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1978-02-16 第84回国会 参議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月十六日(木曜日)    午前十時開会     —————————————    委員異動  十二月二十日     辞任         補欠選任      佐藤 昭夫君     宮本 顕治君  十二月二十一日     辞任         補欠選任      亀井 久興君     岩上 妙子君      岩崎 純三君     熊谷太三郎君      坂野 重信君     丸茂 重貞君      成相 善十君     大石 武一君  同日   委員岩上妙子君は議員を辞職した。  十二月二十二日     辞任         補欠選任      吉田忠三郎君     秋山 長造君      片岡 勝治君     阿具根 登君  一月二十日     辞任         補欠選任      安永 英雄君     松本 英一君  一月二十一日     辞任         補欠選任      松本 英一君     小谷  守君  一月三十日     辞任         補欠選任      山本 富雄君     園田 清充君  一月三十一日     辞任         補欠選任      園田 清充君     山本 富雄君  二月八日     辞任         補欠選任      橋本  敦君     内藤  功君  二月十日    辞任          補欠選任      内藤  功君     橋本  敦君  二月十四日     辞任         補欠選任      藤川 一秋君     戸塚 進也君      宮崎 正義君     原田  立君      橋本  敦君     内藤  功君  二月十五日     辞任         補欠選任      戸塚 進也君     藤川 一秋君      原田  立君     白木義一郎君      宮本 顕治君     沓脱タケ子君  二月十六日     辞任         補欠選任      阿具根 登君     浜本 万三君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         中尾 辰義君     理 事                 八木 一郎君                 山本 富雄君                 寺田 熊雄君                 白木義一郎君     委 員                 大石 武一君                 高橋 誉冨君                 初村滝一郎君                 藤川 一秋君                 丸茂 重貞君                 秋山 長造君                 小谷  守君                 浜本 万三君                 内藤  功君                 沓脱タケ子君                 円山 雅也君                 江田 五月君    委員以外の議員        議     員  下村  泰君    国務大臣        法 務 大 臣  瀬戸山三男君    政府委員        法務政務次官   青木 正久君        法務大臣官房長  前田  宏君        法務大臣官房会        計課長      石山  陽君        法務省人権擁護        局長       鬼塚賢太郎君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局第一        課長       早川 義郎君        最高裁判所事務        総局経理局長   草場 良八君        最高裁判所事務        総局経理局総務        課長       上田 豊三君        最高裁判所事務        総局経理局主計        課長       仁田 陸郎君    事務局側        常任委員会専門        員        奥村 俊光君    参考人        プロ野球コミッ        ショナー事務局        長        井原  宏君        元プロ野球選手  荒川  堯君        野球評論家    川上 哲治君        セントラル野球        連盟会長     鈴木 龍二君        パシフィック野        球連盟理事    三原  脩君     —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (法務行政基本方針に関する件)  (昭和五十三年度法務省及び裁判所関係予算に  関する件)  (プロ野球ドラフト制度に関する件)     —————————————
  2. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  宮崎正義君、橋本敦君、宮本顕治君が委員辞任され、白木義一郎君、内藤功君、沓脱タケ子君が委員選任されました。     —————————————
  3. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、現在理事が二名欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事山本富雄君及び白木義一郎君を指名いたします。     —————————————
  5. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  検察及び裁判運営等に関する調査のうち、プロ野球ドラフト制度に関する件の調査のため、本日、参考人としてプロ野球コミッショナー事務局長井原宏君、元プロ野球選手荒川堯君野球評論家川上哲治君、セントラル野球連盟会長鈴木龍二君、パシフィック野球連盟理事三原脩君の出席を求め、意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 検察及び裁判運営等に関する調査を議題といたします。  法務行政基本方針について瀬戸山法務大臣からその所信を聴取いたします。瀬戸山法務大臣
  8. 瀬戸山三男

    国務大臣瀬戸山三男君) 委員各位には、平素から法務行政運営につき、格別の御尽力をいただき、厚く御礼申し上げます。  この機会に、法務行政に関する私の所信一端を申し述べ、委員各位の深い御理解と特段の御協力を賜りたいと存じます。  昨年十月、当委員会において就任のごあいさつをいたしました際にも申し述べたところでございますが、私は、法務行政の使命は、法秩序維持国民権利保全にあると考えております。特に、内外の諸情勢がきわめて厳しいこの時期において、民主主義を守り、国民生活の安定を確保するためには、その根底をなす法秩序が揺るぎなく維持され、国民権利がよく保全されていることが何よりも肝要であると存じます。私は、今後ともこのことを念頭に置き、全力を挙げて国民の期待する法務行政推進に努める所存であります。  以下、私が考えております当面の重要施策について申し述べます。  第一に、法秩序維持についてであります。  最近の一般犯罪情勢は、一応平穏に推移していると申せるかと存じますが、覚せい剤事犯暴力団関係者による各種犯罪が多発しているほか、いわゆる動機なき殺人事件等凶悪事犯が相次ぐなど、人命軽視暴力依存の風潮が一部にうかがわれるのでありまして、今後の推移には必ずしも楽観を許さないものがあると存じます。  また、当面最も警戒を要するのは、過激派各派動向であり、国内においては、新東京国際空港開港阻止闘争狭山事件に関する最高裁決定に対する抗議行動等に見られるように、火炎びん時限式発火装置を使用して関係施設等に対する襲撃を繰り返しているほか、いわゆる内ゲバ事件の発生も後を絶たず、また、国外においても、いわゆる日本赤軍中心として、きわめて重大な犯罪行動を反覆敢行しております。特に、先般のダッカ日航機ハイジャック事件において、最も凶暴な爆弾事件等犯人のみならず、殺人強盗等重大刑事事件犯人をも釈放せざるを得ないという最悪の事態に立ち至ったことはいまだ記憶に新たなところでありまして、新たな要員を得た日本赤軍が再びこの種の国際的テロ事犯を敢行するおそれも多分にあり、その再発防止対策が当面の急務であることは申すまでもありません。また、かかる過激派各派不法越軌行動は、いわゆるバスジャック等模倣事犯を誘発するばかりでなく、一般国民の間に法に対する無力感を生むおそれなしとしないのでありますから、私は、このような情勢に対処するため、関係諸機関との緊密な連絡協調のもとに、検察体制整備充実して厳正な検察権の行使に遺憾なきを期し、もって法秩序維持に努めてまいる所存であります。  一方、立法の面について申しますと、まず、ハイジャック防止対策につきましては、政府は、さき日航機ハイジャック事件契機に、ハイジャック等人道的暴力防止対策本部を設置し、この種事件防止策推進に努めているところであり、その一環として、過般の臨時国会において航空機強取等防止対策強化するための関係法律の一部を改正する法律案可決成立を見たのでありますが、さらに、この種事犯再発防止を図る見地から、航空機の強取以外の態様による悪質危険な人質強要行為処罰規定を新設するとともに、航空機の強取等による場合を含め、この種の強要行為を行った犯人人質を殺害したときは死刑または無期懲役をもって臨むことを内容とする法律案並びに一部の過激派等による刑事事件訴訟遅延を防止する見地から、刑事事件公判の開廷についての特例を定める法律案を今国会に提出すべく、目下所要作業を進めております。  なお、この際、右の特例法案について付言いたしますと、御承知のように、現行刑事訴訟法のもとにおいて、弁護人がなければ開廷することができないこととされている事件のうち、いわゆる連合赤軍事件連続企業爆破事件のような一部の事件について、弁護人がいわゆる法廷闘争戦術として、正当な理由がなく公判期日に出頭せず、裁判長の許可を受けないで退廷し、あるいは法廷秩序を乱して裁判長から退廷を命ぜられ、さらには、訴訟を遅延させる目的辞任するなどしたため、当該公判期日に予定されていた審理が行えないのはもちろん、その後の手続の進行が阻止されるという事態が生じており、これが訴訟手続を著しく遅延させている実情にあります。そこで、右のような異常な事態に対処するための当面の特例的措置を定める必要があるとの観点からこのような法律案を本国会に提出すべく準備いたしている次第であります。  また、犯罪国際化が著しい最近の諸情勢に対応するため、各国との間に逃亡犯罪人引渡条約を締結することが望ましいと考えておりますが、さしあたり、日米犯罪人引渡条約について引き渡し犯罪範囲拡大中心とした早急な改正を行うため、外務当局協力して日米交渉を行った結果、すでに大筋の合意を見ておりますので、近く正式調印運びとなるものと期待しており、同条約改正に伴い、逃亡犯罪人引渡法所要改正を加える必要がありますので、改正条約承認案件国会提出に合わせて、同法の一部改正法案を提出すべく準備中であります。  このほか、最近における経済事情変動等にかんがみ、刑事補償法における補償基準日額引き上げ内容とする同法の改正についても作業を進めているところであります。  なお、刑法全面改正につきましては、目下、事務当局において政府原案作成のための作業を進めておりますが、刑法は、国の最も重要な基本法の一つでありますから、国民各層意見をも考慮しながら、真に時代要請に適応した新しい刑法典を実現すべく、引き続き努力いたしていきたいと考えております。そのほか、少年法改正及び犯罪被害者補償制度立法化についても、事務当局において鋭意所要作業を行っているところであります。  第二は、犯罪者及び非行少年に対する矯正及び更生保護行政充実についてであります。  犯罪者及び非行少年改善更生につきましては、刑務所少年院等における施設内処遇を一層充実強化するとともに、これと実社会における施設外処遇とを有機的に連携させることに努め、その効果を高めてまいる所存であります。  そのためには、まず矯正処遇の実態について広く国民理解を得て良識ある世論を反映し、時代要請に即応し得る有効適切な矯正処遇の実現に努力を払ってまいりたいと存じます。  なお、監獄法改正作業につきましては、目下、法制審議会監獄法改正部会において審議が行われておりますが、同審議会答申を得た後、できる限り速やかに改正法案国会に提出いたしたいと考えております。  一方、社会内処遇におきましては、保護観察官保護司等民間篤志家との協働体制を一層強化し、犯罪者等社会への受け入れ態勢を十分整えるとともに、処遇方法を多様化して適宜適切な保護観察を行い、その改善更生の実を上げるよう努める所存であります。  第三は、民事行政事務等充実についてであります。  民事行政事務は、登記事務を初めとして量的に逐年増大し、また、質的にも複雑多様化傾向にあります。これに対処するため、かねてから種々の方策を講じてきたところでありますが、今後とも職員増員を初めとして、組織、機構の合理化事務処理能率化省力化等に意を注ぎ、適正迅速な事務処理体制の確立を図り、国民権利保全行政サービスの向上に努めてまいる所存であります。  また、民事関係立法につきましては、強制執行及び競売手続改善につき、昨年二月に法制審議会から現行強制執行法及び競売法を統合する新しい民事執行法案要綱答申を受けましたので、今国会法案を提出すべく、目下立案作業を進めており、債権担保目的とする代物弁済予約等に基づく仮登記効力等に関する立法につきましても、法制審議会において最高裁判所の判例の動向を踏まえて最終的な結論が得られる段階に達しましたので、その結論を得た上、速やかに法案を作成し、今国会に提出いたしたいと考えております。  なお、国家試験制度採用等に関する司法書士法の一部改正につきましても、鋭意検討中であり、できるだけ早く成案を得て国会の御審議を煩わしたい考えであります。  次に、人権擁護につきましては、国民の間に広く人権尊重の思想が普及徹底するよう、法務省としては、人権相談人権侵犯事件処理、その他の一般啓発活動等を通じ、今後とも一層の努力を重ねる所存であり、いわゆる差別事象の解消についても、関係省庁等と一層密接な連携をとりながら、積極的な啓発活動を続けてまいりたいと存じます。また、これと関連して、国際人権規約批准が問題となっておりますが、法務省としては、その趣旨、目的に照らし、早期批准が望ましいと考えております。  次に、訟務行政充実についてでありますが、国の利害関係のある争訟事件は、近時の社会情勢等を反映して、その質的変化が著しく、ますます複雑困難の度を加えておりますので、今後とも事務処理体制整備充実を図り、この種事件の適正円滑な処理に遺憾のないよう努めてまいりたいと存じます。  第四は、出入国管理行政についてであります。  交通手段の発達や外国旅行一般化等による国際交流拡大に伴って、外国人出入国やわが国民出帰国は、ともに依然として増加傾向にあり、また、外国人在留活動が多様化するなど、出入国管理及び外国人在留管理に関する業務はいよいよ複雑、困難の度を加えるに至っております。  法務省といたしましては、当面現行法令の運用の範囲内で手続合理化事務処理能率化等に努め、このような情況に対処してまいる所存でありますが、他方、昨今のハイジャック事件等契機として、国際的に出入国管理の厳正な運営要請されている上、本年三月末には千葉県成田市に新東京国際空港が開港する運びとなっているなど、出入国管理業務はさらにその重要性を増し、業務量も増大するものと考えられますので、これらの諸情勢に即応した出入国管理行政の適正円滑な運営に努めてまいる所存であります。  最後に、法務省施設整備について申し上げます。  現在、法務省が所管している施設の数は約二千八百庁に達し、その延べ面積は全官庁庁舎延べ面積の約三〇%を占めておりますが、老朽狭隘等により早急に整備を要する施設が少なくない実情にあります。  法務省といたしましては、事務処理適正化職員執務環境改善を図るため、特に法務局及び地方法務局の支局、出張所及び検察庁の支部、区検など中小規模老朽狭隘施設を五カ年で整備する計画を策定し、昨年来逐次実施してまいっておりますが、昭和五十三年度には、新たに、刑務所等収容施設のうち老朽の著しい施設についても、その整備を進めたいと考えております、  以上、法務行政の当面の重点施策について所信一端を申し述べましたが、その他の諸問題につきましても、委員各位の御協力、御支援を得まして、その解決に努力する所存でありますので、どうかよろしくお願い申し上げます。     —————————————
  9. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 次に、昭和五十三年度法務省及び裁判所関係予算について説明を聴取いたします。石山法務大臣官房会計課長
  10. 石山陽

    政府委員石山陽君) 昭和五十三年度法務省所管予算内容について、概要を御説明申し上げます。  昭和五十三年度の予定経費要求額は三千七億一千九百九十六万九千円でありまして、これを前年度予算額二千七百七十七億三千六百三十七万八千円と比較いたしますと、二百二十九億八千三百五十九万一千円の増額となっております。  増額分内訳を大別いたしますと、人件費百七十四億六千二百四十七万九千円、一般事務費三十七億八千六百七十万三千円、営繕施設費十七億三千四百四十万九千円となっております。  まず、増員について申し上げますと、第一に、検察庁において事務官九十五人が増員となっております。その内容は、まず、特殊事件処理円滑適正化を図るため十五人が増員となっておりますほか、財務経済交通公安労働公害等事件処理体制充実するため並びに公判審理適正迅速化を図るため、合わせて八十人の増員となっております。  第二に、法務局において事務官二百十人が増員となっております。その内容は、まず、登記事務の適正迅速な処理を図るため、百九十二人が増員となっておりますほか、国の利害関係のある争訟事件処理充実するため十五人、人権侵犯事件等に対処するため三人が、それぞれ増員となっております。  第三に、刑務所における保安体制充実を図るため、看守等四十八人、医療体制充実するため、看護士(婦)十二人が増員となっております。  第四に、非行青少年対策充実するため、関係職員二十一人が増員となっております。その内容は、少年鑑別所観護体制充実のため、教官七人、保護観察所面接処遇強化のため、保護観察官十四人であります。  第五に、出入国審査業務等適正迅速化を図るため、地方入国管理官署において、入国審査官十七人、入国警備官七人が増員となっております。  第六に、破壊活動調査機能充実するため、公安調査官十六人が増員となっております。  第七に、国際犯罪対策室を設置すること等に伴い、法務本省事務官四人が増員となっております。  増員内容は以上のとおりでありますが、御承知のとおり、昭和五十一年八月の閣議決定に基づく「昭和五十二年度以降の定員管理計画の実施について」による昭和五十三年度定員削減分として、三百三十五人が減員されることになりますので、差し引き九十五人の定員増加となるわけであります。  他方昭和五十三年度においては、沖繩特別措置法に基づく定員十五人が減員されることとなっております。  次に、一般事務費につき、それぞれ前年度予算と対比しながら御説明申し上げますが、まず、全体としては、前年度に比し旅費類が一億九千五百八十三万九千円、庁費類が二十二億二千二百十四万八千円、営繕費が十七億三千四百四十万九千円、その他の類が十三億六千八百七十一万六千円増額となっております。  以下、主要事項ごとに御説明申し上げます。  第一に、法秩序確保につきましては、さきに申し上げました検察事務官九十五人を含む合計二百七人の増員経費及び関係組織人件費を含めて一千七百六十七億九千六百万円を計上し、前年度に比較して百十八億二千九百万円の増額となっております。  その増額分について申し上げますと、まず、検察庁関係としては、四十五億七千七百万円が増額されておりますが、その中には関係職員人件費のほか、検察費三億三百万円及び財政経済事件等各種検察活動充実強化を図るための経費五千七百万円が含まれております。  次に、矯正関係としては、五十八億八千二百万円が増額されておりますが、この中には関係職員人件費のほか、職員待遇改善経費六千四百万円が含まれております。  また、矯正施設収容者処遇改善につきましては、十七億二百万円の増額となっております。これは、作業賞与金支給計算高を一四・三%引き上げるための所要経費七千五百万円、生活用備品日用品医療器具等充実公害防止等に要する経費十億四千八百万円が増額となったほか、被収容者食糧費につきましても、主食、副食による熱量摂取比改善のほか、常菜代物価上昇分七・九%の引き上げ並びに祝祭日菜及び誕生日菜単価引き上げによる給食内容の大幅な改善が図られ、これに要する経費として五億七千九百万円が増額となっております。  次に、保護関係としては、六億三千百万円が増額されておりますが、これは、関係職員人件費のほか、短期交通事件処理経費保護観察事件カード検索機運転適性検査機等保護観察体制整備を図るための経費四千二百万円、犯罪予防活動協力費を含む保護司実費弁償金一億三千六百万円、更生保護委託費八千百万円であります。  次に、訟務関係としては、国の利害関係のある争訟事件処理経費として三千七百万円が増額となっております。  次に、公安調査庁関係としては、七億二百万円が増額されておりますが、その中には関係職員人件費のほか、調査活動充実経費一億一千二百万円が含まれております。  第二に、国民権利保全強化につきましては、まず、登記事務処理適正化に関する経費として、さきに申し上げました事務官百九十二人の増員経費及び関係職員人件費を含めて四百八十八億四千万円を計上し、三十五億六千六百万円の増額となっております。その増額の主なものは、登記諸費一億三千万円、公共事業関係特殊登記事件処理に要する経費三千二百万円、全自動謄本作成機等事務能率機器整備に要する経費一億八千六百万円、謄抄本作成事務の一部を請負により処理する等当該事務処理促進のための経費一億八千八百万円、登記簿粗悪用紙改製に要する経費三千七百万円であります。  次に、人権擁護活動充実に関する経費として、三千七百万円の増額となっております。その内訳は、人権侵犯事件調査強化を図るための旅費庁費一千四百万円、人権擁護委員実費弁償金等二千三百万円であります。  第三に、非行青少年対策充実強化につきましては、一部、法秩序確保関係と重複しておりますが、さきに申し上げました少年鑑別所教官等二十一人の増員経費及び関係職員人件費並びに少年院等収容関係諸費を含めて二百六十九億四千四百万円が計上され、前年度に比して十九億三千百万円の増額となっております。  そのうち、事務的経費増額分について申し上げますと、まず、検察庁関係としては、一億一千万円が増額されておりますが、これは検察取り締まり経費であります。  次に、少年院関係としては、一億五百万円が増額されておりますが、これは生活、教育備品の整備等に要する経費であります。  次に、少年鑑別所関係としては、三千万円が増額されておりますが、これは生活備品の整備及び日用品充実等に要する経費であります。  次に、保護観察所関係としては、一億九千二百万円が増額されておりますが、これは補導援護活動の充実経費であります。  第四に、出入国管理業務充実についてありますが、さきに申し上げました入国審査官等の増員経費及び関係職員人件費を含めて三億七千万円の増額となっております。その中には、出入国及び在留管理経費三千万円、護送及び収容業務充実経費千五百万円が含まれております。  次に、施設整備につきましては、登記所等小規模施設整備費六十億三千万円及び沖繩施設整備費八億二百万円を含め、百二十五億九千四百万円を計上し、前年度予算に比し、十七億三千四百万円の増額となっております。  なお、このほか、大蔵省及び建設省所管の特定国有財産整備特別会計において、甲府刑務所外五施設施設整備費として、五十億八百万円が計上されていることを申し添えます。  以上が法務省所管歳出予算予定経費要求の概要であります。  終わりに、当省主管歳入予算について御説明いたします。  昭和五十三年度法務省主管歳入予算額は、七百六十五億七千四百十五万七千円でありまして、前年度予算額七百十二億七百八十万八千円に比較いたしますと、五十三億六千六百三十四万九千円の増額となっております。  以上をもって、法務省関係昭和五十三年度予算案についての御説明を終わります。
  11. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 次に、草葉最高裁判所経理局長
  12. 草場良八

    最高裁判所長官代理者(草場良八君) 昭和五十三年度裁判所所管予定経費要求額について説明申し上げます。  昭和五十三年度裁判所所管予定経費要求額の総額は、一千六百二十二億四千六百八十二万二千円でありまして、これを前年度予算額一千四百七十八億六百十七万円に比較いたしますと、差し引き百四十四億四千六十五万二千円の増加となっております。これは、人件費において百十六億一千二百十万六千円、裁判費において四億七千五百十五万八千円、営繕費において十九億八千二百四十六万二千円、司法行政事務を行うために必要な旅費庁費等において三億七千九十二万六千円が増加した結果であります。  次に、昭和五十三年度予定経費要求額のうち、主な事項について説明申し上げます。  まず、人的機構の充実のための経費であります。  (一)特殊損害賠償事件の適正迅速な処理を図るため、判事補三人、裁判所書記官三人、裁判事務官六人の増員に要する経費として一千八百二十七万七千円、(二)会社更生事件の適正迅速な処理を図るため、判事補二人、裁判所書記官二人、裁判事務官四人の増員に要する経費として一千二百十七万七千円、(三)差止訴訟事件の適正迅速な処理を図るため、判事補三人、裁判事務官九人の増員に要する経費として一千七百九十一万一千円、(四)調停制度の充実強化を図るため、裁判事務官十五人の増員に要する経費として一千百八万五千円、(五)交通事件(道路交通法違反事件)の適正迅速な処理を図るため、裁判事務官三人の増員に要する経費として二百二十三万四千円、合計六千百六十八万四千円を計上しております。  以上、昭和五十三年度の増員は、合計五十人でありますが、他方定員削減計画に基づく昭和五十三年度削減分として、裁判事務官三十二人の減員を計上しておりますので、これを差し引きますと、十八人の定員増加となるわけであります。  次は、裁判運営の効率化及び近代化に必要な経費であります。  (一)庁用図書、図書館図書の充実を図る等のため、裁判資料の整備に要する経費として四億一千七百十一万円、(二)裁判事務の能率化を図るため、複写機、計算機等の整備に要する経費として三億二千四百四十一万四千円を計上しております。  次は、裁判施設整備充実に必要な経費であります。  裁判所庁舎の新営、増築等に必要な経費として百億三千六百十八万六千円を計上しております。  次は、裁判費であります。  (一)証人等の日当を増額する経費として一千七百三十二万三千円、(二)国選弁護人報酬を増額する経費として一億八千五十三万三千円を計上しております。  以上が、昭和五十三年度裁判所所管予定経費要求額の大要であります。
  13. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 以上をもちまして説明を終了いたしました。  ただいまの所信及び予算の説明に対する質疑は後日に譲ることといたします。  速記をとめてください。   〔速記中止〕
  14. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 速記を起こしてください。     —————————————
  15. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) プロ野球ドラフト制度に関する件を議題といたします。  参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、皆様には御多忙中のところ御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。  プロ野球ドラフト制度につきまして皆様の御意見を承りたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。  なお、委員会の進め方につきましては、最初に参考人の皆様からお一人十分程度で意見を述べていただき、その後で委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。  それでは、まず井原参考人からお願いをいたします。
  16. 井原宏

    参考人井原宏君) プロ野球井原でございます。  現在実施しておりますプロ野球ドラフト制度の概要につきまして簡単に説明いたします。  この制度は、提案されましたのが昭和三十九年十月二日、実行委員会において提案されたのであります。そして可決に至りましたのが四十年の七月二十六日、その間に約十カ月間を要しまして、いろいろな会議、そういうところの慎重審議を経まして、そして可決に至りましてからも若干の修正を加えまして、現行規程に至ったものでございます。大体この制度の骨子と申しますのは、一人の選手に対して一球団が契約の交渉に当たる窓口を一つにするということ、これが根幹でございます。この制度の内規につきまして骨子だけを申し上げますと、次のとおりでございます。  まず、このドラフト制度によりましてドラフトの対象となる新人選手というのはどういう者かと申しますと、日本の中学校、高等学校、大学にかつて在籍していたことのある選手で、そうしてプロ野球に未経験の人、これはすべてドラフトにかけなきゃいけないということになっております。そうしまして、現在在学中の選手につきましては、翌年卒業見込みの選手だけしかトラフトにかけられない。また、その間に中途退学者の取り扱いなどは別に決めておりますが、これは省略いたします。ただ、社会人野球の選手につきましては、同協会と協定いたしまして、協会登録後、同協会のシーズンが二つのシーズンにまたがりまして、それが全部終了した後でなければドラフトにかけられないということになっております。そのほか、社会人野球とのこれにつきましての協定はまだほかにもございますが、細かいことになりますので省略いたします。  そうしまして、選択方法、どうして選択をするかと申しますと、十二球団が抽選によって一位から十二番まで指名の順序を決めまして、そうして各球団が六名を限度として交渉権を持つという方法でございます。そうして、交渉期間は翌年のドラフト会議の二日前まで続く、こういう制度でございます。ただし、これまた協定によりまして、社会人の選手と交渉するためには、社会人の行事中、三月から大体十月ごろまでありますが、その期間は交渉をしないということになっております。学生につきましては、会議開催が大体十一月でありますので、それから卒業見込みのある選手でなければ交渉ができないということがありまして、これには学生野球の行事中に交渉するということはないわけでございます。そして、ドラフト会議で指名されなかった選手は、これはどの球団でも翌年の三月三十一日までに契約して登録すればよろしい、そういうことになっております。  大体大まかなところを申しますとそのようでございますが、なお詳しいことは、御質問がございましたらお答えしたいと思います。  以上でございます。
  17. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 次に、荒川参考人にお願いをいたします。
  18. 荒川堯

    参考人荒川堯君) 御紹介ありました荒川です。  この中の五人では私だけがドラフト制度という洗礼を受けた一人なので、受けた立場として、八年前なんですけど、率直にあの当時の気持ちと、いまどういうふうにドラフト制度を思っているかということを述べたいと思います。  八年前ドラフトを受けたわけなんですけど、少年の気持ちとしてやはり巨人軍にあこがれる。日本の七割以上が巨人軍ファンですね。選手としたら人気のある球団でやりたいと、これは人情ですし、やはりあこがれました。また、あの当時父が巨人軍にいたものですから、やはりおやじと一緒にやりたいと、敵同士のチームではできないということもあります。そういうようなことから、巨人軍でユニフォームを着たいという淡い気持ちから、小学校、中学、高校、大学とどんな試練にも耐えて夢見てがんばってきた。それを、プロ野球に入るときに、自分の選ぶ自由ですね、自分の人生の戸を自分のかぎで開けられないということに大変矛盾を感じまして、あの当時ドラフトというのに反逆したんですけど、いま振り返ってみますと、一人の力のなさということを感じている次第なんですけど、あの当時ドラフト制度には若い自分にとって大変矛盾を感じました。  でも、八年後のいまの私の意見としましては、いま小さいなりにも代表取締役として会社をやっているわけなんですけど、ドラフト制度のその内容は後にしまして、やはり規則というものは守らなくちゃいかぬ。国に法律があり、会社にも社則がある。やはり事プロ野球で野球を職業としてやるからには野球界の規則には従わなくてはいけないというような気がします。ドラフト制度というのは、長いアメリカの歴史の中から一番合理的な制度ということでできた制度でございますから、やはりプロ野球という企業にとっては大事なものじゃないかと、なくてはならない制度ではないかと、私はかように思います。  しかし、野球というのは、いま日本の国民にとってはもう国技と同様でございますし、王選手のホームラン新記録を見ていろんな人が一喜一憂する、ホームランを見てぼくもあしたがんばらにゃいかぬというような日本の国民的なスポーツになっております。  ですから、結論を言いますと、私の意見なんですけど、ドラフト制度というのは、野球にとっては、もちろん内容を変えてもらいたいと、これはもちろん私はそう思いますけど、やはり必要ではないかという意見であります。順不同になって、上がってしまって思うことが言えないんですけど、デパートの商品でも高い商品がたくさんありますけど、何でお客さんが行くかというふうに考えますと、やはりいろんな商品があってそれを自由に選べるということでぼくはお客さんが行くと思うのです。野球でも自由に選べる場を少しでも与えてもらえないと、素質のある選手がだんだんプロ野球というところから遠のくのではないかと、私はいま野球を離れた一人の人間としてそう思うのですけど、まあ大岡裁きではないんですけど、もちろん決まりも必要です。しかし、若い人の夢ですね、やはりどこどこの球団のユニフォームを着てやりたいという夢を制度の中に多少なりともくみ入れていただきたい。せっかくこういう国会という場でドラフト制度というのを取り上げていただいたんですから、やはりプロ野球発展のために慎重に真剣に審議していただきたいですし、その中でドラフトされる弱い選手の立場としてもう少し自由に選べる機会を与えてもらいたいと、私はかように思います。  ドラフトに対して私はいろいろ反逆もしました。それと暴漢にも襲われました。そのために目も不自由になりました。大変ドラフト制度には恨みを持っております。しかし、いまでもプロ野球を愛しています。ですから、こういう場所で皆さんに真剣に審議していただきたいと。以上です。  ありがとうございました。
  19. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 次に、川上参考人にお願いをいたします。
  20. 川上哲治

    参考人川上哲治君) 川上でございます。  昭和四十年にプロ野球ドラフト制度が採用されましたときに、私は現場を預かる監督としてこのドラフト制に対して反対の意見を持っておったわけであります。その理由としては、ドラフト制のもとではプロらしい球団をつくれない、チームづくりができない、チームづくりが困難ではないかと、こういうことを思ったからであります。当時、ほかのチームの監督やあるいは新人獲得に直接タッチをしますスカウトの人たちも同じ理由で反対をしていたのですが、私は現在でもこのドラフトはプロ野球の発展進歩に障害があるのではないかと、こういうふうに考えております。  日本のプロ野球は、発足の当時から、アメリカの大リーグに少しでも近づき、そしてこれに追いつき追い越すと、こういうような大きな目標を持っておったのでございます。大リーグの戦力としましては、非常に体力があるし、スピードがある。こういう大リーグに対等に戦うためには、どうしても日本の全国津々浦々から非常に肩の強い選手、あるいはスピードのある選手、あるいは体力のある選手を発掘して、厳しい訓練に訓練を重ねて選手を育てる、こういうことが必要なわけでございます。それが、このドラフト制が実行されましたので、こういう計画ができないとして私はあきらめざるを得なかったわけでございます。  考えてみますと、日米のプロ野球界には非常に大きな差がございます。アメリカではプロ野球組織がしっかり確立して、コミッショナー以下関係者が野球発展のために情熱といろいろな工夫研究というものを注ぎながら、みずからの職業に徹底する姿勢が見られております。一方、わが国では、各球団の間で経営方針あるいは経営努力という面からもずいぶん大きな差があるように思います。したがって、新人選手の立場に立って考えました場合に、球団の違いは非常に大きな意味を持つものと私は思います。同じ程度の素質を持った選手がプロ入りをしました場合、その選手生命は、もちろん本人の自覚、実行力、こういうこともさることながら、所属するチームの環境によって左右される場合もまた多いものでございます。特に若い人でございますから、こういう違いは非常に大きく差があるのじゃないかと思います。チームのあり方がしっかりしておるとすれば、選手がプロ野球選手としての心・技・体の向上というものに対して正しい指導を受けられ、常にベストを尽くしてプレーをするようにしつけられていくのでございます。そして、そうしたプレーがファンの共感を呼び、あるいは社会的な高い評価を受けるというようになるものと思います。率直に申し上げまして、あの王選手ですら、今日あるのは、本人の才能、努力もそうでございましょうけれども、熱心に応援してくださったファンの方々のお陰であると思います。つまり、選手側から言いますと、入団するチームの違いは選手生命にも影響を与え、また収入にも差が生じてまいります。また、社会的信用という人生に大きな違いを生むということも言えるのじゃないかと思うのでございます。  それでは、ドラフト制度を撤廃したら特定球団だけにいい選手が集まって野球がおもしろくなくなるのじゃないかと、こういう意見もあるようでございますけれども、私としては、決してそういうむちゃな集中現象といいますか、一カ所に集まるというようなことは起きないのじゃないかと思うのでございます。それは、プロ野球選手は、どんないいチームにおっても、試合に出て働けなければうれしくないわけでございます。と同時に、皆そういうことを考えるわけでございます。私がジャイアンツを率いて九連勝の中で、ちょうどチームが三連勝しましたころから、巨人軍は各ポジション、ポジションごとに非常にいい選手が集まっておるということで、いまジャイアンツに入っても試合にはすぐ出れないのじゃありませんかというようなことでスカウトが勧誘するのが非常にむずかしかったという実例がございます。また、そのほかに、自分の力を高く評価してくれるチームの情熱、つまりこれは契約金という形をとるのでございますが、その球団の誠意を高く評価すると、こういう現象は特にいま現在あるのじゃないかと思います。また、特定球団を破ることに生きがいを感じるといいますか、そのためにほかの球団に入りましてそしてほかの球団の選手としてやっていくという、こういう反骨の選手というものも現代の青年の中には非常に多いのではないかと、こういう気もいたします。阪神のエースの村山君、あるいは大洋の初優勝、ここの三原さんがやられたのでございますけれども、そのときの原動力になりました秋山、土井というバッテリー、こういう人たち、あるいはまた、私がちょうど監督時代に実際に勧誘したのでございますけれども、阪神に入りました安藤君という慶応の出身の選手がございます。この人なんかも、断固ジャイアンツをけってそういう反骨の選手じゃなかったかと思うのでございます。  そのほかに、球団としては、全力を注いで全国の無名の選手を発掘すると、こういうようなことに努力をするのじゃないかと思います。一時代を画しました稲尾、あるいは金田、大友という、こういう大投手も無名でございます。あるいはまた、いま現在でも四十二歳で捕手を務めております野村君なんかも全く無名選手でございます。こうした野に埋もれた無名の逸材を探すという努力がこのドラフト制度のお陰で薄れていることも私は確かじゃないかと思うのでございます。  このドラフト制度を取り入れた理由の一つとして、各チームの努力を均等化するという点がありますけれども、ドラフトだけではこの目的は達することはできないばかりか、言うなれば高いところを削って低いところへ流すと、こういうレベルダウンの形になっていって、だんだん野球全体がレベルが低下していく、そして内容の乏しい試合が展開されファンの失望を買う、勢いプロ野球の衰退につながっていくということにもなりかねないと思うのでございます。  また、一歩を譲って、このドラフト制によって仮に各チームの実力の均等化が行われた場合、極言しますと、優勝のかぎを握るというそのかぎは、現在一チーム二人までに認められております外人選手の働きいかんということにもなりかねないと思うのでございます。となれば、それこそ金だとかあるいは条件などすべて先方任せというような獲得合戦といいますか、外人選手の獲得合戦というものが演ぜられる危険も非常に多くて、それこそ日本野球という存在意義まで失われてしまうのではないかということを心配いたすわけでございます。  どこの世界でもそうですが、プロ野球界では常に進歩発展が求められております。あるチームが強くなれば、そのチームを何とかして負かしてやりたいということで他球団がわざをみがき、あるいは戦法を考え、これに挑戦すると、こういうのがプロ野球本来の姿ではないかと思います。この場合、資本力の強弱は問題にはならないと思います。長い目で見れば、勝負は結局強い者が勝ちますけれども、逆に、プロ野球は勝たなければチームの発展につながらないこういう社会でございます。勝つためにはチーム全員が最大限の努力、精進を重ねる、これがプロ野球の姿であるし、現在のドラフト制度はこうした意欲と姿勢を減退させていると言っても私は過言ではないと思います。  ドラフトによってレギュラーの座を脅かすような選手が入ってきにくいために、一度レギュラーの座を占めた選手は、ある程度の努力でその位置を長期にわたって占めることができます。これもプロ野球の発展にはマイナス要因ということができるのじゃないか。競争のないところに発展はないし、進歩はないということでございます。古い話でございますけれども、不世出の名力士双葉山が昭和十一年夏から六十九連勝をしたことによって、その当時少し人気が低下しておりました大相撲が非常に隆盛期を迎えたことは御存じのとおりでございます。打倒双葉の意欲に燃えた各力士の努力がその裏づけになったことと思うのでございます。  ドラフト制に改善の余地があるかどうか、あるいはまた撤廃すべきかどうかと、こういう点で、私は現在プロ野球機構の中におりませんので、各球団の事情やあるいは利害関係と、こういうのが全然わかりません。ですから、この問題はプロ野球当事者に研究していただきたいと思うのでございますけれども、私の考えでは、現在のドラフト制度には改善の余地があると思います。少なくともくじ引きで人生が変わっていくようなことだけは何とかならないものかと、こういう気がいたすわけであります。  終わります。
  21. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 次に、鈴木参考人にお願いをいたします。
  22. 鈴木龍二

    参考人鈴木龍二君) 鈴木です。  私の答弁は質問者の皆様の御意見にあるいは外れているかしれませんけれども、このドラフト制度を施行いたしまして、その前にまあいろいろ議論がございました。三十九年のときに私はドラフト制度制定のための議長をやったことがあるのでございます。そして、十二球団の決をとった結果、一致してこのドラフト制度というものをしかれたわけでございます。そして、四十年から今日まで、ドラフトの会議のときにも五、六回私が議長を務めておりました。そして、現在においては、私、セントラル・リーグの会長であると同時に、本年は実行委員会の議長でもあるのでございます。御承知のとおり、実行委員会というものは、十二球団の意見をまとめまして、そして結論を出すということが十二球団の議長に与えられた義務なんでございます。  そういう関係にある私として、ただいまここでもってドラフト制度に対する可否、あるいはどういう点ということを私がたとえ個人の意見といたしましても述べるということは、十二球団の間に響くところがあるのじゃないかと思います。そういう次第でございますから、委員の方の御趣意に背くかもしれませんが、私の意見としては申し上げないことを御了承願いたいと思います。  ただし、各委員の皆様の今回プロ野球に対する非常な、もちろん発展、向上、姿勢を正すということでしょうか、いろいろの御意見をこれから承らせていただきますので、それを私は三月中に開催いたします実行委員会において忠実に報告をいたしまして、そして十二球団の実行委員の人で再検討をする——再検討の結果がどうということは別でございます、一応議題にすると皆様にお答えして、議題にすることに協力をしたいと思っております。  これで終わります。
  23. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 次に、三原参考人にお願いをいたします。
  24. 三原脩

    参考人三原脩君) 三原でございます。  最前、井原コミッショナー事務局長は、ドラフト制度が施行されるまでの一応の経過を御説明申し上げましたし、続いての荒川川上両氏は、それぞれの選手としてまたプロ野球の監督としての立場から意見を開陳されたというふうに解釈をいたしております。また、鈴木会長は、セ・リーグの会長、それから野球機構の実行委員会議長としての立場からの御発言であったかと思うのです。私はパ・リーグの理事でございますが、本日ここで申し述べますことは、ただ単にパ・リーグの理事としての立場からではなく、私の個人的な見解としていろいろなことを申し上げてみたいと思うわけでございます。  いままでの四人の方のお話を聞いておりますと、皆様は全部うんそうだとうなずかれたであろうと、またそういうことを期待してこの委員会が開かれたのであると、わが意を得たりと、そういうふうに思われておるのではないかと私は思うのです。いや、実は、この各委員の方々の中には、白木さんとか、下村さんだとか、山本さんだとか、すでに周知の方、また新聞紙上で皆様のお名前は承っておりますが、私的におつき合いを願ったり御交際を願ったり、過去におつき合いをしていただいた方もおりますので、私としては非常に気安くいろいろなことがお話しできると、そういうふうに思いまして、委員長は特にそういうような御配慮をいただいて、われわれが気軽に話ができるような雰囲気をつくっていただいたのではないかと非常に感謝をいたしております。  実は、本日、パ・リーグの岡野会長が出席をいたしまして——岡野会長は、実は、このドラフト制度の発起者の一人なんでございます。亡くなりました西鉄ライオンズの元の球団社長である西亦次郎氏と、それから岡野祐氏、このお二人がこのドラフト制度の発起者となって各球団を説得をして回られたと、そういういきさつがございますので、パリーグの会長が本席におられますならば、野球機構の一員としてはもちろんのこと、ドラフト制度の発起者の一人として、皆さんに十分意を尽くした御説明ができたのではないかと、そのように私は思うわけなんです。しかし、岡野会長は、先ほども申し上げましたように、きょうからまた入院加療、手術の必要ありと、そういうふうな診断をいただきまして、本席に出席できないのは非常に残念だけれども、君の考えとぼくの考えは非常に似ておるから、ひとつ十分に皆さんに御説明をして御批判をいただいてくるようにしてくれと、そういうことがございましたのでお伺いをしたわけでございます。  先ほど井原事務局長からちょっと触れられた問題でございますが、昭和四十二年に、衆議院の法務委員会で、東海大学の学長の松前先生が当時衆議院の議員さんであったと思うのですが、その松前先生の御発言で、選手の人権問題、特に高等学校の選手の人権問題が論議されたことがございます。それはもうすでに皆様御承知のとおりであると思うのですが、そのときの先生の一つの質問のテーマは、人身売買ではないかと、そういうようなお話がそのテーマであったと思うのです。今日の問題は、特に恐らく委員の皆さんは江川問題に端を発した御発想かと思うのですが、江川君の場合を例にとりますと、これは、いままでの、いままでと申しますよりも、先ほど申しました松前先生のおっしゃられておる人身売買というような観点とは違って、江川君が、まあ先ほど荒川君も言いましたように、自分の欲する球団に行きたいと、行かれないと、それが不満であると、だから選手契約はしないということで、同じ人権問題につきましても、以前の松前先生の提起されておるテーマと今日のテーマとは若干違うと思うわけなんです。  まず、荒川君とか江川君の問題はさておきまして、松前先生が提起されたときの問題は、高校生が入団する場合に多額の金が動いておると、しかも、球団関係者はもちろんのこと、若い未成年の選手を取り巻く関係者——親、親権者その他がお金をもらうためにその選手の意思に反していろいろ行動しておるのではないか、発言をしておるのではないか、それが人身売買というような印象を世間に与えておるのではないかと、そういうことを質問をされておるわけです。もちろん、これに対して、人権擁護局長のお答えは、そうではないんだと、しかし運用を誤るとそういう危険性も十分にあると、そういうふうにお答えになって一応決着をみておるわけでございます。しかし、その松前先生がおっしゃられたことは、まあ人身売買という言葉ではありますけれども、その言葉の裏には、プロ野球は少しお金を出し過ぎておるのではないかと、それがいろいろ世間にいろいろな悪い影響を与えておるのではないかと。まあこれは何も私どもだけの問題じゃなしに、新聞の方で非常に太鼓をたたきまして、一を十とは申しませんが、一を二か三ぐらいに誇張していろいろ報道すると、そういうようなことがやはり世間にいろいろな悪い影響を及ぼしておると、そういうことに対する一つの警鐘的な意味での御発言であったのではないかと、そういうふうに思うわけでございます。  プロ野球ドラフト制度を施行いたしました前後の事情は、私は当時西鉄でございましたか大洋でございましたか、チームの監督をしておったわけでございますが、やはり、スカウトは、まあ悪い言葉で言えば暗躍ということになるわけでございます。と申しますのは、一人のいい選手、まあ一人のいい選手じゃなしに、一つの球団は二十人も三十人も目をつけておるわけですが、一つの球団が目をつけておる選手というものは、やはりお互いに探って、どこの球団はあれを目標にしておるということをまあ忍者みたいなものですから探って、情報を手に入れて、そしてその情報をもとに自分も調査をする。そして、調査をしてそれがいい選手であるということがわかればアタックするということになるわけですが、その選手を一人と仮に仮定いたします。そうしますと、その一人の選手に対して、十二の球団が、一球団にある場合にはスカウトが二人ぐらい寄って選手を攻めるということもあり得るわけです。選手一人ではなしに、選手を取り巻く何人かの関係者——両親だとか、親族、縁者、監督とか、そういう人たちに手を回してがんじがらめの攻勢をしかける。それは何もプロ野球関係者がまあ猟師が獲物を追って山の中へ入っていくようなことではないわけですけれども、やはりどうしても採りたいということになりますと、勢いそういうふうなことにならざるを得ない。確かにそれはわれわれとして非常に反省しなければならぬわけですけれども、交渉相手の選手の側にしますと、言うならば一世一代のひのき舞台−選手を取り巻く親御さんとか、親戚、縁者、それから非常に有名ないい選手が出ればそれを後押ししておる何人かの関係者ということになろうかと思いますが、その人たちが、一世一代のひのき舞台ですから、ありとあらゆる策略を講じて、そしてプロ側と折衝をする。したがって、その中に伊賀之亮が出てくることは十分予想されることでございます。そのために、プロ野球は非常に被害を受ける、操られる。それも舞台裏だけでそれが推移するならば何の影響もないと思うのですけれども、新聞は逐一これを報道する。そうしたら、お金は、まあ先日もある人が江川君の値段はどのぐらいでしょうかと、一億円ぐらいでしょうか、二億円ぐらいでしょうかといって私に質問をするのです。一億円というのは非常に莫大なお金で、いままでプロ野球界が払ったことのないお金の額でございます。また、幾らインフレの世の中とは言いながら、まだ海のものとも山のものともわからない、何の実績も何の裏づけもない人に一億円の金を出すと。あすの日にもその人が病気をしたりけがをしたり、野球ができなくなるかもしれない。まあそれは私はいま野球のことだけを申しておるのと違うのです、一般社会のことを申しておるわけなんです。そんなお金をだれが出す人があるのだと、出しておるのは野球だけであるということさえ言えるわけです。そのときに私は申したんです。一円が二円になるのと一億円が二億円になるのとは同じ倍であってもお金のけたが違うんだと、そういう感覚でとにかく活字を扱ってもらっちゃわれわれは非常に迷惑するということも申したわけなんですが、それは一例なんでございますが、そのように、つまり選手を取り巻くスカウトの一つのスカウト合戦と申しますか、虚々実々の駆け引きと申しますか、それは皆さんの想像される以上のものがあるわけなんです。それから起こってくる弊害、これもまた皆さんの想像に絶するものがあるということなのでございます。  そういったようなことがドラフトをしがなければならないという一つの背景になっておるわけでございますが、その一つの例としまして私の経験したことなんですが、ある明治大学出身の遊撃手を私が大洋時代に採ろうとしたことがあるわけです。もちろん、私は、監督ですから、その選手を見ることもできないし、見に行くこともできないし、その選手と直接折衝する機会もシーズン中ですからございません。すべてスカウトからの報告によってこういう選手がおるということをデータによって承知するわけでございます。それは、十月ごろだったと思うのですが、六大学のゲームがもう終わっておりましたから十月半ばを過ぎておった時期でございますが、その明治大学出身の遊撃手、静岡県の出身の選手なんです。その選手は、大洋と広島と両方のチームから誘いを受ける。そして、もちろん私は絶対に採ってもらいたいということを要求をしておったわけなんですが、その選手が、契約が最終段階に来ましたときに、こういうふうなことを言っておるわけです。大洋の三原監督は静岡の私の家へやってきてこれこれの金額を提示したんだと、ですから私はもし広島へ入るとすればそれ以上の金を広島がくれなければ入らないと、こういうことを新聞で言っておるわけですね。私はその選手に会ったこともないし、話をしたこともないし、条件提示をしたこともない。しかるに、そういうことを言って、これは新聞に言っておると同時に相手の球団に対してそういうふうな攻勢をかけて自分の契約を有利に持ち運ぼうと、そういうふうにしておった事例があるわけです。これは一つの例なんです。  そういうようなことで、これはドラフト制度の始まる前の話なんです。ですから、そういうような状況、特に、先ほど申しましたが、松前先生が非常に懸念をされておりました高校生の問題なんですが、高校生に確かにいい選手もおると思うのです。われわれとして相当な高額な金を払ってでもプロ野球の選手として球団に誘致したいと、そういう選手もおります。しかし、それらの選手が、先ほどもちょっと例に挙げましたように、とにかく一億円か二億円と、このドラフトが始まったころの例をとりますと一晩のうちに百万円とか二百万円とか上がっちゃうわけですね、値段が。実体は同じですね。人間がそんなに一尺も二尺も背が伸びたわけでもないし、体重が一晩のうちに二貫目も三貫目もふえたわけではないし、一晩のうちにスピードがえらい速くなったと。あいつはきのう一晩寝ておる間にスピードが十分の一秒速うなったらしいぞ、だからちょっと上げてやれ、上げにゃ採られぬと、そういうようなことならこれはいざ知らず、その対象にしておる選手の実体というものは全く変わっておらない。それなのに、お互いのそういうような駆け引きによってどんどん上がっちゃう。そういうことが、高等学校のつまり年末の試験、それから翌年の大学受験を目指して一生懸命に勉強しておる子供たち、そういう子供たちにどういう精神的な影響を与えるか。これを考えたときに、プロ野球として、それを、プロ野球が全く社会のすみでひっそりとやっておるものならばいざ知らず、今日のようにプロ野球社会性というものは、皆さんがわれわれをここにお招きいただいてそしてプロ野球はどうなっているんだというふうに関心を持たれるほど、日本国じゅうがプロ野球社会性というものを認識をしておる今日、そういうことをプロ野球関係者が放置していいということはないわけです。さるがゆえにこのドラフト制度というものは発足したわけのものでございます。  アメリカにもドラフト制度というのはございます。もちろん、ドラフトというのは英語でございますから、その制度及びその言葉を日本がまあまねをしたということではないのでございますが導入したことは事実でございます。アメリカのドラフト制度につきましても、恐らくどなたかから御質問があると思いますが、アメリカのドラフト制度は、一月と六月、年二回になっております。制度は全く日本と同じで、日本はアメリカのドラフト制度を導入して、そしてプロ野球の健全な発達に努めたいと、そういうことがドラフト制度を導入したゆえんのものでございます。  少し長くなりましたけれども、皆さんが今日この会合を持たれておるのは、やはりドラフト制度に対する一つの批判を大いに持たれておるがゆえにこの会合を開かれておるのでございますので、少し皆さんの御意見とは食い違って牽強付会の説をする男であると、そういうふうに思われるかもしれませんけれども、私は至って素直でございますので、皆さんからどのような御質問をいただきましても素直にお答えいたしますから、どうぞ御質問いただくときにはひねくれた質問でない質問をしていただきたいとお願いをいたします。
  25. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 以上で参考人意見聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  26. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 川上参考人にお尋ねをしたいと思うのですが、あなたの御意見を伺いまして、大変率直に御自分の信念をお述べになりまして、強いチームをお育てになった監督経験者として私どもも非常に感心してお聞きしたんです。三原さんの御意見と少し違うようなんですが、そういう意味でお尋ねをしてみたいと思うのです。  この野球協約ですか、これを見てみますと、  第三条 (協約の目的)   (1)わが国の野球を不朽の国技にし、野球の権  威およびその技術にたいする国民の信頼を確保  する。   (2)わが国におけるプロフェッショナル野球を  飛躍的に発展させ、もって世界選手権を争う。   (3)この組織に属する団体および個人の利益を  保護助長する。と、こういうようにうたわれておるようですね。この目的と現在のドラフト制度とがやっぱり背馳するように思われますか、それともそこまではいかぬような御意見でしょうか。
  27. 川上哲治

    参考人川上哲治君) 私は、先ほども申しましたように、このドラフト制度があるために強力なチームづくりというものができないと、そういうふうに考えますので、そこにも書いてありますように世界の覇を争うというのにはこのドラフトは非常に障害になりはしないかということを考えます。
  28. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 かなり思い切った御意見のように思いますが、その点、三原さん、いかがでしょう。何かあなたと川上さんで少し対照的のように思われます。
  29. 三原脩

    参考人三原脩君) 私は、川上君は、昔から一緒にプレーをやりましたし、非常に人格的にも尊敬をしておりますので、こういうところで対決のような形で言われると非常に私としては困るわけでございますけれども、率直に申しまして、野球機構の立場とそれから監督、選手の立場は若干違うと思うのです。監督は、チームを強くしたいと。先ほども私が漆畑のことで言いましたけれども、スカウトが妙なことをしてもらっちゃ困るわけですけれども、手段を尽くしてやっぱり選手を獲得してもらいたいと。それからまた、一人の選手、たとえば左のピッチャーが欲しいとか、遊撃手を補強したいとか、そういうような補強をしぼって選手を獲得するために努力をするということならば、監督としては自由である方がいい。選手もまた自分が自由なところへ行かれる。そして、お金の面でも自由に交渉できる方がいい。一対十二と一対一だったら、一対十二がいいというのはもう決まった話なんです。一対一がいいというのは、ルールがあるからこそ一対一に従わざるを得ないのであって、ルールがなかりさえすれば一対十二でいいわけですから、一対十二、まあそれの上にさっきの伊賀之亮が加わりますと非常にものすごいふくそうした交渉の手段というものがあるわけですから、それにマスコミが関連してくればさらにふくそうした舞台が設営できる。それならばますます選手の側にとって有利であるということは、選手に意見を聞かれれば、百人が百人、千人が千人、一万人が一万人、全部ドラフトはない方がいいと、これはもうあたりまえの話なんです。それからまた、先ほどの現場の監督の立場からチームを強くするということならば、それは自由でよろしいと。自分は金を出すわけじゃないんですから、金を出せ、金を出さにゃ強うならぬと、なんだ、金を出してくれぬからわしは弱いんだと、こういうふうに言います。  ですから、野球機構の立場と監督、選手の立場とはおのずから立場が違うということで、先ほど来るる申しますように、野球の社会的背景を持った健全な発達とそれから機構の健全性というものから考えまして、若干川上君の意見と食い違わざるを得ないということなんです。その他のことにつきましてはすべて川上君と私は同意見でございまして、この点だけが違うわけですから、どうぞ御了承ください。
  30. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 いまお話を伺いますと、監督の立場あるいは選手の立場から見るとドラフト制度というものはじゃまになると。しかし、球団の経営者としてはどうしても必要なんだというような御意見のようにも聞こえるのですが、川上さん、いまあなたのお話を伺いまして疑問に思ったのですが、いい選手必ずしも一つの球団に集まらないよと、それは球団に入ってもすぐ試合に出れないからだということをおっしゃいましたね。そういうことも確かにあるでしょうが、ただ、ずば抜けて優秀な選手ですね、すぐに入団したら試合に出られるような選手というのがあると思いますが、そういう選手はやはりスカウト合戦が自由になりますね、もしドラフト制度を廃止すれば。そういう場合には、資本力の強大な球団が獲得してしまうということが言えるのじゃないでしょうか。あるいはまた、選手の側にしても、非常に人気のある球団にそういう超一流の選手が集まってしまうというようなおそれ、それはないでしょうか、いかがでしょうか。
  31. 川上哲治

    参考人川上哲治君) それはそういう可能性もあります。超一流の選手、どうしてもこのチームに対してこの選手が欲しいということになれば、そこへ言われますように獲得合戦が起こると思いますし、また、その人はそれだけの実力があるとすれば試合に出れますから今度は金高の多い方へ行くと、こういうようなこともあると思いますけれども、それは特定の人でございまして、プロ野球全体から見れば本当に限られた者じゃないかというふうに考えます。
  32. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 大変率直なまた興味のある御意見なんですが、結局、監督の立場からしますと、やはりドラフト制度は撤廃しちゃった方がいいという結論になられるわけですね。川上さんは、現在では、やはりドラフト制度撤廃論なんでしょうか、それとも改善論なんでしょうか。
  33. 川上哲治

    参考人川上哲治君) これは、先ほど申し上げましたように、私は、現在機構に入っておりませんので、また経営に携わったこともありません。ですから、各球団のいろいろな利害あるいは事情というものはわかっておりません。ですから、撤廃か改善かという形になれば、私はそういうものに対するはっきりした意見というものは現在のところは言えないと思いますけれども、自分が監督をしまして、チームを強くする、勝たなくちゃいけないというのがプロ野球の監督の宿命でございますから、そうなると、自分のチームのウイークポイントをどうしても補充したいというそういうことが自由になるドラフト制度の撤廃というのはこれは非常にプラスになっていくのじゃないかと、こういうふうに思います。ただしかし、現在、いま三原さんがおっしゃいましたように、選手がドラフト制がない方がプラスだというのは、現在の選手の中にはそうとばかり受け取っていない選手もおります。というのは、先ほども申しましたように、後ろから追っかけられてくる者がいないと、自分の少しの努力でレギュラーの地位を守っていけます。自分の野球生命というのは長いものですから、ドラフト制度もいいなというような考え方をしている人が大分おるようでございます。これはひいては私は技術の低下、内容の低下につながっていくそういう要因も含んでいるのじゃないかと思います。
  34. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 荒川さん、あなたの御意見も身につまされて伺いました、大変御苦労になって……。いま、御心境としましては、当時と少し変わって、やはりルールは必要だというような御意見のようですね。そして、ただこの制度を改善する必要があるというように結ばれたと思いますが、あなたは、どんなふうに改善したらこの選手の球団選択権を生かし得ると思われますか。
  35. 荒川堯

    参考人荒川堯君) どんなふうにというような具体的な意見は私多少は持っていますけれども、言う立場でもございませんし、それは私が言っても変えられるかどうかわかりませんけれども、いま人を使って会社をやっていますから、もちろん三原さんが言ったように安く使う、これは企業家としてあたりまえですし、あの当時の私の立場はいまの会社でいうやはり仕える方という立場ですね。ですから、会社でも労使関係というものがあると同じように、プロ野球でもやはり入る人の心がある。あと、雇う方の球団とその辺の一致点ですね、これがいま多少なりとも選手にちょっと不利じゃないかというような気がしますものですから、もう少しレベルを、選手のことをもう少し考えたドラフト制度というようにラインをもう少し移動さしてもらいたいというような意見です。
  36. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 荒川さんのような経験を私ども伺いますと、非常に純真な少年選手あるいは大学の選手、そういう人々が巨人なら巨人に入りたいという夢を持っていますね、その夢が時として無残に砕かれてしまう。それで、川上さんのお話によると、野球界を去っていくとかそういう現象もあると言うのですが、そうとすると、これは、野球連盟として、やはり野球界にはドラフト制度があり、そのドラフト制度というものはこういう存在理由があるんだと、したがって自分の好む球団には必ずしも行けないんだと、球団選択権というものは無制限でないんだということをもう少しPRしまして、子供たちあるいは選手の卵の成長がスムーズに滑らかに行くように少しPRする必要があるのじゃないでしょうかね。その点、鈴木参考人、どんなふうにお考えになりますか。
  37. 鈴木龍二

    参考人鈴木龍二君) このドラフト制度は別に江川君の問題から端を発したのじゃないと私は思うのですが、ドラフト制度について、一般ファン、社会に対して、ドラフト制度はこういうものであるということの宣伝ですか、それは恐らく足りなかったと思っています。ただ、われわれは、両リーグがあくまで常に車の両輪、鳥の双翼と同じで、勝負は別としまして協約の面についてはお互いが忠実に守り合おうじゃないかという誓いを立てておるだけで、内輪だけでそういう誓いを立て今日まで実行してきたわけで、外に対する宣伝、理解を求めることは、おっしゃるとおり確かに足らないと思っています。
  38. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 そうでありませんと、やはり第二、第三の荒川なり江川というものが出る可能性は十分考えられますね。したがって、やはり、ああいう大選手、超一流の選手がスムーズに野球を続けていけるようなそういう環境をつくっていく必要があるのですけれども、それが制度の問題か、それともドラフト制度の存在意義というものをみんなが理解してそれに協力するということによるのか、そこの問題だと思いますね。もう少し、少なくも制度を変えるということができなければ、その存在理由というものを十分徹底さしていくということが必要なように思いますが、井原参考人、どうでしょう。
  39. 井原宏

    参考人井原宏君) お答えいたします。  プロ野球組織というものは特別なものでございまして、あくまでも共存共栄を図らなければ成り立たない。プロ野球というものは相手がみんなあって真剣勝負をするところでございますから、伯仲したいい試合をしてこそプロ野球の発展につながる。そして、一般社会あるいは青少年の期待にこたえるゆえんだと思います。協約の精神はその共存共栄ということに尽きるのであります。各規定というものはすべてプロ野球組織のためにはなければならないという共存共栄の幅を定めたものであると思います。そういうようなことでございまして、いま各参考人の方々がいろいろと説明なさいまして、それも本当にありのまま正直にそれぞれの立場において述べられましたことは十分に理解が私にはできます。ただ、プロ野球組織というものと、それによって各球団が真剣勝負をする。あくまでも真剣勝負をしなければプロ野球というものは成り立たない。しかも、できれば伯仲した試合を展開していくと、そういうことでありますので、そういうふうな点ですべてを解決していくということであろうかと思います。
  40. 寺田熊雄

    ○寺田熊雄君 ドラフト制度が廃止されてスカウト合戦が自由にできるということになりますと、どうしてもやはり超一流の選手というものに対しては三原さんがおっしゃったように大変お金が積まれて、結局強大な資本力を持った球団が勝利するというおそれがあるのじゃないだろうか、また、どうしても、川上さんのお話があったけれども、超一流の選手というものが一つのチームに集まるのじゃないだろうか、それがゲームをつまらなくさせるのじゃないだろうか、つまり戦力の均衡が必要なんじゃないだろうか、そういうふうないろいろな声を私どもは聞いているわけですけれども、もう一つの私どもの関心事は、現在の制度が選手の生活面にどういう影響を与えるのだろうか。つまり、選手が非常に短命な選手生活なので、将来の生活が保障されるかどうかというような問題があると思うのですね。その点、いまのドラフト制度で選手の生活が十分保障されあとうものであるかどうか、そういう点をお伺いしたいのですが、この点は川上さんとそれから三原さんにお伺いしたいのです。いまの選手の生活面でドラフト制度がどういう影響を持っているかという点、簡単で結構です、時間がありませんので。  もう一つは、選手全部の横断的な労働組合のようなものが必要はないのだろうかということですが、いかがでしょう。
  41. 川上哲治

    参考人川上哲治君) プロ野球の選手は働く期間が短うございますから、どうしてもある程度の契約金という制度が必要でございます。契約金は、一般社会で申しますとこれは退職金に当たります。途中、ボーナスもなければ、何にもありません。ですから、退職金の先取りという形になるわけです。そして、これが、先ほども三原さんからおっしゃられたように、入ったときの契約金をそのまま残しておけるかというと、なかなかそうもいきません。いろいろな形でそれが減っていっておりますから、やっぱりやめたときには非常に苦しい状態に追い込まれていきます。それがためには、やはり契約金もそれ相当の高いものであってもいいのじゃないかと思いますし、また、現行の給料も、その短い選手生活の特殊性というものに見合ったものじゃない。言うなれば、選手の待遇の悪さは赤字だと、もうかっていないというようなことで、そのことが選手にしわ寄せしてきまして、そして選手のそういう選手生活をやめたときの不安が伴うということは言えるのじゃないかと思います。私らは三十七年間プロ野球でユニホームを着てまあプロ野球の発展に尽くしたと思いますけれども、いまもらっておる年金というのは月二万五千円でございますから、何の足しにもならぬと思うのでございます。そういう形で、この年金制度もまだまだこれからいろいろと改善されなければならない問題でございます。と同時に、いまは、選手会というものがありまして、そして選手会の委員とそれから球団関係者、両リーグの会長さんというのを出しまして実行委員会というのをつくっております。それの話し合いというのは持たれております。いま話になっておるのは、もう少し年金を高額にするためにはどうしたらよかろうかというような問題を選手会側で検討中ということを聞いております。
  42. 三原脩

    参考人三原脩君) ただいま川上さんが言われたとおり、やはり選手生活を終えた後の不安の解消という点についてわれわれはもっともっと配慮しなければならない、それば年金額の検討であるということでございますが、私も全く同意見でございます。
  43. 山本富雄

    山本富雄君 各参考人にお尋ねいたします。時間があれば皆さんにそれぞれお聞きをして勉強したいと思いますけれども、限られた時間でございますから全部の方にお聞きできるかどうかわかりませんけれども、端的に、ここで法律の議論をしようというわけじゃない、お気持ちをお聞かせ願えればいい、私もそういうつもりでお聞きをしたいと思っております。  まず荒川参考人にお尋ねをいたします。  先ほど三原参考人から素直にという話が出ましたけれども、非常に素直な率直なお話で、私も野球じゃありません、スキーを長くやっておりましたスポーツマンの一人として感銘したのです。そしてしかも、その当時ドラフトの犠牲者でもあり反逆もしたというあなたの新聞をずっと私は読みましたけれども、三角トレードなんというので問題になった、しかも目を痛められて現在野球から離れている。さぞかし胸の中は無念の気持ちでいっぱいだろうと思うのですね。にもかかわらず、現在に至ってこのドラフト制度を考えた場合に、社会に規則があるように、会社に規則があるように、これも一つのプロ野球界の規則なんだと、こういう観点に立たれた。私はもっともだと思うのです。ただしかし、プロ野球にあこがれる若い人の夢を砕かないでほしい、こういう話があり、まあたとえ話として、デパートへなぜ高い物を買いに行くか、商品を自由に選べるからデパートへ行くんだと、こういうお話もあったわけです。で、寺田委員から、あなたが内容を変えてほしいという具体的な考え方があるかというお話がございまして、それと若干ダブりますけれども、きょうここへおいでになる前にいろいろお考えになったと思うのですね。それからまた、大先輩の三原参考人川上参考人のお話をお聞きになって、それも含めてもう一遍お尋ねしたいと思うのですけれども、ドラフトが現在必要なんだということを理解すると同時に、変えたい、変えなくちゃならない、変えたいとすればどういうところを変えればいいか、お尋ねをしたいと思うのです。
  44. 荒川堯

    参考人荒川堯君) 選手の立場からは、やはり野球界が生きていく上に、ドラフトはチームの均衡化のためにどうしても必要なものだ、これがわかれば選手はこれついていかざるを得ないと思うのです。たとえば去年のドラフトで順位がクラウン。これはいいにしましても、二位が巨人、三位が阪急ですか、この二チームとも去年の両リーグの覇者ということで、そういうチームが上位を引くということは、チームの均衡化、ドラフトの本来の目的ですか、やはりこの大義名分と違っているのではないかというような感じがしますし、それがたとえば最下位から順番に引く、それでいい選手をとっていく、これはチームの均衡化になると思うし、そのように大義名分と一致していれば、これに選手は従わざるを得ないのですね。やはり野球で飯を——飯なんて言っちゃいけませんけれども、御飯を食べるという人にとってはやはり決まりは守らなくちゃいけませんし、そういう大義名分のとおりにやっていただければ選手は従わざるを得ないというような気がします。
  45. 山本富雄

    山本富雄君 川上参考人にお尋ねをいたします。  川上さんの御意見をずっと聞いておりました。実は私も野球の大ファンで、現役時代川上さんの十六番の赤バットも、その後のV9も一生懸命に見ておった一人なんです。しかし、その後そこを卒業されて現在はNHKの解説者になられておられる。巨人軍のユニホームをつけたときなら、選手としても監督としても、巨人だけのことを考えればいい、巨人が勝てばいい、巨人が強くなればいい、こう考えるのはあたりまえの話です。しかし、現在のお立場に立たれ、しかも解説者として全球団の試合をごらんになっているわけですね。また、私どもの地元へもおいでになっているようですけれども、少年野球、この次の日本の野球を背負う少年をみずから御指導なさるために全国津々浦々歩かれておるというお姿を拝見して、敬意を表しているのですけれども、私は、実はかつては川上参考人は選手、監督としてドラフトはない方がいいとお思いになっていたのは当然だろうと思うのです。しかしその後、現在に至るまでのさらに大きな広い立場の経験を積まれて、ドラフトがしかれた当時以前の大混乱がありますね、金さえあれば、物さえあれば。「あなた買います」なんという小説が洛陽の紙価を高めたわけですから、その世間のひんしゅくはプロ野球界がみずから気づいてこういう制度に踏み切ったという経過は私ども読んでいるんですけれども、そういうこと等を考えあわせまして、先ほどお話のあった、スポーツは強くなくちゃいかぬと、こういう御議論ですね。そのとおりです。しかし、ただ巨人だけが強くなっていいというものではないんじゃないかという声もあるわけなんです、具体的に申し上げて恐縮ですけれども。やっぱり勢力が均衡して戦うことがさらにプロ野球を発展させるんだという議論もあるわけなんです。そういう点等を踏まえまして、もう一遍御心境を伺いたいと思います。
  46. 川上哲治

    参考人川上哲治君) 私が申し上げたいのは、撤廃というのが一番私は理想的だと思いますけれども、現行ではすぐ撤廃という形にはならないだろうと思います。しかし、私が本当に言いたいことは、このドラフト制度というのがチームを強くしていく、あるいは戦力の均等につながる切り札ではないんだと、まだほかにいろいろな要素があって、この戦力の均等、それからチーム力の充実というものがあるはずだと、こういうことを言いたいわけでございます。ただドラフトに頼ってやっていけば、そこへ必ず、ドラフトでくじにさえ当たれば結構チーム力が均等して試合だけはおもしろくなるんじゃないかというような形で、チームの、プロ野球のそういう技術向上というもの、あるいは内容充実というものにあるマイナスをかけるんじゃないかということを心配するわけでございます。
  47. 山本富雄

    山本富雄君 川上参考人、野球の話でなくてスキーの話で恐縮ですけれども、私はかつて選手もやりました、監督もコーチもやった。選手を率いて外国へも遠征した。そのときにどうしても日本のスキー選手は勝てないのですね。勝たせたい、強くしたい、それにはもう金でも何でもかけなきゃだめだということを帰ってきてスキー連盟で報告をして問題を起こしたことがあるのですけれども、そういう経験等に徴しまして、たとえばスキーに例をとれば、ジャンプという競技がありますが、人間が飛ぶわけですから、飛ぶのなら鳥の方が遠く飛ぶわけです。走る競技でも犬や馬が走ればその方が速く走れる。人間の競技だと、そしてそこにルールがあって、そこから勝たなきゃだめだと。ですから、日本の選手を強くするのも——かつてぼくらの仲間に猪谷千春さんという人がおりまして、これはすばらしい選手だったんですけれども、残念ながら日本製でないんですよ。アメリカで育っちゃったわけです。特殊な環境で育ったんです。ですから、猪谷さんのあと、日本のスキー界というのは、まあジャンプでもって札幌で日の丸は上がりましたけれども、その後は余りぱっとしない。結局底辺をどんどんどんどん強くしていかなきゃだめなんじゃないか。これがストレートにプロ野球に当てはまるとも思いませんけれども、しかし、やはり巨人さえ強きゃいいんだと、そうすればプロ野球は栄えるんだという暴論もありますよ、感情論もありますが、そうでなくて、いまのようなことのスポーツの本体を踏まえながら考えた場合には、一定のルールがあって、そしてまたさっきあなたがおっしゃったように、ユニークなチーム愛に燃えるような選手をそれこそ球団や監督やコーチが指導してつくっていくべきじゃないかと、こういうふうに考えますけれども、その点いかがでございますか。
  48. 川上哲治

    参考人川上哲治君) そのとおりだと思います。
  49. 山本富雄

    山本富雄君 三原参考人にお尋ねをいたします。  三原さんも川上さんに劣らず赫々たる戦歴がおありになりますし、選手としてももちろんでございますけれども、巨人軍の監督であったり、あるいは例の西鉄をあれほど強くされた。さらに大洋を勝たせたというふうな監督としての、新聞で球界一の知将三原なんて書いてありますけれども、そういう御経歴を経て、現在は球団の責任者と、こういう立場におありなわけなんです。先ほど来のお話をお伺いしておりますと、川上参考人意見、いわゆる精神論、願望論まで含めた、やっぱり選手を強くするためには本当はドラフトはない方がいいんだという意見と、三原参考人の、ドラフトは発足当初からずっとその機能を果たしてきて、現時点でも必要なんだと、こういうふうに受け取れるわけなんですけれども、ただ一面こういう声が非常にあるんですね。ここに荒川さんもおりますし、それから江川さんの問題が出ましたが、かわいそうじゃないか、球団側が少し無法じゃないか、いい選手がせっかく行こうと思っているのにそこへ行けない、何とかならぬかと、こういう素朴な国民の声があるんです。  それから同時に、先ほど川上さんがいろいろお話しになりましたけれども、かえってそのことが確かに新人の契約金の暴騰を抑えたり、あるいはその結果各球団のバランスがだんだん均等化されたという功はありますけれども、強い選手ですね、そしてユニークなチームですね、そういうものがちっとも最近は出てこないじゃないかと、こういう批判も非常に強く一面ではあるわけなんです。そういうことにつきましていかがお考えになりますか。
  50. 三原脩

    参考人三原脩君) たまたま昨年のドラフトにおきまして、非常な人気者の江川君が自分の欲しない球団に指名をされて、それに対する拒否、それについての同情心というようなことだと思うのでございますが、確かに人間は心情的に同情には弱いわけですね。それでルールと同情とどっちだということになれば、やはりある時点ではルールよりも心情の方が強いというのはもう世上間々あることなんです。ですからそういうような心情的なものというものは、あることが起こったときに発生するものですから、そういうものがない状態の、何と言うんですか、そういう特殊な状態が起こらないときにこのルールは正しいかどうかということを判定するならば、もちろんルールは人間のつくったものでございますから、ルールは万能である、ベストであると私は申しませんけれども、ルールというものは少なくとも調和の上に立っておるわけなんです。ですからルールは万能でないわけですから、やじ馬がルールの盲点をつけば幾らでもルールの盲点をつくことはできるわけです。しかし、やじ馬のルールの盲点をついておるとおりにやったら、それで調和が保てるかといったら、まず保ちにくいということが言えると思うのです。ですから、ルールはあくまでも調和の上に立っておるわけですから、まあ心情的には私も江川君にパ・リーグと入ってもらいたいわけです。  ですから、ここで余りきついことを申しまして、ライオンズもまだ江川君の交渉をあきらめておるわけではないわけでして、あるいは江川君は本日のこの委員会の結果を非常に待っておるかもしれません。そういう状況下にあるわけですから、極端なことは申しませんけれども、とにかく心情的に現在ルールよりも心情が勝っておるという野球界の情勢にあることは事実だと思うのです。しかし、先ほども申しましたように、そういう特殊な事情が起こったからこういうぐあいにしてやってくれということではなしに、そういう特殊なことでない状態におけるルールと申しますか、調和と申しますか、それはどこにあるかということを冷静に御批判をいただくといいますか、御理解をいただくといいますか、そういう立場で御検討をいただきたいと、そのように思います。
  51. 山本富雄

    山本富雄君 三原参考人、こういう意見もあるんですよ。いまのお話ですけれども、先ほど川上参考人からも話がございましたが、もうこれはプロ野球というのはただプロ野球だけのものじゃないですね。国民的なスポーツで、荒川さんが国技だと言いましたけれども、王選手が総理大臣から栄誉賞をもらう世の中ですから、非常に国民の関心が高いということですね。ですから球団とそれから選手、それからもう一つファンという名のつく国民ですね。このみんなの気持ちというものが一緒になるのが一番いいわけなんです。これはプロ野球のためにもいいわけなんです。精神的にも物質的にもその三者が、言うなれば利益が享受できるような形の方がいいわけなんです。球団だけのためにドラフト制度というのはあるのじゃないかと、そのために選手が非常に何といいましょうか、割りを食っているんじゃないかとか、あるいはファンの期待に沿わないんじゃないかとか、こういう声も非常に強くあるんですけれども、その点はいかがお考えになりますか。
  52. 三原脩

    参考人三原脩君) まあ特定の選手に対する、何というんですか、ファンの特定の感情というものも確かにあると思うわけでございますが、先ほども申しましたように、野球機構の利益、不利益、それから野球の機構の持っておる社会的な責任、そういうものとそれから選手の立場、選手の扱い方というものの調和点をわれわれはルールにしておるわけでございます。したがって、先ほども申しましたように、選手との交渉を一対一にしないで一対十二に広げると先ほど申しましたようないろいろな弊害が起こるわけでございますが、それを一対三にするとか一対二にするとか、そういうような方法は考えられるかもしれませんですね。しかし、それは何というんですか、いろいろ議論の分かれるところであろうと思いますけれども、改善をしなければならないのではないかということは私どももいろいろ考えておるわけでございますけれども、確かに心情的にはおっしゃられるとおりだと思います。
  53. 山本富雄

    山本富雄君 それでは大石委員の方にバトンタッチいたしますけれども、最後に実行委員長鈴木参考人ですか、一言だけ申し上げたいと思うのですけれども、ドラフトは賛否両論いろいろございます。しかし、いま私が言ったとおりもうプロ野球の問題はプロ野球界だけのものじゃない、国民の非常な関心の的なんだということを十分踏まえられまして、いままでのこのドラフトができ上がったときから今日までの功罪といいますか、議論がたくさんあると思いますけれども、その機能を果たしてきたと思うのですね、果たしてきた。現在でもいきなり撤廃していいかどうかということは問題があると思いますけれども、少なくともこのドラフト以外にもいろいろ問題があります。さっき川上さんから出ましたけれども、年金問題とか保障の問題とか、そういう問題も含めてドラフト問題を中心に再検討する時期に来ているのじゃないかというふうに考えますけれども、いかがでございますか。
  54. 鈴木龍二

    参考人鈴木龍二君) 先ほども申し上げたとおり、このドラフトの改正あるいは云々ということは十二球団の委員会が決めることでありまして、いま御質問のような要旨を実行委員会に十分伝えまして、そして善処したいと思っています。
  55. 山本富雄

    山本富雄君 終わります。
  56. 大石武一

    大石武一君 スポーツの問題を、きょうはプロ野球がテーマですが、そういう問題をいわゆる政治上やあるいは行政的に取り上げて云々するということは、私は余り好ましいと思いません。しかし、きょうはとにかくこのような法務委員会といういかめしい名前の委員会でこの問題が取り上げられましたし、また、せっかく開かれた以上は、いろいろな話し合いをして、やはり国民にいろいろな問題を解明する、あるいは関心を持たせるということも無意味ではないと思いますので、私もここへ出てまいりまして、日ごろ考えておりますことを疑問点を申し上げたいと思います。時間がありませんから、疑問に思っております三つの点だけをひとつ率直に申し上げまして、お時間があれば御返事をいただきたいと思います。それからこれから私の申しますことは、あるいは偏見が入っているかもしれません。あるいはいろいろな過ちがあるかもしれません。そういうものについてはひとつ後で御批判をいただきますし、お許しもいただきたいと思います。  ただ、私は野球が好きなんです。高等学校で野球をやっておりましたし、また残念ながら現在私はプロ野球では実は巨人ファンなんです。というのは、川上哲治、王貞治という優秀な選手が好きなために巨人軍が好きになったということになっておるわけでございます。そういうぐあいで、プロ野球がますますよくなりますように心から願っておるわけであります。  私は、プロ野球はいわゆる国民のスポーツではないと思います。スポーツというものは、自分自身で実行して、あるいは健康になるなり、楽しみを生むなりすることがスポーツの本質だと思います。そういう意味では、このプロスポーツは選手自身にとりましてはスポーツではありましょうけれども、一千万、二千万という日本の国民のファンにとりましてはスポーツではありません。私はいわゆる興行の一種、娯楽であると考えます。しかし、たとえ何であろうと、このような数千万の人に大きな影響を与えるものでありますから、これが健全に楽しいものに発展してもらわなきゃなりません。そういう意味で、私はプロ野球は本当のスポーツであるとは思いませんけれども、健全に発展してもらいたいと願っております。  その中で一番私が気になりますのは、各球団は十二ありますが、その球団がおのおの球団として自主的な活動なり努力ができるような将来のあり方になってもらいたいということです。残念ながら、現在は、だれが聞いてもわかるように、読売巨人軍であるとか、ロッテオリオンズとか、みんなどこか営利会社の名前が一番上についておる。そればかりではない、日本ハム球団とかなんとかといういわゆるニックネームも何もない店そのもの、企業そのものの名前だけのような球団もあるほどです。これも決して法律には抵触してはおらないでしょうけれども、私は余り望ましいと思わない。もう少し自主的に、本当に国民プロ野球を楽しめるような、やはり自主的なものであってほしいと思います。残念ながら、これから述べるドラフト制度にしても何にしても、やはりこれはそのような営利会社のコンマーシャリズムによってすべてが支配されておると、これは私の偏見かもしれませんけれども、私はそのような気がするんです。いま日本には二千万、三千万と野球のファンがいる。こういうファンを土台にすれば、たとえどのように人気のない野球チームだって、三十万や四十万の基礎的な協力者と申しますか、出資者と申しますか、集め得ると思うのです、そういう努力をすれば。そのようなまともなファンを中心として球団は自主的に思う存分に活躍ができると思います。でありますから、将来は、いますぐと言っても不可能でありますけれども、せめていろいろな会社の名前なんか乗っけなくて済むような、そのような自主的なものにひとつ発展していただきたいというのが一番の願いであります。  次はドラフトの制度でありますが、これは川上哲治さんの意見に私は全く賛成であります。まず何といっても、これから学校に入るとかなんとかというならば、それは人間の発展の土台なんです。ところが、学校を出てこれからいよいよ実務に入って働くというのは、人の一生を左右することなんです。その場合に、単なるくじ引きによってその運命が左右されるなんていうのは余りにも人権を無視していると私は思います。そういう意味では、くじ引きなんていうのは断然やめなければならぬと思います。ドラフト制度もどういう理由で起こったか、またどなたからも御質問もありませんし、私も聞く時間がありませんからあえて言いませんけれども、大体見当はつきます。コンマーシャリズムによってできるだけよけいな契約金を出さなくて済むように、そのような方針のもとにつくられたのではないかと思います。しかし、その制度はすでに破られている。いわゆる新聞紙上に出ているように、一千万円の限度に契約金を抑えることにもとはあったと言われている。それがいまとっくに破られて、さっきの三原参考人の話にも一億円とか二億円というような話も出ている時代です。こんなものはもう意味がないんです。契約金というのは私は当然あっていいと思う。いいものはいい。ただし、その契約金を、わけがわからないように、まあ税金の問題かどうか知りませんが、わけのわからないように、新聞社の憶測だけに任しておるところに私はいろいろな間違いがあると思う。契約金は契約金ですから、堂々と何千万円でも結構です、出せるなら。それに出して、そのかわりそれを明確にして社会に示せばいいんです。妥当な税金も払えばいいんです。そうなればむずかしくありません。それ以外のことにつきましては全く川上さんの意見に私は同然です。  それから第一、さきに申しましたように、プロ野球ですから、娯楽ですから、強くなければ国民は飽きてしまう。ですから、強くなってもらう。それにはやはり選手が情熱を傾けて働けるように、自分の行きたいという球団に行かせることが一番大事なんです。情熱を失ってはいけません。一番大事なことは、情熱を持って真剣にプロ野球をやるということが一番大事なんです。そういう意味でこのドラフト制というのは十分に反省してもらいたいと私は考えます。  三番目には、これは直接関係がありませんが、川上さんには関係がありましょうけれども、プロ野球内容を向上してもらいたいと思います。一例を挙げますと、王貞治選手はしょっちゅうフォアボールで歩かされます。それが、いいですか、二塁、三塁にランナーがいて、王の一発で逆点するというようなときならば、あるいはフォアボールで送ってもこの作戦は結構だと思いますけれども、ランナーも何もいないときに初めからフォアボールで送り出すなんていうのは言語道断です、これは。こんなことは本当にプロ野球の精神に反します。いいですか、もう少しひきょうでないように、正々堂々と、王がホームランを打つか、三振に討ち取るか討ち取られるかというのがファンの一番の楽しみなんですから、そういうように正正堂々と、余り高等な作戦は効を奏しないですな。内容をやはり娯楽的にも高尚な楽しめるものにしていただきたいということをあえて希望するわけでございます。あと、時間の都合で御答弁があってもなくても結構でございます。  それからもう一つ、どなたかが江川、江川とかと個人の名前を盛んに挙げられましたが、こんなことはやめてください。きょうは何も江川君に関係がない、こんなことは。ドラフト制度一般の問題でやっているんですから、個人の問題でありませんから、余り個人がどうしているのだとか、どうだこうだとかこれはおっしゃらない方が結構だと思います。
  57. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 答弁は要りますか。
  58. 大石武一

    大石武一君 終わりました。答弁は要りません、時間がないでしょうから。
  59. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) それでは、ただいまの質問に対しましては答弁を省略いたします。
  60. 白木義一郎

    白木義一郎君 本日は、お忙しいところ、ありがとうございます。  きょう、私は、久しぶりで往年の赤バット川上ホームラン王と対決するつもりで何を投げようかと非常に考えてまいりました。私の持ち味である変化球からというつもりでこのグラウンドへ参りましたが、先ほど上林捕手から強力に直球のサインが出まして、幾ら首を振ってもサインを変えないということで、やむを得ず直球で勝負をしたいと思います。彼いわく、おまえは昔哲ちゃんと渡り合ったときに変化球で討ち取ったのか直球で討ち取ったのか、おれのデータでは直球だと、こう言われまして、それもそうだというようなことでこれから若干のお尋ねをしたいと思います。  それに先立ちまして、先ほど参考人としての川上さんから、日本のベースボールの世界的発展という大問題に対して理想的なお考えを伺いまして、私も非常に意を強くしている次第でございます。アメリカに追いつけ追い越せという大理想を掲げた以上は、ひとつこのたいまつをいついつまでも燃やし続けて力走をしていただきたいと思います。なるほどあなたがおっしゃったとおりに、その大理想を目指すならば、このドラフト制度は非常に障害になるということは私も納得いたします。しかし、現実問題としてここまで国民的スポーツとして関心を持たれるようになったプロ野球の発展から考えました現実において、若干の改善が必要であろうというところで悩んでおられるということも伺いました。しかし、理想を目指してあなたは連日全国の少年ファンに対してその理想達成のために努力をしていられるということもまことにありがたく、かつ大切なことだろうと思います。私は私なりに、これだけ国民的課題、関心を持たれるその陰には、野球をやりたくてもなかなかグラウンドがないと、朝四時、五時に起きて占領しないと好きな野球ができないという、こういう事態もわが国では問題になっておりますので、私はその方で応援をしていきたいと、こういうふうにも思っております。  そこで、鈴木参考人にお尋ねしますが、このドラフト制度の制定当時に選手側の意見が十分取り入れられたかどうかという点についてお尋ねします。
  61. 鈴木龍二

    参考人鈴木龍二君) ただいまのお尋ねですが、これは率直に申し上げます。選手側の意向は取り入れておりません。
  62. 白木義一郎

    白木義一郎君 その後契約金の上限が撤廃されたと。最初は、この制度の中に契約金に制限が加えられていたと伺っておりますが、その後改善されましてこれが撤廃されたその理由はどんな理由からだったでしょうか。
  63. 鈴木龍二

    参考人鈴木龍二君) 契約金は、御承知のとおり、当時ドラフト制をしかれましたときは一千万円でございました。そして、四十九年か、あるいは間違ったかもしれませんが、四十九年か八年に一千万円という上限を撤廃いたしました。その理由とか根拠というものは、物価の騰勢につれまして、そのほかの理由なくしてただ物価騰勢ということに順応するためでしょう、外されたわけであります。
  64. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうしますと、この制度は諸情勢によって改善をされる可能性があると、こういうように伺うわけですが、次に、これだけ問題になったこのドラフト制の影響について、連盟当局では、その後、実行委員会等でファン各位の要望にこたえるために真剣な討議を加えられたことがあるかどうか、お伺いします。
  65. 鈴木龍二

    参考人鈴木龍二君) ドラフト制度そのものについては、まだ実行委員会には提議されておりません。が、しかし、先ほど当初に申し上げましたとおりに、今日皆様からいろいろ御親切な御意見を賜りまして、私の考えとしては、また恐らく十二球団の人も了解してくれると思いますが、次の実行委員会に本日の会合の次第を報告し、そして十二球団の意向によって方向を定めたいと、こういうように考えております。
  66. 白木義一郎

    白木義一郎君 次は荒川さんにちょっとお尋ねしますが、このドラフト制度の影響による一年間のブランクは選手としてどんな影響があったか、もし思い出せばひとつ……。
  67. 荒川堯

    参考人荒川堯君) ブランクと申しましたら、一年間野球から離れる、野球から離れるというより勝負の試合から離れるということは、自分ではわからなかったのですけど、一年たってみて、まあ走ったり打ったり投げたりという練習はしていたのですけれども、実際勝負と離れた世界の筋肉というのは違うのだなと、一年間休んだおかげで——おかげでと言ったらおかしいですが、自分の責任なんでしょうけど、当時ヤクルトに入ったときに、ここにおられる三原社長が監督だったんですけど、いろいろなところをけがした、あせると。ドラフトに反対していろいろ生意気だと言われる、自分であせる、けがする、休む、あいつは弱いと、やはり自分でがんばる、というような悪循環で大変体を方々痛めたということを記憶しています。
  68. 白木義一郎

    白木義一郎君 次に、ファンの立場からこの問題を考えなければならないのじゃないかと、このように思います。ということは、私の周りにもこの制度に賛否両論です。大変やかましい。ということは、それぞれ思惑があって意見を出しているわけですが、その人たちの考えの奥には、野球が好きでたまらないと。そこで、ここ何年に一人の逸材と言われる江川選手が一年間恐らくユニホームの姿が見られないのじゃないかと。彼が先輩の選手にどれほど挑戦していくか、あるいはまた各チームの選手が江川何者ぞというわけで獲物に向かっていく猟犬のように恐らく挑戦していくであろう、それをファンは見たくてしようがないと。しかも、銭のとれる選手、それを一年間凍結というか、お蔵へしまっておくということについて非常にさびしさがあるのじゃないか。こういうことから考えますと、この制度を社会の変革等によって改善していくのは当然なことでございますが、何とか現状で、お客様は神様だと、その神様の要望にこたえる線が考えられるのじゃないか。三原さんも、できればパ・リーグにと、こういう御意見もお述べになりましたけれども、われわれはできれば選手としてユニホームを着て、ファンとしてあるいはテレビのブラウン管で見たいというそれぞれの考えが意見の奥底に野球ファンとしてあるのじゃないかと思います。その点、どうも連盟当局は私から言わせると少しお客様を無視しているような点があるのじゃないかと思います。その点ひとつ今後の御検討を願えればと、このように思います。  御承知のとおり、これだけ関心を集めるまでに私の古巣であるプロ野球が発展したということは非常に望ましい問題です。この制度が善であるとか悪であるとかという位置づけ以前に、大多数のファン、大多数の国民が納得する線を真剣にひとつ関係者の皆様方で御討議願って、そして楽しく愉快なスポーツであるといういわゆる川上さんの望む理想の方向へ進んでいかれるように心から願望をいたしまして、私もルールを守って、わずか十三分という与えられた時間でございますので、ルールを守るのがスポーツの鉄則でございますので、残念ながらこれで私の質問を終了いたします。
  69. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 答弁は要りませんか。
  70. 白木義一郎

    白木義一郎君 ルールを守ると申し上げて、時間をオーバーしてはいけないと思って……。
  71. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) いいですよ。
  72. 白木義一郎

    白木義一郎君 委員長がお許し下さるそうでございますので、この問題については鈴木さんと三原さんのお二方からひとつ御答弁を願えればと思います。
  73. 鈴木龍二

    参考人鈴木龍二君) 江川君の姿をマウンドで見たいという本当に一般のファンの方の希望の声は私は知っております。しかし、先ほど白木委員の申したこと、全くルールを守ることは、これはプロ野球においては絶対必要なのでございます。江川君の問題についてルールを守るということは、指名されたクラウンに行くということが一番正しいのでありまして、他の十一球団がこれを犯し、あるいは変な行動をすることはルールの守られないことでございまして、本年の十月のいつごろですかまでは江川君を右にするか左にするか、これは江川君の意思ということとは別でございます。プロ野球として右にするか左にするか、このルールを守るということは、十月の幾日、いわば指名制度の解禁ですね、その十月までは他の十一球団はこれは絶対に触れてはいけないのでございます。ということに野球協約はなっておりますので、われわれがもしそれまでに江川君の姿をプロ野球のグラウンドで見ることがあれば、これは全く幸いとすることでございます。しかし、ルールを守る上においては、ほかはもういかなる方法があっても手を出すことはできませんので、一にかかってクラウンの熱意にありますから、どうぞ御承知を願いたいと思います。
  74. 三原脩

    参考人三原脩君) いま鈴木会長が申されましたとおりでございまして、私どもが容喙をする余地はルールではございません。あるとすれば、私は、夜、ライオンズの中村オーナーのところへ、どうなっておりますか、こういうぐあいにしたらどうですか、ああいうぐあいにしたらどうですかとルール違反すれすれの助言をするのが精いっぱいでございます。先ほども鈴本会長が言われましたように、江川問題解決のかぎはライオンズが握っておって、他の十一球団は全く手出しはできないという状況でございます。
  75. 白木義一郎

    白木義一郎君 江川君をどうのこうのじゃなくて、ファンです。そこのところをひとつごしんしゃくをいただけるのかどうなのかということなんです。ファンあってのプロ野球なんです。ファンは神様だということ。神様が何とかならないかと——わかりますよ、皆さんのおっしゃっていることは。さすがの川上君でも具体案はないはずですから、いますぐ個人としてね。そこをお客様のファン、今日あるのは全部ファンのおかげですよ。神様のおかげです。その神様がとにかくもったいないじゃないかと、一年間お蔵へ入れておくと荒川君も言ったとおりに相当質が低下すると、われわれはいま見たいんだと言っているんです。何とかならないかと。それを、いやルールがと。ルールは皆さんでつくったんです。選手の意向は入っていないとおっしゃたんです。そうでしょう。ですから、今日の隆盛を築いた大功労者の鈴木龍二先輩も、ここでひとつなぜて、なるほどと、さあまたグラウンドへ行こうというような方向へひとつ何とかというお考えを持っていただけないものかどうかと、こういうことなんです。
  76. 鈴木龍二

    参考人鈴木龍二君) まことにファンの皆さんに本当に申しわけないと思っております。申しわけないと思いますけれども、その前にやはりルールというものが現在しかれている以上は、厳然として守りたいと思っております。
  77. 内藤功

    内藤功君 プロ野球の健全な発展を望むという私どもの方の党の立場からも、私自身がプロ野球が職業野球と呼ばれておった当時からの非常に熱心な関心を持っている人間の一人であるという点からも、ぜひ若干の質問をしておきたいと思うのです。  私は、基本的には野球というものは選手というものが基本であって、この選手の意思、選手の待遇、選手の心構え、やる気というものが、やはり見る者から見ても野球を非常におもしろくさせるものだと思う。そういう観点で御質問をしたいと思うのですが、まず荒川さんにお尋ねいたします。  さっきもあなたがどのようにして小さいときから巨人軍に行きたいという気持ちを持っていたかというあなた自身のお話は伺ったのですが、やはり小学校から中学、高校、大学というふうに野球の厳しいいろいろな練習、試練に耐えていくというのは、プロ野球の選手になったらば自分はどのチームに行きたい、どの球団に行きたい、そしてできればポジションはここかここかと、まあ一つではないにしても、一つか二つの選択の希望を持って、それでみんなプロ野球選手を志望してくるのじゃないかと私は全くの部外者ですが考えているんです。たとえば、監督がどういう人で、チームカラーはどうで、歴史と伝統はどうで、それから先輩、後輩の人的関係はどんなものだと。いまの若い人はわりと情報がありますから、そういうこともよく調べて、単なる子供のあこがれというのじゃなくて、かなり研究して自分の志望チームを一つあるいは何個か決めていくのじゃないかと、私はそう推察をするわけなんですよ。ただ、その推察は、われわれは素人ですから、それが間違いであってはいけないというので荒川さんに確かめたい。荒川さん自身のはもう聞きましたから、荒川さんのお友達、まあ同僚というか、自分のおつき合いしている範囲、知っている範囲でどうであろうか、どっちが多いのか。ただプロ野球の選手になればいいというのでみんなやっているのか、プロ野球ならばこのチームのということでやっているのかという点です。
  78. 荒川堯

    参考人荒川堯君) いろいろな友達がいまして、私の場合は巨人でしたけれども、ほかの友達で、たとえば阪神と、たとえば広島と、たとえば中日という方もいます。もちろんチームにあこがれて行く人もいると思うのです。もっと現実的になれば、あそこは経営内容がいいから、あそこに行ってレギュラーになったらほかのチームの三割バッターよりたくさんお金がもらえるのではないかというようなごく割り切った人もいると思います。私の知っている範囲ではそういうところだと思うのですけれども、先ほどから言っているように、やはり野球を商売にして生活していくのですから、たくさんのお金をもらった方がいいし、まあ待遇のいい球団に入りたいというような意見が周りにはありました。  以上です。
  79. 内藤功

    内藤功君 今度は鈴木さんに伺いますが、いま白木元投手から大分豪速球が投げられましたが、私がお聞きしたいのは、三月中に実行委員会などで検討したいという御趣旨であります。そこで、検討といいましても、やはりいろいろな方向があると思うので、たとえば、いまの日本のドラフト制度というのは、本人の意思、本人の選択の自由というものについてはこれは尊重しているとは言いがたいことは、もうみんな大体わかっていると思うのですね。これをやはり受け入れてやる、選手の希望というものは受け入れてやるという合理的な道を探すという方向で検討するのだと思うのですね。それとも、この際、これは球界全体の発展のために選手個人の意思なんというものはそれほど考えるべきじゃないという考え方なのか、あるいはドラフト制度というものの中でこれから育ってくる若い人たちは、もうそのドラフト制度という中にすっぱり埋まっているからして、若い人はそんなに矛盾を感じないだろうという認識の上にいろいろ検討するのかということによって、ずいぶん違ってくると思うのですね。余り詰めてしまうと答えがやりにくいかもしれないけれども、そこらあたりの選手個人の意思を尊重する方向で検討したいのだということではないのですか。そうあるべきだと思うのですが。
  80. 鈴木龍二

    参考人鈴木龍二君) どうもこれは非常にむずかしい答えでございまして、私は、先ほども申し上げたとおり、私の現在の立場からいきまして、御質問の点にお答えするということはちょっとできないと思います。ということは、私が余りに球界の古ダヌキになっておりますので、言うことが球界に及ぼす影響が相当あるんですね。ですから、この際、本当に個人的には自分にも意見はあります。ありますけれども、それが決して球界で個人的な鈴木の言葉だというふうにとりませんものですから、この点だけは御容赦願いたいと思います。
  81. 内藤功

    内藤功君 お立場もありますから、私の意見を正確に報告してくださることを期待して、次の質問です。  川上さんに伺いたいのですが、日本の野球は、特に攻防、投打、走守の各面、技術面あるいは戦術面において、大リーグに学ぶところが非常に多いと思うのですが、肝心な大リーグの一番尊重している選手の意思の尊重というか、人格の尊重、あるいは待遇、あるいは移籍の自由というような問題について、また、勤労者だと思うのですね、勤労者としての選手の立場や人格を尊重する、それから選手会というものをいろいろな交渉とか選手会の団結を尊重するというような点では、この大リーグから学んでいる点が率直に言ってきわめて少ないのじゃないかという感じがするわけなんですよ。最低年俸なんかもやっぱり大リーグは決めておりますよね。それから退職一時金もちょっとけた違い、額はここで言いませんけれどもね。それから健康管理、医療保険の点なんかどうなのか。それから退職後の年金、それからアメリカの大リーグはたしか食事手当、キャンプのときは幾ら、ロードゲームのときは幾らというふうな食事手当というものもついている。反面、契約金は日本はうんと高い。これは退職金の前取りだと言うけれども、ちょっとこれは納得できないので、退職金はきちんと出して、年俸もきちんとやっぱり出すというのが正しいやり方だろうと私は思うのです。  そこで、前置きはそのくらいにしまして、私は保留権の問題をちょっと聞きたいと思う。保留権というのは、球団の選手に対する一種の人格的な支配権を意味すると私は思うのですが、もしドラフト制度を存続するという立場に立つのであれば、無条件じゃいけないので、一たん自分の意思に反してA球団に入ったけれども、一定期間そこで仕事をしたならば他の球団に移る自由というものを保障してあげるくらいは、仮にドラフトを存続するというなら、そのくらいはやっぱりすべきじゃないかと思っておるんです。たとえば、一九七五年にたしかアスレチックスのハンター選手、それから七六年にはセントルイスカージナルスのフラッドという選手が、これは大リーグの調停委員会あるいは連邦裁判所にも提訴しまして、そしていわゆる選手の移籍の自由というのを主張して裁判をした。その結果、七六年に、大リーグでは、六年間ある球団で働けば、あと一年間はオプションイヤーとして八〇%の年俸で働くとその次の年に自由に移籍ができるという、そういう協定を大リーグでつくっていますね。私はすべて大リーグ並みというのじゃないけれども、それにせめて近づくように、関係者の皆さん、選手個人もそうですが、やっぱり努力をしていくということが必要じゃないかと、こう思うのですが、川上さん、いかがでしょうか。また、私の大リーグの知識がもし間違っておったら直してください。
  82. 川上哲治

    参考人川上哲治君) ただいまの御質問ですけれども、実は日本にもこのアメリカの方式というものがあったわけでございます。これはA級十年選手、B級十年選手という十年選手の制度がございまして、私はA級十年選手でございました。これは、十年勤めたら自分の意思でどこへでも行ってよろしいと、もちろんここで契約金ももう一度取れると、こういう制度があったわけでございます。B級十年選手は、自分の意思ではなくてトレードによって他のチームに移されたと。それでもやはり十年選手という特典を与えると、こういうような制度があったのでございますけれども、こういう制度は、言うなればプロ野球の発展というものに非常にマイナスになるということで、これはいつの間にか、何年かわかりませんけれども、記録を調べればわかりますけれども取られていったわけでございます。いまおっしゃったように、いま現在では、どうしてあのいい制度を取ったのかなと、世の中はだんだん人権問題というものが盛んになってくる時代に惜しいことをしたなという話も私は聞いております。  そういう面で、いまおっしゃいましたように、アメリカはたしか五年だとかという話じゃないかと思いますが、あと一年勤めて後は自由と、こういうことらしいのですけれども、私ももう少しそういう面で再検討をする。選手の犠牲と言ってはなんですけれども、そういうものだけで野球をやっていくというのじゃなしに、みんな経営者も経営努力をやる、と同時に選手も自分のプロ野球選手としての職業意識、これをしっかり持って自分の仕事に打ち込むと、こういうようなものが出てくると本当の日本のプロ野球の発展につながっていくのじゃないかと、こういうように考えます。
  83. 内藤功

    内藤功君 最後の質問ですが、もう一回川上さんにお伺いしたい。  それは選手会の問題です。選手会というのは、現状は親睦会のようになっておるんですか、それとも、ユニオンのような、いわゆるみんなの要求や不満を代表者が取り次いで、場合によったら交渉するというふうになっておるんですか、その点と、私は、あり方としては、また大リーグの例を出しますが、あそこには選手会があって顧問弁護士がおるんですね。アービン・ミラーという人がたしか顧問弁護士だと思う。たとえば選手の宿舎の雨漏り一つもこの顧問弁護士がオーナー側と交渉するというふうなシステムになっているやに聞いておるんですね。さらに、選手会は年間に十数回交渉を代表者が持っている。日本の場合は一、二回で、それもたとえば雨が降ったときの素振りをやる場所をどうするかとかいうような問題を決議しているというふうなことも聞いておりますが、少しもこれは労働組合をつくるつくらないはみんなの自主的な問題ですが、選手会というものを、そういう不満を吸い上げ、要求を聞くような団体として尊重していくという風習がつくられていくことが非常に望ましいのじゃないか。  私は、きのう実は役所に電話して、プロ野球の選手の方が健康保険やあるいは税金はどうなっているかと聞きましたら、税金は個人事業者としての税金だと。驚いたですね。あれが個人事業者であろうか、ちょっと奇異な感じです。それから健康保険は国民保険だというようなことを聞いたんですが、私はこれはやっぱり勤労者というふうに割り切って、そこらあたりを扱った方が人間関係はうまくいくし、球界の発展のためにもいいんじゃないかというふうな感じを持つのですが、その点を伺いまして、私の質問は終わります。
  84. 川上哲治

    参考人川上哲治君) 選手会の問題でございますけれども、実際この選手会というのは、私らまだ現役のときに、これは実際を言いますと、連盟の方から、これからは選手会とそれからオーナー側、要するに経営者側と力を合わしてやっていかなければいかぬ問題だから、ひとつ選手会をつくれと、こういうような形で発足した選手会でございます。現在でも選手会を入れた実行委員会というのがありまして、これは随時実行委員会に選手の委員を入れていろいろな問題を討議する、と、こういう形でいまやっておるわけです。ただ、一般の労働組合という形のふうに言われて、そういうものをどうだということでございますけれども、実際言いますと、選手は自分が自分の技術をやっていく個人何といいますか事業所得者でございます。ですから、これはそういうことになりますと、非常にプロ野球の基本的なものから検討を加えなくちゃいけませんので、そういう面で、私は法律的なことを全くかいもく知りませんものですから、こういう面についてはお答えを避けたいと思います。
  85. 円山雅也

    ○円山雅也君 私がいただきました時間が十分でございますので、できるだけ多くの方に御意見を聴取したいと思いますので、お答えもなるたけ簡単にお願いをしたいと思います。  まず、井原さんにお尋ねをいたします。  ドラフトの契約金の制限が撤廃になったのは、昭和四十九年の九月七日でございますね、正確に。そうしますと、それ以降は、いわゆる交渉権を持った球団が新人選手に対して自由に契約金は決めてよろしいというふうに理解してよろしゅうございますか。
  86. 井原宏

    参考人井原宏君) お答えいたします。  契約金の制限がありましたのは、やはり、非常に年々高まっていく過当競争、つまりこういう事情から出発することでありますが、一人の選手に多数の球団が集中して契約を熱望すると、そのために競り上がりが起こってくるということであります。ドラフト制度になりますと、大体はそういう現象はなくて、一対一でございます。ですから、その球団の出せる範囲……
  87. 円山雅也

    ○円山雅也君 ちょっと待ってください。私が聞いているのは、一対一の間では自由にできるんですかと、制限がないんですかと聞いている。それだけです。
  88. 井原宏

    参考人井原宏君) 全くございません。
  89. 円山雅也

    ○円山雅也君 はい、わかりました。  次に、井原さんにもう一点お聞きします。  私の手元の資料によりますと、昭和四十年に始まったドラフト制で指名を受けた選手が千三百三十一名、そして、入団契約をした者は昨年度を除きまして七百六十七名、つまり入団率六〇%、ですから拒否した者が四〇%、つまり半数近いということですが、これは確かでしょうか。
  90. 井原宏

    参考人井原宏君) 拒否したためにプロ野球に入らなかったとか、進学したいから入らなかったとか、または社会人野球その他の会社に入ったために入らなかったとか、そういう点によって統計がいろいろと細かく出るわけでありますが、それにつきましては相当に拒否をしている。アメリカが今回一月にやりましたのでも二百人ぐらい拒否されたという統計が出ておりますが、これもいま申しましたようないろいろな本人の事情があってのことでございますから、いまおっしゃいました統計は必ずしも拒否したということは言えません。
  91. 円山雅也

    ○円山雅也君 それからこれも確認でございますが、入団を拒否しますと、通常、原則は一年間プロ入りはだめ、それから社会人野球に入った場合には原則として二年間だめ、高校生は三年間だめ、プロ入りができないと、これも確かでございますか。
  92. 井原宏

    参考人井原宏君) ちょっともう一度おっしゃってください、一番最初の……。
  93. 円山雅也

    ○円山雅也君 入団を拒否いたしますね、指名された選手が。そうしますと、社会人野球に入った場合には二年間、高校生の場合は三年間になりますね、それから社会人野球にも何にも入らない場合は一年間、プロ入りができないという規則になっておりますか。
  94. 井原宏

    参考人井原宏君) 高校生の場合は、三年間というよりは、普通在学している一年、二年というものは全然ドラフトの対象にならないわけです。ドラフトしちゃいかぬのです。学校に在学中の者は、どの学校——大学、高校、中学どれでも卒業しなきゃいかぬということです。
  95. 円山雅也

    ○円山雅也君 理由はいいんです。結論だけをお聞きしているんです、私は。ほかの方へ行っちゃうんです、答えがね。結構です、その問題は。ありがとうございました。
  96. 井原宏

    参考人井原宏君) いま確認とおっしゃいましたので……。
  97. 円山雅也

    ○円山雅也君 次に、川上さんにお尋ねしたいと思います。  こういう論議があると思うんです、契約金の制限がなくなっちゃったからあと今度ドラフトは球団の均衡を図る意味でまだ必要なんだという。ところが、その球団の均衡を図る必要という意味がどうしてそんな必要があるのかというと、何か均衡を図らないと野球がつまらなくなってプロ野球自体が滅びてしまうのじゃないかという議論があるのですけれども、その点についての御意見を……。
  98. 川上哲治

    参考人川上哲治君) 確かにその理論があります。そういう方向がドラフト存続の意思だと思います。
  99. 円山雅也

    ○円山雅也君 川上さんのお考えでは、本当にプロ野球はだめになっちゃいますか。
  100. 川上哲治

    参考人川上哲治君) 私はそう思いません。これはやはりお互い同士に自分の技術の眼それから情熱というものを傾けて新人を採ってきてそして自分の枠の中でやっていくと、こういうようなチームづくりこそ私は繁栄につながると思っています。
  101. 円山雅也

    ○円山雅也君 もう一つ川上さんにお伺いします。  三原さんのお考えだと、これは後で三原さんに確かめるのですけれども、契約金が非常につり上がったり、スカウトが暗躍するから、そのためにドラフトが必要なんだというふうな御意見のように承りますが、じゃ、川上さんの御意見として、ドラフトをなくした場合には、契約金がまた再びドラフト制度が発足した当時のように暴騰したり、スカウトが暗躍すると同じ状態に戻るのだというふうにお考えでしょうか。
  102. 川上哲治

    参考人川上哲治君) これは、こういうドラフトの体験を経て、それから今度ドラフトがたとえばなくなったということになれば、きっとこの体験は生かされると思います。と同時に、そのチームの方針によってむちゃくちゃに契約金を出したら、球団を経営していくのはむずかしかろうと思います。そこへおのずから一つの節度ができてきやしないかと、こういうふうに考えます。
  103. 円山雅也

    ○円山雅也君 今度は荒川さんにお聞きします。  あなたは、あなたがドラフト会議にかけられる以前からもう巨人入りをはっきり明示されておったようで、そうしますと、たまたまあなたの場合は他球団が指名しましたが、その他球団は、あなたが巨人に入りたいんだと、おれは巨人でなきゃいやなんだということをわかっておりながら、そういうわかっておりながら前提でもってあなたを指名したということになりますか。
  104. 荒川堯

    参考人荒川堯君) 直接にはそういう前提の交渉はいけないという決まりになっていますし、私、直接には話したことはございませんし、まあ新聞紙上では巨人以外は行かないとか巨人に入りたいということは言っていたと思います。個人的には私は言った覚えはございません。
  105. 円山雅也

    ○円山雅也君 これは時間がもうなくなってまいりましたので、三原さんにお尋ねをいたします。  先ほどから、私の理解では、三原さんの意見は、スカウトが暗躍したり契約金がつり上がったりして非常にいろいろな社会問題になったから、これがドラフトを必要とさしておるんだというお考えのように私は理解しました。そこで、いま、昭和四十九年に契約金の制限が撤廃されたということを前提にしても、やはり御同様の御見解でしょうか、その点をちょっとお尋ねします。
  106. 三原脩

    参考人三原脩君) 契約金が撤廃されましたのは、税法上の問題があるわけなんです。従来は、契約金を均等払いにして税金を納めてもよろしいというようなやや寛大な処置がとられたわけですけれども、国税局長の方から、そういうことではいかぬのだと、その年度に受け取ったものはその年度のうちにその翌年の三月の十五日までに税金を納めてしまいなさいと。従来はそれを分割にしておったわけなんです。たとえば三千万円受け取ったといたしますと、それを四年とか三年とかそういうふうに分割いたしまして、そしてその分割された金額の上にその年度の参稼報酬を加えて、そうしてその翌年の三月十五日までの税金の対象額にする。そうしますと、かなり節税をできるわけです。そういう方法が閉ざされたわけです。したがって、その上限を外すということが起こってきたわけでございます、事情は。
  107. 円山雅也

    ○円山雅也君 ちょっとお答えが私の聞いたことと違うように思いますけれども、時間の関係で結構です。  最後に、鈴木さんにお尋ねをいたします。  どうもドラフト制というのは、先ほどからいろいろな委員の方の御指摘を総合してもおわかりと思いますけれども、球団内部の事情または球団内部の努力不足、企業経営態度とか、そんなものの欠点を第三者であるこれから入ろうとする新人の方へしわ寄せをして、新人の犠牲において球団内部の安定を図るとか、そういうようなふうに思えてならないのでございますけれども、この点について御意見が言えますか。
  108. 鈴木龍二

    参考人鈴木龍二君) ドラフト制を三十九年に約半年十二球団が集まりまして検討しました。もちろんその中には若干ドラフト制をしくことに反対の人もおりました。若干です。が、衆論におきまして結局ドラフト制は現在のプロ野球を経営する上において必要なものであるということに落ち着きまして、全員がこれに承諾したわけでございまして、ですから、これは当時は十二球団全部の意向で決まったもので、はたからどうとかこうとかということは、それは外野からはいろいろ声もありましたけれども、そうでなく、十二球団自身で決めたことであります。
  109. 円山雅也

    ○円山雅也君 最後に一つだけでございますが、よくドラフト制を擁護するために、球団側の方たちは、何か十二球団が全部集まって一つの会社になっておるんだと、だからどの十二球団に入っても新人選手にとっては同じではないかというような、だから選択の自由なんという選択ということがあり得ないんだという御議論を聞きます。その点について、少なくとも鈴木さんは、十二球団が、一つの会社の中の経理部、総務部というように全く同じ会社で、同じ待遇で、同じ保障でというように、十二球団が新人選手にとっては同じだと、つまり待遇面でも何でも同じだと思っておらないと思います。そうしますと、十二球団がこんなに格差があるのにかかわらず、一つの会社の中の経理部に入るのか総務部に入るのか同じじゃないかという議論を野球機構側がされるという、これはどうなんでございましょう、それは鈴木さんとしてそれがいいと思っておられますか、その理論が。
  110. 鈴木龍二

    参考人鈴木龍二君) これに対するいい悪いは、先ほどからくどく申し上げているとおり、現在においては私の立場上申し上げることは控えかいと思います。
  111. 円山雅也

    ○円山雅也君 わかりました。ひとつその辺も含んで御検討いただきたいと思います。  終わります。
  112. 江田五月

    ○江田五月君 私の持ち時間が十分で、十分質問できるということになるわけですが、この委員会として参考人の皆さん方にお願いをしたのは一時までということでありまして、もうその時間は過ぎている。私はやはりこの委員会の一人でありますから、そうするとそちらのお約束にも従わなきゃならぬ。ルールというのは、時として非常にどうやっていいかよくわからないということが起こるわけでありまして、なるべく短い時間しか質問いたしませんから、ひとつちょっとだけお許しを願いたい。大体、ルールというのは、このドラフト制にしても、そういった非常に困難な事態というのが生ずるのだろうと思うわけであります。  最初に伺っておきたいのは、政治のこととプロ野球のこととはやはり違うのではないかということであります。王選手を走らすのがいいのか悪いのかというようなことは、これは幾らスポーツ新聞のトップにどんどん出るようなことであってもやはり政治の問題ではないんで、果たしていまこのドラフト制というのは政治が介入しなければならないほどのものになっているのかどうか。それはまあ江川選手のことも非常に大きな問題でしょうけれども、人身売買とかなんとかが起こるというような形で政治が何かチェックしていかなきゃならないそれほどのことになっているとは私はどうも思えない。プロ野球というのは、確かに国民の大ぜいの本当に各層の人たちに健全な娯楽を提供するものではありますが、これはやはりプロ野球関係者の方々、野球機構に入っている入っていないは別として、プロ野球関係者の皆さん方の英知でもって解決していくべきもの、皆さん方の総意でもって解決していくべきものだろうし、そういう自負心が皆さん方にあってしかるべきだと思いますが、川上さん、いかがですか、この点は。
  113. 川上哲治

    参考人川上哲治君) そのとおりだと思います。
  114. 江田五月

    ○江田五月君 ほかにいまの見解と違われる方はいらっしゃらないと思いますが、どうですか。——それじゃ、そういうことで、皆さん方にひとついい英知を働かせて何かつくっていっていただきたいと思いますが、これにはまず議論というものが十分なされなければならないだろう。どうも、いま聞くところによりますと、最初にドラフト制ができたときに選手の意見も十分聴取されていないとか、あるいはまた、川上さんは監督をなさっていたので川上さんの意見は十分いろいろな点で検討の対象にはされたのであろうと思いますけれども、この点は、川上さん、いかがですか。
  115. 川上哲治

    参考人川上哲治君) 大勢でこういうふうに決まったものですから、私らの意見というのはまあ参考程度にとどめておかれました。
  116. 江田五月

    ○江田五月君 今後、まあいまいろいろな問題がないわけではないのですけれども、ここで出た問題について実行委員会で検討されるということですが、国民のあるいはファンのいろいろな人が、それぞれいろいろな考え方を持ち、創意工夫を持っていると思うのですね。そういうものをたとえば投書でもいたしたいと、まあプロ野球運営についての市民参加というほど大げさなものではありませんけれども、投書でもしてひとついろいろ検討していただきたいというような見解を持っている人が、プロ野球に提言具申をしたいと思うと、一体どういう方法があるのでしょうか、井原参考人にお答え願えますか。
  117. 井原宏

    参考人井原宏君) 公聴会と申されました。こういうことは、多数のファンの皆様または高度の有識者たちの御意見を伺うということば、原則的に大事なことだと思います。しかし、いずれにしましても、野球愛好家である、言いかえれば野球のファンでもあるという人によって集められる公聴会だと思います。その場合に、各球団ともファンがあるわけでございます。そのファンたちは、自分の好きなチームに勝たしたいということであります。ちょうど相撲を見ますように、どっちかに勝たしたいと、程度はありますがそういうようなことになりますので、多分に御意見が分かれるということではないかと私は思っておりますが、これは非常にいい御意見でありますので今後検討したいとは思っております。
  118. 江田五月

    ○江田五月君 いろいろな人たちの意見を十分くみ入れるような工夫をひとつお願いをいたしたいと思います。そして、プロ野球界の規律というものについては、これがスポーツ精神の結晶であるんだというようないいものをつくって、これにいろいろと異を唱えるというような場合には、まあわがままなんだと、こう胸を張って言えるような制度をつくるよう御努力を皆さん方にお願いいたしたいと思いますが、最後に鈴木参考人の決意だけを伺って終わりにしたいと思います。
  119. 鈴木龍二

    参考人鈴木龍二君) ただいまのお話、本当にそうだと思います。御教示どおりに前進したいと思っています。
  120. 江田五月

    ○江田五月君 どうもありがとうございました。
  121. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) この際、お諮りをいたします。  委員議員下村泰君から発言を求められておりますので、これを許可することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) 御異議ないと認めます。下村泰君。
  123. 下村泰

    委員以外の議員(下村泰君) 委員長初め各理事の先生方、そして当委員の皆さん、委員外発言をお認めくださいまして、ありがとうございました。  鈴木会長に伺いますが、いまのドラフト制度は、完璧とは言いませんが、完全に近いものなんでしょうか。
  124. 鈴木龍二

    参考人鈴木龍二君) これはもう先ほどからの私の答弁のとおりと解釈してどうぞお許しを願います。
  125. 下村泰

    委員以外の議員(下村泰君) では、三原さんに伺いますが、いかがでしょう。
  126. 三原脩

    参考人三原脩君) 何でございましょうか。
  127. 下村泰

    委員以外の議員(下村泰君) いまのドラフト制度は、完全とは言わなくても、ややそれに近いものなのだろうかということです。
  128. 三原脩

    参考人三原脩君) そうですね、完全とは先ほど来申しておりませんが、調和の上に立った制度である、ルールであると、そういうふうに理解していただきたいと思います。
  129. 下村泰

    委員以外の議員(下村泰君) 川上さん、いかがでしょう。
  130. 川上哲治

    参考人川上哲治君) 先ほどから申し上げましたように、ここでできたら手直しをしていただきたいような雰囲気でございます。
  131. 下村泰

    委員以外の議員(下村泰君) それでは伺いますが、毎年毎年このドラフト会議の爼上にのせられる選手の中で、即戦力になり得るという選手は大体何人ぐらいとお思いでしょうか。まず、現場をあずかった川上前監督、お願いします。
  132. 川上哲治

    参考人川上哲治君) まあその年によってちょっと違いますけれども、大体五、六名までではないかと思います。
  133. 下村泰

    委員以外の議員(下村泰君) 三原さん、いかがでしょうか。
  134. 三原脩

    参考人三原脩君) そうですね、その翌年ということになりますとかなり少ないのではないかと思います。まあ二、三年たちまして何人かと。総体的に見まして、二割ぐらいがかなりな選手としてついていける、あとの八割は途中で脱落をするというのが現状です。
  135. 下村泰

    委員以外の議員(下村泰君) そういたしますと、ここにございます協約がまるでこれなっとらんということになります。百三十六条にございますが、「球団がすべて六名を指名」と、こういうふうなのがあります。六巡する必要がどこにあるのかという私は疑問を持つ。しかも、十二球団が一位に指名する選手が十二名おります。その中で、いま川上前監督がお答えになったように五、六名。私はもっと厳しく見ています。即戦力になるのは、恐らく十二球団が一位に指名する十二名の中で三人ぐらいだと私は見ています。そうしますと、いわゆる十二番目の球団が指名しても一位は一位に変わりはないわけです。そうすると、一位に指名されたがゆえにその選手が契約金のつり上げを行うというような事実があると思います。これは、三原さん、いかがですか。
  136. 三原脩

    参考人三原脩君) そのとおりだと思います。
  137. 下村泰

    委員以外の議員(下村泰君) しかも、甲子園の勇者であると、ああいった高校野球のヒーローになった場合、しゃにむに採ります。ところが、私の聞くところによりますると、現場を委託された監督はこの選手はまだ出せる選手じゃないというのにもかかわらず、高い契約金を払って採った選手なんだから何とかこれを使えという至上命令が出ていると。そのために、ヤクルトで採った酒井もおかしくなり、中日の土屋もおかしくなる。その力がないのにもかかわらずそういう現状になる。  それからこのドラフトというものは、私はまるでファンの意思を無視していると思う。後楽園、甲子園に集まる五万、七万近い観客、あるいは神宮に集まる六万に近い観客、この六万の観客、五万の観客、七万の観客の気持ちを無視して、球団関係者のみの存立を図るためにあるようにとしか私には思われないのです。ですから——もうあと持ち時間が一分でございます。お許し願ってよけいなことを言ってすみませんが、もういまや先ほどからいろいろ論議し尽くされてきたようにも感じておりますけれども、アメリカの制度から導入されたものならばやはりアメリカの制度に準ずべきでもありますし、また、日本のプロ野球の発展のためにも日本のプロ野球自体の独自のドラフトの制度があってもいいのではないか。たとえば、この百三十七条にありますが、契約交渉権を持って「これを放棄することも、またこれを他球団へ譲渡することもできない。」ここへ括弧をして、ただし選手の希望があれば別であるというようなことぐらいを書き込んで、ドラフトの中のトレードがあっても差し支えないと思うのです、球団が企業であるならば。アメリカのフットボールの例を挙げてまことに恐縮かもしれませんが、最下位のチームが、特定のえらいほかのチームが選んだ選手を選んでそれを上位チームへトレードすることによって、その上位チームから現役ですぐ使える選手を四人か五人採ることによって、その最下位のチームが上位の方へ行ったという例もある。してみれば、本当に均衡を図るならば、こういうような制度もあってもいいのではないか。お答えをいただくとすでに時間がございませんから、意見だけを言わせていただきます。そういう制度も取り入れるもうそろそろ段階ではないか。もういまの制度にいつまでも固執していたのでは、かえって日本のプロ野球の発展はあり得ないと私はあえて断言さしていただきます。ですから、何とかして中身を改造して、いま申し上げた多くのファンが納得するような方法に持っていってくださることを切にお願いしまして、私の発言を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  138. 中尾辰義

    委員長中尾辰義君) ほかに御発言もなければ、参考人に対する質疑はこれにて終了いたします。  参考人の方々に一言お礼を申し上げます。  本日は、お忙しいところを長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見を拝聴させていただきまして、まことにありがとうございました。委員一同を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時十九分散会      —————・—————