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1978-01-30 第84回国会 参議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年一月三十日(月曜日)    午前十時一分開会     ―――――――――――――    委員異動  一月二十八日     辞任         補欠選任      内藤  功君     安武 洋子君  一月三十日     辞任         補欠選任      熊谷  弘君     山本 富雄君      峯山 昭範君     小平 芳平君      井上  計君     三治 重信君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         鍋島 直紹君     理 事                 戸塚 進也君                 内藤誉三郎君                 中村 太郎君                 宮田  輝君                 竹田 四郎君                 吉田忠三郎君                 多田 省吾君                 渡辺  武君                 栗林 卓司君     委 員                 浅野  拡君                 岩動 道行君                 石破 二朗君                 糸山英太郎君                 小澤 太郎君                 亀井 久興君                 亀長 友義君                 下条進一郎君                 園田 清充君                 玉置 和郎君                 夏目 忠雄君                 成相 善十君                 林  ゆう君                 真鍋 賢二君                 三善 信二君                 望月 邦夫君                 八木 一郎君                 山本 富雄君                 赤桐  操君                 大木 正吾君                 志苫  裕君                 野田  哲君                 福間 知之君                 藤田  進君                目黒今朝次郎君                 太田 淳夫君                 小平 芳平君                 矢追 秀彦君                 矢原 秀男君                 安武 洋子君                 下村  泰君                 柿沢 弘治君                 秦   豊君    国務大臣        内閣総理大臣   福田 赳夫君        法 務 大 臣  瀬戸山三男君        外 務 大 臣  園田  直君        大 蔵 大 臣  村山 達雄君        文 部 大 臣  砂田 重民君        厚 生 大 臣  小沢 辰男君        農 林 大 臣  中川 一郎君        通商産業大臣   河本 敏夫君        運 輸 大 臣  福永 健司君        郵 政 大 臣  服部 安司君        労 働 大 臣  藤井 勝志君        建 設 大 臣  櫻内 義雄君        自 治 大 臣        国 務 大 臣        (国家公安委員        会委員長)        (北海道開発庁        長官)      加藤 武徳君        国 務 大 臣        (内閣官房長官) 安倍晋太郎君        国 務 大 臣        (総理府総務長        官)        (沖繩開発庁長        官)      稻村左近四郎君        国 務 大 臣        (行政管理庁長        官)       荒舩清十郎君        国 務 大 臣        (防衛庁長官)  金丸  信君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       宮澤 喜一君        国 務 大 臣        (科学技術庁長        官)       熊谷太三郎君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  山田 久就君        国 務 大 臣        (国土庁長官)  櫻内 義雄君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        内閣法制局第一        部長       茂串  俊君        人事院総裁    藤井 貞夫君        人事院事務総局        職員局長     金井 八郎君        内閣総理大臣官        房管理室長    藤井 良二君        総理府人事局長  秋富 公正君        公正取引委員会        委員長      橋口  收君        公正取引委員会        事務局経済部長  妹尾  明君        防衛庁長官官房        長        竹岡 勝美君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        防衛庁人事教育        局長       渡邊 伊助君        防衛庁装備局長  間淵 直三君        防衛施設庁長官  亘理  彰君        経済企画庁調整        局長       宮崎  勇君        経済企画庁物価        局長       藤井 直樹君        科学技術庁研究        調整局長     園山 重道君        科学技術庁原子        力安全局長    牧村 信之君        環境庁水質保全        局長       二瓶  博君        沖繩開発庁総務        局長       亀谷 礼次君        国土庁長官官房        長        河野 正三君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アメリカ        局長       中島敏次郎君        外務省経済局次        長        溝口 道郎君        外務省条約局長  大森 誠一君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        大蔵省主計局長  長岡  實君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  田中  敬君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        厚生大臣官房会        計課長      持永 和見君        厚生省環境衛生        局長       山中  和君        厚生省社会局長  上村  一君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        厚生省年金局長  木暮 保成君        農林省農蚕園芸        局長       野崎 博之君        水産庁長官    森  整治君        通商産業省産業        政策局長     濃野  滋君        通商産業省立地        公害局長     左近友三郎君        通商産業省生活        産業局長     藤原 一郎君        工業技術院長   窪田 雅男君        運輸大臣官房長  山上 孝史君        運輸省船舶局長  謝敷 宗登君        運輸省港湾局長  大久保喜市君        気象庁長官    有住 直介君        郵政省貯金局長  高仲  優君        労働省労働基準        局長       桑原 敬一君        労働省職業安定        局長       細野  正君        建設大臣官房長  粟屋 敏信君        建設省住宅局長  救仁郷 斉君        自治省財政局長  山本  悟君        消防庁長官    林  忠雄君         ―――――        会計検査院長   佐藤 三郎君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    参考人        日本銀行総裁   森永貞一郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十二年度一般会補計正予算(第2号)(内  閣提出、衆議院送付) ○昭和五十二年度特別会計補正予算(特第2号)  (内閣提出衆議院送付) ○昭和五十二年度政府関係機関補正予算(機第2  号)(内閣提出衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、理事補欠選任に関する件についてお諮りいたします。  委員異動に伴い理事一名が欠員となっております。理事補欠選任については、先例により、その指名を委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事渡辺武君を指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 昭和五十二年度一般会計補正予算  昭和五十二年度特別会計補正予算  昭和五十二年度政府関係機関補正予算  以上三案を一括して議題といたします。  まず、理事会において協議決定いたしました事項について御報告いたします。  審査期日は本三十日及び明三十一日の二日間とし、審査方式総括質疑方式とすること、質疑時間総計は二百二十分とし、各会派への割り当ては、日本社会党九十分、公明党五十分、日本共産党三十分、民社党二十分、第二院クラブ、新自由クラブ及び社会民主連合それぞれ各十分とし、質疑順位及び質疑者はお手元の質疑通告表のとおりとすること。以上でございます。  右、理事会決定どおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  6. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十二年度一般会計補正予算外二案の審査のため、本日の委員会日本銀行総裁森永貞一郎君を参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認めます。  なお、出席時刻等については、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  9. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) それでは、これより質疑を行います。竹田四郎君。
  10. 竹田四郎

    竹田四郎君 まず、総理にお伺したいと思いますけれども、いまの日本国民気持ちを一言で言うと、物はなるほど豊かであるけれども心のどこかに不安の影が襲いかかっているというのが実態ではないかと思うのです。特に将来に対して真っ暗だというのが、これは経企庁長官経済演説の中で、未来が不透明であるということを最後の方に述べられておりますけれども国民社会の一員として、あるいはまた国民の一人としてその責務と努力を払いさえすれば将来に心配はないと、このことを一番求めているのじゃないかと、こう思うのですけれども、どうも年金の問題にしても医療の問題にしても教育の問題にしても、あるいは雇用の問題にしても経済の問題にしても、何一つとってみてもどうも安心できない、こういう気持ちに駆られていると思うのですけれども福田総理はいままで経済関係を担当し、この一年間総理として政治を総括してまいられたわけでありますが、この時期にこのことだけは安心してよろしいというようなことが、国民にここでお約束できることがありましたらひとつお述べをいただいて、少なくとも国民の不安な気持ちというもののどこかに青空をやっぱり見させなければ、いまの政治というものでは私はないと思う。どうお考えですか。
  11. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お話しのように、私もなかなかむずかしい時代だというふうに思うのです。世界情勢が非常に不透明ですね。私は、今世紀になって最大の不透明の時代だと、こういうふうに思うのです。しかし、不透明のその中においてわが日本は一体どうしているんだと、こういうことでありますが、私は、世界情勢が不透明だとは申しながらも、しかし非常に大きな線が出てきていると思うのです。つまり、資源有限時代というか、エネルギーなんかの非常な制約を受ける時代になってしまった。そういうようなことで、いままでのような高い繁栄発展世界が享受することはなかなかむずかしいような状態になってしまった。わが日本もその流れにちゃんとまっしぐらにさお差しまして、そしてその道を誤ることがないということになれば、私は、不透明で相当波乱含みの今後の世界情勢であるけれども、わが国は安定した状態を維持し得る、こういうふうに思うわけです。つまり、世界が大変変わってきておる。その変わってきておるその流れに調子を合わせて、腰をとにかく日本の各分野において少し落とすことだと思うのです。そして少し揺れがある。揺れがあるけれども、びくともしない姿勢を整えることだ。そうなれば、私は日本の前途については何らの心配はないと、このように考えております。
  12. 竹田四郎

    竹田四郎君 いまの御答弁国民が聞いても、何か世界経済に責任を転嫁して、国内の問題にはっきりとそういう線を出されていないような気がいたします。  たとえば年金一つとっても、これは国際経済と全然関係がないと言うことは言い過ぎでありましょうけれども、これは国内で何とかできることです。医療の問題にしても国内で何とかできることですよ。そういうような一つでもいいから、これだけはまじめに働いていれば何とかなるという線を、私は総理としていまのこの混迷した世の中に何か一つ出すべきだと思うのですが、そういうつもりはございませんか。何か国際経済国際経済に逃げているというふうにしか私には思えません。
  13. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 経済の角度からのお話でありますれば、とにかく物価を安定させる、これが第一です。第二は、国際収支をこれは適正な均衡、そこへ持っていく。第三の問題は、活力ある経済社会、つまり、景気情勢を適度に活発化する。この三つだろうと思うのです。いま私は国民がこれを一番求めておるんじゃないかと思うのです。求めているそのことを私は実現をする、こう申し上げているわけであります。
  14. 竹田四郎

    竹田四郎君 いま三つばかり総理はおっしゃったんですけれども、これはいずれもどうも外れていることが多いわけですね。物価のことは、あなたの唯一ただ一つの、物価は下がった、物価は下がったということをおっしゃっているんですが、これだってこの国債大量発行時代景気がちょっと直ってくればこの物価だって上がりかねない。こういう時代で、どうもあなたがそういうふうにおっしゃっていることは一番国民の不安の根源の条件ですか、そういうことをおっしゃっているんですね。国民国際経済のことをどうのこうのということをいま、それは関係はないと私言いませんけれども、何らか一つ自分生活の中に明るみを見出したい。このことを言ってくれないと、ますますあなたに対する信頼というものは落ちていく、こうなるんですがね、この辺のところをやはり福田総理として明快に国民に私は指し示すべきだと思うのですよ。それがまた日本経済全体の運営あるいは政治社会の課題であろうと私は思うのです。  年金なら年金一つでいいですよ。将来になって、どうも掛金は払ったけれども年金はもらえないというようなことのないようなことを、国民が納得できるような政策なり何かを出してくれればいいけれども、それもどうも出してくれない。これじゃ国民は幾ら働いても、貯金は目減りをする、年金を掛けても老後がどうなるのかわからぬ、病気になってもすぐ病院に行けるかどうかわからぬ、こういう不安をまず一掃することが私は第一だと思うのです。どうですか。
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国民が何かいらいらを感じていると、これは私は年金だとか医療だとかいろいろお話がありますけれども、そういう前に、やはりインフレ、それから景気、このことについて本当にしっかりした見通しを得たい、こういうところにあるんじゃないか、そのように思うのです。国際収支という問題、これは私は国民自身関心を持っているという人は少ないと思うのですが、これはしかし非常に大事な問題です。国民関心を持つ度合いが少ないからといって、政府がこれを放置することは許されない問題ですから、一番国民関心を持ち、また大事な問題はやっぱりインフレを起こさない、それから失業、そういうようなことを考えて、そして景気活動を適正な水準に維持する、この二つじゃないかと思うのです。  それができて、そうして個々の、教育の問題だとか、あるいは福祉の問題だとか、あるいは環境づくりの問題とか、そういう問題がみんな片づけられていくんであって、やっぱり国民は私はにらんでおると、にらんでおるその観点というものは、これはインフレをなくす、起こさないようにしてくれ、また雇用状態をこれは活発にしてくれ、こういうことじゃないかと思うのですが、それを目指して何とかやっていきたい。その上に立ちまして個々の問題、これはどれ一つというわけにいかない、総合的にやっていかなければいかぬから、そういう考えでございます。
  16. 竹田四郎

    竹田四郎君 雇用の問題は後ほどまた触れていくわけでありますが、どうも総理のいまの御発言、国民は必ずしも納得しないし、まあおっしゃっていることととやっていることは非常に乖離している、この辺に私は大きな問題が一つあろうと思うので、これはまた後ほど触れていきたいと思います。  日中平和友好条約締結の機が熟しつつある、このように総理外務大臣も述べておられるわけでありますが、まあ外務大臣はエンジンは吹かしっ放しだと、このようにこの間本会議で御答弁になっておりますし、世論も大体一月には交渉再開だと、こういうふうに思っているわけでありますが、もうきょう、あすで一月は終わりでありますけれども、どうも外務大臣中国へ飛んでいくというような雰囲気にはないわけでありますけれども、一体、中国との交渉をいつから、外務大臣、お始めになり、いつごろ中国へ行かれるつもりなんですか、日程をちょっと御質問申し上げたい。
  17. 園田直

    国務大臣園田直君) 総理がしばしば答弁されているとおり、機はまさに熟しつつあり、日中双方の意見はだんだん近まっているわけでありますが、いつ、どういう段取りでどうするかということは、この時期で申し上げることは御勘弁を願いたいと思います。
  18. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理は、これの見通しについてはどんなふうにお考えですか。
  19. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日中平和友好条約締結につきましては、かねがね申し上げておるんですが、双方が満足し得る条件をつくり出して、そしてなるべく早く締結したい、こういう姿勢でずっとやってきておるわけであります。それが話し合いが中断をしているという形になって今日に及んでおることは御承知のとおりですが、話し合い再開する環境というものは私は整ってきておる、こういうふうに観察をいたしておるわけであります。  さて、そういう背景の中で、さあ交渉段取りをどういうふうにするか、そういうこと、これは交渉が始まってから、その交渉を円滑に進めていく上にも必要なことでありますので、段取りの詰め、そういうものは慎重に扱っていきたい、こういうふうに考えておりまして、いまどんな段取りにするか、その段取りを模索しておる、こういうようないま今日この時点の状況でございます。
  20. 竹田四郎

    竹田四郎君 その段取りを模索しているというふうにおっしゃっておりますが、どの辺にその段取りがスムーズにいかない点があるんですか。私どもは少なくとももういまごろは外務大臣がこの席にいるというふうには実は思っていなかったわけでありますけれども、どの辺に、これは外務大臣段取りがとれないところがあるんですか。
  21. 園田直

    国務大臣園田直君) 段取りその他を進めるについて日中双方に特別の障害があるわけではありません。話し合いがだんだん進んでおるわけでありまして、問題は時期の問題であると考えております。
  22. 竹田四郎

    竹田四郎君 問題がなければ、どうしてこれが再開ができないんですか。
  23. 園田直

    国務大臣園田直君) 相撲と同じでありまして、両方の気分がぱっと合ったところで出るわけでありまして、なかなかこちらが立ち上がる先に向こうが立ち上がるわけにもいかぬし、だんだんそういう点を詰めておるわけであります。
  24. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうもよくわからぬですけれども、私は何か阻害条件があるんじゃないかと思うのですけれども中国側には何か事情があるんですか。
  25. 園田直

    国務大臣園田直君) 特別障害になるような事情はないようでございます。
  26. 竹田四郎

    竹田四郎君 それじゃ台湾側に何か事情があるんですか。
  27. 園田直

    国務大臣園田直君) わが方も特別障害になるようなことはございませんけれども、いろいろ話し合いを詰めておるという時間をとっておるわけであります。
  28. 竹田四郎

    竹田四郎君 それならどうなんですか、すぐ、あんたエンジン吹かしっ放しなんだから、いつだって飛んでいけるんですから、きょうにでも、あしたにでも、日中の五年越しの問題でありますから、早く飛んでいったらどうですか、ここにいないで。私はもう開放しますよ、どうですか。
  29. 園田直

    国務大臣園田直君) その時期が来ますれば、国会に御相談をしてそういうことにしたいと思っておりますが、ということでございます。
  30. 竹田四郎

    竹田四郎君 大変不明確なんですが、これは日中平和友好条約というものは国民の大きな希望だと思うのですよ、いまのところ。不透明な中で、恐らくこれだけは何かうまくいくんじゃないか、隣の国と仲よくなれるんじゃないか、こういう気持ちというのは私は国民の中に非常に多いと思うのですよ。それをまたこういうふうに不透明にぼやかすというのは私はこれは問題だと思うのですよ。これ明確にしてください。
  31. 園田直

    国務大臣園田直君) アジアの平和と繁栄のためになるべく早い時期に締結するということについては、竹田委員と同じ意向を持って努力しているわけであります。不透明では決してございませんが、だんだんその時期が迫ってくるとなると、なかなか具体的に返答ができないというふうに御理解願えれば結構でございます。
  32. 竹田四郎

    竹田四郎君 二月中ぐらいには出かけられますか。
  33. 園田直

    国務大臣園田直君) 何月中というわけにはまいりませんが、一生懸命努力をいたします。
  34. 竹田四郎

    竹田四郎君 はっきりその日時を明確にしてもらいたいわけでありますが、何かこんにゃく問答をやっていてもしようがありませんから、次へ進みます。  今度の政府の大きな役割りというのは、国民生活安定のために雇用を確保していく、創造していくんだ、こういうふうに各大臣とも述べられているわけでありまして、その中で特に失業予防措置大分力を入れて述べられているわけでありますが、具体的に失業予防をどのようにやっていくか、どうも私どもは余りはっきりしませんけれども失業したときのことは若干出ておりますけれども失業予防措置というのは大きくどういうふうになさっているんですか。これは労働大臣でしょうか。
  35. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御案内のように、このたび、政府は、いわゆる十五カ月予算という、こういったことで公共事業を中心としまして積極的な大型予算によって一日も早く景気を回復するという、これがもう何といっても雇用問題の大前提であることは御案内のとおりでございまして、そういった背景のもとに雇用安定資金制度を積極的に活用する、同時に特定不況業種離職者の臨時措置法、これをまた活用する、こういったことを推進いたしまして、特にまた中高年齢者に対しては民間の力を活用いたしまして新しく雇用をつくり出すという、こういった方向に努力して、特に最近の円高状態が厳しくなってまいりまして、そういったことを強力に推進してまいりたい、このように考えておる次第でございます。
  36. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうもいまの労働大臣のおっしゃっていることがよくわからないわけですが、抽象的にただ民間の力を活用するというだけではどうもよくわかりません。  で、私どもはすでに労働省に雇用について申し入れているわけであります。その中で、私どもは、まず解雇の規制ということを大がかりにやらなくちゃいけないと思いますけれども、最近の経営者の動きを見ましても、生産は上がっても雇用を大きくするという考え方はどうもないようであります。減量経営をますます進めていきたいという考え方のようでございまして、せいぜい残業時間を多くするとか、能率を高めるとか――能率を高めるのは当然でありましょうけれども、あるいは常用労働者数はどちらかと言うと減らして、パートとか臨時とか、あるいは下請外注とか、こういうところにあるようでありますけれども、私どもは、そういう意味では労使公ですか、これを入れて一つ委員会をつくって少し多目の解雇については事前に協議をして、なるべく解雇をさせないようにしていくという制度をつくっていきたいということを、これは労働省にも要求しておりますけれども、こういうことをやっていかないと、ことしの上半期というものは恐らく失業者が相当出てくるんじゃないか、こういうふうに思いますが、どうでしょうか。
  37. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のとおり、非常に厳しい経済情勢の昨今でございますから、この問題につきましてはもう労使が一体となり、また政府もこれに参画をいたしまして、最近、産業労働懇話会という、こういった場などを積極的に活用いたしまして、ひとつ何とかしていわゆるトンネルの出口を見つけるべく全力を挙げておる、こういったことでございまして、われわれとしては、すでに過去相当実績を持っております産業労働懇話会の場などを中心に御指摘の方向に向かって努力をいたしたい、このように考えております。
  38. 竹田四郎

    竹田四郎君 それでは私いままでどおりだと思うのですよ。そして企業マインドも減量経営、減量経営という形であれば、当然、これは何%の成長になりますかことしわかりませんけれども経済成長ができても雇用は減っていく。先ほど総理景気をよくして雇用を確保すると言うんですが、どうもそれは実質十何%のようなかつての高度成長ならいざ知らず、大した成長もできないということになれば、私はこの減量経営というのは一層進んでいくだろうと思うのですね。雇用状況というのは景気がよくなってもよくならない、こういうことだろうと思うのですけれども、これはそういうふうに考えませんか。
  39. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘の問題、確かに心配でございます。しかしながら、ほかにどういう手があるかといろいろ現在努力しておる最中でございますけれども、やはり何といっても背景は景気をよくするということ、そしてこれは長期的な問題にも関連いたしますけれども、できるだけ雇用機会を多くみんなに分かち合うという、こういったことによって労働時間の短縮の方向へ努力しなきゃならぬことと、やはり産業構造、雇用構造が変わるというこういう時代のいま転換期でございますから、やはりそういう方向に向かって雇用の伸びる仕事、職種に職業訓練あたりを積極的、機動的にやりまして対応していく、これをひとつ努力したい、このように思っておるわけでございます。
  40. 竹田四郎

    竹田四郎君 いま経営者はむしろ労働時間の短縮じゃなくて、残業時間をふやして、あるいは常用労働者を少なくして臨時労働者を入れる、こういう雇用の不安をむしろ助長しているわけであります。そういう意味で、私どもは、週休二日制を義務的にしていけ、それから残業制限というものをやっていけ、こういうふうにずっと要求しているんですが、これはどうですか。
  41. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) お答えいたします。  ちょうど私が労働大臣就任直後でございますが、中央労働基準審議会から公労使一致した建議をいただきまして、労働時間のあり方について、政策の進め方についてという、こういう趣旨でございまして、やはりそういった方向に努力していくということは当然考えなきゃならない。ただ、いまのような現在非常に不況でございますから、経営者が減量経営ということでいま御指摘のような方向に行かざるを得ないような事態もわれわれは無視するわけにはまいりません。十分それを踏まえながらも、雇用の拡大に労働省としては全力を挙げる、そして勤労者の生活の安定と福祉の向上に向かって全力を注ぐということでこれからもがんばりたい、こう思っておる次第でございます。
  42. 竹田四郎

    竹田四郎君 それから失業保険の給付日数でありますね、これは特定業種についてはなるほど若干延ばされているわけでありますが、必ずしも労働省なり通産省の指定している特定業種だけでないと思うのですね、いまのは。こういうものについては当然私はそういう規定にとらわれず、少なくとも一律に延ばしていくべきだ、こう思うのですが、その辺の改正の御用意はございますか。
  43. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 雇用保険の給付の問題につきましては、御承知のごとく、特定不況業種の場合、これは九十日、それ以外の場合は六十日延期するという方向で、この五十三年の四月以降、六十日まで給付の延長ができる、こういうふうに予算措置をいたしております。
  44. 竹田四郎

    竹田四郎君 それはぜひひとつ、特定業種以外でも困っているわけでありますから、全般的に適用できるように改正をしていただきたいと思います。  それから、私ども申し上げております雇用の二十万人創造でございますけれども、これは毎日の新聞を見ても、たとえば老人が一人で焼け死んでいるとか、あるいは老人が亡くなって相当期間たってから発見されるというような事態がこのごろの新聞に非常に多いわけですね。ぼくは、こういう意味で、たとえばホームヘルパーなどもいま何人ありますか、恐らく一万一、二千人の予算単価は出ているようでありますけれども、実際にはホームヘルパーなんというのはいま一番頼られ、必要になっていると思うのですよね。こういうようなもの、これは地方自治体が当然雇用するということになると思いますけれども、そういうようなものとか、たとえば最近のスポーツなんかの、非常な余暇ができてきてスポーツをやる、そのスポーツの指導員とか、こういうようなものをもっと雇用すれば、国民生活の実態の中ではそういう人たちを望んでいるわけですね。あるいは聾唖者については手話通訳者、その他のそういう身体障害者とか、あるいは高齢者とか少年とか、こういう者にはまだまだ介護をしたりあるいは指導したりする人というものが私は要ると思うのですよ。  この辺、積極的に、これからの余暇時代あるいはこれからの老齢化時代、こうしたものに備えていくためにも私はこういうものをやっていくべきだと思うのですけれども、これはどうですか。これは厚生大臣にもお聞きしたいし、自治大臣にもお聞きしたいと思うのですが、どうですか。
  45. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 竹田議員御指摘の方向、まさに私もさように存じております。したがって、ホームヘルパーを初めとして、新しく雇用需要の伸びる方向に職業訓練を機動的にまたその需要に対応していきたい、このように考えて、職業訓練法の改正もいずれ御審議を願う、こういうふうに考えております。
  46. 小沢辰男

    国務大臣(小沢辰男君) お答えいたします。  家庭奉仕員の拡充につきましては毎年努力をいたしておりますが、五十三年度は、人数としては約一万三千人確保するようにいたしております。手当額等についても増額を図っているところでございます。
  47. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 各地方団体におきましては、限られた財源の中におきまして、地域住民の皆さん方の御要望に最大に沿うために日夜努力をいたしておる、かようなことでございます。したがって、限られた財源の中ではございましても、最大の配慮をいたしながら、地域の皆さん方の幸せのために各地方団体がやっていく、このことには賛成でございます。
  48. 竹田四郎

    竹田四郎君 その辺が私は国民の不安解消のやっぱり一つの手段だと思うんですよ。ところが、政府の方は、地方公務員をふやすのはけしからぬ、こういうような答弁が出てまいるわけでありますが、もうそういうことは、総理、どうなんですか、国民の日常生活に安心を与えていく一つの手段だろうと思うのです。そういう意味では、そういう面での雇用というものを政府はひとつ積極的にふやしていくべきだ。どうですか、総理
  49. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 雇用の創出でございますが、これは一番大事なのは仕事がふえるという、こういうところじゃないか。そういうことから、それに一番近道である公共事業をやろう。しかし、その公共事業も、わが国の社会におきましては、生活関連の投資が非常におくれているものですから、それを中心といたしましたそういう種類の公共事業に重点を置いた仕事をやろう。そこで需要創出という、これは相当私は効果がある、こういうふうに見ておるわけです。  しかも、非常にこの問題は急いでおる、そういう問題です。まあ三月危機だとか四月危機だとか、そういうことが言われる。そういうようなことが言われるところの客観的な理由というものもそれなりにあるわけですから、早く雇用対策にひとつ効き目があるような施策というので、御承知のように十五カ月予算という構想をとりまして、そして五十三年度予算は待たない、もう五十二年度の第四・四半期からこれを実行していくということにしたわけでありますが、いま問題として提起されておるホームヘルパーとかそういうようなことにつきましても、社会保障体制というようなことから、財政が非常に窮屈な際でありますから、考慮してはおりまするけれども、そういう仕事というか、なかなかそういう財政資金だけでこの雇用をつないでいくというような考え方になりますと、また将来の財政ということを考えるときに若干問題がありゃしないか、その辺はほどほどに財政の状況を見ながらやっていかなければならぬ問題ではないか、そのように考えております。
  50. 竹田四郎

    竹田四郎君 いまの総理答弁、私了承したわけじゃありませんでして、むしろそういう方向は私は明らかに間違いである、こういうふうに言っておかざるを得ないと思うのです。  労働大臣にお尋ねしますけれども、中高年層の雇用促進ということを大変おっしゃっておりますが、中高年層の雇用特別立法があると思うのですね、措置法がね。そして、それは中高年層を六%以上雇いなさいという雇用率というものが出ていると思うのですが、いまこの雇用率の達成はどのくらいですか。
  51. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) お答えいたします。  中高年齢層の雇用率、制度上努力義務として六%ということになっておりますが、現在五・六%、こういう状況でございます。
  52. 竹田四郎

    竹田四郎君 企業規模別にはどうですか、雇用者数の規模別にはどんなふうになっておりますか。
  53. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 政府委員をして答弁させます。
  54. 細野正

    政府委員(細野正君) 中高年齢者の規模別の実際の雇用されている割合でございますが、規模百ないし二百九十九人のところで八・三%、三百ないし四百九十九人のところで六・六%、それから五百ないし九百九十九人、これが五・八%であります。それから千人以上が三・九%、平均が先ほど大臣から申し上げました五・六%、こういうことでございます。
  55. 竹田四郎

    竹田四郎君 身体障害者の雇用促進の法律も同じようにできているわけでありますけれども、これは一・五%とか一・八%とか、こういうふうになっているわけでありますが、この達成率はどんなふうになっておりますか。特に民間の規模別のところを御報告願いたいと思います。
  56. 細野正

    政府委員(細野正君) 身体障害者の雇用状況でございますが、平均では一・〇九%、これは民間だけでございますが、一・〇九%でございます。規模別に申し上げますと、六十七から九十九人のところが一・七一%、百ないし二百九十九人のところが一・四八%、三百ないし四百九十九人のところが一・二一%、それから五百から九百九十九人のところが一・〇四%、千人以上が〇・八〇%でございます。
  57. 竹田四郎

    竹田四郎君 特殊法人はどんなようになっておりますか。
  58. 細野正

    政府委員(細野正君) 特殊法人の身体障害者の実際の雇用率、雇用している割合でございますが、これは〇・九五%でございます。
  59. 竹田四郎

    竹田四郎君 普通の人でさえ雇用というのが非常にむずかしいときに、中高年齢者やあるいは身体障害者の雇用というのはもっと私は厳しいと思うのですね。そのために特別立法がされて、たとえば中高年者の場合には六%、あるいは身体障害者の場合に、純粋の民間の場合には一・五%、その他の場合には一・八%という目標というものが出されているわけです。ところが、いま御答弁がありましたように、大きな企業はこれを達成していないんですね、むしろ達成しているのは小さな企業。特に政府の監督下にある特殊法人に至ってはその半分しか達成できていない。これは一体どういうことですか。片っ方でこういうことをやっておいて、中高年齢者に雇用をよくするとか、あるいは国民生活の安定をやっていくと言うんだけれども、やってることはまるで逆じゃないですか、これ。これはどうしますか、この数字は。小さなところだけにしわ寄せがいって、大きな企業は漫然としているじゃないですか、どうしますか、これは。
  60. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のとおりのような現状を私はぜひ改革をお願いをしたい。特に中高年齢者の場合には、これは努力義務でありますから、行政指導によってこれが改善を図る。身体障害者の場合には御案内のような義務規定になっております。特に、また官公庁関係はぜひこの規定された率に到達するように積極的に努力をしてまいりたい、このように考えます。
  61. 竹田四郎

    竹田四郎君 こういう数字が出てくるから、幾ら雇用を安定しようと言っても私どもちょっと信用できないわけですね。特に特殊法人が民間の平均よりも悪いというのは、これはどういうわけですか。法律をつくっておいて、自分たちの監督下にあった、それが悪いというのはどういうわけですか。これ説明してください、どういうわけなのか。
  62. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) お答えいたします。  私まだ最近の就任でございまして、事情をよく調べて、改善すべき点は改善をする、そして先ほど答弁をいたしましたような方向に向かって努力をいたしますことを答弁といたします。
  63. 竹田四郎

    竹田四郎君 しかし、私は、この数字は、労働大臣、官報にある資料をここで言っているんですよ、私がつくっているわけじゃないんですよ、これは。だから、あなたが労働大臣になったのは日が浅いとか言ったって、そんなことは、あなただけは確かに浅いでしょうけれども、あなたの下僚というのは幾らでもいるわけですよ、いままで長く勤めたのが。これ自分たちで計算して出しているわけですよ。特に、私は、この際、特殊法人のこれはいつまでに直しますか、今年中に直しますか。
  64. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 官公庁関係、まあ定員の……
  65. 竹田四郎

    竹田四郎君 官公庁関係を聞いていない、ぼくは特殊法人を聞いている。
  66. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) これもやはり予算の枠がございまして、まあ一応、すぐこの率どおりの達成はなかなかむずかしいんではないかと思いますが、極力、御指摘の趣旨というのはごもっともでございますから、計画的にこれが達成に努力をいたしたい、このように考えます。
  67. 竹田四郎

    竹田四郎君 そんな答弁答弁でないですよ。いままでの特殊法人は、その役員の退職金だとか、渡り鳥だとか、あるいは場合によっては大臣よりも高い給料を出しているような、そういう事態ですよ。予算が云々なんてことは私は言わせませんよ。
  68. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘の趣旨、よく承知いたしました。努力いたします。
  69. 竹田四郎

    竹田四郎君 いつまでに改善しますか。
  70. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) きょう、この場でいつまでにという、まあ人の問題でございますし、ひとつ誠心誠意全力を尽くしてこれが達成が一日も早く成るように、ひとつ私も労働大臣として全力を尽くします。
  71. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理大臣、どうですか。政府の機関がこういうようなでたらめをやっていて、それで雇用雇用だなんて、かね太鼓をたたいて言っているんだけれども、現実はあなたの言っていることと反対じゃないですか。いついつまでに直しますか、これ。
  72. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 特殊法人の問題、これにつきましては調査いたしまして、そして……
  73. 竹田四郎

    竹田四郎君 調査は出ているんですよ。
  74. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そうですか。いやいや、どういうふうにこれを改善することができるか、そして後刻お答えするようにいたします。
  75. 竹田四郎

    竹田四郎君 それじゃこの問題はひとつ後でちゃんと計画を出して答弁してもらいたいと思いますし、また同時に、中高年齢者にしても、大企業がこういう低い数字だっていうのは私はどうもわからぬですね、どういう行政指導をしているんですか。
  76. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 私も、こういう結果が、どういうふうにして大企業と中小企業において、大企業の方が成績が悪いかということについてつまびらかにいたしておりません。後刻調べまして御報告いたします。
  77. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうも、こういう一番基本的なところがぐらぐらだということで、ことしは雇用が最大急務でございますというようなことを施政方針演説には述べているが、どうもこれは理解ができない。だから国民は信頼しないし、不安が一層倍加する、私はこうなると思うのですね。しかし、もう時間がありませんし、日銀総裁もお見えでございますから、あと若干日銀総裁の方に御質問申し上げたいと思いますが、ひとつ雇用のいまの問題はとにかく早い時期にはっきりしてください。  日銀総裁にお尋ねいたしますけれども、最近、あなたは日本経済が明るい兆しが見えてきたというようなことを、私新聞でしか拝見いたしませんけれども、明るい兆しが見えてきたと、こういうふうにおっしゃっておりますが、それは一体どういうことなんですか。そして、それはかなり継続するものですか、どうですか。
  78. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) ことしになりましてから、まだ経済指標がそろっているわけじゃございませんので確たることはわかりませんが、先般、支店長会議を開きまして全国の情勢について報告を受けました。  その中に一、二少し情勢が変わったような点が見受けられましたのは、一つは、昨年の秋ごろ円高のさなかにおきましては前途についての見通しを失いまして大変企業家心理が混迷いたしておりましたのが、その後における円相場の小康ということもございまして、やや落ちつきかけておる、円高にいかに対処するかということについていろいろと考えをめぐらす余裕もできかけておるというような感じの報告が何カ店かの支店長からございましたのが一つでございます。それからもう一つは、第一次補正等に伴う公共事業の執行の促進ということが、具体的に建設業の受注の増加、それに関連した事業の生産、出荷、在庫等の面にいい影響となってあらわれておるようでございまして、物にもよりますが、在庫調整がかなり進んだ業種が見受けられるという点、この二つは、この秋ごろの情勢と違って、やや愁眉を開きました点でございます。  しかし、他面、民間の設備投資ないしは個人消費につきましては、まだ依然として低迷状態が続いておるわけでございますし、さらにはまた、円高の具体的な影響はむしろこれから出てくるわけでございますので、私は、経済情勢全体としては厳しい情勢がまだ続いておるのではないか、若干明るい材料も見えておりますけれども、まだ経済情勢の潮の流れを変えるところまではいっていないのではないかというのが私どもの現状判断でございます。
  79. 竹田四郎

    竹田四郎君 公定歩合の引き下げという要望がかなりあるわけでありますが、年初には公定歩合の引き下げがあるのではないかと、こういう観測がかなり一時流れておりましたけれども、最近はそういう話は少なくなってきているようでありますけれども、公定歩合の引き下げについてはどういうふうにお考えでございますか。
  80. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 先ほども申し上げましたような厳しい経済情勢に対処しまして、何とかしてここで景気の回復を着実なものにする、内需を拡大し、国際収支の黒字幅を縮小するということが当面の喫緊の課題であると存じまして、その意味で、私ども、さきに政府で策定されました十五カ月予算、思い切った財政面からの刺激効果に大いに期待しておる次第でございます。  金融面からも、この景気回復をいろいろと支援していかなければならないことはもちろんでございますが、幸いにして金融は量的な緩和はもうすみずみにまで浸透しておるようでございますし、また、金利につきましても、昨年三回にわたりまして行いました公定歩合への市中貸出金利の追随的低下がことのほか順調でございまして、短期金利に関する限りは都銀では史上最低の金利がすでに実現しておるわけでございます。金融機関も利ざやが縮小して苦しい中ではございますが、今後ともさらにこの貸出金利の低下を図ることに努力をいたしておりますので、その面からも支援の体制は整っておるのではないかと思っております。私どもといたしましては、今後の情勢次第にもよることでございますが、当面のところは情勢の推移をしばらく見きわめるつもりでございまして、いまのところ公定歩合を引き下げることは考えておりません。むしろ、そういうマクロ的な問題のほかに大変大切なのはミクロ的な対処ではないか。いろいろと構造不況業種でございますとか、経営に困難を来しておる業種も、企業も数多いわけでございますので、それにつきましては各金融機関が常時連絡を緊密にして情勢を把握し、適切な時期に適切なアドバイスをしていくという体制を怠ってはいけないというようなことで全国金融機関にもお願いしておる次第でございます。私どもも、その点は大変大きな当面の課題であると考えておる次第でございます。
  81. 竹田四郎

    竹田四郎君 時間がありませんので、もう少しお聞きしたいことが総裁にありますけれども、それはまた後日に譲って、一つだけ、今日の国際通貨の現状から見まして、ドルというものの権威というものはもう必然的にこれは回復することはないだろう、だんだんだんだん弱くなってくる可能性の方がむしろ強いだろうというふうに私は思っております。そういう意味で、ドルとマルクと円、これはこれから国際的な通貨としてかなり大きく見られてくるだろうと思うんですけれども、ローザ構想というのが発表されたわけでありますけれども、これについて総裁はどんなふうなお考えなのか。私はある程度理解できる面もあるわけでありますが、どんなふうにお考えですか、お答えいただきたいと思います。
  82. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) ローザ構想は、御案内のごとく、ドルとドイッチェマルクと円、その相互間におきまして一定の変動幅――ターゲットゾーンを設けまして、その範囲内の変動で極力おさまるようにしたい、それにつきましては要すれば共同介入等も実施したいというのが骨子でございます。  私ども、この通貨制度をできるだけ安定したものに今後とも改善していかなけりゃならぬということにおいては全く同感でございまして、その意味でローザ構想は将来のあるべき一つの構想、姿ではないかと敬意を払っております。  ただし、現在では各国のインフレ率がかなり食い違っておりますし、また国際収支の構造も大分違っておりますし、それを受けまして現実の国際収支にもアンバランスが非常に大きく目立っておるわけでございます。そういう状況のもとにおいて直ちにローザ構想をとり得るかどうかということになりますと、もう少し事態の進展、落ちつきを見なければならないのではないか。現状では、この許容されるべき変動幅――ターゲットゾーンの設定すらなかなか困難な状態じゃないかと思うわけでございまして、もう少しこの情勢が熟するのを待たなければならぬのじゃないかと思っております。しかし、基本的な構想そのものにつきましては敬意を払っておる次第でございます。
  83. 竹田四郎

    竹田四郎君 ありがとうございました。
  84. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 日銀総裁は退席してよろしゅうございます。まことにどうもありがとうございました。厚く感謝いたします。  なお、日銀総裁におかれては、矢原先生の質疑の際は、再度、御出席をお願いいたします。
  85. 竹田四郎

    竹田四郎君 けさの新聞を見ますと、牛場対外経済相とECのジェンキンズさんとの話し合いが持たれまして、大分強くジェンキンズさんは、このままであるならば対日輸入規制、こういうことも辞さないし、場合によれば東京ラウンドのこれについても阻害要因になるかもしれないという、かなり強硬な意見が出ているわけでありまして、ECでそうした意見が出てくる、あるいはそれが一つの保護貿易主義につながりかねないという面も私はあるだろうと思う。これに対して、アメリカには大変譲ったけれども、ECには余り譲らないという感情的な面もあると思うんですが、これに対して、一体、どのように対処していくつもりですか。
  86. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先般、主として米国との間でございましたが、対外調整をいたしました際に、私ども、当然、たとえば関税の前倒しなどでございますけれども、対米関心品目だけではこれは適当でないので、ECの関心品目も考えなければならないという問題意識は最初から持っておりまして、可能な限りそのようにいたしたつもりでございます。しかし、なお、ECの関心品目に、向こう側といたしましては、不十分な点があるという意見であるようでございますが、これは当然ジュネーブで行われます東京ラウンドの対象になるものである。せんだっての前倒しは一部でございますから、その際にも考えたつもりでございますが、足らざるところは東京ラウンドの場において協議せられるべきものであろう、かように考えております。
  87. 竹田四郎

    竹田四郎君 余りよくわかりませんけれども、特に欧州製のエアバスを買え、こういうことを言っておりますのですが、これはどうなんですか、運輸大臣
  88. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) ただいまお話しのような要請がございました。目下検討中でございますが、事務的にはなお今後必要なこともございますが、私は理解を持って臨みたいと考えております。
  89. 竹田四郎

    竹田四郎君 理解を持って臨むということは、買うということですか。
  90. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) いろいろの手はずを整えまして、差し支えがなければそういう方向へいくべきではないか、時代の趨勢はそうではないかというような気が私はしておるのでございます。しかし、これにつきましてはなお若干問題もあるようでございます。遺憾なきを期していきたい、そう考えております。
  91. 竹田四郎

    竹田四郎君 けさの一部の新聞では、東亜国内航空がエアバスを八機買うという記事が出ておりましたが、これはどうなんですか。
  92. 福永健司

    国務大臣(福永健司君) そういう意向があるように聞いております。まだ私に対して正式の申し入れというところまではいっておりませんが、なお、こういう日本が黒字が多いというようなこと等から、買ってもらう側からもぜひひとつやってくれというような話もあるようでございます。しかし、これらを総合的に判断して、いまわが国がいかにすべきかという見地から解決していきたいと考えます。
  93. 竹田四郎

    竹田四郎君 総理は、この間二十八日ですか、九日ですか、つい二、三日前でありますけれども、マンスフィールド大使が帰国をされるということで総理のところにあいさつに来られた。そのときに、総理は、七%の経済成長については最大限の努力をする、こういうふうにマンスフィールド大使に述べたと、こういうふうに言われますけれども、それは本当ですか。
  94. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日米間の数カ月の論議、これが一応の決着になったということを多とする、そして問題はこれをどういうふうに実行していくか、こういうことがこれからの問題なんで、それにつきましては、私は、日本政府としても全力を尽くすということは申し上げてあります。
  95. 竹田四郎

    竹田四郎君 七%が国際的な公約であるかないかということが年初来大変議論になってきたわけでありますが、まあ努力目標と言ってみたり、あるいは七%が七%程度になったり、いろいろその辺が大変、自民党の党内の問題なのかどうなのかよくわかりませんが、いろいろぼやかされてきたわけですが、マンスフィールドさんにそういうふうに言ったというのは、国民とすれば、とにかくアメリカの代表に日本の代表が言ったんですからね、これはアメリカとの私は一つの国際公約というふうに国民は見ると思うのですが、どうでしょうか。
  96. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) マンスフィールド大使にはコミュニケ全体のことを言ったのです。日米関係はコミュニケで大分詳細に書いてあるが、この線を実行する、こういうことでいいんじゃないでしょうかと、日本政府としてはこれは全力を尽くしてやるつもりであると、こういうので、別に何も約束したとかしないとかそういう角度の問題じゃございません。  いま恐らく竹田さんの頭には七%のことが頭にあってのお話じゃないかと思いますが、これは共同声明にも非常に注意して書いてあります。日米双方は、これはインフレのない成長、これをやっていくということで合意した、なおこれに関連して、日本側は日本国内運営において七%成長ということを中心として考える云々ということが書いてありますが、そういうことで、七%成長問題につきましては日本側のそういう決定を述べただけの話であって、これを国際的に公約をすると、これはそういう性質のものじゃそもそもないんです、これは。一国の経済の運営のかなめとなるべき成長、それが外国と約束あるいは交渉の経過で決めらるべしと、そんなようなものじゃありません、これは。私どもは、この問題につきまして日米交渉中いかなる段階においても約束めいた話はいたしておりません。むしろ、逆にこのような話は、向こうから出てくる、初めの段階で出てきそうな段階があったのです。そういう際には、これは日本の国の内政の問題だから、話は手を触れないようにというようなことで、この問題は自今問題にすらされておらぬ、こういう性質のものでございます。
  97. 竹田四郎

    竹田四郎君 実は、私、この七%の問題が国際公約であるかどうかは余り重要には考えていなかったわけでありますが、わざわざマンスフィールド大使が帰るときにそれをまた言うということは、やっぱり国際公約に本当は考えているんだというふうにしか私は考えられないんで、あえてまたきょうこの問題を出してきたんですが、私は、国際公約であろうとなかろうと、とにかく九カ月なり十カ月たったところで、それよりもはるかに低い数字が出たら、これは何らかのお返しがちゃんとこの間の円高と同じように来るわけでありますから、それが国際公約であるかどうか、そのことが重要なことよりも、あなたがわざわざマンスフィールドさんが帰るときにそういうことを言わなくとも私はいいと思うのですね。新聞によると何か言ったように書いてあるのですが、共同声明のことも、私はそういう内容について言わなくてもいいことをあなたはわざわざ言って自分の身を苦しめているような気がしてしようがないんですが、どうなんですか。
  98. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 竹田さん、どうも間違った情報を基礎にしてお話しされているようですが、私は、七%ということは一言も触れませんよ。そんなことは全然ありませんから、それはそういう前提でお尋ねのほどをお願い申し上げます。
  99. 竹田四郎

    竹田四郎君 言ったか言わないかは、これから日米の経済情勢がどうなってくるかによって、それは恐らく証明されるものでありますから、私は、ここで言ったとか言わないとかということを、私も聞いていたわけではございませんので、これ以上追及する気持ちはありませんけれども、しかし、そういうことを言ったということは、あなたがそれを言った言わないじゃなくて、それはやがてまた日本からアメリカへの輸出の規制の問題だとか、あるいは円高の問題だとか、あるいはその他の問題で私ははね返ってくる、そのことが私は実は心配なんです。ですから、そういう点では十分に私は御注意を願いたいと思うのです。  経済企画庁長官にお伺いするわけでありますが、どうも政府の七%という数字は大き過ぎるわけですね。ずっと各民間の見通しを見ましても、どうも七%という数字は出てこないわけなんですけれども、これはどこが違うんですか、民間と政府のと。飛び抜けていますね。ほかは大体四%から五%台ですね、実質の成長率が。政府だけ七%というのはどうもよくわからぬ。恐らく他の民間の機関も政府と余り違った数字は持っていないだろうと思います。むしろ民間の方が五千億から一兆円の所得減税等を前提にしていたり、あるいは公定歩合の〇・五%ぐらいの引き下げを予想した、そうした仮説を入れて、それで数字を出しているわけですね。どうしてこんなに違うんですか。いままでの政府経済見通しというと、民間の、こう並べてみて大体中間ぐらいのところに座っていたんですが、今度だけはずば抜けて高く出しているのはこれはどういうわけですか。七%のできたいきさつも、何か鉛筆を一なめしたら六・七%が七%になったという話を私ども聞いておりますけれども、その辺は一体どうなんですか。
  100. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 確かに民間の見通しはほとんど全部政府のよりも低うございます。かなりそれも差がございますが、これは多くの見通しが昨年じゅうになされておりまして、したがいまして、昨年末政府が財政を中心にして税制を含めましてこのような努力をすると、これはいわゆる臨時、異例のことでございますが、そこを十分織り込んでいなかったということは、これは私は事実であろうと思います。  その点が一つでございますが、もう一つは、やはり国内における在庫調整の見方が違うのではないか、すなわち長年政府は公共投資をやってきたが、その効果というのは十分に波及効果となっていないではないか、したがって今回ある程度の公共投資をやっても結果は同じではないかという気持ちが予測者の中に、民間には多いのではないか。私どもは累積的な公共投資の効果とこのたびの十五カ月予算の効果というものは、これはさしもの大きな在庫を実はかなり調整に向かわせつつあるのではないかという見方をいたしておりまして、この違いによりまして公共投資の波及効果が、すなわち個人消費につきましても、企業設備投資にいたしましても、在庫投資にいたしましても、あるいは住宅も税制等の問題がございますので、ほとんどの項目が民間の見通しが小さい、私ども見通しが大きい、こういうことだと思います。
  101. 竹田四郎

    竹田四郎君 まず民間の設備投資の名目的な伸び率が九・九%というふうに出してありますね。この質問に対して福田総理は、電力業界が五兆円の設備投資の前倒し、これをやることが大きく、四兆円ですか、伸びたと、こういうふうにおっしゃっておられたのですが、これは河本通産大臣にお尋ねしますが、あなたは五兆円というようなことを電力業界に要請なさったようでありますけれども、去年もたしか、四兆円という大きなものじゃありませんけれども、かなりのものを電力業界に前倒し投資をお願いをするということで、去年も政府の方は要請したと思います。しかし、その実効というのは余り上がっていないと思うのです。今度の場合にいたしましても、電力業界としてはそんな無理なことを言ったってしようがないと、こういうふうに言って、努力はするけれどもとてもそんな金額にはならない、こういうふうに言っているわけでありますけれども、これは河本通産大臣どうですか。それはあなたのおっしゃっている五兆円を電力業界はことしの前倒し投資でやってくれるんですか。あるいは具体的に契約をし、あるいは金の支払いが起きるところのそういう契約をことしじゅうにやってくれるんですか、どうですか。
  102. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 電力業界が五十三年度中に確定をしております投資額は約四兆円強であります。しかし現在の電力投資の現状を申し上げますと、全国で発電所を建設中のところが六十カ所ございます。なお近く着工しなければならぬところが百五十一カ所あるわけでありますが、そのうち二十二カ所を最重点地区に指定をしておるわけです。ところが、五十二年度は立地問題の関係でなかなかそれが思うように進まなかったのです。で、五十三年度は政府の方も全力を挙げましてこの立地問題の解決のために協力をしていこう、こういう体制を確認をいたしました。そしていろいろな形でこの立地問題の解決にいま取り組んでおるところでございます。そこで電力業界に対しまして四兆円は確定をしておるが、なお百五十一地点の促進のために全力を尽くすので、その進行状態を見てなお一兆円ばかりの追加投資を考えてもらいたいという要請をしております。電力業界もそれに対しては、立地問題の促進状態を見まして一兆円の追加は考えてまいりましょうと、こういうことでございまして、なお一兆円は確定をしたわけじゃありませんが、積み増しの方向でいま努力をしておるところでございます。
  103. 竹田四郎

    竹田四郎君 この話も、恐らく私は去年の経緯から、それから電力立地の状況というのがそんなにことしになって変わっているわけではありませんし、若干電源地域の市町村に交付金をふやすとか、何かそういうような若干の色をつけている。しかしそのぐらいな色づけで一挙にここで発電関係の投資がふえるというふうには私は思いません。現実に五十二年度の民間設備投資は当初一二・二%でしたね。それがこの九月の例の総合経済対策ですか、このときには見通しが六%になり、最近はもっと低くなって実績見込みでは三%になってしまったこういう状況、あるいは経企庁がお調べになっている法人企業の投資見通しの一-三月あるいは四-六月、こういうところの経営者のアンケートに基づいても、私は民間設備投資がこんなにふえるはずがない。何を確信して私は九・九%という伸びを経企庁ははじいているのかよくわからぬのです。国民もわからぬと思うのです。どうしてそういう九・九%という数字になったのか、もう少しわかるように、場合によればその資料等を私どもにいただいて、ひとつその辺を明確にしてもらいたいと思うのです。ここで政府の方は七%いくと、こう言っている。これはもし七%いかないということになったら今度は反動が大きいですよ、二年にわたって政府国民をだましたということになるわけです。その辺は去年と違ってもっと明確な説明というものを国民にしてもらわなければいけないと思うのです。
  104. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 私ども昭和五十三年度末、すなわち五十四年三月ごろにおける稼働率指数を九二ぐらいと考えておりますから、稼働率としては八二、三ということで、そういう状況において一般的に製造業の設備投資が新規に行われるということは単年度中には大きな期待はできないと考えておりますことは、竹田委員のお考えのもとにありますこととそんなに実は隔たっておりません。したがいまして、九・九%というのは名目値でございますが、そのうち製造業に対しては名目値で三%しか期待をいたしておりませんで、しかもいわゆるその中の大企業に対しては一・八ぐらいのことしか考えておりません。それに対しまして電力を含みます非製造業には一三・八、その他個人、金融というところにある程度の期待をいたしておるわけでございますが、製造業に対して大きな設備投資の伸びを期待することはこの単年度中には困難であろうと考えております。
  105. 竹田四郎

    竹田四郎君 そういうことで恐らく政府の民間設備投資の見方も私は過大ではないか。いろいろこれは予想の問題ですからわかりませんけれども、もしそういう形でおやりになるというなら、これは調整インフレか何かをお考えになって名目的にふやしていく、こういうことにならざるを得ないというふうに思うわけであります。  それから民間住宅投資、これも私は少し多過ぎやしないか。確かにことしは住宅金融公庫にいろんな措置はとられたんですけれども、しかし住宅全体の投資というものは、民間が金融公庫に乗りかえた、こういう部面というのが非常に多いわけです。そうなってくると、これも幾ら政府が公庫住宅金融にいろいろな措置をしても全体としては去年に比べてそうふえない、特に土地が得られない、こういう点から見ましても、これも若干私は多過ぎやしないかと思うのですが、どうですか。
  106. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 確かに昨年中の推移を見ますと、住宅金融公庫へ民間金融からの乗りかえという部分が相当実はございまして、その点私どもも非常に気を使って推定をいたしておるわけでございますけれども、五十三年においては民間の住宅ローンも、及び住宅金融公庫はもちろんでございますけれども、ある程度伸びを考えていいのではないだろうか。それは減税の問題もございますから、それも加えましてでございますけれども、ほぼ順調な伸びを示すのではないだろうかと考えておりますが、これはまさに御指摘のように一つ見通しの中のむずかしい問題でございます。つまり消費者側と申しますか、国民全体が経済の落ちつきというものを心理的にどういうふうに考えていくか。私どもの推算では、徐々に雇用所得の伸びも、何と申しますか、安定していくと考えておりますので、そういうことも心理的にはいい影響があるのではないかと考えておりますが、確かにこの点は見通し一つの大事なポイントになろうと思います。
  107. 竹田四郎

    竹田四郎君 まだ聞きたいことがあるんですが、最後に一つ経企庁長官に聞きたいと思うのです。  政府の経常収支の見通しですが、六十億ドルということになっておりますね。ことしは恐らく百億ドルをオーバーをするということになろうと思います。そうしますと、ことしに比べて少なくとも五十億ドルからの輸出がそれだけ抑えられるということになりますね。そういたしますと、なるほど貿易関係を入れて七%の成長ということになるんですが、国内だけを見ましたらそれだけの分が落ちるわけですね。そうすると、国内の成長率という考え方をいたしますれば、これは七%よりオーバーしていかないと……、国内の需要の方が大きくなると思うのですね。そういう意味で、国内だけの需要では大体どのくらい七%から上がるというふうにお考えですか。
  108. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 結論としては七・四、五を見ておる竹田委員の御推論は正しいので、そうならなければならないはずですから七・四とか五ぐらいを考えておるわけでございます。経緯を申しますと、輸出の方はもう恐らく数量的な伸びはないであろう。価格的には七ぐらいの伸びがあるかもしれない。輸入の方は数量で七ぐらい、価格で五ぐらいの伸びを見ております。
  109. 竹田四郎

    竹田四郎君 そうしますと、来年度の国内景気というのは相当あおらないと私は七%成長というのはちょっとむずかしかろう、こういうふうに思います。そのときには今度は外国の方から当然批判が出てくるだろう。またことしと同じような経済情勢が私は出てくることを非常に心配するわけです。これはそのときになって補正予算を組むとかいうようなことでまた大騒ぎになってやると思うのですけれども、どうも福田総理は外圧がないと動かないですね、日本経済は。もう少し経済にしても財政にしても私は中期展望というのを出して、それを毎年幾らかずつ修正する、ローリングをしていかないと、ことしは公共事業はうんと出た、来年はどうなるか国民はわからぬ、これではやっぱり民間設備投資は私はふえないと思うのです。来年も公共投資がふえるということになりゃ、この辺でひとつダンプを買いかえよう、この辺でブルドーザーを買いかえようということになりますが、来年はどうなるかわからぬ、五十四年度はどうなるかわからぬというなら、ようしこの古いブルドーザーはひとつ全部使っちゃおうと、こういうような企業家のマインドに私はなると思うのです。  そういう意味では、経済も財政も中期的な計画を立ててローリングしていく、こういうふうなことをしないと私は企業家のマインドもふえなければ個人消費もふえなければ、すべてのものが前向きに進まないようになると思うのです。そういう意味で私は、ことしの責務としては、そうした経済の中期展望、それから財政の中期展望、特に財政の中期展望というものを明確にしていくことによって国民の前向きのマインドを引きずり出していく、こういうことが必要だと思うのですが、これ総理どうですか。その日暮らしのような感じがしますが。
  110. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私もそういうふうに考えます。そういうことで、政府には経済の面では五十年代前期五カ年計画というのがあるんです。それは五十一年から始まりまして五十五年で終わるわけでございますが、それが大体二年を過ぎようとしておる、そして三年を残すと、こういうことになっておりますが、その二年の経過を見てみますと、かなりずれだとか変化が出てきておりますので、その変化、ずれを踏まえまして、残された三年間をどういうふうに展望するか、その試算をいま急いでおるわけであります。  同時に財政、これも非常にこれから先々のことが大事になってきましたので、そのような経済の試算、これを踏まえまして、そしてこれから先、大体五年ぐらいを展望した方がよかろうかと、こういうふうに思いますが、そうなると五十七年度に至るわけでございますが、それまでの一体財政はどういうふうになるか、これは前提をどういうふうに考えるかで非常に変わってきますので、一つの展望にはまとめにくいんです。幾つかの展望になりますが、その試算をただいま急いでおります。
  111. 竹田四郎

    竹田四郎君 その点、私は明確にやっぱりことしはすべきだと思うのですね。いままでみたいな抽象的な、ちょっと変わればすぐがらがらとこう崩れてしまうような計画では私はいけないと思うのです。また同時に、一つの計画ができても、そのときの情勢によって、変わったら速やかにそれを変えて対応していくというような経済財政の政策をぜひ私はきちんと立てて、そして宮澤さんのおっしゃる不透明な部分というものを明確にしていく、これでなければ企業家精神というのが私は生まれてこないのじゃないか、こういうふうに思います。  大蔵大臣にお伺いいたしますけれども、財政収支試算、まあこれは大量に国債が出てまいりまして、私どもは一体将来の財政はどうなるのか、これが心配なんですが、財政収支試算表はもうお出しになったんですか。いつ出すんですか。
  112. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) いま総理からお話のありました、経済計画の手直しをいただきまして、それに基づきまして昭和四十七年までの展望を財政収支試算としてお示しするつもりでいま……
  113. 竹田四郎

    竹田四郎君 五十七年でしょう、四十七年でなくて。
  114. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 五十七年まで。五十四年から五十七年までの収支見通しをお示しするように目下準備中であります。
  115. 竹田四郎

    竹田四郎君 いつ出すんですか。
  116. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 通常予算が提出されるときまで……
  117. 竹田四郎

    竹田四郎君 提出されているんですよ。
  118. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 一日に。いま補正予算でございますので……
  119. 竹田四郎

    竹田四郎君 提出をされているでしょう。あなたはこの間ここでしゃべったでしょう。
  120. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) これが委員会にかかります、衆議院では二月一日からかかる予定でおりますので、二月一日までには提出したいと思っております。
  121. 竹田四郎

    竹田四郎君 二月一日に出されるということであるならば、もう大体その大要ができているわけでしょうから、御説明いただきたいと思います。
  122. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) まだ、いまいろんな前提を置いてやっているわけでございますので、二月一日までぜひお待ちいただきたいと思うわけでございます。  ただ、申し上げておきたいことは、一つのケースではございませんで、五つぐらいの場合を想定いたしまして、そしていろいろ御審議をいただきたいと思っているわけでございます。
  123. 竹田四郎

    竹田四郎君 それではどのケースかよくわかりませんけれども、大体五十七年度におけるところの国債残高はどのぐらいになりますか。
  124. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) その点は、この前も本会議で申し上げましたように、現在の公債依存率あるいは公債残高が非常に異例でございますので、われわれとしては五十七年度には特例公債をゼロにすると、こういうめどで……
  125. 竹田四郎

    竹田四郎君 発行をゼロでしょう。
  126. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 発行をゼロにすると、そういうあれでやっているわけでございます。
  127. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は残高を聞いているのです。
  128. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) それはいずれそのときに出てまいります。試算のところで出てまいります。いろんなケースで、五つのケースによりまして全部違ってまいりますので……
  129. 竹田四郎

    竹田四郎君 この財政収支試算表の一つの大きな目的は、そのときにおける国債残高がどのぐらいになるかということが大きな収支試算表のポイントですよ。だから大体どのぐらいからどのぐらいまでのものは、ケース一からケース五と、いろいろあるでしょうけれども出てくるはずですよ、そんなものは、大まかなところが。それを大蔵大臣がいまにして知らないなんて言うのは、あなたは財政を預かっている人だとは私は思えない。大蔵省の役人の方で結構ですが、ひとつ述べてください。主計局長でもいいです。
  130. 長岡實

    政府委員(長岡實君) 財政収支試算につきましては、その基礎になります経済計画の改定と申しますか、改定まではまいりませんけれども、五十五年度の姿、五十七年度の姿を経済企画庁の方でいろいろ試算をしていただいておるわけでございます。その試算を参考として幾通りかの財政収支試算を私どもの方が用意をいたしまして、いまの予定ではあさって国会に提出すべく準備をいたしております。企画庁の方の数字もたしか三十一日に発表すると聞いておりますので、あと二日のことでございますから、もうしばらくお待ちいただきたいと存じます。
  131. 竹田四郎

    竹田四郎君 それがはっきりしなければ、今度の補正予算のこの一兆幾らの国債発行だっていいのか悪いのか判断できないですよ。あと二、三日の問題でしょう。詰めた数字はなかなか出ないでしょうけれども、大ざっぱなところは出るわけでしょう。出ないはずはないですよ。わかる人が説明してください。
  132. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) これはいろんな計算の方法がございますし、それから先ほど五つのケースと申し上げましたのは、たとえば五十七年までに消すにしましても、歳出のカット率を一体どれぐらいにするのか、あるいは増税にどれぐらい依存するのか、そういったものと全部絡むわけでございます。そこで、それらのものをそれぞれ組み合わせまして出すわけでございますので、公債残高がどうなるかということば、それぞれのケースによって違ってくるわけでございます。
  133. 竹田四郎

    竹田四郎君 だから、大ざっぱなことを言いなさいと言っているでしょう。
  134. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) まだ、先ほど申しましたように、経済企画庁のその見通し自身が三十一日にしか公表できないわけでございますので、われわれはいまそのめどによってやっているわけでございまして、まだ発表する段階にないということを御了承いただきたいのでございます。(「だめだよ、そんなことでは」と呼ぶ者あり)
  135. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後零時四十分から委員会再開し、竹田君の質疑を続行いたします。  直ちに理事会を開きます。  これにて休憩いたします。    午前十一時四十一分休憩      ―――――・―――――    午後一時二分開会
  136. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 予算委員会再開いたします。  昭和五十年度補正予算三案を一括して議題といたします。  午前に引き続き竹田四郎君の質疑を行います。竹田君。
  137. 竹田四郎

    竹田四郎君 郵政大臣に伺いますけれども、数年来、相模原市の相模大野郵便局長佐藤和也、これが局長時代、あるいは局長をやめてからも、局長の官職を使って預金者の金を集めて、それを自分の事業に投資したりして大変多くの人が迷惑を受けている。しかも、被害者は大体年寄りのおばあさん、これが老後のために残そうとした金をその局長によって使われてしまっている、こういう事件が発生をいたしまして、その金額は恐らく五千万円以上に及ぶようであります。  これについて郵政省は監察官を中心に調査もなさっておられると思いますけれども、まず第一に、その被害者の救済を一体どういうふうにするのか、大変問題があると思いますが、いかがですか。
  138. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) お答えいたします。  御指摘どおり、本件は、元郵便局長の佐藤和也が郵便局に対する一般の信用が厚いことを利用いたしましたきわめて悪質な不正行為であり、郵政事業全体の信用を失墜し、特に関係利用者に多大の御迷惑をおかけいたしましたことははなはだ遺憾に存じているところであります。今後は二度とこのような犯罪が起きないように関係機関を集めて厳重に注意を促すとともに、私としましては最大の方途を講じて信用回復にいま必死の努力を払っているところでございます。  重ねて、被害者にどのような救済措置を講ずるのかという御指摘でございまするが、これも御指摘どおり、確かに高齢の婦人の多い点に私は意を使いまして、いろいろと法的に問題のこともあるわけでありまするが、しかし、私は、こういった方々すなわち被害者の立場に立って救済措置を講ずるべく鋭意研究を続けるとともに、先生の御意思を十二分に体しましてきわめて早い時期に措置を講じたい、かように考えている次第でございます。
  139. 竹田四郎

    竹田四郎君 ぜひひとつこれは十分に、いまお話がありましたように、特定局に対する信頼の問題、あるいは郵政事業に対する国民の信頼をどうするかという問題がありますから、十分に被害者に対しては手当てをしていただきたいと思います。  それからもう一つ、特定局長というのは、御承知のように、非常に長い期間一つの局にいるわけですけれども、もう少し転勤をして相互牽制を強めていくというようなこと。それからもう一つは、この特定局というのは局長の私宅を郵政省が借りてやるということでありまして、これからたとえば年金の支払いなどが大変多くなりますが、見ていますと、おじいさん、おばあさんが雨の日に郵便局の前へ並んでいるという姿もあちらこちらに現にあるわけですよ。それで金を取りに行っても座るところがなく、立っている。しかも長時間やらされている。こういうような点も私有局舎制に私は問題があると思います。しかし、これを全部いま公共のものにしろと言ってもなかなかこれは場所の問題もあるし、いろいろな施設の問題もあるから、すぐというわけにはいかないと思いますが、この辺もひとつ改善の計画を立てて、これからの年金受給者が雨の中、雪の中を立って待っているなどというような、そういうばかなことをひとつさせないように考慮してもらいたいと思うのですが、そういう今後の運営について、どうですか、十分検討してもらえますか、どうですか。
  140. 服部安司

    国務大臣(服部安司君) お答えいたします。  犯罪防止には正規取り扱いの励行が最も肝要であることは言うまでもございません。そこで、適確でしかも能率的な運営をさせるように、取扱方法の制定並びに指導訓練の充実、あわせて管理体制の確立などに努力しておりまするが、特に各地方郵政局、地方監察局ごとの対策協議会というものを現業局ごとの防犯打合会などを開催いたしまして、局相互間の緊密な連携のもとに、こういった事案が起きますると、徹底的にこの原因の究明を図りまして、再びこういう事案が起きないような措置を講じている次第でございます。今後も、この監察局には監察支局という制度がありまして、これを大いに活用いたしまして、御指摘どおり、局相互間のいわゆる連携を保ちつつ再犯防止に徹底を期したい、かように考えておる次第であります。  あわせて、御指摘どおり、最近は、国のいろいろな制度の上に立って、年金支給取り扱いとか、また、日常生活上不可欠の電気料金あるいはNHKの聴視料、いろいろな業務を多岐にわたって取り扱っております。雨の降る日には利用者が大変に困っているとかいう御指摘の問題もごもっともな御意見であります。御承知のとおりに、この特定局舎というのは大体古いのが多うございまして、特に御指摘の相模大野郵便局もこれはたしかそんなに新しくない建築だと思いまするが、最近の局の新築、改築に当たってはそういった時代に対応した点も十二分に考慮に入れるとともに、先ほど御指摘のあった局舎が局長所有のいわゆる借り入れ局舎という点もございまするが、この点についても、犯罪防止のために出入り口と局舎等のいわゆる制約、そういった面に十二分に配慮した建築指導をいたしております。今後も十二分に注意をいたしまして御注意を守りたいと考えております。  なお、いま一つの御指摘の、郵便局長が更迭の場合に利用者に周知徹底を図るべきではないかという御指摘でありまするが、私たちは、これはもうすでに厳重に、利用者、地域住民に認識していただけるべく通達を出すように指示いたしまして、御指摘どおりに、市町村広報なども、これは市町村の御理解を得ねばなりませんが、連絡をとって速やかにそういった機関を利用させていただいて周知徹底を図るとともに、更迭の場合には利用者が一目にわかるように、窓口の上に大きな字で、これこれの事情局長が退職しました、新しくこういった局長が任命されました、こういった告示もするように指示いたしましたことを申し添えて答弁といたします。
  141. 竹田四郎

    竹田四郎君 ひとつ、郵政大臣、これを機に一大刷新を図っていただきたいということを重ねて申し上げておきたいと思います。  次に、補正予算に関する質問を若干いたしたいと思いますけれども、今度、決算調整資金というのを二千億つくったんですけれども、何か年度末に金がなくなってしまってどうにも処置がないからこれをつくると、こういうふうにおっしゃっているようでありますが、どうも私これはよく腑に落ちないわけであります。  今日の財政法ではそういうことは許されていないだろうと思いますけれども、何か今日財政法の趣旨を外れてしまって勝手なものをつくっていく、まあ特例債もその一つのものでありますが、こういうものをつくるならば、私は財政法そのものをやっぱり一回見直してみる必要があるんじゃないか。そういうことを基本的にしないで継ぎはぎ細工をやっていくということは私よくないと思うのですよ。いまの財政法が私はすべていいとは思っておりません。たとえば、先ほどからの議論の中で、単年度主義というものは一体いまの時世に合うのかどうなのか、こういうことも十分考えてみなくちゃいけないし、赤字国債がこれだけ出る世の中にそれを毎年毎年特例法でやっていくということは必ずしもいいかどうか、これは意見が分かれるところでありましょうが、そういう点も検討してみなくちゃいかぬ。そういう検討なしに、ただ決算調整資金という大蔵省のところにへそくりの袋をつくるというようなことは私はこれはよくないと思うのですけれども、これは、大蔵大臣、もう少し抜本的に日本の財政そのものを見通した中で新しい財政制度というものをつくるべき時期に来ていると私は思うのですが、どうですか。
  142. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 現行の財政法が、御案内のように、単年度主義を貫いていることは御承知のとおりでございます。これにつきましてはいろいろな批判がございまして、やはり単年度主義から脱却すべきではないかというお話がございまして、これは検討の対象になると思いますが、これを検討することはなかなか容易でないのは御承知のとおりでございます。そんなことがございますものですから、まあ長期試算の問題であるとか、あるいは現行制度のもとにおきましての継続費とか、あるいは債務負担行為の問題があるとか、あるいは剰余金が出た場合にはどうするか、こういうことでつないでいるわけでございまして、財政法の改正の問題は大きな問題でございますが、今後、根本的なまた相当慎重な検討を要すると思っているのでございます。  このたび決算調整資金を創設さしていただきますのは、実を申しますと、むしろいまの単年度主義の立場に立ちますとやはりどうしても必要じゃないかと思って、それで御提案申し上げているわけでございます。と申しますのは、もとよりその年度の歳入が歳出に不足すると見込まれる場合には、補正予算を組むとかあるいは必要な節約をすることはもう当然でございまして、これでまず原則的には対処してまいっているわけでございます。しかし、実際問題といたしまして、年度末あるいは年度経過後に歳入が不足するということは、特に最近の高度成長から低成長になりましてからしばしば見受けられるところなのでございます。しかし、いままでは、たとえば税外収入に自然増収がありましたとか、あるいは四十九年の場合には、四十九年度内に発生した租税債権、それを四月中に収納したものを便宜四十九年度に入れさせていただきまして、まあいわばその場その場で何とかやりくりしてきたのでございます。しかし、最近のように非常に低成長になりますとその危険は非常にございますし、そうなると赤字決算を組まざるを得ないという場合がございます。補正予算を御審議願う暇がない、いとまがないという事態が十分考えられるのでございます。  そういうことで、こういうものについてどういう制度をつくったらいいであろうかということを実は財政審にかねてから御審議願っておったのでございますが、やはり現行財政法のもとにおいては、ちょうど剰余金が出たときにはその剰余金の処分をその半額は少なくとも国債整理基金に繰り入れなくちゃならぬ、こういうようなことが設けられております。マイナスの剰余金が出る場合を実は予定していないのでございますが、その公算、蓋然性が非常に高くなっておるので、それで財政審の方では、やはり単年度主義というものを貫き、そして赤字決算を組まないというためには、やはり恒久的なものとして決算調整資金のようなものを設ける必要があるんじゃないか、こういう御答申をいただきまして、今回御提案をし、そしてまた御審議をお願いしているところでございます。
  143. 竹田四郎

    竹田四郎君 今度の補正予算を編成し、提案されたねらいはどこですか。
  144. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 今度の第二次補正予算は、まあ二つ、三つあるわけでございまして、一つは、何と申しましても、円高その他による最近の不況に伴いまして、五十三年度予算と合わせて切れ目のない十五カ月予算という考え方のもとに、公共事業を間断なく、切れ目なくやるという意味で三千六百億円ぐらいの追加をするということが第一点でございます。  第二点は、同じ問題でございますけれども、円高その他によって非常な不況が来ているわけでございまして、この前の第一次補正予算では見通せなかった歳入減がいま予想されるわけでございます。お示ししているように、八千六十億ぐらい法人税、所得税を中心にして赤字が出てまいりますので、それの歳入の補てんをしなければならない。それが今度しかし財源がございませんから特例債でもってこれを処理しようとしているわけでございます。  で、また三つ目には、ただいまの決算調整資金、これも赤字特例債で処理しなけりゃなりませんので、もと金として二千億円入れさしていただきたい。  第四番目には、中小企業に対する緊急の必要がございますので百二十数億これを入れているわけでございます。  なお、特例債等の増加に伴いまして、その発行に要する経費が要りますので、国債整理基金への繰り入れを七十八億円ばかり計上している、こういうことでございます。
  145. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、今度のこの補正予算は、若干の問題はありますけれども、一番中心は大蔵省の税収見積もりの誤りをここでごまかしている、こういうふうに思うのです。  各月の昨年度に比べての税収の伸び率というものがすでに五月、六月、七月あたり、この辺に大変落ちている。しかも、この前の第一次補正のときには赤字国債を千百二十億減額している、今度はそれを逆に一兆百九十億増額している。この辺は何といっても私は筋が通らぬと、そういうごまかしじゃないですか、今度の予算は。
  146. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 歳入見積もりの大宗をなしますところの、たとえば法人税で申し上げますと、これは大体経済見通しの生産、物価、それから所得率は大蔵省で計算いたしますけれども、そういうものを基礎にして計算しておるわけでございます。七月ごろまでの、ちょうどこの前の一次予算を組みますときには七月末までの税収がわかっておった段階でございますが、そのときまでは、進捗率で申しまして去年の決算ベースよりもややよかったのでございます。したがって、あの段階ではいまのような税収の減は見込まれなかったのでございます。その後、経済見通しが大きく変わりまして、生産その他物価も変わってまいりました。それからまた、九月決算があの当時まだ、十一月が申告時期でございますのでまだわからなかったわけでございます。当時、一般には増益が鈍化するということは言われましたが、あのような減益になるということば当時予想されなかったわけでございます。その上、円高による、非常な円ベースによるところのデフレギャップが出てまいったわけでございます。  で、具体的に申し上げますと、これからは一、二、三の問題でございますけれども、一月税収で一番大きなものはやっぱり年末のボーナス、これが一番大きな要素でございます。それからまた、二月でございますと、一年決算の中小法人分が二月に出てくるわけでございます。それから三月十五日になりますと、これは申告所得税、で中小企業の一体あれがどうなるか、あるいは譲渡所得はどうなるかと、ここが最大の問題になるわけでございますが、いずれも最近におきますところの生産、物価あるいは円高等を計算いたしますと、この一次補正後新たに見込まれる要因でございましたものでございますので、今度は八千六十億という減収を計上せざるを得なかったということでございます。  なお、第一次補正で特例債の減額、千百億ぐらい減額したのはどういうわけかと、こういうお話でございますが、あの当時は、確かに歳出の追加、全体でもって二千七百億あったわけでございますけれども、当時のあれを見ますと、節約その他が相当効いたわけでございますし、また予備費も充当いたしました。そういったことから、所要財源を計算いたしますと差し引き千百億ぐらいの特例債の減を見込むことができたということで、あの段階では減らしたのでございます。
  147. 竹田四郎

    竹田四郎君 私の調査によりますと、本来一七%ぐらい税収が伸びていかなくちゃならないのに、七月には前年同月比で五・八%、八月は六・四%、こんなに落ちているんですよね。これを見過ごして、そして最後に来てどかっとやって、そのしりぬぐいを決算調整資金に求めようというのは、これは私は大蔵省の大ミスだと思うのですよ。それをここへきて何とか理屈をつけて、これを恒常化して自分たちのへそくりをつくって何とかつじつまを合わせよう、こういう非民主的なやり方については私は憤りを覚える。
  148. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) いまの、七月末までそのあれが税収ベースですでに悪かったという話でございますが、そうでないということをいま政府委員から答弁させます。
  149. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 先ほど大臣がお答えいたしましたように、第一次補正を組みます段階では七月末までの税収しかつかめておりませんでしたが、四月から六月まで御存じのとおりかなり好調な税収でございました。七月が、ただいまおっしゃいましたように、前年に比べまして一〇五・五という伸び率でございましたが、これは特別減税が七、八と固まってございましたのでその影響も調整しなくてはいけないということがございまして、七月末の累計で見ますと、七月末で一一六・八の税収であったわけでございます、対前年比。これに対して予算の決算に対する伸び率は一一六・五でございましたから、先ほど大臣が申し上げましたように、その段階ではまだ見かけはよかった。  しかし、九月ごろの両院の大蔵委員会で私がお答えいたしましたのは、いまのところ見かけは何とかなる形でございますけれども、これから先少し減収が生ずる危険がないと言えない、ただ、それがどのくらいの幅であるかということをつかむための的確な資料が残念ながらいまだに全然出てこない、という趣旨のことをお答えいたしたわけでございます。実際の計数につきましては、特別減税という特殊な要素があったということだけ御理解いただきたいと思います。
  150. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は、特別減税があっても、こうはならないだろうと思います。  それで、もう一つは、どうしてこの決算調整資金をこれから続けようとしているのか、その意図がよくわからない。恐らく、これからも赤字国債をうんと出して、そしてこの中でひとつ操作をしていこう、そういう遠謀深慮のもとにこういう非民主的な制度をここでつくろうというふうにしか私には思えないんですけれども、どうですか。
  151. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) そういうことではございません。先ほども申し上げましたように、年度末あるいは年度経過後に歳入が経常予算に達しない、つまり税収が不足するという事態は、現実の問題として危険が非常に起きているわけでございますので、そのやりくりをつけなければならぬわけでございます。そういう意味で、まあ言ってみますると、剰余金が出た場合のことは考えておるけれども、マイナスが出た場合のことを全然考えていない現在の財政法のたてまえでございますので、そういうものにけりをつける意味で、それでもと金二千億を入れさしていただきたい、こういうことでございまして、特例債の公債をよけいにするとかなにするとかいうこととは、これは何も関係のない事柄でございます。
  152. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 竹田君の残余の質疑はこれを留保し、都合により明日に譲ります。     ―――――――――――――
  153. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、野田哲君の質疑を行います。野田君。
  154. 野田哲

    ○野田哲君 まず冒頭に、総理にお伺いをいたしたいと思いますが、昭和五十三年度の経済の成長率について政府が立てた目標、一般的には七%ということで言われております。マスコミあるいはエコノミスト等もそういうふうに言っているんですが、総理大臣やあるいは大蔵大臣、宮澤経企庁長官の国会での発言を非常に注意深く聞いておりますと、総理も注意深く七%程度というふうに発言をしておられるのですが、ことさらに七%程度という、程度という字句をつけられるということは、何か意味があるのですか。
  155. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはさして深い意味があるわけじゃないんです。七%といいますと七・〇〇、こういうことでありますが、経済運営でありますから、そうコンマ以下まで正確にいくというようなことは、なかなかこれはむずかしい。しかし、成長目標を示した以上はこれを実現することに努めなきゃならぬ、それはもう当然のことでございます。そこで七・〇〇というような意味じゃないんだと、七%周辺というような意味なんだということで程度と言っているのですが、そういうような趣旨で使う言葉といたしましては、私は、七%だろうが七%程度であろうが、それにこだわるものではない、こういう考えです。
  156. 野田哲

    ○野田哲君 七%周辺ということだということですけれども、この七%という数字が決まった経過についていろいろ報道されておりますし、衆議院の予算委員会でもいろいろ答えておられる。宮澤さんと村山さんと河本さんが最初六・七%と、こういう目標を立てていた、それを最終的に七%にした、こういうふうに答えておられるわけですが、そういう経過からすると、七%周辺という意味は、上ではなくて、七%に近い六%台と、こういうふうに理解していいわけですか。
  157. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そうではございません。衆議院の予算委員会でも申し上げたんですが、途中の段階で六・七%、その場合には財政枠はどうなるのだという報告が大蔵大臣から私にありまして、それでそれに前後いたしましてまた企画庁長官から同じようなお話がありまして、私は、いろいろいまの経済界の状態とかそういうことを考えますと、六・七%、それでなくて七%というふうにした方がいいんじゃないかという感じがするが、それはできるかどうかそれを相談してくれと、こういうことだったんです。で四大臣が相談をされまして、その結果七%としましょうということになったという旨を大蔵、経企両大臣から私は承りましたが、それで、その際、六・七%が今度は七%程度ということになったんですから、それに応じまして財政上の計画の修正をしなければならぬ。大蔵省におきましては六・七ということで私に報告してきたその数字を、今度は七に見合うように修正をいたしまして、そして私に報告が行われた、こういうことでありますから、やっぱり七%に近い六%台というのじゃなくて、七%周辺、こういうことでございます。
  158. 野田哲

    ○野田哲君 政府が発行している文書、いろんな表現があるんです、注意深くいろいろ資料を調べてみると。で昨年の十二月二十一日ですか、一応閣議了解されて、ことしの一月二十四日に決定された「昭和五十三年度の経済見通し経済運営の基本的態度」、こういう文書があるわけです。この文書を見ると、程度という言葉、前後という言葉が使われているわけです。前後ということになると、これはプラスもあればマイナスもある、こういうことですか。こういうふうにまちまちな表現が使われるというのは、一体、これは何か特別な意味があるのですか、程度と言われたり、前後と言われたり。
  159. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど総理がお答えになられましたように、私ども政策目標を示しておるわけでございますけれども、御承知のように市場経済でありますし、国際的な関連もわが国は深くなっておりますから、時計の針のように物を言うことは適当でなくて、したがってその七%の、何と申しますか、周辺と申しますか、そういうふうに程度あるいは前後というふうに、その意味合いは同じでございますが、使っております。まあ普通、程度というのが一番私どもよく使います表現でありますけれども、特に程度と前後に違いがあるわけではございません。ただ、ぴちんと時計の針が指すような性格のものではないということは従来から同じことでございますが、「経済見通し経済運営の基本的態度」では、従来からそういう意味の表現を用いているわけでございます。
  160. 野田哲

    ○野田哲君 河本通産大臣はわりにずばっとした表現を公文書の中で使っておられますね、七%。ことしの「通産ジャーナル」の一月号の冒頭に通産大臣が論文を出しておられる。これははっきり七%と言い切っておられる。こういうふうに、いろいろこの七%をめぐっては、前後とか程度とか、あるいは通産大臣のようにずばり言い切っておられるとかまちまちな表現があると、何かそこにわれわれは疑念を持たざるを得ないんですが、これはやはり統一的な表現をされた方がいいんじゃないですか、いかがですか。
  161. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 事柄の性格は先ほど申し上げたようなことでございますので、きちんと言うといたしますと七%程度あるいは前後でございますけれども、世間では、なかなかその程度というようなことはいつもつけてはくださいませんで、私どももそれは別にこだわるほどのことではない、こう思っておるわけでございます。
  162. 野田哲

    ○野田哲君 これはやはり、総理、あれですか、前後とか程度とかいうものがどうしてもくっつくんですか、その辺いかがですか。
  163. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 経済見通しですから、これはもう何ですね、成長率ばかりじゃないんです。たとえば物価につきましても、あるいは国際収支などにつきましても、何ポイント幾らというような細かい、たとえば物価ですよ、これが予測してそこへいくはずがないんですから、もうそもそもが、たとえば物価上昇率を四・何だと、こういうように言った場合に、これはやっぱりその辺の周辺だという意味なんです。しかし、まあいろいろ議論をしていますと論をなす人もありますから、そこで念のため、正確を期する意味におきまして、程度とか、そういうふうな言葉を使っておるんですが、俗称まあ七%と申して一向これは差し支えないことであろう、このように考えます。
  164. 野田哲

    ○野田哲君 正確を期する意味で程度という言葉がつくというのは、これはどうも理解に苦しむわけですがね。  そういたしますと、ことしの一月十三日に、ストラウスさんと牛場さんが日米共同声明を出しておられる、決定されていますね。これを読むと、総理の言われるような程度とか前後とかいう表現はついてないですね、これは。英文の方でいくと、グロウス ターゲット オブ セブン パーセントフォアジャパン云々と、こうなっていますね。明確に七%と、こうなっているのです。総理がそう明確に言い切れない、予測なんだから明確に言い切れないということであれば、これはアメリカとの共同声明についても、そこにはそれなりの言葉がついていなきゃいけないんじゃないんですか。これは牛場さんがいらっしゃらないんで、園田さんの所管であろうと思うのですが、英語の堪能な宮澤さんもいらっしゃるんですが、総理のような表現であれば、そんなにきちっとした数字の上で明確に表現できるもんじゃないということであればですよ、(「アバウトに近い」と呼ぶ者あり)アバウトとかあるいはニアリーとかアプロクシミトリーとか、そういう言葉が入らなきゃいけないんじゃないですか。この点いかがですか、アメリカをだましたことになるんじゃないですか。
  165. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 大変に厳格に申せば、野田委員の言われるとおりだと私は思います。ただ、日米の話では、日本の今回の経済成長率をはじき出しました経緯、その性格等はもとよりよく説明をしてございますから、それはそれとして先方はそういうものかと受け取っておりますので、実体的な誤解があるとは私は思いません。
  166. 野田哲

    ○野田哲君 この成長率をめぐる問題ですが、総理にはちょっと聞き苦しいところがあると思うのですが、見られたかどうか、昨年の十二月三十日にワシントンポストが、総理の写真入りで、これはカーディガンを着てかなりリラックスした写真が載っておりますが、説明は余りリラックスできるような説明じゃないですよ、この写真説明を見るとですよ。経済における長い経験も何の助けにもならないことがわかったミスター福田と、こういう説明がついておりますが、これを検討してみるとですね、こういう評価をされております。  ミスター福田は、五月にロンドンで開かれた経済首脳会議出席して、六・七%の成長率と貿易黒字の完全な削減を約束をした。しかし、どちらの目標にも接近しなかった。今日主として外国の強い要求を満足させるために彼は来年の七%の成長率を打ち出している。ところが、ヨーロッパや当地のエコノミストたちは、全くこのことは達成できないだろうと予測をしている。  こういう論評が出ているわけですが、この七%が国際的にどういう性格を持つものであるか。総理は、国際公約ではない、あれは公言だということを発言されたということが新聞に出ておりますが、この点はどういうふうに総理は理解をされているわけですか。
  167. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 一国の経済運営のかなめである成長率、これを海外に対して約束をすると、こういう約束というのはですよ、権利義務が生ずるようなそういう意味の約束をするというようなことは、これは私はあり得ざることだと、こういうふうに思うのです。そういう厳しい認識を私は持っているんです。  ですから、率直に言いますと、この日米交渉ですね、これが昨年の九月ごろからずっと続いておったんです。その中途の段階、十一月ごろの段階でアメリカが日本政府に対して、日本の成長率をどうすべきであるというような意見を言いかけたことがあるんです。私はそれは待ってくれと、一国の経済の成長率なんていうのは、これはよそから見て論ぜられるべき問題でないと、日本の成長率につきましては、日本として私が全責任を持っていま考えているんだけれども、まだ私が日本の内部でこれだけ検討して成長率をどうするというのについて固まった考え方も出ていないと、それをよそから見て何%にすべきだというような議論はあり得ざることである、そういうことをもし言われるとするならば、国際社会の常則としてきわめて奇異なことである、そういう話をしたんですが、アメリカは、自来、成長率につきまして一言も言いません。しかし、わが国の七%に決まったという通報を受けまして、これは高く評価しているというふうに承っております。そういうことでございます。
  168. 野田哲

    ○野田哲君 一月二十日に、カーター大統領がアメリカの連邦議会に経済報告を行っておりますが、このカーター大統領の経済報告によると、やはり日本にかかわるくだりがあるわけです。これによると、日本が示した一連の政策という表現があるわけです。米国と協議の後、日本は巨額な黒字削減のための一連の政策をとることを示したと、こうなっているわけです。  これは恐らくストラウス・牛場会談の共同声明のことをこの中に盛っていると思うのですが、カーター大統領の経済報告に盛られて議会に提出されたということになれば、総理は義務とか権利とかいう表現を先ほど使われたんですが、権利とか義務とかいうことではなくて、国際信義の上でこれはやはり非常な拘束を受けていると、こういう認識に立つべきではないんですか、いかがですか。
  169. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 共同声明に盛られておることで、アメリカと関係のある面です。成長率なんていうのは別にアメリカと日本との間に関係のある問題じゃないんですよ、これは。関係のあるものは何だと言えば、経常黒字を六十億ドルにするとか、そのことをするためにいろいろこういう措置をしますとか、そういう点は日米間で関係はあります。  それで日米交渉におきましていろいろ日本が述べた意見、これに対しましては日本は国際信義というか、そういうような立場においてそれは責任を持つべき立場にあると、そのように考えますが、内政上の問題なんかが共同声明に書いてありますから、それは何というか、そういう性格のものじゃなくて、状況の説明を日本側からしたとか、アメリカからたとえばドルの安定に努力しましょう、その前提として石油節約法案、いわゆるエネルギー法案、これを九十日以内に国会を通過させましょうとか、そういう見解表明はありますけれども、直接日米間でつながっている問題について日本が申し述べたそのことにつきましてはそれなりの責任を感ずべきであると、このように考えております。
  170. 野田哲

    ○野田哲君 総理はそう言われるけれども、与党あるいは内閣の中でも総理の発言とはかなりニュアンスの違った発言がされているんじゃないですか。  河本通産大臣に伺いますが、河本さん、あなたは十七日の日に日本記者クラブで講演をされているわけですが、あなたの講演の内容では、七%成長はさきの日米共同声明に盛り込まれた国際的な公約であると、こういうふうな趣旨の講演をされていると、こういう報道がありますが、これは間違いありませんか。
  171. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 一時期、私はそういう表現を使ったことがありますが、その後、統一見解が出ましたので、統一見解が出ました後は、それに従っております。
  172. 野田哲

    ○野田哲君 これは統一見解ができたからそれに従ったと言うけれども、その統一見解というのは、つまり総理の表現にあなたが抑え込まれたと、こういうことじゃないですか。  もう一つ言えば、総理、自民党の大会の運動方針に七%の国際公約云々という文章があった。これを総理がじかに大平幹事長に注文をつけてこの表現を消さしたと、こういう報道がされているわけですから、あなたはどう考えられようとも、あなたの周辺の重要なポストにある人はやはり国際公約だと、こういうふうに考えているわけです。私は、やはり国際的にあれだけ昨年の暮れから牛場さんを派遣したり、ストラウスさんが来たりして議論したことですから、総理が言うように義務とか何とかいうことじゃないけれども、国際信義の上から言えばやはり国際的な約束事と、こういうふうに考えなければいけないんじゃないですか、どうなんですか。
  173. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それを約束事というふうな言葉を使いますと、これを法律攻めにしますとなかなかこれはむずかしい問題になっちゃうんですよ。とにかくそういう議論をする人もありますから、私は、そこで非常に注意しながらこの対米折衝というのをやったんです。いきさつはざっくばらんにいま申し上げたとおりでありまして、七%だ、八%だ、いろいろ議論が日本でもありましたよ。ありましたが、アメリカ側ではとにかく何%というか、パーセントは別といたしまして、この成長率論争はわが国といたしておりませんから、したがいまして、わが国がこの交渉の過程においてそれを約束したなんてそれはあり得ざることなんです。しかしながら、この七%という成長をわが国が打ち出した、これに対しましては、国際社会において、また国内におきましても、非常に大きな期待と関心を持っていると思うのです。ですから、これは責任を持ってこれの実現のための努力をすると、そういう考え方でおります。  しかし、どこまでも契約したとか、義務を負うたとか、そういう法律的な意味でないんだと。私は日本のとにかく総理大臣といたしまして、日本の主権、このことについては非常に厳粛に考えておるんです。そういう立場で公約じゃないんです。公言と言ってもよろしゅうございます。しかし、公約ではありませんけれども、その七%成長、またそれによって六十億ドルの黒字でありますとかいろんな問題があります。そういうことを実現する、これにつきましては責任を持って努力をする、こういうことであります。
  174. 野田哲

    ○野田哲君 七%の成長が達成可能かどうかというのはいろいろな見方があると思うんですが、また後の次の機会があると思いますが、河本通産大臣にこの問題について伺っておきたいと思うのです。  河本さんは、十七日の日本記者クラブでの講演で、七%の国際公約を達成するために夏ごろの景気の状況次第ではさらに需要喚起策を追加すればいいんだと、こういうふうに述べたという報道がされておりますし、それから、午前中の竹田委員の質問の中に、労働大臣がいろいろ言われた産労懇というあの場面に初めて通産大臣が出られたときにも同様趣旨の話がされたと、こういうふうに聞いているんですが、あなたの考えておられる夏ごろに需要喚起策を追加すればいいんだというのは、これはつまりまた夏ごろに模様を見て景気対策のための追加予算を組むと、こういう意味なんですか。
  175. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私が述べました趣旨は、御案内のように非常に大規模な積極予算を組んでおりまして、これを上半期、特に四月ないし六月に集中して執行していくということになりますと予想外の効果が出てまいりまして、その予想外の効果によって民間経済は当然動いてくるであろう、そして七%成長というものは達成されるであろうと、そのように期待をしておるが、世の中には万が一ということがありますから、もし万が一予想しておるような効果が出てこない場合には、そのときにはほっとくわけにまいりませんから、そのときには何らかの対応策が必要であると、こういうことを言ったわけでございまして、対応策の内容までは言ってないんです。
  176. 野田哲

    ○野田哲君 需要喚起策の追加と、こういうふうに報道されておりますね。需要喚起策の追加ということになれば、総理の本会議での演説や宮澤さん、村山さんのあれからすれば、五十三年度の前半、設備投資を大きく期待することはできないから、前半、財政の主導によって景気回復策を図っていくと、こういうふうに構想を述べておられるわけです。この前半の中で通産大臣から喚起策を追加と、こういう言葉が公の場面で出てくるということになれば、これはもう早くも現行予算では七%は達成できないから次の追加が夏ごろには考えられているのだと、こういうふうに私どもは理解をせざるを得ないのですが、この点は大蔵大臣なり経企庁長官としてはいかがお考えになりますか。
  177. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) もう一回、説明をさしていただきますが、先ほど申し上げましたように、もうすでに五十二年度の第一次補正で若干の効果があらわれ始めましたし、今回第二次補正を通していただきますと、直ちに二月から執行できる体制等もでき上がっておりますから、これまた重ねてそれに追加して相当な効果が出てくると考えております。それからまた、先ほど申し上げましたように、この五十三年度予算というものは非常に大きな内容でありますから、これは私は予想外の効果が出ると思っておるのです。したがいまして、現時点では経済が冷えておりますから、民間の方々も必ずしも一〇〇%の確信を持って後半の経済というものはあるいは期待しておられないかもわかりませんけれども、私どもは、この予想外の効果によりまして必ず後半は予定どおりの経済運営ができるものと期待をしております。  重ねて申し上げますが、しかし、世界情勢の変化等もあり、いろんな変化が予想される場合もございます。だから万一という場合も当然考えなきゃいかぬわけです。で、万一という場合には、やはり産業の操業率を高めて雇用問題を解決し、あわせて国際収支をできるだけ均衡に近づけていくというこの日本に課せられました課題というものはこれはもう大変に大きな課題でございますから、これを実行するために、やはり何らかの需要喚起策というものを万一の場合には当然考えなければならぬ、万一の場合でも考えないということではこれはいけませんから、万一の場合のことを私は申し上げておるわけでございます。
  178. 野田哲

    ○野田哲君 万一の場合のことを考えて言ったということですが、これは大蔵大臣は承知しておられるんですか。
  179. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 万一の場合のことでございますから、私はいま予測はしておりませんが、考え方はそれはいま河本通産大臣が言ったことと同様でございまして、私は、いまの予見し得る状況のもとでは、この予算で特に年度後半以降民間経済に及ぼす影響を考えますと七%は大丈夫であろう、こう思っておるわけでございます。
  180. 野田哲

    ○野田哲君 万一の場合のことも考えておかなければいけないという話がいま出たんですが、総理としては、どうお考えになりますか、いまの河本通産大臣お話について万一の場合のことという……。
  181. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 万一の場合はどうかと、こう聞かれたら、いま河本大臣が言ったような答えをするほかないのじゃないでしょうか。あるとすれば、万一のことは考えておりませんと、こういう答弁はこれはあり得ますよ、しかし、素直に万一ということを考えれば、そのときはそのときでまたいろいろ考えてみると、こういうような答弁にならざるを得ないのじゃないか、それは素直なお答えであると、このように考えます。
  182. 野田哲

    ○野田哲君 まあ本予算の審議の始まる前から、もうそういう議論が出るということは、大体これでは七%はおぼつかないと、こういう不協和音としか思えないですよね、閣内での。  そこで、それじゃ万一の場合のことの一つとして、建設大臣と自治大臣に伺っておきたいと思うのですが、いまのこの通産大臣が言われた話の中の公共事業の問題です。公共事業、これをいま通産大臣が言われたような形で消化をしていく見通しが立ちますか、立っておりますか。
  183. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 一言で申し上げますならば、消化をする体調は十分にとっておるつもりでございます。しかし、これは結果を見なければならぬことでございますから、誠意を持ってやる手段といたしまして、省内には対策本部を設けて、そして地方建設局に対しましては細かく指示を与えております。また、各地方建設局におきましては、これは建設省だけでなく、公共事業を持っておる運輸省にしても、あるいは農林省にしても文部省にいたしましても、横の連絡を十分とりまして、資材類あるいは工事を引き受ける向き、そういうものも加えての連絡会議などを持ちまして、円滑を期していこうと、私としてはまず無難にこなせる体制はとっておると、こういうことを申し上げておきます。
  184. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 五十三年度の場合で申しますと、公共事業のいわゆる補助事業なるものが七〇%程度を占めておるのでありますから、これは当然地方が消化をしていかなければならぬ。そこにまた単独事業も相当程度予定しておりますので、端的な言い方をいたしますならば、大変であろうことははっきりいたしておりますけれども、しかし、これが執行体制には心配がない体制をとっていこう、かようなことでありますし、また、地方団体もきわめて積極的に取り組んでくれておりまして、たとえば都道府県の場合で申しますと、一、二の県を除きまして、ほとんどの県が推進対策本部あるいは公共事業実施本部、かような本部を設けまして、全庁一致となってやっていこうという体制でございますから、まず、厳しゅうはございますけれども、私は消化が可能だと、かような見通しを持っておるところであります。
  185. 野田哲

    ○野田哲君 私も、この年末年始に、建設省の現場あるいは自治体の職場へ行ってみました。建設省の現場へ行ったのは、何も私は検査院の問題をあげつらって行ったわけじゃないんです。  こういうことですよ、建設大臣、自治大臣。いまどういう状態が起こっておるかと言いますと、建設省やそれから自治体の公共事業担当の職員、それから建設業者が工事の周辺の地域へ行って、できるだけ工事について騒音とか振動とかいう問題についていちゃもんをつけてくれと、こういうふうに火をつけて回っているんですよ。住民運動をあなた方の方の職員が火をつけて回っているんだ。なぜかと言えば、そういう形で住民から振動に困るとか騒音で困るとかいうことで声が上がってくれば工期を延ばす口実ができる、それでなければとても注文されたような期間内には工事は進捗しない、こういう状態にあるということを、私は実情としてあなた方の耳にはなかなか入ってこないと思うので申し上げておきたいと思うのです。万一という言葉は、もうすでに起こっているということですよ、状態が。  そこで、建設大臣に質問した行きがかりでもう一つ聞いておきたいんですが、げっぷが出るとかいう表現が使われたというんですが、げっぷが出るという表現が使われるほどの大型の公共事業の予算を組んだ中で、あなたの方ではささやかな公団住宅の入居者の非常な反対の声を押し切って公団住宅家賃の値上げを計画をされている、認可を。こういうことでいろいろ議論が起こっておるわけですが、これについてはどういうふうにいま考えておられますか。
  186. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) かねて住宅宅地審議会の方に公団家賃のあり方はどうかという御諮問を申し上げております。また、他の機関におきましても詳細検討をしつつ、今回の一月六日の住宅公団の方からの申請になったものと思うのです。これは急に出たものではなくて、手順がずうっと踏まれておるものと私は認識をしております。  たまたま現在のような不況の時期に当たっておるわけでございまするが、一方におきまして住宅公団に対するいろいろな批判がある。それも十分心得ておりまするが、同時に、二十年以上家賃がそのままになっておるということも、これは問題だと思うのであります。したがって、私は、申請を受けまして、国会の皆様の御意見も徴しながら最終的にはいずれ近く判断をしなきゃならない、こういう状況にある次第でございます。
  187. 野田哲

    ○野田哲君 いま五十三年度予算をこれから審議をしていくという段階にあるわけでございまして、これはやはり経済全体の運営、国民生活の問題全体の審議をする貴重な場が続いておるわけでありますから、そういう情勢も考慮して、ぜひひとつ慎重に国民、住民の生活を守るという立場で判断をしてもらいたい、このことを要望して、次にまいりたいと思います。  総理府総務長官に伺いますが、昭和五十三年一月吉日という日付になっているんですが、「建国記念の日奉祝運営委員会 会長 黛敏郎」、こういう人の名前で建国記念日の祝賀行事の案内状が出ておりますが、この文書を見ると、総理府の名前が横に並んで印刷をしてあるんですが、そして文章の中を見ると、政府が後援をすることが決定をした、こういうふうになっているんですが、政府総理府ではいつどのような手続でこの祝賀行事を後援をすることに決めたんですか。
  188. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) お答えいたします。  建国記念日、民間行事として総理府の後援承認申請が出たのが今回が初めてであります。主催者、規模その他内容を目下審査中であります。
  189. 野田哲

    ○野田哲君 そうすると、審査中ということであれば、この黛敏郎さんが出しておる文書というのは「政府総理府」という名前が入っているんですが、これを勝手に使っている、こういうことになるんですか。あなた見られましたか、その文書。
  190. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) 拝見いたしております。いま申し上げておるきょうの段階ではということを申し上げておきたいと思います。
  191. 野田哲

    ○野田哲君 いや、もうすでに文書が出ているんですよ。反対をしている私のところにまで手に入っているわけですからね。日にちがわからないが、一月吉日で。「本年愈々政府総理府の御後援をいただく事となりました。」ということで、最後が「後援 総理府」と、こうなっている。あなた承知されておりますか、これ。
  192. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) きょうの段階では、審査中であります。
  193. 野田哲

    ○野田哲君 これはあとわずかの期間しかないわけですが、審査中ということですが、あなたは黛敏郎さんという方がどういう性格の人であるか、そして構成団体にどういう団体が組織をされているか、そして昨年来のこの行事がどういう形で行われていたか御承知ですか。
  194. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) お答えいたします。  黛敏郎さんがどういう人であるか、これは、当然、芸術界と申しますか、その他文化団体、それから経済団体、その他二十八名によって申請をされております。
  195. 野田哲

    ○野田哲君 総務長官ね、黛さんという人は、テレビで「題名のない音楽会」というふうな番組のタクトを振っておられますが、別のタクトを振っている方なんですよ、これは。自主憲法制定国民大会という、いまの憲法ではだめだから別の憲法をつくろうという集まり、団体のタクトをいつも振っているんです。わかっておりますか。それからこの事務局長をやっておられる村上さんという方、この村上正邦さんという方は――玉置さんがいればよくわかる。この人は生長の家の国民運動本部長です。  ここにある、この会場の図面は、これは総理も聞いておいてください、昨年やられた「建国記念の日奉祝国民大会団体別座席表」というのがあるわけです。これでは、まず一階の席は勝共連合が三分の一を占めております。そして、もう一つの三分の一は仏所護念会、二階は全部生長の家と念法真教、ほとんど圧倒的にこれは宗教団体なんですよ。こういうものにもし政府がかかわるということになれば、これは明らかに憲法二十条の政教分離の精神に反しますよ。しかも、会長黛敏郎という人は、いまの憲法ではだめだから別の憲法をつくろうということでタクトを振っておる人なんです。あなたは審査中というふうにおっしゃいましたけれども、これは審査の要はないですよ、もう却下しなさいよ、いかがですか。
  196. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) お答えいたします。  昨年とは全然異なっておると判断をいたしております。
  197. 野田哲

    ○野田哲君 どういうふうに異なっているんですか。
  198. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) お答えいたします。  先ほども審査中と申し上げましたが、政党色、宗教色、あるいはまた営利を目的としない、こういうことが承認を与える一つの基準と、こういうふうに考えておりますので、昨年とはやや違っておると、こういうふうに考えております。
  199. 野田哲

    ○野田哲君 そんなことはないですよ。これは私の聞いたところでは、去年のとおりで持っていったところが、そういう団体が名を連ねていたのでは後でまた政治的に問題になるから、そういう団体を後ろに隠して個人名で持ってきなさいということで、黛敏郎さん以下ずっと個人の名前で運営委員会委員という形で持ってきたと、こういうことなんですよ。背景は全部去年と同じですよ。しかも、団体の代表は、日本の憲法を別のものをつくろうという人が団体の代表になっているんじゃないですか。憲法を守るという日本政府が、憲法を変えようという人が代表者になっているそんなものに、そんな行事に、なぜ後援をするために審査する必要があるんですか。これは総理の見解を伺いたいと思うのです。
  200. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだ私の手元まで上がってきておりませんが、憲法二十条の問題かと思いますが、建国記念日の行事をする、それが政党的な色彩もありません、また宗教的な色彩もありません、また営利を目的とするものでもありませんと、こういうことであれば、これは後援名義を与えるぐらいなことは考えてやってもいいんじゃないかなあという感じがしますがね。まだ私も詳細にあなたから御指摘の点なんかを承知しておりませんから、また、総理府の方からも、こうしたいんだという、決裁といいますか、そういう手続になっておりませんけれども、そういう点を注意深く処置していきますれば、これは私は素直に、後援名義をかしてくれや、こう言うならば、かして差し上げたらどうだろうなと、そんな感じがいたします。
  201. 野田哲

    ○野田哲君 大体、政府がまだ審査中というのに、政府の名前をかたって文書を出しておること自体、これはおかしいじゃないですか。総理、これ見てくださいよ、これが去年の席に着いた配置図ですよ。こんなものが宗教色がないと言えるんですか。  それで、引き続いて、総理ね、この問題については、五十一年の二月十日に議員から質問主意書が出ています。「建国記念の日政府行事実施に関する質問主意書」こういうことで。これについて政府自身が建国の日の記念行事をやりなさいと、やる意思はありませんかと、こういう質問主意書に対して、政府自身がやることについてさえ、当時の三木総理大臣は、国民世論の動向などを見守りつつ慎重に検討いたしますと、こういうことなんです。それから、これは議会でも問題になっていますよ。これは玉置さんが質問したことなんですが、これに対して三木総理大臣は今後の研究課題だ、こういう言い方をされているわけです。一体、総務長官、あなたは、この慎重に検討いたしますとか、あるいは検討課題として考えますと、こういうことで三木総理が答えているわけですが、この間、国民世論の動向について何か特別の変化でもあったんですか、いかがですか。
  202. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) 誤解があってはいけませんと思いますから、いまここで提示されたのは今年度の座席表でありません、これは昨年の……
  203. 野田哲

    ○野田哲君 だから、ぼくも昨年だと言っている。
  204. 稻村佐近四郎

    国務大臣(稻村左近四郎君) そうですか。  いま御質問の点でございますが、国民世論、こういったことは考えておりませんが、ただ基準として先ほど申し上げたとおりであります。
  205. 野田哲

    ○野田哲君 この問題だけ議論してもあれですが、総理ね、これはやはりいま見られたような形で勝共連合がこともあろうに三分の一を占めるようなこういう、これは昨年の実績ですけれども、間違いなくこれはことしも同じですよ、構成団体等から見て。こういうものに総理政府としての名前をかすとか、こういうことであったのでは、これは憲法違反のそしりを免れませんよ。慎重にこれは考えてもらいたい。このことを重ねて要望しておきたいと思います。  憲法問題でもう一つ、防衛関係についての憲法認識について伺いたいと思うんですが、金丸防衛庁長官、あなたはことしの一月八日に陸上自衛隊の第一空挺団に行って訓示をした中で、外国に脅威を与えずに何の防衛と言えるか、こういう発言を威勢よくぶち上げられたというふうに聞いているんですが、これはどういうことなんですか。
  206. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) お答えいたします。  ただいま先生がおっしゃられたことは申し上げたわけでありますが、その前提に、私は、骨の髄まで大国主義にしてはならぬという考え方を持っておるわけでございまして、そういうことから、その前提に平和憲法を踏まえなければいけない。侵さず侵されずという考えの中で、侵されないという立場から、防衛というものは脅威を感じない防衛ではいけない。だから部隊は精強でなくちゃならぬと、こう申し上げておるわけでありまして、その脅威という言葉は、私はもっと平たく申し上げれば、ちゅうちょするような防衛でなくちゃならぬ、敵が入ってきてちゅうちょするような防衛でなくちゃならぬという意味で申し上げたということを御理解いただきたいと思います。
  207. 野田哲

    ○野田哲君 これは私が直接聞いたわけもでない、読んだわけでもないですから、この押し問答は際限がありませんが、もう一つ、栗栖という統幕議長がおられる。これはもう明確に文書にしておるわけですから間違いなく明確なんですが、この人が一月四日の「ウイング」という航空専門の新聞に論文を書いております。年頭のあいさつを含めたような論文ですが、その中では、いつわが基地や策源がやられるかもしれないという心理的拘束力を相手に与えない武力は防衛の効果はないと、こう言っておられるし、専守防衛と抑止力保持とは併存しがたい概念だ、こういう意味のことを言っておられるわけです。つまり、外国の基地をいつでもたたけるようなそういう防衛力でなければ意味がないんだと、抑止力にならないんだと、こういうふうに、これは論文として書いているわけですが、長官は御承知ですか。
  208. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) お答えいたします。  栗栖統幕議長の発言につきましては、先生がただいまおっしゃられたとおりでありますが、私は、軍人というか自衛隊の幹部として、いわゆる願望を述べたということであろうと思いますが、ただ、いままでの政府答弁に逆行するような発言をした。それは、ただいま抑止力あるいは専守防衛というような問題について言及をいたしておるわけでありますが、私はその中に、いわゆる日本の防衛は必要最小限の防衛でなければならないということがあって、それ以上の防衛を持つことはできないというのがきょうの日本の憲法だと、そういうことでありますから、その抑止力という問題について、日米安全保障条約を堅持して、それが抑止力だということを言ってないところに私は重大な発言があったと思うわけでありまして、本人も呼びまして厳重な注意をいたしたわけであります。ただ、その文で私が思いますのは、もちろん政治が優先するということが書いてあることは御理解をいただきたいと思うわけであります。
  209. 野田哲

    ○野田哲君 長官、栗栖統幕議長は前歴があるんですよ、問題の。昨年の十月に、統幕議長に就任の内示が出た段階で問題発言をされているんですよ。統幕議長は認証官であるべきだということを、これは当時園田官房長官のところへ要請に行ったとか、あるいは統幕議長はこれからは総理のところへじかに月に定例的に軍事情勢について御進講に行くとか、こういう問題発言をされて、これはここの場で大変な問題になって、予算委員会理事会の問題にまでなっているんですよ。理事会でどういう協議がされたか長官は御存じですか。
  210. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 認証官その他の発言につきまして、非常に重大な発言をしてこの予算委員会の問題になったことも十分承知をいたしておるわけであります。また、先ほどのような問題を起こしたということで、いわば、一回でなしに再度またこういうことをやったということに問題があろうと思うわけでありますから、私は、今後こういう問題があったときは厳重な処置をとると本人に言い聞かして、この間厳重な注意をいたしたわけであります。
  211. 野田哲

    ○野田哲君 これはもう二回もシビリアンコントロールを否定し、国会での議論の経過を否定するような人が制服の長で統幕議長を勤めるというのは、これはもう了解できないです。これはひとつ、今後さらに私どもも問題を引き続いて追及をしていきたいと思いますが、これは防衛庁としても明確なる責任ある処置をとってもらいたいと思います。  総理に伺いますが、いまのような制服のそういう言動に対して、総理としてはどういう認識をお持ちですか。
  212. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 自衛隊はあくまでも憲法の枠内のものでなければならない。それからまた、いわゆる文民統制、シビリアンコントロール、これに服すと、こういう枠組み、このもとでなければならぬ、このように考えておりますが、いろいろ物議を醸しておるという案件等もありますので、この趣旨をさらに防衛庁長官を通じまして自衛隊に徹底さしたいと、かように考えます。
  213. 野田哲

    ○野田哲君 制服幹部からああいう言動が出るということは、私は総理を初めとした政府に責任があると思いますよ、心理的な責任が。それが最も端的にあらわれているのは今度のF15の導入を決定をしたことだと思うのです。F15については、昨年私は内閣委員会総理に質問をして、空中給油装置をそのまま残す、爆撃装置をこのまま残すということで防衛庁は計画を進めているが、これは問題があるんじゃないかということで、具体的に問題点を指摘をして総理にただしたわけですが、総理は、当時はまだ何も決めていない、国防会議としては全く白紙だということで答えられなかったわけですが、今度は決定されているわけですから、具体的にこれは国防会議の議長でもある総理から答えてもらいたいと思うのです。  昭和四十七年の十一月七日の日に、衆議院の予算委員会でわが党の石橋さんの質問に答えて、当時の増原防衛庁長官が、戦闘機に爆撃装置を施すことによって他国に侵略的、攻撃的脅威を与えるとの誤解を生じるので爆撃装置は施さないと、こういうふうに明確に答えておられる。ただし、これは問題があるんですが、この答えの後に、T2改は足が短いから爆撃装置はつけても他国に脅威を与えるおそれはないと思いますと、こういうのが勝手な解釈としてついているんですが、総理とずっと政治的な活動をともにされた佐藤榮作元総理も、日本は憲法九条の規定に従ってやりは持たないと、やりは持たないということを国会で表現されているんです。つまり足の長い、外国の領土に奥深く侵入するような航続距離を持った、爆撃装置を持った、そういうものは持たないということを佐藤総理も言明をされている。これがいつどういう理由で、今度は爆撃装置も持ち、給油装置も持ったものを公然と導入をするということになったんですか。総理も後で答えてください。
  214. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) F15の決定に当たりまして国防会議で慎重に審議をいたしたわけでありますが、過去の国会の討議も踏まえて、その結果F15に爆撃装置あるいは給油装置を存置するということになったわけでありますが、F15戦闘機はいわゆる要撃的な性能を有しておる、そういうことを主眼にした戦闘機だということでありますから、いわゆる専守防衛にはふさわしい。また、この戦闘機は対地攻撃にいわゆる制限的な機能、限定的なと申し上げた方がいいと思うのですが、限定的な機能を持っておるということですから、他国に脅威を与えたり、他国に誤解を生ずるということはない。いま一つこのF15を導入するにつきましては、いわゆるいままでの現有の戦闘機が減耗をいたしていくということとあわして、現存のそのあわしていく戦闘機がいままでの数より少なくなっていくというような状況の中で、よりベターな戦闘機を入れることがいいと、こういうような考え方、あるいは給油装置を存置するということにつきましては、一九八〇年の状況を見ますと、いわゆる航空機の発達というものは目覚ましいものがあるということでありまして、いわゆる軍艦の問題や大砲の問題とは全く違った角度に進展しておる。そういうものを踏まえてみますと、いわゆる他国を侵略する、あるいは他国を侵す、あるいは他国に誤解を生じないという面から考えても、この給油を置いても絶対憲法に反することはないという結論が、私は政治家としていわゆる国防会議の事務局長あるいは防衛局長等から説明を聞きまして判断をいたしたわけでありますが、この詳細につきましては防衛局長か、あるいは政府委員から答弁をいたさせます。
  215. 野田哲

    ○野田哲君 技術的なことじゃないんです、政治的なことですから総理も答えてください。
  216. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) F15を爆撃装置並びに空中給油装置づきで今回採用する、こういうことを決定したわけですが、これは昨年の十一月でしたか、内閣委員会で野田さん初めいろいろ御指摘があった。そういう御指摘等の経緯も踏まえまして、国防会議でずいぶんこれは慎重に審議をいたしたわけであります。何回になりますか、何回かやっておるんです。そして、これは専守防衛というわが国の自衛隊の基本方針にもとらないかどうか、またさらには、さかのぼって憲法に違反するというようなことはないかどうか、そういうところまで十分議論を煮詰めまして、そして最終的にこれを五十三年度予算から取り入れるということを決定したわけでありまして、十分審議を尽くしたその上の決断である、このように御了承を願います。
  217. 野田哲

    ○野田哲君 これは国会の経緯を踏まえて十分審議を尽くしたというふうに防衛庁長官総理も言われたわけですが、増原長官、そしてさらに空中給油装置については本予算委員会で田中総理が答えているわけです。空中給油装置は行わない、空中給油機は保持しない、訓練も行わない、こういうことを答えているわけです。これはファントムの問題のときです。増原長官の答えや田中総理の答えというのは、やはり足の長い飛行機に爆弾を積むということはこれは他国に脅威を与える、こういうことから憲法九条の規定に照らしてそういうことはしないということを答えておられるわけです。だから、飛行機が攻撃的か要撃的かとか、いついつになったら日本の戦闘機は減耗してなくなるからと、そういうことは理由になっていないんです。いままで爆撃装置は施さない、空中給油装置は持たないということの背景は、すべて憲法に基づいて発言をされているわけなんです。それがどうして今度は憲法の上からも国会の経緯からも問題ないということになったんですか。この理由を明確にしていただきたいと思うのです。
  218. 伊藤圭一

    政府委員(伊藤圭一君) いま総理防衛庁長官から、審議を尽くして御決定をいただいたという御説明をいただきましたが、この際に私ども防衛庁といたしましては過去の国会の議事録、その論議の中でどのような点が問題になっていたかということを十分御説明いたしまして、御審議をいただいたわけでございます。  一言に申しますと、やはりこの装備品の選定に当たりましては、その機能、その性能を決定するに当たりましては、やはり御議論の背景になっております軍事技術の趨勢あるいは戦術思想の変化、そういった一連の流れの中であの議論というものはなされているわけでございまして、いま先生がおっしゃいましたような意味で、長い足を持った爆撃機は持たないということも議論になっておりますけれども、それはまさに長距離爆撃機についての議論でございました。したがいまして、当時の御議論の中では、いわゆる当時開発されておりました戦術戦闘機といいますか、こういったもの自体がきわめて大きな破壊力を持った爆撃能力を持っている、しかもこれがピンポイントの能力を持っている、そういうような観点から御議論がなされております。したがいまして、当時対象になりましたファントムあるいはF105、そういったものが憲法に違反する装備であるというふうな考え政府も持っていなかったわけでございますが、その御議論の中におきまして非常にクローズアップされましたのが、攻撃力の大きさといたしましてファントムは核爆弾を装備することができました。それからもう一つは、ピンポイントを攻撃するために爆撃照準のための計算装置を持っておりました。それからもう一つは、遠いところから正確に命中させる空対地の誘導弾の攻撃能力というものをファントムが持っていたわけでございます。したがいまして、当時の御議論から、その三つのものについて取り外したわけでございますが、F15はそういった機能は持っていないわけでございます。したがいまして、そういう点を私どもの方から国防会議の場で御説明申し上げまして種々御議論をいただきまして、爆撃装置については残しておいて差し支えないという御判断をいただいたわけでございます。  さらに、空中給油装置につきましては、まさに一九八〇年代中期以降の航空脅威というものを考えましたときに、ファントムを採用したときには余り重視しておりませんでした警戒待機、空中におきまして侵入機に対する待機の構えというものが戦術面できわめて重視されるということが明らかでございます。したがいまして、この可能性について機能として残しておきたいということを御説明申し上げまして、御判断をいただいたわけでございます。
  219. 野田哲

    ○野田哲君 国防会議ではそうであっても国会の議論としてはそういう経過になっていないです。国会の議論で爆撃装置を持たない、空中給油装置を持たないというのは、そういうものを足の長い飛行機で持つことは他国に脅威を与えることになる、こういう憲法第九条の規定をそのまま素直に受け取って、政府もそれによって撤回をされたわけですから、これは伊藤防衛局長が言うような形の技術論じゃないですよ。  法制局長官に伺いますが、憲法第九条の解釈というのはあれですか、航空機等の技術が進歩したり、戦術戦略の態様が変わったら、憲法九条の武力による脅威を与えないという解釈は変わってくるんでか、どうですか、この点は。
  220. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) もうこれはいまさら申し上げるまでもなく、憲法第九条で陸海空軍その他の戦力は保持しないと書いておりますけれども、これはしかし、文字どおり戦う力、そういう実力部隊を一切持たないという意味ではなくて、わが国の防衛、自衛のために必要な最小限度のものを超える、そういう戦力は持ってはいけないんだと、こういう意味だというふうに、これはもう終始一貫して政府がお答えしているところでございまして、それもまた、自衛のために必要な最小限度を超えるということのまた説明として、従来、外国に対して脅威を与えるようなものだとか、攻撃的なものだとかというような、表現はいろいろそのときどきによって使い方が異なった場合もございますけれども、結局、それは自衛のために必要な最小限度を超えるような戦力の説明として申し上げておったわけなんです。ですから、脅威を与えるようなものであるかどうかということが実はポイントでございまして、それに該当するかしないかということになれば、これはまた軍事的な専門的知識がないと、私の方では実は右とも左とも申し上げかねるわけでございますけれども、先ほど来の防衛局長の専門的な説明によれば、これはもう外国に対して脅威を与えるというようなおそれのあるものと評価すべきものではないだろうという御見解で、国防会議でもさような御決定が行われた次第でございます。
  221. 野田哲

    ○野田哲君 長官、武力による威嚇はやらないと、放棄すると、こうなっておるわけでしょう、憲法は。この憲法の規定に基づいていままで爆撃装置は持たない、空中給油装置についても、空中給油装置の機能だけは持たないことに四十八年にしたわけですよ。  で、あなたに聞きたいのは、今度のF15の問題の導入についての防衛庁側の技術的な説明というのは、技術の進歩、戦術態様が変わった、こういうことによって航空機の機能が変わってきた、だからF15が必要なんだというふうな説明なんだけれども、憲法九条の「武力による威嚇」という解釈は、ときどきによって外国の飛行機が、どういう飛行機を持ったか、こういうことによって変わるんですかと、こういうふうに聞いているんですよ。
  222. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) なるほど、過去において国会における御論議の際に、足の長い爆撃機は持たないというふうな答弁があります。それはしかし、その真意は、外国に対して脅威を与えるようなおそれがあるというふうな、そういうような性能を持っている足の長い爆撃機と、こういうふうな御理解で御論議が行われておったはずなんです。  そこで今度のF15になりますと、それは詳細なことはもちろん専門家でないと、私は自信を持って申し上げられませんけれども、伊藤防衛局長の御説明によれば、ただ爆撃機に爆撃装置があるということだけで、過去の国会論議における政府の見解が変わったというふうに即断されるのもいかがかと。結局、外国に脅威を与えるおそれがあるかどうかということは、当該兵器が持っている各般の性能を総合的に判断して、そして結論を出すべきものでございますから、空中給油装置と爆撃機という名前がつくものがおよそ二つそろえば、もうそれは直ちにそのことだけで外国に脅威を与えるというふうにはなるとは限らないというのが私たちの考えでございます。
  223. 野田哲

    ○野田哲君 つまり仮想敵国の装備によってはそのときどきで憲法解釈は変わると、こういうことなんですか。端的に言ってください。
  224. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) それは端的に申しますと、相手国が脅威を感ずるかどうかということ、また、そのおそれがあるかどうかということに尽きるわけなんですが、非常に軍事技術が進歩しまして、仮に、これは仮定の話なんですが、たとえば竹やり時代日本だけが機関銃を持てばそれは脅威を感ずるかもしれないんで、それは特定のその時点時点におけるやはり軍事科学の進歩の度合いによって憲法九条二項の日本が保持を許される自衛力の限度についても変化があってしかるべきだと思います。
  225. 野田哲

    ○野田哲君 これは大変な発言ですよ、法制局長官。そうすると、相手の装備によっては行く行くはこれはわが国も核装備をしなければならぬということも合憲だということになる。この問題は、また機会がありますから引き続いてひとつやりましょう。  コスモス954号の墜落事故について伺いたいと思いますが、まず官房長官に伺います。情報を日本政府が入手をしたのは正確にいつの時点で、それからこの情報をどういうふうに処理されたのか、まずそこから伺いたい。
  226. 園田直

    国務大臣園田直君) 官房長官に質問がありましたが、情報を受けたのは外務省でありますから、私からお答えをいたします。  十九日の夕刻、米国政府が、在京米大使館を通じて外務省に対し、極秘の含みで、ソ連の人工衛星コスモス954号に異常を生じ、二十四日ごろ大気圏に突入する可能性が強いとの情報を通報してまいりました。外務省は、直ちに総理大臣及び内閣官房にこれを通報し、続いてその後も米側より関連情報の入手に努めつつ、それぞれ必要に応じて関係方面に通報してきたところであります。  なお、これに関して、本日の新聞に、事務当局はこれを外務大臣に教えなかったという記事があるそうでございますが、外務省としては、大臣は事務当局を信じ、事務当局は外務大臣を頼り、信頼関係は全く紙一重も差もないわけでありますが、ちょうど十九日の夕刻、外務省に情報が入った際は、外務大臣は中近東から帰国の飛行機の機上でございまして、幾ら信頼関係が深くても報告する余裕がなかったわけであります。飛行機からおりた途端にこの報告を聞きましたから、総理大臣及び内閣官房には通報してあるか――通報してあると、こう言って、報告をしてあるということでありますから、それでは、それぞれ内閣官房から関係官庁には通報してあるであろうけれども、今後必要に応じて関係官庁に通報し協議をしろ、こういう指示をしたわけでございます。
  227. 野田哲

    ○野田哲君 私が聞かない裏話まで説明があったわけですが、まあしかし、新聞は園田外務大臣の所管だけれども、この人は直言が多いからちょっとどうかなあとか、あるいは防衛庁長官は田中派の大幹部だからこの情報を伝えるのはどうかなあということで、いろいろ部内で検討がされたと、こういうような報道がありますが、そんなことは私はないというふうに思いますが、いずれにしても世界で例のない原子炉を積んだものが落ちるというのに、派閥次元の問題やら、あの人はずけずけ物を言う人だから、というようなことが情報の扱いの基準になったのではこれは困ると思うのです。  余談はさておきまして、落下地点が不明という状態が四日間続いたわけですね。どこに落ちるかわからない。日本も落下の可能性の範囲に入っていた。そういう状態の中で、日本にこの原子炉が落ちる、こういうことも想定としては当然あったと思うのですが、それに対しては一体どういう対策をお立てになっていたんですか。
  228. 園田直

    国務大臣園田直君) 全くおっしゃるとおりに、落下地点はわからなかったわけであります。日本は国土が狭い関係上、率が少ないという程度であります。  そこで、私の方では必要に応じて科学技術庁と相談をし、科学技術庁、防衛庁でそれぞれの対策を講じられたわけであります。
  229. 野田哲

    ○野田哲君 科学技術庁長官。
  230. 熊谷太三郎

    国務大臣熊谷太三郎君) 大体、さっき外務大臣から情報の連絡についてはお話があったとおりでございますが、実は、この原子炉を搭載した人工衛星が大気圏に突入する可能性が強いということを連絡を受けまして、直ちにいろいろ対策をとったわけですが、このとき日本としましては、同衛星の落下による影響を受けみ場合を考慮しまして、専門家による放射能調査班を編成いた北ますとともに、放射能対策本部でとるべき対策、関係方面との連絡体制の検討などを行ったわけであります。そうして次に、いよいよ二十四日に三回にわたって外務省より情報がありまして、まず六時ごろ、衛星は日本に落ちる可能性はなくなった、それから八時ごろ、カナダのバンクーバー北方シャーロット諸島上空で大気圏に再突入した、こういうふうな情報を承ったわけであります。  これに対しまして、大気圏再突入の地点が遠隔地でありまして、わが国への直接的な影響はないと考えられましたが、当庁としましては、念のために全国的に放射能監視ができる体制をとったわけであります。すなわち、北海道、青森県、茨城県、神奈川県、福井県、長崎県、沖繩県等におきます宇宙放射線の連続測定器を備えております機関によりまして厳重にその監視体制を強化しまして、もし測定値に異常値があらわれるようであったらすぐに科学技術庁に連絡するように厳重に指示をしたわけであります。そして、この体制は二、三週間でございますから、いまでもとっているわけでありまして、もしこれに異常が生じたような場合は直ちに、前回核実験が行われましたときに、ソ連、アメリカ等の核実験あるいは中国の核実験等が行われましたときにとりましたように、放射能対策本部を設けまして、そして必要な措置を進めていくと、こういういま考えでいるわけでございます。  大要はいま申しましたようなわけであります。
  231. 野田哲

    ○野田哲君 金丸防衛庁長官に伺っておきたいと思うのですが、新聞の報道するところによると、防衛庁は全くこれは参事官のところで情報がストップして、あなた自身も、もちろん航空自衛隊で放射能の測定装置を持って空中を飛んでおる部隊も全くこの問題については何らの連絡もなく、対応策もなかった、こういう報道がされておりますが、事実ですか。
  232. 金丸信

    国務大臣(金丸信君) 防衛庁へは、この問題につきましては、二十三日の六時に外務省から事務次官に連絡があったわけでありますが、事務次官は外遊をいたしておりまして、ちょうど二十三日の六時に防衛庁へ帰ってきたわけであります。そのときちょうど六時に入って六時に帰ってきたという、いわゆるサンフランシスコから東京へ帰ってくる、そういうことで次官も時差ぼけがしておったと思うわけでありますが、そういう時差ぼけという中で私にその連絡がなかったということが、新聞にも出ておるとおり、まさに私にもなかったわけでありますが、しかし私は、人間の機能というものの中には時差ぼけもあるし、時に人間のことだから間違いもある、いわゆる何十時間乗ってきたそれを責めるということも……。しかし、今後いわゆる自衛隊の指揮命令系統からいっても、大臣にそういう話がなかったということは、まことに本人も遺憾の意を私に表しまして、私もそれ以上詰めることもと思いまして、そういういきさつがあったことを申し上げます。
  233. 野田哲

    ○野田哲君 外務大臣に伺いますが、今後国際的に、空中を原子炉や原子エネルギーを搭載をした衛星が飛んでいると、こういう状態に対して国際的にどういう対応策をもってこれから臨もうとされるか、このことを伺いたいと思います。
  234. 園田直

    国務大臣園田直君) まず、情報の入手が第一でありますから、米国それからカナダは外務大臣に直接今後の詳細な情報の通報を依頼し、これは承諾を受けております。ソ連に対しては、二十八日、口頭をもって文書を添えて、このような事態に何らの通報がなかったことはまことに遺憾である、今後安全について十分注意をされたい。なお、これについての詳細な情報を通報願いたいという申し入れをいたしております。  なおもう一つは、宇宙に打ち上げられた人工衛星に関する国際条約が四つほどありますが、その中の宇宙条約には日本は加盟をしておりますが、他の条約には国内法の準備関係でおくれておりますが、これは早急に入るようにしたいと考えております。  次に、原子力を動力とした人工衛星は、私の記憶ではただいまアメリカの方は一つ上がっておると、ソ連の方は数はわかりません。いずれにしても、現在のところではこれに対する規制がないわけでありますから、さっそく関係諸国と連絡を始めておりますが、国際機関でこれを議題とし、これを規制することをやろうじゃないかと、こういう準備をいたしておるわけでありますが、次の国連軍縮総会には間に合いかねると思います。また、場所としても、国連宇宙空間平和利用機関の委員会の小委員会委員会にこれを持ち出し、十分規制をして、このようなことがないようにしたいという努力をすでに開始いたしております。
  235. 野田哲

    ○野田哲君 総理は、四月末から五月の初めにカーター大統領と会いたいということをきのう申し入れをされたようですが、新聞によると、五月下旬の国連軍縮総会にも出席をすることを検討しているという報道もあるわけですが、これに対して、アメリカも原子エネルギーの衛星を飛ばしているわけですから、ソ連と同時にやはりアメリカにもやめてもらう必要があると思うのですが、そういう問題について提起をされる用意がありますか。
  236. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国は、核問題につきましては世界でもユニークな立場を持っておるわけであります。核兵器といえども持たんとすれば持つに足る経済力、工業力、技術力、こういうものを持っておる。それから、さらに世界で核兵器の洗礼を受けたただ一つの国である。そういう国であることを踏まえまして、独自な、貴重な立場にある、こういうふうに思いますが、このコスモス衛星問題につきましても、そのような立場で行動すべきかと、かように考えております。  なお、国連総会に私が出席するかどうかというお話ですが、まだ具体的な検討はいたしておりません。どういうふうになるか、これはよく注目してまいりたい、このように考えております。
  237. 野田哲

    ○野田哲君 最後に法務大臣総理に、これは質問の予定はしておりませんが、緊急な問題ですからひとつお答えをいただきたいと思います。  きょうのロッキード裁判において、丸紅の大久保さんが証人に立たれて証言をされております。この証言によると、四十七年の十月二十九日の夜、当時の丸紅機械部副部長の松井直から電話があり、――これは亡くなっている人です、松井という人は変死をしているんです。その電話によると、全日空が明日トライスターの導入を決定をする。ついては、世話になった先生方にお礼をしたい、こういうことで六人の名前を挙げた。その名前は橋本登美三郎、佐藤孝行、二階堂進、佐々木秀世、加藤六月、福永一臣、私はその名前と金額を全部メモにとった。こういう証言が行われたというふうにいま連絡があったわけです。そういたしますと、やはりいままでロッキード委員会等で議論をしてきたこと、関係者は否定されておりますけれどもかなり具体的に名前が出てきたということ、それからもう一つここで問題になってくるのは、松井さんという方がこれは変死をしております。渋谷区役所の出張所の前で変死をしておりますが、この松井さんという方の死因についてもかねがね疑惑が持たれていたところであります。こういう証言があったことに対して、総理と法務大臣の見解を承りたいと思います。
  238. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) ただいま野田さんからのお尋ねでございますが、きょうロッキード問題の全日空ルート関係について裁判があります。それに大久保証人がいまおっしゃったような問題点について証人台に立つ、これだけは私は聞いておりますけれども、証言の内容はまだ全然承知しておりません。仮に、いまおっしゃったような証言がありますとすれば、それは御承知のとおりに検察の捜査段階で出ておりますことで、その証言の事実を証明したんじゃないかと、かように考えております。  それから、松井某の死因については何も聞いておりませんが、後刻調査してみたいと思います。
  239. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お尋ねの件は、私まだ全然その情報を聞いておりませんので感想を申し上げかねますが、なお裁判の成り行きを注目したいと、かように考えます。
  240. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 以上で野田君の質疑は終了いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  241. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 次に、矢原秀男君の質疑を行います。矢原君。
  242. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 昭和五十二年度第二次補正予算について質問をいたします。なお、関連してその他諸問題についても若干の質疑を重ねたいと思います。  まず、日中平和友好条約の早期締結についてであります。日中国交回復が実現いたしまして五年有余になりました。わが国は、平和共存五原則に基づき日中両国の友好と相互理解を一層深めてアジアの平和と安定に寄与すべきであると思いますが、まず総理のこれに対するお考えをお伺いしたいと思います。
  243. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、世界平和、このことについてはわが国はできる限りの努力をすべきである、このように考えますが、特にアジアはわが国に近接した地域でございまするから、これは特に留意しなければならぬ地域である、このように考えます。さような認識のもとに、昨年の夏には私はASEANを回ってまいりました。また、大陸の問題、これはもう申し上げるまでもありませんけれども、日中、日ソ、この二つの条約問題が懸案として残っているわけでありますが、日中問題につきましては、双方がお互いに満足し得るという条件を早くつくり出してそして締結したい、このように考えておるのです。それまでの間は、とにかく五年前のあの日中共同声明がありまするから、これを誠実に遵守するということでいままでも日中関係は円滑にきておりまするし、そういう方針で条約ができるまではとにかくいかなければならぬと、このように考えております。  日ソにつきましては、御承知の北方領土問題がありますから、これを解決いたしましてそして日ソ間に平和条約を締結したい、このように考えています。
  244. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 日中復交以来、航空、貿易、漁業、海運など日中実務協定が締結されておるわけでございますが、今日までのこれらに対する実績、もしおわかりでございましたら具体的に示していただきたいと思います。
  245. 園田直

    国務大臣園田直君) いま仰せのとおりでありまして、逐次実務協定が結ばれ、あすは商標協定が結ばれることになっております。そういうもので、貿易その他実務協定に基づいてきわめて順調に進展しておるところでございます。
  246. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 ちょっと数字を。
  247. 中江要介

    政府委員(中江要介君) ただいま御質問の、実務協定に基づく進展の度合いについての詳細な数字というのは、ちょっといま手元に準備してまいりませんでしたけれども、貿易につきましては、御承知のようにオイルショックの後で少し落ち込みがあったし、また、中国の内政の問題もありまして一昨年は多少下降といいますか、上昇のカーブが伸び悩んだことはございますが、昨年からことしにかけましてまたもとに戻りつつある、三十億を超えるのではないかというふうに見られておるわけでございます。  それから、航空協定の方は、御承知のように日中航空の直行便が飛行するようになりましてから人事交流もふえまして、御承知のように増便の必要があるかないかということが話題になるくらいに伸びてきていると、こういうことでございます。  海運は、これは特に海運協定の適用実施に伴いまして、むずかしい問題も起きないで円滑に行われているというふうに承知しております。  漁業につきましては、これは世界的に二百海里の時代が来るという趨勢の中にありまして、日中間は日中漁業協定の現在の秩序を守っていこうということで双方気持ちが一致しておりまして、いまのところ、これという懸案もなくて、定期的な漁業委員会も開きながら実施していると、こういうことでございます。
  248. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 いま質問いたしましたのは、いま抽象的な答弁でございますが、このような大きな役割りを相互に果たしております現在、日中平和友好条約は覇権問題などにより、いまだ締結を見ておりません。そこで現時点において、一つは覇権についての政府の見解はどうなのか。また二番目には、その他にも異論等があるのか。総理にこの二点についてお伺いしたいと思います。
  249. 園田直

    国務大臣園田直君) 覇権の問題は、日中共同声明に表現された立場を政府はとっているわけであります。この覇権問題をどう取り扱うということは、これは条約の中身でございますから、これはいま申し上げるわけにはまいらぬわけでございます。
  250. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 もう一つ、そのほかに何か。
  251. 園田直

    国務大臣園田直君) そのほかには、手続その他でいま準備を進めているところでありまして、特別に大きな障害はないと判断いたしております。
  252. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま外務大臣からお答えいたしましたとおりでございますが、もう交渉開始の機運が熟しつつある、こういうふうに見ております。それをどういうタイミング、段取りでやるか、これをいま模索をしているという状態でございます。
  253. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 本日までの国会の質疑を伺っておりますと、日中条約について閣内の不統一があるのではないかという感じがするわけでございます。  それは二十五日の竹入質問に、機は熟したが、いましばらく情勢の推移を見てほしいと総理は答えられました。そして外務大臣は、二十五日の参院本会議で、首相の指示があればいつでも訪中できるようエンジンはかけっ放しだと発言がありました。また、二十六日にこの点について、二宮質問に対して総理環境は熟しつつあると述べられました。さらに外務大臣との考えは違ってない旨の答弁を伺ったわけでございます。  この点で重ねて総理にお尋ねをするわけでございますが、私はもう少し積極性というものが足りないのではないかということを感じるわけでございますが、総理外務大臣の間には呼吸は全く一致しているのかどうか、その点、お伺いしたいと思います。
  254. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日中問題の対応につきましては、私と外務大臣の間にもう本当に寸分のすき間もございませんです。全く一体としてやっております。
  255. 園田直

    国務大臣園田直君) いま総理が言われたとおりでありまして、私がエンジンをかけっ放しというのは、機が熟し、その時期が来たならば直ちに対応の処置ができるように、寸刻を争わず行動に移る準備をしておるのは外務大臣の責任でありますから、そのように答えただけであります。表現上、ときたまいろいろ御批判を受けまするが、外務大臣としては、命令をされる総理の前に立ったり後に立ったりするのが輔弼の任にある者の仕事であると考えまするが、いささかのあれもなく総理のお指図に従ってやっておりますので、御了解を願いたいと思います。
  256. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 報道によりますと、外務省筋では、条約締結交渉再開日中双方の呼吸が合致した時点で同時に立ち上がる必要があると云々されております。中国は人民代表大会の準備などに忙殺されているために、同大会が終わるまで中国側交渉再開に立ち上がるまいとも述べられておりますけれども、きょうの午前中の質疑でございましたか、総理は詰めば慎重にやっていきたい、段取りを模索している、こういうふうに言われております。ここで問題でございますが、相撲と同じように両方の気分が一致してというふうにしきりに外務大臣等も言われておりますけれども、私も昨年の九月、北京で紀登奎副総理とお会いしましたときに、この問題につきましては、中国日本で言えば双葉山のように受けて待っているのが現状でございます。日本政府は、お相撲の話が出ておりますけれども、そういう問題については、どういうふうになれば気分が一致するのか、そういう点、もう少し掘り下げてお話を伺いたいと思います。
  257. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいまこの交渉に対する内外の関心は非常に強いわけでありまして、政府関係者の公式、非公式の発言がいろいろ波紋を呼んでいることは御承知のとおりであります。公の場において交渉の手順、段取り等について具体的に申し上げることは、現在熟しつつある交渉環境を固め、交渉を円滑に進めるために適当であるかどうか、慎重にやっておるわけであります。いずれにいたしましても、歯切れが悪いかもわかりませんが、政府としては交渉を成功裏に進めるために最善の手順、段取りを鋭意検討し、これを静かに進めていくということで御了承を願いたいと存じます。
  258. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 重ねて総理にお伺いしますけれども、手順、段取り等々、決断の時期、これはいつごろ国民の前にお示しになるのか、外交問題等々でございますけれども、その点を重ねてお伺いをしたいと思います。
  259. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 日中条約問題につきましては、まず交渉の開始ということがあるわけですね、続いてこの交渉が決着を見て、そうして調印、こういうことになるのでありますが、その交渉を開始する時期は熟しつつある、こういうふうに申し上げておるわけなんですが、さあ、いついかなるタイミング、段取り交渉に入るか、その辺を政府としては非常に熱心に考えておる。しばしば話がありまするけれども、日中両国側の気合いが合ったとき、その瞬間が交渉開始の時期じゃないか、こういうふうにも思いますけれども、あらかじめこの交渉はどういう段取りで、どういうタイミングでやるというようなことを言いますと、いままでの経過から見まして、これがまたいろんな解釈づきで北京に伝えられまして、私は決して日中条約進行のためにいい結果にはならぬ、こういうふうに思いますので、それは差し控えさせていただきますが、いま慎重に手順、段取りを模索しておる、このように御了承願います。
  260. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 話は変わりますけれども外務大臣に伺いたいと思います。  日中正常化について、最近カナダの外務大臣と意見の交換をされたそうでございますが、よろしければ具体的な内容をお伺いしたいと思います。
  261. 園田直

    国務大臣園田直君) カナダの外務大臣は、御承知のとおりに中国を訪問する中途に立ち寄ったわけであります。そこで、国際情勢の分析の中で、カナダの外務大臣から質問がありましたから、国会で答弁していると同様、ただいま鋭意準備を進めておるところである、こういうふうに返答いたしておきました。
  262. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 去る二十六日、自民党外交調査会の席上で園田外相は、交渉する場合は私が劈頭訪中して交渉再開する、こういうふうに発言されたと伺っております。ですから、その時期というものが通常国会の会期中になるのかどうか、そういうふうなところをお伺いしたいと思います。
  263. 園田直

    国務大臣園田直君) 自民党の合同部会で私が申し上げたのは、当初交渉が開始されても、問題が起こるかあるいは結末がつくまでは行く必要はないと考えておったが、近ごろではその状況次第では訪中する方がよいかもしれぬとただいま検討しておると、こういうふうに報告を申し上げたわけであります。したがいまして、私が行くか行かぬか、あるいはいつ行くかということは今後の情勢によって決まるわけであると考えております。
  264. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 外務大臣は同じ席上の中で、こういう発言をされているやに伺うわけでございます。一つは、日中条約は米国の世界戦略の一つである。二番目は、交渉再開についていろいろ取りざたされているが、進展はいささかもないと、いままでの国会答弁及び外交上の重要な見解を述べられたように報道では私も感じているわけでございますが、その真意についてもう一度伺いたいと思います。
  265. 園田直

    国務大臣園田直君) 外交部会の質問の中で出ました要旨は、一つは、日本中国と条約交渉再開するということは、米国に対して、米国は関係ないから勝手にやれと、こう言われておるのか、それとも米国ともよく相談の上かと、こういう話がありましたから、これは勝手にやっているわけではございません、米国はアジアの平和と安定ということを非常に考慮しておりまして、そういう観点から米国のアジアに対する政略、世界平和に対する政略、こういうものとも関連をして進めているところでありますから御了解願いたいということで、戦略という言葉は軍事的な戦略という意味ではなくて政治的な政略と、こういう意味でございます。
  266. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 もう一つ交渉再開
  267. 園田直

    国務大臣園田直君) 交渉再開についていままで全然進展がないというのは、変化がないという意味ではございません。この前、合同部会から呼ばれて、いよいよその段取りがついたら必ず了解を得てやりますと、こういうことを言っておりますので、この間はモスコーと中近東の報告でございましたが、その際、あれ以来まだ報告するような進展はございませんと、こう言ったわけでございます。
  268. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 外務大臣、いま伺っておりますと、平和戦略等々と言われておりますけれども、やはり平和と戦略というのは語学的にもちょっとなじまないような形にもなります。そういうわけで、ちょうど世界の緊張緩和、相互信頼の立場から見て、時期が非常におくれているわけですから、不穏当な発言にならないように、その点だけ老婆心ながら御注意を申し上げたいと思います。  で、日中共同声明に基づいて日中平和友好条約を早期に締結すると、そしてまた両国間の恒久平和、友好関係を樹立すべきであるとの声は、日本国民中国人民の大半の切なる願いであろうと思います。そこで福田総理、最初の御答弁と重なるかもわかりませんけれども、重ねて、いま申し上げました私の意味合いからも、もう一度この日中というものがいかに重大であるのか、そういう点の御見解を重ねて伺いたいと思います。
  269. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アジア外交が大変大事なことであるということは申し上げるまでもございませんけれども、そのアジアの大陸方面とすると、わが国は日中、日ソ、この二つの条約案件を持っておるわけでありまするが、先ほど申し上げましたように、日中につきましてはこれは共同声明の線で順調に両国の関係が発展いたしておりまするけれども、まだ平和友好条約締結になっておりません。まあ双方が満足と、こういう条件の中でなるべく早くこれを締結したいと、こういう考えです。その締結交渉をいつやるか、こういうことをいま慎重に模索しておる、こういう段階でございますので、ひとつ御理解お願い申し上げます。
  270. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 次に移ります。  質問が重複するかとも思いますけれども、本日の新聞報道に取り上げられておりました異常放射能の問題でございますけれども政府はカナダ当局からの報告は受けられたわけでございますか、外務大臣
  271. 園田直

    国務大臣園田直君) カナダから落下した通報は受けておりますが、その後の情報についてはまだ出てきておりません。
  272. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 この点重複しますので、結論だけ重ねてお伺いしたいと思いますが、衆議院予算委員会で近江委員の質問に対しては、再発防止策について総理は積極的な役割りを演じたいと述べられておりますし、外務大臣も原子炉の積載を禁止するくらいの厳しい規制をすべきだと答えられておられるわけでございますが、先ほどのお話と重複するかもわかりませんけれども、重ねて確認をしておきたいと思います。提案の場が来月開かれる宇宙空間平和利用委員会、そして国連軍縮特別総会、総理大臣はどちらに出席されるのか、外務大臣はどちらなのか、こういうふうな点をもう少しはっきりとお伺いして終わりたいと思います。
  273. 園田直

    国務大臣園田直君) 外務大臣は軍縮総会の方に出席する予定でございます。総理がこの総会に出席されるかどうかというのは、総理の御意向もあり、また外務省としては、他の国々からどういう人が出てくるか、こういうこともさらに情報を入手して検討するつもりでございます。平和利用委員会の方には、総理も私も出る計画はございません。
  274. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 総理にお願いいたします。
  275. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 軍縮総会につきましては、いま外務大臣からお答え申し上げたとおりでございます。ただ、軍縮総会は、これは今度のコスモス問題と直接どういうつながりがあるかというと、多少かみ合わぬところがある問題じゃないか、そのような感じもいたしますが、いずれにいたしましても、この軍縮総会がどういう内容のものになるかよく見守って、また私の出欠につきましては考えてみる、このようにいたしたいと存じます。それから宇宙空間平和利用委員会、これの方には私もまた外務大臣出席をいたしませんです。
  276. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 本年度第二次補正予算及び五十三年度予算の編成に対する福田総理の基本的姿勢を具体的にまず伺いたいと思います。  第一には、一つは内需拡大について、二番目には対外経済等の調整を図る意味から、三番目は不況の克服の実現等々について、予算編成のときに総理はどういう重点的な基本姿勢というものを非常に意識をされたのか、そういう点を簡単にお伺いしたいと思います。
  277. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 予算はこれは一年間の経済の動向を決める、こういう性格を持っておるものでありますので、経済の動向を注意深く観察したわけですが、国内経済はどうもまだ民間の投資意欲、これが起こってこない。また、もう一つ景気推進の大きな要素である輸出、これもいまの世界情勢から見るとなかなか景気牽引力を期待するというわけにはいかぬ。そこで、非常に大きな経済牽引の力のあるのは財政だ、しかし財政はさなきだに容易な状態ではございませんけれども、しかし経済の現況を考えるとき、財政しかその役割りを担当し得る力はないんであると、こういう認識に立ちますと、財政について臨時異例の考え方をとらなきゃならぬ、このように考えざるを得なかったわけであります。そこで、公共事業を中心といたしまして大規模な積極型の予算を編成する、こういうことにいたしたわけです。  それから、そういう考え方を五十三年度予算からやるというんではちょっと時期を失しやしないか。やっぱりそれに先立って、まだ五十三年の一月、二月、三月と、こういう段階もあるんだから、この段階に対しましては五十二年度の補正予算をお願いいたしまして、そしてこの第二次補正予算と五十三年度の予算が一体となって十五カ月予算という役割りを担当するということになると効果的だなあと、こういうふうに考えた次第でございます。
  278. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 第二点目には、当然総理としての立場からは、一つ失業者の増加をどうして食いとめるか、二番目には雇用の安定を図る、三番目には構造不況業種対策の充実、そうして四番目には円高倒産の回避にどうするのかというふうなものが、編成時の大きなやはり基本姿勢として福田総理がお考えになったんではないかなと思いますが、いま申し上げた点についてはどういうふうに苦慮されたのか、簡単に伺いたいと思います。
  279. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 積極型の臨時異例の財政政策をとったということは、これはわが国の経常収支の問題もありまするけれども国内的に見まするときには、これはもうとにかく雇用の安定を図ることである、こういうことでございます。それは雇用の安定ということを考えますと、景気政策としてはいろんな手段が考えられるけれども、やっぱり一番波及力を持った適確な手法というものは公共投資である、そういう認識でこのような予算を編成すると、こういうことになったわけでありますが、かなり私は今度の予算雇用情勢、それにはいい影響があると、こういうふうに見ております。しかし、財政措置だけで雇用問題は解決というわけにはまいりません。そういうことで雇用調整安定資金制度、これはちょうど去年の十月から動いておりますが、非常に有効な手段でありますので、これを積極的に活用するとか、またいろいろ財政上雇用のための施策を打ち出しておりますが、それらの施策を駆使いたしまして、雇用の面におきましては遺憾なきを期してまいりたいと、このように考えます。
  280. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 三番目の基本姿勢というのは、やはり長期の不況によって苦境に追い詰められております社会的弱者の人たちの生活について、総理大臣も相当苦慮されたのではないかと思っておりますが、一つは高齢者の方に対する対策、二番目には身障者に対する対策、三番目には母子家庭に対する対策、四番目は生活保護世帯に対する対策、そういう面ではどういうふうに基本姿勢の中で非常にあなたが御心配なさったのか、簡単で結構ですから伺いたいと思います。
  281. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今度は景気中心の大型予算だということでございますが、それは予算を二つに分けまして、そして経常的な予算、それから投資的な予算、こういう二つに区分したんですが、いまお話しの福祉の関係は経常関係の問題になるわけです。で、この景気対策でありますが、公共事業費を大いに進めますが、その伸び率に福祉関係予算が及ぶというわけにはまいりません。まいりませんけれども、福祉関係は一般の行政水準の予算よりはこれを重視するというようなことで、高齢者のための年金、これもそれぞれの年金につきまして処置をいたす、あるいは心身障害者、母子家庭あるいは生活保護世帯、これはもうそれぞれ手厚い処置をいたしておるわけでありまして、この部面が景気対策のゆえにないがしろにされておるということはございません。
  282. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 そういう観点の中から、経済見通しについて具体的に質疑を重ねたいと思います。  経済福田政権が登場して一年有余でございますけれども、低迷脱出の御託宣とはうらはらに景気は長期不況の様相を濃くしております。今年度の経済成長率も、六・七%の国際公約を破り五・三%へ修正、この数字もきわめて楽観的であり、産業界では四%前後が実感ではないか、こういうふうにも予測をしているわけでございます。経常収支の方も、七億ドルの赤字から黒字八十億ドルまた百億ドルと二転三転、全く当初の予測と大幅な狂いを生じておるわけでございますが、これらは大変重要な問題でございます。福田総理はこの経緯をどう考えられていらっしゃるのか、お伺いします。
  283. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 五十二年という年は私は年の初めにこれは経済の年だと、こういうふうに申し上げてきたんですが、それはどういう意味かと申しますると、ことしをもって日本経済を安定成長路線に定着をさせると、そういう年にしたいという願望を込めての経済の年であったわけですが、やってみるとそういかなかったんです。非常に波乱重畳の経済の年であったということになるわけでありますが、いまいろいろ顧みて御指摘がありましたが、私が一番一年じゅう、五十二年において苦慮し頭を悩ましたのは国際収支の黒字の問題です。これは年の初めには七億ドルの赤字になると、こういうような予想でありましたが、全くそれとは逆に百億ドルを超える黒字になった。これが国際社会におきましてもかなりの批判を浴びていると、この点が非常に苦慮しておる点でありますが、しかし、成長率が六・七%から五・三%に下方修正された、これは私はそう苦にはやまないんです。ドイツのごときも五%、これがいま二・四%に修正でしょう。アメリカだって、六%と言ったのが五%を切るというような状態で、決して私は日本の成長率につきましてどうこうということはありませんけれども、成長率が高くなかったという点で、それが国際収支の黒字の改善に響かなかったという点は、非常に私は残念だというふうに思っておりました。まあ一年ずれましたけれども、五十三年度、この年はぜひ安定成長路線を軟着陸させる、そういう経済の年にいたしたいと、かように考えております。
  284. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 ただいまの答弁を伺っておりますと、総理としての責任、反省が少し少ないんではないかなと感じているわけでございます。個人消費、民間住宅、民間設備投資の内需は停滞をしております。景気は低迷状態を脱することができない、こういう形で本年を迎えておるわけでございますけれども福田総理ももう少し深く反省をするということが、やはり国民に対して非常に大事ではないか、こういうふうに思うわけですけれども、その点いかがですか。
  285. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) とにかく五十二年という年はうまくいかなかったんです。うまくいかなかった、どこに問題があるかというような点を静かに考えてみまして、五十三年こそはこれを経済安定の年にさしたい、これをやってのけることが私の責任であると、このように考えます。
  286. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 本年度の最終的な経済成長率、経常収支の見通しをどう予測するのかという問題もございます。また、昨年のように見通しが狂った場合に総理はどういう形の責任をとられるのか、明確にお伺いしたいと思います。
  287. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ことしは成長目標を実質七%、それから経常黒字を六十億ドルと、こういうふうに見ておりますが、私は大体今度の積極財政、これを中軸といたしまして、成長目標、それから経常黒字目標、これは達成されると、このように見ておりますが、とにかくこれが達成されるように責任を持って努力する、これが私の決意でございます。
  288. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 次に、五十三年度の経済成長率七%が決定された経緯を明確に伺いたいと思います。
  289. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 新内閣が発足いたしまして直後に、私は大蔵大臣から大体昭和五十三年度の財政運営についての基本的なお考えを承ったわけであります。で、それを背景にいたしまして関係各省が作業をいたしたわけでございますが、まあ六・七%ぐらいまでは比較的順調に作業が進みまして、その段階で大蔵大臣、通産大臣、私が集まりまして、さらに財政、財投あるいは税制等にいろいろ工夫をこらすことがどの程度にできるかということについて三人で討議をいたしたわけであります。で、ある程度のなお努力が可能であるということまではその討議でわかってまいりました。その段階で大蔵省事務当局が年内編成をいたします上で、もう作業仮説を最終的に与えませんと法人税、個人所得税の歳入見積もりが正確にできない。そこから、したがって国債の発行額も決まらないということになりましたので、再び三大臣で御相談をいたしまして七%という作業仮説を設けることを決定いたしました。もとより、その段階では総理の御指示も仰いだわけでございます。  で、その仮説で作業いたしました結果、財政当局の財政、財投、税制等を含むいろいろな最後の御努力があって、七%程度の成長というものは可能であるということが最終的にはっきりいたしまして、これを目標と決定したわけでございます。
  290. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 この経緯を見ておりますと、閣議了解もとらずに発表されたというようなことも言われておりますけれども、十二月の十三日の段階では、経済企画の方で八%、通産の方では七%以上、大蔵では六・二と、調整がつかなかったというふうな経過も聞いておりますけれども、この点、大蔵大臣、この時点ではいかがでございましたですか。
  291. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 七%が決まりました経緯につきましては、いま宮澤長官が言われたとおりでございまして、いま御質問のようなことはございませんでした。
  292. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 通産大臣にお伺いします。
  293. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 七%が決定をいたしました経過につきましては、いま宮澤長官がお述べになったとおりであります。
  294. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 まあ十四日には、またまた大蔵が六・七、通産が七%以上の主張の調整がつかずとも聞いておりますけれども、こういうふうな中で十二月の十五日には、米国にいる対外経済相からの要請で、急転直下の七%発表というふうな形も聞くわけでございますが、総理大臣、米国の押しつけと言われるような、そういうことはないわけですか。
  295. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは本会議におきましても当委員会におきましてもるる申し上げておるわけですが、この成長率をアメリカから云々ということは一切ございませんです。これはわが国の経済運営という立場から、関係省庁において十分検討をいたし決定いたしたものである、このように御理解願います。
  296. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 では、何回も話に出ておりますけれども総理大臣、公約と目標の問題が出ているわけでございます。もう一回、その点どちらなのか、はっきりと伺いたいと思うのです。
  297. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 七%成長目標が公約だということになりますと、いま矢原さんからお話がありましたように、これはちょうどアメリカと経済交渉をしておるそのさなかの決定であるというその経緯にもかんがみまして、これはアメリカから押しつけられたんじゃないかというような見方も生まれる余地がなしとしないということを私は大変心配したんです。そういうようなことで、アメリカとの交渉の過程におきましても、十一月ごろの時点でアメリカ側が日本の成長率はこのくらいが好ましいなんて言ったことはあります。ありますが、私はそれはもうおかしな話だという話をしまして、それ以来一切アメリカ側から成長率のお話は出てきておりません。でありまするから、これはアメリカに対してわが国が成長目標を約束したなんていう、そういう性格のものじゃありません。ありませんが、これは日本がどういう経済政策をとるか、これにつきましては、これは内外ともに大変に大きな関心を持っておりますので、七%成長目標、それを中心にした経済諸指標がぜひ実現されるように、私といたしましては責任を持って努力をする、このような考えでございます。
  298. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 総理に重ねて伺いますけれども、七%成長は可能であると、こういうふうに確認をしてよろしいですか。
  299. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおり御確認願います。
  300. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 五十三年度予算の中において、公共事業費を中心にした景気回復への政府の施策は、まあ理解のできる面もあるわけでございます。しかし懸念されることが多過ぎるわけでございます。政府の本予算に対する基本的な理念も明確でないように思いますし、公共事業にさえ金を出せば景気が回復するとばかりに予算を組んだとしか思えません。  そこでお伺いをしますが、列島改造予算と言われた四十八年度の決算を見ましても、一三%の使い残しを出しております。理由は何なのか、総理大臣に伺いたいと思います。
  301. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 御案内のように、四十八年は列島改造ということで配意しまして当初大型の公共事業費をつけたのでございますが、御案内のようにもうすでにそのときには四十七年の秋から国際のいろんな木材を初め資源が上がってまいりました。さらに、四十八年の十一月には石油ショックが起きているわけでございます。狂乱物価になっているわけでございますから、当然この公共事業の予算を実行上抑制してまいった、そのことが結局使い残りがうんと残ってしまったということにつながったわけでございます。
  302. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 どうもはっきりしませんけれども、では、当時の公共事業関係費について実態を明示してください。――一三%残っているでしょう、その中の公共事業はどれだけ残ったのかということです。
  303. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 四十八年の公共事業費を振り返ってみますと、四十八年には三二・二%伸ばしているのでございます。そのうち、一般公共事業費は二八%の伸びでございまして、予算額は公共事業関係費二兆八千四百八億となっておるのでございます。しかし、先ほど申し述べましたように、このときにはもうすでに狂乱物価が起きているわけでございますので、実行上これをあえて抑制いたしまして、そして計画的に繰り越しを出したわけでございます。したがって、年度繰り越しが一三%になったということは、物価情勢との関係でございます。
  304. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 これは四十七年の決算から見ても明確になっているのですけれども、公共事業の中で住宅対策は四十七年でも消化をしていない。やっと七四%しか達成していない。四十八年の公共事業の中でも、住宅の対策は六二%の消化率なんです。ではあとはどうなっているのかという問題になると、大蔵大臣だけの説明では了承できないわけです。計算をし尽くされた上の中で四十七年、四十八年から見てもこういう未消化、総理大臣、こういう点については、五十三年度の公共事業対策についてはどういうふうに参考にされたのか、伺います。
  305. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私、いま四十八年度のことを具体的に承知しませんが、恐らく想像できますのは、四十八年度の年度の途中であのいわゆる物価狂乱、石油ショックと、こういうことになったわけです。それで、公共事業初め諸事業はここでできる限りストップをかける、そういう政策が出されたわけで、その関係ではなかろうか、そのように思いますが、五十三年度につきましてはそういう事情はありません。これはもう公共事業費を何とかして消化をしなければならぬ、こういう立場にありますので、これはもう各省挙げて対策本部等をほとんどの省がつくりまして、そしてこれが推進に当たっておる。なお、この公共事業は、地方自治団体、これの担当する分野が非常に多いわけでありますから、地方自治団体に対しましても同様の御協力をお願いしておるという現状でございます。
  306. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 担当大臣でございます建設等もいますけれども生活環境施設の整備等もなかなか消化できていないんです、数字を見ておりますと。そういうような点についても、今後の大きな課題というのは、こういう公共事業の中で用地買収はどうなっていくのか、地方の自治体の取り組み方は実際にどういう点までなっているのかというふうなことが、資材の問題であるとか技術者の問題であるとか重複した中で出てくると思うわけです。これは担当として四十七年、四十八年を踏まえてどういうふうに厳しく考えていらっしゃるのか、伺いたいと思います。
  307. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 今回の十五カ月予算の中で、公共事業の大幅増進、その大半といいますか七割近くを建設省で受け持っておるわけでございますが、ただいまの御質問のことは、そのまま私は責任者として心配をしておるわけであります。しかし、同時に、心配するとともに、その対応に万全を尽くしたいと、こういうことで、たとえばいま土地の問題はどうかと、こういうことでございまするが、今回お願いをしておる公共事業の中では、おおよそ用地の手配のできておるものを優先しておるわけでございます。ただ、この用地のストックを吐き出したままで済むというものではありませんから、今後のための先行投資などにつきましては極力手配をしてまいりまするけれども、五十三年度に関しましてはまず心配がないような措置を講じておる。これは自治大臣の方、自治体とも緊密な連絡をとっておるわけであります。  それから資材の関係につきましては、御承知のように五十二年度不況のためにおおよその資材は皆不況カルテルを結んでおったわけでございまするが、今回のこの大幅予算にかんがみましてすでにセメントはそのカルテルの解除をお願いして増産に努めておるわけで、その生産能力は十分あると思うのであります。したがって、私どもとしては、これが達成ができなければ、きょう皆さんの御質問にありますように七%を目標とするそのことに大きな影響がありまするから、鋭意担当の私としては私の分野を一生懸命消化するために努力をしておると、こういうことでございます。
  308. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 総理大臣、ここで一つだけ詰めておきたいのですけれども、四十七、四十八年を見ておりましても、住宅対策でも三一%も翌年度へ繰り越している。その上に不用額というものが五%も出ている。だから私は心配しているんです。もし五十三年度に翌年の持ち越しが出たり、不用額が出たりしたら、これは大変なことになると思います。だから、ここで、総理に、建設大臣だけではなしにあなたにも責任の所在というのか、目をそこへ向けていただかなくちゃいけませんので、公共事業に対してこの点をどうするか、お願いしたいと思います。
  309. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公共事業は、予算ができましてもこれが執行が順調にまいりませんと、これはもう何にも意味をなしません。そこで、執行が非常に大事なんです。しかし、制度的にも執行しやすいようにしなければならぬと、こういうので、先ほど申し上げましたが十五カ月予算――五十二年度の補正でもうできるものはどんどん契約もし、着手もする、そこへ五十三年度予算ができてくる、そうすると切れ目なくずっと公共事業の執行がつながっていくと、こういうことになるわけでございます。  それからそういう前提のもとの予算でありますが、これが執行に当たりましては、これは各省庁本当に全力投球という構えで、執行のための仕組みまでつくりましてやっておるわけです。それから地方公共団体の方もずいぶんこれは御協力くださる態勢でございましてありがたく思っておるわけですが、四十八年のお話がありましたが、これは年度の途中で予算を抑えなきゃならぬ、そういう事情が出てきた年でありまして、これは非常に異例の年でありますから、そう大きな繰り越しが出るということのないように、とにかく消化には万全を期してまいるということでございます。
  310. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 いま総理も言われておりますように、公共事業は、地方自治体の役割りが非常に大きいわけでございます。ところが、自治体の中には、五十三年度予算の公共事業費の増加には、人的設計能力、用地買収の面からも消化を危ぶんでいるところもあります。そういう中で、地方財政の状況はきわめて厳しく、裏負担にはおのずと限界がございます。そういう中で、補助金の重点的な配分であるとか、起債とか、自治体の立場に立った配慮をすべきであろうと思いますけれども、まず地方債計画はどのようになっているのか、伺いたいと思います。
  311. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 御指摘の地方債計画につきましては、鋭意策定を急いでまいっておるところでありまして、さほど日数を要せずして最終的な結論に相なると、かように考えておるのでありますけれども、若干の数字がまだ変動するかもしれませんが、国の一般会計予算を若干上回ります三十四兆三千億前後の計画になろうかと、かように考えておるところであります。(「それは地方財政」と呼ぶ者あり)いま私は地方財政計画のことを申したのでありまして、地方債計画はこれまた地方財政計画の中で最終的に固まるのでありますが、五十三年度におきましては、若干数字がまだ動く可能性はありますけれども、約六兆二千億円を超えます地方債計画を持っておると、かようなことであります。
  312. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 同じく縁故債の金額と構成比、それを伺いたいと思います。
  313. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 縁故債も二兆二千億円を若干超えるであろうと、かように想定をいたしております。
  314. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 地方債資金の中で、縁故債の占める割合は、三六・二%になるわけでございます。非常に多いわけでございます。自治体が、低利の政府資金が減り、高利の縁故債の増加で金利負担がふえておるわけです。今回、国は六〇%までは政府資金並みの金利とするようにいたしましたが、私は、この点についてはもっと枠を広げるべきであると、こういうふうに考えるわけでございますが、この点はいかがでございますか。
  315. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 地方債計画の中におきまして、縁故債は先ほど申したとおりでありますが、私どもはできるだけ多くの政府資金を期待をいたしておったのでございますが、政府資金の枠は、二兆四千億円を超える結果に相なると、かように想定をいたしておるのでありまして、財政的に弱い市町村の立場を考えますときに、縁故債では非常に苦労をいたしておるのであります。ですから、財政的に弱い立場にある市町村にできるだけ政府資金を充当いたすと、かようなことによりまして今回の公共事業の消化を最大限に可能にする、かような努力をいたしてまいりたいととろであります。
  316. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 すでに政府も御承知のように、昨年の十一月に全国の市長会が発表しました五十一年度縁故・地方債に関する調査によりましても、銀行等から借り入れる縁故債の金利が非常に高い。当時の政府資金金利七・五%以下で借りているのはわずか四・三%にしかすぎない。こういう点も非常に考えられるところでございます。また、縁故債の一応の目安とされております市場公募債の発行者利回りを超えているのが、何と約三分の二になっているわけでございます。こういう点が今後どういうふうに生かされるのか、参考になるのか、そういう点をお伺いしたいと思います。
  317. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 先ほど申しましたように、都道府県等におきましてはさほど大きな苦労はないのでありますが、財政規模の小さい市町村、ことに町村におきましては非常な苦労をいたしておるのでありまして、そこで結果を調べてみますと、ただいまおっしゃいました数字は恐らく昭和五十一年あるいはそれ以前の数字であろうかと思うのでありますが、ある町村のごときは九・五%という高い利息で資金を調達をいたしておる、かようなところもございました。が、幸いにして昨年は、金融も緩和されたようなこともありまして、私どもの調査によりますと、七・〇五%が最高でありまして、大体六%台で資金の調達が可能である、かような数字が出ておるのでありますけれども、しかし、各市町村が個々に金融機関と交渉をいたしますから、場合によりましてはあるいは高いもので借らざるを得ないようなこともあろうかと思うのであります。そこで、先ほど申しましたような政府資金を充当いたしまするのならばさような苦労も解消できるのでありますから、そういう方法をきめ細かくとりまして公共事業の執行等に支障がないようにいたしてまいりたいと、かように思っておるところであります。
  318. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 いま答弁もございましたように、府県についても非常にばらつきがございます。金融機関においても資金不足等々の悪条件のときはどうしても利率の高い資金を受けざるを得ない、こういう自治体も大変でございます。これに対しては政府も今後真剣に対策を立てなくちゃいけないと思うわけでございますが、いずれにしてもこういう都市によって非常にばらつきがある。しかし、住民のために実施する事業に使用するのでございますから、金融機関の方にもどういうふうにいろいろと指導すべきであるか、そういう点について一言お伺いしたいと思います。
  319. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) いま自治大臣からおおよそお話がございましたが、大体今度は地方債については約六兆二千億程度見込まれるのでございまして、前年に対しまして二三%増でございます。それに対しまして、政府資金は今度三二%ふやしておりまして二兆四千四百四十五億ぐらい、それから公庫資金も一三%伸ばしております。したがって、八千九百二十七億円。結果として民間資金は約一四%の伸びでございますが、市場公募の方を大分伸ばしておりますので、差し引き残ります縁故債につきましては、前年に比べて、一般の起債資金が二三%に対して九%でございます。そうして、絶対額でも、五十二年度の縁故債の総額は二兆三千八百十二億と見込まれますが、大体二兆一千八百億程度でございまして、絶対額でも減るであろうと思われるのでございます。  さらに、先ほど自治大臣からもお話がありましたように、市町村の方がどうしても負担能力が少ないわけでございますので、そこで、財源対策債一兆三千五百億につきましては、市町村の財源対策債は全部政府資金で持つということを自治省との間に取り決めております。  なお、今度公営公庫の資金枠がふえましたが、これも単独事業の方によけい回そうということで、二千億程度新たに拡張いたしておるところでございます。  御心配になります縁故債、これは量はうんと少なくなりましたが、御案内のようにもう非常に金利が下がっておりますので、従来のような御心配のことはないと思うのでございますが、なお金融機関についてもわれわれは十分な指導をしてまいりたいと、かように思っておるところでございます。
  320. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 総理大臣、公共事業費を幾ら増額しても、自治体に対する配慮が欠ければ非常に実施できない面もあるかと思います。そういう意味で、一つ政府資金比率の増加、二番目には縁故債の借入金利の条件改善、三番目には縁故債借り入れに要する労力の減少等についての改善が将来どうしても一歩前進する立場においても取り組まなくちゃいけない問題だと思うのです。その三点について明確にお伺いしたいと思います。
  321. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) おっしゃるとおりでございまして、この点は昨年も銀行局長通達で十分申したところでございますが、ことしもなお一層同じように指導してまいりたいと、かように思っておるわけでございます。
  322. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 じゃ、日銀総裁にお伺いしたいと思いますが、午前中の質疑と重複するかもわかりませんが、大事な問題でございますのでよろしくお願いいたします。  公定歩合の引き下げについて、日銀総裁は、いま考えていないと、こういうふうにおっしゃっていらっしゃるわけでございますが、この点についてお伺いしたいと思います。
  323. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 今後の経済情勢の推移いかんにもよることでございますが、目下のところは公定歩合を引き下げることは考えておりません。
  324. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 二十四日に、日銀総裁は、記者会見で、「民間が政府経済見通しにケチばかりつけず、七%成長めざして努力と工夫をしてほしい」云々のお話があったと聞いておりますけれども、いま中小企業と民間企業においては大変な状態にあるわけでございますが、そういう現況を踏まえて日銀総裁はどういうふうなこれらを見通してのお話であったのか、真意を伺いたいと思います。
  325. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 来年度の経済目標は、七%の成長率と六十億ドルの経常黒字幅ということが二本の柱になっておるわけでございますが、私どもといたしましても、景気の着実なる回復のために、そしてまた、それによる内需拡大、さらには輸入増加というようなことによる黒字幅削減のためには、ぜひともこの七%程度の成長率が望ましいと考えておる次第でございまして、それによって国際収支の黒字幅の縮小も初めて可能になるのではないかとひたすらその実現を期待しておる次第でございます。つきましては、この景気刺激、七%達成の原動力になりますものは、あくまでも財政面からの刺激的効果、内需拡大であると考えるのでございますが、国民経済活動全体の中の比重から申しますと、やはり民間経済活動の比重が大きいわけでございまして、やはり民間経済活動が伸びることが期待されるわけでございます。つきましては、現在ややもすれば政府の七%目標が非常にむずかしいという悲観的な人気がみなぎりがちでございますが、そういう悲観的な批判だけじゃなくて、この際やはり自分たちでできるだけのことをみずから実行して、それによって難局に耐え、また難局を切り開いていく、そういう努力、その心理的な効果、これが大変大きいのじゃないかと思うわけでございまして、その意味で民間がやる気を起こしていただくことがこの際ぜひとも必要ではないかと、そういう意味で御指摘のとおりの発言になった次第でございます。私ども、支店長会議で各地の情勢を伺いましたが、最近、政府にだけ頼っておったんじゃいけないので、やはり自分たちでやる気を起こさなければならないという経営者の数がかなり増加しておるような感触を受けましたし、また、当面、円高が問題でございますが、その円高の問題に対しましても、たとえば付加価値のより高いものに転換することによってすでに成功した事例であるとか、あるいは工場の外地転出等々、いろいろ工夫すれば切り抜ける手段があるというような報告を受けた次第でございますが、私は民間におきましてもぜひこの難局を切り抜けるために工夫の限りを尽くしていただいて、何とかこのむずかしい局面を切り開いていくよう民間経済活動に大いに期待をいたしたいのでございまして、そのような趣旨から申し上げた次第でございます。
  326. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 同じ会見の中で、総裁みずから、景気の潮は変わっていないとも言われておりますけれども、ここで考えますのには、みずからの工夫や努力ではどうにもならないものもあるかと思います。一ドル二百四十円では対処できないところがあるのではないかとも思いますけれども、こういう点については総裁はどのようにお考えでございますか。
  327. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 円高に伴う心理的な影響はもうすでに出尽くしておるようでございまして、一時は混迷の極に達しておりました企業家心理もやや落ちついて少し明るさがほの見えておるということは、けさほど申し上げたとおりでございます。しかし、その具体的な影響いかんということになりますと、これから問題が出てくるわけでございます。大変業種がたくさんあるわけでございますが、業種によりましてはなかなかむずかしい業種もございましょうし、概して申し上げますと、自動車とか精密機械などはこの局面にかなり力強く対処できるような感じでございますが、そのほかの事業につきましてはやはりいろいろな工夫努力が必要になるということは想像にかたくないわけでございまして、その辺のところはやはりやる気を起こしていろいろと考えるというのが現在企業家が努力しなければならないことじゃないかと思うわけでございます。概して申し上げますれば、決して楽じゃございません。困難な道を乗り越えていかなければならぬわけでございますが、それについてまずやる気を起こすということが何よりも大切なことじゃないかという感じでございます。
  328. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 最後にもう一点総裁にお伺いしますが、政府の七%成長は達成できると思われるのか、それとも、すべきだとお考えなのか、お伺いしたいと思います。
  329. 森永貞一郎

    参考人森永貞一郎君) 七%の目標達成は、厳しい経済情勢の中で決して容易なことではないと思いますが、私どもといたしましては、景気の着実なる回復並びに経常収支黒字幅縮小のためにぜひその程度の成長率は達成していただきたい、また、それに向かってできるだけの努力をつぎ込まなければならないと考えております。
  330. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 じゃ、次に各論について伺いますが、最初に民間設備投資でございますが、政府は名目九・九%と言っておりますが、民間の調査では、名目で最高六・四、最低で〇・九%、平均四・六と、政府の予測とは差がありますけれども、こういう数字も出ております。これについては総理はどういうように考えていらっしゃいますか。
  331. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 矢原君、日銀総裁に御退席いただいていいですか。
  332. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 はい。
  333. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 森永参考人には、御多忙中にもかかわらず、再度御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。御退席をいただいて結構でございます。
  334. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 民間のいろいろな予測の細かいことが逐一わかっておるわけではございませんけれども、大体見ておりますと、製造業の新規設備投資については、私どもも、実は、今朝も申し上げましたが、大きなものを見ておりませんで、せいぜい名目で三%ぐらいではないかと見ておるわけでございます。この点はもっと低く見ておる民間も恐らくあると思いますが、いずれにしても大きな違いは非製造の方から起こってくると思います。電力等を含みますが、これを私どもは一三・八ぐらいと、それからあと個人、金融業、これが一一ぐらい見ておるわけでございますが、非製造業のまあ電力などは別でございますけれども大きな部分と、個人、金融というような部分は実は統計的に非常に把握がむずかしい部分でもございまして、その辺が私どもと民間の諸見通しとの設備投資についての分かれる大きな点ではなかろうかと存じます。
  335. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 いろいろ御意見があろうかと思いますけれども、民間が低く見ている最大の理由の中には、内需拡大に期待が持てない点もあろうかと思います。前年度比三四・八%増の公共事業が一〇〇%消化できるだろうかと、こういう心配もあろうかと思いますけれども関係閣僚の御見解を伺いたいと思いますけれども、大蔵大臣にまずお聞きいたします。
  336. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) いま私が執行促進対策本部長をやっておりますので、私から便宜答えさせていただきます。  私は、やはり、今度の公共事業の、編成もさることながら、執行が一番大事だと思っているのでございます。その一つは、何と申しましても第二次補正予算及び本予算を早く上げていただくということが何より一番大事なことだろうと思います。それから第二番目は、いろいろなその諸準備を部内的に早く進めているということでございます。一つは支出負担行為、これの実施計画を早く部内的に進めておきまして、予算が成立しましたらすぐ実施に移せるようにやることでございます。それから第三番目は、国庫支出金のいわゆる補助金交付に伴う手続を簡略にするということでございます。そのための設計をあらかじめ部内的に簡略に、そして部数も少なくすると、こういうことをやっておく必要があろうかと思うのでございます。さらに、自治団体におきましては、いよいよ入札その他の問題もありますから、その辺まで気を配ってやっていくということ。それから最後に、やはり何と申しましても自治団体が実施する面が多うございますから、自治団体のやりやすいようにいろいろな地方債、資金手当てをやっていくことは当然のことでございますけれども、早く県会なり市会を開いていただきまして、そして時期を逸せず直ちに消化にかかる、こういう手段をもっていくことが一番大事だと思います。  途中の過程では、矢原委員がおっしゃいましたように、いろいろな資材面の問題、あるいは雇用の問題、さらには地価騰貴の問題が部分的にあるいは一時的に出てくるかもしれませんが、これまた関係省庁が緊密な連絡をとって、そして情報を交換し合ってそういう隘路がないようにする。こういうすべての計画を計画的に実施することによりまして、私は一〇〇%可能のように持っていきたいと、また不可能でないのじゃないか、こういう非常に意欲を持ちまして関係各省といま協議を進めているところでございます。
  337. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 自治大臣、どうでございますか。
  338. 加藤武徳

    国務大臣(加藤武徳君) 公共事業の完全執行はなかなか容易なことではないと思うのでありまして、ことに公共事業につきましてはいわゆる補助事業が七〇%以上占めておりますので、これは地方がやってまいることであります。かてて加えて、地方でもできるだけ多くの単独事業をやることによって景気の回復を図る、こういう考え方でありますから、これまた五兆円を超えますようなものを計上いたしておるのであります。これらの消化は大変でございますが、先ほど申しましたように、財政的な裏づけを行っていく、不足財源を完全に埋めていく、かようなことが重点になっておるようなことでありますし、ことに公営企業金融公庫の改組もいたしまして、一般会計債をも充当いたすことができる、かような処置をとっておりますので、私は完全にと言い得るかどうかは別にいたしまして、予定しておりますものは消化し得るものと、かように判断いたしているところであります。
  339. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 河本通産大臣にお願いしたいと思います。
  340. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 先ほどの御議論の中で、四十八年は相当積み残しがあったではないかと、こういうお話がございましたが、私は四十八年とは若干事情が違うと思いますことは、一つは、現在は生産能力に相当の余力があるということであります。たとえば、四十八年は、第三・四半期などは瞬間風速で鉄の生産は一億二千八百万という水準まで達しておりました。ほとんどもう生産能力いっぱいいっぱい、ぎりぎりのところまで生産をしておったわけでありますが、現在の水準は九千四百万という年率であります。三千数百万トンも減少しておりますし、しかも能力はそのときよりもはるかに大きい。こういう状態でございまして、生産能力に相当な余力がほとんど全部の業種において存在をしておるということ。  それからもう一つは、当時は、前半はオイルショックは起こっておりませんけれども、それでも物価は非常な騰貴を続けておりましたし、後半はオイルショックでいわゆる狂乱物価、こういう状態でございましたが、現在は物価事情は全く安定をしておると、こういう状態だと思います。  それからまたさらに、四十八年は公共事業も非常な激増をしておりますけれども、民間の投資も大変な勢いで激増しております。そういうことで、民間、公共双方が激増いたしました関係で、総合的に判断いたしまして若干の積み残しが出たわけでありますが、ことしは、先ほど来各大臣答弁せられましたように、いろいろな点で十分配慮していく、こういうことをいたしますならば、私は、完全に消化はできると、また消化しなければならぬ、このように期待をいたしております。
  341. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 まあ各大臣ともいろいろ少し微妙な言い回しでございますが、いま河本さんも言っていらっしゃいますように、物価安定とかそういうことも、非常に国民生活は不安定でございますめで、そういう点も私は非常に厳しく見ているわけでございます。  じゃ、次に移りますが、民間住宅投資でありますけれども、今年度の見通しはどういうふうになっているのか、伺いたい。
  342. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 先般、一月十七日に五十二年度の最後の住宅金融公庫の融資対象の募集をいたしました。そうしましたところが、一週間程度でもう締め切るぐらいな情勢でございました。この政府関係のものにつきましては順調に消化できておると思うのでございまするが、全般的で申しますると、まだ低調なところがございます。これらのことにつきましては、きょうもお話がだんだん出ておりまするように、土地の取得が困難であるというような問題もございまするが、しかし、それらにつきましては、でき得る限りこの取得の容易になるように、これは五十三年度の方になりまするけれども政府機関の金融などにつきましては緩和する措置をとるように考えております。しかし、五十二年度全般として申しまするならば、民間の方についてはやや低調であったということは認めなければならないと思います。
  343. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 昨年九月の総合景気対策の例では、前年度比一六・六%の伸びを想定していたのにもかかわらず、達成できませんでした。また、新規住宅着工戸数は一月から七月まで前年同期実績比で二・六%減になっております。これらの原因を政府はどういうふうに見ているのか、伺いたい。
  344. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ただいまお示しのような実績の傾向にあると思います。いま私の手元にあります民間住宅投資の対前年度伸び率を見まするに、当初見通し五十二年度一六・五%のものが大体七・五%と、こういうことでありまするので、民間住宅全般としては落ち込みが相当あると、これは先ほどから申上げるように認めなきゃならないと思います。これはやはりいまの景気の動向というものが相当響いておるということは言うまでもないと思うのであります。  そこで、ちょっと付言さしていただきますが、今度十五カ月予算をお願いしておるその内容といたしましては、それらの隘路につきましては相当配慮をするつもりでございます。たとえば住宅金融公庫の融資条件を緩和するとか、ただいまも申し上げましたように土地取得を容易ならしめるような対象範囲の拡大とか、いろいろ考慮を払っておるということを付言さしていただきます。
  345. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 こういうふうに民間住宅投資についても非常に見通しが崩れております。こういうふうな現況については、現在の日本では住宅を建てる場合最初に問題になりますのが、いまもお話がございましたが、土地でございます。マイホームの建設用地の内訳を日米で比較しておりましても、もちろん国土は違いますけれども日本では土地に六〇%の神経を使います。米国は二〇%です。建設には日本は三五%、米国は六〇%。設備に日本は五%、米国は二〇%。こういうふうに分析をしてまいりますと、日本における土地の比重の重さが全くアメリカと異なっております。こういうことになりますと、土地問題の解消、これが住宅問題の解決になってくることは論を待たないわけでございますが、ここで一点は、すでに取得者のみならず、新規購入の方に対しても助成をしたらどうか。第二点は、大量の住宅建築に伴う地価の高騰を防止しなくてはいけない、こういう対策が急務であることは当然でございますけれども、この点についてしかと伺いたいと思います。
  346. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 土地の提供がふえるように措置をしていかなければならない。民間デベロッパーなどの宅地造成につきまして開銀とかあるいは住宅金融公庫からの融資を従来よりは緩和して土地造成の役に立たしめたいというような措置を考えております。また、個人の場合におきまして、住宅金融公庫からの融資が従来土地百九十万円限度でございましたが、今回三百五十万円まで引き上げてもらおうというようなことも考えておりまするが、先ほども申し上げたように、民間の宅地取得の場合に、従来でありますると非常に制限をしておるわけであります、いまの三百五十万円の資金などを出す場合にですね。しかし、今回は、優良な宅地造成者から取得する場合にはもちろんよろしいということにしておるわけであります。  それから価格問題についての御懸念でございまするが、これは今度の土地税制の改善をお願いしている内容でおわかりのように、国土利用計画法の公示価格を基準にしてやろうというようなことで暴騰することをも抑制しておるということを御参考に申し上げておきます。
  347. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 いずれにいたしましても、政府の実質経済成長率の見通しの七%のうち〇・七%になる重要な民間住宅投資でありますけれども、現状のような雇用不安、給料もふえない状況の中では、政府がいかにてこ入れしても、政策の融資分は民間ローンの振りかえに利用されて、新規需要の誘発が非常に無理だと思うわけでございますが、この点についてはどのように考えていらっしゃるのか。
  348. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 今回、たとえば住宅金融公庫の融資対象を個人の場合四十万戸をお願いしておる。この場合に、従来の住宅取得の傾向を相当考えてやっておるつもりなのであります。これも先ほどちょっと申し上げましたように、この一月十七日に五十三年度分前倒しまで入れて七万四千戸の募集をして、一週間ですぐ締め切るような状況にございまするし、融資条件の緩和などを考え、あるいは――まあ融資条件の緩和が主でありまするが、ちょっとお話が出ましたように、税金関係、住宅ローンなんかの取り合わせ、そういうものを総合していきまするならば、私は、御心配がないものと、必ず消化ができるものと、こういうふうに信じておる次第でございます。
  349. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 ひとつそういう点でしっかりがんばっていただきたいと思います。  次に移りますけれども、中期財政収支についてでございますが、いままでの中期財政収支試算、これは見通しの誤りでなかったのかと思うわけでございますけれども、どういうふうに反省をされていらっしゃるのか、お伺いします。
  350. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 従来の中期財政収支試算は、五十年代の中期経済計画の試算をもとにいたしまして二つの場合を想定して出しているわけでございます。しかし、その後、経済が、基調的にはそんなに変わらないかもしれませんが、五十一年度、五十二年度とかなり大きなぶれがあるわけでございます。したがいまして、従来お示しした中期財政収支試算、これも当然変更してまいらねばならぬところでございまして、本予算が本委員会にかかります前、二月一日までにはその収支試算をお示しして十分な御検討をいただきたいと、かように思っているところでございます。
  351. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 まあ一口に言いまして私は試算の失敗であると思っているわけでございますが、景気対策の失敗が原因ではなかったのか、こういうふうに思うわけです。この点どうですか。
  352. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 税収の伸びがかなり予想よりも落ちておるということは、まさに経済が予想よりも少し悪かったということでございます。ただ、従来の収支試算は、五十五年度までのものにつきまして二つの場合を想定して出しておりますので、率直に言いまして、なかなか財政の状況がどれぐらい困窮しているのかということがわかりにくい面もあったのじゃなかろうか。そしてまた同時に、いまのような経済状況でございますから、一般的な負担増を求めるというようなことが景気対策の観点から事実上できなかった、それもまた大きかったのではないかと、かように思っているわけでございます。したがいまして、今度お示しするものにつきましては、企画庁の試算をもとにいたしまして、それと関連した問題意識がはっきりしたようなものを出しまして、そして財政の苦しい状況、それから将来どうなるか、こういった展望ができるようなものを出しまして、そして御審議を賜り、そしてまた国民の皆様方からも、本委員会における審議の経過を踏まえて財政状況について御認識を賜り、願わくば経費の節減とかあるいは負担の増についてコンセンサスが得られればと、かような願いを込めてお示しするつもりでございます。
  353. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 午前中の質疑と重複すると思いますけれども、五十七年に経常支出の国債依存率をゼロにするための五カ年にわたる財政施策を策定すると約束されたわけでございます。五十三年度予算審議は二日後でございますけれども、その概要、具体的な数字を示していただきたいと思います。
  354. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 残念ながらまだお示しできないのをまことに遺憾とするわけでございますが、何らかの形で皆様方から早いうちに収支試算の内容を御理解いただきますよういま諸般の手続を進めているところであることを御理解賜りたいと思うのでございます。
  355. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 明確に示されておりませんので、この問題は留保したいと思います。  じゃ、次に移ります。構造不況対策として政府が提出を予定しておりますいわゆる特定不況産業安定臨時措置法案について簡単に伺いたいと思います。  一つは、立法措置を必要とする理由、二番目には、特定不況業種として政令で指定する予定の対象業種はどのようなものになるのか、特に造船、合板など通産省以外の所管業種はどうなるのか、お伺いしたいと思います。
  356. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 政府経済政策についての基本的な考え方は、一般的な景気浮揚対策と、それと構造不況業種対策及び中小企業緊急対策、こういうことを柱にしておるわけでありますが、そのうち、構造不況業種の再建につきましては、どういう法律の内容にするか、いま各方面と意見を調整中でございます。
  357. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 法案の中身には設備廃棄、債務保証基金制度等が含まれておりますが、設備廃棄等に要する各業界の資金はどれぐらいが見込まれておるのですか。そして、債務保証基金制度の保証規模、保証期間はどうか、伺いたいと思います。
  358. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 債務保証基金は、とりあえずは百億、保証額はその十倍の一千億をとりあえず考えておりますが、これは今後場合によれば拡大の必要があろうかと考えております。  それからお述べになりました幾つかの問題点につきましては、謙虚に各方面の意見を聞きまして調整をするつもりでございます。
  359. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 法案は、指示カルテルによって効果が上がらなかった場合アウトサイダーの規制命令が出せるとして、統制力が強過ぎるとの批判、それから独禁法の形骸化につながるのではないかとの声もございますが、通産大臣の御見解はいかがでございますか。
  360. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いま各方面と意見を調整中でございまして、先ほども申し上げましたように謙虚に皆さん方の意見を聞くつもりでございますが、いずれにいたしましてもどうすれば構造不況業種の立ち直りに一番よいかということを中心に考えていきたいと思います。
  361. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 交渉中とのことでございますが、次に、設備廃棄のカルテル、合併、営業譲渡などの独禁法適用除外について、その必要性を通産大臣はどういうふうに考えていらっしゃるのか、この点も伺いたいと思います。
  362. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) その点につきましてもいま調整中でございまして、極力急いでおるところでございます。
  363. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 この点については、公取委員長としてはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  364. 橋口收

    政府委員(橋口收君) ただいま通産大臣からお答えがあったとおりでございまして、現在折衝を急いでおるところでございます。ただ、一月十八日にちょうだいいたしました通産省事務当局の作成に係る第一次試案にはいま御指摘のような問題につきましてある種の提案がなされておったわけでございまして、現在それを中心にして折衝をいたしておるところでございます。
  365. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 公取委員長は、かつて、独占禁止法によって設備廃棄は可能であると答弁をしておられましたと思います。将来の問題かもしれませんが、独禁法と設備廃棄についての公取の見解を伺いたいと思います。
  366. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 日本の独占禁止法は、先生よく御承知のように、不況カルテルという制度を持っております。法律ができましてから今日まで約四分の一世紀経過をいたしておりますが、いままでの運用の実績で申し上げますと、事業者についての販売数量、生産数量の制限、あるいはときには価格についての協定まで認めておるわけでございまして、法律の規定で申しますと、設備の制限につきましても協定合意ができるということになっております。ただ、設備の制限に設備の廃棄まで入るかどうかというまあ法律解釈上の問題もございますし、いま申し上げましたように過去二十五年間における運用の方針というものもございます。それらを調整いたしまして昨年の秋に公正取引委員会としては独占禁止法の不況カルテルの運用方針の転換によって設備の共同廃棄に対しても対処し得るのではないかという方針を打ち出したわけでございまして、これは衆議院の商工委員会の西中委員の質問にもお答えしたとおりでございまして、今日におきましてもその考え方は変わっておりません。  ただ、先ほど来通産大臣からお答えがございましたように、現在の特定構造不況業種というものは大変むずかしい状況にあるわけでございますから、そういう産業の設備につきまして何らか立法的な措置をとるということにつきましては基本的に賛成でございます。
  367. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 総理にお伺いしたいと思いますが、通産大臣、公取委員長、まあ私推察いたしまして微妙に少し考えの違うところもありますし、歩み寄りの点もあろうかと思いますけれども、いずれにしても、閣議、国会提出は、両者の合意、こういうようなことを前提にしながら私は進めなくてはいけない法案だと思っておりますが、その点いかがでございますか。
  368. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおりに心得ております。
  369. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 じゃ、次に移ります。不況の問題の前に、伊豆地震について質問をいたします。  持越鉱山鉱滓流出事故について伺いたいと思いますが、一月の十四日、第一堰堤より持越川、狩野川から駿河湾へと流れていったシアン鉱滓は、現在持越鉱業所付近から下流四キロにわたって約四万トンのシアンヘドロとなって埋め尽くしております。これは地域住民に対して二次災害の不安と鉱害の恐怖を与えて、より早急なるヘドロの除去が望まれておりますけれども、その対策について伺いたい。
  370. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 持越鉱山の対策につきましては二つございまして、一つは扞止堤の強化であります。それからもう一つはいまお述べになりました持越川に流れ出ましたヘドロの除去、こういうことでありますが、二つとも二月末までに完成するようにいま準備をしておるところでございます。
  371. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 シアンヘドロの除去を早急に行うような問題はいま申し上げたとおりでございますけれども、やはりどうしても心配になりますのは二次鉱害の防止対策、まあ四月にやると言っておられますけれども、この点は非常に大変でございます。また、今回の事故で養殖ハマチへの影響が心配されております。まあこういうふうな問題、それから強度の地震があった場合にまた相当の二次災害というものが全般的に発生するのではないか、こういう非常に心配を持っておるわけでございますけれども、伺うところによりますと、狩野川のアユについても相当の影響等も出ているように伺っておるわけでございますが、こういう地元住民に対する損害補償等を含めてどういうふうに対処されようとしていますか。
  372. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 持越川の下流の狩野川のアユの放流は三月に始まりますので、ヘドロの除去はいま二月末までに除去したいと、こういうことを申し上げたわけでありますが、アユの放流が始まりますまでにこれを除去するようにいま準備が進められております。  それからなお、漁業補償等の問題につきましては、これは当事者間で解決されるというのが原則でございますが、政府の方といたしましても、事故原因の徹底的な究明をいま急いでおるところでございます。
  373. 小平芳平

    小平芳平君 関連。
  374. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 関連質疑を許します。小平芳平君。
  375. 小平芳平

    小平芳平君 関連いたしまして質問したいことを何項目か申し上げますから、御答弁いただきたいと思います。  通産大臣に伺いたいことは、専門家を派遣して原因究明をするとおっしゃっておられますが、この堆積場は三十九年五月に始まっている。四十九年八月の段階では、監督部へ報告をとって、この堆積場は安全だということになっているわけです。それから年一回ないし二回の巡回の検査もやってきているわけです。その都度これは危険だということは一度もなかったわけでしょう。それも安全だということは専門家が安全だとしていたわけでしょう。しかし、行ってみると、崩壊したこの第一扞止提――第二扞止提しか私は見られませんでしたが、土が盛ってあるだけです。恐らく新聞報道だと、第一扞止堤も同じじゃないかと思いますが、石で補強するとか、コンクリートで補強するとか、そういうことはさらさらないわけです。土が盛ってあるだけです。それは土が盛ってあるだけで、確かに地震が引き金になった。地震はあったけれども、周囲の山は別に崩壊しているわけじゃないのです。周囲の山は崩壊もしておりませんが、第一扞止堤、第二扞止堤だけが大量に崩壊して、駿河湾までヘドロが流れ込んだと、こういう経過をたどっております。  したがいまして、お尋ねしたいことは、この補償の責任はどうなりますかということなんです。特に、地元の町においても、あるいは業界の方においても、県においても、その責任があっちだこっちだといって長引かれるのが一番困るというわけです。速やかにこの補償の責任はここですというふうにしてもらいたい。  それから特に無過失賠償責任もありますから、企業が責任だということもあると思いますが、企業が払えなければどうなさるんですかということを伺いたいわけです。  それから環境庁長官と通産大臣に伺いたいのですが、このようなヘドロの山が住民が住んでいる上にあったわけです、山の上に。決壊して流れてきてみて、何だ、こんなものがあったのかと、こういうわけなんです。県としても町としても、その安全性については、事鉱山保安法による許可を受けているんだということで何らタッチできなかったわけです。こういう点についてどう考えますか。そうした環境問題として、地元の県や町が口出しできないという、ヘドロが流れてきて初めてびっくりするというような、こんなことでいいのかどうか。  それから最後に、総理大臣は、地震対策の特別立法を陳情を受けて考慮しているとおっしゃっておられましたが、具体的にどういう作業をお進めになるかということと、それから一つ具体的に、総理大臣がある責任者だったとします、そこで地震が起きそうだということを、まあどこからかそういう情報を得たとします、そのときに総理大臣はどうなさいますか、その点をお伺いします。
  376. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 担当の局長からひとり……。
  377. 左近友三郎

    政府委員左近友三郎君) 現在、原因につきまして、事故調査団を土曜日に結成いたしまして、明日現地に入って調査をいたす段取りになっておりますが、確かに現地の鉱滓の堆積場につきましては、通産省が四十八年に定めました基準に従いまして建設され、その後の検査におきましても問題がないということになっておったわけです。しかし、それにもかかわらず、御指摘のとおり事故が起こったわけでございますので、この点につきましては十分調査をいたしまして、改むべきところは改めていきたいというふうに考えております。  それから、補償の問題につきましては、先ほど大臣から答弁いたしましたとおり、事業者が補償を行うということでございますけれども、これが円滑にいきますように、それに対する必要な援助と申しますか、企業がうまくやっていけるような配慮については、われわれが考えてまいりたいというふうに考えております。  それから、第三点といたしまして、御指摘がございました地方の自治体、地域住民に対する連絡という問題でございますが、確かに鉱山保安法の体制でやっておりますので、直接の監督責任は通産省でございますが、やはりこういう問題につきましては、従来とも自治体、地域住民によく連絡するように指導をしてまいったわけでございますけれども、何分不十分な点があるというふうな御指摘もございますので、われわれとしては、今後は十分地域との連絡を密接に保ってまいりたいというふうに考えております。
  378. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 地震予知がありました場合、それに関連いたしまして政府が系統的にどういう対処をするかと。まあ政府という中には地方公共団体等も入りますが、それにつきまして知事会から一案が提案されておるんです。その知事会の案を政府におきましては検討いたしまして、何とかしてこの国会にそれを提案できるようにこの作業を進めたい、このようにいま考えているわけですが、まだ具体的にどういう内容になるか、そこまでは至っておりませんです。
  379. 山田久就

    国務大臣(山田久就君) 御案内のとおりに、鉱滓堆積場の安全確保等につきましては、これは鉱山関係の特殊な必要性というようなことから、鉱山保安法によりまして鉱山は通産省の方でこれを全部見るというようなたてまえになっておることは御案内のとおりでございます。これについて県あるいは市町村というものが非常な利害関係があるということから、これとの関係を非常に密にして、そして万全を期する必要があるということはもうごもっともでございまして、いま総理からもお話がございましたけれども、いろいろな点を参酌いたしまして、われわれとしてなし得るところは万全を期してひとつ対処していきたい、こう考えております。
  380. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 いま、現地調査をしました小平委員のつぶさなそういう調査の中から質問がありましたけれども一つは、どういう援助をするのか、数字的に、制度融資等ございますけれども、明確にしていただきたいと思います。
  381. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) とりあえずは、このヘドロの除去をするにいたしましても、扞止堤を強化するにいたしましても、資金を必要といたしますので、持越鉱山が金融的にその資金が手配できますように、いまいろいろ打ち合わせをしておるところでございます。
  382. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 この件につきまして、私は、結論といたしまして感じますのは、通産大臣もただいまお話ございましたように、監督というのは通産省でございますけれども、震度六に耐え得るこういう集積場が震度四、そういうところで崩れてしまった。そうして内容としては、四年前に行われました鉱山総点検でも書類検査だけで済まさしている。そうしてもう一点は、年に一、二回行われる巡回検査、これも外観視察だけという簡単なものである。こういう他人任せの行政であっては私はならないと思うわけです。そういう意味で、通産大臣に、こういう点について、今後、やはり監督官庁として非常にこれは重大なことだと思うわけでございますが、この点についてどういうふうに責任を明確にされようとしていらっしゃるのか伺います。
  383. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) いずれにいたしましても、専門家の調査が始まっておりますので、その調査結果を見まして、現在の鉱山保安法の基準でいいのかどうか、これを改正する必要があるのかどうか、こういう点をまず検討をいたしまして、そして全国にもこのような例がございますから、二度と災害が起こらないように万全の対策を考えていかなければならぬと思っております。
  384. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 よろしくお願いいたします。  次に、不況下における輸出関係の地場産業をどう救済するのか、こういう点で、具体的に調査をいたしました中から話を進めてまいります。  輸出関連地場産業の不況及び円高の影響は想像を絶する深刻な現況にございます。で抜本的な改革がない限り不況を克服することはできません。そういうわけで、経済指標を常に誤った中でと私は感じるわけでございますが、地場産業の将来にわたる展望、政府はどういうふうに見ていらっしゃるのか、伺いたいと思います。
  385. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 円高によりまして、特に輸出を中心といたします地場産業、地域産業でありますが、非常に大きな影響を受けておりますので、とりあえずは、いま参議院で御審議を願っております中小企業の円高の緊急対策を一刻も早く成立するようにいまお願いをしておるところでございます。  それからもう一つは、地域産業、地場産業というものを今後強化するためには一体どうしたらよいかと。現状ではいけませんので、やはりある程度の強化が必要であります。その強化策につきまして二、三の案をいま用意をしておるわけでありますが、さらに転換をしようというような場合に、それじゃどういう方面に転換をしたらよいかということについて調査もしなければなりません。そういう調査をする場合に対しても援助をしていく。いろんな対策を総合的に進めていかなければならぬと考えまして、考えられるあらゆる対策をいま用意しておるところでございます。
  386. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 通産省では、昨年の末、地場産業の円高影響を調査されたと聞いております。  そこで、具体的に質問申し上げたいと思いますが、地場産業の一部でございます兵庫県の播州織の昨年の生産量、輸出の占める割合と数量、こういう点おわかりであれば伺いたいと思います。
  387. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) お答え申し上げます。  播州織だけにつきましての数字はちょっといま手元にございませんが、全体といたしましては、主として香港、台湾等を経由しておるわけでございますが、香港に対しまして前年比一五%以上の伸びの二億三千万ドル程度、台湾につきましても一〇%程度多いところの約五千万ドル程度というものが輸出になっております。
  388. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 いま播州織を具体的に出しましたのは、全国的な地場産業に対する対処、こういう形で一つの地点を浮き彫りにしないとなかなか大変でございますので、そういう関係で進めておるわけでございますので、誠意のある御答弁をお願いしたいと思います。  播州織も、先染め織物という製品の特質と体質から、現在、ほとんど輸出に頼っております。いま内需拡大と、いわゆる総理大臣以下すべてが努力をされていらっしゃるわけでございますが、こういう性質のものを内需に向けるとするならば、開発市場の将来は明るいものであるか苦しいものであるのか、そういう点をまず伺いたい。
  389. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) お答え申し上げます。  輸出用のものが全部内需の方へあふれるということになれば、非常にやはり需給バランスを崩すことになりますので、これは非常に問題であろうかと思います。ただ、実際におきましては、輸出用の繊維製品その他のものと内需のものとは相当銘柄、品質その他が違っておりますので、そのまま移転するということはちょっとむずかしいことがあるかと思います。
  390. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 確かに大変なことでございますが、糸から製品になるまで七十日から七十五日の時間を要します。ドル建ての現在の輸出契約では、円の高騰が続けばその影響は重大であります。  そこで伺いますけれども、昨年の十月五日、七十日後の十二月十五日の円とドルの中心レート、こういう点をまず参考までにお伺いしたいと思います。
  391. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 円の相場は、昨年の九月末のIMFの総会直後から上がり始めまして、十一月末まで約二カ月間の間に二百七十円前後から二百四十円前後まで高騰しております。
  392. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 いま私が申し上げましたのは、糸から製品になるまで七十日から七十五日かかっている。そこへ輸出契約の問題ということになりますと、十月の五日の中心レートが二百六十一円です。十二月の十五日が二百三十八円で、差が二十三円も出ている。こういうことで私が懸念をいたしておりますのは、製造の工程にとりかかって、いざ製品が完成をして輸出をしていく、その差損が一ドルについて二十三円生じておる。このほとんどを産地が負わなければならない。そこで、私は、総理大臣や通産大臣にお伺いをしたいわけでございますが、このような商取引、どのように御感想というものを、大変だろうと思いますけれども、皆さんのお立場でどうかと、こういうふうにお伺いしているわけでございます。
  393. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 中小企業の織物の場合は、大部分、商社を経由いたしまして輸出契約がなされておりますので、為替差損あるいは差益、こういうようなものは大体商社が直接受ける、こういう仕組みになっております。もちろん例外的にはメーカーが負うという特約があれば別でありますが、大部分は商社経由と承知をしております。
  394. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 大臣は商社と、こういうふうに言われて、一部例外と言われておりますが、非常に多様化しておりまして、現地では強いものと弱いものとの関係、非常に複雑でございます。こういうふうな中で播州織も非常に円が不安定なままで一生懸命努力をしておりますけれども、やはりこのレートが固定化しないと見通しが非常に真っ暗である、こういう懸念を持っているわけでございます。  そこで、政府の通商交渉、貿易収支改善の失敗から私は起きてきたのではないか、こういうふうに考えるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、今後、こういう産地の地力というものを向上するためにはどういうふうにしたらいいのか、具体例、具体策がございましたら伺いたいと思います。
  395. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 昨年の秋は為替相場が激しく動いておりました関係でなかなか成約がむずかしかったんですが、最近は、一応二百四十円前後という水準に落ちつきましてから、やや契約はふえ始めております。もっとも二百四十円という水準では、ほとんど全部の中小企業が赤字であります。したがいまして、この水準で企業経営がどこまで持ちこたえられるかということは、これは別の問題でありますが、引き合いそのものはある程度落ちつきつつある、こういうことでございます。  とりあえずの対策といたしましては、先ほど申し上げましたように、昨年来続けておりました中小企業に対する円高対策をさらに強化をいたしまして、今度法律でいろんな対策をお願いをすることにしたわけでございますが、なお抜本的な対策といたしましては、地域産業全体の強化、高度化、あるいは事業転換、こういうことを積極的に考えていかなければならぬと思います。
  396. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 輸出について見逃してならない点がもう一点ございますけれども、播州織は綿布が製品で輸出されますので衣料としては半製品であります。これが諸外国で縫製されて完成するわけでございますが、輸出市場の動向が大きな影響を与えます。そういうことで政府も当然これらについて調査検討されていらっしゃると思いますけれども、輸出先の市場動向、こういうふうなことについては政府はきめ細やかにどういうところまで対処されていかれようとしているのか、お伺いをしたいと思います。
  397. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 大体、織物で輸出をされまして、そしてさらに加工されてアメリカ、ECに再輸出をされる、こういうケースになっておりますが、主として香港、台湾等に対する輸出動向を絶えず注視をしておりますが、最近は、ECに対する二次輸出が大分ふえておるようであります。アメリカに対しては若干減っておる、こういう傾向でなかろうかと思いますが、絶えずその第二次輸出の動向は注意をいたしておるところであります。
  398. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 じゃ、もう一点。次は絹、人絹について伺いたいと思います。  時間がございませんので簡単に質問いたしますけれども、絹織物、そういう織機の共同廃棄、この問題についてはどういうふうな現況にまで進んでいるのかお伺いしたいと思います。
  399. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) お答え申し上げます。  絹織物の共同廃棄につきましては、昨年初頭よりいろいろ各組合ごとに協議をいたしておりましたが、大体二〇%程度の織機の共同廃棄というものが中小企業振興事業団の融資によりまして行われることになりまして、五十二年度からスタートをいたしております。すでに若干の破砕を始めておるところがございますが、五十二年度及び五十三年度をもちまして、大体、平均して二〇%ぐらいの共同廃棄にいくかと思います。
  400. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 これも地場産業の一つでございますが、全国的に各地域でお仕事をされておりますけれども、非常に大変な様相になっております。  そこで、通産大臣にお伺いをしたいわけでございますが、設備廃棄の問題もしかりでございますけれども、将来、二国間の協定の問題、これについて特に韓国の問題、こういう点については、数量的な問題はどの点まで対処されようとしていらっしゃるのか、まずお伺いしたいと思います。
  401. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 絹関係の主たる日本に対する輸出先、つまり日本から見ますと輸入先でありますが、これは中国と韓国が大部分でございます。何しろ非常に安い原料を使ってつくっておりますので、向こうは大きな競争力を持っております。したがいまして二国間協定でここ一両年数量の協定をいたしております。昨年も協定をいたしましてこの三月まで続いておりますが、引き続きまして二国間協定を改定をしなければならぬと思っておりますが、大体、一年ごとに決めております。
  402. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 通産省としても、この点については十分業界の意向をくんで取り組んでいただきたいと思います。  で、もう一点伺いますけれども、絹糸といいますか、原糸の国際価格の問題でございますけれども、いまキロ当たり幾らぐらいしているのか、そうしてもう一つは、業界に渡るときにはどれだけはね上がっておるのか、そういう二点を伺います。
  403. 藤原一郎

    政府委員(藤原一郎君) お答え申し上げます。  生糸の国際価格は私ども正確に把握しておりません。これは農林省の方でやっておられると思いますが、大体キロ当たり七、八千円という勘定ではないかと思います。これが輸入されます際には、また別途の値段で輸入されるかと思うわけでございますが、国内の売り渡し価格は一万三千百円というのが基準価格になっておることは御承知のとおりでございます。
  404. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 いま国際価格がキロ当たり七千円から八千円と伺っております。では韓国の方では、そうして中国では幾らであるか、そういう点、お伺いしたいと思います。
  405. 野崎博之

    政府委員(野崎博之君) 最近の、五十二年の一月から十一月までの平均でございますが、中国物につきましてはキロ当たり八千九百八十五円、韓国物につきましては九千三百二十八円という数字になっております。
  406. 矢原秀男

    ○矢原秀男君 いま地場産業の家内工業も含めて、いろいろ流通機構がございますから、末端のお仕事をしていらっしゃるところでは、せめて機械を廃棄して、そうして田地田畑を売ってそれにすべてをかける。しかし、こういう状態の中で生活ができないということになれば、もう同じつぶれるのであれば、自由化にしてほしい、原糸を。外国の追い上げてくるところはキロ当たり一万円前後である。いま一万三千幾らという日本国内の売り渡し等のお話がございましたが、恐らくこれはもっと末端にいけば一万六千円近くでやっているんではないんでしょうか、その点確かめたいと思います。
  407. 野崎博之

    政府委員(野崎博之君) 先ほど申し上げました価格は、あれはCIF価格でございまして、実需者割当の価格といたしまして、それに関税分を加えたり諸経費を加えたりしまして、最近のものは一万百七十六円で実需者割当としては売り渡ししておるわけでございます。
  408. 鍋島直紹

    委員長鍋島直紹君) 矢原君の残余の質疑はこれを留保し、都合により明日に譲ります。  明日は午前十時から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十八分散会      ―――――・―――――