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1978-03-23 第84回国会 参議院 法務委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十三日(木曜日)    午前十時四分開会     ―――――――――――――    委員異動  三月二日     辞任         補欠選任      内藤  功君     宮本 顕治君  三月十三日     辞任         補欠選任      高橋 誉冨君     塩見 俊二君  三月二十三日     辞任         補欠選任      小谷  守君     上田  哲君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         中尾 辰義君     理 事                 八木 一郎君                 山本 富雄君                 寺田 熊雄君                 宮崎 正義君     委 員                 大石 武一君                 上條 勝久君                 初村滝一郎君                 藤川 一秋君                 丸茂 重貞君                 阿具根 登君                 橋本  敦君                 円山 雅也君        発  議  者  宮崎 正義君    国務大臣        法 務 大 臣  瀬戸山三男君    政府委員        法務大臣官房長  前田  宏君        法務大臣官房司        法法制調査部長  枇杷田泰助君        法務省民事局長  香川 保一君        法務省刑事局長  伊藤 榮樹君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   大西 勝也君        最高裁判所事務        総局刑事局長   岡垣  勲君    事務局側        常任委員会専門        員        奧村 俊光君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○集団代表訴訟に関する法律案宮崎正義君外一  名発議) ○裁判所職員定員法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付)     ―――――――――――――
  2. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告をいたします。  去る二日、内藤功君が委員辞任され、その補欠として宮本顕治君が選任されました。  また、去る十三日、高橋誉冨君が委員辞任され、その補欠として塩見俊二君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 集団代表訴訟に関する法律案議題といたします。  発議者宮崎正義君から趣旨説明聴取いたします。宮崎正義君。
  4. 宮崎正義

    宮崎正義君 ただいま議題となりました集団代表訴訟に関する法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。  欠陥商品やみカルテルによる価格引き上げ等の一企業または数企業違法行為によって無数消費者損害を受けているという現実があるにもかかわらず、現行民事訴訟制度は、原則的には、一対一の対等な当事者間の紛争解決することを念頭に置いて紛争解決するための手続を定めているにすぎないから、このような原則に基づく現行民事訴訟制度のもとでは、一対無数すなわち企業無数消費者民事紛争解決しようとしても、その訴訟追行は事実上不可能であります。すなわち、今日の消費者問題は、訴訟を通じては事実上解決できない状況にあります。これは、法制度が社会の進展に即応していないからでございます。  すなわち、第一に、消費者各人損害額少額であるとしても、集団としての消費者損害額は巨額になると思われます。消費者集団のこの巨額な損害賠償企業に対して請求することができる訴訟制度確立することなしには、社会的経済的公正を確保することはできないのであります。  第二に、企業消費者との間には訴訟行能力及び訴訟費用負担能力の不均衡があるにもかかわらず、現行民事訴訟制度のもとでは、これを対等な当事者として取り扱っているため、訴訟による権利救済の方途はきわめて厳しい現実にあります。この現実を打破して、実質的に対等な当事者としてみずからの権利を行使できる訴訟制度確立しなければならないと思います。このような訴訟制度確立なしには、消費者主権は、裁判によって保障されない眠れる主権、幻の権利に終わらざるを得ないのであります。  第三に、企業違法行争による無数消費者損害は共通の原因によって発生し、またその損害額も一般的には定型化する傾向があります。このような実体について、消費者各人の訴えの当否を個別的に審理することは訴訟経済観点からもむだだと思います。また、企業違法行為によって発生した損害賠償をめぐる紛争は、事実上は企業無数消費者紛争と思いますので、その紛争解決は、消費者集団企業との間で包括的に解決することが望ましいと思います。  われわれは、消費者主権確立のためには、このような困難を克服して、民事訴訟制度が真に機能する制度確立しなければならないと思います。  以上の観点から、非訟裁判による訴訟信託設定方式を採用することにより、消費者代表者消費者集団全員のため企業に対して提起する損害賠償一括的請求目的とすると訴え、すなわち集団代表訴訟を可能にするためのこの法律案を提出いたした次第でございます。  以下、この法律案内容たる集団代表訴訟制度の仕組みにつきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず第一に、申し立てに係る共同の利益を有する著しく多数の者の少額債権について集団代表訴訟による紛争解決が適当であると認められる場合に、非訟裁判により、除外申し出をしない限り債権を一括して訴訟目的とするための信託設定されたものとすることができるようにいたしております。すなわち、集団代表訴訟を追行させるため、除外申し出をしなかった少額債権者たる委託者から少額債権者代表者たる受託者当該債権信託的譲渡されたものとする信託であります。なお、少額債権者権利を保護するため、信託設定については公告するほか、非訟裁判所代表者たる受託者を監督するようにいたしております。  第二に、集団代表訴訟におきましては、職権証拠調べを採用するほか、重要な訴訟行為につきましては、非訟裁判所の許可を要するものといたしております。なお、欠陥商品やみカルテルによる価格引き上げ等に係る少額債権者全員損害総額の算定につきましては、推定規定を設けております。  第三に、各少額債権者は、受益者として、代表者たる受託者に対し、勝訴判決の最初の公告の日の翌日から二年以内に通知することにより、その債権の満足を得ることができるようにいたしております。なお、請求してこなかった債権者の分は、国庫に帰属するようにいたしております。  第四に、代表者たる受託者集団代表訴訟の追行等に関して必要な費用につきましては国庫による裁判費用等の立てかえ・支払猶予制を置くほか、そのほかの事務費用を含めて集団代表訴訟により得た財産をもって充てることといたしております。なお、敗訴等の場合にも最終的に受託者負担となることのないように、交付金を交付することといたしております。  以上がこの法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願いを申し上げます。
  5. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 以上で趣旨説明聴取は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることといたします。     ―――――――――――――
  6. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明聴取いたします。瀬戸山法務大臣
  7. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 裁判所職員定員法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所職員員数増加しようとするものでありまして、以下簡単にその要点を申し上げます。  第一点は、裁判官員数増加であります。これは、地方裁判所における特殊損害賠償事件会社更正事件及び差しとめ訴訟事件の適正迅速な処理を図るため、判事補員数を八人増加しようとするものであります。  第二点は、裁判官以外の裁判所職員員数増加であります。これは、地方裁判所における特殊損害賠償事件及び会社更正事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所書記官員数を五人増加し、また、地方裁判所における特殊損害賠償事件会社更正事件及び差しとめ訴訟事件家庭裁判所における家事調停事件並びに簡易裁判所における民事調停事件及び道路交通法違反事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所事務官員数を五人増加しようとするものであります。  以上が裁判所職員定員法の一部を改正する法律案の要旨であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますよう、お願いいたします。
  8. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 以上で趣旨説明聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  9. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 本案質問に入ります前に、最近新聞紙上をにぎわしております東山薫氏の事件について少しく質問をいたしたいと思います。  この事件結末は、私どもにとって非常に意外な結末であったわけです。警察官のこの種の問題が生じました場合に、警察官を特定して起訴したというような事例が余りありません。何となくいままでのように警察官に対する不起訴処分という結果になるのではないかという予感は私どもあったのでありますが、しかし、今回の結末というのはきわめて意外な結末であったわけです。  この事件被害者である東山薫さんの死因については、千葉大学医学部木村康教授鑑定がありまして、私もこの鑑定書のリコピーを大体入手して見たのでありまするが、ほぼ新型ガス弾による傷害を受けたということが、大体起訴せられました場合に裁判所が認定するに支障のない鑑定結果であったように思うのでありますが、その鑑定が採用せられずに、別個の鑑定、これと異なる鑑定の結果が採用されたということが新聞紙上報道せられておるわけであります。  そこでお伺いいたすのですが、この木村鑑定と異なる鑑定というものについて、マスコミによりますと、東海大の斎藤銀次郎教授鑑定がそれであるということが報道せられております。また、その鑑定結果というのは、投石による傷害と、そういう鑑定結果を出しているということも報道せられておるわけでありますが、大体この事実は間違いないのでしょうか、まずお伺いしたいと思います。
  10. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) ただいまお尋ね事件につきましては、当初、御指摘のように千葉大学教授木村康博士鑑定をお願いしたわけでございますが、現場のその他の関係証拠と符合しない部分があったりいたしましたために、改めまして、現在東海大学教授、元慶応大学教授であられました斎藤銀次郎博士に再鑑定をお願いいたしました。また、別途、兵庫医大教授、この方は現在大阪大学名誉教授でもあられるわけでありますが、松倉豊治博士のつくられました意見書、これも検討いたしました結果、御指摘のような結論を出したものでございます。
  11. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その兵庫医大松倉さんという方の意見書ですか、これはどういう経路で検察庁が入手なさったのでしょうか。
  12. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 現在この東山さんの関係の方から国に対して損害賠償請求民事訴訟が起きております。その民事訴訟に応訴いたしますために千葉県警が依頼をしまして意見書というものをつくってもらいまして民事裁判の方に提出したということを検察庁で聞きまして、そのものを取り寄せてそして捜査に役立てたと、こういう状況でございます。
  13. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その松倉意見書と、それから検察庁職権で委嘱された結果入手なさった斎藤教授鑑定結果とは同一結論になっておるわけですか。
  14. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) ほぼ同一結論でございます。
  15. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 刑事局長の御説明によりますと、木村鑑定現場関係証拠と符合しないということでしたね。そうすると、その符合しないというのは、いろいろわれわれ職務上の経験から判断をいたしますと、一番大切なものは東山さんの近くに新型ガス弾を持った警察官がおったかおらなかったかということが一番関係があるように思いますが、それはおったという証拠があるのでしょうか、あるいはおらなかったという証拠によったものですか、どちらでしょうか。
  16. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 端的に申し上げますと、例の俗に言われます野戦病院のそばで東山さんがスクラムを組んでいたときに受傷したものというふうに認められるわけですが、その付近において新型ガス弾が発射されたという事実がどうもないということも一つ状況としてあったわけでございます。
  17. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 刑事局長、非常に専門の御関係上慎重な御発言があったわけですね、いま。新型ガス弾が発射せられた形跡がないという表現をとられたのですが、それは新型ガス弾を持った射手がそこにいなかったということを意味するのですか、いやおったけれども発射されなかったというそういう意味でおっしゃったのですか、どちらでしょうか。
  18. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 何しろ三月二十日の処分でございますので詳細な部分を私聞いておりませんが、私の従来受けておりました報告を思い出してみますと、新型ガス弾発射装置を持った者がその付近にはいなかったということであったと思います。
  19. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 私も恐らくそういうようなことが今回の検察庁のとられた結論の前提になっておるというふうに想像しておったわけです。なるほど新型ガス弾を持った射手がそこにいないということになりますと、それは検察庁のとられた結論が妥当であったということにならざるを得ないと思いますが。ただ客観的に本当におらなかったのか、まあ想像したくないことであるけれども警察がそこにおったにもかかわらず、おらないといってそれを秘匿してしまったのではないかという、そういう想像も全く不可能というわけではないのですね。これは大変したくはない想像だけれども、私どものいままでの職務上のさまざまな経験からそういうこともあり得ないことではないと考えるわけです。その点は、検察庁におかれてはやはり警察関係の人々の証言をもとにしてそういう結論をお出しになったのでしょうね、おらなかったというふうに認定なさったその根拠は。
  20. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) もちろんこの事件では警察官も約二百五十名調べておりますが、そのほかのいわゆる反対同盟関係方々も御協力いただきまして数十名調べさしていただいておりまして、それらの方の供述、現場写真、こういうようなものをしさいに吟味をして結論を出しておるようでございます。
  21. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは私どもとしましては多分に疑いが残りますし、恐らく検察庁のそうした職務遂行歴史といいますか、そういうものの歴史の中で一つのクエスチョンマークを打たれる事件ではないかというふうに考えられるのですけれども、私どもも客観的な証拠がなしに単純なる職務上の経験からする推定だけで余り質問をするということもどうかと思われますので、きょうはこの程度にこの事件についての質問は打ち切っておきたいと思います。しかし、これは後日にもさらにまた検討をしなければいけないと私どもは考えておるわけです。  その次の甲山学園事件についてお尋ねをしたいのですが、神戸地方検察庁が西宮市の児童福祉施設である甲山学園ですね、これの保母である山田悦子という人、これを今月になって起訴をなさったようですね。これは恐らく罪名は殺人であろうと思いますが、殺人あるいは死体遺棄が伴うのでしょうか、これは新聞紙上で見た限りにおきましては、事件が四十九年三月の事件である、そして、かつて山田は四十九年の四月七日に逮捕され二十日間の勾留を受けたということも聞いておるわけです。これは刑事局長間違いないでしょうか。
  22. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) ただいまマスコミ等甲山事件といわれております事件にりきましては、御指摘のように昭和四十九年四月に現在の山田悦子、当時沢崎悦子逮捕いたしまして二十日間勾留の後処分保留のまま釈放しておりましたところ、その後昭和五十年九月になりまして不起訴処分に一応いたしましたところ、神戸検察審査会で不起訴不当の決議がございましたので、事件を再起した上神戸地検で鋭意捜査中でございましたところ、新たな証拠が得られる等の事情がございまして、今回再び山田悦子殺人罪で身柄を拘束いたしまして、本年三月九日、死体遺棄はございません、殺人罪として神戸地方裁判所起訴しておる次第でございます。
  23. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 前回、つまり四十九年の四月中に逮捕され、二十日も勾留されたということになりますと、今回の逮捕勾留というものは当然新しい証拠がなければいけない。これは学説もあり、下級審の判例でも大体決まっておるようですけれども、その新しい証拠というのは、これはどういうものなんでしょうかね。これは裁判官予断を持たしてはいけないということ、よくわれわれ承知しておるのですが、その予断を持つということに至らない程度で結構ですから、どういう――概括的な説明でも結構だから御説明いただきたいと思います。
  24. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) はなはだお答えのむずかしい御質問でございまして、要するに新たな人証物証が出てきたと、こういうことでございます。
  25. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ただ、物証という御説明もありましたが、新聞紙上で見る限りは新たな物証というのは何やら保母の被服についていた、その殺害されたと思われる児童の衣服の繊維のようなものがついておったと、そういうことのようでしたが、それは前の逮捕勾留のときにもあった証拠なんじゃないでしょうか。  それから人証という御説明がありましたが、この人証というのも、やはりこの事件関係者と言っては変だけれども、この事件現場に近接したあるいは関連した場所に存在した、そういう人の証言でしょう。
  26. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) そういうことでございます。  ちょっと御説明申し上げますと、昭和四十九年当時の捜査段階で、いろいろな諸般の状況から御協力いただけなかったような方々がおられたわけでございますが、そういう方の御協力が今回得られるような状況になっておったというようなこともございまして、そういう意味で新たな人証というものが相当数得られたようでございます。
  27. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 刑事局長の御説明によりますと、確かにその関係者あるいはその場所に近接したところにおる人、その人物の協力が得られなかったというのですが、ただ、いまの御説明によりますと、事件の起きたのが四十九年三月中でしょう。山田逮捕されたのは四十九年の四月七日ですから、事件が起きたのは三月の十七日と十九日、逮捕されたのは四月七日、そういたしますと、事件が起きて十八日ないし二十日の間に逮捕があったわけですね。ですから、協力が得られなかったということだけれども、もうちょっと協力を得るのに努力をすべきだったのではないでしょうかね。これはやはり自白偏重というか、ともかく逮捕して自白させればいいという従来の、これは検察庁警察かそこのところはわかりませんが、東京などは逮捕するのも警視庁がことごとく検察庁に必ず合い議をしてからやることに伝統がなっておるということを、私ども友人検察官から前から聞いておるのですが、この場合は独立捜査権ということで警察検察庁と十分な打ち合わせがなしに逮捕しちゃったのか、あるいは検察官も合い議を受けて同意して逮捕したのか、その問の問題がありますね。それは別として、わずか二十日ぐらいの間に協力が得られないからといって、努力して協力を求めておったならばいま新証拠といってさらに再逮捕しなくても済んだものを、あわててそれを逮捕したために不起訴処分で釈放したと、それをさらに再逮捕するという不手際が生じたのではないかという疑いがありますね。その点どうでしょうね。
  28. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 確かにいまから振り返ってみますと、四十九年当時にもっと一生懸命あらゆる方策を尽くして、そういう今度新たにわかったような証拠を当時集めておけばよかったと、そういう点反省させられるわけでございます。しかしながら、四十九年四月当時の事情と、それから今度再捜査を開始しました昭和五十一年十二月以降の事情と、その間の二年半の歳月の経過というものが、甲山学園をめぐるいろいろな状況に変化をもたらしまして、これまで協力を得られなかった人が、今度捜査を再開してみると協力してくださったと、こういうふうな事情もあったようでございまして、反省点反省点としてかみしめなきゃならぬと思いますが、事情はそういうことでございます。
  29. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それは法務大臣のやはり高い見地からの指導が必要だと思うのですね。この事件が果たして警察独立捜査権ということで検察庁に合い議をしないで逮捕しちゃったか、あるいは合い議は一応形式的にしたかもしれないけれども、強い意欲で走ってしまって、検察庁はそれをあえてとめなかったという程度にとどまるのか、そういういきさつは私にはわかりません。  何にいたしましても今回は捜査協力してもらったという、そういう関係者であるならばもうちょっと努力をすれば、つまり二十日間の間に協力を得られなかったからもうだめだとあきらめちゃって、そういう人的な証拠を十分に整備しないままに逮捕勾留に突っ走ってしまった、それは自白偏重捜査方針、それがその根底にあるように思いますね。これはまあ法務大臣も非常に豊富な御経験をお持ちでいらっしゃるので、しかもいろいろな立場での御経験をお持ちですからしてお考えがおありになると思うのですが、いかがでしょう。
  30. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) この事件の再逮捕するに至るまでの概要は、いま刑事局長から申し上げたとおりのようでございます。実は私も新聞報道山田何がしの再逮捕起訴、こういう報道を見まして、正直なところ異様に感じたわけでございます。そこで、事は人権にも関係することでありますし、また、検察に対する国民の信頼の問題にも重大な関係があります。そういうことで早速刑事局長いきさつをただしたわけでございます。いま概要を申し上げた状況でございますが、ここで細かく申し上げることは差し控えさしていただきますけれども、二年前の捜査段階においてはやはり甲山学園をめぐる状況がきわめて複雑と申しますか、異様な状況であった。いま寺田さんがおっしゃるような周到な捜査が残念ながらできなかった状況にあったようでございます。その後二年ぐらい経過いたしまして、その状況が相当変わっておるようでございます。そういう関係から、先ほど申し上げましたように検察審査会からのお話もあり、再調査をして、新たな確証を得たと、これは検察段階でございますが、そういうことで起訴に踏み切ったと、こういう事情でありまして、いまおっしゃるように、考えますと、御指摘のような遺憾な点もあったと思いますけれども、いまここで細かく申し上げませんが、そういうような前の段階ではなかなか捜査が周到にできないような事情の環境があった、こういう点を私は説明を受けまして、まあ事件の真相を明らかにするためには今回の措置はやむを得ない措置であったと、かように看取しておるわけでございます。
  31. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 まあこれを教訓として、独立捜査権と言いましても法律的な素養にかけては警察官検察官との間には明らかに差異がありますし、ことに人権尊重というような面においても差がありますし、これは大臣でも刑事局長でも結構ですけれども、第一線の検察官警察官と常時接触を保って指導していく、その努力を今後お約束願いたいと思いますが、いかがでしょう。
  32. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 御指摘の点はまことにそのとおりでございまして、御承知かと思いますが、検察警察のあり方につきまして関東と関西で若干趣を異にしておる点がございます。そういう点も踏まえまして、ここ数年来諸般の検事の会同がありますごとに大臣からも御訓示いただいておるわけでございますが、それぞれの検察官は管内に起きました重要事件につきましては発生と同時に周到な注目を払いまして、警察に対して積極的に指導、助言をするということを励行するように、いま大臣からもおっしゃっていただいておりますし、私どもからも言っておるわけでございます。したがいまして、ここ数年の間に県警関係はわりあいそういう点ではうまくいくようになったと自負しておるわけでございますけれども、今後ともそういう点について、事人権等にも関しますので、さらに徹底さしてまいりたいと思っております。
  33. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大臣いかがですか。
  34. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 寺田さんから御指摘のような点は、いま刑事局長申し上げましたように十分注意することだと思います。
  35. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 刑事局長もう一つ、これは法曹協議会の問題は刑事局長関係ないかしら、私はこれを落としておったから……。  私ども、日弁連の役員をいたしたことがあります。単位弁護士会の会長という地位にありますと、当然に日弁連の理事になりますから、そういう面で日弁連の理事会等で法曹三者協議会、これに対する期待ですね、これは非常に大きかったわけです。と同時に、国会もこの問題については非常な関心を寄せております。昭和四十五年四月、第六十三国会におきましても、当時の小林国務大臣、小林さんが法曹三者の協調、協力という点について努力するということをお約束しておられますし、また参議院法務委員会において、裁判所法の一部改正法を議決いたしましたときに、附帯決議として、今後司法制度の改正に当たっては法曹三者、裁判所、法務省、弁護士会の意見を一致させて実施するように努めなければならないという決議がなされております。さらに、四十六年の三月二十六日、民事訴訟法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議におきましても、その第二項に「政府及び裁判所は、司法制度の改正にあたり、在野法曹と密接な連絡をとり、意見の調整を図るように努めるべきである。右決議する。」という附帯決議がなされておるのであります。私どもとしましては、いずれはこの委員会にも付議されるでありましょういわゆる刑事訴訟法の特例法ですか、この問題に関して、当然この問題が論議の対象になるだろうと思いますけれども、これが一体四十五年あるいは六年以降どの程度実施されておるのだろうかという点に非常に疑問を持つわけでありますが、これはその運用の状況を法務省と最高裁判所事務総局、双方から御説明をいただきたいと思いますが。
  36. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) ただいまの国会の附帯決議をもとにいたしまして、昭和五十年の三月に法務省、最高裁判所及び日弁連の三者の協議会が発足したわけでございます。以後、大体毎月一回定例的に協議の機会を持つということで運営をいたしておりまして、現在まで二十数回開かれておる状況にございます。
  37. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) いわゆる三者協議の現在までの経過でございますが、ただいま司法法制調査部長からお話がありましたとおりでございます。
  38. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 刑事局長、結構ですよ。  いまの枇杷田さんの御説明ですね、これは何か毎月一回ということだったけれども、いままでに二十数回というと、四十五年、四十六年からだと、合わないでしょう、計算が。これはどういうことなんでしょうか。
  39. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) ただいま申し上げましたように、実際に発足いたしましたのが昭和五十年の三月からでございまして、それまでの間、その附帯決議をどのように生かして協議会をつくるかということの、いわば入り口のところでいろいろな話し合いが行われた結果、やっと昭和五十年三月に発足をしたというのがどうも経過のようでございます。
  40. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 入口のところでもめておったということですね。それで、大体この法曹三者の協議、いままで二十数回開かれたというのだけれども場所はどこでやっていました。
  41. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 会議の場所は、法務省の会議室あるいは法曹界の会館などを会場に使っております。
  42. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 会議に出席する人はどういう人でしたか。
  43. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) これはそのときによって必ずしも一定いたしておりませんけれども、法務省側は、大体レギュラーメンバーと申しますかは官房長、それから司法法制調査部長、それから秘書課長でございます。それから裁判所側は、大体事務総局の総務局長、それから審議官でございます。それから日弁連側では、日弁連で御推薦のありました方が大体四、五人程度おいでになるということが原則でございまして、なおその議題内容によりましては、関係の部局の者が関与をして入ってくるというふうなことになって運営されております。
  44. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 最高裁判所の方は、いまの構成された人、出席した人は。
  45. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 三者協議の協議員といたしましては、それぞれ三者から七名以内くらいということで大体お話ができておるわけでございますが、以内でございまして、ただいま調査部長から仰せになりましたように、法務省はいま仰せになりました三人でございます。裁判所の場合は総務局長、それから審議官、そのほかに秘書課長が出る場合もございますが、大部分は総務局長と審議官の二人が出るということになっております。  ただ、先ほど来お話がございましたように、議題によりましては別個その議題にふさわしい方が臨時の協議員と申しますか、ということで出席する場合もございます。現在までに、もう御承知かもしれませんが、沖繩の弁護士の問題について協議をいたしましたし、それから百日裁判の審理について協議をいたしましたが、たとえば百日裁判事件の審理というような議題のときには、最高裁判所からはたとえば刑事局の課長が出るというふうなこともあったわけでございます。
  46. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは毎月一回といっても、五十年三月にしましても、まあ三カ年たっておるわけだが、二十数回というのもこれは少し合わないわけで、これはイニシアチブはどこがとるのでしょう。
  47. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) イニシアチブがどこかということは、別に決まっておりませんで、大体開催の当番を順番でやるというふうにしておりまして、ある協議会が開かれました際には、次の開催日と大体の場所と、それからどういうことをやるか、当番はどこがやるかということを決めながら運営をいたしておるわけであります。
  48. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは議題は、じゃその前の会議のときに次の会議の議題を決めてしまうわけですね。
  49. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) 議題と申しましても大きな議題と小さな議題でもあるわけでございまして、いま最高裁の総務局長から御発言がありましたようなたとえば百日裁判をやろうじゃないかという場合には大きな議題でございますが、そういう場合には、その協議会の前提といたしまして議題委員会というものをまた三者で持ちまして、それで、こういうことをこれからやっていこうではないかということを決めて協議会にかけるわけでございます。そこで、議論をしてまいりますととても一回で済む問題ではございませんので、そのときにその協議会では、百日裁判の中で次はこの問題、細部の問題を続いてやろうとか、こちらの方向に少し議論を変えようかという意味で次の協議会の中身を話し合っていくというふうなことでございます。
  50. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 私どもが最初期待したのは、そういう事務的な法曹協議会も必要だけれども、時としては、トップ会談といいますか、法務省で言えば大臣、裁判所側で言えば最高裁の長官なりあるいは裁判官、少なくも事務総長、日弁連の方は日弁連の会長、そういう方々が胸襟を開いて時として話し合うというようなことも期待したのです。少なくも、法務省の方は次官、日弁連の方は事務総長、最高裁も事務総長が出て話し合うようなことが望ましいというそういう期待を込めておったのですが、そういう協議会というのはかつて開かれたことがないようですね。どうでしょうか。
  51. 枇杷田泰助

    政府委員枇杷田泰助君) そういう形で三者が一堂に会したということは、私の承知している限りでは聞いておりません。
  52. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは法務大臣にお伺いします。  法務大臣も非常に御多忙でいらっしゃるしいろいろなお立場があるでしょうから、大臣が直接ということはないにしても、少なくも代理者である事務次官が日弁連の事務総長なり最高裁の事務総長、準トップ会談といいますか、そういうものを開いて胸襟を開いて語り合うということが三者の関係をスムーズにするに非常に役立つ。われわれ初めそういう期待を持っておったのですが、事務官だけの事務的なことに終わっているようで、当初のわれわれの期待と非常に違った形になってきたのですが、これはどんなふうにお考えになりますか。
  53. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 三者が協議をするということは、私はきわめて大事なことであるという考え方を持っております。過去の進め方はいま御説明をいたしたような状況でありますが、問題によってはいまお話しのようにトップといいますか、最高責任者が会って話し合う、意見を交換する、私はきわめて歓迎すべきことだと思っております。ただ、こういうことを申し上げてよろしいかどうかやや遅疑するところがありますけれども、私なりあるいは事務次官、最高裁の長官なり事務総長、こういう場合は私は案外責任を持って話ができるのじゃないかと思うのですけれども、事日弁連に関してはトップの会長さんか事務総長だけではその場で意見を、まあ言うことは構わぬのかもしれませんが、なかなかそれがそう簡単ではないように見受けるのですが、やることは、問題によってはそういうことを忌憚なく進める、私の立場から申し上げるときわめて歓迎すべきことである、かように考えておるわけでございます。
  54. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 私ども見ておりまして、感情的に全然融和しない面を感じたこともあったわけです。それは、お互いの招待宴などで、最高裁の長官と日弁連の会長とがテーブルに相対しておって、食事中一言も話をしないのです。私は見ておって、おかしくてしようがなかったのです。西洋式のそういうスタイルをとっておるわけですから、話をしながら食事をとるというのがわれわれの常識であるわけです。私は近くにおって見ておったから間違いない。一言も話をしない。お互いに立ってスピーチはやる。感情的に融和しないともう話し合いなんというものも不可能になりますから、そういう意味でも、余り議題を持たないでも結構なんですが、楽な気分で話し合う、そういう三者の雰囲気を盛り上げていく必要があると思うのです。ただ、メンツにこだわりますと、最近は日弁連の役員が若くなりましたから、年次をどうのこうのなんというメンツなどはこの際捨てていただいて率直に話し合っていただくことが一番いいのじゃないかというふうに思いますね。これは大臣、そういうふうに御指導願えませんかしら。
  55. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) いま寺田さんの御指摘のようなことがあったかどうか私は知りませんが、少なくとも私に関する限り、何かの場合、日弁連会長、最高裁長官、問題を中心にしてでなくて忌憚なく話し合いをしておるわけですけれども、そういう軽い気持ちで話すことはちっとも差し支えないのじゃないかと私は思っております。せっかくの御忠告でありますから、今後三者とも連絡をしながら進めてみたいと思います。
  56. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 結構です。そういうふうにお願いしたいと思うのです。それで、何らかの公の問題で処理を余儀なくされる場合は、これは意見の対立はもうやむを得ないと思います。ただ、それに感情的になって話し合いの雰囲気が全く失われるということ、これはぜひもう消すように御努力願いたい、こういう趣旨ですから。最高裁の方もそういう趣旨を伝えていただきたいのですが、いかがでしょう。
  57. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) ただいま寺田委員指摘の点、確かにお伝え申し上げます。
  58. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に、裁判官の教養の問題でお尋ねをしたいのです。  最近非常な不況で会社の倒産などが非常にふえました。会社更正法の事件というものが大分出ておると思うのですが、これは何か統計みたいなものがありますか、会社更生法事件がどの程度裁判所に出ておるか……。
  59. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 最近における会社更生事件等の数でございますが、お手元に定員法の一部を改正する法律案関係資料というのが差し上げてございまして、その二十六ページでございますが、これは実は毎年の十二月三十一日現在の係属事件数ということでお示ししてあるわけでございますが、毎年、四十九年、五十年、五十一年の年度末にはそれぞれここに書いてありますような事件数の更生事件、整理事件等が裁判所に係属しておる、こういうことに相なるわけでございます。
  60. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 会社更生事件が五十一年は四百四十六件、五十二年の統計はまだ出てないわけですか。
  61. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 五十二年末の係属事件数でございますが、会社更生事件が四百九十四件、会社整理事件が二百四件でございます。
  62. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 五十二年末で大体五百件近い係属があるといたしますと、これはかなり裁判官としては負担になると思います。ただ、私どもが見ておりますと、余り生きた経済の実情というものを承知しておられない傾きがあります。何よりも大切なのは管財人などの選任ですね。これが当を得ないことが多いわけです。これについては何か特別な教養のようなものを実施しておられますか。
  63. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 寺田委員ただいま御指摘のとおり、更生事件におきまして管財人の選任というのは非常にむずかしく、しかも大切なことでございます。私もやはり経験がございますが、更生事件担当の裁判官といたしましては一番苦心するところでございます。いろいろな選任の仕方がございます。会社の規模等にもよりますし、関係人の推薦という場合もございましょうし、全然別個のところから選ばれるということもございましょうし、それぞれの事件によって違うわけでございますが、管財人の中には確かに選んでみた後で、寺田委員おっしゃいますように、必ずしもよくなかったという場合もないではないというふうに申し上げられるかと思います。しかし、裁判所といたしましては、管財人の監督は裁判所がするわけでございまして、常時裁判官と管財人とは連絡をとりまして、途中でおかしなことがあります場合には管財人を更迭するというふうなことも考えておるわけでございます。ただいま寺田委員がおっしゃいます管財人の教養というのが果たしてどういうことをお指しになるか、ちょっと必ずしもよくわからない面がございますが、要するに裁判所といたしましては、更生会社がスムーズに更生ができますように常に管財人の監督については留意しておる、こういうふうに申し上げられようかと思います。
  64. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 私が教養といったのは管財人の教養じゃなくて裁判官の教養なんです。つまり、こういう事件について実態を把握する上でやはり経済の実務を一通りそしゃくできる人でないと、やみくもに書記官の方で調べてきた管財人名簿からピックアップして管財人を任命してそれで能事終われりとすると困るわけですね。  私が実際非常に遺憾であると思った実例を一つ申し上げますと、これは経済界もやはり心ある人は皆まゆをひそめたのですが、管財人は能力がある人でないといけませんね。と同時に、やはり私利私欲をたくましゅうする者であっては困るので、その土地の経済界というか、財界で札つきの人があるわけですね、企業の乗っ取りというような。そういう人が管財人になった実例があるわけです。だから、かなり何十億の資産を持った会社、その会社の資本金がたとえば六千万程度であったわけですね。これは十分の一の減資すると資本金が六百万になりますね。六百万にしておいて今度一千万増資するわけですね。一千万増資したときに、それを管財人の兄弟が社長をしておる会社が一千万全部出資してしまう。そうすると何十億という資産を持った会社がわずか一千万でその管財人の兄弟が社長をしておる会社のものになってしまう。これは当然にもともとその会社に出資しておった大株主から異議が出まして、その結果を覆そうとして裁判になったのだけれども裁判所も実態がわからないものだから、それがいかに恐ろしい会社乗っ取りの行為であるかということに気がつかないでそのままになってしまいましたがね。  そういう点もう少し裁判官がその土地の実情を把握し、経済の実情を理解し、そして管財人の人柄をよく見る。そういう能力を持っておられたならば、そういう経済界の人が皆まゆをひそめるようなことは起きなかったのですね。それは考えますと裁判官に対する教養もまず必要だし、同時に事務局が管財人のリストならリストというものをつくる場合に、能力と同時に人格を十分よく調査をした上でリストに載せないといけませんね。そういう点の指導監督がちょっと不十分なように思うのですが、いかがでしょうか。
  65. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 確かに更生事件、生の会社、動いている会社を取り扱うわけでございまして、たとえば破産事件のように会社がつぶれた場合の後の財産の分配ということをやります事件とはかなり違った面があるわけでございます。生きた経済をいわば取り扱っているということになるわけでございます。裁判官は法律の素養は一応ありますし、事実認定の訓練も経ておるわけですけれども、実際の経済界の事情に疎いのではないかという御指摘は確かにごもっともであると存じます。  この更生事件関係につきましては、たとえば更生の開始決定をするかどうかというふうな時点におきましても、ごく卑近な例をとりましても、たとえば会計学とか簿記とかの知識がなくては、これもその判断が十分にできかねるわけでございまして、更生が開始になりました後の会社の運営、ただいま仰せになりましたような減資、増資なんかの関係、これは更生計画案の認可の段階で問題になることでございますが、裁判官はそこら辺のところ、確かに仰せのようによくそこら辺の管財人のやり方等よくわかっておりましたら、その具体的な事案は別といたししまして、認可をすべきではない場合もあるのではないかと思います。そこら辺のところ、裁判官としては十分研究を積まなければいけないわけでございまして、最高裁判所といたしましても更生事件関係につきましてはたびたびたとえば研究会というようなものも開きまして、裁判官同士お互いに経験等語り合って切磋琢磨する。あるいは経済界の講師等を呼びまして、その研究会でお話を聞くというふうなこともいろいろやっておるわけでございます。そういうことで努力は続けておりますけれども、具体的な事案になりますとあるいは関係人に御迷惑をかけたという場合もあるかもしれませんが、今後ともそういう意味での裁判官の教養ということにつきましては、なお努力を続けたいというふうに考えます。
  66. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 最後に、最近非常に話題になっております過激派事件裁判ですね。これはまあ私どもの方で最高裁の方からいま現に係属している過激派事件なるものはいまどのくらいあるか大体表をいただいたのだけれども、あなた方の把握していらっしゃる赤軍派の裁判を中心にしてどの程度あるかちょっとおっしゃっていただきたい。
  67. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 私ども過激派の事件とかあるいは赤軍派の事件というふうに特に集計しておりませんので……。ただ、それにやや近いと申しますか、新左翼のセクトによって起こされた学生を中心とする集団事件というもの、これはとっておるわけでございます。その数字でよろしければそれを申し上げてみたいと思うのです。  それは全国の地方裁判所で現在千百六十九件ございます。この千百六十九件の中で、トップは千葉地方裁判所でございまして、これが四百二十四件。それから東京地方裁判所がその次でございまして、三百八十一件でございます。これは五十二年の一月でございますので、その統計でございますからちょっと古いのですけど、五十二年の一月現在でそういうことでございます。それであとは、大体四百、三百八十一という数字のあとに続くものは、大阪が六十というふうにずうっと落ちまして、あとはもう少しずつ全国に散在しておる、こういう状況でございます。それは一審でございますが、それから高等裁判所ではこれは百八十五件でございまして、それでこれはもうトップは東京高等裁判所に百五十八と、ほとんど全部が東京高等裁判所と、こういう状況になっております。
  68. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 その中でいわゆる赤軍派の裁判というのは幾つありますか。
  69. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 残念ながら赤軍派が何名であるかということは私ども把握しておりません。
  70. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そういうあなたが見られた過激的事件といいますか、その審理状況はどんなぐあいなんですか。
  71. 岡垣勲

    最高裁判所長官代理者(岡垣勲君) 審理状況について……。その前にちょっと、先ほど申し上げた統計を五十二年の一月と申しましたが、ミスプリントで五十二年の十二月末でございますので、ちょっとここで直しておきます。  それでこの審理状況というものにつきましては、これは各それぞれの事件、それぞれの裁判所でいろいろ事情状況、様相を異にいたしますので一概には申し上げられませんが、たとえば先ほど地方裁判所の中で東京と千葉とが一番多いと申し上げましたけれども、東京で申し上げますれば、有名な連合赤軍の事件であるとかあるいは企業爆破の事件であるとかいうのがいろいろな事情で必ずしも円滑に審理が進んでいないと。それから千葉でも同じようなことがございまして、なかなか審理がスムーズに進まない。それをもう少し詳細といいますか具体的に申し上げますと、いわゆる過激派と申しますか、こういう学生事件なんかの裁判におきましては、裁判のおよそ始まりから判決に至るまでの間、ことごとく争いの発生する余地があるわけでございまして、最初はそもそも統一公判、全部一緒に裁判しろという問題がございます。それからその次は期日をどれくらいか、期日の指定。それが月一回しか受けられないとか、いやそれじゃ困るから四回にしてくれとかいうふうな問題。それから今度はやっと期日を開きますと、そうすると法律では人定尋問といいますか、被告人がだれかれであるかを確めた上で手続を進めることになりますが、そういうことをする前に発言させろと、事件の本質についてあるいは背景について発言させろというふうな問題、それを許す許さぬというふうなことがあります。それから起訴状の朗読に入ります。そうすると起訴状の朗読をさせまいということでいろいろな発言をして押しとめようとする。それを静止して最後には結局退廷させるというふうなことをいたしますと、今度は弁護人も出ていかれるというふうなことがありますが、いずれにしても、そういう起訴状の朗読の問題。それから今度は読んだ起訴状の釈明と申しまして、その内容はどうかというふうなことをいろいろ聞かれるわけでございますけれども、この場合にも釈明の個々の、一つ一つ釈明を求めて、それに対する一つ一つの返答を求めるという形でやるか、あるいは一括して全部この起訴状についてはこれだけのことを聞きたいというふうなやり方で一括してやるかというやり方の問題でございます、釈明の。そういうことで問題になる。それから被告人と弁護人との冒頭の意見陳述がありますが、それの被告事件についての意見陳述の内容それから長さ、こういったもの。それから証拠調べの範囲、順序。まあ途中で裁判官かわりますれば公判手続の更新。いろいろな点でもう皆問題になってくるわけでございまして、とにかく公判手続の更新なんというものがどうして問題になるかというふうにお考えになるかと思いますが、たとえば公判手続が更新、裁判官がかわりますから、かわって出てくるときに、被告人が、これはまあ千葉の例でございますが、何十人といると。それで被告人に、じゃ自分が今度裁判官にかわったから、一人一人だれがどうか確かめよう、ちょっと前へ出てくれと、こう言いますと、出てこないわけです。じゃしようがないから、そこにいるままでいいから、名前は、と言うと、せせら笑ったような顔して返事もしない。裁判官、しようがないから検察官に、あれはだれですかと、こう聞くと、そうすると検察官が写真なり何なり手元にあるもので、あれはだれそれですと。そうかと言い、それでだれそれだなということで進めるわけです。ところが中には検察官もわからないのがいます。月に一回ずつぐらい何十人も来ているとわかりませんわけです。わからない。で、弁護人に、あれはだれですかと。それもわからない。それじゃしようがないから、だれがいるのかわからない、出ていってもらおうと。そうすると退廷、出ないと言う。そこでごたごたが始まる。それで手続の更新といいますか、今度改めて私がやるから、じゃ新しくやりますよということの始まりをつくるのに二時間か三時間かかかるというふうな事情があったようでございます。そんなのは一例でございますが、そういったようなわけで、裁判に至るまでことごとに問題にしようとすればなりますし、そのときそのときの状況で問題になるわけであります。まあそれは審理そのものでありますけれども、それからそのほか、たとえば法廷に被告人が入る場合に、在宅ならばあれでございますが、身柄を拘束されておりますと、そうするとどうしても看守が入ってくるわけです。一人の人間が暴れますと、そうすると一人の人間に対しては看守二人以上、少なくとも三人ぐらいはいないと押さえ切れないということがありますので、それでかなりの看守が入ってくる。そうすると、その看守が多過ぎるから出せとか、それから看守の座る場所がいかぬとか、そういう問題。それから、今度は傍聴人なりなんなりがヘルメットをかぶって入ってくると、それをつけちゃいかぬ、そんなことしちゃ入れないとか、まあ裁判をめぐるそういう準備の関係。そういったものについていろんなトラブルが起きまして、これはもちろん全部の事件について全部ずうっとあらわれているわけじゃなくて、ある事件ではここで問題になる、ある事件ではここで問題になるということでございますけれども。で、そういうトラブルが起こった場合に、まあ裁判所が、一応いろいろあるだろうがこうやるというふうに言って、それに従ってもらえばよろしいわけでございますけれども、それがなかなか聞かれないということで、それで結局その日の審理はできないというふうなことがあったわけでございます。  そういうような事情がいろいろございますけれども、しかし裁判所としてはできるだけ努力をしていかなくちゃならないということで、各裁判所でできるだけ事件を進めるようにやられておるわけでございますが、その結果どうかと申しますと、たとえばいま一番端的にわかりやすいのは千葉だと存じますが、千葉の成田事件で、昭和四十三年から五十三年までの間に、大体大まかに申し上げまして約六百名、五百七十三名の人間が起訴されているわけでございます。これは事件の数え方が、一人の人間がこれで起訴され、それからまた追起訴でくるとそれを二件と数えるか一件と数えるか、いろいろございますから、多少数字に合わないところがございますが、実人員ということでまずつかまえてみますと、いままでで起訴されたのが、成田の例の鉄塔の工事の着手、それから鉄塔の民事訴訟による撤去、この間ございました刑事事件による差し押さえ、捜索、こういった関係で五十三年の二月二十八日までに起訴された者が実人員で五百七十三名、そのうち終局になりました者は百三十八名でございます。この百三十八名のうち、大体百名ぐらいの者はこれは一審で、反省組と申しますか、これで自分は悪かったというようなことで、単独の方に分離されて終わった者でございまして、それで、争うと言っている者は約三十名ほど終わっただけでございまして、その残りは、ですから五百七十三のうち百三十八名は終わって、四百六十八名という者がこれがまだ係属しておるわけでございますが、――四百六十八、間違えました。これ延べで、実人員は四百三十五名でございます。四百三十五名のものが係属しておるわけでございますが、これがどういう状況にあるかと申しますと、この中で期日の未指定の者が四十四名ございます、期日が決まってない者。それから、冒頭手続がまだ終わってない、つまり証拠調べにまだ入ってない最初の段階でございますが、それが百五名、それから検察官が立証中の者が二百八十四名、それから論告弁論の段階に入った者が二名という状況でございます。以上、ごく大ざっぱに申し上げましたけれども……。
  72. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 非常に詳しい御説明がありましたが、私の方もやはり学生事件の華やかなころ学生事件を弁護してみて、裁判官もこれはえらいなあということを考えた。弁護人も非常にえらい。弁護人も被告人を説得して、まあある程度ルールを守らせながら彼らの志を述べさしてやろうと思うと、これは大変な労力で、しかし裁判官のよしあしにも非常によりますね、能力にも。だから、頭から押さえつけてやろうと思っていくというと、反抗心のかたまりみたいなものだからなかなかうまくいかない。そういう点、きょうは余り論議したくないので後日に譲りますけれども、私がきょうお尋ねしたいと思ったのは、そういう大変えらい審理を要する事件というものがふえてきていますから、裁判官のいまのままの定員で処理できるかどうかという問題をお尋ねしたかったのです、一片の趣旨は。だから、審理がえらいということは私もよく知っておるので、それはよろしいが、あなた方はどうですか、現場裁判官の諸君からのいろいろな報告をお聞きになって、いまの定員でそういう困難な事件処理し切れるという自信がありますか。
  73. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) この際、千葉に限ってちょっと申し上げたいと思いますが、千葉につきましては、ただいま刑事局長から申し上げましたように、特に刑事事件がかなり多うございますし、成田関係につきましては民事の事件もかなり起きておるようでございます。御承知のように、裁判官裁判官だけじゃなくその他の職員も同様でございますが、私どもとしましては事件数に応じた定員の配置をしておるわけでございますが、千葉につきましては、ただいまも話に出ましたように、一人一人の事件の質がかなりむずかしいというふうなこともございまして、通常の審理事件数の割合よりも、より以上の裁判官、一般職員等を配置しておるわけでございまして、最近数年間も逐次毎年ふえております。  それから、ことしの四月――来月でございますが、来月にも裁判官その他の職員を若干増員する予定でございます。それで必ずしも十分であるとは決して申しませんが、最高裁判所といたしましてもできるだけのことはして、何とか事件処理がスムーズにいきますようにということは考えておるわけでございまして、今後とも事件の受理、進行状況等を見ながら対策を考えてまいりたい、かように考えております。
  74. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは法務省の場合も登記官が非常に少ないということで、今年度の予算に法務大臣大変御努力になったように聞いておりますけれども裁判の方も、そういう大変困難な事件が激増しているということになりますと、これはやはり大蔵省なり、あるいは行管が関係するなら行管の長官なり、よくその実情を説明して、そして、その理解を得て、思い切った増員を実現すべきでないか、こういうふうに思いますが、今後そういう努力を十分やっていただけますか。
  75. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 私ども毎年財政当局といろいろ折衝いたしますに当たりましては、単に事件数だけでなくて、今度のこの定員法の中にもございますように、民事の関係では、特別の損害賠償事件でございますとか、差しとめの訴訟事件でございますとか、それから更生事件でございますとか、そういう特殊なむずかしい事件のこと、あるいは刑事につきましては、いまお話に出ましたような事件のこと、それぞれ十分に御説明を申し上げまして御理解を得るように努めておるところでございます。何分能力の不足ということもあるのかもしれませんが、必ずしも十分に増員ができておるとは決して申しませんが、今後ともその努力は続けてまいりたいと、かように考えます。
  76. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 願わくはそういう困難な事件がふえたので、ええ、もう審理を簡単にしちまえと、制度を簡素化しようなんということを考えずに、十分な人材を配置して、それによって事件処理をスムーズにしようと、そういう方向に努力していただきたいと思います。  これは最後の要望ですから、これできょうは私の質問終わりまして、二十八日にさらに人事局長に対して質問いたしたいと思います。きょうはこれで終わります。
  77. 宮崎正義

    宮崎正義君 まず私は、裁判所職員定員法の一部を改正する法律案のことにつきまして、法律の改正のあり方というものに対して最初にお伺いをいたしたいと思います。  と申し上げますのは、この裁判所職員定員法は、申し上げることもなく昭和二十六年に施行されて以来、裁判官員数の改正、これは裁判所職員定員法というこの改正のくだりを見ていきましても二十回に及んでおります。これは私勘定してみました。     〔委員長退席、理事寺田熊雄君着席〕  それから、第二条の裁判所職員の件につきましては二十四回、このように運ばれて改正をされております。ことに昭和三十三年以来この二十年の間には毎年のようにこれを改正されているように私は見るわけですが、こうした状態の中にあっても、かつまたさらに依然として裁判官の増員が問題になってきております。  先ほど大臣の提案理由の御説明の中にも、「この法律案は、裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため、裁判所職員員数増加しようとするものでありまして、」と、以下その第一点というふうに申し述べられておりますが、いま申し上げましたように、大臣の言われておられる「裁判所における事件の適正迅速な処理を図るため」と言いながら、この裁判官の定員充足を今日またやっていくということは、これは迅速を図るのを第一義的に置くという考え方からいって、大臣は来年になってまた増員を図るような考え方をしているのかどうなのか、まずその「適正迅速な」という問題について、この増員のことについてのお考えをまず大臣から伺っておきたいと思います。
  78. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 申し上げるまでもなく、裁判は早く実効を上げると、これは民事も刑事も同じでありますが、それが法律の目的であるし、国民の期待するところだと思います。でありますから、可能な限り適正迅速な裁判の結果が得られるように努力することが当然だと思いますが、     〔理事寺田熊雄君退席、委員長着席〕 さればといってなかなか正直なところどのくらいが理想的なものだと、一応のめどは裁判所にもあると思いますけれども、なかなかそれを一挙に達成するということは、諸般の事情からむずかしいところにお互い苦労があるわけでございます。  今回お願いいたしましたのは、今回提案しておるとおりでございますが、まあ裁判所がどう考えておられるかお話しがあると思いますが、私ども見たところでもこれで十分であると、これで期待するような裁判の適正迅速という国民の期待にこたえられるかということについては、まだまだ十分でないのじゃないかという率直な考え方でございます。これはもう御承知のとおり、裁判官はいつでもどこからでもというわけにはいかない特殊といいますか、特別の職種でありますから、そういう面もありますし、国民の負担の問題もありますから、そういうところを調整しながら提案をしておるわけでございます。  そこで、来年もどうかと、同じことをやるのじゃないかというお尋ねでありますが、来年のことをいま申し上げると大変な間違いを起こすおそれがありますから申し上げませんが、裁判所がどういう計画をされるか、それによって私どもも最小必要とするものはやはりお願いをしなきゃならぬ事態になるのじゃないかと、かように考えておるわけでございます。
  79. 宮崎正義

    宮崎正義君 従来の本法の改正をずっと見ておりますと、まことにわずかな増員をいま大臣がおっしゃっておられるように、私から、私どもから言わしてもらうと、その場当たり的な増員改正のための改正をしている、このように言える。それと同時に、これもまた後で予算の問題等で質問をいたしますけれども裁判官の定員のあり方についても職員の定員のあり方についても何かいい方法なり処置なりそういう考え方が法の設定等で考えられるかどうか、この一つの問題、これをひとつ総務局長ですか、伺っておきたいと思います。
  80. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 定員法の改正、ただいま仰せになりましたように、二十年間毎年少しずつ場当たり的ではないかという御指摘、そう言われますと一言もないわけでございますが、まあちょっと言わせて、いただきますと、御承知のように裁判所の仕事といいますものは、事件を自分が持ってくるわけじゃございませんで、事件が起きてくるわけでございます。そういう意味では非常に受動的なものでございます。したがいまして、事件の数が長い将来にわたって一体どういうふうに変動していくのかということが非常につかみにくい面があるわけでございます。これは単に量的な面だけではございませんで、質的な面についても同様でございます。先ほど来申し上げております特別の損害賠償事件とか、差しとめ訴訟事件というものをとりましても、これは大分前から予想されておったというふうには必ずしも申せないわけでございまして、比較的最近になりましてかなり急激に伸びてきた事件というふうに言えるであろうと思います。そういうように事件の質及び量の両面から見まして、長い将来にわたっての予測というものを非常に立てにくい面がございまして、そういう面からあるいはごらんになりますと場当たり的というふうにごらんになる場合もあるのではないかというふうに考えるわけでございます。  それからもう一つの問題は、いま大臣仰せになりましたように、裁判所職員特に裁判官につきましては、どこからでもすぐに持ってこられるというものではございません。充員については十分努力をしておりますが、毎年増員をお願いするに当たりましてはその裁判官の増員をお願いいたしましたものが果たして実際に充員できるか、埋まるかどうかということが問題でございまして、空の定員だけをお認めいただいては意味がないわけでございます。そういうようなことを考えまして、結果的には非常に少数な増員を毎年々々お願いするという結果になりまして、はなはだ恐縮でございますが、やはりしばらくの間はそういう形で進まざるを得ないのではないかというふうに、いまのところ考えておる次第でございます。
  81. 宮崎正義

    宮崎正義君 立法の考え方というものを考えないで、毎年々々考えていこうとこうおっしゃられますけれども、いままた御答弁の中にもいろいろな事件が起きてくる、長い将来いろいろな問題がつかみづらくなってくる、公的私的もそうだと、また、質及び量に及んできてそうなっていくのだと、こういうふうな御答弁がございましたけれども、私がちょっと調べてみたところによりますと、大臣の先ほどの趣旨説明の中にあります「地方裁判所における特殊損害賠償事件会社更正事件及び差止訴訟事件の適正迅速な処理を図るため、」というこの第一点の一番主眼点とされている問題点でございますが、この問題は事件が起きてから、いま御答弁がありましたように長い将来に向かってという御答弁がありましたけれども、実は五十年の三月十三日に七十五国会において「地方裁判所における特殊損害賠償事件等、」という趣旨説明の中にもあるわけです。あとは省略します、限られた時間ですから。残念ながらもう少し詳しくやりたいのですけれども。  それから第七十七国会においてここにもまた「地方裁判所における特殊損害賠償事件及び行政事件の適正迅速な処理を図るため、」とこうあります。その後にまだ事項は続いておりますけれども。  それからさらには、八十国会において五十二年三月二十二日、「地方裁判所における特殊損害賠償事件会社更正事件及び差止訴訟事件の適正迅速な処理を図るため、」と、そうして「地方裁判所における特殊損害賠償事件及び会社更正事件家庭裁判所における」云々とあります。このように重ねられておりまして、今回また八十四国会における先ほどの趣旨説明における「特殊損害賠償事件会社更正事件及び差止訴訟事件の適正迅速を図るため、」と、この問題だけでも続いているわけです。事件がころころ変わっていくと、そのたびに増員をするのだということには同じ提案理由を持ちながらきているという面からいきましても、もう少しこれは考え方が定員というものに対してどうあるべきかという長期的な問題と合わせながら、長期計画と合わせながら充足面をどうすればいいのだという計画に立っていかなければ、また先ほども御答弁がありましたように来年はまた来年でというようなことになりますと、そのたびに大変だと思うのです。こういうことからいきましても、細かく言いますと、八十国会には十五人増をしているのですね。それから今国会では三十八人、こういうふうにやっております。ですから、何らか私は見直して考え直していかなきゃいけないのじゃないか。先ほども寺田委員の方から会社更生問題等、一つの点を取り上げられましたけれども、具体的な事例のこの案件等見ていって、将来の見通し、今後ふくそうしてくる問題等考えながら、見込みをつけられる点もあるのじゃなかろうかと思うのですが、そういう意味から長期的な考えと、その充足をしていく問題とあわせながら、どういうふうなお考えを持っているか伺っておきたいと思います。
  82. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) ただいま仰せの将来の見込みがつかないかという点でございますが、これは確かにおっしゃいますように全然つかないというわけのものではございません。この種の事件が将来少しずつは伸びていくであろうというふうな事件の種類もございましょうし、あるいは恐らく横ばいであろうというふうに予測できる事件もございましょうと思います。そういう意味では全然将来にわたっての予測がつかないということは言えないかと存じますが、事増員という関係で申しますれば、毎年毎年やはり裁判官の充員との関係ということで考えますと、毎年やはりお願いしていかざるを得ない。もちろん一挙に、ある程度近い将来、たとえば数年分をまとめて増員をお願いして、その間欠員で置いておくという、そういう手段もあるいはないわけではございませんが、そこら辺のところはやはり少しは私どもの方としても慎重に検討させていただきたい、かように考えます。
  83. 宮崎正義

    宮崎正義君 なかなか大変だと思います。わかりますけど、何となく私もわからないわけじゃございませんけれども、わかっていて質問をしているみたいな形ですけれども、いずれにいたしましても八十国会においては裁判所の事務官を五人増しております。同じ「適正迅速な処理を図るため、ということで、今回また事務官というのはないわけですね。この点なんかどうなんですか。
  84. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 昨年の第八十国会におきましては、判事補が十五人、それから一般の職員といたしましては定員の削減分を差し引きました残りが裁判所事務官五人ということでございます。今回お願いしておりますのは、判事補が八人とそれから裁判所書記官が五人、それから裁判所事務官が五人ということでございます。そこら辺のところ少し裁判官と事務官との比率、人数等若干の食い違いはございますが、これも今度書記官が加わりましたのは、書記官の充員の見込みが昨年よりはことしの方がいいというような面もございまして、書記官が加わっているわけでございますが、昨年と比べまして昨年、事務官を増員しながら、ことしは増員しなかったということでも必ずしもございませんで、少しの食い違いはございますが、全体として裁判官及び一般職員とも少しずつ増員をお願いしたいということできてまいっているわけでございます。
  85. 宮崎正義

    宮崎正義君 法務省の資料によりまして、十六ページですか、九十六名の欠員ですかがございますが、それの説明をひとつしていただきたい。どういうふうにして充足をしていくのか。
  86. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 裁判官の充員の関係でございますが、この十六ページの資料にございますように、昭和五十二年の十二月一日現在におきまして判事が六十五人、それから簡易裁判所判事が三十一人の欠員ということになっております。で、これの充員でございますが、判事は昨年の十二月一日以後におきましても、若干おやめになる方もございまして、ことしの三月の末と申しますか、四月になりますころには大体百人をちょっと超えるくらいの欠員ができるというそういう予定でございます。ところが判事補から四月の上旬に七十数名判事に任官の予定でございますし、その他ほかからも少し来られるということで、今年の四月十五日現在では欠員が二十名ちょっとくらいになる予定でございます。  それから判事補でございますが、判事補は昨年の十二月三十一日現在で欠員ゼロでございますが、この判事補につきましては、ただいま申しましたように判事になる者が七十数名ございますほか、少しおやめになる方もございまして、今回の増員八人を加えまして、四月上旬現在で八十数名の欠員が生ずると、こういうことに相なりますが、この関係につきましては現在、昨日からも修習生からの判事補の任官の関係で面接をしておりますが、大体八十名前後現在志望者がございますので、大体四月上旬でこれは埋まるという予定でございます。  簡易裁判所判事でございますが、これは昨年の十二月末現在で三十一名の欠員ということになっておりますが、これにつきましても、その後若干おやめになる方が出てまいりますのと、それから少し判事を定年退官された方で簡裁判事におなりになる方があるというようなことを差し引きまして、四月の上旬で大体五十名くらいの欠員ということになるのではないかと思います。簡易裁判所判事につきましては、御承知のように裁判所法の特別任用の制度がございまして、今年の夏に採用ということになるわけでございますが、大体今年の夏になりますとその欠員が全部埋まると、こういう予定でございます。したがいまして、実質的な欠員といたしましては、判事が二十名ちょっと四月上旬に欠員がまだ生じる。それ以外については四月の上旬ないしことしの夏にほぼ埋まると、こういう予定でございます。
  87. 宮崎正義

    宮崎正義君 私、初めから申し上げていますように、大体の見通しというのは、いまのようにだんだんつけられていくと思うのですが、素人の私なんかの考えでも判事補の人が五百九十五名おいでになる、現定員が。それから判事の方は千二百六十八名おいでになる。こういったような合計の面から見ていきましても、何となくわかるような気がするのでありますが、いずれにしましても欠員ということがゆるがせない事実になってきておりますので、こういう点から考え合わせてみても、やはり何らかの定員というものを、定員法といいますか、そんなようなことの考え方というものを、これはいいかどうかわかりませんけれども、もし定員法なんていうものが考えられますと、これはまた問題点も出てくると思いますけれども、それはまあ随時国会等で諮りながらやっていくというような行き方もあるだろうと思いますが、いずれにしましても、何らかの考え方というものをまとめてみる時点に来ているのじゃなかろうかと思うのですが、この点伺っておきたいと思うのです。
  88. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 毎年毎年細かい数字の増員の定員法をお願いいたしまして恐縮でございますが、私どもといたしましても、先ほど来申し上げておりますように、いろいろ困難な面はございますが、できるだけ見込みを立てまして立法の形式等につきましても法務省とも御相談の上で、ひとつ十分に検討してまいりたい、かように考えます。
  89. 宮崎正義

    宮崎正義君 簡易裁判所の書記官については、従来言われておりますのですが、これは私は素人でございますが、風聞するところによるといろいろなことを聞いているわけですが、その書記官については、本来決定権を有しない書記官が事件処理の実質的判断に関与するようなことが生じているのじゃなかろうかというような問題が従来指摘されているのじゃなかろうかと、こう思うわけですが、現在はそういうことはございませんか、伺っておきたいと思います。
  90. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 簡易裁判所の書記官が事件の実質的判断に関与しているのではないかという指摘があったということでございますが、恐らくそういうことをおっしゃる方が考えておられるのは、たとえば略式命令の事件でございますとか、支払い命令、督促事件でございますとか、そういうふうなことを頭に置いておっしゃっておるのではなかろうかというふうに想像いたしますが、この略式命令とか、督促の事件につきましては、確かに裁判官が自分で一字一字字を書くということはしていないという意味では書記官が書いている場合もあるわけでござ、いますが、事その事件の中身、実体的な判断につきましては、たとえば略式命令では当該被告人にどれだけの罰金を科するとか、督促命令につきましては支払い命令をこの種の事件で出してもいいかどうかというふうな実体的な判断につきましては、これは終始いまだかつて書記官に任したというようなことはまずないものと考えております。裁判官がすべて判断をする。ただそれを実際に支払い命令とか、略式命令とか、書面にいたす場合に、実際は書記官あるいは事務官に筆をとって書かせるという場合はあるかと存じます。そういう意味でのつまり事務補助として使う場合はあり得ましても、事実体的判断に関する限り書記官に任せるということは決してないというふうに御理解をいただきたいと思います。
  91. 宮崎正義

    宮崎正義君 私は専門家じゃございませんので、ずぶの国民の一人の素人としてあくまでもお伺いしているわけです。裁判所法の第三十三条、裁判権のことについて第一項ですね、「訴訟目的の価額が三十万円を超えない請求」というふうになっております。この査定した根拠とか、従来どういうふうにこうなってきた経緯だとか、こういうことでいまの物価高の問題、価額の価値の変動の問題等を考え合わせてみて非常に地裁の方に事件が多くなってきているというような問題点からずっと見てみまして、この点ちょっとわからないのですが、ひとつ御説明を願いたいと思うのです。
  92. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 簡易裁判所ができました当時からのことはちょっと古うございますので、比較的最近のところから申し上げますと、昭和三十年にこの裁判所法三十三条の、これ事物管轄というふうに申しておりますが、簡易裁判所の事物管轄が十万円ということになったわけでございます。その後、昭和四十五年にこの十万円が三十万円というふうに上がったわけでございます。裁判所法の一部改正をお願いいたしまして十万円から三十万円に改正をしていただいたわけでございます。地方裁判所簡易裁判所の民事の事件の分担の割合でございますが、先ほど申しました昭和三十年に十万円になりましたころ、昭和三十年について見ますと、地方裁判所の分担割合は四二・五%でございまして、簡易裁判所は五七・五%と、こういうふうになっておったわけでございます。それが物価の高騰等によりましてだんだん地方裁判所へ行く事件が多くなってまいりまして、四十五年の改正前におきまして、つまり四十四年について申し上げますと、地方裁判所の方が六八・七%、簡易裁判所の方が三一・三%、こういうことになったわけでございます。それから、四十五年の改正、これは年度途中でございますので、その改正後の四十六年について見ますと、三十万円に上がりました結果、地方裁判所が五一・六%、簡易裁判所が四八・四%と、こういうふうに少しまた簡易裁判所の方に係る事件が多くなったわけでございます。それがまただんだん物価の高騰等で変わってまいりまして、昭和五十一年度、これは一昨年でございますが、について見ますと、地方裁判所が六四・三%、簡易裁判所が三五・七%というふうにまたまた地方裁判所に来る事件が非常に多くなってまいりまして、前回、四十五年に改正をお願いいたしました一、二年前の状態にすでに達しておる、こういう状況でございます。  なお、ちょっといま三十年に十万円に改正と申し上げましたが、二十九年に改正になったわけでございまして、その翌年の三十年についてただいま申し上げた次第でございます。  結局現在、恐らく昭和五十二年度におきましては、四十五年度に三十万円に改正になりました直前の状態に達してきたというふうに言えるであろうかと存じます。
  93. 宮崎正義

    宮崎正義君 これは法曹時報ですか、二十九巻の十一号のところでありますが、五十一年度の簡易訴訟事件における弁護士の選任率、こういうふうな面から見ていきましても本人の訴訟が六九・六であります。これは四十年時代と余り変わらないのですね、本人訴訟というものは。いずれにいたしましても、いまお話がありましたように、地裁の方にどんどんふえていくということ、これらの考え方から考えてみても、裁判権の第一項がこれでいいかどうかということは、いろいろな諸問題があると思いますけれども、この点なんかも私はもっと深くいろいろな面から聞いていきたいと思うのですが、時間がございませんので、この程度でこの問題については触れたくないと思うのですが、いずれにいたしましても、四十六年に五一・六%で、今度はまたさらに五十一年では六四・三%というようになって、そして今年度はもっと当初以上になるのじゃないかという御説明がありました。そういうものを本人訴訟だとか弁護士の問題だとか、いろいろなものをひっくるめましてお考えを何かしなければいけないのじゃないかなというように思うのですが、いかがでございますか。
  94. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 民事事件簡易裁判所より地方裁判所の方にたくさん来るようになっておるということは、それだけある意味では本人訴訟が多くて、簡易、迅速に行うべき簡易裁判所事件が逆に減っておるということを意味するわけでございますから、言ってみれば、当事者にとってみますと近くの簡易裁判所事件処理してもらえたのに、遠くまで行かなければいけないという事態が生じておるわけでございます。そういうことから考えまして、私どもといたしましては、いずれこの簡易裁判所の事物管轄の拡張――拡張といいますよりは、物価指数等に相応した、つまり前の状態に戻すということになるわけでございますが、つまり現在で言いましたら三十万円を幾らかに上げるということに現実にはなりますが、そういうことをお願いしなければいけない時期がだんだん近づいてきておるというふうに考えておるわけでございます。ただ、この点につきましてはいろいろ問題もございます。あるいは反対もあるかもしれませんので、簡易裁判所の本来のあり方ということとも関連していろいろ議論あるところでもございますので、私どもといたしましてはこの問題いずれはやらなきゃいかぬという、そういう前提でいろいろ御協議も申し上げ、検討を続けてまいりたいと、かように考えております。
  95. 宮崎正義

    宮崎正義君 定員等の問題等もこんなもの引っくるめていろいろあると思うのですね。それで私は伺ったわけですが、問題を変えまして、裁判所の予算のあり方についてひとつお伺いをいたしたいと思います。  資料がございましたね。資料の中に国に占める裁判所の予算の率といいますか、もうほかの省庁というものは、その予算というものが国の予算がどんどん膨張していくに従って、過大になっていくに従って、それぞれの各関係省は相当多額な予算率というふうになってきているわけですが、相対的な国の予算に対する裁判所の予算、これやはり定員法の問題等にひっくるめて大きな問題が出てくると思うのです。先ほど申し上げましたような将来計画というか、その充足といいますか、それらの問題等含めましてでも予算というものは遠慮なくやっていかなきゃならない。先ほども寺田委員からも大臣に要請をされておりましたけれども、この点につきましてどんなふうにおとりになっているか、お考えになっているか、将来どうするのか。
  96. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) まず裁判所の予算の国の予算の中で占める比率でございますが、ただいま当院で御審議いただいております予算、昭和五十三年度の予算案について見ますと、裁判所の予算が千六百二十二億数千万円ということでございまして、国の予算との比率で申しますと〇・四七三%ということになっております。この裁判所の予算の国の予算に占める比率につきましては、過去を見てみますと、たとえば昭和二十三年度予算について見ますと〇・五〇一%でございまして、ただいまよりは少し上ということになっております。中途の段階におきましては〇・九%を超えたような時期もございます。果たして現在〇・四七三%という比率がいいのか悪いのか、裁判所の予算はどうあるべきかという問題でございますが、御承知のように裁判所の予算は大部分が人件費の予算でございます。昭和五十三年度の予算案について見ましても八十数%までが人件費予算でございます。国の予算はそのときどきの情勢によりましていろいろ変わってきておりますけれども、何と申しましても政策的な予算というものが国の予算の中ではかなり大きな比率を占めておるわけでございまして、たとえば社会福祉関係の予算でございますとか、建設関係の予算でございますとか、そのときどきの予算、人件費以外の予算の占める比重はかなり大きいわけでございまして、そういうことを勘案いたしますと、裁判所の予算が国の予算の中でどの程度を占めるのがいいのか悪いのかということは、必ずしも一概に言うことは困難なわけでございまして、裁判所といたしましては必ずしも十分とは申せないわけでございますが、それはそれなりにやはり人件費以外の予算もかなりはとってきているということになるわけでございまして、いまのところは十分とは言えませんが、一応はまずまずこれで何とかやっていけると、そういう予算になっておるわけでございます。ただ、仰せのように、なお努力を続けなきゃいけないことはそのとおりでございまして、今後とも予算の獲得につきましては十分努力を続けてまいりたいと、かように考えております。
  97. 宮崎正義

    宮崎正義君 そのときどきいろいろな事態に関して増額を、予算を見ていくというふうなお話がありますけれども裁判所の営繕費なんという問題なんかも、これは一般等で質問すればよろしいのですけれども、全体の面から考えられて、その建物等に対して裁判所がどういうふうな自分の所属している営繕の対策といいますか、営繕対策というものをどういう計画を持っているのか、そういうようなこともあわせておやりになっているわけなんでしょう。でありますれば、今日の営繕に対する計画性といいますか、どこをどうしなければならないかということも十分お考えになっていると思うのですが、この点なんかいかがですか。
  98. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 裁判所の営繕の関係の予算でございますが、裁判所の施設の数といたしましては全国で約六百の施設があるわけでございますが、そのうち約四百四十ぐらいは現在もうすでに整備中でございまして、その残りがこれから整備しなければいけない庁ということに相なるわけでございます。これにつきましては裁判所といたしましては計画をいま立てておりまして、たとえば今年で申しますと二十庁ばかりを整備するということで、予算としては約百億でございますが、それで整備をするということになっております。今後とも、まあ具体的な計画は、ちょっと私直接の所管でございませんので、明年以後の具体的な計画というものを申し上げることはちょっとここではできませんけれども、やはり計画を持って逐次整備を続けるということをやっておるわけでございます。
  99. 宮崎正義

    宮崎正義君 総務局長さんですから、総務ですから、あらゆる問題について御承知の上だということで私はお伺いしていたわけなんですが、いずれにいたしましても将来計画といいますか、そういう御計画をお示し願えれば非常によろしいのじゃないかと思います。先ほどの寺田委員の要請事項ということもあわせながら、今度は大蔵省を、ちゃんと財政当局を呼んでしっかりやりたいと思うのですが、それはまあ別といたしまして、先日三月の十日に、当委員会の委員長初め、寺田委員、私ども、法務省の視察をいたしました。そのときに台東区にあります建物の件につきまして、あの状態を裁判所として適当であるかどうかということを一言お伺いしておきたいと思うのです。
  100. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 台東簡易裁判所の庁舎、宮崎委員がごらんになりましたように、法務局の出張所の庁舎の一部をお借りしておりまして、またその敷地の中にも一部法廷とか調停室等を建てさせていただきまして、そこで執務をしておるという状況でございます。決して適当な庁舎とは全然考えておりませんで、先ほど申し上げましたまさに今後整備をしなければいけないこういう庁舎のうちの一つと、その中でもできましたらかなり早くやらなければいけない庁舎ということになっているわけでございます。ただ、これについて後でお尋ねがございましたら申し上げますが、少し事情がございましてちょっと簡単にはいかないということに現状ではなっておる次第でございます。
  101. 宮崎正義

    宮崎正義君 はっきりおっしゃっていただけるものははっきりおっしゃっていただいて、そして改良すべきは改良する、やるものはやるというふうな形をとっていきませんと、私はちょっと心配でございます。御案内のように、小学校がすぐそばに真ん前にございます。それから、登記をされに都民の方がいっぱいあそこに集まってきます。ごった返している中に刑のまだ決まらない方々等が、裁判中の方々があそこへ行かれましてどんな思いをされるのか、またそれを見た方がどんなふうに思いをされるのか、複雑な気持ちがあるように思いますし、またあの簡易裁判所の実態の実情の姿から見ていいのかなということを国民の一人として感じたわけでございます。差し支えない限りお話をしていただいた方が優先的にあれを考えているのだという御意思がそこに通ずるのじゃなかろうかと思うのですが、いかがでございますか。
  102. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 庁舎の未整備庁の中でも、法務局の出張所と同居と申しますか御一緒に住んでおるというのは、実は全国広しといえどもここだけでございます。できるだけ早く何とかしなきゃいけないということが実はあるわけでございますが、もう少し申し上げますと、実はこの台東簡易裁判所の庁舎の敷地につきましては、別個庁舎の敷地を大分前に確保してあるわけでございますが、これが実は細かいことは私存じませんが、前の所有者との問で訴訟が実は起こっておりまして、現在その訴訟が東京高等裁判所に継続中でございます。それが何とかなりませんことには、たとえ予算をいただきましても次に建てるということがなかなか困難である。その訴訟解決して国の所有ということが確定いたしますれば、その段階で早急に予算の措置を講じまして建物を建てると、こういう運びにしたいというふうに考えておるわけでございまして、何分その訴訟の帰趨がどうなるかということとの関係がございますので、あすにでもというふうにちょっと申し上げるわけにはまいらないと、そこら辺のところでございますので、ひとつ御理解をいただきたいと存じます。
  103. 宮崎正義

    宮崎正義君 建物自体も近代的な非常にいい建物だと昔は思ったのです。いまでは暖房をやるにしましても、また暑いときにはあの建物の状態から見ていきましても、非常にあそこで職務をされている方々の健康問題等もこれは考えていかなきゃならない。そういう面から私は考えながら、先ほど申し上げました風紀といいますか、そういったような問題から一言伺ったわけであります。内容につきましては、いま訴訟中のものということも薄々は聞いております。聞いておりますが、あえて取り上げまして、お考えを明らかにしながら対処しなきゃいけないのじゃないか。そこに執務している人たちのことを十分に頭の中にお考え願って、またその周辺の方々のこともお考えになった上で処理をしていくように御努力を願いたいと思います。  ついでに、これは裁判所の問題じゃございませんけれども、いま調査に歩いた関係でそのことにちょいと触れまして法務局の方にも御質問をひとつしたいと思うのですが、実は登記所、二カ所あらかじめ選定して見さしていただきました。その中で大体いいのと、それから悪いのという二通りのことで御案内をしていただいたわけでありますが、いいと言われるところでも狭く狭隘になっているという点も見受けられるところもございます。まあ、いずれにいたしましても全体的に考えていかなければならないのじゃないかと思いますが、いま大臣がちょっとお席をお立ちになっておられるので、法務局の方に板橋の出張所ですね、あれに対する考え方はどんなふうに考えを持っておられるか伺っておきたいと思うのです。
  104. 香川保一

    政府委員(香川保一君) 板橋出張所は現在事件が約登記甲号事件で八万件をオーバーいたしまして、職員数が三十五名でございますが、賃金職員等を入れまして、三十九名ぐらいになっておるかと存じますが、私どもの全国的な負担平均から申しますと、やはり相当過重になっておると。しかし、ごらんいただきましたとおり非常に狭隘でございまして、職員をこれ以上配置する余裕も狭くてないわけでございまして、これをどうするかということで実は数年前からいろいろ検討いたしまして、結論といたしましては、現在板橋の出張所は板橋区と豊島区を管轄しておるのでございますが、大体、板橋区の事件が六割、豊島区の事件が四割ぐらいの割合と思います。そこで、ちょうど豊島区の中にかっこうの国有地がございますので、その国有地の所管替えを受けて、そこに豊島出張所を新設いたしまして、分割することになるわけでございます。そしてさらに狭隘なために、現在板橋区の一部を練馬出張所の管轄に移しておりまして、交通事情等から申しますと、練馬出張所で管轄しておる板橋区の一部は、むしろ板橋の出張所の管轄にした方が合理的なのでございますが、これも現状ではできない、そういうこと等の問題を一挙に解決する意味で、先ほど申しましたように豊島出張所を新設して、この問題を解消したいというふうに現在のところ考えておるわけでございます。
  105. 宮崎正義

    宮崎正義君 現場調査をやられましたでしょうか、おみずから。
  106. 香川保一

    政府委員(香川保一君) 民事局長になってからまだ見ておりませんが、官房長時代に見まして、そして先ほど申しました予定の国有地の方も見てまいったわけでございます。
  107. 宮崎正義

    宮崎正義君 局長さんにおなりになってひとつまたごらんになるといいと思います。これは法務大臣も大変御多忙でございましょうけれども、この板橋の出張所を行って見た方が私はいいんじゃないかと思います。とにかく火災があったらあれはどうするのだろうと思うのです、近所にでも。身動きがとれないのじゃないかと思う。これはえらい事態になっています。もう道路は狭い、もう全部いまは車で行き来する人ばっかりになりましたものですから、その車がもう駐車しちゃいけないところまで駐車している、警察の世話になっている。それで所長さんは一日に少なくとも三回はどなられるというのです。どなられなきゃならないように事務がふくそうして間に合わない。みずからがおっしゃってあのまあ汗をおかきになって奮闘努力なさっている、あの執務をなさっている職員方々を見ますと、何とも言えない気持ちになりました。もうとにかく下に倉庫があるものですから、昔はあれは非常に模範的な建物だといわれておった。昔の話でありまして、いまは模範的な悪いところじゃないかと思うのです。そういうふうな変わってきた状態ということから考えていきましても、これはもう速やかに豊島は分けるとか、あるいは板橋の方、板橋は板橋ではっきりするとか、練馬の方は練馬でまた考え方はっきり区分けするとかいうようなお考えに立たなきゃならないのじゃないかと思います。先ほども総務局長が訴訟事件のことをおっしゃっておられましたけれども、昔は私はこのように聞いていますが、もう裁判所だとか法務局ができるというのは、大概土地を提供する方が多かったようにも私は思えたのです。いまの時代はそうじゃない、むしろそういうときに選ばれた土地が今度はその周辺にみっちりと建物が建ち人家がふえていって、今度はこんなところに国の、法務省があるからいけないんだという声が上がっておるという、こういう点なんか大臣どうお考えでございますか。大臣は御多忙ですから視察するというわけにもまいりませんでしょうけれども、一度、都内でございますので、ひょっと足を伸ばしていただけば申し上げていることがよくわかると思うのです。  中で執務をされる各登記所なんかでも、いまは非常に機械化して合理化してきておりますが、それでかなり事務量というものは救われてきております。全自動謄本作成機、ございますね。これなんかを用いますと相当の人数というものが軽減されてくるわけです。一基約四百万だとも言われております。こういうふうな全自動謄本作成機というものを今度はひとつ入れましょうと言っても建物の問題になってくる。そういうずっと機械化していこう、省力化していこうということになりますと、施設関係、営繕の問題というものが一連の予算というものにつながってくるということになってまいります。  裁判所におけるその営繕の問題等も、いま一つの私は例を挙げて申し上げたわけでありますが、こういう実情と実態というものをやはり最末端の中に入っていって初めて、その御苦労なさっていることが私はわかるのじゃなかろうかと思うし、同時に私どもも、ああ大変だなあ、こんなこと知らないで申しわけなかった、こういうふうにも私は思ってあの視察をさしていただいたわけですが、こういうものについてひとつどんなふうなお考えを持っておられますのか、この点を伺っておきたいと思うのです。
  108. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 板橋法務局の出張所に限らず、私はできるだけ法務省関係の施設等を直接見たいという考えを持っております。持っておりますが、御承知のとおり非常に日浅くしかも連続して国会中なものですから、そういう時間的余裕がなくてまことに申しわけありません。  法務局、あるいは出張所の整備については局長からお答えしたと思いますが、できるだけ速やかに整備をしなきゃならぬということで、計画的にいま進めておるわけでございます。執務される方もあるいはここを利用される方も大変なところあるわけでございますが、しかも法務省のこの法務局の出張所は非常に歴史が深い、長いところが非常に多うございまして、近代に至りますと非常にいずれから見ても不便といいますか、支障を来すと、こういうところがあるようでございます。庁舎施設の整備をし、また事務機等も近代化して執務者にも利用者にも便宜を図りたいと、かような趣旨でいま鋭意努力をしております。多少時間が出ましたら、板橋の出張所もぜひ私みずから見てみたいと思っております。
  109. 宮崎正義

    宮崎正義君 大蔵省の方に、何か大蔵省の官財の土地なんかあるかどうかもこれお調べ願って、いま大臣のお話がございましたようにひとつお考えを願えれば幸いだと思います。どんなにか待っているかと、私は想像にかたくないと思いますので、この点は要請をしておきます。  それから、昨年の九月に円山委員、そのほかの方と一緒に広島の高裁の管内を視察いたしました際にも非常に感じたことは、先ほど寺田委員一つの会社更生法の事件のことについてお取り上げになりましたけれども、近年まことに厳しい社会経済情勢等を反映いたしまして、複雑多岐にわたるものがどんどんふえている傾向になって、事件件数というものは相当違った面でいるということは御案内のとおりであります。多数当事者による各種行政訴訟がうんと見られるということを指摘されておりました。また今後も公害問題とかあるいは薬害問題とか、交通事故等の特殊な専門的な技術的な内容事件がどんどん増加されるということが予想されてきます。これらに対応するために最高裁としてはどのように対処されていこうとしているのか。たとえば裁判官等の研修等、先ほども説明がございましたけれども、あるいは私は人事局長がおいでになればこの問題を具体的にいろいろな角度から伺っておきたかったのでございますが、PCBの問題とか、カドミだとか、スモンだとか、イタイイタイだとか、道交法だとか、いろいろな諸問題が多岐多様にあらわれておるという実情から勘案しまして、寺田委員質問のお考えというものを、私も同じ考えでございますので、この点についても将来の計画性といいますか、現在から、これからに対する教育課程のあり方といいますか、それらのことについて一言お伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  110. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 先ほど寺田委員から更生事件に関してお尋ねがございましたので、特殊の損害賠償事件でございますとか、差しとめ訴訟関係事件について簡単に申し上げますと、この種の事件はたとえば騒音の問題でございますとか、日照の問題でございますとか、そのほか薬品、食品、医療過誤、種々雑多なそういう特殊の損害、特殊の公害と申しますか、そういうものが原因となって起こってくる事件でございます。  そのためには裁判官がその種の事件処理するためには自然科学上の知識、物理学でございますとか、化学でございますとか、医学でございますとか、そういう面の知識がどうしても必要になってくるわけでございます。裁判所といたしましては、この種の事件が次第にふえてきておるということもございまして、かなり前からそういう自然科学上の知識を裁判官に修得してもらうという、そういう目的でいろいろと研究会というようなものを持っておりまして、大学のその種の先生、御専攻の先生等をおいでいただきまして、裁判官がたとえば高等裁判所に集まりますとか、司法研修所に集まりますとかいたしまして、その種の先生のお話を聞きかつ議論をするというふうなことで研究会をやる、そういう機会を持っております。それ以外にもそれぞれの庁におきまして、たとえばある部でこの辺の知識を得たいというふうなことがございました場合には、たとえば大学の先生にその裁判所へ来ていただきますとか、あるいはそこへ、大学へ行って教えていただくとか、そういうふうな必要もございますので、その種の予算措置も数年前からとっておりまして、謝金でございますが、先生方に来ていただいたりお話を聞いていただきました謝金を支払うことができるような予算措置を講じるというふうなこともやっております。  そのほか、そういう自然科学方面の書物、資料でございますが、そういうものを購入するための予算も数年前から予算措置を講じておりまして、ほぼ必要な本は買えるというふうなことに相なっております。  そのほかにも機械器具等の関係でございますが、たとえば振動計でございますとか、騒音計でございますとか、そういうふうな特殊な、いままで裁判所には必要でなかったようなそういう機械器具も必要になってまいりますので、その種の器具も逐次購入すると、そういうことで、裁判官に本来欠けておりますその方面の知識を十分得るような機会を与えるということについては従前から留意をしておりますし、今後ともその面については注意を怠らないようにやっていきたいと、こういうふうに考えておる次第でございます。
  111. 宮崎正義

    宮崎正義君 時間が来ておりますので、まだ私質問したいことがあるわけなんですが、いま総務局長御答弁がありましたようにこれはみんな予算が伴ってくるわけです。そうしますと、その全体的な予算のあり方というものもひっくるめて将来計画というものをお示しくだされば、私どもも一生懸命になりまして労を惜しみませんし、当然やらなきゃならないことはやっていくわけでございますので、ひとつ、一つ一つできれば御計画というものを明示していただければ一生懸命に応援もさしていただき、またやらなきゃならないことはやってまいりますので、その点を要請しておきたいと思います。  さらには、本法の改正について、事件増加に伴ってきます裁判官の定員の妥当性についても、一人当たりの事件負担数だとか、そういう一つ一つのことについて、事件処理一つ一つのことについて、私はきょうは、これで妥当であるか妥当でないかという、こういう問題にも触れていきたいと思っておりましたのですが、残念ながら時間が来ましたのでまた次の機会にでも質問をさしていただきたいと思いますので、こういう点もお考えを願っておきたいと要請をいたしまして私の質問を終わります。
  112. 円山雅也

    ○円山雅也君 私は裁判所職員定員法の改正に関する御質問をしたいと思いましたが、すでに寺田委員また宮崎委員から詳細にお尋ねがありましたので、なるべく重複を避けまして二、三の質問についてとどめたいと思います。  その前に、質問に関連がございますので一言申し上げたいと思いますが、裁判官及び裁判所職員の増員についてはこれはもう大変結構なことだと私は思っております。したがって、今度の改正につきましては結論的には賛成でございますが、と同時に大いに不満がございます。というのは、宮崎委員が御指摘のように、どうもこの定員法の改正というのはこの十数年、二十年近く毎年ちびちびというかけちけちというか、少しずつ少しずつ定員増をしておる。なぜもっと思い切った大幅な増員ができないのか、この点でございます。今度の改正でも、ですからむしろ増員が少な過ぎるという点で大いに不満を持っておりますけれども、このような前提に基づきまして質問に入らせていただきます。  まず、総務局長にお尋ねいたします。  判事補の増員といいますと、先ほどからお聞きしますと、結局は新しく司法修習生を卒業して新任の判事補になってくるということで埋めていくしかないと思うのでございますけれども、そこで、さっき何か今度の司法修習生は八十人ぐらい裁判官の希望があるから大体八十人ぐらいとれそうだというお答えがございました。これは一体八十人しか希望者がいないのか、それとももっと大ぜいの希望者がいるのだけれども裁判官のふるいにかけて適格者としては八十人なのか、その辺がちょっとお聞きしたいのです。なぜかと申しますと、御承知のとおり裁判事務は、われわれ――私はまあ弁護士も兼ねておりますけれども、弁護士とか検事とかいうのは多少うっかりいたしましても裁判官がしっかりしておれば多少のミスは救済される。ですから、その意味で一番法廷審理について裁判官の職責というのは大切だと思うのです。その一番重責を担う裁判官ですから採用についても大変慎重にお願いをしたい。現に、私ども、局長もそうですけれども、私ども裁判官になるころはかなり成績がよくないと、もう最初からおまえ無理だから裁判官やめろと言ってふるいにかけられた状態でございました。いま先ほどの八十人というのはどういう意味でございましょうか。
  113. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 増員のことにつきまして御理解をいただき、御激励をいただきましてまことに恐縮に存じております。  修習生から判事補への志望の人員、大体いま八十人くらいおるということを申し上げましたが、これがどういう経過で八十人になったかということでございますが、たしか、最初修習生として研修所に入りました時期におきましては、毎年のことでございますが、この八十人よりは少し多い数が志望として出ておったのではないかと存じます。しかしこれは修習生になりましたばかりで、まだ、十分考えたと申しますか、事柄を認識した上で、よく考えた上で志望調書に書いたというわけのものではないであろうと存じます。その後研修所での修習、実務についての修習を終えまして、たしか、昨年の暮れ近くになって最終の志望を出すということになっておったと存じますが、その時期までに研修所の教官なり何なりが修習生に対してどういうふうにやったかということは私必ずしも存じません。少なくとも組織的に何らかのことをしたということはございませんが、あるいは一緒に酒を飲んだりというようなときにそういう話題が出たかどうか、個々の場合については存じません。だから、全体として申しますれば、自然と五百人ばかり、四百数十名の修習生が二年間の修習を経てきた結果、自分が裁判官を志望しようと思って志望したその結果が現在の八十人ぐらいになっていると、こういうふうにひとつ御理解をいただければいいのではないかと存じます。
  114. 円山雅也

    ○円山雅也君 そうすると、いまの判事補の採用ですけども、これはたとえばある一定の成績以上でないとさせないとかいう、そういう制限はないのでございますか。
  115. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) まことに恐縮でございますが、私人事を直接やっておりませんのではっきりしたことは申し上げられないわけでございますが、ある一定のところで切るというふうなことはしていない。ただしかし、全体としての能力の評価というものはこれはやはりあるわけであると存じますが、たとえば、何点以上がどうのこうのという形での区切りというものは恐らくないのではないかというふうに横から見て想像しておるところでございます。
  116. 円山雅也

    ○円山雅也君 先ほど申し上げたとおり法廷における裁判官の職責は大変重要でございますので、ぜひ優秀な、増員を急ぐ余りにこの程度でがまんしようというようなとり方をできるだけされないようにしていただきたいと思います。  次に、民事訴訟の遅延の問題についてお尋ねをしたいと思います。  刑事の特殊事件、先ほどから問題になっておった特殊な事件を除きまして一応刑事の方はかなり訴訟促進が一般事件については進んでいると思います。これに反しまして、民事の事件は非常に遅い遅いというのはこれはもう世の中の定説でございます。これは、この点は弁護士の方にも責任があるのかもしれませんけれども一少なくとも現実に、たとえば民事の裁判で証人調べ期日を入れる場合に早くても三カ月先、遅い場合は半年も先と。これは恐らくは裁判所の御都合が、つまり、三カ月先でなきゃ入らない、六カ月先でなきゃ入らないということですから、そうすると、弁護士の責任とは関係なく裁判所裁判官の人数が絶対的に不足している結果ではないか。もし民事の裁判官の数がふえているならば恐らくは一カ月半に縮まるだろう、また一カ月に縮まるだろうと思われるのですが、この点はどうでございますか。
  117. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 民事訴訟証拠調べ期日の指定につきましては、確かにただいま円山委員指摘のとおり、たとえば東京とか大阪とかいったような大都市の裁判所におきましてはいまおっしゃいましたような事態があるかと存じます。ただ、ずっと田舎の方と申しますとあれでございますが、比較的大都会ほど仕事が込んでおりませんところにおきましては、もう少し早く入るところもあるのではないかと存じます。期日が先にまで入らないのは確かに当該裁判所がたくさん事件を持っておるということが一つの原因ではあろうかと存じますが、これは円山委員に対しましては釈迦に説法でございますが、まあ、私どもの実務体験からいたしましても、ただそれだけではなくてやはりそれ以外のいろいろな原因がある。一例を申し上げますと、たとえば期日の延期、変更が多いということもあるいは一つの原因であるかもしれません。私ある時期に調べたことがございますが、裁判所が指定しました期日、これは弁論期日だけではございません。証拠調べ期目も含めてでございますが、決められました期日の三分の一が流れてしまう。実際は行われないというふうな事態もはっきり記録を調べました結果発見したことがございますが、たとえばそういうふうな期日の延期、変更というものがございませんで、決められました期日が全部実質的に行われるということを仮に仮定いたしますれば、あるいは流れるべき事件を入れなくてもいいということで少しずつ前へ来るわけでございますから、たとえば三カ月のが二カ月になるということもあるのではなかろうかと存じます。民事訴訟、円山先生に申し上げるまでもないことでございますが、私益の紛争解決というのがその目的でございますから、手続構造自体が当事者主議ということになっております。そういう意味で、結局その手続構造自体の中に民事訴訟の遅延の本質的な素地が内蔵されているということも言えるのではないかというふうに存じます。そういう意味では確かに日本の民事訴訟もおくれておりましてまことに遺憾なわけでございますが、この民事訴訟の遅延そのものは古今東西を問わないもう世界共通のいわば現象でございまして、私どもといたしましては訴訟が遅延することがないように鋭意努力は続けなきゃいけないとは考えておりますけれども、そういう意味でなかなかいろいろな複雑な原因が絡み合っておって、裁判官の不足ということもあるいは一因であるかもしれませんが、それ以外の要素もかなり大きい面があるということ、これも円山委員御承知のとおりでございますけれども、一言申し上げた次第でございます。
  118. 円山雅也

    ○円山雅也君 それでなくても、私も裁判官やりましたので、かなりの事件を抱えて、精いっぱいの事件を抱えて大変なもう時間もなくて、だからもっとふえたらいいなあと思っておりました。ところがどうもこの辺がわからないんですけれども、優秀な裁判官ができ上がると裁判所はどういうわけか優秀な人材に限って事務関係のポストに持ってきちゃう。たとえば総務局長もそのとおりでございます。それから優秀になると所長に早くなっちゃって裁判から離れちゃう。私の同期なんか見ていますと、ほとんどが優秀な連中はみんないま何か最高裁の事務関係だとか司法研修所だとか書記官研修所とかそんなところへ行っちゃう。そうするとこれはそれでなくても優秀な法廷に練達な裁判官が必要なのに、練達になると事務局へ持っていっちゃというのは、あれはどういうことなんでしょう。むしろ事務局関係のポストは事務局で鍛え上げた方がずっと司法行政手腕もあって事務がいいのじゃないでしょうか。法廷しか知らない練達な裁判官を持ってきても、だから予算の取り方がへたになったり、それから司法行政が実にうまくいかないのじゃないでしょうか。その辺はどうして練達な裁判官ほどみんな持っていっちゃうんでしょうか、事務関係のポストに。
  119. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 最初にお断り申し上げておきますが、私は決して優秀でもございませんし、練達でもございません。ただ、仰せになりましたように裁判所の事務局、最高裁判所の事務総局等に一定の数の裁判官出身者がおるということはそのとおりでございます。この必要性につきましてはかねがね当委員会でも御指摘をいただいておるところでございますが、私どもといたしましても、できるだけその実際の事務総局にいて行政事務をやるような人は少なくするようにということは常々考えておりまして、また現にそのようにやっておるわけでございますが、何分最高裁判所のやっております、事務総局でやっております司法行政そのものがやはり全国的に見まして訴訟がいかに適正迅速に行われるかという準備をやるわけでございまして、そのためにはやはり一定限度の数の裁判官はどうしても必要になるわけでございます。そういう意味でなお事務総局等、調査官研修所教官等の任に当たっております裁判官の数を減らすべき努力はやはりしなければいけないということはおっしゃるとおりでございますが、何分いま申しましたようなことで、そう簡単にそれをなくしてしまえるものではないと、それが決して訴訟の適正迅速、全国的に見た訴訟の適正迅速な処理のためにマイナスにはなっていないのだというふうに私どもは考えておるわけでございまして、そこら辺のところひとつ御理解をいただきたいと存じます。
  120. 円山雅也

    ○円山雅也君 なるたけひとつ優秀な裁判官は法廷に残すように御努力をいただきたいと思います。  それから、裁判官の増員の問題ですけども、私が聞いた範囲でも世論のほとんどがたとえば民事の裁判遅い、刑事の裁判遅いと言うと、それは裁判官をふやしゃいいのだ、ほとんど世論はもうそういうふうに答えるし、それからこれは日弁連でも行った調査ですけれども、有識者へアンケートを出しまして、一体裁判がおくれる原因の最大の理由は何ですかというと、真っ先に裁判官が足りないのだというお答えが全員返ってきておる。これほど、事ほどさように世論が一生懸命になって足りない足りないと言っておられるのに、何でちびちびと毎年八人だ五人だと遠慮しいしい定員を増員されるのか。思い切ってばあんと増員をやれば、百人増員要求絶対必要ですとやって五十人削られれば五十人で八人よりはまだいいと思うのですけれども、どうして大増員ということが打ち出せないのでしょうかね。
  121. 大西勝也

    最高裁判所長官代理者(大西勝也君) 先ほど円山委員指摘になりましたとおり、裁判官、確かにだれがなってもいいというものではございません。やはりそれなりの素質と能力を持った方に来ていただかなきゃいけないということが一つの大前提としてあるわけでございます。そういたしますと、やはり裁判官の充員補充につきましては限度があるわけでございまして、仮にある年にただいま仰せのように百人増員いたしましてもそれは埋まらないわけでございます。空っぽであるわけでございます。それでは結局実質的には何も意味がないわけでございまして、裁判所の実戦力がふえるということにならなければ何にもならないわけでございまして、そういう意味裁判所といたしましては毎年予算要求をいたします際には一定の理想を掲げまして、その理想を早急に実現するということで財政当局と折衝を始めるわけでございますから、そのうちにだんだん充員状況等も固まってまいりまして、その充員に見合った増員を得なければ実質的な戦力の増大にならないということで、はなはだ恐縮でございますが、そういう意味で毎年ちょぼちょぼという増員になるわけでございまして、結局は要するに裁判官の充員がどうなるかということが一番大きな問題、それだけではございませんが、一番大きな問題になっておるわけでございます。
  122. 円山雅也

    ○円山雅也君 これは結局そうすると補給源の問題で、司法試験制度そのものにまで入ってくる問題だと思いますのでこの辺で控えまして、時間があと残り少ないので大臣にお伺いをしたいと思います。  政府当局は、刑事の過激派裁判につきましては、恐らく、これいやな言葉ですけれども、俗に弁護抜き裁判と言われておりますので、その立法をどうせ近々御提案になるだろうと思いますけれども、刑事事件ではそういうごく一部の訴訟の遅延に、裁判の遅延に対してそれだけ一生懸命になって立法をされる。ところが民事の裁判につきましては、仮にさっき総務局長がお答えになったけども、いずれにしても世間のあれはもう全部民事に際しては遅い遅いとこう言っている。その遅いのを片づけるのはきわめて簡単で、民事の裁判官を ふやしゃいいということもこれもわかると思う。その補充もまた問題かもしれませんけど、いずれにしてももう少しふやしていい。そうしますと、いわゆる民事訴訟が遅い遅いという世論に対して大臣はどのようにお考えか一言お聞かせいただきたいと思います。
  123. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 刑事、民事を問わず、先ほど来御意見もありましたように私ども同じ考えでございますが、これは法律の実効を上げるということは国民が期待しておること当然のことであります。でありますから、できるだけ早く公正な裁判の結果が出るようにこれは当然協力をしなきゃならぬところでございます。刑事だけ今度は特例法をお願いすることにしておりますが、これまた全然別の意味でお願いしておるわけでございまして、ここで先ほど来いろいろ御意見もあり、また裁判所、私どもがお答えしておりますように気持ちは皆さんと同じだと私は思っております。ただ、裁判官という特殊な仕事に携わる人をそうなかなか得られない、こういうことが一番の問題点だろうと思います。予算編成当時も、最初裁判所からいろいろ人員の増を政府に御相談になるわけでございますが、さてそれではそれを補充する方法といいますか、ことができるかとなりますと、先ほど裁判所がお答えになりましたように、充員の見込みがこのくらいしかないと、こういうことが最後には出てくるわけでございます。ただ、法律上の人員だけつくりましても実行が伴わないという、残念ながらそういう状況です。  余談と申すと恐縮でありますが、余談みたいになりますが、五百名近くの修習生の中で、私ども深くは知りませんけれども、どうしても裁判官に適格といいますか――弁護士になる人は非常に多いわけですね、御承知のように。これはやっぱり執務といいますか、仕事の態様にも関係があるし、まあ一つは経済ということで収入の面、最近はそれが一番多いと私は見ております。自分の体験を言って恐縮でありますが、私なんかのときには短い裁判官生活をしたわけでありますけれども別に裁判官になろうなんて全然考えていなかった。さればといって私の性格から弁護士になるという気持ちもなかった。妙な言い方でございますが、私は大学の先生にでもなろうかと、こう思っておった。ところが、その当時の大審院の先輩の人に教えを乞うておりましたが、君は何としてでも裁判所に入れとこう言われて、そういうものかなと思って入った程度でございますが、ずっと前の臨時司法制度調査会でも裁判官の充足ということで、これはやっぱり待遇の問題がある。人間だれしも精神面だけじゃだめですから、待遇の改善をしなければいけない。先ほど来お話しのように、きわめて重要な役割りをしていただく裁判官に、やはりそれにふさわしい人材を集めるということが一番大切である。そういう意味で、ある程度裁判官は御承知のように待遇を他の一般公務員よりか上げることにしております。この上げるについても、やはり公務員制度というのがありまして、裁判官だけどうしてそんな特殊な待遇をするのだという議論もまたあります。これも程度の問題がありまして、なかなかそういかない。これは弁護士さんの中でもたくさん優秀な人がいらっしゃるわけでございますが、やはり自由濶達にやれるということ、執務を人に縛られないということ、と同時に人によるでしょうけれども、一般論として何となく収入が多い、こういうことが私は原因しておるのじゃないか。ざっくばらんな話をいたしますと、なかなかむずかしいことで、しかし考え方としては、私どもはできるだけふさわしい裁判官を多く充足したいものだと考えておることは間違いございません。
  124. 円山雅也

    ○円山雅也君 最後に、これは要望でございます。  先ほどから寺田委員宮崎委員も一生懸命になって、この法務委員会で皆様方の方に、予算を出しなさい、予算をわれわれ取ろうじゃないかとか、一生懸命になって応援を出すのに、いや結構でございます、何かお答えがみんな、いや増員は足りておりますとか、結構なんで、まことに……、だから予算が取れないのじゃないかと思います。法務大臣、ひとつ景気回復、経済成長も結構でございますけれども、日本の法治国家の威信を高めるためにも、ぜひともひとつもう少しはでに予算を取っていただきまして人員の充実、いま申し上げた裁判官のあれだって俸給がある程度よければ増員も可能かもしれませんし、ぜひその点御努力をいただきたいと思います。  終わります。
  125. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 先ほど来皆さんの御意見や御忠告を承っておりますが、私は非常に妙な言い方でございますが、非常に感謝をしながら承っておるわけでございます。実のところ言いますと、政治にはいろいろな面があるわけでございますが、我田引水でなくて司法制度というものは国民生活の経済や教育以前の問題、国民生活の基礎条件を整えるのが法治国家の最大の責務であると思います。事裁判官の増員あるいは検察官の増員、こういうものに、失礼でありますけれども、政界で関心を持たれる人が非常に少ない、率直に申し上げて。そういう状況ですから財務当局もなかなか積極的に人員増あるいは施設の整備をしようという意欲に欠けておりまして、最近はそれがだんだん私変わってきておると思っております。ことしだけ申し上げましても、先ほど寺田さんからありがたい言葉があって行政管理庁の話まで出ましたが、今年度の、五十三年度の予算編成に当たっては、いま御承知のように、行政改革、経費節減ということで、いろいろ整理などやっておる中でございましたけれども、こういう面だけはやはり人がやる仕事が大部分でございますから、こういうものは必要なだけはやらなければいかぬということで、行政管理庁も非常に理解を示し、大蔵省も理解を示したと。国会の中でも、きょうは重ねて申し上げますが、ありがたい言葉をいただいておるわけでございますが、政党でもこういう面に非常に関心を持っていただくようになりまして、私どもありがたく思っておりますが、今後とも御意思を体して努力をいたしたいと、かように考えております。
  126. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 本案に対する本日の審査はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十七分散会     ―――――――――――――