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1978-03-02 第84回国会 参議院 法務委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二日(木曜日)    午前十時二分開会     —————————————    委員異動  二月十六日     辞任         補欠選任      内藤  功君     橋本  敦君      沓脱タケ子君     宮本 顕治君  二月二十日     辞任         補欠選任      浜本 万三君     阿具根 登君      白木義一郎君     宮崎 正義君  二月二十二日     辞任         補欠選任      熊谷太三郎君     浅野  拡君      宮本 顕治君     内藤  功君  二月二十四日     辞任         補欠選任      浅野  拡君     熊谷太三郎君      内藤  功君     宮本 顕治君  三月一日     辞任         補欠選任      宮本 顕治君     内藤  功君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         中尾 辰義君     理 事                 八木 一郎君                 山本 富雄君                 寺田 熊雄君                 宮崎 正義君     委 員                 大石 武一君                 上條 勝久君                 初村滝一郎君                 藤川 一秋君                 丸茂 重貞君                 阿具根 登君                 秋山 長造君                 小谷  守君                 内藤  功君                 橋本  敦君                 円山 雅也君                 江田 五月君    国務大臣        法 務 大 臣  瀬戸山三男君    政府委員        公正取引委員会        事務局長     戸田 嘉徳君        法務政務次官   青木 正久君        法務大臣官房長  前田  宏君        法務大臣官房司        法法制調査部長  枇杷田泰助君        法務省民事局長  香川 保一君        法務省刑事局長  伊藤 榮樹君        法務省人権擁護        局長       鬼塚賢太郎君    事務局側        常任委員会専門        員        奥村 俊光君    説明員        警察庁警備局公        安第三課長    福井 与明君        文部省体育局ス        ポーツ課長    西野間幸雄君        労働省労働基準        局監督課長    小粥 義朗君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (法務行政基本方針に関する件)  (新東京国際空港警備発生した事件捜査状  況に関する件)  (過激派内部抗争事件捜査状況に関する件)  (犯罪被害者補償に関する件)  (プロ野球ドラフト制度等に関する件)     —————————————
  2. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  沓脱タケ子君、浜本万三君、白木義一郎君が委員辞任され、橋本敦君、阿具根登君、宮崎正義君が委員選任されました。     —————————————
  3. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が一名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事宮崎正義君を指名いたします。     —————————————
  5. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは、法務省刑事局長お尋ねをしますが、成田空港建設に関連しましてずいぶんたくさんの人々がかなり思い切った反対運動をしておるわけですが、これらの人々がかなり警察検挙せられていることが報道されておりますね。そこで、成田空港に関連して起訴せられました人々の数、男女の別、罪名、それから起訴せられた場合にそれが何件になっているか事件数、過去になされた裁判の結果等についてお答えをいただきたいと思います。
  7. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 成田空港建設をめぐる行動に関しましてこれまでに起訴されました人員は、合計五百六十四名であります。そのうち、男性が五百三十五名、女性が二十九名であります。  主な罪名を申し上げますと、公務執行妨害凶器準備集合傷害傷害致死建造物侵入威力業務妨害、暴行、放火未遂火災びん使用等の処罰に関する法律違反などでございます。  これをいわゆる事件の数という観点から見ますと、三十一件であります。  これまでなされました裁判結果を申し上げますと、三十一件のうち、十一件、人数にして百二十九名について判決言い渡し済みであります。その中身は、懲役刑に処せられた者が百十八名。うち、実刑が十六名、最高が懲役五年、最低懲役四月、執行猶予つき懲役刑判決百二名。それから罰金刑に処せられた者が三名。それから公訴棄却が八名、これはいずれも被告人死亡でございます。以上であります。
  8. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 五百六十四名とおっしゃいましたか、総数は。五百六十四名、事件数にして三十一件といいますと、裁判官に対して大変な負担と時間をかけることになりますが、そのうちすでに十一件判決があったということでありますから、残りが二十件ということになりますが、公判進捗状況はどんなふうでしょうか。
  9. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 裁判結果がありましたのが十一件でございますが、なお、一つ事件について一部被告人の残っておるのがおりますから、現在裁判係属中の事件は二十一件、四百三十五名であります。  裁判進行状況は、検察官弁護人立証がもう済んでしまっておりますのが二件三名、検察官立証中のものが十一件二百八十三名、いまだ冒頭手続も終わっていないものが八件百四十九名でございます。
  10. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは裁判所にとってかなりな負担であるというだけでなくして、検察庁にとってもなかなか負担だと思いますが、裁判所の問題はいずれまた裁判所に尋ねることにして、検察庁としてはどういうふうに処理しようとしていますか、この扱い方は。
  11. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 現在、被告人の数はただいま申し上げたようなことでございますが、これが三十五のグループに分けて審理が進んでおります。裁判所におかれましては、合議三カ部と単独三係、この合計裁判所で担当しておられます。これに対して、検察官の方は、この成田関係事件立会専従の者が二名と、それからほかに応援者二名、合計四名で立ち会っております。まあ裁判所も大変でございますが、検察官の方もなかなか大変でございます。ただいまのところ、各グループごとに月一回、おおむね半日という非常にゆっくりしたテンポで裁判が進んでおりますので、この四名で一生懸命対応しておると、こういう状況でございます。
  12. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 被告人はどうなっていますか。大体身柄は出ておりますか、あるいは勾留中の者が多いのでしょうか。
  13. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 現在、身柄拘束中の者は半分より少し下だと思います。
  14. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この裁判事件については、公判進行が困難を感ずるというような特別な事情はないのでしょうか。その点どうでしょう。
  15. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 一般的にほとんどすべてが否認事件であるという事件の性質がございますが、そのほかに一番困難を感じておるということで申し上げれば、弁護人の御都合によって期日が入らない、一月に半日しか審理ができないと、これが一番検察としても困っておる状況でございます。
  16. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 次に警察庁お尋ねをしますが、最近五年間、まあできたら五年間を言ってほしいのだけれども、五年間における新左翼内ゲバ事件がどんなふうな状態で起きているか、その犯行の概要、これをちょっとまずお尋ねしたいと思います。
  17. 福井与明

    説明員(福井与明君) お答えいたします。  四十八年でございますが、発生が二百三十八件でございます。その結果、一件二人が死亡しております。負傷者が五百七十三人でございます。検挙が三百六十一人でございます。  四十九年ですが、発生が二百八十六件でございます。死亡が十件十一人、負傷者が六百七人、検挙が四百二十八人でございます。  五十年ですが、発生が二百二十九件でございます。死亡が十六件二十人、負傷者が五百四十三人、検挙が五百九十七人でございます。  五十一年ですが、発生が九十一件でございます。死亡が二件三人、負傷者が百九十二人、検挙が百五十二人でございます。  昨年ですが、発生が四十一件でございます。死亡が七件十人、負傷者が四十七人、検挙が四十九人でございます。
  18. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 最近の内ゲバ事件を見ますと、これは白昼公然と焼き殺したとか撲殺したとか、ちょっとわれわれの常識では理解しがたいような犯罪が起きていますね。この死亡事件だけは何とか食いとめて人命だけは保っていかなきゃいかぬと思いますが、殺人までいった事件検挙率というのはどのぐらいありますか。
  19. 福井与明

    説明員(福井与明君) 四十四年以降、内ゲバ殺人事件と申しますか、内ゲバによって被害者死亡する事件が起こっておるわけでございますけれども、五十一件発生いたしまして六十二人が死亡しております。鋭意捜査の結果、二十二件三百十人を検挙しております。そのほかに四十八人を現在指名手配中でございます。
  20. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 五十一件で六十二人死亡して、それで検挙したのが二十二件と言われましたか。で、犯人は二十二件で何人逮捕したんです。
  21. 福井与明

    説明員(福井与明君) 三百十人でございます。
  22. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そうすると、残り二十九件がまだ犯人逮捕に至らぬと、こういうことですか。
  23. 福井与明

    説明員(福井与明君) そのとおりでございます。
  24. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 ことに、昨年の、自動車の中で焼殺されたとか、あるいは東大の構内にまで入り込んだとかいうような事件がありましたね、非常にショッキングな。最近茨城大学の学生が撲殺されたというのですが、こういうショッキングな事件はまだ犯人逮捕に至らぬのでしょうか。
  25. 福井与明

    説明員(福井与明君) 昨年の四月十五日に起こりました伊藤亘伊藤修藤原隆義関口誠司の殺害されました事件について御説明いたします。  これは当日の午後九時十分の発生でございますが、埼玉県の戸田市の方向から走ってまいりました被害者の車が同時刻ごろ浦和市辻一千八百十三の先の路上にさしかかりました際に、前方をロングボデートラックでふさぎまして、後方をほろつきトラックで追突をしてやはり退路をふさぎまして、被害車両が動けないようにしておいて、前後の車両から七、八人の犯人がおりてまいりまして、被害車両のガラスを鉄パイプ等で殴打して破壊をしてガソリンをかけて中にいた四人を焼殺したという事件でありますが、午後九時十五分ころこれを目撃しました人の一一〇番で警察が認知したわけでございますけれども、早速初動措置を講じましたけれども、残念ながら検挙に至りませんでした。当日、所轄浦和署に署長を長とします百五十人の態勢から成る捜査本部を置きました。その後の捜査によって革労協活動家らによる犯行と見まして、都内の杉並区の高井戸にあります革労協の事務所ほかこれまでに百十二カ所捜索をやっております。現場を当時通行しておった人とか付近の人三千五百人から事情を聴取したわけでございますが、その結果、犯人らは付近に駐車しておりました車で朝霞方向へ逃走したということは判明しておりますけれども、現在犯人を割り出すべく捜査を続けておるところでございます。  それからことしの一月二十七日の茨城大学生七人が襲われて三人が死亡、三人が負傷した事案について御説明いたします。  これは早朝の午前三時半から四時ころに四カ所がほとんど同時に襲撃されたという事件でございますが、警察ではこの中の一つ現場中島英子のところの現場につきまして付近の人からの一一〇番がございまして四時二分の時点でこの事件については認知をしております。早速緊急配備をしたわけでございますが、四時五分から七分の間に配備をしまして、早い署では十四分くらいで、遅い署でも四十数分で配備を完了いたしました。県下二十七署、六十五カ所について八百六十人の態勢初動捜査をやったわけでございますけれども、残念なから検挙には至りませんでした。その日、早速所轄水戸署とそれから勝田署にそれぞれ本部を置いて、全体を本部警備部長が統括する形で四百九十人の態勢捜査をやっております。二月十日と十一日にやはりこれも革労協活動家らによる犯行と見まして、さっき申し上げました杉並区高井戸の現代社を初め五カ所の捜索をやりまして関係物の押収をする等捜査をやっておりますが、現在のところでは犯人らは常磐線の羽鳥駅方向へ逃走したということが判明しておりますけれども、さらに犯人を割り出すべく現在捜査中の段階でございます。
  26. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 五十一件の殺人事件でそのうち犯人検挙したのが二十二件といいますと、これは検挙率が約四〇%強ということになりますね。ところが、これは法務省の出している犯罪白書、これを見ますと、日本の犯罪検挙率というのは、総数で五十年が六八・九%、五十一年が七〇・二%、そのうち、殺人事件は、五十年が九六・五%、五十一年が九六・四%、これはまあ世界に誇る大変な高い検挙率でしょう。ところが、この内ゲバ事件だけは一般の検挙率と比べて半分にも達しないという大変低い検挙率ですね。私ども国会議員のところへ送ってくる新左翼の新聞によると、こういう殺人事件は権力の犯罪だというようなことが書いてある。それにまた中核派が乗っているとか乗っていないとかいうようなことも書いてある。そういうようなことをわれわれが信用するわけではないけれども、もうちょっと検挙率を上げないとそういうようなことを言われることになりますから、もうちょっと警察の方が精力的に捜査をして検挙率を上げていただかないといけないと思いますよ。いかがです。
  27. 福井与明

    説明員(福井与明君) 実は、総体の数字委員御指摘のとおりでございますが、中身をちょっと御説明さしていただきますと、四十四年以来の件数でございますけれども、実は四十八年以前に発生いたしましたのが十一件ございます。十一件で十三人死亡しているわけでございますが、これにつきましては十件を検挙しておりまして、百五十八人を検挙しております。したがいまして、四十八年以前の事件はもうほとんど解決しているわけでございますが、それで年を追うごとにだんだんこう残っておるものが多くなっているという状況でございますけれども、したがいまして、捜査期間がだんだん長くなっておるという実態は確かにございます。たとえば五十一年以降は検挙した事件がないわけでございますけれども、五十一年からこれまでの間に実はさっき申し上げました被害者が死にました内ゲバ事件についての検挙はあるわけでございます。五十年度の事件がほとんどでございますが、五十年度の事件及びそれまでの前の事件について八人を検挙しているわけでございます。したがいまして、タイムラグがございまして、古い事件から古い事件からこう片づいてきているという状況はあるわけでございます。  そこで、捜査期間が非常に長くなっている状況をちょっと御説明さしていただきますと、一つは、内ゲバ実行部隊を、内ゲバをやっておる中革、革マル革労協といった彼らの組織の中でも、秘匿をしておると申しますか、警察等には全然顔を知られていないメンバーを、しかも公然面の集会、デモ等には一切出席させないで、こういうものを組織を持っておるということでございます。ことしの一月一日付の中核派機関誌前進の記事でございますけれども、公然面を一層強化しつつ、裏側に党をもう一つ非合法非公然的につくり上げるんだということを言っておりますが、そこで実態をちょっと申し上げますと、これは昨年の二月十九日に警視庁で検挙した事件でございますけれども、全く偽名アパートを借りまして、しかもごく普通のサラリーマンのようなスタイルで少なくとも外見的には注意しながらやっておるという実態があったわけでございますが、これを突きとめましたので有印私文書偽造行使検挙いたしました。ところが、この人物は、非常に注意をしながら生活をしつつ、なおアパート管理人さんなり周囲の人にちょっとでも自分が不審を持たれたというふうに感じますと、すぐさまいままでも転居をしてきているようでございます。五十年の四月から去年の二月に検挙された間でございますから二年足らずでございますが、四回かわって、検挙しました際も五回目の転居直前でございました。こういう実態でございますので、なかなか実行部隊メンバーを見つけるのが困難でございますし、やっと捜し当てた際にはすでに転居をしてしまっているというような実態一つございます。  それから被害者側なり関係者協力がありませんと警察捜査というものはなかなか伸びないものでございますが、これがまたなかなか得られないということでございます。一番最近の内ゲバ殺、これは大阪で起こりました二月十日に松井章というのが殺された事案でございますけれども、この人物は四十九年の十月二十五日にもやはり中核派に襲われまして重傷を負ったことがあるわけでございますが、こちらとしてはその際に被害状況を何とか聴取しようとしましたし、その後の警戒についても申し入れをしたのですが、両方とも一切応じません。そうして、家族大阪の寝屋川に住んでいるわけでございますが、家族とは全然別個に偽名大阪都島区内アパートを借りてそこに住んでおると、こういう状況でございますが、そういう協力を得られないということでございます。  それから関係者でございますけれども、これもまたなかなか内ゲバは何とか解決しろということはどなたもおっしゃるわけですけれども、しかし、自分とは一切関係のないところで捜査をしてくれという風潮が実は残念ながらございます。さっき御説明いたしました茨城大関係者被害者になりました事件でございますが、二月の二日に茨城大学生部長以下が茨城県警本部本部長のところへ申し入れに参りました。茨城大学生被害者である、なぜ加害者を取り調べないで被害者を調べるんだということが申し入れ内容にあるわけでございますけれども、捜査の第一から説明をいたしまして、事件が起こりました直後の一番大事な時期にどうしても突っ込んだ捜査を重点的にやらなくちゃならぬということをるる説明をして引き取ってもらっているような状況でございまして、残念ながらその点でも被害者側協力はございません。  そういう状況がございましてなかなか捜査が難航しておりますが、しかし、二十二件三百十人を検挙しておることをひとつ何とかお認めいただきたいと思いますが、そういう努力の結果、彼らとしては内ゲバに非常に重点を入れておるわけでございますけれども、さっき御説明いたしましたように内ゲバそのものが非常にやりにくくなってきておる状況にあるわけでございます。昨年の発生は四十一件でございますが、これは前年に比べますと二分の一でございますし、そのまた前の年に比べますと六分の一でございます。負債者の数も昨年の四十七人という数字は、その前の数字に比べますと四分の一でございますし、その前の年に比べますと十二分の一でございます。したがいまして、ストレートに一件一件の事件の解決というのはなかなか時間がかかるという事情は今後も容易には公開できないと思いますけれども、国民の理解と協力とやはり警察の取り締まりによってトータルの内ゲバとしては非常にやりにくくなっていると申しますか、抑圧されてきておるというふうには私たちは考えております。
  28. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 大分長い弁明だったけれども、それは大変検挙しにくい事件だということはよくわかるんだけれども、あなた方のいままでの実績を見てみるとほかの事件は非常によく検挙しておられるのだから、まあ困難はあると思うけれども、さらに努力をして検挙率を上げていただくように要望しておきます。いいですか。——それじゃ、警察の方はよろしいです。  公正取引委員会の方にプロ野球事業についてお尋ねをしますけれども、プロ野球事業独禁法第一条に規定する「事業」の中に含まれますか。
  29. 戸田嘉徳

    政府委員戸田嘉徳君) 独占禁止法に申しますところの「事業」には、商業工業金融業などのほかに、映画とかスポーツなどがいわゆるサービス業というものも含まれると解されておりますので、プロ野球事業独占禁止法第一条に言うところの「事業」に該当すると、かように考えます。
  30. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 プロ野球球団独禁法第二条の「事業者」に当たりますか。
  31. 戸田嘉徳

    政府委員戸田嘉徳君) 独禁法第二条第一項で「事業者」と申しますときには「商業工業金融業その他の事業を行う者をいう。」と、かように規定しております。たとえば株式会社阪急ブレーブスでありますとかあるいは読売興業株式会社などのいわゆるプロ野球球団サービス業を行っておるわけでございます。したがいまして、「その他の事業を行う者」に該当するということで、いわゆるここに言います「事業者」に該当するものと考えます。
  32. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そういたしますと、セントラル及びパシフィック野球連盟は、独禁法第二条第二項の「事業者団体」に当たりますね。いかがでしょう。
  33. 戸田嘉徳

    政府委員戸田嘉徳君) 独禁法第二条第二項で、「この法律において事業者団体とは、事業者としての共通利益を増進することを主たる目的とする二以上の事業者結合体又はその連合体をいい、」云々と、かように規定してございます。ところで、太平洋野球連盟いわゆるパシフィック野球連盟は、株式会社阪急ブレーブス等の六球団、また、セントラル野球連盟は、読売興業株式会社等の六球団をそれぞれ構成員として組織されているわけでございまして、年度連盟選手権試合の実施を行うこと等を目的といたしておるわけでございます。したがって、ここで言う「共通利益を増進することを主たる目的」としているものと認められるわけでございまして、「事業者団体」に該当するものと考えられます。
  34. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 独禁法第二条第六項に、「取引相手方を制限する」問題をつかまえておりますけれども、これは、雇用契約ないしは請負契約、あるいは雇用契約とも言えず、請負契約とも言えず、まあ一種特別な無名契約とすべきか、そういう疑いはありますが、野球選手契約というのがありますね、これの締結についての相手方を制限するということも含みますか。
  35. 戸田嘉徳

    政府委員戸田嘉徳君) 独占禁止法の第二条第六項で、「取引相手方を制限する」というふうに規定してございますが、ここに言いますところの「取引」という中には、いわゆる請負契約、これは御承知のように当事者の一方がある事業を完成することを約束しまして、それに対して他の一方がその仕事の結果に対しまして報酬を払う、こういう契約でございますが、かような請負契約は一般的に含まれるものと解されております。しかしながら、雇用契約、これは御承知のように当事者の一方が使用者に対してその使用者の労務に服するということを約しまして、使用者の方がこれに対して給料等報酬を支払う、こういうことを約する契約でございます。その契約内容は、まあいわば一定の賃金を得まして一定雇用条件のもとで労務を供給すると、こういう契約でございます。さらに申しますと、この契約は、非独立的な従属的な状態の時間的に束縛をされた労務を提供すると、かような契約でございます。かような雇用契約は、いわゆる独禁法に申しますところの「取引」には含まれない、かように解されてきております。  いまお話のございましたところのプロ野球選手契約でございますが、この性格につきましては必ずしも一定した解釈が確立していないようでございますが、私どもといたしましては、これはきわめて雇用契約に類似した契約である、したがいましてこれは独禁法上問題としがたいものと、かように考えて従来運用をいたしてきております。
  36. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 最近話題になっております野球界の憲法と言われる野球協約というのがございますね。この野球協約の中に規定されているドラフト制度、このドラフト制度は独禁法第二条第六項の「不当な取引制限」に当たるかどうか、公取のお考えを承りたい。
  37. 戸田嘉徳

    政府委員戸田嘉徳君) ただいまお尋ねのドラフト制度でございますが、これはプロ野球球団が相互に野球選手契約相手方について一定の制限を課すると、そういうことを内容としているものと考えられるわけでございます。ところが、この野球選手契約というのは、先ほど申し上げましたように、一種の雇用契約に類する契約と、かように私どもは判断いたしますので、独占禁止法第二条第六項または第八条第一項第一号というようなところに言いますところの規定には該当しないと、かように解しておる次第でございます。
  38. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そういたしますと、このドラフト制度は、独禁法第八条第一号の「一定取引分野における競争を実質的に制限すること。」にも該当しないと、そういう解釈をとっておられますか。
  39. 戸田嘉徳

    政府委員戸田嘉徳君) 仰せのとおりでございます。
  40. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 かつて、野球選手の契約金の最高額について球団側が申し合わせたことに関連して、独禁法の問題が論議されたことがありました。もちろん反対論もあります。そうすると、この野球協約に規定せられるその種の事項はすべて独禁法の規律するところの範囲外だと、こういうふうに見ておられるわけですね。
  41. 戸田嘉徳

    政府委員戸田嘉徳君) 私、野球協約のすべてに精通しているわけでございませんのですが、ただ申し上げられますことは、いわゆる雇用、まあ雇用に準ずるといいますか、いわゆる雇用契約に関連することども、さようなものについては独禁法の適用は外れると、かような解釈で運用をしてきておるわけでございます。
  42. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 もう結構です、終わりましたから。  次は法務省の方にお尋ねしますが、いま公取の方の御解釈がちょっとのぞけましたね。プロ野球選手が球団と結ぶ選手契約法律的性格、これはまあいろいろ契約の自由と関連したりあるいは職業選択の自由に関連をいたしていろいろ論議されておりますが、これは法務省としてはどういうふうにこの選手契約法律的性格について考えておられますか。
  43. 香川保一

    政府委員(香川保一君) 先ほども寺田委員御指摘のように、大まかに申し上げますと、民法における雇用契約請負契約の中間的な無名契約というふうに法律的な性格を考えるべきだろうと思います。
  44. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 いまの民事局長のお話ですと、雇用契約請負契約の中間にある一種の無名契約と、こういうふうに見ておられるというのですね。いま公取の事務局長は、雇用契約にきわめて類似したと言われる。まあこのごろ中道ということがはやるけれども、どっちの方に傾いているかというそれが問題なんでね。雇用契約の方に近いのか、請負契約の方に近いのか。つまり、雇用契約の類似とまで言えるのかどうか、この点どうでしょうか。
  45. 香川保一

    政府委員(香川保一君) 無名契約につきましてこれは民法自身規定が何もないわけでございますから、いろいろの法律を解釈いたします場合に、やはりその法律の趣旨から、たとえば選手契約が一般的に言って請負契約の方に近いというふうに言えるといたしましても、独禁法の趣旨で言えばやはり雇用に近いものというふうな位置づけもこれはあながち不合理ではないと思うのでありますけれども、先ほど申しました民法から見て請負と雇用の中間的と申したわけでございますから、ほかの法律から見た場合に、その法律の適用上どちらの方に近いものとして考えるかというのは、これはやはり相対的に考えざるを得ない問題だろうと思うのであります。私は個人的にはよくこの選手契約内容をつまびらかしておりませんけれども、少なくとも民法で考える場合には、どちらかと言えば請負に近いような解釈とした方がいいのじゃないかという感じがいたしておりますけれども、これはまあ民法的な考え方として申し上げる限りでございます。
  46. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 公取の方は、どっちかというと雇用契約に類似したという、雇用契約に近い距離を示唆された。あなたは、どっちかというと請負契約に近いというようなお説のようですね。等距離にないというふうな、どちらもそういうニュアンスが感じられますけれども、あなたはドラフト制度についてはどう考えられますか。これはもう御研究になったと思うのですが、これこそ民法九十条との関連、あるいは民法第一条の第二項との関連、いろいろありますね。どういうふうにお考えでしょう。
  47. 香川保一

    政府委員(香川保一君) これはいろいろ見方があると思いますけれども、きわめて法律的にと申しますか冷ややかにと申しますか考えますと、特に選手に選手契約を締結しなきゃならない義務があるわけでもありませんし、また逆に契約締結の請求権を持っているわけでもございませんので、さような基本的な立場で考えますと、民法の九十条、公序良俗に違反する契約というふうには考えられないのではないかというふうに思っております。
  48. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 この場合は、公序良俗よりは、善良の風俗の問題になるのじゃないでしょうかね。それで、どちらにしても民法九十条あるいは第一条二項に該当しないというそういう局長のお考えのように承りましたが、私は選手契約をいろいろ検討をしてみまして、選手契約を締結した後の選手と球団との立場を見ますと、球団側は一方的に契約更新権というものを持っておりますね。これは局長も御承知でしょうが、野球協約の第四十九条、それから実際上付合契約的な統一契約書というものがあるようですが、その三十一条を見てみますと、これは球団側に一方的な契約更新権がある。それから契約条件が一致しないときは、球団側が保留権というものを持っておりますね、この保留権によって選手を拘束し、選手が当該の球団を離れて他の球団との間に契約を締結することを不可能ならしめている。これは野球協約の第九章、統一契約書の第三十一条以下にありますが、そのほかにも、契約について保留権が行使せられた場合の保留手当というのは参稼報酬のわずかに四分の一、これでは事実上球団の提示条件をのまざるを得ないわけです。この点については野球協約の第七条に規定があるわけです。そのほか、選手が引退後復帰する場合、これはもとの球団に戻らなければいけないという規定が七十五条以下にある。一たん契約条件がまとまらないで引退した者がもとの球団に戻るということは事実上無理のように思われます。  こういう一連の協約の規定を見ますと、あるいは統一契約書を見ますと、契約内容が余りにも球団側に有利に傾き過ぎていますね。ですから、ドラフト制度よりも、むしろ問題はこういう契約更新権とか保留権とかこういう点にあるのじゃないかと私は考えるのですが、局長はこの点についてはどういうふうにお考えですか。
  49. 香川保一

    政府委員(香川保一君) 御指摘のような点、それがまあほめた話かどうか私もよくわかりませんが、まあ恐らくはプロ野球実態からいってこういう形にした方が——一つプロ野球それ自体は興行的なものでございましょうけれども、各球団が選手がそろって興行がうまくいくというふうな考え方で、それに合わせるべくいろいろこういった統一契約とかあるいは協約ができておるのだろうと思うのであります。それがいいかどうかは別といたしまして、法律的に見ました場合に、先ほども申しましたように、お互い契約締結の権利義務というふうなものが事前にあるわけではございませんから、純法律的に申しますれば、これを違法というふうな評価はやはりできないのではないだろうか。まあ簡単に申しますれば、選手の方からはこういう内容契約を締結しろというふうな請求権がもともとあるわけでもございませんし、また球団側の方にも同じような契約請求権というふうなものもないところでこういうそれを律するいわば補充的な協約等ができておるわけでございますから、その中に入って契約関係に立とうとするならばやはりそれに従ってやらざるを得ない、そのこと自身が法律的に無効とかあるいは違法というふうな評価のできない分野の問題ではなかろうか。裏から申しますと、これを無効とかいうふうに考えました場合、その後どういう法律関係になるかと言えば決して何も残らないわけでございまして、無効とすることによって一つの私法上の法律関係を整序する、あるいは選手の何らかの地位を救済するというふうなことにもならぬわけでございますから、したがって、法律的に言えば、御指摘のような点は、いいか悪いかは別といたしまして、違法とか無効とかというふうな評価のできないものだろうというふうに考えております。
  50. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 局長も御存じのように、雇用の特質というのは当該の企業に対する従属性が非常に中心になっておりますね。選手というものは、もう球団に従属している、そういう性格がきわめて強いんですよね。ですから、請負というよりは、私はそういう従属性のゆえに雇用に近いという公取の方の解釈の方がちょっと実際にはマッチしているように思いますけれども、それはひとつおいて、局長契約請求権——契約締結請求権というか、それはないからということを大変力説なさるけれども、私がお尋ねしているのは、一たん契約した後の問題です。契約した後、保留権というもので選手を縛っておく。ですから、局長は雇用でないとおっしゃるからいいけれども、雇用に非常に近い性格だという解釈になりますと、これは民法の六百二十六条の雇用の期間の問題になりますね。あるいは労働基準法十四条、これが一般的に、特別法というか、これはむしろ一般法になってきています、いまはね。だから、いま、これはできるだけ人間の自由というものを尊重して、企業に従属したまま縛っておくということは近代法の理想から言って避けていかなけりゃならぬでしょう。それを、実際上、保留権によって、選手としての生命がある限りはほとんど半永久的に球団に縛りつけておく、従属性というものを固定化していく、こういう現象があるわけですが、その点はやっぱり善良の風俗に触れるのじゃないだろうか。どうでしょう。
  51. 香川保一

    政府委員(香川保一君) 実態はまさに従属的な面が非常に強いと思うのでありますけれども、これは契約関係によってそういった従属性が出てくるというよりは、むしろその前の、つまりプロ野球というのは一定の限られた球団しかないわけでございますから、それ以外のところでは、いわば選手として優秀な技量を持っておりましても、よそへ売るというふうな、よそで自由に契約が締結できるというふうなものではないわけでございまして、さような働く場面が非常に限られた狭いところであるということから主としてその従属性というふうな関係が出てくることだろうと思うのであります。だから、そういう意味から申しますと、むしろ契約そのものの本質から従属性が出てき、したがって雇用に近いというふうな見方はちょっとできないのではないだろうかというふうに思うわけでございまして、そういう意味から民法の有名契約の類型のどちらに近いかと言えば、私は、先ほど申し上げましたように、実は請負に近いのじゃないか、さような意味で雇用的ないろいろの法規制をそのままここへ当てはめるということはちょっと法律的に無理があるというふうに感じられるわけでございます。
  52. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 局長は野球連盟と野球球団とをちょっと誤解していらっしゃるような気もするんだけれども、あなたは、球団を、そういう単位が全部のようにちょっと御答弁だったんだが、そうじゃなくて、私は、球団から球団へというその六球団の間に移動する自由というものが脅かされているという、そういう点でお尋ねしたわけです。なるほど、それは、一つの野球連盟あるいは別な野球連盟、セントラルとパシフィックと二つあるから、合計十二球団になるかもしれない。だから、そこの間で移動し得る自由というものがあればまだしも許されるけれども、一つの単位球団に縛られてしまう。それはなるほど雇用契約の規定をストレートに、あるいは労働基準法の規定をストレートに適用はできないかもしれない。しかし、請負契約といえども、請負契約だからもう永久的に縛りつけられてもしようがありませんということにはならないのでね。やはり国民のそういう企業への従属性というものが固定化されるということが近代法の理想から望ましいことではないんで、しかも一方の方は契約解除権というものを一方的に持っているわけでしょう。それからまた更新権も持っている。しかも保留権も持っている。だから、選手と球団との立場の相違というものがもう余りにも隔絶している。そういうことが民法の言う善良の風俗に反するのではないかという疑いは多分にあると思うのだけれども、どうでしょう、重ねてちょっと局長の方から……。
  53. 香川保一

    政府委員(香川保一君) 先ほど申しましたように、私も野球のことは余り存じ上げないものですから、的確には御答弁できなくて恐縮なんですけれども、先ほど申しましたのは、純法律的にと申しますか、事柄がそういう方向に行っていることが決して好ましいとかあるいは好ましくないというふうなことを申し上げているのではないのでございまして、法律的に見ますと、たとえば、いまおっしゃいましたような球団から球団に移る自由がないというふうなことも、これは選手契約を締結する際に付合約款的なものとしてのいろいろの協約なりを前提にしての契約関係でございますから、したがってそれを承知の上でそういう契約を締結している以上、その協約なりの合理性というものが全くないといたしますとさような契約は好ましくないというふうな評価もできるかもしれないと思うのでありますけれども、協約自身がやはりプロ野球の興行性といいますか、あるいはそういったものを盛んにするための一つの長年の知恵としてその方が結局は合理的でいいんだというふうな考え方でできているのだろうと思うのでありまして、そういうふうな一つの、それが唯一の方法かどうかは別といたしまして、さような限りにおいての合理性があるといたしますと、それを前提にしての個々の選手契約そのものを、あるいはいわば球団から球団への移籍の自由ということがないといたしましても、それを承知の上での契約関係に入っておるわけでありますから、これを善良の風俗に反するから無効だというふうにはどうも評価するにはちょっと引っかかるものがございまして、そういうものがいいか悪いか、妥当かどうかの問題は実態に即していろいろあろうかと思いますけれども、法律的に見る限りはこれを無効というふうにきめつけるのはいかがなものだろうかと、かような感じで、はなはだ法律論らしくないのでございますけれども、そういう感じがするわけでございまして、確かに善良の風俗に反するという見方もあろうかと思いますけれども、そういう見方をいたしましても、そのあとそれではどうなるのかということになりました場合に、一体原点に戻りまして選手には契約を締結することを請求する権利というものはもともとないわけでございますから、あとのところが法律的に何ら整序されないような形になるのではないかというふうに思うわけでございまして、要は、結局、その協約とかいうふうなもの、そういうものの合理性の問題だろう。これはまさにプロ野球界の実態、興行性というふうないろいろの観点から見ての一つの長年の知恵と申しますか、そういうものとして生まれてきておるというふうに感じられますので、さらにその内容をよりよくするという努力はもちろん必要かと思いますけれども、現段階でのこういう協約を含めてのそういう法律関係を見ました場合に、善良の風俗に違反するというふうなきめつけ方はちょっとできないのではないかと、まあこういう感じでございます。
  54. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 もう一つは、いまの保留権の問題と、選手契約を譲渡することができる。これはトレードとウエイバーの両制度がありますが、これは野球協約の第百五条以下にある。これは局長は請負の方に近いと言われるから民法の雇用の規定をすぐに引くわけにはいかないかもしれませんけれども、民法の第六百二十五条が雇用に関してありますね。これはもちろん働く者、これは請負人であろうとあるいは雇い人であろうと、そういう者の同意があればいいわけですけれども、ただこれは同意が統一契約書によって付合契約的なもので承認を強制されているわけですね。これは統一契約書の二十一条にある。だから、なるほど局長のおっしゃる合理性というものは企業側から見ての合理性を主にして貫かれている。つまり、働く者の立場においての合理性というものは非常に弱められている。そこに問題があるわけでしょう。それから先ほどもお話しした契約解除権、これも野球協約の九十五条、統一契約書の二十五条、二十六条。これは選手と球団側との間ではこれもまた非常に隔絶したものがある。そういうことを考えますと、これは一つ一つをとらえますと、局長のおっしゃるように、いまだもって善良の風俗に触れるというところまではいかないと、こういう結論があるいは出るかもしれない。しかし、こういうものが総合されて、余りにも両者の立場の相違というものが差があり過ぎるのじゃないか。だから、つまり、合わせて一本というか、これは全部を総合してみると働く者の側に非常に弱くなっているということは否めないですね、そういう感じが。だから、合わせて一本でどうでしょう。やはりこれでもなおかつ触れませんということを言い切れますか。いかがでしょう。
  55. 香川保一

    政府委員(香川保一君) いま一つ一つ取り上げればというその一つとして、たとえば民法の六百二十五条の関係なんかは、請負契約に近いものと申しましても、これはやはり六百二十五条の趣旨から申しますと選手契約についても適用があってしかるべきだろうと思うのであります。したがって、承諾がない限りは譲渡性がないというふうな解釈にはなると思うのでありますが、これも、しからばその民法の六百二十五条が、全くの雇用契約については、まあ労働基準法等のいろいろの法理から考えまして、これを全面的に放棄するような契約というふうなものはやはり法律的には違法というふうな評価はされると思うのでありますけれども、選手契約の場合には、先ほど申しましたように、さような意味での雇用契約的な一つの評価もある面においてはしなきゃならぬといたしましても、やはり事前にそういったいわば承諾をしておると申しますか、そういう法律関係承知の上でそこへ入ってきておるということを現在のプロ野球の選手の立場から考えまして、これを全く雇用と同じような意味でのその契約関係は無効だというふうには評価するだけの実態ではないのじゃないかというふうにも思うのでございますけれども、そういう個々の面についてはいろいろの評価の仕方、これは先ほども申しましたように雇用に近い面から見なきゃならぬものもあると思いますけれども、全体として見まして私はまず請負契約に近い方だというふうに申し上げたわけであります。いろいろそういった個々の点をとらえてどの個々の点についてもこれを違法というふうに見ないとしても、全体として見たらどうかというお話でございますけれども、むしろ私は全体として——これはあるいは思考が逆だといっておしかりを受けるかもしれませんが、全体として見た場合に、これを善良の風俗違反ということで無効というふうには評価するわけにはちょっといかぬのじゃないかというそういう一つの結論的なものが先に立っておりまして、そして個々の面を検討しても、やはりどのような面からもそういった評価はちょっとしにくいのじゃないかと、こういうふうに感ずるわけでありまして、だから、むしろ考え方としては、現在の選手契約あるいはその前提の協約等を、実態をよく知りませんのではなはだ確かなところはないかもしれませんけれども、これを全体として法律的に無効というふうなことを言うのは少し行き過ぎじゃないかというふうな感じが先に立つものですから、さらに個々の点について検討してもそういうふうな点が指摘できないのじゃないかというふうな考え方なんでございます。
  56. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはちょっと少し球団側に傾いた法律見解のように思いますね。これは付合契約でも裁判所がその有効無効についてメスを入れる場合もありますし、それから運送約款にしろ保険約款にしろ監督官庁がこれをめんどうを見るということがありますけれども、野球協約や統一契約書の場合はそういうものがまだないですからね。ですから、かなりその点をよく実態を調べていただく必要があると思うのです。  ここで人権擁護局長お尋ねしたいのですが、いまお話ししたように、個々の制度についてもまあ法律的にはよしんばやむを得ないとしても経済的に言いますと非常に弱者の立場に置かれている。法律的な権限においても球団と選手との間には大変な差がある。これはやはり選手の側に人権の面でちょっと考えてみる必要がある、そういう要素が多分にあると私は思うのですが、人権局長としてはいかがでしょうか。
  57. 鬼塚賢太郎

    政府委員鬼塚賢太郎君) 私もプロ野球の実際のことについてはよく存じませんので、やはり主として法律的な面で考えてしまうのでございますけれども、純法理論としては、まあいろいろ考え方があると思うのでございますけれども、ただいま民事局長が申しましたようなことではないだろうかと、私は専門でございませんけれどもそういうふうに思っておるわけでございます。ただ、この問題につきましては、やはり、学説など拝見しますと、あるいは公序良俗にも反するのではないかという説もあるようでございますし、法律論を離れますと、この実態については確かに御指摘のような面がないとは言えないという感想を率直に申しまして持っておるわけでございます。そういう意味で、契約自由の原則の範囲内のことでございますから、全く無効と、そういうようなことではないといたしましても、なおかつこの実態に即しましてもし改善すべき点があるとするならば、やはり改善を図られるのがよろしいのではないかという感想を持っております。
  58. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そういう御感想をお持ちになって別段いますぐそれを調査して何らかの改善措置を講じたいというそういう積極的な気持ちをお持ちになっているというわけではないのでしょうか。その点いかがでしょう。
  59. 鬼塚賢太郎

    政府委員鬼塚賢太郎君) 法務省の人権擁護機関といたしましては、これは人権侵犯事件あるいは人権相談事件ということで各法務局で実際の仕事をしておるわけでございまして、そういう面でまいりますれば、当然職責上取り上げて検討をしなければならないのでございますが、いままだそういう段階ではございませんので、一般的な感想として申し上げました。ただ、これは前にも国会で大臣も申されたことではないかと思うのでございますが、やはりまずプロ野球界でよくこの点を検討されまして、自主的にもし改善すべき点があれば改善を図られるということが筋ではないかというふうに考えているわけでございます。
  60. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 それじゃ、民事局長とそれから人権擁護局長に対するお尋ねはこれで終わらしていただいて、あとは労働省の方へお尋ねしたいと思いますが、ただいま法務省やあるいは公取のお考えを伺ったわけですが、労働省としては野球選手と球団との契約関係をどのように理解しておられますか。
  61. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 労働基準法の適用の面からプロ野球選手をどう見るかという点につきましては、従来その契約の詳細について把握するまでに至っておりませんので確定的なことは申し上げられる段階でございませんけれども、新聞その他で、たとえば毎年の契約更新時の参稼報酬の決定の仕方とか、報道されている姿、あるいは新聞上でのプレイの取り扱われ方といったものを見ますと、私どもとしては、先ほども法務省の御答弁がありましたけれども、無名契約がこっちにあって、どちらかといえば請負契約に近い性格のものという理解で見ているわけでございます。
  62. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 あなたは野球協約あるいは統一契約書のひな形、こういうものを見られたことはないんでしょうか。
  63. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 現物を見たことはないのでございますが、いろいろ法律関係の図書に引用してある分については見ております。
  64. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはたしか委員部を通じて質問の趣旨はお伝えしてあるわけですから、これは研究して来てもらわないと困る。あなたは、こういう統一契約書あるいはその母法といいますか憲法的な規定である野球協約、これを見ると、野球選手と球団との立場が球団側に非常に有利にできているというふうには考えられませんか。
  65. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 通常の労働契約の場合でも、たとえば、ある企業をやめた場合、同じ業種の他の企業へ再就職する自由はあるわけでございますけれども、たとえば保留であるとかいうような問題になりますと、相当使用者側に有利な扱いになっているというふうに理解しております。
  66. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これはアメリカ側の野球界の規定を詳細に見たわけではないけれども、独特な技能を中心とする労務の提供だというふうには見ているようですね。ですから、技能というものが中心にはなっても、そうした労務を提供する、球団の方はその労務の提供を受けて報酬を支払うと、こういう社会的な実態というものは間違いなく存在する。だから、選手もそういう意味ではそうした技能を中心とする労務を提供する労働者であると、こういうふうに見ることはできないでしょうかね。
  67. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 契約書によりますと、まあトレーニングは含まれますけれども、主として試合に参加することを承諾し、それに対して参稼報酬が支払われるという形で契約が構成されているように承知いたしております。そうなりますと、たとえば芸能人等の場合に、ある番組に出演することを約束してそれに対する報酬を与えられるという形と相当類似した面があるわけでございます。そうすると、その場合の試合への参加に際して労務を提供するという形もございましょうけれども、その提供の仕方は、それなりに選手自身のいろいろな技能の発揮の面での、何と申しますか、裁量と言うのは必ずしも当たりませんかもしれませんが、そうしたような発揮の場もあり得るかというふうにも考えられるわけでございます。確かに、試合に参加し、その中でいろいろ拘束を受けるというようなことはございますけれども、野球としてのチームプレイとしての面から来る拘束というものもあるわけでございますので、いわゆる使用従属関係から来る拘束がそのすべてであるとも一概に言い切れない面もあろうかと思います。  そんなような面と、それからもう一つ、賃金が払われるかどうか、つまり参稼報酬の性格をどう見るかというところにもう一つ問題があるわけでございます。参稼報酬の決められ方を新聞等に報道される限りで見ていて理解しますのは、労務の提供それ自体に対する報酬という意味での言うなら賃金というよりも、人気その他を加味した興行的価値を評価しての参稼報酬というような性格が相当強く出ているのじゃないかというふうにも考えられますので、そういう意味で、プレイをすること自体確かに労力の提供という面があろうかとは思いますけれども、いわゆる基準法上の労働者と言うには少し当たらないのではないかというふうに理解をしているわけでございます。
  68. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そういう法律的な性格論というのはなかなかこれすぐぴたっと決まらないですね、これはたしか。ただ、あなたの言うのは、単に試合のときにぼっと出るんじゃなくて、そういう超一流の選手じゃなくて、たとえば二軍からだんだんだんだんと養成されてきて、そして一軍に入り厳しいトレーニングを余儀なくされて、それから、試合に出るというのが一般的な形態でしょうね。だから、人気歌手がぼっと特定の興行主との間の契約を結んで出るというのとは少し一般的には違うと思うですね。そこで、そういういろいろな違いや同一性は別として、法律的な性格は別として、もう少し、球団と選手との立場というものを平等に近づけるということがやっぱり選手の経済的な立場を上げるゆえんだと思います。これは労働基準法では労使対等の原則があって、雇用契約の場合は対等がもう国家の立場から見た大原則であります。そこまではいかないにしても、無名契約だとしても、できるだけ立場を平等化するということは労働省としてもやはり関心を持っていい事項じゃないでしょうかね。この点いかがでしょうか。
  69. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 労働者的性格を持つと仮にいたしました場合、そういう前提に立ちますれば、当然対等であるべき問題でございますから、そういう形に契約の実体等を持っていくことは望ましいかと思っております。
  70. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 そこで、あなたは、これは雇用契約とは思えないと、請負契約に近い無名契約だというふうに言われる。労働者と断定する立場をとらない。だから、ストレートに労働組合をつくれということは言えないとしても、いま選手会というものがあって選手の立場をできるだけ守ろうとしているようです。しかし、まあこれは何らかの機能は営んでおるだろうけれども少し弱いように思いますね。働く者の立場を守るというそういう労働省の観点から、野球選手の社会的経済的な立場を引き上げていくと、そういう理想に向かってもう少し何か労働省として介入していく余地はないのだろうか。いかがですか、この点どんなふうに考えられますか。
  71. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) まあ一般的に労働者性が薄いと申し上げたわけでございますが、先ほど先生のお話の中にありました、たとえば二軍で非常に長い期間下積みをしながら常に一軍への出場の機会を望んでやっているというような形の人もございましょうし、あるいはまた二軍の中で特にバッティング用投手しかやらないという形の人がいるとしますと、それは先ほど申し上げた請負的なものよりはむしろ労働者性が相当強く出てくるのじゃないかという点は考えられるわけでございます。ただ、私どもは労働省の立場でございますから、そういう労働者性の非常に強いと思われるものがあるとすれば、やはりその点については地位向上といったような問題について何らかのことを考えていかなきゃならないと思っておりますが、一般論としては請負的性格というふうな理解を持っておりますので、先ほど来の御答弁を申し上げたような次第でございます。
  72. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 これは最後に要望ですけれども、十分な関心を払って、野球協約、統一契約書、この二つをよくお調べになること。それから野球選手の実態にある程度のメスを入れられまして、できればその労働者性というものがあるとしますと、あるかどうかをまず見きわめなきゃいかぬ、あるとしますと、やはりその社会的経済的地位を向上していく上で労働省がもう少し指導的な立場をとっていただきたいと思うのです。ことに、これは全国民が非常な関心を寄せておることだから、天下国家の大勢に影響があるとは思わないけれども、非常に多くの国民が関心を寄せているというそのことは重く見る必要があると思うのですよね。ですから、その点十分関心を持って対処していただきたい、こう思いますが、いかがでしょうか。
  73. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 労働基準法の適用上の問題について適用の余地があるのかないのか、まだ実態を詳細に承知していない面もございますので、そうした面についてはさらに実際を承知いたしたいと思います。
  74. 寺田熊雄

    寺田熊雄君 終わります。
  75. 山本富雄

    ○山本富雄君 瀬戸山大臣にお伺いしたいと思います。  例のプロ野球の問題につきまして最初に触れさしていただきたいと思います。過般の法務委員会、十六日にございました。五人の参考人をお呼びをいたしましていろいろ質疑をいたしました。大変これは有意義であったと、勉強になったというふうに私ども考えておるわけでございます。いま寺田先生からも法律論を含めまして詳細なお話がございましたけれども、私は法律の専門家じゃございませんので、その方は余り強くないのですけれども、大臣にせっかくの機会でございますからこの題について改めてお伺いしたいと思います。  過去の記録を調べてみますと、四十二年七月二十日にやはり衆議院の法務委員会で取り上げられておりまして、これは当時の松前委員と堀内政府委員法務省の人権擁護局長、これで質疑応酬がなされたということでございます。しかも、かなり明確になっているように私は読み取ったわけでございます。このときの議論は人身売買等に関係をいたしまして質問がされたわけでありますけれども、議事録を読みますと、ドラフト制度については憲法に示されている職業選択の自由及び基本的人権侵害につながる人身売買等いずれについても法を逸脱しているとは思われない、ただし内容的には関係者が留意すべき点等もあるが、しかしこの取り決めは事業としてのプロ野球存立のためにはやむを得ないのではないかというふうな意味の見解が示されておるわけなんです。先般、大臣は、私どもの参議院の法務委員会の後、翌日でございましたか、衆議院の法務委員会で、鳩山委員の質問に答えてやはり答弁をされたようでございます。また、いま寺田先生のいろいろな質問がございました。四十二年以来の経過も御承知だと思いますし、また最近この問題はにわかに脚光を浴びてきたわけでございますけれども、こういう経過をずうっと踏まえて、法務大臣としてこの問題についてどういう御所感をお持ちになったか、お伺いをしたいと思います。
  76. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) 正直なところ、私も野球は余り詳しくないのでございます。テレビで野球を見る程度でございますから、的確なといいますか、先ほど来いろいろ議論がありましたが、そういう問題について深く知識を持っておるわけじゃございません。ただ、あえて法務大臣としての今日ただいまにおける考えはどうだと聞かれますと、私はこういうふうな感想といいますか見方をしておるわけでございます。  先ほど来、あるいは企業としての独禁法的な関係、あるいは民法契約上の公序良俗に反するや否やという関係、それから労働法に基づく問題点と、いろいろ専門的な質疑応答の中で意見が出ておるわけでございますが、それといまお話しのこの野球協約、こういう問題といわゆるドラフト制というのは、私はこれは一貫した考え方に立っておるのじゃないかという見方をしておるわけなんです。と言いますのは、なるほどプロ球団が六つずつあって十二球団あるわけでございますが、これはほかの一般社会の場合とやや違うような感じを私は持っております。特殊といいますか、いわゆるプロ野球としての一つの企業面があるわけでございます。でありますから、一球団球団の問題でなくて、国民の多く興味を持っておるプロ野球一つの企業経営、それを国民に向けて興味深く見られる、そういうために野球協約もできておるし、またドラフト制、これはどっちが歴史が先だったか私はそこまでつまびらかにしておりませんけれども、ドラフト制にしてもやはりいろいろな弊害その他からそれを是正し、いわゆるプロ野球全体の姿としてスポーツ——一面スポーツでありますから、野球というスポーツを通じて国民の興味に合わせたい、こういう意味でいわゆるドラフト制もできておるのじゃないかと、かように考えます。と言いますのは、好きだからどこかの球団に全部集まる、こういうふうなことではプロ野球全体としては興味が薄れるのじゃないかと私は思います。これは別な言葉で言いますと、やはり各球団できれば勢力といいますか実力が大体対等に近いと、勢力、力が拮抗しておる、こういう状態の中で激しく戦われることが、率直に言って見る立場の方から見ますと興味がわくわけでございますから、そういう仕組みをつくるためにドラフト制というものが案出されたのじゃないかと思います。よけいなことでありますけれども、その中に、先ほど来いろいろ御意見等が出ておりましたが、個々の問題についてはやはり社会の変遷といいますか人間社会の進歩に従っていろいろ指摘のありましたような点も改めてもらうことがいいのじゃないかと私も思いますけれども、人権の問題とか、あるいはおっしゃったかどうか知りませんが職業選択の自由とか、そういういわゆる憲法なりそれに基づく法律に違反しておると断じてはこれは早計ではなかろうかと、私はこういう感じを持っております。いろいろ御指摘のありました点は、これは先ほど人権局長から言いましたけれども、やはり社会に向けてのプロ野球でありますから、社会の各方面でいろいろ意見、指摘がある。こういうことは、これは希望でありますけれども、やはり国民に向けての一つプロ野球としての営業といいますか、企業でありますから、できるだけ国民に理解を求め、親しまれる球団にするためには、やはりそういう意見を入れながら球団の中でよくしていくといいますか改善をしていってもらうことが好ましいと、あえて私は考え方をと言われるとさような考え方を持っております。
  77. 山本富雄

    ○山本富雄君 先ほども論議がございましたけれども、いま大臣がおっしゃった憲法の大原則でございます基本的人権の問題、あるいは職業選択の自由の問題、あるいは善良な風俗に違反しないか、民法上の問題、その他法律の問題は数々ございます。私どもも若干勉強いたしましたが、学者によっては公序良俗に触れるのじゃないかという考え方の方もいらっしゃるようでございます。この間の参考人の質疑の中で私は非常に痛感をしたのでございますけれども、たとえば川上さんがこういうことを言っているのですね。「私らは三十七年間プロ野球でユニホームを着てまあプロ野球の発展に尽くしたと思いますけれども、いまもらっておる年金というのは月二万五千でございますから、何の足しにもならぬと思うのでございます。」と、こういうふうに言っているわけなんです。この言葉ではっきりしておりますように、国技だと言われるようなお相撲と並んで日本の野球というのは、特にプロ野球というのは、もう国民の最大の娯楽といいましょうか、関心の的なんですけれども、時代の先端を行くプロ野球中身が意外に封建的だと、あるいは時代おくれだと、お粗末だと、こういう感じが私ども参考人から意見を聞いておって非常にしたわけでございます。たとえば、さっき参稼報酬の問題が出ましたけれども、年間報酬の問題等につきましても、中身をずっと調べてみますと大変なばらつきがある。これはもう球団によってもある。選手によってもある。新聞に書かれるのは、一部脚光を浴びた選手が幾らだと、まあ江川幾らだとか、あるいはかつては長嶋がどうだったと、こういうふうに出るだけであって、大多数の選手、新聞に書かれない選手の年間報酬というのは、社会的ないろいろな職業の方々の給料に比較して決して高くない、安過ぎるという感じを私ども持ったわけです。それから福祉施設の問題とか、あるいはまた健康保険、いま申し上げた年金の問題、こういう問題等が、特に選手のサイドから見た場合に、先ほど寺田先生も余りにも両者の差があり過ぎるという御指摘がございましたけれども、私は全く同感でございまして、これはきわめて問題な点じゃないか。ですから、法務大臣が、あるいは人擁局長が、ああこうせいというふうな段階ではないと思いますけれども、しかし、これだけ問題になったことでございますから、当然それは先ほどの人権擁護局長のお話のとおりプロ野球界自体が自主的に相談をして改善を図るべきだ。この間、参考人の中で、両リーグの実行委員長は、きょうの委員の意見というものをこの次の実行委員会には必ず報告をして反映をさしたいというふうなことを言っておりましたが、もちろんプロ野球界自体がやることであります。やることでありますけれども、しかし、いま申し上げたとおり、国民の関心の的のスポーツであり、あるいは娯楽でありますから、そういう意味で、基本的な人権に問題はないのだと大臣の御見解でございますけれども、これだけ議論になったことについてやはり何らかの御指導の措置ということができましょうか、助言の措置ができましようか、これはどういう形でやることが一番適当かと思いますが、そういう点については大臣はどういうふうにお考えになっておられますか。
  78. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) そういう問題について法務省等が介入をしてプロ野球球団にとやかくくちばしを入れるということは、私は好ましいことではないと率直に思っております。ただしかし、先ほど来寺田委員からもいろいろ御指摘がありましたし、前の公聴会といいますか、参考人からもいろいろ御意見があったようでありますが、先ほども申し上げましたように、プロ野球はまさに国民とともにあると思います。国民が興味がなくなればこれは存在しないものであります。しかも、素人で言うとおかしゅうございますが、プロ野球界は非常に関心を持たれ注目の的でありますが、内実については、閉鎖的な、閉鎖しておるという意味じゃありませんが、一つの閉鎖社会みたいなことになっておる。お相撲の話も出ましたけれども、相撲も関心がありますけれども、内部がどういうふうになっておるかということは、これもやっぱり同じように閉鎖社会みたいなかっこうになっております。でありますから、国会で参考人の意見を聞いたり、あるいはそれぞれ委員の方々が野球協約その他を検討されて、国民が非常に重大な興味を持っておる、いわゆる国民のものとしていま扱われておるようなプロ野球でありますから、そういうことをここで論議をされて、改める方法はないかと、こういうことを指摘されることは、私は非常に有意義だと率直に思います。でありますから、これを法務省が介入してどうですかこうですかと言うことは、これは適当でないと思いますが、先ほど申し上げましたように、繰り返すようでありますが、国民の野球としてプロ野球を経営しておられる球団の方々が、そういう意見等も参酌しながら、いわゆる野球選手の立場等も考えて、何といいましょうか相談をされて改善をしてみたらと、これが一番適当じゃないかと私は思っておるわけでございます。
  79. 山本富雄

    ○山本富雄君 ありがとうございました。  次の問題に入りたいと思います。大臣が過般の所信の中でこういうことを言っておられる。内外の情勢がきわめて厳しい今日、わが国の民主主義を守り、国民生活の安定を確保するためには、その根底をなす法秩序が揺るぎなく維持され、国民の権利がよく保全されていることが何よりも肝要であると、こういうふうに前段で述べられておるわけであります。まさに私はこのとおりだと思うのです。そしてさらに大臣は、当面最も警戒をすべきは過激派の動向であるということも述べておられるわけでございます。この所信にもございますとおりで、国内的にも国際的にも過去数々の不祥事件を起こしまして、完全に法を破壊する、そして国民や世界の人たちを恐怖のどん底に陥れたというふうな過激派集団の数々の事件というものは、私どもは忘れることはできないということでございます。そこで、さきの臨時国会でも、これに対処するために、航空機強取等防止対策を強化するための関係法律の一部を改正する法律、いわゆるハイジャック防止法が成立をいたしました。さらに、この種の過激派による事件をどうしても絶滅をしなくちゃならない、あらゆる機会を通しましてこれをどんなことがあっても絶滅を期さなくちゃならないというふうにお互い考えるわけでございます。  そこで、まず刑事局長お尋ねをしたいと思うのであります。従来のいわゆる過激派事件裁判について、四十九年の八月から五十年の五月の間に頻発をいたしました例の連続企業爆破事件、それからまた四十六年の十二月下旬から四十七年二月中旬までに群馬県内で起こりましたリンチ殺人事件や、あるいは四十七年の二月に長野県の軽井沢で起きました例の浅間山荘事件を含めて、連合赤軍事件——私は当時群馬県におりまして県関係の法務委員長をしておりましたものですからこれは非常に関心が深かったのでありますが、こういう事件のその後の公判の経過、あるいはまた、事件自体は過激派によるものではなかったのですけれども、その後裁判になってから過激派が支援をして裁判そのものが全くとまってしまっているというふうに聞いておりますピストル連続殺人事件、永山何がしのですね、こういう過激派の裁判あるいは過激派がかんでいる裁判、こういうものの裁判進行状況とかあるいは現況をお教え願いたいと思います。
  80. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 現在、わが国の刑事裁判はおおむね順調に進んでおると思います。しかしながら、ごく一部の事件におきまして異常な訴訟の遅延が生じておるというのが偽らざる実情でございます。そのごく一部の事件と申しますのが、一部過激派の被告人に係る事件でございまして、ただいま御指摘の連合赤軍事件でありますとか、連続企業爆破事件、こういうものがその最も代表的なものであろうと思います。  この種の事件におきましては、非常に訴訟が遅延がちでございます。その理由にはいろいろございましょう。たとえば、全部否認事件であるというようなことが基盤にございますけれども、さらにきわめて特徴的なことは、ごく一部の弁護士の方々がこれらの事件におつきになりまして、被告人と弁護士とが意思を同じくいたしまして法廷闘争といたしまして、それらの人たちの言う言葉を用いれば裁判粉砕闘争というようなことを展開されるわけでございます。ところで、現在わが刑事訴訟法におきましては、一定以上の刑に当たる罪の事件につきましては、弁護人がいなければ開廷できないことになっておるわけでございます。それらのごく一部の人たちは、この規定を逆手にとりまして、訴訟を進行させないために、また、公判期日の指定を入れさせないために、法廷の途中で弁護人被告人と意思を同じくして退廷してしまう、あるいは出廷してこない、さらには公判期日の直前になって弁護人辞任してしまう、こういうような作戦、戦術をとることによりまして、当該公判期日を流してしまうということはもとより、裁判所による適正な期日の指定が非常にやりにくくなっておるというのが実情でございます。御指摘のございました連合赤軍事件におきましては弁護人の不出頭が十回に上っております。それから連続企業爆破事件におきましては不出頭が五回、退廷が一回、それから五名の弁護人辞任してしまって六カ月公判が空転する、こういうような顕著な状況にあるわけでございます。  御指摘のございましたように、過激派に対するわれわれの考え方といたしましては、およそ法秩序に真っ正面から立ち向かってこれを粉砕しようというような者に対しましては、先方がそういう態度であるから、なおさら適正迅速な、憲法に定める公正にして迅速な裁判が実現され国民の期待にこたえるというようなことでなければならないと思っておるわけでございますが、そういう観点からいたしますと、ごく一部の方ではありますが、そういう弁護士さんがおられるということは、はなはだ困ったものだと思っておる次第でございます。  なお、これまた御指摘がございましたように、ごく最近におきましては、もともと過激派でない被告人に対しまして、過激派の支援団体等からいたしますいわゆるオルグが行われておりまして、その中には、御指摘の連続ピストル殺人事件被告人のように、検察官によります死刑の論告求刑が終わるや、にわかにその過激派の支援団体の働きかけに応じましてそういう特殊な弁護人の方と弁護人を差しかえまして、以来数年間判決がないままになっておる、こういうような状況が見られるわけでございまして、さらに、最近また、あるこれまた死刑の論告求刑を受けました一般刑事犯が同じような動きを示し始めております。こういうことについては何とかしないと、裁判の場を通じて法秩序が無視されていくという事態にだんだんなっていっては大変だ、こういうふうに思っておる次第でございます。
  81. 山本富雄

    ○山本富雄君 いま刑事局長の話のとおり、現行の刑事訴訟法では、一定の重大事件については、弁護人がいなければ裁判が開けないという必要的弁護制度というのがございます。ところが、いまのお話のとおり、また私が資料をいただきましてずっと調べたのでありますけれども、いわゆる過激派の裁判では、被告人だけじゃなくて、被告人弁護人が一緒になりましていわゆる法廷闘争と、これは必要的弁護制度を完全に逆用して違法な不当な法廷闘争を公然とやって裁判をおくらせているという実情がはっきりしているわけであります。裁判というのは、どんな裁判でも公正でしかも迅速に行われて初めて国民の被害感情というものを満足させることができるのだというふうに私は考えておりますし、また善良な国民の法への信頼というものが、こういうことによってまさに揺らいでしまうというふうに考えるわけで、当然何らかの立法措置が必要だというふうに考えておりますけど、この点につきまして大臣はどういうふうにお考えになっているか、お聞きをしたいと思います。
  82. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) その前に、先ほど私が所信表明ということで申し上げた法秩序維持ということについて触れられましたので、私といいますか私どもの考え方を少し申し述べさせていただきたいと思います。  私は、民主主義国家では法秩序を維持するということが一番国民に大事なことだという感じを持っておるわけでございます。御承知のように、わが国の憲法は、まず大前提としていわゆる平和憲法といわれておる。そうしてまた、国民個々については、人権を十分に守って、国民が平和で安全で自由に活動できる日本の社会をつくろうという大理想を掲げておると思います。これに基づいて各般の法律、規則ができておるというわけで、それを守ることによって国民一人一人の平和、あるいは自由、あるいは安全と、こういうことが保たれることだと私は信念を持っておりますが、御承知のとおり、そうではありますけれども、残念ながら、見ておりますと、私の認識が間違っておるかもしれませんけれども、経済発展、それと国民生活の向上、これはすばらしい状況になりましたけれども、その反面、どうも国民の心の面といいますか、心というのは私は法秩序に通ずべきものだと思いますが、それがだんだん乱れてきておる、それを私は痛感しておるわけでございます。先ほど寺田委員からもいろいろ御指摘ありました。私は非常に心配して心痛しておるわけでございますが、先ほど内ゲバ事件についてのお話がありました。そのほかに、いわゆる前からありました町の暴力団の、最近は武器等が発達しましたから極端に人命や身体に損傷をきたすという事件が起こっておる。大学等においてもそういうことが頻繁とまでは言いませんけれども、半公然的に行われておる。こういうことは、私は、いまのわが国の大理想を掲げておる憲法その他の制度から言いましてどうしても看過することはできない、こういう観点で司法行政を進めなければならないという強い信念を持っておるわけでございます。そういう制度を法律の目標とするところに生かすのは最終的には裁判でございますから、その裁判によって法律の目標とするところを可能な限り速やかに実現する、これによって法治国家というものがまあ満足といいますか、完全に動くものだと思っておりますが、残念ながら先ほど刑事局長からも一部説明いたしましたように、全部じゃありませんけれども、一部の被告人、特にいま申し上げましたような暴力犯罪、しかも人命その他に凶悪な犯罪を犯した人々裁判について被告人弁護人が、一部でございますけれども、そういう人たちが意を通じて裁判制度を否認するがごとき態度に出られ、そのために法秩序を乱した者が法律の規制に最終的に応ずる機会が非常に阻害されておる、こういう事例がありますから、これはいまもお話がありました刑事訴訟法あるいは憲法の規定にもありますけれども、刑事訴訟法の二百八十九条ですか、そういうものを逆用して、私は憲法や刑事訴訟法はそういうことを許すためにああいう規定があるとは思いません。そういう規定を逆用して、いま申し上げましたように、法治国家の本当の姿というものを破壊する、これを目的かのごとく行動をされる。これについては私は何らかのチェックをする必要がある、しなければならない、これがわれわれの責任である、かような考え方で今度の特例法を国会にお願いしようと、こういう進め方をしておるわけでございます。
  83. 山本富雄

    ○山本富雄君 この問題に関しまして、意見書というか陳情書といいますか、たくさん私どものところへ来ておるのです。それを見ますとこういう意見があるのですね。いわゆる一部過激派の裁判でいま話の出ている弁護人が被告と相結んだ形でいろいろなことをやっていると。このことについては弁護人側の方に問題があるのじゃないのだと、裁判所側に問題があるのだと、裁判所の訴訟指揮に問題があるのだと、こういうことがずっと書いてあるのですね。私は、裁判所の訴訟指揮というのは、過激派の裁判であろうが、一般の裁判であろうが、これはもう公正に行われているに違いないというふうに考えておりますけれども、百歩譲って、そういうことはあり得ないと思いますが、もしあり得たら、法廷の中で法に基づいて堂々と土俵の中で闘ってもらうべきじゃないか。不出廷だとか、退廷しちゃうとか、あるいは辞任しちゃうとかと、こういうようなのはもってのほかだと、こういう考え方を個人的に持っておるわけですけれども、こういう反対の方々の意見もある。  それからもう一つ、先ほどハイジャック防止法の問題を申し上げましたけれども、今度考えられておる特例法は、大臣の所信等によりますと、このハイジャック防止対策の一環としてやるのだと、こういうふうにお述べになっておられる。ところが、これに対して一部反対の方々、あるいは批判の方々は、ハイジャック防止法とは関係がないのだという反対意見などもたくさん来ておるわけであります。この点につきましてどういうふうにお考えになっているか、お伺いいたします。
  84. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) 申し上げるまでもなく、裁判は、裁判官、検察官、それから弁護人、この三者によって円満に法律のもとで、憲法にも書いてあります、刑事訴訟法にも書いてありますように、公正迅速な裁判を進めなきゃならないと決めてありますが、いまおっしゃるように、そういう意見を言われる方もあり、もちろん私も全部の状況を知っておるわけじゃありませんけれども、裁判官といえどもすべて神様でありあるいは仏様であるというわけにはまいらない。たまには訴訟指揮に不適当な点がある場合もあると私も思います。あるいは検察官においても適当でない場合があると思います。しかし、そういう議論をされる人は、しからば、先ほど刑事局長からもお話がありましたが、ごく少数の意見、しかも現行法治国を否定するがごとき言動をしておる被告人の場合に限ってそういうことがあるというのはどういうことなんだ。たくさんの刑事事件がありますけれども、それではそういう場合には裁判官はいいけれども、こういう事件に限って裁判官の指揮が悪いのかと、私はそういう点をぜひ考えてもらいたい。他の一般殺人事件その他たくさんありますが、凶悪犯も、そういう事件の場合にはほとんどない。こういう特殊な考え方を持って一つのあるグループと連絡をしながら犯罪を犯し、また連絡をしながら裁判に臨んでおる事件だけにこういうのが起こっておるということでございますから裁判官の訴訟指揮が悪いからということはたまにはあるかもしれませんけれども、それは私は反対意見としてはきわめておかしいのじゃないか、かように考えておるわけでございます。  それからハイジャック云々の話がありましたが、これはもちろん裁判が早くなったからハイジャックがなくなるというわけじゃございません。私ども法秩序全体を考えたいというたてまえでかような法律案を出そうとしておる。この法律案を、どうしてもこういう措置をとらなきゃならぬということが出ましたのは、従来から、裁判のおくれ、特にこういう場合には何とか方法がないかという考えがあったわけでございますけれども、たまたま御承知のダッカハイジャック事件でああいう事態が起こりまして、そして政府の中では御承知のとおりにハイジャック等非人道的暴力犯罪、こういう犯罪に対する対策を考えなきゃいけない、こういうことになっております。その一環として、やはり法秩序を守る上からはどうしてもそういう種類の裁判の迅速化を図る。さっき申し上げましたように、法秩序を維持するということは最終的には裁判が可能な限り公正迅速に処理される、これが法秩序全体の問題でございますから、やはりそこを考えなきゃいけない。これでハイジャックが全部おさまると、そういうことじゃありません。これに関連しておりますからやはりこれを考えたと、こういうことでございます。
  85. 山本富雄

    ○山本富雄君 この資料によりますと、いま大臣からダッカの事件の問題が出ましたけれども、日本赤軍のハイジャック事件犯人に奪い去られた者のうちほとんど大部分が公判係属中の者だと、十一名の中で八名というふうな数字が出ておるのですね。ですから、こういうことを見ましても、もちろん、ハイジャック防止、あるいは刑事局長の言によるとその他ジャックですか、こういうものを絶滅するためにこれだけでできるとは私ども思っておりません。思っておりませんが、しかし、少なくともそれに対する対策というものは法的に必要だと、同時に裁判が大臣のおっしゃったように一部過激派の裁判に限って延々として延びている。こういう実態の中で係属中に犯人が持っていかれちゃうというふうなことは、あの当時のテレビを見ていた国民というのは、法関係者はもちろんですけれども、歯ぎしりしたのじゃないか、こんなばかなことがあっていいかというふうな気持ちをみんなそれぞれ持ったのだろうと思うのです。  そこで、私は、法務当局は刑事訴訟法の一部改正でお考えになるのじゃないかというふうに考えておったわけでございますし、またそういう声も一部あった。事前に聞いておりました。ところが、今回はこの必要的弁護の例外規定の新設ということで資料などもおつくりになっているようでございますけれども、当初刑事訴訟法の一部改正ということで考えておられたのを、今度特例法に変えた、これは一体どういう理由によってやったものか、お尋ねをしたいと思います。
  86. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) 刑事訴訟法二百八十九条の一部別項を立ててこういう制度を考えたらどうかという時期もありました。ありましたが、先ほども申し上げましたように、裁判裁判官、検察官弁護人、この三者立ち会いの上で堂々と真理を発見し、適当な処置をとり最終決着をする、これが大原則でございますから、こういう特例を設けるということはこれはない方が一番よろしいわけでございます。そういう事態がないことが一番よろしいわけでございます。でありますから、刑事訴訟法の体系の中でそれが常識のように考えられるということは不適当ではないか。こういう事態が速やかになくなることを期待してわれわれはこういう制度をつくろうということでございますから、速やかに正常に戻る、こういうことを期待しながらやる以上は、刑事訴訟法の法体系の中に入れない方が適当である。速やかにこういう事態でないような措置を今後全部で知恵を出して確立することが一番望ましい、こういう考え方でございます。  もう少し申し上げますると、御承知のとおり、もちろん裁判官といえども人間、検察官といえども、弁護士といえども人間でありますから、必ずしもすべてが十全だとは申し上げられない。したがって、こういう制度の中ではそういう場合のチェックの制度があるわけでございます。御承知のとおりに、裁判官については、裁判官にあるまじき状態があれば国会の中の弾劾裁判所にかけてこれによってチェックをする。国民の裁判官でありますから、そういう意味でそういう制度ができております。検察官についても、やはり第三者機関としての検察官適格審査会というちゃんと制度ができております。常に検察官は審査を受けながらやっている。弁護人についてもあるのです。弁護人について弁護士法の中にありますけれども、残念ながら、これは怒られるかもしれませんけれども、そのチェックの機能が自主的なチェックの制度になっておりますから働いておらない。これは裁判というものは国民の裁判でありますから、やはり国民の監視の中にある、こういう制度が私はあってしかるべきだと思います。そこに欠けたところがある。でありますから、そういう制度が何とか皆さんの協議によってできて、将来そういう事態がだんだんなくなっていく、そういうときにはこの法律は廃止するといいますか、なくなっていく、これが一番望ましい形でありますから、そういうことを期待しながら暫定的にこういう制度をつくっておこう、こういう考え方からいま申し上げたように特例法という形でお願いしようかと、それを準備しておるわけでございます。
  87. 山本富雄

    ○山本富雄君 刑事局長お尋ねします。  いま大臣から弁護士法の話が出たのですが、きわめて遺憾なことですけれども、一部の弁護人被告人と一体となって現在の法を逆用したかっこうでやっているという実態をいま申し上げているわけでございますけれども、その場合に弁護人というのは弁護士法によって懲戒の対象となるということでございます。私はその道の素人でございますから、この間来弁護士法というのもいろいろ読んでみました。ところが、大臣のお話のように、弁護士会自体がやるわけでございますけれども、こういう法廷で違法なあるいは不当な、法廷闘争とはっきり言っているわけですけれども、こういうことをやっている弁護士に対して懲戒の実態というのはどういうふうになっているのか、お尋ねしたいと思います。
  88. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 実態について申し上げます前に一つ説明申し上げておきたいと思いますのは、弁護士法におきます弁護士の懲戒の仕組みでございます。  御承知のとおり、弁護士法と申しますのは昭和二十四年に議員立法としておつくりいただいたものでございますが、弁護士の資格審査、登録、懲戒、こういった一種の行政処分を日本弁護士連合会を頂点とします各弁護士会が全く自律的に行うことにされております。そこで、懲戒の問題について見てみますと、国民は何人でも弁護士に懲戒の理由があると思うときは弁護士会に懲戒の請求をすることができるものとされております。で、単位弁護士会で懲戒の処分をしないとか、あるいは相当期間たってもほっておくというような状況がありました場合には、日本弁護士連合会へ異議の申し出ができることとされております。ところが、今度、日本弁護士連合会の処置につきまして不服がありました場合でも、他のいかなる機関にもこれを持ち出すことができないことになっております。これに対しまして、懲戒を受けた弁護士は、不服があるときには東京高等裁判所へ出訴できることになっております。したがいまして、言葉は悪うございますけれども、国民の一人として懲戒処分の請求をいたしましても、日弁連、単位弁護士会の段階でこれに対する適当な措置がなされない場合におきましては、国民としては憲法上のどの機関にも持ち出すことができない、まあいわば泣き寝入りになる、こういう仕組みになっておるように思います。  そういう仕組みを前提といたしまして実態を申し上げますと、御指摘のように、弁護士である弁護人が法廷ではなはだしく品位を害するような御指摘のような行為をいたしました場合には、訴訟関係人としてとり得る方法が二つございます。一つは、ただいまも御説明申し上げました、たとえば裁判官あるいは検察官あるいは裁判所長というような人たちが国民の一人として弁護士会に懲戒の請求をする方法でございます。それからもう一つは、刑事訴訟規則三百三条に定められておりますが、弁護人が御指摘のような不当な行為に出ました場合には、裁判所は当該弁護士の所属する弁護士会または日本弁護士連合会に通知をいたしまして、その弁護士に対して適当の処置をとるべきことを請求することができることとされております。この二つの方法がございまして、まず懲戒の関係につきましては、昭和二十七年から昭和四十五年までの間に延べ十七名の弁護士に対して懲戒請求がなされており、また、昭和二十八年から昭和五十年までの間に延べ十三人の弁護士に対して刑事訴訟規則三百三条による措置請求がなされておりますが、合計三十名のうち弁護士会による懲戒処分を受けた者は一人もございません。特に懲戒請求につきましては、たとえば昭和四十四年ごろに東京地方裁判所長であられた方が個人の資格においてある弁護士の方を懲戒請求をしたわけでございますが、ずうっと弁護士会でそのままになっておりまして、このたびこの法案の件が問題になりました昨年十二月になりまして懲戒をすることができないというような御決定があり、当該裁判所長であった方は日弁連に異議の申し出をしておるというような状況でございまして、懲戒請求をしてもしてもいわゆるやみ夜に鉄砲というようなことであり、措置請求をしても同様でございますために、裁判ではその裁判所関係の方も懲戒請求をあきらめておられるというような状況のように伺っております。
  89. 山本富雄

    ○山本富雄君 いまの刑事局長のお話によりますと、二十七年以降これが零だと、こういうことですね。もうちょっとお伺いしたいと思うのですけれども、弁護士あるいは弁護士会に対しまして、国の機関による監督ですね、こういう問題は、いま大臣のお話によりますと、全然外にあると、どこの手も及ばない、まあ自主独立の団体なんだと、自治権を持っていると、こういう意味の答弁でございましたけれども、そういうことでございましょうか。
  90. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) そのとおりでございます。先ほどちょっと御説明を省略いたしましたけれども、資格審査とか登録、懲戒というような行政処分を行う関係上、弁護士法によりますと、弁護士会の会長、副会長、それから資格審査会のメンバー、懲戒委員会のメンバーは法令により公務に従事する者とみなすと、要するにみなす公務員とされておるわけでございますが、そのみなす公務員の行いました行為につきまして、行政権を総括いたします内閣の監視とかあるいは報告聴取というような権限は全く規定されておりませんので、その点については御指摘のように国会に対して責任を負う立場の者がいないという状況になっておるようでございます。
  91. 山本富雄

    ○山本富雄君 そうすると、くどいようですけれども、日本弁護士連合会、日弁連は、国のいかなる監督も受けていないと、こういうことになりますね。これはちょっとわかりにくいのですけれども、どういう事情、どういう経過、どういう理由によるものですか。
  92. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) もともと、弁護士法の成立経過が、先ほど申し上げましたように議員立法として成立いたしておりますので、どういうわけでそういう仕組みになったのかということは私ども全く承知しておりません。ただ、推察いたしますに、およそ弁護士となられるような方はきわめて法律的な素養が高く、したがってすべて良識を持って行動される方ばかりである、それだから例外的な自治に任せてもよいというようなお考えが当時の立法府の皆様方の間に一般的であったのではなかろうかというふうに存じております。
  93. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) ちょっとこういう特例法を設けるに至った背景の一つとして直接的なことでないのでありますが、これは私が申し上げるのでなくて、あると申し上げておきますが、ある大学の教授が論文を書いておられる。その一部をこの際私はあえて御紹介しておきたいと思う。これは申し上げておきますが、今度のこの立法の過程において日弁連その他の弁護士会等で反対の御意見を出しておられる、その反対の側に立って書かれた学者の論文の一節でございます。かようなことを書いてある。「我が国の論者の中には、日弁連が国家的制裁の外にある唯一の自律的集団であることが国選弁護人選任遅滞の主因であるかのように説く者もあるが、弁護士会を弱気だと非難する前に、生命の危険を冒してまで自ら弁護人を買って出ることができるかどうかを考えてみる必要があろう。」これは私が申し上げるのじゃないのですが、こういうことを書いておられる。この背景はどういうことかと言うと、これは国選弁護人選任を幾ら頼んでもこういう事件はできませんと、これはそれに触れてあるわけでありますけれども、いま懲戒の話がありましたが、このことは出ておりませんが、その背景にもこれがあると思う。家族、本人に至るまで生命の危険を感ずるという状態が今日あるのですから、それはなかなか弁護士会の自律によるということは簡単でないだろうと、私はこの論文を見て想像しておるわけでございます。
  94. 山本富雄

    ○山本富雄君 非常にゆゆしいことだと思うのですね。その論文でございますけれども、生命の危険を云々というようなことは大変なことだと思う。それからまた、刑事局長のお話で、なるほどこれは議員立法だそうですから、私どもの先輩がおつくりになったわけでございまして、内閣が出したわけではないということもよくわかりました。そして、高い教養と良識を持たれておると。弁護士さんと言えば、それはもう国民、世間一般の人というのは、とにかく国会議員のバッジ以上に私たちの頼りになる人だと、こういうふうに思っているわけでありますから、その方が、もとへ戻りますけれども、法廷闘争などということを公言しておるのは私はもってのほかだというふうに考えておるわけでございます。  話をもとへ戻しまして、したがって弁護士会がやっておるその懲戒というのは、先ほどの刑事局長のお話のとおり、十分に行われていないどころか、行われておらない、この種裁判については、ということがはっきりしたわけでございます。  そこで、大臣に改めてお尋ねしたいのですけれども、裁判官に対しましては先ほどお話が出ました国会議員によるところの裁判官弾劾裁判所がございます。検察官に対しましても検察官審査会ですか、いわゆる第三者機関があって、そして不当な行為があった場合にはこれを裁くということができるわけでございますが、ひとり日弁連あるいは弁護士会所属の弁護士さんたちだけが法の監督を受けておらない、国家の監督を受けておらないというふうなことは、私は非常に問題だろうと思います。決してその弁護士さんたちの高い教養を否定するわけでもありませんし、また、日弁連の自治権という、輝かしい世界に誇る権利だと言っている方もおりますけれども、それをもちろん否定するわけでもありません。ありませんけれども、その自治権を持っておられる——三権分立という言葉がございますけれども、ある意味じゃもう四権みたいなものですから、それをみずからお持ちになっている弁護士会の中でかように不届きな法廷闘争をやっている弁護士さんたちがおられると、こういうことが明らかになったわけでございまして、この点につきまして大臣の御所見をもう一遍承りたと思います。
  95. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) 昭和二十四年に議員立法で弁護士法ができておるわけでございますが、その当時私はその立法に参加しておりませんから、国会におりましたけれども参加しておりませんから、こういう自律権をつくられた理由というものはどういうことからかということを私自身は直接は知りません。知りませんが、私が考えますに、いまもおっしゃいましたけれども、弁護士というものは高度の教養を持ったいわゆる法律家の集団でございます。弁護士法にも書いてありますように、人権を守り正義を守るということが弁護士の職務だと書いてある。しかも、高度の法律知識を持っておられるその法律家の集団でございますから、そこへ任せておけば、法律の問題については、いま弁護士法にも書いてありますように、憲法及び刑事訴訟法の精神に従って必ず規律正しくやっていただけるという前提のもとでこういう自治制度といいますか自律制度ができておるものだと思いますが、実態は近年特にそういう実態ではない。先ほど私が学者の論文の一節を御紹介いたしましたが、なかなか自律なんということができる状態でない雰囲気がある、ここに問題があると思います。でありますから、私は最初に先ほど申し上げましたように、これは大きな裁判というものに関係する三本柱の一つでありますから、裁判官、検察官と同様にやはり国民の代表である国会の監視のもとに置くというぐらいの制度をつくるということが一番制度としても適当であるし、こういう弊害を除去する一つの手だてではないかと、かように考えておりますが、率直に言って、法務省がそういう判断を下したらそれこそ大騒ぎになりますからいま控えておりますけれども、願わくば国会等でそういう根本問題を検討していただくということが一番いいのじゃないかと、かように考えておるわけでございます。
  96. 山本富雄

    ○山本富雄君 先ほど大臣からもちょっと言葉で出たのですけれども、国選弁護人ですね。少し早いかもしれませんが、仮にこの立法をお考えになった場合に、当然万般の起こるであろういろいろなことを予想されて配慮をされておられると思いますけれども、仮にこの特例法が立法化されたという場合でも、国選弁護人裁判所が弁護士会に頼むという場合にスムーズに行われればいいのですけれども、スムーズに行われないような事態が容易に予想されるわけでございます。そこで、いまアメリカで行われている公設弁護人制度、この資料を読ましてもらいましたけれども、あるいはヨーロッパで行われている弁護人以外の法曹の資格者を選任できると、こういう制度等を当然考えなくちゃならないのじゃないか。国選弁護人選任とかあるいは公設弁護人制度の新設、これに関して法務当局はどういうふうにお考えになっておられますでしょうか。
  97. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) おっしゃいますとおりでございまして、私どもが考えておりますような特例法が成立いたしましても、もともとこの法律はよく世上で弁護士抜き裁判と言われておりますけれども、決してそうではないのでございまして、いつでも弁護人はもう一回選任しようと思えば選任できます。それからいつでも別の弁護人選任できる、あるいは国選弁護人選任請求ができるということでございまして、一たん弁護人がたとえば辞任したからといいましても、なるべく早い機会に本人から国選弁護人選任請求が行われて、そして裁判所が国選弁護人を早くつけて正規の状態に戻して裁判をすることが望ましいことは、申すまでもないところでございます。ところが、従来は、ともするとこの種事件につきまして弁護士会に国選弁護人の推薦を御依頼申し上げましても、やってくれる人がいないとかいろいろな理由で御推薦が何カ月もないというような事態があったわけでございます。そこで、私ども、今度の立案に当たりまして、事前に日弁連の方とお目にかかりまして、後に経緯につきましてはそれはお尋ねがあれば詳しく申し上げますが、簡単に申し上げますと、最近の異常な状況に対処するためには二つの方法を併用することが考えられる、その一つはこのようないま私どもが考えておりますような立法である、もう一つは、これとうらはらをなすものとして、国選弁護人選任がこれまでのように容易に得られないということでありますと、公設弁護人のような制度、これをつくることも考えなければならない、その二つをセットとして一応考えておるということをお話し申し上げましたところ、前段の問題、これは懲戒処分の励行につながる問題でございますが、これについては現在日本弁護士連合会としても直ちに打つ手がない、しかしながら国選弁護人選任のための推薦の関係はなお努力の余地がある、さらにその努力を裏づけるものとして裁判所においてもそういう事件の国選弁護人報酬等について考慮を払っていただく必要があろうと、こういうご意見がございました。そこで、裁判所の方にもお伺いをいたしましたところが、報酬等の点については考える余地があるということでございまして、弁護士会の御意見と裁判所の御意見とを彼此重ね合わせて考えますと、国選弁護人推薦の点は関係者努力によって今後合理的な解決のめどがないとは言えないというふうに考えましたので、この点の立法化は見送ったわけでございます。しかしながら、仮定の問題でございますが、もし将来もいままでのような国選弁護人推薦の実情が続きました場合には、御指摘いただきましたように、諸外国ほとんどどこの国でもございますけれども、公設弁護人制度をつくるとか、あるいは弁護士資格がなくても一定の法曹資格のある者あるいはこれに準ずる者に国選弁護をやってもらうことができると、こういう立法をせざるを得ないことになりはしないかと思っておりますが、実際問題としてそうならないように、ぜひこれは弁護士会、裁判所とお話し合いをしていきたいと思っております。
  98. 山本富雄

    ○山本富雄君 いま局長のお話しのとおり、そうならないように法曹三者とよく相談してもらいたい、要望しておきたいと思います。  もう一つ局長お尋ねしますけれども、私ども調べたところでは、外国の例ですね、英米などでは必要的弁護制度自体はないわけですね。一定の要件のある場合に弁護人なしで裁判を行っている外国の例をちょっとお聞かせを願いたい。また同時に、今度考えておられるものとの比較ですね、非常に日本のものが厳しいのだというふうなことであるかどうか、その点もちょっとお尋ねをしておきます。
  99. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 諸外国の必要的弁護制度は、その全くうらはらをなす問題としまして国選弁護人制度、あるいは弁護士に対する懲戒制度、これと一連の関係がございますので、それらを一連のものとして見てまいりませんと的確な比較ができないと思うのでございます。たとえば、いま仰せになりましたアメリカ合衆国におきましては必要的弁護という制度はございません。イギリスも同様でございます。むしろアメリカ合衆国の判例によりますと、被告人弁護人が要らないと言っておるのに国がこれに弁護人をつけるということが憲法違反であるということとされております。なお、アメリカにおきましては、弁護士については、先ほど御指摘のありましたように公設弁護人制度というものがございますほかに、不当な行状をした弁護士に対しては裁判所が最終的に懲戒処分権を有しておるわけでございます。それから西ドイツにおきましては、御承知のバーダー・マインホフ事件等が続発しておりますために、現在所要の法改正をいたしまして、必要的弁護事件におきましても、犯罪の過去、あるいは接見交通の乱用等の事由のある弁護人を手続から排除する趣旨の刑事訴訟法の改正が行われております。なお、ドイツにおきましては、弁護士以外の者、たとえば大学の法律学の教授、あるいは一定期間の修習を経た司法修習生を国選弁護人にできることになっておりますし、また、弁護士の懲戒につきましては、検察官の訴追に基づいて名誉裁判所が行う、こういうシステムになっております。以下、どの国を見ましても不当な行状のありました弁護士に対する懲戒権を国の機関が留保することといたしましてその適正な運用を図っておりますために、およそわが国で見られるような被告人弁護人が意思を同じくして法廷闘争戦術をするという現象自体が非常に乏しいようでございまして、大体は懲戒の方で弁護士としての資格を剥奪したり、あるいは一定期間停止したり、そうすることによって賄っておるようでございます。  ところで、わが国の方はアプローチの仕方が今回の私ども考えております案は違うわけでございますが、先ほど大臣が申し上げましたように、弁護士会の自律権に一定の制限を加えるという法改正の仕方というものは、たてまえ論から言えば弁護士会そのものを疑ってかかるような感じでございます。私どもがいまアプローチをしようとしておりますのは、弁護士会はとにかくまず御信用申し上げる、しかしながら弁護士会の統制を聞かないような一部の弁護士さんの措置について適正迅速な裁判というものを防衛しよう、こういう観点からのアプローチでございまして、その差異につきましては先ほど大臣が申し上げたとおりでございます。
  100. 山本富雄

    ○山本富雄君 この法律案の立法化の過程でいわゆる法曹三者間で十分協議をされたかどうかをお伺いをしたい。反対の私どもへの文書などによると、これはちっともなされていないじゃないかというふうな文書等もありますので、念のためにお聞きをしたいと思います。
  101. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 昨年十月四日に、政府にハイジャック等非人道的暴力防止対策本部が設けられまして、鋭意ハイジャック防止、さらにはこれに類する非人道的暴力行為の防止に関するあらゆる施策を総まくりにして検討し、これを逐次実施に移すということとされたわけでございまして、十一月八日になりまして「ハイジャック等非人道的暴力防止対策について」というのが出まして、これによって今後の施策を推進することとされたわけでございます。その検討の過程におきまして、先ほども御指摘のありましたように、裁判中の者が二度にわたって合計八名も連れ去られたということにかんがみまして、その種事件の訴訟の促進をどうしても図らなければならぬということになったわけでございます。  そこで、この対策本部でそういうことが議論になりまして間もなく、十月中から数回にわたりまして、実は私が日弁連事務総長においでをいただきまして、種々意見を交換したのでございます。その際私が日弁連事務総長に申しましたのは、最近の異常事態に対処するための具体的措置として、弁護士に対する懲戒処分の適正、迅速な励行の問題、または必要的弁護の例外規定の新設というテーマ、それからもう一つは弁護士会による国選弁護人の円滑、迅速な推薦、または公設弁護人制度の創設、こういうことをいま私どもの方では考えているのだけれども、日弁連としてはどうお考えであろうかというふうに伺いましたところ、これに対してただいま申しました二つのパターンの前者については、懲戒処分の励行については、ただいまの時点で直ちに自信ある回答はいたしかねると。しかし、国選弁護人の推薦については大いに努力の余地がある。先ほど申し上げましたような見解の御表明がございました。  そこで、私の方から、それでは必要的弁護の例外規定の新設について鋭意検討を進めることにいたしますよと申しておりますうちに、先ほどの十一月八日になりまして、対策本部でこの防止対策要綱とでも申しますものが発表されました。されますと、翌日直ちに日本弁護士連合会会長名で必要的弁護の例外規定の新設には全力を挙げて反対するという声明を出されたのでございます。こうなりますと、この声明が千金の重みを持っておるわけでございまして、その後はお話し合いの場がないまま今日に至っております。  私どもといたしましては、ただいま申し上げましたように、数次にわたって事前に日弁連事務総長とよく懇談申し上げたつもりでおります。それからもちろん裁判所とも最高裁判所事務当局と何回も連絡協議をいたし、結論に達したわけでございます。
  102. 山本富雄

    ○山本富雄君 特例法と憲法との関係につきまして、これは非常に重要なことなんですけれども、大臣にお尋ねしたいと思います。  今回政府が考えておりますこの特例法ですね、これは明らかに憲法に違反しているのじゃないかという声が一部にございます。この点につきまして明確な御答弁をお願いしたい。
  103. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) いまおっしゃったような意見があることは承知いたしております。憲法三十七条だと思いますが、刑事事件については弁護人選任する権利があると憲法は人権の規定の中に規定しておるわけでございます。これは、先ほどから申し上げましたように、刑事裁判を公正にやるために、やはり素人である国民である場合がありますから、弁護人選任する権利を与えておる。この憲法の規定はそういうことでございますが、先ほど来刑事局長からも御説明しておりますように、またこの法案にもありますように、そういう弁護人を排除しようという趣旨は一つもないわけでございます。みずから裁判に参加しないと、こういう態度に出るような被告人に対しては憲法はそこまで保障するものでない、こういう考えでございます。
  104. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) ただいまの大臣の御答弁のとおりでございますが、若干補足いたしますと、憲法第三十七条三項の解釈につきましては、三回にわたる最高裁大法廷の解釈がございまして、これによりますと、憲法三十七条三項の趣旨は、弁護人依頼権は被告人が行使すべきもので、国は被告人にこの権利を行使する機会を与え、その自由な行使を妨げてはならないという趣旨であるということでございまして、私どもがただいま考えておりますのは、被告人弁護人依頼権を与えないというのではなくて、弁護人被告人が意思を同じくして弁護人が法廷にいない状態を作出する。これは、すなわちこの最高裁判例の立場から申しましても、裁判所としては弁護人を付する機会を奪っておるわけでは全くない。いつでも当該被告人は新たに弁護人選任することができますし、適当な弁護人が見つからなければ国選弁護人の請求をすることができると、こういうことでございまして、憲法違反の問題は全くないように思います。  なお、法制審議会等の場におきましても、一部日弁連御推薦の委員の方から、憲法違反の疑いがあるのではないかという御発言が一等最後の段階にございまして、他の学識経験者の委員から、憲法違反の問題があるというのなら法制審議会の最初にまずやるべきではないか、いまごろ持ち出すのはどういうわけだと、一体本気に憲法違反だとあなた方は考えているのかという反問がありまして、沈黙されるというような状況があったわけでございまして、三十七条三項に正面から違反するというようなお考えを本当にお持ちの法曹の方はいないのじゃないかと私どもは考えております。
  105. 山本富雄

    ○山本富雄君 いままで私の質疑に対しまして当局からかなり詳細に答弁がございまして、また大臣の所信もお伺いをしたわけでございますけれども、私の思うところ、一部過激派事件裁判弁護人被告人と全く相呼応しましてそして必要的弁護の規定というのを全く逆用して違法な法廷闘争戦術を行ってきたということは明らかだろうと思うわけであります。こういうことが続いている限り、これはもう完全に法の無視である、民主主義の破壊である、こういうことにつながると思うわけでございます。  私は、反対意見あるいは私どもへ届いております反対陳情などを例にとりましていろいろ質問したわけでありますけれども、暗黒裁判につながるのじゃないかと、こういうふうな表現も反対意見の中にはある。私はアメリカの裁判が暗黒裁判だと言う人は世界どこにもいないと思うわけでございますが、これは一部ためにする宣伝だと、全く誤った宣伝だと、こういうふうに考えておるわけでございます。  この当局が考えております特例法は、一部過激派の裁判のいままでの事例を十分聴取しまして、そしていろいろな観点から考え、かつ、いまの局長のお話のとおり協議も詰めたかっこうで法無視の異常裁判というものを是正して、これは憲法に要請するところの適正迅速な裁判に戻すのだと、正常化するのだと、こういうためのものであるというふうに解釈をしておるわけでございますけれども、最後に大臣からもう一遍所信をお伺いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  106. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) 趣旨は、いま山本委員からお話しのとおりの趣旨にわれわれは考えておるわけでございます。よく暗黒裁判という言葉を使われておることを私も承知をいたしておりますわけなんですが、私は、まあこう言っては失礼でありますけれども、日本の場合はすぐ何かスローガン的な非常にエキセントリックな言葉を使って国民に訴えようとする習慣と言うと恐縮でありますが風潮があります。今度この特例法関連で暗黒裁判という言葉があちらこちらで言われておることを耳にして思い出すのでありますが、あれは二十何年でしたか、いわゆる破壊活動防止法をつくるとき、多くの方々が、あるいは新聞等の、いま持っておりませんから私記憶違いであるかもしれませんが、論説なんかにも、これは暗黒政治をするためのものだというふうな議論が非常に横行いたしまして、進歩的文化人などとおっしゃる方々はほとんどその説をなされた。破壊活動防止法はこういうことも書いてある、この法律は、税金が高いから政府に対して税金が高過ぎると、こういうことも一切言わせない、暗黒政治をするための立法であると、盛んにそういうことを言われた。いかがでしょうか。その後破壊活動防止法ができて今日、暗黒政治ができるような状態でありましょうか。私はそれを思い出すわけでございます。さっきも申し上げましたように、わが国の憲法下でこれほど国民監視の中で暗黒裁判ができるなどということを考えること自体が私は誇大妄想だと、かように考えております。
  107. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 午後一時四十分まで休憩いたします。    午後零時四十二分休憩      —————・—————    午後一時四十六分開会
  108. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) ただいまから法務委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、本調査に関する質疑を行います。
  109. 宮崎正義

    宮崎正義君 最初に文部省の方がお見えになっておりますのでドラフト問題を先に取り上げまして、そして次の質問に移りたいと思います。  まず、所掌の文部省はドラフト問題についてどのように考えておられるか。本委員会で二度にわたりまして行っている内容等も、午前中の内容等も御存じのことだと思いますが、担当所管としてのお考えを伺っておきたいと思います。
  110. 西野間幸雄

    説明員西野間幸雄君) お答えいたします。  プロ野球が広く一般国民に親しまれまして、野球の愛好家にとりましては技術面の参考ともなり、スポーツ振興に役立つ面もありますので、文部省としましては今後ますます健全に発展することを望んでいるところでございます。  御承知のように、プロ野球につきましては、現在セ・パ両連盟に加盟している株式会社である合計十二の球団が営業活動として興行をしているわけでございまして、この両連盟と傘下の球団とが自主的に野球協約を締結され、その協約に基づいて活動されているところでございますので、そのドラフト制度その他協約の内容そのものは文部省としては関与いたしておりませんし、また関与すべき性質のものではないと、こう考えております。
  111. 宮崎正義

    宮崎正義君 社団法人の日本野球機構というのを認定なさっておりますが、この日本野球機構というものについて、文部省としての話し合いといいますか、会議を年にどれぐらい持って、そしていま御答弁になりましたスポーツ振興というものに対するあり方というものを随時やっているか、その年間の回数とか、最近このドラフト等の問題が起きてから会議を持ったことがあるかどうかということ、また指導監督等をどういうふうにしているかどうか、その点についてお伺いしておきたいと思います。
  112. 西野間幸雄

    説明員西野間幸雄君) 文部大臣の所管する社団法人といたしまして、昭和二十三年以来日本野球機構というものを所管しておるわけでございますけれども、この法人は、わが国における野球水準を高め、これを普及して国民生活の明朗化と文化的教養の向上を図るとともに、野球を通してスポーツの発展に寄与し、日本の繁栄と国際親善に貢献することを目的として設置されたものでございまして、その他の所管法人と同様に、その収支予算計画、それから事業計画、それの報告書等につきましては、規定の定めるところによって毎年その書類等を出していただいておるわけでございますが、特に問題があったとか問題になる点、そういうことがございます際には、その都度事務局に来ていただきまして中身をいろいろと教えてもらい、そして適切なといいますか指導をやっている。これは時により違いまして、年間何回とかはっきりとした数字は申し上げかねるわけでございますけれども、ことに最近はいろいろと話題もございますので、たびたび足を運んでいただいているという状況でございます。
  113. 宮崎正義

    宮崎正義君 たびたび運んでいただいているその内容についての主たるものを挙げてみてください。
  114. 西野間幸雄

    説明員西野間幸雄君) この法人の事業内容としましていろいろと挙げてあるわけでございますけれども、特に最近われわれの方でお聞きした件につきましては、「野球に関する資料の収集、調査および研究。」ということがございますので、その内容についてお聞きしましたところ、各種の図書文献を集めてこれを野球博物館において一般の利用に供されている。また、プロ野球に関する各種の記録を集めてその結果を毎年定期的に「オフィシャル ベースボールガイド」という本を編集発行されている。それから「球団間の連絡、親善。」という事業が掲げてございますけれども、そのことにつきましては、各球団の代表などに集まっていただいて連絡会議を随時開催し、また球団の親善を目的として会合を毎年実施されておるというふうに聞きました。  なお、特に「野球選手、監督、審判および野球関係者の養老厚生事業の実施。」という一号がございますけれども、これにつきましては、従前から承知しているわけではございますけれども、昭和三十九年の四月から、国税庁から認可を受けた適格年金というものを発足させて、年金運営委員会を設置して、年金または退職一時金を支給するというような事業を行っているということを特に聞いております。
  115. 宮崎正義

    宮崎正義君 いまの御答弁によりますと、事業内容の点についてところどころ触れておられるようでございますが、午前中もその年金の話なんかも出てまいりましたけれども、適格年金及びまた退職の問題等云々の御答弁がありましたけれども、養老厚生事業の実施という七番目に、「野球選手、監督、審判および野球関係者の表彰ならびにそれらの者のための養老厚生事業の実施。」という点について、今日までの流れといいますか、歴史的にこの内容がどのような年度にどのように変わってきたというようなことがあれば御説明を願いたいと思います。
  116. 西野間幸雄

    説明員西野間幸雄君) この年金制度につきましては、昭和二十六年から各リーグ別に行っておられたわけでございますけれども、これを先ほど申し上げましたように、昭和三十九年から統合して再発足されたということでございます。  現在の状況について申し上げますと、加入者はプロ野球の選手、監督、審判員、コーチでございまして、規定上は野球の関係者となっておりますけれども、これはコーチということだそうでございますが、五十二年の三月末現在では七百九十四人が加入しているということでございます。  なお、加入者は在職年数に応じて一年から三年までは二万円、四年から六年までは三万円、七年から十五年までは四万円、十五年以上はゼロの金額で負担金を納める。それで、この法人といたしましては、加入者一人について六万円のうち、ただいま申し上げました金額を控除した額を機構として負担するほかに、毎年相当の金額を拠出することになっておって、昭和五十一年度におきましては加入者が二千百六十二万円、機構側が七千三百五十一万円を拠出いたしておりまして、その総額は九千五百十三万五千円となっております。  それで、加入者は在職十年に達しますと退職年金の受給資格を得まして、在職年数に応じて年金を五十歳のときから支給される。それから五十一年度の年金の受給者は百六十六人でございまして、金額としましては三千二百八十六万七千円が支給された。なお、十年以前にやめた選手については、最低二万円から最高三十六万円の退職金を支給されまして、このほか年金にかわる一時金、遺族一時金等の一時金がございまして、金額といたしましては昭和五十一年度は一億六百七十九万六千円の一時金が支給されております。したがいまして、年金支給額との合計の総支出額は一億三千九百六十六万三千円に達していると、こういうふうに聞いております。
  117. 宮崎正義

    宮崎正義君 個々の問題を取り上げてやりたいと思いますが、時間がありませんので省略をしますけれども、先ほどの御答弁の中に協約上のものは関与しないという御答弁がありましたけれども、午前中の法務大臣の答弁の中には、契約の問題とか、あるいは民法上の問題、企業の問題、労働法の問題等について寺田委員の方から個々に質問がありまして、そして最終的には大臣はこういうふうに答弁をしております。国民とともにあるこのプロ野球というものは、国民に理解をさせる、その意味においては改善させることがまた場合によっては好ましいのであると、こういうふうな御答弁もありますが、全くの介入をしないという考え方だったならば、この認可している社団法人の日本野球機構というものの指導監督を、ただそのままこの定款を受けて、受けとめているというだけであって、向こうの報告をそのまま受けるという形になるように思うわけです。したがいまして、随時この話し合いの中には、文部省としての考え方というものも当然話し合いの中になければならない。したがって、こういうドラフト問題で法務委員会が二度にわたって行われているということについても、また参考人の方々の意見開陳等も考え合わせながら、その参考人の方々の中にはきょうを参考として改善をしていこうという意見の開陳もございました。そういう面から考えまして、いままでのあり方というものを私は直していかなきゃならないのじゃないか、こういうように思いますが、いかがでございますか。
  118. 西野間幸雄

    説明員西野間幸雄君) この協約の内容そのものは法人であるところの野球機構が直接に関係しないところでございますけれども、この内容の改善につきましては、まず第一義的には関係者の自主的な不断の努力にまちたいと思うわけでございますが、この法人そのものにつきましても、その事業内容その他、御指摘のように法人としての問題点等につきましては、今後はよく相談、また法人に対する指導という意味で私どもも何らか改善していくという点に努力をいたしたいと思うわけでございます。
  119. 宮崎正義

    宮崎正義君 この社団法人の日本野球機構定款の補則事項の四十三条に、「この連盟創立当初の役員を左のとおり決める。」という役員がございますが、これは現時点においても役員の変更はございませんか。
  120. 西野間幸雄

    説明員西野間幸雄君) 役職としては変わりはございませんけれども、それぞれ個々人は若干の変動がございます。
  121. 宮崎正義

    宮崎正義君 変動があるということでしたならば、これは変動したものですか、私がきのういただいたものは。変動したメンバーの変更まで全部出ておりますか。
  122. 西野間幸雄

    説明員西野間幸雄君) 法人設立の際にこの定款がつくられて提出されたわけでございますけれども、創立当初の役員はこのまま残っておるわけでございまして、現在の名簿につきましては、現在の時点でここにはございませんけれども、別に所有しておるわけでございます。
  123. 宮崎正義

    宮崎正義君 それを一々云々するわけじゃございませんが、それをひとつ御提出を願いたいと思います。  それで、先日の参考人として来ていただいた方がこのメンバーの中にもいらっしゃるわけです。この設立当初の役員の会長さんというのは鈴木龍二さんというふうになっておりますが、セントラル野球連盟関係で参考人として前回おいでになりましたし、またパシフィックの方の三原さんも理事の立場の中でおいでになりましたし、そしてコミッショナーの事務局長の井原さん、その方も理事というふうになっております。こうして見ますと、もし先ほどの答弁のように会合を持たれているとすれば、これは非常に話がスムーズにいくのじゃなかろうかと私は思うわけです。したがって、この日本野球機構、そしてプロフェッショナルの野球組織というもの、この中で十分な話し合いも重ねられるということにも考えられるわけであります。したがいまして、両方の十二球団の方にもこれは即通じていく話し合いにもなると思うわけです。  いずれにいたしましても、こういうせっかくの認可した団体があるわけでありますから、所管の文部省としても十二分に内容的にも話し合いをなさって、そして国民的になっているという、国民のプロ野球だというその観点の中から御判断を願いたいと思うわけであります。  私も、このドラフト問題がいろいろ論議されたときに、少数ではございますが、この制度をどう思うかという不特定多数の人ではございますが意見を聞いてみました。廃止すべきか存続すべきか、この二つと、そして、あなたの希望はどういうふうな希望を持っているか、それを開陳してもらいたいということを尋ねながら聞いてまいりましたらば、廃止すべきであると存続すべきであるというのはやや同数でございました。そして、規約を検討し洗い直すべきじゃなかろうか、協約というものの内容を洗い直すべきじゃないだろうか、もう一つには、本人の抽せん権というものも、個人の取得権といいますか、その個人の権利といいますか、それを与えて抽せんをさせるべきだということは、私の尋ねました者のほとんど全部がそういう意見を持っておりましたことを私は申し添えまして、所管の文部省としてこれからのあり方を御検討願いたいということを要請をいたしておきたいと思いますが、お考えを伺って、文部省の関係は終わりたいと思います。
  124. 西野間幸雄

    説明員西野間幸雄君) 法人としましての日本野球機構と、それとまた別の任意団体としての野球組織というものがございまして、先ほど申し上げましたように野球組織の方で協定した内容というものにいろいろな問題点があるわけでございますけれども、御指摘のように、所管法人である日本野球機構の役員の方々が大なり小なり野球組織の方にも関係されていることでございますので、野球機構の方と十分に私どもの方ではお話をしながら、組織の方の協定内容にもそれがうまく反映するということができるようにお話はしていきたいと思います。
  125. 宮崎正義

    宮崎正義君 大臣の所信表明の中で、午前中にもお話が出ておりました件について、私も一言だけ触れて次の質問に入りたいと思います。  この大臣の所信表明のちょうど三枚目のところにございます「この際、右の特例法案について付言いたしますと、御承知のように、現行刑事訴訟法のもとにおいて、弁護人がなければ開廷することができないこととされている事件のうち、いわゆる連合赤軍事件や連続企業爆破事件のような一部の事件について、弁護人がいわゆる法廷闘争戦術として、正当な理由がなく公判期日に出頭せず、」云々というくだりがずっとございます。このことについて、午前中は刑事局長及び法務大臣から質問の補足答弁のような形でございましたけれども、いずれにいたしましても提案をされようとなさっている法律案はまだ提案がございませんし、法文化したものは来ておりませんし、そのときにじっくりとこの問題に取り組みたいとは思いますが、いずれにしましても、法務省は法案を設定する立場ですからどうしてもこの成立を図ることを最善としておりますが、また弁護人抜きと言われるこの問題を提起している反対側の方々の意見というもの、これは十分にそしゃくもし、また大きな問題として取り上げていかなきゃなりません。また、一つには、この出されようとしている法案についての考え方というものを、特に私は国民の側に立って、問題をしぼって、法律案が提案されましたときに十分に審議をしたいと思いますが、ともあれ大臣が午前中おっしゃいました法案に対する自分の考え方というもの、これは大臣の考え方であり、国民の考え方でないんだ、国民の大多数はどういう考え方をしているかという立場の上から私は論議を進めていく所存ではございますが、ともあれ、この法案を提案なされようというそのいきさつといいますか、経緯といいますか、そういうことを一言伺っておきたいと思います。
  126. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) そのことは午前の当委員会でも申し上げたわけでございますが、いわゆる過激派等の刑事事件において裁判が非常に進まないその大きな原因の中に、必要的弁護の刑事訴訟法上の規定がございますが、いわゆる弁護人が在廷しなければ裁判が進められない、そういう事態の中で被告人とその弁護人とが意思を通ずる形であらゆる戦術を使って出てこない、あるいは退席をする、こういう状態がありますから、それでは法秩序を維持するための刑事裁判が進まない。これは、その問題だけでなしに、全体の憲法下における法秩序に大きく関係がありますから、この際そういう弊害といいますか、異例の事態に対して手当てをしなければならない、そういう意味でこの特例法をお願いしようと、こういうことでございます。
  127. 宮崎正義

    宮崎正義君 その論議は、後日提案されてから十分に審議を尽くしていきたいと思います。  次には、所信表明の中で犯罪被害者補償制度の立法化についても事務当局において鋭意所要の作業を行っているところでありますというお考えを述べておられますが、この問題については、前大臣でありました稻葉法務大臣も在任中にはこれを立法化していきたいという答弁もありましたことは御存じだと思いますが、いずれにしましても、最近の新聞紙上には、覚せい剤の事件だとか、あるいは暴力団の関係する犯罪だとか、さらには動機なき殺人事件といいますか、その他青少年による犯罪事件等々、暗い悲惨な報道が毎日のように後を絶たないように続いております。もちろん政府関係当局の遺憾のない対処が最も重要でありますが、この問題が起きる前に、事件の起きる前の措置というもの、対策というものが根本的には大事なことでありますが、現在、過去におけるいろいろな犯罪、動機なき殺人という問題で泣いてる方々が、いまこうしている間でも自分たちの生活の中で苦しんでいるということの事実を大臣はしっかり受けとめながら私の質問を伺ってもらいたいと思います。  去る十二月の七日に、これは朝日新聞でしたか、犯罪被害者補償制度の法務省案がまとまったとの報道がなされておりましたが、この記事に対する法務省の見解というものをまず私は伺っておきたいのでございます。
  128. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 御指摘の朝日新聞の記事は、結論的には誤報でございます。
  129. 宮崎正義

    宮崎正義君 結論的には誤報でありますということになりますと、それが真実性があるかどうか私はわかりませんけれども、この報道によってもたらされるところのものは、国民は非常に大きな関心を持っている問題でございます。したがって、誤報であるという一言でこれを抹消される、打ち消されるというようなことは考えてもおりませんでしたけれども、そうおっしゃるのならやむを得ないといたしまして、大臣にお伺いしますが、これの制度をいま事務当局において鋭意作業中であるということなんですが、その作業はいつの時点にまとまっていくのか、この点をひとつ伺っておきたいと思います。
  130. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) いま伊藤局長から新聞の誤報というようなことを申し上げましたが、これはまだ法務省として犯罪被害者補償法の結論的なところへいっておらないという意味で申し上げたわけでございます。  御承知のとおり、犯罪等の不法の行為によって損害があれば、そういう不法行為をした人に損害の補償請求ができるわけでございますけれども、実際の社会では全く無関係なようなかっこうの犯罪のために生命その他が被害を受ける、こういう状況がおっしゃるとおり多々あるわけでございます。また、犯罪者に対して、損害を受けたら法律上は請求ができますが、なかなか実態的には補償が必ずしも可能な状態にない場合もある。こういうことが社会に多く起こっておりますから、これは前々からそういう意見があるわけでございますけれども、何とか国の方でめんどうを見るといいますか、気の毒な立場にある被害者の方に国家的な立場で補償する制度をつくらなきゃならぬじゃないか、こういうことで法務省もいろいろと検討をしておるわけでございます。  ただ、簡単にそうは言いましても、御承知のとおり、いかなる形の犯罪被害者に補償をすべきか、またどういう程度の補償をすべきか、なかなかむずかしい問題があります。細かいことについては事務当局からお答えをさせますが、そういう関係から、諸外国における犯罪被害者補償制度の状態、またその運営の状態、それから日本における犯罪被害者実態の状態、こういうものをいろいろ調査いたしまして、できれば早くという考え方でいま作業を進めておるわけでございます。ただ、国家財政の問題もありますから、どの程度の範囲で補償すべきか、またどの程度の額で補償を決めるべきか、非常にむずかしい問題がありますから、そう早急に結論が出かねておるというのが実情でございまして、何とかこの制度を早く——これは法務省だけで詰めるものじゃありません。関係各省とも、関係機関とも早く意見を詰めて成案を得たい、これが現状でございます。もう少し詳しいことについては刑事局長からお答えすることにいたします。
  131. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 先ほど非常に簡単に申し上げましたので、大変誤解を招きやすかったかなと反省しておりますが、もう被害者補償の問題は数年前から作業を進めておるわけでございますが、この作業の比較的早い機会に一部の新聞が法務省で検討しておる案として報道されたことがございまして、その内容を先ほど御指摘の記事におきまして私どもにコンファームすることなしにお書きになったものですから、非常な作業の進み方とのずれがございまして、そういう意味で私どもが現在考えておるものとはほど遠い形になっておる、こういうことでございます。  現在私どもがやっておりますことは、当初考えました、わりあい幅広く被害者に対して補償をしていくというような方式で試みに要します金額を試算いたしてみますと、相当膨大なものになりまして、初めからどうもそういう大きなものを望んでも、御承知のただいまの財政事情ではなかなか困難であろう。そこで、俗な言葉ですが、いわゆる芽を出す程度のことでも何とかできないかということで、いま若干規模を最初は小さくするということで検討しておりまして、そのために必要な実態調査をいまやり直しております。これが今月いっぱいで完了するはずでございます。そういたしますと、それをもとにいたしまして、もう一回所要財源の額等もはじきまして、関係省庁と本格的な詰めに入りたいと思っております。  現在、問題は非常に大きく申しますと二つございまして、補償の実施機関をどうするかという問題と、それから財源をどうするかと、この二つであろうと思います。実施機関の問題につきましては、捜査機関が行うというのは適当であるのかないのか、第三者的な機構をつくるとしますと最近の行政簡素化の傾向に対してどういうふうな反応が出てくるかというような問題がございますし、それから財政上の問題といたしましては、犯罪被害者のほかに世間にはいろいろな災害というものがあるわけでございまして、それらとの関連においてどう位置づけ、国家からどの程度の支出ができるかという、そういう関係官庁と相当厳しい議論をすべき問題点があるわけでございまして、それらをなるべく早く作業のテンポを進めていきたいと思っておる段階でございます。
  132. 宮崎正義

    宮崎正義君 私の持ち時間があと二、三分になってしまいました。警察庁の方もおいででございますが、質問に入ったばかりで時間で来てしまいましたのでまことに残念でございます。  いずれにいたしましても、いわれなき殺人といいますか、全然予期もされていない人たちが犯罪のためにこうむったその被害というものは大変なことであります。北海道庁の爆破事件、または北海道の道警爆破事件、この事件等の問題を取り上げましても、八人の人が亡くなり、両方の足ともなくなり、そして不自由な生活をしている。一家の大黒柱の御主人を失った人もおるし、いろいろな立場の方がその災害を受けているわけであります。いずれにいたしましても、その犯罪を起こさせないということが根底でありますけれども、過去に起きている問題については、現在その人たちをどうしてあげるかということが私たちの役目じゃなかろうか、それをやるのが私たちの立場じゃなかろうか。  こういうふうな面から考えていきましても、そもそもこの立法化の動きというものは、昭和三十五年の十一月に日弁連の第三回の人権擁護大会の決議にもございますし、四十三年の十二月にも凶悪犯罪を撲滅する国民の会だとか、あるいは四十九年十二月の被害者補償制度を促進する会とかいうことで法務大臣に要望もされております。さらに、五十年の二月十二日には、衆議院の法務委員会で、稻葉大臣が、犯罪による被害者の補償制度がないのは文明国の恥である、急ぎ立法化すると、このことを言われてもうすでに三年たっております。しかも、その次には昭和五十年の二月十七日に三木総理大臣あての要望書が手渡されておりますし、また、五十年の二月十八日には参議院の法務委員会で、安原刑事局長が、法案作成のための作業を開始している。稻葉法務大臣は、私の在任中にめどをつけたい。そして五十年の三月には、わが党がこの補償制度の要綱を発表し、そして五十年の七月には衆議院の法務委員会、五十年の十月には法務省から要綱が発表されたという新聞の報道等は、こういう一連の流れを見てその報道をされたというふうに私は受けとめたわけでありますが、先ほど違っているという御答弁がございましたけれども、ともあれこの法律案は、先ほど大臣から御答弁がありましたけれども、もう何年度にこれを行うか。刑事局長がいまこういう各省とのにらみ合いがあって大変だからという事務的な問題を訴えられておりますが、それはわかっている上での問題であります。今日まで歴史の流れから見ていって、立法化の流れから見ていって当然やっていなければならないのに、今日の時点でまだそういうことであるということは、私は犯罪で被害を受けている方々のことを考えますと、これはまことに遅々として怠慢な状態じゃなかろうかということを申し上げておきたいと思うのであります。  時間が参りましたので詳細についてはこの次のまた機会を得まして十二分に個々にわたっての質問をいたしたいと思います。また、警察庁の方に、質問もいたしませんで、時間がございませんので失礼いたしましたことをおわびします。
  133. 内藤功

    内藤功君 私は、前回のプロ野球関係者の参考人喚問の後を受けまして、プロ野球などのいわゆる見るスポーツを健全に発展させるという立場と、職業スポーツマンの生活と権利を守っていくという観点から、政府に若干の質問をしたいと思います。  この問題が国会で取り上げられる発端になったドラフト制度につきましては、近くセントラル・リーグの実行委員会その他の投員会で選手の球団選択の自由の問題を含めて改善策を論議されるというような方向が打ち出されたので、私はしばらくその努力を期待し、見守っていきたいというふうに思っております。  本日は、その根本問題、午前中も寺田委員などから非常に詳細に出ましたプロ野球選手の特に球団との法律関係の点につきまして政府のお考えを聞きたいと思うのであります。私は、憲法、民法の観点と同様に労働法の観点というものをもっとやっぱり究明していくことが必要だと思う。政治がスポーツに介入するというのじゃなくて、一たんそういう疑問が提起された場合には、それにこたえ得るやはり論議を行政当局者なり専門家の間でしておくべきものである。それは、たとえば映画俳優あるいは放送関係者などにおきましては、それが労働関係かどうか、労働者かどうかということが初めのうちは非常に疑問だったのですけれども、次第に判例なり行政通達解釈によって労働者性というものが次第に肯定されてきている傾向にあると思うのであります。前回川上哲治さんに私が聞きましたときに、同氏は、自分法律的なことがよくわからないので、野球選手は個人事業主でないかと思っているというお答えがあって私もやや驚いたのであります。私はプロ野球選手も基本的に勤労者あるいは労働者というふうに把握をして、そして実情に合うような法的要素——細かい問題にはきょうは触れませんけれども、大きな方向としてはそういう方向に行政というのは見ていくべきではないかという考えを実は持つのであります。  たとえば王選手が、これはいろいろな推定があるのですが、年収七千万とか八千万とか、コーチ料を含めて七千何百万というようなことが言われているのですけれども、これはもうごく一部の少数のいわゆるスター選手のものであって、そういう華やかさにかかわらず多くの選手は一軍二軍を含めて現実には一般の勤労者と同じ、あるいはそれ以下の給料の方もいると私は思うのです。いろいろスポーツ雑誌その他に発表されておる数字を総合してもそう思う。  私は、まず労働省にお尋ねします。あなた方はこの方の専門でありますが、憲法二十八条の勤労者、労働組合法三条、労働基準法九条の労働者というものは三つ要素がある。一つ自分の労働力あるいは労働を提供する、二番目は使用者の使用従属下、指揮命令下に入る、三つ目はその労働力の対償としての賃金その他のこれに準ずる収入を得る、この三要素が私は最低限勤労者ないし労働者の要件だと思いますが、この点はどうですか。
  134. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 私どもの関係の基準法あるいは労働組合法でそれぞれ労働者の定義をいたしておるわけでございますが、いま先生御指摘のように、労働者であるかどうかの判断というのは、いわゆる使用従属関係、それともう一つ労働の対価としての賃金を得るのかどうかということで考えております。もちろん組合法あるいは労働基準法では若干ニュアンスとして違う面もございますから、すべてを一律に律するわけにはまいりませんが、少なくとも基準法の関係で申しますと、いま申し上げたような考え方で考えております。
  135. 内藤功

    内藤功君 さっき言いましたように、労働者の範囲は戦後三十年の判例あるいは行政解釈の中で次第に拡大してきている傾向にあると思うのです。これはもう否定なさらぬと思う。最近、このプロ野球選手そのものではないが、最高裁の第一小法廷が昭和五十一年の五月の六日に、中部日本放送のCBC管弦楽団の労働組合との間における事件判決を下したんですね、これは労働組合法の関係で。こういう放送会社の管弦楽団員が組合をつくって労働条件で交渉してもいいと、つまり労働者だということです。楽団員の労働関係というのはプロ野球選手よりやや自由な面があったのだけれども、やっぱり労働者と見ている。私は、この判決は、会社の出演発注に応じて出演の義務を負っているということ、この楽団員が。演奏してくれというときには、出演する義務を負っている、断る自由というのがない。二番目は、いつ出演するか、どこで出演するか、どういう番組内容に出演するかという、いわゆる労務提供の方法を会社が一方的に指定できるということ。この二点が使用従属のポイントだというふうに私はこの判例から見るのです。  この判決は恐らく御研究になっていると思うけれども、労働省当局、この考え方の底にあるものから見て、私は、さっきのあなたの答弁は一部労働者であることを認め、一部労働者でないことを認めるという答弁でしたが、これははっきり法的解釈は労働者だということでもって貫いた方がプロ野球選手の場合いいのじゃないか、それとも余り実態を調べていないからこれから調べるというのならそれでもよろしいが、この点ちょっとはっきりさしてください。
  136. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 五十一年の最高裁の第一小法廷の判決については、私どもの方でもいろいろ見さしていただいておるわけでございますが、その中で、芸術的価値を評価したものというよりは、つまりその出演報酬の性格でございますけれども、演奏によってもたらされる芸術的価値を評価したものというよりは、むしろ演奏という労務の提供それ自体の対価であると見るのが相当であって云々というくだりがございます。それは午前中の御質問に対してもお答えした際に同じような考え方をもちましてお答えしたわけでございます。つまり、プロ野球選手の場合の報酬その他のあり方、実態についてはなお詳細に調べませんとわからない点もございますけれども、ここで言います放送団員の場合に、いわゆる芸術的価値を評価したものと見るのか、あるいは単なる労務の提供と見るのかというような論点がございますので、プロ野球の場合は、たとえば参稼報酬の決まり方は、新聞その他に報道されておりますことから判断しますと、相当部分いわゆる単なる労務の提供というよりは、興行的価値と申しますか、人気を含めた興行的価値といったものによって決定される要素があるのじゃないかと判断して、午前中に申し上げたように、いわゆる賃金的性格は薄いのじゃないかと申し上げたわけでございます。ですから、いわゆる使用従属関係があるかどうかという点になりますと、これは実態を詳細に承知いたしておりませんので、調べた上でないとちょっと正確には申し上げられないかと思いますが、賃金についてはそういうような考え方を持っております。
  137. 内藤功

    内藤功君 ひとつ、これを機会に、いろいろな問い合わせや、あるいは場合によっては紛争が持ち込まれた場合にそれからじゃ遅いですから、国会で議論になったのを契機に、いまから研究しておいてほしいですね。  特にいま二つ問題を言われた。一つは賃金の決定がどうなっているかということがよくわからないということですが、これは野球協約にもありますように、十二月と一月のいわゆるシーズンオフを除きまして、十カ月分というものでもって給料を年額で計算をしている、そうして十二カ月分に分けて毎月もらっている、定額をもらっているわけですよ。ですから、年俸三百六十万円の人は三十万円ずつもらう。ですから、定額なんですね。定額ということは労働力の対償という性格をあらわしていると思うのです。  それから何を基準にするかということはぼくも調べたいし聞きたいのですが、ある球団では百何十項目の賃金査定項目を設けているところがあるらしい。その中には、いまあなたの言った人気なんというのもあるのかないのかわからない。あるのかないのかわからない、あるかもしれない。しかし、百何十項目の中には、人気だけじゃないです、いろいろな要素というものを加味している。これは普通の会社で労働者をいろいろ賃金査定をするのと同じような査定の方法をやっているわけだ。こういう点で、定額だということに着目するならば、それからいろいろな能力とか実績とかいろいろな細かい要素を、内容を私自身はつまびらかにしていないけれども、盛って賃金を決定しているということから見ても、私はこれは労働の対価、労働力の対償として見るべきものだという気がするのです。これは王さんのように金額の多い人であろうと、あるいは二軍の人であろうと、多くない人であろうと、私は共通した法律的な一つの解明点だと思う。これを、介入にわたることは私は望みませんけれども、真剣に研究しておいてほしい。  それからもう一つ、使用従属関係は、これは非常に明確だと思うのは、監督、コーチ、トレーナーなどの非常に厳しい命令指示に従ってやる。正式の試合自体がそうですし、練習もそうですね。そういうものすべてそうだ。たとえば制裁規定もあるでしょう。サインの見落としが非常に多くて罰金をたくさん食ったかつての有名選手もいますよ。それから門限におくれた場合の制裁、それからアメリカに練習に行く前の日にたまたま練習を休んだためにアメリカ行きの切符がもらえなかったという人もいる。非常に厳しい制裁というのがあるんですね。それから二軍の選手は寮に居住することを義務づけられている。こういうようないろいろな統制、非常に厳しい使用従属関係というのがあるということ、これは少し御調査になって調べられればわかるのです。その二点を調べて、さっきのようにスター的な選手はこれは労働者性が薄いが、二軍の下積みで、ブルペンでキャッチをやっている、しょっちゅう球を受けて肩を壊して若くしてやめちゃう人がいますよね、ああいうキャッチャー、それからフリーバッティング専門のピッチャー、そういうようなものは労働者性が強いという区別は私は合理的な理由がないと思う。やはりこれは一律に労働者性があるかないかということを労働省としては御見解をいますぐでなくてもいいから研究して明らかにする。それは労働者性を広げていっているといういままでの判例の立場に立ってそういう肯定的な見解を出すべきだと、こういうふうに思うのですが、いかがですか。
  138. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 判例の傾向としまして広げる傾向にあるということは、私どもも感じております。たとえば放送団員の問題ですと、これは専属契約時代の時点の話ですが、基準法上は労働者性を認める行政解釈もすでに二十四年当時出しております。ただ、いま先生のお話にありましたたとえば金額が一定であるという点は、放送関係ですと、たとえばテレビなんかの場合に、何回分というものに対して幾らと、こういうかっこうで、本数契約を結ぶケースがございます。そうすると、野球選手の場合に、年間、まあ十カ月間ではございますけれども、その間球団の指定する試合への出場を選手としては義務として負うというかっこうになりますと、何か放送関係とは必ずしも同じには論じ得ないかもしれませんが、ある範囲のことを請け負ってそれに対する報酬が与えられると、そういうふうにも受け取れますので、したがって定額であるという点はもう少し中身を調べてみないといけませんが、いずれにしましても、いろいろ問題があるようにも感じられますので、労働省といたしましても研究したいと思います。
  139. 内藤功

    内藤功君 さらに、もし労働組合法三条というものを見た場合に、これは「職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。」私はこれにはもう明確に当たると思うのですね。だとしたならば、こういう労働者であるプロ野球選手のいろいろな待遇の問題がありますよ。午前中から出ています年金額の問題。それから退職金の問題。それから移籍の自由の問題。それからいわゆる合同自主トレーニングの二カ月間、十二月と一月の間は本来合同練習をしちゃいけないという野球協約なんだけれどもやらしている、給料支払いの対象になっていない、これをどういうふうに扱っていくか。それから最近のあるスポーツ雑誌を読んでみましたら、選手会の会長が言うには、病気の場合、たとえば内臓の病気になった場合に、尿路結石というのが出ていますけれども、余りいい例じゃないかもしれませんが、そういう内臓の病気の場合には、公傷として認められないので全部自分でお金を払っているのが多いと、こういういわゆる労働災害補償の問題。それから給料の査定の基準について不服を言えないのかどうかという問題ですね。それから食事手当。アメリカ大リーグのように食事手当というのを特につける必要はないかというような問題。いっぱいいろいろな要求なり問題があるのです。  こういう問題を私はいま一々ここで言いませんが、こういう問題は、本来、正常な労使関係であれば、労働者の団体と使用者が話し合って、その結果協約をつくって——野球協約じゃないですよ、この野球協約というのは労働協約じゃない、球団だけの約束なんです。オーナーとそれから選手会との間の協約をつくって、そうしてそれを最低基準にしていく、こういう方向を促進するように、労働省としてはやはりそういう姿勢で一つの話し合って決めていくいい慣行をプロ野球球団と選手会の間あるいは選手の団体との間につくっていくような、そういう温かい気持ちでプロ球界の人間関係、労使関係を見ていくべきじゃないのか。大きな問題として、大きな姿勢としてそういうふうに見ていくべきではないのかというふうに思うのです。細かいことはきょうはやりませんけれども、どういうふうに思われますか。
  140. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 先生が御指摘の問題の一番根底は、やはり労働者性があるかどうかというところにかかってまいるわけでございます。それについての研究の結果、そういうような労働者性があるというような方向の結論が出てくるとなりますと、これは当然労働省としてもそれについての後つながってくる諸問題をどうこなしていくか、いろいろ検討もし、また行政的にも進めていかなければならないと思いますが、前提としての労働者性がやはり問題になってまいりますが、その研究の結果を待って考えたいと思います。
  141. 内藤功

    内藤功君 そうすると、あなたは、いま労働者性を否定するという断定するものは何もないのですね。
  142. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 従来の考え方としては、これは午前中からも申し上げておりますように、一般的には請負契約的な性格の方が強いのじゃないかというふうに理解しております。
  143. 内藤功

    内藤功君 請負契約的な行為じゃない。その問題じゃないのです。民法の請負か雇用かという問題で質問しているのじゃなくて、労働者性というものを否定し去る根拠はありますか。
  144. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) その点は、先ほど来触れておりますが、使用従属関係と、それともう一つは賃金の性格がどうかと、参稼報酬が賃金に相当するのかどうかというところには、従来の新聞紙上等に報道される面からすると、むしろ賃金的性格が薄いのじゃないかという考え方でいたわけでございますけれども、ただ、御指摘のように、たとえば二軍選手の中でつまり練習台的な役割りしかしていないというような方の場合に、果たして興行的価値でもって参稼報酬が決められていくと言えるのかどうかというような問題は、なお従来の考え方からさらに一歩進めて研究すべき問題もあろうかと思っておりますので、そういう点で研究を進めていきたいと思います。
  145. 内藤功

    内藤功君 以上で終わります。
  146. 円山雅也

    ○円山雅也君 私は、プロ野球のドラフト制、そのもとにおける新人選手の法的立場に関しまして政府側の御意見を少しお尋ねしたいと思います。  まず、民事局長お尋ねをしたいと思いますが、ドラフト協約に関しての御意見を求めますけれども、寺田委員の先ほどの質問にお答えになりまして、ドラフト協約は民法九十条に違反するとかの問題はないのじゃないかと思うという答弁をなさいました。ところが、その理由なんですが、その理由が私の理解力の不足か、とうていわからないのでございます。そこで、その理由の点を追及しましてもこれは時間が足りませんので、ただ、寺田委員が御指摘になったように、何か民事局長のお考えは企業サイドにばかり立ってこの問題をお考えになっているのではないか。むしろ問題は新人選手の立場の方に立ってこれを究明すべきじゃないかというふうに私は考えるのでございます。  そこで、たとえば我妻教授なんかは、同業者が同業者間で規約をつくって制約をする場合に、それが果たしてそういう規約によって制約をすることが民法九十条に違反しないかどうかという点に関しまして、こういうことを言っておられるのです。「同業者の規約によって、その営業に従属する者の地位について協定すること、とりわけ、職工・従業員などの争奪を禁止する協定は、また別の観点から注意すべきである。けだし、ここでは、従属者の被る事実上の不利益をとくに考慮すべきだからである。」と、こういうような見解をされております。つまり、言わんとされているところは、同業者間で規約をつくることは契約自由の原則かも知らぬけれども、それによって制約をする場合には、単に同業者間における制約だけではなくて、その規約が第三者に及ぼすところの事実上の不利益までも考慮して、それが度が過ぎた場合に民法九十条でその協約は無効になる場合があるんだという御見解なんでございます。  そうしますと、このような我妻教授の見解に立ちまして、ドラフト制において新人選手がこうむる事実上の不利益というものを考えますと、たとえば新人選手には球団選択の自由が全くございません。それから球団から指名をされたときに入団を拒否すれば、結果的にはプロ野球界全体から干されてしまうという結果になる。それからさらに、現にドラフト制度が十三年になりますけれども、新人選手の約四〇%が指名されたのにもかかわらず入団を拒否している。あえてプロ野球の道を断念している。このような不利益。それに比べまして、先ほど民事局長が企業側にも合理性がある、ドラフト制度をしいた合理性があると言われていましたけれども、じゃ一体どんな合理性があるのかということになりますと、ドラフト制度がしかれた最大の目的は、当時スカウト競争が激しくなって契約金が暴騰した、これを抑えるためだということでドラフト制度が発足し、現に発足当時のドラフト制度は契約金の高を制限しました。ところが、その肝心の制限すらも昭和四十九年にはみずから撤廃をしておる。それから球団の均衡を図るのだということですが、これは新人選手の犠牲において球団の均衡を図らなくたって、他に幾らでも方法があるのではないかと考えられる。それからたとえばプロ野球の発展向上にドラフト制度が貢献するのだというような御意見もありますけれども、これは現に過日のこの法務委員会の参考人川上さんなんかは、それは逆だと、むしろドラフト制度はプロ野球の発展向上を阻害しているのだということまでも断言されている。  このような球団側の事情とそれから今度は逆に新人選手が置かれた不利益を比較考量しますと、先ほど言った我妻教授の言われるのは、まさに同業者間の規約が第三者に不利益を与え過ぎている。その点をとらえてみれば民法九十条違反の問題が十分に考えられるのではないかと思われるのですが、この点について局長の御意見をちょっとお伺いしたいと思います。
  147. 香川保一

    政府委員(香川保一君) 私はドラフト制が民法九十条に違反するというふうにきめつけるわけにはいかぬのじゃないかと申し上げましたのは、一般論として、民法の九十条というのは、御承知のとおり、公序良俗違反ということで法律関係が初めから無効になる非常に厳しいものであるわけですね。こういう公序良俗関係に違反する法律関係を無効にするという民法の考え方というのは、そういうものを法律関係として存置しておくことが秩序あるいは倫理的に許されないというふうなことだろうと思うのであります。  そういう意味から申しますと、ドラフト制というものは、私も野球のことはよく存じませんので断言的には申しかねるのでありますけれども、素人流に考えましてプロ野球というものが興行であり、球団側、選手側にとりましてもきわめて狭い一つの職場であるわけでございまして、それが興行として十分成り立つためにはいろいろそこにやはり工夫が要るだろうと思うのであります。そういうことから考えますと、やはり各球団の実力が呼応しておって試合そのものが非常に興味を引くというふうなことが第一義的に考えられると思うのであります。そういった形で興行を続けていくためにはどうしたらいいかということでまあ紆余曲折はあったでしょうけれども、今日その一つの方法としてドラフト制というふうなものが自主的にとられておる。そうなりますと、これをしも選手のある意味での自由を束縛するという観点からだけで公序良俗違反あるいは善良の風俗違反というふうに断定して果たしていいものかどうかという率直に申しまして戸惑いがあるわけでございます。  仮にそういうふうなきめつけをいたしました場合に、それじゃ後の状態はどうなるのかということを考えますと、そのことがかえって混乱を生ずることになりゃせぬかということがあるわけでございまして、細部について承りますと、いろいろこれはいかがかと思うような、まあ違法とかなんとかいうそういう法律判断を加える前の問題としまして妥当でないのじゃないかというふうな問題は当然あろうかと思うのであります。そういうのはやはり自主的に解決されるべきことでございまして、私のけさほど来申し上げましたのは、そういったことをしなくていい意味での法律的評価を申し上げたわけではないのでございまして、純法律的に考えれば、公序良俗違反というふうに解釈することが果たして結果的にいいのかどうかと、そういう意味で非常に疑問があることから断定はできないのではないかと、かように申し上げた次第でございます。
  148. 円山雅也

    ○円山雅也君 私もそれが民法九十条で違法無効であるということをもって直ちにそれがドラフト制を否定してしまう、つまり現実のドラフト制をだからつぶせというような論理を発展させるつもりは毛頭ありません。ただ、少なくとも野球機構関係者がドラフト制は合法なんだ合法なんだとにしきの御旗のように担ぎ回って、反省の余地を——つまり逆に自分たちの球団利益を守る材料のにしきの御旗にしかねない。だから、ドラフト制を改善するかどうかはもちろん球団自身の自発的なお力によると思うのですけれども、ただ、法的解釈が逆な意味で、つまりドラフト制を守るというよりも球団機構の便宜のためのにしきの御旗に利用されるならば、やはり一応この段階でははっきり法的な見解をきちっと決めて、それを球団側に資料として与えて、さてこれに基づいて判断をすべきではないか、改善を図るべきではないかという資料にすべきだという意味で一応の法的な問題を取り上げておるのでございまして、それを決して球団側に押しつけるとかというような意図で取り上げておるのではないのでありまして、その点では局長と同じでございます。  時間がございませんので、次は人権擁護局長お尋ねをしたいと思います。  昭和四十二年の十二月二十二日衆議院の法務委員会でもって、一応当時の人権擁護局長がドラフト制については憲法の職業選択の自由に反しないのだという御見解を打ち出されました。それから約十年現在たっております。先ほどから申し上げましたとおり、ドラフト制成立の最大の原因となった契約金暴騰の抑制という点、それのまさに契約金を抑えたドラフト制の規約自体は四十九年になくなりました。それからさらに、先ほどから申し上げているとおり、十三年の実績に基づいて新人選手に加えられたまあ大げさな意味では犠牲と申しますか結果と申しますか、いろいろな実情も積み重ねられてまいりました。そういう事情の変化とか、それから制度自体の変化とか、そういうものを今度は加味した上で、人権擁護局長としては、現在のドラフト制及び新人選手の置かれた立場につきまして、なお昭和四十二年の人権擁護局長の回答と同じ御見解でございましょうか、その点をまず承りたいと思います。
  149. 鬼塚賢太郎

    政府委員鬼塚賢太郎君) 以前に、国会で、当時の人権擁護局長が、人身売買の点とそれから憲法に定める職業選択の自由の保障に反するかどうかでこれについて御説明した法律的な、純法律的なと申しましょうか、その見解については、私いま現在これを特に改めるべき点というのは見出しておらないのでございますけれども、ただ、前回の答弁の内容を見ますと、一番最後にこういうところがございますね。ちょっと読み上げますが、ドラフト制が実施されるに至った社会的背景、すなわち契約金の暴騰防止、それから球団間の格差を是正してプロ野球の資質を向上させ、その健全な発展を期し得られるという利益を考えると、右制度は、採用前に比較して、新人選手に対して不利益な結果をもたらすことがあるにしてもやむを得ないものであるという趣旨でございます。この点は多少私の考えは違います。これはやはりプロ野球実態をよく知っている者でないとにわかに断定できないことでございますので、もしここに以前の局長がおっしゃったこういうことが事実であるということであるならば私はこのとおりでよろしいのじゃないかと思いますが、やはりその後の十年間の経過を見ていますと、いろいろその点問題点が出ているのではなかろうかと、これはごく浅い知識でございますが、午前中にも申し上げましたように感想として持っているわけでございます。そういたしますと、やはりやむを得ないというような評価はちょっと問題ではなかろうか。確かに、球団側からいたしますればこれはあるいは問題ないのかもしれませんが、新人選手側の立場から見ますとそこにいろいろ非常に強い拘束を感じているところがあるとすれば、もし改善ができるならばそれにこしたことはないのではないかと考えるわけでございます。ただ、これはプロ野球実態をよく観察し、また知識を持った上でないと判断が非常にむずかしいことだと思いますので、そういう意味で、午前中私も大臣も申し上げましたように、まずこれはプロ野球界が自主的に改善を図るべきではないだろうかというふうに申し上げたわけでございます。
  150. 円山雅也

    ○円山雅也君 その当時の議事録が私の手元にもございますので、その前の理由ですが、たとえばドラフト制をしいたところで「このことは、この新人選手がプロ野球の選手となることまでをも否定しておるものではないのであります。」というのも理由になっております。その直前の理由ですけれどもね。ところが、結果的には、指名されて入団拒否すると一年間はプロ入りができぬ。じゃ食えないから社会人野球へ入れば、原則として二年間はプロ野球へ入っちゃいかぬ。それから高校生の場合は三年間入っちゃいかぬ。それから一年入りたい球団を待っていたって、その次に指名されるかわからぬ。下手をすると、最悪の場合、新人選手は自分の好む球団に入りたくても永久に入れないかもしれないし、ということは永久にプロ野球自体からもほされてしまうという結果になりまして、必ずしもこの当時の局長の回答のように新人選手がプロ野球の選手となることまでをも否定しておるのではないとは断言できないと思うのでございますね。こんな意味でちょっとこの辺の回答もかなりラフじゃなかったかと思うのでございます。  ところが、これもまた球団、野球機構側にとっては、すでにこのドラフト問題は法務委員会でもって、国会の最高の場でもって合法と折り紙がついているのだと、憲法違反でないと折り紙がついているのだというにしきの御旗に利用されて、改善とか何とかの反省材料に少しもしようとされないし、逆に改善を阻止する材料にされるということで、ちょっとお尋ねもしたし、疑問にも取り上げたかったわけでございます。  次に、最後に大臣にお伺いいたします。  先ほど、山本委員の質問に対して、大臣は、ドラフト制が人権問題とか職業選択の自由に触れるとかの考えは少し早計であると、そのような考えは早計であるというふうなお答えをされました。私は、これは法理論的に触れるのではないか、これはいろいろ異論がございますけれども私個人の見解としては触れるのではないかという疑念を持ったわけです。ところが、大臣と同様にやはり早計にそんなことを考えちゃいけないというので、このドラフト制について、法律学者が少しこの問題を正面から取り上げて論じていないかというのでいろいろ文献をあさりました。そうしましたら、ことしに入っただけで二つ、法律学者がこの問題について正面から取り上げて小論を発表されております。一つは「中央公論」、一つは「ジュリスト」です。ところが、取り上げました二人の学者とも、職業選択、契約自由とか、それから人権問題とかについて非常に法的な疑義があるし、これは真剣に検討すべき問題であると、たまたま二つあった小論のうち二つの学者が二人ともそういうふうな御意見を出している。となりますと、大臣が先ほど違反というふうに考えるのは早計であるというふうにおっしゃいましたけれども、早計であるという大臣の御発言の方がむしろ早計ではないのかというふうに私は思うのでございますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  151. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) 先ほどもお答えしたときに申し上げたわけでありますが、私がプロ野球界の実情をよく知らないわけですね。それはそういう議論でなしに、私はいろいろお話を聞いたり新聞記事を見たりして関心は持っておるわけですが、直ちにこれが憲法違反だというようなことはちょっと私も簡単に断定できないと。ただしかし、こういうことを、これはまあ非常なラフな見解です、一つの常識人として、私が常識人かどうか知りませんけれども、常識人という立場で考えても、理屈でなしに、なるほどドラフト制度がしかれておりますが、しくだけの理由があってやられたようでございます。しかし、その反面、最近起こりましたように、非常に素質のある若い将来有望とされておる人がなかなかその素質を生かす機会がなくなった。いま円山さんもそういうことを例に引かれましたが、そういう事態を必ずしも好ましいものではないと私は常識的に考えて、しかし、これはまあそんなことはできるのかどうかわかりませんけれども、せっかくの素質がある若いこれからという人が、何かやはりそういう素質を生かすようなことを球団でも考えられる知恵が出るのじゃないかという気がするわけです。だから、ドラフトで指名する、多少選択の余地があるような幅の指名ができないものか。これを自由にすると、またもとのもくあみになるおそれもあるという感じがするのですが、ドラフト制度をしいたのには一つの理由がある。またそれも一面の効果があったと思います、いろいろな面で。しかし、それだけでいいのかどうか。  重ねて申し上げますが、プ野球界に入ろうという素質のある青年なら、多少の選択の幅を持たせるぐらいの、それがドラフト制に当たるのかどうかしれませんけれども、そういう意味のいまのドラフト制の考え方ができないものであろうかと。まあそんなことができるかどうかしれませんけれども、ただ考えますのは、一、二位ぐらいまでには選択の幅を持たしたらどうか、あるいは三位でもいいですけれども、つまり二回目のときにはもう選択の自由を認めてもいいのじゃないか。こういう工夫の余地があるのじゃないか。なるほど球界だけのことを考えれば結構な制度になっておるかもしれませんが、せっかく野球に素質を持っておってプロ野球界で活動してみたいというその相手方の立場ももう少し考えてみて研究してもらったらどうかと。詳しいことを知らないでおるわけでございますが、いろいろ御意見なり制度等を見ておりまして、多少選択の自由を与える方が一般社会の考え方としていいのじゃないかという気がしておることを申し上げておきます。
  152. 円山雅也

    ○円山雅也君 新人選手のお立場も考えていただいて、大変ありがとうございました。  最後に、これは御質問というよりも政府関係者への私からの要望でございますけれども、学者や専門家の間にも意見が分かれるほどに法律的にはむずかしい問題だろうと思います。ですから、私見にせよ、一応にせよ、断定的な見解を政府側のお立場に立つ方が出されますと、これがもう野球機構側にとってはにしきの御旗になりまして、結果が逆に改善を阻害する、妨げる効果に働くのではないか。現に寺田委員も御指摘になっておりますし、また学者の中にも再検討をするべき重要な問題だと言っておりますので、ぜひひとつこの際、従来の御見解について真剣な再検討を加えていただきたいというふうに思います。  終わります。
  153. 江田五月

    ○江田五月君 ドラフト制がずっと議論になっておりますものですから、最初に多少大臣にドラフト制についてお伺いいたしますが、いまの円山委員の御質問にお答えになって、多少選択の自由があった方がいいのではないかというお答えをされたわけですが、その前には、プロ野球界で自主的に解決すべき問題であるという趣旨のお答えもあるわけで、私は将来性のある者が能力を生かせなくなっている事実があるかどうかということもそう軽々には判断できない。あるいはひょっとしたら能力を生かせないようになったのは本人のわがままであるかもしれないわけで、そのあたりはそう簡単には言えない。どうも、日本では、法務大臣がこう言ったからこうだというようなことが、まあ大臣の権威が重視されるのは結構ですが、ちょっとそういう行き過ぎの気味があるので、大臣として選択の自由がちょっとあった方がいいのではないかという発言をされたら、それを種にいろいろな改革が何らか心理的に強制されるというようなことがあってはいかぬのだというふうに大臣はお考えじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  154. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) たびたび申し上げておりますが、完全な素人で、そういう意味で、常識が私にあるか、常識人であるかどうかわからぬけれども、こういういろいろの御意見がありますときに、これはどうして調和を図るかということです。やはり両方の立場を考えて調和の範囲をどう考えるか、ただ一つの私の思いつき的なことを言ったので、ドラフト制そのものにも意味があるように思うのです。しかし、そうかといってそれだけの意味でいいのであろうか。やっぱり、球界は、素質がある若い野球人をどんどん育てていって球界の発展を図られるというのが一つの目標であろうと思うのです。そういう意味で、その方も多少調和を図って生かす道を考える必要があるのじゃないかと、こういうふうに言っておるわけで、これがそうしなさいとかなんとかいう立場ではございません。あえて聞かれますものですから、何も言いませんじゃいかぬと思いますので言っておるわけでございます。
  155. 江田五月

    ○江田五月君 さらに、ドラフト制はプロ野球界の中で自主的に解決すべきことであるというお話なんですけれども、午前中にドラフト制についていろいろな各委員からのお話があった際に、単にドラフト制だけの問題ではなくて、プロ野球界全体について、まあ経営の方は余りありませんでしたが、選手の処遇、待遇の問題なんかについていろいろな話があったわけで、ある意味ではドラフト制が関係している選手というのは、いまの制度が完全に動いたとしても七十二人しかないわけで、プロ野球の選手のうちのいわばスター的な存在になっている人だけではないだろうかと思うのですが、そういうところには世間の関心もありますけれども、そのほかにも大ぜいの選手が実はいるのだろうと思うのです。ドラフトに関係なく各球団で採用している選手というのはたくさんいるはずでありまして、そういうところの人々状況というのはそれほど世間の関心を集めていない。いま選手契約請負契約雇用契約かというような問題もありましたが、そういうスター的な選手の場合には請負契約的な要素は確かにかなりあろうと思いますが、本当に単純な労務の提供というような選手がまあぼくもよく知らないのですがいるのではないかというような気もするので、そういったいわば下積みの選手の実情というのがどうであるかということは、これはやはり人権擁護局なり労働基準監督署なりの何といいますか権限の範囲に入ってくる問題があるかもしれないので、プロ野球界の自主性に任せるというだけでは済まない問題があろうか。もちろんそういう問題がないかもしれないのですが、プロ野球界の自主性で解決せよということは、そういうところまでも意味しているわけではないのだというふうに思いますが、いかがですか。
  156. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) 素人の私にいろいろ聞かれるものですから、まあわれわれの目につくのはスター的な選手だけですけれども、芝居をやりますにも、やはり主役もあれば馬の足までおらなければ全体の芝居はできない。六球団・六球団、十二球団、しかもプロ野球機構まであるのですから、いろいろな立場で全体が動くようになっておるのだということ。でありますから、そういう目のつかないところ、さっき申し上げましたように、言葉は適切でないかもしれませんけれども、非常に国民の目には映っておりますけれども、全体の姿というものは一種の閉鎖社会みたいなかっこうになる。でありますから、その間にいまいろいろ寺田さんからも問題点を御指摘になりました。私はそういうことはよくわからなかったですけれども傾聴しておったわけです。そういう問題点があると世間から言われる。それが事実かどうかは別問題として、とにかくそういう問題点を指摘される。そういう場合には、さっき申し上げましたように、国民から非常に親しまれておる、国民の野球と言われるくらい今日なっておりますから、やはり国民に歓迎される、ただ王選手が八百号打つだけの問題じゃなくて、全体の運営といいますか、組織というのですか、待遇といいますか、やはりそういう意味で球界でも検討される方が適当じゃないかと、これはこちらから干渉すべき問題じゃないわけですから、世間でいろいろ指摘されるところは反省もし、国民から余り問題にされないような球団にだんだん改革をしていかれることが適当じゃないかということを申し上げておるわけでございます。
  157. 江田五月

    ○江田五月君 プロ野球の問題はその程度にして、午前中に法秩序の維持のことに関係いたしまして、大臣は、国民の心が非常に乱れてきたというか、すさんできたというか、そういった問題をお取り上げになって、それから刑事訴訟法の特例法の方向に話が発展いたしたのですけれども、その国民の心のすさんできていることということに関して、一方で制度を非常に厳しくしていくという方向もそれはあるかもしれませんが、私はどうも必ずしも妥当ではないのじゃないかと思いますが、それと別に、まあいわば北風と太陽の話じゃありませんが、やはり太陽の方で犯罪被害者補償制度の関係の問題というのも特例法と負けず劣らず非常に重要な問題で緊急の問題ではないかと思います。  犯罪被害者補償関係のことについて少しお尋ねをいたしたいと思います。先ほど宮崎委員の方から質問もございましたが、昭和五十年二月十二日の衆議院の法務委員会で、当時の稻葉法務大臣が、この犯罪被害者補償関係の立法を持っていないのは文明国の名に恥じるという気持ちであるというようなお答えであったわけです。その後、すでに三年を経過しておりまして、いま鋭意準備中であるということなんですが、準備の具体的な内容は、余りそう具体的に細かくは要らないのですけれども、たとえば、遡及の問題であるとか、額の問題であるとか、求償の問題であるとか、いろいろありますが、そういうことについて質問をしますと、そうすると、こういう考え方もああいう考え方もというのじゃなくて、法務省としてはこういう方向で検討しているというようなところまで見解を示される程度にまで準備は進んでおるのでしょうか、大臣、おわかりになったら……。
  158. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) 作業の状態については刑事局長からお答えをさせますが、心の問題を言われましたから、それから刑罰といいますか、そういう締め方を強化することがいいのかどうか。私は、実は、法治国家というものは、心の乱れがなければ法律は要らないと根本的に考えておる。最近のこれは私の感想でございますが、見ておりますと、余りにも経済が発展し、生活が豊かになり、何となく物だけに執着して物質を追いかけることに非常に熱中する社会になってきておる。一面、相手の立場を考えるという社会共同連帯の精神がだんだん薄れてきておる。そこに人の立場を認めないということから、いわゆる犯罪なども起こってくる、こういうことを憂えておるということでございます。これは刑罰だけで賄えるものじゃもちろんありません。しかし、そういう事態が起これば、やはり責任を問うだけの刑罰は備えなければならない。そういう意味でこの法も備えなければなりませんが、これは少し余談になりましたけれども、教育から全部にかかわる問題でありますから、そう簡単でありませんけれども、ここら辺で日本民族がもう少し反省する時期に来ておると、私はそういう立場であらゆる問題を考えておるつもりでございます。  そこで、犯罪被害者補償法もやはりそういう意味で、社会連帯といいますか、心の問題で考えなきゃいけない。これも余談になりますけれども、最近の薬害、新しい物をつくる場合にその結果として人々にあらゆる損害をこうむらせる、これも私は心の乱れだと思います。相手の立場を考えないで、余りに利益追求になるというところに問題がある、こういうふうに考えておる。これもまたむずかしい問題で、きょうはその問題じゃありませんからこれ以上申し上げませんが、そういう前提に立って犯罪被害者補償法を考えると、こういうことでございまして、作業の状態は刑事局長から申し上げることにいたします。
  159. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 先ほどのお尋ねに率直にお答えいたしますれば、大体の準備はできております。要するに、最も理想的な案というものをまずこさえております。しかしながら、先ほども申し上げましたように、財政事情からこれを一挙に実施することはできない。ですから、どの程度の範囲にしぼっていくかと、そういうことをいま検討しておるわけです。
  160. 江田五月

    ○江田五月君 いま大臣の方から犯罪被害者補償制度の根本に触れるお話をいただいたわけですけれども、私が口幅ったく申し上げるまでもないと思いますが、もちろん私たちの社会というのはいろいろな制度の複合ででき上がっておるわけで、どの制度もそれ一つだけで単独ではうまく機能するわけではない。犯罪の処罰に関しては刑事司法とそれに続く行刑の制度があります。そういう刑事司法と行刑というのを国家が独占して、死刑といいますかリンチは禁止されているわけで、これはもちろんそれ自体としては近代国家の望ましい制度なんですが、反面、いままでお話にあるような刑罰刑の国家による独占によって被害者側の人が非常につらい思いをしているという事実もまたあるわけです。あるいはまた、いま精神障害の人々の治療として社会内処遇というようなことが非常に必要とされているとか、あるいは、非行少年はもとより、一般の刑事犯の犯人の場合にも、可能な限り収容処遇を避けて社会内で処遇していくというような開放施設の採用等も叫ばれているわけで、こうしたことは社会の進歩の一つ方向であることは言うまでもないと思うのですが、同時に、こういうことによっていわれない人身被害者の出ることもまたあるわけであります。社会全体としてそうしたいわれのない不合理な人身被害者が出ることも覚悟の上で一つの制度を採用していかなきゃならないだろう。篤志家による非行少年の保護施設で、その篤志家が、保護のもとにいる少年によって殺害されるというような事件がしばらく前に起きましたけれども、私たちは、そういう篤志家ほどではないとしても、社会全体として、やっぱりある一つの制度を採用するには何らかの覚悟の上で採用していかなければならない。その場合に、そうした刑事司法の制度、あるいは行刑の制度、非行少年の処遇の制度、精神障害の人の治療のいろいろな方法、そういうものを採用する場合に忘れてならないことは、一方で大きな利益の達成のためにそうした制度をとっておいて、他方で今度そういう利益の実現の陰でそのために大きな損害をこうむった人がいるのだという、その事実であります。社会がこうした人々のつらさと悲しさに対して同情の気持ちを持つということを忘れてはいけない。同情というのは、かわいそうだということでなくて、気持ちを同じくしていくということだろうと思います。少年保護の篤志家の死が自業自得だとするようないまの社会であってはならない。私は裁判官当時に多少事件をいろいろ扱いましたが、そういう場合に加害者は人を殺し得ということなのかと被害者の人に本当にしつこく食い下がられるケースというのは何度もあったわけで、その都度、いまの制度はこうこうこういう合理的な制度なんだと説明しても、やはりそれはある意味ではむなしい説明であったと思います。先日、「中央公論」三月号の佐藤秀郎という人の文章がありまして、これを涙して読みましたけれども、そういう方向、本当に真剣に犯罪被害者の救済の立法というのに取り組んでいただきたい。大臣の所信表明は本当に一行半程度しかないので、まあこれは決して真剣でないことを意味しているわけじゃないと思いますが、取り組んでいっていただきたいと思います。  もう一度言いますが、社会はいろいろな制度の複合で相補いながら全体としてうまく機能していくように調整をしていくべきものなんで、いま犯罪被害者の救済の制度がないというのは、刑事司法と行刑についての制度を補完すべき一つの不可欠な制度が欠けているということであろうと思う。これはどうも社会に道徳性といいますか徳性が欠けているということだろうと思います。野党の方から減税が叫ばれておりますけれども、私はいまの国家が本当に国民の気持ちと心を同じくして精神的充実感を国民の一人一人に与えられるようなことをやれば、国民は応分の責任を果たす用意は十分にあると思うのです。技術的な細かなことは別といたしまして、私よりもずっと法曹としても人生の経験の上でも先輩に当たられる大臣に、その基本的な覚悟といいますか所見を承っておきたいと思います。
  161. 瀬戸山三男

    ○国務大臣(瀬戸山三男君) 全体的な考え方としてはいま江田さんがおっしゃったとおりだと思います。ただ、世の中というものはなかなか理想的にいかないところがお互い悩みである。私は心の問題をこういうところで申し上げて恐縮ですけれども、それをあえて言うのはそういう前提のあってのことでございますが、被害者補償法については、一行書いてあったかどうかはいま記憶にありませんが、決してこれはないがしろに軽く考えておる問題じゃありません。足らざるところを補って全体の社会が円満にいけるようにしようという考え方に立っておりますから、いま鋭意努力をしておる、こういうことでございます。
  162. 江田五月

    ○江田五月君 どうもありがとうございました。
  163. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時二十五分散会      —————・—————