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1978-03-09 第84回国会 参議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月九日(木曜日)    午前十時四分開会     —————————————    委員の異動  三月八日     辞任         補欠選任      中山 太郎君     浅野  拡君      上田耕一郎君     橋本  敦君  三月九日     辞任         補欠選任      矢原 秀男君     相沢 武彦君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鍋島 直紹君     理 事                 戸塚 進也君                 内藤誉三郎君                 中村 太郎君                 宮田  輝君                 竹田 四郎君                 吉田忠三郎君                 多田 省吾君                 内藤  功君                 栗林 卓司君     委 員                 浅野  拡君                 岩動 道行君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 小澤 太郎君                 亀井 久興君                 亀長 友義君                 熊谷  弘君                 下条進一郎君                 玉置 和郎君                 夏目 忠雄君                 成相 善十君                 林  ゆう君                 真鍋 賢二君                 三善 信二君                 望月 邦夫君                 八木 一郎君                 赤桐  操君                 大木 正吾君                 志苫  裕君                 野田  哲君                 福間 知之君                 藤田  進君                目黒今朝次郎君                 相沢 武彦君                 太田 淳夫君                 峯山 昭範君                 矢追 秀彦君                 橋本  敦君                 渡辺  武君                 田渕 哲也君                 喜屋武眞榮君                 柿沢 弘治君                 秦   豊君    国務大臣        内閣総理大臣   福田 赳夫君        法 務 大 臣  瀬戸山三男君        外 務 大 臣  園田  直君        大 蔵 大 臣  村山 達雄君        文 部 大 臣  砂田 重民君        厚 生 大 臣  小沢 辰男君        農 林 大 臣  中川 一郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  福永 健司君        郵 政 大 臣  服部 安司君        労 働 大 臣  藤井 勝志君        建 設 大 臣        国 務 大 臣        (国土庁長官)  櫻内 義雄君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      加藤 武徳君        国 務 大 臣        (内閣官房長        官)       安倍晋太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)      稻村左近四郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       荒舩清十郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  金丸  信君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       熊谷太三郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  山田 久就君        国 務 大 臣  牛場 信彦君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        内閣総理大臣官        房広報室長        兼内閣官房内閣        広報室長     島村 史郎君        公正取引委員会        事務局長     戸田 嘉徳君        警察庁警備局長  三井  脩君        防衛庁参事官   番匠 敦彦君        防衛庁長官官房        長        竹岡 勝美君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛庁人事教育        局長       渡邊 伊助君        防衛庁経理局長  原   徹君        防衛庁装備局長  間淵 直三君        経済企画庁調整        局審議官     澤野  潤君        経済企画庁物価        局長       藤井 直樹君        経済企画庁総合        計画局長     喜多村治雄君        経済企画庁調査        局長       岩田 幸基君        科学技術庁研究        調整局長     園山 重道君        環境庁水質保全        局長       二瓶  博君        沖繩開発庁総務        局長       亀谷 礼次君        沖繩開発庁振興        局長       美野輪俊三君        国土庁土地局長  山岡 一男君        法務省刑事局長  伊藤 榮樹君        法務省入国管理        局長       吉田 長雄君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省経済局長  手島れい志君        外務省経済局次        長        溝口 道郎君        外務省経済協力        局長       武藤 利昭君        外務省条約局長  大森 誠一君        大蔵省主計局長  長岡  實君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  田中  敬君        大蔵省証券局長  山内  宏君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        大蔵省国際金融        局長       旦  弘昌君        国税庁長官    磯邊 律男君        国税庁次長    谷口  昇君        文部省初等中等        教育局長     諸澤 正道君        文部省大学局長  佐野文一郎君        文部省管理局長  三角 哲生君        文化庁次長    吉久 勝美君        厚生大臣官房長  山下 眞臣君        厚生省医務局長  佐分利輝彦君        厚生省社会局長  上村  一君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        農林省農林経済        局長       今村 宣夫君        農林省農蚕園芸        局長       野崎 博之君        農林省畜産局長  杉山 克己君        食糧庁長官    澤邊  守君        林野庁長官    藍原 義邦君        通商産業大臣官        房審議官     山口 和男君        通商産業省通商        政策局長     矢野俊比古君        通商産業省通商        政策局次長    花岡 宗助君        通商産業省貿易        局長       西山敬次郎君        通商産業省立地        公害局長     左近友三郎君        通商産業省基礎        産業局長     天谷 直弘君        通商産業省機械        情報産業局長   森山 信吾君        通商産業省生活        産業局長     藤原 一郎君        資源エネルギー        庁長官      橋本 利一君        資源エネルギー        庁石炭部長    宮本 二郎君        中小企業庁長官  岸田 文武君        運輸省海運局長  後藤 茂也君        運輸省船舶局長  謝敷 宗登君        運輸省船員局長  高橋 英雄君        運輸省鉄道監督        局長       住田 正二君        運輸省航空局長  高橋 寿夫君        海上保安庁長官  薗村 泰彦君        気象庁長官    有住 直介君        労働省労働基準        局長       桑原 敬一君        労働省職業安定        局長       細野  正君        労働省職業安定        局失業対策部長  細見  元君        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省計画局長  大富  宏君        建設省河川局長  栂野 康行君        建設省道路局長  浅井新一郎君        建設省住宅局長  救仁郷 斉君        自治省財政局長  山本  悟君        自治省税務局長  森岡  敞君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        日本国有鉄道総        裁        高木 文雄君    参考人        日本銀行総裁   森永貞一郎君        日本住宅公団総        裁        澤田  悌君        地域振興整備公        団総裁      吉國 一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和五十三年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和五十三年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和五十三年度一般会計予算  昭和五十三年度特別会計予算  昭和五十三年度政府関係機関予算  以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十三年度総予算案審査のため、本日の委員会日本住宅公団総裁澤田悌君日本銀行総裁森永貞一郎君及び地域振興整備公団総裁吉國一郎君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認めます。  なお、出席時刻等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  6. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは、昨日に引き続き峯山昭範君の総括質疑を行います。峯山君。
  7. 峯山昭範

    峯山昭範君 初めに、日中問題についてお伺いをいたします。  華国鋒主席は、今回の全国人民代表大会政府報告の中で、日中平和友好条約早期締結日中両国の利益に合致する、こういうふうに述べておられますが、この点について総理評価をまずお伺いしたい。
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 中国華国鋒党主席政府活動報告、これは私詳しくはまだ見ておりませんけれども、概観するところ、大変私は日中両国のために結構な報告である、このように考えております。特に、その中で、日中平和友好条約に触れておりまするけれども、この日中平和友好条約に関する考え方、これは私と全く同一であるという評価をいたしております。
  9. 峯山昭範

    峯山昭範君 この政府報告によりましても、中国側の体制はほぼ整ったと、こういうふうに見てもいいんじゃないかと私は思うのですが、この報告によりまして新しい進展が期待されるんじゃないか、こういうふうに考えられますけれども、総理の御見解はいかがでしょう。
  10. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日中平和友好条約締結は、私は、日中双方がこれを希望しておる、そういう認識でございます。いまそういう認識に立ちまして、両国の間で、日中平和友好条約締結交渉をどういう段取りで、どういう手順で進めるかということを協議をいたしておる。そういうことでありまして、本会議において私が申し上げましたように、日中平和友好条約締結の機は、締結交渉の機は熟しつつある、このような判断でございます。
  11. 峯山昭範

    峯山昭範君 外務大臣にお伺いしますが、第三回の佐藤韓念竜会談の開催ですけれども、この問題については、政府はもう訓令を出しておられるわけですか。
  12. 園田直

    国務大臣園田直君) 第三回会談がいつどのようなかっこうで開かれるか、相手があるのでわかりませんが、政府としては、佐藤報告に対してはそれぞれ必要なことは通達なり連絡をいたしております。
  13. 峯山昭範

    峯山昭範君 まだ出していないということでございますか。
  14. 園田直

    国務大臣園田直君) 新しい訓令は出しておりません。必要な連絡はいたしております。
  15. 峯山昭範

    峯山昭範君 いつごろ出す予定でございますか。
  16. 園田直

    国務大臣園田直君) それはこちらでいろいろ検討した結果、なるべく早く出したいと考えております。
  17. 峯山昭範

    峯山昭範君 第三回の会談交渉再開されますと、外務大臣訪中という段取りになると思いますが、これはどうでしょう。
  18. 園田直

    国務大臣園田直君) 第三回の会談がどうなるかわかりませんが、そこで合意ができれば交渉再開ということになるわけであります。それから先検討し、必要な時期に総理の御命令を受けて私が参るということでありますから、第三回会談を終わったら直ちに訪中ということにはならぬと思います。
  19. 峯山昭範

    峯山昭範君 直ちにはならないけれども、大体ほぼそういうような方向で進んでいるということでございますね。
  20. 園田直

    国務大臣園田直君) これは今後の問題でございますが、ほぼそういうふうにいけばよいと考えております。
  21. 峯山昭範

    峯山昭範君 第二回の佐藤韓念竜会談でも、反覇権の問題が相当議論されて意見の相違があるような話も先日の衆議院予算委員会でも出ておりますが、この問題について、まず第一に、覇権条項を前文にするか本文に明記するかという問題があるわけですが、この問題についてはもう合意されていらっしゃるわけですか。
  22. 園田直

    国務大臣園田直君) 総理からもしばしば言われているとおり、条約内容についての交渉は一切いたしておりません。再開するについての段取りのことでございまして、したがいまして、それをどうやるかは再開後の問題でございます。
  23. 峯山昭範

    峯山昭範君 内容には入っていないにしても、日本政府考えとしては、本文でもいいという考えでよいわけですか。
  24. 園田直

    国務大臣園田直君) 交渉を前にして、それを申し上げることは御勘弁を願いたいと思います。
  25. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、共同声明第七項の条項そのままでいいと考えてよろしいでしょうか。
  26. 園田直

    国務大臣園田直君) 共同声明の立場をわが日本はとっておるわけであります。
  27. 峯山昭範

    峯山昭範君 変更されるということもあり得るわけですか。
  28. 園田直

    国務大臣園田直君) これはこれからの交渉でございますから、いまここで先走ってどうこう言うわけにはまいりません。
  29. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは、総理、それじゃ日本政府の反覇権という問題については、これは国際関係における普遍的な平和原則と、こういうふうに位置づけて考えてよろしいでしょうか。
  30. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 反覇権というのは、まさに私は国際的公理でなければならぬ、このように考えております。しかし、条約がどうなるかということと私が申し上げていることとは、これはもう別個の問題でございます。
  31. 峯山昭範

    峯山昭範君 この問題については中国側も同じような考え方を持っているんじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  32. 園田直

    国務大臣園田直君) 中国側がどう考えているか、ここで申し上げる問題ではないと存じます。
  33. 峯山昭範

    峯山昭範君 この問題について、中国側とやっぱり隔たりがあるんでしょうか、実際問題として。
  34. 園田直

    国務大臣園田直君) これは今後の交渉で逐次明らかになってくることと存じます。
  35. 峯山昭範

    峯山昭範君 この問題についての見通し、これは明るいと言っていいですか。
  36. 園田直

    国務大臣園田直君) これからの交渉のやり方次第でありまして、明るくも暗くもないと、こういうことであります。
  37. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理、実際問題、この問題を解決できなければ、締結することはできないわけでしょう。
  38. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 何の問題ですか。
  39. 峯山昭範

    峯山昭範君 反覇権の問題です。
  40. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま中国側と話をいたしておりますのは、どういう手順段取りでこの条約交渉をするかという、そういうことなんです。中身についてまだいささかも触れるところがない、こういうことです。  ただ、こういうことは申し添えておきますが、わが国世界のいかなる国とも友好関係を持つということをたてまえとしておる、そういう国柄であるということ、これは手順段取りの話し合いの中で随時佐藤大使の方から申し上げておる、こういうふうに御理解願います。
  41. 峯山昭範

    峯山昭範君 手順段取りはほぼ大詰めに来ておりますか。
  42. 園田直

    国務大臣園田直君) だんだん進んでいるところでございます。
  43. 峯山昭範

    峯山昭範君 少なくとも総理の訪米までには、締結するという考えについてはどうでございましょうか。
  44. 園田直

    国務大臣園田直君) 両方の努力によって、なるべく早く進むようにしたいと思ってはおります。
  45. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、日中問題はそのくらいにしまして、物価問題についてお伺いしたいと思います。  最近の物価の問題で、円高の問題が出てまいりましたが、特に、きょうは、日銀総裁がまだお見えになっておりませんので、円高差益の問題についてお伺いをしたいと思います。  最近の大幅な円高にもかかわらず、消費者物価への波及効果というのがほとんどあらわれていないように私は思うのですが、これはいかがでしょうか。
  46. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御承知のように、わが国輸入は八割方が原材料でございますために、すなわち最終商品が少ないために、たとえばドイツなどの場合に比べますと、直接に円高消費者物価につながるということは比較的少ないわけでございます。しかしながら、非常に原材料価格を反映いたします種類の価格、たとえて申しますと電力料金でございますとかガス料金でございますとかは、御承知のように、据え置きになっておりますし、あるいは灯油の価格なども御承知のとおり下がってまいっております。消費者物資ではございませんが、合成飼料などもさようでございます。したがいまして卸売物価が、現在、対前年同期に対してマイナス一・七であるということは、企業活動の停滞にもよりますけれども、やはり円高というものがそういう形で反映されておるということはすでに御承知のとおりでございます。  したがいまして、間接的に消費者物価にそれが反映をしてまいるわけでございまして、先般、経済企画庁実態調査をいたしましたが、かなり多くのものについて輸入価格低落をし、小売価格もしたがって低落をしておるということがあらわれております。一部、たとえば輸入の魚につきまして、輸入価格は下がったけれども小売価格が逆に上がっているという現象がございまして、この点は、ああいう発表をいたしますことによりまして、何となく魚は二百海里だからしようがないんだという、消費者が恐らく持っておられたであろう気持ちが、案外、輸入価格が下がっているんだなあということで消費者にもわかっていただいたと思いますが、もちろん農林水産庁当局におきまして、なぜこういう現象が起こっておるかということはすでに具体的に調べを始めていただいておりまして、それによってまた行政指導もお願いしたいと考えているところであります。
  47. 峯山昭範

    峯山昭範君 たとえば一%の円高によりまして卸売物価消費者物価に対する影響、これはどの程度試算をしていらっしゃいますか。
  48. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは非常に試算の方法によりましてむずかしゅうございますけれども、〇・一ぐらいではないかと想定をしております。
  49. 峯山昭範

    峯山昭範君 現在、この円高は、昨年と比較しまして、どの程度影響が出ておりますか。
  50. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 何がでございますか。
  51. 峯山昭範

    峯山昭範君 円官問がどのくらいのパーセントになっているか。
  52. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 卸売物価にいたしまして、円高影響だけを申しますと、ほぼマイナス二・五ぐらいは下がるはずであるという計算になります。したがいまして、それが現実にはマイナス一・七ぐらいでございますということは、その他の要因卸売物価国内要因等々が上げておるということでありまして、純粋に円高だけを計算いたしましたら、恐らくマイナス二・五ぐらいになるという試算をしております。
  53. 峯山昭範

    峯山昭範君 私の手元にも資料が届いておりますが、卸売物価が〇・三%弱と、こう物価局試算では出ておるようでございます。消費者物価については、いまおっしゃったように〇・一%。そうしますと、実際問題、円高の方は五十一年の十二月が二百九十八円八十四銭、現在が一応二百三十五円としますと、二〇%以上の円高ですね。そうしますと、余りにもこの影響が少ないというか反映してない、こういうように思うんですが、どうでしょう。
  54. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 何と申しましても卸売物価マイナス一・七であるということは世界各国でも非常に珍しいケースにただいまなっておりますが、ここへやっぱり一番直接に響いておると思います。そうして、これが西ドイツのようなことでございますと、製品輸入が大きいばかりでなく、実は生鮮食料品まで外国から入っておりますから、すぐにそこへ反映いたしますけれども、わが国の場合には、その点がやはり多少時間がかかって間接的に影響していくということでございますので、まだまだ流通機構等関係もありまして、消費者物価に、最終製品価格にもう少し反映してもいいと思っておりますけれども、傾向としてはかなりあらわれておるというふうに見ております。
  55. 峯山昭範

    峯山昭範君 大臣がおっしゃるようなこともあると思います、私はね。しかし、ここで私が申し上げたいのは、円高消費者物価に波及しない大きな理由は、やっぱり何らかの形で国が関与している料金ですね、これが要するに下がらないところに大きな原因があるんじゃないかという考えもあるんですが、どうでしょうか。
  56. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 確かに二回にわたりまして実態調査をいたしますと、自由競争が行われている物資についての方が円高影響が早くあらわれております。何かの形で独占に近いそういうような物はなかなか円高の効果があらわれにくいということが一般論としてございまして、そういう意味では峯山委員の言われますようなことが見られるように私も考えております。
  57. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは現実の問題として総理も聞いてほしいんですが、小麦、砂糖、たばこ、電気・ガス料金、牛肉、国際航空の運賃、国際電話、こういうようなものが下がらないわけですね。これはやっぱり問題だと思うのですが、総理はこの問題についてどうお考えでしょうか。
  58. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 一番大きな問題は電力料金ガス料金、こういうことかと思うのです。その他いろいろありますが、いま電力料金ガス料金等につきましては、二年前に料金改定をいたしまして、周期といいますか、大体当時の見通しから言いますと、ことしは料金改定をしなけりゃならぬ年である、こういうとかうに考えておったわけでございます。賃金の上昇とかいろいろありまするものですから、どうしてもああいう種類の料金、これは引き上げをしなけりゃならぬ、それがことしになる、そういう状態でありましたが、円高というような関係もありますので、その料金改定をもう一年間はこれはやらぬ、少なくとも一年間はやらぬ、こういう方針をとっておる。その辺には顕著に円高影響があらわれておる、このようにごらんになって差し支えないんじゃないか、このように思います。  その他、輸入小麦だ、いろいろその影響は出てきます。出てきますけれども、これは財政処理をどうするかということと関連するわけでありまして、財政上の都合がつきますれば、いろんな処置が考えられるわけでございまするけれども、直ちに、これは自由価格じゃございませんから、円価値の高騰が小麦の売り渡し価格影響するという措置をという関係にならなけりゃならぬという性格のものじゃない、このように考えております。
  59. 峯山昭範

    峯山昭範君 電力料金の話がいま出てまいりましたが、電力会社の燃料費の為替差益は現在どの程度になっていらっしゃいましょうか。
  60. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) いろいろの前提を置きまして、五十二年度における九電力会社の円高メリットは約一千億円と承知しております。
  61. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは当然私は消費者に還元すべきだと、こういうように思うのですが、どうでしょうか。
  62. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 一千億円という円高メリットは、キロワットアワーにしまして二十五銭でございます。わが国の標準家庭で大体百二十キロワットアワー使っておりますので、一カ月にいたしまして三十円程度ということになるわけでございますが、一方、御承知のように、電力は供給力確保のために毎年膨大な設備投資をいたしております。これに伴いまして、資本費あるいは修繕費、人件費等コスト増高要因がたくさんあるわけでございます。また、今後の原油価格あるいは為替レート等について不確定な要素が多い。一方、公共料金でございますから、できるだけ安定的に維持するということも必要でございます。そういったことを総合判断いたしまして、先ほど総理からお話がございましたように、今後少なくとも一年間は現行料金に据え置くということで指導いたしておるわけでございます。
  63. 峯山昭範

    峯山昭範君 国際電話の料金の引き下げについてどうお考えでしょうか。
  64. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) お答えいたします。  御承知のとおりに、国際電話は、相手国と自国との通話回数の相殺をすることにITUで決まっているわけでございまして、したがって日本が通話を多数受けた場合には、逆に差損が生ずるという現状でございます。最近の状態を見ますると、大体均衡のとれた状態でありますので、いまこれを大きく取り上げて云々する状態でもありませんが、しかしながら、こういった問題を、国際電電を招致いたしまして、料金の引き下げについて、今度立場を、独自で引き下げについての指導を行っている現状でございます。
  65. 峯山昭範

    峯山昭範君 具体的にお伺いします。  日本からアメリカに番号通話をかけた場合に、三分間で通話料は幾らでしょうか。
  66. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) ちょっといま手元に資料がございませんので、すぐ取り寄せて返答をいたします。
  67. 峯山昭範

    峯山昭範君 この問題については、後ほど、それじゃ資料がそろった時点で御質問いたします。  それでは、次に、牛肉の問題についてお伺いをいたします。  これは牛肉が下がらないということで非常に問題になっておりますが、農林大臣にお伺いをします。牛肉百グラム、ビフテキ用、ロースで骨なしという原則としまして、アメリカ、フランス、西ドイツ、イギリス、オーストラリア、メキシコ、日本、それぞれどのくらいするものかお伺いしたい。
  68. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 数字のことははっきり知りませんけれども、傾向としては、日本の肉がヨーロッパに比べて二倍ないし三倍、オーストラリアに比べると五倍、六倍と、こういうことでございます。高い理由は、何といっても土地の狭い日本で生産される肉でございますから、外国のように、特にオーストラリアのように何千町歩で放し飼いのようなコストのゼロの地域と違ってくるのはやむを得ないことかと存じます。
  69. 峯山昭範

    峯山昭範君 委員長農林省の方から出た資料がございますので、これを大臣に言っていただきたいと思いますので、お願いします。
  70. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 百グラムで申しますと、日本が四百七十一円、アメリカが百五十六円、フランスが二百十一円、西ドイツがかなり高うございまして三百二十九円、イギリスが百三十三円、オーストラリアのメルボルンでは五十七円、こういうことで、これはILOの調査でございます。
  71. 峯山昭範

    峯山昭範君 それからもう一つ、両方。
  72. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) それから、USDAの調査によりますと、日本の東京では五百六十七円、アメリカではワシントンで百十七円、フランスでは百九十二円、西ドイツではボンで二百六十五円、イギリスでは百六十六円、オーストラリアでは百二円、メキシコのメキシコシティでは五十九円と、かなりこのように差がありますし、また、その他商事調査等もありますが、大体、傾向としては、その程度の差があるようでございます。
  73. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは余りにも差があり過ぎるんですがね、大臣。これはやっぱりもう少し何とか安くなるような方策を講じていただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  74. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 牛肉が高いということは、消費者あるいは外国人等からも非常に指摘のあるところでございまして、特に福田総理も関心を持ちまして、農政の上で牛肉が安く食べられる仕組みをということで鋭意取り組んでおるところでございます。  そこで、現在は、畜産振興事業団の輸入肉を数量において、あるいは値段において、できる限りの放出を行って対処することが一つ。それから、生産コストを下げるために、えさを安く売るとか等等の政策を行って、国産牛肉の生産費のコストを下げるという工夫と、もう一つは、わが国における牛肉が流通過程において非常に複雑である、この流通過程を簡単なものにする、いわゆるバイパスと称しておりますが、産地には産地食肉センターをつくり、消費地には部分肉センターをつくりまして、産地から消費地に直に流れる、こういう仕組みの全国ネットワークをつくるべく、鋭意、来年度予算においても予算を大幅に伸ばしまして、流通の合理化に最善を尽くして御期待にこたえたい。  なお、牛肉の値段でございますが、現在は、昨年に比べて十円、三%程度ですが、ほかのものが上がっている中に牛肉が安定ないしは若干なりとも下がっておるというのはいい傾向であり、これを今後ともさらに推し進めてまいりたい、こう思う次第でございます。
  75. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは、大臣、十円下がったといいましても、世界的な傾向から言いまして、世界一高いと言われているフランスのパリでも二百十一円、日本が四百七十一円では余りにも差があり過ぎますね。これはやっぱり大臣がおっしゃったことをいま実際に実行すれば牛肉は下がるんですかね、それでどの程度まで下がるとお思いですか。
  76. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 何といいましても、日本の牛肉の歴史が浅いこと、しかも飼っております農家が二頭とか三頭とか五頭、多くても十頭というような規模、これに対してヨーロッパその他は何百頭、何千頭という飼い方をいたしておりますので、ヨーロッパ並みに下げるということは不可能でありましても、一割でも二割でも流通過程その他の仕組みをやることによって引き下げ得るもの、その程度の値下げではありますけれども、若干時間がかかる面もあるし、早急にできるものもありますが、両方に配慮して、そういう方向でやりたいと思って最善を尽くしておるところでございます。
  77. 峯山昭範

    峯山昭範君 電電来ましたか。
  78. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) 大変御迷惑をかけました。お答えいたします。  日本からアメリカにかける場合には三千二百四十円、三分。アメリカから日本への通話は二千二百三十一円となっております。
  79. 峯山昭範

    峯山昭範君 もう少し正確にお願いします。アメリカから日本へかける場合は、ドルで払いますね、何ドルですか。
  80. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) ドルの計算、何ドルの支払いかということでございまするが、御承知のとおりに、国際電気通信料金は国際電気通信連合で金フランで支払うことに取り決めされております。したがいまして為替の変動があっても、金フランの価格の算定には、これは変更を来さないわけでありまして、したがいましてアメリカから日本に通話のあった場合には、やはりその当時決められた時点のドル換算価格のいわゆる換算で支払いを受けることに相なっておるわけであります。その当時決められたのは三百六十円でございます。したがいまして、こういった急激な変動の時代でありますので、われわれは各国に、今日まだ定められた国際電気通信の金フランの決済方法を改めるべく、いま関係機関と緊密な連絡をとりながら努力を払っているところでございます。
  81. 峯山昭範

    峯山昭範君 大臣、私の質問には一つも答弁していらっしゃらないわけですが、アメリカから日本へかける場合は九ドルなんでしょう。
  82. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) 九ドルでございまするが、先ほども申し上げたとおりに、国際電気通信連合の定められた基準をただいままだ守っている時代でありまするから、いわゆる円高の時代といえどもそういった換算率には変わりがないということを御理解を賜りたいと存じます。
  83. 峯山昭範

    峯山昭範君 これはいずれにしましても、日本からアメリカに三分間通話しますと三千二百四十円、アメリカから日本にかけると、いま大臣の話ですと二千二百三十一円、千円以上も開きがあるわけですね。利用者としては相当やっぱり同じ通話をし同じ利用をして千円も差額がある、五割以上高いというのは納得できないのですよ。これどうでしょう。
  84. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) アメリカだけをとりますると、そういった計算に相なりまするが、これは国際連合で定められている関係から、たとえば英国、スイス、ドイツ、フランスと、こうなりますると、今度は逆の現象が生じますので、いわゆる先ほども申し上げたとおりに、そういったことを踏まえて、国際電気通信連合で金フランのいわゆる換算でやる、なお両方交互の通話についての相殺を図るというふうになっているわけであります。  しかし、先ほども申し上げたとおりに、こういったことは決して適正でないと考えますので、いま鋭意この問題の解決に努力するとともに、日本は独自の立場で国際電電を呼びまして、実態に沿うように努力を喚起するとともに、利用者の立場に立って料金引き下げの問題についても、経営の基盤の確立を図りながら検討を加えている段階でございます。
  85. 峯山昭範

    峯山昭範君 端的にもう一点お伺いします。  国際間の料金決済については、ゴールドフラン 二十七というのでいま決められているわけでしょう。そうしますと、この改定が昭和三十九年にしたままで、三十九年当時というのは三百六十円でしょう。そのままやっているというのはやはりおかしいので、これはやっぱり総力を挙げて取り組んでいただきたい。どうです。
  86. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) 先ほど来申し上げておりますとおりに、総力を挙げていま取り組んでいる最中でございますが、今後も一努力を払い続ける決意をいたしております。
  87. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは、総理、やはりいますべて政府関係料金なんですね。ここら辺の問題についてもう一回それぞれ洗い直す必要があると思うのですが、どうでしょう。
  88. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 政府関係は特に精査いたして善処いたします。
  89. 峯山昭範

    峯山昭範君 次に、もう一つは、この円高消費者物価に波及しないもう一つの大きな理由というのは、輸入業者あるいは取り扱い業者がその輸入差益をひとり占めにしている、そこに大きな問題が私はあると思います。特に魚介類では大手商社が買い占めをしている。それから牛肉では取り扱い業者がいわゆる転がしている。それから石油製品では精製会社が為替差益をひとり占めにしている。こういう問題が実際問題としてあると思うのです。  そこで、まず、石油製品の為替差益というのはどのくらいあるのか一遍お伺いしたい。
  90. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) これもいろんな前提を置いてでございますが、大体、一円円高になることによりまして、石油はキロリッター当たり八十六円のメリットが出てまいります。五十二年度において二億八千六百万キロリッターの輸入を予定いたしておりますので、一円につき年間約二百五十億円というふうに試算をいたしております。  一方、このような円高メリットに対応いたしまして……
  91. 峯山昭範

    峯山昭範君 合計で。
  92. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 合計は、これは円為替レートの差を幾らに見るかという問題もございますが、仮に三十円の円高メリットがあるといたしますと、七千五百億円ということになろうかと思います。  一方、これに対応いたしましてコスト上昇要因がございます。いわゆる昨年の一月、七月二度にわたりまして原油価格が上がっております。これがかれこれ年度間五千五百億円程度になろうかと思います。それから安全防災関係の費用あるいは備蓄費用等で約千五百億といたしまして、七千億円程度のコスト上昇要因があるわけでございます。これといわゆる円高メリットの関係をどう判断するかということでございまして、企業によっていろいろ事情も異なりますのでマクロ的に申し上げまして、かれこれ一千億円程度ではなかろうか、かように見ておるわけでございます。
  93. 峯山昭範

    峯山昭範君 これはもう全く業者の立場に立った説明でございますね。  輸入ユーザンスによるいわゆる為替差益はどの程度と見ておられますか。
  94. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 輸入ユーザンスと申しますのは、石油で経理記帳をいたす場合は、積み出し時点のレートで原価計算いたしまして、その後四ないし五カ月の輸入ユーザンスを経て現金決済をするその段階におけるレート差でございます。これもどの程度為替予約をいたしておるかということもございまして、計算は非常にむずかしゅうございますが、かれこれ数百億から一千億近いところにあるんじゃなかろうかというふうに推測いたしております。
  95. 峯山昭範

    峯山昭範君 私の手元にございます資料によりますと、輸入ユーザンスによる為替差益二千億、それからいま長官も説明されましたように七千五百億、トータルでは九千億近くの為替差益が現実に出ているわけです。これはやはり灯油の値下げとか、あるいはナフサの値下げとか、そういうところにやっぱり相当影響しなければいけない。こう思うのですが、どうでしょう。
  96. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) できるだけ円高メリットは消費者に還元すべきであるという立場でございます。昨年の十二月に家庭用灯油につきまして円高メリットを消費者に還元するよう指導いたしました。その結果、十二月一日にさかのぼりまして、元売仕切り価格段階で灯油につきまして約二千円の値下げの実行をいたしております。その結果、この一月における十八リットルかんの店頭における小売価格は約七百円、前年同期に比べて二十円方の値下がりを見せております。その限りにおいては消費者還元が行われている。ことしに入りまして一部の有力元売企業が各種製品ごとに二千円の値下げを発表いたしております。各社その方向に即して価格形成が行われているというふうに理解いたしておりまして、これが一般化いたしますと、月間約五百億円の消費者還元額になるというふうに見ておるわけでございます。
  97. 峯山昭範

    峯山昭範君 その程度ではまだまだ還元したことにはならないと私は考えます。  それでは、次に、魚介類がなぜ安くならないか、この点についてどうでしょう。
  98. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 農林省所管で多くの物資——この間、十四品目の調査をいたしましたが、かなりメリットが還元されておるということでございますが、魚介類——マグロの類が実効が上がっていないということでございますが、実はマグロも輸入品は約二割でございますし、こういうことが国内の価格に埋もれておるのであってメリットが還元されていないというわけではございませんで、実態としては国内のものが高い。その結果、別に売るわけではありませんので、トータルでは下がっていないような形になっておりますが、今後とも、この点については注意深く見守って、メリットはメリットとして還元できるように指導してまいりたいと思います。
  99. 峯山昭範

    峯山昭範君 昨日、私は、スーパーで魚の値段を調べてきたんですけれども、サバの切り身が一切れ八十円、ブリが三百五十円、ギンダラが二百五十円、アコウダイ四百円というように非常に高いなあという感じがするわけです。これでは消費者の魚離れという問題が出てくると私は思うんですけれども、こういう方面についての対策はどうでしょう。
  100. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 農林省といたしましては、生産対策も大事でありますが、流通対策も消費者考えて十分配慮すべきであるというので、先般も市場を見てまいったりしておるわけでございますが、やはり市場には市場なりに苦しみもある。朝早く五時から出まして大変御苦労願っておりますが、末端に行きますと若干まだ高いかなということでございますので、この辺も指導してまいりたいとは思いますが、一時期、魚が不足をした時代に値が上がった。しかしだんだんこの傾向も下がってきておりますから、やがて落ちついたことになるであろう、こう思っております。
  101. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、経済見通しについてお伺いします。先に日銀総裁にお伺いします。  昨日からのロンドン市場における円相場、これはもうついに一時二百三十二円五十銭ですか、これは大変なことになったわけでございますが、この大変な異常値上がりですね、これに対してどういうふうに対処するかというのがこれから大きな問題になるわけですが、この事態について総裁はどういうふうな対策を考えていらっしゃるか、というのがまず第一点。  それから、公定歩合〇・七五%引き下げの問題や、あるいは為替管理の強化とか、あるいは長期金利の引き下げとか、そういうような問題がいろいろと報道されておりますが、それとともに、アメリカに対してドル防衛を強く迫るべき時期に来ているんじゃないか。そういうふうにも思うのですが、これらの問題について総裁の御所見をお伺いしたい。
  102. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 御指摘のように、昨日のロンドン市場では、一時高値二百三十二円台が出るだろうと憂慮いたしましたが、その後に開かれましたニューヨークの市場では二百三十五円ぐらいにドルが戻してきておるわけでございまして、それを受けましてけさの東京市場では二百三十五円で寄りつきましたが、その後やはりドル売り、円買いの勢いが非常に強うございまして、現在のところは二百三十四円台の下の方でもみ合っておるというのが現状でございます。  私ども一、この為替相場が果たして高過ぎるか高過ぎないか、そういった点につきましては、何分にもフロート制下でございますので、政策の一端を担っておる者として値ごろ感について言及することは控えたいと思いますが、世界一般に言われておりますことは、どうもドルが少しアンダーバリューされておるのではないかというのが通説になっておることは疑いを入れないと思います。このようなドル安に伴う円高、これが急激にかつ大幅に起こりますと、日本経済に対しまして、ミクロ的にもマクロ的にも大変影響が大きいわけでございますので、私どもとしては、できるだけこの為替相場が安定裏に推移するようにあらゆる努力を払っていかなければならぬわけでございますが、それにつけても、まず根本的に必要なことは、国際収支の黒字幅ができるだけ早く縮小されるようにということをこいねがっておる次第でございます。  なお、昨今の円高は、ドル安という面の反面であることが多い、その要素が非常に多いわけでございますが、その間投機的な動きがこの動きを大きくしておるということも無視できませんので、そのような事態に対しましては、フロート制の本旨を脱却するわけにはまいりませんが、できるだけ円の相場が安定裏に推移するように時に介入も必要なわけでございまして、そのことは従来同様、必要がある場合には断固として介入するという態度を続けておる次第でございます。  なお、この円高に関連いたしまして、公定歩合の問題が昨今新聞紙上をにぎわしておりますことは御承知のとおりでございますが、ここ数日来の動きだけで、今後の円の相場がどういう推移をたどるのか、また影響がどの程度のものであるかということをいまの段階で憶測することはなかなかむずかしいわけでございまして、今後一体どうなるのか、もう少し様子を見る必要があると思います。私どもといたしましては、もちろん経済情勢一般、その中での為替相場の動きを大変大切な問題、重要な問題として、今後の成り行きについては十分冷静かつ周到に見守って、時に応じて適切な手段を怠ってはならないと思っておる次第でございますけれども、現在のところ、公定歩合の引き下げをすべきであるというような考え方には至っておりませんことをお答え申し上げたいと存じます。  なお、為替管理等の強化等の問題につきましてもお尋ねがございましたが、これは私どもと申しますよりもむしろ大蔵省の所管の問題でございますが、目下のところは、そのようなことが考えられておりませんことだけを私からお答え申し上げたいと存じます。
  103. 多田省吾

    ○多田省吾君 関連。
  104. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連質問を許します。多田省吾君。
  105. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、日銀総裁、また大蔵大臣総理大臣にもお尋ねいたしますが、いま峯山委員からも質問がありましたように、ロンドン市場においては二百三十二円五十銭という、一時ではありますけれども、大変な円高を招来しております。  で、私は、昨日も日銀総裁がアメリカの政府に対してドルの価値を維持するように暗に要請したように御発言があったと受けとめておりますけれども、私には、アメリカは約束に反してドル防衛を放棄したのではないか、このようにさえ思われます。で、マスコミにおきましても、現在のアメリカの通貨政策はかつての黙殺から最近は悪意ある無視、こういったものだとさえ言われております。きのうも私はNHKの九時からのテレビでストラウス代表のインタビューを拝見しましたけれども、あの石油の備蓄、買いだめによるいわゆるドルのたれ流し、こういった問題に対しまして、それに答弁しないで、そして福田総理に対して七%と六十億ドルの実施を強く迫る、こういう一方的なインタビューでございました。幾ら七%あるいは六十億ドルに向かって努力をしても、こういったアメリカのドル防衛を放棄した態度によってわが国の景気対策も非常に影響を受けるわけでございます。またキーカレンシーとしてのドルの責任というものも放棄されております。私は、この際、強くアメリカ政府に対しましてドル防衛を要求する、あるいは市場介入を要求する、こういう態度をとるべきだ、このように思います。  それから、日銀総裁には、公定歩合の引き下げに関しましてはいま考えていないというお話でございますが、一方において、よいタイミングをとらえてという御発言もあるわけでございますし、よいタイミングとはいつのことなのか、また、もし公定歩合の引き下げをする場合に預貯金金利との連動をきのうも示唆されましたけれども、私は、連動しない、あるいは影響を少なくするという態度が必要ではないかと思いますが、その点いかがでございますか。
  106. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 私ども、通貨当局の間では、毎月一遍ございますBISの会議、国際決済銀行の会議などにおきまして、機会あるごとにアメリカに対しましてドル価値の維持についての要請をいたしておるわけでございまして、現にニューヨーク連銀では、昨日、最近の介入状況を発表した由でございますが、私まだ直接確認いたしておりませんけれども、年末から今日に至る間の介入額はかなりの規模に達しておる由でございまして、ドル価値の維持を現実的なものにするための努力はアメリカの通貨当局としてもそれなりに行われておるということを信じておる次第でございます。  なお、アメリカ政府当局その他に対する要請につきましては、政府の方の問題でございますので、政府の方から御答弁があろうかと存ずる次第でございます。  為替相場に関連して、公定歩合の問題についてもお尋ねでございましたが、先ほど申し上げましたように、どういう影響を持つのか、今後どうなるのか、その辺大変私ども重大な関心を持っているわけでございまして、日々の経済情勢、その中には為替関係ももちろん含まれておるわけでございますが、情勢の推移いかんに応じて遺憾なきを期したいと思っておりますけれども、今日ただいまのところは具体的に考えていないということをお答えしたいわけでございます。  なお、一般論として、万一公定歩合を引き下げるようなことになった場合に、預貯金利子をどうするのかという点でございますが、やはりこの公定歩合の引き下げをより効果的なものにし役に立たせますためには、今日の大変縮小しております金融機関の利ざやの現状等から考えまして、やはり預金利子につきましても引き下げる問題がどうしても起こってこざるを得ないのではないかと、これはもちろん一般論でございますが、考えておりますことをお答え申し上げたいと思います。
  107. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) まず、円高の問題でございますが、基本的には、やはり日本の内需が拡大するということが基本であると考えているわけでございまして、そのために今年度の予算編成はそこに焦点を当てているわけでございます。しかし、短期的にはお説のように非常に最近円高の傾向はございます。アメリカに対しましては、機会あるごとにわれわれはみずからドル防衛に向かうべきである、基軸通貨の任務を十分自覚してほしいということを言っているわけでございます。そのようなことでございますから、いま日銀総裁からもお話がありましたように、ドル防衛でドル安に対して介入しているやにいま聞いておるところでございます。しかし、基本的にはアメリカ自身の石油法案の通過、これがもう決定的なことであると思っておるわけでございまして、先般こちらに参りましたストラウスもこれは全力を挙げて必ず通す、こういうことを言っているわけでございます。  公定歩合の問題につきましては、私はいま日銀総裁と大体同意見でございますけれども、やはり預貯金金利の引き下げを伴わない場合の公定歩合引き下げ、これはほとんど効果がないであろう、かように考えておる次第でございます。
  108. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 日銀総裁、御退席いただいて結構でございます。まことにありがとうございました。
  109. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今日のこの為替不安といいますか、ドル安円高現象、これはまあ円高という要素ももちろんあるんです。あるんでございまするけれども、しかし、本質はドル安なんでございます。円以上にヨーロッパの諸通貨の価値が高騰しておるということを見ましても、このことは明らかである、このように考えます。  したがって、ドルの価値の安定、これは非常に大事な問題であるというふうに考えておりますが、いま、この通貨不安がなくても、あの石油ショック以来の世界経済というものは非常に困難な情勢になってきておる。そこへドル安を中心としての通貨不安、これがのしかかっておる、こういうことでありますので、いよいよ世界経済というものは混迷の度を加えておると、こういうふうに見るわけであります。こういう状態を長引かせるということは、これはもう本当にひとり経済的角度の問題じゃない、もう世界政治の根幹にも響いてくるような大きな問題であろう、こういうふうに思います。  わが国といたしましては、アメリカに対しまして、もう機会あるごとにドルの安定に努力せられたいということを申し入れておるわけでありますが、そういうただいま申し上げましたような認識に立ちまして、さらにアメリカのドルの安定、これにつきましてはアメリカ政府当局の注意を喚起し、その努力を求めたい、このように考えております。
  110. 峯山昭範

    峯山昭範君 ただいま総理がおっしゃいましたそのドル安ですね、円高の大きな原因はやっぱりドル不安にあると言って私はいいと思うんですけれども、これはアメリカに対してドルを強化するために何らかの具体的な具体策を要求する、そういうようなことは実際問題としてできないんですか。
  111. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アメリカに対しましては、ただいま申し上げたような態度をもちましてアメリカ政府の関心を求めておるわけなんです。しかし、具体的にどうするこうするというようなことになると、アメリカがわが国に対しまして、どうしなければならぬ、こうしなければならぬと言うのと同様に、これはアメリカの内政上の問題にわが国が関与する、こういうようなことにもなりますので、これは大きな声を立てて、ああせいこうせいと言うことは私は妥当でない、このように考えますが、要は、アメリカ政府がドルの安定に対しまして関心を示し、その結果が出てくれば、それはいいわけです。  そして私はもうつくづく思うのですが、アメリカに対しましてドルの価値の安定をわが国としてはずっと主張し続けてきておりまするけれども、これが本当に説得力のある要請ということになるためには、わが国自体があの膨大な黒字、これを是正しなければならぬ、これを是正しないでおいてアメリカに幾ら言いましても、まあアメリカはそうは言いませんけれども、日本のていたらくは一体なんだ、こういうふうな反論というふうになってはね返ってこざるを得ないと思うのです。ですから、本当にアメリカに対して、こうすべきだああすべきだ、アメリカはもう本当にドルの価値に責任を持つべきである、こういう主張をするためには、もうわが国が、たとえば五十三年度六十億ドルの経常黒字という目標を設定しましたけれども、これを実現するというような確固たる決意と、それから実績というものが逐次上がってくるという状態で初めて私は説得力を持つというふうに思うのでありまして、非常に私どもは重大な問題としたしまして、国際経常収支黒字の縮減問題、これは何が何でもひとつ実現をいたしたい、このように考えております。
  112. 峯山昭範

    峯山昭範君 確かに、総理、ゆうべのストラウス代表のインタビューを聞いていましても、油の話を持ち出しただけで相当強圧的な態度だったですね。あれを見ていましても、私はやはりそこら辺のところは、言うべきところはちゃんと言った方がいいような感じがするわけです。それで申し上げたわけです。  そこで、やるべきことをやらないとだめだという総理のいまの発言でしたが、実際問題としては、総理、昨年から全力を挙げて努力をするということで確約をいたしましたいわゆる三十億ドルのドル減らしの緊急輸入ですね、これはここら辺のところどういうふうになったのでしょうか。
  113. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今年度内にほぼ十億ドル緊急輸入の実行がなされ、またなされる予定でございます。そして実はかなり多くのものをウラン関係考えておるわけでございますが、いろいろアメリカ側の事情がございまして、ことにカーター大統領の新しい方針とも関連をいたすようでございますけれども、この部分がまだ実現をいたしておりません。
  114. 峯山昭範

    峯山昭範君 長官、実際問題として最近のこの異常な円高で、中小企業等はやっぱり相当圧迫を受けていると私は思うのですね。また心理的な問題もあると思うのです。その結果、七%の経済成長という問題にも、これはやっぱり大きな障害になるのじゃないか、こういうふうに考えますが、この点どうでしまう。
  115. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 確かに円が高くなったということ及びこれからどうなるかということがわからないというその不安定要素というのはやはり企業家にとっては一番禁物でございますから、昨今の様子は、ことに中小企業にとって私は心配をしなければならない事態だと考えております。ただ、昨年の九月、十月あたりの状態と比べてみますと、今回は、ただいま御審議を願っております予算等々、かなり政府の態度が経済回復について主導をとろうということがかなりはっきり、しかもその金額も大きいということで、昨年の九月、十月におけるような状態とは違っておると存じますけれども、他方で、昨年末ございました円高が実際経営に効いてまいりますのはこの三、四月のところでございますから、そういうこともあわせて考えますと、やはり中小企業としては相当苦しい。そこへまたこういう不安定要素が来たという感じはどうも私は避けられないと考えていまして、それにつきましても、先ほどからお話のございますように、早くこの不安定要素というものを除かなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  116. 峯山昭範

    峯山昭範君 長官、実際問題として、この五十二年度の実績、経済成長ですね、これは修正値の五・三%、昨日もちょっと話が出ましたが、これは達成できる見通しはついたんでしょうか。  それからもう一つは、五十二年度の経常収支の黒字ですね、これは百億ドルを修正して、この間から百二十億ドルか二十五億ドルという話が出ておりますが、ここら辺のところはどこら辺で落ちつきそうなんですか。
  117. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昭和五十二年の十−十二月の第三・四半期でございますが、この国民所得の速報値が昨日明らかになりまして実質で一%ございました。大体、これは私どもが五・三%を頭に置きましたときにほぼ考えておりました数字でございますので、まず五・三%というものは私は大体いいところではないかと、速報値が出まして、やや自信を強めておると申しますと恐縮でございますが、そう考えております。  それから、五十二年度の経常収支につきましては、私ども百億ドルと申し上げておりましたが、すでに一月をもって九十九億ドルに達しましたので、これは私どもの見通しが誤っておりました。かなりそれを超えるということは明らかでございますが、その幅がどのぐらいになりますか、ただいま峯山委員が御紹介になりましたような、その程度の幅ではないかと想像いたしております。
  118. 峯山昭範

    峯山昭範君 これは、総理、これだけ大変な大幅な黒字になりますと、やっぱり緊急輸入とか何らかの措置を講ずるべきだと思うのですが、ここら辺のところはどうでしょう。
  119. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはもう当然緊急輸入というようなことを考えなきゃならぬ、こういうふうに考えておるんです。先ほど企画庁長官から申し上げましたように、今月末までに約十億ドルの緊急輸入、これが大体見通しができております。なお原油のタンカー備蓄、これを考えておりますが、これも私は軌道に乗っていくんじゃないか、そのように考えております。それから濃縮ウランの備蓄の問題でございますが、これもアメリカとそれとなく話をしてみましたが、なかなかアメリカ側の都合がつかない、こういうようなことでございまするけれども、この問題もまだピリオドということにしないで進めてみたい、こういうふうに考えておるんです。なお、こういう際でありますから、できたら航空機の調達、これなんかも考えられないものであろうかというようにも存じており、あれやこれや緊急的な輸入措置、これはできる限りの努力をしてみたい、そういう考えでございます。
  120. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理、ECからのエアバスの導入についての話が新聞報道で出ておりますが、この問題については特に対日輸出品目としてECが挙げているわけですね、実際問題として。これは私は日本としてもいま総理も話に出ましたように重大な問題だと思うのですが、リース会社構想というのもあるんだというような報道がありますが、これは東亜国内航空などエアバス導入の意向があると、そういうような話も報道されております。このエアバスについての総理のお考えはいかがでしょうか。
  121. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) この点については、私は、一月にも若干の考え方を申しておいたところでありますが、いま御指摘のように、ECの方でも強く希望をいたしております。私どもといたしますと、世界の情勢をながめつつ理解を持って臨もうと、こういう所存でございますが、まず、リース会社の話につきましては、私のところまで具体的にこの話が来ているというところまでいっておりません。参りますれば、私はよく検討をいたしたい、こういうように考えております。  エアバスにつきましては、私ども、運輸関係者といたしましても、まあ飛行機では過去にいろんなことがございまして、なるほどということをこの際われわれはやりたいと思いますから、そういう意味でその措置等につきましていま前進中であります。余り遠くなくて結論が出ることを私は期待いたしておるところでございます。
  122. 峯山昭範

    峯山昭範君 総理、最後に。とにかくこの円が現在安いのか高いのか、現在の円はどういうふうな位置づけになっているのか、これはやっぱり総理が明確にしておく必要がある。これは中小企業の皆さんから考えても、私はどこら辺で落ちつくか、現在の円がどういう位置にあるのかということは、当然、私は大事な問題だと思うのです。それが第一点です。  それから、総理は、施政方針演説でも、現在の国際社会の情勢、状況は第二次世界大戦前夜のようだと、それで深刻な情勢分析をされているわけですが、実際問題としてこの国際環境にどう対処していくかという問題について一貫した姿勢というのが私は絶対必要だと思うのです。そこで、わが国の命運にもかかわるというこの経済安全保障の問題としてこの問題をよくよく考えていただきたい、こういうふうに思うのですが、その所信もお伺いしておきたいと思います。
  123. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほどから申し上げておりますように、いまの国際通貨不安、その根源は私は円高、マルク高、いろいろ現象的にはそうなっておりまするけれども、基本的にはこれはドル安ということじゃないか、こういうふうに思うのです。しかし、私は、アメリカの経済体制は非常に強いものである、そういうふうに考えておるわけでありまして、いまドル安というような現象が起こっておりまするけれども、これはアメリカの経済の実体をああいう形で表現されておるというふうには考えません。私は、アメリカ政府がそういう強い経済体制の上に立って、ドルの安定、これに対しまして本当に実効のある手を打つ、これは世界のために非常に大事なことである、こういうふうに考えております。  それから、世界の今日の経済情勢をどういうふうに認識するかということでございますが、私は、このいまの世界情勢というものは、これはひとり経済的角度じゃない、政治的角度から見ましても深刻な状態だというふうに考えておるわけです。つまりこれは五年ぐらいの長期世界不況と、これは大づかみに言って、そういうふうに言っていいんじゃないかと思うのです。  ことに南北問題、そういう政治課題のあるその中で、南の国々、発展途上国、わけても石油資源を出さないところの発展途上国、これは非常に困っているわけです。だからといって、さあこれに協力しなけりゃならぬ立場にある先進工業国はどうかというと、この先進工業国は、これはおしなべてまだあの石油ショックからの立ち上がりができない、こういう状態なんです。こういう状態が続きますと、これはもう私は一つ一つのそれぞれの国に社会不安というものが起こってくる。社会不安はやがて政治不安につながっていくだろう。私は、戦前、昭和初期、一九三〇年代のことを考えてみましても、あの戦争への道というのはちょうど今日の経済情勢というような過程をたどってあすこへ行っておるわけでありまして、私は、いまこういう核兵器が開発されたというこの時代におきまして、第三次世界大戦争、核戦争が起こるなどとは思いません。思いませんけれども、それに近い政治的混乱の時期というものがやってくるおそれがある。  ことに国々がいま不況だ、失業だと、そういうことで悩んでおる。で、この状態が続きますと保護貿易体制というものが起こってくるおそれがあるんです。これが起こってきたら、一体どうなるんだといいますれば、ある一国がわが国に対して障壁を設け、そしてナショナリズムというか保護貿易体制をしくということになれば、わが国だってそういうことを相手国に対してやらなければならぬ、お互いにこれは縮小の過程をたどるわけです。そういうことで、ある一国が何かそういった態度をとりましたならば、これは一波万波、もう世界じゅうがそういうふうになっていくんです。そうすれば世界じゅうの総沈みになっちゃうんです。そういうことが一体どういうことにつながっていくか、これは本当に身の毛のよだつような感じがしてならないんです。  そういう間におきまして、とにかくアメリカは世界第一の経済大国だ、わが国はアメリカに次いで自由社会では第二の工業力を持った国である。わが国のこういう世界の政治、世界の経済の中における責任、これは非常に私はいま大きくかつ重い、こういうふうに思うわけであります。そういう世界情勢の中で、わが国は、世界の平和、世界の繁栄のためにりっぱに役割りを尽くしていかなけりゃならぬ、こういうふうに考えますが、これが私の今日の内外の経済問題に臨む基本的な姿勢でございます。
  124. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、次に、特にことしに入りましてから海運業界の不況が言われておりますが、特に不況倒産が非常に多いわけですが、その実態についてどういうふうに掌握していらっしゃるのか、この海運業界不況の原因は一体何なのか、どういう点に問題があるのか、端的にお伺いしたい。
  125. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 最も不況が深刻であるものの一つに海運業があるということは遺憾ながら事実でございます。そういうことの中で、ごく若干きわめて集中的に起こっている現象等があるわけでありますが、詳しく申し上げますといろいろございます。必要に応じ事務当局からも申させますが、世界全体が海運全体について不況ということではありますが、なかんずく日本の場合には、ある意味で極端にというほどにタンカーが多いもので、このタンカーの部門が特に大きな影響を受けておるわけであります。そういうことで、かなり有名な会社等でも非常に不本意な状況にある、こういうようなことでございます。中には、そうは言いながらも、なかなか苦しい中ではうまくいっている、たとえばコンテナを中心とする定期船部門とか、自動車専用船などの特殊船の部門では、輸出の好調等があってまあまあということになっておりますが、全体といたしますと、いまも申しましたように大変な不景気である、大づかみに申し上げて、そういうことが言えるかと思います。
  126. 峯山昭範

    峯山昭範君 大体、大臣の答弁のとおり、ただいまございましたように、海運業界の不振の原因というのは世界的なものではありましょうけれども、船舶、タンカーとか、そういうようなものの過剰がその大きな原因と言われているわけであります。  そこで、まず、きょうお伺いしますが、政府系金融機関、特に日本開発銀行の役割りについて初めにお伺いしたい。
  127. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 日本開発銀行は、御案内のとおり、政府機関でございまして、重要産業に対しまして必要な融資をし、また、地域開発の任にも当たっているところでございます。
  128. 峯山昭範

    峯山昭範君 日本開発銀行と市中の金融機関との関係ですね、日本開発銀行法の第一条はどういうふうになっているか、一遍この点をお伺いします。
  129. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) お答えいたします。  日本開発銀行法の第一条は、日本開発銀行の目的が書いてございまして、「日本開発銀行は、長期資金の供給を行なうこと等により産業の開発及び経済社会の発展を促進するため、一般の金融機関が行なう金融等を補完し、又は奨励することを目的とする。」、こう書かれてございます。
  130. 峯山昭範

    峯山昭範君 開発銀行の目的は、いまお話ございましたように「一般の金融機関が行なう金融等を補完し、又は奨励することを目的とする。」と、こういうふうになっております。  それでは、具体的にお伺いしたい。日本開発銀行の貸出残高の多い順に、上位十社までで結構ですから、その会社名とその金額をお伺いしたい。
  131. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) お答えいたします。  五十二年三月末現在でございますが、東京電力が千五百五十七億円でございます。それから二番目は関西電力で千二百四十一億円。それから三番目が日本郵船で千百六十七億円。四番目が大阪商船三井船舶で千八十九億円。五番目が中部電力で七百六十七億円。六番目が川崎汽船で六百五十三億円。七番目がジャパンラインで六百億円でございます。八番目が九州電力で五百二十二億円。九番目が近畿日本鉄道で五百億円。十番目が山下新日本汽船で四百六十六億円、このようになっております。
  132. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、いまの上位十社の借入金総額と、それから開銀融資の残高の割合はどういうふうになっていらっしゃるか。
  133. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 総額に対する比率は、後でまた御報告申し上げたいと思います。
  134. 峯山昭範

    峯山昭範君 借入金の方は。
  135. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) それぞれの会社の残高でございますか。——ちょっといま手元にございませんので、また報告いたしたいと思います。
  136. 峯山昭範

    峯山昭範君 これはすでに確認をしているわけですが、すぐ調べられますか。
  137. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 十社の借入金の総額はちょっと時間をいただきたいと思いますが、この場で出ると思います。
  138. 峯山昭範

    峯山昭範君 それでは、資料ができるまで、そのほかの問題をいたします。  まず、米の生産調整の問題でございますが、政府は五十三年度から大規模な米の生産調整を実施しようとしているわけです。これは昨日から相当議論にもなりましたので、もう詳細は申し上げませんが、私は、この日本の将来を左右するような大変な問題ですね。この問題が、何といいますか、正式な法令——どういう法律に基づいてこの生産調整が行われているのかということを考えてみますと、実際問題、その法律がないようにも思うのです。これはやはり私は国会の審議という問題から考えてみましても非常に重要な問題であると思うのですが、この点について農林大臣はどうお考えですか。
  139. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 今度の水田利用再編対策は、確かに日本の農業を将来変える大きな仕組みでございますから、法令によってはいかがかという問題もございます。強いて法令と言えば、農業基本法の第二条に、農業の自給率の少ない必要な作物を伸ばすこと、そしてまた余ったものはこれを転作するといいますか、転換をしていく、これが農業基本法の目的になっております。これを受けまして第四条では、必要な場合とは書いておりませんが、必要な法的措置あるいは財政措置を講ずる。そこで必要であるかどうかという判断でございますが、こういった生産調整というものは法律でぎしぎししばってやるよりは、むしろ農家の皆さんやあるいは団体、関係機関、国がお互いに話し合って理解と協調によって自主的に納得の上でやっていくことの方がむしろ円満なやり方である、こう判断をいたしまして、行政措置によっていま町村あるいは県、そして農家の皆さんの理解と協力をいただいているという段階でございます。
  140. 峯山昭範

    峯山昭範君 いや、私は、大臣わが国の農業の命取りにもなりかねないような重大な問題ですから、何も法律をすぐつくれと言うわけじゃない。けれども、生産調整という問題は農家の皆さん方にとっては非常に重大な問題ですね。私は、実は、先日、鹿児島県の種子島という離島があるんですが、そちらの方へ行きまして減反の話をずいぶん聞いてまいりました。非常にたんぼが少ない、非常に狭いところで、ネコの額のようなところで農業をやっている。そういうようなところでもやっぱり減反調整をしなければならない。米以外の転作が全く不可能である、そういう実情にあるわけですね。そういうところでも減反をしなければならないという非常に大変な実情にあるわけです。その実情を聞くと、私たちは、このままでいいのか、本当にこの日本の食糧事情は大変な実情になってしまう、そういうことを考えると、これは何とかしなければならないと思うのです、実際問題として。農林大臣の御所見をお伺いします。
  141. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 国といたしましては、単年百七十万トンの生産調整が必要である。そこで各県に、北海道のようにやりやすいようなところ等々、市街化区域の状況はどうだ、排水の状態はどうだと、約七つの項目によりまして県別の生産調整の数量を決めまして若干の調整を行いましたが、そういうことで全国に配分を願い、その県内における今度は町村への配分あるいは町村内における農家への配分は、これは県あるいは町村に自主的にお願いしておるところでございまして、県内、町内の事情によってどうしてもできないところはできやすいところに協力してもらうというような、やはりそれぞれの地域に応じた理解と話し合いの中で達成していこうということでございまして、絶対できないものを何でもかんでもしゃにむにという姿勢ではない、こういうことでございます。
  142. 相沢武彦

    相沢武彦君 関連。
  143. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連質疑を許します。相沢武彦君。
  144. 相沢武彦

    相沢武彦君 国で決めた今回の生産調整の数量は、法的に何ら根拠を持たない行政上の設定配分だから、法的にはこの数量を守らなきゃならないという理由は一つもない、農民の自主的判断に任せるんだと、こうおっしゃるわけですね。  そこで、その年につくられないなら翌年、また翌年つくらなければその翌年につくってもらう努力目標だと、こう大臣は論議の中でよくおっしゃるんですが、農林関係の補助事業を抱えている市町村の担当者にとっては、国で決めたこの配分というのは有形無形にどうしてもやっぱり圧力になっている。ですから、結局、市町村担当者は農民との間にはさまれて苦しんでいるんですよ。その実情というものを余りにも政府は知らな過ぎる。結局、形を変えた押しつけにすぎないんじゃないかと思うのです。  また、中川農林大臣の日ごろの持論から推測しまして、この生産調整の進展いかんでは食管制度が揺さぶられるのではないか、こう懸念する向きが多いんですが、この点、総理から、今後いかなる事態になっても、進展の状況はどうあっても食管制度はあくまでも堅持するかどうか、これを明らかにしていただきたいと思います。  それから、農林大臣、農家の理解と協力を得て生産調整を、実施したいと言うんですけれども、農民は不安と不信と不満をつのらせている一方でございます。政府は、稲作農家に協力を求めて生産調整を推進しようというなら、その前提として、畑作物や畜産物の価格安定策を初めとした諸条件の整備、これを確実に実施してからでなきゃならないと思うのですよ。大臣は、生産調整に協力してくれた人には政府も最善の協力をする、こうおっしゃっているんですが、最善の協力をするというならば、特にこの生産調整に協力をしようという意思のある農民が一番強く望んでいる配分目標を完全に消化した場合、その農家について予約限度数量を超える収穫があった場合、その超過米については全量政府が責任を持って買い入れをすることを約束すべきだと思うのですが、この点についての明確な御答弁をいただきたいと思います。
  145. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) 確かに今度の減反調整で農家の皆様方が大変な御苦労をなさっているということはよく理解できます。しかし、過剰のときに、たとえばミカンが過剰なときに、ミカン農家がどんな苦しみをし、あるいは永大産業もそうでございますが、倒産というような過剰の時代には、いろんな問題で血の出るような苦しみをするものでございます。したがいまして、米においても単年百七十万トンも余るという事態でございますから、これはやっぱり農家の人もそれなりの苦しみはしていただかなければ実効は上がらない。  そこで、ペナルティーと言われた翌年加算する分はひどいじゃないかという声が実はあるわけでございます。しかし、みんなしてやろうというときに自分だけはやらないということになったら、そのやらなかった分は、まじめといいますか、公正にやった人に翌年以降負担がかかる、これではまじめにやった人が励みがいがないということで実効が上がらい。やはり理解と協力で話し合った面積はその年消化してもらうことを原則とし、どうしてもできないならば翌年ということでやっていく以外にこれが公平を期すやり方とは言えないのではないか。いわゆるまじめな人を守るための、公正を確保するための最小限の措置であって、しかも、これは政府が押しつけたのではなくて、昨年来農業団体や関係機関の皆さんとも相談したところ、前にもやりました生産調整でも、やるところはやるし、やらないところはやらないということで、やる地域はたくさんかぶってきて損をしてしまった、だから今度本当にやろうとするならばそういう措置を講じてもらいたいということでございまして、政府が無理して押しつけたんではない、やはりやろうとする全体の農家の皆さんの総意を受けて、こういう決定になったということも御承知願いたいと存じます。  そこで、御指摘の生産調整に応じた以降の米は全部政府が買ったらいいではないかと、こういう御指摘でございますが、食管の仕組みは、御承知のように必要な米を農家にお願いをして、そして消費者に安定的に配給をするということで、食管が買い上げます米は必要な米だけでございます。必要以外の米までは買うという仕組みにはなっておりませんので、必要な米として限度数量を割り当てる。ところが過剰米が生じた。一つは生産調整に応じないで過剰米ができた、生産調整には応じたけれども豊作その他で過剰米ができた、こういう二つの過剰米があるわけでございます。この米も食管で政府は買い上げませんけれども、自主ルートに乗せて消費の段階にスムーズにいくように手当てをして措置をいたしておるわけでございます。特に生産調整に応じて余った方々には、手厚いというか、相当の助成をして自主流通ルートで流れる、こういう措置を従来もやってまいりましたし、今後もそういう方針で臨みたいということでございます。  なお、食管制度につきまして、私は、米というものは国民の主食でございますから、少々のぎくしゃくはあっても、これは堅持して、過剰ということも大変ですが、もし不足その他の事態になりますと大変でございますから、国民の主食はこれはどうしても国が管理をして守っていきたい、こういうことでございます。ただ、生産調整にも応じない、むちゃくちゃになって混乱をしてくると、守ろうとしても守り切れない事態になるのではないかというところから、今度の生産調整についても、食管を守るという思想、考え方も持ちながら、苦しいところはありましょうけれども、国民の消費に見合った生産をするというのが生産側の責任であろう、こういうことでお願いをしておるわけであり、食管を守っていきたい、こう思っております。
  146. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 食管制度そのものにつきましては、ただいま農林大臣から申し上げたとおりでございまして、私も、この制度の根幹はいろいろ工夫をいたしましても守り続けていきたい、かように考えております。
  147. 相沢武彦

    相沢武彦君 農林大臣、全量買い上げの問題ですけれども、これまで政府の農政の責任によって農家というものが結局今日まで追い詰められてきたわけですね。この米の問題についても、やはり政府の米の消費拡大への取り組みの甘さというか、見通しの悪さというものは一番の責任があるわけですから、一応予定限度数量を決めた後において生産目標配分を一〇〇%消化した農家のいわゆる超過米については、今後の政府の米消費拡大の努力によって新たにその分は予定限度数量と同じ価格で買い上げる、こういう特別の措置をしようとすればできないわけはないじゃないですか、いかがですか。
  148. 中川一郎

    国務大臣(中川一郎君) しばしば申し上げておりますように、生産調整をやって余った米を買い上げるだけじゃなくて、私は日本の米というものはやはりもっと消費を拡大して、生産調整などということをやらなくても済むようにしておくことが国の食糧安全保障と。一朝何かがあって、麦だ大豆だというものの輸入が困難になったといったときにたちまち米にお願いをしなければならない。ところが、米は生産調整をして生産がなかったというようなことになったら、まさに国家の危機だと存じます。  よって消費者の皆さんにおかれても、やはり日本古米の固有の米の消費拡大については御協力を願う。まあ一日一杯だけよけい食っていただければ、生産調整という非常に厳しいことをしなくて済むわけでございますので、そういったことで最善の努力をし、また学校給食等についても、あるいは酒のアルコール添加等きめ細かく消費の拡大をやりまして、いま言ったような余った場合の措置のみならず、生産調整はやらなくても済むというような方向までできるだけ努力をして、まじめに生産をされる米農家に対処したい、こう思っております。
  149. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 銀行局長よろしいですか。徳田銀行局長
  150. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 先ほど先生御指摘の上位十社に対する民間と政府を合わせての借入金でございますが、総額が十社で三兆一千五百億でございます。これに対しまして、開発銀行からの貸出金が八千五百六十二億円でございまして、その比率は二七%と、このようになっております。
  151. 峯山昭範

    峯山昭範君 各社ごとに言ってください。
  152. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 各社ごとに申し上げますと、総借り入れでございますが、東京電力が一兆六億円でございます。関西電力が六千九百四十五億円でございます。郵船が千九百十億円、大阪商船が千五百三十九億円、中部電力が三千五百七十五億円、川崎が千百四十七億円、九州電力が三千二百三十四億円、ジャパンラインが千五十九億円、近鉄が千四百五億円、山下が六百八十億円、このようになっております。
  153. 峯山昭範

    峯山昭範君 いまの御報告でもわかりますように、上位十社のうち五社が大手の海運会社になっております。しかも、その海運会社の借入金総額に対する開銀の融資の割合は、いまの海運会社だけをとりますと、日本郵船が総借入金の六一%が開銀の融資です。大阪商船三井船舶が七〇・八%、川崎汽船が五六・九%、ジャパンライン五六・七%、山下新日本汽船が六八・五%というように、これは相当開銀の融資が、市銀の割合と比べると、またその差が大変出てくる。これはメーン銀行とかいう言葉がございますが、そういうふうな、たとえば日本郵船の場合は開銀が千百六十七億円でしょう。それに対して借入金第一位の興銀が九十一億円、実に第一位の銀行の十二・八倍。一番少ないところで十二・八倍、倍率で言えばもっとそのほかのところはふえます。そうしますと、その目的からいっても、これは正常と言えないんじゃないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  154. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) お答えいたします。  開発銀行の海運業に対する融資でございますが、これは実は四十九年十二月に海造審の答申が出ておりまして、これは昭和五十年度以降の外航海運政策についてという答申でございますが、この答申の趣旨に沿って融資をしているわけでございます。  この答申は、御承知のことと思いますが、答申の内容では、わが国国民生活と国民経済の基礎となっている貿易にとってその安定輸送手段を確保し、運賃市場の低位安定化を図る見地からも、また貿易外国際収支改善、船員雇用の安定、海運企業経営基盤の確保の見地からも、日本船を中心としたわが国商船隊の整備が引き続き必要である。というようなことでございまして、この趣旨に従って融資をしているわけでございます。
  155. 峯山昭範

    峯山昭範君 開銀がこの膨大な融資をした、その目的に違反して、それこそ膨大な融資をしたというのは、政府の方針に沿ってやったものであると、そういうことですね。
  156. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 開発銀行といたしましては、この答申の趣旨に沿いまして海運に対する融資を行っているわけでございまして、計画造船等とにらみ合わせて融資をやっておるわけでございます。
  157. 峯山昭範

    峯山昭範君 ということは、これは総理大臣、現在の海運業界の不況というのは、これだけの融資を受けて船をつくったわけですよね、結局、船をつくってその船が原因でこの不況を来した、こういうわけです。ということは、逆に言えば、現在のいわゆる海運業界の不況というのは政府に責任のある、逆に言えば政策不況ですね、そういうふうに言われても仕方がない、そう思うのです。そういうような意味では、私は、政府としても抜本的な救済策を考える必要がある、そういうことに実際なると思うのですが、どうでしょうか。
  158. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) いま開銀のそれぞれの海運会社に対する融資残高はお説のとおりでございます。これはいま銀行局長から申しましたように、海運の統合を前提にいたしまして集約いたしました例の海運業の再建からスタートいたしたのでございます。金利を安くいたしまして、そして協調融資でやったわけでございます。  しかし、これは最後の判断はあくまでも海運会社でございまして、海運会社が将来の海運の見通しを立て、そして借りるか借りないか、これは最後には海運会社の判断にあるわけでございます。したがいまして、借りないところもずいぶんあったわけでございますし、政府は、あの当時やはり日本の海運会社の再建が必要であるということで、集約の一種の代替手段といたしましてこの種の制度金融を設けたわけでございますので、私は、厳密な意味では、政府にすべて責任があるとは考えていないのでございます。
  159. 峯山昭範

    峯山昭範君 私は、そういう答弁ではとても納得できない。要するに、借りるか借りないかはそちらの方の勝手だと。法律で決められた開銀のいわゆる設置法みたいなものの第一条の目的を逸脱してこれだけの融資をしながら、それで、そのときの実際の判断はその企業の責任でしょう、それは。けれども、それじゃ中小零細企業の立場から見たらどうなります。湯水のごとくこれだけの国の資金、それを使って、中小企業は借りようにも借りることができないわけです。大変な思いをしながらこの姿を見ていますよ。そういうふうな立場からしたならば、これはこういうふうに海運業界にこれだけ国が融資をすることすら、われれれの立場からすれば、非常に私は遺憾だと思う。にもかかわらず、今度は、借りるのは勝手だからと、不況がやってきたら、その責任は政府には全くないとは言わせない。やっぱり何ぼかの責任は政府にある、そうじゃないですか、どうです。
  160. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) いま思い出してみますと、当時の海運の市況から申しますと、あの当時は世界の海運界がだんだん戦後開けてきているのでございますが、日本の海運会社はほとんど壊滅状態にあったわけでございます。で、そういう意味で統合、集約いたしますとともに、当時の必要に基づいて制度金融を起こしたわけでございます。  いまになってみますと、石油ショック以降の世界的な海運界の不況によりまして、特にそういった関係から、いま海運界は非常に不況にあることはきわめて遺憾であるわけでございます。そういう意味では、やはり長い目で見てなかなか海運界の状況が見通せないという点についてはきわめて遺憾に思っておるのでございます。ただ、中小企業金融にお触れになりましたが、御案内のように中小企業の政府金融の方は全然別の政府機関を用意しているわけでございまして、三金融公庫に対する資金手当ては最も力を入れていることは、委員承知のとおりであると思います。
  161. 峯山昭範

    峯山昭範君 これはそういうふうなところから、開銀の方からそれぞれの海運業界に天下りが行っているわけですね、実際問題として。これは開銀のOBが海運業界にどの程度の天下りが行っているか、一遍御報告を願いたい。
  162. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 個々の企業について開銀の天下りがどのような状態であるかということについては、現在把握しておりません。
  163. 峯山昭範

    峯山昭範君 天下りはおりませんか。
  164. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) そのような事実があるかないかは調べてみたいと思います。
  165. 峯山昭範

    峯山昭範君 これはきょうは時間がございませんが、私の手元にはもう具体的にすべて開銀のOBがそれぞれの海運会社に天下っている。こういうふうなところからやっぱりいろんな問題が出てくる、これはもう明らかであります。しかも、そういうふうな中で構造不況といういろんな問題に陥っている。これはやはり政府としてもきちっとした責任をとらなければならない、実は私はそういうふうに思うわけです。  さらには、この問題に絡んで、最近いろんな、具体的に申し上げますとジャパンラインの問題が出てまいります。ジャパンラインについては実際問題どういうふうになっておりますか。
  166. 後藤茂也

    政府委員(後藤茂也君) 御説明いたします。  ジャパンラインは、新聞等でも報じられておりまするように、膨大なタンカー船腹を擁しまして、オイルショック後のタンカーの不況というものに対応して今日まで経営を続けてきておりますが、資金繰りについて若干の問題がございまして、五十三年度に発生をいたします長期設備資金及び長期運転資金の約定の返済額の猶予を日本開発銀行及び関連市中銀行に申し出ておると、ことしの二月ごろでございますが、そのような申し出を行っております。ただいま開発銀行及びメーンバンクである日本興業銀行を初め関係銀行の間でその申し出に対する検討が行われておるということでございます。
  167. 峯山昭範

    峯山昭範君 ジャパンラインがこういうふうな経営危機に陥った原因は何ですか。
  168. 後藤茂也

    政府委員(後藤茂也君) 私の前の御説明、若干言葉が足りませんでしたところを補足させていただきまするけれども、資金繰りに若干の問題を生じたということでございますが、この資金繰りの問題が生じたというのは、基本的な原因はオイルショック後の世界の原油の荷動きというものが、予想に反して、増加しないでかえって急激に減少するに至った、したがいましてタンカーのマーケットが二十分の一でございますか、四百から二十に下がるといったような世界的に激落の状況にあった、こういったようなことが基本的な原因であると承知します。
  169. 峯山昭範

    峯山昭範君 いずれにしましても、この海運業界の不況というのは、これは総理、私の最後になりますが、やはり何といいましても構造不況ということ自体が、いろいろな問題があるわけですけれども、特に海運業界についてはそういうようないま述べてまいりました種々の問題がある。やはり一つ一つ、ただ構造不況ということで簡単に片づけられる問題ではない。そういうふうな意味では、私は、政府としてもその一つ一つについて適確に対策を立てて対応していかなければいけないと思うのです。それで私の質問はこれで終わりますけれども、いずれにしても、現在の不況を克服するために、広範な立場でそれぞれの原因を的確に押さえて政府は対応していくべきであると思うのですが、最後に総理のお答えをお伺いして、私の質問を終わります。
  170. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) しばしば申し上げておりますように、いま日本経済が当面している問題は、経済全体の需要を拡大し、かさ上げをする、こういうことと同時に、構造不況業種に対しまして適確な措置をするということでありますが、海運業につきましてもそういう考え方のもとに対処しなければならぬ、このように考えております。  いま責任論、いろいろ御議論がありましたが、責任論は責任論といたしまして、それはそれといたしまして、いずれにいたしましても、これはわが国の重要産業でありますから、この重要産業をいかに再建するかということにつきましては、政府におきましても積極的に取り組んでまいりたい、かように存じます。
  171. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で峯山君の総括質疑は終了をいたしました。(拍手)  午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時から委員会再開し、竹田四郎君の総括質疑を行います。  これにて休憩いたします。    午前十一時五十九分休憩      —————・—————    午後一時四分開会
  172. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 予算委員会再開いたします。  昭和五十三年度総予算三案を一括して議題とし、竹田四郎君の総括質疑を行います。竹田君。
  173. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 五十三年度予算についての自然成立の時期というのは四月の五日になるわけでありますが、そういたしますと、それまでの間、予算の空白ができるわけですが、暫定予算を組みますか。
  174. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) まだいつ成立するか、この委員会における審議の結果を待たざるを得ないわけでございます。われわれは願わくば年度内成立をひたすら念願いたしているわけでございます。どうかひとつよろしくお願い申し上げます。
  175. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私ども理事会でこの審議の日程を組んでいるわけでありますけれども、五日まではどうしても審議がかかるわけであります。一日から五日まではどうしても空白になるわけでありますが、どうしますか。
  176. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) ただいまもお願いしましたように、年度内成立をもうひたすらお願いしているわけでございますが、万一おくれるようなことになりましたら、その事態に対処して善処してまいりたい。ただ、重ねて申し上げますが、年度内成立をひたすら念願いたしているわけでございます。
  177. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 総理は、去年の五月にロンドンで首脳国会議を開かれたわけです。そのときに三つの機関車論という話がされまして、われわれもその話を聞きました。しかし、どうもその機関車がお互いにどっちを向いているか最近わからないんですけれども、三つの機関車論という点については、日本の機関車はどっちを向いているんでしょうか。
  178. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日本の機関車は平和と繁栄に向かってばく進をしております。
  179. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 他の二つの機関車はどっちを向いていますか。
  180. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあやっぱり同じ気持ちだと思います。
  181. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 じゃ、機関車っていうことはどういうふうに解釈をしたらよろしゅうございますか。
  182. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 昨年の上半期の時点におきましては、世界じゅうが非常な不況と失業、インフレ、国際収支の赤字、こういうことで悩んでおる、これを克服しませんと、これは大変な世界的な悲劇が起こってくるじゃないか。克服する道は一体何だと、こう言いますと、石油ショックの打撃からまあまあ立ち上がりができかかっておる、まあアメリカ、日本、西ドイツ、これらがさらに体制を固めて、そして世界の経済を安定へと引っ張る、こういうことが期待されたわけなんです。  ところが、その後、ヨーロッパの国々、特にイギリス、フランス、またイタリア、こういう国々が国際収支上の困難ですね、これはかなり緩和されてきたわけであります。そういうようなことで、日米独、この三つの国が中心で世界を引っ張るという考え方よりは、みんなして力のある国が力を出し合って相協力する、コンボイ方式というか、船団方式といいますか、そういう考え方の方がいいんじゃないかという、その空気がいま出てきておる由でございますが、いずれにいたしましても、力のある国が世界経済の安定に寄与する、これは去年のこの時点におきましても、今日におきましても変わりはないわけでありますが、わが国は、とにかくそういう三つの機関車論であろうが、コンボイ論であろうが、いずれにいたしましてもわが国としての責任を尽くすべきだ、このように考えております。
  183. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まあ私は機関車論というのは崩壊してしまったと、西ドイツもこの間の五カ国の蔵相秘密会議、この席上において、シュミット首相は、後でブルメンソール財務長官との会談その他でこう言っておりますが、もう経済刺激の要求は出なかった、こういうふうに言っております。そこで、いまあなたは護送船団方式といいますかね、それに似たようなことをおっしゃっているんですが、船長はだれになるんですか。
  184. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあこれは共同船長じゃないでしょうか。みんなが船長のつもりでやっていくということが妥当であると、このように考えます。
  185. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 しかし、どうもその船長同士の意見が最近合わないんじゃないですか、どうですか。
  186. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) こういうむずかしい時局でありますから、それはもうそれぞれの国の考え方が初めからびしゃっと一致するなんということは、私はこれはあり得ないと思うのです。そこがしかし大事なんで、あり得ないというか意見の食い違いが出てくる、それを調整して一つのものにして、そして大きな力となってこの難局と取り組む、そこが大事なんだろうと思います。私は、この七月のサミット——恐らく開かれることになると思いまするけれども。サミットの使命なんかは、そこで締めくくりをする、こういうことになろうと思います。
  187. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうすると、その三つの機関車論はだめ、今度は船団方式ということですが、それは日本とアメリカ、西ドイツというのが去年の三つの機関車論だったわけですが、三つの機関車だけではだめだと、ほかも入れていかなくちゃだめだと、こういう考え方ですか。たとえばOECDの諸国を入れるとか、あるいはOPECの国々も入れて物を考えていかなきゃだめだと、こういうことなんでしょうか。
  188. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 世界経済の安定に寄与する力のある国、それが出てきたと、日米独三国のほかに出てきたと、こういうことなんです。そういう人たちにも応分のひとつ努力をお願いしようじゃないか、こういう機運が出てきておるんじゃないか、そのように思うわけでありまして、三つの機関卓論がだめなんで、日米独、これは世界経済の安定の立場から御用はもう済んだんですと、こういう意味じゃないんです。日米独はもとより一生懸命やってもらいたいんだ、しかし、同時に力のついてきつつある国が出てきたんだ、その人たちにも御協力を願う、こういう考え方が妥当じゃないか、このような考え方が出てきておると承知しております。
  189. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 日銀総裁にお伺いしますけれども、きのう、きょうの外国為替相場、それからスイスフラン、それからマルク、そういう関係はどうなっておりますか。
  190. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 昨日の市況でございますが、円がちょっと目立って強くなった感じでございます。ロンドン市場では二百三十二円台もございまして、その後少しドルが持ち直しまして、ニューヨークにまいりまして三十五円ぐらいまで戻しましたのでございますが、その間、ドイチェマルクあるいはスイスフラン等につきましては、円ほどの変動は昨日のところは見られなかったようでございまして、円に対する動きがひとしお目立ったというのがきのう、きょうの現状だと思っております。きょうは、まだ向こうの市場は開いておりませんが、東京市場で見る限りではどうもそういう感じがいたします。
  191. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 しかし、私は、去年もそうでありましたし、ことしもそうでありますけれども、アメリカが赤字国として、ドルの安定の方向をとらなければならないということを申し上げたわけでありますけれども、どうもアメリカの金融関係の諸幹部のおっしゃっていることを見ますと、特に日米のパートナーシップ、あるいは三つの機関車論、船団論を含めまして、やはりアメリカ自体かドル防衛をやってもらわにゃならぬ、これでなければ船団は私はまとまっていかないだろう、こういうふうに思うのですが、どうでしょうか。
  192. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いまアメリカは、とにかくドルが世界の基軸通貨でありますからね、これはアメリカのドル防衛への責任というものは非常に大きいと思うのです。私は、アメリカの経済というものは強大である、これにつきましては恐らく世界じゅうでそういうふうに思っておると思います。ですから、基本的にアメリカのドルがそう不安定なことになる要因というものは私はないと思うのですが、当面とにかくアメリカの国際収支が非常に大きな赤字を出している。そこで今日のような現象が起こると思うんでありまするが、これが世界に非常に大きな影響を及ぼす。通貨不安がなくとも世界は大混乱だと、そこへ昨今のような通貨不安ということになると、世界の経済は大変大きな打撃を受けるだろうと思うのです。そういうことをよくアメリカとしては考えて、そしてアメリカのドルの価値維持に対する責任を果たしてもらいたい、そのように念願しております。
  193. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ところが、最近のソロモン財務次官や、あるいはウォーリックFRB理事等の発言、あるいは最近で見ますとクライン教授ですか、こういう人たちの発言を見ますと、まあドルは安い方がいいんだと、そのままにしておけば赤字解消の役にも立つし、国際競争力もいいんだと、こういう発言が新聞によって伝えられているわけでありますが、こういう発言についてはどう思いますか。
  194. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ドルの価値維持について余り責任を感じないというような考え方は、私は妥当な考え方じゃない、かように思います。
  195. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 妥当な考え方でないとすれば、当然、日本は国益の立場を含めてアメリカに対して何らかはっきりと抗議をするなり、改善要求をするなり、何かすべきだと思うのですが、どうも福田総理はそういう動きというのが余り見えないわけですが、どういうわけですか。
  196. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 機会があるたびに、わが国政府はアメリカに対してドル価値の重要性を指摘し、関心を求めておる、こういうことでありまして、少しもそういう形跡が具体的に見えないというようなお話でございますが、あの牛場・ストラウス会談、これにつきましては共同声明が出ているわけです。あの共同声明におきましても、アメリカにおきましてはアメリカのドルの価値維持、これに努力する、そのドル価値の維持のために障害になっておる石油の輸入、この問題を処理しなきゃならぬが、いわゆるエネルギー法案を九十日以内に成立させるということまであの席で言い、共同声明にもそういうことが書いてある。そういうわけなんです。もちろん、それに対応いたしまして、わが国といたしましても経常黒字の縮減、これに努力するということが書いてありまするけれども、アメリカも事態の重要性ということについての認識は十分持っている、このように思うのであります。  ただ、アメリカに対して強くドル価値の維持を要請するためには、わが国といたしましても、やっぱりわが国のこの世界通貨のために尽くすべき責任、これを尽くさなきゃいかぬと思うのですよ。つまり、わが国の経常収支が百億をかなり上回るというような、そういう黒字状態、これを速やかに改善しなきゃならぬ。その改善をとにかくわが国としては急ぐ。これがある程度見通しがつく、また、それが傾向として出てくるということになれば、これは私はアメリカに対し、あるいはその他の国々に対し幾ら声を大にして日本世界の通貨安定ということを呼びかけてもいいと思うのですが、いま何せ日本が非常に大きな黒字を出しておる、余りにも大き過ぎる黒字を出しておる、そういう状態で他の国に対して物を言う、説得力が非常に私はまだ薄いんじゃないか、そのように思うのですが、早く足場を固めまして、積極的に力強い説得力のある要請ができるような状態にいたしたい、さように考えています。
  197. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いま総理のお話の中にありましたけれども、牛場大臣、あなたが代表で行って共同声明を出されて以後、アメリカはその共同声明に沿ってどういう努力をし、どういう効果を上げつつありますか。
  198. 牛場信彦

    国務大臣牛場信彦君) ドル価値の維持につきましては、われわれ十分とは考えておりませんですけれども、カーター大統領は二回にわたりまして乱高下を円滑化するためには介入を行うということを申しました。その前提として、もちろんカーター大統領はドルは元来強い通貨である、だからそのうちには必ず回復するので、人為的にこれを支えることは必要でないんだということを申しておりますけれども、とにかく急激な変化に対しては介入するということを二度にわたって申しております。  それから、エネルギー法案の方は、目下、上下両院の協議会でもってもんでおりまして、二点ございまして、一つは天然ガスの値段の統制を解除するかどうかという問題、それからいわゆる石油、内国産の石油でございますね、これの税金をどうするかという問題、これが二つひっかかっておりまして、最近、その天然ガスの方につきましては大体妥協ができそうだという話もございます。四月中には何とかしてこれを通そうということで非常に努力をしていると思います。
  199. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私どもが見る限りは、どうもアメリカのドル防衛に対する熱意というのは大変薄い。確かに総理がおっしゃるように、日本国内で直していくべき事項というのはこれまたたくさんある、それもあなたが責任者なわけですけれども。私は、このままで進めば、どうも日本輸入インフレの影響を相当受けざるを得ないようになるんじゃないか。そうして世界に再びインフレの状況というものが出てくる可能性が私はあると思うんですけれども、総理は、その辺はどういうふうにお見通しですか。
  200. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま世界的に不況の国は非常に多いわけです。反面、国際収支ですね、これで苦しんでいる国、これまた非常に多い。そういう中でインフレ、それから失業、そういう現象が非常に強く起こっておるという状態であります。  そこで、この事態をどうするかということですが、それぞれの国がそれぞれの置かれておる事情に応じまして、インフレを起こさないで経済を成長発展させるというための努力をすべきだ、こういうふうに思いますが、しかし、とにかく石油ショック以来長い不況でございまするから、そこで国々の考え方は非常にいらいらしていると思うのです。そのいらいらの中から保護貿易主義への動きなんというのがちらほら散見されるわけですが、これが積極化する、また顕在化するというようなことになったら、これは世界は大変なことになるだろう、こういうふうに思うんでありまして、私は、そういう意味で、国際機構が戦前に比べますとずいぶんいま発達をいたしておるわけです。OECDの機構だとかIMFの機構でありますとか、あるいはCIECはいまやありませんけれども、CIECを引き継いでの国際協力、南北協力の動きでありますとか、あるいはサミット、この考え方、こういうものがいろいろあります。そういう中でお互いに意見をそろえまして、そして相協力して今日のこの難関を、保護貿易主義なんというようなところへ移らないようにして打開していく、これがインフレなき成長、これへつながっていく最大の道である、そのように考えております。
  201. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 総理のいまの御答弁の中にもありましたように、このままの情勢が続くということになりますと、私は世界経済の崩壊の危機というものはかなり早目に来るんではないだろうか、こういうふうに思わざるを得ないわけでありまして、このことは同時に、日本のいまの景気回復への国民の希望というようなものも、私はきのうあたりはかなりたたきのめされた、こういう感じがするわけであります。こういう事情の中に、きのうの藤田さんの質問に対しまして、総理は、とにかく世界で二番目の国だということで大変胸を張って御答弁になったわけでありますが、二番目の国ということになりますれば、世界で指導的な立場にある国だというふうに一般的には考えてもいいと思うのですけれども、日本世界経済に対して指導的な立場をとれますか、どうなんですか。
  202. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) とにかく自由社会におきまして、わが国はGNPといいますか工業生産力といいますか、これはもう第二の立場にある、これはもう事実でありまして疑う余地はないわけでありますが、さて、その立場に立ちますと、わが国世界のこれからの経済に対する責任というものは非常に私は大きいと思うのです。その大きい責任をわが日本は尽くさなけりゃならぬ、この責任を避けて通ることは私はこれはできないことであります。何といたしましても、その責任は尽くし果たさなければならない、このように考えておりますが、そういう観点に立ちまして内外の施策を進めておる、こういうところでございます。
  203. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 日銀総裁に承りたいわけでありますが、この前、私、この場で総裁のローザ構想に対するお考え方を承りました。総裁もローザ構想を推進していった方がいいだろう、こういうお話でありましたが、ローザ構想というのはその後どういうふうに国際的に評価され、どういう方向になっておりますか。
  204. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 将来のあるべき為替制度の姿といたしまして、日米独のような主要通貨について、変動幅についてのコンセンサスがもし得られるならば、そういう方向で努力し、その範囲内に通貨、為替変動の幅を極力とどめるように共同介入する、それは将来の姿としてはあるべき一つの方向だといまでも思っておりますが、ただし、いまこれを直ちに実現できるかということになりますと、各国間の国際収支の状況が大変食い違っておるわけでございまして、特にアメリカは御存じのような大幅な赤字、日本は黒字というようなことでございますので、いま直ちにこの構想を実現する条件はなかなか熟していないのではないか。やはりその前に各国が国際収支の調整そのものについて真剣に努力をするという努力が先行しなければならない。その上で、安定した基礎の上に、こういう構想が成り立ってくるというようなことではないかと思うわけでございます。  各国の通貨当局の間でも、いま直ちにローザ構想の実現を求める、追うことは少し時期尚早ではないか、これが大体意見が一致を見ておる現状ではないかと思います。したがいまして、その後、ローザ構想そのものの実現については何ら具体的な進展の跡はないのが現状だと思っております。
  205. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 最近の国際通貨の問題について、西ドイツとアメリカの両通貨当局がスワップをすることによってドル安の支えをひとつしていこうというような動きがあり、たしかその協定も結ばれていると思いますけれども、最近の通貨情勢の中でそうした協定がどの程度効果があったというふうに御判断なさいますか。
  206. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 御指摘のように、アメリカ財務省と西ドイツ連銀との間には新しいスワップ協定ができまして、在来のものも含めてドイツマルク資金をアメリカが調達しまして、それを元手にしてアメリカでもうかなり大規模の介入をいたしておることは事実でございます。つい最近ニューヨーク連銀が数字を発表しておるようでございますが、ことしになりましてから、一月はさほどでもございませんでしたけれども、二月、三月とかなりの規模のドイツマルク売りドル買いの介入をアメリカ市場で行っておるようでございまして、それにもかかわらず、ドイツマルクはより強くなっておるのが現状でございますけれども、もしその介入なかりせば恐らくもっと大きな激変があったのではないか、ドル安ドイツマルク高の現象がもっともっと強化されておったのではないかと考えられるわけでございまして、私どもといたしましては、この介入はそれなりにかなりの効果を上げておると考えております。
  207. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 日銀もニューヨーク連銀との間に委託介入ということをなさっているようでありますけれども、この方の効果、昨夜もかなりこれは発動されたようでありますけれども、その効果は一体どのぐらい上がっているというふうに総裁はお考えでございますか。
  208. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) ニューヨーク連銀に対する委託介入を始めましたのは、昨年末でございます。ちょうど日本の為替市場が三日間にわたりまして休みになるわけでございまして、その間、外国の市場は立っているわけでございますので、その間に激変がございましても日本の市場に対する影響が大きくなる点をおもんばかりまして、この休みの間にもし大きな変動があるような場合にはということで委託介入を始めたわけでございます。  幸い、年明け後、一時、円高になった日もございましたけれども、概して申しますと一月は余り介入しないで落ちついておりましたのでございますけれども、二月、三月とやはり円高の傾向が強くなってくるに伴いまして委託介入をかなり活用いたしまして、日本の為替市場に対して余り円高の相場が移ってこない、戻ってこないように、その辺をスムーズにするためにニューヨーク連銀に委託しておるわけでございますが、それはそれなりにかなりの効果を上げたと思います。もしそのことがなかりせば、さらに日本の為替市場に対する影響は大きかったのではないかと思っております。
  209. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしたスワップ協定あるいは委託介入、こういうようなことで当面のドル安というものの影響というのは防げるんですか。それとも、さらにそういうものを強化すると同時に、何か新しい形のドル安を防いでいくという国際的な関係というものを何らかの意味でつくっていかなければならないというような意見もあるわけでありますけれども、これは政府側はどう考えているのか、大蔵大臣、それから日銀側はどう考えているのか、お答えいただきたいと思います。
  210. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) さしずめは私はいまのやり方で乱高下を防ぐということが適当であろうと思うわけでございます。何と申しましても基本が一番大事でございまして、やはり国際収支のそれぞれの均衡を図っていくということに重点が置かれなければならぬわけでございます。さしずめの問題は、乱高下を防ぐという意味でございますから、委託介入であろうがスワップであろうが、みんな心を合わして乱高下を防ぐということに当面努力してまいるほかはないと思っております。
  211. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 介入そのものは、あくまでも投機的な資金の動きによる過度の為替変動を防止する、いわゆるスムージングオペレーションとして実施しておるわけでございまして、これだけで円高が防ぎ得る、全く安定させ得るという、そのような力は介入にはないと思います。基本はやはりただいま大蔵大臣もお答えになりましたように、日本の国際収支の黒字幅を縮小する、アメリカの国際収支の赤字幅を縮小するということにあるわけでございまして、あくまでもその基本的な努力を忘れてはならないと思っております。  ただ、時として起こります投機的な動きに対しましては介入も必要でございます。さらにはまた、自由円預金についての準備率の五〇%を昨年来課しておりますけれども、そのような手段も必要になってくる場合もあるわけでございまして、そのときどきの情勢に応じて適時に処置していかなければならない事柄も数多くあるのではないかと思っております。
  212. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 確かに、介入だけで防げる程度は乱高下の一部でありまして、現実に日銀の介入によってここの大変な円高を防げなかったことは事実でありまして、確かにおっしゃるとおりでありますが、しかし、全体としてドル安傾向というものは続いているわけです。これが先ほど牛場大臣がおっしゃったこともどうも急に改善されていくというようなことではないわけでありまして、傾向的にはこの問題があるわけであります。そういう傾向的なドル安というものをやはり国際的に防いでいくシステムというもの、こういうものを私は何かつくらなくちゃいかぬと思うんですけれども、これは、総理、どうですか、何か私つくるべきだと思うのですが、どうですか。
  213. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、たとえば主要国の財政当局がいろいろ話し合いをいたしますとか、あるいはBIS、つまり国際決済銀行、これには主要国の中央銀行の総裁またはその代理が出ておりますが、その場で話し合いをいたしますとか、これはずいぶん精力的に話し合いはしておるんです。おるんですが、とにかく非常にこれは利害関係も錯綜したむずかしい問題でありますので、まだ統一された結論が出てきておらないというのが現状でございます。この上ともいろいろな立場で話し合いをいたしまして、そうして国際通貨の安定、これを実現しなけりゃならぬ、これはもう大変大事な問題になってきておるという認識でございます。
  214. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そういう抽象論はだれでも言えることでありまして、だれでもそういう答弁は私はできると思うのです。しかし、もっと具体的にそうしたシステムというものをつくっていく、制度をつくっていく、そういうものを提案していくことが私は日本の国際経済におけるところの指導性を確保するゆえんだと思うのですけれども、第二番目の経済国の総理としては、まさにいまの御答弁はお粗末そのものとこういうふうに私は言わざるを得ないと思うのです。  たとえば西ドイツという国、国の大きさから言えば日本よりも小さな国であろう、経済的な内容は強い国にしても。そういう国では次から次へそういうものを国際的に打ち出して、より多くの国国の参加を求めている、こういうことだと思うのですが、私は、世界二番目の経済大国であれば、当然、ドル安の問題に対して一つの政策を出し、その政策に世界の他の国々が協力をし合っていくというものがなけりゃいかぬと思うのですが、どうも総理の精神訓話は私非常によくわかるんですけれども、その後は一つも具体的なシステムは出てこない。残念きわまると思うのですが、何かお考えはございませんか。
  215. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 各国もいまの通貨問題につきましては大変心配しているんです。そうして、これはもう精力的にいろいろ打ち合わせをしておるんです。そういう過程の一つ一つ、これは非常にデリケートな通貨問題の扱いでございまするから、一々これが公表されるということはありませんけれども、実際はいろんな何とかして通貨を安定さしたいという努力は行われておる。わが国におきましても、とにかく主要国という立場において、わが国の代表がそう目立ちはしませんけれども、国際的なそういう相談に参加をしてやっておるんです。これは通貨問題を公開でこうするんだああするんだと論議はとうていできない問題す。これはもう精力的に、しかも静かに話し合いをしなけりゃならぬ、そういう性格のものだ、こういうふうに御理解願います。
  216. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうも数字の問題をあなたはおっしゃっているような気がしてしようがないんです。これから円が幾ら幾ら高くなるとか、ドルが幾ら幾ら安くなるというようなお話のように思うんですけれども、私はそう言ったんじゃないんですよ。ドル安の、そして世界の経済が混乱しているこういう状態を安定化する、固定化する一つのシステムというものをつくり上げなくちゃいかぬと思うんですよ。あなたは固定相場制の支持論者のようでございますけれども、それも一つの方法だろうと私は思いますが、それは望みがないと、現在のところ。しかし、何らかの形でつくり上げなくちゃいかぬ、こういうふうに思うんですよ。しかも、あなたは七月には先進国の首脳会議に出られるわけでしょう。そこでは必ずそういう問題を私は話されると思うのです。その場合に、七%だ、国際収支がマイナス、赤字の七億ドルだなんという話をしたってそれはしようがないと思う。そういう話ばっかりするから、後でお返しをたくさんいただくわけでありまして、具体的にこういうシステムで世界の通貨を安定していくというものを示すべきだと思うのです。  西独は、最近、示しているわけでしょう。アメリカの中期債をひとつ買おうじゃないか、そしてドルの流動性を幾らかでもとめておこうじゃないか、こういうふうに西ドイツは提案しているわけじゃないですか。私はそういうことを言っているわけですよ。こういう問題についてひとつ、西ドイツのそういう中期債を買ってドルの流動化をなるべく抑えていこうというこのことと、七月の先進国首脳会議においてそうした国際通貨の安定について日本はどういう具体的な提案を持っていくのか、これをお尋ねします。
  217. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは非常にむずかしい御注文ですが、いま、日本ばかりじゃありませんよ、世界の主要国の首脳がこれからの為替制度を一体どうするんだというような話に一言でも触れてごらんなさい、これは大変なまた投機を呼ぶということになってくるわけんでありまして、通貨問題というものはそういう性格のものでもありまするものですから、各国間できわめて静かなうちにいろんな話をしておるんです。その話の内容を公開するということは非常にこれは危険なことでありまするから、申し上げることを差し控えさしていただきますが、まあいろんな話が行われておる。ドイツの行き方、そういうようなことにつきましてもいろいろ論議が行われておりますが、とにかくわが国がどういう考え方をそういう問題についてとるかということは、これはもう私が申し上げるといろいろ影響がある問題ですから、お答えは御勘弁願いたいですが、本当に静かにずいぶん苦心をしておるということだけは御了解願います。
  218. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 西ドイツで発表して影響のないものを、日本がそれと同じようなことを言って何で影響があるんですか。そういうものは先進国として、当然、今後はこういうようなシステムはどうなんだろうかと各国へ問いかけがあってしかるべきでしょう。それをいまのようにおっしゃっているというのは、私は、案がない、こういうことだろうと、こういうふうに思うのです。  日銀総裁は、もうたびたび通貨の国際会議に出られていて、各国のそういうようなシステムというようなものについてお聞きになっているだろうと思うのです。私は、何らかの形で、日本も、政府が出さなければ日銀の通貨当局がそういうようなものを出して、世界の検討に付して各国の同意を求めていくような新しいそういうシステムというものをつくるべきだと思うんですが、総裁も私はそういうふうに思うだろうと思うんですけれども、どうなんでしょうか、そういういまのような形で、それは秘密だ秘密だということでいいんでしょうか。
  219. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) こういう具体的な提案をして交渉をしているというような問題になりますと、これは相手方の利害関係もございますし、なかなかこの経過の詳細をディスクローズすることがむずかしい問題も少なくないとは思いますが、私どもといたしましては、さしずめアメリカとの間で共同介入みたいなことをできないだろうかという点は、BISの会議などでしょっちゅうスイスなども一緒になりまして申し入れてはおります。しかし、アメリカの国内の事情もございまして、恐らくはマルクとの関係で介入すれば、それが全体として効果があるというような考え方だと思いますが、まだ実現はいたしていないわけでございます。今後もそういう趣旨での努力は続けるつもりでございますが、相手があることでございますので、どういうことになりますか、成果のほどはちょっと期待いたしかねております。
  220. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私はいま総裁のおっしゃっていることは非常によくわかりますし、具体的にいま、あしたからこうする、あさってからこうすると言うことは確かに通貨の影響がございますけれども、将来こうあらねばならない、こういう方法で通貨を安定化していくと言うことは私は一向に構わないし、それは出しているわけでありまして、それは日本としても出していくべきだし、どうですか、総理、いまの総裁の話を聞いて、あなたの考えとは違うでしょう、同じですか、違うでしょう。
  221. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 政府、日銀は考え方において一体でございまするから、いささかの違いもございませんです。総裁は、通貨制度、これのあるべき形について申し上げたんだと思うのですよ。私も前々から申し上げているんですが、固定為替制度、これが一番いいんだと。しかし、そこまでとてもいまいけるような状態じゃない。それでは中間的にどういうことをするかというと、いまお話がありましたローザ構想とか、あの辺の考え方が出てくると思いまするが、それとても今日このような国際収支の各国の状態を見まするときに、まだとても採用できるような状態じゃない。しかし、そういう方向へ持っていかなけりゃならぬと、これはそういうふうに考えまするけれども、いま現実的に、さあすぐそういう方向を話し合うかというと、その話し合いがこれはもうとても進むような客観情勢ではない、こういうふうに思っております。  なおまた、国際通貨関係者がずいぶん集まるんですよ。何回も何回も集まっていろいろな話をしておりますが、そういう席上でも、いわゆるローザ構想またはその周辺の考え方がささやかれておりまするけれども、これもいまこの段階においてどうも取り上げるというようなことにつきましては、これはそういう時期ではないという考え方が圧倒的であります。
  222. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵大臣、その西ドイツの最近言っているところの中期債の発行、これについてはどうです。
  223. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 変動為替相場でございますから、私は基本的にはやはり国際収支の状況が決定すると思うのでございます。いま問題になっておりますのは、非常に通貨不安がやってまいりまして、そして投機資金が動き始めておるという非常に微妙な段階でございます。それを一体どのようにしてやるか、いろんな構想があると思うのでございます。まあドイツの中期債の構想等も聞いております。しかし、非常にむずかしいところは、あれは恐らく極秘裏にやっておるわけでございましょうけれども、つい、その会談で意見が一致しないとかあるいは一致したとか、あそこは一致しないとか、こういうもううわさが出ただけで投機資金が動いてくるという私はいま見方をしているのでございます。  そういう意味で、私は、いろんな意味で国際通貨に責任を持っておる当事者の国が、静かに、それこそ本当に現在の世界経済の立場を考えて話し合うこと、これはもう非常に結構なことでありますし、そこで考え方が一致すれば非常にいいと思うわけでございまして、今後も精力的にやるべきことであろうと思うのでございますけれども、まあ中期債がどうであるとか、あるいはスワップがどうであるとかというような余り具体的なやつを言って、そして各国間の見解がどうだこうだというようなことになりますと、私はいまの段階ではかえってマイナスの場合もあるということをきわめて恐れておる者の一人でございます。
  224. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いまの大蔵大臣の答弁は、まさに羹にこりてなますを吹くのたぐいの答弁と言わざるを得ないと私は思いますけれども、こういうドル安が続いているということになりますと、最近のOPECのドル離れというようなことも言われておりますけれども、どうしてもOPEC諸国は石油の値上げというような方向に動いていく心配があると思いますけれども、これは通産大臣外務大臣、最近のOPEC諸国のドル安に対する動きというようなものが一体どういうことになっているのか御説明願いたい。
  225. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 昨年の年末にOPECの総会がございましたが、ここでは石油価格は凍結と、こういうことに決まりまして、次の総会は六月に設定をされております。場所は未定でございますが、多分ここでは再び石油価格は凍結されるのではないか、このように伝えられておりますが、まだ若干の時間もございますから、もう少し様子を見ないと何とも言えないと思います。しかし、仮にこの六月に凍結がありましても、いずれまた十二月には総会があろうかと思いますので、これまでは大体一年か一年半ぐらいに価格の引き上げが行われましたから、その方向にいずれは行くのであろうと思っております。
  226. 園田直

    国務大臣園田直君) 先般のOPECの総会で価格を凍結いたしましたが、これに対しては世界経済不況に各国が苦しんでおる折から、自分たちもそれに協力する意味において強いて凍結をしたと。しかし、今後ドルがドル安、それからその他の問題があって、一挙に価格を上げると世界経済に混乱を与えるから、それをにらみつつ逐次価格を上げる、総量も減産をする、こう言っておりましたが、製油の量については計画的な製油はすると思いますが、さほどの減産はできないと思います。価格については、やはりドル安が続いたりあるいは何年に一回ぐらいは逐次上げていくものと想像するのが妥当であると考えております。
  227. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そういう点があるだけに、最近みたいなドル安の非常な急激な方向というものは私どもは大変恐れなくちゃならぬと思いますけれども、こういうような形が続いていきますと、昨年でしたか、福田総理は東南アジア六カ国を訪問しまして、心と心の触れ合いということで十億ドルの援助を約束し、その他二国間の協定を結んできまして、大盤振る舞いをしてきたわけでありますけれども、その結果、最近はどのぐらい日本の援助は進んでいるわけですか、あなたが行かれてから、協定されてから。
  228. 園田直

    国務大臣園田直君) 総理がASEANを訪問されて各国で言われました約束は、逐次、検討に入るあるいは実施を進めているわけでございます。  具体的なことは事務当局からお答えをいたします。
  229. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) 総理がASEANを訪問されましたとき、経済協力に関しましていろいろ約束なさいましたことにつきましては、ただいま大臣から申し上げましたとおり、逐次実施に移しておりまして、円借款につきましてはほとんどこれを完了済みでございます。タイだけがまだ残っておりましたが、これも近く手続を完了する予定でございます。  それから、片やASEANプロジェクトに対します協力につきましては、ASEANプロジェクトとして固まったものから逐次協力していくということにしているわけでございますけれども、いままでのところASEANプロジェクトとして固まりましたものは、インドネシアにおける肥料工場があるわけでございますが、これにつきましては先般日本側から調査団を派遣いたしまして、その経済的技術的な実施、妥当性につきまして調査を行ったところでございます。そのほか、ASEANプロジェクトとして固まったものはまだないわけでございますが、そのほかのプロジェクトにつきましても、ASEANプロジェクトとして固まり次第協力をしてまいりたい、かように考えているわけでございます。
  230. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 最近は、恐らく東南アジアの諸国でも日本との貿易収支というものは日本からの向こうに対する輸出が非常に多くて大変な貿易赤字、しかもその大部分というものは対日貿易の関係だと思うのです。こういうことになりますと、アメリカ、EC、今度は近くの東南アジアから日本に対するところの貿易紛争というようなものが私は起こりかねないという心配があるわけでありますが、これは外務大臣、そういう心配はどうですか。私は起こり得る、早く手を打つべきだ、そのためにも国際通貨というようなものの安定あるいはASEAN諸国との関係というものをさらに改善をしていく必要があると思うのですが、どうですか。
  231. 園田直

    国務大臣園田直君) その御心配は御指摘のとおりでありまして、すでにタイなどでは具体的にそういうことを言い出しておるわけであります。したがいましてECの折衝問題等の結果によっては、これが逐次ASEANの方向に蔓延するという可能性が非常に多いわけでございます。
  232. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そういう点がありますから、当然、国際通資に対する短期的な取り組み、長期的な取り組み、これは二つなければならない、こういうふうに思います。  大蔵大臣は、先ほどからどうも国際収支の均衡を図るというようなことをおっしゃっているわけでありますが、このことは確かに大変重要なことだと私も思います。日本の黒字基調というものを早く均衡基調に変えていく、この点は必要だろうと思います。これを早く進めると言うんだけれども、そう早くできますか、あなたのおっしゃるように。どのくらいかかりますか、均衡収支にするには。
  233. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 基本的にはやはり内需の拡大が一番大きな基本線でございますし、また先般決定されましたような個別的な対外政策、あれを着実に実行していく。輸出輸入あるいは貿易外収支あるいは備蓄の問題、こういったものを着実に進めていくということであろうと思うのでございます。しかし、なかなかこれは先般来いろいろ実情をお話し申し上げておりますように、急にはまいらないと思いますけれども、逐次効果をあらわしまして、私は、うまくいけば、今年の後半から逐次所定の線のプラス経常収支六十億の線に向かっていくことを期待し、また、それに努力してまいるべきだ、かように考えているわけでございます。
  234. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 企画庁長官にお伺いいたしますけれども、最近の一ドル二百三十五円台、こうした状況というものは今後の七%成長にどういう影響を及ぼしますか。
  235. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 二百三十五円ということもさることながら、円相場が非常に不安定だということが、経済界のみならず、恐らくは消費者にまでよくない影響を与えることは私は確かであろうと思います。ことに企業家のマインドには、かなり一番好まざる一種の不安定要素として映ることは確かであろうと思います。  ただ、昨年九月、十月ごろ、突然円高が起こりましたが、あのときに比べますと、政府の姿勢が今回はかなり当時よりも明確でございますし、財政が相当力を持って指導するということも国民がみんな知っておられます。また、在庫調整などもある程度進んでおりますから、あのときのようなショックではないと思いますけれども、しかし、何分にもこれは不安定要素として成長には好ましからざるところでございます。まだ短期的な現象でございますから、どれだけの幅でどのぐらいの影響ということを申し上げることはできませんけれども、やはり阻害要因であることは間違いないと思います。
  236. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 企画庁は、これはきょうの新聞で私拝見しましたんですが、十−十二月の国民所得統計を御発表になっているようであります。これはちょうど第一次の補正、二兆円の景気拡大政策が行われた後でありますが、しかし、十月から円高になったわけでありますけれども、昨年のこの円高影響というのは成長率にどのくらい影響があったんですか。
  237. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは正確に申し上げることは困難でございますけれども、政府が当初持っておりました成長の見通しは六・七%でございました。で円高が起こりましたのが九月、十月ごろでございますけれども、当時、私、政府におりませんで外におりましたが、政府が九月の補正予算対策をいたしましたときに、これで六・七%というものは、形はともかくとして恐らく達成できるだろうというふうに、私は事情を知らないまま外から見て考えておりました。しかし、結果としては、それが現在政府が見通しを訂正いたしましたように、五・三%という見通しに変えざるを得なかったわけでございますから、やはりこれは円高の与えた影響が大部分と申してもいいぐらい大きかったのではないかと見ております。
  238. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしますと、さらにここで円高、まあこれが二百四十円台、二百四十五円台に返れば私はいいといますが、こうした二百三十五円台、現状のままが続いていくということになりますと、どうも七%成長というものはまた大変ぐらぐらしてくるんじゃないでしょうか。
  239. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはもう竹田委員よく御承知の上でお尋ねでございますから、くどく申し上げるわけではございませんけれども、同じような幅の仮に円高があったとしましても、わが国経済の持っておる局面というものがおのずから異なりますから、同じような影響があるというふうには無論考えるわけにはまいらないだろうと思います。恐らく今回の方がかなり、こういう経済の局面になってまいっておりますから、それに対抗する力が日本経済に、前回よりは、昨年よりは、あるであろうぐらいは申し上げられるかと思います。しかし、影響がないというようなことは申し上げることができません。ことにこういう不安状態が長く続くということが、私は、一番よくないのではないかと考えております。
  240. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 河本通産大臣伺いますけれども、私ども地方公聴会等でも伺ったわけでありますが、ちょうど企業は二百四十円のラインでひとつ何とかペイするような努力をしているように私どもは受け取ってまいりました。しかし、それがまたここでこういうふうになるということになりますと、これは企業家にはどんな影響が出てくるということが予想されますか。
  241. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 昨年の年末、ほぼ二百四十円で落ちつきました当時、ほとんど全部の産業を対象といたしまして調査をいたしましたが、二、三の業種を除きまして、二百四十円という水準ではほとんど輸出貿易が赤字である、やっていけない、こういう調査結果が出ておりました。それから輸出産業を中心とする中小企業でございますが、大体、輸出量が全生産の二〇%以上を占めておる産地が七十九地区ございますが、ここの調査をいたしましたが、これもほとんど全部の産地、産業が二百四十円という水準ではやっていけない、中には父祖伝来の仕事をやめなきゃならぬ、こういうところもございまして、非常に深刻な影響が出ておりました。  しかし、当時二百四十円でほぼ落ちつくのではないかという見通しがつきまして、しばらくの間安定をしておりましたので、とだえておりました輸出成約も、仕事がだんだんなくなるに従いまして、この際積極的にやっぱりやらないと仕事がなくなると困るというので、一月以降、赤字覚悟で大分輸出契約をしたようでありますが、この際、また再びこういう不安定な状態になりますと、いま企画庁の長官もお述べになりましたが、やはり非常に、この際やってみようかと、政府も積極的な財政を組んだ、七%成長も達成しよう、操業率も高くなるのではないかと、こういうやさきに再び気迷い的な感じを与えるのではないかと、その点を大変心配しているわけでございます。
  242. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 通産省が鐘や太鼓でプラント輸出というようなものを大変宣伝をされましたんですが、最近の諸外国からのプラントの受注状況と円高影響というのはどんなふうになっておりますか。
  243. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) プラントの引き合いは引き続いて相当活発にございます。ただ、しかし引き合いがございましても、昨年の秋以来の円高傾向でなかなか思うように成約ができない。残念ながら、ただいまのところ五十二年度の成約目標は若干下回るのではないか、このように想定をしております。
  244. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そういう意味で、昨年末、それから今回にかけての円高、あるいは国際通貨相場の混乱というようなものが大変大きな影響を与えつつありますし、それは具体的な数字の上以上に心理的な要因というものを与えていることは私はこれは否定できないだろう、こういうふうに思うわけでありますが、どうもそれに対する政府の対策というのは、公共事業だけをたくさんにしてそして景気が回復されるんだと、こういうふうに言われるわけでありますが、政府の言うとおり七%成長がこの公共事業を拡大することによってできた暁の来年の経済というのはどんな経済になるということを福田さんは頭に描いているのですか。
  245. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ことし七%成長が実現すると、そして非常に顕著な傾向はいま日本の経済界は不況で非常に重苦しい空気でございますが、それはなぜかと申しますと、これは企業収益が非常に悪い。企業収益が悪いのはなぜかといいますと、企業が過剰の設備を抱えておる、つまり設備過剰の状態にあると、こういうことでありますが、その設備過剰の状態、その大半を清算することができるのじゃないか。製造業稼働率指数、これがよく引用されますが、あれで言いますと、大体九二ぐらいなところに行くのじゃないか。まあ望ましい製造業稼働率指数というのは九五、六だと、こういうふうに言われておりますが、ですから望ましいところまで行かないけれども、もう一息だというところまで行く。そういうところを受けての五十四年度経済、これは一体どういうふうになるかと、こういいますと、私はこれから当分の間は実質平均いたしまして六%成長と、こういうことを考えておりますが、いまこれだけの不況の後でございますので、五十三年度、五十四年度、五十五年度、その辺は実質六%よりは高目に推移すべきであると、こういうふうに考えます。  五十四年度におきましては、五十三年度の七%成長の後を受けまして、七%までは行かぬが六%のところでかなり高い水準、つまりどちらかと言えば七%に近いそういう水準の経済社会を展望すべきであると、こういうふうに考え、それに対しまして需要はどうなるというようなことをいろいろ考え、財政もまた民間の設備の動向もそれに調整がとれるような経済運営をいたしたいと、このように考えております。
  246. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 お話を聞いていて数字だけは大変結構な数字でありますけれども、私は数字だけが実は問題じゃないと思うんですよ。数字の問題よりも産業構造がどう変わっていくのか、そしていまのような輸出偏重の経済構造が変わっていくというところに、やはりこの七%成長なりその次の六%成長の中で産業構造の転換をやるということでない限りは、同じようにいつかまたすぐ国際収支のアンバランスというものが私はできてくると思うのです。さらに、そういうものに加えて、発展途上国の追い上げというような問題も出てくるわけでありますから、ただ数字で昔の数字に返すという考え方でなくて、産業構造を積極的に変えて新しいタイプの日本産業というものをつくっていくと。それでなかったら、私はこれだけの大量の金を使うという、あるいは大量の国債を発行するという意味はないと思うのですが、どうですか。
  247. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それはおっしゃるとおりに考えているんですよ。五十四年度の経済展望はどうかと言うから、それを率直に申し上げたわけなんですが、つまり五十三年度は、私は、五年越しの不況ですね、不況の実態は設備過剰です、それを大方解消してトンネルを抜け出る、その出口が見えると、そういうところまで行くんだと、また行かせることが可能であると、こういうふうに考えておりますが、さてトンネルを抜け出た後の日本経済というものは、これはトンネル以前の日本経済とまるっきり違った経済社会になってくると、こういうふうに思うのです。世界がそうなんです。もう高度成長という世界は終わった、そして安定成長という時代に入ってきておるわけですから、わが日本も高度成長からもうはっきり区切りをつけて、安定成長路線に乗った経済運営、経済社会というものを展望しなけりゃならぬと、こういうふうに思うのです。そういう社会になりますと、これはもう成長度、高さというものはかなり低いものになっていくんです。しかし、そういう成長の低さということを考えまするときに、また社会体制を一体どうするか。高度成長のころでありますれば、これは弱い小さな立場の人々もその波に乗って余慶を受け得たわけでありまするが、そういうことが非常にむずかしくなる。ですから、社会的公正というか公平といいますか、そういうことによほど政府は力を用いなけりゃならぬことになるであろうと、こういうふうに思いますが、成長の高さというものは前に比べるとずっと落ちまするけれども、私は、努力のしようによりましては、より落ちついた安定した社会が実現できると、このように考えております。
  248. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうも、福田さんの話を聞いていると、数字の話で、高度成長、安定成長と、そういう視点からだけしか話が出てこない。これじゃ日本の経済というものをこれから先に安定的に発展させるゆえんにはならない。もっと構造的に問題を考えてもらわなければいけない。初めのうちはそういう話ですが、だんだん安定成長というところへ逃れていってしまうというのは、どうも私に言われて産業構造の話が出てくるので、私の注射が弱ければまた安定成長という数字の方に流れていく。これでは私は困る、こういうふうに思いまして、もう少しその点では考え方を変えてもらわなくちゃならぬと、こういうふうに思いますけれども、御答弁は要りません。  在庫調整の問題について伺いたいと思いますが、最近いろいろな在庫調整がいつ調整が完了するんだというようなお話がたくさん出ているわけでありますが、企画庁は大体三月、四月ごろで終わりだと、それから通産省は夏ごろだと、日銀はこれもかなり慎重論で夏ごろだと、これは短観ですね、それから最近も日本経済新聞なんかが出しているわけでありますが、これもとにかくうまくいって夏から以降だと、こういうふうに言われているんですが、いずれ在庫調整は遅かれ早かれこれはなされるものだと私は思います。しかし、その在庫調整の性格が私は問題であろうと、こういうふうに思うわけです。要するに、在庫調整が終わって適正な在庫になった後に積み増しの在庫になるのか、そのままで積まれない水準で適正という形だけでいってしまうのか。それが今後に大変大きい影響があると思うのですけれども、今後はその在庫調整が積み増しに転化するのか、そのまま推移するのか、その辺が非常に不明確である。企画庁は、これはかなり積み増しの方向だというふうに私ども受け取れるわけでありますが、ほかの方としてはどうも積み増しの方向へ行かない、こういうように感ずるわけでありまして、それによって七%成長が達成されるかされないかというやはりキーポイントにも私はなると思う。そういう意味で、企画庁は三月、四月に在庫調整が終われば積み増しの方向に進んでいくと、こういうふうにお考えなんですか、どうなんですか。
  249. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 在庫調整の時期というのは、確かに少しずつ人によって見方にずれがございますけれども、まあそっちの方へ向かっていることは恐らく間違いないと思っております。  ただいまのお尋ねですが、在庫調整が済みました後、私ども、五十三年度中に大きな積み増しがあるというふうには実は考えておりません。やはり企業家の態度は一般的にまだまだ慎重であって、いわば必要なものだけをつくっていく、買っていくというような企業家の心理がなお続くのではないだろうかと考えております。
  250. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 日銀総裁は、日銀の短観に基づいて在庫調整と今後の調整後はどういうふうに推移していくというお考えでございますか。
  251. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 先般発表いたしました短観の分析をいたします場合に、いろいろな意見が出てくるわけでございますけれども、十−十二月、一−三月の在庫調整は、ものにもよりますがかなり進んだという感じはこの表の上にも出ておるように感じます。そして、四−六がどうなるか、実は数字の上では若干積み増しがあるような感じのアンケートの結果が出ておるわけでございますが、これが本当の前向きの積み増しなのか、それともまだ在庫調整が完了しないその積み残りがここにあらわれておるのか、その辺の判断が非常にむずかしいところでございまして、いずれとも断定しがたいような感じがいたします。ただ、企業マインドとして製品在庫水準をどう見るかというディフュージョン・インデックスによりますと、十−十二月、一−三月に比べて四−六は少し好転をしておる、辛いと見る見方が少なくなっているような感じもございまして、その辺が今後一体現実にどういうふうに推移するか、非常に関心を持たれる点でございます。やはり四−六月いっぱいぐらいは在庫調整が後を引く、ものによってはその先へ少しずれ込むものもあるかもしれませんが、しかし、過剰感は大分この四−六で薄らいでくると、そういう感じがいたしております。
  252. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 したがいまして、私はこの在庫調整の後が実は非常に問題である。それいかんによっては、たとえば総理が言っておりましたどこの企業も減産圧力になかなか抗しかねている、すきあらばひとつ生産を上げて何とかペイをしようか、こういう圧力というのは大変多いわけであります。したがって、在庫調整後積み増しされてもまた去年と同じように過剰在庫が残ってしまう、こういうようなことがあるのではないだろうか。そういうようなものに対して一体政府はどう対処をしていくつもりなのか。
  253. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 卸売物価マイナス一・五%、あるいは一・七ぐらいもうなるのではないかと思っておりますけれども、そういう情勢というのは、私は、いかにもマイナスというのは異常でございますので、在庫調整が進んでまいりますと、マイナスからは多少のプラスには転じる時期があるだろうと思います。そういたしますと、まあ適正在庫というものを考え考え方が、多少は先高であると考える場合と先安であると考える場合は評価損、評価益の問題がございますから、多少そういう心理的な影響は私はあるだろうと思いますが、それにしてもさあ在庫が減ったからひとつうんとふやそうというような動きは恐らく企業家の気持ちには起こりませんし、生産側もまあ多少稼働率が上がるにしましても新規雇用はしない、時間外手当でやっていこうというような、そういう動きを私は五十三年度中はどうも続けていくのではないだろうかという予想をいたしておるわけでございます。
  254. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まだいろいろありますけれども、時間がありませんので次へ進みたい、こういうふうに思うわけでありますが、日米航空協定につきまして、不平等是正ということでいままで進めてまいったわけでありますけれども、最近の報道によりますと、アメリカDCABですか、これが報復措置として日航貨物便の制限をしてきそうだ、そういうことをカーター大統領にCABは勧告しているというのですか、進言していると、こういうことでありますが、これに対して日本政府は一体どう対処していくのか。しかも、成田空港、これが完全な空港では私はないと思う、未完成な空港だろうと思いますけれども、こういう空港の開港を前にアメリカがこういう措置をしてきそうだということは、私は日本の国益にも、あるいは日本の国という独立国の体面の上にも、私は大変大きな問題がある、こういうふうに思いますが、これはどうしていこうとしているのか。あるいはこの問題についてカーター大統領と五月に会われる総理はこれに対してどう対処しようとしているのか。
  255. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) まず私からお答えをいたします。  成田の開港を前にしてその種のことで日米間におもしろくないような動きのあることは、まことに残念であります。いま御指摘のように、日米間にも、日本日本でどうも不均衡なことがあるというような感じを持っており、したがって、一昨年から五回にわたって交渉をしておって、また来週その第六回の会議をやるわけでありますが、開港を前にしてそういうことがないようにというように望むことは私の本意でありまするところ、アメリカが幾つかこちら側へ成田開港前後を目途として言ってきておったこと、そういうこともいま申しました会議でよく相談した方がいいとわれわれは思うから、アメリカに対する返事等も留保しておった。急いでやるとすればそれはそういうわけにいかぬと言うよりほかないのでありますから、やはり方法を考えて留保しておった。そのやさき、日本が聞かないんなら日航の貨物便なんかを減らせと、このことをカーター大統領の方へ民間航空委員会が申し出たということでありますので、私どもといたしましては、そういうことはまずいじゃないか、大統領の方へはそういう措置をとってもらっては困るということを直ちに申し入れをいたし、いまその話が向こうへ行っているわけであります。  そこで、これからどういうようにするんだと、こういうことでございますが、カーター大統領も日本の申し分を了として善処さるるものと私は期待を持っておるものであります。しかし、それを聞かなかったらどうするかということについては、まだここでそれじゃ日本はどうするかというようなことを言うことは早いと思います。しかし、いずれにしてもこの問題の性質等にかんがみまして、日本は相当意を決して臨まなければならぬ問題であるかのように私は認識をいたしておる次第であります。したがって、そういう気持ちで今後対処していきたいと、こういうふうに存ずる次第であります。
  256. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 日銀総裁にはまことにありがとうございました。御退席いただいて結構でございます。
  257. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日米航空協定の改定問題、これはいま運輸省が後に控えまして日米間で話が進められておる、こういうわけでございますが、なるべくこれは早く決着をつけた方がいいんです。いま日米間で経済問題という大きな問題がありますが、そういうさなかに航空問題でごたごたするという状態はこれは極力避けなければならぬ、そのように考えておりますので、鋭意努力をいたしまして、そしてなるべく早く決着をつけたい、そのような考えであります。
  258. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 三月にもたしか日米交渉が行われる予定があると思うのですけれども、しかし、昭和二十七年に結んだ日米の航空協定が、三十年近くたった今日も同じように、路線権にしても以遠権にしても、あるいは輸送力の調整にしても、アメリカの一方的な形でそういうものがやられているということは、これは三月の交渉で私はそう素直に解決されるというふうには思わないんですけれども。私は必ずこれは総理の渡米のときまで響いていくだろうと、こういうように思うのですか、そのくらい三月には簡単におさまりそうですが。
  259. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 私も講和会議出席したような古い人間の一人といたしまして、ここ三十年近くの日米間におけるその種の問題のいきさつについてはいささか承知しているつもりであり、したがって、直すべきところは直されてしかるべきものだという信念に立つものであります。過去何回かにわたってその種の交渉が行われて、ある程度は改善されました。ある程度は改善されたが、いまも竹田さんのおっしゃるように、なかなかうまくいってないということは事実であります。しかも三月、来週からまた会議があるわけでありますが、その会議では先ほども私が申しましたように、ぜひ五月に入って総理が行かれるより前にその種のことはうまくいっていることを私は心から念願するものであります。念願するだけに、先ほども申し上げましたが、意を決してという表現をいたしましたが、余りなまやさしいことではうまくいかぬと、私はそう覚悟しております。そこで、先ほども申し上げましたように、あなたも指摘されたように、過去久しきにわたってそういう問題等もあるのでありますから、ここで何とかと、そういうように強く念願しつつ交渉に当たっていきたい、そう考える次第であります。
  260. 赤桐操

    赤桐操君 委員長、関連。
  261. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連質疑を許します。赤桐操君。
  262. 赤桐操

    赤桐操君 昭和四十一年の七月の閣議で成田市に国際空港の設置を決定いたしまして以来、ちょうど十一年八カ月を経ております。それで、この三月の末にいよいよ政府はこの成田空港を国際空港として踏み切ろう、開港に踏み切ろうといたしているわけでありますが、そこでひとつお伺いいたしたいと思いますのは、国際空港というのは最も整合性と高度の機能を求められる各種施設を要すると思うのです。その諸条件、こうしたものを見てみまするというと、滑走路にいたしましても、交通アクセスあるいは燃料輸送、騒音対策、さらには空域の競合、こういった問題等々、大変重要な問題が実は各種機能の不完全な状態のまま残されているように私は思います。総額で七千億を超える巨額を投じて、十一年八カ月を経て、今日こうした国際空港の開港に踏み切ろうといたしておるわけでありますが、これはいささか余りにも欠陥だらけの施設ではないだろうか、こういうように実は考えられます。国際空港ができ上がりましたといって世界の各国に御披露申し上げるような空港であるとは私には思えません。総理は、十一年八カ月にわたった今日のこの時点に立ちまして、いよいよ開港に踏み切ろうとする立場で、これをどのように御認識になっておられるか。さらにまた、各種の施設等を担当しておられまする外務、運輸、自治、環境各大臣の対策等、それぞれ開港をめぐりましてお伺いいたしたいと思います。
  263. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) まず、私からお答えをいたしたいと思います。  十一年余にわたって今日まで関係者いずれも苦労をしてまいりました。関係の住民の人たちにもいろいろ御苦労を願っているわけでありますが、何もかも完全で何ら心配ないという状況での開港はもとよりわれわれの望むところであります。しかしながら、いろいろ御批判を受けております。そういう観点から、いまもお話があったように、いろいろあるじゃないか、これで開港するのはどうだとおっしゃられますと、私もこれに対しましては、一面において長い間こうしてやってきたのであり、ここまで来たのですから、われわれが開港しようというとおりにぜひやりたいと、これはまず申し上げたいところでありますが、もっと何も心配のないことばっかりがそろっておったらなおいいということは、それは確かに思うのです。思うのでございますが、まあここでお話しのように幾つかのことがあるということでございますが、それなるがゆえに三月三十日を延ばすというようなことは、これは世界に向かってもわれわれはすべきではない。決定的な欠陥があるということになれば、これはこれで考えなければなりませんけれども、まあいろいろ言われているところ等がございますけれども、曲がりなりにと言うとちょっと言い過ぎですが、もうちょっといい状況でとにかく開けると。開かなきゃならぬということにつきましては、私ども自信を持っていま臨んでおる次第であります。それにいたしましても、まだ若干日もございますし、いま御指摘のようなこと等を中心といたしまして、できるだけまあまあと言っていただけることにすべく全面的の努力をいたしているというのがただいまの姿でございます。
  264. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 東京近傍といたしますと、いまわが国は羽田国際空港しかないわけであります。その羽田国際空港が御承知のとおり大変な過密状態でありまして、あの羽田空港において一朝何か事故が起こったということになると、これが一波万波、大変な悲惨な事態が起こりかねない。そういうことを考えますと、もう十一年余り前に決めたこの成田空港、これがかなり進んできた。この空港の完成を急ぎまして、そして羽田における恐れられる事故、きわめて危険な事故、そういうものがないようにするということはこれは政府の責任であると、このように考えまして、鋭意成田空港の月内開港に向かって努力してまいりましたが、やっと目鼻もつきましたので、残された時間、最大の努力を払いまして、国際社会に対しましても恥ずかしくないような成田空港として開港いたしたいと、そのように考えております。
  265. 赤桐操

    赤桐操君 昨年の七月七日に日本航空機長会会長から大変厳しい航空局長に対する要請が出ていることは、総理は御存じだろうと思います。その内容は幾つか出ておりますが、横風用滑走路の設置の問題、これは空港の開港に優先して行われるべきものだということを強くパイロットの立場から主張いたしております。さらにまた、飛行方式の問題では、百里と羽田の間の空域を割って入った関係から、百里基地との空域の重層を非常に厳しく批判をいたしております。パイロットの立場から、複雑化するこの要素を持ってきては危険だということを要請しているわけであります。国際空港としてこういった各種の機能を高度に要請されるものでありますが、特にその中で横風用の滑走路の問題については、私は、これはいま運輸大臣の御答弁の中あるいは総理の御答弁の中で、早急に改善するものは改善して、補完するものは補完して、ともかく何とか目鼻をつけて開港したいと、こう言われるけれども、横風用の滑走路は三月の三十日の開港までに目鼻がつくのかどうか。しかもこれは、いま申し上げた日本航空の機長会からも実は要請等もあって非常に危険なものであることは明らかであります。私は、基本的には横風用のこうした滑走路の設置がないこういう状態のままで、突風とかあるいは大きな風の変化があったとき、そうした場合においては恐らく四千メートルの滑走路だけではとうてい機能を発揮することはできないだろうと思うのであります。しかも、三月、四月、五月というのは、成田は黄塵、霧、もや、突風、内陸空港のまさに特徴的なものが全部実は発生するところであろうと思います。こういう中で、私はこの横風用の第二期工事の問題についてはいずれは出てくる問題であろうと思いますが、この横風用の滑走路なくしては私は恐らくこれは国際空港として役に立たないであろうと、こういうように思います。さらにまた、世界の有力空港の中でこういう空港がほかにあるのかどうなのか、この点をひとつ伺いたい。  また、今後第二期の工事に入らなければならないという場合において、あくまでも地権者との間は話し合いでいくのかどうなのか。今日、十二年間にわたって強権に次ぐ強権の発動で地権者を踏みにじって今日のいわゆる空港の各施設をつくり上げてきたわけでありますが、こうした状態と同じような形を今後の第二期の工事の中でもとるのかとらないのか。特に強権の発動はいやしくもやらないということをこの場でお約束をいただけるかどうか。この点ひとつ伺いたいと思います。
  266. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 赤桐君、時間はもう過ぎております。
  267. 赤桐操

    赤桐操君 はい。
  268. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 横風用滑走路等もできた上で開港ができるということならば、これは一層望ましいわけでございます。ただし、そういうことに至らずして開港をするということでありますが、そういうことにつきましては、この横風用がなければ空港と言うわけにいかないというほどの事態ではないということを以下専門家に説明をさせますが、私もあなたと同じようなこと等も考えまして、果たしていいのかというようなこと等も私は私なりに検討をいたしましたが、専門家がこういうことでは十分でないと言われる意味もこれはわかりますし、それに対しまして、こいつはいまこういうようにして開港をして、その横風用の滑走路等がないということについてはかくのごとくにして対処するという方途が講ぜられておりますから、このことにつきましては申し上げなければならぬと思います。もとより第二期工事も急ぐべきものでございますが、これがまだ御承知のような事態であることを私も残念に存じますが、できるだけ話し合いということで円滑に事を進めたいというのがもとより当然の本意であります。過去長い間にいろいろの経験がございました。このとうとい経験を将来に生かしていかなければならないということは私どもも強く存じているわけでございます。今後どういう事態がということは申し上げられるわけでございませんので、どういうときにはどうしますということを一々申し上げるわけにはまいりませんが、円満に進めるということがわれわれの本意であるということでございまして、あと専門的なことにつきましては、それぞれの責任者からお答えさせることにいたします。
  269. 高橋寿夫

    政府委員高橋寿夫君) お答えします。  昨年、機長会から出ました要望、意見につきましては、これをまじめに検討いたしまして、できるだけこれは対応したつもりでございます。  いまお尋ねの横風用滑走路でございますけれども、私ども成田周辺の気象データを調べましたところ、一年間に横風用滑走路がなければどうしても飛行機が離着陸できないほどの横風の強さが吹く日というのは、年間平均しまして一%未満というデータがございます。したがいまして、この一%未満でございましてもあるわけでございます。こういった日には羽田を代替空港として使うということで手当てをいたしておりますので、そういったことのための危険というのはございません。しかしながら、横風用滑走路は当初計画をしたものでございますので、できるだけ早く第二期工事の中に入れましてつくるつもりでございます。
  270. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 警察の立場といたしましては、二つの場合が考えられるのでありまして、その一つは警備態勢の問題でございます。  燃料輸送等につきまして警備態勢の万全を期してまいらなければならぬことは当然でございますし、かつまた三月二十六日から四月四日にかけまして連続、空港開港反対阻止闘争、これが展開されるのでありまして、その中心は恐らく三月二十六日、そして三月三十日と四月の二日、かようなことが予想されるのでありまして、警備の万全を期してまいらなければならぬと、かように考えておるところでございます。  それから交通アクセスの問題でございますが、東京から成田空港に参りまするいわゆる下り線は、さほどの混乱がなしに約二万台のさばきができると思うのでありますけれども、問題は東京に向かいます上りの交通量でございます。ことに千葉市を中心にしますあの周辺から参りまする車が、幕張の地点から高速自動車道に乗りますことによって非常な混乱が予想されておるのでございますから、幕張から湾岸道路を利用いたしますような交通標識をうんとつくります等の方法で十分な指導を行いまして、交通の混乱が起こらないように対処してまいりたい、かように考えておるところであります。
  271. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) ただいま自治大臣の方でお答えがございまして、恐らく御質問の趣旨は成田空港のアクセス道路の問題だと思うのであります。私も成田まで試乗いたしましたが、京葉道路から行く場合と湾岸道路を利用する場合と、いずれも支障なく予定時間で行けます。私は、この道路の利用のほかに京成電車また国鉄、そういうものとの四つのルートによりまして成田空港開港後の交通につきましては、多少の時間の狂いはあろうかと思いまするが、まず無難に行けるものであると確信しておるわけでございます。
  272. 高橋寿夫

    政府委員高橋寿夫君) 空域の問題についてお答え申し上げますと、これは主として百里の自衛隊の訓練空域と成田の空域との調整の問題でございまして、これは昨年の夏以来、双方の専門家が数回にわたって会議を重ねまして、両者の間で調整がつきまして、これによりまして安全な運航を相互に確保することができるという結論になっております。  それから、騒音対策でございますが、これは直接には空港公団が担当いたしております。昭和五十三年の十二月というのが、環境庁で決めました飛行場周辺の航空機の騒音基準でございまして、こういったものに合格し得るような対策を——たとえば民家防音工事でございますとか、あるいは激甚地域からの移転の問題でございますとか、これらをいま進めております。特に民家の防音工事につきましては、成田の周辺は農家が多うございますので、通常の大阪等の空港周辺でやっておりますような部屋を防音するだけではいけない、やはり全戸防音にしてくれという希望が非常に強うございましたものですから、特殊性にかんがみまして、五十三年度予算をもちまして全戸防音のテスト、試行を行う、そして引き続きこの結果を踏まえまして全戸防音工事に踏み切ると、このようにいたしておりますので、騒音対策につきましては着々と進行していると思います。  なお、開港後実際に飛行機が飛びまして起こってまいりますところの、たとえば騒音コンターの見直し等につきましては機動的に対処するつもりでございます。
  273. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 防衛庁長官伺いますけれども、きのうの外電によりますと、政府が五十三年度から導入配備を予定している要撃戦闘機のF15、これを生産しているマクダルダガグラス社が賄賂商法を行ったという容疑でアメリカの議会のSEC、倫理委員会で調査しているという報道がありますが、この解明が行われるまでは、この前のロッキードと同じように、事件でありますから、F15の導入については留保すべきである、こういうふうに思いますが、どうなんですか。
  274. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) ただいまのお話は、私は初めてお聞きしたわけでありますが、十分調べまして検討をいたしたいと思っております。(「後で調べて回答されますか」と呼ぶ者あり)当然回答をいたします。
  275. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 国債の発行というのが大変多くなるわけでありますが、衆議院におきましてわが党の藤田議員からその償還計画等も出されておりますけれども、これの説明を聞きますと、もう六十三年になりますと償還財源がゼロになるというような状態というお話も聞いたわけでありますけれども、今後の償還というものは、いまのままでいけば私はかなり大きな問題が出てくるだろう、こういうふうに思いますが、昭和五十七年度は赤字国債をゼロにしたいと、こう言っているんですが、そのときの残高というのはどのぐらいになるんでしょうか。
  276. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 九十兆たしかちょっと超えるぐらい——これは財政収支試算のCケースで申し上げるわけでございますが、Cケースで申し上げますと九十三兆六千億でございます。
  277. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そういうものを返していかなければならないし、そうわれわれの孫にこうしたものを、借金を押しつけるわけにもこれはならぬと思うのですが、そうなりますれば、私はある意味で国民に負担を願わなくちゃならぬというときがわりあい早く来るんじゃないかと、こういうふうに思うのですが、負担を願うなら負担を願うらしい体制というものを私はつくらにゃいかぬと思うのです。それには不公正な税制、これをまず直していって初めて新しい税金を課していくということにならなくちゃならぬと思うのですが、不公平税制の典型のように言われております社会保険の診療報酬の医師課税ですか、これについてはいつ直すんですか。
  278. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) この点につきましては、先般の予算編成に関連する税制改正のわが党の税制調査会におきまして、現在の制度は五十三年度限りとし、それに必要な関連する諸般の措置を講じて、それで議員立法でもって行うということを決定いたしておりますので、五十三年度限りと、かように心得ているわけでございます。
  279. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 利子所得、配当所得についても不公平税制だというふうに言われておりますが、これはどのようにお考えですか。
  280. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 利子・配当所得について主として不公平だと言われているのは、現在の源泉選択税率三五%、ことしの一月一日から。これがもし総合になればもう少し高くなるのではないかと、ここに言われているのでございます。御案内のように、ことしの一月から五%上げましたし、なおかつ、この制度は五十五年度まで続く予定になっております。そして、この総合するということにつきましては非常に技術的な問題がございまして、鋭意いま税務当局、大蔵省の方で詰めております。全銀協の方にも一詰めさせ、また部内においても国税庁と相ともに研究しておりますので、できれば五十五年度限りにしたいということで鋭意勉強中でございます。
  281. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ことしの一月、東京都の新財源構想研究会、これが政府の方で発行されております五十年度の国税庁統計年報、これをもとにして少額貯蓄の利子の非課税、これによるところの増収額というものを四千五百億くらいと見ているわけであります。ところが当時、昭和五十年の予算のときに政府が出されました少額貯蓄の利子等の非課税の減収見込み、これによりますと九百七十億。大変な大きな差がありまして、そういう意味では、やはり選択の分だけでなくて、少額非課税の分においても私は不公平性が大変たくさんある、こういうふうに思うのですが、どうですか。
  282. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 小額貯蓄非課税制度はもう御承知のようないきさつでできたわけでございますが、その不公平であるという理由が、三百万円の限度を超えてやっておるという点をあるいは指摘されているのか、あるいはそれ自身がおかしいというのか、いろいろの考え方があるわけでございますが、もし重複適用のことがないように、現在各市中金融機関の方では厳重にそのことのないように手配しておりますし、郵政当局の方でも現在名寄せをいたしまして、年間に三百何十億重複を発見してもらっておるようなわけでございますので、絶対ないとは申しませんけれども、私は逐次直っているものと考えているわけでございます。
  283. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 郵政大臣伺いますけれども、郵政省では名寄せを完全にやっておりますか。
  284. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) 名寄せはもう徹底的にやっておりまして、その証拠に三百九十億といういわゆる解約を窓口を通じて実行いたしておる次第であります。
  285. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 郵政大臣、本当にそうですか。
  286. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) 本当にそうでございます。
  287. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これはこの間新聞に出ておりました二件でもどうも名寄せは行われていない。私のこの前のこの委員会における質問の対象者についても、私は名寄せが行われたという事実は一向に承知していないんですが、どういうシステムでやっておりますか、名寄せを。具体的にどういうふうな手順、手だてを講じてやっているのか。恐らくまだ郵便局は率直に言って、オンライン——電算機が完全に入っていないと思うのですが、どういうふうにしてやっておりますか。
  288. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) 御指摘どおりに、郵便局の窓口ではかなり困難な面がございますので、地方貯金局で徹底した名寄せをやりまして、先ほどお答えいたしましたとおりに、事実三百九十億の解約の実績を持っていることでひとつ信じていただきたいと存じます。
  289. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 事、税金の公平、不公平でありますから、信ずるとか信じないとかという私は問題じゃないと思う。具体的にどういう手だてでそれをやっているのか、こういうことであります。  銀行の方はやっていると言うのですが、あなたは非常にぴしっとやっていると言うのですが、どういうふうにしてやっておりますか。
  290. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) お答えいたします。  銀行の場合の少額貯蓄非課税制度の取り扱いでございますが、まずその申し込みをいたしますときに非課税貯蓄申告書を提出いたします。これは税務署長あてに提出する文書でございまして、これに住所氏名、印鑑をもらうわけでございますが、この場合に、あらかじめ本人であることが従来の取引からわかっているものは別でございますけれども、新規の来客の場合には、いろいろな運転免許証あるいは場合によっては米穀通帳あるいは保険証あるいは国その他から受け取った郵便物、そのようなものをもとにして本人を確認をするということになっております。それから、これは二重チェックになっておりまして、さらにその貯蓄を受け取りました後において、満期までの期間において、その御本人あてに銀行の方から郵便物を出しまして、それがもし架空名義等であれば当然返戻されてくるわけでございますので、そのような場合にはこれは非課税扱いから外すと、このような扱いをやることになっております。
  291. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうもいずれも言葉とやっていることとは全然違うようであります。  そこで、委員長にひとつお願いをしたいと思いますが、銀行局が昭和四十五年五月、「利子課税制度の改正」という、こういうものを出されておるわけです。これをひとつ予算委員会の席上に資料として御提出願うように委員長からお取り計らいをいただきます。
  292. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それは銀行局長、出せるか出せないかを簡単に答弁してください。
  293. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 御指摘の資料は事務取り扱いの円滑化を図りますための内部資料でございまして、表現その他も練れておりませんし、内部の事務の取り扱いの規定でございますので、これを提出することはお許し願いたいと思います。
  294. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) こう言っておりますが……。
  295. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私どもは、この中に、いまの利子所得の問題について不公正な取り扱いがされ、その結果、今日のように利子所得が不公正だと言われているものがこの中にあるだろう、こういうふうに思いますから、ひとつ提出をお願いします。
  296. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ちょっとここで理事会にお諮りいたします。——それでは、銀行局の昭和四十五年五月の「利子課税制度の改正」という分厚い冊子がございますが、その一部につきまして、竹田君はそのコピーを銀行局長に確認をしていただきたいと思います。徳田銀行局長いかがですか。
  297. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) この書類は銀行局で作成した資料に間違いないことを確認いたします。
  298. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 この資料の中に、昭和四十五年六月の六日、国税庁長官と銀行局長の覚書がございますけれども、このときに福田総理は一体大蔵大臣であったんですか、どうですか。
  299. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 多分そのようなことであったと思います。
  300. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしますと、福田総理はこの覚書を御存じですね。
  301. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) さあ、定かな記憶はございません。
  302. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それではひとつ、その覚書が銀行局と国税庁長官との間の正当な覚書であるかどうか、銀行局長ひとつ読んでください。
  303. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) それでは、いま確認させていただきました資料を読み上げます。覚書でございます。  四十五年六月六日、国税庁長官と銀行局長名でございます。   利子所得に対する総合課税制度および源泉選択制度の導入にあたり、その運用については、預金者心理を充分に考慮するとともに、関係機関の負担をできるだけ軽減するよう配意して、その円滑なる実施を図るため、下記事項を了解する。        記  1 金融機関は、税法上、預金者等の住所氏名について調査確認する義務はない。したがって、源泉選択申告書および税務署に提出した支払調書について、預金者自身が申し出た住所、氏名が虚偽のものであることが明らかになつても、これについて金融機関が責任を追求されることはない。   (注) 架空名義預金については、銀行行政を通じ、さらにその是正に努めるものとする。  2 支払調書に関して税務署が調査を行なうのは利子所得の総合のためであつて元本の追求のためには行なわないこととする。   (注) ただし、昭和26年10月16日付国税庁長官通達「直所1—116金融機関の預貯金等の調査について」による場合についてはこの限りでない。以下、第3項及び第6項において同様である。
  304. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 「117」だろう、いま「116」と言ったのは。
  305. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) これはミスプリントでございます。「116」でございます。
  306. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 こっちがミスプリントか。
  307. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 失礼しました。「117」でございます。
  308. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 違うじゃないですか。
  309. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君)  3 金融機関から税務当局に提出された支払調書について、本人が不実在であるため、税の追徴を行なう場合において、徴収ずみの源泉徴収税額と源泉選択税率による源泉徴収税額との差額を追徴すれば、金融機関はそれ以上の責任を追求されることはない。  4 金融機関から税務当局に提出された支払調書について、税務署から金融機関に対し、本人が不実在である旨の通知があった場合において、当該預金者にかかる預金の残高がなくなっているときは、金融機関は、徴収ずみの源泉徴収税額と源泉選択税率による源泉徴収税額との差額の追徴を行なわなくてよいものとする。  5 源泉選択申告書は金融機関が保管するものとする。  6 源泉選択された利子については、源泉選択課税が行なわれれば、当該利子の課税関係はすべて終るものである。それ以上、税務当局による当該利子および元本に対する調査追求は行なわない。  7 金融機関が税務当局に提出した支払調書に関し、本人が不実在で税の追徴が行なわれる場合において、税務当局は、金融機関に対し、できるだけすみやかに通知するものとする。  8 無記名預金については、源泉選択申告書を徴することとするが、無記名預金についての申告書は、取引印鑑の捺印をもつて足りることとする。ただし、将来無記名預金に著しい増加が認められたときには、無記名預金のこの取扱いについて再検討するものとする。  以上でございます。
  310. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 この覚書は現在も有効でありますか、どうですか。
  311. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) この覚書は、昭和四十五年に税制改正が行われまして利子所得に対する課税制度が変わりましたときに、支払い調書その他を提出する必要が起きてまいったわけでございまして、その事務を円滑化するために覚書が出たわけでございますけれども、その後、支払い調書の提出が円滑に行われておりますし、またこの覚書の存在自体が法令以外に何らかの了解事項があるのではないかと、このように誤解されるおそれもございましたので、五十年十二月にこの覚書は廃止してございます。
  312. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 覚書はなくなったけれども、やっていることは同じことをやっているということになりませんか。
  313. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 御指摘の覚書は、先ほど銀行局長が申し上げましたとおり、四十五年度税制改正の際にできたわけでございますが、その後、また御説明申しましたように五十年十二月にその覚書を廃止いたしております。その理由は、先ほど銀行局長が申し述べたとおりでございますが、そこでこの覚書後どのようにしているかという問題でございますけれども、私どもは、この覚書につきましては、その後も引き続き同じ体制で処理をいたしております。
  314. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうすると、先ほどの銀行局長の話は、いろいろな米穀通帳や身分証明書や、あるいははがきでそれをやっているということはおかしいじゃないですか。この第一項に「金融機関は、税法上、預金者等の住所氏名について調査確認する義務はない。」と書いてある。
  315. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) お答えいたします。  この覚書の第一に載っております原則として確認義務がないと申しますのは、これは一般の預金の受け入れでございます。これに対しまして、少額貯蓄の非課税制度につきましては非課税という特典を与えるわけでございますので、これを受け入れるに際しては確認義務があるわけでございます。
  316. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 確認義務があると言っても、それは義務を課していないと、こういうふうに書いてある。おかしいじゃない。ただ銀行の善意でやっている程度のもので、義務はないと書いてある。
  317. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 私もいまこれを見たのでございますが、これは源泉選択税率の話をしているわけでございます、総合にかえて。ですから、これは少額貯蓄の話をしているのでなくて、三五%やっているものの話を書いてあるわけでございますから、法律で三五%でいいと言っているわけでございますから、それはそれでいいわけでございます。
  318. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 その源泉選択は申告書を出す必要はないのでしょう。あなた間違えちゃ困るんです。非課税の少額の申告を出す用紙に、いまおっしゃられた米穀通帳とか何かを調べるとこういうようなことが書いてある。それはあなた見ていらっしゃいよ。あなたは知らないよ。
  319. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 私、これ見ますと、源泉選択税率に関する問題でございますから、少額貯蓄でもなく源泉選択も選択しない者については当然総合になるわけでございまして、それに関する限り支払い調書の問題が書いてあると、こういうふうに理解しておるわけでございます。
  320. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 法律関係につきまして補足さしていただきます。  先ほど銀行局長が御質問にお答えいたしました確認手続は、少額貯蓄の非課税制度、いわゆるマル優に関連してお答えいたしまして、少額貯蓄非課税制度につきましては、規定は所得税法にございまして、その確認手続は所得税法施行令で金融機関に対して本人の確認義務を課しております。したがいまして、先ほど申し上げたような二重チェックで厳重なチェックをするように私どもの方も指導をし、金融機関もそれを守ってくれておる。  先ほど来の二番目に問題になりました覚書、現在はないのでございますが、覚書で事務手続を国税庁と銀行局が取り決めておりますのは、いわゆるマル優の問題でございませんで、一般の預金で、それらの源泉選択分もそれから源泉徴収を受けて申告をする分も両方に共通の問題でございますが、マル優は別と、そういう法律関係になっております。したがいまして、その分につきましては確認義務は法律的にはございません。
  321. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それでは伺いますけれども、少額貯蓄の非課税申告書は銀行からどこまで出されるのですか。税務署長あてには出しておりますけれども、税務署長から先はどうなっていますか。
  322. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) お答えを申し上げます。  源泉選択申告書は、法律、これは租税特別措置法の第三条第四項に規定がございますが、利子の支払いの取扱者が受け取りましたときには、その申告書は税務署長に提出されたものとみなされます。このため金融機関において税務署にかわってその申告書を保管しております。
  323. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 よく聞いていなければだめだよ。
  324. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) よく聞いておいてください。
  325. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 少額非課税の申告書は税務署長あてに出すんでしょう。
  326. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) いま聞きましたか。聞いておいてください。
  327. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) いま次長が申し上げましたのは源泉選択の申告書でございまして、非課税貯蓄申告書は税務署長あてでございますし、これは税務署に参ることになっております。
  328. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 その先はどこで集めているかというのです。
  329. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) お答え申し上げます。  住所地の税務署長で集めております。
  330. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そんなことはさっき聞いたんじゃないの。それから先をどうすると聞いているんじゃないの。
  331. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) お答えいたします。  住所地に集めましたものは住所地の税務署において名寄せをいたします。
  332. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 じゃ税務署が違えばどうなるんです。
  333. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 住所地の税務署に送付をされます。
  334. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それを完璧におやりになったことがありますか。
  335. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) そのように実施をしております。
  336. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これは全く実際を知らない答弁でありますから、私はそれは聞けないですよ。これは税務署で集まって、それ以上は行かないのですよ。税務署が違えばもう名寄せはできないんですよ。どうなんですか、これは。
  337. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) お答えいたします。  住所地の税務署に行きまして、そこで名寄せをいたしますので、事柄はそれで終わると思います。
  338. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それが、すべての預金が——それでは住所氏名の住所というのは一カ所ですか。恐らくあっちこっちの銀行にやっている、あるいは事務所の住所にしている、こういうことは大いにあり得るわけですよ。そういうところに脱税の問題があると私は言っているわけです。だから税務署が違えばこれはどうにもしようがないのですよ。
  339. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) さっきからずっと聞いておったんでございますが、少額貯蓄のときに住所氏名を確認するということでございます。そこさえうまくいけば、それは住所地は納税地でございますから一カ所しかないはずでございます。ですから一カ所の税務署に全部集まるはずでございます。
  340. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 だから私は、それ以上それを銀行なり証券会社がぴしっとやっているかというとやってないのですよ。やっていると言うならやっている証拠を見せてください。
  341. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) お答えいたします。  金融機関につきましては、いま申し上げました申告書の徴求とそれからそれの住所地への送付というのは、これは確実にやっております。
  342. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 この第七項目にありますけれども、「金融機関が税務当局に提出した支払調書に関し、本人が不実在で税の追徴が行なわれる場合において、税務当局は、金融機関に対し、できるだけすみやかに通知するもの」と書いてある。こういうふうにあるんですが、国税庁次長に聞きますけれども、国税庁はこういう通知を何通、金額はどれに相当するだけ出したか、その資料を出してください。
  343. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) お答えいたします。  先ほど来議論がどうも行き違っておりますのは、マル優制度のものと源泉選択申告書のものとがあいまいといいますか、御質問と私どもの答弁とがどうも行き違っているようなことでございますが、先ほどお話しのように、金融機関が税務当局に提出をいたしました支払い調書、これが覚書に書いてある部分でございますけれども、そのお尋ねの件につきましては、特に全国的なケースを取りまとめてはおりませんけれども、一昨年、一部の税務署、約二十七署でございますが、その実績を見ましたところでは、税務署で確認の対象といたしました支払い調書は三十一万二千六百九十七枚で、そのうち追徴いたしました分は四千六百四十九枚で、したがいまして一・五%となっております。追徴いたしました税額は千七百七十七万円、追徴した支払い調書一枚当たり約四千円、こういうふうになっております。
  344. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これはおたくはあれじゃないですか、どこかの一部をやってそれを推計した数字じゃないですか。
  345. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) お答えいたします。  先ほど冒頭に申しましたように、全国的な計数は取りまとめておりませんで、一昨年一部の税務署の実績を徴して調べたわけであります。
  346. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それじゃたまたま調査したところはそれにひっかかるけれども、調査しないところはひっかからないのじゃないですか。
  347. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 先ほど来答弁を申し上げておりますように全国的な計数はとっておりません。一部の税務署でございますので、場合によってはお尋ねのような問題がないとは申せませんが、しかしながら、私どもは大体こういうような数字であったというふうに考えております。
  348. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 少しの税務署をやっただけでこれだけ出ているんですよ。全体の数あるいは年が違うということになれば当然これは多くなるのじゃないですか。どうですか大蔵大臣
  349. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 私も税務を長くやっておりましたが、同じような仕事をみんなやっているわけでございます。したがいまして、いまのサンプル調査に出た実績は、全税務署について大体同じようなことをやっていると私は推定していいと思うのでございます。
  350. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そうしますと、これは大変な不実在記載があるということじゃないですか。
  351. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) そのために源泉選択税率を適用し、そして適用しないものについては総合しているわけでございますから、結果的に源泉選択は源泉選択で取られておる。そうでない人で、総合漏れの人は総合漏れの人で取られておると、こういうことだと思います。
  352. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 先ほど東京都の例を私は申し上げたわけです。東京都が考えている点で見ると、非課税によるこれが非常に多いということを指摘しているわけですよ。だからあなたの言っているのは私はよくわからぬです、何を言っているのかさっぱり。だから私はそこを問題にしているわけですよ。非課税の申告書にいたしましても、完全にもしそれをやられているならば、後なぜ金融機関が本人に、そこへお礼の手紙を出さなければいかぬのですか。それによってなぜ調べなくちゃいかぬのですか。正確にやられていたならば、少額非課税のあの申告書のところに書いてあるでしょう、何であるか何であるかと書いてあるでしょう。それにマルをつければいいじゃないですか。後で手紙を出して確認をする必要はないじゃないですか。なぜそういう二重手間をやっているのですか。いま銀行はもうからないと言っているのに。
  353. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 問題が非課税貯蓄申告書の場合と支払い調書の場合と二つあるようでございますが、非課税貯蓄申告書の場合には、先ほど申し上げましたように一応確認をしているわけでございますけれども、ただ何分にも多忙な窓口でございますので、そのようなことで万一漏れ等もあった場合に備えましてそういうようにダブルチェックシステムを採用しているわけでございます。
  354. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 この覚書の一番最初に書いてあるでしょう。「預金者心理を充分に考慮するとともに、」、これは一体どういうことですか。考慮してそういうことはやめて、なるべく皆さんに貯金をしてください、余りやかましいことは言わぬと、こういうことでしょう、内容は。だからいろいろな手続をずっと外しているわけでしょう。源泉選択にいたしましてもそうですよ。支払い調書あるいは源泉選択のこの申告というのは税務署へ行ってないでしょう。銀行どまりでしょう。そして支払った利子課税の総額が税務署へ行くだけでしょう、源泉選択の場合だと。そして、元本の追求は行わないと書いてあるじゃないですか。そうすれば、ここに金融資産を隠しておけば税務署から来ない限りはわからぬじゃないですか。いま二千万円以上の所得のある人は資産の公開をしなくちゃならぬ、申告をしなくちゃならぬと言うのですが、こうやっておけば何もわかりゃしないじゃないですか。どうですか。
  355. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) そこに書いてあることは限定的に書いてあるわけでございまして、少額貯蓄の話はいまちょっと外しますが、源泉選択の方の問題は三五でいいはずでございますから、だからその利子所得に対する課税はそれで終わりでございます。それから源泉選択をしない、しかも少額貯蓄非課税でもない、この人たちは当然総合を受けなければならぬわけでございますから、それは住所地の税務署に回せますと、こういうことで現行の税法は完結するわけでございます。元本の追求をしないという意味は、金融機関、銀行に行って一体だれがどれだけ預けておるかと、そこから疑いを持って調査を始めるという調査方法はいたしませんと。これは預金というものは当然個人の秘密に属するわけでございますから、そういうことはいたしませんで、実際問題として、会社にいたしましても個人にいたしましても、それぞれ帳簿をもとにいたしまして調査をいたすわけでございます。そこで、もし調査上疑いがあれば、これはこの通達とは別になりまして、その場合は金融機関に行ってよく調べますと。その場合、もし売り上げ漏れがあるとか架空仕入れがあるということになれば、当然のことでございますけれども、それは元本がそこに残っておるわけでございますから、当然法人税なり所得税の追求は行われるわけでございます。ここに書いてありますのは利子所得について必要なことだけが書いてあるわけでございますので、その点御理解いただきたいと思います。
  356. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 しかし、このときの改正は総合課税の方向に進もうという、そういう趣旨でこの改正が行われたはずです。だから、ほかにもこの文書の中に、総合課税を進めていくためにこういうことをするんだと書いてあるんです。これでは総合課税はだんだんできなくなるのじゃないですか。むしろ金持ちは金が多ければ多いほどこの分離選択、これを選ぶわけですね。いまなるほど三五%ですね。そういう人のたとえば所得税に対する税率というのは恐らく四二%、あるいはもっと上でしょう。そうすればなるべく総合課税をしないように、金持ちの税金をなるべく安くするように、こういうふうにしかこれならないじゃないですか。
  357. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) その点は私が冒頭に述べたところでございまして、総合課税に向かっていま検討を進めているわけでございます。しかし、それには非常にむずかしい技術的な問題がございますので、現行の三五%というのは、それにかわるものとして法律上容認されているものでございます。おっしゃるように総合課税が理想的であることには間違いございません。そういう意味で現行制度が五十五年まで続きますので、五十六年あたりを目途にして何とか実効が上がるように、総合課税の実が上がるようにいま検討を進めていると申し上げているわけでございます。
  358. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 また第四項、差額の追徴は行わなくともよい、こう書いてありますね。普通だったら、当然われわれが納めるべきものを納めないという場合には追徴が来たり付加加算税が来たり、あるいは延滞料が来たり大変なものになりますね。この場合には、しかし後行わなくていいと書いてあるわけです。差額の追徴は行わなくてよいと。これじゃ脱税者を、不適正な運営をした者を、むしろ助けることになるじゃないですか。
  359. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 銀行は納税義務者ではないのでございます。徴収義務者でございます。したがって、その徴収すべき源泉である所得がなくなれば、これは追徴してみようがないことは当然でございます。その分は本人に行くよりしようがないのでございます。
  360. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 だからこそ一番初めの一項に、住所の確認の責任は免除してある。本来ならば銀行なり証券会社は住所氏名を確認しなくちゃいかぬわけです。それを免除しているというこういう税制をやっているから、ここを金持ちが利用をしている、取らるべき税金が取られないでいる、こういうことになるんじゃないですか。
  361. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) そこのところは源泉選択税率に関して言っているわけでございます。
  362. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 源泉でもそうです。同じですよ。
  363. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 源泉徴収もまたいま現行二〇%取っているわけでございますから、当然源泉徴収は住所とは関係なしに源泉において取られるわけでございます。
  364. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これは源泉だけじゃないんですよ。分離選択についても同じなんですよ。だからこそあれじゃないですか、その選択の場合に住所氏名の申告書をはっきり出さなくてもいいということになっているんじゃないでしょうか、どうなんでしょう。
  365. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) お答えいたします。  いわゆるマル優制度ですとか特別マル優制度と異なりまして、金融機関は税法上預金者等の住所氏名については調査確認する義務はございません。そのことに関してこの覚書の一項は言っておるものでございます。しかしながら、なお預金者が架空名義を使ったような場合に、これに仮に金融機関にも責任があり、そういう場合には、私どもは罰則に触れるようなことがあれば厳正に対処することにしておりますが、先ほど申しましたように、あくまでも金融機関は税制上はマル優制度とか特別マル優制度とは違いまして、一般の預金について、その預金者等の住所氏名について調査確認する義務はない、このように考えております。
  366. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 いずれにしても、この点はそこに金融資産を隠すことができる。そのかわり相続税のときだとか子供たちが家でも建てたときは大変で、そこがぎゅうぎゅういじめられて、そしておまえまだうそをついているんじゃないかという形でやられているわけです。  局長、いまの本の二百四十五ページ「銀行局長および国税庁長官の利子課税に関する覚書きの金融機関に対する伝達」の四項を読んでください。
  367. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) いま確認させていただきました資料の3と4でございますか。
  368. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 4です。
  369. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 4を読み上げます。   国税庁は、覚書きのうち、公表される事務取扱いにおいて明らかにされない諸項目についても、本年中の適当な時期に秘密通達を発してその趣旨の税務執行面における徹底を図る。  こうなっています。
  370. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 国税庁はそのときに秘密通達を出されたと思いますが、それをひとつ出してください。
  371. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) お答えいたします。  覚書の制定廃止に関しまして、税務署への周知のために、秘密通達はもちろん一般の通達も出しておりません。  なお、覚書の内容は、特に文書にしなければ税務署の取り扱いに支障を来すというものでもございませんので、会議等を通じて税務署を指導しております。
  372. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 銀行局長、これはどういうことでこういうものをお書きになったんですか。
  373. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) この書類は口頭で伝達した趣旨の内容でございまして、必ずしも両者の意見が完全に合致した覚書とは違いますので、そのような点があるかと存じます。
  374. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これはまだこれだけじゃ終わりませんから、これからまた私は大蔵委員会でさらに細かくこれをやっていきますけれども、いずれにしてもはっきりしない。まずこれを廃棄した理由は、覚書は実際そのとおりやっているんだと国税庁の次長は言っている。しかし、これを廃棄した。なぜこれを廃棄しなければならない理由があったんですか。
  375. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) この覚書につきましては、先ほども御説明申し上げましたように、初めて支払い調書を提出するという新しい制度の創立がございましたものですから、それに伴いまして行政官庁の事務の運営化を図る意味で覚書をつくったわけでございまして、その後事務は非常に円滑に行われておりますし、先ほど申し上げましたように、その覚書があることが、何か法令以外の特別な了解事項でもあるように誤解されるおそれもありましたので、これを廃止したわけでございます。
  376. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 そのとおりやっているなら、覚書だけは生かしでおけばいいじゃないですか。
  377. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 先ほど申し上げましたように、この覚書というようなものがあるということ自体について、いろいろ憶測が出るようなおそれもございましたので、これを廃止したわけでございます。
  378. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 時間がありませんから、一応締めくくろうと思いますけれども、とにかくこれだけの疑問があるわけだ。しかもこれをずっと読んでみますと、銀行関係の手数がかかるという、だから何とかしてください、これは国税局もかなりそれには抵抗している図というものがずっとあるわけです。しかし最後にはこのとおりの覚書に抑え込んでしまったというふうにしか私は読めないわけでありますけれども、これは大蔵大臣、これからの税金をもし増税をするというならば、この問題もはっきり解決する、その他法人税の問題もはっきり解決をしない限り、私ども増税に応ずるというわけには、これはなかなかいかないと思うのですよ。私が応じても国民全体が素直に応じない、こういうことに私はなると思うのですよ。ですから、もう一度これは総理からも不公正税制全般について、いつから見直して検討し直すか、そういう計画を組まなければ私はいけないと思いますけれども、それについて御答弁いただきたいと思います。
  379. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 時間が参りました。
  380. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) これから国民の方々に一般的負担増を求めなければならない情勢が近づいておりますので、不公平税制は従来ともわれわれ極力是正してまいっているつもりでございますが、いま委員からお話しになったいろいろの点も踏まえまして、今後とも不公平税制の是正に力を尽くしてまいりたい、かように思っているところでございます。
  381. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま大蔵大臣からお答え申し上げたとおりでございますが、昨年のいまごろ五十二年度予算修正の与野党交渉、そこでも五十三年度においては不公正税制の是正、これを実現するというようないきさつになっておることはよく承知しております。そういう各党の皆さんの御意向を踏まえまして、今後とも鋭意不公平税制の是正には努力したい、このように考えます。
  382. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) なお、先ほどの防衛庁の答弁を求めます。
  383. 間淵直三

    政府委員間淵直三君) マクダネルダグラス社の二百五十万ドルのコミッションの支払いの件でございますが、一九七五年十二月三十一日付のマクダネルダグラス社の一般株主及び取引先などへ配付いたしました年次報告書があるわけでございますが、その中に、一九七五年の九月、マクダネルダグラス社が要請して、同社の海外におけるコミッションの支払いの調査を行った法律事務所が、一九七五年六月までの五年六カ月の間に、民間機の売り込みに関してほんの一部のコミッションが外国政府役人に支払われた可能性があるという報告をその法律事務所からマクダネルダグラス社が受けまして、マクダネルダグラス社は速やかにその内容を証券取引委員会報告して、この期間に証券取引委員会が捜査を始めたものでございます。この報告書の中には、マクダネルダグラス社としてはこれは米国の法律に違反したものではないと考えている云々と、いろいろ書いてあるわけでございますが、この事実をつい最近、マクダネルダグラス社が証券取引委員会に証券登録を行う際にこの声明を出しまして、ダグラス社が二年以上前に一般に公開して、しかも捜査の対象となっておる、その捜査の現状というものを報告したものと、こう聞いておる次第でございます。当庁といたしましては、ダグラス社に関しましては誓約書をとり、その不正がなかった、F15に関しましてはこういうような事実はなかったということを確認しております次第でございます。
  384. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) F15の選定につきましては疑惑がないと私は確信をいたしておるわけでありまして、先ほど来装備局長からお話がありましたように、わが方については全然そういう疑惑はないと私は責任を持って確信をいたしておるわけであります。
  385. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で竹田君の総括質疑は終了いたしました。(拍手)     —————————————
  386. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、渡辺武君の総括質疑を行います。渡辺君。
  387. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、まず最初に学園の暴力問題について伺いたいと思います。  いま、全国各地の大学で、一部暴力集団による暴行事件がいまだに後を絶たずに続いております。私どもは、民主主義と学問の自由、大学の自治を守るという立場から、昭和三十四年以来、国会でもこの問題を繰り返し取り上げて政府に対策を迫ってまいりました。しかも、最近では、例のテルアビブ事件など、国際的なテロ行為あるいはまたハイジャック、こういうものとこうした暴力学生集団とのつながりも明らかになってきているわけであります。  まず、文部省の方に、全国の学園暴力の実態について、昨年の四月から現在に至るまで、不法占拠、それから暴力事件、それから受験や試験の妨害などの合計ですね、合計でいいですから、報告いただきたいと思います。
  388. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) お答えいたします。  現在、各大学は、全般的に申しますと、おおむね平穏な状態にございますけれども、一部の大学におきまして施設の占拠等の不正常あるいは不当な事態が見られます。現在大学の施設が占拠されておりますところは、国立では、東京大学及び京都大学の二校でございます。このほかに、熊本大学におきまして熊本大学生活協同組合に対します施設の明け渡し問題があると承知をいたしております。また、私立では、駒沢大学におきまして施設の占拠を一部されております報告を受けております。  なお、これらのほかに、幾つかの大学におきまして自治会室、サークル室、寮などにおきまして大学の管理の及ばない不正常な使用の状態が見られます。国立におきましては十一大学二十一カ所になっております。  また、昨年の四月一日以降、授業妨害は四大学四十五件、試験妨害は四大学十四件発生いたしておりまして、学内におきます学生による暴力事件は、大学当局が把握をいたしておりますものとしては、昨年の四月一日以降、国立大学におきまして十四大学三十六件、私立大学におきまして四大学七件発生をいたしております。
  389. 渡辺武

    ○渡辺武君 私ども、昨年末に全国にわたって独自に調査をいたしました。件数はいま伺ったものよりももっと多いのです。不法占拠三十七大学三十九館百十五室計百五十四カ所、暴力事件四十九大学三百九十七件、こういうことになっております。  数字で申しますと余りはっきりおわかりいただけないのですが、最近の事件だけちょっと申してみますと、十二月一日には中央大学の学期末試験の最中に暴力集団六十名が乱入して、答案用紙を燃やして、一人の学生は顔をなぐられる、五人が負傷するというような事件も起こっております。ことしの一月十七日には法政大学で約三十名が試験場に乱入する、そうして爆竹とかあるいはまたペンキとかバルサンとかこういうもので後期試験を妨害するということが相次いでいるわけです。  いま大学へ入学するには大変な苦労をして入学されるわけですけれども、せっかく入った大学でこういう状態ということでは、学生も父兄もとうていこれは安心できないと思うのですね。私はこういう状態が依然として直っていないというのは政府の重大な責任だと思うのです。文部大臣、どう考えていらっしゃるか、伺いたい。
  390. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 今日の民主社会におきまして、理由のいかんを問わず、暴力行為が絶対に容認されるべきでないことは、もう議論の余地はございません。まして、学問の府たる大学におきまして、学問研究と教育の場にふさわしい静穏かつ自由な環境、これが確保されることが必須の条件でございます。文部省といたしましては、学園の暴力排除につきましては、かねてから、大学の施設が暴力行為の拠点となりましたり、兵たん基地化したり、あるいは学内に危険物を準備隠匿されることのないよう、学内の秩序維持に対します大学の責務を明確にその重大性を指摘をいたしまして、しばしば大学当局が全教職員を挙げて全大学態勢でその責任を全うするよう指導を続けてまいったところでございます。また、刑事上の事件につきましては、警察当局と直ちに緊密な連絡をとって学内秩序を維持するための適切な指導を講ずる等、大学当局に対しまして指導を続け、努めてまいったところでございます。今後とも、学生指導の徹底及び学内施設の管理の適正につきましてさらに指導を強めて、学園の秩序維持に大学当局と文部省一体になって努力を続けてまいる決意でございます。
  391. 渡辺武

    ○渡辺武君 総理大臣に伺うのですが、昨年の十一月の二十二日の参議院の法務委員会で、わが党議員の質問に対して、総理大臣は、学内での暴力事件とハイジャック事件とは深いかかわり合いがあるというふうにおっしゃっておられるけれども、この見解はいまもお変わりないか、また今後どうなさるおつもりか、これも伺いたい。
  392. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 学園を、私は、大学騒動が終局した後、ずっとわりあいに静かな状態だと、こういうふうに思っておったんです。ところが、最近東大の医学部の一角が不法に占拠されていると、こういう話を聞く。それからそういうことが発端でほかにこういう事例があるかと、こういうことを聞いてみますと、京都で京都大学であると、こう言うんです。そこで、文部大臣に対しまして、この事態は放置することは許されない、早急に事態を解決しなけりゃならぬだろうと、こういうことを申し上げ、そしていま文部大臣はその工作に乗り出しておると、こういう段階でございます。  それで、私は、海外で起きるようなハイジャックでありますとか極左暴力事件、ああいうものと大学の暴力事件は根っこがつながっておる問題じゃないか、そのように考えるのであります。戦後のこれは非常にゆがんだ風潮かと思うのでありまするが、自分の主張は、自分が正しいと思えばこれは他人の立場なんかは考えないで暴力をもって押し通すと、こういうような風潮が出てきて、それが民主主義だと、こういうような履き違えをしておると、こういう流れがいまの日本社会の一部にあるんじゃないかと、そのように私は思うのです。それが学園騒動となって、あるいは極左暴力事件となってあらわれてくると、こういうことじゃないか、そのように思いまして、文部大臣が局所的な処置、これはやっていきまするけれども、そういう社会風潮の是正、これも政治の大きな課題であると、かように考えております。
  393. 渡辺武

    ○渡辺武君 いま総理大臣のおっしゃった京都大学のことは、衆議院の方でわが党の不破議員がやりましたので、私はいま言われた東京大学の問題について若干伺いたいと思うのです。  東京大学の精神神経科の病棟がもうすでに八年にわたって暴力集団に占拠されているということでありますが、その概要を報告していただきたい。
  394. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 御報告をいたします。  東京大学医学部精神科病棟は、昭和四十四年の九月以降、医局講座制解体等を主張いたします東大精神科医師連合——精医連と呼ばれておりますが、これに占拠をされて今日に至っております。現在も病棟を占拠いたしております集団は精医連と称しておりまして、講師一名のほかは医学部の常勤医師が参加をしておりません。同大学職員以外の者が約三十名出入りをいたしまして診療を行っているという大学当局からの報告を受けております。  なお、同病院のベッド数は四十三床、現在十六人の入院患者が在院をいたしておりまして、病院側では、入院患者が入っているという実態から、この入院患者についての最低限度の診療を確保しなければということから、看護婦五名を配置をいたしております。  これが今日の東大精神科病棟の占拠をされております実態でございます。
  395. 渡辺武

    ○渡辺武君 学外者が主で、三十人もの暴徒が占拠していると。そうしますと、東大に病気を治してもらいたいと思って行かれた患者さんはどうなりますか。
  396. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 外来側と病棟側の診療報酬に対する意見の対立から事が四十二年にスタートいたしております。それが今日まで続いておるものでございますから、その病棟の現状からいたしまして、外来診療によって入院を要すると外来の医師の判断をいたしました患者につきましては、同病棟へ入院させることができません。そういう状態にございます。  なお、外来診療によって入院を要すると医師が判断をいたしました患者につきましては、東大分院、それから鶴ヶ岡病院など、都内及び近郊の民間九病院に入院をさせております実情でございます。
  397. 渡辺武

    ○渡辺武君 患者さんが東大に頼って行って東大の病院へ入れないというようなばかな話はないですよ。お医者さんや看護婦さんですね、これは入れるんですか。
  398. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 外来側の医師、看護婦等はいまのところまだ入れません。
  399. 渡辺武

    ○渡辺武君 学生の臨床実習はできるんですか、そこで。
  400. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 病棟におきます医学部学生の実習は、したがって、そういう環境下にありますので行われておりません。このために、外来実習は精神神経科の外来で他の診療科と同様に実施をいたしておりまして、病棟実習につきましては、医学部の附属病院分院及び関東逓信病院の精神科で行っております。また、医学部の附属看護学校生徒の精神科の実習につきましては、精神神経科外来及び国立武蔵療養所精神科病棟で実習を行っております。
  401. 渡辺武

    ○渡辺武君 卒業すれば人の命を預らなきゃならないお医者さんですね。これの卵ですよ。それが自分のところの病棟で実習もできないんだなんてばかな話はないですよ、実際のところ。  六日の日に文部大臣はこの問題で東大総長に会われたそうですけれども、その話し合いの内容などをお聞かせいただきたい。
  402. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 去る六日に向坊東大学長を文部省に招致をいたしまして私から東大精神神経科病棟について医学部長に話をいたしましたことは、「昨年の春以来医学部当局によって行われております真剣な努力は、病棟管理の正常化に向かって歩を進めているその実態は評価はいたします。しかしながら、いかに困難な問題でありましても、八年有余にわたっていまなお解決されていないということは、これは絶対に国民の納得を得られることではありませんよ。国民の税金をもって建設された国有財産がその目的どおりに利用されていない、これは絶対に国民に理解されることではありません。これまでの経緯もあって事態の解決は容易ではないことはわかりますけれども、もう事態の解決の遷延は許されることではありません。さらに毅然たる姿勢のもとに正常化の方向を確認しつつ全学態勢をとってこれの解決に導くようなお一層の努力を尽くしていただきたい。文部省といたしましては、東大による自主的解決のための御努力を今後とも全面的に支援をしてまいります。」と、こういうことを指導助言をし、強く要請をいたしたわけでございます。  これに対しまして、向坊東大学長は、「精神神経科病棟の現状については、国民の皆さんに対して学長として十分責任を感じております。現在、医学部当局を中心に全学的な支援態勢のもとに説得の努力を進めておりますので、三月の六日きょう現在で三月何日までという日限のお約束は明確にできませんけれども、可能な限り早い時期に解決にこぎつける全力を尽くします。」というお答えがございました。なお、私が全学的な態勢をとってと申し上げました点につきまして、「医学部長、病院長だけに任せているのではありません。学長みずからこれらのいわゆる占拠側と交渉を続けております教授と密接な連絡をとって支援態勢をとっております。」という御返事がございました。
  403. 渡辺武

    ○渡辺武君 先ほどちょっと文部大臣は、これは治療方法上の対立で、それに思想の問題も絡んできたと、こういうことを考えているんだと、大学の方が、とおっしゃいましたですね。私はそこのところがおかしいと思うんですよ。大学のことですから、意見の違いや学説上の違いがあるのは、これはどこの学科だって同じことですよ。それが一部の集団が力ずくで、ほかの教授も入れない、学生も入れないということで建物を占拠しているというところに問題があると思いますね。  それで、この間、二十八日の衆議院の決算委員会の理事懇の席で、従来の東大の学校側と暴力集団との話し合いの内容報告されたそうですけれども、どういう話し合いであったのか、その辺を伺いたい。
  404. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) いまのこの状態が起こった原因について学校当局から報告を受けましたことを意見の対立というように報告を受けておりますと申し上げたわけでございまして、私の言葉足らずでお受けとめいただいたかもしれませんが、私自身がそのことを言いわけに申しているのではございません。今日のあの状態は、まさにいかなる体制にも反対だという、いわゆる過激派集団、暴徒によるきわめて遺憾な不当な事態であると私は受けとめております。  なお、医学部長、病院長等がいわゆる占拠派と交渉を進めてまいりまして、衆議院の決算委員会に御報告いたしましたことは、占拠側が一歩譲歩をいたしまして、医学部長、病院長のあの病棟への立ち入りを認めたということだけは一歩前進をしたという報告を東大からいただいたことを決算委員会に御報告をいたしました。次回の交渉時期等を決算委員会に御報告をいたしたはずでございます。
  405. 渡辺武

    ○渡辺武君 私ども決算委員会の理事懇で聞いた説明をちょっとメモにしてもらっていただいてあるのですけれども、これを見ますと、不当な占拠を解けという話し合いじゃないんですね。しかも、暴徒の方は、もっと施設を完備しろとか、看護婦をふやせとか、占拠を前提として設備改善の要求をしているんです。こんなことを話し合いを続けて解決するはずがないと私は思いますが、この点どう思われますか。
  406. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 交渉事で対処を東大当局がしておりますから、占拠派がいろいろな要求を出してくることもまたあると思いますが、断じて妥協をしてはなりませんということを強く大学当局にも文部省からは要請をいたしておりますし、交渉の任に当たっております医学部長、病院長も、いま渡辺委員が御指摘になりましたような占拠側の要求を一片として入れている状態ではございません。
  407. 渡辺武

    ○渡辺武君 大体、その話し合いの相手というのはどういう相手なのか。私どもは一切の話し合いを否定するという意味じゃないけれども、相手が問題でしょう。昭和四十七年に看護婦さんを殴るけるの暴行を働いて病棟から追い出した。それからまた、同じ四十七年の十月には病院当局と職員組合の交渉中に精神病の患者を連れて乗り込んできて、そうして交渉は決裂させるというようなことをやってきた連中ですよね。しかも、学外者がほとんどですよ。  それで、私、警察庁に伺いたいんですけれども、新聞報道によりますと、一月四日に成田帰りの過激派学生二十数名がこの病棟に立ち寄ったということを警視庁の方でも確認しているという記事があるんですが、確認されておられますか。
  408. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 情報としてはそのようなことをつかんでおりますが、確認に至っておりません。情報としてはさようなことは昨年もございますし、今回もございました。
  409. 渡辺武

    ○渡辺武君 またこれはある新聞の記事ですけれども、暴徒の中のただ一人の東大講師、石川清という男です、これが新聞記者とのインタビューの中で連合赤軍二人が武器を持ってやってきたということも言っているんですね。ですから、これはもう話し合いの相手になるような集団でないことは私は明らかだと思うのです。文部大臣が東大総長に会われたということは、これは別に私はとやかくは申しませんよ。しかし、八年たってやっと大臣が直接総長に会って話をするというようなことが生まれたというところに私は政府側の怠慢の姿がはっきりあらわれていると思う。断固とした処置をしなきゃこの問題は私は解決しないと思うのですね。  念のために伺いますけれども、九大だとか阪大だとかこういうところが暴力学生による建物の占拠を漸次排除するという方向を出しているそうですけれども、九大、阪大などはどういうふうにしてやっておられるのか、お話しいただきたい。
  410. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) お答え申し上げます。  九州大学では、昨年の六月の評議会におきまして学生会館の改修の方針を決定いたしまして、十一月の三日以降同会館への立入禁止を大学が告示をいたしました。しかし、この会館の中に関係の部室を持っております一部の過激派の学生が改修に反対をし、立入禁止に従わなかった、そういう状況がございました。このため、十一月六日に大学当局は学内に機動隊を導入いたしまして会館内の学生を排除いたしました。その後、改修工事は順調に進んでおります。  また、大阪大学では、教養部におきまして、ことしの一月二十五日から学費値上げ反対の闘争が行われまして授業放棄が行われておりました。その際に一部の過激派の学生によって講義棟の入り口が封鎖されました。これに対し、大学当局は、学長名で授業放棄の中止と封鎖解除を求めましたけれども、これに従わなかったために、二月二十七日に教職員の手によって講義棟の封鎖を解除いたしております。現在、事態は正常に復しております。
  411. 渡辺武

    ○渡辺武君 民主的な教職員や民主的な学生諸君や、あるいはまたそのほかの大学当局側の方々の奮闘によって、こういう形で解決の方向に向かっている学校がある。私は、ここに、中央大学の学長と法学部長、経済学部長、商学部長、理工学部長、文学部長、この連名で「学生諸君へ」という訴えのビラを持っております。これは学内秩序回復のためにということで暴力行為は絶対許さないという趣旨の断固たる態度を示したビラです。これがやはり中央大学の建物占拠をだんだん解決——まだ残っておりますけれども、解決していく上で大きな力になっている。  また、私は、ここに、立命館大学の「学園から暴力をなくすための確認」という文書を持っております。これは立命館の学内の理事会、立命館大学各学部教授会、それから二部協議委員会、一部学友会、二部学友会、院生協議会、立命館教職員組合、立命館大学生活協同組合、大学を構成するほとんどの団体が連名で確認をしている。つまり、「基本的人権を蹂躙し、大学の自治と学問の自由を破壊する一切の暴力に対して、大学は毅然とした態度で対処すること。」等々の確認をしているんです。  私は総理大臣伺いたいのですけれども、こうした努力ですね、どのように評価なさるのか伺いたい。
  412. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 伺いますと、各学園においてそれぞれ努力を思いを新たにしてやっておると、こういうことで、私は、大変いい傾向だと、こういうふうに思いますが、政府といたしましては、この学園の秩序回復への動き、これを積極的に支援をする、そうしてなるべく速やかにこのような事態——本当に私はこの問題は真相を聞いてみましてびっくりしているわけですが、全く法秩序、法治国家と言えないようなそういう恥ずかしい状態だと、こういうふうに考えておりまして、何とかして一刻も早く是正し、根本的な解決を図りたい、このように考えます。
  413. 渡辺武

    ○渡辺武君 御答弁をいただいた後でくどいようですけれども、総理大臣は施政方針演説で暴力には断固たる態度で対処するということを言っておられる。先ほど申しましたように、この問題の解決は日本の民主主義の根幹にかかわるだけじゃなくて、国際的な責務にもなっているわけですね。私は、こうした暴力の根をなくすということ、これが非常に大事だと思うのですね。ですから、そういう意味で根を絶つために断固たる態度をとってほしい。もちろん大学の自治は守らなければなりません。それを前提条件としてもう一度御決意を伺いたい。
  414. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま起きておる局地の事件を事件的処理をする、これはもう当然のことでありますが、同時に、それと並行いたしまして、とにかく法は守り抜くんだという民族の通念というか、これを揺るぎないものにしなければならぬ。これが解決しませんと、これは大学の局地問題の根本的な解決にならぬと、こういうふうに思うのです。せっかく努力いたしたいと存じます。
  415. 渡辺武

    ○渡辺武君 次に、金大中事件について伺いたいと思います。  総理は、昨年の二月の二十二日とそれから十月の二十日の参議院の予算委員会で、わが党の上田、橋本両議員の質問に対して、金大中事件がKCIAによってなされたという新たな事実が明らかになれば政治決着の見直しもあり得るというふうに答弁されましたけれども、あなたはこの考えにいまもお変わりないかどうか、まず伺いたい。
  416. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 金大中事件、これがわが国の主権を侵犯したというような事実が明らかになる、こういうことになりますれば、いわゆる政治決着についてはこれを見直したいと、このように考えております。
  417. 渡辺武

    ○渡辺武君 それから捜査当局の方にも確認しておきたいのですが、犯行現場から指紋の発見された金東雲元駐日韓国大使館の一等書記官ですけれども、これが犯行容疑者の一人としていつでも逮捕状がとれるというところまで捜査が進んでいるとこれまで言っておられたけれども、この答弁も間違いありませんか。
  418. 三井脩

    政府委員(三井脩君) この事件の犯行グループの一人として金東雲当時の一等書記官をわれわれは容疑者として確認をいたしました。したがいまして、何どきでも必要な措置がとれるということでございます。
  419. 渡辺武

    ○渡辺武君 先月、わが党の正森衆議院議員とここにおられる橋本議員らの共産党の訪米調査団がアメリカへ行きまして、そうしてアメリカの下院のフレーザー委員会のベッチャー主任調査官にお目にかかったのですが、そのときに、ベッチャー氏は、金大中事件に関して、金大中事件はKCIAがやったと確信しており、もうこれ以上調査の必要はないというふうに語っております。フレーザー委員会は、八月ごろには調査を終えてその報告書をまとめることになると思います。それは金大中事件はKCIAの犯行であると断定したものになることは間違いありません。総理、アメリカ議会の調査の結果、このような公式見解が示されたときに、政府としてはどう対処されるか、伺いたい。
  420. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この問題の解明は、わが国といたしましてもまことに重大な問題でありますから、わが国自体が自体の手によってこれを調査する、こういうことです。このことはもうすでにずっと現に進行しておるんです。非常に困難な客観情勢でありまするけれども、いま警察当局が捜査本部というものをつくりまして今日いまだにこの捜査を続けておると、こういう状態であります。アメリカでいろいろな資料が出てくるということはこれはまあ一つの参考にはなりましょうが、わが国わが国としてわが国の正当な官憲による調査をしなければならぬと、このように考えます。
  421. 渡辺武

    ○渡辺武君 もう一つ確かめておきたいのですが、金炯旭という元KCIAの長官をやっておられた方がおりますけれども、この方が一九七四年の二月と四月の二度にわたって金大中事件の捜査のためにアメリカから日本に来たというふうに言っております。このころに入管記録はどうなっているか、伺いたいと思います。
  422. 吉田長雄

    政府委員吉田長雄君) お答えいたします。  入国目的は何であるかは入管局としては存じませんけれども、金炯旭氏は、一九七四年二月二十二日に羽田に入国いたしまして、同年二月二十七日羽田から出国いたしております。さらに、一九七四年四月十六日に羽田から入国いたしまして、同年の四月三十日羽田から出国いたしております。
  423. 渡辺武

    ○渡辺武君 金炯旭氏のいままで言ったこととぴったり符合しているんですね。つまり、金炯旭氏が自分から金大中事件の調査のために二度も日本に来たと言っているそういう事実が真実だということが私はこのことでも明らかになっていると思うのです。この金炯旭氏が、金在権氏ともアメリカで会って、米議会の公聴会に証人として出席して、宣誓の上で、金東雲など金大中事件の犯行グループを特定するとともに、KCIAの犯行であるということをはっきりと証言しております。それにもかかわらず、総理大臣は、金炯旭氏の証言を、いままで伝聞だと、こう言って軽視する態度をとってきました。これはきわめて私は不当だと思います。今回の共産党の調査でも、金大中事件はKCIAの犯行であること、日本にもKCIAが配置されていることは、アメリカの議会調査スタッフを初め関係者は疑いの余地のないことだと言っております。政府は、いまでも、これまで日本にKCIA部員は存在しなかったんだと、いまも存在しないというふうに断言なさるのか、これを伺いたい。
  424. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私が申し上げておりますのは、金炯旭という方は、これはほかのことならば私は別だと思いまするけれども、事金大中事件、あの問題につきましては、これは当時KCIAの地位におったわけじゃないんです。その四、五年前ですか、もうKCIA部長をやめておるそういう人でもありまするし、また、言っていることを聞いておると、金在権氏、この人がこう言っておるとか、そういうような話であります。そういうことで、私自身としては金炯旭氏の言われることにそう多くの信憑性がある、証拠力があると、こういうふうには思いません。  しかし、衆議院予算委員会、この方面では金炯旭氏を金在権氏とともに証人として呼ぼうじゃないかというような動きがありますが、そういう動きについて私が反対だとかなんとかというわけじゃありませんけれども、私が大局というか達観して見まして、金炯旭さんを呼ぶくらいなら金在権さん——金在権さんの話を金炯旭氏がしているんだから、金在権氏を呼ぶという方が効果的じゃあるまいか、こういうことを前々から申し上げておる次第でございます。
  425. 渡辺武

    ○渡辺武君 答弁漏れですよ。KCIAがいまでも日本にいないと、それからまた過去もいなかったというふうに断言できるかということです。
  426. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) その点につきましては、政府委員の方からお答えを申し上げます。
  427. 中江要介

    政府委員(中江要介君) これは先生も先刻御承知のように、金大中事件が起きました一九七三年の八月にこの問題が提起されまして、私ども韓国政府に照会いたしました。その結果として、在日韓国大使館に勤務している者はすべて外務部の指揮監督下に入って、それが他省から出向している者についても同じであるということをはっきり申してまいりました。韓国の職員の職制の規則を見ましてもそういうことになっておりますし、駐日大使館員として勤務している限りは、もとどういうところで仕事をしておりましょうともすべて外務部出身の者と同じ扱いになっている。換言いたしますと、KCIAの部員がKCIA部員として日本に存在することはない、こういうことについて確信を得ているわけでございます。
  428. 橋本敦

    橋本敦君 委員長、関連。
  429. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連質疑を許します。橋本君。
  430. 橋本敦

    橋本敦君 いまの中江局長の答弁は、全く事実にも反するし、信用することができません。韓国政府に聞いて、KCIAがやっているなんということを向こうが答える道理がないのがKCIA問題です。  実は、総理、私はこの二月十日に正森衆議院議員と一緒に訪米調査に参りまして、ニュージャージーのバーゲンというところでクリントンホテルで金炯旭氏と金大中事件、地下鉄ソウル事件に限って話をしよう、こういうことで会ってきました。そのときに、金炯旭氏は、このリストに基づいて在日韓国大使館の公使についてKCIA部員であることを彼は確認をした。総理にお見せをしますが、写真に大きくしておりますので見ていただきたい。昭和三十八年公使として赴任をした金在鉱氏、これはKCIAだ、こう言って彼はチェックの印をしております。続いて四十一年からの公使李相翊氏、これもそうです。金景沃氏、四十三年からの公使、これもそうだ。金在権に至っては、これはもうみんなもよく知っているでしょう、明白だ、こう言って彼は二重丸までつけている。これは、総理、いかがですか。一九六三年から一九六九年まで彼自身がKCIA長官であった。その彼自身の職務上の権限に基づいてこのように派遣をした事実、これはまさに伝聞どころか彼の最高責任者としての直接の証言であります。そして、彼がやめて以後の金在権を含むこの問題については、彼がまさに職務上知り得た知識という重大な直接的な証拠であります。いかがです、総理、これでも日本にKCIAが来ていないと政府はいまもって言えますか。しかも、金炯旭氏は、公使というのはKCIA部員で、同時に公使という地位にある者はその国のKCIAの責任者なんだと、こう言っておりますよ。この事実に関して、いまでも日本にはKCIA要員は韓国大使館その他に一切配置されないと断言できますか、総理自身の明確な御答弁を求めます。
  431. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが外務省におきましては、先ほど御答弁申し上げたとおりの認識でございます。私もそのような認識を持っておるわけでございます。
  432. 橋本敦

    橋本敦君 まさにこの金炯旭氏の直接的証言はその認識を変えるに値する重大な証言じゃありませんか。そういう問題意識をお持ちにならなければ、いつまでたってもKCIA問題は解決しませんよ。  さらに、金炯旭氏は私どもにこう言いました。金大中事件が起こったときに、当時あの犯人たちの大半は私自身が日本に直接派遣をしていたKCIA部員なんだ、こう言っていますよ。特に金東雲、御存じのとおり警察当局も確認したようにまさに犯罪容疑者の一人、元一等書記官——金炯旭氏はこう言いました。彼は優秀なKCIA部員だ、だから私は日本に派遣をしたんだ、自分自身が最高責任者、長官として日本に派遣したと、こう言っているんです。新聞記者という肩書きで派遣をしたが、日本で対北朝鮮スパイ工作に腕を上げたので、後にこれは大使館に昇格されたと、こう言っております。総理、いかがですか。伝聞どころか、まさに彼の職務上自分がやった行為に基づく直接的証言でしょう。もしこのとおりだとすれば、文字どおり金大中事件がわが国に対する主権侵害であるという事実を明らかにしていく上でこれはすぐ調査しなきゃならぬ問題じゃありませんか。総理、もしあなたに日本の主権を守るという本当の御決意があるならば、この金炯旭氏のいま語った証言について政府自身の手ですぐに調査をするというそういう行動をおとりになるのが私は至当だと思いますが、総理の見解を伺います。
  433. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 橋本君、時間が来ております。
  434. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国会が国政調査権に基づきまして金炯旭さんにいろいろお尋ねをする、これは国会のことでありますから、それに対してとやかく私は申し上げません。しかし、政府といたしましては、先ほどから申し上げておりまするとおり、金大中事件につきましては、金炯旭氏はもう事件のあった四、五年前に現職を去っておる人なんです。それでいろいろ話をしておる。それは新聞紙上等で私も承知しておりまするけれども、金在権氏がこう言ったとか、あの人がこう言ったとか、そういうような話が多いのであります。そういう話を聞くよりは、あの当時KCIAの事件のとき東京の公使をしておったんですか、そういう金在権氏なんかの話を聞いたら御参考になるだろうなあと、こういう所感を申し上げておる次第でございます。
  435. 橋本敦

    橋本敦君 委員長、私の質問に答えていないですよ、私の質問に答えていない。金在権から聞いた話を調べろと言っていないんですよ。長官として直接KCIAで派遣をした、この事実をはっきり言っているのになぜ調査をしないかと、こう言っているんです、政府自身が。金東雲についてですよ、金在権じゃありません。
  436. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 金東雲氏について御調査をされる、これは国会でそういう動きがあります。ありますが、それは国会でおやりになったらよかろうと、こういうふうに言っているんです。政府といたしましては、先ほどからるる申し上げておるような見解でありますのて、これに調査の手を差し伸ばすということは考えておりません。
  437. 渡辺武

    ○渡辺武君 いまの総理大臣の御答弁は絶対に満足できませんよ。それはそうでしょう、当時のKCIAの長官であった金炯旭氏自身が、金東雲はおれが命令して日本に派遣したんだと、こういうことを言っているんです。決して伝聞でも何でもない、自分のやったことをはっきりと言うたんだ。これはもう明々白々たる証拠だと言わなければならぬ。これ以上の決定的な証拠はないですよ。その金東雲は、指紋で、あのときの犯行をやったというはっきりした人物でしょう。当然、このことは、あの金大中事件はKCIAがやったんだということを証明しているじゃないですか、どうですか。政府自身が行って金炯旭氏に会って、もし疑いがあるなら事実を確かめるべきだ、こう思うのです。
  438. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 何回も申し上げて恐縮でありますが、金炯旭氏は金大中問題の起こったときはすでにその四、五年前に情報部長の職を辞しておるんですよ。そういう立場の金炯旭氏の発言、その発言も、聞いたり見たりしてみますと、私どもがこれは信憑性があるなあ、証拠性があるなあと、こういうふうには考えられないようなことが多いんですよ。そこで、そういう金炯旭氏の言葉、これを政府がさもそういうことは調査しなければならぬというような立場で調査する意図はありませんと、こういうことを申し上げておるわけです。
  439. 渡辺武

    ○渡辺武君 総理は、私どもの言っていることをわかっていてそういう答弁をされているのじゃないかと思うのですね。  もう一回申しますよ。金炯旭というのは、これはKCIAの長官だった人です。その自分が長官のときに金東雲を日本に派遣したんだということをはっきりと言明している。それはあなたは認めますか、伝聞でないことを。
  440. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私はそういう話は聞いておりませんです。
  441. 渡辺武

    ○渡辺武君 いいですか、現在のたとえば総理大臣がだれかを任命したということと同じことですよ。それを橋本議員が聞いて帰ってきているんです。もしあなたが聞いていないというんだったら、直接に金炯旭にだれか派遣して聞かすべきだと思うのです。これは日本の主権と人権にかかわる重大問題だ。軽くあしらってもらっちゃ困りますよ。調査に行きますか。
  442. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) くどいようでございますが、金炯旭氏は、あの事件の当時、もう四、五年前にやめている人なんですよ。その人の一言にそう神経質になる必要はない。金炯旭氏がいろいろしゃべっておる、そのしゃべっておることを見てみますると、人がこう言っておるとか、特に金在権氏から聞いたとか、そういうようなことが多いのでありまして、そういうところから見まして、この人の言うことには証拠力、信憑性は私どもは認めがたいと、こういうふうに考えておるわけであります。国会でも金炯旭氏にタッチしようというような動きがありまするから、それは私は別にそんなことをされる必要はないなんてそんなやぼなことは申し上げませんけれども、政府といたしましては金炯旭氏にタッチするという考え方はないと、こういうことを申し上げております。
  443. 渡辺武

    ○渡辺武君 まじめに答弁するように言ってくださいよ。すりかえ答弁では困る。すりかえ答弁だ。(「何も答えていないじゃないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  444. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは、ただいまの一件は外務省と警察庁で答弁してください。
  445. 三井脩

    政府委員(三井脩君) 金炯旭氏が先ほどお話がありましたようにアメリカの議会で宣誓をして証言をしたと、こうおっしゃいました。事実そのとおりでございます。その他にも新聞記者に話をしたりいろいろの発言がございます。ところが、その発言は大変信用しがたいとわれわれは考えております。  一つは、宣誓をして証言をしたという中で、あれは宣誓をしてわざとうそを言ったんだと本人が後で言っております。たとえば、金大中氏の拉致に使った船、あれは三十五ノットの高速船だと証言では言っております。それが例の竜金号ではないかというような質問がその後ありまして、竜金号は九ノットか十ノットがせいぜいですと、こう言いましたら、その後の記者会見で金炯旭氏は、証言で三十五ノットと言ったのはあれはわざとうそを言ったんだ、そしたら日本の警察はひっかかってきて本当のことを言ったと、そういうようなことを言っておりまして、その他、警察が尾行をしたとか盗聴をしたとか全然事実無根のことを言っておりますので、私たちは、金炯旭氏の証言は、捜査によって事案の真相を解明するように努めておりますけれども、捜査上有用ではないというように考えておる次第でございます。
  446. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 御質問の中に二つの点で私の方から御説明さしていただきたい点がございます。  一つは、金東雲の派遣の経緯から見てこれがKCIAの手先ではないかというようなたぐいの御推測でございますけれども、先ほど私が申し上げましたように、駐日韓国大使館員として派遣されます者は、これは手続上当然でございますけれども、韓国の外務部から正式の外交官として派遣されてきておるわけでございまして、その過去の経歴がどうであるかということはこれは韓国の内部の事情でございます。御指摘の金在鉉以下六名の名前については、昨年の十月二十日に橋本委員からも御照会がございまして、その中に奇妙なタイトルもありますので私どもも調査いたしましたけれども、いずれもこれは正式の名称でもなければそういう役職が存在するわけでもない。韓国では韓国中央情報部というのはこれは堂々たる一つの機関であるわけですから、韓国の中の正式の機関の人間が一時外交官として在外公館で勤務する、このこと自身は何ら不思議もないし、私どもとしてはそのように受けとめるべきである、これが第一点でございます。  もう一つま、この金東雲という人がきわめて犯罪にかかわった容疑が濃いということで調査いたしましたことは御承知のとおりでございますけれども、これは金炯旭という人が仮に二度日本に来たといたしましても、あるいは、先ほど私初めて伺いましたが、日本の国内で起きた金大中事件をアメリカが調査しているということはあり得ないことだと思いますけれども、それにいたしましても、関係のないアメリカのいろいろの御調査、あるいは、当時責任ある地位になくて一度か二度日本に来て調べたと称する金炯旭の言われる捜査結果と、わが日本の捜査当局の行いました捜査結果と、どちらをわれわれは尊重しそれなりの評価をするかということは、言うまでもなく日本政府といたしましては日本の捜査当局の行いました捜査を基準にしてすべて処理していく、これが正しい姿だと、こういう認識でございます。
  447. 渡辺武

    ○渡辺武君 そんなほかのことを言ったってだめですよ、この問題は。当人自身が、おれが金東雲をKCIAとして日本に派遣したんだと、こう言っている。それから先ほど橋本議員自身もはっきり言われましたからもう記憶されていると思いますけれども、金炯旭氏は、日本に派遣されて外務省勤務になっても、これは直接KCIAの命令に従うんだということもはっきり言っている。ですから、金炯旭の言うことが当てにならないというような趣旨のことを三井さんは言われましたけれども、橋本議員がうそをつかれて帰ってきたと言おうとでもするんですか。国会議員がはっきり確かめて、そうして確信を持ってこうした公式の場で事実を発表しているんです。総理自身、昔何と言ったですか。新たなる証拠が出てきて、そして刑事事件の方で主権侵犯というようなことが明らかになれば、その時点で政治決着について再検討すると、こうおっしゃっておられる。直接の任命者金炯旭が、金東雲はおれがKCIAとして日本に派遣したんだと、こう言っている。これこそ新たな証拠でしょう。金東雲がKCIA部員かどうかということは、金東雲自身が自分の口から語るか、そうでなければ直接の任命者である金炯旭が語るか、どっちかではっきりした証拠が出てくる。まさにこの金炯旭の証言というのはこれはもう最良の証拠だというふうに言わざるを得ない。あなた方はほかのことで当てにならないとかなんとか言っているのでなくて、こうした日本の国の主権にかかわる重大な問題であればこそ、私は政府自身が金炯旭氏に会って事実を確かめるべきだと、こういうことを言っている。おやりになりますか。
  448. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 金炯旭氏は、先ほどから申し上げておりまするように、いろいろなことを言っておりまするけれども、当たらぬことを言っておるわけなんですよ。それはいま三井局長からるる御説明申し上げたとおりなんです。そういうようなことで、金炯旭氏の発言には私どもといたしましてはそう証拠力、信憑性というものを認めない。金炯旭さんが橋本さんに何か言った、こう言った、そういうようなことで一々日本政府が動かなきゃならぬというほどの証拠力、信憑性というものは私は考えられない。したがいまして、政府といたしましては、橋本さんからいろいろお話を聞きましたけれども、だからといって、さあこの問題で金炯旭氏の言うことはもっともだ、何かその手がかりがありそうだ、ひとつ調査してみよう、聞いてみよう、そういうことはいたしませんです。
  449. 渡辺武

    ○渡辺武君 行くこと自身が重要ですよ。大変な言明でしょう、これは。こんな重大問題を重要視しないんですか。答弁に満足できないですよ、こんなことでは。
  450. 中江要介

    政府委員(中江要介君) なぜ調べないかという点の御質問について補足いたしますと丁先ほど来総理もお話しになっておられますように、金炯旭発言に基づいて金炯旭氏自身を調べるよりも、最も事件に近い金在権元駐日大使館公使から事情を聴取した方が適当であるというので政府は金在権元公使から任意の事情聴取を行うための手続をとっておることは、御承知のとおりでございます。他方、金炯旭氏につきましては、先ほどこれも総理もおっしゃいましたように、衆議院予算委員会において立法府の立場から事情聴取を行う努力をなさいましたけれども、いまに至るも金炯旭氏からこれに応じて日本に参りますという返事が来ていないと、こういうのが実情でございます。
  451. 渡辺武

    ○渡辺武君 私ども、わざわざアメリカまで行って本人から話を聞いてきた。この重大な証拠を申し上げている。いままでの総理初めほかの方々の答弁を聞いていますと、あなた方が日本の主権を守るという点でいかに消極的かということが実に明白に浮かび上がってきています。それにしましても、私は総理にはっきり申し上げたいのですが、衆議院の正森議員とここにおられる橋本議員が金炯旭に会って聞いてきたことを、信用できないと、こういうことを根拠もなしに言っている。調査に行って調べた結果信用できないと言うなら、これは別です。調査に行きもしないで信用できないとは何事ですか。議員に対する侮辱もはなはだしいと思う。取り消すべきじゃないですか。
  452. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 大変飛躍したお話でございますが、私どもは、橋本さんがどなたかこう言っておるというようなその橋本さんの認識を否定しているわけじゃないんです、これは。相手が金炯旭氏である。この人は、るる申し上げているとおり、証拠力というか信憑性というか、それのある発言をしておらないんですから、そのような人の発言したことを橋本さんが聞き取ってきた、これを私は否定しているわけじゃないんだけれども、この金炯旭氏が橋本さんに話したというその話の信憑性、証拠性を疑う、したがって調査はいたしませんと、こういうことなんですよ。
  453. 渡辺武

    ○渡辺武君 速記録を調べて、不穏当なところが私はあると思う、善処していただきたいと思います。
  454. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) もし不穏当なことがあれば、理事会に諮って善処いたします。
  455. 渡辺武

    ○渡辺武君 もう国会が乗り出さなきゃならぬときだと私は思います。総理自身も、金炯旭氏が証人として来られるととに反対じゃないという趣旨のことも言われました。金炯旭、金在権ともに証人として呼んでほしいと思います。それからまた同時に、あるいは別の手段の一つということでもいいんですけれども、国会として正式の調査団を送って金炯旭氏の言葉を確かめるということもやってほしいと思います。
  456. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上三件、金炯旭氏、金在権氏ですか、両氏の証人喚問、これはこの前の理事会でも出てなかなか実現をしないでおる問題でございますから、新たな申し入れとして理事会に諮る、さらにもう一つの調査団の件も理事会に諮りまして、処理いたします。
  457. 渡辺武

    ○渡辺武君 次に、浦項製鉄所の問題について伺いたいと思うのです。  総理大臣がにおいもしないと言った日韓癒着に絡む暗い疑惑ですね、いまソウル地下鉄問題などを通じて漸次その内容が明らかになってきていると思うのです。私は、このソウル地下鉄よりも数倍もでっかいプロジェクトである浦項製鉄所の問題について取り上げてみたいと思っております。  まず、外務省に伺いますけれども、外務省経済協力局の五十年八月の日付で「韓国経済協力調査団報告書」というのがあります。この百二十三ページに次のようなことが書かれている。日本の浦項総合製鉄第一期建設に対する資金協力は総額一億六千百五十六万ドルに上ったと報告されておりますが、この内容について間違いありませんか。
  458. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) 報告書にそのように記載されておることは、お示しのとおりでございます。
  459. 渡辺武

    ○渡辺武君 この内訳を聞きたいのですが、政府無償、有償及び民間がそれぞれ幾らになっているか、お答えいただきたい。
  460. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) 内訳につきましては、外務省といたしましては、韓国との請求権経済協力協定に基づきまして供与いたしました無償及び有償の資金供与について把握しております。その金額は、無償協力約百三億円、有償協力約二百七十七億円でございます。
  461. 渡辺武

    ○渡辺武君 総額がドルで書かれているわけですから、ドルで言ってください。
  462. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ドルでわかりますか。
  463. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) 私どもは請求権経済協力協定に基づきまして円ベースで支出をいたしております。これをドルに換算いたしますためには、そのころのドルの相場に一々当たって換算しなければなりませんので、いますぐにはドルの相場を出すわけにはまいりません。——ドルに換算いたしましたものを取り寄せましたので御報告いたします。有償につきましては四千二百九十万ドル、無償につきましては三千八十万ドルでございます。
  464. 渡辺武

    ○渡辺武君 この文の百二十四ページに四千六百四十二万七千二百六十ドルということになっています。どうして数字が違うのですか。
  465. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) この数字は調査団が独自に計算されたものと思いますが、私が先ほど申し上げました数字が外務省として公式に採用している数字でございます。
  466. 渡辺武

    ○渡辺武君 これは外務省の報告書じゃないですか、正式の。そうでしょう。
  467. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) これは外務省経済協力局ということで出した報告書ではございますけれども、この中のまず「まえがき」のところをごらんいただくとわかるわけでございますが、この調査は民間の調査機関に委託いたしまして民間にやっていただいたわけでございます。そこで、この「まえがき」の一ページ目の下の方に書いてございますとおり、「この報告書は調査団の事実認定や判断を示すものであり、政府考えを表わすものではない」と書いてあるわけでございます。
  468. 渡辺武

    ○渡辺武君 一ドル何円で計算したんです。
  469. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 立ってやってください。
  470. 渡辺武

    ○渡辺武君 一ドル何円で換算したんです。
  471. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) 一々の換算のレートについては手持ちがございませんが、いろいろ通貨の変動がございましたので、そのときそのときの為替相場を適用して計算したものだと思います。
  472. 渡辺武

    ○渡辺武君 その換算のやり方ですね、それは後日資料として提出していただきたいと思います。  次に移ります。  私どもここに独自に手に入れた資料がございます。これは韓国の第八十八国会の商工委員会の議事録の第十五号です。一九七三年十一月二十日付のものです。ここにありますけれども、ちょうどこのころというのは浦項製鉄所の第一期建設の終わった直後で、浦項総合建設第一期建設工事についての所要資金が詳細に国会で報告されている。それを見てみますと、総建設資金千二百十五億ウォン、これは韓国の金ですから、それの換算が四百ウォンが一ドルだということになっておりますので、それで換算しますと三億三百七十五万ドル、そのうち内資分——韓国内の資金分ですね、五百四十三億ウォン、ドルにしますと一億三千五百七十五万ドル、それから外資分というのがあって、これが六百七十二億ウォン、ドルにしますと一億六千八百万ドルとなっております。そうして、この外資分の内訳が問題です。日本からの請求権無償資金、これが三千八十万ドル、先ほどの答弁とこの数字だけは合致しております。それから有償資金の分が四千六百四十三万ドル、それから日本からの商業借款六千六百四十九万ドルと、こういうふうになっているんです。日本からの政府ベース、民間ベースが恐らく入っているだろうと思うのですが、合わせての資金協力は総額一億四千三百七十二万ドルと韓国側の計算ですとなっております。ところが、いま申しましたように、外務省の報告では一億六千百五十六万ドルというのが総額になっておりますから、千七百八十四万ドル、日本の円に直しますと、仮に一ドル三百八円、当時のレートですが、一ドル三百八円で換算しても約五十五億円もの食い違いが生まれることになります。日本の方が余分に出ている。韓国の国会に公式に発表された数字はそれよりも日本円にして約五十五億円も少なく報告されている、こういうことです。この莫大な数字の食い違いについて、外務省、どういうわけか説明をしていただきたい。
  473. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) ただいまお示しのございました韓国の国会に提出された報告というのは、私は実は見ておりませんので、取り寄せまして検討することといたしたいと存じますが、韓国側から最近入手いたしました資料によりますと、有償協力については四千二百九十万ドル、無償協力については三千八十万ドルと記載してございまして、これは私どもの正式な数字と合致いたしております。
  474. 渡辺武

    ○渡辺武君 総額の差を聞いているんですよ、どうしてそういうものが出たのか。
  475. 武藤利昭

    政府委員(武藤利昭君) 総額等の差につきましては、これは民間信用供与の部分でございまして、外務省としては所管しておりません。
  476. 渡辺武

    ○渡辺武君 私はそこが非常に疑問だと思います。五十五億円、莫大な金ですよ。しかもドルに直して千七百八十四万ドル、この金額はいま言った協力資金の総額一億六千百五十六万ドルの約一一%に当たっている。この一一%というのが私は非常に疑惑を抱かざるを得ない数字だと思うのです。なぜかと申しますと、当時住友商事の津田久社長のところへ昭和四十一、二年のころに韓国の有力者K氏 ——これはソウル地下鉄でも疑惑の人物となっている故金成坤当時の民主共和党財務委員長ではないかと言われていますが、このK氏が再三訪れて、浦項製鉄の事業を住友商事に任せる見返りとして一〇%以上の金を捻出し韓国政権に献金してほしいという旨の話が持ち込まれているということであります。これは昨年の一月二十三日の朝日新聞の「総合商社」という表題の記事に出ているわけですが、私どもは、いまここにおられた橋本議員と神谷議員と二人の議員が直接津田さんに会いまして、そうしてこの事実を確認しております。津田さんは、わが党の調査に対して、K氏というのは韓国財界のさる名士であると、そういうふうに語っておられる。この話が浦項製鉄を実際に担当した三菱商事などにも持ち込まれているということは十分に考えられるわけであります。まさに、先ほど私は一一%という金額がわけがわからなくなっていると言いましたけれども、K氏が言っている一〇%とほぼ符合している。この点が非常に重大だと思います。で、浦項総合製鉄に関する無償、有償、それから民間すべてについて、担当商社、それからメーカー、及び担当した製品名、単価、総額など、資料を私はいただきたいと思うのです。ソウル地下鉄の問題が非常に重大な疑惑を抱かれておりますが、浦項の方もここにその疑惑の一端が明らかになってきたのじゃないかというふうに思います。あわせて、この重大な疑惑について政府自身が責任を持って解明すべきであると思いますけれども、どうお考えか、これも伺いたい。
  477. 森山信吾

    政府委員(森山信吾君) 私の方は民間の延べ払い借款を担当いたしておりますので、ただいま先生の御指摘の点につきまして私から御答弁を申し上げさせていただきます。  個々のプロジェクトの中身につきましてどういう企業がどういう製品を輸出したかということにつきましては、企業の秘密に属するところでございますので、国会への提出は御勘弁をいただきたいと思う次第でございます。
  478. 澤野潤

    政府委員(澤野潤君) お答え申し上げます。  有償の分につきましては、海外経済協力基金から先ほど外務省の経済協力局長が御答弁されましたように二百七十七億二千八百万円出ております。これは円で出しておりますので、この金額に間違いはございません。これにつきましていま渡辺委員からいろいろな資料を出せというお話がございましたのですが、まず契約者とか、契約年月日、それからそれの数量とか単価とかというようなことについての資料を出せとおっしゃったわけでございますけれども、御要求の資料は、これは韓国の調達機関と日本におけるサプライヤーである日本の企業との間の調達契約に基づいて出されたものでございまして、基金は韓国政府——政府に対して借款を与えておるわけでございまして、基金は当事者としては対政府でございます。したがいまして、その企業と調達機関との間で結ばれました契約の内容というものについては、やはり海外経済協力基金というものが金融機関であるという立場から、これを公表するのは妥当ではないと考えておりますので、資料を提出することは差し控えさしていただきたいと思います。
  479. 渡辺武

    ○渡辺武君 この資料は、総額一億六千何百万ドルの中身について政府と民間に分けて出してくれという程度のことも出そうとしない。けしからぬですよ、これは。国会の調査権と先ほど総理大臣も言われたけれども、これじゃ国会の調査権が発動のしようがないのだ。この資料の問題は理事会でひとつ検討していただきたいと、そう思います。
  480. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 理事会で検討をいたします。
  481. 園田直

    国務大臣園田直君) いまの御質問の中で、日本の方で出した有償、無償の金と韓国の方で受け取った有償、無償の金との額の食い違いということでありますが、このようなことはあり得るはずが常識ではございませんので、ただ、御承知のとおり、あのときの金の出し方、受け取りが非常に複雑でございますから、韓国とよく詳細打ち合わして、(発言する者あり)いや、照会して、韓国に照会をして、この数字が間違いであるかどうか、後で御返答をいたします。
  482. 渡辺武

    ○渡辺武君 いま全国的に失業問題が非常に重大になってきております。もう高度成長の時代というのは過ぎ去ってさま変わりの経済情勢になってきていると思うのですけれども、私は、一九六〇年代の初めごろから政府のエネルギー政策が石炭から石油に重点を移した、そのことが主要な原因で炭鉱合理化という名前の相次ぐ炭鉱取りつぶし、この結果としていま失業と貧困のいわばどろ沼に落とし込まれている筑豊問題について伺っていきたいというふうに思います。  それで、まず最初に伺いたいのですが、一番端的な指標として千人当たりの生活保護者の数ですね、昭和四十年ごろつまり炭鉱閉山が相次いだころと現在はどんなことになっているのか、伺いたいと思います。
  483. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) 筑豊地区の被保護人員の概況をお尋ねでございますが、昭和五十年九月で保護率は一一〇・三——これは千人当たりでございます。五十一年八月が一〇九・〇、五十二年八月が一〇七・三、被保護人員は五十年九月が六万五千九百三十二人、五十一年八月が六万五千百五十七人、五十二年八月が六万四千八百二十六人でございます。
  484. 渡辺武

    ○渡辺武君 総理、お聞きのように大変な事態になっているわけですね。特に筑豊のたとえば大任町というところは千人について二百四十九人が生活保護世帯です。川崎町、糸田町、ほぼ同じような状態ですよ。つまり、人口の約四分の一が生活保護世帯と、こういうような状態になっているんです。この事態を見ていただいただけでも、いままで政府が産炭地振興事業をいろいろやってこられたけれども、余り効を奏さなかったということがおわかりいただけると思います。非常に失業も深刻です。たとえば、これは昨年十二月の数字ですけれども、筑豊の中心都市である飯塚の月間の有効求人倍率はわずかに〇・一三です。それから田川市は〇・〇九です。それから直方市は〇・一五と大変な失業状態です。こういうことですから、家庭も崩壊状態と言うとちょっと言い過ぎですが、非常に深刻な状態なんです。筑豊の中には青少年の非行率が全国に比べても二倍も三倍も多いというのが実情なんです。もちろん、地方自治体の財政力、これも非常に窮迫しているというのが実態です。ところが、筑豊の場合に特徴的なのは、あそこの住民がそういう苦しい状態の中でみずから立ち上がって筑豊復興共闘などの組織をつくりまして、そしてここに私はパンフレット持ってまいりましたが、「よみがえれ筑豊」ということを合い言葉にしてそうして総合的な復興計画をつくって筑豊を新しい町づくりの方向に生まれ変わらせようということで奮闘している。地方自治体もそれに賛成をして協力しているという状態が特徴的であります。いろいろの目標を立てておりますが、その中で住民が要望しておりますベッドタウン構想、つまり筑豊を福岡や北九州のベッドタウンにしてそういう方向によみがえらしていきたい。もちろん、工場を誘地して長期の就職先もつくりたいという要望、これも切実ですが、もう一つベッドタウン構想というのもある。  そこで私は伺いたいのですけれども、地域振興整備公団、この事業の中に地方都市開発整備事業というのがあると思いますけれども、どういう事業なのか、お聞かせいただきたい。
  485. 吉國一郎

    参考人吉國一郎君) お答え申し上げます。  地方都市開発整備の業務と申しますのは、いわゆるニュータウンの建設でございまして、地域社会の経済、文化等の中心としてふさわしいような地方都市の開発整備のために必要な宅地の造成、管理、譲渡、それからこれに関連をいたします利便施設、公共施設の整備、管理、譲渡等の業務でございます。  なお、総合的かつ計画的に実施しなければならない特定地域の開発、整備のための大規模な事業の施行にかかわる業務でございますと、これは政令で定めて初めて公団の業務に加わることに相なっております。
  486. 渡辺武

    ○渡辺武君 いままで地域振興整備公団が筑豊でたくさんの工場団地をつくってこられた。そうして工場誘致もある程度進んでおりますけれども、いまこの深刻な不況と経済危機の中で、せっかく誘致した企業が大量の首切りをやっている、その上にもう来る企業がだんだんなくなってきている、こういうのが実情だと思うのです。したがって、住民の方は、いま申しましたように、工場誘致を望みながらも、ベッドタウンづくりということも非常に強い要望となって出てきているわけですが、地域振興公団の事業ですね、筑豊で行う可能性があるのかどうか、これを伺いたい。
  487. 吉國一郎

    参考人吉國一郎君) 私どもの公団でいたします地方都市の開発整備の事業は、地方公共団体等の地元の発意と申しますか、地元の意欲を尊重して行うことに相なっております。したがいまして、地方公共団体からいわゆる地方の中核都市の形成に寄与いたしますような相当程度の規模を持った市街地造成事業の計画でございますとか、それからその周辺地域の開発整備の計画等を自発的に自主的に作成をいたされました上で、当公団に調査の要請がなされた場合には、それが公団の事業としてふさわしいような条件を備えているかどうかということを検討いたしまして、そういう条件に合致いたしますものについては、一定の基本的な調査を行いまして、事業として実施の可能性ありゃ否やを判断することにいたしております。  ただいままでのところ、筑豊地域につきましては、いま申し上げましたような地元の要請はいただいておりません。
  488. 渡辺武

    ○渡辺武君 地元の要請があれば可能性があるということですが、私は通産大臣伺いたいんです。  ここに福岡県の「産炭地振興実施計画の改訂に関する調査書」というのが五十一年十月付で出されております。この中に、一言で言えばニュータウンづくりということも要望の中の一つとして出されているわけですね。それで、地域振興整備公団が地元から要求を受けてそうして住宅用地をあそこに造成した場合に、私、問題になるのは地元負担だと思うのですね。したがって、やはりこの産炭地振興計画、この計画の中にこのニュータウンづくりを正式に組み入れていただくことが私は必要じゃないかと思うのです。組み入れていただくお考えがありますかどうか、伺いたい。
  489. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 初めからニュータウンとしてやる場合には建設省の所管にこれはなっておりますので、それを産炭地域振興計画に入れるかどうかということについては建設当局とも協議する必要があるかと思います。ただ、私の方の場合、当初工業用団地として準備いたしまして、長い期間の間に企業の進出がない、また地元としても強い要望がある、かつは産炭地域振興の趣旨にも合致するというような場合には、工業用田地として造成したものでありましても、ベッドタウンとして転用することも可能である、またさような指導もやっておるわけでございます。
  490. 渡辺武

    ○渡辺武君 その産炭地振興計画をつくるのは通産省のお仕事だと思うのですね。この中に組み込んでいただく必要が私はあると思うのです。これは地元負担の問題とも関連してそう思いますが、どうでしょうか、御検討いただけますか。
  491. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 関係方面とよく相談をいたします。
  492. 渡辺武

    ○渡辺武君 それからあそこにはたくさんの炭鉱住宅がまだ残っているんですね。大変惨たんたる状態です。私、きょうここに写真を持ってまいりましたが、後でひとつ通産大臣見てください。屋根はこうゆがんじゃっているし、雨漏りを防ぐためにビニールを張ったり、それから家の中に便所もない、共同便所がずらっと並んでいるというような写真です。それで、この炭鉱住宅の建てかえの進捗率、それから現在の炭鉱住宅の数などについてお知らせいただきたい。
  493. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) いわゆる六条市町村における炭住の数は、全体で約七万九千戸でございます。このうち筑豊地域は約三万一千戸、このうち改良を必要とする戸数は全体で約二万八千ぐらい、うち筑豊地域は約一万九千戸でございますが、これらのうち昭和四十二年度から五十二年度までの間に住宅地区改良法に基づきまして改良いたしました数が全体で約九千六百戸、そのうち筑豊地域が約四千二百戸でございます。
  494. 渡辺武

    ○渡辺武君 これではいつ全部改良できるのかわけわからぬという状態になると思うのですね。ですから、通産大臣、この点ももっとひとつ早めていただきたい。きょうは時間がないから詳しい内容に立ち入って伺うことはできませんけれども、その点もぜひお願いしたいと思いますが、どうですか。
  495. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) この炭住の改良計画が進まない理由は幾つかあるようでございますが、これもやはり緊急の課題のようでございますから、関係者とよく相談をいたします。
  496. 渡辺武

    ○渡辺武君 筑豊を新しい工業都市として再生する上でも、あるいはニュータウンづくりを進めてベッドタウンとして再生する上でも、決定的に重要なものは私は国鉄だと思うのです。それで、これは運輸省の方に伺いたいと思うのですが——通産省ですな、失礼しました。産炭地振興実施計画、これで筑豊の鉄道についてはどういうふうに述べているか、ちょっと伺いたいと思います。
  497. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 筑豊地域につきましての交通体系でございますが、実施計画では道路、港湾、鉄道、空港等について規定いたしておるわけでございますが、鉄道につきましては、「この地域における輸送需要の動向に対応しつつ、既設鉄道の整備を図るとともに、油須原線の建設を行う。」と、こういうふうに規定されております。
  498. 渡辺武

    ○渡辺武君 計画の中にはっきりうたわれているわけですから、これは実施に移されると理解していいわけでしょうね、改めて伺いたい。
  499. 住田正二

    政府委員(住田正二君) いま通産省から御説明のありました中で油須原線につきましては、昭和四十年来工事をやっておりましてかなり進んでおりますけれども、現在のところそう大きな需要増が望めないということで、地元と、完成した後の赤字をどう処理するかということについて協議をいたしたいと考えております。
  500. 渡辺武

    ○渡辺武君 いや、油須原線の問題だけじゃなく、「既設鉄道の整備を図るとともに、」というふうに先にそれがうたってあるんですが、その点はどうですか。
  501. 住田正二

    政府委員(住田正二君) 在来線の中でいま問題になっております線といたしましては、筑豊本線と篠栗線と二つあろうかと思いますけれども、現在この二つの線について複線化するとかあるいは電化するという計画はございません。といいますのは、現在の段階ではまだ需要の増加というものが期待できないと考えているわけでございます。
  502. 渡辺武

    ○渡辺武君 いま筑豊に小竹町という町があります。その町に町の面積の四分の一に近い三百五十ヘクタールの工場団地が造成されつつあるわけですね。ところが、その工場団地のすぐ近くに小竹駅という貨物駅がある。国鉄はこの貨物駅をいま廃止しようとしているのじゃないでしょうか、どうでしょう。
  503. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 先生よく御存じのとおり、いま全国的に貨物駅を整備し直そうという案を持っておりまして、現在あります千五百の駅を全国で千駅ぐらいに減らそうと、そうしてそれによってむしろサービスを上げることにしようと。つまり、残った駅で集中的に処理するようにいたしたい。そういたしますことによりまして、やめる方の駅では大変御迷惑をおかけすることになりますけれども、全体として見ますとサービスを向上することができると考えてそういう計画を進めております。その関連で、ただいまお触れになりました小竹駅の問題も、現状では使っていただいている程度がまことに少ないものでございますから、いま縮小さしていただきたいという方の駅の一つとして私どもでは考えております。
  504. 渡辺武

    ○渡辺武君 この小竹町の団地というのは、百億円以上の金をかけていま工場団地としてだんだん造成していっているというところですね。そこの団地ができたら使わなければならない貨物駅を、すでに廃止をしようという方向だと。これじゃ全く国の政策はばらばらじゃないでしょうか。  地域振興整備公団に伺いたいのですが、小竹団地造成の承認申請ですね、これにどういうことが書かれているか。もう時間もないので私が読んじゃいますが、「国鉄筑豊本線が走っており、同本線小竹駅は、団地南端部にあって交通は至便である。」ということが申請の一つの理由になってオーケーになっているわけですね。それを国鉄が廃止する。これはちょっとおかしいじゃないですか。
  505. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) その点は私どもの方もよく承知をいたしております。私の方も、産炭地域は人口が減り、また産業がどうも伸びないということで、私どものお客さんも成っておるわけでございまして、困り果てているわけでございまして、私どもも被害者になっておるわけでございます。そこで、何とか荷物を乗せていただければやめるというようなことをしなくても済むわけでございますけれども、どうも非常に困りますことは、筑豊地区に集まっております貨物駅は、もともと石炭を積み込むのに非常に便利なように施設ができておりまして、貨物駅と一口に申しましても、やはり目的目的に応じまして設備ができておるわけでございます。ところが、今度できます工業団地にいろいろな産業がお見えになるといたしましても、たとえばコンテナというような形で輸送するのでなければうまくいかないわけでございます。そこで、私どもも、工業団地がだんだん整備されましたならば、どこかにしかるべきコンテナヤードをつくってそして新しく入ってこられる工場の皆さんに大いに利用をしていただくという見通しが立てばそういう計画を立ててみたいと思っておりますが、現在のところ、いまの御指摘の小竹駅は、残念ながらいま私ども、設備が石炭向けでございますので、ちょっとこのままではなかなか使いにくいということで、現状としては一遍整理をせざるを得ないかなというふうに考えておるわけでございます。
  506. 渡辺武

    ○渡辺武君 運輸省の方に伺いますが、いま大都市交通施設整備補助金という制度があると思いますが、この内容を御説明いただきたいのと、五十三年度、これに福岡市とか北九州市とかいうところが対象として入るのじゃないかというように私は考えますが、どうでしょう。
  507. 住田正二

    政府委員(住田正二君) いま御質問のございました助成金でございますけれども、本年度から東京、大阪周辺を中心に大都市通勤の工事に対して三〇%の助成をやっております。来年度予算ではそれを拡張いたしまして、福岡とかあるいは仙台とか広島とかいう地域を拡張いたしております。したがいまして、対象範囲には含まれるわけでございますけれども、来年度どのような工事をするかということがまだ決まっておりませんので、その際検討さしていただきたいと思います。
  508. 渡辺武

    ○渡辺武君 国鉄総裁、この地図をちょっと見てください。これは九州の福岡県の地図ですが、北九州市はこっちにあって福岡市はこっちにある。この線は三十キロ圏で引いたわけです。筑豊はこの辺ですよ。ちょうど三十キロ圏なんです。その中心にあるんですね。いま北九州市に通う人たちはこの辺から通っているんですよ。それから福岡市へ通う人はこの辺から福岡へ行くと、こういう状態ですね。さらに、鹿児島本線に沿ってこの辺から通っているという状態です。もう交通混雑が非常にひどくなってきている。何とか新しい団地をつくらなきゃならぬという客観的な事態に立ち至っているわけです。まさに失業と貧困のどろ沼にある筑豊に、工場団地ももとよりつくるけれども、ベッドタウンもつくって、そうして、この筑豊本線、それからこちらは篠栗線ですけれども、これを複線化及び電化をすれば、りっぱな通勤輸送として役立たせることができる。私どもは門鉄当局へ行って聞きましたら、将来この線は育てたいと、こう言っている。もし国が金を出してくれるならわれわれとしては育てていきたい、こういうことも言っておられる。産炭地振興という大きなテーマで国がたくさんの金をつぎ込んで事業をやっているのに、国鉄がそれに反するようなことをやってもらっちゃ困ると思うのです、私は。したがって、いまの三〇%の援助がつくという大都市交通施設整備補助金ですね、これを十分に活用して篠栗線及び筑豊本線の電化ということを検討する必要があるのじゃないかと思いますが、どうですか。
  509. 高木文雄

    説明員(高木文雄君) 私どもも、全国的にかんがみまして、国鉄が通勤、通学のために役立つということをもう少し従来よりウエートを置いて考えてみたいと考えております。五十三年度の予算におきましてただいまお話しございました大都市通勤対策として新たに福岡地区なりあるいは札幌地区なりについて補助金がいただけるようにしていただきましたのも、そうした気持ちのあらわれでございます。ただ、しかし、それでは具体的にどこをどういうふうに先に進めていくかということになりますと、補助金だけではできないわけでございまして、その残余の資金につきまして借入金をもっていたしておるわけでございますが、現在のところ、国鉄全体の投資計画の中でどうしても東北新幹線等、それから車両整備等にウエートがとられておりますために、まだなかなか、気持ちとしては通勤線を重視したいと考えておりますけれども、広げられない状態でございます。当面、福岡県の問題といたしましては、福岡市とその西の方、いま地下鉄を敷いておられますが、その地下鉄と私どもとが相互乗り入れをするというようなことを通じて福岡市の交通対策にお手伝いいたしたいと思っております。また、北九州につきましても、漸次そういうことを考えてまいりたいとは思いますが、現在の交通断面から申しますと、まだまだ現状でも何とかしのいでいける現状でございますので、いわば順番が後になっているということでございまして、漸次情勢を見ながら緊急度の高いところから工事をやらしていただきたいと思っております。
  510. 渡辺武

    ○渡辺武君 この篠栗線とそれから筑豊本線の複線、電化ですね、これはもう地元挙げての要望で、県からも要望書が出ていると思うのですね。産炭地振興という見地からも非常に重要です。ですから、重ねて通産大臣と運輸大臣にこの点についての御見解を伺いたいと思います。
  511. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) それぞれ政府委員からお答えをいたしましたが、私の方でもよく考えてみます。
  512. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 産炭地振興のためには幾つかの対策をいまなお継続してやっております。ただ、いまお述べになりましたことが筑豊地区で最も適当かどうかということにつきましては、関係者の間でよく検討してみたいと思います。
  513. 渡辺武

    ○渡辺武君 次に、私は政府の中期経済計画の問題について幾つか伺いたいと思います。  五十年代前期経済計画が二年足らずの間でもう破綻しました。新しく五十五年度経済についての暫定試算というのが出されました。経済企画庁長官に伺いますが、前期経済計画と比べて今度の暫定試算で国民総支出の中で伸び率がふえた項目ですね、それから伸び率のダウンしたもの、これは何々か、おっしゃっていただきたい。
  514. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 暫定試算そのものが、ことにその中のC案というのが中期経済計画の試算に基づいてほぼ整合するようにできておりますので、したがいましてC案に関します限りは余り大きな違いというものはございません。強いて申しますと、政府の固定資本形成が計画よりは多少多いという特色がございます。  それからあと目立っておりますのは、当然なことでございますけれども、税負担か計画が予想しておりますよりも五十七年度ぐらいになりますと大きくなっておるというような特色がございます。
  515. 渡辺武

    ○渡辺武君 実質個人消費支出ですね、これは五十七年度には四八%くらいの構成に落ちるということだと思いますが、どうですか。
  516. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これは御指摘のとおりなんでございますが、これにはいろいろ議論がございまして、名目でごらんいただきますとそう大きくはなっておりませんで、五六・三といったような数字になっておるわけでございます。実質になりますとそれが小さくなっていきますので、何か個人消費支出を抑えるのではないかという世の中の受け取り方がございますが、これは実はモデルで長期計画を書きますと、どうしても消費者物価の大きなウェートをデフレーターで占めますところの消費と、それから卸売物価等々全体で構成されますデフレーターとが、消費者物価の方がやはり上がりぎみなために、そのデフレーターの関係で実質が小さくなっていく。これはどうも私どもも気にして実はおるところなんでございますけれども、実質を出しますとどうしてもそういう計算になってしまうので、名目をごらんいただきます方が真相に近いのではないかという感じは持っておりますが、実質に関します限り、そういう計算にどうしてもなってしまいます。
  517. 渡辺武

    ○渡辺武君 それは長官、逆じゃないですか。消費者物価指数の方が卸売物価指数よりも値上がりが激しい。それはそれだけ国民生活を圧迫するわけですよ。だから、実質で計算すれば個人消費支出の構成がそれだけ少なくなる。これはかえって実態を反映していると見なきゃならぬと思いますね。  しかし、その論争はとにかくとしまして、政府固定資本形成が以前よりも伸び率が高い、そうして個人消費支出はほかの国にないほど半分以下に構成比が下がる、こういうのが中期の経済計画の展望として描かれている。これで私はいまの深刻な日本経済の危機が打開できるだろうか、大変心配になりますよ。  わが党は、この経済危機を打開するためにはまず国民の所得をふやす、購買力をふやす、同時に公共投資の流れを大企業本位の大規模プロジェクトから生活基盤密着型の投資に変えて、国民生活をよくしながら、同時にこの不況、経済危機も乗り切っていくということを主張しております。ここに「日本経済への提言」という本、これは昨年暮れの党首会談でわが党の宮本委員長から総理大臣に差し上げたと思います。ひとつこれも参考にしていただいて中期経済計画を考えていただきたいと思いますが、念のために伺いますけれども、私、個人消費支出と政府固定資本形成、これの生産誘発効果と雇用誘発効果、これを計算していただいておりますので報告していただきたいと思います。
  518. 澤野潤

    政府委員(澤野潤君) 個別の需要項目の一つ一つにつきましてそれぞれ誘発される生産とそれから雇用というようなものにつきましては、実は需要の大きさということも一つの問題でございますけれども、そのほかに在庫の問題とかそれから景気の見通しにかかわる企業家のマインドといったようなものに多分に影響されるわけでございまして、その個別の項目につきまして一体どっちが大きいかとかどれぐらいであるかというようなことをそれぞれについて申すのは非常に困難だと思いますけれども、過去にいろいろ研究的にやったデータというものがございまして、仮に一つの仮定を置きまして、その仮定に基づいて昔昭和四十五年につくりました産業連関分析というのがございますけれども、これで試算を行ってみますと、同一額の個人消費支出とそれから政府固定資本形成、これについて比べてみますと、生産及び雇用に与える効果では、生産については、要するに生産誘発効果でございます、これは政府固定資本形成の方が大きい……
  519. 渡辺武

    ○渡辺武君 数字を言ってください、どのくらいかと。
  520. 澤野潤

    政府委員(澤野潤君) 一応これは試算でございますので、正確な要するにいますぐ当てはまるとも限らないわけでございますけれども、政府固定資本形成が一である場合に個人消費支出は〇・八五という計算が出ております。それから雇用に対する影響につきましては個人消費支出の方が大きいという試算は出ております。それは政府固定資本形成が一に対して雇用誘発効果は一・四ということにはなっておりますけれども、これは直ちに現状において当てはまるといったものでもございませんで、先ほど申しましたようにあくまでも一つの仮設としてあえて仮定を設けて計算すればということでございます。
  521. 渡辺武

    ○渡辺武君 総理、お聞きのとおりですね。個人消費支出の方が雇用効果に関する限り政府固定資本形成よりも一・四倍も大きいんです。その点をよくひとつ御記憶いただきたい。  それからもう一つ伺いたいのは、同じ公共投資の中で生産基盤投資と生活基盤投資、これの生産誘発効果と雇用誘発効果を伺いたいと思います。
  522. 澤野潤

    政府委員(澤野潤君) 公共投資の中身を産業基盤投資とか生活基盤投資というように厳格に区分するということは非常にむずかしいと思うのでございますけれども、またそういう産業基盤投資とか生活基盤投資という概念にもいろいろな概念があるかとも思うのでございますが、したがいまして、どれがどうだということを一概に言うことはできないのでございますけれども、仮に先ほどと同じように一定の仮定を設けまして、たとえば産業基盤投資というようなものを高速道路とか港湾、漁港とか空港、鉄道といったようなものに概念規定をいたしまして、また生活基盤投資というようなものを住宅とか建物とか一般の道路とか下水道というようなものとして計算いたしてみますと、たまたまこの両者の生産、雇用の両面に及ぼす効果は非常に似通っておりまして、一応試算いたしますと、いずれも大体生産誘発係数というものは二・一五から二・二〇の間におさまっておると計算されております。
  523. 渡辺武

    ○渡辺武君 はっきりわかるように言ってください、生活基盤関連の方がどのくらいか。
  524. 澤野潤

    政府委員(澤野潤君) 全体が大体二・一五強ぐらいでございますですね。それで、産業基盤関連の方は若干それよりも高いという感じでございます。それから雇用誘発係数につきましては、生活基盤関連と産業基盤関連とでは、どちらかといえば生活基盤関連の方が若干高いかと思われますけれども、これも〇・五程度ということで、大体似通った数字であるということを申し上げます。
  525. 渡辺武

    ○渡辺武君 何か歯にきぬ着せたような答弁の仕方ですが、私はあなたに計算してもらってここに持っているんですよ。生活基盤関連の方は生産誘発係数は二・一五、産業基盤関連は二・一三と生活基盤関連の方が高い。雇用効果の方は、生活基盤関連の方が〇・五七、産業基盤関連が〇・五四。そうでしょう。
  526. 澤野潤

    政府委員(澤野潤君) 先ほど申しました計算によりますと、生活基盤関連の生産誘発係数は二・一五でございまして、産業基盤関連が二・二〇、これに対しまして雇用誘発係数は、生活基盤関連が〇・五七であるのに対して産業基盤関連は〇・五五ということで、ちょっと数字が違うのでございます。
  527. 渡辺武

    ○渡辺武君 うそを言っちゃだめですよ。電電公社のことをあなた方は電話や何かは生活関連も含まれているからということで産業基盤から除いている。これがあなた方の公式の見解です。だから、それを除けばさっき私が言ったとおりになるんですよ。電電公社を入れればまたあなたが答弁したことになりますよ。その点は余り争いませんが、いずれにしても生産誘発効果については生活基盤、産業基盤ともにそう大差はないんです。しかし、少なくとも雇用効果については、数字はわずかではあるけれども、生活基盤関連の方が高いということが公式の計算をしていただいたものでもおわかりいただけると思うのですね。  私、もう一つ伺いたいのですけれども、政府が今度の予算で大変力こぶを入れている高速自動車道路、それから新幹線、本四架橋、これの中小企業への発注割合、これをおっしゃっていただきたい。
  528. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) 私どもの方にも一部御質問があるわけでございますが、新幹線について申し上げまするならば、ただいま工事をやっております上越と東北新幹線、これは時期によりますが、五十一年度を例にとってみますと、大体中小に対して七%ばかりということになっております。この数字だけ見ますと大変少ないように見えるのでありますが、私もそういう意味からさらに調べてみましたところ、現段階ではたとえば大きな橋とかあるいはトンネルとかそういうようなものでかなりいろいろの意味で経験や技術を必要とするし、資本力も必要とする等の事情から、わりあいに大企業によけい行っているというようなことでありますので、この数字をながめながら私どもはより多く中小企業の方へ発注するように向けるべくただいま努力中であります。
  529. 櫻内義雄

    国務大臣(櫻内義雄君) 手元に資料がございますが、昭和五十一年度における日本道路公団の中小建設業者に対する発注率は八・五%、本州四国連絡橋公団の分が三・五%になっております。
  530. 渡辺武

    ○渡辺武君 総理大臣、お聞きのとおり、こうした大規模プロジェクトというのはもう大企業に集中的に仕事が行っているのですよ。中小企業には回ってこない。しかも、地域は分散していますし、不安定ですよ。その仕事が過ぎればもうなくなっちゃう。ところが、生活基盤の方は、住宅建設、学校建設、これは政府の公式の数字でも、地方自治体に約八五%仕事が行って、その地方自治体の仕事の約八〇%が中小企業に行っている、こういうことになっている。しかも、これは全国的な規模でそういうことをやることができるのです。はるかに生産誘発効果と雇用効果は大きいのです。これから先中期計画を組むに当たって、さっきのように政府固定資本投資ばかり大幅に伸ばしていって個人消費支出は半分以下にダウンさせるなんというこんな計画はおやめになって、改めて、国民の所得をふやし、そしてまた投資も生活基盤に半分以上はいく、少なくとも生活基盤二、産業基盤一ぐらいの投資割合にするという計画を立てることが日本経済の今日の危機を救う道だと思います。そういう計画をお立てになるおつもりないかどうか。
  531. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 渡辺君、時間が参っております。
  532. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ考え方といたしましては、公共事業つまり社会開発投資、これは生活関連にだんだんと重点を置いてというふうにいたしておるんです。その傾向はよく数字的にも出てきておりますが、今後とも生活関連投資、こういう不況の際非常にいい機会でありますから、生活関連投資をいたしまして、そして環境の整備を充実したいと、このように考えております。
  533. 渡辺武

    ○渡辺武君 いや、中期計画について。
  534. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) なお、中期計画、つまり五十年代前期五ヵ年計画ですね、これは五十年、五十一年度をもう経過いたしまして、若干ずれが出てきておるわけでございまするけれども、しかし、基本的に考え方を変える必要はあるとは認めないんです。そういうことで、あの計画を見直すということをいま決めてはおりませんけれども、暫定試算というか、大局的に見まして五十三年、五十四年、五十五年はどうなるかということは、資料としてごらんに入れておる次第でございます。
  535. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) よろしゅうございますか。
  536. 渡辺武

    ○渡辺武君 もう一問だけ。
  537. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) じゃ、特にもう一問、簡単にやってください。
  538. 渡辺武

    ○渡辺武君 総理大臣、いまの前期経済計画ですね、産業基盤投資は構成比で言うと約四割、生活基盤投資は構成比でいくと約三割なんですよ。まだ産業基盤投資の方が優先しているんです。私がさっきから申し上げているのは、生活基盤投資、これを優先して、この関係を少なくとも逆にする、少なくとも一と二で生活基盤投資の方が大きいというくらいの中期計画をお組みなさいと、その方が経済危機を打開する道だということを申し上げておる。
  539. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これからの社会開発投資、その中で生活関連は比重が非常に高くなるんです。いままでの在来型と違いまして、生活関連も重視と、こういうことになる。ただ、生活関連と申し上げましても、生活関連の住宅だ、下水だ、それだけやればそれで国土はうまくいくのかというと、そうでもない。やっぱり道路もあるいは新幹線もあるいは架橋という問題もそれらと肩を並べて合理的にやっていかなきゃならぬ、こういうことで、そういうことになりますとその方は相当金を食うんです。ですから、比重といたしましては、これからもいわゆる建設投資ですね、これが構成比として見るときには生活関連よりは多うございますが、しかし、生活関連の占める構成比、これは逐次向上さしていきたい、こういうふうに考えております。
  540. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で渡辺君の総括質疑は終了いたしました。(拍手)  明日は午前十時から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時四分散会