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1978-03-24 第84回国会 参議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十四日(金曜日)    午後一時五十七分開会     ―――――――――――――  三月二十三日     辞任         補欠選任      大木 正吾君     対馬 孝且君      赤桐  操君     粕谷 照美君  三月二十四日     辞任         補欠選任      勝又 武一君    目黒今朝次郎君      矢原 秀男君     太田 淳夫君      相沢 武彦君     中野  明君      渡部 通子君     峯山 昭範君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         鍋島 直紹君     理 事                 戸塚 進也君                 内藤誉三郎君                 中村 太郎君                 宮田  輝君                 竹田 四郎君                 吉田忠三郎君                 多田 省吾君                 内藤  功君                 栗林 卓司君     委 員                 浅野  拡君                 岩動 道行君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 小澤 太郎君                 亀井 久興君                 亀長 友義君                 熊谷  弘君                 下条進一郎君                 田代由紀男君                 夏目 忠雄君                 成相 善十君                 林  ゆう君                 真鍋 賢二君                 三善 信二君                 山本 富雄君                 粕谷 照美君                 志苫  裕君                 高杉 廸忠君                 対馬 孝且君                 野田  哲君                目黒今朝次郎君                 安恒 良一君                 太田 淳夫君                 中野  明君                 峯山 昭範君                 矢追 秀彦君                 山中 郁子君                 渡辺  武君                 井上  計君                 市川 房枝君                 野末 陳平君    国務大臣        法 務 大 臣  瀬戸山三男君        外 務 大 臣  園田  直君        大 蔵 大 臣  村山 達雄君        文 部 大 臣  砂田 重民君        厚 生 大 臣  小沢 辰男君        農 林 大 臣  中川 一郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  福永 健司君        郵 政 大 臣  服部 安司君        労 働 大 臣  藤井 勝志君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (国土庁長官)  櫻内 義雄君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      加藤 武徳君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 安倍晋太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)      稻村左近四郎君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       宮澤 喜一君    政府委員        人事院総裁    藤井 貞夫君        内閣総理大臣官        房交通安全対策        室長       三島  孟君        総理府人事局長  秋富 公正君        公正取引委員会        委員長      橋口  收君        公正取引委員会        事務局経済部長  妹尾  明君        公正取引委員会        事務局取引部長  長谷川 古君        警察庁刑事局長  鈴木 貞敏君        警察庁刑事局保        安部長      森永正比古君        防衛施設庁長官  亘理  彰君        防衛施設庁総務        部長       奥山 正也君        経済企画庁調整        局長       宮崎  勇君        経済企画庁国民        生活局長     井川  博君        経済企画庁物価        局長       藤井 直樹君        経済企画庁総合        計画局長     喜多村治雄君        法務省民事局長  香川 保一君        法務省刑事局長  伊藤 榮樹君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省条約局長  大森 誠一君        大蔵省主計局長  長岡  實君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  田中  敬君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        大蔵省国際金融        局長       旦  弘昌君        国税庁長官    磯邊 律男君        文部大臣官房会        計課長      西崎 清久君        文部省初等中等        教育局長     諸澤 正道君        文部省社会教育        局長       望月哲太郎君        文部省体育局長  柳川 覺治君        文部省管理局長  三角 哲生君        厚生省環境衛生        局水道環境部長  国川 建二君        厚生省医務局長  佐分利輝彦君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        農林省農林経済        局長       今村 宣夫君        農林省農蚕園芸        局長       野崎 博之君        通商産業大臣官        房審議官     山口 和男君        通商産業省通商        政策局長     矢野俊比古君        通商産業省貿易        局長       西山敬次郎君        通商産業省産業        政策局長     濃野  滋君        通商産業省基礎        産業局長     天谷 直弘君        通商産業省機械        情報産業局長   森山 信吾君        通商産業省生活        産業局長     藤原 一郎君        工業技術院長   窪田 雅男君        中小企業庁長官  岸田 文武君        運輸大臣官房審        議官       真島  健君        運輸省船舶局長  謝敷 宗登君        運輸省鉄道監督        局長       住田 正二君        運輸省自動車局        長        中村 四郎君        郵政大臣官房長  河野  弘君        郵政省貯金局長  高仲  優君        郵政省電波監理        局長       平野 正雄君        労働省労政局長  北川 俊夫君        労働省労働基準        局長       桑原 敬一君        労働省職業安定        局長       細野  正君        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省計画局長  大富  宏君        建設省都市局長  小林 幸雄君        建設省道路局長  浅井新一郎君        自治大臣官房審        議官       砂子田 隆君        自治大臣官房審        議官       福島  深君        自治省税務局長  森岡  敞君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   岡垣  勲君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        外務省アジア局        北東アジア課長  佐藤 嘉恭君    参考人        日本銀行理事   田代 一正君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和五十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ―――――――――――――
  2. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。     ―――――――――――――
  3. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  昭和五十三年度総予算案審査のため、本日の委員会日本銀行理事田代一正君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認めます。  なお、出席時刻等については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  6. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) この際、去る二十日留保いたしました安恒良一君の一般質疑を行います。安恒君。
  7. 安恒良一

    安恒良一君 時間がございませんから、もう細かい数字はのけまして、まず運輸大臣に御質問したいんですが、私は、この前、国税地方税について、国と公営私鉄バスの違いについていろいろ質問いたしました。  そこでお聞きしたいんですが、運輸省としては、国営、公営と全く同様とはいかないが、公共性の高い部門は減免に努力をしている、こういうことが言われておりますが、この五十三年度税制改正に当たって、運輸省として国税地方税努力をされた点、それがどの程度認められたか、こういうことについて明らかにしていただきたいと思います。
  8. 福永健司

    国務大臣福永健司君) いまお話しの国鉄の場合と、あるいは民営鉄道事業ないし民営バス事業とは、おのずから若干異なるものがございますが、しかし、ともに高度の公共性を有しておるものでございますだけに、それなりの対処が必要かと思いますが、民営鉄道バス公共輸送機関としての公共性及び重要性にかんがみまして、従来から、事業所税自動車関係諸税等について課税軽減措置等が講じられてきたことであり、今後も、その方針によって進めたいと存じます。  なお、五十三年度についての実際的数字等につきましては、いま事務当局から答えさせることにいたします。
  9. 真島健

    政府委員真島健君) お答えいたします。  五十三年度の税制改正におきまして、バス民営鉄道について私ども要望と、それから実現をした項目について申し上げます。  バスにつきましては、バス事業の用に供する固定資産税軽減、それから営業用バス自動車税軽減、それから軽油引取税にかかわります営利区分存続、この三点を要望いたしました。最後に申し上げました営利区分存続については要望が入れられております。  民営鉄道につきましては、大体固定資産税関係でございますが、駅前広場にかかわる固定資産税非課税の問題、それから鉄軌道トンネルに対する固定資産税非課税区域追加の問題、もう一つは長編成化工事にかかわる構築物に対する固定資産税軽減、こんなものが主でございまして、このうち二番目に申し上げましたトンネル固定資産税非課税区域追加だけが実現をいたしました。  以上でございます。
  10. 安恒良一

    安恒良一君 大蔵大臣自治大臣にお伺いいたします。  私鉄バス産業における諸税の中で、公共交通部門にかかわる部分については、国税地方税とも、いわゆる国鉄公営などと同じ扱いをしていただいたらどうかと、このように考えていますが、両大臣の御見解を賜りたいと思います。
  11. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 政府委員から、実務的な話でございますから答弁させます。
  12. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) まず、国税について御説明さしていただきます。  安恒委員よく御承知のとおり、国税では、法人税におきましては、国、地方団体課税しないということになっておりますので、地方営の場合も課税にならないという差異がございますが、これは法人税法の考え方としてやむを得ないところではなかろうか。間接諸税につきましては、消費課税は国の場合、地方の場合と民営の場合で差別はございません。ただ、印紙税登録免許税につきましては、国、地方団体あるいは地方営の場合には非課税になるけれども民営では非課税にならないという差はございますが、これは印紙税はやはり文書の作成者納税義務者とするという角度からそういう規定になっておるわけでございますし、登録免許税は、国、地方団体が自己のためにする登記は課税しないということで、やはり同様に民営の場合とは差が生ぜざるを得ないのではないか、税の性格上やむを得ないことではないかというふうに考えております。
  13. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 地方税は、その税目によりまして、おのおの対処いたします処置が異なっておりますので、詳細にわたりましては政府委員から答弁することにさせたいと思います。
  14. 森岡敞

    政府委員森岡敞君) 自動車取得税及び軽油引取税という間接税につきましては、道路損傷負担という税の性格も持っておる税でございますので、公営国鉄民営、全く同じ扱いになっております。  なお、自動車税につきましては、公営バス非課税になっておりますが、国鉄民営課税であります。これは国、地方公共団体人的非課税にするという直接税に関する基本的なたてまえがありますので、そういう措置がとられておる次第でございます。  なお、住民税事業税その他のいわゆる直接税につきましては、公営はいま申しました人的非課税ということで地方公共団体非課税にいたしておりますので、非課税に相なります。なお、国鉄につきましては、公共法人としての性格非課税取り扱いになっておりますが、民営バスにつきましては、法人性格が異なりますので、課税という扱いになっておるわけでございます。
  15. 安恒良一

    安恒良一君 もう時間がありませんから、現状がどうなっているかということを聞いたんじゃなくて、そこで私はわざと大臣を指名したんですが、公共交通にかかわる部面については同じような扱いをしたらどうだろうかと、こういうことをお聞きしたのであって、いま現状がどうなっているかというのは知っているんですよ。
  16. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いわゆる公共公益と申しましても、いま申しましたように税の体系はそういうふうにできていないわけでございまして、所得課税間接税あるいは流通税という形でできているわけでございますから、現行の税制体系の中でどういう取り扱いになっておるかということを申し上げたわけでございます。
  17. 安恒良一

    安恒良一君 なっているかじゃなくて、私がお聞きしたのは、そういう取り扱いになっているんだが、いわゆる公共交通輸送部門にかかる部面について、そういう取り扱いをしたらどうかと、こういうことでありまして、これももうこれより以上問答していますと時間がありませんから、次は労働大臣にお聞きをします。  昨年の十二月の時点とことしの三月の上旬の時点で、私鉄バス賃金不払いの額、それから人員削減状況についてひとつ御説明をお願いしたいと思います。
  18. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 昭和五十二年の四月から九月までの間でございますが、労働基準監督機関から、新たに把握した鉄道軌道業及び道路旅客運送業における賃金不払い事件は、件数で八十四件、対象労働者数で約九百人、金額にいたしまして一億五千六百万円でございます。
  19. 安恒良一

    安恒良一君 私がお聞きしましたのは、昨年の十二月、それからことしの三月の時点、現在ですね、どれだけの賃金不払い総額があるのか、対象人員があるのか、こういうことを聞いたわけです。
  20. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 具体的な実情のお尋ねでございますから、政府委員をして答弁させます。
  21. 桑原敬一

    政府委員桑原敬一君) お答えいたします。  ちょっと区切りが先生の御質問と合いませんけれども、最近の六カ月ごとの数字を申し上げたいと思いますけれども、五十一年の十月から五十二年の三月の間の六カ月間の新規に発生いたしました件数対象労働者数金額を申し上げます。百六十六件で二千三百五十一人、金額といたしまして三億八千百二十一万円。それから五十二年の四月から五十二年の九月までの間でございますが、件数として八十四件、対象労働者数で八百九十六人、額といたしましては、先ほど大臣が申し上げました一億五千五百六十五万円でございます。ここまでが一番新しい数字でございます。
  22. 安恒良一

    安恒良一君 私が十二月を聞いたのは年末一時金があるからです。そこで私から言いますと、十二月の時点で五社、三十八億七千五百万円の不払いがあるわけです。  ですから、そこで私はお聞きをしたいんですが、このような私鉄バス労働者賃金不払い、それから雇用不安の解消のために、具体的などういう対策労働大臣運輸大臣としてお持ちなのかをお聞かせを願いたいと思います。
  23. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 賃金不払いは、労働者やその家族にとりまして直接大変に困る事態を引き起こすわけでございますから、労働省といたしましては、この事態が生じないように事案の早期把握と、そして監督指導実施に努めて、賃金不払いを起こさない、万一そのような事態を起こしておる企業が発生いたしましたら、厳重にその不払いを解消するように追及をしていきたい。特にまた、この問題は、地方公共団体あるいは運輸省とも、バス事業は特に事業性格からいいまして公共性が強いわけでございますから、関係の深いそれらの機関とも密接な連絡をとって対処したい、このように考えております。
  24. 福永健司

    国務大臣福永健司君) お話の点は、オイルショックの影響を強く受けました四十九年あたりよりは若干よくなってきておりますが、なお相当額の遅欠配を生じているということにかんがみまして、運輸省としては、運輸事業振興助成交付金の一部を、日本バス協会からの短期融資事業に充てるなどの対策を講ずるとともに、金融機関からの融資円滑化等について側面から働きかける等の努力をしているところでございますが、企業の自主的な再建努力等も前提としつつ、こういう不払い等事態が生じないよう、関係方面とも連絡を密にしてできるだけのことをいたしたいと考えております。
  25. 安恒良一

    安恒良一君 公共交通労働者賃金労働条件確保は社会的に保障されるべきだと思いますが、労働大臣、この点はどうでしょうか。
  26. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のとおりと私は考えております。
  27. 安恒良一

    安恒良一君 それがためには、ILO内陸運輸労働委員会で、輸送調整から生ずる労働問題に関する決議三十七号がございますが、これを国内法に速やかに制定をする必要があると思いますが、この点は労働大臣どうでしょうか。
  28. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 安恒君、時間が来ております。簡単に願います。
  29. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘ILO内陸運輸労働委員会の第三十七号の決議は、政府賃金その他の労働条件決定し、またはそれらの決定影響を与える限りにおいて、運輸各種業種に従事する労働者労働条件を同一にするためあらゆる努力をしなければならない、こういうふうに規定をされておるわけでございます。ただ、わが国の場合は、やはり最低労働条件最低賃金法という、こういう一つの法律がございますけれども、それ以外の賃金決定具体的解決の内容につきましては、国が基準を定める、こういうふうなことは適当ではなく、あくまで労使の自主的決定という、こういう線でいきまして、わが国においては、指摘されたILO三十七号の政府というのは、いわゆる第三者機関である労働委員会、中央ないしは地方労働委員会によって、もしも話し合いがつかない場合には調停をしてもらう、こういう線に解釈をいたしておるわけでございます。
  30. 安恒良一

    安恒良一君 いまの問題は後であれします。  そこで、最後質問ですが、新交通システム、これはコンピューター機能を中軸に開発されていると聞きますが、建設省、通産省、運輸省関係されているそうです。そこで、どういう都市において実施の予定なのか、それから既存の交通産業との関係をどうするのか、と同時に、安全面についてどうお考えになっているのかという関係大臣の御説明をお願いをしたいと思います。
  31. 福永健司

    国務大臣福永健司君) この交通システムは新しいものでございますが、昭和五十二年十二月に大阪市南港地区、それから神戸のポートアイランド地区において免特許を行っております。私どもの方は免許であり、他省の方で特許という措置がとられているわけでありますが、そこで、これに基づいて整備が進められておりますが、新しく埋め立て造成された港湾地域で、他の公共交通機関が全くないということを勘案して新交通システム免許等を行ったものであります。  ただいま他の交通手段等との関連においてというお話でございますが、ただいまのところは、私どもとしてはそういう競合という事情を特にいろいろ考えているというわけではございませんが、人口がふえてくると、そういう問題が確かに起こってくるだろうと思います。実情に応じて、その種のことにつきましては今後気をつけてまいりたいと思います。
  32. 安恒良一

    安恒良一君 安全面も聞いたんです、安全面
  33. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 安全面から申しまして、われわれはこの新交通システムが著しく安全を害するというようには考えていないわけでございますが、しかし、これからいよいよやってみますと、いろんな問題が起こってくるかもしれません。よく気をつけてまいりたいと考えます。
  34. 安恒良一

    安恒良一君 それでは、この問題もまだありますが、時間がありませんから、最後要望して終わりたいと思います。  私は、二日間にわたって各大臣にいろいろ私鉄バスを取り巻く問題について御説明をいただきました。率直に言って、構造的諸条件、過疎過密、渋滞、それから旅客の喪失、経営困難、こういう問題については抜本的な対策が必要だと思います。たとえば一つの例を言いますならば、諸税の免税を含む強力な財政措置、車の総量規制による公共交通の積極的な推進などが必要であるというふうに考えます。  そこで、わが党は、これまでこれらの問題を解決するために地方交通確保四法案を出しまして、国会における設定の努力を行ってまいりましたが、政府・自民党の御賛成を得ることがなく、今日まで実現を見ていないことを大変残念に思っています。でございますから、どうか、置かれた状況についてはこの中で御理解をいただいたと思いますから、真に民主的な地方交通を確保するための具体的な対策について政府が前向きに取り組まれまして、できることならば政府提案の形においてこういう問題が解決をすることを心から望んで終わりたいと思います。
  35. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で安恒君の一般質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  36. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、前回に引き続き山中郁子君の一般質疑を行います。山中君。
  37. 山中郁子

    ○山中郁子君 一昨日の予算委員会で、私の追及で安保条約下二十五年間の米軍による事故、犯罪が十四万六千三百九十三件にも上り、日本人死者が九百五十六名に達すること、しかも、この中には返還前の沖繩の問題は入っておりません。このうち一次裁判権が米側にあるとされている公務上のものだけでも三万六千七十五件、死者四百八十六名であることが明らかになりました。  地位協定の十七条では、日本は米軍に裁判権の放棄を要求できることになっています。重大な問題は、それにもかかわらず、日本政府は一度も裁判権放棄を要請せず、その結果アメリカでもただの一度も裁判にかけられた者はなかったということです。処理結果の通知さえ来ていませんでした。法務大臣は意外だとおっしゃいましたけれども、それで済まされることではありません。死んだ方たちも、遺族も、けがをした人も、財産を奪われた人もすべて泣き寝入りではありませんか。これで日本に自主独立の主権があると言えますか。一度も裁判権の放棄要請をしなかったのは一体なぜなのか、当然するべきではなかったかと思いますが、この重大な政治責任をどう感じておられるか、これは法務大臣と、そして外務大臣からもしっかりとした御返事をいただきたいと思います。
  38. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 過去において、米軍関係の事故についての状況はおっしゃるとおりでございます。この前も申し上げましたように、私はその経過を見てまことに意外に思っております。でありますから、今後は、そういうことのないように米国とよく話し合いを進めたい、かように考えております。
  39. 園田直

    国務大臣(園田直君) 日本は安保体制をとっているわけでありますが、その安保体制をどうやるかという、われわれの立場から言っても今後問題になるのは基地問題でございます。その基地問題で日本の国民が納得しないようなことをやっておると、これはわれわれの立場から言うと安保体制がうまくいかない、こういう観点から言っても、あるいは日本の独立、自主性という点から言っても、もう少し厳重にやるべきだったと思います。今後は、十分その点を腹に置きまして、必要な折衝をしたいと考えております。
  40. 山中郁子

    ○山中郁子君 いままでに第一次裁判権の放棄要請を当然するべきであったとお尋ねしておりますが、その点についての御見解を伺います、外務大臣
  41. 園田直

    国務大臣(園田直君) これは過去のことでございますから、それぞれの立場は詳細にわかりませんけれども、やはり厳重にこういうものをやっていくべきであると考えております。
  42. 山中郁子

    ○山中郁子君 今回の悲惨なファントム事故の捜査についてですけれども、一昨日、加藤国家公安委員長は、日本独自の捜査は米軍事故なので押収、検索、差し押さえ等の制約があると答弁されています。こんな弱腰では告訴までされているのに徹底的捜査が期待できないということははっきりしています。  地位協定十七条六項(a)では「日本国の当局及び合衆国の軍当局は、犯罪についてのすべての必要な捜査の実施並びに証拠の収集及び提出について、相互に援助しなければならない。」となっています。これから見ても、関係者から日本の捜査官が直接事情聴取はできるはずだし、直接の事故原因とされているライナーの組み立て場所、日時、だれが組み立てたのか、米国に明らかにさせることは当然できることであると考えておりますが、国家公安委員長が米軍なので制約があると言う以上、当然、政府は外交交渉を行って日本の捜査権の十分な行使による徹底的捜査を実現させるべきだと考えますが、この点についても外務大臣の所見を承りたいと思います。
  43. 園田直

    国務大臣(園田直君) ただいま御承知のとおりに捜査中でございまするから、捜査の結果によってその必要があるという要求があれば、米軍に折衝をするつもりでございます。
  44. 山中郁子

    ○山中郁子君 あいまいになると同じことが繰り返されるということです。徹底した捜査を行えば、犯罪容疑は必ず実証できます。パイロットやエンジン組み立て段階のミス、整備士、管制関係者などの過失が何もなかったなどとはとても言えません。  法務大臣にお尋ねいたしますが、今回のファントムの墜落事故については、アメリカに裁判権の放棄を要請することをここではっきりとお約束をしていただきたい。犯罪が立証されれば、アメリカに放棄要請をされますね。
  45. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 地位協定によりますと、重大な過失があり、また犯罪がありと認める場合に、重要な事態の際には裁判権の放棄を要求することができると、かように約束ができております。そういう事態に該当するということが判明いたしますと、要求するにやぶさかではありません。
  46. 山中郁子

    ○山中郁子君 問題は、だから犯罪容疑を立証するための捜査にかかってくるわけです。それなのに、一昨日も明らかになったように、パイロットや整備士、横田管制関係者、エンジン組み立て者などから直接事情聴取をしていません。すでに強調しておりますように、これをしない限り、犯罪を立証するということは大変困難です。したがって裁判権放棄も要請できなくなる、犯人も容疑者もいままでと同じように野放しにしてしまうという結果は十分考えられます。  安保条約というのは、一体、そういうものなのか、二十五年間そうだとするならば国民をだましてきたことになります。被害者、国民は絶対にこれを容認することができません。決していままでのようにあいまいにしないで、直接事情聴取を含めて、徹底的に捜査をする、このことを重ねて国家公安委員長とそして外務大臣というよりも政府の代表者として、お約束をいただきたいと思います。
  47. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) いろいろな制約のあることは前回申したとおりでございますけれども、さような制約を克服しながら捜査を継続してまいりたいと考えております。
  48. 園田直

    国務大臣(園田直君) 捜査当局で捜査に障害があるような事態になり、その要請があれば、当然、米国には厳重に交渉いたします。犯罪の立証ができれば、裁判権の要求をいたします。
  49. 山中郁子

    ○山中郁子君 犯罪の立証のためには、どうしても事情聴取が必要なんだということはもうおわかりになっていることですし、国民が見守っているところです。ぜひともこれ以上国民をだますということのないように強く重ねて指摘をしておきます。  次に、私は、繊維の問題に入りたいと思います。  この問題に関しましては、すでに国会でも多く議論がされてきました。名古屋で開かれました参議院の予算委員会中部地方公聴会でも重要なテーマになりました。私も参加をいたしました。関係者の切実な要求、実態が披瀝をされました。また、そのほかにも愛知県や静岡県、山梨県あるいは奄美大島などでの産地を調査する中で大変たくさんな問題が出てまいりましたけれども、特に韓国からの輸入問題、そして韓国への日本の企業からの投資問題、これが大事になってきていますが、ぜひとも政府にもう一つしっかりしたこの問題についての対策の約束をいただかなければならないということを痛感しております。  初めにお尋ねいたしますが、韓国からの繊維の輸入総額が一九七一年から七六年までの比較でどのように推移してきたか、七六年では日本の繊維総輸入額の何%に当たっているのか、これをお示しいただきたいと思います。通産省からお示しいただきたいと思います。
  50. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) お答え申し上げます。  韓国からの繊維の輸入状況でございますが、昭和四十七年合計で一億一千八百八十一万ドルでございます。四十八年が四億五千四百二十一万ドルでございます。四十九年が五億二千七百八十六万ドル、五十年が四億七百八十二万ドル、五十一年が六億六千三百七十七万ドル、五十二年が六億五千万ドルほどでちょっと減っております。
  51. 山中郁子

    ○山中郁子君 何%になるか、七六年で。
  52. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) 総額が七六年におきましては約十六億ドル程度でございますから、三分の一弱ぐらいかと思います。
  53. 山中郁子

    ○山中郁子君 時間の関係で、細かい数字を申し上げませんが、四〇%に達するという資料は政府の資料からも算出できます。  で、続けてお伺いしますが、七一年と七六年を比較すると、伸び率はどのくらいになっておりますでしょうか。
  54. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) 七六年、七七年を比較いたしますと……
  55. 山中郁子

    ○山中郁子君 七一年から七六年。
  56. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) ちょっとお待ちくださいませ。――ちょっと手元に七二年からしかございませんが、七二年から七六年にかけましては約五倍になっております。
  57. 山中郁子

    ○山中郁子君 七一年からの比較を要求してございましたけれども、七一年から比較しますと七・二倍という莫大な急増をしているという現状がはっきりしております。  で、こうした韓国からの繊維輸入の急増の背景には、日本の資本の韓国への投下があるわけですけれども、この点、大蔵省にお尋ねいたしますが、日本からの韓国繊維産業に対する投資許可件数、投資額を一九七一年以降現在まで年別に示していただきたい。トータルでは何件で幾らになるのか、あわせてお示しをいただきたい。
  58. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 韓国向けの繊維産業に対する直接投資の許可実績でございますが、五十二年の三月末までの累計で九十八件、一億六千三百万ドルとなっております。  年度別で申し上げますと、四十六年度に八件四百万ドル、四十七年度二十件八千五百万ドル、四十八年度四十六件四千八百万ドル、四十九年度五件千二百万ドル、五十年度二件二百万ドル、五十一年度二件六百万ドルということになっております。
  59. 山中郁子

    ○山中郁子君 トータル。
  60. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) トータルでは、先ほど申し上げましたように、九十八件、一億六千三百万ドルでございます。
  61. 山中郁子

    ○山中郁子君 相当な量ですけれども、通産大臣にお尋ねしたいんですけれども、日本からの進出企業が韓国の繊維産業の中でどのようなウエートを占めているというふうに把握されていらっしゃるか。具体的に言いますと、一つは合弁企業、日本資本の企業を含めてですね、日系企業は韓国の繊維産業の資本金総額のうちでどのくらいの資本金の比率を占めているか、把握されていますでしょうか。
  62. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) その統計につきましては局長から答弁させます。
  63. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) お答え申し上げます。  韓国の繊維企業全体の状況というものは正確に把握できておりません。したがいまして、その進出企業とのバランスというものにつきまして、正確な数字を申し上げるわけにいかないのは残念でございます。
  64. 山中郁子

    ○山中郁子君 では通産省、こういう点はどうでしょうか、日系企業が韓国の繊維の総輸出高の中に占める製品の輸出高の比率、あるいは韓国の繊維労働者総数のうちに占める日系企業で働く労働者数の比率、こうした点はいかがでしょう。
  65. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) これも推定で恐縮でございますが、韓国の全体の数字が必ずしも正確でないという点もございまして、われわれの方で一応の推計ということでやってみますと、韓国の繊維産業の従業員数につきまして、韓国の繊維団体連合会というところの統計がございます。その統計によりますと、同連合会所属の繊維企業の従業員数というのは約五十九万名ばかりのようでございます。で一方、韓国へのわが国の進出企業の占めます比率を、これもグローバルとの比率で計算をいたしまして、あくまでも推定でございますが、推定いたしますと約四万名ぐらいということになりますので、その比率から申し上げますと、大体六・七%という計算が出るわけでございますが、あくまでもこれは推定の値でございます。
  66. 山中郁子

    ○山中郁子君 とてもそんなものじゃないわけなんですけれども、いままでたびたびその輸出についてのしかるべき規制はしてきているんだというお答えがあるんですけれども、そういう実態もわからないで私は行政指導や何かはできないと思います。  で、これは韓国の東洋会社年鑑からの数字を私の方で整理をしたんですけれども、それによりますと、韓国繊維の全企業四百五十七社のうち日系企業は六十八社で一五%、資本金総額では三七・八%を占めています。で特に化合繊業界進出著しいんですけれども、これは二十六社のうち十社ある。で三八%、資本金では六一%に及んでいます。しかも大企業、このうちの資本金三十億ウォン以上ですね、この十社のうち六社までが東レとか旭化成、三井物産、帝人など日本の大企業との合弁会社です。ここの十社で従業員数は韓国の化合繊業界労働者の二七%を占める、こういう数字が出てまいります。  このようにして日系企業が事実上韓国繊維産業の中心になっているということは疑いもない事実ですけれども、私はまず直ちにこうした実態を政府の責任で調査すべきであると思いますが、通産大臣からお約束を承りたいと思います。
  67. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) これまでもできるだけ調査をしておるわけでございますが、相手国の事情が刻々変わっておりまして、正確な数字が統計上手元にないということは先ほど局長から申し上げたとおりでございますが、なお努力を続けます。
  68. 山中郁子

    ○山中郁子君 進出の状況はいま申し上げたとおりですけれども、なぜ日本の企業がこうも韓国の繊維業界へ進出するのか、大規模に。企業としてどういうふうなところがメリットだと思ってしているのか、政府の見解を伺いたいと思います。通産省でたしかお調べになったデータがおありになると思いますが。
  69. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) 私どもの方で調査いたしましたところのアンケート調査の結果によりますと、韓国の市場性というものに対する期待感と、それから冬はり労働事情、それから投資環境の安全性という三点ぐらいにしぼられるかと思います。
  70. 山中郁子

    ○山中郁子君 余りごまかしちゃいけないんでね、おたくの方で調査した「我が国企業の海外事業活動」、この中にちゃんと出ているんですよ。圧倒的にこれは労働力事情がいいからということです。市場が有力だなんていうのはないんですよ。そのことははっきりしているんです、余りいいかげんな答弁をしないでいただきたい。  そして、そこではっきりしてくるのは、韓国の安い労働力をねらって海外進出をしているということだと思いますが、この点はお認めになりますか。
  71. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) いまお示しのように、アンケート調査の結果によりますと、その辺に一番ウエートがあるということは認められるかと思います。
  72. 山中郁子

    ○山中郁子君 最近、韓国の繊維産業に働く婦人労働者が、労働条件の改善のためにハンストをやっているとか、あるいは日本に対してアピールをよこしているとか問題がありますけれども、外務省に、まず、こうした合弁企業の最近の労働問題の実態についてどのようにつかんでおられるか、見解をお伺いいたします。
  73. 佐藤嘉恭

    説明員(佐藤嘉恭君) お答え申し上げます。  外務省としては、外国である韓国における個々の企業、そういった個々の企業の労使の問題に関しまして詳しいことを知り得る立場にはないわけでございますが、最近、報道によりますと、邦林紡績というような企業におきまして、先生ただいま御指摘のような事態が発生しているということが出ておることを私どもも承知しておるわけでございます。  私どもの在韓大使館からの報告によりますと、いわゆる先生のいま御指摘になりました事件と申しますのは、労働者側が工場におけるセマウル運動の一環として、朝晩三十分ないし一時間、作業場の整理、清掃、そういったことのために手当もなくて超過労働をしていた、そういう問題を取り上げたというふうに承知しておるわけでございます。この事件につきましては、在韓大使館からの報告によりますれば、韓国の労働庁が仲に入り事実関係を調査し、企業者側との間に円満に解決を見ている、こういうふうに承知しておるわけでございます。
  74. 山中郁子

    ○山中郁子君 その邦林紡績の問題ですけれども、韓国の婦人から日本国民特に日本女性に送るということでアピールが届いています。アピールの全文、たくさん切実なことが書いてありますけれども、ごく一部を引用いたしますと、「日本勤労者の最低賃金の五分の一という安い賃金で働きながら、一日十時間以上の労働を強いられています。作業場で働いている間にはお手洗いに行く暇もなく、御飯を食べる暇もないので食事を抜いてしまうことも始終です。」、これはまさに私は日本におけるかつての女工哀史の韓国版だと言っても言い過ぎではないと思います。  労働大臣にお尋ねいたしますが、日本の企業、合弁企業がこうした行動を韓国でとって、そしてそれが国際問題ともなっていると、この点についてはどのようにお考えになるかお伺いをいたします。
  75. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 進出企業を含めまして、労働問題はその企業が所属する政府の責任であると思います。したがって、そのようなトラブルが起こるということはまことに遺憾なことでございまして、われわれ労働省といたしましては、日本労働協会というのが、これがこのような問題を取り扱う窓口でございまして、その日本労働協会を通じまして、そしていろいろその国の労働慣行なりまた日本の労働慣行というものをよく周知徹底をして、トラブルの起こらないような指導をいたしたい、このように考えておるわけでございます。
  76. 山中郁子

    ○山中郁子君 それで、一方では国内の繊維の大手企業は大量の人減らし、首切りが行われて雇用不安を増大させています。日本の婦人労働者、特に若い方たちが学校へ行くということで働いているところから、人減らしその他でもって学校へ行かれなくなるということが社会問題化もしているわけです。  重ねて労働大臣にお尋ねいたしますけれども、福田総理大臣は施政方針の中でも、雇用安定対策どもきめ細かくかつ強力に推し進めると延べておられますが、こういう点についての抜本的な対策をどのようにとられるのか、見解をお示しいただきたいと思います。
  77. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) われわれとしては、親企業を通じて適正な行政指導をするということでございまして、直接地域がわが日本の領土でございませんから隔靴掻痒の感はあろうかと思いますけれども、できるだけやはり正常な公正な労使関係が樹立されるように、側面的に配慮しなきゃならぬと、このように思います。
  78. 山中郁子

    ○山中郁子君 私が申し上げているのは、一方でそうした進出を図りながら、国内では人減らしその他で雇用不安を増大させているということです。東レ、帝人、東洋紡を見ますと、七一年から七七年を比較して、海外では五万六千八百三十四名がふえて、逆に国内では二万九千六百九十二名が減っているという、そういう状況なんですね。国内の雇用不安、海外の進出とあわせて、関連してどのような抜本的な対策を考えておられるか、お伺いをしております。
  79. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 私は、まず考え方を二つに分けて御答弁いたしたいと思うのでありますが、一般的な受けとめ方としては、やはり資本の交流、貿易の自由化ということによって世界で全体の経済が発展をし、そしてまたそれらのいわば発展途上国の経済も成長していく、そういうことによって結局はみんなが、たらいの水じゃございませんけれども、戻ってくるといいますか、全体が繁栄してくる、こういうことでございまして、実は、私は労働大臣になる前、いまの御指摘の問題は、私自身もいろいろ配慮した経験がございますが、それで日本が全然そういう方向へ出ないとすれば一体そのままになるかというと、そういうものでは私はないと思う。現在、いわゆる構造不況業種と言われるのはいわゆる労働集約型産業、こういったものはやはりわれわれはいわゆる知識集約型産業の方向へ製造業も漸進をする。かつてわれわれが通ってきた道を発展途上国がたどらんとしている、こういうふうなことでございますから、われわれはやはり大局的な考え方を持ちながら、具体的には構造不況要因によって離職者が出る場合は別途雇用対策を打ち立てておる、雇用安定資金制度であるとかあるいは特定不況業種離職者臨時措置法によって対処する、こういうことによって私は局部的な問題の解決、大局的には世界の大勢あるいは経済の大勢に従うという、こういうことで対処しなければならぬのではないか、このように思うわけでございます。
  80. 山中郁子

    ○山中郁子君 さらにしかるべきところで詰めたいと思いますが、次の問題としてもう一つ大きな点は、日本の大企業の海外にある子会社から韓国の繊維産業に莫大な投資が行われているという、こういう問題です。この実態を政府は把握しておられるかどうか。外務省、通産省、ぞれそれ御答弁をいただきたいと思います。
  81. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) お答え申し上げます。  わが国の海外進出企業から他の第三国への投資というものにつきましては、それが本来その進出した場所での企業でございますので、私どもとしてはこれについて特段の統計その他を持っておりません。
  82. 山中郁子

    ○山中郁子君 そういうことでは行政指導とかでそうした問題の改善はできないと、私はどうしても思います。  で、お手元に資料をお配りしてございますけれども、調査した結果ですね、七五年、七六年の二年間だけでも、丸紅、伊藤忠、そうした商社から総額一億三千六百三十万五千ドルに上っている投資がされています。三百円として計算しますと四百八億円に上ります。こうしたことは、この資料は韓国外資導入審議委員会承認契約でもってはっきり出ますから、政府の責任で直ちに調査をしていただきたい。このことを通産大臣にお約束をいただきたいと思います。調査しようと思えばできますよ。
  83. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) 第三国間の投資活動の問題につきましては、それぞれその国の内部の問題でございまして、私どもとして、これの調査につきましては、場合によりましては内政干渉的な問題にもなりますので、余り強制的な調査ということは不可能だと思います。
  84. 山中郁子

    ○山中郁子君 強制的な調査でなくても、こうした資料でもって当たれば把握できるという道があるんです、そういうことを私は申し上げています。通産大臣、いかがでしょうか、お考えだけ伺えば結構です。
  85. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) できるだけ調査するようにいたします。
  86. 山中郁子

    ○山中郁子君 私は、問題は、初めに申し上げましたように、日本の企業からの投資ということだけでなくて、こうした海外からの投資も調査をするということと同時に、それを規制する措置を、何らかの形で抑えて問題を解決していく措置をとらなければいけないというふうに思います。海外だから海外だからとおっしゃるけれども、本社機能はちゃんと日本の本企業で、親会社でこうやって発揮されていることは理屈の上からも実態の上からも明らかなんです。ですから、調査だけでなくて、その規制も含めて、現在の日本の繊維産業を本当に保護し育成するという立場に立つならば、それが口先だけでないならば、そうしたいま私が申し上げたことも含めて、政府として努力をしていただきたい。そうしなければ、あなた方がおっしゃる日本の繊維産業、中小企業、地場産業を保護育成するというのは口先だけになってしまうと言われても仕方がないと思います。重ねて最後に通産大臣からその点についてのお約束をいただきたいと思います。
  87. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 山中君、時間でございます。
  88. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 第三国に出ていった企業がさらに投資活動をするということに対して、日本政府が規制できるのかどうか……
  89. 山中郁子

    ○山中郁子君 本社を通じての指導です。
  90. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) それはどうでしょうか。まあとにかく現状調査をいたしました上で判断をしたいと思います。
  91. 山中郁子

    ○山中郁子君 もう一つだけ。
  92. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 簡単に願います。
  93. 山中郁子

    ○山中郁子君 規制と言っては余りにストレートかもしれませんが、そうしましたら、調査の上、適切な本社を通じての行政指導、こうしたものでも最低できると思っておりますので、その点についてはお約束をいただきたいと思います。
  94. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) とにかく調査をいたしまして、その上で判断をいたします。
  95. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で山中君の一般質疑は終了をいたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  96. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、対馬孝且君一般質疑を行います。対馬君。
  97. 対馬孝且

    対馬孝且君 まず最初に、私は、当面する円高の急騰に伴って基本的な経済政策でございますあり方につきまして質問を申し上げます。  景気回復のためには七%成長、国際収支のためには経常収支六十億ドルの同時達成というのが基本的な姿勢であります。しかし、すでにロンドンのけさほどの新聞報道によりますと、二百三十円台を割るという結果に相なりました。したがいまして、この達成のための総合的な対策が今日の段階では必要である、こう判断をいたしますが、まず経済企画庁、関係大臣の考え方をお伺いします。
  98. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府は七%程度の経済成長を五十三年度に達成したいと考えておりまして、ただいま御審議をいただいております予算等々によりまして、財政が上半期まず始動をすることによって下半期に民間経済活動もある程度高まりを見せて七%の成長ということを考えておるわけでございます。  で、当面、ただいま御指摘のような円高というものが出てきたわけでございますが、これは確かに円が高くなること自身いろいろな意味でこの成長には問題になる要因でございますけれども、それと同じぐらい、安定をしないということが企業にとりましても商社にとりましてもマイナスの材料になるというふうに判断をしておりまして、日本政府としては、それに対処して、予算を御承認いただきましたならば、できるだけ早く重点的に何をどうすべきかということを対内的に早く決めておきたい、今週末にもそういうことを決めたいと考えておりますし、また対外的には、輸出についてもうすでに御承知のようにカラーテレビでございますとか鉄でございますとかいうものについては、実際上の国際的な約束、取り決めもできておりますし、またいわゆる輸出急増というようなことについては業界でもいろいろ考えておるというようなこともございます。輸入面では、その都度考えられる緊急輸入あるいは新しい輸入分野の開拓というようなことを繰り返しやっておるわけでございます。また、これは今後とも新しいものを追加してまいりたいと考えておるわけでございます。  日本政府としては、したがって内外にわたってできるだけのことをしつつあるというふうに私ども考えておりますが、当面、円高あるいはさらに将来に向かっての円高気配ということになりますと、いわゆるリーズ・アンド・ラグズを誘いますので、どうしても教科書に書いてあるように円が高くなれば輸入がふえて輸出が減ってというようなことにならずに、短期的にはむしろ逆の現象が出てくるというようなこともございます。われわれとして万全を尽くしておるつもりでございますから、基軸通貨国であるアメリカ自身もやはりその点は基軸通貨国としての責任というものを考えてもらわなければならない、と申しますか、あるいはそれより前に、むしろこのように通貨不安というものが続きますと投機の対象にもなるということで、それは結局日本や西ドイツにとってばかりでなくアメリカにとっても困ることだ、お互いに困ることだという認識というものに早くみんなが共通の認識を持つようになって、その上で、さてどういうことができるかというようなところへ行くべきではないだろうかということを考えますが、しかし、これはそれなりに関係者が、各国各国が共通の認識に立つというのには多少時間がかかる。これはやむを得ないと存じますが、そういうふうにいたしまして、われわれとしてはすべきことをすべてやらなければならないし、また、やりつつあると存じますが、基軸通貨国もそれなりの責任を考えてもらわなければならない、こういうふうに考えております。  で、全体として七%はどうなんだというお話でございましたが、私は、いろいろそういう好ましくない要因はございますけれども、いまとして七%の成長はまだ、これから年度が始まるのでございますから、これからの努力いかんで達成可能だと、現在そう思っております。  経常収支の六十億ドルということは、もともと上半期にそういう傾向が顕著になると考えておるのでございますが、ただいまのところはリーズ・アンド・ラグズのようなことでちょっと思うようにその点は傾向に出てまいりません。しかし、全体が落ちつきましたら、これもまずまず目標を達成していけるのではないかと、ただいまとしてはそう考えております。
  99. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 長期的な問題としましては、五十三年度予算で内需を拡大するということで財政措置を講じ、いま御審査を願っておるわけでございます。また、公定歩合の引き下げも金融面を通じましてさらに国内景気をよくし、それによりまして長期的な意味で日本の企業の行動を対内的に向けてくるということによりまして、長い目で見ますと国際収支は私はだんだんバランスのとれた方向にいくであろう、こう考えておるのございますが、当面、なかなか実際の経常収支の関係からいたしましてどうしても円高になりつつあるのでございまして、この辺が非常に心配されるわけでございます。通産当局におきましても、その点はいろいろ御苦心願っておるところでございます。  片やまた、通貨面におきましても、御承知のように先般緊急措置をとりました。これは本来から申しますと、日本の場合はやはり資本の自由化の方に向かうべき筋合いの問題でございますが、緊急避難としてとったんでございますけれども、何しろ基調が基調でございますから、なかなか思うに任かせぬのでございます。そしてまた、いま日本がとりましたような国内的な緊急避難的なことをやっているわけでございますけれども、やはり一面において円高ということは、日本にとりましてはほとんど九〇%がドル建てでございますから、やはりアメリカにおいても共通の認識を持ってもらって、そしてできる限りドル安にならないように努力をしていただきたいということで、あらゆる面を通じましていま接触し、そしてお願いしているところでございます。
  100. 対馬孝且

    対馬孝且君 通産大臣からひとつ。
  101. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) まず、貿易の関係でございますが、現在の状況にかんがみまして、五十三年度は円ベースあるいは数量ベース、これは正確に言えば少し違うのですけれども、現在の動きから言いますと大体同じ程度だと思っておりますが、この円ベース、数量ベースで大体横並びにいくようにいろいろと工夫しながら行政指導をしてまいりたいと思っております。ただ、やはり円高が平年度化いたしますので、その面でドル建てに換算をいたしますと若干金額はふえると思っております。
  102. 対馬孝且

    対馬孝且君 そこで、これは長官にひとつ明確にお答えを願いたいんでありますが、きょうの日経新聞にも出ていますが、マンスフィールド駐日大使が、二十三日、UPI通信との単独会見を行っております。この単独会見の中で、福田総理が五月のカーター大統領との会談の際には固定相場制の復帰を提案をする、こういう記事が載っかっているわけでありますが、このことは福田総理や内閣がそういう態度をお持ちになっているとすれば、どういうお考えでこれの腹をお決めになっているのか。これは果たしてこれからの景気、円高相場にプラスになるかマイナスになるか、どうお考えになっているのか、これをあわせてひとつ明快なお答えをお願いいたします。
  103. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 福田総理がそういうお考えを持っていらっしゃるということを私は承っておりません。  この委員会でございましたか、衆議院の予算委員会でございましたか、福田総理が本来理想の形から言えば固定相場というのがいい云々ということは言われたことがございますけれども、それはまあ一つの理想論を言われたのだと私は承っておりまして、私自身は、いまのような世界の情勢で固定相場というようなものが実現可能であるというふうには私は考えておりませんけれども、総理がどのように言われましたか、お考えでありますか、直接承ってはおりません。
  104. 対馬孝且

    対馬孝且君 これを見ますと、かなり自信のほどを示されたような記事になっておるわけでありますが、私はいまの変動相場制の段階で直ちに固定相場制になるとは思いませんけれども、これをやったら逆に諸外国はインフレが起きて、こっちが逆に締めつけられる、むしろ円の方が締めつけられる、こういう現象が、いまの時点ではそういう結果になるんじゃないかと、こういう心配をするものですから、なければいいんですが、なければないと答えてもらって結構ですが、あなた自身はそういうようにはならないというお答えですから結構です。  そこで、大蔵大臣にお伺いしますが、当面対策としまして、これも後から長官にはっきりお答え願いたいんでありますが、いわゆるスイス方式というのが最近考えられているわけですが、スイスでは大体為替相場に対しまして四〇%のつまり逆利子あるいは逆日歩、こういう方式を採用してかなり外国の投機を抑えてきている。こういう対策をとっているわけですが、ここらあたりがいま日本の段階では外貨準備高、短資流入、円建て外債の諸対策が講ぜられていますけれども、これを思い切って踏み切ってみてはどうか、こういうふうに考えるんですが、大蔵大臣いかがですか。
  105. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) わが国の世界に占めるいまの影響力から言いまして、なかなかスイス方式はとれないんだろうと思うのでございます。まあ本来緊急避難的にしか国際的には了解されないところでございます。すでにとりました先般の自由円預金の増加に伴う準備率を一〇〇%にし、それからなお五年一カ月未満の債券の取得、これを規制したわけでございます。その効果はすでにあらわれておりまして、いままで大体一日一億ドル見当で入ってきておりましたのが大体五百万ドルぐらいのところになっているわけでございますから、二十分の一くらいに減っているわけでございます。したがって、それはそれとして私はもう効果は出ておるんだろうと思うのでございます。  しかし、なかなか実勢が実勢でございますから、レートという問題はやはり実勢に従っていくということでございまして、投機的な資金の流入は前のような方法でいけるんじゃないか。逆日歩であるとか、全部有価証券の取得を禁止するというのは、日本の持っております国際経済から申しますと、これは大変な非難の的になることは明らかでございますから、そういうことはなかなかとれないであろうと思っております。
  106. 対馬孝且

    対馬孝且君 なぜこういう質問をするかと申しますと、これは日本の最高の経営者連盟の日経連の桜田会長でさえ、今日の円レートの段階は二百二十円台は来るだろうと予言をしているわけですね。あるいはアメリカのモルガン・トラストの段階でも大体そういうことが伝えられておる。  そうしますと、やっぱり問題は、私は率直にお聞きしたいんでありますが、もし七%成長、経常収支六十億が危ういと、こういう情勢のころ、夏場のころにはもう一回円の揺さぶりがくるのじゃないか、こういう想定のもとにやっぱり政府は対処すべきだと考えるんでありますが、この点、長官とひとつ大蔵大臣に再度お伺いします。
  107. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御審議願っております予算あるいは財投、税制等々、今回は、政府は相当力の入りますいわば需要喚起策と申しますか手段を持っておりますので、ちょっとやそっとのことで脅かされるというような状況ではないと私は思っておりますけれども、しかし、とめどもなく円というものの不安が続くということは、これはやはり好ましくない、成長にとりましても経常収支の黒字幅の縮小にとりましても阻害要因でございますから、やはりこういうことは何とか長く続かないように、国際的に何かを考えるべきではないかというふうに思っておるわけでございます。
  108. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 財政措置にしましても金融措置にしましても、財政は臨時異例の措置をとったわけでございますし、それから公定歩合の引き下げによりまして恐らく史上最低の金利ができ上がるわけでございます。この二つをてこにし、あるいはまた、いろんな民間設備の方もだんだん影響が及んでまいると思いますので、私は、長い目で来年度一年ということになりますと、効果はやはりだんだん出てくるだろうと思っておるのでございます。問題は、短期の問題なのでございまして、先ほど言ったようなことをやる以外にないであろう、このように思っております。
  109. 対馬孝且

    対馬孝且君 そこで、私は二百二十円台は好ましくないけれども、現実に二百二十九円になっているわけだ、今日の段階で。政府として二百二十円台に対応するという認識の中で、今日の段階でやっぱり緊急措置対策を講ずるべきだと、こう判断しているんですが、この点ひとついかがですか。
  110. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 投機資金が入ってきているというのは、先ほど申しましたように、ほとんどいまとめているわけでございます。問題は、経常収支の、特にドルベースによるところの問題がやはり基調をなしておるということと、それからやはり各国が、特にアメリカがドル安に対して基軸通貨であるということを認識していただいて、より一層の努力をしていただく、こういうことであろうと思うのでございます。
  111. 対馬孝且

    対馬孝且君 これはやっぱり政府の判断が甘いと思うんです。私は、公定歩合が下がったから直ちに設備投資が喚起されて経営者が相当な意欲を持つという段階ではない。これは現に、あなた、先ほど申しましたように、日経連の桜田会長がこのように言明しているじゃないですか。これは公定歩合が下がったとしても、若干の金利程度は経営者が潤ったとしても円高対策にはならないと、こういう言明を日本経営者の親玉が言っているじゃないですか、これははっきり申し上げて。  しかも、私が言いたいことは、これは日経センターの世論調査ですけれども、昨年の五月の世論調査では大体五ないし六%設備投資は上向くだろう、こういう分析をされておったのが、十一月の段階では三ないし四に下がっているわけです。こういう結果で、政府が常に甘いというのは、設備投資がわくだろう、内需が拡大するだろうと言ったって、現実を経営者がそういうアンケートを出しているわけですよ。この事態でやっぱり二百二十円台が最悪の場合来るというふうに対応するとしたら、何らかの緊急手だてを、先ほど私はスイス方式をちょっと言いましたが、そういう手だてを、次の手を打つという考え方を持たぬのかどうか。あるいはもう一回、総合政策として、長官にお伺いするんですが、二十四日ごろ総合政策が出るという新聞報道がありましたが、何らかのそういう政策を出すというお考えがないのかどうか、これをあわせてお伺いします。
  112. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 先般、公定歩合を引き下げましたときも、われわれは公定歩合の引き下げによっていまの円高の傾向に直接影響があるとは初めから申しておりません。せいぜい言えることは、円建ての外債が若干ふえまして、いまどんどんふえておりますけれども、金利が安くなりますから、それが資本の流出を促す程度であろうと、長期的にしかこれは働かないであろうということを申し上げておるわけでございます。したがいまして、まあ話は繰り返しになりますけれども、やはりいまの財政金融政策を早く実行していく、着実に実行していくということが最も長期的に見ればやはり円高の根本策であろう、このように思っているわけでございます。
  113. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) もともと昭和五十三年度におきましては、製造業の設備投資、ことに大企業を中心としました製造業の設備投資には大きな期待を持っておりませんし、また、そのような経済の情勢ではないというふうに私どもは判断いたしておりますので、したがいまして、その点について経済の地合いが非常に悪いから設備投資が云々と、もともと大きな期待は持っておりませんから、その点は私は余り考えませんけれども、むしろ、ですから、この際、私どもが考えるべきことは、具体的に五十三年度になって、どういうことに優先度を置いて財政が具体的なプログラムに着手するかということと、それから民間投資の中では製造業ではない電力投資には相当の期待をかけておるわけでございますから、このための環境は整備しておかなければならない、それらのことを中心に今週末にはひとつ優先度を立てて重点事項を決めていきたいと考えておるわけでございます。
  114. 対馬孝且

    対馬孝且君 優先度を決めて対処するという考え方ですが、大蔵大臣から、いま内需拡大あるいはすぐ企業の設備投資がわくとは思わないと言いますが、しかし、現実に内需を拡大しなければ経常収支の六十億ドルの達成はできないじゃないですか、どんなことを言ったって。  問題は、私が言いたいのは、六十億ドルという経常収支は、このままでは恐らく百億ドル前後でことしも推移するだろうと、私は予言しておきます、はっきり申し上げて。そうならない状態はやっぱり内需の問題になるんですよ。内需の設備投資がわく態勢になるかならないかと、これは何回もわれわれが主張してきたことだけれども政府は公共投資一本やりだと、われわれはことしは思い切った大衆減税をやって、そうして五〇%のやっぱり消費性向をふやす以外に内需拡大の道なしと。この結果が結果的にはいまあらわれているんじゃないですか、どんなこと言ったって。そういう点についても、こういうことだけで時間をとるわけにいきませんから申し上げますが、私は政府のそういう判断でいけば、予言しておきますよ、また再び夏場のころにもう一回、六十億の経常収支がやっぱり困難だとなったら、外圧でもってもう一回円の揺さぶりが来る、それから対策だ何だと言ってなわをなったってしょうがないじゃないか、こういうことだけ明確にひとつ申し上げておきます。
  115. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) しばしば申し上げておりますように、内需拡大という観点から見まして、限られた財源で何が一番有効であるかということにつきましては、いろんな数字もありますし、マクロ計算もありますけれども、常識的に言って、減税よりは公共投資の方がすぐれているであろうということは一貫して申し上げているところでございます。ですから、私は内需の拡大が大事だと言っているのでございまして、内需の拡大を私が無視しているなどということはちっとも言っていないわけでございます。公定歩合を引き下げておりますのも、また、それをねらっているわけでございます。その点は委員と全く認識が一致しているわけでございますが、方法論について見解を異にすると、こういうことでございます。
  116. 対馬孝且

    対馬孝且君 ただ公共投資一本やりでは、これは内需拡大にならないと言うんだよ。それははっきり答えが出ているんだよ。アンケートにも出ていますよ、はっきり申し上げて。時間がありませんから触れませんけれども。その点はひとつ明確に申し上げておく。そういう点では、やっぱり緊急な手だてが必要である、こういうことで私は先ほど提案をしているわけでありまして、これらを含めて検討してもらいたいということを申し上げておきます。いかがですか、この点。
  117. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 限られた財源のもとで内需拡大のためには、いま出しております予算案がわれわれはベストである、こういうふうに考えておる、繰り返し申し上げておきます。
  118. 対馬孝且

    対馬孝且君 ベストであるったって、失業者がふえ、あんた、倒産は増大をして、そして円高になって、またこれ大変な、後ほど申し上げますけれども、重大な段階を中小企業は迎えているんだよ。その点は明確にひとつそのときの責任のとり方まであえて申し上げておきますよ。  それでは、次に、通産大臣にひとつお伺いしますが、この間、一月三十日に円高に伴う緊急対策法案をわれわれも夜にかけましてこれの審議がありました。あのときに私も申し上げましたが、いま中小企業の実態というのは、二百四十円台で円高対策というものは認識をしているわけです。私も桐生の現地に行ってまいりましたけれども、二百四十円台が限界だ、こういうことで、桐生の機織りについても相当深刻な状態を迎えているわけです。ところが、今度は二百三十円を割る、こういう状態になったとすれば、私はこの段階でどうしたら中小企業、こういった輸出産業、零細企業に対してどういう手だてをとるべきなのか、とる必要があるんではないかという私の判断ですが、いかがでしょうか。
  119. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) ことしの一月に緊急に中小企業円高対策のための立法をしていただきました。その背景は、昨年の十二月に主として輸出に依存しております中小企業の七十九地区の産地産業の現状を調査いたしました結果、その影響がきわめて甚大である、このまま放置できないという判断のもとにお願いをしたわけでございます。しかるところ、また再びいま御指摘がございましたようなさらに一層の円高になっておりますので、いま緊急に二百三十円という水準では一体現在の中小企業はどの程度の打撃を受けつつあるかということについて至急に調査をしておるところでございます。近くその調査がまとまると思いますが、それによってどういう対策をとる必要があるかということを判断をしたいと考えております。
  120. 対馬孝且

    対馬孝且君 これは早急に判断をしてもらいたい、検討中であるということですから。  現実に、私は、この間、釧路へ行ってまいりました。で釧路のかん詰め工場では輸出量全体の三分の一がもう減少しているんです。それはサケ・マスが全然だめですから、イワシかん詰めもいまやっているんですが、大体一ケースが四百二十五グラムかんで四百五十個入りで輸出することにおいて五百円の赤字が出るという現状になっているんです。これ二百四十円でしょう、大臣。まして二百三十円台になったら話にならぬですよ、これは壊滅状態ですよ、はっきり申し上げて。  そういう状態に対して、私は、次の点の緊急対策をしてもらいたいと考えますのは、一つは、公定歩合引き下げによって円高為替緊急措置法あるいは円高措置法の中で利息の低減をひとつ図ってもらいたい。二つ目は、無担保、無保証の枠を現行体制から千五百万円程度に引き上げてもらいたい、これが第二であります。第三は、減免措置として、たとえば円高によって赤字、そういう現象がもたらした企業に対しては特免減税措置を講じてもらいたい。こういう点の手だてを早急にやっぱりする必要があるんではないか、こう考えるんでありますが、この点についてどういうお考えをお持ちなのか、ひとつお聞かせ願いたいと思います。
  121. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いませっかくのお話でございますから、調査の方はさらに急いで結論が出るように督励をしたいと思います。  で、一連のそれに対する対策、いま御指摘がございましたが、たとえば今回の円高緊急対策に対する金利などは相当な思い切った水準まで下げております。なかなかこれ以上下げるということに対してはいろいろむずかしい問題があるわけでございますが、しかし、公定歩合も下がったことでもございますから、さらに大蔵省ともよく相談をしてみたいと思います。いずれにいたしましても、とにかく二百三十円時代を迎えて、どういう結果が出ておるかということを急いで知る必要がございますので、調査を督励いたします。
  122. 対馬孝且

    対馬孝且君 大蔵大臣、ひとついまの問題で。
  123. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) やはり中小企業に、特に輸出をやっております中小企業に大きな打撃があるということは容易に想像されるわけでございます。そういう意味でも為替相場が早く安定すること、これが何といっても緊急の課題であるであろうと思っておるわけでございますし、また、これ以上円が上がらないということにつきましてやはり何らかの措置を、できるだけの措置をとることが必要であろう、かように思っておるところでございます。
  124. 対馬孝且

    対馬孝且君 そこで、大蔵大臣政府系三機関の中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工中金、これは当然公定歩合が下がったわけですから、いま言ったせめて円高為替緊急措置法あるいはこの間制定した俗称円高防止法、こう言っているわけでありますが、これらに対して公定歩合を下げてしかるべきじゃないかと、当然利子が下がらないとおかしいじゃないかと、こういうことになるんですが、この点どうですか。
  125. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 公定歩合を下げてまいりますと、まず貸出金利の方は長期プライムレートがやがて決まってくるであろう、それが決まってまいりますと政府の方の基準金利も決めてまいりたい、かように考えているところでございます。
  126. 対馬孝且

    対馬孝且君 大蔵大臣、通産大臣ともにひとつ十分に検討するという、対処してまいりたいというお答えですから、でき得る限り早い機会に具体案を提案されるようにひとつ最善の努力をしてもらいたい、このことを確認したいと思うんですが、いかがでしょうか。
  127. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 先ほどの答弁で尽きておると思いますが、先ほどのようにいたします。
  128. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 先ほど申しましたように、同じ繰り返しになりますが、いまの基準金利、これは預金金利の引き下げを伴うものでございますが、できるだけ早く実施いたしまして、長期プライムレートを決めて、そして金利の引き下げをやる。さらには、いまの円高の傾向に何とかして歯どめをとりたい、かように考えておるわけであります。
  129. 対馬孝且

    対馬孝且君 増税するとか、そういうことは早急にやるけれども、国民のためになることはテンポが遅いから、ひとつ政府はそこらあたりをしっかり踏まえて対処してもらいたいと思います。  それじゃ建設大臣に聞きますが、これは現実にいま中小企業問題で一番悩みになっているのは、これは北海道だけでもございませんけれども、率直に言って官公需発注の場合は前払い金で四〇%を支払っているわけです。ところが、これは北海道の実態ですけれども、四〇%払われているにかかわらず、一向に下請段階には現金がおりてこない。結果的には、去年の総括予算委員会でも、私、本予算で北海道開発庁の問題で申し上げましたが、多少直ってはきましたけれど、いまだに下請代金は手形でもって百五十日、これでは何にも救済にならないんですよ、はっきり申し上げて。ずいぶん建設省、時の長谷川建設大臣は改善すると私に約束したことがここにございますけれども、一向になかなか改善はされていない。あなたの方の調査で言っても、いまなお八一・三%が実際には前払い金が下請段階におろされていない、こういう調査が五十一年になされておりますが、この点についてどういうふうに対処されるか、建設大臣の考え方をお聞きいたします。
  130. 大富宏

    政府委員(大富宏君) お答えいたします。  前払い金が下請には流れていないという御指摘でございます。私ども五十二年八月に調査したものによりますと、前払い金の使途状況でございますが、材料費に五一%、それから外注費に三八%使用されているという結果が出ているわけでございます。この外注費という三八%が下請業者に流れている金額で、現金で流れている数字でございます。それともう一つは、やはり元請が材料購入費に五一%充てているわけでございますから、これは元請が使う材料費と下請が使う材料費も含めた数字でございますので、この中にもやはり下請に流れている金額が含まれているわけでございます。  御指摘のように、やはり元請から下請に適正に前払い代金あるいは下請代金が流れていくということが非常に重要な問題でもございますので、私ども常々それについては指導いたしているところでございます。
  131. 対馬孝且

    対馬孝且君 公取委員長、来ておりますか。――いまの中小企業の実態はおわかりのとおりでございますけれども、建設業法第四十二条によりますと、建設大臣から公取に請求をすることになっているわけでありますが、実態はどうなっておりますか。
  132. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 建設業法の規定によりまして、建設業法違反の疑いがあります場合に、公正取引委員会に対して措置請求ができるように規定が置かれておりますが、法施行になりまして今日まで措置請求を受けたことは一度もございません。
  133. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま公取委員長から、建設大臣から一度も公取に対して請求をした事実はない、こういうわけでしょう、これじゃこれは話にならぬでしょう。五十一年に次官通達が出ているんだよ、ぼくは去年の総括でも申し上げましたが、予算委員会で。一向にこれは改善されてないんだよ、建設大臣。これはどうするんですか、この問題は。
  134. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) いまお尋ねの措置請求ですね、これはもう十分御承知のことと思いますが、前払い金の問題だけでどうこうということになっておらない。不当に低い請負代金の強制、不当な使用資材等の購入強制、下請代金支払い遅延、こういうような問題が起きておるときにとる措置でありますので、四十二条による公正取引委員会への措置請求というものがないということはいま申し上げたような事情にございますが、対馬委員のおっしゃっておるように、前払い金あるいは下請業者に対する支払いの改善につきましては、これは私就任後におきましても大手業界の代表を寄せて厳重に申し渡してもおりますし、また改善の一つの方法としては、標準下請約款をやるがよろしいと、こういうことで、それを示して業界の方に速やかにこれが実施を求めておる。業界の方も、それぞれ業態によって標準下請契約というものが変わりますから、だから業態業態において三月までにはしっかりしたものをやるということで、御指摘のような、私どもがこういう状況を全然考えずにおるんではない、努力はしておるわけで、北海道のような実情というのは、この間も私北海道へ参りましたが、これはおっしゃるようなことがあれば非常に遺憾なことでございまするが、努めて改善に努力してまいります。
  135. 対馬孝且

    対馬孝且君 大臣、これは現実に泣き寝入りしているんですよ。下請が元請に対してそういう話をしたら、おまえのところに仕事はやらないよと、これで一発の終わりになっちゃうんだよ。大臣、実態を知らな過ぎるんだ、ぼくに言わせると。これはこの前、私は旭川の大橋の工事の問題で取り上げました、本委員会で。そのときも具体的な事例を挙げてぼくは言ったんですよ。ところが、その業者が言ったらね、いやあ君のところは次からお断りだ、ほかに業者はたくさんいるからお断りするよと、こう言って断られておるんですよ。たとえのどまで来ておっても物が言えないという実態なんだよ。  私は、本当にやるんであれば、もう一回、次官通達を正確にひとつ精査をしていただいて、もうそういう業界に対しては発注はしない、こういう強制的な発動まで建設省は考えてもらいたい。その措置をとるかとらないか、これ大臣ひとつお伺いします。
  136. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 十五カ月予算で公共事業を大幅に増額しておることはもう御承知のとおりでございます。そして、それが実施のために鋭意努めておりますので、過去において、ある範囲の公共事業の中におきましてはそういうような事例も相当あったと思うんでありますが、言うまでもない大幅の増額で、これを消化するにつきましては、業者の方にも御協力を願わなきゃならぬという状況のもとにおきまして、元請がいまなお、おっしゃるような、不当なと言えるような行為をしておるとは私は思いませんが、しかし、御指摘の点についてはよく精査いたしまして改善には努力いたします。
  137. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま建設大臣から、そういう改善策について検討して指示をするということですから、ひとつこれは早急にやってもらわぬとね、やっぱりどうしようもないんだよ。早くひとつ建設大臣対処するように強く要望しておきます。  それでは、次に、私はいま一番社会問題となっておりますネズミ講対策につきまして、政府の見解をひとつお伺いをしたいと思います。  この問題につきましては、すでに昭和四十六年から論議をされておりまして、ことに昨年は衆議院の段階におきましても一応の議論が交わされております。  ところが、政府においては、総理大臣を座長といたしまして消費者保護会議、第七回の昭和四十九年十月八日、それからネズミ講の規制問題につきまして、第二回が昭和五十一年十一月二十六日第九回会議、これらの取り締まりにつきまして出資法の改正を含めて新規立法を検討するということになっているわけであります。この点、いまだに法律のほの字も出てこないということは一体どういうことなのか、この点、本来ならば総括の段階で総理大臣にお伺いしたいのでありますが、総理大臣がおりませんので、ひとつ官房長官に責任ある立場でお伺いしたい。この主管は経済企画庁長官になっておりますので、長官にもひとつお伺いしたいんです。
  138. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) ネズミ講の活動につきましては、種々の観点から好ましくないというふうに考えておるわけでありまして、いまお話がございましたように、国の消費者保護会議におきましても早急に出資法の改正を含めて新規立法を検討する、こういうことに決定をいたしておるわけであります。  この立法につきましては、現在、関係省庁連絡会におきまして検討はいたしておるわけでありますが、何分にもネズミ講というのが多種多様でありますので、構成要件の規定方法であるとか、あるいは民間の講との類似性等、規制に当たっての問題点が非常に多いわけでございまして、その点でなかなか時間を要しておるわけでございます。したがって検討につきましては熱心に行われておるわけでございますが、そういう状況で時間がかかっておりますことを御理解をいただきたいと思います。
  139. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) いま官房長官がお答えのとおりでございますが、社会の公序良俗といいますか、そういう観点から見ましても、一般大衆の被害という観点から見ましても、これは好ましくないということは政府としてもはっきり認識をしておりますし、また、地方裁判所の判決でございますけれども、公序良俗に反するという判決が出ております。したがって出資法等では十分に取り締まりができないということから、新しい立法を関係各省で検討しつつあるところでございます。  いろいろ問題が複雑でありまして、法律の構成要件等をどういうふうにするか、民間に講というものが御承知のようにございますけれども、これ自身はいわゆるネズミ講とは趣を異にするものであるといったようなことがございますために、的確にどのような法律をつくるかということについてまだ政府内の意見がまとまっていないということでございます。鋭意検討を各省庁間で続けておるところでございます。
  140. 対馬孝且

    対馬孝且君 大蔵大臣、出資法の関係をちょっと。
  141. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま官房長官から述べられたような事情でございまして、どういうふうなとらえ方をするか、いろんな複雑な形態があるようでございますので、新しい立法をやるかどうか、いま鋭意検討しておるところでございます。
  142. 対馬孝且

    対馬孝且君 これは四十六年から始まって四十九年、五十年、五十一年、五十二年、毎回ネズミ講の規制の検討、出資法については新規立法を検討すると、こうなっているんですよ。もう五年以上やっているんでしょう、それで何を検討しているんですか。  そこで、ちょっと法務大臣にお伺いしますが、昨年の三月三十一日、長野地裁でネズミ講の一審判決がございましたが、これは係官で結構ですけれども、どういう判決があったかひとつ答弁してください。
  143. 伊藤榮樹

    政府委員(伊藤榮樹君) 私の専門分野ではございません民事裁判でございますが、私も関心を持っておりまして承知いたしておりますが、詐欺まがいの手段で集めたことであるとしてネズミ講の講元の方が負かされた、で現在控訴して争っておる、こういうことだと思います。
  144. 対馬孝且

    対馬孝且君 争っておるのはわかっているんで、結果がどうなったか聞いているんだ、結審がどうなったか。
  145. 伊藤榮樹

    政府委員(伊藤榮樹君) 損害賠償の請求が認められたのであったと思います。
  146. 対馬孝且

    対馬孝且君 ちょっと正確に言ってくださいよ。ネズミ講の長野地裁判決というのは、法務省として具体的にどういう見解をお持ちなのか、どういう内容なのかということをはっきりしてください。
  147. 伊藤榮樹

    政府委員(伊藤榮樹君) ただいま手元に判決がございましたので確認をいたしましたところ、このネズミ講関係の契約が公序良俗に反するということで無効なものである、したがって預かっておる金を不当利得として返還せよ、こういう判決でございます。  この判決は、初めてネズミ講に関して民事で公序良俗に反するという判断をしたものでございまして、注目に値する判決だと思います。
  148. 対馬孝且

    対馬孝且君 いや、注目に値しておることは、これは当然判決が出たんですから、どういう法務省としてこの判決に対する所見をお持ちになっておるかと、こう聞いておる。大臣、どうですか、その点。
  149. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 判決に対して所見を申し述べる立場ではございません。ただ、ネズミ講というものは社会にいろいろ弊害を及ばしておるという状況でありますから、このまま放置はできないと、こういうことで、先ほど来各省庁の責任者からお答えしておるように、何らかこれを規制する方法を講じなきゃならない、そういう立場でいま検討しておるというのが実情でございます。
  150. 対馬孝且

    対馬孝且君 警察庁の方にちょっとお伺いしますが、これに対しましてどういう取り締まり、それからどういう判断をされておるか、ちょっとお伺いします。
  151. 森永正比古

    政府委員森永正比古君) お答えいたします。  いわゆるネズミ講を取り締まりの面から見ますと、大別をいたしまして、贈与金を会が預かって運用するという会主導型のものと、それから贈与金を会員相互間で授受をするという会員主導型というものがあるわけでございます。この会主導型につきましては、それ自体がいわゆる出資法第二条の預かり金違反となるわけでございまして、警察といたしましては積極的な取り締まりを行っているところでございまして、昨年一年間で六道県で十一の組織を検挙いたしております。これらの事件で一万七千九十六人から総額八十四億八千三百七十万円を集めておりますけれども、このうちで焦げついたために二十七億円の損害を与えておるというような状況でございます。それから会員主導型につきましては、既存法では直ちに犯罪や違反と断定することができないわけでございまして、現在、これらの会は二十四の組織がございまして、その代表的なものは御承知の天下一家の会・第一相互経済研究所でございます。
  152. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま聞いただけでも、相当な被害が出てきているわけであります。  そこで、ネズミ講のからくりは、法務大臣、これよく見てくださいよ。長官もひとつ見てください。  これは天下一家の会ですがね、これは大体百億ぐらい今日結果的には、いま警察庁の判断もございましたけれども、われわれが調べている限りでは百億に上っているわけです。そのためには相当な犠牲者が出まして、ノイローゼになり自殺者が出る、こういう状態で、あるいはサラ金を借りて夫婦別れはする、一家心中まがいができ上がる、こういう状態で、結果的には詐欺的行動になっているわけです。全く社会の罪悪である、詐欺的行為であり、しかも社会的罪悪であり、しかも後ほど国税庁に申し上げますが、多額な脱税をしている。こういう状態の認識について、いま一度ひとつ法務大臣にお伺いするんでありますが、こういうことに対しての実際の団体――今日の段階ではっきり申し上げますと、天下一家の会というのは財団法人である、公益法人であると称していたわけでありますが、もちろんこれは財団法人ということは結果的に法務省は取り消しになった。しかし取り消しになってはいるけれども、こういう財団法人を登記官が認知をした、こういうこと自体に私は相当問題があると思うんですが、この判断はどういうふうにお考えになっていますか。
  153. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) その前に、これがだましておるといいますか、詐欺をしておるといいますか、そういうことで詐欺罪になるということであれば、これはもちろん当然に詐欺罪として捜査をし、処断をしなければならないわけでございます。ただ、問題は、いろんな複雑な機構のこういう種類のものがあるようでありますが、率直に申し上げて、加入者は何とか金もうけをしようということでございます。それが主宰者といいますか、会員といいますか、それが相手方をだまして、全然そういうことでないつもりで入っておったが、金を出したが、それで財産上の損害を受けたということになりますと詐欺罪ということになりますが、事情を知って、いつかはもうかるだろうというような甘いことでやったんでは、これはちょうど競馬を買ったと同じようなことでありますから、簡単には率直に言って詐欺罪にはならない、こういう事情があることを一つ申し上げておきます。  それからもう一つ、財団法人云々ということが使われておるということは前々から承っておりますが、この経過を見ますると、もとは財団法人何とか厚生会とかいう一つの財団法人、これは御承知のとおり財団法人は民法の公益法人としてあるわけでございますが、これはその内容によって各省所管の長の認可を受けてできておるものでございます。ところが、途中で何か登記の変更があって財団法人天下一家の会とかなんとかいうことになって、その際に登記事項に間違いがあった、こういうことで法務省関係ではその登記を取り消した、こういういきさつになっておるわけでございます。しかも、今日なおかつその財団法人の名称を使って天下一家の会というものでやっておるということでございます。これは非常にむずかしいところでございまして、残念ながら、民法の財団法人の名称を使った場合に、認可を受けないで簡単に名称を使った場合に、これを罰するとか、そういう規定現状の法律にはございません。これを勝手に使っておる、それによって、先ほど申し上げましたように世間の人がだまされておって、完全にだまされて自分の財産等を出して、それで損害を受けた、こういう事実があれば、そういう関係があれば、これは詐欺罪となる、かように私どもは考えております。
  154. 対馬孝且

    対馬孝且君 これちょっと認識が甘いんですよ。法務大臣ね、北海道だけでも千三百六十人、いまここに出てきておるんだ。もうはがきがこんなに来ておるんだ、これ。千三百六十人の被害者が訴え出ておるんですよ。全国で約十万以上いるだろうと、こう言っております。  そこで、問題をはっきり申し上げますけれども、つまり財団法人は国が認めた団体だから安全だと、こう言ってやっておるんですよ。それから自民党の国会議員もこれに激励叱咤を与えているので絶対安心でございますと、こう言って大衆をごまかしておるわけだ。しかも、これは結論的にはどんなうまいことを言ったって、六十万円出せば三千三百万になりますと、最後にいったら詐欺じゃないですか、これ。一人が二人の子を生む、その子が二人の孫を生む、その孫がまた子を生んでいく、こういうかっこうでやっておるわけだ。最後へいくと、結論的には三千三百万だまし取られるということ――六十万出したものは返ってこないんですよ、これ。明確でしょう、これは。しかも、その財団法人なるものは国が認めたんだと、こう言ってだまかしておるわけだ。  そこで、私は具体的にお伺いしますよ。商法十八条によれば、たとえば生活協同組合、農協あるいは株式会社であっても、こういう同一名義のものを使ったとすれば、これは違反でしょう、はっきり申し上げて。何でこの団体だけが、財団法人だけがこれが許されるのか、生活協同組合名で同姓同名を使った、あるいは会社名で同姓同名を使ったら、これは違反ですよ、はっきり申し上げて。商法十八条で取り消されるわけだ。何でこれだけが取り消しができないのかということに私は政府は手ぬるいと思うんですよ。こういう問題についてどうお考えになりますか。
  155. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほど申し上げたわけでございますが、民法の公益法人としての財団法人あるいは社団法人、こういう名称は、許可を受けなけりや使ってならないという規定はありますけれども、それを許可を受けないで勝手に使ったときには罰するという規定がないということを申し上げておるわけでございます。株式会社その他の商法上の名称を勝手に使ったときには、株式会社でないのに株式会社と使えば罰則はある、これは当然処断されるわけでございます。でありますから、これには欠陥がある、これは法律を改めなきゃいけないとわれわれは考えておるわけでございます。
  156. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま法務大臣が改めなければならないと、法の欠陥をお認めになったようでありますから、当然改正をされるということだと思うんでありますが、現実に財団法人を私は認知した登記官にも責任があると思うが、これが取り消しされて、いまなお天下一家の会というのは公然とりっぱに、あなた、これだけのグラビアの、これだけのものですよ、この写真の中にちゃんと天下一家の会というりっぱな看板が上がっているじゃないんですか、いまだに。これどうして外すことができないんですか。これで胸を張っているんだよ、天下一家の会が。私はこれは法の欠陥があるとお認めになっているから、この点は少なくとも、財団法人を取り消しをやったとするならば、すべてこれはやっぱり解散をして、これは一切の行為を許さない、あったら取り締まるという、そこまでいかなければ、これは対策にならないと思うんですよ。この点についてどうお考えになりますか。
  157. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 何かをやるときに名称をつける、商売でも何でも同じでございますが、法律で定めてあるもの、あるいは法律で禁止されておらないもの、これをつけておることを、いまのいわゆる民主主義といいますか、言論の自由といいますか、表現の自由といいますか、そういう場合に一々これを取り締まるということは不可能であろうと思います。現に、その天下一家の会、財団法人という、何か九段にもあるそうでありますが、これはまあ良識の問題。  私が申し上げたいのは、いまたくさんの損を受けたという手紙が来ておるそうでありますが、ほかにもそういうことを聞いております。そのぐらいなら、そういうものを相手にしないということをひとつ国民の皆さんも考えてもらいたい、率直に申し上げます。これは私も、こういう細かいことはその仕組みを知りませんが、こういうものはほかにもあると思います。途中までは必ずもうけるんです。途中までもうけますから、どの段階で詐欺になるのかということは非常に問題になるわけでございます。そういう事情であるということを、皆さんも、一般の利用者も考えてもらいたい、率直に申し上げます。
  158. 対馬孝且

    対馬孝且君 これね、法務大臣、長野判決が明確になったわけでしょう。公序良俗に反するということははっきりして、しかも出資金まで返せと、戻しなさいというのが判決の趣旨だから、そうだとすれば、だまかされた方が悪いなんて、そんなの答弁になるかい、あなた、法務大臣。最初からだまかすつもりでやっておるものが、だまかされた者が悪いと言ったって大体国自体が、先ほど言ったように、明らかに認められるべきものでなくても財団法人天下一家の会・第一相互研究所というのを認知したわけでしょう。それは法の番人であるあなたが間違っているじゃないですか、はっきり申し上げると。そういう問題について反省をしないで、だまかされた方が悪いなんてね、国民を冒涜したことを言ったら困るよ。
  159. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) だまされた方が悪いとは申し上げません。気をつけていただきたいということです、世の中にいろんな行為をする人がありますから。それを率直に申し上げます。法務省は法律のないところで追っかけて歩くわけにいかないのですから、できるだけ気をつけてもらいたいと。民法上の欠陥は直さなけりゃならない、かように申し上げておるわけでございます。
  160. 対馬孝且

    対馬孝且君 それじゃお伺いしますけれども、法の欠陥があるということをお認めになったわけですから、これから、いまの法を完全に、やっぱりこういうものを退治をするための決め手になる法改正をするということに理解していいわけですか。
  161. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) こういうものは、社会のまあ一部に有効性があって皆さんがやっておるということであります。でありますから、そのうちまた弊害が出る。どういうふうにこれを規制し、どういうふうに社会の需要に応ずるか、これが先ほど来各省から当然答弁がありましたように、非常に複雑なむずかしい問題でありますから、今日までこれに関する立法はできておらない、こういうことでございます。これはやるべきだと思っていま検討しておるわけでございます。ただ、財団法人の名前をこうやって使っておるというところにいまひっかかりがあるわけでございますから、これは改める必要がある、かように申し上げておるわけでございます。
  162. 対馬孝且

    対馬孝且君 一応、法改正をし、そういう点を改めていくという法務大臣の見解ですから、そのことをぜひひとつ実現をするように強く申し上げておきます。  そこで、税務署、ちょと来ておりますかね。  天下一家の会なるものの内村健一なる者は百億の資産がある、こう言っているんですよ、これ公言しているわけだ、百億ということは。この点について国税庁は一体どういう対策をとり、どういう調査をしておるのか、この点ひとつお答え願います。
  163. 磯邊律男

    政府委員磯邊律男君) いわゆるネズミ講関係課税問題でありますが……
  164. 対馬孝且

    対馬孝且君 天下一家の会でいいよ。
  165. 磯邊律男

    政府委員磯邊律男君) ええ、ですから、その代表としての天下一家の会でありますが、ネズミ講をやっておりますのは、私たちの把握しておるところでは、まず人格のない社団としての天下一家の会・第一相互経済研究所というのがございます。それと、それから別に、ただいま議論になっております財団法人天下一家の会というのがございます。それからもう一つ宗教法人大観宮というのがあるわけでございます。この三つの会長もしくは代表役員というのに内村健一氏が就任しているわけでございます。  国税関係で問題となっておりますのは、内村健一氏が個人時代にやっておりました個人の所得税関係の問題、それからその後、人格のない社団となりまして、法人税の申告をするようになりました人格のない社団天下一家の会・第一相互経済研究所にかかる法人税の問題、それから財団法人天下一家の会の税金の問題それから会員である法人もしくは個人、その人たちが利益の分配か、要するに送金を受けましたときのそれの税金関係、大きく分けて、そういうふうに分けられると思うわけであります。  このうちに、まず歴史的に申しますと、内村建一氏個人の所得税の問題につきましては、これは御承知のように熊本国税局におきまして、所得税法違反として国犯法によりまして査察立件をいたしました。その後、熊本地方検察庁にこれを告発し、現在、熊本地方検察庁はこれを起訴いたしまして、公判係属中でございます。これの脱税額、私たちが告発いたしまして、同時に熊本地検で起訴いたしました脱税額は、税額にいたしまして本税十九億六千五百六十三万九千円ということになっておって、これは現在公判係属中であります。  それから、その後、内村健一氏は、先ほど言いました人格のない社団である天下一家の会・第一相互経済研究所といういわば法人形態の組織を、これは正式の法人でありませんけれども法人形態の組織をとりまして、それによって、その後、法人税としての申告をやっております。ところが、これは個別的な課税問題ございますので、数字を申し上げるのは御遠慮さしていただきたいと思いますけれども、非常に課税問題について議論がございました。第一相互経済研究所としては、会員から入会金として収入するその入会金というものは、これは収益ではないというふうなことで、事実申告いたしておりますのは若干の賃貸料収入等でございます。それに対しまして熊本国税局としては、この入会金そのものが収益事業によって得た収入であるというところで、これを収入金として課税いたしました。その間膨大な更正税額が出てきておるわけであります。現在税務処理といたしましては、五十一年三月期、これは税務調査が終わりまして、いまのところ納税も済ましておりますけれども、現在五十二年三月期についてほぼ調査が終わりまして、近くこれについての処理をするということになっておるわけであります。  それから、さらに財団法人天下一家の会というのがございますが、これは先生御承知のように、昨年の十二月二十日付をもって名称とそれから役員の変更登録の職権による取り消し抹消がございました。ところが、これに対しまして天下一家の会から膨大な寄付金が支出されております。それからさらに会員から第一相互経済研究所の指令によりまして入会金の一定割合、これは二五%になっておりますけれども、これを財団法人天下一家の会に寄付しておるわけであります。この寄付金はどうなるかということでありますけれども、これは支出した方、これはぞれそれの個人が支出したのじゃなくて、むしろそういった会員の金を第一相互経済研究所が受け取りまして、それを収入したんだというふうに私たちは考えております。したがいまして、その寄付金というのは、個人からの寄付金じゃなくて第一相互経済研究所からの寄付金であるというふうに認定いたしまして、そしてこれにつきましては第一相互経済研究所の法人税課税するに当たりまして損金算入についての限度計算をやっておりまして、一定の割合以上はこれを否認いたしまして、法人税として課税しておるわけであります。これを受け取りました財団法人天下一家の会は、これは現在変更登記が職権で抹消されましたので、これを受け取りましたその寄付金というのが一体何なのかということがいま課税上問題となっております。これが財団法人天下一家の会の会長個人の内村健一がもらったのか、それともどういうふうに法律の関係を考えたらいいのかというところで、現在関係方面と法律上の問題については検討中であります。  なお、もう一つの宗教法人大観宮につきましては、これはまさに宗教法人でございますから、収益事業をやらない限りこれに対しての課税は起きないということであります。  それから会について言いますと、法人と個人とございますけれども法人について言いますと、これはもちろん分配金がありましたら法人の益金算入として法人税課税を受ける。それから個人につきましてそういった収入金がありました場合には、これは雑所得として課税するというところで、これはわれわれとしては資料を集めまして、それぞれの税務署において課税処理をしておるということでございます。  以上でございます。
  166. 対馬孝且

    対馬孝且君 いま答弁があったように、やり口が非常に巧妙なんですよ。最初は肥後厚生会という名前を使って発足しておって、次に天下一家の会に変わり、そしてそれをまた変質をして今度は第一相互研究所と、こういうやり口で絶えず団体を巧妙に扱って、そうして財産取得をやって収奪をしている。こんな悪らつなことは許されてたまらぬですよ。私は、こういうことで、いまこそ、不景気なんだから徹底的に収奪を行った者に対しては厳正な調査を行って厳格に法に従って税をやっぱり納めさせると――だけで済まないと思うんです。この処置についての対処の仕方をどうするかということを含めてもう一回お伺いします。
  167. 磯邊律男

    政府委員磯邊律男君) 先生御指摘のように、これの課税問題については私たちは非常に力を入れて調査しておるわけでございます。これを担当いたしております熊本国税局におきましては、国税局長が直轄いたしまして特別なチームをつくりまして連年これに対しての厳重な調査をやっておる。それによって適正な課税、充実した課税をやるというところで現在進行中でございます。
  168. 対馬孝且

    対馬孝且君 それでは、次の点を明確に官房長官にお伺いしますが、この問題は、昭和五十一年十月九日に天下一家の会の十周年大会をやっているわけです。これをどうぞごらんになってください、ここにありますから。この十周年大会に自民党の園田清充参議院議員が出席しまして祝辞を述べているわけです。それから長野判決後ですよ、ここが大事なところなんです、長野判決が下った後に、五十二年四月十五日に東京大会が行われているんです。これは祝賀式をやっています。ここに岩動参議院議員、林道参議院議員が同席をして、これまた一応ここにインタビューが載っております。ちゃんと掲載をしております。そこで私が言いたいのは、先ほど申し上げたのは、こういう訴えの方々から来ているのは、一つは国が認めた財団法人であるからと、こういって信用しました。いいですか。自民党の参議院議員あるいは国会議員の先生方から十分の激励なり祝辞を賜っておりますので本当にこれは信用いたしました、こう言って、これをごらんになっていただければちゃんと書いてあるんですよ。こういう問題について官房長官、やっぱりこういう長野判決が出た段階では、少なくとも基本人権の問題、あるいは国会を代表しているわれわれとしては、この種のこういったものに出席をするということについて、あるいは祝辞を述べるということに対して、一体どうなのか。これは非常に大衆を惑わし、大衆が犠牲になっている一つの要因にもなっているわけです。こういう問題について、官房長官として、本来総理にお伺いしたいところでありますが、まあ一般質問でありますから、ひとつ官房長官にお伺いしたいと思います。
  169. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 先ほどからいろいろとお話がありましたように、天下一家の会の活動というものが好ましいものでないということは、政府としてもそういう立場に立って法改正等も含めていま検討しておるわけでありますが、そういう段階で国会議員の方が出席をされるとか、あるいは祝辞を述べられるとか、いろいろの活動があったわけでありますが、これはまあ国会議員の方の自主的な判断によって行われたものであろうと思うわけであります。したがって、政府としてのこれに対する見解と申されましても、政府としてこれに対して見解を申し上げるというちょっと筋ではないのじゃないか。国会議員それぞれがその良識において判断をされて行動されるべき問題であると、こういうふうに考えております。
  170. 対馬孝且

    対馬孝且君 私が言いたいのは、先ほど来、この長野判決、いま法務大臣もお認めになりました、あなたもお認めになりました、法に欠陥がある。しかもこれだけ社会的な問題になり、しかも多くの犠牲者を出している。しかも詐欺的行動的なやり口である。社会的な罪悪ですよ、はっきりさっきお認めになったように。こういうものに対して私が聞きたいのは、自民党所属の議員であるから、もちろん政府というよりも自民党所属の議員でもあるし、国会議員という立場からいけば、この種の問題についてどういう良識を持つべきか、こういうことを私はお聞きしているわけです。あなたの立場としてどういうふうにお考えになっているかと、私はこう聞いているんですよ。
  171. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 国会議員として、いいというふうに判断するか、あるいは悪いというふうに判断するかということは、やはりその国会議員のそれぞれの良識において判断をされるべき問題であって、これはやはり政府としての私がこれに対していろいろと申し上げることは筋違いじゃないかと、こういうふうに考えるわけであります。
  172. 対馬孝且

    対馬孝且君 まあこれは総裁でないからあれですけれども、あなたは個人的にどういうふうにお考えになっておりますかと、こう聞いているんですよ。先ほど申し上げたでしょう。あなたは国会議員の一員としてどういうふうにお考えになるのか、良識としてお持ちになるべきことではないでしょうかと、こうお伺いしているのでありまして、いかがなものでしょうか。
  173. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) 私はきょうは官房長官として出席をいたしたわけでありまして、そういう立場でいまお答えをしているわけでありますから、個人的な立場でここで申し上げることもいささかどうかと、こういうふうに考えております。しかし国会議員は、ぞれそれ国会議員としての良識と判断によって行動されるのは当然であるというふうに私は思うわけであります。
  174. 対馬孝且

    対馬孝且君 官房長官はなかなか答弁しづらいようでありますからあれでありますが、少なくとも大事なことは、裁判所が判決をしてはっきりした答えが出ているわけですね。私は間違いはあると思うんですよ。あるが、判決後の行動としてこれは良識を欠いておる。少なくともこれだけの社会問題になって、北海道だけでも三十日に千三百人の集団訴訟を起こしているんです。こういう問題になっているわけですから、少なくともこういった問題について良識ある態度をとってもらいたい、このことだけ私は率直に申し上げておきます。  そこで、これに関連いたしまして、私は大事な点で法務大臣に確認したいのでありますが、先ほど財団法人の認知の問題を含めまして、この点どういうふうにお考えになっているか、ちょっとお伺いします。不法登記自体が刑法上の公正証書の原本の不実記載罪に該当すると考えるが、いかがでしょうか、この点。
  175. 伊藤榮樹

    政府委員(伊藤榮樹君) 当然この事態の推移を見ますときに、公正証書原本不実記載に当たるのではないかという疑問を抱くべき案件だと思います。現在関係捜査当局において調査中でございますので、いずれ明らかにされると思います。
  176. 対馬孝且

    対馬孝且君 私はなぜこれを言うかと申しますと、先ほど商法十八条の関係を私は申し上げました。しかし、この種の問題はこれからいろいろな形で、マルチ商法でもあらわれましたように、一回こういう事件が起きて社会的な問題になるとぱっと体質を変えるんです。それでまた新たな組織をつくっちゃうんです。そして次々に新しい組織をつくった段階で、全部大衆がやっぱり犠牲になっていく。新手新手で次の手を考える、こういう性格を持っているんです。これはマルチ商法も、私はおととし本院でもって当時の三木総理大臣にお伺いしたことがあります。そういう問題につきまして、少なくともこの種の問題は厳格にひとつ公正証書原本に対する不実記載罪というものを徹底的に究明をして、この真相解明に当たってもらいたい。このことをひとつ法務大臣にお伺いします。
  177. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) そういう事実があれば当然に調査し、処罰すべきものは処罰する、当然のことでございます。
  178. 対馬孝且

    対馬孝且君 そういう事実があれば処罰をするというのはあたりまえの話でありまして、そのことをひとつ実行してもらいたいということを私は言っているのでありまして、それを含めて、先ほど出資法の問題で大蔵大臣それから企画庁長官からございましたが、これは先ほど申しましたように、出資法――大蔵大臣に申し上げますが、新法、ことしは新しい法律に踏み切ってくださいよ。もう四年も五年も投げっ放し、これはやらないということははっきり申し上げて、先ほども申し上げましたが、自民党に所属する国会議員がこれを応援して、そういう圧力があってこの法律はできないんだろうというのが率直な訴えですよ、これははっきり申し上げます。こういう問題について、本当に五年間も投げっ放しにしているという政府の姿勢がもう私は問題だと思うんだ。やっぱり国会議員が、自民党の議員がいるからそういうことに踏み切っていけないんだろうと。やはり後ろ暗いものが考えられるんです。だからこの際、思い切ってこういう措置をどういうふうに促進していくかということを関係大臣最後にお答え願います。
  179. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 時間が来ております。
  180. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 私の聞いているのでは非常にやはりむずかしい案件だと。法律構成をどういうふうにするか非常にむずかしい問題で、それでなかなか手間取っておるんだと聞いているわけでございますが、今後とも鋭意検討いたしまして、できるだけ早い機会に実現したいと思います。
  181. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私もただいま大蔵大臣の言われましたように考えております。
  182. 対馬孝且

    対馬孝且君 官房長官ひとつ。
  183. 安倍晋太郎

    国務大臣安倍晋太郎君) いま法改正等の問題については七省庁で会議を持ちまして、十一回にわたりまして検討を続けておるわけでありますが、いままで政府関係者から話がありましたように、なかなか問題が複雑でございますけれど、今後とも鋭意努力をいたしまして結論を早く出すように努力をしてまいりたいと思います。
  184. 対馬孝且

    対馬孝且君 時間が参りましたので、被害者が、本当に自民党が悪の政治を退治する、こういうことなら、ひとつ身をもって法案が早急に出されることを強く要望申し上げまして私の質問を終わります。(拍手)
  185. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で対馬君の一般質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  186. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、中野明君一般質疑を行います。中野君。
  187. 中野明

    中野明君 最初に円高の問題について二、三お尋ねをしたいと思います。  昨日の海外の動きを反映しまして、きょうの東京市場で午前中に二百二十八円二十五銭まで円が上昇いたしました。とうとう二百二十円台になってしまったのでありますが、こうした動きに対して大蔵大臣は何か談話を発表されたというようでありますが、そのときに、何らかの措置をとらなければならないという意味の御発言があったようですが、具体的にどういう措置をとろうとなさっておるのか。
  188. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 談話の発表というよりも、けさほどでございますが、新聞社の方からいろいろの質問を受けたわけでございます。そして、どうしてこんなになっているであろうかという話で、公定歩合の引き下げも行い、それから短期の為替規制もやりながら、なぜこんなになっておるのであろうかという質問に答えた形で言ったわけでございますが、やはり基本的にはドルベースの経常収支の関係が一番大きいんじゃなかろうか、どうせ需給関係で相場は決まるわけでございますから、その点にやはり着目しないと、なかなか通貨面だけでやるにはある程度の限界が来ているのではなかろうかという趣旨のことを申し上げたわけでございます。  なお、あわせて通貨面におきましても、そのときは話しませんでしたけれども、やはりアメリカならアメリカがさらに一層ドル安の傾向に対して認識を深めていただくということも大事なことであろうということを、私は現在そのような気持ちも持っているわけでございます。
  189. 中野明

    中野明君 自動車総連の招待で来日しておられますUAW、全米自動車労組のグレートハウス副会長がきのうの記者会見で、日本車は米国車より有利な条件で競争しており、UAWはこうした状態を容認しがたいと考えていると、このような発言をして、完成車輸出一本やりの日本メーカーの姿勢に変化がない限り輸入の規制を招く可能性が強い、こういう警告をしております。一部ではそういうような輸出規制をするしかもう手がないところまで追い込まれたんではないかと、こういう説もございますが、政府の態度はどういうことでしょうか。
  190. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 直接私はお答えするあれではございませんが、私の方に何か答弁せいということでございますので……。通産省もせっかく一生懸命行政指導をやっておるやに聞いているわけでございますので、さらにその力を強めていただきたいと、かように念じているところでございます。
  191. 中野明

    中野明君 通産大臣、いかがでしょうか。
  192. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 円高の背景には、日本の大幅黒字あるいはアメリカの経済政策、世界全体の経済の動き、いろいろ背景があるわけでございますが、日本といたしましても現在の大幅黒字は放置しておけませんので、先般来数量的には大体横並びという線が維持できるようにいま行政指導を始めたところでございます。  それから自動車のお話がございましたが、もうすでに一社はアメリカ進出を決めておりますし、またテレビなどはもうすでにアメリカの現地生産を始めておる企業が三社ございます。さらに今回は三社が出ていくことになっておりまして、合計六社がもう現地生産を始めておる。だから、大勢としてはやはりそういう方向に進んでおると思います。
  193. 中野明

    中野明君 続いて通産大臣にお尋ねいたしますけれども、円が二百三十円台を割ったという異常事態、心配しておった異常事態が来ておるわけですが、中小輸出関連業者の打撃というのはもう想像以上のものがあると思います。これに対して先ほどの通産大臣の答弁を聞いていますと、まだ二百三十円というようなことをおっしゃっておったようですが、もうすでに二百二十円台に突入しているわけですので、そういう緊急事態に対しての通産省の対策を改めて披瀝していただきたい。
  194. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) この一月に中小企業に対する円高緊急対策のための法律をつくっていただいたわけでございますが、そのときは、昨年の十二月に中小企業の輸出関係の重立ったところを全部調べまして、その打撃が余りにもひどいものですから、これはほうっておくわけにいかないということで、緊急対策を法律でお願いをしたわけでございます。しかし、まだ二カ月ぐらいしかたっておりませんのに、もうすでに二百三十円という線がここ数日前から出ておりますので、そこで、二百三十円というその数字を背景として、再びこの輸出関連中小企業がどのような影響を受けておるかということを緊急調査をしておるわけでございます。私が二百三十円ということを申し上げたのは、数日前の段階でそういうことになりましたので、その線でどの程度の影響が出ておるか、それによっては何らかの対策を考えていかなきゃならぬと、こういうことでいま緊急の調査を始めたところでございます。
  195. 中野明

    中野明君 あなたはこの席でたびたび二百四十円でももうほとんどの業種は赤字輸出を余儀なくされている、こういうことを繰り返して述べておられますが、いま二百二十円台に入ってきたのですから、その状況から言えば、まさに壊滅的な打撃を受ける危険があるわけです。ですから、これはもう緊急を要する問題でして、調べているとおっしゃっているわけですが、具体的にどういう対策を今後とろうと考えられるのか。
  196. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 対策はいろいろ考えなきゃならぬと思いますが、とにかくまず結果を見まして、どの程度の影響が出ておりますか、その影響の度合いによって判断をしたいと考えております。
  197. 中野明

    中野明君 それで、この六月危機説というようなこともちらほらまた言われております。特に二百二十円台でもう注文もとれずにお手上げと、こういうような状況について、大臣としてはどういう感触を持っておられますか。
  198. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 中小企業は過去数年の長い間の不況で体力が非常に消耗しております。そこへ急激な昨年の秋以来の円高でございますから、また急激に体力が弱くなっております。だから、もう絶えず中小企業全体の経営状態は、ごく一部のものを除きまして非常に重大な事態に直面しておると思うんです。でありますから、六月危機とかそういうことではなくして、危機は常に存在しておる、こういうつもりで私どもは中小企業政策に取り組んでおります。
  199. 中野明

    中野明君 日銀にお尋ねしますが、必死になって二百三十円の防衛をしておられたようですが、これが二百三十円の防衛線を突破されたことについて、日銀の持っておられる感触と見解ですか、それを最初にちょっと……。
  200. 田代一正

    参考人田代一正君) 私、実は政策担当じゃなく経理担当でございますので、答弁いたしかねるということでございますが、先ほど大蔵大臣からいろいろお話がございましたようなことじゃなかろうかと思います。
  201. 中野明

    中野明君 それじゃ大蔵大臣にお尋ねをしますが、日銀としては円対策はもうすべて出尽くした感じのように私どもも見受けるわけですが、今後金融政策の面で考え得る円高防止対策というのは何が残っておるんでしょう。その辺をどうお考えになっておりますか。
  202. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 私たちも考え得るあらゆる措置は尽くしたと思っているわけでございます。なお何か手はないかと、やはり検討は絶えず続けておるところでございます。
  203. 中野明

    中野明君 こういう緊急事態なんですが、これは本来総理にお尋ねをするべき性質のことだと思いますが、きょうは一般でございますので大蔵大臣にお尋ねをするわけですが、こういう状態で、もうまことに憂慮すべき状態でありますので、政府としてアメリカに特使を派遣するかとか、あるいは世界の国々に実情説明などに使いを出すと、そういうような福田内閣としてすぐ手を打たなきゃならぬのじゃないだろうか。あれほど二百三十円を攻防してやっておったのが、あっさりもう二百二十円八に取りつきから入っているわけです。こういう緊急事態であります。いま、何かできるだけの手を打ちたいとおっしゃっているのですが、その辺のお気持ちはどうでしょう。いずれ総理にもお話しいただかなきゃなりませんが、お聞かせいただきたい。
  204. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 実は通貨当局間では絶えず接触を保っているのでございます。事柄の性質上、そういうことは相場に非常に微妙な影響を及ぼすわけでございますので、その他の内容等は共同コミュニケ等のものしか発表されませんが、絶えず会合も重ね、あるいは電話連絡で絶えず言っておるところでございまして、そして、やはりいまのようなものに対しては、まず共同の認識を持つということが何より大事であろうということで、われわれも絶えず相働きかけているわけでございます。私がさっき申しましたのは、恐らく国内だけでやれる措置としてはほとんど手は打ったと思いますが、なお何かないかというので鋭意検討しておると、こういうつもりで申し上げたわけでございます。
  205. 中野明

    中野明君 いまおっしゃったように常時そういう接触はなさっているわけですけれども、こういう緊急異常事態ですから、政府の方が、福田内閣として本当に緊急事態だということで、諸外国に特使なり使いを出して実情説明をしたり接触するお考えがおありかどうかということをもう一度お尋ねいたします。
  206. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 特使を特に出すというような話は聞いておりません。そしてまた、やはり共通の認識が一番大事なことでございますから、それは絶えずやっているわけでございます。したがって、やはりいまの緊急的な事態というものに対して、外国のあれをどういうふうにやるかということは、主として日本にとってはドルと円との関係でございますから、アメリカも先般ドイツとの間でもやっているわけでございますし、また日本の依頼を受けてニューヨークでもドルの買い支えをやっているところでございますので、その線を強めていくことがとりあえず大事なことであろうと、こう考えているわけでございます。
  207. 中野明

    中野明君 続いて日本銀行にちょっとお尋ねをいたしますが、いまお話が出ておりますように、日銀がドルの買い支えで、二百三十円防衛に大変苦慮しておられることはよくわかりますが、こうした状況の中で日銀の外国為替の差損、これが為替の評価がえによって相当な額に達するのではないかと私ども思います。昭和五十二年度の七千百六十六億円、五十三年度の七千七十九億円の剰余金は見込み額どおりになるでしょうか、どうでしょうか。
  208. 田代一正

    参考人田代一正君) お答えいたします。  剰余金の点でございますが、昭和五十二年度に七千百六十六億円、さらに五十三年度に七千七十九億円と見込んでございます。昭和五十二年度につきましてはこういうことになるだろうと思います。また五十三年度はこれはいろいろ先行き不安定要因もいろいろございますけれども、恐らくこういうことになっていくんじゃなかろうかと思います。  ただ、ちょっとお断わりしておきますのは、五十二年度の七千百六十六億円という剰余金がございますが、その剰余金を誘導するに際しまして、さっき御指摘がございましたように、基準外国為替相場が三百八円から二百六十二円に下がったということもございまして、それに応答する差損が四千五百億ばかり、ことしの一月に発生しているわけでございます。それにつきましては、日本銀行の中にございます内部留保の一角をなす準備金を取り崩すということでもって補てんしているというために、こういう数字になっているわけでございます。
  209. 中野明

    中野明君 いま剰余金は大体見込みどおりにいけそうだということなんです、いろいろ手を尽くして。その処分勘定になっております国庫への納付金六千六百二十八億並びに六千六百九十億ですか、五十三年度は。これの見通しはどうでしょうか。
  210. 田代一正

    参考人田代一正君) お答えいたします。  五十二年度につきましてはこの金額どおりに納付することが可能かと存じます。五十三年度につきましては、さっきも剰余金の節に御説明いたしましたように、先行きかなり不透明な問題がいろいろあるかと思います。しかし、日本銀行といたしましては努めてこの達成について努力したいと、こういう気持ちでございます。
  211. 中野明

    中野明君 次に、住民税法人税割の事業税ですか、この課税状況について大蔵省に伺いますけれども、五十二年度当初のそれぞれの徴収見込み額、現在における見込み額、これをまずお伺いしたい。それから五十三年度の両税の見込みはどうなっておるのか、あわせて御返事をいただきたい。
  212. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 五十二年度の上期はこれは所得で申しますと八百八十一億円でございます。それから法人税額は三百五十二億円。それから地方税額、地方税でございますが、これが百八十一億円となっております。五十二年の方の下期の見込みでございますが、これはいずれも多分ゼロであろう、国の方も、それから地方の方も課税所得はゼロであろうと推定されております。
  213. 中野明

    中野明君 自治省に。この辺の事情は、地方公共団体予算を組むに当たりまして非常にいま財源不足で、特に法人税も去年は落ち込んでいるということもわかってまいりましたし、大変苦慮しているわけですが、その辺の指導はどういうふうになさっているのでしょうか。
  214. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 地方税であります事業税も、また住民税法人割も前年度所得を基準にいたしておりますから、五十二年度におきましては相当額住民税事業税が予定されたのでありますけれども、いま大蔵大臣からもお話がございましたように、五十二年度におきまして為替差損等が大量に出ることによりまして、内部留保の充実等が不可能になってくると、かようなことでありますならば、恐らくゼロになるのではないであろうかと、かように予想しているところであります。
  215. 中野明

    中野明君 結局国の方は日銀の為替差損などがあっても、納付金としてちゃんと先ほど来お話があるように入るものは入ると、こういうことになります。そうしますと、国は為替管理の失敗の影響を受けないという意味にもとれるわけですが、地方はいまの御答弁で明らかなように税収はゼロ、まともに地方団体影響を受けるわけですが、この為替の管理の失敗というものを何か地方だけが負わされているような、そういう感じを持つ一人でございますが、その点の御見解を。
  216. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) それは全く違うわけでございまして、国の方も法人税がゼロに、税はゼロになるわけでございます。それはなぜそうなるかと申しますと、実は日銀の方では為替差損をあらかじめ予想いたしまして償却準備金を積んでおるのでございます。その積むときにはその分は損金に見ませんから、すでに国税におきましても、それからまた地方税におきましても、その積み立てた分は課税済みなのでございます。だから先に取ってあるのでございます。今度納付金のところの段階で納付ができるというのは、すでに課税済みの償却準備金を取り崩してこの損を埋めるわけでございますから、したがって納付金の方はその関係で出ないと、こういう仕組みになっているわけでございまして、申しますれば、その分は国税地方税ともにさきにいただいてあると、こういう仕組みなのでございます。
  217. 中野明

    中野明君 大体そういうことは承知しておるわけですが、このいまの仕組みが少しおかしいから変えなきゃならぬのじゃないか、そういう私は提言を申し上げるわけですが、この剰余金から納付金を差し引いた額に課税をするようになっているからこういうことになるんでありまして、結局この納付金が剰余金に占める割合がふえればふえるほど地方の税が落ち込んでまいります。しかもその剰余金の中に課税済みの準備金の取り崩しが入っている。そうなりますと、税法上ではこれは所得は全然なくなってしまいます。そこで、ぜひ検討し実施の方向に向かっていただきたいのは、事業税では電気ガス供給業あるいは保険業、ここらは収入金額に対して課税をしておるという仕組みになっております。これと同じというわけにはいかなくても、一定の税収がやはり保障されるような方式に改めることが地方財政にとっても好ましい姿じゃないかと私ども思うわけです。と申しますのは、いまのお話のように大変な不況で倒産企業がたくさんふえております。各県で予算を二、三当たってみましたが、ほとんどもう見込めませんと、こういうようなことですから、均等割の六千円だけということになります。事業税はゼロ。もう倒産した企業と同じような現状金額の上ではなってぐるわけです。日銀が倒産するわけはないんですが、倒産したと同じような地方税の姿になっております。だからこういうことを考えていきますと、やはり住民感情から言ってもなかなか理解できないものがあると思いますので、この制度を、電気ガス供給業のようなわけにいかぬかもしれませんが、変えるお考えがあるかどうか。
  218. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 日銀も税の関係におきましては一般法人とちっとも違わないわけでございます。為替利益があれば当然納付金のさきに税金が先に働くわけでございます。そこをよく御理解いただきたいと思うのでございまして、したがって、その所得に対しまして、所得税もそれから住民税も全部同じように働いていくわけでございます。差損があればそれは取れないのでございます。ただ日銀という特殊な性格がございますから、本当に配当するに必要なもの、法定準備金を除いてはいわば国にかわって発券業務を行っているわけでございますので、留保を残す意味がないわけでございますから、税引きの残りはほとんど国に納付していただこうと、税率は普通の税率で課税いたしているのでございます。ただ、日銀といたしましては当然為替差損が出る場合がありますから、それを有税で積み立てているのでございます。したがって、今度は為替差損が出ましたときには、これは当然法人税も国も地方課税できないことは一般の法人と同じであると、それを取り崩して埋めておる。損を埋めておるということでございます。税務計算上の所得の話ではございません。そういう仕組みになっておるわけでございますので、外形標準を入れるということには全くなじまないであろうと、かように思っておるわけでございます。
  219. 中野明

    中野明君 大臣ね、納付金は予定どおり、日銀がいかに差損が出ようとちゃんと入るわけです。予算書を見せていただきますと、この納付金はやはり雑収入で一般の税収と同じところに掲げられているわけです。そういうことを考えますと、いままでの積み立てを取り崩して納付金に回すと、こういうような形をとっているということになると、住民感情として国庫の方はちゃんと一応入るべきものは入っていると、こういう点を私は指摘しているわけですが、その辺はどうでしょう。
  220. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 先生御指摘のとおり、日銀法三十九条第五項によりまして国庫納付金が損金扱いを受けているわけでございますけれども、国庫納付金の考え方といたしましては、いわば国が日本銀行に対して銀行券の独占的発行という特権を与えたことに対する報償であると、このような考えでございますので、これはその法人税の対象にするのは適当でないと、こういう考え方がございまして現在のような経理処理をしているわけでございます。
  221. 中野明

    中野明君 それはわかるわけなんですが、要するに株式会社といっても日銀はもう政府全額出資の会社です。ですから、そういうことを考えると理屈としては確かにその理屈かもしれませんが、政治というのはやはり住民感情というもの、こういうことも無視するわけにまいりません。そういう意味で将来の改正点についての問題提起をしているわけなんですが、その辺の御検討をまたいただきたいと、こう思う次第でございます。  それでは、次に金利の問題に移りたいと思います。十六日に政府は公定歩合〇・七五%の引き下げを決定されたわけです。先ほど来議論がありましたように、財界あるいは銀行筋も今回のような引き下げでは従来の政策の延長であって、決して景気の対策とはならないと、効果は薄いというようなことを発言している人が非常に多いわけですが、それを押して公定歩合を引き下げて最後の手を打たれたようですが、こういう事態になってくると、まさにこの公定歩合の引き下げというのは時期が早過ぎたのではないかという気持ちもしないでもありませんが、まあそれはそれとしまして、まず私が最初にお伺いしたいのは、昨年一年間で預貯金の金利の引き下げを二回やっております。これで一体どれぐらい預貯金が目減りをしたか、まずその辺をお伺いいたします。
  222. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 個人の預貯金の金利の収入がどのぐらい減ったかという御質問でございますが、これはたとえば定期性預金の満期日の分布がどのようになっているかということにつきまして統計がございませんので、非常に正確に申し上げることは困難でございますけれども、一応の前提を置きまして試算いたしますと、これは民間の預金分でございますが、五十二年の四、五月の引き下げで五十二年度中に個人に入るべき利息の減少額は約三千億円でございます。それから五十二年九月分で同じく五十二年度中に個人の利息の収入が減少した分は約七百億円、このように推定されます。
  223. 中野明

    中野明君 それで今回、同じく〇・七五利子を引き下げられることを決定されたわけですが、そうしますとことしの大体の推定はどうでしょう。
  224. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) ことしの分、四月分でございますが、これはまだ先ほど申し上げましたようにいろいろな前提が必要でございますけれども、一応の推算といたしましては、五十三年中に個人の受取利息の減少した分は約二千億円、このように考えられます。
  225. 中野明

    中野明君 郵政大臣にお尋ねをいたしますが、郵政大臣としてはもともと今回の公定歩合引き下げには反対の考えをお持ちになっておったやに私も承知をしておりますが、結論としてこういう事態が生まれてまいりまして、銀行の預金利子を下げると、こう決まりました。郵便貯金の利子はどうされますか。
  226. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) 去る十六日に公定歩合が〇・七五%引き下げられました。これに伴って民間金融機関の預金金利の引き下げが御指摘どおり一昨日正式に決定されたところであります。これに関連いたしまして、郵便貯金の利率をどうするかという問題でありまするが、かねがね私が申し上げておりますとおりに、零細なささやかな金利を目的とする預貯金者の立場に立って考えますると、きわめて重大な問題でありまして、預貯金者の立場に立って十分考慮せねばならないと、またそういう立場を踏まえて、郵便貯金が御承知のとおり三十七兆円という膨大な資金を有しておりまして、わが国の金融全体の流れに相当の影響を及ぼしていることは先生御理解いただけるものと思うのであります。こういった実情にある点につきましても十分考慮いたしますと、郵便貯金の利率の扱いについては、一つの方向を見出さねばならない時期にあると考えております。  そこで御承知のとおりに、郵便貯金の金利は郵便貯金法第十二条で決定の原則があるわけでありまして、政令で定めるわけですが、郵政大臣がこの立案に当たって郵政審議会に諮問せねばならないという法的な規制がありますので、近く郵政審議会を開いていただいて、委員各位の広い意味の御意見を賜って、その時点でさらに真剣に考えてみたい、かように考えている次第でございます。
  227. 中野明

    中野明君 郵政審議会の意見を聞いてと、こうおっしゃっているわけですが、大臣としては諮問されるんでしょう、原案をつくって。それはいつ、幾らぐらいされるつもりですか。
  228. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) 郵政審議会の開会をお願いいたしましたのは三十日でございます。諮問をするのだから、大体どの程度の利下げで諮問をするのかという御指摘でありまするが、先ほども御質疑の中で御指摘がありましたとおり、昨年度は五月、九月と二度の公定歩合の引き下げで連動して貯金金利の引き下げが行われる。今度でまあ三度目でございます。私は正直に申し上げて、零細な預貯金者を守るという郵政大臣の立場で苦悶状態であります。したがって、今度の審議会にはありのままの姿を審議会に出しまして、まず、御承知のとおりにこの郵政審議会は各界各層の集まりでお願いをいたしておりまするから、各界各層のこの重大な問題に対しての御意見を聞いて、その上でさらに引き続いて私が審議会の招集をいたしたい。ただ御理解をいただきたいのは、こういった厳しい財政事情のもと、また、先生方が絶えずこの委員会の場で御指摘の雇用不安定を除くという御意見なども考え合わせますると、劈頭に申し上げたとおりに、本当にもう苦しい立場でございます。したがって、そういったことも十二分に検討の課題にいたしまして、そういう方向に進んでまいりたいと、かように考えている次第でございます。
  229. 中野明

    中野明君 郵政大臣から郵政審議会の意見をということでございますが、しかし、郵政審議会の構成そのものが大変な批判を過去からずっと受けてきております。十七日の朝日新聞で、郵政大臣が審議会の役人の委員を解任するという新聞記事が出たわけですが、この辺はお考え変わりありませんか。
  230. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) 確かに朝日新聞で私は御指摘のとおりの記事を拝見いたしました。これは行政改革に伴って、各官庁から出ておられる審議委員は御辞退いただくという方針に相なっているわけでございます。そのときに、ただいまの御指摘のような御質問がありまして、これは法律で定められて、郵政大臣が金利の引き下げについては郵政審議会に諮らねばならないと。ところが、はっきり申し上げてそれに反対の立場をとる大蔵省の事務次官もいるじゃないか、いや公取もいるじゃないかというのがあったので、私は今度の審議会に間に合うか合わないかは別問題にいたしまして、そういう御批判もかねがね聞いておりますので、閣議了解事項である、この各官庁からの審議委員に御遠慮いただく方針でありますと、こういった意見を申し上げた次第でございます。
  231. 中野明

    中野明君 そうしますと、行政改革でたしか私は七名減らすということを承知しておりますが、現在大臣も御承知のように、四十三名の審議会委員の中で現職の役人及び元お役人、それに準ずる公社公団のようなのを含めますと十四名おります。それから財界代表が十二名、そして消費者代表と純然と思えるのは二人ぐらいしかおらぬのですね。あとは学者、評論家、こういうことになっております。ですから、この際七名減らされるのでしたら、もうお役人を本当に減らして、そうして全体的にこういう機会に全部入れかえて、やはり郵政審議会令で要求しているような消費者の代表を入れると、そういうふうにしないと納得できないと思います。特に会長さんが、代々経済界の一番偉い人が大体会長になっておられます。現在も土光さんですか、土光さんは利子を下げろと、公定歩合を下げろと一番の急先鋒だった人です。こういう方が会長で、そして利子の引き下げを審議会で審議して、結果大臣の言うたとおり下げますと言われても納得できないわけです。この辺ひとつ服部郵政大臣として、こういう行政改革の一環として、その機会に内容をがらっと改められる気持ちがあるのかどうか、いま一度。
  232. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) 郵政審議会のメンバーをこの機会にがらりとという御意見でありまするが、今日まで各界各層から公平にお願いを申し上げて、今日までの郵政行政運営に多大の貢献をいただいた方々ばかりでございます。しかし、私はこの委員会のあり方というものについて、いろいろと御批判を受けておりまするが、余りに長きにわたることについては私も余り賛成はできませんが、おのおのの立場で、やっぱり専門的知識を必要とする場合はかなり多いわけでありまして、これも定められた任期が来た場合に、これは一挙にやることはちょっと御要望に応じかねるわけでありますが、任期満了の時点で御指摘どおりに各界各層から選んでまいりたいと、かように考えている次第でございます。  なお、この際行政改革の一環として、いわゆる役所並びに関係機関の選ばれている委員を一掃すればどうかという御意見でありまするが、正直申し上げて、私はやはりこういった御苦労いただいている関係者にも専門的な知識をお持ちになっている方々を必要とする場合も多いわけでありまして、しかし、なるだけそういった方々に今後は御遠慮をいただいて、国民に十二分の理解と納得をしていただけるような審議会をつくりたい、かように考えている次第でございます。
  233. 中野明

    中野明君 大臣も御承知のように、審議会の使命が非常に大きくなっております。三十八年に、いままでは法定だったのが審議会で利子の問題を取り扱うとか、いろいろこうなってきたときに、いまのメンバーでは、構成内容を見ただけでも圧倒的に官僚、元官僚あるいは財界で可半数を占めている。こういうことではこれは審議会の性格としておかしいのではないか、こういうふうに思うわけです。  最後に、これは特に強い要望を含めて申し上げておきますが、物価がやや鎮静の方向に向かいつつある今日、ほっとしかけたときにまた預金の目減り、これでは庶民はたまったものじゃありません。そういう意味で、どうしても金利を万やむを得ず下げなきゃならぬことになれば、その下げ幅を絶対に少なくするように、特にこの点は強い要望を申し上げておきます。御決意をちょっと。
  234. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) 先ほどもお答え申し上げたとおりに、やはり一つの金融の流れの中で、私自身はもう心境は何度も申し上げているわけでありまするが、現在の厳しい経済情勢下の中でどの道を選ぶかということに非常に苦悶をいたしております。したがって、今後この問題と私は真剣に取り組まねばならない宿命にあるわけでございまして、そういう点も十二分に認識しながら、金利だけの問題を取り上げて考えた時点の私の心境と、また、いま経済的に行き詰まっているこの問題をどうするか、また、一番大きな国民のいわゆる雇用安定施策にどのような影響があるかということも十二分に総合的に見きわめつつ判断をし、真剣に取り組んでまいりたいという心境でございます。
  235. 中野明

    中野明君 農業問題に移りたいと思います。  農林大臣にお伺いをいたしますが、日米の通商協議で牛肉とかオレンジ及び果汁などの農産物の輸入枠の拡大が決定されました。これは生産する農民や団体にとっては大変なショックであります。不安と危惧を抱いておるわけですが、この輸入枠拡大に至った経過、経緯、そしてまた政治的な判断、これは農林大臣としての御見解をまず述べていただきたいと思います。
  236. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 日米間の経済調整というのは私が就任する前からの長年の懸案でございました。アメリカ側から、農産物についてもっと自由化したらどうか、ないしは輸入枠を拡大してもらいたいものだという非常に強い要請があったわけでございます。この背景は必ずしもドル対策だけではなくして、貿易に臨む日本側の姿勢として、もっと柔軟、弾力的にやっていいのではないかということでございます。中でも具体的に要求がありましたのは、オレンジについては自由化してほしい、季節自由化をしてもらいたい。ミカンと競合しない時期、すなわち四、五、六、七、八、こういう時期はミカンと競合しないので自由化してもらいたい。ジュースについては五万トンのジュースに対して二万トンという数字だったと思いますが、ブレンド用として――五十万トンに対して五万トンでございましたか、かなり大きいものでございました、ブレンド用として買ってもらいたいという要望がありました。牛肉についてはホテル枠等、高級牛肉を一万トンという要請があったわけでございます。  さてこれに対処するに、私としては作付転換、稲作の再編成の時期でもございますので、しかも果樹とかあるいは酪農等々に転換をしなければならない大事な時期に、もし農家に影響を与えるようなことがあっては大変だという観点から、農家の皆さんに影響を与えない範囲はどうかなあということでずいぶん頭を使いといいますか、苦労をし検討いたしまして、オレンジについては、季節自由化は絶対全体的な自由化にもつながるということでこれを返上し、しかも四月、五月という要請でございましたが、四月、五月もこれはタンカン等に影響を与えるというところから、六、七、八、この三カ月に限って二万二千五百トンを買う、これならば農家には悪影響を与えないであろうと、こういう判断に立って対処したわけでございます。  またジュースについては、実績が千トンございましたけれども、ブレンド用として限定をし、これについては果汁業界からもぜひひとつ入れてもらえば消費の拡大にもなる、ミカンジュースの消費拡大にもなるという要請もございましたので、千トンを三千トンにする、そして、グレープフルーツについても要請がありましたので、千トン程度を追加する。  牛肉については、幾ら言われましても需要のないところにおこたえはできないというので、ホテル枠は三千トンぐらいは需要がある、それ以外についてはもし需要があればおこたえしましょう、お互いに努力してみましょう。しかし、これはあくまでも総枠をふやしての、一万トンなりあるいは三千トンなりというものをアメリカから買うからというので総枠をふやしたのではなくして、日本の必要とする輸入牛肉の範囲内において、いい肉に嗜好があれば、アメリカが売りやすい高級牛肉について配慮をするということでございまして、私としては農村に影響を与えない範囲ということを最大のポイントとして対応したというわけでございます。しかし、農家の皆さん方が非常に不安がっておりますので、これらに対しては適時対処してまいりますが、むしろ必要以上に不安や悪影響を与えておるのではないかと、こういうことも心配し、農業団体等に実態について御説明を申し上げ、御納得をいただいておる、努力をしておるところでございます。
  237. 中野明

    中野明君 時間がありませんのではしょってお尋ねしますが、ミカンは確かに生産過剰になって価格は暴落しております。そこで農林省としては晩柑類へ転換をすると、こういう方針でおられるようでございますが、一番やはり今度目の輸入で影響を受けるのはハウスミカン、これじゃないだろうかと思いますが、このハウスミカンの受ける影響についてどう認識なさっておりますか。
  238. 野崎博之

    政府委員(野崎博之君) 先生がおっしゃいましたように、ハウスミカンについては、ちょうどオレンジ輸入期の出回り期になりますので最も懸念されるものでございますが、現在は非常に量も少なく大体一万トン程度でございますし、贈答用や特殊な用品に提供されるものでございますので、関係団体とも十分協議をしながら、綿密な出荷計画を立てて出荷をするように指導をいたしたいと考えておるわけでございます。なお、そのハウスミカンについては、昨年度、これは非常に設備投資が高くかかりますので、余りふやせば需給のバランスを失して非常に収入が落ちる。したがいまして、農林省としては余りそのハウスミカンの生産を奨励しないと、そういうような方針で現在おるところでございます。
  239. 中野明

    中野明君 通達を出されたときには、すでにもう制度資金を借りて生産に入っているというような人もおるわけです。そういう面では、ぼくは通達は非常に遅きに失したんじゃないかという感じもいたしておるわけですが、いずれにしましても、その範囲の中で全部オレンジが消化できれば結構なんですが、もしできなかったときのこともやはり心配であります。そういう意味で大変ハウスミカンは心配をしているようでありますので、この対策ですね。そして通達が出る以前にもう制度資金を借りてやっているというような人たちに対するやはり利子の援助とか、あるいは償還期限の延長とか、そういうことについてのお考えはございますか。
  240. 野崎博之

    政府委員(野崎博之君) 先生おっしゃいましたように、普通のミカンについても非常に価格が低落した場合に、個々の農家と個々の金融機関との融資条件の緩和ということについて、農林省も金融機関等に対して依頼をいたしておりますので、ハウスミカンについても、今後そういうことがあれば同様な措置をとりたいというふうに考えております。
  241. 中野明

    中野明君 農業問題の最後にお尋ねしておきますが、ミカンの生産農家から強い要望が出ております、このオレンジを輸入する、輸入するとどうしても利益が出る。それを何とか生産農家に還元するような方策、一元的な輸入をするなり協会をつくって輸入するなり、そういう方策を考えてくれと。結局は農家が工業製品の輸出のしりぬぐいをさせられているという感情的なものがあります。そういう点で何か対策をお考えになっているのかどうか。
  242. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 御指摘のように、今回の輸入枠の増によって、その輸入を農業団体でございますか、がみずからやってコントロールしたいという意向もありますし、それはなかなか大変だと。員外利用の問題等もありますし、むしろ業界にお願いして、その中から一部生産農家にというような声もございますが、いろいろこれは業界と団体等との話し合いでございますので、われわれとして積極的にはまあできませんけれども、そういった方向に行くのではなかろうかなと、当分ひとつそういった話し合いの結果を待ちたいと、こう思っております。
  243. 中野明

    中野明君 できるだけそういう方面で、やはり農家の納得いく政策をとってもらいたい。また、そういう対策大臣の方としても強力に講じていただきたい、これを要望いたしておきます。  それでは、ちょっと時間がなくなりましたので申しわけありませんが、運輸大臣もいらっしゃるようですので、一言だけ。  造船が大変な不況であります。私の地域は四国なんですが、瀬戸内海を抱えまして大変な不況で倒産も出ておりますが、この造船業界の今後の見通しをちょっと述べていただきたい。
  244. 福永健司

    国務大臣福永健司君) タンカーの船腹過剰だとか、あるいは新造船の受注減少、こんなところを中心に非常に造船業界はいま不況にあえいでいるということでございますが、これも先行きもう短くて何とかなるかというところまでなかなかいっておりません。不況はなお続くものと覚悟しなければなりません。したがって、これらのことに対していろいろ対策を講じていかなければならない、これが現況でございます。
  245. 中野明

    中野明君 今回はよく二十五兆円にも達する公共事業と、こう言われておるわけですが、この公共事業が造船業界に与える影響をどの程度お考えになっていますか。
  246. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 造船そのものに公共事業影響を与えるというのは、これはやりようによって大分違うわけでございますが、ぜひそうあらしめたいということで、私どもといたしましても関係省庁等ともいろいろ折衝をいたしまして、できるだけ造船業を助けることができるような公共事業と、こういうことで、ある程度それも進行いたしております。まだまだこういうことについて一層考えていかなきゃならないと、そういうように存じておる次第でございます。
  247. 中野明

    中野明君 何か報じられるところによりますと、造船の関連企業に優先的に発注をしてもらいたいというようなことで、運輸省の船舶局とか中小企業庁、そこらと連携をとって建設省に申し入れているというような記事も出ておりましたが、これは具体的に何か進んでいるんですか。
  248. 福永健司

    国務大臣福永健司君) 御説のようなことをぜひ促進いたしたいと存じまして、たとえば私自身といたしますと建設大臣に言って、ぜひ造船の技術等を生かせるような、たとえば鉄鋼構築物とか橋のようなものでもできるだけ発注してもらえば造船の技術を使うことができると。そういうようなことにつきましても、その種の業種が助かるようなということも、一面からそうでございますが、同時に、いま四国のお話がございましたが、四国あたりでは特に不況に苦しんでいる、したがって、そういうようなところへ公共事業もできるだけ割り振ってもらうことがよかろうというようなことで、実は多少これは露骨に私どもそういうことをしてもらうように話をいたしております。そういうことで、窓口としては造船関係都道府県連絡協議会、十四県ばかりでつくっておりますが、こういうところともそれを通じても話をいたしております。ほんの一、二例を挙げさせていただきますと、たとえば地方公共団体お話をしてその種のことを進めていただいておって、これは私はそれなりの評価をいたしておりますが、長崎県なんかでは道路、橋梁、ダム、水門、下水道工事等の鉄鋼構造物を多く用いるプロジェクトの増加を進めてもらっております。また愛媛県では公共事業の計画に当たって、造船不況の影響を強く受けている今治とか越智地区への重点的配分を考慮してもらっていると、こういうようなことを、ほんの一、二の例を挙げるとそういうことなんでございます。この種のことも、もっともっと促進するという方向へまいりたいと考えております。
  249. 中野明

    中野明君 造船を初め繊維とか、構造的な不況のために大変な失業者が出ております。この失業者については、きょうの本会議で労働大臣も述べておられたように、結局転職するという方向がこれは一番いいわけでありますので、そうなってまいりますとどうしても離職者の職業訓練ということが問題になってくると思います。ところが現実に職業訓練の実態を調べてみますと、四国全体を私は調べてみましたが、職業訓練校には定員の大体半分ぐらいしか入っていないということです。この辺どうお考えですか。
  250. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のように、職業訓練校の現在の運営の状況という点につきまして抜本的に検討をしなきゃならぬ時期が来ておると、このように思います。  一つは、実は労働行政のPR不足といいますか、相当いろんなことをやっておるにかかわらず、それが一般に知れ渡っておらないという点もあります。反面、職業訓練所のその訓練科目なり、あるいは入校時期なりそういう面において、特に最近は不況業種からの離職者という中高年齢層でありますから、こういう方々がやはり再就職のために職業訓練を受けるという場合は、いままでのような職業訓練校のあり方では非常に役に立たない、利用価値が少ない、こういう点がございますから、大いに今度は、やはり雇用政策というものは職業訓練と表裏一体でいくべきである。具体的に申しますと、職業安定局と職業訓練局というのはもう一体的な運営が考えられてしかるべきだと、こういうふうに考えておるわけでございまして、そういうことを前提といたしまして、近く御審議を願う予定になっておるのが職業訓練法の改正でございまして、これは十年前の状態がそのまま続いておるわけですから、これもいまのような考え方を踏まえて、時代の要請にこたえ得る職業訓練校の運営ができるように職業訓練法の改正をやりたい、そして御趣旨に沿うような方向に改善をしたいと、このように考えておるわけでございます。
  251. 中野明

    中野明君 いま大臣が言われたように、労働者が職業訓練を受けようと思ったときにどうしたらいいかということが非常にPR不足です。この点はぜひ改めていただいて実行もしていただきたいんですが、職業の相談も含めて要望にこたえられるわかりやすい説明材料を提供していただかないとならぬのじゃないか、こういうふうに私も思います。また、事業転換に伴う職業訓練への援助措置も、これは労働省だけの関係じゃないと思いますが講じていただいて効果的な運営をしないと、せっかくの制度があってもこれが生きていないという現状、それから職業訓練校のことはもうすでにいま始まったことではないわけです。ですから、これは少し行政の方の手の打ち方がいかにも遅いという感じを私は受けてなりません。ですから、これはもう緊急事態でございますので早急にこれは手を打っていただきたいと、このように要望をしておきます。  最後になりましたが、沖繩の問題について一言だけお尋ねしておきます。沖繩でわが国でも初めて交通方法の変更が行われるわけですが、七・三〇と、こう地元で言っておりますが、着々その準備が進行中ですが、私は那覇市の現状を見ますとちょっと七・三〇は心配な面もあるわけですが、総務長官の見通しをちょっと。
  252. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) お答えをいたします。  昨年の九月に閣議決定をされて以来、大変当事者の方々に御協力を願っておりまして、順調という言葉はどうか知りませんが、スムーズに進んでおるわけであります。特に国の関係においては九十何%、まあ九二%、また県の段階におきましても七十数%、ただ市町村段階においては多少おくれてはおりますが、これは当事者の方々に御努力をちょうだいして、七月三十日には間違いなく私は実行できるものと確信をいたしております。
  253. 中野明

    中野明君 県道、国道の方はいまおっしゃったとおりなんですが、那覇市はもう非常に大変、そうでなくても大変なところなんで、現在一部工事が始まって大変な渋滞をしておりますが、昨年長官は沖繩へ行っておられるわけなんですが、いずれ国会でも終われば一応現地を見に行って適切な指導をするといいますか、手を打つというお考えはございますか。
  254. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) 長い間なじまれたものを変更するわけでございますから、やはり想像しないいろいろな問題が発生することは私は当然なことだと思っております。そういう意味からできるだけ早く、できるならば来月の上旬にでも国会の関係がお許しさえ願えるならば向こうに出かけまして、いろいろ問題点を取り上げて協議をしてみたいと、こういうふうに考えております。
  255. 中野明

    中野明君 特に二点だけお答えをいただきたいのですが、特別事業を地元は強く要望しております。この特別事業に対する長官の考え方と、それからもう一点は、初めての行事でございますので、事後いろいろと予測しないようなことも起こってくると思いますので、それに対する苦情処理の窓口、これもただ行政だけじゃなしに、一般の県民の良識的な学識経験者のような人たち、あるいは国、県、ここらの三者で苦情を処理して補償の可否を決めるようなそういうものを置かれる考えがあるかどうか、この二点。
  256. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) お答えいたします。  特別事業については、やはり国の施策で、大変長い間なじまれた環境をここで変更するわけでございますから、やはりこの特別事業については、県その他のいろいろな御要請につきましては各省連絡の上これは実現をしなければならぬと、こういうふうに考えております。  ただ、その後の苦情処理の問題につきましては、これは起きることは当然であります。そういう意味からこの交通変更に伴う対策本部はそのまま存続をさせなければなりませんし、また現地の窓口も一定の期間存続をさせるべきだと、こういうふうに考えておりますが、ただ御指摘の民間人等々をこの中に入れてはどうかと、この問題については、よく検討して御指摘の点におこたえできるような形で進めてみたいと、こういうふうに考えております。
  257. 中野明

    中野明君 以上で終わります。(拍手)
  258. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で中野君の一般質疑は終了をいたしました。     ―――――――――――――
  259. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、粕谷照美君の一般質疑を行います。粕谷君。
  260. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は五十三年度の教育予算を中心にして質問をいたしますが、その前に、最近子供たちの非行の問題あるいは低学力の問題が世の中で大きく取り上げられております。そういうときに、先月の十五日、目黒区の東山小学校が社会科の見学に裁判所に行きました。東京地裁に行きまして、七〇三号法廷でいろいろと説明を聞いておりましたところが、その説明が途中で打ち切られて外に出されてしまったという事件があったわけです。翌日の読売新聞によりますと、その原因がいろいろと書いてありましたけれども、その内容について御報告をいただきたい。
  261. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) それではお答え申し上げます。  ただいま御指摘のありました小学校の児童の裁判所見学の件でございますが、結論的に申し上げますと、小学児童の見学を途中で打ち切って追い出したというふうな事実はないというふうに考えております。  その経過を申し上げますと、当日は二組の見学が予定されておりました。一つは、午前九時三十分から十時三十分までの一時間の予定で、それから第二班目が十一時から十二時までという、二つの見学が予定されておったわけでございます。これは目黒区内の東山小学校の児童の裁判所見学でございまして、法廷の見学で、傍聴ということではなかったようであります。ところで、この第一班の到着が、実は裁判所の前に見学をしておった国会の方の御都合で大幅に早まって、午前八時五十分ごろになってやって来たというふうに、これは引率者の言うことでありますが、八時五十分ごろに裁判所に来たわけであります。当日は朝から雪が降っておりましたので、広報係はすぐに当日の空の法廷を調べまして、それで七〇三号法廷があいているということで、児童を誘導し、九時五分ごろから説明を始めていたわけであります。そして、一時間ほど説明いたしまして、これを終えようとしていた十時十分ごろに、この法廷を別の事件の審理のために使用するんだという連絡がございましたので、それでは説明をこれで終えますということで児童らを法廷外の廊下に誘導して、そして児童は下へおりて行ったと、こういうことになるわけでございます。そして、その児童が法廷から出た後で三階から上がってきた傍聴人らをボデーチェックの上入廷させたということでございます。なお、第二班は、これは十一時からの予定でございましたけれども、なお九時三十分ごろに裁判所に到着しまして、九時五十分から十時五十分の間、これは七〇一号のあいている法廷で説明をしたと、こういうことでございます。したがいまして、客観的に外から見ますと、一方小学生が法廷から出て行く、他方下から他の傍聴人が上がってくるということで交差いたしましたので、まあ追い出したように見えたというような状況はあったかもしれませんけれども、内実はいま申し上げたとおりでございます。
  262. 粕谷照美

    粕谷照美君 私はその学校に直接電話をして聞いたわけですよ。そうしましたら、これから説明をする場所はここに裁判官が座るとかここはどうだとかという、そういう説明の部分がカットされて、そして出てくださいと言われたと、こういうふうに言われているのですが、それは事実ではありませんか。
  263. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 説明の内容がどこまでしておったところで、そこで交代といいますか、じゃこれで終わりますというふうに申し上げたのか、そこのところを私は残念ながら正確に承知しておりませんけれども、しかし、法廷に入ってから約一時間たっておるわけでございますので、恐らく必要な説明はほとんど終わっておったのではないかと思いますが……。
  264. 粕谷照美

    粕谷照美君 あなたの方はかと思いますということであって、私は現実に引率をされた先生からそのお話を伺ったわけですから、そういう推測で物を言うことについてはおやめいただきたいというふうに思います。  ところで、その三階から上がってこられた傍聴人というのは、一体どういう方が上がってこられたのですか。それから、たとえばその方々は最初から七〇三法廷に入られる予定でいたのでしょうか。どうでしょう。
  265. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) お答え申し上げます。  これは最初その当日三〇八号法廷を使って審理、判決言い渡しをされる予定の事件の傍聴人でございまして、この事件は、これは被告人が五十二年の十月十五日に東京都の中央区の銀座六丁目の歩道上で肩が触れたということからけんかとなった相手に対して顔面を手拳で殴打するとともに、逃げ出した同人の背後から拳銃弾一発を発射したが、同人に命中しないで、折から付近を通行中の歩行者に弾丸を命中させて全治約二カ月を要する傷害を与えたという、こういう事実に対する公判の期日でございまして、この公判は、この当日が四回目でございまして、それまでに三回法廷が開かれておったわけでございますが、これはその三回とも傍聴人が七、八名ないし十一名程度だということで比較的審理は静穏であった。こういうことから、当日、傍聴人も恐らく十名ぐらいであろうというふうに予想してその三〇八号法廷を使って審理を開こうとした。ところが、当日午前九時五十分ごろから係員が予定どおり傍聴券の配付を開始しまして、十枚の傍聴券の配付を終えたところで、玄関ホール付近にいた約四十名の組関係らしい者が、傍聴券が十枚とは何だ、少な過ぎるではないかというふうに騒ぎ出したわけでありますが、その庁舎の三階にある三〇八号法廷の前の廊下に皆集まってきたわけでございます。その法廷の廊下の前で入ろうとしたところを係員からだめだというふうに断られますと、口々に、こんなたくさん来ているのに傍聴券十枚とは何事であるか、それから家族が入れないじゃないか、報道の人の数が多過ぎるのじゃないかというふうなことを言って食ってかかっておったのでございますが、さらに、法廷の入り口付近に報道関係者の方がおられまして、それに対して、おまえらがいるから法廷に入れないんだ、報道なんか関係ないから帰れ帰れというふうな、ぶっ殺すぞとか、刺すぞとかいうような暴言を吐いて険悪な状況になったようであります。こういうことで、裁判長は、弁護人がそのときに見えておられましたので、弁護人にひとつあの者たちを説得してほしいというふうに頼まれる一方、書記官に、あいているもう少し大きい法廷はないかと、そういう有無を調べさせられたわけであります。その当日その小学生が七〇三号を使っておるということを知らないままで書記官の方で訟廷に連絡して、七〇三号があいておりますという連絡をいたしましたので、察するに、裁判長の方では、ここで傍聴人とそれから傍聴人になろうとする者たちとの間の相互のトラブルを避けようというふうに考えられて、当日法廷を七〇三号法廷に変更するという決定をされた、そういう動機だろうと思いますが、変更されました。それで、その者たちが下から上へ上がってきたと、こういう状況でございます。
  266. 粕谷照美

    粕谷照美君 簡単に言えば、組というのは暴力団の組というふうに言っていいのではないかと思いますが、その人たちが騒いだので、大きい方へ移さなければならないと判断をして移したと、こういうことだと思いますけれども、こういうことはしょっちゅうあることなんでしょうか、どうでしょうか。
  267. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 法廷をその当日になってから変えるということはほとんどございません。
  268. 粕谷照美

    粕谷照美君 子供たちは一応裁判所の説明を聞いてそれで了解はしたといたしましても、翌日のあの新聞を見まして非常にショックを受けているわけですね。特に社会科で行った。あなた方の身分を守る、そして悪いことをした人たちについてきちんと判定を下すという裁判所がそういうことをやったのかということについては、大変ショックを受けております。正義の味方であるべき裁判所が何だというような声も大きく出ておりましたし、学校の先生方にも私はお伺いしたのですけれども、とにかく学校参観をいろいろと前もってお願いをして来てもそういうような取り扱いをするということはきわめて非教育的だというふうに思いますという感想なども漏らしておられましたけれども、文部大臣、どうでしょう、とにかく子供たちをきちんと育てていかなければいけない、正義を愛する子供たちにしていかなければいけない、こういうふうにやっているときに、裁判所がそういう行動をとるということについての文部省としてのお考えはどうでしょう。
  269. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 東山小学校の件は、あの新聞報道以上のことは承知をいたしておりませんけれども、見学を途中で打ち切られた子供たちにしてみればわけのわからないことであったろうと思うのです。そうたびたびあることではないという御説明でございましたけれども、そういう応急措置でありましたならば、なおさら子供たちにも理解のいくだけの御説明をしていただくぐらいの配慮はしていただきたかったなあと思います。
  270. 粕谷照美

    粕谷照美君 最高裁、もう一度お伺いしますけれども、そのときに、じゃ十枚渡した後の、何人入られたかわかりませんけれども、その方々は全員傍聴券を持って名前などを記入されるのかどうか。ちょっと私は手続がわかりませんけれども、入られたのでしょうか。
  271. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 七〇三号法廷に変えた後、そこへ入った人たちが全員――最初小さ過ぎると言って騒いだ方たちが皆入ったかどうかという問題でございますね。それは、七〇三号法廷の大きさから、そのときに傍聴を希望した人は全部入れたと聞いております。
  272. 粕谷照美

    粕谷照美君 傍聴券を持って入ったか。
  273. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 傍聴券は発行しておりません、そのときは。最初小さい法廷でやる予定で、それで先ほど申し上げましたとおりに十名分を出したわけでございますが、その後法廷変更ということで、そのときに入ることを希望しておる者全員が入れる大きさでございましたのでそのまま入ったと、こういうことでございます。ボデーチェックをして入れたと、こういうことでございます。
  274. 粕谷照美

    粕谷照美君 そういうことはできるのですね。私はそういうことは非常に不思議な感じがしてならないのです、傍聴券なしに判決を傍聴できるというそういう前例をつくられたわけですから。
  275. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 刑事裁判の法廷は、これは原則として傍聴券なくして入れるのが普通であります。つまり、どなたでもいつでも見られるときに見られる。ところが、それを希望する方が多いという場合には、あらかじめ傍聴券を出して、その持っておられる方だけが入れると、こういうシステムになっております。
  276. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは了解をいたしました。以後、特に子供たちの裁判所関係の見学については御注意をいただきたいということをお願いいたします。  その次にもう一つ文部大臣にお伺いしたいのですけれども、私も各地を回っておりますと、全日本青少年育成会というのは一体何をしているのだという質問を社会教育関係の方々からお伺いをしました。ところが、先日の新聞を見まして、この全日本青少年育成会が文部省の管轄下の社団法人であるというふうに思いますけれども、何か業務上横領の疑いで責任者が問題を起こした、それで警視庁が内偵に入っているというような記事が出ておりましたけれども、この法人の目的ですね、そかれら目的に沿っての事業、あるいは各地にある育成会の所在、代表者名、こういうようなものが全部わかりますでしょうか。どんな関係になっておりますでしょうか。
  277. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) この問題を新聞報道で私も初めて知りましたのですが、警視庁で捜査を進めているという報道でございましたので警察庁にすぐに問い合わせをいたしました。警視庁では、本件について関係資料の収集を図っているということでございましたので、文部省といたしましても、同法人関係者を直ちに招致いたしまして事情を聞くなど調査を進めてまいりました。これまでの事情聴取で、この団体が持っております少年研修館に関します財務上の処理が不適切だと考えられる点が出てまいりましたので、さらに必要な資料の提出をただいま求めているところでございます。新聞報道で指摘されているような横領の事実があるかどうかは、これは警察の調べを待たなければなりませんけれども、新聞に報道されておりますような財務上の不始末がありとすれば、青少年の健全育成のために元来寄与すべき公益法人として社会的期待を裏切る許すべからざることでございますので、文部省としても重大な関心を持ち、なお必要と思われます資料提出を強く求めているところでございます。  この団体の内容等につきましては社会教育局長からお答えをいたします。
  278. 望月哲太郎

    政府委員望月哲太郎君) お答えいたします。  ただいま先生御指摘のございました財団法人全日本青少年育成会は、昭和四十八年に文部省で認可をされました法人でございます。そこで、この目的は、寄付行為の四条に、「豊かな自然および日本の伝統文化に恵まれた教育環境のもとで、行事活動、クラブ活動、奉仕活動等の活動を通じて、青少年の情操の陶冶、身体の鍛練を図り、責任と勇気をもって積極的に行動していく人間を育成することを目的とする。」という目的を掲げまして、具体的な事業といたしましては、「少年研修館及び青年心身研修会の開設と運営」「青少年育成指導者の養成」「青少年問題に関する調査研究」「その他目的を達成するために必要な事業」を行うことになっておりますが、いま先生御質問のございました少年研修館につきましては、主としてこの会を発足するに当たりましては、当時、子供の遊び場、あるいは子供たちが集まる場がなかなかないと、お寺やお宮の境内その他を活用して子供たちの遊び場あるいは集まる場をつくったらどうだというような声も方々にございましたので、この団体といたしましては、主としてそういうお寺の中でこういうことをやってみようというそういう希望を募りまして、そこに一定の設備を整えまして、子供たちの集まる場所、あるいは勉強する場所をつくるということでございまして、少年研修館というのは、そういう形で各地のお寺が育成会に希望をいたしまして、それに対して育成会の方からほぼ一カ所百万程度の設備の補助をいたしまして、それを活用しながら子供たちのあれをするということになっております。ただ、私どもも、全国で五百カ所ばかしあるということを聞いておりますけれども、現在のところこの一つ一つの場所については資料を持ち合わせておりませんので、いま団体の方から提出を求めておるところでございます。
  279. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは、文部省にお願いをいたしますけれども、その五百カ所あると聞いている少年研修館の所在地及び代表者名の資料が文部省の手元に入りましたら私の方に届けていたただけますでしょうか。私もぜひこれは調べてみたいというふうに思っております。  それから決算報告書が、四十八年、九年、五十年、五十一年までもう普通であれば出されているというふうに思いますけれども、その決算報告書も見せていただけますでしょうか。  さらに、その目的に沿っての事業というものをやっているのかいないのかということについては、文部省は把握をしているのでしょうか、どうでしょうか。
  280. 望月哲太郎

    政府委員望月哲太郎君) お答え申し上げます。  ただいま先生お話しのございました研修館の場所については、資料が出ましたところで御報告さしていただきたいと思います。  それから決算につきましては、現在までのところ五十年度までは正式な書類が出ておりますが、五十一年度につきましては、新聞にも報ぜられておりますように、若干内部でもいろいろなことがございまして、正式の書類としては出て来ておりませんので、これは正式のものを出すように現在求めておるところでございます。これもまた出次第御報告をさしていただきたいと思います。  なお、その運営の実態につきましては、私ども個々具体にどこかへ行って現実に見たというようなことをいたしておりませんので、その点につきましてはさらにいろいろと資料その他を集めまして、改めてまた御説明をさせていただきたいと思います。
  281. 粕谷照美

    粕谷照美君 ここの資金は船舶振興会から出されているということでありますけれども、この船舶振興会から交付されるお金というものは国会の中でもしばしば取り上げられて問題になったところであります。大体モーターボート協会から出ているのだということになるわけですが、今回のラスベガスからの告訴でもわかるように、そういうものは賭博だということになっているわけですね。賭博のお金をこういう子供たちの育成に使っていくということについては、私は何としても納得ができないものがあるわけですが、文部省の管轄下でほかにこのようにここからお金をもらっている法人はあるでしょうか。出す人ともらう方の人が同じ理事をやっていたりするというような社団法人があるでしょうか。
  282. 望月哲太郎

    政府委員望月哲太郎君) お答え申し上げます。  この関係は体育局が所管でございまして、私、全体の資料を現在持ち合わせておりませんが、この船舶振興会から補助金をもらっておる団体は幾つかございますので、これがここだけではございません。
  283. 粕谷照美

    粕谷照美君 では、その資料も一緒にいただきたいというふうに思います。いずれこちらの方でまた調べましてから文部省については質問をすることにいたしまして、次に移ります。  本年度予算の中に、特殊教育百年記念行事が行われるというものを含めて、とにかく今回は五十四年度の養護学校の義務化をめぐりまして世間の中で障害児の教育はどのようにあるべきかという考え方が問われているときだというふうに思います。それで、そのことについて一連の質問をいたします。  まず最初に文部大臣にお伺いするのは、一九四八年十二月十日、国連総会における人権に関する世界宣言は、第二十六条で「何人も、教育を受ける権利を有する」そしてその第三項で「親は、その子に与えられる教育の種類を選択する優先的権利を有する」とうたっています。昨年、つまり一九七七年の六月一日、アメリカの保健教育厚生省のカリファノ長官が、三千五百万人以上に及ぶ障害者に対し機会均等の新しい窓を開くものとして自賛する障害者差別撤廃令に執行署名されましてこの法律が発効されました。これより二年前の一九七五年に全障害児教育法が議会を通過しておりますけれども、この二つの法令の概略についで御説明をいただきたいと思います。
  284. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) アメリカ合衆国におきます心身障害者差別撤廃に関する行政命令は、昭和四十八年九月に制定されましたリハビリテーション法第五百四条に基づいて、昭和五十二年四月に保健教育福祉省長官が署名をいたしまして、同年六月から実施されたものでございます。その中で、障害児教育については連邦政府の財政援助を受ける州その他の地方公共団体は、障害児に対して無償で適切な学校教育を提供しなければならないとされております。なお、ここで適切な教育とは、十分に障害児の個々のニードに応ずるように計画されたものであるとされております。  もう一つの全障害児教育法は、現在アメリカ合衆国には八百万人の障害児が存在いたしておりまして、その半数以上が適切な教育的サービスを受けておりません。また、百万人の障害児が公立学校制度から除外されております。市及び地方教育当局が現在の財政源では障害児の特殊教育的ニードに応ずるためには不十分である。そこで、障害児のニードに応じたプログラムを提供するために州及び地方教育当局を連邦政府が援助するよう努力することを定めたものでございます。この連邦法は昭和五十年に成立をいたしました。昭和五十三年から全面実施されることに相なっております。
  285. 粕谷照美

    粕谷照美君 私はこの措置というものは人権に関する世界宣言に基づくカーター政権の教育に関する政治的な姿勢であるというふうに考えるわけですが、五十四年の養護学校義務化方針、日本の方針と比較をいたしまして、どこのところが違うのかということについてお伺いをします。
  286. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 全障害児教育法は、連邦が州及び地方教育当局に対しまして財政援助を行う場合の交付条件を定めております。これによってすべての障害児に無償で適切な公教育を保障することといたして、それをねらいといたしておりまして、わが国昭和五十四年四月一日から実施されます養護学校教育の義務化におきましては、無償で適切な教育を提供するために養護学校の設置を都道府県に義務づけることにいたしております。したがいまして、全障害児教育法は、障害児に対して無償で適切な教育を保障するということであり、わが国の養護学校教育の義務化と同じ趣旨である、このように考えるものでございます。
  287. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は大臣と違う理解をしているわけです。それは全障害児教育法によれば、原則として障害児も健常児も一緒に教育をされる、こういうふうに理解をしているわけですけれども、どうでしょう。
  288. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) アメリカ合衆国におきます心身障害差別撤廃に関します行政命令におきましては、連邦政府から財政援助を受ける州その他の地方公共団体は、障害児に対し適切な学校教育を提供しなければならないとされておりまして、この適切な教育というのは、十分に障害児の個々の教育的ニードに応ずる普通または特殊教育及び関連した援助、サービスであるとしております。特殊教育を適切な教育の一つとして位置づけているものでございまして、同法におきましてはまた原則として障害児と普通児は最大限可能な限り一緒に教育されることとしておりまして、画一的に必ずともに一緒に同じ場所で教育するべきであるということを決めてはおりません。  なお、わが国におきましては、現在、小中学校在学者約千五百万人に対しまして、特殊学級在籍者、すなわち同じような学校に行っておられる子供さんたちが約十三万人、盲聾養護学校在学者が約五万人ということでございますから、アメリカのこの法律の精神と日本の養護学校の義務化の精神とそれほど大きな差のあるものではないと心得ております。
  289. 粕谷照美

    粕谷照美君 それほど大きな差はないとおっしゃることについて、では具体的にお伺いをいたします。  二月九日の日に、神奈川県立養護学校の生徒でありました脳性麻痺の長男を絞殺して、翌日睡眠薬を飲んで学校近くの四階ビルの屋上から投身自殺をした母親の痛ましい事件は、私たちの胸を打っておりますが、一方、三月の十七日、仙台市で全盲の尾形真澄さんが公立中学校から公立の高校へ進学したというニュースは、全国の障害を持つ子供たちやその親のみならず、その教育に当たった教師たち、あるいは健常児たちも非常に大きな激励をもらったというふうに考えております。しかし、この事件は、五十四年度からの養護学校義務化問題を考えるときに、どうしても文部省の考え方をただしておかなければならないというふうに私は考えます。  まず、尾形さんの例のように全盲の児童が小学校に入って、つまり公立の小学校に入り、そして中学校に行く場合に、文部省のいままでの初中局特殊教育編「特殊教育執務ハンドブック」はどのように答えているでありましょうか。
  290. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 「特殊教育執務ハンドブック」というのは、県及び市町村の教育関係者の執務のための参考図書でございますが、そこでいま御質問の事項につきましては、「障害の程度が学校教育法施行令第二十二条の二で定める程度の盲者(および聾者)は盲学校(聾学校)へ就学する義務を負うことになり、小学校、中学校へ就学しても就学義務を履行したことにならない。」と書いてあります。
  291. 粕谷照美

    粕谷照美君 それで、具体的に尾形さんは全盲ですね、この場合はどうなるのでしょうか。このハンドブックによれば、尾形真澄さんは小学校を卒業しない、中学校は卒業していないということになりませんでしょうか。
  292. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 学校教育法の立法の趣旨といいますか、それをわれわれはどう考えておるかということでございますが、御承知のように、学校教育法では、学齢児童の保護者はこの児童を小学校、中学校または盲・聾・養護学校の小学部、中学部へ就学させる義務を負うと。そして、別の条文で、盲学校、聾学校、養護学校というものは小中学校に準ずる教育を行い、あわせてその障害を補うために必要な知識技能を授ける。そして、その盲学校、聾学校、養護学校へ行く障害の程度というものは別に政令で定めると書いてございますから、法律の予定しておりますのは、明らかに障害のあるお子さんは盲・聾学校なり養護学校へ行くということでございます。そして現実にほとんどすべての障害者はそうした学校へ行っておるわけでございます。  そこで、御質問の、全盲の方が行っておるのは就学義務を履行したことにならぬじゃないかと、こういう御質問でございますが、そこで私どもはいまの条文と立法の趣旨というものを解しました場合に、原則はあくまでも特殊学校へ就学する義務があるわけでありますが、一人一人の子供さんについて見た場合に、教育上の必要から合理的な理由があるというふうに考えられます場合は、例外的に本来特殊学校へ行くような子供さんが普通の学校へ行かれても法律違反ということには直ちにならぬというように考えるわけでございます。という趣旨は、全盲の方が普通の学校へ行くということは、本人自身の大変な努力も要りますし、また、学校なり周囲の方なり友達なりの協力がなければこれはとてもできるものではございませんから、一般論としてそれを承認するわけにはとてもまいらない。しかし、特殊の場合にはそういうことも認められるだろうと思うわけでございます。そういう意味では、ただいま御指摘のハンドブックというのはかなり前につくりましたものでございますが、多少言葉が足りなかった点は私も率直に認めるわけでございます。
  293. 粕谷照美

    粕谷照美君 多少言葉が足らないではなくて、「就学義務を履行したことにならない。」と、こう断言しているわけですから、これはぜひ書き改めなければならないものではないだろうかという気持ちを持ちます。  さらに、やはり古いものですけれども、それが別に直っているということにはなっておりませんから質問いたしますが、三十八年の十二月二十三日付の「盲者、聾者等の就学の適正な措置と指導について」という体育局長の通達は、この尾形さんのようなケースについてどういうふうに指導をしているでしょうか。
  294. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) この通達は、初中局長と体育局長の連名で教育委員会に出したものでございまして、表題にありますように「盲者、聾者等の就学の適正な措置と指導について」ということでございまして、御承知のように、盲学校、聾学校は昭和二十三年から学年進行で九年かかりまして義務制に移ったわけでございますが、この昭和三十八年当時、ここの表題にもございますように、必ずしも一般の父兄の方のこういった特殊学校に子供を就学させることについての理解というものが十分でないというようなことがございまして、「保護者の無理解、盲者または聾者の判別の不適正、就学猶予または免除の措置の不適正」云々等のために適正な就学がなされていない事態もあるやに聞くので、そういうことがないようにひとつやってもらいたいと、こういう趣旨でございまして、まあ表現におきまして少し強いところはございますけれども、趣旨はまさにいま申し上げたようなことでこれは出したものと思うわけでございます。
  295. 粕谷照美

    粕谷照美君 尾形さんがこれに該当するかどうかは別といたしましても、しかし、この表現は非常に厳しいですね。「このような事態は、憲法、教育基本法等の精神からも、また本人の幸福の上からも遺憾なことであります。」と、もう返す刀で一刀両断というような通達になっています。それで、こういうような事態は教育基本法あるいは憲法の上から間違っているんだというのは、一体どこの条項に該当するか。それから本人の幸福の上から遺憾なことというのは、だれが本人の幸福を判断するのか。結婚をして、御主人もやさしくて、お金もあって、マンションもあって、幸福でいいわねと人が言っても、本人にとっては幸福でないという場合もあるわけですから、本人の幸福というのは一体だれが判断をするというふうな考え方をお持ちなんでしょうか。
  296. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 確かに、本人の幸不幸というのは、一般的に言いますれば本人の主観的な判断でございますから、よそからあの人は幸福だと言っても本人は幸福と感じないかもしれませんけれども、ここに言います趣旨は、ただいまのように就学する方が不適切に不就学のまま放置される、そういうような事態をなくすことを一般的に客観的に見ても本人の幸福のために除いてあげた方がよろしいと、こういう趣旨に御理解をいただきたいと思います。
  297. 粕谷照美

    粕谷照美君 なかなかそういう理解をするような表現ではない、ちょっと誤ってとられがちな表現であるというふうに私は思いますが、文部大臣、どうでしょう。大臣のいろいろな予算委員会におきます御答弁を聞いておりましても、健常な子供が野球をしている、そこに障害児がいれば一緒に野球ができない、やっぱり養護学校に行けば一緒に野球ができるのにと、こういうふうにおっしゃっておられますけれども、野球しなくたって幸せだというふうに思う子供だっているというふうに思うわけですが、この辺のところについての御見解を……。
  298. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) ただいまの昭和三十八年の通達、それからハンドブックを引用になりましての御質問でございますが、私の基本的な考え方、いま文部省がとっております基本的な考え方をお答えいたしておきたいと思います。  五十四年度からの養護学校義務化発足の準備に懸命に取り組んでいるわけでございます。そして、養護学校の義務化というのは、原則的に二つの義務があると考えております。一つは、養護学校を設置いたします義務でございます。設置をする側の義務でございます。もう一つは、体に障害を持っておられるお子様たちを保護者が学校へ教育を受けるために就学させる義務でございます。この二つの義務が原則的にあると思います。ただ、いま仙台の本当に敬服するべき尾形君などのことを例にお引きになりましたけれども、文部省では、普通の学校へ行って普通の学校で勉強されるのがそのお子様に幸せか、特殊学級へ行かれるのが一番いいか、それとも養護学校に行かれるのがいいか、それともこれはもう通学なんということはとても不可能事であって命にかかわる問題になるであろうから就学猶予の措置をとらなければならないであろうとか、そういう判断をいたしますのに、全市町村をカバーするだけの就学指導委員会をつくる努力を続けてまいりました。五十三年度中には全市町村をカバーするだけの就学指導委員会をつくり終えます。そして、この就学指導委員会には各様の専門家にお入りをいただきまして、この全市町村をカバーいたします就学指導委員会で個々のお子様をそのお子様の立場に立って御両親の御意見も伺い、いままでどうしておられたかということも検討をし、受け入れる側の学校側の事情も伺い、このような観点から政令で決めております障害の種類、程度につきましては、これはやはり政令のことですから言葉で書かなければなりませんので、非常に冷たくとられがちでございますけれども、ケース・バイ・ケースでお子様の立場に立って、どこへ行かれるのが一番望ましいかということを判断して教育委員会にその意見を上げる。教育委員会でまださらに判断がつきかねるときにはもう一遍就学指導委員会に教育委員会が問い合わせる。念には念を入れて一人一人のお子様のそれぞれ違った態様にこたえていこうということを決意しておりますものですから、昭和三十八年のあの通達、ハンドブックに書かれたことをこれは改めなければならないと考えておりまして、五十四年度からの義務化が新しくスタートいたしますので、それまでにどういうふうな通達を出すか、ただいま検討をいたしておるところでございます。どうぞ真意だけは御理解をいただきたいと思います。
  299. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは、書き改めるとおっしゃることですから、大臣のおっしゃるようにケース・バイ・ケースはきちんと認めるんだということが父母にも教師にもわかるような形で出していただきたいと、こう考えております。  さて、いま、その就学指導委員会で十分な説明ができる、指導ができるという体制を整えますと、こういうお話なんですけれども、その就学指導委員会には、本当に自分が障害を持って、いままでの教育経験に照らし合わせて障害者の意見を代表していくような方々が中に入るような条件になっておりますでしょうか。もう健常者だけのあるいはお医者さんとか心理学者とかそういう方だけの就学指導委員会になりますでしょうか。
  300. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 現在、就学指導委員会を設置する場合に国が予算補助をいたしておりますが、その予算補助の条件として就学指導委員会の人数と構成を決めておるわけですが、県の段階に置かれます就学指導委員会は十五人以上、市町村の段階に置かれます就学指導委員会は十人以上といたしまして、その構成は医者と学校の先生とそれから社会福祉、児童福祉施設の職員というふうになっております。
  301. 粕谷照美

    粕谷照美君 その就学指導委員会にぜひ障害者の代表の方を入れていただきたい、こういう要望が障害者団体のあたりからも出ているというふうに思いますけれども、全然そのことについては考える余地がありませんでしょうか。
  302. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 就学指導委員会というのは市町村及び都道府県に置きまして、このお子さんはどういう学校へ入れたらいいかということを教育委員会が判断する場合のまあいわば専門的な諮問機関と考えておるわけでございます。したがいまして、その構成員も、いま申しましたように、医学的あるいは教育的に見てそのような指導のできる方をもって構成しようということでございますので、御指摘のような障害者の方あるいはその団体の代表という方は、やはり就学指導委員会の中へお入りいただくのではなくて、その決定をするに際して必要に応じてまた別途御意見をいただくということはあり得るかと思いますけれども、就学指導委員会性格はそういう方にお入りいただくにはちょっとどうであろうかというふうに思うわけでございます。
  303. 粕谷照美

    粕谷照美君 しかし、この障害者の教育を大事に考えている県におきましては、具体的に障害者の代表をそういう中へ入れているわけですね。必ずしも団体の代表その人を入れなければならないということではありませんけれども、障害を持っていらっしゃってなおかつその指導委員会の委員として適当な方々が大ぜいいらっしゃるわけですから、ぜひ私はそういう方を中に入れていただきたいというふうに思いますけれども、もう一度大臣いかがですか。
  304. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 府県の就学指導委員会を府県から委嘱をして構成をいたしておりますが、府県によりましては障害関係の方を入れている府県もあるわけでございます。私は好ましいことだと思います。
  305. 粕谷照美

    粕谷照美君 好ましいことだとお思いになられたら、具体的にそのような指導をとっていただけるかどうかということを伺っているわけです。
  306. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) それぞれ府県の意思もあることでございましょうから、強制するわけにはまいりませんけれども、府県と懇談はしてみたいと考えます。
  307. 粕谷照美

    粕谷照美君 まことにありがとうございました。府県の意思もあることでしょうけれどもとおっしゃいましたけれども、府県の意思がありましても、たとえば主任制などについては非常に強力な指導をされるわけでございますから、この辺についても大臣が好ましいことだとお思いになることはぜひ強力に御指導をいただきたい、こう思います。そのことが明らかになりましたので、私はその他いろいろと細かいことを伺おうと思いましたけれども、時間がありませんから次に移ります。  次は、幼稚園と保育園の問題についてです。  最初に厚生大臣に伺いますけれども、時事通信の出しております「厚生福祉」というのを私はずっと見ておりますが、先日、「厚生省に望む」という中で、盛岡市長の工藤さんが、「第一 保育と教育の一元化」という見出しで「保育所は保育に欠ける幼児の保育施設であり、幼稚園は教育の機関であるとする現在の建前には賛意を表しかねる。幼児にとって保育と教育は不離一体であり、父母に二者択一を迫ること自体不合理である。」と、こういうふうに言っていますし、豊橋市長の青木さんは、「保育所が家庭の代替的存在で就学前教育の場としても市民に認識されてきている。建前論で幼・保の差を強調しても、住民のニーズを逆なでするにすぎない。」と、こう言い切っているわけですけれども大臣はこの辺についていかがお考えでしょうか。
  308. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) そういう御意見もあることは重々承知をいたしております。ただ、保育所というのは、御承知のように、養護と教育の両面から乳幼児について適切な保育を行うということを目的にしておりますし、全く法律もそれからそういう目的も違っておるわけでございますから、一概にこれを一元化しろという御意見は私どもとしてまだそこまでの段階ではないだろうと思っておりますが、おっしゃるように、そのお二人の御意見にもありますように、最近の保育所というのは、やっぱり幼児教育の場としてほとんど父兄もそれから一般も認識を非常に深めてきておるわけでございます。ところが、一方においてこの保育所というものはやはり保育に欠けるという点から考えまして、御承知のとおり時間が違うわけでございますね。大体幼稚園は幼児教育というものを中心にしますから、したがって大体午前中、場合によって給食を終わってから一時ごろまで、保育所は場合によって夕方までということになっておりますので、これをいまどちらかに統一をするということは、かえって一概にこれを短兵急に考えますと子供のためにならない場合もございますものですから、したがって、私どもは、この問題については、いろいろ共通点もありますが、現状においてはまだそこまでの踏み切りがつかないでいるわけでございます。  なお、文部省側と厚生省側でそれぞれ適正配置について十分協議をして、ダブらないようにするとか、あるいはまた今後のあり方について両方でそれぞれ専門家を出し合って協議をして、将来この一元化の問題ということにどう対処していいかということを真剣に検討いたしておりますので、その結論を待ってから私どもとしては御意見も承って検討していきたいと、かように考えます。
  309. 粕谷照美

    粕谷照美君 最初の御説明は法律があるからこういうふうにやっていきたいというふうにおっしゃっておられますので、これは硬直した考え方だというふうに思うのですね。三十年前にできた法律で保育所が出てきた。三十年たったらもう国民の考え方がずいぶん変わってきている。だから、法律もそういうふうな形で変えていかなければならないという、そういう前提ではないというところを残念に思いましたが、最後に、この一元化に向けて努力をしているとおっしゃったので、やっぱり小沢大臣もずいぶん変わって物をお考えになられるようになったと私は高く評価したいと思うのですが、文部大臣としてはいかがでしょうか。
  310. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 厚生大臣がほめられたからというわけじゃありませんが、私も同じ考えを持っております。もう粕谷委員よく御存じの点でございますが、ただいま文部、厚生両省で懇談会を設けて検討をいろいろなことをいたしてもらっております。この懇談会は、ただいまのところは、昨年のもう年末近く発足いたした懇談会でございますから自由討議をしていただいておりますが、この懇談会が出してくださいます結論を私どもは期待をいたしておるところでございまして、懇談会の結論が出ましたときにこの答えを踏まえて厚生大臣と同じような気持ちで取り組んでまいることにいたしております。
  311. 粕谷照美

    粕谷照美君 文部大臣がこの懇談会に大変期待をしていらっしゃるというお答えでございました。私も期待ができるような方々が本当にこの審議会のメンバーに入っていらっしゃるのかどうなんだろうか、こう思って考えてみましたけれども、本当に自分の子供さんを保育所に預けて苦労したいわゆる消費者の立場に立ったというのですか、そういう方の代表は来ておられません。別に財界の代表が入るからいけないというわけではありませんけれども、薬を売るときに景品をつけちゃいけないなどといったそういう薬屋さんの代表も入っていらっしゃるというようなことを考えてみますと、どうも本当に幼児の教育を大事にするような方々がいい結論を出すような方向で討論をしてくださるのだろうかどうだろうかということについては疑問を持つわけです。  それで、懇談会の協議事項は、「(1)幼・保の整備計画 (2)幼・保の教育・保育内容の連携 (3)その他」というふうになっておりますけれども、幼・保の一元化という要請にこたえるような協議事項というのは(2)だけでしょうか。
  312. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 懇談会を構成していただいております委員の方々は、教育のそれぞれの専門家であり、幼稚園というものの経験者でもあり、保育所のことで長い間御苦労なさった方々であり、あるいは教育問題を実に長い問報道関係で担当しておられる方であり、そういう方々でございますから、私はこの懇談会が出してくださる結論を正真正銘期待をいたしております。そして、一元化のことについては、おっしゃるように(2)のところに書かれておりますことがこれに絡んでくるわけでございます。
  313. 粕谷照美

    粕谷照美君 お一人お一人については、この方はいい方だなあと思う方がいらっしゃいますけれども、私が申し上げたのは、いわゆる消費者代表というような形の方が入っていない。たとえば労働者代表も入る、資本家代表も入ると、こういう審議会もあるわけですけれども、ここの点については抜けているのではないかということを思うわけです。  それで、一体この懇談会というというのは本当に現行制度の基本に触れるようなことも協議をするのでしょうか。たとえば、児童福祉法の見直しだとか、あるいは保育料などについての見直し、こういう問題点です。保育単価などにしましても、地方公務員の人件費が保母さんや調理員などの人件費が保育については入っているわけですね。そうしますと、保育所に子供を預ける親というのは、人件費を税金でも納めているわけですから、二重負担をしているということにはなりませんでしょうか。ところが、一方、公立の幼稚園はこの人件費が含まれておりませんから、明らかにここに不平等が起きています。さらにまた、徴収基準などにつきましても、これは税額負担でランクづけをされるわけですが、共働きというのはほかよりも非常に経費が増大する。その経費の増大は別といたしましても、同じ年収であっても夫あるいは妻が独身扱いになるわけですから、税金が高くなっている。この辺のところにも大変な不合理を感じているところがあります。それから砂田文部大臣の兵庫県などでもありますけれども、市町村によりましては、四歳までは保育園ですが、五歳になりますと全員を幼稚園に入れるというふうに市町村で規則を決めているところがあるわけですね。そうすると、うちは保育所にぜひ遅くまで子供を預ってもらわなければ困るという親にとっては、幼稚園に行かなければならないという市町村の決まりがありますとやらなきゃならない。それでは、児童福祉法から考えてみますとやっぱり問題があるのではないか。  こういうような点がたくさん指摘をされておりますが、こういうような点についても十分な討議をいただけるような懇談会でありますでしょうか。それからそのことは一体いつごろこの結論を出せるような条件に持っていきたいと文部省はお考えでしょうか、あるいは厚生省はお考えでしょうか。
  314. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) まず第一点の保育料の問題は、これはこの懇談会ではやりません。これは措置費でございますから中央児童福祉審議会で審議をして決定をするわけでございますので、この懇談会には私は任すわけにいかないわけであります。  それから夫婦の場合に共かせぎのときとそうでないときと保育料その他についていろいろ負担がかえって二重にかかるじゃないかというようなお話でございますが、これは事務当局から説明しますけれども、私ども保育料の面から言いますと、それは逆でございまして、そういうことにはなっておりません。  それから第三番目の、五歳児になったら全部幼稚園に入れろという指導は、もし保育に欠けるような児童までそういうことで指導するということは適当でないと私は思います。
  315. 石野清治

    政府委員(石野清治君) ただいま大臣お話しになった中で、具体的な問題で共かせぎの場合とそれからそうでない場合との不均衡の問題についてお話がございました。これは具体的な数字で申し上げた方がよろしいかと思いますけれども、たとえば三百万の収入が共かせぎであったという場合と、それから夫だけが三百万という場合でございますと、具体的に申しますと、保育料の徴収基準では、三歳児の場合ですと、共かせぎの場合月額一万百円、それから夫のみの場合は一万四千百五十円ということで、月約四千円の差がございます。年間六万円ぐらい夫婦共かせぎの方が有利だ、こういうふうになっています。
  316. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 御指摘のように、地域的に保育所が多くて幼稚園が少ないところ、幼稚園が多くて保育所が少ないところ、そういうばらつきがあるわけでございます。私の出身地のことを申されましたが、兵庫県も幼稚園が非常に多くて保育園が少のうございます。こういう地域的なただいまのようなばらつきの問題等も含めて基本的なことをこの懇談会で御相談いただいているところでございます。
  317. 粕谷照美

    粕谷照美君 時期は、いつごろをめどにやられるのでしょうか。
  318. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 五十三会計年度中をめどにいたしております。
  319. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、この懇談会において、厚生省あるいは文部省の係の方々が御出席をなさるというふうに思いますので、ぜひ要望しておきたいことは、すべての子供たちを平等に教育していくという観点からどのような形がいいのかという、本当に保育の、就学前教育の基本に触れるようなそういう討論を展開していただきたいということをお願いいたします。  では、次に移ります。  文部省のことしの予算の中で、児童生徒の健康増進が大きく取り上げられております。骨が弱いとか、心臓発作で学校の中で亡くなる子供たちがふえているとか、大変な問題点があるわけですが、特にその中で最近の子供たちは虫歯が多いということが言われております。それを取り上げまして学校歯科保健活動の推進として推進校四十七校を挙げまして、保健指導、保健管理の徹底で虫歯を予防するという、このことについては私は大変賛成をいたします。ぜひがんばってやっていただきたいと思いますけれども、一体この虫歯予防というのは、どのような観点で虫歯を予防するのか。たとえば私は新潟出身ですけれども、新潟県は全国一虫歯予防について熱心だ、こういうふうに言われておりますが、その熱心のあり方というのは一体どういうことかと言えば、弗素洗口を取り入れていくということですね。この弗素洗口については、学会におきましても賛否両論厳しいものがあるわけです。それから親にしましてもその賛否両論を聞きますと非常に不安になりまして、何とかしてその不安をなくするために、うちの子供はやらせてもらいたくないと、こういう意見を申し出ても、決めたんだからやらなければならないという、そういう学校の態度の中で大変な心配を持っているわけです。私は、歯を大事にするということはどのような観点でやっていくのか、弗素洗口をやると、うふうな観点でこの推進校四十七校を指導していかれるのかどうかをお伺いしたいわけです。
  320. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 歯の齲歯の予防はやっぱり子供のときが一番大事でございまして、そこで今度診療科名でも特に小児歯科というものを設定していきたいと思っておるわけでございますが、よく歯の清潔を保つ訓練を母親としてはまず第一にしていただかなければいけません。それともう一つは、歯科医師会の熱心な方々等は、むしろ子供のチョコレートを食べるのを徹底的にやめてもらおうというような意見の人もございます。これは非常にねばりが強いものですから中に残るのが多くあるわけでございまして、あるいは小児のころ、乳児のころに歯列矯正をやるとかいろいろな努力をしているのですが、その一つの方法として、国際的に非常に有効だと言われているものが、御承知のとおり、WHOでも、弗素の塗布というもの、あるいはまた水道に弗素を入れて予防に資するという点があるわけでございます。しかし、現在、日本の水道ではいま弗素を入れているところはございません。これはむしろ水道管理者の方でいろいろな問題があってその実行をしていないわけでございますが、ヨーロッパでは余りありませんけれどもアメリカ系の国際的な社会では水道に弗素を入れることが非常に励行されているわけでございます。ただ、弗素は、一PPm以上になったり、あるいはそれがまたうんと八PPmになったりしますと、身体的な弊害、まあその前段として歯に斑点ができたり、いろいろな問題がありますので厳重に指導しなければいかぬ、専門家がやらなければいかぬと思いますが、弗素の方法というのはこれは医学的に見て正しい実は方法でやれば非常に有効であるということに国際的になっておるわけです。ただ、日本では住民感情等いろいろございますから、ほとんどいま水道その他で実行しているものはないと、こういう現状でございます。
  321. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 学校歯科の御指摘の推進校では、児童たちが自分で自分の歯を健全に保つことのできる能力を育てるということに主眼を置いております。具体的には、歯みがきや、口の中をきれいにすること、糖分の多い粘着性の間食などを控えること、こういったことを習慣づける指導をやっているわけでございますが、いまの弗素の利用につきましては学会では弗素が虫歯予防に有効であるということは定着しているように聞きますけれども、この推進校では弗素を用いることはいたさない、そのようにしております。
  322. 粕谷照美

    粕谷照美君 宝塚の斑状歯の例などもあるわけですから、その辺のところは十分お考えいただきまして文部省で正しい姿勢をとっていただきたい。歯科医の方でもいろいろな歯を大事にする流れがあるわけですが、これは参議院の歯医者さんのところに私行きましていただいてきたものですけれども、やっぱり生活態度が大事だと、そこのところをきちっとしなさいということの指導があるわけですから、私は教育に関してはその辺の御指導をいただきたい、こういうことを要望いたしまして終わります。  最後に、もう時間がありませんから週休二日制の問題に移っていきます。週休二日制に対して、私は、ここで、文部大臣、それから総理府の総務長官人事院総裁に、それぞれ試行のデータなども踏まえまして今後の考え方を明らかにしていただきたいと思います。  さらに、河本通産大臣、あなたは三月の二十二日に首相と対外貿易の黒字減らし策を協議されたそうですが、現在における政府の黒字減らし策について明らかにしていただきたいと思います。
  323. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 公立学校の教職員の週休二日制の試行につきまして、文部省は、昨年の三月の二日、教育委員会が管下の高等学校以下の学校の教職員について昨年四月から週休二日制の試行を実施する場合留意事項につきまして各都道府県教育委員長あて通知をいたしましたが、昭和五十二年度内に週休二日制の試行を実施した県は一つもございませんでした。しかし、国家公務員の週休二日制について先般の関係閣僚懇談会で本年四月から一年にわたって再試行を実施することを決定いたしましたので、公立学校の教員の週休二日制の試行について、本年の三月七日、再度都道府県教育委員会に対しましてこれが実施方通達を出して指導を行っているところであります。  今回の通知では、教職員の週休二日制の試行の実施について、原則として前回――昨年の通知によって対処することといたしておりますけれども、五十二年度実施いたしました県がなかったという点も考慮いたしまして、試行の期間を原則としては一年とするけれども、四カ月あるいは三カ月というような特定の期間を試行期間とすることも差し支えないということを書き加えました。教員の週休二日制及びその試行を研究するための研究協議会を教育委員会の中に設けるなどして検討していただきたい。この二点を書き加えたわけでございます。
  324. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) 週休二日制問題についてはまあいろいろ議論のあるところでございまして、五十一年の十月から一年試行いたしました。その結果、これに参画をしていない省庁もございますし、またいろいろ問題点がたくさんありまして、人事院から再試行の要請をされたわけであります。そういう意味から、二月十日閣議決定をされまして、四月から全省庁にわたって再試行する、こういうことになったわけであります。
  325. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) ただいま総務長官がお述べになりましたとおりでございまして、人事院といたしましては、民間の状況また世界の大勢を踏まえまして週休二日制についてやはりこれを放置できがたいという判断に立ちまして、第一回は一昨年の十月から一年間試行をお願いいたしましたし、また、これを踏まえまして今年の四月から向こう一年間少し濃密なかっこうで再試行をお願いをするということに相なっております。幸い、予算定員の範囲内ということで非常に窮屈な中ではございますけれども、それぞれ御工夫を願いまして、今回は参加省庁も第一回に比較してふえております。全省庁にわたって少なくとも参加はしていただくというかっこうでこれが行われることに相なっておるのであります。一年間行いました結果、問題点を整理をいたしまして種々の点を検討いたしました結果、次のステップをどうするかということにつきまして慎重な配慮をもって対処するというふうに現在のところは考えておる次第でございます。
  326. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 一昨日総理大臣と当面の貿易問題について意見を交換いたしました。  その第一点は、御案内のように、非常に大幅な黒字が出ておるわけでございますが、当面のこの大幅黒字に対する考え方でございます。大体のことを申し上げますと、金額的にはドルベースで相当ふえておりますが、数量ベースでは年度間を通じて大体六、七%ぐらいではなかろうか。そして、世界全体の貿易が数量ベースで六、七%ぐらい伸びておるわけでありますから、日本の貿易が数量の面ではそんなに伸びておるわけではない。さらにまた、仮に現在の貿易量を五%数量ベースで削減するということになりますと、円ベースで金額は一兆円ぐらいになりまして、波及効果等を考えますと、GNP、成長率におよそ一%の影響がある。七%成長はたちまちのうちにして六%に下がる、こういう重大な事態にもなります。そこで、数量ベースではこれは大体横並びに指導していこう、そして通産省といたしましていろいろ工夫をしながらきめの細かい対応策を立てていこう。つまり、縮小均衡には持っていかない、こういうことを第一点として確認をしたわけであります。  ただしかし、五十二年度のドルベースの経常収支というものは非常に大きな金額が予想されますので、やはりこの際思い切った輸入拡大策を考えていかなければなるまい。去る三月十一日には関係閣僚会議で若干の対応策を決めたわけでありますが、その程度では規模が小さいので、さらに工夫をこらしまして緊急輸入対策というものを拡大する必要がある。そしてそのために関係者の間でよく研究しようと、こういうことを決めたわけであります。  それから御案内のように、本年一月、経常収支六十億ドルというそういう目標を一応設定をしておりますが、これは国際公約ではありませんけれども、しかし、内外に日本政府が明らかにした一つの大きな経済目標でございますから、若干事情が変わりましても一々説明をしてこの言いわけをするというわけにはいきませんから、だから、あらゆる工夫と努力をして万難を排して経常収支六十億ドルというその目標は達成をしなければならぬと、以上三点について総理と私との間で合意を見たわけであります。
  327. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連質疑を許します。竹田四郎君。
  328. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 時間がありませんので簡単にやりますけれども、まず飛躍的に輸入をふやして黒字減らしをやるということでありまして、十一日宮澤長官を長とする輸入促進閣僚会議ですか、この四項目との関係ではあれだけでは足りないと、こういうふうに言っていらっしゃったわけでありますけれども、具体的にどんなものをどんなふうにこれから輸入をしようとお考えなのか。  輸出の方は数量ベースでは大体横ばいだというのですけれども、自動車なんかはふえているようでありますけれども、こういうもの、あるいは鉄鋼もふえる可能性があると思うのですが、これをどういうふうにするのか、これが二点目です。  それから三番目は、この間アメリカに輸入促進使節団というのが行きましたね。そして、新聞によりますと、二十億ドルぐらいの成約ができたというのですが、二十億ドルの成約が二十日ばかり行ってきてできるとすれば、これをECに出す、あるいはアメリカへさらに出せば、そんなに大さわぎして緊急輸入をする必要はないと思うのですけれども、この二十億ドルというのは、一体どういう内容なのか、具体的にどんなものがどのぐらい成約できてきたのか、概略でいいですから、これは局長の方から御報告を願いたいと思うのですが、以上の三点を関連質問したいと思います。
  329. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 輸入ミッションの内容につきましてはこれは後で局長から答弁をさせますが、第二次の緊急輸入拡大策の内容は何ぞやと、こういうお話でございますが、これは現在の貿易事情にかんがみまして飛躍的な拡大策を考えようという基本方針は決まりましたが、その中身につきましては、関係各省の専門家の間で至急に具体的に検討いたしまして、検討が済んだ段階でなお関係各省間で改めて相談をしようと、そういうことでいまその具体的な作業に入ったばかりでございますから、どういう品目についてふやすのかと、こういうことについてはまだ未定でございますし、そのふやす方法等についてもこれからの相談ということになるわけでございます。  それから私はいま数量ベースということを申し上げましたが、現時点では数量ベースと円ベースはほぼ同じ水準でございます。だから、ある意味では円ベースということになるわけでございますが、自動車なども一-三月は一年前に比べて若干ふえておりますが、これなども五十二年度は四百六、七十万台と想定をしております。だから、五十三年度もほぼその前後で指導をしてまいりたいと考えております。中には実は相当減るようなものもあります。それから鉄はアメリカではトリガー価格ができましたし、ヨーロッパでも一言で言いますとヨーロッパ全体の鉄に関する不況カルテルというものができまして、それに対して日本も参加をしてくれいというのがいまのヨーロッパの言い分でございまして、日本もそれに対して参加をすることになりましたので、ヨーロッパでもふえることはない、アメリカではむしろ若干減るのではないか、こういう感じでございますので、現時点では鉄の方は残念ながら数量ベースで若干減るのではないか、そう大きな数字ではありませんが、若干減るのではないか、こういう感じでございますが、全体として、減るものもあれば少しぐらいはふえるものもあろうと思いますが、円ベース全体として大体横並びと、こういうことできめ細かい強力な行政指導をしていこう、こういう考え方でございます。
  330. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) 先般、米国に対しまして輸入促進ミッションを派遣したわけでございますが、そのときに契約をいたしましたものを、三月にしましたものと、それから四月以降九月までの半年の間で恐らく契約されるであろうと思われるものに分類したわけでございます。しかもそのうち、長期契約に基づくもの、あるいは穀類といったような当然買いつけるものを除外した金額といたしまして集計いたしますと、三月中に契約の見込みのあるものは三億九千万ドル、四月から九月までの間に、恐らくミッションの派遣を契機に契約されるであろうと思われるものは十五億五千万ドル、計十九億四千万ドルという数字が出ておるわけでございます。
  331. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 時間がありませんから、もう幾らも申し上げませんけれども、もしこういうミッションによって、二十日ばかり行ってきて二十億ドルというなら、今度はECにも出し、豪州にも出し、各方面に出したら六十億ドルぐらいのものは一挙にこれは成約できるんじゃないですか。それを片一方では四項目、あるいは総理と河本さんときわめて厳しい合意をやるということになると、どうも国民はわからないわけですね。それなら、もう少し出したらどうですか。九十二人ぐらい二十日出したら二十億ドルなんですからね、もっと大いにやられたらどうですか。
  332. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) 十九億四千万ドルでございますが、これはミッションの派遣を契機に契約されるという見込みのあるものでございますけれども、そのうち恐らくミッションが行かなくても、在米の支店あるいは子会社の活動によって契約されるであろうものも含まれておるわけでございます。したがいまして、この十九億四千万ドルは、ミッションによって純増というわけじゃないわけでございまして、これにつきましては、米政府とも了解済みの数字でございます。
  333. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 よくわからないけれども……。
  334. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いずれにいたしましても、現在の時点では、昭和五十二年度の経常収支は相当大幅な数字になりそうであります。まだ具体的な金額を言う段階ではございませんが、相当大幅な数字になります。これを発射台といたしまして五十三年度の貿易を進めるわけでございますししますので、いろんなやっぱり工夫を前広に積み重ねていかなければならぬと考えております。  それから、世界各国へミッションを出しましても、相当まとまったこういう取引ができるのはアメリカぐらいなものでございまして、ほかのところへ出しましてもそう大きな期待はできないわけでございます。もっともECに対しましてはできるだけのことはしてまいりたいということで、ここ数日間、牛場さんがECの代表と打ち合わせをしておられまして、場合によれば日本からもミッションを出す、先方からもミッションが来ると、こういうことは考えております。
  335. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 簡単に願います。
  336. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 最後に、きょう二百二十八円ですか、ついに二百三十円台を割ったということでありまして、景気がよくなりそうだ、トンネルの向こうに明かりが見えてきたというようなところで水をぶっかけられたということでありまして、いまの局長の話を聞いていても、この十九億四千万ドルというのはどうも何が何だかわからぬ。国民に対するアピールなのか、アメリカに対する露払いをやってきたのか、どうもこの辺がわかりません。本来そういうことができるならば、そんなに河本通産大臣予算委員会中に総理とわざわざ会談をして緊急協議をする必要はないわけです。そういう辺は、もっと私ははっきりとしてもらわなければ、いいかげんな数字を発表して、それで緊急輸入ができるような、そういう態度ではきわめて困る、こういうことを申し上げて、またこの問題は後でやっていきたいと思います。
  337. 粕谷照美

    粕谷照美君 ぜひ週休二日制についてお願いをしたいことは、よその国の党から、週末の休みもない、バカンスもないような日本の婦人は奴隷のようだなどと言われることのないように、試行するということは実施をするということが前提だという態度に立ってやっていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  338. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で粕谷君の一般質疑は終了いたしました。  明日は午前十時から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十五分散会