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1978-03-15 第84回国会 参議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月十五日(水曜日)    午後一時六分開会     ―――――――――――――    委員の異動  三月十四日     辞任         補欠選任      相沢 武彦君     黒柳  明君  三月十五日     辞任         補欠選任      成相 善十君     亀長 友義君      渡辺  武君     山中 郁子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         鍋島 直紹君     理 事                 戸塚 進也君                 内藤誉三郎君                 中村 太郎君                 宮田  輝君                 竹田 四郎君                 吉田忠三郎君                 多田 省吾君                 内藤  功君                 栗林 卓司君     委 員                 浅野  拡君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 小澤 太郎君                 亀井 久興君                 亀長 友義君                久次米健太郎君                 熊谷  弘君                 下条進一郎君                 田代由紀男君                 玉置 和郎君                 林  ゆう君                 真鍋 賢二君                 三善 信二君                 望月 邦夫君                 八木 一郎君                 山本 富雄君                 赤桐  操君                 大木 正吾君                 志苫  裕君                 野田  哲君                 福間 知之君                 藤田  進君                目黒今朝次郎君                 太田 淳夫君                 黒柳  明君                 峯山 昭範君                 矢追 秀彦君                 上田耕一郎君                 山中 郁子君                 井上  計君                 喜屋武眞榮君                 柿沢 弘治君                 秦   豊君    国務大臣        内閣総理大臣   福田 赳夫君        法 務 大 臣  瀬戸山三男君        外 務 大 臣  園田  直君        大 蔵 大 臣  村山 達雄君        文 部 大 臣  砂田 重民君        厚 生 大 臣  小沢 辰男君        農 林 大 臣  中川 一郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  福永 健司君        郵 政 大 臣  服部 安司君        労 働 大 臣  藤井 勝志君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (国土庁長官)  櫻内 義雄君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      加藤 武徳君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       安倍晋太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)      稻村左近四郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       荒舩清十郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  金丸  信君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       熊谷太三郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  山田 久就君        国 務 大 臣  牛場 信彦君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        国防会議事務局        長        久保 卓也君        総理府統計局長  吉岡 邦夫君        北海道開発庁総        務監理官     吉岡 孝行君        防衛庁参事官   夏目 晴雄君        防衛庁参事官   番匠 敦彦君        防衛庁参事官   古賀 速雄君        防衛庁長官官房        長        竹岡 勝美君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛庁人事教育        局長       渡邊 伊助君        防衛庁衛生局長  野津  聖君        防衛庁経理局長  原   徹君        防衛庁装備局長  間淵 直三君        防衛施設庁長官  亘理  彰君        経済企画庁調整        局長       宮崎  勇君        経済企画庁総合        計画局長     喜多村治雄君        経済企画庁調査        局長       岩田 幸基君        沖繩開発庁総務        局長       亀谷 礼次君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省条約局長  大森 誠一君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        大蔵省主計局長  長岡  實君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省国際金融        局長       旦  弘昌君        文部省体育局長  柳川 覺治君        文部省管理局長  三角 哲生君        厚生大臣官房長  山下 眞臣君        厚生省社会局長  上村  一君        通商産業大臣官        房審議官     山口 和男君        資源エネルギー        庁長官      橋本 利一君        資源エネルギー        庁公益事業部長  服部 典徳君        労働大臣官房長  石井 甲二君        労働省労働基準        局長       桑原 敬一君        労働省職業安定        局長       細野  正君        労働省職業訓練        局長       岩崎 隆造君        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省住宅局長  救仁郷 斉君        自治省行政局長  近藤 隆之君        自治省財政局長  山本  悟君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        会計検査院事務        総局第三局長   松尾恭一郎君        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和五十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題とし、きのうに引き続き上田耕一郎君の総括質疑を行います。上田君。
  3. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 きのうからの質問に入る前に、日中問題について一言お伺いしたいと思います。  きのう鄧小平主席政府の正式な態度として四項目を示しましたけれども、この四項目について政府としてどうお考えになるか、首相にお願いします。
  4. 園田直

    国務大臣園田直君) 新聞に報じられておる四項目なるものは、外交の場で述べられたものではございませんが、有力なる参考意見としてこれを検討しておるところでありますが、いずれにしても矢野書記長が帰られてから詳細御感触等も入れて承りたいと考えております。政府日中友好条約締結の方針は、既定どおりに進めていくつもりでおります。
  5. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この二項目ですね、これが一番問題になる。首相矢野書記長に伝言として渡しました第二項、これに対する回答として満足すべきものであるのかどうか、この第二項目が。この点いかがでしょうか。
  6. 園田直

    国務大臣園田直君) これも、いま申し上げましたとおりに、いまのところ新聞で承っただけでありますから、外交の場ではございませんから、矢野書記長が帰られて御意見等も承った上でやりたいと考えております。
  7. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうも全部お答えは矢野書記長が帰られてからというのですけれども、「一方で覇権反対をしながら、もう一方で「だれに対するものでない」というのでは論理的でない。事実上、覇権主義中国を脅かしているとともに、日本をも脅かしている。」と、こう言っているわけで、鄧小平主席会談の中でもソ連を名指しで批判しているということがありますが、こういう考え方で、政府の言うような、この条約は反覇権というのは第三国、特にソ連を名指すものではないという考え方と両立できるとお思いになりますか。
  8. 園田直

    国務大臣園田直君) これは今後の交渉内容に入るわけでありますから、新聞を見てここで政府考え方を申し上げるわけにはまいりません。
  9. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 われわれも一切の覇権主義反対であります。しかし、それが中国の特定の路線、特に反ソ統一戦線の一環に日本が組み込まれることになると、これは全くまずいと思います。そうなりますと、対米従属プラス中追随というようなことになって、国民の真の利益を守ることにならないと思います。政府は毅然とした態度自主独立の立場に立ってこの問題に臨んでいただきたい、このことをお願いいたします。  次に、大蔵大臣にお伺いしますけれども、先ほどのニュースで、きょう午後三時日銀理事会を開いて公定歩合引き下げ〇・七五%を決めるということを聞いておりますが、大蔵大臣としては引き下げることは御存じですか。
  10. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 私もニュースでいま間接に聞いたわけでございますが、日銀の方からは正式に通知を受けておりません。
  11. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 きょうの新聞には十七日とも書いてありますが、どうやらきょうやりそうなんですが、これまでもたびたび問題になっておりましたが、公定歩合引き下げられますと、これと連動しまして国民預貯金引き下げがいつも行われるということになりますが、これを連動させるべきでないと思いますが、大蔵大臣郵政大臣預貯金の利子引き下げ、これをしない問題についてお伺いしたいと思います。
  12. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 仮定の問題でございますけれども、私は、公定歩合引き下げるということは、金利水準を下げましてそして日本の景気を振興し、あるいは金融負担を減らすことによりまして、雇用の維持あるいは拡大に資するということであろうと思いますが、現在の金融機関預貯金あるいは貸し付けの金利差から申しまして、もし公定歩合引き下げに伴って貸付金利をそのような意味で下げようとすれば、預貯金金利引き下げは当然伴わなければやれるところではないと、そのような認識を持っているわけでございます。
  13. 服部安司

    国務大臣服部安司君) 郵便貯金利率公定歩合引き下げとは、直接的には関係はありません。  しかし、郵便貯金法第十二条で、郵便貯金利率については、預金者利益を増進し、十分な考慮を払いつつ、あわせて民間金融機関預金利率についても配意するという決定原則がございますので、私はこの決定原則にのっとって対処したいと、現在のところそのように考えている次第であります。
  14. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 やっぱり国民生活を守るために連動させないという方向でぜひ努力を願いたいと思います。  さて、きのうに引き続きまして、沖繩返還交渉に絡む密約疑惑、これについてお伺いしたいと思います。  ここに、日本国際政治学会昭和五十年に発行しました「沖繩返還交渉政治過程」という本があります。これはその年の一月に開かれた箱根会議での研究をまとめて出したもので、この中に、アメリカブルッキングス研究所、これはアメリカの民主党のシンクタンクと言われておりますけれども、そこの福井治弘さんとプリシラ・クラップ女史のお二人の論文が載っております。この福井論文を見ますと、日本側だけで官僚、学者関係者を初め約百人の人とインタビューをして書いた、そう書かれております。この本の百二ページ、百十五ページには、外務省チーム中核メンバーとして、つまり沖繩返還に関する外務省チーム中核メンバーとして六人の名前が挙っておりますけれども、外務省にお伺いします。これらの人々は福井さんのインタビューに応じたんでしょうか。
  15. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 六人の名前が挙がっておるという先生の御指摘でございますが、恐らくそれは当時の外務省アメリカ局及び条約局責任者名前を挙げたものであろうと思われますが、当時この人間が福井先生インタビューを具体的にされたか否かということは、私は承知いたしておりません。
  16. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 中島さんは、一九六九年当時、どういうポストでしたか。
  17. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 私は、その当時条約局条約課長をしておりまして、いま先生の挙げられた六人の中に挙がっておると思います。  私は、当時、福井先生なる方がいろいろ日本外交政策政策決定過程についてアカデミックな研究をしておられるということを聞いておりまして、現に日本にその関係でやってこられたということで、何かの機会にお目にかかった記憶はございます。
  18. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ございますか。
  19. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) はい。
  20. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 箱根会議参加者の方々に私は面会しました。その人たちの言うところによりますと、箱根会議福井論文ペーパーが出た。その前にペーパー外務省関係者にもお配りしたそうです、やっぱりインタビューした者の責任として。福井さんがアメリカにお帰りになった後、在アメリカ日本大使館を通じて、この福井論文に関してどことどことどこを直してほしいという要望が来た。こんな細かなところまで直すのかというので非常に関係学者は驚いたそうですけれども、そういう事実はありますか。私、おととい、よく調査してほしいということを要望しておきました。
  21. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) まことに申しわけありませんが、先生の言及された時点で私は東京におりませんでしたので、具体的にどのようなことがあったか存じませんが、いやしくも学術的な研究をされる成果に対して、外務省がその内容に立ち入って云々というようなことを述べることはないものだろうというふうに考えております。
  22. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 否定しますけれども、明白な事実であります。  この福井論文外務省関係者ペーパーを見ていろいろ直さしたんですけれども、この本の百十九ページにこういう個所があります。一九六九年の八月に、佐藤首相は、私的な使者をワシントンに派遣して、キッシンジャー大統領特別補佐官と数度にわたって会談をさせた、そして一括合意に達したと、沖繩返還問題で。これには、施政権返還後、米国による緊急時の核再持ち込みにつき日本政府が考慮するということも含まれていたと。この密使は同時に繊維交渉についてもこの裏ルートで行ったということが書かれております。これは福井論文だけではありません。同じくタラップ論文にも同様の記述があります。  そして、ここにブルッキングス研究所の出しました「マネージング・アン・アライアンス」という本があります。これは、当時、アメリカ側沖繩返還交渉についてリチャード・スナイダー日本部長とともに国家安全保障会議作業グループのチーフとして大きな責任を負いましたモートンハルペリン、この人がイニシアチブをとって主任研究所員時代につくった本であります。この本にも、三十四ページに、沖繩問題について佐藤首相が、ヒズ・オウン・プライベート・チャンネルをキッシンジャーに向けて開いた、それで交渉を行わしたということが書いてあります。また、三十九ページには、繊維交渉をも佐藤首相が、密使――ア・プライベート・エミサリーとちゃんと書いてありますけれども、それを通じて行ったということが書いてあります。これはハルペリン自身責任を持った文書であります。こういう事実が当時ありましたか、密使はだれを送ったのか、この点外務省にお伺いいたします。
  23. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいま先生の言及されました福井先生の書かれた論文の一部を拝見いたしますと、この論文でも、たとえば、「外務省関係者はもとより愛知外相でさえも関知しなかったと思われる秘密の交渉ルートが存在したからである。」と、こう書いてございまして、当然のことながら私どもが何らこの点について知っていなかった。書かれた御当人が書いておられるとおりでございます。
  24. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 「朝日ジャーナル」の去年の七月一日、七月八日に、同じくブルッキングス研究所の所員のデスラー、福井佐藤三氏の繊維交渉についての論文の翻訳が載っております。これは近く発行されます大部の本の第七章であります。この中にはかなり詳しくこの密使との関係が書いてありまして、「佐藤が送り込んだ人物政府高官ではなく、沖繩問題やその関連問題について佐藤にしばしば助言を与えていた専門学者たちの「大浜グループ」につらなるある民間人だった。」と、そう書かれてあります。そして、キッシンジャーは、その人物が八月に来たとき、果たしてその人物佐藤首相の本当の代理人であると確かめた後、数度にわたる会談を行った。そして、その後長距離電話でひそかに話し合ったと。そのとき、暗号を使って、「あなたの友人」と言えば佐藤首相のこと、「私の友人」と言えばニクソンのこと、そういうことを行ったと書かれております。  これらの事実を見ますと、外務省は知らないと言われますけれども、ブルッキングス研究所、特にハルペリン責任を持ったこの研究アメリカがこういう問題を公表している事実について、われわれは大きな疑惑を持たざるを得ません。外務省御存じないと言いますけれども、恐らく国家最高機密に属するものと思いますので、福田首相はこういう件について御存じですか。
  25. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 佐藤政権のとき、私はずっと大蔵大臣外務大臣等をしておりまして、あるいは党の幹事長などしておりまして、かなり佐藤総理の行動については承知しておる方でありますが、ただいま上田さんのお話をごもっともだなあと申し上げるような何らのあれはありませんですね。これはもうあり得ざることである、こういうふうに申し上げておきます。
  26. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 牛場対外経済担当相にちょっとお伺いします。  牛場さん、あなたは当時外務次官でした。その後、駐米大使にもなられましたが、これらについて何か感じたことはございませんか。
  27. 牛場信彦

    国務大臣牛場信彦君) 私は、一九七〇年の九月に次官をやめまして駐米大使になったのでありますけれども、そういう話は一切聞いたことはございませんでした。
  28. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 つまり、なかなか外務省関係者は口がかたいのか、全く知らなかったのか。しかし、この密使は同時に繊維密約をも結んだわけであります。  それで、宮澤通産相にお伺いいたします。  佐藤さんは、ニクソンと協定を結んだ後帰られて、そのときは大平通産相です。大平通産相にもこの密約のことは一切言わなかったというふうにこの彼らの論文は書いている。うまくいかないので、翌年の一月に内閣改造をやって宮澤さんを通産相にした。宮澤さんと、あなたの任務の大事な問題は繊維交渉を解決することだというふうに佐藤さんが言ったそうです。宮澤さんは、交渉を始めて、どうもおかしいので、佐藤首相にそういうものが何かあるのじゃないかと聞いたことがある、そう言われておりますが、そういう事実はありますか。
  29. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昭和四十五年、一九七〇年の当初から私は繊維交渉通産大臣としていたしまして、たしかその年の六月であったと思いますが、ワシントンに参りました。当時の米国商務長官スタンズ、後にウオーターゲートにちょっと出てまいりますスタンズと、数日間交渉をいたしましたけれども、これは不調に終わりまして私は帰国をいたしました経緯がございます。が、その間に、ただいま仰せられましたようなことを具体的に感じたようなことはございません。
  30. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 宮津さんは昭和四十五年六月のスタンズ商務長官との会談について触れられました。当時日本繊維産業連盟会長谷口豊三郎、この人が、「エコノミスト」の「戦後産業史への証言」、これは七七年三月八日付ですが、この中でこう述べております。宮澤さんスタンズさんとやり合ったときに、「スタンズは「そんなバカな、何いっとるんだ」というような気持ですよ。「おまえ、これ知っておるか」と宮澤さんにある書類を見せたというんだ。「あの書類イニシアルがあったかなかったか、私は見ておりません」とあとで宮澤さんは私に言った。大臣がそういう表現を使うということはイニシアルがあったということですよ。」と。宮澤さんが、谷口さんに、スタンズ書類を見せられたと。これは密約ですよ、佐藤さんがつくった。この事実を否定されますか。
  31. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは谷口さんのおっしゃっていらっしゃることが不正確であると思います。そういう書類を私が見せられたというようなことはございません。
  32. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 宮澤さんとしてはこれは口が裂けても言えないことだろうと思います。どういう書類だったんですか。
  33. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私はそういう書類を見せられたことがございません。
  34. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 宮澤さん、お酒をたしなまれますか。
  35. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) はい。
  36. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私はこの問題でも幾つか調べました。ある人が、宮澤さんはお酒をたしなまれるとこの問題について触れて、こういう密約があったと、私は文書を見たと、佐藤首相というのはひどい人だと、そう言われるということであります。恐らくこのことも宮澤さんはお聞きしましても肯定されないでしょう。肯定されないでしょうけれども、あなたがイニシアルつき文書を見たことは事実だろうと思う。谷口さんは、イニシアル下田大使だろうというんですね。ぼくはそうじゃないと思う。Sというイニシアル下田佐藤は同じSです。恐らく、これは私の推測だけれども、Sというイニシアルがあったのではないか、私はそう思うのです。  もう一つ宮澤さんにお伺いしますが、六九年十一月、佐藤首相は、会談の中でニクソンとたった二人で会談したことが二回あります。二回目にこの繊維問題の密約について話された、そう思います。化繊協会当時会長だった宮崎輝さんがやはり同じく「エコノミスト」の「戦後産業史への証言」で、七七年四月五日付ですけれども、そのとき会談は通訳が入ったというのですね。だから、通訳の記録があるんですよ。「私は直接そのレコードを読んだわけじゃない。それを読んだ人から聞いたことです。その人は名前を出すわけにはいかないが、ある立派な方です。それによるとコンプリヘンシブ(全品目包括規制)とかセレクティブ(特定品目の規制)とか、そこまで議論しているらしい。ですから、何か繊維の話が出たことは事実のようですね。」と、こう言っている。私は、「名前を出すわけにはいかないが、ある立派な方」というのはあるいは宮澤さんではないと思いますけれども、この点いかがですか。
  37. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまのは佐藤さんのその会談の……
  38. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 の通訳記録。
  39. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) を私が通訳をしたかというお尋ねですか。
  40. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ごらんになったことがあるんじゃないですか、そのレコードを。
  41. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ございません。
  42. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この宮崎さんのインタビューによりますと、いろいろ愛知さんと話されていることがその前に書かれているですね。私もその会談に出なかった、あるいは愛知さんかもしれない。しかし、愛知さんは亡くなられましたし、宮崎さんも「名前を出すわけにはいかない」と書かれているので、これもミステリーですけれども、この記録はあるんです。  当時この会談日本側から出た通訳はどなたですか、外務省にお伺いします。
  43. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 外務大臣房審議官の赤谷源一氏でございます。
  44. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 アメリカ側はウイッケルという通訳で、日本からは赤谷源一審議官が出ました。この記録はあるんです。外務省あるいは通産省で保管しているだろうと言われておりますが、外務省、通産省、この通訳記録は保管しておりますか。
  45. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) いま通訳記録とおっしゃいましたが、先生御承知のように、通訳と称するものは会談内容を正確に訳すことでございまして、記録を本務とするものではございません。したがいまして、通訳が記録をとるということは必ずしもないわけでございます。  他方、会談内容につきまして日米それぞれでその内容をメモしておくとか記録をしておくということは当然にあり得ることだと思いますけれども、これは何分にも両国政府のトップレベルの会談でございますし、相手方もあることでございますので、そのようなものがたとえありましてもその内容を御開示はお許しいただきたいというふうに考えます。
  46. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 通産省はどうですか。
  47. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 何も聞いておりません。
  48. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 トップレベルですけれども、これは重大な繊維密約と沖繩の密約に関する記録です。私はこれを国会に提出することを要望いたします。
  49. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 委員長としては理事会に諮って処理いたします。
  50. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この繊維密約も沖繩に劣らず大変な問題なんですよ。宮澤さんがやられた。密約は何かというと、アメリカ側はジュネーブの繊維交渉で第一に物すごい高い要求を出すと。日本側が断ると。そのとき妥協案として第二次案を出すという。その第二次案が密約でできていた。第二次案を出したら日本側はのむはずだと。ところが、佐藤首相は帰ってきてからだれにも言わなかった。そのために業界の反対が強くて、国会でも宮澤さんは答弁をしまして、その密約をのまないで拒否した。それで佐藤首相というのは密約を守らぬというのでアメリカはかんかんになったんです。田中通産相時代にこれは解決したんですよ。だから、サンクレメンテ会談福田さん外務大臣佐藤さんと福田さんだけ行くはずだったのに、田中さんはニクソンに呼ばれて行って、それでレセプションのときにニクソンの隣に座らせられた。ニクソンは田中通産相を物すごくほめたそうです、あなたのおかげだったと。これがロッキードにつながるんですよ。(笑声)皆さんお笑いになるけれども、そうなんですよ。その年の一月にサンクレメンテ会談、次に田中さんは首相になって、八月に田中・ニクソン会談でしょう。やはり沖繩の密約がずっといって繊維密約繊維業界はこれを非常に不満に思って行政訴訟までやったんですから。田中通産相はこの行政訴訟をやめろという圧力まで業界にかけたんですから。それでけりをつけてニクソンと親しくなって、今度は飛行機ですよ。皆さん笑うけれども、歴史の論理というのはこういう筋道で発展したんです。  私は、この問題について、さらに、皆さん方はなかなかお答えになりませんので、アメリカ政策としてもこういう沖繩に対する核兵器の再持ち込みと通過の密約を結ばざるを得ない根拠があったということを次に述べたいと思います。  七四年の六月に、アメリカの国会が、キッシンジャー国務長官の宣誓供述書を極秘のものを発表いたしました。これはウオーターゲート事件のエルズバーグ事件に関連するものであります。これがアメリカの法務委員会の聴聞会の記録であります。この中に、極秘とありますキッシンジャーの宣誓供述書が全文載っております。これは七四年の四月に発表されました。この一項目に、第六番目に沖繩問題についての記述があります。一九六九年一月に国家安全保障会議の検討メモというのが恐らくハルペリンの起草でキッシンジャーの指示によってつくられました。そして、五月二十八日に日米会談に臨む沖繩問題についてのアメリカの最高の戦略方針が国家安全保障会議決定として決定覚書――デシジョン・メモランダムというのがつくられた。これについてキッシンジャーはこう言っています。「この覚書は、沖繩に核兵器を保有したいとするわれわれの要望を示したが、譲歩する点として、貯蔵と通過の権利を獲得し得るならば核兵器撤去を考慮する用意がある趣旨を記述したものであった。」と。つまり、核兵器をいつまでも置きたいけれども、譲歩してとにかく抜こうというためには、この貯蔵と通過権、これだけは獲得しなければならないというのが、ニクソンが議長の安全保障会議、そこでアメリカの最高方針として決まったんです。  そして、外務省にお伺いしますが、じゃその後の交渉で、このメモに基づくアメリカ側の要望――核兵器の一時貯蔵あるいは再持ち込みあるいは通過の問題、こういう点は交渉の過程でどのようにして解決されましたか。
  51. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) まず、第一点といたしまして、先生御指摘のキッシンジャー元国務長官の宣誓供述書につきましては、かつてほかの委員会で御質問もありましたので、私どもも当時の新聞記事を拝見いたしておりますが、その新聞記事によりますところの供述書の内容によりますれば、そのような核の一時貯蔵と通過の権利を獲得し得るならば、核兵器撤去を考慮する用意があるという趣旨をアメリカ側のその国家安全保障会議の覚書の中で一たん決めたことはあったけれども、その記事によりますと、その後「ニューヨーク・タイムズ」によって沖繩から核兵器を除去することに大統領が決定したというすっぱ抜きがあったために、ついにアメリカ側としては日本側交渉の取引をすることができなくなったという記述でございまして、したがいまして、このお話はアメリカ側の内部でのいろいろな議論の過程を述べたにすぎないものでございます。日本側に対してそのような話があったということはこの宣誓供述書によっても何ら出てまいりませんし、事実そのようなことはなかったわけでございます。実際上の問題といたしましては、沖繩の核抜き返還につきましては、一九六九年の佐藤ニクソン共同コミュニケ第八項におきまして核を抜いて返還するということが決定いたして、そしてそのとおりが一九七二年に実現して、当時のロジャーズ国務長官から福田外務大臣に対してその核抜きの返還をそのとおり実施したということを手紙でもって明確に述べてきたと、こういう経緯でございます。
  52. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 あなたそう言われるなら、福井論文にこういうところがある。日米共同声明第八項、この中で、「安保条約の事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく」と言っている。これは外務省の案にもなかった。愛知外相その人がまるっきり知らなかった。首脳会談のその日になって初めて入ったんだと、これは密約に基づいて入ったんだと、こう述べてありますが、外務省案にこの一節は最初からありましたか。
  53. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 交渉の過程での具体的な案のあれこれがどうなったかということにつきましては、何分にも外交交渉のことでございますので、説明を控えさせていただきたいと思います。  いずれにせよ、いま先生御指摘の共同声明第八項にありますところの「事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく」ということの表現が何を意味するかという点につきましては、当時まさにこの共同声明の作業に参画されました愛知外務大臣が共同声明発出後にその説明をいたしておりますので、その点をちょっと御紹介させていただきます。  愛知外務大臣は、その表現につきまして、「事前協議制度のもとでは、核兵器の日本(本土及び返還後の沖繩)への導入は法的に禁止されるということではなく、ただ日本政府は現在その政策たる非核三原則により、これを断るという方針をとっています。従って事前協議の対象となるべき性質の問題であることは変らず米国政府の立場としてこれを確認したのが「事前協議制度に関する米国政府の立場を害することなく」との表現であって、これによってわが方が「有事持込み」を認めるという保証を与えたものではありません。」と、こういう説明をしております。これに明白であると考えております。
  54. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 だから、日本側アメリカ側と解釈が違うんですよ。当日、ジョソン国務次官は、記者団への背景説明の中で、この項は返還が実現される際、米国が沖繩に核兵器を貯蔵する権利を行使しないことを意味する、これしか言っていないんですよ。あと、将来の再持ち込み、通過ということはできないということは絶対言っていない。返還するときに貯蔵する権利を行使しないと。返還するときはないんですよ。私も確かにそれで抜いただろうと思う。しかし、将来持ち込む、また通過はできるというのがアメリカ側態度で、大統領の安全保障会議の決定によってこれが貫かれなければ議会も軍部も絶対イエスと言わぬのですよ。だから、佐藤首相は、外務省との交渉では核問題はトップに上がっていてだめだというのでやむを得ず密使を送ったんです。どうしても核抜き返還を実現しなきゃならぬから、方法がなくてかくのごとき異常な手段をとったんです。私ども訪米調査団の一員の共産党の国際部の副部長増田紘一さんが三月一日にモートンハルペリン自身にこの問題で会いました。話がずっと進んで核問題にいったら、ハルペリンさんは、いや、もうそれは答えることでわかってしまうと、質問に答えないという態度密使はだれだったというので、大浜信泉グループの一人というふうに始めたら、ハルペリンさんはいすから飛び上がった。もう帰ってくれと、おれの顔色を見られただけで困るというのでもうドアから押し出される形で、ハルぺリンさんがそういう態度を示したこと自身が彼は否定しないんですよ。事実なんですよ、これは。明らかに事実なんです。それで、こういうことを隠して、その後私は歴史の弁証法が生まれたと思う。沖繩返還協定を国会で強行採決で通そうとしたときに、━━━━━━━━━━保利幹事長がみずからイニシアチブをとって非核三原則を国会決議にした。そのためにノーということになってしまったんですね。核兵器の持ち込みは一切ノーと。これは自民党政府は非常に困る。それまで非核三原則は政策だった。いつでも変えれる。国会決議になって、福田さんは憲法と同じ国是だということを言い出した。アメリカはこれは非常に困ったのです。岸内閣当時はこの問題はイエスかノーかあり得る。それがノーになってきた。それで沖繩返還交渉を通じてこういうことをしたんですよ。  私は、この密使がだれかというのを訪米調査並びに国内でわが党は調べました。そして、だれであるかをわれわれは突きとめました。いま京都産業大学教授で、元防衛研修所の所員です。その後にマイヤー大使がニクソンあての手紙でこの人は日本の最高級指導者が信頼している人だという報告を送ってジャック・アンダーソンが暴露したこともある、その人であります。彼はキッシンジャーとも面識があります。英語もできます。六九年に四、五回アメリカへ行っております。私は彼に面会を求めました。彼は外遊するので忙しいというので面会できませんでした。十五分だけ会ってくれ。十五分も面会は断られました。電話で私はインタビューしました。若泉氏は、私ではない、恐らくはかの人物であろうと言って二、三の推定する人物を挙げました。しかし、私は、これはもちろん密使ですから否定するのは当然だと思う。アメリカでも、私は名前を挙げませんけれども、ある人が、若泉敬氏の名前を増田紘一国際部副部長が出したら、この名前だけは言えないと。しかし、いい線をいっていると、そう言いました。日本の国内でも、私はこれもニュースソースを明らかにしないという約束ですので言えませんけれども、若泉敬氏であるという複数の信頼できる証言を私は得ております。これはきわめて重大な問題です。日本の非核三原則という国是に背くような大問題を一国の首相が代理人を通じてアメリカ密約をしている。繊維についてもそうであります。  ですから、私は、政府に対して、先ほどの通訳の記録、それから沖繩並びに繊維についての密約、これを国会に提出していただきたい、このことを強く要求したい。
  55. 園田直

    国務大臣園田直君) 事の経過を細々と承りましたが、いま言われた論文その他も、これは交渉決定にいくまでの過程を述べたものであります。  密使密使という話がありますが、外交交渉その他で外交官にあらざる者が使いに行くことはあります。これを通俗に根回しと言っております。根回しをして、話がつけば、当然これは外交ルートに乗して、そしてこれを承認するなり、あるいは文章にするなり、ちゃんと後々するのがこれが約束でありまして、代理人がひそかに行って話をつけて、それがそのまま約束になって後に残るということは断じてございません。そういうようなのんきなものじゃありません。そのようなことであれば、総理大臣が勝手な人ならば、北海道を勝手に売ってみたり、そういうことができるわけでありますが、そういうことは一切できぬように事細かになっておるわけであります。したがいまして、沖繩の密約を出せとおっしゃいますが、そういう文書外務省にはありません。  それから総理が二人きりで会いましたというが、全部いま首脳者会談というのは、細々とした問題は全体会議で開きますけれども、重要な問題はそれぞれの国の首脳者が二人きりで話すわけであります。これには通訳が入っておりますが、その記録もございませんので、これは調査はいたしますが、提出のお約束はできません。
  56. 内藤功

    内藤功君 関連質問。(発言する者あり)
  57. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 時間が来ております。――理事会で協議いたしました結果、時間が切れておりますので、関連質疑は許しません。一般質問でお願いをいたします。
  58. 上田耕一郎

  59. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 時間が来ておりますから簡単に。
  60. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それでは、政府の側はこれだけの重大問題について一切文書はないと。しかし、私、最初にきのうの質問でやりましたように、閣議にも出ていない、国会でも報告されていないというものでも、首相がもしそういう秘密協定を結んでいたら国際法上有効だというんですよ。だれも知らなくても有効かもしれない。  アメリカ側は、ハローラン記者などは、こういうものはアメリカ側文書があって、日本側にはないのだと、日本側は口頭だけだと、そういうことも言っている。日本側文書をつくらしたら必ず明らかになってしまうというので、アメリカだけ持っているという証言さえあるんです。その点で私は……
  61. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 上田君、簡単に願います。
  62. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 はい。  国会としても、国権の最高機関として、政府が調査しない以上、国会としてどうしてもこの問題を調査する必要があると思います。  それで、私は、まず証人として次の五名の方を要求したいと思います。  当時の駐米大使、前最高裁判事、現在外務省顧問の下田武三氏、当時外務省アメリカ局長、現在駐米大使の東郷文彦氏、沖繩基地問題研究会、これは現在安全保障問題研究会と言いますが、そこの座長の久住忠男氏、同じく委員の若泉敬氏、それから当時官房審議官でこの通訳をした人ですね、現国連事務局事務次官の赤谷源一氏、この五名の証人喚問を求めたいと思います。  そして、これを調べた上で、必要があれば超党派でアメリカに調査団を派遣することを提案いたします。ニクソンキッシンジャーモートンハルペリン、それらの人々に会って、この日米間の重大問題、日本の国が核戦争に巻き込まれるかもしれない密約を……
  63. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 簡単に願います。
  64. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 憲法に反して一国の首相が結んでいたという、こういう重大問題を国会として調査することを要求いたしまして、委員長、ぜひこの問題を取り上げていただきたいと思います。
  65. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 証人喚問の件及び調査団の件等につきましては、理事会においてこれを諮りまして処理いたします。  以上で上田君の総括質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  66. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に大木正吾君の総括質疑を行います。大木君。
  67. 大木正吾

    ○大木正吾君 私は特に雇用問題につきまして伺いたいのですが、その前に総理並びに村山大蔵大臣等に伺いたいのですが、きのうきょうの東京の外為市場はついに円高二百三十三円という状態なんですけれども、これはどの辺で落ち着くでしょうか。
  68. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、円高というよりは、これはドル安というふうに見ておるのです。そういう客観性があるわけなんです。私は、ドルというものは本質的にはそう弱い通貨じゃない、こういうふうに思いますが、ただいまアメリカの国際収支なんかの関係でいろいろ複雑な現象が出ている、こういうふうには思いますが、このドル・円の関係がどういうふうに将来なるか、これはそれに対する見方を政府筋から申し上げることは、いろいろ機微な影響がありますので、ぜひ控えさしていただきたいとお願い申し上げます。
  69. 大木正吾

    ○大木正吾君 私が伺っていますのは、本年の経済見通しにつきまして宮澤長官等に伺いたいのですが、新聞報道その他の資料によりますと、二百四十五円という大体円高の根拠、円相場の根拠でもってはじき出した、こういう資料がございますけれども、二百三十三円という数字は大体五%ぐらい経済見通しとの関係でもって乖離が出ているわけですね。ですから、予算審議をするにつきましても、その辺の根底が少し崩れつつあると、こういうふうに考えますものですから心配して伺っているんです。
  70. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 為替の変動期におきまして経済見通しをどうするかということについては、従来から先例がございまして、昭和五十三年度の経済見通しにつきましては、先例に従いまして見通しをつくります一番近い月の――今回の場合は昨年の十一月でございますが、円の平均値を作業のために使いました。十一月の平均値は二百四十四円八十銭か何かでございましたので、二百四十五円で計算をいたしまして経済見通しをつくりました。これはもとより政府が来たるべき年度における円の変動を予断した、あるいは予知したという意味ではございませんで、作業のための便宜といたしまして一番近い月の平均値をとったということでございます。  ただいまのお尋ねは、その後に円が変動するということによって経済見通しというものが何がしかの影響を受けるはずではないかというお尋ねと存じます。理論的には私はそういうことであると存じますけれども、ただ、それはどのような変動に対してどのように変化をするかという、計数的にそれを的確に申し上げることは困難なことだと思います。
  71. 大木正吾

    ○大木正吾君 長官に重ねて伺いますが、今年じゅうにもう一遍これ見通しをローリングしますから変える必要が起きませんか。
  72. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は、七%程度の成長というものはできても不思議がないほど財政が大きな主導をしておると考えております。本予算を御審議いただき始めましてから、ことに衆議院の最初の段階では、そもそも五十二年度の政府の見通し改定の五・三%が四%台に乗せればいい方であるから、その延長としての七%程度は全く一顧に値しないというような趣旨のお尋ねが何度かございましたが、五十二年度についてはだんだん計数が明らかになってまいりまして、私ども五・三%というものは概していいところを予想しているのではないかとただいま自信を深めております。同様の意味で、その線上にある七%程度というのは、まず私はいいところを考えておるのではないかというふうに思っております。したがって、その意味ではただいまの段階、予測し得る将来において、この見通しを改定するということを考えておりません。
  73. 大木正吾

    ○大木正吾君 この問題は一般質問の中でまた少しやらしてもらいますけれども、私のきょうの質問の主題は雇用問題でございますから、この問題について、ひとつ緊急な問題でございますけれども、これは建設大臣の方かと思うのですが、櫻内さん、いいですか、永大倒産がございまして、会社更生法問題が問題になっているはずなんですが、これについて更生法の適用をする用意がございますか。
  74. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 御質問の趣旨が必ずしも明らかでないのですが、会社更生法を永大何がし会社に適用するかどうかということは、それは管轄裁判所に対して申し立てがあって、そうして裁判所が決定することでございますので、建設大臣は何ともお答えのしようがないのではなかろうかと思うわけでございます。
  75. 大木正吾

    ○大木正吾君 これは十日の日の日経新聞のちょっと小さな記事なんですけれども、関連の合板業界が永大産業の更生に反対をして動いているという記事がございまして、関係省庁に対して、あるいは裁判所に対しましてもやっているようですが、これを見ましたですか。
  76. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 遺憾ながら、私、所管でもないので関心を持っておりませんので、見ておりません。
  77. 大木正吾

    ○大木正吾君 そうしますと、これは所管はどこになりますか。農林大臣、中川さんの方でしょうか。
  78. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 残念ながらいま初めて見ましたので、もうちょっと読んで見さしていただきます。
  79. 大木正吾

    ○大木正吾君 これはきわめて関連の中小、下請、特に労働者の雇用問題に関係がございますので、ぜひ善処をお願いいたしたいのです。  さて、本論に入りますが、私は、総理府関係から出ています労働力調査について少しく伺いたいのですが、日本における失業率の算出の根拠について、総理府並びに労働大臣からちょっと見解を承りたいと思います。
  80. 藤井勝志

    国務大臣(藤井勝志君) 失業率の算定の仕方は国によって違っておるようでございまして、わが国の場合は、就業者と、そして職を求めて職が得られないいわゆる失業者を足しまして、それを分母にして、そして失業者を分子にすると、これによって失業率を算定をしておりまして、その方式はアメリカ、カナダ、イタリア、これがこのような方式をとっております。それに対しまして、イギリスとか西ドイツ、これは就業者でなくして雇用労働者とそれから失業者を足して分母にいたしまして、その分子は失業者、これによって失業率を算定をしておるというふうに、国によって算定の仕方が異なっており、なお、失業者というのが、わが方は約二十万世帯の抽出調査によって職を求めて求め得られない人の調査をしておりますけれども、イギリスあるいは西ドイツは、職業安定所機関に申し出した人を失業者と、こういうふうにやっておる。国によって以上のような相違がございます。
  81. 大木正吾

    ○大木正吾君 日本は、この失業状態をヨーロッパ流に直したらどれぐらいになりますか。
  82. 石井甲二

    政府委員(石井甲二君) お答えいたします。  先ほど大臣から御答弁ありましたように、失業率の出し方については非常に各国の事情によって違います。したがいまして、いまのところ、たとえばイギリスなりあるいは西ドイツという方法でやるのは、その実態が違いますので、そういう推計はいたしておりません。
  83. 大木正吾

    ○大木正吾君 きわめて不親切な答えなんですけれども、失業状態の比較というものにつきましては、ある程度EC関係なりアメリカとの関係等と比較しながら出しておきませんと、やっぱり失業問題の深刻さが一般的にはマクロ的にはお話が出ますけれども実態がつかめない、こういうことになりますから、私は、もう一遍政府委員の方からヨーロッパ的に見たら大体概略どうなるか、御質問いたします。
  84. 細野正

    政府委員(細野正君) お尋ねでございましたが、ヨーロッパの場合は、先ほど大臣からお話しございましたように、失業保険の受給率でやっておりますから、同じような意味でわが国の失業保険の受給率をとってみますと、現在大体二・六%程度でございます。
  85. 大木正吾

    ○大木正吾君 どうも数字が少なく出てくるのですが、私の見ている民間の統計関係の資料ですと大体三%を超えているのが多いのですが、そういったことを申し上げさしていただきまして、そして、実は、「労働力調査報告」、総理府が一月の末に発表したものについて少し内容に入って御質問いたしますが、これは第三表にございますけれども、実は常雇いの男子が大分減ってきておりまして、そしてパートとか女子がふえているわけですが、これについての御感想はどうでしょうか。
  86. 藤井勝志

    国務大臣(藤井勝志君) 御指摘のごとく、最近の雇用情勢はある程度就業者がふえております。五十一万人ほどふえておりますけれども、その中身は、女子が約四十五、六万人で、男子のふえ方がきわめて少ない、こういう雇用情勢になっております。
  87. 大木正吾

    ○大木正吾君 藤井さん、もう少し聞きたいのですが、この同じく第四表によりますと、大規模の五百人以上の企業が非常にマイナス現象を呈してまして、二十九人以下の中小のところがふえている傾向がございますね。このことはどういうことを意味しますか。
  88. 藤井勝志

    国務大臣(藤井勝志君) 雇用の背景である日本の産業の景気回復の状況といいますか、経済の推移というか、製造業が非常に不況が続いておりますが、第三次産業、そういった流通部門あるいはサービス部門、こういった面の雇用がふえておる、そういうところから女子の就業者はふえると、こういうことになっておるわけでございまして、これからやはり景気が本格的に回復して、製造業を含めて全体の雇用が健全な安定拡大に移るように努力をしなければならぬと、このように思っておるわけでございまして、ただ、もう一つつけ加えますと、やはり日本の産業構造が質的に変化を遂げつつあるまだ過渡期でございますから、そういう点も事態の推移を見ながらこれに対応する人材の養成、社会の求める職種の訓練と、こういったことをやらなければならぬと、このように思うわけでございます。
  89. 大木正吾

    ○大木正吾君 これはつい最近の官報資料版でございますけれども、三次産業に対しましてぐんとウエートが寄ってきますね。そうして、減量調整という問題で、これはきのうの日経新聞なんですけれども、東芝さんという大企業が、むしろ電機関連のメーカーの場合には平行に推移するか、若干微増するか、そういったことをしてほしいのだけれども、三年間六千人減量調整、こうなっているんですよ。ですから、残念ながら大臣がおっしゃることとは少し方向が違うのじゃないかと思うのですけれども、どうでしょう。
  90. 藤井勝志

    国務大臣(藤井勝志君) 実態の詳細な面にも関連いたしますから、政府委員をして答弁をさせます。
  91. 細野正

    政府委員(細野正君) いまお尋ねの東芝の例は、たしか、私の記憶では、ある程度の減量をする場合に、ほぼ欠員の不補充という形でやっていこう、こういう記事だったように記憶しておるわけでございますが、そこで先生御指摘のように、現在、大企業、特に基礎産業の工業的部門を中心に減量が進んでおりまして、したがいまして、先ほどの数字にもあらわれておりましたように、大企業関係では雇用が伸びずにむしろ減の傾向があって、中小企業、なかんずく三次産業を中心に現在伸びているわけでございますが、これは一つには構造不況業種その他の基本的に問題を抱えている業種がいま申し上げたような大企業のしかも製造業の基礎産業という部門に多いわけでございますので、当分の間そういう傾向が続くのはこれはやむを得ない面があるのではなかろうか、こういうように考えておるわけでございます。
  92. 大木正吾

    ○大木正吾君 造船とか鉄鋼とか、そういったところは大変困難な産業状態ですからわかるのですが、電機等の場合には、私たちはこういった形でもって傾向を持っていくことは非常に将来心配なんですね。しかも、ちょっと古いのですけれども、これは去年の十月の新聞なんですが、生産性が大変に高まっておりまして、そしてむしろ高成長期以上に生産性が高まっている、こういう記事もございまして、そういう中でもっていわば常用工を中心としました中高年労働者がどんどん排除される、こういったことはやはり私は何らかの行政指導なりそういったことをしてもらいたいと思うのですが、どうですか、藤井さん。
  93. 藤井勝志

    国務大臣(藤井勝志君) これからの雇用政策の大切な問題点というのは中高年齢者の雇用対策である。特に先ほどもちょっと申し上げましたけれども、日本の産業構造が転換をするという、これは特定不況業種を中心に現に始まっているわけでございまして、それは途中から職場を変えなければならぬ、こういうことになりますから、当然中高年齢層になり、また、日本の社会そのものが高年齢者社会になっているという、こういう二重の事情から、中高年齢の雇用問題というのは非常に重要でございまして、中高年齢の求人倍率を調べてみますと、これは五十二年度の資料でございますけれども、四十五歳以上だと〇・一九%、五十五歳以上だと〇・〇九%というふうに、大変な厳しい求人倍率になっておるわけでございますから、これに対しては高年齢者の雇用率制度という六%義務規定で努力目標として決めておりますこの制度を活用して、そうして高年齢者を雇い入れた場合の雇い主に対する奨励金、あるいは定年延長奨励金であるとか、継続雇用奨励金であるとか、いろいろな施策をいまやっております。それにまた、新しい施策としては、中高年齢層を雇い入れた事業主に対して新規の雇用政策としてこれに助成をし、中小企業の場合は賃金の三分の二を援助すると、こういうことによって民間の活力も活用して中高年齢の雇用対策を推進をしたいと。これはこれだけではまだ私は十分ではないと考えております。何かいいいろいろな分別をせなければ中高年齢者の雇用対策というのは十分ではないと、このように思いますけれども、とりあえずはいま申しましたような賃金面において雇用主が中高年齢者を雇いやすいようなことに持っていこうという考えで五十三年度予算にお願いをしたわけでございます。
  94. 大木正吾

    ○大木正吾君 総理にもぜひ聞いてもらいたいのですが、四十歳といいますと、大体子供が中学から高校に上がるころになると思うのですが、そういった方が求人倍率〇・七、さらに五十歳ですと〇・四一ですね。私はやっぱり心配しますことは、どうしても三十五歳から四十五歳という一番働き盛りの、しかも子供の教育で金がかかる方々が肩をたたかれてやめていくような状態に入ってきますね。やっぱり外国と違うところは、日本の場合には、百十万人といった場合に、四十五万人ぐらいが四十歳以上ですからね。百二十六万という藤井さんのお話の場合はもっとふえているはずですから、ヨーロッパとこれは大変違うと思うのですね。ですから、一番生活の中心的な中年の方々がこういった惨めな状態ということは、いま藤井さんのおっしゃった程度ではやっぱりまずいと思うし、現にお金がありますね、予算もつけてもらいましたし。だから、少し発想の転換ということがこの辺の問題についてはどうしても必要だと、こう考えておるのですが、総理、どうでしょうか。
  95. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国の失業問題は、失業統計で見ると諸外国に比べて非常に失業率が低いんです。ところが、いま統計の各国のとり方の問題もありますね。と同時に、わが国におきましては終身雇用制と、こういう関係があって企業の中に潜在失業群が滞留しているというそういう問題もあります。  そこで、いま日本の政治問題、経済問題という角度からすると、雇用政策は最も大事な問題になってきておると、こういうふうに考えておりまして、そういう認識に立ちまして雇用造成政策をとっておるわけなんです。それには一番公共事業がよかろうというので、五十三年度予算でも公共事業を大幅にふやす、これの御審議をお願いすると、こういうことにいたしたわけですが、そういう手段によって雇用需要を起こす。同時にまた、雇用安定資金制度、そういういろいろな制度を縦横に駆使いたしましてこの深刻な雇用情勢に対処しようと、こういうことなんで、まあこの政策を続けていきますれば、非常に厳しい情勢でありまするからそうはかばかしい改善、そういうことにはならないけれども、かなりの改善がこの五十三年度中には実現されると、そういうふうな見解です。
  96. 大木正吾

    ○大木正吾君 いま公共事業を中心としまして雇用改善とおっしゃったのですけれども、これはたしか建設省が十七、八万人の雇用増と、こういうお話がございましたですね。あの中身は、一体、常用工、出かせぎ、臨時工等を含めてどういうふうになりますか、櫻内さんから聞かせていただきたいのですが。
  97. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 建設省の五十三年度の雇用増としては、五万人増と、こう言っておるのでありまするが、それは道路、住宅、下水道、海岸公園、災害関係など、五十二年度の実績に対して五十三年度の見通しを立てて、その差し引き増減が約千五百万人目になるのであります。それを一人年間二百六十四日の就労で単純に換算した人員を五万人ぐらいの増と、こう申し上げておるわけでございます。そういうわけで、手元には治水、道路、住宅、下水道、それぞれのただいま申し上げました何万人目の概算はございますが、省略さしていだだきます。
  98. 大木正吾

    ○大木正吾君 これは公共事業のこういった大きな計画を三年も五年も続けていくおつもりですか。
  99. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これは企画庁長官がお答えする方がいいかと思うのでありますが、政府としては、本年度公共事業を中心とする財政による景気浮揚をしようと、そうしてそのうちに産業界の自立回復をねらっていこうと、そういう心組みの上で、本年度の公共事業が大幅増になる、特にその中の七〇%見当を建設省が責任を持っていくと、こういうわけでございまして、建設省として明年度以降も同じような形でやっていくのかどうかということは、全体の経済の仕組みから考えていかなければならないのでありまして、われわれとしても、国家財政の現状からいたしまして、同じようなパターンを繰り返すということでなく、自立回復が期せられてそれだけは公共事業の事業量というものが緩和される方が望ましい。しかし、それが期せられないときには、当然財政浮揚でやろうという方針がある以上、われわれとしても公共事業をもっとやっていかなきゃならないと、こういうようなことになると思うのであります。
  100. 大木正吾

    ○大木正吾君 これを、労働大臣、みてもらいたいのですがね。長官も見てもらいたいのです。最近の雇用の動向なんですよ。これはちょっと見にくいかもしれませんけれども、ふえているのは全部臨時とパートタイムです。常用工は全然ふえていないのですよ。こういう状態でいきますと、最近の中期経済見通しなども出ましたけれども、結局は五十七年になって少し雇用がおさまるかという話が出ているのですけれども、臨時工をずらっとこう並べていきましても不安定雇用状態というのは全然変わらぬわけですね。ですから、その辺のことをもうちょっと、公共事業の場合、中身が常用工なのか、出かせぎなのか、臨時工なのか、それがどういう産業につながっていくのか、そういったことを聞かしていただきたい。
  101. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまの雇用増がいわゆるパートタイムでありますとか女子でありますとかいう方に偏っていきまして、常用工がなかなか採用されないということは、私はそのとおりであると思います。企業においていわゆる減量経営をしてまいりました。そこで、多少仕事が出ましてもなかなか常用工をふやすというまでの自信は持てない。そこで、まあさしずめ残業をふやしていくとかあるいは臨時を使いますとかいうようなどうしてもそういう企業家の心理であろうと私は思います。したがいまして、五十三年度を通じましても、私どもはこれだけ公共事業をいたしますが、完全失業者の数は五万人ほどしか減らないのではないかという見方を実はしておるわけでございます。これは、つまりこういう経済の過渡期でございますから、日本経済の将来についてまだ企業家として十分な見通しを持ち得ない、しかし何となく経済が動いてきたのでそれに対処しなくてはならないということから、そういうような雇用の仕方になるということは、現状としては私は事実であろうと思うのでありますが、五十三年度を通じまして、日本経済の将来についてもう少しはっきりした自信を日本経済に携わる人々が、消費者を含めて私は持つようになるであろうと期待しております。したがいまして、これが順調に将来の日本経済の拡大発展につながっていきますれば、やがてそういう傾向も変わってくるであろう。ただ、単年度をとりましては、やはり完全失業者の数もその程度の改善しか見られない。これは将来に向かって、しかしそういう方向へ動いていくというそういうために、このような財政主導の経済運営を五十三年度にいたすということになっておるわけでございます。
  102. 大木正吾

    ○大木正吾君 若干前後しますが、河本通産大臣にお伺いいたします。  衆議院で審議が始まりました特定不況産業安定臨時措置法ですか、これで造船その他幾つかの業種が指定されていくでしょうけれども、もしもこれが今国会で通過したら一体どれぐらいの労働者が消えていくんですか。設備の廃棄でもって首になりますか。
  103. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いまの法律案は、けさほどから衆議院の商工委員会で御審議をしていただいておるわけでございますが、これはいわゆる各構造不況業種からいろいろな計画が出てまいりませんと最終の判断はできないわけでありますが、大体私どもは、設備の廃棄といたしましては、少ないところで一割五分から二割、多いところはやはり五割前後の設備廃棄が出るのではないかと思っております。もっとも、これまでにも相当合理化が進んでおりまして、ある程度雇用は減っておりますから、必ずしもその比率で失業者が出る、こういうことではありませんし、また他の部門に配転ということもありますので、もう少し事態の推移を見守りませんと、具体的にどの程度の数字が出るかということははっきりわかりません。
  104. 大木正吾

    ○大木正吾君 これは法案がもう出ているわけでありますから伺いますけれども、労働組合と、雇用問題などを含めてこの法案に対して修正を加えて協議決定をするという用意がございますか。
  105. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) この法律の一番の中心は過剰設備の廃棄ということにあるわけでありますが、やはり当然雇用問題が起こってまいりますので、雇用問題も当然重視していかなければなりません。実は、昨年の年末に各党共同で離職者対策の緊急立法を決めていただきました。この法律と実は表裏一体の関係になっておる法律でありますけれども、しかしながらこの法律は法律として、ある程度雇用問題を積極的に考えていかなければならぬと考えております。  その考え方といたしましては、いろんな計画をつくります場合に、各種審議会がございまして、その審議会で御相談をしながら案をつくることになっております。その審議会に労働組合の代表、場合によりまして地域代表あるいは中小企業、下請の代表も参加していただきましていろいろ意見を述べていただこう、こう思っております。それからあわせて、雇用問題につきましては労働大臣と十分相談をしながら進めていく、こういう考え方でございます。
  106. 大木正吾

    ○大木正吾君 現在衆議院で出ていますこの関係法案につきまして、そういった中身は盛られていないでしょう。修正する用意がございますか。
  107. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私どもは、提案をいたしました法律案が一番いいという判断のもとに各方面と意見調整をして出したわけでございますが、しかし、国会で御決定になりますと、その御意見に従うつもりでおります。
  108. 大木正吾

    ○大木正吾君 宮澤長官に重ねてまた伺いたいのでございますけれども、衆議院の予算委員会が始まった際、多賀谷真稔さんの御質問に対しまして御同様のお話があった。五万人ほどふえた話があったんですね。ところが、この話は、建設省の方の話の問題は大体織り込み済みと私は考えるのですけれども、いまのこの構造不況問題に対しまして、この法案が通って今年度じゅうに廃棄をされて、したがって二十万前後の人が仕事を失うという問題は入っておりませんですね。
  109. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのお尋ねはごもっともでございますけれども、経済企画庁で五十三年度中の新規雇用、失業者数等を計算いたしますのは、いわゆるマクロの計算をいたしておりますものでございますから、業種別に積み上げをいたしておりません。構造不況業種の問題が出て、設備廃棄があればそれだけの雇用の減をどうするかというお尋ねは、ごもっともでございますけれども、ただいま河本通産大臣がお答えになりましたように、すでにある程度の雇用の減は起こっておるということもございましょうし、またいろいろな施策によりまして、技術訓練等によってよそに参る人もございましょうし、全部が新しい失業になるとも考えなくてよろしいのではないか。私どもでは、全体がマクロの計算でございますので、その点ははっきり申し上げることができないような状態でございます。
  110. 大木正吾

    ○大木正吾君 長官に重ねて伺いますけれども、実は経済見通しの場合、一・五%の雇用増ということが織り込みになっていますね、この中に。私の見方からしますと、経済見通しの背景と、中身の雇用者所得の算出根拠にも絡むのでございますけれども、一・五%の雇用増ということになりましょうか、ことしは。
  111. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 経済見通しをいたしましたときに、いわゆる雇用者所得の計算をいたしましたが、そのときに五十三年度は一・五%ぐらいの雇用増というふうに計算をいたしておるわけでございます。まあ算術にいたしますと五十五万人ぐらいの雇用増でございます。大体五十五万と申しますと、ほぼそのぐらいになるのではないかと考えておるわけでございます。
  112. 大木正吾

    ○大木正吾君 これは通産大臣、労働大臣、ともどもに伺いたいのですけれども、いずれにしましても新しい予算の背景の経済政策、経済見通しは、雇用問題をきわめて重要視するということが重ね重ね今国会でも、経済演説の中にもございましたし、総理のお話の中にあったわけですが、その関係でもって私が見ていきますと、どうも今度の通産省の出します法案、特定不況業種関係の問題につきましては、雇用問題というのは常に結果論として後追い問題で処理されている、こういう感じがしてなりませんので、ぜひこの問題の法案の審議の際には――私の判断では一・五%雇用増はむずかしい、こういうふうに判断します。プラス五万が恐らくマイナスで一%増、あるいはもっと〇・何%増ぐらいになってしまう、こういう感じがいたしますので、その辺の見通しについて労働大臣あるいは通産大臣、総理等からの見解を聞きたいわけなんですけれども、どうしてもこの雇用問題というものを重視するとはマクロで言いながら、やっていることは企業の問題ばかりやっている、こういう感じがしてなりませんので、その辺、総理の見解を聞かしてもらいたいんですが。
  113. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 実は、いま御指摘になりました問題がやはり商工委員会でも大きな問題になっております。しかしながら、この構造不況業種の状態というものは非常に深刻であります。今回、政府は予算を中心に積極的な内需の拡大策をとっておりますので、これによりましてある程度の産業全体の操業率は上がると思います。それによってある程度はこの構造不況業種というものはよくなるとは思いますけれども、何分にもオイルショック以降の経済情勢の変動が激しいものですから、やはり先ほど申し上げましたような相当大幅な設備の廃棄ということはどうしても必要だと思います。それじゃ、雇用問題が起こるから設備の廃棄をやめたらどうかという議論もあるとは思いますが、そうなりますと、現状では構造不況業種全体が非常に深刻な打撃を受けまして、ひいては国民経済全体にも大きな影響が出てくると、こういうことでございますので、将来を展望しながら、ある程度の過剰設備の廃棄ということはやむを得ないのではないかと考えております。つきましては、雇用問題が非常に大事でございますから、その点につきましては、先ほど申し上げましたような十分な配慮を払っていきたいと考えております。
  114. 藤井勝志

    国務大臣(藤井勝志君) 現在並びに直面する厳しい雇用情勢を考えますと、雇用問題というのが当面の最大課題であること、不況脱出と同等でございます。ただ私は、いまお話がございましたお言葉を返すという意味ではございませんが、むしろ雇用問題を重視しておるがゆえに、とりあえず特定不況業種離職者臨時措置法というのが先に生まれて、雇用問題、これは議員立法で各党一致しておつくりいただいたわけでございますが、そういう雇用対策の受けざらをまずつくって、そうしてどうしても産業構造の変化に対応して、そうしてこの質的な転換を遂げ、また設備のある程度縮小もやむを得ないと、こういった事態に対しましても特定不況産業安定臨時措置法においても雇用安定ということは条文に明記され、また設備の共同廃棄の問題、あるいは計画をつくるに当たっては労働側の意向を十分に反映をすると、労働省とも十分協議すると、こういったことに歯どめができておりますから、私は雇用問題については十二分に現在の政府で受けとめてもらっておると、こういうふうに信じておるわけでございます。
  115. 大木正吾

    ○大木正吾君 まだ聞きたい点ございますが、時間もありませんから、ちょっと関連しまして藤井さんに聞きたいのですけれども、実は職安行政ということだと思うのですけれども、最近出向社員という扱いが非常にふえてますね。この実態はどうなっていましょうか。
  116. 藤井勝志

    国務大臣(藤井勝志君) 現在、産業構造がこう移り変わりまして、具体的に申しますと、たとえば自動車産業の方に造船そのほかの不況産業から出向するという、こういう事例を私も聞き及んでおります。この問題は、やはり雇用安定制度を活用をして、そうしてふるわない事業主から、ある程度伸びておるというか不況が深刻でない、同時に労働者がまだ必要だというところへこれが異動する、出向するという、これは私は現時点においてはお互いの知恵の一つの使い方であると、結構なことであると。ただ、職業安定所あたりと――これは国がやるわけでございますが、そういう問題とはおのずから競合、相反しないでスムーズに自主的努力において転換されるということは時代の要請にこたえるゆえんであると、このように考えておるわけでございます。
  117. 大木正吾

    ○大木正吾君 出向社員の中で、出向先で賃金の半分以上もらっておる方は何%ぐらいございますか。
  118. 藤井勝志

    国務大臣(藤井勝志君) 具体的な問題のお尋ねでございますから政府委員をして答弁させます。
  119. 細野正

    政府委員(細野正君) お答えいたします。  包括的な何といいますか、出向全体の状況というものの把握はできておりませんけれども、御存じのように、雇用安定資金制度によって出向等を行われる場合につきましては、前職の賃金とほぼ変わらないということを条件にいたしておりますので、そういう運用で現在やっておるわけでございます。
  120. 大木正吾

    ○大木正吾君 ちょっと質問をそらしているんですけれども、私が聞いているのは、賃金が下がる下がらぬじゃなしに、どこの会社が負担しているか、その度合いを聞きたいんです。
  121. 細野正

    政府委員(細野正君) 現在、雇用安定資金制度の中でやっております事業転換等の雇用調整事業として行われる場合におきましては、出向先において賃金はもちろん払われるわけでございますけれども、出向させるもとの方でも賃金を一部負担するということを考えているわけでございまして、そういう意味では、両方からその賃金が支給されるということも前提にしているわけでございます。
  122. 大木正吾

    ○大木正吾君 どうも質問をそらしている感じがするんです。私の手元にあります資料ですと、前の会社が半分程度持って、派遣先の会社が半分程度持っている部分から派遣先が全部持っている部分を含めまして、藤井さんね、三七%の会社が大体出向の場合にそうなる、こういう数字が出ているんですがね。そうしますと、この出向社員の場合には、若い方が行って帰ってくる場合もありましょうし、あるいは将来会社の重役になる方々の場合もありましょうけれども、多くの場合が、さっき申した四十歳を超えてまして行ったら帰ってこられない、バイバイ出向という言葉がございますけれども、そういう方々なんですよ。ですからある意味じゃこれは退職につながるわけなんですね。そうしますと、私が思うのは、この出向の扱いということは私自身これは別に否定しません。否定しませんが、職安法四十四条との関係でもって、こういう問題をどういうようにお考えになりますか。
  123. 細野正

    政府委員(細野正君) いまお尋ねのように、向こうへ行ってその先で向こうの従業員になってしまう場合には、もう職安法四十四条との関係はないというふうに考えるわけです。なお、それまでの間の問題として考えてみました場合にも、いわば業として反復継続してそういう行為が行われているかどうかという点から見ますと、いわゆる労働者供給事業には該当しないのではないかというふうに考えているわけでございます。
  124. 大木正吾

    ○大木正吾君 ここに職安法があるんだけれども、「労働者供給事業の禁止」という項と「許可」とありまして、労働組合だけが四十五条によりますと労働者供給事業はできるんですね。労働組合と相談しているかしないかそれはわかりませんけれども、会社の人事部長や庶務課長同士でもって話し合ってやっていればこの法律に抵触をしませんか。
  125. 細野正

    政府委員(細野正君) お答えいたします。  労働者供給事業の禁止規定は、現に自分の従業員である者を他人に使用させることから発生する問題でございますから、向こうへ行ってしまった場合にはもう労働者供給事業という問題は起こらないと、こういうふうに考えるわけでございます。
  126. 大木正吾

    ○大木正吾君 これは重要な問題なんですけれども、向こうへ行ってしまったと、向こうへ行く過程のことを私は言っているわけですからね。しかも賃金が半分はこっちの会社と向こうと、半分ずつ持ち合っている場合ですね、そうすると、賃金を払っている会社の方にいわゆる身分もいっているという状態になるわけですから、要するにこっちが渡っていくときの状態について会社間だけでやることは違法じゃないかと、こう聞いているんですよ。
  127. 細野正

    政府委員(細野正君) いまお尋ねのその状態の中でおきましても、やはりこれが反復継続して業として行われているというふうに見ることはできませんので、労働者供給事業には該当しないというふうに解釈しております。
  128. 大木正吾

    ○大木正吾君 それはやっぱりおかしいですよ。そういう言い方ですと、業じゃないと言いましても、まとまって動いていることは間違いないんですからね。だからこの辺のことについて、私はもう少し法律的な問題について――出向が悪いとは言ってないんですよ。ただ問題は、その対象に追い込まれている方々は気の毒ですよ、一つはね。同時に、この安定法上の解釈について、労働省はもっと明確にしておかないと、これは労働省の外郭団体で議論した「週刊労働ニュース」という新聞があります。これは一月の討論会ですが、ちゃんと違反、法に触れるかもしれないということを含めて討論しているんですからね。大臣も週刊紙を見ているはずですから、それは検討した方がいいですよ。
  129. 細野正

    政府委員(細野正君) 「週刊労働ニュース」に出ております日経連の職員の方の見解というのは、むしろ職業紹介事業としてもうはっきり認めてもらってやらさしてくれたらどうかと、こういうお話でございまして、労働者供給事業の問題とはちょっと別個の問題じゃないかと思うわけでございます。いずれにしましても、私どもこの制度を実施する、雇用安定資金制度をやる場合には、その辺についての法律問題を十分考えた上で発足さしたということでございますが、なおいろいろ問題もございますので、御存じのように安定資金制度の場合には、労働組合ないしは職場の労働者の代表と協定を結んで実行すると、こういうことをやっているわけでございます。
  130. 大木正吾

    ○大木正吾君 こういったことがあり、私はむしろ、出向問題についてはこれで終わりますけれども、別にこれが職安法違反だからいけないと言っているわけではないんでして、やっぱり解釈をしっかりしてもらいたい。同時に、最近の雇用問題というのは地域ごとにまとまって起きますからね、そうすると、地方の自治体がやる場合が出てくるわけですよね。同時に労働省の出先の職安がやるでしょう。きのう志苫委員がちょっと質問しておりましたけれども、要するに、地方事務官制度問題という行政改革問題と絡みまして、やっぱり労働省の出先の方と自治体の方々と一緒になって地元の工場とか事業所の求人の状態と失業状態を調べまして、そこでプロジェクトでも何でも組んでいかなけりゃいけない、こういう感じを持っているんですよ。だから、その辺の問題については、あんまり簡単に割り切らないで、私はそういったことが十分できる状態をつくってもらいたい、こういう意味で申し上げているわけです。
  131. 藤井勝志

    国務大臣(藤井勝志君) 御指摘の趣旨は私もよく理解できます。したがいまして、すでに労働省といたしましては、職業安定所が世話人になりまして、各県の出先並びに地方自治体と一つの機構をつくって、地域雇用協議会、こういったもので緊密な連絡をとり、正確な情報をつかんで対応したいと、このように考えております。  また、先ほどからいろいろ出向の問題についてお話がございましたが、やはりこれは雇用者、労働者の労働条件に関する重要な問題でございますから、十二分に関係者の理解を得て、また労働組合、そのほかそれぞれの立場の人たちの同意を得てスムーズに転換できるように、配慮しなけりゃならぬ、このように考えております。
  132. 大木正吾

    ○大木正吾君 その話はこの辺で打ち切ります。  雇用に関連いたしまして、週休二日制度について先進工業国である日本がどういう状態か、藤井さんに聞きたいのですがね。週休二日制問題です。
  133. 藤井勝志

    国務大臣(藤井勝志君) 労働時間の短縮、週休二日制、有給年次休暇の消化の問題、こういった一連の問題は、われわれはどうしても今後前進をせなきゃならぬ。非常に時節は不況で厳しい環境でございますけれども、これが前進を図ってまいりたい。特に中央労働基準審議会の建議を去年の暮れにいただきまして、やり方は、やはり行政指導によってこれを推進するようにという、公労使の一致した建議を受けたわけでございますから、そういう線に沿うて積極的に今後努力したいと思います。  週休二日制の問題でございますが、一番これが実質的に週休二日制が取り上げられておるのは金融機関でございます。ただ、完全週休二日制、すなわち土曜、日曜に休むという、こういう週休二日制と、交代制によって、週に二日順番で休むというやり方でございますが、現在やっているのは、前者を、輪番で実質的に週二日休むということが、金融機関が一番普及率が高いということでございます。ただ、完全週休二日制ということになりますと、銀行が二日休むということが取引先との関係、まず何よりも銀行法の問題、銀行法の十八条でございましたか、これにも関連がありますし、手形法、小切手法そのほかにも関連がございますが、やはり関係機関とわれわれはずっと会合を重ねておりまして、完全週休二日制にいけるような方向にひとつ体制を整えたい、このように考えております。
  134. 大木正吾

    ○大木正吾君 村山大蔵大臣に聞きたいのですが、銀行と金融機関で週休二日制をやっていないのは日本とあとスペイン、ギリシャなどがあるんですが、大体先進工業国はほとんどやっているのですが、どうでしょう、これらの問題については。
  135. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 銀行の週休二日制の問題につきましては、何年前でございましたか、大蔵委員会で大きく取り上げられまして、これは閣議の検討事項にしようということで、週休二日制並びに定年延長に関する閣議において検討しているところでございます。一方、同じ問題を銀行法の改正と絡めまして、いま金融制度調査会の方でも鋭意検討しているわけでございます。金融制度調査会の方でアンケートを出しまして、ついでに申し上げますと、そこの審議委員は労働界の方、あるいは中小企業者その他それに関係する方が大ぜい入っているわけでございますが、アンケートをとりましたところ、やはりいまのところ国民的コンセンサスが得られていないということが、調査会のメンバーが大体確認しているところでございまして、今後さらに検討を続けていきたい。  特にアンケート調査で一番大きな論点になりましたのは、やはり中小企業が手形その他の関係で土曜日は休んでいないということが一つでございます。それから最近は、いろいろな住宅金融とか、あるいは消費者ローンが発達いたしまして、サラリーマンの人たちが条件の改定であるとか、いろいろなことの手続をするときに土曜日を利用する、こういうことが非常に多くございまして、そういう意味で金融機関に完全に休んでしまわれると非常に困ると、そういう答えが出ておった、それが合意が得られなかったという中身でございます。この問題は、しかし全体に通ずるものでございますから、なお今後とも検討してまいりたいと、かように思っておるところでございます。
  136. 大木正吾

    ○大木正吾君 総理に伺いますけれども、大体週休二日問題を実行いたしまして、週の労働時間を仮に三時間ぐらい短縮しますと百万人ぐらいの失業者が大体間接的ですけれども減る、こういう計算が一つあるのですよ。ですからどうですか、本当に雇用問題に対処するとするならば、ぼちぼち公務員の週休二日問題についても、六〇%程度の国民の合意ということが新聞記事にございましたからね、踏み切るお考えはありませんか。
  137. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この問題は政府が踏み切るとか踏み切らないとかと、そういうことでなくて、やっぱり世界的な流れであります。その流れの中でわが日本の経済界がどういうテンポで順応していくか、こういう問題だろうと、こういうふうに思うのです。政府企業につきましては、政府がもちろんそういう流れの中で順応していくということになりますけれども、基本的には民間が、まあなだらかにその流れにさお差していくと、こういうことじゃないかと思うのです。急にこれをごしごし進めるということになりますと、これは賃金問題、いろいろの問題と絡まりまして、結局生産コストの上昇、こういうことになり、わが国の国際経済力と競争力というようなところにまでいろいろ問題を持ち込む問題ですから、これはいずれにいたしましてもなだらかな対応ということが大事な考え方になってくるんじゃないか、そのようにとらえております。
  138. 大木正吾

    ○大木正吾君 これは衆議院の方では大蔵委員会で週休二日問題に対する小委員会をつくって結論出していますね。そして全国銀行協会連合会の会長中村さんが、去年の三月に週休二日制実施に踏み切るような善後措置を講じる、こういう通達を出していますね。それから同時にOECD加盟国でもって恐らく週休二日やっている国は九割を超えていますよ。そういった状態のときに、総理、むしろ私はおっしゃったことは逆だと思うのです。日本は週休二日もやらない、先進工業国でありながらやってないから、労働コスト問題についてもいわば低くつく。だから世界的に大変日本からの輸出が多い、こういう話が出ると思うのですよ。だから、むしろ私は国際的な非難を浴びる前に、国内的にこういった問題については踏み切るべき時期だと、いまは最適だと、こう考えているんですが、どうでしょうか。
  139. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、この問題が世界のそういう大勢にわが日本経済界としても順応していく、こういうことは好ましいことだと、こういうふうに考えているんですが、これを人為的に、また急激にやるというといろいろ摩擦現象がある、なだらかな順応が一番いい、こういうことを申し上げておるわけなのです。
  140. 大木正吾

    ○大木正吾君 なだらか、なだらかという話は十年ぐらい聞いてきたんですけれどもね、ぼちぼちもうやるべき条件ができているんですよ。むしろやらなければILOの総会等でもって、また日本政府側の委員の方々も恥をかくし、労働界の私たちも恥ずかしい思いをするんですよ。ですからぼちぼちこれは決断してくださいよ。
  141. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 決断、決断とおっしゃいますが、政府関係の部門におきましては政府は主導的な役割りを持つことは当然でありますが、これは事は大体において民間の問題でしょう、民間経済界がそういう流れになってくる、こういうことになれば、これは政府におきましてもそういう流れの中で共同な動きをする、こういうことになることはこれは当然そういうことだろうと思いますが、とにかくこの問題を余り急激にやりますと、それは企業のコストアップ、こういう問題になる。それはいまとにかく不況、不況ということで大変なことでしょう、その不況な企業にさらに人件費圧力を加重する、こういうことにもなってくるので、この辺はなだらかにいくべきだということを言っているんで、御理解いただきたいと思います。
  142. 大木正吾

    ○大木正吾君 総理はのどを痛めているというものだから少し遠慮しているんですけれども、銀行法の十八条問題もこれは政府機関の問題ですね。基準法の改正問題も労働省が所管するやっぱり政府内の問題ですよ。公務員の週休二日問題もそうでしょう。いま最大のネックは何といったってこの銀行法十八条、公務員問題等がネックなんですからね。だから総理の決断を求めているわけなんでして、何か公共事業をたくさんふやしたり、そして景気浮揚をしようといったって、民間の経営者の方々は現在の人員でもって時間外労働をさして、生産性を上げて、もって全部やっていくんですからね。ですから、そういったことに対して政府がやっぱり何らかの、誘導じゃなしに法律でぴしっとこの際週休二日問題は実行するというふうにすれば、私は失業問題は相当に、宮澤さんも苦労しているでしょうけれども、やっぱり四、五十万人は年間中には何とかいい方向にいく、こういうふうに考えているけれど、どうでしょうかね。
  143. 藤井勝志

    国務大臣(藤井勝志君) 労働時間の短縮、週休二日制問題の実現というこの目標は私は断じて後退してはならない、このように考えております。それはやはりお互いこの世に生まれてゆとりのある暮らし向きというこういう考え、同時にまた、いまお話がございましたように、やはり日本人の働き過ぎという、こういうことが外圧の背景になっているということも聞き及んでおります。同時にまた、これから経済はいわゆる成長が高度成長とは変わってきている、こういうことになると幾ら雇用拡大を努力しても限界があると思うのです。したがって、仕事を分かち合うという、こういう面においてやはり労働時間の短縮という、この問題に向かって前進すべきである、このように考えるわけでございますが、ただ、いま総理からもお話がございましたように、日本は現在不況のどん底で、零細企業も現在あえいでおる、こういう状態において、コストにも直接結びつくわけでございますから、これがなだらかにいくようにということで(「なだらか、なだらかと言ったってわからぬ、坂じゃないか」と呼ぶ者あり)まあちょっとお聞きいただきたいんですが、急激に立法化によってやるということについて、いろいろ議論が中央労働基準審議会においてもなされまして、去年の暮れ公労使一致して行政指導によってやってくれ、こういうお話がございましたから、労働省はこの予算が一応御審議が済み次第、各産業別あるいはまた地域別、それぞれチームをつくって、そしてどう進めていくかということ、どう行政指導をしていくかということについてまともに取り組みたい、こういうことに考えておりますから、どうかひとつわれわれの意のあるところを御理解いだだきまして、いろいろ御鞭撻は十二分にやっていただきたいと思いますけれども、いまのような運び方でいかしていただきたい、このようにお願いをするわけでございます。
  144. 大木正吾

    ○大木正吾君 大体これは私も前にやっていた仕事の関係もございまして、六、七年間何回となくその話を聞いてきたんですよ。ただ、せっかくのこういった大きな予算を組みまして、そして失業を防ぐとか景気をよくしようとか――藤井さんね、景気の中には労働者の頭数あるいは所得というものは入るでしょう。そういったことを考えていきますと、きのうもうちの福間委員が質問したワークシェアリングという言葉がヨーロッパでははやっていますけれども、どうなんですか、本当にもうぼちぼち、これは国会で予算が終わったら指導しようということではぼくらは困るのですよ。それではっきりどういうふうな形に一応するか聞かしてもらいたいと思うのですよ。同時にそれを土台にして法改正をどうするか、銀行法十八条を含めて聞かしてもらいたいと思うのです。
  145. 藤井勝志

    国務大臣(藤井勝志君) 私がいま予算の御審議を願っておる最中と言うのは、私自身が御案内のようにこうくぎづけになっておりますし、すでに事務関係者には作業の開始を命じております。したがいまして、そうだらだら、のんべんだらりとやるという考えは藤井労働大臣持っておりません。したがって、これから大いに前進したい。ただ、法律でどんぴしゃりとやるということが現時点において適当でない、行政指導でやりたい、具体的な構想につきましてもまだ事務的に煮詰まっておりませんから、この場で私が思いつきで申しげ上るということはどうかと思いますが、ただ私は、先ほど申しましたような時間短縮の必要性については、皆さんと同じ考え方の上に立っているということは御了解いただけると思いますので、しばらくの間お時間を拝借したい、決して後退はしない、こういうことを申し上げる次第であります。
  146. 大木正吾

    ○大木正吾君 これは理事会に諮ってもらいたいのですが、私は、労働大臣がもしそういった行政指導を本当にやると言うのだったら、大臣、一日ぐらい予算委員会を休んでもらって、相談してもらって、そしてどういうことをやるかということの誠意を、大体四月の三日ぐらいまでやるでしょうから、その間に示してくださいよ。総括時の議論がまたございますから、とにかくこの予算委員会の最中にそういったことを示していただきたいということを委員長に特にお願い申し上げておきます。  次の問題に入らしていだだきますが、これは実は貯蓄性向に絡む問題でございまして、長官に伺いたいんですけれども、五十二年度の経済白書の二百二十八ページ下段から二十九ページにございますが、村山大蔵大臣からもきのう御答弁があったのですけれども、預金がだぶついている、こういう話がございまして、福田さんの方からは公債をたくさん出すから預金がなくちゃ困ると、こういう話もございました。どうも私はその御答弁を聞いていますと、この経済白書の中にはこういうことが書いてありますね。「指摘したように家計部門における現在の高貯蓄率は、老後、住宅、教育等、将来財の分野で」云々という言葉がございまして、やっぱりストックの不十分さ、福祉の不十分さが個人的にやっぱり貯蓄でもって解決、こういう意味のことが書いてあるわけですね。ですから、総理がおとといでしょうか答えた問題とはちょっと意味が違うのですがね。貯蓄率と景気の関係について長官の意見を聞きたいのです。
  147. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 貯蓄の目的は何かというアンケートを何度もいたしますけれども、いつもただいま御指摘のような答えが出ております。これはもうかなり長いことさようでございますが、そこで貯蓄率と景気の関係でございますが、最近で申しますと、昭和四十年ごろから石油危機までの間ぐらいの期間は貯蓄率にいたしますと一七ぐらいまで下がったと申しますか、逆に消費性向で言いますと八二、三近くまで行ったことがあるわけでございます。それが四十八年の石油危機を契機にいたしまして非常に貯蓄率が上がってまいりまして、二五まではたしか行ったことがございます。それからまた少し下がり始めまして、ただいまのところ二三とか四とか、この辺で恐らく、何と申しますか、二五というような異常な事態はほぼ終わったのではないかと見ておりますが、概して申しますと、やはり一種の経済の先行きがいいといいますか、成長が早いときには、そうでない非常な不安時に比べますと貯蓄性向が下がっていくという傾向がございますと思います。
  148. 大木正吾

    ○大木正吾君 実はこの要旨はこういうことだと思います。貯蓄率と資金循環のバランスの崩れという問題でございまして、大体高成長期には企業の方に金が流れる、低成長期なり不況のときには、政府は今度の財政規模を大型に組みましたけれども、政府関係の資金に流れる、海外の方に向く。そういう関係等を考えまして、私自身むしろ貯金者は縦貫道路とか港をつくってくれと、こういう気持ちは余り持っていないと思うのですよ。やっぱり自分の子供の学校のためにとか自分の老後の施設とか、そういったものに使ってほしい、こういう気持ちを持っていると思うのですよ。ですから、公共投資のあり方なりバランスを含めて、この予算の中身はきわめて私は不満ですけれども、これからどういうように対応されますか。
  149. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 四十九年には二五・五までございましたのでつけ加えさしていただきます。  それで、ただいまのお尋ねは私はごもっともだと思いますけれども、貯蓄をする方の立場を考えますと、老後とかいろいろございますが、その貯蓄がどのように公共の立場で使われるかということは恐らく二義的な関心事ではないかと思います、自分のいろいろな必要から貯蓄をするわけでございますから。しかし、そのような国民の貯蓄の運用としましては、やはりそのときどきの国民経済の広い意味での重点事項に使われていくということがよろしいのではないか。つまり、それはある段階では道路であり新幹線でありというようなことでございましょうし、またある段階ではもう少し生活関連の方に重点を置いていくということ、そのときそのときの国の需要で異なってくるのではないかと思いますが、大きな傾向は生活関連、生産と生活をちょっと分けにくい点もございますけれども、概して生活関連の方に国民の貯蓄を国の責任において運用するという傾向になってきておるのではないかというふうに考えております。
  150. 大木正吾

    ○大木正吾君 一般質問でまたそのことをやらしてもらいます。  最後に、これも長官にまた聞きたいのですが、本年度の雇用者所得の問題なんですけれども、経済見通しにございますね、一一%。これについて狂いなく行くでしょうか、雇用者所得。
  151. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 雇用者所得は、昭和五十三年度一一%を見込んでおるわけでございますが、これは先ほどお話のございました雇用の増が一・五であるということ、それから一人当たりの所得としては九・四ということを見込んでおるわけでございます。ちなみに五十二年度を申し上げますと、おのおの該当いたします数字は一・四、一〇・五でございまして、雇用者所得としては一二・一を見ておるわけでございます。
  152. 大木正吾

    ○大木正吾君 長官のいまのお気持ちをちょっと聞きたいのですが、ぼちぼち民間でも賃金の交渉が始まっているような新聞報道ですけれども、端的に申し上げて、けさの新聞ですか、鉄鋼が五%という話がございましたですね。あの五%ということだったらとてもじゃありませんけれども長官の見通しにはいかぬでしょう。
  153. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 大木君、時間が来ております。
  154. 宮澤喜一

    ○国務大里(宮澤喜一君) これはもうよく御承知のことをくどく申し上げるようで恐縮でございますけれども、雇用者所得そのものは全体の個人所得の大体六割ぐらいを占めております。それから雇用者所得の中で、いわゆる春闘の対象になります時間内の労働、これがほぼ五〇%でございますから、春闘のペースは非常なペースメーカーになることはもとよりでございますけれども、全体の個人所得から申しますと大体三割ぐらいということになるわけでございまして、春闘のベースアップを政府が云々することは最も慎まなければならないことでございますから、それについては国会でも申し上げたことがないわけでございますが、私ども全体としてはこの程度の雇用者所得、個人消費を見込むことは無理ではないのではないかという感じを持っております。
  155. 大木正吾

    ○大木正吾君 終わりますけれども、福田さんの抑制政策でもって、個人は全部自分の生活防衛に走っておるし、企業はなかなか投資をしないわけですね。物価だけがこうずっと下がりまして、大変な問題が、失業問題とかたくさん出ているわけですね。そういった意味で、私は一般質問の中に問題を残しますけれども、ぜひ、物価一刀斎という言葉があるエコノミストの中から出ているのですけれども、もう少しバランスをとった経済政策の展開をしてもらいたい。特に雇用というものは働く労働者の失業につながるわけですから、いわばサラリーマンは失業したら自殺行為ですからね。その問題について最後にひとつ福田総理に、この問題については五年もかけないでしっかりやるのだ、こういった話を聞かしてくれませんか。
  156. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 経済抑圧というような政策ばかりとらないでバランスをとってやれ、こういうお話ですが、石油ショック後のこの四年間を回顧してみますと、これは相当順調に来ているのじゃないでしょうか。初期にはインフレ抑圧をやったわけですよ。あの抑圧ができなかったら今日一体どういうふうになっておるか。不況になった、不況になってこれを不況対策を一体インフレ下においてとれますか。そういうようなことを考えますと、いろいろお気持ちはありましょうけれども、大体私は大局によってそうまずい行き方ではない、こういうふうに思いますが、いろいろ知恵を出してもらって万全を尽くしたいと、かように考えます。
  157. 大木正吾

    ○大木正吾君 納得できない点はまた一般質問でやらしていただきます。終わります。(拍手)
  158. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で大木君の総括質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  159. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、黒柳明君総括質疑を行います。黒柳明君
  160. 黒柳明

    黒柳明君 初めに、総理、中国問題をお聞きしますが、政府交渉の重要な危機なものですから、わが党の訪中団も側面的に何かお役に立つことがあればという態度で終始一貫しまして、昨日ああいう成果が出たわけでありますけれども、まず、あの成果につきましてひとつ総理の評価を承りたいと思います。
  161. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 矢野書記長が北京に出発するに当たりまして、ごあいさつに来てくださったのです。その際、私は、矢野書記長に伝言というわけじゃございませんけれども、私の日中平和友好条約問題に対する考え方、これを申し上げたわけなんです。  その一つは、双方が満足し得る状態でなるべくこの条約を早く締結したい、こういうふうに思っていること、これが一つ。それからもう一つは、日本はいずれの国とも仲よくしていくという考え方、これは基本的な国の方針として考えておるんだと、この点よく御理解おき願いたいと、こういうことを申し上げたわけなんですが、新聞、テレビ等の情報を見ておりますと、矢野書記長におかれましては、私の示しましたこの考え方を相当的確に中国要人に伝えていただいておる、こういうふうに存じまして、私は、矢野書記長のこの行動に対しまして大変感謝を申し上げておるわけなんです。  それに対しまして、中国側の方からいわゆる四カ条というはね返りがあったようでありますが、まだ、私は、これは北京大使館からの公電というような形で見たわけでもありません。新聞報道等によって承知しておることでありまするし、その四カ条の前後にいろいろまたやりとりがあったことだろう、こういうふうに思いますので、その四カ条だけを見まして私がこれに対しまして発言をするということはまだ妥当じゃない、こういうふうに思います。いずれにいたしましても矢野書記長が二、三日中にお帰りになる、そのお帰りになられました矢野書記長のお話を承るということ、これは大変日中平和友好条約を進める上において参考になることであろう、このように期待しております。
  162. 黒柳明

    黒柳明君 まだ課長も行っておりますし、帰ってきてからいろいろ聞いていただくということで、それを待つよりほかないと思いますが、少なくともあの四項目につきましては、これは公明党じゃないんだよ、福田総理、園田外務大臣にですと、わざわざ断りも入って述べたことでありますので、いろんな厳しいとき、むずかしいときでありますから、立ち入ってのコメントということじゃありませんで、大局観に立ってのあの四項目の御評価もしくはコメントするようなことがありましたら、ひとついただきたいと思いますが。
  163. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま申し上げましたように、あの四カ条というのは、私は、新聞報道等で拝見しております。おりまするけれども、あの前後にいろいろまたやりとりがあったことだろうと思うんで、そういうことと一緒にこれは考えてみるということにいたしませんと、片言隻句をとらえて物を言うということになるおそれもあるんです。そういうことを考えますと、書記長がお帰りになって篤とお話を伺いまして、これをどういうふうに理解するかということを考えてみた方がよかろう、いまこの段階で私がコメントするということは、これは日中平和友好条約を円満に推進する、締結を推進するという上に私は障害になるおそれもなきにしもあらずと存じますので、お許しを願いたいと思います。
  164. 黒柳明

    黒柳明君 少なくとも、中国側からボールは日本に投げ返されたんだと、こちらが今度は返事をする番だと、こういう認識はお持ちでしょうか。
  165. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) とにかくこの四カ条問題は、これは矢野書記長から、あれが表明されたその前後のいきさつなんかをよく伺った上で申し上げた方が誤解を招くおそれがないんじゃないか、そのように考えております。
  166. 黒柳明

    黒柳明君 よくわかるような気がします。そうすると、こういうことでしょうか。いま申しましたように、政府中国課長が行っておりますし、また当然帰ってきていろいろな報告もすると思います。まあ矢野の話も聞きたいということでありますので、またお聞きいただくかと思いますが、それらの話を聞きまして当然一つの決断をするんだと、こういうふうなお考えはお持ちでしょうか。
  167. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま日中間では平和友好条約のこの手順、段取り、これをどういう手順、段取りで交渉するか、こういうことを話し合っておるわけであります。その途上において、矢野書記長の訪中、これが実現をする、私はこれはそういう段階において非常に貴重な資料になる訪中であったと、こういうふうに理解いたしまするけれども、なお矢野書記長の話も十分承ってみたいし、また北京に駐在する佐藤大使――佐藤大使も佐藤大使なりにいろんな行動をしておりますので、その報告もまた聞かなけりゃならぬし、また佐藤大使がさらに今後いろいろ行動することがあるだろう、そういうふうに思っておりまするけれども、その結果もまた聞かなけりゃなりませんし、まあいろいろこれからさらに積み上げていく問題があるんです。それらの問題全体を総合いたしまして、日本側の最終的な考え方を固めたい、このような考えでおります。
  168. 黒柳明

    黒柳明君 あそこの文章の中に、早い決断を望みたいと中国側からこういう申し出が出ておりました。まあ決断と言いましても、いまの答弁を聞きますと、いろんな情報を総合して決断ということになるかと思いますが、少なくともあの四項目、これは公式に、野党を通じてではありますが、中国政府からの見解表明でありますので、少なくとも決断まで至らない、まあ決意ですね、条約締結に対しての決意を一段と深めたと、このぐらいな推測は、私、してもいいでしょうか、総理の腹の中はいかがでしょうか。
  169. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、前々から申し上げているんですが、それから矢野書記長の訪中に際しましても申し上げたわけですが、日中双方が満足し得る状態においてこの条約はなるべく速やかに締結したい、こういうことでございますが、締結交渉の機も相当熟してきたように思うのであります。今後とも、さらに努力したい、このような決意でございます。
  170. 黒柳明

    黒柳明君 外務大臣、こちらからその訪中の申し込みがなくして、向こうから来ることを歓迎すると、こういうことは外交儀礼上非常に異例なことじゃないかと私思うんですが、これはどうなんでしょうか。
  171. 園田直

    国務大臣園田直君) ありがたいと思っているところでございます。
  172. 黒柳明

    黒柳明君 いや、異例であると思うんですけれどもね、外交上。
  173. 園田直

    国務大臣園田直君) 異例でございます。
  174. 黒柳明

    黒柳明君 何か自信がないような……異例ですよね、これは。となれば、やっぱりいろいろ判断する材料もこれから来るでありましょうけれども、それについては可及的速やかに、まあ一たび国会で三月中にもという発言がありました、情勢は変化しているんだと思います。時期についてはまだと思うんですが、少なくともああいう異例なぐらい前向きに歓迎するという意思表示があったわけですから、それについて外務大臣としましても何らかのやっぱりコメントをする、それが中国側が言っている、福田さんと中国の事情はわかるけれども、友人になってくれりゃいいんだという深い含蓄を込めた言葉である、私が言うまでもなく、もうこんなことは知っているかと思いますけれども。この異例なぐらい積極的かつ友好的な歓迎について、これはどういうふうに受けとめているか。スケジュールぐらいはもう考えなきゃならないんじゃなかろうか、こう私は思うんですけれども、それはどうでしょうか。ありがたいと言うだけでは、これは外交儀礼上済まされなんいじゃなかろうか。これからのスケジュールはどう考えているか。あるいは、これに対して速やかに対応しなきゃならないんじゃないか。その点いかがでしょうか。
  175. 園田直

    国務大臣園田直君) いま御承知のとおりに、交渉再開の段取り、手順に及んでいるわけでありまして、北京の佐藤大使の方では廖会長、鄧小平主席、韓念竜副部長会談をやっている段階であります。  そこで、矢野訪中団が行かれて、これまた一つのあれが出てきたわけでありますから、私の訪中についてもありがたいと思っておりますが、これに対するコメントは、直ちにその後の手続き、段取りに影響することでございますから、いま総理の言われましたように、総理も向こうも早く締結をしたいということだけは一致しているわけでありまして、十分検討いたしまして段取りを進めていきたいと考えております。
  176. 黒柳明

    黒柳明君 中国側が、交渉回復について全く障害は中国側にはないと、こう言っておりますが、日本側はあるんでしょうか。
  177. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本側にも特別障害があるわけではありませんので、今後、相互理解の上にだんだん段取りを進めていきたいと思っております。
  178. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、総理、もう障害がなくて、これだけ向こうの意思が出た、それに対してこちらが、まあ時期がかかってもしょうがないでしょう、いろんな情報を検討してということについては、万々が一のことがあっても、昨年の一月、何がどう起こったかわかりませんが、どこかの歯車がこう変わりましてああいう結果になったわけでありますが、少なくとも早期に条約締結に向かって政府は行動を起こす、こういう理解を含めての、先ほど述べた前からの決意は変わりないんだと、こう理解してよろしいですか。
  179. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 申し上げておりまするとおり、双方満足し得る状態で、なるべく早くこれを締結する、こういうことでいまその手順、段取りを詰めているわけなんです。手順、段取りをいま慎重に詰めておりますが、それはなぜ慎重かというと、交渉を始める、始めてそれがまた停滞をするというようなことでは、これはかえって交渉自体に支障がある、こういうふうに考えますので、交渉を始める、始める以上はひとつ気合いを合わしておこう、こういうようないま話し合いをしておる、こういうことでございまして、私どもは、双方満足し、両国民から祝福される条約だというような形でこの条約が結ばれるということを念願して、その締結を急いでおる、こういうことであります。
  180. 黒柳明

    黒柳明君 最後にお尋ねしますけれども、早期と言いましても、相当両者の呼吸も合っていると思うんですね。事務レベルというよりも、私はもう事務レベルを飛び越えていかなきゃならないという感じもするんですけど、まあそれは政府の考えがあるかと思いますけれども、ひとつ本国会中に総理の腹の中は何とかゴールにたどりつきたいという、きのうの中国からの四項目の提示を見てそういう感じを強くしたと、こういうふうに私推測したらこれは誤りでしょうか、いかがでしょうか。
  181. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだその辺の手順、段取りを詰めている、そういう段階でありますので、まあいついつまでにどうするというふうなことは、今日この段階ではひとつ控えさしていただきます。
  182. 黒柳明

    黒柳明君 今度は、派閥のことでひとつ、お眠い方もあるかと思いますが、お聞きいただきたいと思うんですが、総理、派閥断固まかりならぬと、解消論者の最大右翼でありますが、新聞の批判、国民の批判、当然のことであります、永田町から全国に散らばった。まあ党営選挙、これは必ずしも悪いということじゃないと思います、利点もあるかと思います。しかしながら、最近、御存じのようにマスコミは旧という名前も消しましてね、完全に前の福田派であり田中派でありということで批判が集中しております。間もなく総裁選が迫るにつれて、また派閥活動がふえるんじゃなかろうか。いかがでしょう、総理、この傾向に対して総理はどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  183. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は長い間自民党におりまして、自民党内の派閥解消、これを提唱して今日に至っておりますが、私が自由民主党総裁になった。私は自由民主党総裁になりまして、党に向かって申し上げているんですが、私の党総裁としての責任は自由民主党の改革といいますか、体質を改善することであると。第一は派閥の解体である。これに関連いたしまして、党の党首ですね、総裁の選挙は党員全体でこれをやる。それから党の財政、これはいままで何と申しましても企業献金、これに偏り過ぎておる。私は企業献金全部をこれ排斥するという考えじゃないけれども、今日の自民党の財政は余りにも企業に偏重し過ぎている、これを改革する。また、党の組織が国会議員、その他地方議員、それに関連を持つ一部のいわば政治プロ、そういう人に限定されておる、これを国民次元に引き広げるんだと、こういうことを目指していろいろいまその手順を進めておるということでございますが、総裁選挙の問題と派閥解体の問題とが絡まってくる傾向、これがあるんです。  派閥は、一度、とにかく去年の初めに大体派閥というものは看板をおろしました。おろしましたが、さあ総裁選挙がことしの暮れに迫る、こういうことになってきますと、またその看板を、実態は半分ぐらいしか解消されなかったかもしれませんが、それがむくむくともう少しふくれ上がってくるという傾向を示しておる。私はこの傾向を非常に実は党総裁として憂慮しているんです。そういう実態ではありまするけれども、その実態をそのおもむくがままに許すことはできない、こういうふうに考えまして、派閥の解体、こういう問題につきましては今後ますます神経質に取り組んでいきたい、そういう考えであります。
  184. 黒柳明

    黒柳明君 くしくも総理大臣が半分ぐらいしか解消と、そのとおりなんです。私、この実態を述べる暇がないんですけど、要するに派閥解消とは名ばかり、派閥の何とか会に入れたところはまだ厳然として残っているんです、金集め機関が。  ここを私やろうと思ったが、時間がないんで、そこで私は閣僚の皆さん方に、いま総理が断固として許さないと、こういうところにお出になって批判を受けている方がいらっしゃるわけでありまして、私、少なくとも反対党であります、私が云云することじゃありませんけれど、まあこんなことを言って失礼かと思いますが、自民党の長期低落に歯どめをかけるためにも、私は行政の頂点にいる閣僚の皆さん方だけは李下に冠を正さず、国民、マスコミの批判を受けて、そして総裁選にまたかというようなことがあったら、これは自民党のためにうまくない。構わないですよ、公明党が伸びりゃいいんですから、自民党が低落しても。だけど私はそういうわけにいかない、マジョリティーを持っている皆さん方ですから。さらに言うならば、やっぱり長期的に見ましては閣僚としてそういうところに出るべきじゃない。これはやっぱり日本の政治に対する不信がつのるばっかしです。私たちに対しても国会不信の一つの遠い因をつくるでしょう。そういうことについてどうお思いになるか、ひとつ荒舩行政管理庁長官、どうでしょうか。
  185. 荒舩清十郎

    国務大臣荒舩清十郎君) お尋ねがありましたとおりでございます。総裁が派閥解消を唱えておりますので、私もそれに従うつもりでございます。
  186. 黒柳明

    黒柳明君 そのとおりですね。小沢厚生大臣、いかがでございましょうか。大体聞かれると思ったでしょう、各代表ですから、しようがない。
  187. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 私は、もう去年の四月二十六日、旧田中系の七日会というものは解消になりまして、それ以来全く派閥の会合というものはございません。ただ、官民合同の研究会を私やっておりますので、これは官民合同でございまして全く政治家の派閥とは関係ありません、政治団体でもありませんので。それにはちょいちょい顔を出しますけれども、いわゆる政治家の派閥会合というものには、私どもはいまのところは総理の方針に従って慎んでおるわけでございます。
  188. 黒柳明

    黒柳明君 だから、そういう理論をぜひ――率直に私は言っているんですよ。これはもう一つの形を変えただけの――田中派といま呼ばれているじゃないですか。そこにやっぱり出ることはうまくない、日本の全体の政治不信を招くことに、それを総理がいま半分とおっしゃった中にも含まれるんではなかろうかと、こう思いますよ。小沢さんは出てもいいと、こうおっしゃる。名前だけ変えて実体は同じなんですよ、全く。  その次、どうでしょうか、福永運輸大臣
  189. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 私は、今度の総裁公選について、総裁公選に関する委員会の委員長でもありました。また、初代の総裁公選の選挙管理委員長ということでもございました。いま多少違う仕事をしているということでございます。そういうことをいろいろ当時は新聞等でも予想されまして、果たして福永たちがそういう規程をつくることができるかというようなことで大分ひやかしも受けたのでありますが、私は福田総理の所信を貫き、全然考えは同じでございますから、規程をつくりまして、それで、人はいろいろに言いますけれども、私は私なりにまあまあという要領でつくったつもりでございますが、早くできたら早くできたで、そんなに早くやったけれども実行がうまくいくのかと、次に話が活字でもあらわれておりましたが、私は、なかなかめんどうなことであるけれども、これはどうしてもやらなきゃならないということで、実行についての諸般のことを大いに進めておりまして、いまいろいろやっておりますが、手順はおおむね私のときに決めたのをさらに後を継いでもらっているわけでございます。  こういうような立場でございますから、その後も派閥的活動というようなことは私はすっかり忘れてしまったというか、もうそういうことは念頭にないんです。私は、もともと吉田茂とか池田とか、いまは大平派というように、印刷物を見ますとたまにそういう文字を見るのであります。しかし、いまや福田総裁のもとにおいて渾然一体をなしたわが党の姿の現出のために大いにやらなければならない。閣僚の中にも、そういうわれわれとグループが同じように言われておる人があと若干おりますが、そういう人たちは私以上にさらにそういうことには透徹している人たちだと、こう思います。まあ一つのグループの仲間の一人として私は同じような立場の人たちについても申し上げるのでございます。いろいろ御心配いただくことは恐縮でございますが、必ず国民の期待に沿うように私たちはやりたい、そのように考えております。
  190. 黒柳明

    黒柳明君 マスコミのあれによりますと、大平派の宏池会だけが事務所があって、ほかのは一応ないんです、事務所は。私も行ってきました。ありますね。まあそういうことはやめましょう、実態は。  櫻内建設大臣、いかがでしょう。
  191. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 私は、もう皆さん方がよく御承知のように、建設大臣だけを務めるのに精いっぱいなのに、もう一つ国土庁長官ということで、もうそれで手いっぱいでございまして、どこへも顔を出す余裕もなく、専心福田内閣閣僚として務めておる次第でございます。
  192. 黒柳明

    黒柳明君 最後に、河本通産大臣
  193. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私どもは、いま自由民主党の最大の課題は、国民から信頼される党の近代化をするということだと心得ております。いま党の近代化ということは、組織、それから資金、政策、幾つかの面にわたるわけでありますが、昨年の初め以来、この問題に精力的に取り組んでおるわけでございますが、ただ、そういう方向で党の近代化、派閥の解消には当然努めておるわけでありますけれども、その間やはり親しい人たちの仲間で政策研究をする、そういう程度のことは一向差し支えないのではなかろうか。しかし、仰せのように派閥の解消ということは、これはもう党の基本方針でございますから、全く賛成でございます。
  194. 黒柳明

    黒柳明君 お聞きのとおりです。私、これは笑い事じゃやっぱりないと思うんですよ。短期的にはこれから自民党内閣は続くでしょう。中期的、長期的にはわかりません。その間だけでもせめて政治不信を解消するために、国民にこの場を通しまして、総理大臣、やっぱり全閣僚に対して、ともかくいろんな意見をお持ちの方がいます。あるいは総理の言うとおりやっているんだと言う方もいます。そういうまちまちの閣僚がいらっしゃいますけれど、少なくともいわゆる前向きの人もいらっしゃる。ところが言いわけされる方もいらっしゃるし、自分の悪に気づいていない方もいる。ひとつ総理大臣、ここの場を通しまして、たとえ自分のやっていることが悪いと思わなくても、マスコミを通じて国民の批判があることは間違いないんですから、それが総裁選のまた批判につながる可能性があるんですから、出るな、そういう批判を受ける場には一切足を入れるなと、こういう勇気ある発言を全閣僚にして、それをまたひとつ政治不信の自民党長期低落に対する歯どめとする、そのぐらいの勇気をお持ちでしょう。
  195. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私が常々閣僚にお願いし、また、それを繰り返さなきゃならぬような立場にあるわけでございますが、私にかわってそのようなことをおっしゃってくださいまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。(笑声)
  196. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 黒柳さん、ちょっと大蔵大臣から発言を求められましたので……。
  197. 黒柳明

    黒柳明君 どうぞ。
  198. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 黒柳委員がいま質疑中、恐縮でございます。  ただいま日本銀行総裁から、日本銀行政策委員会において公定歩合を〇・七五%引き下げて三・五%とし、明十六日から実施することを決定したとの連絡を受けましたので御報告いたします。  私といたしましては、この公定歩合引き下げの実効を期する見地から、日本銀行政策委員会に対し、直ちに預金金利引き下げの発議をいたしたいと考えております。  今回の公定歩合引き下げは、十五カ月予算等の財政措置と相まちまして、景気を順調な上昇過程に乗せることに資するとともに、市中金利全般の低下を一層促進し、企業の金利負担を軽減させることを通じまして雇用の維持、安定に寄与するものと期待されております。また、このことは、内需の拡大等を通じて円高対策としての効果もあるものと考えますが、さらに、今回は、非居住者の債券取得の制限、非居住者自由円預金に対する準備率の引き上げの措置も同時に実施されることとなっており、これらの措置は、公定歩合引き下げとあわせ、為替相場の安定と対外経済の調整に資するものと期待しておる次第でございます。
  199. 黒柳明

    黒柳明君 通産大臣公定歩合引き下げがまたこの円高にストップをかける、歯どめをかける効果があるかどうか、これはわかりませんけれども、政府のいろんな見通しの誤りが出ていることは間違いない。一昨日のアメリカと西ドイツのスワップの拡大だって全く影響がありませんね。もうアメリカと西ドイツは、やっぱり円は安過ぎるんだと、こういうふうに見ているんじゃないですか。通産大臣、やっぱりそういう見方も日本の皆さん方がなさらなきやならないときに来ているんじゃないでしょうか、どうでしょう。
  200. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) この問題についての見方はいろいろあろうと思います。ただ、しかし、昨年の十二月末、円が二百四十円前後でほぼ安定をいたしておりました当時、通産省といたしましては、国の全産業及び輸出を中心とする七十九地区の輸出産業等につきまして円高の影響を調べてみました。ところが、やはり二百四十円という水準は余りにも急激に上昇したということもありまして、二、三の業種を除いては二百四十円という水準ではとてもやっていけないと、こういう業種がほとんどでございました。だから、製品の価格の値上げをできる力を持っている業種はいいわけでありますが、国際競争上とても値上げが不可能であるという業種は非常に大きな影響を受けております。それから中小企業に関しましては、これまたごく一部を除きましてほとんど全部が非常に大きな影響を受けております。  そういうことの関係上、とりあえず、ことし一月、国会が再開と同時に、通産省といたしましては、中小企業の円高で大きな影響を受けております業種に対しまして緊急の融資対策というものを実行するための法律をお願いをいたしまして、すぐに成立をさしていただいたわけでございますが、そういうことを考えますと、なかなかこれはむずかしい問題ではございますが、通産省の立場から申しますと、私は日本の経済はどうも実力以上の評価を受けておるのではないか、こういう感じがいたします。もっとも、この背後にはアメリカ政策とか日本の貿易の現状とか、こういうものがございますので、非常に複雑な背景があることは十分承知しておりますけれども、しかしながら、昨年末の調査では、いま申し上げましたような結果が出ております。
  201. 黒柳明

    黒柳明君 企画庁長官、いま二百三十三円、買い支えしましてもここまで。あるいはあと二十円台まで三円ですね。もしこれがいまのまま、あるいはもうちょっと円高になりましたら、発想の転換をせざるを得ないんじゃないでしょうか、円高に耐え得る日本経済と、こういう発想の転換をしなきゃならないんじゃないですか、いかがでしょうか。
  202. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨今、新聞等の社説におきまして、そういう意見を私も間々見ておるわけでございます。結局、この円高というものが日本経済にプラスになっていく行き方が、いろいろな事情がありまして非常に遅いあるいは非常に不十分であるということが黒柳委員が御承知のようにございますので、その点を私どもとしてもっと行政で徹底をさせていくということはどうしてもやはり必要であろうと考えております。
  203. 黒柳明

    黒柳明君 防衛問題に移ります。  防衛庁長官、F15とP3Cにつきましてはいろいろ論議がありましたが、私は価格の問題で質問したいと思うんです。  装備局長ですか、これF15とP3Cは一機平均の購入価格は幾らですか。
  204. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) P3Cに関しましては、八機の平均取得価格が初度部品なしの価格で六十三億円、初度部品込みの価格で七十五億円。F15に関しましては、二十三機の平均購入価格、初度部品なしの価格が六十一億円、初度部品込み七十億円でございます。
  205. 黒柳明

    黒柳明君 私の調査によりますと、米国防総省がメーカーから調達する価格が、F15は千三百九十万ドル、P3Cは千六百七十万ドル。これ大蔵省の二百六十二円のレートで掛けますと、F15が約三十六億、P3Cが約四十四億。非常にいまの装備局長の言われたのと幅がある。まず、私のこれは独自の調査ですけれども、この千三百九十万ドル、千六百七十万ドル、これは妥当な価格でしょうか、間違っていますでしょうか。
  206. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) アメリカの七八会計年度の購入価格としては、先生のおっしゃられるとおりでございます。
  207. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、私の調査が合っているとすると、三十六億、四十四億、それが物すごく購入のけたが今度は上がっている。装備局長、これはどうしてこういうふうに価格が、日本アメリカ――それはアメリカの方が安いことはわかりますよ、国内のメーカーから買うんですから、日本は一万キロ超えて買うんですから。だけれども、余りにも幅が広い。その理由をひとつお述べいただけますか。
  208. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 平均価格の構成をもうちょっと詳しく申し上げますと、P3Cに関しましては、私どもFMSで買うやつ、それからライセンス生産をする、その二種類に分けておるわけでございますが、FMSから購入する価格は一機平均フライ・アウエー・コスト、FAC価格で四十九億円でございまして、ライセンス生産の価格は初度部品なしの価格で七十一億円でございまして、その平均が六十三億円と、そういうことでございます。それからF15に関しましては、FMSで買う価格が四十五億円、それからライセンス生産で買う価格が六十九億円、その平均が六十一億円ということでございます。  この価格差がどうして出てくるかということございますが、第一は、その取得年度がわが国の場合はずっと後になるわけでございまして、その取得年度の差による価格上昇、これは年々数%の価格上昇があるわけでございますが、その差。それからライセンス生産をするということに伴いまして技術援助契約を結ぶということで、ライセンスフィー及びロイアルティーというものをこれに支払わなければならないということ。それから、わが国独自でライセンス生産で組み立てを行うわけでございまして、このための治工具等生産設備を整えなければならない、この償却その他が入るというようなこと。それからまた開発分担金、これはF15などで見ますと二十億ドル以上の開発分担金がかかっておるわけでございますが、アメリカが買い入れるときは、この開発分担金は自分の政府のふところから出たものでございまして、当然払う必要はないわけでございますが、私どもは払わなければならないというようなこと。それから生産機数の差でございまして、P3Cに関しましては、わが国におきましてはわずか四十五機を取得するわけでございますが、アメリカではこれを三百機以上生産するというようなこと。それからF15に関しましては、わが国では百機をいまお願いしておるところでございますが、アメリカにおきましては、アメリカの戦術空軍だけでもこれを七百二十九機生産するというようなことから差が生ずるわけでございます。
  209. 黒柳明

    黒柳明君 ですからね、その項目については私も調べました、その項目は。ところが、私が調べたその項目の原価構成、これについて調べると非常にやっぱり差があり過ぎるということでいま質問したわけでありまして、項目については私もいま言ったこの年度の違いとか、これ数%ですが、そんなに違いないんです。それからライセンスフィーとか開発費とかいろんなことがあります、よく知っています。  それじゃ、それの具体的な原価構成がどうなっているか、これをお示しいただかないと、私はそれについての疑問が氷解できない、審議が進まないとこういうことなんです。ぜひこれについて、おのおのどのくらいの価格か、これをお示し願いたいんですが。
  210. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) ただいまこの予算の御審議をお願いしているわけでございますが、私どもといたしましては、この予算が認められた暁には、おのおのの機種につきまして三十社前後の会社と契約を結ぶわけでございまして、その契約を結ぶ前に、予定価格がこういうものについてはどのくらいだというようなことをお示しするというようなことは、契約前に私はどのぐらいで買いますというようなことをお示しするわけでございまして、私どもといたしましては、与えられた予算の範囲内でできるだけ安く買いたいとこう思っておるわけでございまして、そういう商談に差し支えが生じてくるというようなことで、その明細については何とぞ御客赦願いたいと思うわけでございまして、世界の各国におきましても、厳密な原価構成といったようなものについては公表しておるところはないと、こう思っております。
  211. 黒柳明

    黒柳明君 また、世界各国におきましては、あのロッキード事件みたいなようなスキャンダルはそんな例も少ないわけですよ。私たしかそういうことも知っているんです、全く知らないで言っているわけではないんです。だけど、やっぱりいまの時点というのは、P3Cにしたってロッキードから買うにしたって、必ずしも全面的にこの事件は解決したのか、いいんだというわけには私たちいかない立場で、F15にしたって、一番初めの選択のときからの問題があった。空中給油問題、あるいは爆撃照準だって、これだって氷解されて、いいんだと、一〇〇%合意を得た問題じゃない。  さらに、こういう価格、いまもくしくもおっしゃったように、国民の税金を使うわけですよ。そこに何かやましいことがあった、あったわけですね、現に。それを残念ながら皆さん方は知らなかった、ロッキードのときには。変なものも介入して横取りしていた。今度は絶対あってはいけない。いままではいままで、ほかはほか、だけど、これからの日本の姿勢というのは、できるだけのことはやっぱり公表して、お互いに詰めて、皆さん方のマイナスもこの国会全体でカバーする、また皆さん方に対してプラスがあったら国会全体で後押ししていく。こういう一つだけの中で、防衛庁だけが決めるという姿勢はもうだめなんじゃないでしょうか。くしくも中国問題で、お互いに協力し合って一歩前進の姿が出てきた。いつまでもそういうようなことにこだわっているとだめなんじゃなかろうかと、こう思いますが、再度ひとつ、皆さん方がいままで公表しなかったというその問題について何とか公表できないか、どうでしょうか。
  212. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) 価格の算定に関しましては、私どもの方から担当官を派遣いたしまして価格調査をする、あるはい原価監査をするという手はずになっておるわけでございまして、そこら辺、一点の疑いもないようにきちんとそういう監査、検査を遂行するつもりでございますが、先ほども申し上げましたように、先生がここで明らかにしろというお気持ちは非常によくわかるわけでございますが、一方、私どもといたしましては、今後商談を進めなければならない、商談もなるべく値切って安くしたいというようなことから考えまして、そういう点を御理解願って御容赦願いたいと思う次第でございます。
  213. 黒柳明

    黒柳明君 さあここで防衛庁長官、金丸信が――失礼です、呼びつけて。山梨から出た不世出の政治家だと言われるゆえんがここにあるんですよ。(笑声)いやいや笑ってちゃだめだ。やっぱり失礼ですけれどもお役人でしょう、間淵装備局長も、体型的には非常に初老のかっぷくがいい体型ですけれども、腹の中は防衛庁長官、そこは政治家だから違うんじゃないでしょうか。いままでいろいろこう局長がおっしゃったけれども、やっぱりこの際は、明らかにできる範囲は明らかにして、それで皆さん方に納得がいくF15、それからP3Cというものをこれから購入してわが日本の防衛に資したいと、こういう気持ちがあるんじゃないでしょうか。そのためには、私、この問題が出ませんと実質的審議ができないんです。私の疑惑ったって、皆さん方が言わない言わないというもので、こっちで一方的に言うわけにいきません。どうでしょう、金丸防衛庁長官長官の座にあるのは、今日のこの答弁のためにあると言ってもいいんじゃないでしょうか。もう一回ひとつ、原価構成というものを出せませんか。今度は政治的な立場で、出すと、政治家の判断として出さざるを得ないと。
  214. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 防衛庁の予算あるいは防衛関係、こういう問題はシビリアンコントロールという言葉があるわけでありますが、政治優先ということから言えば、先生の御質問にお答えしなければならぬと思うわけでありますが、先ほど来から装備局長が申し上げておりますように、いわゆる国費を使う上において不利だということでありますから、それの内容を公開することは必要かもしらぬけれども、そのような不利という、いわゆる国民の税金を少しでも少なくするということは必要じゃないかという点から言えば、先生のお話もわかりますが、御容赦願いたいと、こう思うわけであります。
  215. 黒柳明

    黒柳明君 私も、大臣の話わからないわけじゃないです。しかしながら、やっぱり私は皆さん方の立場に立つわけにいかないけれども、F15、P3C、これから十年、あるいは相当長く持つんでしょう。何か価格の疑惑疑惑というものの重荷をまたしょっちゃったら、第一線の制服の人がかわいそう。そういう立場からもこの点すっきり氷解して――出された問題ですからね、何らかの形でやっぱり国会に出していただかないと、私はこの疑惑は晴れないと思うのですが、どうです。局長にまた聞くのもしつこいようで申しわけないんですけれども、どうですか、何らかの形、たとえば秘密理事会に出すということもできませんか、これを秘密理事会に。どうですか、ひとつ。
  216. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) ただいま秘密理事会というお話でありますが、この問題は、委員長理事会責任を持って秘密を保っていただけるということであれば、委員長にお任せをいたします。
  217. 黒柳明

    黒柳明君 委員長そういう答弁ですから、ひとつ秘密を守ることを前提にして秘密理事会で出させていただくように言っていただけますか。
  218. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいま金丸防衛庁長官の答弁もございましたので、理事会を開きまして、必要であれば秘密理事会を開いて、資料を黒柳君にお知らせいたします。
  219. 黒柳明

    黒柳明君 これは秘密理事会で秘密を守るということを前提で出すというんですから、くどいようですけれども、もう一回それを確認していただきたい。理事会でということじゃなくて、秘密を守る前提ならば出すということですから、それをもう一回、委員長、発言して確認していただきたい。  もう一つお願いがあるんですが、できれば、この総括があしたあさってあたりで終わりますので、終わる時点ぐらいまでにひとつ出さしていただきたい。  この二点、もう一回くどいようですが、委員長から。
  220. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 秘密を守るという意味におきまして、金丸防衛庁長官……
  221. 黒柳明

    黒柳明君 いやいや、守ることを前提に、委員長から、前提にしますから出してくださいと要望することと、総括質問が終わるまでに出してくださいと要望してもらいたい。
  222. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 重ねて申し上げますが、秘密を厳守していただくということでありますれば、終わりの総括に持っていって理事会に出します。
  223. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 終わりの総括質問の前……
  224. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) いや、終わりの総括の締めくくり。
  225. 黒柳明

    黒柳明君 この総括でどうですか。この総括でだめですか。
  226. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) ちょっとえらいです。しかし、委員長、それは責任を持っていただきます。
  227. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 委員長は大変な責任を帯びたわけでありますが、終わりの総括ということでございますから、それで御了承いただきまして、それまでに処理をいたします。
  228. 黒柳明

    黒柳明君 じゃひとつ、秘密を厳に守るという――私、理事じゃございませんものですから、わが党はそういうことでぜひ教えていただきたい。  同じく、私、自衛力の限界、これはあくまでも総理が憲法上と政策と間違ったと、こうおしかりをいただいたので、私は間違わないように、あくまでも憲法上の許される自衛力の限界についてお尋ねしたいと思うのですけれども、防衛局長ですか、ICBM等の戦略核兵器は持てない、こうですね、憲法上。
  229. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 二月十四日に「F-15及びP-3Cを保有することの可否について」という内容文書を提出してございます。その中で、自衛隊が持ち得るのは自衛のための必要最小限度内のものであるということの御説明をいたしておりますが、その中で「性能上専ら他国の国土の潰滅的破壊のためにのみ用いられる兵器」といたしましてICBMというのを例として挙げております。したがいまして、いかなる場合においてもこのICBMを保持することが許されないというふうに考えております。
  230. 黒柳明

    黒柳明君 局長ですね、そうすると、純粋に防御用の戦術核は憲法上持てますね。総理も先日おっしゃったけれども、確認ですけれども、持てますね。
  231. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) そのように考えております。
  232. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、いま米韓合同演習で問題になっているランスみたいな地対地の短距離ミサイルあるいは核魚雷のサブロックないしは百五十五ミリりゅう弾砲、要するに防御だか攻撃だかわからないような核兵器、これについては憲法上は保有できるのですか、できないのですか。
  233. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 私どもは、非核三原則のもとで核兵器を持つ意思が全くございません。したがいまして個々の兵器について検討をしたということはないわけでございます。いま先生がおっしゃいましたたとえばランス、百五十五ミリというような兵器でございますが、この核弾頭の問題と、それから到達距離の問題があろうかと思います。したがいまして、たとえばランスのように百五十五ミリの倍以上の射程を持っているものはどうかということになりますと、これは具体的にその装備品を装備するときに私どもも検討し、そしてまた国防会議でも御審議いただき、最終的には国会で御判断いただくということになろうかと思います。  一つだけ例を申し上げますと、先生も御記憶があると思いますけれども、私どもが防空ミサイルとして最初に採用いたしましたのがナイキアジャックスでございます。あのときには、御承知だと思いますが、ナイキアジャックスは非核弾頭でございました。しかし到達距離、射程が四十キロ強でございました。したがいまして、ナイキハーキュリーズというのがあったのでございますが、あのときには百三十キロの射程がございますし、それだけの射程があると命中率というものが悪いので、いわゆる通常弾頭では余り意味がないのではないかというような判断もあったわけでございます。しかしながら、侵入してまいります飛行機の性能も上がりました。そしてまた命中精度もきわめてよいということがわかました。したがいまして、三次防におきましてナイキをライセンス国産いたしますときには、ナイキJ、すなわち百三十キロの射程のものを採用させていただいたわけでございます。これは国防会議でも御審議いただき、国会でも御判断いただきまして現に私ども採用しているわけでございますので、個々の兵器について、いまの段階で判断しろということは何とも私ども判断しかねるところでございます。
  234. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、個々の兵器についてと言ったって、私限定しましたよ。核ですよ、百五十五ミリりゅう弾砲。私が言ったのは、攻撃か防御かわからないからということで。そうすると、これはあくまでもいまおっしゃったことについては、ICBMは戦略核兵器だから持たないと、これ断定しましたね。それとは別の範疇のものだと、こういう理解でよろしいですか。
  235. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 通常の兵器体系の中で考えられますと、たとえばICBMとか長距離爆撃機あるいはIRBMといいますか、四千マイル程度飛ぶようなもの、こういったものはいわゆる戦略核兵器と呼ばれております。それ以外のものは一括して戦術核兵器と呼ばれているわけでございますが、その戦術核兵器の中でも、純粋に防衛的なものということになりますと、それぞれの核兵器、いま現時点において判断しろというのはきわめてむずかしいと私どもは考えているわけでございます。
  236. 黒柳明

    黒柳明君 だから、要するに、それは配備するときには国会の審議、国防会議の決定をもらうということは、もう一歩言いますと、ICBMみたいに戦略核として持たないというものとは違う。さらに、要するにいろんなことを検討した結果、将来持つという可能性も生まれる範疇のものだと、こういう理解でいいですね。
  237. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これはたびたび申し上げておりますように、核兵器というものは私ども持つ考えは全くございません。これは非核三原則がございます。そしてまた核兵器そのものを実際に戦術的にわれわれが使えるかということになりますと、日本のような地勢、それから、これだけの多くの国民を抱えている国におきまして、戦術核兵器といえども、これはなかなか使えない、使っても余り意味のないものだというふうな理解も一方にあるわけでございます。
  238. 黒柳明

    黒柳明君 政策上はね、総理、そうなんです。混同しないようにと言われましたから、純粋な憲法上ですよ、私言っているのは、何回も。そうなると、いま言ったように、ランスやなんかは、配備するときになったら国防会議で審議してもらって、国会で審議してもらうということは、持たないと断定してないわけですね。そうすると、装備やなんかについて、またはっきりするならば、持つ可能性というものがあるんだと、憲法上。こういう判断として私承ったと、こういうことなんですけれども――何かありますか、防衛庁長官
  239. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 装備局長が申し上げておりますように、三原則があるということで、全然そういうものを持つことは考えておらない。私も、いわゆる自衛隊は核兵器が大きかろうが小さかろうが、長かろうが短かろうが、全然持つ考え方はないと、こういうように御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  240. 黒柳明

    黒柳明君 そうですね、政策上、間違いない。憲法上ですからね、私が言っているのは、総理。混同していますから、本当ならここに立って言ってもらわなきゃならない。  じゃ、重ねて聞きましょう。FB111、あの爆撃戦闘機ですね、これはどうですか。たとえば、簡単に言いましょう。長距離爆撃機は持たない、こういうことですね。これはいいですわな。それじゃ戦闘爆撃機FB111、これは憲法上持てるんですか、どうですか。持たないという政策上のことはわかりましたよ。
  241. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) このF111という飛行機の中には、いま先生が言われましたように。純然たる戦術爆撃機として使用しているものもございます。しかし、いまおっしゃいましたFB111というのは、これは航続距離も非常に長くなっておりまして、B52が長いのは二万キロ程度飛ぶのに対しまして、六千五百キロぐらい飛ぶようでございます。それから搭載の爆弾にいたしましてもFBになりますと十四トンで、しかも核爆弾を持つ。そして現実にこのFB111が配備されておるのはアメリカの戦略空軍でございます。したがって、このFBという飛行機も航続距離等においてはB52より劣っておりますけれども、いわゆる戦略爆撃機としてアメリカは運用いたしております。したがいまして、そういう考え方からすると、いわゆる相手に壊滅的破壊を与える戦略兵器として、憲法上、現時点において持てるというふうには私どもは考えていないわけでございます。
  242. 黒柳明

    黒柳明君 現時点ということは、また先ほどの説を引用しますと、将来においてはいろんな装備とか性能とかということをキャッチして持つ可能性は出てくると、こう逆にとっていいですか、現時点は持たないと。
  243. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これは前にも御答弁したことがございますが、FB111という、この戦略空軍としての使用をしております戦略空軍の長距離爆撃機としてこれを考えます限り、憲法上持てないというふうに判断いたしております。
  244. 黒柳明

    黒柳明君 そうすると、戦略爆撃機という判断、またそうじゃない判断も出てくるわけですね。そうなった場合に、持てるという可能性が憲法上できてくるわけですか。
  245. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま先生がおっしゃっておりますFB111というのは、まさにアメリカでは戦略爆撃機として使っております。したがいまして、これは持てないというふうに御理解いただいて結構だと思います。
  246. 黒柳明

    黒柳明君 法制局長官、いま核のことで憲法上は防御用の戦術核は持てると、ただし政策上は持たないんだと、これはよく理解しております。ただし、政策と憲法が相入れない場合にはこれはどういうふうになるんですか、政策と憲法が相入れない場合に。
  247. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 相入れないとおっしゃいましたが、その意味合いなんですが、憲法に違反するような政策はもちろんとることはできません。それで、憲法上禁止されておらないけれども、政策としてそれは持たないことにするということは、これはあり得ることでございまして、これは別に相入れないんじゃなくて、相入れる範疇だろうと思います。
  248. 黒柳明

    黒柳明君 こういうことです。たとえば、憲法上持てる可能性があるわけですよ。そうなった場合に、たとえば防御用の核、まあ核自体がそうであるかわかりませんよ、防御用の戦術核を持てるんですから。持てるというときになったら、今度は持たないという非核三原則の政策についての選択を迫られるというときも――仮定ですよ、これ。だけど、ここまでいま論議が発展しているわけです。仮定ですけれども、憲法上許されるわけですから、防御用の戦術核は。さらに、戦術であるけれども防御か攻撃かわからない範囲までも、もうそのときそのときによってというような防衛局長の話があったんですから。そうなると、あくまでも憲法上は持てる。そのときに持たないんだという非核三原則の政策の選択を迫られることがあるんじゃないでしょうか。
  249. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 純粋な憲法九条二項の解釈としては、純粋の防御的な兵器であって、しかも自衛のために必要な最小限度を超えないものは、たとえそれが――これ理論上の問題ですよ、たとえそれが核兵器であっても、これは憲法九条二項には違反しないという憲法解釈があるわけでございまして、しかし、それは憲法上の解釈としてそうなっているだけであって、それをだからといって持たなきゃならぬことはもちろんないんであって、非核三原則を堅持してこれは持たないという選択をとっているわけでございますから、相反する場合の性格はどうこうなどというような問題が起こるような気がしないんですがね。それが前回から私が口を酸っぱくして申しております、憲法解釈と政策とは別だということの真意でございます。
  250. 黒柳明

    黒柳明君 こういうことなんですよ。これ二回も三回も言ったって真意はわかっておると思うんです。憲法上持てるわけです、防御用の核兵器は。さらにそれ以上エスカレートするという可能性もいまあるわけです、防衛局長の話ですと。もし仮定で、憲法上防御的戦術核が持てる、そういうことが起きた場合に、憲法と政策、非核三原則じゃ、法規範としてやっぱり憲法の方が最大のものでしょう、総理、これは言うまでもなくしてですね。政策の選択を迫られるときが来るんじゃないでしょうか。持たない持たないというのは政策ですから、それはわかりますよ。持てるんですから、憲法上は。憲法上持つという可能性がゼロじゃないんだ、あるんですから。そのときには逆に政策の選択を迫られるんじゃないんでしょうかと、こういうことですよ。ですから、この前のこの論議とは違いますよ。
  251. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) おっしゃる意味は、非核三原則は政策だから、その政策を改める必要に迫られることが将来あるではないかと、こういう意味でございますか。――  それは歴代の内閣が、非核三原則はもう憲法にも比すべき国是であると言って、絶対これは守るとおっしゃっているんですから、そこまで御心配になる必要はないんだろうと思います。
  252. 黒柳明

    黒柳明君 これは全く道徳的な問題、精神的な解釈であって、法制局長官としての法解釈とはちょっと違うんじゃないんでしょうか。もうこれ以上、意味はわかっているわけですから、長官とやってもしようがないので、総理、どうでしょうか、いまの問題。歴代内閣は守る、あたりまえです。自民党内閣、福田内閣は守る、もう耳にたこができるほど聞いています。だけど憲法上許されているんですから、万が一そうなったときには、逆に政策を今度は変更する、選択を迫られることはあるんじゃないか。それはあたりまえのことでしょう、どうですか、総理。
  253. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 憲法解釈の問題と政策選択の問題は別だと、こういうことはしばしば申し上げているので、これはいいやね。  そこで、憲法におきましては、核は必要最小限の防衛という立場において持ち得ると、こういうことになっています。しかし、政策上の立場から非核三原則、これを堅持して、核はいずれの場合においても持たない、こういう決意をしているわけであります。  しかし、いま黒柳さんはその決意を覆すような事態が発生するかもしらぬから、そのときはどうするのだというようなお尋ねかと思うんですが、そうですか。
  254. 黒柳明

    黒柳明君 そうですよ。
  255. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういう際には、もちろんおっしゃるとおり選択をして、政策の問題ですから、その選択をするということになりましょうが、わが国といたしましては、非核三原則という大原則がありますので、その選択する上において、迷いが生ずるというようなことは万々あるまい、かように確信をします。
  256. 黒柳明

    黒柳明君 時間もありますし、また、ほかの人を呼んでありますので、続いて何かの機会に論議したいと思います。  公共事業のことで私指摘したいんですが、福田総理、公共事業一本で景気浮揚ということでありまして、五十二、五十三年二〇・六%、三四・五%。しかし五十二年も六・七の見通しが五・三になった。いま七%は非常に危なかろう。これはもう相当やっぱり、この前も背水の陣というような言葉を使いましたが、これが達成できない場合は、また改めてこう総理も腹を決めざるを得ないという心境にあられると思いますが、いかがでしょうか。
  257. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 七%とは申し上げませんが、七%程度の成長については、責任を持ってこれが実現をいたすように最善の努力をいたします。
  258. 黒柳明

    黒柳明君 ですから、最善の努力とともに、いろんなこう内外の余波がありまして、努力が、見通しが狂ったりなんかしているわけですよ、現にですね。外圧もありますでしょう。そういう中において、また改めてここで全責任を、総理の座をかけても、こういうふうな決意を固めざるを得ない心境じゃないんですか、こういうことなんですけれどもね。
  259. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その程度の成長につきましては、これはもういろいろ変化がありましても、あらゆる対応の策を講じまして責任を持ってこれを実現をいたしたい、そういう考えです。
  260. 黒柳明

    黒柳明君 公共事業の問題について、私は一つまずい点を取り上げますが、聞いていてください。果たしてそれが達成できるかどうか。  北海道開発庁ですね、開発庁が五十二年、北海道の測量事業協同組合に発注した、この発注の件数とか金額とか契約方式、それについて述べていただけますか。
  261. 吉岡孝行

    政府委員吉岡孝行君) 五十二年度における北海道開発局の測量業務等のうち、ただいまお尋ねの北海道測量事業協同組合に発注しました分は、十二月末現在におきまして、件数で八百五十九件、金額で二十六億六千二百万円であります。その契約方法としましては、そのうち一件を除きましては随意契約の方法によっております。
  262. 黒柳明

    黒柳明君 会計検査院ですね、八百五十九件のうち一〇〇%随契、二十六億以上の金額、これについてどうですか。会計法令上、これは全くうまくないんじゃないですか、違反じゃないですか、どうでしょう。
  263. 松尾恭一郎

    説明員松尾恭一郎君) 測量等の契約においては、特殊の技術を必要とする場合、そういう場合においては随意契約によることができるのでありますけれども、ただいまお話のあったように、北海道開発局において測量等の業務をすべて随意契約によって発注しているということになりますと、競争契約を原則としております会計法令の趣旨、目的に違反しているおそれがあると思います。
  264. 黒柳明

    黒柳明君 建設大臣、本来ならば――これは北海道ですから開発庁になっておりますけれども、建設大臣の所管ですな。一〇〇%ですよ、これ随契が。この仕組みやなんかこれから言うんですけれども、こういうことは初めて耳にされたと思うんですけれども、どうですか、これ。
  265. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 測量業務の執行に当たりまして、北海道開発局の方にお願いしておりますので、この事実につきましては、私はつまびらかにしておりませんでした。
  266. 黒柳明

    黒柳明君 じゃ、いまのを聞いて。
  267. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) これは会計検査院が見解を述べられたのでありまするから、それ以上の見解を述べる必要はない、この会計検査院の言わることを遵守しなければならないと思います。
  268. 黒柳明

    黒柳明君 しかも、開発庁、この公共事業の発注に対して、総理、要するに発注高の五%を受注手数料として組合が取っていますね、その点はいかがですか。
  269. 吉岡孝行

    政府委員吉岡孝行君) ただいま御指摘のように、北海道測量事業協同組合は、組合の事業を執行する経費に充てるため、ただいまおっしゃいましたように受注額の五%を手数料として徴収しておるというふうに聞いております。
  270. 黒柳明

    黒柳明君 そういうことですね、会計検査院。受注高の五%を一律に取っているんです、組合が業者から。そうなりますと、これは一種のピンはねですな、総理、と同じ様相ですよ。これは役務の提供か何か組合があればいいですよ、何にもないんです、そんなもの、トンネル会社。いわゆる開発庁から組合が全部一〇〇%受注を受けて、それを業者に配分するだけの組合ですから、それがてんつけ五%ピンはねしている。この事実があれば……これは事実があるんです。これがその全部の資料。これは建設大臣にもう一回……これは開発庁長官知っていますからね。これ全部、各社の受注額、受注額の五%を全部取っています。ここに全部出ています、手数料五%と出ていますから。  こういう実態が、これ一つじゃない、これから言っていきますよ、公共事業についても。こういうおかしなことがあるわけですよ。会計検査院、これについてひとつ見解を……。
  271. 松尾恭一郎

    説明員松尾恭一郎君) 検査を実施してみないとはっきりしたことはいま言えませんけれども、御指摘のように組合が手数料を受け取るに足りる給付を何らしていない、にもかかわらず、受注高に応じて手数料を一律に徴収しているということが事実だとしますと、このような組合を契約の対象とするのは妥当でないと考えております。それから手数料の徴収によって契約の成果品出来高に影響を及ぼすような事態がありますと、またこれも問題だと考えております。
  272. 黒柳明

    黒柳明君 そのとおりなんですよ、総理。これは北海道全体で建設省で三千億ぐらいですね、そのうちの三十億かわかりませんよ。だけれども、昭和三十八年から続いているんですからね。それが今度はピンはねだけじゃなくて、これは発注の高までもこれが上がっているとなったら、幾ら総理が一生懸命やるやると言ったって、これはもう景気浮揚できませんよ、こんなばかなことがあったら。これはいま具体的に一つ挙げて、中を続けますよ。  開発庁長官、どうですか。こういうことはいま起きた問題じゃないです。加藤大臣の実直さは知っています。前からの問題ですけれども、いま偶然長官になっちゃったんで、このことについてやっぱり答弁をいただかにやならない立場になっている。どうですか。
  273. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) ただいま協同組合が創設されたのが昭和三十八年とおっしゃいましたが、当時といたしましては、それなりに必要があったことは事実でありましょうけれども、現時点におきまして、すっかりなれができてしまっておりまして、そして公入札が行われておらないということはきわめて不適当だと思うのでありますから、早急に是正しなければならぬ、かように考えております。
  274. 黒柳明

    黒柳明君 これは早急に是正なんですが、総理、なぜこういうことが起こるのか。検査院だって開発局に行っているんですよ、検査しているわけです。開発局だって知っているわけです。福田総理が五十二年、五十三年目玉としている公共事業、なかんずく本年は――それが一角でこういう考えられないようなことがなぜまかり通っているのか。  さらに、もっとひどい。開発局とこの組合は、もうこれはちょっと私こういう発言をするのはいやだが、天下りに問題があると思うんです、公務員の定年制の問題が。にしても、もう全部天下りなんです、役人が一〇〇%。だから発注する側と発注を受ける側とは、OBの役人がもう采配を振っているわけです、組合の中で。しかも、この組合が開発庁の役人と飲み食いをしている。私、個人的なことを挙げるのはいやなんですが、総理大臣の執念が何とか公共事業一本で景気浮揚をというんで、私はこのことも指摘した方がいいんじゃないかと、こう思うんです。たとえば昭和五十二年一月二十九日、釧路の建設部長以下、業者と十五万――十四万九千百八十円。そのときの業者の開発局に対する要望事項は、受注量の拡大について、早期発注について、諸経費のアップについて――ここにそれがあるんです。復命書までついているんです、領収までついているんです。これが全部やっている、全部。  法務大臣、こんなことをやっていますとね、これは供応じゃないですか。私これ全資料を渡しますので、ひとつこれ厳重に。――福田総理のさっきの派閥じゃありませんが、やっぱり公共事業に対しての執念ですから、そういう中において、幾ら天下りが古いとはいうものの、北海道の一角でこういう悪さがまかり通っているということは、これは許されないんじゃないでしょうか。資料を差し上げますんで、ひとつぜひこれを調べてください。供応に通ずる可能性があると思いますよ。どうです、法務大臣
  275. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 後で資料をいただきますが、いまのお話の実態上のことがわかりませんから、どうあるべきかということをここで申し上げるわけにはまいりません。ただ、申し上げておきたいことは、常日ごろ綱紀粛正がよく言われておるわけでございます。業界と公務員が癒着したようなかっこうに見えるということは厳に戒めなければならない、これだけを申し上げておきます。
  276. 黒柳明

    黒柳明君 まず、総理、いままでのを聞きまして、どういうふうに思われますか。
  277. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 変なことがあるものだなという感じでございますが、せっかくの御指摘でございます。これは徹底的に調査いたしまして是正いたします。
  278. 黒柳明

    黒柳明君 そこで、是正するのは、これだけじゃないということ、OBと現職と持ちつ持たれつの間は。これたった一つ。そこで、私は、防衛施設庁の建本会、建設省の建設業協会、住宅公団の住建懇、電電公社の電信電話工事協会、農林省の農業土木協会等々――まだまだありますよ、言うと時間がそのたびにパッパッとたちますんで省略します。こういう全く同じ形態のものもこの際やっぱり総点検して、たとえ一銭でもこの際公共事業でむだに使われたら大変です、そういうことについて総点検を各省に命ずる、それを国会にきちっと報告してもらう。それが一〇〇%シロだって七%近くの達成ができるかどうかわからない情勢なんですからね。少なくともこういうところに不備があってはならないと思いますが、建設大臣、ひとつ先に答弁してくれますか、それから総理大臣に。
  279. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 御指摘の御注意はよくわかりました。私は建設省所管でそういう事実はないと確信はしておりますが、いまの御注意に沿いまして、よく調査をしてみたいと思います。
  280. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 御指摘の問題は、点検いたしまして誤りなきを期してまいりたいと、さように存じます。
  281. 黒柳明

    黒柳明君 いや、全省。
  282. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 誤りなきを期してまいりたいと、これが善処でございます。
  283. 黒柳明

    黒柳明君 全省に対してね。
  284. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) はい。
  285. 黒柳明

    黒柳明君 全省に対して誤りなきよう点検すると――ひとつ国会にも報告してくださいね、点検の結果を。
  286. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 適当な機会に御報告申し上げます。
  287. 黒柳明

    黒柳明君 済みません、国鉄総裁、最後に。  五十三年の国鉄予算での収入はどのぐらいになるんでしょうか。非常にやっぱり赤字を背負って三年間御苦労されてきたと思うんですが、ひとつ国会で法定制緩和も決まりましたし、必要経費だけのアップといっても、六月からですか、また家計を、奥様方のふところを悩ますということになるんですが、とりあえず五十三年の予算の収入、これをお聞きします。
  288. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) いま御審議いただいております予算で計上しております予定収入は、運輸収入が二兆五千八十七億円、雑収入が千四十五億円、合計二兆六千百三十二億円、そのほか損益勘定の収入といたしましては、資本勘定からの助成金受入れがございます。これらの、いま申し上げました数字を全部合わせますと、収入は三兆三千二百三十一億円でございます。
  289. 黒柳明

    黒柳明君 赤字で再建について非常に苦慮されておると思いますけれども、先ほどのこの雑収入、それをふやす方策というのはどういうことを考えていますか。
  290. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 雑収入は大別して二種類ございますが、千四十五億円の雑収入中、いわゆる関連事業収入として見込んでおりますものが五百三十二億円でございまして、約百億円、五十二年度の実績見込みよりもよけい収入を上げたいということを考えております。
  291. 黒柳明

    黒柳明君 関連事業の収入というのが相当あるんじゃないですか。それについてどういう方策を考えているか教えてくれますか。
  292. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) いろいろいま工夫しておりますが、まだなかなか成果が上がっておりません。主として土地の高度利用、あるいは営業線の利用促進というようなことでございます。高度利用といたしましては、貸しビルであるとかホテル事業であるとか住宅であるとか、あるいはスポーツ、レジャー施設というようなことで、何とかいま持っております土地をうまく活用して収益を上げてみたいものだということで研究をいたさしております。
  293. 黒柳明

    黒柳明君 さらに、これ具体的に教えてくれますか、どの辺をどういうふうに考えているか。
  294. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) たとえば駅ビルでございますと、現在、盛岡で具体的に案が出てきておりますが、いいま検討中のものとしては神戸の近くの三宮、あるいは東京の周辺では荻窪というようなところで研究をいたしております。また、これも研究段階でございますが、旭川でひとつやりたいというふうなことを考えております。それは駅ビルの例でございます。  ほかに住宅としましては、北海道の札幌で住宅公団と協議をいたしておりますが、これはまだなかなかまとまっておりません。この近くでは、亀有の貨物跡地で住宅公団と一緒にやりたいと思っております。  スポーツ、レジャーのたぐいといたしまては、吉祥寺に土地を持っておりますので、そこでひとつテニスコートといいますか、そういったスポーツセンターをつくってみたい。また市ケ谷では現在ミディショップと申しますか中規模の店舗をそこで開設をしたいということで工事中でございます。なお、この近所では信濃町、大塚、取手といったところでいまいろいろ研究をいたしておるところでございまして、何とか一日も早く取りまとめに入りたいと思っておるところでございます。
  295. 黒柳明

    黒柳明君 何か両国国技館もまたどこかに移転するということで、協会と協議中なんですか。
  296. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 国技館の問題は、現在は隅田川のこちら側にあるものを昔どおり川向こう、両国の方に移したいというお気持ちが協会の方から出ておるわけでございまして、私どももそれにお手伝いできればと思っておりますが、具体的には、協会側のプランがもう少し煮詰まってこないと私どもの方も受け切れないということで、今後話し合いを進めてまいりたいと思っております。
  297. 黒柳明

    黒柳明君 以上で終わります。(拍手)
  298. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 黒柳君の総括質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  299. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、野田哲君の総括質疑を行います。野田君。
  300. 野田哲

    ○野田哲君 先ほどの大蔵大臣の報告についてお伺いいたしたと思うのですが、済みませんが、もう一回先ほどの報告を読み上げていただけませんか。
  301. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) ただいま日本銀行総裁から日本銀行政策委員会において公定歩合を〇・七五%引き下げて三・五%とし、明十六日から実施することを決定したとの連絡を受けましたので御報告いたします。  私といたしましては、この公定歩合引き下げの実効を期す見地から、日本銀行政策委員会に対し、直ちに預金金利引下げの発議をいたしたいと考えております。  今回の公定歩合引き下げは、十五カ月予算等の財政措置と相まって景気を順調な上昇過程に乗せることに資するとともに、市中金利全般の低下を一層促進し、企業の金利負担を軽減させることを通じて雇用の維持、安定に寄与するものと期待されます。また、このことは、内需の拡大等を通じて円高対策としての効果もあるものと考えますが、さらに、今回は、非居住者の債券取得の制限、非居住者自由円預金に対する準備率の引き上の措置も同時に実施されることとなっており、これらの措置は、公定歩合引き下げとあわせ、為替相場の安定と対外経済調整に資するものと期待しております。  以上でございます。
  302. 野田哲

    ○野田哲君 ただいまというのは何時何分ですか。
  303. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 決まりましたのが三時三十二分でございます、発表がありましたのは。
  304. 藤田進

    ○藤田進君 関連。
  305. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連質疑を許します。藤田君。
  306. 藤田進

    ○藤田進君 私どもが承りましたのは、黒柳委員の質疑中の三時三十八分でございます。私は時間を争うわけではございませんが、すでに夕刊には印刷で詳しく出ております。発表が三時三十二分で、私どもがただいま聞いたのが三時三十八分、六分間で印刷ができるわけはない。そういった点をもっと詳しくここで釈明いただきたい。野党は、委員各位がそれぞれ現下の経済情勢をおもんばかり、公定歩合については日銀総裁の出席を求めてそれぞれ聞いたわけであります。目下のところ考えていないということでございましたが、いずれにしても、こうして国会が開かれている以上、かって問題になったように、できるだけ議会を通じて国民に周知を図るという基本方針であったはずです。この辺の行き違いをまずお伺いいたします。  続きまして、零細預金と言われ、かつ世界でもまことに特異な現象であります預貯金率、中でも郵便貯金等の零細預金が非常に大きいのが特徴なんです。これについては、今日の夕刊を見ましてもかなり郵政省は抵抗をしたと称するのですが、郵政大臣にもお伺いいたしますが、今回発議するということでこれからの最終作業になるでしょうが、私は本会議以来、わが党社会党は零細預金に対する、そのまま連動することに対して大きな構造的なやはり金融その他問題を起こすように思うわけでありますから、これは大いにひとつ、そのままの連動でないことがもう絶対不可欠であるように思いますが、この点いかがお考えか。  それから、租税収入なりその他のいわゆる国税等々財政収入に対してどれだけの響きを予定されておりますか心なかんずく新規国債利回りですね。  それから第四は、どうも先進諸国から見ればまだまだ、スイスに次ぐ四、五番目ということにはなります。イギリスよりは下回っておりますが、しかしながら、わが国のこの構造不況等の特異体質から言いまして、公定歩合引き下げに依存していくことには非常に危険性があるように思います。関連ですから、内客はもうよく御存じだから説明いたしませんがね。したがって、かかる上さらにいわゆる構造不況対策、金融のみならず財政上その他の運営の妙を得ませんと所期の目的達成は困難なように思いますが、公定歩合引き下げを契機に、さらにどういう構えになってまいりますか、お伺いをいたします。したがって、この七%成長見通しとかいったような点について、企画庁長官から公定歩合と連動した形での御回答をいただきたい。  最後に、〇・七五引き下げ、三・五ということになりますが、一般は、これは商業手形その他では多少の差異はあるようでございます。これ以上さらに公定歩合引き下げが将来あり得ないだろうというのが専門家の見通しでございますが、しかしながら、ドル安その他の経緯によってはそうではないのかどうかということをお伺いいたします。そうして、円高について、二百四十円あるいは二百四十二円、衆議院段階では二百四十二円ぐらいが限界だと称されて、政府答弁にあったように思いますが、それがだんだんと二百三十円台になり、私は質問のときに二百二十円に下手するとなりますよと申し上げていましたが、残念ながら二百三十円台になってしまった。これがどう、公定歩合が円高に対する措置として、緊急措置としての打開策のように御説明でありますが、これをどの程度に食いとめられると、今度の公定歩合の影響が。いろいろ検討を長時間されたようでございますので、その過程に出た結論をひとつお聞かせいただたい。
  307. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 藤田君、時間をオーバーしております。
  308. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) できるだけ簡潔にお答えさせていただきたいと思います。  刷り物は早くでき上がっておったじゃないかというお話でございます。これは実は日銀の方からできるだけ早くやりたいというお話がございまして、しかし政策委員会のこれは了解を得なければならぬわけでございますので、その場合を予定してあらかじめ印刷しておった次第でございます。
  309. 藤田進

    ○藤田進君 夕刊に出ている。六分間で刷れないと言っているんですよ。回答になりませんよ、それは。
  310. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) ですから、きのうのうちに打ち合わせはしているわけでございます。特に為替規制の問題を含んでおりますので、これはもう極密にやらなければならぬことは当然だと思います。新聞は恐らく見込みで書いているんだろうと思うのです。  それから零細の方でございますが、郵便貯金の話は後ほど郵政大臣にお願いするといたしまして、先ほど申しませんでしたが、福祉預金、現在は特別の率で六・七五%を設けているわけでございますが、これはやはり六カ月ぐらい、その期間をそのままで延長したいというふうに考えております。  それから租税に対してどういう影響を与えるか。これは恐らく、事業にとりましては借入金利は軽減されますから、それだけ収益状況はよくなってくるであろう。それがどれくらいになりますか、いずれにしてもいい影響を与えるだろうと思います。  それから公定歩合引き下げることが一体どれだけの効果があるかと、こういう話でございます。私たちはやっぱり公定歩合というものは、本格的な内需の拡大の方が中心だと思っていることはしばしば申し上げたわけでございます。その内需の拡大に資する。それから第二にはやっぱり金利の負担軽減を通じてやっていく、そのことによって、十五カ月予算と相呼応して景気の拡大あるいは雇用の維持ということでございます。しかし、金利が安くなるということは、何ほどかやはり現在の円高に対しても多少いい効果を持つであろうと……
  311. 藤田進

    ○藤田進君 どの程度ですか。
  312. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これはわかりませんが、金利が安くなりますと、円建て外債、これが出てくるわけでございまして、五十二年度は昨年に比べまして恐らく六、七倍の金額になる。年度末になりますと恐らく四千何百億ぐらいになると思います。それがさらに拡大して資本の流出につながっていくだろうと思います。それと今度の短資の流入規制がございます。これと相まちまして、流入を抑え、そして流出を促進するという効果から、これは相当程度の効果は期待できるわけでございますが、しかしこの問題は、基本的に申しますれば投機資金との関係でございます。したがいまして、これだから確実に守れるという問題ではなくて、何ほどかいい影響を与えるであろうと、公定歩合引き下げという問題はあくまでも長期的の問題であると、かように考えております。  それから構造不況業種に対しましても同じような、これはその問題を解決するということにはなりませんでしょうけれども、金利負担の軽減はあるであろう。まあ七%についてもそういう意味でプラスの方に働くのではないか。  それから〇・七五というのは大幅であるが将来また引き下げが考えられるか。まあ私は、いまの情勢では〇・七五といったらほとんど精いっぱいじゃないかと思います。  それから今後の為替相場がどうなるかという問題でございますが、これはなかなか予断を許しませんし、さっきも申しましたように、相手方のある問題でございます。しかし、今度の措置が全体としてプラスの方向に働くであろうと思います。しかし、いかなる相場になるかということは実はよくわかりませんし、またそのことを責任のある私の立場から申し上げることは控えさしていただきたいと、かように思うわけでございます。
  313. 藤田進

    ○藤田進君 新規の国債利回り。
  314. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) この問題は、当然長期金利につきましては、これから預貯金金利を決めました後で長期金利の改定は順次やっていくわけでございます。
  315. 藤田進

    ○藤田進君 新規国債も。
  316. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これからの問題でございます。
  317. 藤田進

    ○藤田進君 新規国債を下げることになる、新規国債も。
  318. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) はい。
  319. 藤田進

    ○藤田進君 郵政と企画庁、どうした。
  320. 服部安司

    国務大臣服部安司君) 公定歩合引き下げ決定に伴いまして、大蔵省から民間金融機関預金金利引き下げについての日銀政策委員会の発議について、先ほど本省から秘書官を通じて連絡を受けました。しかしながら、民間金利自体はこれから決定される運びに相なりますので、今後、私は民間金融機関預金金利がどうなるかを十分注視をしながら、御承知のとおりに郵便貯金法第十二条の決定原則にのっとって十二分に対処したいと、かように考えている次第でございます。
  321. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 内外に分けて申し上げることにいたしますが、大部分は大蔵大臣が御説明になられました。  まず外との関係でございますが、いわゆるこれによって金利差がさらにわが国は低くなるということによりますところの短資の流入というものが、ことにこの際、あわせて非居住者の債券の取得の制限、それから非居住者の自由円預金についての準備率の引き上げ、この両方の措置とあわせまして、短資の流入についてある程度の効果があるであろうと考えられます。先般、米独の間でできました合意ともあわせまして、何がしかの好影響を期待できるのではないか。またもう一つ、これは資本勘定のことになりますけれども、わが国における起債が起債者にとってはそれだけ有利になるということから、資本の流出ということがより期待できるということから圧迫要因が一つ除かれるということもあろうかと思います。  それから輸入金利でございますが、これはこれからのことでございますが、たとえば緊急措置としての外貨貸しの金利、これはプライムレートを基準に定めておりますから、もしプライムレートが下がるということであればあるいは輸入のための外貨利用の金利も何がしか下がることがあるかと、これはこれからの政策決定でございますけれども、そうなりますと輸入促進ということに役立つことになろうかと思います。  それから対内的には、基本的には長短期の金利が追随をすることによりまして、固定費がそれだけ下がっていくという効果は、これは企業経営の上でかなり期待ができるのではないかと考えております。総じて、このたびの公定歩合引き下げはかなり長いこといろいろ取りざたされておりました。また、先ほどもお尋ねにございましたが、もうかなり低くなっておりますから、この辺が最低かといういままでの気迷いが解消しますのと、そのような見方等をあわせまして、これで金利が最低になったということがいろいろな企業活動には、もし金を借りるとすれば、現在より有利な時期というのはもうないのではないかといったような意味での見方、そういったようなことも多少は内需の振興に役立つことがあろうかと考えておるわけでございます。
  322. 野田哲

    ○野田哲君 重ねて大蔵大臣郵政大臣に伺いますが、新聞の報道によると普通預金郵便貯金金利引き下げ〇・五%と、こういうふうになっています。で、実施時期については審議会等の手続が要るので四月になるだろう、こういうふうに報道されておりますが、大体そういうことなんですか。
  323. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これから金利調整審議会に発議をいたすわけでございます。いろいろと時間的にかかりますので、いま確たることは申し上げられませんが、ことによると四月に入るかもしれぬと、こういうことでございます。
  324. 野田哲

    ○野田哲君 〇・五は。
  325. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 私は、定期につきましては〇・七五、それから要求払い預金については〇・五ということを発議したいと、かように考えているわけでございます。
  326. 服部安司

    国務大臣服部安司君) まず新聞報道についての御意見でありまするが、全く私はその問題については関知いたしておりません。なお、先ほど申し上げましたとおりに、民間金融機関利率の決定がこれからなされるわけでございまするから、私はこの民間金融機関利率の決定を十分注意しながら、郵便貯金法第十二条、すなわちこれは政令で定めるわけで、郵政大臣が郵政審議会の議を得て決定するわけでございまするから、いま何パーとかどうとかということは全く考えておりません。   〔委員長退席、理事内藤誉三郎君着席〕
  327. 野田哲

    ○野田哲君 次の問題に入りたいと思います。  これは大蔵大臣に伺いますが、諸外国で軍事費を募集をしている、これに対して日本人が応募するということに対して何か規制の措置がありますか。野放しですか。
  328. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 献金といいますと、手続的に考えますと、送金の場合とそれから円を持ち出す場合と二つあるわけでございます。送金の場合は現在は三千ドルまでは自動許可でございます。三千ドルを超えます場合には日銀の許可を必要とするわけでございます。それから渡航の際に円を持ち出すということになりますと、現行はいま十万円でございます。十万円を超えて持ち出そうとすると、大蔵大臣の許可を要するということになっておりますが、許可を求めてきた事例は一件もございません。
  329. 野田哲

    ○野田哲君 送金、円の持ち出しの手続きさえ経れば軍事献金については自由に持ち出せると、こういうことですね。
  330. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いまは別に禁止はしておりません。
  331. 野田哲

    ○野田哲君 外務大臣に伺いますが、韓国に防衛誠金という制度があるのを御承知ですか。
  332. 園田直

    国務大臣園田直君) 韓国国民が自主的に国防献金をするという制度で、七三年ぐらいから始まっている制度だと承っております。
  333. 野田哲

    ○野田哲君 文部大臣に伺いますが、日本高校野球連盟というのはどういう性格の団体ですか。理事長、代表者はだれですか。
  334. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 高校野球連盟につきましては、事務当局からお答えをいたします。
  335. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) いまおっしゃいました団体は体育局の所管でございまして、ちょっと問い合わせましてからお答えさしていただきたいと存じます。
  336. 野田哲

    ○野田哲君 後で答えてもらうとして、再度文部大臣に伺いますが、東北歯科大学というのは、その法人の理事長はだれで、この大学には何か紛争といいますか、事件が起こったと思うのですが、その概況について説明していただきたいと思います。
  337. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 東北歯科大学理事長は影山四郎氏でございます。学校設立当初に理事側と学長側に紛争があった、同時に学校が開設をされました最初の年に理事の間で紛争があったということを聞いております。
  338. 野田哲

    ○野田哲君 この学校法人かあるいは後援会で金銭上のトラブルはなかったですか。
  339. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 学校の用地を学校自身の用地であるという申請で私学審議会等に学校開設の許可願いが出たわけでございますけれども、学校の理事者の人からあれは借用地であったというような投書が文部省にあったことがございまして、その後調査をいたしました結果、郡山市から学校用地の一部を借用していたという事実が判明をいたしました。
  340. 野田哲

    ○野田哲君 東北歯科大学に対して五十一年度、五十二年度に補助金が交付されていると思いますが、その内容を説明してもらいたいと思います。
  341. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 私立大学の経常費補助金につきましては、五十年度も法令に基づきまして私学振興財団に補助金の交付方の要請がございましたけれども、先ほどお答えいたしましたような紛争下でございましたので、これは交付はいたしておりません。五十一年度におきましては、その紛争が解決をした、ただそれをなお見守っていく必要があるということから、法令に基づいての補助金の算出を私学振興財団がしたのでございますけれども、文部大臣にこれの五〇%の減額方の協議がございました。それを当時の文部大臣が認めました。五十二年度におきましては、同大学の振興会が収納いたしました入学金の寄付金の一部をこの東北歯科大学以外の学校に支出をいたしておりました事実がございましたので、それを理由として私学振興財団から法令に基づいての計算をした金額を七五%減額をするという協議が文部省にございました。当時の文部大臣がそれを認めたわけでございます。
  342. 野田哲

    ○野田哲君 文部大臣は、この東北歯科大学の理事長影山四郎氏が一昨年に韓国を訪問して、先ほど話が出てました軍事誠金に一千万円の寄付を行っていること、それから先ほど説明はなかったんですが、文部省の管理下にある日本高校野球連盟が昨年の九月に日本選抜高校野球チームを韓国に派遣をして、そのときにやはり同じように軍事誠金を寄付をしている。この事実を御承知ですか。
  343. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 日本高校野球連盟のことは、私は承知をいたしておりませんので、調べまして後ほどお答えを申し上げたいと思います。  東北歯科大学につきましては、昨年の十一月に大学当局者を文部省へ招致をいたしておりまして、事情を聴取いたしました。その結果、昭和五十年の七月十日、東北歯科大学の影山四郎理事長が韓国政府から招待された際に、同政府に対し日本円に換算して一千万円の寄付を行った、この寄付は理事長の個人としての寄付行為であったという報告を受けました。会計書類等調査をいたしました結果、学校会計からはこの金は支出をされておりませんでした。なお、防衛誠金というような性格のものであるということは私ども初めて伺ったことでございます。
  344. 野田哲

    ○野田哲君 ここに韓国の新聞が二通ありますが、それぞれそのことを記載をしております。明確にこれは日本人影山一千万円防衛誠金、そして記事の中では、東北歯科大学理事長と、こうなっている。説明もそうなっている。  大蔵大臣に伺いますが、一昨年、影山四郎氏が一千万円日本円で持ち出している。どういう手続がなされておりますか。
  345. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) その点はわかりません。
  346. 野田哲

    ○野田哲君 政府委員室へ昨日からそのことは何回も調査を求めておるし、きょうの質問でもそのことは出すということを通告してあるんですが、なぜわからないんですか。
  347. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) まあ想像でございますが、恐らく現金を持ち出したのではなかろうかという推測のようでございます。
  348. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 同大学の当局者を文部省へ招致をいたしまして事情を聴取いたしましたときに、学校から受けております報告は、影山理事長は寄付をするに当たって、当該資金を現地で同大学の姉妹校であります慶煕大学から一時借用をして、昭和五十年十二月に慶煕大学の総長が日本に来たそうでございますが、その際に返済をしたという報告を聞いております。
  349. 野田哲

    ○野田哲君 そのせんさくをやっておると時間がかかりますので、総理に伺いますが、こういうふうな形でこの日本の法人、いま例を挙げたのは、特に教育関係の法人だから私は特に例を挙げたのです、ほかにも例は幾つかあるわけですが。非常に緊張している国のこのような軍事資金に日本の金が持ち出されて寄付をされている。こういう状態に対して、武器については武器輸出の三原則という形で規制をされておりますけれども、外国への軍事資金の持ち出しの寄付の規制、こういう措置は必要とはお考えになりませんか。
  350. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国は武器輸出三原則というのを持っておるわけであります。つまり紛争中の当事国に武器は輸出しない、こういうことになっておるわけでございますが、まあ韓国は紛争は始まっておりませんけれども、緊張状態があるというようなことで、韓国に対する武器輸出についてもその三原則に準ずる、こういうような政策でございますが、そういう政策があるものですから、いま御指摘の韓国政府の軍事費に対する献金、それをやりますと、三原則、これに違背をするというような結果になるような感じがするんです。そのとおりじゃないかと思いますけれども、問題はどうやってそれを規制するかです。いま文部大臣から御説明があったような、こういうことでありますとなかなか規制というようなわけにもいかぬ。まあ単独の立法でも出して、刑をもってこれをというようなこともちょっと仰々しいような感じもしますし、まあこの規制はした方がいいような感じがしますけれども、さてどうやって規制するかということになると、なかなかこれはむずかしい問題じゃないか。これはとにかくよく検討してみることにいたします。
  351. 野田哲

    ○野田哲君 文部大臣、先ほどの団体の性格はお答えにならなかったんですが、日本高校野球連盟、これは高校生のスポーツの団体でしょう。そしてしかもこれは法人になっているわけでしょう。その財源というのはこれは純粋なスポーツの、夏の甲子園大会とか、これから始まる春の甲子園大会とか、これらの収入が主たる財源になっていると思うのです。その団体がその目的以外の外国の軍事資金に金を提供することは許されますか、法人の性格として。
  352. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 日本高校野球連盟は財団法人でございます。まさに御指摘のとおりに高校野球の振興を目的として設立された団体でございます。ただ御指摘のその韓国への献金の点をただいま問い合わせております。いましばらくお待ちいただきましたならばお答えができるかと思います。
  353. 野田哲

    ○野田哲君 事実あったとしたら、これはどういう所管大臣としては認識をお持ちですか。
  354. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 韓国へのその献金の性格がどういうものであったかということをまだ承知をいたしておりませんので……
  355. 野田哲

    ○野田哲君 軍事誠金、軍事基金です。これは新聞に出ているんです。
  356. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) それをただいま問い合わせ中でございますから、しばらくお待ちをいただきたいと思います。
  357. 野田哲

    ○野田哲君 外務大臣に伺いますが、昨年の六月二十三日にアメリカの下院の国際関係委員会のアジア・太平洋小委員会のウルフさんという委員長、この人が日本と韓国を訪問した後、議会に報告書を出している、いわゆるウルフ報告書と言われているんですが、この内容を御承知ですか。
  358. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) お尋ねの点は恐らくアメリカの下院の国際関係委員会が昨年六月に公表した同委員会のアジア・太平洋小委員会アジア特別調査団の報告書のことであろうかと思われます。この報告で述べられておりますことは、在日米軍施設区域の中の弾薬庫に貯蔵されている米軍所有の弾薬の一部が韓国における不測事態において使用されることがあり得ると、こういう趣旨のことを述べたものであるというふうに理解いたしております。
  359. 野田哲

    ○野田哲君 防衛施設庁に伺いますが、日本に所在をするアメリカの陸軍の弾薬庫というのはどことどこにありますか。
  360. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) お答えいたします。   〔理事内藤誉三郎君退席、委員長着席〕 在日米陸軍の使用しております弾薬庫は、広島県の川上弾薬庫、同じく広弾薬庫、それから同じく秋月弾薬庫、それから沖繩におきまして名護市にあります辺野古弾薬庫、それから嘉手納の弾薬庫、これは陸軍だけでございませんで、海兵等との共用でございますが、以上五つでございます。
  361. 野田哲

    ○野田哲君 アメリカの国防総省の方から七九会計年度で日本に所在する陸軍弾薬庫の増強の予算を要求しているというふうに聞いておりますが、その状況についてどうなっておりますか。
  362. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) これは以前にも御質問が出たことがあるのでございますが、昨年の二月にアメリカの陸軍省が一九七八会計年度の軍事建設計画につきまして米下院の歳出予算委員会の軍事建設小委員会に提出した資料の中に、在日米陸軍の将来計画、一九七九会計年度の事業計画の一項として弾薬貯蔵施設の項目が掲げられておったということは承知しております。ただ、これはあくまで七八年度の予算の参考資料として将来計画に関する資料を提出しておったものでございます。
  363. 野田哲

    ○野田哲君 外務省のこれは政府委員がいいんですが、先ほどアメリカ局長が簡単に説明されたウルフ報告書ですけれども、これはもっといろいろ書かれているわけですが、今後、議会の承認でもってこれは韓国軍の有事の際に韓国軍に提供すると、こういうふうになっているんじゃないですか。移管をすると、こういうふうになっているでしょう。
  364. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 日本にあります弾薬、米軍の弾薬は、これは第三国の所有ないし統制のもとにあるようなものが日本の弾薬庫を使ってその中に入っておるということは全くないという点、米側からも確認をとっております。で、ウルフの報告そのものにも当該弾薬が米軍の当局によって保管せられておるということも述べておりますし、いずれそれらの弾薬が韓国地域に移送されるというようなことは、これはあり得ることであろうかと思いますけれども、そのことによって韓国の弾薬庫をわが国の施設において保管をしておると、そういうことは全くないというふうに考えております。
  365. 野田哲

    ○野田哲君 いまはアメリカの所有でありますけれども、ウルフ報告書によっても、韓国軍に使わせるということだけははっきりと記述をしておるわけですね。初めから韓国軍に使わせるということを明確にしたものを日本の国内で保管をするということ、これは地位協定のどこにそういう条項があるんですか。
  366. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) アメリカ軍の内部におきまして特定の爆薬が、いずれこれの使用に供せられることになるであろうという一種の腹づもりないしイヤマークと申しますか、そういうような腹づもりを持っておるということ自身は、これはあり得ないことではなかろうかと思います。いずれにせよ、いま地位協定の関係のお尋ねでございますが、米軍は、安保条約第六条によりまして日本国の安全に寄与するため及び極東における国際の平和安全に寄与するために施設区域を使用することができることになっておりますので、その目的に合致する限りで、米軍が弾薬をわが国の施設区域を使って保管するということは、これは安保条約上特に問題はないというふうに考えているわけでございます。
  367. 野田哲

    ○野田哲君 いま、この七九年度へ向けて日本の弾薬庫の設備を拡張しようとする予算を要求しているわけです。そういうときに、ウルフ委員長の方から日本にある弾薬は韓国陸軍に使わせるんだと、こういう報告書が出ているわけです。韓国陸軍に使わせるということが明確になっているんだとすれば、約六十億今度の拡張費を要求しているわけですが、これについては明確に断るべきじゃないですか、いかがですか。
  368. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいま申し上げましたように、わが国にあります弾薬の貯蔵は基本的に米軍がこれを使用するものでございます。で、その使用に当たって安保条約の目的に反しない限りで、極東における国際の平和安全のためにその補給活動が行われるということ自身は、安保条約上これはまことに許容されるところでございます。したがいまして、それから他方いま先生はウルフの報告を引用しておられるわけでございますが、御承知のように、ウルフさんの委員会と申しますのはアメリカの議会の機関でございます。で、議会で特定の調査団を派遣して、その調査団なりの見解をまとめたのがいまの報告でございまして、これが行政府そのものの具体的な見解ということとはちょっと違うだろうと思います。ウルフさん自身のお考えがいろいろあり得ることもあるだろうと思います。いずれにしろ、安保条約との関連は、先ほども申しましたような安保条約の目的の範囲内で米軍がこれを使用すること、その際に、その特定の弾薬がいずれは他地域に移動していくことを腹づもりとして考えているということ自身は安保条約の違反ということにはならないというふうに考えておるわけでございます。
  369. 野田哲

    ○野田哲君 地位協定では、米軍が使用するものを保管するということが取り決められているわけでしょう。ウルフ報告では、これは韓国の陸軍に所有を移管をすると、こういうところまで触れているわけですよ。所有を移管するんだったら日本において保管をすることはないのだし、その予算をもって日本の施設区域を拡張することはないわけでしょう。どうですか、この点、外務大臣なり総理大臣なり明確にしてください。
  370. 園田直

    国務大臣園田直君) 在日米軍の弾薬庫の予算は、外務省から問い合わせましたところ、これは施設を強化するのではなくて、現在ある弾薬庫の整備補修をする予算であると、こういう返答であります。  それから、いま局長から申し上げましたのは、韓国に移管する弾薬または韓国の所管下にある弾薬を日本の弾薬庫に保管しているわけではありませんので、ウルフの報告でも、将来韓国において不測の事態があった場合にその一部は使用されると、こういうことでありますので、韓国の所管または将来韓国に移管されるという趣旨のものではありませんので、地位協定には違反しないと考えます。
  371. 野田哲

    ○野田哲君 それではアメリカの議会で韓国へ移管することの承認が行われたときには、この秋月、川上、広等の弾薬庫から直ちにその弾薬は撤去してもらうという確認ができますか。
  372. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) お答え申し上げます。  先ほど来申し上げておりますように、いわゆる在日米軍が保管いたしておりますところの弾薬が、たとえば在韓米軍の管轄下に移管されるということ自身は、これはきわめてあり得ることでございまして、そのことが安保条約上どうこうということはないわけでございます。  他方、いま先生の御質問の趣旨が必ずしも明確につかめなかったのですが、日本に置いてあります弾薬そのものが、ある日突然議会で承認した途端に韓国の所有に移されるというようなことは、これはあり得ないことで、日本にあります弾薬は米軍が使っておるものでございます。それがいずれは他地域に移されて、そしていずれ議会の承認、それからそれに基づくところの売買と申しますか、援助の、調達の手続とかいうようなものが果たされたときにそれが韓国軍に移されるということは、これはあり得ないことではないと思いますけれども、日本に保管されておりますところの弾薬そのものが、突如ある日韓国の所有に帰するというようなことは、これはあり得ないのではないかというふうに考えております。
  373. 野田哲

    ○野田哲君 それはウルフの報告書とはちょっと違うんじゃないですか。ウルフの報告書では、日本と韓国に備蓄されている弾薬は韓国で戦争が起こった場合に使用させるためのものであると、こうなっておりますし、さらにそれに対しては目印をつけると、こういうふうな記述もあるわけです。つまり韓国に移管をしても、依然として日本の国内に残して保管をしておくという意味になっているわけです。そうなると、地位協定上のこれは問題が出てくるんではないですか。だから、韓国に移管をされたときには直ちに撤去してもらうという措置がとれますかと、こういうふうに聞いているんです。
  374. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほども冒頭にお答え申し上げましたように、第三国の所有に帰する弾薬が日本の施設区域の中に貯蔵されているということを米軍は確認しているわけでございます。したがいまして、いま先生御懸念のような、日本にありますものが、ある日、韓国の所有に帰するというようなことはない。ウルフさんの報告も必ずしもそこまでのことを言っていることではないんではなかろうかと。私も十分に読んだわけではございませんけれども、たとえば議会でその権限額を承認した場合に、「これらの権限額は、新しい調達を認めるものではないこと、また韓国政府あるいは韓国軍に所有権や統制(権)を移管するものではないことを指摘すべきであろう。」というような記述もございますし、この報告書全体の趣旨が必ずしも先生の御指摘のようなことを明確に考えているということではないのではないかというふうに考えております。
  375. 野田哲

    ○野田哲君 これは、外務大臣、よく考えてください。日本には米陸軍はもうほとんど戦闘部隊としては所在をしていないんですよ。沖繩の陸軍も撤退を始めるということを発表しているんですよ。弾薬を使うような陸軍部隊は日本の国内にはほとんどいないんです。そういう状態の中で、広島県にある川上弾薬庫を六十億円かけて内部の改修をやろうとしている。明らかにこれは米軍が使うものとしてはもう必要がないはずなんです。そうしてしかも、そのために基準量がオーバーしているからアメリカで基準量オーバーの承認の手続をとろうとしているんです。明らかにこれは、いま七九会計年度で日本における陸軍の弾薬庫の増強の費用を計上しようとしているということは、これは韓国へ移管する弾薬を日本で貯蓄するものとしか考えられないのじゃないですか。その点はひとつアメリカに対して明確にしてもらいたいと思うのです。いかがですか。
  376. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほども外務大臣から御説明がありましたように、先生御指摘の金額、七九会計年度において要求されておる金額は、弾薬のその増強分の予算ではなくて、弾薬庫の改修のための費用であるということを言っておる次第でございます。
  377. 野田哲

    ○野田哲君 答弁になってないですよ。日本では陸軍はもういなくなっているんですよ。その中で六十億円も金をかけて弾薬庫を存置をしようとしているということは不可解には思いませんか。どうですか、これは。外務大臣、どうですか、不可解に思いませんか。陸軍がいないのに陸軍の弾薬庫を六十億円もこれから金をかけようというのは不可解に思いませんか。
  378. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま先生がおっしゃいましたように、陸軍の実力部隊というのは日本に現在ほとんど駐留いたしておりません。しかし、日米安保体制のもとで抑止力として、私どもは防衛協力小委員会等におきましても安保条約第五条のもとで共同対処ということを考えているわけでございます。したがいまして、私どもの防衛構想の中にも、小規模のものについては自衛隊が原則として強力で、さらに大きくなったものについてはアメリカの協力を得てこれに対処するという防衛構想がございます。その際には当然ながらアメリカの協力が必要でございまして、その際の一番大事なのは補給面でございます。したがいまして、そういった補給関係の能力が日本にあるということはやはり日米安保体制というものを実行するというあかしであるということでもあるわけでございます。
  379. 野田哲

    ○野田哲君 外務大臣、もし日本にある米陸軍の弾薬がアメリカで手続をとられて韓国の所有になる、移管をされると、こういう場合には日本から撤去してもらうということを明確にできますか。
  380. 園田直

    国務大臣園田直君) 局長が数回答弁いたしましたように、そのようなことは考えられぬということでありますけれども、現実に日本の弾薬庫にある弾薬が韓国に日本に置かれたまま移管されるということになれば、これは当然野田さんのおっしゃるとおりに米軍と交渉すべき問題であると考えております。
  381. 野田哲

    ○野田哲君 これは外務大臣政府委員でも結構ですが、あるいは防衛庁かもわかりませんが、アメリカと韓国との軍の指揮命令系統について伺いたいと思うのですが、韓国の陸海空三軍の作戦の指揮権、これは一九五〇年に指揮権移譲に関する協定というのを韓国とアメリカとの間で結んでおりますが、この指揮権移譲に関する協定というのはいまも存続をしておりますか。
  382. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 一九五〇年、当事の李承晩韓国大統領と当時のマッカーサー国連軍司令官との間で交換されました書簡と、それから一九六一年の五月でございますけれども、韓国の国家再建最高会議と同じく在韓国連軍司令官との共同声明によりまして、韓国軍は現在におきましても在韓国連軍司令官の指揮下にあるものと承知いたしております。この国連軍司令官というのは、たまたま在韓米軍の司令官が兼ねている、同一人物が務めておりますけれども、韓国軍が指揮下に入っているのは国連軍司令官としてのその人の指揮下に入っているものと承知いたしております。
  383. 野田哲

    ○野田哲君 七七年、七八年、チーム・スピリット77、チーム・スピリット78、これは現在行われているわけですが、この最高の指揮官というのはこれはどういう立場の人がやっておりますか。
  384. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 今度のチーム・スピリットの最高指揮官がだれであるかということは発表されていないわけでございますが、韓国で報道された中には指揮官は在韓米軍の司令官であるということが載っておりますし、また、昨年米韓共同の司令部をつくった場合の最高指揮官はアメリカの大将であるということが合意されております。したがいまして、そういう点から現在の在韓米軍司令官というふうに理解いたしております。
  385. 野田哲

    ○野田哲君 私の理解でも、いわゆる米軍の司令官、つまり国連軍司令官の名において行われているというふうに聞いているわけですが、そこで、昨年来協議が続けられておりまして、ことしの七月を目途にして、従来の国連軍へ韓国三軍の指揮権を移譲していた形を、今度は韓米連合司令部と、こういう形に改組するという話し合いがほぼまとまって進行していると、七月までには改組されると、こういう情報がありますが、この点はいかがですか。
  386. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 御質問の昨年七月の共同声明の線に沿って米韓間で当然その基本的ラインに沿って話が進められていると私ども思いますけれども、米韓間の問題でございまして、外務省としてはどういうふうになっているかという実情は承知しておりません。
  387. 野田哲

    ○野田哲君 国連軍に対する地位協定というのは現在どうなっておりますか、日本の場合。
  388. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 現在なお有効でございます。
  389. 野田哲

    ○野田哲君 今度、韓国での米軍と韓国の陸海空三軍の指揮命令系統が、国連軍という形から韓米連合司令部、アメリカ流に言えば米韓連合司令部と言うのでしょうか、こういう形になってきたときには、たとえばいま行われているチーム・スピリット78、このような演習が行われる場合に、これは今度は米韓連合司令部あるいは韓米連合司令部というのでしょうか、そこの指揮のもとに行われると、こういうふうに解していいわけですか。
  390. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 国連軍司令部はいま残っております。それからまた、一方に米韓司令部というものがいま検討が続けられておりますが、その後どういうことになるかということは、私どもまだ聞いておりませんのでよくわかりません。
  391. 野田哲

    ○野田哲君 国連軍司令部が解体をして、先ほど国連局長から説明のあったように、韓米連合司令部、こういう形に改組されて、そこの指揮、計画のもとにいまのようなチーム・スピリット78というような演習が行われたとする場合には、日本におけるたとえば沖繩の海兵隊の出動であるとか、あるいは横田基地の使用であるとか、第七艦隊の横須賀からの出動であるとか、このような日本の基地を使った米軍の出動が、韓国も加わった米韓連合司令部の意思によって動かされるというのは、これは安保条約関係から言えばどういうふうに理解をすればいいんですか。
  392. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) いわゆる在日米軍が日本から出てまいりまして韓国地域に移動するという場合に、そこでいかなる指揮統制に服するかということは日本とは実は関係ない問題でございまして、いまるる御答弁がありましたように、米韓連合司令部なるものがどういうことになろうとも、それは日本とは直接関係のないことであるというふうに理解いたしております。ただ、日本から戦闘作戦行動を発進させるというような場合には、先生御承知のように、これは当然に事前協議の対象になる、こういうことでございます。
  393. 野田哲

    ○野田哲君 米軍あるいは国連軍という場合には、これは地位協定というものがあるから、いま説明のあったようなことになるんでしょうけれども、米韓連合司令部というような形のところが作戦計画を立てた、これに日本の基地を使って出撃をする、あるいは演習が行われる、こういうやり方に対しては何の取り決めもないでしょう。これはできないはずなんですが、いかがですか。
  394. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 先ほどアメリカ局長からも説明がございましたように、わが国にある米軍施設区域について、安保条約第六条に基づきまして、単にわが国の安全のみならず極東の平和と安全の維持のために米軍が使用することを認められているものでございます。で、日本におりますこの米軍が、いま申し上げましたような目的の範囲内でその練度を高めるということで演習するということは、これは安保条約上認められているところでございまして、その米軍が演習等のために韓国へ移動していく、そしてそこで演習を行うということについては何ら特別の取り決めを要しないものと、こういうふうに考えております。
  395. 野田哲

    ○野田哲君 日本の基地を使うという場合には米軍あるいは国連軍、これに限られております。そしてその行動については米軍の指揮命令によって動く場合に限られておるはずだと思うのです。それを突如として、朝鮮半島地域において行動する部隊が、米韓連合司令部というような形で韓国が加わった連合司令部ができて、そこから指揮命令が下るというような場合にこれは許されるんですか、安保条約、地位協定で。許されないでしょう、そういうものは。
  396. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 私の答弁する筋合いではないようでございますが、あなたから質問書が出ておりましたから確かな筋に問い合わせて聞いてみましたところが、そういうことは、絶対に指揮命令系統は変わっておりませんと、こういうことであります。
  397. 野田哲

    ○野田哲君 金丸長官、ことしの七月ごろから変わるんですよ、指揮命令系統は。これは間違いない。  押し問答ですからこれはやめて武器の問題に入りますが、防衛庁長官に伺いますけれども、国防会議にかけられた、これはまああなたの前の三原さんのときですけれども、国防会議にかけられたFXの要求性能というのはどういうふうになっておりますか。これは政府委員でいいですから、その要求性能について詳しく読んでください。
  398. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 新戦闘機に要求される能力といたしましては、まずレーダー誘導ミサイル、これは非常にすぐれたものであるということ。それから全天候性を持っているということ。これはレーダーによって誘導されるミサイル、こういうものを持っているということでございます。それからさらに上昇性能、加速性能といったような飛行性能がすぐれているということ。それから低高度目標に対する対処能力がすぐれているということ。それから高高度高速目標に対する対処能力がすぐれているということ。さらには対電子戦能力、いわゆる電子的に妨害されるのを排除して戦う能力がすぐれているということ。それから独立戦闘能力、地上からの管制支援が十分でないようなときにも長距離のレーダーをもって敵を捜索し識別し、これを攻撃する能力を持っているということ。さらにはまた、わが国に導入した場合の適合性でございますが、教育訓練あるいは安全性あるいは装備の容易性、そういった内容が要求性能として述べられているわけでございます。
  399. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 野田君、文部大臣から発言を求められておりますから。
  400. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 先ほどの日本高等学校野球連盟の件でお答えをいたします。  五十二年の九月に高校選抜野球チームが招待をされまして韓国の高校チームと親善試合を行っております。遠征費用は大韓野球協会持ち、そして切符の売り上げ等でございましょう、大会運営剰余金は折半ということになっておりましたけれども、日本側が受け取ることになっておりましたその半分を日本高等学校野球連盟の側は受け取らずに、大韓野球協会へそのまま寄付をしてきた。寄付をいたしました対象は、相手は大韓野球協会であったそうでございまして、高校野球連盟としては同国の高校野球の親善に当然使われるものと考えておりますと、かように答えております。
  401. 野田哲

    ○野田哲君 文部大臣、これは違いますよ。ここに書いてあるんですよ、はっきり。防衛誠金として、いま言われた向こうの野球協会を通じて――これはただ窓口にしただけなんですよ。防衛誠金として寄付をしたと、こうなっているんですからね。よく事情を調べてください。
  402. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 日本高等学校野球連盟としては、防衛献金としてそれを寄付したような気持ちは毛頭ない、日本高等学校野球連盟が受けとる金であったけれども、それは受け取らずに韓国の高等学校の野球の振興に使われるものとして、対象は大韓野球協会にお渡しをしてきたと、かように答えておりますので、韓国の新聞に出たという御指摘でございますので、なおその実情をもう一度文部省といたしましては調査をいたしたいと思います。
  403. 野田哲

    ○野田哲君 総理に伺いますが、先ほど防衛局長が、次期戦闘機にはどういう性能が必要かということを、国防会議等に手続をとったときの説明をやっていたんですが、おられなかったんですが、総理は国防会議の議長として、このF15に対して爆撃装置や給油装置がついていることは、いつどなたから説明を受けられましたか。
  404. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは国会の御論議がありまして、その後で防衛庁事務当局から説明を受けたと、こういうことだったと思います。
  405. 野田哲

    ○野田哲君 防衛庁に伺いますけれども、「日本の防衛」という昨年決めたその中に次期戦闘機の選定についてというのがあるんです。これは私はこの前も指摘をしたんですが、この「武装」というところ、スパロー、サイドワインダー、バルカン砲、ここまでは書いてあるんです。これはジェーン航空年鑑から転載をしたと、こうなっているわけですが、ジェーン航空年鑑、あるいはここに何冊も航空機の専門誌がありますけれども、どの本を見たって、この武装のところには全部スパロー、サイドワインダー、バルカン砲とあわせて爆撃装置はこうなっていますよということが書いてある。これをなぜ載せなかったんですか。
  406. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 昨年の防衛白書作成に当たって、FXについてジェーン年鑑その他から引用したということでございますが、私どもとしては、FXはあくまでも要撃機能に着目して採用するという前提でございましたので、そういう面を特に引用したわけでございます。
  407. 野田哲

    ○野田哲君 爆撃装置というのは武装の中に入らないんですか。
  408. 夏目晴雄

    政府委員(夏目晴雄君) 一般的に武装の中に入ると思います。
  409. 野田哲

    ○野田哲君 これは前任者の問題ですけれども、継承の責任がありますから長官に答えてもらわなきゃならぬと思うし、総理の所見も聞きたいと思うのですが、わずか四、五年前に、憲法上の規定から足の長い飛行機には爆撃装置は持たない、それから他国に深く侵入するような脅威を与えてはいけないので、航続距離を伸ばす空中給油装置はもちろん持たないし訓練もしないし空中給油機も持たない、こういうことで国会の中での大論議を収拾をしているんですよ。そういう経緯があれば、当然FXを選定するに当たっては、総理のところまでF15についてはこれだけの機能がありますよという点を、特に問題になった空中給油装置あるいは爆撃装置等についてもこの資料に明記をして手続をとるべきじゃないですか、この点いかがですか。
  410. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) この問題につきましては慎重に審議をいたしまして、前後五回、そして国会の審議も踏まえまして、このF15の戦闘機は要撃的な性能を有する戦闘機ということとあわせまして、いわゆる減耗する戦闘機を補完しなくちゃならぬ。それには近代的なものにするべきであるというようなこと。またこの爆撃装置につきましては、いわゆる限定的な付随的な装備だということでありますから、いわゆる他国に脅威や誤解を生じるようなことはない。また給油装置につきましては、いわゆる近代化していく兵器の中で、相対的な考え方から言えば当然これは持つべきであるという、十二分に国防会議で審議した結論がそういう結果になったということであります。
  411. 野田哲

    ○野田哲君 いや、それは長官違うのですよ。総理は国会で問題になって知ったと、こういうことなんです。当然あれだけ問題になっているんですから、国民に向けてPR用の、この防衛庁の防衛局防衛課が出した「新戦闘機の選定作業の経緯と今後の方針について」、この中に書かれている「新戦闘機に期待する能力」、あるいはわれわれにも配られたこの「日本の防衛」、この中で当然空中給油装置についてはどうなっているとか、爆撃装置はどうなっているかということを明記をして手続をとるべきじゃなかったんですか。総理、いかがですか。
  412. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回のFX機の採用につきましては非常に慎重な手続をとったわけです。つまり、これは国会におきまして前々からこの種の問題につきましての論議があった。その経緯等から見まして今回のFX採用問題、これはどういうふうな位置づけになるかと、こういう問題があるわけです。これは国会におきまして、特に参議院内閣委員会等におきましてもずいぶん御論議があったわけでございますが、そういういきさつも踏まえまして、ただいま防衛庁長官から申し上げましたように、前後五回にわたりまして国防会議を開催するということであり、しかもその最後の三回ぐらいはほとんどこのFX問題に説明が集中する、こういうような状態で審査が行われたわけでありますが、結局いろいろないきさつはこの問題は過去においてはあった。あったけれども兵器の技術の変遷、そういうようなことから見ましてこれは憲法に支障はないと、こういうことと断定すべきであると、こういう結論であり、また防衛庁におきましても、今回の調達がどうしても早急に必要になってきたと、こういうことであるので、最終的に国防会議においてF15を採用すべきである、こういうふうに決定したわけでありまして、これは従来のいきさつ等を踏まえましてかなり慎重に検討し結論を出したと、このように御理解願います。
  413. 野田哲

    ○野田哲君 これは総理、手続的に国防会議、閣議にかけられた過程では、去年の十二月に最終的に決定するときまで、十一月に国会で問題になるまでは総理も知らなかったとおっしゃるんですからね、そのための書いたこの防衛庁の資料には一切空中給油装置や爆撃装置のことは書かれていないんですから。要求性能としても書いてないし武装の中にも書かれていないことをなぜそんなにこだわるんですか。これはもう前の国会の経緯からして了解できないですよ。撤去すべきですよ。どうですか。
  414. 久保卓也

    政府委員(久保卓也君) FX、それからP3Cの問題につきましては、昨年春以降、国防会議事務局でずっと検討しておったわけであります。そして、昨年の秋の段階では事務的に各省とわれわれが慎重に審議をしている段階でありまして、その途中に臨時国会でいまのFX、それからP3Cの問題が出ましたので、私どもは検討途中でありましたので、総理にはまだ申し上げない段階のうちに、総理の方が先に国会審議で問題点を御承知になったということであります。  そこで、いまお手元の資料でそういった爆撃装置のことが書いてないじゃないかというお話でありますが、防衛庁の公刊資料は、性能的なことについては通常ジェーンの年鑑を出しております。ジェーンの年鑑に出ておらないものについては、国会等で特別の御注文があればその都度御説明していると思いますが、通常、公刊資料については年鑑を利用している。そこで臨時国会もあり、また本国会も始まることであり、それ以外のことについては十二分に国会の中で防衛庁が御説明申し上げるということであり、また総理に対しては国防会議の席上で防衛庁からるる御説明があったということであります。
  415. 野田哲

    ○野田哲君 総理は国防会議の議長として決定の責任者ですけれども、この武装というところに爆撃のことを、爆弾をどれだけ積めるかということが全然書いてない。こういう書類がつくられていることを不審に思われませんか。
  416. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 私は昨年十一月二十八日に防衛庁長官になったわけでありまして、そのときその問題につきまして、大臣になりますと、いわゆる幹部からいろいろの教育を受けるわけでありますが、その教育の中で、いわゆる爆撃装置、給油装置等につきまして、いまあなたが御指摘のようなところも私はついたわけであります。ついたところが、F15を決める前のいわゆる戦闘機を購入するというときには、そういうものがついているかついていないかわからなかったから入れなかった。しかし、この問題につきましては御指摘のところもあるわけでありますが、私は、そういうところは、足らなかったところは頭を下げるときは下げべきだと、こそくなことをやるべきじゃないんじゃないかと言ったのですが、そんなようないきさつもありまして、先生のおっしゃることもわかりますが、ぜひひとつ御理解をいただきたいと思うわけであります。
  417. 野田哲

    ○野田哲君 それは長官、違いますよ。ジェーン航空年鑑にはちゃんとスパロー、サイドワインダー、バルカン砲、それから爆弾は幾ら積めるということは全部書いてあるし、ここにこれだけ航空機の本があるんですよ。全部書いてありますよ、爆撃はどうだということを。調査団が何回も行っているんですよ。それで爆撃のことが書けないはずはないんですよ。どうですか、この点。
  418. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま先生は要求性能の中にないのはおかしいではないかということでございますが、まず私どもの要求性能といたしましては、この機種選定は要撃戦闘機というものを選定いたしております。したがいまして、先ほど申し上げましたように、高々度の飛行性能あるいは低空対処能力、電子戦に対する能力、そういったものが要求性能としてできておったわけであります。そして、その後F15を選定いたしました。で、これは付随的に爆撃機能を持っているということはその国防白書にも書いてあるとおりでございます。
  419. 野田哲

    ○野田哲君 それじゃ武装のところへなぜ書かなかったのですか。この防衛白書の武装のところへなぜ書かなかったのですか。
  420. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これはたびたび申し上げておりますように、要撃戦闘機として選んだわけでございます。したがいまして、要撃機能というものを強調して書いてございます。そこで一行、付随的にそういう機能は持っているというふうに書いてございますが、先ほど長官も申し上げましたように、まあわかっていることであれば載せておくということも親切であったかというふうに考えております。
  421. 野田哲

    ○野田哲君 これはもう全く納得できない、手続的に。  最後に、時間がありませんが、総理はこの前の源田委員の質問で、口が痛かったせいかどうか、もごもごとして答えられなかったんですが、有事立法について何か考えがあるやの一言を言われたんですが、どういう認識なんですか。
  422. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 自衛隊は有事にこそ備えてあるわけであります。でありまするから、有事の際にどういうふうな行動をする、あるいはどういうふうなそのために立法が必要だとか、そういうようなことにつきましては常日ごろ検討しておかなければならぬことである、そういうようなことで、もう有事に際してあらゆる面で備えをあらかじめなしておくということは当然のことである、こういうことを常に申し上げておるわけであります。源田さんに対しましてもそのような趣旨を申し上げたかったわけであります。
  423. 野田哲

    ○野田哲君 防衛庁に伺いますけれども、笹部益弘という方、これはいま防衛研修所の研究部長をやっておられる方だそうですが、この人が再軍備に伴う国内法制の整備、こういうことで非常事態対策と超憲法的非常事態対策、こういう点についての法制についてかなり具体的な検討を行って、文書にしたものがあるというふうに聞いておりますが、これを説明してもらいたいと思います。
  424. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) お答えいたします。  いまからちょうど二十年前、笹部益弘、現在防衛研修所の研究部長ですが、当時防衛研修所の所員でございまして、自衛隊と基本的法理論という彼自身の学術論文を書いたことがございます。これには、最初は憲法上の解釈、各国の兵制その他を学術論文として書きまして、その中に確かに最後の項に、再軍備に伴う国内法制の整備ということを彼が書いたようであります。これは第二次大戦中にわが国がいろいろな法律、統制法令、そういうものがたくさんできてきたと、そういうものを列挙して、そういうものを今後考えるべきかどうかという彼なりの学術論文を書いたようでございます。現在この本は廃棄されてございませんので、私は直接笹部君からきょう電話で聞いたところでございますが、そういう内容の説明がございました。
  425. 野田哲

    ○野田哲君 防衛庁ではかなり具体的なこの検討課題の洗い出しが終わっているというふうに聞いておりますが、どういう検討課題の洗い出しが終わっているんですか。
  426. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) お答えいたします。  昨年の七月に三原前長官から、防衛庁として有事立法の勉強をしたらどうだろうという御指示がございましたので、官房長の責任のもとにおきまして、内局、各幕僚監部一体になりまして、組織的に初めて有事におきまして現在の法制では何が足らないか、どういうものが必要であろうかという勉強をするようにしたわけでございます。  御承知だと思いますけれども、有事といいますと、わが国の国土が焦土と化するわけでございます。そうしますと、まず第一に考えられるのは多くの国民の避難誘導措置があります。あるいは自衛隊に対しまして、そういう場合には自衛隊がまず出て行って戦えという国民からの強い叱咤激励があろうと思います。そういう場合におきます自衛隊の活動をある程度優先ならしめることも必要でなかろうか、あるいは自衛隊に対しまして多くの国民が協力されると思いますが、そういう協力体制が現在の法令で果たして可能かどうか、こういった点を基本的なものにいたしまして、われわれ現在勉強中のところでございます。ただし、これは多くは他の官庁の所管の法制等々にも関係がございますので、防衛庁といたしましては現在国民が差し迫った危機感を持っておるわけではございませんので、防衛庁として静かにゆっくりと勉強していきたいと思います。もし、いざというときに防衛庁がよく勉強しておったと言われるだけの体制で勉強を進めていくつもりであります。
  427. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 野田君、時間が来ております。
  428. 野田哲

    ○野田哲君 検討項目はどういう内容か。
  429. 竹岡勝美

    政府委員(竹岡勝美君) いま言いました検討項目はまだ勉強中で、各幕僚監部その他から検討すべき項目を現在洗い出しておる最中でございます。そして、いま申し上げましたように、検討項目の大本は、基本的なものは、国民の避難誘導措置等、あるいは自衛隊に対する活動をより優先ならしめる方法等、あるいは国民が自衛隊に対します協力体制、こういったものは恐らく現行法令だけでは私は不十分だと思っております。そういうものを中心にして勉強を進めていこうと思いますけれども、まだ各幕僚等からいろいろな検討項目が出てくるであろうと思いますので、私の責任においてさらに具体的に詰めていきたいと思います。まだ具体的な細かいところまで来た段階ではございません。
  430. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で野田君の総括質疑は終了いたしました。(拍手)  理事会をやります。――それでは、ただいま内藤自由民主党理事から、先刻の上田君の発言中に不穏当な個所があったやの指摘がございました。委員長といたしましては、速記録を調査の上、理事会で協議をいたしたいと思います。  明日は午前十時から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時三分散会