君) 二十二兆円になる見込みでございます。
  131. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 大蔵大臣、この二十二兆円にたまっている年金積立金ですね、これは厚生大臣にもそうして地主参考人にもお伺いしたいわけでございますが、私は、先進国の大半と同じく、財政方式を修正賦課方式にすべき時期ではないか、こういうふうに考えるわけです。そうして世代間の負担の不公平を是正していかなくちゃいけない。こういう形の中で、この二十二兆円の積立金をいかにすべきであるかということを、三名の方にまず基本的にお伺いをしたいと思います。
  132. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 厚生年金、国民年金にいたしましても、まだ実は未成熟な段階でございますので、これが成熟してまいりましたときのことを考えますと、軽々にいま積立金を使うということは、私は将来の給付の増、急激に老齢化社会に向かって進展する日本の特殊性から考えまして相当危険だろうと思っておるわけでございます。  なお、この賦課方式につきましては、私ども現在の制度は修正積立方式と、こういうふうに考えておるわけでございますが、賦課方式につきましては、全面的にこれに切りかえるということは、まあ二十一世紀ないしは二十一世紀初頭十年ぐらいのところを考えてみますと、大体六人に一人の老人という人口になった場合を考えますと、後代の十五歳から六十歳までの方々に対して非常な負担になりますので、この点はやはり現在のような修正積立方式、一般的にはいまの方が合理的じゃないかと思いますが、たとえば老人のこの年金の中での経過年金等を考えてみますと、これは一つの賦課方式はある程度大幅に導入していくような考え方も成り立つかなあというような気もいたします。いずれにいたしましても、実は今年いっぱいかかりまして何とかその辺の見通しも十分つけた上で、この年金の財源問題等のあり方にも取り組んでいきたいと考えておりますので、現在のところ、賦課方式でということをここで私がまだはっきり申し上げる段階ではありませんので、もうしばらく検討させていただきたい。
  133. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) いま厚生年金の積立金が二十二兆という話でございましたが、これはもう御案内のように三分の一は還元融資に使われておりますし、残余のものは財投として普通の金融機関ではとうていやれないところを補完いたしまして、一番大きな重点になっているのは生活関連の方にほとんど七〇%の融資がいっているわけでございますし、あとは国土保全とかその他にいっているわけでございます。いま産業部面にいっているところはもう一〇%を切っておるというところで、いま有効に活用されているところでございます。  お尋ねの賦課方式にしてはどうかということでございますが、これは基本的な問題と絡みますが、先ほど厚生大臣が言いましたように、まだ高齢化が平準化しないときににわかにやることは、やはり世代間には非常に大きな問題があるでしょうし、それからまた老齢化が平準化したときでも、なおどちらがいいかというのは多くの議論のあるところではないか。私は専門家ではございませんけれども、その辺は基本的な年金制度の組み立てと相関連して、やはり財源問題の一つとして国民の納得の得られるようなものでなければならぬ。具体的なことについては申し上げかねますが、よほど慎重でなければならぬという感じがいたすのでございます。
  134. 地主重美

    参考人(地主重美君) 一つの点は、現在の積立金をどうするかという問題と、もう一つは今後この財政方式をどうするかと、この二つの点が御質問の御趣旨だと思います。  第一の、二十二兆円と予想される積立金の使い方でございますが、私は日本の貧困というか、日本の貧しさという言葉を仮に使うことを許していただきますと、それはやはり社会資本の立ちおくれだと思うんです。住宅を含めて生活環境資本が非常におくれているというところにあるわけでありまして、でき得ることでしたら、これを挙げてそういう生活関連の社会資本の速やかな充実に充てる、こういうことに使った方がより有効ではあるまいかというふうに考えるわけでございます。  それから第二の、将来これからの財政方式をどうするか。いまの大臣のお答えにもありましたけれども、現在修正積立方式ですか、これは修正積立方式にしていくのか、あるいは修正賦課方式にしていくのかということは、これはある意味では時間が問題を解決すると言うこともできるわけでありますが、しかしながら、これをより早く修正賦課方式にするのがよいのか、それでなくて、いま修正積立方式をある程度堅持していくのがよいかということは、かなり厄介な問題が絡んでいるわけです。厄介な問題と申しますのは、先ほど来言っておりますように世代間の公平の問題が一つあると思います。ただ、それだけで片づかない問題といたしまして、たとえばこれは厚生省の試算の中にも出ておりますけれども、今後三十年先、三十数年先には厚生年金の積立金が三百兆を超えるというふうなことが言われておりますけれども、その三百兆を超えるということは、これはその当時の対国民所得比で見ましても、かなりの高い比率だと思いますが、そういったものを運用するということが果たして可能かどうか。つまり、それが経済に大きなフリクションを起こさずに運用することが可能かどうかという、この財政政策の運用という見地からも考慮していかなければならない。そういったことを含めて、この財政方式についての検討をすべきだというふうに考えるわけでございます。
  135. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 終わります。(拍手)
  136. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、山中郁子君。
  137. 山中郁子

    山中郁子君 中高年齢者の雇用問題についてお伺いをいたします。  総理府の調査によりましても一月の完全失業者数は百二十六万人、そのうち四十歳以上の完全失業者は五十三万人で、全体の四二%になっています。昨年と比較しても四十歳以上の完全失業者が十九万人、三六%増と大幅に増加しているわけですけれども、実際問題として不況業種だけではありませんが、こういう時期には真っ先に婦人とそれから中高年者が対象とされるということがこういう結果を招いていると思いますけれども、五十二年の十月の労働省の調査で有効求人倍率が〇・二になっている。そうすると、ほとんどこうした失業した人たちは就職ができないという状態になっていると思うんです。  初めに政府にお伺いしたいことは、五十一年に中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法を改正して、高年齢者の雇用率を六%というふうにしたわけですけれども、これを努力義務ということにしているために、後ほど数字も明らかにしていただきたいと思いますが、なかなか達成できないでいる。とりあえず六%であっても、いまのこういう状況のもとで強制的な義務というふうに一歩前進をさせて中高年齢者の雇用促進を図るという姿勢が必要じゃないかと思いますが、労働大臣の見解をお伺いいたします。
  138. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のごとく、雇用情勢が非常に厳しくなってまいっておりますし、特に最近いわゆる特定不況業種の離職者は中高年齢層がほとんどでございまして、そういう面からいいまして、雇用政策の一番大切な柱はまさに中高年齢者の雇用対策だと思います。  そういう面から、中高年齢者に対して雇用率制度を軸にして、いろいろ政策をきめ細かくやっているわけでございますが、いまお尋ねの、雇用率制度を努力義務でなくて義務規定にしたらどうかという、こういうお尋ねでございますけれども、これはやはり特に中高年齢者の雇用がなぜむずかしいか、あるいは定年制の問題が、いろいろ今後も努力しますけれども、やはり従来の日本の雇用賃金慣行と申しますか、いわゆる年功序列で、そうして勤務年数に比例して賃金が上がっていくということ、あるいは退職金制度の問題も勤務年数に正比例する、こういうことが中高年齢者が雇用のチャンスがなかなか安定しないという背景になっておりますから、こういう問題については、労使の自主的な話し合いということで、法律で一律に決めるということになじまない状態の実情があるわけでございますから、やはりこれが努力義務として、そしてどうしても基本的には定年制の延長というこの線を軸として、そうして特に今度新しい政策としては、中高年齢者を雇い入れる事業主に対して別途助成をする、そして中高年齢者の雇用の拡大に民間の活力を利用して大いにひとつ雇用の安定拡大を図ろう、こういう配慮をいたしておるわけでございます。
  139. 山中郁子

    山中郁子君 労働省が発表いたしました「高年齢者の雇用状況について」、これは昨年の十一月三十日だと思いますけれども、この中でも労働省自身が指摘をしているんですけれども、六%に達しないで平均五・六%、大企業ほどその率が低くて問題だということは労働省自身が認識をされているわけです。百人以上三百人までの規模で言いますと八・三%といっていますが、千人以上になると三・九%とこれが半分になっています。達成状況を見ましても、三百人以下の企業ですと四九・一%ですけれども、千人以上になりますとこれが一七・八%、二割以下になる、こういう状況です。で、きょうは時間がないので触れませんが、障害者雇用の問題も大企業ほど少ないということは労働省がよく認識されていらっしゃるところだと思います。  いま労働大臣は年功序列賃金その他の問題をおっしゃいましたけれども、大企業、つまり日経連の賃金問題研究委員会で出しているものによりますと、結局、高齢者の雇用問題の「最大の障害は、わが国に支配的な年功序列賃金体系と退職金の累進制であろう。」と、こういうふうに言っているんですね。私は、労働大臣の言われたことが、労働省の認識が全面的に大企業に肩入れしている、全部一〇〇%というところまでは申し上げませんけれども、かなめになる点がまさに日経連が言っているようなそういうところで軌を一にしているというところは私は大変重要な問題だというふうに思っているんです。それでいま数字を申し上げましたけれども、大企業ほど、その社会的責任の大きい大企業ほど、こうした国の施策にも協力的でないし、そして実際問題としても雇用不安、高齢者の失業の問題についての壁になっている。この問題については、私はかなりしっかりした積極的な対策、行政指導、そうしたものを労働省としてはっきりさせておく必要があると、姿勢としてですね。重ねて労働大臣にお伺いをいたします。簡単でいいですよ、余り時間がないですから。
  140. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 定年制の延長というのが中高年齢者雇用対策の主軸であることは先ほど申し上げたとおりでありまして、それが大企業がなかなかそういう線に沿っていないではないかという御指摘でございますが、ただ、全般的にはやはりこの五十五歳定年制が五割を割ったということで、年を追うて延長の方向に前進をしていることは事実であります。御指摘のように、大企業を含めまして企業が目的としております六十歳の定年延長に向かって前進をするように強力な行政指導をやっていきたい、このように考えております。
  141. 山中郁子

    山中郁子君 定年制の問題だけじゃなくて、いま私が数字を挙げましたけれども、中高年の雇用促進の問題についても大企業ほど非協力的なわけですよ、実際の数字が明らかになっています。労働省自身のこの文書によっても「企業の規模が大きくなるに従って実雇用率は低く、従業員数一、〇〇〇人以上の規模の企業では、三・九%と特に低い。」と、こう指摘しているわけですから、この点についてもきちんとした行政指導の問題の解決を図ることをお約束いただきたいわわけです。
  142. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘の点は、十分考慮して行政指導をいたします。
  143. 山中郁子

    山中郁子君 すでにいま話が出ましたけれども、定年制の問題です。これは政府としても、いま大臣がすでに御答弁なさいましたように定年延長の問題について取り組んでいるわけですけれども、四十八年五月十八日に「定年延長の促進について」という事務次官通達を出されている。で、五十年の九月に改めて職業安定局長名で「当面の雇用対策の推進について」ということで重ねて定年延長の推進を指導していますけれども、それで前進が見られたという御答弁があったんですが、私はやはりいろいろな形で企業がこうした定年問題のからめ手作戦というものを展開しているということを指摘せざるを得ないんです。  これは新聞などでも報道されていますけれども、たとえば三井物産で、定年五十八歳だけれども、四十七歳で第一段階の事実上の定年である選択定年制を導入している。具体的な実情を言いますと、四十七歳で課長になれない者は退職慫慂の対象にする、こういうことをやっているわけです。そうすれば、実際問題として、中には特別なケースとしてはそういうところで退職慫慂を受けてやめたいという方が出てくるということも私は否定するものではありませんけれども、基本的にはこれは企業が定年延長の趨勢の中で何とか全体の賃金を抑えようということで、自分に都合のいい労働力政策でもって持ち出している定年の問題のからめ手作戦だと言わざるを得ないと思うんですね。同じようなことは、三菱商事だとか日商岩井だとか昭和電工、日本鋼管、東洋レーヨン、そうした大企業がとっておる問題なわけです。これは実際上定年延長の施策に反するものであるというふうに言わざるを得ないと思いますが、この点についての認識をまずお伺いしたいと思います。
  144. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 最近、御指摘のように、新聞で一、二定年延長を繰り上げるような報道がございますけれども、私たちの承知しておるのでは、一応定年が来て、それを勤務を暫時延ばしておる、それが現在経営が非常に困難になってきたからその勤務延長を取りやめる、こういう状態になっているように聞いておるわけでございます。ただ、このような厳しい現在の雇用情勢において定年延長が後退しないように、やはりわれわれとしては着実に行政指導を進めて、六十歳を目標に努力をいたしたい。これは企業のむしろ大きな方がそういう点が成績が悪いという御指摘に対しては、十分注意して今後も行政指導をいたしたい、このように思います。
  145. 山中郁子

    山中郁子君 実際問題として、こういうやり方をしていることが定年延長の方向に逆行するものであって、そして私も長年仕事をしておりましたし、そして労働組合の仕事もしておりましたからもう手に取るようにわかりますけれども、定年と別なんだと言いながら、こういうやり方をすれば必ずそこで退職に追い込まれるという事態が生まれてくることは、私は労働省だって百も承知のことだと思うんです。そういう点はお認めになりますか。お認めにならなきゃ私困ると思うんですけれども、その上ではっきりした、かなり責任のあるきちんとした指導をとっていただかなければならないと、重ねて最後にお伺いをいたします。
  146. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 事実関係の問題もございますので、政府委員から答弁をさせます。
  147. 細野正

    政府委員(細野正君) お尋ねの件でございますが、本人が自由に選択できるという範囲において特に問題はないのじゃないかというふうに考えられ、また、労使で話し合いの結果できているというふうに私ども現在のところは聞いておりますが、ただし、運用で強制にわたるようなことがあれば、そこに若干問題が出てくるというふうに考えておるわけでございます。
  148. 山中郁子

    山中郁子君 委員長一つだけ。
  149. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 簡単に。
  150. 山中郁子

    山中郁子君 はい。  じゃとにかく具体的な実情について調査をして、問題があれば把握をして善処するというお約束だけをいただきたいと思います。
  151. 細野正

    政府委員(細野正君) よく調査いたしまして、また御報告いたします。
  152. 山中郁子

    山中郁子君 終わります。(拍手)     —————————————
  153. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、井上計君。
  154. 井上計

    ○井上計君 先般の一般質問の中で、これは大蔵大臣にお伺いをしました公務員の共済年金法と厚生年金との受給のアンバランスでありますが、これにつきましては大蔵大臣からは、保険の性質が違う、いろいろ過去の経緯等もあるので検討はするというお約束をいただいておりますが、そこで、きょうは厚生大臣に、厚生年金が現在、船員保険もやや似ておりますけれども、今度改正になりましても、十三万四千円以上、六十五歳までについては支給の制限が行われておる。さらに六十五歳以上の老齢者、老齢年金等につきましてもやはり制限があるということでありますが、これについては今後の方向として、お考えとして、厚生大臣はどのように持っていくことがよろしいか、お考えであるかどうか、ひとつ簡単に承りたいと思います。
  155. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 六十五歳以上になってなお在職している人の支給制限の撤廃問題だろうと思うんですが、なお全然収入のない方との関係から見ましても、若干の支給制限はこれはまあ忍んでいただきたいなあと思うんでございまして、ただ、しかし、ことしも十三万強に上げたと思うんですが、年々それは改善をしていかなきゃいかぬと思っております。
  156. 井上計

    ○井上計君 ぜひひとつ改善につきましての御検討をいただきたいと思いますが、大体、五十五歳を過ぎますと、民間の企業に勤めておりますと、そのまま在職してもかなり収入がダウンする。特に六十歳、さらに六十五歳以上になりますと、事実上大幅にダウンをしておるわけでありますから、現在のような支給制限がやむを得ないとはいいながら、余り好ましいことではないというふうに考えますので、十二分にひとつ御検討をお願いいたしたいと思います。  そこで関連をいたしますが、先ほど来、社会保険の問題等につきましては、健康保険の問題等につきましては、いろいろと御答弁等がございました。その御答弁の中で、大臣の給付の公平、負担の公平というものをぜひ考えていかなくてはいけない、これは当然であろうというふうに思います。ところが、健康保険組合の中には、もう事実上医療費の高騰等によって大幅な赤字が発生しておる。認められておるところの保険料率の最大限を取っても、なおかつ赤字であるというふうな組合が特に最近続出をしておるわけです。そこで幾つかの保険組合等におきましては、赤字分をさらに補てんするために、特別分担金という形の徴収をやってそれを補っておるという組合が相当あるわけでありますが、これについて違法か適法かは別にいたしまして、そういうふうなケースがどんどんふえておりますので、特にこれは中小企業の総合健保は非常にふえておりますが、そこでそれらの中ではもう政府管掌に戻りたいという希望の事業主あるいは被保険者がふえつつありますが、そういう場合、どういうふうに取り扱っていこうとお考えになっておりますか、ひとつ大臣の御見解を承りたいと思います。
  157. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 私は、本来、職域健保というものは、共済も含めて一本化すべきだという持論を持っておりますが、早急にはなかなかできないと思っております。しかし、少なくとも所得の再配分を中小企業、ことに総合健保は中小企業でございますから、大企業、いいものはいいものだけでやるんだ、中小企業はおれは知らぬという考え方でなくて、やはり所得の低いものと高いものが相扶共済の制度社会保険を成り立たせるという考え方だけは持っていただかなきゃいかぬと思うのですが、現実に、いま総合健保の中で、もうどうにもやれぬというのがありましたら、これは現在の法的なたてまえでは、これはもう私ども拒むわけにいきません。ただ努力をしたり、指導をしたりいろいろしまして、なおかつ戻りたいという方がいれば、これはもう結構でございます。
  158. 井上計

    ○井上計君 大臣のお答えを伺いまして、私自身は大いに期待をいたしたいと思います。ただ、従来はそのような希望の被保険者、事業所がありましょうとも、それぞれの社会保険事務所でそれは困る、できないと言った場合、全部これはもうオミットというふうな形になっておりますが、では従来のそのような行政指導と異なって、今後は、いま大臣お答えをいただきましたような、そういう方法をお取り計らいいただける、このように理解してよろしゅうございますか。
  159. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 従来は、そのようにいいときだけは自分たちでやると言って出ていって、そして悪くなったらまた戻ってくるというような、そんな考えじゃいかぬから、もっとしっかりやれとか、あるいは保険料をもっと取れとか、いろんな指導をやっておるということは、やっぱり社会保険の監督官庁としては当然だろうと思うんですが、しかし、現実に私どもはやっぱり保険制度というものは被保険者のためだと思いますので、したがって被保険者がどうしても困る、しかも政府管掌よりも圧倒的に高い保険料を負担しながらも、なおかつやっていけないというようなことがあれば、これはもう当然被保険者のことも考えて、私どもはこれを政府管掌の中へ取り入れてやっていくのは、これはもういまの法律のたてまえとしては当然のことじゃないかと思いますので、行き過ぎがないように指導いたします。
  160. 井上計

    ○井上計君 厚生大臣は大変専門家でおられますので、非常に前向きに御答弁いただきまして、ありがとうございました。  そこで、もう一つ、それに関連をしてお伺いしたいと思いますが、広域の総合健保ですね、全国的な組織となっております。そうしますと、どうしても医療費、あるいは各地域によっての医療費の問題等によりまして、非常にアンバランスになっております。たとえて言うと東京地区は黒字であっても、九州はもう大変な赤字であるとか、あるいは北海道は、事実上、料率から計算をしますと一五〇%ぐらいの保険料を徴収してもなおかつやっていけないとか、いろいろあるわけですが、そういう場合に、広域の場合にはできる地域、さっき職域あるいは地域というお話がありましたが、できる地域、あるいはできない地域というふうなものをどんどん区分をしていって、分離独立というふうなこともひとつ今後は考えていくべきだというふうに思っておりますが、これについてはどのようにお考えでしょうか。
  161. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) いまの全国的な総合健保をばらばらにしまして、あるところはやめた、あるところは残るということは余り好ましい姿でないんですが、私は実は自分の、これはまだ固まっておりませんけれども、将来の理想像としては、地域的にいわゆる向こう三軒両隣というものは同じような給付、平等な給付で負担の公平を図っていくのが本当じゃないかと思っておるわけでございますので、そういう理想像に至る道として、職域関係者がその地域にまとまるというようなことは、これは私は否定すべきじゃないと思っております。ただ、いまの現実の問題として、ある総合健保がそういうふうにばらばらでやっていいかどうか、ここですぐ返答をと言われますと、私よくその具体的な事例を見ませんとわかりませんので、また後でよく承って検討させていただきます。
  162. 井上計

    ○井上計君 それでは、もう時間がありませんので…
  163. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 簡単に。
  164. 井上計

    ○井上計君 要望だけしておきます。  厚生大臣、大変前向きにいろいろとお答えいただきまして、ありがとうございました。いろいろな問題が健保組合には存在しておりますので、ぜひ健保法の抜本的な改正の中で、それらのものをあわせてひとつ御検討いただきますように要望して終わります。(拍手)     —————————————
  165. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、下村泰君。
  166. 下村泰

    下村泰君 厚生大臣並びに文部省一つだけ伺います。神奈川県の横須賀市に在住する定家陽子ちゃんという六つになるお嬢ちゃんがおりまして、このお嬢ちゃんは全盲でございます。この全盲のお嬢ちゃんのめんどうを見ましたのは、横須賀市池田町にあります社会法人誠心会のしらかば保育園というところの園長さんがめんどうを見ました。この方は第二十三回、四十九年七月、読売教育賞を受けた方で、浜田幸生さんとおっしゃいます。この方の手記が実は毎日新聞の二月の四日に出ておるんですが、こういうふうに書かれております。「陽子は昭和四十八年四月、公立乳児保育所に入園しましたが、三歳になると年長を理由に継続が認められず、市当局からていのよい断りの通告を受けました。まさに自治体の児童育成の責任が宙ぶらりんに見え、後味の悪い思いをして当園で陽子を受け入れた」。  ここは大変ユニークな保育園でございまして、健常者、普通のお子さんも、身体障害児者も、脳性小児麻痺の子も全部入れておるんです。そして生後六カ月から小学校二年生まで、もちろん学童は放課後保育されます。ですから、ここではそれ以前、いわゆる六カ月から五歳までのお子さんは一緒に保育されるわけです。かつてはまるで手足も動かなかった脳性小児麻痺の子が朝一・五キロから二キロのマラソンができる、駆け出せるようにまでめんどうを見ているんです、ここは。こういう民間が全力を尽くしてやっているのが日本の福祉事業の実態だと思うんです。  ところが、いまも申し上げましたように、こうしてこの浜田幸生さんという方がこれだけ一生懸命やって、学校に上げる段階になって学校で拒否される。この保育園という言葉が使われているお子さんを収容するところと幼稚園という名前で収容するのはそれぞれ異なりましょうけれども、こういうことを一貫して文部省と厚生省とが連係プレーがとれて、一つの流れの中に乗せられるような方法がやれてやれないことはないと思うのですが、これについて両省の御見解を求めて、私の質問を終わります。
  167. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 私は、身体障害者の方はなるべく一般の児童と同じように保育所で、それから学校もできることなら一般の学校に通っていただく方が、より理想に近い、ベターだと思っております。そういうことで、できるだけ文部省にもお願いをいたしたいと思います。いまの例はそうだと思います。  ただ、身体障害者の方々の中には、かえって特別な施設なりあるいは養護学校なり、そういう特殊教育を受けた方がより幸せだと思うような方もいらっしゃると思うのでございます。したがって一概に身体障害者だから全部特殊教育であるべきで、一般の学校はだめだとか、あるいは幼稚園はだめだとか、保育所はだめだとかいうことのないようにしなければならない、かように考えております。そのためには身体障害者を扱っていただく保育所なり、小学校というものは、相当人手がやっぱり必要でございますので、それらの人件費について国が温かい配慮をやっぱりしなきゃいかぬだろうと思うのでございまして、そういう面が実際にできていかないと実効が上がりませんので、そういうような点もあわせて検討さしていただき、努力をして、両々相まってそういう条件整備ができたら、ぜひ一般の児童と同じように教育してもらうのが一番いいだろう、かように私は考えておりますので、文部当局にもお願いして、努力をしていきたいと思っております。
  168. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 幼稚園におきます障害児の教育につきましても、御指摘のように、障害の種類や程度によりましては、たとえば自閉症のお子さんを普通の健常児と一緒の幼稚園で教育をするというようなところがございますし、また、そういうふうな、交流教育というふうに言っておりますけれども、これは非常に教育上も効果が上がるというふうに一般に言われておりますので、一般の幼稚園でもかなり研究が進み、また実践をいたしておるところもございます。  ただ、厚生大臣も申されましたように、それにはそれなりの学校の施設とか、あるいは先生の資質とか訓練とかいうことが必要でございますので、やはりそういうものを前提としながら、条件の合ったところでやっていくように広げてまいろうというふうに考えるわけでございます。  それで、小学校につきましても、同じように、障害の程度の軽い子供さんにつきましては、小学校の特殊学級へそういった障害児を入れまして、それで必要があれば別々に特殊学級で教育をし、また全校的な運動会だとか、いろいろな学校行事の際は、普通の子供さんと交流してやらせるというふうなことをやっておりまして、非常に障害の重い方につきましてはなかなか一般的に交流は無理でございますから、盲学校なり、聾学校なり、養護学校の小学部、幼稚部というところで教育する、こういうことでやっておるわけでございます。
  169. 下村泰

    下村泰君 終わります。(拍手)     —————————————
  170. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、柿沢弘治君。
  171. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 先般、十六日の総括質問でも、これからの社会保障の中での医療費の重要性について指摘をいたしました。きょうも、その問題についてお伺いをしたいと思います。  五十三年度十兆円、五十八年には二十兆円になるという医療費について乱診乱療、薬づけの問題を防ぐ意味でも、いろんな意味で歯どめが必要だと思います。今度の抜本改正の中でも、軽症についての自己負担という原則を厚生省は主張しておりますが、その問題について医師会その他から若干の批判があるというふうに聞いておりますが、その点は厚生省として基本的な原案を貫かれるつもりかどうか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  172. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) これは給付の平等といいましても、どうしても十割給付にはなかなかできません。そういたしますと、どこで負担を願うかという問題が出てまいりますので、その場合に、私はやはり家計に対する不安を与えないようなものを考えていかなければならぬだろう、逆に言えば、家計に非常な負担のかかるようなものは保険で全部見るようにするのが本当ではないだろうか。しからば、経費の負担をどういう形で求めるか、これについては実はいろいろな案を考えておりますけれども、まだ成案を得るに至っておりませんで、この二、三日中には何とか得たいと思っていま努力をいたしているところでございます。
  173. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 二、三日中というお話がありました。先ほど大臣は四月中には国会に提出するということをもう一度お約束になりましたので、その意味でも今週中に成案を得ることが至上命題だと思いますが、そう考えてよろしゅうございますか。
  174. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 今週中には、どうしても成案を得たいと思っております。
  175. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 地主参考人にお伺いをしたいと思いますが、いまの医療保険の歯どめの問題、一つは自己負担のあり方、それからもう一つは医師会提案によりますと、地域中心ということが言われておりまして、組合健保をつぶしてしまおう、それも一つの理想案だろうと思いますが、その場合に、いまの診療報酬に対するチェックの仕方、管理、監察のあり方で、果たして歯どめになり得るのかどうか、その点について何らかの工夫が必要だと思いますが、その辺も含めて今後の医療費のあり方と歯どめの問題についてお話を伺いたいと思います。
  176. 地主重美

    参考人(地主重美君) 医療費の高騰というのは日本だけでなくて、国際的な問題であるわけですが、私はその方法としておよそ大きく言って三つくらいあろうと思うのです。  一つは、いま言ったように、軽症の場合には自己負担とするという、いわば自己負担によってある程度規制するということですね。この規制の仕方はいろいろあろうと思いますけれども、まず、そういうやり方、軽症自己負担というのは考え方としては非常にすぐれているものだと思います。ただ、しかしながら、この軽症自己負担というのがどれほどの効果があるかということになりますと、これはILOとかWHOのいろいろなレポートを見ますと、どうも余り期待したほどの効果がない。と申しますのは、社会保険の被保険者というのは、かなり所得の低い人も入っているわけでありますから、そういう人の負担能力考えて自己負担考えなくちゃいかぬということになりますと、どうしても自己負担というものは低目に抑えられる、そうすると余り効果がない、これが一つございます。  それからコントロールの第二の点は、これはやはり患者のビヘービアを変えるといいますか、つまり予防をもう少し重視して、患者が簡単に医療機関に駆け込まないというふうな、これは教育を含めてでありますけれど、そういうこと。それからビヘービアの中には医師のビヘービアもあると思うわけです。恐らく一番大きな問題点は、現在の出来高払い方式がよいのかどうか、これがむしろ医療費を引き上げるインセンティブになっているのじゃないかということもあるし、また薬価基準の問題もあるわけですね。こういうことについてやはり検討が必要で、これによって医師のビヘービアというか、行動の仕方を変えていくということが必要ではあるまいか。  それから第三番目は、しかしながら、こういったことをやってもなかなかうまくいかないというのが諸外国の経験だというふうに考えるわけでありまして、それで先進国はどうなっておるかというと、結局のところ、供給を抑制する以外に手はない。たとえば医者をたくさんふやす、あるいはまた医療機関をたくさんつくるということが、そのことが医療費の上昇につながるわけでありますから、それをある程度抑制するという以外に方法はないというのがどうも先進諸国の最近のいろいろな経験を通した結論のように思うわけです。ただ、その場合に供給を抑制するだけでは困るわけでありまして、同時にまた、医療資源の配分についてよほど慎重な考慮が必要だ、それをやりませんと、結局、医療資源が少ないところ、僻地とかなんかというところがさらに削られるということになりまして、これは非常に不都合なわけで、それをやるからにはやはり医療資源の配分について、よほど根本的な対策というか再検討が必要ではないか、こういうふうに思います。
  177. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 柿沢君、時間が来ております。
  178. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 終わります。(拍手)
  179. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で社会福祉に関する質疑は終了いたしました。  地主参考人には、御多忙中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして心から御礼を申し上げます。(拍手)     —————————————
  180. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、農業問題に関する質疑を行います。三善信二君。
  181. 三善信二

    ○三善信二君 私は、農業問題について、特に最近問題になっております米の生産調整に関連するような問題について若干お伺いしたいと思います。  なぜ生産調整をしなければならないかといろいろ考えてみますと、いろんな理由があると思います。あるいは毎年反収が伸びてきた、全体の米の生産が非常に予定より伸びた、あるいは四十六年から五十年まで生産調整をやっているその間に、やはり農家としては何としても米をつくりたい、そういう意味で自己開田もふえてきた。いろんな理由があると思いますが、私は一番大きいのはやはり国民の方々が米離れといいますか米を食べなくなってきた、御飯を食べなくなってきた、これが一番大きな基本的な問題じゃないかと思います。そのために予定した消費がそれに追っつかずだんだん米が余ってきた、過剰米ができてきたというようなことではなかろうかと思います。  そこで最初に、過剰米がどのくらいあるのか、四百二十万トンとか三十万トンとかいろいろ言われておりますが、一体正確にどの程度過剰米があるのか、それをまずお伺いしたいと思います。
  182. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 政府の過剰米と言います場合に、まず前年産米の古米の在庫量が新米穀年度に入ります場合にどの程度かということで見るわけでございますが、五十二年十月末、新年度への切りかえの時期でございますが、そのときの古米の在庫量は三百六十七万トンでございます。そのうち約三百万トンが五十一年産米、あと六十七万トン強がそれ以前の古米を持っておるわけでございます。政府は現在、不測の事態に対処するための備蓄目標といたしまして二百万トンを計画的に古米の持ち越しを保有することにいたしております。そういたしますと、三百六十七万トンから二百万トンを引きました百六十七万トンが、昨年の十月末で計画よりもオーバーしておるという意味で過剰だというように見ております。  なお、今年度の十月末、五十四米穀年度に越す時点での古米の在庫量は、五十二年産米が豊作でございましたことも原因となりまして、現在より約百万トンぐらいの古米の持ち越し量がふえるのではないか、こういうように想定をいたしております。
  183. 三善信二

    ○三善信二君 本年の十月末四百六十万トン程度過剰米がある。ちょうど四十五年でしたか、七百万トンぐらい過剰米があって、それを長い年月かかって処分をした。しかもその処分に対して財政的に一兆円と言われるぐらいの損失が出た。そういうことで過剰米の処分については非常に苦労をした経験があるわけでございます。一体この過剰米の処分についても、この前経験したと同じようなことを予定しておられるのか、あるいは計画しておられるのか、その辺のところをちょっとお伺いしたいと思います。
  184. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 前回、過剰米の処理をいたしましたときには、七百四十万トンの過剰米を処理いたしました。そのときには飼料用三百五十万トン、それから援助輸出用が約三百九万トン前後で、その他国内用の加工用原料として処分したわけでございます。  今回の過剰米に対します本格的な処理方針につきましては今後検討するわけでございますが、当面は米菓——せんべい、その他でございます。あるいはみそ、あるいは穀粉等の国内加工原料用に売却をするということに重点を置いておりますが、これの本格的処理の方法につきましては、前回の処分方法も検討しながら、なおことしの水田利用再編対策の推移等も見ながら本格的な処理について検討してまいりたいというふうに考えております。
  185. 三善信二

    ○三善信二君 先ほども申し上げましたように、やっぱりこれだけの過剰が出ると大変苦労して処分をしなければならない。何としてもやはり米の消費というのをどうやって拡大していくか。毎年毎年米の消費というのが減退してきた。一体最近の傾向として、国民の米離れといいますか消費が減退している、そういう傾向は真実どの程度になっているのか、ちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  186. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 食生活の多様化に伴いまして、主食である米の消費量が漸減をいたしておるわけでございますが、これまでの推移を見ますと、ピークでございましたのが昭和三十七年でございます。このときには一人当たり消費量は百十八・三キログラム、これは都市世帯も農家世帯も平均したものでございます。その後二、三%多いときには年率で下がり、やや最近は減退傾向がございまして、最近の数年間は一・六%前後の年率で減少してまいっておりまして、現在は一人当たり八十六・二キログラムということでございます。都市の消費世帯の方が農家世帯よりはもちろん消費水準自体は低いわけでございますが、その上に減少率も高かったわけでございますが、まだ断定できませんけれども、ごく最近の傾向といたしましては、都市よりは農村の方が減少率が上回るのではないかというようなことが傾向として見られるわけでございます。  なお、御参考に申し上げますと、総量におきましては、人口増がございますので、三十七年は一千三百三十二万トンということでございまして、それ以降のピークは三十八年が一千三百四十一万トン、最近が一千百八十二万トンということで三十八年以降一貫して減少しておるわけでございます。
  187. 三善信二

    ○三善信二君 いまお話しがございましたように毎年数%減っている。考えてみますと、何千年来主食として米を食ってきた、その米を食べなくなる、これは世界で日本だけじゃないかと思うんですね、こういう傾向があるのは。本当に珍しいことじゃないかと思います。  一例を申し上げますと、いま漁業の日ソ交渉をやっておられますけれども、ソ連の交渉の方々が日本に来られて一週間、二週間滞在するということになると必ず黒パンを持ってくるのですね。私が質問をしましたら、日本の黒パンじゃだめだ、やはりわれわれが食いなれているソ連の酸っぱい黒パンを食わないとどうも腹もちが悪いということを言っておりましたが、まさに日本の米離れ、米を食べなくなったということはこれは本当に世界的に珍しいことじゃないか。  何としてもやはり米の問題、これを解決する場合にこの消費を拡大しなければならない。いま農林省で、政府の方でもいろんな対策をやっておられると思います。予算も取っておられると思いますが、一番大きいのは、私は学校給食をもっと何とかできないものかということを感じております。最近いろいろ米の安売りをしたりなどして、学校給食にも力を入れておられますけれども、どうしても遅々として進まない。私なりにいろんな理由を調べてみました。PTAの方々、父兄の方方は何とか学校給食に米を取り入れてもらいたい、生徒の方々もそういう要望が非常に強い、しかし一向に進まない。それはどういうことかと私なりに調べてみますと、やはり学校の側でどうもシュリンクされる。あるいは炊飯施設が要るとか、あるいは配ぜんをする、あるいは後始末する手間がかかってもう大変だ、めんどうである、人手がかかる、そういう問題をよく言われる。だから、そういうことを考えてみますと、学校給食はいま完全給食になっておりますけれど、もう一歩進んで、パンや御飯を学校で出さないで、むしろ自分の家から弁当で御飯ぐらい持ってくる、いわばおかず給食といいますか、そういうことをやったらどうかということを考えてみたらいかがかと思っております。  といいますのは、これは単に架空な話じゃなくて、現実に静岡県の豊岡村ですか、村長さんが大変熱心で、家から御飯だけは持ってくるということを現にやっておられます。そういう実際やっておられるところもある。それから、おかず給食、いろいろ利点があると私は私なりに思うんですよ。教育上の利点がないものかと考えてみますと、家庭で朝飯ぐらい御飯を炊いてお母さんが子供に持たしてやる、そうすると家庭の方は御主人もやはり一緒に御飯を食べるというようなことも出てくるだろう。その間にまた、最近は子供と親の対話がどうのこうのという問題がありますけれども、対話も出てくる。そういった教育上の問題。それからまた、最近問題になっております、何か最近は朝飯を食べないで学校に行く生徒の方が非常に多い。お母さんがめんどうくさいから朝飯の用意をしてくれないのかもしれませんけれども、そういう生徒の健康上の問題というようなことも出てくるんじゃないかと思うのです。そういう意味で、何としても学校給食に御飯を取り入れる。取り入れるだけじゃなくて、御飯は家庭から、自分の家から持ってくるというようなおかず給食を今後取り上げてみたらどうかと思うんです。  きょうは文部大臣が来ておられませんので、文部省の方が来ておられれば後で御答弁願いたいと思いますが、農林大臣いかがでしょう。そういうことを農林大臣としても文部大臣にひとつ相談をされて、そういったおかず給食を今後具体的に検討するというようなことをやっていただいたらいかがなものかと思いますが、農林大臣の御意見、いかがですか。
  188. 澤邊守

    政府委員(澤邊守君) 学校給食に対します米飯の導入は五十一年度から本格的に行われておるわけでございます。その際、弁当持参による学校給食というようなことは、米の消費を拡大するという意味では私どもとしては非常に有効な手段であるというように考えておりますが、御指摘ございましたように、学校給食は教育的な側面が重点になっておりますので、その際完全給食というのが現段階において目標になっておるということでございますので、五十二年度から文部省と御相談をしまして、経過的には弁当持参による給食も結構である、こういうことで、弁当を持参した場合の加温庫、保温庫といったようなものに対しまして援助をするというような措置でやっておるわけでございますが、基本的には完全給食という考え方学校給食の中に現在あることは御指摘のとおりでございます。この点につきましては、私どもといたしましては、今後引き続きまして文部当局ともよく御相談をして、御指摘がございましたような線でできるように努力をしてみたいというふうに考えております。
  189. 宮野禮一

    説明員(宮野禮一君) 御質問は、米飯を学校へ持ってまいりまして、おかずを給食するというやり方はどうかという御質問でございますが、学校給食につきましては、学校給食が戦後取り入れられてからいままでの間、同じ食事内容を全クラスの者が食べる、そしてその間に教育的な機能があるということで現在までやってまいりまして、学校関係者さらに学校給食関係者一同がそういう点において理解と賛同をしている、そして学校給食を進めてまいったわけでございます。仮に御飯の弁当を持ってまいりますという問題になりますと、たとえば、生徒によっては持ってくるのを忘れたり、あるいはお米のかわりに場合によってはパン等を持ってくるとかいうようなふうに、いろいろ食事内容がばらばらになってくるというような問題も種々生じてくるというようなことを現場の方から聞いているわけでございまして、そういうような問題がいろいろあるわけでございます。学校教育現場でなるべく学校教育関係者、その学校の関係者が一致してそういうことを取り入れてまいります場合にはともかくといたしまして、そういういろいろな問題がありますので、そういう問題が生じるということを考えますと、私どもとしては、全国一般的な指導方針といたしましては、現在、お話しになりました、完全給食と言いますが、具体的に米を取り入れる場合については、自己炊飯の方式もございますし、それから業者に委託炊飯という方式でやっている場合もございますが、そういう方の方式を一般的なものとして現在指導推奨しておるわけでございまして、その方面の充実を期してまいりたいと、現在のところそういうふうに考えているわけでございます。  弁当持参の方式につきまして、本年度から農林省の方で施策が講ぜられるということは、先ほど食糧庁の方から御答弁があったとおりでございます。
  190. 三善信二

    ○三善信二君 私は、家庭から弁当を持参するといっても、御飯を強制的に持っていくということじゃなくて、どうしても自分はパンを食いたいという人はパンを持っていってもいいのじゃないか。そういうことをやることにおいてだんだん御飯にかわっていくというような感じがして申し上げているのです。おかずは栄養の基準でこれは学校で一律にやられたらいい、あと主食だけは好きなものを持っていく、そういうことを何も一律にしなければならないというようなことはないのじゃないか、余り画一過ぎるというような感じもいたしますので、今後ひとつよく具体的に検討をお願いいたしたいと思います。  せっかく足鹿先生がお見えでございますし、米審等でいろいろ学校給食の問題等が問題になっているかと思いますが、学校給食、おかず給食について足鹿先生はどういう御意見か、もしおありだったらお聞かせ願いたいと思います。
  191. 足鹿覺

    参考人足鹿覺君) 議員をやめてからこの議場に引っ張り出されまして、何かちょっと勝手が違ったような感じがいたします。とちるかもしれませんが、ひとつ御了承を願うことを最初にお断りいたしておきます。  いま三善さんから、米飯の学校給食について御意見があり、強い御要請がありましたが、私も米価審議会に籍を置いております。だれも異存を持つ者がなくして満場一致の態度で支持しておるわけです。先ほど例に挙げられました型も熱心に主張されておりますが、その中でも私どもが気がつきますことは、何か学校給食会という組織がありまして、これが中央から都道府県にちゃんと機構がある。このものがどういう役割りを演じておるのか。学校給食会とは表裏一体の関係にあるように聞いておるのであります。その取り扱っておりますものはメリケン粉であるとか、あるいは脱脂粉乳であるとか、その他いろいろのものを過去において取り扱ってきたんです。食糧の不足の時代にはアメリカの配給の諸物資は皆学校給食会を通じて流れておったように聞いております。ですから、当時の情勢においては非常に御苦心になり、その人々は相当の功績をお上げになったと思うのでありますが、現在はもはやアメリカからそういう援助を受けるような状態でもございませんし、国内で米が過剰になっておるというようなときに、やはり情勢が一変しておるときに、このような機構が現在学校給食に欠くべからざる機構であるなのかどうかということをひとつ真剣に検討してみて、もし必要な機構であるとするならば、国なりあるいは地方自治体がそれを肩がわりをして、その人たちのめんどうを見、また事業分量もそれが肩がわりをすることによって円滑に学校給食が米に移動していくようなことはできないものだろうか、かように考えておるわけであります。  学校給食の米の消費量は二十五万トン推定、完全給食にした場合の推定でありますが、現在週二回というようなことでやっておるところも相当あるようでありますが、これはヘビの生殺しでありまして、完全給食にすべきであるならばやはり完全給食にしていきたい。ただ、嗜好の問題等もありますから、無理にこれを強制するということはどうかと思いますが、やはり一つの方針に従って国策の線を打ち出していくならば家庭も児童もまたおのずからそれになれてくるのではないかと、こういうふうに思います。現在、米の消費量が減ったということは、三十年間学校給食に親しんできて、ミルクとコッペパンというものにならされてきたことがパン食になれて今日に至っておるのでありまして、ただいたずらに米を食え食えと言いましても、長い習慣が一遍に変わるものではありません。したがって、いまの時点から学校給食を行いますならば、十数年の後には習い性となって米の消費も順調に伸びていくのではなかろうか。そして一人前の成人として、やはりまた米食についてのいろいろな、また他の加工品等についても嗜好がおのずから変わっていくのではないか、こういうふうに思うのであります。  ただ、一つ問題になりますことは、学校給食になった場合に、学校の先生方にこの重労働が肩がわりしたり、あるいは地方自治体の職員の人々に何か専任職員を置かないことによって重荷がかかる、重労働になる、こういうような心配もあるようでありますので、そういう点等については、文部当局なりあるいは地方自治体当局等も、さきの学校給食会と同様に、それらの点も、人件費の面等もあわせて対策を講ずることが必要ではなかろうか。そういうことによってこれは学校給食に完全に切りかえることができ、またやらなければならぬものである、こういうふうに考えております。
  192. 三善信二

    ○三善信二君 次に、転作の問題について若干お尋ねしたいと思っております。  米の生産調整はこれはやむを得ないということを農家の方も考えたが、さて何をつくったらいいか。足りないものをつくりましょう、麦をつくろう、あるいは大豆をつくりましょう、あるいは飼料作物をつくりましょう、つくるについては奨励金も出そうということで、いろいろと政策を講じておられるわけですが、一、二点、私が農村あるいは農家の方と接してぜひこれをやってもらいたいということを考えておりますのは、一つは、麦をつくりたい、あるいは飼料作物をつくりたいといっても湿田では何としてもつくりようがない、そういう声をよく聞くわけでございます。土地改良をやって大分進捗されておりますけれども、まだまだ湿田がたくさん残っている、そういうところに麦をつくりたいと思ってもつくれないという不満が非常にある。そういう点、何かひとつ現在の予算の中でやりくりしてでもせっかく転作を進めていく、つくってもらう、しかもそれを定着させていくという上において、そういう湿田を解消するような具体的な一つの対策をぜひ講じてもらいたいと思っておりますが、いかがでございましょうか。
  193. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) 仰せのとおりだと思います。農業基盤整備事業の中でも特に水田の高度利用、水田を水稲だけのものとしないで、できるだけそれを汎用化するというような事業に直結するような費目を重点的に計上したつもりであります。たとえば圃場整備事業とかあるいは末端の排水事業、あるいは土地改良総合事業、そういったものもそうでありますし、あるいは非公共事業の転作の特別対策事業百二十億という計上もその一つであります。今後そういった事業の運用に当たりましても、いまおっしゃいました水田の湿田を乾田化する、そこで畑作物の作付が可能な状況にするというところに力点を置いて事業を展開していく必要があるだろう。ことに圃場整備事業等につきましては、かつてはどちらかと言えば水稲の作付というところにウエートが置かれて事業が行われた。つまり機械を入れるための地耐力の問題だとか、あるいは圃場の広がりとか、そういったところに力点を置かれたわけでありますが、今後のやはり圃場整備事業の新しい展開としては、おっしゃいましたように湿田を乾田化する。そういう方向をもう少し徹底するような形でこれからの農業基盤整備事業というものを積極的に充実していきたい、かように思っておるわけであります。
  194. 三善信二

    ○三善信二君 それからもう一つは、麦でも飼料作物でもまだまだ反収が非常に少ない。せっかくやろうとしてもどうも不安があるというような心配がある。ただ、現実にいろいろ農村を回ってみますと、麦でも平均五俵とれるのを七俵とっているところがある。あるいは飼料作物でも、年間、これは飼料作物をつくってまあ平均は十トンか十二、三トン、それを二十トン、二十五トンとっている人もある。そういった非常にまじめで本当にいろんな工夫をしてやっておられる農家というのもやはりあるわけでございますから、農家の方々はなかなか現実を見ないと新しいことに取り組んでいかないという習性もございますし、そういった事例をどんどん農林省としても全国の農家の方に知らしていく、PRしていくというようなことをやってもらいたい。  それからもう一つは、やはり本質的に麦でも飼料作物でも大豆でも反収をどう上げていくかというのがこれから非常に大きな問題で、試験研究機関でそれぞれやっておられると思いますけれども、何かもう一つてこ入れをして、現実に単に試験場の試験官だけではなくて、それをもっと広げた県と国の試験場の体制、麦と飼料作物には特にそういう試験場の体制を強化してもらいたいと思っております。  それからもう一点は、飼料作物を何としても今後つくっていかなければならない。一千万トン以上のトウモロコシやマイロを輸入しておるわけですから、日本の畜産は輸入飼料によって賄っているまさに情けない状態、どうしてもこの飼料作物、草をもっと牛にも食わせるということをやっていかなければならない。これが私は畜産政策の基本であろうと思うわけですが、単に牛を飼っている人が自己飼料として草をつくるということだけではなくて、今後必要なことは草だけを専門につくる農家、そういう方々が出て、その草を牛を飼養している人に売る、そういった一つの流通の形態といいますか、そういった一つの草づくりというのをやはり始めてもらいたい、それが一番大きな問題じゃないかと思いますが、この三点について御意見を伺わしていただきたいと思います。
  195. 川田則雄

    政府委員(川田則雄君) お答えします。  水田で畑作物をつくるということはここ数年の経験がございますが、必ずしもいまおっしゃいましたように収量が高いとは言えないと思います。ところが、そういう中でも、いまお話しがございましたように、非常に高い収量をおさめておる優良事例がかなりたくさんあるということは事実でございます。そういうことからいたしまして、私たち技術資料というものを作成して各県に配付いたしておりますが、これは一つは最近の開発された試験研究の成果、もう一つは各所にございます優良事例を収集大成したものでございますが、何しろ全国一本ということではございませんで、地域には特徴がございますから、各県でもそれぞれの試験研究の成果と同時に、身近な地域の優良事例を収集いたしまして、それぞれの地域で活用するという体制をとっております。なおそのほか水田利用再編促進指導事業等においては、実証展示圃というものを非常にたくさんつくっておりますが、そういうものも同時に活用いたしたいと思います。なおそのほか共励会等でもってかなり優良事例が全国的に数多くございますので、これらの成績も末端に伝わり、末端で実際面で活用されるような努力をいたしたいと考えております。
  196. 三善信二

    ○三善信二君 今後の農政の方向として一番大きいのは、私はいままで何となく上から下へというような方向で農政が進められてきた。やはり県によってあるいは市町村によって、市町村の集落によってそれぞれ農業事情が違うと。そうすると、やはり本気で農業をやりたいというためには、その集落やらあるいは町村、村から、本当にどうやってこの農業を進めていくかということを本気で相談しながらそれを上に積み重ねていくという、いわば下からの農政といいますか、そういうことを考えていくことが一つの基本ではないか。  それからもう一つは、やはり何としても規模拡大をもっとやっていかなきゃいけない。規模拡大をするためには、どうしても土地の利用関係というのをもう少しきちっとしていかなければならない。一生懸命農業をやりたいという人が土地がなくて、また一方では土地を、農地を遊ばしているというような農家もある。そういう農家の方々を町村単位あるいは集落単位でまとめて土地利用計画をつくり、そしてそこの村の一つの農業というのをどうやっていくかということをやっていかなければいけない。いま農林省で農用地利用増進事業ということをやっておられますが、なかなかそれでも進まない。これも私は農村を回ってみますと、まだ知らない方が大分いる、PRが足りないんじゃないかと思っているくらいでございますが、どうかひとつ、こういったせっかくやっておられる事業でも、もっと町村長あるいは市町村の農業委員会あるいは農協あるいは普及員、そして忘れてならないことは、最近若い人たちで研究グループというのがあっちこっちできております。そういう方々も含めてひとつ根気強く情熱を持ってこういった農地利用増進事業等を進めていってもらいたいと思っておりますが、これに対して御意見をお伺いしたいと思います。
  197. 大場敏彦

    政府委員(大場敏彦君) 農用地利用増進事業、まあ五千ヘクタール余りの成果を上げておりますが、まず御指摘になりましたように制度成立してから日が浅いという関係で普及がまだ十分ではない、そういうふうに思います。  今後の方向としては、地域によって需給事情に差がある、アンバランスの問題はありますけれども、今後の方向としては、御指摘になりましたように、集落とか地域社会というものの総ぐるみの運動の中で、そういった土地利用の高度化、効率化とか、あるいは農業の組織化とか、そういった運動を展開していきたい、かように思っております。
  198. 三善信二

    ○三善信二君 時間がなくなりましたので、最後に一つお願いをしておきたいと思います。  三月は農産物の価格の月だと、きょうも食肉の価格の諮問が畜産振興審議会に行われております。また加工原料乳の保証価格あるいは繭糸の価格、こういったものを三月の末まで決めなければいけない。そこで畜産農家あるいは養蚕農家はこの価格決定を大変心配げに見守っているわけでございまして、今後の転作の問題とも関連して、やはり再生産を確保するような、そして農家が安心してつくれるような、そういう価格の決定をひとつお願いしたい。  と同時に、やはり生産対策として、価格だけじゃなくて、農家もいろんな負債で困っているというようなことも畜産農家等にもございますし、そういう生産対策も含めてひとつ考えてもらいたいと思います。  農林大臣、ひとつよろしくその点は価格の決定について御配慮を特段にお願いいたしたいと思います。  これで私の質問を終わります。(拍手)     —————————————
  199. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、目黒今朝次郎君。
  200. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 畜産振興審議会が三月十五日開かれまして、きょうは飼料部会、あしたは原料乳部会、そうなっているんですが、時間がありますので前段は後にして、きょうの読売新聞によりますと、今回の特に原料乳については据え置きを諮問するという新聞報道がありますが、私はきのう、農林大臣の出身の北海道の酪農農民が百五十名ほど集まりまして、北海道選出の自民党の議員さんを代表して絶対に据え置きにならないように体を張ってがんばるということを、中川農林大臣を含めた北海道農民代表が胸を張って帰ったわけでありますが、きょうの新聞を見ると据え置きと。それで、その内容を見ますと、円高による配合飼料の大幅な値下げが原因だと、こう新聞は報じております。そうだとするならば、一体配合飼料トン当たり具体的に農家の手取りでどのくらい値下がりするのか、具体的に教えてもらいたいと、こう思うのです。手取りですよ、手取り。
  201. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) お答えいたします。  全農の建て値で申し上げますと、五十三年の一月にそれまでトン当たり畜種別平均で五万五千四百円でございましたものが五万一千六百円ということで、トン当たり三千八百円の値下がりになっております。  それで、いま先生のお話は、末端へこれがどれだけ波及するかということでございますが、これは主力が農協を通じて流れておりますので、当然農協としては値下がり分を末端の農民にフルに戻すと、中間で吸収するようなことはしないものと期待をいたしております。
  202. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 経済企画庁長官も、それから通産大臣も、円高における差額という点については、いままでずうっと予算委員会で、具体的に消費者の方に渡るというのはいろんなむずかしい流通機構があってなかなか思うようにいかないという点で、まあ具体的に石油ぐらいはちょっとあったけれども、なかなかはっきりしない、そういう現状である。それから牛肉の問題についても、総括質問の前段の段階で、この円高に対してなかなか消費者の方にうまく行かない、そういう円高問題はそういう方面についてはなかなか出てこないのに、何で配合飼料だけはぴりっとこう五万五千四百円が五万一千六百円で三千八百円、農協は云云と、なぜ配合飼料だけはぴしゃっとこう出てくるのですかね。この辺のからくりは、ひとつ通産、経済、農林を含めて、ほかの方は出てこないのに、なぜ配合飼料だけはぴりっと金が出てくるのか、この辺の不思議な内容を教えてもらいたいと、こう思うんです。
  203. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 先ほど審議官から答弁申し上げましたが、実は、飼料はことし一月だけじゃなくて、昨年の九月にも六万四百円であったものを五万五千四百円と五千円値下げいたしております。それと先ほどの三千八百円と合わせますと八千八百円になりまして、一五%の値下げでございます。昨年乳価決定にいたしました。  そこで、その分だけがなぜ出てくるかと、生産費は、これはもう法律のルールによって計算をしなければなりませんから、安くなったものは安くなったとして計算する方法以外にないのでございまして、政府が計算をするときには、物があればこれは採用する、これは採用しないというものではなくて、再生産を確保するという旨から言って、えさ代がどういう影響を与えるかと計算するのは当然のことでございまして、ほかとの関係はどうなるかわかりませんが、少なくとも乳価決定には当然のことだと思っております。
  204. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 経済企画庁長官、聞かしてください。ほかの産業関係の円高による消費者への還元を……。
  205. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 従来、円高の消費者への還元という問題について、しばしば当委員会でもお尋ねがございました際に私どもが申し上げておりますことは、完成品の輸入が少ないと、したがって原材料という形を通じての場合が多うございますと。ただ消費物資につきましては、強いて申せば果物であるとかいうふうなことになるわけでございますが、と申して、配合飼料は、ただしこれは消費物資ではございませんけれども、これにははっきり円高の反映が出ておりますということを常に繰り返して申し上げてまいりました。これはやはり現実に輸入のコストが下がってくる、そうしまして取引の形態が非常に簡単と申しますか、恐らくは購買者側の力というものがそれだけはっきりしておって、円高のコスト低下というものがその取引に反映しやすいという状況にあるのではないかと存じます。
  206. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 円高還元の問題につきましては、日本の輸入構造が御案内のような事情でございますから、なかなか還元しにくい面もあるわけでございますが、それなりに工夫をしてまいりました。しかし、最近のような急激な円高ということになってまいりますと、さらに私は、やはりこの際相当思い切った差益還元ということを考えていかなければならぬのではないか、積極的に考えてみたいと思います。
  207. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 私は、農林大臣にもちょっと、たとえば電気料金の値上げの問題で議論しますと、円高によって確かに収入はあるというプラスの点。だけれども、いままでいろんな投下資本に金を使ってきたから、その累積赤字を償却する方に使うから、プラス、マイナス云々という議論がよく重化学工業でされるのですよ。酪農農民は、この前も通産省に伺いますと、大臣も北海道ですが、酪農農民には嫁に行かない、なぜかと聞くと、大体五百万以上、多い方は九百万ぐらいの借金がある、累積赤字が。でありますから、こういう段階に重化学工業ではいままでの累積赤字を消化するというふうにレールを敷かれながら、酪農農民が現にもう七百万、八百万の借財があるという段階では、一歩下がってそういう従来の赤字を清算する、あるいは償却する、そういう方向に、重化学工業並みにこの円高問題についてやはり考えられないものかどうか。なぜ農民だけがストレートにこういう取り扱いを受けるのか。どうも私は釈然としない、こう思うんですが、大臣の見解をお聞きしたいと、こう思うんです。
  208. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 先ほどの答弁にもうちょっと補足いたしておきますが、今度の値下がりは円高メリットだけではなくて国際価格が下がったということでございますので、今度の値下がり、新聞にいかように書いてありましても、円高のために安くなったから据え置きになったのではなくして、飼料は円高のほかに国際価格が非常に下がったということもあることも申し添えておきます。  なお、電気の場合は赤字であるからこの際はという議論だそうでございますが、それを農村にも適用してはどうかという御指摘だと存じます。そういう見方もあろうと思いますが、負債があるために昨年来負債整理をいたしまして、負債からの重圧にはこれを解放するというんですか、整理をいたしまして、負債対策を講じたところであり、そのほか万般の政策を講じて酪農を健全化するというふうにやっておるのでありまして、実際下がっておるものを、今度下がらないことで計算をするということはいかがかと。しかも、これは最終的にはやはり消費者へ転嫁されるものでございますので、消費者も円高メリットは欲しい、あるいは国際価格で下がったものは自分のものに欲しいという点に関連するならば、最終的には消費者に還元をされるという仕組みでございますので、どうかひとつこのことと電気料金とは結びつけないで、素直に再生産が確保されるかどうかということでございます。  またもう一つ、価格を決めるに当たりましては、いまの農家の実態が、再生産ができないということで生産が縮小傾向にあるならばこれもまた一つの方法だと存じますが、現在はむしろ生産意欲は強くて、第三次酪近よりははるかにスピードが上がっておるというぐらい生産意欲は落ちてはおらないと、こう判断をいたしておるわけであります。
  209. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 それは大臣、こじつけだと思うのですよ。後ほど言いますけれども、農民が米をつくろうと言っても、つくっちゃいかぬ、減反、休耕でどんどんいじめられる。特に北海道など米をいじめられると酪農しかないと、酪農しか生きる道がないということで相当に無理して酪農に全力を投入している。そして統計としてはこう上向きに出てきているという点は現にあります。しかし、それは酪農農民の最後の私はぎりぎりの努力じゃないかと、こう思うんです。でありますから、これ以上言っても、時間がありますから、きのう大臣も含めた北海道の百五十名の酪農の代表、農民同盟ですか、絶対に据え置きでは納得せぬと、中川農林大臣に焦点を合わせても、この据え置きの問題の首を取るまでは農民春闘としてがんばると、こう誓っておりますから、毎日農林大臣のうちに日参するかもしれぬから、たまにはまけてもらって、やっぱり昨年以上の値上げということに努力されんことを要求いたしまして、この畜産物の価格については一応終わります。  それから二番目には、私はこの前の二十二日、米の生産調整をめぐって二時間にわたって議論をしたわけですが、きょうは繰り返しはいたしません。ただ、その際に今後十年間にわたってやるんだというおたくの説明と、とりあえず区切って三年間に今回は二千億の金をつけるという関係と、それから政府の農業全般の長期見通しで、六十年にタイミングを合わせていろいろな点を発表していますね。この農業の六十年の見通しと新生産調整の十カ年計画という点はどういう絡み合いを持っているのか、ひとつ農林大臣に教えてもらいたい、こう思うんです。
  210. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 御承知のように、農産物の需給と生産の見通しは昭和六十年を目標といたしております。生産調整の方は十年間でございますから昭和六十二年までになります。でありますから、最終年度を合わせて計算したらどうかという意見もありますが、実は生産調整は十年間ではございますけれども、三年ごとに消費と需給の関係を見直しながら手直ししていくという仕組みのものでございまして、現在やっております数量も必ずしも十年を固定化したものではない。ただ考え方として、前回の生産調整は五年間の短期の臨時的に米を減らすというだけでございましたが、今度は十年間かかって需給のバランスをとった総合食糧政策に見合った農政ということになっておりますから、十年かかって固定的にそういった過剰が生じないという農政を確立したいということで十年を設定したものであって、生産調整の見通しなりあるいは米の見通しを必ずしも六十二年は何ぼにするということではなくて、六十年の長期見通しともそう差はないという、横もにらみながら今回の十年計画を持ったわけであり、年々の変更はありませんが、三年ごとに見直すということで、その際はまた六十年の長期見通しを横にらみしながら三年ごとの計画を立てていきたい、こういう関係になっておるわけでございます。
  211. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そうすると、主要農産物の自給率の推移という形で、六十年の段階では米は一〇〇%、小麦云々と表示しているんですが、この枠内で新生産調整の十カ年計画をコントロールしていくんだと、こういう理解でいいんですか。
  212. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) そのとおりでございます。
  213. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そうしますと、この前、新生産調整で、私としてはこういう問題については納得できないので、時限特別立法でもつくって農民の納得のいくような方法でやるべきではないのかと、こういう提起をしたわけですが、なかなかかみ合わなかったわけなんです。きょうはたまたま足鹿参考人がいらしておりますから、この新生産調整の問題をめぐって、現行のままでいくと私は縮小再生産になって日本の農業が崩壊する危険性を持っている、そういう論陣を張ったわけでありますが、実際に参考人として全国を歩かれて、この新生産調整と今後の農業という点からどういう御意見を持っておられるか、この際聞かしてもらいたいと、こう思うんです。
  214. 足鹿覺

    参考人足鹿覺君) お答えいたします。  ただいま問題になりました十カ年間の長期にわたる水田利用再編対策大綱の一環として、現在米の新生産調整問題で検討がされておるわけでございます。元来、この発議者は前農林大臣でありました鈴木善幸氏が発表されたものでありまして、鈴木さんによりますと、この事業は農地改革に匹敵する大事業である、こう言われておるのであります。その内容は知るべくもなくしておやめになりましたのであえてわかりませんが、これから先は私の想定でありますけれども、もしそれを中川農林大臣が踏襲されておって、今回のような米の生産調整二千十三億の予算を持った案がここへ提示されておるといたしますならば、余りにも農地改革に匹敵するという内容にはふさわしくない中身ではないかと、かように判断せざるを得ません。  少なくとも農地改革を行ったときに、農地改革を農業改革へということは、当時官民一致した一つのスローガンでございました。残念ながら農業基本法が成立以来、農業労働力が重工業にごっそり抜き取られまして、農基法が定めた中規模の農業経営それ自体が崩れていきつつある状態の中でありますので、これからその農地改革の後を受けてどのような形で日本の農業改革を進めていくかということは、このような形の中からは私どもは出てこないのではなかろうか、かように思います。  しかも、このたびの水田利用再編対策大綱は閣議の了解というにすぎません。私は決してこれを軽いとか重いとか言うのではございませんが、少なくともこのような画期的な事業を行うとするならば、目黒先生が言われましたように、法律でもって予算の裏づけをし、長期の展望をもって対処すべきものであると考えざるを得ません。にもかかわらず、法律もなけらねば、全くの行政指導によって農地改革に匹敵する大事業を行うということになりますというと、いかにもその内容がこれにふさわしくない、そういう点で、むしろこのような準備不十分ででき上がりました、そして米過剰の緊急避難的な内容を繰り返すようなことであってはならない、かように私は考えておるものでありまして、もちろんこのような計画が知事会議においてもその割り当ての基準が明確にされない、不公平な割り当てだと言って相当議論がなされ、最近私が入手したものによりますと、七項目の割り当ての基準がございますが、これらは全く末端の市町村段階には知られておりません。もしこれを知ったといたしますならば、当然異議の申し立てをする人が出てくると思いますが、それすらも何ら認められておらない、一方的、強制的なものだと受け取らざるを得ないのであります。法律で保護されておる農民の土地を、自由に耕すことを一片の通達によって、しかもペナルティーと称する罰則規定らしきものをつけるに至りましては、私は少なくとも憲法の立場から申しましても、職業選択の自由に匹敵する作目選択の自由は、私は農民が根本的に持っておる人権であり、権利であると考えるものでありまして、そのような問題意識の上から、もし農地改革に匹敵する大事業だとするならば、内容を再検討されて出直されることが適当ではないか。これは大変失礼なことを申し上げるようでありますが、時間さえ許せば、いろいろ全国の農村を歩き、あるいは農村の事情が私の手元へ入ってきておりまするので、時間の都合を見まして申し上げておきますが、総体的に見た私の見解を申し上げておきたいと思います。
  215. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 そうしますと、農林大臣ね、これは衆議院でわが党の竹内先生が、農水委員会で大分具体的に質問したんです。今回の新生産調整の各都道府県の割り当て基準七項目云々という話があったんですがね、これはやっぱり国会で具体的に審議するためにわれわれが農村に行って、町村に行って、あるいは常会に行って、なぜこういう割り当てになったんですかと質問されても答弁のしようがないんですよ。やはりその内容を明らかにするためには、農林省が各県知事のもとに出した割り当ての基準、方法、各県別の内容ということは当然国会に出して、きょうは時間がありませんから、やはり予算委員会の農水の分科会などにおいて具体的に議論をする必要があると思いますが、この資料なり内容の提示ができますか、農林大臣の見解を聞きたいと思います。
  216. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 出しました七項目は国会にも、衆議院では少なくとも出ておったと思いますし、差し上げます。ただその結果、各県にどの項目がどの程度働いてこうなったということは、これをお示ししますと各県議論が出ますので、数字は差し上げられませんが、計算をした基本的な資料は差し上げることとしたいと、こう思っております。
  217. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 これは各県のおのおの事情を勘案して、そういうことの内容を明らかにして、初めて農民なりあるいは地域の住民なりが行政側とやはり合意に達しなければ私はこの問題は成功しない、合意に達しないままにやるとすれば、結局はあなたがどんな衆議院で、罰則方式で、きれいごとを言っても、結局行政権を行使した公権の抑圧、農民の希望をいわゆる行政権で抑圧してしまうそういう結果になりかねないんじゃないですか。私はあなた方が自信を持って話し合い、福田総理も総括質問では納得ずくでやるんだということを言っている限りは、納得ずくを裏づけする七項目と各県別の算定の基礎を国会を通じて国民の前に明らかにするというのは当然じゃないですか。この最も大事なところをカモフラージュされて何が討論できるんですか。やはり国会を通じてすべての資料を出して国民の合意を求める、国民の議論を呼ぶという点が私は必要だと思うんですが、重ねて大臣の見解を聞きたいと、こう思います。
  218. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 七項目は差し上げます。七項目に基づいてできた数字も差し上げますが、項目別にどうこうということは、これは各県いろいろまた議論をすれば、この取り方がいいとか、この取り方は悪い、このウエートは多くなり過ぎるということで、とてもとてもまとまりのつくものではございません。この項目はおれの県にとっては不利だからこれは外せとか、入れろとかということになっていけばこれはできませんので、まあまあ一つの基準をつくって計算をしてお示しをした、その結果の数字も各県別の数量が決まっておりますから差し上げます。  それから県内においての生産調整のやり方は、これは知事さんの独自の立場でやっていただくことであって、国が採用した七項目をそのまま採用してくれというようなことは申し上げません。これはまた町村内、集落内でも独自にやっていただくと、こういう仕組みになっておりまするので御理解をいただきたいと思いますし、これも国家権力でやろうとはしておりません。まさに理解と協力、こういった異常な時代、過剰な時代には応分の努力をしなければならぬ。  ここで一つだけ申し上げておきますけれども、農産物の中でもミカンのように過剰生産のときにはどのように苦しんでおるかということを考えれば、四万円から七万円の奨励金を差し上げて、これは世界的に見ても過剰なものに対する対策としてこれ以上やっている国があったらお目にかかりたい、あるいは国内においても、過剰傾向のときにこれほどの手厚い政策をやっているのはない、私は国家権力でいやがることを無理やりやったのではない、こういったことで必ずや農家の皆さんあるいは団体の理解と協力が得られるものと、こう確信を持って進めておるところでございます。
  219. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 いや、どういう釈明をされようと、私はいま言った各県別にどういうデータがどういうふうにかみ合わされて各県に割り当てられたのか、やはり本予算委員会を通じて具体的に国民の前に明らかにしなければ議論できませんから、私はきょうは要求して、分科会で農水の問題もやるわけでありますから、少なくとも農水の分科会までにその資料を提供するように理事会で諮ってもらうことを委員長に要請しますが、いかがですか。
  220. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 理事会において協議いたします。
  221. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 じゃ、よろしく御配慮のほどをお願いいたします。  そうしますと、そういう内容が明らかにされないままに、都合が悪くなると農林大臣はどんなきれいなことを言っても農民にぎりぎり押しつけられる、こういうのが現在の私は農政の姿ではないかと、こう思うんです。この前の二十二日の委員会で、通産大臣経済企画庁長官もあるいは労働大臣も、いろんなことを言いましたけれども、しょせんは農民にしわ寄せが来ていると、こう思うんです。  それで、現在いろんな審議会などがあるわけでありますが、米価審議会なり甘味の審議会あるいは現に開かれておる畜産の振興審議会などなどについても、いわゆる俗に新聞で言われる隠れみのという存在であって、本当に生産農民の声が通っていないと、こういうふうに私は考えるわけであります。やはり今日の農民なり農村を救うためには、生産農民の声をじかに政府にぶつけると、そういう機構を抜本的に見直す必要があると、こう思うのであります。  足鹿参考人にお伺いいたしますが、こういう農民の声をじかに政府にぶつけるということで、現在の審議会をどのように受けとめ、この審議会を直すためにどういう方法があるのか、具体的にあったらひとつお聞かせ願いたい、こう思うんです。
  222. 足鹿覺

    参考人足鹿覺君) 目黒委員も御承知のことと存じますが、畜審にいたしましても米審にいたしましても、きわめて非民主的な構成になっておるわけであります。私は米審に席を置いておりますが、生産者代表が五人、消費者代表が五人、二十五名中十名でありまして、あとは全部中立と称する官庁出身の方々やその他大学の諸先生というような構成になっておるのであります。葉たばこの審議会は十一名でありまして、一人が委員長になり、あとの十人を生産者側と学識経験者側が分け合っておるというきわめて妥当な委員構成になっておることは御承知のとおりでありまして、何も米価審議会や畜産振興審議会がいまの構成比率でいかなければならないということは法律にも何もないことでございまして、政府が本当に農民のあるいは消費者の民意を聞く、あるいは生産者やあるいは消費者の真意を聞くということでありますならば、まず生産者代表を、その次には消費者代表を、そして中立代表をそれぞれ同数で決めて、そして妥当な結論が出れば国民も私はある程度納得するのではないかと思います。  ただ、私は一つ新しい意見を持っておりますが、まだ十分熟したものではございませんが、米の生産者価格の決定については、私の理想とする案ができますまではやはり三者構成に準じていくと、ただ消費者の米価につきましては、国の予算、その逆ざやの問題、二重価格の問題等、非常に大きな問題でありまして、これを現在の米価審議会において取り扱うということは必ずしも妥当ではないと、かように考えまして、この消費者米価の決定は国会において御決定になることが正しいのではないかと、かように考えておりますし、また私どもは、従来も農民の団体交渉権の確立の問題について古くから叫んできておりますが、今日のような輸入の外圧の激しいとき、また農産物価格が不安定なとき、そういったときにおきましては、やはり売り手と買い手の立場に立った、相手が政府なら政府、団体なら団体と生産者側がまず話し合っていく、そこに問題を発展させていくと、それを法的に裏づけていくということが今日必要ではないか。労働委員会にしろ公共企業体の調停委員会にしろ、私は学ぶべき点が多々あると思います。これは政府もメンツなどにこだわらないで、広く日本の食糧の国内自給を高めていくことは、究極するところ適正な価格問題で解決するのであります。営農のペイするのも農業所得を守るのもすべてその価格問題にかかってくるのでありまして、確たる農業政策を一方に踏まえ、一方には農民の団体交渉権を基礎にして、売り手と買い手において決定しないときにはまた第三者構成においてこれを決めると、こういうふうな民主的な方法をとることが最も正しいのではないか、これはたたき台として申し上げるのでありますが、十分御検討をいただきたいと存じます。
  223. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 大臣、毎年米価闘争で大騒ぎをする、私もここ十何年来米価闘争で、生まれ故郷が仙台の方ですから経験していますが、いま足鹿参考人の陳述を聞いていますと、やはり適正な価格、これが農民の生活を守るあるいは国民の生活を守るためにどうしても大事だという点で、現在の審議会のあり方あるいは将来の農民の団結権、団体交渉権、こういう問題について陳述があったんですが、こういう問題についてはひとつ農林大臣としても前向きに検討をしてもらいたい、こういう希望が私にもあるわけでありますが、これは当予算委員会の北海道・札幌公聴会の際にも農協及び農民団体から同じような開陳があったわけであります。あなたの選挙区の農民にもそういう強い意向があるわけでありますが、これに対する農林大臣の見解を聞いて私の質問を終わりたいと、こう思います。
  224. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 時間が来ております。
  225. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 食管制度によって今日まで米穀政策をやってまいりました。結果としてはどうかというと、国際価格の五倍も高いと言われるぐらい私は農家保護に役立ってきたものだと存じます。一方、国内には食管制度はむしろなくした方がいいという声も非常に強いわけでございます。食管制度をなくして安い米を食べたいと、こういう声にも耳を傾けなければならない。農林省といたしましては、総合食糧の自給率を高めるという基本方針と、農家経済を守るという従来のやり方によって何ら支障はないと、むしろ過剰生産ということで、米が生産意欲が強いという方向はあっても、いままでの制度、仕組みによって農家を苦しめてきたというようなことは断じてないと、こう思っております。したがいまして、団体交渉などはゆめゆめ考えておりません。ただし、農家の意向はあらゆる機会を通じて、農業団体もあるいは審議会等においても十分吸収してまいりますが、いわゆる団交権というようなことは断じて考えておりません。
  226. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 簡単にしてください。
  227. 目黒今朝次郎

    ○目黒今朝次郎君 現在の農家の現実の生活あるいは生産環境、そういうものについて、中川農林大臣と基本的に見解を異にしますから、私はいまの大臣の答弁があったから、はいそうですかと言って下がるわけにはまいりません。きょう冒頭に申し上げた加工乳の問題から畜産の問題からやがて来るであろう米価闘争を含めて、われわれはその主張に従って政府と徹底的に対決をしていく、そのためにも、先ほども言った国民の前に内容を明らかにする、そのためにはやっぱり資料を公開する、こういうことについて特に農林省及び政府に要求をして私の質問を終わります。(拍手)     —————————————
  228. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、相沢武彦君。
  229. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 最初に全日農会長の足鹿さんにお尋ねをいたしたいと思います。  私は、日本農業の育成に五十年以上も情熱を注いで今日までこられた足鹿会長に対して心から敬意を表するものでありますが、足鹿さんは、今回の第二次減反政策と言われ、水田利用再編対策について、先ほどの御質問に答えられて、大変深い御懸念を持っていることを表明されました。端的に言いまして、今回の減反政策は、農業従事者の生存権を侵害するものだとさえ全国の末端農民の中から強い反発の声がわき上がっているわけでございます。いまお話がありました農地改革に匹敵する大事業と言うには余りにも政府の提案の中身は準備不足であると、ぜひ内容を再検討して出し直すべきであると足鹿さんはおっしゃいました。足鹿さんの手元には、全国の農民の頂点に立つ足鹿さんのところへ、特に割り当て基準の七項目に対する異議等についての意見等も出ていると思いますので、それも含めて今後再検討すべき中身につきまして、大綱で結構でございますので、この際お話しをいただければ幸いだと思います。
  230. 足鹿覺

    参考人足鹿覺君) お答えを申し上げます。  このたびの新米の生産調整計画に対する地方自治体や農民の対応について、具体的に私の知る限りにおいて申し上げてみたいと思います。  これはある地域における実情でございますが、大体その県は六%程度の割り当てを受けておるところでありますが、長方形の区画を額縁型に五センチずつふやしまして、そこへ大豆等をまいて全県下のたんぼをそういうふうにしていくならば三%は確実にそれによって消化ができるのではないか。これは農民の知恵とでも申しましょうか、その人はただ単なる農民ではなくして、農村を指導していく公の立場の人がそのような提案をなさっておるわけでありまして、その点も地方における第一線の人々の考えと政府が考えておられる点につきましては大分異なったものが開きがあるのではなかろうかと思います。  それからたとえば水田に大豆をまく、これは第一種の奨励金の率に該当するものでありますが、私の地方におきましてもすでに大豆の選別機が百八十万円からの高額の機械の展示説明会がメーカーによって行われておりました。農協の幹部諸君は、まだ大豆もまかない、大豆ができるのかできないのかわからない、また大豆ができたとしてもこれを脱穀調製する手だてもないというときに選別機を持ち込まれてみてもしようがないと思ったけれども、でも農協が見に来いと言うものだから見に行ったと、全く恐れ入ったことでありまして、大豆がさように簡単にできるものだとは私は思いません。農林省にも技術者がたくさんおいでになると思いますが、肥え過ぎてもいけませんし、余りやせ過ぎてもいけませんし。余り肥え過ぎますと葉ばかりでございまして実が実らない。こういうことで、これは昭和四十五年度においてもう試験済みでありまして、もはやこういうことを反省もなくいまからやるというようなことについては、私は納得することができない実情にあるのではないかと、何か先走り過ぎているのではなかろうかと思います。農民はやはりきわめて具体的でありまして、割り当て通知を大体もらっておりますが、農民がもらっておりますものを見ますと、大体こういうものでして、これは、ある県の市長さんが、九反五畝つくっておる人に対して、転作等目標面積七アールということの目標達成に御協力を願いますという通達を配ってきておるのであります。何ら納得も何もしておらないのにこういうももが舞いおりてくる、こういうことでは私は本当に農民が意欲を持って政府の施策に金だけで協力できるものであろうかと、かような疑念を持っておるものでありまして、その県におきましては、先ほど申し上げました政府の案ではございませんが、それに基づいて「昭和五十三年度転作等目標面積の配分要素等について」というものが出ておりまして、そのウエートを五項目に分けておりまして、  一、水田本地面積の要素 百分の五十  二、自主流通米出回比率の要素 百分の二十  三、排水条件(乾田率)の要素 百分の十五  四、積雪度の要素 百分の十  五、市街化区域等面積の要素 百分の五と、これをもって割り当ての基礎としておりますが、不思議なことに農民に先ほど述べましたこの通知が行きまして、この通知は後で本年の三月二十日に知事名をもって来ておるという奇態な現象になっておりまして、何かそこら辺にも農民の気持ちにすっきりしないものを与えておるのではないか、かように思います。  また、私は、ある地域を見ましたのですが、減反はしてやろうと、しかし減反分は増産技術をみがいてよけいとろうと、その研究会が各地にでき上がっておるということも事実であります。したがって、農民が納得しないことはどこかで破綻を生ずるのではないか。やはりそういう点については政府も関係団体もお互いが本当に一体となって、そして実行可能なことをやっていくことが本当に農地改革に匹敵する農業改革への道ではなかろうかと、私はさように考えておるわけでございます。
  231. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 政府は、水田利用再編対策を十年間を目途に進めることによってバランスのとれた生産再編をするんだと、こういうふうに言っているのですが、いま足鹿参考人の御意見を聞きますと、農家は、減反分を、また生産技術を振興してその減反した分を取り戻すんだということになりますと、これはなかなか政府の思っているとおりに簡単にいかないだろうということがここではっきりしてくるわけなんですが、足鹿会長から見て十年間を展望した場合に、果たして米作以外に主要農産物の価格の保障が薄いまま総合的食糧自給力の向上が図れるかどうか非常に不安なんでありますが、その点についての御意見を承りたいと思います。
  232. 足鹿覺

    参考人足鹿覺君) まあ十年といいましても、一つの具体的な基本に乗った計画がありますならば、年次計画で推進もできますが、つまりそういうことになりますと、閣議了解事項等ではなくして、農業基本法に基づくか、あるいは他の法制に基づくかしてはっきりとした根拠を与えなければならないと思います。何をつくっても米並みの労賃が、米に与えられる労賃が保障されることが農業農産物価格政策において認められますといたしますならば、農民は喜んで他の作目へ転換をしてまいります。それがない限り、私はどのように強制をしてみても、どのように籠絡してみましても、やはり農民はついて歩かないではなかろうか。農民は本当に長い間の苦しい経験を経て先祖伝来農業を営んできておりますから、お上に対しては従っていかなければならないという考え方はいまだに地方自治体にすら見られるわけでありまして、そういう点におきましてはいまのような米の減反を幾たび繰り返してみましても問題は解決がつかないのではないか。つまり、農業政策を立て直して、いわゆる経営の面と、それから価格の面と、これが基盤整備の面と、この三つが三者一体となって問題が初めて解決をするのであろうと私は思うのであります。  たとえば基盤整備の問題にしてみましても、御承知のように国営と県営と団体営では補助率が違います。そういうことで、最も必要な団体営は農民がお互い互助組織でつくりますが、県営の委託になりますと工事が粗末であります。これはいかに農政局が地方にできましてもこれは免れません、私は現地を知っておりますから。それから国営になりますと、また大き過ぎて、せっかく基盤整備したものが、干拓しあるいは造成したものが、工業用地にそのまま地目変換を受けるということもございます。でありますから、農地政策としては、五十年程度の元金だけを償還いたしまして、山の段々畑で幾らかかろうともこれを整備する、またしけ地の排水の悪いところにも十分に施設をして田畑輪換のきく基盤整備をとにかくどんな困難があってもこれをやっていくという、この三つの基盤整備の条件、田畑輪換のきくたんぼ、それから価格の安定、そして団体交渉権、これはまあ大臣の方では考えておらぬということでありますが、国会の議員立法でも、別に経費を伴うものではございませんから、皆様方のお力によってぜひつくっていただきまして、別に乱暴しようというのではありません。秩序正しく売り手と買い手が、相手が政府であれ団体であれ商人であれ、交渉していこうというのでありますから、そういう点で農民がみずからつくったものにみずから値をつけていくという基本的な理念に立って農民の今日までの悲願を達成さしていきたいと、これが私ども考え方でございまして、何ら混乱を誘発したり、あるいはその他時の権力に対しまして抵抗していくというのではなくして、イギリスにおいてもフランスにおいても西欧諸国においてはすべてその方式が大か小か違っておりますけれどもとられておるのでありまして、日本にだけそれがとられないということはないと思います。  この点は相当時間を要しますのでこの程度に終えておきますが、農地改革を農業改革へと、このスローガンについては私も賛成をいたしますし、ぜひそうあってほしいですが、その内容については、現在の農政審議会が農業白書だけを審議する委員会に成り下がっておりますし、現在の機能を果たしておりません。もっとこのような農政の転機をもたらすような重大な問題を扱う場合の委員会のようなものをつくっていただきまして、農民のじかの声もそこへ届いていくようなあり方が好ましい。現在の農政審議会は全くその任務に適当だと思いますけれども、それがなされておらない。この実情を先生方はよく御承知だろうと思いますので、十分御配慮をいただきまして、そういう方向へ政策を持っていくように御協力をいただきたいと思います。
  233. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 大蔵大臣にちょっとお尋ねしたいのですが、今回の水田利用再編体制については大変大規模な転作なんですが、しかも今後十年間ですね、長期にわたって実施をするという政府方針なんですけれども、法的な裏づけなしに今後十年間奨励金の交付措置ということが本当に約束されるものなんですか。その点も農民は大変不安に思っているんですが、大蔵大臣の立場からこの席上で明確に御答弁いただきたい。
  234. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 今度の水田利用再編対策は、従来の長年の総合農政その他の経験を踏まえまして、農林当局としては練りに練った案であろうと考えるわけでございます。その辺のことが今度の計画の上に随所にあらわれておるわけでございまして、財政当局といたしましても農林省のこの案が所期の目的に照らして成功することを望んでおるわけでございます。そういう意味で、五十三年度予算としては、当面今年度の予算をつけたわけでございますけれども、これは三年ごとに——第一期が三年でございます。これはこのとおりやるということをお約束しているわけでございますから、少なくとも三年間は問題はないであろう。さらに十年間いまの政策をやってみるということでございますので、農林当局と十分連絡いたしまして、そうしてまた、今度の実施の経験を踏まえまして農林当局もさらに改善を加えるところがあるかもしれませんけれども、そういった点は担当の責任省としての農林省と十分合わせまして、財政当局としても所期の目的を達成してまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  235. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 とりあえず三年やって、その三年後あと保障しないで奨励金がつかないというふうなことでは、また同じことの繰り返しになると思うんですよ。この奨励金は下手をしますと地代化してしまうというようなことでまた弊害の点もありますので、先ほどお話しがありましたように、米並みの価格保証という形で転作奨励作物に対する価格保証という形へ誘導するようにお考えをぜひいただきたいということを要望しておきます。  それからもう一点、大蔵大臣に農産物の輸入問題でお尋ねしておきますが、国内の生産農家をこれ以上圧迫しないように、大蔵大臣も閣内において輸入阻止に協力的な立場をとるのかどうか、その点を明確にしてほしいんです。農産物の関税障壁についてはこれを守るという御決意があるかどうか。
  236. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 食糧問題につきましては農林省が責任を持ってやっておるところでございます。関税等の問題につきましても最終的には農家の方という問題と消費者の方という問題ということを合理的な国益を踏まえつつすべて施策するところでございます。そういう次第でございますから、われわれは農林省と十分政策的な打ち合わせを遂げた上で、完全な合意を見た上で、今後ともあらゆる制度、あらゆる予算制度を動かしてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  237. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 農林大臣、先ほど足鹿参考人からいろいろ御意見があって、なかなか政府の考えておるように農民の協力と理解が得られていないという現状なんですよね。それで、大臣は、さきの答弁で、今後農民の意見は十分聞いてまいりますと、こういうことだったのですが、具体的にじゃどう聞いてこの生産調整の政府の施策の施行に当たって取り入れようとなさるのか、その点をお聞きしたい。
  238. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 農民を代表する意見はいろいろございますから、そしてまたいろいろな団体がございますが、一応農協中央会、これは全国的に農協組織を持っておりまして全国的な農民の集約的な意見を聴取できるところは全国農協中央会であると、そういうことで中央会の意見も十分聞きまして、全体的な意見としてやむを得ないかなあと、もちろん好んでやるところではありませんけれども、こういった過剰傾向のときにはやはり生産調整はやらなきゃいかぬし、法律によってやるという意見もありますが、こういったことを強制するものではなくて、やはり農業基本法第二条に言う需要の強いものは増産をする、需要の余ってきたものはこれを調整すると農業基本法の示したところに従って行政指導によって実施をしたと、こういうわけでございます。
  239. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 終わります。(拍手)     —————————————
  240. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、立木洋君。
  241. 立木洋

    ○立木洋君 中川大臣、先日水田利用再編対策についてお尋ねして、大臣の方からは、今回の施策というのが単なる米減らしだけではなくて、日本の農業の再編を図るのだという趣旨のお話がありました。特に大豆、麦に関しても積極的に増産のために努力をしたいという趣旨のお話もございました。きょうは大豆の転作の問題について特にお尋ねをしたいわけでございますけれども、政府が発表されております農産物需給の長期見通しで見せていただきますと、大豆については、六十年には食用大豆の六割を自給するというふうになっております。その内容は、水田転作大豆の増産というものが相当の比重を持っておりますし、この大豆転作の定着がこの長期見通しの上で重要なウエートを占めているというふうに判断されるわけですけれども大臣、いかがでしょうか、その点。
  242. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 大豆は国民にとって大事な食糧でございますし、いま自給率が非常に低いわけですから、ぜひとも長期的に目標を達成したいと、こう思って鋭意やっておるところでございます。
  243. 立木洋

    ○立木洋君 それで、農林省が出されました水田利用再編のための技術指針の中で、大豆転作の優良事例として秋田県の能代市東雲拓友地区の大豆転作が例として挙げられておりますけれども、これが大豆転作の最も優良事例の一つというふうに判断してよろしいのでしょうか。
  244. 野崎博之

    政府委員(野崎博之君) おっしゃるとおり、東雲地区の大豆転作は全国的にも非常に優良な事例であるというふうに考えております。
  245. 立木洋

    ○立木洋君 ここの場合、五十一年度の生産で十アール当たりの粗収益がどの程度になっておるか、ちょっとお聞かせいただきたいのですが。
  246. 野崎博之

    政府委員(野崎博之君) 粗収入が十アール当たり約九万二千円ということでございます。
  247. 立木洋

    ○立木洋君 それは、私の方で現地でお尋ねすると、奨励金も含んで十万一千円というふうに聞いてまいったのですけれども、間違いございませんか、ちょっと数字が……。
  248. 野崎博之

    政府委員(野崎博之君) 粗収入が九万二千円でございまして、その経営費を差し引きますと十アール当たり六万六千円の純所得になりまして、それに転作奨励金五万円を加えまして約十一万六千円というふうに聞いております。
  249. 立木洋

    ○立木洋君 私は現地の農民の方からいろいろお話を聞いたのですけれども、そこのお話によりますと、この優良事例である東雲拓友地区の場合でも、転作奨励金が打ち切られたら、今後大豆の生産をやっていくのはなかなか困難だということを農家の方々が話しておられましたけれども、この点については御承知になっておられるのか、あるいはその点どのように御判断になっておるのか、お聞かせ願いたいと思います。
  250. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 現段階では、大豆のみならずあらゆる作物総じて言えると思いますし、仮に大豆にしても、仮に一番いいところでありましても、生産奨励金がなければ米に見合った収穫は得られないであろうと、こう思っております。したがいまして、十年間は生産奨励金を差し上げると、こういう基本方針でやっております。じゃその先はどうなるのかと、こういうことだろうと思いますが、その先は、その間に価格のバランスをだんだんと差を縮めていくという工夫もしながら長期的に落ち着くように努力をいたしたいと、こういうわけでございます。
  251. 立木洋

    ○立木洋君 価格のバランスの問題をいま大臣は言われましたけれども、政府の計画を見てみましても、この場合反当収入を伸ばすという点から見てみますと、政府の先ほどの見通しでも十アール当たり二百五十七キロというふうな数字が出されております。ですから、実際にはこの価格水準を高めていくという問題が非常に大きな問題になってくるだろうと思うのです、大豆の転作の定着を図る場合には。その点は間違いございませんか。
  252. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 一遍には財政その他の関係もありましてできませんが、徐々にバランスをとるようにやっていきたいと、こう思っておるわけでございます。
  253. 立木洋

    ○立木洋君 そこで、大豆の生産の状態を歴史的に振り返ってみますと、戦後一九五〇年代の当初、大豆が若干増産されました。ところが、一九五〇年代の後半、特に一九六〇年代の大豆が自由化されてから非常に激減しましたですね、生産が。こういう状態については、こういう歴史的な経緯を踏まえて大豆の生産の上で自由化が非常に大きな打撃を与えたという点については、大臣はどのように御理解なさっていますか。
  254. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 私も北海道でございまして、大豆の主産地でございますからよく知っておりますが、やはり自由化は恐ろしいものであると、こう思っておる次第でございます。
  255. 立木洋

    ○立木洋君 つまり、大豆が自由化され、そして輸入に依存していくというふうな政策が中心になっていくと、なかなかこういう大豆の転作なんかを定着化さして増産に向かうということとは矛盾してくるわけですから、やはりそういう問題については十分に対策を立てていかなければならない点だろうと思うのです。それで、一九六〇年代のあの所得倍増計画がなされておったとき、あの当時の政府の説明を見てみますとこういうふうな解説がなされております。「需要があっても国際的に割高なもの、例えば小麦などは輸入する方向に重点を置き、大豆などは増産よりも生産性の向上に重点を置いて」という趣旨の説明が当初なされておりました。こういう輸入に重点を置くというふうなやり方では、特定作物として転作を重視しながら政府はやっていくとしても、なかなかやっぱり問題が起こってくるわけですから、こういう点については所得倍増計画時代のああいう輸入に依存する政策とはきっぱりと縁を切って、やはり国内の自給率を高める転作定着のために本腰を入れてやられるというふうなお考えがおありなのかどうなのか、あるいは六〇年のいわゆる所得倍増当時の輸入に依存するという面もどうしても欠かせないというふうに大臣はお考えになっておられるのかどうなのか、その点についてはっきりと御説明いただきたいと思うのですが。
  256. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 農政の基本は、食糧の自給力の向上、しかも総合食糧、過剰なものは減らし少ないものをふやしていく、しかも大事な基本的なものの食糧自給率を上げるということでございます。  そこで、輸入の方はどうかということでございますが、自由化に対しては国民の間にもあるいは国際的にも非常に強い要請がありますが、大豆の例に見られるように自由化は大変なことであるということで自由化には対処しないということで、先般も対米調整は農産物そのものについてはやらないことにしておるわけでございます。関連品目、たとえば代表的な味の素の調製品というようなものを自由化しても差しつかえないというものはやりましたが、基本的な農産物の自由化はやらないと。輸入は国内で賄えない範囲内においてこれを輸入するという基本であって、国内の農産物の生産を抑制しながら輸入枠の拡大をするというようなことは絶対これを避けて通ると、そういうことで先般も消費の動向等をにらみながら生産農家に影響を与えない範囲での調整をとったと、こういう姿勢でございます。  重ねて申し上げますが、食糧自給率の向上ということを最優先にして、足りない面を補完的に輸入に仰ぐ、こういうことにいたしているわけでございます。
  257. 立木洋

    ○立木洋君 国内で賄えない範囲内でと、輸入の件についてはですね。もう少しはっきり御説明いただきたいのですが、大臣が一九六〇年のときに農林水産委員会でなさった質問の議事録も読ましていただきました。なかなか鋭い指摘をなさっておるし、輸入との関係で増産をどう図るかという問題についてはあの当時鋭い指摘をなさっておるわけですから、輸入の問題というのはやはり日本の国内において自給率を高めて増産を発展さしていくという問題とは直接間接は別として非常に深いかかわり合いがある。そうだとするならば、どうしても国内的な自給率を高めるならば、輸入に依存するという問題から農民が受けるいろいろな不安あるいはそういうその考え方の上で見通しがなかなか立ちにくいという考え方まで十分に納得できるような対策を示した上で増産の方向を明確に示していくことが重要ではないかと思うのですけれども、その点六〇年代の所得倍増計画時代にとった輸入に依存するという立場とははっきりと区別して考えておるというふうに理解してよろしいのかどうか、もう一度重ねて質問いたしたいと思います。
  258. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 私が代議士になったばかりのころだと思いますが、その気持ちといまも変わりは基本的にはございません。ただ、自由化の問題でなり輸入枠の拡大の問題で理解を得なければならないのは消費者でございます。国際的よりはむしろ消費者から仕方ないなということで御協力をいただかなければならない。それにはやはり農政においても努力することは努力をし、農民もそういったことに判断を持って正すべきは正すと、こういうことでやっていきませんと、何でも自給率のためにむちゃくちゃやったのでは、最終的には消費者の反発を食って支え切れなくなるのではないか、こう思っておるところでございます。  重ねて申し上げますが、輸入は第二義的ということで今回も調整いたしました。ところが、農家の間に非常に不安がある。これは必要以上に大変だ大変だと、犬が出たのにクマが出たような宣伝をされる方もおりまして、実際は市場が下がっておらないのに末端において大きく揺れるということで、私は国会を通じあるいはテレビ、ラジオ等でも農家に影響を与えるような輸入枠の拡大はしませんと、これは将来ともにやりませんとしばしば言っておりますので、現在不安がっている農家の皆さんに対しては機会をとらえていまの基本的な考え方を申し述べて理解を得たいものだなあと、こう思っておるわけでございます。
  259. 立木洋

    ○立木洋君 最後に一つ
  260. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 簡単に願います。
  261. 立木洋

    ○立木洋君 十年間の計画でやっておられるわけですから、特に価格水準の改善ですね、農家の方方が安心して転作してやっていける見通しが持てる価格水準の改善の問題、それからやはり自給率を高めていく上でのしっかりとした見通しの持てる展望を農家に与えていただくという点でも積極的に今後努力してほしいという点を前回の水田利用再編対策での私の指摘とあわせて強く要望しておいて、私の質問を終わりたいと思います。(拍手)     —————————————
  262. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、井上計君。
  263. 井上計

    ○井上計君 総合農政という見地から農林大臣に大変御苦労願っておることは十二分に承知をしております。片方では過剰米をどうしようかというふうな、またさらには片方ではいましばしば論議されておりますけれども生産調整についての問題、もう大変御苦心されておる。十二分にわかっております。そこで、先ほど三善委員からも御発言がありましたが、米の消費をふやす、需要をふやすことをまず考えたらどうかということでいろいろと御提案もありました。私、そこで大臣に、米の需要、消費をふやすことと、もう一つはやはり大きな問題でありますところの輸入牛肉の問題、この二点を——これは質問というよりも、むしろ私自身の意見を交えての提案であります。農林大臣はきっとお喜びいただけると思うのですが、申し上げて、御見解を承りたいというふうに思います。  一つは、米の問題であります。先ほどのお答えを聞いておりますと、現在すでに二百万トンの計画的な保有を除いてもすでに百六十七万トンの過剰がある。ことしの十月末になりますとさらに百万トン過剰がふえると。莫大な過剰米であります。それを一挙に云々というわけにはまいりませんけれども、そこで一つの提案でありますが、現在全国に生活保護を受けておりますところの世帯が七十二万三千世帯あるそうでございます。人口にして約百四十万人だそうでありますが、それらの世帯に、一人年間百キロ、まあ大した量じゃありませんが、一日当りにしますと約三百グラム弱でありますけれども、これらのものを無償で給付をする。大蔵大臣もお見えになりますけれども、予算その他いろいろな問題もあろうかと思いますけれども、これをやりましても実は十四万トンしか減らないんです。計算しますと十四万トン。それでもやはりかなりの消費増になるのではなかろうかと思います。それからもう一つ学校給食。先ほど週に一回か二回ぐらい弁当を持ってこさせたらどうだというようなお話がありましたが、学校給食用にこれまた無償で生活保護世帯の年一人百キロの十分の一、一人十キロを無償で配付しますと、これは約十三万トン。合計で二十七万トン、まあ三十万トン足らずでありますけれども、ひとつこれらのことを——思い切った施策がやっぱりこの際必要でありますから、お考えになる御意思、これは大蔵省との問題が十分ありますけれども、農林大臣のお立場でどうお考えか、御所見がありましたら、当然のことでありますけれどもお聞かせをいただければと思います。
  264. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 米の消費拡大についてはずいぶんわれわれも議論をいたしまして、御指摘のあったようなことについてもずいぶん議論をいたしたわけでございます。基本的にむずかしいのは、ただで差し上げてそれがネットでどれぐらいふえるのか。いままで食管で買っておった米がただの米を食べただけに終わってしまうのではないかということで、米の消費拡大に実際役立つのかどうかという問題も一つございます。また、ただの米が一般家庭に回りますと、これがまた市場に出回ってくるというようなことをどうして保証して、そういう悪い人はいないと思いますけれども、それを売ってパンを食べられたときに一体どういうことになるのかとか、高く売って安いパンを食べるというようなことをだれが担保をしてくれるのかというような実はむずかしいところもありましてこれに踏み切れないでおるわけでございますが、一つの提案でございますから、これからそういったむずかしい点はありましても研究には値しますけれども、むずかしい問題もあると、こういうわけでございます。
  265. 井上計

    ○井上計君 突き詰めていくとむずかしい問題がたくさんあると思いますけれども、しかし、あれもむずかしい、これもむずかしいでちゅうちょしておったのではなかなか解決ができないと思いますので、ぜひひとついま一度それらの面についての御検討をいただきたいというふうに思います。  そこでもう一つは、学校給食用の牛肉の問題であります。お聞きしますと、現在、給食用の輸入牛肉の特枠が若干あると聞いております。しかし、それを計算しますと、年間、一年間に一人百五十グラム程度であるということでありますから、これはまあなきに等しい量だというふうに思います。片方ではオーストラリア、ニュージーランド等々を初めとして牛肉の輸入ということがずいぶん言われております。あるいはまた貿易収支の黒字を少しでも減らすために政府は大変御苦心をいただいておりますし、また、子供たちは牛肉の味をもう知らない者が最近たくさんふえてまいります。牛肉の味を覚えさして、将来の国内畜産、要するに需要増も考えていったらどうかとか、このように申し上げると、一石三鳥、四鳥、五鳥ぐらいになるかと思いますが、そこで提案でありますけれども、もう別枠というよりも特別に学校給食用の牛肉として輸入をする、したがってそれには調整金も何もかけないとなりますと、一キロが四百七十二円の輸入価格、ちょっと調査資料をいただきますとそういうことになります。現在給食人口が千三百二十四万人程度でありますから、それに一週間に一回百五十グラムの牛肉を学校給食で食べさす、これについては別枠どころかもうそれのみの輸入対象にするということになりますと、国内の畜産農家にも影響がありませんし、肉屋さんにも全く影響がないわけでありますから、その方法をとれば、計算をいたしますと七万七千トンばかり消費できるということになります。金額にしますと、現在二百三十円で計算をすると約一億六千万ドル程度これに必要であるということになりますから、全体から見れば大した金額ではないと思いますが、ひとつ思い切ってこういうようなことをお考えになるお気持ちはございませんか、承りたいと思います。
  266. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 具体的な御提案でございますので研究はいたしてみたいと思いますが、ただ何でも余ると学校給食という議論があるわけなんです。ミカンが余ったから学校給食、マグロがこのごろ余ったから学校給食。余ったから学校給食で何でも押しつけるというところに私はちょっと問題があるのじゃないかと思います。しかし、現実的な話でもございますから研究はしてみますが、米は食べてくれ、牛乳は飲んでくれ、そうしたらミカンを持っていった、そうしたらマグロというようなことになっていくと、これはちょっと学校生徒を余りにも利用し過ぎているのではないかという心配もありますので、その辺は節度あるところで処置してまいりたいと、こう思うわけでございます。
  267. 井上計

    ○井上計君 おっしゃるように、余ったから何でも学校給食に持っていくということは、これはもう適当でありません。しかし、いままでミカンが余ったとかマグロが余ったとかと。いままでと違ってこれは余ったからではないのです。したがって、従来の余ったから学校給食に云々というそのような御遠慮でなしに、もう積極的に肉をまず子供たちの栄養のためにも、特にこれから鯨肉も減るわけでありますし、二百海里問題でいえば魚類たん白もずいぶん減るわけでありますから、積極的に学校給食に対して肉を大いに利用するんだ、食べてもらうんだ、それには政府は思い切ってこういう施策をとるんだと、こういうお考えはどうでしょう、できませんでしょうか。
  268. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 時間が来ております。
  269. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) そういうことで、余ったからではなくて、発想を長期的な、児童の体格向上だとか、そして肉になじましていくことが長期的にいいというような観点から、ひとつ十分検討してみたいと存じます。
  270. 井上計

    ○井上計君 終わります。(拍手)     —————————————
  271. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、下村泰君。
  272. 下村泰

    下村泰君 農林臣にお伺いします。  先ほどから古米とか古々米の話がたくさん出ておるようでございます。量が幾らとか何かと言っておりますと時間がございませんので省かせていただきますけれども、私は昨年の十一月でございましたが、秋田県に参りました。秋田市に蓼沼銀次郎さんという方がいらっしゃいます。この方はたしか叙勲者として表彰された方です。この方のお家へ参りましたところが御飯を食べさせられました。食べてみた。どうですかと言うから、おいしいですね、ことしの新米ですかと言ったら、冗談じゃない、この米はうちにある土蔵の片すみにあった、いつごろそこに置かれたのか年代は覚えてないと言うのです。その方もう七十過ぎなんです。その方が覚えてないのです。してみると少なくとも百年近い。もみのまま置かれていた米なんです。これを蓼沼さんの家は代々お米屋さんですから精米をして御自分が食べる。近所の奥様方に食べさせたらやはりおいしい。もみのまま残せばこれだけうまいんだと言われました。それから福島県の郡山市に田島勇さんという弁護士の方がおります。この方は松川事件の主任弁護人であったと思いますけれども、この先生もやはり同じことをおっしゃっている。なぜもう少し農林省はこういう点において真剣に考えないのかというお話。それから月刊「食糧」という雑誌、七八年の二月です。毎日新聞記者の小泉さんという方が書いていらっしゃるのですけれども、もう農林省と大蔵省の肝いりで始めているんだそうですが、冬眠密着包装米、これをやっておるそうです。それから農協の方でもサイロの中に入れておいて、それを今ずり米としてもみのまま出すと。これも大変おいしくいただける。それから冬眠米。この場合にはそのまま置いておくと約八カ月もつそうです。そして味も落ちないそうです。  それから、この小泉さんの書かれているこの本の中に、明治三十七、八年のお米をいまだに貯蔵していて召し上がっていて、そのまま食べてうまいとはいえないけれども、チャーハンにするには最適であると、こういうような説も出ております。石油の備蓄も結構ですけれども、一朝事あるときに備えて、こういう米のいわゆる備蓄の仕方、農業の従事者も消費者も全部うまくいくよううな方法というのは農林大臣考えですか。
  273. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 備蓄についてもわれわれもずいぶん勉強いたしましたつもりでございます。たとえば、琵琶湖の底へ埋めておけば百年はおろか千年ももつかもしれないという指摘をしてくれる人もあるわけです、空気を遮断いたしますから。貯蔵方法によっては備蓄は非常にいまはいい米で品質が保てると。仮に、もみでやると一番いいんだそうですが、これはかさばると。かさばらない効果的なものはやっぱり玄米にしておくことだと。しかし玄米から胚芽というところですか、あそこだけ取ればこれは新米と同じになるということでございますから、長期的にもつという工夫は幾らでもあろうかと存じます。ただ、それを持っておったからといって、五年、十年先にまたそれが消費されるというめどが立たないということなんでございます。そういうことのめどが立つならば、これは相当持っておってもいいわけですが、持っておることによって金利と倉敷が莫大な金——農家の方が自分で持ってくれるならいいわけでありますが、政府がこれを持つとすれば、一トンについて二万円の金利、倉敷がかかりますから、それだけの財政負担を持って長期的に持つ意義があるかどうかという点に難点があって踏み切れないところでございます。
  274. 下村泰

    下村泰君 時間がないので残念です。これは何か言っておったらおしまいになりましたから、またこの次に改めてやることにいたします。(拍手)     —————————————
  275. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、柿沢弘治君。
  276. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 また四分でございます。  きょうの新聞によりますと、農林省は牛肉及び豚肉の安定価格の据え置きの諮問をしたというふうに書いてございます。試算をすると、牛肉が〇・一%ダウン、豚肉が〇・四%ダウン、しかし据え置きだと。これでは円高のメリットを消費者に還元するという政府の政策としては不十分ではないかと思いますが、この試算の根拠になるドルのレートは、一体一ドル何円で計算しておられますか、それをお伺いしたいと思います。  それから、あすは加工乳の保証価格を諮問すると聞いております。加工乳の場合には輸入飼料の原価に占める割合が高いと思いますので、この牛、豚肉の食肉よりも低い価格になると思いますし、引き下げの諮問をされるものと期待をいたしますが、いかがでございましょう。  それから、この両者について経済企画庁は物価を担当する立場から当然相談を受けていると思いますが、これで果たして円高のメリットを消費者に還元していると言えるかどうか。私は非常に審査が甘いのではないかと思いますし、これ以上の政治加算をさらに積み増そうという動きもあります。それに対してどういう態度をとられるのか、お伺いをしたい。  さらに、この根拠になっているドルレートが、円高がさらに一層進んだ場合には価格引き下げの原因になると思いますが、その場合には年度途中で改定をするということができないのかどうか。先ほどから質問を聞いておりますと、相変わらず組織された生産者の声だけが声高に叫ばれておりまして、組織されてない一億一千万の消費者の声がどうも届いていない。農林省はその意味で、農林大臣が見識を持ったことをさっきおっしゃいましたけれども、やはり消費者の立場を十分考えた諮問をしていただきたいと思いますが、その点もつけ加えてまとめて御質問をいたします。農林大臣にお願いします。
  277. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 今度の価格据え置き諮問は、円高何ぼとかということでやっておるわけでございませんで、実際、飼料価格が幾らであったかということから生産費として計算をしております。その中で強いて何%下がったということをやれば後でまた御報告をいたしますが、農家が従来どおりの生産を維持していくのにはどれくらいの値段がいいかなということで計算をいたしましたものが……
  278. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 原価の輸入飼料のドル換算、一ドル幾らで円に換算をしていますかということです。
  279. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) いや、それは換算はまた後で出ますけども、そういうことで何ぼ何ぼになるはずだということでなくて、実際動いているえさの値段というものを基礎にしてはじいたということでございます。  そこで、若干下がるのを挙げているわけでございますが、あらゆる物価が上がっているときに、下げるということもちょっといかがかということで、消費者にもその程度ならがまんをいただけるところが据え置き程度かな、従来ずっと上がってきたものが据え置くということだけでも、消費者の人はこれは理解をしていただかなければならないと、こう思うわけでございます。
  280. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 加工乳の方はどうですか。
  281. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 加工乳も大体同じ傾向だと見ております。
  282. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 これから飼料穀物が下がったらどうなりますか。
  283. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 価格が上がった下がったで年度で調整する仕組みになりませんで、一年間やりまして、そして来年の結果に下がれば下がった方向に、上がれば上がった方向に計算をするということになっておるわけであります。
  284. 佐野宏哉

    説明員佐野宏哉君) 先ほどの大臣のお答えのとおりでございますが、飼料費の見込み方は昭和五十三年の一月までの農村物価賃金調査を使っておりますが、農村物価賃金調査に反映されておりませんえさの値下がり、既定事実になっておりますえさの値下がりは織り込んでおりますが、これは配合飼料価格と政府操作飼料の値下がりを織り込んでおりますけれども、いずれも先生お尋ねの交換レートのお話は、配合飼料メーカーが購入した飼料原料の段階でそのお話のような事情があるわけでありまして、私どもが織り込んだのはそれを織り込んで配合飼料のメーカーが建て値を下げた分を織り込んだということ、ですから、これは特に特定の交換レートをアサンプションとして持っている計算をしたわけではないという事情でございます。
  285. 藤井直樹

    政府委員藤井直樹君) 円高の問題でございますが、いまお話しがありましたように、配合飼料が昨年から二回にわたって下がっている。その理由は円高によってコストが下がったということでございまして、それが織り込まれまして今回の価格の決定になったかと思うわけでございます。  それから、今回の諮問案につきましては私ども十分農林省と御連絡をしてまいったとこでございまして、この御諮問案という形で最終的に決定されるということが望ましいと考えております。
  286. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 終わります。(拍手)
  287. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で農業問題に関する質疑は終了いたしました。  足鹿参考人には、本日は大変御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)     —————————————
  288. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) この際、分科会に関する件についてお諮りをいたします。  本件に関する理事会における協議決定事項について御報告をいたします。  分科会開会の日数は、明二十九日から四月一日までの四日間とすること、分科会の数は五個とし、その所管事項、分科担当委員数及び各会派への割り当ては、お手元に配付いたしました資料のとおりとすること、分科担当委員の選任並びにその辞任の許可及び補欠選任については先例により委員長に一任すること、分科会への参考人の出席についてはその取り扱いを委員長に一任すること、以上でございます。  右、理事会決定のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  289. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  明日は午後一時から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後五時二十八分散会