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1978-03-23 第84回国会 参議院 文教委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十三日(木曜日)    午前十時六分開会     —————————————    委員異動  二月十五日     辞任         補欠選任      白木義一郎君     宮崎 正義君  二月二十日     辞任         補欠選任      宮崎 正義君     白木義一郎君  二月二十二日     辞任         補欠選任      長谷川 信君     岩上 二郎君  三月一日     辞任         補欠選任      小巻 敏雄君     小笠原貞子君  三月二日     辞任         補欠選任      宮之原貞光君     浜本 万三君      小笠原貞子君     小巻 敏雄君  三月三日     辞任         補欠選任      浜本 万三君     宮之原貞光君  三月十三日     辞任         補欠選任      塩見 俊二君     高橋 誉冨君  三月二十二日     辞任         補欠選任      久保  亘君     吉田 正雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         吉田  実君     理 事                 後藤 正夫君                 世耕 政隆君                 粕谷 照美君                 小巻 敏雄君     委 員                 岩上 二郎君                 山東 昭子君                 二木 謙吾君                 勝又 武一君                 白木義一郎君                 田渕 哲也君                 有田 一寿君    国務大臣        文 部 大 臣  砂田 重民君    政府委員        文部政務次官   近藤 鉄雄君        文部大臣官房長  宮地 貫一君        文部大臣官房会        計課長      西崎 清久君        文部省初等中等        教育局長     諸澤 正道君        文部省大学局長  佐野文一郎君        文部省学術国際        局長       井内慶次郎君        文部省社会教育        局長       望月哲太郎君        文部省体育局長  柳川 覺治君        文部省管理局長  三角 哲生君        文化庁長官    犬丸  直君    事務局側        常任委員会専門        員        瀧  嘉衛君    説明員        警察庁刑事局保        安部少年課長   古山  剛君        行政管理庁行政        監察局監察官   山田 博幸君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○教育文化及び学術に関する調査  (文教行政基本施策に関する件)  (昭和五十三年度文部省関係予算に関する件) ○日本学校安全会法及び学校保健法の一部を改正  する法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 吉田実

    委員長吉田実君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二月二十二日、長谷川信君が委員辞任され、その補欠として岩上二郎君が、また三月十三日、塩見俊二君が委員辞任され、その補欠として高橋誉冨君が、さらに昨二十二日、久保亘君が委員辞任され、その補欠として吉田正雄君がそれぞれ選任されました。     —————————————
  3. 吉田実

    委員長吉田実君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、本委員会理事が一名欠員となっておりますので、ただいまから補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任いただきたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 吉田実

    委員長吉田実君) 御異議がないと認めます。  それでは、理事に小巻敏雄君を指名いたします。     —————————————
  5. 吉田実

    委員長吉田実君) 教育文化及び学術に関する調査中、文教行政基本施策に関する件及び昭和五十二年度文部省関係予算に関する件を議題といたします。  本件について質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 勝又武一

    勝又武一君 大臣は就任なさいました第一声を覚えていらっしゃいますか。そのときに、日本教育は転換期にある、消費者教育重要性を強調されました。カリキュラムの中にこれを取り入れる、積極的に取り入れるという意向を示されましたが、この点所信表明の中でどのようになさっていらっしゃいますか。
  7. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 消費者教育教育の場でのことのお尋ねでございますが、すでに小・中学校で自、社、民、公四党で共同提案をいたしました消費者保護基本法を受けまして、その中に書かれております消費者が果たさなければならない役割り、賢い消費者になるための勉強のあり方は、小・中学校学習指導要領の中にすでに取り入れられているわけでございます。しかし、私が考えますと、同時に消費者保護基本法の中には企業責務もまた明確になっているわけでございまして、小・中・高の学習指導要領に私が目を通しましたときに、企業者としての責務ということについての教育が、学習指導要領の中で明確になっておりません。  そこで、いま取り組んでおります高等学校学習指導要領の中で、企業の果たすべき社会的責務というものの基本だけは少なくとも明確にしておくべきだと、かように考えたわけでございます。すなわち、学窓を巣立って青少年たち社会に出ますと、芸術の道に進む人もありましょうし、社会福祉の道に進む方もありますけれども、大多数の青少年はやはり経済活動をするわけでございますから、その企業の果たすべき社会に対する責務基本というものが、やはり消費者に対して提供をする商品、サービス、役務についての責任を持つことだ、こういう意識高等学校においては少なくとも明確に教えられた上で社会に出ていくべきだ、かように考えたものですから、ただいま文部省で検討いたしております高等学校学習指導要領の中で、そのことを明確に書き記すことを事務当局に指示をいたしておるところでございます。
  8. 勝又武一

    勝又武一君 それから、文教問題を経済問題よりは下に置くわけにはいかない、こういうことを第一回の記者会見の席上で申されておりますが、これも所信表明なり、五十二年度予算の中にどう生かされましたか。  文教予算全般に関して見ますと、一五・二%の伸び率でありますし、一般会計全体の伸び率の二〇・三%と比較してきわめて低いと思うんです。昨年度も全体の一七・四%の伸び率に対して、文教予算は一三・八%でありましたし、二年続いてこのような状態であるわけです。公共投資一点張りのかけ声でありますけれども、これらの一例を見ただけでも、教育が軽視されているというように考えますが、どうですか。
  9. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 所信表明冒頭に、教育というものは永遠に国の根幹であるということを明確に申し述べてあるところでございますけれども、確かにただいまは経済の問題、不況脱出国際経済の中での立ち直り、こういうことを大多数の国民の皆さんが熱望しておられる、言いかえますと、まさに五十三年度もまた経済の年であろうということは理解はできますけれども、そういう困難な経済状態からわが国が抜け出し得ますのも、やはり日本人の頭と日本人の心で抜け出さなければならないわけでございます。まさにある年は経済の年であり、ある年はまた何かのテーマを持った年であるかもしれませんけれども教育というものは、これはもう変わらざる永遠の国の根幹であるということをかたく私は信ずるものでございます。  ただ、もう率直に申し上げますけれども、しかしその考え方は、考え方としては多数の方の共鳴をいただけるという確信は持ちます。しかし、それは頭で考えるだけではなくて、行動として教育という問題に国の施策の最重点を向けていくということについては、残念ながら社会全体、政治社会においても、まだその気持ちが定着をしているとは決して申せない。しかし、教育がもう永遠の国の根幹であるという意識を、政治社会にも定着をさせていくことが文部大臣責務であると、さように深い責任を感じるものでございます。  いま御指摘の、数字を挙げての教育が重要視されていないという御指摘でございましたけれども非常事態とも言うような予算編成をいたしました中で、可能な限りの努力をいたしましたその結果を、ただいま予算案として御審議をいただいている段階でございます。私は一五・二%程度文部省予算全体は、多い少ないという御議論はございましょうけれども、この予算の範囲内でひとつ最大の努力を続けてまいりたい、かように予算編成段階決意を新たにいたしたものでございます。
  10. 勝又武一

    勝又武一君 さらにこの第一声の中で、心の温かい子供を育てよう、あるいは心のつながりを持って指導できる先生が欲しい、こういうこともおっしゃっておりますが、この点は大臣としてはどのように生かされましたか。
  11. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 具体的に申し上げますと、小・中学校のすでに発表いたしました学習指導要領改定もまたこのことを物語っているということを、私は自信を持って申し上げられると思うのです。いままで知識詰め込み詰め込みに偏り過ぎていたという反省の上に立って、各方面の御意見ちょうだいをいたしながら、学習指導要領改定をいたしております。ゆとり時間を設けていこうと、やはり教育の目的の基本が人格の完成にあることでございますから、知識詰め込み詰め込み暗記力を強要するがごとき従来のあり方というものは、私は反省あって当然であった。やはりそこには思いやりのある、温かみのある人間こそが、日本国の将来のために私は必要な人材であると確信をいたすものでございます。
  12. 勝又武一

    勝又武一君 続いて所信表明に関しまして、以下具体的に幾つかの項目についてお伺いをいたしたいと思います。  この第一ページに、文教行政基調として、「個人の創意自主性及び社会連帯感を重視し、世界の平和と繁栄に貢献し得る知・徳・体の均衡のとれた情操豊かな日本人育成」とされています。全く大賛成であります。しかし、この教育の現状はいかがでしょうか。現実と余りにも食い違っているというようにお考えにならないでしょうか。学歴偏重学歴社会の打破、これも大臣藤井労働大臣と会って話しするというニュースもございましたが、そういうことだけで解決できるなまやさしいものでもないと思うんです。この基調を貫くために教育制度をどう変えていこうとなさるのか、教育現場をどう改善しようとなさるのか、御決意伺いたいわけです。
  13. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 私は教育というものは、学校教育だけでいまのいわゆる荒廃をしているという批判を受ける教育が、改善されるものとは考えておりません。やはり学校教育社会における教育、また家庭における教育、こういうものが一貫して緊密な連携をとりながら、青少年児童生徒育成を目指してまいらなければならないものと考えますけれども所信表明に書きましたことは、その中で教師方々に対してのことを余り申しておりません。家庭に対しても物は申しておりません。それはやはり民主主義の一つの非常に大事な基本であると私が考えておりますみずからの責務を果たした者が他の人の責務についても言及できるんだ、この基本を貫きたいと思いましたので、いま申し上げました学校教育社会教育家庭教育の中で、まず文部省として果たさなければならない責務が何であるか、五十三年度において文部省が果たし得る役割りは何であるか、かくかくしかじかのことだけは何としてでも文部省としての責務を果たします、そういう従来の反省の上に立っての文部大臣としての所信表明をいたしたものであることを、どうぞひとつ御理解をいただきたいと思うのでございます。
  14. 勝又武一

    勝又武一君 教育大臣のおっしゃるように学校社会家庭、全くそのとおりだと思うんですが、しかし、その中での学校教育重要性があると思うのですね。おっしゃっていらっしゃるような日本人育成をするためには、まずやはり教師自身がこのような人物にならなくてはならないと思うんです。そういう意味では文部省はもっと現場教師自主性教育現場創造性、これを尊重するような行政指導をこそ行うべきではないでしょうか。所信表明文章はまさにりっぱですし、そのとおりだと思いますが、実際の文部行政は逆ではないかとさえ思われてなりません。そういう意味で過去の実情を見ましても、余りにもこの文章文部行政のやり方がかけ離れている、そういう感じがいたしますが、いかがでしょうか。
  15. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 冒頭に申し上げました学習指導要領改定にいたしましても、これが児童生徒のために本当に役立ちますためには、やはり現場先生方創意工夫に待たなければできることではございません。文部省だけで事ができるものでもございません。各都道府県教育委員会がいかように努力をいたしましても、それだけで教育が正常化されるものでもございません。やはり文部省行政、各都道府県教育委員会努力、そして現場教員方々研さん研さんを重ねていただきました上での現場での創意工夫が渾然一体となって、初めて学習指導要領も私ども考えておりましたように生かされた教育内容になると確信をいたすものでございます。
  16. 勝又武一

    勝又武一君 全く賛成ですが、教育現場代表意見、あるいは教職員組合代表と会談すること、こういうことなどもきわめて重要だと考えますが、どうでしょうか。そして、今後そうするための努力もなさっていただけますか。
  17. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 当然のことでございます。各教育団体とも何度かずつ私もいままでも懇談を続けてまいりました。ある教職員団体とはお目にかかって全く意見の対立のまま終わる問題もございます。しかし、またお互いに協力し合えることもあるではございませんか。もう率直に申し上げますけれども、坊主憎けりゃけさまで憎いという姿勢は私は断じてとりません。何か対話のないようなところはまさに不毛の状態でございます。もう積極的に現場方々ともこれからも懇談を続けてまいる、そういう決意をいたしております。
  18. 勝又武一

    勝又武一君 続きまして、「国民能力の基盤を培う重要な課題であります。」こういう個所がございますが、この「国民能力」という概念はどういうことでしょう。
  19. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) もう言葉どおり日本人の持っております能力を、いわゆる人間能力開発をしていかなければならないということでございます。
  20. 勝又武一

    勝又武一君 それから、この「小・中・高等学校を通じて一貫した教育内容の整備」という個所がございまして、これ全く賛成なんです。しかし、現在の学校制度そのままで実現することはむずかしいのではないかというように私は考えますが、特に中学高校との一貫化、これをいまの制度そのままでどうしてやられるのか。むしろ、現在の高校あり方を抜本的に変えていかなければできないのではないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  21. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 先般の教育課程審議会答申におきましても、中学校青少年のほとんど大多数の者が高等学校に進むようになりました。いっとき昔と様相がすっかり変わったわけでございます。国民教育機関としての性格を強めてまいっていることにかんがみまして、小・中・高等学校の十二年間の教育内容を一貫的に把握をして、児童生徒の心身の発達や、学習適自性などを考慮して、それぞれの学校段階において確実に身につけさせるべきだという基礎的、基本的な内容について、教育内容が一貫されるべきだという答申ちょうだいをいたしました。まさにそのとおりでございます。しかし、従来の学習指導要領は、特に高等学校学習指導要領につきましては、必ずしも小・中学校との一貫性を持っておりませんでしたので、この答申文部省といたしましては尊重いたしまして、小・中学校学習指導要領改定を昨年行い、また一貫性を持ったものとしての高等学校学習指導要領改定とただいま取り組んでいるところでございます。いま先生指摘の六・三・三制の制度そのものを根本的に、抜本的に変えなければそれができないではないかという御議論があることも承知をいたしております。しかし、そのことはそう簡単に踏み切れるものでもございませんし、また、取り組むといたしましても非常に長い経過期間もまた必要でございましょう。したがって、いまの学制の中においての一貫した教育内容を貫くための学習指導要領をまずとってまいりたい。同時に、小・中・高の一貫してということは、中学校高等学校の一貫したあり方ということも試行的に進めながら、現在の制度の中ででき得るもう最大限の努力をしていく、こういう考え方からとった道でございます。
  22. 勝又武一

    勝又武一君 時間の関係でこの点はここで打ち切りますけれど、私の言わんとした高校あり方を抜本的に変えるという意味は、六・三・三制度そのものまで変えなくても、高校あり方を抜本的に検討する方法はあるのではないか、そういう意味合いで申しましたので、それだけはそういう意味だということを申し添えておきます。  次に、教職員定数改善についてお伺いをいたします。  この点も文相の所信表明の中で四十九年度からの五ヵ年計画を完成させるとおっしゃっています。確かに五ヵ年で二万四千三百七十八人、五十三年度六千五百九十人の増であります。そして、学級編制改善小・中学校教諭定数改善養護教諭事務職員定数改善、こういうことが主としてうたわれています。ところが、実際にこの内容を見ますと、学級編制基準改善も四十五名はそのままですし、複式等改善にとどまり、小・中学校教諭改善も、寄宿舎等ごく一部の改善にとどまり、養護教諭配置率も七六%、事務職員配置率も七三%までの引き上げという改善にすぎません。この程度改善文部省の言っていらっしゃるゆとりある、しかも充実した教育が行われるとお考えになりますか。
  23. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 教職員定数改善学級編制基準を絡めての御質問でございましたが、四十九年を初年度に進めました第四次の五ヵ年計画が五十三年度ですべて完了をいたすわけでございます。これは完了いたしました時点で、過密地域過疎地域とに大変な違いが出てまいりましょうし、こういったことを含めまして、第四次のこの計画が完遂いたしましたその状態を全国にわたって悉皆調査をしたい、かように考えるものでございます。その調査結果を踏まえて第五次の改善計画をひとつ十分考えてまいりたい、かように考えているものでございます。  なお、学級編制基準が四十五人そのままではないかという御指摘がございました。四十五名よりも四十人に減らすことが私も好ましいと考えております。でき得ることなら三十五名、三十名ということを、理想的には考えを持つものでございますけれども、同時に、現実問題といたしましては、ここ何年かの間に百二、三十万の新しい学童を受け入れなければならない、それに対応する措置もまたとらなければならないわけでございます。しかも、その百二、三十万増の学童生徒過密地帯に集中をしてくるという事態がございます。やはり、国力と申しますか、財政力と申しますか、そういうものも考慮に入れざるを得ないわけでございます。四十九年を初年度にいたしました第四次の改定計画完全実施をいたしましたその結果の悉皆調査を踏まえて、これらの点を根本的にひとつ検討をしたい、かように考えておるものでございます。
  24. 勝又武一

    勝又武一君 文部省におきまして小学校中学校で一時間の授業を行うためには、事前の準備教材研究、事後の指導、あるいは授業企画等のために、どの程度の時間が必要と考えていらっしゃいますか。平均して最低一時間程度は必要だというように従来から文部省もおっしゃっていらっしゃいましたが、この点はいかがでしょうか。
  25. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 先生が自分の授業を展開するためにどのぐらい準備を必要とするかということは、その担当なさる教科内容その他によっても違いますでありましょうけれども、逆に先生が一週間のうちに授業を担当する時間がどのくらいが適当か、こういう議論があるわけでございまして、三十三年に標準法をつくりましたときには、小学校先生について言えば、一週間の授業時数を二十六時間、中学校は二十四時間、高等学校は十八時間ということで想定をいたしましたが、その後逐年の定数改善によりまして、四十九年の調査でございますと、小学校は二十三時間、中学校が十八時間強、高等学校は十五時間強ということになっておりますので、先生全体のいわば拘束される勤務時間というようなことを考えますと、ただいま御指摘のように、一時間の授業について少なくとも一時間は要るんじゃないかという、その時間は十分考えられると、こういうふうに思うわけでございます。
  26. 勝又武一

    勝又武一君 なお、教育をする者にとりましては、直接の授業と関連する準備だけでなくて、もっと幅広い研究活動が必要ではないでしょうか。子供たちにとって生き生きとした魅力ある授業を行うことができるのではないか、そういうように考えますが、この点についての見解はいかがでしょうか。局長で結構です。
  27. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) おっしゃるとおりだと思います。やはり、いろいろな機会先生研修をしていただき、いろんな見聞を広めていただくということは大いに必要なことでありますので、文部省としましても、また各都道府県教育委員会におきましても、そういう研修機会につきましては、これまでも十分配慮してまいりましたし、今後も一層そういう方向で努力をいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  28. 勝又武一

    勝又武一君 先ほど局長がおっしゃいました調査は、四十九年時点での調査ですか。小学校二十三時間、中学十八時間、高校十五時間とおっしゃっていますが、現場ではこの標準を数時間上回って担当しているのが実情であります。たとえばA県で申しますと、小学校で二十八時間、これはもちろん全部一週間当たりの担当授業時間数ですが、小学校では二十八−二十九時間が約四〇%、三十時間が二四%であり、合計六四%。中学校でも二十六−二十七時間が約一三%、二十九時間以上が約三%もいるという調査結果になっていますが、この点をどうお考えになりますか。つまり、A県だけがそうであって、他の四十六県は全部違うんだと、文部省の言うとおりだと、こうおっしゃるのかどうか。
  29. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) そういうふうにはもちろん考えません。ただ、私どもが調べましたところでも、いまの二十三時間、十八時間、十五時間というのは、それぞれ平均した教科担当授業時数でございますから、それぞれの教員につきまして調べますと、たとえば小学校で言えば二十時間以下のものというのが一五・五%ありますし、二十一時間から三十時間のものが七九・八%、三十一時間を超えるものが四・七%ということで、学校教員構成なり、その教員が持ちます教科内容なりによって大分差がございますので、あるいは先生がおっしゃったように、統計のとり方によってはそういう時間が出てくる県もあろうかと思うわけでありますが、大体の実際の傾向としては、いま申し上げましたように、平均の教科担当時数というものを全国的に見ました場合には、そう間違いの数字ではないだろうというふうに思うわけでございます。
  30. 勝又武一

    勝又武一君 大分違うと思いますが。このように教員受け持ち授業時間数が過重になってきたのはなぜなのかということです。その原因は、私は第一に教頭や主任等担当授業時間数が減ってきたこと、第二にいわゆる充て指導主事や、長期または短期の教員研修が定員の枠内で行われていることにあると思いますが、どうでしょうか。たとえばB県の調査によりますと、小学校の教頭で一時間も授業をやらないものが七二%、八時間以下が二二%です。中学校でも、教頭の授業時間ゼロが四〇%、十一時間以下が五九%となっています。また小学校の教務主任で九時間以下というものが五三%もあります。このような実態をどうお考えになりますか。これもまたB県だけがそうであって、他の四十六県は全部違うと、こうおっしゃるんでしょうか。
  31. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 御指摘調査内容は恐らくそのとおりだと思います。ただ私ども考えを申し上げますと、校長、教頭が授業をますます担当しなくなるんではないかというような御指摘でございますが、教頭につきましても、四十九年にこれが法制化されて、校長の補佐として管理的な職務がはっきりしたというようなことがあり、また現実に学校という一つの組織体を運営する上において、校長、教頭というものが直接授業を担当するよりも、いろいろの校務を処理しなけりゃならないという実態があるわけでございますので、そういう意味で、定数上は校長はもちろん教頭につきましても、逐次教頭の定数という形で増員をいたしております。しかしながら私は、そうだからといって教頭が授業を担任しなくていいというふうにはさらさら思わないわけでありまして、やはり教頭はもちろん校長もできるだけ日常子供に接して、授業を担当していただくということは、これは非常に望ましい姿だと思いますので、今後も文部省考えとしては、そういうことで県の方を指導してまいりたいと思うわけでございます。  また、主任の問題がございましたが、この主任は、それでは一体実態としてどのぐらい授業を担当しておるかということでございますが、これも五十年の五月に実態調査をしましたところでは、教務主任が大体一週に二十二時間ぐらい、その他の主任は二十五時間ぐらいという全国的な統計が出ておるわけでございまして、その点は永井前大臣のときにも、主任も引き続き、制度化されたからといって授業を放棄することのないように、十分児童生徒に接触するように、こういうことを言っておられますし、文部省も同じような考え指導してまいりたい、かように思います。
  32. 勝又武一

    勝又武一君 全く大違いですね。これどこの県の調査なのか、後で聞かしてほしい。特に三年前ぐらいじゃないんですか。三年前でもこんなことはないはずです。まして三年以上たっているいま、これはとんでもない話で、よっぽど文部省も雲の上もいいところだというように正直に思いますよ。それから教頭も授業を持つ、校長も授業を持つことに賛成だと、私も大賛成なんだ。小学校のとき校長さんの一週間に一回ぐらいの授業というのは、いらっしゃっる委員の皆さんも御記憶があると思いますがね、非常に感銘を受けているわけですよね。ところが、ほとんどいまいませんよ、そういう校長さん。文部省だけが、局長だけがこういうところでそうおっしゃっていて、現場がそうなっていない実態をどうなさるんですか。これはやっぱり、文部省がそうお考えなら大臣、これ大臣にお願いしますが、私も賛成なんだ。だからそういうようになるように、そういうことこそ力を入れて指導すべきなんだ、ほかのことはやめても。こう思いますので、これはそのことを強調しておきます。  それからもう一つ、養護教諭事務職員が配置されていない小規模校の実態がありますが、この場合、一般教員がその仕事を分担し合い、大変な過重労働になっている。それこそ研究時間どころじゃなく追い回されている。こういう点も雲の上の文部省御存じですか。
  33. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) ただいまの授業担当の時数の問題でございますが、雲の上というお話でございましたが、いま申しましたように実際に調査がございまして、ただ私いまそらで申し上げましたが、中学校はもう少し少なくなっております。しかしながら、小学校で申し上げますと、教務主任が二一・五時間、学年主任が二八・一時間、保健主事が二四・四時間というふうな調査がございますので、これは勝手に申し上げているんではないということをひとつ御認識をいただきたいと思います。  それから、養護教諭の問題でございますが、確かに養護教諭は今度の五十三年度の五ヵ年計画が終わりましても、七五%強の学校に設置されるということでございますから、全校必置というところまでいっていない。したがって、その養護教諭のおられない学校については、かわりの先生がその仕事をされるという意味で、非常に御苦労をなさっておる面もあるということは十分承知をいたしております。ただ、この問題は三十三年以来逐次増加をしてくるということで、国の財政状況等も見ながらやってまいったわけでありますから、さらに全校必置の方向に向かって引き続き努力を払ってまいりたい、かように思うわけでございます。
  34. 勝又武一

    勝又武一君 わずか一例を挙げただけでありますが、まさに教育現場では授業一時間に対して事前準備、研究、事後指導等に一時間が必要だというような、そういう状態にほど遠い、こういうことが言えると思うんです。ゆとりのある、しかも充実した学校生活とおっしゃいますが、ゆとりのあるというのは、具体的にはこういう事態改善していくこと、教育課程の強化の授業時間数を減らすことだけではゆとりが生まれないというように考えますが、いかがでしょうか。
  35. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 先生の御指摘数字と初中局長が御答弁をいたしました数字は少し食い違っておるようでございますけれども、初中局長のお答えをいたしました数字も私は誤りではないと思うんです。ただ、いま聞いていますと、これは五十年調査だそうです。さらに、これからいま先生が御指摘がありましたゆとりのある学校での学校生活、こういうことを目指してまいらなければなりませんだけに、先生方におかけをいたします御苦労は、いままでよりももっとふえてくるわけでございます。子供たちにはゆとりを持たせますけれども先生方に持っていただくゆとりがございません。それだけに第四次の定員改善が終わりました後の悉皆調査が、過密、過疎の地域でどういう状態になっているかという実態調査に合わせまして、事前、事後の先生方準備時間等、これもひとつ一緒に調査をいたしまして、第五次の改善計画の重要な一つの資料にさせていただきたい、かように考えるものでございます。
  36. 勝又武一

    勝又武一君 最後に、以上の点から学級編制基準の現行四十五名を、少なくとも四十名、週当たりの担当授業時間数を小学校中学校ともに十八時間、高校は十五時間程度、こういうことを基本とした定数標準法を抜本的に改善する、そういうお考えはございませんか。
  37. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 学級編制基準につきましては、先ほども申し上げましたとおりに、教員定数改善ともまた絡み合うことでもございます。そしてまた、先ほどもお答えいたしましたが、ここ数年間で児童生徒百二、三十万増に対応をしていかなければなりません。それに対応する先生を確保いたしますとともに、施設の確保もしてまいらなければなりません。しかも、それが百二、三十万の児童生徒増が過密地帯に集中をしてくる、こういう現実問題にも対応をいたしてまいらなければなりませんので、今日いま直ちに四十五名という学級編制基準を、これを改めるということは非常に困難でございます。次の重要課題として検討を続けさせていただきたい。先ほど申し上げました悉皆調査結果等もよく見届けました上で判断をしてまいりたい、かように考えるものでございます。
  38. 勝又武一

    勝又武一君 次に、青少年の非行問題についてお伺いをいたします。文相の所信表明にかかわって、特に中学高校生の殺人、自殺、売春等の非行問題でありますが、以下お聞きをいたします。  まず、文部大臣といたしまして、これらの問題についてどのように反省されていらっしゃいますか。今後どのようになさろうとお考えですか、所信をお聞きをいたします。
  39. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 青少年に非行、自殺等がふえてまいっておりますことは、きわめて遺憾な、残念な事態でございます。問題が起こりますと、その都度教育委員会等を通じて、その背景等の調査をいたしておるところでございますけれども、そういう問題行動の背景が非常に多種多様でございます。実はこれは調査そのものが大変むずかしいなという感じを深めているんですが、たとえば滋賀県の野洲中学の事件等も、先生御承知のように、ちょうどあれは中学校から高等学校への受験シーズンにぶつかってしまったものですから、他の生徒たちへの心理的な影響も考えまして、ちょっと間を置きまして、政務次官を派遣をいたしまして、学校先生方学校の管理職の方、警察、父兄の方、そういうところを幅広く政務次官にも様子を聞いてきてもらったんですが、政務次官に対する警察の説明と、学校側の説明が大きく食い違っていたという事態もございます。やはりそればいろんな問題行動の背景、原因が非常にむずかしい、多種多様、多岐の問題が複雑に絡み合っていると考えざるを得ない。家庭におきます過度の甘やかしや放任、率直に申し上げますと捨て子の状態になっている子供もある、あるいは社会の生命軽視の風潮、価値観の多様化、こういうものに子供たちが毒されているという状態もございます。困難に耐えるということについての弱みも最近の児童生徒には見られることでございますし、先生たちと、あるいは両親との対話が非常に不足しているという事態もまた見受けられるわけでございますが、学校におきましては、私は先生が一人一人の児童生徒との話し合い、対話をもっと拡充していただいて、子供たちが持つ悩みや問題について、それを十分に把握をしていただいて、問題行動の早期発見をする、早期指導に努める、学校生活のあらゆる場所を通じて、教師児童生徒たちの間に好ましい人間関係をつくりたい、また、つくらなければならない、児童生徒同士の間にも心のつながりの人間関係をもっとつくっていく努力をしていかなければならない、このことが私らに課せられた一番肝要な問題であると思うわけでございます。こういった点につきまして各学校におきます生徒指導等を重ねて教育委員会を通じて通達を出しました。通り一遍の通達という御批判があるかもしれませんけれども、祈るような気持ちでこの通達を出しまして、これらの徹底を図っているところでございます。
  40. 勝又武一

    勝又武一君 私もいま大臣所信賛成できる向きが多いのでありますが、教育現場は実態はそうなっていない。たとえば中学高校生の意識調査によりますと、だれに相談をするのかという点を聞きますと、最も多いのは友人です。同級生あるいはクラブの先輩等であって、悲しいかな教師や父母に相談をするというのは最も少ないのでありまして、この点の、私は教師自身反省も十分必要でありますが、同時に中学高校での偏った学歴主義や受験準備教育、いわゆる落ちこぼれと言われているいまの教育制度教育内容教育のやり方、これらについての反省も非常に必要ではないかというように思いますので、ぜひこの点は文部省でも御反省を願いたい、対策を講じていただきたい。高校進学率が九三%、国民教育水準の向上という観点からは喜ぶべきことでありますが、また逆についていけない者が七〇%もいるという現実、こういうことがすでに明らかだと思うんです。そういう意味で一つ二つ伺いますが、高校中退者が非常に多いんですが、この中退者の復学の場合、ケース・バイ・ケースでもあるでしょうが、これを容易にできるような制度や慣行、こういうことを広めることとか、あるいは中退するまでの履修取得単位を何らかの形で認めておいて、生涯教育、あるいは社会教育の一環と関連をいたしまして、社会で公認されるようなシステム、こういうことも今後御検討願ったらどうかというように思いますが、これらはどうでしょうか。
  41. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 私は学校教育重要性というものは十分認識をいたしますけれども、やはり教育の終局の目的ということを考えますと、学校自体も社会から隔絶してあるものではございません。先生指摘の高学歴社会と申しますか、あるいは好ましくない学歴偏重社会の風潮と申しますか、これも打破をしてまいらなければなりませんし、特定の大学へ入らなければいいところへ就職ができない、こういうことを小学校のお母さんたちが気になさる、こういう状態はやはり改善をしてまいらなければなりません。高等学校あり方学歴偏重社会の打破、小・中・高校に及びます学習指導要領改定、あるいは大学そのもののそれぞれ特色を持った、もう率直に言えば格差解消、こういう一連の総合的な対策をとってまいりませんと、私は今日の教育というものが望ましい形になってこない、こういうことを考えますので、その観点からもただいまの先生の御指摘には賛成でございます。またそういう努力をしてまいりたいと考えます。
  42. 勝又武一

    勝又武一君 警察庁の方いらっしゃいますか。——五十二年版の警察白書によりますと、刑法犯少年の学職別補導人員の推移、四十七年から五十一年、これによりますと、中学高校、大学、各種学校とも毎年増加しており、しかも有職少年は毎年減少しています。そして中学高校生が数も多く、しかも激増の傾向にありますが、この点は間違いございませんか。
  43. 古山剛

    説明員(古山剛君) ただいまの先生のおっしゃるとおりでございます。間違いございません。
  44. 勝又武一

    勝又武一君 これを年齢別に見ますと、十五歳から十六歳が最も多く、高校一年が約五〇%でありますが、この点もそうでしょうか。
  45. 古山剛

    説明員(古山剛君) そのとおりでございます。
  46. 勝又武一

    勝又武一君 なお女子高校生の性非行の補導人員だけでも三千百十一名、売春百六十二名が含まれています。これは補導された者だけであります。残念ながら補導されない者を推定すればまことに憂慮にたえませんが、この点も間違いございませんか。
  47. 古山剛

    説明員(古山剛君) 間違いございません。
  48. 勝又武一

    勝又武一君 これは文部省にお伺いしますが、女子だけの高校ほど、男女共学の高校よりも性非行が多いという具体的な事実をよく指摘されるのでありますが、この点はどうお考えになっていますか。あるいは、これは全国的にこういう傾向なのか。文部省としてもこういう調査をなさったことがおありですか。
  49. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 文部省ではそういう調査をしたことはございませんし、事実は確認いたしておりません。
  50. 勝又武一

    勝又武一君 こういう傾向を一つの県だけなしに幾つかの県でお聞きをいたしますが、もしそういう傾向があるならば、たとえば小学区制、男女共学制等が、昭和二十年代に果たした役割りが大きく一定の評価がされているのでありますが、こういう観点からも小学区制なり男女共学制なり、あるいは総合高校制度なりへの展望、こういうことを考える余地はないでしょうか。
  51. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 女子生徒の性行為の逸脱というような問題が、女子だけの高校の方が多いのかどうかというのは、先ほど申しましたように調査もいたしておりませんし、またこれは予想でございますが、仮に調査をしましたとしても、私はそういう男女別か、男女共学かどうかという問題よりも、やはりそれぞれの学校生徒指導の実態なり、あるいはその地域の実情というようなものもかなり影響いたしますので、女子のみの高校であるからそういう行為が多いというふうに即断するのはどうであろうかという気がいたします。そしていま御指摘の小学区制にして、総合高校、男女共学というのは一つの考え方でございますし、今日全入に近いような状況にあって、これからの高校がどうあるべきかということで、一つの提案としてなされておりますことは十分承知いたしておりますので、その問題はその問題として検討を引き続きいたしたいと思いますけれども、いまの女子学生の性行為逸脱の問題とは切り離して考えた方が妥当ではないかというふうに考えます。
  52. 勝又武一

    勝又武一君 それから自殺の問題ですが、警察庁の五十二年一年間の少年の自殺白書によりますと、小学生の自殺が増加をしている。それから自殺の低年齢化、これがくっきり浮かび上がっています。同時にまた官庁統計によりますと、青少年の非行について見ましても、ここでも低年齢化の傾向が著しくある。特に中学生以下の非行が激増をしています。これらについて警察庁なり、文部省なりはどうお考えでしょうか。
  53. 古山剛

    説明員(古山剛君) 少年の非行の低年齢化という点につきましては、先生のおっしゃるとおりでございますが、自殺の低年齢化ということについては、私どもはよく把握いたしておりません。といいますのは、昨年初めて自殺の統計を私どもの方でとったわけでございますので、それ以前との比較の材料はございません。したがいまして、実感としてそういう傾向はあるかもしれないという感じはするのでございますけれども、はっきりとしたデータとしてはまだ出ておらないわけでございます。ただ少年の非行の低年齢化という問題につきましては、やはりこれはゆゆしい問題でございますので、私どもの方といたしましてはできるだけ非行の芽が小さいうちに、早期に非行少年を発見して、早期に治療するという必要があるということで、私ども街頭活動の強化ということで一生懸命やっておるわけでございます。また、最近少年を取り巻く環境の悪化という点につきましても著しいものがございますので、たとえば雑誌の自動販売機で売られているいろんな悪書がございますが、そういったものを法令で取り締まるとか、あるいは各団体の自主的な活動でそういったのがだんだん改善されていくという方向にいま私ども問題提起をして、そういった方向で少年を取り巻く環境というものをよくするということについても、私ども努力いたしておるわけでございまして、そういうことで、少年の非行の増加という問題について、今後そういうことのないように努力いたしたいというふうに考えておるわけでございます。
  54. 勝又武一

    勝又武一君 警察庁の調査によりますと、昭和五十一年、五十二年の売春防止法違反事件の売春をしていた女子中・高校生の数というのがあります。五十一年、中学生が二十九人、高校生が百六十二人、計百九十一人。五十二年が、中学生二十四人、高校生百六十二人、計百八十六人となっています。そうですね、間違いありませんね。
  55. 古山剛

    説明員(古山剛君) 間違いございません。
  56. 勝又武一

    勝又武一君 しかし、実は静岡県の県警本部長が三月六日の静岡県議会本会議で答弁したところによりますと、昨年一年間に売春で摘発された少女は五十三人、うち中学高校生が四十六人でありました。一昨年の約六倍に急増したと答えているのであります。一体これ静岡県だけが多いんでしょうか。警察庁の調査はどうなっているんでしょうか。静岡県だけで全国の約三分の一を占めているということになるのかどうなのか、本当にそうなのか、これはひとつ具体的にお聞かせいただきたい。
  57. 古山剛

    説明員(古山剛君) 静岡県の売春等の取り締まりでございますが、恐らく売春と、それから売春ではないけれども性非行を犯しておったということで補導した少女と合わせた数字ではないかというふうに思います。それで、ちなみに私どもの方で静岡県の関係で把握しております数字は、これは中・高校生だけではございませんが、売春関係が三名、それから児童福祉法違反で少女に淫行をさせるという行為が処罰されるわけでございますが、その関係が五十人で、合わせて五十三人というふうに聞いておるわけでございます。したがって、売春につきまして静岡県だけが特に多いということはございませんで、少女売春は全国的にいま増加傾向にあるというふうに考えておりますが、静岡県の数字はいま申し上げたとおりでございます。
  58. 勝又武一

    勝又武一君 飲酒運転ですね、酒飲み運転、これもいままでは酒ぐらい飲んで運転したってという調子が十年ぐらい前ありましたね。ところが、最近は飲酒運転は罪悪だということがようやく社会的に徹底してきたと思うんです。つい先日も九州でしたか、国会議員の飲酒運転が新聞、テレビで大きく報道されました。県でも市町村でも同じように市町村会議員、県会議員等、県版で大きく報道されるのであります。私はこれは当然だと思うんですが、警察庁ではどうでしょうか。
  59. 古山剛

    説明員(古山剛君) 私どもの方では、犯罪捜査を遂げまして犯罪事実が明らかになった段階で、社会防衛の観点から報道機関に対しまして素材を提供するということがございます。しかし、同時に被疑者の人権を守るということも重要でございますので、同じような犯罪を——失礼いたしました。ちょっと勘違いいたしまして、飲酒運転の関係については私どもちょっとよく承知いたしておりませんので……。
  60. 勝又武一

    勝又武一君 国会議員のことはちょっと勘違いでありましたので訂正いたしますが、しかし、あればこれはもう大変な、全国版トップ記事ぐらいになるであろうということは事実だと思うんです。  そこで、そういうように社会的地位なり、あるいは社会的な指導層であればあるほど、その社会的な責任が問われる、こういうことはもう私は当然だと思いますが、この点は文部省どうでしょうか。飲酒運転ですね。
  61. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) もう当然のことでございます。
  62. 勝又武一

    勝又武一君 売春防止法というのは天下にざる法のお手本だと言われていて、なかなか、何というんでしょうか、いやな言葉ですけれども、片っ方のほうは罰せられない。しかし、確かに売春というのは飲酒運転と違いまして、双方ということですからいろいろな議論があるようです。しかし、百歩譲って、少女売春、特に中学生や高校生を承知の上で売春の相手とする、こういうことは私は飲酒運転以上の社会的な罪悪だと考えますが、文部大臣はどうお考えでしょうか。
  63. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 全く同感でございます。
  64. 勝又武一

    勝又武一君 よく新聞紙上あるいは週刊誌等にもありますが、この中学高校生を相手をする人は、医師とか、企業の経営者とか、高額所得者とか、相対的に社会的地位の高い、あるいはいわゆる社会指導者層、こういう人が圧倒的に多いというように思いますが、この点は警察庁はどう思われますか。
  65. 古山剛

    説明員(古山剛君) その点につきましては私どもの方はデータをとっておりませんので承知いたしておりません。
  66. 勝又武一

    勝又武一君 そういうことはないと思いますが、私のこれは感じです。  そこで、社会的な指導者層が社会的な罪悪を犯すならば、最低限度、飲酒運転以上の制裁があってしかるべきだと考えます。そういう意味で、この住所とか、職業とか、氏名とか、こういうことが公表される、新聞やテレビで報道される、こういうことは当然だというように私は思いますが、この点大臣いかがでしょうか。
  67. 古山剛

    説明員(古山剛君) 少女を相手とする売春をやった大人につきまして、それ相応の制裁が加えられるべきことは当然だと思いますけれども、ただそれにつきましては、必要があれば、たとえば各県の青少年保護育成条例で罰則を設けて刑罰を科するとか、そういう方法もございますし、直ちにそういったことを、住所、職業、氏名等を公表して社会的な制裁を加えるべきかということにつきましては、これは相当慎重に検討されるべき問題ではないかというふうに思います。
  68. 勝又武一

    勝又武一君 何が慎重にやるのかさっぱりわからぬですよ。約三十八県が少女売春を防止するために、県青少年環境整備条例等を制定して、いろいろ努力をしているというように私も調べて承知をいたしています。しかし、やはり国なり、国会なりの私は責任というものも大きいんじゃないか。そういう意味では、特に中学高校生であるだけに、学校教育なり、社会教育の観点から、文部省としては、この少女売春追放運動、こういう一大キャンペーンを勇気を持って展開する御意思はございませんか。
  69. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 文部省のやはり教育行政としては、私はやはり正攻法的に学校現場現場生徒指導人間の尊重、男女双方のそれぞれの認識と申しますか、そういうことを教えていく、教育していく、そのことに徹していくのが私は教育行政のやはり基本であろうと思います。いま先生の御指摘のお気持ちは十分わかるところでございますし、相手になるのが社会的に地位が高いとかそういう御指摘がございましたが、私はやはり金を持った人がそういう相手になる、そういう人たちに対する制裁のことを御指摘になっていると思いますけれども、それはやはり売春防止法の関係文部省が直接タッチできることではございません。ただ先生の御指摘のように、非常に多くの府県に条例が設けられておりまして、総理府の青少年対策室がその中心になりまして、学校教育社会教育との連携をとりながら、こういった非行事件の防止に努めているところでございます。私は学校教育の中ではどこまでも正攻法で、先ほど申し上げました児童生徒たちのこういった問題に対する認識をより深めていく、生徒教師の間の対話、早期にそういう一人一人の問題児についての教員の把握、そしてその教員の的確な家庭なり、地域社会への連絡、こういうことでやはり教育としてはこういった非行の防止に努力をいたしたい、いたさなければならない、かように考えるものでございます。
  70. 勝又武一

    勝又武一君 総理府の青少年対策本部にもお聞きをしたいんですが、時間の関係で省略いたします。ぜひ御検討を願いたいと思います。  それから、次に教科書無償問題についてお伺いいたします。  昨年の十一月一日の本院の文教委員会におきまして、私は当時の海部文部大臣にこの件で質問をいたしました。教科書無償制度は大切に維持をしていきたいと何度も繰り返し大臣から御答弁がありました。現在も文部省はこの方針を維持をなさる、変えるという考えは毛頭ない、こうお考えでございますか。
  71. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 毛頭ございません。
  72. 勝又武一

    勝又武一君 ただ予算折衝の中で一度大蔵省が有償化を引っ込め、あるいは四科目の教科書について貸与制を導入しようとした経緯が新聞報道をされました。しかし文部省を初めとして関係者の皆さんの御努力で従来どおり無償制度が守られています。大蔵省が再び貸与制度なり、有償制度ということを持ち出す心配もございますが、あくまでも文部省としては義務教育無償の原則に立ちまして、大臣のいま毛頭ございませんということを私も十分承知をしまして、御努力を願うことを引き続きお願いをしておきます。  それから、次に義務教育にかかわる外国からの帰国子女の教育についてお伺いをいたします。  これは文相の所信表明の終わりの方に、海外に在留する日本人子女の教育の充実と帰国後の受け入れ体制の整備に触れられている個所がございます。ただ帰国子女の受け入れについては「私立高校の新設に対して特別の助成をする」と、こうあるだけであります。ところが文部省資料によりますと、海外に同伴していく義務教育学齢段階の者は、四十六年八千六百六十二人で、五十二年は一万九千四百八十九人と、六年間で二倍以上にふえております。また、帰国子女は五十一年度調査小学校三千二百二十五人、中学校千人、高校三百七十三人でありまして、この五年間にその数も三倍となっております。  そこでお聞きをしますが、義務教育段階の者についても十分考えるべきだというように思いますが、この点はいかがでしょうか。
  73. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 御指摘のとおりに、海外で活動をいたします日本人が非常にふえてまいりましたので、また帰国子女の数もふえてきたわけでございます。好ましい特性を持った帰国子女でございますので、その適切な受け入れ体制を整備をいたさなければならないことは当然のことでありまして、海外勤務者が安んじて国際的な活動ができるように、これは重要な課題でございます。この問題に対処いたしまして、帰国子女の受け入れを主目的といたします私立の高等学校の新設の助成でありますとか、国立大学の付属学校におきます帰国子女学級の拡充でありますとか、公・私立学校の帰国子女教育研究協力校の拡充、また、帰国子女教育にかかわります教師のための指導資料の作成、講習会の開備、国・公・私立学校にわたりまして、その体制の整備拡充に努めることにいたしておりますけれども内容の具体につきまして担当局長からお答えをいたします。
  74. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) ただいま御指摘のように、五十一年で帰国しました小・中・高等学校子供が四千六百名弱ということでございますが、これらの子供が全国の各学校に帰ってきて在学をするということになりまして、その実態としては、その四〇%の者は東京都に在留することになりますが、そのほか神奈川、大阪、兵庫等に多いわけですが、全国的にほとんど帰国子女のいない県はないというような実態でございますから、そこで、これに対応するために、最も帰国子女が集中します東京、大阪等を中心にしまして、帰国子女教育研究協力校というものを四十五校ほど設けまして、そこで帰国子女のこういう教育のうち、特に言語関係であるとか、日常の生活習慣であるとか、早急に適応してもらいたいようなものを、そういう学校において研究をしながら教育していただくというようなことをやっておりまして、そのほか、いま大臣が申しましたように、帰国子女の教育についてどういうふうにやったらいいかというような資料をつくるとか、関係先生の研究会をやるとか、こういうようなことをいたしまして、一般に若干名ずつ帰国子女を引き受けておりますところの小・中・高等学校教育のために各種の資料を提供すると、こういうようなことをやっております。それから国立の学校につきましては、そのための受け入れ学級というものを特別に設けるというようなことを十数校においてやっておる、こういうことでございます。
  75. 勝又武一

    勝又武一君 おっしゃられるように帰国子女が大都市に集中しています。全体の約八五%ぐらいになっていると思います。その点そうですが、そこで、他の何というのですか、散らばっている県ですね、二、三の県を除くとほとんど散らばっていますので、いま御指摘のように、この研究協力校なり、資料の作成なり、研究会というお話がありましたが、やはり各県にある国立大学の付属の小・中学校とか、あるいは特定の公立の小・中学校等を選定しまして、該当の子女のみを対象とする特設学級を設けるというような方法、こういうことを御検討していただけませんか。
  76. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 付属学校におきます帰国子女の教育学級につきましては、御指摘のように、帰国子女の多い地域についてまず順次増設を図るということで進めてきたわけでございます。御案内のように、現在東京地区では東京学芸大学の大泉小学校、大泉中学校高等学校の大泉校舎、それから関西では、京都教育大学の桃山中学校と神戸大学の住吉小学校、さらに住吉中学校にそれぞれ帰国子女教育学級を設置をいたしております。そのほか普通学級に混合受け入れの方式をとっておりますものが、東京学芸大学の竹早中学校と附属高等学校の世田谷校舎でございます。五十三年度はさらにお茶の水の附属小学校に帰国子女教育学級を設ける、あるいは横浜国立大学の横浜中学校に混合受け入れ方式の学級を増設をするというような措置をとっております。それ以外のそれぞれの地域における国立大学の付属学校をさらに活用をするということについては、方向といたしましては、もちろん付属学校教員養成に関しする学部の研究に協力をしたり、あるいは教育実習を受け入れたりする特別の任務を持っているわけでございますから、そういう性格にかんがみて、できるだけそういう御要請にこたえていく努力をすべきであるというふうには考えておりますが、当面は、やはりいま申しましたような、帰国子女の多い地域についてまず優先的に整備をするということで進めているわけでございます。
  77. 勝又武一

    勝又武一君 少ないところでも六十二人とか、あるいは三十五人とか、四十人とか、三十六人とか、五十六人とか、こういうような数字があるわけですね。ですから、できれば県単位のいまの国立大学の付属小・中学校、あるいは困難な場合には県内一ヵ所ぐらいでもいいから、公立の小・中学校に特設学級をして、そのための特別のカリキュラム編成とか、教員配置とか、こういうことは御検討できませんか。
  78. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 一つの県としては、御指摘のように二十名とか三十名、あるいは四十名という数字になりましても、具体的に個々の子供がどこの地区に住むかということによりまして、特に、小、中学校段階ですと、必ずしも一つの学校に集められるような状況にはないかと思います。思いますけれども、いま御指摘のように、私どももそういう帰国子女の少ない県について、この教育をどういうふうにやったらよろしいかという点につきましては、やはりそれぞれの県で実態を考えて、どういうふうにするかということを考えていただくより仕方がないわけでございますので、そういう面についての県の研究協力という点をもう少し積極的に進めてまいりたいというふうには考えております。
  79. 勝又武一

    勝又武一君 それでは、次に週休二日制についてお伺いいたします。  文部省は引き続き四月の新学期から公立学校教員の週休二日制試行を実施する方針で準備を進めてこられまして、三月七日、そういう旨の通達を出された、こういうふうにお聞きをいたしますが、この点間違いございませんか。
  80. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 御指摘のとおりでございます。すでにもう通達を出してございます。
  81. 勝又武一

    勝又武一君 これに対しまして教育委員会側の態度は全く消極的だというように思われるわけです。二月の十四日でしたか開催されました都道府県教育長協議会の第一部会でも、拒否的反応が強く出されたと聞きますが、もしそうであるならば、新学期からの試行実施もきわめてむずかしいと思われますが、どうでしょうか。
  82. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 都道府県の様子をまだ通達を出しましたばかりで的確に把握をしておりませんけれども、昨年の通知では、公立学校の教職員の週休二日制の試行について、教員以外の一般職員について試行が実施されている都道府県において試行を実施することができるものといたしまして、父母、住民の理解を得ること、教育活動への支障が生じないこと、一年間の試行とすること等の、他の一般職員と異なる取り扱いができることとしたわけでございますが、今回の通知では少し様子を変えまして、都道府県がこれの試行に踏み切っていただきやすいようにということを心がけまして、試行の期間を原則として一年としつつも、その間の特定の期間を試行期間とすることも差し支えない。これは国家公務員もやっていることでございますので、そういったことを新たに書き加えたわけでございます。さらに、教員の週休二日制及びその試行を研究するための研究協議会を教育委員会に設けていただいて、これの検討を進めていただくということもまた今年度書き加えて、都道府県が試行に踏み切っていただきやすいような通達を出したわけでございます。
  83. 勝又武一

    勝又武一君 これも昨年の十一月の本院の文教委員会で、私が週休二日制について質問をいたしました。諸澤局長が公立学校で試行したところのなかったことをお認めになりました。なお、教育委員会の事務局職員については試行を始めたところがある、そこでそういう点を横目で見ながら、慎重に検討してもらいたいということを指導していますという答弁がありました。  そこで、いまは大臣からは試行期間を特定の期間にするというお話もありました。恐らく特定の期間という意味は、非常に短い期間、あるいは学校で最も二日制がとりやすい期間、そういう期間を利用して設定するということになると思いますが、そういう程度で一体公立学校、特に小学校中学校等の教育現場が、具体的に週休二日制が実現できる状態にあるというように文部省ではお考えでしょうか。
  84. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 週休二日制の試行というのは、あくまでもこれは試行でありますから、一定期間やってみてどこに問題があるか、これはとてもやれないかどうかというようなことを調べるものだと思います。したがって、国家公務員一般の場合は、御承知のように、三ヵ月なり四ヵ月を一区切りにして、ある特定の部局についてやってみる。文部省でもそういうことをやりたわけでございます。  そこで、先生について試行をどういうふうにやるかということは、一昨年でしたか、人事院から試行一般の考え方が出ました際にいろいろ検討したわけでございますが、学校という教育現場はやっぱり一年を一つの区切りとして教育課程を組んでおるということからして、やるなら一年だと、一年を一区切りにしてやったらいいじゃないかということで、その考え方を打ち出しまして、県に検討してもらったわけでありますが、この場合の条件として、御承知のように、しかし試行はあくまでも定員をそのためにふやすことはしないんだと、予算も特に計上しませんということで、しかも住民に対するサービスを低下してはいけないんだ、学校で言えば教育内容、質を下げることはしない、こういう前提でございますんで、実際に呼びかけましたけれども、実際にやったところはないということでありますんで、そこで、しかし少なくとも前向きに試行ということを考える場合に、それじゃどうしたらいいかということで考えました末、いま申しましたように、一年という期間をいきなり試行として出すにしても、ちょっと問題があるんだろうと。そこで、一学期なら一学期、あるいは二学期なら二学期という特定の学期を取り上げて、その期間を試行するとしても、もちろん年間の教育計画に支障を来さないという前提で考えていただければ、一つの考え方だろうということで、私どもは特定の期間ということを申し上げたわけで、何もお茶を濁す程度に短い期間でやりなさいという趣旨ではさらさらないわけでございます。そのやり方について、そういうことでありますので、さらに県において協議会等の場をつくって、いろいろな人の意見も聞いた上でひとつ考えてください、こういうことにしたわけであります。
  85. 勝又武一

    勝又武一君 私の表現の稚拙であった点、まずかった点はおわびをいたしますが、言いたい意味は、そういう条件を出して、そういう条件下でやってみろと、それで試行ができたというところと、そういう条件がついた中では全然できなかったというところとはもう全く違うんだという、この現場認識といいますか、実情把握といいましょうか、そこに私は問題があると思う。だから、他の諸官庁ではそういう条件でも一定程度できたというところは、今度はある程度改善を加えればさらによくなる、こういうことが言えると思うんですね。つまり、十分週休二日制が試行しやすくなる、実行しやすくなる。ところが、小・中学校というのはもう何かを変えなければ、たとえば一例を挙げますが、教育制度なり教育内容なり、もうざっくばらんに言って大幅な定員増なり、そういう条件を変えない限り、現状の中ではとても困難だと、こういうふうにお考えになりませんか。
  86. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 義務教育、特に小学校段階では、学校の規模にもよりますけれども、週休二日制を現在の予算定員のままで実施をするということは非常にむずかしい課題であるということは、私はもう当初からそういうふうに考えております。そして、人事院にもそれは非常にむずかしい問題ですよということは再三言っておるわけでありますが、人事院としても、学校に限らず、職場によってはそういうところが他省庁の所管にもありますと、しかしそれは国の方針としては一応全部を対象にして考えてもらいたい、こういうことでスタートしたことでございますので、われわれとしてもそういう全体の政府の方針のもとにこれを考えざるを得ない。ただ、いまおっしゃいましたように、できるだけ条件についていろいろやりやすいように考えるべきではないかという点につきましては、したがって、今回の場合は一年間というその長期的な制約を一応外して、その学校考え方に従って、特定の学期なり、月なりでひとつこれをやれるところはやっていただきたいと、こういうふうにしたわけでございます。
  87. 勝又武一

    勝又武一君 たしか一昨年の人事院の報告によりましても、民間、公共企業体等の週休二日制の実施状況は、いろいろの形態のものをひっくるめますと、約七割近く実施に移っている、そういう報告があって、公務員でも試行ということだったというように記憶をしているわけですが、そういうように国民の大多数が週休二日制になっていく状況の中で、文部省としましては、いや小学校中学校というのは週休二日制なんてのはなじまないんだと、そういうのは国民の大多数が二日制になっても必要ないんだと、こういうようにお考えですか。
  88. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 私からまずお答えをいたしておかなければならないと思いますことは、週休二日制というものは、長期的な展望に立って見た場合に、日本の民間企業も公務員も、将来は恐らくすべてが週休二日制の制度をとると、私はさまうに考えます。しかし、民間企業考えてみましても、必ずしもすべての民間企業が週休二日制に踏み切っているわけではない。週休二日制に踏み切りたくても踏み切れないでいる企業もまたあることでございます。特に中小企業などがとてもやれることではないという切実な気持ちを訴えておられる民間企業もまたある今日でございます。そこで、政府といたしましても、国家公務員の週休二日制というものは、やはり基本的には公務員は民間企業の後についていくべきものと考えているわけでございます。しかし、それの試行はやらなければならないということで、昨年も試行をし、その結果が正確に問題点がどこにあったかというようなことを、すべてを把握ができなかったので、本年度もさらにその試行を続けてやろうという決意をいたしたわけでございます。地方公務員であります公立文教関係教員方々についても、私は同じことが言えると思うんです。ですから、本年度の試行、どれだけの都道府県が踏み切ってくださるか、あるいは踏み切ってくださらないか、その結果を待って、なぜ踏み切れなかったのか。一年やられるところがあるかもしれません。四ヵ月やるところがあるかもしれません。その試行をいたしました実情を踏まえて、その後に私は検討をするべきもの、かように考える。冒頭に申し上げましたように、将来長期的な展望の上に立てば、恐らく日本全体が世界の先進各国と同様に週休二日制に踏み切っていくべきものという将来の見通しは私は立てての上での御答弁をいたしておきたいと思います。
  89. 勝又武一

    勝又武一君 学校五日制というような議論もございますし、将来にわたってということになればそうだと思いますけれども、確かに中小企業の困難さということも私もよくわかります。ですから、余りにこのことでどうこうという気持ちはありませんけれども、いつまでも一番おしまいでいいんだよということは、本当はやはり日本教育全体を考えてみても、やっぱりいろいろな問題をはらむんじゃないかと思いますので、さらに前向きの検討を願いたいと思います。  次に、大学問題についてお伺いいたします。これは教員大学への特に現職からの入学につきまして、任命権者の推薦を必須の入学資格の前提とするという向きのことが、衆議院段階での答弁にあったようにお聞きをしていますが、この点は事実なんでしょうか。もしそうだとしましたらば、抜本的にこの点だけはお考え直しをいただきたいと思いますが、どうでございましょうか。
  90. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 現在国立学校設置法の改正案をもってお願いをしております教員大学の大学院レベルの段階は、入学定員の三分の二程度を現職教員を受け入れるということを予定をいたしておるものでございます。現職教員を受け入れるわけでございますから、現職の先生が二年にわたって現場を離れて研さんを積まれるということである以上、やはりそのことが全体の学校教育に支障があるかないかということが問題になるわけでございます。そういう意味で、その先生が二年にわたって現職のままで大学で修学できるかどうかについての保証というものがどうしても必要になると思われます。そういった観点でこの大学の大学院の場合には、教員が受験を出願されるに当たって、公立学校先生であれば、市町村の教育委員会のいわば同意があることを確認をしたいということを現在考えているわけでございます。これは各教育委員会の推薦を求めるということではなくて、その先生が二年にわたって現場を離れて修学をするということについてのいわば保証、それをあらかじめ得ておきたいということでございます。入学試験はもちろん大学院の方で、通常の大学院と同じように実施をするわけでございます。何ぴとを入学させるかということを決めるのは大学が決めるわけでございますけれども、出願に当たってそういった保証を得ておきたいという意味で、市町村教育委員会の同意の確認を得たいということを考えているわけでございます。もちろん大学でございますから、同意のない者は一切受験させないというわけではございません。それは受験は拒みませんけれども、しかしそういう場合には、同意なくして受験をされるという方は、二年にわたっての現職のままでの修学についての保証がないという状態になるわけでございますから、そういう形にならないように、やはり本人のいわば研さんについての積極的な意欲というものを十分にしんしゃくをした上で、教育委員会の方で同意をしていただくというような御配慮を私たちは期待をしているわけでございます。
  91. 勝又武一

    勝又武一君 この二年間の大学院を卒業後現職に復帰をする、その現職に復帰した以降、特に待遇なりあるいはそういう点で何か特別のことを文部省としてはお考えでございますか。
  92. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教員大学の大学院を終えて現場に戻った先生について、給与の上で、あるいは何と申しますか、任命、任用上の上で特別な取り扱いをするということは全く考えておりません。これは一般の大学院を終えた場合と同じというふうに考えております。
  93. 勝又武一

    勝又武一君 細かい点は省略いたしますが、特に教員大学は初等科教員のみの養成、しかも単科大学に限定をされているわけでありまして、戦後三十年間続いてまいりました一般の大学、あるいは総合大学での教員養成をこそ私は存続させるべきだというように考えますけれども、この点はどうなんでしょうか。
  94. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 教員大学ももちろん教員養成の普通の大学でございます。特段の新しい範疇の大学をつくるということではございませんし、いわゆる戦後続けられてきた開放制のもとにおける教員養成のシステムの中に組み込まれていくものであることはもとよりでございます。私たちは、もちろん教員大学を創設をするということだけで、これからのいろいろな問題に対応できるとは考えておりませんし、既設の教員養成大学、あるいは学部の充実を図っていく、あるいはそれぞれについても、既設のものについても大学院レベルの教育の充実を図っていく、そういうことと並行しながら教員大学についてもその充実を図る、両々相まって教員養成の充実を期していくということが必要であると考えているわけでございます。
  95. 勝又武一

    勝又武一君 教員養成についてはいろいろな考えがあると思うんです。たとえば、いまの非常に短い、何というんでしょうか、現場での教職経験、こういう程度でいいのかどうかということも一つ問題があると思うんですね。これは教育学部、その他の学部の場合を問わず、自分の出身の中学高校へ行って、簡単にいえばちょこちょことやって、それで何か現場研修が済んだと、こういうことで一体いいかという免許法上の問題もあるでしょうし、制度上の問題もあると思うんですね。私は抜本的には一般の学部を出て、経済学部でも法学部でも出て、一年間ぐらいの教員養成コース、こういうことをやって、いわば一年間のインターン、このくらいに小・中学校教員高校教員、初等教員を問わず、育成すべきだというようにも考えるわけです。そういう意味からいきますと、たとえば教育学部出身だけでなく、他の学部の出身とか、むしろ思い切って民間企業の経験者、あるいは研究所、あるいはその他の分野、こういうところから教員の希望者というのをできれば一年間、できなければ一定の期間教職員の研修制度なり、養成制度というようなものを創設をしていく。そうして、そういうところを出た者が教員になっていく。また、そういうことをやっても、経済学部を出て一年間ぐらいインターンをやっても、小学校中学校教員になっていくんだ、こういうぐらいにいくのが本当の意味での人材確保法案、教育界に人材を求めるということに合致していくんじゃないか。たとえば、イギリスなどにおけるそういう制度ども、もっともっと日本で学んでもいいんじゃないんだろうかというようにも考えるわけです。そういう意味では全然逆行とは言いませんけれども、今度の教員大学院大学、この二つが二つだけで終わるのでなくて、続々と、さあ次は福岡と北海道だ、さあその次はというようになっていきますと、私の言っているような、ある程度理想論、空想論にすぎないかもしれませんけれども、本当の意味での人材確保をする教育界、教員の養成制度を根本的に考えていくということに、非常に大きな障害になるのじゃないかという感じがひとつするわけです。ですから、そういうことがぜひないような大学院大学でなくちゃいけない、そういうふうに思いますし、同時にくどいようですが、そういうもっと抜本的な教員養成制度、そういうものについても、検討する余地があるというように考えますけれども、いかがでしょうか。
  96. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 勝又委員の御指摘の点は、私は必ずしもいま先生おっしゃいましたような理想論、空想論とは考えません。やはりそこを、いま御指摘のような点を私どもは当然目指さなければならないと考えているんです。教員養成のための既存の各大学も、そういうふうに開かれた大学になっていっていただくように、大学当局にもそういう御決断をいただきたいし、そういう指導助言を進めてまいりたいと思いますけれども、これから法案の審議をお願いをいたします教員大学というものの存在が、そういう先生のおっしゃる理想へ向かっての一つの大きな刺激剤になってくれることを期待をいたすものでございますし、また現職の教員方々にそういう研修機会を数多く提供していくわけでございますから、第五次の定員改善についても、このことは重大な検討の要素の一つになる、かように考えているものでございます。
  97. 勝又武一

    勝又武一君 以上で終わります。
  98. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 大臣所信表明からきょうまでずいぶん長い時間がたってしまいました。その間に大臣、大変精力的に現場を見ておいでになったようです。私はこのことは非常にすばらしいことだというふうに高く評価をします。やっぱり水戸の黄門様ではありませんけれども大臣が本当に現場を見て歩かれて、現場にどんな問題点があるかということを体で把握するということは、これからの教育行政の上で非常に大きな価値になるのではないだろうか、そういう気持ちでいっぱいです。  そして、ただいまも坊主憎けりゃけさまで憎いなんということはないと、こうおっしゃった言葉は、日教組が憎いからみんな憎いというわけでもないというような言葉にお伺いしましたけれども、非常に永井文部大臣、海部文部大臣、そして砂田文部大臣とずっと続きまして、よく教職員組合ともお会いになって、話し合いをされるという姿勢については、私は評価をしていきたいというふうに考えております。そして、先ほどの野洲中学校の問題ではありませんが、大変な教育の荒廃、子供たちの非行の問題に祈るような気持ちでいる、こうお答えになったことについても、私は誠実な大臣人間性を見たような気持で、ぜひ文部行政についてもがんばっていただきたい、こういう気持ちで質問をいたしますが、現場を見てこられたという中で、どんな視点で学校を選ばれたか、そして、その行かれたそれぞれ特色ある学校についての大臣の感想のようなものをお伺いしたいと思います。
  99. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 私は方々見て歩いてよかったと言っていただいたんですが、実は衆議院、参議院引き続いての予算審議で、本当のところはかん詰め状態でございました。あそこも見たい、ここも見たいと思いながら思うに任せません。幾つかの小学校を見て回ったわけでございますけれども、やはり参りますと、現場生徒たちがどういう環境で勉強をしていてくれるか、どんなに元気にやっていてくれるか。勉強しろ勉強しろと言う人はたくさんいるわけでございますけれども、もっと遊びなさいという人が少ないようでございますので、小学校へ出かけますと、私は努めてもっと遊びなさいということを言ってまいります。私が遊びなさいと言っておりますことは、勉強ももちろん大切ではありますけれども、課外時間でもっとスポーツをおやりなさい、音楽に親しみなさい、こういう思いを込めてそういう話をしてまいったのでございますが、特にその感想をというお話でございましたが、私は一つ見ました小学校で給食を一緒にごちそうになりました。それはその学校自身で、学校のよその場所へ給食を任せないで、学校自身で給食のメニューの多彩化、栄養のバランス、そういうことを学校自身で一生懸命先先方が、また給食関係の担当の方々も含めて非常に熱心に研究をしておられる。いただきました給食のごちそうが大変おいしくもいただけましたし、ちょうど御飯の日にぶつかりまして、子供たちがきょうの御飯おいしいと言っておかわりをしております状態を見まして、非常に学校の皆さんの御努力に感服をいたしました。  もう一つは、養護学校へ参りました。スクールバスというものが今日どれだけ進んだものが確保されているかということの実態を見ました。非常に朝早くからスクールバスを運転して回らなければ、子供たちを所定の時間に学校へ集めてこれない。そういうスクールバスを運行しておられる方の大変な御努力にありがたい思いがいたしましたのと、養護学校というものが一つ一つの教室に、また廊下に、どれだけ安全性を確保するための努力が払われているかということも認識をさせていただきました。身体に障害を持っておられる気の毒な子供さんたちと一緒に、先生方がどれだけ真剣に、もう本当にその子供さんの立場に立って一緒に勉強をしておられるか、その御努力のほどにも感服をいたしました。  また、私の郷里で危険校舎を見てまいりました。鉄筋の校舎というものが危険校舎という扱いを受けていない。ですけれども、大正時代の校舎というもので非常に危険なものが出ている。それは大正十一年にできた鉄筋校舎であるけれども、五十何年かたちます間に、いろんな補強の工事をしておられる学校は、非常に安全堅固性が損なわれていない。それよりも後の大正十四年か十五年にできた鉄筋校舎でも、四、五年新しくはあるけれども、その間に手が入れられていない学校がどんな危険な状態になっているかというふうなことも見聞をしてまいりました。危険校舎が、いままでの木造の建てかえだけで済むことではない。五十年たっていようが、六十年たっていようが、どこかの大学の工学部の危険だというお墨つきを、八十万円も百万円もお金をかけて調査をしなければ文部省は認めないんだということは、これは改めなければいけないということを痛感をいたして帰ってまいりました。このようなことを勉強をさせていただいて帰ってまいりました。
  100. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 今後もまたいろいろとごらんになると思いますけれども、いま教育の大きな課題になっている問題、たとえば、養護学校はそれで結構ですけれども、普通の学校に障害の子供たちを入れているところ、普通のクラスに入れているところ、あるいは、特殊学級という形ではありますけれども、学年は同級生と一緒に進んでいくというようなことをやっているようなところ、あるいは川崎あたりに行きますと低所得者層向けの住宅がありまして、そこの真ん中に立っただけでも胸の締めつけられるような空間の狭さ、——私はそこに立ったときに、ここの学校先生は大変だねと言ったら、そういうことがわかる人は少ないと言われましたが、本当に学校の中は大変なんですね。物がなくなる、けんかは起こる、非行はもう大変だと。だから、そういう低所得者層だけが集まるような町づくりはいいのかどうなのかというふうなことも、文部省としては考えていただくような方向とか、いま大臣が自校で給食をつくり、そして生徒に出しているところをあれされましたけれども、一括して委託をしていて、そして給食を出してもらうところがあるわけですね。そういうところへ行ったときに、本当においしいねって大臣が言えるような給食になっているかどうかというふうなことなども、事前に余り準備をされないで、その白は特別メニューにしましょうなんというようなことのないような、こういう視察というものをやっていただきたいというふうに心から願わずにはおれません。  それでは、私の本題の質問に入りたいと思いますけれども、衆議院の予算委員会で日教組の教研の問題に触れまして、大臣教育問題で熱心な議論が行われていたということについては率直に評価すべきだと思う、しかし、政治的な議論が行われているために文部省として集会は認めていない、こういうふうに発言をされているわけですが、大臣が日教組教研をどのような形でごらんになっていらっしゃるかをまずお伺いしたいと思います。
  101. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 衆議院でもお答えをいたしたことでございますけれども、日教組の教研集会はいろんな分科会等を設けて御勉強になるわけでございます。また、集まられた皆さんが一堂に会しての冒頭のセレモニー的な集会もあるようでございます。そして、その場所その場所で行われます議論というものは、やはり一部には政治的な色彩を持った議論も行われておりますので、私は教育というものの中立性を守るのが、私の大切な基本的な一つの責務でありますと申し上げておりますが、そういう観点からも、今日ただいまの日教組の教研集会を文部省として公式に認めるわけには残念ながらまいりません。しかし、これは私自身が行ったわけではございませんけれども、新聞の報道等で拝見をいたしますところ、教育そのものの非常に熱心な御議論もあるようでございまして、こういう点については、先生方子供たちの立場に立って、いろんなことをお勉強になっておられる、そのこと自体は文部大臣としては素直に評価をするべきだ、かように率直に、素直に、感じたままを衆議院でもお答えをいたしたわけでございますし、今日もその気持ちに変わりはございません。
  102. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 私もずうっと日教組の教研集会には出てまいりましたし、今回も行ってまいりましたけれども、第一日目は、なるほどセレモニー的とおっしゃいますけれども、たとえば公害の問題についての記念講演などというのは、まことに胸を打つようなお話でして、いかに教師が公害問題に取り組まなければ、子供たちの健康が守られないかというふうなことがきちっとわかるような集会なわけです。ですから、そのことは大臣理解をしていただきたいと思いますけれども、いま一部に政治的な色彩を持った発言があるからというふうにおっしゃいましたが、教師政治的なことについて発言をしてはならないということはないと思いますし、そのような政治的な発言をされた方が、必ずしも参加した人たち全部に受け入れられているということでもないわけです。討論がかみ合っていって、初めて私は一人の人間がきちんと、自分はどのような教育観を持たなければならないかということがっくり上げられるというふうに思いますので、伝達の研究会ではない、自分たちでつくり上げていく研究会、手づくりの教育研究会が日教組教研であるというふうに私自身は考えておりますが、いま大臣が、今日ただいまそのような条件では公式には認められない、こういうふうにおっしゃいました。そうすると、変わっていった場合には認めるということもあり得るという含みではないんだろうかというふうに思われてなりませんが、この辺についてはどのようにお考えでしょうか。
  103. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 先生の御発言のとおりに、一部に政治的発言があった、そのことは集まった教員の皆さんが全部受け入れたものではない、そのとおりであろうと思います。しかし、一部に政治的なこともやはり議論をなされたことは事実でございますので、今日は文部省としては教研集会を公式に認めるわけにはまいりませんとお答えをしているわけでございます。将来のことは予測はつきませんけれども、日教組という団体が純粋に教員の待遇改善等、経済的問題に集約をした団体になられまして、純粋に教育の問題だけを研究なさる集会を将来もしもお持ちになるようになりましたときには、また考え方も変わりましょうし、あるいはその場合は、もう率直に申し上げますけれども、そういうことでありますならば、文部省と日教組とが共同で主催する教育研究の機会が持たれてもいいではありませんか。そういうときの来ることを私は期待をいたしつつお答えをいたしておきます。
  104. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 文部大臣、私も実は十七年前だったと思いますけれども、当時の日教組教研集会の一つの分科会に出ておりましたら、私服の警察官を連れた方が来られましてね、後ろの方に座って、じいっと討論を聞いてらっしゃるんですよ。おやっと思ってましたら、あれは松田文部大臣だと、こういうふうに言われました。つまり、文部大臣がお忍びで来られているわけですね。で、私もあっそうかと思いましてね、当時現場におりましたけれども、写真を撮りまして、いまでも大事にそのスナップを持っております。やっぱり百聞は一見にしかずという言葉がありますけれども、本当に大臣自身が私は学校現場をごらんになったように、やっぱり日教組教研を見ていただきたい。政治的な議論が行われたとしても、なお余りあるものが、教育根幹に触れる討論が行われているということを、私は胸を張って申し上げたいというふうに思います。  さて、その日教組教研の前に沖繩の教育委員長大浜さんが、沖繩の子供たちが本土の子供たちに比べて学力が低いのは教師責任だと、こういった発言をして、大変まあショックを受けているわけですね。しかしまあ、学力が低いのではないかということは、沖繩の先生方もどうもお認めに——薄々は感じていらっしゃるようで、そのことについて話し合いましょうということにはなっているようですけれども、本土と沖繩の学力を比べるということ自体が、私はやっぱり問題があるんではないんだろうか。比べて悪いとは言いませんけれども、点数で比べるということには問題があるんじゃないかというふうに思うんです。もし学力、点数が低いとしたならば、沖繩はなぜ低いんだろうか。このことについて、初中局長どうですか。そして後に大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  105. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 沖繩の児童生徒の一般的な学力、まあ何を学力と言うかという問題はありますけれども、それがまあ本土の子供と比べて低いか高いかというような、そういう調査は私どもはしたことがございませんし、また探してもいまのところそういうものはございません。ただ、まあ教育委員長の発言なされたといいますその趣旨は、恐らく今日小中学校子供を、沖繩といわず本土といわず、全般を通じまして、学年が上へ上がりますごとに、いわば基礎的事項が十分できてないというようなことから、まあ落ちこぼれという表現も使いますけれども、そういう子供さんが相当おると。高等学校の入学試験の成績の様子などを見ましても、かなり点の低い子供が入っておるというようなことがございますから、そういう点を教育委員長の立場において見た場合、これは沖繩としても大変だという認識でおっしゃったんではなかろうかというふうにまあ考えるわけでございます。  そこで、そういう実態についてどう対処するかということでありますが、一般的に申すならば、全国的にできるだけ物的、人的な教育条件の整備を図っていくということはわれわれの務めでございますし、まあ特に沖繩の場合は復帰というような歴史的事実が非常におくれておったというようなことからして、たとえば高等学校生徒にしても内地よりも大分おくれておって、したがって進学率が低いというような条件の悪さもございますし、その他教育の環境としてまあ適当でない場合もあるだろうというようなことも考えられますので、全般的な日本教育の水準を引き上げるという努力はもちろんでありますが、特にまあ沖繩につきましては、一般といろいろわれわれも協力し、助成をしてまいりたいと、こういうことでいきたいと思っております。
  106. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 私は四十七年の沖繩復帰のときに、ちょうど総理府の副長官をいたしておりました。屋良さん初め沖繩の皆さんが、二十七年間のアメリカの施政下で大変な御苦労になられ、そしてまた日本の施政が及ばなかった、そのために、その当時は本土本土と言ったわけでございますけれども、本土とあらゆる面で格差がある。そのことを復帰をしたからといって、すぐに日本の法律に当てはめるわけにはいかないということで、特別の措置をとりましたことは御承知のとおりでございます。それに取り組みました経験をいたしました私といたしましても、教育の問題も非常におくれておりまして、施設の面についても、先生の数にいたしましても、教育内容においても、それを早く全県並みに追いついていかなければならない、そういうことも措置をいたしましたけれども、ことしの五月でちょうど六年目を迎えるわけでございます。沖繩の教育のいろんな施設その他の問題について、まだ追いつき切れていない。四十七年のときの責任者の一人として、非常に強い責任を感じるものでございまして、沖繩の皆さんに対して特段のひとつ努力をしていかなければならない。いま初中局長が答えましたような内容もございますので、努力をしてまいる決意をいたしておるものでございます。
  107. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 私が問題にしていきたいのは、沖繩の教育委員長の大浜さんが、沖繩の学力低下の責任現場教師にあると、こう発言をされているところがやっぱり大きな問題だというふうに思うわけです。それで、大臣おっしゃったように、私もまだ復帰前の沖繩に行きましたけれども、たとえば屋良小学校なんかに行けば、もう爆音でもって先生のお話が聞こえないわけですね。そんな中で一体どうやって授業をやっていいのか、物を教えてその物がわかったのかどうなのかということすらわからないという悩みを校長先生はおっしゃっておられましたし、養護学校へ行きますと、たとえば予算がないっていうんで、わざわざ車いすで二階に上がれるようにスロープをつくったのに、そのスロープの必要な長さをつくることができなくて急勾配にしたために、つくったはいいけれども二階まで上がれないなんていう、そういうふうな大変な教育条件の中で、私は先生方が一番必死になってがんばってこられた、その方に対して言われた言葉としては非常に冷たい言葉だというふうに、人ごとながら大変な胸の痛みを覚えているわけです。  数字で見てみますと、文部省調査で言えば、中学浪人は全国平均で〇・七%。ところが、沖繩については〇・七どころじゃなくて六・三%で、人数で言えば二千二百十五人が高校に入れない。高校に入れないっていうことは一体どういうことかと言えば、高校の増設をしないまんま行われているわけですね、教育が。増設をしないと言うとちょっと問題がありますけれども、進学の希望、生徒の増に追いつかないような状況の中で高等学校がいま現在ある。そして、もうマンモス学校が物すごいわけです。これは文教委員会でも視察に行ってまいりましたけれども、二千百余人という超マンモス学校ですね。子供たちを見るのに二千人の生徒を一人一人名前を覚えるなんていう、そんな校長先生はいらっしゃらないと思うんですけれども、大変なマンモス学校だというふうに思います。  それから、校舎だとか、体育館だとか、プールだとか、もう本土との格差は非常に大きいし、琉球大学の合格者なんていうのは大半が本土勢に占められていて、そして沖繩の子供たちが入れない。これはもう怒りが出てくるのは当然だというふうに思いますがね。それで、じゃあ屋良小学校の爆音が、いまの状況はどうなったかと言えば、まだまだ、私も先日沖繩の教研集会に行きましたけれども、討論が爆音でもってとぎれてしまうような状況がまだあるんですね。これもまた大変な話だというふうに思いますし、沖繩の女の先生の報告によりますと、実弾実習のときには子供たちの頭上で不気味な音を立てて炸裂音が窓ガラスを揺すぶるんだと、こういうお話も出ているわけです。  さらに、私は先生方のことを考えてみますと、あすこにありますひめゆりの塔だとか、健児の塔でも明らかなように、いま五十代の先生方というのは、本当にあの戦争の中で勉強もしないで師範学校に通われた方々ですし、その場合教育なんかも十分に受けないまま現場に立たれた方々がいっぱいいらっしゃるということも事実だというふうに思います。そういう先生方に対して、一体どれだけの現職教育というものを行われたんだろうかというふうに思いますし、いま親になっている人たちというのは、あの当時もう校舎もないような中で授業を受けたような人たちがいま親になっているわけですから、自分の子供に勉強を教えるということだって大変な問題になっているわけですね。で、ドルで物を買ったり計算したりすることが身についている人たちには、円で計算をするなんということはもうとてもじゃなかった。だから、数学の点数が悪いなんというのは当然の話だというふうに思うわけですが、まあ本土とのこの学力差をすべて教師責任にするという教育委員長さんというのは、私は大変な人だというふうに思わざるを得ません。しかし、それだからといって教師責任がないなんということは私は言いたくありません。やっはり専門職なんですから、きちんと教育をしていかなきゃならないということは思っております。  それで、いまの初中局長の説明では、私はどうも予算上の措置が十分であるようには、何か自信がないような説明だったものですから、思えないんですけれども、ちょうど文部大臣が当時の責任者であるということもありますので、今回の予算について、一体沖繩の特別予算というのはどのような形でついているのかお聞かせいただきたいと思います。
  108. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 大浜教育委員長の発言がたびたびお話に出てくるわけでございますが、私は直接報告を受けたわけではございませんけれども教育水準の維持向上のために、教師の果たすべき役割りがきわめて重要であるという意味の発言であったんではないかというふうに理解をいたすものでございます。文部省としては、それも重要なことでありますけれども、それだけで事が済むわけではありません。物的ないろんな問題の整備、こういうこともやってまいらなければなりませんし、たとえば高等学校にいたしましても五十二年までに五校がふえ、五十六年までにさらに五校ふやそうとしているわけでございまして、全面的にこの沖繩県の計画文部省が協力をしていく立場をとっておりますし、騒音の問題等につきましても、すでに防音工事が全部やれた学校、一部できた学校等、数字は管理局長なり、初中局長なりつかまえておりますので、後ほど御報告をいたしますけれども、こういう総合的な対策をとって、数字でどうも表現をいたしますのは私も酷だと思いますけれども、上の学校への進学率やら、中学校浪人なんかの状況を見ますと、早く追いついてほしい、こういう気持ちが非常に強うございますので、格段の努力をいたしてまいります。細かい数字等につきましては両局長からお答えをいたします。
  109. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 初中局の所管します事項につきまして、たとえば理科教育設備であるとか、産業教育設備であるとか、そういうものにつきましては、それぞれ沖繩分として別途計上をいたしておりまして、できるだけ他の府県と同じ水準に早く持っていけるようにということでやっておるわけでございます。  で、特にその教員の資質向上という点からの対策を申し上げますと、沖繩教員研修ということで、これは復帰前からやっておりましたけれども、向こうの先生に内地に来ていただいて長期間研修をしていただく。五十三年度におきましては、一般の教員を六ヵ月七十人、それから校長先生については二ヵ月十人と、指導主事は二ヵ月五人というふうに積算をいたしております。そしてまた、この夏休み等にはこちらからそれぞれの専門家を那覇等に派遣いたしまして、夏休みの一月ないし二月というものを、現地においてその資質向上のための研修会をしていただく、その専門家の派遣旅費等を計上いたしておりますし、それから全般的にこの沖繩の現職教員の再教育講習というための予算等も計上いたしまして、それらを合わせますと前年度の経費とほぼ同じ五千七百万ほどの経費になるわけでございます。そして、そのほかにもそれぞれの教科なり、あるいは教育技術なりについての文部省主催の研修会を中央において、あるいはブロックにおいて相当数実施をいたしますが、それらの際には九州ブロックの一環として、沖繩の先生に参加をいただくというようなことをやっておるわけでありまして、先ほども申しましたように、引き続きそういう面での再教育なり、資質の向上ということで力を注いでまいりたいと思うわけでございます。
  110. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 学校の施設関係予算でございますが、昭和五十三年度、総理府で計上していただきまして、これは従来その執行は文部省の方でめんどうを見させていただいておるという従来どおりの形でございますが、この五十三年度の予算案におきましては、やはり五十二年度に引き続きまして、できるだけ全国の水準に沖繩の施設の整備を引き上げてまいるという観点から、それに、さらに従来に加えまして新たに学校水泳プール、それから学校給食施設等の整備も加えまして、五十二年度の予算に比して四十三億円の増をいたしまして、百六十五億円を計上いたしてございます。で、これはまあ事業量で見ますると、約二五・六%の増でございまして、まあ本土分につきましては二四%の増を図ってございますが、沖繩につきましては二五・六%というものを面積の上で積算をいたしたわけでございます。  なお、先生御承知のとおり、沖繩につきましては、小・中学校につきましては基本的に補助率を十分の九、それから高等学校につきましては、本土の場合は三分の一でございますが、三分の二ということで措置をしてまいってきておるわけでございます。  それから、高校の増設の問題でございますが、四十七年以降、沖繩県におきましてもいろいろと努力をしてまいておりまして、そして政府といたしましても、これに対して対応する方針でまいっておりまして、五十年から五十二年までの間に高校が五校新設されておるわけでございます。なおそのほかに、本土の学校法人の建てますところの私立高校が一校できております。それから沖繩の県といたしましては、五十三年度以降五十六年までにさらに五校増設をする計画を持ってございまして、で、私どもは申請がございますれば、この五校の建物の設置経費について、そのつどこれを受けて協力をしてまいりたいというふうに考えておりまして、なおこの五校が計画どおりできますといたしますれば、この収容定員という関係から申しますと、いわゆる中学卒業者の人員推計数の九六%を若干上回るものが確保されますので、これはまあ空き定員といったような現象がどのように絡まってくるかということもございますけれども、少なくとも収容能力の上では、ほぼ全国の平均水準並みかないしは若干それを上回る状況になるのではなかろうかというふうに私どもは見込んでおるわけでございます。  それから、大規模校の問題でございますが、沖繩には粕谷委員指摘のように大規模校というものがあるのが実態でございます。そういった小・中学校につきましては、沖繩県の特殊事情もございますわけでございますので、これを配慮いたしまして、四十九度以降でございますが、こういった学校が分離をいたしまして新設校を設置する場合には、いわゆる児童生徒急増市町村でやっておりますのに準じまして取り扱いをいたしまして、新しく分離してできます学校の用地の買収費に対して補助を行う、そういうことで、できるだけこの過大規模校が、何と申しますか、解決されていくということに努めてきておるのでございまして、私ども今後もこの問題につきましては、県の方の御計画にこれまた極力ぴったり寄り添って協力してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  111. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 要望はすべて入ったというふうに先ほど大臣おっしゃいましたけれども、そういうふうに理解をしてよろしいわけですか、沖繩県の要望はすべて入ったと。
  112. 三角哲生

    政府委員(三角哲生君) 要望というものはいろいろたくさんあると存じますが、やはり沖繩県の実情から申しまして、明年度手がけて取り組んでいくというものにつきましては、これは全部といいますとちょっと表現が若干問題かもしれませんが、大部分のものにつきましてはこれを受けとめることができるというふうに、私ども考えておるわけでございます。
  113. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 ぜひ、そういう意味で本土との格差を早急に直すように、今後も努力をしていただきたいというふうに思います。  さて次に移りますけれども、人の質問したことに対して大臣がお答えになった、その議事録を見て質問をするというのはどうもぐあいが悪いのですが、その質問に対する御答弁の中で、大臣が当たり外れという言葉を使ってらっしゃるわけですね。親が教師に対してあの先生は当たったとか、今度は当たらなかったというふうに言うと。その当たり外れという言葉を言われること自体がもう教師という立場の方々は恥辱と感じていただきたいというふうにおっしゃっておられます。私は、大臣先生が恥辱と感じているというふうに思っていらっしゃるのか。恥辱と感じていないというふうに思っていらっしゃるのか。そこのところをお聞きしたい。
  114. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 実はいろんなたくさんお手紙を全国からいただくわけでございます。当たり外れという言葉を使ってのお手紙もたくさんいただくわけでございます。私自身が大変残念に思うことでございまして、やはり文部行政をやります私ども教員の間には、一番大切なことは根本的には信頼感をお互いに持つということが大切なことでございます。そうでありますだけに、私は当たり外れの外れだと言われた先生がもしあるとすれば、その先生は当然恥辱だと考えておられる、そう考えております。
  115. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 ですから、そういうふうに言われた先生は思っていない、心も痛まないというふうに思っていらっしゃるかどうかということを伺ってるわけです。
  116. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 恥辱だと先生自身が感じておられると思いますし、そう信じたいと思うんです。
  117. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 一番心を痛めるのは当該先生なんですから、大臣が思っていただきたい、感じていただきたいと、こうおっしゃらなくても、感じているわけなんですよね。たとえば、これは女の先生に対して言われることが多くて、日教組の婦人部などでも、もう大都市では七割が婦人教師で、三割が男子教師じゃないかと。初等、中等教育は婦人教師責任持ってやらなきゃならない時代に、そのようなことを言われるのは非常に残念だと。みずからの力量を高めようとお互いに自戒の言葉として努力をしているところですから、感じているんです。そのことば大臣、信じていただきたいと思うんです。しかし、なおかつその言葉が取り上げられているということも事実だと思います。NHKなんかも毎年毎年、もう四月になりますとすぐ婦人教師論などを出しまして、お母さんを大ぜい集めまして、いや当たったの当たらないのなんて、そういうことをやっておられますけれども、私はそういうことに対して本当にもう何か胸が痛むというんですか、怒りを持ちたいというふうに思っているんです。けれども、事実そういうことはあるんだろう。そういう言葉が当然出ているということも、私自身も耳にしています。それで、当たったの当たらないのなんということは中学校には出てこないですね。中学校先生で、あの先生が担任になったから当たったとか当たらないとかいうのはない。高等学校でもありません。大学でもありません。もう小学校に限るわけですが、一体小学校でなぜこのような言葉が出るんだというふうにお考えでしょうか。
  118. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) なぜというのは、いろいろ原因があろうかと思いますが、ただ、粕谷委員指摘の、私が承知しております範囲では、女性の先生に特に多いというふうには私は考えておりません。ですけども先生の中にはあるいは勉強の足りない先生もあるのかもしれない。また子供たちに対します態度が粗野であるのかもしれない。そういう先生があるのかもしれない。あるいはまた、両親も先生に対して、教員に対して、両親の側からの要望もまた多種多様多岐でございますから、たとえば教員の仲間でよく勉強しているいい先生だと思われている先生でも、両親の側から見て何か足りないところがあるのかもしれない。その原因がどこにあるということを明確に申し上げることは、私は大変むずかしいことだと思いますけれども、いずれにいたしましても、私はいま粕谷委員が御指摘になりました、教員自身がもっと勉強しなければいけない、教員としての資格をみずからもっと研さんの上に立って高めていくんだという意欲をお持ちになっておられることを信頼をしつつ、そういう研修機会をもっとたくさん提供をしていきたい。そのことによって当たり外れなどという言葉が世の中からなくなるように努力をしたいと考えます。
  119. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 私はどんなに教師研修をし、努力をしても、一〇〇%すべての父母の要望を入れて、何といいますか、一〇〇%の父母があの先生はりっぱだというふうに満足をさせるなんということは不可能ではないか。そんな超人的な先生がいらっしゃるというふうには考えられないわけですね。たとえば筑波小学校へ私は行きました。筑波小学校というのは、御存じのように筑波大学の関係先生方とか、公務員とか、そういう方々がほとんど入る学校です。あそこの校長先生がこういうことをおっしゃったのをまだ忘れることができないんですけれどもね。ここの学校のPTAの方々は、たとえばグランドを整地しようとか、どうしようとかいうようなことについては、一切いままでと違って協力的ではない。そういうことはわれわれがやることではなくて、当然行政の側がやるべきことだろうというふうに言われる。その次に、とにかくよく勉強を教えてもらいたい、もう大体八割から九割ぐらいが公務員なんですね。特に筑波大学の先生方子供さんたちが来ていらっしゃる。その父母の学歴を見ますと、もう超エリート——何といいますか、一流大学を出た方々なんですね。その奥様もまた大学を出た方がほとんどです。そういう方々学校に来られて何を言うかというと、ここの学校先生方の学歴はどこですかと、こういうふうに質問される。私は、校長先生ですね、私は胸を張って、全員が茨城大学卒業生ですと、こう言って答えたら、ああ二期校ねと言って、こう軽くいなされてしまったと。先生が学歴でもって父母にそのようなことを言われて、同じ国大でありながら一期校だ、二期校だで、もううちの子供を教えるようなこの先生は滑りどめの学校を出てきたんではないかなんというようなことを言われたんでは、私はいい教育ができるというふうに思えません。父母と教師との信頼がないところに、子供たちの信頼をつなぎとめるなんということはできないと思うんです。そういう意味で、この当たり外れ論があるということは非常に残念なことだというふうに思いますが、中学校に少ないということは、一つの原因として、小学校はもう一人の先生が二百四十日間その子供だけ付き添っている。ほかの先生が全然入り込むすきがないから、だからもういやだ、困るというふうに思ったときにはもうその一年間は全然だめなわけです。そういう意味ではたとえば複数担任制がいいのではないかとか、いろいろなことを言っていらっしゃる方々がおりますけれども、諸澤さん、どうでしょう、こういうことについて文部省の中で討論をしたことがあるでしょうか。
  120. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 前段に御指摘になりましたようなことは私の耳にも入ります。ただ、私といたしましては、両親の側から先生責任を追及する、先生の側からはそれは学校責任ではなくて、家庭責任だという責任の追及がある。このこと自体が私は大変残念な状態だと思うんです。もう教育基本先生にお話し申し上げる必要はないと思うんですが、やはり学校教育というものと家庭教育というものを、児童生徒たちの好ましい人格の養成を考えれば、どこで線を引くのかということを言葉や文章で書きあらわせるものではないという気持ちが私はいたします。それだけに私はその責任追及をお互いにやるんではなくて、学校家庭とのやはり対話というものがどうしても必要だ。教員家庭、両親との対話、お互いに理解し合っての子供たち教育指導ということがどうしても実現できなければ、私は本当の教育の確保ができない。もう歯に衣着せず申し上げれば、今日の状態教育というものから、もっと豊かな教育を確保するために、また今日のような状態を醸し出したその原因について、青少年児童生徒に対して反省をしなくてもいい大人が一人でもあるだろうかという気持ちすらいたすのでございます。したがって、私はいまの前段の御指摘のような、どういうのですか、誤った学歴偏重、そういう状態もやはり打破をしていかなければならない私たちの努力目標の一つでございますし、両親と教員の間のただいま申し上げましたような理解が成り立っていくことに、文部省としても努力をいたさなければならない大事な点であると理解をいたしております。
  121. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 大臣のお考えは非常に精神的なものでありまして、私もそのことについては賛成をしたいと思います。しかし、そういうような条件をつくっていく教育条件そのものですね。たとえば、教員養成の問題にしても、お医者さんをつくる大学は六年間ですね。きちんと現場実習というものをやって、そして出していらっしゃいます。牛や馬や、こういう動物を診る獣医学校も去年たしか六年になったと思います。非常に勉強をきちんとやっていくということと同時に、本当に臨床を大事にしていかなきゃならないという意味で、この六年間というものは決まっているんだと思いますが、たとえば教員の場合はどうでしょう。教員養成大学であっても、なかなか教育現場の実習というものが長期間とれないで出ていくわけです。美容師だとか、理容師なんかといったって、じっと先輩のやるのを一年間も見ていたり、頭洗いばかりもう何ヵ月もやったりというふうに、本当に徹底的にその訓練をされますけれども教員というのは新卒でもすぐクラスを担任させられて、もうすぐそのときから一切の命の問題まで含めて、重要な責任というものを負わされる体制になっております。この辺のところは一体どういうふうになってくるのか。非常に父母も高学歴化しているわけですから、教師もその父母と大体同じようなところでやっていくということよりは、一応現場へ帰っていったら、本当に教員現場でもって苦労して、さらにもっと勉強したいと、もっともっと深めなきゃいけないというふうに思うわけですから、そういうような条件をつくるためには、いまだけの大学院で数が足りるのかどうなのか、この辺のところもひとつお話しをいただきたいと思います。さっき私は諸澤さんに小学校の一学級一人制というのは問題があるんじゃないかということについては、文部省としての御答弁がありませんでしたので、この辺もいただきたいというふうに思います。
  122. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 一学級の児童編制四十五人で、先ほど来議論がありましたように、編制基準をもう少し下げるべきじゃないかというような御意見とも関連して、補助教員をつけたらどうか、これは一つの考え方だと思うわけです。ただ、いま小学校は全科担任ではございますけれども、実態としましては音楽とか、図工とか、体育とかいうような教科については、他の専門の先生がかわって教えるというようなことがございますので、仮に担任の先生が女の方であっても、その方が全部教えるというケースは名簿より少ないんではないかと思います。そこで、いまの補助教員の問題ですけれども、これは確かに一つの検討課題ですけれども、ただ女子教員等の対策といいますか、その関連で言いますと、先ほどお話もありましたけれども、現在国立の教員養成学部の小学校課程の志願者というのは、女子の方が、最近ちょっと男子がまたふえてきたようですけれども、それでも女子が相当占めているわけですね。それで小学校現場教員構成も女子が五三%ぐらいになっていますか。そうだとせっかくこの補助担任制をつくっても、正規の先生が女子で、補助の先生も女子だというんだと、それでも悪いこともないかもしれませんけれども、やっぱりそれはちょっと問題であろう、そうすると、やっぱり問題は教員養成のあり方というようなことにも戻ってくるんじゃないかと思います。教員養成につきましては、大学局長がお答えになると思いますけれども、私ども実際に養成された先生を受け入れる立場から言いますと、現在の小学校四単位、中学校高等学校二単位という教育実習は、単位数としてはもちろん少ないし、その中身もまたきわめて希薄なものであるというところは御指摘のとおりでございますんで、それを現場研修という形でできるだけカバーをいたしておるわけでありますが、なお実際に教壇に立つ人の資質養成としては、十分でないというふうに認めざるを得ないというふうに思っております。
  123. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 安易に免許状を与えているんではないかという批判があるわけなんですね。私なんかも、某私大あたりから来まして、子供を一週間教えただけでもう単位をもらったといってこう報告するわけでしょう。その辺のところの反省はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。それからいまちょっと私気になるんですけれども、女の先生が本担任で、副担任が女であっては問題だというのはやっぱりおかしいんであって、人間が違うわけですから、男に男の副がついたところでそれは構わないんじゃないですか。男、女でやらなきゃならないなんということ自体がおかしいのではないかというふうに思いますけれども、どうでしょう。
  124. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) ですから、私もそれだからといってすぐ問題だというふうにはならぬでしょうがというふうに一応留保したわけですけれども、ただ学校教育の実態を見ますと、女の先生、私は本当にりっぱな先生たくさんいらっしゃると思います。たとえば、しかし文部省の視学委員で体育関係先生現場を見に行かれまして、夏の暑い日に子供に体操を教えている。それで女の先生がその担任で、自分は日陰に入って麦わら帽子かぶって、しかもほおかぶりして、日にやけるのがいやだから木の下にいて、お前やれと言っておって、あれじゃ子供うまくなりませんよ、こう言っておられた、私はそのとおりだと思うんです。それで、それは女の先生だから悪いということではないと思いますけれども、やはり女の先生はどうしてもそういうことを気になさるという、それはまあ婦人として天性のものがありますから、そういうことを考えました場合に、教育現場として一つのクラスに女の先生が正担任、副も女だというのは、必ず悪いというわけではありませんけれども、やはり私は人間教育として、特にまあ小学校段階ではやはり教員の組み合わせというのは考えてやった方がよろしくないかという程度意味でありまして、これを絶対いけないというふうに申しておるわけではございませんで、ひとつ御理解をいただきたいと思います。
  125. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 五十二年三月で教員免許状を実際に取得した者の数は十六万七千二百でございます。それに対して、五十二年三月の新卒の段階で実際に教員になった者の数は三万九千五百。このように、実際に教員になる者に比して免許状の数が非常にたくさん出ているということから、免許状が乱発ではないかというような御批判があることは十分に承知をいたしております。これは戦後開放制のもとで、一般の大学からも広く教職に人材を受け入れようということで教員養成の制度が進められてきたと、一方で高等教育の規模が著しい拡大を見てきていることに伴ういわばある意味では当然のことでもあるわけでございますが、その間に教育実習がどうしても形式的になるとか、あるいはこれは私ども責任でございますけれども教員養成の課程認定が安易に過ぎるのではないかというような問題の指摘があるわけでございまして、課程認定のあり方については、教員養成審議会にも御検討いただきまして、来年度からはいまの課程認定のあり方をもう少し基準を上げて厳しくするというようなことも現在考えておりますし、また教育実習の問題については、これは本来は制度の抜本的な改革、改善ということを考えないと十分には行き届かない点はあるにしても、少なくとも現行制度のもとで、実習に当たる者を精選をするとか、あるいはもっと大学と教育委員会、あるいは受け入れ学校との間の連携を密にするとか、あるいは大学の方がもう少し責任を持って実習生を指導する体制を整えるというようなことが何とかできないかということで、これまた検討を進めているところでございます。  なお、教員大学をこれからどういうふうにつくっていくかということでございますが、教員大学については兵庫、上越に続いて鳴門について創設準備を行っております。それ以降のものにつきましては、かつて教員養成審議会の建議で、現職教員のための大学院を各ブロックに一つくらいつくった方がいいというようなことを御指摘をいただいたことはございますけれども、既設の教員養成大学学部をどのように充実をし、そして、そこにおける大学院をどのように整備をしていくかということも進めなければなりませんし、また今後の初等教育教員の需給の状況というものを見ていかなければなりませんので、それ以降の教員大学をどのようにつくっていくかということについては、そういった他の関連する状況を見ながらさらに慎重に検討したいと考えております。
  126. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 ぜひ私は大学局長にもお願いをしたいというふうに思いますけれども、本当に現場先生方が、教員になってよかったと、こう思う方々はいっぱいいらっしゃるんですけれども教師として自信があるかというと、いつも一〇〇%自信がありますというふうにはなかなか言えない、それほど毎日毎日がむずかしい新しい問題の連続になっているわけですから、そういう教師たちの悩みにこたえられるような大学院の教育でありますように心からお願いをしたいというふうに思います。何か学歴を取るためだけの大学院ではなくて、そういうことをいまお願いをしまして、この点については後で法律が出されますから、そちらの方で十分討論をしたいというふうに思います。  先ほど勝又委員の方から教員の週休二日制について質問がありましたけれども基本的にできないというふうに思っていらっしゃるのか、やろうというふうに思っていらっしゃるのか、そこのところが私はわからないので、民間がやっちゃってからできるというんじゃ、本当にいつになったらできるんだろうかというふうなこととも絡み合わせまして、こういう観点からお聞きしたいと思います。  フランスの総選挙が終わりました。残念ながら私どもとしては革新が破れたんですが、その選挙中にマルシェ共産党書記長がテレビの中で、日本の女性はまさに奴隷のごとく扱われている、こういう発言があった。それで日本大使館はびっくりしてこれに対して抗議を申し込んだというのを、私、外務省からも資料をとりましたのでよくわかりましたが、その発言の中で、この二十世紀に週末の休みもなくて、バカンスもない、そのほかに社会保障の問題も挙げられておりますが、だから奴隷のごとく扱われているということなんだそうですね。確かに物議を醸しましたけれども、週末の休みがあるというのは、ヨーロッパにおいては当然の常識になっているわけですね。ソビエトなんかでも、土曜日なんというのはみんな別荘に行くんですね。あそこは生活程度が悪い悪いなんて言いますけれども、ハバロフスクへ行っても、レニングラードへ行っても、モスクワへ行っても、みんな土曜日曜というのは休日になっているわけですよ。で、やってもらわなければならぬ仕事なんというのは、金曜日に間に合わぬと土曜日にされないで、本当に旅行者なんというのは非常にいらいらすることが多いわけですけれども、こういう考え方からしてみますと、まさに教育界は奴隷のごとき存在にあるんではないだろうかなんという感想も出てまいりますが、さっきの質問と関連いたしまして、世界的に見てこの週休完全二日制の国というのは一体どのようになっているか、あるいは学校五日制の国というのはどのくらいあるのかということはおわかりでしょうか。
  127. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 学校五日制をどのくらいの国でやっているかというのは、資料があったと思いましたけれども、いま手元にございませんので、後ほどまたいたしますが、率直に申し上げまして、ヨーロッパの国など大体それに近い、あるいは平日でも午前中だけで授業をおしまいにする、こういうようなことでございますので、大分日本と事情が違うということは御指摘のとおりでございます。ただ、学校五日制にするということのためには、土曜日曜を子供にどういう生活を送らせるかということをやはり考えなきゃいけない。日本の場合そういう点につきましては、学校外の子供の運動施設なり、その他の施設というのがかなり未整備であるというようなこともございますから、外国がやっているからというだけですぐにはいかないという問題もございます。長い目で見ましたら、先ほど大臣がおっしゃったとおりでございますので、そういう課題も同時にいまいろいろ検討はいたしておりますけれども、やはり当面の問題としては週休二日制を変則的な形でも、まあ公務員につきましても、われわれも週休二日制の試行と言っても、一月のうち四土曜日みんな休むわけじゃなくて、一日だけ休むという形の試行をやっているわけですが、そういう程度のものでも学校でできないかどうかということを、去年に引き続いてもう一段踏み込んでひとつ研究してもらおうというのがいまの時点考え方でございます。
  128. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 その学校のことについては、質問通告をしておきませんでしたので、私の方で調べた分を申し上げれば、完全二日制のところはアメリカ、カナダ、イギリス、フランス、西ドイツ、スイス、ソ連、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、チリと欧米二十四ヵ国ですね。それから学校五日制のところはアメリカ、イギリス、フランス、カナダ、オランダ、デンマーク、スウェーデン、西ドイツと、こうなっていて、週休二日制と学校五日制がばっちりと組み合うというところは、オランダ、デンマーク、スウェーデンですから、学校は六日、教師は週休二日というところがずいぶん多いんだというふうに思うわけです。そうしますと、いま諸澤さんおっしゃったように、この学校五日制についても検討していると、遊び場の問題なんかもちょっと御報告になりましたから、全然考えないということではないというふうに思いますけれども、今度のゆとりある新教育課程で、学校六日制のまま教員二日制にした場合、一体どのくらいの教員が必要になるんでしょうか。現在の定数ではやれないということはみんなわかると思うんですが、もし学校六日制のまま教員週休二日制にしたらどのくらいの人員が必要になるでしょうか、計算したことございませんですか。
  129. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 御指摘でございますけれども、今度の学習指導要領改定してゆとりのある学校生活ということにいたしましたが、それはあくまでも六日制といういまの前提に立ってのゆとりでございますから、これをいまのままで五日制にしてしまったら、せっかくつくったゆとりがまたなくなってしまうということにもなりますので、いまの指導要領の改定は、六日制を前提としておるというふうに御理解いただきたいと思います。したがいまして、いまの六日制で週休二日制にした場合どうかという点につきましては、いまのところそういう計算はいたしておりません。
  130. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 そうしますと、私の方でのちょっと計算になりますけれども小学校では十三万人ぐらい必要になる。中学校では四万人で、合わせて十七万人ぐらいふやさなきゃならない。これまた大変な定員増になりますよね。そのほかに、いま四十五人の一学級の編制基準を四十人にしていくといったら、大変な人数がふえてくるだろうと思います。私どもも、やっぱりいい教育ができるために教育条件を整えなきゃならないという意味で、定数法改正のための試算に入っていますけれども、大変な状況が出てくるわけですね。文部省としては、この週休二日制についていずれはやらなきゃならないだろうという、そのいずれというのは民間の状況を判断する、あるいは公務員の状況を判断するということだろうと思いますけれども、めどをどのくらいに立てていらっしゃるでしょうか。
  131. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) これは私もちょっと推量的な考えになるわけですけれども、人事院が五十三年度もう一年試行をやると言うて、それじゃその後どうなんだということを私ども聞きましても、肝心の提案した人事院もはっきりしたことを言ってくれないので、とにかく試行をやるんだということですから、私どももその方針に従って、政府としてそれに沿って都道府県教育委員会指導してきているということでございますので、その先したがって学校をどうするんだ、あるいはいつまでをめどにやるんだというようなことにつきましては、いま特定の具体的考えは持っていないというのが正直申しまして実情でございます。
  132. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 それでは最後にお伺いしますけれども、先日新聞で、リベリアで大統領が日本先生を欲しい、こう言われたということが載っておりましたが、そのニュースを見て、千二百人がぜひ私は日本語を教える先生になって行きたいと言って申し込みをした。今度は選考に困っているというような記事が出ておりましたけれども文部省の方で海外派遣教師というのは、今回全部国でめんどうを見ることになったようですけれども、そこのところは現職の先生でなければならないのでしょうか。大分この派遣教師内容についていろいろなことが言われておりますけれども、本当にそういうところでやっていきたいという実力とか、意欲とかというものがある方々が出されているのでしょうか。たとえば夫婦二人でいらっしゃった、片方の方は申し込んだときには妊娠をしていらっしゃるのがわからなかった。で、出かけるときにわかったんで、私妊娠しているのですがと言ったら、そんなこといまごろ言われても困る、とにかく行ってくださいといって行った。そこのところで産んだらかわりの先生がいらっしゃらなくて非常に本人もお苦しみになったし、現地の不満も多かったというようなことも出ておりますので、そういうのは苦労して苦労して先生を探していらっしゃるからではないだろうかというふうに思います。青年海外協力隊の数字なんかも見てみましても、十三年前にはたった二十六人しかいなかったのが、いまは非常に希望も多くて二十ヵ国、五百二十三人も出ていらっしゃる。アフリカあたりにもケニアあたりでも五十人行っていらっしゃるとか、あるいはマラウイあたりには六十九人も行っていらっしゃるとか、こういう数字が出ているときに、文部省あたりでは教員を探すのに御苦労なさっていらっしゃるのかどうなのか。それから、そういうふうにもつと幅広く広げる気持ちはあられるのかないのかということをお伺いしたいと思います。
  133. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 先生お話しのように、派遣教師が従来は都道府県から行っていただくわけなものですから、都道府県によって先生の身分と申しますか、取り扱いが違いまして、休職で送り出される県があったり、研修派遣ということで送り出される県があったり、海外の日本人学校を回りますと、校長先生がどこの学校へ行きましても訴えられるのは、その待遇がばらばらであるということでございます。  そこで、五十三年度から派遣をいたします教員につきましては、全額国庫で見るということにいたしまして、そのかわりに各都道府県とも扱いは休職なんということでなくて、研修派遣で送っていただこう。五十三年度からになりますので、大体三年で全部そういうことになるわけで、改善ができるわけでございます。なお、海外の日本人学校へ行きたいという御希望の先生は非常に多うございまして、海外に行っていただかなければならない先生の——いま手元に正確な数字がございませんけれども、かね太鼓で探して行っていただくという状態ではございません。希望者が大変多うございます。それから学校先生を奥さんがなさっておられて、御主人が商社にお勤めになっていたり、あるいは報道関係に勤めておられたり、御主人の方がニューヨークならニューヨーク、クアラルンプールならクアラルンプールに派遣なされる。奥さんがいま教員なものですから、やはり日本人学校へ行きたいという御希望がある、そういうことも若干しんしゃくもしながら扱っているところでございます。
  134. 粕谷照美

    ○粕谷照美君 大変優秀な教員が派遣をされるというふうに理解をしていいというふうに思いますけれども、今後とも御努力をお願いをしまして私は質問を終わるわけですが、最後に一つお願いをしたいと思うのは、いま卒業の時期です。そして四月になれば入学の時期です。入学式のときは余りこの事件が起きないのですけれども、卒業式をめぐって君が代を歌わせる、歌わない、歌わせない、業務命令は出していく、その業務命令に反発するなどという事件が出ています。文部省の今度の学習指導要領の中に国歌君が代と、こういうふうに入れたというので、非常に校長先生方が勇気づけられまして、東京都の管理職員協議会でどのようにして君が代を歌わせるかなどというこのパンフレットなんかも出しておりますけれどもね。私は現場にそういうような問題が起きていくというのは、国歌、国旗というものが本当に国民のコンセンサスを得たような形で出ていない、そこのところに問題があるというふうに思いますので、文部省の中でも十分この点について御検討くださるようにお願いをして、質問を終わりたいと思います。
  135. 吉田実

    委員長吉田実君) 本件に対する午前の質疑はこの程度にとどめます。  午後は二時から再開することとし、休憩いたします。    午後一時休憩      —————・—————    午後二時四分開会
  136. 吉田実

    委員長吉田実君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  教育文化及び学術に関する調査中、文教行政基本施策に関する件及び昭和五十三年度文部省関係予算に関する件を議題とし、午前に引き続き質疑を行います。質疑のある方は順次御発言を願います。白木君。
  137. 白木義一郎

    白木義一郎君 文部大臣学術と大学教育の国際交流を深めるねらいから、現在欧米諸国が採用している共通入学資格制度の導入を検討するために、先月ロンドンで開催されたインターナショナルバカロレア、国際入学資格制度会議にわが国として初めて文部省審議官を派遣したと伺っております。  そこで、まず国際入学資格制度についての説明及びロンドンでの会議の模様の御報告をお聞かせ願いたい。
  138. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) インターナショナルバカロレアの制度と、また先般の会議について、大学局長からお答えをいたします。
  139. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) まずインターナショナルバカロレアとはどのような事業かということでございますが、近年国際的な規模の人的交流が進展をいたしますに伴いまして、世界各地にいわゆる在留外国人子女の教育を主な目的とする国際学校が急増しつつございます。インターナショナルバカロレア——いわゆるIBと申しますが、IB事業はこれらの学校在学者に国際的に認められた大学入学資格を与えて、大学進学の道を確保することを主な目的とする事業でございます。で、これらの国際学校の修了者に与えられる大学入学資格のことをインターナショナルバカロレアと称するわけでございますが、この事業に参加する国際学校の所定の課程を修了したものを対象といたしまして、IBの事務局が統一的に共通試験を実施をいたしまして、これに合格した者にこのIBの資格が与えられるわけでございます。この事業は現在ジュネーブに本部を置く事務局を中心とする民間組織が実施をいたしておりまして、このIB資格を大学入学者選抜に際してどのように評価をするかは各国、各大学の判断にゆだねられているところでございます。この事業を通じまして学生の国際的な流動化が促進されると同時に、国際的に共通するカリキュラムの開発を通じて、国際理解の増進に寄与するということが期待されておりますことから、IBの事業に関しましては国際的にも大きな関心が寄せられておりまして、五十二年一月現在でIBの試験合格者に対して、何らかの形で自国の大学への入学資格を認めております国は、欧米の主要国を中心に三十八ヵ国、またこのIBのカリキュラムに基づく授業を実施している国際学校は二十九ヵ国、六十校に達しております。  で、先般の会議でございますけれども、このIB事業は四十一年に開始されましてから、これまで参加各国国際学校の共通カリキュラムを開発したり、あるいはIBの資格試験を実施をするというようなことで、事業を進めてきたわけでございますけれども、事業の本格的な実施に先立ちまして、五十一年にハーグで第一回の関係国による国際会議を開催をいたしたわけでございます。今回の会議はこれに引き続く第二回目の国際会議で、イギリスの教育科学省が主催をいたしまして、わが国を含む三十二ヵ国、さらに五つの国際機関が参加をして、IB事業の強化をどのように進めていくか、あるいは各国政府の資金の援助の増額等の問題につきまして討議を行ったわけでございます。IB事業の政策決定機関として拠出国の代表から成る拠出国常設会議を設置をすること、IBの事務局は当面民間団体として、現在のままの法的地位を維持すること等が決定をされております。  今回の会議を通じまして、参加をいたしました各国は、いずれもこのIBの事業に対して支持を表明をし、資金援助の開始、あるいは増額を約束する国も多かったわけでございます。その結果、IB事業の国際的な基盤はさらに強化されたというふうに考えております。わが国は今回初めて参加をするわけでございますけれども、IB事業の実情をまず把握をするということと、同時に、わが国の教育制度・特に大学の入学制度につきまして、IBとそれから参加各国の理解を求めることに努力をしたわけでございます。
  140. 白木義一郎

    白木義一郎君 現在、外国の高校を出てもわが国の大学に入ろうとすると、まず資格検定試験を受けなければならない。いま説明を受けた範囲内で判断しますと、この国際制度に加盟すれば、外国で教育を受けた者も日本の大学に、場合によっては無試験で入学ができる道が開かれることになるんではないか。海外からの帰国子女にとって、大変大きな朗報となりますが、これらの点についての現在の文部省のお考えをお聞きしたいと思います。
  141. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 大学入学資格につきましては、御案内のように、外国におきまして学校教育における十二年の課程を修了した者につきましては、これは入学資格があるわけでございます。したがって、そういった外国における十二年の課程を修了した者であれば、IBの試験に合格するまでもなく、現在でもわが国の大学に入学する資格はあるわけでございます。しかし、国際学校と言われているものにつきましては、制度的な位置づけが必ずしも十二年の学校教育の課程を修了したというふうに言い切れるかどうかについて、これは各国の事情がいろいろでございますので、問題がないわけではございません。そういった点からしますと、IBというのは確かに非常にメリットの多い方法であるということで、私たちは関心を持っているわけでございます。IBの試験に合格をした者についてのわが国の大学への入学についてどのような取り扱いをしていくのかということにつきましては、もう少しIB事業に参加をしている国際学校実情なり、あるいはIB試験の実態についても研究をしながら、検討をしていかなければならないというふうに考えております。なお、わが国の場合には、御案内のように大学の入学につきましては、それぞれの大学がそれぞれ入学者の選抜を行うというたてまえになっているわけでございますので、仮にIBの試験合格者について入学資格を認めるということをわが国として採用するにいたしましても、そのまま希望する大学に無試験で入れるというような形ではなくて、各大学が改めて入学者選抜を行う、つまり各大学の入学試験を受ける受験資格を持つというような取り扱いになろうと思います。もちろんその選抜をしていく方法については、海外子女の実情に即するような配慮というものが必要だとは思いますけれども、事柄としてはそのような運びになるわけでございます。なお、IBをどういう形で採用するかについては、先ほど申しましたようなことでございますけれども、私たちはやはり強い関心を持っておるわけでございます。
  142. 白木義一郎

    白木義一郎君 私は、わが国の文部省がこの国際資格制度をこのまま傍観していると学術教育文化の面で国際交流に取り残されていくことになり、ますます教育の国際化の対応がおくれてくるんじゃないかと考えております。そこで外国に比べて、わが国の教育制度が大変異っているのは当然ですが、まずわが国もこれに加盟をして、そうして制度導入については十分な検討と受け入れ体制を整えた上で、決定したらよいのではないかと思いますけれども、非常に張り切っていらっしゃる文部大臣、この問題をどのようにとらえていらっしゃるか、御答弁を願いたいと思います。
  143. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 大変IBというのが世界的に広まってまいりました。各国とも充実をしてまいっておりまして、IB本部でつくりますカリキュラム等大変りっぱなものになってきておりますので、私といたしましては非常に大きい関心を持っておりまして、まずIBに資金参加をすることが先決だと思うんです。政府部内で関係官庁ともよく協議をいたしまして、五十四年度で資金参加ができるように努力をいたしたいと考えております。なお、IBにどう日本の国内での学校体制等が対応していくかは、これからの検討課題で、先生の御指摘のとおりであると考えております。  それから、先ほど先生の御質問の中に、IBの資格があれば日本の大学にすぐにということでございましたが、大学局長が答えましたように、十二年の学校を済ませた、IBではなくて世界の各国の正規の高等学校を卒業した人には、検定試験を必要とするまでもなく、日本の大学への受験資格が当然付与されておりますので、資格は付与されておりますけれどもその受け入れが、外国の高等学校の中には学期の月が違っておりますので、それをどう受け入れるかという、正規の高等学校を卒業した青年たちを日本の大学でどう受けとめるかという、こちらの大学側の対応の方をどうも先に進めていかなければならないんじゃないかと考えておりまして、その対応整備に心がけたい、かように考えております。
  144. 白木義一郎

    白木義一郎君 IBに加盟すれば、基金の一部を分担することになりますし、それについてはいま大臣は五十四年度から資金参加をできるように、強力に推進すると大変前向きなお考えを持っていらっしゃることを伺って意を強くしたわけですが、これを受け入れる体制としては、外国との関係で英語で講義をする大学が必要になってくると思います。この点についてその目安、あるいは早急に制度加盟のための検討を進めていただきたいと思います。  それについて、局長大臣も、とにかく試験——まあ局長さんがそう言うのはわかるんですが、大臣まで何かというといま問題になっている試験でと言うところが大変私は不満なんですが、できるだけこの制度を活用して、そして海外で勉強した子女をわが国の大学へ受け入れて、そして十分にその資質あるいは才能、外国で学んだものを発揮させていくべきじゃないかと、こう思うんですが、自由に自分の望む大学へ入学できるようにするとか、それから特定の大学に入れるようにするとか、また、いま言われたように受験資格だけを与えて、そして大学の試験を受けさせると、この三つの方法がそれぞれの国で選ばれているようですが、わが国では現在まだ検討の始まった段階のように思いますが、大臣はこの制度を活用しても、さらにどうしてもやはり大学の試験を受けさせるというようなお考えであるかどうか、もう一度お伺いします。
  145. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 私立大学の一部では、海外の高等学校調査表及び面接のようなことで、別枠で受け入れをもうすでに行っている大学もあるわけでございます。私立大学としては大変好ましい受け入れ体制をとってくれていると私は考えておりますし、そういう私立大学がふえてまいりますことを期待をいたすものでございます。国立大学につきましては、御承知のように共通一次入試に五十四年度から踏み切りますので、海外の高等学校を出た人は、やはり一次入試の科目の中に国語がございますから、これはもう否定的なことにこのままではなりかねませんので、そこをどういうふうに、海外の高等学校を卒業した人を受験資格があると言いながらどう受け入れられるか、その点の改善がこれから取り組まなければならない大事な問題でございます。ただ全部が全部無試験ということをもう初めから決めてかかりますことは、やはり国内の高等学校を出た青少年との均衡のことも考えますと、すべてがすべて無試験というわけにはまいらないと思いますが、日本高等学校ではない海外の高等学校を出たということの特殊性、その特殊性が壁になるようなことのないような方法を検討いたさなければならない、そういうふうに考えているところでございます。
  146. 白木義一郎

    白木義一郎君 いずれにいたしましても、この問題はできるだけ速やかに、また堅実に、早期の実現をすべき問題であろうと思いますが、こういうことから考えてみますと、大臣も先ほどお話しになりましたけれども、国の根幹教育にあるというような、当然のことでありますが、お考えをお持ちですので、問題は大学入学に限らず、もう少し大きな視点に立って、また長期的な視野が必要ではないか、このように考えます。で、わが国は明治開国以来、外国からの知識輸入に頼っておりましたけれども、これからは世界に開いていく、世界の教育のお役に立つというような考え方をすべきだろうと思います。もちろん日本独自の研究、あるいは現にロンドン大学の森嶋教授のように、世界でりっぱに通用する学者もおられるわけですが、まだまだ足りないと思います。頭脳流出などと大騒ぎするだけではなく、もっと多くの学者が海外に出て活躍してもらわなければならないと思います。そこで学者、研究者が海外で教授研究をするためにどのような施策、また配慮を文部省では行ってこられたか、あるいはお考えになっているか、お尋ねしたいと思います。で、当然海外へ出て勉強、あるいは研究をされる方があれば、当然わが国で教授研究をする外国人もいるわけで、伺いますと、国立大学の教官として外国人教師を正規に雇い入れるということも検討をされているということで、大変結構なことだと思っておりますが、さらにこれを開いて、初等、中等教育においても、全部とは言わないまでも、モデル校をつくって外国人教師も含めた教育を行っていいのではないか、このように考えてみましたけれども、どのようにお考えになっていらっしゃるか、お伺いいたします。
  147. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 初等、中等教育段階でも、やはり国際的にもっともっと開かれた日本になってまいらなければなりませんから、そういう意味で外人教師がふえることは好ましいことでございます。また大学におきましても、私は二つあると思うんです。受け入れの問題と、いま白木委員が御指摘になりました各国で日本のことを研究してもらうことがやはり必要でございます。こういう面につきましては、私どもも取り組まなければならないことがありますが、外務省とも十分協議をしながらその道を開いてまいりたい。いま一つ、白木委員の御指摘になりました国立大学の教授の受け入れでございますが、すでに大分たくさんの教官に来ていただいてはおりますものの、国立大学となりますと、その教授がやはり国家公務員という関係がございます。国家公務員法で決めております国家公務員としての根幹に触れる問題が出てまいります。もしも正規の国立大学の教授、外国人に来ていただきますと、教授会にも出席をして、ちょっと大げさな言葉で言えば、国家意思の決定にも参画をすることになるものですから、国家公務員法で決めておりますそこのところをどうすればいいが。実は国家公務員法の根幹に触れる問題だからだめだと、法制局から私どもは聞かされ続けてまいりましたが、方法があるようなことを予算委員会で法制局長官が答弁をいたしましたので、そういうことならばひとつ積極的に取り組んで検討してみよう、そういう決心をいたしたわけでございまして、もちろん法律的な何かの手段を講じなければできることではございませんけれども、何かの方法が見つけ得られないかということを検討いたしたいと考えております。
  148. 白木義一郎

    白木義一郎君 教育の国際交流、あるいは教育の国際化ということが大変むずかしい問題ではありますが、特に制度の問題として考える場合は、いろいろな困難な問題にぶつかるということは十分知っての上で申し上げるわけですが、私は日本教育の自由都市、さらには教育の国際連合というようなものを設立するために、先進的な役割りを果たしていくということを提案をしたいと思います。で、さきに問題にしたIBのような組織を順次つくり上げるとか、ユネスコを改組する、あるいはOECDの教育活動を発展させるとか、あるいは国連大学に新しい役割りを持たせる、また各種の国際教育研究センターを発展させる、あるいは独自の組織をつくるなど、方法はいろいろあるかと思いますが、二十一世紀に向かって国際共同の新しい教育組織をつくって、人類の平和に貢献するという方向が考えられないかと思うわけであります。そこで、鉄は国家なりという言葉があるなら、人は国家なりというのが裏表の関係にならねばならないと思いますが、その人も、日本人だけというのではなく、人類という広い立場でこれからは考えていかないと、アニマル呼ばわりをされてしまうおそれがあります。で、その人類、人間教育するということを国際的視野、規模で考え教育国連の設立にわが国は取り組むべきだと考えますが、このような提案につきまして大臣はどのようにお考えになりますか。教育の国連本部を設けて、世界的な立場で全人類の平和に貢献する教育に取り組んでいく、その推進にならねばならない、このように考えておりますが、いかがですか。
  149. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 大変雄渾な御発言でございますので、いまどういうことをという具体的な考えが私にあるわけではございませんけれども、方法としては、私も教育こそは国の根幹であるとかたく信じておりますので、白木委員の御指摘のその御趣旨、御構想に対しては全く同感でございます。
  150. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、モスクワに世界の教育国連本部を設置すると。世界のエキスパートがモスクワに集まって世界平和を論じるという基本から、全人類の教育を研究する。大変有意義なことであろうと思います。どうか視野を大きく持って、在任中にひとつその方向づけだけでもすべきじゃないか、このように思います。  次に、これは何回も聞かれ、答えられていらっしゃることですが、教育の荒廃、受験地獄、塾通い、落ちこぼれ、無気力、無責任、無関心、無感動——高校生の四無主義とか、あるいは教育費が年々高騰する、実に憂慮すべき問題があふれ出ております。国民教育行政に対して抱いている不満、不信もつのる一方で、大変残念な現状でございますが、現在の教育の荒廃の状況について、大臣はどのような把握をされているか、その対策をどうお考えになっているか、所信表明では一応お触れになっているように思いますけれども、具体的な焦点をしぼった文部大臣のお考えをお尋ねします。
  151. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) わが国の学校教育は、これまで着実な発展を一般的には遂げてきた、こういうことを申して過言ではないと思います。  ただ、知識の修得の偏重でありますとか、社会風潮から受けている悪影響でありますとか、改善を要する問題が多々ありますことはもう御承知のとおりでございます。このような教育の現状にかんがみまして児童生徒の知・徳・体の調和のとれた発達を目指して、みずから考え、みずから正しく判断をする力を養う教育、これを確立しようとする意図のもとに、このたび教育課程の基準の改善を行ったところでございます。こうした充実した学校教育の、学校生活の中で、将来国民として、また社会人として必要とされる基礎的、基本的な事項がしっかりと身につく、そういう教育考えていかなければならないと考えております。  また、入学試験の改善につきましては、高等学校に関しましては、地域の実態に応じて各都道府県において改善工夫を願っておりますけれども、大学に関しましては、国立大学等において共通一次入試というものを五十四年度から実施をいたすことにいたしました。高等学校で決められている教育内容を幾ら完全にマスターしても、それだけでは大学の入学試験には及第点がとれないんだという事態改善したい、こういう願いで実施をいたします共通一次入試でございます。あわせまして学歴偏重社会的風潮を是正をする、そして国公私立の各大学のただいまあります格差を解消していく、さらに児童生徒の自殺でありますとか非行、大変遺憾な事態がたくさん問題として出ておりますので、それぞれの原因等は大変複雑ではありますけれども社会の価値観の混乱や、生命軽視の風潮等が背景にあるものと考えられるわけですが、学校、政府、教員、両親、社会、みんなが教育というものの目的を、同じ価値観を持たなければ、これらの問題が改善をされませんので、文部省といたしましても、大変荷の重いことではありますけれども社会風潮の是正にまで努力をいたしたいと、かように考えているところでございます。広く生徒指導の充実を、これらのことに努力をしながら充実をさせてまいりたい、こういう決意を新たにいたしておるところでございます。
  152. 白木義一郎

    白木義一郎君 いまも大臣お述べになりましたけれども所信の前文で、「世界の平和と繁栄に貢献し得る知・徳・体の均衡のとれた情操豊かな日本人育成文教行政基調として、」と大変格調高くお述べになっておりますが、しかし青少年の体力について、体格は毎年向上しているにもかかわらず、体力は必ずしもこれに伴って向上しているようには思えません。特に男子では十七歳ごろから、女子では十四歳ごろから体力、持久力の発達の停滞が見られます。一方、知育の方はいまお話になりましたように、学歴偏重、入試地獄及び受験産業の異常なあおりで受験熱だけが先行しております。このような実情の中で、真に均衡のとれた情操豊かな日本人育成ができるようなものなのかどうか、基本となる体力の基盤づくりに対して今後どう取り組んでいかれるのか、御決意を承りたいと思います。
  153. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 御指摘の体育につきましては、教育課程審議会答申におきましても、卒業に必要な単位数を引き下げ、必修科目の削減があります中で、体育については現行どおり七ないし九つの単位、普通科の男子では十一単位でございますが、これを当てておりまして、今回の改定においても体育は特に重視をいたした点でございます。また体育の指導は体育の時間だけでそれで十分とは申せません。クラブ活動や学校行事など、教科外活動においてもその充実を図ってまいらなければなりません。そのような教育活動全体を通じて、体力づくりが適切に行われるように努めてまいりたいと考えております。また、今回の改定では中・高学年において生徒能力、適性等に応じて、大幅な選択制をとる方向で検討いたしておりますので、これによりまして必修としての体育以外にも、必要に応じて学校において相当数の体育の時間を当てることも可能になると考えておりますけれども教育委員会を通じまして学校——現場にこれの指導をいたしますのに、私は課外活動としての体育にもっともっと重点を置いてもいいのではないか。  私事のようでございますが、白木委員と私が野球の試合をしたような時分には、もっと課外活動としてのスポーツが青少年の間でいまよりももっともっと盛んであった。これはやはり確かに受験という問題も絡んではおりますけれども、それはそれで改善を図りながら、課外活動としてのスポーツに重点を入れて青少年の体力づくりに努めたい、かように考えるものでございます。
  154. 白木義一郎

    白木義一郎君 大臣も私もよき学生生活を送ったわけですが、しかし、考えてみますと、その根底に大きな狂いがあって、大東亜戦争へ突入したという点が非常に残念なところであります。ここらあたりに深い思索と注目をしなければ真の教育は開かれない、こういうように思いますが、それはそれといたしまして、文部省は新しい高校学習指導要領の中間案を五月末には発表する目標のもとに作業を進めていらっしゃるようですが、いまお述べになったようなお考えを、体育充実のために思い切ってその時間をふやす御意向はおありのようですが、どうも文部大臣という肩書きといいますか、いすといいますか、それにだんだん大臣が押し込められていく、あるいは閉ざされていくような感じを——私は間違っているかもしれませんが、そういう思いでおるのですが、ここで作業の中に大臣のお考えを強く反映する御意向はないかどうか。
  155. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 御指摘のとおりの姿勢で、相当強い決意で取り組みたいと思うのです。あるいは、あるときには事務当局と一戦交えなければならないことがあるかもしれませんが、どうぞ御支援をよろしくお願いを申し上げます。
  156. 白木義一郎

    白木義一郎君 一戦、二戦、三戦四戦と交えて、大いに支援をさしていただきますから。  そこで、最近報道された問題で大変興味のある一例を、御存じだと思いますが、東京都で都立の体育高校をつくるというプランであります。適当な用地がなくて、現在検討段階といわれておりますが、この構想はなかなか興味深いことであり、歓迎すべき計画だと思います。もちろん幾ら体育高校だといっても、国語や数学を全くやらないというわけではないんでしょうが、それらの教科の時間はできるだけしぼって、大部分の時間は体育に当てる、また野球、サッカーを毎日やる生徒、マラソンや棒高飛びに打ち込む生徒、とにかく高校生活三年間思い思いの体育をやって卒業していく、そういう高校を東京都で考えているようであります。硬直した高校制度のもとで、生徒にとっては興味も理解もできない教科の勉強のために教室に縛りつけられているよりも、はるかに生き生きとした高校生活が送れるのではないか、こういったような構想が東京都で進められているわけですが、このような点について御意見をお伺いしたい。
  157. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 東京都には既設校として都立の駒場高等学校に保健体育科が設置をされております。このほかに、先生指摘の体育高校を新設するということは、新聞報道を通じて私も承知をいたしておりますけれども、具体的な話として東京都から直接まだ伺っておりません。しかし、現在高等学校の進学率が九三%を超すような状態高等学校生徒能力でありますとか、適応が非常に多様な状態になっているのでございますから、能力、適性に応じた多様な教育内容を用意することが非常に必要なこと、また必要な時代でございます。このためには、現在も全国に保健体育科または保健体育コースを設けている高校が三十四校ございますけれども、新聞で見る限りの東京都の御構想には私も大賛成でございまして、たとえば、中学校で数学ができないからといって落ちこぼれという烙印を押してしまうぐらいばかな話はないと思うんです。数学がたとえ少々できなくても、芸術的な才能を持っている人もありましょうし、体育についての特段の技能を持っている子供たちもいる。こういう青少年たちが何の落ちこぼれでありましょうか。そういう考えからいたしますと、東京都のこのような御構想については、私は賛成でもございますし、十分検討に値すると評価をいたしておるものでございます。
  158. 白木義一郎

    白木義一郎君 体育局長はいかがですか、あなたも相当何かやられたようですから。東京都で体育専門の高校を設けようと、たくましい若者を教育しようと、そういうプランがあるわけです。いま大臣もだんだん本音を出してくれまして、大賛成で、このような学校が各地方に一つや二つ設けられてもいいじゃないか、そういう大変御理解のある御答弁をいただいたんですが、体育局長のお考えは。
  159. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) ただいま大臣が御答弁されましたとおり、多様な進路と申しますか、まず学校教育基本には、基本、基礎の問題として、自己の体を鍛え上げる、自己の体を使いこなす、体に自信を持って世に立つということが教育基本の一つであろうというふうに感じておる次第でございます。したがいまして、そういう観点から、あるときは一般教養を学び、またあるときは生涯にわたって生活の伴侶とできるスポーツを身につけていく、そのわざを学び鍛え上げていく、同時にあるときは、手先その他将来の職業に結びつく教育を受けるというような、そういう形の学校があってよろしいのではないかという問題が御指摘の点かと思います。この面につきましては、現在初中局長の方と私ども体育局の立場からこの面の学校が、いわゆるスポーツ学校のようなものが今後高等学校にさらに設置されていくということをむしろ奨励してまいりたいという気持ちで、体育局としてはおる次第でございます。ただこの面につきましては、それなりの施設設備の体制等も要することでございますし、まあ兵庫県等で体育科をつくったわけでございますが、必ずしもその目的にかなう生徒が入ってこないというような現象もありますので、この面、東京都でも体育関係者にはその希望があるわけでございますが、都庁全体として、教育委員会全体として現在検討中ということを聞いておる次第でございます。私ども重要な問題として関心を持って対処していきたいと思っております。
  160. 白木義一郎

    白木義一郎君 まあ歌の文句じゃありませんけれども、青春時代は希望がありますと、どんな困難にも挑戦していくというのが若さの特徴であろうと思います。ところが現在の子供たちを見てますと、枠にはめられて、そして何が何でもこの水準に達しなければだめだと、落ちこぼれという烙印を押されるような、非常に型にはまった教育のシステムの中に閉じ込められている。で、英語は全くだめだけれども非常に音楽に天分的なものを持っているとか、数学はだめだけれども非常に文章を書かせるとりっぱな文章が書ける、そういうような生徒が、学生が平均的なレベル、それが以下であるために、落ちこぼれという烙印を押されるというようなことがしばしばあるわけですが、そこで、ゆとりのある教育といっても、授業時間の調整だけでは抜本的な解決はできないと思います。そこで都道府県教育長協議会がいま高校教育の諸問題について研究を重ねている中に、新しいタイプの高校の開発についてという研究が進められているようであります。その中で公立の体育高校のプランも討議されているようですが、この辺ももっとディスカッションを行っていただいて、そしてそれこそ知育、体育兼ね備えた充実した教育をすべきだろう、このように思いますが、これらの新しいタイプの高校の開発について、こういったような問題について大臣はどのように把握をされているか。
  161. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) ただいま御指摘の事柄は、都道府県教育長協議会の中で、今後の高等学校あり方をテーマとして、プロジェクトチームをつくって先年来検討しておられる。それでその中間発表という形で、たとえば中・高一貫の六年制の高等学校であるとか、あるいは普通科と職業課程を一体化した高等学校であるとか、あるいは全寮制の高等学校であるとか、そういったような、今日の事態に対応して新しいタイプの高等学校あり方というものを検討し、それを発表したわけでございます。  ただ、私いろいろお話を聞きますと、相当突っ込んだところまではまだいっていない。いろいろのタイプを挙げまして、これらを、教育長協議会としても一つの検討課題だと、こういう意味で取り上げたようでありますので、引き続きそれらの内容について御検討を願うことにし、またその結果を、文部省でも高等学校教育あり方を検討するために、私的な懇談会を設けておりますので、その場にもそういう教育長協議会の方の御意見を反映させながら検討させていただく、言ってみれば、文部省教育委員会と協力し合って、これからの高等学校の形態というようなものについてもひとつ検討していこう、こういうことになっておるわけでございます。
  162. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、わが国の体育、スポーツの普及振興について、まず第一に、来年度における体育、スポーツ振興についての文部省施策の概要を示していただきたいと思います。最近文部省が取り組み始めたグリーンスポーツ施設構想の実施状況を含めてお示しを願いたいと思います。
  163. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 体育、スポーツの振興策につきましては、さきに、四十三年に文部大臣の諮問を受けまして、保健体育審議会から、四十七年十二月に体育、スポーツの振興に関する諸般の施策につきまして、詳細な答申をいただいております。その内容といたしましては、御案内のとおりでございますが、まず、体育、スポーツ施設の整備の課題、あるいは体育、スポーツ組織の育成、体育、スポーツ指導者の養成確保、研究体制の整備等諸般の問題に触れられておるわけでございますが、文部省といたしましては、この答申の趣旨をくみまして、体育施設の計画的な整備促進、あるいは学校開放の推進、あるいは地域のスポーツクラブの育成等のための助成、あるいはスポーツ主事の設置促進などの施策を進めておるところでございます。  そこで、五十三年度の予算に当たりましても、対前年度比三五%増の百三十二億四千万円の予算を計上いたしまして、体育、スポーツ施設の整備を促進するとともに、指導者の養成確保、その他諸般の施策の進展を期しておるところでございます。来年度新しい施策の課題といたしまして特に力点を置きました点は、体育施設等の環境の整備、またこの積極的な活用を図るということとともに、自然の中で子供たちが行動して、自然の動の中に動を知ると申しますか、そういう、できる限り子供たちに自然に恵まれた環境を何とか取り戻したいということの一環になればということで、いわゆるグリーンスポーツ施設という問題を考えまして、野外活動施設といたしまして、全国十ヵ所を試みに行っていくということで、三億円の新規予算を計上いたしております。これにつきましては、来年度からの新しい課題でございますし、保健体育審議会で自然を生かしたスポーツ施設の整備にも触れられておりますことの具体化の問題でございますので、これは来年度の課題でございますが、現在各県から市町村の実施計画につきまして事情聴取いたしておるところでございまして、大体十ヵ所を見込んでおりますが、それを超える要望が出てくるものと思っておる次第でございます。
  164. 白木義一郎

    白木義一郎君 現在の児童生徒の体力、運動能力の変化について、体育局の方から体力運動能力調査報告書が出ておりますが、それによりますと、児童生徒の体力、運動能力昭和四十一年と五十一年を比較して、体力、運動能力はやや向上しているものの、背筋力や懸垂力等基礎的筋力や柔軟性が著しく低下をしている、こういう結論が報告されております。これは言うまでもなく、体育、スポーツに対する方向づけがいままで遅々として行われなかった、そう思わざるを得ません。  そこで、体力、健康という反面で、多額な国民のための医療費が使われております。今日、国民医療費は莫大な金額に上がっております。ちなみに昭和五十年度で六兆四千七百七十九億円、一人当たり五万七千八百七十一円となっています。また、五十三年度については十兆四千億円、一人当たり九万円以上と推計をされます。まことに驚異的な数字です。これはいろいろな原因が指摘できますが、大きな原因の一つに、相当数の国民がスポーツ、運動を行わないことに原因があると推定できます。つまり、運動は健康を維持し病気を予防するからであります。  そこで、国民のスポーツの状況は、五十一年総理府が行ったスポーツに関する世論調査によれば、一年間に何らかのスポーツを行っている者は六五%、三人に一人は全くスポーツをやったことがないということを示しております。次に、スポーツの種目を見ると、体操が二七%、軽い球技二二%、水泳が一六%、ソフトボールが一一%、釣り一一%、バレーボール一〇%、野球同じく一〇%等となっております。この調査には地域のスポーツ施設の整備についての満足度が調査されておりませんが、やはり地域や職場におけるスポーツ、体育施設の未整備が運動不足の大きな原因と思われます。  そこで、スポーツ施設設備の整備について、昭和四十七年十二月保健体育審議会が「体育・スポーツの普及振興に関する基本方策について」という答申を出して以来五年以上経過しておりますが、政府は答申を受けて、体育、スポーツの振興施策をどのように発展させてきたか、順次お伺いをしていきたいと思います。  地域の体育、スポーツ施設の整備については、この答申では、従来の選手中心の競技スポーツから、日常の体育、スポーツ活動を活発にするという立場に立って、地域と職場のスポーツ施設の整備の充実を打ち出しております。まず答申では、人口規模別に日常生活圏域における体育、スポーツ施設の整備基準を示しておりますが、これが現在どこまで充足したか、具体的にお示しを願いたい。  さらに答申では、体育、スポーツ施設の七二・五%は学校の施設であり、次いで事業所の施設が一六%、公共社会体育スポーツ施設が約一万で、全体の七%にすぎません。これの不足、立ちおくれを指摘しております。昭和五十年の調査では公共社会体育スポーツ施設が二倍に増し、全体の一〇・五%を占めるに至っておりますが、絶対量の不足は依然として続いていると言って過言ではありません。文部省は、答申の整備基準に達するにはどれだけの施設が必要と考えていらっしゃるのか。また、達成するための年次計画をなぜ持っていないのか、この点について要点をひとつお示し願いたい。
  165. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 四十七年の保体審の答申をいただきまして、その後文部省がとってまいりました学校社会、職場等の体育施設の充実につきまして、具体的に体育局長からお答えをいたします。
  166. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 四十七年の御答申では、御指摘のとおり、それぞれ人口規模別の市町村におきまして、およそ備えるべき体育、スポーツ施設の目安の基準を示しております。これを参考として各市町村においてそれぞれスポーツ施設の整備を促進するようにということの御答申でございますが、現在体育施設の総数は十八万八千二百二十四ヵ所の施設が全国にございます。このうち、いま御指摘のとおり十二万ヵ所が学校体育施設でございまして、それ以外がいわゆる社会体育施設、あるいは職場のスポーツ施設、あるいは商業的な立場から行われておるスポーツ施設等でございます。それで、この基準で示されましたところによりまして、およそ体育、スポーツ施設の必要数をどのくらいに見込まれるかということでございますが、四万三千四百十七ヵ所のスポーツ施設がこの基準によると必要になるというように計算できます。それで、現在これに該当する運動場とか、コートとか、あるいは体育館、水泳プールのこの四つが基準で示された具体の数でございますが、これに対しまして現在の現有は、数の上では三万六千三百二十九ヵ所ございます。したがいまして、単純に数の上でいたしますと充足率八三・七%という数字が算出されます。しかしながら、基準でお示しになっておりますのは、たとえば運動場につきましては一万平米以上ということで、およそ野球場として使えるということの内容をいたしておりますので、この辺の内容を加味して推計をいたしますと、これはなお詳細な分析が必要でございますが、一応基準の内容を加味していたしますと、五一%程度の今日充足状態であろうというように私どもは推測をいたしております。それで、人口規模別の実態につきましても、これはなお今後詳細な調査をいたしまして、さらに今後の計画に資してまいりたいというように考えておる次第でございます。  それから、この基準のうち公共施設がどの程度今後必要となるかということでございますが、四万三千四百十七のうち、公共施設で受け持つ部分を約半数といたしますと、その整備所要数は二万一千八百九十五ヵ所でございます。現在その充足状況が約八千ヵ所で、三七%程度の充足であろうかというように推計いたしております。したがいまして、今後一万四千ヵ所程度の施設を公共の体育、スポーツ施設として整備していく必要があるのではなかろうかということで、かなり大きな整備の努力を要するというように感じておる次第でございます。  それから、次に基準達成のための年次計画を立てるべきであろうという御指摘でございますが、その面につきましては、この御答申を受けましてから、施設整備の年次計画を樹立すべく努めてきたところでございますが、具体には経済情勢の変動や、あるいは地方財政の状況等による、各地方公共団体の取り組み方にいろいろな変化がございますし、もともとこの体育、スポーツの施設は、それぞれの地域の実態に応じて、先ほどの答申で示されました内容を参考として取り組むという形のものでございまして、具体に申し上げまして、たとえば十万都市でございますと七百五十平米の体育館を六ヵ所ということでございますが、最近は総合体育館の三千平米、あるいは四千平米の総合体育館の建設という動きが大変強くなってきております。そういうような動向もございますので、これまで必ずしも明確な年次計画を立てるまでには至っておらなかったという経緯がございます。先生も御指摘されましたとおり、最近の五十年の実態調査によりますと、前回の調査昭和四十四年でございましたが、六年間に公共のスポーツ施設は倍増になってきたということでございまして、この面の整備に対する市町村の熱意が大変高まってきておりますので、現在市町村の一応計画している長期的な計画につきまして、具体の資料の徴取をいま行っておるところでございます。で、これらを参考といたしまして、今後具体に体育施設の整備促進につきましての努力を重ねていきたいと思っておる次第でございます。
  167. 白木義一郎

    白木義一郎君 そこで、いま御説明がありましたように、その施設等については逐次進めていらっしゃるようですが、なかなか思うようにはかどらない。したがって、どうしても既存の施設ということになりますと、学校開放という問題が出てまいります。  で、次に学校開放の現状についてお伺いをしたいと思います。公立学校について見ますと、学校の開放率は屋外運動場は七三・七%、体育館が六七・八%、プールが五九%となっており、答申当時より開放率が上がってきております。まだ不十分ですが、学校開放の実情を御説明願いたい。たとえば、年間の開放日数別の学校数とか、あるいは昼夜別の学校数、利用者数等御説明を願いたいと思います。
  168. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) わが国の体育施設の整備につきましては、学校における体育、スポーツ施設の整備ということに大変な努力が重ねられてまいったわけでございます。その面で先ほど全国十八万八千ヵ所のうち、学校体育の占めるものが十二万六千というような、大きな比率を占めておるわけでございまして、この学校の施設を、スポーツ振興法で決められておりますとおり、国民があらゆる機会にあらゆる場所でその適性、また健康度に応じたスポーツが実践できるように、諸条件を整備していくということが行政責任でございます。  そこで、御指摘学校開放につきましては、種種の施策をとってまいったわけでございますが、現状につきましては、いま御指摘のとおり五十年度の調査によりますと、公立の小・中・高等学校で約三万七千八百校のうち、屋外運動場につきましては二万八千校、屋内運動場につきましては二万一千校、水泳プールにつきましては一万二千校の学校が開放を実施いたしております。何らかの形で開放している学校がいまの数でございますが、このうち年間を通じまして定期的に開放をいたしておるというところにつきましては、運動場につきましては七千二百校、二六%、屋内運動場につきましては五千六百校、二七%の学校になっております。また、この定期的な開放をいたしておる学校のうちで、週二回以上開放している学校数は、運動場について見ますと約五千五百校、七六%、屋内運動場につきましては四千六百校、八三%という状態になっております。また、プールにつきましては、開放校一万二千校のうち約八千四百校、七一%が夏季休校中に十五日間以上を開放しているというような状態でございまして、なお、今後この定期的な開放につきまして、さらに促進を図る必要があろうかというように感じておる次第でございます。  また、御指摘の昼夜別の開放状態でございますが、まず屋外運動場につきましては、昼間のみの開放校が二万六千三百校、九四%でございます。それから夜間のみの開放校が約二百校、これは〇・七%でございますが、昼夜とも開放しておるというところが千四百校、四・九%という割合になっております。また、屋内運動場につきましては、昼間のみの開放校が約四千三百校、二〇・三%、夜間のみの開放校が約二千三百校、一〇・八%、昼夜間とも開放している学校が一万四千五百校、六八・九%でございます。水泳プールにつきましては、昼間のみが一万七千六百八十四校、九九・二%、夜間のみが二十六校、〇・二%、昼夜開放が六十三校、〇・五%というような状態でございます。
  169. 白木義一郎

    白木義一郎君 いま御説明がありましたように、学校開放の問題については、文部省が推進しているにもかかわらず、まだまだ思うように伸びていない。それには四つの問題が解決されないからであると思われます。その一つには管理責任者の問題、指導者の配置問題、夜間照明等学校開放のための施設設備の充実の問題、それから四番目が事故補償問題。  最初の管理責任者の問題について、調査報告書によりますと、開放施設の管理責任者には当該学校長、それから教育委員会、開放委員会とか、開放施設運営委員会など、開放のための組織の三つのタイプがあるようであります。校長先生責任者になっている場合が最も多く六四%、次いで二三%、二二・一%となっているようですが、管理運営の実情を詳しく御説明をしていただきたいと思います。
  170. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 学校開放につきましては、文部省は次官通達をもって、この具体の運営につきましての指導を行ってまいってきております。この通達におきまして、学校開放の管理の責任教育委員会が行うものとするということに、教育委員会を表面に出しておりまして、教育委員会学校体育施設開放事業に必要な事項を定め、また、具体の管理責任教育委員会にあることを明確にして、この開放事業を推進するようにということを指導してまいっておりますが、具体に五十年度の調査によりますと、ただいま先生指摘のとおりの六四%が学校長が管理責任を持っておるという形で行われているという内容でございまして、今後この面の問題につきましては教育委員会責任を持つ。その場合に、教育委員会は具体には管理指導員を委嘱して、この管理指導員を施設に配置いたしまして、その管理指導員の管理のもとに、適正な開放がなされるようにということを基本にいたしておる次第でございまして、さらにもう一面は、利用者の方がまさに善良な管理者として、その施設の利用に当たるということもまた両々相まって大事なことでございますので、この面につきまして、従来の次官通達の趣旨をくみました指導を、さらに徹底してまいりたいと思っておる次第でございます。
  171. 白木義一郎

    白木義一郎君 それでこの管理指導員について、文部省は五十二年度小・中学校の開放施設九千五百ヵ所に対して予算措置を行っておりますが、現在、屋外運動場の小・中開放校は二万六千校、体育館は一万九千校、プールは一万一千三百校に上がっております。また、プールではどうしても複数配置が必要なので、もっと補助対象をふやすべきではないか、このように思います。またこれらの指導員の積算単価も三時間で千八百円となっておりますが、もっと引き上げていかなければ、数の上からも指導員を集めるということは無理ではないか。実際には現在どのように支払われているかお伺いします。
  172. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 御指摘の管理指導員の配置状態につきましては、現在、屋外運動場の関係で一万六千五百四十四校、それから屋内運動場、体育館の関係で一万二千八百三十六校、それから水泳プールの関係で九千六百七十六校にそれぞれ管理指導員が配置されております。それで、管理指導員の配置につきましては、文部省といたしましては各開放する施設ごとに管理指導員が置かれるようにいたしております。したがいまして、ある学校が屋外運動場、それから屋内運動場、水泳プールを同時に開放しているというときには、三人の管理指導員が配置されるようにということで、補助の扱いをいたしてきておるわけでございます。先生指摘の、プールを開放した場合に複数の管理指導員が要るのではないかという御指摘でございます。これにつきましては、あるいはその必要があろうかということでもございますが、学校の施設を利用して、みずからのスポーツを自主的に行っていくということの活動でございますので、やはり利用者の方にその面の自覚と、またしっかりした責任体制が持てるようにしていくということも大事なことでございますので、文部省といたしましては、学校開放の場合には、スポーツクラブ等の団体が登録して、その登録団体に貸していくというような方向を指導いたしておるところでございまして、貸す方と利用する方の側の両々相まった責任関係で、この面の実効が上がっていくということが大切ではないかと思っておる次第でございまして、現在のところそのような考え方から、水泳プールの場合、複数配置について直ちにこれに取り組むということにつきましては、現在まだ特に考えておらないということでございます。  それから管理指導員の謝金の単価につきましては、一回三時間を標準といたしておりますが、千八百円を補助の限度といたしております。これにつきましては、昨年は千六百円でございましたが、これを千八百円に上げていくということでございまして、今後市町村の実績を見ながら、あるいは個所数とともに単価の増額については、毎年その都度検討してまいりたいというように考えておる次第でございます。
  173. 白木義一郎

    白木義一郎君 学校開放の問題については、いまお述べになりました管理指導員、あるいは夜間照明、これもきわめておくれております。文部省は五十二年度予算では運動場及び体育館に、それぞれ百五十ヵ所分の予算措置を講じてきましたが、これでは全部照明をつけるには百年もかかってしまう。もっと積極的に予算措置を図らなければならないと申し上げておきたいと思います。時間が参りましたので、最後に二つの点について提案を申し上げておきたいと思います。  第一点は、スポーツ体育指導者に関する人材銀行の設立についてであります。地域あるいは職場で、これらの指導者を得たいと思っても、これらに関する情報がほとんど得られないような現状です。したがって、スポーツ体育指導者に関する人材銀行のようなものを設けて、そこへ連絡すれば、リストもあり、あっせんもやってくれるというシステムも確立すべきだと思います。これにつきましては、一部の県や市町村ではすでにつくっているところがあるようでありますが、全国的に拡充強化をすべく政府は援助を行うべきではないか。  第二点は、体育、スポーツ施設の整備基準をいかに守らせるかということについての提案であります。答申では事業所における体育、スポーツ施設の整備基準を作成しておりますが、これをいかにして実施させるかが大きな課題であろうと思います。これを実現するには、政府の指導や援助も、特に中小企業等では必要がありますが、少なくとも屋内の体育施設については、建築基準法の中で義務づける措置が必要と思います。たとえば国会周辺の官庁、あるいは民間事務所の中で、どのぐらい体育施設を持っているところがあるかどうか調査をしたりして、ぜひ国策として建築基準法の中で体育施設の設備を義務づけるという考えを持っておりますが、この二つの提案について御意見、お考えを承っておきたいと思います。
  174. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 白木委員の御提案の指導員のことに関しましては、御指摘のように、府県あるいは市町村によりまして、当該府県の体育協会、当該市町村の体育協会と非常に密接な連絡がとれているところもあるわけでございます。また、スポーツ施設の整備基準のことにつきましても、非常に貴重な御意見でございますので、前向きにひとつ検討をさせていただきたいと思いますが、一つ基本的な問題といたしましては、スポーツの施設等をいろいろな官庁が今日は行うようになってまいりました。総理府もやっておりますし、余暇という面から通産省もやっている。これらの各他の官庁と、各省庁も協議等を持ってはおりますけれども、お恥ずかしいことですが、少々おざなりのような気持ちが私はいたしてなりませんので、ひとつ文部省からこれらスポーツ関係のことと取り組んでおります他の省庁にも、積極的に文部省から働きかけまして、政府全体の立場でスポーツの基本的な問題、施設の問題、指導員の問題、基礎的な問題、ひとつしっかりしたものを対応をしていきたい。まだ具体的な構想を持っているわけではございませんけれども、そういう心構えで積極的に対処をしてまいりますということをお答えをしておきたいと思います。
  175. 白木義一郎

    白木義一郎君 終わります。
  176. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 先般の参議院予算委員会の際に、若干文教行政についてお尋ねをしたのですが、初め一、二関連をして、二点だけをお伺いをしておきたいと思うのです。  大学共通一次の問題で、私は成績を個人に通知してもらうわけにはいかないかと、こういうふうに今度の実施の中で図ってもらうわけにはいかないかということをお尋ねしたところ、それは大学のランクづけ、大学の格差助長、また高校のランクづけ等を助長することにつながるという論もあるし、今年度の状況はもう固まっておるので、今年段階ではそのままやっていきたいと、個人に自己採点をしてもらってやってもらいたいというようなことだったと思うのですが、時間がなくて、あの場では十分にお尋ねできなかったのですが、私が提起した問題は、本人に知らしてもらいたいということですから、本人が自分の進路を決定していく参考として知らせてもらっても、これが全面的に、五十万と言われるような受験者の全体がそう新聞に出されるわけじゃなし、そう問題になることはないのですから、そのまま格差につながるというのは論理の飛躍があるのではなかろうか。あの場合の答弁ではどうしても納得をいたしかねたわけですので、この点について重ねてお伺いをしておきたい。  それからもう一つ、まあ大学の格差について触れられ、高校の格差について触れられたわけでありますが、確かに大学の格差、高校の格差の緩和、ひいては解消という問題は、国民のまことに切実に望むところであり、多くの今日出てくる教育上の困難な問題というのが、根源を尋ねるとここの問題に行き当たってくるわけですね。そういうことですから、それを十分に意識されているということには敬意を表するのですけれども、されば、その点でも緩和策について、一期校、二期校を解消し、本人に成績を知らせないというのは、一番かなりの苦痛を現実に強いるような場面でだけそれが強調されて、他の方で見るべき策が講じられていないということになれば、格差は依然として残るわけであり、あるいは強化されていくのですから、顧みてこう言われるような感じになってくるわけですね。もともとトップエリートを養成する旧帝大系をピラミッドの頂点に置いて、そうして、新設私大等を底辺に置いて、大学の場合にも形成されておりますし、高等学校の場合は、共通一次試験に先駆けて、高等学校こそすべて共通テストをやっており、難問、奇問が出るはずもないですね。県段階で統一テストをやっておる中で、特に単独選抜制をとっておるところでは、一流から七流までというような深刻な序列というものが形成をされており、実業学校等の教育困難問題等も、今日社会問題になっているわけであります。こういったふうな施策を並行することもなく、さような状況で、恐らく来年の施行では勘弁してもらいたいということになれば、二年、三年、四年と、これらの問題は先づけの検討課題になるということになりますと、大臣の在任中であるかどうかも、それは疑わしいですね。まあ総理なぞになっておられるのかどうかもわかりませんけれども、こういうふうに考えますと、この点についてあわせて明らかにされなければ、あの答弁だけでは国民的な納得も得られないんじゃなかろうかと、こういうことでひとつお伺いをしておるわけです。
  177. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 予算委員会小巻委員にお答えをいたしましたけれども、来年の第一次の共通一次入試結果を、一人一人の受験生にその成績結果を通知をするということはいたさないということにいたしております。ただ、昨年行いましたあの試行テストの結果発表、正解発表、また同時に、最低点と最高点と標準点だけの発表では、いかにも受験生に対して、それぞれの受験生がその答案を持って帰って、正解が発表になったときに当てはめてみましても、自分がどこら辺に位置しているかということの判断をいたしますのに、不親切だというそしりは当然免れませんので、その点の改善といま取り組んでいるところでございまして、一人一人の受験生には通知はいたしませんけれども、受験生が自分の受験結果の位置するところが判断しやすい方法が何かとれるはずであるということで検討をいたしているところでございます。  その他、詳細にわたりまして大学局長からお答えをさせていただきます。
  178. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 ちょっとね、個人に知らせたらなぜ大学の格差が助長されるのかというところを一段論法か、二段論法でやられますので、論理が飛躍しておると。この点についてはもう少し丁寧な御答弁をもらわないと、ということですよ。
  179. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 率直に言って、受験生に自分の共通入試の成績を知らせることの可否というのは、国大協が共通入試について検討いたします場合でも、また私たちがこのことを考えていく場合でも、かなり問題になり、その取り扱いについて検討をした経緯がございます。しかし、やはり何といっても現在残念なことではございますけれども、異常に過熱をしたいわば受験をめぐる情勢がございます。衆参の両院での入試センターに関する御審議の際にも、大学入試センターは、結果として毎年四十五万を上回る受験生について、その学力という、共通入試の結果ということを通じて、いわば試験の成績に関する個人別の膨大なデータを蓄積することになる。それが万一世の中に出ていくということになると、現在の状況のもとでは非常に心配なことが起こりかねないと。それはそういった成績の結果を通じて、高校なり、大学なりのランクづけということが、まさに受験熱をあおるような形で行われて、そしてそれが現在のいわば受験の過度の競争に拍車をかける結果になっては困るというような御指摘もあったところでございます。御指摘のとおり、個人に通知をすると、そしてそのことが個人限りにおいてとどまっておる限りにおいては、それは弊害はないはずのものではございますけれども、現在の状況は遺憾ながら私どもはそれが個人のところにとどまるという確信を持つことができません。それば個人に伝わるということは、いろんなルートを通じて、やはり一般に相当部分が広がっていくということを考えなければなりませんし、それがある場合には受験産業の利用するところになるということも予想できることでございます。そういったことを通じて、やはり単に共通入試の受験ということを通じての、その結果を通じての高等学校なり、あるいは大学のランクづけが行われて、そのランクづけということが現在の非常に行き過ぎた受験熱というものをさらにあおる結果になっては、私たちは非常に困ると思っております。そういったことから、一人一人に成績の結果を通知をするということは避けると。そのかわりできるだけ各受験生が自分の成績について自己診断ができるような方法を考えようということを、少なくとも五十四年度の入試の実施については決定をしたわけでございます。
  180. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 格差問題。
  181. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) もちろんその大学間における格差ということが言われておりますし、その問題は成績の公表をするかしないかというふうなこととはかかわりなしに存在することであって、そういった状況を是正するための努力というのは別途に行わなければなりませんし、また、われわれは各大学がそれぞれその特色とするところを伸ばしながら発展をしていくよう、いわゆる各大学が一律均衡な形で整備をされていくということではなくて、むしろ各大学がそれぞれの特色を持ちながら、それぞれの特徴を生かして発展をしていくという方向で、大学全体の整備を考えていくことをいま進めているわけでございます。そういった努力を続けていくということはもちろんでございますけれども、先ほど申しましたような形での誤った利用が行われるということをおそれるということでございます。
  182. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 大臣大変御勉強になって答弁をされておる限りで敬意を表しておるわけですけれども、やっぱり文部省がいま努力を集中している領域以外の谷間のところに問題はたくさん伏在しておるわけであって、その部分についてはまた役所の検討を超えて、いろいろ御研究をいただきたいわけであります。いまの局長の御答弁を聞く限りでは、これは受験産業がこういうデータを手に入れて利用したら困ると言うんですけれども、類似のものは、これは模擬テストによってわけなくつくっていくわけですからね、こういうところへは手はつかないわけだ。それから言われるように、自己採点がかなり役に立つものだったら、それをとったら同じことですからね、それはあんた方論理の矛盾に落ち込むわけですよ。自己採点とったって当てになるものかと言うんなら、それで自分の進路指導やれというのは一体どういうことになるんだと、こういうことですからね。自己採点というのはほぼ成績通知をするのに準ずるところまでできるはずだと一方で言っているんですから、そのデータを手に入れたら同じことじゃないですか。やっぱりこれを発表しないというところは、そういうところに条件があるんじゃなくて、初めから言われておったように、人手が足りない、金がないと、選ぶ側にはその必要は余り認めないと、ここのところに問題があるのであって、どうしても釈明をされるようなところの中に実態があるのではないということは、いまの答弁を聞かれても大臣にもわかっていただけることだと思うんです。長期の課題としてといいますか、第一回終了以後その結果も見て、やらなければならぬと言われた部分は、ほかの人はまだ言ってないわけなんですから、私はその状況として認識されたものと思います。この問題については、いまからさきなお、高校側の意見もセンターの運営に反映すると言っておられるわけですから、こういう問題が反映しなければ、こういう問題が運営の中で語り合われなければ、高校関係者をよしんばセンターに入れたって下請機関になって、出題のところの技術的な部分に関する技術聴取に終わってしまうわけでありますから。そうして国会の附帯決議等の関係答弁の中で弾よけに使われるだけでありますから、そういう状況ではなくて、ひとつ身の入った状態で進めていただきたい。永井文相はいろんなことを言われました。特に今日の教育の病弊というものを四頭立ての馬車というようなことを申しまして、そのうちの二つは大学だった。その一つはテストのあり方で、もう一つは大学格差だ。いろんなことを言って、評判の落ちないうちに去っていかれたんですから、本人は幸せだったですけれどもね。後のところをきちんとやってもらわないと、それは罪の深い大臣だったということにしかならぬです。こういうところをお引き受けになって大変だと思いますけれどもね。こういう問題だということであります。  本日は、続いて就学援助の問題についてお伺いをしたいわけであります。今日の不況下ですね、それから国民教育熱心と申しますか、こういう状況の中で教育費問題というのは次第に耐えがたいものとして、家計費の中で位置づけられてきている。このことは春闘を闘う労働者の調査の中なんかでも大きく、重苦しく出てきておる問題であります。三月十九日の毎日がこれを取り上げておりましたが、たとえば婦人会議の調査の中では、家計窮乏の原因のトップは何か、これは教育費だ、節約するものはいままでは食費であったと、こういうわけですね。これ以上節約はできませんと、こういうようなことが挙がっております。もう一つ、これは電機労連のものだったと思いますけれども、これは表を出して、子供が義務教育段階から大学に進むに従って、子供が成長するに従って、これは非常に早いカーブで教育費の増大が家計の中で位置づけられておる。それからもう一つは、それと反比例するように食費のカーブが急激に下がっておるわけですね。まだ栄養を必要としないほどの年じゃないです、子供が大学へ行ったぐらいでは。しかし、そういうカーブがこれは冷厳に数字として出ておるわけであります。もちろん幼稚園から大学まで教育費問題はいまの大変な課題だと、不況の犠牲を子供に負わせないという点で言えば、義務教育無償というものがどのようにりっぱに実行され、年々これが拡充されていくかということは、かなめの問題だと思うわけであります。ところが、ことしの文部予算の概算が、大蔵査定の中では教科書の無償にまで手をつけようとするような、政治の動きが現に存在をしたわけであります。これは幸いにしていま直ちに大事に至っておりませんけれども、こういう考え方が依然として今日の政治の重職にある方々の頭の中から去っていないわけであります。こういう状況の中で、教科書の国費負担という実績まで取り上げようという、非常に私はその限りで憂慮をしております。就学援助の問題についても、これが末端で適用される場面では、必ずしも理想的にいっていない訴えを多数聞いておるわけであります。こういう立場でひとつお伺いをするわけであります。  こういう状況下で、就学援助の拡充についての文部省決意大臣決意もしくは今年の状況というものについて、一言お伺いをして逐次具体問題に入りたいと思います。
  183. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 経済的な理由によりまして、就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対しまして、市町村が必要な援助を与えなければならない、これは学校教育法で定めるところでございます。国は、その「就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の援助に関する法律」に基づきまして、手だてをとっておるわけでございますが、予算の範囲内において必要な補助ということで、二分の一の補助率をもって対応しておるわけでございます。五十三年度予算におきます人員は、従来の実績を考慮をいたしまして、学用品費について見れば、小学校五十一万三千三十九人、中学校二十二万五千五百二十八人を、また全体の予算額は対前年度一二・一%増、これは十七億二千九百四万円で、百六十億三千一百七十八万円を五十三年度予算案に計上いたしているわけでございます。これはもう教育基本法、学校教育法、この就学援助についての法令の定めるところ、非常に重要な課題でございますので、今後とも就学援助を必要といたします児童生徒の就学援助につきましては、格段の努力を払って必要な措置を講じてまいりたいと考えております。
  184. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 局長にお伺いしますが、補助単価は幾らから幾らにされて、積算基礎はどうなっておるわけですか。
  185. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) これはいま大臣も申し上げましたように、実績を基礎にして積算をいたしました。その意味は、五十三年度の予算でありますと、五十一年度の実績というのはその時点でわかりませんので、五十一年度の実績を基礎にいたしまして、費目によってまたその考え方が違うわけでありますが、たとえば学用品費でありますとか、通学用品費というような一般の物価動向に左右されますものにつきましては、消費者物価指数を大体めどといたしまして増加額を決定する。それから、通学費とか、修学旅行費のようなものにつきましては、大体直近の年度の実績とそれ以後の交通費の値上がりの予定ないしは実績というようなものをめどとして増加額を決定すると、こういうふうにいたしまして、全部の費目について申し上げますとちょっと長くなりますが、たとえば学用品費であれば、小学校五十二年度六千七百四十円でありましたものを五十三年度七千百三十円、つまり三百九十円の引き上げで五・八%の増と、同じく中学校は一万三千四百七十円を一万四千二百四十円として、七百七十円の増で五・七%の引き上げと、大体こういうような考え方でございます。
  186. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 指数をかけてやられるだけでは元が低けりゃいつまでたっても救済をされないわけです。制服だとか、かばんだとか、スポーツウエアだとかいうようなものを、県段階で、ちょうど私長野県の文書資料を見ておりますと、補助の計算では制服を買うのは九千円ないし一万円するというわけですね。ところが、単価が一万四千二百円であって、かばん三千数百円と、あるいはスポーツウエアが五千円ぐらいするというのを合わせてみると、どうしても持ち出しになりますというようなのも出ておりますから、これらの単価の問題についてもよく検討される必要があると思います。問題は、そのこととあわせて広く言われるところは額の問題もありますが、それだけ窮迫しておっても、親が受け取れにくくって辞退をするとか、知らなくって受け取らないとか、こういうものがかなりに上っておるということであります。大体潜在的な受給資格者というんですかな、これと現に受けておる者との数、大体この人は知っておって、両方でわかれば受け取ることができたというので、受けないままで置かれている人というような人の関係というのは把握しておられるでしょうか。
  187. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) これはなかなかむずかしい課題だと思います。生活保護世帯でありますと、標準所得が決まりますから、大体人数も客観的に把握できる。しかし、準要保護というのは、法律の趣旨が保護世帯に準ずる程度経済的に困難な家庭をいわば個別につかまえて、それに対して就学援助をするというのが、私は法の精神だろうと思います。したがって、具体的に要保護の上に所得がたとえば平均幾ら以下だというふうに決めれば、おっしゃるようにそれはかなり的確な把握ができるかもしれませんけれども、そういう考え方をいたしませんで、個々のケースについて、もちろんそのいろいろな客観的な基準はございますけれども、それを目安にしながら、校長なり、あるいは民生委員なり、福祉事務所の長なりの意見を聞いて決めるということでございますので、潜在的に本来ならば幾らあったはずのものが幾らぐらいだという想定はむずかしいというふうに私は考えております。
  188. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 保護基準を文部省の方でつくられたのは十一くらいの項目があって、それは見せていただいておるわけですが、基本的に、持ってくる弁当の中身が悪いとか、見苦しい服装をしておるとかいう状況を見ながら、先生が判断するなどということだけに頼っておったのでは、それでは親が食べる物も食べずに、母親が見苦しくないかっこうをさせて、ちゃんと弁当を持たせてやれば外れてしまうことになるわけであります。ここでは、文部省の方でも一応準生活保護基準については、対象の決定に当たって、所得を基準にして、一定の計数を表示して、目安を出してやっておられるんじゃないですか。
  189. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 従来要保護世帯、つまり生活保護世帯の所得に比して一・三とか一・五ぐらいというような標準を目安を示したこともございますが、五十年から五十二年にかけての担当者のこの事務を的確に実施するための指導資料といいますか、これごらんになっておられるかと思いますが、これでおわかりのように、現在におきましては、一つの目安として、市町村民税の所得割を課税されているかいないかということを目安にして、課税されていない所得階層について、保護者の職業が不安定な状況にあるかとか、あるいは子供学校納付金等の減免が行われているかとか、そういうような事情をまず勘案すると、そして、しかしながら、所得割の課税されていない世帯だけに限定するのではなくて、課税されておっても何らかの事由でやはり困難なものもあるかもしれないので、そういうものも念頭に置いて考えるようにということを言っておるわけでございまして、その際に、いま学校先生子供の弁当をのぞいてやる程度では困るじゃないかという御指摘でございますが、それは先生ももちろんある程度把握してもらわなきゃ困るわけでありますが、こういう問題はやはり子供家庭自体の問題でございますから、民生委員なり、あるいは社会福祉事務所の職員なり、そういう方々の御協力をいただいて、子供及び保護者全体の生活環境がどうであるかということを判断していただく、こういうたてまえにしておるわけでございます。
  190. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 以前は生活保護基準の一・三、特にその中で事情の悪い者に対しては一・五と、こういうものを目安にしてやったらよろしかろうというふうに行われておったのが、今度は市町村民税を払っておる限りでは、所得上は対象にならないというふうに変更しておるわけですね。これは私から見ると明らかに以前より後退をしておる、いわば予定した数に合わせるために、いままで出しておった物差しというものを詰めたんだというふうに見ざるを得ないわけでありますが、そういうことになりませんか。
  191. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) その点はいまもお話申し上げましたように、市町村民税の所得割が課税されているかいないかということも、審査の段階における第一ステップとして、一つの目安としておりますけれども、所得割が課税されておりましても、その事情によってはこれを対象とするということで、決してそれを制限しておるわけではございませんので、むしろ一般的な一・五とか一・三とかいう画一的な基準ではなくして、個々の実態に合わせて判断をするという方がこの制度の趣旨に合うんではなかろうかと、こういう判断でございます。
  192. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 一・三というなのが上がっておった段階では、こういう点から総当たりをしてながめてみると、大体二五%ぐらいが対象になる。そこの中で平均的には全国で九%ぐらいが受給をしておったということがあったと思うわけですね。しかしそれは、そのことがもし恥をかかされないできちんと受給できるという状態が保証されて、国民に周知をされたら、この際やっぱり法律で定められて、国の側、市町村がやっていくという義務があるんですから、それを受ける側はやっぱり権利という解釈も成り立ちますから、こういう点で大いに法の趣旨を利用をして、これを受け入れていこうという人もふえたんじゃなかろうかと思うわけですけれども、今度はよく国民もわからないままに物差しの方が縮んできておるというようなことは、少なくともこれを拡充をしていこうというような姿勢が見られないというふうに思うわけです。ただ、これは事業主体は市町村ですから、市町村の方で大いに積極的におやりになるなら、その人数がふえたからといって、それについて制限を加えたり、あるいはあれこれと圧迫をしたりするものではない、あくまでも市町村が事業主体として認定をして、そして補助をしていくならそれの半額を出していくと、こういうふうに言われておるようですが、それはいいわけですか。
  193. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 認定の基準につきましては、いま先生指摘のようなことでございましたが、私は、先ほど申しましたように、基準のあり方そのものとしては決して後退しているというふうには考えないわけでございます。ただ問題は、個々のその保護者を認定するに当たって、先生の御趣旨で言えば受ける方が何といいますか、卑屈感を持ったり、いろいろ遠慮したりというようなことで、本来受給さるべき人がされないというようなあり方、あるいはその趣旨の徹底が十分でなくて、知らないために受けられないと、そういうことがあるとすれば、これは決して適当なことではございませんから、従来よりも一層その趣旨の徹底といいますか、そしてそのやり方について、受ける者の立場を十分考えたようなやり方でやってもらいたいということで、これは今後も指導してまいりたいと思うわけでございます。そして、いまおっしゃったように、市町村がこれをやる事業でございますから、市町村がやれば、それに対して国が補助をするというたてまえでございます。ただ、この制度の解説を冷静に申せば、市町村がやった場合に、国は予算の範囲内で補助をするということでございますので、予算がなければやれないということになるわけですが、しかしわれわれの考え方としましては、市町村がやるについて、十分合理的な根拠があって、こういうふうに保護の範囲を決めるんだということでありますならば、それはそれを十分しんしゃくして、予算の計上などについては一層の努力をしてまいりたいと、こういうふうに思うわけでございます。
  194. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 以前から、この点についてお伺いをすれば、局長はこれは抑えつける気持ちはない、市町村でりっぱにおやりになればそれに従って半額を出す、こう言っておられるわけですが、結果的に申しますと、みごとなもので、ことしの予算委員会のわが党の要求資料として文部省から出していただいたものを見ますと、就学援助費補助金の補助申請額及び内示額、これやった交付額——交付申請額は交付決定額とみごとに同額になっておるわけですね。これはその申請どおりに、各府県から申請してくるとおりに交付をしておったら、結果において寸分の狂いもなく一致したのか、もしくは申請が予算に合わせてやったのか、それはどういうことなんでしょうね。
  195. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 予算補助でございますからあくまでも予算が前提になるわけでございまして、そこで年度の初めに本年度の就学奨励費のそれぞれの県のおおよそのめどというのは、従来の実績、人数等からすると、このくらいになりますよということは、これは申し上げます。そして、県の方で今度は市町村におろして、市町村の要求というものをまとめ上げて、そこでまあ多少そこのところに食い違いが出るということ、これも事実でございましょう。その場合に各県間の調整というのもいたしますし、国としてはあらかじめ若干の金額を留保しておいて、実態において非常にふえてまいったというようなところは、そこへ回すとかということを操作いたすわけでありまして、現在の予算制度をたてまえといたします場合に、おおむねこういうやり方でやるのが妥当な処置ではなかろうかというふうに思うわけでございます。
  196. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 言われるように、文部省の通知によって市町村で予算編成するに当たっては、前年の二月に県を通じて通知をされる仮配分数というのが市町村に伝えられて、そして市町村では配分された仮配分数に合わせてそれの該当者を申告をしてくる、こういうことになっているんじゃないんですか。
  197. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 大体そういうことだと思います。ただ、市町村によっては、ことしはこういう事情でどうしてももう少し欲しいんだというようなことがあります場合に、まず県の段階の調整というのもございますし、国の段階の調整というものもあるわけですから、いわば国が一遍決めたものは絶対に変えないで、一方的に押しつけるというわけでももちろんないわけでございます。
  198. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 仮配分が行われたときに、これは押しつけるものではなくて、実態に合ったように枠をはめないでやっておられるわけですか、本当に。
  199. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) そこで、こういうものにつきましては、大体実績というものを前提にして考えませんと、それならば自分のところは全く画期的にやるんだと、こう言われましても、これは予算措置ができておりませんので、大体あなたのところの実績はこれくらいでしょうということで、それは承諾をしていただくというのが実態だろうと思います。
  200. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 従来からこの事業は市町村の事業ですから、市町村で主体的に法の趣旨が徹底するようにやってもらうなら、それに対して圧力を加えたり、押しつけたり、計数を文部省で作成して、予算を押しつけたりはしないというふうに言ってこられたわけですけれども、この流れを聞いておれば、どうしたって若干の陳情して調整をすることはあろうとも、国が配給しているということになってしまうわけであります。そういう状況のところから一体どういうことが起こっているのかというのを示すような一つの資料があると思うわけであります。昭和五十年の七月二十五日付で、徳島の行政監察局長が「就学援助に関する地方監査結果について」というのを出しておりますが、これを見ますと「徳島市教育委員会における援助費の支給方法は、学校長を通じて支給する方法と、保護者へ直接支給する方法の二本立となっている。」が、「このうち、学校を通す援助費の支給については、その受給が他に漏れるため子弟の教育上好ましくないと考え受給を断念する要援助者があるなど救済の実があがっていない」というふうなことを書きしるしておって、こういう状況は改善されなければならぬということを書いておるわけであります。実際上の方から割り当てられてきたものに数を合わせようと思えば、学校が任されてさまざまな問題が起こってくることは当然だと思うわけです。この点、行管庁の方にお伺いをしますが、こういったふうな具体的な実態について御説明をいただきたいと思うんです。
  201. 山田博幸

    説明員(山田博幸君) ただいまお尋ねのございましたように、私の方の出先機関でございます徳島の行政監察局におきまして、昭和五十年の四月から六月までの三ヵ月間に、県の教育委員会及び徳島市等につきまして就学援助業務についての調査を実施したわけでございます。その結果、七月に至りまして現在までの事務処理の一層の円滑化を図っていただくというような趣旨から、若干の改善点を提示いたしております。  その要約をかいつまんで申し上げますれば、第一点は、就学の認定ということでございますが、先ほど来お話に出ておりますように、私の方で調査いたしました範囲につきましてでございますが、就学援助の制度がやや知られていないといいますか、あるいは対象児が十分に見つかっていない・あるいは申請者の所得の実態が必ずしも十分把握されていないというようなために、一応私の方の監察局の判断ではございますが、場合によっては就学援助に該当するのではないかと考えられるような方が就学援助を受けていないというような例、また逆の場合でございますけれど、基準を超えるような所得といいますか、そういう方でも認定されているというような、これはやや例外的でございますが、そういうような例も調査の過程でわかったわけでございます。そういうようなことから県の教育委員会を通じまして、市町村教育委員会に対してその是正と申しますか、改善についての努力をしていただきたいというのが第一声でございます。  第二の点は、援助の具体的なやり方の方法でございますが、徳島市におきましては、現在援助費の支給の方法が二様あったようでございまして、一つは、学校児童生徒を通じて保護者に渡すという方法と、それからもう一つは、保護者に直接市の教育委員会から渡すという方法になっておるようでございますが、父兄の中の一部には、支給をされるということが子供教育に好ましくないというような一応考えを持たれまして、受給を断念するというような方も調査でございました。したがって、そういうようなことを前提にいたしまして、保護者に直接渡すということについても、切りかえについて検討していただければどうであろうかというのが第二の問題点でございます。  それから第三は、援助費の認定、あるいは支給がおくれているというような状況も一部に見られましたので、適切な指導を行ってほしいというようなことを県に対して意見を提示した事実はございます。  以上でございます。
  202. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 こういったふうな実態は文部省では承知をしておられたわけですか。特に、該当することは当然と思われる人が断わってしまうというような実態にあるなら、法の目的だって遂げられないわけじゃないですか。一体この点どう考えますか。
  203. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) この問題は率直に申しまして、たびたび国会等でもいろいろ御論議をいただいておるところであり、私ども現場の実態等につきまして、いま御指摘のような、何といいますか、認定が必ずしも適当でない、本来受ける資格のあるような方も外されているとか、あるいは逆に高額所得者で対象になっているとか、そういうことも絶無ではないというふうに聞いておりますんで、そこでこの事務を担当する者につきましては、毎年のように関係者集まって講習会をする等のことをやっておるわけでございまして、決していまのままでもう万全であるというふうには私も考えておりませんし、できるだけこういう事務につきましては適正を期するように今後も努力してまいりたい、かように思っております。
  204. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 私はここであらわれておる問題点は二つあると思うんですね。  一つは、予算の査定も厳しいので、県としてはそれに合わせるようにするために、余り大ぜいの人を初めから知っておってあれこれ申してくるような、たとえば市町村の教育委員会に申請書を取りに来て、そして子供にわかりにくいような状況で受領しようというのを好まないということと、それで学校の中では数がたくさん出てくれば厳しくなってくるので、非常に便宜的な措置をやっておる。通知書を子供に持たして帰したり、あるいは人の目の前で学用品を交付をしたり、さまざまな問題があって問題になる。あるいは民生委員に相談したときに民生委員の助言が問題になって、地域で顔が悪くなるというような問題がさまざま起こっているんだと思うわけです。一体こういうのに対しては改善措置はどうすればいいわけですか。
  205. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) いま御指摘のように、一つはその対象者をどうして適正に選定するか、その場合に対象者の意識においても卑屈感を持たせないようにどうしてやるかということでありますが、これは保護者対学校、あるいは教育委員会、あるいは民生委員、福祉事務所の職員といったような関係において、より一層緊密に連絡をし、情報を交換しながらやっていただくということだろうと思います。  ところで、今度は支給する場合の支給の仕方につきまして、直接子供に物を支給する、あるいは子供を通して家庭に連絡させるとかいうようなことは、思わぬ悪い結果を紹来することも十分予想されるわけでありますので、従来の指導におきましても、学校長に委任をして支給をするという場合には、十分適切な方法を考えて支給をするようにということを指導しておりますし、都市部などでは直接教育委員会から保護者に対して銀行振り込み、その他の方法をもって支給するというようなことを進めておるわけでありまして、この問題はやはりそれぞれの市町村が地域の実情、父兄の実態というものを考えて、工夫をしていただくということよりしようがないんではないかというふうに考えるわけでございます。
  206. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 問題の中心は、法で定めた正しい方法が親の好む方法で運用されていないというところに一つの問題があると思うんです。  大阪市では、いままで区役所の窓口を通じて取り扱うものと、教育委員会を通じて取り扱うものというのを一元的に全部最近学校委託の方法に切りかえたわけであります。これは市町村が主体ですから、市町村にその選択権はあるという見解を持っておるわけですね。しかし、これは受け取る方から言えば非常にやりにくいと、中ではその結果子供の方に通知書が渡されるというのを見て、ほかの子供から、おまえはそういう金をもらっているのなら、給食を受けるのは遠慮したらどうだというようなことを言われてなぶられたりしておる、その結果辞退するというようなのも出てきておるわけであります。この点では、文部省の方で学校委任の方法を最もよい方法として指導しておられるのではないんですか。
  207. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) その点は、学校委任が最もいいとは言っていないので、「援助費の給与は、金銭又は現物で保護者又は当該保護者から受領について委任を受けている学校長に対して行うものであること。保護者に対する給与の方法については、適正な方法により行うこと」。要するにそのどちらというふうに一方的な指導はいたしておりません。ただし、保護者に対して給与する場合には、その方法について適正な方法で行われるようにしなさいと、こういう注意をいたしておるわけであります。
  208. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 きれいな答弁されていますけれども、実は徳島の方に実際に当たって調べてみますと、文部省研修会で、五十二年の場合には中国と四国で一緒に行われたわけですが、課税最低限所得は従来これに掛ける一・三もしくは一・五でやっておったけれども、現在ではこの市民税の課税最低限所得と、保護基準の一・三との関係がずっと寄りついてきたから、大体前の方式を詰めて切り下げろということを指導しておるわけです。徳島県では従来は一・七くらいの人も認めていた例があったけれども、こういう状況下、あるいは行管の厳しい指導の中で一・五、一・三を下回るように努力をし、現在一・三まで持っていっておる、こういうふうに言っておりました。  それから、こういう状況を考えてみますと、どういう方法を用いてでも、やっぱり最終的に数を合わせようとするところに問題があると思うんですね。この点について改善をするという考えを持っていないかということと、もう一つは、やっぱり明らかにこの父母の望む方向として、各区役所、もしくは市町村教育委員会に申請書を備えて、全体に周知させた上で、この申請書を取りに来れば、学校を通じなくてもそこで渡すという措置を講ずるべきではなかろうか。それから学校を通じて行われたものについても、父母が望むなら銀行を通じて、あるいは窓口を教育委員会直接に行うというふうなことも考慮されるべきではないかと思うんですが、どうですか。
  209. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 後段の方から先お答えしますが、その要保護家庭として認定を受けるそのやり方、申請の仕方、あるいは実際に奨励金を受けるその交付する仕方等につきましては、今後もひとつ一層研究をしてまいりたいと思います。ただ、その対象となる人について、申請があればこれをみんな見るかどうかという問題につきましては、これは何回も申し上げますけれども、この制度の趣旨自体が予算の範囲内において、国は市町村に助成するんだというたてまえでございますので、予算自体の増額につきましては、今後とも引き続き努力はいたしますけれども、やはりその予算の制約があるんだというその前提はわれわれとしては考えないわけにはいかないというふうに思うわけでございます。
  210. 小巻敏雄

    ○小巻敏雄君 大臣にお伺いするわけですが、お聞きのとおり冷え冷えとした行政指導態度になってきておるということであります。各県はそれなりに努力をいたしまして、この保護基準の一・三、これを少々上回ってもということで、かなりやってきておるわけです。ですから、各市町村においてかなりこの行政姿勢にも格差があります。私は時間なくなりましたから、いま申しませんけれども、奈良県等を調べて見ましても、四十幾つかある行政区の中で、かなりの成果と申しますか、恩恵を広く及ぼしておるところもあり、これらのところはみんな申請書を市役所、教育委員会に設置をしてやっておるわけですね。それと同時に、いやしくも対象についていままで枠内として取り扱っておったものを切り下げるというふうなことはできないというので、従来からあった生活保護基準の少なくとも一・三というレベルは守ってやっておるわけです。局長もこのようにたてまえとしては、それは市町村が決めることだ、こう言っておられるわけですけれども、この文部省の基準が後退するというのは、これは非常にシビアなもんであります。この状況の中から大阪市のように、父母の好むような方向をとって、区役所の窓口で処置しておったようなものが、全部学校一律にして大きな後退をもたらし始めているというようなことが出ている。この点については、従来のものを少なくとも改悪を強要するようなことはないという点について、大臣、どう思われますか、その点をお伺いしておきます。
  211. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 大変重要な課題だと思うんです。特に行政監察局から指摘を受けましたようなことは、できるだけ早い時期にこれは改善をしなければならないと思いますし、渡し方が、御指摘のように非常にむずかしいし、大事なことだと思います。子供たち学校で何かコンプレックスを持つようなことは絶対に避けなければなりませんから、御指摘の点十分検討をさせていただきまして、温かい支給の方法で実現できますように努力をしてまいります。
  212. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 大臣所信表明の中で、かなりまあ広範な分野にわたって述べておられるわけでありますけれども、まず現在の教育の中で特に早急に解決すべき問題点は何であるか、どうお考えになっておりますか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  213. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 大変広範な点にわたっての御質問でございますが、早急に解決を迫られております問題としては、個性豊かで、心の温かい子供を育てるための教育内容改善、これを指導する教員の資質の向上、過熱化した入試問題の改善、さらには学歴偏重社会的風潮の是正、これらの問題が当面まさに急務と考えなければならないことだと思います。
  214. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 昭和四十六年に中教審の答申が出まして、教育改革のための基本施策について出されたわけでありますけれども、もちろんこの中教審答申につきましては、賛否いろいろな意見があるわけであります。われわれとしましても全面的に賛同するというものではありませんけれども、しかし、この中には現在の教育の中の問題点に対する指摘というものも行われ、また改革の方向というものも出されておる部分もあるわけであります。この点についてどうお考えになっておるか、また、今後その改革を進めるに当たって、この中教審の答申というものの線に沿って行われるおつもりであるかどうか、この点についてお伺いをしたいと思います。
  215. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 四十六年の中教審答申は、今後におきます教育改革の基本的構想を明らかにいたしましたのと、それを実行に移すための基本的な施策について提案がなされております。この答申は初等、中等教育及び高等教育につきまして、広範な施策の御提案でございまして、この実施には相当長期的な視点に立って、計画的に推進する必要がございます。また、そういう線に沿って努力をしているところでございまして、今後ともさらにこの答申の趣旨に沿って施策を進めてまいることにいたしております。
  216. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 この方針に沿っていままでどれだけのものが具体的に実現されたのか、あるいは現在進行中のものがどれだけあるか、この点はいかがですか。
  217. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) その主なものを申し上げますと、まず初等、中等教育におきまして、昭和五十二年七月の小・中学校学習指導要領改定と、これに続きます。ただいま準備中でございます高等学校改定準備でございます。  次に、幼稚園振興十ヵ年計画に基づきます幼稚園の積極的な普及、充実、また、昭和五十四年度からの養護学校の義務制実施などの特殊教育の積極的な拡充、整備、教員の養成、確保とその地位向上のため昭和五十三年度新構想の大学二校の創設、昭和五十二年度からの新任教員研修の実施、昭和四十九年二月のいわゆる人材確保法に基づきますところの三次にわたる教員給与の改善などを行ってまいりました。また、高等教育におきましては新構想の筑波大学や、技術科学大学の創設でございますとか、放送大学をスタートさせますためのセンターを、昭和五十三年度に予算に計上して、ただいま審議をお願いをいたしております。  また、大学間、大学院間の単位互換制度、これの実施などの高等教育の多様化、弾力化、この趣旨の実現を図ってまいっております。  また、大学入学者の選抜方法の改善につきましても、昭和五十二年五月に大学入試センターを設置をいたしまして、これを中心として、国立大学の共通第一次学力試験の昭和五十四年度からの実施に向けて準備を進めております。これらの点が従来まで実施をしてまいりました主なる点でございます。
  218. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 あと残されておる特に重要な問題というのは何々ですか。
  219. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 答申の御提案の中には、幼児、児童生徒の発達段階に即した学校体系の開発、非常に重要な抜本的な問題と申しますか、相当な長期的な展望のもとに実証的な研究を行って、それらを基礎として段階的に実現を図らなければならないというようなものが含まれておるわけでございまして、これらの点が残っている点でもございますし、現在慎重に調査研究を進めている段階でございます。
  220. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は、まあ現在の父兄の立場から考えまして、特に大きな問題というのは、一つは受験地獄の問題だと思うんです。それから、もう一つは教育費の負担が非常に重くなっておる。したがって、この二つの点は早急に解決をしてもらいたい、このように考えるわけです。特に、まず最初に言いました受験地獄の改善について、大臣はどういう具体策を持っておられますか。
  221. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 高等学校の入試の場合と、大学入試の場合と、両方お答えをいたさなければなりませんが、公立高校の入学者選抜につきましては、特定校への志願集中などの受験競争が激化をいたしております。高校全体の定員と中学から高校へ進みます志望者の数をこう比べますと、大体ほぼ受け入れられるはずでございますが、特定校集中という現象が過熱をいたしております。このことによって正常な中学校教育が阻害をされておりますので、こういうことを改めなければなりませんので、調査書の活用や学力検査の実施教科に対します配慮等を指導をしてまいっておりますが、各都道府県におきましても、この趣旨に沿って改善措置を検討し、実施に逐次移していっているところでございます。高校入試の具体的な改善方策につきましては、各都道府県におきまして、それぞれの地域の実情に即して行うことがもちろん適切でございますので、文部省といたしましては、各都道府県の主体性を尊重しつつ、適切な入学者選抜が実施されますように、今後も指導を続けてまいりたいと考えております。  大学入試の改善につきましては、学歴偏重、有名校偏重という好ましくない社会的な風潮、これはなかなかこれを打破するのは大仕事でございますけれども、やはり高校、大学を通じての、あるいはそれが小学生に至るまでの正しい勉強のあり方を阻害をいたしておりますので、この風潮の是正に全力を尽くしたい。また、尽くしてまいっております。国公立、私立大学の特色ある充実を図りますなど、こういったことが必要でございますが、もとより入学者の選抜方法そのものの改善もきわめて重要なことでございまして、五十四年度からの共通第一次学力試験の万全な実施に全力を挙げて、各方面の御意見伺いながら、国立大学協会とともにその改善に力を尽くしてまいりたい。もう残された時間はそうございませんけれども、残されておりません時間の中ででも、なお一層改善の方法はないかということと取り組んでいるところでございます。  私立大学におきましては、その共通一次入試への参加を呼びかけてまいって、検討していただきましたけれども、もうこの時点まで参りますと、五十四年度の共通一次入試に私大が参加するということは困難となってまいりました。しかし、今後さらに必要な話し合いを行いまして、五十五年度からは何か、私学のグループ的な参加というふうなことだけにこだわらないで、個々の私立大学の参加お申し出があれば、それを受け入れることも含めまして、国公、私立大学を通じる入試改善の実が上がりますように、一段の努力をしてまいりたいと考えております。
  222. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 大学の共通一次テストの実施は、一つは難問、奇問からの解放、それから一期校、二期校の差別がなくなる、こういう面では前進だというふうに評価されております。ただ、先般新聞社でやったアンケートの調査を見ても、学生の側から見たら非常に不安があるし、かえって負担増になるのではないか、こういう意見も多いわけであります。有名な学校といいますか、いい学校に集中するという傾向は、これはなかなか解決はむずかしい問題だと思いますけれども、やはりまず受験する生徒の負担をできるだけ少なくする、負担を少なくした中で適正な選考が行われるような試験をする、これは非常に重要なことだと思うんです。そこで、この間のアンケートの結果を見てもいろいろの問題点が指摘されておりますけれども、あと残された期間で具体的にどういう点を改善されようとするのか、お伺いをしたいと思います。
  223. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 残された時間は少ないですけれども、これからなお改善をやらなければならない点と、大体来年受験をします高等学校生徒理解をしてくれたんではないかと思っておりましたけれども、正しく理解をしていてくれていない状態が、先般のあの読売新聞の調査で私どもも思い知らされた感じがいたしております。高校側、父兄側から、主として共通第一次学力試験の実施時期の問題、次に受験科目数の問題、第二次試験の科目数の問題、いわゆる足切りと呼ばれております二段階選抜の問題、一期、二期の一元化に関しまして、受験機会が少なくなってしまうというような御心配、こういう意見や、要望が出されているわけでございまして、やはり受験生の不安や、疑問というものはいま申し上げたような点でございますけれども制度の変更に伴います志望校選択のむずかしさ等にもあると思われます。これらのうちで共通第一次学力試験の実施時期は、高校側の御要請に大学側がこたえまして、大変な御努力をいただいたわけですが、当初予定の十二月下旬を一月中旬に繰り下げたところでございまして、今後とも実施の経験を積みながら、この点さらに研究を続けてまいりたいと考えております。二段階選抜の問題でありますとか、二次試験の科目数につきましては、国大協自身におきましても、改善努力をする必要があるということを確認をいたしておりまして、実施の経験を経て改善が行われるものと期待をいたしておりますし、文部省としてもその方向での指導を続けてまいることにいたしております。  なお、先ほどもお話に出ましたが、受験生が自分の得点の相対的位置を判断しやすくするように、一次の学力試験の結果の公表の仕方の改善についても、いまなお検討を続けておりまして、何とか第一次までにこれを改善をしたい。国大協の側でも、入試センターの側でも、懸命になっていただいているところでございます。一次の科目数や、一期、二期の一元化につきましては、その趣旨がどうも十分理解されていないという点が多いのと、これらの問題を含めまして、このたびの入試改善の趣旨が完全に理解されてないという感じがいたしますので、これまで文部省や入試センターで高等学校関係者に対しまして、ブロック別の説明会や、全国的会合で御説明をしてまいったのでございますけれども、さらに重ねまして、文部広報等全受験生に渡りますだけ十分の数をそろえまして、また父兄にもその趣旨や、実施方法について、一段の努力をして、大PR作戦を進めなければならない、またその準備をいたしているところでございます。そしてこのような問題は、今日の教育という問題が、社会的にも非常に重要視されるときでございますから、受験生や父兄に知らせるだけでは、それでは足りないという気持ちが私はいたしまして、総理府にお願いをいたしまして、全国民の皆さんに御理解をいただけるような新聞広告等を通じての政府全体としてのPR、このことも何とか実現をしたいと思って、ただいま政府部内で研究をいたしているところでございます。
  224. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それから引き続いて、これは非常に基本的な問題ですけれども、その試験方法の改革と同時に、学制の改革といいますか、六・三・三制の持つ問題点というのがやはりあると思うんです。中学三年、高校三年と短く分けておるということは、この一番重要な精神的に不安定な時期において、二度の入試がここに集中しているわけですね。小学校から中学校までは義務制だから試験がない。それから中学校から高校に試験があって、高校から大学に試験がある。ちょうどこの一番青年前期の精神的に不安定な時期に、三年ごとにきわめて苛烈な試験にさらされる、これが非常に大きな問題点だと思うんです。したがって、現在の中学校教育というものはまるで高校受験のための準備のようなことになる。また、高校、特に有名校というようなものは、まるっきり大学の予備校みたいなものになっておると、ここに非常に大きな問題があるわけで、この青年前期の内面的な成熟を阻害しておるということも言えるわけでありますけれども、この点について大臣はどうお考えになっておりますか。
  225. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 戦後いわゆる六・三・三という制度がとられましたのは、いろんな角度から検討いたしました上で決断をして取り入れられた制度でございます。御指摘のように、この時期は人生の中で最も精神的に不安定な時期であることはもうそのとおりでございますが、これを短く分けることによって、高校、大学の二度の入試をこの時期に受けなければならない、中学の三年というのは高校受験準備のための、まさに受験準備年になってしまっている、高校は大学の予備校化してしまっている、これが青年前期の内面的成熟を妨げる原因となっているという御指摘も、私はそういう面もあろうかと思います。しかしながら、十二、三歳から十七、八歳の青年前期の生徒の心身の発達過程から見ますと、確かに心理的葛藤の多い時期でございますが、それではこれを六・五にしたらどうか、あるいはまた違う年数で、昔の旧制中学校考えてみたらどうかと。それはそれなりに非常にむずかしい、またデメリットも出てくるということも考えなければなりません。中学校の一年生、高等学校の二年生が六・五とした場合は該当するのでありましょうけれども、今日の中学校の一年生、高等学校の二年生、その間の心身の発達の状況というものは、驚くべき変化を来してしまいます。それだけ態様の違う児童生徒を一つの学校の中にそのまま置いておいていいかどうかということも、非常に大きな問題でございますので、大臣どう考えるかという御質問でございましたけれども、まだこの点はいろんな専門的な学者の方々にいろんな角度から検討をしていただきながら、勉強をまだ続けております時期、このようにひとつおくみ取りをいただきたいと思います。
  226. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 四十六年の中教審の答申の中に「中等教育中学校高等学校とに分割されていることに伴う問題を解決するため、これらを一貫した学校として教育を行なう」、そのための「先導的な試行に着手する」というようなことがうたわれております。これは現在具体的にどのように進められているのか、お伺いをしたいと思いますが。
  227. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 中教審答申では確かに先導的試行という言葉が使われているわけでございますが、綿密な準備調査による科学的な実験計画というものを立案することを指摘もしておられるわけでございます。文部省におきましては、四十七年度以降、学識経験者等による各会議を開催をいたしまして、心身の発達過程に応じた学校体系の開発について、基礎的、理論的に研究を続けているところでございます。また、これとともに、教育内容指導方法等につきましても、科学的、実証的な資料を得ますために、教員、学者等の研究グループに調査研究を委嘱をいたしまして、さらに研究開発学校を指定をいたしまして、教育課程の基準改善に資する実証的な資料を収集するなど、努力を続けているところでございますすが、今後ともこれらの研究開発を四十六年度中教審答申に基づいて、研究開発を引き続いて進めてまいることにいたしております。
  228. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 次に、教育費の負担の問題についてお伺いをしたいと思います。  特に、最近の父兄の大きな悩みは、教育費の負担が年々増大しつつあるということではないかと思います。特に国公立と私立の場合の格差が大きい。国公立の場合で試算をしてみますと、これは少し前の数字でありますけれども、幼稚園から高校卒まで、全部公立で行ったとしまして、授業料、入学金だけで八十三万円かかる。私立の場合はどうかといいますと、大体これの四倍ないし五倍はかかる。学校によって差がありますけれども、大体平均すれば四倍ないし五倍、つまり三百万円ないし四百万円というお金が要るわけであります。この教育費の負担の増大について、この解決策について大臣はどう考えておられますか。
  229. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 御指摘のとおりな経済的負担に格差がございます。文部省といたしましては、私立学校振興助成法に基づきまして、私立大学等に対する経常費補助及び私立高等学校に対する経常費助成費、この補助を年々拡充をしてま  いったところでございまして、私立学校教育条件の維持向上と学生、生徒にかかります修学上の経済的負担の軽減を目途といたしてやってまいったわけでございます。  ちなみに五十三年度予算案におきましては、私立大学等の経常費補助金が前年度予算に比べて二三・一%増、一千九百七十五億円を計上いたしました。また、私立高等学校の経常費助成金は、前年度に比べまして四六・七%増、四百四十億円を計上をいたしたわけでございます。さらに、私立の大学、高等学校等の学生、生徒にかかります負担の軽減を図りますために、各種育英奨学事業等を行っているわけでございます。  ちなみに私立大学の経常費補助の配分の仕方が細かく決まっておりますけれども教員費、学生費等は、私学振興助成法が目指します二分の一まで達することができました。しかし、その他全体から見ますと、五十三年度の予算案に計上いたしました数字で二九・一%にやっと達したと申しますか、長年の努力結果、ここまでまいったわけでございますが、私学振興助成法の目指しますところにはまだ達してないわけでございますので、今後ともこれらの施策の充実にひとつ懸命になって努めてまいろうと、さように決意をいたしておるものでございます。
  230. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 昔と比べて私立に依存する度合いが非常に多くなっていると思うんです。特に幼稚園では現在七七%を私立に依存している、高校は三一%、短大は九九%、大学が七五%。これらの状況を見ますと、やはり教育の需要が非常にふえてきておる。特に、これは高度成長、あるいは国民所得水準の上昇、そういうことも関係していようかと思いますけれども、この教育の需要増に対して国公立の増設が行われなかった。これは私は政府として非常に大きな怠慢ではなかったかと思うのです。その結果が私立に依存度がふえてきておる。昔は特に高等教育については、国公立が大部分を占めておったわけでありますけれども、最近は私立が大部分を占めるようになっておる。したがって、いまさらすぐ国公立を建てろといってもなかなかむずかしいと思いますけれども、やはり私学の補助というものを急速に引き上げるべきではないか。特に二分の一の水準には——年々これはふえてきておることは事実ですけれども、そうぼちぼちふやしておったのでは父兄の負担増は年々上がるばかりでどうにもならない。もっと思い切って早急に二分の一の線に持っていくべきではないかと思いますけれども大臣とすればどのような目標を持っておられますか。
  231. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) やはり私学振興助成法の意図しますところに一日も早く到達する努力をいたさなければならないというのが基本的な考えでございます。確かに御指摘のように、私学が非常にふえて、国立が余りふえなかった。しかし、科学技術者でございますとか、教員でございますとか、医師でございますとか、計画的な養成を必要とするものには、やはり国立の大学を整備をいたして、その社会的要請にこたえてまいったということは言えると思うのです。  同時に、異常とも言えるような、かつての歴史にないような高度経済成長、それに伴っての進学希望者の増、それと、私学経営というものが経済的行為と結びついて、非常に私学が受け入れ体制が拡充されてきた、こういう事実がもう現実問題としてあったわけですが、ただひとつ、外国と比べて考えますと、私立大学というものに対しましての資金的な私学の力といいますか、そういった私立の学校教育に資するための浄財を寄付するという習慣が、どうもわれわれ日本人には薄いようでございます。そのことがやはり私学へ通われる青少年の就学上の負担増ということにもなっているように、諸外国と比べますとそういう気持ちがいたしてなりません、ただ、そういう社会的風潮をつくり上げるということはなかなか困難な問題でございますし、文部省といたしましては、私学、公立の間の格差を縮めますために、やはり私学振興助成法の意図する線まで、できるだけ早く到達をするための懸命な努力をしてまいる、このことがやはり私どもに課せられた大きな責務であると考えております。
  232. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 それからもう一つ、私は急速にふえた、この大学の中身の問題があると思うのです。前の文部大臣の海部さんが指定校制の是正について経済団体に要請を行われました。その後の経過というものはどうなっておりますか。
  233. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 海部文部大臣と石田労働大臣、前両大臣懇談をなさいまして、海部文部大臣が大変な御努力になったわけでございます。海部前文部大臣から申し入れを受けました経団連は、傘下企業団体に指定校制度というものはやめようではないかという、そういう連絡を文書でとってくれまして、その結果を実は私どもいま調査をしているところでございます。私も就任をいたしまして間のない時期に藤井労働大臣懇談をいたしまして、前両大臣のせっかくともしてくれた大切なともしびを絶対に消さないでいこうという申し合わせを二人でいたしました。  それでは、具体的に次にどういうことをするかというのは、海部前文部大臣の御努力、それを受けてくれた経団連、その通達を受けた各企業が、としの新卒をどういう姿勢で採用をしてくれたかという結果を踏まえて、次に打つべき具体的な手だてを考えようということを労働大臣と打ち合わせをいたしました。文部省で、二千数百の各企業、それから企業で働いておられる勤労者の皆さんに質問書を実は送りました。それをいまお答えをいただいております、回収をいたしておりますところでございます。もう間もなくその結果がはっきりすると思うのですが、私は様子が変わってきたと思います。それは、文部省のやっております調査結果はまだ出ておりませんけれども、他の世論調査機関で調査をいたしました様子を聞いてみましても、ある大銀行ではことし百二十名採用したけれども、七十校から採用した、こんなたくさんの大学からとったのは初めてだ。ある別の大企業は、新卒者の採用の基本的な方針は、地方の大学の人材を見落とすな、いままで有名校と言われた大学の、学問ばかりができる人を採用したのでは企業にバイタリティーがなくなる、バイタリティーのある地方大学出身者の人材を見落とすなというのが採用の基本方針であったと聞いております。そういうことを踏まえて、文部省自身で私どもがただいまやっております調査結果を実は楽しみにして待っているところでございまして、これは公表をいたします。その上で次に打つべき具体的な手段を労働大臣と打ち合わせて決めたいと考えております。
  234. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 いわゆる学歴社会の是正というのは企業側の協力も必要であります。  それからもう一つは、やはり大学の側は、中身の問題について改革すべきではないか、というのは、大学ができた年次を調べてみますと、特に昭和三十七年から四十三年、この間に続々とできておるわけですね。ちょうど高度成長の一番華やかなりしときに、年間大体二けた台の大学が設置されておるわけです。ほとんど私立の大学であります。これはもちろん経済社会の要請ということもあるでしょうけれども、同時に、所得水準が上がって、高等教育が受けられるような環境になってきた。それから、学歴社会というものを身にしみて感じておる親心といいますか、とにかく大学を出させたいという、こういうものが背景となって、私立の大学というものが企業的に経営が成り立つという環境ができた。これが急激に増大した結果だと思うのですけれども、ただ急激にできたことの問題点として、果たしてそこで受けておる教育内容社会のニーズに合ったものかどうか、私はこれが非常に大きな問題となって出てくるように思うわけです。特に高度成長が終わって、これから低成長時代に入りますと、従来のようないわゆる管理職目当ての大学生というものはそんなにたくさん要らない。現在は四〇%近くが大学生でありますけれども、四〇%の人間が管理職になれるわけではないわけであります。したがって、こういう状況を反映して、最近は大学卒業生の就職というものも非常にむずかしくなってきておる。したがって、この大学の教育の中身というものを変えていくべきではないか。従来のようなエリートが大学に行くのではなくて、いまは大学は大衆化しておる。そうすると、エリート教育を目指したいままでの大学のまねをして大学の教育課程をつくっておったのを、中身をやはり変えていかなくてはならないのではないか。こういうことに関連して、中教審の答申でも高等教育の多様化ということを言っておるわけですけれども、今後大臣は大学の教育内容について、どういう改革のお考えを持っておられるか、お伺いをしたいと思います。
  235. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 高度経済成長時代、それの終えん時代にかけて、大学に対する社会のニーズというものが変わってまいりました。これからもまた大きな変化をもたらしてくるという気持ちがいたします。それに対応する努力文部省考え、大学当局もいろいろなことをやってまいっておりますので、その中身につきましては大学局長からお答えをいたします。
  236. 佐野文一郎

    政府委員佐野文一郎君) 先生も御指摘のように、中教審の答申におきまして高等教育の多様化、あるいは種別化の御提案がございます。こういった高等教育の多様化、種別化のねらいというのは、結局のところ非常に進学率が増大をしている現在の高等教育、あるいは高等教育化に対しては、一方ではそういった多様な大衆化のもとにおける要請があり、また一方では学問研究の水準の維持向上といったような要請もある。そういうものを十分に考えながら、現在の高等教育化の目的、性格を再検討をして、それぞれについて特色のある発展を促していくべきだという点にあったんだというふうに考えております。そしてまさにそうした大学の対応ということは望ましいことであり、またそういった大学の改革というのは、何よりもまず基本的には大学当局、大学当事者の自主的な努力によって推進されていくべきものでもございます。そういった見地から、これまで文部省といたしましては、大学の設置基準を改正をして、大学のいろいろな制度面の弾力化を図る、あるいは大学院についても同様に弾力化を図る、そういった弾力化を活用して、各大学がいろいろな要請にこたえた特色のある発展を可能にするように努めてまいったわけでございます。さらに、新しい大学のあり方ということを考えて、先ほど大臣からお答え申しましたように、筑波大学であるとか、あるいは技術科学大学であるというような、新しいタイプの大学もつくってまいったわけでございます。今後とも各大学がそうした社会のニーズというものにこたえて、自主的に改革を進めていくように、そうしてそうした大学側の改革の努力に対して、私たちも積極的に対応していくように努めてまいりたいと思います。
  237. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 余り時間がなくなりましたので、最後に主任手当の問題についてお伺いをしたいと思います。  主任手当制が実施されたわけでありますけれども、主任というのは管理職ではない、主任手当というのは、主任という職務に対する御苦労賃だと、こういうようなことが言われておるわけです。ところが、実際手当支給の対象となっておるのは非常に限定をされておりまして、教務主任か、学年主任とか、あるいは生徒指導主事とか、非常に限定をされております。同じ御苦労賃なら、少なくとも主任という名前で他の先生より余分の仕事をしておる人には全部出すべきではないか、これをわれわれが主張してきたわけであります。去年の十一月の十七日の衆議院の内閣委員会においてわが党の大内議員の質問に答えて、前文部大臣の海部さんはできるだけ現在の支給の対象となっておる主任に準ずるような主任についても、今後これは手当支給の対象とするように考えたい、しかも、時期はできるだけ早急に実施したい、こういう答弁をされております。文部大臣はこの主任手当の対象の拡大について、どのようなお考えを持っておられますか。
  238. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 海部前大臣が大内先生に御答弁をいたしましたその考え方につきましては、私も全く同様の考えを持っております。今後その実現に努力をしてまいります。
  239. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 その際、現在省令で定められている主任というのは限られておるわけでありまして、それ以外にもたくさんの主任がおるわけです。そういう主任をやはり一応できるだけこの省令で規定すべきではないか。つまり、省令化主任というものをもっとふやすべきではないか、このように思うわけですけれども、いかがですか。
  240. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 主任という制度が校務分掌の仕組みを整えることを目的といたしたものでございますし、各種の主任等のうちで、学校におきます教職員の組織の基本的なもので、かつ全国的にほぼ共通して自然発生的に設置をされておりましたものについて、その設置と職務内容について文部省令に規定をいたしたものでございます。また、地域の特性に応じまして、その他の主任等についても必要に応じて設置できるよう規定はしてございますが、省令主任をふやすことにつきましては、このような全国的な実施状況等を勘案をいたしまして、検討してまいりたいと考えております。
  241. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 主任手当の対象とする主任は、必ずしも省令で規定されてなくてもその対象とできるわけですか。
  242. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) どういう主任に手当を支給するかというのは、まあ端的に言いますと人事院の規則なり、あるいは規則に基づく指令なりの決め方だと思うわけでございますね。そういう点も含めて、いま、さらに検討したい、こういうことでございます。
  243. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 この主任手当の問題は、これまたいろいろ賛否両論があって、大分もめた問題でありますけれども、一応これが国会で決定をされた。それから東京の都議会においても決められたようでありますけれども、ことしの二月に、東京都下の公立小学校教育を語る会という会合が行われまして、その案内状を教師児童に持って帰らせました。そして集まった父兄に主任制度反対の署名を求めた。これは私はちょっと行き過ぎではないかと思うのです。一応国会並びに東京都議会で決めたことについて、意見はいろいろあろうと思うのですね。ただ、反対の署名運動をやるというのは、これは地方公務員法に違反しておると思うんですけれども、この点はいかがですか。
  244. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 公立学校教育公務員の政治的行為の制限につきましては、教育公務員特例法、地方公務員法、それらの規定にかかわらず、国立学校教育公務員の例によることになっております。国家公務員法の第百二条及び同条に基づきます人事院規則等が適用されることになるわけでございますので、御質問のような署名をとるといったような行為がこれらの法令に違反するかどうかは、これはきわめて慎重に検討いたさなければならないと考えますけれども、特に児童を利用して父兄に働きかけるような行為は、公教育に対する信頼を損なうものであることには間違いない。教員としてはきわめて好ましくない行為であると私は考えます。文部省といたしましては、東京都教育委員会に対して実情を把握するとともに、適切に対処するように指導をしてまいりたい、かように考えております。
  245. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 私は日本教育の問題点の一つは、やっぱりこの政治的な鋭い対立が教育現場に持ち込まれることだと思うんです。そしてそれに父兄とか児童が巻き込まれておる。この現状を改めなければ、長期的な安定した教育というのはできないと思うんですね。それについて民社党としては前々から一つは教育行政側の姿勢といいますか、あり方というものについて提案をしております。これは大臣がくるくる変わることも好ましくないと思うんですね。教育というものは大臣所信表明にも書いてありますように、やはりきわめて基本的な、永遠に変わることのない国政の基本である。言うなら国家百年の計に基づいた教育が行われるべきである。したがって、そのときどきの政権——政権は変わることがあるわけですね。議会制民主主義である以上政権は変わるわけです。政権が変わったら教育も変わるようなことでは本当は困るわけであります。したがって、われわれが主張しておるのは中央教育委員会というようなものを設けるべきである。そして文部大臣というのはできるだけ中立的な立場で、できるなら議員でない方がいい、学識経験者の中から適当な人を選んで、できるだけ長期にその人が教育を担当する。こういうシステムにすべきではないか、こういうことを主張しておるわけです。それから同時に今度先生の側も当局に反対する闘争、そういう意見を持つのは結構ですけれども、それを父兄とか児童の場まで広げるべきではないのではないか。やはりそれは行政当局と組合との間で話し合って問題を解決すべきである。これがこういう意見の対立が児童にまで持ち込まれるということは、決して教育にはプラスにならない。このように思うわけですけれども、この問題について大臣はどのように対処されますか。
  246. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 何か長く文部大臣を務めておる方が安定していい、私も賛成でございます。いつまでやらしていただけるかわかりませんが。ただ政治家でない方がいいとおっしゃいましたけれども、永井さんも短かった。国会議員でない文部大臣が登用されることに私は個人的に大変魅力を感じます。ですけれども、そのことが必ずしもその文部大臣の任期を長くするものでもございません。現行憲法下におきましては立法、司法、行政の三権の分立を基本原理といたしておりますし、教育のこともまた行政権の範囲に属することでありますことは、もう御理解のとおりでございまして、国会の立法作用のもとに運営されていくべきものでございます。文部省はやはり教育学術文化に関します行政を一体的に遂行いたします行政責任を負っておりますので、御質問のような教育制度を採用することは考えておりません。しかし、もとより教育政治的中立ということは非常に重要な事柄でございまして、私も文部大臣を拝命いたしましたときに、教育政治的中立を守ることが最も基本的な私の責任であるということを、自分で自分に言い聞かせて文部大臣に就任をいたしたのでございますが、その確保につきましては、教育基本法その他の法令に規定されているところでもございますし、教育を政争の具に供するようなことのないように、いかなる政党政派も慎んでいかなければならないことでございますし、そういう圧力が加わりましたときには、断固として、身を挺して教育の中立を守る決意でおります。
  247. 田渕哲也

    ○田渕哲也君 終わります。
  248. 有田一寿

    ○有田一寿君 通告申し上げているのもありますし、そうでないのもありますから、別に完全な御答弁をいただく必要もありません、それにつきましては。一つは先ほどから問題になっています入試並びにその前提としての学歴社会の問題、これについては歴代の文部大臣国民各層の協力を得て、この是正を図っていきたいということを言われてまいっておるわけでございまして、砂田大臣も同様だと思うのです。ところで先ほど田渕委員の質問に対しても、指定校制度の追跡調査のことについてお話がありましたが、この三月二十日東大の入試の発表がありました。あのときの各新聞の扱い並びにきのうきょう出ている一流週刊誌の扱い、これは全く東大信仰、東大偏重、学歴社会推進以外の何物でもないというふうな感じを強く持ったわけです。昨年の三月にも私はここでそういう指摘、質疑をした記憶がございます。それについて、この指定校制度について経済界に申し入れるのであれば、マスコミについても文部省として何らかのことを考えなければならないのではないかというのが一点。  それから、各大きな企業が指定校制度というものを緩和させた、しからば名前は挙げませんが、一流新聞社等はどういうことでしょうか。やはり採用する学校数を非常に拡大したとか、成績を多少軽く見てでも、その他の特性だとか、体力だとか、そういうものを重視したのか、お調べになったことがありましょうか。まずそれをお聞きしたい。
  249. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) マスコミ関係調査はまだいたしておりません。
  250. 有田一寿

    ○有田一寿君 それも通告申し上げていなかったからそれで結構でございます。ただ、少し言葉を飾らずに私はあえてここで言いたいのは、学歴偏重、あるいは入試地獄だ、あるいは子供が自殺した、十五の春を泣かせるなとか、あらゆる文句でマスコミはほとんど連日のように入試激化、学歴社会を告発しております。ところが、なぜそういうふうに三月になって有名校、特に東大等の合格風景をテレビで流し、新聞で、写真で流し、その後フォローして各週刊誌で東大合格者出身県別一覧表、これは大学は発表していませんよね、氏名は。それなのに全部それを調査網を動員して個々に調べ出してそれを発表する。これは私はもう名前は言いませんが、そういう責任者に会ってみた。そしたら、そのとおりだと、そのとおりなんですが、売れますものですから、という一語に尽きるんです。言いかえれば商業主義、だから私は新聞初めマスコミの功罪を論ぜよと言えば、功もある。それは医科大学その他そういう不正を告発したり、あるいは東大の精神病棟の告発をしたり、これはプラスだと思う。ところが、それを全部消しゴムで消すほどの罪悪というもの、これはいまの学歴をあおる、だから私は教育を毒している元凶は、文部省でもなければ、経済界でもなくて、やっぱりマスコミだと思うんですよ、まあ極言ですけれども。これに対して何らかのことがなされる必要がある。別に自由主義社会ですし、言論は自由ですから、これを書くなとか、そういう指図はできませんが、国民各層の協力を得て、いま言う目的を達するという悲願を、これを実現したいというのであれば、いまや家庭教育はない、マスミス教育があるとさえ言われておるこのマスコミについて何らかのことが私なされなければ、さいの河原のごときものではないかという非常に強い危機感を持っているわけです。資料等に一切基づかずに、大臣の感触をここでちょっとお聞きしたい、それはよろしいでしょう。
  251. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 全く同感でございます。マスコミが取り上げてテレビの電波に乗せ、ラジオの電波に乗せ、あるいは新聞に書かれることで私も教えられることもずいぶんたくさんございます。こういう事情になっているのかと、気がつかなかったことを気づかせてくださることもたくさんございます。いま有田委員が御指摘になりました新聞、週刊誌等が東大合格者、一流大学合格者等をあのような形で発表いたしておりますことを、もうきわめて苦々しい気持ちで私は受けとめております。また、マスコミがどういう新入社員の採用の仕方をしているか。先ほど田渕委員にもお答えをいたしましたけれども企業の側にも高度成長時代からもう安定成長に移った、人材をどう確保していくか。有名校の学校の名前に引かされていたのではこれはだめだぞ、地方の大学にも、学校の学問の成績は余りよくはないけれども、きわめてバイタリティーの強い、しかも品位のある学生がたくさん出てきている、そういう新卒者を採っていかなければ、将来の企業のバイタリティーがなくなってしまうという反省経済界にも生まれておりますのに、マスコミがそのことに気がつかずにいて、マスコミ自身が有名校にばかり偏るような学歴偏重の採用の仕方をしてまいりましたならば、そのマスコミ自身が私は衰退をしていくだろう、マスコミの方が思い知らされるであろうという気持ち、またそうあってほしい、そうさせてやりたい、そういう感じを持つものでございます。落ちこぼれと言い、落ちこぼしと言われますけれども、少々数学ができないとか、読み書きが不得手であるとか、それだけで青少年を、児童生徒を落ちこぼれだときめつけることは本当に不愉快でございます。教育の目的がどこにあるかということを理解をしてくださっていない、学問についていけなくても、それは芸術的な豊かな才能を持っている子供さんだってあるんだし、思いやりの深い、数学は不得手だけれども、自分の一生は社会福祉事業に捧げようという温かい気持ちを持った、人の役に立ちたいという非常に強い意欲を持った子供たちもいるわけでございます。それを落ちこぼれだと言って、間違ったコンプレックスを持たせるようなことは、私は日本人全体の将来のために、まことに不愉快な感じがいたしておりますことを率直にお答えを申し上げておきたいと思います。
  252. 有田一寿

    ○有田一寿君 よくわかりました。  それで、ここにちょうどけさ方切ってきたんですが、「東大合格者高校別一覧、都道府県別全氏名、速報・決定版」、それはここに京都大学、阪大、一橋大等数校挙がっておりますし、これはどなたも目を通されたことと思いますが、これはもう各一流週刊誌全部ですね。恐らくこれから二十日間ぐらいにわたって第二弾、第三弾が出てくると思います。この次に出てくるのは必ず間違いなくテレビで、合格した者が通った塾の経営者とそのとき当たった先生を呼び、それから合格した生徒、恐らく百人ぐらい並べてボタン式で、塾で何時間勉強しましたかということ、勉強時間の、塾に通う時間の少なかった者はやっぱり落ちたという結果がここに出て、家庭でお母さん方の目にこれでもか、これでもかというほど繰り返されることはもう目に見えている。それはくどくもう言いませんが、ここに一つの大きな無反省な元凶があると。ただし、聖域であるからだれもこれに触れたくない、しかし大変なこれは問題だということをここで申し上げて、この問題は終わりますが、ただ、これに多少関係しますが、民社党の中沢議員がやめられる前に私に、私は約十年間、社会教育の面から書店等に出るあの店頭の雑誌、あるいは映画の看板その他、あるいはテレビ、そういう社会面の無反省な扱いが子供教育を、言いかえれば家庭を破壊しつつあるということを言い続けてきたけれど、微力で私は何もどうにもできなかった、言いかえれば壁は憲法ということでしょう。表現の自由、営業の自由等であろうと思いますが、それで私は、それは私がひとつ引き受けさせていただきましょうと、そして今後しつつこく私はこの問題はあなたの意思を受けて追及していきますということを言った手前もあり、私やっぱりそのことは強くここで申し上げて、何らかの施策文部省なり、あるいはその他の総理府なり、関係のところと御連絡くださって一歩前進さしていただきたい。そうしないと、こういうことは全部放置しておって、そしていろいろなことをやってみても、やはりだめだろうという気が非常に最近強いわけでございまして、何らかのことができるかできないかですけれども、私はできないはずはないと思うんです。これについてはどういうふうにお考えでしょうか。社会教育面です。
  253. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 中沢伊登子先生は私と同じ兵庫県出身でございます。郷里でいろいろな社会教育関係の集会等でしばしば御一緒になりました。中沢先生のこの面での御熱心なお気持ちは私も十分承知をいたしておるところでございます。いま有田先生が御指摘になりました悪書追放、あるいはテレビの俗悪番組の追放、私はやはりそういう行為が社会的な指弾をだんだん受けてきたという感じを持ちます。たとえば全国PTA連合会では、先般も皆さんお集まりになりまして、テレビのワースト番組を決める、それを天下に公表するんだというふうなことを御決議になっておられるようでございます。そういった傾向が社会教育の面でもなお一層強まってまいりますように私ども努力をいたしますと同時に、なかなかマスコミに対して物を言うということがもう御承知のとおりむずかしいことでございますけれども、私ども青少年児童たちに与えております悪影響を、その心配な点をひとつ率直にマスコミの皆さんにもお話しをいたす機会をつくることを検討させていただきたいと思います。
  254. 有田一寿

    ○有田一寿君 次に、幼稚園の園児、児童生徒の保健体育のことについて若干質問いたします。  最近の子供たちの健康上、特に基礎体力の向上を図る上から問題点として浮上しているのが姿勢の悪化、肥満児、背骨の異常、背筋力の低下、骨折の多発、こういう戦前には余り見られなかったような現象が多く見られます。これに対してどういうふうな対応策があるだろうかということは、これは体育局長にお伺いするわけですが、お聞きしたいのは、こういう重大な影響力のある問題点を解決する一つとして、学校における健康診断の際に、これをチェックして早期に矯正することができれば、治療にも資することができようし、要するに矯正ができるのではなかろうかと思うわけでありますが、いまはどういうことになっておりますか。
  255. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 学校における健康診断につきましては、六月末日までに毎年全児童生徒に対しまして、健康診断を学校医の方々によって行うということをずっと続けてきておるわけでございまして、ただ最近になりまして御指摘のような問題、特に心臓、腎臓の疾患の問題、あるいは側彎症の問題その他と、新しい課題の問題が起こってまいっております。これにつきましては、それに応じた特別の施策を講じていくということで進めておる次第でございます。その施策といたしましては、従来の診断項目につきまして専門の先生方の御意見をお聞きいたしまして、診断項目にその都度改善を加えていくということをひとつ取り組んでおります。また心臓、腎臓の疾患等につきましては、小学校におきまして、一年生につきまして尿検査と、それからレントゲンの間接撮影を行う、それから尿検査につきましては隔年行っていくように続けると、それからレントゲン間接撮影につきましては、レントゲンでございますから、毎年というのも特別の弊害の問題が心配されますので、新たに中学校の二年生のときにおいて、レントゲンの間接撮影を行うというようなことの施策を新しく取り組んでおる次第でございまして、また側彎症の問題につきましても、昨年の二月に通知を出しまして、健康診断の際に前屈等の行為を行わせまして、その面からの早期発見に資する、その早期発見いたしましたものにつきまして、疑わしきものにつきましては二次、三次の追跡検査をしていく、その体制をいかにとるべきか、これはなかなか学校ではできませんので、それを県内にわたりましてどういう検査体制が確立されるのかという問題の検討が必要でございますので、この面につきましては、新たに学校保健会にも御研究をいただき、また五十二年度、本年度、六県の県にこの面の特別の検討のための補助金を交付いたしまして、二次、三次の診断体制をとり、その上で早期の治療を受ける病院等も決めていくというような、県内を通じてのネットワークを張っていくというようなことの試みをいましておるところでございます。
  256. 有田一寿

    ○有田一寿君 私が申し上げたいのは、いまの学校保健法施行細則に基づく健康診断の項目ですね、これは文部省から出された資料がありまして、昨年出された資料を拝見したんですが、いまは主な検査項目というのは、身長、体重、胸囲、座高、これに胸郭というのがいまのレントゲン撮影等のことと思いますが、入っておりますね。あとは目だとかずっとあれですが、私はこれにどうしても姿勢測定、それといわゆる形体計測という二つを入れる必要があるのではなかろうかと思うわけです。体位はよくなったが体力がないという表現は、これは平均値の錯覚だと思うんですよ。現代の子供たちは体位はよくなったが体力がないと言われておるけれども、体位がよくなったという表現は、身体検査の際に身長及び胸囲などの計測が、いわゆる長さのみによる計測の平均値をもとにしたための錯覚だと思うんです。だから、背だけ伸びる子供がふえる、そうすれば身長の平均値は大きくなりますね。肥満児がふえる、そうすれば体重の平均値はふえる。身長が伸び体重がふえた、だからトータルしてみれば体位が向上したということになるんでしょうけれども、それは本当に体位が向上したことにはならないのではないか。だから、そういうことを考えてみますと、わかりやすく言うと、胸が八十五センチあったと、そうすれば扁平であっても八十五センチは八十五センチ、しかし幾らか厚くても八十五センチですね。扁平なのより厚い方がいいということはこれはもう医者の常識なんですが、これを巻尺ではかったんではわからないだろう。だから、やっぱり瞬間カメラで縦横を撮って、そしてそれを運動能力とのバランスで個々にずっと整理していけばいいだろう。私が持っておる資料では、運動能力のある子供は姿勢がよい。逆に言えば、姿勢のいい子供は運動能力もある。また、学校もわりにできる、まあこれだけ余分かもわかりませんがね、というあれが出ているんですよ。これはもうつかんでいらっしゃると思いますが、思いますけれども、だから、それならば計測というものを私はちょっとここでやはり考えて、身体検査項目に、これだけ近代化してきた、また器材もこれだけ進歩してきたときですから、やはりそういう意味の実態が反映されるものに改善の余地があれば、何とかして行った方がいいのではないかという、これは提言で、それに対する感触を伺いたいというふうに思います。
  257. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 現在検査項目には御指摘の身長、体重等のほか、たとえば肺活量、背筋量、握力等の機能を検査の項目に加えることができるというような規定になっておりまして、身体の常態の検査と同時に、身体機能につきましても、できれば診断していこうというような考え方の基礎はございます。健康診断につきましては、長い歴史を持って今日まで来ておるわけでございますが、私どもも御指摘の問題がございますので、特に来年度以降学校、地域、家庭を通じて、基礎体力づくりという問題が大きな課題であろうということで、家庭におきましては乳幼児期の子供たちに、基礎体力づくりの手引きと申しますか、子育ての中における体力づくりという問題の手引きをつくってまいりたい。また学校におきましては、体力づくりの推進校を拡充していく。また地域におきましては、親と子の体力づくり教室等を各市町村で開いていただくというようなことを進めると同時に、学校におけるこの面の健康診断につきまして、将来にわたってどのようにしていくのかという大きな問題が、御指摘の問題がございますので、これにつきまして来年度新たに補助金を若干でございますがとりまして、日本学校保健会に健康医事相談、スポーツ医事相談的な要素も入れました研究委嘱をお願いしていくということをいま来年度新たに考えておる次第でございまして、その面からいわば健康体力診断的な方向が将来考えられるべきであろう。そういう場合には、現在の検査項目をどのように拡充し、あるいは割愛できるものは割愛していく、その辺の御示唆をその面からもいただこうということで、研究に入らしていただくというように考えておる次第でございます。
  258. 有田一寿

    ○有田一寿君 わかりました。  私も初めてこれ勉強してみたんですが、明治二十一年ですか、以後ずっと身体検査の変遷というものを遅まきながら見てみて、そして感じたことです。それで、現在児童の机、腰かけ、あれは私の見た限りでは九十度になっていると思うんですよ。それで腰かけの高さ等も学年に従って多少もちろんあると思うんですが、たとえば前屈の子供については、初めに小学校のときにぴしっと計測ができたならば、たとえば十度なら十度腰かけの背中を倒したもので、これで中学出るまで九年間やったら、大概のものはよくなるだろう。これは医者もそう言いますわね。だから、後屈のものは前にするとか、そういう一日中というか、ずいぶん座っているわけですから、それにそういうものを加味していくということは、いながらにして矯正できるのではなかろうかというわけですね。これは私は企業の方が一生懸命だと思いますよ。ですから、少し進んだ企業に行ってごらんになったら、会議室の腰かけとか、応接とか、全部違うんですよ。それは決していいかげんにでき合いを買っているんじゃないのであって、あれはいすの背中が応接のように倒れ過ぎておると気持ちはいいけれども、会議のとき発言力がなくなるからあれは立ててあるわけです。それからここもカシの木を使ったり、あるいはやわらかなものを手に当てる。これも考えてそれぞれ用途によって購入しているわけです。だからしゃれたところは、あんまりエキサイトすると思えば、会議する前に香をたいていいますよ、そうすれば幾らか人間鎮静するんですね。私の関係しておるところもそうしておるんですけれども。だから学校は柔軟な体を持っているから、それ以上細かい配慮でやはり対処していく必要があろうかと思いますので、これはどうかひとつ御検討おき願いたいということです。  それと、もう一つ関連して社会体育のことなんですけれども、これ約三千万人の日本人は半病人だと言われている。私もそのひとりなんですけれども。だから昨年ずいぶん長く入院して、いろいろ反省させられましたが、やはり全部間違っていましたね、自分の心がけというか。だからその反省を含めての提言なんですけれども、これは過食と運動不足だと言われております。わが国の総医療費、これはまあ今度の予算でも十兆円の大台に入っております。五年後には二十兆を超すだろうという試算がなされております。このまま推移していくと国家財政はその面から破綻するということまで言えるだろうと思うんですよ。だから、これからの時代は病気になって医者にかかるよりも、病気にかからない防衛体力というものをつくるということを、これはもう本当に積極的にやる必要があろうと。いまでも予防体育とか、予防医学とかずいぶん言われますけれども、言われるだけでそれほどの私は姿勢はないんじゃなかろうか。だから、これも西独の第一位の心臓病というのが、十五ヵ年間のゴールデンプランというのでやっぱり変わってきている。いろいろやれば変わり得るということですから、まあわが国の場合も、十兆円の予算等が今後ふえるということを予想して、何も金のことだけではありませんが、やはり真剣に考えたいものだ。  それで、今度の体力づくり関係予算総額は二千三百三十一億でしたかね。ただ、これは各省に分割使用されているでしょう。と思います。   〔委員長退席、理事世耕政隆君着席〕 だから、よほどうまくそこで統括して目的を定めて使用しないとどうだろうかという不安を持っているわけです。まあそのほかに総合体育館の問題等、スポーツクラブの育成事業とか、以前に比べれば五十三年度は三十数%の伸びですね。私は大変結構だと思うので、あとは使い方等を、最も有効な使い方、たとえば健康体力相談機能というようなものを、十分にそれぞれ体育施設には備えるというような運営面、それから人的に少しでも補充をしてやるということを、何とか考えていただけたらと思うわけです。それについて体育局長の御答弁をお願いしてこのことについての質疑は終わろうと思います。
  259. 柳川覺治

    政府委員(柳川覺治君) 御指摘のとおり、現在あらゆる技術革新、あるいは生活様式の変化等に伴いまして、体を動かすということが少なくなり、その面がまさに予防医学の時代、今後十年、二十年は予防医学の時代だろうということを言われておりまして、国民の間に大変持久走等の、ランニング等に対する実践が高まってきておるということが如実に起こってきているわけでございまして、この国民の体育、スポーツに対する要望に私どもこたえまして、諸条件の整備をしていくということが大変大事な課題であろうということで、現在取り組みつつあるわけでございます。たとえば総合体育館の建設に当たりましては、必ずそこに健康相談室を置くということで、それで住民の運動診断にこたえていくというようなことの施策も、体育館の建設に当たっては新たに指導してまいるようにいたしておりますし、またママさんバレー等の身近な体育館の建設につきましても、新たな取り組みとしての実現を期しておるところでございまして、砂田大臣から体育の今後の振興についての、基本についてのさらに詰めた検討をするように御指示もいただいておりますので、御趣旨の線に沿った努力をしてまいりたいと思っておる次第でございます。
  260. 有田一寿

    ○有田一寿君 高等学校の問題について、五十一年度に四十二億の国庫補助の道が開かれました。その後が百億、次がたしか二百億だと思いますが、それがその後どういうふうに役に立っておるのか。それからその必要性、その緊迫度が多少緩和されつつあるのかなあということを、どうなっているかちょっと知りたいわけですが、そこをじゃお考えになる間私ちょっとこれ申し上げますが、五十年度に四百二十五万だったですね。それから五十五年度これに四百七十二万であろうと、それから六十年度は五百十三万であろうと、高校生ですよ。それから六十八年度は五百八十五万人であろうと、まあこれは計測された推測数字が出ておりますが、これは年平均八万人増でしかない。しかし、それなのに大騒ぎになっておるというのは、いままで論議されたように、東京と中京と近畿とこの三圏に集中している、このことであります。だから、第一次のこの急増期、このときは経済は年平均で一四%の高度成長経済であったと、公教育費の年平均一六%の伸びというのも国民所得の比率から言えば〇・二五%の増でしがなかった。   〔理事世耕政隆君退席、委員長着席〕 で、公立高等学校九十九校増加したのに、都道府県行政費に占める教育費の比率はほとんど変わらなかったという事実があります。ところが今後は違う。それが年々問題を深めてくるであろうと思いますが、事業税、住民税の収入増で、いわゆる高度成長の恩恵に浴した大都市ほど税収の落ち込みが著しい。だから、高校増設を賄うことが至難である。それと、第一、私立学校の心理状態が変わってはいないか。第一次急増期は増加分の四〇%を私立で受け持ちましたね。ところが、私学は高校生が減少した現在、十万人以上の欠員を生んでいる、経営も悪化している。一度失敗したから二度とこれには乗らない。しかも、前回私学の膨張を可能にした国民所得水準の急上昇という条件がもうない。だから、そういうふうな大きく変化した事情、それに加えて大都市府県は富裕だった上に、私学依存や学卒者の労働力の流入があった。ところが、経済成長がなくなればUターンする、現にUターン現象が起こっている、税収が伸びない。それに高度成長期に流入した人口の子弟が今度ベビーブームと重なった。だからこうすれば、私はいまお聞きしなくても多分余り解決されてないんじゃないかと思うんですよ。だから、ここで高校建築について高層化を考える必要はないだろうかというのが一つ。それから、過密地以外を選定しなければならなくなるのではなかろうか。立地条件の選定、これについてどうお考えだろうか。そうなれば当然寄宿舎の併用ということもここに起こってくるのではなかろうか。そして設置基準を改定していくということが必要にならないか。それから私学の活用ということ、これは三年ぐらい前からしきりに言われておりますが、現実はむずかしい面もありますが、私学の活用ができてないのじゃなかろうか。あいたところはあきっ放しではなかろうか。これに何らか方法が考えられましょうかと。かてて専修学校等との高校の単位の互換だとか、言いかえれば相互協定というものがどの程度可能であろうか。まあ二部制まではいまとる必要はないと思いますけれども、この高校問題というのはやはりほうっておけない。おわかりの範囲内で結構ですが、いまどういう状況でしょうか。
  261. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 高校生のこれからの急増、そういったこれからあらわれてくるであろう現象は有田委員指摘のとおりでございます。五十三年度予算につきましては従来方式での補助の制度の拡充をいたしましただけでございます。しかし、五十四年度以降これだけで対応できるかどうか、非常に大きな問題を抱えているわけでございまして、特にいま御指摘のように、急増をいたしますのは地域的に集中をしております。それだけに、いまおっしゃったような高度経済成長の波に乗った比較的大きな市が税収の落ち込みがひどい。したがって、五十四年度以降の高校急増というものは一応計画的にやってまいりまして、その従来とってまいりました計画の線に沿って、五十三年度予算は従来方式の予算増による補助増、また自治省におきます起債等の拡充を図ったにとどまっておりますけれども、五十四年度以降のことにつきましては、いま有田委員指摘になりましたような高層化を図るとか、そういったことも考慮に入れて、一遍考え直してみなければならない、そういう気持ちを文部大臣としては持っているところでございます。五十四年度の概算要求までには何かの決断もしなければならない、かように考えております。
  262. 有田一寿

    ○有田一寿君 いまの問題は私が通告を申し上げなかったので、それで結構でございます。  もう一つ別の角度からお尋ねをしておきたいのは、学校格差に対する考え方でございまして、そのもう一つ背後にあるのは、能力に応じひとしく教育を受けることができるという憲法の——教育基本法にも書いてあったと思いますが、その文言。で、能力主義か平等主義かということで、いま高校全入全入と、まあほとんど全入できております。これは平等主義というもので押していったと思うんですが、そのいま言う落ちこぼれだとか、あるいはその反対によくできる子供が足踏みをさせられている面はないか、あるだろうと。それがいまの塾につながっている。それと、これは学校教育の補完作用を果たしている面があるというので、私は塾を初めから否定してないわけです。学校の方が反省すべきだということなんですけれども、そうなるとこの学校に対する格差ということをもう一回ここでやはり考えておく必要があると。で、学校格差といいますが、学校を平等にするということはもう絶対に私は不可能だと思うんですよ。それは教員の質も違う、卒業生が違う、立地条件が違う、努力点が違いますから、おのずからそこに差が出てくるのは当然だと。そしてもし子供を平等に入学させるということでいきますと、一つの学校について考えてみて、このAという学校とB、Cという学校は全く同じ質の子供を抱えたことになるから、これは格差は解消されたということになりましょうが、一つの学校の中をとってみれば、百点の子供からゼロ点の子供まで、まあ百通りの者を収容しているわけですから、これは教育はもう非常にむずかしい。だから、どちらを選ぶかという選択の問題であろうと思う。で、小学区制はいわゆる前者をとったわけで、大学区制は後者をとった。それでいまこういうふうに全国的にそれぞれ都道府県によって違いは多少ありますけれども、現在行われているような学区制というので高校教育も行われていると。ただ、いま言う落ちこぼれだとかなんとか、そういうことからきたときに、この学校格差はもっと極端に言えばあってもいいのじゃないか、ある程度均質の者がそこに行った方が、それぞれ教育はやりやすいし、子供も助かるのじゃないか。ところが、それは極端だよ、それはもう暴論だという御意見もあるだろうと思います。しかし、どっちを向いで走るかということは、私は文教の責任当局としては絶えず考えながら、これでよいのかなと言いながら、やっぱり進まなければならないのじゃないかということを、高校教育の問題から考えさせられるわけでございます。ですからそれについて、できたら格差はない方がいいというお答えだろうと思うので、御答弁をお聞きすると言ってもどういうお答えがいただけるのかわかりませんが、まあその感触でもお聞かせ願えましょうか。
  263. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) 憲法二十六条には「すべて國民は、法律の定めるところにより、その能力に鷹じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と書いてございます。このことは高等学校教育におきましても、その能力に応じて適切に行われるべきものと、こう意味しているものと考えるわけでございます。このような考えのもとに、文部省といたしましては、能力、適性、進路、これらの多様化した生徒に対応して、教育課程の編成が弾力的に行われますように、目下高等学校学習指導要領改定も、このことも取り組んでただいま検討をいたしているところでございます。いま、有田委員も落ちこぼれという言葉を使われました。能力に応じてということに絡んでの落ちこぼれということを考えますと、学業についていけない子供があるとすれば、それも落ちこぼれでありましょうが、非常に進んだ能力の、すぐれた能力の持ち主の子供高等学校の決められた学習内容だけでは不満足だという子供があるとすれば、またその子も一つの落ちこぼれだと考えなければなりません。そういう子供たち能力を育てていくこともまた教育の大事な一つの目的でもございますし、まさに社会的ニードもまたあると思いますので、そういった能力、適性、進路、こういった多様化した生徒に対応できるように、学習指導要領をこれに適切に適用していけないものか、そのこともただいま取り組んでおります学習指導要領内容の検討科目の一つにいたしておるところでございます。
  264. 有田一寿

    ○有田一寿君 職業教育のことについて、これは諸澤局長にお伺いしたいんですが、職業教育を今後どういうふうにしてこれを位置づけていくかと、みんな普通科、普通科、そして大学という中で、どういうふうにするかということですが、ここで二、三思いついたことだけをちらっと申し上げて御意見伺いたい。  一つは、産業界が卒業生を受け入れるときに、職業コースを出た生徒の初任給を二、三千円は高くするということができれば、これも一つの方策ではなかろうかと、振興策の。それから、大学の受け入れる選択科目、これを広くして、職業高校から進学しやすいようにさらにする必要があるのではなかろうかと。  それから職業コースと、こういうのが昔からそれぞれ工業、農業、商業、家庭、水産、そういうふうになっておりますけれども、もうこれだけ多様化してきたら、調理科だとか、秘書科だとか、古典芸能科だとか、そういうものを相当つくってもいいのではなかろうか。そして、たとえば古典芸能科、言いかえれば伝統工芸の後継者養成等は全国で一つ全寮制による高等学校があってもいいのではなかろうか。それからホテルの調理科なんというのは、これは各ブロックに一つか二つはあてもいいのではなかろうか。まあ高等学校教育の目的はこうこうだというものはありますけれども、しかし職業教育を魅力あるものにしていくには、何らかここで積極的な考えが出てこないと、やはり普通科に落ちこぼれた者が職業科に入れられているんだという消極的なことでは、私はもう日本全体のためにもならないがという心配です。どういうふうにお考えでしょうか、局長
  265. 諸澤正道

    政府委員(諸澤正道君) 職業高校出の青年の初任給を、普通高校出の者に比べて若干でも差をつけるような方向で考えるというのは、これは私はやはり職業高校というものの存在意義を一般に認識し、かつ志望者をそこへ喜んで集めるという意味からいっても一つの考え方だと思います。ただ、日本の給与体系というのは、御承知のように大体学歴年数ではかるということがありますから、普通科三年と職業科三年でどう違うのかというような議論にえてしてなりがちでございますので、その辺をどういうふうに考えていくか、やはり一つの施策としてこれは前向きにひとつ考えていく課題ではないかというふうに思うわけでございます。  それから、職業高校から大学へ入学する場合について、現在の入試の制度でも、いわば職業高校における職業の専門科目を代替するというのは部分的にやっておるわけでございます。これは今後共通一次試験をやりました場合に、どの段階でどういうふうに見るかというのは、一つの研究課題だと思うわけでございますが、いま高等学校学習指導要領をやっておりまして、私はおよそ高等学校生徒として共通必修するという、その共通必修の中身についても、職業課程と普通課程と全く同じでいいのかどうか、やはり職業科目に関する科目を若干代替するというようなことも、考え方としてあるのじゃないかというようなことも考えられますので、そういう点も含めて研究をしてもらっておるわけでありまして、そういうことと将来の大学のあり方、入試の試験科目のあり方というのもやはり関連づけて考える問題だと思いますし、同時に職業高校から将来大学教育を受けたいという者が進むその大学自体のあり方というものも、やはり一つの検討の課題だろうと思うわけでございます。  それから三番目に、職業高校のタイプがいまのように農、工、商、水産という、いわゆる職業教育だけでなくて、もっと現実の要求に対応した、若い人にも魅力のある職場という意味、あるいはそれぞれの特性に応じた能力を伸ばすという意味で多様化し、おっしゃるような秘書科とか、調理科とか、あるいは古典芸能科とか、あるいは先ほど白木先生がおっしゃにました体育科とか、いろいろあるわけでございまして、指導要領の形としてそれをどこまで言うかという問題は別でございますけれども考え方として、基礎、基本として高等学校生徒がおよそこれだけ習わなきゃならぬというものをできるだけコンパクトなものにして、その先はそれぞれの適性や、思考能力に応じてかなり多様化した高等学校ができる。特に職業科の場合、そういう面からの配慮というのもこの際ひとつ考えてみたい、こういうふうに思っております。
  266. 有田一寿

    ○有田一寿君 終わりますが、最後に一つだけ。  いまのことですけれども、戦前学歴年数が同じであっても、大学の場合もそうだったし、専門学校の場合も技術コースを出た者は五円ないし十円高かったですね。われわれが七十五円のとき八十円ないし八十五円もらっていましたよ。だから高等学校段階でどうなるかわかりませんが、それは技術研修料として、私は考えられないことではない。これは日経連あたりと話してごらんになれば、私はできるんじゃないかなあとも思います。だから、それはそれだけ言い添えて、以上で終わります。
  267. 吉田実

    委員長吉田実君) 以上で本件に対する質疑は終了いたします。     —————————————
  268. 吉田実

    委員長吉田実君) 次に、日本学校安全会法及び学校保健法の一部を改正する法律案を議題といたします。  まず政府から趣旨説明を聴取いたします。
  269. 砂田重民

    国務大臣砂田重民君) このたび政府から提出いたしました日本学校安全会法及び学校保健法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  この法律案は、学校安全の充実を図るため、国が日本学校安全会の災害共済給付に要する経費の一部を補助することができること、高等学校、幼稚園等の設置者が共済掛金の一部を負担すること等を定めるとともに、学校における安全管理に関する事項につき所要の規定を設けることとし、あわせて、義務教育学校の校長、教員の健康診断について所要の改正を行うこと等を内容とするものであります。  まず、第一は、日本学校安全会の災害共済給付事業に対する国庫補助についてであります。  学校教育の積極的、かつ、円滑な実施を図るため、昭和五十三年度から安全会の災害共済給付の給付額を大幅に引き上げることといたしておりますが、この改善に際し、新たに、国が安全会の災害共済給付に要する経費の一部を補助することとし、それに必要な規定を設けることといたしております。  第二は、学校の設置者の共済掛金の一部負担についてであります。  義務教育学校の設置者については、従来から安全会の災害共済給付にかかわる共済掛金の一部を負担することといたしておりますが、今回の給付額の改善に際し、高等学校、高等専門学校、幼稚園及び保育所の設置者も共済掛金の一部を負担することとするものであります。  第三は、学校の設置者の損害賠償責任の免責についてであります。  現在、災害共済給付の給付事由が学校の設置者の責めにより生じたものである場合は、安全会は、その設置者に対し、その給付の価額の限度において、被害者にかわって損害賠償の請求をすることとなっておりますが、今後は、学校の設置者があらかじめ特別の掛金を安全会に支払うことにより、その損害賠償の責任を免れるようにする特約を締結することができることとするものであります。  第四は、学校における安全管理についてであります。  学校における児童生徒の安全を確保するためには、事故の原因となる危険を防止するための措置を講じ、安全な環境の維持を図ることが肝要でありますので、この際、学校における安全管理の一層の徹底を期して、安全点検等の計画的な実施について法律に明記することとしたものであります。  第五は、義務教育学校の校長、教員の健康診断についてであります。  現在、市町村立の義務教育学校の校長、教員の結核に関する健康診断については、都道府県教育委員会が行うことといたしておりますが、今後は、市町村が行っている他の項目の健康診断と一元的に行うこととするものであります。  そのほか、昭和五十四年度から養護学校の義務制が施行されることに伴い、義務教育学校に就学する者の健康診断に関する規定を整備することといたしております。  以上が、この法律案を提出いたしました理由及びその内容の概要であります。何とぞ十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。
  270. 吉田実

    委員長吉田実君) 以上で説明は終わりました。  本案に対する質疑は後日に譲ることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時五分散会      —————・—————