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1978-03-16 第84回国会 参議院 予算委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月十六日(木曜日)    午前十時二分開会     ―――――――――――――    委員の異動  三月十五日     辞任         補欠選任      井上  計君     柳澤 錬造君  三月十六日     辞任         補欠選任     久次米健太郎君     成相 善十君      黒柳  明君     矢原 秀男君      山中 郁子君     渡辺  武君      上田耕一郎君     下田 京子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         鍋島 直紹君     理 事                 戸塚 進也君                 内藤誉三郎君                 中村 太郎君                 宮田  輝君                 竹田 四郎君                 吉田忠三郎君                 多田 省吾君                 内藤  功君                 栗林 卓司君     委 員                 浅野  拡君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 小澤 太郎君                 亀井 久興君                 亀長 友義君                 熊谷  弘君                 下条進一郎君                 田代由紀男君                 玉置 和郎君                 夏目 忠雄君                 成相 善十君                 林  ゆう君                 真鍋 賢二君                 三善 信二君                 望月 邦夫君                 八木 一郎君                 山本 富雄君                 赤桐  操君                 大木 正吾君                 志苫  裕君                 野田  哲君                 福間 知之君                 藤田  進君                目黒今朝次郎君                 太田 淳夫君                 峯山 昭範君                 矢追 秀彦君                 矢原 秀男君                 下田 京子君                 渡辺  武君                 柳澤 錬造君                 喜屋武眞榮君                 柿沢 弘治君                 秦   豊君    国務大臣        内閣総理大臣   福田 赳夫君        法 務 大 臣  瀬戸山三男君        外 務 大 臣  園田  直君        大 蔵 大 臣  村山 達雄君        文 部 大 臣  砂田 重民君        厚 生 大 臣  小沢 辰男君        農 林 大 臣  中川 一郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  福永 健司君        郵 政 大 臣  服部 安司君        労 働 大 臣  藤井 勝志君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (国土庁長官)  櫻内 義雄君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      加藤 武徳君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       安倍晋太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)      稻村左近四郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       荒舩清十郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  金丸  信君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       熊谷太三郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  山田 久就君        国 務 大 臣  牛場 信彦君    政府委員        内閣官房内閣審        議室長        兼内閣総理大臣        官房審議室長   清水  汪君        内閣法制局長官  真田 秀夫君        国防会議事務局        長        久保 卓也君        内閣総理大臣官        房交通安全対策        室長       三島  孟君        警察庁刑事局保        安部長      森永正比古君        警察庁交通局長  杉原  正君        宮内庁次長    富田 朝彦君        行政管理庁行政        管理局長     辻  敬一君        防衛庁参事官   夏目 晴雄君        防衛庁長官官房        長        竹岡 勝美君        防衛庁長官官房        防衛審議官    上野 隆史君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛庁装備局長  間淵 直三君        防衛施設庁長官  亘理  彰君        防衛施設庁施設        部長       高島 正一君        防衛施設庁労務        部長       菊池  久君        経済企画庁調整        局長       宮崎  勇君        経済企画庁総合        計画局長     喜多村治雄君        経済企画庁調査        局長       岩田 幸基君        科学技術庁計画        局長       大澤 弘之君        科学技術庁研究        調整局長     園山 重道君        環境庁大気保全        局長       橋本 道夫君        環境庁水質保全        局長       二瓶  博君        沖繩開発庁総務        局長       亀谷 礼次君        沖繩開発庁振興        局長       美野輪俊三君        国土庁長官官房        長        河野 正三君        国土庁長官官房        審議官      四柳  修君        国土庁計画・調        整局長      福島 量一君        国土庁土地局長  山岡 一男君        国土庁大都市圏        整備局長     国塚 武平君        法務省入国管理        局長       吉田 長雄君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アジア局        次長       三宅 和助君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省欧亜局長  宮澤  泰君        外務省経済局長  手島れい志君        外務省経済局次        長        溝口 道郎君        外務省条約局長  大森 誠一君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        大蔵省主計局長  長岡  實君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省関税局長  戸塚 岩夫君        大蔵省理財局次        長        川崎 昭典君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        大蔵省国際金融        局長       旦  弘昌君        文部大臣官房会        計課長      西崎 清久君        文部省初等中等        教育局長     諸澤 正道君        文部省学術岡際        局長       井内慶次郎君        文部省体育局長  柳川 覺治君        文化庁長官    犬丸  直君        文化庁次長    吉久 勝美君        厚生省環境衛生        局水道環境部長  国川 建二君        厚生省医務局長  佐分利輝彦君        厚生省薬務局長  中野 徹雄君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        厚生省保険局長  八木 哲夫君        厚生省年金局長  木暮 保成君        厚生省援護局長  河野 義男君        農林省農林経済        局長       今村 宣夫君        農林省畜産局長  杉山 克己君        通商産業省通商        政策局次長    花岡 宗助君        通商産業省産業        政策局長     濃野  滋君        通商産業省機械        情報産業局長   森山 信吾君        工業技術院長   窪田 雅男君        資源エネルギー        庁長官      橋本 利一君        中小企業庁長官  岸田 文武君        運輸省海運局長  後藤 茂也君        運輸省船舶局長  謝敷 宗登君        運輸省自動車局        長        中村 四郎君        運輸省航空局長  高橋 寿夫君        運輸省航空局次        長        松本  操君        海上保安庁長官  薗村 泰彦君        気象庁長官    有住 直介君        郵政省郵務局長  神山 文男君        労働省職業安定        局長       細野  正君        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省計画局長  大富  宏君        建設省道路局長  浅井新一郎君        建設省住宅局長  救仁郷 斉君        自治省財政局長  山本  悟君        消防庁長官    林  忠雄君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    参考人        新東京国際航空        公団総裁     大塚  茂君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和五十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     ―――――――――――――
  2. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。     ―――――――――――――
  3. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  昭和五十三年度総予算案審査のため、秦豊君の質疑の際、新東京国際空港公団総裁大塚茂君まを参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、出席日時等については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  6. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは、これより太田淳夫君の総括質疑を行います。太田君。
  7. 太田淳夫

    太田淳夫君 最初に、公定歩合引き下げにつきまして御質問さしていただきます。  村山大蔵大臣経企庁長官にお尋ねいたしますが、去る十一日の多田委員質問に、両大臣公定歩合引き下げ効果に対して消極的な答弁をされたように見えました。本日から、白銀は〇・七五%の公定歩合引き下げを行うわけでございますが、今回の措置によって円高対策経常収支の黒字減らし、景気回復などにどのような大きな効果が期待できるのか、両大臣に御答弁願いたいと思います。
  8. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 公定歩合引き下げの問題のねらいとしては、私は、二つあると思うのでございますが、主としては、やはり国内的な景気対策に眼目があるわけでございます。財政が五十三年度予算で大型な公共投資中心とする十五カ月予算を組んでおる、これと対応いたしまして、公定歩合がリードをいたしまして貸付金利が下がるということができれば景気浮揚効果が一層上がると思っているわけでございます。また、民間企業金融費用がそれだけ軽減されるわけでございますから、その民間企業の収益の回復を通じましてやはり景気効果影響する。特に、企業家のマインドで言いますと、下がるところまで下がったということで、今後の金融についてひとつめどはつく、この心理的影響を非常に重視しているわけでございます。そういうことで、公定歩合というのは、本来は内需拡大を通じて景気回復を図るというやや長期的な目標でやっておるわけでございます。  しかし、現在の為替相場に全然影響がないかというと、そうではないと思うのでございます。やはり日本金利が下がりますから、ただでさえいま円建て外債がどんどん発行されております、その増勢がこれから強まるのではないか。それは資本収支関係になりますけれども、資本の流出を促すであろうということは予想されます。  それからまた、公定歩合と同時に、いま御質問はございませんでしたけれども、短資の流入につきまして二つの措置を講じたわけでございまして、新しく非居住者の、五年一カ月未満の残存期間でございますけれども、そういう債券の取得を禁止いたしました。つまり流入を抑えたわけでございます。また、自由円預金として入ってくるものにつきましては、これから増加額について一〇〇%日銀でもって預金準備として吸い上げるわけでございますから、入ってくるものは全然妙味がないわけでございますから流入がとまる、こういうことでございまして、この両面をあわせましてやはり何ほどか現在の為替相場影響するであろう。これは両方とも資本収支関係を通じて考えているわけでございます。公定歩合は、あくまでも、そういう面もございますけれども、長期的に景気拡大という問題を中心にして行った次第でございます。
  9. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま大蔵大臣のお答えになりましたこと、また昨日私もお答え申し上げまして、特につけ加えることも少のうございますが、やはり国内的に企業固定費用がそれだけ減るということは相当なプラス要因ではないかと考えておるわけでございます。それから、恐らく、これからの政策決定にもよりますが、住宅ローンのようなものの金利にまで影響があるといたしますと、そういう投資を何がしか需要家のために促進する効果があると思いますし、全体を通じまして一種の金利底入れ感というものがございますと、ここしばらくの間取りざたされておりましただけに、まあここで最低金利になったかというような心理は、恐らく住宅にいたしましても企業投資にいたしましてもプラス要因になるのではないかと思っております。  対外的な効果は、ただいま大蔵大臣が言われましたことで尽きておるように存じます。
  10. 太田淳夫

    太田淳夫君 今回のこの公定歩合引き下げを、海外の市場では、日本円高対策の最後の切り札だと、それを行ったんだという見方をしていますけれども、これで日本円高対策は全部出尽くしたんじゃないか、こういう批判をしている状況です。ロンドン市場では、相変わらず二百三十二円九十銭と円高になっておるような状態ですし、今回のこの公定歩合引き下げというのは、時期が果たして適切であったかどうかという問題もあるんじゃないかと思うんです。その点、大蔵大臣経企庁長官、いかがお考えですか。
  11. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 円高対策に対しての切り札が出たんじゃないかと、こういうお話でございますが、本来変動為替相場のもとでございますから、やはり経常収支中心にいたします国際収支、これが決定的な動向を決めるわけでございまして、だから切り札というのはこれからの話でございます。  内需拡大して日本景気がよくなりますれば、当然、円高効果もございまして、やはり国際収支関係は漸次よくなってくることは長い目で見れば当然なことだと思うのでございまして、これからわれわれがいま五十三年度予算に盛っておりますやつを早く成立さしていただきまして着実に実行していく、そのことが円高に対して決定的な影響を及ぼすであろう、こう思っているわけでございます。したがって公定歩合というものが円高に及ぼす効果というものにはある限界があると私は思っているのでございます。  それからタイミングの問題でございますけれども、これはいろいろな考え方がございますけれども、やはりここへまいりましていろんな企業家心理を考えてみますと、もう一つ積極的になれない、何といいますか、公定歩合引き下げ待ちというような感触がありまして、やるべきものも少し様子待ちという点もあるので、一刻も早くやった方がよろしいと、それにかたがた先ほど申しました限定された効果でもありますけれども、円高対策に対しましてもある効果があるわけでございますから、この辺が見切りどきではないか、このように金融当局としては判断いたした次第でございます。
  12. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 日本側が持っております本当の切り札ということになれば、いま大蔵大臣の言われましたように、われわれの経常収支の過度の膨張というものがある程度傾向として変わってくるかということ、やはりそのための努力ということになると思うのでありますが、同時に、総理がしばしば答えておられますように、これはドル安であるという問題がございます。この二週間ほどアメリカ国内で、このドルの減価ということがかなりアメリカ自身の問題として議論をされ始めております。かつてはむしろそれが米国にとって有利だというふうに言われた時代があったわけでございますけれども、どうもそうばかりは言えないというような議論がかなり国内で出てきておるようでございます。  せんだってドイツとアメリカとの間でああいう同意がございましたが、これはあの同意だけを読みますと、実際どの程度にやるかということでパフォーマンスを見なければわからないという種類のことでございますけれども、どうもアメリカ国内にそういう議論がかなり――これも専門の雑誌とかいうのでなくて、一般的に政治の問題としてやかましくなってきておるようでございますので、そういう意味アメリカがどういうふうに対応するかということもやはり一つ大事な要素になるのではないかと見ております。
  13. 太田淳夫

    太田淳夫君 私たちとしましては預貯金金利引き下げには反対でありますけれども、政府日銀はこれを公定歩合と同幅の連動引き下げを考えてみえるようですけれども、この点は非常に私たちは不満ですけれども、この預貯金の利下げはいつごろ行われますか。
  14. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 日銀政策委員会を通じまして、金利調整審議会にいま諮問いたしておるところでございますが、答申を待ちまして逐次これを行ってまいりたいと、できるだけ早い機会に預貯金金利引き下げてまいりたいと、かように思っているわけでございます。
  15. 太田淳夫

    太田淳夫君 そうなりますと、やはり庶民預貯金目減りということがこれが大変な問題になってまいります。したがいまして、私どもとしましては福祉年金受給者に対する福祉定期預金の大幅な拡充とか、その他のやはり零細な庶民の資産の目減りということを防ぐ対策をこれは実施しなきゃならないと思いますし、その対策が一つと、あるいは中小企業に対する対策をどのようなことを考えてみえるか、その点をお伺いしたいと思います。
  16. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) お話しのように福祉預金がございますが、現在、預金金利はこの前の引き下げにもかかわらず一年定期で六・七五%でございます。この金利は依然としてそのまま据え置きたいと考えているわけでございます。それ以外のものにつきましては預金金利はやはり公定歩合引き下げと同じように、いま考えておりますのは、定期につきましては〇・七五、それから要求払いにつきましては〇・五%ぐらい引き下げていきたい。そういたしませんと貸出金利が下がらぬわけでございます。そういうことがございまして、中小企業という面から申しますとむしろその方が中小企業としてはフェーバーを受けるわけでございます。  問題は、そうでない一般家庭の、家庭と申しますか、雇用者の方の預金がそれだけ利回りが悪くなるわけでございますが、幸いいま消費者物価も落ちついて四%台になっているのでございます。願わくはこの消費者物価を今後抑えていくことによりまして、そして実質的な目減りが起きないように懸命な努力をしなければならぬと思っているわけでございます。なおまた、間接的に申しますれば、企業がよくなるということは回り回って結局家庭雇用者の方にもやがてははね返る、そういう意味でいましばらくごしんぼう願いたい。そういう経済の機構になっておるわけでございますので、ぜひごしんぼう願いたいということをお願い申し上げたいのでございます。
  17. 太田淳夫

    太田淳夫君 次に、いまいろいろと問題になっております住宅ローンの問題なんですが、やはりこの公定歩合引き下げに絡みまして住宅ローン金利とか住宅金融公庫の利子も当然これは下がってぐると思いますが、どの程度下げる予定でございますか。
  18. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これは、逐次、預金金利をどの程度下げるか、それによりまして今後長短の貸出金利を決めていかなければならぬわけでございまして、これからの具体的な作業に入るわけでございます。どの程度下がるかまだ計算してございませんが、下がることはある程度下がるであろうと思っているわけでございます。現在がたしか七・九%ぐらい、一般金融機関は七・九幾らで、いま史上最低でございますが、さらにこれより少し下がるのじゃないかと期待しているわけでございます。
  19. 太田淳夫

    太田淳夫君 いま住宅ローンの最高は九・一八%というのがあるわけですね、これが非常に高いわけです。新しい方々は下げるというような予定だそうですが、そうしますとますます格差は開いてくるわけですね。そういった点で既往住宅ローン金利もこの際引き下げることをやっぱり考えるべきじゃないか、こう思いますが、その点いかがでしょうか。
  20. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 一般的に申しますと非常にむずかしい話でございまして、今度は公定歩合が上がったときのことを考えますと、前にさかのぼって既契約の分まで上げるのかと、こういう話になるわけでございまして、やはりすべてが合理的な採算を基礎にやっておるものでございますから、既往のものに対して一般的にやれるかどうか、これは非常にむずかしい問題で検討問題だと思います。  ただ、現在でも、住宅相談所をつくっておりまして、住宅ローンの相談所をみんな各銀行はつくっております。非常にお困りのところはそこに行きまして、いろんな償還なりあるいは条件の改定にはいつも御相談にあずかると、ケース・バイ・・ケースでやるように指導しておることはもう御案内のとおりでございます。
  21. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 関連。
  22. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連質疑を許します。矢追秀彦君。
  23. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 私は、いまの問題に関連をいたしまして、通産大臣経企庁長官、そして大蔵大臣総理にお伺いしたいと思います。  まずこの公定歩合引き下げによって、これは特に通産大臣ですが、内需拡大までいくのかどうか。五十二年度については三回も引き下げになりましたが、余り景気に大きな影響はございませんでした。銀行の方はお金がいっぱいあって、そうして企業は借り手がない、こういうことで一生懸命借りてくれないかということで走り回っている。貸してほしい方は担保がないとか、あるいは企業の内容が悪いというので貸してもらえない、こういうことでございまして、五十二年度の三回の公定歩合引き下げというのは余り影響がございませんでした。今回は相当な影響がここで出なければ大変なことになると私は思いますので、まず、その点の見通しはどういうことかということ。  それから次に、個人消費の伸びですが、これは経企庁長官。今度預金金利が下がりますと、やはり庶民の方は非常に大きな打撃を受けるわけでして、いまも大蔵大臣は物価の問題に少し触れておられましたが、個人消費の伸びがこれでどうなるか、借金してでも物を買おうというふうになって伸びてくるのか。それとも現在の状況からして、依然として個人消費の伸びはそう私は期待できないと、かえってその前にインフレが起こって庶民に大変大きな打撃になり、よけい伸びは出ないんじゃないか、こう思うんですが、その点経企庁長官はどうお見通しになっておりますか。  それから大蔵大臣ですが、この公定歩合引き下げということ、それから特に円高、かつて円の切り上げがありましたときに、大型の補正を組みました。その結果、輸出が伸びなくなるから内需拡大しようとしてやったことが、結局は、狂乱物価を生み出してしまいました。それで列島改造が加わって大変な騒ぎになった、こういう過去の大変苦い経験がございますので、今回の予算も大型予算です、公共事業はもうふやすだけふやしております。これで公定歩合引き下げが行われた。これが下手をすると私はインフレ、いま申し上げたようにインフレになるとともに大変な混乱が出てきやしないか。この場合いま申し上げたように、庶民の立場から言いますと、消費を伸ばすためにはやはり減税をやることがあと一つ残されていると思います。衆議院ではいろいろ議論がありまして、自由民主党の方は減税をお約束していただいておりますが、これはどういう形でどういうふうにされるのか、この新しい段階に入った上で減税をどの程度お考えなのか、それは補正予算の中でおやりになるのか、また別の方途でやられるのか、その点はいかがなものか。  まとめまして、総理に、この問題をすべてお答えいただきたいと思います。以上です。
  24. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 矢追君、時間が来ておりますから。
  25. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) ことしの経済運営の一つの大きな柱に設備投資がございまして、総額で二十五兆数千億の設備投資を期待をしておるわけでございます。これが予定どおり実現するためには、一つは経済の展望がある程度開けるということが一つ、もう一つは金融の条件が整うということ、この二つだと思いますが、特に長期金利のある程度の引き下げというものが当然行われると思いますので、私は、そういう意味におきまして、これは一つの大きなプラスであると考えております。
  26. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 公定歩合引き下げましたときに、個人消費の伸びがどうなるかということでございますけれども、けさでございましたか、主婦連の関係の方が、これは結局預貯金の利子が下がるのであるから消費はどうも減る方になるんだという心配をしていらっしゃいました記事を拝見しました。全然また別の観点から、モデルを使いますと、やはり個人の利子所得は減るから消費はどうもマイナスになるというような、そういうモデルがあるわけでございますけれども、どうも私は、その辺のところが少し常識に反しておると、モデルもこういう場合には問題を単純化いたしますから、その制約があるなあというふうに考えておりますわけで、つまり仮に利子率が下がりましても既往預貯金にそれが関係をするというわけではございませんし、それから新しい低い利子のもとにおける預貯金から生ずる利子というのはすぐに生まれてくるわけではございませんから、どうもその辺がモデルの単純化が少し常識に反しておるというふうに考えています。  むしろ、もっとあり得べき事態は、公定歩合が下がることによって企業固定費用がそれだけ軽減される、ということは企業経理としては多少楽になるということでございますから、他の条件が同じであれば、その他の固定費用への圧迫要因は減るはずでございます。すなわち、そういう意味からの雇用所得というのはむしろふえる、他の条件が一定ならば可能性になるはずだと私は思いますので、全体にまた公定歩合が下がることによって、いわば明るいと申しますか、プラス要因というものは、循環いたしますと個人所得をマイナスにするのではなくて、どちらかと言えばプラスにする要因が多いのではないか。非常な長期をとる場合と短期をとる場合と違いますけれども、単年度で考えれば私はそうではないかと、むしろ私はそういうふうに考えておるわけでございます。
  27. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) ただいま委員のおっしゃいましたのは、恐らく昭和四十七年のころだろうと思います。全く私は条件が違うと思っているのでございます。あのときを考えてみますと、石油を初めとして各資源が、輸入物価がまず上がってまいりまして、それが日本の卸売物価を押し上げる。またあのときは大変な過剰流動性でございまして、名目の成長率がたしか一七%ぐらいのときにマネーサプライが二七というわけで、過剰流動性があったわけでございます。したがいまして、それがいろんな方面に投機的に土地に向かったり、あるいは株式に向かったり、いろんなことで物価を押しあげてまいりました。そのベースアップが、その消費者物価中心にいたしまして、三〇何%、二〇%連続してあったわけでございまして、その後は、今度は、賃金コストの上昇を通じまして四十九年、五十年は非常に卸売物価が上がったことは御案内のとおりでございます。いまは全く諸条件が違うのでございまして、輸入物価はむしろ円高でもって下がりつつあるわけでございまして、その還元をどうするかという話でございます。また消費者物価も先ほど申し上げましたように、ここのところ四%台に落ちついている、マネーサプライはどうかといいますと、大体M2で一〇から一一ぐらいでございますから、むしろ資金需要は非常に少ない、こういう状況でございます。したがいまして今度のような措置をとりましてもとうていインフレということは考えられない。かたがた、もう一つ申し上げておきますと、窓口規制をあのインフレを鎮静するためにやったわけでございますが、この枠組みはまだ残っているわけでございます。私はそんなものを使う必要はないと思っておりますけれども、あらゆる体制は整っておりますし、客観条件もまるで逆であるということから、インフレというようなものを心配していないのでございます。  そのようなわけでございますので、減税は、かねがね申し上げたとおり、乏しい財源のもとでやることについてはいかがかと考えまして、減税を考えているわけではございません。
  28. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 公定歩合引き下げは、これはもう通常は量的緩和、これを象徴するものとしてとられるわけでありますが、いま量的には相当緩和されています。ですから、今回の公定歩合引き下げは、そういう意味は非常に希薄である。それからもう一つは、公定歩合引き下げによりまして金利水準が下がる、そうすると産業コストが下がるわけであります。この意味においては、私は今回の公定歩合引き下げはかなり大きな影響があると、このように見ております。  いま経済界が沈滞しておる。なぜであるかというと、企業がもうからない、もうからないのみならず仕事をすると損をする、こういうような状態である。それはなぜかというと、設備過剰の状態。そこですでに投じた資金、それが利益を生まないで赤字を生んでおる、こういうような状態であります。金利負担、これが軽減をされる、こういうことになりまするから、これは企業活動に対しましては大変いい効果を与えるだろう、このように考えます。  昨年の暮れ、とにかく政府は総予算を発表いたしまして、財政がこの景気の下支えとまた浮揚のための役割りを演ずる、こういう姿勢をとったわけでありますが、当時から、金融の方でも何か役割りを担うべきだという期待がかなり強かったわけであります。その期待が今日すでに相当盛り上がってきておる。これをこのままにしておきますると、その期待というようなことからもうそろそろ金利も下がりそうだ、当然しなけりゃならぬ設備投資もちょっと控えておけ、こういうようなことにもなりかねないような情勢になってきておる。こういうことなども考えまするときに、今回の公定歩合引き下げは、まことにその幅におきましても、またタイミングといたしましても妥当のものであった、そのように見ております。
  29. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 簡単に。
  30. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 簡単に。時間が来ておりますから、一問で。
  31. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 四人の閣僚の答弁を聞きますと、大変私は甘いと思います。特に、総理は、いま産業コストが下がるからいいだろうと。そこまでいくかどうか私は非常に疑問に思います。  お伺いしたいのは、一つは、経企庁長官、昨年末の経済見通しをつくられた時点とかなり変わりました。一ドル二百四十円のこともそうですし、また今回のこういった状況、完全に政府の見通しは狂った、こういうことになるわけですが、見直しはおやりになりますか。大体、どの辺の時期までの様子を見て見直しということになりますか、それとも最後までこのまま突っ走られますか、それが一つ。  それから、総理、もし今回のこの施策が失敗いたします、効果が出ない、その場合は、責任はおとりになりますか。どういう形でいつごろまでを見きわめた上で、まあ総辞職というやり方もあるでしょうし、いろいろあると思いますけれども、いかがですか。
  32. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 五十二年度につきましては、見通しを改めました五・三%というのは、まずまず私はいい線をいっておるのではないかと現在考えております。  五十三年度でございますが、二百四十五円で計算をいたしましたのは、一応、作業上の便宜でいたしたわけでありまして、五十三年度における円の高低を予見したわけではございません。高い低いといいますよりは、円が不安定であるということは、経済成長にとりましてはこれはもう確かにマイナスの要因でございますけれども、ただいまの段階でそれが七%にどのような影響を与えるか与えないかということは、まだ申し上げるのには早そうに思います。ただいまのところ、七%程度という成長目標を変更する必要は、私は、ないというふうに考えております。
  33. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いまの政府経済目標、これは七%程度の成長、六十億程度の黒字幅と、こういうことでありますが、これは内外の期待にこたえる目標数値である、このように考えておりますので、これはもう何としても実現をしたい。これから刻々情勢が推移していくでありましょうが、もう来月から新しい年度が始まるわけです。年度中、もう一月一月厳重にその推移を見詰めまして、この二つの目標実現のために責任を持って努力をする。何か変な徴候が出てくるということでありますれば、その際、適宜、機を逸せず、大胆、積極的な行動をとりながら対処していきたい、このように考えております。
  34. 矢追秀彦

    ○矢追秀彦君 政治責任。
  35. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは政治責任を持ってこの二つの目的は完遂する、そういう決意であります。
  36. 太田淳夫

    太田淳夫君 それでは、私、続きまして、十一日に、国際収支対策に関する閣僚会議で緊急輸入四項目を決定いたしましたが、その問題についてちょっと御質問さしていただきますが、最初に、原油のタンカー備蓄についてですけれども、総理は昨年の十一月からこのことをおっしゃってみえますけれども、いまはどのように進展されていますか。
  37. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) タンカー備蓄ができますと五百万キロリッター、場合によりますれば千万キロリッター、その程度の備蓄ができますので、この際の外貨対策、そういうこととしてはきわめて有効である、こういうふうに考えまして、その準備をずっと進めておったんでありますが、これは関係各省も非常に熱意を持って努力をいたしております。それで、問題は、備蓄基地に適当なところがあるかというところなんでございますが、だんだんと見当もつきかかってきており、かたがた、さあそういう場合にどういう仕組みでこのタンカー備蓄を実行するかという、その仕組みの方もかなり整ってきておりますので、これは私はもう時間がかからないで実現の段階に入る、このように考えております。
  38. 太田淳夫

    太田淳夫君 それで、ちょっとその点をお聞きしますけれども、このタンカー備蓄は民間にやらせるのか、あるいは国家備蓄でやるんでしょうか。
  39. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 石油開発公団に実施させる予定でございます。そのための関係法令を今国会に提案いたしております。
  40. 太田淳夫

    太田淳夫君 ただいま総理からも適地探しの問題点が指摘されましたけれども、そのほかにもいろんな問題点がこれはあるんじゃないでしょうか、どのような問題点があるでしょうか。
  41. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 太田委員がどういう意味で問題点とおっしゃっているかということもあろうかと思いますが、そのほかにわれわれが検討いたしておりますのは、いわゆる安全防災対策の問題、あるいは事故の際の保険、補償の問題、こういったものも検討をいたしておりますが、やはり私たちといたしましては、先ほど総理からお話がございましたように、基地をどこに求めるかというのがこの問題がいつから発足できるかということにかかってくるかと思っております。
  42. 太田淳夫

    太田淳夫君 めどはいつごろかということ、まだ正式には決まっていませんか。
  43. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 先ほども申し上げましたように、法律改正あるいは所要の予算措置ということが必要でございます。こういった法令、予算の成立次第、できるだけ早く実施に移したいと思って準備をいたしております。
  44. 太田淳夫

    太田淳夫君 そうしますと、これはそういう問題が決まらないと原油の緊急輸入にはならないんじゃないでしょうか。
  45. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 御承知のように、現在の備蓄は主として陸上タンクに依存しておるわけでございますが、陸上タンクでやるためにはやはり二、三年の期間を必要とする。タンカー備蓄の場合は、諸般の準備が整えば直ちに実行に移せるという意味合いにおきまして緊急性の高いものと考えております。
  46. 太田淳夫

    太田淳夫君 じゃ、次は、民間航空機の緊急輸入についてお伺いしますけれども、航空機の導入に当たってはそれぞれの航空会社の事業計画に基づいて運輸省に申請するのがこれは筋道だと思いますけれども、また、この緊急輸入をするにつきましては国内の航空三社の完全な一致した了解がなければならない、このように思うわけですけれども、運輸大臣はこの三社を呼んだときの状況はいかがでございましたでしょうか。
  47. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 三社の社長をそれぞれ呼びまして、いま太田さんにお話しのような話し合い等をいたしましたのであります。それも返事が際限もなくおくれるというようなことであってはもちろんならないので、できるだけ早くということで、ただし今週中は無理であろうかと、こう思うのでございますが、まず最初に三社を呼びまして話しましたゆえんのものは、共通のいろいろな問題もあろうし、この種のことはできるだけ公明正大裏に疑惑を受けるようなことがない措置が望ましいと私は考えましたので、その種のことにいたしましたが、しかし、第一回目はともかくといたしまして、これから後、いまお話しのように、各社がいずれも自分の会社の考え方、それからいろいろの計画等とにらみ合わせつつ進行させていくのではあるが、しかし、いま同時にまた、これをできるだけ早くやろう、そのことによってわが国の現在の貿易事情を世界各国が納得してくれるような方向に進める上においてもいい方法がとられればなお結構であるというようなことで、その種のことも話し合いをいたしました。まあそれぞれの会社はよく理解をしてくれております。  ただ、そこから先になりますと、あるいはECの飛行機を考えているところもありましょうし、アメリカのものを考えているところもありましょうし、また、それについて若干早いのとおそいのといろいろな話等がございますので、来週以降に、その種の中身にもある程度入っていくことになりましょうが、いずれにいたしましても、私どもは、民間三社、この会社の諸君の自主性に、しかも現在の日本の事情にも役に立つようにという両面から最も適切な方途を講ぜしめるように話をしている最中でございまして、話だけでなくて、わりあいに効果的に進むというように私どもは期待している次第でございます。
  48. 太田淳夫

    太田淳夫君 運輸大臣、いま国際リース会社の構想もあるようですけれども、これは外国にリースした場合に、それに見合う需要というのはあるでしょうか。また、これもいろんな問題点があると思うんですけれども、リースした航空機が事故を起こした場合の責任の問題とか、あるいはリースの条件として相手国が日本乗り入れの増便を求めてきた場合にどうするとか、いろいろなこれから解決していかなければならない問題点があると思いますが、これは実現可能でしょうか。
  49. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) いまお話しのような大いに考慮を必要とする諸点があるわけでありまして、私自身も太田さんと同様になかなかむずかしいこともあるし、したがって、このむずかしいことをやるとすれば、適切に措置しなければならないことを考えているところでございますが、率直に申しまして、このリースの方の話は、これは私どもというよりむしろ通産省等で考えておられるところがありますので、これはこれでまた御答弁いただくといたしますが、私どもといたしますと、どういう国々にどういう方法で貸すか、それと関連して日本へ乗り入れさせてくれとか、あるいは日本の航空会社の路線等との競合関係にどういうようなことになるかとか、それからいまさきのお話しのように、保険的な意味においてこれから生じたものについてどういうようにするかとかいうようなことはすべてこれからのことでございまして、それらの問題をこれから詰めていくということでございますから、すぐに大規模にということはそう簡単なものでなかろうと私自身は思っているわけでございます。  なお、それと関連いたしまして、日本の航空機会社、日本ばかりとは限りませんけれども、従来から日本との間で運航をいたしております会社等との関係その他も全然無視してかかるというわけにはいかぬ、こういうように思いますので、それらを総合的に判断いたしまして最も適切な運営をと、こういうことを考慮に置きつつ、このリース業という――業と言っていいかどうか、リースが進められることを私は期待しておるのでございます。
  50. 太田淳夫

    太田淳夫君 次は、ウラン鉱石の問題についてちょっとお尋ねしますけれども、ウラン鉱石の輸入は昨年九月二十日から輸入促進を打ち出して対米交渉を重ねてきましたけれども、この話し合いがつかずに白紙となったと聞いております。その点はどうか。それから、ウラン鉱石の輸入を白紙にせざるを得なかった理由とか、あるいはアメリカが結論を出さなかった、渋ったという理由は何だったかという点ですね。  それから、政府は今回もウランの緊急輸入を打ち出しておりますけれども、アメリカのウランに対する態度は変化したのかどうか。それともアメリカを説得するだけの材料があるのか。また、電力会社にあってはほとんどの会社において十年先までの核燃料を確保しているからということで渋っているようですが、今回、このウランを輸入する場合、金利の問題等でその実施には無理があると聞いておりますけれども、その点どのようにお考えになりますか。
  51. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) ウラン鉱石につきましては、現在まだアメリカ側と折衝中でございますので、その詳細については差し控えたいと思いますが、問題は、ECを合わせて、濃縮ウランの形にするか、濃縮役務サービスだけに限るかという問題もございます。そういった問題も含めて検討いたしております。いずれにいたしましても、長期の前払いということにもなりますので、そういった資金事情について質のいいものということで、実現する場合には輸銀基金の活用といったようなことも必要ではなかろうかと思います。
  52. 太田淳夫

    太田淳夫君 次に、ECとの通商交渉の点でちょっと牛場対外経済相にお聞きしますけれども、日本とのEC通商貿易交渉は現在どのようになっていますか。  それからEC側からエアバス等の購入要求や、米国に対してと同じような共同声明を出すように要求されておりますが、それにどのように対処されるつもりですか、その点をお聞きします。
  53. 牛場信彦

    国務大臣牛場信彦君) ECから一昨日デンマンという委員会の総局長という職ですけれども、この人が十人以上の人間を連れてまいりまして、きのうから交渉に入っておるところでございます。これは最終段階と言っていいと思うのでございますけれども、それで、大体妥協ができそうだという見込みがつけば、ハフェルカンプという副委員長が参って、最後には共同声明みたいなかっこうで締めくくりたいというのが先方の希望でございますし、私どもも、できるだけそうしたいと思っておるところでございます。  内容につきましては、マクロの方は、大体、日米の間で話したと同じようなことになると思います。それからミクロの方につきましては、先方が一番気にしていますのが日本とECとの間の貿易の不均衡ということでございまして、昨年は、日本の輸出超過が五十億ドル近く――全体の日本の輸出が八十数億ドルの中で五十億ドル近くの輸出超過ということになっていますので、これは相当大きな割合になりますから、これを何とかして逆の方向に持っていってもらいたいという話が一番焦点になっておる次第でございます。  それから、製品輸入、ことに航空機、向こうは非常に熱心でございますけれども、これは最後には結局、いま運輸大臣から御説明ありましたようなことで私どもの立場を説明するということになると思います。これもやはり性格としてはあくまでもグローバルな問題であると、つまりどこの飛行機を買うということでなくて、航空機輸入全体について日本政府としてこう考えているのだと、こういうようなことを申すことになると思います。
  54. 太田淳夫

    太田淳夫君 総理、緊急輸入の問題にしましても非常に問題点があって、私たちとしては非常に効果が薄いのじゃないかという感じがしますが、今回、米国あるいは西独両国はドル防衛に対して新しい対策を発表しているわけですね。それに対してわが国の姿勢は甘過ぎるのじゃないかという声もあるようですが、これは牛場対外経済相を派米して、円に対する対応策をアメリカに要求してはどうか。  また、さらに、五月の日米首脳会談が続きますけれども、わが国の通貨及び通商の基本的な対応策はどのようにされるのか、その点最後にお聞きしたいと思います。
  55. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いま国際的通貨不安、こういう状態だと見ておりますが、これを安定させる方途いかんと、こういうことになりますと、やはり日米欧、これが緊密に連絡する必要があるだろうと思うのです。わが国は、そういう立場から、日米欧というこの関係の中の日本といたしまして他の二極と常に緊密に連絡しておりますが、特にいま通貨不安の根源となっておるのは何だというと、私は円高でもなしマルク高でもない、問題はドル安だと、こういう認識のもとにアメリカとの間に非常にきめ細かな話し合いをいたしておるわけであります。  アメリカにおきましても置かれておる立場に十分責任を感じまして、そして石油法案ですね、これもとにかくもう五月ごろの時点では成立させるという決意でいま努力をいたしておりまするし、国際的な努力アメリカのみならず関係国はずいぶんいたしておりますので、だんだんと平静を取り戻すかと思うんでありますが、私は基本的にはドル、つまりその背景にあるアメリカ経済というものは決して弱い立場じゃないと、こういうふうに見ておるんです。それがたまたまアメリカ経済が今日この時点におきましては膨大な赤字を出しているというようなことから不安を醸しておりますので、粘り強くアメリカを初め関係国が努力いたしますれば、私はやがてこの国際通貨の安定というものはもたらし得るのではあるまいか、そのように考えています。日本といたしましても、有力なる立場にありますのでせっかく最善の努力をしてみたいと考えております。
  56. 太田淳夫

    太田淳夫君 それでは次の問題に移りますが、この五十三年度予算景気回復を最も大事な目標に組まれたと、このように言われています。その中身は、一つは公共事業費の拡大であり、二つは住宅建設の増加となっておりますけれども、以下この二つについて若干お伺いしたいわけですけれども、まず、公共事業については、どうも途中でパイプが詰まって期待どおりの効果を上げていない、そういう危険性があるように思います。  三月九日、通産省が発表した公共事業の下請状況調査によりますと、重層下請と長期手形の支払いの実態がわかりました。また、報道によりますと、公共事業等施行推進本部は、近々、各省庁、公社、公団等が発注する公共事業につきまして改めて下請状況調査に乗り出す、こういうことでございますけれども、その調査はいつからどういう方法で行うのか、また結果が判明するのはいつごろか、またその結果どう対処されるのか、推進本部長の御所見を伺いたいと思います。
  57. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これは衆議院における予算委員会等におきましても問題になったところでございまして、いろいろ議論は交わされておりまして、いまの下請の状況、こういうものをいま調査しつつあるところでございます。大体、この予算が成立します四月の中ごろまでにはできてくるんじゃないか、かように思っているわけでございます。
  58. 太田淳夫

    太田淳夫君 結果が判明したら、どう対処されますか。
  59. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いまいろんな点、早期施工、それからいろんな熟練工の手当、それから資材の部分的な値上がり、こういった点はいっているわけでございますが、下請の前払いが一体どうなっているのか、それから工事の概要、それから受注者の資本金、下請への発注状況、請負代金の受け取り状況、下請代金の支払い状況、それから前払い金を行ってない場合はその理由とか、そういった事柄について調査を進めているわけでございます。
  60. 太田淳夫

    太田淳夫君 調査結果にどう対処されるかということの御答弁がないようですが……。  次に、建設大臣にちょっとお伺いしますけれども、ここに私たち、まあこれは一例でございますけれども、そういう下請の状況、資材業者の実態というものがここにあります。この実態を見ますと、建設省が調査された以上の厳しい状態にあるわけです。建設省としましては、従来も事務次官通達を出されたり、建設工事標準下請契約約款とか現場説明書とか、そういうもので行政指導を行っているようでありますけれども、なかなか現実には改善されておりません。こういう通達を幾ら出しても何の効果もない。しかし、これをしっかりしないことには幾ら景気浮揚のために公共事費業をつぎ込んでも末端まで行かない。景気浮揚には非常に影響がなくなってくるんじゃないか。先ほど申し上げましたパイプの途中で吸い込まれてしまうような可能性があるわけです。したがいまして、この公共事業の目的を達成するためにも景気浮揚のためにも強い姿勢で臨むべきじゃないかと思うんですね。  いま調査されているようですけれども、ここにも元請の横暴で下請業者あるいは資材業者が倒産寸前のいろいろな手紙も来ているわけです。こういった悪質な事例がもしわかった場合には、一時期でもその業者を指名停止するような、そういう厳重な措置が必要じゃないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  61. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 御質問の御趣旨はもうごもっとものことであります。そこで、指名についてどうするかということにつきましては、これは建設省の内規の中に、業務に関し不正、不誠実の者については指名停止等の措置をも考えなけりゃならぬようになっております。したがって、この不正、不誠実ですね、これが下請業者や資材納入業者に対して不当なしわ寄せや不利益になるようなことをしておるというような、その内容をよく調べまして、この不正、不誠実に該当する者があればそれはおっしゃるように指名を停止いたしたいと思います。
  62. 太田淳夫

    太田淳夫君 総理、いま建設大臣からああいうお言葉がございましたが、総理としてもその点厳重に監督していただきたいと思います。
  63. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そのとおりに心得てまいります。
  64. 太田淳夫

    太田淳夫君 次に、第二点の住宅建設についてお尋ねしますけれども、政府が言うほど家が建つかどうかということは、また、家が建てられる条件整備は十分かという点がこれは問題でございますけれども、建設省は、五十二年度の新設住宅の着工戸数を最低百六十五万戸達成をしたい、こう発表していますが、実際問題としてこれは達成可能でしょうか。
  65. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 従来お答えをしておりますのは、百六十万戸見当ということを申し上げておるわけでございます。それで、この中で政府の施策が中心になりますのが公営公庫の分また住宅金融公庫融資による分でございまして、相当量を民間自力建設に依存しなきゃなりませんので、これらの点につきましてはあらゆる施策を講じながら、特に自力建設の分につきまして土地手当てがどうなるかということが焦点になっておると思いまするが、これらにつきましては、公的機関によるもの、あるいは民間の業者によるもの、それぞれ誘導政策を講じて目標達成の上に努力をしてまいっておる次第でございます。
  66. 太田淳夫

    太田淳夫君 総理、わが国のこの貧弱な住宅事情というのは国際的にも有名であります。あるフランスのジャーナリストは、日本の国の経済の繁栄は国民の貧弱な住宅事情の犠牲の上に立っている、その住宅は非効率的で不経済な建物だと、こう言っておりました。  また、最近、私の知人が住宅を購入したわけでございますけれども、これは千五百万の住宅をローンで購入しましたけれども、土地が二十八坪で4DKだ、東京までの通勤時間は二時間かかるわけです。年齢は三十五歳ですけれども、毎月の返済が約八万円、ボーナスの返済が二十九万九千円ですね。これは年二回になります。合計しますと年間で百五十万をこれの返済に充てるわけですね。二十年払いですから、返済の総額は約三千万になるわけです。ですから、彼としましてはまことに悲壮な決意でこの住宅を購入したわけですけれども、都会のサラリーマンではこんなことはざらですし、また最近は、マイホームの建設にまつわる悲劇が非常にふえております。家族が病人になったり、あるいは不況で会社が倒産すれば、延滞あるいは一家心中をはかるというような事件が続出しているわけですが、総理は、施政方針演説の中で、住宅は国民の心のよりどころだ、あるいは健全な家庭の支えである、このようにおっしゃっておりますけれども、総理は、平均的な国民の住宅像についてどのようにお考えでしょうか。
  67. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) わが国は、わが国の国民生活全体という立場から言いますと、衣食住と言いますが、その衣食につきましては相当高度のところまで来ておると思うんです。問題は住。で、わが国は、企業でもそうでありますが、家庭におきましてもそうだと思います。その点は、フローといいますか、経常的な意味における経済活動、これはかなり充実してきた。ところが、ストックといいますか蓄積、これが非常に乏しいのです。家庭における最もその特徴的なあらわれは、これは住宅問題に出てきておる。このように見ておりますが、まあフローの経済、これはかなり充実いたしました今日、これからストックの充実という方向に大きく流れは変わっていくわけですが、その中で住宅問題、これはその中心的課題をなす問題である、そのような感覚でございます。
  68. 太田淳夫

    太田淳夫君 しかし、本年度の住宅政策の特徴として私は二つあると思うんですが、一つは、住宅金融公庫の融資枠の拡大、それから金額の増加、それから公共住宅建設戸数を公営住宅、公団住宅合わせて約二万九千戸減らしている、こういうことだと私は思いますが、この二つをまとめますと、どういうことになるかというと、政府は、自分では住宅はつくらない、そのかわり資金を借りやすくしてあげるから資金を借りてみんなの力でつくってくださいと、こういう総理の御意見とは違う非常に消極的な施策になっているのじゃないかと思うんです。そういった点で、もう一度ちょっとお聞きしますけれども、特に住宅に重点を置いたと、こういうことが言えるでしょうか。
  69. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 政府は、ただいま申し上げましたような認識の上に立ちまして、長期計画を持っておるわけでありますが、その長期計画を強力に進めてまいりたい、このように考えます。  それは公的住宅それから民間住宅、こういうことになりますが、公的住宅につきましては、これはどうしても規模が大きゅうございますものですから、これに必要な土地、これが大きくなる。この大きな規模の土地、これは物色することが非常にむずかしいんです。そういうような関係で、公的住宅、これを伸ばそうというのでずいぶん予算も組み努力してきたんですが、その予算が使い切れないというのが現状であり、五十三年度の段階といたしましては、そういう事情も考慮いたしまして戸数の縮減はいたしたわけでございまするが、土地事情、これを打開いたしまして、公的住宅、これはさらに今後進めてまいりたい、このように考えます。  それから、公的または私的住宅、これを総合いたしますと、かなり規模も拡大しておるわけでありまして、住宅政策につきましては、五十三年度におきましては、特段の配慮を払った、こういうふうに私どもは考えておるのでございまして、この上ともそのつもりでやっていきたいと思います。
  70. 太田淳夫

    太田淳夫君 それではちょっと各論に入りますけれども、先ほどの金融公庫の住宅ローンの問題でございますけれども、五十三年度の予算、税制改正による住宅ローン償還金の軽減というのは建設省の試算でございますが、これから試算をした月間の負担額というものはどのようになっていますか。
  71. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 東京周辺を例にとりまして、二千二百万円、これは土地つきの一戸建て住宅でございますが、これを買います場合に、一年目が月九万七千円、二年目が月十二万七千円というようになっております。また、自分の土地の上に一千万円の住宅をお建てになる場合、この場合には一年目で三万六千円、二年目が四万八千円というようになっております。
  72. 太田淳夫

    太田淳夫君 住宅局長ですね、そうしますと、いまの月収の三〇%というのが本当のぎりぎりですね、何とかローンの返済負担額としましては、こういうことを言われているんですが、いろんな意見があると思いますけれども、そこから逆算しますと、建設省のモデルケースでは月収はどのぐらいになりましょうか。
  73. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 先ほど申し上げました土地つきの一戸建ての場合は、三〇%といたしまして、月収四十二万円。それから土地は持っていて、住宅だけ一千万お建てになる場合の月収が十六万円ということになっております。
  74. 太田淳夫

    太田淳夫君 大臣、月収四十二万というと、平均ならしまして年収では五百四万円になります。こういう年収五百四万円というと大体どの程度の階層の人と思われますか。
  75. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) 勤労者の平均収入で申し上げますと、大体、第五分位に相当すると思います。しかし、実際、昨年の春の住宅金融公庫で申し込んだ方の中で、東京周辺でございますと、やはりそういった形で一戸建ての土地つきの住宅をお持ちになるということは非常にむずかしゅうございます。したがいまして東京周辺ではマンションをお買いになる、これは当然土地つきでございますが、昨年の春の第一回の募集の場合は平均価格が千三百五十万ということになっておりまして、これは大体第二分位の方々から可能だというように私ども考えております。
  76. 太田淳夫

    太田淳夫君 総理、いま局長から話がありましたように、建設省の試算に挙げられていますこの土地つき二千二百万あるいはマンション千七百万ということでございますけれども、東京ではほとんどこれは無理だと、首都圏でも本当にこれはもうぎりぎりというよりも、ちょっとむずかしいような状況なんですね。住宅を、何と申しますか、本当に欲しいと願っている方々、そういう方々のやはり中心というのは、平均的な都市サラリーマンといいますと、年齢的には約三十代ですか、平均年収というのは、建設省の調査によっても出ていますが、三百九万九千円という人たち中心だと思うんですね。これらの人たちにとりましては、もうこの低利の公庫融資を含めて、いま試算に挙げられた返済額ではとても住宅ローンも借りられない、こういうことになると思うんです。  そこで、公庫住宅の点ですが、ことしは融資をして、五十三年度建設計画によりますと、個人住宅の計画戸数は五十二年度に比べて六一%もふえております。しかし、大型の公共投資をぶち込むことしの方針からいきますと、これは土地も値上がりはしてくるでしょうし、あるいは建設の資材の値上がりということも当然考えられます。そうしますと都市のサラリーマン、住宅を本当に欲しいと思っている方々の希望というものはますます実現が遠のいてしまうわけですね。その点、総理は、この実態をごらんになって、どのようにお考えになりましょうか。
  77. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、先ほど申し上げましたように、これからの内政の大きな課題は住宅問題を解決することにある、こういうふうに見ておりますが、しかし、政府住宅問題に手をかす、これは御承知のような財政事情でもありますので、そう飛躍的というようなわけにもまいりませんが、政府財政の許す限りにおきまして、住宅問題につきましては今後も力を入れたい、このように考えております。  いま住宅資材の値上がり、地価の値上がりというような御懸念でございますが、これだけ住宅を進めるということになりますると、やっぱりその問題、これは私どもも心配しております。そこで、そういうことにならないように、これはもう細心の注意を払ってやってまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  78. 太田淳夫

    太田淳夫君 もう時間もないので、こちらで申し上げますけれども、住宅金融公庫の延滞の数も一月の末で約二万二千八百八十四件あるし、六カ月以上の延滞の方は五百十五件。昨年一月の末を見ますと二百二十六件。この一年間で長期延滞者は約二倍になっているんです。このように現実に低利の金利であります住宅公庫の返済さえ事故がいまふえているわけです。まして民間ローンではもっと切実な事態がいま増加しているわけですね。  総理府の調査によりましても、マイホームを実現したそのサラリーマン家庭の六軒に一軒の割合でローン返済において何らかの形でもって苦境に陥っているということが調査に出ております。家族の病気、不景気による減収、倒産、あるいはいまは支払いを続けている方々でも夫婦共かせぎという事態になったり、あるいは退職金を前借りして、退職後には家だけ残るというような状態の中で、一生懸命マイホームを維持しているのがいま現実じゃないかと思うんです。ですから、こういった実態をよく調査しまして、私どもとしましては、いま住宅金融公庫の融資限度の引き上げ、その他の改善ということをお話しされていましたけれども、むしろそういう改善でよしとしないで、さらに先ほど申し上げました住宅の潜在的需要者たる平均的なサラリーマンの方々が安心してマイホーム建設に動けるような、そういう施策を今後検討していただきたいと思うんです。  たとえば、昨年の十月に、建設省は持ち家政策推進の立場からいろいろと調査したものがここにありますけれども、それによりますと、平均的都市サラリーマンが宅地二百平米、住宅百平米の一戸建ての標準住宅を建設する際の難易度を建設省でまとめてみえました。それを建設費で示しますと、東京都区部では三千九百十七万になるわけです。三鷹では三千百十七万、大阪では二千九百二十一万、京都市では二千六百二十五万と、こうなっておりますね。これから見ますと、東京とか大阪その他のこの大都市では、もう適正な居住水準の住宅を平均サラリーマンの方々が入手することは本当にむずかしい状態になっています。しかも、このままでこれを放置してまいりますと、これはミニ開発とかに走ったり、あるいはスプロール化の現象がますます進んで、ますます居住環境が低下してくるでしょうし、あるいは都市の防災という面から見ても、将来に大きな禍根を残すことになるんじゃないかと思うんですね。そういう点で政府としても対策を考えなきゃならない重大な問題じゃないかと思うんです。  そこで、私、発想の転換ということを先ほど申しましたけれども、ここで申し上げたいのは、この際、このようなその方一世代でローンを返済できないような状態、そういう場合に適正な居住水準、たとえば耐火構造であるとか、あるいは適正の規模で、あるいは社会資本としてりっぱに通用するような住宅であれば、この住宅を取得するに際しまして、二世代にわたる長期住宅ローンというものを創設されるような、そういう発想の転換をしていく必要があるんじゃないかと思うのです。住宅公団でもいま耐火は七十年として算定されておりますけれども、西ドイツの住宅では百年の長期のそういったローンの制度もあるわけですから、その点総理にお伺いしたいと思います。
  79. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) いろいろ問題点の御指摘で、最後に一つの構想をお示しでございましたが、このローン返済で苦境に立っておられる方という場合は、これは現在でも個々の例によりまして御相談に応じておると思うのであります。  それから、いまの二世代にわたるという問題につきましては、日本の場合は実態的にはそういう傾向を持っておると思いますね。たとえば住宅金融公庫の融資によって建てた場合は、その債務は相続により継承されるわけでございますね。それから民間の場合でございますと、生命保険で担保しておるということで、この生命保険による返済をいたしますから、その生命保険の収入が得られないということはその影響はございますが、しかし住宅を建てるときにそういう契約でやっておりますね、だから次の世代の方は自分の方にはその負担がかかってこない。まあ自分の得べきものを払う、こういうことでございますから、これらのことを勘案してみまするに、二代にわたってやる制度とおおよそ近い施策、近い制度になっておるのではないか、こう思うのであります。
  80. 太田淳夫

    太田淳夫君 しかし、先ほど話しましたように、それですと、何とか防災上の見地から見ても優良な住宅というのは建てられませんわね、大臣おっしゃったようなことでは。私も生命保険で入っておりますけれども。  そこで、私申しましたのは、都市部で防災上の見地から見ても、あるいはこれは社会資本として残せるようなりっぱな建物を建てていただけるような方々に対しましては、そういう長期のローンを組めば、安くしかもりっぱな住宅を建てられるのじゃないかということです。ですから、そういった長期の二世代にわたるローンというものを計画されてはどうかということをいま申し上げているわけですけれどもね。
  81. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 太田委員のおっしゃっておることは、いまの経済社会情勢の上からいって、果たしてそれが住居者にとっていいのかどうか。現在、住宅金融公庫の返済、償還の条件として、木造二十五年それから簡易耐火三十年、普通の耐火であれば三十五年というようなことにしておるわけでありまするが、太田委員の御構想を私なりに解釈して、それが五十年、六十年と持っていく。いま公団の場合七十年の計算になっておりまするが、これが果たして現実的にいいのかどうかということを私は疑問に思っておるぐらいなのであります。この時代の進歩に応じて、余り長期の償還のものというものはどうかなというように思いまするが、お話の御趣旨については検討さしていただきます。
  82. 太田淳夫

    太田淳夫君 次は、先ほど公営住宅と公団住宅の建設戸数を五十二年度予算に比べて二万九千戸減らしたと私申し上げましたが、これはなぜでしょうか。建設大臣にちょっとお答え願いたい。
  83. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 一つには、しばしば御指摘を受けておるように、公営、公団、空き家が相当ございます。これは現在の公営住宅、公団住宅が需要者の要望に沿っておるのかどうか、すなわち狭いとか、あるいは高過ぎるとか遠過ぎるとかというような問題を起こしておると思いまするので、公団の分なんかは、この空き家等まだ未利用の分は合計三万九千ぐらいございますから、ことし二万戸減りましても、その方の改築と申しましょうか、あるいは今回の公団家賃改定によって、値下げになって住居の希望者も出るという向きもございまするから、そういうことで計画として減っております。それからもっと根本的には用地の取得難であるとか、あるいは関連公共施設などにつきまして民間デベロッパーなどに負担をかける、だからそういうことはいけない、こういうことで今回別枠で公共施設整備をやろうというようなことをいたしておるわけでございます。
  84. 太田淳夫

    太田淳夫君 いま公団の問題が出ましたけれども、五十一年度の公団の新築空き家に伴う国の損失というものが計算されておりますけれども、それを見ますと、管理費としては八億四千六百万円、収入の減が六十六億五千五百万円、金利相当分が四十七億六千万円、合計で百二十二億六千百万円、これだけの国損が五十一年度の公団新築空き家でもって生じているわけですけれども、これはもう住宅政策の失敗のあらわれじゃないでしょうか、どうでしょうか、建設大臣
  85. 救仁郷斉

    政府委員(救仁郷斉君) ただいま御指摘のような収入減をもたらしていることは事実でございます。ただし、これが直ちに国損という概念にはならないというように私どもは考えております。ただ、そういった事態を招いたこと、これは確かにそういった住宅需要の変化、そういうものに対応できなかったということでございまして、今後、こういうことのないように十分公団を指導いたしますとともに、現在のそういった空き家の解消ということにつきまして最大限の努力を払いたいというように考えております。
  86. 太田淳夫

    太田淳夫君 それでは、最後に一つお伺いしますけれども、そこで、政府は、この公団の新築の空き家をその地域の公営住宅として地方自治体に移譲することを検討されているという、わが党もこれは主張していましたので評価しておりますけれども、これは三月の末に具体策とか、あるいは昭和五十四年度から実施するとか、このように報じられておりますけれども、すでに建物が完成をしていることでございますし、また埼玉県のあるところでは、公団と県営が隣接をしていて、県営の方は満員で公団の方はがらがらだというようなことも実際に報じられているわけです。したがいまして、こういった住宅難の折ですし、もうすでに建物は完成しているわけですから、これは早急に具体策を詰めて、五十三年度から実施するような方向でやるべきじゃないかと思いますが、その点いかがでしょうか。
  87. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 太田君、時間が来ております。
  88. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいまの問題は、衆議院の方でもお答え申し上げましたが、御趣旨のように公営に移管するということで現在事務当局に検討さしておりまするが、さらに具体的に千葉、埼玉、愛知などでは現に折衝しておる段階でございます。
  89. 太田淳夫

    太田淳夫君 いつごろから実施されます、いつごろから。
  90. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これはもう早いにこしたことはないと思うのでありますが、折衝中でございますので、いまにわかにいついつということを申し上げかねますけれども、速やかにその話を妥結させたいと思っております。
  91. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で太田君の総括質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  92. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、柳澤錬造君の総括質疑を行います。柳澤君。
  93. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 私は、まず最初に、内閣の基本姿勢について総理にお尋ねをしてまいります。  日本は、世界の百五十七カ国の中で、先進国首脳会議に招かれるという国なんです。その日本の国が国会において、国家形成の基本である国を守るということについてのコンセンサスが得られていないのです。その点について総理にどうお考えになるか。
  94. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 国を守るということは国家形成の基本である、これはまことに私はお説のとおりのことと存じますが、敗戦という本当に日本民族始まって以来の大衝撃の後の国家再建というか、その途上に今日あるわけでありますが、国の防衛、そういうことについて論ずること、これが大変低調というか活発さを欠いておるというような私は実感を持ちます。しかし、この問題は私は非常に大事な問題でありまするので、これは遠慮なく皆さんが率直に議論をする、特に国会において大いに議論をして、そうしてやっぱり国自体として一つの指針を持つというところまでぜひいきたい、こういうふうに念願をいたし、そのようなことを常に申し上げておるわけでありまするが、国会におきましてさらにこういう問題について御論議されるということにつきましては、私は深くこれを期待いたします。
  95. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 総理ね、国会において大いに議論されることを期待をなさるというだけではなくて、総理御自身が国の総理大臣なんですから、政府部内をそのことについてどういうふうにやっていき、そしてそれを国会にも持ち出すという、そういうことについての御見解をお聞きしたい。
  96. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 政府におきましては、もとより国の基本的な姿勢、そういう中で防衛というものはどうあるべきかということについては基本的な考え方を持ち、そして常にこれを皆さんにも申し上げておるわけであります。国の基本的な考え方、これは常に私は申し上げておりますが、日本は持たんとすれば持ち得る強大な経済力、また技術能力というものを持っておりまするけれども、それを持たない。そして各国と友好親善を積み重ねる、その中においてわが国の安全を貫き通す、こういう考え方ですね。これは常日ごろ皆さんにも申し上げて、国民の御理解を得、また、そればかりじゃない、世界に向かってそのことは申し上げておるわけであります。  同時に、しかし、そうは申し上げましても、こういう現実の世界情勢の中でわが国をうかがうという不心得な国が出ないとも限らない、そういう際におきましては、わが国はわが国をわが国の力においてこれを守り抜くという、いわゆる専守防衛、この考え方、これは貫き通し、また現実性のあるものとしなければならない、このこともまた申し上げておるわけでありますが、しかし、国会におきましてはいろいろ御論議があるということはまた柳澤さん御承知のとおりであります。
  97. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 総理ね、防衛力の限界はと言ってよくこの国会の中で議論されるのです。その辺で私はもう少し突っ込んでお聞きしたいのは、国を守るという肝心の基本原則が決まっていないのに、防衛力の限界はどうだと言って議論なさることについてはどういうことなんです。これは防衛庁長官もそれにお答えなさるのですが、何をよりどころにお答えなさるか、それも一緒にお聞きしたいのです。
  98. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 防衛という問題は、ただいま総理からもお話がありましたように、政治の基本だと、原点だと私は考えておるわけであります。そういうことから考えてみますと、コンセンサスを得るとか、あるいはシビリアンコントロールとかいうような中で、いわゆるシビリアンコントロールということは政治優先ということであろうと思うわけであります。  その政治優先ということであるならば、最高の国会というものはこれを論議するということが当然のことであろうと思うわけでありまして、そういう意味で私は国会にそういう場をつくる。衆議院の議運の委員長をいたしておりましたときに、制度調査会を何回か開きまして、各党の合意を得た。各党の合意を得たわけでありますが、その中でまだこの問題が決着がついておらない。ぜひ私は、本当に政治家の姿勢だと、与野党を問わず、この問題を真剣に考えて、いわゆるきょうの侵さず侵されずという考え方の中で、国民に理解を持っていただくようなことを考えるには、国会にそういう場をつくることが最適だと。私はぜひつくっていただきたいということを考えておるわけであります。
  99. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 いまシビリアンコントロールという言葉が出てきたんですから、総理、シビリアンコントロールは確立されているんですか、どうなんですか。
  100. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 確立されております。
  101. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 どうなんですか。私が調べて、防衛庁長官が大体平均八カ月ちょっとで交代しているんです、いままでずっと。総理大臣が八カ月ぐらいで交代しておったら日本の政治がどうなるんですか。そういうことを考えていったときに、形の上ではシビリアンコントロールということが実際にそれができていると言えるのかどうか、その辺もう一度突っ込んでお聞きしておきます。
  102. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 諸般の事情がありまして、内閣の改造、これは大体一年に一回というようなことになってきておりますがね。その間において防衛庁長官は特別というような考え方もこれはしてみたいような気持ちがありまするけれども、諸般の都合でそういうようなことが実行されない。そういう気持ちが実行されないということが多いわけでございますが、しかし、さらばといって、任期が他の閣僚と同じくらいな程度の防衛庁長官、これがその職責の遂行において不足しておると、こういうふうに私は考えません。事務の引き継ぎというようなことも十分に行われておることは御承知のとおりかとは思いまするけれども、同時に、特に有能なる歴代の防衛庁長官が、任期の短い、そういう欠陥を乗り越えて堂々とその任務を完遂しているということにつきましては一点も私は疑いを持たぬ、このような見解を持っております。
  103. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 外国なんかだと、少なくとも一国の総理大臣をなさる方は国防長官をやってからなさる方が結構多いと思うんです。それはそれだけ国防長官、いまの日本で言えば防衛庁長官が重要視されていることだと思うんです。その辺、日本の場合にはそれが大分違うんだけれども、総理、その辺はどうなんですか。
  104. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、今日この時点のわが国の政治情勢の中で、防衛という問題が政府の中において軽視されておるとか、あるいはしたがって防衛庁長官の地位が軽んじられておりますとか、そういう感触は持ちません。私は、福田内閣ができましてから、防衛庁長官その人の選考につきましては特に意を用いまして、この人ならばという人にお願いしておると、このように御理解を願います。
  105. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 別にいま防衛庁長官をどうこう言っているんじゃないんです。しかし、先ほどから言っているように、シビリアンコントロールの最高の権限というか何というのですか、適当な言葉が思い出せないんですが、それは国会だと思うのです。その国会の中に防衛の問題を議論する委員会がいまだにできていないわけなんでしょう。防衛庁長官があって形の上はできたかわからぬけれども、それでシビリアンコントロールが確立されていると、そういう判断をなさるところに私は問題を感じるんですよ。その点どうですか。
  106. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、国会に防衛問題をもっぱら論ずる、そういう委員会ができるということは大変好ましいことじゃないか、そのように思いますので、私ども、自由民主党といたしましてもぜひそういうふうにお願いしたいというふうに考えますが、同時に、各党におかれましても、そのような認識でひとつ対処されるということを切に御期待を申し上げます。
  107. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 防衛委員会が設けられるということが話題になり、ある程度そういうことが話が詰まってから、特に総理大臣の前の総理大臣、そういうことは言っているはずなんですけれども、何年たったらそれができるのですか。少なくとも総理ね、私の代に必ずそれはつくるようにするのだと、自分が自民党総裁として内閣総理大臣としてそれは責任を負いますということは言えませんか。
  108. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 院の構成の基本になる点ですね、これは全会一致というか、そういうことが好ましいんだと、こういうことにされておる、そういう慣例だそうであります。そういう慣列ではありまするけれども、私自身といたしましては、これは私の在任期中とかなんとかという話ですが、一刻も早くそういう機構ができてほしい、こういうふうに考えておるのです。  いま防衛庁長官の金丸君は、この長官前には衆議院の議運の委員長をされておったわけでありまするが、非常にそういう意味においては、この問題のまとめというか推進には、これははまり役の立場のお方だと思うのですが、こういう機会にこそ、私は防衛問題を専門に論ずる委員会が両院にできるということをぜひひとつ実現をいたしたいなという感じでございます。
  109. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 それでは、総理のお言葉に対して防衛庁長官の御決意のほどをお聞きしたいです。
  110. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 私は、議運の委員長のとき、その問題につきまして、いわゆる法案をその特別委員会は審議しないと。私は審議するとかしないとかいうことではなくて、それをつくるところに意義があるという考え方で、実は、衆議院議長あるいは衆議院副議長に私は先般も参りまして、このお話を強く要請して、全くそのとおりだと、こういうお話も出ておるわけでありますが、今後とも一層の努力をして、一日も早くこの委員会をつくっていただけるような努力をいたしたい、こう考えております。
  111. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 防衛庁長官、もう少し突っ込んでお話ししてくれませんか。  それで、いま言われた委員会がつくられて、そこで法案の審議をしないなんてそんな委員会は私はないと、つくる以上それはあたりまえのことだと思う。  それからもう一つは、自民党の皆さん方の中でもこういう防衛委員会はつくらぬ方がいいということをかなりの人が言っているということも私聞いているんです。そういう状態の中でどうやってこれをおつくりになっていくかということをもうちょっとお聞きしたいです。
  112. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 与党の自民党の中にもそういう考え方を持っておるという人がおるようでありますが、そういうような状況の中で、私は保利議長と三宅副議長にお話し申し上げましたのは、せめて、参議院の方でいろいろ御議論があるようだけれども、いわゆる特別委員会というものは衆参両院一致してつくられなくちゃならぬものでもないでしょう、ということであれば、衆議院だけでもまずつくってくださいと、こういうお願いをいたしておるわけでありますが、衆議院だけつくるということはまことにちょっとこれは型の変わったことになる。できることであれば衆参両院につくっていただくことがベターであることは当然でありますが、そんなような状況もあるわけでありますが、参議院の与党の皆さんにも十分御理解をしていただいて、私もなお一層の努力をして、できるだけ早い機会にこういう委員会をつくっていただくことを願うわけであります。  また、法案を審議しない委員会という一つの提案も野党からあるわけでありますが、それも全部だめだだめだと言ったんじゃこれは成り立たない、そこに政治というものは妥協もあると私は思うわけでありまして、そういう意味で審議しなくてもいいのだと。その政治の姿勢というものが、国民に、シビリアンコントロールというものは、なるほどこれだけの論議をされるということであるならば安心だというようなことを考えてみれば、一日も早く、法案審議をするしないは別にして、この委員会をつくっていただくことが最大の私は願いだと、こう考えておる。もちろん法案を審議していただく場になればベターであることは当然であります。
  113. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 福田総理日本総理大臣がお持ちになっている権力というか権限というか、大変大きなものだと思うんです。しかし、国民が総理にそれだけの権力を持たせているというのは、その反面、国民みんなが安心して生活できるようにしてくれよという、そういうものだと思うんです。その重さは同じだと思うんです。その点について総理がどうお考えになって、その国民の期待にどういうふうにおこたえになるか、その御決意をお聞きしたい。
  114. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) わが国の国法上の中で総理大臣の地位の重み、これは大変なものである。同時に責任も同じ重荷を持っておると、このように考え、総理大臣の行動の一つ一つ、これが一億一千万人のその一人一人の運命にかかわる問題であるという意識を持って毎日毎日精進をいたしておるというのが現状でございます。
  115. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 そんな抽象的なあれじゃなくて、もう少し具体的に、何も全部のことを触れてくれと言うんじゃないんですよ。少なくともこのことだけは自分はやりたいんだ、そして国民の期待にこたえるんだというものをお聞きしたい。
  116. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 当面の私の仕事といたしましては、早く経済を安定さして、そして皆さんに豊かに暮らしてもらいたい、この一念でございます。
  117. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 いま何と言ってもやっぱり経済を安定させて景気回復していくということだと思うんです。  それで、いまの予算を策定されるときには恐らくドルが二百四十五円ぐらいのときにやられたと思うんです。先ほどからなにしているように、もう二百三十三円か四円かに来ちゃった。その辺がかなり計算が違ってくるんですが、これで七%の成長率が達成できるのかどうなのか、その辺を総理と、できれば経企長官と両方にお聞きしたいんです。
  118. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまの五十三年度の見通しをつくりました段階では、為替の変動する場合の従来の例に従いまして作業の最前、最も近い月の平均値を作業の基礎として使いました。二百四十五円を使ったわけでございますが、このことは五十三年中における円の価格変動をそういう形で予見をいたしたわけではございません。  そこで、当面の円の問題でございますが、高低もさることながら、なかなか不安定であるということが経済の成長にはやはり一つのマイナスの要因であることは間違いございませんけれども、実はまだ年度も始まりませんことでございますし、これからの帰趨ということもいまから予見をすることもできないことでございます。したがってこの見通しそのものを私はいまどうこうというふうには考えておりません。いずれにいたしましても、経済運営の基本方針にありますように、ともかく財政が主導で経済の立て直しを図って、そして後半には民間部門がそれに応じていくということ、並びに経常収支の幅が大き過ぎますので、これをひとつ小さくしていきたい、こういう二つの運営の主たる目標は、これはもういよいよその重要性が増してまいるというふうに考えておるわけでございます。
  119. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 確かに予算編成時には円のレートは二百四十円台だったんです。それが今日は二百三十円台になってきておるというその変化はあります。ありまするけれども、この経済の見通しがそれによって根底が変わってきたというような認識は持っておりません。七%成長、間違いなくこれを実現をする、こういうふうに御理解願って結構でございます。
  120. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 総理、そうであっても恐らくこの予算のときには、秋ごろになればまた手直しをして補正予算も組まざるを得ないんじゃないかと御判断を持っていたと思うんです。そのことがこういう形でさらにどんどんどんどん円が上がっていく形になれば、かなり早めておやりになる必要があるんじゃないんですか、その点。
  121. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 秋ごろになったら、また手直しをというようなお話でございますが、そんなことはいま考えておりません。私は、もう秋ごろと言わず、刻々この経済は実際は動いていくんですから、その刻々に応じた移り行く経済の現実に対しまして政策があらゆる手段を尽くして順応していく。これはもう秋を待たず、秋まで待っているという考えじゃありませんで、刻々そういうつもりでおります。現に、きのうは、公定歩合引き下げをやるとか、あるいは為替管理の強化をやるとか、いろいろいたしておるんですよ。そういうことで、補正予算という意味だといたしますと、ただいまのところ年度内の補正予算ということは考えておりませんです。
  122. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 経企長官の方に、もう一度お聞きしますが、いま秋までなんか待つ必要ないんで、刻々いつでも手を打つということなんです。現実にこれだけ円が上がってきて、いまの状況ではまだ円高になるんではないかというのが大方の見通しなんです。そうすると、かなり景気が上向きにいくと見ておったのがなかなかそうはいかない。ここでもって前にも言った二段ロケット方式で雇用の安定なり倒産防止なり、いろいろそういう――いま公定歩合のあれも一つの手だと思うんですけれども、そういう企業倒産の防止をするとか、そういうことについていろいろ緊急に手を打つということのお考えはないんですか。
  123. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 円が不安定であるということは、消費者にとりましても企業家にとりましても、雇用の面でもマイナス要因であることは間違いございませんけれども、しかし、これからまだ始まりません十二カ月、それがどういう帰趨になりますか、確言はいたせない種類のことでございますから、十分注意をして運営をしていかなければならないと思っております。  それで、いわゆるそこから起こりますところのいろいろな雇用の問題等々につきましては、もうすでに円高に伴う特別措置も国会で立法をしていただきました。その点は遅滞なくそういう処置を強めてまいらなければならないと思っております。
  124. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 総理、もう一つ、七%成長論がかなり議論されているけれど、ある意味においては結果のことだと思うんですね。国民がやはり期待しているのは、たとえば失業者を半分にしてくれ、あるいはもうちょっと景気をよくしてくれ、あるいは企業だったら安心して経営がやれるようにしてくれというものだと思うんです。そういう点でいまもお話に出た公定歩合を下げた、それで預金金利も下げる。ドルが安くなっても輸入物資はそれほど安くなって国民の手に入らない。それで今度公定歩合を下げて、預金金利も下げちゃう。そうすると、国民の側からいけば踏んだりけったりになっちゃうんです。  そういう点からいくならば、所得減税をやる、あるいは老齢福祉年金とかそういうのを二万円に上げるとか、いろいろ何かそういう国民の側にもそれに対応した手を打つ必要があると思うんですが、その点どうでしょうか。
  125. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 七%というのは結果だと、こういうようなお話ですが、そういう一面も私はあると思います。実際は企業収益もよくなり、稼働率も上がってくる、それから雇用も拡大される、そういうようなことになれば、何も七%でなければならぬと、こういうことはないはずなんですが、大体、しかし、そういう実体上の効果を上げるには七%ぐらいの成長がないとできないんじゃないかなあという、そういう見当として七%ということを言っておるわけなんです。  しかし、いま国民の生活のことに触れられましたが、結局、いま政府が苦心しているのはどこに目標があるかと言いますれば、景気を安定させる、向上させる、そして雇用を拡大させる、そして国民一人一人のふところがよくなる、そういうようなことで国民生活が安定する、最終的にはそれをねらいとしておるわけなんです。  特に、物価のことにお触れになりましたが、円高ということでこれはかなりの影響が出ているわけです。卸売物価はあのような状態。それから消費者物価も四%台に年間上昇率がなってきておるんですからね、これもすばらしいことであるわけなんです。そういうことで国民各界各層のその生活に相当均てんをいたしておる、こういうふうにお考えなさっていいんじゃないかと思っております。
  126. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 次に、二番目に、雇用創出政策についていろいろお聞きしていきたいんですが、まず、総理、施政方針演説でも、設備投資も期待できない、輸出も余り望めない、だから公共投資をして景気回復するんだと。民間産業がいま冷え切っちゃっているんだけれども、それをどうやって回復させるか、その面についてお聞きをしたいんです。
  127. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 民間の産業、企業が冷え切っておるというお話ですが、なぜ冷え切っておるかというと、仕事をやってももうからない、場合によったら仕事をやればやるほど損が出る、こういうことだろうと思うんです。それはなぜかと言いますと、これはいろいろ原因はありまするが、私は主たる原因は設備過剰、人員過剰、これに問題があると思うんです。そこで、人件費の負担、また資本費の負担、こういうことで経営がなかなか成り立っていかない、それを一体どういうふうに矯正するかというと、やはり設備過剰、人員過剰の状態を、これをなくすほかないだろう、こういうふうに思うのです。  いま、いわゆるデフレギャップというのが大変あるわけなんですが、このデフレギャップ、これを消していくということに努めなければならぬ。そのためには、いまやっぱり需要を造成する必要がある、需要を。その需要造成、これをどうやるかということになりますと、やはり公共投資、これが一番の近道だ。いろいろ道はありまするけれども、これが最も有効なる手段である。そしてデフレギャップが解消される、つまり操業度がある程度の水準に進みますれば、そこで企業の設備投資活動も始まってくる、こういうことで、だんだんと民間の活力が回復される、こういう見当をつけておるわけであります。
  128. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 わかりますけれども、いま総理が言われた、だんだんと民間の方にまでいってと、そのだんだんということでもって待ち得るかどうか。  たとえば造船産業の実態なんかも、運輸大臣の方から造船産業の現状がどうなっているのか、どのようなつかみ方をしているかお聞きしたいんです。
  129. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) いろいろ問題がございますが、これを総じて申し上げまするならば、造船業はいま非常な不況のうちに苦しんでおる、こういうわけでございまして、これの対策は、いろいろ失業者等が出るとか、倒産が出るとか、こういうことに対してどうするかというようなこととともに、さらに問題は、そういうことばかりでなくて、いかにして新しい需要等を開拓して、苦しんでいるのを助けるだけでなくて、さらに進んで新しい生命を開拓する、こういうような意味での対策も必要でございまして、それらについていま鋭意腐心をいたしておる、一言にして申し上げれば、そういうようなことでございます。
  130. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 その鋭意苦心をなさっている、そういう点に立ちまして、幾つかの点で具体的にお聞きをするんですが、スクラップ・アンド・ビルド方式で国内船の建造ということをお考えになっていると思うのです。どの辺まで話が進んでいるのでしょうか。
  131. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) スクラップ・アンド・ビルドということをいろいろに理解しますが、一言にして言うならば、老朽船をスクラップにし不経済船を少なくして、他面、できるならば新しいいい船をつくって、こういう関係の事業全体を新しく合理的に繁栄をせしめていく、こういうところまでいかなきゃならないわけでございますが、いいことではございますが、同時に、これと関連いたしまして、たとえばスクラップにしていけばいくほど、その面からだけ言えば、相当に余剰船員等を抱えているような海運界等では、このスクラップをするということだけで、これに伴う諸般の施策がなければ過剰船員もふえる、したがって失業者も出すというような傾向になる。こういうことについては、これまたスクラップすると同時に人間のスクラップが出るようなことがないようにしなきゃいかぬ。厳にそういうことを慎んでこれに備えていくという措置が伴わなければならぬ、こういうように考えております。
  132. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 その辺をやはり大臣の方で行政指導をしてもらわなければ困るんだけれども、もうちょっとさらに突っ込んで、近海船航路の関係をどういうふうに把握されて、どういう手を打とうとしているか。
  133. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) だんだんと専門化してまいりますと、私十分に必ずしも認識しているわけではございませんので、大事な問題でございますから、この辺で政府委員から答えさせることにいたします。
  134. 後藤茂也

    政府委員(後藤茂也君) お答えいたします。  近海船のスクラップ・アンド・ビルドでございますけれども、ただいま御審議いただいております五十三年度予算で老朽船舶スクラップ一・三、あるいは老朽船舶の海外売船一・五、それらのトン数に対して一トンの新造をさせる、この新造については船舶整備公団から特別のいわば持ち分の高い、いわば船主に有利なる方策をとるという考え方で予算を組んで御審議いただいております。このトン数は重量トンにいたしまして、恐らく新造トン数で五万重量トンぐらい、この程度の規模でございます。
  135. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 いま局長の方から船舶整備公団のお話が出たんですが、局長、この船舶整備公団というのはトン数の制限があったわけですね。その制限はどういうふうになっていますか。
  136. 後藤茂也

    政府委員(後藤茂也君) 船舶整備公団は、ただいまは四千五百総トン未満の船舶の建造ということに……
  137. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 それは変えないんですか、変わらないんですか。
  138. 後藤茂也

    政府委員(後藤茂也君) 変えておりません。
  139. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 公共投資というような関係で、景気回復の――運輸大臣、二百海里に入ってかなり広くなったわけで、ともかくソ連よりかも日本の支配する海の方が広くなったというぐらいに大きくなったわけなんで、保安庁の船のかなりのものを増強してやらなきゃいけないんですけれども、その辺についてのお考えというか構想はどうなっておるんですか。
  140. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 海上保安につきましては、まさに新しい海洋秩序のもとにおいて、これはもう画期的に機能も強化しなければならぬ、当然でございます。したがって今度の予算なんかにも、いままでよりは船その他の機材等についても強化することを審議をお願いをしているところでございますが、率直に申しますと、これだけでとうてい足れりとするのでなくして、なお積極的にこの種のことを進めていきたい、こういうわけでございまして、この点につきましても、船をどうするというようなことにつきましては、先ほど大事なことと言いましたが、大事なことでございますから、私が主なことを申し上げ、これに政府委員をして幾らかつけ足させる、そういう意味で若干のつけ足しを申し上げることをお許しいただきたい。
  141. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) ただいま大臣から申し上げましたとおり、昨年来、領海と漁業水域の警備、取り締まり、監視というものは大事な仕事になってまいりました。したがいまして五十二年度の予算からいま御審議を願っている五十三年度の予算案にかかって、かなり船艇、航空機の増強、代替建造というものを行ってまいりましたが、ただいま大臣も申し上げましたとおりでございます。特にまだ老朽の船が残っていることもございますので、今後、十分諸事情を考えて検討していきたいと思っております。
  142. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 御答弁なさらぬから、もうちょっと私は突っ込んで聞くんだけれども、昭和二十八年にも巡視船は九十七隻あったんですね。細かいのをひっくるめて三百九隻で三万五百二十六トン、昭和四十六年には巡視船が九十一隻、細かいのを含めて二百九十九隻で四万百四十トン、それが五十二年になっても大きいのは九十六隻、全部ひっくるめて三百十二隻、トン数で四万九千三百八十五トン、トン数は少しずつふえているんだけれども、船の数からいけば二十八年当時と大して変わっていない。全くいま二百海里時代に入って、その点から考えるならば、その考え方を根本的に変えて取り組まなくちゃいけないと思うんですが、そこのところがお聞きしたいんですよ。
  143. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 船の数は余り変わってないが、性能が大変よくなっているという変化は大分あろうと、こう思います。思いますが、しかし、それにしても今度の二百海里時代に入ったという変化は、いま柳澤さんがおっしゃるような程度の変化、大きな変化があるだけに、性能がよくなったということを考慮に入れてももっと大きく前進すべきである、こう思います。でございますから、先ほども申し上げましたように、補正でも、それから今度の予算でも確かに前進はしておりますが、なお一層前進せしむべきものである、こういうように認識をいたしておるわけでございます。
  144. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 大臣、具体的にその性能がよくなったこと、私も認めるんですが、だけれども、いまの中にももう船齢が二十年以上と古いのが三十二隻もあるんだけれども、それはどうなさるつもりですか。それも近代化させるつもりでおるんですか、どうですか。
  145. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 財政当局とも折衝をいたしまして、当然、その方向へ進めるべきであると私は考えておるわけでございまして、それにいたしましても、この種のものを一遍に全部というわけにもなかなかいきませんので、これから着々その歩を進めてまいりたい、こういうように存じます。
  146. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 防衛庁長官の方にお聞きするんですけれども、防衛庁長官、防衛庁の方にもかなり古い船があると思うんです。その辺について現在どの程度の状態になっているのか、それで今後どうするようにお考えかということをお聞きしたいと思います。
  147. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 防衛庁におきましては、艦船の長年の使用実績といったようなものをもとにいたしまして、性能が劣化するであろうと思われる時期を想定いたしまして、老齢船舶の調査時期というのを定めておるわけでございまして、これは具体的に申しますと、護衛艦につきましては十六年、潜水艦につきましては十二年、その時期に検査をいたしまして、次の検査の時期まで、具体的に言いますと、護衛艦では四年、潜水艦では二年という年数をプラスしたものを耐用年数と、こうしておるわけでございます。耐用年数が来た船舶はどうしておるかと申しますと、またその時期に検査をいたしまして、できるだけ大切に使用するというような観点から、そのまま同じ任務につかせるとか、あるいはより軽微な訓練艦であるとか、あるいは実験艦として使用するというようなことをして大切に使用しておるわけでございまして、本当に物理的に使用ができないというような段階に達したものは、これを除籍して廃艦しておるわけでございます。  それで現在の状況から申しますと、この耐用年数二十年というものを越しておる船舶といたしましては、護衛艦六隻、潜水艦二隻、その他含めまして十五隻、約一万四千トンでございます。それから老齢船舶の調査時期を経過しておる船というのが、護衛艦十隻、潜水艦一隻、その他含めまして約二十五隻、二万七千トン弱と、こういう状況になっておる次第でございます。
  148. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 次に、運輸大臣、去る二月IMCO――政府間海事協議機構で会議がありまして、海洋汚染防止で一つのあれがまとまったはずなんですけれども、それを具体的に説明してくれませんですか。
  149. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) あの会議は、アメリカ中心とするグループやイギリスを中心とするグループ等でいろいろ意見等があって、わが国もいろいろ悩んだところでございますが、幸いにいたしましてみんなの意見がどうにかまとまって一つの結論に到達いたしました。したがって、われわれといたしますと、このできた考え方に従って早くその批准を行うことをまず考えなければなりませんが、それとともに、いまお話しになりましたように、たとえば四万トン以上の船につきましてSBTとCOW、いずれかをというような結論等につきましては、これは船を持っている者の意見も尊重しなければなりませんので、どちらにどうとは申しませんが、いずれにしても決まったことを選択してできるだけ早く行わせる。  これにも発効するときから、たとえば三年間なら三年間でやるということになりまするならば、その作業を進めなければなりませんし、同時に、これはこっちの皮算用だけで言うわけではございませんが、そういう工事等もある程度のものは日本に頼もうというのが世界全体の動きではないかと思いますし、なるべく日本でそういうことをやってくれと言われるように、こちらはこちらで行動する必要があろうと思いますが、いずれにいたしましても、これは海をきれいにすること、それから船の安全を図ること、いろいろ効果があるわけでございますから、船を持っている者が大いにそれを考えてくれるように、政府も配意いたさなければなりませんけれども、海運国の政府としては、必要な諸般の措置を積極的に進めていくべきものである、こういうように考えておる次第でございます。
  150. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 大臣、IMCOの会議の結論が出て、その後、アメリカの方の議会がどういうことになったんでか、それを待っていたはずなんですか。
  151. 後藤茂也

    政府委員(後藤茂也君) アメリカの議会の動きについて御説明申し上げます。  アメリカの議会では、IMCOの会議以前に、すでにマグナソン法案あるいはその他の法案が審議されておりまして、ごくその一部については、すでに上院で可決しておるという状態でIMCOの会議を迎えたわけでございますけれども、IMCOの会議以後、アメリカの議会、上院下院とも、いまさしあたって具体的な新たなる法案の提案であるとか修正であるとか、そういうふうな動きは認められておりません。新聞報道によりますと、アメリカの代表団は母国に帰ってIMCOの会議の結論に非常に満足をしておるというふうな意向を表明しているようでございますので、いずれは、将来の問題で予測でございますが、このIMCOの会議の結論というものを盛り込んだような法案というものに、だんだん議会で審議されている法案の内容が変えられていくのではないかと予想されます。
  152. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 大臣、先ほど海運国の政府としてやるべきことはやるということなんで、私もそういうことで善意に解釈したいと思うんです。少なくとも世界一の船を持って、世界一の造船国で、そしていま海洋汚染を防がなくちゃいけないというときなんですから、日本が率先してそれを実行するように善処していただきたいと思うんです。  次に、LNGの問題で、LNGがどういう形でもって需要が伸びていくか、それについて政府の方はどうお考えになっているか、あわせてタンカーの関係もお聞きしたい。
  153. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) LNG船等は、これは新しい傾向にかんがみまして大いに伸ばしていかなきゃならない、こう思うわけであり、この点についてはかなり先進している諸外国もあるわけでございまして、日本はぜひそういうようにしなければならないと考えておるわけでございますが、これまた関係の業者が深く認識してこれに対処しなければならない、こういうように思っている次第でございまして、漸次、その方向に向きつつあることは事実でございますが、多少詳細にわたりましては、政府委員から答えさせることにいたします。
  154. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) LNGの建造につきましては、日本では若干おくれていたわけでございますが、五十一年度から船舶局におきまして調査を始めておりまして、関係省庁、関係業界の協力を得て調査をある程度終わっております。  それによりますと、昭和六十年、大体、三千万トンという想定をいたしますと、隻数としましては三十八隻から四十一隻必要である。そのうち新造は十三隻ないし十六隻と二つのケースがあるわけでございますが、こういう想定をして検討を開始しているところでございます。ただ、世界じゅうにおきましては、かなりチャーターの決まっていないフリーのLNG船もありまして、この点で日本の国でつくり、日本船主によりLNG船を運航するという場合におきましては、日本がプロジェクトで積み地から揚げ地まで参加できるという形が望ましいわけでございまして、このプロジェクトが出てまいりますれば、その進展に応じてLNG船の建造について海運、造船、その他関係業界の検討を詰めていきたい、こう考えております。
  155. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 運輸大臣、これは本当に、だんだんふえていくんだけれども、世界一の船を持っている日本が、しかも造船国でありながら、いまLNGを運んでいるのはみんな外国でつくった船で大変おかしなことなんで、いま船舶局長からお話があって、これからもいろいろそういうものを積極的にやはり政府でも取り上げてやっていっていただきたいと思うんです。  次に、通産省の方に航空機産業のことで若干お聞きしたいんですが、日本の航空機産業の技術水準というのは国際的に見てどの辺にあるんですか。
  156. 森山信吾

    政府委員(森山信吾君) わが国の航空機産業の技術水準という御質問でございますが、御承知のとおり戦後の相当長い空白期間がございますので、率直に申し上げまして、大変欧米諸国に比べまして劣っておるという現状ではないかと思います。  これを生産額について見ますと、わが国の航空機産業の生産額は、昨年は大体二千六百億円ぐらいでございまして、アメリカの大体二十分の一、それからフランスの五分の一、イギリスの三分の一、それから西ドイツの二分の一という状況でございまして、カナダ及びイタリアと大体同水準ではなかろうかというふうに判断をしておるところでございます。しかし、わが国の技術ポテンシャルというものは非常に高いということでございまして、今後、政策のいかんによりまして、この技術水準を欧米先進国並みに向上させるという努力は続けてまいりたい、こういうふうに考えております。
  157. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 生産額というよりかも、私が一番知りたいのは、技術のレベルがどの辺かということなんですね。これはいまも最後に高いと言われたのですが、私もかなり高いと思うんです。それで通産大臣も聞いていただきたいんですが、いま日本の航空会社が持っている飛行機というのは三分の一が国産で三分の二が外国製なんです、飛行機の数では。ところが、座席の数でもってそのシェアを比較してみれば、日本の飛行機の持っているシェアというのは一二%しかないんです、総理。あと八八%は外国のつくったのに乗っているんです。少なくとも、もうかなりの技術に来たんだから、日本で使う飛行機ぐらい――いまジャンボをつくれと言ったってそれは無理でしょう。ある程度のものは日本がつくれるぐらいのことをやはりやっていただかなきゃならない。政府が本気になってこの航空機産業を育成する気があるのかどうかということが私は一番知りたいわけですよ。
  158. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 航空機産業とコンピューター産業は非常に技術水準が高いわけでございまして、この産業がある程度発展をいたしますと、すそ野が非常に広がるわけでございます。そういう意味日本産業全体を相当高い水準に押し上げる力を持っておる、そういう意味でこの二つの産業に非常に力を入れております。  そこで、対策といたしまして、数年先を目標といたしまして、アメリカ、イタリー、日本三カ国が次代の航空機をひとつ共同開発をしようという計画を数年前から進めておりましたが、ようやく機が熟しまして、先般その方向が決まりまして、昨年の末に調印をしたわけでございます。数年先には、その一号機が飛ぶわけでございますが、日本はその仕事の二〇%を引き受けましてやることになっております。そのほかに自衛隊の飛行機を今回国産する方向も決まりましたしいたしますので、ようやく数年間低迷をしておりました航空機産業も方向が決まりまして、私は活力を取り戻す基礎ができたと、こう思っております。
  159. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 いま言われたのは、大臣、これはYXのことで、それもかなりおくれたわけですね。本来ならば、もういまごろは試作機に手をつけていかなけりゃいけなかったんですけれども、それがおくれているんですが、できるだけそういうことも早くしていただきたいと思うんです。  これは総理と、それから通産大臣や特に大蔵大臣にも聞いておいていただきたいんですが、この航空機産業というのは大変なことだけれども、将来のやっぱり未来に必要な産業なんです。外国は軍用機でもって国のお金を使ってじゃんすかじゃんすかいろいろ開発をやっていって、それでいい飛行機をつくる。いい飛行機ができれば、それが今度は民間にその技術を生かしてやっていかれるわけでしょう、日本にはその道がないんです。その技術開発のためのそういうお金の投資をいまの民間企業に言ったってとてもできるものじゃないんです。その辺のところが外国と違う状態にいま置かれているんですから、その点をどうやって、言うならばケアしていくか、これは本気になって政府がお考えいただかなければいけないと思う。ですから、いま大臣がお話しになったYXに近く手をつけるようになる、YXが手をつけられるようになったら、次のもう何というんですか、新YXとでもいうべきそれを将来どうするかということぐらいは取り組まれるようになっていただきたいということを希望いたしまして、この問題を終わります。  三番目には、外交の問題で若干お聞きしたいんですけれども、外務大臣、これは交渉の過程ですから余りそれに立ち入ったことを私聞こうと思いませんので、ぐあいが悪いことは結構ですけれども、日中条約、いまかなり交渉が進んでいると思うんです。外務大臣があちらに行かれて話をまとめて調印をしようというのは、大体、いつごろということにめどを踏んでいるんですか。
  160. 園田直

    国務大臣(園田直君) 御指摘のとおりに、日中友好条約の交渉は手順、段取りがだんだんと進んでおる段階でございます。したがいまして、その段取りがだんだん詰まっていけば、いま御指摘されたとおりになるわけでございますけれども、私がいつごろ向こうに参るかは、一にその進みぐあいと総理の御指示によって行くことになるわけでありますから、その経過については、相手もあることでございまするし、いつごろになるかという見当を申し上げる段階ではございません。
  161. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 申し上げる段階でないというんですから、一月の本会議のときと同じ御答弁だと思うんですが、それはそれで結構ですが、ただ、きのうの新聞なんかで、この覇権反対の問題が日本側はどこの国を指すものではないんだということを向こうに伝えているんだけれども、あちらでは、そういうことじゃ困りますということを言っているようなんですが、それについての政府の方の受けとめ方はどうなっているか、お答えができるならば聞かしていただきたい。
  162. 園田直

    国務大臣(園田直君) 新聞でございますから的確ではございませんけれども、中国のあの方針は従前から言われているところでございまして、わが方としては、あえてこれで考え方に変化があるわけではございません。しかし、いずれにしても、日中両国将来のために、わが方は覇権については共同声明の立場を一貫してとっておるわけでありますから、今後の交渉の話し合いによるものと考えておりますが、われわれはずっと申し上げてきましたとおり、一貫した方針で、あれによって何らわれわれの動きや方針が変わるものではございません。
  163. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 じゃ外務大臣、この日中条約が結ばれたら、中ソ等距離外交というのが日本側の態度だと思うんですけれども、この中ソ等距離外交というのは修正されるんですか、それともそれは変わらないということになるんですか、その点。
  164. 園田直

    国務大臣(園田直君) わが方は、ソ連の方とも、しばしば申し上げますとおり、善隣友好関係を進めていきたいということは従来のとおりでございます。総理からもしばしば言われたとおり、わが国の基本方針はすべての国を敵としない、どこの国とも仲よくやっていく、こういう全方位外交と言っておられますが、等距離外交ということはないわけでありまして、日米関係は最大の日本の基軸であり、その後、それぞれの国についてはそれぞれ重要性は変わってくるわけであります。しかし、ソ連、中国はお互いに両方ともごく近所にある隣国でありますから、ソ連とも友好関係は進めていきたいという方針に変わりはございません。
  165. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 外務大臣、次にもう一つ、中国との問題で、中ソ友好同盟相互援助条約、御承知のとおり、中国の方では名存実亡、あってもそれは死んだものですということを言われているんですが、私はこれは条約を尊重しない軽視の態度だ。その辺を向こうがそう言っているからといって喜んでいていいのかどうか、その辺のこちらの受けとめ方をお聞きしたい。
  166. 園田直

    国務大臣(園田直君) これについてもしばしばお答えをしているところでありますが、この問題についてわれわれは喜んでも悲しんでもいないわけであります。ソ連でも申し上げましたが、中ソ同盟条約を中国の方では訪中の方々に対して名存実亡であるということをしばしば言っておられるようであります。しかし、政府が正式に承ったわけではありません。しかし、現実に、御承知のとおりにあの条約を結ばれたときといまとは全く対照的に変わっておるという事実はわれわれは認めておるわけでございます。  そこで、この問題については、わが方も中国と友好条約を進めていくし、一方には米国とは安保条約があるわけでありますし、ソ連ともなるべく早く平和条約を進めたい、こういうわけでありますから、相手の国がどこの国とどういう条約を結ぶかということは、これは内政干渉でありますから、私はこれを問題にするべき筋合いではないと考えます。ただ、その中で日本を敵国と規定しておりますから、この点は日本としてはっきりこれは困るということを申し入れ、なお交渉の段階において、そういう不安が日本の国民の方々にある用でありますから、中ソ同盟条約について国民のの方々が納得されるような明確な中国の方の御意見を承る機会は得たいと考えておるわけでございます。
  167. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 大臣、いまも話していますソ連の方、この方は少し立ち入って解明していただきたいのですが、平和条約の交渉はこれからどういう段取りで進めようとなさるのか、あわせて特に大事な点は、北方領土の返還をその中でどういうふうに転がしていくということか、少しその具体的な構想を聞かしていただきたい。
  168. 園田直

    国務大臣(園田直君) これは四島一括返還、未解決の問題を解決して、なるべく早く平和条約を進めたいという一貫した方針は不動でございます。しかしながら、先般の私の訪ソについても双方の言い分は隔たりがあるわけでございます。この問題については、しかし日本国民が一致した世論のもとに不動の方針を貫きながら、日ソの間にはそれぞれ共通の利害もあるわけでありますから、お互いに相助けつつ、友好関係を進めていき、この一貫した方針で粘り強く進めていくならば、いつの日にか解決できるという確信を持っておるわけであります。具体的にどうこう進めていくという時期ではないと存じます。
  169. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 時間もないから余り立ち入るのはやめまして、もう少し外務省の方から。  アジアからの留学生は、日本の場合にはそれほどたくさんでもないのだけれども、いまはどのくらい来ておるのか。それで、それに対しての政府の対応策というか、どうも余り評判がよくないので若干その点をお聞きしたいのです。
  170. 園田直

    国務大臣(園田直君) 留学生の問題は、文部大臣と外務大臣の両方の所管になっておるわけでありますけれども、ただいま、わが国には五千七百人、うちアジア諸国からの出身者は七六%、約四千三百人の外国人留学生が来ておられるわけであります。この外国人留学生についてのわが方の待遇の仕方、取り扱い方は、これはきわめて大事でありまして、これがまた一つの日本を理解してもらう基本になるわけであります。  ところが、これは案外新聞等で非常にまずくいっているという記事がときどき出てくるわけでありますが、これは官費の学生と私費の学生とありまして、官費の学生は文部大臣の所管するところ、私費の学生は外務省が所管するところでございます。これは総理が外務大臣のときにやられた交流基金から始まりまして、アジア諸国の留学生の諸君は、終わってからも年に一回家族連れで毎回総会をするというアフターケアも非常に行き届いておりまして、先般、総理が行かれたときなどは、日本語で自分の父親が帰ってきたような涙ぐましい状況もあったわけで、非常に成功しているわけであります。しかし、また、かといっていまのままでいいわけではございませんので、やはりそういう国からの待遇、取り扱い、そういうこと以外に、外務省等でいま一部検討しているところでありますけれども、もっと日本の習慣、家庭を理解してもらうために、留学生が在日中里親みたいなものをつくって家庭との交際を願うようなことは、非常に小さいことのようではあるが大事なことではないかと考えております。  一方、私の方で所管しております私費留学生の方が問題がしばしば出てくるわけでありまして、これに対しては、一年間は、私費ではあるけれども御不便であろうからということで、国の方で補助をしまして寮を提供して、そして日本語を覚えられたら出ていってもらって次の方が入る、こういうことになっているわけでありますけれども、これがなかなか問題が多いわけでございます。そこで、総理から内々のお指図もあって、私費留学生もひとつもう少し国で何か見てやったらどうかということ、もう一つは、同じ留学生であるから、外務大臣、文部大臣と言わずに全部、官費、私費を問わず文部大臣に所管してもらったらどうだと、そして外務省はこれを外から力を尽くす、こういう総理の方針に従って、御指摘の留学生がもっとうまくまいりますような経過がありますように、本当に心と心の結びつきができますように、せっかく検討、努力をしているところでございます。
  171. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 よくわかりました。これは、総理、本当にぜひやっていっていただきたいと思うんです。昨年、せっかく総理が東南アジアを回っていろいろいいことをしてきても何にもならないですから。  次に、総務長官の方に、ベトナムの難民はいまどのぐらいいるんですか。それで、これも政府は喜んで受け入れる、喜んでと言ったらおかしいけれども、温かく迎えているのか、迷惑のつもりでいるのか、お聞きしたいです。
  172. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) ちょっと数字のことでございますから、政府委員から答弁をさせます。
  173. 清水汪

    政府委員(清水汪君) いままでに千二百六名の上陸がございまして、三月十五日、昨日現在で三百六十九名残留しております。差額の八百六十四名は出国をいたしたわけでございます。
  174. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 その八百六十四名の出国というのはどういうことなんですか、理由。
  175. 清水汪

    政府委員(清水汪君) この出国と申しますのは、定住先の引き取り国へそれぞれ出国したわけでございまして、一番大きいのはアメリカ六百七十九名というようなことで、あと数カ国以上にわたっております。
  176. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 時間がないからもうこれもここで打ち切りますが、総理、やはりいろいろな事情があってああいうふうに難民で来て、せっかくめんどうを見るということになったら、それだけのことをやっぱりしてあげて、それで日本の国に行って助けられたけれども、よかったなあと言って喜んでもらえるようにやっていただきたいと思うんです。  もう一つは、日本の船が航行中に難民を救助するのがかなりあるわけなんです。そういうときにどういう処置をするのか、また政府はどういうことを考えているか、これも時間がないので私言ってしまいますが、結局、端的に言えば政府は何にもしちゃいないんです。船主の人たち日本船主責任相互保険組合という組合をつくって、船会社がみんなそこへお金を掛けておる、一つの共済みたいに。そしてそういう形でもって予定の航路を外れて難民を救済した、それを香港へ持っていった、どこへ持っていったというときにかかった経費をめんどう見るんです。見るといっても一〇〇%は見ていないんです。五千五百トン未満の船だったら最大限でも百万円が限度だ、あるいはどんな大きな船でも二百万円以上は見ないというふうに内規でなっている。ですから、たとえば伊藤船舶の第二十三神巧丸というんですが、四百九十五トン……
  177. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 柳澤君、時間が来ております。
  178. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 はい。  こんな小さい、わずか十何人の乗組員の船が七十二人も救済をして、三百万以上もお金をそれに使っても、結局百万円しかもらっていない。このことについて、もう少し難民の問題と同じように政府としてやっていただきたいと思うんです。それについて御見解をいただきたいんです。
  179. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) いまの問題は、銭をくれるくれないにかかわらず、一生懸命にやるというのが本旨でございますので、わが日本の船は幾らくれないからどうしないというようなことは申しませんが、いろいろおっしゃっていただくこと等につきましても、ありがたい話でございまして、せいぜい……
  180. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 政府としてやることがあるでしょう。
  181. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 政府として、その種のことをさらに検討をさしていただくことにいたします。
  182. 柳澤錬造

    柳澤錬造君 終わります。(拍手)
  183. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時三十分から委員会を再開し、喜屋武眞榮君の総括質疑を行います。これにて休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十三分開会
  184. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十三年度総予算三案を一括して議題とし、喜屋武眞榮君の総括質疑を行います。喜屋武君。
  185. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 私は、沖繩の戦争による犠牲、国の責任においてなされなければいけないもろもろの問題が余りにも多過ぎまして、どれから取り組んでいいかわからないという戸惑いを感ずるわけでありますが、差し迫っていよいよあした内閣で決められるという、沖繩にとってのいまだかつてない交通方法の変更の問題、この問題を最初に取り上げたいと思います。  まず、関係長官の総務長官にお聞きしたいことは、三十三年も焦げついた、そして定着した、県民になじんだこの交通方法が余りにも簡単に変更されようとしていることについて非常に不満を持つものでありますが、要綱が最近示されますや、県議会もストップをしている。大あわてで知事を初め、県議会も、しかも与野党一致をしてこの要綱では大変なことになると、こういうことで陳情、要請に及んでいることは皆さん御案内のとおりであります。  そこで第一点、要綱をもっと早く示すべきじゃなかったか、なぜこのようにおくれたかということをお聞きしたい。
  186. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) お答えいたします。  実施要綱のおくれた問題でございますが、県当局と事務当局との細やかな点がたくさんございまして、おくれたことについては大変申しわけないと思っておりますが、県当局の理解もちょうだいをいたしましたので、実施要綱が明日閣議で御報告できる段取りになりましたことを大変喜んでおるわけであります。
  187. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そうしますと、七・三〇と俗に言っておりますが、七・三〇は予定どおり踏み切られる決意であるかどうか。
  188. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) お答えいたします。  七月三十日は予定どおり実施できるということになっております。
  189. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 予定どおりできることになっておるとおっしゃいますが、私は非常に気になりますことは、予定どおり踏み切られた後に、その積み残しをどうするかということまでも具体的にこの要綱に基づいて詰めていきたいと思いますが、その見通しは大丈夫とおっしゃるんですね。
  190. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) お答えいたします。  道路施設の整備につきましても、昨年の九月、政令が出ましてから鋭意努力をいたしておりますし、また、国の直轄部分についてはすでに九割以上、あるいはまた県単部についても七割以上、それからまた市町村段階におきましても三割以上、こういうことで当事者の方にも御努力を願わなければならぬと思いますが、政府といたしましても全力を挙げて万全の処置をとってまいりたいと、こういうふうに考えておるわけであります。
  191. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 その全力を挙げてこられた現時点で、関係省庁がどういういま時点にまでこぎつけておられるか、それを一応確認いたしたいと思いますので、建設省、警察庁、運輸省、総理府、外務省、文部省、沖繩開発庁。
  192. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 道路の状況を御報告申し上げます。  各道路管理者ごとに鋭意努力を重ねておるところでございますが、本年二月末における変更事業の発注状況は、昭和五十二年度の第一次、第二次補正予算を含めて直轄事業で九一・六%、それから補助対象の県分が七四・一%、市町村分が二七%となると、市町村分がおくれておるわけでございますが、建設省の見通しといたしましては、七月三十日の変更日までには交通安全上支障のない範囲は完了できると思います。
  193. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 私の所管いたしますものでは、約三十万台の自動車の前照灯の取りかえ、あるいはバス、タクシー等の車両の代替、改造等のことに関係するわけでございますが、二月一日から七月三十日まで六カ月の間に、これらについて完璧を期したい、こういうように考えておりますし、おおむね手順は間に合うように進行するものと確信をいたしておる次第でございます。
  194. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 警察といたしましては、信号機の切りかえや、また道路標識等でございますが、計画どおり順調に進んでおります。  なお、歩行者や運転者等への広報、宣伝等につきましても万遺漏なきを期しております。
  195. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 昭和五十二年度で、「沖繩県交通方法変更に伴う交通安全指導資料」というのを幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特殊学校、それぞれ別に作成をいたしまして、各学校の教員全員に配付をいたしまして、二月十三日から二十日までの八日間、沖繩県内を六ブロックに分けまして、交通安全講習会を開催をいたしまして、非常に効果があったと考えております。  さらに、五十三年度のできるだけ早い時期に、再度このような学習教材を全児童に配付をいたしまして、指導を続けてまいることにいたしております。
  196. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) 沖繩開発庁といたしましての広報活動といたしまして、県民一般、幼児、老人、観光客等を対象として、いわゆる一般広報を担当いたしております。  一般広報につきましては、交通方法の変更の必要性及び意義、変更事業の内容、交通方法変更の実施方法等について、新聞、ラジオ、テレビ、ポスター、立て看板等、多様な媒体を用いて、これまで順調に実施しておるわけでございますが、五十三年度にも引き続き実施をしてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  197. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 外務省といたしましては、合同委員会の場におきまして、アメリカ側に対しまして、米軍の施設区域内の信号、交通標識の変更、車両の前照灯の調整及び米軍人家族等に対する周知徹底について協力を申し入れまして、米側も協力いたしますということを言っております。
  198. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、示された要綱に基づいて、どうしても不安、不満、そういった点がまだ十分解明されていない、こういう点がありますので、それを二、三具体的に取り上げてみたいと思います。  一ページに、「県民の理解と協力」、「極力軽減する」という、こういった「極力軽減する」というのには、この一切の責任は国にこれはあるということを確認されておりますが、この要綱を見ますというと、何か県側にもあるいは市町村側にも、その経済的負担もあるのではないかという疑惑が、疑問が持たれるわけですが、そういった点、「極力軽減する」と、こういうことはどういう内容であるのか、それを確かめたいと思います。
  199. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) 先ほども申し上げましたように、長い間なじみました交通の変更というのは、これは国際条令に基づきまして、やはりどうしてもやっていただかなきゃならぬということでございますから、復帰事業の一環として、これはやはり原則として国の責任においてなすべきであると、こういうふうな見解を持っておるわけであります。
  200. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 原則としてということでありますが、これはたてまえは国だが、あるいは県や市町村にもその経済的負担もあり得るということもあるんですか。
  201. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) いま申し上げましたように、国の責任においてなすべきであると、こういう解釈をいたしております。
  202. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、特に県民が心配しておる中で、県民の経済的損失の補償が明確にされておらない。それから損失補償をするための担当官庁、これも明確にされておらない。こういう点はどのように今後処理していかれるのであるか、伺っておきたい。
  203. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) これはなかなかむずかしい問題でございまして、利害得失と申しますか、右から左の変更でありますから、やはり損をする人と得をする人と、こうできるわけでございますから、これはやはりケース・バイ・ケースで解決をしてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  204. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、いままで報告してもらった中に属しない、いわゆる落ちこぼれといいますか、そういった問題の処理についてはどのように考えておるか。たとえばスクールゾーン内の標識、これをどこがどうするか。次には私立幼稚園、保育所の通園バスに対するところの措置はどこがどうするのか。三つは精神薄弱児の通園バス。それらのどの部にも属しない落ちこぼれがあるんですが、これに対してはどのように考えているか。
  205. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) お答えいたします。  長い間の伝統、歴史のあるものを変えていくわけでございますから、もろもろの問題が私は山積しておると、こういうふうに思っております。そういう意味から、しばらくの間、やはり存続をさせて調査をいたしまして、その都度その都度解決をすることが望ましいのではないかと思います。  また、幼稚園等については文部大臣、それから運輸関係については運輸大臣からお答えを願うことがいいのではないかと、こういうふうに思っております。
  206. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 乗降口が右側についておりますスクールバスのうちで、特殊教育小学校でありますとか、僻地のバス通学が必要である、こういったスクールバスを利用いたします必要性の高いものにつきましては、買いかえに必要な経費を補助をすることにいたしております。その他、どう申しますか、学校法人じゃない幼稚園等が若干残るわけでございますので、何らかの融資の方法を講じる等、検討をいたしているところでございます。
  207. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 県から要望いただいておりますのは、いままで補助制度のない無認可の保育所が持っている通園のバスの改造費、これを出さぬかと、こういうお話がございます。しかし、これはどうも制度のあるものは出せますけれども、保育所につきましてはそういう通園バスというものは全然認めておりませんし、しかも無認可の保育所が大半でございますから、ちょっと制度的にはどうにもなりません。他の、たとえば福祉施設等につきましては補助を予定しております。
  208. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いま制度がないからどうにもならぬとおっしゃった。そこが問題であります。変更それ自体がこれは異例の、特殊な例でありまして、この問題は特別な措置によってしか解決できない。それを制度がないからどうにもならぬというここに問題がある。そこを越えて、これは後にも先にもない問題であるので、方法の変更でありますので、どうしても政治的配慮でやってもらわなければ解決できないと、こう思いますが、いかがですか。
  209. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 保育所は元来そんなに遠方から通ってくるものではないのでございまして、十二カ所の保育所、うち十一カ所が無認可の保育所でありますが、ほとんど近くの方々の保育所でございますので、いまだかつて日本国内で保育所に対して通園バスを用意した例もありませんし、まして補助をしたという例はないわけでございますので、特別に、たとえば非常に大きな生活圏についてたった一つしかないというようなものであれば別でございますけれども、それは実態がそうじゃないわけでございますから、ただ交通のあれが変わったからといって、それを実態に合わない制度まで新しくつくるわけにはなかなかいかない。これはひとつ御了解いただきたいのです。
  210. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そう簡単にそうでありますかというわけにはまいりません。ぜひひとつ問題として取り上げて検討してもらいたいことを強く要望しておきますが、いかがですか。御勘弁願いたいとおっしゃいましたが、これは勘弁できる問題じゃありませんので、ぜひ再考慮していただきたいということを強く申し入れておきます。
  211. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 与党の代議士さんも県知事を案内して強く要望されましたのですが、いま先生からのたっての要望でございますからよく承ってはおきますが、私は余り政治家としてできそうもないことを期待をして県民に与えることはよくないと思いますので、いまのところは検討をすると、こう言いますと、もうできるのじゃないかと思われて、かえって御迷惑をかけてもいかぬものですから、やっぱりできないものはできないということが本当じゃないかと思うのです。しかし、御要望、たってのそういう検討をしろというお話は、私として頭にしみ込ませておきます。
  212. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 もう一つ要望として加えておきたいことは、民間企業の送迎バス、特にパイン産業につながる従業員の送迎バスの問題でありますが、これもパイン企業を育成するためにいろんな問題があったわけです。その作業員の送迎バス、このこともありますので、ひとつ含めて御検討を願いたいということを強く要望申し上げておきます。  次に、米軍人軍属に対する対策が非常に不明確であると、こう思います。特に事故防止の面から、基地の中の沖繩と言われておる状態でありますので、米軍人軍属に対する対策、これについてひとつ外務大臣からしっかりしたその対策、姿勢を承りたい。
  213. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほどお答え申しましたとおり、私どもといたしましては、この問題について変更を行うという政府の方針が固まりましたときに、昨年でございますが、合同委員会におきまして米軍人軍属に対する交通方法の変更について周知徹底してもらうように要望いたしまして、アメリカ側といたしましては最大限の協力をいたしますということを申しております。ただ、その後総理府の方で中心になりまして、この問題の実施についてその事務を取り進めておられるわけでございますが、その点で特にまた新たに具体的な問題が生ずれば、また総理府のお手伝いをいたしたいというふうに考えております。
  214. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 特に米軍人軍属のこれはもう現状が非常に困った状態にあるという、その実情、体験の上に立って私は強調いたしておりますので、ひとつ十分御配慮願いたい。  次に、これは建設になりますか、沖繩に起こる問題、大ぜいの皆さんも何の意味かおわかりじゃない、たとえばつぶれ地とか、角切り工事とか、いろいろ出てまいりますが、この交通方法変更に伴って特に都市地区――那覇地区や市町村もそうでありますが、角切り工事に伴って生ずるつぶれ地の補償を十分考えてもらわなければいけませんが、これはどうなりますか。
  215. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 御質問の御趣旨は市町村道のつぶれ地をおっしゃっているのではないかと、こう思うのです。これにつきましては実態把握のための調査をいたしておりまして、その調査の結果検討さしていただきたいと、こう思います。
  216. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、特にこの要綱で問題になります、そして現地要求の強い特別事業について、この交通方法変更が国の施策として行われる復帰処理の大事業であることは申し上げるまでもありません。そこで政策的配慮による特別事業が必要であると強調されております。県民の交通方法変更に対する不安、危惧に対応して、人的、物的両面から交通環境の改善を促進する必要が大いにある、こういう要望が非常に強いわけですが、その交通方法変更に伴って県民のこうむる有形無形の損失があるわけですが、それを一々個人に還元するわけにいかぬ面も出てまいると思いますので、それを一括して特別事業の形であらわす。この内容として、一つ沖繩県交通安全教育センター、二つに道路整備、三つに交通災害医療センターの設置、この三つをぜひ特別に配慮してほしいと、こういうことなんですが、いかがでしょうか。
  217. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) お答えいたします。  まず、特別事業といたしまして、第一番目に交通安全教育センター、それから道路の整備、それから交通災害医療センターと、この三つの問題が県当局から特別事業として、ぜひひとつやってもらいたいと、こういうふうに参っておりまして、いま各省とも連絡をとりながら、できるだけその御期待に沿うべく全力を挙げておるところであります。
  218. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 三十三年もなじんできたこの方法を根こそぎ百八十度切りかえるわけでありますので、予期しない事柄が必ず踏み切った後に出てまいることが十分予想されます。そこで、要望を兼ねて承りたいことは、七・三〇以後積み残した問題も国の責任において完全に解決すると、こういうことをまずはっきり明確に打ち出してもらいたいということと、もしいま現時点で予想されない問題が出た場合に、それをどうしてもほうっておくわけにいかない、そういった大事をとっていただいて、その要旨を踏まえて、現在沖繩県交通方法変更対策本部、この本部、あるいは名称は変わってもいいと思いますが、その組織を自後に備えて継続存置してもらわなければいけないと、こう思っておりますが、いかがでしょうか。
  219. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) 交通方法変更対策本部もまた現地の窓口も一定の期間存続をさせていくつもりであります。
  220. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いま一つ、積み残したものに対するいわゆる継続事業としての完遂、これはいかがですか。
  221. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) その組織、現地の窓口を残すわけでございますから、積み残されておるものを一つ一つ解決をすべく、そのために存続をさせていくわけでございますから、ケース・バイ・ケースで解決をしてまいりたいと、こういうふうに思っております。
  222. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 この問題に対する最後の締めくくりといたしまして、本当に変更してよかったと、こう言える結論を出していただきたい。変更ということは、あるいは改善改良ということは、メリット、よくなるために変更があるのであって、デメリット、不安やいろんな損傷が予想される、このような状態では変更とは言えない、また変更してはいけない、こう思いますので、本当に変更してよかった、切りかえてよかったと、こう言えるひとつ安心を与えていただきたいことを強く要望いたしておきますが、もう一遍担当大臣の決意を承りたい。
  223. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) 先ほど来も申し上げましたように、国の施策で大変長い間なじまれた交通方法を変えていくわけでございますから、この記念事業として必ずや皆さん方のその御期待に沿うように、なるほど無理な変更をされたが誠心誠意政府がこれにこたえてくれたと、必ずそのように努力することをお誓い申し上げておきたいと思います。
  224. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまの担当大臣の御説明を承りましたが、最高責任者としての総理のひとつ決意をお願いします。
  225. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 今回の沖繩におきまする交通方法の変更は、これは大変重大な問題でございます。政府では基本方針として国の責任で処理すると、そういう考え方でやって、沖繩県民の御期待にこたえてまいりたいと、かように存じます。
  226. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に移ります。  福田総理は機会あるごとに日米安保は尊重すると、こう強調していらっしゃいますが、その日米安保を沖繩の現状に照らしてどのように理解しておられるか、そのことをお聞きしたい。
  227. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日米安保体制はこれを堅持するという必要があるわけでありますが、その間におきまして、沖繩、これはアジアにおける一つの戦略要点であると、そういう意味から申しまして、米軍の基地、これが多数置かれておる。人によっては基地の中の沖繩県というようなことを言うくらいの密度で米軍の基地が置かれておる。この米軍基地につきましては、沖繩県民はなるべく早くこれが清算されるということを希望しておるわけでありまするけれども、ただいま申し上げましたように、日米安保体制はこれを堅持する、またその中におきまして、沖繩が戦略上きわめて重要な地点を占めると、こういうことからいたしまして、この沖繩基地、米軍基地の整理統合、これがなかなか県民の期待するようにはかばかしい進捗を見ておらぬわけなんです。その辺は私どもよく承知しておるわけでありますが、一方におきましてこの基地の整理統合、これはとにかくむずかしい問題ではございまするけれども、政府といたしましては、粘り強くこれに取り組んでおる。またその間におきまして、基地の運用、これがいろいろ摩擦が出てくる。その摩擦現象につきましては、そういうことにならないように日米安保体制の運営上極力配慮しなければならない、このように考え、そういう基本方針で安保体制下における沖繩問題、これに取り組んでまいりたいと考えております。
  228. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 総理、沖繩の言葉に「忍ばらん忍び、すしが忍び」という言葉がございますが、おわかりでないと思います。「ならぬ堪忍するが堪忍」ということなんです。沖繩県民は政治的に、歴史的に忍の一字に耐えて「忍ばらん忍び、すしが忍び」、こういう忍の一字に耐えて今日まで来たと。これを称して、琉球処分を幾たびか繰り返してきた。もう今後そのようなことが絶対にあってはいけないということで、県民は新しい歴史の創造を求めて立ち上がってきておるつもりでありますけれども、しかし、復帰前と復帰後を沖繩の状況に立って比べました場合に、アメリカの沖繩基地支配者、あるいは責任者の知事を初め県の首脳の大衆の指導者に対する姿勢が非常に高圧的になっておる。そして軍事演習の量が広がっておる、質が深まっておる、これが沖繩の最近の状況なんであります。  いま米韓演習が行われて騒然となっておる。県議会におきましても、きのうの新聞によりますと、与野党を含めて全会一致で反対の決議を超党派でやっておる。これは決して沖繩の与野党がなれ合いでというわけではありません。事の重大さに耐えられなくて全会一致で決議をしておる。これが沖繩の現状なんです。  そこで、私もそのことを強く感じながらきたわけですが、衆議院でも問題になっております例の五・一五メモの問題について、いつどのように五・一五メモが発表されるか、答えてもらいたい。
  229. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) お答えいたします。  日米合同委員会の関係文書の内容は、原則としては公表されないことになっておるわけでありますが、御承知のとおり、施設区域に関する取り決めのうちで、施設名、所在地、所有関係、使用目的等の主要な事項、並びに漁業、船舶の航行に重大な影響がある水域についての使用条件については、官報に告示して周知を図っているところであります。さらに、ただいまお話しのそのほかの内容につきましても、衆議院でも御答弁がありましたように、国民生活に密接な関係のあるものについては、米側の了解を得まして公表したいということで、現在鋭意作業中でございます。できるだけ早くまとめたいと思っております。
  230. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いずれというのはどういう意味ですか。
  231. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) これは私ども施設庁で作業をいたしまして、外務省とも御相談し、米側とも相談しなければいかぬわけでございますので、確たることをいま申し上げられませんけれども、できるだけ早く提出いたしたいと、今月中には発表できるように努力いたしたいと、こう思っております。
  232. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 使用条件のメモはでき上がっていますか。
  233. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) いま申し上げました五・一五メモとおっしゃったのは、まさにその点を含んでおるものでございます。
  234. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 本土では、基地の使用条件はちゃんと地主、あるいは関係市町村に明確にされております。なぜ沖繩はそれがなされていないか、その理由を承りたい。
  235. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 本土におきましてもたくさん基地がございますが、すべてについてその使用条件が明確になっているというわけではございませんで、ケース・バイ・ケースで、たとえば北富士演習場のように地元の御理解を得て、こういう条件で使いましょうというふうな話し合いが持たれましたような場合に使用条件が明らかになっておるということでございますが、ケース・バイ・ケースでございます。
  236. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまの答弁はでたらめじゃありませんか。ちゃんとここにその使用条件の証拠がありますよ。三十六年一月十六日閣議了解、「静岡県東富士演習場返還に伴う措置について」、ちゃんと明確なメモがありますよ。
  237. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 私が申し上げましたのは、本土におきましてもすべての基地についてその使用条件がその都度一々明確にされているということではございませんので、ケース・バイ・ケースで、ただいまお話しの東富士、あるいは北富士等については明確にされておるということでございます。
  238. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 だんだん掘り起こしてみると、沖繩がどのようにふたを覆われておるか、あるいは差別されておるか。そういう中で戦場同様な、いわゆる無制限な基地の自由使用、そして出撃基地とも言われておる今日、そのような形で沖繩の基地をでたらめに自由自在に使わしておる、このことに私は憤りを感じてなりません。憲法に照らしても差別があるべきはずがない。それを沖繩なるがゆえにと、こう言いたい。  次に進めますが、基地の整理縮小は、さき総理努力しておるけれどもなかなかと、こうおっしゃったけれども、その基地の整理縮小も復帰の時点で確約されたことであります。それが順調にいかない理由はどこにあるか承りたい。
  239. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 政府としましては、従来から地元の返還の御要望等を踏まえながら鋭意米側とも交渉いたしまして、施設区域の整理統合に努めてきておるところでございます。御承知のとおり、第十四、十五、十六の三回にわたります日米安全保障協議委員会において了承されました施設区域の整理統合計画があるわけでございます。これは沖繩につきましては、この三回の合意で六十三件、五千七百三十四万平米の返還計画があるわけでございますが、いままでに返還が実現しましたのは、そのうち二十九件、千二百八十万平米ということで、率にしますと、約二二%強になっておるわけでございます。私どもこれにつきましては、鋭意この促進を図りたいということで努力しておるわけでございますが、この計画の中には施設の移設を条件とするものが多うございます。経質的にも相当の財政負担を要するということがございます。それから内地と違いまして、沖繩の施設区域はほとんど民有地で国有地は少のうございますので、内地におけるような特別会計方式の活用ができないということもございまして、おっしゃるとおり進行状況は芳しくございませんが、今後とも鋭意努力をいたして、できるだけ早く全体の計画の実現をいたしたい。またこの間におきまして、現地の地元の御要望の強いところから重点的に仕事を進めてまいりたいと、こういうふうに思っております。
  240. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 努力努力と、機会あるごとにそういう姿勢は示してもらうけれども、その努力が実らなければこれは空虚なものである。沖繩の返還はもうれっきとして核抜き本土並みということが前提じゃなかったですか。当時の外務大臣、現総理、あなたがおっしゃったことは本土並み。ところが、いまの基地の返還につきましても、復帰後本土は二一・七%返還されておりますよ。沖繩が七・九%。本土は沖繩の三倍以上返還されておる。復帰前でさえも基地の中の沖繩という状況。復帰後はさらに本土はどっと返還され、沖繩は三分の一しか返還されておらぬ。ますます、本土並みどころか格差はずれてくる。この矛盾をどう解決しようとしておるのか、総理に承りたい。
  241. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 沖繩県にあれだけの基地がいまだにあると、これが沖繩の皆さんの民生、これをかなり圧迫しておると、こういうことにつきましては、私どもそういう認識を持ち、またこれを深く憂いとしております。そういう認識に立ちまして、アメリカ政府との間では基地の整理統合、これについては防衛庁、外務省を中心といたしましてずいぶん努力をしているんです。しかし、何せ先ほども申し上げましたが、沖繩が戦略上大変大事なキーポイントのような地位にあると、そういうようなことから、なかなか整理統合、これが思うようにいかない、そういうようなことで今日に至っておるわけでありまするけれども、これは沖繩県民の御要請、こういうこともよくわかっておりまするから、そのお気持ちも踏んまえまして今後ともできる限りの努力をいたしてまいりたいと、このように考えます。とにかく粘り強くやります。
  242. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、またこれも差別につながる沖繩における基地公害の実態はもう限りなくありますが、このことをまず柱として申し上げたい。全国の基地面積の五三%を占めておる。航空機による爆音公害が激しい。演習による自然破壊が著しい。人身被害、そして米軍人軍属による犯罪と限りありません。その中での一例はハリアジェット戦闘機の訓練、離着陸。これは五十二年七月二日の一日の記録です。久辺小学校、久辺中学校八十九ホン、午前中で十三回授業中断。児童生徒の行動、教室から飛び出す、耳を押さえてこらえる、教師にしがみつく、学校全体が恐怖感に襲われる。その付接地域住民百一ホン、これがハリアジェットの離着陸に伴う爆音の実態です。そして墜落事故が二回起こっております。この訓練の即時中止、県外への撤去を県民やそして地元市町村民は訴えております。これにこたえてもらえるかどうか、お聞きしたい。
  243. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 海兵隊のハリアにつきましては、昨年の半ばに岩国から沖繩に移動いたしまして、これが騒音の関係で大変地元に御迷惑をおかけしておる。それからまた、ただいまお話しのように、昨年十一月に事故が相次いだというふうなことがございまして、私どもは米側に申し入れをいたしまして、米側も飛行前の整備点検を一層厳しく実施する。それから住民地域の上空の飛行は極力回避する。それから児童の授業中及び夜間の訓練は行わないようにするというふうなことを答えてきておるわけでございます。私どもの立場におきましては、この訓練を中止しろということを申し入れることはできないわけでございますけれども、住民の御迷惑ができるだけ少なく済みますように今後とも米側とよく協議をいたしたいと思っております。
  244. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 厳重にひとつ申し入れてこれを守るよう、要望にこたえてもらうように努力してもらわなければいけない。  次に、嘉手納基地中心のF4ファントム戦闘機、それからKC135空中給油機の離着陸及びエンジン爆音。県当局の騒音測定調査の結果、嘉手納飛行場周辺住民の環境破壊、まず電話あるいはテレビ、これがたとえば電話であるとその爆音中は電話器に布団をかぶせてでなければ電話が聞こえない、これが実態なんです。それからテレビが全然映らない。映っても見るにたえない。住民地域で百十ホン、百九回。嘉手納小学校で百二ホン、四十四回。それで近くの北谷高等学校で一日の授業中断――一日の中で爆音のために授業中断が六十五回。これが実情なんです。これも人道上も許すことのできない実情なんです。何で沖繩がいまごろ戦争中でもないのにこのような状態の中で明け暮れなければいけないかということに、私は激しい憤りをもって抗議をすると同時に、それをどうしてもらうか。とのことを私は責め寄りたい。  そこで提案したい。ぜひこの要望を直ちに守らしてほしい。一つ、学校及び住民地域上空における訓練飛行を中止させよ。二つ、訓練以外の飛行機についても可能な限り民間地域上空を避けること。三つ、夜間、早朝のエンジン調整及び離発着を禁止すること。大型サイレンサー装置を早急に設置すること。この四つを直ちに申し入れて実行さしてほしい。申し入れますので答えてほしい。
  245. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 基地周辺の航空機の騒音問題は、内地におきましても沖繩におきましても大きな問題でございます。私どもとしましてはこれを深刻に受けとめまして、米側に対しまして合同委員会の下部機構であります航空機騒音対策分科委員会の場、その他を通じまして事実上の規制措置を申し入れておるわけでございます。いまお話しの嘉手納飛行場については、いままでにいろいろの措置を申し入れて米側の了承している点もあるわけでございます。たとえばエンジンテストと飛行活動は緊急やむを得ない場合を除いては二十二時から翌朝七時までは行わない。あるいは飛行経路についてはできるだけ人口の多い地域は避けて通る。それから、オーバーラン区域でのアフターバーナーの使用は特に安全上、運航上必要とされる場合に限る。さらにパイロットに騒音問題の重要性を十分教育して遵守すべき事項を指示するというようなことについてはアメリカも合意しておるわけでございます。  それからまた、こういう運用面の措置のほかに、この騒音対策の防音工事等についても施設庁としてできるだけのことをいたしたいということで、復帰以来五十二年度までに学校、病院、住宅、その他を含めまして九十四億ぐらいの対策事業を進めておるところでございますが、さらに、ただいまの先生のお話を踏まえまして十分米側と話し合いをいたしたいと思います。
  246. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまおっしゃったことに対する予算の裏づけばどうなっておりますか。
  247. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 騒音対策事業につきましては、防衛施設周辺の環境整備法に基づきまして予算措置をもって実施しておるところでございまして、復帰以来五十二年度までに学校、病院等について約七十億円。住宅について十一億円、それから市町村の庁舎、公民館等につきまして約十億円、その他移転措置、騒音防止用電話その他の措置を講じておるところでございまして、合計いたしますと九十四億円程度の措置をいままでにいたしております。
  248. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 平和とは、人間が人間らしく生きていく最低の条件であると思うのです。その最低の条件さえも与えられていない沖繩の県民です。生活の不安、生命の危険に毎日さらされている、こういう状況の中で何が平和ですか。県民も日本国民の一人です。  次に、戦車道工事による自然破壊、キャンプ・ハンセン-キャンプ・シュワブ連結戦車道二十七・四キロを自由自在に基地は国土を破壊している。そして切り倒した木が三万五千本。六カ所の水源地が汚染。南明治山の試験林が根こそぎ切り倒されておる。こんな痛ましい状況にある。このことをまず環境庁長官はどう受けとめておられるか。
  249. 山田久就

    国務大臣(山田久就君) 御指摘の沖繩北部東海岸におきまする積土による海域の汚染、これは県からの報告によれば、地形とか地質というような自然的な要因によるもの、あるいはまたパインの開墾、道路工事などという人為的な要因が加わったもの、そういう複合的なものによるものだという報告に接しております。水産庁、沖繩県等におきまして関連した調査も行われておりまして、環境庁といたしましては、直接のそれぞれの責任官庁とよく連絡いたしまして、環境基準、そういうものが保たれるようにということで、県等に対しましても必要に応じて技術的な指導を行うというようなことで鋭意努力いたしてまいりましたし、今後においてもひとつ努力してまいる所存でございます。
  250. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 林野庁長官は見えていますか。骨身の痛む思いがなさるんじゃないかと思うのですが、林野庁長官の意向を聞きたい。
  251. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 林野庁長官は来ておりませんし、御質問の趣旨をちょっと聞き取りかねましたので、もう一度、恐縮でございますがお願いします。
  252. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 質問の趣旨を簡単に。
  253. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 戦車道による自然破壊、美しい山野が、しかも試験木を植えた二十七・四キロの森林がめちゃめちゃに破壊されておる。そして、赤土で汚染して水源地が汚れておる。こういう痛ましい状況をどう思いますかということです。
  254. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) そういうことはよろしくないことだと思いますので、実態も十分調べまして対処いたしたいと存じます。
  255. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 次に、基地内の安全衛生について。  公害の防止、雇用員の健康、安全衛生についてはどのような協定がなされておるか。
  256. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) お答えいたします。  基地内の従業員の安全衛生管理の問題は、従業員の健康と生命にかかわる大変重要な問題でございますので、常々米側に対して注意を喚起しておるところでございます。私どもとしましては、この従業員の雇用主という立場もございますので、この安全衛生教育の徹底あるいは作業場の整備あるいは健康診断の実施あるいは保護衣の備えつけ等の従業員の安全衛生の確保のための施策につきまして、常々在日米軍に要請いたしますとともに実施に努めてきておるところでございます。  それからまた、万一職場において不幸にして事故が発生しました場合には、所轄の労働基準監督機関の立入調査に御協力するとともに、必要に応じまして米側に対しまして事故原因の究明、再発防止、安全管理の徹底等について強く申し入れておるとごろでございます。
  257. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 いまの規定は完全に実施されておりますか。
  258. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 職場の従業員の安全衛生の管理につきましては、原則として日本関係法令の定めるところによることになっておりますが、十分でないところがございます。この点につきましては、私どもと在日米軍との間で鋭意検討するということで、合同委員会の合意を見ておるところでございまして、目下鋭意検討中でございます。
  259. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 少なくとも合同委員会で決まったことは、ひとつ責任ある行動をとってもらいたい。いいかげんなことをしてもらうと、その被害は結局国民に、県民に及ぶんです。  それじゃ具体的に、例のメチルブロマイド中毒事件に遭った喜納昌秀君は現在どうなっているか、そして見通しはどうなのか。
  260. 菊池久

    政府委員(菊池久君) お答え申し上げます。  喜納さんにつきましては、五十一年の二月の事故でございまして、五十一年の二月の事故発生以来、その後の処置につきまして医師団を派遣いたしまして、その後、現在は東京の労災病院に入院されているところでございます。  現在の状況でございまするが、現在は大分好転いたしまして、車いすで廊下を歩いていらっしゃったり、腕をゆっくりと上下に動かしたり、けいれんが非常に少なくなっておりますし、食事も普通の状態に戻っております。  今後の見通しにつきましては、病院にお聞きしますところによりますと、症状は前のような症状がございませんので、退院の時期、回復の程度等につきましては、いまのところはっきり申し上げられませんけれども、最大限の努力をするつもりであるというふうに先生からも聞いておる次第でございます。  以上であります。
  261. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そうすると、当分はそのまま治療を続ける方がいいということなんですか。
  262. 菊池久

    政府委員(菊池久君) 医師の診断によりますと、いまのような症状でございまするので、もうしばらくリハビリテーション等を続けたいということでございます。
  263. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 家庭の事情を一言申し添えておきます。子供四名を親戚に預けて、妻がその看護に当たって、二人きりで労災病院におる。この痛ましい状況を御存じと思いますが、この子供たちの将来を本人は非常に憂えて嘆いておる事情ですので、ひとつ一日も早く回復さしてもらうよう努力してもらいたい。  次に、対米放棄請求権、いわゆる戦後処理、これが現時点でどうなっておるか。そしていつそれが予算化できるか。五十四年度から予算化できるかどうか、その見通しについて。
  264. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) お答えをいたします。  対米放棄請求権問題につきましては、現在までの調査の結果に基づきまして、被害の実態の全体が明らかになった漁業問題につきましては、特別支出金を交付する方針で、その一部十億円を来年度予算案に計上して御審議をお願いしているところであります。  漁業関係以外の事業につきましては、なお解明すべき点が多いので、五十三年度には関係各省庁による協議会を設けて、本土の先例をも参考にしながら慎重に処理方針を検討してまいるつもりであります。
  265. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 漁業補償の十億は二、三年来の懸案であったわけですが、今度やっと頭をもたげましたが、これは補償ですか、見舞金ですか。
  266. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) 特別支出金であります。
  267. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 その十億を今度計上したその根拠を承りたい。
  268. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) お答えいたします。  防衛庁が漁業問題で補償いたしておりますその算定の基準で決定したものであります。
  269. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 まあ一角が頭をもたげたことは、さらに道が開けたということになるわけですので、残りは、少なくとも五十四年度からは予算計上、他の十二万件余、一千百五十九億のその査定については五十四年度からぜひ、全額でなくしても一部でも計上できるかどうか承りたい。
  270. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) 各省庁と協議会を設置いたしまして、慎重に対処してまいりたいと思っております。
  271. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 そこでひとつ要望いたしたい。こういった膨大なこれもう戦後処理の焦げつきであります、三十三年の。これをじわりじわりではいけない、単なる行政措置でもいけないと思う。それで、ぜひひとつ特別立法による措置を講ずべき必要があると思うが、いかがですか。
  272. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) 特に現段階としては、立法措置を講ずる必要はないと、こういうふうに考えております。
  273. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 現時点ではと――将来の問題としてもぜひひとつ特別立法措置を講じてもらう方向に検討してもらうことを強く要望しておきます。  それでは時間が参りましたので、次に、これも幾たびか予算委員会でも、内閣委員会でも問題にしました読谷飛行場用地の返還問題。あれから一年近くなっておりますが、これが現地調査の結果はどうなっておるか。
  274. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 読谷飛行場を含みます旧日本軍の買収の実態その他の調査がようやく取りまとめられておりますので、これを整理いたしまして、各省とも打ち合わせの上、できるだけ早い機会に国会に提出したいと、かように思っております。
  275. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 できるだけ早くというあいまいじゃなく、もっと具体的なめどを聞きたい。
  276. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 約一月ぐらいかかるだろうと思っています。
  277. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 時間も参りましたので、最後に、締めくくりとしまして福田総理に申し上げたい。  これまでの本委員会での審議の過程で総理は、東南アジア、中近東、特に東南アジア、開発途上国に心が通うようにということをよく強調しておられますが、私は南米にもっともっと、心だけでなく目と心を向けてほしい。今日の南米、将来の南米を築くのも私は日系市民であると、こう思っておりますが、強く訴えておりました。私たち日本の国策によって移住してきた移住者であると、そうしてジャングルを開拓して今日の南米にした。ところが、われわれが汗水流して働いてつくったその産物を祖国日本は買ってくれない。買う義務があると思うのだが買ってくれない。これを嘆いておりました。ぜひ総理に訴えてくれという注文もございました。  それから留学生の問題。南米から日本に留学したいという強いあれがあります。
  278. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 時間が来ておりますから簡単にお願いいたします。
  279. 喜屋武眞榮

    喜屋武眞榮君 はい。  それから天野博物館、あのすばらしい博物館の運営に対する補助、それからボリビアの領事館の独立、こういったいろいろの要望がございましたが、総理は南米に心と目をしっかり向けて、通わしてもらいたい。いわゆる経済交流と文化交流を強く強く要望しまして、最後に総理の御所見を承って終わります。
  280. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 南米に対する御所見、私も全く同感でございます。私も一昨年南米を、ブラジルなどを訪問いたしておりますが、あの地で働いております日系市民ですね、あの人々の立場なんかもずいぶん配慮してやるべきだと、こういうふうに考えております。喜屋武さんと同じような気持ちで今後とも南米政策は進めてまいりたいと、このように存じます。
  281. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で喜屋武君の総括質疑は終了をいたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  282. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、柿沢弘治君の総括質疑を行います。柿沢君。
  283. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 参議院で六番目の政党でございますが、私の質問順番は三十番、すでに各党から多くの議論がなされておりますので、さらに与えられた時間にも制約がありますので、ポイントをしぼって質問をしたいと思います。  衆参合わせて一カ月半の議論を聞いてまいりましたけれども、依然として日本経済は一体どうなるのか、これからどこへ行くのか、明らかになっていないように思います。その意味で、相変わらず漂える日本丸という感じがしてなりません。七%成長論にしても、それが実現可能かどうかということだけではなくて、それが達成されたら一体どうなるのか、本当に国際収支の黒字幅は減るのか、もしくは雇用の不安は消えるのか、それが明らかになっておりません。  宮澤経企庁長官の最近の答弁を少し拾って読んでみました。個人消費については、急速に盛り上がるとは期待できないとおっしゃっておられます。在庫についても、在庫調整は政府の見通しよりおくれている、五十三年度中の顕著な積み増しはできない、むずかしいだろうとおっしゃっております。しかし、政府見通しでは、在庫投資は二五%伸びる、こういうことを入れているわけです。設備投資についても、稼働率が低いような現状では電力を除いて五十四年度にならないと盛り上がってこないだろう、こういうことを言っておられます。さらに、輸出は円高によってダウンしてくるだろう、こういう見通しも述べておられます。  各重要項目別の見通しを全部並べてみますと、いずれも控え目で厳しい。ある意味では宮澤長官の本音がそこにのぞいているように思えます。それなのに総体としてどうかと言いますと、七%成長は達成できると確信をしていると再三繰り返しておられるわけです。個別項目の合評がGNPを構成しているのではないのでしょうか。個別項目についてかなり控え目な見方をしている長官が、七%成長論について超楽観主義者だということは、非常に不思議な感じがいたします。これは七%成長論が決して経済学的に根拠のある数字ではなくて、つまり冷静な見通しではなくて、そうあってほしい、そうなければ困るという切実な願望以外の何物でもないというふうに思いますが、宮澤長官、そろそろ本音を出していただきたい、お願いいたします。
  284. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いいお尋ねでございますので、考えていることを申し上げたいと思うのでございます。  まず、五十三年度という年を私どもどう考えているかと申し上げますと、長年の間の雇用の停滞、経済の不況でございますが、いろいろなことを五十三年度で一遍に直してしまうわけにはまいらない、これはもう明らかなことだと思います。かつてわれわれは完全雇用ということを一度は達成いたしましたが、有効求人倍率が二・幾つであったものが現にもう〇・五というようなことになっておる、この状況は何とかして変えていかなければなりません。もう一遍完全雇用の時代というもの、われわれはもう一遍そういう社会をつくっていかなければならないと思っておるわけでございます。それだけつまり石油危機の傷というものは深かったわけでございますが、しかし石油危機以来のこの数年を顧みますと、われわれはともかく石油がとても買い切れないと言われておった時代から、少し行き過ぎましたが、これだけの経常収支の黒字を出すようなことになっております。また、物価も、狂乱物価であったものがとにかくこのぐらいのところまで来ている。石油危機の対処の仕方は世界各国みんな違いましたけれども、私は、わが国はその中では最も上手に対処した国であるというふうに考えております。また、外国でもそう認めている国が多いのではないかと思います。  しかし、だからと言ってすべてのことがうまくいっているわけではありませんで、それだけにいろいろな代償をわが国としても払っておるわけであります。それがやはり不況であり、現在の雇用状況であると私は考えているわけです。しかし、不況にいたしましても、そういう雇用状況にいたしましても、それはいまやわれわれ自身の努力でどうかできる種類の問題であって、外からのファクターでもってどうしようもないというような状態にわが国はあるわけではもはやございませんから、そういう意味で私は非常にりっぱに対処した国だというふうに思います。  しかしながら、それだけ石油危機の傷は大きいわけでありますからこのような不況であり、このような雇用状況であるわけで、五十三年度を通じて何とか、これだけ財政が本当に逆立ちをするようなことを何度も何度もいたしませんでも、わが国経済の持っている力で徐々にもう一遍正常な拡大均衡に戻したい、そういう転機の年であるというふうに私ども五十三年度を考えていますし、またそうしたいと思っております。  一つ一つの見通しは、確かに私は余り欲張った見通しをしておるつもりはございません。指標としては、現在のところおくれておりますのは消費の指標、それからやはり国際収支が、経常収支が思ったほど縮まっていくだろうかという、そういう二つの問題を持っておりますけれども、その他の指標は私は順調だというふうに考えております。で、七%を、しかしそれでもおまえが言うのは答えだけが過大ではないかとおっしゃいますけれども、御存じのように、われわれ、五十一年度、五十二年度、まあ五十二年度がどうなりますか、政府の見通しどおりでも五・三%でございますから、そういう低い後の七%程度というものは大変なことですけれども、実はそんなに跳び上がって驚くような大変な高い成長ではないわけでして、私は一つ一つかなり慎重に重要項目は積み上げておるつもりでございますが、それで七%というものはやはりできて不思議はない。しかし、それは大変に大きな成長だというふうには実は考えない、こういうことでございます。
  285. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 実は、私、三十年以来の政府見通しと実績との対比表をつくってみました。こういうふうに並んでいるわけですが、三十年から四十四年まで、つまり四十年代の前半までを並べてみますと、わずか昭和四十年度を除いて全部見通しを上回っております。これは、いわば高度成長時代は、へそくりがあった、へそくり率のあるへそくり型の見通しだったと思います。ところが、四十五年から五十二年までをとってみますと、これは二年を除いて全部政府見通しを実績が下回っております。いわば政府見通しが上げ底型の時代だと。高度成長期にはへそくり型であり、低成長期になって上げ底型になっているというのは明確でございます。へそくり率は大体三割、上げ底率は大体二割。ことしの七%に二割を掛けてみますと、五・六%、まあこれは単純な子供だましの数字ですが、そんなところが一つの指標になろうかというふうに思います。  政治が国民に夢を与えることは必要だと思いますが、幻を売り続けるというのは困ったことだ。前にも申しましたように、福田内閣は景気がよくなるよくなると言い続ける。思い切った行政改革をやるとおっしゃる。医師税制の是正をやるとおっしゃる。牛肉も安くしますと約束しました。デノミネーションまでやるとおっしゃる。しかし、やるやると言いながら次々に引っ込めて、まさに幻を売り続けてきたように思います。今度こそ本当に七%成長しますと言ったところで、それを信用して財布のひもを緩める家庭の主婦や企業経営者がいるかどうか。私は福田総理の姿勢に問題があるというふうに考えますが、総理、いかがでございますか。
  286. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私ぐらい真剣にやっている人は珍しいのじゃないでしょうか。これだけ激動する経済ですからね。それは、見通しと実績が違う、これは日本ばかりじゃないんです。あの西ドイツでも、去年は五%成長だと、これが二・四%成長でしょう。アメリカでも六%成長だというのが四%台成長だと。わが国は六・七%成長だと、これが五・三%成長。あれだけの円高の嵐の中でもそれだけとにかく実現できるというのですから、その辺もまた評価願いたいとお願い申し上げます。
  287. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 やります、やりますと言ってやってこなかった実績が余りにも多いと思います。三〇%の公債依存度だってそうです。三〇%を上回ったらそれこそ大変なことになる、そう言い続けてきた御本人の手で三〇%を大幅に上回る予算を組んで提案をしておられる。まさにオオカミ少年と言っても過言ではありません。それは、こう並んでいらっしゃる皆さんを見ると、オオカミ少年というよりもオオカミ中年もしくはオオカミ老年かもしれません。福田オオカミ老年と異名をとってしまったところに福田内閣に対する国民の不信感があり、世論調査の結果が低下している原因があると思いますが、いかがでございますか。
  288. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いまに見ておれとお答え申し上げます。
  289. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 その意気でやっていただきたいわけでございますが、それならお伺いをいたします。  きょう公定歩合引き下げられました。しかし、公定歩合引き下げの日に円レートは二百三十三円を割って二百三十二円に落ち込んでおります。一体、公定歩合引き下げは円レートにどういう効果があるとお考えでしょうか、村山大蔵大臣お願いいたします。
  290. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これもしばしば申し上げましたが、公定歩合引き下げというものは私は直接には円レートにそれほど響かないものだと思っておりまして、やはり内需拡大あるいは金融費用の軽減という問題を通じて長い目でこれが日本景気をよくしていく、その結果として、だんだん円レートがモデレートのものになっていくと思っているのでございます。ただ、資本収支についてはプラス面があることはもう御承知のとおりでございます。しかしまた、あわせてやりました短資の流入規制も、これも対症療法であることは、御承知のとおりでございます。しかし、現在の短資あるいは為替市場は非常にセンシティブでございますから、利食いをやるとかそういうことはしょっちゅうあるわけでございます。今週の初めに米・独でやりました協定、これも期待感があったときにはドルは上がったわけでございますが、発表されてから逆に下がる、ドルが逆に安くなると、こういう結果でございます。この辺は非常にセンシティブの毎日毎日の相場というものは、それほど余りそのときそのときの施策をそのまま反映するのではないであろうと。私は今度のとった措置が短期的にもやはりある程度の効果をあらわしてくると、このように思っております。
  291. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 村山大蔵大臣のおっしゃることは、一部本当だと思います。公定歩合引き下げが簡単に円レートの安定に役立つものではない。だからこそ私たちは一月にも早々に公定歩合引き下げるべきだということを主張したわけです。政府は、様子を見てから様子を見てからと言い続けて、また一月半空費をしてしまったではないですか。これから公定歩合引き下げ効果を発揮して設備投資をふやすとかいろいろな効果を発揮するには、一月ないし二月かかるわけでございます。これがまさに福田総理のおっしゃるいまに見ておれという――いまは見ておれでございますね。いまに見ておれでなくて、いまは見ておれ、そのうちやるぞと。いつまでもいまは見ておれと言っていられる状態だとお考えだとしたら、経済に対する認識が甘過ぎると思います。  一例を挙げます。政府は、五十三年度の経常収支の黒字を六十億ドルに減らすと約束をされました。本当に達成可能でしょうか。たとえば年度間六十億ドルにするためには、上期と下期をどんな形で想定をしておられますか、宮澤経企庁長官
  292. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 六十億ドルということは、結局、毎月の貿易外の赤字を六億ドルと仮に考えますか、そういたしますと、月の貿易収支の黒字が結局十億ドルぐらいであればよろしいわけでございますね。そのぐらいになりますか。ですから、そういうトレンドは私はそんなにむずかしくないのではないか。ただいまのところはその倍ぐらいの貿易収支の黒字があるわけでございますけれども、年の後半になりますと、私はそれよりももっと貿易収支の黒字が減ってくる可能性があるのではないだろうか。貿易外の方のふえ方、減り方はそんなに変わらないと思いますので、大体そういうふうに考えていいのではないかと思っております。
  293. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 それでは、五十二年度の下期は経常収支幾らの黒字と見込んでおられますか。
  294. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは柿沢委員もよく御承知のとおり、将来のことについて四半期別……
  295. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 五十二年度の下期です。いま進行中のととろです。
  296. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 失礼いたしました。  五十二年度は、今日多分発表になるわけでございますけれども、ここまでで季節調整済みで経常収支の黒字が四月からで百十九億ドルございます。これは二月末まででございます。
  297. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 そうしますと、百二十億ドルと言われておりましたが、年度間で百三十億ドルを上回るということにならざるを得ないと思います。上期が五十億ドル台でございますから、経常収支で七、八十億ドルという大幅な黒字になるというふうに考えてよろしゅうございます。その八十億ドル、つまり五十二年度の下期だけでかせいだ黒字を来年一年かかってかせいでいくようなそういうペースにしなければいけないということだと思いますが、果たして五十三年度に入って四月、五月と一挙に下がるんでしょうか。もし、その辺がいまの七、八十億ドルベースから、百三十億ドルベースから下がっていくとすれば、よほど下期に入って大幅な減少がない限りは不可能だと思います。その点から見ても、もう六十億ドルの黒字幅というのは破綻をしていると思います。しかし、そこはまた宮澤大臣ですから大丈夫だとおっしゃるに違いない。  問題を変えますが、それでは六十億ドルの黒字幅、これを地域別にもしくは品目別にどう積み上げておられるのですか。
  298. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは貿易収支、貿易外収支は実は地域別、品目別に積み上げておりません。
  299. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 積み上げられないというのが本音ではないでしょうか。とにかく、えいやっとばっさり切ったという以外の何物でもない。その点では、これも客観的な見通しではなくて、願望にすぎないと思います。七%願望、六十億ドル願望、願望でアメリカに約束をしてしまう、こんな無責任な外交があるでしょうか。五月の初め福田総理アメリカにいらっしゃるころそれが顕在化してきて、こんなはずではなかった、日本はまた約束を裏切ったと円高の攻勢をかけられることは目に見えているのではないでしょうか。その点、五月の福田総理の訪米を待ち構えているのは、ポトマック河畔の桜の花吹雪ではなくて、円高の冷たいあらしだというような気がしてなりません。訪米のみやげで解散などという思惑が外れて、深手を負って帰ってくることになりかねない。そうなれば解散などできなくなると思いますが、総理、いかがでございますか。
  300. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 解散はいま考えておりませんから、御安心願います。
  301. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 私の方は安心はしておりますが。  それでは、もう一度経済の問題に戻ります。  品目別に積み上げておられないと言いましたので具体的に伺いますが、アメリカ向けの輸出で大きなウエートを占めている自動車の輸出、これは五十三年度は台数でも金額でもふえるというのが関係者の一致した見方だと思います。通産省もシェアで一定という指導を業界にしているはずだと思いますが、そうですね、河本通産大臣
  302. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 大体、貿易の大勢を申し上げますと、現在は数量的にはほとんどふえてないんです。それが金額的に非常にふえるというのは、円高によりまして計算上ふえてくるわけでありますが、何しろ二〇数%という円高になったものですからその分だけ計算がふえると、こういうことになっております。しかし、いずれにいたしましても、金額的には非常に大きな黒字になっておりますので、先ほど来議論がありますように、ことしはどうしてもある程度の調整をしなければなりませんので、できるだけ急激な輸出の伸びが各地で起こらないように行政指導をいましておるところでございます。
  303. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 自動車の輸出も減らない、むしろ金額的にはふえるという状況の中で、一体どうやって対米黒字を減らしていくのか、これはまさに荒唐無稽としか言いようがないと思います。経常収支の黒字幅の縮減という約束が達成できなかったら大変なことになる。それがわかっていながら政府はとるべき対策を思い切りて実行していないというのが現状です。これだけ日本経済が強くなってきたわけですから、国際貿易のメリットを相互に分かち合うために、外国製品に対してもっと日本国内市場を開放しなければならないと思いますが、牛場大臣、いかがお考えでしょうか。
  304. 牛場信彦

    国務大臣牛場信彦君) 外国製品に対する市場開放につきましては、政府としても先般来あらゆることをやっている次第でありまして、大筋から申せば、一番大事なのがいまのガットにおきます東京ラウンドの交渉を成功裏に終結させること、それから製品輸入促進のためにいろいろ手段を講ずることでありまして、細かいことはもう皆さん御承知でありますから、簡単に申し上げますが、並べてみますと、関税の前倒し、それから若干品目の自由化、政府調達の自由化、輸入金融、輸入手続の簡素化及び輸入金融の緩和、検査手続の簡素化、為替管理の大幅緩和、それから最近――いままだアメリカで滞在しておりますが、買い付けミッションの派米等の手段をとっている次第でありまして、これらの手段を総合しまして、われわれとしましては必ず輸入がふえてきて、そして経常収支の黒字幅の縮小が達成できるものと考えております。
  305. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 やるべき手段はやっているとおっしゃいましたけれども、確かにコンピューター、カラーフィルム等若干の引き下げはしました。しかし、まだまだアメリカの輸入関税率に比べて日本の同種の関税率は高いと思います。少なくともアメリカの関心品目について日本の関税率をアメリカと同率またはそれ以下まで思い切って下げる。とにかく壁の高さを同じにする。それで入ってこなければ、アメリカさんそれはあなたが悪いんですよという状態まで一方的にでもできるだけ早くやるべきだと思いますが、通産大臣、いかがお考えでしょうか。
  306. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) ことしの国際収支を考えますときに、先ほど来申し上げますように、数量的にはほとんど貿易もふえなくなっておりますので、私は、為替レートに著しい変動がない限り、後半はある程度修正されるのではないか、こう思っております。  先般来、対米ミッションも約半月間各地を回りまして、緊急輸入約二十億ドルを達成をいたしましたし、それから先般十一日に政府の方では別に緊急輸入対策として四項目を決定いたしまして相当額の輸入をしようとしております。いろいろなことをやっておりますので、ほっておけばこれはなかなかむずかしいと思いますけれども、工夫を重ねれば私は六十億ドル前後に経常収支を減らすということはそうむずかしいことではないと、こう思っております。
  307. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 見通しの問題ですからすれ違いになると思いますが、先ほど申しましたような最近の最近月の輸出入の動きその他を見れば、そう簡単に輸出が減り輸入がふえるという状況ではないと思います。それだけに、関税率を日米対等にしていく、特にアメリカの関心品目についてはそのくらいの思い切った対策が必要だと思いますし、そのほかにも農産物輸入について、これもいろいろと議論はありますけれども、大乗的見地から、入れるものは入れるという考え方が必要ではないだろうかと思います。牛肉については生産者の方方の意見が強く反映しておりますけれども、しかし、たまには安い肉を食べたいと思っている一億一千万の消費者がいることも政治は忘れてはいけないと思います。流通の合理化、必要なら不足払い制度の導入等を実施して、生産者には何とか生産コスト、消費者には安い牛肉を保証しながら国際的な要求にもこたえるもう一段の努力が必要だと思いますが、中川農林大臣、いかがでしょうか。
  308. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 外国からの安い肉を初めとして農産物によって消費者対策を考えよと、こういうことは一つの声として有力なものがございます。しかし、一方には、やはり国内の食糧の自給率というものは高めなければ国家安全保障上よろしくないという、二つの相反する議論がございまして、その辺をどう調整をとっていくかというところが農政の一番むずかしいところでございます。安い肉を食べさせたいという気持ちから、政府としても朝市あるいは輸入肉の放出等々、特に流通コストを下げるための革命的なバイパスというようなものを講じまして長期的にこたえていきいたい。ただ、牛肉も、昨年に比べますと、三%ではありますが、ほかの物価がそれぞれ上がっている中に最善の努力もいたしておりますし、この上とも消費者対策を考えつつ前向きで検討してみたい。その場合、不足払いということでございますが、牛肉を主食やその他重要農産物と同じよな、大豆のようなものと同じような不足払いは、国民の税金においてやるべきかどうかという問題もありますし、もう一つは、技術的に品質やあるいは等級等々非常に複雑なものに何を基準にして不足払いをするかという技術的な問題もありますので、なかなかできがたいところではありますが、お気持ちは消費者対策を考えよということでございますので、十分意を体して努力をしてまいりたいと思う次第でございます。
  309. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 お米のような主食とは違って不足払いはできないと農林大臣はおっしゃいました。ところが、牛肉の自給率を高めることが国家安全保障上大切だということもおっしゃいました。牛肉は主食ではないと思います。その点で、お米のような国民にとって不可欠の主食と同じ議論で自給率を高めることが国際的に許容されるかどうか、私はそれはむずかしいというふうに思います。  いままで企画庁長官、通産大臣、農林大臣に伺ってまいりましたけれども、どうも具体的に六十億ドル経常収支をおさめるための対策はおとりにならないようでございます。それならば、最後はもう一度円高へ戻ってくるということは避けられないと考えざるを得ません。円高のあらしの中でまたこれからの三カ月、六カ月を暮らしていくことになる。そのときには、福田総理、責任をとらなければならないということになると思いますが、いまは見ておれ、いまに見ておれはそのとき通用しなくなると考えざるを得ません。私は、その意味で、きょうの二百三十二円というのが、大蔵大臣がおっしゃったような一時的なものと考えるには余りにも楽観的に過ぎるというふうに思います。三月は特に季節的にも輸出のふえる月でございますから、まだ中旬、下旬に輸出手形がどんどんと持ち込まれることになる。その中で円を二百三十二、三円で支えていく自信はおありでしょうか。
  310. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 変動為替相場のもとでございますから、最終的にはやはり日本の場合はドル建てが多いわけでございますから、アメリカ国際収支日本国際収支、それが基本的な関係になってくるということでございまして、そのためにこそ、臨時の措置といたしまして内需拡大をやり、そうして国内企業の向く方向を内需に向けようと、こういうことをやっているわけでございます。  おっしゃるように、三月は輸出がなかなか多い月でございます。三月中どんな為替相場になるのか、なかなかむずかしいところでもございますし、また、その相場の予測を申し上げることは金融当局としては避けたいと思っているところでございます。
  311. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 いまの大蔵大臣のお言葉の中に、かなり予測がもう暗示されているというふうに考えざるを得ません。つまり、円高になるのだということはおっしゃらないけれども、皆さんがおっしゃっていることは日々円高を導いているんです。  先ほど、総理は、われわれは一生懸命やったけれども円高のあらしが来たと他人事のようにおっしゃっておられますが、円高は福田内閣の経済政策の結果にすぎないということは、もう重々御承知のとおりだと思います。過去について責めることはいたしませんけれども、いまさらにそうした無策を重ねているのなら、二百二十円もしくは二百円レートまで落ち込むことは避けられない、そう考えざるを得ません。その点はぜひしっかりと認識をしてもらいたいというふうに思うわけでございます。  しかし、この議論にこだわっていますと時間がなくなりますので、次に進みます。  五十三年度の予算の特徴は、どしゃぶりの公共事業だと思います。景気対策の観点から五兆円を上回る公共事業を計上しています。しかし、その配分の仕方を見ると、高度成長時代と全く変わらない総花的な配分になっております。本州と四国の間に三本橋をかけようとしたり、車もめったに通らない山の中に自然破壊も顧みず林道をつくってみたり、すぐにお金がばらまけるということで町の中の道路をやたらと掘り返してみたり、年度末のせいもあって至るところでここ掘れワンワンとやっておりますけれども、車が渋滞して困るという声すらある。公共事業、公共投資、これは十年、二十年先を見て二十一世紀の国土のあり方を考え、住みよい国土をつくるという観点から組み立てていかなければいけないのではないでしょうか。その点、どなたにお聞きをしたらよろしいのかわかりませんが、村山大蔵大臣公共投資の配分についてお伺いをしたいと思います。
  312. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 柿沢さん御案内のように、五十年前期経済計画というものがございまして、それと整合性を持った社会資本のそれぞれ長期計画を持っていることは、御承知のとおりでございます。実は、その線に沿ってやっておるわけでございまして、むやみやたらに掘り返したり何かしているわけではございません。はっきり申し上げておきます。  それから何遍も申し上げるわけでございますが、やはり国民のニーズに合ったもの、それから特に雇用効果をねらっているわけでございますので、一般公共事業が三四・五%という中で、生活関連、下水とかその他環境施設、こういったものは四〇%ぐらい伸ばしておりますし、それに反して道路その他につきましてはこれは二八・八ぐらいに抑え込んでおります。農林の方は三五%ぐらいに伸ばしておる。それから国土保全の方も三七ぐらいに伸ばしておると思うわけでございます。そういう点は、今度の同じ財政主導型の公共投資と申しましても、それぞれのニーズを考え、その効果を考えて、われわれは綿密にやっておるつもりでございます。
  313. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 事業別の五カ年計画があるということは私も承知しております。しかし、それは、みんなそれぞれの分野にいる方々が、一生懸命うちを伸ばそう伸ばそうといって競争をした結果できているものだということも事実じゃないでしょうか。生活関連だ、下水道だと口を開けば自慢そうにおっしゃいますけれども、私の言っているこれからの公共投資のあり方の哲学というのはそういうことではないんです。いまのように平均二階建てにもならないようなだだっ広く広がった東京の町、それをそのままにしておいて、ただやたらに下水道だけ引っぱったって、文化的な住みよい町などできっこありません。地方都市だってそうです。無計画なスプロール化を放置しておいて後追い的に下水道だ公園だと言ってもだめなのです。もっと計画的な町づくりの全体としての構想があっていいと思いますが、その点については、国土庁長官、いかがお考えでしょうか。
  314. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいま御指摘になっておる下水道でも、住宅でも、あるいは公園にしても、また余り御関心がない口ぶりでございますが道路にしても、河川改修でも、全部これは五ヵ年計画をもってやっておるんですね。それからもう一つは、第三次全国総合開発計画を昨年の十一月に閣議で決定をいたしておりまするが、おおよそ十年では二百四十兆円の社会資本を投入しようと。五十年度代は六%程度の成長率でいこうと。ただ、五十三年度につきましては、景気浮揚の必要性からある程度の前倒しで七%でいこうということで、これらの点は、先ほど大蔵大臣も言われましたように、いずれの計画も整合性をとりながらやっておるのでございまするから、ある一部の面から御批判を受けましてもちょっと私どもとしては解せないわけであります。
  315. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 五カ年計画があるということは承知しておりますと先ほど申し上げたつもりでございます。道路に関心がないわけではなくて、道路をどこにつくるかということについて建設大臣とは違った考え方を持っているということでございます。その点は誤解のないようにお願いをいたしたい。  つまり、これからの公共投資は、高度成長時代のように、産業活動の拡大や人口の都市集中の後を追っかけて道路をつくったり橋をつくったりする、そうした後追い型ではいけない。もっと将来の国土を考えた夢のある先行型の公共投資にならなければいけないということなのでございます。いままでは民間企業が飛び出していって、政府は後から追っかけていった。しかし、これからは、パブリックセクターが日本の国土をどう描くか、それに従って民間企業の生産力を伸ばしていく。パブリックセクターはリーディングセクターになっているんだという点についての認識が足りないと思います。ビッグプロジェクトということがしきりに言われておりますが、中身を見れば、大きな橋をかけることや、新幹線をつくること。それより、もう一つ気宇壮大な、歴史に残るような、いわばモニュメンタルプロジェクトというものが考えられないものでしょうか。たとえば、首都移転の問題です。私たち新自由クラブは、以前から、文化庁を京都へということを主張してきましたが、最近、近畿圏協議会でもこれを取り上げております。政府もいまこそ首都移転――全体を移すということでなくても、遷都でなくても、分都とか転都とか、そうしたものを考えるべき時期に来ているのではないでしょうか。その点、もう一度国土庁長官に伺います。
  316. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 分都とか遷都とか、これは国民に夢を与えることで大変結構なことだと思うのです。それにはそれなりの準備の必要がございますから、国土庁の中には基礎調査のための予算も計上し、いろいろと検討しておるわけであります。ただ、柿沢委員は何かこう現状を全く否定的なような御見解をとられますけれども、いまの首都の状況を見てこれではどうもまずいということが、筑波学園都市のようなものがああやってできつつあるわけですね。この首都の中からひとつ研究機関は移転しようということでりっぱにできているわけです。これはまた考えようによっては一つの分都のかっこうにもなるわけであります。いま関西方面に文化庁でも移したらばと、これはまた一つの御提言であったと思いまするが、しかし、関西方面に文化の遺跡が多いからといってそっちに文化庁を置くがいいというその御主張も私は余り結構だとも言いかねるんですね。やはり全般的に見る上におきましては、まあ私が理解が十分でなかったかもしれませんよ、前提がちょっとおかしいのじゃないかと思うのですが、十分御趣旨のような線で大所高所から見ておるということを申し上げておきたいと思います。
  317. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 私たちは、首都機能の分散というものが、余りにも中央集権化し過ぎた日本の社会経済構造を改めて地方分権化し、魅力ある地方都市をつくるために、ぜひ必要だというふうに考えているわけです。ですから、むしろ日本の社会経済構造にメスを入れる、思い切って改革を図る、そのためのきっかけとしたいということでございますので、櫻内長官には全く御理解をいただけなかったとしか考えられません。  筑波学園都市の問題が非常に有効だったということは、おっしゃるとおりです。だから、それをもっと大規模にしてなぜやれないのかということを問いかけているわけではありませんか。筑波学園都市へ移転の跡地の中でも、東京にとって幾つか貴重な財産があります。たとえば目黒の工業試験所の跡地、これは文化人の皆さんが一致して第二国立劇場を建設してほしい希望を持っております。さらに、文京区の教育大の跡地についても、あの密集地帯に緑地の避難地を確保してほしいと住民の切実な声もあります。この二つについて具体的に今後どうされるつもりか、文部大臣にお伺いをしたいと思います。
  318. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 第二国立劇場の設立につきましてはかねてから準備を行ってきたところでございますけれども、用地問題の解決が何といっても第一でございます。文化庁といたしましては、渋谷区本町の通産省の東京工業試験所跡地をいろいろな角度から検討いたしました結果、最適地として昨年の十二月に文化庁より大蔵省に対しまして同用地の提供方を申し入れたのでございます。大蔵省の国有財産中央審議会で取り扱いを検討いたしてもらっております。文化庁としては、同審議会の審議の経過を見守りつつ、積極的に、きわめて積極的に積極的にこの問題と取り組む決意でございます。五十三年度予算としては基本設計準備ということで予算がついておりますけれども、一日も早く準備という字を削ります。
  319. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 ありがとうございます。  教育大跡地の問題は……。
  320. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 教育大跡地の問題は、先ほど申し上げましたような、まさにこれは国有財産でございますので、大蔵省の国有財産中央審議会で御検討をいただいているところでございます。
  321. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 大蔵大臣、その問題はどうでしょう。
  322. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 教育大学の跡地の利用方法につきましては、各方面からいろいろの希望がいま寄せられているわけでございます。こちらを立てればあちらが立たずという状況でございまして、最もよく利用するには何が望ましいか、中央審議会にはその方の学識経験者がたくさんおりますので、できるだけ急いで御審議を煩わし、できるだけ早い機会に結論を得たいといま鋭意やっておるところでございます。
  323. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 ぜひ住民の意見も聞きながらお願いをしたいと思います。  それから本会議で、有田議員から、公共建築物の建築費の一%を文化的装飾にという提案をいたしました。文部大臣からはお答えをいただきましたが、これを官庁営繕の一般公共建築物に適用するつもりはございませんか。そうなれば、東京の町が、もっとゆとりのある、文化豊かな町になると思いますが、建設大臣の御意見を伺いたいと思います。
  324. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これはそれぞれの建築物には目的がございますね。だから、その目的に沿う最も理想的なものをつくるのがいいと思うのです。ですから、柿沢委員のおっしゃるような点では、たとえば国立京都国際会館あるいは最高裁判所のような記念性の高い建築物につきましては、内部をごらんでございましょうが、御趣旨に沿っておると思うのですね。まあこれは建築物それぞれに私はよると思います。
  325. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 パリへいらっしゃったことがあると思いますが、国防省の建物にも美人の彫刻がついております。大蔵省でもそうです。国防省に行ったら軍人の装飾しかしていけないということはないはずでございまして、建物は建物としてその町の修景をつくっている、そしてそこに文化的な香りをつくり出しているということを建設関係の皆さんはもっと理解をしてもらいたい。全く理解をされていないとしか考えられません。  しかし、これからの公共投資でもう一つ重視すべき問題は、災害に強い町をつくるということです。昨年十月当委員会で私からも取り上げて地震対策質問をいたしましたが、その後も大きな地震が相次いでおります。関係地域住民の不安は極度に高まっております。大規模地震対策特別措置法案を政府が準備中と聞いておりますが、その内容と、いつごろ提出されるのか、お伺いをしたいと思います。
  326. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 地震特別立法は、国土庁におきまして関係各省庁の調整に鋭意努めておるところでございまして、今月末までには提案ができると思うのであります。現在、災害基本法によりまして災害に対応する諸施策を持っておるわけですね。それからまた中央防災会議もあることでございまして、この欠陥を補うということで特別立法をいたすことにしたわけであります。その中で一番大事なのが、いわゆる東海大地震などに対応するための予知のできるものはしたらいいじゃないか、また、危険のおそれのある地域を指定したらばいいじゃないか、また、それに応じて事前の準備をしたらいいじゃないか、こういうことでございますので、それらのことを盛り込んだ立法をする考えでおります。
  327. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 全国知事会からも要望が出されておりますが、それに対していま政府で計画中の法案は予知が出されても対策は各省任せ、その実施の責任は末端の知事や市町村長に押しつける、一元的な防災対策ができていない、予知体制についても学者、研究機関が逃げ腰である、いろいろな不満が出ております。地震対策という多くの人命にかかわる問題について、いまの行政がそうした逃げ腰では、国民は政治や行政に対する信頼を失っても仕方がないと思いますが、総理のリーダーシップをぜひ発揮して、大震災に対応できる特別立法をまとめていただきたいと思いますが、いかがでございましょう。
  328. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 内政の大きな問題といたしまして、とにかく大都市の震災対策、これはもう大変むずかしい、しかし大事な問題になってきている、こういうふうに思うのです。まあリーダーシップという話がありますが、防災対策本部が内閣にあるわけですから、これを中心といたしまして、できるだけひとつ、むずかしい問題でありまするけれども、一つ一つ問題を片づけていきたい、このように思います。そういう途上、知事会から、いまお話しの地震予知を中心とした特別法の制定、これについての建策がありまして、これはまあもっともなことだと、こういうふうに思いまして、いま政府の方で検討しておりますが、今月中にはひとつ国会へ御提案をしたい、こういうふうに思いますので、その節いろいろ御論議のほどをお願いしたい、このように存じます。
  329. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 総理のリーダーシップが発揮できるような法律にしていただきたいと思います。  さらに、今度の法案では警報と警報後の措置だけが規定されていて、防災施設の整備についての国の助成等については予算の範囲内において経費の一部を補助することができるものとするという、あってもなくてもいいような一項が入っているだけと聞いております。補助することができるのはあたりまえでございまして、それだけでは真剣に都市住民の命の安全を考えている姿勢とは言えないと思います。この際、防災施設の整備を国及び地方公共団体の責務として十全の財政措置を講ずるべきであると思いますが、補助率のかさ上げ等、法文上明記すべきではないでしょうか。
  330. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 地震対策につきましては、政府におきましても格段の力を入れているところでございまして、全体ではたしかことしは六千億ぐらいでございます。三五%ぐらいの伸びだろうと思います。予知対策につきましては四〇%以上の伸びになっております。ただ、そのやり方といたしまして、補助率を上げるということは、ことしは一切上げないという方針を貫いたわけでございます。むしろ補助事業としての優先採択の方が効果的でもありますし、補助率を上げますと一波万波に行きまして、財政の切り盛りが非常に苦しいわけでございますので、重点的に対象範囲を拡大したということでございます。あってもなくてもいいようなできるという言葉の中に実は非常に含蓄のある施策がとられているということをひとつ御理解賜りたいと思います。
  331. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 いまの大蔵大臣の含蓄のある御答弁にぜひ私どもは一縷の望みをつないでまいりたいというふうに思っております。  いま、東京もしくは東海地方で何百万人の都市住民が人命の危険にさらされているわけでございます。第二次世界大戦で日本人の犠牲者は、いろいろな数字がありますが、百八十万、二百五十万という数字でございます。一たび地震が起こった場合に、大地震、大火災が発生すれば、それに匹敵する人命の危険がある。その意味では、地震は、一種の外敵であり、仮想敵である。防災対策は国防や国の安全保障に匹敵するというふうに考えます。防衛費に二兆円以上を支出しているわけですから、公共事業予算の中から思い切った資金を人命を地震の災害から救い出すために投入すべきだと思います。昨年の十月にも、その意味で、防災事業特別会計、防災公債の発行ということを提案をいたしました。もう一度それについて御検討をいただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  332. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 地震対策の強化につきましては、全く私は柿沢さんと同意見でございます。ただ、そのために特別会計をつくるとかあるいはそのための目的債をつくるということはいかがであろうか、屋上屋を架するだけではないであろうか。そんなことをやらなくても、十分みんな関係省庁と連絡すればおっしゃるような目的を達することができると、私はかように思っております。
  333. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 効率を優先する公共投資から安全を最重要課題とする公共投資への転換、それを公共投資の哲学と言ったわけですが、昨年十月にも総理から公共投資に哲学なんてちょっとオーバーだと笑われました。その程度の認識では私は困ると思うわけでございます。人命は地球よりも重いと例の名言を吐いた総理のお言葉が本当に口先だけでないということをこの公共事業の配分の中ではっきり国民の前に示していただきたい。災害からの人命の救出対策、災害に強い町づくり、それがいま何より必要だと思いますが、もう一度総理の御答弁をいただきたいと思います。
  334. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 公共事業の配分、この中にもこれはもう政府の政治哲学がにじみ出ているのです。公共事業は、いままで、産業中心、こういうことで産業に偏り過ぎておったと思います。しかし、世の中が変わってくる、低成長時代になる、そういうことになりますと、この考え方を変えて、そして生活関連諸施設の整備充実、これにウエートをかけるという考え方をとらなければならぬ、そのように考えておるわけでありまして、その考え方は公共事業の全面ににじみ出ておりまするから、よくひとつお読み取りのほどをお願い申し上げます。
  335. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 次に、国家財政について大きな負担になりつつあるばかりでなく、国の経済全体の中で膨大な規模になっている医療費の問題を質問したいと思います。  国民の医療費は五十三年度に十兆円を超えまして、一世帯当たり三十万円という医療費を負担しているわけでございます。国庫負担も三兆円。かつて、米、国鉄、健保が三Kと言われましたが、いまや健保がずば抜けて大きな負担になっております。ことし二月の医療費改定による医療費の増加額は九千億円、国鉄の運賃の値上げが二千五百億、消費者米価が二千億程度でございますから、それの三倍前後の負担増になるということになり、このまま推移しますと、五年後には倍増して二十兆円を超えるという推計すらあります。そうなれば、一世帯年五十万円の医療費ということになりますが、政府は、こうした医療費の増加にどう対処をし、その負担についてどう考えるのか。米、英、仏、独、スウェーデン等でも医療費の適正化措置がとり始められておりますが、わが国についてその対策をはっきりお示し願いたい、小沢厚生大臣にお願いいたします。
  336. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 人口増と人口の老齢化の進行、あるいは医学技術の進歩による医療の高度化、疾病構造の変化、あるいは物価賃金の上昇を見込む医療費の改定等やむを得ざる措置、こういう点から見まして、確かに年率一〇%以上の医療費の増高というものは避けられないだろうと考えておるわけでございますから、おっしゃるように、当然この医療費の増高にどう対処するか、結局は私どもはこの運営に当たってできるだけ合理的に効率的に努力をしていかなければいかぬと思いますが、同時に、保険料にいたしましても、あるいは患者負担にいたしましても、あるいはまた国庫負担にいたしましても、すべてが国民の負担でございますから、一方において国民所得に対するただいまの医療費の負担割合を世界各国と比較してみますと日本においては非常に低いことは、もう御承知のとおりでございます。したがって、ある程度この負担は、この三本の、国庫負担、保険料、あるいは一部患者負担等、すべて国民の負担でございますから、そういう意味における負担増というものはこれは避けられないだろうと思うのでございます。しかし、そのためには、一方において運営の適正化を図ってむだをなくするという努力はしていかなければいけない、当然だと思いますので、今度私どもはやはり給付、保険料両方とも公平であるべきように、そしてむだがないような何らかひとつ工夫をこらしまして、私どもの考える疾病保険制度の理想像に向けての第一歩を踏み出していきたい、かように考えております。
  337. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 医療費については保険料でどこまで負担するか、患者の自己負担をどうするかというのが問題だと思います。私は、かぜ引きとか腹痛のような軽症については患者が応分の負担をするということはやむを得ないと思いますし、むしろ乱診乱療、薬づけの弊害を防ぎ、健康についても自分が第一義的に責任を持つという観点から必要なことだと思います。一方、入院をすると差額ベッドとか付添看護、家計に大きな負担を強いているのが問題です。したがって、一方で軽症についての自己負担を導入しながら、入院等による高額の負担を保険で見てもらうという方式に早急に改めるべきだと思いますが、いかがでしょう。
  338. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 私はもうおっしゃるとおりだと思いまして、大変家計に不安を与えるような点はすべて保険で見ていくという考え方、一方において軽いものはひとつ自分で御負担を願う、この考え方でいきたいと思っております。
  339. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 時間がなくなりましたので簡単に聞きますが、薬剤の乱用がわが国の保険医療費に大きな負担になっていることは事実だと思います。きのうも武田の抗生物質センセファリンを薬価基準から落とすというような措置をとりました。今後とも違反があれば厳しく措置をしていく、薬価調査を一層徹底して薬価基準の引き下げを図るということをこの際お約束いただけますでしょうか。
  340. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 薬価基準の価格と実勢価格との乖離というものをなくする努力は今後とも当然続けていきたい。また、今度の武田の事件に見られますような点がもし発見されましたならば、断固たる措置をとっていきたいと思います。
  341. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 さらに、高額の医療機器が大量に導入されている。たとえばCTスキャナーとか人工透析機、これらが医療費に対して大きな負担になっていることも事実です。この辺の適正利用、効率的な利用についてもっと厚生省として考えるべきではないですか。
  342. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 柿沢君、時間が来ております。
  343. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 日本においてはその傾向が出始めましたけれども、まだやっぱりあるコミュニティーには一台ぐらいずつのそういう高度の医療機械というものは必要だろうと思うのです。アメリカあたりはそろそろもう制限をしてきておりますが、ただ、おっしゃる方向は十分気をつけていかなきゃいかぬことだと思いますので、私どもとしてもできるだけむだのないようにいたしたいと思います。
  344. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 柿沢君、簡単に願います。
  345. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 最後に、それでは、厚生省は健康保険法案の抜本改正について三月末もしくは四月早々にも出すということを厚生大臣も再三国会で答弁をしておられますが、その方針はいまでも変わっていないと考えてよろしいでしょうか。  この問題とともに、衆議院の予算委員会で、私どもの西岡幹事長に、総理大蔵大臣から、医師税制の是正については議員立法を待って五十四年から是正をするとお答えになっておられますが、その点についてもその後変わりがないかどうか、確認をしておきたいと思います。
  346. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 少々おくれておりますが、四月にはぜひ出したいと考えております。
  347. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 医師税制についての考え方につきましては、しばしば両院で申し上げておるところと少しも変わっておりませんです。
  348. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 以上で終わります。(拍手)
  349. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で柿沢君の総括質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  350. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、秦豊君の総括質疑を行います。秦君。
  351. 秦豊

    秦豊君 社会民主連合、この最小会派に与えられた発言の機会こそ参議院良識の発露であります。  ところで、福田総理、ただいまの健康状態はいかがなんですか。
  352. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 先般来口内炎というのでちょっと悩まされましたが、大体もう全快に近づいております。
  353. 秦豊

    秦豊君 結構です。これからの三カ月こそ内圧外圧ともに高まる、風雨強かるべし、あなたの正念場だから、御健闘を祈ります。  ところで、外務省、日米首脳会談についてなんですが、今度のような決まり方自体、園田さん、異例と言えませんか。
  354. 園田直

    国務大臣(園田直君) 異例だとは存じておりません。
  355. 秦豊

    秦豊君 何も遠慮なさることはないんで、やはりあなた方が一たん決めたもの、東郷さんが決めたものを押し返す、頭越し、異例じゃありませんか。
  356. 園田直

    国務大臣(園田直君) 外務省が決め、東郷大使が決めたものを総理がまたひっくり返して交渉されたわけではございません。総理の指示によって終始一貫して日米両方で協議した結果五月三日と決まったものでございますから、異例ではございません。
  357. 秦豊

    秦豊君 それはまあ整形手術を終えた後みたいなものですよ。いきさつは異例なんです。  総理、いまワシントンに行きたい気持ちはわかりますよ。時期が何さま悪いとお考えじゃありませんか。
  358. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ私はもう少し早い方が実はいいと思ったんですが、これは国会がありますから、そうむやみに私の考えどおりで動くわけにはいかぬ。しかし、五月の初旬はこれは連休の時期でありますから国会の方でも御了承願えるだろうと、こういうふうに思いまして、それで日米会談をやろうというそういう交渉をいたしたわけであります。問題はいろいろあります。あればあるだけこれは日米会談というのは意味があるのでありますから、これは決してそれでたじろぐというようなことはいたしませんです。
  359. 秦豊

    秦豊君 しかし、日米関係好転の兆しは何にもない。日本を見る目は依然として冷たい。エネルギー、パナマ――カーターさんもあなたとじっくり会って胸襟を開く心境にない、そうお考えじゃありませんか。
  360. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) カーター大統領もいまなかなか内政外政重苦しい時期じゃないか、そのように思います。その重苦しい気持ちの中でアジアの盟友福田赳夫首相と会談をするという、それはいいことじゃないでしょうか。
  361. 秦豊

    秦豊君 まあ意気や壮と言いたいけれども、問題は成果なんですよ。単なる次元の低いみやげ論を私は言っているのじゃないのです。  じゃ、仮に、福田・カーター会談をやってみてもなおかつ万般効果なしとなった場合は、あなたに与えるダメージはきわめて大きいですよ。政治責任が伴いますよ。どうされますか。
  362. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、日米首脳会談でありまするけれども、日米間の問題というのはそう眼中にはないんです。いま世界が非常に混沌としておる。ことに経済的に混沌としておる。そういう中で、とにかく世界第一の経済大国のアメリカだと、第二の工業大国である日本だと、この両首脳が会って世界をどうするという話をする、これはもう世界のために私は大変有効である、そのように考えますので、そのような見地に立ちまして世界の経済、政治万般について話し合いをしてみたいと、このような考えでございます。
  363. 秦豊

    秦豊君 どうも認識が一般的かつ大変甘いと思う。必ずあなたが帰ってから風速が強まると、これがむしろ国際通貨関係者なんかの一般的な観測ですよ。大変なことになりますよ。そうはお思いになりませんか。
  364. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) なかなか世界情勢は重苦しいんです。それだけに、とにかくアメリカのカーター大統領と世界でも大きな経済的な立場をとっておるわが日本の首相が会談すると、これはもう私は大変いいことだと思うのです。困難だからそんなものはほっとけと、そのような考え方、これは政治家として、何と言うか、はなはだ低い姿勢である。本当に世界の政治家であるというならば、いろいろ問題あろうと、それを乗り越えてそして会談を実現をする、これが正しい行き方であると、そのように考えます。
  365. 秦豊

    秦豊君 ちょっとテーマを変えましょう。  総理、公明党の矢野書記長とはいつお会いになるんですか。
  366. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) あした矢野書記長が帰ってくるやに聞いておりますが、私は、お帰りになりましたらお目にかかって、そしてかの地の話の模様をつぶさに承ってみたいと、このように考えておりますが、いま官房長官がその時間の段取り等については打ち合わせをしておると、そういう段階でございます。
  367. 秦豊

    秦豊君 相当重要な内容を持ち帰るわけですから、たとえ深更に及んでも会うというほどのおつもりなんですね。
  368. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 久野書記長のお立場というか、御都合もありましょうから、私の方の都合で押しつけるわけにはまいりませんけれども、私の気持ちといたしましてはなるべく速やかにお目にかかりたいと、そのように考えております。
  369. 秦豊

    秦豊君 あしたの夜を含めてそれはあり得るということでよろしいですね。
  370. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 多分そういうことに相なろうと、このように考えております。
  371. 秦豊

    秦豊君 園田さん、いまあなたいろいろ詰めていますよね、北京と。その詰めている手順の中には、東京か北京か、条約締結の土地も含まれていますか。
  372. 園田直

    国務大臣(園田直君) それは今後の交渉の問題でございます。
  373. 秦豊

    秦豊君 話は出したがまとまっていないということですか。
  374. 園田直

    国務大臣(園田直君) 先般も申し上げましたとおり、佐藤大使と韓念竜副部長との会談の内容は公表しないことになっております。
  375. 秦豊

    秦豊君 総理、全くこれは違った問題なんですが、五月の下旬の国連軍縮総会ね、この意義と役割りをどのようにあなたは評価していらっしゃいますか、認識ですね。
  376. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは、私は非常に大事な会だと、こういうふうに見ております。特にわが国といたしますと、平和主義、しかもわが国は持たんとすれば強大な軍備も持ち得る経済力、技術能力を持っておるわけです。その日本が、あえて強大な軍備は持ちませんと、そして軍備を持つことの愚かさを世界に説いて回ろうと、こういう立場でありますから、そういう立場の日本とすると、この軍縮総会は大変大事な有意義な会であると、このように考えております。
  377. 秦豊

    秦豊君 その認識は妥当でしょうね。御自身で出席されて、あえて非核日本、平和の決意を広く訴えられるという心境にはなっていませんか。
  378. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) それは、相手というか、国連の受け入れの段取り――時間的段取りですね、そういうこともありましょう。それからわが方の政治日程ということもあります。そういうことがうまくかみ合いますれば、私がじきじき行っていろいろな方にお目にかかるということも有効だと、こういうふうに考えますが、私が行けなければ当然外務大臣が行ってそこでわが国の考え方を御披露申し上げる。御披露申し上げるその内容は同じでございまするから、あえて私が行かなければならぬというまでには考えておりませんけれども、まあ諸般の事情を見て決めたいと、かように考えております。
  379. 秦豊

    秦豊君 せっかくの御答弁だが、それは総理と外相が行くのは意味が格段に違いますよ。あなたがみずから国際場裏に乗り込んで、非核三原則は普遍的な公理であるというふうなことを堂々とアピールされたら、日本を見る眼が途端に違ってくる、俄然違ってくる。意味は全く違いますよ。
  380. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日本の平和国家としての思想、これはもう世界じゅうがよく承知しております。毎年毎年の国連総会におきましてもわが国はこれを中心として世界に平和を訴えておるわけですから。そういう意味で、わが国の考え方を改めてどうこうと、こういうことじゃございませんけれども、とにかくわが国といたしましては世界でも本当に特異の立場をとっておるわけですから、その日本としては、この会議においてわが国の立場を踏んまえまして大きく平和思想というものを推進すべきであると、そのようには考えておりますが、それは私でなければならぬというほどまでには考えておりませんです。
  381. 秦豊

    秦豊君 ちょっと距離がありますね。日本のあるいは日本外交の根本的な欠落というのは、あなたがお考えになっているよりももっと世界に通じるメッセージが少ない、これが少ないということなんですよ。日本という国はわかりにくいんです、表から見れば。だから、日本は哲学がないと言われている。そうじゃありませんか。
  382. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) さあ、わが日本が哲学がないというような評価でありましょうか。私は昨年ASEAN諸国をずうっと回った。そして、最後にいわゆるマニラ演説というものをやったわけでございますが、この考え方なんかも高く東南アジアの諸国から評価されているんです。東南アジアばかりでないんです。アメリカのカーター大統領も大変私の演説に関心を持ちまして、いまこちらに来ておるマンスフィールド大使が帰ってお目にかかるという機会がありますと、福田さんのあのスピーチはすばらしかったと、こう大変評価をしておるというようなことも聞きまするし、また、ヨーロッパの方でも福田演説というものに関心を示しておると、こういうことも聞いておりまするし、わが日本のこの平和外交、これはもうかなり各国に浸透し、だんだんと理解を深めつつあるのではあるまいかと、そのように考えております。
  383. 秦豊

    秦豊君 私が申し上げたいのは、もう事あるごとに核は持たない、非核だと、平和だと、戦わない、不戦だと、非核、平和、不戦のアピールを繰り返す、これが最も日本としての根源的な主張だと、それを表現するかっこうな媒体は、最高の表現者はあなただと、そういう意味で言っているんです。違いますか。
  384. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) お話の趣旨はよくわかります。ですから、私は、総理大臣になってからばかりじゃありませんよ、なる前からこの考え方については機会あるごとに内外に申し上げておるわけでありまして、今後とも機会あるごとにこの日本の政治哲学、平和哲学、これを世界に吹聴し、そして同調を求めるようにしていきたいと、このように考えます。
  385. 秦豊

    秦豊君 残念ですねえ、こんな大事な場への出席をあなたがこれほど微妙に渋るから勘ぐられるんですよ。政治日程をあけておく。五月第一週はカーター、下旬をあけておく。あなたの政権延命のためのラストチャンス、解放のラストチャンスをいよいよ福田赳夫はねらっていると、こういう勘ぐりと結びつくんです。違いますか。
  386. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いかに勘ぐられても、勘ぐられるお方のお立場でありますから、私はあえて御批判申し上げません。申し上げませんが、私の気持ちから言いますと、本当に私はいま日本経済を、日本の社会を、これを混沌たる世界情勢の中でどうやっていくんだと、これでもういっぱいであります。解散をどうのなんというようなそんな次元の低い考え方はいたしておりませんから、この辺は篤と正確に御理解のほどをお願い申し上げます。
  387. 秦豊

    秦豊君 総理ね、だから、あなたの出席はまだペンディングで、多分にあり得るというふうな前向きな御意思と受け取って、そう見当違いでありませんな。
  388. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まだ白紙であって、これから先ほど申し上げましたようなわが方の日程に合うような国連の方の都合になるかどうかという点、それからこの会議に私が出席するとなった場合に、どのような人が出ていっておるのであろうかというようなことも見なけりゃなりませんから、まあフィフティー・フィフティーというか、これから検討すると、このように御理解願います。
  389. 秦豊

    秦豊君 だって、総理、あなた、解散はしないと言っているんでしょう、そんな次元の低いことにかかずらわないと言っているんでしょう。ならば、あいている時間は、受け入れ体制よりは、日本国の福田赳夫が行くという意思の方が優先しますよ。
  390. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私はアメリカから上旬中には帰りますよ。帰りますけれども、それで日程がもうあいているというわけじゃないんです。私は国務倥偬でございます。もう、国内経済を一体どうするんだ。また、アメリカばかりじゃない、世界じゅうを相手にいたしまして世界の経済、社会のことも考えなきゃならぬ。それからASEANの諸国との関係、まあ去年はああいうことがありましたけれども、フォローアップという問題もある。また、いろいろな世界のすみずみにおいていろいろな問題が起きておる、そういう問題にも目を配らなけりゃならぬ。何か、アメリカから帰ったらもう手ぶらで、日でもあいているのかというような御認識のようでありますが、そんなんじゃないんです。私は、アメリカから帰りまして、本当に直後、後といえどもずっと多忙で、そうそうよほどのことがなければ、何日かを全く割くというような時間が出てこないというくらい多忙な日程であるというふうに御理解願いたい。
  391. 秦豊

    秦豊君 それはわかっております。  黒字減らしが大きな焦点だけれども、一つわれわれとしても提案があります。まじめに受けとめていただきたいんです。この百三十億ドルのむなしい紙の山を抱くのではなくて、そのうちの三十億ドルぐらいを拠出して、たとえば世界平和研究所を創設する、そしてそれをファンドにして発展途上国の留学生センターをつくる案というふうな考えはまずどうですか、基本的に。
  392. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) わが日本は平和ただ乗り論というようなことを言われる。しかし、そう言われてもしょうがないような面もあるわけですね。これを払拭するには一体どうするんだということになりますと、私はやっぱり発展途上国に大きな貢献、協力をすること、これが一つだと思うのです。もう一つは、これはやがてエネルギーの谷間がやってくる。十年先になりますか、十五年先になりますか、そのころになれば本当にエネルギー問題というのが非常に深刻な事態が来るだろうと思う。そういうことに備えまして、日本も、とにかく経済力を持っておる、また同時に科学技術の力も蓄えてきた、そういう立場に立ちまして、新しいエネルギー、大きなものに貢献することができないか。このようなことができるということになれば、私は世界から大変評価されるであろうと、こういうふうに思うのですが、まあそんなようなことを考えておりますが、その上さらにいま別な使い方を考えておられるのでしょうか、三十億ドルと。三十億ドルというと、いま七千億円。これはちょうど五十三年度で発展途上国に使う金が七千億円なんですわね。しかし、その上さらにここでぼこんと七千億円ということになりますと、それだけ、外貨はあるけれども、この外貨は政府が持っているわけじゃないんですから、それを吸い上げなきゃならぬ。税がそれだけ要るんですよ。そういう辺でなかなか問題もあり、それだけ増税をするのか、あるいは公債を発行してそういうふうにするのか、いろいろ方法はありましょうけれども、いずれにいたしましても国民の負担を求めなきゃならぬということでありますので、よほど国民に負担をしてやるからそれをやれという御理解をお願いできませんとそういうことはできない。しかし、金の使い道は違いまするけれども、私は世界から尊敬されるように発展途上国に対し、また新しいエネルギーに対し大いに日本は貢献するべき立場にあるという考えでありますので、その考え方は御評価いただけると、このように存じます。
  393. 秦豊

    秦豊君 私の提案も評価してもらえるんでしょうね。どうなんですか、基本的に。金額ではなくて。
  394. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 考え方としてはもちろん私は敬意を表します。敬意を表しまするが、さあ、それを実現をするということに一挙に御賛成申し上げるというわけにまいりませんのは、それはいずれそれだけの外貨を調達する。金が要るんですよ。その金をどうやってつくるかというめどがつきませんと、それで結構でしょうと言えないということを申し上げているわけです。
  395. 秦豊

    秦豊君 金額は一つの例示にすぎません。私が言いたいのは、日本が物にではなくて理念や理想に金を使う国なんだと、こういう姿勢を示す。金額は毎年の拠出でもいいじゃありませんか。どうです、少し真剣に受けとめてみたら。
  396. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そこで、現実的な考え方といたしましては、国際交流基金というような制度がありますが、五十三年度も五十億円ふやすことにいたしましたが、ああいうものをもっともっと強化するというようなことも一つの考え方ではなかろうか。それにはやっぱり国民の皆さんの御理解が必要なんですね。いろいろ国内においてしなけりゃならぬ仕事があるじゃないか、それを差しおいて海外のためにというようなことでなくて、海外に尽くすことがまたやがてはわれわれの問題としてはね返ってくるんだ、その海外へ尽くすことをしなければわれわれの生活は保障されないんだという、その外と内との結びつき、これについてもっともっと国民が理解をしてほしいなあと、このように存じます。
  397. 秦豊

    秦豊君 もっと国民の皆さんを信じてもらいたい。平和とか理想のためになら必ず合意は得られます。一遍の応酬にとどめないで、切って捨てないで、このアイデアを温めて超党派で考えてみるというお気持ちはありませんか。
  398. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 大変結構なことだと思いますよ。思いますが、超党派で考える場合におきましても、さあその問題だけ一つを考えるわけにいかないんです。国の施策全体を考えて、その中でいまお話しのような問題をどういうふうな位置づけをするかということだと思いますが、しかし、そういう問題が各党各派の間で論ぜられて、そうして統一的な見解がまとまるということは大変結構なことじゃないか、さように存じます。
  399. 秦豊

    秦豊君 たとえば、総理ね、次の国連軍縮総会を東京か広島に招致するというふうな発想はどうでしょうね。
  400. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) それは一つのおもしろい着想でございますね。これは私も十分頭に置きまして、これから国際社会に対処をする際に思い出したい、このように存じます。
  401. 秦豊

    秦豊君 宮内庁次長に伺いますが、四月二十九日でたしか喜寿のはずですが、天皇の御健康の状態はどうでしょう。
  402. 富田朝彦

    政府委員(富田朝彦君) いまお尋ねの喜寿を迎えられます天皇陛下の御健康状態でございますが、非常にお元気でございまして、ただいま訪日をされておりますブルガリア国家評議会議長御一行の御接伴、非常にハードなスケジュールでございますが、これも非常に元気に消化をされておられます。したがいまして、また今後、ことしは多くの国賓の御来日が予定されておりますが、そういうことに対しても積極的な御意向を示しておられまして、あらゆる行事に意欲的に取り組んでおられる、かように拝見をいたしております。
  403. 秦豊

    秦豊君 法制局に伺いますが、皇室典範による摂政を置く条件と国事行為の臨時代行に関する法律の場合、健康状態の把握のランクが違いますね。
  404. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) おっしゃるとおりでございます。皇室典範による摂政を置く場合の要件は、精神もしくは身体に著しい障害がある、あるいはまたこれに準ずるような事故がある、そういう場合に摂政が置ける。臨時代行の方の要件は、その著しいというのが実は外してありまして、したがいまして、おっしゃるとおりの結論に相なるわけでございます。
  405. 秦豊

    秦豊君 お元気な天皇で大変結構だと思いますが、お元気であればあるほどいまのうちに――退位や譲位がないんですね、皇室典範を変えなきゃならぬわけですね、法的には。
  406. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) その点もおっしゃるとおりでございます。もちろん、学説の中には、退位は憲法上できないんだという説もないこともないのですけれども、通説としては、憲法上その退位ができるかできないかは、法律である皇室典範の規定に譲っているというふうに言われておりますから、おっしゃるとおり皇室典範の改正が必要だということに相なります。
  407. 秦豊

    秦豊君 皇室典範を改めるというのは、何か法的な妨げがございますか。
  408. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 同じく皇室典範と申しましても、明治憲法下の皇室典範は一種特別な法形式でありましたが、現在の皇室典範は通例の法律と同じように国会の議決によってつくられたものであり、国会の議決によって改正することができます。  あと、どういう内容の改正をするかということにつきましては、これは政策問題でございますので、私からお答えする限りではございません。
  409. 秦豊

    秦豊君 ならば、政府提案でも議員立法でもよろしいと、こうなるわけですね。
  410. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) おっしゃるとおりでございます。
  411. 秦豊

    秦豊君 お元気な天皇、なかなかまじめな方でいらっしゃるようだから、御自分ではなかなか意思を表現されない。周辺が考える以外にはないと思います。この天皇の国事行為代行から摂政までの段階で、臣赳夫としてはどうお考えですか。
  412. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 天皇陛下は、大変国務に、国務というか、御熱心に与えられた任務を尽くしておられる。いま宮内庁の方からお話もありましたが、私もしばしばお目にかからしていただきまして見るところによりますと、本当に御健康だと思うのです。年のことはありますよ。お年ということを除きますると、別にこれというお病があるわけではない。それから国家的な行事、これはつつがなく消化されておるということで、摂政だとかあるいは国務行為の代行だとか、そういうことを別にいま心配をしなければならぬというような状態とは思いません。ただし、何せお年のことでございますので、国事行為でない、たとえば植樹祭にお出かけになるとかなんとか、そういうことを全部御みずからおこなしになるということでなくて、もう少しそういう際の代行というようなことにつきましては常に周りの人が気をつけてやったらなあと、このような感じがいたします。しかし、憲法上与えられたお仕事を遂行されるという上におきましては、いま目下の状態において支障があるというような感じは持ちませんです。
  413. 秦豊

    秦豊君 お好きな博物の方に専念されるようゆとりをお与えするということは、臣赳夫としては一つの高級な義務の一つではありませんか。
  414. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そういう気持ちがないわけではございませんけれども、陛下におかせられましては、与えられたお仕事、これを非常に大事に受けとめられまして熱心に遂行されると、こういうお気持ちでございますので、まああえてそのお考えを変えるというようなことをする必要はなかろうじゃないかというのが私のただいまの感想でございます。
  415. 秦豊

    秦豊君 非常に微妙ですしね。だけれども、これは節目節目が大事だと思います。たしか今年の十二月二十三日、皇太子は四十五歳だと思います。そういうとき、一つの節目を、あなたのお好きな言葉を使わしてもらえば、なだらかに、ごく自然にというふうなことは、あなたがお考えになってあげなければむずかしいのじゃありませんか。
  416. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあこの席では御所見を謹んで拝聴するにとどめさせていただきたいと存じます。
  417. 秦豊

    秦豊君 宮内庁、ブラジルからはいま正式招請が参っておりますか、天皇の。
  418. 富田朝彦

    政府委員(富田朝彦君) 天皇陛下にはブラジル国政府からの御招待はございません。
  419. 秦豊

    秦豊君 じゃ、皇太子御夫妻でしょうか。
  420. 富田朝彦

    政府委員(富田朝彦君) 皇太子、同妃殿下に対しましては、昨年の十月でございますが、ブラジル共和国大統領ガイゼル閣下の名におきまして、両殿下に本年六月にブラジル国において開催されます日本人移住七十周年記念式典、この折にぜひ御訪問をされるよう御招待申し上げると、こういう御招待を受けております。
  421. 秦豊

    秦豊君 間違っていれば御訂正願いますが、最初ブラジル政府は両陛下という希望であったようですが、なぜ変わったんでしょうか、こちらの事情ですか。
  422. 富田朝彦

    政府委員(富田朝彦君) ただいまお尋ねの天皇陛下並びに皇后陛下にという御招待の儀は一切ございません。ただ、現地ブラジル国の新聞とか、あるいはブラジルに在住しておられる方の御意見として、陛下においでを願ったならばというようなことが日本の雑誌あるいは新聞紙上に伝えられる、こういうことがありましたし、また、これは仄聞でございますけれども、七月ごろにブラジル国の下院の代表団が訪日をされた際に、そういうことはできるのだろうかというような非公式な意見の御表明があったやには聞いておりますけれども、それ以上にその事柄は発展をせずにおります。したがいまして、ブラジル国あるいはブラジル国大統領からの両陛下に対する御招待は一切ございません。
  423. 秦豊

    秦豊君 一つの仮定のケースですが、宮内庁、外務省にも伺いますが、中国が仮に天皇を正式にインビテートした、招いたという場合は、どう扱われますか。
  424. 園田直

    国務大臣(園田直君) 秦さんの御質問でありますが、招待されないのに招待されたという議論をいたしますと、中国からも心卑しき国民だと思われますので、仮定のことには御答弁はできません。
  425. 秦豊

    秦豊君 中国の志は高いからそのような卑しいあれはいたしません。しかし、正式なあれがあれば十分に対応するのは、宮内庁、常識でしょうね。
  426. 富田朝彦

    政府委員(富田朝彦君) お答え申し上げます。  お尋ねの件につきましては、ただいま外務大臣からお答えがございました。これは事実関係が生じました以後において慎重に検討すべき事柄、性質だろうと存じますし、ただいまの時点におきましては、まだそういう事柄が全くないわけでございます。また、こうした事柄は宮内庁だけで決めることでもございませんので、ただいま申し上げることはございません。
  427. 秦豊

    秦豊君 天皇御自身が、五十年に訪米前に、「タイム」のインタビューで、中国訪問の機会があれば非常にうれしいとも発言されていますから、もし正式にそういうケースが発生した場合には、受けとめ得る、また、ねばならない、こうじゃありませんか。
  428. 富田朝彦

    政府委員(富田朝彦君) お答えいたします。  いまお尋ねの中にございました五十年の九月ごろと、お帰りになりましてから後の十月に、それぞれ米国関係あるいは国内関係の記者の方とのお会いの際にそういう話が出たことは事実でございます。しかしながら、それは特にそういう国名を限定してお尋ねになった方もあるわけでございますが、陛下のお答えというのは、もちろんそうした国を含めまして、あらゆる友好関係にある国と、国がいわば純粋に善隣親善のために必要とするということであれば労はいとうつもりはないと、こう仰せられたのでありまして、そういうふうに御理解をいただきたいと思います。
  429. 秦豊

    秦豊君 全然違った問題で宮澤さんにちょっと伺いたいのですが、ローザ構想もどこかへかすんでしまって、ドル・マルク枢軸、円は圏外、かやの外というふうな印象なんだが、違いますか、現状は。
  430. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 要は、アメリカが国際基軸通貨の国として、国内的な問題としてばかりでなく、国際的な責任をどのように遂行するかということでございますので、円がどう、マルクがどうということよりは、むしろアメリカ自身の基軸通貨国としての対外的な責任というふうに、昨今、ことにこの一、二週間でございますが、米国内一般的に政治の問題としても議論が高まっているように聞いております。
  431. 秦豊

    秦豊君 これは牛場さんの御意見もぜひ伺いたいのだが、アメリカと西独の間には円はまだまだ安いんだと、上げ得るんだという共通の認識がありはしませんか。
  432. 牛場信彦

    国務大臣牛場信彦君) これはどうも私からお答えするには余り適当でないのでございますけれども、私はそういう両国共通の感じというのはないと思います。
  433. 秦豊

    秦豊君 宮澤さんどうですか。
  434. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) つまり、アメリカの場合には自分の国としての、米国自身の国益というもののほかに、世界の基軸通貨を発行している国としての国際的な責任があるという自覚が、議論がこのところ大変に高まってきておるということをもってお答えにさせていただきたいと思います。
  435. 秦豊

    秦豊君 間接叙法ですな。モルガン・ギャランティー・トラストのリポートを見ると円はまだまだ安いと、二百二十円というふうなことを打ち出していますね。これはかなり先見性のあるリポートだったですが、それはどう思われますか、評価は差し控えられますかな。
  436. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういうことを私存じておりますが、これだけをひとつ申し上げるべきかと思います。モルガン・ギャランティー・トラストは一つの経済の調査機関を持っておりますけれども、しかし、モルガン・ギャランティー・トラスト自身がいわゆるオイルダラーの最大のマネジャーでございます。したがいまして、その申しますことは必ずしも客観的な経済の予測ばかりでなく、自分の会社自身のいろいろな立場というものを非常に反映しているということ、これは必ずしも広く知られておりませんので、モルガン・ギャランティーが言ったというと何か非常に客観的な予測のように――秦委員はよく御存じでございますけれども、とられる向きもありますので、必ずしもそういうものでないというふうに私は常に考えております。
  437. 秦豊

    秦豊君 結局、このドル安を抑える一つの方法は、総理アメリカが膨大な油の輸入、石油輸入に超過課税をすること以外にもはやないのじゃないでしょうか、どうでしょう。
  438. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いまのドル不安、これをどう見るか。私はアメリカ経済力というものは大変強大だと見ているのです。ドルがそんな国際的に弱い立場にはない、こういうふうに見ておりますが、ただいまこの時点ではアメリカ国際収支が余りにも悪い。そういうようなところで、この基軸通貨たるドルががたがたし始めておる、非常にこれは残念に思いますが、当面のアメリカ国際収支をどうやって直すかということになりますと、いまお話しのように油の輸入、これを減らすということを考える、これが一番近道であると、このように考えるわけでありまして、アメリカ政府におきましてもそういう認識でいまエネルギー法案を国会に提出して審議が続けられておると、こういうことじゃないかと思うのです。
  439. 秦豊

    秦豊君 今年百三十億ドルの黒字、来年また宮澤さん、九十三、四億ドルというふうな不穏な観測がすでに出ていますね。全くこれは荒唐無稽でしょうかね。
  440. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 経常収支の黒字のことでございましたら、それは私は荒唐無稽だと思います。
  441. 秦豊

    秦豊君 総理、この日本経済新聞なんかの調査、円、二百三十円、輸出産業の六割はもう圧倒的減益と、やる手なしと、ここまで来ているんですが、そういう深刻な状態に対してもう政府としてはこれ以上の円高対策というのはまるっきりないんですか。一しずくも、一つも打つ手はないんですか。あれだけなんですか。
  442. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いま円高円高とおっしゃいますが、円高という本質じゃないんです。いま国際通貨の動きはドル安なんです。このドル安の根源が直りませんと、これはなかなかドルの価値の安定というところにいかないんじゃないかと思いますが、しかし、わが国の国際収支、これも円の今日のこの状態、これに縁なしというわけではございません。円の価値の安定のためにはアメリカが何といたしましてもぴしっと姿勢を整える、これがかなめでございますが、同時にわが国といたしましても、いま目標を立てている五十三年度六十億ドルの経常黒字、これですね、これを何といたしましても守り抜くということになり、その傾向が出てくるということになれば、これは円の安定のために非常に大きな影響を持つであろうと、そのように考えております。
  443. 秦豊

    秦豊君 国際通貨の項の質問は最後にしますけれども、総理、何かあるとほかの大臣を出すという発想じゃなくて、ホットラインを活用したらどうですか。トップ会談もいいけど、ワシントンとボンみたいに。ホットラインを一番活用しなければならないのは防衛と通貨なんですよ。だから、何かあるとすぐ大臣じゃなくて、発想の根源が違う。あなたの流暢なキングズイングリッシュを活用されたらどうですか。
  444. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは電話もありまするし、また手紙の往復ということもありまするし、私自身がやらぬでも、これは通貨の問題につきましては、大蔵省が財務省とこれはもう実に緊密なる連絡をとっておるわけでありまして、その辺は抜かりなくやっておりますから御安心願います。
  445. 秦豊

    秦豊君 私から見れば、はなはだ足らないのです。  防衛問題に行きます。  外務、防衛両者に伺いますが、チーム・スピリット78、当然所管として全容はつかんでいらっしゃいましような。
  446. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) お答え申し上げます。  チーム・スピリット78につきましては、二月の十五日、在京の米大使館からごく概略の説明を受けております。それによりますれば、演習に参加する米軍は総計約三万三百人ということでございまして、そのうち日本関連の米軍が約一万四千、在韓米軍が七千三百、その他米本土などから約九千人、こういう概略をつかんでおります。
  447. 秦豊

    秦豊君 味もそっけもないですね。じゃ、どういう想定なんですか。想定のない演習はないでしょう。
  448. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) これはアメリカ側の発表によることが一番正確であると思います、何分にもこれは第三国の演習でございますので。そのアメリカ側の発表によりますれば、演習の範囲といたしまして、一つに韓国への戦略的展開、第二に制空、三に米韓地上軍に対する近接航空支援、第四番目に合同水陸両用作戦、第五番目に機動部隊に対する兵たん支援、及び第六番目に模擬の空海陸上戦闘の調整などを含むであろう、こういうことでございます。
  449. 秦豊

    秦豊君 全く答弁になっていませんよ。何のために、がないじゃありませんか、あなた。何のためですか、想定を聞いているのです。防衛局長は御存じでしょう。
  450. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 私ども直接この想定そのものの内容を聞いたわけではございませんけれども、三十八度線を突破して北からの攻撃があったときに、米韓が共同してこれにどう対処するかというのが想定であったように思います。したがいまして、地上戦闘につきましてはソウル以北の地域で演習をやっているようでございますし、制空につきましては韓国の全域にわたってこの演習を行っているようでございます。
  451. 秦豊

    秦豊君 やや実態に近づいている。あれは朝鮮半島有事の際のリハーサルなんですよ。  じゃ、日本のたとえば沖繩はどう使われたんですか。
  452. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 御承知のように、在日米軍からこの演習に参加をいたしております。したがいまして、沖繩がどう使われたということは、そこに駐留しております十八戦術戦闘航空団が韓国に参りましてこの演習に参加をしているということで、そういった意味では、あるいは沖繩あるいは横須賀におりますミッドウェーが参加したというようなことでございますが、ただランス部隊が横田を中継して行ったということで、これは移動の際の中継基地として利用されたということだと思っております。
  453. 秦豊

    秦豊君 これは七五年夏の米韓第一軍団長ホリングスワーズ中将の九日戦争が下敷きになっているんです。横須賀も当然対応しましたね、岩国も。
  454. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 先ほども申し上げましたように、演習に参加するために岩国の部隊も、それから横須賀におりますミッドウェーを中心とする部隊も参加したということでございます。
  455. 秦豊

    秦豊君 空母ミッドウェーは何月何日に横須賀を出港したか当然つかんでいるでしょうね。なるべく早目に、テンポを早く御答弁を願いたい。いたずらに時間がたってかなわぬ。
  456. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 三月七日から始まっておりますので、その四、五日前だったと記憶いたしておりますが、正確な日時は調べてすぐお答えいたします。
  457. 秦豊

    秦豊君 三月三日です。ランスの横田到着三月四日未明。だから演習は、Dデーは三月七日。その四日ほど前からずっと作戦行動が展開される。それはわかっていますね。
  458. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま先生がおっしゃいました、これが全部演習が始まったというふうに私どもは考えないわけでございます。軍事的な演習をやりますときには、いわゆる演習準備という期間がございまして、その地域でどういう演習をやるかということによってそれに必要な部隊というものが集結をいたします。したがいまして、私どもはそういうのは一応演習準備というふうに考えておりますので、今回の移動もそういった考え方で見ておるわけでございます。
  459. 秦豊

    秦豊君 まだ私、事前協議は全く聞いていないんですよ。実態を聞いているんですよ。答弁が先走っている。今度のチーム・スピリットはまだ終わっていない。きのうランスを発射して一応ピークを迎えたんだが、まだ続くのです。自衛隊はこの間どうしたんですか。
  460. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 自衛隊は何もいたしておりません。
  461. 秦豊

    秦豊君 米韓のことだから見物もしない、参観武官も出さない、こういうことですか。
  462. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) そのとおりでございます。
  463. 秦豊

    秦豊君 朝鮮半島有事のケースというのは、外務省、安保条約の五条なのか六条なのか、どちらに該当するのか。
  464. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) まず第一に、朝鮮半島有事の場合というのがきわめて漠然といたしておりますので、必ずしもそのベースで、その基礎で論ずることが適当かどうか存じませんが、いずれにせよ、安保条約第五条は、日本国の領域下におけるいずれかの一方の締約国に対する武力攻撃でございまして、それ以外の場合は、もしありとせば第六条の関係になるというふうに考えます。
  465. 秦豊

    秦豊君 岸・ハーター交換公文は、日本の領域に戦闘のおそれある場合には事前協議はしないと、こういう表現になっていますね。確認できますね。
  466. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 日本国におきますところの施設区域を使用して戦闘作戦行動を発進させる場合は、これは事前協議の対象になりますが、その場合に第五条に基づく場合は除かれておると、こういうことでございます。
  467. 秦豊

    秦豊君 この日米安保条約第五条に言う日本に対する武力攻撃の可能性としては、防衛庁、どんな対応とシナリオが考えられますか。
  468. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 私どもが想定いたしておりますというか、脅威として考えておりますのは、航空につきましてはいわゆる空からの侵入、それから陸上自衛隊の対処する任務といたしましては上着陸の作戦、海上自衛隊につきましては沿岸の警備と海上の護衛、そういう形で侵攻というものが行われるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  469. 秦豊

    秦豊君 当然、北からの侵攻と朝鮮半島に関連したというケースは考えられますね。
  470. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いろいろな形の侵攻の中に、北からの侵攻あるいは西からの侵攻というものを想定としては考えて年々の防衛計画においては研究いたしております。
  471. 秦豊

    秦豊君 安保第五条の武力攻撃には、外務省、武力攻撃のおそれも入りますね。
  472. 園田直

    国務大臣(園田直君) おそれは入りません。
  473. 秦豊

    秦豊君 朝鮮半島有事、確かに漠然たる表現ではあるが、朝鮮半島有事の場合は、第五条というのは、中島さんの答弁をもう一遍確認しておきたいんだが。
  474. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 第五条は、わが国の領域におけるところのいずれかの締約国に対する武力攻撃でございます。直接朝鮮半島における事態とは関係がございません。
  475. 秦豊

    秦豊君 条約の非常に味もそっけもない解釈としてはそのとおりかもしれないが、戦闘というのは、たとえば半島有事という場合には米韓軍事体制が先に発動する。自衛隊は日米体制で引っ張られる。牽引車は米韓だ、それは違いますか。
  476. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) ただいまのその引きずられるという意味がよく理解できないわけでございますけれども……
  477. 秦豊

    秦豊君 先行するんだ。
  478. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いわゆる第五条によって、日本に直接武力攻撃があったときに第五条が発動されて共同対処するということになるわけでございます。
  479. 秦豊

    秦豊君 総理も覚えていらっしゃいましょう。藤山さんとマッカーサー大使の間にゼントルマン・ザ・アグリーメントがありますね。御存じですね。
  480. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 承知しております。
  481. 秦豊

    秦豊君 あれから十八年なんですよ。軍の編成も装備も、もうまるっきり違ってきた。あの程度の口頭了解では実態とまさに乖離している。あれをもっと精密にする時期が来ていると私は思うのだが、どうでしょう、基本的に。
  482. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 藤山・マッカーサー口頭了解、これは核兵器の持ち込み、これは事前協議の対象になると、こういうことでございますが、これはその後もアメリカ政府から確認をされております。ごく最近そういうケースがあるんじゃないかと思いますがね。したがって何らの疑義がありませんので、これを再検討するというような必要は政府といたしましては感じておりませんです。
  483. 秦豊

    秦豊君 伊藤さん、この米韓軍事体制というのは、八度線周辺の緊張の予兆を感じ取ったらもう事前の展開をするわけです。そうすると自衛隊は当然自衛隊法第七十六条による防衛出動の前の体制をとるんじゃありませんか。そのあたりは常識的な対応じゃないですか。
  484. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま先生のおっしゃいましたことに直ちにお答えしているかどうかわかりませんけれども、まず、現在の三十八度線、あすこでいわゆる米韓によります防衛線というものはかなり強化されております。そしてまた、今度の第二師団の撤退に伴いまして韓国軍の強化というものも計画されているわけでございます。したがいまして、三十八度線における紛争が直ちに七十六条のおそれのある事態というふうにストレートにいくというふうには私どもは考えていないわけでございます。
  485. 秦豊

    秦豊君 ちょっとアングルを変えまして、日米防衛協力小委員会というのは、有事の際の日米共同作戦を練り上げる場ですね。
  486. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) そのとおりでございます。
  487. 秦豊

    秦豊君 ならば、当然朝鮮半島というケースは入るわけですね、常識として。違いますか。
  488. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 防衛協力小委員会におきましては、いわゆる日米が共同対処する際に必要な指針というものを日米の安全保障協議委員会に報告いたしまして、その指針を決めていただくための勉強でございますが、一つのシナリオを決めまして、それで現実のときにどういうふうにやるかというようなシナリオに基づいた研究というものではないわけでございます。たとえば御承知のように、日米が共同対処するにいたしましても、それぞれの指揮系統が別だというようなことがございます。この別系統による指揮に従って共同対処するわけでございますが、そういった際のいろいろな問題点、そういったものに対する指針を示していただくというのが目的でございますので、いま先生がおっしゃいましたようなシナリオのもとにやるということは考えていないわけでございます。
  489. 秦豊

    秦豊君 総理、いままでのところ残念ながら事前協議条項は歯どめの機能を果たしてないんです。私に言わせればこれは裸の王様なんです。それで私は、やはり国民の多くの皆さんは一体これではとめどがないんじゃないか、一朝有事の際に。歯どめを強化せよというのが大方の国民的合意ではないかと思う。あなたはいまの日米間のあのようにラフな事前協議の取り決め方で十全だとお考えですか。
  490. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 結局、事前協議問題はこれをせんじ詰めていきますと、これはもう両国間の信義、信頼の問題だと、こういうふうに思いますが、その信義、信頼の上に立って運用していく事前協議制度、その事前協議制度自体といたしましては、私は大体妥当なものであると、そのように考えております。
  491. 秦豊

    秦豊君 しかし、それにしても両国政府間の口頭了解ですよ。もっとオーソライズして確たるものに強化するお気持ちはありませんか。
  492. 園田直

    国務大臣(園田直君) 藤山・マッカーサーの口頭了解というのは、御承知のとおり第六条に関する、実施に関する交換公文がございます。この交換公文は国会に提出をして承認済みのものでありまして、両国がこれによって拘束されるわけであります。マッカーサー・藤山の口頭了解というのは、その解釈についての口頭了解であり、その後時勢も変わりましたが、五十年三月ごろに米国からさらにこれを確認しておりますから、これを文章にするとかその他のことは必要ないと考えております。
  493. 秦豊

    秦豊君 今度のこのチーム・スピリット78に関連した日本基地の対応を見ると、事前の場合には佐藤元総理が言われた事前協議については迅速かっ前向きと、まさにあれを地でいっているような気がする。いざとなったらイエスという英語しか日本政府から返ってこないんだということが両国政府間の了解だというふうな、まるでそういう印象が強過ぎると私は思うのだが、政府側はどういうふうに受けとめていますか。
  494. 園田直

    国務大臣(園田直君) 事前協議は歴代の総理、特に福田総理がしばしば言われているとおりイエスもノーもあるということは明確になっておるわけであります。
  495. 秦豊

    秦豊君 じゃ、いざ戦闘が起こったら、巨大なシステムですよ、これは。その場合の事前協議にイエスを与える場合にはケース・バイ・ケースなんていう悠長な、そんなことは軍が認めませんよ。包括承認じゃありませんか。
  496. 園田直

    国務大臣(園田直君) 事前協議の承認は包括ということにはなっておりません。もちろん一機一艦ことごとく小さく事前協議がありませんけれども、それは包括ではございません。しかも日本は憲法第九条、それからその他のことがありますから、これに巻き込まれるおそれはございません。
  497. 秦豊

    秦豊君 あなたの答弁は、園田さん、典形的な形式論理というんですよ。そうはお思いになりませんか。そんなもので軍のエネルギーを、軍の作戦をチェックできるはずがない。そうお考えになりませんか。あなたも軍の経験がおありだから。
  498. 園田直

    国務大臣(園田直君) 絶対に形式ではございません。日本の自衛隊は最高指揮官たる総理の命によってのみこれが動くわけでありまして、他国の圧力またはその当時の情勢によって自衛隊が勝手に動くということは断じてあり得ません。
  499. 秦豊

    秦豊君 総理、この事前協議問題というのは、外務、防衛はもう何万回も想定問答集でやって手なれたテーマなんですよ。古典的なテーマ、一番逃げやすいんですよ。しかし、国民の皆さんのおそれは、チーム・スピリットとか、もう次々に大規模な演習が行われて、今度の場合なんか史上空前の米韓合同演習、北からの侵攻の想定をしているわけですね。一体、一朝有事の際にはどうかという、そういう懸念が改めて高まっている。だから、あなたは一国の総理として、今度のトップ会談もいいし、ホットラインもいいんだけれども、とにかく事前協議についてはより厳正に執行し、むしろこれを強化する方向で取り組むというふうな決意をここで披瀝してもらいたい。
  500. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 事前協議制並びにその運用方式、これはかなりもう定着してきておるんじゃないかと思うのです。これを蒸し返しまして新しいルールに整理するという必要があるかどうか、私はその必要はないんじゃないか、そのように考えます。  事前協議制度そのものを厳重に実行するということにつきましては、これはもうここで正確に宣言しておきますが、さあそのルール自体をここで見直すかどうかということについては、その必要はないと、これが私の見解でございます。
  501. 秦豊

    秦豊君 防衛庁、F15の能力というのはファントムよりかなり小さいと言っているんだが、具体的にそれを並べてください。
  502. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 小さいということは申しておりませんが、この性能を申し上げますと、まず要撃戦闘の場合、F15は空対空ミサイル、スパロー及びサイドワインダー各四発、F4EJは、空対空ミサイル、スパロー四発及びファルコンまたはサイドワインダー四発を搭載することになっております。  対地支援の場合には、通常F15は五百ポンドの通常爆弾でございますが十二発、空対空ミサイル、サイドワインダー二発を搭載しております。またF4EJは、五百ポンド爆弾八発を搭載しておりますし、また爆弾の最大搭載量というのは、F15が五百ポンド爆弾十八発、F4EJが五百ポンド爆弾二十四発でございます。
  503. 秦豊

    秦豊君 ところどころこちらのデータと合ってますね、ところどころ。しかしいざという場合は、実際の攻撃行動の場合かなり変わってきますよ。たとえば相手の地対空ミサイルを防ぐためのエレクトロニクス、ECMポットが必要になるでしょう。それからソ連のような強力な戦闘爆撃機を相手にする場合には当然接近戦用のミサイルが必要になる。そのどちらかを装備した場合の爆弾搭載量というのはF4もF15も十八発で確かに同じだ、そのデータは一緒ですね。
  504. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 先生のおっしゃられるその前提のいろいろの形態というのがちょっと不明でございますが、おおむねそのとおりだというふうに思います。
  505. 秦豊

    秦豊君 そこから違ってくるんですよ。その両方を備えた場合には、爆弾は最大十二発になるんです、ファントムは。ところがF15は両方を積んでも爆弾搭載能力が落ちないんです。六発多いんです、ファントムより。これはどうですか。当然空幕からデータをお取りになったはずだ。
  506. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) ただいまのところECMポットというのを使用しておりませんものでございますから、ちょっとそこら辺どうなるか不明でございます。
  507. 秦豊

    秦豊君 それを積まなきゃ実戦できませんよ、積まなきゃ使い物になりませんよ。いまは訓練だからそうでしょう。
  508. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) ECCMは所有しておりますが、ECMポットというのは持っておりませんです。
  509. 秦豊

    秦豊君 とにかくECMもECCMも当然システムの一つですから、両方積まなきゃなりません。  私どもの調査では、F15イーグルの爆弾搭載量は、五百ポンド爆弾に換算して六発多いというデータなんです。防衛庁、それは認めますか。
  510. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 爆弾の最大搭載能力は、先ほど申し上げましたとおり十八発と二十四発でございます。
  511. 秦豊

    秦豊君 だからF15の方が重いものを積んでいける。それからもう一つは、F15のコンピューターの能力が高くて、爆撃命中精度も確かにファントムの二倍以上というのはアメリカ空軍の資料で出ていますが、それはお認めになりますね。
  512. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 爆弾の命中精度――CEPでございますが、この数字についてはちょっと申し述べることを差し控えさしていただきたいと思います。慣性航法装置、それからコンピューターの能力――アナログがディジタルになったというような、いろいろのことを考えますと、F15の命中精度の方がすぐれておると見るのが常識だろうと思います。
  513. 秦豊

    秦豊君 これ非常に厳密な議論をしなきゃいかぬと思うのです、委員長にもお願いですが。いつも、きわどいところになりますと申し上げられません、対象国を刺激します。――ユニホームは一〇〇知っているんですよ。いいですか総理、一〇〇。内局はせいぜい七五ぐらい刀国会は五〇以下ですよ。こんなことでは討論できませんよ。何がシビリアンコントロールの最高機関ですか。もっと精密なデータでもって突き合わさなきゃ論議は深まりません、すりかえたり、あれしたら。じゃ航続力を比べてください、両機の。
  514. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 航続力は、F15の短距離要撃の場合が二百五十海里、長距離要撃の場合が八百二十海里、五百ポンド爆弾十二発を搭載した対地支援行動の場合のレンジが二百八十海里でございます。F4EJの行動半径は、短距離要撃が約百海里、長距離要撃が約四百五十海里でありまして、五百ポンド爆弾八発を搭載したときの対地支援が約二百五十海里でございます。
  515. 秦豊

    秦豊君 防衛庁の論理というのは決まっているパターンがあるんですよ。ファントムよりF15は要撃戦闘機に限定された運用をするからちっともこわくないんですよ、脅威じゃない、いわんや戦力ではない、足も短い、だから空中給油は外さない、こういう論理を展開するんです。ところが、ぼくのデータでは、F4は要撃行動半径が百二十から百七十五ノーチカルマイル、一・八倍すればキロになる。イーグルの方は哨戒進出距離が三百ノーチカルマイルで全く大きいんです。認めますか、重いものを積めるし足が長いんですよ。皆さんの言うのは違うんです。
  516. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) F15とF4との航続距離に関しましては、同じパターンで飛んだ場合は、先ほどの前提の爆弾搭載量とかミサイルの搭載量といったようなもののもとにおいては、先ほど申し上げましたとおりでございます。
  517. 秦豊

    秦豊君 爆弾搭載量も実戦用に完装した場合にはF15は格段に大きいし足も長いんです。おまけに空中給油装置を残そうというんだから、勝負は明らかなんです。じゃ燃料の搭載量を比べてください。消費率は大体同じだが、イーグルは少ないはずだから。
  518. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 燃料の最大搭載量といたしましては、F15が内部タンク約二千百ガロン、F4EJが約二千ガロン。外装タンクは、F15が約千八百ガロン、F4EJが約千三百ガロン。合計いたしますと、F15が三千九百ガロン、F4EJが三千三百ガロンでございます。
  519. 秦豊

    秦豊君 これは委員長にも計らっていただきたいのですが、航続力、ミサイルを含めた爆弾の搭載量、それから進出距離、全部の性能諸元が私の手元のデータと余りにも隔たりがある。私も専門家に聞いてここに持ってきたデータがある。防衛庁も、その易しのぎではなくて、もっと精緻なデータを出してもらいたい。それを突き合わせてさらに議論を深めたい。いまのままでいえばまるで防衛庁のぺ-ス。何にも心配することはないからどうぞお認めを。ところがデータはこんなに違う。私のこれはアメリカ空軍のデータですからね。そういうものと装備局長のデータとこんなに違っているんでは、論議はこれ以上深まらないし、ややテクニカルにわたるからこの場では控えますけれども、改めてデータを提出してもらうことをお取り計らいいただきたい。
  520. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 本件につきましては、理事会に諮りまして処理いたします。
  521. 秦豊

    秦豊君 去年の十二月二十三日に能登半島沖にソビエトのTU16が接近しましたね、あのときにミサイルを下げていたようだが……。
  522. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) ミサイルを積みましたソ連機が近づいてまいったのを発見いたしております。
  523. 秦豊

    秦豊君 時間がないから詰めて言いますけれども、あれは空対地ミサイルで最大射程が四百キロ、三百五十キロの核爆弾が積めるというふうにNATOは見ている。そうすると、逆に言えば日本のレーダーの性能範囲外から悠々と日本が攻撃できるというミサイルなんです。あれはあなた方の愛するF15で要撃できるんですか、対応できるんですか。
  524. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) あの新しいミサイルでございますが、これを積んだ飛行機には十分対応できるわけでございます。
  525. 秦豊

    秦豊君 そんな子供だましは通用しませんよ、あなた。F15は、あなた方によれば進出距離は短い、足が短いからとてもTU16の実戦範囲に到達しない、向こうはそう言っているんだが、ところがTU16のソビエトは悠々とはるか圏外から目的を達して回避する、したがってF15は対処できないと、こうなるわけですね。
  526. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) F15の長距離要撃の行動半径は約八百二十海里でございまして、そこまでは対応できます。
  527. 秦豊

    秦豊君 国防会議の久保さん、もしお見えであれば、私いつも言うのですけれども、日本の防衛庁というのはどうも正面装備の充実で頭がいっぱいなんです。FXの次はFXX、より強くより強大な、これはユニホームの常識なんだ。そこで私は、だから正面装備の充実に狂奔するのではなくて、バランスを持った防空体制をシステムとしてつくるならばまだしも百歩譲れる。しかし、ファントムの次はF15、F15の次はF30ととめどがありません。もっとバランスをもった防空構想を練り直すべきではないかというのが私の年来の主張なんだが、久保さんいかがですか。
  528. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) バランスのとれた、戦う力のある、防空能力のあるシステムとしての防空機能を持つべきであるというのはおっしゃるとおりだと思うのです。ただタイミングの問題あるいは予算の問題、そういうものがありまして、同時にシステムを出発させられないというところに悩みがあろうと思うのです。したがいまして、生産の問題でありますとか、国内の各般の準備でありますとか、あるいは従来のたとえばバッジが一応は間に合うというようなことがありますので、何年かのうちには当然バランスのとれた防空機能を持つべきであるという御趣旨についてはそのとおりだと思います。
  529. 秦豊

    秦豊君 もう伊藤さんにこれは伺わないが、久保さん御苦労さんですが、たとえば空幕の予算の中でF15の占めるあのウエートを考えれば、まさに私に言わせれば一将功成って万骨枯るという路線なんです。そんなおそれはないでしょうかね、久保さん。
  530. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) これはF15だけを取り上げて議論してもなかなかうまくいきませんので、航空自衛隊全体の予算の中で、しかも何年かの間で、たとえば五年あるいは十年の中で、バランスがとれているかどうかということを議論すべきであろうというふうに思います。
  531. 秦豊

    秦豊君 時間がないからまた別な場でやり直しましょう。  総理、あなたの安全保障観をちょっと後学のために伺っておきたいのだが、防衛軍事はほんの一部門にすぎない、もっとトータルにナショナルセキュリティーというものを考えるべきだという常識的な見解に対してはどうですか。
  532. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) その常識的な見解から出発いたしまして、一つの問題として軍事面があると、このように考えております。
  533. 秦豊

    秦豊君 最近のある雑誌に坂田元長官が、国防会議は十分に機能していないとおっしゃっているんだが、久保さんなぜでしょうね。どの辺をどう改めればいいんですか、短期的に、あるいは中長期的に。どうでしょう。
  534. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) いろんな組織、機関にしましても一〇〇%機能を発揮しているところはなかなかございません。国防会議もなお向上の余地はあろうと思いまするけれども、問題は従来のように防衛庁の装備を中心議論をするというきらいが若干ございましたけれども、そういった点は、ただいまもお話しのように、もう少し広い意味での安全保障あるいは防衛構想の背景になるようなものを国防会議として取り上げていくべきであろうというふうに考えます。
  535. 秦豊

    秦豊君 こちらの閣僚席ですね、これをぐっと縮尺すれば国防会議になるんですよ。皆さんは失礼だが余り防衛のことは専門的に探求されない。そうするとどうなるか、防衛庁のユニホームの立案が内局を動かして寄り切る、それがそのままフリーパス、国防会議は追認の場、こうなりかねないですよ。総理、違いますか。あなたは議長だけれども。
  536. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 国防会議が軍事面の技術的な問題だけを論ずるというようなことになると、お話しのような傾向にもなりかねない。私はこの国防会議のあり方というものはそうであってはならぬと思うのです。やはり国防という問題は幅の広い問題である。軍事面はその一つの問題であります。ですから幅広い問題を考えなきゃならぬし、同時に軍事面一つを考えるにおきましても、いろいろ思いをめぐらさなけりゃならぬ、その背景である世界の政治情勢はどうか、世界の軍事情勢はどうか、特に近隣のそれらの情勢はどうかというようなことを十分頭に入れて、そして一つ一つの問題を処理するということになるべきであるというふうに存じ、私は国防会議の議長といたしまして、その運用につきましてはそのようにいたしたいと思って努力をいたしておると、このように御理解願います。
  537. 秦豊

    秦豊君 いまのようなのでは非常に事務しか論ぜられません。もっと多くのエキスパートを集めて、システムを組んで、国家安全保障会議のような場ででなければ、これからの現実に対応できないと思うのだが、どうでしょうか。
  538. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ、その仕組みはいろいろ研究いたすといたしまして、考え方としては私は秦さんの考え方に賛成でございます。
  539. 秦豊

    秦豊君 それはすでにあなたの構想の中にもうちらついているんですか。
  540. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は国防会議議長といたしまして、最初からそのような運営にしなければならないと、このように存じながら運営に当たっておる、このように御理解願います。
  541. 秦豊

    秦豊君 防衛庁広報の分析をちょっと参照したいのだが、なるほど自衛隊肯定は八三%、これは間違いない。ところが、肯定された八三%の国民の皆さんのうちの過半数はどう言っていますか、防衛庁。
  542. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 肯定している中で、防衛丈をもっと強化すべきだという意見も十数%、あるいはもっと減らせとうものも十数%あったと思いますが、大部分は現状でよいというような回答になっていると思います。
  543. 秦豊

    秦豊君 正直で結構です。総理、意外でしょう、あなたによれば。四一%はいまの予算でよろしい、いまの程度でよろしい、こう言っておられるんです、肯定している人の。あとはぐっと少ないんですよ。だから、いまは防衛庁や政府はいい気になって、まるでタカ派のような高い姿勢で防衛を論議しようとしている。特にあなたの持論だから施政方針演説に入ってきた、それはあなたの姿勢でしょう。だけれども、政府として本当踏まえるべきは肯定八三%ではなくて、むしろクールにさめた国民の皆さんのまなざし、いまより増強する必要はない、一番役に立っているのは災害派遣ですよと、こう言っている素直な反応こそ世論として踏まえるべきではありませんか、総理として。どうでしょう。
  544. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 八三%の国民が自衛隊を肯定していると、これは私は注目すべきことで、これを度外視することはできないと思います。同時に五〇%を超える人が自衛隊の規模は現状のままでいいと、こういうような答えをしておると言うが、それがどういうことを意図しているのか、これはちょっと分析してみる必要があるんじゃないかと思うのです。ただ単にこの程度でいいかどうかというような簡単な聞き方でそういう数字が出てきた、それだからこうしなけりゃならぬという、そういう結論を出すにいたしましては余りに抽象的な聞き方ではないかというようなことを、いま応答を通じまして感じ取った次第でございます。この程度でいいかなという人の中には、この程度の水準でいいというふうに考えておる人もあるだろうし、あるいは国力、また周囲の状況が今日のような状態でありますればこの程度かなと、また国力が伸長すればそれにつれて自衛隊というものは自動的にまた強化されてもしかるべきではなかろうかというような、そういう考え方の人も、この程度かなというような回答になるかとも思いまするし、その辺はさらに分析してやらぬと、それはとり方を間違えたということになりはしないかというのが私の率直な気持ちでございます。
  545. 秦豊

    秦豊君 最近のあなた方は、私に言わせると、事防衛については居直りの季節、居直りの論理、悪乗りです。  久保さん、あなたに伺いたいのだけれども、あなたがせっかく残された基盤的防衛力、これはやや理性的なブレーキのきいた構想と私は評価を惜しまない。ところが、真田法制局長官の最近の戦力解釈を初め、最近の防衛庁の考え方は昔の所要防衛力論への逆行だと思うのだが、久保さん違いますか。
  546. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) 防衛庁長官がお答えになった方がよろしいと思いますが、私が各委員会で長官のお話を伺っておりますると、基盤的防衛力の構想、したがってそれに基づいた防衛計画の大綱、一昨年国防会議及び閣議で決定しましたが、この方向及びプランについては一向に変わらないというふうに御答弁になっておりまするし、私もそのように考えております。
  547. 秦豊

    秦豊君 これは一般質問の方でさらにあとの詰めをしましょう。  成田空港は三月三十日に開港できますか。
  548. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) まず私からお答えいたします。しかと開港いたしたいと存じます。
  549. 秦豊

    秦豊君 きょう、実は参考人として本委員会で成田の農民の方の生の声を聞いてほしかった。石橋正次さんにいらしていただきたかったが、残念ながら本委員会理事会の合意は得らなかったことは大変残念です。成田の問題はいわゆる総理、ボタンのかけ違いです。高い授業料です。行政の最高責任者としてきっとあなたにもじくじたる思いがおありじゃないですか。
  550. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) じくじということはどの点を指しておるのかわかりませんけれども、私はとにかく成田空港が三月三十日開港というところまで持ってこられたということにつきましては、ちっともこれはじくじというような感じはいたしません。わが国の特に東京空港を見てみますると、これは羽田が大変な過密の状態でありまして、これをほうっておいた場合におきまして、一朝何か事故があった、そうしたらどんな惨たんたる被害状態になっていくのか、これははかり知れないものがあるんです。あそこへ行ってあの状態を見ると、本当に身の毛のよだつような危機を感ずる状態でございまして、一刻も早く代替飛行場をつくらなきゃならぬ。しかもその代替飛行場が十一年前に決定されまして、そして七千億円を超える費用が投ぜられて、しかもそれが開港できないと、また一方においては、羽田で危機がいよいよ迫っておる、そういうことを一体放置しておくということが政府といたしまして国民に対する責任と言えましょうか。そういうことを考えまするときに、ともかく仕事は急いだ、多少手抜かりのところもあるかもしれませんけれども、とにかく三十日には開港できるというようなことになりましたことは、私は国家のために御同慶にたえない、このように考えております。
  551. 秦豊

    秦豊君 候補地を決めるときからもうゆがんでいたんですよ。あなたの先輩が絡んで、成田に決まるまで四年もかかった。御存じのとおりですよ。頭から今度は公共性を振りかざした、農民を追いつめてきた、空から札束をばらまいた、対応の姿勢が全くなかった、そうじゃありませんか。そういうことについてあなたの言う国家の威信ではなくて、じくじたる思いは一切れもないのかと聞いているのです。
  552. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 成田空港が今日ここに至るその過程におきまして、好ましからざるいろいろな問題が起こったわけです。そういう点は大変残念に思いますよ。思いますけれども、とにかく先ほども申し上げましたように、いま成田空港を開港しないでほうっておいたら、羽田のあの過密状態からいって一体どういうことになりますか。そういうことを考えますと、あの成田の空港を三月三十日にとにかく開港できるということになったことは、まあまあああいういきさつではありましたけれども、これは大局的に見て、これはもう国家のために慶賀すべきことではあるまいか、そのように考えております。
  553. 秦豊

    秦豊君 運輸大臣、いま成田空港のことが何と言われているか御存じですか。暫定空港、国際欠陥空港、ワン・ポイント・リリーフ。賛辞はどこからも聞こえてこない。残念ですね。何とか言いたいでしょう。
  554. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) それはあなたがおっしゃることで……
  555. 秦豊

    秦豊君 いやいや、とんでもない。
  556. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) また大ぜいの中にはその種のことを言いたがる者がどの国にも相当いるものでありますが、われわれはもっと大局から……
  557. 秦豊

    秦豊君 大きな声を出さなくてよろしい。
  558. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) いや、多少大きな声を出す必要がある。  私は、そういう観点から信念を持って――それはいろいろありますけれども、しかしわれわれはりっぱに開港もしなきゃならぬし、それのために多くの人々が努力をしていることに対して私は敬意を表したいと思うのであります。
  559. 秦豊

    秦豊君 マイクの性能は相当鋭敏ですから、そんなに張り切らなくてあなた十分です。  運輸大臣、あなたはそう言われても私の見方じゃないんです。外国の航空会社に羽田に行って意見を集めてごらんなさい。外国の航空会社の間では、マッカーサーのせりふじゃないが、アイ・シャル・リターンと言っているんです。いいですか、説明の要はないでしょう。その外国の航空会社が使用料の問題なんか含めて必ずしもすぱっとしていない。それは繰り返さない、時間がないから。  中華航空以外に一社でも居座った場合には、それを強権をもって成田に移転をさせることは可能なんですか。ほどよいボリュームでお願いしますよ。
  560. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) そういうようなことについては、いま力を尽くして理解を得つつあり、そして理解をしていただけるものと私は確信するものでありまして、いま秦さんのおっしゃるような事態は万々起こらないと私は確信をいたします。
  561. 秦豊

    秦豊君 高橋航空局長にちょっと確認していただきたい小さなコピーがあるんです。これはあなたが出席された座談会ですか。「航空振興」の中身、これをちょっと読んでみて確認だけしてほしい。あなたの写真がついているからあなただと思うのです。
  562. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) はい、私でございます。
  563. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 確認されましたか。
  564. 秦豊

    秦豊君 はい。  高橋さん、あなたの発言をちょっと読んでいただけますか。私が読んでいると時間を取ってしようがないから。
  565. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) お読みします。これは高橋の発言でございます。  「成田空港は遠くて高くて何とかって悪名高いわけですから、外国エアラインは羽田に残りたい気持ちを率直に持ってると思います。羽田については、やはり将来的に問題のある空港なんで、国際線については成田へ移ってほしいということで、苦労してつくったわけですから、われわれとしては、外国エアラインの理解を十分求めた上で全部お引っ越しをお願いするということにしております。」
  566. 秦豊

    秦豊君 福永さん、高橋さんなかなか能吏だから、あれは本音なんですよね。ところが逆に言えば、ああいうひ弱な態度では、したたかな外国エアラインの要求をはね返して、たとえば増便要求、移転反対の意思、これをはね返して円満に三月三十日開港というようなめでたい仕儀には至りませんぞ。
  567. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 何かいろいろまずいことがあるようなことを言うという表現がありましたが、高橋君がそう思っているということでなくして、中にはそういうことも言われるようなことのある空港だから、だがしかし、真相は余り言わなくても空港関係者は皆知っているのですから、理解を持って臨んでもらいたいという彼の気持ちのあらわし方が、多少、読みようによってはそういうようになるのじゃないか、こういうように私は存じます。いずれにいたしましても、高橋君の真意というものは、あそこにあらわれた言葉の一部そのものが彼の真意であるとは私は思いません。
  568. 秦豊

    秦豊君 とにかく外国のエアラインは、総理、成田に何か事故でもあったらもっけの幸い、さっきのアィ・シャル・リターンの合唱に返るんです。大変な問題が起こると思う。総理、もう私の時間もないし、開港までの時間も余りにも乏しい。一度パトカーの先導ではなくて、福永さん、あなたもこの前ちらっと行かれたらしいが、ああいう大名旅行はだめ。やっぱり一度無警告でタクシーにお乗りになって、四時から六時の時間帯に、東京から、ダウンタウンから成田を目指されてみればよい。いかにこれが困難な旅であるかよくおわかりになる。一度成田の農民の皆さんと――公団と会ったってしようがないのだから、公団総裁も運輸大臣も、ときによっては総理も候補地の選定を始めて十五年、政治の抗争から今日まで、この大詰めに、せめて一度行政の姿勢として農民の皆さんと話を交わすという意思は総理、運輸大臣公団総裁、ありゃなしや、せめて伺っておきたい。
  569. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 私もいまお話しのようなことをいとう人間ではございませんので、参りましたのが知られているのもありますが、別にお忍びというわけではございませんけれども、いろいろの方法でいろいろの事情を知るように大いに努力したつもりでございますが、ただいまもそうしたお言葉をいただきましたので、さらに完璧を期していろいろ承知をし、また承知した上においてはこれに対する対処方策を講じていきたいと思うわけであります。
  570. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 秦君、時間が来ております。
  571. 秦豊

    秦豊君 赤いものがついていますからこれでやめます。  日米航空協定は運輸省、外務省も絡むけれども、成田開港を控えましてのタイムリミットですね。まとめるということになると五月三日も気になるし、まとめることを優先すると暫定にしかなりかねませんね。日本の要求を通すというよりは、まあ手際よくまとめるということになると、暫定にしかならないのではないかと私は思いますが、どうでしょう。
  572. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 日米航空協定につきましては、私もできるだけ不均衡の是正をやらなければならぬと思う。したがって、これに対しては強い決意を持って臨まなきゃならないと思っていま対処しているところでありますが、まあいまからどうなるということは私は申し上げたくないのでございます。あなたのおっしゃるようなことにならぬように、相互に理解をしてよき結果が得られるようにせいぜいの努力をいたしたい、そういうように存じます。
  573. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 簡単に願います。
  574. 秦豊

    秦豊君 はい。  決意だけではどうにもならない段階に来ていると思います。フライングタイガー一社を考えても、ユナイテッドを考えるまでもなく、やっぱり暫定も結べないというふうなところまで追い詰められるのではないかと私は思う。そうなった場合の具体的な影響が出るんだろうか、それとも案外影響が出ないんだろうか、それだけを伺ってやめます。
  575. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 私は何とかうまくやりたいということをひたすら念ずるものでございますから、いま遺憾ながら秦さんがこうなった場合、ああなった場合ということでございますが、そういうことを申し上げますと、アメリカ側でもあいつの方ではそうなった場合というのをもう早くも予想しておるかと、こういうようなこと、さようなことは私はいたしたくないと思うのであります。
  576. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で秦君の総括質疑は終了をいたしました。(拍手)  これにて総括質疑の通告者の発言はすべて終了をいたしました。  明日は午後一時三十分から委員会を開会し、一般質疑を行います。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十五分散会