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1978-01-25 第84回国会 参議院 本会議 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年一月二十五日(水曜日)    午前十時三分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第四号   昭和五十三年一月二十五日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  議事日程のとおり      —————・—————
  2. 安井謙

    ○議長(安井謙君) これより会議を開きます。  日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  去る二十一日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。秋山長造君。    〔秋山長造君登壇、拍手
  3. 秋山長造

    秋山長造君 私は、日本社会党を代表して、わが国の当面する内外緊急課題につき、福田総理大臣及び関係大臣所信をただしたいと存じます。  まず、去る十四日、伊豆大島近海に起こった地震の犠牲者及び被災地区住民各位に対しまして、謹んで心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。同時に、政府においても、その援護と復旧対策に、また今後予想される大地震対策各種災害対策にさらに万全を期せられるよう改めて強く要望し、政府の具体的な用意いかんをお尋ねしておきたいと存じます。  さて、一昨年の暮れ、宿望の内閣首班に選ばれた福田総理大臣は、「経済福田」を一枚看板に、去年一年を経済の年と位置づけて、自信満々、年内には必ず景気の回復をと、機会あるごとに楽観的見通しを振りまかれました。しかし、遺憾ながら、総理見通し事ごとに外れ、対策後手後手に回り、年末には、ついに総理自身、「大戦前夜を思わず超非常時」というような刺激的な言葉すら口にされる事態に立ち至ったのであります。  経常収支七億ドル赤字という当初の見込みが、年末百十一億ドル黒字となり、ロンドン首脳会議でも公約してこられた成長率六・七%が五・三%の低成長に終わった、その政治責任は一体どうなったのでしょうか。昨年後半の円高狂乱状態を、一口に客観情勢が変わったからとか、見通しが多少甘かったなどと、まるで自然災害ででもあるかのごとく言い、内閣改造でほおかぶりして済まそうという責任感の薄さに、国民は大きな失望を味わったのではないでしょうか。この一年間の各種世論調査で、福田内閣支持率が一貫して三〇%を割り、逆に不支持率が四〇%を超えるに至った事実を、福田総理はどう受けとめておられるのか。  第一、これだけ円高円高と騒ぎながら、何か輸入品一つでも値の下がった物がありますか。これだけ牛肉牛肉と騒がれながら、牛肉は一向に庶民の口には入らぬではありませんか。国民不在消費者不在政治の怠慢、行政の怠慢と言われても仕方がないではありませんか。あの鳴り物入りの行政改革も結局は線香花火に終わり、物価は安定、安定と言いながら、これから、授業料も、公団家賃も、医療費も、鉄道運賃も、軒並み大幅値上げということでは、国民はついてはいけません。言葉言葉の乱発で実行の伴わない内閣に人気の出るはずはありません。「いや支持率安定成長だ」とか、「日本マスコミは素直じゃないからなあ」などと問題をそらさないで、もっと真正面を向いた謙虚な反省があってしかるべきではありませんか。この際、組閣二年目を迎えた福田総理の率直な御感想を承りたいと思います。  いま、われわれを取り巻く政治環境は大きく変わりつつあります。衆議院では与野党ほぼ伯仲、わが参議院ではまさに与野党同数となりました。もはや自民党党支配時代は完全に終わったのであります。われわれは、まずこの厳粛な事実をはっきりと認識してかかる必要があります。しかも、多党化現象とともに、世論調査のたびに目につく無党派層支持政党なし層、政治不信層の増加は、議会制民主主義あり方そのものが改めて厳しく問われていることを示すものであり、与野党を問わず、国民的合意形成のための新しいパターンをつくり出し、政治に魅力と信頼を取り戻して、政治を真に国民のものとするため全力を尽くすべき共同責任があると考えます。わが社会党もまた、野党第一党として、議会制民主主義の重要な一翼を担う責任役割りの重大さを痛感するものであります。  しかし、何といっても、問題は、政権政党たる自民党態度いかんであります。その最高リーダーたる福田総理大臣の抱かれる政治理念政治哲学、その政治姿勢こそ、この上なく重大であります。この新しい政治情勢を前にして、福田総理のいわゆる日本丸のかじ取りとしての抱負と心構えを国民の前に明らかにしていただきたい。  福田総理は、内閣のスタートに当たり、協調連帯をキャッチフレーズに掲げ、先日の施政演説でもこれを繰り返されました。しかし、一年たったいま、福田総理の言われる協調連帯とは具体的には何か、何だったのかを改めて問い直さざるを得ません。  昨年三月、三千億円減税の画期的な予算修正が行われましたが、これも、与野党伯仲の新情勢の中で、全野党から一致結束して迫られた窮余の妥協にすぎず、現に総理自身は終始強硬に反対されたことは御記憶のとおりであります。  また、昨年末、新年度予算編成を前にして、にわかに党首会談や政調・政審会長会談を持たれましたが、でき上がった予算を見れば、われわれ野党意見や要望は一向に生かされてはおらず、一連与野党会談は、結局、ポーズ、ゼスチュアだけに終わったのであります。第一、野党五党の統一要求の最重要ポイントとも言うべき所得減税福祉年金引き上げ、また、昨年来与野党合意約束になっている不公平税制の是正のごとき、いずれも一顧だに与えられておりません。そもそも、これらの国民的要望に誠意をもってこたえようという姿勢が全く見られないのであります。  率直に申し上げます。総理は、いまからでも翻然態度を改めて、虚心坦懐に予算修正に応ずる御意思ありやなしや。総理の言われる協調連帯が本物かどうかのあかしにもなると思いますが、いかがでしょうか。大体、何か事が起きたときだけ場当たり的に党首会談を開くのでなく、少なくとも各党政策担当者会談ぐらいは定期的、継続的に開いて、野党意見に謙虚に耳を傾けるだけの度量と柔軟性が必要なのではないでしょうか。およそ政府・与党が修正ということを屈辱と考えないで、民主主義の常道、当然の原則として積極的に対応する姿勢をとられるならば、それこそ各政党の励みにもなり、ひいては日本政治を明るく魅力あるものにすることにも通ずると思うがどうでしょうか。私どももまた、外交なら外交年金なら年金雇用なら雇用と、一つ一つの問題、政策について、既成のイデオロギーにとらわれず、十分意見を調整して、一致点を見出すための努力を誠実に、根気強く積み重ねていくことにやぶさかではありません。それこそ政治への信頼回復の道だと確信するものであります。いささか繰り返しにもなりますが、これからのわが国政治運営基本にかかわる重大問題であるだけに、重ねて福田総理の率直な御見解をただしておきたいと思います。  さて次に、さきの日米通商交渉と新年度予算編成について、国民の素朴な疑問に明確に答えていただきたいと存じます。  七%の経済成長の達成こそ、新年度予算、新年度経済運営至上命令、にしきの御旗になっておりますが、これが十二月中旬ワシントンでの牛場・ストラウス日米通商交渉最終段階で飛び出した数字であることに、どうにも割り切れないものを感ずるのは私一人でしょうか。せんだっての日米共同声明の冒頭にもその数字が出ておりますが、一体日本経済成長率外国約束する性質のものなのかどうか。日本経済政策予算編成方針ワシントンで決まるのかどうか。私は、アメリカとの緊密な相互依存関係を否定するものではありません。また、日本自身の矛盾、不合理の多い経済構造貿易政策をそのまま是認するものでもありませんが、それにしても、今回の一連日米交渉は、ちょっとみじめ過ぎるのではないでしょうか。たまたま日米貿易がアンバランスになったからといって、直ちに一方的に、経済構造を変えよとか、成長率を何%にしろとか、何と何を幾ら幾ら輸入せよとか、経常収支をいついつまでに赤字にしろとかいうような難題を持ちかけ、日本側がまた、この高圧的態度に対して、ただひたすらに陳情、弁解、迎合これ努める姿は、まるで三十年前の占領時代をほうふつさせる思いで、とても見てはおられません。もし日米の立場が逆だったら一体どうなるのでしょうか。なぜ対等のパートナーとして、もっと堂々と対応できないのですか。  さすがにアメリカにも自重論があると見えて、現にミシガン大学日本経済を専攻するゲーリー・サクソンハウス教授は、今月十一日付ニューヨークタイムズ紙上で、アメリカ日本に対する恫喝外交をやめ、新しい外交あり方を模索すべきだと、昨年来の通商交渉アメリカ政府のとっておる強硬姿勢を厳しく批判し、仮に、一時的に日本政治指導者エリート官僚を屈服させることができても真の解決にはならず、民衆の反発を買って、むしろ逆効果に終わるのではないかとまで論じているのであります。  率直に言って、今日のアメリカ貿易赤字の一半の原因はアメリカ自身にあるのではありませんか。ドル国際通貨としての特権を持つだけに、いまさらデフレ政策をとって国際収支赤字を減らす努力をするよりも、黒字国責任を押しつけて、その通貨の切り上げを迫る方が都合がよい、国益にかなうということではないのですか。現に、ブルメンソール財務長官のごときは、貿易赤字を改善するため成長率を落とせというのは、犬にしっぽを振らせるのではなく、しっぽに犬を振らせるようなものだとさえ言っておるのであります。要するに、ドルを放置して黒字国責任をとらせるのがその基本戦略ではないのですか。大体、アメリカ自身産油国でありながら、独自のエネルギー政策から、石油大量輸入に年間四百五十億ドルにも上る莫大なドルをつぎ込んでおり、それがなければ逆に百五十億ドル黒字になろうとさえ言われているではありませんか。なぜこういうことを率直に堂々とぶっつけないのですか。それがほんとのパートナーではないでしょうか。(拍手)  さすがに日本国民の目を意識されてか、せんだっての日米共同声明では、アメリカ経済成長努力するとか、石油輸入を減らすとかいう文言がくっつけられてはおります。しかし、日本側約束が一々数字を挙げてきわめて具体的なのに比べて、アメリカ側のはいかにも抽象的で、取ってつけたような印象をぬぐうことができません。  問題の農産物にしても、すでにアメリカからの輸入総額百十八億ドルのうち実に半額、すなわち五十五億ドルにも上っており、仮に残存制限二十二品目全部を自由化したところで、せいぜい五億ドル程度上積みすることにしかなりません。これを、対米輸出総額百五十七億ドルうち農産物三億三千万ドルと対比すれば、今回の日米交渉で、牛肉何千トン、オレンジ何万トンなどと、さもさも天下の大問題のごとくに議論されたこと自体が、はなはだ意図的、政略的であり、工業製品のいわゆる集中豪雨的輸出で生じた黒字を減らすため、競争力の弱い国内農業をまたも犠牲にしたやり方と断ぜざるを得ません。(拍手)そうでなくても、百七十万トン、三十九万ヘクタールの米の生産調整で混乱する日本農業に、さらにダブルパンチを食らわす冷酷な仕打ちと言わざるを得ません。福田総理が、年頭の記者会見で、工業製品の出し過ぎを農家にしわ寄せするようなことはしないと約束されたのは一体どうなったのでしょうか。食糧自給体制確立という自民党農政の一枚看板はいつの間におろされたのでしょうか。国民の前に明確に答えていただきたいと思います。  ところで、国会再開直前になって、にわかに、七%は国際的約束ではなくて単なる努力目標にすぎないとか、公約ではなくて公言だなどと言いつくろう福田総理態度ほどこっけいなものはございません。その上、急に「七%程度」と、「程度」という二字がくっつけられるようになったのはなぜですか。七%と七%程度とはどう違うんですか。日米共同声明をやりかえるつもりですか。早くも、七%成長ができない場合の予防線を張っておられるのではないですか。そもそも、そんなに自信のない数字をなぜ出されたのですか。これらの点については、河本通産大臣の御見解をも聞いておきたいと思います。  また、今回の日米交渉が、ECや東南アジア、大洋州諸国との貿易関係にどう響くのか、どうはね返るのか、はなはだ懸念されますが、政府見通し対策はいかがですか。  元来、経済成長率は、いろいろな政策課題を調和させた経済運営の結果として出てくるべきもので、成長率自体目的とするのは本末転倒であり、その目的を達成するためには手段を選ばぬ政治姿勢にもつながりかねないのであります。今回の場合、外国の圧力に屈して、専門家のだれもが疑問視するような無理な数字をはじき出し、これをしゃにむに実現するため、政府資金を総動員して、公共投資一点張りの大味な予算を組んだと批判されても仕方がないでしょう。もしこれだけ無理をして、なおかつ七%成長が達成できなかったら、その責任は一体どうなるのですか。福田総理内外に対していかなる責任を負われるのか、はっきりしておいていただきたいと思います。  三四%を超える公共事業費大幅増は、建設省の官房長が、くしくも、「空から金が降ってきた」と漏らしたほどの大盤振る舞いであり、まるで、げっぷの出そうな予算とさえ言われておりますが、一体これが効率的に消化できるのかどうか。人、物、そして地方財政負担能力との関連で懸念なしといたしません。現に、田中内閣当時、一三%もの使い残しを出した前例があるではありませんか。この六兆円近い公共事業費を完全に消化して公約どおり景気の浮揚に役立てる確信がおありかどうか、総理大臣の明確な御答弁をお願いいたします。  なお、この際、政府として景気回復への中期展望をはっきりと国民に示される必要があると思います。国民がいま一番知りたいのは、総理のいわゆる日本丸の目指す目標であります。それがなければ先行き不安は増幅されるばかりであり、その見通しのないまま、こういう膨大な赤字予算を示されても、国民は受けとめ切れません。福田総理、この点はいかがでしょうか。中期展望いつお示しになれますか。政府もそれを出し、われわれ野党もそれぞれの案を出して、そのすり合わせの中から、国民優先のよりよい予算、よりよい政策をまとめ上げるべきではないでしょうか。総理の御見解を伺います。  なお、年頭早々福田総理はデノミネーションへの強い意欲を打ち上げ、国民を驚かされたのでありますが、その真意はいかん。一国の総理大臣がこれだけの重大問題を簡単に持ち出し、また簡単に引っ込めるということでは困ります。不謹慎と言われても仕方がないではありませんか。一体、デノミをやるのかやらないのか、国民の前にもう一度はっきりしていただきたいと思います。  さて、このようにして、わが国経済は、いまや長期不況と急激な円高で深刻な危機にあえいでおります。その結果、中小企業倒産は昨年一年で実に一万八千五百件、負債総額二兆九千八百億円にも上り、さらに、ことしになってからもすでに千五百件を超える倒産が続出しております。特に、輸出関連企業地場産業等は、輸出成約の軒並みストップで、いよいよ深刻な事態を迎えつつあり、これが応急対策こそ焦眉急務でありますが、政府はどういう手を打たれるおつもりですか、明らかにしていただきたい。  そもそも、この急激な円高は何によって生じたのでしょうか。オイルショック以来の長期不況の中で、歴代政府は、社会福祉の充実や勤労所得引き上げなどによる国内需要拡大を怠り、もっぱら輸出一辺倒景気対策に走ったため、これが対外的には円安による輸出競争力と映り、変動為替相場制のもとで急激な円高となってはね返ってきたものであります。  したがって、この不況を打開するためには、何といっても、まず内需の喚起と拡大こそ焦眉急務であります。それは、公共料金値上げや、酒税の引き上げ石油新税、そして大型プロジェクト中心借金財政によってではなく、福祉年金引き上げ所得減税による個人消費拡大と、上下水道、病院、学校、保育所住宅等社会的生活基盤整備や、土地改良等農業基盤整備への集中投資によってこそ行われなければなりません。野党修正要求もほぼこの線に沿うものと思われますが、福田総理においても十分前向きで対処されるよう、いまから強く要請をしておきます。  またこの際、わが国産業構造を、これまでのように原材料を輸入して鉄鋼等一次製品輸出する形から、知識・技術集約的、加工度の高い製品に転換していくことが必要であり、そのための資源配分投資あり方を含めて、計画的な対応策確立されなければなりませんし、輸出についても、自主的規制を含む節度ある貿易体制確立がぜひ必要と思いますが、総理通産大臣の御見解を伺いたい。  今日、わが国を襲った急激な経済危機からのいわば緊急避難財源として、国債発行がついに三〇%のガイドラインを超えたわけであります。国債依存率三二%、実質三七%にも達したのであります。新年度国債発行額十兆九千八百五十億円、うち建設公債六兆五百億円、赤字公債四兆九千三百五十億円、また、年度国債残高実に四十三兆四千億円、国民一人平均四十万円の借金という数字の意味するものは実に重大であります。このまま進めば、公債は雪だるま式にふえて、国家財政は完全に破綻するに至ることは火を見るよりも明らかであります。破局を防ぐため、政府はいかなる対策を考えておられるのか。かつて総理は、五十年代上期に万難を排して赤字財政から脱却したいとおっしゃったが、どうなったのですか。財政当局が長年守ってきた三〇%のガイドラインが外された今日以後、国債の増大にいかなる歯どめがあるのか。速やかに中期財政計画を明確にする中で、可及的に国債を減らして、財政健全化全力を尽くさなければならぬと思いますが、福田総理の確固たる所信を伺いたい。  次は、雇用問題であります。  構造不況円高不況、この二重の不況が生んだ百万人を超える完全失業者を一体どうするのか。これこそ当面最大の政治課題でなければなりません。われわれは、昨年十二月の臨時国会で、いわゆる雇用三法を与野党一致で成立させ、不況離職者に対するとりあえずの応急対策を講じたわけですが、本格的かつ包括的な雇用対策はいよいよこれからであります。この際、雇用問題に対する福田総理藤井労働大臣基本構想具体策をお聞かせ願いたいのであります。  私どもは、あらゆる関係法令をフルに活用することはもちろん、大量解雇の規制、定年延長失業給付の改善を図るとともに、さしあたり二十万人以上の雇用の創出を目標として、地方自治体に雇用増大のための独自のプランづくりを要請し、国はそれに必要な財源を全額保証すること、特に沖繩等失業多発地帯に新たに開発就労事業を起こすこと、第二に、労働基準法を改正して週休二日・週四十時間労働制確立し、雇用人員拡大を図ること、第三に、ホームヘルパーその他の社会福祉従事者を国費の投入によって画期的にふやし、福祉雇用同時前進を図ることなどの施策をぜひ緊急に前向きで検討していただきたいと思いますが、総理労働大臣の御見解を承りたい。  福田総理は、一昨年暮れ、内閣発足に当たって、ロッキード事件徹底的究明金権政治の打破を約束されました。しかし、その約束は今日まで履行されておりません。特に、いま注目を浴びようとしておるのは、いわゆる日韓癒着問題であります。アメリカ下院倫理委員会において、韓国の対米買収工作の実態が急ピッチに究明されつつあり、その際日本においても同様な工作が行われた形跡が濃厚であります。ことに、ソウル地下鉄工事を受注した三菱商事その他四商社は、アメリカ韓国側代理店に多額のリベートを送金し、その資金が対米買収工作に使われたのではないかと伝えられております。まさに国際的疑獄事件そのものであり、わが国国際信用の上からも、また日韓国交正常化明朗化を期するためにも、その真相を忌憚なく解明することが必要であります。福田総理は、日本主権侵害にかかわる金大中事件はもちろん、日韓癒着関係徹底究明のために積極的役割りを果たされるおつもりはありませんか。関係資料国会提出について積極的に応ずる御用意ありや否や、明確に御答弁願います。  また、多国籍企業の不正・違法行為を規制する国内法整備国際的取り決めの締結、一定期間を経過した行政資料公開の制度を早急に実現すべきと考えますが、総理の御見解はいかがですか。  次は中国問題であります。  言うまでもなく、中国との正常な友好関係確立なしにはわが国アジア外交は成り立ちません。日中友好は、いわば、わが国外交至上命令であり、大前提、基本原則であります。しかるに、日中国交回復からすでに七年目に入ろうとしておるのに、肝心の平和友好条約がいまだ結ばれないことは、返す返すも遺憾であります。総理は、この一年間、環境は熟しつつあるとか、近ごろはまた、機は熟しつつあるなどと言われながらも、段取りだ、手順だと言って、一進一退、われわれ国民にとって全く不可解な消極的態度をとってこられました。よく、覇権条項がネックになっていると言われますが、本件はすでに事実上解決済みで、問題はむしろ、国内というより与党自民党内部にあるのではないですか。解決のかぎは、福田総理の決断、リーダーシップいかんにかかっていると思われるが、いかがですか。  具体的に伺います。正式交渉はいつから再開されますか。園田外務大臣はいつ北京に派遣されるのですか。願わくは、三月いっぱいには一切の準備を完了し、花咲く四月、総理みずから北京に乗り込んで条約調印というぐらいの段取りにならないものでしょうか。福田総理及び園田外務大臣の御決意のほどを明らかに承りたいと思います。  なお、この際あわせて伺っておきたいのは、例のココムの問題であります。去る十二月、日立製作所の大型コンピューター三台の中国向け輸出が二年越しでアメリカ政府から条件つき承認されたとの新聞報道は、私どもを驚かせました。一体、こういう冷戦時代の遺物がいまだに生き延びて働いていること自体が、時代錯誤もはなはだしいのではないですか。日本は、いつまでこれにかかわっておるつもりですか。この際、ココムの撤廃について積極的意思表示をなさるおつもりはありませんか。重要な問題でありますので、政府の方針を明確にしていただきたい。  次は、日ソ関係であります。  先般、モスコーで開かれた日ソ外相定期協議は、予想どおり北方領土をめぐる日ソ交渉という形となり、日ソ双方の主張を改めて浮き彫りにしたままに終わったわけであります。壁は厚く、表情はかたかったのであります。いまわれわれに何よりも肝心なのは、与野党を含めて国論の統一と国民的合意に基づく不動の信念、そして冷静かつ根気強い弾力的対応であります。基本的立場は堅持しつつも、漁業問題やシベリア開発文化交流等を通じて友好親善関係をますます深めていくことが肝要と思いますが、福田総理大臣及び園田外務大臣のお考えを伺いたい。  教育基本法ができてからちょうど三十年経過しました。そもそもの初めから歴代自民党政府から厄介視されながら、今日まで曲がりなりにも教育憲法としての役割りを果たしてきたのであります。  今日は教育時代と言われております。カラスの鳴かない日はあっても、新聞に教育記事の出ない日はないという教育過熱時代であります。私立医科歯科大学の入学寄付金問題が社会を驚かし、大学入試問題漏洩事件マスコミの話題となと、全国五万を超える塾が繁盛して、いわゆる乱塾時代を現出し、また、偏差値業者テスト学校教育をゆがめております。この教育の退廃を前にして、いまこそ私ども教育基本法の原点に立ち返り、教育とは何ぞや、われら何をなすべきかを問い直さなければなりません。学歴社会を助長する受験競争ではなく、機会均等、無差別平等、人間尊重の民主教育、平和教育の徹底にこそ全力を挙げるべきであります。政府は、教育基本法をあくまで守り、生かしていくおつもりかどうか、明らかにしていただきたい。  文部省が一クラス四十五人を目標に二十年がかりで進めてきた小中学校の学級編制基準改善計画は、いわゆる落ちこぼれ問題の深刻化する今日、大きく再検討され、一クラス当たり児童生徒数をさらに減らしていくことが父母や現場教師から強く求められておりますが、政府はどう対処されるおつもりですか。また、幼稚園や高等学校の増設、学校災害補償制度確立国民的要望にどうこたえていかれますか。文部大臣の確固たる御方針を承りたい。  第二点は、古くて新しい問題、すなわち文部省対日教組の関係であります。この両者が相変わらず冷戦状態を続け、例の主任制度、主任手当の強行が、かえって教育現場に大きな緊張と混乱を起こしつつあることは、はなはだ遺憾であります。大体、文部省や教育委員会と教員組合がいつもにらみ合っておって、日本教育がよくなるはずはありません。全国の教育関係者や子を持つ親たちはもちろん、国民の多くが、ひとしくこの現状を憂え、その改善を心からこいねがっているのであります。政府は、ぜひこの願いにこたえるべきであります。私は、文部大臣と言わず、福田総理みずからも日教組の諸君と積極的に再々会って、根気強く、率直に話し合われる中から、必ずや国民教育の生命線とも言うべき国民的合意が形成されるものと確信いたします。日本教育前進のため、福田総理及び砂田文部大臣の御決意を伺いたいと思います。(拍手)  近年、官公庁における官紀の弛緩、規律の乱れは実に目に余るものがあります。先般、天下を驚かした制服警察官の女子大生暴行殺人事件のごときは論外としても、昨秋、本院でわが党同僚議員により追及せられた会計検査院の過剰接待事件にしても、建設省関係の欠陥住宅問題にしても、いわば氷山の一角で、たまたまやり玉に上がった者が運が悪かったぐらいにしか受け取られておらないじゃありませんか。また、幾ら世論の指弾を受けても、高級官僚の天下り就職はますます盛んであります。自衛隊の最高幹部が事もあろうに取引先の軍需会社へ天下ったり、元検察の最高首脳がロッキード裁判の弁護席にずらり顔を連ねたりする例も少なくありません。職業の自由云々という法律論はともかくとして、そもそも、これではなれ合い行政とか癒着行政とかいう国民の批判を否定できないじゃありませんか。いかに責任感の麻痺した破廉恥時代とは言え、これでは下に対して示しがつかないじゃありませんか。福田総理は、行政の最高責任者としてどうお考えになっておるのでしょうか。国民を納得させるだけの、はっきりした御方針をお示し願います。  最後に、文字どおり世紀の大事業として内外の注目を集めておる本州四国連絡橋について簡単にお尋ねいたします。  昨秋、第三次全国総合開発計画、いわゆる三全総において、早期完成ルートとして児島−坂出ルートが決定をされ、目下着々準備が進みつつあることは御承知のとおりであります。特に、今回実施されました大がかりな環境アセスメントは、高速道路や鉄道に対するわが国初の試みであり、岡山、香川両県知事初め、関係各自治体から相次いで意見書が……
  4. 安井謙

    ○議長(安井謙君) 秋山君、時間が超過しております。簡単に願います。
  5. 秋山長造

    秋山長造君(続) また、地元住民からは多くの貴重な意見要望が出されておりますが、それらの今後の取り扱いはどうなるのでしょうか。いわゆる聞きっ放しになるおそれはないのかどうか。また、本連絡橋の完成は十年後ということで、現在予測しがたい問題も少なくないと考えられるが、それに備えて、公団と関係自治体との間で確固たる公害防止協定を結んでおくべきと思いますが、政府にその用意がありますか。  昨年九月、福田総理は、大阪において、児島−坂出ルートは条件さえ整えば年度内着工も可能だと発言されましたが、現状を踏まえた着工時期はいよいよいつになるのか、明らかにしていただきたい。産業界の不況ムードにかんがみ……
  6. 安井謙

    ○議長(安井謙君) 秋山君、時間が超過しております。簡単に願います。
  7. 秋山長造

    秋山長造君(続) 架橋工事に当たっては、努めて地元優先の発注形式をとるべきと考えますが、政府方針はいかがでしょうか。  以上をもって私の代表質問を終わりますが、福田総理大臣以下、国民によくわかるよう、懇切、具体的な御答弁をお願いいたします。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手
  8. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お答え申し上げます。  まず震災対策でございますが、私も、過般の伊豆大島地区の震災被災者、犠牲者に対しまして弔意とお見舞いの意を表したいと存じます。  お話のように、地震対策は、これはなかなかむずかしいものでございまして、その意ははやるわけでございまするけれども、なかなか率直に言いまして実効が上がっておらぬ。特に大都市に問題があると思うわけでございますが、都市の防災化、それから防災体制の強化、地震予知、こういうことを主眼といたしましていま対策を進めております。なお、全国知事会から、地震予知が行われた場合の対策、これについての立法の要請があります。これをただいま検討しておりますが、なるべく今国会に御審議願う、このようにいたしたいと、かように考えております。  次に、私が内閣を組織してから一年、この間一体福田おまえは何をしておったんだと、こういうようなお話でございますが、私は、激動の一年、これは、とにかくなかなか日本丸のかじ取りは容易じゃございませんけれども、かじ取りとして最善を尽くしてきたと、かように考えております。私は、年度の初頭——昨年の年の初めです、ことしは経済の年だと、こういうふうに申し上げたんです。私の念願は、この年を何とか努力いたしまして経済安定の年にしたいと、こういう意味で経済の年というふうに申し上げましたが、事志と違いまして、激動の経済の年に終わってしまったわけであります。率直に申し上げまして、私は一番、国際経済、国際社会の動き、この点があるいは甘かったかもしらぬと思うのです。経常収支百億ドルを超すというような大黒字を出してしまった。そして、これが国際社会においてかなり批判を受けておると、こういうような情勢につきましては、私は大変残念なことであったと、こういうふうに思っております。  しかし、わが国経済全体としますと、物価は、昨年暮れの十二月の時点を調べてみますれば、とにかく上昇率が五%だと、東京区部について言って。こういう状態、つまり、石油ショックの前の動きに返りつつあるということを示しております。あるいは国際収支も、これはよ過ぎて、とにかく各国から批判をされる、そういうような状態であり、成長につきましても、恐らくまだ実績は出ておりませんけれども、国際社会全体の中で最高の方にいく五・三%というところではないかと、このように思うのでありまして、まあ世界が非常に、インフレ、また不況、それから失業と、こういう問題で悩んでおるその中では、まずまずの推移ではなかったかと、こういうふうに思うわけでございますが、しかし、わが国国内をながめてみますると、まだいろいろ問題を抱えておる。ことに経済的に見まするときに、構造不況業種問題なんかがある。こういうことにつきましては、もうわが国の方が他国よりは深刻じゃないか、高度成長というあの時代を経過してきた日本社会の方がほかの国よりも深刻な状態じゃないかというふうにも思いまして、とにかく一年間は、安定路線への定着、これがずれた、そういうような認識を持ちまして、ことしもまた経済を安定させる年というふうに考えまして、懸命に取り組んでまいりたいと、かように考える次第でございます。  それから、私が政治に取り組む考え方、姿勢、理念、これはどうかというようなお話でございますが、これはこの間の施政方針演説におきましても申し上げたとおりです。これはもう政治ばかりじゃありません、人生あるいは社会、あるいは政治、そういうあらゆる角度におきまして、人間の行動原理というものは、これは協調連帯、これでなければならぬと、これに徹して私はやってきたつもりでございます。国会運営の面におきましても、党首会談、こういうことを、重要な段階におきましては、私はあえてお願いをいたしておることは御承知のとおりであります。また、予算案の編成につきましても、大蔵大臣が各党の政審会長等と意見の交換をしておるというようなことも御存じのとおりでございます。あるいは、その他重要な外交案件というようなことがあります。そういう際におきましても、各党の党首とじきじきお目にかかりまして御理解を賜るというようにしておることも御承知のとおりでございます。  そういうことに関連いたしまして、予算修正要求を出すが、それに対してどういうふうに対処するかというお尋ねでございます。私の国会に臨む考え方、これは、ただいまも申し上げたとおり、協調連帯だと。自由民主党政府だけが正しいんだという、ひとりよがりの考え方は持っておりません。広く各界各党の皆さんの御意見を聞く。ことに国会運営の場面においては、各党の御意見を十分お聞きしまして、そして正しい行き方、それも日本のためにこれが一番いいんだという結論を模索しなければならぬ、このように考えておるわけであります。  ただ、予算問題ということになりますと、これも編成の前に各党の党首ともお目にかかりまして十分意見を承っておるんです。その際に、各党から減税のお話がありました。減税のお話がありましたが、これはその席でも申し上げたのです。これだけはひとつ勘弁していただけないでしょうかと、こういうふうに申し上げてきておるわけでございますが、いま、御承知のように、財政がまあ大変な苦しい状態だ、そういう中でとにかく減税をしよう、そういうことになれば、それはそれだけ財源が要るんですよ。財源が要る。その財源を一体どういうふうに今日この情勢下において使うんだということになりますれば、やっぱり景気対策のために使うんだということになる。景気対策のために何が一番有効かということになれば、これはもう各方面ほとんど一致しておると思うのです、これはもう公共投資社会投資に使わなきゃならぬ、こういうことだろうと思うのです。御承知のとおり、五十二年度予算につきましても、昨年の国会におきまして三千億円の減税の上積みをいたしましたが、三千億円というと一世帯平均月千円なんですが、月千円の減税で、さあどのくらい景気回復に役立つであろうかということを考えまするときに、やっぱり、家を建てた、あるいは下水道を、学校を、病院もという方が何ぼか景気回復のために有効であろうか、こういうふうに思うと同時に、まあ月千円の減税だということになりますと、それはもう本当にささいな消費となって消えてしまうわけなんですが、これが社会開発投資、つまり公共事業費ということになりますれば、これは学校である、病院である、下水道だ、道路だとなって、われわれの国民財産としてずっと残っていくんですよ。そういう金の使い方、そういう角度から考えましても、どうもまあ減税だけは何とかひとつ勘弁願いたいなあと、こういうふうに考える次第でございます。また、社会保障の問題につきましても、同様な考え方を持つわけでございます。  私は、そういう連帯協調というような考え方でいきますが、これからも国会におきまして重要な問題がありますれば、御提言もありましたけれども、政審会長クラスの会談、これもよかろう、問題によりましては党首会談、これもよかろう、幹事長・書記長会談、これもよかろう、そういう会談を通じまして極力各党間の合意を探り出していきたい、かように考えておる次第でございます。  それから、日米交渉につきまして、どうもアメリカ側に引っ張り回された感があるが、というようなお話でございますが、この日米間で話し合いをしたものは、これは新聞マスコミ等には、牛肉の問題、オレンジの問題ああいう種類のものが大きく報道されておりましたが、この本質は、世界第一の経済大国であるアメリカ、それから第二の立場にあるところのわが日本、この二つの国が、この世界の混乱した経済状態に対しまして共同の歩調というか、認識を同じくするということは、これは世界の安定のために非常に大事なことなんです。そういう立場から日米会談というものは行われた。もとより日米間にはそれ自身の問題がありまするから、これに言及されないわけはありませんけれども、そういう立場の問題であったわけであります。そういう会談でありましたが、とにかく、アメリカ石油輸入を減らす、そしてドルの安定に努力をする、また、わが日本経常収支の大幅な黒字を縮減するというようになったこと、私は、これは世界のこれからの経済が安定する上に非常に重要な意味を持ったと、このように考えております。  その交渉とひっ絡めて、七%というわが国成長目標アメリカから押しつけられたんじゃないかというような御印象の御発言でございましたが、一国の経済成長率、これを外国の示唆で、外国の要請によって決めるなんて、そんな不見識なことば絶対にいたしません。私が、世間往々七%は国際公約かと、こういう話があるのに対しまして、これは公約ではありませんと、こういうことを言っておりますのは、そういう趣旨なんです。何もアメリカから言われて七%というふうに決めたわけじゃない。現に、いい機会でありますから申し上げておきますが、この交渉の過程において、アメリカ側は、日本成長率は何%ぐらいが適当だなんていうことを言った時期があるのです。私は、それを聞いたとき、おかしい話だと、じきじきアメリカ責任者に申し上げたのですが、一国の経済成長率を何%にする、いま日本の場合をとってみても——それは十一月時点の話でありますが、私自身よく考えてみて、わが日本経済成長率を何%にする、これは非常に重大なことで、いま私自身がまだ見当もつきかねておるような、そういう状態だ、それを何ですか、よその方の人が。成長率という問題は、これはわが国わが国自身の立場において決める問題であって、容喙をさるべき問題じゃない、このように話してあるわけでありまして、決して七%成長というものが、これはアメリカの圧力のもとに決められたというものでないということは篤と御承知願いたい。お願いを申し上げます。  また、しかしながら、七%という成長目標は、とにかく内外でこれを期待をいたしておるわけであります。国内においても、七%成長ぐらいはぜひやってもらいたいという声が多いと思う。また国際社会においても、七%成長を歓迎する、ぜひやってもらいたいということを大いに期待をいたしておるんです。この期待に対しましては、私は責任を持っておこたえをいたしたい、かように考えておる次第でございます。  それから、「七%程度」と言うがと、こういうようなお話ですが、これは初めから「程度」となっておりますが、どうもわが国では非常にきちょうめんな人がありまして、物価目標でもそうです、成長目標でもそうです、七%と言っては、それより超えてはならぬ、あるいは下がってもならぬというふうに、かたく考える人もあります。そういうようなことも考えながら、七%程度、まあその周辺ということを言った方がよかろうと、こういうふうに考えた次第でございます。  それから、デノミネーション発言は一体どうなんだ、出したり引っ込めたりというお話でありますが、少しも引っ込めても何もおりません。私は、年初頭、新聞社の方から、デノミはどうするんです、いろいろ取りざたされておりますがと、こういうお話でありましたので、率直に私がデノミについての考え方を申し上げたわけです。この考え方は、私は十年来——私が初めて大蔵大臣になった、四十一年ですか、あの当時から私は同じことを言っているんですから、ひとつ誤解のないようにお願いしたいんでございますが、デノミというものは、これはいずれやってのけなければならぬ問題である、避けて通ることはできない、これは日本のためにどうしてもしなければならぬことである、しかし、それには条件があるんだと。経済が安定することである、経済の安定とは何だといえば、主として物価、それから景気国際収支、この三つである。ところが、景気につきましては今日このような状態である。でありまするから、デノミは今日まだこれを実行する条件が熟しておらぬ、何とか早く景気回復さして、そうしてデノミということが言えるような条件が整ったと言えるようにしたいもんだなというようなことを申し上げたんですが、これは十年来ずっと申し上げておることでありまして、少しも変わるところはございません。ただいまこの時点におきましては、景気回復、これにかけておるというような心境でございまして、デノミを実施するということは考えておりません。(「従来は考えていた……」と呼ぶ者あり)ただいまはと、こう言っているんですから。  それからさらに、円高は一体どういうふうにして起こってきたのかということについての分析したお尋ねでございましたが、簡単に申し上げますと、これは、アメリカ国際収支の大幅な赤字、これが一方にあり、他方においてわが日本国際収支が大幅な黒字である。この両々相まって円高現象と、こういうふうになってきたと、こういうふうにとらえておるわけでございますが、その根源は、一体どこからそういう国際収支赤字が出てき、国際収支黒字が出てきたのか、これは十分突きとめなきゃならぬわけでございまするけれども、その分析の上に立って、経常収支の縮減対策というものをいま進めておる。それからアメリカにおきましては、経常収支赤字の縮減ということに努力をすると、こういうことに相なっておる次第でございます。  そういうような国際情勢、また資源有限時代というような今日の情勢からいたしますと、お話のように、わが国産業構造、貿易構造、これはどうしても大きく転換をする必要があると思うのです。しかし、これを一挙にというようなことはむずかしゅうございますが、時間をかけて、資源・エネルギーの利用効率と、こういうことを重点に置き、また環境の保全、また技術の集約化、まあ具体的に言いますれば、新情報システムなどの先端的技術開発の推進、また電子計算機産業というようなもの、また原子力機器産業というようなもの、そういうような部面に一層力を入れるようなことをしていかなければならぬだろうと、このように考えております。  それから貿易構造の面におきましては、資源小国としてのわが国では加工貿易構造は基本的に変わるということはございませんけれども、やっぱり国内産業構造と同様に、資源の節約、貿易相手国との相互分業といいますか、相互繁栄というようなことを考えながら、輸出構造の高加工度化、知識集約化を図り、さらに、製品輸入増大等を可能ならしめるような貿易構造というようなことを考えていかなければならぬだろうと、このように考えます。  なお、秋山さんから、中期的な立場に立ちまして、経済計画、また財政計画、これを策定すべしという御所見でございますが、私ども、御趣旨はそのように考えておるところでございますが、ただ、この激動の中でありまして、これを数字でぴしゃりぴしゃりということはなかなかむずかしいということは御理解願えると思うのです。そこで、まず、政府といたしまして、経済計画につきましては、昭和五十年代の前期経済計画というものがあることは御承知のとおりであります。これが二年を経過いたしました今日、かなり動いてきておるわけであります。そして、これは五十三、五十四、五十五と三カ年を残しておる。その動いた状況に即しまして、この計画を全部根っこからやり返すかどうかということになりますと、私どもの考え方としては、今日になりましても少しも経済運営のその基本につきましては変わるところがないんです。ただ、数字が動いてきておる、ずれてきておると、こういうような関係でありますので、五十年代の前期経済計画を根本的に全部御破算にしてやりかえるということをしないで、それで、残された三カ年、これが動いてきた二カ年、この実績を踏まえまして、どういうふうになるであろうかということを試算して、また御審議の資料にさしていただきたいと、このように考えております。それができますると、それに相呼応いたしまして、財政の方におきましても、これは、これから先々、まあ三年になりますか、五年になりますか、そのくらいの中期の展望に立ちまして、財政が一体どうなるかと——これも、こういうふうになるということの一本の結果が出ないんです、いろいろ前提条件があるものですから。三つ四つぐらいな結論になると思いまするけれども、そういう試算を整えまして、速やかに国会に提出し、御審議の資料にいたしたいと、かように考えております。  さらに、失業、雇用問題にお触れになられましたが、雇用問題につきましては、失業が出ない、これが一番いいんです、まず。その次善措置、その次善措置としては、とにかく雇用を造出する、それに最も力があると見られるところの公共投資、これを大いに進めまして雇用の次善対策といたしたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。なおまた、御承知のように、雇用安定資金制度、これもそういうような目的のためにありますので、これを十分活用してまいりたい、かように考えておる次第でございます。それにいたしましても、ある程度の失業者が出ることは予想されるわけでありますが、これに対しましてはきめ細かな配慮をいたしておる。御承知のとおりでございます。  それからさらに、日韓問題にお触れになられまして、金大中問題、これをどうするというお話でございますが、これはもう外交的にすでに決着済みの問題であります。  それからさらに、日韓間のいろいろないわゆる癒着と言われるような問題に対して、解決政府として努力するかと、こういうようなお話でございますが、いま私どもとしてなかなか手がかりを得ておりませんけれども政府が手を出さなければならぬというような問題がありますれば、これはもう十分調査いたしまして御報告しなければならぬというふうに考えております。また、関係資料の提出、これを十分やれというようなお話でございますが、これも、できるものは何でもひとつ整えたいと、かように考えておる次第でございます。  なお、多国籍企業につきましての御提言でございますが、これはいまOECDや国連で、この問題、どういうふうにするかということを検討しております。これはわが国も積極的にこれらの会議に参加いたしまして、国際的な立場から、腐敗の根源を断つというふうに、協力してまいりたいと思います。  次に、日中平和友好条約につきまして、具体的な段取りは一体どうなるのだ、四月調印というようなわけにはいかぬかと、こういうようなお話でございますが、この日中条約は、日中のこれから長きにわたっての関係を決めるものでございまするから、これは何といたしましても日中双方が満足するというようなものでなければならぬ、日中双方の両国民から祝福されて締結ということにならなけりゃならぬと、このように考えまして、交渉再開の機をずっとうかがってきておるわけでございまするが、その機は熟しつつあるというような感じを持っておるわけでございまするけれども、これは何せ私どもだけで決めるわけにはいかない。相手のあることなんです。これは、まあ双方がいついかなる段取りで交渉を開始するということの合意があって初めてこの問題は動き出すという性格のものでありますので、いまここで、いつどうするということまで申し上げるわけにはまいりません。  ソビエト連邦との関係につきましては、これは日中問題とはまた別の角度で善隣友好の関係を結びたいと、このように考えておりますが、これは御承知のように、また御指摘のように、北方四島の問題があるんです。この問題が壁となりまして、条約締結というところまでなかなか展望が開けてこない。しかしながら、あらゆる角度から日ソの関係というものは進める。そういう中で領土問題も何とか解決いたしまして、この平和条約を結びたいと、このように考えております。  さらに、文教問題につきましてお尋ねがありました。教育基本法をあくまで遵守するや、こういうことでございますが、これはもう文句なしにそのとおりでございます。  それから、必要があれば日教組の代表とも総理自身会談せよというお話でありまするが、会談、やぶさかではございませんけれども、まず、とにかく文部大臣がその衝にあるわけでありまするから、文部大臣にこの話し合いに当たらせたいと、こういうふうに考えております。  文教問題は私は非常に重大な問題であるというふうに考え、今度の予算におきましても、かなりの配慮をいたしておるわけであります。人間らしい日本人をぜひつくり上げていきたいと、かように考えております。  なお、官公庁の綱紀粛正の問題にお触れになられましたが、これは、私どもも、内閣を組織したその当初からこの問題を取り上げまして、そして各部局のすみずみまで徹底するようにこのことを申しておるわけでございますが、なお遺憾な事件がときどき出てくるというような状態でありますので、一層この問題に対しましては配意をいたしてまいりたい、このように考えます。  また、高級官僚の関連企業への天下りの問題の御指摘もありましたが、今度、行政改革の一環といたしまして、特殊法人の整理をいたしますとか、また、特殊法人の役員の給与、これを規制いたしますとか、あるいはずいぶん皆さんの話題になるところの退職金、これを二割削減をいたしますとか、いろいろな措置を含めておるわけでありますが、行政機構改革の一環といたしましても、この官庁綱紀の粛正につきましては今後とも努力をいたしてまいりたいと、このように考えております。  最後に、本四架橋の着工時期などにつきましてのお尋ねでございますが、これは前からも申し上げておるわけでありまするが、児島−坂出ルートを早期完成ルートとして決定をしているわけです。そこで、この児島−坂出ルートにつきましては環境影響評価を実施いたしておるわけであります。またさらには、旅客船問題の対策の問題があるわけであります。そういう着工に先立っての事前準備が必要なんでございますが、この事前準備が整い次第正式に着工いたします。これは、この前から申し上げておるとおりでございます。それが年度内、この三月までに事前準備が全部終わりますかどうか、その辺はまだちょっと私も詳細な報告を受けておりませんけれども、いずれにいたしましても、準備が整いますれば着工するということには間違いはございません。なおまた、発注につきましては地元を優先するという考え方、御提言がありましたが、できる限りそういうふうにいたしたいと、かように存じます。(拍手)    〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手
  9. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 私に対する御質問は二つでありますが、その一つ経済成長問題でございます。わが国の当面の緊急の経済課題は何ぞやと申しますと、私は二つあると思うのです。一つは、現在の深刻な雇用問題、これを好転させるということ。このためには産業の操業率を高めるということが何よりも大事でございます。それから第二には、世界的にややもすると保護貿易が台頭する気配がございますが、この保護貿易の台頭を抑えまして、自由貿易の原則をあくまで守っていくということが何よりも大事だと思います。世界経済の均衡拡大を図っていくということ、このためには自由貿易の原則が必要でございますが、そのためには、わが国国際収支を均衡の方向に順次転換していかなければならないことは当然でございます。そういうことから、昭和五十三年度経済目標といたしまして、大規模な内需の拡大を図りまして七%程度経済成長が必要である、これは基本方針にいまなっておるわけでございますが、私どもは、わが国はこれを実現するだけの十分な力を持っておるということを確信をしておりますし、政府はこれを実現するためにあらゆる努力を払うということを繰り返し明らかにしておるところでございます。  それから次は、産業構造の転換問題でありますが、総理の方からは総論についての御説明がございましたので、もう少し具体的に申し上げますと、現在産業構造の転換を必要といたしております理由は、一つは、わが国の貿易構造を転換しなければならぬということであります。それから次は、発展途上国の追い上げがますます激しくなっておるということであります。それから第三は、構造不況業種対策、これを進めていく必要があるということ。それから第四は、オイルショック以降のエネルギー対策というものを新たに考えなければならぬということであります。すなわち、新エネルギー対策、省エネルギー対策、こういう必要が生まれております。それから第五には、環境保全、依然として重要な課題でございます。また第六には、新技術の開発、こういう問題が生じております。  そこで、この方向に沿った産業構造の転換が必要でありますが、このためには、知識集約型産業あるいは高度の機械工業、こういう方向にわが国経済は当然転換しなければなりませんが、政府といたしましては、産業構造審議会から昭和四十九年にこの方向についての答申を受けております。産業構造の長期ビジョン、こういうことについての報告を受けまして、さらに五十年、五十二年と見直しの報告を受けております。これを基礎にいたしまして今後の産業構造の転換を図ってまいりたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣藤井勝志君登壇、拍手
  10. 藤井勝志

    国務大臣(藤井勝志君) 雇用問題が現下の最大課題であるという認識において、私は秋山議員と全く同感でございます。  深刻な雇用、失業情勢が続く中で、最近さらに円高傾向によりまして不況感が高まり、加えて、構造不況業種からの離職者の発生が必至であるという状況を踏まえまして、去る二十日、円高不況下の緊急雇用対策を決定をいたしまして、失業を積極的に予防するとともに、再就職の促進と雇用機会の造出などの措置を講じ、雇用の安定と確保を図ることといたしております。  すなわち、第一に、雇用安定資金制度を積極的に活用いたしまして、また、特定不況業種離職者臨時措置法の適切な運用により、これに積極的に対応すると同時に、地方自治体との連携を密にいたしまして、失業の予防と雇用の確保に全力を尽くしたいと思っておるわけでございます。  また、大幅に拡大された公共事業への失業者の吸収を促進するとともに、新たに雇用開発の促進を目的として、中高年齢者等を雇い入れる事業主に対する国の助成措置を充実することをいたしまして、民間の活力を生かした雇用機会の増大を図る施策を推進する考えでございます。  沖繩等の失業多発地帯に新たに開発就労事業を起こすべきであるとのお考えに対しましては、それが一時的に失業者を吸収する方式の特別の事業を起こすということであるならば、これまでのこの種の事業が必ずしも再就職につながっておらないという面もございまして、適当ではないと考えます。しかし、沖繩等の失業多発地域につきましては、各種の就職援護措置の活用を図りまして、また、新たに設けられる本土に移転就職する者に対する就職資金貸付制度の活用や広域職業紹介事業を実施するなどによって、失業者の再就職の促進を図ってまいる考えでございます。また、御案内のように、公共事業については法律に基づく失業者救済制度の積極的活用を図りたい、このように考えます。  労働時間の短縮、週休二日制の実施につきましては、去年の十一月二十九日、労働側から提案がございまして、立法措置によって推進すべきであるという要請がございましたが、この問題については、中央労働基準審議会において「労働時間対策の進め方について」ということで、公・労・使三者一致した建議を受けました。今後は、この建議の線に沿いまして、労使の話し合いの機運を醸成するとともに、労使の努力が及びにくい分野においては特に配慮しつつ、労働時間短縮が産業、企業の実態に応じて進められるよう、行政指導を積極的に進めてまいる所存でございます。  それから、ホームヘルパーの問題、その他の社会福祉関係の従事者の増員等の雇用拡大の問題につきましては、先ほども述べましたような、雇用開発の促進を図るというこの助成措置を活用して御期待にこたえたいと、このように考えます。  それから、解雇の規制の問題について言及がございましたが、御案内のごとく、労働基準法等によりまして一定の規制が行われておりますほか、解雇権乱用の法理も確立いたしておりますので、新たな法制が必要であるとは考えておらない次第でございます。  以上。(拍手)    〔国務大臣園田直君登壇、拍手
  11. 園田直

    国務大臣(園田直君) 日中問題につきましては、総理がお答えのとおりでありまして、日中両国間に大体腹の見当はついたわけでありまして、いよいよお言葉どおり、機ようやく熟し、わが方にも若干与党に対する説明その他の条件の不足もありますし、向こうの方にもいろいろ条件があるようでございまして、遠からずこれは秋山議員のおっしゃることになると思いますので、ひとつ暫時御猶予を願いたいと思います。  外務大臣はいつごろ中国に行くのか、行くのか行かぬのか——総理のお指図でありますが、お指図があればいつでも国会のお許しを得て行くように、エンジンはかけっ放しでございますから、よろしく。  それからココムの問題でありますが、チンコムは四十六年廃止をいたしまして、ココム規制については秋山議員と同じ意見でありまして、わが国の対共産圏貿易の円滑なる発展、技術の進歩、国際情勢の変化等から考えまして、ココムは逐次緩和していくべきものと考え、そのように努力する所存でございます。  日ソの領土問題については、総理からお答えがありましたが、この際私からもお願いしたいことは、領土問題について、わが方も考えなきゃならぬ点があると思います。四島返還の問題を使って反ソ感情をあおり、あるいはこの領土問題を使ってソ連邦を攻撃するがごとき態度は、領土返還の妨害にこそなれ、何ら益するものではないということをわれわれは考える必要があるわけであります。  次に、われわれは、この領土問題については、率直に国民の総意を、これが一部の意見であるとか、あるいはつくられた意見であるとかではなくて、永久不変の国民の総意である、これを率直に申し述べ、なお、田中・ブレジネフ共同声明による未解決の問題という問題を、一方的に、これを協議も通告もしないで、一方的にこれは解決済みであると、こういうソ連の態度は、これはわが国も納得できないばかりでなく、単に——日ソの間には共通の利害がいっぱいあります。にもかかわらず、この問題だけで日ソの国民感情が阻絶をされているということを、国民の総意を背景にして、ねばり強く主張することが大事であると考え、この上ともねばり強く努力する覚悟であります。どうかよろしく皆様の御支援をお願いする次第でございます。(拍手)    〔国務大臣砂田重民君登壇、拍手
  12. 砂田重民

    国務大臣(砂田重民君) 秋山先生から六点の御質問をちょうだいをいたしました。お答えをいたします。  申すまでもないことでありますけれども教育基本は、人格の完成を目指しまして、平和的な国家及び社会の形成者として、心身ともに健康な国民の育成を目標として行われるものでございます。したがって、教育基本法の精神に沿って行うことは当然でございます。教育基本法は、制定されましてから、昨年が三十年でございます。本年は三十一年目、新しい三十年に向かって第一歩を踏み出すのでございますから、秋山先生御発言のとおり、同法の原点を再確認をいたしまして、全力を傾注してまいる所存でございます。  二番目が学級編制の問題でございました。現在、義務教育学校の学級編制は、標準法に基づきまして、最高が一学級四十五人と決まっておりますことは先生御承知のとおりでございますが、ただいまの状態で全国平均をとってみました場合に、小学校が三十二・九人に相なります。中学校が三十六・八人となっておるわけでございます。この数字は、先進諸外国の実情と比べまして、小学校はほぼ同様でございます。中学校におきまして、わが国が若干高い実情にあるわけでございます。問題は、これからにあるわけでございます。今後数年間に約百二十万ないし百三十万人の児童生徒が増加をいたしまして、しかもそのほとんどが過密県に集中をするわけでございます。これに対応してまいらなければなりません。これに対応をいたしますことと、先生御指摘の学級基準の再編制をやる、この問題を両方一緒にやるということは、なかなか容易ならない問題でございます。しかし、私は、学級編制基準というものが教育上の重要な課題であるということは十分認識をいたしておりますので、前向きに慎重に検討をさせていただきたいと存じます。  なお、義務教育学校の教職員定数につきましては、昭和四十九年度を初年度といたします第四次の定数改善五カ年計画が、昭和五十三年度、本年に終了することに相なるわけでございます。この際、既定計画どおりに、五十三年度におきましてこれを完成させることといたしております。  第三番目が幼稚園の増設の問題でございました。文部省は、幼児教育の重要性と幼稚園教育に対します国民の強い要望にかんがみまして、幼稚園教育振興計画を策定をいたしました。昭和五十七年度当初までに、保育所措置児及び特殊教育対象児を除きまして、幼稚園への入園を希望をされますすべての四歳児及び五歳児を就園させることを目標に、公私立を通じて幼稚園教育の普及、整備を進めておるところでございます。これに必要な公私立幼稚園の施設設備費の助成を行いますとともに、幼稚園への就園に伴う父母の負担軽減にも努力をいたしてまいりました。これによりまして、幼稚園教育は、計画策定当初の昭和四十七年度に比べますと、普及度は高まってまいりました。五歳児の就園率についてみますと、当初の約六〇%から昭和五十二年度の現在、約六五%まで伸びてまいっておりまして、これは当初の計画どおりに進展をしておるものと考えるのでございます。今後とも計画に沿いましてその整備充実に努めまして、幼児教育に対します国民要望にこたえてまいる所存でございます。  第四番目が高校増設の問題でございまして、高等学校の新増設につきましては、従来から起債等の地方財政措置のみで対応してきたところでございますけれども、近年の高等学校生徒の急増の実情に対処いたしますために、昭和五十一年度から緊急対策として、公私立高校の新増設につきまして、一定要件のもとではありますけれども、新たに国の補助を行うことにいたしましたことは、秋山先生御承知のとおりでございます。昭和五十二年度におきましては、この補助金を百十二億計上いたしたのでありますけれども昭和五十三年度におきましては百九十八億円、前年比一・八倍として、高校増設の問題に対処しているところでございます。引き続いて努力をしてまいります。  五番目が学校災害の問題でございます。学校におきまして安全教育、安全管理を適切に行いまして、学校事故の防止について万全を期することが重要な課題でありますことは当然でございます。一方、不幸にして事故が起こりました場合の救済措置も十分にしておくことは、学校教育の円滑な実施にとって欠くことのできない問題でございます。このために、日本学校安全会の災害共済給付につきまして、かねてから改善を行ってきたところでございますけれども、五十二年、昨年の衆議院の文教委員会におきましても、この問題についての国会の御意思の御表明があったわけでございます。これを背景といたしまして、昭和五十三年度からは、死亡事故や廃疾事故に対します給付額を大幅に引き上げることにいたしますとともに、新たに給付財源につきまして十八億円の国庫補助を計上をいたしまして、このことによりまして、原則としては保護者負担の増額を招かないでこの改善が行えることに相なるわけでございます。このような措置をとりまして、次代を担う青少年をたくましく育て上げるよう、学校教育が積極的に展開されますことを期待をいたすものでございます。  第六番目は、秋山先生は日教組との話し合いの問題を御提案でございまして、私は、文部大臣に就任をいたしましてまず決心をいたしましたことは、教育を政争に巻き込まないようにするということでございました。就任後間もなく、日教組を含めまして広く教育団体と率直に意見の交換をいたしてまいりました。その際に、真に建設的な意見、御批判には十分耳を傾けて皆さんの御意見を承ってまいりました。同時に、文部省の意見もまた十分申し上げました。いささかでも共通の理解を得るように努力をいたしてまいりました。特に、日教組と私の第一回の会合におきましては、当然意見の合わない平行線のままな問題もございました。それはお互いにそれはそれなりに理解をし合いました。しかし、そういうことはこっちへ置いておこう、意見の対立した問題は対立した問題として、お互いに協力のできることならば協力し合っていこうではないかというのが、双方の理解し合ったことでございます。私は、今後もこの姿勢を明確に続けてまいる決意をいたしております。同時に、教職員の皆さんにおかれましても、教育基本法の原点にやはり返っていただきたい。教育基本法の第六条に書かれております全体の奉仕者という立場に立って、教育政治的中立性につきましても、教職員の皆様方にも原点に返っていただき、父兄、国民教育政治的中立性の問題についていささかの疑念も抱かせることのないように強く求め、そして、こういう努力を続けまして、父兄、国民の期待にこたえる教育の振興に努力をしてまいる決意でございます。  最後に、主任制の問題の御提案がございました。主任制の問題につきましては、これが学校の管理面の問題とは私はいささかも考えておりません。これは教育指導面の充実の問題である、こういうことを教員の皆さんにさらに御理解をいただきます、その努力を続けてまいりまして、いやしくもこの問題で教育の現場に混乱などが起こらないように、児童生徒にとって迷惑にならない、こういうことを腹に置いて懸命に努めてまいる決意でございます。(拍手
  13. 安井謙

    ○議長(安井謙君) 答弁の補足があります。福田内閣総理大臣。    〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手
  14. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 答弁を補足いたします。  まず、七%程度成長が達成されなかった場合に責任はどういうふうにとるのかと、こういうお話でございますが、七%程度成長達成ということは、これは内外の期待するところであります。この期待にこたえることは政府責任である。その責任を踏まえまして、政府全力を尽くすということをもってお答えといたします。  次に、公共事業費が一体完全に消化されるかというお尋ねでございましたが、これは非常に膨大な公共事業でありますので、よほどの努力と工夫を必要とすると、このように考えておりますが、いますでに予算御審議の最中ではございまするけれども、前もっていろいろ事前の準備を進めておるんです。そして、成立した暁におきましては、直ちにこれが実施できるように、五十二年度補正につきましても、五十三年度予算につきましても、そのように準備をしております。  なお、消化という問題の一環といたしまして、この公共事業関連の資材の値上がりとか労務費の問題とか、いろいろありますが、それらの問題につきましても十分配慮いたしまして、所期の目的が達成できるようにいたしたい、かような考えでございます。  それから、赤字公債の歯どめ問題でございますが、これは非常に大事な問題になってきておるわけであります。五十三年度予算におきましては、これを予算の取り組み方といたしまして、経常勘定と投資勘定に分けてあります。そうして、投資勘定におきましては、これは建設公債で全部を賄う、それから経常勘定の方は二四%だけを公債によって支弁をするというたてまえになっておるわけでございますが、これから先々の公債というものが乱に流れるということがあっては、これは非常にゆゆしいことでありますので、何とかして歯どめということを考えなきゃならぬ。その場合の歯どめと申しますのは、大体経常勘定における国債依存率、これを一つの大きな目安として考えることが妥当ではあるまいか、そんな感じがいたしておるのです。ことしは、五十三年度は二四%でございます。この二四%を目安といたしまして、だんだんとこれを縮減をしていくという考え方、この辺を歯どめとして考えたらどうかなというふうに感じておるわけでありますが、なお、これから三年または五年間にわたるところの財政試算を皆さんに御披露申し上げることになりますが、この試算でどういうことになりますか。私の大体の希望といたしましては、五十七年度、つまり五十三年から五年目、この時点では何とかしてこの二四%という経常勘定での依存率、これをゼロにしたいなあと、このように考えておる次第でございます。(拍手)    〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手
  15. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 二つの問題で補足答弁をさせていただきます。  第一点は、円高問題に関連して、国内中小企業に特に大きな影響が出ておるわけでありますが、これに関連いたしまして、総合的な中小企業の緊急融資対策というものをまとめまして、近く法案を国会に提出をいたしまして御審議をいただきたいと思っております。  なお、この倒産問題に関連いたしましては、昨年成立をいたしました法律に基づきまして、本年から倒産防止のための共済制度もスタートをすることになっておりますし、それからあわせまして、昭和五十三年度予算では、中小企業対策といたしましては考えられるあらゆる対策を採用することにいたしております。しかしながら、私どもは、幾らきめ細かい中小企業対策をとりましても、景気がよくならなければ中小企業対策というものはどうにもならぬと、このように思います。でありますから、一面このような特別のきめ細かい具体的な対策を立てますと同時に、内需の拡大をいたしまして、産業全体の操業度を高めていく、景気をよくして中小企業の仕事をふやしていくということ、これがもう最大の中小企業対策であると考えておる次第でございます。  それから第二点は、七%成長問題でありますが、この点につきましては、先ほど総理が重ねて御答弁になりましたが、全く私も同意見でございます。(拍手)     —————————————
  16. 安井謙

    ○議長(安井謙君) 林田悠紀夫君。    〔林田悠紀夫君登壇、拍手
  17. 林田悠紀夫

    ○林田悠紀夫君 私は、自由民主党・自由国民会議を代表し、当面の内外の重要施策に関して、総理並びに関係閣僚に若干の質問を行うものであります。  一九七三年秋、石油ショックによって世界全体が転換期に入ってからすでに五年、あと二年で一九八〇年代を迎えようとしている新しい年頭に当たりまして、世界も日本も、いまだ長い霧のトンネルを抜け出すことができません。われわれは、いま、大きな変動と、あすへの展望が容易に開けない不安の世代に直面しているのであります。  一九八〇年代あるいは九〇年代中には、石油採掘量は極限に達し、やがて下降線をたどっていき、その際、価格は高騰するのみならず、手に入れることがむずかしくなり、一方、核融合の利用や太陽エネルギーなどの新エネルギーの出現は、ようやく二十一世紀に日程に上ってくるであろうと言われております。    〔議長退席、副議長着席〕 その間、世界はゼロに近い経済成長に甘んじ、失業の慢性化を見なければならないかもしれません。  昨年は、米国、ソ連、日本、EC等主要諸国は、年初から相次いで経済水域二百海里を宣言し、日ソ漁業交渉のたびごとに、わが国の漁業は危機を深めております。わが国経済は、一万八千件に上る倒産企業を抱えて、かつてない不況にあえぎ、欧米への輸出は拒否反応を受け、発展途上国からは追い上げられ、判断を誤れば、一層の円高と各国の保護政策を誘発し、ついには自由貿易体制そのものの崩壊にまで至るおそれすらあります。  われわれは、いま、前途に山積する難問題を抱えて、ここに第八十四国会を迎えました。  総理は、昨年は経済の年と規定し、不況の克服に総力を挙げ、高成長経済から安定成長経済への軟着陸を図ってこられました。今年は、GNP実質七%の成長目標を掲げ、その実現に全力を傾け、日本経済の五年越しの長いトンネルの出口をはっきりさせる年にしたいと決意を述べておられます。  いま、政治は創意と指導性をもちまして、国民に未来を開く戦略を示し、前進しなければなりません。この変動と危機時代に、総理はいかなる姿勢をもって政治に臨み、また日本の新しい時代への展望を持っておられるか、お伺いしたいのであります。  次に、現下のわが国を取り巻く外交問題についてお伺いいたします。  園田外相は、新年早々に、延び延びになっていた日ソ外相定期協議のため、厳寒のモスクワを訪れ、帰国するや、席の暖まるいとまもなく、中東諸国を訪問されました。日本の国益のために東奔西走されている外相に敬意を表する次第であります。  日ソ外相定期協議は、北方領土問題に対するソ連側の一方的な強硬態度によって、共同声明を発表するに至らなかったことは、まことに遺憾なことでありますが、日本側のとった態度は当然であると思うのであります。しかしながら、日ソ間には二百海里時代の厳しい漁業問題やシベリアの経済協力問題もあり、北方領土の返還を図って平和条約を締結する日をわれわれは切望いたしております。  そこで、先般の協議において、一九七三年の日ソ首脳会談における、双方は第二次大戦のときからの未解決の諸問題を解決して平和条約を締結するという共同声明に関して、ソ連はいかなる認識を示したのでしょうか、また、今後の平和条約交渉の継続に影響はないのか、お伺いいたしたいのであります。  さらに、昨年のサダト・エジプト大統領のイスラエル訪問によって劇的な変化を見せた中東情勢についてどのような感触を持たれたか、とりあえず六カ月間石油値上げを見送りましたOPECの動きとともに、お伺いしたいのであります。  総理は、施政方針演説において、「日中平和友好条約に関しては、交渉の機はようやく熟しつつあるものと判断されますので、さらに一段の努力を重ねる決意であります。」と述べておられます。  一九七二年九月二十九日、日中共同声明調印が行われてから、日中ともに諸般の情勢の推移を経まして、ここに五年以上経過いたしました。いかなる国とも友好関係を維持促進することを基本とするわが国といたしましては、双方の国益の増進を踏まえて、隣邦中国との条約を締結すべきものと思うのであります。ソ連は、これまで、反覇権条項を含めた日中条約に対し、繰り返し攻撃を続けてまいりました。過般の日ソ外相定期協議においても、コスイギン首相はこれに懸念を表明したけれども、外相の説明に理解を示し、注文をつけようとしなかったということでありますが、日中問題に対するソ連の態度はいかがであったのか、お伺いいたします。  わが国にとって、日ソ、日中の関係はともに最大の外交課題でありますが、複雑化した国際情勢の中にあって、わが国が主体性を持った外交を貫き、日ソは日ソ、日中は日中という方針で進めることができるのか、お伺いしたいのであります。  次に、日中平和友好条約の締結に当たって、わが国で議論のある問題は、いまより二十七年前にわが国を仮想敵国として締結された中ソ友好同盟条約であります。この条約について、中国側からは名存実亡と言われているとのことでありますが、わが国民に明確にし得る公的な確認の方法があるのか、お尋ねいたしたいのであります。  また、台湾、韓国、ASEAN諸国等、アジアの国との関係にいかなる影響があると思っておられるのか、お伺いいたします。  昨年八月、総理のASEAN諸国及びビルマの訪問は、同じアジアの民として、心と心の触れ合いをもって平和と繁栄をともに分かち合う運命共同体の観念をこれら諸国に呼び起こし、マニラにおける福田ドクトリンの発表は、アジアの歴史に新しい一ページを開いたものと言うことができます。この福田ドクトリンの精神、特に八月七日の日本・ASEAN首脳共同声明の内容をいかに実行に移していくかは、東南アジア諸国はもちろん、広く世界の注目するところとなっております。  去る十二月に行われた東南アジア太平洋地域大使会議の提言は、総理が強調された東南アジア諸国民との相互理解と信頼関係の構築は、まずその第一歩として、宣明された政策を着実に実施していくことから始められねばならないと述べており、まさにそのとおりであると思うのであります。  総理は、「政府開発援助を今後五年間に倍増以上に拡大し、物心両面にわたる協力の強化に努力する。」としておられますが、新年度、これらASEAN諸国への経済協力並びに文化協力及びASEAN諸国の輸出所得安定のための措置についていかに考えておられるか、お伺いしたいのであります。  戦後三十年、日本人が気づかないうちに、いまやわが国は世界の経済大国の一つに数えられるに至り、その行動は国際的に大きな影響を及ぼすがゆえに、国際社会における従来の他力本願的な姿勢、自己中心的発想は許されなくなりました。わが国輸出増大は、世界の各国から自由化や関税等の撤廃を迫られるのみならず、米国、EC等の批判を招き、これら諸国においては保護貿易の機運が強まっております。  幸い、日米間につきましては、先般ストラウス通商特別代表との間で合意を見ることができ、当面の経済摩擦を回避し得た政府努力を多とするものであります。しかし、当面の事態を乗り切ったからといって、国際収支の均衡の問題に決着がついたとは言えないのであります。米国の石油輸入などが急減して貿易収支の赤字が容易に改善されるとは思われず、一方、わが国は、景気拡大のために最大の努力をすることはもちろんでありますが、閉鎖経済の象徴とみなされている牛肉やオレンジなどの農産物の自由化や産業構造の転換も政治上なかなか容易ではないと思われます。また、三千億ドルものユーロダラーが自由に動き回っている国際金融市場の現状では、本格的な投機に対処することはきわめて困難であります。  このような国際情勢経済環境の中で、わが国が国際協調路線を進むためには、まず国際収支黒字幅の縮減を図るべきであり、政府は新年度経常収支黒字は六十億ドルに縮小する見通しになっておりますが、その実現にはいかなる具体的な方策を持っておられるのでしょうか。  また、わが国農業は目下きわめて苦しい米の生産調整を進めている段階にありますが、国際経済環境は、さきに述べましたように、農産物の自由化を迫り、わが国農業に多大の影響を与えようとしておりますが、これらの外圧に対していかに対処される方針であるか、お伺いいたします。  なお、わが国は、欧米諸国とは言語、風習を異にするため、意思の疎通を欠き、わが国責任のない諸問題についてもスケープゴートに仕立てられる傾向があり、米国側においても、世界の基軸通貨ドルの防衛を真剣に実施すべきことが当然であります。政府はもちろん、議会も国民も、日本の実情をよく他国に認識させ、同時に、他国のことを知る努力をしなければならぬことを痛感いたします。総理は、予算の成立後訪米して、カーター大統領と意思統一を図られるとのことでありますが、その御努力を期待し、このような国際的潮流に処して、総理みずからの外交日程をお伺いいたします。  次に、防衛問題について質問いたします。  最近、防衛問題について、国民の理解と関心が深まり、建設的な論議が行われるようになりましたことは、まことに喜ばしいことであります。わが国周辺においては、ソ連の軍事力の急速な増強、中ソの対立、北朝鮮の軍事境界線設定など、わが国の安全にかかわる重要なテーマが山積しておりますが、政府は現在の国際軍事情勢をどのように考えていられるのか、見解を伺いたいのであります。  わが党は、米国との集団安全保障体制を基調として国の安全を確保する政策を一貫して推進してまいり、今後ともこれを堅持すべきものと考えております。しかるに、最近の米国との関係においては、時に貿易をめぐる摩擦を生じ、わが国の防衛分担責任についての批判があり、また、カーター政権発足以来、在韓米地上軍の撤退が進められるなどの変化が起こっております。これらはわが国防衛上大いに注目しなければならない問題と思うのでありますが、政府はどのように受けとめ、また、わが国の防衛力整備についてどのような努力をしようとするのか、伺いたいのであります。  次に、当面の最大課題である経済問題についてお伺いいたします。  わが国経済の現状は、政府のあらゆる努力にもかかわらず、百万人を超える完全失業者を抱え、設備の稼働率は八五%と低迷し、繊維、平電炉、アルミ製錬等、構造不況産業はもとより、さらに、急激な円高のもとで倒産する企業も続出しております。このときに当たって、総理は、新年度政策目標景気回復に集中することとされ、経済成長目標を実質七%に置き、五十二年度の第二次補正予算を含む十五カ月予算を編成して、非常事態に処する思い切った財政措置を講ずることを判断されたのであります。  このような景気刺激を最優先とした積極型予算にかかわらず、世上、七%の経済成長目標達成については疑問視する多くの意見があります。五十二年度は六・七%の目標を設定し、第一次補正予算を組むことにより、その達成を図りましたが、十月以来の円の急上昇により、五・三%上昇の見通しに変更されたわけであります。五十二年度経済輸出と公共投資で伸びることができましたが、新年度は、輸出円高内外環境悪化で減退し、当面公共投資のみで伸ばさざるを得ない情勢にありますが、七%成長についての総理の自信のほどをお伺いしたいのであります。  以下、さらにやや詳細にわたって、政府の意図する新年度の財政経済運営の諸問題について若干の要望を申し上げるとともに、政府見解を確かめておきたいと思います。  第一点は、これだけ大規模な公共事業が円滑に消化されて即効的景気対策役割りを果たし得る十分な体制が整備されているかどうかであります。政府は、すでに公共事業等施行推進本部を設置され、その円滑な実施に努力中でありますが、第二次補正予算年度内消化の手順並びに新年度事業の設計及び発注、資材の需給計画、用地の買収、建設労働者の手当など、予算執行に伴う必要事項がいかに進んでいるか、お伺いいたします。  また、公共事業の大部分は地方団体の手を通じて実施されるものであり、補助金の早期決定、補助申請手続の簡素化を図ることはもとより、地方財政について万全の財政措置を講ずべきであると考えますが、どのように対処する所存でありましょうか。特に、公共事業等の拡大によって縁故地方債が著しく増加いたしますが、五十三年度の地方債資金対策は十分でありましょうか、消化の見通しについてお伺いいたします。  第二点は、内需の喚起策として住宅建設にも重点を置いており、住宅が国民生活のよりどころとしての生活基盤であるだけに、持ち家取得促進の画期的な住宅政策には見るべきものがうかがえます。しかしながら、住宅問題はすなわち土地問題と言われるように、いかに住宅に優遇措置をつけても、大都市圏における高い地価の実情では、容易に住宅建設に踏み切れないおそれがありますが、宅地供給にいかなる対策を講ずる所存でありましょうか。  また、一連の公共事業の積極的促進は、国土利用計画法の施行後鎮静化している地価へ当然影響を及ぼすことになると予想されますが、地価高騰防止のためにいかに対処する所存でありましょうか。  第三点は、昨年の通常国会において異例の予算修正をしてまで実施された所得税減税について、このたびも行うべしという根強い議論があります。公共事業を行っても、その効果は特定の地域、特定の資材に限定され、また、ベースアップによる個人所得の増加がそんなに期待されない今日、内需の半分を占める個人消費を刺激するには所得税減税を行うべきだという意見であります。わが国におきましては、欧米と異なり、貯蓄率が二四%の高率に及ぶため、減税効果が十分あらわれず、むしろ公共事業をふやした方が減税よりも景気回復には効果があると思われますし、この予算案の国債依存率は三二%、実質三七%に及んでいることを考えると、減税の代替財源公債にならざるを得ない財政状態では、適当でないと思いますが、いかがでしょうか。  第四点は、民間企業設備投資は、五十二年度は対前年度わずかに〇・九%の伸びにすぎません。五十三年度は六・八%の伸びが見込まれており、特に電力等非製造業が一四%と大きく伸びることになっておりますが、電力等には立地問題があり、よほどの努力を必要とすると思われますが、いかがでしょう。  なお、民間設備投資を促進するため、今回政府投資減税に踏み切られたことは高く評価いたしますが、その対象は公害防止用設備等限定されており、減税額は約千二百億円が見込まれているにすぎません。これで冷え切った投資マインドに効果があると思われるのでしょうか。  次に、エネルギー政策についてお伺いいたします。  資源の乏しいわが国におきまして、エネルギー政策は国の命運を決するものであり、新しい産業転換の基盤を形成するものと思います。新エネルギーの開発、省エネルギー、石油開発、石油備蓄等、今後のエネルギー対策には十年間に六十八兆円という膨大な資金が必要とされており、新年度から石油対策の抜本的推進を図るため石油税が新設されることになりましたが、これは資金解決の一部にすぎません。今後のエネルギー対策財源確保をいかにするのか、決意のほどをお伺いしたいのであります。  なお、設備投資どころではない構造不況に悩んでいる業種、また、急激な円高によって深刻な打撃を受けている中小企業に対して、政府は新年度予算でも相当な配慮をしておられますが、倒産防止のみならず、事業縮小、事業転換等、それぞれの業種ごとに特有の再建安定対策が必要であります。一般的な景気対策によって全体として七%の経済成長を目指したとしても、個別的には広範にわたる不況業種が存在するという経済構造では、国民経済全体としての設備投資意欲は盛り上がらず、雇用不安は解消せず、不況感は緩和されないのであります。政府は、これら構造不況業種及び円高不況中小企業に対してどのような具体的政策を講ぜられるのか、お伺いいたします。  次に、国際収支と外貨準備高についてお伺いいたします。  大幅な経常収支黒字を背景に、わが国の外貨準備高は昨年十二月末で二百二十八億ドルとなり、米国を抜いて西独、サウジアラビアに次ぐものとなりました。五十三年度経常収支黒字削減が政府目標どおりとしても、外貨準備高は引き続き累増するでありましょう。先日、総理は、現在の為替管理を原則自由、例外規制に切りかえる旨を発表されましたが、まことに時宜を得た措置であります。外貨の流出促進策として、円建て外債は昨年一年間で三千二百六十億円起債されましたが、西独のマルク建て外債やスイスのフラン建て外債に比較して、まだ少ないのであります。今年はさらに増加が予想されておりますが、円建て外債発行についての政府の考え方をお伺いいたします。  また、現在の外貨準備高の中で、金準備は九億ドル程度と思いますが、いかがでございましょうか。先進十一カ国とIMFの公的保有金の総量を増加させないことの合意の期間がこの一月末で切れると聞いておりますが、日本として公的金保有を増加させる考えはないのか、お伺いいたします。  次に、わが国経済の中期的な見通しについてお伺いいたします。  五十三年度国債発行予定額は、第二次大戦前の国債依存度の高いときでも三〇%の依存率であったことを思うと、相当大幅なものであります。政府は、昭和五十年代前期経済計画においては、計画期間内にできるだけ早く特例公債に依存しない状態に復帰することを意図しておられました。わが国財政が引き続き長期にわたり大幅に公債に依存していく場合には、公債費負担の累増を来し、その健全性、弾力性を損うばかりでなく、わが国経済に再びインフレ要因を持ち込むおそれがあります。もちろん、当面まず景気浮揚が第一、でありますし、日本経済の中期的な見通しを自信にあふれて作成することは不確実性が多過ぎますけれども政府としては、中期的に財政の計画を示した上で国民の選択を求める姿勢が必要であります。高成長時代が再び訪れるのならば、税の自然増収により借金を返済することができますが、安定成長時代においては不可能であります。今後の中期的な経済見通しをいかに考えておられるのか、お伺いいたします。  次に、多額の公債が発行されるわけですから、公債管理政策について、以下数点お伺いいたします。  第一は、大量国債の発行に伴う国債消化と財政負担の後年度転嫁についてでありますが、その負担を一般消費税等新税の創設によって処理しようというのでありましょうか。  第二は、大量国債の発行に伴い、この際金利等発行条件に弾力性を持たせ、割り当て制から入札制への移行など、市場原理にゆだねるべきであると思うが、いかがでしょう。  第三は、公社債の流通市場を育成しなければなりませんが、今後大量国債が売却され、国債価格の値崩れが生じた場合、政府、日銀はこれを買い支えるのかどうかであります。  第四は、景気回復による産業資金需要が旺盛になった場合、クラウディングアウトの問題について政府はどのような政策をとるのかであります。  次に、不況下の金融政策についてお伺いいたします。  長期不況下における貯蓄・投資の乖離によって金利は低下しており、銀行等金融機関の経営は競争が激化し、苦しくなりつつあります。こうした金融環境の変化のもとで、財政主導の内需拡大政策に対応して、民間投資を誘引するための公定歩合の引き下げを政府は考えているのでしょうか。また、新しい金融環境下における銀行経営のあり方として、金利の弾力化、自由化による市場競争原理を導入すべきであるという主張が行われておりますが、これからの金融制度改革について、基本的な構想をこの際お伺いいたします。  デノミネーションにつきましては、すでに何回も質問がありましたが、総理は、デノミは経済が安定した場合に実行すべきであると述べておられます。まさにそのとおり、現在のように不況の進行中に断行すれば、さらに不況を深化させる原因となると思われますので、その時期については慎重に対処すべきであり、デノミの本質について十分国民に周知徹底させ、デノミによる利得者の出ないよう、万全の策をとるべきであると思いますが、総理所信をお伺いいたします。  次に、深刻な社会問題となっている雇用不安の解消についてお伺いします。  現在、百万人の完全失業者のほかに、企業が抱えている過剰雇用者は約二百万人に上ると言われております。これまでは、経済成長を追求する政策がそのまま完全雇用達成の条件をつくり出していましたが、今後は、構造不況円高による設備の廃棄や事業の転換、引き続く低成長経済の定着により、恒常的な失業不安が懸念されるととろであります。政府は、これらの事態を打開するため、雇用保険法、雇用安定資金制度、特定不況業種離職者臨時措置法等を運用して、鋭意雇用の安定、求人開拓、職業訓練などの緊急対策に努めておられますが、現下の雇用不安は若年者から中高年齢者にまで及ぶだけに、既存の雇用政策の拡充程度の対処の仕方だけで、この深刻な雇用事情が緩和されるとは思われません。  そこで、当面の雇用対策基本は、申すまでもなく、七%成長を目指して景気を早期に回復させることでありますが、将来にわたっての対策としては、雇用拡大できる新しい分野を積極的に開拓することが急務であります。そのためには、まず公共サービス部門、たとえば、教育、情報サービス、社会福祉サービスなどの第三次産業に雇用の吸収を促す産業政策の展開が必要ではないでしょうか。また、最近は低迷しておりますが、農漁業者や技術者の海外移住の促進を図るべきではないでしょうか。さらには、第三次全国総合開発計画を推進して、農業や沿岸漁業への人口の定住を進めるなど、幅広い雇用対策を強力に進めることが肝要であると思いますが、政府の所見をお伺いします。  それと同時に、将来の産業構造の変化に伴う雇用対策を初めとして、高齢化社会への対応策としての定年制の延長、労働時間の短縮など、政府・労・使が一体となって今後の雇用政策対応策確立すべきだと思いますが、いかがでしょうか。  次に、行財政改革について伺います。  今日、国家財政が大量の国債発行に依存するという財政危機の中で、福祉対策、エネルギー問題を初めとする新たな各般の行政需要に対応するには、これまでの肥大化した行政組織に思い切ったメスを加え、国民のニーズに合った行政を目指して、その抜本的な改革を推進し、今度こそはと期待する国民の要請に十分にこたえるべきであります。今回の改革案では、中央省庁組織の簡素化とその再編は引き続き検討を進めるとなっておりますが、今後どのような方針でそれに対処するのか。また、地方出先機関、特殊法人等の整理合理化は第二次改革案以上に今後とも積極的に推進すべきものと思いますが、いかがでありましょうか。  この際、特に私が指摘したいのは、国家公務員の定年制の問題であります。現在、公務員の退職勧奨年齢は、上位官職以外については五十七歳から六十五歳まで、各省庁ばらばらであり、その勧奨決定方法も、根拠法規がないため、慣行、申し合わせ、通達と、各省庁まちまちであります。私は、民間との均衡を考慮して、退職勧奨のあり方、職員の年齢構成の適正化など、定年制導入の準備のための具体的なプログラムを早急に整え、その実施を促進すべきだと存じますが、総理のこれに対処する決意をお伺いいたします。  次に、地震対策についてお伺いいたします。  先日の伊豆大島近海地震は、地震についての国民的関心を呼び起こし、将来地震が発生した場合、現行の防災体制で果たして十分なのか懸念されるところであります。現行の災害対策関係法令は、災害発生後の措置を重点に置いておりますが、一昨年に東海地震説が出されて以来、関係地方公共団体から、地震の予知、警報、緊急措置等を規定した法律の制定の要請がなされております。政府においては、地震予知がされた場合の震災発生前の対策を含めた抜本的な防災体制を確立する必要があると考えるものでありますが、総理の御所見をお伺いいたします。  最後に、参議院の選挙制度についてお伺いいたします。  現行憲法においては、国会は衆参両院をもって構成され、衆議院は、予算、条約、首班指名についての優位を認められ、参議院は、審議に慎重を期することによって衆議院の専制をチェックする機能が期待されているのであります。そのためには、参議院に慎重練熟の要素を盛り込む工夫がされ、特に全国区制度はそのあらわれであると思いますが、参議院の機能や選挙についての憲法制定当時の考え方はきわめて不徹底なものがありましたので、結局衆議院と同じ性格を持つようになりました。しかし、世論は、参議院について第二院としての良識の府を求めているのであります。いまや参議院の全国区選挙制度は改革されなければならぬ時期を迎えていると思いますが、総理のお考えをお伺いしたいのであります。  以上をもちまして、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣福田赳夫君登壇、拍手
  18. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) お答えいたします。  いま、世界は大変な変動期だと、なかなか先を見ましても不透明な時代であるが、この時代にどういうふうに対処するかというお話でございますが、これは大体施政方針演説で申し上げておることに尽きると思うのですが、要約いたしますれば、とにかく、平和国家としてのわが国の全世界に対する立場、これは非常に貴重な立場だと思う。これを堅持してまいる。それから第二番目の問題としては、国際社会において寄与、貢献をする、やっぱり世界とともに生きる日本という立場、これをさらに強化するということ。それから第三には、やはり長い期にわたっての国づくり、その基本はやはり私は人づくりにあると思うのです。この点を大きく推し進めていかなければならぬだろうと、このように思いますが、そういう考え方を進める段階におきまして、どうしても協調連帯というか、その思想を根底に踏まえなければならぬだろうと、このように考えます。  具体的な問題といたしまして、日中問題、これに対するソ連の態度いかんと、こういうお話でございますが、さきの外相訪ソの際、ソビエト側から日中平和友好条約へ直接言及はしておりません。しかしながら、第三国が日ソ関係の発展を妨害しようとしておる旨の懸念を表明いたしておるわけでございます。わが国といたしましては、隣国である日中、日ソ、この二つの問題を抱えておるわけでございますが、日中は日中、日ソは日ソ、これは画然と切り離しておきたいと、かように考えております。これは御所見のとおりに考えておるわけであります。  なお、中国は中ソ友好同盟条約は名存実亡と言っておるが、これを明確にすべきではないかと、こういうお話でございます。まだ日中間の条約交渉が再開されておらないわけで、その中身にわたるのはいかがかと、こういうふうに思います。思いまするけれども中国側におきましては、かねてから、中ソ同盟条約は名存実亡、そういうことを何回か明らかにしておるわけであります。いずれ始まる日中平和友好条約交渉におきましても、何らかの形でこの点が国民に明確になるように、これは心がけなければならぬというふうに考えております。  それから、日中平和友好条約の締結で、アジア諸国、ASEAN等アジア諸国に対する影響を考えておきなさいという御所見でございまするが、もとよりそのことは大事なことでございますが、日中の平和友好関係が維持、確立されるという一連のこの日中関係、これはアジアの諸国も歓迎するところであろうと、こういうふうに考えております。また、この条約問題につきましても、恐らくその一環といたしまして歓迎するところであると、このように見ております。  さらに、ASEAN諸国等への経済協力、文化協力、輸出所得安定などの具体的措置をどういうふうに進めておるかと、こういうお話でございますが、私、昨年、ASHAN並びにビルマを訪問をいたしております。そのとき、いろいろ相談をし、約束したこともありますが、これらは今度の予算で着実にこれを実現をするという考えでございます。その他、今度五十三年度予算におきましては、これはかなり全世界に向かっての政府開発援助、これを拡大いたします。その大部分はアジア地域に配分をされるということになりますので、ASEAN初め東南アジア諸国との経済協力関係は格段の前進を見ると、このように考えております。  なお、これから先、ガットの東京ラウンド交渉その他輸出所得安定問題、いろんな国際協議が、南北関係というような問題を含めまして始まっていくわけでありまするが、そういう問題の処理の中で、東南アジア諸国の立場は、わが国といたしまして特に配慮しなければならない問題であると、このように考えております。  それから、経常収支黒字を縮減すべし、六十億ドルの黒に縮減をするという目標を立てておるが、その具体的な内容はどういうことかというお話でございますが、このことは、わが国の国際社会に対する責任問題として考えておるわけでございます。忠実にこれを実行いたしたいと考えておりますが、その具体的な方策としては、何といたしましても、内需主導型の経済運営ということ、それから東京ラウンド交渉への積極的取り組み、関税の前倒し引き下げ、残存輸入制限品目の割り当て枠の拡大、部分自由化などでございまして、とにかくこの問題は誠心誠意努力いたしていきたいと思っております。  そういう中で、農産物の自由化の問題があるわけであります。これは、御指摘もありましたが、農産物輸入につきましては、わが国農産物の需給動向を踏まえ、その他の各種要素も勘案いたしまして、わが国農業生産の健全な発展と調和のとれた形で行われることが重要でありますので、農産物輸入拡大の要請に対しましても、この方針を踏まえ、水田利用再編対策等の総合食糧政策の推進に支障を生じさせないことを基本として、慎重に対処してまいりたい、このように考えます。  わが国情を外国に認識させ、意思疎通を図る必要がある、そういう見地から、総理外交日程はどういうふうになっているかということでございますが、いま、はっきり私自身のことについて決まったことはありませんけれども、恐らく七月ごろ、先進主要工業国首脳会談が行われるのではあるまいか、その際には私も出席いたしたいと、このように考えております。なお、これは日米の両国でいま話し合っておりますが、それに先立ち、予算案が成立した後、国会のお許しがあるそういうタイミングにおきまして日米首脳会談を持ちたいと、かように考えておる次第でございます。  次に、わが国をめぐる極東の軍事情勢は一体どういうふうになっておるか、どういう判断をしているかというお話でございますが、大勢といたしまして、米ソを初め、核戦争及びそれに発展しかねない大規模の通常戦争、これを極力回避するという態度に出ておる、このように思うのであります。そういう大勢の中で、ソ連は、極東の海軍力の充実強化を目指しております。また、アメリカは、アジア請国に対する条約上の約束履行という基本姿勢を堅持しておる。また、朝鮮半島におきましては、米、中、ソ、日ともに、紛争が起こるということはこれを望まないという態度をとっておる。南北間の軍事的均衡が維持され、平和が続いておる、こういうような情勢と見ておるのでありまして、大規模な軍事的な変動が極東であるような感じは当面は持っておりませんです。  そういう間におきまして、わが国の防衛力をどういうふうに考えるかというお尋ねでございますが、これは、御承知のとおり、防衛計画の大綱、これに明らかにしておるところでございますが、昭和五十三年度予算案におきましては、この基本方針に基づきまして、防衛庁、自衛隊にとって多年の懸案とされておりました新対潜哨戒機、新戦闘機の整備に着手するなど、防衛力の質的充実、向上を中心といたしまして努力をするつもりでございます。今後とも、経済、財政事情、国の他の諸施策との均衡等を考慮しながら、必要な防衛力の整備、充実に努力をいたしてまいる所存でございます。  七%経済成長率の達成には自信あるのかと、こういうようなお話でございまするが、これはもとより自信があることでございます。財政は、とにかく史上異例の措置をとるくらいな積極的なものにいたしております。なお、民間におきましても、一般の設備投資が不振の状態ではありまするけれども、協力の体制が打ち出されておりまして、ことに電力投資のごときは、かなり巨額のものに上る見込みでございます。実質七%程度成長、これは内外の大きな期待がかかっておる問題でありますので、何とかしてこれを実現をいたしたい、かように考えております。  それから、住宅建設を促進せよ、そのためには宅地供給策を樹立せよ、そういうようなお話でございますが、お話のとおりでございます。良好な宅地供給、これは住宅対策上重要な問題でありますので、公的機関による宅地開発の推進、それから優良民間宅地開発に対する政策金融の拡充、また、関連公共公益施設の整備促進、それから土地譲渡益の重課制度の手直し、このようないろんな施策を推進いたしまして、御意見のごとき御要請にこたえていきたい、このように考えます。  それから、そういう際に地価の高騰ということがあるから、これに気をつけろというお話でございますが、これはもうもちろん気をつけてまいるつもりでございまして、国土利用計画法の運用等を通じまして遺憾なきを期してまいりたい、このように考えます。  野党から減税要求があるようだが、これについてどう考えるかということにつきましては、累次所見を申し上げておりますので、重ねて申し上げることを省略さしていただきます。  それから、財政の長期大幅な国債依存は国債費を累増させ、インフレをもたらす危険がある、国民に選択を求めるためにも経済の中期的見通しを示せというお話でございますが、これは、ただいまそのための準備をいたしております。五十年代前期五カ年計画を全部やり直すということでなくて、いま、前期五カ年計画の中で、五十一年、五十二年が過ぎまして、五十三年、五十四年、五十五年と残っております。その残った三カ年を、もうすでに経過した二カ年の実績を踏まえまして見直してみる、こういうことでございまして、その見直しの結果の試算、これを近くごらんに供したいと、かように考えております。財政につきましても同断でございます。  デノミネーションの問題にお触れになりましたが、これは全くお話のとおりに心得ておる次第でございます。  それから行政改革につきましては、これは昨年末の閣議決定で方針を決めておりますが、この国会にその方針に従いまして逐次法律案を提案をいたすことに相なる次第でございますので、何とぞ御協力のほどをお願い申し上げたい、このように存じます。  定年制問題につきましては、各省庁の職員の在職及び退職の現状、民間企業の現況等を十分に踏まえまして、その導入準備を進めたいと、かように考えておる次第でございます。  次に、地震の問題でございますが、これは先ほどもちょっと触れましたが、全国知事会から、地震予知のシステムを整備し、そして地震を予知された場合におきましては、地震予知を、これを発令といいますか、地震警報というか、そういう事前の通知をなすわけです。それに伴いまして一連地震に対するいろんな対策活動が始まるわけでありますが、その一連の問題点を法制化できないかというお話がありまして、政府におきまして、いまそれを検討いたしております。恐らく今国会中に御審議願えることになるんじゃあるまいか、さように考えておる次第でございます。  最後に、参議院の、特に全国区の選挙制度問題についてお触れになりましたが、私は、衆参両院を通じまして、この選挙制度の改革問題というのは、これは、綱紀を正すといいますか、政界の浄化というか、そういう角度から非常に重大な問題である、そのように考えております。まあ、ロッキード問題が再び起こらない、こういうためにも、やっぱり選挙に金がかかるというこの仕組み、これについて反省を要するというふうに考え、何とかそういう方向につきまして各党間で合意ができないものかということをお願いしておるのですが、特にその中で参議院の全国区、これは昨年すでに皆さん御自身が体験された問題なんで、金もかかるし、大変な殺人的な労力も要るわけで、それから制度としてあれが果たして妥当であるかどうかという問題もある。そういうことを考えますと、参議院の全国区は、もうとにかくこの国会ぐらいで好ましい方向への改革ができないかということを念願しておるわけです。  ただ、この選挙制度というものは、これはいわば土俵ですから、これは一党一派の立場で決めるわけにはいかぬ。これは各党間で皆さんが相談し合って決めるというほかない問題かと思うのですが、これがこの国会で始末がつかないで、また来国会ということになると、もうその次の参議院選挙が迫って来ちゃう。そういうようなことで、制度の改革が非常にむずかしくなりますので、この国会で何とかこの問題はぜひ決着をつけるようにしていただきたいということをお願い申し上げます。(拍手)    〔国務大臣園田直君登壇、拍手
  19. 園田直

    国務大臣(園田直君) お答えをいたします。  先般の外相定期会議では、私の方から始終主張したのに対してソ連の方はこれに強く反論はいたしません。ただ、領土問題は解決済みである、こういう態度を通しただけでございます。他の問題についても、それぞれ率直に話し合ったことは非常に率直でありまして、感情的にならずに、向こうも率直に話しておりました。したがいまして、次の平和条約締結交渉を、ソ連の外相がこちらへ来る番でありますから、年内にやりたいと、こう言いましたところ、年内という時期はちょっとまだということで、時期は言いませんでしたが、この交渉が継続されることは間違いないところであります。したがいまして、先般申し上げましたとおり、四島一括返還、平和条約を締結することが真に日本とソ連の安定した関係をつくる基礎であるという立場を堅持しながら国民の総意を背景にして堅実に粘り強く進めていくならば、領土返還の道は開けてくると確信をいたしております。  次に、OPECの問題でありますが、OPEC総会で先般石油の価格が凍結になった。これは国際経済危機の克服に努力をしておるわれわれには非常に有利であったと、こういう話をしましたところ、向こうの言い分は、今日石油の問題は、産油国とこれを買って使う国と対立した状態ではなくなった、両方がお互いに助け合って、限りあるこの資源をどのように有効に使うか、そしてまた、この資源がなくなった場合、特に産油国はどのようにして国づくりをするか、今日の世界経済不況にどのようにしてこのエネルギーという問題をやっていくか、こういう立場からお互いに助け合っていくべきである、こういう方針から価格は凍結をしたが、永久に凍結されると考えられては困る、逐次国際経済の変転に応じつつ、急激なる影響を与えないようにこれは上げることもあり得るし、なお生産についても、計画生産をしつつ、われわれは世界経済不況危機突破ということに協力するつもりであるという趣旨の方針があったわけであります。新聞に報じられたように、価格の引き上げは何十年までに何%上げるとか、あるいは何%の生産を減らすとか、そういう具体的な意思表示があったわけではございません。  なお、この際、中東問題についてのお話がありましたが、サダトの勇気ある行動によって、この契機により中東和平工作が始まっておるとおりであります。紆余曲折を経まして、現在行き詰まったようなかっこうではありますが、この地域では、この時期が最後のチャンスである、ここでわれわれが和平工作を失敗すればどのようなことになるかはかり知れない、こういう真剣な考え方から、それぞれの国で、表現の相違はありますけれども、一方はサダトの動きを見ながら、一方はアラブ諸国の足並みをそろえつつ、一方にはイスラエルが納得できる条件をつくってやろうとしつつ、非常に深刻な努力をいたしております。この地域には世界各国の要人が日々通過をして協議をいたしております。わが国に対しても、この和平工作に対する期待が寄せられたところであります。わが国は、この今日行われておる和平工作を支持し、わが国としての立場上応分の協力をする所存でございます。(拍手)    〔国務大臣村山達雄君登壇、拍手
  20. 村山達雄

    国務大臣(村山達雄君) 林田議員の私に対する第一の質問は、公共事業の消化をどのようにして促進するか、補助金の早期交付の決定とその手続の簡素化、あるいは地方財政対策はどのようにやっているか、縁故債の消化は大丈夫かと、こういうお話でございます。  公共投資が今度の景気回復の主題的な問題になっておりますので、この点は十分考慮をしているところでございます。第一に、何と申しましても、第二次補正予算、それから五十三年度予算を早く成立さしてもらう、これがもう何といっても第一でございます。続きまして、問題は、成立後すぐ着手する、この準備を進めていかなければなりません。設計の問題であるとか、あるいは個所づけの問題であるとか、こういったものをどんどん進めていかなければならぬと思っているのでございます。また、その執行に当たりましては、先ほど総理がおっしゃいましたように、途中の段階で部分的に、あるいは時期的に、資材の問題あるいは雇用の問題、あるいは土地価格の問題、こういう問題が出てまいりましょうから、関係省庁が随時機動的に連絡して、それで対処していく必要があろうと思います。それから第四番目には、何と申しましても実施部隊の大部分は地方団体でございますから、地方団体に対して協力を求めていくということが何より必要でございまして、そのために受け入れ体制を早くやっていただく。県会を早く開いてもらって意思決定をやって、そうして中央方面からの受けざらを早くつくっていただくということが、私は公共事業の消化の大きな前提になると思うのでございます。  先ほど申し上げました補助金交付の早期決定、あるいはその手続の簡略化、これも大事なことでございまして、いま具体的方策を考究中でございます。  それから、地方財政の方の手当ては大丈夫かという御心配でございますが、これは全力を挙げてやったわけでございます。ことしの財源不足額が三兆五百億ぐらいでございますが、そのうち財源対策債が一兆三千五百億でございます。残りは全部——ちょうど一兆七千億になりますが、それは全部交付税で処理することにいたしまして、そのうち千五百億は特例交付金で、残りの一兆五千五百億、これは運用部から借り入れることにしまして、その二分の一は、これは国が全部めんどうを見るということを法律で定めたのでございます。ついでのことでございますので、問題になっておりました五十年度、五十一年度に同じ問題がございます。これも二分の一は政府が持ちますということを、このときにあわせて決めさしていただいております。  それからなお、従来市町村の方が、やはり金利の関係で地方債の消化が非常に問題だという話でございますので、財源対策債の地方債分につきましては、全額政府資金で引き受けることにいたしました。また、人口急増地の義務教育施設については、根っこから一〇〇%全部、これは去年に引き続いてでございますが、運用部の金で引き受けますと、こういうことにしておるのでございまして、私は地方財政対策は十分いっていると思います。その結果といたしまして、実は縁故債の方は、地方債全体は昨年に比べまして、約六兆二千億でございますから、二三%ぐらい伸びるのでございますが、政府資金拡大、あるいは公営公庫資金拡大を通じまして、縁故債の部分は九%ぐらいしか伸びない。絶対額で言いましても、補正予算後の縁故債より絶対額で少なくなっているわけでございますから、御心配の縁故債の消化も現在の金融情勢から考えればまず御心配ないと、かよう申し上げて差し支えないかと思うのでございます。  それから第二点は、最近の国際収支の問題を通じましていろんな御心配をいただいたのでございますが、一つは、円建て外債の問題でございます。これはもちろん、日本の資本市場が国際化していくために、また国際的な資本交流を進めていくというために、また特に最近におきましては、国際収支の上から、長期資本収支の改善が必要でございます。そういった観点から、われわれも、この規模を広め、そのペースを早めるということでやっておりまして、先ほど林田議員が御指摘のとおり、昨年は一年度で六百二十億円でございましたが、今年度は十二月までで、すでに三千百四十億円に上っているわけでございます。政府は、引き続いてこの方向で努力してまいりたいと思います。  それから、金保有問題につきまして、今度、例の協定が期限切れになることに伴いまして中央銀行の買い入れの制限がはずれる、そうして日本の金保有は非常に少ないがどういう態度をとるのかと、こういうお話でございます。おっしゃるとおりに、日本の外貨準備のうちで金準備は約九億ドル程度、九億一千九百万ドルぐらいでございまして、各国の中では非常に少ないのは御指摘のとおりでございます。しかし、金の通貨制度の準備資産としての役割りは縮小すべきである、これは世界的の主張であり、特にわが国が主張しているわけでございますし、現にだんだん縮小していることも事実でございます。しかしながら、やはり金に対する考え方、あるいは金が準備資産として根強い力を持っておるという事実は、またこれ、否定すべくもないのでございます。わが国は大きな外貨を持っている国でございますし、また、及ぼす影響力の非常に大きな国柄を考えますと、今後の金保有政策については本当に微妙な問題でございますので、慎重に対処せざるを得ないと考えている次第でございます。  第三番目の問題としましては、公債発行が非常にふえて後年度負担がふえるんだが一体どうするつもりかと、こういうお尋ねでございます。おっしゃるとおりに、五十年度の後半から大量の国債が出てまいりまして、国債費の増高は大変なことになっているわけでございます。また、この前の私の財政演説でも申し上げましたとおり、これはこのまま放置しては大変であって、当然歳出について強い決意を持って削らざるを術ないし、また、一般的な租税の負担増は避けられないであろうと、こういうことを申し上げているわけでございます。すでに政府の税制調査会におきましても、この点に注意いたしまして、そして昨年の中期答申において、所得税かあるいは一般消費税の増税が避けられないのではなかろうかと、こういうことを言っております。また、政府におきましても、先ほど来総理からもお話し申し上げておりますように、五十七年度をめどに特例公債をゼロにするといたしますればどのような歳入歳出、どのようなあるいは租税負担増あるいは歳出カットになるであろうかと、いろいろな場合を想定して、そして国会の御審議を仰ぎ、それを通じまして国民各位に、いかに日本の財政の現状が厳しいかと、こういうことを御理解賜りたいと、かように思っている次第でございます。  次にお話しになりましたのは、公債の発行の弾力化と入札制の導入はどうかと、こういう話でございます。  弾力化の問題につきましては、すでに昨年の四回の発行を通じまして、御承知のように弾力化を実施しております。特に金融市場が緩和しておることに伴いまして、ほかの公社債との発行条件の幅を縮めておるのでございます。かつては、AA債との間で一・七%ぐらいの発行条件の利回りの差がございましたが、いまは〇、二%まで縮めてしまったわけでございますから、弾力化という問題に対しては相当こたえているだろうと思うのでございます。  入札制ができるかどうか——確かに諸外国におきましては、特に短期国債につきまして入札制をやっているところがございます。しかし、日本の現状を考えてみますと、公社債市場は確かに広がりつつありますが、まだ制度が未発達でございまして、十分なる広がりと深まりを持っておりません。また、入札制という問題もまだ日本ではなじまないのでございますので、それは十分一方において頭に置きながら、しかし、当分の間は、やはりいまシ団引受制度による弾力化でもって当分は対処せざるを得ないのではなかろうかと、かように思っておるところでございます。  それから、国債の値崩れ、クラウディングアウト、こういう問題、まあ同じ問題でございますが、非常に御心配いただきましたのでございますが、これだけ大量国債を発行いたしますと、おのずからその流通額も大きくなっておりますが、いままでのところ、国債の値崩れという事実はございません。今後も恐らく、私は、いまの資金需要から申し上げまして、ないであろうと思います。しかし、非常に景気回復が早くて、それで資金需要が出てきて、そのために金利が上がり、公債が下がってきて値崩れが来たらどうだと、こういう御質問だろうと思うのでございます。そういう場合には、まあ私たちは、日銀の通貨調節手段、オペレーションをやるのが一方にあるわけでございますが、それと相呼応いたしまして、必要があれば国債整理基金の資金を活用してでも、適当な値段に支えるということも考えてみてはどうであろうかと、こんなことをいま思っているわけでございます。クラウディングアウトの問題についても同様の問題でございます。  それから続いて、公定歩合の引き下げについてどう考えているか——これは日銀当局の所管事項でございまして、私から申し上げることが必ずしも適当とは思いませんが、あえて意見はどうかと、こう言いますと、私は、在庫投資が一巡し、そして設備投資の動意が出てこないときにこれをやるのはどんなものであろうか。やはり政策というものは、一つにタイムリーにやるべきではないだろうか。もう一つの問題は、当然、公定歩合の引き下げという問題は、いまの預金・貸し出しの金利差から言いまして、預金金利の引き下げの連動なくしては行い得ないことは自明であると思います。そういたしますと、その点は消費者物価との相関関係の問題でどうなるのか。確かに、消費者物価は最近落ちついてはおりますけれども、まだまだこれがずっと続くというところがまだ保証されておりません。こういった両面を見ながら考えていくべきではないかと思います。  最後に、金融制度の改革の構想と金利の自由化、弾力化のあれはどうかということでございます。これはいま金融制度調査会で金融制度の基本的な改正については審議が進んでおりますが、問題の方向は、要するに、金融機関の経営の効率化というものと、現代社会に求められた金融機関の公共性というもの、これをどのようにしてマッチさせるかというのが中心テーマでございまして、その方向でいま審議が行われておりますので、せっかくこの答申を待ってまいりたいと思います。それから、金利機能を働かすということは私は必要だと思うのでございますが、いますぐ自由化という点には幾多な問題が私はあると存ずるのでございまして、当分は弾力化で対処してまいりたいと思っております。  以上でございます。(拍手)    〔国務大臣河本敏夫君登壇、拍手
  21. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) まず、電力投資の問題についてお尋ねがございましたが、電力事情は、現状のまままいりますと、昭和五十五年、五十六年ごろには相当大幅な不足が見込まれます。それから、かつ景気対策上、この電力投資は非常に大きな役割りを果たしますので、五十三年度におきましては、電力投資をできるだけ増額しようということで、いま政府は取り組んでおります。ところが、立地問題、なかなかむずかしい問題がありますので、このためにはさらに一段と工夫と努力が必要であると考えておりますし、かつまた、この電力が、計画からいよいよ着工するまでの間に、直接間接の関係する法律が三十三もございます。そうして手続が六十六必要でありまして、非常に繁雑であります。でありますから、こういう問題につきましては内閣を挙げて協力していくということが必要でございます。そこで、去る二十一日には総合エネルギー対策閣僚会議を開いていただきまして、電力投資を促進するための一連の決定をしていただいたわけでございます。  次に、設備投資減税はどうかというお尋ねでございますが、今度御審議をしていただくことになっております設備投資減税、これは実は当初通産省が考えておりました内容とは若干変わっております。しかしながら、一年間の時限立法である、こういうことから、設備の繰り上げ実施あるいはまた、繰り延べ傾向がございますが、それの歯どめ、こういうことには相当な役割りを果たすと期待をしておるところでございます。  それから、エネルギーの十年計画、昨年の夏決定したが、相当な資金が必要ではあるが、それに対する対応いかんと、こういう御質問でございますが、エネルギー政策というものは、経済の安全保障という立場から、わが国の産業政策にとりましても最大の課題でございます。そこで、五十三年度以降十年間の間におよそ六十八兆円の投資をいたしまして、これを少し、物価上昇等もございますから、それを考慮いたしますと約百兆近い膨大な金額になりますか、これだけの投資が必要であるという結論に到達をいたしております。そのためには毎年相当な資金が必要であります。ただ、この投資のうち約一割、十兆円弱のものが公共的な資金であります。したがいまして、今後やはり、石油税の新設ということが認められましたけれども、なお引き続いて資金面での政府全体としての工夫が必要であると考えております。  それから構造不況業種問題につきましては、現在、産業政策といたしましては、一般的な景気対策のほかに、構造不況業種対策中小企業対策を並行して進めていくことが必要でありますが、特にこの構造不況業種の価格問題、それから生産調整問題、こういうことのほか、過剰設備をどう廃棄するか、こういう大きな課題がございます。今回法律を用意いたしまして、この過剰設備の廃棄に対しまして政府の方もお手伝いをしようということで、いま準備を進めておりますが、過剰設備の廃棄、ごく一部の業種、たとえばアルミのような業種では過剰設備の凍結、こういうことが必要でございます。また、それに伴う金融対策、こういうものも含めまして、一連の緊急対策を近く決定をする所存でございます。  また、円高に伴う中小企業の緊急対策でございますが、やはり貿易関係中小企業は非常に大きな影響を受けております。したがいまして、それに対する対策は緊急を必要といたします。近く国会に、これについての総合対策を含めました法案を用意をいたしまして提出をいたしますので、ぜひできるだけ早く通していただくようにお願いをしたいと存ずる次第でございます。  以上であります。(拍手)    〔国務大臣藤井勝志君登壇、拍手
  22. 藤井勝志

    国務大臣(藤井勝志君) 雇用拡大して、新しい分野を積極的に開拓して、幅広い雇用対策を進めるべきだという御指摘は、まさにそのとおりと考えております。今後、雇用対策拡大のためには、第二次産業はもちろんでありますが、第三次産業として、生活、消費、福祉、医療保険関係等、関連する多様な部門に積極的な雇用吸収を図ることが重要であると考えます。このために、これらの分野の労働者の円滑な転換を図るために、職業紹介体制の整備、職業訓練体制の充実、こういったことを積極的に進めると同時に、先ほどもお話し申し上げましたが、新たに中高年齢者を対象として雇用機会を増大をするための助成金制度を設けることといたしておるわけでございます。農業あるいは漁業関係者等の海外移住の問題や三全総の関係につきましては、関係当局と密接な連絡をとって進めていくつもりでございます。  今後の厳しい雇用情勢、御指摘のとおりでございまして、この難局を乗り切るためには、何といっても労使が一体どなってこれに当たらなければならない、対応しなきゃならぬと思う次第でありまして、このためには、政府といたしましては、産業労働懇話会、こういった場を使いまして、けさ方も会合をいたしたわけでございますけれども、労使の意見を聞きながら、雇用政策を積極的に推進してまいる所存でございます。特に、産業構造の変化に伴う雇用問題や、いわゆる高齢化社会に対応いたします定年延長の問題につきましては、労使が一体となってこれが前進を図らなければならぬと、このように考えて今後指導していくつもりでございます。  労働時間の問題につきましては、先ほどもお答えいたしましたが、「労働時間対策の進め方について」という中央労働基準審議会の建議を踏まえまして今後行政指導をいたしたいと、このように考える次第でございます。(拍手
  23. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  24. 加瀬完

    ○副議長(加瀬完君) 御異議ないと認めます。  本日は、これにて散会いたします。    午後一時十三分散会