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1978-03-14 第84回国会 参議院 予算委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月十四日(火曜日)    午後一時三分開会     —————————————    委員の異動  三月十三日     辞任         補欠選任      安恒 良一君     藤田  進君      矢原 秀男君     相沢 武彦君  三月十四日     辞任         補欠選任      亀長 友義君     田代由紀男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鍋島 直紹君     理 事                 戸塚 進也君                 内藤誉三郎君                 中村 太郎君                 宮田  輝君                 竹田 四郎君                 吉田忠三郎君                 多田 省吾君                 内藤  功君                 栗林 卓司君     委 員                 浅野  拡君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 小澤 太郎君                 亀井 久興君                久次米健太郎君                 熊谷  弘君                 下条進一郎君                 田代由紀男君                 玉置 和郎君                 夏目 忠雄君                 成相 善十君                 林  ゆう君                 真鍋 賢二君                 三善 信二君                 望月 邦夫君                 八木 一郎君                 山本 富雄君                 赤桐  操君                 大木 正吾君                 志苫  裕君                 野田  哲君                 福間 知之君                 藤田  進君                目黒今朝次郎君                 相沢 武彦君                 太田 淳夫君                 峯山 昭範君                 矢追 秀彦君                 上田耕一郎君                 渡辺  武君                 井上  計君                 喜屋武眞榮君                 柿沢 弘治君                 秦   豊君    国務大臣        内閣総理大臣   福田 赳夫君        法 務 大 臣  瀬戸山三男君        外 務 大 臣  園田  直君        大 蔵 大 臣  村山 達雄君        文 部 大 臣  砂田 重民君        厚 生 大 臣  小沢 辰男君        農 林 大 臣  中川 一郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  福永 健司君        郵 政 大 臣  服部 安司君        労 働 大 臣  藤井 勝志君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (国土庁長官)  櫻内 義雄君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      加藤 武徳君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       安倍晋太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)      稻村左近四郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       荒舩清十郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  金丸  信君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       熊谷太三郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  山田 久就君        国 務 大 臣  牛場 信彦君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        職員局長     金井 八郎君        公正取引委員会        委員長      橋口  收君        公正取引委員会        事務局取引部長  長谷川 古君        警察庁刑事局長  鈴木 貞敏君        警察庁刑事局保        安部長      森永正比古君        北海道開発庁計        画監理官     大西 昭一君        防衛庁長官官房        防衛審議官    上野 隆史君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛庁装備局長  間淵 直三君        防衛施設庁施設        部長       高島 正一君        経済企画庁調整        局長       宮崎  勇君        経済企画庁物価        局長       藤井 直樹君        経済企画庁総合        計画局長     喜多村治雄君        科学技術庁原子        力局長      山野 正登君        科学技術庁原子        力安全局長    牧村 信之君        環境庁水質保全        局長       二瓶  博君        国土庁計画・調        整局長      福島 量一君        国土庁土地局長  山岡 一男君        国土庁地方振興        局長       土屋 佳照君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省経済局長  手島れい志君        外務省経済局次        長        溝口 道郎君        外務省条約局長  大森 誠一君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        大蔵省主計局長  長岡  實君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  田中  敬君        大蔵省理財局次        長        副島 有年君        大蔵省証券局長  山内  宏君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        国税庁長官    磯邊 律男君        文部省初等中等        教育局長     諸澤 正道君        文部省大学局長  佐野文一郎君        厚生大臣官房会        計課長      持永 和見君        厚生省公衆衛生        局長       松浦十四郎君        厚生省医務局長  佐分利輝彦君        厚生省社会局長  上村  一君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        厚生省年金局長  木暮 保成君        農林大臣官房長  松本 作衛君        農林省農林経済        局長       今村 宣夫君        農林省構造改善        局長       大場 敏彦君        農林省食品流通        局長       犬伏 孝治君        通商産業大臣官        房審議官     山口 和男君        通商産業省通商        政策局次長    花岡 宗助君        通商産業省産業        政策局長     濃野  滋君        通商産業省立地        公害局長     左近友三郎君        通商産業省機械        情報産業局長   森山 信吾君        資源エネルギー        庁長官      橋本 利一君        資源エネルギー        庁公益事業部長  服部 典徳君        中小企業庁長官  岸田 文武君        運輸大臣官房審        議官       真島  健君        運輸省港湾局長  大久保喜市君        運輸省航空局長  高橋 寿夫君        郵政省貯金局長  高仲  優君        労働大臣官房長  石井 甲二君        労働省労働基準        局長       桑原 敬一君        労働省職業安定        局長       細野  正君        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省計画局長  大富  宏君        建設省都市局長  小林 幸雄君        建設省河川局長  栂野 康行君        自治省行政局長  近藤 隆之君        自治省行政局公        務員部長     塩田  章君        自治省財政局長  山本  悟君        自治省税務局長  森岡  敞君        消防庁長官    林  忠雄君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君    参考人        日本銀行総裁  前川 春雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) まず、参考人出席要求に関する件についてお伺いをいたします。  昭和五十三年度総予算案審査のため、本日の委員会日本銀行総裁前川春雄君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認めます。  なお、出席時刻等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは、これより矢追秀彦君の総括質疑を行います。矢追君。
  7. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 初めに、私は円問題についてお伺いをいたします。  日銀の方にお伺いをいたしますが、本日の円の交換レート、それから昨日のアメリカ西独の間に交わされましたドル防衛、これをどう見ておるか、そしてそれがどのような効果を期待をしておるか、その点についてお伺いをしたい。
  8. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 昨夜、アメリカ西独との間に為替の安定並びに経済の拡大に関する共同声明が発せられまして、その後を受けました為替市場、本日の東京市場は寄りつきが二百三十三円五十銭でございました。昨日の引け値は二百三十六円でございましたので、さらに二円五十銭ほどの円高になったわけでございます。ただ、これは昨日、いま申し上げました共同声明米国並び西独同時に発表されました後、それぞれロンドンマーケットあるいはニューヨークマーケットにおきまして、この措置に対する失望感からドルが売られたわけでございます。ドル安になりまして、その他のドイツマルクスイスフラン、円、こういう通貨が一斉に高騰したわけでございまして、昨日のニューヨークマーケットレート引け値がやはり二百三十三円台でございます。それを受けまして東京マーケットは二百三十三円五十銭であけました。午前中の取引はそれほど多くございません。模様見でございまするが、午前中の引け値はやはり二百三十三円八十銭でございまして、同じようなところに推移しているというのが現状でございます。  この米国並びドイツが行いました共同声明の内容でございますが、まず為替相場の安定のため、この混乱状態に対処しまして米国市場介入をさらに強化する、そのための資金調達手段を幾つか挙げております。そういう為替相場市場対策のほか、為替相場変動背景になりまする国際収支均衡是正のための政策国内経済政策全般に関しまする適切な運営を図ることが一方にうたわれておるわけでございます。そういう意味で、この今度の共同声明は非常にオーバーオールな、単なる為替相場の安定ばかりでなしに、その背景になりまする経済政策全体の適切な運営を図るというものになっておるわけでございます。私どもといたしましては、これらの措置が、単にアメリカドイツだけではなくて、世界経済全体の安定、ひいては為替市場全体の安定というものに貢献するものであるというふうに考えております。  今後の相場でございまするが、ただいま私が申し上げましたように、昨日この共同声明が発表されました後、市場はかえってドルが売られるという状態になりまして、今度の両国の協議の結果、それに対する過剰な期待感があったのだと思います。それが裏切られたということで、逆にドルが売られる状態になっておりますが、私はやや市場が過度に反応しておるというふうに思います。やや時間をかければ、これがまた安定に向かうのではないかというふうに期待もし、また希望もしておるわけでございます。  以上でございます。
  9. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、日銀委託介入、これについて米政府態度、またそれに対して対処する日銀態度、今後かなり買い支えができるような事態になってくるのかどうか、その点はいかがですか。
  10. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 円相場が不当に動揺いたしまする場合に、これに介入を、国内ばかりではなく、ニューヨーク連邦準備銀行委託いたしまして、ニューヨークマーケットでも介入をしておるわけでございます。  この問題につきましては、今度の共同声明が発表されました後の米当局公式発言におきましても、この日銀委託によるニューヨーク市場における円の介入、これにつきましては、米国当局は十分なる理解を示しております。したがいまして、今後もそういう混乱状態が起こりましたときには、いままでのような介入を続けていくつもりでございます。この点につきましては、ニューヨーク連邦準備銀行でございまするが、それと日本銀行の間には非常に緊密な毎日の連絡を行いながら、相場の安定に少しでも資するような操作をやっていきたいと考えております。
  11. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 昨日だったと思いますが、アメリカクライン教授が、二百二十円、マルクは二マルク、こういうふうなことを言っておりますが、それに対してどう考えられますか。
  12. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 為替相場適正水準がどういうものが適当であるかということにつきましては、いろいろの学者の間に議論がございます。購買力を比較してはかるのが通常でございまするが、こういう学者の間の議論でも、その購買力を何ではかるか、また基準時点をいつにとって比較するかということで全く計算が変わってくるわけでございまして、この水準自体につきましても一定に帰一するところはございません。  クライン教授のそういう計算につきましては、私どももつまびらかにしておりませんけれども、こういう相場水準をいかにするか、適正水準を判定することが困難であるためにいまの変動相場制というのが実はとられておるわけでございます。変動相場制にはいろいろ欠点もございまするけれども適正水準を判定するということはさらに困難でございまするので、こういう状態が続いておるわけでございまするが、いまのそういう意味から申しまして、クライン教授が二百二十円ということを発言しておるということは、教授考えとしてはそうかもしれませんけれども一般に受け入れられるものとはとうてい思えないというふうに思っております。
  13. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私が心配しますのは、昨年の急騰を見ましても、アメリカにおいてたとえばブルメンソール発言であるとか、またアメリカの雑誌に二百四十円台に入るであろうとか、そういういろんなことが出た段階において、その後で必ず円が上がってきておる。また、米政府の人の発言では、必ずその日に上がるようなこともあったわけでございますので、こういったクライン教授発言は大変私も将来にとって憂えますし、せっかく昨日アメリカドル防衛がとられたにもかかわらず、期待感が大き過ぎたといま見ておられますが、私はあくまでもドルマルクの問題のことであって、円は別である、こういう意識の上から、円投機というものもこれから警戒をしなければならない、こう思いますが、その二点についていかがですか。
  14. 前川春雄

    参考人前川春雄君) ただいまお話がございました相場水準に関しまする当局者発言、あるいは銀行あるいは学者発言、こういうものが非常に市場心理に影響いたしますることはお説のとおりでございます。私ども、そういう意味で、少なくとも責任者がそういう発言を軽々しくすべきでないというふうに常々考えております。これからもそういう無責任な発言が起こることによって相場が混乱するということは非常に私どもとしても苦々しく感じておるわけでございます。  これから為替相場は、昨年の秋の例でもわかりまするように、一つ通貨だけが単独に動くということはございません。一つ通貨が変動いたしまするときには、日本の円が初めに高騰いたしまて、その後、ドイツマルクスイスフランというふうに連鎖的に動いておるわけでございます。そういう意味で、いまの変動相場制のもとにおきましては、そういう市場心理が非常に大きく影響いたしますることはお話しのとおりでございます。そういう点からも、責任者あるいは学者等発言については十分慎重にしてほしいと思っております。私ども、そういう相場動きに対しまして、いささかも投機的な動きが起こるような場合にはこれに断固として介入しておくという基本的な態度はこれからも続けてまいりたいと思っております。
  15. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 日銀は結構です。
  16. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 副総裁にはまことにありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。
  17. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理口内炎で熱もあるところを大変恐縮ですが、ただいま議論をいたしました円問題について昨日の米独の間にとられた施策はどうお考えですか。特に、今後日米間でもこのようなスワップ取り決めをされる考え方はおありなのか、また、現在はないとしても、今後どういう状態になればこういうことも考えられるか、その点についてお伺いしたい。
  18. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アメリカドイツの間で通貨安定、これのためにああいう取り決めができたということは、これはもう国際社会のためにはなはだ歓迎すべきことであった、このように評価をいたしております。ただ、国際社会国際通貨に対する不安、これが非常に強かった、それだけに今度の米独協定に対する期待が大きかったんです。あれが発表されてから反動的に期待外れというようなことが見受けられる相場動きでございますが、しかし、それにもかかわらず、私は米独間であのような取り決めができましたことははなはだよかったことだ、このように考えておる次第でございます。  わが日本アメリカ当局との間には、緊密な話し合いが続けられております。あのスワップ協定ドイツアメリカの間では前からあったんでありますが、そのスワップを使い切ったというようなことで先般二十億ドルスワップ枠を新たに設定するというようなことになりましたが、今度、どこまで使っているか知りませんけれども、その枠を四十億ドルに拡大する。わが日本アメリカの間にはかねてからスワップ枠の設定があるわけでありまして、しかし、日米の間における特殊な事情等から、その枠をいま使わないで、そしてアメリカの連銀による代理操作というようなことをいたしておるというのが現状でございまするが、円につきましては、これは大変わが国相場動きが影響がある、しかし、結局、これは円が高くなるというよりは、ずうっと動きを見ておりますと、これはドル安なんです。ですからアメリカがかなり努力をいたしまして、その国際収支、これを改善もする、またドル価値維持につきまして格段の努力をする、こういうことがかなめでなけりゃならぬ、こういうふうに考えます。同時に、わが国といたしましても、いま大変な黒字基調でありますが、これを是正をするというために全力を傾ける必要がある、このように考えまして、アメリカでもそのような方向の努力をいたしておりまするし、わが方におきましても、もう本当に全力投球をしているというのが現状でございます。
  19. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理は、昨年のこの円高問題のときには、余りアメリカには強い姿勢で抗議をするというふうなことについては消極的でございましたが、最近かなりドル防衛を要請する、ドル安だということを言われ始めまして、少し総理の答弁が変わってきたように思っておりまして、その点では私は評価をしておりますけれども、今度もアメリカへ行かれてカーター大統領とお会いになりますが、そのときに具体的にドル防衛に対してきちんとしたことを言われますか。
  20. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日米首脳会談は、とにかくわが国とするとアメリカは非常に大事国である。そこで年に一回ぐらいはその首脳会談をいたしまして、何という特定した問題がなくとも世界の情勢をながめ、世界の平和をどうするか、世界経済をどうするか、そういうことについて話し合うべきである、このように考えアメリカ側においてもそういう考えで今度五月に会談しよう、こういうことになっておるわけで、通貨問題ばかりというわけじゃありません。  しかし、いま通貨問題は、当面する非常に混乱した世界経済、この動きの中で非常に重要なファクターになってきておるわけでありますから、当然通貨問題にお互いにどうすべきかというような話、これは出ないというはずはありませんけれども、事は通貨問題ばかりじゃなくて、世界経済をどうするか、南北問題をどうするか、また通商問題、いまややもすれば保護貿易主義なんていうのがささやかれるような状態になってきておりますが、これに対してどういうふうに立ち向かうかとか、そういう広範な経済の問題、またアジアの政治問題、また中東の問題、いろいろ各地の問題につきまして意見の交換をする、このようなことになろうと思います。その中で通貨の問題が出てくるということ、これはもう当然考えられることでございます。
  21. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私が言っているのは、ドル防衛についていま総理ドル安だとおっしゃっておりますが、その点についてもちろん広範な問題が議論されるのは当然ですけれども、この問題についてはっきりとおっしゃいますかと聞いておる。
  22. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私の口からは、基本的な考え方、これはもう当然申し述べるわけです。しかし、具体的にこの為替操作をどうするとかなんとか、そういう話は、これは日米間に非常に緊密なルートがあるわけなんです。そこで常時話し合っておるわけでありまして、私がそのような具体的な問題について言及するということは恐らくないことであろう、このように考えます。
  23. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 ということは、カーターさんと会ったときは余りいやがられるようなことは言わぬ、こういうことですか。
  24. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういうことはないですよ。これはもうアメリカはぜひドルの防衛については責任を持ってもらいたいと、これはもう強調します。しかし、具体的にこの為替操作の方法としてスワップがどうだとか、そういう技術的な話について私が発言するとか、カーター大統領から話が出るとか、そういうことは私はなかろうと、こういうふうに思うのです。そういう問題は私どもが話さぬでも、わが国にはわが国といたしましてアメリカに対していろいろそういう問題を持ちかけるルートがあるわけなんです、アメリカではそれを受け取るルートがあるわけなんです。そのルートにおいて常時緊密な連絡をしておりますので、私がそういう細かい問題まで立ち入る必要はない、このようなことを申し上げておるわけです。
  25. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、先進国首脳会議、これに臨まれるまでに国内体制、特に内需拡大それから輸入の拡大、これは首脳会議に臨んだ際に他の国から非難をされないようにきちんとできるだけの自信がおありですか。
  26. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはもう日米会談におきましても、あるいは先進国首脳会談におきましても、わが国がどういう態度をとるか大変注目をされている立場でございます。また、いろいろの意味において期待もされておる立場でございます。その注目、関心それから期待、そういうものに十分こたえるような体制、これはもう当然固めなけりゃならぬ。  ただ、それまでにいろいろ経済指標なんかで数字で出てくるかというと、まだ五十三年度が始まりまして四月、五月でしょう、あるいは六月でしょう。そういう時点でありまするから、なかなか数字的にこれというようなわけにはまいりませんけれども、トレンドといいますか傾向ですね、そういうものは十分諸外国にも説明し、諸外国の理解を得たい、そのように考えています。
  27. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 昨年の円の高騰の際の対外経済対策八項目、これはなかなか結果的には実現をしておりません。まだできてないものもたくさんありますし、まだ手つかずということもたくさんあります。ところで、土曜日ですか、出されました四項目、これも大変そういった上からむずかしいと思いますが、この見通しについて企画庁長官いかがですか。
  28. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府といたしましては、常時、わが国として輸入できるものは、必要なものは早く輸入をしたいということで、そのときそのときで見直しをいたしておるわけでございますが、先週の末に改めて見直しをいたしまして、あのようなことを決定をいたしたわけでございます。すでに各関係大臣におかれまして具体的な可能性について御検討を願っておるわけでございまして、私としては、かなりのものが実現をいたしてまいるというふうに考えております。
  29. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 時間の関係上、この問題はまた別の機会に譲らしていただきます。  次に、昨日も出ましたが、デノミ問題につきまして一、二点お伺いをしたいです。  まず、高額紙幣発行の過程、これを千円札発行の段階から説明をしてください。
  30. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 数字にわたりますので政府委員から答弁させます。
  31. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 日銀券発行高に占めます券種別の金額の構成比を御説明申し上げたいと存じます。  本年一月末日現在、日銀券の流通残高十二兆九千九十三億円でございますが、このうち金額で占めます構成比を見ますと一万円券が八一・三%、五千円券が四・六、千円券が一二・一、五百円券が一・六、百円券が〇・四ということで、これらの総計で十二兆九千九十三億円の残高でございます。
  32. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 過去の千円券の発行から。
  33. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 過去、千円券が発行されました際に、当時、百円券の構成比が幾らであったかということでございますが、昭和二十五年一月七日に千円券を発行しました段階におきましては、流通残高のうちに百円券が占めます金額構成比が九六・三%でございました。また、三十二年十月一日、五千円券を発行いたしました際には、千円券の構成比は八六・七%。それから一万円券を発行いたしました昭和三十三年十二月一日現在におきましては千円券が六七・八%、五千円券が二〇・一%、合わせて八七・九%ということでございまして、千円を発行の場合は九六%、五千円の場合は千円券が八六、一万円券の場合はその下の券種二種類で八七・九%、こういう構成比でございました。で、先ほど御説明申し上げましたように、ただいま一月末現在におきます一万円札の構成比というものは八一・三%でございます。
  34. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理、かなり一万円札がふえてきているわけです。このままいきますと、もう少したちますと、いままでの過程から見ますと五万円札を出す段階になるか、あるいはその時点で一挙にデノミということが考えられますか、総理はどちらを選択されますか。
  35. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) かねがね申し上げておりますように、デノミはまだ研究段階でございまして、いま実行する時期ではないと思っているわけでございます。五万円札を出すかどうかという問題、これらの問題はこれからの推移を見まして慎重に考えなければならぬと、いまのところは考えておりません。
  36. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 昨日もいろいろ出ておりましたが、一つ出ていない問題で、切り下げ率ですね、デノミの場合の。これは百分の一という考え方もございます、国際的には。国内的から言いますと千分の一が妥当であろう、こういう説もございますけれども、どちらをお考えになりますか。
  37. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) これもまだ研究段階でございますので、そこまでは詰めていないのでございますが、一般的に言いますと、いま委員がおっしゃったように、百分の一という考え方と千分の一という考え方と両方あるわけでございまして、それぞれ利害得失があるわけでございますので、目下研究としていろいろ研究さしていただいておる段階でございます。
  38. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理、デノミはいつもある日突然やるようなことを言われ、で後、実際は考えているということで国民が大変不安に思っておりますので、この辺についてもう少しきちんとした、ある程度のガイドラインといいますか、それは示すべきじゃないかと思いますが、いかがですか。
  39. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国民が不安を持つというはずはないと思うのです。と申しますのは、まだデノミは、いろいろ世間では騒いでおるというか話が出る。そういう背景を受けまして、新聞社なんかは私どもにデノミはどうですかというような質問がありまするが、政府の方ではデノミということをまだ決めているわけじゃないんです、これは。  さあそういう決意をする、これは普通で言えばデノミ宣言という形でその決意を発表するわけですが、その宣言をする、これとても物価がちゃんとしてなけりゃならぬ、国際収支が落ちついてなけりゃならぬ、景気の方も回復の軌道に乗らなけりゃならぬ、こういう時期でなけりゃならぬわけですから、これはまだそう差し迫った問題でもないんで、そういうことで、まあいま国民が関心は持っていると思います。しかし、不安を持っているというふうには思いませんが、もし不安を持っている人が一部にあるといたしますれば、例の終戦直後の新円発行だとか、ああいうことを連想いたしまして、デノミと同時に財産税の徴収だ、あるいは預金の調査だが行われるんじゃないかなんていうようなことを連想する人があるかもしれませんが、これはもういかなることがありましても、デノミネーションとそういう課税措置、そういうものは全く別の問題でありまして、それらのことを絡めて考えているという人は政府部内にはおりませんから、その辺は国民の方においても十分御理解願いたいところである、このように思います。  それからもう一つ、そのデノミネーションで若干の関心というか持たれますのは、物価がこれでどうなるんだろうと、こういうことでありまするが、最近は、通貨当局、各国ともいろいろ工夫いたしまして、物価に影響のないデノミネーションということをみんな考えるようになってきているわけです。つまり、フランスなどにおきましては新通貨と旧通貨を並行して二、三年の間流通させる、こういうような措置をとっております。そういうことをいたしますれば、これは物価に何らの影響は起こり得ざることであります。それから、基本的には、デノミネーションというものは実質的な通貨価値の変化じゃないんです。通貨の呼び名の変更である、こういうことでありますので、その辺は、政府がいよいよデノミネーション、これを実行するという決意を固める、そういう段階においては国民に十分これは理解を求めなけりゃならぬ、このように考えております。
  40. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、大型開発の問題に移りますが、国土庁長官にお伺いをいたします。  三全総と新全総とはどう違いますか。特に大規模工業基地についてはどうですか。
  41. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 従来の計画でまいりますると、御承知のような高度成長のためのひずみが出てまいったわけでありまするが、しかし、ねらいとしては産業や人口の集中を排除しておったわけでありまするが、三全総におきましてはおおよそ十年の見当で、その間に二百四十兆の社会資本を新たに投入しよう。五十年度代は六%程度の安定成長をねらいとしておるわけであります。ところで六十年度を考えてみますると、おおよそ人口が一億二千四百万ぐらいになると思うのであります。そういたしますると、現在の東京湾、伊勢湾、瀬戸内海周辺に工業基地が集中しておるわけでございまするが、この姿そのものも集中排除をしなきゃなりませんが、同時に、新たな人口増に伴う資源あるいはエネルギーに対応する必要がある、そうなってくると東北や北海道あるいは九州などに新たなる工業基地の必要があるのではないか、そういうことで具体的には、現在、御承知の苫小牧とかむつ小川原が進行しておるわけでございまするし、あるいは大隅とか秋田湾の調査などをしておる、こういう次第でございます。
  42. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私の聞いているのは、大規模工業基地が新全総と三全総とでは考え方、姿勢というのは私は同じだと思いますが、大きな変化はございますか。あるとしたら、どの辺ですか、いかがですか。
  43. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 大規模基地そのものが新全総当時の基地とどう違っておるのか、こういう比較をするときに、新たに基地を設けるのでありまするから、したがって今度の基地の場合は、平たく言えば乱開発のような状況のもとにいくのではなくして、自然保全をあくまでもやりながら、また国民の要望の強い生活環境整備などをやりながら、そして工業基地の建設をする。いまの社会経済情勢に対応してやっていく必要があるのではないか、こう思うのであります。
  44. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 先ほど具体的に挙げられました地域の規模について、その開発の目標年次、業種別生産規模、生産額、計画面積、それらについておのおの説明してください。
  45. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいま計画されておる、あるいは調査されておる基地につきましては、苫小牧やむつ小川原は閣議了解を得て、あるいは現実にもう具体化しておる。しかし、秋田湾や志布志湾につきましてはそれぞれの県の案というものが提示されておる状況でございまするが、具体的な詳細の数字につきましては、案の内容については担当の局長からお答えさせます。
  46. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 所管の関係で苫東については北海道開発庁からお答えがあろうかと存じますが、私どもの担当しております、一つはむつ小川原計画でございますが、むつ小川原の計画は昭和六十年代に完成することを目標といたしておりまして、おおむね昭和六十年前後に一部の操業開始をしたいということで県の計画では決まっておるわけでございます。その規模は全体面積が五千二百八十ヘクタールてございまして、業種としては、御承知のように石油精製、石油化学、火力発電、関連工業等ということになっております。  なお、秋田湾と大隅志布志湾の開発につきましては、まだそれぞれの県において計画として決定してない案の段階でございますが、県の計画案によりますと、秋田湾につきましては、七十年の完成を目標といたしまして、六十年代前半に一部操業開始をしたいということで、全体面積は大体二千五百ヘクタール、業種としては鉄鋼、銑鋼一貫を予定いたしております。生産規模としては年千二百万トンということでございます。大隅開発計画につきましては、昭和六十五年度を目標年次といたしておるわけでございまして、工業用地として臨海部千百六十ヘクタール、内陸部二百五十ヘクタールで合わせて千四百十ヘクタールということになっております。業種の内容としては石油精製、石油貯蔵施設その他の関連工業、機械、金属等々ということに相なっておる次第でございます。  大変概略でございましたが、説明申し上げました。
  47. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 産業の細かい数字は出ませんか、火力発電の目標とか石油精製、石油化学。
  48. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 大隅でございますか、全部ですか。
  49. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いや、大隅はちょっとむずかしいから、むつ、秋田。
  50. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) むつ小川原につきましては、石油精製 ——これは御承知のように一期と全体計画と分かれておりまして、第一期計画で申し上げますと、石油精製が日産五十万バレル、石油化学が年八十万トン、火力発電が百二十万キロワットということになっております。全体計画といたしましては、石油精製が百万バレル、それから石油化学が百六十万トン、火力発電が三百二十万キロワットということに相なっております。
  51. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 秋田はわかりますか。
  52. 土屋佳照

    政府委員(土屋佳照君) 秋田につきましては、先ほど申し上げましたように鉄鋼一貫を予定いたしておりまして、生産規模は年千二百万トンということでございます。  それから大隅開発につきましては、石油精製が日産三十万バレル、石油貯蔵が一千万キロリットルということに相なっております。
  53. 大西昭一

    政府委員(大西昭一君) 苫小牧東部につきまして御説明を申し上げます。  苫小牧東部工業基地につきましては、昭和四十五年に閣議決定を見ました第三期北海道総合開発計画でその具体化を図るというふうな位置づけをいたしたわけでございますが、その翌年の四十六年八月に北海道開発庁が北海道開発審議会の了承を得まして決めました基本計画案がございます。これは四十六年八月に取りまとめたものでございますが、その開発基本計画案におきましては、苫小牧東部の計画面積を一万二千六百五十ヘクタール、そこに開発の構想といたしまして鉄鋼年産二千万トン、石油精製百万バレル——これは日量でございます。石油化学、年エチレン換算百六十万トン、自動車五十万台、あるいはアルミニウム年百万トン、電力六百万キロワット、これらの関連工業を入れまして五十三年工業出荷額三兆三千億円というふうな基本計画案をつくったわけでございます。その後、四十八年に至りまして、地元の苫小牧市を中心といたしまして、地元の意向としましては一気にそう大きな計画を進めるというのは現実的でないというふうな観点等から、当面五年程度、したがいまして五十三年を区切りまして第一段階の開発計画を地元が決めたわけでございます。それを受けまして、四十八年十二月、私ども北海道開発庁を初めといたしまして関係十一省庁の連絡会議におきまして、その地元が立てた計画は妥当であるというふうなことで、現在、その第一段階の計画を当面の目標として開発を進めているところでございます。  この地元が取りまとめました、その第一段階の計画でございますが、工業地帯として開発を予定いたします面積約一万ヘクタールは、これは私どもが四十六年に立てた構想と同じでございまして、その半分を工業用地とし、他の残りの半分を緑地、道路等の緩衝空間とするというふうなことでございまして、そこでの立地の規模といたしましては、石油精製日産三十万バレル、石油化学エチレン四十万トン、自動車年産十八万台、電力三十五万キロワット及びこれらの関連工業等を含めまして、工業出荷額で四千三百億円というふうなことでございます。当面の開発目標としては、私どももこの第一段階の計画を念頭に置いて開発を進めておるところでございます。
  54. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 苫東地区にしぼって申し上げますが、まず用地の買収状況についてはいかがですか。
  55. 大西昭一

    政府委員(大西昭一君) 計画面積は埋め立てを入れまして、先ほど御説明いたしましたように一万二千六百でございますが、これは埋め立てが入っておりますので、四十四年に道が工業団地開発条例をつくりまして買収対象面積といたしました面積は九千八百ヘクタールでございます。このうち買収しなくてもいい面積が九百十二ヘクタールございますので、買収対象面積といたしましては八千八百八十八ヘクタールでございます。  この内訳につきましては、民有地が七千三百九十六ヘクタール、国有地七百三十五ヘクタール、市町村有地七百五十七ヘクタールでございます。このうち現在までの買収実績でございますが、民有地七千三百九十六ヘクタールのうち六千八百七十ヘクタールを現在買収済みでございます。国公有地につきましては、一部買収をいたしておりますけれども、大半はまだ未買収、これは事業が必要なときに買収するというふうなことでございまして、民有地だけについて全体の買収対象八千八百八十八に対しまして、買収済み面積は六千九百二十五ヘクタールでございまして、買収率といたしましては七八%でございます。
  56. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 かなりまだこのように未買収地が残っております。これも一つの大きな問題点ですが、次に、現在、この苫東地区には予定されておる企業のどこが入っておりますか。
  57. 大西昭一

    政府委員(大西昭一君) 現在のところ、第一段階の立地企業のうち、石炭火力発電所三十五万キロ、さっき火力発電所三十五万キロワットと申し上げましたが、北海道電力が石炭火力発電所を、昨年の電調審で決定を見まして、昨年十一月から工事にかかっております。その他はまだ立地は未定でございます。
  58. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 その面積は幾らですか。
  59. 大西昭一

    政府委員(大西昭一君) その面積は二十三ヘクタールでございます。
  60. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 北海道開発庁長官にお伺いをいたしますが、いまお答えのあったように、これだけ大量の買収を行い、しかも五十三年度末、要するに五十四年三月末までに予定されたうち、現在入っているのはたった二十三ヘクタール、火力発電ただ一つと、こういう状況です。これについてはどうお感じになりますか。
  61. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 先ほど監理官が説明をいたしましたように、苫東開発の基本計画案なるものは昭和四十六年に策定をいたしたのでありまして、当時の経済情勢とここ数年の状況はずいぶん変化があったことは御承知のとおりでございます。そこで第一段階計画が昭和五十三年度までではございましたけれども、なかなか進捗をいたしておらず、先ほど説明のように、北海道火力が来年秋には操業いたす、かようなことで、他の企業につきましてはまだでございますけれども、ただいま鋭意誘致に努力をいたしておるところであります。
  62. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 すでに動いております苫小牧西部における鉄鋼四社の進出状況はどういうことでございますか。
  63. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) いわゆる現苫と称しておりますが、私も、先般、現苫にも参りまして、その詳細を見てまいったのでありますが、大部分の企業張りつけはできておりますけれども、まだ一部残っているものもございまして、たとえば加工センター四社なんかは、まだ、用地の売却は終わっておりますけれども、立地はいたしておらぬ、かような状況であります。
  64. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、この苫東地区の港湾計画と、それから進捗状況、見通しについてお伺いします。
  65. 大西昭一

    政府委員(大西昭一君) 苫小牧東港につきましては、四十九年一月に運輸大臣の認可を得て港湾計画の決定を見ております。その港湾計画を決定いたしましたのは、先ほど御説明申し上げました第一段階の開発に見合う港湾の計画でございます。当時といたしまして、港湾計画を決定の時点では、第一段階に見合う港湾の計画として約千五百億程度と見込まれておりましたけれども、その後物価が上がっておりますので、現在それは恐らく二千億を超す規模のものになろうかと思います。その後、昭和五十一年の五月に漁業補償の問題の解決を見まして、また道が作成いたしました第一段階に見合う環境アセスメントにつきましても、関係省庁を含めまして了解を得ましたので、五十一年の七月に具体的に現地の東海について着工をいたしたわけでございます。  今日まで、東港につきまして、どの程度の予算を五十二年度までに港湾事業として入れたかと申し上げますと、これは準備工事等も入りますので、現地に着工いたしましたのは五十一年度でございますけれども、その前に現在の西港でケーソンヤード等をつくっておりました費用を含めまして、五十二年度当初予算までで二百四億円の事業費を投入いたしております。五十三年度といたしましては、ただいま御提出申し上げております予算におきまして百二十五億円の事業費を予定いたしております。
  66. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 どこまでできていますか、いま、港。
  67. 大西昭一

    政府委員(大西昭一君) 大体、五十二年度の予算までで、東港のちょうど東防波堤の根元に作業船だまりといいますか、準備のための、港湾建設のための船を入れる作業船だまりの建設を完了いたしまして、東防波堤につきまして約七百メートルばかりであると思いますが、延長建設をいたしました。五十三年度の予算をもちまして、さらにその東防波堤を延長してまいるわけでございます。
  68. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 大臣、この港一つ取り上げても、これまたお話にならないぐらい進んでいないわけです。この点についてはどうお考えになりますか。
  69. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 企業の立地がおくれておりますので、したがって港の構築も当初予定したほどの進捗率ではないのでありますけれども、しかし、いま建設を急いでおります火力発電には間に合うような体制がとられつつある、かように承知をいたしております。なお、今後、企業の張りつけに伴いまして、鋭意、港湾の先ほど御指摘のございました防波堤でありますとか、しゅんせつでありますとか、さような工事を進めていかなければならぬ、かように考えております。
  70. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 もう一つ具体的な問題としてお伺いしたいのは、五十四年オイルインの五百万キロリットルの石油備蓄基地、これはどうなっておりますか。
  71. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 東部苫小牧につきましては、共同備蓄のための有力な候補地の一つとして考えておるわけでございます。御指摘の五百万の共同備蓄につきましては、現在、具体的な立地点につきまして北海道開発庁並びに北海道庁にお願いいたしまして選定していただいておる。具体的な立地点が決まればできるだけ早く着工いたしたい、かように考えております。
  72. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 仮に早急に決まったとしても、一年間で完成いたしますか、五十四年オイルインですから。
  73. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 五百万キロリッターと申しますと、十万キロリッターのタンクを五十基建設することになりますので、一年間では現実問題としてむずかしいんじゃなかろうかと思います。
  74. 相沢武彦

    相沢武彦君 関連。
  75. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連質疑を許します。相沢武彦君。
  76. 相沢武彦

    相沢武彦君 いまの質問で明らかになりましたように、なかなか苫小牧の東部大規模工業開発の計画は予定どおり進まず、おくれているわけでございます。この適正規模をもう一遍見直すべきではないかという議論もありますが、ここで、私は、昭和四十八年の第一次開発計画に基づく開発をこのまま進めるとして、地元の財政負担の問題についてただしておきたいんです。  昭和六十五年を目標とした関係一市三町の地元の負担、この試算をしたところ約二千数百億円に上る、こう言われております。この地元負担は、今後、資材高あるいは工事費の増大、こういったことを考えますと、ふえても減ったり軽くなることはないわけでして、北海道開発庁の方は、新産業都市法や工業再配置促進法、これの運用によってできるだけ地元負担が軽くなるようにしたい、こういう体制をとりたいんだと言われているんですが、その程度の対策では関係自治体の財政破綻は避けられなくなるであろう、このように予測がされるわけです。しかも、今後、どの地域にも苫小牧の東部のような大規模な工業開発はできないだろう、こうも言われておりますので、こうした国家的な大規模な開発をやるからには、たとえ限定された地域の問題であろうとも、特別立法を制定してでも地元に迷惑や心配や財政負担を多大にかけさせない、こういう財政特例措置を講ずべきではないかと思いますが、この点について、総理大蔵大臣から御答弁いただきたいんです。
  77. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 東苫小牧は北海道地区でございまして、御承知のように、この地域に対しましては内地とは格段に高い補助率が適用されているわけでございまして、すでに十分の九とか十分の九・五とかいう補助率になっておりますので、国家財政の苦しい現状でこれ以上のことは無理ではないか、かように補助率については考えております。
  78. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほどからだんだんとお話がありますように、苫小牧は、これはもうこれから開発し得る非常に数少ない大規模プロジェクト基地、その最も有力な一つなんです。そういうことでぜひこれは完全開発を実現をしたい、こういうふうに考えているので、そういう見地から、いわばナショナルプロジェクトというような立場であらゆる援助、協力をしておるわけなんです。今後ともそういう立場で協力をしてまいりたい、かように考えております。
  79. 相沢武彦

    相沢武彦君 ナショナルプロジェクトのこの苫小牧東部の開発計画では、港湾掘り込みのような国の直轄事業古風別に、上下水道とか宅地造成、モノレールの建設、こういった都市基盤や、住宅あるいは学校、福祉施設、こういった社会開発も進めなきゃならないわけで、現在の国の現行補助制度による地元負担では財政がもうどうしても耐えられなくなる、こういうことが予想されるわけですので、ひとつ大蔵大臣も鋭意この点、さらに財政特例措置を講ずるように検討していただきたいと思うのです。  もう一点、苫東の開発について必要とする工業用地の取得や造成、分譲、これについては地元のいわゆる第三セクター方式でやっていますが、すでに三千九百ヘクタールの土地を先行取得しているわけですな。ところが、経済不況の波を受けて、先ほど話がありましたように企業立地が大幅におくれている。五十一年末ですでに五百三十一億円の借金を抱えておりますし、また、その利子だけでも百億円に上っている。このままでは破綻してしまうわけでして、具体的な対策をどうしようとするのかお尋ねをしたいんです。税制面では特別土地保有税の延納措置がとられているようですが、企業誘致ができて分譲できるまでの間、延納期間というものを認めるのかどうか、その辺もあわせてお伺いいたしたい。
  80. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 相沢君、時間が来ております。
  81. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 前段の御質問の地元負担が多くなるという点でございますけれども、大蔵大臣から答弁もございましたが、一市三町が試算をいたしました数字も承知をいたしております。この二千三百億円を上回るかどうかはもとより十分な見当がつかないのでありますけれども、ただいま北海道が中心になりまして地元市とよく相談をいたしており、できればその金額等も取りまとめたい、かようなことでございますから、さような推移を見ながらも財政的な負担が極力かからないようにと、かような配意をいたしてまいりたい。  それから苫東開発株式会社、いわゆる第三セクターが大量の土地を抱えておりまして、一企業の誘致がなかなか進捗をいたしておりませんので、大変な負担になっていることは御指摘のとおりでございます。そこで、特別土地保有税のことにお触れになったのでありますが、いま徴収猶予の措置をいたしておりますけれども、この第三セクターには公的な資金が半ば以上出ておりますようなこともございまして、性格的には特別土地保有税を課すべきではないのではないか、かようにも考えておりますので、地元市町村とよく相談いたしてまいりたい、かように考えておるところであります。
  82. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 総理にお伺いをいたしますが、総理はよく、今年度予算編成に当たっても、この不況脱出は公共事業が引っ張るんだと、こう言われますが、いままでざっと、もっと詳しくやりたかったんですが、時間の関係で簡単にいたしましたが、これを見ましても、政府がお金をつけ地元が一生懸命お金をつけてこれだけの大規模な開発をしても、一万二千ヘクタールのうち、まだ二十三ヘクタール、それだけしか入っていないわけです。しかも、もう来年の三月で第一次の計画は終わるわけです。だから公共事業が景気を引っ張るということは、これは完全に逆に出ておる非常にいい例だと思うのですが、この点はいかがお考えですか。
  83. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公共事業と申しましてもいろいろありますから、一つ一つの波及効果、これは相当違いが出てくる、これは御理解願えると思うのでありますが、総体として見るときには、やっぱり同じ金で経済効果、景気波及効果を生む、こういうことになれば、これはもう待ったなしに公共事業である、これは私は確信を持っております。
  84. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 いや、そうおっしゃいますけれども、これだけの大規模基地ですよ、すごい規模の、いま総理が非常に期待をされておるところでもなおかっだめじゃないですか。恐らく、今後、通産省の見通しをお伺いしたいんですけれども、これからの五十五年あるいは六十年代を展望した場合、果たしていま言われた大きな規模の基地を全部埋め尽くすだけの、しかも決められておる鉄鋼、石油精製、石油化学、自動車、これで全部埋まるだけの自信おありですか、総理
  85. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これだけの大きなプロジェクトを進めると相当大きな金が要る、また労力も土地も要る、こういうことでありまするから、これが後で立ち腐れになるというようなことは、これは許されないことでありまして、私はいま具体的にどうこうということを申し上げる知識を持っておりませんけれども、これはもう計画に整合する、何というか、経済計画、これはもう十分相並行して進めておる、このように御理解願って結構でございます。
  86. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 ぼくは納得できないんですけどね。総理の言われたこれからの低成長時代、安定成長への軟着陸、盛んにおっしゃっておりました。また産業構造は転換されていくわけです、省資源時代に入るわけです。にもかかわらず、昔と同じ発想法でこの大規模基地の開発が進められておる。  私は、かつて昭和四十九年ですか、当委員会で、この苫小牧については環境アセスメントの上からでか過ぎる、こう警告を発しておったわけです。この四十九年の十二月といいますと、もうオイルショックの終わった後ですよ、狂乱物価の後です。そのときに、環境アセスメントの上からも、今後の経済の上からも無理だと言っておるのにもかかわらず、政府は依然としてこの三全総でまた大規模開発をやろうとしておる。結局、総理考えと全然違うことが現実に行われているんじゃないですか。五十三年度予算は臨時異例の予算であると、これで公共事業で火をつけるんだと、こうおっしゃいますけれども、現実は全然それとは違います。その点いかがですか。
  87. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これから日本経済は低成長時代に入りますけれども、しかし成長しないという経済情勢じゃないんです。やっぱり国民経済は実質で六%を超える成長を当分続けるわけですから、そうなれば、どうしたってそれだけの工業施設は整えなけりゃならぬ、こういうことになるので、整えるその速度、これは前に比べますと大変スローダウンするわけでありまするけれども、しかし、何がしかの六%実質成長に見合う工業投資、これをしなけりゃならぬという、これはもうそのとおりだろうと御理解が願えるだろう、こういうふうに思います。まあ世の中が変わってきたって経済の姿が全部ひっくり返る、こういうようなことじゃないんで、やっぱり経済の実体というものはずっと続いている、その中でどういうふうにテンポあるいは質を変えていくかという問題があるんだと、こういうふうに理解しております。
  88. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私は納得できないですね、総理総理の言っていらっしゃることと、いまのは大変矛盾していますよね。それは私は成長をやめろとか、一切工場をつくるなとか、そんなことは言っておりません。しかし、余りにもこれはでか過ぎるじゃないですか。しかも、もたぬですよ、市町村だって開発公社だって北海道だって、このままいきますと、お金の問題これ一つ取り上げても。こういうことが今度志布志でも起こる、秋田でも起こる、あるいはもう一カ所新潟ですか、あっちの方でも起こる、そこらじゅうで起こるわけでしょう。  通産大臣、お伺いしますが、通産大臣としては、この五十五年あるいは六十年、特に「産業構造ビジョン実現のために」というような本が毎年出されておりますけれども、今度も長期見通しは見直されると聞いておりますけれども、これまでの議論を踏まえまして、今後とも、この鉄鋼、石油精製、石油化学あるいは自動車、これだけの大きな大規模工業基地が今後必要とお考えですか、その点いかがですか。
  89. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 今後、十年間ぐらいを展望いたしました国の建設計画といたしましては、一つは昨年の秋決まりました、いま議論になっております三全総、それからもう一つ産業構造の面からいいまして、昭和五十年に産業構造審議会が答申を出しました「産業構造の長期ビジョン」、これは毎年ローリングプランを出まして見直しをしておりますが、この産業構造の展望と三全総、この二つが私は大体今後十年間を展望した産業政策一つの基本になるのではないか、こう思っております。  いま総理もお述べになりましたように、六%あるいは六%台の経済成長を続けるということは私は日本にとってぜひ必要だと思うのです。一つは、毎年新しい雇用というものを相当数つくり出していかなければなりません。何しろ百数十万という新しい若い人たちが社会に出てくるわけでありますから、相当数の雇用の創出というものが必要であります。そういうことから六%あるいは六%台の成長ということが基本戦略にもなっておるのだと思います。それからもう一つは、わが国はとにかく資源のない国でありまして、外国からエネルギー資源を輸入いたしまして、そして加工してこれを外国へまた出していく、こういう輸出立国、貿易立国でございます。したがいまして常に経済というものは強力な国際競争力というものを持っておらなきやならぬ。国際競争力を持つためには、やはり経済にある程度の活力というものがなけりゃならぬと思います。そういう意味からも、やはり六%台の成長が必要だということが国の経済政策の基本になっておるのだと私は考えております。  で、そうといたしますならば、いまは景気が非常に悪くて経済は停滞をしておりますから、いまの一番悪い時点から物事を考えますと、あるいは御心配なような意見も出てくるのも理解できますけれども、しかし、こういう状態ばかりが続くわけではありませんし、とにかく現状を早く直さなければならぬということで国を挙げて努力をしておるわけでございますから、中期的に展望いたしますと、私はやっぱり相当な工業基地というものが必要なのではないだろうかと思っております。かつての高度成長期には、いわゆる新しい工業基地として数十カ所を指定いたしまして、非常に大規模な国の開発が行われたわけでありますけれども、現在ではもうほとんど残された開発地点というものはなくなっておるわけです。いまもお述べになっておりましたが、大体四ヵ所ぐらいしかもうないわけですね、十年を展望いたしましてもこれぐらいしかない。そういうことを考えますと、決して私は大規模ではない。十分この程度のことは消化できますし、この程度のものが消化できないようなことでは日本経済というものは行き詰まってしまう、このように考えまして、これは合理性を持ったものであると理解をしております。
  90. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私はそうは考えません。というのは、片方において現在在庫調整をやったり、また大変生産が過剰であるということでどんどん機械をつぶしたりしている企業もあるわけです。しかも、今度石油産業というのはどうなるか、あるいは鉄鋼にいたしましてもどんどん現状においては減っておる状況です。もちろんこれが今後、いま大臣は最低の状況から見たら困ると言われましたが、ある程度上がったとしても、いままでと同じスタイルじゃ——産業構造を転換していく、付加価値の高いものでいま言われた輸出競争力をふやすなら、もっと違った産業というものがそこに誘致されてくるなら私はあえて否定はしませんけれども、それではこんな膨大な土地はだんだん要らなくなる、知識集約産業になれば大規模基地は要らない、小さなところで済むのではないか、工場としてはですよ、そういうふうに考えるわけです。その点で産業構造の転換が言われながら、これは諸外国の外圧にもなっているわけです、やらぬことが。その点も含めてどう考えるか、これは宮澤経企庁長官にもお伺いしたいんです。
  91. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 新しい大規模な工業基地は必要でないという御議論も、現状から考えますと理解できないこともありませんが、たとえば石油で申し上げますと、石油には、御案内のように、昭和六十年を展望しましたいわゆるエネルギー政策というものがございます。相当節約を強化し消費を抑えていくんですけれども、大体、現在の二億数千万キロの石油というものは四億三千万キロぐらいは必要である。一例を挙げますと、こういうことになっておるわけですね。そうしますと、やはり新しい石油精製工場の基地というものが必要である。でありますから、エネルギー政策のうちの石油一つをとりましてもこういう状態ですし、たとえばまた電力なども現在一億キロでございますが、六%の成長を続けますと十年後にはやはり電力が二倍の約二億キロ必要である。そういうことのために百数十カ所の発電所をいま予定をしておるわけでございます。  だから、いまの最悪の事態からごらんになりますと、いろんな意見が出てくると思いますけれども、やはり経済というものを十年という中期的な展望から考えました場合には、日本の雇用問題、国際競争力の保持、こういう点を考えますと、最小限度この程度のものは必要である、こういう理解でございます。
  92. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) かつて新産業都市でありますとか、工業整備特別地域あるいはいわゆる新全総等々の時代に、すでに京浜でありますとか、阪神でありますとか、瀬戸内海でありますとかいうところの新しい産業立地というものはむずかしくなってきたということは認識されておったわけであります。その後、公害問題が意識が高くなりまして、なおさらそれははっきりしてまいったわけでございますが、ただいま御議論になっております苫東でありますとか、あるいはむつ小川原でございますとか、南九州でありますとか、場合によりましては秋田湾、これらがわが国に残されましたいわば最後の大規模な工業基地になり得るところである。  もちろん地元の協力が必要であり、地元側で積極的に受け入れてくれるということでなければならないわけでございますが、その考え方は、やはりわが国の産業構造はより知識集約的なものに、あるいは付加価値の高いものへ変わっていくにいたしましても、それはその趨勢でございましょうが、既存の、すでに開かれました、先ほど申し上げましたような地帯というもののシェアがどうしても小さくなっていかざるを得ない。そしてわが国は、それにかえてとは申しませんが、それに加えてやはり基礎産業はどうしても新しいものを持っていなきゃならないという事実には変わりがないのでありますから、そういう大局的に考えますと、河本大臣が言われましたように、基本的には地元の協力を得てやはりそういう新しい大きな、まあいわば残されました最後のということになりましょうが、開発をやっていくべきではないかというふうに私も考えております。
  93. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 最後に、総理に、この問題で。  あくまでも総理はこの大規模開発は強行されますか、それとも見直しをされますか。
  94. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 常に環境の変化ということを見ながら、それに即応するような実施でなきゃならぬと考えまするけれども、大筋は、これはもうどうしても長期的な観点からするとやっていかなきゃならぬ。本当にいまもう工業基地というものは探してもそうたくさんはないんでありまして、いま問題になる四つ、五つ、その辺はどうしてもこれを全面的に開発していく必要があるという認識でございます。
  95. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、私は国債整理基金特別会計について伺います。  この国債整理基金特別会計の運用収入が予算と決算額で大変違う点を私が五十年の予算委員会で指摘をしまして、明くる年改められました。その点については評価をするわけでございますが、予算書そのものは一向に改まっておりません。国会の立場からいいますと大変わかりにくいものになっておりますので、この点についてお伺いをいたしますが、国債整理基金特別会計予算の歳入歳出はおのおの幾らですか。
  96. 長岡實

    政府委員(長岡實君) 昭和五十三年度の国債整理基金特別会計予算は、歳入歳出ともに十一兆四千二百五十二億円でございます。
  97. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 これだけを見ておりますと、大蔵大臣、われわれから見ますと、すべてこの歳入は歳出として使用済みになってしまう、残りはない、こう読めると思いますが、いかがですか。
  98. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) これはもう資金会計でございますので、歳出の方は、歳入に対応して全額歳出権を与えているという非常に技術的な関係で、さようになっているわけでございます。
  99. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そういう答弁じゃちょっとぐあい悪いんじゃないですかね。これ何も書いてないわけですよね。実際、次のところにはいろいろな項目が確かにありますよ。しかし、この最初の区分では全然歳入歳出が同じだけ、これではもう残りは全然ないと、こうとらざるを得ないんですが、いかがですか、重ねてお伺いします。
  100. 長岡實

    政府委員(長岡實君) 補足して御説明を申し上げます。  御承知のように、国債整理基金は、一般会計以外、各特別会計からも財源を繰り入れまして、それをプールしておきまして満期償還を行います。ただ、それ以外に、市場の状況等によりまして、随時買い入れ消却あるいは繰り上げ償還を行う性質のものでございます。そういうことで、繰り入れられました財源は、一応、その年の予算におきまして全額歳出権を付与していただいております。このため御指摘のように歳入歳出が同額になっているわけでございますけれども、最近のように国債残高が増加してまいりますと、例の前年度首の残高の一・六%を繰り入れるという定率縛り入れが増加してまいるわけでございまして、現在では、実際の償還額は繰入額を下回ることになりまして、その差額が基金残高の増加をもたらしておるというわけでございます。  なぜ、そういうような仕組みをとっておりますかということにつきましては、ただいま大蔵大臣がお答え申し上げたとおりでございまして、そういう特殊性に照らしまして、制度としてこのような状態を予想して国債整理基金特別会計法の八条二項で歳出権の逓次繰り越しという制度が認められておる次第でございます。
  101. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 私はそういうことを聞いているんじゃなくて、この予算書では大変不親切ではありませんかと。予算の説明ではきちんと年度末基金残高というのは挙げられております。五十三年度では幾らですか。
  102. 長岡實

    政府委員(長岡實君) 五十三年度末の基金残高は一兆二千九百三十一億円でございます。
  103. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 説明書というのは、予算案と同じですか。
  104. 長岡實

    政府委員(長岡實君) 説明書はあくまで説明資料でございまして、予算案とは異なるものでございます。
  105. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 だから、きちんと私はこの予算の中にはっきりと明示をしてもらいたい。そうでないと、よくわからないわけですから。その点ではいかがですか。特に次の項目の中にもそれは全然出てこないわけです。その点についてもいかがですか。
  106. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) いま委員のおっしゃる点よくわかります。歳入歳出のたてまえは、いまのようなことで歳出権を与えていただいておりまして、必要があれば繰り上げ償還とかなんかいう形をとっておるわけでございますけれども、しかし、わかりにくいことはもう私も率直に認めるわけでございまして、そのために、説明では、いまの償還財源の現在高がいま一兆二千億とかいろいろのことを書いて、少しは御理解に供するようにしているわけでございますが、委員の御指摘もございますので、今後なお、わかりやすいように何とか工夫してみたい、このように思っている段階でございます。
  107. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 大蔵大臣ですらわからぬ予算案ですね、いまの答弁だと。それが提出されてきているわけですから、本来から言えばもう審議できないわけなんですけれども、参議院はそうもいきませんので、私は、いま考えるとおっしゃっていますから、来年度からこれはきちんと改めていただけますか。
  108. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) ただいま申し上げましたように、見ていただければよくわかるように工夫いたしたいと存じております。
  109. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、私は、先日衆議院で提出をされました「特例公債の償還について」この資料について伺いたいと思います。  いまの国債整理基金と大変関係が出てくるわけでございますが、この表は一と二に分かれておりますけれども、五十三年度における余裕金、先ほどお話がありましたが、この余裕金がどうして一兆二千九百億になるのですか。
  110. 長岡實

    政府委員(長岡實君) 先ほどお答え申し上げました国債整理基金の五十三年度末の残高が一兆二千九百三十一億円と申し上げました。この資料はこれを百億円単位にいたしまして、その金額を一兆二千九百億円ということでここに挙げてあるわけでございます。
  111. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 どうして一兆二千九百億になるのか、方程式。
  112. 長岡實

    政府委員(長岡實君) 一兆二千九百億円になりますのは、これは先ほどの御質問とも関連をしてまいりますが、予算の説明というパンフレットをお配り申し上げておりますけれども、この七十一ページに、五十三年度にこの基金に繰り入れます額が五兆四千四百五十一億円、償還額が五兆一千四百二十八億円、したがいまして差し引き三千二十三億円基金残高がふえまして、五十二年度末に十三億円基金残高がふえまして、五十二年度末には九千九百八億円でございましたものが、一兆二千九百三十一億円にふえるわけでございます。
  113. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 五十七年には、これが幾らになりますか。それから赤字国債が回ってきます六十年には、これが幾らになりますか。
  114. 長岡實

    政府委員(長岡實君) 五十七年の姿を申し上げます場合には、今後どのような推移をたどるかということにつきまして一定の仮定の条件を置かなければならないわけでございますが、別途、お示し申し上げております財政収支試算のケースCを前提にいたしまして計算を申し上げますと、五十七年度末の余裕金残高は四兆六千七百億円になるわけでございます。それから六十年度は、今度は財政収支試算は五十七年度までしか計算いたしておりませんので、その後どういう前提を置いて計算をしていくかということになるわけでございますけれども、仮に五十八年度以降において新規に発行する公債の金額を毎年一〇%ずつ伸びるということで想定をいたしてみますと、別途特別の予算繰り入れ等をしない場合には、六十年度末で六兆二千三百億円になるわけでございます。
  115. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 先ほども少し触れられましたが、このように余裕金が大量に生じる理由はどこにありますか。
  116. 長岡實

    政府委員(長岡實君) 国債の償還に当たりまして、わが国では減債基金の制度を持っておるわけでございます。矢追委員御承知のように、原則的には前年度首の国債の残高の一・六%を毎年繰り入れていく、これは将来の国債の償還に備えるために積み立てていく。それ以外に、第二番目に、財政法で剰余金が出た場合にまた国債整理基金に繰り入れる。第三番目には、必要に応じて予算繰り入れを行うという三本柱で将来の国債の償還に備えておるわけでございますが、ただいまのように国債整理基金の余裕金の残高が四兆円あるいは六兆円とふえてまいりますのは、公債の発行が御承知のように最近巨額に上っておりまして、それが加わった前年度首残高の丁六%を積み立てていくのに比較いたしまして、実際の償還額の方がまだ出てこないということで、昭和六十年度ごろまでは基金がふえ続けるといったような現象になるわけでございます。
  117. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 大蔵大臣、ここでお伺いしますが、これは総理にもお伺いしたいのですが、一方において大量の赤字国債を出しておいて、一方においてこのようにお金をためる、しかもこれには運用益が生じる、ということは利息がつくということです。そういうお金をためておく、こういうことは財政審議会ではいいと言っておりますか、いけないと言っておりますか、いかがですか。
  118. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) いまのような大量の特例債を出すときでございますから、財政の健全化を図るためには、もう言うまでもなく早く特例債から脱却しなければならぬことは御承知のとおりでございます。ただ、その間、どのような償還財源を積むかという問題でございます。  現行は、建設国債と赤字国債を含めまして総合減債基金という制度で一体的に運用した方がいいのではないか。これは、大体、財政審議会でも、その程度のことであれば——おっしゃる点はわかります。ややマイナスの面もありますが、全体としての減債基金を仕組むにはやはり一・六というものは建設国債それから赤字国債通じてやる方が減債基金の機能としてはすぐれてはいないか、こういうことでございまして、現行はいまそれによっておるわけでございます。
  119. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 財政審のこれは五十二年の一月二十七日ですが、これは「現行の定率繰入れ、剰余金繰入れ及び必要に応じて行う予算繰入れのほかに、更に別途の財源積立てを行う必要があるのではないかとの考え方があるが、特例公債の発行は臨時異例の措置として行うものであるから、別途の財源積立てを行うような余裕があれば、まず、特例公債の発行額を縮減し、できるだけ速やかに特例公債に依存する財政からの脱却を図ることが先決であると考える。」と、こうなりますと、やはり百分の一・六と剰余金——これはいまありませんけれども、あと予算繰り入れ、それ以外は好ましくないということではございませんか。それはいかがですか。
  120. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) いま委員が御指摘になったのはまさにそういうわけでございまして、いろんな減債基金の制度を論じます場合に、赤字国債脱却前でも、将来の償還財源が非常に苦しくなるから、たとえば十分の一ずつ予算繰り入れをした方がいいんじゃないかとか、あるいは十分の一と言わなくてもやはり予算繰り入れを計画的にやった方が脱却前でもいいんじゃないかという議論が行われておるわけでございます。衆議院におきましても、その議論が大いに展開されたわけでございます。  その点に対しましては、先ほど委員がお読みになりました財政審は、いや、そうじゃないんだ、それは百分の一・六の総合的な減債基金にとどめるべきであって、ほかに計画的に十分の一とか、あるいは何十分の一というものを予算繰り入れをやることは、金利のつくものでございますから、赤字国債でまた金利のつくものを出すということは、赤字公債を出しておる限りそれはいかがなものであろうかということを指摘したのがそこの財政審の答申であるわけでございまして、その点は、私も、委員と全く同じ考えを持っておるわけでございます。
  121. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 二番目の問題といたしまして、五十三年度現金償還は幾らですか。
  122. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 五十三年度現金実償還額の予定額は二千八百四十六億九千四百万円でございます。
  123. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 これは一般会計に限りまして、特にこの衆議院で出された私がいま問題にしております資料でまいりますと、これはどうなりますか。五十一年、五十七年、六十年とおっしゃってください。
  124. 田中敬

    政府委員(田中敬君) ただいま私が申し上げました数字には、交付国債等、普通内国債以外のものが入っておりましたが、普通国債だけでとってみますと、現金償還額の予定額は五十三年度千百三十九億円。御指摘の五十七年度は五千九十七億円を予定いたしております。
  125. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 六十年度。
  126. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 六十年でございますか。六十年は二兆七千三百七十八億円、六十三年度五兆九千七百二十六億円を予定いたしております。
  127. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 この表とは少し細かい数字が違っておりますが、大体合っていると思いますが、要するに、私がここで問題にしたいのは、五十三年にとりますと、この表で言った方が簡単ですからこの表でやらしてもらいますが、四条債が七千五百億、特例債はありません。で要償還額が七千五百億。そのうち借りかえが六千三百億ですから、いま言われたキャッシュで返すのは千二百億、こういうことになりまして、残りが三千億出るわけです。それにプラス昨年度の余裕金の九千九百億が加わって一兆二千九百億という余裕金が出るわけです。これでよろしゅうございますね。
  128. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 大筋は、委員の御指摘のとおりでございまして、余裕金が出ます理由と申しますのは、五十三年度に定率繰り入れの金額が三千五百二十九億円でございます。さらに、ほかに発行差減額の六十二億、あるいは一般会計が承継いたしたものの繰り入れ分十四億というものと運用益五百六十六億、これが入ってくる。歳出に充てられないものでございますけれども、その中から現金償還額といたしまして千百幾らのものが出てまいりますので、差し引き三千二十三億という剰余金が五十三年度生じまして、五十二年度末の九千九百八億に足したものが御指摘の一兆二千九百億円余でございます。
  129. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 したがって、この財政審にもありますように、特例公債をできるだけ出さないようにするためには、ここでひとつ現金償還というものをもう少しふやすということも考えるべきだと思いますが、この点はいかがですか。
  130. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 財政が非常に豊かでございますと、そのようなことも考えられるのでございますが、財政収支試算でお示ししましたように、現在の特例公債を減らすだけでも並み並みならぬ歳出の節約と、それから負担増を求めなければならぬのでございます。したがいまして、財政健全化のためにはそのようにしたいのでございますけれども、なお当分の間は、実際問題としてはなかなかむずかしいのではないか、大分先の問題に属するのではないかというふうに個人的には考えておるわけでございます。しかし、趣旨といたしましては、できるだけ健全化の方向に向かいたい、かように思っておるわけでございます。
  131. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 そういうように大臣は言われますけれども、五十三年度を見たって、これ返す気になったら全部返せるんでしょう、どうですか、一兆二千九百億余っているんですから。というのは、この借りかえ債というのをこの表では収入に入れておられますね、これでみんなごまかされちゃうんですよ。これはなくなるんですから、先へ飛ぶんですからね、手形の書きかえですから。実際キャッシュで返すのはたった千二百億、それは私もうちょっと余裕があるんじゃないか。しかも、これでは予算繰り入れをゼロにしてありますね、その点いかがですか。
  132. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) おっしゃるように、五十三年度だけを見れば全額やってもいいわけでございますけれども、しかし、財政はやはり長い目で見ることがどうしても必要でございまして、それを一遍導入いたしますれば、結局、いま六十年という耐用年数で一・六を積んでおる。そうして十年の償還期限で出しておりますから、六分の五だけ借りかえるという制度なんでございまして、それで六分の一は現金償還と、こういうことになっております。一遍制度を変えますと、それは後年度に全部来るわけでございます。  そのようなことを考えますと、この前にお示ししました財政収支試算、あるいはその後における償還財源がどのようになってくるか、これを考えますと、結局、財政収支試算で示したよりもはるかに歳出を詰めるか、あるいはもっと大規模の負担増を求めるかという問題に最後は帰着してしまうわけでございまして、あの財政試算でお示ししたのでもなかなかむずかしいんではないかと思っているわけでございますので、単年度限りではなかなかむずかしいというのが私の感じでございます。
  133. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 むずかしい、むずかしいとおっしゃいますけれども、じゃ仮に昭和六十年を見てくださいよ、六兆二千三百億になるんですよ、余裕金は。しかも定率繰り入れが一兆七千五百億、運用益は三千七百億、こういうことですね。実際は、この場合は、確かに六十年になりますと赤字国債が回ってきまずからマイナス八千億というのが出てきます。しかし、余裕金ば依然として七兆その前にありますから、それが減っても六兆二千億は緊持できているわけですよね。だから、六十年になってもまだ国家財政は破綻しない。むしろ赤字国債を出すことによってこの運用益がふえ、余裕金がふえてくる、こういうからくり——からくりと言ったら失礼かもしらぬが、そういう仕組みになっているわけです。これはなかなか頭のいいやり方ですね。これは案外いままで私がこれを指摘するまではこういったことが明らかにされませんでした。昭和五十年に初めてこの運用収入との関係でこの余裕金というものを私が問題にしたので、このように明らかに出てきたと思いますけれども。  仮に昭和六十三年を見まして、このときに初めて余裕金がゼロになっております。しかし、その段階では予算繰り入れを三兆一千八百億やって、それでゼロにしているわけです。いざとなりゃ予算繰り入れをばっとやればこれでできるわけです。だから、私は、いま政府は大変だ、大変だと言いながらも堂々と赤字国債を出してやっていけると。だから私は少しでも現金償還をふやしてやってはどうですかと、こう言っているわけです。  時間がありませんので、次に進みます。  次に、この百分の一・六、先ほど十倍という議論がありました。私も確かに十倍ということを言ったことはこの五十年のときにはございました。しかし、それを誤らしたのはあなた方なんですよ、これを隠していたから。この表を見ますと、この一.六という問題についてはいままで確かに衆議院でも議論されておりましょう。しかし、私はここでもう一度私個人の考えとして問題提起をしておきたいんです。  五十七年度、いわゆる赤字国債をゼロにするときまでは、少なくもこの百分の一・六の定率繰り入れをやめてもいいのではないか、それでも十分やっていけるんじゃないか。今後、この余裕金の問題、またこういった仕組みを、赤字国債をまず減らすこと、そして財政を健全化するためにとにかく私はもう一度この問題も検討していただきたい。そうして特にこの出された資料、これは大変不親切ですね、不親切。現金償還額を入れてほしんですよ。そしてそれでどれだけ残り返さなくちゃいけないか、残り余裕が出てくるか、前年度プラスで一兆二千九百億と。この表はもう一度親切に書き直していただかないと、これだけ見ているとこれまた惑わされる。大蔵省というのはやっぱり秀才の集まりですからね、なかなかうまいこと表をつくられますけれども、私も苦労して一生懸命これ計算してやったんです。で、ようやくこの仕組みがわかってきたわけです。そういう点でいま申し上げた三つの点、これ、総理、最後に一緒にお願いしたいんですが、百分の一・六の定率繰り入れの問題、これは再検討されますか。それから現金償還をふやすこと、それからもう一つはこういった余裕金はどう扱っていくのか。私は、片方では赤字国債を大量に、片方でもうけるといいますか金をためるというやり方、これはいかがなものか、その点お答え願いたいと思います。
  134. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) まず、私からお答え申し上げます。  先ほど、委員昭和六十年度に六兆二千億の余裕金残高になるはずではないかと、こういうお尋ねでございますが、実は、この中は五十七年までに特例債の発行をゼロにするという前提が入っているわけでございます。で、その間の増税総額はおおよそ考えますと十兆を超える大変な増税を含んでいるわけでございます。そしてまた歳出も経常経費はかなり詰めていく。まあ振替支出なんかはかなり余裕を見ておりますけれども、そういう前提でできておるのでございます。で五十七年度以降、これも仮計算をいたしまして大体四条公債が一〇%ずつ伸びていく、こういう前提ではじいたものがこれであるわけでございます。  実際は、その赤字国債から脱却するまでに大変な歳出の節約と負担増を求めなければならぬわけでございまして、もしこの余裕金をそれなら返せるようにするためにはいまの増税総枠をも一つとふやさなけりゃならぬ、あるいは五十七年度以降においてもどちらかでございまして、もっと増税をしなければならない、もっと歳出を詰めにやならぬ、そういう問題との総合的関連においてこの六兆何千億は出ておりますものですから、私が申し上げているのは、これは現実にこれだけ余裕金が出るという確かな数字ではない、試算に基づく数字でございます。そういう意味で現金償還を直ちにふやすということは、結局は、計画された負担増なりあるいは試算されました歳出の圧縮をもっと縮めろということでございますので、いまにわかにその点について御賛成するわけにはまいりません、そういう趣旨でございます。理論的に反対だとか、そういう意味ではございません。果たして可能性としてどんなものであろうかということを申し上げているわけでございます。  それから、赤字国債発行のときに、一・六でも惜しいじゃないかと、こういう御指摘なのでございますが、この点は、最初五十年度に初めて特例債を発行するときに財政審においてもいろいろ御検討願ったわけでございますけれども、やはり四条債それから特例債合わせて総合的な減債基金の制度を積むのであれば、六・一という、程度の問題もございますけれども、それくらいの方はやはり減債基金を確実にするという方にウエートを置いてはどうかということで、予算繰り入れにつきましてはもう委員のおっしゃるとおり財政審もそれはむだなことではないか、こういうことでございますので、しばらくこの方法をやっていくのがいいのではないかなと私は思っているのでございます。
  135. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 矢追さんの御指摘につきましてのお答えはいまの大蔵大臣の申し上げたとおりでございますが、お気持ちはよくわかるので、お気持ち自体につきましては財政審におきましてもあなたの御意見どおりのことを言っているんです。ただ、その考え方を適用すると、それには現行の減債基金の制度がありますから、それはそのままにしておこう、しかし特別の予算繰り入れ措置はこれはとらぬがいいなあと、こういうのが財政審でありますが、その財政審の考え方でやっておる、こういうことで、この方が、考え方は矢追さんも財政審も同じといたしましても、まあ現実的な行き方ではあるまいか、そのように考えております。
  136. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 さっきの衆議院提出の資料、もう少し詳しいのにしていただけますか。——  それから、総理、私がなぜこれを言うかといいますと、要するに、赤字国債をたくさん出せば出すほど余裕金がふえるという仕組みなんですよ。だから、下手をすると、いまケースCと言われていますが、ケースAになる、状況がだんだん追い込まれてきて。いわゆるケースA——これは余り好ましいことじゃありませんけれども、財政破綻を意味しますけれども、結果的にはそうなる可能性を非常に私は心配する。そうなっても何とかなる、こういうことをやっていけば。それを非常に心配するので、あえて指摘をしたわけですから、くれぐれもケースAにならぬように、といってCの場合、これまた増税が絡みますから、これも問題ありますよ、問題ありますけれども、いわゆる赤字国債を出すことに麻薬のように麻痺されるという点については指摘をしておきたいと思います。  次に、教育問題に移ります。  先日、滋賀県で起こった中学生の殺人事件、最近、またこういった集団のリンチ事件というのがふえております、これについて御報告願いたいと思います。
  137. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) お答えいたします。  野洲中学の事件等につきまして、文部大臣としてきわめて心の痛む、また残念な遺憾な問題でございまして、教育委員会から報告を、教育長に文部省まで御出頭いただいて、よく承ったのでございますけれども、新聞報道等でもう矢追委員も御承知のことと思いますが、同級生の受験時期をずらせまして、昨日、政務次官を野洲中学に派遣をいたしました。  その背景にありますものは非常に複雑ないろんな問題が絡み合っておるようでございます。クラスで人気投票一番になった生徒、クラス委員にも選挙をされて当選した生徒、服装等について担任の先生が注意をいたしましたら非常に素直に「はい」と言って直ちにそれを直してきた生徒が殺人事件を犯しているという事実。また、先ほど矢追委員が触れられましたように、学校におきましては大変気の弱い生徒だとみんなが思っておりました生徒が、家庭では暴力の限りを毎日のように行っていた。たまりかねた父親によって絞殺されてしまったというような事件。  その背後にありますものはきわめてむずかしい複雑な問題が絡み合っておるように思うのでありますけれども、やはり文部省といたしましては、教師が一人一人の児童生徒の態様を、また悩みや問題を的確に正確に早くつかむということ、早く指導を始めるということ、そしてまた、あらゆる機会を通じまして教師と生徒の間の対話をもっと深める、広めるということ、生徒同士の間の好ましい人間関係を樹立していく、そういうことにまだまだ努力をしていかなければならないということを感じますのと同時に、話を聞いてみましても、驚くほどの家庭での放漫主義と申しますか、過度の甘やかし、あるいは社会の生命軽視の風潮、こういった困難に耐えることのできない弱さを持った子供がふえてきている。こういう事態から、やはり学校のそれぞれの担当の先生だけということではなく、一学級なら一学級全体の問題として、学年主事を交えての学校における先生方の指導力の強化、そして先生たちの努力に私がもう一つ期待いたしますのは、やはりもっと家庭との連絡を密にしていただく、地域社会との連絡を密にしていく、地域社会ぐるみ、家庭ぐるみのこういう非行防止に一段の努力をしていかなければならないということ、そういう気持ちを新たにいたしておるものでございます。
  138. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 国家公安委員長にお伺いしますが、いまの暴力事件、そのほかにも集団リンチ事件等がございますが、特にこういったリンチあるいは殺人事件、さらに自殺について、どういう状況か御報告願います。
  139. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) ただいま文部大臣からもお答えがありましたように、最近、まことに残念な事件が起きておりまして、私どもも心痛いたしておるところでございます。  そこで、少年犯罪の傾向を見てみますに、昨年の統計では、交通事故等を除外いたしまして、約十二万人の少年犯罪者を数えております。人口比率にいたしまして大人の約四倍、かようなことでございまして、傾向といたしましては、窃盗が遊び型のものが多くなって、たとえばオートバイでありますとか万引きでありますとか、かような傾向が濃厚になっておりますのと、中学生や高校生が学内で教師に暴行いたしますような事件もございますし、また傾向といたしましては、最近少年のうちで女子の犯罪が若干多くなっておる、かようなことでありますし、また暴走族等の粗暴な事犯が多くなっておる、かようなことであります。  なお、自殺につきましては、昨年の少年の自殺者は七百八十二名、かように数えられておりまして、それも三月期や四月期が多い。それから原因別に見ますと……
  140. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 八十四じゃないですか。
  141. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 七百八十四名でございます。三月、四月が多いという傾向と、そして内容別には、学業関係が男性が多く、異性関係が女性が多い、なお家庭関係も非常に大きな原因になっておる、かように判断をいたしております。
  142. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 もう少し具体的に言っていただけますか、場所、それから原因、パーセントを含めて。それからどういうやり方か。
  143. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 政府委員から答弁します。
  144. 森永正比古

    政府委員森永正比古君) お答えいたします。  自殺の動機、場所等についてでございますが、自殺の動機につきましては、ただいま国家公安委員長から御報告いたしましたとおりでございます。場所別につきましては、大変身近なところで自殺をいたしておりまして、自宅等が非常に多いということでございます。
  145. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 パーセントを言っていただけますか、トップだけで結構ですから、パーセント。
  146. 森永正比古

    政府委員森永正比古君) 失礼いたしました。  場所別には、自宅が最も多くて全体の五一・八%、それから線路、駅構内、これが九・七%、山林が七・三%。それから特異なものは高層ビル、団地からの飛びおり等、これが五・五%ということでございます。  手段別につきましては、首つりが最も多くて三五・八%、ガスが二・五%、飛びおりが一一%等となっております。  原因、動機別につきましては、大臣がお答えいたしましたように、最も多いのが学業問題についてでございますが、そのうち特に学業不振あるいは入試苦、あるいは入試に失敗、進学進路問題というものがその中で非常に多いわけでございますが、このような学業問題が全体の二七・九%を占めております。その次に異性問題が全体の一三・七%を占めており、次に家庭問題が全体の一二・一%を占めておる状況でございます。
  147. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 結局、受験地獄にすべての根源があると思いますが、文部省は、これは前々から言われながら、ほとんどこの対策が進んでおりません。これについて文部大臣の所見をお伺いしたい。
  148. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 児童生徒のそういった問題行動はまさに受験にも一因があるということを私は率直に認めたいと思います。しかし、問題の背景考えてみますと、余りにも過剰と申しますか、落ちこぼれ論議が多過ぎる。私ども考えて落ちこぼれだと思えない子供たちが、しかも非常に恵まれた環境で勉強を続けている子供が突然自殺をしてしまっている、こういう事態にもぶつかるわけでございます。文部省といたしましては受験、試験という制度は残してまいります。やはり若い人が人生のある時期に競争に耐えるということは人間を鍛えることでございます。しかし、受験地獄だけはもう断じてこれを防いでまいらなければなりません。  具体的な一、二の例を申し上げますと、高等学校への入学者選抜の方式等、地域の実態に応じまして各都道府県において改善、工夫が行われてまいっております。また、もう御承知のように小中学校の学習指導要領の内容の改定を終えまして、高等学校の学習指導要領の改定を五月ごろに予定をいたしておるわけでございますけれども、この学習指導要領の中身、その改定の一番主眼といたしましたことは、余りにも詰め込み主義と申しますか、知育にばかり偏り過ぎていた従来の学習指導要領を改めて、知徳体のバランスをとる。そして二時間ないし四時間のゆとり時間を子供たちに持たせる。そのゆとり時間を子供たちの人間性を豊かなものに指導をしていく時間に使いたい。福祉の心やら花を愛する心やら、人間のとうとさやらというものをその時間に指導をしていくための学習指導要領の改定を行ったわけでございます。  ただ、このためにはやはり現場、現場での工夫が大事でございます。学習指導要領の改定はいたしましたけれども、教科書の改訂は、これに基づくものは小学校で五十五年、中学校で五十六年になるわけでございますから、現在の教科書を使ってでも改定した学習指導要領の内容で教育指導が行えるように、これは生徒たちにはゆとりを与えたいと思ってやったことでございますけれども、学校の先生方にゆとりをお与えするゆとりは文部省にございません。なお一層先生方の研修機会を提供し、先生方に御努力を願って、この学習指導要領に基づいての教育内容の改善を図っていき、それだけではなくて、大学の入試の改善あるいは大学間の格差の解消、あるいは余りにも偏った学歴偏重社会を是正するための経済界への働きかけ、一連の努力を総合的に続けてまいりまして、受験地獄から何とか正当な受験競争のあり方に持ってまいりたい、さらに努力をしてまいる決意をいたしておるものでございます。
  149. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 観念論で余り具体性がありませんけれども、この受験戦争をさらにあおっておるものに、私は受験産業と言いたいのですが、あると思います。  で、参考書を取り上げてみたいと思いますが、まず最初にお伺いしたいのは、国立大学の付属中学校の試験用紙は試験が終わるとどうされますか。
  150. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 国立大学の付属中学の入学試験を行いました後の試験問題は公表をいたしております。それは、入学試験後、試験問題に対する批判を求め、出題の意図を明らかにする目的を持って受験生に持たせて帰らせる、あるいは、しばらく時を経て希望者にお渡しをする、そういう形で公表をいたしております。
  151. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 公表は結構ですけどね、その入試問題の実物コピーがこういう形で売り出されることはいかがですか。
  152. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 私も、最近、いま矢追委員が持っておられるそのコピーというものを見ました。重大な問題であると思うのです。先ほども申し上げましたように、問題を公表いたしておりますのは、それなりの正当な理由があって公表をいたしておるのでありますけれども、いわゆる受験産業と呼ばれる経済活動に、受験熱をあおるようなことに利用をされておることは許しがたいことだという気持ちがいたします。  この試験問題は、教官がつくっておりますけれども、公務としてやっていることでございますから、試験問題の著作権は文部省にあると思うのです。そういう観点からも、ひとつこれを積極的にそういう方向で取り締まれないものか、積極的に検討をしたいと考えております。
  153. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 公取委員長にお伺いしますが、いろんな参考書の中で、一つは内閣告示によるという言葉が宣伝に使われております。これはかつて多田委員も私も指摘をした文部省指導要領準拠、これは使ってはならぬということになっておりますが、これが依然として使われております。その他、絶対にとか、絶対とか、それから初段から名人とか、相当強烈な宣伝のついた参考書が横行しておりますが、公取はいかがお考えですか。
  154. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 感じやすい年齢の受験生に対して商品を販売するのでございますし、こどに学習参考書という受験生にとって死命を制するような文書でございますから、したがいまして内容の表示等につきましては、いやが上にも慎重であることを強く要望いたしたいと思います。  いまお示しがございました、たとえば内閣告示がないにもかかわらず、あるように表示をしたり、あるいは文部省の学習指導要領に準拠もしていないのに準拠をしているという表示をしたりするということは、これは不当表示の疑いが濃厚であろうと思います。  ただ、最後におっしゃいました、絶対に受かるとか、あるいは初段から名人までというようなものを見て、一体、受験生が誤認をするかどうかですね、本当にそういうふうに信ずるかどうかというところがポイントでございますから、こういう問題についてはやや違法性が薄いのではないかという感じがいたしております。
  155. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 次に、文部大臣、コンピューターによる性格診断テスト、こういうのまでついているわけです。それからまた、コンピューターがお答えするお子様の心の健康診断、三歳から六歳児用、小学校一年から四年用、こういうふうに非常に低学年、三歳児からコンピューターによって性格診断テストまだやって、親がまたこれにかんかんになっている。これはどう思われますか。
  156. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 最近も、東大阪のある出版会社が参考書のようなものの付録につけておるのを発見いたしました。大阪府教育委員会に調査を依頼したところでありますけれども、まだがんぜない児童生徒の性格をコンピューターではじき出してやる、それを参考書の付録につけているなどはもってのほかでございます。受験産業の最も悪い一面をのぞかせたものと思います。ひとつ強い姿勢で対決をしてまいりたいと考えております。
  157. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 それで問題は、受験戦争をなくするということで、第一次の国立の共通テストというものをやられたと思うのですけれども、読売新聞でアンケートが出ておりましたが、これに対する大臣の所見、さらにこの共通一次テスト、いろんな意見が出ております。大体まとめますと六つぐらいになるかと思いますが、これに対して一つ一つ大臣の所見をお伺いしたいと思います。
  158. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 先ほどもお答えをいたしましたけれども、高学歴社会を打破していく、大学の入試を改善する、大学がそれぞれ特色のある成長の仕方をしていくように努力をする、そして学習指導要領を改定する、一連の総合的な施策を懸命に打ち出していって、今日の教育の荒廃という言葉で呼ばれているその問題の解決に努めようと思うところでありますが、先般の読売新聞のアンケートは私もつぶさに拝見をいたしました。  国立大学の共通テストというものは、ただいま申し上げましたような方向で改善を行うのでございますから、基本的にはいままでの大学入試の問題にあったような難問、奇問から受験生を解放する一番大きなこれが意義を持つわけでございまして、高等学校で決められている授業内容を十分に基礎的に、基本的に把握、理解をしていれば及第点がとれるという問題でその共通テストをやろうというわけでございます。  ただ、受験生の皆さんには、一期校を受けて落っこったら二期校が受けられたいままでは二度チャンスがあったのが、今度は一遍になってしまうから受験機会が失われたじゃないかという心配もございます。これはそうではないんで、一期校、二期校合わせましても、入学許可をする数は変わりはないわけでございます。  また、自分たちで自分の試験の答案が何点ぐらいであったか、どの辺に位置するかということを見当をつける、それに提供いたします正解の公表、点数の公表等のあり方もまだいま改善に努めているところでございますので、そういう高校の二年生の諸君がまだ十分に理解をしていただいていない点があろうかと思いますので、相当大がかりなPR作戦を開始をすることにいたしております。四十万か五十万の高校生が入学試験を受けるのでございましょうけれども、八十万部ぐらいの文部広報等を用意して配布をしてみましたり、政府全体の姿勢としてのPRも行いたいと思って、総理府にもそれをお願いをしているところでございます。受験生の不安を解消して、この共通一次テストというものが所期の目的どおりに施行されますことに一段の努力を積み重ねてまいります。
  159. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 こういった大変な受験地獄を生み出したのはやはり、私は、基本的には、総理、高度成長から本格的には始まっていると思うのです。総理が旧制中学のころは、こんなにたくさん参考書はお使いになっていないと思います。それでも悠々と一高、東大という秀才コースを行かれたわけです。私のときでも、そうたくさんの種類はまだ——いまはめちゃくちゃにありまして、本屋に行ったら、本屋さんはほとんど受験参考書で占められていると言っても過言ではないぐらいあるわけです。そこで教育産業、受験産業がもうけているというような行き過ぎがある。基本的には政治の姿勢、経済高度成長が私は諸悪の根源だったと思いますが、それも踏まえた上で、この教育を、先ほどの自殺の原因はほとんどが学業問題です、総理、どうお考えですか。
  160. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 矢追君、時間が来ました。
  161. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) やっぱり今日の教育の諸弊ですね、これは根が深いのじゃないか、そのように思います。その根の深い一つの問題は、経済的に、また科学技術的に非常に今日のような急成長をした、それに人間の心が追いつけない、そういう面があるのじゃないか、こういうふうに思います。しかし、これからいよいよそういうものと心の面の乖離、これを克服していく、これは政治の非常に大きな問題であるというとらえ方で教育問題を重視してまいりたい、かように考えます。
  162. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 最後に、済みません、簡単に言います。  進学ローンについてどのような制度があるのか、もちろん学費の補助も含めまして、各省からその実態、利用状況、それからどういうふうな状況で借り出せるのか、その点について報告してください。
  163. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 進学ローンについて大蔵省関係を申し上げます。  進学ローンにつきましては、民間の金融機関が一般的に行っておりますが、たとえば都市銀行の例で申しますと、貸付限度が三百万円から十万円の間でございまして、金利は利率が八・一六%でございまして、保証料は〇・七二%で合わせて八・八八%になっております。貸付期間は五年以内でございます。  それから、これはいま法案を御審議願うことになっておりますが、国民金融公庫で貸し付けをすることになっておりまして、これは低所得者向けと郵貯積み立て者向けと二つに分かれております。低所得者向けは貸付限度が五十万円でございまして金利は七・六%でございます。それから進学積み立て、郵貯積み立てをした人に対する貸付額は、積立額と同額以下でございますが、これは最高限が五十四万円になっております。なお貸付期間は両方とも四年以内、据え置き期間一年、こうなっております。
  164. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) お答えいたします。  財産形成制度の中で今回進学ローンを考えておりまして、今国会に法案を提出する予定にしておりますが、これからの制度でございますが……
  165. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 簡単にしてください、簡単に。
  166. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) 考え方としましては、財形貯蓄をやっている人に対して、その子弟に対する教育ローンを考えております。貸付限度額は一応財形貯蓄額の三倍で三百万、それから償還期間は五年、貸付金利はまだ確定いたしていませんけれども、八・四%程度と、こういうことを考えております。
  167. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 郵政省、文部省、厚生省、これだけあります。
  168. 服部安司

    国務大臣服部安司君) 先ほど銀行局長が説明いたしましたので、重複しますから御了解願います。
  169. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 日本育英会の事業が昨年度比百億ふやしまして六百十三億、それから私立大学奨学事業が昨年に比して十五億円増の二十五億、その他、地方公共団体が各様の進学ローンを持っております。
  170. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 厚生省、母子家庭のを。
  171. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 私どもの方は進学ローンという制度はないのであります。入学の場合の支度金を五万円、母子福祉資金から貸し付ける、こういうことでございます。
  172. 矢追秀彦

    矢追秀彦君 最後に、一言だけ。  たくさんありまして、結局、結論として申し上げたいことは、特に今度言われているいわゆる進学ローンは大変利息も高いし、返済期間も非常に短く大きな問題があります。しかし、本来、これは文部省がもっときちんとやれば、文部省のやっている、先ほど大臣の言われたのは非常に有利なものでございまして、しかし、申し込みが大変少なくて利用が少ない、こういった点がございます。そういった点でもう一度、この授業料に対する援助も含めて、進学ローンの問題についても各省間できちんと調整をしていただいて、低所得者層に有利になるようにきちんとしていただきたいと思いますが、大臣の所見をお伺いして、終わりたいと思います。
  173. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 私どもがいままでやってまいりました事業のうち、私学奨学事業が、矢追委員御指摘のように、五十二年度まで大変利用度が少なかったわけでございます。大変有利な事業でございますので、大学が卒業してからの十年間それを見てまいらなければならない事務の煩瑣なこともあったのでございましょう。そういう観点から、各大学当局に対して、私大協会を通じてだけではなくて、大学に直接文部省として接触をいたしまして、これを十二分に活用してくださるように要請をいたしておりますし、事務費等の助成もいたすことにいたしておりますから、五十三年度で恐らく相当利用度が高まるものと考えます。  他省の進学ローンは、それぞれやっぱり身近な郵便局や銀行にあることが私は望ましいのではないかと考えております。
  174. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で矢追君の総括質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  175. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、志苫裕君の総括質疑を行います。志苫君。
  176. 志苫裕

    志苫裕君 どうも御苦労さまです。  通告した質問に先立ちまして、一つお尋ねいたしますが、最近、防衛問題に関する政府の姿勢をひときわ高く感じます。内外の情勢等について何か変化があるという認識によるものですか。
  177. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 防衛問題についてひときわ色立った動きをしていると、こういう御感想のようですが、別にそういう認識は私どもの方は持っておらないんですけれど、皆さんからよくそう言われるので、どういうところがどうしてそういう御認識になってくるんだろうかなと。私どもはあたりまえのことを、また従来言っているとおりのことを申し上げておると、こういうことでございます。
  178. 志苫裕

    志苫裕君 いずれわが党の委員がやりますけれども、なお若干付随しておきますが、外務大臣、世界の平和は、世界が基本的に平和に向かっておるという理解をお持ちですか。
  179. 園田直

    国務大臣(園田直君) いろいろ問題はありますが、米ソを初め平和に向かって努力をしていることは事実であると考えます。
  180. 志苫裕

    志苫裕君 先ほど総理は、いわば特別に何も感じていないんで持論を述べているだけだという種類の話でありますが、それでは不況脱出に軍備の増強とか武器輸出とかいう意見が台頭しておることについてどう思いますか。
  181. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国は平和国家であり、死の商人というようなことになっては断じて相ならぬと確信をいたしております。
  182. 志苫裕

    志苫裕君 持論を述べておるということであれば、私はあえてこの時期に核装備にまで言及をして政府がトーンを高めておるというものについていささか危惧を感じますし、くしくも与党の質問者の全員が軍備増強問題に触れておるということも無縁でないと思うのです。福田内閣の体質に由来するものですか。
  183. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 福田内閣は大変徹底した平和主義内閣でございますから、いまの防衛論議がそういうところから何か変化を来しておるというふうには考えません。しかし、国の防衛ということは非常に大事なことでありまするから、私はこれを大いに論ずるということは国のために大変有益なことであると、そういうふうに考えます。
  184. 志苫裕

    志苫裕君 以下、通告した質問に入ります。  ところで、総理は景気のブレーキとアクセルの両方を踏んだ大変珍しい方でありますが、かつて、成長率の問題よりもアクセル踏んだりブレーキかけたりしないでも済む経済運営をしたいと、こういう主張をしておられたわけでありますが、どう思いますか。
  185. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 景気はなるべくアクセルを踏んだりブレーキをかけたりというようなことなしに、つまり景気に山あり谷ありと、その山もそう高くない、そう谷は深くないと、こういう状態が一番いいんだと。つまり安定成長論ということを展開しているわけですが、これはいろんな意味があります。景気がなるべくただいま申し上げましたような山あり谷ありという状態でない、そういう平均的に伸びていくということも一つ意味合いでございまするけれども、そういう状態の方が、山あり谷ありと、その間に国民的ロスが非常に大きい。それを避けて平たんに伸びていくという形の経済をずっと望んできておりまするけれども、実際はなかなかそのとおりにはいかぬというのもこれも事実でございます。
  186. 志苫裕

    志苫裕君 いろいろと経済運営についての質問もあるし、答弁もあるんでありますが、私も一生懸命にやっていることを疑っているわけじゃない。しかし今日の事態は明らかな失政だと。この基本認識をあいまいにして何かこう天災か国難のように言いふらすことにはいささか抵抗を感じます。景気浮揚だとか公共事業だと言えば、もう大名行列がまかり通るような、邪魔する者は無礼討ちされるような雰囲気というようなものが何かこう醸し出されておることには承服できない、こういう感じがするんでありまするが、いかがですか。
  187. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 基本的にわが国はあの石油大ショックですね、あれからの立ち上がりは、これは私はまずまずいいところを歩んできたと、こういうふうに見ております。しかし、あれだけのショックの後でございまするから、いろんな後遺症も大変残っておると、そういう状態でわれわれが今日来ておると、こういうことなんでありまして、そういう変動の激しい時期でありまするから、それに対処をする仕方、アクセルもあればブレーキもある、いろんなものを織りまぜて、これを巧みに駆使してそしてこの激動期を乗り切らなきゃいかぬと、こういうふうに思いますので、まあ一生懸命やっているということについては御評価くださっておるようでありまするが、大変感謝いたします。
  188. 志苫裕

    志苫裕君 ぼくは評価をしておるわけじゃないので、やっぱり失政だという基本認識をあいまいにする、あるいは故意にそらして、こう国難のように言いふらして国民精神総動員のような体制をつくっておることは承服できないということを申し上げておるわけです。いかがですか。
  189. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国難だ国難だと言ってことさらに騒ぎ立てておる、そういうことじゃないんです。しかし、国難であることは私は事実だと思いまするから、非常に国がむずかしい状態にあるということは率直に国民にこれはもう説明する必要があると、このように思います。  また、失政かどうかというようなお話でございまするけれども、とにかくどういう点がどういうふうに悪かったのかということについて解説がありますれば率直にお答えすることもできまするけれども、抽象的、概括的にお答え申し上げますれば、これは五年間のわが国の歩みというのは、そう失政だ失政だと騒ぎ立てるような状態じゃないじゃないか、私はそういうふうに確信をいたしております。ただしかし、人間のすることでありまするから、これは間違いというか、そういうものもなしとしない。ことに私は大変いま残念に思っておりますのは、五年間の中でインフレ鎮圧、これは大変すばらしくやってきたと思います。しかし外貨問題、外貨があのように累積されるということになり、大幅な経常収支の黒字、これはなかなか深刻なというまでに膨大化する、そういう中で円高問題というものが起こってくると。この状態につきましてはある程度の感触は持っておりましたけれども、このような、昨年の秋からのような急激な状態で円価値の騰貴というようなことになるであろうというようなことを予測しなかったということは、私はこれは不明であったというふうに考えています。
  190. 志苫裕

    志苫裕君 政府の行為によって災いを国民が招かないようにするには、絶えず政治責任はシビアに追及されなければならない、こう私は考えるので、福田内閣があえて失政を糊塗されているような印象を強く受けるので申し上げた。  次へ参りますが、ことしの予算はしばしば臨時異例であるということを説明なさるんですが、ちょっと具体的に、臨時異例とはいかなることですか。
  191. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私が臨時異例の財政措置だと申し上げておりますのは、これはどこの点が臨時でどこの点が異例であると、そういうのじゃないんです。臨時異例と言って一気に申し上げておるわけなんでありまして、そういう意味において申し上げますれば、これはとにかく私は、皆さんからいろいろお言葉がありましたが、国債発行が財政の中でその依存率が三〇%を超えるというような状態、これは大変なことだということを強調してきたわけなんです。それをあえて実質におきましては三七%、しかも名目上は三二%ですが、五十四年度の五月分の歳入を前取りをするというようなことまでしておる。そういうことを全体として見まして、これはもう本当に財政としては臨時異例の措置であると、このように考えておるわけであります。
  192. 志苫裕

    志苫裕君 いや、分けて言おうと一気に言おうと同じことなんですがね。  大蔵大臣、臨時異例とは一体どういうことですか。
  193. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) いま総理が申したようなことで、実質の依存率が三七%、あるいは公共投資がこれだけ伸びるというようなこと、こういったことがあらわれた臨時異例であるわけでございますが、その背景といたしましては、何と申しましてもこの五年間の不況の問題があるわけでございまして、そこで民間経済の立ち直りがなかなかないわけでございます。各経済指標もなかなかまだらでございまして思うようにいっておりません。財政がいつまでも主導力をとるということはこれはあり得ないことでございます。急速にやはり民間経済が指導力をもついまの経済、それが財政に反映されなければならない。そういう背景を持った意味で何とかして民間経済を正常につけ、そしてそのことによって安定成長路線に早く乗せたい。その意味で、ことしは先ほど申しましたような臨時異例の財政措置をとったと、こういうことだろうと思うのでございます。
  194. 志苫裕

    志苫裕君 いまのお話を聞きますと、国債発行率の問題、翌年の財源を先取りした問題、公共投資が大幅に伸びた問題ですね、こういう問題が臨時異例だということのようでありますが、同じことを毎年やれば、これ臨時でも異例でもない。通例であり通常にならないですか。
  195. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) そういうことが財政的にとり得ないと、そういう意味で言っているわけでございます。そのことを続けるということは、いつまでも財政が主導力を持ってやっておるということでありまして、それはやがて財政的に行き詰まりましょうし、そのことは同時に経済が行き詰まるということの裏側の意味意味していることでございますので、その臨時異例のものをいつまでも続けるわけにはまいらぬ、その意味で臨時異例だと、こう申し上げておるわけでございます。
  196. 志苫裕

    志苫裕君 そうすると、私は言います、論理的には毎年同じことをすれば臨時でもなければ異例でもない。通常で通例になるわけですが、来年以降は国債発行率の問題、財源の前倒しの問題、公共事業の大幅な増の問題は来年はやらないということですか。
  197. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) その点は、この前財政収支試算でお示ししたところでございまして、あのとおり実行するというわけでない、その意味で財政計画ではないわけでございますけれども、しかし、大勢としてどういう財政状況にあるかということは大体おくみ取りいただきたいと思うのでございます。もちろんその年々の財政計画というものはそのときどきの経済情勢等に応じまして適時適切な処置をとらなくちゃならぬことは当然でございます。その意味であの収支資産のとおりやるということを申し上げているわけではございませんが、大勢的に申してあのような姿でございますので、でき得れば何とかあの路線に少しでも近づけたい、こういう希望を持っているわけでございます。
  198. 志苫裕

    志苫裕君 総理、言葉の問題のようですけれども、発想の方法の問題として、公共事業をことしは大幅に伸ばす、それも生活関連にうんと重点を移すのだということを強調されますね。政府自身も、実はいままで社会資本の整備がおくれておったということを自分で口にして、その反省の実を示して公共投資を大幅にやるということをしばしば言うわけでありますが、国民にとって必要なその種の生活関連を整備したり、教育条件を整えたり、福祉施設をつくったりする、それが臨時であり異例であるという発想はいかがなものですかね。
  199. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 公共投資は、御案内のように、社会資本でいまおくれているやつをつくるわけでございます。したがいまして、民間経済と相相応するものでございまして、民間経済の方が盛り上がってくれば、当然資金関係からいたしましてある程度縮小するということは言えるだろうと思うのでございます。いま志苫さんがおっしゃった生活基盤かあるいは産業関連かということになりますと、今度の予算でも全体が三四・五%伸びておりますけれども、道路通信関係は二八・八ぐらいでございまして、生活関連の方に大きく重点が移っているわけでございます。恐らくこの傾向は、やはり現在の社会資本の整備の状況から言いまして、当分続くんじゃなかろうかと私は思っているわけでございます。しかし、その量をどうするか、全体としての公共投資の量をどうするか、それはそのときどきの経済情勢によりまして、民間の資金需要が伸びてまいりますれば、それはそれほど大幅にはやれない、これはもう当然のことであろうと思うのでございます。
  200. 志苫裕

    志苫裕君 ちょっと違うのですね。私は、大臣は先走ってお答えになっているようだけれども、生活関連か産業関連かということを言ってるんじゃない。生活関連の整備をすることですね、このことが臨時異例のことなんだという発想は、国民にとってはやりきれません。その発想方法をぼくが問題にしている。総理、どうですか。
  201. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 臨時異例というのはそんなことを言ってるんじゃないんですよ。財政の規模が非常に一時的に膨大化したと、こういうことを言っておるわけなんです。しかも、その中で財源として公債が大変深刻な状態になってきておると、こういうことを申し上げておるわけでありまして、それはなぜかと言いますれば、やっぱり景気対策として公共事業を大いにやるということも一つの原因でございまするけれども、公共事業のやり方につきましては、前々から言っているわけです。これからの公共事業、これは生活関連に重点を移していくと、こういうことを言っておるわけで、これはそのとおりに五十三年度は実行いたしておるわけです。今後もそうします。その関連で臨時異例と言えば、これだけ大規模の公共事業を組むということは、これは臨時異例でございます。
  202. 志苫裕

    志苫裕君 私の主張をしたいのは、高成長の時代には、これらの部門というのは生産につながらないというのでいささか取り残されておる、そういう扱いを受けておるだけに、生活関連の社会資本の整備というのは、好況不況にかかわらず、やるだけのことをやって、成長率の問題はその結果として考える、こういう発想でいくべきではないかと思うのです。いかがですか。
  203. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 社会資本の充実はこれはもとよりしなけりゃならぬです。これはずうっとしていきますが、それを独立に考えて、独立の計画として社会資本充実計画だと、その結果として成長率というものが出てくるんだという考えは、また私は偏った考えだと、このように思います。やっぱり国の全体の経済を、先ほども申し上げました、山もそう高くなく谷もそう深くなく、平均的にやっていくというためには、これは公共投資を毎年毎年ぐっとやっていくわけにいきません。やっぱり設備投資需要というようなのが起こってきますれば、それに見合って公共投資の方はかげんをしなけりゃならぬわけですから、そういうことで社会資本の、特に生活関連社会資本の充実は重視はいたしますけれども、これがこれからの社会経済政策のかなめである、これをひとつ独立の柱として考えて、それを中心にして突っ走るというわけにはまいらぬということを申し上げます。
  204. 志苫裕

    志苫裕君 次に、ことしの予算の特徴ですが、一般会計を経常部門と投資部門とに分けて扱ってありますが、これの理由あるいはメリット、そんなものですね、いかがですか。
  205. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) いろいろありましょうけれども、まあ大きく分けて三つぐらいあるんじゃないかと私は考えておりまして、一つは、その投資部門と申しますのは、これはいま委員がおっしゃった、社会資本につながる性質のものでございまして、そのときの景気によりましてかなり伸縮性のあるものでございます。これに対しまして、経常経費の方は、御承知のように、やはり着実に計画的に充実していかなければならぬものでございまして、なかなか景気との相応性が比較的に少ない、こういう問題が第一点でございます。  第二点は、しかし、いまの特例債を出すかあるいは税負担によるか、この選択の問題は主として経常部門の問題になるわけでございます。もちろん、公共事業等に対しまして特定財源、ガソリン税のようなものもございますけれども、大づかみに言いますと、財源の選択は主として経常経費部門において行われるということが第二点でございます。  それから第三点は、全体としての特例公債が非常に伸びておる、これは経常費を、人件費だとかそういったものを借りるわけでございますから、いかに消化ができたといっても早く脱却すべきことは当然でございます。その上に四条公債が重なるわけでございますから、このまま全体としての依存度を放任して高くしていきますと、これは国債の利払い、償還その他で財政の機動性が失われることは当然でございます。そういう意味で、将来計画から言いまして、第三点としてはなるべく早い機会に特例債から脱却しなければならない。この三つの問題を考えまして、そして投資的部門とそれから経常部門と、この二つを分けて、この大体三つの角度からひとつ御検討を賜りたい、こういう意味で分けさしていただいたわけでございます。
  206. 志苫裕

    志苫裕君 この勘定項目の区分、もう一度ひとつ念のために。
  207. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) これは主として普通の企業会計と申しますか、あるいは国民経済計算で申します考えと大体同じ考えで区分いたしておるわけでございます。そういう区分に従いまして、投資的経費とそれから経常的経費に分けて計上してあるわけでございます。
  208. 志苫裕

    志苫裕君 自治大臣、念のためですが、地方財政の場合はどうなっていますか。
  209. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 自治省といたしましては、地方団体の財政運営が健全になされなければならぬのでありまして、したがって予算の分析でありますとか決算の分析に当たりましては、従来から経常経費と投資経費と、かようなことに区分をいたしまして、経常経費の節減を極力図っていかなければならぬし、また地域の発展や福祉の増進のためには、投資的な経費ができるだけそちらに振り向けられるような配意をしなけりゃならぬ、かようなことで、おおむね今回大蔵省が組んでおりますような考え方のもとに地方財政を見ていっているところであります。
  210. 志苫裕

    志苫裕君 これは自治大臣、違うのじゃないですか。地方の場合の項目区分は国民経済上の概念を参酌して設定と、こうなっていますね。一方国の財政の方は財政法四条公債などの特定財源で賄われる公共事業費等の投資的経費その他の云々と、こうなっていますね。これは区分の仕方は違うし、全然配分比が違うでしょう。
  211. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 通常経費と投資経費に大きく分けてはおりますものの、勘定科目が違いますことはただいま御指摘のとおりでございまして、たとえば経常経費の場合を見てみましても、地方の場合は一般財源を充当いたすのでありますけれども、国の場合には、御承知のように、不足財源は特例公債をもってこれを充てる、かようなことに相なっておるのでありますから非常な違いがございますし、また財源的に投資経費の場合を考えてみましても、地方の場合は補助金でありますとか交付金等が主な柱になっておるのでありますけれども、国の場合はそうでありませんで、道路目的税のような特定財源は別にいたしまして、原則的には建設国債を充当すると、かような方法でありますから、おっしゃるようにその点では、ことに財源の点では違いがございますので、その限りにおいて勘定科目にも違うものがあらわれておると言えると思うのであります。
  212. 志苫裕

    志苫裕君 ずいぶん説明が違うが、時間がないので次へ行きます。  私は国の分け方、地方の分け方、まるっきり違っておるんですが、率直に言って、こういう会計区分をしたメリットを言っていますが、私の受ける印象ではいい組と悪い組といいますか、いい勘定と悪い勘定、ふえてもいい勘定と減らさなけりゃならぬ勘定というふうに、そういう概念を植えつけていくという効果をねらっているんじゃないですか。
  213. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) そこでは倫理的の判断は何にもないわけでございます。判断はあくまでも経済的な判断でございまして、さっき申しましたような三つのねらいがあると、こういうことでございます。いいとか悪いとかという話ではございません。
  214. 志苫裕

    志苫裕君 そうなっておらないでしょう。先ほどの説明もそうですし、また財政収支試算でも、経常部門というのは増税をするかあるいは圧迫をするか、投資部門というのはいまは手を触れないという財政収支試算になっていますね、数字的には。ということですから、経常部門というのはできるだけもう、さもなければ税金を取りますよ、いやだったら圧迫しますよというそういう対象として考えることになるんじゃないですか。
  215. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) まず財政収支試算の方は、もともとが経企庁の方の暫定試算、大体六%強で伸びるというものと整合性をとるにはどうしたらいいかという問題が基本テーマでございます。しかも五十七年度に特例公債を脱却しつつ整合性を保つには一体どういう施策があり得るかということを試算したわけでございます。その意味で、結果的に公共投資の方が、年によって違いますけれども、平均一三・八ぐらいが出ているわけでございます。しかし、たとえば社会福祉にいたしますと平均一四・幾らでございましたか、かなり高い数字が出ているわけでございます。で、あそこで言っておりますのは、いずれにしてもこのまま公債の発行を増発していけば、先ほど申しましたように、財政の破綻、ひいては経済の破綻に通ずることは明らかでございますので、その意味で早く整合性を保ちながら脱却しなければならない。その場合にはどのような経常部門の形になるかということをお示ししてあるわけでございます。一口で申しますと、経済成長との整合性を保ちながら早く財政破綻にならないようにするためにはどんな姿になりますかということをお示ししてあるわけでございます。
  216. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、そこでもすでに明らかにされていますように、投資勘定の方は言うなら大きくなってもいいと、しかし経常勘定の方はできるだけ圧縮の対象になる。いやなら税金をよけいに取るぞといういわば概念をどんどん広げていくという内容に現実にはなっておる。そうなると経常部門、わけても福祉などは肩身を狭くして暮らしていかなきゃならぬという扱いになる。厚生大臣、あなたのところの福祉が肩身を狭くして暮らさなければいけないような勘定の分け方、扱い方というのがこれから出てくるんじゃないですか。
  217. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 厚生大臣がお答えなる前にちょっと申し上げておきます。  ケースCが主として整合性を保ちながら五十七年に特例公債脱却でございますが、五十七年までの平均で試算でもって見ますと、投資部門の平均の伸び率が一三・三でございます。それから振替支出、これがおっしゃるところのあれでございますが、これは一五%でございまして、公共投資よりもずうっと伸び率は平均的に高いことをまずもってお断り申し上げておきます。
  218. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) いかなる時代でも、政治の終局目標はやっぱり福祉国家の建設にあると思うのでございまして、そういう姿勢で政府自民党はずうっと福祉を重視して予算編成をやってまいりましたので、決して私は御心配は要らぬと思います。現在までの伸びを見ましても、国が三七%も借金をしなければいかぬような貧乏な国でありながら、福祉は一九・二%も今年度は伸ばしておるわけでございますから、その姿勢を見ましても決して今後そんなに御心配は要らない。私ども努力してまいります。
  219. 志苫裕

    志苫裕君 借金しなければならないような貧乏な国ということになると、総理はよ過ぎて困っているというような話で、大分違うようだが、まあそのことは別にして、総理、いま厚生大臣は所感のほどを述べましたが、景気や財政難によって振り回されるほどわが国の福祉の根は浅くない、こう考えてよろしいですか。福祉の基盤。
  220. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのようにお考えになって結構でございます。  先ほどからお話を承っておりますと、今度五十三年度予算から政府の会計を投資勘定と経常勘定、これを分けた。これは結局投資勘定といいますか、公共投資の方はこれはどんどん拡大をする。しかるに逆に福祉政策の方は二圧迫されるんじゃないか。そういうような御懸念のようでございますが、それは逆なんです。投資勘定の方は一般の景気ですね、景気によりまして、たとえば民間の投資活動が活発になるというとこれは投資勘定を、つまり公共事業をそんなにやるわけにいきません。これはクラウディングアウトというような現象が起こってきて、これはとても民間投資も公共投資もというわけにいきません。民間の経済活動が活発になりますれば公共投資こそが圧迫を受けると、こういうことになるわけなんですよ。しかるに、経常勘定の中で大事な社会保障費のごときは景気のいかんによって左右されるという、そういう問題じゃございません。これは揺るぎなく推進される。こういうことでございます。
  221. 志苫裕

    志苫裕君 いま総理、それから厚生大臣から断固として福祉の後退をさせない、財政難や景気で振り回されることはないという答弁をいただきました。  それなら厚生大臣、ささやかなことですが、五四年以降福祉年金であるとか老人医療であるとか児童手当であるとか、その種のものの所得制限を考えているようでありますが、これは後退じゃないですか。
  222. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 月に七十数万円も収入のある人の家庭のお年寄りにやる方がいいのか、一人あるいは夫婦二人きりで百三十万見当の収入があればもう福祉年金はやらないというような制度がいいのか。私どもはこの五十三年度で考えましたように、あるいは児童手当にしましても、とにかく所得の低い人の方に重点を置いて考えを進めてきているわけでございますから、全般的にそういう考え方で、もっと福祉の本当に必要とする面を大いに伸ばしていこうという考えで、所得制限の問題については検討しているわけでございますから、所得制限だけをとらえて後退だとおっしゃるのは私は少し間違いではないかと思うのでございまして、この点は切りっ放しなら悪いですけれども、所得の低い人に手厚くという考え方だけは、これは御了承いただきたい。
  223. 志苫裕

    志苫裕君 総理、違うじゃないですか。福祉は後退させないと言って、現実には後退させるじゃないですか。答弁が違うじゃないですか。
  224. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) いや、より充実をしているので後退ではありませんで、この点はもう私どもちっとも後退だと思っておりません。五十三年度予算についてごらんになっていただいてもわかりますように、より前進をしているわけでございますから後退ではないのでございます。
  225. 志苫裕

    志苫裕君 たとえば児童手当で言えば四百九十七万円の所得のあった者がもらえたのに、いいですか、今度四百八十五万円に下げるわけでしょう。そうしたら五十二年に上げてまた下げることになるわけでしょう、五十四年以降。これが何で後退じゃないんですか。前進ですか、これが。
  226. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 全体の予算を見ていただくとわかるのですが、児童手当にしても全体の予算はふえているわけでございますから、ただ支給する対象を、こちらを若干減らして低所得の人をうんとふやしている、こういうことでございますので、これを比較検討していただければ後退ではないということを御理解いただけると思います。
  227. 志苫裕

    志苫裕君 それは違いますよ。低所得の人をふやしていることにならないでしょう。四百九十七万円までもらえたのを、今度下げるわけですからもらえない人が出てくるわけですね。もらえない人は何万人出ますか。何をふやしていますか、減らしているじゃないですか。切り捨てじゃないか。
  228. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 所得制限の強化でもらえなくなる人が約十五万人です。
  229. 志苫裕

    志苫裕君 十五万人。
  230. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) はい。そうして低所得の方によけいやる分が八十四万人でございますから、これはもう決して後退ではない。むしろ喜んでいただかなきゃいかぬと思います。
  231. 志苫裕

    志苫裕君 それは違うので、別のことを言っちゃだめですよ。それはふえることはわかりました。こっちの福祉をやるために、こっちの方を削って持ってくるというやり方は、削られる方は後退じゃないですかね。
  232. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 私は、やはり福祉というのは所得の再配分も考えなければならぬわけでございます。したがって、そういう所得の高い人から見ますと、一部後退になっておることはやむを得ないので、全体としてはふえているわけですし、それから福祉のやり方もなるべく私どもとしては低所得層に厚くしたい。いろいろ根本改正を考えます場合でも、たとえば老後保障の年金問題でも私どもはいろいろ考えてみまして、今後の方向としても、ある面においては後退を考えざるを得ない面があると思うのですよ。たとえば、私はその仲間の一人でありますが、国会議員の互助年金は五十歳から支給しております。しかも、この互助年金については、御承知のとおり法律では国庫負担がありませんけれども、結果的には相当の国費を使うことになっておるわけです。そういう面について、私どもは国会議員の皆さん方の方のとは言いませんけれども、そういういい面を少し悪くして——悪くするわけじゃないですが、がまんしてもらって、そうして本当に困る老後保障の方へうんとひとつ国の財政をやるべきだと、こういう主張をした場合に、一方いい人はちょっと悪くなったから後退だ後退だとこう言われたのでは、本当の意味での私は福祉ができないと思う。
  233. 志苫裕

    志苫裕君 いい人を悪くするという、何かいい人のようなことを言っていますが、総理、結局いまのやりとりでもわかりますように、いままでもらっていた人が年が変わって収入がふえたので手当がもらえなくなったというのじゃない。同じ収入なのに基準が下げられたからもらえなくなった。逆に収入は減ったんだけれども、基準が下げられたのでやっぱりもらえなくなったという結果が出るから後退じゃないかと言っているんです。これば検討してくださいよ。
  234. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) むしろ私どもは検討してそういう政策の方向をとろうとしているわけでございますから、これはどうも再検討の余地がない。むしろ私どもは、来年もそうでございますが、高額所得のある世帯の方にある程度はがまんしていただいて低所得の方にこそ厚くしたい、これがわが自由民主党政府の考え方である、これだけは御理解いただきたい。
  235. 志苫裕

    志苫裕君 じゃ、いままでその水準にしていたのかという問題も問わなきゃならぬのですが、これはまだ一年あることですから再検討を要求しておきます。  次に、地方行財政に入りますが、今日の地方財政は大変でありますが、総理の地方財政に対する認識をひとつお伺いしたい。
  236. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 地方自治団体はじきじきに国民の地域社会における福祉を中心にして身近な諸問題を処理する、こういう地方行政を実施するための財政手段、これが地方財政ですから、これは非常に大事な問題であると、こういうふうに考えております。国の施策と相まって、私はよく車の両輪と言いまするけれども、国民の幸せを遂行する日本の社会運営の上で国と地方自治団体は車の両輪である、こういうふうに考え、その大事な仕事を推進するための地方財政につきましては、そういう意味においてこれを重視いたしております。
  237. 志苫裕

    志苫裕君 とにかく大幅な財源不足が出てまして、ここ二、三年は借金政策で何とか当面をしのいできたわけですが、短期で終わることであれば、自治体も自分の守備範囲でできるだけ努力をするというふうなことももちろん可能だし、しなきゃならぬのですが、しかしこれがなかなか長期で見通しもたたない、しかも、国のように自治体はフィスカルポリシーとでも言いますか、そういう能力はないということになりますと、今日の事態はやっぱり原則的には国の責任で措置をすべきだと、こう考えますが、どうですか。
  238. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 五十三年度におきましても、本年度に引き続きまして三兆円を超えますような財源不足が生じましたことは御承知のとおりでございます。そこで、これが補てんをいたします措置につきましても、これまた御理解が願えているとおりでありますが、いわゆるルール化を行いたい、かような考え方のもとに法案等の御審議も願うのでありますけれども、ルール化は、実質上田が借入金の二分の一を負担をいたす、かようなことでございますから、この限りにおいて国が責任を持って処置をいたすと、かようなことにも言えようかと思うのでありますから、総理のおっしゃいましたようにまさに車の両輪だと、かように理解をいたしておるところであります。
  239. 志苫裕

    志苫裕君 総理、どうですか。
  240. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま自治大臣からお答えいたしたとおりに心得ております。
  241. 志苫裕

    志苫裕君 そこで、いま自治大臣がこれからの財政対策を述べたんでありますが、私はこの間の関連質問の際に、この借入金というものを交付税の総額に取り込むというのを制度として採用するのであれば、どういう方法で借入金の額を決めるかというルールが決まっていなければ制度とは言えぬだろう。何だか知らぬが国が査定した額を毎年毎年書き込んでいくというのでは、出たとこ勝負の額の書き方ではルールでも何でもないんじゃないか。何だか知らぬが結果の二分の一をめんどう見るよというのでは片手落ちのルールじゃないかということを主張したわけですが、どうですか。
  242. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 五十三年度の財源不足の補てん状況を分析いたしますと、御承知のように一兆三千五百億円は起債で充当いたす。そこで一兆七千億円につきまして、その中にいわゆる臨時特例交付金が一千五百億円ありまして、これを差し引いた一兆五千五百億円を借り入れいたすのでありますけれども、その借入金の半分を国が見ると、かようなルール化でございます。  そこで、ただいま御指摘の点は、一兆五千五百億円の借り入れを五十三年度でいたす、このことを毎年幾ら借りるかのルール化を行った方がよろしいではないかと、かような御指摘であろうと思うのでありますけれども、私どもは、交付税特会で不足をしておりますものを今後もできるだけ臨特で見てもらいたい、国は見るべきだ、こういう考え方を持っております。そういたしますと、借入金の額がそれだけ減少いたすのであります。てすから毎年どの程度の借入金をしなければならぬかということは、不足財源を補てんいたします方法にかかってこようかと思うのであります。  そこで、大蔵大臣を前にしては少々言いにくいのでありますけれども、私は借入金を毎年いかようにするかということのルール化を行いますことは、むしろ地方財政にとりましては固定的になって流動性を欠いてくると思うのでありますから、むしろ臨特をできるだけ多く、そしてその不足をしております面を借り入れをいたす、借り入れをしたものはその半分を見なさいよ、かような取り運びの方が地方財政といたしましては弾力性を持ちよろしいのではないか、こういう考え方を持っておりますから、前回答弁いたしましたときにも、借り入れることについてのルール化はいたさない方がよろしいと考えておりますと、かように申したのでありますが、それはいまくどく申し上げましたような、さような理由があってのことであると御理解をいただきたいのであります。
  243. 志苫裕

    志苫裕君 私はそう思わないわけでありまして、交付税総額を決めるのに、まず財源不足額をどうやって計算をするかというルールは大まかに法定されているわけですよ。基準財政需要額とか基準財政収入額とか、その差のはじき方はある。しかし不足額が決まった後で、幾らを起債に回して幾らを臨特にして幾らを借入金にするかというこの操作というのは、言うならばだれも関与できない、もっぱら政府部内のことだ、国会で法律を出しておいて、まだいろんなことをわれわれがやるから、その決まった結果の半分だけをルールとして決めることを諸君決めてくれよという、こんな国会を軽視した法案があるかという気がするんですよ、いかがですか。
  244. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 毎年度の地方財政計画を策定いたすに当たりましては、国庫支出金がどの程度であるか、あるいは譲与税がどの程度であるか。また交付税特会の場合を考えてみましても、国税三税の税収がどの程度であるか、このことによって毎年変わってまいりますことは御承知のとおりてございます。  そこで、五十三年度の場合で、先ほど申しましたように一兆三千五百億円と申しますのは、公共事業のいわば地方の裏負担に相当いたすものでありますから、これを計算いたしますと一兆三千五百億円、かようなことに相なるのであります。そこで、論議の中心は不足財源の中から一兆三千五百億円を差し引いたあとの一兆七千億円をどういうぐあいに処置をするか、かようなことでございます。その中においてできるだけ臨特で補っていきたい、これが私どもの根本の考えでございますけれども、臨特でなお非常な不足がありますから、やむを得ず当分の間は借り入れざるを得ない、かような考え方に立っておるのでありまして、そこでさっきも申しましたように、私どもは借入金額をできるだけ減少する方向での努力が今後毎年要る。しかし、借り入れたものは半分は当分の間国が見なさいよと、このルールができ上がったのでありますから、私は決して御心配のようなことはないと判断をいたしているのであります。
  245. 志苫裕

    志苫裕君 ルールをつくったから制度だと言う、私はそのルールは半分でしかないじゃないかと思うのですね、計算式の半分がないじゃないか。残りの半分だけをいいか悪いか諸君判断してくれよと言って国会に出されても、いい悪いの判断はできませんよということを言いたいわけですが、そこばっかり言うておってもあれですが、私は、現行制度は地方財源を法定して約束しておるというところに一つ意味があるんだから、そのルールも法定化しておくべきだ。仮にそうできないのであれば、せめてこういう方法で借入金を決めますという、法律でなくても何かそういう公にできるルールなんかをつくっておった方がいいのじゃないかと思いますが、いかがですか。毎年わからぬでしょう、との部分を起債に振り込めるか、この部分を基準財政需要額に入れるかは全くさじかげん一つだ、率直に言って。そのことを指摘している。
  246. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 不足財源を補てんいたしますために借金、起債をいたしますことは御指摘のとおりでありまして、そして五十三年度で申しますと、その金額の査定の一兆三千五百億円は地方での単独事業債等の起債とは性格が異なりまして、国が公共事業を行い、そして地方に補助金を出しまして、地方がその事業を具体的に行ってまいりますその際に、不足をいたします財源につきましての補てんをいたす建設地方債が算定されましたものが一兆三千五百億円でございますので、したがって、そのあとを借金をいたす、かようなことでございますから、ですから借入金をどういうぐあいにやっていくかをあらかじめ次年度なり次々年度の計算をいたしますことは非常にむずかしゅうございますから、やっぱりルール化はなかなかむずかしいと、こう思わざるを得ないのでありまして、その年次その年次で大蔵省とよく話をいたしながら不足財源を完全に充足をしていきたいと、かように考えております。
  247. 志苫裕

    志苫裕君 法制局長官、交付税法の六条の三の二項で言う制度改正というのはどういうことですか。
  248. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 先ほど来、地方交付税法の六条の三の第二項を問題にしてお取り上げになっているようですが、六条の三第二項は、一定の同項に定める事態に該当する場合には交付税率の引き上げか地方行財政の制度の改正をしなさいと、こう書いておって、どちらかをすればいいわけなんで、どちらを選ぶかというのはこれは政策の方の問題ですから、私がくちばしを入れる限りではございません。政府はその交付税率の引き上げじゃなくて、行財政制度の改正という方法を選択したわけなんですが、それで地方財行政の制度の改正と申しますと、なるほどそれは将来多年にわたるルールをつくりなさいというふうにもとれます。しかし、これは通常の場合はもちろんそれでいいわけなんですけれども、今日は非常にまだ経済が流動的であって、将来に向かっての的確なる財源の見通しを立てることが困難であるという特殊な事態のもとにおいては、さしあたって単年度の財政の手当てを法律で決めるということも、先ほど申しました交付税法の六条の三第二項に違反するとまでは言う必要はないというふうに考える次第でございます。
  249. 志苫裕

    志苫裕君 あなたに聞くと大抵そうなるんだ。だから聞くのはやめましょう。  自治大臣、ことしは一兆三千五百億でしたね。去年の五十二年財政対策のときのこの財源対策債の計算の仕方とことしの分で計算の仕方に違いがありますか。
  250. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 計算の仕方は同じでございましたけれども、しかし数字の点で申しますと五十二年度は真っ二つと、かような形になりました。五十二年度の不足財源は二兆七百億円ございましたから、そこで一兆三百五十億円の起債と、それから特会での処置が一兆三百五十億円でございますから、ですから不足財源二兆七百億円の半分が起債で半分が特会の措置と、かようなことになりました。  そこで、五十三年度の場合はさっき申しましたように、起債は一兆三千五百億円で特会の措置が一兆七百億円でありますから、一兆七百億円の中には臨特が一千五百億円……
  251. 志苫裕

    志苫裕君 一兆七千億。
  252. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 失礼しました、一兆七千であります。一兆三千五百と一兆七千でございます。そこで計算の仕方は、計算というかやり方は同じことでございましたけれども、五十二年度では半々という形になりましたが、五十三年度ではそうではありませんで、一兆三千五百対一兆七千と、かような比率になった次第であります。
  253. 志苫裕

    志苫裕君 計算のやり方が同じというのがわからぬのだな。それなら五十一年のときばどうでした。
  254. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 五十一年は、不足財源を補います方法の起債によります分が一兆二千五百億円でございましたけれども、不足財源のトータルにつきましては政府委員から答弁いたします。
  255. 山本悟

    政府委員山本悟君) 五十一年度の財源不足額は二兆六千二百億でございまして、そのうち一兆二千五百億円を地方債によって充てると、残りを交付税特会の借り入れをもって充てると、かような措置をいたしたのでございます。
  256. 志苫裕

    志苫裕君 どうも私どもでは、どういう仕分けの仕方をして財源対策の起債になるのか、あるいはもう一方が借入金になるのか、この辺が表に出てないルールでありますからわからない。そこで少しくどく聞いたのでありますが、今度の制度の賛否のほどは別にして、その方法を制度化と言い交付税総額を確保するのであれば、私はやっぱり自治体の側が見て、ああこういう方法で足りない額が計算をされて取り込まれるんだなということがわかる方がより制度としては完璧であるということを主張しておきたいと思う。  財源対策のもう一つ問題は、いまいろいろやりましたこの財源対策債を今後どうするかという問題です。もともと公共事業などで起債がかさんでいる上にこれが加わるのでありますから、将来相当の重荷になるはずですが、自治大臣、ピーク時の公債費は幾らになりますか。
  257. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 現在、公営企業等をカウントいたしますと三十一兆円を若干超えていると思うのでありますけれども、しかし、今後の財政状況等を判断をいたしてみまして、どの程度の起債増があるか厳格には見積もり得ておらないのでありますから、ピーク時の算定はきわめて困難だと言わざるを得ないのでございます。
  258. 志苫裕

    志苫裕君 いま予見されるもので、ピーク時一番よけい返さなければいけない年は何年で幾らになりますか。公債費。
  259. 山本悟

    政府委員山本悟君) 公債費は、現在五十三年度まで次第にふえてまいっておりまして、五十三年度の普通会計に属します公債費の歳出といたしましては、地方財政計画上二兆二千四百億を計上いたしておりますが、それが最終的に各年度において幾らになってまいるか、しかく正確な計算はございませんが、先般御提出いたしました五十七年度までの中期試算、この数字によりますと、五十七年度におきまして、現在の五十三年二兆二千四百億が五十七年度においては四兆二千三百億になる。平均いたしまして約一九・六%ぐらい次第に伸びてまいる、かような数字になっております。
  260. 志苫裕

    志苫裕君 いずれにしても、いまは足りない額は自治省が総額を確保してくれるし、借金した分は交付税で将来めんどうを見てくれると言うしというので、自治体の当局者には率直に言ってそんなに心配はない。しかし、交付税で将来めんどうを見ると言っても、交付税総額がふえなければタコの足を食っているようなものですからね。私は少なくとも財源対策債、五十一、五十二、五十三を自治体の方が返すというのではなくて、これをたとえば期限つきの暫定交付税率の引き上げ等でそれに見合う分ぐらいはめんどうを見れないか。いかがです。
  261. 山本悟

    政府委員山本悟君) 御案内のとおり、各年度におきます地方団体側といたしまして必要とする公債費の額は、地方財政計画上必要な額は全額歳出に計上いたすわけでございます。その歳出に計上いたされましたものをもとにいたしまして、各年度におきますところの地方財源の不足額というのを算定をいたしまして、その不足額につきましては、先ほど大臣から御答弁申し上げておりますように、政府におきまして、何らかの措置によりまして全額必要財源は確保するとか、こういうようなシステムになっている次第でございますので、このためだけに特段の措置をするということは現在においては困難ではないかと思っております。
  262. 志苫裕

    志苫裕君 これはいずれやります。  次に、公共事業と地方財政の関係でいろいろと尋ねたいのですが、時間が迫っていますので、ひとつ公共下水道を例にとります。まあ国もめんどうを見るからひとつ公共下水道を大いにことしは進めようというので、五〇%も予算をふやしたと言ってせっせと説明なさる。しかし、これは大蔵大臣、最終的な国と地方との負担割合を見ると案外地方が重いのですよ。この点どう思いますか。
  263. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 公共下水道につきましては、志苫さん御承知のように、たしか四十九年でございましたか、補助率を相当上げまして、従来四割であったやつを一番低いところでも三分の二、それから高いところはもっと引き上げたことは御承知のとおりでございます。それから五十一年度に、さらにこの対象範囲をいま拡大しているわけでございます。したがいまして、私たちはいま国・地方挙げて苦しい財政事情でありますので、できるだけのことは相談してまいりますが、原則としてはやはり建設公債で充てていただきたいと、かように思っているところでございます。そのかわりに——そのかわりと申しますと何でございますが、政府の方の資金手当ては十分いたしているわけでございまして、ことし特に市町村関係が一番財政が困難でございますので、下水道等につきましては政府資金は九〇%充てております。それから単独事業につきましても五〇%、公営事業八〇%と、このようにやっておりますので、まあしばらくの間はごしんぼう願うよりほかないのじゃないだろうか、こう思っておるわけでございます。
  264. 志苫裕

    志苫裕君 いま私、にわかに補助率の問題は問題にしないんですが、建設省でしたか、公共と単独の割合はどうなっていますか。
  265. 小林幸雄

    政府委員(小林幸雄君) お答え申し上げます。  五カ年計画におきましては、補助事業六割、四割が単独事業というふうになっております。
  266. 志苫裕

    志苫裕君 来年度はどういう指示をしていまか。
  267. 小林幸雄

    政府委員(小林幸雄君) 現在は第四次の五カ年計画でございまして、来年度は三年度目でございますので、同じようなシステムでございます。
  268. 志苫裕

    志苫裕君 公共六の単独四。
  269. 小林幸雄

    政府委員(小林幸雄君) はい。
  270. 志苫裕

    志苫裕君 補助率は物によっては十分の六とかあるいは三分の二とかということなんですが、しかし、公共、単独を合わせて下水道になるわけで、その単独の分野といいますか割合が多いので、最終負担になりますと地方の方が六から七の財源を持つことになるという計算になるんですが、これは改善されませんか。
  271. 小林幸雄

    政府委員(小林幸雄君) 御指摘のとおり、国費と地方費だけの比率でまいりますと国が四六%程度という負担になります。しかしながら、補助事業の裏負担分、それから単独分、これにつきまして先ほど大蔵大臣が御答弁されましたように、それぞれ起債の充当率の相当高いものが出ておりますので、最終的に直接の自治体の一般財源の負担は六・八%程度になるという計算になっております。
  272. 志苫裕

    志苫裕君 ですから、それは起債を自治体の財源でなくこれはまるっきり別のものだというふうにするとそうなるんですが、これは将来返していかなきゃならぬので、私は起債も含めると逆に六と四ぐらいになるという指摘をしているんですが、要望としては、公共と単独の割合をもう少し公共の分野を多くするべきだということを要望しておきます。  建設大臣、公共事業の完全消化とか急ぐとかいうので責任施工ということを言われておりますが、これは一体どういうことですか。最終責任はどうなりますか。
  273. 粟屋敏信

    政府委員(粟屋敏信君) 建設省といたしましては、責任施工という言葉もございますけれども、自主的施工の推進ということを申しておるわけでございます。これはどういう意味かと申しますと、発注者の公共事業主体が請負業者に請け負わすわけでございますが、その請負業者の工事の施工に当たりまして、一般原則から申しますと常時監督員を配置して監督をするわけでございますけれども、その常時監督員を配置することをやめまして、工事の節目節目の段階におきまして中間検査を厳重にやって工事の履行を確保する、さらには記録写真等を常時請負業者に撮らしまして、その書類の提出を求めまして監督をするというようなことが第一点でございます。  第二点は、工事の施工段階におきまして発注者と業者との間に施工の問題で協議をし、発注者が指示をし、あるいは承諾を与えるというような問題がございますけれども、従来やっておりましたうちで簡素な部面につきましてはそういう指示、承諾ないしは協議を要しないこととする、こういうことを自主的施工と申しておるわけでございます。
  274. 志苫裕

    志苫裕君 現実は業者に任せっ放しじゃないですか。その点はいかがですか。
  275. 粟屋敏信

    政府委員(粟屋敏信君) 建設省の直轄工事におきましては、昭和五十二年度におきましても全発注件数の約一割につきまして自主的施工をさしておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、常時監督員の配置ということはいたしませんけれども、中間的な段階におきまして破壊検査をしたりしまして、その工事が適正に行われたかどうかを検査をいたしますし、また工事、工程に応じて記録写真等の提出を求めて施工が的確に行われているかどうかを点検をするわけでございますので、業者に任せておるということではございません。
  276. 志苫裕

    志苫裕君 そういう工事の最終責任は発注者ですね。
  277. 粟屋敏信

    政府委員(粟屋敏信君) 責任の問題でございますが、工事を発注者の指示に従って、請負契約に従って的確に施工をするという責任はあくまでも施工業者でございます。  なお、損害賠償の責任という点になりますと、これは請負契約で、引き渡し前の目的物に生じた損害でございますとか、第三者に与えた損害でございますとか、あるいは瑕疵担保の問題とかあるわけでございますけれども、これについては請負契約で明確に規定をいたしておるわけでございます。  先ほど申し上げましたように、私どもが申し上げます自主施工の推進というものは、責任の転換を行うわけではございませんで、できる限り事務の省略を図りまして、監督はなお先ほど申し上げましたような点で適正を期しますが、事業の推進を図るという趣旨のものでございます。
  278. 志苫裕

    志苫裕君 いや、現実の問題として人手もないから、しかし急いでやらなきゃいかぬから、まあおまえたちひとつ責任を持ってやってくれやということで工事をやって、言うなら、瑕疵あることで何かが起きたという場合の最終責任はどうなりますかと聞いている。
  279. 粟屋敏信

    政府委員(粟屋敏信君) 先ほど来申し上げておりますように、工事の施工の適正を確保するという意味のポイントポイントは監督をするわけでございます。で、そのできました結果、目的物に瑕疵が生じました場合におきましてはやはり施工業者の責任であると考えております。
  280. 志苫裕

    志苫裕君 会計検査院がおりましたら、ちょっとこのことについて見解を。
  281. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 会計検査院はおいでになりますか。——来てないようです。
  282. 志苫裕

    志苫裕君 電源立地の問題で質問を用意しておりましたが、カットをいたしますので、関係大臣の方は御了承ください。  次に、行政改革の問題に入ります。  事務の簡素化が強調されておるんですが、しばしば地方行政委員会等でも問題になりました市町村の起債についての大蔵省財務当局の審査といいますか、これはいまどうなってますか。
  283. 副島有年

    政府委員(副島有年君) お答えいたします。  市町村の起債にかかわります審査でございますが、これはいわゆる内蔵令——法令によりますと都道府県知事の許可ということになっております。ただし、従来とも昭和二十二年以来、大蔵省といたしましては資金運用部資金の貸付者としての立場、あるいは資金運用部資金の債権者としての立場、あるいは財政資金の総括責任者としての立場というような立場から、法令上ではなくて、事実上の協議を受けてきております。
  284. 志苫裕

    志苫裕君 法令上ではないが事実上の協議を受けておる。——自治大臣、自治法二百五十条で「当分の間」とはいえ起債の許可は自治大臣の専権であります。法令上も資格も根拠もない大蔵省当局と何で一体協議しておるんですか。
  285. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 起債の許可に当たりまして大蔵省財務当局に協議をしなければならぬという法的な根拠がないことは、法制局の答弁にもかつてあったとおりでありますし、また、大蔵省もただいまさような趣旨の答弁がございました。  そこで、起債の財源が資金運用部資金に頼ります面が非常に多かった時代には当然大蔵省がタッチいたすと、これが筋であったと思うのでございますけれども、最近では政府資金が次第に減少いたしておるのでございますから、この面でできることなら事務の簡素化の観点からいたしましても協議を少なくしたい、あるいは最終的には協議をなくしたい、かような基本の考え方で大蔵省といま話し合いを鋭意いたしておる最中であります。
  286. 志苫裕

    志苫裕君 大蔵大臣、それでいいですか。
  287. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) いま、自治大臣は自治大臣の立場でお述べになったわけでございます。自治大臣のお立場もよくわかるのでございますが、私たちは、何と申しましても郵便貯金を中心といたします財投原資、これを管理している立場にあるわけでございます。そして、現にまたたくさんお貸ししておる債権者の立場にあるわけでございまして、また、起債を含むいま大量の公共債を発行しているわけでございまして、そのほかにもいろんな社債、金融債、これの円滑な運営につきましては最終的にはわれわれが責任を持たなければならない立場であるわけでございます。  先ほどもちょっとお話し申しましたが、ことしの市町村債で申し上げますと、一般補助事業は九〇%が政府資金で充てる。それから公営事業は八〇%をやはり政府資金で充てる。それから単独事業も五〇%充てるという債権者の立場にあるわけでございます。したがいまして、それらのものを考えますと、法令上の根拠という問題はさることながら、実際問題として、やはりある程度御協議にあずからないとなかなか責任を持てないなという感じがいたします。ただし、いま自治大臣が申し述べましたように、できるだけ簡略にしていく、起債に当たってできるだけ簡略にする。それからまた、起債が決まりましたら、その政府資金の支出につきましてもできるだけ簡略にいたしまして、双方がそれぞれの責任を果たすようなことをぜひ検討してみたいと、このような考えで今後自治省と鋭意詰めてまいる所存でございます。
  288. 志苫裕

    志苫裕君 荒舩さん、お聞きになったでしょう。法律的な根拠がないんだから自治省はやめたいと言う、大蔵省はおれのなわ張りだからまだやると言うんですね。  総理、これはやっぱりあなたの出番ですよ。公共事業の、景気浮揚の妨げになるような事務の簡素化はなかなかできぬと、これは妨げになっているんですよ。こんなよけいな煩瑣な手続はなければこれほどいいことはない、いかがですか。
  289. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大蔵省の起債に関する関与は、これは法的な例はないんです。ありませんけれども、この起債がだんだん多額になる、そういうような状態の中でこれを円満にこなしていくということになりますと、やはり大蔵省の総合資金運営というような立場である程度タッチしておく必要があるんだろうと、こういうふうに思います。しかし、これが余り事務的に繁雑になりまして御迷惑になっちゃいけませんから、大蔵省の必要とする、そういう総合資金運営という立場に限定して起債関与が行われるということだろうと思います。十分両大臣に相談させます。
  290. 志苫裕

    志苫裕君 いま、十分両大臣に相談をさせますということですが、じゃああれですか、先ほど政府資金の割合が減ってきたからそろそろ大蔵省からお引き取り願おうというのと、政府資金が九割もあるからいやおれの方でやるんだと、こう言っているんですが、これは一体どっちが本当ですか、やぶの中みたいな話じゃないですか。政府資金は何割ですか、市町村債のうち。
  291. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 市町村債の政府資金は、ことに五十三年度におきましてはパーセンテ−ジが非常に高まってきておりまして、最終的なパーセンテージはしかと承知をしておりませんけれども、少なくも町村分に関しましてはほとんどが政府資金と、かように考えておるところでございます。  そこで、大蔵大臣とよく相談いたさなければなりませんのは、いま大蔵大臣が話をされましたように、現在でも、ことに規模の小さい地方団体につきましては政府資金が相当量あるのでございますのと、かつまた過去において相当量の政府資金が地方団体に出ておるのでありますから、かような立場を無視するわけにもまいらないのであります。したがって、両省がよく話し合いをいたしまして、事務の簡素化に努めていかなければならぬと、かように考えておるのであります。
  292. 志苫裕

    志苫裕君 あなたがそうなったんじゃだめですよ。もう少し政府委員でいいですが、正確にどれくらいありますか、市町村の政府資金割合。
  293. 副島有年

    政府委員(副島有年君) お答えいたします。  ただいま、五十三年度の地方債計画はいま作業中でございますので、推計の数字を申し上げますと、一般公共事業——公営住宅、義務教育、下水道等の公共事業につきましては、政府資金及び公営公庫資金の比率が約九割ちょっと超える数字になっております。
  294. 志苫裕

    志苫裕君 市町村でね。
  295. 副島有年

    政府委員(副島有年君) 市町村で。単独事業につきましてはおおむね五〇%程度でございます。それから公営企業その他につきましては約八〇%以上でございます。  それから、先ほど大臣が御答弁されたように財源対策債、これも内訳に入っておりますけれども、財源対策債につきましては一〇〇%政府資金で充当するということになっております。
  296. 志苫裕

    志苫裕君 トータルで幾らですか。
  297. 山本悟

    政府委員山本悟君) 明年度の地方債計画上の政府資金の割合は、総体におきましては約四〇%弱でございます。ただし……
  298. 志苫裕

    志苫裕君 市町村分だよ。
  299. 山本悟

    政府委員山本悟君) 市町村分と県分というような分け方はこれからの作業でございまして、現在、そういう細分化されて市町村分にどれだけ充てるというようなことは決定している段階でございませんので、それば御容赦願いたいと思います。
  300. 志苫裕

    志苫裕君 いまトータルでは政府資金四〇%だと、市町村分はこれからということですが、いまの数字もありましたが、これはひとつ大蔵大臣、政府資金以外のものはやらないんですか。
  301. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 先ほどから申し上げておりますように、市町村債にしろ、あるいは地方債にしろ、政府資金あるいは公募、さらに縁故債とあるわけでございます。いずれも国の全体の資金で賄うわけでございます。政府資金につきましてはまだ——市町村についての推計は先ほど申し上げました。また自治省の財政局長から、全体としては四〇%ぐらいであろうということも言ったわけです。市町村債の方の推計はいま大蔵省の方でいたしておるのでございますが、九〇%、八〇%、五〇%ぐらいになるであろう、こういうことを言っているわけです。  そこで、その縁故債、これが実は一番大きいわけでございます。これの消化が大変な話でございますので、当然のことでございますけれども、大蔵省といたしましてもその消化に責任があるわけでございます。ですから、やはり金融機関の方によく連絡いたしまして、その膨大な縁故債の消化に遺憾なきを期しているわけでございます。その問題は考えてみますと、要するに国の資金をどう使うかという話でございますので、だから、あの方はノータッチでこの分はやってくれというわけにはいかぬのでございまして、やはり全体の資金の効率的な運用、特に地方債の円滑な消化ということを全体考えますと、やはりある程度御協議にあずかる必要がある。ただし、むだなことはやめた方がいいに決まっておりますから、できるだけ簡素化の方向でまいりたい、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  302. 志苫裕

    志苫裕君 縁故債も御協議にあずかりたいということですが、これは資金運用部特別会計の職員がやっているんですね。
  303. 副島有年

    政府委員(副島有年君) お答えいたします。  そのとおりでございます。
  304. 志苫裕

    志苫裕君 資金運用部特別会計の職員が縁故債まで御協議にあずかる、手をつけるというのは越権じゃないですか。
  305. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) やはり起債でございますから、全体の公共債につきましては最終的に資金配分をどうするかという問題があるわけでございます。結局は銀行とか金融機関、そういったものにお願いしなくちゃならぬわけでございますから、そこで起債額を決定いたしましてそれぞれ金融機関に適当なルートを通じて消化をお願いする、これは当然のことであろうと思うのでございます。
  306. 志苫裕

    志苫裕君 そうですか。特別会計の職員がほかの仕事をするんですか。できますか、そういうことが。
  307. 副島有年

    政府委員(副島有年君) 特別会計の職員でございましても、特別会計の事業と密接不可分な事業をすることは許されているというふうに解しております。
  308. 志苫裕

    志苫裕君 荒舩長官、とにかく必死に仕事を離さないんだね。これは簡素化できるんですよ。簡素化するとおっしゃっていますから御協議もいただきますが、どうですか。あなたの出番だ、行管長官
  309. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 御趣旨の点はよくわかっておりますので、先ほどから申しましたように、極力簡素化をいたしまして、そして自治省あるいは地方団体の御要望にもぜひおこたえ申し上げたい、かように思っております。
  310. 志苫裕

    志苫裕君 長官、所感はどうですか。
  311. 荒舩清十郎

    国務大臣荒舩清十郎君) 大変むずかしいことでございまして……
  312. 志苫裕

    志苫裕君 ちっともむずかしくないんですよ。
  313. 荒舩清十郎

    国務大臣荒舩清十郎君) むずかしいです。さっき総理が答弁されたように、大蔵省と自治省とよく相談されてやるべき事柄であると思います。行政管理庁といたしましては、おっしゃるとおり、なるべくこういうものを簡素化できるようにしたいと考えております。
  314. 志苫裕

    志苫裕君 総理が一月二十六日の本会議でも、地方債事務の促進と、こう答えておるし、公共事業推進本部でも起債決定を迅速に行うと、こう書類に書いてある。それらの趣旨から言っても、ただ法律論争の問題だけでなくても、やめるものはやめる、簡素化するものは簡素化するということで、この次の機会のときには、決まりがついていましたという形になるように要望しておきます。  次に、これまた地方事務官制度に関する改革の方針もお伺いします。
  315. 荒舩清十郎

    国務大臣荒舩清十郎君) 地方事務官制度は長い間の懸案でございまして、大変困難な事情もございます。行政改革をやるについても、地方の問題、中央の問題、なかなかいろいろなむずかしい問題がありますが、昨年末の閣議で、まず運輸省の陸運局関係の地方事務官を根本的に解決しよう、そうして厚生省及び労働省の地方事務官も二年間のうちにはこれを廃止する、こういう方針を決定したわけでございます。この閣議の線に沿いまして、まず運輸省の陸運関係の取り扱いを、ただいま運輸省と自治省と行政管理庁と協議をいたしまして、可及的速やか、まず二、三日のうちにこの問題を解決することにいたしました。どうかひとつ、法律案を出しますから御協力をお願いいたします。
  316. 志苫裕

    志苫裕君 五十一年三月三十一日までに決まりをつけようという国会が決めた日限よりおくれたけれども、そのことはあえて問いません。しかし総理、これは約束違いですよ。細かいいきさつはもう触れませんが、身分は地方公務員にするということじゃなかったんですか。過去の記録をずっといまここで読み上げる時間がもうないけれども、四十八年七月四日の参議院本会議で、江崎自治大臣は、地方事務官は地方公務員にするということで合意をしている、福田行管長官は、その方向で努力をしているということを答弁をしておる。そのほか、国会の決議にこたえた云々は別にしますが、これは違う。運輸省問題について明らかに方向が違うし、労働と厚生のことは、方向はありませんけれども、これはやっぱり約束違いです。この点については自治大臣と総理大臣からお答え願って、私はその国家公務員にするという方針は撤回をされるべきだと思う。いかがです。
  317. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 衆参両院の地方行政委員会で何回も決議をなすっていらっしゃることもよく承知をいたしておりますし、またその決議の内容につきましても、いま志苫委員が御指摘になりましたように、地方事務官を廃止いたします際の方向といたしましては地方団体の職員にすべきだ、かような決議の内容であることもよく承知をいたしております。ただ、この実現がなかなか困難でありますからこそ、今日まで、当分の間と言いながら三十二年を経過いたしておる、かようなことでございます。そこで、最近では知事会におきましても若干考え方が変わりまして、いま陸運事務所で所掌いたしております仕事の中では都道府県にはなじまないものがあるのではないか、かような判断も出つつあるようなことでございますけれども、しかし、基本的には両院の委員会で議決をされておりますことを尊重し、これを踏まえながら関係省庁と緊密な連携をとってまいりたいと考えているところであります。
  318. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 地方事務官問題につきましては、御指摘のように、衆参両院の地方行政委員会におきまして、これを速やかに廃止せよ、廃止するときには地方公務員に統合せよ、こういうような御意向であることは私もよく承知しております。しかし、政府で関係方面ずうっと当たっておりますが、この両院の委員会方式ですね、これじゃなかなか妥結というか、いい結論が出てこないんです。それで、やむを得ずその御方針のとおりにいけるかどうかこれはわからぬというような状態ではございまするけれども、とにかく、それにいたしましても事務官制度はもう終戦直後からの大問題でございます。まあこの辺で区切りをつけた方がよかろうということで、両院の御意向に沿わない面も一部出てくる、こういうふうには思いまするけれども、また政府の案が決まりましたならば篤と御検討を願いたいと、このように考えております。
  319. 志苫裕

    志苫裕君 両院の決議もさることながら、政府自身、あなたが行管長官のときにも地方公務員にするという趣旨については了解されているわけです。いまあなたのお答えですと、一部沿わないことが出るかもしらぬが、大筋その方向で努力をするということですか。
  320. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私が申し上げましたのは、廃止、これはやる、こういうことですね。もっとも三省関係するんですが、さしあたり廃止にいたしますのは運輸省関係分だけです。  それから、地方公務員に統合するかどうかと、この点につきましては、これは衆参両院の御意向どおりに全部が全部動くというわけにはいかないだろう、こういうふうに申し上げるんで、全体として一部御意向に沿わないと、こういうことを申し上げているわけです。
  321. 志苫裕

    志苫裕君 全体として一部意向に沿わないかもしれないという答弁ですね。そればできれば全部が沿うように、これは努力をせっかく要望しておきます。  最後に、雪について少しお伺いします。  総理、この陽気だというのにまだ数メートルの雪の中で暮らしておる国民がいるんですよ。けさほど新潟県の六日町というところで観測点の積雪を聞きましたら、少ないところで百八十、多いところで二百九十、平均して二百四十センチですよ。二百四十センチの雪を体の回りに置いて——この地域は根雪期間が百三十五日ですからね。積雪量が一万六千センチデー、二メートル以上の雪が回りにある期間が三カ月以上ある。こういう地帯が——実はそこに二、三百万人の国民がまだ住んでいるわけです。こういう事実をまず理解をいただいて、以下若干の質疑をいたしますが、昔は雪に囲まれて、忍従——耐えるとかあるいは祖先伝来の知恵とか、そういうもので暮らしておったのですが、最近はなかなかそうはいかない、雪国だけに通用する暮らし方なんというのはないわけでありますから。そういうことで大きく変貌しているわけでありますが、したがって、雪対策というものも年々歳々新しい観点で新しい取り組みをしなきゃならぬという時代に入っていると思うのですが、まず総理の所感を聞きたい。
  322. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私も雪の新潟の隣の上州ですから、雪国のことはよく承知しております。お話しのとおり、雪の問題についての関心は、以前はさほどでもなかったんですが、最近は相当これが深刻に検討されるようになりました。いま豪雪地帯対策特別措置法、これがあることは御承知のとおりでございまするが、そういう法制等を踏まえまして、豪雪地域の福祉の向上につきましては格段の配慮をしてまいりたいと、このように考えております。
  323. 志苫裕

    志苫裕君 概して公共施設の雪対策は進んでいますが、直接個人の暮らしにかかわるものがおくれている。どうですか、直接個人の暮らしにかかわるものでどういう対策がありますか、関係者は答えてください。
  324. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 大雪が降りますと家の傷みが非常に早いのでございますから、家屋の固定資産税につきまして特別の処置をとっておりますし、また自動車も三百六十五日走るわけではないのでございますから、自動車税につきましても特別の処置をとっておるところでございます。かつまた、除雪のために必要といたします電力につきまして、電気税の点で特別の処置をとっておりまするし、かつまた住民税につきましてもこれまた減税措置をとっておる、かような処置をいたしておるのであります。かような税制面からもアプローチをいたしまして、個人の負担が軽くなりますように対処いたしているところであります。
  325. 磯邊律男

    政府委員磯邊律男君) 国税関係で申しますと、いわゆる雪害についての税制というのは大きく分けて三つあろうかと思います。  一つは、所得税法におきますところの雑損控除の制度でございます。これは御承知のように、居住の用に供しておる家屋または財産につきまして、豪雪等によりましての損害を受けました場合には、その被災者の年間の総所得金額、退職所得金額、山林所得金額、これの合計額の十分の一を超えた場合に、その超えた額について、これを雑損といたしまして年分の所得から控除いたしまして税額の計算をする、そういうことになっておるわけでございます。もちろん、自営業者であるとかあるいは農業を営んでいる人等につきましては、その店舗あるいは倉庫等の除雪のための費用とかというものは、これは当然に所得税法の必要経費として控除されるということになっております。ただ、個人の場合に、単に豪雪によって被害を受けたその損害額だけではございませんで、これは先生御承知のように、昭和四十八年の秋田豪雪であるとか、あるいは新潟の豪雪、それからさらにまた五十二年における異常寒波等によりまして雪害が非常に大きいというところから、その家屋の損壊を防ぐための除雪の費用、それからまた家の周囲にある雪を除雪するための費用、こういった費用を雑損失上における損失というふうに認めて、控除してよろしい、さらにまた、こういって排除いたしました雪を捨てに行くために直接要した費用、これもまたその雑損失の損失の中に加えてその所得の計算をしていいということにしたわけでございます。  それからまた、災害減免法によりましては、これは所得が年間四百万円以下の納税者につきましては、家屋もしくはその資産に二分の一以上の損失を受けました場合、これはそれぞれの所得によりまして税額を全部免除する、あるいは二分の一、四分の一の免除というふうな制度がとられているわけでございます。  それからもう一つ、国税通則法によります徴収の猶予の制度でありますけれども、これは災害等によって資産の損失が大きかった場合、あるいはそのために一時の納税が困難であるといったような場合には、これは納税者の申請によりまして原則として一年間、場合によっては、特別の理由がある場合にはさらに一年間、最高二年まででございますけれども国税の納税を猶予し、その間延滞税をすべて免除するという制度がとられている、そういったところが国税の概要でございます。
  326. 志苫裕

    志苫裕君 大蔵大臣、あなたの選挙区のことなんですよ。どうですか、強い要望のある豪雪控除制度の拡大、いかがですか。
  327. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) そういう御要望がありますので、いま国税庁長官が言いましたように、従来は雪おろしであるとかあるいは排雪だとか、さらにそれを川に捨てに行くというやつは、実は雑損控除の対象にしていなかったわけでございますが、これを今年度から雑損の対象にいたしますということでございます。約一年間検討いたしまして、雑損の対象にするということでございます。
  328. 志苫裕

    志苫裕君 それはそうだけれども、その所得の十分の一というのじゃだめですよ。もう少し改善考えてください。
  329. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 志苫君、時間が来ました。
  330. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) この雑損控除の制度は、実はシャウプ税制以来ずっと引き続いているわけでございます。問題は、豪雪による災害のみならず、すべての災害、盗難、横領、そういったものが全部雑損の問題になっているわけでございます。したがいまして、雪国でございますけれども、私は全体をよく考えましてこれらの点を慎重に考慮したいと、かように思っております。
  331. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 志苫君、時間が来ておりますから簡単に願います。
  332. 志苫裕

    志苫裕君 わかりました。  人事院、自治大臣、労働大臣、除雪休暇制度は考えませんか。
  333. 藤井貞夫

    政府委員藤井貞夫君) 現在国家公務員につきましては、御承知のように特別休暇の制度がございます。ただ、この特別休暇の制度自体は、そのたてまえが投票その他の公民権の行使でありますとか、非常な異常事態に基づく交通遮断その他の場合であるとか、あるいは社会的慣例に基づく親類縁者の忌引の問題とか、そういうふうなことで非常に厳重に範囲が決められておるわけでございます。そういう意味からは、いまお話しにございました除雪休暇と申すのが若干特別休暇の制度とは趣旨が違うので、なじまない面もあり得るかという点がございます。したがって、本筋といたしましては、一応やはり年次休暇をこれに充てて配分をしていくというのが一番筋道ではないかという感じがいたしております。ただ、私たちといたしましては、休暇全体の問題というのが相当長い間経過をしてきて今日に来ておりますので、現在いろいろな角度から検討しております。先生も恐らく御承知の結婚休暇その他の問題についても要望が出ております。いまの除雪の問題についても要望がありますことは十分私といたしましても承知をいたしておりますので、そういう点を踏まえて、いろいろ問題点がございますけれども、ひとつ今後とも検討を加えてまいりたいと、かように考えております。
  334. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 地方公務員は休暇につきまして国家公務員と権衡を失してはならないたてまえになっておるのでありますから、国家公務員の動向等を踏まえまして対処してまいりたいと、かように考える次第でございます。
  335. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 労働時間の短縮あるいは年次有給休暇、週休二日制、こういった観点から、労働省としてはやはり労働福祉の向上からいま御発言の問題も非常に大切な問題だと思います。ただ、やはり地域のそれぞれの特殊性といいますか、そういったことで、この問題はやはり新潟地域という特殊性を考えますと、私は年次有給休暇の消化という面、こういう面と結びつけて前進することを期待したい。ただ問題は労働条件との関係もございますから、労使の話し合いという、こういったことを前提としながら、これが前進を図ることによって雪国の労働者の福祉の向上を期待したいと、このように考えております。
  336. 志苫裕

    志苫裕君 国鉄総裁、おいでいただいてまことに恐縮でありますが、一言だけ、冬季ダイヤの改善を求めたいのですが、いかがですか。
  337. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 一昨年の暮れから昨年の春にかけまして異常豪雪がございました体験にかんがみまして、本当は一部列車の間引きあるいは編成長を短くするというふうなことで対処いたしたわけでございます。結果といたしまして大変混雑をした列車が出まして、乗客の皆さんに御迷惑をおかけをいたしました。しかし反面、昨年のようにダイヤ全体が乱れるということは避けることができたわけでございまして、この辺の調整をどうしたらよろしいか。混乱を避けようとしますと混雑が起こりますし、混雑を避けようとしますと今度はダイヤの方が乱れるというので困っておるわけでございますけれども、試行錯誤的にいろいろ工夫をして、御迷惑を少しでも減少するように努めたいと考えております。
  338. 志苫裕

    志苫裕君 いずれまたやります。どうもありがとうございました。(拍手)
  339. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で志苫君の総括質疑は終了いたしました。     —————————————
  340. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、上田耕一郎君の総括質疑を行います。上田君。
  341. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私は、信濃川河川敷問題と、安保、核持ち込み問題について質問したいと思います。  河川敷問題は、田中金脈の最大の問題の一つで、国会でずっと問題になってまいりました。世論の大きな注目を受けております。これまで私は建設委員会、決算委員会などで質問してまいりましたが、首相に質問する機会がございませんでしたので、まず最初に取り上げたいと思います。  この問題で参議院の決算委員会並びに参議院の本会議で内閣に対する警告決議が行われておりますけれども、首相は御存じでしょうか。
  342. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それは私は承知しておりませんです。
  343. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうも、首相が承知していないと、ここにやっぱり姿勢に国会の決議そのものに対する非常な軽視があると思うのですね。建設大臣、御存じですか。
  344. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 就任後、その経緯は承りました。
  345. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 中身を言ってください。
  346. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) いま手元に資料がございません。
  347. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 こういう状況なんですね。河川局長、言ってください。
  348. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) お答えいたします。  警告決議は、いわゆる処分に当たりまして妥当な処置をとるように警告決議するという内容でございます。
  349. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 総理大臣も建設大臣も担当の河川局長もろくに知らない。五十年六月六日、参議院決算委員会警告決議、同じ日に参議院本会議でも採択です。「資産形成の過程において、信濃川河川敷等をめぐって、疑いをもたれているような行為については、各行政機関において、十分調査を行うとともに、」云々「その事後処理に、遺漏のないよう、妥当な行政措置を講ずべきである。」と、こういうのが国会決議なんですよ。何も知らないじゃないですか。そういうことでいいかげんな処分をしている。三木内閣のこの問題についての基本方針を、福田首相、福田内閣は受け継ぎますか。
  350. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまのお尋ねの国会の決議ですね、決議自体は承知しておりませんけれども、国会の御意向はそういうところにあったということはよく承知しております。  それから三木内閣の本件処理に対する意見を福田内閣は受け継ぐかということでございますが、恐らく三木内閣の本件処理の基本方針は国民の納得のいく処理をするということであったと、こう、いうふうに思いますから、そのとおりに考えております。
  351. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それでは廃川敷処分のやり方について三木内閣の方針を首相は御存じですか。
  352. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) お答えいたします。  廃川敷のやり方でございますけれども、河川法に基づきまして河川区域内の土地が河川区域でなくなった場合にいわゆる廃川処分をする。と申しますのは、河川区域内の土地は、たとえ民有地であろうとも、建物を建てていけないとかいろいろな制限があるわけでございます。それからその中にまたもう一つ九条地というものがあるわけでございます。九条地は、旧河川法時代に国がただで旧地主から取り上げた土地でございます。   〔委員長退席、理事内藤誉三郎君着席〕 したがいまして、それが廃川処分といいますか河川区域でなくなった場合には旧地主に下付すべしというふうに定められておるわけでございます。そういうことから、今回信濃川の蓮潟の地域が河川区域でなくなったということで昨年の十一月一日に廃川処分を行ったという次第でございます。
  353. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 五十年六月六日の参議院決算委員会で、三木総理大臣は、廃川敷処分については建設大臣限りでなしに私との協議を建設大臣に指示する考えだと。つまり、総理大臣と建設大臣が協議してやるということなんです。福田首相はなぜ昨年十一月一日に長谷川建設大臣が独断で処分することを許したんですか。——いや、あなたに聞いているのじゃない。総理大臣に聞いているんですよ。
  354. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 事務的な問題についてまず御説明いたします……
  355. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、事務的な問題じゃない。だめだめ、そんなの。あなたを要求していないでしょう、私は。引っ込んでください。総理大臣に聞いているんだから。
  356. 内藤誉三郎

    ○理事(内藤誉三郎君) 先に河川局長がやって、後から総理にも……。C政府委員(栂野康行君) 先ほどお話ししましたように、河川法に基づきまして廃川処分を行ったわけでございます。それで、廃川処分を行った背景といいますかそれについて御説明いたしたいと思います。  昨年、長岡市長から、当地域を早急に廃川処分してほしいというふうな要請があったわけでございます。そのときに、室町産業と長岡市長との間の覚書並びに長岡市の土地利用計画書を添えて提出されたわけでございます。その覚書によりますと、この土地全体が長岡市発展のために市民全体の利益を優先して使われるという精神がうたわれております。それからその二分の一の土地につきましては長岡市が実費で譲り受けると。と申しますのは、室町産業が買いました土地代金、それから支払った補償費、それにその後の利子といいますか、そういうものによりまして実費で長岡市が譲り受けると。それで残りました二分の一の土地につきましては、室町産業がその利用計画を立てる場合に、公益性の強いものを主体にして利用すると。しかも、その場合に、長岡市長に協議を行うというふうにその覚書に決められておるわけでございます。しかも、その市長の要請に当たりましては、市議会の各派協議会の了承、さらに町内会長会議——約四百人集まった会議でございますけれども、その圧倒的な支持を得たと。そういうことから、適正な土地の利用も図れるし、国民の納得も得られるということから廃川処分に至ったわけでございます。しかも、その廃川処分を行う場合におきましては、室町産業が長岡市に土地利用計画につきまして事前に協議する場合には事前に建設省に協議するというふうにしまして、その上で廃川処分を行ったわけでございます。  そういうふうないろいろな環境の変化といいますか背景があるわけでございます。
  357. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 昨年の暮れですか、暮れも迫ったころですね、つまり内閣改造が迫ったころでありましたか、当時の長谷川建設大臣から、廃川処分を実行いたしましたという報告を受けました。ちなみに、そのとき、これは御報告はいたしませんけれども、これはもう廃川処分処理の環境が全部整いましてきわめて公明正大に処理が行われたと、こういうふうに思いますと、こういう付言がありましたことを申し添えておきます。
  358. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 公明正大なら、それだからこそ総理大臣と協議してやればよかったんじゃないですか。なぜ建設大臣は——一まああなたは後任ですけれども、そういう総理大臣と協議なしにやったんですか。
  359. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 先ほど担当の局長から御説明を申し上げた経緯を私は聞きました。そして、その総理との協議ということも記録の上で私は承知しておりまするが、前大臣がとられましたのは、その後のただいま御説明のあった経緯などにかんがみまして、情勢が非常に変わっておると、また、長谷川大臣として専決してもいいという心境になられてやられたものと思うのであります。私も私なりに経緯をたどってみまして、上田委員が御指摘のような特別な障害と申しましょうか、長谷川大臣が御批判を受けるような措置にはなっておらないという認識であります。
  360. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 協議してやった方がよかったと首相はお思いになりませんか。
  361. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 当時報告を受けました際には、きわめてよく条件も整って、そうして公明正大の処置であります、あらかじめ承認を受けるほどのことではなかったと、こういうようなことで、当時はそう思いましたけれども、いま何かどこかの速記録をお読みになりましたね。それによりますと、三木総理大臣が私は協議を受けるというようなことを申しておりました由でございますので、ああそれもそういうこともあったのかなあと、それなら協議をしてもらってもよかったなあというような感じもしますけれども、当時私は別に協議を受けなければならぬというふうな考えは持ちませんでした。
  362. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは非常に国会無視なんですね。国会での警告決議も総理大臣も建設大臣も河川局長さえ余りよく覚えていないと、それから国会で首相が答えたことも伝えられていないということでしょう。  次にこの処理方針の中身ですけれども、これも首相にお伺いしてもどうせ御存じないでしょうから、私は自分で読み上げます。三木さんは、五十年十月三十日の参議院の予算委員会、この席で、こう答えている。室町産業に暴利を余り得させない、これが第一点、第二は売り渡し価格は原価プラス金利程度にしたい、三つ目が公共優先、大体この三原則で処理する、これなら国民の納得いくやり方だと思うと、そう言われた。この中身については賛成ですか。
  363. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大体そんなような方針で処理されたのじゃないかというふうに私は受け取っております。
  364. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私の質問で園田官房長官が答えられて建設省から調査団が出ました、できれば全面公共利用したいということで。その調査結果を簡単に述べてください。
  365. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) お答えいたします。  五十二年の十一月十四日及び十五日の両日にわたりまして当時の河川局次長であります丸山良仁が現地調査を行ったわけでございます。  その調査項目としましては、室町産業株式会社が利用されるとされております土地につきましての新潟県及び長岡市の利用に関する意向調査が主でございます。  その調査結果でございますけれども、まず、長岡市の意向を申し上げたいと思います。  長岡市としましては、長岡市が利用する土地につきましては、県立普通高校、美術館等、あるいは新潟県が建設する施設の敷地及び長岡赤十字病院など公益施設の敷地も含まれておると。したがいまして、長岡市全体の公共公益施設の配置のバランスを考えてみますと、この地域のみに公共公益施設をこれ以上集中することは望ましくないと。したがいまして、長岡市が利用するとされておる土地で十分であるという現地調査の結果でございます。  なお国の施設につきましては、この地域に誘致すべき適当なものはないと。しかしながら、せっかく国からのお尋ねもあるので、十分検討の上速やかに回答したいと、さらに回答したいというのが現地調査でございます。  一方、新潟県の意向としましては、当面この土地を県の施設の敷地として利用する計画はないと。しかし、なお検討の上速やかに県の意向を申し上げたいという現地調査の結果でございます。  これに基づきまして、その後長岡市並びに新潟県から返事が参ったわけでございます。  まず、長岡市の小林市長から昨年の十一月二十九日に返事が参ったわけでございます。これによりますと、まず第一点としまして、今後十年にわたる長期的な展望に立って必要な公益施設の設置を検討しても、今回の廃川処分によって長岡市が利用することとなる用地はこれを十分充足し得る見通しであることということでございます。  それから第二点としましては、残りの南半分でございます、室町産業株式会社が扱うとされておる土地でございます。これを長岡市が仮に取得するとすれば、土地の取得あるいは土地の造成その他に非常な莫大な経費が要ると。したがって、そういう財政上の余裕がない。先行取得しておく財政的なゆとりがないというのが第二点でございます。  第三点としましては、公益施設配置というものは全市的なバランスを考えなければならないと。そういう立場から見ますと、この場所だけに公共施設が集中するということは好ましくないのみならず、市民感情からしても合意を得がたいことということで、これにつきまして長岡市としての再度の回答におきましても、市としては利用する意思はないということでございます。  それから次に新潟県からの回答でございますけれども、これも同じく昨年の十二月二日に知事から大臣あてにあったわけでございます。これにつきましては主々検討したけれども、当県として利用する計画はありませんという回答を得ております。  以上でございます。
  366. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 建設省の調査で、室町産業がこの七十五ヘクタールを買ったときの買収価格、これは幾らでしょうか。
  367. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) お答えいたします。  全部で四億一千二百万円でございまして、そのうち、土地代金が一億百万でございます。残りは補償費あるいは事務費ということでございます。
  368. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 つまり、室町産業に半分移ったわけですけれども、半分ですから大体二億円ぐらいになりますね。その土地の原価は約二億円です。  国土庁にお伺いします。  この土地の付近の公示地価はいまどのぐらいになっているんですか。
  369. 山岡一男

    政府委員(山岡一男君) いまお話しのございました蓮潟地区にはずばりの標準値はございませんが、最寄りでは、六、七百メートル離れましたところに調整区域内の宅地、長岡の雨池町字木ノ下というところがございますが、これは一平方メートル六千七百円。それからちょっと北の方で二キロほど離れておりますが、上野町字大割というところが平方メートル当たり一万二千六百円、これは市街化区域内の宅地でございます。
  370. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これで計算しますと、最初のところが二十三億円、その次が四十四億円。   〔理事内藤誉三郎君退席、委員長着席〕 それからいま言いいませんでしたけれども、決算委員会でかつて問題になった水道町三丁目、これは対岸のところですけれども、これが一平方メートル当たり四万五千三百円、そうすると、三十五ヘクタールで百五十八億円です。大体、宅地にしますと、あの室町産業の手に入る約三十五ヘクタールは約百億円ぐらいになると思うのですね。原価で約二億円で買った土地が百億円で室町産業のものになるわけであります。これは、首相、暴利だと思いませんか。
  371. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) お示しの計算で二億と百億とは大変な差があるということになりまするが、しかし、その百億というものは御推定であって、その処分については、先ほどから御説明を申し上げておるような公益性のあるように利用せよとか、あるいはそれをするについては市長の承諾を得るようにとか、市長と協議してやれとか、また、その場合に建設省と相談せいとかということになっておりますから、単純に百億と二億との比較でどうだというわけには私はいかないと思うのです。
  372. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 とにかく財産で室町産業に転がり込んでいるんですから。これだけじゃない。河川局長、あの南半分のふもとに新しい橋ができますね。いつごろできますか。
  373. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) それにつきましては、現在計画中でございます。
  374. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 北半分を長岡市に渡してここにいろいろな公共施設が建つわけですよ。開発されてすばらしい土地になる。南半分にまた橋が大手大橋ができる。恐らく時価二百億になるだろうと言われている。私は去年調査に行きました。県の鶴田総務部長に会いましたところ、とにかくそれはいい場所になりますというわけです。半分長岡に渡した渡したと言いながら、全部開発してもらって開発利益が転がり込むんですよ。約二億円で買った土地が橋が建って開発されると二百億円の財産がとにかくできる。暴利と思いませんか。
  375. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 先ほどからたびたび申し上げておりますように、覚書によりまして、室町産業が利用されるとされておる土地につきましても、公益性の強いものを主体に利用すると。しかも、その利用計画を立てる場合には長岡市長の事前の協議が要るというふうになっておりまして、しかも、建設省としましても、長岡市長が同意を与える場合には事前に建設省に協議をするというふうに、はっきり覚書あるいは建設省との間の問題におきましてもうたわれておりまして、これはやはり適正な土地の利用が図れるというふうに考えます。
  376. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 利用にいつも逃げるのですけれども、新聞報道ではバスターミナルあるいは越後交通の本社が建つと言われているのですが、これは公共性のあるものと認めるのですか。これはあなたは承認するつもりですか。
  377. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) いま先生おっしゃいましたバスターミナルの問題でございますけれども、現在長岡市に室町産業から協議されていないということでございますので、現在としましては具体的な見解を述べる段階ではないというふうに考えます。
  378. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ゴルフ場はどうですか。公益性があると認めますか。
  379. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) そういう話は全然聞いておりません。
  380. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 結局、一私企業のものですから、何に使おうとそれほど公共的なものにならぬですよ。室町産業が会社ごと身売りしたり、土地転がしでこの土地が転売された場合、この覚書はどうなりますか。
  381. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 先ほどからたびたび申し上げておりますように、覚書によりまして市長の同意を得て当該土地を公共性の強いものに利用されるということにされておりますので、これに反する内容での転売ということはないものというふうに考えます。
  382. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ないものと考えるとどこに禁止されていますか。
  383. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 転売というものは土地利用計画の一環であるというふうに私個人は解釈いたします。
  384. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 個人の解釈じゃだめですよ。どこにこういう転売だとか会社ごとの身売りだとか——田中ファミリーはこれは常套手段なんですから、それがないという保証はどこにありますか。
  385. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) その点、私、長岡市長にも確かめたわけでございますけれども、この利用計画の中に入っておるということでございます。
  386. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 万一そういう場合があったとき、建設省は断固たる措置をとりますか。
  387. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) それは、その使用の内容によるのじゃなかろうかと思います。
  388. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、内容じゃなくて、転売したり転がしをやっていても、利用方法によって認めることもあり得るわけですか。
  389. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 仮に転売しましても、その土地が公共性の強いものに使われるということであれば、やはり覚書の精神にのっとっておるということでございます。
  390. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 大問題ですよ。転売したら、時価いま百億ぐらいで、将来橋が建ったり公共施設が建ったら二百億になるんですよ。転売したら室町産業に何百億の金が入るじゃないですかロッキードで五億ですよ。百億でロッキードの二十倍ですよ。あなた、それでも転売して公共利用されれば認めるつもりですか。
  391. 栂野康行

    政府委員(栂野康行君) 転売した場合に、どの程度の面積を転売するかわかりませんけれども、税金がかかるのが一つと、それともう一つ基本的には、この土地はやはり個人の土地であると、私人の土地であるということでございます。
  392. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 首相、三木首相は暴利を得させないと言ったんですよ。原価プラス金利ぐらいで売らせると。百億も二百億も時価で売らしても明らかに暴利じゃないですか。首相の国会答弁と違うじゃないですか。しかし転売した先で公共利用がうまくいけばこれを認めようという、どう思いますか、こういう建設省の担当の河川局長態度、許しますか。
  393. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) いろいろこう仮定を置かれて御懸念をされておるわけでございますが、私は、あくまでも市長と室町産業との間の覚書というものは天下注目の中で行われておることでありまするから、この趣旨というものが当然生かされるものであると思います。  それからまた、先ほどから巨利をむさぼるのではないかという御心配でありまするが、それはそれでいま局長がお答えしたように別に対応して、そういうことが万が一——私はないと思いますけれども、万が一行われた場合には、徴税等によって処置ができると、こう思うのです。私は、しかし、そういうことは考えておりません。あなたの前提を一応考えてみてもそういう措置もあるということを申し上げるわけであります。
  394. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 大蔵大臣、もしその土地を百億、二百億で売った場合、徴税はどのぐらい取れるんですか。
  395. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 法人諸税は実効税率でいま四九・四七でございますから、それはいただくことになりましょう。  それからもう一つ、土地重課税は、あれは四十四年一月一日以降の取得だから、もしそれがありますと、そこはいつ取得したかということにかかるわけでございますが、さらに二〇%かかると、こういうことになろうかと思います。
  396. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いずれにせよ、抜け道があるわけですよ、こういうふうに。土地重課税をかけなかったら五十億か百億かファミリーへ転がり込むんでしょう。建設大臣、どうですか、そういう転売だとか土地転がしを許さないという態度をどうして明確にとれませんか。
  397. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 私どもは、今回のこういう長岡市あるいは建設省が介在しておる土地が、一般的な土地の売買のようなことでは処理されないと、こういうことを、これは常識的に考えてもこれだけの問題になったものをおっしゃるようなおそれというのは私は起こり得ないと思うのであります。
  398. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、お聞きになったように、とにかくこの覚書に抜け道があるんですよ。建設省の態度もこれじゃだめなんですよ。市と協議するからといったって、河川局長と協議するということになっているんでしょう、覚書は。それじゃだめなんですよ。これだけ国会で問題になり、参議院本会議の決議があるんだから。河川局長との協議は、いまのようなあの態度の河川局長に任せておいたら大変なことになっちゃう。だから、建設大臣も総理大臣も、この歯どめについては協議をちゃんとやると、国会にもちゃんと報告するということにしなければ、国民は絶対に納得いかないと思うのですね。首相、任しておかないで、国民に納得いく措置をとるために、あの南半分を措置する場合には建設大臣も総理大臣もちゃんと協議に応じ、それから国会にもちゃんと相談してやるということをお答えいただきたいと思います。
  399. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 国会決議は、先ほど上田委員がお示しのように、「その事後処理に、遺漏のないよう、妥当な行政措置を講ずべきである」と、これが本旨であると思うのであります。そして、きょう局長からも御説明申し上げ、私も当時の経緯を聞いての見解を申し上げている範囲からいたしまして、この警告決議の線に沿っておるものと思う次第でございます。
  400. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この問題をやっていると続きますので、本当に疑惑の起こらないように措置してほしいと思うのです。もしあそこに田中ファミリーの越後交通の本社だとかが建ってごらんなさい。田中金脈の汚辱のシンボルがあそこに建っちゃうんですよ、日本の政治の汚辱のシンボルが。国民は信頼できないですよ、このままでは。それでファミリーがどのぐらいもうけるかというのをみんな見ているんですから、きちんと政府はこの態度をとっていただきたい。  ですから、そういう疑惑が起こらないように、市民の間では全部公共用地にしてほしいという署名運動が起きている。ここに持ってきました。全部でいま二万二千署名が集まっております。越山会の人も署名しているんすよ。これはもう全部政党政派抜きです。全面公共利用をしてほしいというんです。ここへ持ってきているのは一万五千です、このうち。その公共用地の利用の仕方にはいろいろある。たとえば新潟は県で総合スポーツセンターをつくりたいと、これは新潟県のスポーツ振興審議会から答申が出ている。こういう県から希望が出たら、これを国が援助すればできるわけです。それから長岡ニュータウンというのを地域振興整備公団がいまやっている。あちこちに飛び地がある。あの河川敷地は近いんですね。だから、国の方針で地域振興整備公団の長岡ニュータウンの事業の中に組み入れれば、ちゃんと住宅もつくれる。いろいろ官僚の方々が知恵を出せばやれるんですよ。だから、市民も一生懸命いろいろな知恵を出している。どうですか、建設省もできれば公共利用させたいというので調査団まで派遣したわけだから、もっとひとつ知恵を出して全面公共利用をやることを検討するということをやっていただきたいと思う。  首相、ひとつ首相自身、全面公共利用のために努力検討をする用意があるかどうか、この点をお伺いしたい。
  401. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) おっしゃっておられることは一応わかりますけれども、しかし、これを本当に具体的にどうかということを検討していきますと、いま地域振興整備公団のニュータウンのお話も出ましたが、これは地元地方公共団体の要請が前提になるわけであります。スポーツ総合センター用地のお話も出ましたが、これは県としてどういう意向を持つかと、そういうことが前提になるわけでございまして、しかも、長岡市長も、また新潟県知事も、先ほど局長からお示しのとおりに、公式に文書をもってそれらの考えはないと、また、私どもがそれぞれどういう事情かを調べてみますると、長岡市としては半分を公共用にいろいろ利用するだけでも手いっぱいであると、こういうようなことも言っておるのでございまするから、きょう上田委員から特に何か私にあるいは総理に答えを求めようと言われましても、現実に私どもがいいかげんなことを言えるわけではないのでありまするから、お話しのいろいろ御指摘は私として参考にいたしますが、いまのような事情も御理解をいただきたいと思います。
  402. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 首相、最後に、室町産業分の約三十五ヘクタールの最終的な処理をする場合に、河川局長任せでなしに、建設大臣、首相も責任を持つと、国会にも報告をしてその了承のもとにするということは最低限のやっぱり政治的責任だと思うのですね。どうお考えになりますか。
  403. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 本件の事後処理につきましては室町産業、長岡市、この間でもうルールは決まっておるわけです。しかも公明正大なルールである。また、皆さんの御意見等を聞いておりますが、その御意見等にも合致する処理であると、こういうふうに思っております。しかも、長岡市長は、建設大臣にまたそういう案件が具体化した際には相談をするとまで言っておるわけでありまして、私は本件の事後処理措置といたしましてはまあかなり考えをめぐらした措置であると、このように存じております。そういう上に立ってこれから具体的に残された室町産業の土地の処理が行われるということでございますので、私は、建設大臣にこれは一任しておけば間違いなく適正に処理されると、このように考えております。
  404. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 建設大臣に一任ということでなくて、首相として責任をとりますか。土地転がしや転売まで考えているんですよ。それでいいと思うんですか。本当に首相として誠実に国民の世論に対して疑惑の起こらないように国会決議に従って措置をとる責任をとるかどうか。
  405. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはあの処理方式は私は相当練りに練った考え方だと、このように思っておるわけであります。土地転がしが起こるかどうかとか、そういう話をされますが、その土地転がしが起こるような事態を想像してつくっておるわけじゃないんです、あれは。もう利用される場合には公先の用に供せられると、こういうことでありまして、お話を伺っておりますと、まるでそういうような処理方式が決まっておらぬで、一般の私有地が処理されるような、そういうようなお話を前提としてお話しになっておられますけれども、そうじゃない。ルールがちゃんと決まっておって、公明正大、公共の用に供すると、こういう処理でございますので、御懸念のようなことはございませんです。
  406. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 この問題はまだ追及しなきゃなりませんけれども、次の建設委員会その他でやることにいたしまして、次の問題に移ります。  次に、チーム・スピリット78演習というのが今月の七日から始まっておりますけれども、この演習の概要と在日米軍基地の役割りについて説明してください。
  407. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 米韓統合合同演習が、この七日から向こう十一日間、韓国の領内で行われておることは御案内のとおりでありますが、これは指揮官あるいは幕僚、部隊の演習または演練をするということが目的であろうと思うわけでありますが、本演習に参加しておりますのが三万三百人というように承知をいたしております。また、日本関連米軍約一万四千人、在韓米軍七千三百人、その他米本土などから約九千人、これで三万三百人ということであろうと思うわけでありますが、本件の演習と在日米軍基地の役割りとはいかなる意味で使用されているかわかりませんが、本演習に参加している日本関連の米軍については次のとおり承知いたしております。  海兵隊が、沖繩第三海兵師団の一部、沖繩・岩国第一海兵航空団の一部、また、海軍では、横須賀空母任務群——ミッドウェーを含んでおるわけであります。沖繩・三沢艦隊航空部隊の一部、空軍では、沖繩第十八戦術戦闘航空団の一部、また横田から病院部隊が参加をいたしておるようであります。
  408. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 もう明らかなように、米軍は第二次朝鮮戦争が起きたら本土と沖繩を拠点にするという演習をやっているわけですよ。ブラウン国防長官は、二月二十二日に、そういう事態が起きたとき、沖繩の米海兵師団は二日以内に韓国に投入するということまで述べているわけであります。一体、政府は、もし朝鮮に有事が起きた場合に、日本が米軍作戦の拠点になるという前提に了承を与えておるのですか。
  409. 園田直

    国務大臣(園田直君) 第二次朝鮮戦争と言われますが、今度の演習並びにブラウン国防長官の証言等一連から、今度の演習の目的というものは、もちろん指揮官、軍の練磨の向上もありましょうけれども、大きな目的は、韓国から地上軍を撤退しても韓国及びアジア地域、西太平洋は断じて守るものである、しかもその体制は持っておる、有事の際の対応の処置はこうだということを示す政治的ゼスチュアであるとわれわれは判断しておって、第二次朝鮮戦争を始めるための準備をしておるとは判断いたしておりません。わが国の防御は専守防御とかいろいろ言われますけれども、その戦術戦略の前に、抑止力によって戦争を起こさせないということがわが防衛の第一義でありますから、隣組で消防団が演習をして庭先をポンプが通ったからといって、けしからぬと抗議をするつもりはございません。
  410. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 さて、じゃポンプかどうか、通っているのが。地対地、ミサイルランスというのが横田基地を通過したことをこの委員会でも先日答弁がありました。あのランスミサイル、これの性能、どういうものか、答えてください。
  411. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) ランスというミサイルは、アメリカが持っておりますオネストジョンそれからサージャントにかわるものとして一九七二年から配備をいたしております地対地のミサイルでございます。射程は、公式に発表されておりませんけれども、大体五十マイル程度というふうに推定いたしております。弾頭は核、非核両用でございまして、速力がマッハ三でございます。
  412. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 防衛局長、先日のブラウンの国防報告、この中で、ランスミサイルについて、核、非核両弾頭改良が述べてありますが、どう書かれていますか。
  413. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 七九年の国防報告におきまして、まず核弾頭の近代化というもののために千四百万ドルを使って研究開発をするということと、それから非核弾頭、これも改良することによって能力を増すことができるだろうということで六百万ドルの研究開発費を計上いたしております。
  414. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 核弾頭の改良というのは、どういうふうに改良しようとしていますか。
  415. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 弾頭の近代化、安全機構及び安全解除機構の改善並びに照準装置の改良によって現在のランスミサイルの性能を向上させる計画を七九年度において千四百万ドルで行いたいというふうに述べておるわけでございます。
  416. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 どうもちゃんとしたところを読まないんで、これは国防報告ですが、七十二ページと百三十二ページにこう書いてある。「爆発力を減らし放射能を強化した兵器は、この種の柔軟性を可能にする」と。爆発力を減らして放射能強化すると、中性子爆弾ですよ、中性子弾頭ですよ。「大統領がこれを製造することを決定し、同盟諸国が同意するなら、われわれはそれをランスミサイルのために配備する用意がある」と七十二ページと百三十二ページに書いてある。世界で初めて中性子弾頭をつけようとするランスミサイルですよ。これでもポンプですか、外務大臣。
  417. 園田直

    国務大臣(園田直君) 今度の演習で使うのは、そういうものを持ってきておりません。
  418. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 それは私も知っている。中性子爆弾をつけるランスミサイル、実戦のときにこれがつくんですよ。それが日本を通過していく。これは核通過になりませんか、万一ついていた場合。
  419. 園田直

    国務大臣(園田直君) 演習では事前協議の対象になりません。核を持ち込む場合にのみ、通過する場合にのみ、事前協議の対象になるわけであります。
  420. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 また、非核弾頭の改良といいますけれども、これも一々読みませんけれども、高密度の砕片に改良するんだ。いわゆるパイナップル爆弾、ボール爆弾ですよ。ランスミサイルというのは、非核弾頭の場合には例のあの残虐なパイナップル爆弾やボール爆弾、そういうふうに改良しようとし、核の場合には中性子爆弾をつけようという方向がもう国防報告で明確に出ているんですよ。そういうものが横田基地を通過して送られているんです。いざというときには、そういう核ミサイルをつけるということになるわけです。その点、事実をさらに調査することを要求します。外務省、どうですか。
  421. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先生のおっしゃられる調査しろということの意味が必ずしも明確につかめませんでございましたが、いずれにせよ、今回の米韓合同演習に当たって、ランスミサイル部隊が横田基地を中継して現地に赴いたということはアメリカ側から聞いておるわけでございます。
  422. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 そういう核弾頭をつけるランスミサイルの実態をもっと調査する必要がある。いざというときには日本を通過して非核三原則に反する事態が起きかねないのですね。だから、こういうランスミサイルを日本を通過させ、横田を通過させるということ自体に直ちにやっぱり抗議して中止させる必要がある、そう思いますが、いかがですか。
  423. 園田直

    国務大臣(園田直君) 有事の際にかかわらず、平時の際にかかわらず、核の持ち込みは一切ノーだと事前協議の場に総理がしばしば言われているとおりでございます。いまは、先ほども申しましたとおり、侵略する者あればこれに対応して直ちに準備があるということをやっている演習でありますから、その場合に威力のあるものを持ち込まぬなどというかっこうはあり得ないのであって、消防ポンプを集めたから火事を起こすんじゃないかと、こういう理屈は成り立たぬと私は思います。
  424. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 一切ノーなんでしょう。一切ノーで、できないことをアメリカはいま演習しているんですよ。できないことを何で演習できますか。
  425. 園田直

    国務大臣(園田直君) かかしには弾の撃てない鉄砲なんか持たしてかかしを立てることはよく御承知のとおりでありまして、抑止力による防衛ということを考える場合には、それはそういうことがあるかないかわからぬようにするのが当然でありまして、何にもないからやってこいというのでは演習になりません。
  426. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 大体、政府は、そういう核戦争、核攻撃を予想した今度の演習についても、いまのようなまことに国民の期待に反する態度をとっている。  次に、沖繩の核基地問題についてお聞きしたい。やっぱり同じなんですね、態度は。二月三日に、不破議員が、衆議予算委員会で、沖繩米軍の朝鮮出動演習また核訓練について質問しました。福田首相は、一方的なお話だと、そういうふうにあのとき答えられましたけれども、その後瀬長・寺前議員が嘉手納基地のバクスター司令官と面会してこの点を話し合った。司令官は、ブロークンアローという核兵器の事故の場合の訓練、それから核兵器の起爆を可能にするPALという訓練を年四回やっていることをはっきりと明言いたしました。だから、不破議員の一方的な話でないことが司令官によって明らかにされたのですけれども、首相、こういう事態をどうお考えになりますか。
  427. 園田直

    国務大臣(園田直君) 沖繩の司令官は核があるとかないとかは言っていないわけでありまして、訓練をやったという事実だけ認めているわけであります。上田さんはお年はわかりませんけれども、演習というものは想定をいたします。想定をして、こうこうこういう状況で、状況中の人になれ、本当にそのつもりでやれというのが演習で、大の男が、ここには核はない、そのおそれもない、だからこの重い物を担いで演習をやれって、これじゃ演習になりません。ですから、訓練したからといって核があるということにはなりません。私は、かつて化学戦の将校でありますけれども、毒ガスを専門に扱いましたが、全軍が毒ガス防護の訓練をしたのは当然であります。それと同じであります。(発言する者あり)
  428. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 不破議員の質問に対して伊藤防衛局長は、いまのようなお話で、米軍は属人主義で訓練していると、そう答えましたね。しかし、バクスター司令官は、質問に対して、属地的訓練もあるんだと、属人訓練並びに……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。属地的訓練並びに属人訓練、両方やっているといって明言しているんです。伊藤防衛局長、どうですか。
  429. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 私が御答弁申し上げましたのは、昭和四十九年にこのブロークンアローという演習を米軍がやっているということで、外務省を通じて向こうに確かめましたときに、属人的な教育としてやっているという返事があったということを申し上げたわけでございます。そこで、いま私は属人的なものであるということを申し上げましたけれども、たとえば練度を向上する訓練というのはほとんどのものが属人的なものであるということは御理解いただけると思います。たとえば演習場で私どもの自衛隊も訓練いたしておりますが、そこで戦闘が行われるわけでないわけでございまして、これはまさにその個人あるいは部隊の練度を上げるために教育をしているわけでございます。その際にその地形地物を利用する。それはその演習場におきます地形地物を利用するということはあり得るわけでございますから、属人教育という中でそういったものを利用するということは当然あるわけでございます。
  430. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 そういうふうに次々と逃げていこうとするんですね。問題の解明をしようとしない。わが党はこれまでずっと沖繩の米軍基地の実態を追求してきた。この基地は、六拍子そろった常時核基地体制にある基地です。第一に核模擬弾の投下訓練をやっておる。二番目に核起爆可能化、この訓練をやっている。三番目に、事故の場合のブロークンアロー訓練、これも年に四回やっている。四番目に、核の取扱要員に対する人間信頼度計画、千人を超すのをやっている。五番目に、核安全要員が配置されています。六番目に、核兵器がハイジャックされた場合の対策、これも講じております。だから、いまのような属人主義というのは全くごまかしで、六拍子そろった核基地化の常時体制にあるんですよ。つまり、これは、いまは核弾頭、核兵器はないかもしれないけれども、有事の場合には沖繩に核兵器が持ち込まれることを想定してこれだけ激しい訓練をやっているんです。瀬長議員がバクスター司令官に非核三原則の話をした。バクスター氏はこう答えた。よくわかっている、原則については評価し理解しいている。しかし、眠っている犬——スリーピング・ドッグです、スリービング・ドッグを起こすなということわざもあると、こう言っているんですよ。つまり、日本国民を刺激しさえしなければ大丈夫なんだという実態なんですね。ひとつ、首相、事前協議について、ほかの場合は別として、核兵器の持ち込み、通過、寄港、これについては一切ノーと言うという政府のこれまでの方針に変わりは何らありませんか。
  431. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 変わりはありませんです。
  432. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いまの政府の言明にかかわらず、やっぱり沖繩基地の現状、それからランスミサイルの横田基地の通過、これらはどうもアメリカ日本の政府との間に核兵器の通過についてトランシットアグリーメント——秘密の取り決めがあるというたとえばニューヨークタイムズのハローラン記者の五回にわたる報道でこれの疑惑がいよいよ濃くなっているのではないか、そういうふうに思われます。  特に沖繩返還協定の際に、日米間政府の間に核兵器の再持ち込みという密約が行われたのではないかという疑惑をも一層深くするものであります。わが党は、先ほどの訪米調査団の調査をも含めましてこの問題を調べてきました。ひとつ外務大臣にお伺いしますけれども、佐藤・ニクソン共同声明日米沖繩協定以外に、核の問題について日米間にいかなる秘密の取り決めもありませんか。
  433. 園田直

    国務大臣(園田直君) 断じてございません。
  434. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 一九六九年、沖繩返還が決まった日米共同声明が結ばれた年ですが、あのとき福田首相は第二次佐藤内閣の大蔵大臣でした。あの際、閣議でこの問題についてのたとえば秘密の合意その他、報告だとか何かあったことがありますか。
  435. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ございません。
  436. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これは外務省に聞きます。  もし日本の首相あるいはその代理人が外国の元首あるいはその代理人と秘密の取り決めを行った場合、そういう取り決めは国際法上効果がありますか。
  437. 園田直

    国務大臣(園田直君) ないと言っているものをあった場合にはどうこうということについてはお答えはできません。
  438. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、法理論として言っているんですよ、万一あった場合。
  439. 園田直

    国務大臣(園田直君) それじゃ、法制局長官から御答弁を願います。
  440. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 外務大臣御自身がそういういわゆる密約なるものはないとおっしゃっているわけですから、それがあったということを前提とする御質問には私はお答えする筋合いではございませんが、純粋に法理論として申し上げますと、いわゆる密約とおっしゃいますのは、結局、不公表といいますか、一般には知らせないで締結した取り決めということだろうと思いますが、もし万一、理論上の問題として両国のそれぞれの締約権限者が締結した取り決めは、仮にそれが不公表のものであっても、国際的にはそれはそのことだけをもって無効だと言うわけにはまいらないというふうに考えます。
  441. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 私も、万一ということでいいです、いまのところ。大体いまのは有効だということですね。もし国会でいまのようにその秘密の協定は一切ないと言われた場合、しかし実際にはある場合、その場合は効果はどうですか。
  442. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 政府はそういうものはないと言っているわけなんですから、それが……
  443. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 万一あった場合。
  444. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) あった場合にはどうだとおっしゃいましても……
  445. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 万一あった場合、国会で否定されたとき。
  446. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) それは万一の場合のことは先ほど申し上げたとおりでございまして、現実にはないと政府が言明しておるわけで、それは国会であった場合はどうだというのは……
  447. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 国会で否定された場合。
  448. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 先ほどの答えをくり返すよりほかにお答えのしようがございません。
  449. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 つまり有効だということ。閣議にさえ報告もされない、承認もされない、首相個人がひそかに結んだ、そういう場合、これは有効ですか、法理論上。閣議にも報告されていない。
  450. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 日本総理がということでございますか。
  451. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いやいや、一般論。
  452. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 一般論としては、先ほども申し上げましたとおりに、一国の条約締結権者が他国の条約締結権者との間に結んだ取り決めその他の国際条約は、それが密約、いわゆる不公表であるということのみをもって無効だと言うわけにはいかないです。
  453. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 ほかの大臣がだれも知らなくても。
  454. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 総理大臣は締約権限がございます。
  455. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 総理大臣個人が結ばないで、代理人に権限を与えて結んだ場合はどうですか。
  456. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 国際取り決めをどういう人が適法にやれるかということは、全権大使とかいろいろあるんでしょうが、どうも、私、的確なことをよくわかりませんので、条約局長あたりからお聞き取り願います。
  457. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 条約局長、お願いいたします。
  458. 園田直

    国務大臣(園田直君) いまからお配りになるのか、お配りになったのかは知りませんが、上田さんが「三月十四日 参議院予算委員会資料」というのを準備しておられるようですが……
  459. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 これはこれから配るんです。早過ぎる。
  460. 園田直

    国務大臣(園田直君) 早過ぎますか……。いずれにいたしましても、これを拝見しまして私も読んできたんですが……
  461. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 だから、法理論で言ってください。
  462. 園田直

    国務大臣(園田直君) いまの法理論を別としてですね、実際問題として、総理大臣が、総理大臣の職にあろうとも、外務大臣も知らない、閣僚も知らない、そして外務省のキャリアを使わずに、だれか使いをやってこっそり密約を結ぶなんということができる仕組みには絶対になっておらぬので、それを疑われることは、どうも上田さんらしくない。余り頭がよ過ぎてそうなるのかなと思って、私には理解できません。
  463. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 いや、私の何とかということじゃなくて、万一——万一ですよ、そういう場合があった場合に有効かということを聞いている。条約局長、お願いします。
  464. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 先ほど来大臣から御答弁申し上げていますように、そのような密約といったようなものは一切ないわけでございます。  そういうことを前提といたしまして、どういう角度からの御質問か、私もちょっとはかりかねるわけでございますが、総理大臣の使者というようなお言葉をお使いになりましたけれども……
  465. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 代理人。
  466. 大森誠一

    政府委員(大森誠一君) 国際法上、総理大臣の代理人といったようなものが権限を持つといったような、そういう地位というものはございません。
  467. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 わかりました。  まあ一応そういう秘密の取り決めがあった場合ですね、これは国際法上合法だと法制局長官は言われましたけれども、その秘密の取り決めは、その内閣を拘束するだけじゃなくて、政権が交代した場合、次の内閣をも拘束しますか。
  468. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) どうも、万一の場合という仮定を踏まえてのお話でございますのではなはだお答えしにくいのですが、仮にそういうことがありまして、不公表であるということだけをもって無効だとは言えないというような事態になった場合には、それは国と国との間の取り決めでございますから、その拘束を受けるのは国でございますから、政府が交代しても、国が同一である限りはそれは効力は続くと言わざるを得ないと思います、廃棄されない限りは。
  469. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 総理大臣本人が結んだ場合にはどうも次の内閣も拘束されるようですね。まあ民主連合政府ができてそういうものを破棄すれば別ですけれども。  さて、それでは、代理人が結んだ場合にはいまのようにあり得ないということで、これは代理人が結んだ秘密取り決めは無効だということだと思います。万一、こういう秘密取り決めを、総理大臣にしろ何にしろ、その国の憲法に背いたり、あるいは国会の決議、たとえば非核三原則のような国是と言われている——首相も国是と言われましたけれども、そういうものに背いた、つまり、秘密の取り決め日本の国益を害するものであった場合、そういう秘密の外交措置を行った総理大臣、これは処罰されますか、法務大臣。
  470. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 残念ながら日本にはそういう処罰する刑法がございません。
  471. 上田耕一郎

    上田耕一郎君 無罪ですか。  私、次の質問がずっとつながっておりますので、あと二十二分残しておりますけれども、翌日に回したいと思いますが……。
  472. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ちょっと理事会を開きます。——上田君の質疑はこの程度にとどめ、あとは明日に譲ります。  明日は午後一時から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十三分散会