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1978-04-18 第84回国会 参議院 文教委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十八日(火曜日)    午前十時六分開会     —————————————    委員異動  四月十七日     辞任         補欠選任      田渕 哲也君     和田 春生君  四月十八日     辞任         補欠選任      和田 春生君     田渕 哲也君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         吉田  実君     理 事                 後藤 正夫君                 粕谷 照美君                 小巻 敏雄君     委 員                 岩上 二郎君                 山東 昭子君                 高橋 誉冨君                 内藤誉三郎君                 二木 謙吾君                 増田  盛君                 勝又 武一君                 久保  亘君                 松前 達郎君                 宮之原貞光君                 白木義一郎君                 田渕 哲也君                 有田 一寿君    国務大臣        文 部 大 臣  砂田 重民君    政府委員        文部大臣官房長  宮地 貫一君        文化庁長官    犬丸  直君        文化庁次長    吉久 勝美君    事務局側        常任委員会専門        員        瀧  嘉衛君    説明員        警察庁刑事局保        安部防犯課長   長岡  茂君        外務省国際連合        局外務参事官   小林 俊二君        大蔵省主税局税        制第二課長    水野  勝君        大蔵省関税局輸        入課長      武末 祐吉君        郵政省電波監理        局有線放送課長  小野沢知之君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○著作権法の一部を改正する法律案内閣提出)     —————————————
  2. 吉田実

    委員長吉田実君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十七日、田渕哲也君が委員辞任され、その補欠として和田春生君が選任されました。     —————————————
  3. 吉田実

    委員長吉田実君) 著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。
  4. 久保亘

    久保亘君 最初に、レコード条約批准に至るまでの経過と、それから著作権法の一部改正が必要となったわが国事情などについて、御説明をいただきたいと思うんでありますが、特にローマ条約批准が今日まで行われないまま、さしあたってという形でこのレコード条約批准という経過になっていくと思うんでありますが、その辺の経緯などについても御報告をいただきたいと思います。
  5. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) 近年レコード無断複製、いわゆる海賊版、そういうものが国際的に非常にはびこってまいりました。そういうようないわゆる海賊版レコード無断複製からレコード製作者保護するということが国際的に必要な事柄になってまいりました。これがレコード保護条約というようなものが締結されるようになりました動機でございまして、一九七一年に作成されまして、それが一九七三年に効力を生じ、現在世界の主要レコード生産国でありますアメリカとか、西独、イギリス、フランス等を含めました二十八カ国が締約国となっております。それでわが国といたしましても、この条約締結することが意義のあることと考えまして、今国会においてその締結について御承認をお願いしているわけでございます。一方、わが国著作権法におきましては、国内レコード製作者につきましては、すでにその製作したレコード無断複製等から保護する規定ができております。ところが、今回この条約承認いたしますと、外国レコード製作者権利保護しなければならない、こういうことになりますと、現行法では不十分でございますので、この現行法による保護を受けるレコードの範囲を拡大いたしまして、この条約によりましてわが国保護義務を負うレコードにも拡大をすると、これが今回の著作権法改正の趣旨でございます。  なお御指摘のございましたローマ条約、いわゆる隣接権条約の問題でございますが、これは広い意味におきまして隣接権の一部でございます、このレコード著作者権利保護というものは。その隣接権で全面的に保護されれば、その中に吸収されるわけでございます。それで国内法におきましては、昭和四十六年に改正されました著作権法におきましても、国内におきましては隣接権保護をいたしておりまして、隣接権関係の条文がすでにできております。しかしながら、これを隣接権全般にわたりまして外国に対しても適用するということになりますと、これはいろいろ問題がございます。現在ローマ条約承認しております国は必ずしも多くございません。現在二十カ国ぐらいであったかと思います。現在アメリカとか、ソ連、フランス等の大国もまだ加入しておらない状況でございます。  そして、隣接権というものにつきましては、各国によりましていろいろ状況が違います。中身の実質においても、それぞれの国の事情によりまして内容も違いますし、それから、隣接権保護するという考え方自体が比較的新しく生じてきた考え方でございまして、わが国におきましても、昭和四十六年の改正でその条項は取り入れられましたけれども、それを現実に当てはめていくという問題につきましては、だんだん慣熟していかなければならないいろいろな問題点もございます。そういう状況もございますので、現在のところ、ローマ条約承認というところまではいっておりません。しかし、基本的方向といたしましては、やはり、将来これは承認していくと、それに応じてわが国内法制も直していくということが当然あるべき方向であると考えております。しかし、現状といたしましてはまだそこまでまいりませんので、さしあたり非常に緊急の課題となっておりますレコード製作者権利保護するという点で、今回この条約承認し、それに伴った著作権法改正をお願いいたしておる次第でございます。
  6. 久保亘

    久保亘君 外務省では、いまこのレコード条約加盟国といいますか、批准した国は何カ国か。それからローマ条約加盟国は何カ国になっているのか。正確な数がおわかりだったらお知らせいただきたいと思います。なお、その加盟国のうち、アジア地域における加盟国についても、その内訳をお示ししていただきたいと思います。
  7. 小林俊二

    説明員小林俊二君) ただいまのところ、このレコード条約加盟国は二十八カ国でございまして、そのうちアジア地域に属する国はインドのみでございます。したがいまして、その残余の大半はいわゆる先進諸国、それから南米、あるいはアフリカ地域に属する若干の諸国でございます。  一方、御指摘ローマ条約は、先ほど長官から御答弁ございましたように、二十カ国でございます。
  8. 久保亘

    久保亘君 文化庁の方で、今度のレコード条約批准、これに伴う著作権法改正によって、新たに保護対象となる洋盤レコードが、大体その種類金額においてどの程度になると把握されているのか、御説明をいただきたいと思います。
  9. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 今回の法改正によりまして、新たに保護対象となる外国盤レコード種類につきましては、まだ把握をいたしてないところでございます。  しかしながら、ちなみにわが国生産されておる洋盤レコードテープ生産状況につきましては、金額といたしまして、昭和五十二年度で約七百八十億でございますが、数量といたしますと、ディスクレコードにおきまして、国内における生産数量の四二%が洋盤でございます。テープにつきましては約一五%、それから枚数でまいりますと、ディスクレコードにつきましては三一%、テープにつきましては約一三%という状態でございます。  今回の条約承認によりまして、著作権法改正により、新しく保護義務を負うところのレコードにつきましては、それぞれの、二十八カ国の締約国におけるところの状況等調査する必要があるわけでございますが、現在のところまだその調査をいたしていない状況でございます。
  10. 久保亘

    久保亘君 そうすると、その実態については、いずれこの著作権法改正が成りました段階で、文化庁としてもできるだけ実態を詳細に調査をしておいていただきたいと思うんです。  それでは、一体この許諾を得ない、今度保護義務を負うレコードということになるわけでありますが、それだけではなくて、いわゆるレコード許諾を得ない複製、一般に海賊版と言われているものについて、文化庁としては、著作権保護立場から、その実態をどういうふうに把握されているのか。海賊版の横行している実情について、文化庁が掌握されている実情を御説明をいただきたいと思います。
  11. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 海賊版実態につきましては、国際レコードビデオ製作者連盟という国際団体がございまして、こちらの方の一九七六年における調査によりますと、おおむね世界的に申し上げまして二億五千万セット、金額にして約千二百億円という状況でございます。これを全体のレコード生産状況から言いますと、約六%が海賊版の占めるシェアであるというような調査数字が参っておるわけでございます。  で、このうちわが国国内盤による海賊版状況につきましては、これは遺憾ながらまだ調査ができておりませんので、私どもとしましては、現在のところまだ把握をいたしていないという状況でございます。
  12. 久保亘

    久保亘君 このような、条約批准し、そして著作権法改正を行うという以上は、レコード等著作権保護ということについて、文化庁としては、今日いわゆる海賊版が出されている実情というものをかなり掌握されていなければ、法改正の根拠というものについて非常にあいまいになってくるんじゃありませんか。だから、当然海賊版実態ということについては、取り締まり当局などとも詳細な打ち合わせが行われて、文化庁は、この問題についてはしっかりした実態を持っておられなければいかぬと思うんです。で、それはあなた方の方ではいままでそういう実態調査などをやられたことはないのですか。それから、現在把握されているのはこういうことだということで説明できるような資料はお持ちになっておらぬのでしょうか。
  13. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 先ほど私が答弁申し上げましたのは、いわゆる海外におけるわが国邦盤に対する海賊版状況でございまして、このことにつきましては、東南アジア等における状況はいろいろなところから聞き及んでいるわけでございますし、また、私どもも毎年度東南アジア方面にその実情調査をいたしておりまして、いろんな聞き込みによる状況把握をいたしておりますが、数字といたしましてどの程度あるかというような調査はまだできていないわけでございます。  なお、わが国国内におけるレコード無断複製にかかる事実につきましては、いろいろな観点から調査をいたしておるところでございまして、たとえばレコード協会等調査いたしておりますいわゆる新法施行後、昭和五十一年十月までの状況の中で確定された判決につきましても、八件の違反事件があり、裁判が確定されて、実刑判決等がいずれも出ておるものもあるわけでございまして、こういうような国内における状況及び東南アジア等におけるそれらの状況基本といたしまして、わが国におきましても、今回そのような事実に対する国際的な防止措置についての積極的な協力の姿勢を示すという必要もあるわけでございまして、今回、条約承認及びそれに伴う国内法改正についての御審議を煩わしている状況でございます。
  14. 久保亘

    久保亘君 文化庁著作権課からお示しいただきました資料などによりますと、わが国は、レコード無断複製が広く行われれている実情にかんがみ、この条約を作成することは大変意義があると思った、それで条約採択会議においては積極的にその審議に参加をしたものである、特にこの保護方法として、刑事制裁を加えることについては、わが国代表の提案によってこの条約に明記されたものであると、こういうのが文化庁から示された資料にありますが、こういうことを国際条約採択締結に当たって主張される以上は、無断複製実情海賊版実情について、やっぱりわが国における実情をかなり詳細に把握されておらなければならぬと思うのでありますが、そういう点でこの著作権というものに対して、特にレコード等著作権というものに対して、文化庁自体も、きちんとこれを保護しなければならぬという認識において欠けている点があり、またそのことに対して国民によく理解をさせるという点でも不足している点があり、また取り締まり当局等との連携においても、著作権保護するということに関する認識が十分でない点が非常に多いのではないか、こう思うのでありますが、こういう点について文化庁長官としてはどうお考えになっておりますか。
  15. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) 著作権というものは、やはり文化の基礎になる一つの大変重大な事柄であると思います。独創性、オリジナリティを尊重するというものでございますから、そういう意味におきまして、著作権考え方国内にも定着し、あるいは国際的にもそれを主張できるということが、文化行政として非常に大事なことであるということを私ども強く認識いたしております。一方、著作権の活用という面がございます。これは国民全般立場に立ってそれを活用していくということ、幅広く活用できるようにしていくということ、その両面の要請を満たすということが著作権関係行政中心点であろうかと思います。  そういう観点から、国際的な事柄進行状態を踏まえまして、できるだけわが国実態がそういう著作権保護という方に固まっていくことを慫慂すると同時に、国際的な関係においても条約承認し、その関係権利を確立していくと、こういう方向で努力いたしておるわけでございます。平生私どもも、法令的な事柄だけでなしに、著作権思想普及等につきましてはいろいろ努力いたしております。それから対外的にも、あるいは開発途上国等に対して、著作権関係のセミナーに参加するというようなことによりまして、著作権思想が国際的にも広がっていくことに努力いたしておる次第でございます。
  16. 久保亘

    久保亘君 どうも著作権、特に今回保護対象となろうとしておりますレコードなどについて、著作権ということに関する認識が、監督官庁の方も、取り締まり当局の方も、認識が欠けているんでありますから、当然に全体的な著作権に関する理解が非常に不足しておって、この問題があいまいにされてきたのではないかということを私は感ずるんであります。先ほどお話がありましたように、一千二百億にも達するような海賊版が横行するというようなことが、事実上は野放しの形であるということは大変問題だと思うんであります。  それで、このことに関して、直接取り締まりに当たられる警察庁お尋ねをしたいと思うのでありますが、海賊版摘発についていま警察庁が掌握されております状況、それから海賊版について裁判係争中のものや、すでに結審になった事件などについて、内容を御報告いただきたいと思います。特に昭和五十一年の七月の十五日には、音楽出版社協会浅香理事長から警視庁捜査課長に対して、海賊版輸入レコード取り締まりに関する陳情が提出されております。これは御存じだと思うのでありますが、また日本音楽著作権協会日本レコード協会等からは、レコード輸入販売業者や、販売店に対して、海賊版等不法複製録音物輸入販売禁止や、あるいは国内における販売禁止などについての要請も出されております。  なお、最近は報道機関等においても、この海賊版国内上陸について、かなり大がかりに行われていることについての実態報道をされているわけでありまして、これらの問題について取り締まり当局としても、これは法律違反し、著作権者権利侵害をしている問題でありますから、当然にこれらの問題についてはいろいろと御調査に相なっておろうかと思うのでありますが、今日の海賊版摘発状況取り締まり実情、あるいは係争中のものの状況などについて、少し詳しく御説明をいただきたいと思います。
  17. 長岡茂

    説明員長岡茂君) 最近五カ年間におきまして全国警察検挙いたしました著作権法違反状況について申し上げますと、昭和四十八年が十二件の十七名、四十九年が三十八件の三十五名、五十年が十二件十名、五十一年が五件十四名、五十二年が十三件十五名という状況でございます。  昭和五十二年中に検挙いたしました十三件は、すべて告訴に係るものでございますけれども、その状況について主なものを申し述べますと、一つは、昭和五十二年四月警視庁検挙した事例でございますが、被疑者四名が共謀いたしまして、日本音楽著作権協会使用承諾を受けることなく音楽録音テープ製作しまして、JASRACシールを偽造し、これを貼付した上販売したということでございます。本件では二名を逮捕し、二名を任意検挙をいたしておるわけでございます。  もう一件は、昭和五十二年の四月、これも警視庁でございますが、検挙した事例でございまして、被疑者四名が共謀し、著作権者承諾を受けないで中学英語の教科書の本文をテープに吹き込んだ上、カセットに編集しまして複製し、販売したものでございます。本件では被疑者四名を任意検挙をいたしております。  そのほかいろいろございますが、この中で結審をいたしておりますのは、ただいま最初に申し上げた録音テープ製作販売したというものでございます。  それから、取り締まり要請警視庁に出されたという状況でございますが、実は余り詳しく現在報告を受けておりませんので、必ずしも十分なお答えでございませんが、警視庁におきましては法違反摘発に当たりましては、鋭意取り締まりを行っておるわけでございまして、昭和五十一年中四件十二名、五十二年中は五件十一名と、全国の半数近くを検挙しているという状況でございます。  なお、これら海賊版に係るものは、外国から輸入されるというようなことが多いわけでございますが、あるいは国内製作されるという場合が多いわけでございますが、警察におきましては、このような事案があります場合には、告訴を受けまして取り締まりを推進しているところでございます。
  18. 久保亘

    久保亘君 実際のところ、警察庁にはこの種の著作権法違反の犯罪を調査したり、取り締まったりする専門家というのはいないんじゃないですか。そういう道の専門家という方が警察の中にはだれかいらっしゃるんですか。
  19. 長岡茂

    説明員長岡茂君) 著作権法違反、これは特別法でございますが——の捜査を行っておりますのは、全国警察保安担当捜査員、あるいは知能犯担当捜査員でございます。この捜査員著作権法だけをやっておるわけでございませんで、いろんな特別法を同時にやっておるわけでございます。著作権法違反取り締まりにつきましては、特別のいろんな教育、あるいは研修等を行っておりますけれども、たとえば警察学校で専科又は講習会をやるとか、あるいはいろんな法令の解説、捜査要領等資料化いたしまして配布するとか、そういうようないろんな方法で専門的な捜査能力の向上には努めておる次第でございます。
  20. 久保亘

    久保亘君 しかし、実際にはかなり大量の海賊版日本の中でもつくられているでしょうし、また東南アジア台湾を含む諸地域から大量に日本に上陸しているという実情が、いろいろな資料によって見ることができるわけであります。現に、警察では、台湾から持ってまいりました海賊版を陸揚げするところを押さえられたものがあるんじゃないですか、そういうケースは一件もございませんか。
  21. 長岡茂

    説明員長岡茂君) ただいま先生お尋ねの件につきましては、警察庁といたしまして報告を受けておりませんので、ちょっとわかりかねる次第でございます。
  22. 久保亘

    久保亘君 いま私がちょっと調べておりますところでは、たしか清水港でそういう台湾からの海賊版レコードが押さえられたということがあるようでありますし、また現に、国内小売店ですね、レコード販売店では堂々とこの海賊版店頭に陳列されて売られておる。また、いろいろな興行が行われます際には、その入り口で海賊版宣伝文が公然と配布されておる。そういうような事実があるにもかかわらず、これらの問題が野放しにされているというのは、警察としても著作権法についての取り締まりというのは何か非常にやりにくい。で、専門的にこの著作権法違反を取り締まるための分野が手薄である、そういうような弱点があるのではないかというような気がするんです。ほかの問題だったら、たとえば麻薬が公然と店頭に並べられたら、とてもこれは警察がほおっておく問題じゃない。しかし、法律違反するという限りにおいては同じことでありまして、ここに都内で売られております海賊版レコードの実物がありますがね。こういうものが店頭にずうっと並べられて、平気販売をされているということになれば、実際にはこの著作権法取り締まりは非常にむずかしくて、警察としても手が回りかねるという状況があるんじゃないかという感じがするんでありますが、いかがでしょうか。
  23. 長岡茂

    説明員長岡茂君) 著作権法違反海賊版取り締まりでございますが、これはまあ著作権法にもあるとおりでございまして、この捜査は「告訴をまって論ずる」という親告罪という性格を持っておりますので、警察まあ取り締まりが非常にむずかしいという問題もございますけれども、もう一つ問題点は、そういうふうな親告罪になっているということじゃなかろうかというふうに考えるわけでございます。
  24. 久保亘

    久保亘君 確かに親告罪という点からのむずかしさはあると思います。しかし、今度一方関税定率法では、不法複製の、著作権法違反するような物品輸入は禁止されているはずです。そうすると、これは、関税定率法違反というものは親告罪ではないと思いますよ。そういう不法なものが輸入されてくるのは、これは波打ち際でストップさせなきゃならぬ法律上の規制があるわけです。ところが、こういうものが平気で入ってきて、そして国内販売店店頭にずうっと並んでいるという状況ですね。これは親告罪だからできないという問題ではないんじゃないでしょうか。
  25. 長岡茂

    説明員長岡茂君) まあ関税定率法でございますが、もちろんこれは警察といたしましてもこの法律によっての捜査権限はございますが、まあ大体はそのために税関がございまして、税関が第一次的にはこれの違反検挙するということになっておるわけでございまして、したがいまして、これによる検挙警察が行う場合には、税関と密接な連携によって行うということになるわけであろうかと思うわけでございます。
  26. 久保亘

    久保亘君 じゃあ大蔵省税関においてこの不法な著作権法違反するレコードテープなどの輸入をどういう形で取り締まっておられますか。そしてまた、これを実際に税関でチェックして、取り押さえた実例がありますか。
  27. 武末祐吉

    説明員(武末祐吉君) 税関での著作権侵害物品のチェックでございますが、先生指摘のとおり、関税定率法二十一条に、著作権又は著作隣接権侵害する物品輸入してはならないという規定がございます。実際の税関におきます取り扱いといたしましては、輸入申告がございますと、書類審査あるいは必要に応じて現品の検査をいたしまして、無体財産権侵害物品であると判断されるような場合には、輸入者に対して権利者許諾がなければ輸入許可はできないんだということを通報いたしまして、許諾が得られないというものについては、その物品を積み戻しをするように輸入者に命ずることになっております。そういう方法著作権侵害等の無体財産権保護を実際にやっているわけでございます。で、実際問題といたしまして、無体財産権侵害する物品かどうかその疑義があるという場合もございますので、そういう場合には文化庁に照会申し上げて、文化庁の御意見によって侵害物品であるかどうかという判断をした上で、いまのような措置をとっておるわけでございます。それから、実際にそのような事例があるかという御質問でございますが、五十二年中に文化庁に御照会の上、侵害物品であるということで積み戻しをさせた事例がございます。
  28. 久保亘

    久保亘君 その事例というのはきわめてまれな例だと思うんでありますが、実際に入ってきているものは非常に大量に上るんであります。ここに国際蓄音機工業連盟——IFPIの調査資料がありますが、これを見ますと、たとえば台湾においては年間のレコード生産のうち、三十センチLPが六百五十万ないし七百五十万枚台湾でつくられるが、このうち中国語が二〇%で、海賊版外国レコードが七〇%である、これはIFPIの資料です。この海賊版レコード七〇%というのは一体これはどこへ出て行くか。今度は大蔵省の関税の統計によれば、台湾から日本に上がってくるレコードが際立って多い数量報告されているわけです。いま文化庁はどういうふうに御理解になっておりますでしょうか。台湾から日本に入ってくるレコードというのは、そういう海賊版でない、正規のレコードとして日本台湾から輸入するレコードというのはどういうものがあるとお考えになりますか。台湾でつくられたレコード日本輸入されて、日本輸入業者や販売業者によって国内販売される、そういうレコードというものはどういうものがあるとお考えになっておりますか。
  29. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) まことに申しわけございませんが、そういう詳細なデータにつきまして調査不十分でございまして、いまのところちょっとその内容につきましてお答えしかねるわけでございます。
  30. 久保亘

    久保亘君 さっき私が言いましたが、ちゃんとこれは台湾と書いてある。台湾でつくられたレコードで、しかも一体だれがつくったのかというのは、これはエイプリルフールに日本の武道館で録音されたとか、それからプロデュースした者はだれかわからない、そういうことが書かれているレコードなんです。こういうものが実際に国内において販売されているということは、さっき税関の方では積み戻しをやらしているということを言われておりますが、積み戻しされずに入って、これ平気店頭に並べて売られています。店屋によっては海賊版コーナーというのもあるそうです。そういう状況で、だから台湾から日本輸入されたレコードの数というのは、ほかの地域に比べるとかなり各月統計によっても多い数字が出てくるわけであります。こういうことを見てまいりますと、しかもこのIFPIの統計によれば、台湾におけるレコード会社というのは、全部でレコード製作者が百二十三ある。しかし、その百二十三のうち五十一が製造設備を持っておるが、この五十一のうちプレス機を八台以上持っている者はない。四台以上持っていないとレコード製作者として登録されないのであるが、大体がみんな四台持っておる、こう書いてある。ここでつくられたものが海賊版外国レコードが七〇%、これが今度は税関の統計によれば日本国内に大量に上陸している。そして現実に国内販売店店頭に並んで買われている。しかもそのレコードの中身は、日本の武道館で公演された際に、その公演の状況を、ライブ盤と言うんですか、実況録音をとって、その録音を今度はレコードにして、そして日本へ持ち込んで売りまくっている、こういう種類のもののようであります。こういうものの実態について、もっと大蔵省も、税関も、文化庁も、警察連携をよくとって、そしてこれをそれぞれの分野において法律違反を行わせないように食いとめるという努力がないと、幾らこういう条約批准や、著作権法改正をやってみたって何にもならぬということになるんじゃないでしょうか。現状はそういう状況だということは文化庁も少しは御承知なんでしょうか。著作権を担当される方々はレコード販売店などをずっとのぞいて、海賊版がどういう状況で出回っているかというようなことについて御調査になったことがあるんでしょうか。
  31. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) 著作権法におきましては、少なくとも国内の著作者につきましては、法的には保護されているわけでございますけれども、その実態におきましていろいろ問題もあろうかと思います。それでわれわれといたしましては、法的な整備と同時に、実態もこれに即するように、まだ努力が足りない面がたくさんあると思いますので、今後努力いたしたいと思います。  なお、これは国際問題にも絡んでまいりまして、国際的にもいまの台湾からの問題でございますけれども台湾等におきましても著作権思想をもっと普及してもらいたい。で、発展途上国におきましては法制的にもまだわが国実情よりも遠いような国もございます。そういう国に対しましては私どもいろいろな機会に、ユネスコの企画いたしました会議等におきまして、著作権思想の普及というようなことにも努力いたしております。そういうようなことを含めまして今後さらに努力し、また関係当局とも御相談しながら実情を改善してまいるように努力いたしたいと思っております。
  32. 久保亘

    久保亘君 このIFPIの調査を見て私ども非常に驚くんですが、「多数の台湾製海賊レコードは依然近隣諸国に出まわっており、不法レコードの輸出は、ひと月に約十三万枚と見積られている。」という、これがその報告なんです。しかもこの台湾には外国資本のレコード産業への投下は認められていないけれども、技術援助のためのライセンス契約は承認されている、こういう報告になっているわけであります。こういうことから見てまいりますと、どうもこれは日本で公演されたものが録音されて、台湾レコードにつくられて、複製されて、日本にまた輸入されてくる。こういう形を見ておりますと、これはただ単に台湾レコード製作者の問題だけではないのじゃないか。日本にもこの台湾レコード製作者——台湾だけじゃありません、東南アジア諸国などのレコード製作者と、日本のある種の者たちとがちゃんと提携をしておって、そしてそういう不法なレコードの作製をやって金もうけをやっている。そういうことがあるのではないか。国内だけを見ましても、警察でことしに入ってからいろいろと検挙をされたりしました者の中にも、暴力団絡みの海賊版作製の事件がありますですね。同じように、東南アジア諸国レコード製作者と提携をして、日本国内にいるいろいろな者たちが、資金捻出のためにこういうことをやっているのではないかと思われる節がある。そういうことについては警察庁としては実態把握されていることはありませんか。また、そういう面についての調査が必要だとお考えになったことはありませんか。
  33. 長岡茂

    説明員長岡茂君) 海賊版が暴力団の資金源になっているという御指摘でございますが、これは取り締まりの側からの実例で申し上げますと、昨年の例でございますが、五十二年中に検挙しました十三件のうち、暴力団が関係しているのは一件ございます。これは昭和五十二年の十一月大阪府警で捜査に着手した事件でございますけれども、暴力団山口組系の組員を含む二名の被疑者が、レコード会社八社が著作隣接権を持っておるレコードから、録音されております歌謡曲を生テープに収録いたしまして、原盤十種類を作製し、さらにこれをもとにしまして一万七千七百本のカセットテープ複製したということ。そして、これを事情を知っている六名に対しまして合計五百八十三万一千円、一本が三百三十円でございますが——で売り渡して、頒布したという事案がございます。警察といたしましては、暴力団の取り締まりにつきましては警察の総力を挙げて強力な取り締まりを行っているわけでございますが、お尋ねのような海賊版の密造、密売に暴力団が絡んでおるという実態がこのほかにまだまだたくさんあるとするならば、これは暴力団の資金源を封圧するという見地からも看過することができませんので、私どもは鋭意捜査を行いまして、関係法令を有効に活用して、取り締まりの徹底を期してまいりたいと考えておるわけでございます。したがいまして、この実態の解明につきましては、重大な関心を持っておりますし、その必要性を感じている次第でございます。
  34. 久保亘

    久保亘君 警察庁はそういうことでいろいろ今後対策をお立てになるのはいいんですが、私が先ほどお示ししましたような海賊版が実際に台湾等から国内に入ってきて、そしてこれを小売店に持って回ることを業としている者もいるわけですし、それから、その海賊版販売について、業界誌などに堂々と海賊版販売の広告が出されているという状況もあるわけですね。こういうものについて具体的に、取り締まりがいま直接的に困難であるとするならば、その実情調査をして、そしてその調査に基づいて対策を講ずるというようなお考えはありませんか。
  35. 長岡茂

    説明員長岡茂君) 御指摘のように海賊版のはんらん、これはやはり重大な問題でございますので、警察といたしましてもこれは看過できない重要な問題であるというふうに考えます。ただ、この実態が非常に広範でございますし、なかなか警察だけの調査ではその全貌をつかむことが困難でございますので、文化庁あるいはその他関係機関とよく連絡をとりまして、その調査あるいは実態の掌握に努めてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  36. 久保亘

    久保亘君 こういうことを調査される場合には、レコード業界、たとえばレコード協会とか、あるいは音楽著作権協会ですか、出版社の業界とかいろいろありますね、そういうような団体とも連携をとっておやりになりますとこの実態は掌握しやすいわけです。文化庁監督官庁として当然におやりにならにゃならぬことでありますし、全般として、こういう問題については、あなた方が実際に波打ち際でいろいろと取り締まっておると言われても、こういうふうに大量に出回っておるわけですから。大量に出回っているということは、税関の網は非常に目が荒くて、レコードの大きさぐらいのものはどんどん抜けるということになっておるわけですからね。だから、そういうようなことが関税定率法二十一条に違反して、平気実態として存在しているというようなことがありますから、あなた方もそういう横の連絡をとって、この条約批准や、著作権法改正が行われた機会に、きちんと取り締まりをして、そして著作権が正当に保護される、それからまた、この著作権法違反するようなやり方でもって不正な資金調達などが暴力団などに行われるというようなことを阻止するためにも、この際、こういう機会に関係者が一つの会合をつくられて、そしてこの著作権保護のための対策を講ずるということが必要になってきているんではないかと思うんですが、これは文部大臣いかがですか。何かそういうことをあなたの方から御提唱になっておやりになったらいかがですか。
  37. 砂田重民

    ○国務大臣(砂田重民君) 台湾事情等を久保委員から御指摘になりました。IFPIの調査でも、アジア太平洋地域というのが海賊版生産高が一番高いというような資料も私の手元にございますし、いまその海賊版の実物を久保委員のお持ちのを拝見もいたしました。武道館での演奏会のライブ盤、これは日本のどこかのレコード会社が正当な製造権とでも申しますものを持って、それの海賊版であるのか、そうであるとするならばもう法改正待たずに現行法で取り締まれるはずでございます。またボストンでのライブ盤をお手元にお持ちでございますが、こういったものは今度の法改正ができましたならば、当然新しく取り締まり対象になることでございますので、著作権法の所管者としての責任がございますから、文化庁がやはり中心になりまして、警察また大蔵省等への御協力を得ながら、ひとつ徹底的な海賊版撲滅作戦と取り組んでいこう、またやらなければならないという気持ちが非常に強くいたしたわけでございます。本法改正を機にひとつ徹底的な努力をいたしたい、かように考えるものでございます。
  38. 久保亘

    久保亘君 海賊版実情や、それからこの取り締まりについては、いま文部大臣の御見解をお聞きいたしましたので、今後の対策やその成果に期待をしてまいりたいと考えております。  それからもう一つ、これ文化庁と文部省がともにおやりにならなければならないことは、最近、私的使用のための複製ということで、小・中・高校生の間に録音機器による複製が非常に流行をしているわけであります。彼らはその著作権法の何たるかを承知しているわけではありません。だから、法の許す範囲と、それからやってはいけない部分と、そういうようなことについてはやっぱり文部省としてよく指導をする、啓蒙をするということが必要になってきているんではないかと思うんであります。著権法やこれらの条約のことについて理解がないために、そういう法律違反するようなことが実際に行われているとするならば、これは大変残念なことでありますから、そういう面についての啓蒙といいますか、文部省としての、文化庁としての今後の対策は必要になってきているんじゃないか、こう思うんですが、いかがでしょう。
  39. 砂田重民

    ○国務大臣(砂田重民君) 昭和四十六年に新著作権法が施行されましてから、著作権というものを尊重しなきゃならない思想は高まってきているとは思います。また、文化庁講習会でございますとか、いろんな各様の刊行物等努力を続けてまいっておりますけれども国民全般的に見まして、必ずしも著作権というものの重要さを、広く認識を青少年たちもみんなしているというところまでいってないような気持ちもまたいたすわけでございますので、文化庁の続いての努力をまちながら、また学校教育の場では権利義務という基本的なことで教えているだけでございます。その場で著作権というものがいかなるものであるかということを何とか取り入れられないか。中・高校生の間にこれだけのオーディオブームを巻き起こしている時代でありますから、このようなことをひとつ研究をさせていただきたい、こう考えます。
  40. 久保亘

    久保亘君 それでは次に、今度はこの著作権法改正になります機会に、レコードテープなどの物品税の関係について文化庁大蔵省お尋ねをしたいと思うんですが、著作物が独禁法の適用除外になっておる理由はどういう根拠か、御説明をいただきたいと思います。
  41. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) 著作権と申しますものは、人間の精神的な創造活動の結果生み出されたものでございまして、非常に個性的なものでございます。それで、むしろそういう一人の人が独創して生み出したものを、その独創性を守るということが著作権法立場でございまして、ほかの人がやたらにまねをして、そのつくった、独創した人の権利が阻害されないようにするという立場でございます。したがいまして、独禁法ではむしろ大量生産される産業の生産物、そういったサービスが特定の一部の者に独占されないようにするという立場でございまして、おのずから権利の性質が違うと思いますので、それで外れておるんであろうと思います。
  42. 久保亘

    久保亘君 そういう理由でございますと、結局レコードとか、それから書籍というのは同じような範囲に属するものというか、同じような基準で独禁法の上でも税制の上でも取り扱わるべき種類理解をしてよいんじゃないでしょうか、いかがでしょうか。
  43. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) 独禁法の関係はよく存じませんが、著作物、特にレコードにつきましては、確かに普通の商品と違ったそういう独創性のあるものでございますので、税法上も何か一般の物品と違った扱いができないんだろうかという考え方は私どもも持っております。
  44. 久保亘

    久保亘君 それでは大蔵省お尋ねいたしますがね、レコード物品税は過去三カ年、大体どれぐらいの歳入になっているのか、それからレコードに対して同じ著作物として評価されているにもかかわらず、レコードに対してのみ物品税が課せられて、書籍等に関しては物品税が課せられないというのはどういう根拠に基づいているのか、その辺ひとつ大蔵省側の御見解をお聞きしたいと思います。
  45. 水野勝

    説明員(水野勝君) 最近におきますところの物品税の課税の状況といたしましては、大体三年間とりまして百億から二百億円台という数字になっております。  それからレコードと書籍というお話でございますが、やはり私どもといたしましては、レコードは本体の課税物品でございます蓄音機でございますとか、テープレコーダーでございますとか、そういったものと一体になって使用されておるという、そういう使用の実態からいたしまして、書籍とは質的に違うところがあるんではなかろうかということで、課税物品——原則として課税物品とさせていただいているところでございます。ただ、レコードの中におきましても、書籍にきわめて類似した性格のものなどにつきましては、非課税措置を講ずるといった形で、このあたりは調整をさせていただいているところでございます。
  46. 久保亘

    久保亘君 レコード等から徴収される物品税の額というのは、大体一年に百億から二百億ぐらいだという、大蔵省というのは計算に最もやかましいところでしょう。しかも、こういうことをお尋ねするということをちゃんと言ってあるのに、百億から二百億ぐらいですというような、そんな説明はないでしょう。何年度は幾ら、何年度は幾らという説明はできませんか。
  47. 水野勝

    説明員(水野勝君) それではそういう数字で申し上げさせていただきます。四十九年度百七十六億円でございます。五十年度二百三億円でございます。五十一年度二百五十五億円、こういう数字になってございます。
  48. 久保亘

    久保亘君 わかっておるんならそう言えばいいんです。余りあんた質問する方がぼんやりしておるようだからと言って、軽べつしたような答弁をしては困る。  いまの説明で大体税収はわかりましたがね。たかだかそれこそ百億、二百億台の税収を、レコードは蓄音機やあるいはテープコーダーなどと一体のものであるから、これは物品税の対象になるのであるというような理屈ではなかなか理解できぬのじゃないですか。むしろレコードテープというのは、これは文化国民が摂取するということについて、目で見るか、耳で聞くかという差でありまして、しかも目と耳の両方から聞く興行などについては、入場料三千円までは税金を課さないことになっておる。そうすると、こういうこの種の教育文化的なものについて、ひとりレコードテープのみが物品税の対象になっているということは、非常に不可解なものではないかと思うのでありますが、大蔵省としてはこれはもうそういう立場から考えれば、レコードテープ物品税は撤廃をするというようなお考えに立たれた方が合理性があるんじゃないか、私はこう考えるのですがね。大蔵省、このレコード等物品税について検討をすべき必要があるというふうにはお考えになっておりませんか。
  49. 水野勝

    説明員(水野勝君) ただいまの先生のお話の教育とか文化、こういった面につきましてのレコードにつきましては、一つは非課税措置といたしまして、そういう学術的なものを、あるいは科学技術的なものを吹き込んだレコードとかテープ、そういったものは非課税とさしていただいているところでございます。  それから教育関係につきましては用途免税措置を講じまして、所要の免税措置をいたしておるところでございまして、先ほどの先生のお話の百億、二百億程度というお話でございますが、私どもいま大変な財政難の折でございまして、百億、二百億の増収措置につきましてもいろいろ国会にお願いいたしまして、増税措置をお願いをしているような実情でございますので、貴重な財源であると私どもは感じておるわけでございます。
  50. 久保亘

    久保亘君 ちょうどあなた方のそういうような考えで、レコード物品税というのはもともと始まっとるんですね。これは支那事変のときに戦費調達が一つの目的で、それでレコードに課税をして、そしてレコード物品税は最高一二〇%までいったんです。だから合理性はなくても取りやすいところから税金を取るというのが大蔵省の考えだと、これは余り国民に支持されない。じゃ教育、文化的ということについては非課税にしているということでありますが、必ずしもそうじゃないんじゃないですか。たとえば教育用のレコードであっても、これは一定の手続や、一定の基準に合致しないものはやっぱり課税されているんじゃありませんか。教育用のものは全部非課税になっておりますか。いかがでしょうか。
  51. 水野勝

    説明員(水野勝君) 用途免税の点につきまして申し上げますと、教育機関といたしましては、学校教育法一条の学校その他類似の機関が指定をされておるわけでございます。それからそういう機関が教育用にお使いになるということにつきましては、それなりの教育用に使われるという証明の手続をお願いをいたしておるわけでございまして、そういう一定の資格を有される人なり、団体、そういった方が一定の手続を経たところで免税措置を受けていただくということにつきましては、最低限度の手続等をお願いをしているわけでございます。ただその手続等につきましては、証明者は学校がお使いになるということであれば、その学校自身の証明で現在は取り扱っているようでございまして、できるだけ簡単なものにいたすようには心がけておるところでございます。
  52. 久保亘

    久保亘君 書籍はもうすべて物品税は非課税ですか。
  53. 水野勝

    説明員(水野勝君) 書籍については課税されてございません。
  54. 久保亘

    久保亘君 そうすると、たとえばレコードの場合には、教育用のレコードであっても、これはやかましい手続を踏んだものでなければ非課税にならない。しかし書籍については、極端な場合にはポルノ雑誌であっても物品税かからないんじゃありませんか。漫画本でもこれ子供の見る教育的な漫画じゃなくて、大人の漫画でも物品税かかっていないんじゃありませんか。それは同じ著作物でありながらポルノ雑誌は非課税、そしてたとえ教育的な意義を持つものであってもレコードテープは課税する、これは大変不合理なことだとはお考えになりませんか。
  55. 水野勝

    説明員(水野勝君) 先ほどのは用途免税の点でございますが、一方非課税措置といたしましては、学術、科学技術に関する記録でございますとか、報道とか、解説とか、あるいは記録文とか、通信文、そういったものを収録いたしましたものにつきましては、手続を要しませんで、非課税といたしておるところでございます。  それから書籍につきましては、先生指摘のような周辺部分にはそういった点もあろうかと思われますが、書籍全体といたしましては、私ども大筋といたしましては課税をするに適当でない物品であると考えておりまして、そういう大筋の面から私どもは判断さしていただければと考えておるわけでございます。
  56. 久保亘

    久保亘君 それじゃあね、わかりやすいもので言います。たとえば広沢虎造の浪花節が本になっているものは非課税、レコードになったら課税される。これは理屈の通らぬ話なんですよ。たとえば盲人の人だったら本で見るわけにはいかぬ、耳で聞かにゃいかぬ。同じ浪花節を見るか聞くかの差で税金がかかるかかからぬか、そんな不合理な話はない。それから教育用のテープレコードであっても、家庭で使用するために買えば、これ課税されているでしょう。だから、こういうものは大変不合理なことなんです。むしろ物品税について、レコードテープについては物品税を軽減もしくは免除することによって、それは何か大蔵省が当然に取るべきものをまけてやるわけにはいかぬというような言い方のようにさっき聞こえたんですけれども、そうじゃなくて、この種のものは著作物、書籍等に適用されている例からするならば、取るべきでないものが長い歴史的な経過から今日まで取られ続けてきた。そしてその物品税は国民の実質的な負担になり、その負担が一方では教育的、文化的なこの種のものの国民的な利用をある意味では経済的に制限をしてきた、こういう意味ではこのことはもう大変問題の多いことだと私は思うんです。この物品税を撤廃することによって、別に私は業界がこのことによって利益を得るということにつながる必要はないと思う。業界はそのレコードテープの値段が安くなることによって、これの国民的な利用が拡大することによる利益は結構であるけれども国民がいままで取られていた物品税の徴収を免除されることによって、国民に利益が還元されるべきものだと、こういう立場からいたしますならば、これはむしろ業界の要請というよりは、利用者である国民的な要請として、大蔵省はこのレコードテープに課せられている物品税を検討し直さなければならぬ、そういうふうに私は思うんですが、大蔵省はこの問題について検討される余地は全くないんですか。文化庁としては先ほど同じ著作物としてこの問題についてはやっぱり考えざるを得ぬというような、考えるべきではないかという意味のお話でございましたけれども大蔵省としてはこのレコードテープに課せられている物品税は、これはわれわれの主要な財源であるので、断固としてこれは離すわけにはいかぬ、そういうことでずっと貫かれるおつもりなんでしょうか。
  57. 水野勝

    説明員(水野勝君) レコードの課税の問題につきましては、文部省、文化庁から毎年のように御要望はいただいているところでございまして、そのつど私どもといたしましても検討はさしていただいているわけでございますが、現在までのところといたしましては、レコードそのものにつきましては、いろんな物品との権衡上これを課税からはずすということは適当ではないということで扱わさしていただいてきているわけでございます。ただ、先生指摘の、教育あるいは文化的な見地からの配慮につきましては、用途免税なり、非課税措置で配慮をさしてきていただいておるということでございます。
  58. 久保亘

    久保亘君 そういうふうに言われるとね、私余り愉快でないこともあるんですよ。この問題について私さっき申し上げましたように、利用者というか、使用者であるこの著作物を実際に文化の摂取のために使用する国民立場に立ってみても、物品税は合理性を欠く。そういう意味で、できるならばこのことについて大蔵省に対しても検討を要請すべきではないかという立場を私ども主張しようとしているわけでありますが、このことについて大蔵省の中でも、この問題についてはもう検討すべき段階ではないかというようなことを、全く個人的に述べられた方もあるんでありますが、何か私どもがそういう主張をするというようなことを耳にされたのか、そういうことをやられちゃ困るというようなことで、あちこち大蔵省の方から働きかけられたということを聞いて、私は大変不愉快に思っております。だから、こういう問題については、大蔵省もただ単に財源というふうな視点だけではなくて、レコードテープが果たしている役割りや、他の著作物とのバランスというか、それらのものとの関係における合理性、そういうものの立場から私は検討すべき段階にきていると思うんです。  この物品税が課せられてから——戦時中にすごい税金を課せられて、そして戦後、これが戦時中の遺産として残されて、次第にその範囲が狭まったり、あるいは税率が下がったりしてはきておりますが、ずっといままで引っ張ってきているので、この物品税がレコードに課せられた歴史的な経過を見るならば、レコード物品税を撤廃しないと戦後は終わらないというような感じがするんですよ。しかも、文化国家を目指そうとする戦後の日本の立国の基本的な精神に沿えば、これらのものに物品税を一五%ないし一〇%を課しているということは、政府としては余り自慢にならないことだ、こういう認識に立たなければならないものだと私は思うんです。  文部大臣、このレコードテープなどの物品税について、今日までも大蔵省に対して文化庁からこの税の、軽減か免除か知りませんが、それをずっと要求されてきたということでありますが、この際、書籍との関係も考え、また国民文化の向上という視点からも、これらの物品税について、さらに今度は強く大蔵省に対して再検討を求められる必要がもう生じているのではないかと私は思うんですが、大臣はいかがお考えでしょうか。
  59. 砂田重民

    ○国務大臣(砂田重民君) 毎年のように大蔵省主税局にお願いを続けてきているところでございますが、たとえば、公民館等で地域社会の主婦の方が集まられてビバルディの「四季」を聞く、そういう生涯教育という考え方の上に立って考えますと、教育的に、教養的に、また情操教育、教養等、先ほど久保委員が御指摘になりましたような書籍と比べて、どちらが人間の情操に与える好ましい影響があるか、そこら辺のところ等考えますと、レコード物品税というものはもうやめていただきたい、こういう気持ちを持つものでございます。これは文部大臣としての感想として述べました。  毎年のようにこれの撤廃方をお願いをしてまいっておりますけれども、大蔵の主税には主税でまた物品税としての理論、根拠があるんだろうと思うんです。私どもが音楽文化高揚のためにと言えば、それではスポーツ文化のためにゴルフボールまで物品税やめなきゃならないかというような理屈が大蔵省にもあるんではないかと思いますが、文部省といたしましては、文化庁と一緒になりまして、できるだけ早い時期にこの物品税が撤廃がされますように、なお一層の努力をしてまいりたいと思います。
  60. 久保亘

    久保亘君 大蔵省立場について私も全く理解をしていないわけじゃないんでして、大蔵省は、自分の方の歳入財源を減らす方にここでそうだという返事をされるのはなかなかむずかしいだろうと思います。しかし、これは国民全体の立場から見た場合、それから合理性という立場に立って考えた場合に、非常に問題を含む物品税であるということについては、大蔵省としてもある種の御理解がいただけるんではないか、こう思っております。  それで、ぜひ、いまの文部大臣の御意見もありましたように、私は検討いただきたいと思うんであります。きょうは大臣がお見えになっているわけじゃありませんから、担当の課長として、この問題に責任ある御返答をされては、後お困りだろうと思いますから、これ以上私も申し上げません。しかし、この委員会において、レコードテープ等の物品税について強い意見があったことは、ぜひ大蔵省のしかるべき責任者にもお伝えをいただきたいと思います。そしてまた、文部省や文化庁の意向も十分検討をされて、必要な措置について検討を進めていただくようにお願いをいたしたいと思います。  もし御出席の課長の方で御意見があればお聞きしたいと思うんですが、いま私が申し上げましたようなことについては、別にこれに同意をしたとかしないとかということではなくて、十分意のあるところを含んで御検討いただけるかどうか、そのことだけお伺いしたいと思います。
  61. 水野勝

    説明員(水野勝君) 私ども大蔵省といたしましては、国会の御論議をいただきました後は、大体五月か六月ころから税制調査会を再開いたしまして、国会でいろいろ税制を中心として御論議いただいたことはすべて税制調査会に逐一御報告をいたしまして、来年の税制改正の中でそれをお考えいただくということにいたしておりまして、ただいまの先生のお話もその中で、税制調査会に御報告をし、来年の税制改正の検討の中で勉強をさせていただきたいと思っておるわけでございます。  それからまた、毎年八月なり、九月には、各省からそれぞれの税制改正につきましての御要望が出てまいります。その中に恐らくまたことしも御要望があるかと思います。私どもは、その中の一環といたしまして検討をさせていただきたいと思っております。
  62. 久保亘

    久保亘君 それでは、また私どもも他の関係委員会等においても、この物品税の問題については引き続き意見を申し述べていきたいと考えております。  次に、文化庁お尋ねいたしたいのは、わが国は、いま録音、録画機器については世界でも有数の輸出国になっております。ところが、この録音、録画機器によって使われるレコードとか、そういうものについては、輸出国というよりは輸入国である、海賊版は別にしましても、輸入国である。わが国レコード輸出がふるわない理由、つまり日本文化の海外輸出がこのレコード等の分野についておくれている理由というのは、どの辺にあると文化庁としてはお考えになっておりますか。
  63. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) 先生指摘のようにレコード盤につきましては、昭和五十二年度を見ますると、金額にして輸出が約七億円、百万枚、これに対して輸入は三十六億円、四百三十万枚ということで、大変な輸入超過になっております。これは機器の輸出の状況と比べて全く逆なのでございますけれども、これはやはり現在の日本の音楽というものの世界性がまだ十分にない、日本の音楽を世界で本当に楽しんでもらえる、あるいはそれを鑑賞してもらえる状況が、日本人が外国音楽を鑑賞する状況に比べてはるかにその点が片貿易であるという点であろうかと思います。
  64. 久保亘

    久保亘君 じゃ、これらの日本文化的なものの輸出振興について、文化庁として何か今後の対策といいますか、そういう施策を講ずるというようなお考えがありますか。具体的にはどういうことが必要だとお考えになっておりますか。
  65. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) 日本文化につきまして、広く諸外国にもっと普及させるということはこれは大変大事な仕事であると思っております。これは文化庁のみならず、外務省文化事業部、あるいは国際交流基金というような組織もできておりまして、われわれ日本人にとって日本文化そのものを世界の文化の中で考えていくという、われわれの文化を高める上においても、そういう意味の国際交流は非常に大事なことであろうと考えております。そういう国際交流の過程を通じまして、もっともっと諸外国日本文化に対し関心を持ち、それが世界に普及していくという状況をつくり出さなければならないということは御指摘のとおりでございます。これはなかなか大きな仕事でございまして、一朝一夕のことではございませんが、いろいろな方法を通じまして、各種の国際交流事業の推進を通じまして実現していくほかはないと思っております。
  66. 久保亘

    久保亘君 特に日本文化国家を目指すということであれば、日本文化理解を国際的にも広めるという意味から、これらレコードテープ等の輸出がもっと機器と同じように拡大をされていくということは大変重要なことだと考えております。これはなかなかむずかしい問題だと思いますけれども、やっぱりその方向について業界等とも協力をしながら、文化庁としていろいろ御努力をいただくことが必要になってきているのではないか。特にこういう国際条約批准をして、相互に著作権保護をしようという立場に立てば、三十六億と七億では余り相互主義ということにもなりませんから、だからわが国レコードも海外に大いに進出をする、そういう点でこの日本文化の輸出振興ということについて、ひとつ今後の御努力をお願いしておきたいと思います。  それから、だんだん時間がなくなりましたので、もう一つ、一番最初お尋ねいたしましたローマ条約について、今度のレコード条約によってレコード製作者保護ということが可能になってくるわけでありますが、実演家の保護ローマ条約批准を行わなければなお十分でないというような立場もあって、関係者の間にもローマ条約の早期批准を求める声がありますが、外務省としては、このローマ条約批准について今後積極的に推進をされるおつもりがあるのかどうか。それから、このローマ条約批准が今日まで見送られてきている、二十カ国はすでに批准をしているにもかかわらず、なおわが国がこれに批准できないでいる一番大きな理由は何であるのか。レコード協会もローマ条約批准を求められているようでありますし、音楽著作家の協会の方もそういう希望が非常にお強いようであります。一体隘路はどこにあるのか、その辺をひとつ外務省にお聞きしたいと思いますし、また文化庁の方からもそのことについて御意見があれば承りたいと思います。
  67. 小林俊二

    説明員小林俊二君) ローマ条約、いわゆる隣接権条約でございますが、それは作成されてからすでにかなりの年月を経ております。にもかかわらず、加盟国が二十カ国という現況は、ここに規定されておりますいわゆる隣接権というものの概念が必ずしも国際的に確立はしていない。各国における取り扱いぶりもまちまちであるといったような問題が大きな影響を及ぼしているものであろうと想像されます。ただし、わが国といたしましては、この条約そのものに反対する立場にはございません。むしろ基本的には賛成の立場をとっております。今日までの著作権関係条約の加盟はかなりの作業並びに準備を要して、今日まで着々と整備いたされてまいっておるわけでございまして、近年におきましてもベルヌ条約のブラッセル改正条約であるとか、ベルヌ条約のパリ改正条約であるとか、さらには万国著作権条約のパリ改正条約という、これらの条約に対する加入の措置が進められてまいりまして、今回レコード条約への批准の運びになったというわけでございます。そういうふうに、著作権関係国際条約に対するわが国締結につきましても、逐年その措置が進められてまいっておりますので、この方向に従いまして、今後このローマ条約というものも、わが国締結対象として真剣に検討されるべき時期にまいりつつあるというふうに私どもは考えております。なお、国内におきますさまざまの見解の中には、必ずしも一致してローマ条約批准促進というふうにまとまっておるという現況ではないようでございますけれども、そうした国内の見解の調整を経まして、条約批准という段階に今後追い込もうと私どもは考えております。
  68. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) 文化庁といたしましても基本的にはこのローマ条約——隣接権条約というものは承認方向で考えるべきものであると考えております。いま、外務省からもお答えがございましたように、問題は、隣接権というものの内容が国際的にもいろいろまちまちである。初めにもちょっと申し上げましたけれども隣接権という考え方自体が比較的新しい概念でございまして、従来の著作権のような確定した概念でございませんので、その実際の運用上にもう少し慣熟しなければ、いろいろな面を社会に及ぼすということもございますので、昭和四十六年に初めてわが国国内におきましても導入された制度でございます。したがいまして、その辺の状況をよく見きわめた上で、承認に向かいたいと考えております。特に、著作権立場権利者保護ということがまず第一でございますけれども、同時に、その利用の円滑化ということがございますが、その両方のバランスをとりませんと、著作権者の利益を逆に害することになります。その利用の円滑化と権利保護というこの両面の要請を満たすための現実の状況わが国の中に十分育ってきたかどうか、しかも、諸外国におけるその実態状況等とあわせて、条約承認にまで進む段階であるかどうかということをもうしばらく検討いたしまして、方向といたしましては前向きで取り組みたいと考えておるわけでございます。
  69. 久保亘

    久保亘君 その難点について、むずかしい原因というものは、私どもがいろいろな面から伺いますところでは、放送関係の方でこのローマ条約批准促進については、難色があるというふうに聞いているのですが、文化庁もそのように御理解になっておりますか。
  70. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) 放送関係者からの御意見もひとつ私どもとして、実態として大いに参考にしなければならない御意見だと思っております。
  71. 久保亘

    久保亘君 参考にしなければならぬ意見というのはどういうことですか。放送関係者は実演家の保護ということを含むローマ条約締結については、やっぱりぐあいが悪いと、こういう意見なんでしょうか。
  72. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 現状におきましては、NHK及び民放、両方とも直ちにこの状態においてこれを承認をするということについては、おおむね消極的ないしは反対の意見のように伺っているわけでございます。
  73. 久保亘

    久保亘君 それではその放送関係者の方で、このローマ条約の早期批准について消極的ないしは反対、こういうことだといたしますと、今日商業用レコードの放送における二次使用料の支払い状況というのは、諸外国と比べて日本の場合はどういう比較になるのか、その辺について文化庁御承知でしたらひとつ御説明いただきたい。
  74. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) まずわが国におけるレコードの二次使用料の支払い状況でございますが、昭和五十二年度の状態で申しますと、民放関係が一億二千六百万、NHK関係は五千二百万円ということになっているわけでございまして、なおレコードの放送時間一分当たりの使用料といたしましては、昭和五十一年度の状態で二十円ということになっております。  ところで、諸外国状況について申し上げますと、若干調査データは古うございますが、一九七三年の資料によりますと、デンマークが二億六千万円、フランスが三億九千万円、スウェーデン四億円、西独十六億七千万円、イギリス三億六千万円ということでございまして、この金額を単純に比較することにつきましては問題があろうと思いますが、単純にこれを先ほど申し上げました日本国内における二次使用料の額と比較をいたすといたしましても、デンマークが約四倍、フランスが六倍、スウェーデン六倍、西ドイツは二十六倍、イギリスは五・六倍というふうな数字の比較になるわけでございます。したがいまして、レコードの使用状況等、これは日本国内におけると、それぞれの西洋各国におけると状態の違いはございますけれども、これを単純に比較いたした場合におきましても、わが国におけるレコードの二次使用料の額は、先ほど申し上げました諸外国から比べまして、かなり低いということは申し上げられるかと思うわけでございます。
  75. 久保亘

    久保亘君 しかも日本の場合には、テレビにしても、ラジオにしても、いま比較されました諸外国と比較いたしますと、放送の量というのは決して少なくない。私はむしろ日本の方が放送時間など私どもの体験からいたしますとはるかに長い。そういう状況の中で、西ドイツが日本の二十六倍も二次使用料が支払われるということになれば、これはやっぱりわが国の実演家の保護といいますか、この二次使用料の決め方ということについてはかなり問題があるのじゃないか。しかもそういう状況であるだけに、放送関係の側からは、ローマ条約批准について消極的にならざるを得ないという実情が生じているのではないかという感じがするわけであります。しかし、これは両者の協定にも関する問題だと思いますから、文化庁としても直接いろいろ余りおやりになる立場にはないのかもしれませんから、二次使用料の国際的な常識、そういうものに基づいて適正な契約が結ばれるように助言をするぐらいのことは、やっぱりローマ条約批准を急がなければならぬ、やるべきだとお考えになっている立場からは必要なのではないか、こう思うわけであります。  それから、いまローマ条約に加盟しておりませんから、外国の実演家に対する二次使用料というものは実際には支払われていないのじゃないかと思うんですが、それはどうなっておるのでしょうか。
  76. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 外国の実演家に対するいわゆるレコードの二次使用料等につきましては、当然のことながら支払っていないわけでございます。
  77. 久保亘

    久保亘君 これはローマ条約に加盟すれば、支払わなければならないようになってまいりますか。
  78. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) そのとおりでございます。
  79. 久保亘

    久保亘君 そうすると、やっぱり国際条約について、その条約の作成に加わって、そしてその批准をしなければならないという方向にあるわが国について、加盟しないことによって、こういうものを払わなくてもよいということが条約批准の障害になっているということは、余り国際的には好ましいことではない。だから、この二次使用料の問題については、私もこれ非常に大きな問題が背後にたくさんあると思いますから、むずかしい問題だと思いますけれども、私どもがいまこの音楽著作家組合とか、いろいろな団体の意見を聞きますところでは、わが国における商業用レコードの二次使用料については、何か余り適正ではない、力関係で実演家の方がかなり圧迫されているというような感じを受けます。だから、この点について適正な二次使用料というのはどのようにあるべきかということについて御検討いただきたいと思います。私どももこの問題についてはさらに調査をして、また別の機会に意見も申し上げたい、こう考えております。  それから時間がまいりましたので、最後にぜひ文部大臣の御見解をお聞きしたいと思うのでありますが、日本製作をされたレコードなどについて、二十年たちますと著作権が消滅してまいります。それからまた、古くなりますともう廃盤になって、つくられないレコードがふえてくるわけであります。こういうものを今日協会の方から国会図書館に納められておりまして、国会図書館には保存をされているということのようでありますけれども、ぜひこのレコードや、テープ製作をされたものを一定の場所に収集して、そして廃盤になったものや、著作権の消滅しているものなどについて、希望する者が自由にそこで複製をして聞くとか、あるいはいろいろ調べるとか、そういうことができるような施設、レコードライブラリーと呼んでいいのかどうかわかりませんけれども、そういったようなものが、一部の人たちの間からは必要なのではないかと提唱されているようでありますが、こういう問題について、文化庁御検討になったことがあるのかどうか。また、文部大臣としてこの種のものについてぜひレコード協会等の協力も得ながら、きちんとしたものをつくっていきたいというお考えはおありでないかどうか。そういう点で御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  80. 砂田重民

    ○国務大臣(砂田重民君) まだレコードについての博物館のようなもの、あるいはレコードライブラリーというのでしょうか、そういったものを日本では持っておりません。また諸外国実態等につきましても、文化庁もよくまだその点調査ができていないようでございます。御指摘のように、国会図書館にそのようなレコードを保存をいたしていてくれるようでございますし、地方にあります図書館におきましても、そういうレコードを集めているところがあるようには聞いておりますけれども、大変大事なことでございますので、レコード協会とよく相談をいたしまして、ひとつ前向きに研究させていただきたい、かように考えます。
  81. 吉田実

    委員長吉田実君) 本件に対する質疑は、午前中はこの程度にとどめます。  午後一時から再開することとし、休憩いたします。    午前十一時五十二分休憩      —————・—————    午後一時九分開会
  82. 吉田実

    委員長吉田実君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、著作権法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  83. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 午前中の質疑で私が考えておりましたことのかなりの部分をすでにお出しいただいておりますので、できるだけ重複を省いてお尋ねいたしたいと思います。  著作権法わが国における沿革、その中で特にレコード著作権という問題を中心に簡単に御説明を伺い、さらにこの法律昭和四十六年の改正の主な点との関連をお答えいただきたいと思います。
  84. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 旧著作権法は明治三十二年に制定され、制定以来数回の改正を経てまいっておりますが、現行著作権法制定までは、その基本的な体系は制定当時のままでございまして、その後起こってまいりました複写・録音等の複製手段並びに出版、放送等の伝達手段の目覚ましい発達、普及につきましては、いろいろ検討すべき課題が指摘されておったわけでございます。また、著作権の国際的保護条約であるベルヌ条約につきましても、第二次大戦後いろいろな改正が行われたわけでございまして、実演家、レコード製作者及び放送事業者の国際的保護を目的としたいわゆる隣接権条約も、一九六一年に条約ができたわけでございます。このような国際的事情を背景といたしまして、欧州諸国においてもいろいろな著作権制度の整備が行われたわけでございまして、わが国におきましては昭和三年にローマで改正されたベルヌ条約批准にとどまって、国際的にも立ちおくれていたという状況があったわけでございます。そのため、昭和三十七年、文部省に著作権審議会を設けまして、制度改正についていろいろ根本的な検討を行いまして、昭和四十五年、第六十三回国会におきまして現行著作権法が成立をいたしたわけでございます。先ほどの御説明レコードにつきましても、新しく一九六一年の著作隣接権条約を下敷きにした国内法改正がありました。レコード製作者につきましても、著作隣接権を認めるという内容改正が行われたわけでございます。
  85. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 けさほどの久保委員の質問とも関連いたしますけれども、このレコード保護のための条約わが国が今日まで加入しなかった一番大きな理由は何であったか、その点伺いたいと思います。
  86. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) レコード保護条約につきましては、先ほども申し上げましたように、著作隣接権条約そのものにつきまして、すでに国内法の大改正にこれを取り入れてまいりました関係上、その趣旨、考え方につきましては賛成をいたしておったわけでございます。したがいまして、またこのレコード保護条約そのものにつきましても、当然早期に加入すべきものと考えておったわけでございますが、著作権法の大改正後、施行後、昭和四十六年度以降、いろいろな他のベルヌ条約、あるいは万国著作権条約等の改正に伴う国内法の整備の問題のために国会の御審議、御承認を得てまいったわけでございまして、このような緊急を要するものの国会提案ということのために、若干このレコード保護条約への加盟が後回しになったと言っては語弊があるかもしれませんが、若干そちらの方へ力をそがざるを得なかったわけでございまして、ようやく今国会におきまして保護条約への加盟及びそれに伴う著作権法改正という段取りに相なったわけでございます。
  87. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 このレコード保護のための条約以前に締結されておりました隣接権条約、これは一九六一年に日本も署名をしたまま批准をされていなかったんだというふうに思いますけれども、これに加盟しなかった理由として、締結国が比較的少数国であったという説明をされているように思いますけれども、それについて積極的に加盟するということについてはどうしてお考えにならなかったのか、その点を伺いたいと思います。
  88. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 先ほど申し上げましたように、昭和四十五年の著作権法の大改正におきましては、一九六一年にできました著作隣接権条約というものを十分参考といたしまして、国内法に取り入れまして、四十六年の一月から新法が施行されまして、これを国内的に適切円滑に運用するという方向に私ども努力をいたしたわけでございまして、その成果は着々上がりつつあるかと思いますが、なおいわゆる商業用レコードの二次使用料問題等をめぐって、まだ不十分な点もあるわけでございます。私どもといたしましては、隣接権条約の趣旨は賛成でございまして、方向といたしましてこれに加盟する必要性は認められるところでございますが、国内的な受け入れの状態等も十分見ますと同時に、国際的にもすでにしばしば御答弁申し上げておりますように、諸外国のいろいろなこの隣接権に対する扱い方が、たとえばアメリカにおきましてはレコードについて著作権である、イギリスも著作権である、ただし西ドイツは著作隣接権で扱っている、フランスは著作権体系ではなくて、不公正競争の取り扱いという他の法体系でこれを処理しているというような、非常に混み入った事情等もございます。そのためにアメリカフランス等がまだ入っていないという国際状況等も考え、また先ほど申し上げましたような国内自身における著作隣接権の適切な運用につきまして、なお改善を加える点もあるというような事態におきまして、これを後にせざるを得なかったわけでございますが、私どもといたしましては、この著作隣接権条約が十分わが国に取り入れられるような方向で整備を図りつつあるということを申し上げたいと思うわけでございます。
  89. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 今回のこのレコード保護のための条約に、わが国が加入するということは、私もこれは大変いいことであるというふうに思いますけれども東南アジアの多くの国々がまだこれに加入をしていないということで、できるだけ多くの国々に早く加入してもらうことが必要だと思うんですけれども、現在東南アジアの国々は、これに対してどういうような態度をとっているのか、その点おわかりだったらお聞きしたいと思います。
  90. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) レコード保護条約に加盟しておる国は、世界で二十八カ国でございますが、アジア地区におきまして加盟している地区は、オーストラリア、ニュージーランド、インド、フィジー、このオセアニア地方を入れて四カ国という状況でございます。なおいわゆる東南アジア諸国は、フィリピンだとか、インド等少数の国を除きまして、なおベルヌ条約とか、あるいは万国著作権条約のような基本的な著作権条約にまだ加盟してないという段階でございまして、私どもといたしましては事ある機会に、東南アジア諸国に対しまして、これらの条約に加盟するよういろいろ要請もいたしておるわけでございますが、まだ遺憾ながら東南アジア諸国はそういうような状態でございます。  そういうような基本的な条約に加盟するのはもとより、わが国もこのレコード保護条約に加盟することによりまして、さらに東南アジア諸国におけるレコード保護条約への加盟の促進につきましても、いろいろ要請してまいるということができようかと思うわけでございまして、そういう点につきまして、今後とも東南アジア諸国と十分お話し合いをする、あるいは要請するということをしてまいりたいと思うわけでございます。
  91. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 条約の問題はその程度にいたしまして、次に二次使用料の問題につきまして伺いたいと思いますが、放送事業者の二次使用料の額というのはどういうことになっているか、その二次使用料の決定の方法、それらにつきまして伺いたいと思います。
  92. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 放送事業者が放送におきまして、商業用レコードを二次使用する額の問題につきましては、毎年度芸団協、レコード製作者の団体であるレコード協会と、NHK及び民間放送連盟、この四者相互の当事者間でいろいろ交渉してまいったわけでございまして、金額といたしましては五十二年度の額といたしまして、NHKから五千二百万円、民放連からは一億二千六百万円、合計いたしまして約一億七千万円というのがNHK及び民放が二次使用料として支払っている金額でございます。この一億七千万円を日本レコード協会と芸団協が話し合って配分をするというふうなことに相なっておるわけでございます。
  93. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 いまの配分の方法ですね、配分の方法はそういう方法をとられるんですが、最初の決定の場合は、これはどこがどういう手続で決定されますんでしょうか。
  94. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 実はこのことにつきましては、文化庁といたしまして、昭和四十五年、六年当時、従来におきましては話し合いによって決めるという状態であったわけでありますが、何か合理的な算定基準というものがあった方が、この話し合いによって決める決め方自身が適切、円滑になるのではないかというようなことで、話し合っていただいた経過がございますが、いまだにその合理的な基準の算定方式については両当事者間でできていないわけでございます。したがいまして、現在までのところ、各年度ごとに先ほど申し上げました両当事者間で話し合って決めてまいるというようなことでいたしておるわけでございます。
  95. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 それに対して文化庁としてはどういう立場をとっておられますか。
  96. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 先ほども申し上げましたように、この法律、つまり新法が施行される昭和四十六年一月以前の、四十五年の十月あたりから、その点につきまして文化庁が肝いりで関係者お集まりをいただきまして、いろいろ話し合っていただきまして、合理的な算定基準というものをお互いが話し合いの中で出すべきだというようなことで、話し合いをお願いをいたしております。で、昭和四十九年の段階におきましては、合理的な算定基準をお互いに話し合って決めようというような話し合いは、実はできたわけでございまして、五十一年三月末までに、それをお互いに話し合って決めようという合意が成立しておりましたが、それができませんで、その後昭和五十三年の三月末までにそれじゃ決めようというようなお互いの話し合いが成立したわけでございますが、遺憾ながらこの三月末もまだできておりません。現在のところはその話し合いを昭和五十三年四月以降さらに継続をして、合理的な算定基準を出そうということで、関係団体で話し合いが継続されているという状況でございます。私ども文化庁といたしましては、やはり合理的な算定基準というものが、お互いの話し合いの中で合意に達するという方が、毎年度の金額が適切、円滑に決まるゆえんのものであるということで、側面的な御指導を申し上げているということでございます。
  97. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 レコードができるだけ安い価格で、だれにでも入手できるということが非常に望ましいことだと思いますけれども、一面今日の二次使用のいろいろ状況などを見ておりますと、その使用の範囲というものが次第に拡大をされておりますので、事実上実演家の機械的な失業といいますか、機械の進歩によるということでしょうか。機械的失業などという言葉なども聞くようなこともあるんですけれども、そういうことについては文化庁はどういうふうにお考えになっているか、伺いたいと思います。
  98. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) いま先生機械的失業と仰せられたのは、恐らくは新しく録音、録画機器、ないしはビデオ、複写、複製、そういう新しい機器の家庭その他社会的な活用に伴う実演家の問題ではないかと存ずるわけでございますが、確かに録音、録画機器等がかなり個人の家庭等にも普及し、手軽にこれが活用できるという状態になりますと、いわゆる著作権法三十条で、法制定当時考えました非常に極限された私的な利用という範用をはるかに超えて、利用されるということになりますと、当然実演家がそれに伴う実演の機会を失う、ないしはそれが非常に少なくなるという心配が出てくるわけでございます。ここら辺の問題の取り扱いにつきましては、著作権法昭和四十五年に国会で承認される際、本委員会からも付帯意見としてつけられておることでございまして、私どもといたしましてはその後著作権審議会に小委員会を設けるなどして、その問題に対する問題点の整理、どうするかという法改正を含めての対策につきまして検討いたしておるところでございまして、録音、録画機器につきましては、昨年の十月から第五小委員会というものを著作権審議会に設けまして、各界から関係者にお集まりいただきまして、大体月に一回程度、精力的な御検討、お話し合いをしていただいておるところでありまして、実演家の方々が安んじてそれぞれ芸術文化に携わり得るような条件というものをつくると同時に、著作権なり、あるいは著作隣接権というような権利が適切に保護されると同時に、これが公正に利用されるというような一つわが国におけるところの慣行と申しますか、そういうものを打ち立てるべく、われわれとしては今後努力しなくちゃいかぬというふうに思っているわけでございます。
  99. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 実演家の保護の問題と、それから著作権審議会の問題については後ほどもう一回伺いたいと思いますが、わが国の現在のレコード生産状況というのは、諸外国と比べてどうなっているか、よく世界で第二位ぐらいになっているという話も聞いておりますけれども、その辺のことをひとつ伺いたいと思います。
  100. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) わが国におけるレコード生産状況につきましては、先生いま御指摘のように、世界でアメリカに次いで第二位という状態でございまして、ディスクにつきましては、金額にしまして約千六百億円、テープにつきましては約六百億円、計二千二百億円というのが昭和五十二年度の状況でございます。
  101. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 そこで先ほどの実演家の保護の問題について伺いたいと思いますけれどもレコードを吹き込んでいる音楽演奏家——実演家といいますか、その保護について現在はどういう方法をとられておりますか。それについて伺いたいと思います。
  102. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 実演家の保護につきましては、たびたび申し上げますように、新著作権法におきまして著作隣接権を実演家にも認めたところでございまして、著作権法によりまして、その実演を録音し、または録画する権利、それからその実演につきましてこれを放送し、または有線放送する権利及び実演家の許諾を得て、その実演が録音されている商業用レコードを用いた放送、または有線放送を行った場合における二次使用料の請求権が認められているところでございます。
  103. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 いまの有線放送というお話が出ましたので、それについて伺いたいと思いますけれども、有線放送でレコードまたはテープによって音楽放送が行われておりますけれども、この有線放送による音楽放送についての著作権法による二次使用料というものについては、その徴収というのはどの程度確実にといいますか、どの程度行われるものであるか、その点を伺いたいと思います。
  104. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 有線放送を行っているものがレコードを使用する場合、当然当該レコード製作者は二次使用料の請求権があるところでございまして、昭和五十一年度の状況で見ますと、五百五十六万七千円というのが有線放送事業者から徴収します商業用レコードの二次使用料の金額でございます。
  105. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 その使用料の請求というのは合理的なシステムで行われているのかどうか、その徴収の方法等についてもしおわかりでしたらお答えいただきたいと思います。
  106. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) この二次使用料の金額につきましては、全国団体が二つございまして、全国有線音楽放送協会、それと日本有線放送連盟、それぞれ二つの団体に有線放送事業者が加盟をいたしているところでございまして、これらの二つの団体に対しまして芸団協、レコード協会がそれぞれ話し合いをいたしまして、先ほどの金額を徴収をいたしているわけでございます。先ほどの金額は実はレコード製作者だけでございません。芸団協も入っているわけでございまして、その五百五十六万七千円を徴収しました後、芸団協とレコード協会がそれぞれまた話し合いによって配分するということでございます。
  107. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 そうすると、有線放送によって行われておりますその音楽の著作権については、現在のところは公正な方法でその使用料等の徴収が行われているというように考えてよろしいんでございましょうか。
  108. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) その点につきましては、私どもといたしましては、一応適正な徴収が行われているんじゃないかと思いますが、細部のことにつきましては詳細にまだ調査をしていませんので、正確なことはちょっと遺憾ながら申しわけございませんが、わからないわけでございます。
  109. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 きょう郵政省からお見えいただいているんですが、有線放送は郵政省の所管であると思いますけれどもレコードまたは録音テープ等によって音楽放送が行われていると、こういう放送の内容については郵政省としてはどういう管理といいますか、行政指導というか、そういうことをおやりになっているか、その点について伺いたいと思います。
  110. 小野沢知之

    説明員小野沢知之君) お尋ねの有線音楽放送と郵政省所管の法律関係についてまず御説明したいと思います。  有線放送は、有線テレビジョン放送とそれから有線ラジオ放送、こういうふうに大きく分類されるわけでございますが、有線音楽放送と申しますのは、そのうちの有線ラジオ放送の一形態であります。そうしまして有線ラジオ放送業務に関する郵政省所管の法律といたしましては、有線ラジオ放送業務の運用の規制に関する法律というのがございます。  ところで、この法律でございますが、その目的は有線放送の内容についての規律ということでございますし、またこの法律内容の骨子は、有線ラジオ放送業務の開始、実施につきましてこれを届け出制といたしますとともに、放送法第四十四条第三項の規定、これは放送番組の編集に当たっての準則と言われるものでございますけれども、これを準用いたしまして、その放送内容を適正ならしめようとしているものでございます。すなわち、有線ラジオ放送業者につきましても放送事業者と同様に、その放送番組の編集に当たりまして一定の準則によらなければならないというふうにいたしております。第一に公安及び善良な風俗を害しないこと、第二に政治的に公平であること、第三に報道は事実を曲げないですること、第四に意見が対立している問題につきましてはできるだけ多くの角度から論点を明らかにすること、というふうにされているものでございます。  有線ラジオ放送業務に対する現行法の目的及びその規律の内容は以上申し上げましたとおりでございますが、このような法律の枠組みと申しますか、限界と申しますか——からいたしまして、お尋ねの有線音楽放送業者の商業用レコードの二次使用の実態と申しますか、二次使用料の支払いの実態と申しますか、そうした著作権法上の具体的施行上の実態につきましては、そこまでは郵政省としては把握していないというのが実情でございます。
  111. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 実情についてはわかりましたけれども把握はされていないということのようですが、その点について適正に行われるような行政指導ですね、そういうことについては郵政省は現在郵政省の所管としてはお考えになっていないというふうに考えてよろしいでしょうか。
  112. 小野沢知之

    説明員小野沢知之君) 先生よく御承知のように、各省庁それぞれ守備範囲というものがございまして、責任、権限の範囲がございますが、著作権法の具体的な施行に関しましては、やはり主管庁である文化庁において一元的に取りまとめていただくのが適当ではないかというふうに考えておりますが、なお私どもといたしましても、業界に対して機会あるごとに一般の遵法精神の自覚と申しますか、そういった面についての指導と申しますか、これについては今後配意していきたいと、こういうふうに考えております。
  113. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 それでは、先ほど文化庁の方からすでに御説明のあった、またお考えを述べておられたことではありますけれども、念のためにもう一度伺っておきたいと思いますけれども、一九六一年につくられたいわゆるローマ条約隣接権条約、これについては、レコードの音楽の実演家の保護という観点から、なるべく早くこれについて加入することを文化庁としてもお考えになっているというように考えてよろしゅうございますか。
  114. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) この点につきましては、すでに午前中から御答弁申し上げておりますように、私どもといたしましては、その考え方につきましては基本的に賛成でございますし、国内法にもすでに取り入れているところでございます。で、これを国際的に取り入れると、つまり条約に加盟するということになりますと、これにつきましては、まず国内における体制の整備が必要かと存ずるわけでございます。また、国際的にも、先ほど申し上げたような若干の問題点もありますので、基本的な方向といたしましては、当然これに加盟すべきものというふうに考えているわけでございますが、わが国の加盟する条件の整備等につきましても若干の日時を要する事情もございますし、そういう点を十分踏まえながら今後検討してまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  115. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 それでは、先ほども触れておられましたけれども著作権審議会のことについて伺いたいと思いますが、著作権審議会はレコード著作権保護について、これまでどういう役割りを果たしてきておられるか、その点について伺いたいと思います。
  116. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 著作権審議会は、御承知のとおり著作権制度に関する重要事項について調査審議する文部大臣の諮問機関でございまして、法改正等につきましても、これまでいろいろ御意見を賜っておるところでございますし、今回のレコード保護条約の加盟、ないしはこれに伴う国内法改正につきましてもいろいろ御意見を賜り、御教示をいただいているところでございます。  なお、先ほど来から申し上げております新しい問題であります録音、録画機器の普及等に伴う著作権法制というものの整備、ないしはこの運用の問題等につきましては、四十六年の新しい法施行以後、著作権審議会に第二、第三、第四、第五という小委員会を順次設けまして、この小委員会の中で継続的に調査審議を煩わしておるところでございまして、私どもといたしましては、今後とも著作権制度の運用等につきまして、十分御意見を聞いてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
  117. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 レコード複製はエレクトロニクスの進歩によって、最近では素人でも容易にボタン一つ押せばできるというようになってきておりますが、現行法で私的使用の範囲というものを超える使用を制限するということは、ますます困難が多くなってくるのではないかというふうに考えられますけれども、そういう問題についても著作権審議会で考慮しながら御検討になっているのではないかと思いますけれども、この点どうなんでしょうか。
  118. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 著作権法第三十条で設けられましたいわゆる私的使用につきまして、その趣旨及び考え方をどのように録音、録画機器、複写、複製等の問題に考えたらいいかということにつきましては、小委員会におきましていろいろつぶさな検討が行われるところでございまして、まだ結論ではもちろんございませんが、三十条に新しく設けられた公正な利用という点につきましては、十分これを尊重すると同時に、新しい機器が普及されることに伴う著作権、あるいは著作隣接権保護との調整をどういうふうにするかということが問題の基本をなすわけでございまして、いろいろそういう観点から御意見なり、御検討を賜っているところでございます。
  119. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 ここでちょっと別の問題を伺いたいと思いますけれども外国から日本に来たいわゆる来日の実演家が、日本国内で実演をして作製をされたレコードについて、著作権法が適用をされないというのは、一体どういう理由によったものであるか、そういう事実はどのように確認されているか、その辺についておわかりだったら伺いたいと思います。
  120. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) お答え申し上げます。  著作権法第七条におきましては、保護を受ける実演の範囲を掲げておりまして、つまり、国内において行われる実演は保護をするわけでございまして、これは国籍を問わないわけでございます。しかしながら、著作権法の附則の第二条の第五項におきまして、「新法中著作隣接権に関する規定は、国内に常居所を有しない外国人である実演家については、当分の間、適用しない。」というような附則がありまして、したがって、この関係隣接権保護を受けないということに相なっておるわけでございます。
  121. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 そうすると「当分の間」ということは、隣接権保護を受けないという、それはその状態でいいのかどうかですね。今後その状態は改めるべきであるのかどうか、その点はどうお考えになっておりますでしょうか。
  122. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) この点につきましては、著作隣接権条約との加盟との関係で、検討すべき問題ではないかと思うわけでございまして、もとより、芸術、文化の振興というような観点から申しまして、やはり、暫定的な措置ではなかろうかと存ずるわけでありまして、将来は、隣接権条約に加盟し、こういうような問題が広く国際間の人事交流等をする中で、水準の向上が図られるようにすべき問題だと思うわけでございます。
  123. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 別の問題に移りますが、現在わが国においてはレコードのライブラリー的なものはあるのかどうか、そういうものはまた今後必要とお考えになっているのかどうか、あるいはもしおわかりでしたら、外国にそういうものがあるかどうか、そういうこともおわかりだったら伺いたいと思います。
  124. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) その点につきましては、午前中大臣からも御答弁申し上げましたように、実は、詳細な調査をまだ文化庁といたしましてはいたしていないわけでございますが、いろいろ聞きますと、地方の方の公共図書館等でレコードライブラリーを設置しているというようなことも聞くわけでございますが、どの程度設置されておるかについてはまだ詳細を調査をいたしておりません。また、日本放送協会の放送博物館には、音のライブラリーというのがあると聞いておるわけでございまして、これなどがレコード博物館、あるいはレコードライブラリーに入るのかどうか存じませんが、あるいはこれに類似したものではないかと思いますが、こういうように、国内状況等についてのつぶさな調査をしておりませんで、また、諸外国状況についてもまだ把握をしていないわけでございまして、今後私どもはこういうことにつきましても十分な調査をした上で、対策を検討する必要はあるんじゃないかというふうに思っておるわけでございます。
  125. 後藤正夫

    ○後藤正夫君 きょう午前中私席を二、三回外しましたので、その間にその問題についてお答えがあった、また、大臣からも御意見をお述べいただいたということを伺いました。重複して質問して失礼いたしました。  ライブラリーはぜひ今後日本の音楽、あるいは芸術というものの発展のために国内に整備するように、この上とも政府の、文部省の御努力をお願いをいたしたいと思います。  最後に、今回の著作権法改正は、「許諾を得ないレコード複製からのレコード製作者保護に関する条約」の締結ということに伴う、いわば最小限度の範囲での改正であるというように考えられますけれども、時代の推移と、エレクトロニクスの進歩、発達、これに対応して今後この著作権法を対応させていくような努力をぜひしていただきたいということをお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  126. 白木義一郎

    白木義一郎君 最初に、ただいま上程されているこの一部改正並びに近く批准されるであろう本条約に伴う国内法改正、これによってけさほどから論議されております海賊版の防止の効果、警察庁からも答弁がございましたけれども、伺っておりますと、この改正によってどの程度防止ができるかという点について、文化庁がどこまで見込んでいらっしゃるかということをまず最初お尋ねしておきたいと思います。
  127. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) ただいまの御質問でございますが、このレコード保護条約に加盟することが、直ちに世界に六%ばかりの海賊版が現在横行している状態をどの程度改善できるかということにつきましては、私どもとして明確な推定もできかねるわけでございます。しかしながら、私どもといたしましては、すでに申し上げておりますように、世界的に海賊版が横行しておる中で、一番東南アジア状態がはなはだしいというデータがあるわけでございます。同じ東南アジア国民といたしまして、特にレコード生産額がアメリカに次いで第二位という国際地位にもかんがみまして、このレコード保護条約にまず加盟することを通じまして、東南アジア諸国にもそういうことのないように、お互いに国で努力をするという呼びかけも可能になるわけでございまして、そうすることが日本の国際的な地位に伴う任務ではないかと思うわけでございます。そういうことから申し上げまして、海賊版の防止対策としては一つの大きい前進ではなかろうかと思うわけでございまして、私どもといたしましては、このような法改正と同時に、さらにそういう決意を延長させて、海賊版に対する、国としての対策というものについて、今後とも万遺憾なきように実施することはもとより、諸外国等にもそういうことでお願いしてまいるということをするならば、かなりの改善があるんではないかというふうに思うわけでございます。
  128. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうしますと、先ほどから伺っております文化庁の答弁によりますと、この条約と、それからローマ条約も加入する必要を認めていらっしゃる、こういうことでございますが、とすれば、この現在の条約と、それからローマ条約との大きな違いは何か、あるいは著作権者を守る点、それから海賊版を防止するというような観点に立って、どこがどういうふうに違うのかということを具体的にひとつお知らせいただければと思うんですが。
  129. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) このレコード保護条約は、たびたび御説明申し上げておりますように、海賊版を防止する、つまり許諾を得ないで、レコード製作者に無断でレコード製作するということを防止すると、そのためには製作そのものを防止するだけじゃなくて、そのつくられたものの輸入ないしは頒布までも禁止をするということを、効果としてねらっておるわけでございます。で、著作隣接権条約はもう少し広く、つまりわが著作権法において実演ないしはレコード及び放送、この三つにつきましてそれぞれ隣接権を認めておりますが、これを条約加盟国はお互いに内国民待遇、つまり自国民にそれを保障すると同じように、契約国民にそれぞれ保障するということを内容といたしておるものでございます。で、著作隣接権条約に加盟するならば、当然海賊版も防げるわけでございますが、しかしながら、著作隣接権条約に加盟するためには、いろいろなむずかしい他の要件がありまして、なかなか一挙に加盟に達せられないという国もあるわけでございますので、とりあえず海賊版の防止をするための簡易な条約として、レコード保護条約がその後できたという経過があるわけでございまして、わが国といたしましてはそういうような経過にかんがみまして、まずこれに入って、国際的な海賊版の防止体制というものに協力の姿勢を示すと同時に、隣接権条約につきましても、これは当然その趣旨は守られるべきものでございますので、国内の諸条件が整い次第、また諸外国状況等にらみ合わせながら、前向きでその加盟に検討してまいるということを申し上げておるわけでございます。
  130. 白木義一郎

    白木義一郎君 そういう違いがあるとしますと、文化庁わが国ローマ条約に前向きの考えを持っていると。にもかかわらず、国内のいろいろな情勢があって、なかなか思うようにいかないと、こういう御答弁ですけれども、そのなかなかいかないという事情を具体的にお聞かせ願いたいんです。  さっきも物品税のことについて大蔵省のお話聞いていますと、聞いていてさっぱり要領得ないわけです。いまあなたの御答弁も、いろいろ事情がございましてということで、一生懸命伺っているんですが、さっぱり要領得ないんで、よろしければ具体的にお聞かせ願いたいんですが。
  131. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 大変説明がまずうございましてまことに申しわけございませんが、まず国内情勢について申し上げますと、昭和四十六年の一月から新しい著作権法になりまして、著作隣接権国民には認められたわけでございます。で、朝方から再々御質問受けておりますように、新しい著作隣接権関係で、たとえば実演家なり、レコード製作者が商業用レコードの二次使用料というものを請求できる著作隣接権が認められたわけでございますが、この実施なり、施行そのものが少し問題ではないかと、何かはっきりした算定の基準があるのかという御質問も再々いただいておるわけでございまして、実はお互いの中で論理的な算定基準を生むための苦しい話し合いになお継続をいたしておるという状態が、新法施行後の著作隣接権の施行状態というようにお考えいただいても、あるいは当たっているかと思うわけでございます。  私どもといたしましては、まず著作隣接権という比較的新しい権利というものを著作権法の中に取り入れまして、これを適切に国内的に運用いたしたいということで、いろいろ関係者努力をいたしておるところでございます。そういう努力につきましては、若干成果も上がってまいり、レコードの二次使用料の額も若干ずつはふえているわけでございますが、なお、西ヨーロッパから比べますと、かなりな程度のまだ差があるということは、正直申し上げざるを得ないということでございます。もう少し何か論理的な基準によって、そこら辺が円滑にいくならば、一つの前進ということは言えようかと思います。私どもといたしましては、そういう点を十分今後とも努力をいたしたいということが一つでございます。  それから、そういう事態の中で、この著作隣接権を、いま直ちに加盟をするということにつきましては、午前中もちょっと申し上げたかと存じますが、放送関係者の方は、消極的ないしは反対の御意見を持っておるわけでございまして、芸団協ない、あるいはレコード協会等は、むしろ積極的に加盟促進ということでございまして、まだ遺憾ながら関係者の利害が不一致ということもございまして、まだ体制が整備しない。そもそもその理由は何かと申し上げますと、いろいろ理由はあると思いますが、これも先ほど午前中からお話のように、日本の国のレコード生産は、諸外国の、特に西ヨーロッパ先進国から原盤の提供を受けて、これを国内生産するというような状態、輸出が少なくて輸入の方が圧倒的に多いという状態でございまして、いまのままの状態隣接権条約に加盟するならば、レコードの二次使用料というものにつきましては、かなりな出超といいますか、支払いが多くて、他国から支払いを受ける量が少ないということについては、当然放送関係者は、これを覚悟するわけでございます。そういうようなわが国の国情もございますので、放送事業者の方々が、直ちにいまのような状態隣接権条約に加盟することについて、消極的な意見を持つということもあながち非難はできない状態がただいまのところはある。私どもといたしましては、国内におけるところの隣接権の施行というものを十分適切にやっていただく中で、さらに諸外国との間の隣接権の取り扱いについても、適切にできるような力をたくわえていただくというのが、まず国内的には大切なことではないかと思うわけでございまして、そういうような国内情勢について一、二申し上げましたが、いろいろ不一致な点だとか、いろいろ問題があるというのは、そこらあたりの事情は何といいますか、大変お聞き苦しい点があろうかと思いますが、そういう事情があるということでございます。
  132. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうしますと、放送関係ローマ条約加盟に反対、レコード協会等は賛成と、こういうことで、意味はわかりますけれども、先ほどもお話がありましたけれどもローマ条約に加盟してないために、現在外国製のレコードは、放送でどんどんただで一晩じゅうやっていると。これはやむを得ないんだというようなことになりますと、これから青少年のテープを使っての著作権侵害というようなことがだんだん問題になってくると思うんです。そうしますと、文化推進の最前線を進む放送関係の方では、これは条約に加盟してないから外国の音楽は幾らでもいまのうちにただで放送しておけというようなことを、政府並びに文化庁が放置しておいていいかどうか。これから著作権というものについて、国民に大きく理解をさせていくべきであるという議論の中で、これはまことにぐあいの悪いことじゃないかと思うのです。特に文部大臣はオーディオファンであり、有名なクラシックからポピュラーまで、フォークソングまで音楽の愛好者だということを伺っておりますが、まさしくそのとおりだと思いますので、この問題を政府、文部省として放置しておくというのはどうかと思うのです。条約に加盟してないから、洋盤は自由に使っていいんだと、日本レコード著作権で、話し合いの上適当なものを支払うけれども外国のものは構わないのだという考え方を認めてしまうと、これは著作権というものを国民理解させるということと裏腹になってこやしないかと思う。そこで私は、まあ文部省、あるいは文化庁として、放送関係に対して、積極的にこの問題の解消を諸外国へ呼びかけるべきじゃないかと、そういう姿勢がありませんと、著作権のPRをするなんといっても、片一方でそうやって、法律がないのだから、いまのうちにただでどんどんかせいでおけと、だけれども、あなた方はテープなんかとって、それを私的利用の範囲を広げちゃいけませんよ、著作権というのがあるんだからというようなことをやっていたんでは、国民の方は、何だということになりゃしないかと思うのです。御承知のとおり、この間もキャンディーズのお別れのあれがありました。大変な、若い子たちの大騒ぎで幕が閉じたわけですけれども、その後始末があったわけです。何かレコード屋へ大ぜいで行って、何十万という価格のレコードをかっぱらってきた、そういうような現状から考えると、片一方は放送関係だからいいんだと、いろいろ事情があって、文化庁としては、それに対して少し足踏み状態である。こっちの方は断固として取り締まらなければならないというような矛盾を私は感ずるんですが、文化庁あるいは文部大臣、いかがでしょうか。
  133. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) ただいまの点につきましては、すでにしばしば申し上げておりますように、私どもその問題を放置しているつもりでは全くないわけでございます。そうではなくて、まだ著作権法が施行後日が浅くて、いろいろな問題点を抱えておりますが、それらの問題点を前向きで整備をして、早く著作隣接権わが国において批准できるような状態国内法的には整備をいたしたい。かたがた国際的にアメリカ、フランスあるいはその他の国等におきまして、いろいろ隣接権の扱いが違っております。そこら辺の動向等も十分にらみ合わせながら、前向きに検討してまいるということでおるわけでございまして、決していまの状態で、これでいいんだということではないわけでございますので、その点御理解をいただきたいと思うわけでございます。
  134. 砂田重民

    ○国務大臣(砂田重民君) 著作権という比較的新しい権利というものをもっと普及していきますためにも、放置しておいていいことであるはずはございません。いま次長からもお答えをいたしましたけれども、民放あるいはNHK等の意見をたびたび聞いてまいったところでございますし、これからもこの隣接権条約に加盟をしようと考えております政府の姿勢等も含めて話し合い、懇談を続けてまいりたいと考えております。なお、著作権審議会にもこの問題を御議論をいただいておりますので、できるだけ早い機会に結論を得て、著作権条約への加盟、その努力をこれからも続けてまいることにいたしたいと思います。
  135. 白木義一郎

    白木義一郎君 NHKとか放送関係は、いわゆる海賊版でもうけている暴力団と違うわけです。ですから、懇談というようなことじゃなくて、むしろ条約に加盟するということを推進するのは当然だ。それと並行して早く積極的に、外国のいい音楽を使わしていただいてます、幾ら使用料をお支払いしたらいいでしょうかというくらいなNHKであるべきじゃないかと思うんです。そうしませんと、もう国民大衆は納得しないんです。これで、そんなことがもっと広がったらまた聴取料どうだ、こうだなんということになりますよ。ですから、非常にレコード音楽には造詣の深い文部大臣が在任中、ぜひひとつその勧告とかあるいは行政指導なりして、そして日本は本当に文化を求め、あるいは向上する意欲のある国だという旗を掲げる必要があると思うんですが、もう一度ひとつ。
  136. 砂田重民

    ○国務大臣(砂田重民君) 御指摘の御趣旨はよくわかるんです。ただ、もう一つむずかしい問題点は、このローマ条約アメリカ、フランスが加盟していないということもまたあるわけでございます。そこら辺のところも、いまおっしゃったNHKなり、民放なり、いわば支払い側といいますか、ここら辺の考え方の中にアメリカ、フランスが加盟してないといういまの現実の問題もひっかかっているようでございます。いずれにいたしましても放置しておくべきことではございませんので、努力をさらに積極的に積み重ねてまいることにいたしたいと存じます。
  137. 白木義一郎

    白木義一郎君 外国が加盟してないからというようなことは大した理由にならないと思うんですよね。だからこそわが国が率先してこの問題に——加入する、しないは別にして、現実に外国レコードをただでじゃんじゃんあれして成績を上げているわけですから、これは放送海賊版じゃないかというような気がするんです。教条的に説明されると無理もない点もよくわかるんですが、国民大衆の側から見ると、NHKを先頭として、各民放が、世論をリードしていくべき文化の推進者のリーダーたちが、条約に入ってないんだ、アメリカも払ってないじゃないか、おれのところは払わないのはあたりまえじゃないかなんというと、これは海賊に近くなりゃしないかと、こう思うんですが、ひとつ善処を願いたいと思うんです。  そこで今度は、著作権法の意識が進めば進むほど、大変迷惑する人たちがあるということを、私は文化庁、あるいは文部省にお考え願いたいんです。ということは、最近非常にボランティア活動が全国的に普及しまして、特に盲人の方々に何とかこの文学的なものを読ませたい。あるいは点字、さらに点字もどうしても何回も使うと摩滅して非常に能率が悪い。一方、途中でいろんな事故で目が見えなくなった方々は、いまさら点字を身につけてということが非常にむずかしいということから、いま録音に対しての機器が非常に普及、発達、いわゆるカセットテープというものが発達しまして、これに吹き込んで、ぜひお気の毒な方々にも幅広い教養を味わっていただきたいという活動が盛んになっているわけですが、そこで問題は、このテープを録音し、そういうふうに供しようとしますと、著作権法が問題になってくるわけです。そこでこの問題を解決するには、大臣が一言声をかけられると、ボランティア活動が非常に推進するということを私は学んだわけです。ということは、点字図書館では、小説なり、何なりをボランティアの人がテープに吹き込んで朗読して、そして盲人に貸し出すということが可能なんですけれども、公立の図書館では図書館法の施行令によってできない、こういう隘路があるわけです。そこで、ぜひとも大臣に、公立図書館でもこれはボランティア活動を進めるために、盲人あるいは寝たきり老人等に、求めに応じて与えてあげられるように政令を改めていただきたい、こう思うのですが。
  138. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) お答えをいたします。  先生の御質問になったいわゆる点字図書館等についての盲人用の録音テープの貸し出しの規定につきましては、この前の著作権法改正で新しく入ったわけでございまして、この規定は、私ども調査では世界的にも非常にまれな、私どもといたしましては非常に進んだ制度ではないかと思っておるわけでございます。この法律をお読みいただくとおわかりのように、これはあくまでも点字図書館その他の盲人の福祉の増進を目的とする施設でということが、政令の決める前にかぶっておるわけでございまして、したがって、公共図書館という一般の図書館等につきましては、かなり著作権法審議の段階でもんだようでございますが、いまのところこれはこの法律には入っていないわけでございまして、法律改正をもとより要するわけでございます。この法律がいろいろ審議をされました段階におきましては、権利者の側から、こういうような規定を設けることは非常に行き過ぎではないか、こういうようなのを法律によってとやかく言うのではなくて、むしろ権利者側の自主的、積極的な判断でやるのに任すべきことではないかという、強い御意見が権利者側にあったようでございまして、いろいろあれこれ論議の末、こういうような現在の三十七条二項のような規定に相なったという経過がございます。したがって、先生の御意見については確かに御意見かと存ずるわけでございますが、そのような法制定当時の経過というものを十分私どもも踏まえておかなければならないわけでございます。そういう点につきましては、さらに御趣旨を十分参考にしながら、今度法改正等の問題にわたるわけでございますので、研究をさしていただきたいというふうに考えるわけでございます。
  139. 白木義一郎

    白木義一郎君 そういうふうにお答えいただくと私はちょっと絡みたくなる。なぜかというと、いま問題になっておる条約、これはもう七年も前にできているのがいまごろここで、わが国会で論議されているわけですね。そうしますと、いまあなたのあれだと、法改正とか、スタートのときはこうだったからこれからというと、これ何年先になるかわからぬわけです。そこで、大臣もお聞き願いたいんですが、著作権とボランティア活動の面について、三月に毎日新聞の投書がございます。「全盲生に勉学の保証を」と、「私の学校では、毎年数名の全盲生が普通大学へ進んでいるが、教科書を点訳したり、テープ録音する苦労は大変なものがある。今の日本では、制度的にも社会的にもまだまだ障害者を受け入れる態勢が整っているとはいえない。  たとえば、近年ボランティアによる点訳や朗読奉仕が盛んで、私の学校でも大勢の生徒がその恩恵にあずかっているが、最近になって、この善意のボランティア活動が、法律違反であるということが一部でいわれている。著作権法のうえでは、点訳は自由にできるものの、朗読の場合は、いちいち著者の許諾が必要であるという解釈が、もっぱら著者側から提起されているのである。  盲人から点訳書やテープ図書を取り上げたら、高校や大学での勉学はまず不可能であろう。文化の推進者である著者側が、企業によるテープ教材の乱売には目をつぶりながら、このような規制を加えようという姿勢は、何かおかしい気がする。」と。  また、二月には朝日新聞の投書には、「最近「視覚障害者のために、本を読みテープに入れることは、著作権侵害」といわれ出し、朗読ボランティアをやめる方々が、少なからず出ていると聞きます。私たち目の見えるものは、図書館で本を借りたり、本屋で本を買ったりすれば、自由に読書できます。しかし、視覚障害を持った方々には、それができません。  あの本が読みたい、勉強したい、そんな心からの叫びにこたえて、私たちは朗読ボランティアを続けてきたのです。いまやめてしまったら、私たちの声で読書をしていた方々は、どうなるのでしょうか。私たちは少しも悪いことはしていません。全国の朗読ボランティアの皆さん、やめるなどといわないで下さい。  作家の皆さま、彼らは、読めないのに本を買い、朗読者にそれを頼み、何カ月も出来上がるのを待っているのです。この点を、ぜひご理解願いたいものです。」  以上のようなボランティア側の主張を文化庁、あるいは文部大臣はどういうふうにお考えになっているか。特に、盲人が自分で買い求めた本をボランティアに依頼して録音することについで、著作権法違反となるのはなぜか、こういう疑問が出てくるわけです。
  140. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) いま先生のお読みになりました二つの点の後者の方につきましては、ちょっとお聞きした限りでの御答弁でございまして、あるいは正確でない点があるかと思いますが、私どものいまお聞きした限りでは、著作権法に三十八条というのがございまして、ちょっと読み上げますと、「公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、公に上演し、演奏し、口述し、若しくは上映し、又は有線放送することができる。」というようなのがございまして、したがって、ただしその場合には、ボランティアが対価を受け取らないというような場合には、三十八条第一項によって認められているんじゃないかというふうにも考えるわけでございます。もう少し実態を研究さしてもらわなくちゃいかぬかもわかりませんが、ボランティアが当該朗読につきまして対価を受けず、営利を目的としないというようなものにつきましては可能な道がございますので、さよう答弁さしてもらいたいと思いますが、前者の方は、最初に御答弁申し上げたようなことで、現在のところはむずかしい問題があるわけでございます。この点についての検討は将来問題としてさしていただきたいと思うわけでございます。
  141. 白木義一郎

    白木義一郎君 そうしますと、ボランティアの方々が盲人の方に頼まれて、そして有名な小説なら小説を録音して、そして無償でその人に聞かせる分には一向差し支えないわけですね。
  142. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) ただいまの問題で若干補足さしていただきますが、朗読をするに当たりまして、録音につきまして当該著作者の許諾を得ておるということであれば、三十八条によりまして可能であるということでございますので、補足をさしていただきたいと思います。
  143. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、許諾の問題について、やはり昨年の暮れの朝日新聞を読みますと、日本文芸著作権保護同盟の事務局長は、「盲人だけに許されている権利が、善意ではあっても健康な人にも流れてゆく心配がある。長野市の社会福祉センターの〃テープラィブラリー〃の際にも、協力を申し込まれたが、団体としては協力できない、と答えた。個々の作者にお願いするのなら側面的に認めよう、ということになったんです。しかし、この方式も無制限に認めてしまうと影響は大きい。なんらかの歯止めを必要とするかもしれない。なんとか認めてやりたいというのが本音ですが、」ということを事務局長が述べ、かつ悩んでいる。これは著作者の権利確保と、福祉の立場に立つ盲人の本を聞く権利、そこに矛盾が感ぜられるわけです。この矛盾を文化庁はどのように理解し、また将来において解決をされていこうと考えられるか、お尋ねします。
  144. 砂田重民

    ○国務大臣(砂田重民君) そのような盲人の方へのボランティア活動の意義が非常な大きいものでありますことは私十分認識をいたすものでございます、まず。同時に、やはり著作権という観点に立てば、権利者の利益もまた確保しなきゃならない。白木委員が先ほどおっしゃいましたように、大臣の一言で片づくことではないような気持ちがいたしまして、非常にむずかしい問題だと思います。そこで、政令で決めました施設によっては、著作権権利者側の権利制限ができていることでもございます。いまのような有名な著作物を録音をする、そういうボランティア活動の方々の、その福祉の心が生かされるように、また視力障害を持っておられる方々の生活周辺がそういう文化的に豊かになるように、そう願いますので、この問題はひとつ著作者の皆さまの協会とも、積極的に話し合ってみたい、こういうふうに考えるのでございますが、しばらく時間をちょうだいをいたしまして、一度相談を積極的に持ちかけてみたいと考えます。
  145. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、著作権法施行令の第二条によりますと、先ほどちょっと触れましたけれども、公立の図書館ではなかなか録音をし、貸し出しすることがむずかしい、こういうふうに第二条の一、二、三、四、この中に公立の図書館で、そういうために録音をしてよろしいというようなあれが出てこないわけです。で、私が申し上げたのは、大臣に、ここへ公立の図書館でも幅広く日本じゅうの公立図書館、あるいはさらに全国の各大学図書館等で、自由に福祉の面について録音をし、お気の毒な方々に勉強、あるいは慰めを与えるようにしていただきたい、そういう意味で、大臣のお考え一つでできやしないかと、こう思ったわけです。私は、大臣になったことありませんからわかりませんけれども
  146. 砂田重民

    ○国務大臣(砂田重民君) いまの現行法の定めておりますところは、全部盲人の方々のための施設という枠がかぶさっているわけでございますから、広く公立図書館等でというわけに、いまの現行法ではまいりませんので、ただ著作権に基づきます権利者側の方々から、現行法で盲人という枠をはめて、その中での権利制限、そのこと自体権利者側から相当な異議がこの法制定のときに申し出られた経緯があるそうでございます。やはり権利者の自主的な判断に、それは自分たちに任しておくべきだ、そういう御議論があったそうでございますので、現行法でできないことでありますけれども、一方そういうボランティア活動の意義を私は十分認識をいたしますから、いわゆる権利者側の自主的な判断というものをどう取りつけ得られるかについて、ひとつ著作家協会等と私どもの間で、積極的にこちらから話しかけを行って、そういう権利者の自主的な判断というものを、盲人の皆様の福祉のためにどう判断していただけるかを、積極的に話し合いをしていきたい、かようにお答えをしているわけでございます。積極的な努力を一応してみたいと思いますので、しばらくの時間をちょうだいができたらと思います。
  147. 白木義一郎

    白木義一郎君 権利者の方の代表の、先ほど考えをお伝えしたわけです、新聞に出ていましたああいう考え方です。本心からはそうしてあげたい、だけれどもあちこちいろいろむずかしい問題がひっかかるから、それで悩んでいるんだ、こういうことなんです。ですから、いまさら話し合いでというと、何年かかるかわからないんです。その間に手弁当で一生懸命奉仕をしている人たちが、一々その小説家にお伺いを立てて、返事の来るのをいまかいまかと待っていたり、あるいは中には、いやそんなこといいかげんに読んでもらって、テープに吹き込んでもらったら、おれの作品の真価が問われるから反対だなんという勇ましい人もいるわけです。そうしますと、これは幾らたっても進まないということが目に見えているわけです。ですから、そこでこれは文部大臣の政治力いかんというようなことにもなりますけれども、まずこの政令に公共図書館でも、これは福祉関係の点字図書館は厚生省の方のあれらしいですけれども、公立図書館は文部省の管轄ですから、文部省の側の図書館法による公共図書館でも、そういうことならば、やっぱりある程度限界はつけなければならないでしょうけれども、利用できるように幅を広げると、一項加えれば、この第一、第二、第三、第四、そして第五に公共図書館でも右に同じと、こう大臣が鶴の一声でできそうな問題じゃないですか。
  148. 砂田重民

    ○国務大臣(砂田重民君) 余りできそうでないんです。やはり第一、第二、第三と読まれましたけれども、すべて一つ一つが目の悪い方々を全部対象にいたしておりまして、公共図書館(もっぱら盲人の用に供する)というようなものが具体的に現実問題として公共図書館ではありませんので、政令に一項目書き加えるという程度のことでどうしても済まない、法改正を要することだと思う。そこで法改正ということになりますと、権利者側との意見の対立なんというものが出てまいりますので、先ほど白木委員がお読みになりました文芸著作権保護同盟の事務局長さんの御意見、確かに承りました。承りはいたしましたけれども、そこをやはり福祉の重要な問題と、著作権という権利者側の権利の行使の問題と、その兼ね合いですから、そのひとつ調和点を一緒に見つけてくださいませんかということを、重ねて私どもの方から積極的に持ち出してみたい、それに時間をちょうだいをいたしたいと申し上げているわけでございます。その新聞に出ております事務局長さんの御意見は確かに拝聴をいたしました。そうではありましょうけれども、もう一つ考えてくださいということを持ち出してみたいと思うわけでございますから、一遍努力をさせていただきたいと思います。
  149. 白木義一郎

    白木義一郎君 こんなことを申し上げるまでもないことだと思うんですが、図書館法第一条では、「社会教育法の精神に基き、図書館の設置及び運営に関して必要な事項を定め、その健全な発達を図り、もって国民の教育と文化の発展に寄与することを目的とする。」と、こううたってあるわけです。ところがその「国民」の中に、視覚障害者、あるいは盲人の方は現在入りにくくなっているという問題が出てきているわけです。それからさらに、これから何か点字だけじゃなくて絵本、小さい子供は小さな子供のころから絵本で情操教育を受けているけれども、生まれながらの目の見えない子供は、そういうあれが、ないわけです。さわってわかるような絵本、それからにおいまでわかる、それからさらにテープにその音を吹き込んで、そして目の見えない人たちにということが進んでいるわけです。ですから、私はむしろどうも大臣のあれは、権利者側に立った物の考え方のように、——聞き違いだったら訂正しますけれども、どうも私がいままで聞いたあれでは、盛んにガードを固めて、よし、わかったと、それは気の毒だと、どことどこは問題なんだと、何とか在任中にもう一歩でもあれを前進しようと、ゴールまでは行かないにしても、というふうにはうかがえなかったわけです。ですから、けさの新聞にも出ていましたけれども、まだまだいろいろな問題がこの著作権に絡んで出てくるわけです。今度は文字のどろぼうなんという、こんなのもだんだん問題になってくるだろうと思いますが、そういうふうなことになってきますと、次第に忙しいためにそういう善意の人たちの、善意から起きる希望、欲望がどうしても後へ送り込まれてしまう心配があるわけです。それでしつこくお伺いしているわけですが、そこで、金があれば文句ないわけです。全部文部省で、著作権者——権利者にこれだけ払うから、放送局みたいに、NHKみたいにただではやらない。ですから、それに適当な費用を払って、そしてもっともっと福祉関係の問題に、文化の推進の力を添えなければいけないと思うんです。それを、いろんな法律がどうだこうだと言っていると、権利者側に立ったような発言もしなくちゃならないということにもなるでしょうし、何とかひとつ大臣在任中に血路を開くべきだと思うんです。  さっき御説明伺っていると、日本製のレコードを放送局でかければ、それに対して放送局から協会へ何がしか払っている、それをまた話し合いで分けていくと言うんですから、政府あるいは文部省から、そういう協会なり何なりに一定のあれを払って、そして、さあボランティアの皆さん、手弁当で長い間御苦労さまでしたと、本当にわが自民党政府は大資本優遇のためのあれでしたと。しかし、今度の文部大臣は違いますと、全部権利者権利も認めますと、それから、福祉政策には国として手を差し伸べていきますと、伸び伸びと勉強してください、明るい人生を少しでも取り戻していただきたいというような、どうでしょうかね。
  150. 砂田重民

    ○国務大臣(砂田重民君) 権利者側に立つとか立たないとかいうことではなくて、著作権という権利があるという現実問題はまさにあるわけでございます。ですけれども、盲人の方へのテープの吹き込み、ボランティア活動をしておられる方のやってくださっておりますことは、私自分でもこの目で見ておりますので、これは何とかしなければならぬと考えましたから、ひとつ方法を考えさせてくださいと申し上げているわけでございまして、ほうっておくわけではございません。もう積極的に何らかの答えを出したいと考えますので、わが自民党政府としての解決策を何とか考えさせていただきますから、しばらく時間をちょうだいをいたしたいと思うわけでございます。
  151. 白木義一郎

    白木義一郎君 多少とも進んだ、まではいかないけれども、向きが変わったように伺ったんですけれども、解散含みということがありますから、何とかひとつ、大臣在任中にいろいろおやりになりたいでしょう、功績もお残しになりたいでしょうけれども、そういう人たちが置き去りにされる文化なんというのは一部の特権階級のものですよ。そうでしょう。ですから、今度の文部大臣は、もう弱者の中の最弱者に目を向けて、そしてがんばったというあれを残していただきたい、心から要望なり、あるいはお願いをいたしまして私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  152. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 今回、レコード保護条約加盟に従って、法改正が行われようとするわけであります。私は、この法改正が、著作権法の目的にも掲げられておる、文化的所産の公正な利用に資するものであり、そして芸術家等の権利保護に有益なものであり、そして文化の発展に寄与するというような立場で、わずかながら前進の方向だということで、賛成をする立場をとっておるわけでありますが、文部大臣にお伺いをするわけであります。  先ほどから、繰り返し関連をいたしまして、隣接権に関するローマ条約に速やかに加盟をするべきではないかという立場で質問が続けられておるわけであります。私もその点について文部大臣の所見をただしておきたいと思うわけであります。  先ほどから説明があったところでは、ローマ条約に関して未加盟であるという状態は、将来は加盟するとしても、三つばかり理由を挙げられたように思います。  一つは、日本レコード事業なり、放送事業なり、外国盤の輸入国としてのわが国においては、これを同条約批准によって使用料を払うということになれば、日本のいわば文化産業が圧迫を受けると申しますか、輸入超過の国としてそういうやむを得ない状況があるから、しばらく時をかせというのが一つ。それから、現実にこの種の大国であるアメリカ、フランスが未加盟の状況でもあり、なお情勢が熟していないというような把握をしておられる。三番目には、日本の水準自身において、使用料の具体的内容等欧米と比較するなら、なおかなりの水準差があって、その点についても熟するのを待ちたいというふうに整理をされたと思うんですが、いかがでしょう。
  153. 砂田重民

    ○国務大臣(砂田重民君) 御指摘のような状況でございます。四十六年に新しい著作権が成立をいたしまして、わが国社会でこういう著作権という、日本にしてみれば新しい制度が明確になってきたわけでございますが、だんだん定着しつつあるとは言うものの、その普及、認識にはまだまだ努力をしなければならない、そういう時期でございまして、そういう状況のもとに、外国人であります著作隣接権者の権利を新たに保護をする、そういうことにつきましては、国内のいろんな立場での関係者の皆さんのやはり意見の一致を大体見ていただかなければなりませんが、文化庁の事務当局で、これら各立場にあります関係者の皆様の御意見を徴しているわけでございますが、まだなかなか一致するに至っておりません。今後、その見解調整のためにはいましばらく時間が必要かと考えます。  また、先ほどお答えいたしましたが、国際的に見ましても、わが国文化的なつながりが非常に深いフランス、アメリカなどがこの条約に加入をしておりませんので、仮にわが国だけが締結をいたしましても、そういうことですと、実質的に余り大きな変化がないということもあるわけでございます。  こんなことから、この問題について、なおまだ若干の時間をおかりして、国内関係者の見解を取りまとめ、また各国の動向などにも配慮をしながら、いずれは締結をしようという気持ちでおることでございますから、その時期を目指して、せっかくいましばらく努力を続けさせていただきたいと、かように考えるわけでございます。
  154. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 いま、関係者の一致を得てというふうに言われるわけですが、かなり関係者の中における意見というのは、二つの態度が非常に明確に出ておるわけであります。その限りでは、文部省としては法の趣旨に従って、それで日本の著作者等の権利保護するという立場から、特に日本文化水準のレベルアップについて、いずれが有益なのかという点をよく見ていただく必要があると思うんです。私も、日本の放送事業、レコード事業等の文化産業について、これを批准をしたら打撃、損害を受けるのかどうかということに関しては、一面的にそういうふうに見ると、片手落ちな見方になるんじゃないかというふうに思うわけであります。特にこの点では日本関係者のうちでこの芸術家の集団、レコード協会等は明確化に批准要請をしておるわけであります。むしろ今日の野方図な外国盤レコードの使用等は、日本の芸術家のいわば演奏機会を奪い、日本盤に対して圧迫的な作用をし、かえって日本の中で放送事業者等には便宜を与えておっても、本当の意味での日本文化水準のアップに対しては、マイナスの貢献をしておるのではないかと、さような観点からひとつ十分に見ておく必要があるというふうに思います。  また、アメリカ、フランスが未加盟であるという状況は、むしろ日本が率先をして加盟をした場合に、直後にはアメリカ、フランスとの使用料を払うという関係が発生しないのでありますから、むしろその点では第一に日本が圧迫を受けると言われた状況を緩和するように作用するのであって、日本が率先をして加盟をするということに対して、マイナスの作用を果たすというふうに一概に言われないと思うわけであります。同時に、当然この使用料等について、ヨーロッパと日本との段階格差というのは非常に大きなものがあって、放送事業では世界一流であるけれども、二十数カ国のレコード条約加盟国の中でも、日本の待遇といいますか、これはどうひいき目に見てもビリとは言いませんけれども、ビリから二番目ぐらいで、後を向いたらいるのはただ一国韓国だというような、ここらで日韓合作をやる必要はないと思うんです。こういうような点でも、速やかに、このレコード条約批准一つの踏み台にして、特に文化庁では鋭意懸案の解決をされるというようなことでなければならぬと思うわけですが、その点はどうでしょうか。
  155. 砂田重民

    ○国務大臣(砂田重民君) 全く同感でございます。  日本の放送事業者等が、文化の高揚という立場に立って、音楽等の著作権というものの重要さを正当に認識をしてほしい、そういう気持ちを私も持つものでございます。
  156. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 認識において文部大臣と一致することができたということは、非常に私はいいことだと思うんです。認識が一致したら次はやっぱり何をなすべきかという、この辺のところでひとつ一致をして前進をしていただきたいと思うわけでありますが、私はこれに関して特に再度申し上げるわけですが、日本法律には「文化の発展に寄与する」というふうに比較的包括的に書かれておりますけれども、万国著作権条約を見ると、もう少し同じ文化の発展に寄与するという内容が明白だと思うわけであります。まあ個人の権利尊重という点は同じようにうたっておるのですが、続いて文化的向上というのは文学、学術、美術の発達を助けると、こういう法制的な措置というのは、発達を助けるものでなければならぬと、それと同時に、人間精神の所産としてのこういう複製物の普及を容易にすると、あわせて国際理解を増進するというふうに記述しておりますけれども、全く表現の差はあれ私は精神は一緒だと思うわけです。この中で、普及の方で大きく力を発揮されるのは、それは放送事業者であり、またレコード会社等になってくると思うんです。特に巨大なマスコミュニケーションとして放送事業の果たす役割りは非常に大きなものがある。しかし、大もとは孤独な人間の精神の所産なわけであります、その点では、一人一人の人間の所産、大もとの学術、美術の発達を助けるという観点に立てば、どうしても芸術家のこの権利を保障し、これはどっちがどっちとは申しませんけれども、二つの意見があっても、基本は私はやはり芸術というのは創作活動、つくり出す人のために制度が役立つことでなければならぬと思うわけです。そういう点から申しますと、今日の状況というのは、むしろ速やかにこれらの条約批准することによって、急速に法の精神に基づく日本文化的な前進を、むしろ文化庁としては主導的に推進をされなければならぬのじゃないか。少なくとも百年河清を待つというふうに、両者の意見の統一と言えば労使関係に擬して恐縮ですけれども、大きくて強い立場の方にある意見が優先しがちになるのですね。やはり普及の仕事をやっておるレコード協会自身も、その中の役員の方の言われるところを見ますと、これははっきり極言をしておられますね。ローマ条約批准をしない日本政府の態度は、放送業界、レコード使用企業の利益代表と言われてもやむを得ない。世界の実演制作家の権利を無視し、あわせて自国の芸術家の首を絞めている。日本の芸術家の利益代表者がそういうふうに言っておるわけであります。現実に照らしてどうかということになるわけです。ここで音楽家の著作権、これを代表する日本音楽家の著作権協会、これと今日放送企業との間で使用料規定について、文化庁に責任のある変更申請が出ておるわけですけれども、これらに対する文部省の態度も、こういう基本にかかってくるものだと私は思うわけであります。いわゆるJASRACの出した規定変更申請、これについてすでに本年の一月七日に官報告示をされておるわけでございますけれども文化庁の態度を御説明いただきたい。
  157. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) お尋ねのJASRACとNHKないし民放との間の、いわゆるレコード二次使用料についての、音楽著作物の使用料の額の問題につきましては、多年の経過があるわけでございますが、特に著作権法改正法の施行後昭和四十六年文化庁関係者を集めまして、この問題の処理につきましては、いわゆる局別方式という従来の方式をやめて、いわゆる欧米のブランケット契約方式を導入すべきものであるというような観点からお話し合いの場を持ちまして、三年間の暫定期間の後、昭和四十九年度にはそれらの契約方式に移行することをお互いで確認をいたしたわけでございますが、この問題の処理につきましては、いろいろむずかしい事情もございまして、昭和四十九年度までにそれが実現できず、五十、五十一、五十二とお互いの話し合いが継続される中で、ようやく昨年の八月、民放もブランケット方式移行への方向については一応了解を示しながらも、なお、いろいろな問題で実は話し合いが難航した中で、昨年の暮れ、話し合いがつかないままにJASRACから文化庁長官に対して、ブランケット方式を基本にする新しい認可の申請があったわけでありまして、先生先ほどお話しのように、これを受けて文化庁長官が一月に告示をいたしまして、一カ月以内に関係者から御意見を承ったわけでございますが、NHK、民放とも、若干相互間の意見の相違はありますが、いずれもこの段階においてJASRACの方が提案するようなブランケット方式への移行については反対である意向がもたらされたわけでございます。私どもといたしましては、JASRACのブランケット方式移行案による認可申請案が、五十二年度の使用料を含めたものでございまして、一月、二月段階で意見を聴取する中で、五十二年度も終わりを迎えるというようなことになりましたので、関係者と文化庁とお話し合いの上、五十二年度については従来の認可案で話し合って処理するということの了解がとれましたので、お互いに話し合っていただいて、従来どおりの方式で決めましたが、五十三年度以降につきましては、ブランケット方式に移行するというかねてからの方針は、文化庁としても持っておるわけでございますが、現在それらの移行する中で、意見が余りにも隔たっておりますので、これらにつきましては関係当事者内で十分話し合っていただいて、所期の方向に持ってまいりたいということで、五十二年度は一応話し合いができましたので、五十三年度早々、現在ただいま文化庁と各関係者の間で、五十三年度以降からの話し合いの条件づくりの努力を現在いたしておるということでございます。文化庁といたしましては、昭和四十六年度当時からブランケット移行ということで関係者を指導いたしておりまして、今後とも関係者の話し合いを強力に指導する中で、ブランケット方式に適切に移行できるように、私どもとして最大限の努力をいたしたいということで考えておるわけでございます。
  158. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 NHKといえば、これは利潤を追求するたてまえの団体ではなくて、これは公共的な事業であります。国際的な趨勢もある中で、私もなかなかがんこなものだと思って驚いておるわけですが、ここで振り返って具体的に今日までの状況を見る必要があると思うんです。昭和三十五年以来今日まで、ユニットプライス方式というんですかな、一曲単価でやってきて、一体どのぐらい具体的には支払って、今日のレベルはどのくらいになっておるのか。私はこのJASRAC側の資料を見ておるわけですけれども昭和三十五年段階で十七年続くこの方式で始めた。それでも初年度あたりでは、協会として受け取った使用料の総額が三億四千二百万円あったうちで、放送分が四六・四%、一億五千八百万円を占めておったけれども、十六年たった昭和五十一年現在までどれだけ成長したかを見ますと、この協会の取り扱うこの徴収総額が百五十一億六千六百万円まで五十倍に成長する過程で、放送から入ってくる収益は十億七千万、約六倍にしか伸びなかった。非常にシェアが減ったわけですね。そうして当初半額近い四六・四%というようなシェアが六・三%までダウンしておると、こういうふうなことを書いているわけです。いかにその点では状況発展に対するこの改定措置が行われてこなかったのかということとあわせて、この間を振り返ってみますと、この金額の伸びというのはほとんど内容改定を含んでなくて、UHFテレビなりFMラジオが途中で開始されておって、放送事業がずっと拡大しておるそのいわば自然成長のはね返りが何にもないではないか。こういうような点を見ますと、速やかにこの点では国際水準と申しますか、それに歩み寄る必要があるんじゃなかろうか。結論的に、今日の十億レベルで入っておる状況は、世界の事例と比べて一体どんなものになるのか、アメリカではどのくらいそれは支払われているわけですか。
  159. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) お答え申し上げます。  JASRACは新しくブランケット方式による使用料の認可申請をしてまいっておりますが、JASRACとしては、目標としては千分の二十、百分の二を原則としたいという考え方を申請してきているわけでございます。その根拠は、ヨーロッパ諸国におきましては、おおむね百分の二というのがいわゆるブランケット方式による使用料算定の際の、放送料収入に対する音楽著作物の使用料の率であるわけでございます。アメリカも大体百分の二程度というふうに伺っておるわけでございますし、そのほかイギリス、ドイツ、フランス等におきましても、私ども調査をいたしてますが、大体、若干の違いございますが、百分の二程度であるというふうに考えるわけでございます。ところで、JASRACに対してNHK、ないしは民放が支払ってきた使用料額を、いわゆる放送料収入の額に換算をして比較してみますならば、私どもの試算によりますと、昭和五十一年度でNHKが千分の五・八でございます。それから民間放送が千分の四・九、大体千分の五程度でございまして、先ほど申し上げました百分の二、つまり千分の二十から申しますと、かなりな隔たりがあるということを申し上げざるを得ないかと思うわけでございます。そういうような大体の状況に相なっております。
  160. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 資料によれば、アメリカで三百億を超しており、フランスのように日本よりスケールの小さいところでも、四十四億円というなのが上がっておりますし、この文部省からいただいた資料で、JASRAC側の試案と申しますか、提案を見ますと、電波料の百分の二というのではとてもなかなかすぐに実らないというふうに考えて、私どもが昔、労働組合で労使交渉をやれば、途中でそれなりに相手側から幾つか答弁ないし回答が出てくるものですが、黙っておる相手に自分の方からみなしタイムというようなもので中間的な案を出すとか、さまざまな案を出してやっておられるようであります。文部省としては終局的には、話がついたら、認可権を持っておるわけですから認可をやるわけでしょう。その点の見通しについてひとつお伺いしておきたいと思うんです。
  161. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 文化庁長官は認可権を有しているわけでございまして、最終的には文化庁長官が認可をするということに相なるわけでございます。ただし、現在のいわゆる認可申請案の状況につきましては、率の中でもかなりな相違がございますし、それからいろいろな周辺の状況等につきまして、なおいろいろな相違もございますので、そういう点については調整をする必要があるんではないかと思うわけでございまして、これらについては話し合いを基本にした上で文化庁の必要な調整を加えたい、その上で最終的には認可ということに持っていきたいというふうに考えるわけでございます。
  162. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 いずれにしても明確にブランケット方式を文化庁としては志向しながら話し合いをまとめて、そして実現に至るようにしたいというふうに答えておられるわけですから、その点についてはひとつ早急に進めていただきたいと思うんです。  続いて、商業用レコードの二次使用料の額の問題、これについてもいわゆる芸団協とレコード協会の方から算定方式に関する提案が出ておるわけですが、私の見せてもらったところでは、内容にいろいろ具体的な違いがありますけれども、おおよそブランケット方式でもって、この問題も処理したいというふうに提起をされておるわけでありますが、これはどういうふうに動いておるのか、これについても文部省は最終的には、両者の話が実らないときは裁定をされるというふうに承知しておるわけですが、いかがですか。
  163. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 芸団協と、民放ないしはNHKとの商業用レコードの二次使用料の額の問題につきましては、昭和四十五年、六年の段階におきまして、文化庁が肝いりで関係者に集まっていただきまして、いわゆる著作権法施行後、この商業用の二次使用料をどうするかということで話し合いをいただきまして、そこで毎年度決めていったわけでございますが、私どもといたしましては話し合いで決めるということだけでは不十分でございますので、論理的な算定基準というものが必要であるということで関係者を指導いたしまして、昭和四十九年度の段階でようやく両者の合意に達したわけでございまして、昭和五十一年の三月末までに、その論理的な算定基準の合意に達するという話し合いをしてきたわけでありますが、それができませんので、したがって、この三月末までをさらにめどにして話し合おうということで、関係者努力してまいったわけでございますが、なおこれが成就しなかった。これは先ほど申し上げたわけでございますが、したがいまして、現在両当事者の中で四月以降も話し合いを継続をいたしておるわけでございます。文部省といたしましては、すでにずっと継続的に指導してまいっておりますように、話し合いの中で決まるものでございまして、文化庁長官が認可をするという性質のものではないわけでございますが、しかしながら、話し合いだけで決まっていくということでは不十分でございますので、適切な合理的な算定基準というものをお互いが話し合ってもらいたいという方向で、今後とも指導してまいりたいというふうに考えるわけでございます。
  164. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 やっぱりこれらの問題についても、あれこれ試案でも考えられるなり、具体的な指導をいただかないとなかなか進みにくいんじゃないかと思うんですが、基本的にはどうなんですか、ブランケット方式化を志向をする著作権の利益擁護の団体の意向、これを、前のJASRACの場合にも、芸団協の場合にも、基本的には文化庁としてはこういう考え方の実現の方向でやっていかれるというふうに承知をしていいですか。
  165. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 私どもとしましては、その方向で努力をいたしたいと思っております。
  166. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 ここで気になることがあるわけですね。先ほどもローマ条約の加盟問題についてお伺いをしたのですが、一定の手直しなり、改善を日本の芸術家についてやっていく。一方では引き続き外国盤については使いほうだいというような状況になっておるというような点が、特になかなか話の実りにくいような状況の中で解決していった場合に、一層外国盤の乱用と申しますかね、こういうことによって日本の芸術家が損害を受けていくというふうな状況にならないかというふうなことであります。その点ではまず現状を見る必要があると思うのですが、現在のラジオ放送番組中で音楽放送は大体どのくらいの割合を占めており、さらに、二次使用になるレコード使用というのは、一体その番組中でどういうシェアを持っておるのか、これをお尋ねします。
  167. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 手元の資料によりましてお答え申し上げさしていただきますが、ラジオ放送におけるレコードの二次使用の実態につきましては、まずNHKにおきまして、音楽放送は二六・三%ということに相なっております。そのうち、これを洋盤邦盤に分けて申し上げさしていただきますと、邦盤が一六%、洋盤が六三・七%、それからその他二〇・三%ということに相なっております。民放の方について申し上げますと、音楽演奏時間が三〇・一%、それから洋盤が三八・七%、邦盤が五六・七%、その他五・六という状況でございます。
  168. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 今日の音楽家がやっぱり出演の機会に恵まれて、そして創作のチャンスに恵まれて、こうなって日本文化水準はアップしていくと思うのですけれども、実際にこのレコードの使用というのは便利でもありましょうし、これが音楽演奏のうちで八〇%を占めておる。このこと自身、生放送をやる生番組、実演家の出演機会の非常に奪っているということが言えると思いますし、あわせてその中の実に六四%が外国盤だと、こうなりますと、いろいろな意味で、確かに言われるように使用料を払わなくても、今日、日本の芸術の発展上、外国盤の圧力というものは非常に大きいと言わなければならぬ。むしろそれよりも民放に比べても、NHKの方の番組制作においてその傾向が顕著だというようなことは、ひとつ考えてみる必要があるのではなかろうかというふうにも思うわけですが、これらの点、どうなんでしょうね。一つは、やっぱり外国盤が使いほうだいだということが、この外国盤レコードの使用の頻度を高めておるというふうに見ることができないでしょうか。そう見るのが常識的なんじゃないでしょうか。大臣、いかがでしょう。
  169. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) 今回のこの法律改正によりまして、外国盤の使用につきましての許諾の必要性とかいうようなことが起こってまいりますれば、反射的に国内の演奏家の利益が保護されるという面がございます。そのベースにはいまおっしゃったような事情もあろうかと考えておる次第でございます。
  170. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 やっぱり、前質問者もずいぶんと述べてきたわけでありますけれども、このローマ条約批准の問題は、これは外国著作権保護をするというふうに単純に見る筋のものでなくて、日本著作権ですね、日本の芸術家の生活を擁護していく上で、これは非常に有効に働く法律なのであって、今日国内における意見の未調整というのは、いわばこれは企業体としての放送事業者とそして芸術家と、あえて類推的に言うなら労使関係のようなもので、一方的な意見によって批准が阻まれているのだということがこの辺の姿からも明らかになってくるわけであります。この点については明白なことで、文化庁長官もそのように把握しておられるようでございますから、やっぱり一段と加入促進というのが図られなければならぬ。再度ですが、大臣いかがですか。
  171. 砂田重民

    ○国務大臣(砂田重民君) 御説のとおりでございます。また、今回の改正日本の演奏家にとっては演奏機会がふえることにも役立つわけでございます。
  172. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 外国盤が野放しというようなことで、逆に日本の芸術家の演奏機会と、日本盤のレコードの演奏機会を減らすというような点が懸念されますから、その点では鋭意努力をしていただきたいと思うわけです。この新法とそれから今回の改正等の中で、次第に著作権思想というのは日本国民の中でも普及をしてきておると思うわけでありますけれども、一面では新しい姿での著作権侵害が大きくなってきておるのではなかろうか。この点について、これまた文化庁の認可団体として存在をしておる日本放送作家組合の今日での主張があるわけです。この日本放送作家組合は、NHK、民放との間で団体協約を結んで、脚本料について、原作者の権利について契約を取り結んでおるわけです。これ一つは、他のものと同水準で安いという問題があって、これも一つの訴えの中心はインターナショナル・ライターズ・ギルド、こういう二十三国の中で二十二番目であって、下を向いたら韓国だけしかいないというような点があるようですけれどもアメリカと比較すると実に二十対一というような相違がある。こういう点が並行してあると同時に、新しい状況として著作権侵害の団体協約は結んだけれども、これが空洞化をしてしまう。特に民放の番組制作の九〇%以上は下請化をしておって、下請プロダクションに対して放送局は原作使用料のところから始まって、一切合財をここに請け負わせてまるまる買い取っている、こういうことが言われておるわけです。いわば一本分、一回分の脚本料で何回でも再放送をやる、あわよくいけば海外輸出までやる、こういうようなことが次第に広がっておるということが言われているわけですが、この辺の実態については承知をしておられますか。
  173. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) ただいまの先生の御指摘になった事実等につきましては、関係諸団体等からのお話、陳情、訴え等で承知をいたしている程度でございまして、つぶさに実態調査した上で承知しているということではないわけでございますが、その程度の承知の仕方はいたしております。
  174. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 これは年を追って次第にこの傾向は進んでくる。特に、お昼の時間帯の番組というのはことごとくそうだと言ってもいいぐらいにいまなっておるということが言われておるわけですが、この点各団体の訴えもありますので、私も、特に小プロダクションが倒産をして、一切権利が守られなくなったとか、さまざまな問題がありますから、これは中小企業庁か郵政省かと思って、これらの問題について、いろいろ資料なり調査結果を当たろうとするわけですけれども、驚くべきことにはどこへ行っても、私のところの係ではそういうことは取り扱っておりませんというようなぐあいになって、話は持っていったけれども、頼りになる受け答えの相手がいないというような状態になっておる。一方で、その点では作家組合なり、あるいは文芸著作権保護同盟なりで契約を結び、規則をこしらえても、無法地帯のような、こういう状況がまかり通ってしまえば、空洞化をしてしまうことになるのではなかろうか。これが少なくとも日本文化行政に対して、全体として見ていかれる文化庁は、早急に具体的な実態について調査をされて、そして関係官庁、郵政省もしくは中小企業庁等とも力を合わせて解決をしていかれる必要があるんじゃなかろうかと思うのですがどうですか。
  175. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) 放送脚本とか、シナリオとかいうものの著作権料の問題につきましては、基本的には放送業者等と、それから著作権者との私的な契約の事柄でございますので、それを踏み込んでどうこうせいという立場ではございません。文化庁といたしましては、著作権法考え方に基づいて、権利が侵されないようにという基本的な制度の問題、そういうような問題についてまず確立し、それからもう一つは、著作権思想というものの普及というようなことに努めているわけでございます。ただ、そうは申しましても、現実の著作権の使用関係がどうなっておるかということは、著作権制度にも非常に関連の深いことでございますので、可能な限り実情調査して、文化庁としてどういうことをしたらいいのか、あるいはほかの関係省庁にどういうことをお願いしたらいいかというようなことにつきましては、今後検討してまいりたいと思っております。
  176. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 不当労働行為などがあれば、労働省ではすぐ取り締まることになっておって、無効の契約ならしても、これは監督官庁でいろいろ規制することはできるわけですが、この点では法律の面でも不十分な点があるのではなかろうか。やっぱり強い者と弱い者といいますか、この点では芸術家の立場というのはもっと保護されなければ、いわばこういう下請、孫請の中で、著作権保護されるべき部分も買い取りになってしまって、空洞化するという現象というのは、進行をとめることがなかろうと思うわけです。法的にはどうすればいいのかというような問題があります。労働問題なら、女性が深夜業するような契約を結んだり、最低賃金以下の雇用関係を結べば、この点については法規制もあるわけですね。これは一つ行政指導と世論とか、あるいは啓発とかで解決をされると思うのですが、まず何よりも具体的な実態調査が必要だと思いますので、恐らく各団体からの実態の訴えなり、陳情なりは、文化庁の方にも相当行っておると思いますから、それについてのひとつ調査をされたら御報告をいただきたいと思います。
  177. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) 私どもに許される限りの調査をいたしまして、結果がまとまりましたら御報告いたしたいと思います。
  178. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 著作権法に関して、特に映画の関係につきましては、いわばテレビに食われた産業として、いろいろな実態が言われるわけですが、特に映画の著作権、制作者と言えば普通文芸物なら原作者がありますけれども、映画の制作者としてだれでも頭に浮かべるのは映画監督なんじゃないでしょうか。これは昔から、黒沢明の映画とか、稲垣浩の映画とか、伊藤大輔の映画とかいうふうに、普通にも考えてきたし、映画の制作の中で監督の位置というのは高いものだと思うわけですけれども、映画監督の著作権というのは一体どうなっているわけなのですか。
  179. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) 映画の著作権といたしましては、映画制作者というものが権利者となっておりまして、現在、映画監督につきましては著作者としての権利が法制上直接に保護されておるという状況にはなっておりません。
  180. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 つまり、映画といえば監督というふうな普通の通念にも反する実態があるのではなかろうか。特に、いまのように旧作映画がどんどんテレビ等で流されて、二次使用料なんかが支払われる場合に、ようやく俳優等の場合には、二次使用料である程度の、わずかながらの補償があっても、監督については全くそういうことがない、こういう点については一考を要するのではなかろうか。特にこの中で見逃せないのは、財産権としての著作権が会社に帰属するという形で失われるばかりでなく、通常は人格権というものがその中でも残されなければならぬわけですけれども、その点についても全くの運用上の取り扱いも行われていないと思うんですが、どうでしょう。
  181. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) 現行法制におきましても、人格権としての監督の著作権というものはあるんであると、ただ財産権としては確定しておらないということの問題がございます。
  182. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 こういう映画監督なんかの場合にも人格権としては形成しておると、こういうふうに見られるわけですか。
  183. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) そのとおりでございます。
  184. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 では、人格権というのはどういう権利で、どういうぐあいに保障されておりますか。
  185. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) 人格権としての著作権内容といたしましては、現在、公表権というものと、それから氏名表示権、それから同一性保持権、それぞれ著作権法の第十八条、十九条、二十条に決められておるもの等が内容をなしておるわけでございます。
  186. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 この七六年締結のベルヌ条約のパリ改正条約、この中で、人格権のところを見ますと、映画が上映されていく過程で勝手に改造をされたり、あるいはカットされたり、つくり直されたりすることについては、少なくとも、財産権を譲渡した後であっても、これは保護されなければならぬ、というふうなことが書かれてあるわけですけれども、かなり自由自在にその点は、古い映画というのは手ごろに使われておって、裁判でもやらなければ、これは解決できぬというような状況になっておると思うんですけれども、どうですか。
  187. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) おっしゃいましたような、勝手な改ざんをするとか、いうようなことは、その人格権の内容としてそういうことは法律上禁止されておるはずでございます。  それで、これ実態がどうなっておるかということでございますけれども、まだ訴訟になったというふうなケースは余り私ども承知してはおりません。
  188. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 大臣にお伺いするわけですが、以上、著作権法を具体的に日本国に定着をさせ、特に放送関係について言いましたら、道具の方の輸出とか、海賊版を使う物質であるテープの輸出とか、機械の輸出という方はアンバランスなほど進んでおって、これはこれで保護もされておるというような状況がある一方、私もこの法律の中でタッチして改めて驚いておるわけですけれども、非常に芸術家の保護というのは立ちおくれた状況にあるというふうに見なければならぬのじゃなかろうか。  同じく芸団協が、芸術家の生活実態調査と意見の調査をやられているわけですが、東京でも、大阪でも、プロの芸術家で芸歴二十年、平均年齢四十歳超えたというような方々の中で、年所得二百万円を超える人は大体三分の一しかいないというような状況。国家公務員、地方公務員になっても恐らく勤続五年ぐらいで達するであろうぐらいの水準が、大部分の万の全体の生活水準になっておるというような状況です。こういったものを全体として保護していこうと思うなら、この条約締結に伴い、また今後の条約締結も含めて、著作権法というものを鋭意普及をし、行政指導をされる必要があるだろうと思うんです。この点についての大臣の決意をお伺いいたしまして、質問を終わります。
  189. 砂田重民

    ○国務大臣(砂田重民君) 非常にむずかしい問題をたくさんひっくるめての御指摘であったと思うんです。やはり著作権というものが持っております人格権と財産権、それはやはり双方を持っているわけでございますから、そこのところの区分をどう考えるか、その考え方にいろいろな議論がございましょうけれども、やはり映画の問題については、文化庁長官がお答えをいたしました映画についての著作権のただいまの法制上の考え方、さように御認識をいただきたいと思うのでございます。そしてまた、芸術活動で経済的な収益がどれだけのものがもたらされるかという問題は、これはやはりいろいろな問題が絡み合ってくることであると思います。ただ、日本におきます実演家を保護をする立場に私は、文化庁はまさにあると思いますので、その方向で可能な限りの努力を続けてまいりますことだけははっきりお答えができることだと思います。
  190. 有田一寿

    ○有田一寿君 この国際条約に加盟することに伴って、国内的にはいろいろな義務が生ずると思います。大きなものとしてはもちろん海賊版取り締まりということでありますけれども、一口に海賊版レコードといいましても、あるいはテープといいましても、その中にいろんな種類があると思うんです。そういう条約締結することに伴う周辺の問題について、二、三だけちょっとお聞きしたいと思います。  最初に、外国盤レコードと一口に申しますが、先ほどの久保委員の質問に対しても、輸出と輸入の比率の問題でありますけれども、輸出が七億、輸入が三十六億というふうに言われましたけれども、この外国盤を輸入するという場合に、製品としての商品レコード輸入するというのが三十六億だと思うんですけれども実態はそうではなくて、原盤契約というものを結んで、相当なギャラを外国に払って、そして物理的ないわゆる生産国内で行うと、これも洋盤と言われておるわけでございますが、これは三十六億どころではない。その数字についてお伺いをまずいたしたいと思います。
  191. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) わが国におきます外国原盤レコード生産状況でございますが、これにつきましては、昭和五十二年におけるレコード協会の調査によりますと、ディスクといたしましては、金額にして六百八十八億円でございまして、ディスクの生産額全体の四二%を占めておるわけでございます。テープにつきましては巻数で四百五十万巻、金額にいたしまして九十二億円でございまして、このシェアは全体の一六%という状況でございます。
  192. 有田一寿

    ○有田一寿君 そこで、三十六億の外国輸入に比しまして、約二十倍の洋盤レコード国内生産されておる。しかしながら、これは全部相当なギャラを海外に払った上で生産されているという実態があるわけでございます。それで、輸入と輸出の比率は、この音楽に関しましては、一対九九というふうに考えてしかるべきものと思うんです。ところが、資本自由化によっていまはフィフティー・フィフティーということで五〇%、外国日本の市場に出資してよろしいということに現実になっておるわけでございますが、その問題も、それからいまのギャラを海外に払う問題もこれは一対九九と、言いかえれば音楽に関しては一方交通であると、全部入ってくるだけで、日本から出すという面がないということで、その海外に払うべきギャラはぎりぎりまで私は取られておると思うんですよ。これは恐らく企業秘密ですから余り調査されてもなかなかレコード会社は言いたくない、言わないと思うんですが、ということは競争原理が働いているわけで、そのレーベルをほかに持って行かれると困るから、向こうの言いなりにどうしても聞かなきゃならぬ。したがって、利益調査をなされば、べートーベンその他クラシック物からポップスに至るまで、洋盤レコードはこれだけたくさん輸入され、生産もされておりますけれども、余り利益になってないんではなかろうかと思うんです。ということは、一対九九というこの基盤に問題があるわけで、しからばといって、ではこれを半分半分輸入もし、輸出もするというようなふうに、これは無理にできる問題でもございませんから、これは日本の現実だと思うので、そこら辺にレコード製作者が苦労しているということを、これは認識をしなければならない。したがって、海賊版の問題、あるいは放送から生テープに私的複製をやって、これを頒布する等のことを大っぴらにやられますと、レコード産業というものは成り立たなくなるというのが日本の現状であろうと思うわけです。それで、不況になってもレコードはあんまり売り上げが下がらないということが言われておりますけれども、それはささやかな娯楽だということに原因があろうというふうに私は思うんです。  それで、五十二年度の書籍の出版の金額と、それからレコードテープ金額と、競馬、競輪、競艇の金額と、これおわかりですか。——なければ、どうせこの資料を見て転記した数字ですから私から申し上げましょう。これは先ほどお答えになりましたレコードテープ金額が二千二百億、これはこのとおり。それから、出版は一兆五千八百九十三億円ですね、五十二年度。それから競馬、競輪、競艇は四兆三千億円。ですから、レコードよりも出版の方が八倍なんですよ。だから書籍についての物品税をいまさらまた取るべきだとは決して私は申しません、それは書籍も文化商品ですから。しかしながら、一・八%の物品税を仮に本にかければ、そうすれば、いまレコードから取っておる三百億近くの年間の物品税は本に一・八%かけただけで、これで大蔵の財源は同じ財源が確保されるということは言えると思うんです。まあ、しかしそういう暴論を吐くわけではなく、ただたとえの話として申し上げておるだけです。それで、片一方はゼロにして、そしてレコードの方だけ一五%かける。しかも、売り上げからいえばいまの一兆数千億と二千二百億の差ですね、これは私は弱い者いじめ以外の何物でもないというふうに思うわけです。まして海賊版レコード換算で一兆二千八百億円も流通しているということになれば、経営主体が明瞭でありませんから、課税対象になりにくいんでしょうけれども、仮にこれで法人税を取るとすれば三千億の法人税は年間で確保できる。そうすると、レコードから三百億をこれ取りやすいから自動的に取れますけれども、私はこれはもう行政としてはまことに承服しかねるおかしいことではなかろうかと思うわけです。  それから、次にこの学術的なもの、あるいは教育レコード等ですね、除外規定の中に列記されてありますものを大蔵省も言うわけです。これだけ減免措置を講じてありますと言いますが、このレコード総売り上げの中で、いまの減免措置を受けているものがどの程度あるだろうか、お調べになったことありましょうか。
  193. 吉久勝美

    政府委員吉久勝美君) 遺憾でございますが、まだ調査をいたしておりません。
  194. 有田一寿

    ○有田一寿君 私も調査はしていないんです。資料も持ち合わせがございませんけれども、恐らく先ほどちょっと非公式に大蔵当局にも言ったんですが、そう詭弁を弄してもらっては困る。項目にすれば大変たくさんの免除規定の項目がありますけれども、これを金額に換算したら恐らくもう微々たるものだろうということを申し上げたわけです。  それから、みみっちい話ですからここで言うにふさわしいかどうかわかりませんけれども物品税をレコードから取るのはもう大変取りやすいということは、猶予期間がレコードの場合は二カ月で物品税は取り上げる。そうしますと、いまレコードの方が約二十億ずつは立てかえているわけです、そうしないと間に合わないから。ですから二十億を常に立てかえさしておるということも、これも私は弱い者いじめではなかろうかと。まあ、文化庁に言っても、これは大蔵省に言うべきことですから、もうこれ以上申し上げませんけれども、以上のような実態になっているということだけはどうか認識していただきたいと思います。  それから、いわゆる救済措置の問題ですけれども、生テープですね、これはいま再販価格はありますか、お尋ねいたします。     —————————————
  195. 吉田実

    委員長吉田実君) 委員異動について御報告いたします。  ただいま和田春生君が委員辞任され、その補欠として田渕哲也君が選任されました。     —————————————
  196. 有田一寿

    ○有田一寿君 結構です。生テープには再販価格がありません。したがって、いまは千円で三本というのが大体の実態じゃないかと思います。最初は一本六百円ぐらいで売れていたようです。ですから生テープというものは非常に安いわけですね。それに音を記録した途端にこれが価値が生ずるというわけです。それで、海賊版というものが非常に普及する理由はそこにあるわけです。したがいまして、この救済措置としてたとえば西ドイツ方式のように、西ドイツは機器にかけるわけですね、ハードに五%をかける、それの卸売価格にかける。それからフランスの方は生テープの方にかけようといま研究中だそうで、まだ結論は承知しておりません。したがって、これはお尋ねしたいんですけれども、ハードの方は電子機器工業会というものがありますし、それから生テープの方は磁気テープ工業会というものがございます。結局二つの団体と話して合意を得る必要がある。この二つの団体が合意すれば、そういうことがわが国でも可能になる。仮に五%が無理ならば三%でも二%でも可能になると思うんですが、そういうようなことで意見聴取をなさったとか、間に入ってお話し合いを進めたとか、そういう何かございますか。
  197. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) 録音機器等の日進月歩の進歩の状況は世界的な状況でございまして、おっしゃいましたテープであるとか、あるいは機器自体に著作権料をかけていくという方向は国際的にもそういう話が出ておることを承知しております。日本におきましても、著作権審議会の特別委員会で子の問題につきまして検討を始めております。その小委員会におきましては、機器メーカーの方たちも御参加いただいて、検討をいま進めつつあるところでございます。
  198. 有田一寿

    ○有田一寿君 レコード日本で年々売り上げが増加してきた、五十二年度は逆にダウンしたようですけれども、それまで増加をしてきたと、それからカセットについても同様でございますが、その理由というものは、どういうところにあるとお考えでしょうか、文化庁長官
  199. 犬丸直

    政府委員犬丸直君) これはいろいろな事情によるものと思いますけれども、いまの機器等で簡単に録音等ができるというような状況がだんだんはびこってきたということも一つの原因ではなかろうかと思いますが。
  200. 有田一寿

    ○有田一寿君 簡単にできると言ってもそれは海賊版の話でして、会社がつくる場合はなかなか簡単にはできないわけですね。ですから、これはいろいろあると思いますけれども、ふところが豊かになったということもあると思いますし、それから小学校のときからの音感教育が非常に定着してきたということも言えると思いますし、あるいは文化的な雰囲気が高まってきたということも言えましょう。それと、やはり機器が普及してきたということですね、レコードにしても、カセットにしても。これは大きな機器をつくっておる、ハードメーカーの功績だと思うんです。だから、レコードの方も業界としてはそれに感謝しなきゃならぬ。一方的に五%かけたらいいということも簡単には言えない。だから、お話し合いの上で、合意の上でやる必要があろうというふうに先ほど申し上げたわけであります。それと先ほどちょっと触れましたように、外国はレジャーは休暇が長いということもあって、なかなか大型レジャーでございまして、雨が降ればレコードが売れると、こう言われている。それはもうボートに乗ったり、海、山に出て行ったりということができないから、まあレコード店でも行って、レコードを一、二枚シングル盤でも買ってくるかということですね。だから、日本レコードにささやかな娯楽を求めている。だから本当にはまだ豊かになっていないということは言えるんじゃなかろうかということも考えるわけです。  まあいずれにいたしましても、朝からいろいろ詳しく論議をされましたから、もう私は何も申し上げることはありませんけれども文化的な国家として日本がこれから伸びていくためには、形に見える物をとれば犯罪になる、しかし目に見えないもの、音をとるというようなこと、これは犯罪感覚が薄いということは、これは文化国家としては致命傷だろう。そういう無形のものも有形のものも、同様に価値を持っているものをとった場合は、これは犯罪であるというこの考え方を、やはり子供のときからしみ込ませておく必要があると思うのです。そうでなければ大きくなっても海賊版等は悪であるという観念にはならないんじゃないか。だから、これは学校教育の中でも何らかの形で私はそういうことを教える必要がある。たとえば音楽鑑賞会等をクラブ活動でやるようなときに、最後に指導教師の方が、こういうものだけれども、これを家庭でただ聞くだけはいいけれども、これをとって友だちに手広く渡すとか、あるいは多少でもお金をもらって、またそれを分けてやるというようなことは犯罪だぞということは教える必要があるんじゃないか。そうしないと、今度のこの国際条約に入って外国版の権利保護するんだといっても、これは口だけでしてね、実際にはそういうことは行われないであろう。そうなると、これは相互条約ですから、外国は守った、しかし日本は守らず、ますます海賊版がふえたといったことだったときは、やはり私はこれは国辱問題だというふうに案ずるわけでございます。  以上で私の質問は終わります。
  201. 吉田実

    委員長吉田実君) 他に御発言もなければ、質疑は終了したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 吉田実

    委員長吉田実君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  著作権法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  203. 吉田実

    委員長吉田実君) 全会一致と認めます。よって、本案は原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  粕谷君。
  204. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 私は、ただいま可決されました著作権法の一部を改正する法律案に対し、各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。    著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるべきである。  一、著作隣接権保護の徹底を図るため、「実演家、レコード製作者及び放送事業者の保護に関する条約」にすみやかに加盟すること。  一、商業用レコードの二次使用料については、実演家及びレコード製作者と二次使用者との間に十分な協議が行われ、適正な基準が設けられるよう配慮すること。  一、放送・レコード等から複製する録音・鏡面が盛んに行われている実態にかんがみ、現在行つている検討を急ぎ、適切な対策をすみやかに樹立すること。  一、教育及び芸術文化の普及向上に資するため、図書・書籍の例にならい、レコード物品税につき、非課税措置のあり方等を含め、検討配意すること。   右決議する。  以上でございます。委員各位の御賛同をお願いいたします。
  205. 吉田実

    委員長吉田実君) ただいま粕谷君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  206. 吉田実

    委員長吉田実君) 全会一致と認めます。よって、粕谷君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、砂田文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。砂田文部大臣。
  207. 砂田重民

    ○国務大臣(砂田重民君) ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、政府といたしましてはその御趣旨を体し、誠意を持って対処いたしたいと存じます。
  208. 吉田実

    委員長吉田実君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  209. 吉田実

    委員長吉田実君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時一分散会      —————・—————