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1978-04-20 第84回国会 参議院 法務委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十日(木曜日)    午前十時十一分開会     —————————————    委員異動  四月十四日     辞任         補欠選任      内藤  功君     宮本 顕治君  四月十五日     辞任         補欠選任      玉置 和郎君     熊谷太三郎君  四月十九日     辞任         補欠選任      熊谷太三郎君     玉置 和郎君  四月二十日     辞任         補欠選任      玉置 和郎君     熊谷太三郎君      上條 勝久君     鈴木 正一君      宮本 顕治君     佐藤 昭夫君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         中尾 辰義君     理 事                 八木 一郎君                 山本 富雄君                 寺田 熊雄君                 宮崎 正義君     委 員                 大石 武一君                 鈴木 正一君                 藤川 一秋君                 丸茂 重貞君                 阿具根 登君                 秋山 長造君                 小谷  守君                 橋本  敦君                 円山 雅也君                 江田 五月君    国務大臣        法 務 大 臣  瀬戸山三男君    政府委員        法務大臣官房長  前田  宏君        法務省民事局長  香川 保一君        法務省刑事局長  伊藤 榮樹君        法務省矯正局長  石原 一彦君        運輸省航空局長  高橋 寿夫君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局刑事局長   岡垣  勲君    事務局側        常任委員会専門        員        奥村 俊光君    説明員        警察庁警備局警        備課長      若田 末人君    参考人        新東京国際空港        公団総裁     大塚  茂君        新東京国際空港        公団理事     井辻 憲一君        新東京国際空港        公団理事     角坂 仁忠君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○刑事補償法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (新東京国際空港治安等に関する件)     —————————————
  2. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十四日、内藤功君が委員辞任され、その補欠として宮本顕治君が選任されました。  また本日、玉置和郎君が委員辞任され、その補欠として熊谷太三郎君が選任されました。     —————————————
  3. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 刑事補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 橋本敦

    橋本敦君 私は刑事補償法の一部を改正する法律案につきまして、この法案に賛成するという立場ではありますが、若干の問題点について質問をさせていただきたいと思います。  まず最初にお伺いしたいのですが、いままで刑事補償法金額というのが昭和二十四年以降順次引き上げがなされてまいりました。それ自体は結構なことであるのですが、いままでの引き上げが大体どういう基本的な考え方基準に基づいてなされてきたのか、今日までその考え方基準としては一貫しているのかどうか、まずこの点についてお伺いをさせていただきたいと思います。
  5. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 昭和二十四年に現行刑事補償法制定されました際、補償金額算定基準日額が一日二百円以上四百円以下ということで発足したわけでございますが、その後昭和三十九年の改正で四百円以上千円以下、四十三年の改正で六百円以上千三百円以下、四十八年の改正で六百円以上二千二百円以下、昭和五十年の改正で八百円以上三千二百円以下というふうに改定されたわけでございますが、考えてみますと、この補償金算定基準日額と申しますものは、国が定型的な形で故意過失のいかんにかかわらず損害賠償のような趣旨で差し上げるわけでありまして、それを定型化するという点において、一体幾ら差し上げれば一般的に妥当するかという一つの問題はあるわけでございますが、それにしましても、経済事情変動というものを考慮しないというのは不合理であるわけでございます。したがいまして、ただいま申し上げました過去四回の改定並びに今回の御提案申し上げておる改正、いずれも前回の改正からの賃金及び物価変動というものを加味いたしまして、いわば賃金物価上昇率平均値にスライドさせて金額を改めていくという方式をとってまいったわけでございまして、今回も同様な方式でございます。
  6. 橋本敦

    橋本敦君 そういう方式で今回を見てみますと、提出されております資料第一表「賃金物価指数調」ということで提出をされておりますが、常用労働者賃金指数が一二九・九、物価指数が一二八・五、これの平均指数が一二九・二と、こういう関係で今度の金額が出てきておるということに結論としてはなるわけですね。
  7. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) そのとおりでございます。
  8. 橋本敦

    橋本敦君 それは幾らの引き上げを行うかということについての一つ基準ということで指数をおとりになっていくということになるのですが、私がここで一つ基本的な問題としてお尋ねしたいのは、この補償ということの性質が、いま局長がおっしゃいましたように損害賠償的な考え方に基づいているとしますと、本来の損害賠償ということになれば、その人が不当に勾留もしくは刑の執行を受けた期間得べかりし利益喪失と、それからそれに含まれるとすれば精神的苦痛身体的苦痛を受けた慰謝料ということが加味される、これが損害賠償ということの中身になろうかと思うのですね。  そういう考え方を、たとえば国家賠償という形で起こされた事件資料最高裁事務総局からいただいておりますが、この東京地裁の五十一年二月二十五日、民事二十八部の判決でもそういう考え方に立って原告に対して金員の支払いを命じている、こういうことになろうかと思うのです。だから、国家賠償という裁判を起こした場合には、裁判所はそういう考え方原告となった人本人の当時の得べかりし利益算定し、それに慰謝料を加えて、そして適当な損益相殺をやった上で結論を出す、いわゆる定型的な損害賠償判断という形でおやりになっていらっしゃる。これは裁判所間違いございませんか。
  9. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者岡垣勲君) おっしゃるとおりに、これは国家賠償法要件故意または過失によって違法に他人に損害を公務員が職務を行うに当たって加えたということでございまして、その損害不法行為による損害でございますから、ですから財産的損害とそれから慰謝料——精神的損害と、大きく二つに分けまして、そして財産的損害では、御指摘のとおりに、得べかりし利益喪失という面と、そのことがあったためにいろいろ出費しなければならなかった、たとえば弁護士費用だとかそういう積極的に出さなきゃならなかった損害と、その二つ、これが財産的損害となります。それから慰謝料はこれは精神的損害ということで、この両方を引っくるめて裁判所算定する、こういうことになるわけでございます。
  10. 橋本敦

    橋本敦君 それで、この判決では四十一年二月に逮捕されて、その損害賠償ということですが、逮捕当時この人の場合は一日千八百円の収入を得ていたという認定がなされているのですが、昭和四十一年、四十二年といいますと、いま刑事局長のお話によりますと、最高額が千円、四百円以上千円以下という、こういう基準補償がなされていた当時の事件に当たります。そういたしますと、国家賠償の場合、千八百円得べかりし利益喪失でそれ自体認定がされるわけですが、この場合は千円で打ち切りということで、国家賠償ということで言えばかなり低い額になる、こういうことになるわけです。  そこで考え方としては、いま局長がおっしゃったように、損害賠償的な性格ではあるけれども故意過失を問わず国が国の責任補償するというたてまえであるという関係から、本人原告となって訴訟を起こし、国家賠償法で言う不法行為要件に合致するかどうかという厳密な審査を経ないでも補償するという、こういうたてまえですから、必ずしも私は同一に論ずるのが正しいとは言いませんが、しかし、考えてみますと、不当に拘禁、拘束をされたという、そのことの償いというのは、これは本人にとって受けた苦痛から見ますと大変なものでありますから、完全に裁判所不法行為要件が認められたと同一とは申しませんが、考え方としてはそれに近い水準というものを維持するのが私は司法国民に対する責任のあり方の一つではないかと思うわけです。  そこで、局長に、古い資料で恐縮ですが、いまおっしゃった昭和二十四年に二百円から四百円までという補償額が決められていたときに、常用労働者の一日当たりの平均賃金というのはどれくらいであったのか。それから、昭和四十三年当時、千三百円が最高額のときにどれくらいであったのか。この点をちょっといまお手元資料がありますと数字で示していただきたいのです。
  11. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 刑事補償法施行当時の産業別常用労働者賃金平均日額は、これは昭和二十五年の数字でございますが、三百五十二円ということでございまして、昭和四十年という数字が的確なのがございませんが、昭和三十八年当時のこれは日雇い労務者賃金平均日額が六百二十六円という数字がいまとっさに見つかっておりますが、なおほかの数字につきまして御必要であれば調べてみます。
  12. 橋本敦

    橋本敦君 いまの三十八年のは日雇い労働者賃金指数で、これは非常に低いのです。常用労働者、いわゆる統一的に物を見るために、御指摘の二十五年は常用労働者平均賃金ですから、常用労働者平均賃金で四十年以降、わかっている年度の分があれば御指摘いただけますか。わかっている年度の分で結構です。
  13. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 現在、古いところの常用労働者平均賃金日額がちょっと出てまいりませんが、いま手元に出てまいりましたのは昭和四十七年以降でございますが、昭和四十七年が三千三百五十三円、四十八年が四千八十五円、四十九年が五千百六十六円、それから五十年が五千九百七円、それから五十一年が六千六百七十五円と、こういうことになっておるようでございます。
  14. 橋本敦

    橋本敦君 そこで、私が問題として指摘いたしますのは、随時改正をされました補償額最高額、これの推移と、それからいま御指摘をいただきました常用労働者平均賃金額推移、これを出発点から比べてみますと一つの問題があることが出てくるのです。つまり、昭和二十四年当時、最高額四百円、最低二百円ということで補償していた当時、二十五年には常用労働者賃金が三百五十二円、労働省の毎月動労統計調査総合報告書で調べますと、二十四年は常用労働者平均賃金が二百九十四円という数字がございます。つまり、ここで私が指摘をしたいのは、二十四年当時の補償考え方は二百円ないし四百円という幅を持っていましたが、この最高額の四百円というのは常用労働者平均賃金二百九十四円あるいは二十五年の三百五十二円より高い水準に置かれていたということですね。つまり、言いかえますと、常用労働者平均賃金額はあくまで平均賃金額にすぎませんから、幅を持たせて補償額を決めておきませんと、平均賃金額以上に収入のある人がたくさんいるわけで、そういう人もある程度補償を十分になそうという考え方からいきますと、この刑事補償法による補償の幅というのは、中間が大体常用労働者平均賃金額の前後をとっていくという考え方でいく一つ妥当性があると見るわけです。そういう意味では昭和二十四年は二百円ないし最高四百円ですから、常用労働者平均賃金が二百九十四円の場合あるいは三百五十二円の場合、大体そういう考え方ができる考え方としてのべースがあるわけですね。ところが、累次いま最初局長がおっしゃいました賃金指数変動物価指数変動率をずっと掛けていったということですが、その後三十九年から今日に至るまで刑事補償最高額より常用労働者平均賃金額の方がずっと上にいってしまった。たとえば五十二年でとってみますと、最高三千二百円の補償ですが、この五十二年のころにはすでに常用労働者平均賃金は六千円を超えているという現状になります。今回四千百円に上がりましても、五十二年の労働省統計で私の調査では七千三百二十一円ですから、その半分ぐらい低いところに抑えられてくる。だから、そもそもの出発点考え方に私は非常に合理性があると思うのですが、それから賃金指数物価指数変動を掛けていっているうちに、本来の妥当な補償基準内容というのが崩れて、逆に今度は非常に低い、労働者平均賃金額よりもはるかに低いところでしか補償しないことになってしまった、これはひとつ考え方として見直してみる問題点がここにあるのじゃないだろうか、私はこういうようにこの数字を見るわけです。この点についていままでの経過をどうごらんになっていらっしゃるか、こういう傾向にあることについて、これでよいという妥当的合理性があるとお考えなのだろうか、裁判所並びに法務省のそれぞれのお考え方をこの際伺っておきたいのです。
  15. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 実は昭和二十四年に二百円ないし四百円という日額を決めますときにいろいろな点を考慮したようでございますが、当時は御記憶かと思いますが、物価の騰貴が著しくて、一方賃金上昇がこれに件わないという状態でありましたために、非常にどの辺の額で決めるかを苦労したようでございますが、結局、証人日当とか鑑定人日当の戦前から戦後にかけての上昇率等を勘案いたしまして決めた、こういうことでございまして、必ずしも当時の常用労働者賃金日額を考慮に入れたというわけでもないようでございますが、それにいたしましても当時は常用労働者賃金平均額をはさむような状態上限下限が決まっておった。その後次第に賃金物価上昇スピードに追いついてくるようになった、そういう状態において先ほど御説明しましたように、賃金物価上昇率平均化したものを掛け合わせるというような形で基準額を改定してまいりましたために、確かに現在見てみますと、制定当時とは大分、常用労働者平均賃金日額との差異が生じておるということは否定できないわけでございます。したがいまして、ただいま御指摘いただきましたことは、私どもとしてももう一度この刑事補償金額基準日額を再検討してみる必要があるのじゃないかというふうな感じを持っておるわけでございますが、そういう感じをまさに御指摘になったと、こういうふうな気持ちで承っておるわけでございます。先般の当委員会でも、むしろ基準金額上限を取っ払ってはどうかというような御提案もございました。そういう点も含めまして、果たして今日的な状態でこの基準日額上限というものをどういうふうにするか、仮に上限を決めるとして、どの程度が妥当かということは私ども真剣に検討してみたいと、かように思います。
  16. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者岡垣勲君) 私どもの方といたしましても、ただいま法務省刑事局長がお述べになりました以上のことを別に考えているわけではございません。ただ、最近に至るまでのこの変動状況のグラフを見ておりまして、私いまちょっと思いついたことで失礼ではございますが申し上げますと、二十五年当時に決まったときには確かに平均賃金と同じようなところあるいはその上へ決まっておった、その額がずっと三十九年まで変わっておらないわけでございます。で、三十九年ごろに至りますと、もう差がついてきておる。これは何を意味するのであろうかということをちょっといま考えてみたわけでございますが、訴訟賠償を求めますと、やはり立証をいろいろやるのに時間がかかる、そうすると不法行為発生のときから結論が出るまでに期間がございまして、そのときの金額は妥当であっても、もらうときには非常に少なくなっておるということがインフレで醸成されるのではあるまいかということを考えるわけでございます。そういう状況のもとで行われる定額的な刑事補償というものと、それからある程度経済状態が安定したところで訴訟でも求められる場合の刑事補償というのとはあるいは多少ニュアンスが違うのかなというふうな感じは持ったわけでございますが、しかし基本的には先ほど法務省の方でお答えがあったとおりだと自分たち考えております。
  17. 橋本敦

    橋本敦君 いまの裁判所お答えは、これはちょっと私理論的に整理されたお答えではないという感じがいたしますよ。たとえば、インフレの予想をして損害賠償訴訟提起期間、それが現実に入るまでの考え方というのをとっても、これは社会情勢のいろいろな変動一般ということであり得るだけの話で、そこまで予想して金額を決めるとなりますと、今後経済情勢の見通しが福田さんのおっしゃるように落ちつくのか落ちつかないのか、これはもうまとまりつきませんからね。ちょっと理論的なお答えには私はならぬだろうと思う。  いずれにしても、たとえば裁判所が、現在の場合、これからは千円以上四千百円以内で御判断になるのですが、裁判所補償額決定判断としては、当然その人が当時得ていた収入の実際の実額ですね、これは重要な勘案事項としてお考えになるはずです。その場合に、四千百円以上の収入というのがたくさん私はあると思うのですよ、もう平均で七千円にまでなっているのですから。どうにも最高額認定してあげるということでもカバーできないわけですが、こういう幅がありますと、最高額認定というのはよっぽど高い収入の人でなければなかなか裁判所認定できないというように、そういう今度は抑制作用が働くのを私は心配するのです。そういうことを考えますと、いかにも現在四千百円に値上げするということでありますが、現在の労働者平均賃金が、私の五十二年の調査では七千三百二十一円ということですから、ほぼ半分ということになっている。逆に、言いかえますと、最高額をもらっても現在の日本の労働者平均の半分以下の人でなければ得べかりし利益自体——慰謝料ありませんよ、満足できないという現状になっている。これでは私は国家責任を持って不当に逮捕、勾留された人に対して補償をするという考え方としては余りに少な過ぎるのではないか。こういった関係で、いま局長もおっしゃったように、将来の問題としてはいままでの全部の経過に関連をして見直すと同時に、問題意識を持って国民に対して十分な補償をなし得るような、そういう考え方を今度は整理をして進めていくべきではないかというように私は思うのですが、大臣はいかがお考えでしょうか。
  18. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) この刑事補償の額を決めるについての経過は先ほどいろいろ質疑応答で出てきたようなことでございますが、いま橋本さんがおっしゃったように、上限の問題がやや少し低位に見られておるような傾向がずっときておる、実情と合わないような関係があらわれてきておることも事実でございます。ただこれを、上限を撤廃したらどうかという意見も前々からあるわけでございますが、しかしそれではまた裁判所で決定するとき非常に何と言いますか苦労をするといいますか、判定がしにくい場合もあるし、やはり上限下限の一応の基準を決めておかないと刑事補償がかえって適切に行われないという懸念も私はあると思うわけでございます。でありますから、その点は、撤廃ということはいかがかと思いますが、先ほど刑事局長お答えいたしましたように、もう一遍経過から、この法の精神からいって将来必ず検討しなければならない、かように考えております。
  19. 橋本敦

    橋本敦君 いま法務大臣がおっしゃいましたように、刑事局長あるいは裁判所の御意見も同様と伺いますが、ぜひ物価指数それだけで追っかけていくのじゃなくて、基本的にひとつ研究、改善の方向をお願いしておきたいと思います。この法律は不当に逮捕、勾留された人に対する賠償措置を講ずるということで、その面での国民権利人権保障という意味で大事な法律ですが、私は司法作用としてはもう一つ今度は刑事事件を起こして刑の執行を受ける、そういうことで刑務所に入っておる受刑者ですね、これの人権という問題ももう一つの側面としては刑事司法として大事だと思います。  かねがね明治時代にできた監獄法近代化する、監獄法改正ということが議論され、法務委員会でも私も他の委員質問をして、その促進方法務省に要望してまいりましたが、この監獄法改正問題は現在どういう方向でどういう段階にあるのか、矯正局長お越しいただきましたので、御説明願いたいと思います。
  20. 石原一彦

    政府委員石原一彦君) 監獄法明治四十一年の制定でございまして、本年でちょうど七十年になります。したがいまして内容形式ともにきわめて古いのでございまして、一言で監獄法改正方向を申し上げますれば、第一には近代化ということをしなきゃいかぬであろう、これは内容形式を含めてのことでございます。二番目には国際連合で被拘禁者最低基準ができておりますので、その最低基準に近づけるということが必要でございます。もっとも現行監獄法におきましても八〇%は最低基準に達しているということでございますが、これを国際的な視野に立ちましてもっと進めていきたいという点が第二番目でございます。三番目は、法律化というふうに言っておりますが、受刑者とそれから職員の側、あるいは被拘留者職員関係での権利義務関係を明らかにしようという点が簡単に申し上げますれば三つの要点でございます。  監獄法改正進捗状況でございますが、御承知のとおり昭和五十一年の三月二十七日に法制審議会に諮問いたしました。現在、監獄法改正部会におきまして大体月一回の見当で議論が進められております。なお、部会のほかに小委員会を設けまして細かい議論を検討するというふうな作業もしておりますが、これまでの大きな法典の場合には部会を一応やってそれから小委員会で検討するということでございましたが、小委員会部会とを並行してやっております。月一回の部会のほかに月二回小委員会を開くと。そのほかさらに細かい問題が出ましたときには起草委員会を別途少数の人員で構成いたしまして、順次答申案の原案をつくっていこうということで進めております。それで、監獄法改正の構想は四十七項目挙げたのでございますが、一応四十七項目の全部につきまして部会審議は終わりました。あと、巡閲、巡視、参観であるとか、監置処分であるとか、それから矯正組織について何か部会の御意見がないかとかいう一般的な事項をこの四月からの部会で始めました。私どもといたしましては、早期に監獄法改正部会の御答申をいただきまして、法制審議会の総会で決めていただきたいというふうに思っております。おおむねことしの秋ないし冬に入ります前には部会が終わるのではなかろうかというふうに考えております。
  21. 橋本敦

    橋本敦君 監獄法改正問題にはわれわれも議論をしたい幾つかの大きな重要な問題もありまして、そういう問題を法務委員会を通じても議論を進めていかなくちゃならぬと思っているのですが、それにしても、いま言った局長説明では大体でき上がるのがことしの暮れ近くになるということになりますと、法務省責任を持って法案として国会に出すという見込みはそうするとどれくらいになりますか。
  22. 石原一彦

    政府委員石原一彦君) 私ども事務当局の希望といたしましては、本年暮れから始まります通常国会にというふうに思ってはおりますが、相当な条文数にもなりますので、場合によりましては来年の暮れの通常国会には提出できるのではないかというふうに思っております。
  23. 橋本敦

    橋本敦君 大分まだ時間がかかりますが、できるだけ急いでお進めを願いたいということをこの際言っておきましょう。  法務大臣、国が国民との関係人権なり権利を保障するという立場で物事を考えますと、私は重要な三つの柱がある。その第一は、不当に逮捕、勾留された人に対する刑事補償といういま法案になっている問題、二番目は受刑者人権問題、もう一つ大事な問題がある。そのもう一つ残された非常に大きな問題が、国民自身が犯罪によって被害を受けた、それに対する犯罪による被害の補償、その問題だと私は思っております。この犯罪による被害の補償の問題については、さきに宮崎委員からも御指摘もありましたし、私も質問をしたこともあるのですが、この問題を急がなければ、国民との関係で、刑事司法が本当に国民人権を守るということで一つの重要な柱を欠いたまま走っていくことになる。私はこれは非常に急がねばならぬと、こう考えておりますが、この点について、現在の法務省の作業の進捗状況法務大臣考え方、まずこの点を明らかにしていただきたいと思います。
  24. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 作業の状況等については細かく刑事局長から御説明をさせることといたしますが、いまおっしゃったように、犯罪によって被害を受けた人、これは御承知のとおり、普通の論理でいきますと、不法な行為で他人に被害を加えたときには、損害を加えたときには、加害者がこれを担保する、補償するというのがたてまえでございますが、実際問題としては、しかしなかなかそれが実効が上がらない、上がらない場合が多い、こういう状態が御承知のとおりに各種の犯罪であるわけでございます。そこで、世界的に見ましても、いわゆる共同社会の中で、そういう犯罪によって損害を受けた、こういう人が非常に困難な事態になる、こういう場合は共同社会という意味で、社会連帯の考え方から、いわゆる国家がこれを取り上げて何らかの補償措置を講ずべきである、これは世界的にもそういう傾向がありますが、わが国としても、共同社会をモットーにしておる憲法のもとにおいて、やはりそういう制度をつくるべきであると、こういうことは国会等でも議論がありますし、われわれ法務省でもそういう考え方で進めておるわけでございます。ただ、細かいことは刑事局長から御説明いたしますが、そういう考え方は基本的に進めなけりゃならないという立場でいま検討をしておりますが、さてそれじゃいかなる犯罪によった場合のものをするか。すべてこれを国家でといっても、国民補償するわけでございますから、それが可能であるか、それが適当であるかという一つの問題があります。それは検討をしなきゃなりませんが、それと、先ほど刑事補償にもありましたが、被害者補償においてどの程度の補償をすべきか、これはまた相当重大な問題であります。国民負担、いわゆる国家財政の面、それから他の、国家補償という名前じゃありませんが、やはり社会連帯の考え方から各種の補償費があるわけでございますから、そういうものとのかね合いというものも当然考えなきゃならない。こういういろいろの問題点があります。そういう点については、重ねて事務当局から説明いたしますが、最もいま問題としていかにすべきかということは、そういう制度をつくってその被害者補償をどこで決定をするか、どの機関で決定をするか、既存の機関には適当なものがあるかどうか、まあいろいろ意見がありますけれども、また第三者的な機関をつくるか、こういう問題点があります。第三者的な機関をつくるといっても、いま行政改革という問題があるときに簡単にはそう考えられない。これまた国家財政にも関係があります。そういう点がありますので、鋭意検討しておりますが、いまおっしゃったように必要であるという観点に立っておりますから、できるだけ早く関係省庁とも意見を詰めて、また各方面の意見も参考にしながら、できるだけ早く決めたいと、これが基本的な考え方でございます。
  25. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 大臣のお答えを若干補足いたしますが、私ども事務当局でやっております作業は、基本的な作業はもうあらかた終わっておるわけでございます。全国的な犯罪被害者の実態調査、これも現在二回目をいま集計しようという段階でございますが、第一回目に実態調査をやりまして積み上げてみますと、これに対しましてすべて補償を差し上げるということになりますと、実に膨大な予算額を要するということになったわけでございまして、御承知のような現在の国の財政状況との対比におきまして、とうてい一挙に実現は困難であるというような感触を得ましたので、改めまして、本当にほうっておけない人からまず救うということで、いわゆる俗な言葉で言う芽を出すという程度の措置でもいまの国家財政の中ででもできないかということで再度実態調査を行ってきたわけでございまして、それが本年三月末日をもって締め切りになりますので、間もなく全国からその実態調査の結果が集まってくると思いますので、それに基づきまして所要額の積算を早急にいたしたいと、こういうふうに思っております。現在この問題につきまして私どもは一日も早く実現を図りたいということで、これは予算措置も調査に関して講じられておりまして、鋭意急いでおるわけでございますが、二つの解決すべき問題点が現在ございます。  一つは、財政事情との関係、さらにはこれに関連いたしまして国が行っております他の福祉政策、さらには各界各層かち御要望のある福祉政策、それとの調和をどのように図るかと。これはひとり法務省だけの考えで決まるわけではございません。政府全体として議論しなきゃならぬ問題でございます。  それからもう一つは、大臣がちょっとお触れになりましたが、だれが補償裁定をするかと、こういう実施機関の問題でございます。従来私どもは公明党が現在御提案になっておりますように、あるいは日弁連が御提案になっておりますように、第三者委員会を各都道府県につくり中央にこの不服審査を行う機関をつくるというような構想を考えたことがあるわけでございますが、行政簡素化という大方針がございますところからなかなかこの実現は困難があると。そこで、それでは既存の何らかの組織を使ってやれないかと。しかしながら、既存の組織といいましても捜査機関が裁定するというのは適当ではないのじゃないか。そういう意味で現在広く関係省庁と詰めに入っておりまして、私は、何しろそういう段階でございますから、ここではっきり申し上げるのを差し控えさせていただきたいと思いますが、見込みは相当明るいというようなところまで来ておりますので、何とか御期待にこたえるように努力をいたしたいと、こう思っております。
  26. 橋本敦

    橋本敦君 矯正局長裁判所、御多忙中お越しいただきましたが、質問はもうございませんのでお引き取りいただいて結構でございます。ありがとうございました。  いまの問題で若干私も質問をしたい要件があるのですが、法務省が実態調査を行っていらっしゃる、その実態調査の結果、まずどういうことがわかったかということなんです。つまり私は、被害者の皆さんの、言ってみれば大変な悲惨な実態がやっぱりよくわかったということが出発点になっていなければならないと思うのですが、その点の実情の把握はいかがですか。
  27. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 詳細な数字の点はちょっと御勘弁いただきますが、要するに、たとえば殺人の被害者になった方、この中の三割程度は肉親間とか近親間の出来事で殺されたというような方でありますからこれは別といたしまして、その余の方々の中には、新聞にもときどき報ぜられますように、全く犯人と縁もゆかりもなくて、行きずりの行為で殺されたという方々が相当多いわけでございまして、また、その殺される被害者となる方というのが往々にして働き盛りの方であると、そのために遺族の方が大変困っておって、犯罪の結果、生活保護を受けざるを得ないようになっておるというような実情が相当ございます。それからまた、命だけは取りとめたけれども、一生いわゆる廃疾になってしまって人間らしい生活が送れなくなってしまっておると、むしろ生きておられることが家族にとっては重荷になっておると、そういう方も相当おられるようでございます。それらのことを再度の実態調査で的確に数字で出せるような把握の仕方をしたいというのが第二回目の実態調査でございます。
  28. 橋本敦

    橋本敦君 大臣、お聞きのように、いままでの調査でも刑事局長がおっしゃるように、被害を受けた皆さんの本当に苦しい悲惨な実態というのはもう出てきているわけですね。私も大阪なら大阪で被害を受けた皆さんにいろいろ実情を伺って調査をやりました。私の調査したところでも、偶然の何の責任もない犯罪行為によって悲惨な状態に置かれていらっしゃる皆さんというのは本当に大変です。いまだに犯人がわからない、あるいは娘さんが暴行の上殺されたけれども、ついに犯人が挙がらないまま時効が来ちゃって、警察からその時効が来た命日のときに花を一花添えて参りに来られたけれども、まだ犯人はわからないし、何の補償もないということで、亡くなった娘さんを思いながら悲しんでいらっしゃる両親もたくさんある。あるいは息子さんが偶然けんかの仲裁に入って、それで暴力団風の男に刺し殺されてしまって、子供三人を抱えて、それこそ残された奥さん、おばあさんが三十数キロまでやせる思いで働き通して子供を育てていらっしゃる。まあ例は挙げれば数限りございませんが、本当に悲惨な状態にあるわけです。たとえば新聞でも問題になりましたが、警笛がうるさいということでまさに短銃で撃ち殺すというようなあんな事件まで起こってくる。私はやっぱりいまの近代国家としては国民が安心して暮らせるように犯罪を防止するという大きな国家の義務ということを考えますと、こういった問題に対する補償は急がなきゃならぬと思うのですね。しかも加害者がわからない場合がある上に、わかっても、大臣、御推察のように、加害者が暴力団員であったり、また無頼の徒であったりするために、損害賠償裁判を起こしてもとてもじゃないが取れないということがあるのです。たとえば大阪でも安部さんという方が損害賠償裁判を起こされて、四百八十万円の賠償裁判で四十九年訴訟を起こされて確定しておりますが、これも取る見込みがない。判決だけが紙のごとくここにあるという悲惨な状態であるわけです。何としてもこれは早く救済の手を差し伸べねばならぬ。  そこで大臣、私もう一つお話ししたいのは、交通事故がモータリゼーション激化の中で多発をいたしまして、そして交通遺児を守ろうという運動が大きく発展をいたしました。これはもう超党派的に発展をいたしました。世論になりました。いまでも、もっともっと母子家庭、交通遺児を大事にしなくちゃならぬという課題は残っております。ところがこの犯罪被害者ということになりますと、皆さん一生懸命運動なさっている方も多いのですけれども、何か国民から見て殺人の被害者になった、いろいろな被害者になったということになりますと、いわゆる交通遺児と違ってもっと暗いイメージが国民の中にありまして、世論として公に訴えていくというそういうムードがなかなかないのです。何にもこっちが悪くないのですね。悪くないのだけれども陰惨、悲惨な残虐な刑事事件の被害者になったというだけで冷たい目で世間から見られるという、こういう精神的苦痛も大変なんです。これは大臣もおわかりいただけると思うのですね。  そこで、先ほどのお話ですと二つのネックがあって、一つ国家財政の問題がある、二つ目には裁定機関をどうするかという問題があるということで詰めを急いでいると、こういうことですが、私は、国家財政という観点は、これは思い切って国会で論議をして、そして詰めていったらいいじゃないだろうかという気がするのですね。たとえば私の調査では全国で大体四百億近い金が罰金で国庫へ収納されていると見ている。これは一般会計に、国庫へ入ってしまいますからいろいろな使い方ということを特定するわけにまいりませんけれども、こういうやっぱり四百億近い金が国家財政に入っているという状態考えてみていいのじゃないか。いま刑事局長は、最初調査では財政措置は莫大な金が要ると、こうお話しになりましたが、莫大なだけではわかりませんが、局長どのくらいの金が要るというような調査の結果が出ておるのでしょうか。
  29. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 私どもの当初の構想を公表しておりませんので、これに基づいて申し上げるのが困難でありますので、仮にでございます、大変失礼でございますが、公明党案というのが現在出ております。これで推算いたしますと平年度で八百億円ぐらいになろうかと思います。ただ、過去二十年にさかのぼって適用するというような御提案でございますから、そうなりますと、初年度はもっと膨大な数字になります。大体そんなところでございます。
  30. 橋本敦

    橋本敦君 私ども共産党の法案要綱でいきますと、大体補償は自賠法並みの基準を参考とするということを考えております。遡及としては公明党さん、二十年とおっしゃいますけれども、二十年ということもいいでしょうが、合理的な範囲でやはり遡及する必要があると思っておりますが、大体私どもの案からいってもそれぐらいの金額になりますか。
  31. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) もう少し内輪になるかもしれませんが、大体似た金額だと思います。
  32. 橋本敦

    橋本敦君 これは各党案ということは、これはやっぱり一つ国民的な要求だというように見ていただいていいと思うのですね。それで犯罪の対象、つまり補償要件となる犯罪行為は現在法務省としてはどの範囲にお考えになって作業を進めていらっしゃいますか。
  33. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) たてまえとしては、私どもとしては故意による暴力事犯による被害者の方、これを全部お救いするのがたてまえだろうと思っております。しかしながら、初めからそれだけ全部に広げることは私ども政府部内の役人としての考えでは至難のわざに属するということで、とりあえずは亡くなられた方、あるいはそれに等しいような悲惨な生活を送っておられる方、こういう方々に一応限ってみてどのぐらいの予算規模になるか、こういうことを検討して、広げられるだけ広げたような形にしてはどうかということを考えております。
  34. 橋本敦

    橋本敦君 だから、基本的には殺人とかあるいは傷害、いまおっしゃった暴行も含めて、重大な被害を受けた場合の補償という考え方でいらっしやるように思いますが、もう一つ問題になるのは、どこまで遡及するのかしないのかというこの問題がありますね。これは私は理論的にはこの法案がもともともっと早くできてしかるべきものがおくれたということを考えますと、現に困っていらっしゃる方たちの現状を救うという点から言えば、その犯罪行為は過去に適当な期間遡及して補償しなければ、将来だけでは片手落ちであるという感じがいたします。この点について法務省考え方はどうなっておりますか。
  35. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 先ほど御説明申し上げました補償対象を決めますと、それをじっと見てまいりますことによりまして、おのずからどの程度の遡及が適当かということも出てこようかと思っておるわけでございます。たとえば遡及するとしても、何年間遡及して適用するというような考え方もありましょうし、あるいは請求期間を一定の期間どうせ決めざるを得ないわけでございますが、当面の措置としてそれについての例外規定を設けるとか、いろいろな立法上の技術はございますけれども、何らかの方法で一応検討の対象にしております。
  36. 橋本敦

    橋本敦君 だから、その問題も検討の対象にしていただいておるということは、これはまあ結構でありますが、もう一つのネックである第三者機関を設けるか、裁定機関どうするか。これはいまの行政機構改革で官庁の縮小ということが問題になっておる折からもむずかしいと言いますが、これは私はそう膨大な人数を要する問題じゃない。私どもの党の要綱でも、中央犯罪被害補償委員会、これを頂点といたしまして地方にもつくるということでこれを予算化しても大したことはないと思っておりますが、しかし、国民のこういう被害を救う上で本当に必要な機関であるということになれば、これはやっぱり国の責任で設置すべきだと思うのですね。  そこで、もう時間がまいりましたのですが、大臣にいま法務省が殺人、重傷害を含め一定の遡及も考慮しながら早急に、局長の言葉によれば近い時期に見通しは明るいということでお進めいただいていると、こういうことですが、何としても被害者の皆さんの悲惨な実態がもう法務省でわかり始めておるわけですから、それを基準にして、財政処置その他のネックということは、これは財政処置の問題ですから、一たん法律をつくりますと、これはもう基本的な法律になりますので、思い切って抜本的なよい犯罪被害補償法をつくるというたてまえで決意を持ってお進めいただきたいということを一点大臣に申し上げておきたい。  それからもう一つは、この問題は法務省が内々にどういう基準でどうするかということじゃなくて、いま言った調査結果も当委員会資料としてお出しいただく。法務省考え方、これもできるだけ早く骨子はここの法務委員会議論できるようにお出しいただいて、みんなで議論してよいものをつくろうじゃないかと、こういう姿勢で進めていただきたい、早急にこのことを進めていただきたいということをお願いして、いまの二点について大臣の所信を承って私の質問を終わります。
  37. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) この考え方は先ほど申し上げたとおりでございますが、非常に高度な理想的なものをつくりたいという気持ちはありますけれども、しかし、やはり国民の財政を預かっておる政府の立場といたしますと、やっぱり諸般の状況考えて案をつくらなければならぬこともまた当然だと思います。そういう調査状況、実態等が明らかになりましたら、皆さんの意見を聞く機会をつくりたいと思いますが、各方面の意見を聞き、これはやはり国民の合意といいますか、当然のことでございますから、そう理想論ばかりでもいかないことも御理解願いながら、実態に合うようなものにしていきたい、かように考えております。
  38. 橋本敦

    橋本敦君 いまのような方針で鋭意努力していただいて、次の通常国会にはもう法務省案をお出しいただくということぐらいはお約束いただきたいと思うのですが、いかがですか。
  39. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) そういう気持ちでおるわけでございます。
  40. 橋本敦

    橋本敦君 終わります。
  41. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  43. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) この際、委員異動について御報告をいたします。  本日、宮本顕治君及び上條勝久君が委員辞任され、その補欠として佐藤昭夫君及び鈴木正一君が選任されました。     —————————————
  44. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  刑事補償法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  45. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  46. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  47. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 次に、参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  検察及び裁判運営等に関する調査のため、本日、参考人として新東京国際空港公団総裁大塚茂君、同理事井辻憲一君及び角坂仁忠君の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  49. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  50. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 公団の総裁、大変御苦労様です。それでは、これから公団総裁に対してお尋ねをいたしたいと思います。  成田空港の建設につきましては、大変いろいろマスコミその他をにぎやかしております。立法などにも大変大きな影響を与えておるわけであります。この問題では、反対する国民の中心はやはり周辺の農民諸君でありますけれども、農民諸君の説得という努力が足りなかったのではないかと、話し合いが不十分ではなかったかという点が各方面から指摘せられております。歴代の総裁が何をおいても直接農民と対話をするということ、その納得を得るための努力をすること、それが最も必要なことであると思うのですけれども、過去におきまして、現総裁も含めまして、歴代の総裁が直接農民を集合させて、土地の売り渡しその他、空港の建設に関する協力を求める話し合いをなさったことがあるのでしょうか。その点をお伺いしたいのですが。
  51. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 空港公団は御承知のように四十一年七月末に発足をいたしたわけでございますが、四十一年の十一月には地元に地権者の四つの団体が成立をいたしております。この成立した四つの地権者の団体と千葉県知事あるいは成田その他の関係市町村長の協力を得まして、総裁みずから積極的に地元の方々と話し合いを進めまして、その結果が昭和四十三年の四月にこの地権者の四団体と代替地の配分あるいは土地の価格等について合意に達したわけでございまして、その間には何遍も団体の代表の方あるいは農民の方とお話し合いをいたしたようでございます。その後も個別に折衝を重ねてまいりまして、四十五年末までには事業用地の約八六%を合意によって取得をいたしたわけでございます。四十六年に御承知のように代執行をめぐります大きな騒動がございまして、それ以後は団体的な折衝、話し合いということは困難になりましたが、部落別あるいは個人別にいろいろ接触をいたしまして、私の代になりましてからも、たとえば岩山部落の方々とお会いをするというようなことをいたしまして、その結果、現時点におきます未取得地は約四十ヘクタール弱というように減ってまいったというのが実情でございます。
  52. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうしますと、現総裁を含めて過去においても歴代の総裁が直接農民と団体的にも個人的にも話し合いを現実にしているわけですね。これ、もう一遍確認します。
  53. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) さようでございます。
  54. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これはいま参考人として御出席になっている総裁、あなたね、総裁はもう何回ぐらい話し合いなさったのでしょうか。
  55. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 私は数回でございまして、わりあいに少ないと申しますのは、四十六年以降表向きな話し合いが不可能になりまして、先ほど申し上げましたように、個人別あるいは部落別に内密に話し合うということで、なかなか話し合いの機会が得られませんから、回数としては私は非常に少ないのではありますが、やってはまいりました。
  56. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 その話し合いというのは、場所はどういうところでなさったのでしょうか。
  57. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 私が岩山の方々とお会いをしたのは、最初は成田市内の北総会館というところで、岩山部落の代表六人とある人のあっせんでひそかにお会いをしたというのが一回でございます。それからその方々が私の部屋へ、実はこっそり東京にお見えになったことが一回ございます。それから最後に、話をまとめる一番最後の段階で、これは空港内の公団の事務所で、時は晩でございました、夜でございましたけれども、農民全部の方と私が会いまして、最後の調印をした。たとえて言えばこんなふうなことでございます。
  58. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 四十六年以降は話し合いが不可能になったといいますのは、現在のあの反対同盟の諸君等との話し合いが不可能になったと、そう伺っていいのでしょうか。
  59. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 反対同盟に所属をしておる農民の方々との話し合いが非常にむずかしくなったということでございます。反対同盟は御承知のようにあくまで廃港というたてまえをとっておりますので、反対同盟に所属する農民の方は表向きわれわれと条件的な話し合いというようなことはできないというたてまえになっておりますし、われわれと話し合ったということがわかりますと非常な迷惑がかかるし、危険もあるというふうにわれわれは聞いておりますけれども、われわれと話し合うということは、絶対秘密でないとやらないというのが実情でございます。
  60. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 その反対同盟所属の農民の人ですね、たとえば委員長している戸村さんとかあるいは副委員長の石橋さんとか、そういう人も過去においては歴代の総裁と話し合いをしたことがあると伺っていいのですか。
  61. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 戸村氏とは何か一度ぐらいは会ったようですが、余りないようでございます。
  62. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それは戸村氏とは一度会ったようで、それ以外はないというのは、戸村さんだけという意味でしょうか。それから反対同盟に所属しているほかの農民とも話し合いをしたことはその程度だということでしょうか。
  63. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 私が先ほど申し上げました歴代総裁が何遍か会っておるというのは、反対同盟に所属する農民の方々とお会いをしておるということでございまして、反対同盟を代表する人と正式な話し合いというようなことはほとんど行われていないというのが実情でございます。
  64. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いま総裁は一度ぐらいは会ったようだということで、現在は不可能だというのですけれども、今回の事件、成田の騒擾的な事件が起きまして、NHKその他がいろいろテレビでそういう人々の話を聞く、あるいは各新聞社がそういう人々の意見を聞くというものを見聞いたしますと、話し合いを必ずしも拒否していないようにも受け取れるのですけれども、これはもう廃港一本やりだから話し合いにならないのだということでなくて、やはり話し合いをするべく、まあ総裁が直接出かけていくこともいいでしょうし、来るように呼びかけるということもいいでしょうし、どちらでもいいのですから、そういう努力をやってみるというお気持ちにはなられないでしょうか。
  65. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) まあ率直に申しまして、戸村一作氏はもう新左翼系の職業的な活動家といいますか、運動家と私は考えておりまして、この方と空港反対運動そのものについての話し合いをしてもまず効果はなかろうというふうに考えまして、私どもとしては農民の方々とお話し合いをすると、こういう立場でいままで来たわけでございます。しかし、その戸村一作氏が応ずるということでございますれば別にこちらがそれを忌避するものではございません。
  66. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 私のお尋ねしたのも新左翼の活動家と話をしたらどうかということをお尋ねしているわけじゃないのです。反対同盟所属の農民諸君と積極的な話し合いの場をつくるように総裁が御努力なさるお気持ちはないかということなんで、話し合いを拒む気持ちはないという消極的なことでなくて、あなたが積極的にその話し合いの場をつくるように乗り出す、そういうお気持ちはないでしょうか。
  67. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) それは時期を見てひとつやりたいというふうに考えております。
  68. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 時期を見てやりたいというのは、結局どういう意味でしょうか。よくわかりませんが、そういう話し合いができるようになったらやるという程度のことなんでしょうか。ちょっとよくわかりません。もう一度おっしゃってください。
  69. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) すでに反対同盟との関係というのは、公団と反対同盟という関係をもうすでに越えて、御承知のようにいま政府べース等で進められておりますので、それとの関係を見ながら公団総裁公団総裁としての努力をしていきたいと、こういうふうに考えております。
  70. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 なるほど、もうすでに公団を越えて政府べースの状況になってしまっているということですか。しかし、新国際空港公団法によりますと、空港の設置、維持というのも直接の責任者というのはやっぱり空港公団になっていますね。政府はそれを監督する立場でしょう。だから、直接の責任者はやっぱり総裁ですね。私がなぜこんなことを言うかといいますと、私もかつて自治体の首長をしておりましたときに、もうそれは成田空港から比べれば恐らく何十分の一のような小さな空港でしょうけれども、初めは反対が激しくてそれはもう取りつく島がないわけです。県の方はだれも相手にされない、行っても話し合いができないと市の方へ来ましたから私が行って、それはもう初めはこてんこてんにたたかれちゃうわけです。もう話し合いどころじゃない、要するにしかられに行くようなことで、それを何回かやっているうちに自然に話し合いができるようになったわけでね。それは行ってもしかられるでしょう、何回かは。相手にされないかもしれない。しかし、それをやっぱり突破しないと話し合いなんというのはできないので、こっちが大きな立場で話し合いの場をつくりませんと、向こうが来るのを待っているということではもう永久に話し合いができないわけです。だから私は、総裁が最初に出かけていったってそれは相手にされないでしょうし、しかられるだけかもしれないけれども、しかしやっぱりそういうつらい仕事を上の者が率先してやらないと、こんな困難な仕事は打解できないと思うからお話ししているわけです。どうでしょうか。
  71. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) お気持ちはよくわかりますので、私もひとつ私なりの努力をいたしたいというふうに考えております。
  72. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それではその御努力を刮目してお待ちすることにしましょう。  それでは、過去において完成してしまった第一期の工事分の用地というのは全部自由な売買契約によって取得したもので、収用によったものは全然ないと伺っていいのでしょうか。
  73. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 大部分は自由取得でございますが、収用によったものが少しございます。土地収用法によりまして収用裁決を受けました土地が三・一ヘクタールございまして、そのうち代執行で取得したものが〇・六ヘクタールでございます。
  74. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 代執行を行いましたのが有名なあれでしょうか、第一要塞ですか、あの土地ですか。
  75. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 代執行を行いましたのは、四十六年に二回行っておりますが、一坪運動地と団結小屋だけでございます。
  76. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 空港公団として把握していらっしゃる現在の三里塚芝山連合空港反対同盟、これが空港建設になぜ反対しているのかという反対の理由を述べていただきたいのですが、その反対理由というものを掌握しないと打開のきっかけがつかめません。ですから、総裁が把握していらっしゃる反対同盟の反対理由というものは何なのかおっしゃっていただきたい。
  77. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 反対同盟とそれに所属をいたしております農民とは必ずしも一致をしていないというふうに私ども考えておりますが、反対同盟としては、御承知のように、あくまで成田空港を廃港に追い込むのだという立場でございます。そして、もうすでに反権力、反体制運動の一つの目標として成田空港問題を取り上げておるというふうに私は見ております。ただ、それに所属しておる農民が全部そういう考え方かということになりますと、私はこれは非常に違う。農民の方々は、これにもいろいろその反対同盟そのものの考え方に同調しておる方も若干おられると思いますが、反対同盟の大部分の方というのは、要するに自分の従来やってきた農業をできりゃ継続したい、生活に大きな変化をもたらすようなことはできるだけ避けたいというお考えが一番強いのじゃなかろうか。したがって、できりゃこのまま自分で持っておる土地を耕して従来どおり生活を続けていきたい、しかしそれがもし不可能な場合には同程度の代替地等を得て従来の生活を続けられるような将来の生活設計というものを持ちたい、こういう御希望の方が相当おられるというふうに私ども考えております。
  78. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 確かに現象的にはいまはもう廃港に追い込むというような目標を掲げておるのかもしれませんけれども、ただなぜ反対するか、反対の理由がやっぱりその根底にあるわけですね。その問題はいま総裁が後段でおっしゃったように、いまの土地で農業を継続したいと、もしそれができなければ同程度の代替地を得て生活を維持したいということにあるというふうに把握していらっしゃるというように承ったのですが、それは全くそのとおりだと思いますね。私どもはあちこちで飛行場の問題だけじゃありません。自衛隊の演習用地に反対する農民諸君などと接触してみますと、一に平穏に農業を継続したいというのが根底にあるようですね。ですからどうしてもそこでできなければ同程度の代替地を得たいというのが反対の基本にあるようです。ですから成田の場合も同程度の代替地を完全に国が取得して提供すれば今日の事態は起きてないわけです。そのお金を惜しんだり、その何分の一かの代替地しか与えないという、そういう不徹底な対策をとるものですから、そのときにやっておけば要したであろう費用の何百倍あるいは何千倍の費用をいまかけなければどうしようもないということになっているので、これは一に行政の怠慢というか、それ以外に原因を求め得ないと私は考えているのですが、いまでもたとえば農業を継続したい、同程度の代替地を得たいと考えている農民が反対同盟の中にあるのだという、そういう御認識を持っておられるならば、これは国の監督官庁の協力を得て、それをやっぱり少なくも公団としてはおやりになるべきじゃないでしょうか。そうじゃなくてそれをやらずにおいて強権で抑えつけて、ともかく開港するのだ、あるいは拡張するのだというのでは本末転倒じゃないでしょうか。いかがですか。
  79. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) いかにも同規模の農業を継続するような代替地のお世話を公団でやってこなかったようなお話でございますが、決してそういうことはございませんで、他団としては過去においてもそういう努力をいたしてまいりましたし、いままで買収した農家の方々には面積一対一で代替地を差し上げたところもございます。それから、特に価格の高い、いい土地を御希望になった方には、非常に希望の多い土地については、いわゆる基準配分といいまして、提供された地面の何割かの土地だけしか差し上げない、そのほかはお金で差し上げたという場合もございます。そのお金で差し上げた部分で、率直に申しまして、最初のころの公団の買い上げ価格は当時の周辺の土地の倍以上の値段でございましたので、公団からお払いしたお金で同程度もしくはそれ以上の面積の土地を最初のころは買えたわけでございます。そのうちに値段が、急に周辺の地価が上がりましたので必ずしも——片方は土地収用法の事業認定で公団の買い上げ価格は抑えられておりますので、現在においてはその値段で同面積を買えるかというと、これは無理でございます。したがって、われわれとしてはできるだけ同面積程度の農地を代替地として差し上げるようにという努力を現在でもやっておりますし、そういう点で農民の方々との話し合いを進めておるというのが現在の状況でございます。
  80. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 きょうその農民の代表を呼ばなかったのは、これはちょっと私どもの方の多少配慮が足りなかったのかもしれませんが、これは新聞紙上で報道される限りでは、農民諸君の言い分は、実際の何分の一かの代替地しか提供を受けなかったということを言っているようですよ。いま総裁がおっしゃったように、買収の価格というものには一定の枠がはめられちゃうし、それで代替地を買おうと思うと代替地が高くなってきたというお話がありましたね。これは私も実は非常に経験があることで、国の河川用地の買収に当たりまして、百間川という、岡山の旭川という大きな川の洪水用の人工的な河川用地が買収になりまして、そのときも同じ問題を経験したのですが、国が買い上げる価格では、高くて農民が代替地が買えないわけですよ。それだから結局代替地が取得できないのでいつまでも話し合いができなかった。私ども、これは衆議院の代議士の先生方と一緒に協力して、結局農民を説得して話し合いをようやく三、四年前につけましたけれどもね。つけましたけれども、そういうことが私の経験からもよくわかるのですけれども、本当にあなた方はお買いになる土地と同程度の、そして同面積の代替地を御提供になったと断言できますか。
  81. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) そういう部分が相当ございます。それから、最近私が直接手がけてやりました岩山部落、これは十二戸が集団的に移転をしたわけでございますが、これについては九五%の面積を差し上げて、まあ五%だけ減歩になっておりますが、ほとんど従来と同じ程度の面積を差し上げております。
  82. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうして現在でも農民の説得のためには、農家が、農民の諸君が生きるために大体同程度の、そして同面積の代替地を提供する用意はおありでしょうか。
  83. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) そういう方針で私どもは努力をいたしております。
  84. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから、この間私どもが空港におじゃまをいたしまして、副総裁初め理事の方々の大変御配慮をいただいて中を視察いたしたのでありますが、そのとき副総裁のお話では、反対同盟所属農民のうちかなりの部分が内心は空港建設に賛成しているというようなお話も承ったような気がしますけれども、これはどういう根拠でそういう把握をしていらっしゃるのでしょうか。
  85. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) これは相手方のお立場がありますので具体的に申し上げかねますが、われわれとしては個人的あるいは部落単位でいろいろのルートで接触を図っております。その接触の過程において私どもが得た感じというものは、まあ空港建設に賛成というのはちょっと言葉が強いと思いますし、恐らく副総裁もそうはっきり賛成と申し上げたのではないと思いますが、要するに、条件によっては話し合いに応じまとめて移転をしたい、空港に用地を提供したいというようなお気持ちの方が相当おられるという私どもは受けとめ方をいたしておるわけでございます。
  86. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうといたしますと、これはかなり、いま総裁がお約束なさったように、話し合いをする決意であるとか、あるいは代替地を提供する方針であるとかいうことが非常に重要な問題になってきますから、それは先ほどのお約束を守っていただきたいと思うのです。  いま直接にそれじゃ反対同盟と話し合いを進めていくつもりがある、努力すると言うのですが、その具体的努力をどのようにしてこれから進めるかということは、いま直接お伺いするのは無理かもしれませんね。ただ、やっぱりそのためには具体的努力が必要ですからして、単にそういう決意だというのじゃなくて、そのための具体的な方策というものをいろいろみんなで協議して考えられて、それを一つ一つやっぱり実行に移していっていただきたいわけです。これはお約束していただけますか。
  87. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) われわれとしましては、先ほど申し上げました反対農民の方々の気持ちというものをある程度存じておるつもりでございますので、その線に沿った代替地の準備等に努力をいたしまして、極力話し合いを進めてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  88. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 次に、反対同盟所属農民に何か不法耕作地があるというようなこともこの間伺ったのですが、これはどの程度あるのでしょうか。
  89. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) これは季節によって御承知のように異なりまして、冬になるともうなくなってしまうということで、耕作の時期だけでございますが、昨年六月の調査をもとにして申し上げますと、現在または昨年どおりの不法耕作がことしの耕作期にも行われるということになりますと約五十九ヘクタールぐらいあるというふうに私ども考えております。
  90. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それは、ずっと過去から継続したものですか、新しいものですか。
  91. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 過去から継続したものが大部分でございまして、また年によって多少の異動があると思います。
  92. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 何か先般公団がそこに農薬をまいて耕作物がとれないようにしたというようなことも伺ったのですが、そういう事実があったのでしょうか。
  93. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) この不法耕作地の管理については、私どもとしては従来からいろいろやっておられると思われる方々に警告をするとか、あるいは直接お訪ねをしてやめていただきたいということを申し上げたり、あるいはその土地に警告板を立てまして、これは公団の土地ですから立ち入らないでくださいというようなことをやったり、いろいろやってきておるわけでございます。そういうふうなことをやっておる過程におきまして、不法耕作をされておる土地もあるし、されないで雑草の生い茂っている土地もございますので、この雑草が生い茂っているところはそのままほうっておきますと周辺の耕作地に悪影響を及ぼしますので、これには除草剤等をまいて草が生えないようにということをやっております。そのついでと言ってはおかしいのですが、それと同時に不法耕作をしておると認められる土地にも除草剤をまきまして、その周りをくいと鉄条網で囲ったという作業を第二期工事の区域内にある不法耕作地について行っております。
  94. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 これは総裁の気分はわかるのですけれども、やはり不法占拠地でも、長い間それが耕作しているということになりますと、直接自力救済といいますね、自分でそれを奪い返すというようなことは本質的にはいまの民事法体系に余りなじまないわけですね。やっぱり訴訟を提起して、そして国の助力を得て取り戻すというのがオーソドックスな方法でしょう。ですから、そういう方法でやることが望ましいわけですけれども民事訴訟の提起ということはなさらなかったのでしょうか。
  95. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 民事訴訟の提起で解決できる問題でございましたら私ども当然やるのでございますが、御承知のように、不法耕作というのは別にだれそれという名前をはっきりさして、そしてそこの占用とか使用を宣言をしてやるとか、あるいは自分たちでその土地を囲ってこの土地はおれが耕作するのだというようなことでおやりになるわけではないのでございまして、要するに空き地を勝手に耕作をして、その収穫が終わればもう自分は占有も使用もしていないというような状況になって、また翌年も時期が来ると耕すこともあるし、耕さぬでほかの土地をまた耕すこともあるというようなことで、相手方の特定ということが非常にむずかしいということと、占使用の状態が継続してずっときておるというものではございません。ですから、恐らく私どもが訴えを起こしますと、いや、おれは何も使っておらぬよと、こういうことになってそのまま放棄をされれば訴訟を起こしてみても問題にならないということになるような性質のものが不法耕作でございますので、民事訴訟によって解決をするということにはなじまぬ事案であるというふうに私ども考えております。
  96. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そういう関係は私どもも私人間の関係として非常に日常頻繁に起きているわけですよね。われわれもそういう所有者から訴えを受けてその不法占拠者を特定するのには大変苦労をするわけです。暴力団が占拠する場合もありますし、そういう場合でもそれは写真に撮るとか、あるいは直接行って確かめるとか、何らかの方法を講じて、そしてそれを特定していく努力をしながら、われわれは民事法秩序というものの維持に努めているわけですよね。だから、その耕作している人の写真を撮ったようなそういう努力をしたことがあるのですか、あるいはそれを直接職員が行って、耕作しているところを、あなたはだれだと言って確かめたり、あるいは種をまいているところを写真に撮るなり、行って制止するなり、そういうことをしているのでしょうか、写真がありますか。
  97. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) それはできるだけやっておりますが、とにかく公団が所有しておる土地は、第二期工事区域内と騒音地域内と合わせますとたしか八百ヘクタールぐらいございます。しかも、その土地が全部一カ所とか二カ所にまとまっておるのでなくて、大部分は、ことに騒音地域にある二百七十町歩ぐらいは非常にばらばらに散在をいたしております。しかも御承知のように、その辺はわれわれは無法地帯と称しておりますが、危険で公団職員が一人や二人ではとても近づけないという地域でございますので、そういうやり方にも非常に狭い限度があるというのが実情でございます。
  98. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 あなた方が行って農薬をまいたとか、あるいは囲いをしたということと、いまの総裁のお言葉とは少し矛盾するので、農薬をまいて回収ができるぐらいなところだったら必ずしも不法地帯でも無人地帯でもないわけで、ちょっとおかしいでしょう。だから私どもが聞いているところでは、何か特別立法にとかく頼ろう頼ろうとして、その状況を誇大に言って特別立法に頼ろうとする。そうして公団の職員としてなすべき努力をしないというふうな印象を受けざるを得ないのですよ。それはそこに行ってあなたはだれなんだと言って特定する努力をすると、あるいは写真を撮ると、そういう努力を重ねて、なおかつ、特定できなければこれはまた別だ。そういうことをせずに無人地帯だと言ってみたり、そうかと思うと行って農薬をまいたというし、はなはだ矛盾しているでしょう。だから、それは一つ一つ一挙にはできないでしょう、広大な面積だから。だけれども一つ一つやっぱりなしていくことをなして、不法占拠だと思うならば仮処分でもよろしいし、民事訴訟でもいいから、やっぱり民事法秩序というものを守っていくべきではないでしょうかね。どうしてもそれが不可能なんですか。
  99. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) おっしゃられること、ごもっともと思いますが、やはり実情の御認識が非常に、そう申し上げては失礼でございますが、甘いということだと思います。今回、農薬をまいた第二期地域というのも、これは工事用道路がようやくできまして、警察の警備がお願いできるというような状況になったからやれたわけでございまして、端的に申し上げますならば、警察の警備のもとに私どもは除草剤をまいたというのが実情でございます。
  100. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そう言われるなら、従来でも警察の警備を当然求め得たでしょう。なぜいままでそれじゃ警察の警備を求めてやらなかったのですか。
  101. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) それはやはり警備当局の御都合もありますし、何から何まで全部われわれ警備当局にお願いをせにゃいかぬというわけにもまいりませんし、もう一つは、一遍そういうことをやりましても道路のないようなところですと、結局後はなかなかそれの維持といいますか、管理が非常にむずかしいと、たとえば訴訟をいたしまして勝って、これは年数がかかりますが、われわれが一応占有権なり何なりを獲得したとしても、その後、その占有を続けるということが、先ほど申し上げましたような散在しておる場所等については非常に困難でございます。またすぐ同じようなことが繰り返して行われるという可能性が非常に強いわけでございまして、それらの事情等を考えながら、私どもの能力でできる範囲でやってまいったというのが実情でございます。
  102. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 何か理屈の闘いみたいになって私も不本意ですけれども、余り陳弁なさるので私の方もやっぱりお尋ねせざるを得ないのですが、過去において警備当局の支援を求めたにかかわらず、警備当局は援助してくれなかったというような実例があるのでしょうか。
  103. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) まあ求めてというよりも、その前に相談をいたしておりますので、求めて断られたというようなことはございません。
  104. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 あなたは、民事訴訟はそういう不法占拠に対して今後も起こすつもりはないとおっしゃるのでしょうか。
  105. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) できるところはやりたいと思いますが、なかなか手が回らぬというふうに考えております。
  106. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 はなはだ遺憾ですね。やっぱりありとあらゆる方法をとっていかなければ、しかもそれは合法的な手段をとっていかなければ、あなた方の任務を完全に果たしたことにならないのです。そうじゃないでしょうか。困難だ、困難だと言って——それはまた後に譲ります、余り時間をとってもいかぬから。  それから、第二期工事は農民との話し合いがつくまでは、私どもは行うべきではないと思うのですね。また、それはできると思う、あなた方がもう思い切って努力をしていけば話し合いはできると思いますが、あくまでも農民との話し合いのできるできないにかかわらず、第二期工事は推進するというお気持ちなんでしょうか、いかがでしょうか。
  107. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 私どもも第二期工事の中に残っております農民の土地につきましては、できるだけ話し合いでこれを解決をしていきたいというふうに考えております。ただ、御承知のように、成田空港はいろいろ横風用滑走路がないとか、あるいは予備の滑走路がないとか片肺空港じゃないかとか、欠陥空港じゃないかというようなことも言われておりまして、私どももそういう点も十分考えなければいけませんので、そういう状況等にらみ合わせながら公団のすでに所有しておる土地の上での工事というのはすでにある程度進めておりますが、これはできるだけ継続をしてまいりたいというふうに考えております。
  108. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それから五月二十日開港予定と聞いておりますが、これは農民との話し合いができてもできなくともやはり強行する、そういうお気持ちですか。
  109. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) これは政府でお決めをいただいたことでありますし、われわれとしては羽田の現状その他から見てぜひ五月二十日には開港したいというふうに考えております。
  110. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 それでは一応公団の総裁御苦労さんでした。これで終わります。  運輸省の航空局長にお尋ねしますが、局長はこれは直接空港を建設したり、管理したりというお立場ではありませんけれども、監督官庁ですね。歴代の運輸省の航空局長が直接地元農民と話し合いをしたことがあるのでしょうか。
  111. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 成田空港の建設段階の仕事は一応空港公団の仕事というふうに従来割り切っていたものでございますから、過去におきまして直接航空局長が現地に行きまして地元の農民の方と話し合ったということはないと記憶をいたしております。
  112. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 先般、NHKのテレビで私、非常に興味を持ったのです。これは鈴木さんというアナウンサーの人がおやりになった番組でしたけれども、運輸大臣が何か反対派農民との間で話し合いを進めるということを言っておられました。そうして過去において一度もやったことはないじゃないかという農民の代表の方のお話に対して、私が当時運輸大臣であったらなあということまでおっしゃったですね。お聞きになったでしょう。これはそういう何か農民との話し合いを進める具体的な計画がおありなんでしょうか。
  113. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 実は昨年の五月にA滑走路の南側の妨害鉄塔が一挙に倒れまして、そのときに政府、公団側の受けた印象は何かこれでもう開港が目前に迫ったという印象を一様に受けたわけでありますけれども、私はそのとき逆にもう一つの危惧を持ちました。妨害鉄塔の撤去によりまして確かに物理的な意味での開港の日は近づいたかもしれないけれども、このことによる逆の波及効果といいますか、そういったものが地元の反対農民の間に広がることによる各種の混乱あるいは予期し得ざる事態の発生、これはもう非常に心配だというふうに考えまして、一方におきまして、物理的な開港促進のためのいろいろな準備を進める一方、何とかして非公式にもせよ、そういうパイプをつくって話し合いをしたいというふうに思いまして、前田村大臣もそういう気持ちでおられたわけですが、大変残念なことに当時まだ反対同盟の姿勢が今日とまたもう一段当時は廃港一本やりというきわめて強い姿勢でございまして、なかなかしかるべき機会をつかむことができなかったということと、もう一つは、言いわけになるかもしれませんが、私ども政府としては公式に動く場合には、地元という場合はやはり第一義的には地元の地方公共団体であるというふうに考えまして、千葉県それから成田市、芝山町、これらから地元要望事項というものが約七十項目出ておりました。これを完全に約束し実現する方向で進めることがすなわち政府の公式な立場での地元に対する対策であると考えまして、このことに奔命いたしておりました。昨年の暮れぎりぎりまで実はこれにかかりまして、もう一つの非公式にせよパイプをつなぐということを思いながらも、言いわけになりますけれども、表芸の方で実は手いっぱいで、なかなか反対農民の人とパイプをつないで話をするということが実は実現できなかったということは大変残念であります。しかしながら、ことしに入りましていろいろ地元の反対農民の人たちとの間に入って御心配をくださる方も出てまいりました。全く非公式でございますが、福永運輸大臣にもある国会議員の方を仲介として地元の、反対農民じゃありませんけれども、反対農民とパイプのつながっている人が会われたことがございます。そして、そういった人たちの計画では、何とか三月の初めごろにでも運輸大臣と地元反対農民とを会わせようということでいろいろやっていたわけでありますけれども、残念ながらそのパイプが十分できず、そういった機会のないうちに二十六日の事態が起こったということでございまして、このことは私どももちろん大変遺憾なことでございますが、恐らくそうやって運輸大臣とのパイプをつなごうとした仲介者の方々、あるいは恐らく、私の想像でございますが、反対農民の方々もああいう事態になったことは残念だったと思ったと思うのであります。そういったところの私ども気持ちを受けまして、三・二六以後運輸大臣は積極的に地元と話し合いをしようじゃないかという姿勢を持たれまして、テレビの会見等でもそういう言葉があったわけでございますが、それ以後私たち現実にいろいろこのパイプを実は探っております。反対同盟もやはり立場がございますから、なかなか私どもと話をするということをすぐに公にすることについては向こうの方にも立場がございますので、そうまだ公にできておりませんけれども、事実上いろいろのルートを通じましていまパイプづくりをしているところでございます。それで、これが開港までにこのパイプがつながってそして政府の代表と反対同盟の代表とが話し合うというふうな場ができて、それで一挙に新しい方向ができるということは大変望ましいことでございますし、これに向かって努力をしているわけでございますけれども、遺憾ながら時間もかなり制約がございますし、やはり政府としても運輸省以外にも各省それぞれの立場もございますし、それらを全部集約して、そしてまた反対農民の中にも、これは農民の立場としてはあるいは一つのものがまとまりかけても支援学生、これらとの関係その他から果たして反対同盟が一本になって政府の代表と話し合うということになるかどうかという点についてはまだ今日確証はございませんが、私どもとしては何とか努力をしたいと思っております。それでつい数日前に地元で反対同盟が声明書を発表いたしました。先生方、新聞でごらんいただいたと思いますけれども、あの声明書の結論的なことは、話し合いをするにしても条件があるということで、たとえば開港を取りやめろとか、あるいは二期工事の凍結とか、あるいは新規立法をやめる、機動隊の撤去、いろいろなことが書いてございます。これらそれぞれが全部クリアにならなければ話し合いをしないというふうに書いてございますけれども、私どもといたしましては、そういったことはやはり反対同盟のたてまえ論としてはああいったことを中外に声明したい立場は一応理解できないことはない、しかしながら、内容につきましては私どもそれが全部クリアにならなければ話し合いしないということではこれ非常に硬直的なことではないだろうかと考えます。そこで私たちとしては、あの声明書に書いてあります各種の条件、この中でもいろいろ濃淡の度合いがあると思います。したがいまして、この向こうの言っている条件も、やはりわれわれパイプをつないで話し合いをするとすれば、それも含めた話し合いをしようじゃありませんか、こういう姿勢で話し合いをするというのがいいのではないかということでございまして、目下そういう努力をしております。ああいう声明が出てしまったので、これでもう政府と反対派は当分縁が切れたかというふうな見方も新聞に書いてある向きもございますけれども、私どもとしてはああいったことも含めてひとつ対話をしようということでいまいろいろ、今日もやはりそういう努力を続けているわけでございます。
  114. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 局長にお尋ねしますが、午後一時からじゃいけませんでしょうか。ちょっと休憩してよろしいでしょうか。できたらそういうふうにお願いしたいのですが。
  115. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 結構でございます。
  116. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 午前の質疑はこの程度といたします。  午後一時まで休憩をいたします。    午後零時六分休憩      —————・—————    午後一時五分開会
  117. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き本調査に関する質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  118. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 航空局長にお尋ねをいたしましたところ、大変誠意のある御答弁いただきましたけれども、なお二、三お尋ねをしたいと思うのですが、これはいろいろなルートを通じて接触を保ち、話し合いの場をつくることに努力していらっしゃるということでありました。その成功を望むわけですけれども、話し合いを進めるためにはやっぱり農民が納得し得る条件、これが必要だと思います。先ほどもちょっとお話がありましたけれども、先方の唱えている条件の中には、運輸大臣といえども受け入れがたいものがあるだろうと私想像いたしますけれども、しかし農民が最も希望する基本的な条件、これはやはり平穏に農業を営むことができるという、その問題に関連してお考えをいただかなきゃいけませんわね。そういうことで、あなたがお考えになっていらっしゃる具体的な条件、これをお話しいただければ、お話しいただくと。それから局長御自身もやっぱりしかられ役にならなきゃいけませんよね。部下任せでなくして、局長もやはり現地に行って接触をし、ときにはどなられてすごすご帰るようなことがあるかもしれません。それはそのつかさつかさに当たっていらっしゃる方の宿命ともいうべきもので、これはまあやむを得ないと思うのですが、そういう御努力をなさる御決意があるかどうか。そういう点をお尋ねしたいと思うのです。
  119. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) まず第一の方のお尋ねにつきましてでございますが、反対派農民の方たち、特に第二期工事用地内に土地を持っておられる方々の切実な願いというのは、やはりいまの土地でできれば農業を続けたいということであると思います。しかしながら、一方空港をつくる方の側から言いますと、どうしてもそこの土地が欲しいと、こうなるわけでございます。でありますれば、先ほど午前中にも公団総裁とのやりとりを伺っておりましたわけでございますが、やはり農民の、たとえ場所は移っても同じような条件で農業が継続できるような代替地のお世話をするということが必要だと思うのであります、何といってもやはり地元の農民が安心して農業ができるような基盤をつくるということが話し合いの基本であると思います。このことは多少理想的に過ぎるかもしれませんけれども、私の申し上げることは。単に買収される農民に対する代替地の提供ということだけにとどまらず、できれば成田空港の周辺というものを何と申しますか、新しい意味での近代的な農業の用地、農業地帯として前向きにつくっていくということがあっていいのじゃないだろうかと。御承知のようにあそこは南京豆とかスイカとかがとれる、かなり農業収入の高い農地でございましたし、これから東京の人口もだんだん千葉県方面にいっぱい定住してまいりますし、また空港関連の消費も高まっていけば高級野菜などの栽培、そういったものも新しい農業の対象だろう、あるいは高級果実等、そういったものを含めて、何と申しますか成田空港の周辺というのを新しい北総台地の農業地帯としてつくっていく。これについては、いまここで第二期工事の用地などの関連で対象になっている方だけではなくて、従来第一期の対象ですでにもう解決済みの人たちも含めまして、地域として新しい農業問題への取り組みということが大事なのじゃないだろうかというふうに考えまして、実は農林省へも相談に行きましたところが、農林省も大変乗り気でございまして、そういうことでひとつ新しい青写真を描いて農民の人たちに夢を与えることに骨を折ろうじゃないかということも言ってくれておりますので、そういうふうな明るい将来の展望というものを前の方に掲げながら、当面どうしましょうかというミクロの話を詰めなきゃいけないと思っているわけでございます。  実は私ども、ここで第二のお尋ねに対するお答えになるわけでございますが、もちろん私、現地へ何遍でも足を運ぶことにやぶさかでございません。ただ、私たち大阪空港の騒音問題でやはり地元といろいろおつき合いしている経験がございますが、大阪空港の騒音問題は先生方も御承知のようにすでに一審、二審で国が敗けまして、現在最高裁に上告しているところでございまして、五十年の秋に上告をしたわけでありますが、上告は上告といたしまして、私どもとしてはやはり騒音によって被害を受ける激甚地の町づくりということを考えまして、訴訟団の人たちとも話し合いをいたしまして、こういった人たちを激甚地からできるだけやはり騒音のないところへ移転をしていただく、そしてその移転跡に新しい空港と調和がとれた町づくりをする、そういうことのもとに現地の市当局あるいは訴訟団、調停団の方々とたびたびお会いいたしております。私も現地へ何度も行っております。しかしながら、こういう私どもと現地の訴訟団あるいは調停団の人たちと話し合いをするということが実現するまでにはずいぶん長い間のやはり事前の話し合いが、準備工作と申しますか、ございまして、もちろん運輸省からも担当の者がもう毎週のように出かけ、そして現地でもやはり市役所を中心に働きが行われ、また現地の市議会等の中でもそういった方々が生まれ、そうしまして、やはりこのパイプを通じて話をすれば全部こうふっといくという、やはり頼むに足るパイプをみっけるということが大変むずかしい問題でありまして、そういった意味では、成田の問題につきましては、かなり急ごしらえのパイプづくりでございますから、短期間のうちに大阪空港でいまやっておりますような対話の場ができるということが、そう私簡単に楽観いたしておりませんけれども、楽観できないだけに、このことはしかし急がなきゃいけない。特に五月二十日開港ということにつきましては、やはり政府として決めたことでございまして、これを再び延ばすということは、これはもう国際信用の点からもできないことでございます。そういうしかしせっぱ詰まったものがあればあるだけ、地元の反対派農民の方々とは何としてでも話し合いを始めたい、そして開港ということを一方で見切り発車をしながら話し合いをするのじゃなくて、開港ということについてはどうしても日本の国としてやはり簡単に延ばすわけにはいきませんという事情もよくお話をしました上で対話の開始をして、そしてああいう暴力的な事件が起こらないような基盤なり環境をつくった上で、あるいはつくりながら開港をしていきたいというのが念願でありまして、そのためには私ども労はいといませんし、またぼろくそに言われることも覚悟いたしております。努力を続けるつもりでございます。
  120. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ただいまの局長の御答弁で大体最後に私がお尋ねしようとする問題のお答えも出ちゃったわけですが、そうすると、最善を尽くして農民との話し合いのルートを求めて、そういう舞台を設定するために努力をするけれども、その努力の成果が必ずしも五月二十日までに実るとは限らない、そういう場合でも五月二十日の開港というものはやっぱり避けることができない、国際信用の上からこれだけはどうしてもやっぱりやらざるを得ない、こういう結論になるわけですね。
  121. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 結論はそういうことでございますけれども、決して私ども見切り発車とか強行開港ということに受け取られないように、そこの段取りはやはりきちんとする必要があると思います。
  122. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 第二期工事の開始といいますか、これはやはり農民との話し合いをして、その納得を得てやるという基本方針はおとりになった方がいいと思うのですよ。その方針がどうしても実らないという場合は、これはまあそういう場合もないとは言い切れませんけれども、しかし基本的立場としては、B、C滑走路のための第二期工事を農民との話し合いができないうちは強行しないという基本的立場といいますか、それはお持ちになった方がいいと思いますが、その点いかがでしょうか。
  123. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 私ども空港公団を監督する立場どいたしますれば、二期工事は一日も早く着手をしたいわけでございますけれども、やはり二期工事のやり方について現地にたくさんの意見があるわけでございまして、やはり農民の方の一番の問題はそこのところだと思います。したがいまして、二期工事のやり方につきましては十分話し合いをしていくということが必要であると思います。
  124. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 農民と話し合いができるまでは絶対着手しないとお約束はいま局長のお立場としてできないだろうと思いますけれども、これはできるだけいまお話があったような方針で進めていただきたい。というのは、これは強行した場合、話し合いのパイプができない場合は、いかにそれは警備を強化いたしましても、向こうもそれに応じてやっぱり戦法をだんだんと高めていって、それはイタチごっこでやはり何らかの方法で妨害というのは続くと思うのですね。それをまた防ごうとする、あるいはその妨害によって起きた結果のしりぬぐいというようなことのために、いま話し合いをし円満な妥結に達するために必要とする努力、あるいはそのための財政的な負担、それよりもそれは何十倍もの負担が恐らくそういう妨害工作が永続した場合には必要になるでしょう。それを考えますと、いま財政負担を惜しんでもいけないし、努力も惜しんではいけないと私は思うのです。だからこういうことをしつこく申し上げておるわけです。そして農民が納得して妥結に達すれば、これは俗に言う過激派の諸君といえども、これはいろいろな妨害工作をするといったって、もともとは農民を助けるためにやっていると言うのだから、彼らといえどもそれはヒューマニスティックな精神でやっているわけで、破壊のために破壊をしているのじゃないと彼らは言うわけでしょう。だから農民が納得すれば彼らの活躍の舞台というのはなくなっちゃうのだから、そこをやはりお考えいただきたいと思うのです。  それから、いまの羽田空港の沖合いが東京都のごみ捨て場になって、それがようやく水面下に姿をあらわしつつある。東京都はそれを完全に埋め立てをしてそれを羽田国際空港の拡張用地として活用できないものかという希望を持っているというふうに聞いておるわけです。それをまた弁護する人もあるようです。羽田がいい、第一騒音の問題が起きないじゃないか、それから都心とのアクセスですか、それも成田よりは数段まさるじゃないかというような弁護論もあるわけです。それからもう一つは、羽田を第二の国際空港にしたらどうか、つまりその沖合いの埋立地を活用して第二の国際空港にしたらどうかという説もあるようですね。これについては局長としてはどういうふうにお考えですか。
  125. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) いま御指摘のように、羽田空港の沖合いに産業廃棄物で埋め立てをいたしております。この面積はいまの羽田空港よりも一割多い面積でございまして、東京都知事から私どもに対しましては、現在の羽田空港をそっくりそのまま埋立地の方に移せと、こういう御要望がございました。これは主として東京都としては騒音問題からでございまして、滑走路をできるだけ陸地から離すということのために、埋立地の一番海側に滑走路をつくって、いまと同じ規模で移転をしたらどうかというのが、これがおおむね東京都の考え方であるわけでございますが、まだこれに対して私たち正式に東京都に対してお答えに行っていない段階なので、ここで見解を申し上げるのは東京都に対しては少し不義理になるかもしれませんが、私どもとしては、東京都の言われるような同規模移転ということでは、やはり将来の東京を中心とする国内航空輸送需要にどんなに低く見積もっても同規模では足らないだろうと考えています。なるほど成田に国際線が移ればいまの羽田の処理能力は三分の一の余裕が出ますけれども、そのぐらいの余裕は恐らく五年か七年すればいっぱいになってしまって再び過密空港になるというおそれがございますので、私どもは東京都に対しましては沖合いにいく場合には現在の羽田空港がそっくりいくのじゃなくて、並行滑走路をもう一本つくらせてほしいというお願いをしようと実は思っているわけであります。まだこれは行っておりませんけれども。いまの羽田空港が滑走路二本でありまして、これぶっ違いになっております。横風用が一本ありますから合計二本でありますが、それを合計三本にしていただきたい、並行滑走路二本と横風用滑走路と合計三本にしていただきたいと、こういうお願いを実はしに行かなければいけないと思っておるところでございますが、それではついでのことにもうちょっと沖へ埋め立てて——もうちょっとというか、もっとうんと埋め立てて大規模な拡張を羽田沖に展開いたしまして、成田空港なんかをのみ込めるようなものはできないだろうかということが議論の対象になっているわけであります。新聞等にもそういう御意見がいろいろ出ております。私たちもこの点について検討しなかったわけではございません。  その検討の結果を申し上げますと、羽田空港の沖に大規模な空港をつくるということは、さっき私が申し上げました並行滑走路二本というもの以上につくることはむずかしいという結論が出ているわけであります。なぜかと申しますと、羽田はやはり西側とそれから北側、西は大田区、品川区等の住宅地、工業地帯でありますし、北側はやはり東京都の豊洲埠頭とかそういった埠頭がたくさんありますし、下町があります。そこで羽田空港というところはどんなに東側の海の方に空港を出しましても、そこを発着する飛行機というのは西側とか北側には行かれないわけです。発着する飛行機はやはり東側の海を通って房総の方にいくとか、そういった方向をとらなきゃならない。そうなりますと何本つくりましても、飛び立った飛行機がみんな北の方に向かって豊洲埠頭の手前ぐらいで右へ回らなければならない。そうなりますと、そこでみんな集まってしまって、飛行機と飛行機の間がとれなくなる、あるいはぶつかる危険がある、そういうふうなことがございまして、たくさんの滑走路をつくることは困難でありまして、安全上は並行滑走路二本というのが限界であります。そういたしますと、現在の羽田の年間十七万回という処理能力が七万回程度ふえて二十四万回ぐらいになるのが限度である、こう考えるわけであります。もちろん羽田の沖の場合にはそうであります。  それではもっと東京湾のど真ん中につくったらどうか、大阪の関西新空港だって何か海上空港をつくるという話があるじゃないかと、こういうふうなお話もまた別にあるわけでありますけれども、関西空港をつくる場所と東京湾とでは、まず湾の太さが違いまして、東京湾の方が細うございます。そして、東京湾のど真ん中に仮に大空港をつくった場合には、技術上はできると思うのであります。埋め立てにせよあるいは浮かぶ空港にせよ、できると思うのであります。しかし最大の問題は、東京湾を出入りしている船の航路を恐らく半分以上阻害しなければできないだろうということがございまして、現行の東京湾あるいは京葉港というものの機能を半ば否定してかかれば不可能ではないと思いますけれども、これはやはりこれなりに大問題でありますので、そういった意味で東京湾のど真ん中につくることもやはりできない。羽田空港の沖に大規模拡張するのではせいぜいいまの羽田の能力が五割程度ふえるしかふえない、こうなりますものですから、私どもは何としても北総台地につくりかけております成田空港の計画を完成させなければならない、こういうふうに考えるわけであります。できればもちろん海上空港の方が騒音問題等の発生も少のうございますし、いいと思いますけれども、やはり東京の置かれている世界的な地位あるいは日本の首都であるという国内交通上の要衝という地位から考えますと、羽田空港の沖に滑走路二本の空港ではとても動きがとれない、やはり成田と羽田沖と二つありまして将来の需要にやっと対応し得ることじゃないかと思います。  もちろん、それでもいまから二十年、三十年、四十年たてばいっぱいになります。私は、もうその段階は東京周辺の空港能力の限界点だと思います。したがいまして、成田空港が二期工事まで終わり、かつ、羽田の沖にもう一本滑走路をつくれば、東京周辺の空港はまずそれでおしまいということで、それ以上のことはむしろ国際線の発着する空港を日本全国に展開するとか、あるいは国内輸送については新幹線等を活用するとか、別の手段を用いないと困難である、しかしそこの限界点まではやはり何としてでも世界第三の都市として必要な空港の機能といたしましては最小限度成田プラス羽田というものは必要だ。世界の主要都市の空港に照らしましても決して過大な大きさではない、こういうふうに考えますので、十分地元の事情もわかるわけでありますけれども、その辺との話し合いを続けながら、羽田問題あるいは成田問題に対応していく必要がある、こう考えているわけでございます。
  126. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 よくわかりました。  最後に一つお尋ねしたいことがあるのは、この間国会を通りました特定空港周辺騒音対策法でしたかね。あれが法務委員会に係属しませんでしたから、私もいままで余り検討してみなかったのですが、検討してみるとずいぶん法律的に問題があるということがわかったのですが、あの法律の本当のねらいというのは、やはり局長がおっしゃった大阪空港の騒音訴訟がありましたね、ああいうような訴訟というものを将来起こさせないことにあると、それが本当のねらいじゃないのでしょうか。
  127. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 訴訟を起こさせないようにすることは直接ねらっておりませんけれども訴訟が必要になるような市街地を空港周辺につくってもらわないようにするということでございまして、結果はあるいは一緒かもしれませんが、成田空港の周辺、まだ広々といたしておりますけれども、交通が便利になりますとやはり不動産屋や何かが目をつけまして、宅造をどんどん始めるであろう。そうしますとやはりあの空港が大阪空港と同じように隣まで住宅というふうな空港になったら、これは訴訟問題より何より、そこに住まわれる方としてはもう大変な被害を受けるだろう、したがって家ができちゃってから民家防音工事とか何かに金をかけるよりは、やはり空港ができる前に一定の地域についてはやはりそこのところは空港騒音から被害を受けないような緑地にするとか、農地にするとかいうことにする必要がある、そういったことで建築禁止ということを眼目にいたしましてつくったわけでございます。諸外国でもやはり都市計画の手法その他を使いましてこういうふうなことをやっておりますので、わが国ではおくればせながらそういう手法を講じたわけでございます。
  128. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ただ、そういう騒音を起こすのは民間の航空会社ですが、それを空港を設置することによって国が可能ならしめたというのですから、共同責任を負わなきゃいかぬかもしれませんが、被害をこうむるのは国民ですが、被害をこうむる国民の方にその騒音の障害をなくせといって命じてそれを要求して、騒音を消す責任というものは、まあほおかぶりしてはいない、いろいろ援助を、財政措置をやっていますから、ほおかぶりはしていないけれども、どうも被害者の方に負担をかぶせちゃったような印象を受けざるを得ないので、これはちょっとおかしいなあという気がしますが、その点はどうでしょうか。
  129. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 現在、私ども航空機騒音防止法という法律を持っておりまして、これは現に飛行機が飛んでいることによって周辺の住民の方の受ける被害を減らすために民家防音工事の助成ですとか、激甚地からお移りになる場合の移転補償等の制度をうたい込んでいる法律でございますけれども、したがって、現に住んでおられる方についてはそういうことによりまして事後的にできるだけ騒音被害を軽減してもらうような措置を講じたい。特に成田空港周辺などでは、全戸防音工事と申しまして、家ぐるみ防音工事してくれというような要求もございまして、これについても大体応じていきたいというふうに考えているわけでございますけれども、そうやって後追い後追いでやりましても切りがないというだけではなくて、やっぱりもとを正していかないといけないのじゃないかということから、前からいろいろ要請され、また参議院の運輸委員会ではいまの騒音防止法を通すときの附帯決議で、後追いだけじゃなくて前向きにそういったものをやはり規制していく立法をしろというふうな附帯決議もございまして、今回、ああいう法律をつくったわけでございますが、衆参両院の運輸委員会でやはりいろいろ議論になりましたのは、私権の制限ではないかという点について大変御議論ございました。その点につきましては、私ども十分運用の面で注意をしてまいりまして、仮にもいま先生御指摘のように、当然国とかあるいは航空会社あるいは公団というふうな側がすべきことをしない分だけ地域の地権者に負担をかける、制限を加えるということにならないようにしたいと思っております。
  130. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 どうも局長御苦労さんでした。大体私の方は公団の総裁と局長に対するお尋ねは終わりました。  法務大臣にお尋ねをいたしますが、成田空港問題が今日のようにこじれてしまった原因としては、これは先ほど伺いますと、公団の総裁の方ではかなり農民との話し合いを行ったという陳弁をなさったわけですけれども、反対同盟の農民の言い分を聞きますと、話し合いを直接受けたことはないというような主張がまいっておるわけでございます。そうしてこの間NHKのテレビ放送を見ましたときに、いまの運輸大臣も、過去のことについては確かに話し合いが不十分だったということをお認めになりまして、これから自分はやるという御決意を表明なさったわけですけれども法務大臣としてはどのようにお考えなんでしょうか。過去における国の対応なんですが、これはいかがでしょうか。
  131. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 今日までの経過は大体先ほど空港公団の総裁からお話があったとおりであると思います。私は直接成田空港の開設処理に携わっておるわけじゃございませんが、実はこれは御承知のとおり、昭和四十一年に成田空港設置を決めたときに、私は実は建設大臣として閣内におりまして協議にあずかっておるわけでございます。いろいろ今日の状態になって、いま寺田委員から言われたような意見等が出ておりますけれども、これは非常に今日まで苦心をして地元と話し合いをしておる経過があるわけでございまして、結果から申し上げますと、先ほどお話しがありましたように、現在開設をしようとしておる第一期工事の分については、用地の問題で九九%まで任意買収、いわゆる話し合い買収で済んでおるわけでございます。ただ、ほんの一小部分がやむを得ず強制執行等の方法をとっておる、こういう状況でありまして、あそこを最初に開設いたそうということから始まって、さて、農地の補償などがどうあるべきか、いろいろ県や市町村あるいは地元の農民と話し合いが続きまして、ちょうど軌を一にして、これよけいなことでございますが、例の茨城県の鹿島開発の問題がありました。これは茨城県が中心となってやられたわけでございます。あそこも膨大な地域、農地をやはり話し合いによって解決をされた。現在また参議院に来ておられます岩上さんが知事の時代だった。あそこは話し合いで、これも困難をいたしましたが、話し合いで鹿島工業地帯の開発を進めることになると、その後を追って成田空港設置の問題が起こって用地の問題が一番——すぐそばでございますから、利根川を隔てておるというだけでございます。でありますから、成田空港はもうくどくど申し上げる必要ありませんが、先ほど来お話しのように、わが国の航空政策上どうしてもどこかに相当規模の国際空港をつくらなきゃならない。これのその切実性については、専門家がいろいろ検討して成田付近ということになったわけでございますが、そういうきわめて必要な施設ではあるが、用地の問題で、これは土地所有者の感情から言いますと、非常に問題があったわけでございます。結論から申し上げると、いま額ははっきり覚えていませんが、その当時の補償価格から言いますと、成田の方は特別に多く補償をするという方式をとったわけでございます。その際に茨城県側から非常に文句が出たわけでございます。すぐ近所で、用地も比較的安くといいますか、その当時の適当な価格でやられたわけでございますが、すぐ隣の県でありますけれども、地理的には非常に近所でございますから、空港の方では百万以上だと思いましたが、全然比較にならないような高い補償をしてやったわけでございます。そのくらいに非常な配慮をして代替地等も提供すると、こういうことできておるわけでございますが、やはりこれは申し上げるまでもないことでございますけれども、農業をやる人は、これは農地に非常に執着するものでございます。特にあの地帯は開拓をやって営々として築き上げた人たちも相当におる。だから、あそこを補償を受けてあるいは別の事業に入ろうと、あるいは空港周辺の各種の事業が始まりますから、その方に転換しようと、農業から転換しようという人も相当あったと思いますが、農業に生きたいという人は先ほど来お話ありましたように、農業の経営ができるようにということで補償もいたしましたし、また各種の条件をのんでやった。しかし、他に転換する——この土地でやりたいのだという人がやっぱりおるわけでございます。これもわかるわけです。そういう人たちが最後まで残ったというかっこうだろうと思うのです。これは決して一方的といいますか、ないがしろにしているわけでは全然ございません。そういうせっかく自分たちが開拓してつくったところ、ここで百姓したいのだと、この気分もわからぬわけじゃありませんが、先ほど申し上げましたように、空港の必要性はいろいろいきさつはありましたけれども、御理解をいただいて、土地については九九%まで話し合いで解決した。その残りの問題です。でありますから、いまごろ問題が起こりましてから、怠慢であったのじゃないかと言われておるわけでございますけれども、私はそうは見ておらない。まあ寺田さんも先ほど来お話があって、いろいろな経験をされておられるわけでございます。私どももこの場合だけでなくていろいろな経験をしておりますが、いかなる場合でも一小部分の人は、そういう方がいっぱいいらっしゃる。そこに途中からいわゆる過激派集団という人々が入ってきて、これは、私は直接話を聞いておるわけではありませんけれども、いま残っておる農民の皆さんの考え方と実際は相当違ったかっこうになっておるのじゃないかと思う。もちろん、あの過激派の連中といえども、いわゆるたくさんの人が集って反対に参加しているわけでございますが、そういう人たちも一部農民の人たちの立場を気の毒だと、こういう考え最初は参加されたと思う。ところが、最近のいわゆる日本赤軍その他のいろいろな考えの人があるわけでございます。これを利用してそういう活動を顕著にしたい、こういうことがだんだん入ってきた。そこで、先ほど来苦心の話がありましたが、農民の人たちと話し合いをするという環境は出てこなくなった、こういうことだと思う。ほかの場合も私経験がありますが、これは余談でありますけれども、先ほど岡山空港のお話がありましたが、宮崎空港ももう六、七年ずうっともめている。これは滑走路を海の方に延長するだけでございますけれども、七百メーター延長する計画でございます。それは今日もう六年、七年ぐらい、まあことしいよいよ一部着工いたしますが、率直に申し上げて、これは漁民の方が中心であります。無関係の人がたくさんここに集まってきて反対運動をやる。それを県労評が取り囲んで、いまは漁民の人に自由意思がないというかっこう、判断を言うわけにはいかないのだといういまかっこうになっておる。その際に宮崎県の黒木知事は何遍でもみずから、あるいは副知事その他の県庁の役人の人と話し合いを進めてまいりましたが、だんだんそういうことで話し合いができなくなった。あらかじめ通告すると、全然所在をくらましておいて話し合いに応じようとしない。まあ回数は私ははっきり覚えておりませんが、宮崎県の黒木知事はもう数十回みずから出向いていろいろ話をしておる。あらかじめ話し合いのために行くと言うと、他の人が来てそれを邪魔する、あるいは当事者がどこか所在をくらます、こういう状況でありますから、朝、寝込みを襲って、たびたび寝込みを襲って話し合いました。そういう際の話し合いはよくわかりますということでありますが、わかりましたと言うわけにいかない立場にあります、まあこういうことがあるわけですね。  それで、最近は高橋局長なんか参加していただいておるわけでございますが、やられることはいいとは言えませんから、やられることは黙って見ておりますということになって始めるわけです。これはよけいなことを言いましたけれども、そういう意味の、これはまあああいう過激派が囲んでおりますから非常に私むずかしいと思いますけれども、身を挺してそこまで行っておらなかったということについては私は反省をすべきものだと、かように思っております。でありますから、私は空港そのものの設置や運輸行政に関係しておりませんけれども、これは警察も同じでありますが、われわれは治安の問題から、あるいは犯罪防遇の問題から、これは無関心でいられないわけでございますから、運輸大臣ともよく話し合って、とにかくあなた身を挺して直接話し合ってくれと、こう言っておるのです。この間のテレビで見ましたけれども、あの前からです。運輸大臣もその決意でおります。いかなる困難があっても直接農民と会って話をして、向こうの条件ものめるものはのんで、向こうの生活が立つようなことをしてこたえたいと、こう言っておるのです。  ところが、これは微妙なもので、そういうことに話し合いに応ずるなんて言ったらまた囲まれてしまって、さっきお話がちょっと出ましたけれども、身の危険を感ずる——これは運輸大臣が身の危険を感ずるという意味でなしに、そういう話し合いに応じようという空気をつくった農民の身の危険を感ずる、こういう微妙な問題があるわけでございますから、まあ時期を見てとかなんとかいうお話がありましたが、いまいろいろな方策を講じて直接農民の皆さんと話し合いをしたいと、こういう努力をしておられることだと思っております。そういう点で、私は、もう十一年ぐらいになりますが、過去の経緯を見て、だから反省がなかったかといえば、そういう意味においてはやはり反省をしなければならない。しかも、遅いといえども、いまからでもやっぱりいま申し上げたことをやっていただきたい、やるべきだと、こういうことを実は話し合っておるわけでございます。
  132. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大臣と航空局長、委曲を尽くした御答弁をいただいたので、大分時間が超過したので簡単にお尋ねしたいのですが、今度第二要塞の中におりました反対同盟の人が、何か幹部が三名ほど起訴されましたね。これは、私どもとしては、いま大臣がおっしゃったような話し合いですか、これは、いま大臣がおっしゃったように、話し合いを求める方も受ける方も相当勇気が要ることだと思います。そういう話し合いをやろうということにちょっとこう水を差すような結果になったのじゃないでしょうかね。いまもうすでに起訴されてしまったからどうにもならないけれども、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  133. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) いわゆる横堀要塞と言われるものの捜索等の過程で起きました事件につきましては、ただいま御指摘のように、去る四月十八日に四十九名を公判請求したわけでございます。その大部分はいわゆる極左暴力集団の者でありますが、起訴された中に三名反対同盟の人が入っております。検察当局といたしましては、この事件の処理を決めます際に、反対同盟の人が入っておるということを念頭に置きながら、それぞれの一人一人の者について、犯罪の事実関係あるいは情状あるいは、例の鉄塔を突然建てたときから話が始まっておるわけでありますが、それら一連の行動についての関与の度合い、こういうものを詳細検討いたしました結果、ただいま申し上げましたような処分を行ったと、こういうことであるようでございまして、その検討の過程では、反対同盟の人が三人いる、それはだれとだれとだれであるということを十分念頭に置きながら証拠を精査し処分を決めたと、こういうことに聞いております。
  134. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 最後にお尋ねしたいことがあるのですが、それは、今度団結小屋の撤去ですか、あるいは使用禁止というような処分を求めると。これは民事訴訟を提起するのに非常に困難だというような理由が入っているようですけれども、私ども民事法秩序に対する理解ですと、この民事関係というのは、国といえども私人と同じ立場に立って取引をする、そういうことがいままでの民事訴訟法秩序というもののこれは大原則になっていましたね。今度はそれが民事訴訟の提起が困難だというような理由からいきなり団結小屋を壊してしまう、あるいは使用を禁止させるというような手段に出てくると。これは非常に私どもとしましては疑問符を打たざるを得ないのですが、これは民事局長、こういう問題については民事局もやっぱり合い議を受けておられるのでしょうか。そしてそれについてはどうお考えですか。私は民事訴訟の提起というのがやはりこういう民事関係ではオーソドックスな方法で、みだりにその例外を置くべきではないという考え方を持っているのです。  それからもう一つは、さっき運輸省の航空局長にお尋ねした特定空港周辺航空機騒音対策特別措置法、これもやはり民事局長としては合い議を受けたのでしょうかね。というのは、さっき航空局長がおっしゃったように、この本当のねらいは、やはりこの間大阪の高等裁判所判決がありましたように、人格権というような非常に貴重な権利を認めて、そしてその人格権を基礎にして夜間の航空機の飛行を差しとめする請求権を認めたと、これは画期的な判決だと思うのですが、そういう判例による民事法といいますか、そういうものがだんだんと生まれていく、そういう傾向に対して立法的にこう押さえつけてしまうという結果になりますね。それがねらいだと言ったのじゃこれは航空局長にも失礼になるけれども、結果的にそういうことになってしまう。これは非常に問題だと思うのですけれども、この二点について、民事局長、これは民事関係の元締めでいらっしゃるから御意見伺いたいのですが。
  135. 香川保一

    政府委員(香川保一君) 後者の問題でございますが、もちろん合い議を受けておりまして、既存のものはともかくといたしまして、これから設置されるもの、つまりは空港周辺に病院とかあるいは住宅等建てれば騒音によって被害を受けることはもう明らかでございますから、それを承知の上で自分の土地あるいは借地だからといってそこへ建物を建てて、そして騒音による被害を受けたということで争いになるというふうなことは決して好ましくないことだと思うのであります。訴訟をやるというふうなことはできるだけない方がいいに越したことはないわけでございまして、したがって、この前成立いたしましたあの法律では、そういった特定地域を決めまして、そして建てる場合には騒音の被害を受けないような構造等にして建ててくださいと。ただ、そういうことになりますと、そういうことにしない場合にはそういうところには建てられなくなるわけでございまして、そうなると当然そのために地主、所有者等が、あるいは借地人がそれだけの損失を受けることが明らかでございますから、そういう損失は国の方で補償いたしましょうという構造になっておるわけでございます。そういうことでございますので、騒音ということは単に財産上の被害というにとどまらず、むしろ人命にも関係すると、大げさな言い方かもしれませんが、それほどのものだと理解するわけでございます。さようなことを承知の上で自分の土地だからそこに建てざるを得ないというふうなことになって被害が生ずるということは、これは決してほめた話ではないわけでございます。だから事前にそういう行政上の規制をいたしまして、そしてそれによってこうむる損失を補償するという構造の方が私どもはるかに合理的だというふうなことで、この法律は決して訴訟を防止するという——物のとり方でございますけれども、できるだけそういう争いを生じないということはもう好ましいことは当然でございますので、さような意味では非常に合理的な措置だと、かように考えておるわけであります。  それから最初の問題でございますが、これは実は暴力的なきわめて過激な犯罪の場所に使われるいろいろの設置物があるわけでございまして、何といっても、航空の安全あるいは空港の管理、そういった公共上の必要性からそういうことの障害を与えるものを取り除こうというふうなすぐれて行政サイドの問題でございまして、民事的な請求権というふうなものとは全く違うものだと思うのであります。まだ法案の中身は私十分承知いたしておりませんので、伝えられるところによりますと、そういう方向の立法措置ということで、民事的な、つまり民事訴訟が問題になる、そういった場と違った行政措置的なそういう面での立法というふうに承知いたしておりますので、いままでのところは正式のそういう協議というふうなものは全然受けておりませんので、どのようになりますかまだ委細承知しておりませんので、この程度しか存じません。
  136. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 最後に一つだけ。民事局長、特定空港の、大分違うのですよ、内容は。防音装置を施せというのは非常に軽微な、わずかに五WECPNL程度の効果を持つものというのが政令で決められることで、騒音を阻止するという効果は余りないのです、これ。だからそれに対する補償は全然ないのです。補償のあるのは建築禁止の部分だけで、そういう認識が大分局長とこの法案内容と違うように思うのですよ。だからこれはもっと議論していかなきゃいかぬですが、時間がもうないのです。私、超過してるから、これはまた後日に譲ってさらに協議したいと思います。  それから後の問題、後で答弁された問題も、これはなるほどその行為を禁止するとかいうのではなくて、その行為者が他人の家を使用する場合に、他人の所有権を奪うとか、他人の使用まで禁止するとかいうことになっちゃうので、これは行為そのものに着眼するのじゃなくて、それから飛び越えて所有権を侵すという規定なんですね。だから、ちょっと私どもとしては民事訴訟によるのがあたりまえだと考えているのです。それでないと司法秩序が崩れちゃう、こういう考えを持っているので、これはやっぱりいまは刑事局長が御担当のようですけれども、これは民事局もやはり合い議を受けて、そういう司法秩序というものを守っていただきたいと私は思うのです。これは最後に民、刑両局長にその決意だけ伺って終わります。
  137. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 現在、成田空港問題をめぐって考えられておる、いわゆる団結小屋等の使用制限、撤去等の行政措置を取り得る根拠法でございますが、現在の段階では政府の中で作業班をつくって大綱を鋭意いま固めておる。一方、与党の方と御連絡をして、そちらから今度野党の方々に大綱をお示しになりまして、いまお話し合いが進んでおる段階でございますが、ただいま御指摘になりましたような問題点が確かにあるわけでございまして、第三者の所有権を侵すというような場合には補償の措置、その他所要の措置が必要であろうと思います。したがいまして、今後次第に法案内容が固まっていくにつれまして、所要の民事局あるいは訟務局とも連絡を取りながら作業を進めていきたい、こう思っております。
  138. 香川保一

    政府委員(香川保一君) いま刑事局長が申しましたように、そういう先生のお言葉をあれすれば、民事法秩序がかかわってくる問題点がありますれば十分協議いたしまして、さような秩序を乱すことのないようには当然のことながら注意したいと思います。
  139. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 終わります。
  140. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 午前中からいままで、今回の成田空港問題に関する出発点といいますか、基本的なことにつきまして、問題の端緒といいますか、そのことにつきまして寺田委員からるるお話がございますし、また論議もされてまいりましたので、私はその問題についても時間をかけて御質問をしようと思いましたけれども、これは重複しますのでやめまして、まず最初に成田空港問題に関して今回の処分が非常に厳罰主義で臨んだのじゃないかとも言われておりますが、このことにつきましての基本的な考え方を、まず最初法務大臣の方から伺っておきたいと思います。
  141. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 成田空港事件の実態は御承知のとおりでございます。いわゆる過激派集団の暴力行為によってああいう犯罪が行われたのでございますから、これに対してやはり法律の命ずるところに従ってこれを検挙し、犯罪があると確認した者は起訴処分をする。特に厳罰云々じゃなくて、現行法の犯罪に適用される法律を適用して起訴した、こういうふうに私どもは見ておるわけでございまして、今後これが裁判の上でどういうふうに処罰されるかということは今後の問題でございますから、特にこれに厳罰をもって臨むとかなんとかということではないと私ども考えております。
  142. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 今後の裁判上の問題になってくるということでありますので、それはそれとして、少し経緯的なものを考えてみますと、反対同盟が二月の六日、七日の第二要塞の攻防といいますか、それで六人の幹部の人が立てこもって、そしてそれが逮捕された。そのときは六人の人たちが全員釈放された。そこで反対同盟の人はさらに意気が上がったのだというような報道がされておりまして、その中には、不起訴のうちは闘いの先頭に立つべしとかで、闘いの表に立ったことを取り上げて、北原事務局長ら三幹部が要塞に籠城したのだ、それが今回は凶器準備集合罪などで共同正犯として起訴されたとも報道されていますし、また、そのことによって戸村委員長は、こうなれば闘いあるのみ、自分の土地に建てた要塞をできてもいない滑走路に障害になる理由で壊し、中にいた者を逮捕、起訴するなど言語道断だと怒りを込めているとも報道されていますが、こういうことについて御承知をなさっておらるかどうか。また、どういうふうなお考えでおられますか、伺っておきたいと思います。
  143. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 御指摘のような事柄については、検察当局が行いました処分については職責上知っておりますし、また戸村氏の言ったという言については新聞等で承知いたしております。
  144. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そこで、三・二六事件以来の、話し合うことを第一義と立てて政府の方々全部臨んでこられましたけれども、今回この起訴されたということになりまして、反対同盟の人が政府あてに三つの条件を加えて公開書簡を出された。そしてその一つの中に、対話路線に対する声明の中で、逮捕者全員釈放を対話条件の一つに入れておりますが、これは申し上げることもなく、司法制度の根幹に触れる問題になるのじゃなかろうかと思いますが、この点について一言伺っておきたいと思います。
  145. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いわゆる反対同盟といいますか、あるいは戸村一作氏の声明、こういうものは私ども新聞報道で承知をいたしておるだけでございますが、仮にそれがいわゆる話し合いの条件と、こういうことになりましても、犯罪を犯し、あるいは暴力によって主張を通そう、こういうことを法治国家として認めるわけにいきませんから、その話し合いの条件としてこの処分を取り消す、こういうことは絶対考えておりません。
  146. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 それで、先ほども大臣がおっしゃられましたけれども、今後は裁判の上から、裁判上のことから決めていかれるようにという、将来のことについてはそれによるというふうなお話がございましたけれども、こうしたこの種の裁判という過去の例から見ましても順調に進むかどうか。また、被告にしましても、弁護側にいたしましても、起訴事実と適用罪状の解釈などでいろいろな問題で法律論争が起こってくるだろうと思います。この審理方式などに非常に俗に言う荒れる法廷とかよく言われておりますが、こういったようなこと等を考えてみますと、その昭和二十七年の九月施行の法廷秩序維持法も騒乱事件法案の成立を早めたと言われている、また同年施行の破防法など、異常事態が新立法というものを結果的にはつくりやすくしていくのだというふうにも考えられてまいりますが、こういう点についてのお考えはどんなふうにお持ちになっておりますか。
  147. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 今回の起訴によりまして、成田関係事件の被告人、これは千葉地方裁判所関係で約六百人になりました。このような大ぜいの被告人を擁しまして今後公判が進むわけでございますが、これに対しては並み並みならぬ関係者の決意でもって裁判を進めていかざるを得ないと思います。検察当局におきましては、これらの公判に要する人員を全国の検察庁の定員からへずりましてでも千葉地方検察庁へつけまして、早急にその措置を講じまして対処したいと思っておりますし、また裁判所におかれましても、裁判官の充員でありますとか、法廷の確保でありますとか、そういった物的、人的な対策につきまして最大限の御配慮をいただきますように私どもからもお願いを申し上げておるところでございます。そういうことでやってまいるつもりでございますが、何分これまですでに起訴されております約四百五十人の被告人についての公判が一カ月に一回しか開けないというような状況にございます。これだけは何としても解決を要する問題であろうというふうに考えておるわけでございまして、その意味で結局弁護人がこれ以上公判期日を入れれば自分は公判に出ていかないと、あるいは辞任してしまうというような態度を示すことによって、裁判所がやむを得ず妥協をして、月に一回しか公判が開けない状態があるわけでございまして、このような事態にかんがみまして、現在、刑事手続の特例法を国会にお出ししておるわけでございます。私どもといたしましては、このいま申し上げました特例法の成立を見ます限りにおきましては、他の新たな立法等はもはや必要ではないと。あとは訴訟関係者の努力によって迅速にして適正な裁判が確保できる道が開けると、こういうふうにかたく信じておる次第でございます。
  148. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 刑事局長のおっしゃいました刑事特例法はすでに衆議院の方でこれから審議に入る段階でございますし、私はそのほかにこれと並行して成田の新立法といいますか、そういったようなものもあわせて考え方をしておるのじゃないかということで、新聞等で報道されておりますが、各党で話し合いを進めて、そして新立法をつくり上げようというような報道もされております。このことにつきましては、私はいま刑事局長がおっしゃった特例法のことにつきましては、これは十分審議をこれからする段階でございますので、それは後日に譲るといたしまして、仮に法律をつくるといたしますれば、わが党もそれから各党の方々がNHKで政治討論会をやりました。あのときの状態というものをよくお考えになった上で、恐らく運輸省が所管になるというような報道もありますけれども、御相談もあることじゃなかろうかと思いますので、この点どんなふうにお考えになっておりますか、それを一言聞いておきたいと思います。
  149. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほど宮崎委員からこの裁判が非常に困難じゃないかと、こういう意味の御質問でありましたから、刑事局長からああいうお答えをしたことであろうと思います。裁判は現行法でもちろんやるわけでございますが、ただ一点、この点をいまお尋ねじゃございませんでしたけれども、刑事訴訟法の二百八十九条を盾にとって裁判が進まないような事態がありますから、今度特例をお願いしようと、裁判が円満に進み得るような道を開こうということでお願いをしておるわけでございます。ただ、いまお話しの問題点は、この前のああいう事態を見まして、ああいう暴力による犯罪といいますか、空港施設の破壊あるいは航空の安全を阻害する、こういうふうな行為に対して現行法で対処できないのかどうかと、こういうことをあの事態にかんがみまして細かく検討するようにしたわけでございます。そして現行法を十を十適用するといいますか、運用して、行政府は法律に従って運用する責任があるわけでございますから、それを詰めてああいう事態を防遏し得ないのかどうか、防遏することができないということであれば、これはああいう事態を放任するわけにいきませんから、新たなそれに備えるだけの立法をお願いしなければならない。こういう立場でずっと各関係省庁、専門家に検討をしてもらい、現行法十のものを十活用してこれを施行すればここまでいけると、大体これで間に合うということでございますが、伝えられておりますように、先ほどもお話が出ましたが、いわゆる周辺にある団結小屋あるいは要塞といわれるようなもの、これはまさに空港の機能を阻害するためにこれをつくっておるわけでございます。それそのもの自体が阻害するわけじゃありませんが、阻害する行動をとるためにつくっておるわけでございますから、これは開港というだけの問題でなしに、今後やはり空港の安全それから飛行機の運航の安全、これは非常に大切なことでございますから、それに支障を来たしてはならない。そこで、現行法ではそれに対する対策の方法がないから、その点だけに限って新しい立法をして備える必要があると、こういうふうな考え方で政府にも意見を求められまして、検討の結果を自由民主党の方に連絡をしてあります。自民党でも検討されたそうでありますが、その内容は率直に申し上げて私自身がまだ承知しておりません。そこで党としては、先ほどお話が出ましたが、各党に御相談をして各党一致の意見で、できればいま申し上げましたように成田空港の施設の安全それから運航の安全のためにそういう立法をお願いしようじゃないかと、こういうことを御相談をしておるというのが現状でございます。
  150. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 これはあくまでも一つ法律をつくれば成田の問題が解決するという、ただ単なるそれだけのことでなく、いま大臣からも御答弁がありましたように十分に各党間で練って練って論議を尽くした上でお考えをひとつ進めていただければと、こう私は思います。  そこで、運輸省の航空局長にお伺いをいたしますが、これはもう運輸委員会等でずいぶん論議され尽くしたものだと私どもは思っておりますが、法務委員会では初めて御出席をしていただいてのことでございますので、ごく基本的なことだけ、時間の関係もありますのでお伺いをしておきたいと思うのですが、成田空港が国際空港としての機能があるのかないのか、こういう一つの問題がずいぶん論議されてまいりました。交通不便の問題、また危険な空港として海外からも相当な悪評を買っているという、国際空港としてのシステムを構成する施設が機能的にバランスがよく整合されているのかどうなのかということを私は疑問に思っておりました。先ほど御答弁にありました羽田空港の実態、今後のあり方、成田の今後のあり方というお話等をお伺いしながら、なおかつ出発及び待機、進入の各経路を含む空港の専用空域、いわゆる空域が、防衛庁が管理する百里空域あるいは羽田、横田との各空域に相互に干渉し合うことなく十分に機能が発揮することができるのかどうなのか、こういう問題もずいぶん言われてきております。ことに百里空域の関係につきましては、運輸省と防衛庁との政治上の話し合いによって、これはしょせん暫定的な処置として飛行コースにする以外にないのじゃないかというふうにも聞かされておりますが、こういう基本的な点が第一点。それから、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、アクセスの空港への既設の交通機関等の問題点だとか、あるいは一番その血液となっていく航空燃料の給油問題、ライン問題等含めて、今後も大きな問題が残されてまいります。四番目には、建設計画のA、B二本の同時使用可能な平行滑走路と、横風用としてのC滑走路の設置計画の実現の問題、これも第二次計画の諸問題を含めての問題点が残されております。さらに五番目には、その他先ほどもお話がございました騒音問題、この対策をどういうふうにしていくのか。暫定運航時間等の未解決の問題等も残されておると。こういうふうにいろいろな問題点を取り上げてみますと、果たして、最初に申し上げましたように、国際空港としての本当の機能というものが十分出せるのかどうなのか、そういうことをまずお伺いをしておきたいと思います。
  151. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) お尋ねの順番に従ってお答えを申し上げますと、まず空域の問題でございます。御指摘のように、防衛庁の百里の空域がすぐ北にあるわけでございます。そこで、百里の空域との間に合理的な調整を講ずる必要がございまして、昨年の夏を中心に数カ月にわたりまして防衛庁の管制関係の専門家と私どもの管制関係の専門家が詰めまして、百里の空域の南側一部を削りまして成田空域にくっつける、また成田空域は羽田の空域を削りまして構成するという形で羽田、成田、百里と三つの空域が平面的に分割できたわけでございます。百里と成田につきましては、平面的な分割だけではなくて、飛行高度による垂直的な分割の方式もやはり採用することにいたしまして、水平、垂直両方の空域分割の方式によりまして、両方の空港に離発着する航空機が安全な間隔をとり得るようなそういう空域編成にしたわけでございまして、これは両方の専門家が何ら政治的な背景と申しますか配慮を加えることなく純粋に航空管制技術の面から検討した結果でございまして、安全上問題はないと確信いたしております。  恐らく、配慮というふうなことが世上伝えられますのは、こういうことだと思います。防衛庁は、百里の空域が削られるそのかわりに、埋め合わせに千葉県の海上に訓練空域を設定してくれと、こういう要望があったわけであります。これは実はずっと前からあったわけでございますが、成田空港の開港に伴って百里の空域を現実に削らざるを得ないという事態になりまして、初めてこの訓練空域問題を運輸省としても、どうしてもこれを入れなきゃならない義理に迫られまして、これもやはり合意の上に立ちまして、百里の空域が削られることに伴う埋め合わせとして千葉県の海上に防衛庁の航空機の訓練のための新しい空域をつくることで合意をいたしました。これにつきましても技術的な検討を経てやったわけでございますけれども、何といいますか、私どもとしては百里空域を削った恩返しというふうな意味がありまして空域の設定をしたということがあったわけであります。  それから次は燃料問題でございまして、燃料輸送問題は、御承知のように千葉市の中を通りますパイプラインの建設が数年前に地元の反対でとんざをいたしまして、やむを得ず鹿島港と千葉港から暫定的に開港後三年間だけ鉄道で運ぶというふうになっているわけであります。もともと鉄道とかあるいはタンクローリーで運ぶのは近代的な燃料の運び方として余り好ましくない、したがってパイプラインをつくりたいということで地元にパイプライン建設の説得に回った手前がありまして、そのパイプラインができないからといって、鉄道でということは、実は非常に鉄道の沿線住民の理解をいただくのに苦労したわけでございますが、そこで閣議で御議論いただきまして、五十年の夏でございましたが、開港後三年間だけということで、しりを切りまして暫定輸送方式を決め、そういったことをべースに地元と話し合いをしてまいりました。昨年の夏、関係の市町村と合意ができたわけでありますけれども、何せそういういわば緊急避難的な問題でございますから、十分ゆとりがある燃料輸送計画を持つことが困難でありまして、やはり羽田の過密状態から見て、どうしても早く成田空港に移る必要がある、そういったことを根拠にお話をしたものですから、羽田空港の処理能力を何十%も大きく上回るようなそういう油を確保するということでは、なかなか地元と話し合いがつきませんで、いわば必要最小限度にプラスアルファという程度のもので話し合いがついた経緯がございますので、燃料につきましては、正直のところかなりタイトでございます。したがって、諸外国からの新規乗り入れ、あるいは現在乗り入れている会社の増便要請等に対しましても、三年間はそういい顔をして、はいはいといって応ずるわけにはいかない、これもやはり必要最小限度義理の悪いところから優先順位をつけてという、かなり苦しい運用にならざるを得ないわけでございまして、大変残念でございますが、しかし今日の羽田の過密状況は、これはもう大変航空安全上問題でありますので、そういった意味で成田の開港を急がざるを得ないという立場から、非常にタイトな燃料スケジュールのもとで開港するわけでございますが、したがいまして、一日も早く本格パイプラインをつくりまして、そういう八方に肩身の狭い思いをするという状態を解消したいと思っているわけでございます。しかしながら、このことは開港に支障を来す問題ではございませんし、開港後も国際的にも最小限度の義理を果たし得るというふうに考えておりますが、決して楽ではないということだけを申し上げたわけでございます。それから、三番目のアクセスの問題でございますが、アクセス問題は鉄道あり道路あり、いろいろな方法がございます。輸送力としては鉄道、道路、それぞれ見まして問題はございません。問題はむしろ質の問題でありまして、質といいますと具体的にはパンクチュアリティーの問題であります。特に道路につきましてその問題があるわけでありますが、御承知のように、建設省にもお願いいたしまして、りっぱな湾岸道路をつくってもいただきまして、ずいぶん事態は改善されましたけれども、何せ道路と申しますのは混合交通でございまして、空港へ行くお客さんは急ぐからといってパトカーをつけるわけにもいかない。まして専用路線をつくるほど空港旅客というものの数も多くはないというところから、混合交通になりますので、他の東京−千葉間の、特にトラックなんかが多いわけでございますが、そういったもののラッシュと重なったときには若干の時間がかかるという弱味がございます。いまいろいろ飛行機の発着時間のラッシュになるときと、それから東京−千葉間の道路のラッシュになるときと比べてみますと、幸いなことに少しずれておりまして、いまの東京−千葉問の道路のラッシュがそのままアクセスに対する障害になるかというと、そうはならないわけでございますが、しかしながら、これは夏の海水浴などのことを考えますと問題なしといたしません。そこで、道路の使い方を十分上手に考えていくということで、建設省、道路公団、あるいは警視庁、千葉県警などとお話をいたしまして、円滑な使い方ができるようにいま知恵をしぼっているところでございます。  鉄道につきましては、成田新幹線ができませんので大変残念でございますが、輸送力としては京成電鉄がこれにかわる輸送力として十分ございますし、また、国鉄成田線も三年ぐらいの後には成田空港に直接延伸するという計画もございますので、そう致命的なものではないと思います。しかしながら、羽田に比べますと物理的に確かに距離がございますので、この点につきましては十分利用者の方に事前に御理解をいただくということと同時に、特に道路関係につきまして、関係機関が十分連絡をとって円滑な、そしてパンクチュアルなアクセスが実現できるように引き続き努力をしているところでございます。  それから、滑走路の関係でございますが、さしあたりA滑走路一本で開業するわけでございます。能力としては一年間に十三万回の離発着を処理する能力がございます。ところで、現在羽田から成田へ移りまする需要は一年間五万五千回でございますから、A滑走路は優に倍以上の余裕がございます。問題は横風が吹いたときにどうするかという問題でございまして、羽田のように横風用滑走路がぶっ違いに一本できてないのがきわめて航空安全上危険があるのじゃないかという指摘を航空の専門家がなさる場合があるわけでございます。もちろん私ども横風用滑走路が必要だと思うからこそ当初から計画に入れているわけでございますが、御承知のような事情でまだ二期工事がかかれませんので、横風用滑走路なしで開港せざるを得ないわけでございますが、それならば安全上問題があるかという点でございますが、ぎりぎりの話を申し上げますと、安全上支障があるとは思えないわけでございます。そこのところは非常に話がむずかしくて、安全上支障がないということをはっきり申し上げますと、では横風用滑走路をつくる必要がない、二期工期は要らないという議論になりますので、非常にむずかしいのです。そこで、むずかしさを十分予想しながら御説明申し上げますと、まず横風用滑走路がなくても当面の開港には支障はないという点、安全上支障はないという点を申し上げますと、飛行機は御承知のように風に向かって飛び、風に向かって着陸するわけでございます。したがって、横風を受けますと飛行機というのは弱いわけでございますから、横風が強い地域には横風用滑走路をつくるというのが原則でございます。羽田は海辺でございまして、風向きがしょっちゅう変わります。そこで横風用滑走路をつくりまして、横から風を受けないような配慮をして運営をしておるわけでございます。成田というところは内陸でございますので、横風の率が非常に小さいわけでございます。これは最近三年間の成田のあの現地における気象庁の観測によりますと、飛行機が離発着するのに困難なほどの横風が吹く率は年間平均で千分の一の確率しかない、〇・一%という確率しかない、そういうデータが出ているわけでございますので、そういった意味で、横風用滑走路がないために使えなくなるという確率は年、これは二十四時間考えて千分の一でありますから、空港の運用時間は朝の六時から晩の十一時でございますから、確率はもっと小さくなるわけでございます。しかしながら、仮にあった場合にはどうするか、これは羽田を代替空港として使う準備を整えておりますので、そういった場合にはあらかじめ飛んでおる飛行機にいましばらく横風が吹いている間羽田へおりなさいと、こういう指示をすることによって安全上の問題は解決できると思います。  それから、よく乱気流があるのじゃないかということが新聞に出まして、これも成田の安全問題として議論されますけれども、成田という場所は御承知のように山あり谷ありといいますか、丘あり谷地ありという起伏の富んだ土地でございますので、地表近くの空気は土地の起伏に従って波を打つわけでございます。したがって、風の強い日には地上から恐らくせいぜい五十メーターか百メーターくらいの高さだと思いますけれども、そういう地表の風が波を打ちます。したがって、それに特にエンジンをとめておりてくる着陸機などが乗りますと、多少がたがたと揺れる日があるということでございまして、乱気流という言葉は大分前に富士山の頂上でBOACの飛行機が晴天乱気流というのにぶつかって空中分解したこととすぐ結びついて、乱気流という言葉は非常に悪いわけでございますけれども、言葉としては乱気流というほどのものじゃございませんで、内陸空港は日本じゅうどこにでも見られる現象でございまして、成田は危険だということはそれはございません。したがって、安全上の問題は何もないと思います。  次に騒音問題でございます。これはいままで何にも飛んでいないところに新しく飛行機が来るわけでございますから、主観的には恐らく大変な問題であると思います。私どもといたしましては、騒音防止法に基づきまして各種の民家防音工事とかあるいは移転補償等の仕事を公団を通じてやっております。その目安は環境庁が四十八年に告示をいたしました目安がございまして、それによりますと成田の空港では五十三年の末にある一定の数値まで下げなさいと、こういう基準がありまして戸外で八五WECPNL、屋内で六五でございましたか、そういう基準がございまして、この基準に合うようにいま公団が中心になって民家防音工事等をしているわけでございます。したがって、音を全然なくすということはできないわけでございますけれども、政府で決めました飛行場周辺の環境基準というものを達成することは、ことしの暮れまでに可能であります。空港公団としては開港までにこの基準を満足さしたいということで、ずいぶん努力をしてきたわけでありますけれども、先ほどもちょっと御説明しかけました、もうどうせやるならうちじゅうぐるみ防音工事してくれというふうな方があったり何かいたしまして、従来の防音工事の仕方では応じないという方があったりいたしましたためにまだ若干残っておりますが、これにつきましても、できるだけ早く完成をさせまして、政府で決めた環境基準はクリアできるというふうにしたいと思います。しかしながら、内陸空港でございますし、何しろいままで何にもなかったところへ音が降ってくるわけでございますから、地元の方々のいろいろ御不満やあるいは御要求があると思います。これらにつきましては、開港後、きめ細かに対応をしていくと、そして一つ一つ解決を図っていきたいというふうに考えております。従来までの成田空港反対運動というものが、開港後は騒音に対する被害を問題にする動きに、市民運動にきっとなってくるということは予想いたしておりまして、これに対しては準備を十分いたしまして、そして対応をしていくことを考えているところでございます。  なお、内陸空港でございますから、発着時間等につきましても厳しい制限をつけていきます。羽田と同じ発着時間にいたしましたのは、国際空港でございますのでどうしても日本の事情だけで時間を決められません。日本がいい時間だと相手の空港が真夜中になっちゃうというふうなこともございまして、やむを得ず羽田と同じ発着時間にいたしましたけれども、そのかわり羽田空港に間々見られますような遅延便等はもう絶対出さないように、特に出発の遅延等は絶対やらせないということで、十一時以後はいかなることがあっても出発させないと、翌日に回すという方針を堅持いたしまして、たくさんその回数を重ねて違反を犯した会社に対しましては乗り入れの制限等のまた処分をするというふうなことも含めまして、十分この夜の十一時から朝の六時までというものの飛行禁止時間を守るということにつきましても努力をしていくつもりでございます。  お触れになられませんでしたけれども、私ども心配なのは、最後にセキュリティーの問題であります。三月二十六日の事件以後、政府それぞれのつかさつかさでいろいろ努力をいたしておりますけれども、セキュリティーの問題がやはり現在でも国際線の外国の航空会社あるいはパイロットの協会等の人たちからも心配だと言ってきている問題のかなり大きい点がそこでございますので、これにつきましては四月四日の対策要綱の線に沿いまして、関係各省にいろいろお願いいたしまして万全を期していく。そして先ほどからもいろいろ御議論ございますように、もとを正す意味で地元と話し合いを十分展開していくと、そういうことを通じまして成田空港が本当に安全で心配のない空港になるように——ただ若干、燃料輸送とかアクセスで御不便な点があるかもしれませんが、これについてはできるだけ前向きに解決をしていくと、こういうことで開港を迎えたいと思っているわけであります。
  152. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 具体的にいろいろ御説明がありましたので時間が大分経過いたしました。御答弁の中にもありましたように、非常に整って万全な対策がなされないままに見切り発車をするような形でいくことが何よりもこわいわけですから、いまお話しがありましたように、その点を十分に注意をし、施策をし、やっていくということですから、万全を尽くしていただきたいと思います。  そこで、いまちょっとお話が出ましたけども、IATAあるいはIFALPAですね、それからいろいろな問題を提起されてきております。いまお話しがありましたように、四日に三つの柱を立てられて出発をされたということがいまちょっと触れられましたけれども、そのことを万全にやっていけば、いま私の言いましたIATA、IFALPAのことにつきましても十二分な回答になるとも思えるし、ならないとも思えるわけです。これは正直なところ私はならないのじゃないかと思うのですが、この報じられているところによりますと、どうも心配だということに対する運輸省としての回答といいますか、それをどのようにお考えになっておられますかね。
  153. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) これらにつきましては、四月四日の関係閣僚会議の決定事項を踏まえて、いま政府はそれぞれの部署でこういう努力をしているという経過説明いたしまして、それによって五月の二十日に開港するのであるから、絶対心配はないという電報を打っております。そしてまた、特にIFALPAというのは、これは定期線に乗っている操縦士の協会でございまして、専門家ばかりでございますので、ひとつ日本に来ませんか、航空局の専門家と十分話し合いをしましょうということを言って来訪を待っているわけでありますが、テーブルを囲みまして十分納得のいく説明をしてあげたいと思っております。
  154. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 反対同盟の方で伝えられるところによりますと、これはあくまでも報道でございますから、事実かどうかわかりませんけれども、五月の六日に、外国航空会社のパイロットの方々を招聘して現地を案内して危険な空港だというような説明をするような報道等もあるわけでありますが、それで私いまお伺いしていたわけなんです。それにつきましても不穏当な発言をしていることもいろいろな角度で報道をされておるようでありますが、このIATAの問題にしましても、IFALPAの件にしましても、そういうふうなことがどんなふうに今後反対同盟の方とかみ合う、かみ合うといったらおかしいのですけれども、反対同盟の人たちがどういうふうな方向でこの人たちと政府と話し合いをどういうふうに阻害をするか、妨害をするかというふうなことも非常に今後残されている問題だと私は思うわけですが、この点もう一度御回答願いたいと思います。
  155. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 航空の安全、つまり暴力集団などの襲撃という問題を抜きにいたしました意味での正常なる状態での航空の安全という問題での議論でございますれば、事実はみんな一つでございますから、私どもの持っている事実も反対同盟の持っている事実も一つでございましょうから、これは私どもが私どもの踏まえている事実にのっとりまして説明をすれば、専門家である航空技術者あるいは操縦者の人はわかってくれると思うのであります。したがって、反対同盟の方々がどういう事実をもって説明するかわかりませんが、その辺は私どもの持っている客観的なデータというものの信憑性については十分自信があります。むしろ心配なのは三・二六みたいなことをされたら困るということでございまして、それさえなければ成田の航空交通上の安全という点については十分説明をし切れますので、どんなに反対同盟の方が違った説明をしましても、私どものところへ来られたときにそれを全部正しい理解をしていただける、そういう自信はございます。そういった意味でIFALPAの代表の来日を待っているわけでございます。
  156. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 大体いつごろになる予定か。それともう一つは、いまお話しがありましたように、三・二六の反対同盟の人たちがやった何といいますか、総合的な一体化した集中暴発を目途として管制塔に押し入っていったというあの進め方のあり方ですね。ああいうことから考えていきますと、私は非常に心配が、いま航空局長もそれがなければというふうにおっしゃっておられましたけれども、それがこわいわけですから、いつごろになってその安全性というものを説明ができるかどうか、その時期的なものはどうなんでしょうか。
  157. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) IFALPAの人には一日も早く来てくださいというふうに言っておりますが、恐らく連休明けぐらいに来るのじゃないかと思います。反対同盟の人が五月六日という話、私正確に反対同盟から聞いたわけじゃありませんが、同じような時期にIFALPAの人は両方から話を聞くようになるのかもしれませんけれども、かえって両方から話を聞いてもらって私ども説明の正しさをより理解してもらうことがいいと思います。一方三・二六類似のああいったことが起こらないようにということはもう政府の悲願でございますし、また、先生方も御心配いただいておるところでございますが、四月四日の対策要綱踏まえまして万全の措置を講じていく。それによりまして安全な開港を迎えるということで努力をしているところであります。
  158. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 警察庁の方から開港を前提としての三十一項目に上る空港施設の改善を運輸省に申し入れているという、その具体的内容というと長くなるでありましょうけれども、私の持ち時間余りないもので、まだ残されている問題がいっぱいあるわけなんですが、その要点だけでもおっしゃっていただければ幸いだと思います。
  159. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) これは念には念を入れて防備体制強化するというふうな趣旨のもとに警察庁から運輸省と空港公団両方に要請がございまして、そういった個所を数え上げますと三十幾つになるというふうなことでございますが、具体的にはすでにもう空港公団及び運輸省で工事にかかっておりますけれども、たとえば管制塔なんかに簡単に上がってこられないように途中にもう一つ鉄の扉を設けてロックをするとか、あるいは従来木の扉であったところを鉄の扉に変えて割られないようにするとか、あるいは空港公団におきましては、空港の周りの柵をもう一重建て回してさらに警報装置もつけて堅固にする。あるいは出入り口等につきましては二重、三重の装置をつける。あるいはガードマンを増強するというような、いろいろ警察の方の立場でも自分たちは一万五千の機動隊で守ってやるけれども、公団も運輸省も自衛をせよというお話でございまして、私どももごもっともでございますので、私たちの力でできる限りのところはやりたいということで、空港公団約五十億円、運輸省約二億円というお金でいまその工事を始めまして、開港に支障はない程度まで八割方完成するのが五月半ばごろということもございまして、五月二十日の開港日が決まったといういきさつもあるわけでございます。
  160. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 細かいことをずっと質問をいたしたいと思ったのですけれども、警察庁の人も見えておりますから一つ一つやっていきたかったのですが、まるきり時間が参りましたので飛ばしてまいりまして、いままでとうとい国民の血税を成田空港でお使いになったその建設資金、それから公団における経費の支途別といいますか、それらの御説明を運輸省と公団の方々、それぞれに御説明願いたいと思います。
  161. 井辻憲一

    参考人井辻憲一君) お答え申し上げます。  昭和四十一年度から五十一年度までの予算、これは決算ベースで申し上げますが、この総計が二千四百六十七億円でございます。さらに五十二年度の予算額は約六百四億円、五十三年度の予算額は七百四十億円を予定しております。したがいまして昭和四十一年度から五十三年度までの合計額といたしましては約三千八百億円でございまして、その経費の内訳は建設事業費に約二千三百億円、業務費、一般管理費あるいは業務外支出等が約千五百億円でございます。
  162. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 公団以外の部分につきまして概算申し上げますと、関連の公共事業が約三千億円、それから関連の民間事業、京成電鉄とかその他、これが約一千億円でございます。これらそれぞれ投資された年度金額で計上しておりますから、十年前の貨幣価値をいまに直すとするならば、先ほど来公団の理事、私が申し上げている金額はいまの値打ちで計算すればもっとふえるわけでございます。
  163. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 私のところで手元にあるのは四十一年から五十一年度までの経費の使途別の内訳というものが出ております。運輸省の政府資金、それから財投の費用と自己資金と特別債とか、五十一年までのやつは出ているのですが、五十二年度のはまだ決算はできないのじゃないかと思いますが、これに基づいてのいま御説明のありました使途別の内訳を、また後日でも結構ですから、ひとつ御提出を願いたいと思います。よろしゅうございますか。  そこで、今回の三・二六でこうむった被害総額、ということは復旧費ということになりますか、それらについて運輸省と公団それぞれに御説明を願いたいと思います。
  164. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 壊された場所が管制塔でございまして、本来なら運輸省のものだけなんですけれども、一部空港公団の機械をあそこで運用するために空港公団の機械も壊されてしまったということでございます。合計一億三千万ほどでございまして、このうち空港公団関係が三千万円含まれております。
  165. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 細かい一億の内訳をお伺いしようと思いましたけれども、私の調べたデータが合っているかどうかわかりませんけれども、いずれにしましても管制卓だとか、航空灯火制御卓だとか、いろいろありますけれども、それらの内容についてはまた機会があるとして、細かい点も先ほど申し上げましたように内訳で出していただければよろしいかと思いますので、時間を省く関係上次へ進んでいきたいと思います。  もう一つは、昨年のダッカ事件等によって非常に空港内の施設を、防御施設も含めてずいぶん変更をなさってきているわけでありますが、今後のフェンスの計画といいますか、そういう概算もひとつお答えを願いたいと思います。
  166. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 御質問の趣旨がはっきり私理解できなかったかもしれませんけれども、公団として今後防護施設等に使います金は約三十億足らずというふうに考えております。その中でハイジャック関係や何かにつきましては、これは警察当局及び航空会社等とも連絡をとりまして総合的に防止対策を講ずるということになっておりまして、たとえば金属探知器とか、X線装置とかあるいは乗りおりのお客が混合しないような両方セパレートするような装置をするとかというような施設を講じますと同時に、専門的な検査要員を配置をいたしまして厳重な措置を講ずるということでハイジャックの防止に万全を期してまいるということにいたしております。
  167. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 時間を詰めて質問をするものですから、具体的にお話をしないから、そうだと思い、想像で御答弁願っておられたのでございますが、いま御答弁があったことなんですが、最初に計画したものと、ハイジャック等の防止をするので改修と言いますか、改築をせざるを得なくなったところを大分やりましたね。それと見送りに、送迎、送り出すところ、最初は低くしておりましたね。ガラス板と言うのですか、それをずうっと天井まで高くしてみたり、いまお話がありましたように、出入する客がごっちゃごちゃになるので真ん中へ線をこれから引こうという、これは開港までに全部、今度は五・二〇と言いますが、これまでに全部完了できますか、いまお考えになっていることで。
  168. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) ハイジャック防止対策につきましては、いま先生のおっしゃられるようなことを全部五月二十日までに完了いたします。
  169. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 それで空港管理の上から、今日まで管理監督するといいますか、そういった意味も含めて空港内にいま営業している人たちもおりますね。それから今回の三・二六によってそれを、開港を目途としてやったところが、三・二六によって営業ができなくなってきたという業者の方々がいらっしゃるでしょう、いろいろな業界に分かれて、業種に分かれて。それを目途とした、まあタクシー会社なんかは別なんでありましょうけれども、それに伴うガソリンスタンドだとかあるいは空港内にあるみやげ店、食堂、喫茶店、清掃業に携わっているその人たち、いろんな人たちがおいでになります。特に私は、農家の方が自分のとうとい土地を協力して売られて、そして一つの事業体をつくられてやられた方、そういう方々がいらっしゃるわけですよね。その方々に対する今回のこの被害の助成とかあるいは育成するための資金を出してあげるとか、そういうふうな対策をどんなふうにお考えになっておられますか。
  170. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 今度の不幸な事件によりまして、約五十一日間開港が延びるということになるわけでございますが、それによってこうむります被害といいますか、得べかりし収入が五十日間ないという額がどれぐらいかということでございます。これは港内業者で飲食業が四十一社、それから物品の販売業が四十一社、その他が十一社と、それから中で航空会社等の委託を受けてハンドリング等の仕事をやりますのが五社、これをあわせまして九十八社でございますが、その営業収入の減少する額は、これはまだ初めてなものですから的確にわかりませんが、私どもの予想する計算では約十四億円程度であろうというふうに推定をいたしております。この中に農地を公団に提供いたしまして転業した方々が約三十社含まれておるわけでございますが、いまはそれだけを抜き出した被害額というものをちょっと持ち合わせておりませんけれども、こういう方々に対しましては、すでに契約をした家賃等を開港まで延期をするとか、まだ納めてないものについてはそれまで納めることを猶予するとか、あるいはお客様はまだ見えませんけれども、警備の警官その他の方々が相当空港内におりますので、こういう方々を対象にした訓練を兼ねた営業開始をやりたいというような方もありますので、そういう方々には営業していただく。そのかわりその方々の家賃その他の公団がいただくべき料金は普通の場合の二〇%程度に下げて私どもの方へいただくというようなことをいたしますし、また先ほどの転業の方々については公団でいろいろできるだけの細かい仕事をほかに見つけましてやらしてあげる。そのほかにどうしても金融上の措置が必要なものについては県にお願いをいたしまして制度融資の枠を広げていただき、またそれに利子補給をしていただくというようなことをいたしました。
  171. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 特に一番基本になって、反対同盟の人たち、反対をされている人たちと違った、その賛成者が、一番最初から協力したという方々のことを考えますと、十分な対策を講じてあげて守るようにしなければ私はならぬと思うのです。そういう意味におきましては、総裁も十分にお考えの上でおやりになっていると思いますが、いまのお話を聞いた程度では私はまだ非常に不十分だと思うのです。もっと時間があればそれぞれ私の手元に寄せられました、各業者の方々から寄せられましたデータによりますと大変なことなんですよ。それらを一つ一つ指摘して総裁ときょうはゆっくりやろうと思っていたのですが、前の話が長くなっちゃって時間がありませんのでやれませんので、まことに残念なんですが、どうかひとつ私の申し上げる意を十二分に体して、その方々に、家族の方々にも十分に手当てができるような行き方を考えてやっていただきたいと思います。それに対するお話がありましたけれども、金融の融資制度、こういうふうなものも十二分に考えてやってあげてもらいたい。特にきょう法務大臣がいらっしゃいますので、関係大臣にも閣議でぜひとも私のいま申し上げたようなことについてひとつお話をしていただきたいことを要請をいたしたいと思います。
  172. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) そのことにつきましては、三月二十六日事件がありまして、翌早朝、対策閣僚会議を開きました。諸般の問題がありましたが、とにかく先ほども申し上げました十一年以上も前からいろいろやっておることでございまして、その間期待をしてあそこに転業した人なんかもおるわけですから、そういう人が非常にもうおくれたとはいえ楽しみにしておったのがこういうことになった。そのときには五月二十日という日にちはまだ出ないときでございましたが、私は閣議においても、特に運輸大臣等についても、その他関係省庁についても、そういう人の損害あるいは今後の立ち行き、これを十分援助してあげるようにしなきゃならぬと発言をいたして皆了承しておりますが、今後とも注意していきたいと思います。
  173. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そこで運輸省の方にお伺いするのですが、私ども、当委員会委員の方々と一緒に視察をしてまいりまして、感じましたことを申し上げますと、東京シティ・エア・ターミナルの非常に航空旅客に最良なサービスをするというお考え方からあわせ考えてみますと、非常に狭隘のように感ずるわけです。狭い。受付をするところ、これなんかも人と荷物をどういうふうに振り分けていくのか、どうなのかという心配もございます。まあ高速道路の下にお建てになったということもありますが、いずれにしましても、交通関係考えてみてもこれは非常に狭いということで、隣の土地を、手狭だからといって、たしか三千坪といいましたか、求められているという、これの工事もやらなきゃならないというようなこと、そしてまた今日開港ができなかったことについての損害というものが非常な大きな赤字を生み出してしまっているという説明も聞きましたのですが、こういう点について航空局長はその実情をご存じでございましょうか。   〔委員長退席、理事八木一郎君着席〕
  174. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 予定どおり開港できないためにこのシティ・エア・ターミナルは大変な損害をこうむっておるわけでございまして、そのことは十分承知いたしております。そこで、たとえば銀行に返済するお金のたな上げ、あるいは東京都に納めるべき固定資産税の支払い猶予等、できるだけの措置を講ずることにつきまして、運輸省も間に入りまして話をしてきたわけでございますが、開港によりまして一日も早くその状態から脱するということしかありませんので、私どもとしてはそういった方向で協力をしていきたいと思っております。
  175. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 現在まで五十三億だとか言っておりましたね。それから一カ月大体五億円の欠損をするということを言っておりました。今度は五十日ばかりになるわけですか、大変な痛手を受けておられるわけですが、今後の円滑なる行政をやっていこうとすれば、運航していこうとすれば、十二分な対策というものを考えてあげなきゃならないということをさらに私は申し上げておきまして、この件は終わりにしますけれども、もう一つここに私「うえの」という雑誌がありまして、そこに随筆が出ておりまして「開港待ちわびるの記」、梶本保邦さんという、これは京成電車の副社長さんだと思いますが、これは上野のれん会で発行しているものですが、これは成田空港の「開港待ちわびるの記」ということになっておりますが、これによって見ますと、   新幹線の方がいっこうに捗らないので、こん どは京成に対して、何が何でも開港に間に合わ すようにと、関係方面から矢の督促。昼夜兼行 、遮二無二工事を進めて、すっかり完成したの が四十七年十一月末。延長七、二四九メートル 、総工費百五十億の大工事であった。   爾来、五年数か月、この間の金利だけでも約 八十数億円。金利は雪だるま式にふえて行く一 方だからたまらない。年二十億の金利は、一日 に換算すると実に六百万円。鳥の鳴かぬ日はあ っても、金利の重圧に毎日毎日泣かされている ような始末。  これは中の一部なんでございますが、これを私拝読しまして——拝読ですよ——お気の毒ということ。とにかく国鉄が間に合わないからやれやれと言って進められたということは、これは事実だと思うのですが、ともかくも、京成電鉄に私は肩を持つわけじゃございませんが、公平な立場の上から申し上げてみますと、現在まで三百二十五億の金利を含めて金を投じているということなんでありますね。そして今度は四月三十日に開港するということで十億円かけてオーバーホールを全部やっていった。三十両つくった車両は、十八両まだ何にも使っていない、こういう実情であるのだと。そして、しかもこれは四十一年の七月の四日に成田空港建設の閣議が決定してから、そして四十五年十一月十八日に起工式をやって、そして四十七年の三月の末には三十両を完成して、この一車両五千万だと。十億をかけて、もう運輸省の言われたとおりやりましたよと、こう言っておったというわけですね。そして四十七年の十一月末には駅の二十五億、土木費だけ百十億。路線が七千二百四十九メートル、先ほどのあれにも書いてありましたようなもので。ところが四十八年の三月二十三日には吉倉橋梁が爆破されるという事件があった。これはまだ犯人がつかまっていない。これは警察庁、まだ犯人がつかまっていない。訴える場所がないという。損害賠償の請求のしようがない。こういうようなことで、そして今度の開港まで五十日あるとすれば、一日の赤字だけでもさっきの「待ちわびるの記」の中にあります六百万を五十日で掛けますと三億。金利だけでも三億だというのです。一番被害を受けておるのは私なんだというふうな説明があるわけなんです。ともあれ、これらのことについて運輸省ではどういうふうにお考えになっておりますか、この点もひとつお伺いしておきたいと思います。
  176. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 関連民間事業で約千億投資をしたと申し上げましたが、一番大口は京成電鉄でございます。本当に申しわけないことでございまして、梶本さんは私どもの運輸省の先輩でもございますので、よく存じ上げておりますけれども、このために本当に社運をかけて工事をなさり、かつその成田延伸工事だけではなくて、その受け入れ体制として上野の西郷さんの銅像の下に地下駅を大拡張したお金も、これはそこに入っていないかもしれませんが、大変な工事費でございます。これらにお報いするためには、やはり一日も早く空港を開港いたしまして、そして新幹線ができなかった分、そのお客も全部京成がいただくということになる日が一日も早く来るようにしてあげることが唯一最善の道であろうと考えて、いま努力をしているところでございます。   〔理事八木一郎君退席、委員長着席〕
  177. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 あれは中へずっと新幹線のように引き込む予定で四十五年には盛んに交渉なさったそうなんですね。それが現在の位置にとめられてしまったということで、いま今度新幹線を中に入れるといってもなかなかできないという実情等もあわせてお考えの上で善処してあげていただきたいことを——私は向こうの社員でもなければ何でもありませんけれども、この雑誌を見まして、そして大変な御苦労をなさっているのだなということがしみじみわかったわけなんです。いずれにいたしましても、今回の成田開港ができなかったということで、もう大きいところは大きいなりに、一番悲惨な目を受けているのは最初に話がありました農家の方々、まだいまだに土地の問題が解決できていない。あるいはそこで紛争しているというような実情等をあわせ考えてみますと、そういう業者の方々もいっぱい泣いているのだということを承知をして間違いのないように、今度の五・二〇ですか、この日には見切り発車なんと言われるようなことのないようなひとつ進め方をしていかなければならないのじゃないかと思いますので、これは運輸省も公団の総裁の方におかれましても、十分にお考えを願わなきゃならぬと思うのです。決意のほどをひとつ伺っておきたいと思います。
  178. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) お伺いいたしました点は全部ごもっともでございます。私どもも御指摘の点、肝に銘じましていろいろな配慮をしていくことにいたしたいと思います。
  179. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) おっしゃられます線に沿いまして、ぜひ五月二十日までに万全の備えをもって開港を迎えるようにいたしたいと思います。
  180. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 私の質問を終わりましたので……。  警察庁の関係のことにつきまして、時間が余りありませんので、この前も成田の問題を取り上げるときに、何にも質問をしないで時間がなくて終わってしまいました。きょうは少し残っておりますので、お伺いしておきたいと思います。  私、先ほど申し上げましたように、当委員会の方々と視察をしてまいりました。そこで感じましたことは、御苦労なさっておられる警察官の方、署員の方々の御苦労というのは痛いほど胸が引き締まるような思いをして、御苦労のことを感じて帰ってきたわけであります。  それで、あそこで警備体制というのは何が目的なのか。過激派の対策が目的なのか、あるいは空港警備というものが目的なのか、何かその辺が——同じだよ、それは二つ含めたものだよと言われるかもわかりませんけれども、これが明確になりますと、それに伴っての行動というものが実施をされてくるのではないかと思うのですが、この点についてのお考えを伺っておきたいと思うのです。
  181. 若田末人

    説明員(若田末人君) お尋ねの件は、いまお話しのように二つのことが目的でございまして、警察は犯罪の予防、検挙ということでございます。空港の安全を期しまして、そのためには過激派等の犯罪の予防、検挙というようなことになると思います。
  182. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 そこで、見てまいりまして、横堀の方で、ちょうど私ども行きましたら、過激派の方だと言われる人らしいのですが、約二十人ぐらいおいでになって——署の方に案内していただいたわけです。そこでシャベルを持った人もおるし、車が二台、トラックが一台、小さい車が一台、それから俗に言う団結小屋というのですか、というところも、要塞らしきものも見えるわけでありますが、そこで作業をやっていられるのですがね。それを遠くの方から見ているというのですか、警備しているというのですか、いまお話がありました、目的を何に置いているのかというようなことを考えたのですが、どういうふうなことをやっているかということをお調べになったことがあるのですか。
  183. 若田末人

    説明員(若田末人君) ただいまの御質問意味は、ああいう過激なことをやった連中が御視察の折に、まあ農作業でありますか何か知りませんが、やっておるのに対して、警察はやり方がなまぬるいのではないか、率直に言えばそういうことではないかと思いますが、この点につきましては、民主主義の法治国家のもとでは、そういう連中がああいう過激な行動をやったということを、証拠なりあるいは現実にやっているところを確認いたしませんと、それが済みましてから、そういう平和なところで——そういう時期にそういうことをやっておるということが後ほど捜査関係ではっきりいたしますれば、裁判所等の令状によって処置できるわけでございますが、まあ、その連中の一派ではあろうという推察はできましても、現実にそういう形で平和裏のうちに農作業等について行っておるというような状態につきましては、現在の法体系では処置ができないというような状況でございます。
  184. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 農作業をやっているかどうかわからないのです。とにかく、あれはコンクリートですか、コンクリートみたいなあのところから出てきたのですから。そこで何をやっているかこれはわかりません、私にも。また、おわかりにならないと思いますが、仮に三・二六であれだけのことをやっていった。管制塔へ入るために排水溝からも入ってきた。それで集中的に人間を決めてふわっと行った。そして、それを遊撃隊のような作業をやって、目的を達成させたというような、知らない間にいろんなことをやられているわけですね。いまお話がありましたように、犯罪行為があれば捜査令状出して検挙すると、捜査もできるというお話ですが、起きてしまってから——今度は事件があったわけでしょう。彼たちの行動があって、行為があってやったことが今度の事件になってきたわけでありますね。したがって、何といいますか、中に入って、いまお話がありましたように、民主制度でなかなかそれができないということはわかりますけれども、何となく傍観しているみたいな感じでならないように受けたわけです。あれでいいのかなというような率直なこれは気持ちでお伺いしたわけですが、ああいうふうなことではどういうふうな手を打っておられるのですか。
  185. 若田末人

    説明員(若田末人君) 平素におきましては、できる限り彼らがどういう行動に出るのか、あるいは実態把握のために情報活動をやっておるわけでございまして、私も現地に行って見ておりますが、横堀要塞につきましては、現在差し押さえ中でございます。ああいう不動産物件については余り前例はございませんけれども、ああいう非常に凶悪な犯罪を行った、犯罪に供された物件というようなことで、裁判所の御判断をいただきまして、現在差し押さえ中でございますので、先生いつ御視察になられたかわかりませんけれども、そこから出てくるような状態はいまのところないはずでございます。警察の管理のもとに厳重に差し押さえをいたしておるような状況でございます。  それから、単に起こってからだけということではなくて、警察もできるだけ未然にああいう犯罪を防止したいということで、あの日の三日前にも二日間にわたりまして、それまでの捜索令状によりまして、約二十二カ所にわたって事前に予防するために捜索も行っておるような状況でございます。
  186. 宮崎正義

    ○宮崎正義君 大変御苦労なことはわかるのです。私はくちばしを入れることもなかなか、あのお姿見ていてもわかるわけですが、火曜日に行ったのです、十八日。ですから、まだほやほやでございます。  いずれにいたしましても、この空港警備隊の方が出動されると、出動費が千三百円で、時間外勤務が二千円で、食費が千五十円で、計四千三百五十円一日の経費がかかる。こういうふうなことを考えてみますと、これでいいのかなと思う。食費のことなんか千五十円で十分なのかなというような考えもございますし、時間があれば一つずつ問題点取り上げて、御苦労なさっている方々にもう少し何とか対応策が講じられないのかなと思いまして、また予算の面からいきますと、これは膨大なものになるわけですね。いま言いました千五百人で三交代で勤務した場合、一人当たりの年間人件費が四百五十万になる。四百五十万を千五百人でかけますと六十七億五千万の人件費になる。それに加えて装備だとか活動費を加えると八十億円はかかるだろうと言われております。こういったような防護対策費、警察の費用等を考え合わせてみまして、地方自治体はどんなふうにこの問題を処理して、予算の面から言っても処理していけるのか。警備隊の方々の身分を守っていくためにどんなふうにしてあげたらいいのだろうかという考えをもとにしていろいろな質問をしようと思ったのです。残念ながら時間が来てしまった。これは法務大臣、いま申し上げましたように、大変なことなんですね。なぜ、ああいうふうに警察庁で三千名宿泊できる、五千名宿泊できるプレハブの住宅をつくりながら開港をしなきゃならないのか。それに要する費用というものは考えられなかったほど使っていかなきゃならない。大きな流出になるわけであります。こういう問題等国務大臣としてどんなふうにお考えになって、また実際の作業をなさっている方々にどう手厚い行き方を考えておられるか、この点を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  187. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) ああいう事態で各般にわたって先ほど来空港をめぐる関係では非常によけいな経費を使うことになった。また、警備等についてもいまお話しのように莫大な経費が使われておること、事実であります。この問題については、細かく会計のことはわかりませんが、千葉県だけで負担のできるものじゃない。これは政府も何らかの方法をもってこの解決に当たらなければならぬと思いますが、ただそういうことを、何かそんなことまでして開港することはないのじゃないかというような印象を受けるお話のようにも承りましたが、もしそういう暴力ざたがあるから、国家的な必要なこと、国民に必要なことができないということになりますと、わが国の民主主義国家というものは成り立たなくなります。これは金がかかってもやるべきことはやらなければいけない。そういう考え方で万全の措置を講じたい、こういうことに考えておるわけでございます。
  188. 橋本敦

    橋本敦君 きょうの成田問題の集中的な審議ということで、初めに大臣に私一言ちょっと苦言めいたことを言っておきたいのですが、この成田問題というのは非常に重大な事件だし、彼らの過激、えせ左翼暴力集団の行動ということについては衆参両院で厳重な決議までなされ、そして各党も熱心に彼らの今後の暴力的な策動を一掃しながら空港の安全確保、こういったことできょうは熱心にやっているわけですが、肝心の自民党の与党である皆さんが全然お越しにならぬ。八木先生と山本先生、お気の毒にずっと代表のごとくにいらっしゃる。午前中は法案があったから多少出入りはありましたけれども法案さえ通ったらいいというようなかっこうに見えちゃうんですね。(山本富雄君「いや、そんなことはありませんよ」と述ぶ)しかし、この成田問題、大事な問題ですから、私はやっぱりこういうことは本当に与党の皆さんも一生懸命になっておられるということであれば、集中審議ということでもっといらっしゃって、熱心に討議をお聞きになって参加してほしい。こういう希望を強く持っておりますし、こういうことではやっぱり法務委員会のせっかくの集中審議も、言ってみれば野党だけが一生懸命やっているというかっこうになり過ぎますので、その点は大臣も国務大臣であると同時に自民党の幹部でもいらっしゃいますから、またいま山本先生からお話ありましたけれども、今後とも与党という責任を果たしていただくようにお願いしておきたいと思います。  ところで、十八日にあの三・二六成田事件の刑事処分というのが一応終わったということで新聞で報ぜられておりますが、大体刑事処分としては、刑事局長、これで終わったわけでございますか。
  189. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 現に身柄を拘束されて検察庁に送致になった者の処分はおおむね終わったということでございまして、あと背後関係その他の追及が残っております。
  190. 橋本敦

    橋本敦君 今度の彼らのゲリラ的策動というのは、そういう意味で背後関係なり何んなり多くのセクトがありますし、非常に重要ですから、今後の捜査というものもまだ重要な課題が残っているわけですが、逮捕した者に対する処分が一応終わったということで、私は一つのけじめだろうと思います。そういうときにあの反対同盟の人たちが、今後話し合うという問題に関連をして、逮捕者の全員釈放ということを要求している。法務大臣はこの問題について絶対そういうことをやる考えはないというお話がございました。私は何も無理やりに長く勾留しておくことを主張しているわけではありませんが、彼らの勾留という処分については今後裁判所が保釈をお認めになるかどうなさるか、裁判所の公正な御判断にまつということでこれはいいと思います。  私が心配するのは、法務大臣、この前のダッカハイジャック事件で、彼らというのは国際的にも連動するということもあり得るし、勾留中であろうが、刑の執行中であろうが、自分たちのコマンドが必要となれば、これの釈放を要求して再びあのようなハイジャック事件を起こすのではないか。断じてそういうことをさしてはならぬ、私はこう思うわけですね。あのときは超法規的——あるいは超法規的と言えば言い過ぎかもしれませんが、要するに超実定法的な処置で涙をのんで釈放せざるを得なかったという法務大臣のお立場、お考えがございました。そういうような考えは今後とも一切ないということは、法務大臣の御決意としていま伺ってよろしいわけでしょうか。
  191. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) まあ、その前に、話し合いの条件として逮捕者を釈放しろなんという話が伝わっておりますが、これは断じてそういうことはできないと思います。おっしゃるように、今後、訴訟法その他の手続によって釈放の可能性がある場合これは当然でございますけれども、ただ暴力に屈して解決を図るということは断じてやってはならぬ。  それから、ハイジャック等によってさらにこういう凶悪な犯罪を犯した者を釈放要求があったと、これも応ずべきではないと思います。そういうことを繰り返しておりますと、こういうものの取り締まりは不可能になってくる。法治国家のそれこそ根本が崩れてくる、かように考えておるわけでございまして、余分なことでありますが、刑事の特例法というようなものもお願いして裁判の迅速を図る、これはただ裁判の迅速を図るということだけのことじゃなしに、こういう法治国家を乱すような行為をあらゆる面でチェックしなければならない、こういう考え方に立っておるわけでございますから、断じてそういうものに屈してはならない、かようなことでございます。
  192. 橋本敦

    橋本敦君 刑事特例法の問題はまた議論が別でございますが、大臣の決意はわかりました。  一たんああいう残忍なハイジャックが起こりますと、人命尊重というのはやっぱりこれもまた真剣に考えなきゃならぬ問題になってくる。あのダッカハイジャック事件以後、政府もハイジャック防止対策ということで心労されておることはよくわかります。私は何としてもあのような事件を今後起こさせないということで、あらゆる面で注意をしていかなくちゃならぬ。つまり、のど元過ぎれば熱さを忘れるというようなことがあっちゃならない。  そこで、航空局長にわざわざ御在席願ったのは、ああいうようなハイジャック事件が起こらないように海外の日航もしくはいろんなところでの厳重なダブルチェックその他いろいろ当時御指摘がありました。あのダブルチェックの実施状況はどうなっているのか。そして、今後そのようなハイジャック事件を絶対起こさないという、そういうたてまえで成田開港五月二十日を前にして、私は国際的なこういう彼らの策動を封ずるために、海外における一層の警戒配備を強化するということを運輸省として責任をもって示達、通達をされるという処置も改めておとりになった方がよくはないかと思うのですが、局長の御意見を承りたい。
  193. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 御指摘いただきました心配、私もやはり持ちまして、この間の開港の前にエアラインに対しまして全部注意を促したところでございますが、なお今度の五月二十日を控えましても、もう一度念を入れまして、その点をしっかりしたいと思います。それから昨年のダッカ事件にかんがみましての各種の改善措置につきましては、いま資料を持っておりませんので具体的にお答えできませんけれども、相手国の立場もございましたけれども、順調に進んでおります。全部ダブルチェック体制になったかどうかはちょっといま資料がありませんけれども、もし残っているところがありますれば、なるべく早くそれを完全にするようにいたしたいと思います。
  194. 橋本敦

    橋本敦君 航空局長、私の質問はあなたにはそれだけでございますから。どうもありがとうございました。  私は次に刑事局長に伺いたいと思いますが、今度の場合、三・二六事件での処分者総数、それから起訴の人員数、全体として何%が起訴されたか、その点を明らかにしていただけますか。
  195. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 身柄つきで送致を受けました人員が百六十五名でございまして、これに対して四月十八日までに起訴した人員が百四十九名でございます。なお、処分保留、釈放が八名、家庭裁判所送致が十一名、こういうことでございます。なお、家庭裁判所に送致した者の大部分が刑事処分相当の意見を付して送っておりますので、最終的な起訴率はそれを見なければわかりませんが、相当高率の起訴率になっておると思います。
  196. 橋本敦

    橋本敦君 相当高率ということで、約九割近い起訴率ということになったと思います。この問題は先ほどの宮崎委員の御指摘もあった問題ですが、大臣のお考えではことさらに厳罰主義ということで臨んだのではなくて、法を厳正に適用した結果だというお話がございました。そういうお考えに大臣変わりはないわけでございますね。
  197. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) これは、処分につきましては、申し上げるまでもなく法務大臣あるいはこれを補佐します私どもの影響力は全くなかったわけでございまして、検察が独自の立場で決めたわけでございますが、私が報告を受けておりますところによりますと、今回の事件の性質の悪質さ、こういうものからいたしまして、この起訴率が今回高くなっておるのは当然の帰結であると、こういう説明でございました。
  198. 橋本敦

    橋本敦君 いまの御答弁で私若干問題点局長感じるのです。たとえば四十六年九月十六日の第二次執行の際には、まことに痛ましいことでありますけれども、三人の警備隊員が殺害されるという事件まで起こした。このときは五十七名起訴されておりますが、しかしこのときに逮捕された数というのはかなりのものであった。いままでの成田事件、今日までいろいろな事件が起こりましたが、全体を考えてみますと、逮捕者の数、それから三・二六までの逮捕者の数と検挙の数とを比べてみますと大体どのくらいの率になっておりますか、見当で結構です。とても九割にはなっていないわけですね。
  199. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 三・二六の事件が起きます以前の成田事件によります逮捕者というのは、約二千五百だったと記憶しております。これに対して起訴が約六百でございますから、相当起訴率は低くかったと言わざるを得ません。理由といたしましては、なかなか証拠がとりにくかったことが一つと、それからもう一つは比較的何といいますか付和随行的な分子が多かったと、犯行の態様もただいまお上げになりました東峰十字路の警察官殺害事件、これは別でございますけれども、比較的単純な形の犯罪が多かったということによるものだと思います。
  200. 橋本敦

    橋本敦君 そういったそれなりの事情がないとは私は全面的に否定しませんが、しかし、悪質な過激暴力的活動であるという点については、被害の実態なり犯行の態様なりそれぞれ差はあるとしても、やっぱり彼らの策動というのはずっと一貫して、悪質な暴力主義的な破壊的な行動というのはずっと続いてきたわけですよ。たとえば一つの例を挙げますが、今度空港の心臓部である管制塔、あそこへ乱入をして逮捕された者の中に、前に事件逮捕されながら処分保留で釈放された者も入っている。具体的には中川憲一という男ですが、こういう者が入っていることは間違いありませんか。
  201. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) ただいま御指摘の者もおりますし、現に成田事件で公判中の者も一人入っておるようでございます。
  202. 橋本敦

    橋本敦君 今度三・二六事件で起訴された者の中に、いま局長がお話しになった公判中の者、前に成田事件逮捕された逮捕歴のある者、これは全部で何名ぐらい入っておりましょうか。
  203. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 逮捕歴のすべてについてはただいまちょっと把握いたしておりませんが、成田関係事件で起訴されまして公判中の者が合計四名おります。そのうち三名は保釈中、一名は在宅起訴でございます。
  204. 橋本敦

    橋本敦君 逮捕歴はわかりませんか、逮捕歴のある者。
  205. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 正確な数字を持ち合わせませんので申しわけありませんが、成田事件に限らず逮捕歴があるという者は二十名前後でなかったかと、これは私の記憶でございます。
  206. 橋本敦

    橋本敦君 これまた正確にお調べいただいてお答えをいただくことにいたしますが、大臣、私がこの質問をしております趣旨は、あの管制塔という心臓部を襲撃した者の中に、いま答弁がありましたように逮捕歴のある者、公判中の者を含む。今度の起訴の中にいまお話の公判中四名、逮捕歴のある者が局長の御記憶で二十名ある。これは私はいままでの処分——逮捕した者というそのことの中でも、言ってみれば再犯ですね。そういう者が歴然とあらわれてきている。だから私はこういうことを一つ見ても、今度の処分が厳正過ぎる、厳罰過ぎるとは申しません。いままでの二千名以上逮捕したその刑事処分がもっと厳格に、厳正に、厳しく検察庁の方でやっておられたならば、今日の事態が根本的に変わったとは申しませんが、もっと厳しくやっておられたならば彼らに対する断固たる政府の姿勢が示されて様子が違った面がないとは言えない。そういう意味では今日まで彼らに対する処分というのが、これは私どもの言葉で言えばいささか甘かったのではないか。本会議で総理が言われた言葉によれば、いささか甘過ぎたのではないかと反省という言葉がありましたが、ここにもそういう事情が一つはあるのではないかと私は見るのですが、大臣の御所見はいかがでしょうか。
  207. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 過去の多数の逮捕者の中に起訴が少なかったか多いかという問題については、先ほど刑事局長が答えましたようにいろいろな事情があると思います。今度の場合は御承知のように非常に明確な形で現行犯として逮捕されておりますから、これはもう証拠その他の面で起訴率が多くなる。これも当然だと思っております。ただ、おっしゃるように私はこの際今度の事件について全部、前に、成田空港事件だけでなしに、その他の場合にいわゆる過激行動によって逮捕されたことがあるかどうか、あるいは裁判に付されたことがあるのかどうか、それからもっとさかのぼって、いかなる家庭に、あるいはどういう学校でどういうことをしておったか、そこまで詳細に調査しておくようにと、こういう指示をいたしております。これは検察だけじゃなくて、やはり裁判に至るまで、やはり法治国家というものの意味をようく考えてもらって、こういうことの起こらないような刑事法の運用をする、こういう観点がありませんと、いつまでたってもこれが後を絶たない、こういうことを私心配しておりますから、こういうことはやはり経験を積んで、何の場合でもそうでございますが、だんだん後で知恵が出るといいますか、注意を喚起するということになると思いますが、今度の事件を見まして過去の状況を全部この際は調査をしておくようにと、こう命じておるのはそういうためでございます。
  208. 橋本敦

    橋本敦君 そういう趣旨で調査を命じられたのは結構です。ただ、客観的に法務大臣、私が指摘しましたのは、代執行をめぐる事件で三人の警官が死んで、局部に集団的に集まって、そして局部に起こった本当に局部的な代執行をめぐる紛争事件ですね。したがって、ここでは集団的に四百七十三名が一挙に逮捕された。警備陣としてはそこのところはよくやったわけです。ところが起訴されたのが九十七人、たった二〇%、いまの九〇%と大変な違いです。だから、ここに私はいままで彼らの策動を見る検察庁の判断に誤りがあったとは言いませんが、甘さがあった点は反省をするという立場で、大臣のおっしゃった調査の検討、これが要るのではないか、こういう意味で申し上げておる。容観的にはっきり数字で出ておりますから、そういう意味でやっぱり厳正な法の適用という意味で甘かったのではないかという面が私は感じられてしょうがない。この点大臣のもう一遍、調査は結構ですが、お考えをお聞きしたいのです。客観的にはっきり数字が出ているのです。
  209. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 御承知のように法務大臣あるいは法務省として個々の事件についてどういう起訴をせい、どういう処置をせいというわけにはいきませんが、ただ一般的に検察庁以下警察庁に対しては常にこういう暴力主義的なまたは法違反を犯す者は厳正に処置をする、すべきであると、こういうことを常に通達といいますか、説示をしておるわけでございますから、おっしゃることはよく理解ができるわけでございます。
  210. 橋本敦

    橋本敦君 そこで、処分は一応決まりましたが、私がもう一つ聞きたいのは証拠物件の押収という問題ですが、たとえば新聞でも写真で出てまいりましたあの凶悪なトラックを戦車型に改造したようなあれがございますね。そういったものを含めて主要な証拠品、彼らの用法上の凶器となるものも含めて、こういった証拠物件の押収というのは今日まで何点ぐらい全部でなされたのか、そしてまた、主要な彼らの使った犯罪組成物件はほぼ押収は完了していると言っていいのか、そこらの状況はいかがでしょう、警察でも検察庁でも結構ですが。
  211. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 大量の検挙でございましたので、現在検察庁に証拠物の多くはまだ送られてはおりませんので、把握が必ずしも的確にできておりません。
  212. 橋本敦

    橋本敦君 警察の方はどうですか。
  213. 若田末人

    説明員(若田末人君) 大まかに申しまして、現在までに押収いたしておりますのが約五千点でございまして、いまだ若干残っておると思っております。
  214. 橋本敦

    橋本敦君 いま私が指摘しました彼らが使った火炎びんを満載してゲートから突入していったトラック、それから装甲車型のトラック、こういったものは押収済みですか。
  215. 若田末人

    説明員(若田末人君) 押収いたしております。
  216. 橋本敦

    橋本敦君 それらを検証の結果、そのトラックの所有者あるいはエンジンナンバー、ボデーナンバー、そこから旧所有者を割り出すという作業はできましたか。
  217. 若田末人

    説明員(若田末人君) 鋭意捜査をいたしておるところでございますが、エンジンナンバー等についてもすべて削っておりまして、やはり非常に悪質でございまして、承知をしておるようでございまして、すべてのナンバーを削り取っておる状況でございます。それからもちろん前の方の車両ナンバーにつきましても取りはずしておりまして、そういうことでまだ捜査が十分進んでおらない点がございます。
  218. 橋本敦

    橋本敦君 そうすると、あのような改造車はどこで改造したのかということもまだわかりませんか。
  219. 若田末人

    説明員(若田末人君) ただいま申し上げましたように、鋭意捜査をいたしておりますが、いまのところまだわかっておりません。
  220. 橋本敦

    橋本敦君 最も顕著な重要な証拠物件がまだそういう状況で、彼らも巧妙ですから、捜査の目をごまかして、なかなかうまくいってないということはわかりますが、これは重要な証拠物件ですから、まさに凶器の準備集合の準備の段階にもかかわる犯罪要素にもかわりますから、厳重に捜査を遂げてもらいたい。  ところで、あの成田空港の周辺に、この間も説明を伺いますと、彼らの団結小屋が三十三カ所とか、数え方によっては三十八カ所とか、まあ三十数カ所あるということですが、この三・二六事件に関連をいたしまして捜索を団結小屋全体のうち何カ所行いましたか。
  221. 若田末人

    説明員(若田末人君) 三・二六の前に二日にわたってやりましたが、延べで四十一カ所をいたしております。
  222. 橋本敦

    橋本敦君 団結小屋四十一カ所もあるの。
  223. 若田末人

    説明員(若田末人君) 延べでございますので、同じ個所を……、
  224. 橋本敦

    橋本敦君 個所だけ言ってください、個所。延べじゃわからない。
  225. 若田末人

    説明員(若田末人君) 二十二カ所でございます。
  226. 橋本敦

    橋本敦君 いまあなたは三二一六の前とおっしゃった。二十二カ所。三・二六は全然一カ所もやっていないのですか。
  227. 若田末人

    説明員(若田末人君) 私、細かいことで恐縮でございますが、警備実施の方を担当する課長でございまして、いまちょっと調べておりますが、三・二六事件に関連いたしましても捜索等実施いたしておりますが、後刻また数字を申し上げさせていただきたいと思います。
  228. 橋本敦

    橋本敦君 それなら数字は結構ですが、団結小屋全部を捜索したのじゃなくて、そのうちの何カ所だと、それじゃ結構です。全部ではないということですね。
  229. 若田末人

    説明員(若田末人君) そのとおりでございまして、令状によりまして捜索をいたすわけでございますので、それぞれの過去の事件等によりまして関連のある団結小屋について行ったわけでございます。
  230. 橋本敦

    橋本敦君 確かに法律的には関連性ということなしに何が何でもやるというわけにまいらぬでしょう。しかし、あの三・二六事件ということを考えてみますと、彼らはゲリラ活動の総決起であり、同時多発型陽動作戦を含んだ集団的な空港に対する攻撃ですよ。だから、そういう一連の彼らの過激暴力集団の大部隊がそういう団結小屋を何らかの形で使用したという、そういう状況は一般的に考えられる。したがって、これは令状を裁判所に請求したが、関連性がないので却下されたというならこれはいいです。しかし、警察自体の捜索としてあの団結小屋全部を捜索するというたてまえをとって当然やるべきだと私は思う。なぜ全部やらないのですか。裁判所から関連性がないということで令状が却下された事件が一件でもありますか。そこのところだけはっきりしておいてください。
  231. 若田末人

    説明員(若田末人君) 団結小屋につきましてもいろいろございまして、あの中で最も当日凶悪な犯罪を行いましたのは第四インター系でございますが、それ以外に極左の中でも比較的穏健な行動をとりまして大衆デモと申しますか、デモのみに参加したという者の団結小屋等もございますので、おっしゃるように、いろいろ私どもが懸命に収集いたしました疎明資料でできる範囲のことをやったわけでございます。
  232. 橋本敦

    橋本敦君 答弁はなかなか要領よくおっしゃっていますが、私は甘いと思うのですよ。甘いと思う。平穏にデモをやったというが、そのデモに警備隊の主要部隊を引きつけるという作戦だってあるのです。したがって、セクトによって最も凶悪な第四インターが突入したというのは、これは現象的にわかりますけれども、彼ら全部が全体としてあの日の一連の行動を作戦計画として意を相通じていたということがないとは決して言えないのですよ。だから、局長がさっきおっしゃった背後関係の捜査中だというのも、そういうことも含めて徹底的な捜査が要る、警察はこういう観点に立っておりませんか。
  233. 若田末人

    説明員(若田末人君) 御指摘のとおり、そういう観点に立ちまして背後関係について特に意を用いておりまして、現在鋭意捜査中でございます。
  234. 橋本敦

    橋本敦君 だから私は甘いと言うのです。令状を却下された事件があるなら、それは何カ所は却下されたということでわかりますよ。だけれども、捜査というものは、こんな凶悪な大規模事件については徹底した捜査の大きな方針から行くべきだ。そういう点で私はいまだに警察の捜査体制、これは甘いのじゃないかということを言わざるを得ないのです。  ところで刑事局長に伺いますが、今度逮捕、起訴された者の中に公務員、郵便局勤務の者あるいは準公務員と見られる電電公社その他に勤務の者、地方公務員と見られる者、こういった者がかなりいるという問題があります。具体的にいまおわかりでしたら、起訴された者のうち何名がそういう者であるか、どういう官署にいるのか、これをちょっとお話しいただけないでしょうか。
  235. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 今度起訴しました被告人のうち、御指摘のような身分関係の者は、わかっておる範囲で二十二名でございます。お断り申し上げておきますが、起訴いたしましたのが百四十九でございますが、現在、氏名等が判明しておるのはそのうちの約百名でございまして、まだわからない部分がありますから、ふえる可能性はないとは言えません。二十二名の内訳を申し上げますと、郵政関係職員九名、電電公社関係職員が五名、国鉄関係職員が二名、国家公務員が一名、地方公務員が五名、こういうことになっております。
  236. 橋本敦

    橋本敦君 私、この点で法務大臣の所見を伺いたいのですが、公務員は全体の奉仕者であるということが憲法で規定されております。公務員も、使用者たる当局と労働関係に立つという面はわれわれは考えております。だがしかし、これは労働運動でもなければ、政府もおっしゃるように、本当に農民と密着した反対運動の域を超えた暴力的破壊活動だ。こういう破壊活動に二十二名に上る公務員、まだふえるかもしれませんが、これが関与しているという問題は、国民から見てやっぱりショックなんですね。この点について大臣はどんな御所見を持っていらっしゃるでしょうか。
  237. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) この事件がありまして捜査が始まった当初、私閣議でも各閣僚の皆さんにお願いしてあるわけでございます。最初に郵政関係でございましたか、二名ということが出ました。これはまだ捜査が進んでおらないときでございます。そこで、少なくとも国家公務員あるいはこれに準ずる国民に奉仕する立場で、国民の税金で報酬を得ている者、これが職場を離れて——まあ一般の労働運動はまだしもでもですけれども、おっしゃるようにこういう過激な破壊活動をするということは断じて見逃してはならない。通常でありますと、起訴されたとかあるいは裁判があったとか、こういうのを見るのは今日まで常識でございましたが、現行犯として現に逮捕された、そしてそれが明らかになった者は直ちに法に従って処分をすべきである、こういうことで全閣僚了承して現に処分をいたしておる。まだ不明なものがあるわけでございますから、今後出れば必ずそうやる、かように考えております。当然なことだと思っております。
  238. 橋本敦

    橋本敦君 したがって、今回はっきりしている者は懲戒免職等厳重な処分をとるように大臣も閣議でおっしゃった、こういうことですが、彼らがどうやって採用されてくるのか、この問題を私研究する必要があると思う。公務員の採用は、憲法その他のたてまえがありまして、思想によって採用、不採用を差別することはこれは絶対に許せないと私は思いますね。だから、思想によって彼らを差別するということを私は決して言うわけじゃありません。公務員に採用する際に前歴調査をやる。彼らが逮捕歴があるか、あるいは暴力主義的なセクトに属して逮捕はされなかったけれども事件に参加をした事実があるかどうか、こういうことがわかっていながら採用したとなれば、これは甘やかし、政府の責任重大だ。しかしわからないで採用したというならば、今後どうやって彼らの破壊暴力活動の加担というものを役所の中にもぐり込ませないようにしていくか、こういう点の研究が要ると思う。大臣、ここらあたりどうすればいいでしょうか。
  239. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) おっしゃられるように、憲法上思想、信条等によって差別は一切できません。ただし、国家公務員法あるいは地方公務員法、あるいは教育公務員法にも同じような規定があります。暴力主義的破壊活動をねらいとする団体に所属しておる、こういう者は採用してはならないということになっておる。それが私は必ずしも現に行われておらないような気がしております。でありますから、そういう前歴等があれば厳重に調べてそして公務員の採用をすべきものである、今後とも閣内で注意をしていく、こう期待しております。
  240. 橋本敦

    橋本敦君 大学からも暴力を根絶しなければなりませんし、何よりも、今度のような事件が起こったときに、政府のおひざ元からこういう凶悪暴力集団を出すというようなことがないように、政府としてのいま大臣がおっしゃったような厳しい姿勢を望みたいと思います。  ところで、今度の法令の適用の問題ですが、初めて航空危険罪違反というのが適用される。これについては、現にあの成田空港が空港として機能していたのかどうかという事実上の問題と、それからそれをめぐって法律上の問題として今後法廷でも論議が持ち上がる可能性のある問題があるというように新聞なども一部書いておるようでございますが、この点について刑事局長の御見解はいかがでしょうか。
  241. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 航空危険処罰法の適用問題につきましては、法令解釈の問題を含んでおりますので、処理前に検察当局から若干の相談を受けておりますので承知いたしておりますが、問題のポイントは、あの時点で管制塔の中にいた管制官の人たちが管制業務を実際有効に行っておったかどうかということになるわけでございます。その点について事実関係の詰めをしていただくことができれば十分この法律の適用は可能であるという解釈をお伝えをいたしました結果、検察当局で、その点に重点を置いて、運輸省当局の方とか管制官の方々、その他その当時成田空域周辺を飛んでおった航空機の関係者とかいろいろ調べたようでございまして、この詳細につきましては捜査の内容に属しますから御勘弁いただきたいと思いますが、十二分の確証を得たと、こういうふうに報告を受けております。
  242. 橋本敦

    橋本敦君 それから、さらに新たな問題として、例の第二要塞の事件、これについては、未必の故意による殺人ですね、これを罪名として適用したということも報道されております。この問題についても、検察庁としては、事実関係、未必の故意の立証については十分可能な状況であったというように認定された結果だと思いますが、その点についても確信のある状況でございますか、
  243. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 当初、警察当局の御意見は、第二要塞事件の被告人については広範に殺人未遂の適用ができるのではないかという御見解で送致されたようでございますが、検察当局で事実関係及び証拠を厳重に検討いたしました結果、当時鉄塔の上から大きな石を警察官目がけて投げ落とした等の行為がありました四名について殺人未遂として処断するのが相当であると、こういう結論に達したようでございます。
  244. 橋本敦

    橋本敦君 わかりました。厳しく法を適用するというたてまえの中で具体的に証拠関係を固めて殺人未遂でも立件なさったという事情よくわかりました。  で、法務大臣、またさきの話と関連するんですが、今度の事案に関してはいま言ったように警察、検察庁十分連絡をとって最大限にある現行法の適用ということで徹底的な取り締まりという方向が出てきた。これは私事件の大きさもさることながら、やっぱり過激暴力集団を甘やかしてはならぬという国会なり国民の世論なりというものが背景でそういう方向へ思い切って踏み切っていかれたと思うのです。だからいままで数々あった、私が先ほど指摘をした警察官を殺害に至らしめたような事件、ああいう事件でも、検討し証拠をき、ちっと集めれば、いままででも殺人未遂罪、こういったことで公訴を提起して厳重処断するという方法をとることが可能であったかもしれない面が私はあるのじゃないかということを考えるのです。そういう面についても反省的に調査をするとおっしゃいましたが、法務大臣はそういうことも含めていままでの処分の当否、これを調査という形で検討を命じられているのでしょうか。
  245. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 過去の事件について私がとかくの指示はいたしておりませんが、やはり今回の事件等を振り返って、過去の事件についても、やはりこれを今後どうするということでなしに、捜査なり法の適用なりについては反省をすべき点は反省しなきゃならない、かように考えております。
  246. 橋本敦

    橋本敦君 前の事件についてはいまから証拠を集めるのが困難ですから、そういう意味の変更手続ということもなかなかむずかしいので、あえてやれとは言いませんが、いま言ったような反省的な調査をぜひお願いをしておきたいと思うわけです。  そこで、処分ということが大体終わりまして、背後関係の捜査が今後に残っているので捜査活動は続けられているということですが、一応やっぱりあの三・二六事件についてのいままでの警察の警備それ自体について、どうであったかということをいま振り返って考えてみるという一つの時点でもあろうかと思うのです。そういう点で警察当局に私はお伺いしたい第一点は、多くの情報によれば、彼らは三・二六管制塔襲撃事件は三月の初めから謀議をこらしていたということがあれこれ新聞等で言われているわけです。事実はどうだったですか。
  247. 若田末人

    説明員(若田末人君) 先ほども申し上げましたように、私、警備実施を担当する課長でございまして、情報等の方ではございませんが、しかし情報の担当の方から情報をもらいまして部隊配置等を行います立場でございますので、その点で申し上げますと、三・二六事件の事前に私どもが得た情報は、極左暴力集団の一部が空港に突入を図るという漠然たる情報でございまして、今回現実に入られましたような形でマンホール等を使って入るとか、そういう具体的な情報は得ておりませんでした。
  248. 橋本敦

    橋本敦君 それはもし仮に彼らがそういうような管制塔襲撃に主力を置いた、陽動作戦等を展開しながら管制塔襲撃に主力を置いた攻撃をやったというのは、結果から見てそうなっているわけですね。だとすれば、一つは、むずかしいことですが、事前の情報収集という点でまだまだもっとやれることがあったのではないかという問題があるのではないか、この点についてはいま警察はどう反省されておられますか。
  249. 若田末人

    説明員(若田末人君) 情報担当課といたしましては、全国を動員いたしまして情報収集に当たっているところでございまして、最善を尽くしたと思っておりますが、なお御指摘のようにさらに進めるところは、余地はあるかと思います。そういう意味も含めまして、本日全国の本部長会議を行いまして、今後五月二十日につきましては万全の警備体制で全国の警察から情報を収集するというようなことで、本日、全国の警察本部長会議も行ったところでございます。
  250. 橋本敦

    橋本敦君 公団総裁に伺いますが、あのマンホールの問題で問題になりましたのは、新聞で報道せられたところによりますと、あの彼らがもぐったマンホールというのは地図に、図面になかったので警察としてチェックができなかったという話、空港公団としてはそんなことはないと、図面には全部あるはずだという話も公団内部にあるという情報も新聞で私は見たことがある。実際はどうなんですか。
  251. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 警察に差し上げた図面には、あれはちょうど二期工事の区域内に入っていますので、その分については記載をされていなかったわけでございます。
  252. 橋本敦

    橋本敦君 じゃ、なぜ記載されている完全な図面を渡さなかったのですか。
  253. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 排水その他地下幹線についての図面は、第一期工事の分だけがその保守管理の必要から図面が整備されておりますが、二期の方は目下建設が始まったばかりでございますので、そういう図面を特に作成をしていないわけでございます。
  254. 橋本敦

    橋本敦君 図面はあることはあるわけですね、一期の場合の図面は。それを警備ということの要請の中でどうしてその図面も渡して完全に警察の方に、この地理状況を含めて完全な知識を持ってもらえるような処置をおとりにならなかったのかと、こういう質問です。
  255. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 公団の中の内部連絡の、率直に言いますと不備と申しますか、そういう図面を作成し持っている工事関係と、それから保安警備関係を担当しておる部門とに連絡が率直に言ってうまくなかったというふうに反省をいたしております。
  256. 橋本敦

    橋本敦君 だから、いま反省なさるのは結構ですが、公団の側にも徹底的に警備するという上で彼らの策動に対する若干の甘さが私はあったと。徹底的にマークをするということになれば、もっと密接に保安と警察が連携するのです。  それから、もう一つの問題として、彼らがあの空港をゲリラ的に襲撃するとすれば、当日の警察配備としてはあの空港のどこに彼らが集中的に攻撃をかけてくると踏んでいたのですか、配備の問題として。
  257. 若田末人

    説明員(若田末人君) 従来私どもが承知しております範囲では、大体当日もそうでございましたが、三里塚のちょうど交差点にございます第一公園ないしは第二公園に集まりまして、それから二九六あるいは大清水コースというような二つのコースに分かれてデモをやるわけでございますが、その途中あるいは終わりましてから第五ゲートあたりに火炎びんを投げてくるというようなことでございまして、その前のときにも五月八日に第五ゲートからちょっと離れたところで大きな事犯を行っておるというような状況でございましたので、大体そういう第五ゲートあるいは第七ゲートというようなところに突っ込んでくるのではないかと、従来の経験から言いますと、そういう感じで外周を固めておったような状況でございます。
  258. 橋本敦

    橋本敦君 よくわかりました。だから、全く警察の部隊配備も彼らのこれまでの攻撃態様の上に立った経験主義ということから出なかったわけですね。その裏をかかれたわけです。そうなりますね。だから、管制塔が直撃されるようなコースは配備としては十分頭の中に入っていなかった。だから、管制塔の前に配備もしてないし、それから第八ゲート、第九ゲート、それぞれ配備が手薄であり万全でなかったという事実は明確ですね。この点の反省をなさっていますか。
  259. 若田末人

    説明員(若田末人君) 第八、八の二ゲート、それから第九ゲートにはそれぞれ部隊を配置をいたしまして、物理的にも入られないように一応のことを措置しておったわけでございますが、第九ゲートにつきましては、視察に出ましたパトカーが火炎びんで追われて、まあこれも大変ある意味では不運なことでございますけれども、中に入るところをちょうど後ろから追いかけられて入られたというようなことでございますし、それから八の二ゲートに配備されておりました部隊につきましては、上の方から彼らの集団がやってくるというようなことで、通常の道を来るところに迎え撃つということで前進をしたようでございます。そうしましたら、裏の方のバリケードができておりますところを破ってきたということでございまして、やや背後に回られたというようなことでございます。
  260. 橋本敦

    橋本敦君 私が言うのは、裏をかかれた、裏をかかれたという話を幾らしてもしょうがないのです。警察の重点配備として管制塔、玄関、その周辺に一体どのくらいの部隊を配置してたのかいう問題については、管制塔が直撃されるという、そういう想定が十分なかったから、管制塔の防備それ自体は部隊配置を重点的においてやってないと、これは事実でしょう。いかがです。まずそう聞きましょう。
  261. 若田末人

    説明員(若田末人君) 管制塔は警察署の隣でございまして、そこに四十名の部隊を置いております。そのうちの五名が警らをいたしておりまして、ちょうどこのマンホールから出たところを発見をいたしまして、追跡をいたしておるわけでございます。
  262. 橋本敦

    橋本敦君 情報があったかどうか。
  263. 若田末人

    説明員(若田末人君) そういうことで御指摘のとおりに、どちらかと申しますと、私ども外周のゲートあるいはその周辺において迎え撃つというような重点でやっておりました。
  264. 橋本敦

    橋本敦君 だから、だからですよ、たった四十名ですか。しかも三百人の部隊がゲートから入ってきているわけですから、四十人で太刀打ちできませんので、一時管制塔の前はまるで解放区のような現状にまで彼らが持っていったわけですね。だから、そういう意味で言えば一万四千の全警官の配備、一万四千からわずか四十名、これはだれが考えても少ないわけですから、管制塔という心臓部を十分防衛するという配備がそういう頭でなされてなかったという事実は認めざるを得ないのじゃないですか。四十名も置いておったら十分だと言うのなら、これは十分でないことが証明されたのですから、そういう意味で部隊配備ということでは、管制塔防衛ということでは十分配慮はしてなかったと、これははっきり反省されたらいかがですか。
  265. 若田末人

    説明員(若田末人君) 御指摘のとおり、私どもかねがね空港視察に参りましても、運輸省当局なりあるいは公団等からも管理棟については、特にタワーの方につきましては十分の防御措置、現実に電子ロックもかかっておりまして、機動隊が後ほど管制室に入っております連中を逮捕に向かうときにも、これを破壊して入るべくやったわけでございますが、なかなかむずかしかったと、そういう情勢も日ごろ聞かしていただいておるたてまえから、ゲート等の外周で一応守るというようなことに重点を向けておったことは事実でございます。
  266. 橋本敦

    橋本敦君 言いわけはいいのですよ。いまの言いわけもおかしいのだね。  総裁に聞きますけれど、公団の保安部は、あの管制塔は電子ロックその他があっていろいろ厳重だから、あんまり人間を配置してもらわなくても大丈夫だと、そんなニュアンスの話をなさったようにいま聞こえるのですが、そんな話はあったのですか。これはおっしゃったかもしれませんね、公団が。
  267. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 別に、私もそのとき具体的にどういう話が出たかは聞いておりませんけれども、しかし、私どもとしては警備当局には空港内外の諸施設についての警備をお願いしますということで、特にどこをということをお願いをしておるわけではございません。
  268. 橋本敦

    橋本敦君 どうも空港公団と警察との間の本当に真剣な部隊配備と防衛ということについての協議が十分なされたという感じは幾ら聞いても出てきませんね。これは不十分ですね。あの長年にわたっての彼らの過激暴力集団の盲動というのを多年にわたって見ながら一体何ということですか。私は公団にも責任があると思います、警察にですよ。ここは厳重なロックがあるなんとか説明はいいです。だけど、ここがやられたらどういうことになるのだ。これはもう真剣に話ししなきゃならぬですよ。保安部一体何しているのですか。そういう甘いことやからこういうことになるのです。警察でも部隊配備が当日万全であったとはとても言えないということは、これはもう客観的に見て明らかですけれども、そういう甘さを生み出した中に、空港公団が長年にわたって公団の土地を不法耕作され、団結小屋を建てられ、不動産侵奪罪で告訴したというもののこれを放置してきたという、こういうずさんな甘やかしがあるかと思えば、警備自体という問題について、もっと警察に真剣に話をすべきですよ。返答すべきですよ。意見を言うべきですよ。やすやすと管制塔やられたじゃないですか。警察だけ私は責めるわけにいかない。公団だって重大な責任、反省しなければならぬと思いますよ。警察の配備のミス、あるいはゲリラが巧妙に裏をかいたということだけで済まされますか。公団の警備自体に、警察との緻密な連絡なり、彼らがどういうことをやるかということについて想定をした十分な警備を、総裁が責任を持ってやるというぐらいのことがなかったら、あの大空港はもちませんよ。いまどう反省されていますか。
  269. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 私どもとしては十分な警備をやったつもりでおるわけでございますが、しかし、ああした事件を起こした後から反省をいたしてみますと、確かに足りない点があったということで、警察当局とも十分連絡をとりながら、現在防護施設の強化その他の警備体制の増強を図っておるところでございます。
  270. 橋本敦

    橋本敦君 私は、現行法制を厳格に運用して、彼らの盲動を徹底的に取り締まるべきだという考え方ですが、今後、いま公団総裁がおっしゃったように、過去の甘さを反省して、警察も全国本部長会議ですか、おやりになって対策を講ぜられる、これは私は労を多としますよ。だけど、これだけの事件を起こして、国際的にも信用を害し、彼らのまるでひどい暴力的な盲動を許したということについて、反省は結構ですが、一応やっぱり政府として責任あるべきところは責任をとるというけじめをつけて、初めて私は問題は真剣に国民的な課題として進むと思います。  そういう意味では、この間ここで玉置委員も警察庁長官当時何しておったと、公舎におって何しておったのだと、一時過ぎに彼らに襲撃をされ、夜七時ごろ、記者会見直前に庁舎に登庁するということで、一体それで責任持てるか、友人として私は辞職することを勧めると、ああいう厳しい指摘もあったのです。国民から見て一体——反省、反省はわかったと、しかし、いままでの甘さ、これについて政府はしかるべきところでしかるべき責任を明確にするということが私はいま必要だと思う。そういう意味において、空港公団は公団として、あの事件を惹起せしめられたことについてどういう点に公団としていままでの点を反省するのか、これはやっぱりはっきり文書で国会なら国会に報告すべきだし、警察も警察当局として、当日の指揮系統、情報収集、部隊配備、その他全般的な体制について反省すべきは反省するという、成田事件についての当日の警備問題について報告書を提出をして、国会に私は出して明確にけじめをつけるべきだと、こう考えております。総裁並びに警察の御意見はいかがですか。
  271. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 私どもとして責任を決して回避するものではございません。従来からのいきさつ、経過等を詳細に調査をいたしまして、責任のあるところについてはひとつ明確に処理をしたいというふうに考えております。
  272. 若田末人

    説明員(若田末人君) 当日の警備状況等につきましては、各種委員会等についてもるる詳細に御報告を申し上げておるところでございますが、ただいま御指摘の点につきましては、上司に報告をいたしまして善処をいたしたいと思います。
  273. 橋本敦

    橋本敦君 最後に、法務大臣、私が質問した趣旨は、はっきり責任責任の所在として政府の責任でけじめをつけましょう、そして今後こういう問題が起こらないように多くの知恵を集めて対策を進めていきましょう、まあこういう趣旨で申し上げているわけです。いま警察並びに空港がおっしゃったように、やっぱりいままでの点を明確にきちっと整理をして反省すべきは反省し、今後の対処に資するというけじめをつけるという立場で法務大臣も——これは法務省責任があって報告いただくという趣旨ではございませんが、閣議では所管官庁はそういう体制をとる、こういうことについて大臣からも御進言いただきたいと私は思っております。政府の姿勢としていかがでしょうか。
  274. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 実は、繰り返すようでありますが、三月二十六日の事件があって、早朝、翌日はたまたま閣議の日でありますが、その前にこの新東京国際空港の閣僚会議を開きました。その際に、どういう事情かわかりませんけれども、総理の方から、この事態に対して法務大臣としての所見を聞きたいということでございました。私はきのうのきょうでございますから——二十六日はテレビで状況を見ておったわけでございます。ただそれだけの経験で所見を述べたわけでございますが、私は、非常に警察も苦心惨たんをして一万三千人も動員をしてやっておる、これはもう一生懸命やっておるわけでございます。空港公団としてももとよりでございますが、しかし起こった状況は、これは結果論でありますけれども大変な間違いを起こしておることは事実でございますから、これについて、先ほど来申し上げておりますように、現行法を完全に施行しておったかどうか、あの場合だけでなくて従来からも、それをまず第一に検討する必要がある。それから真っ先に申し上げたことは、私がその際に、きょう申し上げることはこういう前提で話をしておるのだ、といいますのは、これは当然責任問題があるわけでございますけれども——結果から見ると責任なしとはしない、しかし、この事件であわてて責任の所在等だけを追及していくということは適当でない、むしろこの事態にいかに対応するか、反省すべきところを反省し、いかに対応するかということがまず第一に考えなきゃならぬところだと、そういう前提で意見を申し上げました。  そこで、いま申し上げましたように、警備の状況がミスがあったのではないか、ないのであるかどうか。結果論から言ってミスがあったのに間違いありません。これは情報の収集、従来の反対運動の状況等からそう判断されたのでしょうけれども、だんだん過激になって、あの空港を破砕するというのが目的になってきておるところでありますから、ゲリラ活動に対して警備をすることは非常にむずかしいことでありますけれども、それを想定してやっておらなかったところに裏をかかれたわけでございますから、そういう点について反省をしなきゃならない。それと同時に、あれを防除できなかった点については、まさに現行法を十分に適用してなおかつ防除ができないのかどうか。先ほど申し上げましたように、ああいう事態は断じて許してはならないこと、あってはならないことでございますから、もしそれで足らないというのであれば新しい立法も必要であるかもしれぬが、新しい立法を考える前に、現在ある法律が十のものが十施行されたかどうか、それを十分検討した上でやるべきであると、こういう意見を申し上げておるわけでございまして、全閣僚ともそういう意味で真剣に取り組んでおる、これが今日までの経過でございます。いずれにいたしましても、国内的にも国際的にも非常な失態でございますから、これを次いつ開港するということは後で決まったわけでございますが、とにかくこの国内的、国際的な名誉を挽回して、そして空港を安全にし、航空の安全を図って、世界的にも安心のできるような状態をつくることがまず先決である、今日までの経過における責任はその上のことであると、こういう考え方で今日まで来ておることを申し上げておきます。
  275. 橋本敦

    橋本敦君 その考え方はいいです。だから私が言うのは、刑事処分も一応処分がなされた、そして五月二十日開港ということでいまそれぞれの努力は続けられておる。しかし、あの三・二六についてはいろいろな問題点が明らかになりましたから、その責任がどうであったかという、こういう事実の調査も含めた政府としての責任ある所管官庁の報告を、報告書を作成をして国会と国民に明らかにするという処置をしかるべきときにおとりになるというように大臣から閣議で諮っていただきたいと、公団総裁も警察もそれぞれそういう方向で検討するというお話ですから、そういうことを私申し上げたわけです。その点についてだけ承って、時間が参りましたから終わります。
  276. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) その前に、ちょっと申し落としましたから申し上げておきますが、法律を、現行法を完全に施行する、その上足らなければ立法をお願いしなきゃならぬ、しかし法律だけでああいう事態を防げるものじゃありませんから、空港の施設——私最近の施設は見ておりません、途中で見たことはありますが、空港の施設自体でも——ゲリラなんていうものは法律や警察だけでなかなか対応できない場合がある。でありますから、空港の施設だけでも、少なくとも運航に支障を起こすような重要な部分は施設として相当な程度まで防げる状態をつくっておかなきゃならない、それに足らなければ法律をつくらなきゃいかぬと、こういうことを申し上げて相談をしておるわけでございまして、先ほど来空港公団、運輸省等からもお話がありました。いまそういう意味で空港施設自体に防備の施設をつくると、そういうことでございます。  それから次にお話がありました問題については、この事案の問題を相当整理されました段階で、御要求があれば報告することにいたしたいと思います。
  277. 江田五月

    ○江田五月君 どうも遅くまで申しわけありませんが、私は十分だけお許しをいただいておりますので、簡単に伺いたいと思います。  まず、航空局長に伺ったらいいのかと思いますが、三月三十日の開港ができなかった理由というのは、三月二十六日管制塔が破壊されたからだと考えてよろしいわけですか。
  278. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) そう御理解いただいて結構でございます。
  279. 江田五月

    ○江田五月君 その管制塔の破壊部分の修理はもう終わっておると聞いていいわけですか。
  280. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 当時、四月の十日、遅くも半ばには終わると申し上げました。きょうはもう二十日でございますから、完全に直っております。
  281. 江田五月

    ○江田五月君 この破壊部分というのは、運輸省関係の施設のほかに空港公団の施設も少しあるというお話でしたが、そちらの修理ももう終わっていると聞いていいわけですか。これは総裁の方ですか。どちらでも。
  282. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 両方含めまして済んでおります。
  283. 江田五月

    ○江田五月君 そうしますと、これは先ほども宮崎委員質問の中にもありましたが、鳥が鳴かない日はあっても利息がふえていかない日はないのだというような、そういう関連業者以外にも非常に多くの方々に迷惑をかげながら開港が延びているという側面も、延ばしていることについてはあるわけですけれども、もういまの状況で言えば、三月二十六日の前の状態に戻っていると考えてよろしいわけですか。
  284. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 三月二十六日の前の状態に戻すという意味では、今日完全に戻っております。ただし、ああいった事件にかんがみまして、不測の事態を避けるためにもう一つ念を入れて防備を強化しようじゃないかということになったものですから、その防備強化の工事をやりますと、五月の半ばまではどうしてもかかるということになったわけであります。
  285. 江田五月

    ○江田五月君 そうすると、その三月二十六日前の開港に関する考え方で言えば、もういつ開港しても——もちろんNOTAMとか引っ越しとかいろいろありますが、そういうことを除いてはいつ開港してもいい状態ではあるけれども、その後の三月二十六日の事件その他で、三月二十六日以前に考えていたよりもっと空港の安全を完全なものにしてから開港したいということが五月二十日に延びている理由だと聞いていいわけでしょうか。
  286. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) そう御理解いただいて結構でございます。
  287. 江田五月

    ○江田五月君 そこで、空港の、そうすると安全ということなんですが、安全はこの場合、空港自体の機能の問題と別に、先ほどからの言葉で言えばセキュリティーですか、あるいは過激派等による破壊活動の防止ですか、そうしたようなセキュリティーの問題なんですが、これが一体何によって確保できるのかということなんですが、警備ももちろんありましょう。それは確かに警備もあることは間違いないわけですが、しかし、この警備というのは、たとえば今回の三月二十六日の場合でも、どうも人によっていろいろな考え方はあると思いますが、日本の警察、検察というのは非常にすぐれているわけでありまして決して——結果論から言えばいろいろ反省すべき点はあったろうけれども、事前になかなか万全なことを完全にやるというわけにはいかないので、警備だけじゃなくて、やはりこの空港が必要なんだという一つの法的確信といいますか、国民的な合意といいますか、そういうものが達成されなきゃいけないので、したがって五月二十日まで延びている、あと一カ月あるということは、警備を確実にすることだけのためにあるのじゃなくて、やはり先ほどからいろいろお話の、現地の農民とのいろいろな話し合いをもっと詰めていくとか、あるいはいろいろな反対意見なんかとの間の意見の交換等を十分行って、国民的にどうしても空港が開港されなければならぬのだという、そういう合意をつくっていく、そのための期間であるともあわせて考える必要があるのじゃないかと思いますが、いかがですか。
  288. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) そのとおりでございまして、五月の半ばというのを選びましたのは、まず選んだスタートは防備工事の進捗状況でございましたけれども、しかしながらそれだけの時間を与えられているのだから、単なる物理的な防備の問題だけではなくて、さらに国民に対する理解を深める話、特に地元の農民との話し合いを進めるというふうなことを含めて、それを五月二十日までにやろうじゃないかということが四月四日の閣僚協で決まりました各般の対策要綱の趣旨でございます。
  289. 江田五月

    ○江田五月君 そうしますと、どうもこれもまたいろいろな考え方があると思いますけれども、五月二十日という一つのタイムリミットをつけることにどの程度こだわられるのか。これに余りこだわられるというよりも、むしろこの五月二十日というタイムリミットは、できればそれはそれがいいのだけれども、余りこだわらないのだということの方が地元農民との話し合いを円滑に進めていくためには、ある意味では必要なんじゃないかと思いますが、それでもなおこだわられるのでしょうか。
  290. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 先生御指摘のような考え方も、私、とり得る余地はあると思いますけれども、ただ、政府といたしましては五月二十日に開港するということと一つのパッケージでほかのことも全部決めましたので、それは全部一連のものでございますので、開港だけを他と切り離して論ずるということはできないことになっているわけであります。
  291. 江田五月

    ○江田五月君 空港公団の方は、五月二十日は別に空港公団側がこだわるかこだわらないかという問題じゃないかもしれませんが、農民との話し合いと五月二十日開港ということの絡みについてのお考え、簡単で結構ですが、聞かしていただけますか。
  292. 大塚茂

    参考人(大塚茂君) 私どもの立場からいたしますと、いろいろ先ほどもお話が出ましたテナントの方々に対する御迷惑、その他関連の事業、非常な巨額な投資をしていただいている方々に対する関係、そういうふうなものも考慮に入れ、さらに警備の防護施設の強化というもの等を考えて、やはり五月二十日ごろはぜひ開港していただきたい。その間にできるだけ農民の方々との話しも進めたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  293. 江田五月

    ○江田五月君 大臣に伺いますが、私はやはり警備の問題というのは、基本的には国民の中でどれだけ空港の必要性について合意があるかという問題だろうと思いますし、そしてその合意ということに関しては、どうもこの三月三十日が近づくに従っての、三月の半ばから終わりごろの一つの政治的な雰囲気といいますか、ムードというのが非常に何か暗いムードというか、陰うつな感じになっていたのじゃないかと思うのです。この成田国際空港はいろいろな意見があることは確かですが、何もこれを一つのてこにしていまの体制の転覆をねらうとか、そういうことばかりじゃなくて、そういう人はむしろ本当の少数派、本当のごくごく少数派であって、そうじゃなくて、この空港の機能であるとかあるいはこの空港の選び方、決め方、つくり方、それから関係する農民の方々との話し合い、そうしたことについて疑問がありながら、何か本当にいい国民的な合意ができることが必要だと思いながら、そういうことができないままずっと事態が進行していくことについて、政治に対する無力感といいますか、政治不信といいますか、そういうものがだんだんつのってきて、こうなった以上とにかく政府がやるっていうのだからやらしてみなきゃしようがないじゃないかというようなことであきらめ的に三月三十日開港を認めるというような空気が広がっていたというような感じがするのですが、この三月二十六日の事件というのは確かに非難されなきゃならないし、これに対して私どもも国会の決議に賛成したわけですけれども、同時にこの非難すると同じ程度だけ、やはりこの事件で開港が延びて、そしてもう一度議論がオープンの場に置かれたということについて、私たちはこれまでの政治の無力さというものに対し十分反省をしていかなきゃならぬ、そういうことをこれは示しているのじゃないかと思うので、別に法務行政の責任者としての大臣じゃなくて、国務大臣としてあるいは政治家として今後パイプラインの問題とかあるいは二期工事の問題とか、さらに羽田の拡張とこの成田空港との関係の問題とかを考える際に、十分もっと国民的合意を取りつけるためのいろいろな努力が必要なんだということを、この事件が私たちに反省として教えているのだという気がするのですが、いかがでしょうか。
  294. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 空港をめぐる、いまパイプラインその他のお話がありましたが、そういうまだ若干の問題も残っております。しかし空港の安全、その運航の面については先ほど航空局長からも御説明いたしました。何事も努力をしなければ、ほったらかしはこれは万全なものはできませんから、その点は心配なく運航ができるということでございます。ただ、こういうことを私ども考えておるわけでございまして、昭和四十一年七月にこれを、空港をつくらなきゃならない、こういうことに決定いたしまして、今日に至って相当おくれたわけでございますが、御承知のようにわが国の国際空港はいま羽田が日本の玄関となっておりますけれども、これは国内線と併存しておるわけでございます。諸外国のいわゆる国際空港に比べるともう何分の一の施設しかない。そこで非常に国際交流の盛んな時代に入っておるのは御承知のとおり。非常な危険を感じながらいま羽田空港を使用しておる。国内線などは上空に来ても着陸を非常に待たなきゃならない。非常に薄氷を踏むような気持ちで、まあ今日まで大事故はなかったわけでございますが、そういう状態を早く解消しなきゃならない。一日も早く別に国際空港をつくって、そういう危険な状態を解消しなきゃならない。ここからきておるわけでございまして、三月三十日ですか、非常に楽しみにしておったわけでございますが、ああいう事態になった。でありますから、先ほど航空局長も言いましたように、実は管制塔の機器が直ったら、それで空港の機能が回復する、そこで速やかにという意見もありましたけれども、いま説明がありましたように、もう少し物理的な防護施設等も考える、こういうことで諸外国に対して理解を深める。それから地元の農民等についてももっと努力をして理解を深める。これは国民全体に対してのことでございますが、そういうことを可能な限りのことをして、施設だけの物理的な安全だけじゃなくて、いわゆる気分としての安全感を持つ余裕をも持たなきゃならない。それが五月の二十日と、こういうことになっておるのでありまして、何もかにもしゃにむにという考えではございません。一方においては、重ねて申し上げますが、非常な危険な状態で羽田空港を使っておる、こういう事情があることも御理解をいただきたいと思います。
  295. 江田五月

    ○江田五月君 時間がありませんから、もうこれで終わりますが、最後に二点だけ小さな点をちょっと聞いておきます。  宮崎委員質疑の中で航空局長が成田空港上空の乱気流が起こる——乱気流といいますか、飛行機の航行に危険な程度の風が吹く可能性は〇・一%、二十四時間とれば〇・一%、そして飛行場の使用は午前六時から午後十一時までであるから、それを考えると〇・一%という確率はさらに小さくなるとおっしゃいましたが、ここは論理的につながらないことになりませんか。つまり〇・一%の危険な気流が午前六時から十一時の中に全部入っておればもっと確率上がるわけじゃありませんか。
  296. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 成田空港を二十四時間運航をしているとすれば〇・一%という確率が全部効いてくると思うのですけれども、二十四時間運航をしているわけじゃありませんから、何といいますか、べースとしてそのべースが変わってくるので、その分だけ私は安全サイドの方に傾いてくると思ったわけですけれども、もともとが〇・一という数字議論すること自体が余り私意味があることだと思っておりませんけれども、しかし、ぎりぎりの横風成分というものを計算すれば〇・一ということでございまして、余りにも小さ過ぎるものですから、〇・一ということはほぼ完全に近いような形なんで、実は余りそれを私たち振り回すつもりございません。やっぱり〇・一という横風で危ないぞというその計数に至る以前でも、つまり横風用滑走路があればもう横風用滑走路を使った方がベターだなあという風向きもあると思うのであります。したがって、私どもは一日も早く横風用滑走路をほしいと思いますけれども、ただ、ぎりぎり航空会社の運航規程で横風のときに着陸しちゃいかぬという限界点で議論すれば〇・一%ということになるわけでございます。
  297. 江田五月

    ○江田五月君 そういうことじゃなくて、もうちょっとささいなことで〇・一%というのは二十四時間分の何分ということになるわけでしょう。ですから、その何分が午後十一時から午前六時の間に入るなら〇・一%というのはますます小さくなるのだけれども、そうじゃなくて六時から十一時の間に入るならば〇・一よりもパーセンテージは大きくなるのじゃないでしょうかということだけ聞いているのです。
  298. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) これは〇・一というものが出てきました基礎を御説明しないといけなかったわけでありますけれども……
  299. 江田五月

    ○江田五月君 簡単に。
  300. 高橋寿夫

    政府委員(高橋寿夫君) 気象台の分室があすこの現地にございまして、そこが一時間に一回、一日二十四回風向きをはかったわけです、三年間。それの、平均値が〇・一%ということであったわけでございます。
  301. 江田五月

    ○江田五月君 それと、警備課長、伺いますが、これも言葉をお足しになった方がいいのじゃないかと思うのですけれども、先ほどやはり宮崎委員からの質問の中で、三月二十六日前、団結小屋等について予防のために捜索をされたとおっしゃったのですが、それでよろしいのですか。
  302. 若田末人

    説明員(若田末人君) 現実には、その罪のいろいろな証拠収集のためにやったわけでございます。
  303. 江田五月

    ○江田五月君 終わります。
  304. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十五分散会      —————・—————