○
最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 審理
状況について……。その前にちょっと、先ほど申し上げた統計を五十二年の一月と申しましたが、ミスプリントで五十二年の十二月末でございますので、ちょっとここで直しておきます。
それでこの審理
状況というものにつきましては、これは各それぞれの
事件、それぞれの
裁判所でいろいろ
事情、
状況、様相を異にいたしますので一概には申し上げられませんが、たとえば先ほど
地方裁判所の中で東京と千葉とが一番多いと申し上げましたけれ
ども、東京で申し上げますれば、有名な連合赤軍の
事件であるとかあるいは
企業爆破の
事件であるとかいうのがいろいろな
事情で必ずしも円滑に審理が進んでいないと。それから千葉でも同じようなことがございまして、なかなか審理がスムーズに進まない。それをもう少し詳細といいますか具体的に申し上げますと、いわゆる過激派と申しますか、こういう学生
事件なんかの
裁判におきましては、
裁判のおよそ始まりから判決に至るまでの間、ことごとく争いの発生する余地があるわけでございまして、最初はそもそも統一公判、全部一緒に
裁判しろという問題がございます。それからその次は期日をどれくらいか、期日の指定。それが月一回しか受けられないとか、いやそれじゃ困るから四回にしてくれとかいうふうな問題。それから今度はやっと期日を開きますと、そうすると法律では人定尋問といいますか、被告人がだれかれであるかを確めた上で手続を進めることになりますが、そういうことをする前に
発言させろと、
事件の本質についてあるいは背景について
発言させろというふうな問題、それを許す許さぬというふうなことがあります。それから
起訴状の朗読に入ります。そうすると
起訴状の朗読をさせまいということでいろいろな
発言をして押しとめようとする。それを静止して最後には結局退廷させるというふうなことをいたしますと、今度は弁護人も出ていかれるというふうなことがありますが、いずれにしても、そういう
起訴状の朗読の問題。それから今度は読んだ
起訴状の釈明と申しまして、その
内容はどうかというふうなことをいろいろ聞かれるわけでございますけれ
ども、この場合にも釈明の個々の、
一つ一つ釈明を求めて、それに対する
一つ一つの返答を求めるという形でやるか、あるいは一括して全部この
起訴状についてはこれだけのことを聞きたいというふうなやり方で一括してやるかというやり方の問題でございます、釈明の。そういうことで問題になる。それから被告人と弁護人との冒頭の意見陳述がありますが、それの被告
事件についての意見陳述の
内容それから長さ、こういったもの。それから
証拠調べの範囲、順序。まあ途中で
裁判官かわりますれば公判手続の更新。いろいろな点でもう皆問題になってくるわけでございまして、とにかく公判手続の更新なんというものがどうして問題になるかというふうにお考えになるかと思いますが、たとえば公判手続が更新、
裁判官がかわりますから、かわって出てくるときに、被告人が、これはまあ千葉の例でございますが、何十人といると。それで被告人に、じゃ自分が今度
裁判官にかわったから、一人一人だれがどうか確かめよう、ちょっと前へ出てくれと、こう言いますと、出てこないわけです。じゃしようがないから、そこにいるままでいいから、名前は、と言うと、せせら笑ったような顔して返事もしない。
裁判官、しようがないから
検察官に、あれはだれですかと、こう聞くと、そうすると
検察官が写真なり何なり手元にあるもので、あれはだれそれですと。そうかと言い、それでだれそれだなということで進めるわけです。ところが中には
検察官もわからないのがいます。月に一回ずつぐらい何十人も来ているとわかりませんわけです。わからない。で、弁護人に、あれはだれですかと。それもわからない。それじゃしようがないから、だれがいるのかわからない、出ていってもらおうと。そうすると退廷、出ないと言う。そこでごたごたが始まる。それで手続の更新といいますか、今度改めて私がやるから、じゃ新しくやりますよということの始まりをつくるのに二時間か三時間かかかるというふうな
事情があったようでございます。そんなのは一例でございますが、そういったようなわけで、
裁判に至るまでことごとに問題にしようとすればなりますし、そのときそのときの
状況で問題になるわけであります。まあそれは審理そのものでありますけれ
ども、それからそのほか、たとえば法廷に被告人が入る場合に、在宅ならばあれでございますが、身柄を拘束されておりますと、そうするとどうしても看守が入ってくるわけです。一人の人間が暴れますと、そうすると一人の人間に対しては看守二人以上、少なくとも三人ぐらいはいないと押さえ切れないということがありますので、それでかなりの看守が入ってくる。そうすると、その看守が多過ぎるから出せとか、それから看守の座る
場所がいかぬとか、そういう問題。それから、今度は傍聴人なりなんなりがヘルメットをかぶって入ってくると、それをつけちゃいかぬ、そんなことしちゃ入れないとか、まあ
裁判をめぐるそういう準備の
関係。そういったものについていろんなトラブルが起きまして、これはもちろん全部の
事件について全部ずうっとあらわれているわけじゃなくて、ある
事件ではここで問題になる、ある
事件ではここで問題になるということでございますけれ
ども。で、そういうトラブルが起こった場合に、まあ
裁判所が、一応いろいろあるだろうがこうやるというふうに言って、それに従ってもらえばよろしいわけでございますけれ
ども、それがなかなか聞かれないということで、それで結局その日の審理はできないというふうなことがあったわけでございます。
そういうような
事情がいろいろございますけれ
ども、しかし
裁判所としてはできるだけ
努力をしていかなくちゃならないということで、各
裁判所でできるだけ
事件を進めるようにやられておるわけでございますが、その結果どうかと申しますと、たとえばいま一番端的にわかりやすいのは千葉だと存じますが、千葉の成田
事件で、
昭和四十三年から五十三年までの間に、大体大まかに申し上げまして約六百名、五百七十三名の人間が
起訴されているわけでございます。これは
事件の数え方が、一人の人間がこれで
起訴され、それからまた追
起訴でくるとそれを二件と数えるか一件と数えるか、いろいろございますから、多少数字に合わないところがございますが、実人員ということでまずつかまえてみますと、いままでで
起訴されたのが、成田の例の鉄塔の工事の着手、それから鉄塔の
民事訴訟による撤去、この間ございました刑事
事件による差し押さえ、捜索、こういった
関係で五十三年の二月二十八日までに
起訴された者が実人員で五百七十三名、そのうち終局になりました者は百三十八名でございます。この百三十八名のうち、大体百名ぐらいの者はこれは一審で、反省組と申しますか、これで自分は悪かったというようなことで、単独の方に分離されて終わった者でございまして、それで、争うと言っている者は約三十名ほど終わっただけでございまして、その残りは、ですから五百七十三のうち百三十八名は終わって、四百六十八名という者がこれがまだ係属しておるわけでございますが、――四百六十八、間違えました。これ延べで、実人員は四百三十五名でございます。四百三十五名のものが係属しておるわけでございますが、これがどういう
状況にあるかと申しますと、この中で期日の未指定の者が四十四名ございます、期日が決まってない者。それから、冒頭手続がまだ終わってない、
つまり証拠調べにまだ入ってない最初の
段階でございますが、それが百五名、それから
検察官が立証中の者が二百八十四名、それから論告弁論の
段階に入った者が二名という
状況でございます。以上、ごく大ざっぱに申し上げましたけれ
ども……。