○林田悠紀夫君 私は、自由民主党・自由
国民会議を代表し、当面の内外の重要施策に関して、
総理並びに関係閣僚に若干の質問を行うものであります。
一九七三年秋、石油ショックによって世界全体が転換期に入ってからすでに五年、あと二年で一九八〇年代を迎えようとしている新しい年頭に当たりまして、世界も
日本も、いまだ長い霧のトンネルを抜け出すことができません。われわれは、いま、大きな変動と、あすへの展望が容易に開けない不安の世代に直面しているのであります。
一九八〇年代あるいは九〇年代中には、石油採掘量は極限に達し、やがて下降線をたどっていき、その際、価格は高騰するのみならず、手に入れることがむずかしくなり、一方、核融合の利用や太陽エネルギーなどの新エネルギーの出現は、ようやく二十一世紀に日程に上ってくるであろうと言われております。
〔議長退席、副議長着席〕
その間、世界はゼロに近い
経済成長に甘んじ、失業の慢性化を見なければならないかもしれません。
昨年は、米国、ソ連、
日本、EC等主要諸国は、年初から相次いで経済水域二百海里を宣言し、日ソ漁業交渉のたびごとに、
わが国の漁業は危機を深めております。
わが国経済は、一万八千件に上る倒産企業を抱えて、かつてない不況にあえぎ、欧米への輸出は拒否反応を受け、発展途上国からは追い上げられ、判断を誤れば、一層の円高と各国の保護政策を誘発し、ついには自由
貿易体制そのものの崩壊にまで至るおそれすらあります。
われわれは、いま、前途に山積する難問題を抱えて、ここに第八十四国会を迎えました。
総理は、昨年は経済の年と規定し、不況の克服に総力を挙げ、高
成長経済から
安定成長経済への軟着陸を図ってこられました。今年は、GNP実質七%の
成長目標を掲げ、その実現に全力を傾け、
日本経済の五年越しの長いトンネルの出口をはっきりさせる年にしたいと決意を述べておられます。
いま、
政治は創意と指導性をもちまして、
国民に未来を開く戦略を示し、前進しなければなりません。この変動と危機の時代に、
総理はいかなる姿勢をもって
政治に臨み、また
日本の新しい時代への展望を持っておられるか、お伺いしたいのであります。
次に、現下の
わが国を取り巻く外交問題についてお伺いいたします。
園田外相は、新年早々に、延び延びになっていた日
ソ外相定期協議のため、厳寒のモスクワを訪れ、帰国するや、席の暖まるいとまもなく、中東諸国を訪問されました。
日本の国益のために東奔西走されている外相に敬意を表する次第であります。
日
ソ外相定期協議は、北方領土問題に対するソ連側の一方的な強硬態度によって、共同声明を発表するに至らなかったことは、まことに遺憾なことでありますが、
日本側のとった態度は当然であると思うのであります。しかしながら、日ソ間には二百海里時代の厳しい漁業問題やシベリアの経済協力問題もあり、北方領土の返還を図って平和条約を締結する日をわれわれは切望いたしております。
そこで、先般の協議において、一九七三年の日ソ首脳会談における、双方は第二次大戦のときからの未解決の諸問題を解決して平和条約を締結するという共同声明に関して、ソ連はいかなる認識を示したのでしょうか、また、今後の平和条約交渉の継続に影響はないのか、お伺いいたしたいのであります。
さらに、昨年のサダト・エジプト大統領のイスラエル訪問によって劇的な変化を見せた中東情勢についてどのような感触を持たれたか、とりあえず六カ月間石油の
値上げを見送りましたOPECの動きとともに、お伺いしたいのであります。
総理は、施政方針演説において、「日中
平和友好条約に関しては、交渉の機はようやく熟しつつあるものと判断されますので、さらに一段の努力を重ねる決意であります。」と述べておられます。
一九七二年九月二十九日、日中共同声明調印が行われてから、日中ともに諸般の情勢の推移を経まして、ここに五年以上経過いたしました。いかなる国とも
友好関係を維持促進することを基本とする
わが国といたしましては、双方の国益の増進を踏まえて、隣邦中国との条約を締結すべきものと思うのであります。ソ連は、これまで、反
覇権条項を含めた日中条約に対し、繰り返し攻撃を続けてまいりました。過般の日
ソ外相定期協議においても、コスイギン首相はこれに懸念を表明したけれども、外相の説明に理解を示し、注文をつけようとしなかったということでありますが、日中問題に対するソ連の態度はいかがであったのか、お伺いいたします。
わが国にとって、日ソ、日中の関係はともに最大の外交課題でありますが、複雑化した国際情勢の中にあって、
わが国が主体性を持った外交を貫き、日ソは日ソ、日中は日中という方針で進めることができるのか、お伺いしたいのであります。
次に、日中
平和友好条約の締結に当たって、
わが国で議論のある問題は、いまより二十七年前に
わが国を仮想敵国として締結された中ソ友好同盟条約であります。この条約について、中国側からは名存実亡と言われているとのことでありますが、
わが国民に明確にし得る公的な確認の方法があるのか、お尋ねいたしたいのであります。
また、台湾、韓国、ASEAN諸国等、アジアの国との関係にいかなる影響があると思っておられるのか、お伺いいたします。
昨年八月、
総理のASEAN諸国及びビルマの訪問は、同じアジアの民として、心と心の触れ合いをもって平和と繁栄をともに分かち合う運命共同体の観念をこれら諸国に呼び起こし、マニラにおける福田ドクトリンの発表は、アジアの歴史に新しい一ページを開いたものと言うことができます。この福田ドクトリンの精神、特に八月七日の
日本・ASEAN首脳共同声明の内容をいかに実行に移していくかは、東南アジア諸国はもちろん、広く世界の注目するところとなっております。
去る十二月に行われた東南アジア太平洋地域大使会議の提言は、
総理が強調された東南アジア諸
国民との相互理解と信頼関係の構築は、まずその第一歩として、宣明された政策を着実に実施していくことから始められねばならないと述べており、まさにそのとおりであると思うのであります。
総理は、「
政府開発援助を今後五年間に倍増以上に拡大し、物心両面にわたる協力の強化に努力する。」としておられますが、新年度、これらASEAN諸国への経済協力並びに文化協力及びASEAN諸国の輸出所得安定のための措置についていかに考えておられるか、お伺いしたいのであります。
戦後三十年、
日本人が気づかないうちに、いまや
わが国は世界の経済大国の一つに数えられるに至り、その行動は国際的に大きな影響を及ぼすがゆえに、国際社会における従来の他力本願的な姿勢、自己中心的発想は許されなくなりました。
わが国の輸出の増大は、世界の各国から自由化や関税等の撤廃を迫られるのみならず、米国、EC等の批判を招き、これら諸国においては保護貿易の機運が強まっております。
幸い、日米間につきましては、先般ストラウス通商特別代表との間で合意を見ることができ、当面の経済摩擦を回避し得た
政府の努力を多とするものであります。しかし、当面の事態を乗り切ったからといって、
国際収支の均衡の問題に決着がついたとは言えないのであります。米国の石油輸入などが急減して貿易収支の赤字が容易に改善されるとは思われず、一方、
わが国は、景気拡大のために最大の努力をすることはもちろんでありますが、閉鎖経済の象徴とみなされている牛肉やオレンジなどの
農産物の自由化や
産業構造の転換も
政治上なかなか容易ではないと思われます。また、三千億ドルものユーロダラーが自由に動き回っている国際金融市場の現状では、本格的な投機に対処することはきわめて困難であります。
このような国際情勢、経済環境の中で、
わが国が国際協調路線を進むためには、まず
国際収支の黒字幅の縮減を図るべきであり、
政府は新年度
経常収支の黒字は六十億ドルに縮小する
見通しになっておりますが、その実現にはいかなる具体的な方策を持っておられるのでしょうか。
また、
わが国農業は目下きわめて苦しい米の
生産調整を進めている段階にありますが、国際経済環境は、さきに述べましたように、
農産物の自由化を迫り、
わが国農業に多大の影響を与えようとしておりますが、これらの外圧に対していかに対処される方針であるか、お伺いいたします。
なお、
わが国は、欧米諸国とは言語、風習を異にするため、意思の疎通を欠き、
わが国に責任のない諸問題についてもスケープゴートに仕立てられる傾向があり、米国側においても、世界の基軸通貨ドルの防衛を真剣に実施すべきことが当然であります。
政府はもちろん、議会も
国民も、
日本の実情をよく他国に認識させ、同時に、他国のことを知る努力をしなければならぬことを痛感いたします。
総理は、
予算の成立後訪米して、カーター大統領と意思統一を図られるとのことでありますが、その御努力を期待し、このような国際的潮流に処して、
総理みずからの外交の日程をお伺いいたします。
次に、防衛問題について質問いたします。
最近、防衛問題について、
国民の理解と関心が深まり、建設的な論議が行われるようになりましたことは、まことに喜ばしいことであります。
わが国周辺においては、ソ連の軍事力の急速な増強、中ソの対立、北朝鮮の軍事境界線設定など、
わが国の安全にかかわる重要なテーマが山積しておりますが、
政府は現在の国際軍事情勢をどのように考えていられるのか、見解を伺いたいのであります。
わが党は、米国との集団安全保障体制を基調として国の安全を確保する政策を一貫して推進してまいり、今後ともこれを堅持すべきものと考えております。しかるに、最近の米国との関係においては、時に貿易をめぐる摩擦を生じ、
わが国の防衛分担責任についての批判があり、また、カーター政権発足以来、在韓米地上軍の撤退が進められるなどの変化が起こっております。これらは
わが国防衛上大いに注目しなければならない問題と思うのでありますが、
政府はどのように受けとめ、また、
わが国の防衛力整備についてどのような努力をしようとするのか、伺いたいのであります。
次に、当面の最大課題である経済問題についてお伺いいたします。
わが国経済の現状は、
政府のあらゆる努力にもかかわらず、百万人を超える
完全失業者を抱え、設備の稼働率は八五%と低迷し、繊維、平電炉、アルミ製錬等、
構造不況産業はもとより、さらに、急激な円高のもとで倒産する企業も続出しております。このときに当たって、
総理は、新年度の政策の目標を景気の回復に集中することとされ、
経済成長の目標を実質七%に置き、五十二年度の第二次補正
予算を含む十五カ月
予算を編成して、非常事態に処する思い切った財政措置を講ずることを判断されたのであります。
このような景気刺激を最優先とした積極型
予算にかかわらず、世上、七%の
経済成長の目標達成については疑問視する多くの意見があります。五十二年度は六・七%の目標を設定し、第一次補正
予算を組むことにより、その達成を図りましたが、十月以来の円の急上昇により、五・三%上昇の
見通しに変更されたわけであります。五十二年度の経済は輸出と公共投資で伸びることができましたが、新年度は、輸出が円高と内外の環境悪化で減退し、当面公共投資のみで伸ばさざるを得ない情勢にありますが、七%
成長についての
総理の自信のほどをお伺いしたいのであります。
以下、さらにやや詳細にわたって、
政府の意図する新年度の財政
経済運営の諸問題について若干の要望を申し上げるとともに、
政府の見解を確かめておきたいと思います。
第一点は、これだけ大規模な公共事業が円滑に消化されて即効的
景気対策の
役割りを果たし得る十分な体制が整備されているかどうかであります。
政府は、すでに公共事業等施行推進本部を設置され、その円滑な実施に努力中でありますが、第二次補正
予算の年度内消化の手順並びに新年度事業の設計及び発注、資材の需給計画、用地の買収、建設労働者の手当など、
予算執行に伴う必要事項がいかに進んでいるか、お伺いいたします。
また、公共事業の大部分は地方団体の手を通じて実施されるものであり、補助金の早期決定、補助申請手続の簡素化を図ることはもとより、
地方財政について万全の財政措置を講ずべきであると考えますが、どのように対処する所存でありましょうか。特に、公共事業等の拡大によって縁故地方債が著しく増加いたしますが、五十三年度の地方債資金対策は十分でありましょうか、消化の
見通しについてお伺いいたします。
第二点は、内需の喚起策として住宅建設にも重点を置いており、住宅が
国民生活のよりどころとしての生活基盤であるだけに、持ち家取得促進の画期的な住宅政策には見るべきものがうかがえます。しかしながら、住宅問題はすなわち土地問題と言われるように、いかに住宅に優遇措置をつけても、大都市圏における高い地価の実情では、容易に住宅建設に踏み切れないおそれがありますが、宅地供給にいかなる対策を講ずる所存でありましょうか。
また、一連の公共事業の積極的促進は、国土利用計画法の施行後鎮静化している地価へ当然影響を及ぼすことになると予想されますが、地価高騰防止のためにいかに対処する所存でありましょうか。
第三点は、昨年の通常国会において異例の
予算修正をしてまで実施された所得税減税について、このたびも行うべしという根強い議論があります。公共事業を行っても、その効果は特定の地域、特定の資材に限定され、また、ベースアップによる個人所得の増加がそんなに期待されない今日、内需の半分を占める
個人消費を刺激するには所得税減税を行うべきだという意見であります。
わが国におきましては、欧米と異なり、貯蓄率が二四%の高率に及ぶため、減税効果が十分あらわれず、むしろ公共事業をふやした方が減税よりも
景気回復には効果があると思われますし、この
予算案の
国債依存率は三二%、実質三七%に及んでいることを考えると、減税の代替財源が公債にならざるを得ない財政状態では、適当でないと思いますが、いかがでしょうか。
第四点は、民間企業設備投資は、五十二年度は対前年度わずかに〇・九%の伸びにすぎません。五十三年度は六・八%の伸びが見込まれており、特に電力等非製造業が一四%と大きく伸びることになっておりますが、電力等には立地問題があり、よほどの努力を必要とすると思われますが、いかがでしょう。
なお、民間設備投資を促進するため、今回
政府が投資減税に踏み切られたことは高く評価いたしますが、その対象は公害防止用設備等限定されており、減税額は約千二百億円が見込まれているにすぎません。これで冷え切った投資マインドに効果があると思われるのでしょうか。
次に、
エネルギー政策についてお伺いいたします。
資源の乏しい
わが国におきまして、
エネルギー政策は国の命運を決するものであり、新しい産業転換の基盤を形成するものと思います。新エネルギーの開発、省エネルギー、石油開発、石油備蓄等、今後のエネルギー対策には十年間に六十八兆円という膨大な資金が必要とされており、新年度から石油対策の抜本的推進を図るため石油税が新設されることになりましたが、これは資金難解決の一部にすぎません。今後のエネルギー対策の財源確保をいかにするのか、決意のほどをお伺いしたいのであります。
なお、設備投資どころではない
構造不況に悩んでいる業種、また、急激な円高によって深刻な打撃を受けている
中小企業に対して、
政府は新
年度予算でも相当な配慮をしておられますが、倒産防止のみならず、事業縮小、事業転換等、それぞれの業種ごとに特有の再建安定対策が必要であります。一般的な
景気対策によって全体として七%の
経済成長を目指したとしても、個別的には広範にわたる不況業種が存在するという
経済構造では、
国民経済全体としての設備投資意欲は盛り上がらず、雇用不安は解消せず、不況感は緩和されないのであります。
政府は、これら
構造不況業種及び
円高不況中小企業に対してどのような具体的政策を講ぜられるのか、お伺いいたします。
次に、
国際収支と外貨準備高についてお伺いいたします。
大幅な
経常収支の黒字を背景に、
わが国の外貨準備高は昨年十二月末で二百二十八億ドルとなり、米国を抜いて西独、サウジアラビアに次ぐものとなりました。五十三年度の
経常収支の黒字削減が
政府の目標どおりとしても、外貨準備高は引き続き累増するでありましょう。先日、
総理は、現在の為替管理を原則自由、例外規制に切りかえる旨を発表されましたが、まことに時宜を得た措置であります。外貨の流出促進策として、円建て外債は昨年一年間で三千二百六十億円起債されましたが、西独のマルク建て外債やスイスのフラン建て外債に比較して、まだ少ないのであります。今年はさらに増加が予想されておりますが、円建て外債発行についての
政府の考え方をお伺いいたします。
また、現在の外貨準備高の中で、金準備は九億ドル程度と思いますが、いかがでございましょうか。先進十一カ国とIMFの公的保有金の総量を増加させないことの合意の期間がこの一月末で切れると聞いておりますが、
日本として公的金保有を増加させる考えはないのか、お伺いいたします。
次に、
わが国経済の中期的な
見通しについてお伺いいたします。
五十三年度の
国債発行予定額は、第二次大戦前の国債依存度の高いときでも三〇%の依存率であったことを思うと、相当大幅なものであります。
政府は、昭和五十年代前期経済計画においては、計画期間内にできるだけ早く特例公債に依存しない状態に復帰することを意図しておられました。
わが国財政が引き続き長期にわたり大幅に公債に依存していく場合には、公債費負担の累増を来し、その健全性、弾力性を損うばかりでなく、
わが国経済に再びインフレ要因を持ち込むおそれがあります。もちろん、当面まず景気浮揚が第一、でありますし、
日本経済の中期的な
見通しを自信にあふれて作成することは不確実性が多過ぎますけれども、
政府としては、中期的に財政の計画を示した上で
国民の選択を求める姿勢が必要であります。高
成長時代が再び訪れるのならば、税の自然増収により借金を返済することができますが、
安定成長時代においては不可能であります。今後の中期的な経済の
見通しをいかに考えておられるのか、お伺いいたします。
次に、多額の公債が発行されるわけですから、公債管理政策について、以下数点お伺いいたします。
第一は、大量国債の発行に伴う国債消化と財政負担の後年度転嫁についてでありますが、その負担を一般消費税等新税の創設によって処理しようというのでありましょうか。
第二は、大量国債の発行に伴い、この際金利等発行条件に弾力性を持たせ、割り当て制から入札制への移行など、市場原理にゆだねるべきであると思うが、いかがでしょう。
第三は、公社債の流通市場を育成しなければなりませんが、今後大量国債が売却され、国債価格の値崩れが生じた場合、
政府、日銀はこれを買い支えるのかどうかであります。
第四は、
景気回復による産業資金需要が旺盛になった場合、クラウディングアウトの問題について
政府はどのような政策をとるのかであります。
次に、不況下の金融政策についてお伺いいたします。
長期不況下における貯蓄・投資の乖離によって金利は低下しており、銀行等金融機関の経営は競争が激化し、苦しくなりつつあります。こうした金融環境の変化のもとで、財政主導の内需拡大政策に対応して、民間投資を誘引するための公定歩合の引き下げを
政府は考えているのでしょうか。また、新しい金融環境下における銀行経営の
あり方として、金利の弾力化、自由化による市場競争原理を導入すべきであるという主張が行われておりますが、これからの金融制度改革について、基本的な構想をこの際お伺いいたします。
デノミネーションにつきましては、すでに何回も質問がありましたが、
総理は、デノミは経済が安定した場合に実行すべきであると述べておられます。まさにそのとおり、現在のように不況の進行中に断行すれば、さらに不況を深化させる原因となると思われますので、その時期については慎重に対処すべきであり、デノミの本質について十分
国民に周知徹底させ、デノミによる利得者の出ないよう、万全の策をとるべきであると思いますが、
総理の所信をお伺いいたします。
次に、深刻な社会問題となっている雇用不安の解消についてお伺いします。
現在、百万人の
完全失業者のほかに、企業が抱えている過剰雇用者は約二百万人に上ると言われております。これまでは、
経済成長を追求する政策がそのまま完全雇用達成の条件をつくり出していましたが、今後は、
構造不況、円高による設備の廃棄や事業の転換、引き続く低
成長経済の定着により、恒常的な失業不安が懸念されるととろであります。
政府は、これらの事態を打開するため、雇用保険法、雇用安定資金制度、特定不況業種離職者臨時措置法等を運用して、鋭意雇用の安定、求人開拓、職業訓練などの緊急対策に努めておられますが、現下の雇用不安は若年者から中高年齢者にまで及ぶだけに、既存の雇用政策の拡充程度の対処の仕方だけで、この深刻な雇用事情が緩和されるとは思われません。
そこで、当面の
雇用対策の基本は、申すまでもなく、七%
成長を目指して景気を早期に回復させることでありますが、将来にわたっての対策としては、雇用を拡大できる新しい分野を積極的に開拓することが急務であります。そのためには、まず公共サービス部門、たとえば、教育、情報サービス、
社会福祉サービスなどの第三次産業に雇用の吸収を促す産業政策の展開が必要ではないでしょうか。また、最近は低迷しておりますが、農漁業者や技術者の海外移住の促進を図るべきではないでしょうか。さらには、第三次全国総合開発計画を推進して、農業や沿岸漁業への人口の定住を進めるなど、幅広い
雇用対策を強力に進めることが肝要であると思いますが、
政府の所見をお伺いします。
それと同時に、将来の
産業構造の変化に伴う
雇用対策を初めとして、高齢化社会への
対応策としての定年制の延長、労働時間の短縮など、
政府・労・使が一体となって今後の雇用政策の
対応策を確立すべきだと思いますが、いかがでしょうか。
次に、行財政改革について伺います。
今日、
国家財政が大量の
国債発行に依存するという財政危機の中で、福祉対策、エネルギー問題を初めとする新たな各般の行政需要に対応するには、これまでの肥大化した行政組織に思い切ったメスを加え、
国民のニーズに合った行政を目指して、その抜本的な改革を推進し、今度こそはと期待する
国民の要請に十分にこたえるべきであります。今回の改革案では、中央省庁組織の簡素化とその再編は引き続き検討を進めるとなっておりますが、今後どのような方針でそれに対処するのか。また、地方出先機関、特殊法人等の整理合理化は第二次改革案以上に今後とも積極的に推進すべきものと思いますが、いかがでありましょうか。
この際、特に私が指摘したいのは、国家公務員の定年制の問題であります。現在、公務員の退職勧奨年齢は、上位官職以外については五十七歳から六十五歳まで、各省庁ばらばらであり、その勧奨決定方法も、根拠法規がないため、慣行、申し合わせ、通達と、各省庁まちまちであります。私は、民間との均衡を考慮して、退職勧奨の
あり方、職員の年齢構成の適正化など、定年制導入の準備のための具体的なプログラムを早急に整え、その実施を促進すべきだと存じますが、
総理のこれに対処する決意をお伺いいたします。
次に、
地震対策についてお伺いいたします。
先日の
伊豆大島近海地震は、地震についての
国民的関心を呼び起こし、将来地震が発生した場合、現行の防災体制で果たして十分なのか懸念されるところであります。現行の
災害対策関係法令は、災害発生後の措置を重点に置いておりますが、一昨年に東海地震説が出されて以来、関係地方公共団体から、地震の予知、警報、緊急措置等を規定した法律の制定の要請がなされております。
政府においては、地震予知がされた場合の震災発生前の対策を含めた抜本的な防災体制を確立する必要があると考えるものでありますが、
総理の御所見をお伺いいたします。
最後に、参議院の選挙制度についてお伺いいたします。
現行憲法においては、国会は衆参両院をもって構成され、衆議院は、
予算、条約、首班指名についての優位を認められ、参議院は、審議に慎重を期することによって衆議院の専制をチェックする機能が期待されているのであります。そのためには、参議院に慎重練熟の要素を盛り込む工夫がされ、特に全国区制度はそのあらわれであると思いますが、参議院の機能や選挙についての憲法制定当時の考え方はきわめて不徹底なものがありましたので、結局衆議院と同じ性格を持つようになりました。しかし、世論は、参議院について第二院としての良識の府を求めているのであります。いまや参議院の全国区選挙制度は改革されなければならぬ時期を迎えていると思いますが、
総理のお考えをお伺いしたいのであります。
以上をもちまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔
国務大臣福田赳夫君登壇、拍手〕