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1978-06-08 第84回国会 参議院 農林水産委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月八日(木曜日)    午前十時十三分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鈴木 省吾君     理 事                 青井 政美君                 大島 友治君                 山内 一郎君                 川村 清一君                 相沢 武彦君     委 員                 片山 正英君                 北  修二君                久次米健太郎君                 小林 国司君                 坂元 親男君                 田代由紀男君                 田原 武雄君                 野呂田芳成君                 降矢 敬雄君                 坂倉 藤吾君                 丸谷 金保君                 村沢  牧君                 吉田 正雄君                 原田  立君                 藤原 房雄君                 河田 賢治君                 下田 京子君                 三治 重信君    国務大臣        農 林 大 臣  中川 一郎君    政府委員        農林政務次官   初村滝一郎君        農林大臣官房長  松本 作衛君        林野庁長官    藍原 義邦君        林野庁林政部長  石川  弘君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    説明員        林野庁職員部長  相賀 幸雄君        林野庁指導部長  須藤 徹男君        林野庁業務部長  秋山 智英君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国有林野事業改善特別措置法案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  国有林野事業改善特別措置法案を議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 村沢牧

    村沢牧君 国有林野改善特別措置法について、私は先日の委員会で総論的に、また基本的な問題について大臣質問したわけでありますけれども、きょうは少し各論にわたって質問いたします。  国有林野の収入のほとんどは木材販売収益に頼っているわけでありますけれども長官答弁にもありますように、今後当分の間、伐採量の増加は見込めないわけであります。このことは、国有林蓄積が一年生から二十年生未満のもの、つまり四齢級以下の蓄積が七一%を占めているという数字が示しておりますように、国有林は過去において乱伐あるいは増伐をし過ぎた結果によるものであるというふうに私は判断するものであります。高度経済成長時代国有林から木材を供給するという時代要請はあったにいたしましても、伐採超過のツケが今日回ってきているんだというふうに思うのであります。過去における乱伐、増伐の実態とその反省を求めるものであります。
  4. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) ただいま国有林の過去におきます伐採についての御質問ございましたけれども、戦後国有林林政統一になりまして、北海道国有林あるいは御料林それから国有林等々が一緒になりまして、昭和二十二年から国有林野事業特別会計として発足したわけでございますが、戦後御存じのとおり、復興あるいは経済成長ということで国内木材需要量が非常に急激に増大してまいっておりまして、昭和三十年代まではほとんどの木材需要というものが国内木材生産によって賄われ、特に燃料等におきましても、まだまき、木炭というものが中心でございましたし、そういう意味から、国内における木材需要というものが供給量よりも多いというような状況で、木材価格というのも年々高騰しておったわけでございますし、特に昭和三十五、六年前後におきましては、いろいろ諸物価の高騰の原因木材価格にあるというような形もございまして、そういう意味から、非常に木材需要というものが活発になったことに対する対応というものが強いられた事態がございます。  そういう意味で、国有林といたしましても、その時代時代に合いますやはり国民需要なり要請にこたえるために、木材生産というものに対応してまいったわけでございますが、昭和四十年代に入ります前まではいま申し上げましたような状況で、国有林といたしましても従来余り切っておりませんでした天然林、これは成長量の非常に少ない林分でございますが、そういう天然林をできるだけ成長量の高い人工林に切りかえることによりまして国民需要にこたえ、なおかつ将来の国有林の山を蓄積の高いものにしようという方針伐採量を増大させてきたわけでございます。ところが御存じのように、昭和四十年代に入りまして、森林の持ちますいろいろな機能、こういうものをよりよけいに発揮するような要請が高まってきたわけでございまして、そういうことに対応いたしまして、国有林といたしましても昭和四十八年にこれからの森林施業あり方というものを見直しまして、これからの国有林伐採の仕方、造林の仕方という方向を改めて決めたわけでございますが、その場合に、従来皆伐でやっておりましたものの面積がぐっと減ってくる、あるいは択伐を禁伐にする、皆伐を一部択伐にする等々、前に比べますと伐採する面積も非常に減ってまいりました。そういう関係伐採量が減ってまいりました。  そういう点で、私どもといたしましては、ただいま伐採量が落ち込んでおりますのは過去におきまして国有林が大面積伐採、大きな収穫量をしたからであるということだけではないというふうに考えておりますが、また逆に、造林地がまだ非常にいまお話ございましたように、二十年生以下の造林地が七〇%ございますし、そういう観点から、現時点では確かに成長量は少のうございますから伐採量も少ないわけでございますが、将来ただいま造林しておりますものが成長してまいりますれば、それに伴いまして成長量も大きくなるわけでございまして、私どももそういうことで今後の国有林収穫量が増大することを期待し、またその量になるような山の仕立て方をいたしまして、これからの国有林改善を図ってまいろうというふうに考えておる次第でございます。
  5. 村沢牧

    村沢牧君 長官は、今後余り伐採が見込めないのは過去において乱伐した結果だけではないというような答弁があったわけでありますけれども伐採量基準は、私は樹木の成長量に見合うものでなくてはならないというふうに思うのであります。  ここに林野庁資料がありますけれども、「経営基本計画」で見ますると、昭和四十四年に策定をした計画、つまり四十四年から四十七年までの計画でありますが、これを見れば、成長量は千百万立方伐採品が二千万立方、一八二%の超過伐採である。さらに四十八年の計画を見ますると、これは四十八年から五十年までの資料でありますけれども成長量が千二百万立方伐採量が千五百三十万立方、一二八%ということになっているわけであります。さらに、過去二十年間の伐採量成長量とを比較してみますると、二十年間の平均は一一七%でありますけれども、特に三十九年、四十年、四十一年は二〇〇%、成長量の倍切っているわけですね。それから四十三年、四十四年、四十五年は一八〇%、成長量の一・八倍ということを林野庁資料は示しているわけです。  したがって私は、この成長量を超えて伐採をしたこと、このことに大きな原因があるというふうに思いますが、これについてはどのような反省をしておるんですか。
  6. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 御指摘になりましたように、伐採量を決めます一番大きな基準になりますのは成長量であることは事実でございます。しかしながら、先ほど申し上げましたように、国有林の場合、私ども老齢熟林分と申しておりますけれども、いわゆる天然林相当年齢のたった森林、こういうものが相当ございまして、現在でもまだ残っておりますが、そういう森林成長量と申しますのはきわめて少ないわけでございます。したがいまして、その時点におきますそういう森林成長量を加えました総量で成長量を算出いたしますと、相当少ない量になる。しかしながら、そういう森林伐採いたしまして人工造林地にし、そして杉、ヒノキ等々を植えますと、今度は非常に成長量の高いものになってまいります。  そういう将来成長量が大きくなるという成長の高い森林に切りかえるという手法、いわゆる森林改良していくという形、過程をとっておるわけでございまして、そういう過程におきましては、その森林が全部改良後になりますれば、いま先生がおっしゃいましたように、大体その成長量に見合った伐採量ということでスムーズに対応できますけれども改良期間中におきましては、どうしても成長量よりもある意味伐採量をよけい切ってまいりまして、将来におきます伐採等関係が保続になるような形、そういうものを考えていく必要があろうというふうに考えております。  そういう関係で、俗に保続方式と申しておりますけれども、そういう保続方式を考えまして、それを大体六十年間ぐらいについて計算いたしまして、伐採量余り減少しないような形でそれぞれの時代期間伐採を決めておるわけでございまして、そういう意味からも私どもといたしましては、先ほど申し上げましたような皆伐面積をよけいとりまして、天然林林分改良いたしまして活力のある造林地にする場合には、その過程におきましては成長量を上回る伐採量が一時発生いたしますけれども、将来におきましては成長量伐採量が大体イコールになるというのが基本的な考え方でございまして、六十年代の終わりには、成長量伐採量が大体私ども同じになるような形で現在計画を組んでおる次第でございます。
  7. 村沢牧

    村沢牧君 長官答弁を聞いておりますと言いわけばっかりであって、成長量を超えて伐採をしたことについて反省らしいことが一言もないわけですね。皆さんはこれでよかったというふうにお思いになるんですか。そのことに答弁をいただきたいとともに、もう一つ昭和四十八年の三月、林野庁公益的要請から国有林野改善の基本的な考え方、あるいは新たな森林施業方針をつくって禁伐地域択伐地域拡大、あるいは皆伐地域の減少などの方針を示しておるわけでありますけれども、これはあくまで施業方針であって、伐採量基準を示したものではないというふうに思うんであります。  そこで、なるほど最近は伐採超過率は減少したといっても、それでも五十一年で一一二%でありますね。ことしの三月、林野庁は新たに経営基本計画をつくったわけであります。これは御承知のとおり五十三年から六十八年までの計画であります。この計画の中においては成長量とそれから伐採量、この関係がどのようにいま配慮をされておるんですか、そして将来どのようになるんですか。過去における反省と、これからの見通しについて答えてください。
  8. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 初めに前段の御質問にお答えいたしますけれども、先ほど申し上げましたように、昭和三十年代の後半、非常に木材需要に対する国民要請が多かった。民有林におきましてもまだ切れる木は余りない、さらに外国からは輸入ができない、こういう事態に、やはり国有林としても国民要請にこたえなければいけない非常に大きな使命がございまして、閣議決定等から見まして、国有林がこれからどうやって木材生産するかという方針も決めたわけでございますが、そういう時点でできるだけそれでは技術的に可能な範囲天然林改良して人工林に切りかえることによって、伐採量をふやしてまいろうという方法を考えたわけでございますが、いま先生指摘になりましたように、私どももその時点でやはり国民要請に、その時点としては私はやむを得ない要請であっただろうと思います。  しかしながら、いま振り返ってみますと、確かにそういう考え方でやりましたものに一部標高の非常に高いところ、あるいは地質的に必ずしも十分でないところ、あるいは非常に大きな面積で皆伐していったという点については、私ども反省しないわけではございません。そういう点がございましたことは私どもも十分わかります。それとあわせまして、さらにはただいま非常に要請になっております公益的機能の発揮という面から伐採あり方、あるいは面積の縮小、そういうことを考えてこれからの方向を決めたわけでございまして、そういう点では私どもも十分その辺を踏まえながらこれからの計画を組んだわけでございます。  それから、これからの状況でございますが、これはきちんとした、きわめて正確だという数字であるということではございませんけれども、ただいま私どもで試算した数字でございますが、現在森林蓄積昭和五十三年度で大体七億七千万立方ございます。これが今後昭和七十二年、約二十年弱、大体改善期間でございますけれども、その間になりますと八億強という形で、八億立方以上の蓄積になる。成長量にいたしましても昭和五十三年度は一千四百万立方成長量でございますけれども昭和七十二年度には約二千万立方強成長量になるというふうに見込んでおりまして、そういう観点から見まして、私どもといたしましては昭和五十三年度千五百三十五万立方伐採という計画を組んでおりますけれども、七十二年におきましても一応千五百万立方弱という形で伐採を組みまして、それから先徐々に伐採が上がっていくという形で、伐採計画を組むことにいたしておる次第でございます。
  9. 村沢牧

    村沢牧君 私がお聞きをしたのは、本年三月作成をした経営基本計画ですね。この計画は、伐採量成長量とはどのように配慮をされておりますかということなんです。
  10. 須藤徹男

    説明員須藤徹男君) ただいま長官から考え方について御答弁申し上げたわけでございますが、今回の五十三年から六十八年までの十五カ年計画におきましては、まだ改良期間の中期でございますので、若干成長量よりも伐採量が上回っているということでございまして、いまお話ございましたように、さらにその後の傾向を見ますとむしろ伐採量よりも成長量がどんどんふえていくという状況下になっておりまして、先ほどお話ございました今回立てました計画では、まだ若干成長量よりは伐採量が上回っておるというかっこうでございます。
  11. 村沢牧

    村沢牧君 成長量を高めるためには更新をしなければなりませんが、そこで「国有林野における新たな森林地業」、これを見れば「伐採から更新までの期間は、拡大造林にあっては二年以下、再造林にあっては一年以下を目途とする。」というふうに規定をしているわけなんです。  そこで、この森林施業指導方針どおりのいま人工造林が行われているかどうか、そのことと、特に人工造林を必要とする面積と、その面積に対してどのくらいの率で実行されておるのか、その点についてはどうですか。
  12. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 更新期間についてお答え申し上げます。  国有林野事業におきましては、伐採に着手いたしましてから造林が完了するまでの期間更新期間と呼んでおります。具体的には、したがいまして、更新が未済で翌年度に繰り越す分を当該年度に実行した量で割りまして求めるわけでございますが、全国平均で申し上げますと、昭和五十一年に一・九年でございます。で、一・九年の中には、伐採に着手しましてから完了する期間がございますが、これが大体十ないし十一カ月でございますので、地域によって差はございますが、木材搬出を終わりましてからおおむね一カ年程度で更新が終了しております。  それから次に、造林関係でございますが、ただいま申し上げましたとおり、一応一・九年の範囲内でやっておりますので、皆伐をいたしまして造林をする面積につきましては、すべて植えられておるというふうに申し上げたいと思います。
  13. 村沢牧

    村沢牧君 それでは、いま部長答弁は、この「国有林野における新たな森林施業」、このとおりいっているということですね。
  14. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 更新期間はそのとおりいっております。
  15. 村沢牧

    村沢牧君 次は、森林の保続培養と生産力の増進を図っていくためには、すなわちいい山をつくっていくためには、間伐を初め保育事業を促進することが強く要請をされているわけであります。本年度林業白書でも、戦後積極的に造成をされた森林が近年逐次間伐期に達しており、間伐必要性は年々累増する結果にあり、森林生産力の増大と森林の持つ公益的機能を高度に発揮さしていく上から、間伐の実施がきわめて重要かつ緊急な課題となっているというように訴えているわけであります。幼齢林の多い回付林でありますだけに、保育必要性が高いわけであります。現在、国有林間伐を必要とする面積と、その実行状況についてお聞きをします。
  16. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 国有林におきます人工林間伐状況をまず申し上げますと、昭和四十九年から五十一年の三カ年間につきまして見てまいりますと、間伐面積年平均一万七千ヘクタールを実行しております。これを同期におきます地域施業計画国有林におきてましては、全国国有林を八十の地域施業計画区というふうに分けまして、それごとに地域施業計画というのをつくっております。それで、その中で伐採造林その他必要な森林施業の事項をおさめておりますが、その中で間伐につきまして指定しておる面積に対比いたしますと、実行面積で七〇%、それから材積で八三%となっております。  なお、先生ただいま御指摘ございましたように、国有林におきましての造林も戦後非常に多く植えられておりまして、約七〇%が若い造林地でございますので、これから逐次戦後に植えられました造林地間伐時期に到達することとなります。五十三年度から六十七年度までの十五カ年におきますところの間伐面積年平均は、五万ヘクタールと見通しております。したがいまして、私ども今後間伐重要性にかんがみまして計画的に実施してまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  17. 村沢牧

    村沢牧君 間伐の必要は改めて申すまでもありませんけれども間伐国有林民有林を問わず大変におくれているわけであります。私は、間伐山づくりという面から見れば、たとえ採算が合わないとしても、やはり手を入れるべきものは入れなければならないというふうに思うのであります。国有林民有林を問わず、今日の間伐の状態を見る中におきまして、間伐材生産対策をどうするのか、あるいは流通対策あるいはまた需要拡大、こうした面が大変におくれているわけでありますから、間伐をやりやすくするためにも、林野庁みずからが林野庁の重要な仕事としてこれらの対策を立て、あるいは指導に当たるべきだというふうに思いますけれども、この間伐対策はどうなっていますか。
  18. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 国有林間伐につきましては、ただいま申し上げましたとおり、今後の森林資源を造成するに当たりましてきわめて重要なところでございまして、私ども鋭意これに努力しているところでございます。  まず第一に対策として考えておりますのは、これは国有林民有林を通じた施策ともなりますが、間伐材生産流通というのがやはり一つの問題になるものですから、この生産流通計画的に、しかも効率的に進められますように、間伐材安定流通パイロット事業というのを国有林民有林を通じた形で実施しております。  それから、戦後植えられましてようやくこれから林業地帯を形成されるような地域対象といたしまして中核林業振興地域というのを指定しておりますが、その育成特別対策事業の中で民有林間伐対策がございますが、これと国有林は連動しつつ昭和五十二年度からでございますが、間伐対象面積の多い地域を特定いたしまして、この間伐事業計画作成並びに間伐促進協議会の設置、それから五カ年間にわたりまして予約的な販売を行う間伐促進特別対策事業というのを実施しております。特にこの間伐と申しますと、計画的に出てまいりませんとコスト高でなかなか材価が低うございますので、やはり計画的に出すということが非常に必要かと存じますので、この対策を通じまして今後推進してまいりたいと考えております。  それから、第二点でございますが、間伐林道間伐作業道を作設いたしまして、間伐の材の搬出施設を積極的に進めてまいりたい。  それから、第三点といたしましては、やはり間伐材需要開拓という問題が今後の間伐材を有効に利用するためにきわめて重要でございますので、間伐材を利用しました住宅工法の開発など、利用分野を開拓するということが、やはりこれからの一つの重要な課題かと考えております。  ただいまのような方法を講じまして、ぜひとも間伐事業を積極的に進めてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  19. 村沢牧

    村沢牧君 国有林の危機が叫ばれているのは、財政上の赤字だけの問題ではないというふうに思うのです。私は、山が荒れていることに問題があるというふうに思うのです。つまり、立木の価値が落ちていることなんです。国有林特別会計といっても会社の経理と同じようなもので、一体たな卸しが幾らあるのか、山にどれだけの資産があるのか、そのことを見なければ、単年度収支だけでこの経営がよかった悪かったというようなことを論ずるわけにはいかないと思うんです。  そこで、不良造林地の問題でありますけれども、さきの委員会でも指摘をされたところでありますけれども、私も幾つかの国有林を見て回っておりますけれども国有林保育は確かにおくれているというふうに思うのです、林野庁は、生育不良の山が一万五千百ヘクタール、早期保育を必要とする山が三万ヘクタールというふうに言っておるわけでありますが、とてもそんなことには私は思えぬです。私は実はここに多くの営林署からの不良造林地に関する資料を持っているわけでありますが、これらを見ても、よく言われているように二〇%、四十万ヘクタールぐらいの不良造林地があるんではないか、そんな気がするのです。  そこで、改めてお聞きをしますけれども、この不良造林地基準ですね、生育不良とはどういうものを指すのか、あるいは早期保育を必要とするものの基準と、先日の部員の答弁でもこの不良造林地の一万五千ヘクタール、三万ヘクタールは調査に基づいて組織を通じて皆さん方が掌握したものだという答弁があったわけであります。そうだとするならば、この面積の各営林局別の内訳を示してください。
  20. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 不良造林地基準につきましては、私ども生育が不十分である造林地という考え方から四つのパターンに分けてございます。  第一のパターンは、これはこれから改植をしていかなきゃならぬというところでございますが、これは植えたときの植栽本数に対比しまして現在の生立本数が約半分以下でございまして、しかもその植栽後入ってまいりました有用な広葉樹林等を含めましてもこのままではなかなか成林がむずかしい、しかも今後改めて植えかえてりっぱな造林地になり得る可能性のきわめて高いというところを、改植の必要のある個所ということでこれは考えています。  それから第二点は、植栽後天然性有用広葉樹林が入ってまいりまして、気象条件その他の立地条件から見てまいりまして、両者あわせまして針広混交林に仕立てた方が、誘導してまいった方がよろしいという林分が第二点のパターンでございます。  それから第三は、現在の造林地の中に空隙地等もございまして、そこに人工によってさらに植えつけをする必要のあるものは植えつける。それから、地表をかき起こしまして、天然性広葉樹等が導入し得るようなそういうものについては、人工林的な手法を加えまして人工補整林に誘導していこうというふうなものが第三のパターンです。  それから第四のものは、これはまだ非常に若くて、どういうふうに将来の林分に持っていったらいいかということを観察して、しかる後に決定したいというのが第四の型でございます。  以上の四つの型がございますので、これを中心にいたしまして、私ども各営林局の局別の内容を集計したものが、先般御説明申し上げました一万五千百ヘクタールでございます。  これを局別に申し上げますと、旭川が七百六十ヘクタールでございます。それから北見が三千七百九十ヘクタール、帯広が二千二百四十ヘクタール、それから札幌が二千百七十ヘクタール、函館が二百五十ヘクタール、青森が千五百三十ヘクタール、秋田が二百五十ヘクタール、前橋が千三十ヘクタール、東京が二百九十ヘクタール、長野が千百五十ヘクタール、名古屋が二百四十ヘクタール、大阪が五行三十ヘクタール、高知が三百四十ヘクタール、熊本が四百九十ヘクタールでございます。  それから次に、早期に保育を要する人工林でございますが、これにつきましては、やはりできるだけ早い機会におきまして、侵入してまいりました広葉樹を除去いたしまして植栽木の生育をよくしようという、そういう考え方でとっておるものが早期に保育を要する造林地と考えるわけでございますが、これにつきましては、旭川が二百三十ヘクタール、北見が千六十ヘクタール、帯広が二千百三十ヘクタール、札幌が二千六百ヘクタール、函館が九百八十ヘクタール、青森が千二百ヘクタール、秋田が一万百十ヘクタールでございます。それから前橋が六千十ヘクタール、それから東京が百五十ヘクタール、長野が五百四十ヘクタール、名古屋が六百六十ヘクタール、大阪が三千六百三十ヘクタール、高知が三百三十ヘクタール、熊本が五百七十ヘクタールでございます。  以上でございます。
  21. 村沢牧

    村沢牧君 若干具体的な事例についてお伺いいたしますが、長野営林局の岩村田営林署は、昭和四十五年に署長以下署のプロジェクトチームをつくって、保育手おくれ地の調査を行ったわけであります。私は、署長以下署を挙げてこのようなことに取り組んだことは大変評価するものであります。  これを見ると、その序文にこういうことが書いてあるんです。   林業経営においては保続原則という指導原則があり、また「手入れが行きとどかなければ植えるな、植えられなければ伐るな」という鉄則があるが、とかく保育作業は手がぬかれがちであるのが実状である。保育こそ造林事業の主体をなすものだという考え方になりたいものである。 というようなことでこの調査を行ったわけであります。当時の調査として造林面積、つまり対象造林地が二千百六十二ヘククールのうちの三分の二の千四百三十七ヘクタールが手おくれ林分またはそれに近い林分であり、森林内容の充実から見て憂うべき現状にある、早急に解消対策を図らなければならない状態である、このように調査結果がまとめられておるんです。こうした調査は、いま部長から話がありました四つのそういう条件に基づいて調査をしたものですか、その点まずお伺いしたい。
  22. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 長野営林局の岩村田営林署の調査は、昭和四十五年におきまして、署が独自の立場からプロジェクトチームを編成して調査をしたと聞いております。  これは、間伐、除伐、つる切り、本数調整というふうな区分に従いましてしたものでございまして、私ただいま申し上げましたのとは直接的に関係のあるものというふうには言えません。ただし、これは署段階で独自にやったというのは、私どもやはり非常にこれは好ましい調査というふうに考えております。
  23. 村沢牧

    村沢牧君 その基準に基づいてやったかどうかは別として、営林署自体が手おくれがあるのだということでこういう調査をやらざるを得ないという実態だったんですよ。  そこで、手おくれの原因としては、ここにもありますように、予算上、技術上、労務上の問題点と更新優先の時代的趨勢が挙げられておるわけなんです。この不良造林地を解消するために当該営林署はその後努力してきたことは認めるといたしましても、労働力だとか予算の不足によって思うようにいかず、この営林署の労働組合の調査によると、五カ年たった五十年度においても、その後に発生したものを含めて、まだ千三百六十四ヘクタール不良造林地があるんではないかと、こういう指摘もしているわけなんです。このことの調査については前もって通告しておきましたから、その結果について答弁してください。
  24. 秋山智英

    説明員秋山智英君) この長野営林局の岩村田営林署におきまして調査いたしました結果につきましては、私ども今後手入れを必要とする面積は一千四百四十ヘクタールだったというふうに聞いております。その後、営林局におきましては、昭和四十六年から事業実行に際しまして、この調査報告を参考にしつつ、昭和四十八年には岩村田営林署が所属しております千曲川の上流の施業計画区の施業計画の編成がなされたと聞いています。その編成に際しまして、この調査の問題の個所につきまして調査をしたというふうに聞いております。そういう計画に基づきましてその後の卒業実行がなされたというふうに報告を受けておりますが、このいま一千四百四十ヘクタールの中を区分して申し上げますと、間伐につきましては……
  25. 村沢牧

    村沢牧君 部長、時間がないから簡潔でいいですよ。
  26. 秋山智英

    説明員秋山智英君) この各種類につきまして、トータルで千九十ヘクタールやってございます。しかも、残っておる分につきましては、たとえば間伐につきまして少し残っておりますのが、まだカラマツ林の林分が鬱閉してないために間伐をもう少し見送ってやった方がいいだろうというようなところ、それから除伐で現在残っている部分につきましては、間伐として近い将来やった方がよろしいだろうということで、五十四年ないし五十八年に予定をしている部分もあるというふうなことも聞いております。いずれにいたしましても、現段階では、残っております三百五十ヘクタールについては手おくれ地になってないというふうに報告受けています。
  27. 村沢牧

    村沢牧君 これまた、署の報告とそこに働いておる人たちの調査とは大分違いがあるわけですけれども、いま三百五十ヘクタール残っておる。これは手おくれになってないという話でありますけれども、その数字だけとらえるにしても、なおかつこれは四十五年調査したよりも二割以上残っているわけなんですよ。私は、これが国有林のやっぱり実態ではないかというように思うんです。いま不良造林地の問題が各所で出ておりますけれども、これはそういうものを調査をして皆さんを追及するためにやっているわけじゃないんですよ。いい山をやっぱりつくらなきゃいけないです。現地の働く人たちが、営林署がやっぱり不良造林地をなくさねばいけない、そういう気持ちで取り組んでいるんですから、皆さんもやっぱりそのつもりで真剣になってこの問題については考えてもらいたいというように思うんですね。  そこで大臣にお尋ねしますが、大臣、この法律によって改善計画を立てるわけでありますけれども、その際、先ほど来私が指摘をしておりますような伐採地と成長量との配慮関係、あるいは間伐も含めて保育不良造林地の実態、これらについてやっぱり十分把握しなければ、二十年後の改善計画なんというものは立たないというふうに思うんですね。したがって私は、国有林の実態を把握する、そのことについて林野庁大臣が積極的な方針を出すべきだというふうに思いますが、その点どうでしょうか。
  28. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 御承知のように、国有林は五年ごとに施業計画を立てることになっておりますし、御指摘のように、国有林不良造林地が多いということについては十分反省をし、今後とも現地において実態の把握に努めまして、実態に基づく施業計画というものをりっぱに立てていく、こういう見直しをしてみたいと、こう思っております。しっかりやってまいりたいと思います。
  29. 村沢牧

    村沢牧君 大臣から前向きな答弁があったわけでございますから、ぜひひとつやってください。  次にお聞きをいたしますが、営林局は造林事業方針書というのをつくって造林事業に必要な基準を設けているわけであります。これはいわば造林事業の仕様書であり、設計書であるというふうに思いますけれども、現在各国有林の作業がこの方針書に基づいたような形で実際に作業が行われているかどうか、このことを明確にひとつ答弁をしてもらうことと、それからあわせて、この造林事業方針書も予算の都合に合わせていつもぐるぐる変わるわけです。造林の憲法と言うべきものが予算に合わして変わっていくなんていうことはおかしい話なんですが、この間の事情はどうなんですか、まずその点についてお聞きをしたいと思います。
  30. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 国有林造林事業につきましては、先生指摘のとおり、造林事業方針帯に基づきまして、これで現地の実態に即しまして事業を実施しておるところであります。  なお、長野営林局で例を申し上げますと、長野営林局の造林事業方針書は、四十八年の十二月二十七日に定めまして、それに基づいて実施しております。なお、御案内のとおり、この四十八年と申しますのは新しい施業方法を導入した年でございますので、新しい施業方法を導入して方針を定めておるということであります。
  31. 村沢牧

    村沢牧君 部長、聞いたことだけ答弁してください。  このとおりやっていますか、皆さんそのように確認しますか、各営林局が。
  32. 秋山智英

    説明員秋山智英君) この方針書に基づいて実施していると考えております。
  33. 村沢牧

    村沢牧君 私は、ここに長野営林局のお話があった造林事業方針書を持っているわけでありますけれども、この方針書の中で特にお聞きをしたいことは、地ごしらえだとか植えつけ、補植、改植、下刈り、つる切り、除伐あるいは枝打ち、あるいは間接保護ですね、これらについてこの方針書どおりに、計いてあるとおり実行するとしたらば、一体ヘクタール当たり人工はどのぐらいかかりますか。同時に、そのとおりに人工をかけているかどうか、あわせて答弁してください。
  34. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 造林事業につきましては、この方針雷に基づきまして現地の実態に即して事業雲行をしているわけであります。  そこで、長野営林局におきましてヘクタール当たり各種事業の使用人工数を申し上げますと、新値の地ごしらえが二十三人、それから新植植えつけが十三人、それから補植が四人、それから改植が三十七人、人工林の下刈りが四人、つる切りが二人、除伐が九人、四捨五入の関係ございますので若干のあれはございますが、枝打ちが十六人というふうな、こういう考え方で実施しております。
  35. 村沢牧

    村沢牧君 それは営林局で実際に実行している、かけている人工ですね。私が言ったことは、その人工、それがこの造林事業方針書に基づいたものであるかと、それだけかければこの造林事業方針書どおりの仕事ができるかどうかということなんです。一体、この造林事業方針書どおりの仕事をするとするにはどのぐらいの人工をかけなければならないか、そのことを聞いておるのです。
  36. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 造林事業方針書には、人工数は示してございません。
  37. 村沢牧

    村沢牧君 部長も専門家でしょう。示してないけれども、ここに間伐をするにはこれだけのことをしなければならない、あるいは植えるにはどれだけのことをしなければならないと書いてあるわけですね。そうすれば、これだけのことをするには一体人工がどれだけかかるかということは、これはわかるでしょう。
  38. 秋山智英

    説明員秋山智英君) ただいま申し上げました五十一年度の実績の人工数で森林は生育していくものと、私ども考えております。
  39. 村沢牧

    村沢牧君 そんなことでは部長として実際は何か責任感がないような気がしますけれども、じゃ実際このとおりの、いまおっしゃった人工造林が生育していくかどうか、その実態については後ほどまた明らかにしましょう。  そこで、造林にしても保育にしても伐採にしても、山に人工をかけることを節約しではいい山をつくることはできないというように思うのですよ。幾ら機械化になったといえども、わが国の森林の実態からまだまだこの森林作業の労働生産力には限界があるわけです。ところが、国有林は山の採算ばっかり考えますから、なるべく人工をかけないように、その傾向が非常に強くなってきておるわけなんです。国有林民有林と比べてどんな比率になっているかと、これまた私もいろんな関係で調査をしてみたんですが、たとえば一、二の例を申し上げます。  国有林、つまり営林署と森林組合とを比べてみた場合、これは長野県の臼田営林署と同地区の臼田森林組合でありますけれども、ヘクタール当たりかける人工は、地ごしらえにして営林署が十九・六に対して森林組合は二十六・六、植えつけは八・九に対して十一・八、下刈りは四・三に対して六・四。それから次は、国有林民有林との比較をしてみました。これは青森の盛岡営林署でありますけれども民有林に対して国有林は地ごしらえで二九%、下刈りもやっぱり二九%、つる切りが三〇%、除伐が一二%、これしかかけておらない。じゃ県の公社と比べてみたらどうか。群馬県の中之条営林署でありますけれども、これと県の公社と比べてみた。そうすると、地ごしらえについて営林署は十一・八、県の公社は二十五、植えつけはどちらも十五、下刈りは四・八に対して十四、つる切りは三・九に対して八、除伐は九・六に対して十五、このようにいろいろ比較をしてみると、いかに営林署が人工をかけないようにだけ力を入れているかということが、実態の数字としてあらわれてくるのですよ。  そこで、今度は片さんにお聞きをいたしますけれども、これは農林省の統計情報部が出した林家経済調査報告書の五十年度の作業別労働投下量が林業について出ています。この投下量と比べてみて国有林は一体どういう状態になっているか、これは皆さんにお聞きします。
  40. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 国有林民有林の事業費並びに労働の投下量の実態につきましては、民有林国有林の置かれます立地条件が違いますし、植えるその樹種その他非常に異なりますし、また所有形態も違っておりますので、直にこれを結びつけることは非常にむずかしいかと存じます。  なお、ただいま先生からお話がございました林家の経済調査報告書と申しますのは、これは対象林家、これは保有山林二十ヘクタールから五百ヘクタールの規模の林家を相当数対象にいたしまして、その林家が持っておる森林にその年に労働を投下したそのものを、樹種別、林齢別、船級別に集約したものでございまして、したがいまして、森林所有者の持っている森林の樹種あるいは齢級別分配その他から見てまいりますと、なかなか齢級の連続性の問題とかその他から、特に国有林の直接の作業労働投下量と比較するのは困難でございます。  そこで、私ども五十年度の林家経済調査の報告書をもとにいたしまして、この五十一年度国有林の実績と試算をしてみたわけでありますが、その場合に、まず国有林民有林の樹種別の関係につきまして同じベースにいたしまして計算しませんといけないものですから、国有林の樹種別構成とこれを同じような形で加重平均をいたしまして計算いたしますと、新植がヘクタール当たり二十二人、それから補植が二人、それから施肥が一人、保育が七十九人、それからその他七人、計百十一人となっております。一方、五十一年度国有林の実績をもとにいたしまして直接作業投下労働力に共通作業、保護管理の労働量を入れますと、新植が四十五人、改植一人、施肥一人、補植一人、保育六十一人、その他四人、合わせまして百十三人となっております。労働投下壁は、この調査とほぼ同じような結果になっております。  なお、この作業労働投下量を見てまいりますと、ただいま私が申し上げましたように、この森林所有者の持っております樹種構成、林分構成等の関係から見てまいりまして、たとえば杉におきましてはこれは百八十二・九人、ヒノキは百九十二・〇人、それから松は五十五・七人、カラマツは十七・四人ということで、非常に樹種別の乖離が大きいというふうな、そういう側面はこの表から出ると思います。
  41. 村沢牧

    村沢牧君 部長答弁で、国有林民有林とは立地条件も違う、樹種も違う、したがって比較にならないというような話があったんですけれども、私は長野県と群馬県と比較したわけじゃないんですよ、その地区の営林署とその地区の森林組合、あるいはその地区の営林局とその地区の県公社を私は比較したんですから、そんなに違いがあろうはずはないんですけれども、いま林業統計から見た答弁があったわけでありますが、これとてやっぱり見方がいろいろありますけれども、私の見方では、林業統計でいえばたとえばこの森林所有者が年間労働投下は百八十二である、そのようなことが出ているわけですね。それに対して部長の方から余り違いがないというお話があったんですけれども、そのことの論議は時間がかかりますからひとまずおきましょう。つまり、人工をかけなくてもいい山ができれば私は結構だと思うんですよ。  私が人工のことを特に主張するのは、現実にそのようになっていないから、問題があるから指摘をするんです。林業所有者の問題も出たわけでありますけれども、林業所有者が自分の山にそれだけ人工をかけるということは、あるいは森林組合が民間から委託を受けて施業してそれだけ人工をかけるということは、いい山にするために、委託を受けた人がその程度の人工では承知をしないからかけているんですよ。ところが、営林署は、自分の山だからそういうものはかけてない。県の造林公社にしてもそうなんです。委託者が、この程度の営林署くらいな人工では承知をしないんです。山にならないんですよ。だから、いま国有林山づくりには学ぶべきものはないと、そういうふうに言われているんですよ。  このことを、皆さん自体が反省しなければならないというように思うのです。このヘクタール当たりの人工を見ても、年々だんだん減っていっているのです。私の調査によれば、たとえば人工保育の場合においても、三十年には八・九人かけたのを、五十一年には二・六人しかかけておらない。あるいは更新にしても、三十年には一七・七人かけたものを五十一年には九・一人というふうに減っているのです。これは機械化だけの原因じゃないのです。林野庁は山の手を抜くことによって、人工をかけないことによって採算を合わしているんじゃないですか。長官答弁してください。
  42. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) ただいま業務部長からいろいろ御説明したわけでございますが、私ども国有林がそれぞれの山をいい造林地にするように仕立てなければいけないというふうに考えておりますし、その方向に向かいまして指導を徹底しておるつもりでございます。  業務部長から細かい話をいたしましたけれども、たとえば造林費の比較をいたしますと、国有林でやっております造林でございますけれども、これは杉、ヒノキでございますが、その場合には経費にいたしますと、大体ヘクタール当たりで七十六万三千円、このくらいの金をかけております。これは直営の場合でございます。請負の場合ですとそれが五十二万二千円、平均いたしまして大体長野の国有林の場合は六十万六千円かけておるわけでございます。民有林の場合は、ヒノキの場合が四十三万二千円、カラマツの場合は二十九万四千円という形になっておりまして、金額的に見ますと国有林も結構かけておりますが、これは一部賃金の違いはあろうと思いますけれども、それにいたしましても、私ども造林地につきましてはできるだけの投下をいたしまして、能率的な範囲の中で造林地がよくなるような努力は今後とも続けてまいりたいと考えております。
  43. 村沢牧

    村沢牧君 大臣にお伺いしますが、いい山をつくるということは国家百年の大計であるわけであります。国有林が企業利益を追求することは、これは企業会計として当然のことでありますけれども、ただ当面の赤字だけに目を奪われて山づくりに手を抜くようなことがあってはならないと思うのです。必要な労働力は投入する、必要な予算は入れる、そうすれば国有林木材を供給するとともに国土の保全、地域の振興を図ってくれる、そうした充実した山になるのですよ。また、そのことを期待しなければなりませんけれども国有林に対して人間も予算も使うのだと、その気持ち、考え方はどうですか。
  44. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 全くそのとおりだと存じます。目先のことだけで、単年度の収支が合う合わないだけでやったのでは山づくりというものはできない。そういうところから、今回長期的な改善計画を立てる。そのためには当分の間は伐採量を減らす、あるいは造林なり山づくりというものをしっかりやる。それで当分の間収支が合わないために一般会計からも財政投入を行う、あるいは資金の借り入れを行う、こういう意味で、目先のことではなくして、かけるものは十分かける、しっかりした山づくりをしていく。こういうところが今度の改善計画あるいは組織の機構改革、一連の国有林対策はそういうところから発想しており、そういうふうにやっていくべきだと、こう思います。
  45. 村沢牧

    村沢牧君 私は、ここで具体的な地域の問題について、若干触れて質問をしてまいりたいというふうに思います。  木曽の国有林の現状を、私はこれを明らかにするとともに、その改善策について見解を求めたいというふうに思うのです。ということは、木曽谷は国有林の代表的な存在であるからであります。木曽谷に、いま国有林の持つ現状あるいは課題が象徴的に私はあらわれておりますから、あえて木曽谷の問題をここで取り上げます。  最初にお聞きをいたしますけれども、五十一年度国有林勘定の収支は四百四十八億円の赤字になっておりますけれども、木曽谷十営林署の収支合計は八十九億の黒字であります。これは五十一年度に限らず、過去二十年間の収支の関係を見ても、木曽谷というのは常に他の地域を凌駕してこういう成績を上げているわけですけれども、この点は認めますか。
  46. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 木曽の国有林は、十の営林署でここにおきましては事業を実行しているわけであります。この十の営林署の収支状況は、一部には赤字基調の営林署もございますが、全体として見てまいりますと、先生指摘のとおり、過去昭和四十二年から五十一年度の十カ年間見てまいりましても黒字基調でございまして、年平均六十一億円の収入超過となっております。もちろん、これには営林局、林野庁の間接経費は含まれておりません。この営林署の区域の中におきまして、長野営林局で支弁しています林道工事費等を考慮いたしましても収入超過になっております。したがいまして、先生指摘のとおり、この木曽地域国有林野事業が全体の財政に大きく貢献していると考えております。
  47. 村沢牧

    村沢牧君 いま答弁がありましたように、五十一年度で九十八億円の黒字であり、年平均しても六十億以上黒字であると。これだけ国有林会計へ入れても国有林会計はなおかつ四百四十八億、五百億の赤字になっているわけなんです。いかに木曽谷が国有林会計に貢献をしているかということをこの数字は物語っているわけでありまして、まさに国有林にとっては木曽はドル箱なんです。国有林にとってはドル箱でありますけれども、長年にわたる乱伐、あるいはまた増伐によって山は荒れて、自然環境は破壊をされ、崩壊地が多くなって地域住民はいつも災害の危険に立たされておるわけです。また、国有林の合理化によって、山に働く人たちが減ってまいり、その地域は過疎化の現象が大きくなってきておるんです。  木曽の山がなぜこんなに荒れたのか、第一の原因乱伐によるものであります。地形や地質の悪い地域であるにもかかわらず、成長量に対する伐採超過率は、実は三十年から五十一年までの平均数値をとってみても非常に大きいわけですね。この二十年間の平均で五〇〇%です。つまり成長量伐採量と比べて五〇〇%。しかも、多いときには、三十八年、三十九年、四十年には、成長量に対して八・九倍だとか八・五倍だとか、八倍、九倍も切っているんです。あるいは四十三年、四十四年、四十五年にも五倍以上切っているんです。先ほど申しましたように、国有林全体の成長量が一一七%でありますから、これはいかに天然林が多いからこうだとか、成長率がとまった木であるからこうだとか、あるいは風倒木があったからこうだとかいうように皆さん言っているんですけれども、いずれにしても木はこれだけなくなってきておるんです。まず第一の原因乱伐であり、あるいは増伐なんです。  それから第二は、造林はしたけれども自然的条件に合ったような造林をしておりませんから、造林木は成長しない。つまり、適地適木の選択を誤ってきたんですよ。  三つ目には、造林後の手入れがきわめて悪い。これは衆目の一致するところ。したがって、このように山が荒れたということ、これについて皆さん方は十分これは反省をしなきゃいけないし、考えてもらわなければならないと思います。  実は、私のところに昨日木曽の人たちがこんな写真を持ってまいりまして、どうかこういう実情を農林大臣にも、あるいは林野庁の偉い人にも見てもらってくれという写真を持ってきたんです。これを見れば、更新樹種の選定を誤った結果こういうふうになっておるんだとか、あるいは保育がこれだけおくれているんだと、つぶさにこの写真は物語っているんです。一体、このように荒れた原因をどのように考えますか。ひとつ大臣の方、この写真を見てください。
  48. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 木曽谷が荒廃した原因でございますが、当然国有林につきましては、地質的には花崗岩、石英斑岩という非常に深層風化の進んだものでございまして、非常に脆弱な地帯でございますし、さらにまた、地形も非常に急峻でございまして多雨地帯でございますので、崩壊地が発生しやすい位置にございます。  過去におきます災害等をまず見てまいりますと、昭和三十四年に伊勢湾台風、それから三十六年に第二室戸台風の被害を受けまして国有林で相当ひどい風倒木、約二百三十万立方メートルの被害が出てまいりました。これは、木曽谷の国有林の五十一年度収穫量の七年分に相当するものの量でございます。その後も台風あるいは梅雨前線等が発生いたしまして、この木曽谷の国有林が荒れた原因になっておるものと考えております。
  49. 村沢牧

    村沢牧君 部長ですね、そういう現象であったと、しかしこの乱伐、木を切り過ぎたそのことについては反省らしきものがないわけですね、その点はどうですか。
  50. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 先ほど長官が御説明申し上げましたとおり、昭和三十五年以降わが国の高度成長に伴いまして、木材需要の増大に対処するために国有林におきまして生産力増強計画並びにそれに引き続きまして木材増産計画をつくりまして、成長力の衰えました天然林伐採しまして、跡地に成長力の旺盛な人工林を造成するということで事業実行をしてまいりまして、そういう面からいきますと、やはり老齢天然林を切る場合におきましては成長量を超えた伐採をしますが、将来におきますところの保続の度合いを勘案して決めておるものでありまして、成長量を超えた伐採をしたからといって即過伐ということにはなりません。ただし、私ども現在反省しておりますのは、森林の持っております公益的機能の側面からの見直しにつきまして反省をいたしまして、昭和四十八年からは新しい施業方法でこの森林の取り扱いに従事してきておるところであります。
  51. 村沢牧

    村沢牧君 部長大臣もいい山をつくっていくんだと、やっぱり過去に切り過ぎたことは皆さん方も認めておるんですよ。部長が一々そんな言いわけばっかりしなくたって、あなたも長野県の人でしょう。木曽のことはよく知っているわけだ。木曽がなぜ荒れたか、あなたたち知っているわけですね。ですから、もっと真剣に答弁しなさいよ。  それから、伐採に対して更新がどうなっているかということを見ますると、なるほど二十年間平均で八〇%の人工更新はしております。ところが、保育が十分行き届いておらないだめに、先ほどから言われている不良造林地が非常に多いわけなんですよ。先ほど部長答弁では、長野営林局両方合わせましても不良造林地が千六百九十ヘクタール程度というお話があったわけですよ。私らの調査によると、とてもそんなことじゃないんです。もう九千ヘクタールも超えているというんですね、不良造林地が、幼齢林についても。つまり、人工造林の二八%も不良造林地があるというんですよ。これは各営林署ごとに調査した数字ですよ。  と同時に、御承知のように、木曽谷のこの伐採跡地は単に再造林をすればいいと、それだけでは済まされないんです。そこにもありますように、樹種を誤ったために、植えたって木が育たないところがあるんですよ。この地域の土壌の特質と、それから標高とササとの関係、あるいは幾つかの樹種の混植など、昔からいろいろな学者や営林署の皆さんが調査をし学説も出して施業方針も出しているんです。したがって、伐採した後は木を植えてあります、それだけでは山はなっていないんですよ。そのことについてどういうふうに思いますか、保育はどうですか。
  52. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 木曽谷の営林署は十ございます。そのうち販売営林署が一つございますので、残りの九営林署の最近五カ年の造林の実行を見てまいりますと、植えつけが六百七十ヘクタール、下刈りが四千三百二十ヘクタール、つる切り、除伐が千六百六十ヘクタールでございます。ただ、先生いま御指摘ございましたが、それ以前の昭和三十二年から以降、前半四十一年度までにつきましては、その造林過程におきまして問題がございます。そこでこの二十年間、三十二年以降五十一年度までの二十年間の皆伐面積は約二万ヘクタールでございますが、新植面積は一万六千ヘクタールでございまして、その差四千ヘクタールございます。  そこで、この中でございますが、まずあそこに三浦ダムができましてダム敷になった部分、それから林道敷の部分、それから地元の要請に基づきます部分林等が合わせまして約八百ヘクタールございます。それから、残りの三千二百ヘクタールでございますが、この大部分が、先ほど私説明申し上げました三十四年、三十六年の伊勢湾台風、第二室戸台風によりまして皆伐状の被害を受けた地帯でございますが、この地帯のうちで、海抜高が高くて非常に寒く風衝のためにカラマツも植栽できない地帯がこの地帯でございます。  そこで、これらにつきましては、天然生でカンバなどを導入するというような方法をとりまして実行していますのが二千ヘクタール、それから、人為を加えずに天然力で更新を期待しているものが七百ヘクタールございます。木曽谷の高い地域、三浦ダムの周辺でございますが、ここにつきましては、湿性のポドソル土壌と申しまして、非常に寒いところで多湿の条件のために、土壌の有機物の分解がおくれまして粗腐植の状態で地表に堆積している、こんなことから非常に強酸性で塩基に乏しいために瘠悪な土壌になっております。そこで、この地域につきましては、施業を今後進めていくためには非常に問題があるということで、三浦の実験林というのをここに設けまして、このポドソル土壌等の瘠悪土壌地域における施業方法を解明するということで、いろいろの調査研究を実施しておる実態でございます。
  53. 村沢牧

    村沢牧君 木曽谷国有林のうち保安林の占める率は七二・三%、砂防指定地などを含めますと実に七四%が保安林であるわけです。この保安林の崩壊地は年々増大をして、昭和三十五年を一〇〇とすると四十年には一六一、五十二年には実に五三二という異常な進捗度を示しているわけなんです。このような崩壊地が増大をしていく原因は、いま部長いろいろ答弁があったわけですけれども、何といっても、これは地質、地形にもよるでしょうけれども森林の過伐や更新のおくれ、これが大きく原因していることは私は現地を見てもわかるわけなんです。過日、社会党の国会調査団が木曽へ入りまして、妻籠地区の調査をしたわけです。このことの内容については衆議院の委員会でも論議をしていますから、詳細は私は申し上げません。お話がありましたように、このように国有林の崩壊地が増大していく結果、木曽の南木曽町に見られますように、十五年間に十二回の大きな災害を受けているんです。木材を処分をして木曽から収入を上げている反面、木曽谷に投下するのはきわめて少ないのです。  そこで、治山の関係についてお伺いしたいのですけれども、第四次治山五カ年計画、四十七年から五十一年の国有林全体の治山実行計画を見ても、七二%ということで決して高くない。建設省の砂防指定地あるいは砂防工事等と比べてみて、率も低いわけなんです。そこで、特にいま私が申し上げました、木曽谷においても南木曽地区なんかの治山の進行率、私ども社会党の調査によると、第四次の計画で実は計画に対して七・三%だとか、あるいは砂防防災計画も含めると六・二%程度しか実行されておらない、こういう資料が出されてきているのですよ。この治山に対して、木曽谷全体はもちろんのこと、いま私どもが調査した妻籠営林署の地区の関係はどういうふうに判断していますか。
  54. 秋山智英

    説明員秋山智英君) まず、木曽谷の国有林の全体につきまして、第四次五カ年計画におきまして実施状況を見てまいりますと、この地域は長野営林局の最も重要な地域でございまして、この五カ年間に計画額は三十六億九千二百万円でございますが、実行額は三十四億二千三百万で、実行率は九三%となっております。全国で見てまいりますと、ただいま御指摘ございましたように七二%の進捗率でありますが、木曽谷の木曽川地区につきましては九三%ということで、国有林全体の進捗率よりも多く実施されているところであります。  それから、妻籠の分につきましては、ちょっと資料を用意しますので少しお待ちください。
  55. 村沢牧

    村沢牧君 後ほど妻籠のことについても報告してください。  そこで、木曽谷は昔から、木一本盗めば首一つ飛ぶというようなことで、御料林の当時から国有林を守ってきた。あるいはまた、国有林に働く住民によって木曽の谷というのは支えてきたんです。ところが、最近、国有林の占める率が多い町村ほど過疎化の現象が多くなってきておるのです。このことは、それだけ国有林に働く人たちが減ってきた、仕事が少なくなってきたから町村がますます過疎化になってくるわけなんです。つまり、こういう現状から見ても、いま私が指摘をした南木曽の地区の営林署が治山工事もおくれておるし、山も大変荒れておるのです。聞くところによると、何かこのところを、営林署を一つ整理統合するのではないかというようなうわさが立ちまして、それで地元は非常に心配しておるのですよ。林野庁長官、営林署の統合なんということはもう場所を示しておるんですか。
  56. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 営林署の統廃合につきましては、ただいま営林局で検討いたしておりまして、まだ最終的にどこを統廃合するかというふうな決定はいたしておりません。
  57. 村沢牧

    村沢牧君 営林署の統廃合については、先日の委員会大臣もきわめて前向きな答弁をいただいておるわけであります。大変むずがしいことであるし、地域の住民とよく話をして、簡単に事務的に統合するなんということはしませんという話をしたのですけれども、いま私は時間がありませんから細かく指摘できませんが、衆議院の農林水産委員会でもこの問題についてはかなり指摘をされておりますが、このように山が荒れている、あるいはまた治山もうんとおくれている、その地域の営林署を統合するようなことがあってはならないと私は思います。この点については答弁は要りませんけれども、強く要望しておきます。  それから、木曽に関係して最後にお聞きしますけれども、木曽谷の人たちは、先ほど申しましたように、山とともに生きてきた、そしてまた、国有林も木曽谷の人たちの協力によって発展をし収入を上げてきたんです。つまり、営林局の人たちも、木曽谷は一つの研修の場でもあったわけです。したがって、昔から、木曽谷については、多くの学者や営林署あるいは営林局関係の貴重な文献や調査なんかがたくさんあるわけです。ところが、現実のいまの状態を見るとどうか。大変悪口を言うようですけれども、営林署の署長も十人いますけれども、山の木を売ること、労働組合との団体交渉をすること、そのことにだけきゅうきゅうとしておって、山をよくしていく、どうしたらよくなるのだという気持ちがないし、またそういう仕事がないんですよ。やっておる時間がないんです。私は、このことを非常に残念だと思うんですね。先ほど申し上げましたように、木曽谷は代表的な山でありますし、将来ともさらによくしていかねばならない山なんです。したがって、林野庁が本気になって、私はその一端を指摘したに過ぎませんけれども、ひとつ木曽谷を調査をする。長官みずから行ってみたらどうですか。なるほど林野庁にも計画課があり局にも計画課がありまして調査はしておりますけれども方針は立っておりますけれども、それでは不十分なんです。林野庁みずからがやっぱり調査をしていく、そのような前向きな姿勢は、気持ちはありませんか。
  58. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 私も木曽におりましたので木曽のことはある程度は知っておるつもりでおりますけれども、ただいま先生いろいろ御指摘になりました。私ども、それなりに営林署を通じあるいは担当区を通じ調査いたしておりますが、これから国有林が前向きに改善合理化を進めなければいけないという重大な時期に立っておりますので、私どもも十分その辺は営林局と連絡をとりながら、木曽のみならず全国の山がよくなるような方向を考えながら対応していきたいというふうに考えておりますし、したがいまして、必要なときには必要な場所に行きまして十分われわれも現地を認識をし、そしてまた必要な業務計画、これからの事業遂行に参考になるようなものにつきましては十分われわれも把握しながら、地方におきましてそれぞれの対応をしてまいりたいというふうに考えております。
  59. 村沢牧

    村沢牧君 国有林が荒れている、あるいは手入れがおくれている、そんなことばっかり指摘されるのじゃなくて、たとえば木曽へ行って見てください、りっぱな国有林がありますと、私たちは苦労してこういう山をつくっておりますと、皆さんが胸を張ってできるようなひとつ山にしてもらいたいと思うんですね。そのためには、私が言ったように、全国そういうふうな気持ちでやるけれども、特定の山についてはやっぱり林野庁自体がひとつ方針を立ててみる、現地をもう一回調査をしてみる、そして将来の山づくりをしていくんだと、そのことができないかということですね。もう一回、どうですか。
  60. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 先生の御趣旨はわれわれも十分わかりますし、そういうことも考えてみたいと思っておりますが、御存じのように、担当区があり営林署があり営林局があるわけでございますから、まず第一義的にはその辺を活用いたしまして、十分先生方の御指摘のございましたようなことを含めましたいろいろな検討を進め、さらに必要な場合には林野庁も赴きまして、十分その辺は検討し対応してまいりたいというふうに思っております。
  61. 村沢牧

    村沢牧君 次の問題に移りますが、林業労働者の関係であります。林業の就業労働者は約二十二万人、そのうち国有林労働者が六万七千人だというふうに言われておるわけでありますが、国有林が全森林面積の三分の一を占めておりますように、林業労働者も三分の一ぐらいおるわけなんです。私は、この林業白書を見るまでもなく、あるいは統計を見るまでもなく、林業労働者の数が減少していく、あるいは伸びない、そのことも問題でありますけれども、質の低下が大変問題だというふうに思うんです。私の言うこの質の低下ということは、つまり林業労働者がだんだん高齢化してきていることです。白書にありますように、四十歳以上の者が七三%にも達しているという現状ですね。これからの林業生産にとって、この林業労働者の状態は最大の課題であるというふうに思うんです。  山に働く人たちは大変重労働でありますし、したがってその労働条件も都市勤労者並みの労働条件が保障される、そのぐらいでなければ後継者はふえてこないんです。だけれども、ことしの農業白書を見ると、最近青年が農村にUターンをする現象が見えてきている、そのことは農業、林業を見直した結果であるというようなことを言っておりますけれども、それじゃUターンした青年が、若者が一体林業にどれだけ定着するのか、林業労働者がどれだけふえているんですか。そのことを思えば、この林業労働者対策というのは、先ほど申しましたように、国有林に、山に手を入れること等も含めて林野庁も真剣になって考えなければいけないし、そしてまたこういう状態でありますから、まして山に働く人たちを減らすなんということはとうてい私には考えられないというように思いますが、その辺は林野庁長官どうですか。
  62. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 林業全般の労働力が非常に最近では全体としては横ばい傾向ではございますけれども先生指摘になりましたように、老齢化現象であるということは私どもも十分認識いたしておりまして、これらの対策を今後十分進めなければいけないというふうに思っております。したがいまして、それに関連いたしまして民有林関係の施策はそれなりに対応いたしておりますが、国有林につきましても、非常に高齢者が多いわけでございます。したがいまして、今後やはり若齢の優秀な労働力というものの確保の必要性もございます。そういう面から、先般労働組合と話し合いをいたしまして、高齢者の退職促進という意味もあって退職勧奨制度というものをつくりまして、高齢になった場合には後進に道を譲っていただくというような形を現場の作業員の方々にもとったわけでございます。  国有林の場合、私どももただいま改善合理化を進めるに当たって人員の問題等々もいろいろ検討はいたしておりますが、やはりむだなものについてはわれわれとしてもできるだけ今後削減していきたい、しかし、必要なものについては十分その辺は対応していきたいという姿勢を考えておりまして、当然労働問題につきましてもこのような姿勢で対応してまいりたいというふうに思っております。
  63. 村沢牧

    村沢牧君 長官ですね、長官の方の人員対策としては高齢者はやめてもらうんだと、むだな者はやめてもらうんだという、そういうことに終始しているわけですけれども、それじゃ国有林に実際働いて仕事をする人たちをふやしていくという気持ちはないんですか。やめさせていけばそれでいいんですか。むだな人間はやめさせていくと言うが、一体むだなと言うのはどこがむだなんですか。
  64. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 私のいまむだと申し上げたのが適当な言葉でないかもしれませんからこれは訂正いたしますが、高齢者の方々にはできるだけ御勇退願って、若年労働力で内容の、質の向上された労働力を今後とも確保していきたいというふうに考えております。国有林の問題につきましては、御説明いたしましたとおり、今後ここ当分の間伐採量がやはり縮減傾向にあるという状況でございます。したがいまして、必要な労働力はわれわれも確保しなければいけないと思っておりますけれども、中心をなします伐採量が減るということ、そういう観点から労働力全体を見ました場合に、労働力をふやすという方向にはいまの時点ではないというふうにわれわれは判断いたしておりますので、そういう意味から、できるだけ質の向上ということを中心にいたしまして対応してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  65. 村沢牧

    村沢牧君 若い人たちに林業労働が敬遠されている一面といたしましては、職業病や労働災害が非常に多いということがあるんです。国有林には三千三百人余りの白ろう病認定患者が、あるいは認定に至らないまでも疑わしい症状を持っておって非常に苦しんでおる人たちが多いわけなんです。これは国有林のみならず、民有林にとっても大きな問題であります。それから、林業の労働災害は毎年一千件以上も国有林によって発生しておるんです。他の省庁には例を見られないんです。こういう白ろう病対策だとか労働災害、特に白ろう病対策については今日まで強く要望されてきたところでありますけれども、なかなかいい治療方法が見つからない、あるいはまたうまく治療するところもない、こういう現状なんです。長官、いままでこういうことをやってきましたというありふれた答弁じゃなくて、この白ろう病に苦しんでおる人、このことはその人たちの問題だけじゃなくて、林業経営にとっても大きな問題なんですよ。そういう立場に立って将来この総合病院をつくるだとか、あるいは治療をどうしていくんだという前向きな答弁をしてください。
  66. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 振動障害の問題につきましては、私どもも本当に遺憾なことであるというふうに考えております。国有林におきましても振動障害の罹病者が年々ふえておりまして、非常に気にいたしておりましたが、私ども国有林の場合、林野庁といたしましては、できるだけまず予防対策というものを重点に考えましていろいろな予防対策をやってまいったわけでございますが、ちなみに申し上げますと、五十二年度で振動障害関係にかけました予算が五十六億、五十三年度の予定では、これは機械の取りかえが完了いたしましたので四十五億と減っておりますけれども、年々できるだけのことをいたしまして、振動障害ができるだけ早くなくなるように、そうしてまたかかった方につきましては、できるだけ早く治療をしていただいて回復するような努力をしておりますし、今後ともこの指導を続けてまいりたいというふうに思っております。  特に認定患者を見ますと、四十九年に七百八十七人ということで多くなりましたが、その後五十年は四百八人、五十一年は二百一人、五十二年は百五十六人ということで、一応漸減傾向にあるということは私どもも喜んでおりますけれども、さらにこれが本当に認定患者が出ないような形になるように、今後とも努力を続けていきたいというふうに考えておりますが、さしずめ機械の改良等、現在ではいわゆる遠隔操作のリモコンチェーンソーというものも一応開発できまして、ただいま組合との間で話し合いもついてこれを現地で使っていただくということで対応いたしております。そういうことになりますれば手に振動も伝わらないわけでございますから、振動病にかかる心配もなくなるであろうというふうに考えております。  さらに、民間の問題につきましては、私どももやはり予防対策等につきましてはいろいろ十分対応いたしておりますが、治療その他につきましては、やはり厚生省なり労働省、これらの省庁の方方にお願いしなければいけませんので、先般三省によりましていろいろ協議をしていただき、その結果三省での連絡会議を持ちまして、各都道府県にブロックをつくって、そのブロック単位に関係者が寄り集まりまして対応していこうという姿勢を出して、それを都道府県に指示した段階でございます。そういう観点から、私ども国有林民有林を含めまして、この振動障害に関連する林業関係の労働者のこの病気にかかった方は一日も早く治り、またこれからかからないような対応を今後とも十分続けてまいりたいというふうに思っております。
  67. 村沢牧

    村沢牧君 私は議事進行に協力いたしましてここで質問は終わりますけれども、最後に大臣質問をして終わりたいというように思います。  この法律が通ったとすれば、改善計画作成に取り組むわけであります。そこで、この法律には改善計画作成してそれを公表する、明らかにするとか、あるいはその改善計画に基づいて事業を実施していく実施計画について国会に報告するとか、そういうことが何にもないわけでありますけれども、これはやっぱり大事なことでありますし、それからわれわれも重要な関心を持っているところでありますから、改善計画の公表なり実施状況の報告、このことがやっぱり国会の場あるいはしかるべきところにおいて明らかにしていかなければならないというふうに思いますけれども、その辺はどうでしょうか。
  68. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 改善計画につきましては、林政審議会の意見を聞くことになっております。また、白書を通じて国会にも報告いたしておりますが、できました暁は何らかの機会を得まして国会にも十分出して皆さんの御批判もいただきたいと、こう思っております。
  69. 村沢牧

    村沢牧君 終わります。
  70. 河田賢治

    ○河田賢治君 私は、三十分の時間で、きわめて大まかな点だけを聞いてみたいと思います。  まず最初に、この前、牛場・ストラウス会談で日米共同声明が出されました。ここには、やはり木材の輸入の拡大ということについて合意に達したというふうに言われておるわけですが、この点についてどのような共同声明に基づいて農林省はこの問題に対処されるのか。  それから第二は、御承知のとおり、近く東京ラウンドにおいて関税問題を中心に製材品などの輸入問題などについての協議が行われるわけです。もちろん、これは外務省が中心ですけれども、農林大臣も外務大臣に代行して盛んに外交交渉をやっておられるんだが、そういう意気込みで農林省としてはこの東京ラウンドに対してどのような方向で対処されるのか。私は、これは外交交渉というものは手のうちがありますから、相手に見せることはないと思いますけれども、しかし、どこに腹を据えてやるかということが大事だと思うんです。その点を聞きまして、この問題さらにお伺いしたいことがあるわけですが、一応それについて伺っておきます。
  71. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) まず、春先の牛場・ストラウス会談における対米調整でございますが、その場合向こう側から言ってまいりましたのは、主に製品輸入についてもっと弾力的にやってもらいたい、特に規格についての制限が厳しいというような話がありまして、その点については今後話し合っていこうと、わが国としても研究もしてみるし、また向こうの人もひとつ研究してもらいたいということで規格の問題について話し合いをいたし、この問題はそういう方向で大体そう大きな開きがないものに解決し得るものと、こう見ております。  次に、東京ラウンドでございますが、これまた、アメリカのみならずそのほかニュージーランド、カナダ等からも、いま関税が一〇%かかりております松属の一部あるいは針葉樹の製材、ラワン製材等一〇%かかっておるものに対し、この関税を撤廃ないしは縮小して輸入ができるようにしてもらいたいという要望がございます。しかし、わが国といたしましては、今日の木材森林の現状からいってそういうことの対応はでき得ないということで、この点については牛場さんにもよく理解してもらって東京ラウンドに対処して乗り切りたい。先ほどの規格の問題等については、前向きで応じ得るものがあれば応じられますけれども、関税問題については非常にいま厳しい情勢にございますので、せっかくではございますが、こういう姿勢でいま東京ラウンドを乗り切りたいと、最善の努力をいたしておるところでございます。
  72. 河田賢治

    ○河田賢治君 いずれにしましても、今日外材が需給関係においては主要な位置を占めるに至っておるわけです。今日、外材主導型の木材の需給関係がもう構造的に定着しつつあると。ですから、最近また、特に去年からことしにかけてドルはずっと安くなる、したがって、外材の価格は下がる。また、国内ではいろいろな関係から木材その他の製品価格はむしろ上がってくると。したがって、外材との競争関係においては非常に日本が不利になるわけですね。こういう点について、木材がいまやはり一定の関税をかけるにしましても、その関税をかけただけで、若干また下がるわけですからとうてい守り切れるわけではないわけですね。こうなりますと、貿易自由化の中で外材の秩序ある輸入をするということは言われておりますけれども、しかし、御承知のとおり、もうパルプなんか、あるいはチップなんかも若干まだ比率は小さいですけれども、しかし、外材がどんどん入れば、恐らく日本の製紙産業なんかもかなりそちらの方へ傾くであろうということも考えられるわけです。  そうすると、今後、単に国有林だけでなく日本の民有林を含めた林業全般について、やはりこれから日本の貿易構造、木材における貿易構造というものがやはり非常に外材が優位を占めてくると。こういう中で日本の林業を守り、あるいはまた国有林もそういう中で経営しなくちゃならぬわけです。ですから、この状況のもとで、恐らく外材が入ってくることがさらに多くなるというような予想を持って林業政策を立てられておるのかどうか、この辺を一応伺っておきたいと思うんです。
  73. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 御指摘ありましたように、ただいま国内では需要に対しまして外材の供給は六五%でございます。先ほど来ございましたように、日本の森林がまだ若齢の森林が多いために、ここ当分の間、国民需要を満たすための供給は、外材をある程度輸入いたしませんと国民需要にこたえられない状況でございます。しかしながら、やはり外材がよけい入ることによりまして、林産業あるいは林業が圧迫をされるということであっては私ども問題があろうというふうに考えております。そのためにただいま私どもといたしましては、この外材が安定的に、計画的に入ってくるような方途を考えなければいけないということで、従来からも需給計画というものをつくりまして公表し、一応それぞれの業界に御指示をして指導してまいりましたけれども、やはり木材につきましてはその需要をさらに的確に把握し、あるいは供給についても的確に把握し、そしてさらにそれを短期的な期間で把握して、よくそれをチェックしていくということ、これをまずやる必要があるであろうというふうに考えております。  したがいまして、できるだけ短期間需要と供給というものをつかみまして、これを中心にして行政指導を強めて、できるだけ安定した外材が入り、そしてまた、国内の林業なり林産業が外材等のためにいろいろな圧迫を受けないような方途を今後見出すような努力を、今後とも続けてまいりたいというふうに考えております。
  74. 河田賢治

    ○河田賢治君 単に数量的に制限するというようなことは、恐らくできないでしょう。農産物はかなり輸入を禁じて、牛がどうだとか、あるいはオレンジがどうだとかいうことをいまやっていますよ。しかし、木材が自由貿易である限りは、単に日本の国内需要をある程度満たすということができても価格が問題ですからね。向こうは価格を下げればどんどん入ってくるわけですよ。製紙業者なんかは山は持っていますけれども、恐らくこれから外国の品が安ければこういう加工して生産するようなものはどんどん外国から入ってくる。これを抑えることはできぬでしょう。ですから、本当に日本の木材業者や、あるいは森林を守るという見地があるならば、自由貿易といったって、御承知のとおり、その本尊のアメリカ自身が鉄鋼は幾らだとか、自動車は幾らだと、テレビは幾らにしてくれといって大体数量制限しているでしょう、本当の意味の自由貿易じゃないんですよ。だから、そういう点で、やはり日本の今日の木材産業や、あるいは国有林にしましても、含めてこれを守っていかないとならぬわけですね。だから、その辺の腹があるのかどうかということを聞いておきたいわけです。ひとつ長官でなくて大臣頼みますわ。
  75. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 自由貿易は、世界的な約束事であり努力目標でございます。したがいまして、自由化されました木材につきましてはこれを輸入制限することはできない。そこで、価格の面で国内木材が非常に苦しい状況にあるということでございます。  そこで、輸入制限はできませんけれども、先ほど長官答弁いたしましたように、秩序ある輸入ということでやってまいりませんと、これまた消費者、特に一般の皆様方が住宅を建てる、こういう場合に余り厳しいことをいたしますとこれまた消費者の反発も受けますので、輸入については制限はできませんけれども、需給の見通しを立てて秩序ある輸入ということについて林野庁も積極的な指導を業界に徹底いたしまして、何とかそういった外材による混乱をこれ以上起こさないということについて非常な努力をして対処してまいりたい、こういう姿勢でやっておるところでございまして、御指摘のように、外材による国内木材業界あるいは森林生産業者が非常に不安、混乱の現状にあるということを踏まえまして、血のにじむような努力をいまやりつつあると、こういうことでございます。どうかこの上ともしっかりがんばりたいと思いますので、また何かと御指導いただければ幸いと存じます。
  76. 河田賢治

    ○河田賢治君 そういうふうにして外材をできるだけ防いでいくという態度が必要だと思いますが、次に国有林野の問題について、林政審議会の答申によれば、治山、森林保全管理等の公益的な機能を直接発揮する部門については企業経営の枠外とし、原則として一般財源に依存するとともに、経理上も勘定区分の設定等によって企業経営の分野から分離すべしという答申が出されておるわけですが、これらの事業はどの程度の事業規模になっているのか、また、その国有林野事業の全体の予算に占めるウエートというものはどの程度か、ごく簡単にちょっと数字を挙げていただきたいと思うんです。大まかで結構です。
  77. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 林政審議会が答申いたしました段階で、実は治山事業が非常に公益的機能としてははっきりいたしているわけでございますが、そのほか森林の保全管理といったものもそういうものに当たるのではないかという御指摘であったわけでございます。ただ、この森林保全管理につきましては、御承知のように、森林がいい状態に保たれるように管理をするということでございますので、その費用の大半の部分が実は人件費という形になろうかと思います。この人件費をいわゆる木材生産しますための管理運営のための人件費と、保全をいたしますための人件費とに分離いたしますことは非常に困難でございまして、したがいましてその人件費部分を除いてみますと、実は保全管理、たとえば火災防止とかいろんな形に使います費用というのは余り大きな比重には出てまいりません。いまの事業勘定で申しますと、パーセントにも出てこないような実は低い数字になるわけでございます。  ただ、治山につきましては、御承知のように治山勘定ですでに六三・三%のものを一般会計で盛っておりますけれども、五十三年度予算におきましてもさらにこの比重を上げまして六八・六%まで一般会計の負担を上げております。その他のものが実は事業勘定で盛っておりますので、この事業勘定で盛っております比重を申し上げますと、事業勘定全体には約五%程度の比重になろうかと思います。いずれにいたしましても、当時林政審答申でこういうものを分離してというお考えありましたのは、非常にはっきりした公益的機能のものを分離をし、どちらかといいますと、企業と公益が混淆いたしますようなものについては分離までいっていなかったのではなかろうかと思っております。
  78. 河田賢治

    ○河田賢治君 次に、さっき申しましたように、林政審議会の答申に言うところの公益的な機能を直接発揮する分野への一般会計の導入ということと区分経理の措置を講ずるということになっておりますが、これは余りいまなされていないわけですが、この法案において、事業、施設費について改善期間に限り一般会計から繰り入れるということにしたのはどういうわけか。また、十年間という期限が切られたのは、それで達成できるとかいろんな諸事情がありますね、そういう見通しがあってこういうことになっているのか、ひとつ聞かしてもらいたい。
  79. 石川弘

    政府委員(石川弘君) まず、公益的機能の部分に対する経理区分という形にいたしませんでしたのは、御承知のように、今回入れます金が単に公益的機能のことだけではなくて、国有林生産基盤整備のための造林、林道等、いわゆる事業費に内接かかわりがありますものを入れることにしたからでございます。  次に、十年に限りということでございますが、国有林経営につきましては、約二十年後に現在生育途上の人工林が相当伐期に入ってくる。したがいまして、収入としての上昇を期待できる時期に来るわけでございますが、その間にわれわれといたしましては、十年間を限りますこういう生産基盤整備のためのいろんな投入をいたしまして、それがその後の十年間に効果があらわれてまいりまして、二十年後に収支均衡が達成できるようにということで十年間を限っておりまして、これはわれわれといたしましてその期間におけるいわゆる経営改善のための努力が実りますれば、先ほど申しました二十年後の人工林の育成ということと期間をあわせまして、効果が発揮できるという考えでこの期間を設けているわけでございます。
  80. 河田賢治

    ○河田賢治君 奥地なんかへどんどん林道をつくっておきませんと、自然林なんかを伐採する、間伐でもするとかという場合になかなかすぐ役立たぬでしょう。また、奥地への林道というものは効率的にも林野事業としても悪いわけですけれども、しかし、そういうものを早くつくってやりませんと、急にあんなものが一年、二年でできるわけじゃないですね。だから、もっと基本的に奥地の方を開発して、将来何年か、三年なり五年なり先に開発できる準備だけはしておく。そうすれば、林道をつくるとか、このためには私たちだって今日の林野事業の特別会計というものをもっともっと一般会計から入れて、そしてそういう林道は日本の経済にも大きな利益を与えることなんだし、また国有林野の当局としても、いつでも若干の需給関係を調節するのでもそういうものがあった方が便利なわけですね。だからもうちょっと、十年計画でどこまでおやりになるかわからぬけれども、われわれはそういう点をもっと強く主張しておきたいと思うわけです。  次に四番目ですが、時間の関係でごく簡単にお願いします。森林レクリエーション事業について、国民の期待がだんだん今日では強くなっております。国有林野事業の財政的逼迫を理由に、かなり消極的な姿勢に変わっているように言われておる。第一、観光政策審議会ですか、あそこも指摘しているわけですね。ですから、また御承知のとおり、昨年の何月でしたか、五十二年の八月林野庁が出された「国有林野事業の特別整備について」という案の中に、このレクリエーション部分のところはかなり事業を廃止するとかいうようなことも書かれておる。一方、またことしの休業施策ですか、これを見ますと、たくさん少年、青年のレクリエーションの場をつくるとか、森林の家をつくるとか、あるいは緑化センターを充実するとかいうことを言って、かなりこっちは積極的に出ているわけですね。この辺はどういうふうになるんですか、ごく簡単にお答え願いたい。
  81. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 国有林の使命の一つでございます、そういう国民に対する保健休養の場の提供ということを怠るわけではございません。国有林がそういう場所を提供いたします場合にいろんな形がございまして、国有林がそういう施設をみずからがっくりましてみずから管理する姿とか、あるいは地方公共団体等と協力をいたしまして、国有林が場所を提供し地方公共団体等がこれを利用する形、いろんなものがございます。私どもとしましては、その地域地域の実情、あるいは関係いたします地方公共団体その他の方々と御相談いたしまして、その地域に最も適合する姿でこういうレクリエーションのための施設をやっていきたいと考えております。
  82. 河田賢治

    ○河田賢治君 私は、こういうレクリエーション施設を都道府県もやる、あるいは文部省も青少年の家をつくったりして各地でやっておりますし、厚生省も国民宿舎とかいろんな形で各省やっているわけですね。農林省もそういうことをおやりになるかもしれぬけれども、農林省の方々は客商売なんかへただと思うんですね、いわゆる昔で言う侍商売で。しかし、それも国民がどんどん行くところならいいですけれども、これから週休二日制だとか労働時間の短縮とか、それからまた、なかなか一般の労働者、勤労者の収入が思わしくない、近いところで済まそうということで、山林なんかに対するそういう休養を求めるあれは大きくなると思うんですよ。  これなんかは、よほど合理的に配置なんかも考える、それからまた、そういう宿舎なんかの設備、あるいはそれをだれがやるかということもよほど総合的に考えませんと、皆各省が自分たちの古い役人をそういうところへはめ込んで、そして隠居仕事にやってくれというような調子で侍商売をやられたんじゃ、これはだめだと思うんですね。こういう点は、これは各行にまたがる問題ですけれども、この辺はやはりよほどこれも林野庁あるいは農林省も注意してもらいたいと思うんですよ。このことだけを申しておきます。  さらに、国有林の管理運営について、私は一度もまだそういうところを回っておりません。京都の嵐山あたりはこれはしょっちゅう見ておりますから問題ありませんが、しかし、他の委員諸君が言われたように、いろいろ運営問題であるんですね。私は外へ行かないけれども、新聞なんかよく読んでおるわけです。四月の二十一日に朝日新聞が社説で、神奈川県の第一国有林世附というのですか、山北町にあるそこへ本人が行ってみたというのですね。そして、東京から三、四時間あれば現場に行くと。国有林の至るところでこうした荒れ果てた、たとえば九年前に杉、ヒノキを植えたというのだが、ところどころに育ちの悪い幼木が残っているだけで、山を一面に覆っているのは枯れ草である、こういうことを言われておるんですね。九年後ですよ。この山に入るのは、林道は本州製紙の社有林を通り抜けるが、この社有林は杉、ヒノキがみごとに育っている。余りにも対照的である。枝打ち、それから間伐など管理も行き届いておる。  まあ、営利会社ですから、管理が悪かったらそこの場長とかなんとかどんどん首にするでしょう。官庁はそうしませんからね。お役人仕事と世間から言われるような、至極のんびりした管理があるわけですね。これは十年前のことが言われているんです。こういうふうに国有林の全面積皆伐が始まったのが三十五、六年からだと。そしてここもやられている。そして、このように山がすっかりもう荒れているというんですね。この新聞をごらんになって、農林省では国有林関係の方はだれかを派遣したとか、これまでにそういう報告を受けているかどうか、そのことをひとつまず第一に聞いておきたい。
  83. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 早速、技術調査官を現地へ派遣いたしまして、その対策を練っておるところであります。
  84. 河田賢治

    ○河田賢治君 派遣しまして、その結果どういうふうにされたんですか。そのところをちょっと聞きたいんですよ。
  85. 秋山智英

    説明員秋山智英君) この世附国有林は、昔地震が起きたところでありまして、地盤が非常に悪い関係もございまして、人工林で育てていくところと、それから広葉樹林を導入して混交していく方がよろしいところとございますので、その辺を比較検討しながら今後天然林の一部導入も考えております。
  86. 河田賢治

    ○河田賢治君 すぐそばに、本州製紙ですが、そこの会社の土地を通っていくんですが、そこはみごとに育っているんですよ。同じやっぱり地震があったとかいろいろな地帯で、そう土地の条件というのは変わらぬと思うんです。ところが、国有林の方はこういうふうに枯れ草がばあっと生えて、たまに立ち木があると思えば、これにつるが巻いてぐにゃぐにゃしている、こういうんでしょう。これでは、先ほど社会党やその他公明党の諸君が管理についてはずいぶん言われました、事細かく。私は行ってないからこれを信用するしかないのですけれども、こういうところがあるというところが私は問題だと思う。新聞を見て飛んでいかなければならぬというのも問題なんですね。こんなことは毎年報告を受けているはずです。五年計画がどうなっているかということを調べていなければならぬ。それで労働者が働かぬとかなんとか言っている。  それで、この社説には役人のことを言っているんですよ。官吏というのは大体二、三年でかわってしまう、上の方は。それで机の仕事をしているので、現場のところを余り見もしないと。現場の人が、これは間伐せんならぬとか、あるいは草刈りもせんならぬとか、下刈りせんならぬとか言うことがあっても、余り取り上げないと。計画だけ立てて、たったったっと変わって歩いて上へ上るわけですよ。天井へ行ってしまうわけですね。ですから、そういうふうに非常に痛切にこの社説は言っているわけなんですから、この点はやはり現場の人を減らすとかなんとかいう問題をいまあなた方は抱えているけれども、それよりも——それからまた、この林業施策には民有林やあるいは森林組合、こういう団体の林業政策に対して指導せんならぬと言われているんです。かなり大きいいばった態度で書かれているんですよ。ところが足元の、あるいは自分自身のところはちっとも見ていないんですね。反省一つもないんですよ。よそを指導するどころか、自分のところがどこかから指導されなければならぬような状態なんですね。  これは全部だとは言いませんよ。そういう状態であるから、もっと謙虚にやはり国有林の管理運営については私はやってもらわなきゃならぬ。それで、そういうことがちっともこの毎年出される報告書に出ていないんですよ。自分たちがどこに欠陥があったとか、それは出していいんだから。そういう教訓を踏まえて新しい、従業員が全体となって国有林を守っていく、日本の山林の指導的な模範的な林業をつくっていく、こういう態度でなくちゃならぬと思うんですよ。それがないんだから、私は困るんですね。  私、時間が来ましたからこれで大体終わりますけれども、とにかく国有林というものが民有林以上にりっぱに林業を運営する、また木を育てていく。そして他の、今日小さな土地を持っている、山を持っている人は、なかなか資本がなくて改植なんかしませんよ。だから、いまはほとんど使わぬような雑木でずいぶん覆われたところがたくさんあります。ちっとも経済的な効果もないわけです、こういうものは。だから、もっと農林省は全体として、民有林なんかも山を持っているからといって全部が絶対に手入れさせぬというわけじゃないんですよ。所有をそのままにして、山林については管理運営をもっと積極的に政府なり公共団体、これらが一緒になって、詰まらぬ木は刈ってそして有効な木を植えていく、こういう行政をやはり私は大胆にやるべきだと思う。そうしなきゃ、とてもすそ山というようなものは本当の植林はできないですな。この辺は私は国有林自身がしっかりと反省するとともに、民有林に対してもそれをできるような立場に立って、そしてそういう指導を私はしてもらって日本の林業を守る必要がある、こういうように考えますから、これをひとつ大臣にお答え願って、私の質問を終わります。
  87. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 国有林経営についていろいろ御批判のあることは事実でございます。それにはいろんな、親方日の丸的なやり方等々、あるいは労使関係の対立があり過ぎて団体交渉ばかりしているのじゃないかというような御批判もあります。いずれにいたしましても、御批判は御批判として率直にこれを受けとめて、今後やるべき仕事はきちっとやって、民有林の模範になるような国有林あり方ということを念頭に置きまして、今回それぞれの改正をお願いいたしました。率直にひとつ反省をしながら、しっかりがんばっていきたいと存じます。
  88. 河田賢治

    ○河田賢治君 終わります。
  89. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後零時四十分再開することとし、休憩いたします。    午後零時九分休憩      —————・—————    午後零時四十四分開会
  90. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、国有林野事業改善特別措置法案を議題とし質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  91. 原田立

    ○原田立君 この法案は、「国有林野事業の現状並びに国民経済及び国民生活におけるその使命の重要性にかんがみ、」改善を図ることを目的に特別措置を定めたとされております。そのために、七十二年度までに収支の均衡を回復する等必要な基本条件の整備を六十二年度までに完了することを旨として改善計画を定め、運営するとされておりますが、確かに現状の国有林野事業はこのまま放置しておくことはできないし、何らかの改善対策は必要であると思うのであります。そういう意味で、若干質問したいと思います。  まず第一に、最も基本となる問題として国有林野あり方についてお伺いいたします。  一般的に国有林は、自然環境保全あるいは自然保護に徹する経営をすべきであり、木材生産はいわば従属的に考えるべきであるという、そういう意見があります。もう一方では、可能な限り国内木材資源を充実し木材生産の増大を図るべきである、こういう二つの考え方があるわけでありますが、政府の立場はどちらの考え方を基本とされておられますか。
  92. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 先生指摘になりましたように、いま国有林というものはそれぞれなりの使命を持っております。国有林の使命を考えますと、やはり木材その他の林産物の計画的、持続的な供給という大きな使命が一つございます。それから、いまも御指摘になりました国土の保全、水資源の涵養あるいは自然環境の保全形成等の森林公益的機能の発揮という使命がございます。さらにもう一つ国有林の場合には国有林の活用あるいは地域産業活動の助長、こういうものを通じまして地域振興への寄与という、私ども大体この大きな三つが国有林の使命ではなかろうかというふうに考えております。  したがいまして、いま先生が御指摘になりましたように、どちらが重点かということではございませんで、この辺を十分調和を合わせながら対応していくことが国有林の使命であろうというふうに考えております。
  93. 原田立

    ○原田立君 この法案の「(趣旨)」では、「この法律は、国有林野事業の現状並びに国民経済及び国民生活におけるその使命の重要性にかんがみ、」云々と、こう説明されているわけでありますが、この「国民経済及び国民生活におけるその使命の重要性」とは一体何を意味し、基本的目的との関係とどういうふうに結びつくのか、その点はいかがですか。
  94. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) ただいまも申し上げましたように、国有林の使命は大きく分けましていま申し上げましたように三つになろうと思います。木材資源と申しますのは、やはり国民の生活になくてはならない住宅建築資材あるいは紙資源、こういう問題でございます。したがいまして、国有林といたしましても、との木材資源というものをやはり安定的、計画的に供給できる体制を、七百五十万ヘクタールの国有林を持っておるわけでございますから、そういう中で十分対応しなければいけないというふうに考えておりますし、また一方、公益的機能の発揮、これもまた水資源の問題あるいは環境保全の問題さらには国土保全の問題、こういう問題をあわせまして国民の生活に大きく寄与しているものでございます。したがいまして、この二つ、そしてまた、それぞれの地域地域の振興、こういうものに木材資源として、あるいは生活環境として、さらには労働の一市場として国有林がそれぞれ寄与しておるわけでございまして、そういう観点から国民生活あるいは国民経済に大きな関連を持っておりますので、こういう使命を十分果たすような形で国有林改善の目的を達成しなければいけないということでございます。
  95. 原田立

    ○原田立君 表面的にとらえると、「国民経済及び国民生活におけるその使命の重要性」という言葉から判断して、国有林は自然環境の保全、自然保護を最重点に考え国民生活を守るという判断になると思いますが、いかがですか。
  96. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) いまおっしゃいましたように、「国民生活」という言葉も入っておりますけれども、その上に「国民経済」ということも入っております。したがいまして、私が先ほど御説明申し上げましたように、経済の面ということになりますれば、当然木材としての利用あるいは国有林におきます労働市場の問題等々ございます。そういうことで、国民経済につきましてもその使命がございますので、この辺は十分調和を合わせながら対応していくことが、国有林の必要な対応であろうというふうに考えております。
  97. 原田立

    ○原田立君 そうすると、経済というのがあるからいま私が指摘した自然環境の保全、自然保護を最重点に考える点は多少軽いという、そういう意味ですか。
  98. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 先ほども申し上げましたように、どちらが軽い、重いということではなくて、この辺は十分調和をとりながら国有林の管理経営をしていくことが、私ども国有林管理経営をする人間の使命であろうというふうに考えておる次第でございます。
  99. 原田立

    ○原田立君 国有林野の中で、保安林の占める割合は非常に大きいものでありますが、政府提出の資料の中で昭和二十八年度国有林が八十八万六千ヘクタール、民有林が百六十三万二千ヘクタール、五十一年度に至っては国有林が三百六十一万九千ヘクタール、民有林が三百四十六万二千ヘクタールと、民有林の全面積の二〇%に対して国有林の場合は約四五・六%が保安林となっているわけでありますが、このように水源涵養、土砂流出防備などの自然環境保全、あるいは自然保護に寄与する面がますます高まっていることも事実だろうと思うんであります。国有林の場合、特に自然環境保全や自然保護に最大の努力を払うべきことが基本的目的でなければならないと思うが、いかがですか。
  100. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) ただいま先生から保安林の配置状況国有林民有林についてお話があったわけでございますが、そのとおり、確かに国有林には保安林が多うございます。と申しますのは、国有林の場合、やはり日本の脊梁山系を中心にして分布いたしております。脊梁山系ということになりますと、やはり山も急峻でございますし、また、水資源の面からも重要な地域でございます。  したがって、国有林の中にどうしても保安林の面積が多くなるという実態でございまして、約三百六十万ヘクタール保安林があるわけでございまして、そういう意味から、国有林は当然保安林としての管理経営をしなければいけませんし、あわせまして、先ほど申し上げましたような使命をこの保安林を持ちながらも遂行していかなければいけないというふうに考えておりますが、したがって、当然公益的機能の発揮という問題についてはそれなりの対応をいたしますし、また、経済林としての森林につきましては、木材生産ということを重点にし、なおかつ森林、林業と申しますのは一つ機能だけを持っておるわけではございませんで、木材生産としての機能が高い森林におきましても当然やはり公益的機能は持っておりまして、その使命も果たさなければいけないということでございますから、そういう意味からも先ほど来申し上げておりますとおり、調和のとれた中で公益的機能の発揮と木材生産計画的遂行ということをやっていかなければいけないというふうに考えております。
  101. 原田立

    ○原田立君 いまも申し上げたように、保安林が国有林の場合には四五・六%という非常に高い数値を示しております。すなわち、全面積七百九十三万ヘクタールに対して、国有林の場合が三百六十一万九千ヘクタールと、保安林の率が非常に高いわけです。だから、確かに長官言われるように、経済的な面というものもあるかもしれないけれども、やはり自然保護、自然環境保全というものにもっとよりウエートを置くべきじゃないでしょうか。いまの長官の発言を聞いていると、それも大切でしょうけれども経済の方も云々と、こういうふうな言い方をして、自然環境保全あるいは自然保護というものをちょっと軽く見ているような感じがするんですけれども、どうですか。
  102. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 私の説明が十分でなかったのかもしれませんが、私どもも決して軽く見ているわけではございませんで、その両者を十分調和をとりながら対応しなければいけないというふうに考えております。したがいまして、伐採につきましても、最近では伐採個所を分散させてやるとか、あるいは面積を小さくしてやるとか、こういうものはやはりいま先生がおっしゃいましたような自然環境保全というものを十分配慮しての対応でございますし、また、林道沿い等々につきましてはできるだけ伐採をしないで残すとか、いろいろな対応をいたしております。そういう配慮も自然環境保全という意味からの配慮でございますし、また、公益的機能の中には治山事業もございます。そういうものにつきましては、一般会計からの負担をいただいて、五十三年度は特に六八%強の助成で治山事業を遂行するという形をとっておるわけでございまして、私どももその辺自然環境保全ということについては、今後とも十分配慮してまいるつもりでございます。
  103. 原田立

    ○原田立君 そういう意味で実は大臣にお聞きするわけでありますが、本年の二月号の中央公論に「日本から森がなくなる日」と題した佐藤朝泰さんという人の論文が発表されているわけでありますけれども、これは屋久杉のことが取り上げられているんであります。まあお読みになっていなければしようがありませんけれども、この論文に対する率直な御意見を、おわかりでしたらお聞きしたい。
  104. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 私からかわりまして御説明申し上げたいと思います。  ただいま御指摘になりました「日本から森がなくなる日」、これは本年の二月号の中央公論に掲載された佐藤朝泰さんですか、この方がお書きになった論文でございます。これはわが国の林政、それから国有林事業のケーススタディーとして、鹿児島県の屋久島におきまして国有林野事業をとらえられまして、この国有林野事業乱伐である、あるいは自然破壊または木材の不適正販売、こういう問題を抱えておるということで、それを基盤にいたされまして国有林野事業全体の赤字経営の主因というふうにされておられます。また、それをさらに援引されまして、国内林業全体が森林資源の枯渇、あるいは木材供給力の低下だと、そうして森林、林業が危機だということで結んでおられるわけでございまして、この論文の基礎になっておりますものは、屋久島の国有林の認識を初めといたしまして、ある意味で非常に事実の誤認がございました。  そこで、私どもといたしましても、全国的な林政や、あるいは国有林野事業の評価という面からも、必ずしも適切ではないのでなかろうかということをわれわれも感受いたしまして、これにつきましては中央公論の方にも一部その申し入れはしたわけでございますけれども、特権その中で一、二例を申し上げますと、屋久杉の方は名ばかりで貴重な屋久杉が枯渇するのではないか、こういう主張をしておられます。国有林におきましては、御存じかと思いますけれども、屋久杉が世界的にも貴重な存在であるということから十分その認識はいたしておりまして、その保存ということを中心にいたしまして、保護に十分配慮しておるわけでございます。また、屋久杉を中心として乱伐が行われるというふうなことを言っておられますけれども、林地の保全なり屋久杉の保護育成なり風致の維持あるいは水資源の確保、こういう問題につきましては十分配慮して、また将来にわたります伐採量の保続ということも考えながら、計画的かつ適正にこれを実行するように現在努めておる次第でございます。  また、高価な屋久杉を特定業者に安売をしているというふうにも述べておられます。これにつきまして、屋久杉の販売に当たりましては、その特性に即応いたしました販売方法を採用しておりまして、特に特定な業者へ安売りしているというふうには私どもも考えておりません。こういうことで修正を申し入れましたところ、その一部について次の機会に修正が載った分もございますけれども、十分に私どもの申し入れを聞いていただけない面もございましたけれども、いま申し上げましたような形で、私どもといたしましてはそれぞれ屋久島ばかりでなく、全国的に自然環境の保全、こういうものにも十分配慮しながら、そうしてまた、木材の持続的供給が図られるように対応しておるわけでございまして、今後ともこういう誤解が起きないような努力等も十分してまいりたいというふうに思っております。
  105. 原田立

    ○原田立君 この論文は、林野庁から見ればいろいろ言いたいところもあるだろうと思いますが、問題提起という面では、大きい評価をなされてしかるべきだと思うのであります。  林野庁は、屋久島原生林の保存地区として国立公園特別保護地区、各種の学術参考林、自然休養林、施業見合わせ地区等の指定を行い、その面積もわずかながら年々ふえているようでございますが、これら保存地区面積は屋久島原生林全体の何%に当たるんですか。
  106. 須藤徹男

    説明員須藤徹男君) ただいまお話のございました屋久杉の保存地区でございますが、まず大正十年学術参考保護林といたしまして、約四千三百ヘクタールを設定いたしまして以来、各時代要請もございまして特別天然記念物、国立公園特別保護地区、自然休養林、原生自然環境保全地域等の保護区域を漸次拡大してきておるところでございます。特に、昭和四十三年から四十四年にかけて、屋久島の自然保護をめぐりまして各層から陳情等が提出されたのでございますが、昭和四十五年に屋久島国有林の自然保護に関する調査を行いまして、その結果に基づいて学術参考保護林、展示林等の設置を行うとともに、伐採面積の縮小、保護樹帯の積極的な設置を行うこととしたのでございます。  さらに、昭和五十一年度には、屋久島国有林経営について、森林の開発と保護の両面から総合的に解明するために、学識経験者によります特定地域森林施業基本調査というものを実施いたしまして、その提言に従いまして同年度樹立いたしました、現在実行中でございますが、第三次地域施業計画におきまして既設の保護区域の見直しを行いまして、その結果、国立公園特別保護地区並びに学術参考保護林等の自然環境の保全対象区域は、屋久島国有林面積の約二五%に当たる約九千六百ヘクタールになっているのでございます。このうち約八千二百ヘクタールに屋久杉が分布しているのでございまして、また、このほか、先ほど申し上げました保護樹帯及び険阻地等に分布する屋久杉約八千四百ヘクタールについても伐採をしないという方針でございますし、以上の結果、屋久杉が生育分布する区域の約二万六百ヘクタールのうち約八一%に相当する上万六千六百ヘクタールについて、将来にわたって伐採しない考えでその保護の万全を期していきたい、このような方針を持っておるのでございます。
  107. 原田立

    ○原田立君 屋久杉は、樹齢数千年の生きた化石として人類の貴重な財産ともなっており、その保護が叫ばれているわけであります。今後、屋久杉の保護、保存のため、保存地区の拡大や保存方法等どのように考えられておりますか。
  108. 須藤徹男

    説明員須藤徹男君) ただいま申し上げましたように、国立公園特別保護地区とか、あるいは原生自然環境保全地域並びに学術参考保護林等の、屋久杉を中心とする自然環境の保全区域は九千六百ヘクタールでございますが、いまも申し上げましたように、屋久杉はこのうち八千二百ヘクタールを含めて約二万六百ヘクタールに生育分布しておりますけれども、屋久杉の島内経済に及ぼす影響等を考慮いたしまして、約一九%に当たります四千ヘクタールを今後おおむね五十年間にわたりまして伐採するということにいたしておるのでございます。したがいまして、今後漸減的に減らしていこうということでございます。
  109. 原田立

    ○原田立君 いまも漸減的に伐採していくというふうなことでありますけれども林野庁は、現在、保護地区に設定されている以外の屋久杉に対してはいまのような姿勢で臨まれるのだろうと思うのでありますが、保護地区の設定を隠れみのに保護地区以外はもう手当たり次第に乱伐する、こういうふうな感じを私は強く感じるのですけれども、そういうようなばかなまねはしないでしょうな。時間がないですから、答えは簡単にしてください。
  110. 須藤徹男

    説明員須藤徹男君) ただいま先生がおっしゃいましたようなことは絶対にいたしません。
  111. 原田立

    ○原田立君 林野庁の発表によると、昭和四十七年現在の残存屋久杉の本数は一万一千六百本、うち伐採対象地分は四千二百本、材積量に換算して七万九千立方メートル、また四十七年から五十一年の五年間では四万一千五百五十六立方メートルが伐採されました。したがって、五十二年度現在での屋久杉の伐採可能地区の材積量は三万七千四百四十四立方メートルであります。にもかかわらず、昭和五十二年からスタートした国有林経営計画によると、五十二年から十年間に七万立方メートル、約四千本でありますが、これを伐採、さらに次の十年間で三万立方メートルと、いまも説明のあったように漸減的に伐採する、こういうことのようでございますが、五十二年度現在での伐採可能地区の材積量と、現行の施行計画に示された数字との間にはかなりのギャップがあるのでありますが、この点どのように説明なされますか。
  112. 須藤徹男

    説明員須藤徹男君) ただいま御指摘の、三万七千四百四十立方メートルと、こういうふうになっておりますが、実はこの論文で御承知でもございましょうが、屋久島におきましては、樹齢千年未満のものは小杉と呼ばれておりまして、特に千年以上のものを屋久杉と言って取り扱っておるのでございます。したがいまして、四十七年から五十一年まで屋久杉の伐採量四万一千五百五十六立方メートルのうち、約八四%はいわゆるいま申し上げました樹齢千年以下の小杉でございまして、この期間のいわゆる屋久杉の伐採量は六千六百五十立方メートルでございます。したがいまして、いわゆる屋久杉の伐採対象地内の四十七年の現況七万九千立方メートルからいわゆる屋久杉に小杉を含めました伐採量を差し引いたために、いま言われております三万七千四百四十四立方メートルという数字が出たというふうに計算されるわけでございまして、四十七年の現況七万九千立方メートルに対応するいわゆる屋久杉の伐採量は、四十七年から五十一年までの間で六千六百五十立方メートルでございまして、五十一年度末のいわゆる屋久杉の現況は七万二千立方メートルというふうに推定されておるのでございます。
  113. 原田立

    ○原田立君 昭和四十九年の行管の監察によりますと、販売方式に関して、随意契約による販売は、その販売予定価格に対する販売価格の値開きが、一般競争入札に比べ全国平均で一〇%程度低くなっておることを指摘して、随意契約の整理を勧告しておりますが、以後、入札方式等どのように改善されましたか。
  114. 秋山智英

    説明員秋山智英君) お答えいたします。  屋久杉、これは小杉も含めてでございますが、営林署の製品生産事業によりまして、丸太にして販売しておる量を五十二年度の量で申し上げますと、六千六百立方メートルでございます。で、販売総額は九億六千万円となっております。販売方法別に申しますと、営林署の一般競争入札によって販売したものが数量で一三%、金額で六%、それから市売り市場に出しまして競り売りをやっておる分がございますが、これは全体で三〇%、金額で六七%しております。それから、地元の製材工場に随意契約で販売しておるものが数量で五七%、金額で二七%というふうになっております。特に屋久杉の中で市場性の高い銘木級のものでございますが、これは鹿児島県の銘木市場協同組合を中心といたしまして競り売りをやっております。これ、はなかなか銘木になりますと規格基準では判断できない面がございますので、こういうやり方でしておるわけでございます。  なお、地元の随意契約の分でございますが、これは径級がどちらかと言いますと細いもの、それから根株とか林地に残っておる残材というようなものを地元の製材工場に販売して、工芸品加工業の振興に寄与しているところでございます。
  115. 原田立

    ○原田立君 屋久杉は、その材質等から非常に高価なものとなっており、一立方メートル平均単価の相場は百万円程度と言われておりますが、単純計算をしても、年平均七千立方メートルの伐採で七十億円の実収があることになりますが、実際はそういうふうになっておらない。五十年の場合で言いますと、伐採量六千二百二十五立方メートルに対し実収は九億五百八十七万円となっておりますが、以上からわかるように、実際の一立方メートル平均単価は約十五万円内外であり、この入札販売価格は実勢価格百万円−百五十万円から見て相場の十分の一という超安値になっているわけでありますが、この極端な値開きは何が原因であるのか、具体的にお伺いしたい。
  116. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 屋久杉、これは小杉も含めてでございますが、五十二年度販売単価を立方メートル当たりで見ますと約十五万円でございます。しかし、これは銘木として売買されておるものと、それから比較的径級の小さい一般材とか根株の平均価格でございます。そこで、市場性の高い銘木級の屋久杉でございますが、これは先ほど御説明申し上げましたとおり、競り売りというふうな形で市売り市場で販売し、あるいは入札によって競売をしているわけでございますが、この方法によって売られております平均の単価は、五十二年度におきまして三十三万円でございます。中には、百八十万円もするような銘木もございます。それから、なお随意契約によりまして販売をする場合におきましても、これは市売り市場の市況状況とかを十分踏まえまして、この市場価格を算定いたしまして販売をしておるところでございまして、五十二年度におきましては平均が六万七千六百円でございます。
  117. 原田立

    ○原田立君 国有林乱伐、過伐傾向が見られるわけでありますが、林業政策の実態から、この屋久杉等の保存が将来とも維持されるかどうか危惧されるのが多くの識者の声であります。今後これら貴重な国有林の保護保存に対して、どのように取り組んでいくつもりであるのか、見解をお伺いしたい。
  118. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 屋久杉につきましては、いま先生からいろいろ御指摘になりましたが、私どもの方におきましても、指導部長なり業務部長が御説明申し上げましたように、それなりの対応をいたしまして慎重に対応をし、やはり貴重な屋久杉でございますからそれなりの国民の財産として今後も未来永劫に残るような対応をしながら、そしてなおかつまた利用できるところについては利用して対応してまいりたいというふうに考えておりますけれども、先ほど来申し上げましたように、八〇%近い地域については保存していこうという考え方に立っておりまして、その辺につきましては十分配慮して今後とも作業をやってまいりたいというふうに考えております。
  119. 原田立

    ○原田立君 大臣、いまの長官の説明があったけれども、屋久杉の乱伐あるいはもう絶滅するんじゃないかというふうなことがしばしば指摘されているわけです。いま長官の今後の決意を聞いたわけでありますけれども、再度大臣のお考えをお伺いしたい。
  120. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 屋久杉は歴史的なものであり、きわめて大事な資源でございますので、今後ともいま長官答弁したような趣旨で慎重に大事に扱っていきたいと存じます。
  121. 原田立

    ○原田立君 それでは、別の問題にまた入るわけでありますが、農林大臣、この林政審議会の答申をどのように受けとめておられますか。
  122. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 当時の国有林の実態あるいは民有林等にも関連しまして、当時は当時として非常にまた適切なものであったと。しかし、今日はまた状況が変わっておりますので、今回これをベースにして新しい時代に対応するものを考えたと、こういうことでございます。
  123. 原田立

    ○原田立君 状況が変わったというちょっと大臣お話があったけれども状況が変わったというその一言が非常にまた重要な意味があるわけであります。昭和四十年の中央森林審議会の答申の中には、経営の組織形態についての指摘がありました。独立の人格を持った公企業形態が妥当であると、こういうふうな指摘をしているわけでありますけれども大臣昭和四十年のこの指摘ですね、どうお受け取りですか。
  124. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 指摘はまさにそのとおりでございまして、今日もなおその指摘は誤ったものではないと、正しいものであると、こう判断をいたしております。
  125. 原田立

    ○原田立君 前と変わらないということでありますが、独立の人格を持った公企業形態が妥当である、つまり公社方式などの形態が望ましいという指摘であるわけでありますが、この指摘に基づいて具体的に検討されたと思いますが、どのような内容であったのか発表されたい。
  126. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) ただいま御指摘になりました四十年の中央森林審議会の答申と、それから四十七年の林政審議会の答申でございますけれども、四十年の中央森林審議会の答申におきましては、国有林というものは能率的に運営しなければいけないということで、企業的自主性を大幅に付与して責任体制を確立する必要があるという観点から、いま先生も御指摘になりましたけれども、独立の人格を持った公企体ということが妥当であるというふうに述べられておるわけでございます。これに対しまして四十七年の林政審議会の答申では、公益的機能の重視ということ、そういう意味での事業運営を志向する今後の国有林野事業経営組織といたしましては、やはり企業的能率性の追求を徹底するための公社方式を採用することは適当でないということで、公益的機能を重視しながら能率的に事業を実行し得るような新たな特別会計方式によることが適当であるという答申をいただいておるわけでございます。  この両者が変化してきたという経緯を見ますと、これは一つにはやはりわが国の高度成長という経済の伸展の中で都市化が進みまして、先ほども申し上げましたけれども、国土の保全とか水資源の涵養とかというような森林の持ちます公益的機能というもの、そういうものをより以上発揮してほしいという国民要請が非常に強くなっておりますし、それが特に四十年の後半から強くなってきたということで、四十年代の初め、四十年代に中央森林審議会で答申をいただいたときの日本の状況と、それから四十七年に林政審議会の答申をいただいたときの日本の状況というものがやはり大きく変化してきた、そういう点、それから四十年の答申をいただきましたときには外材がそれほど入っておりませんでした。それ以降外材の輸入が非常に大きくなってまいりまして、国産材供給が一部停滞ぎみであるというような状況も出ておりまして、そういう両々相まちました観点から、そういうことを背景にされてこの答申がなされたものというふうにわれわれは考えております。
  127. 原田立

    ○原田立君 四十年と四十七年の二回の答申の中身は大変百八十度に変わっていることは、いまあなたが説明したとおり、私もそういうことはわかっているわけでありますけれども、一体どうしてこんなに百八十度も転換したのかつ四十年のときには公企業体が妥当であると、こう言ったのが、四十七年のときにはそれが妥当でないと言っている。まるっきり変わっちゃったわけですね。一体どこにその原因があるんですか。
  128. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) いまも申し上げましたように、四十年代ではやはりまだ日本が復興、そして高度成長の真っ盛りの時代でございました。したがいまして、木材生産というものが非常に必要でございましたし、さらには外材がまだ余り輸入できる状況でもございませんでしたので、国民木材需要に対します供給ということ、これについてはやはり国有林も相当対応しなければいけない、そういう考え方から、そのためにはやはり独立した人格を持った公社等々でやった方がベターであるという判断がおありになったと思います。  しかし、その後の大きな変化、これはいまの時点になりますと、四十年代はおかしかったではないかという御批判になるのかもしれませんが、やはり四十年代と四十七年を見ますと、環境保全、自然保護、いろいろな問題が出てまいりまして、やはり森林というものは単に木材生産するということが中心ではなくて、それぞれの機能を十分発揮しながら運営しなければいけない、そのためには独立な性格を持った公社という形で能率追求ということだけではなかなか問題がある、やはりいまのような両々相まつ形で調和させながら国有林というものも経営しなければいけないということで、林政審議会の答申はいま先生が御指摘になったような形で答申がなされたというふうにわれわれは考えております。
  129. 原田立

    ○原田立君 そうすると、今日のように極度に悪化している経営状態になっても、その四十七年の考え方は変わらない、こういう理解でいいですか。
  130. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 先ほども大臣からお答えいただきましたように、私どももこの四十七年の答申の精神を受け継いで今後ともやってまいりたいというふうに考えております。
  131. 原田立

    ○原田立君 四十七年の審議会の答申では、情勢の著しい変化によって公益的機能重視の国有林野事業は企業的能率性の重視は好ましくないと、四十年の答申とは逆の立場を表明しているわけであります。確かに国有林野事業経営収支は、四十四年までは黒字基調であった。それが四十五年以降赤字基調に転じているわけでありますが、四十八年、四十九年の黒字は狂乱的な大暴騰のためであり、例外的なもの、いかなる情勢の変化が生じた場合に方向の変更というのか、姿勢の変更は一体どういうふうに考えられるのか、その点をお伺いしたい。
  132. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 御承知のように、四十七年に林政審答申が出まして、その考え方に立ちまして国有林経営改善、合理化するということを始めようとしたわけでございますが、四十八年の例の大暴騰というのがありまして、御承知のように二カ年にわたって大きな黒字が出たわけでございます。しかしこれは、たまたまいま先生も御指摘になりましたように、材価が異常に高騰した中で出てまいりました収益でございまして、国有林の体質自身としては、あの時点においてもやはり改善すべきものは改善しなきゃいけない、要するに、基礎的な構造は変わってなかったわけでございます。  したがいまして、材価の暴騰が終わりますと直ちに御指摘のような赤字の形になったわけでございまして、私どもとすればやはり経営改善を継続すると。さらに、あの状態から比べましても、材価の将来性あるいは伐採量というようなものを将来的に見ますと容易ならざる事態でございますので、今回、ただいま御審議いただいております法案の形で二十年光を目途にしました改善計画を立てまして、所要の財政的な援助を受けながら改善をしていきたいと考えているわけでございます。
  133. 原田立

    ○原田立君 地域的、部分的には国土保全など自然環境保全、自然保護を最重点に考えなければならないところも多いんであります。しかし、国有林の中にも部分的には収益性も高く、民営にも適する森林を抱える場所も当然含まれているわけでありますが、このような場合でも現行どおりの形態で進むのかどうか、これが一点。  それから、国有林の中にも地域の配置によっては一部を切り離して別の経営形態を考えていくなど、新しい形態の運営も考えられるというような意見もあるんでありますが、それらについてはいかがですか。
  134. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 国有林は、北は北海道から南は沖繩まで分布しておるわけでございまして、その分布の仕方も、主として日本の脊梁山系を中心にしてこれが分布されておるということでございます。したがいまして、個所によりましては、いま先生も御指摘になりましたような非常に収益性の高い、比較的里に近い森林もございますが、まあ合わせましてやはり山岳地帯に近い森林が多いわけでございます。したがって、私どもといたしましては、これらをすべて含めまして国有林の使命を達成していかなければいけないという観点に立って経営しておるわけでございまして、先生指摘になりましたように、収支採算のいいところだけを取り出して、それはそれなりに独立採算的なやり方でやるというような考え方はとるべきではないと。やはりこれらを一体にして、国有林というものは管理経営すべきであるというふうに考えております。
  135. 原田立

    ○原田立君 木材輸入の実態についてお伺いいたします。  昭和三十年、四十年、そして一番新しい五十一年における需要部門別の輸入割り当てを報告されたい。また、昭和六十年の見通しはどうでしょうか。
  136. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) いま数字を調べますので、ちょっとお待ちください。
  137. 原田立

    ○原田立君 それではまた調べてもらうとして、政府提出の資料でも——あなたの方からもらった資料の中に出ているんですよ。外材輸入材率は昭和四十年で二八・六%、四十五年で五五%、五十一年では六五%と増加の一途をたどり、世界一の木材輸入国になっておるのが現状であります。最近、特に資源有限化時代が強く叫ばれている中にあって、現状の状態を続けていくのか、今後の見通しをお伺いしたい。
  138. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 木材の輸入量が年々全体の需要量に対しましてパーセントがふえてきたことは、先生の御指摘のとおりでございますが、ここ一、二年大体六五%前後でこう推移しておるというのが実態でございます。本来、木材と申しますのは、有限的な資源では私どもはないというふうに考えておりまして、これはやはり再生産できる資源である、そういう意味ではほかの資源とは違うであろうというふうに考えております。そのためにも、日本の国土を林業その他の推進によりまして、いい造林地をつくり上げることが必要であろうというふうに考えております。  そういう観点から、ただいま造林事業等を中心にして林業の推進、国有林もそれなりの努力をしておるわけでございますが、将来、ただいま大体二十年以下の森林が中心になっておりますけれども、何年かたちますとこれらが伐期に達するという時代が参ります。そういう意味から、私どもも将来に向かいましてはだんだん輸入をよけいしなくても、日本の木材、国産の木材だけである程度の需給が賄えるという方向がいずれは来るというふうに判断いたしておりますが、ここ当分の間は、まだ相当量の外材によらなければ国民需要にこたえ得ないというふうに判断いたします。
  139. 原田立

    ○原田立君 年々需要が増加していくことは当然考えられることでありますが、しかし、供給面でも並行して対策を講ずる必要があると思うのであります。国産材を見た場合、昭和四十年が約五千万立方メートル、四十五年が約四千六百二十万立方メートル、五十一年が三千五百七十六万立方メートルと、国産材は年々低下しているのが実態であります。この実態についてどのようにお考えになっておりますか。
  140. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 国産材が、いま先生指摘のように、年々漸減しておるということは私どもも認識いたしておりますが、これは先ほど申し上げましたように、日本の国内造林地と申しますのがほとんどは戦後造林された造林地でございます。したがいまして、戦後まだ三十年しかたっておりませんので、どうしても伐期に達した森林が少ないということ、そういう面と、もう一面は、ある意味で最近のように林業そのものが非常に外材等に圧迫されますと、民間の方がなかなかお切りにならないという問題も一部にはあるというふうに考えておりますが、そういう面からも、先ほど申し上げましたような造林地をできるだけ今後積極的に手入れその他をいたしまして、いい造林地ができ上がれば、数年先にはやはり国産材がいまとは逆になるような形で年々ふえ続けるだけの能力を持った日本の森林ができ上がるというふうに考えております。
  141. 原田立

    ○原田立君 現行の経営実態から判断して、国営の場合と民間経営の場合とでは林業経営の採算はどちらが高いと判断しておられますか。時代的経過、国土保全などの公益的機能の確保等を考え合わせれば、単純に比較できない点も考えられますが、一般的に見てどうお感じですか。
  142. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) ただいま先生指摘になりましたのは、直営事業とそれから請負とどちらかということだと思います。これは簡単には私どもなかなか比較できないというふうに考えております。たとえば直営生産のいいところといえば、労務がやはり安定いたしておりますし、それからいわゆるいろいろな賃金の問題あるいは社会保障の問題、そういう面ではやはりある意味では民間の請負よりもすぐれている面がございます。一方、民間の請負事業というものを見ますと、これについてはある意味で能率的な面もございますし、しかしながら、逆に社会保障的な問題にかんがみますと、その面ではやはりいろいろ問題もあるという点がございます。そういう点で、一概には私どもはなかなか比較はできないというふうに考えておる次第でございます。
  143. 原田立

    ○原田立君 提出資料の八ページに、事業従事職員の概要の中で、昭和五十一年度の場合、職員総数六万八千百九十三名に対して、定員内職員が三万六千二百七十六名となっているわけでありますが、この定員内職員は一般には事務を中心としてお仕事をなさっておられると思いますが、業務内容は一体どういうふうなことですか。
  144. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 定員内職員は、林野庁におります職員あるいは営林局それから営林本署それから一部担当区事務所、事業所等におります人間がおりますが、一部には技能職的な方もあられますけれども、大半は先生がおっしゃいましたような事務、それから現場の指導監督並びにそれの補助という者が主体でございます。
  145. 原田立

    ○原田立君 まさにその点を指摘したいわけでありますが、職員の半数以上、すなわち五十二年は五四%の職員が事務、いわゆるホワイトカラーであり、残りの四六%が伐採等の現場作業者ということになりますが、公社あるいは民間など国以外の経営形態として考えた場合、職員の半数以上がホワイトカラーというような実態は好ましい経営形態だと判断するのかどうか、一般的な判断としてお伺いしたいのであります。西ドイツなどの例を聞きますと、現場作業員が圧倒的に多く投入されているのが実態と聞いているわけでありますけれども、それらと比較してどうお感じですか。
  146. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 御指摘のように、国有林の事業の中でいわゆる間接管理部門と申しますか、いわゆる必ずしも現場の作業といいますよりも管理的な職員の比重が高いという御指摘がございました。これは、最高二千三百万立方程度の伐採をいたしました時代につくられております管理委員の大きさが、現時点で千五百万立方程度にまで伐採量を落としてきておりますが、なかなか思うように縮減をしていないというような事情もございまして、この間接管理部門か相対的に肥大化しているというのが、国有林野経営の大きな問題点であると考えております。われわれといたしましても、そういう先ほど御指摘がございましたような現場を重視しまして、間接管理部門については極力これを身軽なものにできるようにということを、国有林経営改善の中で進めていきたいと考えております。
  147. 原田立

    ○原田立君 大臣、これは最後の質問としてお伺いするわけでありますが、法案の第二条「(改善計画)」では、「昭和七十二年度までに国有林野事業の収支の均衡を回復する等その経営の健全性を確立するために必要な基本的条件の整備を昭和六十二年度までに完了する」と明文化しておりますが、現状の事業を推移した場合赤字は拡大の一途を歩む以外にないと、こう思うんであります。そのために五項目の改善計画を定めておりますが、各事項の改善計画の中身をできるだけ詳しく報告されたいと同時に、この法案提案に当たって国有林野事業の面での改善、本当に実効が上がるのかどうか、各現場の方々から、もうこんなにたくさんこの法案に反対してくれという電報が来ております。そういうような人たちのためにも、明快な御答弁をいただきたいと思います。
  148. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) この改善計画にどうして反対されるのか私はわからないわけでございますが、いずれにいたしましても、現在非常に厳しい状態であることにはもう間違いない。そこで改善計画を立て、特に林道あるいは造林等について一般会計からの導入も図る、あるいは機構についてもいろいろ御批判がありますけれども、正すべきは正す、こういうことで二十年後には何とか赤字にならないようにということを目指してやっているものでございます。改善計画の内容につきましては、林政審等の意見も聞きましてりっぱなものを立て、公表いたし、皆さんの御批判もいただきたいと思いますが、要は、そういった経営改善計画の内容そのものも大事でありますけれども国有林に働きます皆様方が長官を先頭に、もちろんわれわれもそうでございますが、さらに出先の御苦労願っている人々に至るまで国有林の使命あるいは自分の職場を大事にすると、こういう気持ちでしっかり取り組んでいくことによって、ぜひともこの改善計画の目的とするしっかりした経営、そして国民の期待にこたえるようにいたしたいと、こう思っておるところでございます。
  149. 下田京子

    ○下田京子君 国有林野事業改善特別措置法案の審議に当たりまして、私は今回の法案のまずその大きな柱であります二つ、特にその一つ改善計画の策定の問題と、それからもう一つ目は、その改善期間中を十年間と定めて一般会計から繰り入れを行うというふうなことが提案されているわけですけれども、これらに沿って質問をまずしたいと思うんです。  この法案の提案に当たりましてまず確認しておきたいことなんですけれども、この法案の提出はいま言った二つのことが主な内容でありますけれども、これらはいわゆる国有林の、また森林資源の持つその大きな目的といいますか、その三つの目的、一つは、木材その他の林産物の計画的、持続的供給を図る問題、二つ目には、国土の保全、また水資源の涵養あるいは自然環境の保全などの公益的機能を発揮するというもの、そして三つ目には、国有林野の活用と地域産業活動をさらに発展させていくという、こういう三つの目的をきちんと基本に置いておいて、これから本当にいい山をつくっていこうということを基本にしてお出しになっているかどうかという、その提案理由の趣旨そのものについて、まず基本的な点について大臣にお答えをいただきたいと思うんです。
  150. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) まさにそのとおりでございます。
  151. 下田京子

    ○下田京子君 そういう点だとおっしゃるわけなんですが、ぜひ私もそうあってほしいと心から願っているところです。  そういう立場から、改善計画の中身そのものについてお尋ねしたいわけなんですが、この改善計画については次の事項に定めるものとして当初は五つ、その一は「国有林野事業の運営についての基本方針」、二が「国有林野事業の運営の能率化に関する事項」、そして三つ目には「国有林野事業経営管理の適正化に関する事項」、四つ目には「国有林野事業に係る収入の確保に関する事項」、そして五つ目に「その他国有林野事業改善に関し必要な事項」、この五つが出され、それが、衆議院の段階でもって修正が出されてそれが織り込まれた。その修正された部分の改善計画の中身の一つは、「国有林野事業における造林及び林道の開設その他林業生産基盤の整備に関する事項」、こういったことが入りまして六つの内容になっているかと思うわけです。本来ならば私、この改善計画なるものがるる御審議ありましたが、今後は折を見て国会にも諮る機会を得るように努力をしたいという趣旨のお話もありましたが、基本的にはこの法案の審議に当たって、こういうものですよというのをお示しいただきたかったところなんです。しかし、それがいま出されていない状況の中で具体的にお尋ねしたいことなんですが、いま六つ話されたその中の、特に「事業の運営の能率化に関する事項」、ここのところで二点ほど具体的にお尋ねをしたいと思います。  その一点は、能率化に関する事項で五つほど御説明あったと思いますね。ちょっと言っておきますと、一つは、立木販売と素材販売の選択のあり方、二つ目には、企業的能率性に即した現場作業の遂行、三つ目に、新技術の開発導入等による生産性の向上及び労働安全性の確保の問題、四つ目には、職務意欲の向上と優秀労務の確保、五つ目に、関連事業についての見直し、こうおっしゃられているわけなんですけれども、非常に言葉として抽象的でありまして、具体的に何を言わんとしているのかということを、もう少し明確にしていただきたいと皆さん思っていらっしゃるのじゃないかと思うんです。その点でお尋ねしたい第一点は、企業的能率性に即した現場作業の遂行というのは一体どういうことを言われているのか、まずお聞かせいただきたいと思います。
  152. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 企業的能率性に即した現場作業の遂行ということで現在考えておりますことは、林政審議会の答申でも明らかにいたしておりますように、国有林野事業の事業の実行形態といたしまして、いわゆる直営直用型の事業、それから御承知のような請負その他外部に依存しますような事業のあり方がございます。この両者につきましては、林政審議会の答申にも掲げておりますように、それぞれの利点あるいは欠点というものがございまして、たとえば請負で申しますと、大変間接管理部門が雇うございますし、非常に身軽に運営ができるという利点がございますが、反面、たとえば労務の問題について必ずしも十分じゃないじゃないかという、いろんなそういう現実的な欠点、それから理論的に考えられます利点というようなものを選択する必要があるわけでございます。  この場合に、その選択の尺度といたしましては、やはりそういう両方の利害というものを調整しました上で企業的な能率性を尺度にして、たとえば役人がやっているからいいのだとか、あるいは民間がやっているのだから悪いのだとかというようなそういう選択の方法はないわけでございまして、その実際やられていることがどのような能率性の尺度ではかってすぐれているか、能率性といいますのは、ここにもございますように、たとえば安全衛生を無視して能率がいいということでは真の能率性でございませんから、そういうものも十分加味した上で、どういう事業実行形態を採用していったらよいのかというようなことを選択する方法を、この能率化に関する事項の中で定めていきたいと考えているわけでございます。
  153. 下田京子

    ○下田京子君 お話はわかったんですが、ただ現場作業の遂行に当たって形態としては現在の直用直営型と、それから外部民間への委託の問題等現にあるんですよ。ですから、それを今度現場作業の遂行をするに当たって、形式は現在あるんですが、企業的能率性に即したという形で出されているものですから、正直言って皆さん心配しているのは、これはまたまた山が荒れてしまうんじゃないかというところを心配されて、いろいろと私どもの方にも意見が出されているわけなんです。そしてずばり申し上げますと、これは秋田の五城目というところなんですけれども、そこの労働者の方々は、実は本当に国有林造林地を見直して下刈りや枝打ちやつる切りや間伐などの手入れを十分にやって補植をして不良造林を解消していきたい、そのためにいろいろと具体的な事例なんかもお出しになっている、そういう立場から心配として出されていたことがこういうことなんですね。  北海道の場合には民有林より国有林の方がいいんですが、本州ですと、荒れた山を見たらあれは国有林だと思えというぐらいに、労働者がさぼっているんじゃなくて、やりたくとも事業の予算や何かがつかない、そういう施業計画になっていないという御指摘なんですが、こんなことを言われたんですよ。第一に下刈りは一年に一回しかやらない。民有林は二回やっている。つた刈りを全然しませんから、雀も通れないような状況だ。そして、こういうことを言われたんですね。簿冊刈り、目刈り、坪刈り、頭刈り、こういうのをやっているというのです。私もわかりませんからね、聞きました。薄冊刈りって何ですかと言ったら、これは帳簿上刈ったということになっている、そう処理されてしまう。それから——笑えないんですよ。目刈りというのはどういうことかと言ったら、状況は見るけれども実際には刈らない。それから坪刈りというのは木の回りだけを刈る。それから頭刈りというのは、上だけはさっとこうやる。しかし、現にそういう状況になっているわけです。それを職員の皆さん方がさぼってやっているんじゃないんですよ。  そういう状況だからここのところを見直して、山を見直して、そしてきちんとしたそれなりの予算もつけなきゃならない、人員も配置しなきゃならない、こう言っているわけなんです。こんなことが少なくともまかり通るようなかっこうでは、いわゆる現場作業の遂行ということにはならないでしょう。そこのところの御確認をいただきたいんですが、長官いかがでしょう。
  154. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 先ほど林政部長の方から御説明申し上げましたけれども、現実問題として確かにそれぞれの現地に、直営直用でやっている現地あるいは請負でやっておる現地ございます。しかしながら、これからの改善計画を進めるに当たりましては、やはり先ほど部長から御説明申し上げましたように、企業的な能率性というものを加味しながらできるだけ能率が上がり、そして山もよくなるような方途を見出しながらそれぞれの現場で改善をしていこうということでございます。そういう場合に、どうしても改善できなければ請負が直営になることもあるかと思いますし、また直営が請負になることもあろうかというふうにわれわれは考えております。しかしながら、やはりそれぞれの現場に合った事業の仕方なり、それから能率のあり方なりというものがあると思いますから、そういう目標を立てまして、それに向かって努力をしていくというのがこの考え方でございます。  それから、いま御指摘になりました造林の下刈りについて、目刈りとか頭刈りとかいろいろある。私もそういう話を大分前に聞いたこともございます。ただ、これは金がなかったからやらなかったのか、あるいは怠けてやらなかったのか、その辺は私わかりませんけれども、もし現場にそういうような問題があれば、これは確かに非常に問題があるというふうに考えておりますし、そういうことのないようなやはり保育なり撫育なりをやっていかなければいけないというふうに考えておりますから、もし現地にそういう指摘があれば、その辺は十分われわれも悪いものは直さなきゃいけませんから直してまいりますし、また現実としてそういう問題はそうないではなかろうかというふうにも考えておりますが、万一ありましたら、十分その辺はいい山ができるような作業をするように指導をしてまいりたいと考えております。
  155. 下田京子

    ○下田京子君 いまの長官の中で、私黙って、ああそうですかと聞くわけにいかないことがありました。それは現実そういうところがあるだろう、あれば直していきたい、これは基本的に私どもも願うところです。しかし、そういう現況がなぜ生まれたかということの御認識については、それは予算がつかなかったからか、あるいは施業計画がなかったからか、あるいはそれとも労働者が、職員が熱意を込めてやらなかったからかというお話でしたが、そういう問題でとらえることについては、少なくともいまここで出したことについては当てはまらないと思います。一方で、今回の法審議に当たっても、関連できちんと請願を出しているんです。ですから、私はそごを踏まえて言っているんです。こういうふうなことで、下刈り、枝打ち、つる切りだとか間伐だとかしなきゃならない、具体的に施業としてこうしなきゃならないということで提示しているんですよ。ですから、そこは絶対もういまの御答弁は改めでいただかなきゃならないと思います。同時に、そういうことが各地域にあればということなんですが、もう次々次々事例を出していったんでは時間がないぐらいです。  ここでもあわせて出しますと、これは北海道なんですが、北海道の帯広管内を私もずっと見てまいりました。やっぱり見て聞いていかなきゃならないというふうなことで行きましたら、中標津なんですけれども、あそこは天然更新というのと、それから人工林といろいろやられていて、大変美しい山をつくっているところもあります。すばらしい山も見せていただきました。ただ、そのすばらしい山で私も驚いて、いいですねって署長さんとも話していましたら、陰の方で職員の方が、雪があってなかなか入れないけれども、これから百メーターぐらい奥に入ったらば実は問題のところがあるんですよと。残念ながらそこは雪が多くて入れませんでした。そういうところでなんですが、天然更新人工補整を要する個所ということでもって、ずうっと各班ごとに調査をしておりますね。これが一点。  それから、枝打ち作業についても、この中標津の場合なんですけれども人工林が約一万五千ヘクタール。ところが枝打ちは全然行ってない。それなので、もっとこれは良質材生産のために枝打ちが必要だという提起もしている。それから、つる切り、除伐についてもこれまた同じように非常におくれている、こうお出しになっているんです。  また、ついでにもう一つお出ししますが、これは後でと思ったんですが、長官がそういう御答弁をされたので、私も黙っておれませんから見ていただきたいと旭うんですが、先ほどお写真お示しの方おりましたが、実は私もお写真いただいているんです。これは最近のですが、ごらんになってみてください。植栽木の状況がどういうふうになっているか、つるがどういうふうに絡まっているか、それからどういうふうな荒れ状況になっているか。これは具体的に申しますと、写真を届けてくださったのは福島県の猪苗代営林署です。長官、いかがです。
  156. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 国有林にはただいま約二百万ヘクタールの造林地を造成したわけでございますが、先ほど来御論議もいろいろございましたが、私どもも誠心誠意やはりいい山になるように努力はしてまいったわけでございますが、山によりましては、やはり皆伐をしたために、その土壌の関係あるいは気象の関係、そういうことで十分な生育ができなかった面、あるいは個所によりましては確かに十分な予算がなかったためにやれなかったところもあるのかもしれません。しかし、全体といたしまして、先ほど私が申し上げましたのは、いろいろな原因があってそういうものもあったであろうと。しかし、われわれとしては、これから一般会計からの金もいただいて真剣にいい山づくりをしようということでいまこの法律の御審議もいただいておるわけでございますし、そういう面から、悪い山につきましてもその調査をいたしまして、計画的にこれを立て直そうということで段取りをしておるわけでございます。したがって、御指摘になりましたような悪い造林地が部分的にはあることは私も十分認識しておりますから、それらについては計画を立てまして、十分いい造林地になるように今後努力してまいりたいというふうに考えております。
  157. 下田京子

    ○下田京子君 造林の問題については、基本的なこれからの方向としては、いい山をつくりたいということは当初御確認いただいているんですよ。ただ、それが言葉であって、具体的にどうかという点での御認識が甘いと思うんですよ。部分的には荒れた山もあるでしょうという、そこの認識が間違っていますよということなんです、私。全国の中のもう数カ所ということじゃないんです。これは他の委員の皆さんからも指摘しているんです。私がいま挙げた例もそういう意味で挙げているんです。ですから、この認識を変えていただかなければならないんです。  その点で申し上げますと、実は本庁の林業労働者の方からもお手紙いただいております。どういうお手紙かと言いますと、これはちゃんといただいているわけですが、千代田区の霞ケ関ですからここです。本庁本部の方から出されているやつでも、不成績造林地ということで林野庁としては一万五千ヘクタールというふうに言っているけれども、実際に組み直してみると、職員の皆さんの調査でも四十万ヘクタールあると、こう言っているんですよ。だから、私は、これを四十万ヘクタールがどこどこの営林局のどこでどうだということいま言えるあれでもありませんし、またどうかということを言うつもりもありません。でも、こんなに格差があるということですから、御認識を改めてほしいんです。いわゆる山荒れの状況がいかにひどいかという、部分的じゃないのだということなんです。そこのところをしっかりと押さえていただいた上でのこの改善計画を出さなければ、最初に皆さんども一致して願った山づくりというものは達成できないのじゃないでしょうかという心配をしているんです。いかがでしょう。
  158. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 林野庁におきましても、造林が十分成績を上げていない林地につきまして、先ほど来御説明申し上げておりますように一万五千ヘクタール、手入れがおくれているところは三万ヘクタールというふうに把握をしておるわけでございます。しかしながら、私どもといたしましても、これからの国有林改善するに当たりましては、やはり造林地がいい山に育たなければ、国有林は将来二十年先にも改善の目標が達せられないわけでございますから、不良造林地等につきましては、今後やはりこれからの改善計画の重点的なあり方として十分認識して対応してまいりたいというふうに考えております。
  159. 下田京子

    ○下田京子君 十分認識を新たにして対応したいというお話ですからこれ以上申し上げるつもりもありませんが、私は、改善計画の柱の大きな基本というのは山づくりだと思うんです。そこの御認識は皆さん同じだと思います。その山づくりがいままでどうだったのかという、率直な見直しがまず必要なんだということなんです。そして、いろいろと御提言があれば、それに見合った形での調査が必要だろうと。その上に立って、その山をつくるのにはどうかというふうな形での施業計画なり現場作業のあり方というものを組み立てていく必要があるんじゃないかということなんです。  くどいようですが、そういう立場で、決して手抜きというような皆さん心配されていることがないように、よく各営林署あるいは担当区、事業所等からの意見等もくみ入れて、そしてしっかり見直しをした上での造林計画なるものをお立ていただきたい、このことを希望したいと思います。
  160. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 山をよくすることは、先ほど来申し上げましたとおり、私どもも当然それが国有林の使命でございますし、国有林には営林局、営林署、担当区それぞれございます。したがいまして、そういう職員に、先ほど大臣からお話しいただきましたように十分その辺の考え方を徹底いたしまして、国有林の山が国民から批判を受けないような山づくりをすることに努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  161. 下田京子

    ○下田京子君 次に、事業運営の能率化に関する事項のもう一点で、これまた確認しておきたいんですが、関連事業についての見直しということなんです。この関連事業の見直しということでこれまた皆さん心配されているのは、収益の上がらない事業はやらないんじゃないかと、そんなことで心配されているんですが、決してそのようなことはないと言明いただけますでしょうか。
  162. 石川弘

    政府委員(石川弘君) これは収益が上がる上がらぬということもありますけれども国有林がみずからの事業の中でどのようなことをやっていったらいいかというもう一つ観点がございます。  たとえば、過去におきまして、国有林の土地を使いまして肉牛の放牧ということを実験的に国有林野経営の中で行っていたわけでございますが、この種の事業につきましては実験のある種の成果を得ておりますので、これをさらに一般の民間の方々に国有林をお貸しするという形で振りかえていったらどうかというようなことで、五十三年度予算におきましてもそのような方向づけをやりまして、畜産局の予算にもそのような予算を計上してあるわけでございますが、これはいわゆる収支問題ということだけではなくて、国有林の本来的使命あるいは現在置かれております国有林状況というものを考えた上で関連事業の将来のあり方を検討をしたい。もちろん、こういうことをいたします際には、林政審議会等の御意見も伺った上でその方向づけをするわけでございまして、そういう趣旨でございます。
  163. 下田京子

    ○下田京子君 関連事業の見直しは、一つ国有林の使命と、また現在置かれておる状況とから見ていろいろと林政審議会の意見も聞きながらと、こうおっしゃっております。それは型どおり御答弁いただけばそうなるんでしょうが、ここで大事なことは、使命をまず基本に置くのか、状況が先かということになるわけです。  いま大変な状況であることはわかるんですが、問題は、そこでもって使命が忘れられないようにということなんです。そして、先ほど申しましたが、企業的能率性に即した現場作業のあり方とも関連するわけなんですけれども、安易に国有林がいま大変だということで、それじゃ民有林の方のに、いわゆる森林組合ですか、そちらの方にというふうなかっこうに安易に物事を処理されるといいうことは、これはやっぱり決してされるべき問題ではないと思うんです。やはり基本的に長年続けてきた国有林、それを責任を持って国がやっていくという立場、同時にまた、民有林との協力ということもあわせてぜひこの関連事業を行っていただきたいというふうに思います。  その次に、経営管理の適正化に関する事項のところなんですけれども、この経営管理の適正化に関する事項のところで三つほどお述べになっているようですね。一つは、事務処理の改善合理化、二つ目に、事業規模に対応する要員規模の適正化、三つ目に、組織機構の整備改善ということなんですが、この要員規模の適正化と組織機構の整備改善、ここのところがやっぱり大きな議論になるところだと思うんです。当初申しましたように、本当に森林資源国有林の使命から考えていった際に、どういうふうな形でこの問題を処理していくかということで、大臣はすでに組織機構の整備改善等については、現在ある十四局を、北海道については五局一局で、しかし中身は変えないようにしていきたい、こう言っておりますし、また署の問題については、三百五十一署あるものをこれは一割ほど統合整備の方向でやりたいと、ただし住民の皆さんの納得をいただいてと、いろいろお話はあるんですけれども、ここで私ずばりお聞きしたいんですが、その方向はやはり変えないのか。  それから同時に、いま一方で地域住民の皆さんの納得いただきながらと、こう言っておりますけれども、この組織機構の整備改善のための具体的な検討がされていると思うのですが、いま林野庁・農林省が考えている整備統合する、そういう対象になる営林署はたとえばどんなところを指して言っているのか、具体的などこどこ営林署ということじゃなくて、どういう条件下にあるところをそういう対象にしているのか、まず基本的なところをお尋ねしたいと思います。
  164. 石川弘

    政府委員(石川弘君) 事業の規模に適応した要員規模の適正化でございますが、これは先ほどもお話をいたしましたように、やはりかなり事業量が大きな時代伐採量を申しますと二千三百万立方というよう伐採、その裏側の造林その他の管理をしていた時代があるわけでございますが、今後最も低い水準では千三百五十万立方程度の伐採、もちろんそれに付帯しますいろんな造林管理相当な業務がございますけれども、そういう事業がある程度縮減の過程に入ってまいっておるわけでございますが、そういう事業量の推移と、特に間接要員等の動きを見ますと、なかなかそう簡単には縮減をいたしてきておりませんが、こういうものはやはり間接管理部門をなるべく身軽にして事業の実効が上がるようにということは、これは行政庁が行いましても民間が行いましても当然必要なことかと考えております。  そういう面で、要員規模が事業量に見合うように持っていきたいわけでございますが、これを強制的な退職手法というふうなことを考えておるのじゃございませんで、昨年末協定が成立いたしております高齢者退職、こういうものが円滑に遂行されまして、さらに新規採用等の要員管理を適正に行いますならば望ましい規模に持っていけるのではなかろうか、そういうことをここで考えているわけでございます。  次に、組織機構の整備改善でございますが、法律的な措置が必要な営林局につきましては、昨日御可決いただきました設置法で行われるわけでございますが、その他営林署あるいは現場の事業の部門につきましては、まず現場の事業の部門でございますが、これは事業を実行するのに最もふさわしいということが何よりのことでございますので、事業実行の面から必要なものは、当然これは場所あるいは機構そういうものを考えながら整備をするわけでございますが、営林署につきましては事業実行の面と、それからどちらかと申しますとこれも間接管理と申しますか、そういう事務管理というようなものがございます。  そういう事務管理といったような面につきましては、営林署が設けられました時代と現在とではかなりの事情が異なっておりまして、交通手段その他におきましても数段の進歩があるわけでございますので、事務処理の合理化をやりながら、そういう管理部門的なところについて何らかの整備改善ができないかということが、おおむね一割程度の営林署の統廃合という形で、行政監理委員会からの報告の中にも決められておることでございます。そういう考え方でやるわけでございますから、営林署があります国有林の事業の状態がどのように推移するかというようなこと、それから周辺にありますようないろいろな行政機関その他との連絡というようなこともございます。  そういうような他の行政機関の組織の状態の問題、これは実は営林署は長い間従来どおりの姿にございますが、それがございます市町村自身がかなりのテンポで市町村合併等を進めておりまして、そういうところにも地域の行政機関とのいろいろな連絡というような問題も生じております。そういう行政機構上の連絡あるいは調整といったことの問題、あるいはその周辺における交通機関の整備の状況その他、主力としましては事業がどうなるかということが一つでございます。それと、管理部門の合理化を伴いましても地元に御迷惑がかからないような状態にできるかどうか、そのようなことが判断の基準となりましてやるわけでございます。  具体的な機構の整備につきましては、再度申し上げておりますように、地元にも大変関連します役所でございますので、地元の意向等につきましても十分御相談をしながら進めていきたいと考えておるわけでございます。
  165. 下田京子

    ○下田京子君 強制的な整備統合ということはしないと、まずそのことは御確認いただいて、しかしなおかつ方向としては、いまのお話ですと四つの項目みたいなかっこうで出されましたが、事業の状況だとか、管理部門がどうかとか、あるいは他の行政機関との関係がどうか、そしてまた交通の便がどうかなどということを出されましたが、そういうふうな条件の中でできるだけ合理化していきたいというふうなことですけれども、前に戻って、住民の、あるいはまたそこの行政機関なり、あるいはそこに働く職員の皆さん、どう見ても事業分野だけで見ては、収支から言ったらば保安林が七割も八割もあったりして、とてもでないけれども事業という面から見たらばこれは統合されてしまうのじゃないかと心配されているわけなんですが、決してそれだけから見ないで、最終的には住民の納得をもってやっていくということについては、再度御確認いただけるかどうか。  具体的に出しますと、実はもう東北各地で秋田だったらばここのところかな、青森はここかな、福島だったらば猪苗代がどうも事業面から言って危ないみたいだということでもって、御承知だと思いますが、局長さんのところにも町長さん初め議会も住民代表もみんな行って、ぜひ廃止しないでほしいと、こう言われているわけです。これは具体的な事例ですが、そういう状況の中で、これはもう本当に一方的なかっこうで強権発動はしないということだけ言明いただけるかどうか。
  166. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) ただいま林政部長から御説明申し上げたわけでございますが、営林署というものが国有林を管理経営するだけではなくて、先ほど申し上げましたように、その使命の中に、やはり地元の振興等というものも国有林の大きな使命でございます。そういう観点から、いろいろな因子、条件を十分判断して私どもも対応してまいりたいというふうに考えておりますし、その場合地元にも十分御説明し、御理解いただけるような最善の努力はしてまいりたいというふうに考えております。
  167. 下田京子

    ○下田京子君 質問に答えてください。強権的なことはしないかどうかなんです。
  168. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 私どもも、強権的な発動をいたしまして営林署の統廃合をしようというふうには考えておりませんが、あくまでも地元の御理解と御協力をいただけるように、十分な努力はしてまいるつもりでございます。
  169. 下田京子

    ○下田京子君 まあ強権発動はしない、がしかし、がずいぶんついているようですけれども、大変微妙な言い回しですが、事業部門だけで見ていけば、そこの営林署の状況によっていろいろと違う点が出てきますから、画一的にそれは見ない、むしろいい山をつくっていくということになれば、きのうの大臣答弁もありましたけれども、むしろ局ということについては、直接これは困るという意見もなかったが、署は地域としっかりいろいろと結びついているというお話もありましたね。ですから、署の一割削減の方向ということについては、私どもは幾ら住民の納得云々ということについても、この方向がいいというふうには認められないんで、そこのところはよく踏まえてやっていただきたいというふうに思います。  その絡みで具体的なことでお尋ねしたいんですが、同じところで恐縮ですけれども、猪苗代で、種苗の事業についてということで、実はアズマスギとか表磐梯のアカマツとか吾妻のブナなどの種苗育成と品種改良の研究を行ってほしいと、こう言っているんです。こういうふうな御要請については、こたえていけるような体制になっているかどうか、そこのところをお尋ねしたいわけです。
  170. 須藤徹男

    説明員須藤徹男君) 林木の品種改良事業の問題でございますが、この事業は昭和三十三年に開始されておりまして、現在では国立林木育種場、五本場、三支場を中心にいたしまして、従来から精英樹の選抜育種事業というのをやっております。また、気象害抵抗育種事業というのを実施してきておるわけでございます。この精英樹の選抜育種事業におきまして、いま先生からアズマスギとかアカマツとかというようなお話がございましたけれども、この中からも精英樹が選抜されておるわけでございまして、現在この育種場におきまして、アズマスギにつきましては、福島県において多雪地帯の造林用の妥当性を検討するために、さし木増殖を行いまして現地適応試験を実施しております。  それからまた、三十三年度から実施しております精英樹選抜事業によって、アズマスギ系統の精英樹三本を選抜いたしまして、育種素材として国立関東林木育種場に保存いたしまして、遺伝的特性を調査中でございます。つまり次代検定林の調査をいたしております。  また、表磐梯地方のアカマツにつきましても、精英樹選抜育種事業によって二本を選抜いたしまして、実用種子を生産するための育種母樹林、これは採種園約二十ヘクタールでございますが造成いたしまして、一般造林用に供する体制をとっているところでございます。
  171. 下田京子

    ○下田京子君 いまの具体的なことについては、現地適応のためだとか、あるいは調査中であるとかということで一応対応をいましてしる あるいはしようとしているというお話をいただきましたが、私が申しましたのは個別事例ですが、全国的に見れば、こうした形での品種の改良あるいは研究を行ってほしいという御要望はたくさんあるかと思うんです。問題は、そういった研究体制がどうなっているか、あるいは民有林も含めて林業の普及のための指導がどういうふうになっているかというところも、皆さん心配されているところだと思うんです。  その点でお尋ねしましたところ、いただいた資料を見ますと、どうも全国的に見ても、福島県とちょっと違うんですけれども全国的な状況で見れば、林業の専門技術員、それから林業改良指導員、どちらも定員削減ということで、第一次、第二次、第三次、第四次まで含めて、年々減ってきているという状況が明らかになっているわけですね。第一次と第四次のところをちょっと比較してみたいんですけれども、四十五年当時、林業専門技術員が五百人だった、これが、若干後でふえたところもありましたが、現在は四百九十六人で、これは四人しか減ってないと言えばそうかもしれませんが、ふえるんじゃなくて減ったと。それから林業改良指導員、これまた二千五百三十六人四十五年当時いた。現在は二千二百五十三人、またこれは減っているわけですね。いまのような状況ですから、むしろ私は一般的な定員削減というんじゃなくて、こういう部門というのは本当にこれからいい山をどうやってつくっていくかという樹種のことも含めたり、施業方法も含めたりしていく上では、私は安易にこういうことがやられたんでは、体制そのものがしっかりしているというふうには言えないんじゃないか、その点を指摘しておきたいと思うんですが、いかがでしょう。
  172. 須藤徹男

    説明員須藤徹男君) ただいまお話ございました民有林におきます林業専門技術員及び林業改良指導員につきましては、定員削減の結果、いま先生の御指摘数字になっております。  そこで、このような情勢の中で、国の定員削減でございますからやむを得ないわけでございますが、効果的な林業普及指導活動を展開するために、従来から普及指導員の資質の向上を図るための研修の実施でございますとか、あるいは集合駐在によります効率的な普及活動の推進でありますとか、巡回指導のための機動力の整備でありますとか、集会開催方式の創意工夫などを加えまして、効率的な普及活動を実施しておるのでございます。  また、昭和五十三年度からは、林業関係者にとって身近かな相談員といたしまして指導林家活動促進事業、つまり指導区に一家ずつ配置いたします指導林家活動促進事業でありますとか、あるいは中央でございますけれども、林業コンサルタント養成講習事業というようなものを新たに実施することにいたしまして、いま言いましたような定員削減に対応する、あるいはそれ以上の効果を推進していこうということで努力をしておるところでございます。
  173. 下田京子

    ○下田京子君 事業名を挙げて努力の状況を認めてほしいというお話だったと思うんですが、問題は、そういうことでいろいろと研究されていると思うんですが、基本的に今後また定員削減の方向ということでは、これはいかにいろいろ努力しても、絶対的な数が不足するというような状況が生み出された結果においては、体制としては十分とは言えない状況になると思うので、そこの点は指摘しておきたいと思います。  次に、やはり具体的な点なんですが、治山事業についてお尋ねいたします。  最初は、この治山事業の問題で、やはり猪苗代の例でお話ししたいんですが、ことし二月の二十七日付でもってここに働く林班の皆さん方がいろいろと指摘をした。そうしたらば、融雪時に山側ののり面で七カ所、約九ヘクタールの崩壊が起きた。いろいろと調査してみたら、その崩壊部分だけじゃなくて、山全体にわたっての治山工事というものを実施しないと大変なことになるよという、警告を含めた形での当営林署に対する署長さんへの提言をしているんですね。署長さんはそれを受けて局長の方にお出しになっているわけですが、そのお出しになったのは、被害報告というかっこうでの指摘だけされているわけなんですが、これは個別のことだからおわかりいただけると思うんですが、こういう形で実は全国各地でいろんな指摘がされていると思うんですね。こういう治山事業のあり方ということについて、まず基本的に今後どういうふうに進めようとしているか、この具体例も含めてお答えいただきたいと思います。
  174. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 治山事業につきましては、先生十分御存じだと思いますけれども、治水を含めました五カ年計画というのを立てまして実行いたしております。国有林とてもその中に入っておるわけでございまして、ただいま五次の五カ年計画を遂行中でございますが、いまおっしゃいましたようなそういう融雪災等が出ました場合には、当然緊急治山事業というものもございますので、そういう内容で対応してまいりたいと考えておりますが、私どもも治山卒業というものが国土保全の上からも非常に大半なことでございますし、そういう意味から五カ年計画を立ててその遂行に当たっておりますが、国有林におきましても、この五カ年計画に沿いまして治山事業の安定を図ってまいりたいというふうに考えております。
  175. 下田京子

    ○下田京子君 いまの具体例については、これもどうぞ写真をごらんになってみてください。  五カ年計画を立てているということなんですが、第一次から第四次、そして現在は五十二年から五十六年に向けて第五次の治山事業計画をお立てになっておりますが、その進捗率を見ますと、かなりやっぱり問題があるように思うんです。第一次の場合ですと、当初の計画に際して国有林は一二五・一%いった、民有林は一一五・一%いった、第一次は昭和三十五年から三十九年にかけて大変いい成績だと思うんです。ところが、これが第四次になりますと、四十七年から五十一年の間に国有林で七二・三%、民有林は九一・一%、民有林国有林がどうこうということで相対立させる意味じゃありませんけれども、全体としても非常におくれている中で、国有林が特段にまたその進捗率がおくれている状況がうかがわれるわけですね。  こういう状況が今後また続くとなれば、大変なことになると思うんです。私もいろいろ勉強させていただきまして、この「日本林業年鑑」ですか、ことしの「災害編」のところを見ました。五十一年で発生している「林地荒廃総復旧計画及び被害状況」林地にかかわる部分での被害状況ですね、これを見ますと、五十一年だけでとうとい人命が何と百四十六人も失われているんです。それから、負傷した方が三百五十二人もおります。そして家屋が全壊が二千三十戸、半壊が三千二百七十戸、道路等、これまた一つ一つ申し上げると大変な数になります。公共施設等においても、子供たちが行っている学校そのものでも十カ所。それから、農地等の面積も大変な数になっているという状況が出ているわけです。  ですから、私が指摘するまでもなく、いかに国土保全という立場からこの治山事業というのが重要かということ、これは御認識を改めていただきたいというふうに思います。そういう点で、今後の治山五カ年計画をさらに力を入れて具体的にやっていただきたいと思うわけですが、その決意のほどをお聞かせください。
  176. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 第五次の治山五カ年計画につきましては、林業関係全体で一兆三百億円という総計画額にいたしましてこの遂行を図っておるわけでございます。国有林につきましても今後治山を重点的にやっていきたいということで、五十三年度の予算におきましては、従前以上の一般会計からの繰り入れという形で六八%を超える一般会計からの導入をいただいて治山事業の強化を図っておりますし、私どもといたしましても、今後治山事業につきましては、十分いま申し上げましたような精神で対応してまいりたいというふうに考えております。
  177. 下田京子

    ○下田京子君 対応していきたいという御決意はいただいたんですが、ここで問題を指摘しておきたいのは、なぜ国有林の治山事業がこういう形でおくれてきているかということで、これは現在は五十三年度において一般会計から六八・六%入れるとおっしゃっておりますけれども、過去の状況を見ますと、基本的にこうした事業も特別会計といういまの事業の中でやってきているというふうなところにやっぱりおくれがあったのではないか、そこのところを私はしっかりと指摘しておきたいと思うんです。そして、本来ならば、こうしたものは公共的なものです。災害を未然に防ぐという点で、これは大いに基本的に国の施策として、これは一般会計も入れてやっていかなければならないということは当然であるというふうに思うわけです。  次に、具体的な例でまたお伺いしたいんですけれども、それは国有林材の販売問題についてなんです。御承知だと思うんですけれども、現在非常に外圧も、それから日本の経済事情という内圧も含めて木材あるいは木製品関連業者というのが大変困った状況に追い込まれていると思うんですね。その倒産件数が、一年間で一千件を超えるというふうな状況であります。実は、これは昨年の暮れだったと思うんですけれども、秋田の方に行きまして、秋田といえば本当に日本でも有数の木材県ですから、そこに行きましていろいろ聞きました。そうしましたら、こんな状況が訴えられたんですね。  その第一は、こういう木材不況という状況の中で大変な在庫も抱えている、輸入というふうな状況もあってなかなかさばけない。にもかかわらず、営林署の方はどうも会計、ふところぐあいがよろしくない。だから買ってもらわないことには困るというわけで、業者に対して指定量だけ何とか購入してほしいと、こうおっしゃられるわけです。業者の側は、指定量を購入しないとどうも来年から枠がなくなってしまうんではないかという心配があるわけですね。そういうことがないようにということで、これは直接長官のところにもお願いに来たと思うんですけれども、今後ともこういうふうな形で起きないとも限りませんから、これは十分に配慮しなければならないことだと思うんですが、どうでしょう。
  178. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 国有林が材を販売いたします場合に、やはり地元の業界につきまして、地元の業界の工場原料として安定的にある一定量を供給する使命がございます。したがいまして、そういう地元工場につきましては、随意契約ということで工場原料を買っていただいておるわけでございますけれども、いま先生指摘になりましたように、買わないから来年度の随契量がなくなるということではなくて、やはり国有林に対する依存度あるいは個別企業のそれぞれの経営の状態、そういうものを勘案して私どもはそれぞれの年の随契量等決めておりますので、今後ともそういう形で国有林としては随意契約の販売をしていきたいというふうに考えておりますので、いまおっしゃいましたようなことだけで判断するものではございません。
  179. 下田京子

    ○下田京子君 随意契約のことについては、後で会計のあり方、そのところでお話したいと思うんですが、基本的には、いま私が話したようなことだけでいわゆる購入量を押しつけるようなことはしないという御確認をいただいたかと思うんですが、次に、その際に支払う販売代金の問題なんです。これは現在は延納制度というものがとられている、そういう習慣があると思うんです。ところが、なかなか延納制度そのものも活用しない。そして、現金で購入をと強く要請されている。実はことしの二、三月あたり、秋田県においてもまた青森等においても、国有林の林材を購入した際のその支払いをどうするかという点での特別融資制度を県が設けたというふうなことが出たわけです。これは御承知でしょうか。
  180. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 存じております。
  181. 下田京子

    ○下田京子君 このことについて言ういうふうにお考えになるかということなんですが、私どもの方ではいろいろと皆さんの意見も聞いてみましたら、これは日本林業調査会会誌の五月号なんですが、元林野庁の業務部長をなされていた辻さんという方が指摘しているわけなんです。どういう指摘をしているかというと、国有林の延納制度の運用の変化による影響というのは、きわめて業界にとって大変な時代になっている。ですからいま不況だ、そういう不況に追い打ちをかけていって、しかもそれに見合って、今度は地方自治体が融資制度をつくらなければならないというふうなかっこうで、実はそこに働く関連労働者の皆さん方も倒産に近い込まれて、あしたからの暮らしにも事欠くという状況が出てきているわけなんです。こういうことは厳に戒めなければならないと思うわけなんですが、こういう延納期間の短縮をやめるかどうか、ここをお尋ねします。
  182. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 昭和五十二年度国有林野事業の財政上非常に厳しい資金繰り等もございまして、一部の販売代金につきましては、地元の業界の皆さんの御理解と御協力をいただきまして延納期間の短縮あるいは一部現納という措置を特にお願いしたわけでございます。これは将来にわたりまして買い受けの意欲を減殺することやら、あるいは特に最近のように木材関連業界不況の段階では非常に心苦しい面もあったわけでございますが、今後の運用につきましてはこういう問題を十分踏まえまして、極力事業全般につきましての改善合理化をもちろん進めるわけでございますが、そこの一環といたしましてこの会計の資金繰り等もいろいろ改善を図る一方、買い受け人の資金事情等に十分配慮するような新しい金融措置等も検討してまいりたいということで、現在検討を進めておる段階でございます。
  183. 下田京子

    ○下田京子君 すべて関連する地域皆さん方の御理解をいただいてというふうに、こう言われるわけなんですが、その御理解という意味が大変にいろいろありまして、やはりこちらのあれで、国が言う方向で納得しろという形での御理解と、それから実際いまだれから見ても地域皆さんが困っていると、そちらに理解を示すかと、こうあるわけなんですが、こうした大変な状況の中では、十分に配慮して対応されたいということを再度要請したいと思います。  ただいまずっと改善計画と、それらに関係するいろいろの問題点について、具体的なことも含めて御答弁いただいてきたわけなんですけれども、私はここで最後に大臣に御答弁いただきたいんですが、今後改善計画を労働組合や職員の皆さんと十分協議するというのはもうこれはあたりまえのことであって、最も必要なことは、国会での承認事項において具体的に責任を持ってこうやっていくというふうな、そのぐらいの態度があってしかるべきではないかと思うんですけれども山づくりに向けての今後の大臣改善計画をいかにして進めていくかという基本的な姿勢、態度、そこをお伺いします。
  184. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 改善計画につきましては、審議会の意見も十分聞きましてよりよいものをつくりたいと思います。ただ、国会の承認事項ということになじむものであるかどうか、専門家の皆さんではございますけれども、法律の示すところによって技術的に事務的にいいものをつくって、もちろん国会その他に公表いたしますから、皆さんの御批判はいただきますけれども、承認がなければできないという仕組みはなじまないものと思っております。いずれにいたしましても、国会の意見等も聞きながらよりよいものをつくってその目的を達成したい、こう思う次第でございます。
  185. 下田京子

    ○下田京子君 国会の承認がなじむかどうかということがあったわけですけれども、私がそれを申し上げますのはなぜかというならば、改善計画が必要である、同時にその期間はというこの二点のお話が御提示になっただけで、資料はどうかと申していろいろお聞きすれば、一応五つの柱は出されたけれども、いろいろと聞けばまだ検討中だとか、あるいは林政審議会のお話を聞いてだとかというふうな形で、今後本当に二十年たったらば何とかなるだろうという話はしているんですけれども、こういう論議をする際には、いまこうこうこういう事情でこんな形でやっていこうというものが、もっと詳しく責任を持って出されるべきではないかという、その点から私は申し上げているわけなんです。もっと具体的なものをお示しいただかなければならないんではないかということを、指摘しておきたいと思います。  二番目にですが、大事な点は、いかにいい改善計画を立てるか、中身をどうかということと、あわせてそれをつくっていくのはやはり労働者だと思います。その労働者の問題ということでもって第一にお尋ねしたいことは、これも新聞等の報道によりますと、公共企業体等基本問題会議の中で意見書が出されている。このことについていわゆる政府として、林野庁として、大臣をどういうふうな態度で臨まれるおつもりなのか。
  186. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 公共企業体等の基本問題会議で、現在最終段階の取りまとめが行われておるということは私どもも伺っておりますけれども、その内容についてはまだ私ども十分承知いたしておりません。ただ、昨年十月に国有林部会におきまして、農林省の意見というものを聞かれたことがございます。林野庁といたしましては、昭和四十七年の林政審の答申に即しまして、国営の企業でございます現在の国有林の国営経営形態というものを維持して経営改善に努めていくことが必要かつ適切であるということを、私どもはこの部会で説明したわけでございますが、政府の方針といたしましては、やはりこの基本会議の結論を待って決定されることになるのであろうというふうに考えております。私どもといたしましては、林政審の答申の趣旨に沿いましてこれまでの国有林野事業経営改善、合理化に努めているところでございますし、また林政審の答申の尊重を基本といたしまして、妥当な方向で政府の方針が決定されるように対処をしてまいりたいと思います。   〔委員長退席、理事山内一郎君着席〕
  187. 下田京子

    ○下田京子君 公共企業体等基本問題会議のところについての内容をよく承知してないというその意味のことは、具体的に政府の方にはまだ提出をいただいてないというふうなことかと思うんですが、中身は新聞報道でおわかりだと思いますね。こう言っています。「現行の国営形態維持が適当と考える。しかし、作業部門の効率化を図るため、基本的には現行の直雇方式を請負方式に改める。請負方式に切り替えるに当たっては、要員の自然減を待つだけでなくて、職員の転退職の促進等、組織機構の簡素合理化を積極的に進める一方、請負事業体の指導、育成に努めることとする。」、こういうことを言っているわけなんです。  これをこのままやっていくということになりますと、先ほどもいろいろ議論がありましたようですけれども、自然退職だけでなくって、一方ではやっぱりさらに人減らしというようなことがやられていって、実際口では山を守ると言いながらも荒れていくような結果になるんじゃないかというところを心配しているわけなんです。同時に、ここで指摘しているような方向で仮にやっていく場合、一体どうなのかということになるわけですが、どういう点で問題かと言えば、一つは労働力の確保のことなんです。その労働力の確保の問題、これは請負か直用かということについては安易に結論は出しませんと先ほど御答弁いただいていますからいいんですが、労働力確保ということをどういうふうに見ておられるのか。
  188. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) ただいま労働力の確保の問題の御指摘があったわけでございますが、先ほど来御説明申し上げておりますように、直営直用でやる場合の利点と、また請負事業でやる場合の利点と、あるいはそれぞれの欠点といろいろあるわけでございまして、またそれぞれの地方に、民有林が非常に多くて民間労働力もあるところ、あるいはまた民間労働力のないところもございます。  したがいまして、私どもといたしましては現在やっておりますそれぞれの事業形態がございますし、そういう現在の事業形態をさらにいい方向で伸ばすという形で国有林の事業は進めてまいりたいというふうに基本的には考えておりますが、林業全体の労働力の確保という問題になりますれば、やはり質の低下という点もございますし、そういう点から今後やはり一般的に林業労働力というものが確保できるような方途をただいま民有林の推進、振興という面からも私どもといたしましても積極的に対応しなければいけないというふうに考えまして、それなりの施策を講じておるわけでございますが、今後ともそういう労働力の確保、これが林業推進の一つの柱でもございますから、この面につきましても、私どもはこの事業の推進と同様な気構えで対応してまいるつもりでございます。
  189. 下田京子

    ○下田京子君 労働力の確保が可能かどうかという質問をしているわけです。精神的な御答弁だけをいただいているんじゃないんですよね。それから、ただ言葉じりをつかむようですけれども、費の低下、質の低下ということですが、ある一定の年齢になったと、そのことをとらえて即質の低下ということについての御認識、これは問題があると思います。そこの点は私は指摘しておきたいと思う。可能かどうか、労働力がどうなのか。
  190. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 私が申し上げましたのは、それぞれの地域の実情がありまして、非常に労働力の確保の可能なところもあるし、むずかしいところもあるであろうということを申し上げたわけでございまして、したがいまして、やはりそれぞれの地域国有林なり民有林なりがこれから推進するためには、それぞれの地域の実態に合ったような形で労働力の確保を図っていかなければいけないというふうに考えておりますが、国有林につきましては、いま申し上げましたように、直営直用でやっております作業員につきましては通年雇用という体制をとりまして、十分な安定した形で仕事に従事していただけるような方途を昨年末決めたわけでございまして、そういう形で今後とも労働力の確保を図ってまいりたいというふうに考えております。
  191. 下田京子

    ○下田京子君 抽象的に地域地域に労働力の確保を図っていきたいというお話をいただいても、全体としてどうなのかということはつかんでいらっしゃるんですか。私、文部省の学校基本調査報告書で見てみました。中学校卒業、高校卒業とそれぞれ何人で、そのうち農業に従事する人が何人で、林業がどのぐらいなのか、割合はどうなのかというところを調査資料によって見てみましたところが、どういう状況かといいますと、実は五十二年段階では、数字全体申しますと大変ですから比率でいきましょう。農業に従事したいと答えている人は、中学校、高校卒業の全体総数の中で四・四七%なんです。林業に就職した人が〇・〇九一%です。  これが、五十一年の三月で見てみますとどうなるか。農業に就職した人、これが二・一四%です、全体の卒業者の中で。それから、林業に就職した者が〇・〇一%なんです。で、その数、四十二年から五十一年までの十年間の中で林業に就職した者が、中学校卒業で二千百七十名、高等学校卒業が六千八百二十九名なんです。合計でも全国で八千九百九十九名です。こういう状況の中で、労働力の確保といってもこれは容易ならざる問題なんです。そこのところをどう見ているかということを、私は指摘しているんです。それが具体的なものをつかんでないとなれば、これは非常に問題が多いと思います。しかも、労働災害もまだ出ていると、いろいろな改善なんかも叫ばれているという状況なんです。このことについて大臣、どういうふうにいまの数字を見てお感じになりました。
  192. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) いまの御指摘数字は、私の聞いたところでは林業者になる希望があるかないか、農業者になるか、林業者になるかの希望だろうと思う。今日の森林事情は非常に厳しくもありますし、また長期的でないと収益性もないというところから、かなり希望者が少ないということは事実だと思います。しかし、いま議論のありますのは、国有林の直営がいいのか請負がいいのかという、その場合の林業労働者が確保できるかという材料とは直接私は結びつかないと思う。私の見るところでは、少なくとも直営について今度の企業体会議が非常な批判を加えたのと同じように、国民の間からもいまのような直営ではいかないという批判があることは事実だろうと思うのです。私は、労働力の問題もあろうと思いますが、請負にしたからといって国有林の事業に支障あるとは思わない、正直言って。あちらこちらで仕事をしたい、特に北海道あたりでは林業業界がもっともっと請負にしてくれ、幾らでもやりますという声が非常に強いんです。強いのでありますが、直営というものも見直してしっかりしたものにして、そして国営のいまの形態を進めていこうと。  特に、山に働く皆さんを生の首を切るということは気の毒なことであり、われわれ一緒に働いてきた者として耐えられない、いかに公共企業体の方が答申があっても、政府が最終的にどう決定するかは別として、農林省といたしましては直営直用というものを従来の姿でやっていきたいし、ただ、やっていきたいけれども、いままでのような批判のあるような直営直用であってはこれは国民的に申しわけないことである。だから、寄り寄り直営直用あるいは請負というものを改善をしていかなきゃいかぬ。いままでのようなことをやっていけば、公共企業体の基本問題の会議から意見の出るように、国民皆さんから批判があるだろう。でありますから、私どもとしては、いまの問題会議から答申がありましても、従来の直営は大事にしていきたい。それを労働力があるからないから、やるのがあたりまえだと言われても、にわかに私は賛成できないところでございます。
  193. 下田京子

    ○下田京子君 いろいろと私の質問に対してまとめていろんな角度から御答弁があったようですが、一つは、直用か請負か云々の問題については私はいま直接質問したわけではなくて、もうこれは大臣の御答弁いただいているところなんです。いずれにしても、いろいろ見直すということについてはだれも反対はしていない。安切にそれを請負に持っていくということについては問題がある。大臣もそこはそういうふうにはしないと、こう言っているわけです。ただ、重要なことは、どんどんどんどん森林地帯と言われる山村地域において過疎が進行している。ですから、いま私が指摘したのは、確かに直接云々ということになれば、それは関係ないとおっしゃればそうでしょうけれども、若手の人たちが林業に対してどう見ているか、あるいは現況がどうなっているかという点でのこれは大事な指標になると思うんです、私は。全く関係がないということではないと思う。賛成できるとかできないとかじゃなくて、現実こうなっていますよということなんです。  あえてまた言いますと、長野県下の高等学校の中で特に農業高校、林業に対する意識調査をやられたのが出ているんです。それを見ますと、あなたが林科を選んだ動機は何か、先生に勧められたというのが二一・四、特別に理由はない二六・一、こう言っています。それから、三年間林科で勉強してどうだったかということについて、林業技術の習得が大変よかったという生徒さんも四割います。しかし一方で、自分のこれからの進路に余り関係ない、得るところが全くなかったみたいに三年間過ぎてしまったというのが四五・九%もいるというのもまた事実なんです。それから、あなたの家の山の経営はだれが行っているか、いろいろ調査しているようなんですが、私は若い後継者、これは民有林の場合もです。それから同時に、今後十年、二十年と、少なくとも十年でもって改善計画を立てる、それから二十年たったらばもう少しよくなるだろう、こういう長期の方針をお出しになっているんです。そういう状況の中で、若い皆さん方がいわゆる林業についてどう見ているのか、どういう状況にあるのかというふうなことは、大臣、私お言葉ですけれども、賛成できるとかできないとかの問題ではなくて、こういう認識にある、こういう状況にある、そこを踏まえてどうしていくかということで、これは必要なことじゃないかということを指摘しているわけであります。  重ねてその直営の問題やら、あるいは労働者の改善問題なんですけれども、確かに労働組合等あるいは全国的ないろんな御意見等の中で、民有林の労働者に対しても、とてもじゃないけれども安い貸金でもって働くというような状況改善しなきゃならない、それから退職金共済制度もつくらなきやならないというふうに改善してきていると思うんです。また、国有林についても、定期作業員を去年の十二月からで、ことしの二月一日からですね、基幹作業職員制度というかっこうで日給制度から月給制度に変えてきた。確かにそういう改善点はあるんですが、ただその点からいって問題が幾つかあると思うんです。  その問題点の第一なんですけれども、実は現在もなお定期作業員という形でもって日給制の、しかも定期の職員ですか、季節雇用ですか、そういう方々が政府の資料でも一万一千二百十九人おる。これは特に苗畑に働く婦人の労働者なんかも含めまして、日給制の定期職員に置かれているわけですね。こういう人たちを、今後退職金という問題から見てどうするのかという点が第一なんです。どのようなお考えでしょうか。
  194. 相賀幸雄

    説明員(相賀幸雄君) ただいま先生の御指摘ございましたように、国有林野事業の現場作業員を定員外の常勤職員扱いとするいわゆる基幹作業職員制度につきましては、昨年の十二月から発足いたしておるところでございます。それで、この制度におきまして要員規模は、事業の企業的な能率を勘案しながら長期的視点に立って直接雇用を行う事業規模の範囲内とするということで、また、基幹作業職員の任用はいろんな条件がございまして、その職務に弾力的に従事し得る能力を有し、それから地域間の流動化に応じられる等、一定の資格要作を有している者に限ってのこととしておりまして、この制度の厳正な運用を図っておるわけでございます。  したがいまして、現に雇用されている定期作業員の全員を対象としてこの基幹作業職員とするわけにはまいらないわけでございますが、一定の資格要件等備えた者につきましては、高齢者の退職の促進あるいは必要な能率性の確保等経営改善の進展に即しまして、要員規模の範囲内で基幹作業職員への任用を図っておるわけでございます。  それで、さらに御質問のございました定期作業員の退職等の問題でございますが、これは退職金等の問題でございますけれども、現在の国家公務員の退職手当につきましては、国家公務員の退職手当法に基づきましてそれぞれの勤続期間に応じた退職手当を支給することになっておるわけでございます。したがいまして、定期作業員につきましても、この定期作業員の勤続期間に応じまして一定の退職手当を毎年雇用終了時に支給しておるわけでございますが、過去の勤続期間を通算いたしまして退職手当を支給するということは、現在の法律上の制度面から見てできないところでございます。  なお、これも先生御承知かと思いますけれども、失業者の退職手当の問題は、制度化されておるわけでございます。
  195. 下田京子

    ○下田京子君 答弁簡単にお願いします。  定期作業員の退職金制度はいまないということですね。このことについていろいろありましたけれども、こういうふうに具体的に訴えてきているんです。ちょっと読んでみたいと思うんですが、   私達は定期作業員として過去何十年と国有林の人里はなれた山奥で、真夏には塩の汗を流し、また冬には腰までの雪の中で、かじかんだ手をこすり乍ら働いてきています。私達は一身上あるいは家庭の都合で、基幹作業職員にはなりたくともなれないのです。その結果、毎年年末には退職、三月又は四月雇用を繰返しております。   そこで高齢になれば辞めてほしいと無理無理言われ一円の退職金もなく職場を追い出されていくのが実情です。政府・林野庁は、毎年退職金は払っていると言いますが、それは全くの「マヤカシ」です。雇用保険法の給付日数から待機日数の分を退職手当として出しているからです。定期作業員でも林野庁は立派に職員として認めています。以上の趣旨により退職特別給が制度化されますよう請願いたします。 というふうなことを言っておるんです。これは、皆さん御自身のことでお考えになったらおわかりだと思うんです。民間に働く皆さんには少なくとも林対協というかっこうで今度できたわけですから、当然これは改善のために手を打つ時期ではないかというふうに思うわけです。  それから、あわせてこの基幹作業員になったといいましても、一方では広域流動化というかっこうでもって局間の流動もあるし、また同じ局内でも広いところになると大変家族と長い間離れておらなければならないというような状況になって、家庭破壊のみならず、子供たちの教育にとっても大変ですし、また留守を守る奥さんたちの苦労も大変というふうな状況があるわけです。少なくともこういう状況というのは、今後改善方向で私は検討を急ぐべきではないか、こう思うわけなんです。その点について決意のほどはどうなのか、大臣、いま私の言葉を受けてぜひ検討のためにいろいろと努力をいただきたいと思うんです。いかがでしょう。
  196. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 御説明するまでもなく、林業というのは非常に季節的な事業であることは十分御存じのことだと思います。したがいまして、林業に従事する方々を通年で雇用するということはきわめてむずかしい地域がございます。たとえば、冬に造林をやろうと思ってもこれはできない。また、植えつけの時期というものも決まっております。そういうことで、特に豪雪地帯におきましては、通年化というのは非常にむずかしい。私どももその辺は非常に苦労したわけでございます。  しかし、これからの国有林に働いていただく方に安定したやっぱり職場で働いていただきたい。また、そうすべきだということからいろいろ工夫をいたしまして、一年間働いていただけるような仕事を見つけて、通年作業という形の中で常勤制度化を図ったわけでございまして、そういう面から、やはりある面では営林署から違う営林署へ、あるいは隣の局へというふうな形で御異動いただくことによって通年化ができるということもあり得るわけでございますので、この辺は非常に個人生活として私どもも忍びない面もあろうかと思いますけれども、今後できるだけこういうものを余り動かないで済むようなことにしたいとは思いますけれども、いま申し上げましたような林業というものの特殊性からなかなかこれはむずかしい問題でございますので、その辺につきましては十分御理解の上、常勤制度がスムーズに運用できますように御協力をいただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  197. 下田京子

    ○下田京子君 検討今後おやりになるかどうかということです。退職金制度のあり方についての検討を急ぐかどうかということです。同時に、その大変な事情はわかりますが、林道の開設等によってさらに奥地に入ることも可能だということですし、いろいろと仕事もあるという御指摘なんかもあるわけです。ですからさらに調査が必要ではないか、そういう点でのさらに改善のために努力をいただきたい、その姿勢はどうか。簡単にお願いします。
  198. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) まず退職手当でございますが、これについては先ほど職員部長から御説明申し上げましたように法律によって決められておりますし、この法律は林野庁の所管でもございませんので、われわれとしても一応関心のある問題ではございますけれども、いまお答えはなかなかできない問題でございます。  それから、できるだけ流動化のないような方向に対する検討でございますが、先ほど申し上げましたように、冬にやれる仕事というのはきわめて少ないわけでございます。そういう意味から、私どもとしては先ほど申し上げましたように御協力いただきたいというふうに考えておりますが、今後これから国有林事業というものは末永く続くわけでございますから、そういう過程でそういう異動も少ないような事業ができるようなことを考えていかなければいけないというふうには考えますけれども、現時点におきましては、いま申し上げましたような形でこの制度がスムーズに運用できるように御協力をいただきたいというふうに思う次第でございます。
  199. 下田京子

    ○下田京子君 いまの長官答弁の中で、関心があるけれども所管でないというふうなことで、これは問題ですね。これは、国有林の労働者の問題ですから所管であるかないかじゃないんです。民有林に働く労働者の場合でもいろいろと条件改善が必要だというふうな中で、今度は林対協という制度ができた。今後その国有林野の中での実際に仕事をしていくその分野においての条件改善ということについては、所管であるかどうかという制度上の問題は別にしても、直接的にこれは林野庁が考えていかないでどこが考えるんですか。いますぐに改善しなさいと言っているんじゃないんです。そういう改善がいま必要になっているでしょうということなんです。そして、所管でなかったらば、関係するところに働きかけなかったら一体どこがやるんですか。
  200. 石川弘

    政府委員(石川弘君) ただいまの問題でございますが、国有林の直接雇用しております労働者の今後の姿といたしましては、先ほどから申し上げております基幹作業員がまず中枢でございまして、その基幹作業員を中枢にいたしまして、それ以外に非常に少数でございますが、むしろ臨時的と申しますか、臨時的に雇用します者についてこれが雇用を、何と申しますか、応援するという体制が基幹作業員制度をつくりましたときの基本的考え方でございます。  定期につきましては、先ほどから申し上げましたように、公務員の制度としましてはなかなか位置づけのしにくい形でございまして、定期が今後とも基本的に残ってくるような形での雇用の形を考えておりませんで、むしろ定期につきましては、将来基幹作業員とそれから臨時の作業員の両極に分配をしていくというのが、基幹作業員制度を設けました際の基本的考え方でございます。したがいまして、この退職金問題につきましても、先ほどから申し上げておりますのは、そういう他にいろんな形で例がありますところの他の公務員の制度等との、何と申しますか、均衡の問題ということが実は独特のそういう退職制度をつくれない最大の問題点でございますので、基本的に申しますと、基幹作業員と純粋の臨時作業員の両極に分配をしていくと、そういう中で全体としての退職の制度あるいは身分の安定の制度を考えたいというのが、林野庁の基本的考え方でございます。
  201. 下田京子

    ○下田京子君 基本的な考え方はわかりました。しかし、現在定期作業員で現場に働いている方がいると、どうしてそういう状況になっているかとか、なってきたかといえば、冬に仕事がない。ですから、毎年雇用を繰り返しながらやられているというふうな、そういう林業という特殊的なところから出てきていることでもあり、他制度とのいろんな関係もあるでしょうけれども、強く改善のためにいろいろと御検討をいただきたいということは希望しておきます。  最後になりますけれども、今国会にこうした改善計画、あるいは改善のための期間、あるいは一般会計の繰り入れ等出されてきたその大きな原因といいますか、時代的な背景と申しますか、国有林野事業にかかわる会計のあり方ですね、それをお聞きしたいと思うわけです。この法案の提案の説明の中でもいろいろと理由が出されております。一つは、国有林事業の経営の構造が公益的機能の維持という点でも高まってきているし、一方では、伐採量に限界があるというふうなことなんかも指摘しているわけなんですが、第一に聞きたい点は、伐採量の限界を生み出してきたそもそもの原因がどこにあるかということなんです。この大きな原因が、第一に、やはり成長量を上回る伐採量にあったんじゃないかということなんです。これはやはりいただいた資料ですけれども昭和三十六年あたりから非常に大変な形で成長量を上回る伐採量がなされているわけなんですが、だれが見てもこれは過伐であるというふうに指摘できるのじゃないかと思うんですが、いかがでしょうか。
  202. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 三十年の国有林の歴史を見ておりますと、いま先生指摘のように、現時点昭和三十年代のことを見ますと、非常によけい切ったなあという感じをわれわれも受けます。しかし、やはりその時点において新聞紙上で国有林が木を切らないから物価が上がるのだという大きな批判を受けて、その時代にやはり国民需要にこたえるために、当時の国有林の林力でどれだけ切れるのか、そのためにはやはり奥地の天然林をいい山に切りかえることによりまして伐採量を上げて、国民需要にこたえようということで伐採量をふやしやってまいったわけでございます。  したがいまして、その時点では確かに成長量を上回った伐採もいたしております。しかし、これはいずれ造林地になった場合の成長力というものを勘案しながら保続計算をしてやったわけでございまして、ただいまそれが伐採に限界があるという状況になりましたのは、その後やはり木材というものが外国から非常に入ってくる、そこで国有林をそんなに切らなくてもいい、また逆に公益的機能を発揮しなければいけない、そういう意味からいままでやりました形と変わった皆伐面積の縮小あるいは禁伐面積拡大、こういうものによりましてこれからの保続を計算した結果、これからはいままで申し上げましたような伐採量にならざるを得ない。それにスムーズに移行するにはどうしたらいいかという形で伐採量の徐々の、漸減的な減少ということを考えておるわけでございまして、必ずしも私どもは過去の伐採量が多かったということにはならないのではないかと思っております。
  203. 下田京子

    ○下田京子君 その当時確かに切り過ぎだというふうなことは一方で認めておるわけなんですが、同時に、それはいろいろと国民要請にこたえて行ったものだと、こうおっしゃっております。しかし、国民要請にこたえたといっているわけなんですが、確かに消費者の問題と生産者の問題と両面から考えていくというのが国策の基本であると思うんですけれども、その点では私たちも異議ございません。ただ問題は、五十一年三月二十六日付で、これは大蔵大臣の方に当時の安倍農林大臣が「予算決算及び会計令第九九条第二〇号の規定に基づき国有林材をパルプ及びチップ用として随意契約によって売り払う場合について」というお話で、このことについては五十一年三月三十一日限りでこれをもう対象から外してよろしいですというあれを出しているんですね。間違いないですね、これは。
  204. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 間違いございません。
  205. 下田京子

    ○下田京子君 ということは、逆に言えば、このいわゆる予算決算及び会計令の第九十九条の第二十号に基づいて何をやってきたかと言えば、先ほど問題になった、いわゆるその随意契約の問題ですね。この随意契約の本来の目的というものは、本来はそこに山がある、そこの営林署があって、そこに木材業者もいる、地元の皆さん方地域発展のためにというふうなことが大きな目的ではなかったかと思うんです。そういう点から見ても、随意契約と一般競争で一体その金額はどのぐらい差があるんだろうかとこれを見てみましたら、これは林野庁国有林野事業統計書によっての資料ですが、四十年で一立米当たり一般競争の場合ですと、四千六百八十七円、ところが随意契約は約その三分の一、千六百九十円です。さらに、四十八年で一立米当たり一般競争が一万八千二百八十一円、随意契約が六千五百五十三円、いずれにしても非常に随意契約が安い、こうあるわけですね。これは、もちろん目的からいけばそういうことになるわけです。  ただ、先ほどなぜこれを聞いたかと言えば、このパルプ及びチップ用としての随意契約について売り払う場合、これをもういいですよということで除外されたわけですね。なぜこれは除外が出てきたかというと、現在安い外材が入るということでもって、パルプ用材やチップ用材というのはもう用がなくなったということでもって、大手独占パルプのためにいままでいろいろ国有林が貢いできたのに、今度は要らないといってぽんと捨てたということを、はっきり物語っているのじゃないかと思うんです。そう指摘しても私過言でないと思うんですが、いかがですか。
  206. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 随契の場合には、法律によりましてそれぞれの規定がございます。その中に地元工場振興というものがございますけれども、逆にまた産業の振興というものがございます。御存じのように、昭和三十年代、四十年代の初めまでは外国から余り材も入らない、一方、紙資源というのは新聞紙を初めといたしまして非常に消費量が伸びた。それに対するパルプ材としてのチップなりパルプというものがなかなか手に入らない、そういう問題が非常にございました。そういう意味で、産業振興ということで、パルプにつきましても随意契約で売り払ったことは過去の実績がございます。しかしながら、最近、やはり先生もただいま御指摘になりましたけれども、外国からチップが入ってくる。そういうことであれば、いまの時点で産業の振興ということをあえて国有林材が中心になって行わなくても、パルプはパルプとしての原料も確保できるという観点からこれを外したのでございまして、その点につきましては、先生指摘のような形ではないということでございます。  それから、先生指摘になりました木材価格の公売と随契の価格でございます。これにつきましても、私ども原則としていい木、こういうものについては公売で売ろう。木を切りますといいところと悪いところと、刺身と粗といろいろ出るわけでございます。したがいまして、それぞれの一本の木からいろんな価格のものが出るわけでございまして、そういう意味で、公売の価格と随契の価格をダイレクト比較するというのは、やはりある意味では当たらないのではなかろうか。その材料の質というもので相当考えませんと、たとえばバルブ材というもの、あるいはチップ材、こういうものは非常に安いわけでございますが、一番玉というようなものについて無節であればこれは相当高いものになります。そういう点で、公売は随契に比較しますと、確かに公売の方が一部高い場合が多いわけでございますけれども、これを全体の平均値でその辺を判断することは少々無理があるのではなかろうかというふうに考えております。
  207. 下田京子

    ○下田京子君 時間もございませんので、私は最後に赤字を生み出してきた問題点について、いま話しました成長量を上回る伐採をしてきたということで、今日の状況というものは逆に言えば起こり得るべくして起きた問題ではないか、そしてそれは予測できたものである、だからこそ、答弁に繰り返しされておりますように、今後二十年間の改善が必要であるというのがここにあるのだと思うんです。そういう点で、いかに言葉でつくろおうとも、こういう状況が生み出されてきたということは過去の問題であるとは言いながらも、そういう成長量を上回る伐採をやってきたということがいかに山を荒廃させていくか、あるいは造林とか基本的な山づくり、そのための施業がおくれてきたかということを、現実が逆に私は教えてくれているのでないかというふうに思うわけなんです。  第二番目に、こうした国有林事業の赤字が生まれてきた問題ですが、林政協力ということでもってこれはもういろいろと特別積立金の制度や、あるいは基金積立金のあり方というふうな議論もあると思うんですけれども、いずれにしても、一般会計あるいは森林開発公団等についていままで現に九百二十三億円から出してきている。これは、現在の価格でもって評価がえすれば一兆円ぐらいになるんでないかというふうな論議もあります。そういう状況の中で、当然必要なときに一般会計に貢いできたんですから、現時点で今回の法改正に伴って四十億の一般会計の算入ということはこれは当然で、四十億なんというとてもじゃないけれどもこんな少ないお金で改善ができるものじゃないと思う。そこは林野庁さんも、これから大蔵との折衝の中で大いに真に山づくりを目指しておやりになると思うんですけれども、これは当然しかるべき問題だというふうな点を指摘しておきたいと思うんです。  さらに、これまたいろいろと御論議がありましたけれども山づくりというものは単年度で決まるものじゃないわけですから、そういう点の基本的な林業というあり方から見て単年度収支がどうかということについても、これはいろいろ議論が必要だろうと思います。何よりも、いまの国有林全体がどういう状況にあるかという土地柄を見てみる必要があると思うんです。単年度収支が可能なのかどうか。これは保安林や公園だとかそのほかのレクリエーション施設等々含めて、実際に事業という形で収益を直接生み出せない、そういうところが七割からあるわけですね。そういう見直し等についても、いろいろ議論はあるところですけれども、こういった面から見て、当然特別企業会計という中でこれは赤字だからといって企業努力はそれはそれなりに必要ですが、わずか四十億のものでこれが事足りるようなことではないと。赤字の原因ということについても、この際しっかりと御認識を新たにして、真の改善を図るべきではないかという点を指摘しておきたいと思うんです。そういう点で、大臣、本当にこれからの森林資源を育てていくという上での私の質問に対する御答弁をいただきたいと思います。  以上で終わります。
  208. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 国有林が今日のような事態になりました理由は、いろいろあろうと思います。過伐の問題もあったと思いますし、あるいは木材価格が低迷しておるということもありましょうし、さらには、公的責任が非常に大きかったということもありましょうし、あるいは御指摘のように、木材の払い下げ方法に問題はなかったかというようなこともありましょう。あるいは労使間の問題においても十分一体となって働いておったのだろうかというような問題、いろいろあろうと思いますが、これらを率直に反省をいたしまして、新しい気持ちでこれからの国民の期待にこたえられる、国有林の使命が果たせるようにしっかりやってまいりたいと存じます。   〔理事山内一郎君退席、委員長着席〕
  209. 三治重信

    ○三治重信君 国有林野改善特別措置法をきょう何とか委員会採決にまで仕上げるために、質問時間を非常に節約してほしいという要望に沿って、ごく簡単に質問いたします。  それで、体系がちょっと乱れますけれども、一番最初に、いまの定員内職員の給与が平均でも一万三千円、退職年齢時になると数万円も林野庁の中の同じ職員との比較においても低くなっていると、こういうことのようですが、林野事業は三公社五現業で仲裁裁定によって賃金が決まる、その決まった賃金で分配する、だから結局分配の問題だろうと思うのですけれども、それにしても特別会計で一般会計の職員と、これは公務員の定員内の職員なわけですから、これが人事院の勧告のやつよりか特別低いというのは、何か労使交渉においてもそういうものが十分当局として主張されていかなければならぬと思うのですが、その差が本当にあるのか。また、こういう問題について、やはり林野庁の職員と農林省の一般職員との等級別定数というようなものが均衡を保っていかないと、これは中間管理職なんかも実際に計画の意欲的な部面が非常にそがれると思うのですが、その点をお尋ねします。
  210. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 先生十分御存じだと思いますが、林野庁の現在の定員内の職員の構成が、四十五歳以上の高年齢者が非常に多くなっております。そういう関係で、必ずしも職員構成が年齢別にバランスがとれていないという点で私どもも非常に苦慮しておるわけでございますけれども国有林改善を進めるに当たりましては、いますぐこれをいい形になかなか補充はできない。しかし、徐々にそういう形に持っていきたいという、まず努力をしていきたいというふうに考えておりますが、御指摘になりました給与が低いという問題でございますけれども林野庁の場合非常に職員構成からいいまして、他の官庁に比較しまして職位構成に非常に差がございます。中央、上の方といいますか、上位な者が少なくて中間が非常に多い、なおかつ下が多いというような形で、非常に職位の構成に差がございます。それから、いま申し上げましたように、年齢構成が非常に過去におきます膨張の関係で偏っておりまして、高年齢者が非常に多いという問題。  それから、従前から先生十分御存じの給与につきましては、労働組合と協議して決めるわけでございますけれども、その俸給表の体系が、曲線が非常に俸給表適用者の俸給に比べましてなだらかな曲線になっている、こういう観点から、現実に林野庁の内部におきます特別会計の職員と一般会計の職員との交流をやります際に、給与が非常に低位になるということが間々見られる事例はございます。これは事実でございます。ただ、これで直ちに給与特例法の適用の職員の給与が一般の給与法の適用者に対して低位であるかどうかということは、やはりその方の経歴なりいろいろな問題がございますから、簡単には私は言い切れないというふうに考えております。ただ、この問題は、公労委の調停に従いまして、ただいまのところ労使の間でその実態、要員等につきまして検討、協議をしておるところでございまして、この問題の所在を明らかにするように今後とも努めてまいりたいというふうに考えております。
  211. 三治重信

    ○三治重信君 結局、高齢者なり年齢構成なり経験年数の職員の案分比例がまずいとそういう偏差も出、そのところに当たったのがほかの一般会計の職員との比較においても低位になってしまうと。また、それのために人事異動もできないと、こういうふうなことのようですが、これについては、林野庁の中にも一般会計の方は、職位というんですか、いろんな身分階層というのか等級定数ですか、それの職員の分が経験年数の多い者やなんかにはつけられてくるけれども特別会計の方はそういうものがずっと全然ふえてないと、こういうことにもあるようなんですが、そういうものも、林野庁だけでなくて農林省全体でできるだけこの人事交流もされるようなことで、同じところにいながら仕事が違うため、林野の仕事をやるために、そこにいたために五年、十年たつとえらい給与差ができてしまって、後もうほかのところへも行けないし、今度は一般会計からも人が、これは来るのがいやだと言って来ないと、こういうこと。これは人出からもおかしいと思うんで、そういうところはひとつ、団体交渉や賃金配分の中にもそういうものも重要項目として入れて、御配慮を願いたいと思います。  それから、飛び飛びになって恐縮なんですが、いろいろ議論の中で、ことに会計検査院の指摘の、いわゆる直用だと非常に能率が悪いという具体的な事例等、これが直ちに直用と請負というようにひっかけているようですが、これは私は全然違うと思うんです。問題は、この定員内の常勤職員にしても基幹作業員にしても、また定期作業員のやる仕事にしても、会計検査院が指摘しているこのいわゆる作業能率が非常に低いというのは、これは労務管理の問題や労使関係の問題であって、直用、請負と全然これは考え方が違う問題だと思うんです。で、会計検査院が指摘しているのは、農林省が決めている標準林内生産性、こういうような決めたものから見てそこの実績がえらい悪いと、五〇%以下なんだと。それから、それがまたさらに、現地の営林署が計画したその計画量に対して実際の作業成績が六三%と、こういう指摘なわけですから、これは労務管理というか、個個の作業員が、当然計画者がこれぐらいはできると思ったやつが実際やってみるというと半分もできない。だから、現地ではさらに標準作業量を下げてやってもまだその六割しかできないと、ここに問題があると思うんです。  だから、この問題を直用、請負とすりかえるということは非常に問題で、ここの今後経営改善の基本の中に入れられる企業的能率性に即した現場作業の遂行というのは、前角とか直用というそのことじゃなくて、同じ一定量の人間なり一定の作業をやるのにどれだけの生産性を上げなくちゃいかぬかと、標準作業員というものをどれぐらいに見て、それが賃金との見合い、その請負や直用との作業量の比較を余り強化でもいけないし、余り野方図の差でもいけない。ここをしっかり各営林署や各地の比較ができるような計画にし、それがきちんと第一線へ指示できる計画というものがつくられるべきだと思うが、この点の意見はいかがですか。
  212. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) ただいま先生の御指摘のとおりでございまして、私どもも、直用の能率が悪いというような問題については、これは管理者の責任も多分にあるとわれわれも判断いたしておりまして、今後とも十分その辺の指導はしてまいりたいと考えております。ちなみに、ただ一応比較してみますと、たとえば製品生産事業でございますけれども生産原価では直用は一立方メートル当たり約一万四千円、それから請負は約七千円でございますし、それから生産性について見ますと、一人当たり直用につきましては一・一四立方メートル、それから請負は一人当たり一・九二立方メートルという形で、数字的に見ると差がございます。  ただ、これがそのまま能率の問題であるかどうかは、これは十分検討しなきゃいけないというふうに考えておりますけれども、そのためにも、今後、現場の作業管理の改善なり作業仕組みの改善なり、あるいは間接要員の節減なり、そしてまた職業意欲の向上ということに努力を向けまして、現場の仕事が請負であろうが直営であろうが、能率が上がるように努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  213. 三治重信

    ○三治重信君 したがって、現に林野庁がやっておられるこの作業職員の作業実績をしっかり改善していくことがまず第一に重要で、現在の作業職員の定員管理、それから現におる人の生産性の向上、それも合理的な数字に基づいて生産性の向上に努め得る経営改善計画が組まれなければいかぬと思うんです。  その点と、それから非常に議論になっておりました、現場のいわゆる植栽した山がその後管理されてなくて荒れている問題だとか、そういう問題も、むしろ今後伐採量がいままでから見ると三分の一は下がっていくわけです。そうすると、伐採量が少なくなればこういういわゆる山の育成の管理にもっとこの人員がはけるはずだと思うんですが、その点は、今後の計画についてどういうふうにお考えになっておりますか。
  214. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 先生指摘になりましたように、これからの改善計画を立てるに当たりましては、伐採量も下がってまいります。しかしながら、私どもも一番問題にしておりますのは、やはり管理部門の肥大化ということでございますし、現場につきましては重点的に仕事を進めてまいりたいというふうに考えておりますので、それなりの対応をして、現場が十分仕事ができるような人のあり方というものを今後十分検討しながら、現地におきます仕事が批判を受けることのないような人員配置なり能力なり能率なり、あるいは職業意欲、こういうものを十分それぞれの職員が対応できるように努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  215. 三治重信

    ○三治重信君 木材の買い受け業者の金融の問題は、先ほどもちょっと前に質問が出たんですが、こういう問題が余り独善的にいくと問題で、これはぜひ林野の会計の都合だけで考えることのないように配慮をしていただきたいと思うんです。いま金融もそんなに、きついときならば問題があるわけなんだけれども、現実に金はだぶついているわけなんだから、それを林野庁特別会計が非常に苦しいからというだけで、延納制度を切り上げて現金でとにかく出せ出せと、こういうふうなのはやはりこれは少し独善的だと思うんです。そういうのはかえって林野の経営改善に問題だと思いますから、ひとつよろしく。  最後に一つ。今度の改善で、林政審議会で一番問題になったいわゆる特別会計でやり直営でやるのが結論として結構だと。その中で、一般会計から入れる行政的な事業の分野と経営の実質的な事業分野との区別をさらに一層進めていっていただかないと、その企業的な分野の努力がやはりまたもとへ戻ってしまう、その点を特に決意を促して質問を終わりたいと思います。
  216. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 林政審の答申でも、ただいま先生指摘の点については御指摘を受けまして、私どもも治山勘定につきましては積極的な治山勘定の充実ということを図っておりますし、あるいは育種事業、さらにはその他一般会計と特別会計あり方については、十分その辺の整備ができますような努力をしてまいったわけでございますか、今後ともその辺の整備につきましては、十分その趣旨に沿いまして努力してまいるつもりであります。
  217. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 一昨日、物品購入の問題で質問をいたしまして、まだ答弁をいただかないので留保してある案件がございますが、この点についてひとつ御答弁をお願いいたしたいと思います。
  218. 藍原義邦

    政府委員藍原義邦君) 国有林の物品購入の問題につきましては、種々の御指摘を受ける問題がありましたことについて私も非常に遺憾に思っております。それで、これから国有林が厳しい現在の状況の中で経営改善を進めていかなければいけないというきわめて重要な時期に当たっておりまして、御指摘になりました問題については、十分私どもとしてその実態を把握いたしまして善処していきたいということはもちろんでございますけれども、今後このような御批判を受けないように、またこういう事態が生じないように、私どもといたしても強く戒めていきたいというふうに考えております。
  219. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 この経費のむだ遣いの分を保育に回せば、いまより山はずいぶんよくなると思いますが、大臣、ひとつこの問題についての御見解をお願いいたしたいと思います。
  220. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 一昨日来、国有林野事業の物品購入についていろいろ御批判をいただいたわけでございますが、私といたしましても、この際、国有林野事業改善に取り組む姿勢を職場の末端まで確立し、すべてにわたって正すべきは正す、そしてよりよい職場規律を守って、皆さんの御批判をいただかないようにしなきゃならぬということを痛感いたしております。その一環として、このような問題につきましても抜本的に改善策を講じてまいりたい、このように考えております。
  221. 丸谷金保

    ○丸谷金保君 この機会に、手前みそでございますけれども、大変申しわけないんですが、時間の関係でまとめて申し上げたいと思います。  どうも池田町のことばっかりで申しわけないと思いますけれども、それより体験がございませんので。  一昨日写真でお見せしたように、われわれは個人の造林地の模範になるようにと、少なくとも町有林でもそう心がけてまいっております。したがいまして、国有林におきましてはもっともっとそういう点国の模範になるようにやってもらわなければなりませんし、さらにまた、そういう点につきましてたとえばこういう経験があります。  昭和三十二年町長になりまして、二、三ヘクタル細々とやっておりました。補助造林から融資造林に切りかえれば一遍に五十ヘクタール、百ヘクタールできると、やろうと思いましたところが、植林の人夫がおりません。それから、一遍に施業案を無視して苗木を要求しても、どこからも供給してくれません。こういう苦い経験で、私自身その計画をやるのに三年ほど足踏みせざるを得なかった。そして、そういう経験から、やはり苗畑も自分の町でつくらなければだめだ。それから、直営の人夫を賛成してこれで植林や保育をしなければだめだ、こういうことを痛感した次第でございます。  先日、帯広の営林局長さんがおいでになりまして、常用のおばさんたちと課長が一緒になって、山でどっちがどっちかわからぬように仕事をしているのを実際に見ていただきましたけれども、子供を育てるようにして一生懸命働いてくれる、そういう常用の人たち、常雇いの人たちがいたからこそ、私いまここでこういうことの言えるような美林を築き上げていくことができたと思う次第でございます。  大臣国有林の場合、私いまこの法律で十年だ、二十年だという論議をしております。少なくても五十年か百年の大きな物差しをもって考えなければ、本当にいい国土を保全していくということにはならないのではないか。幸いにしていまの国有林野特別法をいろいろ読んでみますと、これは単年度の黒字、赤字というふうなことを法定事項として決めているわけでないんで、相当長い赤字、黒字というふうな処置のできるようにわれわれは理解いたします。  幸いにして大臣も、直営直用については大変理解を深めていただいておりますけれども、もう一歩進んで、何といっても主体をなすのは直営直用でなかったらだめなんだと、私の苦い経験から言っても請負と直用が並列するようなことでなくて、本当に直用で間に合わないようなときには請負に回すということがあっても、これはどうかそういう点を十分お考えいただかないと、いざやろうというときに請負関係に重点を置くようなことになると、人がいなくなったときに処置ありません。やはり自賄いで山を守るというそういう人たちを末長く養って、あるいはまた、そういう人たちが安心して働けるような、そういう長期の計画作成をしていただきたいと思います。  請負が効率が上がらぬというようなことを言っておりますけれども、ドイツに行ってみましても、すでにもう国有林で働く人たちの作業の日数なんていうのは週休二日です。白ろう病もありません。そういうような環境条件の中で本当にいい山をつくっているそういう国もあるのですから、いまのいわゆる民間の請負で一万人に二千人も潜在の白ろう病患者がいるというふうな、そういう非常に劣悪な労働条件の中での民間の労働者というふうなものを対象にして物を判断しないで、そういう各国の林業労働者というふうなものの状態かどうだというところから見れば、私はいまの国有林にもずいぶんりっぱな人がおります。それからまた、一生懸命やっている人もたくさんおると思います。これらが一人当たり、一時間当たりどれだけの能率を上げるかということになったら、国有林で長く働いている人の方が私は民間の請負の人よりは能力があると思います。  こういう能力を十分活用できるようにしっかりとがんばっていただきたいし、またそういう点では三十億、四十億というようなわずかな金でなくて、入れるときには国費を思い切って入れて十年や二十年——私は実際に二十年つぎ込みだけやってきました。小さな町でもできるのですから、まして国がその気になってできないはずがない。大臣は、その点に勇気をふるってがんばっていただきたい。大変直用問題についても御理解を深めていただき、本当にさらにもう百尺竿頭一歩を進めていただくことをお願いいたしまして、物品購入の問題につきましては、どうかできるだけむだを省いて山につぎ込んでくださいということをお願いいたし、一応この件については、もう時間もございませんから答弁要りませんが、お願いいたしたいと思います。
  222. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) この際、先ほどの村沢君の質疑の際に保留となっております答弁を求めます。
  223. 秋山智英

    説明員秋山智英君) 先ほど村沢先生の御質疑の中で、妻篭営林署におきますところの第四次治山事業五カ年計画計画と実行につきましての数字の御要求がございましたが、計画が九億に対しまして実行が七億でございまして、実行比率は七七・八%でございます。  なお、先生お手持ちの資料によります実行率七・三%と申しますのは、この第四次の五カ年計画数字でなく、長野営林局が独自に内部資料といたしまして治山の全体計画、これは年度を限っておりません。将来にわたる全体計画の中の総量に対する比率でございます。  なお、五カ年計画につきましては、この全体計画に基づきまして、緊急を要するものから計画的に実施しておる次第でございます。  以上でございます。
  224. 川村清一

    ○川村清一君 私は最後の質問者でございますが、ただいままで各委員が御熱心に質問されてまいりました問題の中で、特に確認しておきたい数点についてお尋ねをいたしまして、中川農林大臣の責任ある明確な御答弁をいただきたいと思います。  まず第一に、これまでの質疑でも明らかにされておりますように、わが党の調査から見ましても、国有林造林面積二百万ヘクタールのうち、四十万ヘクタールに及ぶ不良造林地があるものと推定されるのであります。今後の国有林野事業改善に当たっては、何よりもまずこのような実態を改めて認識し直し、必要な事業を積極的に推進し、りっぱな山づくりを図ることを基本とすべきだと思うのでありますが、これに対する大臣の対処方針をお聞かせ願いたいと思います。
  225. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 国有林におきます森林造成につきましては、森林の持っております多面的な諸機能、すなわち公益的機能木材生産機能でありますが、これを総合的かつ高度に発揮するよう努めていく必要があると考えております。  現在の国有林における造林地はおおむね順調に生育していると考えておりますが、御指摘のこともあり、より的確な実情把握に努め、現地の実態に即した合理的な施業を行っていくようにいたしたいと思っております。今後の国有林野事業改善の推進に当たっても、以上のような考え方に沿って、国有林資源の充実を期していくつもりであります。
  226. 川村清一

    ○川村清一君 次に、修正後の法案第二条第二項第二号、すなわち「国有林野事業における造林及び林道の開設その他林業生産基盤の整備に関する事項」の規定も、国有林におけるりっぱな山づくりを進めるために加えられたものと理解しているところでありますが、ただいまの大臣方針を受けて、この規定の運用をどのように図っていくつもりか、伺いたいのであります。
  227. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 御指摘の規定の運用につきましては、林業基本法に基づく森林資源に関する基本計画及び森林法に基づく全国森林計画に即応して、国有林野における森林資源の充実及び適切な森林施業の実施が確保されるよう、十分配慮していくつもりであります。  なお、現行の森林資源に関する基本計画及び全国森林計画につきましては、最近におけるわが国林業の状況に照らして、その改定を検討していきたいと考えておる次第でございます。
  228. 川村清一

    ○川村清一君 次にお尋ねいたしますが、本法案に基づく一般会計からの繰り入れ措置については、その積極的な運用を図っていくべきだと考えますが、大臣の御意向をお聞かせいただきたいのであります。  また、これとあわせて、治山事業等の森林公益的機能にかかわる分野についても、その充実を期して、適切な事業運営及び財政措置を図っていくべきだと思いますが、その方針はいかがなものであるか、お伺いいたしたいと存じます。
  229. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 本法案に基づく一般会計からの繰り入れ措置につきましては、昭和五十三年度において約四十億円を予定しておるところでありますが、その後におきましては、国有林野事業改善の進展状況、収支の動向及び一般財政事情等を考慮しつつ適正な運用を図っていくつもりであります。  また、公益的事業については、これまでも一般会計資金を財源とした治山勘定による事業実施の充実を図ってきておりまして、昭和五十三年度においては、民有林と同様の一般会計負担割合としたところであります。治山事業以外のいわゆる公的事業の問題につきましては、その範囲や費用負担のあり方等について種々いろいろの論議もありますが、真剣に検討していく所存であります。
  230. 川村清一

    ○川村清一君 次に、国有林野事業改善の一環として、別途農林省設置法の一部改正が行われ、これと並行して営林署等の統廃合が予定されているわけでありますが、特に営林署等の組織については、農山村地域において、地域の経済や社会の運営と深いつながりを持っており、地元関係者もきわめて重大な関心を持っているところでございます。したがいまして、その実施は、関係者の十分な理解と納得を得た上で行うべきだと思いますが、その方針を伺いたいのであります。
  231. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 営林署等の組織は、御指摘のとおり、地域と深いつながりを持っている一面もありますので、その統廃合につきましては、一方的に強行するようなことはせず、地元地方公共団体等の理解と協力を得るよう、最善の努力を払った上で実施したいと考えております。
  232. 川村清一

    ○川村清一君 最後に、国有林野事業改善は、全職員が相互に理解し協力して取り組んでいかなければ実効が上がるものではないと思うのであります。したがいまして、改善計画作成、実施に際しましては、あらかじめ労働組合と十分意思疎通を図るとともに、労働条件についても協議していくことが必要であると考えるのでありますが、これに対処する大臣方針を伺って、私の質問を終わりたいと任じます。
  233. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 国有林野事業改善の実効を上げていくためには、従事する職員が一体となってこれに当たっていくことが肝要であるという点は、私もお説のとおりであると思います。したがって、改善計画の円滑な遂行を図るために、その作成、実施の過程で労働組合にもこれを説明し、理解と協力を求めていきたいと考えております。また、改善計画の実施に伴う労働条件の問題につきましては、ルールに従って労使協議を行っていくことはもちろんであると思っております。
  234. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べ願います。
  235. 下田京子

    ○下田京子君 私は、日本共産党を代表いたしまして、国有林野事業改善特別措置法案に対する反対の討論を行います。  国有林野は、御承知のように国土面積の二割、森林面積の三割を占め、その管理運営のいかんは国民生活に重大な影響をもたらすことになるわけです。  こうした国有林野は、一つは、木材その他の林産物の計画的、持続的供給、二つ目に、国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保全形成等、公益的機能の発揮、三つ目に、国有林野の活用、地域の産業活動等を通じた地域振興への寄与など重要な使命を持っております。  ところが、国有林野事業運営の基本は、これら使命の達成を図ることでなければならないにもかかわらず、本法案は残念ながらこれに逆行するものであるということを指摘せざるを得ません。  その第一の理由は、国有林野事業運営の問題であります。本法案によって森林保全管理、森林レクリエーション事業など公益的事業は収入に結びつかないとして、国民の強い要請があるにもかかわらず、廃止、縮小を図ろうとしておることです。また営林局、署、担当区事務所の統廃合など、事業、組織機構、人員などすべての分野で大がかりな合理化を図ろうとしている方針です。これは、国有林野事業の使命を放棄して国有林野を一層荒廃に導くおそれがあります。  第二には、国有林野事業の収支の改善経営の健全化の問題でございます。  本法案の提案理由説明では、国有林野事業経営構造は悪化をたどっていると指摘しております。国有林野事業経営を今日のような状況に近い込んだ原因は、国民に安く木材を供給したために生まれたものではありません。大企業、特に大製紙会社に奉仕するため木材の特売を図るなど、高度経済成長政策によって成長量の二倍にも達するような乱伐と乱開発によって国有林野を荒廃させるとともに、本来一般会計で負担すべき治山、自然環境保全、公共林道など公共的支出まで国有林野事業特別会計に肩がわりさせてきた結果であることは明らかでございます。  本法案によって、一般会計から繰り入れが行われますが、合理化を条件とした、しかも投資的経費に限り、それも改善期間の十カ年川だけに当面限られており、依然として借入金依存体制が続けられておりますし、一層国有林経営を悪化させることになって、根本的経営改善には役立たないということが明らかであります。  わが党は、国有林野事業が真に国民生活に役立つものにするために、人員の確保を図り、公益的事業も含めて一般会計から必要な資金を導入するよう強く要請して、討論を終わります。
  236. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  これより採決に入ります。  国有林野事業改善特別措置法案を問題に供します。  本案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  237. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  青井君から発言を求められておりますので、この際、これを許します。青井君。
  238. 青井政美

    ○青井政美君 私は、ただいま可決されました国有林野事業改善特別措置法案に対し、各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    国有林野事業改善特別措置法案に対する附帯決議(案)   政府は、国有林野及び国有林野事業が果たすべき林産物の計画的持続的供給、同士の保全等の公益的機能の発揮、地域振興への寄与等の使命の重要性並びに国有林野事業が当面している種々の困難な実情にかんがみ、本法の執行を契機として、次の事項に十分留意し、長期的観点に立つて、森林資源の充実整備を回りつつ、経営の健全性を確立すべきである。  一、国有林野事業の組織機構の再編整備に当たつては、地域の実情をふまえつつ、国有林野事業機能低下、地元関係者等に対するサービスの低下を招くことのないよう十分配慮すること。  二、国有林野事業特別会計に対する一般会計からの繰入れ及び資金運用部資金の貸付けによる財政措置については、国有林野における公益的機能の一層の充実及び造林、林道の開設等生産基盤の整備の促進を図るため、民有林における助成措置を勘案しつつ、積極的に行うこと。  三、国有林野事業の運営に当たつては、地域の実情に即して、森林組合等や地元木材関連産業等の健全な育成発展に寄与するよう努めるとともに、農林畜産業の振興等の地域要請に応じた国有林野の適切な活用を図るよう十分配慮すること。  四、国有林野が農山村における重要な就労の場となつていることにかんがみ、直接的、間接的な就労機会の計画的な提供を通じて優秀労働力の確保に努めるとともに、労働安全その他の就労条件の改善を更に積極的に講ずること。  五、国有林野事業改善計画作成等に関して所要の調査審議を行わせるため、林政審議会に国有林野部会を設けるよう措置すること。    また、改善計画の内容を公表するとともに、改善計画の実施状況について、林業の動向に関する年次報告において明らかにすること。  六、国有林民有林を通ずる我が国林業の安定、振興を期するため、適切な木材需給計画を樹立し、行政指導の強化等による外材の秩序ある輸入を図る等、木材の需給、価格の安定のための対策の推進に努めること。   右決議する。  以上でございます。  委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  239. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) ただいま青井君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方は挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  240. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 全会一致と認めます。よって、青井君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、中川農林大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。中川農林大臣
  241. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) ただいまの附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重し、善処してまいる所存でございます。
  242. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ舌あり〕
  243. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十八分散会