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1978-03-11 第84回国会 参議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月十一日(土曜日)    午前十時一分開会     —————————————    委員の異動  三月十日     辞任         補欠選任      大木 正吾君     大森  昭君      田渕 哲也君     井上  計君  三月十一日     辞任         補欠選任      熊谷  弘君     源田  実君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鍋島 直紹君     理 事                 戸塚 進也君                 内藤誉三郎君                 中村 太郎君                 宮田  輝君                 竹田 四郎君                 吉田忠三郎君                 多田 省吾君                 内藤  功君     委 員                 浅野  拡君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 小澤 太郎君                 亀井 久興君                 亀長 友義君                 源田  実君                 下条進一郎君                 田原 武雄君                 玉置 和郎君                 夏目 忠雄君                 成相 善十君                 林  ゆう君                 真鍋 賢二君                 三善 信二君                 望月 邦夫君                 八木 一郎君                 赤桐  操君                 大森  昭君                 志苫  裕君                 野田  哲君                 福間 知之君                 藤田  進君                目黒今朝次郎君                 太田 淳夫君                 峯山 昭範君                 矢追 秀彦君                 矢原 秀男君                 上田耕一郎君                 渡辺  武君                 井上  計君                 喜屋武眞榮君                 柿沢 弘治君                 秦   豊君    国務大臣        内閣総理大臣   福田 赳夫君        法 務 大 臣  瀬戸山三男君        外 務 大 臣  園田  直君        大 蔵 大 臣  村山 達雄君        文 部 大 臣  砂田 重民君        厚 生 大 臣  小沢 辰男君        農 林 大 臣  中川 一郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  福永 健司君        郵 政 大 臣  服部 安司君        労 働 大 臣  藤井 勝志君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (国土庁長官)  櫻内 義雄君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      加藤 武徳君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       安倍晋太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)      稻村左近四郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       荒舩清十郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  金丸  信君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       熊谷太三郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  山田 久就君        国 務 大 臣  牛場 信彦君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        警察庁長官官房        長        山田 英雄君        防衛庁参事官   夏目 晴雄君        防衛庁長官官房        長        竹岡 勝美君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛施設庁長官  亘理  彰君        防衛施設庁施設        部長       高島 正一君        経済企画庁調整        局審議官     澤野  潤君        経済企画庁調査        局長       岩田 幸基君        法務省入国管理        局長       吉田 長雄君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省条約局長  大森 誠一君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        大蔵省主計局長  長岡  實君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  田中  敬君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        文部大臣官房長  宮地 貫一君        文部省社会教育        局長       望月哲太郎君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        農林大臣官房長  松本 作衛君        農林省農蚕園芸        局長       野崎 博之君        食糧庁長官    澤邊  守君        中小企業庁長官  岸田 文武君        運輸省鉄道監督        局長       住田 正二君        運輸省航空局長  高橋 寿夫君        運輸省航空局次        長        松本  操君        海上保安庁長官  薗村 泰彦君        気象庁長官    有住 直介君        郵政省貯金局長  高仲  優君        郵政省簡易保険        局長       佐藤 昭一君        郵政省電波監理        局長       平野 正雄君        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省計画局長  大富  宏君        建設省道路局長  浅井新一郎君        建設省住宅局長  救仁郷 斉君        自治省行政局公        務員部長     塩田  章君        自治省行政局選        挙部長      佐藤 順一君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    法制局側        法 制 局 長  杉山恵一郎君    説明員        会計検査院事務        総局第三局長   松尾恭一郎君    参考人        日本住宅公団総        裁        澤田  悌君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十三年度総予算案審査のため、本日の委員会日本住宅公団総裁澤田悌君参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認めます。  なお、出席時刻等については、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは、これより多田省吾君の総括質疑を行います。多田君。
  7. 多田省吾

    多田省吾君 私は、初めに参議院選挙制度についてお尋ねいたします。  総理は、一月末の参議院会議で、本国会全国制度改正をしたいと答弁されました。しかし、自民党内でも調整は非常に難航しているようでございます。で、私は、第一に、参議院地方区の極端な定数均衡を是正すべきだと思います。すでに五十一年四月の最高裁判決におきましても、投票価値の平等が憲法上の平等原則要求に合致していなければならないと判定を下し、前吉國法制局長官あるいは現真田長官等も、その当時、一票の価値の平等は国会の両議院の議員選挙について述べているんだと、このように答弁されております。しかるに、政府自民党は、全国区の改正と一括処理するんだということで、昭和四十五年には第六次選挙制度審議会報告昭和四十七年には第七次選挙制度審議会報告定数是正を言っているのにもかかわらず、いままで放置されてまいりました。私は、これは憲法問題でございますから、他の政治問題の一切を切り離して、参議院定数均衡の核心とも言うべき極端な不均衡改正、また逆転現象の解消に踏み切るべきだと思いますが、決意のほどをお伺いします。  また第二に、全国区の改正問題につきましては、また、われわれもこの欠点を除去することに真剣であらねばならない、このように考えております。しかし、朝日新聞におきましても、昨年の暮れ百人の全国議員にアンケートをとりましたところ、過半数は全国区の比例代表反対であったとか、あるいは読売新聞にも広く有識者意見を載せたことがありますが、非常に幅広い意見も出ているわけです。また、毎日新聞の社説等におきましても、この際拙速に走ることなく第八次選挙制度審議会等考えてもいいのではないか、このように言っております。また、最近は、八日、総理連絡会議全国区のほうを督励されたそうでございますけれども、いま御存じのように、今度こういう改正案を出して、五月十七日以降の会期延長やあるいは解散の火種に資しようとしているんじゃないか。総理解散のかの字も考えていないとおっしゃっておりますけれども、そういう観測も一部で行われていることは事実でございます。  私は、この際、政府が本当に無理をしてまでもこの国会改正を図るのか。あるいは拘束比例方式でも自民党選挙制度調査会等におきましてはまだ疑義があると、衆議院よりも政党化が進んだり、あるいは無所属を締め出したり、あるいは党内で順番をつけることにおいてどうかなと、こういう疑義も出ていることは事実でございます。そういったときにおいて、私は無理をしてまでこの際、今国会改正を図らなければならないものがあるのかどうか。また、もし出すとすれば、政府提出かあるいは議員立法として出すのか、その辺のお考えをお聞きしたいと思うのです。
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 選挙制度全体につきましては、私は金のかからない公明な選挙が行われるようにということを念願して、衆参両院を通じましての選挙についての改革、これはぜひやっていかなければならぬ問題だと、こういうふうに考えておりますが、その中で参議院制度につきましては、地方区において定数問題があるわけです。それから、全国区につきまして全国制度自体をどうするか、こういう問題があるわけであります。  私は、選挙制度衆参両院を通じてやっていきまするけれども、これはとにかく相撲でいえば土俵をつくるようなものでありますから、やっぱり皆さんのというか、各党各派の合意というか、相談の上やっていかなければならぬ性格のものだろう、こういうふうに存じまして、自由民主党に対しましては各党各派相談をして改革の方向を進めるようにという要請をしており、そのような動きになっておるわけでございまするけれども、私は、率直に申し上げまして、参議院地方区の定員問題もあります。これは大事な問題です。大事な問題ではありまするが、それよりもさらに急がなければならぬ問題ですね、これは全国区の制度自体の問題である、こういうふうに思うのです。昨年の七月の参議院選挙、これでわれわれはあの制度がいかに公正に実行しにくいものであるかということを体験したことかと思うのです。その体験というか経験、その熱の冷めないうちにこの問題は処理したいというような考え方であります。その点も自由民主党に対しましては強調しておるわけなんであります。  いずれにいたしましても、第八次選挙制度審議会、そうなりますればまたこれは悠長な話になりまして、次の参議院選挙も現行の選挙制度だというようなことになっちゃう。そうじゃなくて、もう選挙制度審議会においていろいろ意見は聞いておるわけでありまして、もう各党各派相談してどういう選択をするかという踏ん切りの段階に来ておるんじゃないか、そのように考えております。私は、各党各派反対だというのを無理をしてどうこうという考えはありませんけれども、願わくば次の参議院選挙、特に全国区につきましては新しい制度でやっていきたいなと熱望しております。
  9. 多田省吾

    多田省吾君 私は、いまの総理の御答弁にはなはだ不満でございます。なぜならば、憲法軽視であり、国民権利を無視しているからです。  私は、地方区定数是正こそ最優先すべきだと思います。なぜならば、国民の一票の権利鳥取神奈川県ではすでに一対五・五、神奈川県の皆様は五・五分の一の権利しか持ち合わせていないわけです。だからこそ最高裁判決、これは衆議院定数是正においてやったわけですが、法制局長官もはっきりとこれは両院に通ずる問題だと言っておるわけです。しかるに政府自民党は、いつも、自治大臣は第六次、第七次の際も是正しますと言いながら、それを昭和四十六年のときも四十九年のときも、五十二年のときもサボってきたんじゃありませんか。これはまず最優先すべきです。ところが、自民党の案を見ますと、東京と神奈川をふやして、それから北海道と栃木を減らすというような案で、鳥取と大阪の関係はまだ一対四・七というぐあいに、アンバランスあるいは逆転現象がずいぶん残っています。こういうものではいけないと思う。  また、私は、全国制度につきましてはやはり拙速はいけないと思うのです。いま第八次選挙制度審議会をやると遅くなると申されましたけれども、有識者あるいは学識経験者等もさまざまな意見を持っている、広く国民意見を求めるべきだ。やはりこの際、公正な委員を選出いたしまして十分に悔いの残らないように私は検討すべきだ、このように思いますが、いかがでございますか。
  10. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) ただいま重ねての御質問で二点が指摘をされました。  第一点は、参議院定数アンバランス憲法違反ではないか、かような点でございました。御承知のように、昭和五十一年の四月に最高裁判決が出ておるのでありまして、これは昭和四十七年の衆議院議員選挙に関しての判決であったことは御承知のとおりでございます。そこで、その翌月に選特におきまして多田委員法制局に御質問なさったその記録等も私は丹念に拝見をいたしたのでございますけれども、なるほど当時の法制次長であった真田さんが、その前段におきましては、一票の重みのことを表現はいたしておるのでありますけれども、しかし、その後段において、これは直ちに参議院に適用されるべきものではない、かような性格答弁をいたしておるのでございますから、直ちに現在の定数アンバランス憲法に違反する、かようには考えておらないのでございます。  それから、第八次選挙制度審議会のことにつきまして、ただいま総理が御答弁になったのでございますけれども、御承知昭和三十六年以来第一次から第七次まで、昭和四十七年までいろいろ審議会におきましては答申なり報告をいたしておることは御承知のとおりでございますけれども、しかし、その答申報告が実はほとんどと言っては言い過ぎかもしれませんけれども、実行されておらぬというのが現実の姿でございます。実行されない原因につきましてはいろいろあるでございましょうけれども、結果としては各党間の意見がなかなかまとまらないままに実行ができ得なかった、これが大きな原因であろうと思うのでございます。で、昭和三十六年に第一次選挙制度審議会が発足いたしましたときには、各党間の意見がまとまらないから公平な第三者でと、かようなことであったのでございますけれども、結果としてはいま申し上げたようなことでございます。  そこで、やはり基本選挙基本に関しまする選挙制度のことでございますから、各党間の話し合いをしていただきますことが最重要である、かように認識をいたしておるのでございまして、先ほど総理の御答弁のように、各党間の話し合いを煮詰めてもらいますことが事を解決する最も近い道だと、かように承知をいたしておるところでございます。
  11. 多田省吾

    多田省吾君 私は、地方区定数是正自民党だけがやはり消極的でサボってきたのでございまして、また全国区につきましても、第七次選挙制度審議会中間報告では、具体案実質審議は一回も全国区についてはなされていないんです。だからこそ、私は第八次もやれという御意見も強うございますから、それを申し上げておるんです。総理のもう一回、地方区定数是正、また全国区についての御答弁を願いたいと思います。
  12. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 参議院選挙制度につきましては、全国区、地方区ともにこれを改正する必要がある、こういうふうに考えております。  私は、くどいようでありますが、特に全国区につきましては、もう改正をしなけりゃならぬということが国民の世論化しておるのではないか、皆さんがそう考えておられるところじゃないか、そのように思うわけでありまして、とにかく世論も熟し、それから各党各派間の話し合いがつくというものから逐次でもいいからぜひ実行していきたい、このように考えております。
  13. 多田省吾

    多田省吾君 その際、無理をして拙速に陥り、悔いを千載に残さないようにひとつお願いしたいと思います。  次に、私は経済の見通しについて若干御質問したいと思います。  本日、夕方から関係閣僚会議を開きまして、この際のあの突発的な円高問題に対処いたしまして、緊急輸入あるいは一部有力閣僚の訪米とか公定歩合引き下げの問題とか、こういつたことをお諮りになると聞いておりますが、具体的に新しい方策も考えておられると思いますので、どのようなお考え関係閣僚会議に臨まれるのか、御答弁をいただきたいと思います。
  14. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 本日、当委員会終了後に関係閣僚が集まりまして、ただいま御指摘のような問題を協議いたしたいと考えておりますが、これは、実は、ただいまの円高に対処する問題と申しますよりは、三週間ほど前から、かねて政府がそのときどきで輸入し得るもの、適当なものがあれば、いわゆる緊急輸入と申しますか、いろいろな形で輸入をふやしていきたいと考えて定期的に検討いたしておるわけでございますが、三週間ほど前からそういうことを、私、世話役というようなことで寄り寄り関係閣僚と御相談をいたしておりまして、それが一応ある程度まとまりましたので、今日集まりまして結論を出したい、こう考えておるわけでございます。したがいまして、この十日ほど顕著になりました円高に対処してということではなく、むしろ従来定期的にやってまいりましたことを、五十三年度の予算執行を間近に控えましてもう一遍取りまとめてみよう、こういう趣旨でございます。
  15. 多田省吾

    多田省吾君 それで、報道によりますと、輸入前払い制度の活用とか、あるいは外貨貸しの対象を拡大するとか、あるいは石油のタンカー備蓄の促進、ウラン、エアバスあるいは発展途上国食糧援助、こういったいろいろなことを論議なさると報ぜられておりますけれども、どうなんですか。
  16. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいまお挙げになりましたような項目が主たるものでございます。ただ、ただいまよく御承知のとおり、この中には相手方と申しますか相手国と申しますか、のいろいろな事情に左右されるものもございますので、全体としてこれこれで何十億ドルといったような、そういう計算がきちんとできない種類のものも入っておりますことは、過去の例からも御推察をいただけると思います。
  17. 多田省吾

    多田省吾君 今度の対策で、輸入は大体三十億ドルとか五十億ドルとか、どの程度を目指しておりますか。
  18. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先般、この委員会におきまして、昭和五十二年度の緊急輸入の中で、ウランの問題につきまして総理大臣から御答弁があったわけでございますが、このウラン鉱石あるいはウラン濃縮ということにつきましては、アメリカの最近のカーター大統領のお考えもあるようでありまして、なかなか先方にいろいろむずかしい事情がございますようです。これは、しかし、だからといって、いろいろまだ交渉してみなければならない、われわれとして断念をするのにはまだもっと努力をしてみなければならないと思っている部分もございますので、それはやってみるつもりでございますが、これが金額的には実は非常に大きゅうございますために、そういうこともありまして、全体の金額が、いつまでにこれぐらいになるということを申し上げにくい性格のものだと思います。
  19. 多田省吾

    多田省吾君 二日前ごろまでは、この急激な円高に対応いたしまして、アメリカ宮澤経企庁長官かあるいは牛場担当大臣を派遣するようなお考えもあるやに報ぜられましたけれども、いまはそのお考えはございませんか。
  20. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨日、総理大臣が、そのようなお尋ねに対しまして、いまは考えていないと御答弁なさったと思います。そういうような総理の御方針だと存じております。
  21. 多田省吾

    多田省吾君 この前からの日銀総裁や、あるいは大蔵大臣等公定歩合引き下げに対する御答弁がございましたが、公定歩合引き下げ効果についてどう考えているか、大蔵大臣経企庁長官に御答弁いただきたいと思います。  いまは、御存じのように六カ月先物は二百二十九円と、ほぼ直物に比べまして二%の円の先高を示しておりますし、また、西ドイツは公定歩合がほぼ三・五%、スイスは一・〇%、そういう姿もございます。果たして〇・七五%あるいは〇・五%の引き下げ円高に大きく効果があるのか、あるいは公共投資の後の民間設備投資に対してこの公定歩合引き下げ効果考えておられるのかどうか、その辺をひとつ御答弁いただきたいと思います。
  22. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 変動為替相場のもとにおきましては、言うまでもございませんけれども、国際収支の動向が最終的な相場を決めることは当然でございます。その問題と関連して公定歩合のお話が出ましたけれども、現在のところ、公定歩合引き下げ考えておりませんけれども、従来、公定歩合を下げまして果たして円高なり、その国の公定歩合を下げて流入する短資を規制できたかということを実験的に見てみますと、昨年九月、わが国で公定歩合引き下げ、同時に一連の対外政策を実施したところでございます。しかしながら、あのときはやはり円高の傾向がございまして簡単に乗り切られてしまった。またスイスにおきましても、最近、一%の公定歩合引き下げ、それからまた外資に対しては逆日歩を取るというようなことをやっておるわけでございますが、円高の傾向の強いときにはほとんどその効果はございませんで、やはり簡単に乗り切られてしまった、こういう経験があるわけでございます。したがいまして公定歩合の問題というものは、そういうところに余り重点を置くべきでないんであって、本来、やはり金融情勢を踏まえ景気の振興を図っていくタイミングをどういうふうに考えるか、このように考えるのが私は本筋だと考えているわけでございます。
  23. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私からは抽象的にお答えを申し上げることになりますが、まず、対内的には、公定歩合が下がりプライムレートが下がることによりまして長短期の金利がある程度追随をする、それによりまして企業の固定費がそれだけ下がっていくという企業採算上の効果は一般的に期待できるのではないか。これが好況期でございますと投資意欲をそそるということになるわけでございますけれども、このような経済情勢でございますから、それに大きな期待はこの段階としてはかけられないのではないか。住宅投資なども、理屈の上では多少は促進されるはずであると考えておりますが、対内的にはそんなことであります。対外的には、ただいま大蔵大臣が言われましたようなふうに私も考えておりまして、それによって外資の流入がある程度防げるかと、理屈の上ではそのはずでございますが、他の国の公定歩合との関連もございます。大蔵大臣の言われました程度のことではないかと考えております。
  24. 多田省吾

    多田省吾君 通産大臣と経企庁長官に、日本の輸出が減らない理由をお尋ねしたいと思うのです。  もう本年度も経常収支の黒字は百三十億ドルを突破しようとし、貿易収支の黒字においてはもう百九十億ドルから二百億ドルに達しようとしております。また、この一月も輸出は非常に高水準でございまして、来年度は六十億ドルに抑えようとしているのに、なぜいまこのように輸出が減らないのか。そのためにまた円高という現象、あるいは投機筋の思惑も出てくるわけでございまして、これは第一に出血輸出なのかどうか、第二に二百四十円程度に適応しているのかどうか、第三にタイムラグ、時間的ずれなのかどうか。このうちのどの理由でございますか。
  25. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 昭和五十二年度の経常収支がどの程度になるかは、まだ最終的には明確な数字を申し上げる段階ではございませんが、当初予定しておりました数字よりは相当大幅にふえるのではないか、このように考えております。現在の円高の背景にはいろいろあるわけでありますが、何と申しましても、わが国のこの大幅な黒字ということが最大の理由になっておるように私どもは考えております。かつまた、これだけの大幅な黒字が出ますと、世界経済全体に対して少なからざる影響を与える、こういうことでもありますので、適当な水準にこれを調整する必要がある。これが現在のわが国の大きな課題だと考えております。このためには、内需の拡大ということがもう最大の私は政策だと思います。内需の拡大をするためには、財政のみならず、すべての政策手段をこの際は尽くすべきである。当然のことだと思いますが、同時に、輸出につきましても、各国と摩擦を生じないようにできるだけ配慮をしながら今後はやっていく必要があろうと考えます。  ただ、この際申し上げておきたいことは、実は輸出は金額的にはふえておりますけれども、数量的にはほとんどふえていないのですね。かつまた五十三年度の貿易の見通しを見ましても数量的にはほとんどふえない、むしろある分野では減る。ただ、金額的には六、七%ふえる見込みでありますが。でありますから、輸出を抑えるということは、これはもう数量そのものが減るということでありまして、国内では減産ということになりますから、これはもう大変な事態でございます。そういうことのないように拡大均衡の方向で輸出入のバランスというものを考えていかなければならぬ、このように思っております。  それから、現在の円レートの水準で赤字なのかどうかという御質問でございますが、昨年の年末の二百四十円という水準では、ごく二、三のわずかな業種を除きましては、大部分が赤字である。特に中小企業につきましてはほとんど全部がやっぱり出血、赤字輸出になっておる、こういう状態でございました。
  26. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 基本的な問題としては、なぜわが国の輸出がふえるのかということは、わが国の製品が価格的にも非価格的にも競争力があるということ、これが基本的な原因だと申し上げざるを得ないと思います。それは長年の新しい設備投資とすぐれた労働の質によるものであるというふうに考えております。  価格的にもそうでありますが、非価格的と申し上げます意味は、品質でありますとかデリバリー、納入の期日が確実であるとか、そのようなことを含んでおると思います。したがいまして鉄鋼あるいはカラーテレビに見られますように、ある程度人為的な輸出抑制をしなければならないというような状況になっておるわけでございます。  その他は、河本大臣がいまお答えになりましたとおりでありますが、一言だけつけ加えるといたしますと、一般に円が高くなるということの結果、教科書的にはそれによって輸出が減り、輸入がふえるというはすでございますけれども、短期的には、円高がこれから先もあるということになりますと、企業家の心理としてはいわゆるリーズ・アンド・ラグスが起こると、輸出はなるべく有利なうちに契約をしていく方が得だと、輸出促進という動きになりますし、輸入は円が高くなってから買った方が得だと、むしろ輸入がおくれる、短期的には全く反対の現象が起こるということも考慮しておかなければならないと思います。
  27. 多田省吾

    多田省吾君 いま通産大臣は大部分がもう出血輸出、赤字であり、中小企業や下請が非常にいじめられている、大変だというような御答弁があったわけでございますが、その対策をどのように考えておられますか。
  28. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 特に中小企業に対する影響が非常に大きいものですから、この円高に対処いたしまして中小企業の緊急対策を考えなければなりません。先般、政府の方ではその法律を用意いたしまして国会にお願いをいたしまして緊急に審議をしていただきまして、もう現在すでに実行に移しております。これが一番大きな対策でございますが、その後も、絶えず追跡調査をいたしまして、どのような現実の影響が起こっておるかということを正確に把握いたしまして、その都度、適切な対策を遅滞なく打ち出していきたいと考えております。
  29. 多田省吾

    多田省吾君 このたびの円高等によりまして、予期しない七%成長に対する困難な事情が起きたわけでございますが、私は、政府予算原案作成当時に比べまして、三カ月たった現在、マイナス要素として、第一には予期しない突然の円高、第二には、企業収益が非常に低下しておりまして個人消費支出に大きな影響があるんじゃないだろうかという問題、それから第三には、在庫調整宮澤長官は三、四月ごろには完了するとおっしゃっていましたけれども、いろいろな調査では秋口までずれ込み、あるいは適正水準が下がっているというような調査の結果もあらわれておりますが、これはどうなんでしょうか。それから第四には、いわゆるボトルネック、公共投資が消化できるかという問題、土地の問題、あるいは技術公務員や建設労務者の不足の問題、あるいは砂利なんかの骨材の不足の問題、特に市町村レベルにおいては非常に大変でございますが、この四つのマイナス要素を宮澤長官はどのように考えておりますか。
  30. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 円高という問題は、何円ということもさることながら、一種のそういう不安定要因というものが経済運営には非常にぐあいが悪いものでございますから、何とかこれが早く安定をしてほしいと考えております。これが一つの成長の路線上でむずかしい問題でありますことはもう御指摘のとおりであります。  それから次に、消費でございますが、ただいまのところ生産関連ではわりにいい数字が出てまいっておりますが、消費の方がなかなかいい数字が出てきておらないことは御指摘のとおりであります。これは、しかし、経済全体がだんだん上向くのだということが消費者の心理に、つまり所得、雇用の面を通じて反映するのに多少時間がかかると思っておりますので、私は、いずれこれもそういう時期が来るであろうと考えております。これは、したがいまして、ややおくれる要素であるということは認めなければならないと思います。  次に、設備投資でございますが、これはもともと私ども製造業では余り大きなものを期待しておりません。電力には大きな期待を寄せておりますけれども、こういう経済情勢で製造業の大きな設備投資があるとは、もともとこの五十三年度単年度内には考えておらないわけでございます。  次に、在庫でございますが、確かに一部のもの、ことに構造不況業種のもの、あるいは非鉄金属、原材料の中で鉄鋼業の原材料でありますとか、石油、石炭、これは備蓄の関係がございますが、原材料の一部、そういうものの在庫調整におくれが出るということはそのとおりでありますけれども、大局的に見まして、私はこの在庫の問題というのは、大体、もう一つの方向に向かって動き出したというふうに考えておるわけでございます。もともと適正在庫という言葉も漠然とした言葉でございますし、調整という言葉もそうでございますから、その時期をいつとかっちり言うことの方が本当はちょっと無理がありますわけで、私が春ごろに、あるいはお人によりましては新年度ごろにと言われる、どれでもよろしいわけで、その時期ごろにはほぼ在庫調整は完了するということは大体皆さんの御意見が一致しているのではないか。ただ、これはいわゆる減量経営のもとでありますし、構造不況業種の問題が別途ございますから、だからといってこれで景気が一気に上昇するというわけのものではない。この点についても関係者の認識は一致しておるというふうに考えております。
  31. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 公共事業の消化に当たりまして、ことに市町村の技術者不足はボトルネックではないか、かような御指摘でございました。国の公共事業の七割を超えますものがいわゆる補助事業で地方がやるのでありますし、かつまた、五十三年度は大量の単独事業をやってもらおう、かように考えておりますので、したがって、問題点の一つが技術者の不足でありますことは御指摘のとおりでございます。  ただ、地方団体におきましては、いろいろ工夫をいたしまして技術者の不足を補うような分別をいたしておるのでありますし、ことに地方の実情を見ますと、一般行政の職員は減少させる中において技術者の増加を図っておる、かように日ごろからいろいろ工夫もこらしてきておるのでありますし、かつまた、公共事業の消化に当たりましていろいろ工夫をこらしておりますから、私はボトルネックではあろうかとは思いますけれども、しかし、消化にはまず支障がないのではないか、かように判断をいたしておるところであります。
  32. 多田省吾

    多田省吾君 自治大臣にお尋ねしますけれども、首都圏のある県では、技術公務員が不足いたしまして、月間百時間以上の残業をしているとか、あるいは四国の松山市におきましては、技術公務員の不足のために民間企業から二十人も出向を頼んでやっと消化を行っているとか、いろいろな問題が起こっているわけです。こういった実態を自治大臣は把握しておりますか。
  33. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 技術者の不足を補いますために、地方団体におきましては、すぐれた技術を持っておりながら一般行政に携わっている人もずいぶんおりますから、さような方々の配置転換をいたしましたり、なお設計等につきましてできるだけ工夫をこらしてまいりましたり、中央への協議も簡略化する、かような方法もとられておるのでありまして、ほとんどの都道府県が公共事業の推進本部を設けまして推進に当たり、その本部におきましていろいろ工夫をこらしております。  そこで、ただいま御指摘の松山市の場合は、民間企業から約二十名程度の技術者を県に迎えまして公共事業の執行に遺漏なきを期してまいりたい、かような工夫をいたしておりますようなことでございます。ただ、民間に在籍のまま公務員として採用いたしますことにはいろいろ問題点がないでもないのでありまして、たとえば公務員法あるいは規則、条例等の適用を当然受けるのでありますから、さような工夫もこらしながら民間の技術も活用いたしたい、かような考え方を持っており、これは工夫の一つであろうと思うのでございますから、県とよく連絡をいたしまして市の指導に遺漏なきを期したい、かような考え方で対処いたしているところであります。
  34. 多田省吾

    多田省吾君 終わりに建設大臣に二点お尋ねいたします。  わが党の調査あるいは建設省の調査でも明らかになりましたが、下請代金の前払い金などが滞ったり、あるいは資材購入に当たって数多くのいろいろな下にいくほど問題がございます。私の調査でも数例がありますけれども、建設省の事務次官通達その他の行政指導が何回か行われているにもかかわらず、なかなか是正されておりません。そこで、こうした現状をどうするのか、厳しく臨むのは当然といたしましても具体的にどうするのか、また最も厳しい措置として指名停止なんかの処分もあるのかどうかお尋ねしたいと思います。
  35. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 建設省におきまして抽出調査をいたしてみた結果が昨年の暮れに出ておるんでありますが、その場合、一次下請業者が七五%、二次下請業者が二三%、まあその辺が非常にパーセンテージが高いんでありますが、また手形の場合も六十日を超え九十日以下が三十五件の一四%、九十日を超え百二十日以下が二九・六%というようなことでございます。これらの状況を概観してみまするに、私どもとしては、元請が下請に対して不当にいろいろ圧迫をしておるとは見ないんであります。  この手形期間なんかがただいま申し上げたように若干長いものがございまするが、しかし、建設業法の上から言えば、割り引きのできないようなそういう不良の手形であればこれは問題であると思うんでありまするが、そういうような事実は余り私どもの方には言ってまいりません。そういうわけでありまするから、元請、下請間がしっかりしておることが好ましいのでありまするので、中央建設業審議会の勧告のようなものもございまして、標準契約約款を結んで元請、下請の関係をしっかりしたものにしておこう、そういうことによっていろいろ言われておることがそう心配なく行い得られるものではないかというふうに考えておる次第でございます。
  36. 多田省吾

    多田省吾君 会計検査院いらしていますか。——一点お尋ねいたしますが、生コンその他の資材納入業者は、国等の発注段階よりも相当低い価格で買いたたかれた上に、長期サイト手形払いを余儀なくされております。その金利分を考えると、実際にはもっと低価格で納入している理屈になりますが、これが実勢価格となりますと、国等の発注単価、ひいては予定価格が高過ぎるということになりませんか。そのような事実があった場合、検査院といたしましては調査する必要があるのではないかと思いますが、どうですか。
  37. 松尾恭一郎

    説明員松尾恭一郎君) 御指摘の点は、現在の厳しい経済情勢のもとで納入業者が無理をしてでも仕事を得たいということで、そういう面から生じた面もあるとは思いますけれども、そのような納入価格が世の中のいわゆる実勢価格であるというようなことになりますと、国等の積算単価、ひいては予定価格、これが高過ぎるということになると思います。それから、現在のところ、そういう具体的事実を承知しているわけではございませんが、国等の契約価格に疑問が生ずるような具体的事実がありますれば、検査院としても、このことを十分考慮に入れまして検査をしてみたいと考えております。
  38. 多田省吾

    多田省吾君 次に、私は外交、防衛問題について若干お尋ねいたします。  最初は日中問題でございますが、報道によりますと、あすから外務省の田島課長が三日間にわたって北京に派遣される。また園田外務大臣は自民党の三役の方々に訪中のお願いをしたとか、あるいは田島課長の仕事ですが、日中平和友好条約締結についての細部の打ち合わせも多分行われるのではないかというような観測もあるわけでございますが、どのようなお考えで田島課長を派遣されるのか。また、四日に、二回目の佐藤大使と韓念竜外務次官との話し合いが行われたわけでございますが、三回目の予備折衝はどのような予定になっておるのか、その辺をお尋ねいたします。
  39. 園田直

    国務大臣(園田直君) お答えをいたします。  田島課長を北京に派遣いたしますのは、佐藤大使と外務省の間の業務連絡でございます。だんだん手順が詰まってまいりますると、業務的な連絡がだんだんふえてくるわけであります。今後も必要があれば業務連絡のために大使との間に使いを派遣することは考えております。  それから佐藤大使と韓念竜との会談は、引き続いて第三回目も行われるであろうと判断をいたしますが、これは相手のあることでございますから、いつになるかはわかりません。  それから新聞記事で、私が党三役に訪中についてお許しを得たという記事は間違いでございます。昨日、閣議前、月例経済報告があって、それが閣議の時間になって閣議が始まる。全部立ちました。その立った瞬間一分間ぐらいの時間で、次官、局長からそれぞれ経過は三役に報告をいたしておりますが、順調に大体進んでおりますと、したがいましてこれがだんだん詰まってくれば、あるいは外務大臣の訪中ということもあるかもわかりませんが、これは必要に応じ、総理からの命令があったらそれはお願いをしなきゃならぬと思うと、そういうことで党の方に対する御理解を得るためにはまだ時期がちょっと早いと思いますので、そういう時期が来ましたらよろしくと、こういう業務の見通しを申しただけであります。
  40. 多田省吾

    多田省吾君 しかし、だれが考えましても、この時期に田島課長を三日間派遣するということは、日中平和条約についての佐藤大使との間の細部の打ち合わせなんか全然やらないんだというわけにはまいらないと思いますし、いろいろなそのような話し合いがある程度は行われるんじゃないですか。
  41. 園田直

    国務大臣(園田直君) だんだん話し合いが進んでくれば、だれが考えても業務連絡は必要であるということは御理解いただけると存じます。
  42. 多田省吾

    多田省吾君 最近、この日中平和友好条約締結に向かっての空気が非常に微妙なときになっております。総理大臣としましては、熱意を持っていまこそがんばるんだと、こういうお気持ちを強固に持っておられるのかどうか、その御決意のほどをお聞きしたいと思います。
  43. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この条約問題は、日中双方が満足し得る状態においてなるべく早く締結したい、こういう考え方でありまして、ずっとこの考え方を推し進めておる、また今後も推し進めていく、こういう決意でございます。
  44. 多田省吾

    多田省吾君 次に、この前、八日の本予算委員会峯山議員の質問の憲法と核の問題、憲法第九条と核の問題で御質問したいと思います。  峯山議員は、あくまでも憲法第九条解釈にしぼって、第九条に、核を持てない、核を持てるという二つの解釈が可能とするならば、最高裁判決もない以上、国民の大部分の強い要望をとりまして核を持てないと解釈すべきではないか、核を持てると解釈する理由を示せと迫りましたが、憲法解釈の問題と、それから政治判断の問題が混乱しましたので、文書の見解を求めました。九日の質疑開始の直前に文書が示されたものですから、本日は峯山議員が関連質問をいたしますので、一応、先般出された文書を読み上げていただきたいと思います。
  45. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 峯山委員の御要望によりまして、一昨日、書面をもってお示しいたしました「核兵器の保有に関する憲法第九条の解釈について」という文書を朗読いたします。  一 政府は、従来から、自衛のための必要最小限度を超えない実力を保持することは憲法第九条第二項によっても禁止されておらず、したがって、右の限度の範囲内にとどまるものである限り、核兵器であると通常兵器であるとを問わず、これを保有することは同項の禁ずるところではないとの解釈をとってきている。  二 憲法のみならずおよそ法令については、これを解釈する者によっていろいろの説が存することがあり得るものであるが、政府としては、憲法第九条第二項に関する解釈については、一に述べた解釈が法解釈論として正しいものであると信じており、これ以外の見解はとり得ないところである。  三 憲法上その保有を禁じられていないものを含め、一切の核兵器について、政府は、政策として非核三原則によりこれを保有しないこととしており、また、法律上及び条約上においても、原子力基本法及び核兵器不拡散条約の規定によりその保有が禁止されているところであるが、これらのことと核兵器の保有に関する憲法第九条の法的解釈とは全く別の問題である。  以上のとおりでございます。
  46. 峯山昭範

    峯山昭範君 関連。
  47. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連質疑を許します。峯山君。
  48. 峯山昭範

    峯山昭範君 ただいまの統一見解は、私が求めましたことには一つも答えていない。  これは、総理、聞いてもらいたいんですけれども、政府のこの見解は、従来政府がとっているいわゆる憲法第九条の解釈上の説明だけで、私が要求しましたのは、いろいろな解釈がある中で、持てるという解釈をなぜ政府がとっているのか、その点を明確にしてもらいたいと要求しているわけですね、答弁を。それがまず第一点。  それから、核兵器が憲法九条上保有できるかどうかというこの議論はいろいろある、これは私も認めるわけです。しかし、その中でどれをとるかということですね。これは政府が認めておりますように、これはいろんな議論がある中でそのどれをとるかということは、それは政策的な側面なんですね、結局、総理。そうしますと、そういうような意味では、これは結局なぜ持てるという方をとるかという問題についての説明が一言もなされていないということです。それをきちっとしてもらいたいということです。  それから、もう一点は、非核三原則というこの問題については、一昨日も総理の見解を求めましたが、今回の統一見解では、政府の政策的側面だけでとらえていまして、従来、憲法的国是である、こういうふうにかねがね総理が言っておりましたこの憲法的国是という問題とは大分後退した答弁になっております。この二点について御答弁願いたい。
  49. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 憲法第九条第二項と核兵器との関係についての政府の解釈は、先ほど読み上げたとおりでございまして、これは従来から一貫して政府がとっている解釈でございます。で、いま峯山先生は、いろんな説があるんだから、非核三原則を言っているくらいならばそういう線に沿った解釈をとるべきでないかというふうな御見解のように承りましたけれども、憲法の解釈論と、それから政策、どういう選択をするかということとは、これはもうこの前も申し上げましたように、全く別のことでございまして、解釈は解釈、運用なり、政策は政策、これは別の問題でございます。  そこで、法令というものの性質上、憲法を含め法令というものの性質上、人によっていろんな説があり得ることは、これはもう避けがたいところでございまして、政府がどうして先ほど読み上げましたような説をとっているかということを申し上げますと、それは憲法をつくづくと、つらつらと読みますと、たとえば憲法前文などを見ますと、憲法前文には「われらは、全世界の国民が、ひとしく」「平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と、こういう個所があるわけなんですが、全世界の国民が平和のうちに生存する権利があることを確認しておりながら、肝心の日本国民は、その武力攻撃があった場合に、それに抵抗してはいけないということはあり得ないわけでありまして、したがいまして日本が独立国として持っておる固有の自衛権、この自衛権を担保するために必要最小限度の武力を持つことは憲法九条二項は禁止していない。  そこで、憲法九条二項をまたつらつら読みますと、これじゃ何も核がいいとか核がいけぬとか言っているわけじゃないのであって、ですから自衛のために必要な最小限度の武器、自衛力はこれは憲法は禁止しておらないという解釈になるわけでございまして、どこにも……
  50. 峯山昭範

    峯山昭範君 なぜとらないという解釈をとるかと聞いているんです。
  51. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) つまり、政府が、先ほど読みました解釈をとっている理由をいま申し上げたわけでございます。
  52. 峯山昭範

    峯山昭範君 私の質問に一言も答弁していないですよ、委員長。  もう一回、私説明しますけれども、私の質問の趣旨は、憲法と核兵器についての解釈論や学説をとやかく言っているんではないんです。私は、いかなる解釈をとるかというのは、いろんな解釈がある中でどの解釈をとるかというのは、これは政治の問題であって、政府のこの問題に対する解釈の選択についての態度を問題にしているわけです。福田内閣は、ほかの立場、いろんな解釈があることを認めながら、憲法上は核兵器を持てるという解釈が正しいと信ずる、これ以外の解釈はあり得ないという答弁がここに出ているわけです。ということは、その理由は何かと、その理由を聞いているわけです。その理由は一言も説明されていない、それが一つ。  それから、わが国は広島、長崎で世界で唯一の被爆国ですね。そういう悲惨な体験をこうむっているわけです。われわれ国民としては、この核兵器の絶滅というのを心から願望しているわけですね。そうしますと、この願望、決意というのが国会における非核三原則の決議となってあらわれているわけです。総理もこのことは認めているわけです。この間の答弁でも間接民主主義という言葉を使いました。憲法的国是であるともおっしゃいました。だからこそ憲法上も核兵器を持てないと解釈すのが私は正しいと、こう思っているわけです。なぜ政府がこうした見解をとらないのか、核兵器を持たないというふうに解釈する方が正しいと私は思っているわけです。その疑問に私を納得させるだけの説明をしてほしい、こう言っているわけです。政府がこういう核兵器も憲法上持てるという解釈をとることは、逆に言えば、国民的願望に基づいたものであるとでも考えているのかどうか、そういうことになってきますね。だから、私は、そういうような意味で、この際、憲法の解釈についても国民の願望、合意に沿った解釈をとるのが最も正しいんだと、そういうように私は思っているわけです。そういうような意味では、この第二項目の「一に述べた解釈が法解釈論として正しいものであると信じて」いる、その理由を説明しなさいと、こう言っているわけです。
  53. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 峯山君、関連質疑の時間が来ておりますから。
  54. 峯山昭範

    峯山昭範君 来ていますけれども、これをちょと……。
  55. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 国会におけるその非核三原則を堅持しろというような御決議があって、それでその核は持たないという選択をしなさいという御決議があるわけでございますから、それで政府はその政策の選択として非核三原則を堅持しておる、そのことと法律の解釈というのは、それは政策とは別なんですよ、それは。
  56. 峯山昭範

    峯山昭範君 いや、だからそれはそれでわかっているんです。
  57. 多田省吾

    多田省吾君 そういう解釈をした理由を……。
  58. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) それは先ほど申し上げましたように、憲法九条第二項をつらつら読んでみると、そうすると、それは自衛のために……
  59. 峯山昭範

    峯山昭範君 持てるという解釈と持てないという解釈とあるんでしょう。持てる方の理由を説明しなさいよ、理由を。
  60. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 自衛のために必要な最小限度の自衛力は、これは憲法解釈として禁止しているものでないと。そして自衛のために必要な自衛力というものの中には、これは何も通常兵器に限るというふうなことも書いてないわけなんですから、ですから、したがって……
  61. 峯山昭範

    峯山昭範君 その中身の問題じゃないんだ。
  62. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 自衛のために必要な非常に小型な、あるいは防御専用のものがもし開発されれば……
  63. 峯山昭範

    峯山昭範君 違う、違う。
  64. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) それは憲法九条二項の……
  65. 峯山昭範

    峯山昭範君 そんなこと違う。
  66. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 保有の禁止の対象ではないという解釈、これは法律上の論理的な当然の帰結でございまして……
  67. 峯山昭範

    峯山昭範君 違う、違う、違う。
  68. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) これはもう、わわれれはそれが正しい解釈だと……
  69. 峯山昭範

    峯山昭範君 そんなことね、そんなこと聞いてないよ。
  70. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) いうふうに信じているわけでございます。
  71. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは委員長ね、文書で後でもう一回出していただきたい。関連ですから、一言それじゃ言います。
  72. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 委員長として申し上げますが、憲法解釈のいろいろある中で、核兵器も持ち得るという解釈をしておる理由を言えと、そういうことでございますね。
  73. 峯山昭範

    峯山昭範君 そういうことです。
  74. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 文書で出せますか。
  75. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 私も、政府の……
  76. 多田省吾

    多田省吾君 じゃ、法務大臣、文書で出してくれるか。
  77. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 一員でございまして、政府の解釈をいま申し上げておるわけでございますから、しかも、憲法にかかわりの最も大きい法務大臣でありますので、政府の立場を私の口からもう一度申し上げてみたいと思います。  峯山さんは、憲法九条の解釈にはいろいろあると、それはあります。現に自衛隊を持てないという解釈をする学者あるいは政党があるわけでございます。憲法九条はいろいろな解釈をされておりますが、私ども政府あるいは自民党と申してもいいでしょう、これは一国が自衛権を持ち、国の存立と国民を安全に保つためには、やはり国を防ぐだけの備えをする、こういうことは憲法は認めておるという解釈をいたしております。  これと同じことでありまして、その中に自衛のためにはどういう武器等を持てるか、どういう力を備えるかということに限界があります。それを言葉で言う人があれば、専守防衛の範囲内であると、こういうこと。その専守防衛の範囲内で、あるいは飛行機が持てるか、鉄砲が持てるか、大砲が持てるか、あるいは今日進んできておる兵器の中の核兵器が持てるかという問題があるわけでございます。核兵器ももちろん防衛の範囲内において持てるという解釈をすべきは当然であるというわれわれは憲法の解釈をいたしておるということでございます。  ただ、しかし、わが国は、いまもおっしゃいましたように、よく言われておりますように、人類始まって以来核兵器の攻撃を受けた唯一の民族である。いま世界は核兵器のためにおののいておる。そういう洗礼を受けた民族でありますから、何とか世界から、人類の社会から核兵器というものを絶滅できないかということがわれわれの願望である、また国民の願望であります。でありますから、自衛の範囲でも、核兵器というものは持たないことがいいんだと、こういう立場をとっておる、そういう政策をとっておる。  これだけの違いでありまして、憲法の解釈に、そういう願望を持っておるんならば、憲法解釈のうちで自衛隊が持てないという解釈もあるんだから、なぜそれをとらないんだとおっしゃるのは、それはちょっと見当外れだと私は思います。(発言する者あり)
  78. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) だから、まあ答弁はお聞きいただきまして、私が先ほど申し上げた点について、政府として……(発言する者あり)それでは、後ほどその点を文書でお出しします。  なお、よく打ち合わせを願います。食い違わないように。
  79. 多田省吾

    多田省吾君 憲法解釈上いろいろな解釈ができるにもかかわらず、しかも唯一の被爆国であるわが国の政府がやはり核を持てないという決定をしない、憲法解釈をしないっていうのは非常に遺憾でございます。  私は、また別の側面から、一点だけ総理にお尋ねしておきたいと思います。  それは二月二十二日の衆議院外務委員会で、土井たか子委員が園田外務大臣に対しまして、憲法九条のみならず、憲法十三条また九十八条の二項等に基づきまして、この核の問題を質問したのに対して、園田外務大臣が数カ所で答弁をしておるわけです。その一カ所だけをちょっと読み上げますので、総理もちょっとごらんになっていただきたいと思います。  園田外務大臣「憲法九条だけ限定して見ると、法制的、法理論的な問題はあるかもわかりませんが、いまおっしゃいました結んだ条約は遵守しなければならぬ、それから憲法の各所に、日本国民の生命と財産を守るということが書いてあるわけでありますから、この精神からいっても、小型、大型であろうと、条約を結び、非核三原則の今日、憲法からいっても私は大型、小型は持てない。」、ずっと来まして「小型であろうとも、日本国民に被害を与えるおそれのあるようなものは、憲法の精神からいっても、いまおっしゃいました憲法の各所の条文からいっても私は持てない、このように申し上げておきたいと思います。」、こうおっしゃっておりますが、総理大臣もこれと同じお考えでございますね。違ってたら、これは大変な問題です。
  80. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはもうずいぶん長い答弁でございますので、これの趣旨をよく吟味していただく必要があろうかと思うのですが、結局、私は、まず私の考え方を申し上げますと、憲法第九条の解釈から言いますと、核兵器は、これは防御的なものである限り、必要最小限の防衛力としてこれが禁止されておると、こういうふうには思いません。しかしながら、条約並びに法律によって核兵器の保有ということは禁止をされておる、そういうことでございます。  それからまた、非核三原則という政策、これは非常に尊厳なる政策、憲法にも似た重みを持った政策であるというふうに考えられる政策、そういうようなことからいたしまして、この核兵器は政策的にまた条約的、法律的にこれを保有してはならない、このように考えております。  そこで、この答弁でございますが、大体、そういう趣旨の答弁をしておると思いまするけれども、憲法第九十何条でございましたでしょうか。
  81. 多田省吾

    多田省吾君 九十八条。十三条が生命の尊厳ですから、九十八条の二項です、条約遵守。
  82. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 条約遵守。条約遵守の憲法条項なんかがある。それで核不拡散条約を結んでおる、こういうようなことで、非常に間接的なことのつながりになりまするけれども、わが国の自衛隊が核兵器を一切持ってはならぬということは、その条約からくる憲法条項に由来しておるということもあるわけなんですが、憲法第九条の解釈論といたしましては、核は一切これが保有を禁ぜられておるという解釈はいたしておりませんです。
  83. 多田省吾

    多田省吾君 ですから、総理、もう一点だけ聞きますけれども、憲法十三条の生存の権利、またはいまおっしゃった憲法九十八条二項の条約の遵守というこの憲法の精神からいっても、それから憲法の各種の条文からいっても、核は持てないと外務大臣がおっしゃたことに異論はございませんね。総理大臣から、ある、ない、それだけお答えください、総理大臣から。
  84. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 人の言ったことですからね、これ一々言葉が照応するというわけじゃございませんけれども、第九条の趣旨から言いますれば、その解釈から言いますれば、核は一切これを保有すべからずということにはなっておりません。こういうふうに御理解願います。
  85. 多田省吾

    多田省吾君 あとの質問に答えてない。私の質問に答えてない。
  86. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 憲法九十八条第二項の条約遵守義務をお触れになりましたので、まずその点について御説明いたしますが、九十八条第二項は、条約を守らなければならない。そして日本は核防条約に入っているわけですから、核防条約の第二条によりまして、いわゆる非核兵器国として一切の核兵器は持っていけない、こう書いてあるわけなんで、したがいまして、もし仮に日本が小型であれ大型であれ核兵器を持てば条約に違反したことになって、ひいては九十八条第二項に違反したことになる、こういう関係になるわけでございます。  そこで、その大事なことは、九条二項というのは、これは先ほど来申しておりますように、それ自体としてどこまで持てるとか持てないとかという規範的意味内容を直接に書いている条文、ところが九十八条第二項というのは、これは中身は実は条約を守れと言っているだけで、その九十八条第二項が直接に規範的意味内容を持っているわけではないわけなんで、これは約束は守らなきゃならぬということはあたりまえのことなんで、これはパクタ・スント・セルバンダと申しまして、ローマ法以来の法理なんですよ。それを書いているわけなんで、書いた以上は憲法とは無縁ではないわけなんで、したがって約束を破ればこれは九十八条を通して、ひいては憲法に触れることになるという意味でおっしゃれば、それは私だって別に異存はないんです。ただ、九条二項のような規範的意味内容を持っている条文と、九十八条第二項のように抽象的なといいますか、それ自体として直接規範的な意味内容を持っているものでない条文、この二つの種類の違いはおわかりになるだろうと思うのですが、そういう違いを十分に御理解の上で九十八条違反になるのではないかとおっしゃるのならばそれはそのとおりなんで、私にも別に異存はございません。
  87. 多田省吾

    多田省吾君 そんなことはわかっているんだよ。言論の自由ですからお話しなさるのは自由ですけれども、そんなこと承知の上で質問しているんです。  「憲法の精神からいっても」「条文からいっても」「持てない」。それから、もう一つのこの下段においては、総理も私もこの「日本国憲法によってそういう核は絶対に持ちません、その証拠は日本国憲法であります」と、証拠として十三条あるいは九十八条を加味して外務大臣がおっしゃっていることは、私は、その部分に関しては非常にりっぱだと思う。総理が何もこれを認めないということじゃないんでしょう。もう一回御答弁願います。その精神でしょう。
  88. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま多田さんが読み上げてくださいました文言についてお答え申し上げますが、これはいま法制局長官からお答えいたしましたように、憲法第九十八条、条約の遵守規定があるわけですね、また条約そのものがすでに締結をされておるわけであります。核不拡散条約であります。そういうことで間接的ではありまするけれども、わが国は核兵器を持ってはならぬということが憲法第九十八条によって決められておる、こういうふうに言ってもいいんです。いいんですけれども、憲法第九条の解釈論とまたこれを混同してはならぬ。憲法第九条、これにおきまして、わが国が核兵器は一切持ってはならぬというふうには決められておらぬということは強調しておきます。
  89. 多田省吾

    多田省吾君 ですから、私は、憲法全体の法理論としては外務大臣のおっしゃっておるとおりになるでしょうと、そのように申し上げているわけです。
  90. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そう言われると、そうですというふうには言い切れないんです。  と申しますのは、たとえばですよ、たとえば万一核不拡散条約、これを日本が脱退をするということになった場合には、条約上の遵守義務というものはありませんから、先ほど申し上げましたような間接的意味における憲法に由来する九十八条の問題というものは消えちゃうんです。第九条の問題だけが残るということなんです。憲法全体の思想といたしましては、私は、第九条だと思うのです。第九条によって、わが国は専守防衛的意味における核兵器はこれを持てる。ただ、別の法理によりまして、また別の政策によりまして、そういうふうになっておらぬというだけのことである。
  91. 多田省吾

    多田省吾君 私は、そういう総理答弁では、本当に外務大臣が、憲法の精神からいっても、あるいは条文の各所からいっても、憲法上核は持てないんだ、あるいは持たないんだと強く決意している。それに対して、総理大臣は、九十八条のところは核防条約を脱退したら持てるじゃないかとか、そういう御答弁では、私は、非常に憲法に対する認識といいますか、また政治姿勢といいますか、あるいは唯一の被爆国であるわが国の総理としては、非常に消極的であり、また平和主義的ではない、このように強く感ずるわけです。  それで、私は、外務大臣の御答弁総理の御答弁の食い違いも非常にあると思いますけれども、今度の読売新聞のアンケート調査でも、世論調査でも、どうもいまの政府の支持率が二五%ですか、非常に下がっている。こういうところも私はそういう政治姿勢から生じてくるのじゃないか、このように感じられてなりません。私はもう非常に不満でございます。  時間もございませんので、私は、次にまいりますけれども、柏市のロランCの建設予定がいま電波障害を起こす可能性があるのでということで工事を中断したのか、あるいは断念したのかわかりませんが、支障を来しております。これは、防衛庁、どういうことでございましょう。
  92. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 柏通信所の中にあります工事は、昨年の暮れ以来、中止されております。これは米軍の説明によりますと、周辺の電波障害を起こす可能性があるということから、その程度あるいは解決策について検討中であるということで、その間工事を一時取りやめたものであるというふうに承知しております。
  93. 多田省吾

    多田省吾君 それで、この柏市のロランCの建設の問題で、昭和三十八年に北海道の十勝太にロランCを建設したときにも電波障害が起こったと聞いておりますけれども、それから十五年たった今日、工事を中断せざるを得ないような新たな電波障害が起こる可能性があるということは——この柏のロランCというのは十勝太と同じものであるかどうか、また、地元では一切電波障害がないんだ、十勝太と同じ施設をつくるのだと説明をされておりますけれども、この電波障害があるということでなお一層強い不安を感じているわけでございますが、もうちょっと明確にその点の御説明を願いたいと思います。
  94. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) 十勝太も、御承知のとおり、ロランCの施設があるわけでございます。ロランCの利用いたします周波数は、十勝太であれ柏であれ、あるいは硫黄島——南鳥島でございますが、同じでございます。出力は局によって相違がございますけれども、周波数は同じでございます。ただ、周辺の状況によりまして、周辺にどういう施設があるかによってその障害を受ける対応はさまざまである、こういうことであるわけであります。  十勝太の場合には、三十八年に電波障害の問題がございまして、これは対策を講じまして解決されておるわけでございます。柏におきましては、十勝太と周辺の状況は違うわけでございますので、及ぼす影響も違ってくるということで、いまその障害の程度と、それからその防ぐための対策について米側で検討中である、こういうことでございます。
  95. 多田省吾

    多田省吾君 郵政省の方でも米軍と協議されているそうですけれども、いつごろから柏のロランCによる電波障害を協議したのか。また、工事が始まった時点で障害がなかったのか。また、米軍に対していかなる障害があると通告しているのか。また、その障害の除去は技術的に可能なものであるかどうか、お尋ねしたいと思います。
  96. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) 郵政省としましては、施設の工事には全く関与はいたしておりませんが、電波障害の可能性については、昨年八月、米軍から協議をしてきて以来、昨年の十一月、当方から電波障害の可能性について指摘するまでの間、米軍と十分協議を行ってあります。  したがって、十一月十四日、きわめてむずかしい問題があるので、要求周波数の使用はできないと考えられるという旨のメモがありました。そこで、御承知のとおりに、日米合同会議の下部組織に技術連絡部というのがございまするが、これからさらに五十三年一月十三日に、この会合の席上、柏ロランC局に対する周波数の要求はキャンセルをするという旨のメモランダムを受けておりますが、二月三日に、今度は、米軍は、日本における現存のロランCシステムの精度向上のための可能な代替案について引き続いて検討をしておりまして、経費の点を考慮する要があるが、柏の代替案としては残っているという、これまたメモが送付された現状でございます。
  97. 多田省吾

    多田省吾君 防衛施設庁では、盛んに地元に対して、このロランCの建設は平和目的であると強調されておりますけれども、時間がありませんから長くは申せませんけれども、私たちの調査でも、あくまでもアメリカの極東戦略の一環で、アメリカが日本海で失った制海権を取り戻して、あるいは朝鮮半島有事の際になくてはならない施設だと、このように考えておりますけれども、防衛施設庁はどうこれを説明されるんですか。
  98. 亘理彰

    政府委員(亘理彰君) かねてから御説明いたしておりますが、このロランC局は、米国の国防省の予算によりまして設置いたしまして、米軍のコーストガードが運営する、こういうことでございます。しかし、その利用についてはオープンになっておりまして、ロランマップ並びにロラン受信機はだれでもこれを利用できる、こういうことで、現に、漁船等の利用も二百海里時代等を迎えて広がっておるというふうにも聞いておるわけでございます。したがって、そういう意味においては、米軍の設置、運用する施設でありますが、同時に、汎用的な目的のために、船舶、航空機の航行の支援に利用されておる、こういうふうに理解しております。
  99. 多田省吾

    多田省吾君 このロランCは世界の二十四カ所にあるわけですが、ほとんどもう人口の少ない海岸べりにあるわけです。柏市は、御存じのように、人口もふえておりますし、東京から三十キロ圏内にございます。私は、このような軍事的意味を持っているところのロランCというものは、この際、住民の強い反対もありますし、署名運動なんかももう十万近く集まっております。国として、これは全面返還を要求すべきものだと私は思いますが、総理はいかがですか。
  100. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、これはいろいろお話を承りましたが、そう支障があるような問題とも聞いておらないのであります。既定の方針でやっていくという考えですが、御所見、御注意の点は篤と承っておきます。
  101. 多田省吾

    多田省吾君 次に、私は、一つは難民救済のことで、防衛庁並びに外務省に対してお尋ねしたいと思います。  三月二日の衆議院予算委第一分科会で、防衛庁の伊藤防衛局長は、朝鮮有事の際、日本政府が難民救済に当たる場合に、自衛隊が協力することはあり得ると。また、三月三日の同じく衆議院予算委員会第二分科会で、外務省の中江アジア局長は、難民の救済に当たり自衛隊の派遣もあり得る。特に国際法と人道上の問題が抵触する場合は、国際法に反しても、その違法性は阻却される、このように述べております。  が、しかし、私は、これは非常に危険であり、自衛隊の海外派兵にもつながるおそれがありますし、また、現実に韓国の各マスコミが非常によけいなおせっかいだと、そのような極限状態を想定することは荒唐無稽だと非常に反発もしているわけでございます。私は、どういうお考えでそのことをおっしゃったのか、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  102. 園田直

    国務大臣(園田直君) 中江局長答弁関係いたしておりますから、まず外務大臣からお答えをいたします。  先般の中江局長答弁は、いま言われた国際法と人道上の考慮の関係について述べたものでありまして、憲法、自衛隊法等国内法上の観点から問題があることは、その発言の中にはっきり言っているところでございます。したがいまして、御承知のとおりに、外国の領海内における難民救済活動は、国際法上の領海制度のもとにおける無害通航には該当いたしておりませんから、沿岸国の事前の同意なしには行い得ないとの議論もあり得るとして、かかる事前の同意を取りつけることが不可能な場合、目の前に難民が溺死をする、あるいは生命の危殆に瀕している、こういう場合にはやむを得なくそういうこともあり得る、こういうことを言ったのでありまして、なぜこういうことを言ったか、これは一に質問者の方から、もしそういうことがあったら、領海外で、すれすれのところで難民が死にかかっておったらどうするかと、こういう質問を受けたから、いろいろ問題はあるが、人道上から、その場合に見捨てて逃げるわけにはまいりませんと、こういう趣旨の発言をしたわけであります。
  103. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 私が御答弁申し上げました内容について御説明申し上げますと、私は四点について御説明申し上げたわけでございます。あのときの御質問は、朝鮮半島で紛争が起きた場合には難民が予想される、その場合に、自衛隊はこれを救済することがあるのかという御質問でございました。  そこで、私が申し上げましたのは、まず第一点といたしまして、自衛隊が直接難民を救済するという任務は持っておりませんということを申し上げました。さらに、政府が難民を救済するという方針をお決めになった場合、まず警察、海上保安庁がこの任に当たるであろうということを申し上げました。その際に、自衛隊も協力するということはあり得るだろう、これは人道的な見地から協力することはあり得るだろうということを御答弁申し上げたわけでございます。  ちょうどこの御質問のありました一カ月ほど前に、御承知のように長崎県の五島列島でシンガポールの船が転覆をいたしました。そして、たまたまそのそばで夜間訓練をやっておりました海上自衛隊の艦艇がこの救済に当たったわけでございます。当時は非常に荒天でございまして、長崎からの救援というのは海上保安庁は七時間後に着いております。海上自衛隊が直ちに救済をいたしましたので、ボートで漂流をしておりました十人が救われました。海中で泳いでおりました十二人の人は救い上げましたが、その後亡くなったわけでございます。そのような状況を想定しておりましてお答えした次第でございます。
  104. 多田省吾

    多田省吾君 趣旨はお聞きいたしましたが、それではあれですか、人道上の問題であるならば、国籍を問わず、朝鮮民主主義人民共和国の方であろうと、あるいは非武装の軍人であろうと、一切問わずに救済する場合があり得る、こういうことでございますか、外務大臣。
  105. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 先生がおっしゃられるように、派兵という問題については憲法が許しておりません。また、ただいまの難民というような問題につきましても自衛隊法によって許されない、こういうことであります。
  106. 多田省吾

    多田省吾君 これはやはり答弁によりましては内政干渉とも、あるいは日本の大国意識ともとられますので、御注意いただきたいと思います。  私は、最後に、このたびのチームスピリット78、米韓合同演習と事前協議の問題について若干お尋ねしたいと思います。  在韓米軍撤退に伴う補完措置として、現在、米韓合同演習、チームスピリット78が行われておりますが、この演習の目的、それから今度の演習で日本を中継して韓国に大量の米軍が投入されていますが、どのくらいの規模の人数で、どのくらいの装備の軍隊が移動したのかお尋ねしたいと思います。
  107. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) お答え申し上げます。  米韓の合同演習は、何分にも他国の演習でございますので、その当事者であるところのアメリカの発表ぶりに照らしまして、ただいまの御質問にお答え申し上げたいと存じますが、アメリカ側の発表ぶりによりますれば、この演習の目的は、統合連合の空、海及び陸上作戦の計画、実施及び評価により指揮官、幕僚及び部隊を演練することにある。その演習の範囲は、韓国への戦略的展開、制空、米韓地上軍に対する近接航空支援、連合水陸両用作戦、機動部隊に対する兵たん支援及び模擬の空、海、陸上戦闘の調整などを含むであろう、こういうことでございます。  それから、演習の規模につきましては、私どもがアメリカ側から一般的に説明を受けているところによりますれば、この演習に参加している米軍は総計約三万三百人、そのうち日本に関連いたしますところの米軍は約一万四千人、在韓米軍が約七千三百人、その他米本土などから約九千人というのが参加しておるというふうに承知いたしております。
  108. 多田省吾

    多田省吾君 その際、米国の地対地戦術核ミサイル、ランスの一個大隊が空輸されまして模擬展開されているようですが、このランスの部隊は日本を中継基地として使用したのかどうかお尋ねします。
  109. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ランスの部隊は、横田基地に立ち寄って現地に赴いたというふうにアメリカ側から承知いたしております。
  110. 多田省吾

    多田省吾君 この横田に核ミサイル部隊が立ち寄ったこと自体は、事前協議の対象になりますか。
  111. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 御承知のように、ランスは核、非核両用のものであるというふうに承知いたしております。本件のごとく、アメリカの部隊が日本に立ち寄ること自体は、安保条約第六条の実施に関する交換公文におきますところの事前協議の対象にはならない。もちろん、核の持ち込みがあれば当然に事前協議の対象になりますが、そうでない限りは事前協議の対象にならない、こういうふうに理解いたしております。
  112. 多田省吾

    多田省吾君 それでは、横田に立ち寄ったときに核、非核両用の核ミサイル部隊であるランスの部隊は核を持っていなかったということははっきりしておりますか。
  113. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 核の持ち込みにつきましては、これは事前協議の対象とするというのがアメリカ側の条約に基づくところの明確な義務でございます。そのようなことがあれば、当然に事前協議を仕掛けてくるべきものでございますが、本件について事前協議は特に行われておらない、こういうことでございます。
  114. 多田省吾

    多田省吾君 昔からの論議でございますが、総理、事前協議というのはわが方から申し入れできますか。
  115. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはもう先方からこちらへ持ちかけるものであります。
  116. 多田省吾

    多田省吾君 しかし、昭和三十九年二月十八日の衆議院予算第二分科会で、大平外務大臣は、当方からもできると承知していると。昭和四十五年の五月八日の衆議院外務委員会で、愛知外務大臣は、運用上こちらに発議権があると、このように答弁していますが、どうですか。
  117. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいま総理からお答えがありましたように、事前協議の問題は、純粋に法律的な立場から申し上げれば、当然にその事前協議の対象になっているところの行動をとりたいと希望するところの当事者、すなわちアメリカ側から行われるべきものでございます。他方、ただいま御指摘のような答弁にありますように、その事前協議の問題について日本側として米側と協議することを希望する事態があるのであれば、これは安保条約第四条に照らしまして、いわゆる随時協議とかいう形で事前協議の問題をアメリカ側に提起することは、これはいつでもできる、こういうことでございまして、御指摘の御答弁は、そういう趣旨をお答えになったものだというふうに理解いたしております。
  118. 多田省吾

    多田省吾君 私は、第四条の随時協議のことと関係なく、事前協議のことだけを聞いているのです。ですから、混乱させないでください。  いま三十九年あるいは四十五年の発議権がある、できると承知している、これは事前協議に関する質問に対する答弁でございますから、これはどうなんですか。
  119. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) もちろん、ただいま申しましたように、たとえば日本側から特定の事態に関連して事前協議があり得るのかどうかという照会を行うとか、事前協議があるべきものだと考えるというようなことを米側に伝えて協議を行うこと自身は当然にできるわけでございまして、それを純粋に法律的にどこの条文に即したものであるかということをお答えすれば、それは条約第四条の随時協議ということになるということを申し上げているわけでございまして、その内容自身につきましては、事前協議の問題を米側と協議することは当然可能な次第でございます。
  120. 多田省吾

    多田省吾君 総理大臣、いま事務当局の答弁のように、外務省ではもう事前協議は先方にのみあるのだと、そういう法解釈をとっているわけです。ところが、福田総理大臣は、四十七年四月十日の参議院予算委員会で、事前協議全般にわたって発議権の問題についても検討したい、このようにおっしゃっているわけです。私は、当然、事前協議制の申し入ればわが国にあってしかるべきものと思います。その検討が行われたのか、また、総理としてどうお考えか、お尋ねしたいと思います。
  121. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 事前協議は、これは法的にはどうしてもアメリカ側からということでございます。ただ、その運用上、こちらがいろいろ照会をするとか、意見を申し述べるとか、そういうことはあるわけでありまするが、正式な条約上の事前協議ということはアメリカ側だけからの問題である、このように御理解願いたいのであります。  それから、この事前協議のあり方についてその後検討したかと、こういうお話でありますが、この問題は外務省当局からお答えをすることにいたします。
  122. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 事前協議制度の運用に関する問題につきましては、昭和四十八年一月に開催されました第十四回日米安保協議委員会におきまして日本側から提起いたしました。その結果、日米間で討議が行われたわけでございますが、その結果、この事前協議制度の運用上の基本的枠組みにつきましては、日米双方の考え方が一致しているという点が再確認されまして、その具体的な運用は、日米間の相互信頼と現実の状況に即した密接な連絡協議によるべきであるとの点で意見の一致を見た次第でございます。  政府といたしましては、この委員会を通じて、日米双方における事前協議制度の運用上の理解が十分確認されたと考えておりまして、事前協議制度の運用の基本的枠組みについてさらに検討する必要はない、このように考えている次第でございます。
  123. 多田省吾

    多田省吾君 それから核について一すなわち装備の変更について、総理は、非核三原則の上に立って、核については常にノーと、そういう基本方針は変わらないと了解してよろしいのかどうか。
  124. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおりに考えております。
  125. 多田省吾

    多田省吾君 それならば、当然、アメリカにおいても、事前協議にかけても核においてはノーであるということをアメリカ側もはっきり知っておりますね。
  126. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 御承知のように、安保条約締結以来、アイゼンハワー大統領以下アメリカ側のトップレベルの首脳が、事前協議の問題に関しては、日本国政府の意思に反して行動することはないということを明確に明らかにしているわけでございまして、日本側がノーと言えばそれを受け入れる、こういうことでございます。
  127. 多田省吾

    多田省吾君 アメリカ側はそういうことを知っているにもかかわらず、もし仮定の質問ですが、事前協議を求めてきた場合はアメリカ側としてもよくよくな場合であるわけでございますが、いわば危急存亡の場合とでも申しますか、そういう場合であっても、この事前協議は、日本において戦争に巻き込まれない歯どめでございますから、いかなる場合でもわが国ではノーと言う、このように思ってよろしいですか。
  128. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) さように考えております。
  129. 多田省吾

    多田省吾君 わが国を中継いたしまして大量の米軍が一時通過とか、あるいは核の一時通過をする場合は、事前協議の対象になり得るのか、なり得ないのか、お答え願います。
  130. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 核の通過に関しましては、核兵器の持ち込みは一時的であろうとなかろうと、これは事前協議の対象であるということで、御指摘の問題は、事前協議の対象になるということでございます。
  131. 多田省吾

    多田省吾君 核だけではなしに、私は大量の米軍の一時通過も聞いたわけですが、どうですか。
  132. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 米軍がいわゆる日本国に配置をさせる、日本国の施設区域を本拠として駐留させるということであれば、これは配置における重要な変更の問題が生じますが、単なる通過は、これは事前協議の対象にはならないということでございます。
  133. 多田省吾

    多田省吾君 そうであるならば、駐留ではなくて、一個師団以上がわが国を中継してそして出ていく、こういう場合は対象になるのですか。
  134. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) ただいま申し上げましたように、単にわが国に立ち寄って、また他の地域に移動していくという場合には、これは事前協議の対象にはなりません。
  135. 多田省吾

    多田省吾君 その辺が私は非常に危険だと思うのです。このたびの演習でございますけれども、もし有事の場合、アメリカの師団が何回も何回も次々と日本に入ってきまして、そこから作戦を立てながら出ていく。わが国は後方支援基地になるということで、それでもなお、いま御答弁があったように、事前協議の対象にならないというのはおかしい。私は、それは配置と認めてもよろしいんじゃないかと、このように考えますが、どうですか。
  136. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) 先ほど申し上げましたように、米軍がわが国を本拠として駐留するという場合であれば、配置における重要な変更の問題が生ずることは事実でございますが、ただいまのように単に立ち寄って、他地域に移動していくということは、法律的に安保条約の六条の実施に関する交換公文の対象にはならないということを申し上げたわけでございます。  他方、先生御指摘のように、このような動きに対して日本としてそれじゃ何もできないのかということになれば、それはそうではないのでございまして、そのような動きがある場合に、日本側として関心を持つということであれば、当然に、たとえば条約第四条は「日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。」ことになっているわけでございまして、この条文によりまして、米側と十分な協議を行うということは、これは可能な次第でございます。
  137. 多田省吾

    多田省吾君 今度、韓国から韓国在留の米軍が撤退するわけでございますが、防衛庁においては、六月ごろからと言われておりますが、その具体的な話は聞いておりますか。
  138. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) これは昨年決定されました在韓米地上軍の撤退につきましては、第二歩兵師団を撤退するわけでございますが、従来から計画を持っております本年度中に最初の六千人が撤退する。それから二つの旅団についてはこの撤退の最終段階までとどめておく。さらに空軍力についてはこれを増強する。そのほかこれを四、五年以内に実行するというところで、撤退の計画につきましては、そのような連絡を受けているわけでございます。
  139. 多田省吾

    多田省吾君 その撤退の際、報道もされておりますように、韓国にあると言われている七百発に及ぶ核が同じくやはり撤去されるんじゃないか。その場合、まかり間違っても沖繩等に、一時寄留であっても持ってくるようなことは絶対にないと、そのように外務大臣は確約できますか。
  140. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 多田君、時間が来ております。
  141. 園田直

    国務大臣(園田直君) これについては、しばしば答弁してあるとおり、そういうことは絶対にないと確信をいたしております。
  142. 多田省吾

    多田省吾君 最後に、このたびは演習でございますが、沖繩を発進基地にするとか、いろいろな危険な姿があり、またわが国が戦争に巻き込まれるおそれというものも多分にあるわけです。佐藤総理がいわゆる韓国条項というものを結んでまいりましたけれども、私は、あくまでも朝鮮民主主義人民共和国を早く承認するとか、あるいは国交を回復させるとか、そういった平和的外交的手段によって私たちは平和を守るということに徹しまして、いささかも、こういうわが国の中にある米軍基地のために戦争に巻き込まれるおそれを生ずるとか、そういうことのないようにしっかりした運用を望みたい。総理に最後にお願いいたしまして、質問を終わります。
  143. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国といたしましては、世界の平和に貢献しなければならぬ、同時に、わが国を守り抜かなければなりません。そういう立場に立ちまして、心して平和外交、平和施策に徹してまいりたい、かように存じます。
  144. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で多田君の総括質疑は終了いたしました。(拍手)  午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後零時五十分から約一時間の休憩を持って赤桐操君の総括質疑を行います。  これにて休憩いたします。    午前十一時五十一分休憩      —————・—————    午後零時五十四分開会
  145. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 予算委員会を再開いたします。  昭和五十三年度総予算三案を一括して議題とし、赤桐操君の総括質疑を行います。赤桐君。
  146. 赤桐操

    赤桐操君 一昨日の成田空港をめぐる質問に対しまして、総理並びに関係の大臣からそれぞれ御答弁をいただきました。まあその答弁は、成田空港は施設その他においてなお完全ではないけれども、この三月三十日開港に踏み切りたいと、こういうようにお伺いをしたと思いますが、これで総理よろしゅうございますか。
  147. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ予定のとおり開港いたしたいと、かように考えています。
  148. 赤桐操

    赤桐操君 運輸大臣はどういうお考えを持っておられますか。
  149. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 至れり尽くせりというわけにもまいりませんが、開港ができないというような事情でなくて、まあまあという形で開港できると確信をいたします。
  150. 赤桐操

    赤桐操君 そうすると、不完全であるけれどもひとまずスタートを切りたいと、こう理解をしてよろしゅうございますか。
  151. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 不完全であるというような言葉そのものを使いますと、また何か赤桐さんは後おっしゃりそうな顔つきに見えるのでございますが、あえて、完全とは申しがたいが、まあ何とか先ほど申し上げたような手順で進めたいと、こういうように存じます。
  152. 赤桐操

    赤桐操君 そうしますと、完全と不完全の間というのはあるんですか。
  153. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 完全と不完全の中には多少の距離があると考えます。考えますが、私の承知するところのものは、どこからどこまでといっても、なるべく完全に近い方が望ましいということはつけ加えておきたいと思います。
  154. 赤桐操

    赤桐操君 そうしますと、完全に近い方が望ましいのであって、完全ではないわけですね。かように確認してよろしゅうございますね。
  155. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 私は、場合によっては完全ないしそれに近いことをという言葉を使いたいのでございます。赤桐さんが初めから不完全という言葉をお使いでございますし、事実多少そういう面がございますところから、私はいままでのような表現をいたしておる次第でございます。
  156. 赤桐操

    赤桐操君 完全か不完全かのどちらかだと私は思うのですよ。いやしくも各国の航空会社がこの成田空港に集中をしてきて、羽田から移転をして三月三十日を契機としてそのスタートを切るということになれば、少なくともそこには国際空港としての私は信を問われると思うのですね。そこには完全か不完全かのいずれしかないと私は考える。完全でないならば不完全でしょう。
  157. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 二つだけ並べてどっちかと言われると、それなりのまた考え方もあろうと思いますが、完全という言葉と不完全という言葉の間には何物もないとのみ考えるわけにはこれはもちろんいかないわけです。いま赤桐さんが言われるように、諸外国その他に対してもこうあるべきだということ、しごくごもっともでございます。私は、そういうような意味においては完全を期したいと、完全であってもらいたいと切にそれを念願するものでございますが、先ほどからの御質問の出方としては、答えによってそれぞれ何か御用意をなすっておられるようでございますから、私も多少そこらを幅を持って答えておかないと、後で身動きがならぬと、まあ長い間の国会生活の経験等からいたしましても、多少そういうことも考えて申し上げた点をお許しをいただきたいと思います。
  158. 赤桐操

    赤桐操君 これは禅問答を私は運輸大臣としているんじゃございません。開港を前にしてこれは重大な問題だと思うのでお尋ねをしているわけなんです。  高度の機能と整合性を求められるのが私は国際空港だと思うのです。国内のいわゆる飛行場であれば、それは私はある程度ということもあり得ると思います。しかし、いやしくもこれが国際的に注目をされ期待をされている国際空港として御披露申し上げる空港である以上は、そこに日本の信用が問われると思いますね。信が問われていると思いますね。そういう意味からするならば、これは少なくともあいまいなことでは許されないと思うのです。そういう意味で、私はこの国際空港は完全でなければならない、こう思うのですが、いかがですか。
  159. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) いま仰せのごとき観点からいたしまするならば、私どもとしましては完全を期して臨みますからどうぞ御期待くださいませ、どうぞよろしくと、こういう気持ちであらねばならぬと思います。
  160. 赤桐操

    赤桐操君 私は気持を伺っているのじゃなくて、現実の成田の国際空港がどうですかと、こういうことを伺っているんですよ。
  161. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) おっしゃるような意味において、先ほど申し上げたとおりでございます。
  162. 赤桐操

    赤桐操君 お答えの内容を聞いておりますというと、残念ながら完全な空港であるということはついにお答えをいただけなかった。総理はどうお考えになっていますか、もう一度伺いたい。
  163. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま運輸大臣からお答えしたとおりでございますが、欲を言えばというか、いろいろまだしたいことがあるんです。特にアクセス、このごときはいまの状態をかなり改善しなけりゃならぬ、こういうふうに考えまするが、とにかく国際空港でありますから、お話しのように。これは国際社会に対しての名誉をかけての開港でございます。そういう意味においては、私は準備は整えさせる、その上の開港だと、こういうふうに理解しております。
  164. 赤桐操

    赤桐操君 そうすると総理は、三月三十日現在、ひとまず完全な空港にすると、こうおっしゃるわけですか。
  165. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いろいろまだ補足しなけりゃならぬ点は多々あるんですよ。特に当面補足しなけりゃならぬのはアクセスの問題でございます。しかし、多少の不便ということの程度の問題ですからね、絶対の問題じゃございませんから。まあ時間が多少かかると、少し不便でございましょうががまん願って、そういうことにいたしまして開港をしたい、こういうふうに思っているんですが、国際社会に対しまして非常にこれは大事な問題ですから、それに対しまして、非常に不名誉なことになるというような状態ではないそういう状態において開港いたしたい、かように考えております。
  166. 赤桐操

    赤桐操君 それでは次の問題に入りたいと思いますが、成田は内陸空港であります。したがって、成田には羽田とは違う気象現象があると思うのであります。大変上空に乱気流が発生するということが新聞等でも報道されておりますが、この問題は実はわが党の各議員衆参両院で、気象問題についてはもうすでに成田問題が発生以来指摘をしてきたところであります。私どもは慣熟飛行の中でいまさらのごとくこれが取り上げられるような問題ではないと実は考えておったのでありますが、こうしたものが出てきている。乱気流、突風、霧、もや、こういったもの等々を見まして、一体今日までのこれらの気象に対する調査、こうしたものはどのように行われてきたのか。対策はどう持たれてきたのか。
  167. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) ただいまお話しのような諸点につきましては、従来綿密な試験、対策等を講じてまいったところでありますが、例を乱気流にとってみます場合に、世界じゅうどこの空港でも、滑走路の路面近くに近づくに従って山あり谷ありビルディングありというようないろいろな事情からいたしまして、多少の気流の乱れというものはどこにもあるわけでございまして、私どもも海外を旅行して、香港の飛行場やあるいはロンドンの飛行場等で、素人は素人なりに身に感じるものもあるようなことでございますが、そういうような世界の例等に比しましても、いまお話しのごとく成田は成田で事情があるわけでございますが、これは学の深い連中の研究等によりましてある程度の数字が出されておりまして、この数字は世界的水準から見ましてもそう特にひどいということではなくて、まあごく小さな数字で、着陸については考えなけりゃならぬ、場合によってはそこを避けなければならぬということが、ゼロでは確かにありませんが、まあ〇・一%、つまり千分の一ぐらいな可能性でそういうことも指摘されております。この種のことは、少ないからないのだと言い切るべきものではもちろんございません。ございませんけれども、そういうことでございますので、そういうまれな事情に対しては、他へ着陸するなりその他の方法を考慮するといたしまして、今度開港いたしましてもそういうようなことがちょいちょいあるというような事情ではないわけでございまして、理論上からいたしますものにつきましては、ゼロとはあえて申し上げませんけれども、そういう次第でございますので、長い間、赤桐さんの方からもいろいろ御説を伺っております。それぞれ傾聴いたしてまいった次第ではございますが、そういう御注意等も拳々服膺しつつ今後の事態に対処してまいりたい、かように考えております。
  168. 赤桐操

    赤桐操君 端的に伺いますが、羽田と成田を比較いたしまして、気象条件は羽田よりもよろしいと解されますか、悪いと考えられますか。
  169. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 羽田のような地勢のところと、お話のあった内陸空港である成田の場合とでは、いまおっしゃるようなことについて、ある点については片っ方がいいがある点については片っ方がというような幾つかのことがありましょうが、乱気流等を中心にして申し上げた場合には、先ほどのようなことでございまして、理論上ないし数字的にいろいろの事態がございますので、必要でございましたら政府委員から答えさせることにさしていただきます。
  170. 赤桐操

    赤桐操君 成田の方がよくない……。
  171. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) よくないということでなくて、いい点も悪い点もあると、こういうことで、総じて申しまするならば、さして悪いというようなことではないと、こう認識しております。
  172. 赤桐操

    赤桐操君 それでは重ねて伺いますが、成田空港は、私はいろいろと今日までの経過を見ておりまするというと、やはり東京から相当離れたところにある。したがって、当然交通アクセスの問題、燃料輸送の問題、騒音の問題、それから空域の競合の問題、こうしたいわゆる基本的な安全に関する問題等を中心とした、空港としての諸条件が相当実は準備されなければならないはずだったと思うのです。しかし、この十一年間余にわたった経過を見ておりまするというと、成田空港の立地以来の状態というものを見ると、この整合性の厳しく求められる諸条件について、ほとんど無準備、ほとんど対策なし、こういうことで今日までスタートを切ってきたと思うのですね。成田空港を選んだ理由はどこにあったんだと、こういうことまでいま実は疑わざるを得ない状態にあると思うのです。こういう無準備、そしてスタートを切った、こういう経過についてどのようにお考えになっておりますか。
  173. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) わが日本の表玄関を新しくつくるということと関連いたしましては、長い間今日まで苦労してまいりましたが、成田と決する前にも何年間か、ずいぶんいろいろの観点からの苦労もございました。私も党役員等といたしまして、そのころにいろいろこの問題にも触れてまいったのであります。いま赤桐さんから何らの対策もないまま今日にと言われましたが、それほどのことではないのでございまして、それなりに一生懸命に対策は講じてまいりましたが、なかなか意のごとくいかなかった問題は確かにございます。幾つかございます。うまくいくはずだと思ったのがうまくなかなかいかなかったことも実はあるわけでございますし、今後も、まあ開港以前にも開港後も鋭意対処しなければならぬ幾つかのこともあるわけではございますが、しかし、御承知のような経過をたどって今日に参ったのです。いまさらどうこうという問題では私どもの立場においては全然ないわけでございまして、おしかりを受けるような点については、なるべくおしかりを受けなくて済むようにいろいろ対処していくと、こういうことでございます。  ごく詳しい点につきましては、政府委員が必要でございましたら政府委員からお答えさせます。
  174. 赤桐操

    赤桐操君 それでは大臣に重ねて伺いますが、先ほど総理並びに大臣の御答弁、それからいまの私の質問に対する御答弁等々を伺いまするというと、完全ではないけれども成田空港として開港するについては一応諸施設はまず十分だと、こういうように理解をされると思いますが、よろしいですか。
  175. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 赤桐さんの前でございますから、完全でございますという言葉は私は使っておりません、事実。しかし、完全を期して一生懸命対処をいたしますので、そういう意味において諸外国等の期待を裏切らない開港をいたしたいと、こういうことでございます。
  176. 赤桐操

    赤桐操君 ですから、完全ではないかもしれぬが、国際空港としては一応諸施設は十分でございます、したがって三月三十日開港を取り運んでも差し支えございませんと、こういうように理解してよろしいですか。十分であると理解いたしますが。
  177. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) そういうようにいたしたいと思います。
  178. 赤桐操

    赤桐操君 私は大臣の答弁としては無責任だと思うのですよ。完全であるか不完全であるかという私の質問に対しては、完全とも不完全とも言わない。さらにまた、一応開港についての条件は十分であるかと伺えば、それについても十分を期したいと思うと、こう言っておられる。これでは私は所管大臣としての御答弁としてはいただけないのですが。
  179. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) いままで申しましたことを私は訂正をするわけではございません。そういう気持ちで臨んでおりますが、私の責任といたしましては完全なものとして空港を開く、開港の日を迎えなければならない、これについては私は責任を十分感じつつ対処したいと、そういうように思います。
  180. 赤桐操

    赤桐操君 次に、横風用滑走路の問題についてお伺いをいたしたいと思います。これはいま私からお伺いいたしました各種空港として必要な諸条件、こうしたものの中で大変実は大きな意義を持つものであろうと思いますので、この点について伺っておきたいと思います。強度の横風というのは年平均どのぐらい成田は吹きますか。
  181. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) まあ強度といいましてもいろいろありましょうが、成田に着陸することがこれはできないとか、してはならぬとかというような意味における——これから風がどう吹くかわかりませんけれども、いままでの経験でいろいろ精密に調べました結果では、たしかここに書いてございますが、いまのA滑走路に関する横風分力が二十ノットを超えるという、そういう数値であらわされておりますが、そういう回数の割合は全体の〇・一%、千分の一というように非常に少ない。ただ、ちょっと申し上げておきますが、少ないから何も心配ないんだと、こういう意味で申し上げているのでなくて、そういうように少ないのではありますが、たとえどんなに少なくともそういうことが起こった場合にどうするかということを考えなければなりませんので、そこで急いで横風用滑走路もつくるように準備しておりますが、さらにそこまで申し上げると、それじゃ横風用の滑走路ができない前に風が吹いたらどうだと、こういうことになるわけで、そこで、そういう場合におきましては羽田等に代替着陸をさせる等の措置をとってまいります。そういう意味においては横風用滑走路があった方がいいということは事実ではございますが、いかんせん、いまそれを待っておりますとこれまた大変な月日を必要とするでございましょうし、さらには、先ほども申し上げましたように、数値的に〇・一%というような数字等も出ておりますので、いま申し上げましたそういう際にはこうするというような代替的な措置、これを加えまして今度の開港に備えたい、こういう次第でございます。
  182. 赤桐操

    赤桐操君 激しい横風を受ける場合に、飛行機はどのような対処をするのでありましょうか。
  183. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) その「どのよう」というのもいろいろ「よう」があると思うのでございますが、恐らく赤桐さんは技術的な意味での御質問であろうと思いますが、いささか私より学のある方面から答えさすことにいたします。
  184. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) お答えいたします。  たとえば日本航空株式会社で横風が強いときの運用制限というのを決めております。これによりますと、滑走路がぬれているとき、これは二十ノット以上あったらいかぬと。それから滑走路が乾いているとき二十五ノット以上あったらいかぬと、こういうことでございます。ノットはおおむね半分にいたしますとメートルになりますので、メートルでいきますと、滑走路がぬれているときは秒速約十メートル以上の横風が吹いたらこれは離着陸してはいかぬ。それから乾いているときでも秒速十二メートル半以上の横風が吹いたら離着陸してはいかぬと、こういうふうに会社で決めているわけでございまして、もちろんこれは私ども航空法の規定によりましてクリアーしている数値でございます。  そこで成田関係でございますが、あすこに管理棟がございます。管理棟ができましたのは四十六、七年でございますから、その管理棟の中に将来できるべき東京航空気象台というものの準備室がございまして、この準備室で四十九年のお正月から五十一年の暮れまで三年間、毎日一時間に一遍ずつ二十四回データとりました。これによりますと、いま申し上げましたような二十ノット、滑走路がぬれている条件の悪いときの二十ノットを超える横風の比率が〇・一%ということでございますので、そういった意味で、着陸できなくなるような横風が吹く比率は数値上きわめて少ないというデータが出ているわけでございます。
  185. 赤桐操

    赤桐操君 一昨日の航空局長答弁では一%以内と私は承りましたが、それでよろしいですか。
  186. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 私はあの日突然の御質問でございましてデータ持っておりませんでしたので、大事をとりまして一%未満と申し上げましたけれども、なお帰りましてデータ調べましたら、さらに小さい〇・一%でありましたので、きょうはそのさらに小さい方の数値を、〇・一%というふうにお答えするわけでございます。
  187. 赤桐操

    赤桐操君 大体お伺いいたしまするというと、横風用の滑走路というのは、まあ言うところの強度の風というやつは〇・一%ですか。そうすると、これは日数に直すというと何日になるんですかな。航空局長に伺いたいのですが。
  188. 松本操

    政府委員松本操君) お答えいたします。  日数にして何日かというのは非常にお答えしにくいのでございまして、先ほど局長がお答えしましたように、毎時観測で風速をとりまして、それを三百六十五倍いたします。その中で、二十ノット以上の風が記録されたのが千分の一回であるということでございますので、二十四掛ける三百六十五掛ける千分の一という時間になるわけでございます。しかし、それが連続して吹いているのか、風の吹き方というのは息継ぎ等もございますので、朝はひどかったが午後からおさまるとかいろいろでございます。単純に一日として考えました場合には、三百六十五掛ける〇・一%になってしまいますので、一日にもならないと、こういうことになりますので、概略申し上げれば、一日吹き続けるということはない。足してもたかだか一日とか、全部足しましてもそんなところではないか、こういうふうに思います。
  189. 赤桐操

    赤桐操君 そういう場合には羽田に振りかえる、こういう措置がとれるから心配はないと、こういうふうに理解してよろしいのですね。
  190. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) さようでございます。
  191. 赤桐操

    赤桐操君 そうしますと、横風用は大体羽田もあることだし、〇・一%だということにもなってまいりますると、あえてこれは必要ないんじゃないですか。したがって、横風用の準備についてはなくても三月三十日に開港もできるわけだし、しかもそれは、総理も大臣も御答弁になっておられまするように、ほとんど完全に近い、十分な状態でスタートを切るということであり、私は横風用の滑走路は不必要だと、こういうように判断をいたしますが、いかがですか。
  192. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) いまおっしゃるところがむずかしいのでございまして、数字的にはそうだから要らんじゃないかというようなことで横風用滑走路をつくらないというようなことに——まあとにかく三月三十日まではもちろんできないのでありますが、そういう事情で対処するのでありますが、長き将来を考えますと、そういうことだからつくらないでもいいと考えておりますと、これは大変な誤りを犯さないとも限らない。世の中には突如地震があったり、この間、これも私の所管でございますが、橋の上へ電車が通りかかったときに突風があったりというようなこと等も考えても、希有のことであっても、希有のことに対処する措置はおのずから講じなければならない。そういう意味から申しまして、私は横風用滑走路もまた先ほどからいろいろお話をいただいております完全な空港とするためには必要であると、こういうように考えておりますので、もういいじゃないかという考えは私どもは持っていないわけでございます。
  193. 赤桐操

    赤桐操君 完全に近いあるいは十分な状態で国際空港としての機能を持つと、こういうさっきの御答弁であります。しかも気象条件は羽田も成田も大差がない。しかも今度は成田に対して羽田がある。こういう状態の中では、これはあった方がそりゃいいかもしれないけれども、なくたって一つも差し支えがない、こういうことになるんじゃないですか。
  194. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) まあこれ言葉の使いようによるのでございますが、私はやっぱり完全にやりたいという意味から申しまして、あった方がいいには違いないのでございます。まあ万全を期する上にもさらに一層万全を期するというような表現もございますが、そういうような心境で私どもは今後に対処したいと、こう考えるわけでございまして、先ほども申し上げましたように、数値的に小さいものであるからまあよかろうというようなことでは行政責任者は許さるべきものではないと、こういうように存ずる次第でございます。
  195. 赤桐操

    赤桐操君 しかし、先ほど来のお話しのとおり、一応とにかく三月三十日、横風用の滑走路がなくて、これはもう完全に近い、十分な条件としてスタートもできるのですから、なくたって一つも差し支えがない。したがって、そんなに不急不要のものであるならば無理につくることはない、こういうようになるのが普通の常識を持つ人の考えであるし、正常な認識を持つ人の大体の結論だろうと思いますが、いかがですか。
  196. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 赤桐さんのおっしゃるように、正常な常識からはという御議論については、これはいろいろ答え方があろうと思うわけでございますが、われわれが現実に三月三十日にはなくてやるんですから、それで完全を期してやるというなら後だってそうじゃないかと言われると、これなかなか返答がむずかしくなってまいるのでございますが、先ほど私が使いました言葉を引いて申しますならば、行政責任者として、政治の責任者として国民にこたえるということのためには、三月三十日はこれで勘弁していただくとして、それからできるだけ早い機会に、先ほどから申し上げておりますような、さらにその次の措置を講ずるということは、やっぱり政治の責任者としてはそれが常識であろうと、こういうように存じます。
  197. 赤桐操

    赤桐操君 結局、やはり完備された空港というのは、横風用も必要だということになるのですよ。世界の有力空港の中で、横風用のない空港というのは私は余りないと思うのですけれども、この点についてばいかがですか。
  198. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 世界のおおむねの国におきましても、私がいま申し上げておりますのと同じような観点から、大体横風用の滑走路も備えているというのが世界の大勢でございます。
  199. 赤桐操

    赤桐操君 結局、横風用がなければ航空保安上から言ってもこれは成り立たぬ、こういうことに私はなると思うのです。それが行政責任者の判断だというようにあなたは結論的に申されているのですよ。そうでしょう。だとすれば、この成田は不完全な空港なんですよ。
  200. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 未来永劫ということからしますと、やっぱり考慮する余地がいま御指摘のようにないとは申せませんが、第二期工事、そのうち特に横風用滑走路ができるまでの間は、かくのごとく対処いたしまして完全を期しますということで臨んでいくわけでございます。長い目で見れば、先ほどから話がありましたような措置をとっていかなければならないと、こういうわけでございます。
  201. 赤桐操

    赤桐操君 そうしますと結局、横風用ができるまではこの成田は不完全な空港なんです。したがって、この間はこれは大変不完全な状態で国際空港として運行していかなければならない、こういう実は重大な問題になってくると思います。こういう状況の中で空港の開港ということはあり得るのかどうなのか、このことは私は基本的な問題としてここに問われてくると思います。
  202. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 先ほどからいろいろ伺っておりますように、いろいろ考えてわれわれは臨んでおるわけでございますが、現実的に考えまして、今度の三月三十日に対処するには、かくのごとくにして完全を期すると、長い目で見ればこうというように分けて申し上げているのでありますが、長い目でそうなら短い間だって——長い短いの違いはあるが完全とは言いがたいじゃないかと、論理学者的にこう言われると私もなかなか答え方がむずかしいわけでございますが、そういうところをいろいろ申し上げておりますゆえんのものは、現実的に完全を期していく者のまあ一生懸命の姿があるわけでございますので、御理解をいただきたいと思います。
  203. 赤桐操

    赤桐操君 大変残念な私は状態の中で開港をすることになると思います。非常にこれは行政の責任者としてとるべき態度ではないと思うし、とるべき措置ではないと思う。総理大臣、どうお考えになりますか。
  204. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま伺っていますと、完全か不完全かと、こういうような話から問答がきておるようですが、やっぱり完全、不完全というのでなくて、完璧かどうかと、こう言ったらどうかと思うのです。私は、完璧かということであれば、それは完璧というわけでもないと、こういうお答えができると思うのですが、つまりアクセスの問題、パイプラインの問題、それから第二滑走路の問題、いろいろあります。そういうことを考えますと、完璧であるというふうには言えませんけれども、とにかく世界じゅうの人の生命に関係する重要な国際空港である。そういう国際空港として国際責任がちゃんと果たせると、そういう見地から見るとこれはその準備が整った上でなければ開港できるはずはない。そういう準備は重々整えて、そうして開港するものであると、このように御理解願います。
  205. 赤桐操

    赤桐操君 成田から東京まで自動車で参りまするというと、大体、開港後恐らく三時間を超えると思いますね。とてもじゃないが、これはもう言われているようなものではないように思う。また燃料輸送にしても、いつパイプラインの埋設が終わってこれができ上がるのか、この見通し等はどうなっているのか。それからまた、騒音対策にいたしましても、夜間におけるところの運航時間についてはどういうようになっているのか。空域の競合についても、御宿、阿見の上空については非常に危険な空域として指定されているということは専門家が指摘をいたしております。こういうぐあいに、いまの横風用の問題以外のところを取り上げてみても、総合的な、そうしてまた高度の性能を求められるこの空港というものが、条件を整えていないじゃありませんか、実際問題として。この点について御答弁をいただきたいと思います。
  206. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 数点にわたってのお尋ねでございますが、私も、冒頭にお話しになった成田と東京との間のアクセス等につきましてはいろいろ頭を痛めまして、私自身も行ってまいりましたが、一回行ったときがわりあいにすいていたからいつでもすいているというわけにはもちろんいかぬ問題でありますし、現在の事情と空港を開きまして後の事情とは、またここに変化も起きてくる。ただし、それは必ずしもマイナス要因のみではなくして、交通機関等が開港とともに動き出すという事情等もございますので、いろいろの点から申さなければなりませんが、三時間半というお話もございましたけれども、これはまあ走り方によってはそういうこともあると思いますし、事情によってはそういうこともあろうと思いますが、私が行きましたときは、行きが一時間と五分で、帰りに湾岸道路を通って羽田の方へも回って帰りましたが、帰りの方が一時間三十五分と、こういうふうなことでございましたが、なかなか開港後はそう簡単にはまいらないと、こういうようなことは考えておかなければならぬと思います。いずれにいたしましても、三時間半というのはよほど極端な事情のことであろうと思いますが、そういうことがあるというような状況、また騒音対策等につきましても、鋭意いま対策を講じておるところでございますし、今後もさらにやらなければならぬことでございます。  これらのことについては、すべてがすでに終わったというわけではございませんし、またさらに、空域の問題等につきましては、私もこれは大分講義を受けたのです。なかなかむずかしい問題でございますが、私が申し上げますより専門家から幾らか申し上げて、世上どうも危ないというように伝わっておりますが、私が聞きました説明では危なくなっていないようでございます。その他いろいろお話を伺いまして、いずれも大切なところであり、パイプラインにつきましては、御承知のとおり三年間で新しいのをやると、こういうことに決めております。これもとても危ないじゃないかと言われると、これまた答え方はなかなかむずかしいのでございますけれども、とにかくそれをやらなきゃいかぬ。成田では十数年来えらい苦労をしたが、これからまた同じような苦労は余り長く続けておってはいかぬと、こういうように私はつらつら思いますので、そういう心構えで今後に対処したいと思います。空域等につきましては、ちょっと専門家の話も聞いてやっていただきたいと思います。
  207. 松本操

    政府委員松本操君) 大臣が総括的にお答え申し上げました中の、特に空域問題について補足せよということでございますので、御答弁申し上げます。  御案内のように、成田ができます前、関東地域に進入管制空域を持っておりました空港、飛行場は、百里の飛行場とそれから羽田の空港でございます。そこに成田の空港ができたわけでございますので、考え方としてはいろいろあるわけで、これらの三つの空港を一カ所の管制機関でまとめて管制してしまうというやり方ももちろんあるわけでございます。しかし、残念ながらその時点においてはもちろん現時点におきましても、私ども、戦後アメリカから導入して発達、改良を進めてまいりました管制技術によりましては、現在の状態ではまだ複数空港を一カ所で総合的に管制をしてしまうというだけの技術を十分に安全に行い得るという自信を持つに至っておりません。そこで、従来から使いなれてきております空域を分離して、それぞれの一個の空域には一個の管制機関を対応させる、こういう形で管制をするのが最も確実であり、したがって安全である、こういうふうに判断をしたわけでございます。  したがいまして、羽田と成田と百里のこの三つの空域をどのように分割すれば、それぞれの管制空域の中で一個の管制機関が確実に安全に管制ができるかということについて相当時間をかけて検討いたしました結果、現在、昨年の十二月三日のAIRAC・NOTAMで出しましたような形の空域に分割をしたわけでございます。  先ほど先生の御指摘の中で、たとえば御宿のVORなり阿見のVORの上が非常に複雑な空域になっておるではないかと、こういう御指摘でございましたが、御宿の空域につきましては、これは羽田専用の空域の中に入れてございますので、御指摘のことはなかろうかと思います。阿見は、確かに空域が重なっておる部分の下に阿見が入っておるわけでございますが、ここは霞ケ浦の飛行場がございまして、ここの管制を成田の方がめんどうを見るというふうなこととか、あるいは、非常に使う頻度はまれでございますけれども、成田の空域から北側へ真っすぐ出し入れをするという必要があった場合——まれと私が申し上げますのは、通常は羽田の空域を横切り、またはその上に出すという形で一たん西へ出してから北へ上げるという使いなれたコースを使うことにしておるわけでございますが、管制というものは二重、三重に代替手段をとるというのが常識になっておりますので、これが使えない場合には真っすぐ北へ出すということをしなきゃなりませんので、その場合に百里の空域の上に成田の専用の空域というものを置きまして、その上に常用される羽田の空域、これは大子の方から真っすぐ羽田へ入ってまいります、北からの流れというものを取り扱うための空域が現在もございます。大体八千フィートから上ぐらいのところを使っておるわけでございますので、それをそのままの形で残して、一万四千フィートだったといま記憶しておりますが、それまでのところを羽田の方で使うようにしたわけでございます。したがいまして、空域の問題を図面も何もなくて空で申し上げますのは私も実は申し上げにくく、先生の方も御理解しにくいだろうかと思いますけれども、空域の重なりというものは、それぞれの空域の中は一つの管制機関しか使わないという原則を貫くためにそういうふうな仕掛けになっておるわけでございます。空域が複雑であるから管制が複雑になっているのではなくて、管制をなるべく簡単化して、そして確実、安全を期するために、多少空域的に重なったりするような場合があっても、むしろその方を選ぶという考え方で作業を行ったということを御理解いただきたいと思います。
  208. 赤桐操

    赤桐操君 成田をめぐるいろいろの条件は、なお一つ一つ深めたい問題がたくさんございますが、時間の関係がありますので私はもとに戻りまして、一番大きな安全性を問われる横風用の問題にもう一遍戻りますが、結局この横風用の滑走路については、今日ただいま現在、成田の場合はそれほど急ぐものではない、さらにまた緊急性はない、こういうようにいま私は判断をいたしますが、それでよろしゅうございますか。
  209. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) すでに三月三十日に開港をいたす空港が、先ほどから御指摘もいただいておりますように完璧な姿にするためには、これは安全は期しつつも、このこともまた急がなければならないという次第でございまして、そういうことなら別にあわてることはないじゃないかというようには考えたくないのでございます。できるだけ速やかに完璧な姿にしたいと、そういうことでございます。
  210. 赤桐操

    赤桐操君 重ねて伺いますが、〇・一%程度の横風の実態、さらにまた羽田というものとの併用、こうしたものから見るならば、この問題についてはいまの御答弁の結論はなくても、いまの段階はそう心配はないと、こういうことになるわけでありますから、そう急いでこの問題をつくり上げる必要はないと、こういうように私は判断をいたします。ということは、具体的に申し上げれば、成田空港を緊急を要するということでもって、今日まで第一次のいわゆる土地の収用については強権の発動に次ぐ強権の発動をしてきたと思うのですよ。この横風用の滑走路というものは第二期の土地収用を行わなければ実現できないんですよ。さらにまた四千メートル滑走路の本当の当初からの計画どおりの保安施設をつくるためには保安用の土地も必要になるはずであります。これらの二つの目的を持つ土地の問題についての解決がなされなければ私はできないと思います。したがって、横風用のこうした第二期の工事、保安施設用の第二期の工事、こうしたものはいまはそう急ぐ必要のないものだということであるならば、これはかつてのように強権に次ぐ強権の発動をしてきたような、そういう姿勢でこの問題に臨む必要はないと私は思うのです。あれば結構な話なんであって、なくてもやっていける問題なんです。したがって、この点についてこの際御確認を願っておきたいと思います。
  211. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) これも聞きようによりますといろんな問題が生じ得ることであると思うのでございますが、長い間かかってなるたけ円滑にということで進めてきておりながら、ある段階でいま御指摘のような強権発動等もあったということは残念至極でございます。私は二期工事ないしその他の工事等について、そういうことがないことをひたすら願うものでありまして、いままでも地元の皆さんに大変御協力をいただきました。私はこの場においてもそういう方々にお礼を申したいと思います。同時に、これから後のことでございますが、赤桐さんは急ぐことはないじゃないかとおっしゃいますけれども、そんなつもりでおりますと、成田がもっと早くできるつもりでおったのができなくて、しまいごろあたふたとした——あたふたとしたという言葉が適当であるかどうかわかりませんけれども、私も幾らかそれを感じるのであります。それを思いますと、まだ日があるからというわけにはなかなか簡単にいかぬと思いますが、しかし、それにいたしましても地元の皆さん等に御理解を願い御協力を願うというのが本旨でございます。円満に事を進めるようにあらゆる努力をいたしたいと、こう感ずるわけでございます。それじゃその他の方法は全然講じないかと多分後でお聞きになるかもしれませんが、なるべくそういうことでありたいと私は考えつつ前進するわけでございまして、いずれにいたしましても一生懸命やりたいと存じております。
  212. 赤桐操

    赤桐操君 第一期工事の中で収用された地権者に対してはどのような施策をとられましたか。
  213. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) この種の方々に対しましては、国としてできるだけのことをしなければならぬわけでございまして、個別的にはいろいろの事例がございますので、それに携わりました責任者から答えさせることにいたしますが、できるだけのことをしていくということが私の本旨でございます。
  214. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 土地を提供された方に対しましては、まず適正な価格で補償することが大事でございますし、御希望によりましては代替地を提供申し上げる、さらには成田空港自身あるいはそれの関連の事業に、そういった方々の転業先をごあっせんするというようなことを、公団が中心になりまして千葉県当局とも御協力申し上げながら、従来万全の措置をとっているわけでありますが、今後ともそういった姿勢をさらに強めるように公団に対して指導いたしているところでございます。
  215. 赤桐操

    赤桐操君 土地を失った農家の方々はいずれも私は不本意な生活を送っておると思います。一貫して言えることは、その土地については、いわゆる農家の生活の手段としての考え方に立った補償ではない。農家の土地を単なる物件として結論的には扱ってきていると思います。ここに私は成田空港が大きな混乱に陥った問題の実は基本的なものがあると考えております。農民には農地は生活の手段であります。土地として、物件ではないのであります。この点が、私は基本的にこの空港公団、運輸省、国の姿勢の中になかったからではないか、こういうように思うのであります。わが党の各議員が今日までこの問題を強く各種委員会において主張をいたし、その都度、諸対策を講じますといういろいろの御答弁をいただきながら、ほとんど結果的には今日みじめな生活を送っている農家の方々もたくさんございます。そういう事実等を見まするときに、余りにも地権者に対する対策が、これは国として大きな私は問題を残しているのではないか、こう思うのであります。  これらに対しましてはもう一つ伺いたいと思いますが、たとえば成田の土地の中の問題については強制収用をしても取る、しかし関連するところの各種の用地については強制収用をかけていないじゃありませんか。パイプラインの用地にいたしましても、これはもうなければならないものでしょう。あるいはまたアクセスのための各種の道路の設置にいたしましても、当初の計画は成田から東京まで新幹線をつくる予定だったじゃありませんか。これも強制収用はかけなかった。ひとり成田の中の第一期工事の中にたまたま該当した人たちだけが強制収用をかけられている。同じ成田関連の土地でありながら、一方は強制収用をかけられ、一方はかけられないであくまでも話し合いでいく、こういう不公平は私は基本的にあり得ないと思う。基本的な財産としての、生活をかけた財産としてのこうした土地を失うか失わないかということは私は国として大きな問題があると思うのです。こういうわけで、これらの問題に対する回答を明確にひとつ文書でいただきたいと思います。
  216. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 申し上げてそれでまずいようでございましたら、まずいとかなんとか、さらに正確を期する意味においてということでは考えても決してそれに対してやぶさかであるとは思っていないのでありますが、いまもいろいろお話をいただきましたように、大変な苦労がございました。みんなに同じにすればよかったじゃないかとおっしゃいますが、そういかぬところに苦労があったわけでございまして、でき得べくんば強権発動ということがなくて済めば一番いいし、なるべくそうしたいというのが本旨でございました。だがそうもいかずにその種のことがあったことはよくよくの事態であると、こういうことに私は理解をしておるわけでございますが、そういうことを思えば思うほど、こうした経験を生かして、将来になるほどという措置が一層考慮されていかなければならない、こういうように重々思うわけでございます。  文書でお答えすることにつきましては、それがよろしいんでございましたら御命令どおりにいたしますから、御了承いただきたい。
  217. 赤桐操

    赤桐操君 そこで、第一次の場合にそういう事態を招いておるわけでありまして、この横風用の問題についても、第二期の工事についても一私は、いま大臣のお言葉によりまするというと、あくまでも話し合いでいきたいと、こういうふうに言っておられるわけでありまして、それは強権の発動は裏づけない、こういうように理解して受けとめたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  218. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 御理解をいただいて御協力をいただきたいというのが本旨でございます。と申しましても、この段階で強権は一切発動しませんと言い切るというわけにもこれはいかない。第一、運輸大臣もだれがいつまでやっているか、これもわかりませんししますので、私はいま申し上げたような心構えで臨みたいと思うわけでございますが、そういうことで、事がうまくいくようにということには、ひとつ赤桐さんも御協力をいただきたいと切にお願いをするわけでございます。しかし、将来の事態に対しましては、そういう心構えで臨みますということはもう一度重ねて申し上げます。それでどうにもならぬというときにどうするかというようなことはいま申し上げることではないと思うのでございまして、できるだけそういうことでうまく進むことを念願をいたしております。こういう次第でございます。
  219. 赤桐操

    赤桐操君 緊急を要しないものであるにもかかわらず、なおかつ強権の発動を考えなきゃならぬということはあり得ないと思います。したがって、大臣のいま言われた、あらゆる努力を重ねて話し合いの中で解決をする、この姿勢を貫かれると私は受けとめたいと思いますが、よろしいですか。
  220. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) もうお話し合いで進めることにぜひいたしたいと考えていることを重ねて申し上げます。ただ、赤桐さんのおっしゃるこういう場合はこうということで断定的におっしゃるその文句だけで、その通りいたしますとうっかり言ってしまうと、これなかなか赤桐さんもうまいことおっしゃるので何でございますが、精神としては先ほどから申し上げているとおりでございまして、重々今後気をつけてまいりたいと考えるわけでございます。
  221. 赤桐操

    赤桐操君 成田の問題につきましては以上をもって今回は一応とどめたいと思います。いずれ場所を改めましてぜひひとつ詰めたいと思います。私はほかの用意もございますので、一応これで成田問題は第一ラウンドを終わっておきたいと思います。次のラウンドでひとつもう少し詰めたいと思いますので、御了承願っておきたいと思います。  それでは、次の五十三年度の予算問題、特に公共事業を中心といたしまして若干の御質問をいたしたいと思います。ことしの公共事業中主要な項目について二、三お伺いをいたしたいと思います。  その第一点は、道路整備でありますが、今日まで道路は五カ年計画に次ぐ五年計画で、この道路整備もかなり実績を上げてきておると思います。そうした中でことしは一兆七千億、約三〇%の伸びを示しているわけでございます。これは各科目の中で最大のものでありますが、五十三年度から五十七年度に及ぶ第八次の五カ年計画がいよいよことし始まることになるわけでありますが、その総額はさらに二十八兆五千億に上ると、こういう膨大なものでございます。しかし、第七次の道路整備五カ年計画を振り返ってみますると三兆六千億という実は積み残しがございます。その進捗率は実に八〇%というわけでありまして、完全にこれは達成することができなかった。これはいろいろな事情で説明はされておりまするけれども、結局、このようにいわゆる国道ないしは高速道路、こういったような形の大規模な道路計画というものについては大変一つの隘路が出てきているのではないだろうか、こういうことを感ずるわけであります。したがって、従来やってまいりました道路等を中心とする公共投資の型、これは一つの転換点に来ているように思うのでありますが、この点について総理はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。
  222. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ世界情勢が非常に変わってきた。それに応じましてわが国の社会経済の体制も変えなけりゃならぬ。つまり、これを大きく申し上げますと、産業中心の社会経済、それを生活中心、生活重視の体制に移しかえなけりゃならぬと、こういうふうに考えているわけでありまして、公共投資はそういう考え方を実行する上において非常に大きな影響を持つ問題でありますが、そのとおりの考え方でこの一、二年間やってきておりまするし、また今後ともその考え方を推し進めてまいりたいと、このように考えております。
  223. 赤桐操

    赤桐操君 確かにここ一、二年間そういう傾向であったと私も承知いたしております。しかし、ことしの予算内容を見まするというと、この生活基盤向けのこの重点投資というものに一挙にブレーキがかかったように思うのです。そしてまた、かつての公共投資型に戻ったように思うのですが、これはことしだけの現象ですか、それともこれからこういう形にのめり込んでいくということになるんですか、もう一度伺いたい。
  224. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ことしもその気持ち——私ここで詳しい数字を承知しておりませんが、気持ちとしてことしから考え方を前の考え方に戻すというような、そういう考え方は全然持っていないのです。ことしそういう傾向が出ておると仮にするならば、これはもう本当にこれこそ景気対策のための臨時異例のことであると、これから先々の考え方におきましては、これは生活重視、この考え方をますます進めておると、その考え方には変わりはございません。
  225. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 総理の補足説明を申し上げますと、御承知のように、ことしの一般公共事業の伸びは三四・五%でございます。そのうちいわゆる生活関連と最も密接に近い住宅、下水、環境衛生等、これが四一%ちょっと超えております。それから国土保全関係が三六・六%。それから農林漁業関係三七%。それからおっしゃる道路でございますが、二八・八%の伸びでございますから、大幅に生活関連の方に傾斜しているのでございます。
  226. 赤桐操

    赤桐操君 いずれにいたしましても、公共投資がこういう形で出てくる。そういたしまするというと、これは地価の上昇等もかなり大きく影響されるのではないか、こういうことを各方面で懸念をし始めてきております。したがって、地価上昇が始まることになりまするというと、それは当然物価上昇にもはね返ってくるだろうと思うのですが、総理はこういう点についてはどのようにお考えになっているか。また、こうした現象が本年じゅうに出ないとも限らないと思いますが、そういう場合にはどのような考え方、対策をお持ちでしょうか。
  227. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回、まあ大規模の公共投資を行うということでありますので、これを無節度で実施いたしますと、御指摘のような懸念が生じてくるおそれがある。そこで、地価はもとより諸物価に悪影響を及ぼさないように、これは価格の動向、それから物資につきましてはその物資の需給の状況、これなんかを十分見詰めながら、これがインフレ傾向につながっていくというようなことにはしない、こういう配慮のもとにやっていくつもりでございますが、これはもうとにかく今度の予算を執行いたしまして、これがインフレになると、こういうようなことは絶対にいたしません。
  228. 赤桐操

    赤桐操君 次に、公共投資問題についてなお実はあるのでありますが、時間の関係ありますので、いずれ次の場にこれは譲ることにいたしまして、とりあえず住宅問題に移りたいと思います。  ことしもまた住宅問題を、本年は特に一般公共投資と並行いたしまして二つの柱として政府は景気対策上打ち出されております。で、お伺いするのでありますが、わが国の住宅建設の状況を見まするというと、公共住宅と称するものは、厳密に申し上げるというと六・九%しかございませんね。大体、戸数にして二百万。その居住の水準や、あるいは住居負担の割合からいたしましても、非常にこれはお粗末な状態に置かれていると思います。公的建設と民間自力建設の割合は、これら公共的な建設戸数は大体一〇%を割っております、九・三%。民間自力建設、これが大体九〇%を超えておる。これが第二期の建設の経過であったと思います、五十二年度までの状態であったと思います。第三期におきましても、大体まあこれと似たような状態にあるように私は判断をいたしております。したがって、たとえばイギリスなどはこれはまあ大変な実は差がございますが、西欧諸国とは大分わが国の住宅政策のあり方が違っておるわけでありますが、一体これはどういう日本の住宅政策は目的を持つものであろうか、こういうことを非常に最近感ぜしめられておるわけであります。特に、最近におけるところの、マイホームはつくったけれども、一家心中をする、自殺を図る、マイホームの支払いがし切れない。こういうことで大変そのために悲惨な結果を招いているそういう問題も新聞等で報道されており、私は政治的な問題になってきておるんではないかと、こういうことを感ずるのでありますが、こういう状況の中で公的建設、民間自力建設、これからもこういう状況で進められるようでありますが、わが国の住宅政策の目的というのは一体どういうことなんですか、総理の御見解を承りたいと思います。
  229. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国の国民生活を見てみますると、これはかなりいいところへ来ておる。特にフローの面ですね、衣、食、この面ではかなりいいところへ来てるんですが、ストックといいますか、住宅の問題、この問題はまだまだ立ちおくれの状態であり、先進諸国に比べますと大変なおくれになっておる。ですから、私はいまこれから、先ほど公共投資、また社会投資、その問題がこれから大きな政策課題になるだろうというふうに申し上げましたが、そういう中で一番私はこの住宅の問題だろうと思うのですよ。そういう認識で住宅問題に取り組むべきである。いま特に赤桐さんから、まあ民間自力建設と公的住宅建設、そのバランスをどういうふうに考えるかというようなお話でございますが、五十三年度あたりは土地の入手、そういうものを考えますと、公的住宅というような大規模な建設はなかなかむずかしいんです。そこでまあ比較的控え目な計画にしておりまするけれども、土地の準備がつきますればこれを拡大するということを考うべきかと考えまするけれども、やはり基本的には国民の公的住宅がいいのか自家住まいをすることがいいのかというような選択の動向、そういうこともよく考えて対処しなければならないかと、このように考えておりますが、要するにいま大変住宅問題は国民生活の部面としてはおくれておる。まあ一世帯一住宅、そういう大勢にはなっておりまするけれども、内容がきわめて空疎である。この空疎な住宅事情というものに厚みをつける、そういうことを目指してやっていくべきだと、そういうふうに考えます。
  230. 赤桐操

    赤桐操君 民間自力建設に重点を置いてきているわが国の政策は、結果的には土地も住宅も利潤追求の商品になっております。これは否めない事実だと思います。私はやはり住宅政策の根本というものは労働者、特に一番低所得者層の対策に置かれなきゃならない、これが根本の精神だろうと思います。社会的に住宅が保障されていくべきものだと、こういう考え方に立たない限り私は本当の住宅政策というものは生まれてこないんではないか。  そうして、お伺いするわけでありますが、たとえば西欧の諸国においては、大体公的建設が非常に住宅問題の解決の主力をなしております。そして、たとえば日本が、イギリスほどでなくても、西ドイツあるいはフランス程度にまでわが国の公的建設がいっているとしたならば、これはまたそういう体制ができているとしたならば、今回のようなこういういわゆる低成長時代に入っても政府のコントロールでこの公共住宅の建設がどしどしできていったであろう。そのことは公共投資と同じように、この問題については他の一般公共投資と同じような社会的な波及効果、影響力を持つことができたんじゃないだろうか。しかし、民間自力建設に重点を置いている、九〇%を頼るわが国のこの住宅政策の中では、高度成長の時代にはそれはそれで済むかもしれないけれども、いまのように景気が転換してくる中では、これからは残念ながらそういう期待を持つことはできないだろう。したがって、二つの大きな柱のうち住宅政策に期待するものは残念ながらことしは期待することはできない結果になるのではないだろうか、こういうように私は判断するんですが、総理はどのようにお考えになりますか。
  231. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私いま問題を二つ提起したんですがね。一つは公的住宅、これは規模が大きいものですから、それに必要な土地、これがまた大規模なものにならざるを得ないのです。その入手がわが国の現状とするとなかなかむずかしい。また、これを強いて入手しようとすると大変な摩擦を生ずるというようなこと。それから、わが国の国民の選好ですね。自家住まい、こういうことを選好する人が相当多いのじゃないかと思うのです。そういうこともあり、また住宅公団のやり方についても問題があるかもしれませんけれども、とにかく公団住宅にあれだけの空き家が出るというようなことを考えてみましても、いろいろ公的住宅には問題があるんじゃないか。そういうようなことを考えまして、土地の入手がうまくいくようになり、また同時に国民の選好がそういうふうに移るということになれば、これはわが国におきましても公的住宅に傾斜をしていくという考え方、これはとり得るわけでありますが、ただいまの状態ではなかなかそこまでいっておらぬと、こういうふうに見ておるわけであります。
  232. 赤桐操

    赤桐操君 ここで私はひとつ問題を提起したいと思うのでありますが、いま総理もお答えになりましたが、大変公団が空き家が多い。これは公団だけではないと思うのですね。これは一般の民間における一戸建てで建設された住宅であっても、建てっ放しで売れない、空き家であるというのがかなり多いと思うのです。この状態については、公団並びに建設省の方からお答えをいただく方が明確になると思いますが、後でお答えをいただきたいと思いますが、要するに、私はそうした標準的な、政府が指導するそういうりっぱな住宅、団地ができ上がっているけれども、そこには残念ながら空き家が多い。一方、百坪ぐらいのところに五、六軒建てたミニ開発と称するもの、一千万円程度のものがどんどんいま売れているわけですね、大体首都圏を中心として全国の各都県においては。こういう状況は一体何だろうか。公団だけが空き家があるんじゃないんですよ。一般のそういう民間の建てた住宅にも空き家がたくさんあるんです。  一方、それらを避けてミニ開発のそういう小さな、いわゆるスプロール化といいますか、そういう住宅にどんどん国民の目が向いていく。これは一体どのように政策的に説明をしたらよいのか、お伺いをしたいと思います。
  233. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) お答えを申し上げる前に、ちょっと御理解をちょうだいしたいと思うのでありますが、先ほどから公的な住宅の数をいろいろ取り上げておられるのでありますが、私の手元でいきますと、第三期五カ年計画で公的とおほしきものは三百五十万戸、民間自力は五百十万戸と、こういう計画になっております。それから五十一年度の実績を見ましても、公的は六十二万一千戸、民間自力は百二万。五十二年度は七十六万九千戸が公的で九十万戸が民間自力と、こういう割合で、御質問を聞いておりまして、あるいは公庫住宅をこれを民間の方へ御計算で言われておるのかなと、こう思うのでありまするが、公庫住宅のことは言うまでもないわけでございまするが、私どもとしては低利融資などでお世話をしておりまするから公的な性格を持っておるものではないかと、こういうふうに思うのであります。  それからミニ開発の問題についてお触れでございましたが、ミニ開発がどんどん売れていきまするゆえんのものは、やはり土地つき家屋という魅力があるのではないか。それで、このミニ開発がどういう障害を与えるかということになってまいりますると、防災上あるいは都市開発上問題がある、したがって、このミニ開発をできるだけそういう弊害を除く方向に指導していくことがしかるべきではないか。そういう考え方に立ちまして、都市計画法による現在許可制度は千平米のことでありまするが、それ以下にしてもよろしいということでありまするから、それらのことを勘案しながらミニ開発の欠陥はでき得る限り除去してまいりたいと、こんなふうに考えるわけであります。
  234. 赤桐操

    赤桐操君 私の申し上げている数字は、金融公庫融資つき住宅は自力建設の中に入れております。この種のものは西欧の諸国ではいわゆる公的建設とは言わないのであります。私は世界の常識だと思うのであります。  それからさらに、いまの大臣の御認識は、大変これは残念ながらいただきかねる認識であります。そこで私は、ひとつそれが誤っているということをこれから実証していきたいと思う。  時間がないのでお尋ねの方を中心としていきたいと思いますが、公団の総裁にお伺いいたします。端的に申し上げますが、千葉県の八千代市に村上団地がございます。この団地の家賃の構成と概要について御説明をいただきたいと思います。
  235. 澤田悌

    参考人澤田悌君) お尋ねの村上団地でございますが、四十七年から建設に着手しまして四千七百二十三戸をほぼ完成をいたしたのであります。そして管理開始戸数が二千七百七十戸、保守管理戸数に残してありますのが千九百戸ほどございますわけであります。  それで、その中心になります三DK住宅の家賃につきまして、いまお尋ねのその構成内容を見てみますと、この家賃は若干、同じ三DKでも少しずつ違いますが、四万四千九百円から四万六千八百円にわたっておるわけでありまして、その四万六千八百円クラスの家賃の構成を見てみますと、償却費が三万八千三百円ほどであります。それから地代相当額が一万一千百円、修繕費が一万一千四百円、そのほか管理事務費三千五百円、損害保険料が若干四百円ほどございます。それから公租公課が一万一千円、諸引当金が七百円ほどありまして、合計七万六千八百円になるわけでありますが、これを御承知の傾斜家賃に直しまして、三万円を差し引いて当初、初年度家賃を四万六千八百円と、こういうことで管理開始をいたした次第でありまして、この中で利息に相当するものが、先ほどの償却費の中の大部分と地代相当額と合わせますと五〇・七%が利息分に相当すると、こういうような構成になっております。
  236. 赤桐操

    赤桐操君 金利が五〇・七%。
  237. 澤田悌

    参考人澤田悌君) そういうことでございます。
  238. 赤桐操

    赤桐操君 次に、私の手元に不動産協会やあるいは千葉県における県の明らかにいたしました資料が来ておりますので、つけ加えたいと思いますが、千葉県から来ておりまする内容を申し上げまするというと、主要な県下の団地の平均が、団地内の公共公益施設でありますが、こうしたものに要した土地の割合は四六・三%であります。ですから、住宅になった有効宅地面積はわずかに五三%であります。これが一戸建て住宅を中心とした団地であります。ですから、半分は公共負担分、公益負担分、こういうようになっているということを私はひとつ明らかにしたいと思う。  それから、民間におけるところの協会等から出ておりまする内容からいたしましても、これは公示価格を中心としていろいろ行ったモデルがございますが、この内容を見ましても、いずれも大体四〇%前後のいわゆる公的負担分を全部かぶっておるわけであります。これではどう考えてみても、一戸建て住宅にいたしましても公団住宅にいたしましても安くなるわけがない。公団住宅は金利の問題で対策をとる以外にない、一戸建て住宅についてはいまの関連公共公益施設費でもって対策をとる以外にないと、私はこう考える。これらに対して庶民大衆の金である大蔵省資金運用部資金もありまするし、いわゆる投融資の大きな財源もあることですしするので、こうしたものを地方公共団体と一体となり、あるいはまた関係の機関との関係等からいたしまして、十分に私は対策をとる余地があると思うのです。総理が先ほどの御答弁のとおりに住宅政策に重点をこれから置かれると言うならば、まずもって私はこうした問題を置きかえる必要がある。これを置きかえれば、大体現在の価格の村上団地にしても三分の二ないしは半分近く、それから一戸建て住宅にいたしましても一千七百万とか二千万とかという価格にはもうならなくなってくる。大体千二、三百万程度で庶民大衆の手に届くものになるであろう、こういうように判断をいたします。  したがって、本当にこの五十三年度で真剣に住宅対策に取り組むということであるならば、こうした具体的な施策をおとりになる用意があるかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
  239. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 赤桐君、時間が来ております。
  240. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 最初の御指摘の金利でございますけれども、現在、住宅公団に対する金利は五%、安いのは四・五%でやっております。したがいまして、一般会計から税金で補給している分が、いま大体五百三十億ぐらいでございます。私は、この金利をそれだけ入れるということはいかがなものであろうか、別途の方策をやはり講じないと、他の一般の民間の住宅、自力の民間の人はそういう税金の補給は受けていないわけでございますので、私はどうかということで疑いを持っているのでございます。  それから問題は、いまおっしゃいましたように、まさに公共負担が高いことはもうおっしゃるとおりでございます。問題はそちらの方にいかに向けていくかということでございまして、従来から人口急増地域につきましては、いろいろな関連公共につきましては補助率のかさ上げをやっていることはもう御承知のとおりでございますが、ことしは特にそのほかに三百億という特殊のものをつけたわけでございます。そのほかにも、これは考え方でございますが、公共事業の中でその種のものを優先採択してあるとか、あるいは現在立てかえ施行の分があります、公団なりあるいは公営住宅なり。そういたしますと、それは二十年年賦で返せるはずでございますから、こういったものを今後やはり強めていくという方が問題解決に早いのではなかろうか。もちろん地方交付税の問題、あるいは地方債の問題、こういう一般的な補完措置があるのは同様でございますけれども、問題はやはりいま公共負担にあると思いますので、その点をぜひ強めてまいりたいと、かように思っておるところでございます。
  241. 赤桐操

    赤桐操君 最後に一つ。
  242. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 赤桐君、時間が来ておりますから簡単に。
  243. 赤桐操

    赤桐操君 西欧におけるところの各国では、金利は一%から三、四%が最高であります、社会住宅向けの金利は。決してわが国の公団の出しておりまする金利が安いとは私は考えていない。これらにつきましては、いずれまた第二ラウンドでひとつ詰めたいと思いますので、一応これで終わりたいと思います。(拍手)
  244. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で赤桐君の総括質疑は終了いたしました。
  245. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、源田実君の総括質疑を行います。源田君。
  246. 源田実

    源田実君 本日私がお伺いしたいと思う問題は、主として日米安保条約の問題、及び憲法解釈の問題、それから防衛の問題、時間があればあとちょっと教育問題についてお伺いしたいと思いますが、そのほとんどいずれも実はいままでの一般的な解釈とは違った解釈が、最近私はそういうものを——私じゃなくて、だれの手にも入るような形でこれが出てきております。したがいまして、安保条約の解釈の中についても、アメリカ人をも含めて日本人も同じように解釈しておることが実は違っておるということをアメリカの方で指摘してきておるという問題があるわけであります。そういう問題についてお聞きするわけでございますが、この問題は、初め注文を申し上げておきたいのは、私のようなこういうちょっと少しお人よしの人間で人の言うことをすぐはいといって聞くような人間は、おえら方に言われると、すぐ、悪く言うとそのままちょろっとちょろまかされたようなかっこうになる。しかしながら、この問題は絶対にそれでは済まない。私は幾ら説伏されても事態そのものはこれじゃ解決しないんです。したがいまして、皆様方でもしそこに疑点があるんなら、その疑点があるということ、また、全然もう疑点も何もないというんならば、そのまま申していただきたい。ただし、問題をきょう解決することができなければ、これから相当時日をかけてもこの問題に対して明快な回答を与えなければ、日本そのものの安全に非常に大きな影響があると考えます。したがいまして、そういう意味でお答えを願いたい。  それからついでにこの機会をかりまして、いままでそういうような問題の研究に各省庁の事務当局にいろいろな資料をお願いしますと、非常に快く資料を提供していただいた。遠いヨーロッパの資料、アメリカの資料とか、私個人ではなかなか手に入れにくいような資料が、ことに外務省の方から非常に多く得られて、この点は私はここでひとつ申し上げておきます。感謝しております。  まず第一、日米相互協力安全保障条約の解釈でありますが、その条約第五条の「自国の憲法上の規定及び手続に従って」というこういう問題がございます。この問題について、時間の関係上、日米安保条約には「憲法上の規定及び手続に従って」という文句がある。しかしながら、アメリカが世界で四十二カ国と相互防衛条約を結んでおりますが、日本以外の国と結んだのには、手続のみあって、規定——プロビジョンか、これはないんです。こういうところの違いは一体どこから出てきておるのか、この点ひとつ外務省からお願いします。
  247. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) お答え申し上げます。  日米安保条約第五条の中には「自国の憲法上の規定及び手続に従って」云々と、こういう規定があるわけでございますが、憲法上の規定という点につきましては、わが国におきましては、憲法第九条によりまして、安保条約第五条に言いますところの共通の危険に対処して行動するような場合における制約が課されておりますので、わが国憲法上の枠内で行動するのだということ、すなわちわが国のとる措置が憲法第九条の規定に従うべきことを明示する趣旨の規定でございます。この点は、当時の日米現行安保条約の交渉の経緯に照らしても明らかなところでございます。  他方、憲法上の手続という字句につきましては、米国がその他の国と結んでおります相互援助条約の例について見ますと、戦争宣言あるいは開戦宣言等に関します各国の憲法上の手続を指しているというふうに推察されるわけでございますが、わが国におきましては、先ほど申し上げましたように、憲法において戦争を放棄しているということの当然の結果といたしまして、憲法に開戦手続に関する規定は設けられていないわけでございます。したがいまして、この安保条約第五条に言います憲法上の手続という字句に該当するものは、わが国にとってはないわけでございます。したがいまして、この規定は米国について該当する規定であると、かように理解いたしております。
  248. 源田実

    源田実君 そうすると、この手続というのは、旧日米安保条約にはないわけですね。そして、その他は、北大西洋条約及び米比、米加、米韓条約、その他全部プロセスという文句は英文では入っておる。ということは、アメリカ憲法上のプロセスというと、戦争宣言はアメリカの連邦議会がやる、上院だけではなくて連邦議会の承認を要する、承認というか、やる、こういうことになっておると思うのですが、それに間違いありませんか。
  249. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 米国憲法上、宣戦布告の宣言につきましては、これは連邦議会が行うということとされております。他方、アメリカの大統領が軍に対する統帥権を有していると、こういう規定もあるわけでございます。
  250. 源田実

    源田実君 いまの後のところをもう一遍……。
  251. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 米国の大統領が軍に対する統帥権を有していると、こういう規定も米国憲法上あるわけでございます。
  252. 源田実

    源田実君 そうすると、米国憲法の第四条第四節には、合衆国は、この連邦内の各州に共和政体を保障し、各州を侵略から防護すると、こういうことが規定されておりますね。そうすると、この条文からすると、アメリカの領土に対する侵略が行われた場合には、最高司令官たるアメリカの大統領の権限で軍隊を直ちに出動を命じてこれに対する防御をやり得る。しかしながら、アメリカの各州を侵略から防護するでありますから、各州でないところが攻撃された場合、たとえば日本が攻撃された場合、アメリカの大統領が直ちに出動命令を出すことはできないと、こういうぐあいに理解できますかどうですか。
  253. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) ただいま先生御指摘の米国憲法第四条第四節におきましては先ほど御指摘のような規定があるわけでございますけれども、この米国憲法第四条、これは第四節を含めてでございますが、ここの条項は米国の憲法の法制にかかわることでもありまして、私の方から詳論することは差し控えたいと思いますけれども、われわれの理解しているところでは、この第四条は、およそ連邦制度をとっている合衆国におきまして、合衆国——これは連邦でございますが、この連邦と、これを構成する各州の権限の関係を規定している条項というふうに理解しているところでございます。このような文脈の中で、合衆国が各州を侵略に対して守る義務を定めていると、こういうふうに考えられるわけでございます。したがいまして、この条項は、米国が条約上他の国に負っている防衛義務というものとは直接関係のない規定というふうに理解いたしております。
  254. 源田実

    源田実君 もちろんこれは外務省では御存じと思いますが、去る十二月二十二日のジャパンタイムズのワシントン・メリーゴーラウンドというのに、これは執筆者はジャック・アンダーソンという人でありますが、その内容は、アメリカ国会の軍事委員会の法律顧問をやっておるグレノンという人、その人が、大統領が独自の立場で直ちに参戦することはできないと、アメリカの議会が承認しなければこれはできないんだということを述べているわけです。そうして、それは単にこの人だけじゃなくて、これには——詳しいことは私いま申し上げませんが、他にも幾らも専門家がそういうことを言っておる。アメリカ人もこういう問題があるということは余り気づいていない。この題名が、第一、エスケープ・クローゼス、こういうことになっておるんです。もしこういうことがあるとなれば、もし日本が侵略された場合、いま日本がよってもって実力行動、軍事力として頼っておるのは、自衛隊と、それから日米安保条約による米国の協力である。このうちの一つは無条件にはわれわれは信頼することができない、多分できるだろうけれどもいまのところ無条件にはできないんだというようにこれからは出てくるのです。この点は、外務省、どういうぐあいにお考えになっておるか、ひとつお伺いしたいと思います。
  255. 園田直

    国務大臣(園田直君) お答えをいたします。  ただいまの新聞の記事は、私も拝見したところでございます。この新聞記事の要旨は、同盟国が攻撃されて協力する場合には憲法の規定、手続を経なければならぬとなっておるから、大統領が勝手にやるわけにはいかぬと。したがって、その防衛は自動的なものではなくて、議会の承認を得てやるのであるからという意味のことが書いてあるわけでありますが、米国戦争権限法第二条(c)には、「大統領が、戦闘行為及びその状況からみて戦闘行為に直ちに巻き込まれることが明らかと思われる事態に米軍を投入し得るのは、」一つは、いま言われた「議会による宣戦布告に基づく場合、」二つには、「特別立法による授権に基づく場合並びに米国、その領土・」——これは先生が言われたとおりであります。「属領、または米軍に対する攻撃により国家的緊急事態が発生し、これに対処する場合である。」と、このように規定してあるわけであります。したがいまして、仮にこれをわが日本の立場をかえて考えた場合に、日本が攻撃される場合には当然日本に駐留する米軍も攻撃されるわけでありますから、現在の安保体制は米軍駐留を前提とした安保体制でございますから、したがって、この大統領の権限によって直ちに防衛につくことができる。しかし、それも、先生がおっしゃったように、全面的に信頼するかどうかと、こうなれば、これは大統領の判断に基づくわけでありますから、それから先はわれわれが絶対にというわけにはいかぬということは間違いないところであります。
  256. 源田実

    源田実君 いまの点、わかりました。しかし、いまの侵略者がちょっとばかりずるくて、日本の自衛隊とか、米軍のいないところを攻撃する、そうして米軍の基地に対しては手を加えないというようなことをやった場合には、大統領はそれに対して直ちにできるのかどうか。これはやっぱりアメリカの連邦議会の承認を要するのじゃないかと、こう思うのですが、そこのところはどうでしょうか。
  257. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 安保条約第五条におきましては、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め」「共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」と、かような規定ぶりになっております。つまり、日本国の施政のもとにある領域におきまして、たとえば日本に対しての武力攻撃、これが行われました場合には、アメリカの平和及び安全を危うくするものであるということを認めて、この危険に対処するように行動するということをアメリカは安保条約第五条によって義務づけられているわけでございます。この条約上の義務と申しますのは、これは米国が負っているものでございまして、その限りにおきましては米国の議会、行政府ともに当然この義務を履行することが求められていると、かように理解いたしております。
  258. 源田実

    源田実君 そこのところが、アメリカが、自動的——議会はもうほっておいてもそういう事態にはやるという考え方と、その場合二の足を踏むかもしれないという考え方が分かれると思うのです。これを外務省はもう絶対に二の足を踏むことはないというようにお考えになるのかどうか、これをひとつもう一度念のためにお聞きしたい。
  259. 中島敏次郎

    政府委員中島敏次郎君) お尋ねの点につきましては、先ほど条約局長からも安保条約五条の関係をるる御説明したわけでございますが、先生お触れの米国の戦争権限法によりましても、その第八条の(d)項には、「本共同決議」——これは戦争権限法のことでございますが、「本共同決議は、議会若しくは大統領の憲法上の権限」——大統領が統帥権を持っておるということは先ほど条約局長からもお答えしたとおりでございます。「大統領の憲法上の権限又は、現行の条約の規定を変更することを意図するものではない。」ということを明記してあるわけでございます。したがいまして、問題は安保条約第五条に返るわけでございますが、第五条において、アメリカ側がわが国の施政領域におけるいずれかの当事国に対して武力攻撃があれば共同の危険に対処するように行動するという、いわゆるわが国の防衛義務を明記してあるわけでありまして、たとえば昭和五十年の八月六日に三木総理大臣が訪米されましたときの日米の共同新聞発表において、「大統領は、総理大臣に対し核兵力であれ通常兵力であれ、日本への武力攻撃があった場合、米国は日本を防衛するという相互協力及び安全保障条約に基づく誓約を引き続き守る旨確言した。」ということを言っているわけでございます。御承知のように、昭和五十年というのは、いまの戦争権限法ができました後の状態でございます。その戦争権限法の字句の規定をも踏まえながら、なおかつアメリカの大統領は日本を防衛する誓約を引き続き守るということを明確に述べているわけでございまして、私どもといたしましては、アメリカ側の意図についてはいささかも疑いを持っていないということでございます。
  260. 源田実

    源田実君 ここのところが実はちょっとよくわからないんです。というのは、一昨年ですか、ここで私が三木総理に非核三原則の第三項、持ち込ませないというのを、有事もいかなるときも持ち込ませないというので果たして済むのか、アメリカはそれで日本を防衛するのかと言ったところが、三木総理は、フォードが必ず守ると言いましたということをここで言われたのです。それはフォードは言ったかもしれません。しかしながら、こういう場合に果たして守るかどうか。これは仮定の問題です。仮定の問題だが、侵略者が核兵器を使った場合、防衛のために核兵器が陸上で要る、あるいは領海内に入って要るというような場合に、日本は入れさせないというんです。核兵器を使うのと使わないとでは、あたかもわれわれがアリを踏みつぶすと同じようなかっこうでアメリカも日本の戦闘員とともにやられるんですよ。そういう場合に、アメリカは、その大統領の約束によって、アメリカの時の大統領、連邦議会及びアメリカの司令官が、自分らの部下がこんなにまるでアリのように踏み殺されるということを知りながら、果たして核兵器を使わないでやっていくのかどうか、こういう問題について、私は、本当に煮詰まっておるかどうか非常に疑いを持つんです。いまここで言うのは簡単ですよ。しかしながら、そういう事態が起きた日には一体どうするんだと。私が総司令官とすると、必ず二の足を踏みますよ、こういう問題は。これは重要な問題である。この点について、政府は、いささかの疑点も持たないと、そうしてまた効果を上げ得るというように考えておられるのかどうか、これをお伺いしたい。
  261. 園田直

    国務大臣(園田直君) ただいまの御指摘は、なかなか重要な問題であります。私が先ほどお答えいたしましたのもアメリカ憲法とそれから戦争権限法に基づいてお答えしたわけでありますが、御承知のとおりに、戦争権限法ができましたのは、ベトナムでアメリカがああいうことをいたしました結果、大統領が勝手に戦争に巻き込まれるようなことがないようにという国会の意思からなされたものであります。したがいまして、憲法と戦争権限法の個条は私はお答えしたものの、これは一に大統領の判断によるわけであって、日本が攻撃されたる場合、自動的に直ちに日本の防衛につくということは、なかなか法文上は絶対に間違いありませんと言うわけにはいかないわけであります。一に、しばしば日本の首脳と向こうの首脳との間において交わされた話し合いまたは共同声明等によって安保条約を基礎にした相互信頼に基づいて、日本が攻撃された場合は必ずアメリカは直ちに防衛をするという一点の疑いを持たないということで終始しているわけでありますけれども、その判断は、正直に言ってどこに基づくかと言えば、一つには、日本の存在、日本の位置というものがアメリカの戦略上欠くべからざるものであるかどうか、第二番目には、日本の平素の経済しその他の状態がアメリカにとってきわめて大事なものであるかということに煮詰められると思うわけでありますけれども、しかし、いまここでこれをさらに突き詰めて言いますと、論理的には源田先生がおっしゃったように、日本が核攻撃されたる場合、アメリカが核を持ってこないで済むかという議論になってくるわけであります。その論理的な問題を詰めていくと問題が起こるわけでありますが、しかし、そのような状態を考えると、日本が核で攻撃されたる場合というのは、これはもう現在の核爆弾その他の核兵器というものは日本の存亡が数発の核兵器によって消滅する時期でございますから、いまこれを論理的に詰めて答弁をする段階ではないと考えておるわけでございます。
  262. 源田実

    源田実君 この問題は、相当戦略戦術的な問題を詳しく掘り下げていかないと、明確なる解答が出ないと思います。したがいまして、いま外務大臣が申されましたように、数発の核爆弾で日本が壊滅する場合と、しからざる場合と、二つ考えられると思うのです。ヨーロッパの地域にニュートロン・ボムを持ち込もうとしておるああいう兵器ならば、これは壊滅をしないで済むんですよ。しかしながら、威力はうんとある。したがいまして、オール・オア・ナッシングというこういう簡単な理論ではこの問題は解決し得ないと思いますが、これは専門事項にずいぶん入りますから、ここでは一応この問題についてはこのあたりでとめておきます。  続いて、実は私が予算の質問順序として提出した中で、それをずうっとやっていくと、下手すると重要問題をやる時間がなくなると思うんですよね、四時までに終わってくれということなんで。それで、時間がなくなると重要問題が抜けますので、ちょっと前後が狂いますけれども、憲法解釈の問題についてひとつお伺いしたい。時間があったらまたもとへ返ります。  憲法解釈の中で、憲法第六十二条の国政調査権の限界、その限界というのは議院証言法の第五条によってある制限が加えられておると思うのです。そのほかにもこれがあるかどうか、どこまで限界があるのか、国政調査権に対する限界は。これは法制局長官ですか、お願いします。
  263. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) 議院のお持ちになっている国政調査権の範囲の一般的な御説明ということになりますと、実は私よりも参議院法制局長あたりの方が適当であろうと思いますが、ここで私に説明をせよとおっしゃればそれはいたします。  それは、証言法の第五条で、一定の場合に一定の手続を経て証言を拒むことができる、あるいは資料の提出をしないことができるという規定はもちろんございますけれども、そのほかに、あの規定を待たずして、つまり国政調査権に内在する制約というものはやはりあるのだろうと思うのです。その典型的なものとしては、他の国家機関、しかも独立機関、まあ裁判所が典型的なものだろうと思いますけれども、司法権の内容にわたるようなことは、これは国政調査権をもってしても調べることはできない。あるいはまた個人の非常にプライバシーにわたる事項、そういうような事項につきましても、これも調査権の性格そのものに内在する制約だろうと思います。
  264. 源田実

    源田実君 ただいまの問題について、参議院法制局長、お願いします。
  265. 杉山恵一郎

    法制局長(杉山恵一郎君) ただいま法制局長官がお答えになったとおりでございまして、国政調査権と申しますのは、国会がその権能を行使するために持っている権能でございますので、したがって国会の権限外の事柄についての調査ということはできない。ただし、それが立法のみならず行政にも絡みますので非常に広い範囲ではございますけれども、たとえば私人に関する問題であるとか、あるいは司法作用、裁判そのものというようなことについては調査できないというふうに考えます。  それで、議院の証言法に関する五条のお話がございましたが、これは国政調査権の範囲の問題というよりも、国政調査権を行使する場合に、たとえば資料要求するときに、無制限に応じなければならぬかどうかということで、行使上の制限として、たとえばそれが国益に重大な影響があるというふうな場合には拒否できるというふうな、権限の内部での制限としてそういうものがあるというふうに考えておるわけでございます。
  266. 源田実

    源田実君 私はこういう問題は素人でありますが、第四十一条に国権の最高機関というぐあいに書いてある。その最高機関の意思と他の機関との意思とが衝突したような場合には、国会の意思の方が優先権を持つわけですか、どうですか。
  267. 杉山恵一郎

    法制局長(杉山恵一郎君) この憲法で申しておりまする最高機関ということの法律上の意味でございますけれども、いろいろ議論のあるところではございますけれども、これは法律上の意味を持っていない、ただ国会が主権者たる国民と直結しておるということで、国の中のたくさんの機関との間で一番重要な意味を持つ機関であるということのいわば政治的宣言であるというふうに言われておりまして、権限間の問題は、それぞれ憲法でたとえば司法、司法権は独立である、行政そのものは行政権に属するというふうに配分されておるというふうに考えております。
  268. 源田実

    源田実君 そうすると、この国権の最高機関という意味は、順位が一番であるというだけで、権限の方はまあ相当制限を受けると、必ずしも一番にいかない、こう考えていいですか。
  269. 杉山恵一郎

    法制局長(杉山恵一郎君) やはり憲法は三権分立主義をとっておりますので、それぞれ独立の権限を持っておる。その限りでは一番権限が強いというわけにはいかない。たとえば、最高裁判所は国会でつくった法律の審査をして、これは憲法違反であるというふうな判決をすることがあるわけでございます。それと同時に、今度は内閣の方では最高裁判所の裁判官を任命するというふうなものもある。それから内閣は国会に対して責任を負うというふうな、それぞれ違った立場でのチェック・アンド・バランスがあるというふうに考えておりますので、国会は何でもできるんだというふうなそういう意味での最高権力を持っているわけではないというふうに思います。
  270. 源田実

    源田実君 そこで、問題がいよいよ本題に入ってくるわけなんです。ということは、自衛隊法第七十六条による治安出動及び防衛出動の下令が、これは国会の承認を要する。国会が閉会であるときには、総理大臣が下令して、そうしてなるたけ早く国会の承認を得なきゃならない。国会が承認をしなかった場合には、命じた出動命令を撤回しなきゃならない、こういうことになるんです。ところが、国会が承認する場合に、この防衛問題についてはいろいろなことが考えられる。侵略者が兵力を幾ら持ち、どういう練度を持ち、どういう配備でどこからどういうぐあいに動いておるんだと。こちらはそれに対してどういう兵力でどういう方向からどうやってやらなきゃならないんだと。したがって、ここになるたけ早く防衛出動を下令してもらわなきゃどうにもならない状況であるというような詳しいことまで国会で審議しなければ、国会自体が承認の決定をすることができないという問題があるわけです。しかしながら、その場合、非常な問題がここに残るのは、国会でいままではほとんど機密事項はこれは議院証言法その他によってやっていない。しかしながら、こういう防衛出動に踏み切るか踏み切らないかという重要問題を、その機密事項に触れないで国会は盲判をつきなさいとはいかないと思うのですよ、この問題は。この問題を一体まずどういうぐあいにお考えになっておるか、これをひとつ法制局長官、いかがですか。
  271. 真田秀夫

    政府委員真田秀夫君) それはわが国が自衛隊をして防衛出動をさせるということは、これはまことに大変な事態でございますので、それで自衛隊法はその防衛出動については原則として事前に国会の承認を得なさいと、こう書いているわけですから、とても盲判でいいなんというようなことは考えるわけはないのであって、防衛出動を命ずるための要件が法律にありますから、少なくともその要件は御説明をして御納得をいただいて御承認を得ると、これは当然必要なことでございます。ただ、私は軍事専門家でございませんので、いま源田先生がおっしゃいましたように、敵がどれだけの兵備でやってきて、それに対してではどういう自衛隊の対応の仕方をしなきゃいけないかというようなことまで承認事項であるかどうか、ちょっと私はその辺は読みにくいような気もいたします。つまり、防衛出動は、「外部からの武力攻撃(外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。)に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合には、」というわけでございますから、防衛出動を必要とするという客観的な情勢、これは御説明をしなければ御承認を得るわけにはいかぬと思いますけれども、その武力攻撃に対してわが自衛隊がどういう方面にどういう規模でいつ対応するかというようなことは、これは最高指揮官である内閣総理大臣の権限として自衛隊を動かすということに相なるのではなかろうかと思います。したがいまして、そんなに秘密事項がそれを披瀝しなければこの自衛隊法の七十六条が動かないというような関係でもないだろうというふうに私は思います。
  272. 源田実

    源田実君 こういう問題は、非常に重要な問題なんです。一点の疑義があってもいけない。そうして、防衛出動を必要とするときになって、ああでもないこうでもないという論議を国会の中でやるようになったら、これはもうどうにもこうにもならぬ。したがって、あらかじめこういう問題についてはちゃんとした処置をとっておかなきゃならないと思うんですよ。こういう問題については国会でいままで議論されていないのじゃないかと思うのです、防衛出動なんかの問題については。それで、憲法第五十七条によれば、国会は秘密会議を開くことができる。この秘密会議は三分の二の多数の賛同によって開くことができる。そうすると秘密会議はあるいは守れるかもしれない。しかし、秘密会議を開いた場合に、今度はその秘密会議に参列した国会議員の一人一人に機密保持の義務が生ずるのかどうかをひとつこれははっきり答えていただきたい。
  273. 杉山恵一郎

    法制局長(杉山恵一郎君) 憲法は懲戒に関する規定を規定し、国会議員を懲戒することができるという規定がございます。そして、国会法がこれを受けて、秘密会の場合に特に秘密と認めた事項は会議録は公表しないと。そして、そういう会議録を公にしないようなものについて秘密を犯した場合には、懲罰事犯としてこれを処理するというふうなことになっておりまして、国会がこれを秘密だということにしたものは、これは院の秩序としてこれに違反する者は懲罰するというわけでございますので、そこには当然前提として国会が秘密としたものについてはそれを国会議員は守らなければならないという義務があるというふうに考えます。
  274. 源田実

    源田実君 これは国会の中の懲罰委員会にひっかかるのであって、これが刑法にひっかかるとかそういうことにはならないのじゃないんですか。
  275. 杉山恵一郎

    法制局長(杉山恵一郎君) 先生御指摘のとおりで、一般的に国会議員について秘密保持義務があってそれを刑罰で担保しているというそういうような制度にはなっておりません。
  276. 源田実

    源田実君 この問題についても、私は、これから政府国会ともに、もっともっと掘り下げて、この問題について本当の重要な場合が起きたときになってからあわてても仕方がないんです。それでこういうものを進めていかなきゃならないという念願を持っておるのでありますが、ひとつ総理の御意見を伺いたいと思います。
  277. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いろいろ重要な問題についての御指摘があり、ジャック・アンダーソンですか、ジャパンタイムズにおける記事、そういう御指摘もあり、ああいうことが公の新聞等において論じられるということ、これは放置するわけにいきませんから、政府はかたい考えを持っておりまするけれども、これはなお私どもはよく検討いたすことにいたします。  それからいまの国政調査権の問題がありました。これは国政調査上必要な問題について政府に要請がありますれば、これは政府はできる限りの御協力をすると、こういうつもりでございまするけれども、いまお話しの多くの部分は国会内部のやり方の問題のように思いますので、国会において善処せられんことを期待いたします。
  278. 源田実

    源田実君 この問題はここで一応終わりまして、あと時間があったらまたやります。  次は、防衛問題でありますが、今度は防衛庁に聞きます。昨年の七月に出された国防白書「日本の防衛」の中のぺ−ジ九、これにどういうことが書いてあるかというと、「米ソ両国は、いずれも相手側の先制攻撃を受けた後においても相手側に耐え難い被害を与えることができるいわゆる第二撃能力を保有することによって核戦争を相互に抑止し合う関係にある。」と、こう書いてある。ところが、この思想は、アメリカの元の国防長官であったマクナマラの発想である。そのマクナマラの発想が今日までずっと続いてきておるんです。ソ連はただの一度もこういうことを言ったことがない、ソ連のいろいろな発言を調べてみても。兵力バランスなんて一言も言っていないんですよ。ソ連の言っておるのは平和共存とデタント、これだけなんです。ところが、このマクナマラの発想について私は非常な疑問を持っておる。兵力はバランスしておれば戦争にならないというそういう概念というものはちょっと疑問を持っておるんですが、防衛庁はいまでもやはりこれがいいとお思いかどうか、それをまずお聞きしたい。
  279. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま先生がおっしゃいましたのは、戦略核戦力、これがバランスしておればいいというようなことだと思います。マクナマラが一九六七年にすでに言っておりまして、いわゆる戦略核抑止力がバランスを保っているということと同時に、戦略核兵器というものがもうすでにオーバーキルになっているというような考え方のもとに、アメリカは過去十年以上にわたりましてICBMは千五十四機をふやしておりません。したがいまして、これは完全に第二撃能力を持っているということで、いわゆるバランスを保っているといいますか、そういう攻撃を受けてもそれに対して報復力を常に維持し得るという自信、そういったものが抑止をしているというふうに考えていると思っております。
  280. 源田実

    源田実君 実は、まず根本的な問題から先に申し上げますと、兵力バランスというのが、あのマクナマラが盛んにお互いのバランスをとらなきゃいけないと言ったときに、アメリカのある軍事雑誌が、あの当時はアメリカは圧倒的な武力を持っておった、戦略兵器で。もうソ連に対して何度でもやり得る、ソ連は手も足も出ない、そういう圧倒的な兵力のもとにキューバの危機を乗り越え、レバノンの危機を乗り越え、ベルリンの危機はそれで乗り切ったんです。その後、今後そういう問題が起きたときに果たして乗り切り得るかどうか非常な疑問がある、いま。というのは、あの当時軍事雑誌がどう書いたかというと、それほどバランスが平和のために有利なら、アメリカはたくさん持っておるのだから、ひとつ残ったやつをソ連にやってバランスすればもっと平和になるだろうと、こういうことをその軍事雑誌が書いておりました。いま日本の政局もいま保革伯仲というんですよ。これはやっぱり一般に不安感を持っておるようですね。そうすると、いまが一番政局が安定する時期である、保革伯仲だから。与党があんまりたくさん取ったら、今度は残った余りの半分を野党の方へちょっとくらがえさしてちょうどバランスがとれるようにすると政界はきわめて安定すると、こういう理論になるのじゃないかと思うんですよ。これはそのほかにもいろいろ伯仲ということは、柏鵬時代ということがある。柏戸と大鵬とが伯仲しておる。そうすると、見物人は喜ぶんです。本人同士の間には平和はないですよ、あれは。見物にはいい。巨人軍にちょうど敵対できる強力なるチームが出てくれと。みんなその方がおもしろいから。巨人だけ強かったら、もうことしも巨人、平和がずっと続いていっておるんです。この考え方に真っ向から挑戦するのが兵力バランスのコンセプトである。それをアメリカがやってきて、そうして日本から世界各国がみんなそのまま持っておる。いままでなぜ持っていたかというと、アメリカの圧倒的な戦力なんですよ。それが何のかんの悪く言われながらもとにかく大戦争を起こさないで済んだ。今度、あのバランスということになりますと、これは講義をやるようになって非常に恐縮ですが、バランスというのは、支点が真ん中にあって、ここに棒がこうある、この間に同じ重量のおもりを両側へつけて、ちょうどバランスするように持っていこうというのがマクナマラ思想なんです。ちょっと片っ方の重みがふえたり、あるいは風が吹いたりすると、ぐらっとひっくり返るんです。こういうことであります。もしそういうバランスをとろうとするんならば、おのおのの下に柱を下げて、その上におもりが乗ってその間に橋をかける、これなら安定するんですよ。いまの戦力バランスの概念というのはその点において非常な誤りを犯しておって、みんなそれを信じておる。これは世界の平和維持のために決していい方法ではない。しかし、ほかの方法についての意見は私はいまここじゃ言いません、ありますが。そういうぐあいに私は考える。それはなぜ危ないかということを私は今度は防衛庁に聞くんですが、米国はそのバランス思想でいっておる。ソ連はどういう思想でいっておりますか、いまソ連は。
  281. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま先生がおっしゃいましたバランス論の中で、私はマクナマラも単なるバランス論だけをとっていたとは思いません。御承知のように、マクナマラの時代からきわめてアメリカが注視し、ソ連も注視しておりましたのが、第二撃能力でございます。したがいまして、一九五〇年来圧倒的な核戦力を持っておりましたアメリカの時代というものが、六〇年以降になりましてから第二撃能力、生き残れるということによりまして、圧倒的な力を持たなくても、その第二撃能力を維持している限りきわめて報復力としての核戦力というものが大きいということを言い続けできているわけでございます。一九六七年のマクナマラの国防報告にもございますように、アメリカはソ連から核攻撃を受けた後、それで破壊された戦略核兵器の残ったものの五分の一でしたか五分の二かなんかの兵力でもって攻撃をしても一億二千万のソ連国民を殺傷することができるというようなことを言っております。そういった意味を含めましてのバランスであろうということでございまして、ソ連は現在量的にアメリカをしのごうという努力はしているようでございます。したがいまして、全体から見ますると、質の面ではアメリカがすぐれておりまして、量の面では現在ソ連が凌駕しているということでございます。  ただ、アメリカは、ソ連がそういった軍事努力をしているということについて、その意図がどこにあるかということに対してはやはり懸念を持っております。したがいまして、そういったソ連の核戦力に負けないような核戦力を維持していこうという決意を述べているわけでございます。
  282. 源田実

    源田実君 それじゃ、私の考えを申し上げて、防衛庁はそれに反対かどうかひとつ……。  アメリカは、従来、ソ連の第一撃を受けた、残った核戦力によってソ連のポピュレーション——都市人口を目標にするんだと。それと工業地帯。そうして、アシュアード・ディストラクションケーパビリティーといういわゆる確実なる破壊力思想というのはマクナマラの思想ですね。これはソ連の人口の五分の一ないし四分の一をやっつけて、そうしてソ連の工業力の二分の一をやっつけるならば、そういう力を持てば、これはいわゆる確実なる破壊力を持ち得る。そうするとソ連から手を出さないという考え方のもとに、アメリカのあの核弾頭というものは都市攻撃が目標になっておる。ところが、ソ連の方は、そうではなくて、アメリカの軍事基地、ことにあの防御されたミニットマンなんかの基地を爆撃する、これが第一目標である。都市攻撃のためには不必要な兵力をずいぶん整備しておる。二十五メガトンなんというような弾頭は都市攻撃のためには不必要なんです。この大東京を壊滅させるために必要なのは一メガトンなんですよ。そうすると、一メガトンを二十五発持った方が二十五メガトン一発持ったよりもはるかに有効なんです。にもかかわらず、ソ連は二十五メガトンなんて化け物のような大きな爆弾をいますでに二百何十発−三百発以上持っていますよ。それはきわめて強固に防御されたアメリカのICBMをその基地においてやっつけるということが目標である。そこにアメリカとソ連との戦略目標に根本的な違いがある。ソ連の方がどっちかというとオーソドックスで、敵の兵力を目標にする。アメリカは敵の国民の命を人質にとるという思想になっておると思うのです。その点は防衛庁はどうお考えですか。
  283. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) まず、アメリカの戦略の中で、いま先生は都市攻撃を目標にしているとおっしゃいましたが、私は、先ほど申し上げました一九六七年のマクナマラ報告におきましてこういう記述がございますので、御紹介申し上げます。  最初にアメリカがソ連を攻撃する場合には、一億人のソ連人を殺傷することができるだろう。しかしながら、最初ソ連がアメリカを攻撃して報復する場合には一億二千万を殺傷することができるという記事がございます。この報告がやはりアメリカの議会で、おかしいではないかと、最初に攻撃した方が少なくて、後の方が多くなる、しかも少い数で報復して多くなるのはどういうわけなんだという質問がございます。それに当時のマクナマラが答えまして、最初に攻撃する場合には、これは軍事施設に焦点を合わせるんだと。したがって、今度は向こうから攻撃を受けたときにはそういった照準を変えてやるのだからその場合の方が多いんだというようなことも言っております。したがいまして、当時からアメリカの戦略ミサイルの特徴というのは目標に向かってきわめて的確に当たるということであったと思います。当時、ソ連の、ミサイルというものは命中精度というものがよくなかった。したがって、ソ連はやはり破壊力の大きさというようなものに向かって努力しておったのではないかというふうに考えられるわけでございます。しかし、この命中精度につきましても最近ソ連はきわめて努力をしているという事実もあるようでございます。
  284. 源田実

    源田実君 アメリカの例のアシュアード・ディストラクション・ケーパビリティーという意味は、いま防衛庁はどう理解しておるんですか。それがアメリカの根本思想だとぼくは思うのです。
  285. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) それは、先ほど来御説明申し上げておりますように、ねらった目標を的確に攻撃する能力というふうに考えております。
  286. 源田実

    源田実君 アメリカのはたびたびいろいろな書類に出ておる。それは都市の人口を目標にすることが抑止力になると。これは、アメリカの議会の中にある、米ソの戦略兵器の比較と、それからその用法と、それの効果と、それに対してどういうぐあいに対処すべきであるかという、結論は出さないで、各専門家の意見をずらっと並べて書いておる「カウンターフォース・イシューズ・フォア・ザ・US・ストラテジック・ニュークリア・フォーシズ」という本なんです。この中に、アメリカはこうだと、ソ連は兵力を目標にしておる、こういうことがあるんですよ。これは防衛庁は読んでおられるかどうかそれは知らぬけれども、この中に重要な問題があるんです。それは、アメリカは抑止力に重点を置いている。ソ連は置いていないんです、実際は。先制攻撃に重点を置いておる。ところが、キッシンジャーの言葉でも、アメリカの核兵力はソ連の人口を——全世界かな、七回にわたって殺すだけの力を持っておる、こういうことをよく言っておる。ところが、その七回にわたって殺す力があるということの計算を、これをずうっとまた、これは「ウォー・サーバイバル・イン・ソビエト・ストラテジー」という本なんです。アメリカのある大学の戦略研究所、この中の学者がずいぶん研究して書いた。その中におもしろいことが書いてあるのは、ああいう何回にもわたって殺す力があるというその計算の基礎は一体何であるかというと、これは広島、長崎に落とした原子爆弾の一単位重量によって幾らの人間が死んだかと、こういうことなんです。それが基礎になって、いまのアメリカが持っておる核弾頭の炸薬量によって幾らの人間が殺せるか、やってみると、その出た数を現在の世界人口で割ってみると何回かというのが出てくるんです。しかし、ああいう広島、長崎に落としたやつを、そのまま全然人も何にも住んでいないニューギニアとかなんとかに適用できない。シベリアに適用できないんです。そのことを言うと、これにも書いてありますが、世界じゅうにナイフとフォークが幾らあるかと、一つで一人ずつ殺せると、これはどれだけの人間が殺せるかというようなことが書いてある。したがって、そういうぐあいに簡単にはいかないと。それで、それに対するソ連がきわめて強い防御をやっておるということは、防衛庁は御存じでしょうね。いかがですか。
  287. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) 民防その他でその防御について努力しているということは承知いたしております。
  288. 源田実

    源田実君 これももう時間が余りないそうですから、どっちにしても十分はもうできないんで、結論的なことをまず申し上げたい。  それは、ソ連は、第二次世界戦争が終わると同時に、技術屋、戦略家その他の専門家を約六百名動員しましてずうっと丹念に研究した。それはどういう研究であるかというと、いかにすれば核戦争に生き残れるかと、いかにすれば核戦争において勝ち得るかということを徹底して研究しておるんです。そうして、いまは、それが着々ほとんど実行に移っておる。アメリカの方でアメリカの空軍の情報部長がこの間やめてその実情をずうっと発表したですよ。ところが、アメリカ政府はこれを黙殺しておるんです。何遍言っても政府はわれわれの言うことを聞かないということを彼は証言しておる。しかし、そういう事実がもしあるとすれば、これは恐るべきことですよ。そうして、ハンターキラーというあの、何ですか、人工衛星を落とすのもアメリカ政府は否定したですよ。ところが、昨年は五回ソ連がやった中で三回成功して、いよいよアメリカ政府も取り上げざるを得なくなった。偵察衛星が破壊されたらさっぱり敵情がわからなくなるんですよ。こういうような核戦争に対するきわめて緻密な計画がソ連側では行われておる。アメリカの方はいわゆる確実なる破壊力思想によって戦争は抑止でき得るというように考えておるのじゃないかと私は思うのです。  したがいまして、この問題について私は最後に総理にお願いしたい問題は、いままでアメリカの思想をわれわれはまるまるそのまままるのみにして持ってきておるんです。それによってすべての計画を立てていくということにははなはだ疑問がある。自分でもっと日本もどういうぐあいになるのかということを真剣に研究していかなきゃならぬ。あらゆる面でこの防衛問題には手抜かりがいっぱいあります。したがって、いまその手抜かりの点を一つ一つ言うとまだ何時間もかかりますからこれはもう言いません。しかしながら、そういうものが残っておるということを私はここに申し上げ、最後に総理の、こういう問題に対してもう少しこの深い研究を、アメリカの言うことをそのまままるのみにしないで、日本は日本で独自の研究をやる能力があるんですから、ひとつ進めていただきたいと思いますが、総理にその御見解を承って終わりたいと思います。
  289. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 平素、国防につきまして、私どもが余り研究しておらなかった側面の諸問題を含めましていろいろ貴重なお話を承った次第でございますが、まあ日米安保体制下でありまするから、アメリカ事情、これを検討するということは、これはもう御理解願えると思うのでありますが、わが国といたしましてはわが国の独自の立場もあるわけでございまするから、また独自の機能、能力を動員いたしまして独自のいろいろな検討をいたしたいと、このように存じます。
  290. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で源田君の総括質疑は終了いたしました。(拍手)  次回は明後十三日午前十時から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十七分散会