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1978-05-30 第84回国会 参議院 文教委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年五月三十日(火曜日)    午前十時九分開会     —————————————    委員の異動  五月三十日     辞任         補欠選任      藤井 丙午君     藤井 裕久君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         吉田  実君     理 事                 後藤 正夫君                 世耕 政隆君                 粕谷 照美君                 小巻 敏雄君     委 員                 岩上 二郎君                 山東 昭子君                 高橋 誉冨君                 藤井 裕久君                 増田  盛君                 勝又 武一君                 久保  亘君                 松前 達郎君                 宮之原貞光君                 柏原 ヤス君                 田渕 哲也君                 有田 一寿君    国務大臣        文 部 大 臣  砂田 重民君    政府委員        文部大臣官房長  宮地 貫一君        文部省初等中等        教育局長     諸澤 正道君        文部省大学局長  佐野文一郎君        文部省管理局長  三角 哲生君    事務局側        常任委員会専門        員        瀧  嘉衛君    説明員        国税庁直税部法        人税課長     北村 恭二君        文部省管理局企        画調整課長    塩津 有彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○昭和四十四年度以後における私立学校教職員共  済組合からの年金の額の改定に関する法律等の  一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○教育、文化及び学術に関する調査  (日本歯科大学経営問題等に関する件)     —————————————
  2. 吉田実

    委員長吉田実君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 若干、先般の質問とダブるところがありますけれども、もう一回念のために確認を申し上げたい点もございますので、お許しをいただきたいと思います。  先般、現職教育の問題について、今後は教員大学同様に他の大学院現職教育として学ぶ場合も、いわゆる現職、現給、いわば出張研修扱いにするんだという方針だと理解をしてよろしゅうございますかね。
  4. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 御審議いただいておりますこの法律案にあります教員大学大学院に参ります場合も、他の既存大学大学院に、より一層の研さんのために行かれる教員の方も、その問に差別があってはならない、こう考えますので、ただいまの御指摘のとおりに私どもも考えております。
  5. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そういたしますと、この場合も、これは後ほど触れたいと思いますが、所属長同意、もっと具体的に言えば、県教委地教委学校長同意という形に相なるわけですね。
  6. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) やはりさようでございます、現職、現給でまいるわけでございますから。
  7. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 なお、先般の質疑の中で、大学を出て真っすぐ大学院に入る学生と、現職からの受験の場合は、語学その他の面で全く同一条件で受験するのでは、いろんなハンディがあるので、別建て選考方式をとるようにしたい、そのように指導したいという先般は答弁があったんですが、そうでございますか。
  8. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教員大学大学院入学試験の具体的な方法は、創設後の大学で決定されることでございますけれども創設準備室で現在検討をしている方向といたしましては、御指摘のように語学試験のほか、全般にわたりまして、教職の経験者学部卒業者とでは、試験内容について、それぞれに応じた適切な配慮をする必要がある、そういう方向で、どのようなその適切なあり方を求めるか、それについて検討が行われております。そういう方向での検討をさらに深めていただきたいと考えております。
  9. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 すべては準備室でやりますと、こう逃げないでくださいよ、準備室の方はあなた方の意向を受けてやっているんだから、だから、明確にこういうものをしておいていただかなくては困りますよ。この間あなたは、語学やその他の面で、やっぱり学部からストレートに行くのとでは非常にハンディがあるから、別途の方式選考方式を考えたいと、こうおっしゃったわけでしょう。そうですか、どうですかと、こう聞いておるんです。
  10. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 文部省としては、そういう選抜方法がとられることが適切であると考えて、準備室検討を求めているということでございます。
  11. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうすると、既存大学院の場合も一緒でございますか。
  12. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 先ほども申し上げましたように、どのような入学試験実施をするかというのは、これは大学が御決定になることであって、私どもの方は現職先生を受け入れるについて、適切な配慮をしてほしいということを、各大学に対してお願いをするわけでございます。東京学芸大学の場合をとりましても、当初は二カ国語の外国語試験実施をしていたものが、現在は全部にわたって二カ国語ということではなくて、専攻によりましては、一カ国語で実施をするというような形に改められてきている経緯もございますので、各大学において、現職先生を受け入れるのにふさわしい選抜あり方というものをさらに検討していただく、そういう方向でこれからも各大学に要請をしてまいりたいと考えております。
  13. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 もちろん既存大学は、最終的には大学で決めるでしょうけれども文部省としてはどういう行政指導をされるんですか。だから、教員大学と同じような方途を講ずるようにということで指導されるんですか、どうですかということを聞いておるんですよ、いかがですか、そこは。
  14. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 方向としては教員大学の場合と同じように、それぞれの既設教員養成大学学部に置かれている大学院、あるいはこれから置かれることになる大学院につきましても、現職教員の受け入れということを十分に考慮してほしいと考えておりますから、そのために適切な選抜あり方というものを考えてほしい。それは考え方としては、教員大学修士課程の場合と、他の養成大学修士課程と異なるものではございません。考え方としては同じでございます。具体的な内容をどのようにするかということについては、各大学に御検討を求めるということでございます。
  15. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうすると、他の大学にも同じような趣旨行政的な指導をするということですね。  そういうことになりますと、学部から真っすぐ行くところの学生との間に、大学院を受けるところの一つ学力の面で、たとえばこの間語学ということを特に指摘をされておったですが、非常に劣るという面を是認をするという形に相なりはしませんかね。その点はどうなるわけですか。言うならば、言われておるように、この教員大学とか、あるいは大学現職教育の場合は、何のことはない、別途の方式をやると言うなら、言葉は別途の方式となりましょうけれども、いろいろハンディがあるということは、とりもなおさず、学力の面で落ちるから、別途の方途を講ずるということになれば、これは一段他大学院に入るのとは別途に、レベルを落としたような形の入学を認めるんだと、こういうことになりはしませんか。その点はどうなんですか。
  16. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) それは決してレベルを落とすということではないと考えております。修士課程への入学者選抜を行う場合に、どのような方法実施をするかというのは、必ずしも現職先生を受け入れる場合だけでなくて、一般的に修士の性格というものが、いわゆる将来大学院博士課程進学をしていって、研究者、学閥の後継者として育っていく方もございますし、あるいは高度の専門的な職業人養成という機能を果たす修士課程もあるわけでございますから、それぞれの大学においてやはり修士入学者選抜あり方というのは、適切に検討される必要があるわけでございます。修士でもちろん勉学をするのにふさわしい学力というものを備えているということが必要であることは当然でございますけれども、そういった修士勉学されるのにふさわしい能力というものを判定するその仕方として、語学試験というものにどれだけのウエートを置くべきであるか、その点のいわば判断の問題になるわけであって、レベルを落とすということではなくて、現職先生修士課程勉学をされる、それにふさわしい資質能力を備えている方を、どのように選抜をするということが最も適切であるか、そういう角度から検討が加えられるべきものであって、学力の面においても、それは語学試験学力のすべてを決して決定するわけではございませんし、適切な選抜方法検討されるということが望ましいところだと考えているわけでございます。
  17. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 どのように言おうと、同じ修士課程を受けるところの者が、学部から真っすぐ来る者と、現職教育として研修出張ですか、出張研修というかっこうで入るという違いはあるにしても、同じ修士課程に入るんだったら、同じ試験でなけりゃぐあい悪いんじゃないんですか、同じ課題で、科目でなければ。そればれ別々に違うというなら、言葉はいいですけれども実態に合わせてやるということになりはしませんか。客観的に見れば、やっぱり一つハンディをつける、こういうかっこうのやはり入試方式にしかならぬじゃないんですか、それは。百メーターの競争の者に、片一方は少し年とったから、脚力が落ちるとかあれがあるとかで、九十五メートルぐらいから出発させる、片一方は百メーターから出発させるというかっこうになりませんか、どのようなことを言われようと。同じ修士課程試験なんですからね。
  18. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように非常にむずかしい課題であるということは、私たちも十分にわかります。特に一般教員養成大学に置かれる修士課程の場合には、今回設けようとしている教員大学修士課程のように、三百名の入学定員の三分の二を現職教員を予定をするというようなことには、必ずしもなっておりませんし、むしろ学部を卒業して、修士課程へ進んでくる者の数が、実態としてははるかに多いという形になるわけでございますし、そこでの修士入学者選抜あり方というものを求めることは、それを適切なものとしようとすればするほど、各大学にとって困難な課題になるということは十分にわかるわけでございます。しかし、現職先生が二年間の修士課程勉学を重ねて、そして再び現場にお戻りになる、その場合にはすでに各学校現場において教育実践を重ねて、その間にそれぞれの先生方課題意識をお持ちになり、それをさらに大学院研さんをし、深めていかれるわけでございますから、単に学力学部卒業の者と比校してどうであるかという観点だけではなくて、やはり修士進学される場合のそれぞれの先生方資質能力というものを、総合的に判断をしていくということが必要になるわけでございます。決していわゆる学力の面でハンディをつけて、そして劣っている者も進学をさせる、そういう趣旨のものでない、できるだけ修士課程における現職先生方研さんということにこたえられる適切な選抜方法を求めたいという、そういう趣旨検討を続けるものでございます。
  19. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いや、それは教員大学の方は三分の二は現職教育だと、こういう枠があるからそれは入ることはできるでしょう。しかし、いまの方式でいけば、先ほど答弁一般大学大学院にしても同じですと言いながら、一般大学に入れないということになりはしませんか、きわめて入りにくい、それは事実でしょうが、どうなんですか、結果論としては。
  20. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 先ほどもお答えを申し上げましたように、一般大学の場合には、教員養成大学修士課程でございましても、あるいは一般大学一般学部修士課程にいたしましても、主として受け入れるのは学部を卒業してきて、さらに勉学を深めたいという者でございますから、それらと同じように入学試験を受けていくわけでございます。したがって、実態として御指摘のように、現職経験を重ねた方が入学をする場合には、非常にむずかしい試験になるということが、そのままの形であれば予想をされます。そのことの基本を変えてしまって、初めから現職先生のための特別の枠取りを、一般大学なりでその修士課程について行ってもらうということは、これはなかなかできないことであろうと思います。したがって、先ほども申し上げましたように、既設大学の場合の修士課程にどのように現職先生方を受け入れていくかという点は、教員大学の場合よりははるかに入試あり方についてもむずかしい課題になる、それは御指摘のとおりでございます。そうではございますけれども現職先生方修士課程勉学をしたい、そういう機会確保をするという点においては、教員大学に限らずに、一般大学におきましても、既設教員養成大学の場合におきましても、同じように機会を開いていくことが必要でございますし、その方向で考えるならば、修士課程入学者選抜についても、各大学でできる限りの配慮をと申しますか、工夫をしていただく、その方向が望ましいわけでございます。実態として既設大学の場合に、それが非常にむずかしい課題になるということは、私どももよくわかります、そのとおりだと思います。
  21. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 だから、そこにぼくは非常にあなた方の詭弁があると思うんですよ。じゃあ教員大学だけじゃなくて、現職教育の枠を広げていくんだと、そうしてほかの既存大学院にも同じような条件を与えるんだ、機会を与えるんだと、こう言われながら、片一方の方は、たとえばいまの答弁にしてもそうですが、衆議院におけるところのあなたの答弁にしても、教員大学大学院は三分の二は現職だけれども一般既存大学院は、言うなら学生の方が主体なんだと、こうなんでしょう。だからますますこれは狭き門なんですよ。その上に入試の場合のあり方もそれは大学の方に任せざるを得ない、こういうことになるとするならば、ますますこれは狭き門になっていくことははっきりしていますよ。だから、いや両方いろんなところに門戸を広げるんだと、こう言いながら、おたくがねらっているところのものは、現職教育はすべて教員大学大学院でと、こういうふうにしかならぬでしょうが。現にいままでの方式ではあなた方はいままで十名程度しか入っておらないという答弁でしょう。幾ら奨励をしてみたって、ふえるような条件ないじゃありませんか、どのようにして積極的にふやしていくんですか。枠なら枠、一割なら一割を、今後教育系既存大学院にはとっていくんだというならば、それはそれなりの意味がありますよ。しかし、その枠も従来のまま置いといて、ただ入る場合にだけ、試験に合格したならば現職現給でやりたいということであっても、これは入った後のことであって、入るまでの枠は一つも広まらぬですよ、そういうことになりませんかね。その点、大臣どうなんですか。皆さんは現職教育の問題については、他の教員養成系大学院にも門戸を広げるんだと、こう言いながら、門戸を広げることにならぬじゃありませんか、現職教育が一番重視されなければならないときに。言うなれば、教員現職教育は私どもがかねがね指摘しているように、一段レベルダウンのもののところにだけ入れるということにしかなりゃしませんじゃないですか。
  22. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 御指摘でございますけれども、私は実はそうは考えていないんです。従来の東京、大阪にありますような教員養成課程大学大学院、確かに十名程度の方しか現職教員がお入りになっていない、それは事実そのとおりでございます。しかし、現職教員大学院へ進んで、さらに研さんを積み重ねていただきたいとも思いますし、そういう期待がふえておりますし、現職教員の方もそれを希望される方がふえてきている、そういうことから新構想のこの教員大学を考えられたわけでございます。そして、この教員大学と、これから整備充実をしてまいります、従来の大学に設けてまいります大学院、お互いにいい刺激を与え合いながら、受け合いながらということが、まさにそこにあるわけでございます。やはり現職教員を受け入れていこうという気持ちが、従来からございました大学に、これから設けていく大学院に、そういう気持ちが醸し出されてくる、そういう実は確信を持つわけでございます。  そして、レベルダウンとおっしゃいましたけれども、いま入試選抜方法のことに絡めてのレベルダウンというお話がございましたけれども、それは選抜のときの一時期の問題ではないでしょうか。やはり修士課程研さんを続けておりますうちに、もしもそのときに劣る学力のものが何かの科目でありましても、修士課程研さんをしておられるうちに、意欲を持って大学院に進まれるわけでございますから、追いつかれるではないか、そのように考えるわけでございまして、先ほど宮之原委員は、百メートル競走を九十五メートルから片方はスタートするとおっしゃいましたけれども、そうではないんで、百メートル競走同じスタートラインからスタートをいたしますが、それはスタートダッシュの速い者もあるでしょうし、後半に強い者もあるでございましょうし、卒業するときの資質能力がどこまで高められているかということが、一番私はみんなでそこに価値を求めていかなければならないことだと考えております。
  23. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それなら聞きますが、現在まで既存教育系大学で、現職教育として十名程度しか入り得ないというこのあれは何ですか、条件は、要素は。もっともっと私は門戸を広げればあり得たと、けども実際問題として十名程度しか入っておらないという現実、これはどういうところに理由があるんですか、それからまず聞きたい。
  24. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) やはり一つ入学試験に合格できないということがございます。それからもう一つは、実際に進学を希望する場合に、行政の側の対応が十分でなくて、現職先生方大学院進学をするということ自体が必ずしも容易でない、その二つの点があったと思います。
  25. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 中身をおっしゃってください、行政対応はどうだったんですか。十分でないと、それはどういう意味ですか。中身を言ってもらわなきゃ困りますよ。
  26. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) これまでも研修定数というものが各県にはございまして、その研修定数の中で代替教員のことを考えながら、各県はそれぞれ現職先生方大学大学院、あるいは学部専攻科における研さんというものについて対応をしてきておりますけれども、いわゆる現職、現給の形で積極的に現職先生方大学における研さん機会確保をしていく、そういう姿勢につきまして、なお不十分な点があったということを申し上げているわけでございます。
  27. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 だから、この間私が質問したときには、いや現在でも現職、現給で行っていますと、こう言っておって、今度は行政対応がいままでなかったんだと、こういうことでは矛盾しませんかね。だってあなた、昨年の予算でも一千名前後の現職対象定員というのはあるんでしょう、枠外は。今度は何か二千名ですか、三千名ですか。それでいて十名しか入っておらないと言うんだったら、これは一つの隘路があったわけなんでしょう。それが一つはいま申し上げたところの問題。いま一つの問題は、先ほど指摘しておるように、同じような条件試験をすると、入試の合格の水準に達しないんでしょう。だから、今度は現職から入るところの人々は別途の方法を講じたいということならば、この水準に達する以下のもので入れたいということなんでしょうが。これはやっぱり低下になるでしょうが。一つレベルダウンをしたところのものでやるということになるんでしょうが。しかしながら、一般大学の場合にはそれはやらないと、大学にお願いする以外にないとするならば、口では現職教育の枠を広げると言いながら、実際問題としては従来にちょっと毛が生えたぐらいにしかならないじゃありませんかと言っているんですよ。だから、結論的に言うならば、現職教育は、大学院教員大学大学院にしか入れないということになりはしませんかと言っているんだ。もし、いやそうでないと言うならば、たとえば教育系大学の新しく認可するところの大学には、一割なら一割、二割なら二割枠をとるんだというなら、まだ一つ条件としてあり得るでしょう。そういうことも考えないでおって、ただ現職教育を重視します、枠を広げますと言ったって、これは口先ばかりになるでしょうが。だから、とどのつまりは現職教育を重視をしなければならないけれども、しかし既存大学大学院には入れないから、各ブロックに教員大学院をつくらなきゃならないという大義名分をあなた方つくることになるんでしょう、そういうことになりませんか。それならば、既存教育系大学院のこの修士課程入学者に対して、現職教育の枠を広げるためにはどうすればいいかという案があるなら出してくださいよ、どういうふうにしようという考えか。
  28. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、既設大学院になかなか実際問題として進学しにくいという状況があるというのはそのとおりでございます。また、そういうことも考えて、教員大学における大学院について、現職先生方を大幅に受け入れる、そういう方途を講じ、現職先生方大学院における研さんの場を確保しようという施策を進めるということを考えているわけでもございます。これは先ほど来申し上げておるように、決して入試水準を下げて、それによって大学院に受け入れるということではなくて、現職先生方大学院で勉強される場合の、その資質能力判断をしていく、そのあり方についてより適切なものを求めようということであるということは、ぜひ御理解をいただきたいと思います。  それから現職先生方既設修士課程に受け入れていく方法を進める、それはこれまでも努力は私どももいたしておりますし、大学もそれを考えてはくれております。たとえば、東京学芸大学の場合には、五十一年度からは従来いわゆるマル合教員一人に対して、入学定員は二名ということになっていたものを、さらに一名を増加をして三名ということにし、そのうちの一名は原則として現職教育者を充てるということを募集要項の中でも明らかにしております。ただ、その一名についても、大学としては一定の基準に達しない場合はこの限りでないということを募集要項に記載をしておりますし、ここのところがむずかしい問題になる。先ほど来御指摘のとおりでございます。やはり、東京学芸大学においても、現職先生修士課程により広く受け入れていく、そういう基本的な考え方を持っておりますし、そのために、こういった定員上の措置を講じ、さらに現職先生方をより広範に修士課程に受け入れるためには、どのような方法が適切であるかということも検討をしてきているわけでございますから……
  29. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 検討してきておるなら、その中身を言ってくださいよ、それが親切というもんでしょう。
  30. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) それらの既設大学、これはいままでの既設の東京学芸、あるいは大阪教育に限らずに、今後設けられている大学におきましても、現職先生方を受け入れる、より積極的に受け入れる方途というものを各大学でお考えをいただくということでございます。入試選抜あり方についての現職者を受け入れるために適切な方途、それは各大学で御検討をいただく以外にないわけで、文部省の方からこういうふうにしろということは大学に対しては言うべき事柄ではないわけでございますけれども方向については大学に対して要請をする、そういうことで臨んでまいりたいと思っております。
  31. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これはどのように皆さんが答弁されようと、これは理解できませんよ、客観的には。幾らこれ大臣確信を持ちます、こうおっしゃったって、幾ら現職教育の代替の教員の枠を広げてみたって、肝心かなめの入るところの門が開かれぬことには、これはどうにもできぬでしょうが。だから、いまのようなお話では、これは何ら現職教育に対して、教員大学大学院以外のところの枠を広げるという積極的な意欲は、文部省からの御答弁からうかがえませんよ、率直に申し上げて。やろうと言うなら、明確に今後の方針を明らかにしてくださいよ。たとえば今後教員大学大学院は積極的に大学院を設置するようにしたい、こうおっしゃるんでしょう。それならばその現職教育とのかね合いの中で、どれだけのやはり門戸を広げるかというものがなければ、これ意味ないんですよ。そうでしょう、大臣。幾ら大臣が確信を持ちます、こうおっしゃったって、現実に試験も同一レベル、しかも枠もない、これではこれは広がりませんよ。しかもまた、入試条件も何と申し上げても、一段ランクを下げた形になっちゃうんです、これは。そこらあたりにおたくの出されているところの法案の一つのやはり問題点があるということは明確に指摘をしておきます。これはもう時間がありませんから、多くを申しませんがね。  次に移ります。
  32. 吉田実

    委員長吉田実君) 速記はとめてください。   〔速記中止〕
  33. 吉田実

    委員長吉田実君) 速記を起こして。
  34. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 質問を続けますが、先般の御答弁の中で、教員大学大学院修了者は身分上、待遇上も特典はないんだと、こういうことをはっきりおっしゃっておったわけですが、そのように確認をしてよろしゅうございますね。
  35. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教員大学大学院を修了した者について、給与あるいは免許の上で特別な措置を講ずるということは全く考えておりません。
  36. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 大学院現職から行った者の履歴書はどういうふうに書くことになるんですか。その大学院修士課程修了という形になるんですか、それとも二年間教員大学大学院研修というかっこうになっていくんですか。そこはどういうふうになるんですか。
  37. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 当然修士課程修了ということになると思います。
  38. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 すると、その場合でもいわゆる学歴換算の処置はとらないわけですね。この間もそう言ったね。勤年と学歴のいわゆる換算ですよ。一・五年方式はとらないわけですね、その場合でも。
  39. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 在職中に上位の学歴を取得した場合には、現に受けている給与を新たに職員となったものとして見直すことはできることになっているわけでございますが、実際問題として、その場合にすでにその職員が持っている勤務年数というものの計算上、御案内のように一年を一号俸としては計算しないたてまえになっておりますので、新たな学歴を取得したことに伴って、給与の見直しを行いましても、結果としては先般お答えを申し上げましたように、大学院を出て、初めから教員になった者との間には一号の差というものは残るわけでございます。
  40. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いや、見直すことができるということがあるから尋ねておるんですよ。見直すわけですけれども云々というのがちょっとひっかかるんですよ、いまのあなたの答弁では。だって、じゃ特昇という方式ででもやるんですか。人事院あたりは、それはやろうと思えば特昇でできますよなんて言っておりますよ。そういうこともやらないという意味なんですね。どうなんですか。  いわゆるその勤務年数の年限は、それはやらないというのはわかりました。しかし、実際給与の上で、見直すことはできるという条項も確かにある。人事院あたりは、特昇という方式があるんですから、恐らく文部省さんはそういうこと考えるんじゃないですかなんて、こう言いよるんですけれども、そういうことも考えないんですね。
  41. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 先般からお答えを申し上げておりますのは、在職中に上位の学歴を取得した場合の見直しを行いましても、いまの制度では経験年数一年について一号俸を加算をするということになっておりませんので、結果として給与は高くならないということを申し上げているわけであり、そのことについて制度的な手直しをするかどうかというのは、これは教員大学大学院に限ったことではなくて、一般に在職中に上位の学歴を取得した場合についてどのように考えるかという問題であり、またそれを教員の場合に検討する時期というのは、もっと大学院における研さん機会というものが広がった将来の課題であろうということを申し上げてきたわけでございます。  特別昇給の問題は、そうした給与の制度をどう改善をしていくかという問題とは事柄が別でございます。一般的に各県において教員に対して特別昇給をどのように運用をしていくかというのは、これは教員大学大学院を修了した者に限らずに、それぞれの県で人事の運用上お考えになることであり、この教員大学を修了した者についてどのように免許、あるいは給与の改善の措置を講ずるかということとは、別途の事柄であろうと思います。
  42. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そこに非常にごまかしがあるんですよ。この間私もあっさり引き下がりましたけれども、それはおかしいとさえあなた方の肩を持つような話しましたけれども、いろいろ調べてみるとそうでないんですね。なるほどあなたの答弁をいま注意深く聞いておったら確かにそうなんですよ。勤年と学歴との一・五年計算はしないと、勤務年数はそれはなるほどそうでしょう。けれども、その見直すことのできるという条項と、特昇という問題を、行政指導でやっていけば、これは必ず優遇措置になっていくんですよ。いまの御答弁は特昇の問題はそれは教育委員会のやることですと、こう逃げておるでしょう。これは当然教育委員会としては、あなた方がサゼスチョンすればやっていきますよ、ここにもすでに格差がつくところの要素というのがあるんです。現実の問題として必ず特昇になりますよ、これは。あなた方が絶対に差をつけないというならば、教員大学を修了しても特昇もさせませんという方針だというならば、これはきちっとしていますよ。そこをあなた方逃げ道をつくっているじゃありませんか。それも県の教育委員会が自主的にやることでございますということですか。
  43. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 俸給の見直しにつきましては、先ほど申し上げましたように、これは実施をしてもいまの制度では結果的には変わらないということでございます。特別昇給の制度をどのように運用をするかというのは、これはまさに県の教育委員会が御判断になり、それに従って適切にお進めをいただくということであって、その場合であっても、教員大学大学院を修了した、だからこうしようというようなことでないと、それは一般的に教員の特昇というものの運用をそれぞれの県の教育委員会でお考えをいただくということであろうと思います。
  44. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そう逃げてみたって、各都道府県教育委員会ぐらいあなた方の言うことを聞くところはありませんよ。あなた方が命令すれば、いまやずっと市町村の末端の教員までいくんだから。これはいろんな口実ができることははっきりしておるでしょうが。大学院に行って勉強してきたんだから、これは特昇させるのは当然だと、これは常識的にそう言われたらあなた方拒否できませんでしょう。内面的にそういう指導するわけでしょうが。ここにいままで答弁では、いや現職でずっと入らない者との差はつけませんと言いながら、すでにこういうところに抜け道をつくっておるんですよ。ここにも私どもがごまかしがありゃしませんかと皆さんに言っておるんです。そういう意味では、私は先般は若干勉強不足でございましたから、それはおかしいじゃないかと、逆に皆さんの立場になって応援したんですけれどもね、どうもいろいろ調べてみるとそうじゃない、非常にあなた方のやっていることは、表面と裏の実際とは非常な違いが出てきておるんです。非常にこれは問題点です。  それなら、さらにお聞きしますが、この間の質問と同じですけれども、同じ年度で大学を出て、片一方大学院を経て教職についたと、片一方はストレートでいってやった者、二年の勤務年数の差はありますわね。それは換算しないということはわかりました、それはいいですよ。けれども別途の方途であなた方はごまかしておるんだから。その二人の退職金と年金の関係はどうなりますか、この両者の。それで具体的にお尋ねいたしますが、大学院を卒業して二十年の者ですね。ちょうど年金のつく年限、その場合と、いま一人は同じ学部ですから二年プラスされるわけですから、二十二年になりますわね、同じ大学卒ですから。この二十二年と二十年の者、三十年と二十八年の者、四十年と三十八年の者、これはどういうふうに違いますか、同じですか。  これは初中局長でもいいですよ、あなたが専門なら、給与のことは。
  45. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 御指摘のように、修士課程まで出て就職して二十年の勤務年数と、それから大学を出てすぐ勤務して、勤務中に二年間大学院に行ってやった人とでは、二年間の在勤中の大学院の勉強期間は、現職、現給のままいくわけですから、これは勤務年数として換算します。したがって、同じ年に二人がやめれば、片一方は二十年の勤務年数、片一方は二十二年の勤務年数で、年金それから退職金は計算するとこういうことになります。
  46. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 だから、どれくらい違うんですか、同じですかと聞いておるんです。
  47. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) それは金額はわかりませんけれども、違うことは事実ですね。二十年と二十二年の違いはございます。
  48. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 中身までは申し上げませんけれども、これ大臣やっぱり明確に違うんですよね。私が人事院の給与局にちょっと調べてもらいましたが、これは自己の都合により一応退職をして、年金を五十五歳で受け取ったという前提に立ってみますと——勧奨退職じゃなくてね、これは大学卒の者が二十二年になるわけですから、これは退職手当で四十三万円プラスなんです。それから、年金で四万六千円、これが三十年と二十八年ね、この違いになりますから、それでいきますと大学卒が百二十七万円、それから年金では六千円違う。それから、三十八年と四十年でいきますと、これやはりすぐに入った者が退職手当で六十九万円上。それから年金で七千二百円違うんですね。だから、先ほどの特昇の問題といい、今度はずっと現職でいって、大学院へ行って勉強した者、こう勘案しますと、退職金や年金ではうんといいことになるんですよね。この上に、いまさっき話したところの特昇までつくと、ますますの優遇措置になっていくことはこれは明白ですよ。それを皆さんがいや何もしませんと、こう言いながら、特昇は教育委員会の判断でございますからと、こう逃げておる。これは選ばれて行く者とそうでない者との差は、ますますつくということになりゃしませんか。本当はあなた方はそれを隠しながら、いや差はつけませんと、こう言っておるんでしょうが。ぼくはここにも皆さんのやり方に対して、都合の悪いところはちょっと隠しちゃって、いや差別待遇はいたしませんなどとね。これではちょっと私はフェアじゃないと思うんですよ、この点は。大学局長、これはどうなんですか、こういうことは。これは仕方がないんですか。いままでのあなたの答弁とはまた違ってくるんですね、この点は。なるほどそれは、あなたの答弁の中では、勤年と学歴との換算はしないということだけはわかりました、しかしながら、退職金や年金、あるいは特昇ということを考えますと、やっぱり現職教育大学院にやるという者は、特段上のクラスになっていくところの可能性というものは非常に強いんじゃありませんか。     —————————————
  49. 吉田実

    委員長吉田実君) 委員の異動について御報告いたします。  ただいま、藤井丙午君が委員を辞任され、その補欠として藤井裕久君が選任されました。     —————————————
  50. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、現在の制度では退職金なり、年金についてはこれは学部卒の場合と同じということになるのであり、直接大学院に行った者とは、勤務年数が二年長い、給与額は一号下と。全くその間に特昇その他のことがなければ、そういうことになるわけでございます。そのことに伴って御指摘のような状況が起こるというのは、そのとおりであろうと思います。問題になったのは、そういった現在の制度をさらに直して、大学院を修了した者について、給与制度の上で、制度的な改善措置を講ずるかどうかということについて、それは教員大学大学院を修了した者についてのみそのようなことを考えるということはありませんということを申し上げてきているわけでございます。
  51. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 やりませんと言っても、そうなっちゃっておるんですよ、これ。特昇制度はそれぞれの教育委員会のやることですということになればね。それを大学院を卒業して入ってきた者と、それからすぐ入って現職教育に行った者とは、いまさっき言ったように、結果的には金銭面ではプラスになっておる。あるいは同じ者でも、今度は、直ちに学校へ入った者と、現職教育を受けない者と受けた者とでは、特昇という一つ方式があるということになると、これは幾らあなた方が優遇措置でありません、今後の検討課題でありますと言ったって、なっておるんですよ。いや、その全体的な検討を待つまでは今後五、六年——この間なんかは大分かかるような話でした。それまではこの特昇の問題についても凍結しておきましょうというなら、これは話はわかるんです。しかしながら、これは教育委員会のやることですからと、こう逃げておる。だから、表面あなた方が答弁することと実際とは違ってくる。だから、現場教員はみんなそのことを知っておるから、はだで感じておるからこれはおかしいぞと、こう言うんですよ。  これ以上やったって、あなた方は手直ししますとは言わぬでしょうけれども、ここにもこの問題の問題点があるということだけは私指摘しておきますよ。  続いてお尋ねいたしますが、今度は教員大学院の性格です。  四十一年三月十一日の「教員養成大学に設置される大学院に関する審査方針」、この審査方針を変えるとかなんとかいう答弁を衆議院ではされておるんですが、変えてこの教員大学院の性格づけをするんですね、念のためお聞きしておきます。
  52. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 現在の大学設置審議会の設置分科会の総会が了承しました審査方針では、一般教員養成大学に置かれる大学院の目的、性格につきまして、「義務教育学校指導的立場に立ちうる者」として括弧をして「例えば校長、教頭、指導主事等のほか、当該学校内部において特定の教科について指導的立場に立ちうる者等」という記載があるわけでございます。この点について、大学院研さんを深められた方が、それぞれの学校現場において指導的な役割りを果たしていただくということは、もちろん期待をしているわけでございますけれども、校長、教頭、指導主事の養成ということを、教員養成大学修士課程が直接の目的とするというような誤解が生ずるとすれば、それはきわめて本意でないので、この点については、現在審査方針の内容について、設置審議会の関係の専門委員会で検討をしていただいておりますので、その機会に、この括弧書きの文言を削るということを含めて、設置審議会にこの点の修正をお願いをするということをお答えしているわけでございます。
  53. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それは四月十四日の衆議院におけるところの答弁の中でもはっきりしておる、するということは。もうしたんですか、どうなっておるんですかということをお聞きしているんですよ。それから一月以上になるわけだから、いかがですかということをお尋ねしておるんだから、それにお答え願えりゃいいんです。
  54. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 前回お答え申し上げてから、これまでの間に、大学設置審議会の関係の専門委員会が開かれておりません。専門委員会に対してお願いをする、あるいはその専門委員会の御検討ということを見ながら、さらに大学設置審議会の常任委員会なり総会なりにお諮りをするという手続が進んでいくわけでございます。
  55. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 するとどうなりますかね、法律が今国会で決まるという形に相なりますと、公布されるわけでしょう、実施されるわけでしょう。その後にまた目的が変わっていくんですか。少なくとも大学院であるならば、現在生きておるところの教員大学大学院に関する審査方針というのが、この法律の実際の場合に適用されるわけでしょう。それは後からいくんですか。どうも不明確ですね、その点が。どうなんですか、それは、手続上は。さらにずっと後の審査方針で返って、遡及でもするんですか、どういうことになるんですか。
  56. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 現在、この審査方針については先ほど来申し上げておりますように、その内容について再検討が関係の専門委員会で進められているわけでございます。教員大学修士課程に限らずに、一般教員養成大学修士課程趣旨とするとこうということについては、これまでも国会でお答えを申し上げてきているところでございますし、そのことは私どもとしては明確にこれまでお答えをしてきたような趣旨のものということで、事柄を進めているわけでございます。今後手続的には、この法案が成立をしたといたしますと、教員大学についての具体的な設置審議会の審査というものが、学生受け入れの時期が五十五年でございますけれども、五十五年までの間に続けられていくわけでございます。そのときに設置審議会が適用をしていく審査方針というのは、ことしの設置審議会の専門委員会なり、あるいは関係の常任委員会、あるいは分科会での御審議を経て、固まっていくわけでございますから、当然新しい審査の方針というものに基づいて、具体のたとえば教員審査であるとか、そういった点は進められるわけでございますから、その間に整合性がおかしくなるというようなことはございません。
  57. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 それはわかりましたが、そうすると、既存教員大学大学院はどうなるんですか。
  58. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 衆議院でもお答えを申し上げましたように、この審査方針に基づいて認可と申しますか、設置されております東京学芸大学なり、大阪教育大学修士課程につきましても、それぞれの大学において、それぞれの修士課程について目的と定めているところはこのような表現のものではなくて、学校教育において指導的な役割りを果たす者を養成するんだということを、まさに端的に述べているわけでございます。したがって、既設養成大学に設置をされている大学院の目的というものを、各大学が直す必要はなかろうと思います。それからまた、愛知の教育大学大学院その他、これから逐次設置をされていきます修士課程につきましても、もちろんいま申しました審査方針というものを設置審議会の方で改めますので、それに従って、審査は行われていくわけでございます。事柄としては、むしろこの四十一年の審査方針の趣旨としたところも、決して現在考えている教員大学、あるいは既設養成大学修士課程について、われわれなり、あるいは各大学が考えていることと、本質的に違うということではなくて、むしろ、この表現は表現において必ずしも従来の修士課程を設置する趣旨というものをあらわしていない、あるいはむしろ誤解を招くおそれがある、そういう角度から修正が行われるということに相なろうと思いますので、既設教員養成大学修士課程につきましても、修正される審査方針というものに基づいて、運用がされ、あるいは設置がされていくということでございます。
  59. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ちょっと先ほど既存のものは直す必要がないと言われたんじゃなかったんですか。やっぱり修正されていくんですね。これからのものはわかりますよ。既存教員養成大学大学院がありましょう。そこのものはこのとおりになるんですか。そこを聞いておるんですよ。
  60. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 先ほどもお答え申し上げましたように、この既設の、現在の審査方針に基づいて設置をされております、東京学芸大学大学院規程の「目的」の条文を見ますと、「東京学芸大学大学院は、学部における一般的並びに専門的教養の基礎のうえに広い視野に立って精深な学識を修め、理論と応用の研究能力及び教育実践の場における教育研究の推進者となる能力を養うことを目的とする。」と書いてございます。大阪教育大学の場合も同じような文言で、「教育実践の場における教育研究の推進者としての能力養成することを目的とする。」ということが書かれております。したがって、この現在の各大学大学院規程における目的の条文について、字句の修正をする必要はなかろうということを申し上げたわけでございます。
  61. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 しかし、少なくともそれぞれの大学で、どのように文書を現在読まれようとも、その既存のものの大学院の審査をしたところの根本的な方針というのは、明確にあなた四十一年三月十一日の審査方針に基づいてやったんでしょうが。言うならば、義務教育学校指導的な立場に立ち得るところの人を養成するんだと、審査方針には明確にそう出ておるんですよ。いまの御答弁では、それはそれでも現在のものがそう書いてあるんだから、大阪にしても学芸大学にしても指導的と一つも書いてないんだからいいです、こう言うならば、それならば何もこれを改める必要がありますか。今後、ここにどう書かれようとも、今後もこれでいきますのだと、こう言うならばつじつま合うよ。しかしながら、それは困るから今後は変えますと、こう言っておって、既存のものは審査方針には明確に指導的な立場の者がやると書いていながら、たまたまその大学大学院の目的の文言に書いてないから、これは現行のままですと、これは通りませんよ、世の中は。改めたならば、今後そういうふうに既存のものの入学条件も変えていきますと、大学院修士課程の性格も変えていきますというならば話はわかりますよ。どうもあなたの方は、つじつまを合わせよう合わせようと答弁すればするほど矛盾が出てくるのですよ、そうでしょうが。幾ら首をひねってみたって、審査したときのこの大方針は変わっていないんだから、だから、都合が悪いから今後は変えますと言うのでしょう、大臣答弁のように。変えるならば、既存のものも変えたならば、新しい年次からの採用の場合は、少なくとも最低限この趣旨に沿ってやりますというならやりますと明確に答えてもらわなきゃならない。それを変える必要がありませんというぐらい詭弁のものはありませんよ、それは。どうなんですか、そこは。
  62. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 既設教員養成大学大学院を、それぞれの大学が何と申しますか、これから運営をしていくわけでございます。その運営をしていくに際して、この設置審議会の審査方針が改められた場合に、審査方針がこういう趣旨で改められたということを、関係の大学にはもちろんお知らせをいたしますし、その趣旨を十分参考として運営をしてほしいということは申し上げるつもりでございます。
  63. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 ぼくは、ここにも矛盾点があるんですよ。明確にしておいてくださいよ。それならばこの審査基準を変えたならば、そのように少なくとも既存教員養成大学はさせますと、明確にしておかなければ、じゃ先ほど現職教育じゃないですけれども、この前のものに基づいて設置されたところの大学院に行く者は、特別なまた処置があるんですかということになっちゃうんですよ。どうもそこらあたりも皆さんは無理して合わせておるものだから無理が出てくるんです。  時間がありませんから多くを申しませんが、もう一つぼくがどうしてもわからないのは、恐らくこれはいままで議論もされたと思いますけれども現職からの入学の手続の問題ですね。これどう考えてもわからないんです。これは衆参の文教委員会の参考人としてこられたところの国大協関係の委員先生方の話を聞く限りは、文部省は国大協に対して、大学院入学者大学側が自主的に決めることだから、何ら規制はないんですと、このように説明された。だから、国大協は所属長同意を得てという言葉は、文部省のいままでのあれからみれば、たとえばほかのところの工場長の了解を得てとか、あるいは学校長の了解を得てぐらいに軽く考えておる、こう須田さんも言っておるんです。ところが、皆さんがあの衆議院で出されたところの統一見解を見ますと、県教委地教委、校長の同意を得るというかっこうに相なるわけでしょう。そうすると非常にこれは違っていくんですね。何のことはない、この三者の合意を見なければ受験さえもできないというんですからね、これはもう受験段階で推薦がなければ受験できないということに相なるんじゃありませんか。これまたいろいろ答弁をして、そうでないと言っておられますけれども、客観的にそうなりましょう。そこらあたりはあっさり白状されたらどうですか。
  64. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 国大協が非常に心配をしましたのは、この新しくつくられる大学が、いわゆる大学としてではなくて、教員研修所のようなものとして運営をされるということになっては、それはおかしいという、その点に御批判があったわけでございます。その御批判の一つとして、教員大学入学させる者について、教育委員会の推薦制というものがとられるのではないかという点の危惧がございました。この点については、明白にこの大学院については教育委員会の推薦制というものを、大学院入学についてはとらない、いわゆる大学院入学についての推薦入学という方式は採用しないということを申し上げてございます。またそうすることで私たちも考え方を固めておりますし、創設準備室もそういう考え方に立って準備を行っているわけでございます。受験に際して現職の者が所属長同意をとるということは、御指摘のように現在一般大学におきましても行われていることでございますし、教員の場合には、市町村の教育委員会の同意ということを必要とするということをこれまで申し上げてきたわけでございますが、これは決して市町村の教育委員会の推薦ということではございません。
  65. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 だってあなた方の答弁を見ますと、県全体の研修計画その他いろいろな事情を判断してと、これはくせ者ですね、その他いろいろな事情を判断してと、これはくせ者ですね、その他いろいろな事情を判断して所属長の校長、身分のある市町村教委、任命権者の県教委が十分協議をして同意書を添付すると、こう言っておるんですよ。これはきわめて間口の広いその他事情ですよね。それで三者が合意をするというんですからね、どんなに善意に解釈いたしましても、これは実質上三者の推薦ということになるでしょう。そのことと、教育公務員特例法にあるところの十九条、二十条の精神、言うならば教員研修をしたいと言ったときに、研修に便宜を図るという、積極的な教育委員会のこれは義務でさえあると思うんですけれどもね。このことはほとんどこれは抹殺されるんですよ。そういうことになりませんか、実際上の問題として。それはそんなことありませんと幾ら抗弁してみたって、いろんな事情を勘案して総合的に判断をするというんだから、三者が。これはまさに十九条、二十条の私どもから見れば明らかに精神に反しますよ。研修やりたいと思っても、研修計画、それは一応わかるにしても、その他いろいろな事情を判断して君はノーだと、こう言われたら、受験さえもできないというんでしょう。それどうなんですか。
  66. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) これは現職先生方にまさに大学院における研さん機会確保しようということでございます。教育委員会の側が選抜をして、そしてそれを大学側に推薦をし、その推薦された者を大学が受け入れて教育に当たるというようなことではなくて、現職先生方が積極的に大学院において勉学をしたいという意欲をお持ちになり、そして、それに対して市町村の教育委員会が県の教育委員会と十分御相談をしながら同意を与えていく、そしてその同意を得た者について、大学側はまさに大学院としての入学者選抜を行うということでございますから、私どもが考えているこの大学院趣旨というものは、教員の積極的な勉学の意欲にこたえて、その機会確保していくということでございますから、市町村教育委員会の同意の運用に当たっても、そうした見地からの運用というものが行われることを期待しているわけでございます。
  67. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 幾らおたくが期待すると答弁してみたって、そういう指導をするということじゃないんでしょう。それならばあんた答弁が当然違ってこなきゃならぬはずなんですよ。特例法十九条、二十条の精神に沿って、積極的に受験ができるように配慮しなさいと、こう指導しますというなら話はわかるんだ。ところが逆でしょう。県全体の研修計画その他いろいろな事情を判断をしてと、こう言っている。しかも、先般の衆議院の記録を見てみると、答弁に困っちゃってから、いや同意書がなくても受験できますよと、こう言っている。それもしかも同意書のないということの事情が明らかになった場合には受験できますなんて答弁している。これは初中局長ですかね、だれか答弁をされている。それなら実際の大学院大学入試を受ける場合にハンディがつきますよ。できると言いながら実際はこれはできないんですよ。不合格になることは決まっておる。だとするなら、ますますこれは三者の合意がなけりゃ受験さえもできないというんなら、これはまさに推薦制だと言われてもしようはないじゃありませんか。本当にあなた方がいまも申し上げたように、教育公務員特例法のこの研修という積極的な意義というものに立ってやると言うなら、そういうふうに方針を変えなさいよ。十九条、二十条のこの規定に沿って、積極的にひとつ教員から研修の申し出があったら、特段の支障のない限り受験をさせなさいと、これなら筋は通りますよ。そうしたところが、話はそうじゃない。全体の研修計画やらその他いろいろな事情を判断をしてと、こうして逃げておる。これはまさにいままで指摘をされているところの推薦入学、あるいはおぼしめしにかなったところの者しか出てこない。しかも、出てきたら特昇で昇給はさせる。まさに行政管理の手段として使われておると言われても仕方ないじゃありませんか、このやり方だったら。そうでないと言うならば、大臣、変えたらどうですか、いま私が申し上げたように、積極的にこの方針を。そうしたらだれもが納得しますよ。
  68. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 宮之原委員、変えなくても初めからそうなんです。十九条、二十条の精神をもって、そういう研さん意欲のある現職教員同意を与える方向でおやりなさいという指導を都道府県教育委員会にするわけでございます。したがって、それに必要な研修代替定員確保しようといたすわけでございます。ただ、現実問題としては、たとえば健康的に二年間の研修に耐えられないではないかという方も、中にはあることでございましょう。あるいは一定期間僻地の任務についておられる方が、その勤務途中でとおっしゃっても、それは決められた人事配置のもとでの僻地勤務でございますから、その勤務が終わってからになさってはどうですかという場合もございましょう。そのようなことを勘案してお答えをしているわけでございますから、選抜をする、そして推薦をする、そういうこととは全く違う。都道府県教育委員会が従来のようにみずから計画を立てた長期研修に推薦をして、何人かの先生方研修機会を与えるというような従来の研修とは、全くこれは基本的に違う考え方を私ども持っておりますことを御理解をいただきたいと思うんです。
  69. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これね、議事録を読む限りとてもそういう話出てこぬのですよ。それならば前段を明確にして答弁してくださいよ。何回も読みますけれどもね、県全体の研修計画その他いろいろな事情を判断してこうこう三者と、こう言うんですよ。もし、私の質問どおりだと言うんならね、いま申し上げたように、教育公務員特例法の十九条、二十条の精神に沿って、特段の支障のない限り受験を認めなさいと、こう明確に答弁しなさいよ、そんなら。特段の支障が、あなたがおっしゃったところの健康がどうだろうかと言うんなら、それはすぐ入るでしょうね、それに。恐らくそれは自分が健康が悪かったら受験はしませんけどね。それだったら私ども素直にこれ理解できますよ。他にねらいがあるんでしょうが、本当は。なければ明確にそうしますと言いなさいよ。
  70. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 同意というのは、どこまでも合格後現職のままで大学における研修を保障する、そういう性格のものだと考えております。したがって、都道府県教育委員会の研修計画であるとか、あるいはそれぞれの学校現場における事情であるとか、あるいはその市町村の中における事情であるとかを考えて、まさに御指摘のように、支障のない者について受験に対する同意が与えられていくということになると思います。私どもは各県について、教員大学修士課程への志願者数の割り当てというふうなことはもちろんいたしませんし、それぞれの県によって、いろいろな態様が実態としてはあるだろうと思います。そのことはあえて覚悟の上で、先生方の積極的な勉学の意欲にこたえるということを趣旨としながら、円滑な運用というものをお願いをするということを申し上げているわけでございます。しかし、実際問題として志願者が多数にわたるというような場合、特に同一の教科なり、同一の学校なり、あるいは同一の市町村で志願者が多数にわたるというふうな場合に、それぞれの先生方勉学の意欲がそれぞれに強くても、実態としてはそれに全部おこたえすることができないということは当然あり得るわけでございますから、そういった場合等について、いま申し上げましたような趣旨で、市町村の教育委員会が都道府県の教育委員会と十分御相談の上で、適切な運用をお願いをしたい。そして、先生方の積極的な勉学の意欲というものにこたえる形で、同意というものが運用される、そのことを私たちはお願いをする、そういう趣旨でかねてお答えを申し上げてきておるわけでございます。
  71. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いろいろ言われますけれども、それは理解できませんよ。たとえば同一市町村からたくさん希望者がおって、出られたら困るというなら特段の事情ですよ。それは特例の事態なんです。だから、基本的にはやっぱり十九条、二十条に沿って認めていくんだと。ただ、特段の事情がある場合は、これはやむを得ませんよというならわかるというんですよ。だけれども、あなたのずっと一貫してきている答弁はそうじゃないんだから。ここに非常に疑念が残る、率直に申し上げて。そんなことはさらさらありませんと言うなら、私が言うようなことを言われたら、これぐらい常識的にだれでも理解できるものはありませんよ。特段というなら、それぞれまた事情が違いましょうけれどもね。しかし、少なくともいままでの衆議院におけるところの御答弁では、これは口実をつくるところのものしかならぬですよ。考えてごらんなさい、みんな主体は皆さんの都合でしょう。県の全体の研修計画その他いろいろな事情を判断をして——判断をするものは県の教育委員会であり、市教委であり、校長なんだから。だからそのうちから選びますよということなんだよ、これ。研修というのは、普通ならば教員が主体でなきゃならぬのですよ、十九条、二十条から見ても。それができるような状況をつくっていくというのが、教育行政の任務だと書いてあるじゃありませんか。隘路を打開をする。逆さになっているところに皆さんのこの指導方針というのは決定的な問題点がある。必ずこの問題点というものは、これは実施されるとするならば出てきますよ。そこがまた本当は皆さんのねらいかもしれませんがね。ここに皆さんが教育を管理の手段にしたいという、皆さんの頭の中には管理あって教育なしというやはり物の姿勢が一貫して流れておるんだよ。少なくとも現職教育の問題ぐらいは、教育を優先させなさいよ、教育を。この教員大学なるものの構想の一番の問題点は、ここにも一つありますよ。それだけを私は強く指摘しておきますから。必ず出てきますよ、その弊害は。皆さんのねらいどおりかもしれぬけれども、それでは日本の教育はよくなりませんよ。勉強して受けたいという者の意欲をやはり尊重するようなものでなければ、すでに推薦の段階から、受験をできるかどうかという段階から問題が出ているんだから。  しかも、割り当てはしませんというあなたのお話、それは割り当てはしませんと、こう言っておる。たとえば四月五日の衆議院文教委員会のやりとりを見ますと、あなたは確かにそう言いながら、やがては調整されていって、それぞれの県で研修計画を持ってやるから、実際問題としてはこの問題について各府県ばらばらにはなりませんと、あなたはこう言っている。それから初中局長は、標準法の規定で長期研修に加配するところのちゃんと教員があるから調整されるでしょうと、だから各府県の入学へのアンバラは出てきませんかという質問に対するところの答弁なんです。こういうような答弁にしても、たとえば研修計画といい、定員の加配といい、それぞれの県は自分の県で、ことしはどれぐらいその研修のための教員の加配があるだろうか、そういうことを考慮なしに研修計画は立てませんよ。そうすると、教員大学の二百名なら二百名、あるいは三百名なら三百名、次にはまたさらにふえていくでしょう。そうすると、皆さんが各県ばらばらにさせないとするならば、前もって各県に、加配の中の大体のめどはこうなんだと、こう指導されるに決まってますよ。また、県もそういうことを知ることなくしては、自分の県の研修計画は立てられませんよ。だから、これはどう言おうとも各府県への割り当て制になっていきますよ。その割り当て制の上に、先ほど申し上げたところのこの合意がなければ受験もできないという仕組み、これは私どもが、皆さんはそうでないないと言いながらも、すでに特定の者、あるいは特定の層だけをある数に限ってここにやっていくという、この教員大学という大学院現職教育というものに名をかりた、管理ということを中心に考えたものだと言われたって仕方ないじゃありませんか。  結果的には割り当てになりませんか。それは初中局長、そうなるでしょうが。あなたはことしは予算で二千名とったと言うなら、各県だってみんなずうっと計画を立てなけりゃならぬからね。そうすると、二千名のうちでおれのところは五十名ぐらいだと、いや幾らだと。そうなると、文部省の方からこのうち現職大学院はこれぐらいだよと、こうなっちゃうでしょう。首ひねっているけれども、結果的にそうなりますよ。
  72. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 現在も長期研修のための加配定数というのは千二百七十名でしたかありますから、これを各県に平均すれば三十名くらいになると思いますが、今後、大臣もお答えしましたように、教員大学院のための加配定数をそれに上乗せして要求をするということにいたしておりますが、ただ、実際の運営としては、現在も長期研修といっても、たとえば理科の教員研修、あるいは産業教育研修、あるいは特殊教育研修というふうにいろいろございますが、その点に、割り当てた定数の中でそれぞれ県が、ことしは特殊教育研修のためにどのくらいやろうかということを判断してやるわけでございますので、全体の枠の中で大学院にどのくらいやるかということは、やはりおのずから私は制限は出てくると思いますけれども、もちろん文部省で、この分は大学院のための定数だから、そういうふうに使えというふうなことを指示するつもりはございませんし、各県が割り当てられた数を念頭に置いて、いろいろな分野における長期研修というものをやらせるというたてまえでいっていただくというふうに私は考えておりますので、そう厳格に、ことしはどの県は何名ということには、これはならないというふうに考えるわけでございます。
  73. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 予算の令達、示達を見れば、大体割り当てをやっていますわね。だからいまの答弁はそれでいいでしょうけれども、実際にはそうなっちゃうんですよ。だから、先ほど試験を受けるところの条件の問題といい、そこはやっぱりしりの割れた話ですね、どうおっしゃろうと。非常にうまいことを言われるけれども、実際のねらいは別にあるみたいなんです、これ以上申しませんけれどもね。  時間もないようですけれどもね。さっき中断がありましたから本当は私いただきたいんだけれども、協力するということで次へ進みますがね。  最後にもう一つお尋ねしたいんだ。この管理機構の問題、新しい大学の。これは教員大学の管理運営については、筑波大学方式は採用しないとかという答弁をされておるようですが、そうですか。
  74. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 筑波大学の管理運営の方式というのは、御案内のように、教育、研究組織の機能的な分離、いわゆる学群、学系制というものを前提にした上での組織でございます。この大学の場合には、これまでの既設大学と同じように、学部を設け、そして大学院を設けるわけでございます。学部には教授会が置かれ、大学院には研究会、委員会が置かれるわけでございますから、従来の大学と同じような管理運営のあり方になるわけでございます。
  75. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 これは専門家の局長に聞くのは失礼ですけれどもね、学群、学系制というのは、これは管理運営ですか。私はこの種のものは研究、教育の組織だというふうに理解しておるんですがね。いわゆる何々学部とか、何々学科というのは、研究とか教育の私は組織の形態だと思うんですがね。私が質問をしておるのは、管理運営については筑波大学方式はとりませんかと聞いておるわけですよ。あなたの答弁は、筑波大学のような学群、学系制をとりませんと、こう答弁している。これは意地悪く言うとごまかしですね。あなたみたいな局長がまさか質問を取り違えるはずはないと思うんですがね。私がお聞きしておるのは、管理運営の問題について、筑波方式はとりませんかどうですかとお聞きしておるんですよ。もう一回正確に答えてください。あるいは私が間違いがあったら引っ込めますがね。
  76. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、学群、学系というのは教育、研究のための組織でございます。私が申し上げましたのは、筑波大学の場合にはそういった制度のもとで、たとえば教官の採用、選考等については、人事委員会というような制度を持って実施をしております。こういった制度をこの大学ではとらないということを申し上げたわけでございます。ただ、補足をいたしますと、副学長については、これまでつくってまいりました医科大学なり、あるいは技術科学大学の場合と同じように、この大学にも副学長は設置をするということを予定をしております。
  77. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そこでお尋ねしますがね。この新構想教員養成大学の一番基本になっておる鰺坂調査会、この報告を見ますと、あなたがいま答弁されたのとは大分違いますがね。鰺坂報告は、これとは違うものをつくりますと、こういうことになるんですか。都合のいいときには準備室がみんなやるんですと、こう言われるし、いまのまたお答えはそういうのはとりませんと、こう言っているんですが、人事委員会などは。どうなんですか、そこは。
  78. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、鯵坂調査会の場合は、教官組織につきましても教育と研究の分離の方向を志向しておりましたし、人事委員会の設置のような、現在の法律の改正を必要とする事項も提案をされていたわけでございます。この点については、この大学は現在御提案を申し上げておりますように、鰺坂調査会の報告にはよらなかった、そして基本的に教官は学部に属しますし、また管理運営につきましても現在の法律に即して行う、そういう方向をとったということでございます。
  79. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 じゃ聞きますがね。新構想教員大学の構想図になっているこの管理運営は、副学長を置くぐらいで、現行の大学と変わらないということですね。ところが、しかしいろいろ宣伝されておるのは、審議会を設けます、参与会の参与を置きます、あるいは人事委員会を置きます、こう言っていますよ。これは全然もうやらぬのですね、それなら。そこを明確にしてくださいよ。
  80. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 人事委員会につきましては、先ほど申し上げましたように、この大学は教授会が置かれるわけでございますから、その教授会で運用をしてまいりますので、人事委員会のような制度はとらないわけでございます。もしとるならば、これは法律をもって措置する必要がございます。参与については、これまで設けております医科大学なり、あるいは技術科学大学では参与というものを設けまして、学外の有識者の意見を聞くという工夫をいたしております。この大学の場合にも、筑波大学の場合に、法律に規定をして置いた参与会というようなものは、もちろんこれは法律事項でございますから、この大学に置くわけではございませんが、医科大学あるいは技術科学大学の場合と同じように学外の有識者の御意見を伺う、そういう機関を設置をするということは検討が進められております。参与という形で従来の医科大学、技術科学大学は置いてきておりますが、現在準備室は必ずしも参与という形で置くということについて決定をいたしてはおりません。何らかの形で、そういった学外の方々の御意見を伺う、連絡協議のための機関を設けたいということは考えておりますけれども、いずれにしてもその性質は現在置かれている参与と同じ性質のものになるわけでございまして、それが大学の自主的な運営を阻害をするというようなことにはもともとなり得ないものでございます。
  81. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうすると、評議会というのはどうなります、各副学長やら、それからそれぞれの初等教育課程の長ですか、そういう者を集めたものの評議会はどうなるんですか。
  82. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 一般の単科の教員養成大学の場合と同じ取り扱いになりますので、評議会は置かれるわけでございます。
  83. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうすると、人事問題をやるところの人事委員会だけは置かない、これは教授会に変わると、こういうことですか。
  84. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 既設の単価の教員養成大学の場合と同じような運営の形になるわけでございます。教育公務員特例法の規定しているところに従って、教官の採用、選考等は、それぞれ教授会等において行われるわけでございます。
  85. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうすると、つくられる評議会というのは、学校運営のすべての面の中心になるということなんですか、それとも普通の大学みたいに、教授会が主体になっていくということに相なるんですか、どっちなんですか、教授会との関係は。
  86. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 通常の大学に置かれる教授会、評議会の関係と同じでございます。評議会の機能は評議会についての暫定規則が定めているところによるわけでございます。
  87. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうすると、評議会というのはどういう性格になるわけですか。教授会のあれはわかりました、ほかの一般大学の教授会と変わらないということは。そうすると、今度は普通の大学にない評議会がつきますわね、これはどうなるのか。
  88. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 現在国立大学の評議会に関しましては、国立大学の評議会に関する暫定措置を定める規則というものが、昭和二十八年に文部省令をもって制定をされております。そして「数個の学部を置く国立大学に評議会を置く。」ということになり、「一個の学部のみを置く国立大学においても、当該大学の事情により、評議会を置くことができる。」ということになっております。評議会の権限としては、「学則その他重要な規則の制定改廃に関する事項」、あるいは「予算概算の方針に関する事項」、「学部、学科その他重要な施設の設置廃止に関する事項」、「人事の基準に関する事項」、「学生定員に関する事項」、その他規定が設けられているわけでございます。この大学につきましては「一個の学部のみを置く国立大学」でございますから、評議会を置くかどうかという点については、まさにこの大学として御判断になる。つまり、一個の学部のみを置く大学の場合には、教授会の機能と評議会の機能とほとんどダブりますから、それを置くかどうかというのは大学の御判断になるわけでございますけれども、これまでの単科の教育大学の場合に評議会を置いてきているケースがございますので、恐らくこの大学においても、従来のケースに従って評議会を置くということになるのではないかということでお答えをしているわけでございます。
  89. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いまお読みになったように、数個の学部を置くところでは普通置かれていますよね。特例として置くことができるわけでしょう、率直に申し上げりゃ。あくまでもやはり大学運営の場合は教授会が主体になっていけというんですよ。それをわざわざ、新設のもので、一つ学部しかない、修士課程一つのコースしかない、きわめて簡単、非常に率直な学部、学科のあるところに、何で評議会をわざわざつくらなけりゃいけないのか、その理由を聞かしてくださいよ。
  90. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 先ほど来お答えを申しておりますように、評議会の機能というもの、教授会の機能というものは、それぞれ特例法なり、あるいは暫定規則を通じて定められているわけでございます。評議会をこの大学に置くかどうかは、最終的には大学が御判断になることでございますけれども、教授会の所掌する事項と、評議会の所掌する事項とは、事柄としては異なるわけでございますから、実際問題として教授会をもってカバーをするということもできるわけでございますけれども、この大学が特に評議会を設けようということであれば、それはそれを設けて、所定の法令の定めるところに従って、運用をしていくということは当然考えられてしかるべきことでございます。
  91. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 都合が悪ければ設置審議会や、準備室の方でやりますと、本当はそれでは困るんですよ。皆さんがイニシアをとってさせといて、あなた方の意向どおりに動く人を任命して作業させといて、これはまたそっちでやりますと、こう逃げてみられたって困るんですよ。第一、学部一つ大学院修士課程一つしかない。そういうところに、さっきの話じゃないけれども、学長あり、何名置くかもしれぬが副学長あり、あるいはまた参与みたいなものをたくさん置いたり、それじゃ、ほかの大学と変わりません、筑波はとりませんと言いながら、筑波の一番本質的な管理運営方式、この管理システムをとにかく許される限りぎりぎりもうみんなここに持っていこう、こういう一つ考え方でしょう。しかも、いまお尋ねしますと、教授会と評議会との両者の性格はどうなるんですかとお答えを願っても、非常に不明確なんです。それはまたすべて準備室の皆さんにやっていただきますでは、本当は私はこの法案を審議するところの意欲を失いさえしますよ、これは。日本の将来の現職教育あり方教員大学あり方を決める一番の問題ですから、そこらあたりぐらいは、衆議院を経てここまで相当な日数を経ているんですから、きちっとお答えができるようにしておいてくださいよ。そこはまた一日にわが党の仲間の方からも引き続いてさせますからきちっと答えてください。  最後にもう一つ尋ねますが、一月二十日の国大協の特別委員長の説明メモですね、須田メモ。この中の123ですね、後段の。そこに一の一番後にこう書いてある。「また、高校教育中心の大学院も構想されたことは評価することができる。」とあるんです。恐らくこれは、教員養成でございますから、高等学校教員養成中心の大学院の構想をこれはお持ちだと思うんです。私どもには何も聞かされておりませんけれども、国会には提起はないですけれども、少なくとも国大協の皆さんには説明されたからこういう文書が残っておると思うんですがね。その中身は何ですか、具体的には。これはまさか鹿屋の新高等教育機関設置のそれでもないんでしょうね。別にあるんでしょう。それは何ですか、もう少し具体的に聞かしてくださいよ。
  92. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 五十三年度におきまして、筑波大学教育研究科に高校教員を主として対象とする教科教育専攻というものを、入学定員六十名を予定をして設けることといたしております。これをこの須田委員長の説明メモでは指摘をされていることだと考えます。
  93. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 私はこれはきわめて重要な問題だと思いますよ。小学校教員養成が授業時数でも足らぬし、需給関係でも足らぬし、いや全教科だから国立のものをつくって、特別の養成課程をつくるんだと、こう力説される。先般の質問で、いわゆる中等教員のものはどうしますかとこう言ったら、それは開放制の大学を中心にしながらやります、こう答弁をされた。しかも、現在で高等教育課程があるのは、金沢大学と広島大学ですか、この二つである。そこの大学院でこれを今後やるというならまた話わかるけれども、わざわざ筑波大学に、問題のあれだけ国会で議論になった大学で、高等学校教員養成のこれは一つ課程を六十名で設ける。これは私はちょっと理解に苦しむんですよ。しかも質問されて初めてこのことが明らかにされるというんでは、ますます皆さんの考え方私はわからぬですよ。これは大臣あれですか、こういう養成のいろんな法案関係というのは、指摘されるまではすべての構想というものを覆い隠そうという魂胆ですか、どうなんですか。これだっていままで議論してきたところのものと関連すれば、優に一月半の審議日程を要するところの問題ですよ、これは。ごまかすのにもほどがありゃしませんか。
  94. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 決して私どもは事柄をできるだけ覆い隠そうなどということを考えているわけでは毛頭ございません。この筑波大学教育研究科の点につきましては、衆議院におきましても御議論のあったところでございます。
  95. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 そうすると、さっきの教員大学院大学には管理方式では筑波大学をとらない、それはそれなりに意義があるからとらないと言ったんでしょう。高等学校教員養成大学院だけは、修士課程だけは何で筑波につくらなきゃならぬ。既存の高校教員養成課程のあるところの大学、特に総合大学では広島大学なんかりっぱな大学だ、こういうもの全然歯牙にも触れぬでおいて、何で筑波につくるの、つくらなけりゃならぬ理由聞かしてくれよ。
  96. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 筑波大学教育研究科につきましては、五十二年度から設置をしてきているわけでございます。五十三年度に教科教育専攻をこの研究科に加えるということを考えました。五十二年度では障害児の教育専攻専攻としては設けたわけでございます。筑波大学においては、積極的に教育研究科を設置をして、それを充実をしていくということを考えておりますし、その構想として教科教育専攻を設け、そこでは主として高等学校教育において、指導的な役割りを果たすことができるような教員養成というものを、修士レベルで考えようということを御計画になったわけでございます。そのことを私どもは受けとめて専攻を設けたということでございます。
  97. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 局長ね、どう答弁しようだってね、この問題いままで明らかにされてこなかった問題ですよ。あなたはそう言うけれども。ぼくらも衆議院の議事録を丹念にみんな見ておるんですよ、しかもですよ、これは教科教育ですね、筑波に設けられるやつは。それを何で高校教員中心にしなきゃならぬの。これも現職教育として門戸を広げて、小、中、高の先生方のいろんな研修の場にしてやるというならそれは話わかりますよ。何で高校だけここでやらにゃいかぬの。しかも既存の高校の教育課程のあるところの大学は全然問題外にしている。これ幾ら説明されたってわかりませんよ。  答弁は求めませんけれども、事ほどさようにこの法案にはきわめて隠されたところのいろんな問題点があり過ぎるほどあるんですよ、幾ら皆さんが答弁されようと。すればするほど矛盾点が出てくるところの法案じゃありませんか。  私はやっぱり、委員長にもお願いしますけれども、もう一回やはりそれらの問題点を明確にさした中で、もう少し時間をかけてこの問題について十分審議の時間をとっていただきたい、これだけ申し上げてきょうは終わります。
  98. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 教員大学並びに放送教育開発センターについてお尋ねいたします。  まず放送教育開発センターについてお尋ねいたします。  いただきました資料の1に「放送教育開発センター設置の経緯」、その(1)に「文部省においては、かねてから、放送大学創設の構想を推進してきたが、」とございます。文部省が推進してきた放送大学創設の構想、これはどういうものなのか、何点かお尋ねいたします。  まず、放送大学創設する目的、これは何でしょうか。
  99. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 放送大学は、ラジオ、テレビによる放送の大幅な活用によりまして、国民各層の広い教育需要にこたえる、そして新しい形の大学教育機会を国民に提供し、これまで地理的、時間的あるいは年齢的等の制約があって、高等教育機会を得ることのできなかった方々にも、高等教育機会を提供しようということがございます。また、このことによって、放送大学学生だけではなくて、広く一般国民に大学教育がテレビあるいはラジオを通じて公開されることになります。したがって、電波を教育、学術、文化の領域で、効果的に活用するという点においても、意義の深いものであると考えております。  さらに、放送大学はそうした新しい形での高等教育機会というものを、広く国民各層に開いていくということだけではなくて、教材の、たとえば作成に当たりまして、広く国・公・私立大学教員の協力のもとに、授業内容の充実、あるいは授業方法の改善というものを図りますので、そういった形で、既設大学との間の連携協力というものをさらに推進をすることができる、あるいは放送大学の授業内容が各種の情報媒体を通じまして公開される、それによって既設大学教育内容方法等の改善にも寄与することができるであろうと考えます。  さらに、放送大学におきましては、他の大学との間で単位互換制を積極的に進める、あるいは懸案となっております単位の累積加算の問題についても、この放送大学を場として検討を進めることができる、そういった意味で、高等教育機会を国民各層に広げるということと並んで、高等教育の全体のあり方、構造をより柔軟なものにしていく、そういう方策を推進する上でも非常に意義の深いものであると考えているわけでございます。
  100. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 設置形態をどうするかという点についてお伺いいたしたいんですが、昨年文部省は特殊法人放送大学学園、仮の名前ですが、それを設立して要求を出したわけです。この資料を見ますと、「諸般の事情から」見送られた。そこで今後も放送大学の設置者は特殊法人で進めるのか、それとも政府が特殊法人の新設を認めない場合は、別の設置形態を検討するか、この点いかがでしょうか。
  101. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 放送大学の設置主体のあり方につきましては、御指摘のようにこれまでの放送大学の構想におきましては、放送大学がみずから放送を行うこととする必要があるということから、放送の実施主体と大学の設置主体とを一つのものにする、そういう趣旨から特殊法人を新設をして、それを放送大学の設置主体とするという考え方をとってきたわけでございます。しかし、特殊法人の新設ということにつきましては、行政改革の基本的な考え方ともかかわる問題でございますし、また、特殊法人が大学の設置主体となるということは、これは従来にない全く新しい方式でもございます。そこで、放送大学の設置主体のあり方につきましては、今後、先般の委員会でも御議論のございました放送法との関係も含めまして、昨年の経緯その他いろいろな状況を考えながら、関係者と十分に協議をして、適切な対応策を考えていきたい、そのように考えております。
  102. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 重ねてお聞きいたしますけれども、特殊法人の形ではやらないということですね。
  103. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 放送の実施主体と大学の設置主体とを同じものとするという考え方をとるわけでございます。そのときに国立の形をとるか、あるいは私立の形をとるかというのが、従来の設置形態からすれば考えられるわけでございますけれども、いずれについても問題がございます。  そこで、新たに特殊法人というものを大学並びに放送事業の主体とするということを考え、それが最も望ましい方向であるというのがこれまでの基本構想、あるいは基本計画で御指摘を受けているところでございます。私たちもそれに従って、五十三年度の概算要求もいたしたわけでございますけれども先ほど申し上げましたように、特殊法人を主体として構想するということについては、行政改革との関係等で問題があるわけでございます。それが最も望ましい方向であるという基本構想、基本計画の御趣旨というものを十分に考え、また昨年度の概算要求に当たっての経緯等も考えて、五十四年度でどのような対応をするかということを目下懸命に検討しているということでございます。
  104. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 放送大学が電波を利用し、全国をカバーする。さきに設立要求の場合には、特殊法人として考えられたわけでございますが、その場合に特殊法人という形で行いますれば、国の強い監督を受けるのが普通でありますが、そのような状況のもとで、大学として教育、あるいは研究の自由をどのように保障していくか、これは問題になったと思いますが、このことについてどのようにお考えになったのか、また何かの機構面で教育、研究の自由、これを保障するという点が考えられて、あのような案が出されたか、その点はどうだったんでしょうか。
  105. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 大学の設置主体としては、先ほどお答え申し上げましたように、国立、公立、私立というものが現在の設置主体でございます。特殊法人で大学の設置主体を考えるという場合にも、これはいわば大学の設置主体としては、私立学校の設置主体である学校法人にきわめて近い性質のものに、事柄としてはなっていくわけでございます。  放送大学の場合に、非常にむずかしいのは、もちろん大学でございますから、そこにおける教育の自由、学問の自由というものが確保されなければなりませんし、それは設置主体がどのようなものであれ、憲法の考え方に従って確保されていくわけでございます。そのことと、放送法の規制のもとに、放送番組として大学教育内容が出ていくわけでございますから、そこにおける番組としての公平中正なあり方というものの準則を、いかに満たすかということがあるわけでございます。もちろん、放送大学が放送を実施をするということになれば、それは放送法の規制のもとに行われるわけでございますし、それに対応して法人の中に十分な番組の審議のための機構というものも考えられなければなりませんし、また、もともとこの大学の送り出す教育内容としての番組をつくっていく場合には、既設大学のように一人の教官が、いわば講堂において、あるいは教室において、限られた学生に対して講義をするというのではございませんから、多数の教官がお互いに協力をし、チームをつくって、そこで十分に討議をして番組の中身をつくっていくということになります。したがって、教育内容の構成の過程そのものの間に、十分なその内容のチェックというのは自主的に行われることになろうと思います。いずれにしても、特殊法人で設立をする場合におきましても、そういう放送法との関係でむずかしい点はございますけれども大学としての十分な自主的な運営というものができるようなものでなければならないことは当然でございますし、そういうことは設置主体がどうなるにしても、明確に維持されていくことでございます。
  106. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 お話としてはわかりますけれども、何か機構面で保障する、そういうものがなきやならないと思いますが、そういうものは考えられていたのか、また考えたのか、ございましたらもう少し詳しくお聞かせいただきたいと思います。
  107. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 先ほどもお答え申しましたように、番組の内容の中正公平ということを担保するための機関としては、放送法でも審議機関の要求をしておりますから、当然放送大学学営の場合でも、放送番組の審議に当たる審議会は設置をしなければならないと考えております。  また、放送大学の運営については、全国の国・公・私立の大学の協力を得ながら、その連携協力のもとに進めるということが必要でございますので、国・公・私立、特に、通信制の大学の御経験を生かすというような意味におきまして、そういった方々の御参加を得た、しかるべき運営の協議に当たる機関をつくるというようなことも考えていたわけでございます。
  108. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 放送大学の法的な位置づけ、これについてお聞きしたいんですが、文部省の考えている放送大学というのは、学校教育法第五十三条並びに五十四条に基づいた学部を有する正規の大学なのか、その点はいかがでしょうか。
  109. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教養学部を持つ独立の通信制の大学、正規の大学として構想しているものでございます。
  110. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そうしますと、通信による教育のみを行う大学であって、普通の大学とはちょっと違うと思います。また、現在大学で行われている通信教育でもない、正規の大学なのだから、いわゆる独立通信大学というような位置づけになるんでしょうか。
  111. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のとおりでございます。既設の通信制の大学が、たとえば経済学部なら経済学部を持っていて、その上で通信による教育を行うということとは趣を異にいたします。いわば通信制だけの学部ができる独立の通信制の大学ということになります。
  112. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで、放送大学は現在の大学設置基準、また大学基準協会の大学通信教育の基準、こうしたものを満たす方向で設置されるのかどうか、それとも新たな別の基準で設置されるのか、この点はどういうお考えなんでしょうか。
  113. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 制度的には独立の通信制の大学でございますけれども、いわゆるジャンルとしては現在の私立大学の通信教育と同じように、通信による教育を行う大学でございます。そういう意味では通信教育一つの態様に当たるわけでございます。そういったところから、現在放送大学についても、その大学設置基準を検討しているわけでございます。つまり通信制の現在の教育につきましては、御指摘の基準協会による基準というものが実際上認可の基準として取り扱われているということはございますけれども、省令をもって定めた基準というのはないわけでございますし、直接に大学設置基準にその旨の規定があるわけでもございませんので、放送大学を含めまして、大学通信教育一般に適用される設置基準をつくろうと、そういうことで私大通信教育協会の関係の方々も御参加をいただきまして、大学設置審議会の中に大学通信教育・放送大学の特別委員会を設けて、その基準の内容検討を願っているところでございます。
  114. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そして、新しい別の基準を制定する場合には、現在の通信教育、これはそこに含めて考えられるんでしょうか。
  115. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 放送大学、通信教育を通じまして、いわば通信による教育を行う大学の基準を決めたいということで対応いたしております。
  116. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 次に、現行の通信教育の実情についてお尋ねいたします。  通信教育実施している大学の実情を見ますと、私立のみに依存していますけれども、その理由は何なのか、今後もその方針でいくものかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
  117. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のとおり、現在の通信教育大学、短大を通じまして、私学で行われているわけでございます。国立についても、通信教育というものを考えてはどうだという御指摘は、従来から承る機会があったわけでございますけれども、率直に申しまして、国立大学はそれぞれに整備をすべき課題を抱えている、そして、その対応をまず考えているということから、各大学において通信教育実施をしようという構想が出てこないということから、各国立大学に通信制の教育というものが行われずにきている。  それからもう一つは、放送大学の構想が四十四年から検討されてきておりますので、やはり国立大学の関係者の考え方、意識としましては、放送大学というものを通じて、いわば広く高等教育機会を国民に提供するということが行われるであろうと、そのプロジェクトが現在進行中であるということから、国立大学の通信制の教育というものについては、いわば、放送大学の構想の進展に待つというお気持ちが強かったということがあるんだろうと思います。私たちも当面はやはり放送大学の構想というものを、できるだけ早期に実現をしたいということで対応をしてまいりたいと考えているわけでございます。
  118. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 もう一度お聞きしたいんですが、私立大学のみに依存していると、今後も私立大学に依存した形でやはりいくということですね。
  119. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 率直に申しまして、直ちに国立大学に通信制の教育を取り入れるということが、来年度あるいはそれに近い機会に開かれるということは、現在の各大学における構想を見ましても、通信制を志向しているものがございませんので、非常に困難だと思います。御指摘のようにしばらくは通信制については、現在の私学によって行われるという形をとらざるを得ない。しかし、放送大学創設を通じて、国・公・私立の連携協力による運営というものを考えていきたいし、あるいは放送教育開発センターの設置を通じて、各大学における放送を利用した大学の開放と申しますか、そういった施策もこれは国・公立についても進めてまいりたいというように考えて旧いるわけでございます。
  120. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 通信教育の教材についてお聞きいたしますが、私立大学の通信教育教材改善費補助金というのが四十九年度に実現いたしまして、その四十九年度には二千六百三十四万、五十年度には二千六百五十五万、五十一年度には減って二千五百二十七万、五十二年度、五十三年度はさらに補助金が減っております、二千百万円。五十三年度も二千百万円というふうに下がってきていますが、この補助金の対象事業、この内容は何なんでしょうか。
  121. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) これは二つございまして、一つ昭和三十七年以前に刊行されてその後未改定となっている専門教育教材の改定をするということが一つございます。それからもう一つは、共通して使用できる通信教育のモデル教材の研究開発を推進しよう、そういう二つのことを趣旨といたしまして、御指摘のように四十九年度から実施をしてきているものでございます。この補助金の予算額につきましては、各年度それぞれ私大通信教育協会の方と御相談をいたしまして、専門教育教材の改定の計画に応じて、概算要求をしてきているものでございます。逐年の改定によりまして、通信教育の教材の整備というのは進んできているわけでございますけれども、さらに今後とも努力をしてまいりたいと考えているものでございます。
  122. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 努力していきたいというお話ですけれども、現実にはその補助金は年ごとに減っているわけですね。やはりこれを充実するというならば、この補助金はふやさなきゃならない。それが減っているということは、言っていることと、やっていることと違うということになりますので、これはぜひ充実したいとおっしゃったんですから、ふやすようにお約束をしていただきたいと思いますが、その点いかがでしょうか。
  123. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 先ほどお答え申し上げましたように、大学側の計画に従って、概算要求をしているわけでございますけれども、一方昭和五十年度からは、大学通信教育について一層の振興を図ろうという趣旨で、私大に対する経常費助成の中で、大学通信教育に対する特別な助成というものを考えているわけでございます。教材、リポート、試験に要する経費、あるいはスクーリングの実施に要する経費というものを考えまして、増額の補助を実施をしております。これによりまして、五十二年度には学生経費等の一般補助の約一億四千八百万円に加えまして、さらに三億四千万円が増額をされております。計四億八千八百万円が関係の大学には交付をされているわけでございます。やはりこういった教材の改善費の補助金というものだけではなくて、基本的に経常費の補助金というものの運用という面におきましても、通信教育の一層の振興という点に留意をしてまいりたいと考えております。
  124. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そうしますと、この改善費の補助金というのはやはり減るというのですか、それともふやすというのですか。どっちでしょう。
  125. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) これは、これまで四十九年度から五カ年計画を定めまして、通信教育協会の方と御相談をして進めてきたものでございます。五十三年度をもって最終年度になっておりますので、次の計画をどのようなものにするかという点については、私立大学の通信教育協会の方と十分に御相談をしてまいりたいと考えております。
  126. 吉田実

    委員長吉田実君) 本案に対する午前中の質疑はこの程度にとどめます。  午後一時三十分より再開することとし、休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      —————・—————    午後一時三十八分開会
  127. 吉田実

    委員長吉田実君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国立学校設置法及び国立養護教諭養成所設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  128. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 放送大学ができると、現在の大学通信教育が圧迫されるという心配がございます。そこで、放送大学大学通信教育、これはどういう関係になるのかお尋ねいたします。
  129. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、放送大学の構想が検討をされ始めました段階におきましては、私立大学通信教育の側におきましても、放送大学が整備をされるということによって、既設の通信教育が圧迫をされるということにならないか。少なくとも政府の施策が放送大学の方に傾斜をして、既設の通信教育に対する対応というのがおろそかにならないかというような御懸念があったわけでございます。しかし、そういった点については、その後の文部省と通信教育側との話し合いであるとか、あるいは放送大学検討する各種の調査会への私立大学通信教育の側からの御参加であるとか、そういったことを通じまして、御理解を賜って、現在では通信教育の側も、放送大学構想の意義を十分評価をする、そういう原則に立って、いろいろと御意見を賜っているところでございます。たとえば、放送大学の運営に協会側の意見が反映されるようにする、あるいは放送大学の放送授業については、その利用を放送大学だけに独占的に利用させないで、通信教育を行っている各大学でも、その電波を利用できるようにすべきである、あるいは放送大学の施設、特に地方における学習センターの施設については、通信制の大学側のスクーリング等にも利用できるように措置をすべきである、あるいは私立大学通信教育の振興策について、もっと改善充実を図るべきであるというような点、さらに先ほど指摘のございました放送大学の設置基準については、通信教育との関連に留意をして、それを含めて適正な基準を定めるべきであるというような御意見を現在賜っているわけでございます。  これらのうちで、放送大学の利用する電波、つまり全国を通じて一波確保をされておりますUHFとFMの電波を、どのように利用するかという点につきましては、これは限られた電波の利用ということでございますから、現在の二十一の大学、短大がそれぞればらばらに電波を利用するということになっては、現実的にきわめて対応がむずかしいということになります。したがって、放送大学の提供をする番組の制作に国・公・私立を通じて各大学の御協力を賜って、その共同利用が可能なようなものに言うなればしていくということであるとか、それを通じて放送大学の放送番組を既設大学ができるだけ御利用をいただけるようなものにしていくというふうな工夫ができるでございましょうし、さらに放送大学が実際に電波を出していく場合に、その計画の中で、その出す電波の利用の仕方についても、通信制の大学の方々、これは個々ばらばらに二十一というわけにはまいりませんけれども、それを何らか工夫をするという余地もないわけではない、そういった点があるわけです。  ほかの問題については、これはそれぞれこれからの検討対応することができるわけでございますし、また通信教育振興策の改善充実につきましても、これまで放送大学の調査、研究と並行をして、先ほど指摘のございました教材関係の手当て、その他経常費助成等による工夫改善をしてきているわけでございます。そういう形で放送大学の構想というものと、既設大学の通信教育というものとは十分に並存をし、かつそれぞれが発展をしていくということができると考えております。
  130. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 現在の通信教育におけるラジオ、テレビの利用、この状況はどうなっておりますでしょうか。
  131. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 私大通信教育の放送の利用としましては、まず一般教育の分野における日本短波放送の利用がございます。これは文部省で私大通信教育の教材の改善充実に資するという見地から、四十九年度以降、私大通信教育協会に対して、通信教育実施している大学が共通して使用できる一般教育の教材の研究開発について補助をしてきたわけでございますけれども、これで開発された共通教材を使用する一般教育につきまして、放送授業が実施できるように、私大通信教育協会に対して、放送大学の準備の一環としての観点も含めまして、通信教育における放送利用の効果についての調査、研究を委嘱するということでお願いをしているものでございます。五十三年度におきましても引き続いて放送教育開発センターの事業として、私大通信教育協会に協力をお願いをして実施をすることといたしております。  これとは別個に、慶応大学で三十三年から同じく日本短波放送を通じまして放送の利用を行っております。「慶応大学の時間」という番組がありまして、一般教育語学、専門教育に関する学習指導等に利用をいたしているようでございます。  さらに、NHKの大学講座があります。これにつきましては、かつては私大通信教育協会の加盟大学におきまして、それぞれの大学で授業に利用されていたという経緯がございますけれども、その後いろんな事情がありまして、現在は各大学とも利用を通信教育の授業という観点からは差し控えているという状況にございます。
  132. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで、通信教育水準の向上、発展のためには、電波を放送大学のみが独占しないで、現在の大学通信教育においても利用できるよう、そのために電波監理を行う財団法人の設立をしてはどうかという意見がございます。これはどのように文部省としてお考えなのか。  また、少なくとも放送大学の放送事業は、通信教育関係者を参加させるような組織、機構、これをすべきであると思いますが、いかがでしょう。この二点についてお聞きいたします。
  133. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 確かに放送大学の構想が検討されていく過程で、先ほどお答えをしましたように、放送大学の設置主体が、大学を設置をすると同時に、放送授業を実施するその主体ともなる、そういう形で、放送大学が放送を実施をするということではなくて、当時飛行場論ということがよく言われたわけですが、飛行場をつくって、いろんな飛行機がそこで発着をするように、むしろ飛行場的な放送事業者を一つつくって、その放送事業者がラジオ、FM、テレビ、UHFの電波を使うようにしてはどうか、それを放送大学を含めて、通信制の大学が利用するということにしてはどうかという御議論がございました。これはその電波を各大学が利用できるという点においては、確かにメリットがございますけれども、実際問題としては非常に困難な問題がございます。  一つは、先ほどお答えをしましたように、放送大学の外二十一にも及ぶ大学、短大がそれぞればらばらに電波を使っていくということになりますと、限られた電波でございますから、時間帯等からいいましても、それぞれの大学における放送、あるいはその利用による教育というものが十分にはいかない、ごく限られたものになってしまうということがございます。  さらにもう一つは、現在の放送事業者のあり方からいたしまして、放送番組を送出をする者と、その放送番組をつくる者とが別々になるということについて非常に問題があるわけでございます。つまり、ハードの関係とソフトの関係は、放送事業者については一体のものとして考えられていかなければならないという原則的な考え方が放送事業の面であるわけでございます。したがって、もっぱら大学の方でつくった放送番組を送り出す、そういうことだけを考える放送事業者というものは、現実の問題としては構想しにくいというところがあります。そういった点もありまして、やはり先ほどお答えいたしましたように、放送大学で電波を利用して放送授業を実施をする、そのときに、通信制の大学との協力関係をどのように考えていくかということを考えることが現実的ではないかと思うわけでございます。  その場合に、一つは、御指摘のように、放送大学の運営、あるいは放送大学における放送の実施というものについて、できるだけ国・公・私立の大学、通信制の大学を含めたそうした方々の御協力を得て、その御意見を十分に伺いながら運営をしていくというような体制をとるということと、それからもう一つは、放送大学の放送番組の作成、つまり放送大学における教育というものに、できるだけ国・公・私立の大学先生方に広く御協力を賜わる、そして衆知を集めて番組を作成をし、それを送出していく。そのことが放送大学の番組の共同利用というものを結果的に推進することにもなるであろう。その二つの方向で現在は放送大学の構想というものを考えているわけでございます。
  134. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 電波監理を行う財団法人の設立ということについてはどうでしょうか。
  135. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) いまお答え申しましたような趣旨で、電波監理を行う財団法人と申しますか、それは恐らくその財団法人によって、放送事業を行うということになるだろうと思いますけれども、それを構想することについては非常に問題がある、なかなかそういう方向はとりにくいということでございます。
  136. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 放送教育開発センターと、放送大学の関係についてもう少しお聞きいたしたいんですが、放送大学創設準備室、そのスタッフと、放送教育開発センターのスタッフとの関係はどうなりますか。
  137. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 放送教育開発センターというのは、これはもちろん放送大学で実現を考えておりました国・公・私立を通じての大学の連携協力の関係をさらに進める。そして大学における放送を利用した教育あり方というものについて、研究開発を行っていく。そういったことを通じて、緊急の課題である大学の開放なり、あるいは大学教育内容、特に一般教育の面において教育内容の改善に資する、そういう課題というものを、放送大学創設というものが五十三年度実現をしなかったわけでございますけれども、それはやらなきゃいかぬということで、設置をしたわけでございます。これは、事の性質としては決して放送大学の前進的な意味を持つものではなくて、それとして独立した使命、設置の趣旨を持ったものでございます。ただ事柄としては放送を利用した大学教育というものについては、その主力となるのはやはり放送大学の構想がございますので、放送大学創設準備についても、このセンターが自主的にそれを引き継いで推進をしていくということになっているわけでございます。  センターの創設準備室につきましては、現在室長以下事務的なスタッフを整えて、創設準備に当たっているわけでございますし、法案が成立することができれば、十月からはセンターが創設されるわけでございますけれども、現在の創設準備室のナンバーというのは、これは十月に創設される放送教育開発センターのメンバーとして予定をしている者でございます。  先ほど申しましたように、放送大学とセンターとの実質的な関係というものがあるわけでございますから、放送大学が実際にスタートをする時期が来る場合に、あるいはその前の準備の段階で、この準備室のメンバーがそれにかかわっていくということは、実際問題としてはあり得るとは思いますけれども、事柄としては別のことでございます。
  138. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 このセンターは、放送大学の設立が認められるまでの調査研究、また創設準備が主で、設立後は放送大学に吸収されるか、特にお聞きしたいのは放送大学に吸収されるものかどうか、その点はいかがでしょうか。
  139. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) センターは放送を利用した大学教育の研究開発という本来の役割りを持ちまして考えられ、またそういうものとしてスタートをしていくわけでございます。したがって、放送大学と併存をし、お互いに連携協力をしながら放送大学の事業を推進をすることができる、そういう性質のものでございます。ただ御指摘のように放送大学の機能と、放送教育開発センターがねらいとするところとは、非常に密接な関係を持ちますので、今後放送大学が実際にスタートをする段階において、このセンターをどのように位置づけるのか。いま申しましたように、それぞれ独立のものとして併存をさせて、連携協力の形で推進をしていく方がいいのか、あるいは思い切って放送大学の中に、放送大学のセンターとして吸収をして、そこにおいて実質的にいまのセンターがねらいとしている国・公・私立大学の協力、そういった機能を果たさせていくのか、その点を検討すべき段階があると思います。その時点における関係者によって十分に協議をお願いをしたい重要な課題であると思いますけれども、現在の段階では、やはり私たちは放送大学スタートをしても、センターは十分にそれと併存をして設置をされ、お互いに連携協力をしていくことのできる、そういう性質のものであると考えております。
  140. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 このセンターは、国・公・私立大学から要請された場合は、要請に応じ協力するという項目がここに書かれておりますけれども、具体的にはどういうことを言っているのか、特に私立大学通信教育の場合で言うと、どういう協力になるのか、具体的にお聞きしたいわけです。
  141. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 放送教育開発センターと、既存大学との協力関係、これは国・公・私立を通じたものでございますけれども、大別すれば三つの態様が考えられると思います。  一つは、放送を利用して行う教育内容方法等の研究開発をセンターは行っていくわけでございますが、それについて国・公・私立の大学教員が広く参加をするということでございます。このセンターはこういつた共同利用の形に対応するために、客員教員の制度を非常に大幅に採用する、客員の形で広く既設大学から先生方の御参加をいただけるような工夫をしているわけでございます。  それから二番目には、国・公・私立大学教員で、放送を利用して行う教育内容方法等の研究開発を現在御自分のお仕事として進めておられる、そういった方々に、センターの施設、あるいは設備を御利用いただくということがございます。これはセンターには放送番組を制作するための必要なスタジオを設けます。さらに所要の設備も置くこととしているわけでございますが、こういったものは一般大学にはほとんど設けられていないものでございますから、これを国・公・私立大学教員の利用に供するということによって、それぞれの大学における放送を利用した教育あり方についての研究開発というものをお進めいただく上でセンターは御協力ができると思います。  それから三番目には、国・公・私立大学の要請に応じまして、それぞれの大学における教育に協力をするということでございます。これは国・公・私立大学がその大学における放送利用の教育実施のための教材の製作、そういったことを行う場合に、センターの施設設備を御利用になる、あるいは国・公・私立大学がセンターを教育活動の場として、センターの施設設備を利用して、学生に対して放送利用の教育に関する教育というものを行おうという場合であれば、これも御利用いただける、あるいは要請があれば、センターの教員その他のスタッフがこういった場合に参加をして、それに御協力をするということもできると考えております。そういった対応によって、既設大学にセンターを十分に御活用いただくことができるわけでございますし、そのためには私大の通信教育の場合においても同様に、あるいはむしろ私大通信教育の場合であれば、より積極的に御利用をいただけるのではないかと考えております。
  142. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いまの御答弁の中で、私立大学通信教育の場合についてもう少しお考えがありましたらお願いいたします。
  143. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) いま申し上げましたような三つの態様で、いわば放送教育センターの側は、大学側の御利用に対し、あるいは共同利用という方向で窓を開いている、門を開いているわけでございます。それを通信教育の方でどのように御利用をいただけるのか、これは通信教育の方でいろいろと御工夫をいただけることだと思います。私大の通信教育の場合でも、先ほど来御指摘のように、単に通信教材だけではなくて、放送を利用したいということがあるわけでございますし、また現に日本短波を利用しての御検討も進んでいるわけでございますから、そういった面については、先ほどお答えをしましたように、特に私の方は研究を委託をするというような形で、放送教育開発センターの事業としても、引き続いて私大通信教育協会の方と御相談をしながら、事を進めたいと考えているわけでございますし、そうした教材の製作、あるいはそれを通じての放送利用のあり方についての研究開発というような面については、特にこのセンターは、私大の通信教育の方々に御活用をいただけるのではないかと考えております。
  144. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 センターの機能から判断して、私大の通信教育とのかかわり合いが非常に強くなってまいります。そのときに、通信教育関係者の意見が十分尊重されるように、評議員会とか運営協議会、そうしたメンバーに加えられる、こういうふうに思っておりますが、その点はいかがでしょうか。
  145. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) センターは、これは国立大学の共同利用機関として設置をされるわけです。形式的にはそういうものとして設置をいたしますが、プロジェクトの性質としては、先ほど来お答えを申し上げておりますように、国・公・私立大学の実質的な共同利用の機関として、構想をしているものでございます。したがって、センターの活動に国・公・私立大学の御意見が反映されるようにする必要が当然あるわけでございます。センターには、他の共同利用の機関と同じように、評議員会あるいは運営協議会というような機構が設けられるわけでございますけれども、評議員会につきましては、国・公・私立の大学の学長、その他の学識経験者の中から選ばれるということが当然に考えられると思います。また、運営協議員会の場合でも、センターの職員のほか、センターの目的と同じような大学の放送利用の教育についての研究開発を行っておられる国・公・私立大学教員、その他の方々の中からお願いをするということになる。そういうことを通じて、御指摘のように、他の大学、特に私大の通信教育にこれまで従事をされて、非常に豊富な経験をお持ちの方々の御意見を、運営に反映させる方法というものが考えられていくと考えております。
  146. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それでは、次に、教員大学のことについてお尋ねいたします。  大学院修了者の処遇、これについて疑問を持ち、また、どうなるのかということに、すっきりしたものが感じられないわけなんです。前々から、衆議院でも、またこの参議院においても、教員大学院の修了者の処遇は、文部省としては特別の措置を考えていないと繰り返し御答弁になっていらっしゃいます。きょうの午前中の委員会での文部省の御答弁でも、文部省としては特別の措置を考えてはいないと。ところが、教育委員会では特昇といった措置で優遇するおそれがあるというような感じの御答弁がございました。これは、文部省の方針である特別の措置をしないということに反するのではないかと考えております。そこで、文部省が考えているのとは反して、こういう特昇という措置で優遇されると、当然現場が混乱する。これは非常にまずいと思います。そこで、特別な措置を考えていないとおっしゃっている文部省が、こうした問題については適切な指導をすべきである、こう思いますが、その点はいかがでしょうか。
  147. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) すでに再々お答えをいたしておりますように、教員大学大学院修了者のみを対象として、免許あるいは給与につきまして制度的な改正をするということは考えていないわけでございます。御指摘の特別昇給の制度というのは、これは教員大学を修了した者であろうと、あるいはそれぞれの学校現場教育実績を上げている者であろうと、あるいは短期大学を卒業した者であろうと、そういったこととはかかわりなしに、それぞれの教育委員会が現在の制度のもとで御判断になって、特昇の基準に合致をする者について公正な運用を図り、適切な形で特別昇給というものを実施をしていくという性質のものであろうと思います。したがって、教員大学大学院を修了した者について、特別昇給を必ずするということを決めてかかることも間違いであるし、また教員大学大学院を出た者については、特別昇給をさせないと決めてかかることもこれまた間違いでございます。それぞれの教育委員会の御判断に従って、現行の制度が認めている事柄でございますから、適切な運用が図られていくということであるし、またそういうものとして運用されていくということを期待しているわけでございます。
  148. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 期待していても、教員大学大学院に、現場先生現職のまま、現給のままで行って、大学院卒業という肩書きを持っていくわけで、そうした人たちが特昇という措置によって優遇されるということが、現場ではもうすでに問題になっているわけです。そうしたおそれというものに対して、ただ、教育委員会が適切にやればいいという、そうした高みの見物じゃなくて、文部省としては特別の措置を考えていないと、はっきり言い切っていらっしゃるのですから、そうしたことで混乱が起きないように指導をすべきだ。指導をしますというお言葉が全然ないわけです。教育委員会任せだ。それじゃ私はまずいと思いますね。非常に消極的じゃないか。この問題はもう再三この委員会でも問題になっているわけです。問題になっているということは、現場でもそういうことが将来の問題として問題になるおそれが十分にあるからであって、そういうことは文部省としても御想像ができると思うのです。また、文部省でもそういうことがないように恐れていらっしゃると思います。ですから、適切な指導をすべきだと申し上げているのだから、しますと言うくらいの前向きの姿勢でお答えができないんでしょうかね。ここで答えさえすればいいというんじゃなくて、将来起こるそうした問題は、非常に大きな問題になりますので、もう少し積極的な御意見をお聞きしておきたいと思います。これは、大臣にもぜひその適切な指導をお願いしたいと思うんです。
  149. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 特昇につきましては、これは教員大学大学院を卒業した者だけであるとか、短期大学を出身して教員免許をとって教壇に立っておられる方であるとか、そこに区別はないはずのものでございます。そして、大学局長がお答えをいたしましたように、私どもは特昇が行われますときは、当然それは公正なものでなければいけないと考えております。ただ、特昇ということをやりますのは任免権者でございまして、文部省ではありませんので、文部省が何か国の威力をかさに着て口出しするべきことでないものですから、私どもは公正であるべきだとも考えておりますし、公正に行われることを期待をしておりますとしかお答えができないわけでございますから、そこのところは御理解をいただきたいと思うんです。文部省が任免権者ではございません、任免権者が取り行うものでございます。その特昇が公正なものでなければいけないことは、もうお互いの間では当然わかることでもございます。私ども、それを期待をいたしております。さようにお答えをしておりますので、御理解をいただきたいと思います。
  150. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 もしそういうことが行われたと、非常にそういうことで混乱が起きたとしたら、じゃどうしますか。やはりそこまでは言えないと、こういうことでいまの文部省の姿勢というものは変わらないんですか。
  151. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 教職にある方全体を前提にしてしかお答えができませんけれども、特昇が非常に不公正な形でどこかの教育委員会で行われるというようなことがございましたならば、文部省としてはそれは不公正ではありませんかと申しますのは当然でございます。
  152. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 あたりまえのようなことをお聞きしているんですけれども、そういうあたりまえのことが行われないところにいままでいろいろ問題があったわけで、そういうことを二度繰り返したくないと、新しい現場教員資質の向上ということを期待すればこそ——実際、期待したにもかかわらず、それが大きながんになった、なり得る可能性は十分あるわけです。これは形は違っても、以前にやはりそうした混乱があったわけですから、それを申し上げるわけなんです。その点は十分起こらないことを希望して申し上げるんですから、ひとつよろしくお願いしたいんです。
  153. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 注意をしてまいります。
  154. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それから、資料をいただいたその中に、やはり「諸大学大学院の修了者全般の給与・免許等の改善については、将来の検討による」と、「諸大学大学院の修了者全般の」というふうに言われております。「将来の検討」というと、どういうことをどういう観点から検討しようとしていらっしゃるんでしょうか。その点、よくわからないんですね。将来のことだということで、はっきり言えないのかもしれませんけれども、やはりそんな遠い将来じゃないと思うんですね。それで、この「将来の検討」というものをもう少し具体的に、私にもわかるようにお話を聞かしていただきたいと思います。
  155. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) まず、免許制度の問題がございます。これは、現在の免許制度では御案内のように高等学校、中学校、小学校によって免許状についての学歴の考え方に差があるわけでございます。これに対して四十七年七月の教養審の建議におきましては、現行制度を改めて、初等教育、中等教育を通じて、学部卒業程度の者に普通免許状を与える、大学院修士課程修了程度の者に上級免許状を与える、短大卒業程度の者は初級免許状、このように免許状の種別を改めるべきであるという建議があります。これもかねてお答えをいたしておりますように、こういった免許についての改正というのは、それの前提となるさまざまな条件が整備をされていないと、直ちに制度だけを変えるというわけにいかない。たとえば修士課程における初等、中等教育教員養成、あるいは研修というものが、もっと広く行われるという条件の整備が、私たちはこういった制度改正の前提として必要であると考えているわけでございます。したがって、これは教養審の建議でございますから、文部省としては非常に大事な検討課題ということになってはおりますけれども、それを実施するためには、なお整備をすべき前提条件があるということで、海来の課題ということを申し上げておるわけでございます。  もう一つは、給与の問題、これは宮之原委員からも御指摘を賜りましたように、大学院修了後直ちに教職についた者と、学部を卒業した後に現職経験を経て大学院を修了した者との間には、現在の制度では、同一年齢で引き続いて一号の俸給の格差が残るわけでございます。考え方としてはそれは残って当然、それは現職で勉強しているんだから、十分にそれに応じた給与のあり方というものが検討された結果、そういう形で残っていくのであって、それはそれでいいんだという考え方もございますし、また、片方では学部卒業後教職について、大学院課程を修了した者と、初めから大学院を出た者とはやはり同じように扱ったらどうだという考え方もあるわけでございます。これは現在の段階で、いずれがいいともなかなか言いかねる問題であり、ことにこれは教員だけの問題ではなくて、他の一般の公務員を通じての現在の制度のあり方になっているわけでございますから、これまた検討課題では確かにございますけれども、それを現在の段階ですぐ検討に着手をするというのは適切ではない、少なくとも学部を卒業して教職についた後に大学院を修了するという者が、もっと広範に生じてきた段階で、その事態に応じてやはり十分に検討すべきことであろう、そういうことで、これまた将来の検討課題ということを申し上げているわけでございます。
  156. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この将来というのは、いつごろということはおっしゃれませんか。
  157. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) これは免許の場合と、給与の場合と、必ずしも同一に考えることはできないでございましょう。やはり前提となる条件が整ってきたかどうかということを判断をするということでございますけれども、少なくとも、午前中にも御指摘のございました給与の問題については、これはかなり慎重に検討しなければならないことであって、将来といってもそんなに近い将来の話では私はないと思います。  免許の問題は、この免許状の種別の問題だけではなくて、免許の基準の引き上げの問題であるとか、その他免許制度全般について教養審からは建議をちょうだいしており、しかも、それは四十七年にちょうだいをしたものでございます。その中で、たとえば資格認定によって一般の方々を教職に迎える、そういう資格認定の制度等については、すでに免許法の改正をして、スタートをさせている経緯もございますけれども、免許状の種別の問題だとか、あるいは免許基準の引き上げの問題というのは、そう直ちにその改正に着手をするというわけにいかないわけでございます。これも私どもは鋭意検討を進めてまいりますけれども、いつまでにということはなかなか申し上げにくいことだということを御理解いただきたいと思います。
  158. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 それでは次に、ほかの大学との研究面における提携協力についてお尋ねいたします。  現在の大学間の交流の状況、たとえば学部大学院の単位の交換の状況、教官の人事交流の状況、こうしたものは、必ずしも活発に行われてはいないと聞いておりますが、その理由は何なのか、また、具体的な改善のための施策をお考えでしたらお尋ねしたいと思います。
  159. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、大学間の単位の互換につきましては、すでに大学設置基準を改正をいたしまして、学部であれば三十単位、大学院であれば十単位を越えない範囲で、大学間の単位の互換ができるという定めをいたしております。これを受けて、各大学においてそれぞれ規定を整備をして、単位の互換を実施をしようとすれば、できるような体制をとっている大学というのは、学部の段階で申しますと、国内の交流について規定の整備が行われているものが、国、公、私を通じて九十一大学、国外との単位互換については九十四大学大学院の場合も国内の関係は八十四、国外の関係も同じく八十四、そういった形ですでに整備が行われているわけでございますけれども、実際に実施をしている大学の数というのは非常に少ない。学部の段階で、国内の場合には単位の互換を行っている大学が、学生がほかの大学へ行って単位を取っているものが七つ、ほかの大学からその大学へ来て単位を取っているというような関係が四大学というようなものが、学部の段階の国内の状況でございますし、国外の場合は、もっとはるかに広くなっておりますけれども、これまた規定を整備している大学ほどはないわけでございます。大学院の場合には、学部よりははるかに多くて、二十数大学がそれぞれ実施をする状況になっております。こういう形で大学間の交流を進めるということは、非常に望ましいことである。それはなぜかと言えば、やはりそれぞれの大学が特色のある発展を遂げ、そしてそれぞれの大学として教育研究の面でピークが立っている、そういったことを前提にして、初めて有効な大学間の交流というのができるわけでございますから、大学間の交流を進めることによって、大学間の壁を取り払う、あるいはそれぞれの大学の特色のある発展を推進をするということが期待できると、そういう趣旨で、できるだけこれを進めてまいりたい。そのためには大学間の相互交流のために必要な経費等についても、実施をする大学については特に予算上積算をするというような措置もとっているわけでございます。それがなかなか実施ができないというのは、逆に言えば、やはり実際にそういう互換をするためには、いま申しましたように、その互換というものについて学生に十分それがメリットとして意識できるだけのものを、それぞれの大学の間で特色のあるピークが立つというような形で、確保しておく必要がある。そこのところがなかなか十分にいかないので、実質的な交流が進まないということもあろうかと思います。もちろんそれだけではなくて、まだまだ大学の積極的な取り組みが足りないという面もあると思いますので、そういった点については、今後そういう予算的な措置をあわせまして、私たちは各大学の積極的な対応というものをお願いをしてまいりたいと考えております。
  160. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 教員大学を特殊な大学としないためには、やはり単位交換や、教官の人事交流、教育研究について他の大学との提携協力を大いに努める必要があると思いますが、御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  161. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) その点は全く御指摘のとおりであると思います。教員大学の設置の趣旨というものが、やはり教員大学の発展というものを通じて、既存大学に対するいい影響を与えていく、あるいは既存大学におけるさまざまな問題意識というものを、教員大学における実際の教育研究の中に生かしていく、そして、それにこたえるというようなことを考えているわけでございますから、そういった意味からも教員大学の場合には、できる限り教官の交流であるとか、あるいは単位の互換であるとか、そういったことが進められることが望ましいと考えます。それは教員大学創設に当たろうという方々はもちろんそれを十分にお考えになっておりますけれども既設大学がそういった方向に対しておこたえいただけるようにするということも含めまして、創設後の大学にできる限りの御努力をお願いをしてまいりたいと思っております。
  162. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 再三問題に出たのですけれども、くどいようですけれど、再度お尋ねをいたしますが、大学院受験希望者、これが多く出た場合に、市町村教委はどのような基準で同意を与えるべきであるか、またそうした基準というものが考えられなければならないと思うんです。現場では、推薦制と同様であり、人事管理に結びつくと心配されております。そうした危惧を払拭する公正な手続、明確な基準が要求されると思いますが、その点はいかがでしょうか。
  163. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) これはまず都道府県の教育委員会において、教育公務員特例法の規定に従って、長期の研修については、任命権者として一つの大きな枠取りというものをお決めになると思います。その教育委員が決めるいわば基本的な考え方の中で、どういう形で、長期の研修というものに教育委員会が対応しようとしているのかという点は示されると思いますけれども、具体的な個々の基準というのを、市町村の教育委員会であらかじめ決めておくということは、実際問題としてなかなかむずかしいだろうと思います。たとえば、現職経験が三年以上なければいけないというような形での基準を決めることはもちろん可能であるし、そういったものは、都道府県の教育委員会のお定めになるものの中にもあらわれてくると思いますけれども、どういうものに該当をすれば、受験をすることができるかということを、あらかじめ決めておくということは、それぞれの市町村なり、県なりの状況に応じて、態様がさまざまであることでございますし、実際問題としては非常にむずかしいであろうと思います。  しかし、このことについては従来からお答えをしておりますように、現職先生方の積極的な勉学の意欲というものにこたえて、それをできるだけ実現をさせるという方向同意というものが運用されるようにお考えをいただきたいという考えを持っているわけでございますし、そういう見地に立って、市町村の教育委員会が都道府県の教育委員会と十分に御相談をされて、公正な形で、また適切な形で同意が行われていくことをお願いをしたいと思っております。
  164. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 代替定数確保についてお伺いしておきたいと思いますが、現在長期研修のための代替定数はどれくらいですか。
  165. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 昭和五十三年度の小・中学校研修定数として配分してございますのは千二百七十名でございます。
  166. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 現職、現給で大学院に就学できるこのたびの措置に対する代替定数、これはどのくらいでしょうか。また、教員大学大学院以外の枠はどれくらい確保されているでしょうか。
  167. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 現在はその千二百七十名というものは、大体一年あるいは半年の長期研修のための代替定数ということになっておりますから、一人の人が半年行って、次に別の人が半年行くというようなこともあるわけで、その定数の使い方を、大学院のために使いなさいとか、あるいは一年研修のために使いなさいとかいうことではなくて、県の教員の人数等に応じて、ある県には三十名とか、ある県には二十五名というふうな配分をしておるわけでございます。
  168. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 非常に形式的で、実際教員大学大学院現場先生が行かれた場合、その代替がスムーズにいけばいいと思いますけれども、そういう点は自信おありですか。
  169. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) たびたび申し上げますように、教員大学院入学定数のうち、三分の二の二百名程度大学現職教員をとるということでございますから、それに必要な代替定数を、いまの千二百七十名に上乗せして、必要な時期に要求をして実現するということで、ひとつ自信を持ってそういうことを運営できるように努力をしたいと思うわけでございます。
  170. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 この問題がスムーズにいきませんと、非常に行きたい先生も行かれないというような問題が起きると思いますので、ひとつしっかりやっていただきたいと思います。  それから教育休暇制度、こういう名前をつけて創設の提案をするわけですが、一部の教師の研修機会の拡充よりも、すべての教師に平等に研修機会確保する、全体がレベルアップするということが重要であると痛切に感じております。その意味で、教育休暇の制度、これは非常に有意義だと考えているんです。たとえば十年勤続した者に一年の教育休暇を保障するというような制度、こうしたものを創設すべきと考えますが、検討してみようというお考えはありますか、ありませんか、大臣にお答えお願いします。
  171. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 柏原委員御提案のような教育休暇、それも一つ考え方だとは思うんですが、限られた範囲の職員に対してのみ特別の勤務条件上の制度をそのように設けるということは、非常にむずかしい問題でございまして、検討はいたしてみますけれども、慎重にいたさなければならないと考えます。
  172. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 慎重でも結構ですから検討するような方向にひとつ大臣のお考えを持っていただきたいと思いますが、いかがですか。
  173. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 慎重に検討いたします。
  174. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 まあ慎重というのは一歩も前進しないという解説がついておりますけれども、ひとつこうした現場教員資質の向上のためにも、私は非常にいい制度だと思っておりますので、御検討方向へお願いいたします。  次に、教官の確保について、前の委員会でお尋ねしましたら、非常に自信に満ち満ちた、りっぱな教官がぞっくりそろうと言わぬばかりの御答弁をいただいて、本当にそれならば結構なことですけれども、果たしてそうかどうか。大学をつくる場合に、教授陣をそろえるということが一番困難な問題であるというふうに聞いておりますが、この教官の確保について、小・中・高等学校等におけるすぐれた教育実践家、これを含めて広く人材を求めるように努力はしていらっしゃると思いますが、既設教育系大学学部との摩擦、これが起きないように、安易な引き抜きなどが行われないようにしていかなければならないと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  175. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 大学創設する場合に、少なくとも創設当初、その大学創設に当たって趣旨としたところに従って、発展をすることができるかどうかという点は、創設時にどれだけその教官に人を得ることができるかということにかかる面が非常に多いわけでございます。そういう意味で、教員大学教員組織をどのように構成をしていくかということは、きわめて重要な課題であり、またそう容易にこの教員組織が整えられる、そういったことではないと思っております。もちろん現在教員大学趣旨に賛同をされる方は決して少なくございませんし、また、国・公・私立の大学を通じて人材を広く求める、その場合に、御指摘のように、高等学校以下の学校において、すぐれた教育実績をお持ちの方をこの大学教員にお迎えをする、そういった努力ももちろんしなければなりません。そういったことを通じて、できるだけこの大学創設趣旨に合致をした教員組織というものを構成をしてまいりたいと考えているわけでございます。これについてはこれからの創設準備室の御苦心の最も存するところになるだろうと思います。その場合に、既設教員養成大学学部も、これからは逐次修士課程をおつくりになっていこうという構想をお持ちになるわけでございますから、それぞれの大学におけるすぐれた教官を、言葉は適切ではありませんけれども引き抜いてくるというようなことが、安易に行われるということであっては、これは既設大学の整備計画に支障を生ずるということにもなりかねませんので、そういった点にも十分に留意をしながら、教員大学の教官の構成に当たってほしいと思います。また、それができるだけの教官層の厚みというものをやはり既設大学もようやくにして備えてきているというように考えているわけでございます。
  176. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 教員養成大学学部の教官のうちで、初・中教育の教職歴のある教官の割合はどのくらいになっておりますか。
  177. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教員養成大学学部の教官のうち、高校以下の教職歴を持っております者は、五十年五月一日現在の状況でございますけれども、千二百八十七名、全教官の二三・六%でございます。
  178. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 教員大学が初・中教育の教職歴のあるそうした教官に大きく依存した場合に、大学大学院の教官の資格等については、現行の設置基準等の資格を満たす形で確保するのか。それともそれらの基準を改定する必要があるのではないか、そうしなければそうしたものが満たされないんじゃないか、こういう心配もいたしますが、後者の場合、安上がり教育と言われるようなことになりかねない、こう思っておりますが、この点いかがでしょうか。
  179. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、国立大学教員でありましても、創設の際には大学設置審議会の資格審査を経て任用をするわけでございます。教員養成大学修士課程を考えていく場合の教員の資格審査というものについて、従来いわゆる研究業績ということが非常に重視をされ、それに対して現場におけるすぐれた教育の実績というものを、もっと評価をすべきであるという御指摘が従来からあるわけでございます。このことは現在の大学の設置基準等における考え方の中でも、すでに方向としては出てきていることでございます。現在教員養成系大学院の審査方針につきましては、設置審議会の関係の専門委員会で、全体的な見直しをお願いをしているわけでございます。その場合に、御指摘の点も十分専門委員会で御検討賜りたいと思いますけれども、これは先生指摘のように、安易に教員の組織ができるということになっては、決して趣旨とするところにならないわけでございますし、また教員大学教員構成についてだけ、別の取り扱いをするということもこれまた許されないことでございます。教員大学のほか、既設教員養成大学学部が、これから修士課程をつくっていく場合、そのことを含めて、教員養成系修士課程の審査の基準というものを、十分に専門委員会で御判断をいただきたい。そして、その際にできるだけすぐれた教育実績をお持ちの方が、いわゆる教育論文の数ということだけで判断されるのではなくて、そういった教育実績というものを公正に評価をして、教員に加わることができる、そういう方向で御判断をぜひお願いをしたいもんだと考えております。
  180. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 ありがとうございました。
  181. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 まず、管理運営についてお尋ねをしたいわけであります。  国会に提出された文部省の資料の中で、構想の概要についてというものがありまして、そこでは副学長を置き、運営について学外の教育関係者等有識者の意見を求めるなどの工夫ということが挙げられておるのですが、国大協に対していろいろ説明をされた中には、副学長制を設けるほか、現行の法令に従って、教育研究が円滑、適切に行われるように検討するというふうになっている。参与構想というのは、有識者の意見を求めるというのは、国大協には明示されなかったんではないかと思うわけですが、いかがですか。
  182. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、国大協に担当課長が参りまして御説明をしたときに使用したメモの中には、参与というような文言を書いてはございません。しかし、このときに口頭ではもちろん現行の法令に従って、それぞれの大学において教育研究が円滑かつ適切に行われるよう検討する、そのことを敷衍をいたしまして、いわゆる現在の医科大学や、技術科学大学に設けておりますような参与と同じような性質のものの設置を検討しているということは申し上げてございます。
  183. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 国大協の特別委員長の須田先生のいわゆるメモですね、これでこの問題についてながめてみますと、国大協特別委員会報告というのが四十九年に持たれまして、管理運営上の特別な措置は、教育上の新構想というよりは政治的色合いが強いと言って、非常にこの問題を国大協としては懸念をして、ポイントとしてながめてみたわけですが、須田メモの中にその問題が出てこないわけですね。少なくとも口頭で話したというふうに言われましても、文書で明示されたのは現行の法令に従ってで、法令の令の方が省令であって、ここで何か始末するというので、後置いたときの言いわけのつくようにはなっているのかもしれませんけれども、国大協は全体としてこの点について、問題を聞いていないというふうに見てとるのが自然ではないかと思います。特に、須田メモの中では法律上特別の措置はとらないというのを聞きましたということで、メモでは説明をされておるわけで、ここでは令が抜けておるわけですけれども、こういう状況で、参与構想については国大協は承知しない姿で進んでいると思うんですが、その点は全体に対して知らされているわけですか。
  184. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 国大協の特別委員会の際には、ここにありますように、法律上特別の措置をとらないと、つまり、筑波大学に置かれております参与会は、法律上規定を設けて置いているわけでございますが、そうした法律上特別の措置を大学の運営についてとるわけではないということを御説明を申し上げております。その際に、従来から医科大学等に置かれているいわゆる参与というものについて、参与という形に決め込んでいるわけではないけれども、そういう参与的な機構というものを検討しているということは申し上げてございます。参与というものについては、すでに医科大学、あるいは技術科学大学に設けられて、その運用の実績というものがございますし、そのことは国立大学が十分に承知をしておられることでございます。また、その上で特段の問題点の御指摘を従来は受けておりません。
  185. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 まあ既設教育大学と、今度設置しようとされる教員大学との一つの違いは、管理運営上の副学長設置と、そうして参与構想のところにあることは事実であり、筑波大学の際の参与会の問題ですね、そうして、医科単科大学を設置する場合の参与の問題のときも、非常にこの点は問題の焦点になってきたわけであります。こういう重要問題が明文の中にあらわれてこずに、実際設置したら出現をするというような仕組みになっておるのだとすると、この点は非常に不明朗だと言わざるを得ないわけであります。少なくともこの国会審議の中では、現時点で準備室、その他でこの準備を進められておる到達点と申しますか、具体的なそれの構想、内容、特に参与の、どういう人たちをどんな手続で選んで、それは一体どういうところで仕事をしようとするのかというのを明らかにされる必要があると思うわけであります。特に、これの場合も概要の中で、運営について教育関係者等の有識者の意見を求めるような工夫をすると一方では出され、国大協に対する説明では教育研究が円滑、適切に行われるようにと言っておって、運営などにはこの説明では触れていないわけであります。どういう有識者の意見が、どういう領域で構想されておるのか、御説明をいただきたいと思います。
  186. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) これも再三お答えをしているところでございますが、創設準備室で現在検討をしている状況は、いわゆる参与という形で置くということを確定はしておりません。いわゆる法律上の参与会ではございませんけれども、これまで置かれてきた参与と同性質のものとして、学外の有識者の適切な意見を大学の運営に生かす、そういう工夫をしよう、そういう形での学外の有識者の方々との連絡協議の機関をつくりたいということを言っているわけでございます。私は、衆議院でもお答えを申し上げましたけれども、そう特別に連絡協議会というような形で特別のものを考えなくても、参与という形でそれを置くということが、一番わかりやすくていいという考え方を持っておりますけれども、これは大学でこれから御検討をいただくことでございます。  いずれにしても、学外との連絡協議機関というのは、性質としては現在置かれている参与と同じような性質のものになります。学外の有識者、特に教育関係の方々の御参加をいただく。そして、教員の需給の問題であるとか、現職教育の問題であるとか、あるいは学生教育実習の問題であるとか、大学と外部の方々との協力等、必要な諸問題について意思の疎通を図り、あるいは連絡協議をする、そういったことに当たるわけでございます。これは必要なことである。もちろん教授会であるとか、評議会であるとか、そういった大学の運営の直接の機構ではございません。これは学外との意思の疎通を図るための連絡協議の場でございますから、それが大学の自主的な運営に差しさわりを及ぼすというようなことは、本来あり得ないものでございます。
  187. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 やってみないとその効果というのははかりがたい点もあろうかと思いますが、いままでに置かれておるたとえば単科医科大学の場合と、それから今度の教員大学の場合とは、やっぱりお医者様と学校の教職員ですから、その点においてあり方も違いますし、当然人選についても、予想される事柄についても、違ってくると思うわけですね。もっともう一歩突っ込んで言えば、これはいろいろ、たとえば現職教育の問題について、あるいは現場実習の問題について、それらの中でどういう役割りを果たそうとするものか。医科大学類似といえば、医科大学ではどういう点で成果の上がった実績があるのか、教員大学の場合には、この点で何を予想するのか、ここまではまだもう一つ伺っていないように思うんですが、どうでしょうね。
  188. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、医科大学の場合と、教員大学の場合とは、当然その人選等は異ってくると思います。医科大学の場合、これは必ずしも各大学によって一様ではございませんけれども、県の知事のほかに、医師会の会長であるとか、いわゆる医学の分野において地元との協力関係を確保していく、そういう方向でいろいろと有意義な御意見を賜るのに適当な方々をお願いをしているわけでございます。これは大学によって数も一様ではございません。教員大学の場合は、いま御指摘のように、教育実習の問題を初めとしまして、この大学が十分に地域の方々の御意見を伺いながら、円滑な運営を図っていくという点において、参与の場を設けて、そこで御意見を伺うということが考えられるわけでございます。この連絡協議の機関をどのような形で設けていくのか、そこにおいてどういう事項について御検討をいただき、あるいはどういう方々をメンバーにするかということについては、先ほど申し上げたような形で現在準備室検討していることであって、確定をしていることではございませんけれども、やはりこの大学が開かれた大学として機能をしていく、そういう方向に立って、参与というものが活用されるということは間違いのないことであろうと思います。
  189. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 医科大学の例を聞いても、大変遠隔の地の著名、高名なお方あたりが参与になっておられて、特に、そう言っては何ですが、飾り物的になっておって、具体的な実績は余り聞くことはない。その限りで懸念されたような点もあんまり劇的に表明されたことはない程度の把握を、私としてはいたしておるわけでありまして、現在のところこれがどのように有効に働くかということについては、いまの説明でなお積極的な理由を見出しにくいわけです。特に、これが既設教育大学では、これを設けようというようなことを特にお進めになっておるわけではないのでありますから、教授会とダブって、こういったふうなものが置かれるということについては、なお現地の意見もよく聞いてみなければならぬのじゃないかと思います。いずれにしても、この構想が具体化されるときには、医科大学の例にならえば、国立学校設置法施行規則第二十九条の五に規定されておるこの規定によって、省令改正をされることになると思いますが、これは文部省の一存でやられるわけではない。大体大学の決定を待ってやられる、こういうことですか。
  190. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のとおり、大学の御意見を十分に伺って、二十九条の五の改正措置を講ずるという手続になります。
  191. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 副学長についてですけれども、副学長はこれは文部省が大体設置者として、特に大学の決定を待つことなく、設置の方向で考えておられるわけですか。
  192. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 副学長につきましても、それを置くかどうかということについては、当該大学の意思というものがございます。この教員大学の場合には、創設準備室の意向としては副学長は置きたいということを現段階でも考えておりますので、両大学とも複数の副学長を置く予定であるということを申し上げているわけでございます。
  193. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 現時点では文部省構想はあったとしても、これは準備室の具体的な意見によって、大学の設置後、大学の決定によって置くということですから、当然さらに将来的な状況の中で、複数の副学長が一名にされたり、また状況によっては、副学長を置かない場合にも、大学の決定次第で省令改正はそれを受けて行われると、こういうふうにお伺いをしてよろしいですか。
  194. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 先ほど来申し上げておりますように、現段階ですでに創設準備室は副学長を置きたいということで、その方向検討を進めておりますから、副学長を置くことになると考えますけれども、実際にそれを設置するのは、御指摘のように省令の改正を行いまして、副学長を置くべき大学の中に両大学を加えて、初めて置くことになるわけでございます。
  195. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 大学が決めたら、省令を変えてこれを置くと、またさらに大学の方で置かないごとを、一たん置いた後でもまた将来にわたって置かないような状況で、大学の中で意思が一致をすれば、これを受けて省令を改正し、廃止することもあり得ると、これが行政の方のたてまえになる。こういうふうに聞いてよろしいですね。
  196. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 副学長の制度というのは、大学の運営についての非常に重要な一つの職でございますから、それを設置をするかどうかということについては、まさに大学の御意思というものが尊重されなければならないことは御指摘のとおりでございます。
  197. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 いや、それを聞いているんじゃないんです。今度置いた後でまた廃止するのも、大学が主体的に決めることであって、置くことも大学が決めるし、そしてそれをまたやめて、学長は法律で決めておりますけれども、副学長は置くこともできるし、それをやめることもできると、やめることを決めたら、省令によって後始末をして、それを廃止することもまたあり得ると、こういうことではないかとお伺いしておるんです。
  198. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) もとより法律上必置の機関ではございませんで、御指摘のように置くことができるということになっており、それを置く置き方というのは施行規則の中に規定を設けて置いているわけでございますから、置かないということになれば、施行規則から当該大学の名前を削除するということになるわけでございます。形式的にはそういう運びになります。
  199. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 管理運営の点については、その点を確認をしましてその次の問題に進みます。  この法案審議以来、大臣あるいは局長は多くの疑問に答えて、特に今度の大学が行わんとする現職、現給の院生ができるということについて、二年留学で修士単位を取得をする、このために道を開くわけだから、これはまあ大きな特典だろうと私も思うわけです。これの同意条件なり、出願資格の問題については、繰り返し本人が自発的な勉学意欲を持って、受験を希望する者を、これを進学せしめるんだということと、従来の都道府県の計画派遣と、これについての選考とは全く発想を異にしておるから、あるいは様相を異にするものであるから、この点については新しい観点で、この研修計画なり、研修規定が、これに見合うものとして各県で改正をされるようにと申しますか、これの受けざらができるように、強力に指導をすると、こういうふうに言ってきておられると思うわけですが、その点は間違いないですね。
  200. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 全く新しい構想の大学が新たに誕生するわけでございますから、都道府県教育委員会も、いままで取り組んできておりましたような研修計画が当然変わってくるべきだ、かように考えるものでございます。
  201. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 と同時に、また一方では、現職のまま服務上の監督者の出張命令で入学をするようにさせたいと、こう言っておられるわけですね。その点も間違いないですか。
  202. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 現職、現給で大学院に行くわけでございますから、それは当然出張がなければ現職、現給ということにならないことでございます。
  203. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 私はこの制度が、理想的に、開放的に行われていけば、いままで法理念が不十分にしか保障されていなかった点について、新しい道が開かれることになる。いままで保障もないのに、あるいは退職をして研修に励み、あるいは不十分なままで現職研修に励んできたこういう多くの人たちがありますし、またその厳しさのために挫折をした人もまた数少なくないと思うわけです。この点では、これが開放的に理念に即して正しく行われるなら、確かに意欲ある教職員に対して大きな特典であり、将来の資質向上に対して、非常に有益な措置になるだろうと思うわけです。それにもかかわらず、幾つかの問題点があって、この点が明らかにされなければ、手放しでとうてい喜ぶことはできないということになります。その点で今回の現職研修、特に大学に送って学位を取得するというような長期の留学を行わせるという点では、いままでの研修規定等において新しい概念でやっていかなければならぬということの根本は、二年の研修というようなことになれば、いままでの服務規定なり、あるいはいままでの研修規定が、大体において出張命令という状況のもとに、短期間であったとはいっても、行政研修、職業訓練、あるいは目的研修資質向上と言う前に、やっぱり勤務能率の発揮、増進とか、指導力の向上、こういったふうな目的研修であったのに対して、各府県側がどうしてもこの点で自主研修、これを保障するんだという基本的な理念に立って、ここのところを貫いていくというところから、ひとつ新しい規定を設けるというところまでいかせなければならない。そうでなければ目的は十分に達せられないというところに問題の中心があるのだろうと思うんですが、その点どうですか。
  204. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) いままでやっておりまするところの、たとえば特殊教育教員一般大学への一年ないし半年の研修というようなものは、御指摘のように教育委員会の側において、特殊教育担当教員資質を一層向上したいという考えを持ち、それに合致した先生方研修していただくということになるわけであり、国の関与の仕方も、それらの研修をされる先生については、研修先の大学に年間何がしかの運営費という形で、お金を支出するというようなこともございますので、そこでその研修者の選考、それから実際に大学へ行って勉強する手続等、大体県の教育委員会を窓口としてやっておるという実態でございますが、今度の場合は、御指摘のように、直接本人が大学院試験を志願しまして受験をし、合格した場合に出かけていくということでございますから、手続等のあり方としても、従来と同じように律するわけにはまいりませんので、その点はよくその趣旨に即して、教育委員会で適正な手続をつくりますように、私の方も指導いたしたいと、かように思うわけでございます。
  205. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 いまいみじくも特殊教育内地留学生実施要項というのを文部省の方から出しておられる。これを受けて各県がそれぞれ実施要項をつくって実施しておる、半年、一年以内の。こういうものの受けざらでは、今度の措置に対しては、適切でないという点を言われておるわけであります。  それでは今度行うものとは、それはどこか違わなければならぬかということを明らかにする必要があると思うんですが、まず現在まで各府県の例を挙げて、先日の委員会で御質問申し上げたわけですが、いま局長の方から挙げられました、特殊教育内地留学生実施要項を見ても、この点では資質の向上、あわせて指導力の充実を図る、専門的な知識、技術を習得させとありますから、大体今度の大学設置の目標と非常に似通った目標が目標においては掲げられておりますけれども、各県に推薦させ、初中局長が決定をして、行く先は文部省において受け入れ機関との間の関係を定めて、そして研修をさせる。教員研修として組まれておるわけであります。こういうやり方はとらないということを言われるわけですね。  そうするとこの点でどういうふうに違ってくるのか。改めてこれに対しては、教員大学修士課程への留学生についての内地留学の実施要項のようなものを、文部省において、発足に当たって各県に対してモデル要項と申しますか、実施要項を出されるような用意はあるのかどうか、その点をお伺いします。
  206. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) モデルとして具体的な規則案のようなものをつくって示すということまでするのか、あるいは国会の御審議等を踏まえて、こういう趣旨でそれぞれの県で適当な規則をつくりなさいというふうにするか、まだそこまで決めておりませんけれども、いずれにいたしましても、いま申しましたように、現在の内地留学とはちょっと違うわけでございますから、別な手続によって進められるように指導をしてまいりたいと、こういうふうに思うわけでございます。
  207. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 ちょっと違うというところがどこが違うのか、一年未満のものと、二年といえば現職ですから代替要員の問題とか、財政上の配置の問題とか、条件整備において量的なかなりの違いが出てくる。最的な違いがあれば、これは当然質的な、職務の性質とか、あるいはこれに対するひものつけ方とか、さまざまな点で新しい飛躍をした観点からながめなければならぬだろうと思うわけですが、この点で一番根本のところを明らかにされておく必要があると思うんです。私はいままでのこの研修規定は、本当に法律が保障をしておる自主的な研修に対して、行政が援助をし、保障をするというふうな姿であるよりは、目的別研修で、職務命令、研修命令で研修をさせるというスタイルのものであったと。この点では、今回のものが真に発展するためには、初めて大きく道を開いていくところの自主研修、つまり受ける側の権利を行政の側が保障する研修として位置づけられるところに、大きい意味があるだろうと思うんです。確かに教育公務員特例法が立法されるときの提案理由の説明等を見ましても、新しい法律の考え方では、研修が義務であると同時に権利として位置づけられて、十九条、二十条の中で記述をされており、当時の提案者がるる説明されておるわけです。その点については、大臣にお伺いをするわけですけれども、まさに今度の留学については、選考をされ、指名をされ、派遣をされて、そして義務としての研修をするのではなくて、資質向上が中心であり、まあ結果として能率増進とか、指導力向上というのが出てくるでしょうけれども、これは自主的な研修について、行政が援助、保障をするんだという考えで、この規則も規定もくんでいかなければならぬというところに中心があると思うんですが、大臣その点いかがでしょう。
  208. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 従来の都道府県が立案をいたしましたような長期研修などの場合とは全く違うわけですね。ですから、さらに大学院へ行って研さんを積み重ねたいという自主的な意欲が、研さん意欲なければならない。そこがスタートでございます。ただ、いまおっしゃった、十九条、二十条に絡むことだと思いますけれども、自主研修とも言えないと思うんです。自主的に計画をなさっての研修ではありませんから、国が準備をいたします大学のことでありますから、自主研修ではない。しかし、それはやはり教員の自主的な意欲からスタートをする、そして国が研修機会を提供をする場所に行って勉強なさる、そういうことでございますから、いまおっしゃった、従来からあった長期研修についての各都道府県教育委員会におけるいろんな規約、規定とは違う扱い方で考えなければならないと思います。
  209. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 言葉の使い方というのはなかなか解釈が分かれてむずかしいので、常識的に運びたいと思うんですが、もちろん国が金を出して、大学という国立の機関に、行政機関がいわば預けたようなかっこうで行わせるんですから、勝手気ままにその立場を自覚しないようなことが許されないという道徳的な義務は当然負うと思います。ただ性格は、研修というのは自発的なものとしての研修がなければならぬ。その点、外部からいろいろ職業訓練をするのとは違うという点と、特にいわゆる一般公務員と、教育公務員とについては、自発性を持って研修をすることを保障するという点は、わざわざ法律が書いておるところですから、直接的に成果を上げようと思えば、いつ成果が上がるのか、計算のしにくい、むしろこれは長期投資だろうと思うわけですね。こういう点の中で、大臣がせっかく従来の各都道府県が計画をし、派遣をし、選考をしてやってきた研修計画とは発想が違い、様相を異にすると言われる。私はこの発想の点については、特に自発性、自主性を中心とするものを、これを包んで保障するんだという考え方であるというのが中心になっておると思って、私は大臣答弁を感服して聞いておったわけでありますけれども、その点はよろしいですね。
  210. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) そのとおりでいいんです。ですから選考が行われたり、推薦が行われたりするものではございませんとお答えをしているわけでございます。
  211. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 その点で、形式として予算を準備し、そうしてあとの補充教員を準備をして出すわけですから、出張命令の形態をとるという分にはわかるわけですけれども、出張命令として行うということになりまして、これが矛盾しないように運用されていく必要が非常に重要であろうと思うわけです。その点では文部省自身もその概念の整理を相当やっていく必要があるのではなかろうか。文部省でも、この領域についての内地留学の規定や、あるいは制度というものは、未開拓の分野ではないか。従来の出張命令、あるいは研修というものについての、文部省の整理をしたものを、文部省の地方課法令研究会が編著をしておる「新学校管理読本」というのに照らし合わせてながめてみますと、どうも合致をしたものがないんですね。この点について特に指摘をして、見解をお伺いをしておく必要があると思うんです。  「教職員の研修」という部分がございまして、そして長期研修についての問題も記述をされており、内地留学の問題についても、一般的に記述をされておるのですけれども、教職員の研修あり方というのを三つに分類しているわけですね。  第一に「勤務時間外に自主的に参加する場合」というのがあります。これはまあ勝手にやるというか、自主研修ですね。これは勤務時間外にやれと、やるのは感心なことだから自由であると同時に、むしろ奨励することといえ、しかることは一つもないというようなことがここには書いてあるんです。自主的なるがゆえに時間外ということで第一は書かれており、第三番目には、これも法律に裏づけがありますけれども、「職務専念義務を免除されて参加する場合」、これは学校であれば校長の裁量で認めてやらせていくというようなことが書かれております。どう見ても、この第一の場合と第三の場合は、今度の長期研修を取り扱う概念としては該当しない。第二の場合、「職務命令により参加する場合」というのがあるわけですね。これを見ますと、「研修を勤務そのものとして職務命令により行なわせる場合である。」、「勤務場所を離れて行なわせる場合には出張命令により処理される」、こういうふうに申しまして、「研修命令を出すのは服務監督権者である市町村教育委員会および校長である。」、これはまさに今度の二年間にわたる研修行政的に整理をされるにはこの窓枠しかないわけだと思うんですね。そういう状況もあって、同意を与えるに当たっては、出張命令という形をとっていくのが適切だということを言われておると思うんです。ところが、ここでは非常にシビアな文章で引き続いて記述をされておるわけです。「教員の側にあっては、一たん研修命令が出されれば、これを拒否することができず、もし拒否すれば職務命令違反となり懲戒処分の対象となりうる。」というような文章もありまして、一たん命令を出されたら、わが体がわれにしてわがものにあらずという姿で、野戦に行った兵隊のようになっておるように記述をされており、ほかの記述はありません。これを適用する以外には、今日の教育行政といえども行政一つの法理念といいますか、法概念の運用はこれ以外に出てくるところがないわけです。局長どうですか。
  212. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) おっしゃるように、現給を保障して現職のままで勤務場所を離れて、大学で勉強するという方法としては、この2以外には制度上ないわけでございます。
  213. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 そういうふうに局長の答弁を聞きますと、先ほどもなかなか文部大臣の高邁なる御意見を聞いておりましても、それを実行していく方はこれによってやるんですから、はなはだ心もとなくなってくるわけであります。ましてこれを運用するのは各県でありますから、各県に対していまからどれほど指導されるのかというのが、最大の問題になってくるに違いない。先ほどからも局長が、各県がいろいろな対応をするでありましょうと、こういうふうに言われておりました。いろいろな対応というのは、財政的な力のある県は数をたくさん出すとか、代替教員のつけ方でも、教師に恵まれたところや、もう一息行き届かないところと、これはまあ避けがたく出てくる問題だと思うんです。しかし、こういったふうな原則的な問題でもいろいろな対応をいたしまして、今度は新構想であり、いままでと違って、新しい発想で、研修に出したら、まるであの長良川のウ飼いのように、首のところへ輪っぱをはめて、戻ってきたらすぐに何か吐き出させるというような、こういうやり方ではなくて、長期的にやろうという理念を持たれましても、各県の方は常々から文部省の峻厳なる御指導の方針に従って、毎年毎年しばしば寄り集めて、これで徹底的にたたき込まれておりまして、特に各県はすでに御承知のように、前回もやや引用いたしました研修規程を持っておるわけです。これについて二年にわたってたくさんのお金を使うんだから、これについてはということになりまして、この選別仕方、選抜仕方等を初め、校長に対していままで言われたようなこととは違う指導が出てくることは目に見えておるわけであります。こういう点については、当然いまから先教員大学に内地留学をさせる場合と、そのほかにもいろいろよいことは言われたんですから、一般大学に対してもいまから門を開いていく。また現職教員が、たとえば夜間大学などに参りまして、現に昼間は生徒を教え、教鞭をとりながら、夜みずからの時間を使って学習をする者、いろいろおりますけれども、これに対して援助をしていこうとする姿勢を全体として広げていく一歩として、これが位置づけられるのであるなら、このたびの措置については改めて指導上の原則ですね、それの措置について一つ一つ要所についてはモデルを出された上で、各県がさまざまな対応をするのなら、是正をさせる物差しがあるわけであります。こういう点について概略総論だけ述べられまして、各論は各府県さまざまいろいろということでは、うまくなかろうと思うんです。その点について、いままでたとえば各府県が自主的に定めるべき学校主任制の規則だって、すぐにモデル案を出してごりごりやってこられましたです。この際だけ自治に任すというようなことでなく、幾つかの柱と要項を定めて指導をされる必要があり、このことは多くの関心を持ってここで審議してきた着たちに対しても、状況を明らかにして御指導になる必要があると思いますが、その点はいかがでしょう。
  214. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) おっしゃるように、今回の大学の内地留学の制度の趣旨というのをよく理解して、それにふさわしいような手続がとれるよう十分に指導してまいりたいと思います。
  215. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 どうもその程度答弁ならいままでずうっと聞いておりまして、いま改めて聞いてその答弁では満足することができないわけです。  第一、文部大臣先ほどから聞かれたと思いますけれども、この管理読本に記述をされておる、現時点での命令出張のあり方ですね。それと、今回文部大臣も答えておられる新しい理念に燃えて実施をしていこうという方向に、このままではいかにも新しい酒を盛る革袋ではないというふうに思われませんか、どうでしょうね、文部大臣
  216. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 先ほどもお答えをいたしましたけれども、たびたびまたお答えをしておりますけれども、新構想の教員大学でございます。いま委員がお読みになりましたのは、新構想に基づく教員大学における大学院での研さんのことではなくて、地方公共団体の教育委員会、都道府県教育委員会が立案をした長期研修、これに現職、現給で出張命令を出して研修に行くときの場合のことをお読みになったわけでございます。総論だけ出しているとおっしゃいますけれども、総論が明確に確立しておりませんと、中の各論は狂ってまいりますから、都道府県教育委員会を、初中局長がお答えをいたしましたように、新たに指導をいたしますについて、たびたびお答えをしておりますけれども教育委員会が選考をしたり、推薦をしたりするようなスタートではなくて、現職教員がみずから大学院へ行ってさらに研さんを積み重ねたいという、自主的な意欲から事がスタートしていることでございますから、その総論に基づいて、中身についても指導を改めていたしますと初中局長がお答えをしているわけでございます。
  217. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 まあ大臣、そうは言われますけれども、局長の方ではいま読み上げた条項以外に、各府県が同意を与える際によりどころにするものはないと、こういうふうに言われているんですから、各府県がいまから実施をしていく際に、行政上よりどころにしていく考え方としては、これがただ一つのものだと、その点では少なくとも文部大臣はここに記述されておる問題は、今度の実施については適切でないということは言われたと思うんです、これは各府県がいままでやっていた、在来のものに対する指導であって。その点については管理読本におかれても、新しい状況にこたえるだけの記述の変更なり、新しい改定なりを行われる用意があるかどうか、この点一つお伺いしましょう。
  218. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) この管理読本は、御承知のように、教員の身分管理等についての法律的側面から見た解説でございますから、法律的に見れば研修命令を拒否すれば職務違反になりますよと、違反すれば懲戒の対象になりますよということで、その限りでは正しいことなんですけれども先生がおっしゃるように、こういうことをするのが目的ではさらさらないわけでございますから、ただいま御指摘がありましたような点も含めまして、この辺の記述につきましては、私は表現を少し考えて、こういう書き方でないようにさせるよう、これはいたします。
  219. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 いままでとかく文部省の御指導としては、研修の義務の方に対しては非常に熱意を燃やされたのでありますけれども、まあ教職員の研修の権利という問題については、研修教員の権利であり、研修の要求は認められるべきだという主張が一部にあるが、この法律の持つ意味は、教員研修請求権といったものを認める法意でなく、教員研修の重要性を制度的に保障したものであるから、権利か義務かの議論は実益がないなどと言うて、権利として物を見ていくのに対しては、かなり敵意を燃やしているような要素もあるわけであります。こういった点等からも考えますなら、私は新しく自発的な熱意を保障をしていくと、そして本人が資質を向上していくことが結果的には、ひいては教員の全体の質の向上に資するのだというような考え方については、かなりこれらの問題についても、新しい視点、根本的な視点を反映される必要があるんじゃなかろうか。実はこれはいわくつきの本でございまして、大臣御承知かどうかわかりませんが、主任制の審議の場合に、主任というのは管理職ではなくて、指導職であるということを永井文部大臣がるる説明されたわけであります。しかしこの本には、一切学校に置く主任というのは管理職だと書いてあったわけでありますから、この点については大臣も非常に困られてお声がかりで是正をされたというようなこともございました。しかし、時の法制局に尋ねてみますと、そういう解釈の矛盾があったときは、当該文部大臣がおる間は、その文部大臣の解釈に従うという、そういう答弁を法制局がやったわけであります。今日こういう、開放的に用いられれば教職員の要求、教育関係者の希望にかなう道でありながら、一面ではこれが狭く取り上げられて、場合によれば管理強化の道具として使われるのでないかというのは、大学協会初め国民一般危惧するところでありますから、これらの点につきましては、永井文相も実績ありますけれども砂田文部大臣もまたこの点はよくひとつ目をやりていただきまして、いま大臣が言われた趣旨にやっぱり合致するような新しい発展を文部省が用いるように、これは管理の面を欠いておるのですけれども大臣が読まれてもかなり息苦しくなられて、味気ないものだろうと思うんです。その点をひとつ申し上げておくわけです。いかがでしょう。
  220. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 永井文部大臣が言われたことが、そのまま私は生きていると解するのです、内閣には継続性という問題がありますから。当該大臣が就任をしているときだけ有効だという法制局見解、法制局ともあろうものがずいぶんいいかげんなことを言うという感じが私はいたしました。  いまの指摘なさいましたところは、初中局長もお答えをいたしましたように、新構想の大学が新しく誕生するわけでありますから、その真意に沿ったものにひとつ考え直しをすることにいたしたい、かように考えております。
  221. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 続いてもう少し具体的な問題をお伺いをしたいと思うんですが、再三県が選抜、選考して出すのではないという点は述べられましたので、少なくとも文部省はさような旨を各県に周知徹底されると同時に、おおよそ各府県でつくられる規定も、この大学に修学をする内地留学については、選考の点について本人の意思を尊重し、いやしくも県が指名するのではないというふうにやることを指導の一項目として確認をしてもらいたいと思います。たとえば五年以上の経験というようなのが各県の規程には非常に多いのですけれども、三年以上というのに五年以上と県でもう一つくつわをはめたって、これはちっとも文部省の方には差し支えてこないことになるわけですね。三年というのを二年にすれば文部省の方では基準に合わなくて困られるでしょうけれども、かなり五年という規定が多いんですね。これも指導をして大体三年でそろえさせるというだけの措置をとられるのかどうか。
  222. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 三年につきましては、先般の委員会でも御議論がございました。やはり教員大学で、学校現場における課題意識というものを十分にそれぞれの先生方がお持ちの上で、それをさらに大学院において研究され、研さんをされるという趣旨からすれば、最低限三年程度現職経験というものは必要であろうということで、三年というものを少なくともという形で決めているわけでございます。したがって、御指摘のように、ある県が五年以上ということで、うちの県はやるよということをお決めになっても、そのことが直ちに先般来私の方で御説明をしていることと矛盾をするわけではございません。ただ、大学の側からすれば、できるだけ各県から受験をしてくる者については、同じような形であることが望ましいということも一面から言えるわけではございますので、これは県の御判断との関係でむずかしい問題はございましょうけれども大学の側からすれば、三年以上ということで対応していただくのがよろしいのではないかと考えているわけでございます。
  223. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 これ一つ見ましても、各県は文部省の理念にもかかわらず、やっぱりここで五人なり十人なり派遣するなら、十分にひものついたものにしようと考えまして、たとえば十年以上というような規定を設けますと、これは中堅教員研修に近くなってまいりますけれども、戻ってきたらすぐに指導主事というようなことに非常になりやすいわけですね。これも大体文部省がやはりこれらの点についても、問題を整合性を持って整備をされた目的、理念から、それについての出願資格、研修期間、それから選考方法、それから欠員補充の問題、修了後の義務があるのかないのかというような問題については、やっぱり整備をされた構想、あるいはモデルプランを示していただく必要がある。これが総論だけやりました、各県はいろいろと。まあ三年以上としておるけれども、五年であっても、七年であっても、文部省は別段にチェックはいたしませんということになれば、非常にいままで懸念をして、それぞれの委員から持ち出された問題というのは、一斉に火を噴いてくることになる。これは見やすい道理だと思うわけです。特にその中でお伺いをしておきたいのですけれども、県が指名をするのでなくて、受験は本人の意思によるという点ですね。県のカットの仕方によって、非常に違ってくるんじゃないかと思うわけです。少なくとも出願チェックがどういうやり方で行われるのか。この点については、予算枠以外のものが、選考の際に働くかどうかというのが大きいと思うんですけれども、予算枠以外のチェックはさせない方向指導するというようなことは言明をしていただくことはできますか。
  224. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 実際に、どういう形で先生方が受験を希望をされるかということを考えますと、実際のあり方としては、やはり各学校現場で同僚の先生方と十分にお話し合いになって、自分が抜けることがその学校に支障が及ぶかどうかということについて御相談になるでしょうし、学校の校長とも相談をされ、校長はさらに市町村の教育委員会と相談されるという形になりますと思いますから、実際問題としては、そういう形を通じて最も適切な形で、受験をすべき方法がおのずから決まっていくんだろうというふうに考えます。しかし、そうでなくて、先ほどもお答えをしましたように、同一の教科、あるいは同一の学校、同一の市町村内で志願者が多数にわたるというふうなことが出てきた場合には、やはりそれが学校教育に支障が及ばないように、教科や地域について著しい不均衡が生じないように、市町村の教育委員会は都道府県の教育委員会と御相談の上で、御判断をされなければならない事態もあり得るわけでございます。研修定数の枠を全体として都道府県の教育委員会、あるいは市町村の教育委員会がどのように活用するかということが、もちろん基本にあるわけでございますけれども、事柄としては、それだけであとは教員の自発的な意思によって受験をしていただくということで大丈夫だとはなかなか申し上げられないところがあると思うんです。
  225. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 具体的な取り扱いの点について、各府県教育委員会がどうするかという問題を尋ねておるのではなくて、文部省がどのような物差しをもって指導するのかという点をお尋ねしているんですから、その点明確にお答えにならぬということは、明確なイメージがないということではなかろうかと。そういうことになりますと、午前中宮之原さんあたりからもなかなか峻烈ないろんな御意見が出ておりましたけれども、さような疑問点というのは生きて残るわけであります。これが正しく運用されるならば、非常に大きな前進になるというふうに考える者にとっても、この辺の具体的な点が明らかにされないというところでは、容易に賛同いたしかねるということにならざるを得ない。特に、欠員補充と代替教員の問題についても、私は局長の答弁かなり問題があると思うんです。五十二年度千二百七十人ですね、準備をしておったと。今後は最低四百人ですか、上乗せをしますと。こういうことでしたね。どうですか。
  226. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 四百人を上乗せする方向で努力をいたします。
  227. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 初めからこの努力目標が四百人なんですから、それでは一般大学に入った者にも同様に保障いたしますと。東京学芸大、大阪教育大と、こういうところで大学側にも努力をしてもらって、この現職教育の道を開く。また、やっぱり高田とか、社とかいうところは、たとえば東京の人にとっても、大阪の人にとっても、福岡の人にとっても、余り近いところじゃありませんからね。東京学芸大の修士課程に行こうと、大阪教育大の修士課程に行こうという者が難関を突破して入ったから、それに対しては予算枠を努力目標として取るというのは一言も入ってないんですから。この辺は、局長、文部大臣、これも再三よい答弁をされたんですけれども、お金の方で局長の答弁を見ると、一顧だに与えてないんじゃないですか。その点はどうするんですか。
  228. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 私は、先生がその教員大学院の二百名ずつの定員をどうするかとおっしゃるから、その四百名は実現するよう努力しますと申し上げたんですが、現在千二百七十名というのは、昭和四十四年から五十三年の十カ年で年次計画的にふやしてきてここへ来ておるわけですから、今後ともその千二百七十名を一般大学、あるいはお話がありました大学院等に長期研修に行かれる人のためにさらに拡充するという努力はもちろんいたします。  ただ、御質問がその教員大学院のことだけおっしゃいましたから、そうお答えしたんでございます。
  229. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 そうすると、千二百七十人、非常に不十分ながら、いままでの一年研修、半年研修を支えてきたと、しかし、新しい制度、学校が発足をするんだから、これが四百人のマーケットができるわけですから、これに対しては発足した時点では、千二百七十プラス四百は加えなければ、各県がこれに対して措置をしたものに対する裏づけにならぬと。最低四百は加えることになる。しかし、まあ大臣も局長も、もし一般大学同意を得て入った場合に、これに差別することは許されないから、現職、現給で当然保障することになると。現職、現給で保障すれば、それについての代替教員は当然保障しなければならぬと。それはいまから計算をされて、いま答えがあればいいんですけれども、四百というのは当然理論的に出てくる。同数程度がほかの学校へ行くとすれば八百プラスになりますし、もう少し条件が悪いから少し少なくなるにしても、二百なり三百なりその枠をこの上に上積みして、諸澤局長のいまの答弁は、少なくとも千二百何がしプラス八百であるか千であるか、四百を大きく上回る数が準備されると、こういうふうにお聞きしていいわけですね。
  230. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 千二百七十プラスアルファですから、そのアルファを幾らにするかということは先生の御要望はよくわかりましたけれども、これから検討をさしていただきまして、予算その他の問題を十分考えて、われわれとしては最大限の努力をしてまいりたい、かように思います。
  231. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 いまからゆっくり考えられるなら、その答えが出てから採決をするというふうに私はしてもらいたいと思うんですけれども、この審議期間というのはかなり区切られております。とりあえず現在の答弁では、やっと出てきたのが、千二百何がしプラス四百は乗せなければ保障できないという話が出て、一般大学の問題は忘れておるのかと思ったら、それは別に考えるはずですと言って、いまから検討しますということですから、少なくともいままでには代替教員を、この二つの教員養成大学以外のところに配置するなどということは念頭になくて、いまから考えられ始めるようにも聞こえるわけであります。  こういう状況の中にさまざまな問題がある。特にこの四月段階で衆議院に出された統一見解の中における文部省答弁は、一つは出張命令でやるということのほかに、行く先を教員大学はと限っておりまして、既設教育大学のことを一つも触れていないわけです。これはまあ同一枠にする方向で、入ったら教員大学教育大学は、とりあえず同一枠にする方法でと、その上に一般大学も付加をして考えていただきたいと思います。  時間が来ておりますからきょうのところはここで終わっておきます。
  232. 吉田実

    委員長吉田実君) 本案に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  233. 吉田実

    委員長吉田実君) 次に昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する趣旨説明はすでに聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  234. 松前達郎

    ○松前達郎君 私学共済組合について若干の御質問をさしていただきたいと思います。  まず第一に、私学共済組合がどういう経過で発足したのか。また、いつごろから発足しているのか、その概要について簡単にひとつ御説明いただきたいと思います。
  235. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 私立学校教育振興の問題を考えますときに、私立学校の教職員がその責務を安んじて担当できるために、私立学校の教職員に対します福利厚生の制度、これが整備されていることが必須条件でございます。しかし、私立学校教職員共済組合法制定以前の私立学校の教職員に対します福利厚生の制度というものが、国・公立学校の教職員の共済制度に比べまして、相当立ちおくれておりまして、このようなことから、政府といたしましては第十三回国会で、私立学校振興会法制定の際の附帯決議、すなわち、「私立学校教職員の福利厚生対策については、教育基本法第六条の趣旨に基いて、国・公立の教職員と均衡を保てるような、別途の施策を考慮する」という趣旨に基づきまして、私立学校教職員共済組合法案を第十六回国会に提出をしたのでございます。これによりまして、私立学校教職員共済組合が、昭和二十九年一月に発足をいたしまして、これ以後国・公立学校の教職員との均衡を保つことをたてまえといたしまして、給付内容の充実を図ってまいったところでございます。現在におきます給付制度につきましては、国・公立学校教職員の共済制度と差異が見られないところまで到達することができたわけでございます。
  236. 松前達郎

    ○松前達郎君 私学の助成の問題というのは非常に重要な問題に現在なっておるわけですから、その一環としてこの共済組合というものに対する考え方が出てくるんじゃないか、かように私思っておるわけなんですが、私学共済組合の事業目的、また同時に具体的な業務内容について、これも概略で結構ですが御説明いただきたいと思います。
  237. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 私立学校教職員共済組合は、私立学校に勤務する教職員を対象といたしまして相互扶助事業を行い、その福利厚生を図り、そうして私立学校教育の振興に寄与するということを目的として設立されておるものでございます。  で、この私学共済組合が行っております事業は、大別いたしまして長期給付事業、短期給付事業及び福祉事業の三つでございまして、そうしてこの中の福祉事業は、さらに保険、医療及び貸し付けという三つの各事業に分かれておるのでございます。  で、大別して第一番目の長期給付事業につきまして申し上げますと、これは組合員の退職、廃疾及び遺族補償に関する給付を行うものでございまして、たとえば国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、あるいは農林漁業団体職員共済組合等が行っております長期給付事業と、いわば全く同一の事業といってもよろしいものでございます。  それから、第二番目の短期給付事業でございますが、これは組合員及び被扶養者の保健、休業及び災害補償に関する給付を行うものでございまして、法定給付は国家公務員共済組合及び地方公務員共済組合が行っております短期給付と全く同一といってよい事業でございます。また、付加給付につきましては、家族療養費、出産費、配偶君出産費、育児手当金、埋葬料、家族埋葬料、弔慰金、家族弔慰金、入院に関する給付及び結婚手当金というようなものを行っております。なお昭和五十三年度には、この傷病手当金の新設及び既設の付加給付につきまして、大幅な改善を行ったところでございます。  第三番目の福祉事業でございますが、これは組合員及び被扶養者の保健、保養及び教養に資するということで、施設等の運営並びに組合員の臨時の支出に対する貸し付けを行う事業でございます。恒久的な施設といたしましては、全国に保健施設として設けておりますものが七カ所、医療施設が一カ所、いわゆる宿泊施設が十カ所、現状では設置されているという状況でございます。
  238. 松前達郎

    ○松前達郎君 概略については大体わかりました。私学共済組合に、それでは現在私学が全部が全部加盟しているんじゃないと私思いますけれども、私学としてどれだけ加入しておりますか、その加入人員等も含めて、ひとつ御説明をいただきたいと思います。
  239. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 昭和五十二年十月末現在で申し上げさせていただきたいと存じますが、私学共済組合に加入しております学校数は一万一千八百十七校でございます。組合員数は二十九万四千九百九十四人でございます。  これを学種別に見ますと、学校数、組合員数とも幼稚園が最も多うございまして、八千六十七校、これは全学校数の約六八%になっております。組合員が七万八千四百六十七人でございまして、これは全私学の組合員に占めます割合が約二七%でございます。  現在、私学共済組合発足の際の事情でございますとか、その後、昭和四十九年に法律改正をしていただいたというような経過がございますが、そういった経過を経まして、現在なお五十九校一万四千五百十一人の教職員は私学共済組合に加入していないという状況になっておる次第でございます。
  240. 松前達郎

    ○松前達郎君 そうしますと、私学共済組合の財政基盤、恐らくこれが非常に大きな問題だと思うんですけれども、この財政基盤は一体どのような仕組みになっておるんでしょうか。それについて御説明いただきたいと思います。
  241. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 私学共済組合先ほど申し上げました各種事業について、それぞれ財政の仕組みがあるわけでございますが、まず短期給付事業につきましては、これは掛金のみによって収支を図っておるわけでございます。それでその状況でございますが、昭和五十三年度の見込みといたしましては、掛金収入は四百六十八億一千万円で、支出が四百五十七億一千万円ございまして、十億円の黒字という見込みでございます。  それから、長期給付事業に係る掛金収入は五百七億五千五百万円、それから国庫補助金が四十五億三十四万円、都道府県補助金が五十一億一千万円、振興財団からの助成金が三億四千万円、その他、利息及び配当金等含めまして、合計八百七億五千四百万円となるわけでございます。  支出は、年金等の給付が二百二十九億四千四百万円で、五十三年度におきまして五百七十八億一千万円の利益金を生じ、責任準備金の方へ繰り入れるということになる予定でございます。  一方におきまして、いわゆる財源率は五年ごとに計算するということになっておりまして、前回四十九年に試算されたものに基づいておりますが、五十三年六月からは、五年を待たずに掛金率をとりあえず千分の十、これを、申すまでもなく、組合員と雇用者であります学校法人がそれぞれ折半するわけでございますが、千分の十引き上げることといたしておる次第でございます。
  242. 松前達郎

    ○松前達郎君 いま金額で御答弁いただいたわけなんですけれども、掛金率ですね、パーセンテージで表現すると一体どういうふうになりますか。国庫補助あるいは都道府県の補助、その他私学振興財団からの助成というのがありますけれども、これについてちょっと伺いたい。
  243. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 掛金等の率で申し上げますと、短期の掛金につきましては、これは千分の七十六でございますから、本人、使用者それぞれ千分の三十八ずつでございます。長期の掛金率でございますが、これは千分の八十二でございまして、本人千分の四十一、使用者千分の四十一でございますが、これに対しまして、都道府県が千分の八の補助をしてくださるという、従来都道府県の措置が行われておるわけでございまして、これにつきましては若干、昨今変化の兆しが見られますが、財源等計算する場合には千分の八というものを用いておるわけでございます。  それから国庫補助は長期給付の給付に必要な金額の百分の十八という比率になっておる次第でございます。
  244. 松前達郎

    ○松前達郎君 そういたしますと、いま御説明になった四つの財源ですね、この財源が完全に負担されておるといたしますと、これ運営が成り立つものであると、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  245. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 先生いまの御質問は、四つの財源というお話でございますから、長期給付についての御質問というふうに理解いたしたいと存じますが、将来の財源計算が成り立つかどうかという点につきまして申し上げますと、昭和五十二年度におきますいわゆる責任準備金は約八千四百七億円というものが必要だという計算になっておるわけでございます。このうち、ただいま現実に積み立てております保有資産が約二千四百七十二億円でございます。それから、責任準備金引当金、これは補助金、助成金、掛金等、先ほど御説明申し上げましたような前提で、今後入るだろう収入見込みでございますが、これは三千七百十八億円でございまして、差し引き二千二百十七億円が計算上不足となっておる次第でございます。これは私学共済組合が責任準備金の計算方式を相当長期の見通しの上に立った方式で行っておる関係上、昭和五十二年度決算時におきます、いわゆる計算上の不足額でございまして、これがいますぐにこのために差し支えが生じるというものではないのでございます。たとえば五十二年度予算では収入六百四十二億六千八百万円に対しまして、支出が百九十一億余でございますから、収入のうち約三〇%弱が給付のために当てられまして、残りの部分は当年度利益金として残るという状況でございます。しかし、今後いろんな意味の、給与ないしは物価等の変動がどういうぐあいになりますかによるわけでございますが、今後毎年行われるでありましょう年金改定といったものを考慮いたしますと、この不足金が増大するということが予想されますので、先ほどもちょっと申し上げましたが、昭和五十四年度に掛金率の再計算をして、改定について検討するというところを、引き上げはなるべく段階的に行った方がいいではないかということで、千分の十引き上げることを予定いたしまして、ただいま共済組合としましては、私学関係団体等と協議を行っておるということでございまして、それらの了解のもとに、千分の十引き上げることを予定をしておるわけでございます。
  246. 松前達郎

    ○松前達郎君 掛金率の引き上げで、その財源の不足を補うという考え方ももちろんありますけれども、それもいまの御答弁では余り一遍にやらないで、徐々に将来にわたってやっていきたいと、これも一つ方法かもしれませんが、先ほどからお話がありました財源負担ですね。この行為が欠けているとなると、やはり運営が非常に困難になってくるんじゃないかと、そういうふうに私は感じるわけなんですが、たとえば私学振興財団ですね、これが本来千分の六助成をするというふうなことで、当初の間恐らくそういうふうな助成があったんだということを伺っておるんですけれども、その後、これが五十一年度以降だんだんと減ってきていると、この点もやはり非常に重大な問題じゃないかと私は思うわけなんで、この点についても今後十分な配慮が必要だと思うんですね。  現在で一体私学振興財団からどのぐらいの助成をしているか、その点について。
  247. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 五十三年度におきます私学振興財団から私学共済組合の助成金の予算措置でございますが、これは長期給付の整理資源に対しまして一千万円、それから長期給付のうち、既年金者の年金改定によります増額のための経費に充当すべきものとして、三億三千三百八十四万四千円、合計いたしまして三億四千三百八十四万四千円というものが計上されておるのでございます。
  248. 松前達郎

    ○松前達郎君 それでは、この組合の事業内容の中に、退職金ですね、それから退職年金制度というのがあるわけなんです。これは他の共済組合で見られるように、ベースアップや年金改定等によって、長期の給付制度の運営が困難になってくるのではないか、こういうふうに見られておると思うのですが、その現状は一体どうなっておるんでしょうか。
  249. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 現状におきましては、なおいわば私立学校教職員共済組合は、設立後完全に組合員の構成なり、あるいは退職者の数といいますか、そういったものの比率が恒久化した段階にまでまだ来ておらないと見てよろしいかと存じますが、そういったことから、ただいまの時点では、先ほどもちょっと申し上げましたが、長期給付に関します掛金その他の収入に対しまして、実際に給付するための支出が収入の約三割で賄われているということで、いわば積み立てていくお金の方が多いと、そして、積み立てをしていくという段階であるかと存じますが、これをかなり先を見越した長期で計算をしてみますと、現在の掛金率では将来不足金が生じてくる、こういう見通しでございます。
  250. 松前達郎

    ○松前達郎君 この私学共済も歴史的にまだ日が浅い、あるいは内容的に加入者の数等の問題もあって、今後の問題というのは非常にこれは育成をしていく面で重大な時期にあるんだと私は理解を、いたしておるわけなんです。そういう意味から、国庫補助についても長期給付の補助率が先ほどのお話で百分の十八ですね、これで固定化されてきていると。また一方、私学振興財団に至っては、これは二十数年間ですか、千分の六という数字、これが無視されたような状況に置かれていると。助成が非常に少ない、一千万という数字ですから非常に少ないわけです。この点がやはり今後大きな問題になるんじゃなかろうか。それに加えて都道府県からの補助、これも何だか最近減額、または削減の方向に向かっていると、こういうことですから、私学共済組合の財政というのが将来危機に瀕するというのは、これはもう明らかじゃないかというふうに私は思うんです。そういうふうなことから考えて、この現状についてどういうふうに把握されておるか、お伺いいたしたいと思います。
  251. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 先生指摘になりましたように、財団からの助成が今年度大分減少、減額になっておるわけでございますが、これにつきましては、従来から財団が私学に長期低利で融資をいたしまして、そうして、そういう形での資金運用をした結果といたしまして、利益金を生ずると、その利益金を今度は助成金として私学共済の方へお回しする。また、必要な場合には財団も私学共済からも必要な資金を借り入れて、それを私学の建設資金の方に御融通すると、こういういわば相互協力援助的な仕組みで従来きたわけでございますが、御存じのような経済界の事情もございまして、昨今では、一番私学振興財団の主要な原資は財政投融資資金でございますが、それと私学共済からの借入金、これらのいわゆる借入金利に比べますと、私学に対する貸出金利の方が低くなっておりまして、いわばいわゆる逆ざやの状況に置かれておるわけでございます。辛うじて、これまでの政府出資金の蓄積がございますために、まだ利益金というものは確保しておりますので、その範囲内で助成を行っておるという事情でございます。で、私学共済組合の財政の安定の上からは、やはり私学振興財団の方の経営を何とかこれ以上悪くならないように、できれば前のようにもう少し上向きの方に持っていくことによりまして、私学共済組合への助成金をより確保していく必要があろうと思っております。  それから、都道府県の共済組合掛金に対します助成につきましては、これは、これまで各都道府県で御努力いただきまして、特に高校以下については千分の八、それから大学、短大等についてもやっていただいておりましたのでございます。これは各県の自主的な御努力であったわけでございますが、昨今の地方財政の状況から、若干ずつ後退的な現象と申しますか、特に都道府県が直轄庁であります高校以下は別として、大学、短大等につきまして、しかも、東京でございますとか、大阪でございますとか、わりあい学校の多いところが、だんだんに助成の仕方を従来よりも減ずると申しますか、低くしていくという傾向がございまして、これはしかし、昭和五十三年度、まだ年度に入って間もないことでございますから、都道府県の予算措置というものは、いろいろな意味の補正その他で、年度末になりませんと、その年度の姿というものが確定はいたさないので、現在のところはまだ見込みでございますけれども、そういう傾向が生じつつあるということが感じられております。私どもといたしましては、これまでせっかくいろいろな意味で、都道府県御当局で自主的な御努力をくださいましたので、なおそういった御努力をできるだけ続けていただきますように、要請をしてまいりたいと思っております。地方財政当局も、単にこの私学共済に関する援助だけじゃなくて、一般のいわゆる私学に対します経常費その他の助成というものもございまして、金額としては、いずれも従来よりは伸びてきているわけでございますけれども、いわゆる補助率的な、そういう形でとらまえますと、若干そういうおそれがすでに見られますので、私どももいろいろな機会を通じて、都道府県御当局にお願いをし、要請をしてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  それから、国庫補助の問題につきましては、これは各種の年金制度につきまして、いろいろ先生御承知のように、給付の開始年齢の相違とか、そういった相違がございまして、そういった相違をいろいろと勘案して考えます場合に、やはり、これを現状の百分の十八を現在の時点で増額するということは困難であったわけでございます。私どもといたしましては、いろいろな年金制度がございますが、その中でのバランスの上で、他の同種の年金についての措置ともにらみ合わせながら、私立学校教職員共済組合が不利にならないように、その点を今後とも心がけていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  252. 松前達郎

    ○松前達郎君 いまのお話で、今後努力をしていただきたいと思うわけなんですが、私学共済が当面している財政上の健全化というのは、これは、火の車になってどうしようもなくなってから対処するというんじゃ、大変なことになりますので、早急にこれらについて配慮をしなきゃいけないんじゃないかと思うんですけれども、いまお話ありましたように、国庫補助率の百分の十八の百分の二十にぜひ引き上げるような努力をしていただきたいということ。  それから二番目には、私学振興財団の事情は、いま十分お伺いいたしましたけれども、この千分の六の補助、これを速やかに国庫補助に繰り込んでいく、そういう肩がわりの処置をするということが、これはどうしても必要じゃないかと私思うんです。そういったような処置をしながら、私学共済の健全な発展に努めるというのが今後の対処の仕方だろうと私は思うんです。  最後に、先ほど短期の分、これについて黒字であるというふうなことを言われたわけですね。赤字、黒字の問題、これだけで取り扱いますと、そういった考え方もあるかもしれませんが、私学共済の中には、たしか五人未満の事業所というのが相当多いんじゃないか、聞きますところによりますと、六百五十近くあるというふうに伺ってはおるんですが、これらの学校で、もし私学共済がないとすると、当然国民健康保険の適用事業所になるわけなんです。その場合ですと三〇%程度の国庫補助金が出てくる、こういうことになります。また、その他の事業所でも、私学共済がないとすると、政府管掌健康保険に入るということになるわけなんです。政府管掌健康保険の場合には、百分の十の定率補助、財政調整の補助があるわけなんですね。さらにまた一部の大学では、独自に健康保険の組合をつくるという能力があるわけなんですが、せっかくある私学共済に加入して、私学共済の発展を図ろうということで加入をしておられるわけであります。こういうことが全体の掛金率を低くすることに貢献はしていると私は思うわけなんです。こういった面、さらに、私学共済の場合には、給与総額、この総給与を対象として掛金を納めているんだと思います。国・公立の場合には本俸を対象としておる。その辺にもまた金額的な面での違いが出てくる。そういうことでありますから、赤字、黒字ということではなくて、やはりこういった問題は本来国庫補助というものについて配慮しなければいけないんじゃないか、ほかの方でやっているわけですから。そういうふうに私感じるわけなんで、この点についても今後十分御検討いただいて、御配慮いただければと私は思うわけでございます。  以上、今後の私学共済に対する御努力を期待いたしまして、質問を終わらしていただきます。
  253. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 私学共済について数点お尋ねいたします。  私学共済の長期給付の財源について、私学振興財団からも助成されることになっておりますが、助成されることになったいきさつ、また昭和三十七年の協議内容を御説明いただきたいと思います。
  254. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 日本私学振興財団が、いわゆる整理資源を助成をすることになりましたいきさつと申しますか、経緯は、次に述べますようなことであろうかと存じます。  これは、過去の厚生年金の期間の通算でございますとか、あるいはベースアップ等に伴います、いわゆる整理資源につきましては、国・公立学校教職員の共済組合の旧期間に係る追加費用が全額使用者としての国または地方公共団体によって負担されているということを考え合わせまして、その一部を日本私学振興財団の助成金をもって充てる、そして、これによりまして掛金負担の軽減を図るということにいたしたわけでございます。これにつきましては、昭和三十七年四月十八日に、当時の私学振興会——これが現在の日本私学振興財団になっておるわけでございます、それと私学共済組合とが協議をいたしまして、長期給付財源のうち、整理資源の二分の一相当額、言いかえますれば掛金率の千分の六相当額を助成するということの申し合わせを行ったというのがいきさつでございます。  その申し合わせの内容でございますが、申し合わせ事項が何本かございますが、大きく分けて二つになっております。  第一点は、私立学校済組合が、私立学校振興会に対して業務上支障のない範囲におきまして、私立高等学校急増対策に必要な貸付金に充当するために資金を融資する。これは共済側から振興会側に資金を融通するという内容でございまして、あと細かいことは省略いたしまして、第二点について御説明申し上げますが、第二点が、ただいま先生指摘の助成の問題でございまして、振興会が共済組合に対して、次の助成を行うということで、そのうちの一つが、長期給付財源のうち、おおむね整理資源の二分の一相当額ということで、これは先ほど御説明申し上げた点でございます。ただし、昭和三十七年度の助成額は九千万円の打ち切り補助とし、不足を生じた場合は翌年度以降において長期給付財源率の再計算の際考慮するといったような内容になっております。  あと、第二番目に、既年金者の年金増額相当額、これでございます。  それから第三番目に、昭和三十七年度及び三十八年度共済組合の行う福祉施設のうち、宿泊施設一カ所、海の家または山の家一カ所の開設に要する経費の七五%といったようなことも言われております。  それから第四番目に共済組合の事務所の増改築に要する経費の七五%。一々いろいろだだし書きがついておったりいたしますが、柱だけ申し上げます。  それから、第五番目に、昭和三十九年度以降の共済組合の行う福祉施設に対する振興会の助成についてはまた別途改めて協議するというようなことで、振興会側の代表と、共済組合側の代表で、いわば一種の相互協力援助関係ということで、三十七年の四月の時点で申し合わせが行われたということでございます。
  255. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで、いまお聞きいたしましたように、協議した、助成の約束をしたわけですが、そこで長期給付財源のうちの整理財源の二分の一相当額と、いまお話がございましたように、その約束は整理財源の二分の一に相当する額だということでございますね。それを一応確認さしていただいて、それでは次に私学振興財団からの助成額は幾らになっているか。先ほどお聞きしておりますと、昭和五十三年度の助成額は一千万円だというお話でございます。じゃ、それを標準給与に対する千分率で言いますと、幾らになりますか。
  256. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 掛金率にして千分の〇・〇二という数字に相なります。
  257. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 千分の〇・〇二という額は非常に少ない率になっているわけですね。千分の六に対して千分の〇・〇二。金額で言いますと、所定の助成額は三十八億何がしかの金額になっておりますのに、一千万円だけの助成をしている。結局差し引き三十八億不足しているわけです。約九九・七%の不足の助成が行われている。非常にこれは問題だと思います。  そこで、次にお聞きしたいことは、昭和三十七年に約束した当時の助成率、それが千分の六だったわけですが、現在の整理資源率を基礎として計算しますと、この千分の六という数値は幾らになりますか。
  258. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 現在では整理資源率が千分の二十七・四〇、国庫補助が百分の十となっておりますので、計算いたしますと、千分の十一・二三四というような数字でございます。
  259. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 私が調べたところによりますと、五十三年度は整理資源率千分の三十八・五一九、したがって、千分の十五になると、こういうふうに計算しましたけれども、ちょっと食い違っておりおすが、どうなんでしょうか。
  260. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 柏原先生の仰せになりました数字がどういう方式で算出されたか、よく私どもはちょっと見当がつきかねるわけでございますが、先ほど私が申し上げました数字は、現在の何と申しますか、財源率計算に基づきます数字でございまして、もし私立学校済組合側が、先ほど松前先生に御説明申し上げました際に申しました長期の見通しのもとに、長期給付の財源率を別途計算をいたしまして、そして、五十四年度にやるべきものをできれば一年先取りをして、掛金を上げたいといったときに、前提として計算した数字が、あるいは先生のおっしゃいましたものに近いか、あるいはその数字になるかというふうにも考えられますが、ちょっとただいま手元にその相違をはっきり解明できるものを持ち合わせがございませんので、申しわけないと存じますが、私どものさっき申し上げました数字は、あくまで現行の前提ではじき出した数字でございます。
  261. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 その点は私も文部省がおっしゃることですから、後でいろいろと計算もまたしてみたいと思います。いずれにしても五十三年度、千分率千分の六という計算で、不足している、していないというようなお話になっているわけですけれども、この千分の六というのも、昭和三十七年のときの助成の約束は、先ほど念を押しましたように、整理財源の二分の一の相当額が掛金率の千分の六に相当するんだと。ですから、その当時からもうずいぶん月日がたっているわけです。昭和五十三年度の時点で計興しますと、この資源の二分の一の相当額を掛金率の上から見ると、千分の六どころじゃない、千分の十五で当然なんだと、こういうふうに私は考えております。ですから千分の六の助成をしたとしても、はるかにそれは約束から考えますと不足している。その上に千分の六どころじゃない、千分の〇・〇二の助成だけで済ましている。ですから約束した時点から考えますと、私学振興会の助成の金額というものは、はなはだしいマイナスになっているわけですね。ですから大変な問題じゃないか。私学振興財団が助成すべき整理資源分が、その助成の率の改正もされずに据え置かれて、三十七年度の約束のときから、ずっと千分の六できているわけですね。その千分の六の相当額さえ助成されてない。昨年を見ますと、千分の〇・二で、今年度はさらにそれが著しく下がって、千分の〇・〇二となっているわけです。こういう点、監督官庁である文部省の責任は私は重大だと思います。先ほどのお話ですと、何だかいますぐ困っているわけじゃないから、何とかなるというような感じに御答弁が受け取れるわけです。そんなのんきなこと言ってていいんだろうかと、じゃ、私立学校先生方の将来の年金の保障なんというものはされないと、こう言っても私は言い過ぎじゃないと思うんです。そういう点でいかがでしょうか。
  262. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 私学振興財団からの助成金が大変当初の申し合わせに比べまして、額の上でも、率の上でも減っておることは、御指摘なり、私ども先ほど御説明申し上げましたとおりでございます。これは先ほどもちょっと申し上げましたが、財団からの助成がどうしても利益金を生じて、それによって行うということになっておるわけでございます。一方におきまして、旧私学恩給財団の既年金増額分に対する助成、これが非常に年々増大しております。これは給付としてお払いしなきゃならない部分の増額でございますので、やはりこちらの方をまず優先して確保するという必要もございまして、いわゆる整理資源の一部についての助成額が減ってきたのでございます。五十三年度の状況で申し上げますと、私学振興財団が利益金で行います助成計画といたしまして、全体で総額五億七千二百万円を確保しておるわけでございますが、このうちいま申し上げました既年金者年金増額費が三億三千三百万余で、昨年度よりも六百九十万ばかり増額になっております。それから私学研修福祉会を通じまして、各私学のそれぞれの団体が、いろいろな研修事業でございますとか、海外研修派遣でございますとか、その他の研究、あるいは図書の整備といったような事業を行いますための助成が二億二千八百万余でございまして、これまた二百二十万ばかり増額しておりますが、そういったこととあわせて、長期経理の資源につきましても、これはゼロになっては、そもそもこういうものを続けていくという姿勢が問われることでございますから、非常に僅少ではございますが一千万円ということで、ことしは形をつけざるを得なかったというのが実情でございます。ただ、それから先生おっしゃいますように、将来の長期の展望をいたしました場合に、この長期経理の資源としての見通しとして、もう少し大きい率の計画をし、用意をする必要があるではないかという御指摘でございますが、これにつきましては先ほど申しましたように、五年ごとの計算の際に十分配慮して、そういったことも頭に入れて検討をしていく必要があろうかと思っております。  なお、現在の掛金は千分の六がまるまる入ったという長期の計算のもとではじき出されておりますので、現実に財団からの金が入らないということで、その分が掛金のアップにつながらないように、そういう仕組みで現在の掛金率の計算は行っておりますので、つけ加えさしていただきます。
  263. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 そこで、私学振興財団からの助成金の累積不足額、これはどのくらいあるんでしょうか。  それから、現在長期給付の責任準備金の不足額、この二つはどのくらいになっておりますか。
  264. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 私学振興財団からの千分の六の助成の累積不足額は、五十二年度末現在で百四十五億円でございます。  それから、長期経理の計算上の不足額は二千二百十七億円となってございます。
  265. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いずれにしても不足額は大変な額になっているわけです。千分の六は振興財団が持つという約束だからこそ、長期給付の負担は、組合員と学校法人は千分の四十一と定められて負担してきたわけでございますけれども先ほどから振興財団が千分の六だと、それもろくろくできない。それは逆ざやだからとか、不況だからとか言っておりますけれども、それはそのとおりだと思います。けれども、私はそんな弁解をしてないで国が負担すべきだと、もうどうにもならない不足額ですから、当然国が負担すべきだ、一体この不足額は今後どうする考えなのか、これは大臣にお答えいただきたいと思うんです。
  266. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 管理局長からもお答えいたしましたけれども昭和五十二年度におきます責任準備金、現実に積み立てております保有資産が約八千四百七億円であり、このうち約二千四百七十二億円、責任準備金の引当金が三千七百十八億、差し引き二千二百十七億円が不足ということになっておりますが、私学共済が責任準備金の計算方式を相当長期の見通しの上に立った方式で行っております関係上、五十二年度決算時におきます計算上の不足額がこういうことになっているわけでございまして、いますぐ差し支えるというものではないわけです。たとえば五十二年度予算では、収入が六百四十二億六千八百万円に対しまして、支出が百九十一億二千九百万円で二九・八%が給付に賄われまして、残り四百五十一億三千九百万円が当年度利益金となって残るわけでございます。これも繰り入れていくことになるわけでございます。ですから当面すぐ大変なピンチだという現実にぶつかっているわけではございません。ただ、今後毎年行われます年金改定を考慮いたしますと、この不足金は増大していくことが予想されますので、そんなことから給付率の引き上げ等も考えたわけでありますが、先ほどから御指摘の私学振興財団の問題、私学振興財団の今日の経理内容が大変悪うございますので、これの改善に最善の努力を尽くしまして、私学振興財団から私学共済への給付の金額を確保していくように、できるだけの努力を続けてまいりたいと考えます。
  267. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 私は、文部省が私学振興財団への出資金を大幅に増額するよう努力してほしいと。それに対して大臣から積極的なお答えがございませんで、非常に不満に思うわけです。  そこでもう一つ、国家公務員共済組合の整理資源は、国が負担しておりますね。ちょっと考えると、一方は国が負担している、こっちの方は、ここまで大変な問題になっているのに、そういう考えがない。しかし私は準備金の膨大な不足というものは、何とかしておかなければ、受給者が必ず困るようになると、そのために備えていくべきじゃないか、そういう点で、財源負担について総合的な検討が必要であると思いますが、その点いかがですか。
  268. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 私ども長期給付の事業に対しまして、財団あるいは都道府県の助成等も期待をしなければなりませんが、先ほどから申し上げておりますように、国庫補助の問題もあるわけでございますが、国庫補助につきましては、やはり各種の年金制度の間の均衡ということがございまして、先生ただいま公務員関係との扱いについての御指摘もあったわけでございますが、いろいろな意味での給付の条件その他を比較考慮いたしまして、一つのシステムとして考えます場合に、現在の百分の十八を現状では引き上げることが困難であるという結論で、本年度は百分の十八ということできているわけでございますが、私どもといたしましては、こういった問題につきましては、やはり私学振興を図るという、冒頭大臣から申されましたこの組合創立の趣旨も考えあわせまして、今後引き続きやはり研究、検討を進めたいと思っておりますし、  それから将来におきまして年金制度全体の改善ということが一つ課題になっておりますが、その改善の場合に備えて、やはり十分に研究を尽くすように努めてまいりたいと思っております。
  269. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 いま申し上げた財源負担についての総合的な検討、これは大臣いかがでしょう。
  270. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 他の年金の制度との均衡の問題もございますけれども、少なくとも他の年金制度の国庫補助等におくれをとらないように、最善の努力をいたしますし、私学振興財団の経理内容の改善についても、積極的な答弁がないとおしかりを受けましたけれども、私は積極的に取り組みます、努力をいたしますとお答えをいたしておる次第でございます。
  271. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 時間がわずかになりましたので、まとめて二点お聞きいたしますが、都道府県からの補助について、これは補助率は千分の八となっておりますが、これも現在の数値で再計算いたしますと、千分の八どころか千分の二十程度になると思われます。けれども、今日の地方財政の状況から見て、その負担は容易ではない、とう思います。そこで少なくともこの千分の八の補助がすべての学種に対し確実に行われるべきだと考えております。そのために、ある県では補助が打ち切られるというような場合があってはならない、こういうことを考えまして、文部省は強力に行政指導すべきであると、こういうふうに考えておりますが、その点いかがでしょうか。
  272. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 五十二年度現在で四十七都道府県のうちの千分の八相当額を補助してくださっております県が三十七県でございます。他の都道府県においては国庫以下のみを対象になさっておりましたり、補助率を低くするという状況が生じておりまして、これはやはり地方財政の悪化が原因していると思いますけれども、私どもといたしましては、やはり都道府県補助を、他の面での私学振興のためのいろんな財政措置をやってくださっておりますけれども、このことも重要なことでございますので、主管課長会議等の機会を通じて、従来も各都道府県にお願いをしてまいりましたけれども、なお一層独力に要請を行ってまいります。
  273. 柏原ヤス

    ○柏原ヤス君 最後に、年金制度の改革、これは非常に最近大きな問題になってきております。社会保障制度審議会、ここでも皆年金下の新年金体系、これを建議しておりますし、年金制度基本構想懇談会、ここでも中間意見も出されている。そういう中で現在の年金制度というのはばらばらであると、非常に問題も多く格差がある。こういう中で公明党では国民基本年金構想というものを発表しております。そうした中で、大臣は、私学共済年金制度、この将来をどういうふうにお考えになっているか、一音お尋ねして終わりたいと思います。
  274. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 柏原先生指摘の建議等、これらの御意見は将来の年金制度を考えます上で、やはり貴重な御意見であろうと考えるんです。わが国の公的年金制度が今後どういうふうにあるべきかというのは非常にむずかしい問題でございます。私学共済年金としてはこれらの意見を踏まえつつ、国家公務員共済組合審議会等におきます検討結果というものを十分勘案をいたしまして、私学共済年金の独自性、これとの調整を図りつつ対処をしてまいりたい、かように考えるものでございます。
  275. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 年々行われる私学共済の共済年金の問題について、一層強化していかなければならぬと思うわけですが、特に、今日の日本の大学教育について言えば、八〇%までが私立大学に負うておるという状況であって、これに対する強化策というのは、日本の知的水準の向上という上でも非常に重要な役割りがあると思います。この点では特に教育は人でありますから、教官の生活と権利を守っていくということが、これが経常費補助等を中心にする国家の補助と相まって、経営の健全化の問題、そして教学の充実という両方にわたって効果をおさめていくことになると思うわけです。私、本日特にこれに関連をしながら私学の健全な運営、それから公正民主的な学内のあり方ということについて、若干お伺いをしようと思ったのですが、この終了後に社会党の方から私学について緊急質問が出ておるというような状況もございますし、その関連の中で取り扱いたいと思いますから、この質問は終わりまして委員長においてよろしくお計らいを願いたいと思います。
  276. 吉田実

    委員長吉田実君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  277. 吉田実

    委員長吉田実君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  278. 吉田実

    委員長吉田実君) 全会一致と認めます。よって、本案は原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  粕谷君。
  279. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 私は、ただいま可決されました昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、各派共同提案に係る附帯決議案を提出いたします。    昭和四十四年度以後における私立学校教職員共済組合からの年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   私立学校教育の重要性と私立学校教職員共済組合の実情にかんがみ、政府は左記の事項について検討し、速やかにその実現を図るべきである。  一、長期給付に要する費用に対する国の補助率を百分の二十以上に引き上げるよう努力すること。  二、長期給付に対する日本私学振興財団の助成金について、必要な強化措置を講ずるよう努めること。  三、地方財政の実情にかんがみ、長期給付掛金に対する都道府県の補助を充実するため、必要な措置を講ずること。  四、短期給付に要する費用について国庫補助の措置を購ずるとともに組合員に対する福利厚生事業の充実について、なお一層努力すること。  五、私立学校教職員の退職手当制度及び業務上の災害補償制度のあり方について速やかに検討を行うこと。   右決議する。  以上でございます。委員各位の御賛同をお願いいたします。
  280. 吉田実

    委員長吉田実君) ただいま粕谷君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  281. 吉田実

    委員長吉田実君) 全会一致と認めます。よって、粕谷君提出の附帯決議案は全会一致をもって、本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、砂田文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。砂田文部大臣
  282. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) ただいま御決議がありました事項につきましては、御趣旨に沿って十分検討いたしたいと存じております。
  283. 吉田実

    委員長吉田実君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  284. 吉田実

    委員長吉田実君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  285. 吉田実

    委員長吉田実君) 次に、教育、文化及び学術に関する調査を議題といたします。  この際、三角管理局長から発言を求められておりますので、これを許します。三角管理局長。
  286. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 本日、当委員会の理事会におきまして、日本歯科大学の経営問題につきまして、文部省当局として調査を進めている経過について説明をせよという御意向でございましたので、一言発言をさせていただきます。  本日は、同大学から事務局長小松高暢氏、庶務部長門脇為敏氏に来省を求めまして両氏から事情を聞いた次第でございます。ただ、何分にもただいまお聞きしてすぐのことでございますので、概要について御報告をさせていただきたいと存じますので、御了承いただきたいと存じます。その結果の概要は次のようなことでございます。  まず第一といたしまして、入学生から従来いわゆる入学条件とはならない意味合いでの任意の寄付金を収納していたが、昭和五十三年度からはこれを正規の学納金の方に組み入れました結果として、廃止をしたということが第一点でございます。  それから第二点は、非常時に備えて、法人会計に計上されない資金四億八千七百万円を、理事会の承認を得て理事長において保管をしていたが、本年五月二十四日、これを全額法人会計に組み入れるという措置を行ったということでございます。  なお、学校側の説明では、当該の資金は一度も支出されたことがないということであります。  なお、詳細につきましては、今後状況によりまして、引き続き資料の提出などもいただきながら事情を聞きまして、しかるべき判断の上、必要な指導を行ってまいるということにいたしたいと思っております。  以上でございます。
  287. 吉田実

    委員長吉田実君) それでは、これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  288. 久保亘

    ○久保亘君 国税庁に最初にお尋ねいたしますが、いま管理局長から報告のありましたことに関連をして、報道されるところによれば、日本歯科大学の中原理事長に対して、いわゆるやみ給与所得と認定をして、過去五年間にさかのぼって修正申告を行わせ、追徴課税を行ったと言われておりますが、それは間違いありませんか。
  289. 北村恭二

    説明員(北村恭二君) 医大関係につきましては、かねてからいろいろ問題があるということで、昨年来税務調査を行いまして、課税の適正化に努めているところでございます。お尋ねの日本歯科大学につきましても、これは学校法人でございますから、収益事業を営んでおりません場合には、法人税の課税対象にはなりませんで、むしろ理事者や、職員の給与というものに対します源泉所得税の調査ということがポイントになるわけでございますが、このようなことで源泉徴収が適正に行われているかどうかということについて調査いたしたものでございます。ただ、先生御承知のとおり、調査の具体的な内容につきましては、国税当局として申し上げることは御容赦いただきたいと思います。
  290. 久保亘

    ○久保亘君 いや、具体的内容は結構ですがね、これだけ大きな社会問題になっているんですから、そのような追徴課税が行われた事実があるのかないのかははっきりしてもらわなければ、ないものがあるように報道されたとなれば、これは大変重大な問題であります。  私はいまの管理局長の報告のとおりであるとすれば、これはそのような措置が国税庁によって行われるはずはないと思うわけでありますから、そのことをお尋ねしているわけであります。
  291. 北村恭二

    説明員(北村恭二君) 先ほど申し上げましたように、歯科大学に対しての源泉所得税の調査ということは行っておりまして、それに基づく処理を行っておりますということでございます。
  292. 久保亘

    ○久保亘君 源泉所得税について調査を行って、その調査の結果に基づいて必要な措置を行ったと、こういうことですね。
  293. 北村恭二

    説明員(北村恭二君) さようでございます。
  294. 久保亘

    ○久保亘君 それでは、その調査の結果、必要な措置を行うべき事情が存在したと、こうなりますね。
  295. 北村恭二

    説明員(北村恭二君) 調査の結果、是正すべき点について是正しております。
  296. 久保亘

    ○久保亘君 先ほど管理局長が報告されましたところでは、大学の側で、異常時に備えて、——非常時か異常時かよくわかりませんでしたが、そういうときに備えて、理事会の承認を得て法人会計に入れない別の会計を持っておった、しかし、その後これは指摘をされたのでまた法人会計に戻した、こういうことで調査の結果が報告されておりますが、そのような場合に、これは是正の措置をとるべきものとなりますか。
  297. 北村恭二

    説明員(北村恭二君) 大変むずかしいお尋ねでございますが、税務調査に基づきまして課税が行われました場合、一般的にはそれをもって課税関係は完結していることが通常でございますけれども、仮に課税の判断の基礎となりました事実と、税務的に見て異なる事実が明らかとなった場合というのは、調査の上これに即した判断をすることはあり得るところでございます。
  298. 久保亘

    ○久保亘君 企画調整課長が御出席ですが、あなたが直接きょう関係者に当たって調査をされたと私聞いておりますが、先ほど局長が御報告になりましたこと以上に、あなたの方でつけ加えて説明することはありませんか。
  299. 塩津有彦

    説明員(塩津有彦君) 私の方で事情聴取いたしましたのは、岡調査室長外でございまして、私はたまたま室長の方の課長という立場もありまして、ときどき出させていただいたということはございます。岡調査室長はただいま記者会見中でございますので、私が参った次第でございます。  それから、第二番目のお尋ねでございますが、基本的には局長が申し上げたとおりでございますが、さらに若干の補足する点はないわけではありませんが、お尋ねであればいたしたいと思います。  本日は主として新聞に載りました事項について、事実確認という形で事情聴取したんですが、一は入学者数が正しいかどうか、二番目は入学者寄付金について、それから三番目は、理事長の個人所得とみなされた四億八千七百万円というようなことについて、いろいろ事情聴取したわけでございますが、四億八千七百万円につきましては、入学時寄付金といいましょうか、入学生からの寄付金の一部ではあるということは大学の説明で明らかになりました。それから目的は、これは局長が御報告いたしましたが、天災、恐慌等の非常時に大学及び大学の職員のために理事会の承認を得て理事長において主として現金の形で保管しておったということでございます。そして、五月二十四日にこれを法人会計の方へ正式に繰り入れたというようなことになっております。
  300. 久保亘

    ○久保亘君 いや、それであるとすれば私は非常に問題があると思うんでありますが、それは報道の限りでは、四億八千七百万円を理事長がその使途を認めなかったために、これの使途を明らかにしなかったために、個人の所得とみなして課税を行うことになった。ところが、その税金をまた大学が払った。したがって、四億八千七百万を全部本人の手取りであるという計算にすることによって、追徴課税は総額九億に達した。それを全部大学側が払ったと、こうなっておるんです。そうすると、いま文部省の言われたような経過であれば、私はこれは中原理事長の個人所得として見なすことは大変困難なものだと思うんですよ。それならば九億の税金を、さらにこれは大学が出したといっても、これは学生や父兄が負担した金です。その金で九億税務署に支払われたということになれば、払わなくてもいい、本来教育のために使われるべき資金が誤って国税庁によって徴収されたという結果になって、これは大変重大だと思うのであります。国税庁は、その必要な是正措置を行われたということは、いまのような文部省が調査して報告された事実とは違った事実を確認して、その上に立って、そのような必要な是正措置を行われたと理解してよろしゅうございますか。
  301. 北村恭二

    説明員(北村恭二君) 調査の内容にわたります点で、大変恐縮でございますが、具体的には申し上げられませんが、税務調査に当たって、十分調査の内容を確認した上で是正処理を行ったわけでございます。
  302. 久保亘

    ○久保亘君 そうすると、文部省大学側にどういう指導をされているんですか。いま言われたように、非常の場合に備えて理事会が承認して、そして保管されておったその金を、五月二十四日にそっくりそのまま大学の法人会計に繰り入れたということになれば、理事長の個人所得ということには認定できないんじゃありませんか。その認定できない金に対して、父兄の負担したものの中から、さらに九億円も税金として支払ったということになれば、結果的には理屈の通らないことで、この大学入学している学生や父兄に対して、大きな負担をかけたという結果になりませんか。だから、あなた方がその調査結果に、大学側の説明に納得されておるのかどうか、その点をひとつ明確にしてください。
  303. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 私はけさからここの席に座っていてい文部省当局が事務局長、庶務部長に来省を求めて事情を聞いた、その資料を私いま見たばかりでございますけれども、私にも納得がいきません。大学側の説明を聞き取りましたその内容は、先ほど管理局長がお答えをしたわけでございますけれども大学側の言うとおりであるとするならば、なぜ理事長の個人所得としての課税額が国税庁からあったときに、大学が支払ったのか、どうも理解が私にはまいりません。ただ、大学側の口頭の説明をきょうは聞いただけでございますから、それだけでは私にもどうしても理解ができませんので、その問の書付金の出入り等が明確になります決算書その他の裏づけの資料を提出を求めまして、十二分の調査をひとつ続けさせていただきたい。きょうは口頭でどうも大学側の説明を聞いただけのようでございますから、その説明だけでは私は納得ができませんので、裏づけ資料の提出を求めまして、国税庁は国税庁で御調査になるでありましょうけれども文部省もやはり、学校法人というものが公共性を十分認識をして、節度ある運営、特に経理の適切な処理をしてくれなければならないわけでございますから、その立場に立って調査をひとつ続けさせていただきたい、かように考えます。
  304. 久保亘

    ○久保亘君 私が聞いておりますところでは、国税庁は理事長名義の預金、それから架空名義や無記名の預金もあったのかどうか知りませんが、そういう預金について調査をした結果、使途不明金が四億八千七百万あった。その使途不明金について、その使途を明らかにするように理事長に対して求めたけれども、理事長がそれを拒否した。それで、それならばあなたの所得として課税しなければならぬがと、こうなったら、それで結構、こういうことになって、税金を徴収することになったら、大学が二億二千万余りの税金を払ったので、それではその四億八千七百万の手取りに対する課税にならないから、さらに税金は加算をされて、総額九億になった。それで、理事長がいまもその使途については明らかにされておらぬ。しかし調査をされた側では、かなりのところまでその使途についても詰められた、こう聞いております。文部省はおわかりにならぬと思う。その中には、この日本歯科大学が新潟に分校をおつくりになるときに、諸般の費用等にも使われたのではないかという話もあります。とにかくいまの文部省の報告を聞くとね、一銭も手をつけずにそっくり現金で直してあったというのです。現金で直してあったから、そのまま戻したと。それが現金で直しているものが、どうして国税庁にわかるんですか。そんなばかな話はないと思うんです。金庫の中に現金で入れておいて、国税庁が来たときに金庫をあけて見せたら、これは何かと言われてわかったのなら別ですけれども、国税庁の方は、大学の預金を洗って、使途不明金から、これは何だということで詰めて、理事長の個人所得とせざるを得なかった。しかし大学はあなた方に、現金で直しておって、一銭も手をつけておらなかったから、いろいろうるさくなったから全部返した、こういう話でしょう。これはどちらかが完全にごまかしているわけです。私は国税庁が九億の課税をされる以上、よほどの確信に基づかなければそんなことはできるはずがないと思う。学校法人に対して九億の課税をするということは、そのことによって子供に、父兄にどんなに迷惑がかかってくるかということは十分御承知なはずですから、それを国税庁が簡単におやりになるはずはない。よほどの確証に基づいて行われ、大学側もそれを認めてやったことに違いない。それならば文部省は、大学側からいいかげんな報告を受けて、それでここへ管理局長がその調査結果の、まあ中間だと言われておりますけれども、現在までの調査結果だと言うて報告されたことは、はなはだ私は遺憾であります。だから、文部大臣が言われるように、ひとつこの問題については、徹底的に調査をしていただいて、もし課税に当たらないものであれば、それがもし課税されているとするならば、文部省大学に協力してこのことを取り消してもらいたい、それはもともと父兄が払った金なんだから。私はそのことを言うわけであります。もしこれが当然その追徴を受けなければならないような不明朗な学校経営が行われておるとするならば、そのことに対して、当然とるべき責任を学校の経営者としてとってもらわなければいかぬ。またそのことが犯罪を構成するならば、そのことについてもきちんと処理をしてもらわなければいかぬと思うのであります。そうしないと、このことに対して父兄の側が容易に納得できない。  国税庁もこれだけ金額まで明示されて報道されてしまった問題に対して、守秘義務だということでもって、一切明かさないということは、このことのもたらす社会的な大きな影響ということに対して、余りにも私は無責任だと思うのであります。国税庁のどこからかこの問題について事実が流されない以上は、こういう問題がこれだけ社会に大きく報道されることはないのであります。このことをこの公式の場においてだけ一切明らかにしないということでは問題があります。これらの問題については、大学側がいま文部省に説明しているような事情であるならば、このような事情に対して、なぜ必要な是正措置を行わなければならなかったのか、そのことについては私に違うなら違う、われわれはもっと違った事実の確認に基づいてやったんだということだけは明らかにしてもらわなければ困ると思う。その点についてひとつ国税庁の見解を求めたい。
  305. 北村恭二

    説明員(北村恭二君) ただいまの問題が新聞等で報道され、大変大きな問題になっていることは私ども重々承知してございます。ただ、もう先生よく御承知のとおり、私ども答弁できます範囲というのは限られております。事の重大性は十分認識しておりますし、今後の問題についてもそういう観点から考えていきたいというふうに考えています。
  306. 久保亘

    ○久保亘君 必要な是正措置とは、これは修正申告による是正措置ですか。そんなこと私、あなたが言われたって、何にも問題にならぬと思うのですよ。修正申告による是正措置を行われたのかどうか。それもここでは言えないことなんでしょうか。そんなことは、たとえば田中金脈のときにはその内容にわたって金額とか、一つずつの具体的な内容については守秘義務といわれたけれども、行われたその措置の方法などについては、これは私はかなり説明されてきたと思うんです。これ一切何も言えないということは大変問題だと思うんですよ。修正申告によって、税の是正が行われたんじゃありませんか。必要な是正措置というのはそのことなんでしょう。それぐらいは述べてください。
  307. 北村恭二

    説明員(北村恭二君) 先ほど来申し上げておりますように、調査の結果、納付すべき源泉所得税について納付がなかったというものについて、納付がなされておるということで是正がなされたというふうに申し上げたわけでございます。
  308. 久保亘

    ○久保亘君 済みません、もう一遍言ってください。よくわからぬ。
  309. 北村恭二

    説明員(北村恭二君) お答えいたします。  税務調査に当たりまして、いろいろと調査上の私どもが把握いたしました問題点を、源泉徴収義務者である学校側に指摘いたしましたところ、源泉徴収税額について納付が過少になされていたということで、自主的に納付がされているということでございます。
  310. 久保亘

    ○久保亘君 学校側に指摘したといま言われましたが、学校側に指摘されたのですか、それとも学校側を通して特定の個人に指摘されたのですか。それはどちらでしょうか。
  311. 北村恭二

    説明員(北村恭二君) 源泉所得税の調査というのは、徴収すべきものが源泉徴収義務者でございますので、当面の調査は源泉徴収義務者、この場合には学校法人が調査対象になります。ただ、学校法人の調査に当たって、いろいろと関連するいろいろな関係者とか、そういう方の関係というのは当然調査の範囲の中に入ってくるというふうに御理解いただきたいと思います。
  312. 久保亘

    ○久保亘君 わかりました。大体学校法人というのには税金はかからないんですから、これに対して国税庁がいろいろ調査されることは余りないのでありまして、結局国税庁の調査対象というのは源泉所得税が適正に納められているかどうかということが一番大きな問題なんです。源泉所得税というのは、これは個人に支払われた給与に対してなされているものですから、いまあなたが言われたように、大学側に求めて調査をしたら、過少申告の事実が明らかになったので、この過少課税の事実が明らかになったから、その点を是正させて、つまり税金を追徴した、こういうことなんですから、そうすると、やっぱりやみ給与というか、正規に報告されない所得が個人に対してあったという認定をあなたの方はされたわけです、調査の結果。いまの御報告によって、御答弁によって、そのことは明らかであります。そうすると大学側が文部省に説明したことは全く食い違っている。理事会が決定して理事長名義で大学の必要な資金とするために、この別途保留しておいた金を、それをまた全部返したというなら、これはどの個人とも一切所得という意味においては関係を持ち得ない。そうすると、この国税庁の調査と、文部省大学から事情聴取したこととは明らかに食い違いがある。これは非常に大きな問題だと思う。その点はひとつ文部省が必要とあらば国税庁の事情もお聞きになって、はっきり結論を出していただきたいと思うのであります。  それから、この日本歯科大学について過去に経常費の助成を行われたことはありますか。国からの経常費助成を行われたことがあるか。  それから今日、たとえば五十二年度において、もしこの基準に基づく助成を行えば、助成額は日本歯科大学に対して大体年間どれぐらいになると推定をされておりますか。  それから私学振興財団は日本歯科大学に融資をしたことがありますか。以上をお答えください。
  313. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 学校法人日本歯科大学に対します先生の御質問の事項でございますが、過去に交付した補助金は、私立大学等経常費補助金の創設の初年度でございます昭和四十五年度におきまして交付をしておりまして、その金額は九千百十五万九千円でございます。その後は申請がないために交付をしていないわけでございます。  それから第二の点でございますが、昭和五十年度に、もし補助金がいったとすれば、どのぐらいの金額になるかという点でございますが、これは私立大学等経常費補助金の算定につきましては、若干当委員会でも機会がありました場合に御説明申し上げておりますように、教員数でございますとか、学生数でございますとか、あるいは学生教員比率、あるいは財政状況等によりまして、いろいろな意味の調整をして計算をいたします関係上、正確な意味での試算ということは申し上げられないのでございますが、仮に昭和五十二年度におきまして私立の歯科大学に対して、学生定員一人当たり交付いたしました補助金の平均額を、この大学に当てはめて概算いたしますと、約十億円という数字になろうかと存じます。  それから第三点の私学振興財団からの融資は、この学校法人に対しては行っておらないのが現状でございます。
  314. 久保亘

    ○久保亘君 経常費助成が行われるようになりました、初年度の四十五年度に、九千百十五万をこの日本歯科大学は国から助成金として受け取っておる。四十六年度以降は一切この当然受けられるべき助成金を受け取っていない。四十六年度以降一切受け取っていないということになれば、五十二年度まででも数十億の当然受けるべき国の助成を断っているわけです。それは何か特別な理由があったのでしょうか。その点はどういうふうに把握されておりますか。
  315. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 私どもこの学校が補助金を申請を行わない、その理由については、特別に承知はいたしておりません。
  316. 久保亘

    ○久保亘君 私が調べたところでは、この大学は歯科系の大学の中では最高の入学寄付金を徴収いたしております。最高の入学寄付金を徴収しなければならない大学が、私学振興のために、そしてまた一方では不当に高い入学寄付金等をなくしていくために、国が行う助成を拒否している。このことは非常に不自然なことであります。そのことを文部省がいままで放置されているということも私は大変おかしなことだと思うんであります。自分の大学は寄付金も一切とらない、国からの助成ももらわない、それならばわかりますよ。しかし、最高に寄付金をとる大学が、申請すればもらえる国の助成を断っているということは、しかも昨年度だと年間十億に達するような助成金を断っているということは、これは非常に不思議なことであります。そのことは、一方から言えば文部省から助成金を受けることによって、大学の経理などについて、いろいろ指導、監督を受けることを避けているのではないか。そこにはこの大学に国税庁から今回指摘されたような問題が潜在しておって、そういうことが行われたのではないか。私はその点を大変不思議なことに思うんであります。この点について文部省としては、その助成金を申請してこない大学があることは、これはなかなか気骨があって、りっぱなことだと、こういうふうにお考えになっていたんでしょうか。
  317. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 普通の意味合いで申しますれば、ただいま久保先生が申されましたようなことで、経常費補助金を受けることによりまして、これを一つの主要な学校運営の財源として、そして、全体の財政運営なり、経理を行ってまいるということであろうかと存じまして、その際私どもといたしましては、貸借対照表その他の財務計算書類を公認会計士の監査を受けていただいた上で、ちょうだいするということで、公費を支出する上での適正な処理を担保をしようということにいたしておりまして、そして、特段それによりまして金は出して、さらに口も出すというようなやり方はとっておらないと思っております。ただ、私立学校でございますから、必ずしも財源につきまして、自分の力で、自前でやっていくということが、これは成立の源からしますれば、それが本来の私立学校でございますから、そういうところがあっても、私どもはどうしてもこの補助金を受けるべきであるというような、またそういう対応もいたしておらないということでございます。  それでさらに、先ほど大臣もちょっと申されましたが、補助金を受けようと受けまいと、学校法人は自主性と同時に公共性を持って運営されるべきものでございますから、その経理は補助金を受けた場合と比べて、別に相違のない程度に適正な処理をしていただくということがたてまえであろうかというふうに考える次第でございます。
  318. 久保亘

    ○久保亘君 大臣、いま管理局長が言われたような考え方は、私は私学に対する考え方間違っていると思うんですよ。なぜかと言えば、私立大学というのは、本来自前で経営するのが私学のあるべき姿だというような認識というのは、これは私は今日の私学教育に対する考え方に立てばぼくは間違いだ。間違いだからこそ、私学の教育の公共性に基づき、それから今日の私学教育の振興を国の責任で果たす必要から、この助成の制度というのは生まれているんです。そしてこの助成を行うことによって、できるだけ学生や、その父母の負担を少なくしていかなければいかぬ。そういう趣旨でできておるのに、その補助金を申請してこぬのは、なかなか自主独立の精神があって、これはいいことだ、そういう大学があってもおかしくないというような談話も、管理局筋の談話として新聞で見ましたが、そういうことは私はもう全然間違った考え方だと思う。そんな考え方でいるから、文部省が国の補助と肩がわりに、大学の自主独立に干渉しているんではないかということを思われるんですよ。私はそういう点については、文部省はきちんとしてもらいたい。  それから、私立大学学校経営については、入学寄付金などについて文部省は、私学も含めて文部省の責任として指導しているんでしょう。指導しているならば、そのことについてやっぱりどうなっているのかということについては、文部省は経常費の助成を行っていようといまいと、絶えず留意をしながら、もし間違った行き方があれば、指導をするということがなければいけないんじゃないでしょうか。結局、文部省がこの日本歯科大学の場合には、補助金を申請してこぬのはいいことだ、なかなか気骨のある大学で、こういう大学もあった方がいいぞと、こう考えられておる間に、国税庁が調べたところによれば、やみの金をつくっておいて、それで学生に大変な迷惑をかけている。教育の機関としてはあるまじきことが行われているということになっておったとすれば、この責任は日本歯科大学の問題だけではなくて、やっぱりその指導の立場に立つべき文部省にも一半の責任がある、こういうことだと私は思うのでありますがね。だから、この問題について文部大臣は、日本歯科大学の問題を、先ほど申されましたように、きちっと事実を解明をして、必要な教育機関の経営者としての責任、それから納税者としての責任、そういうものについて、やっぱり明確な立場を国民に対して示される必要がある。いま医科とか、歯科とかいうのは、いきたくても経済的にその大学にいけない子供が日本じゅうには非常にたくさんおるんです。その中で父兄の納めた金がやみ給与になったり、使途不明金になったり、国税庁から追徴を受けたり、そういうことではこれはもう父兄はとてもたえられない。そういう点について大臣の見解をしかと承っておきたいと思います。
  319. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 冒頭にも私が申し上げたのでございますけれども、国税庁のいまのお答えを聞いておりますと、調査の段階ですでに自主納税をなさっておられるそうでございます。それが事実だとすれば、きょう文部省大学の方が出てきて、文部省に説明なさったことがうそであります。そこで、私は私には理解ができないと申し上げたわけでございますから、裏づけになる決算書等の提出も、すでに文部省はきょうの調査段階で求めたようでございますから、国税庁は国税庁、文部省としてはやはり学校法人の所轄省としての責任からこれはもう厳重に調査をいたすことに決意をいたすものでございます。
  320. 久保亘

    ○久保亘君 国税庁に最後に一つお尋ねしたいのは、あなた方が御調査になったのは、国税庁として時効にかかったものは除いて、今日その調査結果において追徴できる段階までをお調べになった、こういうことではないかと思うんですが、そのとおり理解してよろしゅうございますか。
  321. 北村恭二

    説明員(北村恭二君) 先生お尋ねのとおりでございます。
  322. 久保亘

    ○久保亘君 そうすれば、文部省の方の調査は今度はこれは学校の経理に関する問題でありますから、国税庁は徴税者として自分たちの権限の及ぶところまでしか調べられておらぬのであります。五年間しかさかのぼって調べられておらぬ。そういうことが大学においてもしあったとするならば、恐らくそのようなことは、五年前よりもずっと先にも存在したと見なければいかぬのであります。だからあなた方が経常費の助成を行われた段階においても、そういうことがなかったとは言えない。したがって、今回調査されますならば、ぜひ大学側がたとえ戻したと言っても、法人会計に繰り入れない金を四億八千七百万、国税庁の調査によってつかまった分だけは、あなた方にも言ったんです、四億八千七百万という金額を言われたから。四億八千七百万を保留しておったことを明らかにした。それは国税庁の調査結果つかまった分を言っておるわけです。それ以前においても、そういうような便法をとってこられた大学の経営のやり方であるならば、当然そのようなその資金の運用が行われた、こう見なければいかぬのでありますから、私学の経営に関して、国民の側に立って明らかにするという立場からは、それ以前の分についても、ぜひ調査をして、明らかにされるようにお願いをしたいと思うんでありますが、その点についてはいかがでしょうか。
  323. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 学校法人が非常に高い公共性を持っていることにかんがみまして、節度ある運営、特に経理の適正な処理を期すべきである。先ほど私がお答えをいたしましたとおり、四億八千数百万だけのことを調査するのではない。経理の適正な処理について私どもとしてはできる限りの調査をいたします。
  324. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 関連しながら文部大臣に私立大学の関係の件でお伺いをいたします。  昨日、決算委員会でわが党の沓脱委員もこの件について大臣にお伺いをいたしました。ただいままた久保議員から、日本歯科大の問題について追及があったわけですが、文部省は私立学校法によって、大学に対して指導監督権を持っておるわけであります。指導監督権と言えば対象たる学校に対しては権利でありますが、同時にこの権限を負託をした国民に対しては、指導監督することは当然の責務、義務であると思いますけれども、その点はいかがですか。つまり大学指導する権利があるということは、その権利はやってもやらぬでもいい権利ではなくて、国民から文部省に対して付与した権利ですから、国民に対してこれを適正にしっかりと行っていくという義務があるというふうに考えていただかなくちゃならぬと思いますが、いかがでしょうか。
  325. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 指導、助言をしてまいらなければならないと思っております。
  326. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 すでに医科歯科系大学につきましては、しばしば入学者選抜に関して、あるいは納付金問題について、寄付金問題について、問題もございまして、本委員会でも取り上げてきたところであり、文部省においては二回にわたって通達、通知を出されて、筋道を正して指導をしてこられたと思うわけでありますが、この際に、一つはこれは適正な会計の使用でありまして、それからその中で重要なことは、やっぱり学校経営と、教学とのしっかりとした双方の確立と、この間の交流であり、特に経理については関係者に公開しなければならないというような点も出してこられたわけであります。この点がしっかりとでき上がっておれば、かくのごとく状況が頻発をし、表に出ていないところにも何かあるのじゃなかろうかというような、あってあたりまえというような状況にはならないだろうと思うんです。その点について、今回を契機にしてどういうふうにおやりになるのか、その点をお伺いをしておきたいと思うんです。
  327. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 学校法人は経理を公開する義務を必ずしも負っているわけではございません。しかし、きわめて公共性の高い学校法人でございますから、学校法人みずからの判断で、もしもそれが社会から指弾を受けるような問題がありましたときには、学校法人の判断によってそれは公開をなさるべきものだと、かように私考えております。
  328. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 私は、私立大学の経営に関しても、努力に関しても悪いことばかりがあるのではなくて、大学当局の日夜分かたぬ努力の中で、非常に財政的にも厳しい状況の中で、文部省指導とも相まって、一定の成果があらわれていることもまた事実だと思うわけです。そういう状態の中で、文部省のなすべきことは、指導、助言というのは限界があって、権力行政はできないという、いわば大学自治の陰に逃げてしまうのではなくて、やっぱり調査をされて、これを公開をし、そして正すべき筋道を状況にあわせて国民に明らかにしていくということが、本来これは権力でもって是正させるものではありませんから、大学の運営が適正化され、自主解決を促すことになる。その点では現実を国民の前に明らかにし、そして通知をし、指導、助言をするという点は、やり過ぎるということはないと思うんですね。こういう関係から見ますと、やっぱりこの問題についても、一定の前進はあるとは言い条、総論あって、各論におけるもどかしさがある、隔靴掻痒の感があると言わなければならぬと思うんです。私はこの問題について、予算委員会のときにも文部大臣に関西の諸大学について二、三例示してお尋ねをいたしましたし、その後の文教委員会でもお尋ねをしてきたところであります。  ここで、その後の経過についてさらに問題が出ておりますので、その点についてお伺いをしておきます。  五月二十三日のこれは毎日新聞であります。関西方面では非常に大きく取り扱っておりましたが、大阪経済法科大学であります。この大学文部省の通知の筋に対してもはなはだ不適切な状況がございまして、そうして問題を起こしておるわけですけれども、この大学のその後の状況について、この問題を国民に訴えた講師らに対して、まあ突如として報復的に解職を行う、同時に、多数の学生に対して教授と無関係に単位認定を行い、卒業させる、そうして一説では単位一単位につき二万円というような相場が、学生の中でうわさになるというようなところまで問題が提起をされておるわけであります。こういうような点については御存じでありましょうか。どういうふうに状況を押さえておられますか。
  329. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 大阪経済法科大学におきまして、三人の教員が解雇をされる、その解職の通告書によりますと、勤務態度が悪い、あるいは就業時間中に勝手に集会を開いた、あるいは大学当局の誹謗中傷を繰り返し行ったこと、それらを解職の理由に挙げていると承知をしております。私立大学の場合の雇用問題につきましては、労働関係法令の定むるところに従って、それぞれ学校法人によって、自主的に処理されるべきものでございます。今回の件について、大学局として詳細な事実を把握をしているわけではございませんけれども、この三人の教員は、大阪地方裁判所に地位保全の訴えを起こすというように聞いておりますので、当面この訴えの経緯あるいはそれに対する裁判所の判断というものを待つこととする以外になかろうと考えております。ただ、この大学の運営のあり方については、大学局としてはきわめて問題があると思っております。先般来御指摘の補欠入学者に対する寄付金の問題につきましても、その改善の方途というものを大学側にただしておりますが、どうもはっきりいたしません。そういった点であるとか、あるいは先ほど指摘の単位の認定の問題についても、私ども詳細を承知しているわけではありませんけれども、経済学部で四名の学生の単位の認定の問題について、経済学部の教授会として調査をしているということは承知をしております。そのことに金品が絡んでいるということは聞いておりませんけれども、そういった問題を含めてこの大学の運営については、十分にこれから注意をして見ていく、必要な指導、助言をしていかなければならない大学であるとは考えております。
  330. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 いま答弁されたものについては、これは学校に対して調査をされた結果、手に入れられた状態であるわけですか。
  331. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) この件については、私ども大学に対してはまだ電話で事柄を照会する程度でございまして、来省を求めて詳細に聞いてはおりません。
  332. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 少なくとも、事務職員が単位認定についていわば変造、偽造に当たるような勝手な状況をやっておる、これがこの教授会の意に反して、学校の理事者の側と提携をしてやっておるというようなことになれば、教授会が一体どういう位置づけになっておるのか。いわば認可条件にかかわる、法律にかかわる瑕疵、欠陥があるということになるんじゃないでしょうか。
  333. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 私立大学におきまして教授会というのは、もちろん学校教育法の定めるところに従って、十分に機能をしてもらわなければ困るわけであります。教学の問題については、教授会がはっきりとした責任体制をとることによって、大学教育、研究というのは前進をするわけでございます。  単位認定の問題については、先ほどもお答えをしましたように、私どもはその詳細をまだつかんではおりませんけれども学生の単位の認定が厳正に行われなければならないということはもとよりのことでございます。これについては経済学部の教授会の方で調査を進めておられると聞いておりますので、その結果を待ちたいと考えております。
  334. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 この大阪経済法科大学は、これは国の補助金についてはどういう関係になっておりますか。
  335. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) この大学に対しましては、経常費助成は交付されておりません。
  336. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 先ほど社会党の久保議員の方から指摘があった問題と同じ問題がここでも出てきておるわけであります。国から相当の額の補助金を受ける権利があるのを放棄をいたしまして、水増し入学はさせる、あるいは補欠募集から納付金を勝手なやり方で取る、あるいは教授の権限に属し、認可条件にもかかわるこういう教学の問題を、事務系統で勝手にいじっていく、こういうことになれば、もはやこれ大学の名に運用上は価しない状況が出てきておると言わなければならぬ。これをその当の理事者の側から調査をされるということだけでは、いかにしても不十分であろうと思います。それは文部省の方としても、新聞をごらんになれば、かようなことは、虚偽のことを書けば直ちにこれは名誉棄損なり、あるいは法的な措置でもやられるような問題になってくる。成績不実の記載、これは教務部長の談話というのでも、事務職員に一部成績表の転記ミスがあったというような言いわけをしておるのでありますけれども、これでどうしても教授会の言うことを聞かずに勝手にやりますので、経済学部の教授会、山名学部長、これが調査委員会をつくってそうして鋭意、しかも大学側のとうてい協力は得られないわけですから、極秘で調査を進めた結果、四人の学生については年度当初の履修届けがなく、担当の教官が全く知らないうちに認定されておった単位が、三十四科目百二単位あった。卒業には一般教養五十六単位、専門科目八十八単位が必要だが、中には一人二十科目六十単位という、卒業に必要な単位の半分近くも不正認定をしてもらっておった例がある。かようなことについては、少なくとも日本の大学の信用問題であり、日本の教育レベルの問題でもある、こういう状況が天下衆知の状況の中で記載されておるのですから、当然教授会の側、あるいは委員会の側に連絡をとって、調査を進められてしかるべきであろうと思うのですけれども、そういう点は実施していかれるお気持ちはありますかどうかお伺いいたします。
  337. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 御指摘のように、事務当局に照会をした段階では、語学の単位において、ドイツ語のところに記載があったけれども、それはフランス語の単位を履修届けをして取っていたものであったものの転記ミスがあった。それ以外については事務当局としては事柄がわからぬというように申しておりますが、これは事務当局からだけ話を聞いているのでは、実態をつかむというわけにまいりませんので、その学部長から私たちは話をまず伺いたいと思います。
  338. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 先ほどの歯科大の問題でも、もうすでに問題の所在は天下に明らかになっておるにもかかわらず、非常に効果が期待できないようなあり方で調査が進んでおるわけであります。同時に、この状況では文部省が鋭意進めておるこの私学運用の適正化について、いま局長から答弁があったところでも、まことにこの経理運営が適正でないという状況の明らかなところへ、特にこれが公然化された段階で、これも多くの新聞の記載しておるところでありますけれども、弾圧あるいは職員に対する罷免等を行っておるのも、暴力団を呼んで来て直接退去させるとか、教育の場にあるまじきことがずっと行われてきております。この点については、引き続いて私としても結果を注目していきたいと思いますので、鋭意調査を行われて、御指導をされたいと思うわけです。  さらにあるわけですが、この京都産業大学という最近かなり有名になった大学があるわけであります。いわゆる鬼頭氏にせ電話事件のときに非常に有名になった大学がありますけれども、ここについても四月二十日の毎日新聞に、大きく報道されておる事件が起こっております。これについては状況を承知しておられますか。
  339. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) これも詳細は承知をしておりませんが、概況は承知をいたしております。これは京都産業大学の教職員労働組合の委員長、これは教養部の講師をされている方ですが、この方と副委員長である外国語学部の助教授ほか三名の方が、学長と外国語学部の某教授を相手どって、京都地裁に損害賠償請求の訴えを起こすということが起こっております。訴えの内容は原告の方々、原告の一人の助教授がフランスに留学中にフランスの大学で講演を行った、それに対してこの大学の総長名義で、原告の助教授と組合を誹謗する文書がそのフランスの大学に送られた、それによって著しく名誉を傷つけられたというものだと承知をしております。この件についてはすでに訴訟が起こっておりまして、五月二十三日に第一回の口頭弁論が開かれておりまして、第二回が近く開かれる予定と聞いておりますけれども、被告の側はこの原告の訴えた事実につきましては、大学としては知らないということを答弁として答えていると聞いております。これもやはり訴訟になっていることでございますから、その裁判の状況を見守っていくということで対応したいと考えております。
  340. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 訴訟の内容は裁判の進行を待てばよろしいと思うわけでありますけれども、ここの場合にも大学として通常の形態から見て非常に異常な状況がある。これらの点については指導、助言をされるのでなければ、今後とも大学にふさわしい教学の状況が保障されないのではなかろうかと思うわけです。特にこの教授会というものの位置づけが問題であります。この大学においては教授会は総長の諮問機関として位置づけられておるわけですけれども、それは一体大学のふさわしい形であるのか。
  341. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 私立大学の中には、御指摘のように教授会について学長の諮問機関であるという規定を設けているものがなしとしません。しかし教授会の権限というものは学校教育法に規定が置かれているわけでございます。教学に関する重要事項は教授会に付議をするというのが、やはり私立大学の場合におきましても教学のあるべき姿でございます。もちろん私立大学の場合に、教授会の機能と理事会の機能とをどのようにうまく調整をしていくかというのは、それぞれの私立大学でいろいろと御苦心があり、また御工夫があるところでございます。それはそれで結構なことでございますけれども、やはり教授会を教学の問題に関して諮問機関というような位置づけではなくて、もっと明確に位置づけていく、そのことが私大の教育研究を推進をするゆえんであると考えております。
  342. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 学校教育法第五十九条の一項というのは、教授会の設置を義務づけていることとあわせて、教授会の権能について書いておるわけであって、「重要な事項を審議する」というふうに述べられておるのは、当然教授会はみずからの権限を持ってこれを執行できる立場に置かれなければならないと解されるべきであって、これが諮問に応じて、執行するのは総長の独裁権限というふうに置かれているなら、これは法の趣旨に反するということにならないですか。
  343. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 京都産業大学の学則によりますと、「教授会は次の事項について必要な審議をする」ということになっておりまして、学校教育法の規定の趣旨に従って、重要事項が各号列記の形で掲げられているわけでございます。そしてその各号列記の最後に「その他総長が諮問する事項」というのが確かに掲げられておりますが、この学則の規定を見る限り、産業大学における教授会が、いわゆる諮問機関として位置づけられているとは必ずしも言えない、むしろ教授会として必要な審議をする機関として置かれていると考えられるわけでございます。
  344. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 先ほど共済年金の問題を審議をしたところでありましたけれども、やっぱり教職員に対する生活と権利を保障していくという観点から言えば、何よりも今日の一つ水準に各大学が到達をして、全体としてそれなりの保障がなければならぬと思うんです。こういう状況にある大学の結果として、この京都産業大学というのは近辺の十大学の平均から見てもはなはだしい劣位にありまして、教授においては大阪経済大あるいは関西外大、近大等のかなりハイレベルにあるものに比べて、大体三十万円程度のものに対して二十五万円相当ぐらい出しておりますが、どこの大学でも常識的に、助教授と教授との間にはそんなに差を設けていないのが普通なんです。ここでは大体助教授となるとどか減りいたしまして、大体平均的に見て助教授が三十万円見当のものに対して、二十三万円くらいしか出してないですね。こういうような状況にあって、教授の任用であれ、昇任であれ、ほとんど教授会の議を経ていないというような状況もあります。こういう状態の中で前近代的な事件が引き続いて起こってきておるというような状況がある。私はここで文部省に特にお願いしておきたいのは、すでに従来から通達、通知等の中で、その筋は出しておられるわけであります。これに対して、具体的に生起する状況に対して全体として有効な指導をされ、そして指導結果をやっぱり国民の前に明らかにして、内部からこれを解決していく力を高めていくというふうに行っていただきたいということであります。今回の日本歯科大の問題についても、それの顕著にあらわれた例であろうと思います。文部大臣の所感を聞いて質問を終わります。
  345. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 学校法人が、その公共性にかんがみまして、節度ある運営、特に経理の適正な処理をしていただくように、なお一層私どもとしても指導助言を強めてまいりたい、かように考えます。
  346. 吉田実

    委員長吉田実君) 本日はこれにて散会いたします。    午後六時七分散会