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1978-06-01 第84回国会 参議院 農林水産委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月一日(木曜日)    午前十時二十一分開会     ―――――――――――――    委員の異動  五月三十一日     辞任         補欠選任      降矢 敬義君     田原 武雄君      鈴木 正一君     降矢 敬雄君      成相 善十君     坂元 親男君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         鈴木 省吾君     理 事                 青井 政美君                 大島 友治君                 山内 一郎君                 川村 清一君                 相沢 武彦君     委 員                 片山 正英君                 北  修二君                久次米健太郎君                 小林 国司君                 坂元 親男君                 田代由紀男君                 田原 武雄君                 野呂田芳成君                 降矢 敬雄君                 坂倉 藤吾君                 村沢  牧君                 吉田 正雄君                 原田  立君                 藤原 房雄君                 河田 賢治君                 下田 京子君                 三治 重信君    衆議院議員        農林水産委員長        代理理事     羽田  孜君    国務大臣        農 林 大 臣  中川 一郎君    政府委員        農林政務次官   初村滝一郎君        農林大臣官房長  松本 作衛君        農林省農林経済        局長       今村 宣夫君        農林省構造改善        局長       大場 敏彦君        林野庁長官    藍原 義邦君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    説明員        大蔵省主計局主        計官       古橋源六郎君        大蔵省銀行局特        別金融課長    藤田 恒郎君        大蔵省銀行局企        画官       野田  実君        厚生省年金局企        画課長      山本 純男君        農林大臣官房審        議官       小島 和義君        農林大臣官房審        議官       佐々木富二君        水産庁漁政部長  矢崎 市朗君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○連合審査会に関する件 ○農業者年金基金法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○農林漁業金融公庫法等の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○国有林野事業改善特別措置法案内閣提出、衆  議院送付)     ―――――――――――――
  2. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) ただいまから農林水産委員会開会いたします。  この際、連合審査会に関する件についてお諮りいたします。  日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定の実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特別措置法案について商工委員会に対し、連合審査会開会を申し入れることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 御異議ないと認め、さよう決定をいたします。  なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     ―――――――――――――
  5. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 農業者年金基金法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案の趣旨説明は先般聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 吉田正雄

    吉田正雄君 それでは、ただいま議題となりました農業者年金基金法の一部改正案についてお尋ねをいたします。  当初に、聞くまでもないことなんですけれども、本年金制度趣旨目的について再度確認をいたしておきたいと思うんですけれども農業者年金農業経営近代化農地保有合理化など構造改善政策一つの柱としており、優秀な経営担当者の確保、経営移譲の促進を図りつつ、同時に農業者老後の生活の安定と福祉の向上を図る社会保障制度性格をあわせ持つ年金制度であるというふうに理解をしておりますが、そういうことでよろしゅうございましょうか。
  7. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 仰せのとおりであります。
  8. 吉田正雄

    吉田正雄君 次に、農業者年金制度が将来にわたって健全な運営を図っていく上で最も重大なことは、国の助成措置とともに、加入者がどのようになっていくかということでありますが、実際に農村を回ってみますと、まだかなり未加入者が残っているようです。現在の加入者状況がどうなっているのか、また加入目標をどの程度見込んでいるのか、お聞きをいたしたいと思うわけです。全体の加入資格者の中で当然並びに任意別の未加入者の数がどのくらいになっておるのか、さらに、それらのものが年齢別にどうなっているか、わかっていればお聞かせを願いたいと思うわけです。
  9. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 年金加入実態でありますが、まず目標につきましては、去る四十九年にこの法制度を改正いたした場合には百六十五万人というふうに見込んだわけであります。で、実際の加入者は、五十二年の十二月現在で見ますと百十三万人でありまして、加入目標との関係では加入率は約七〇%ということでありまして、まだ三割程度の未加入者がいる、こういった状況であります。  それから、加入者には当然加入者と、任意加入者というものがあるわけでありますけれども加入目標に対する加入者割合で申し上げますと、全体として百六十五万人と、こう申し上げたわけでありますが、そのうちに当然加入者は、われわれのもくろみといたしました百三十三万人ということをもくろんでいたわけでありますが、現実加入者は八十八万三千人ということでございまして、六七%程度加入率であります。それから、任意加入者は三十二万人が一応目標であったわけでありますが、現実加入者は二十四万人ということでありまして、七五%強、こういったような加入状況であります。  それから、年齢でございますが、御存じのとおり年齢の構成は非常に高くて、年齢階層別加入者状況を申し上げますと、四十歳から五十九歳、四十歳以上というものが八六・七%ということでありまして、逆に三十五歳未満というのが五%強ということでございまして、非常に高年齢層加入率が高い。逆に言えば、若年層加入率が低いということでありまして、平均年齢で申し上げますと四十八歳というような状況でございます。  それから、年齢階層別資格を持っていながら加入していない者、逆に言えば加入している者はどれだけあるかということでございますが、二十歳代は国民年金加入して、つまり農民年金資格を持っている者が二十六万人あるのに対しまして、農民年金現実加入している者は二万人、こういったことであります。九%。それから三十歳代は国民年金加入しておる、つまり、農民年金資格を持っている者は四十三万人あるわけでありますが、現実には十二万人、二八%という加入率であります。それから、四十歳代は八十四万人というものに対しまして四十三万人、約半数加入している。五十歳代は八十八万人に対しまして五十三万人、逆に六一%というかなりの高率のようなことになっておりまして、これもただいまのは国民年金加入しておる、つまり農民年金加入する資格を持っている者と現実加入者との対比で申し上げたわけでありますが、これも同様に若い方から未加入割合が高くて、年齢が高いにつれて加入率が高まる、こういった形を示しているわけであります。
  10. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまの数字で明らかになりましたように、若年層加入率がきわめて低いわけですね。その低い理由についてどのようにお考えになっているのか、なかなかむずかしいと思うんですが、概略で結構なんですが、どのようにお考えになっておるのかどうか。  私は、一つ理由として、保険料がこれは一律でいっているわけですので、そういう点で保険料がやはり高いということも一つの大きな理由になっておるんじゃないかというふうに思うわけですね。三十五歳未満特定後継者に対しては、一定要件を具備することによって保険料軽減措置というものがとられているわけですね。しかし、その他の人については、保険料軽減措置というものがないわけです。そうすると、二十歳代の方も、三十歳代も、四十歳代もとにかく保険料が一律であるという点で、他の年金との間に非常に性格の違いがあるわけです。私はそのことも一つの大きな理由だと思うんですが、その辺どのように分析をされておるか、わかる範囲内で結構ですからお聞かせを願いたいと思うわけです。
  11. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 若い層の加入率が残念ながら低いということでございますが、これはかつて私どもがいろいろアンケートをとって調べたわけでございます。入っていない人の理由はいろいろさまざまな理由がはね返ってきているわけでありますけれども、若い方の理由を大体私どもはその調査から類推いたしますと、これはまあ人間一般の通性ということで、若い間は老後ということをなかなか考えにくいということもあるわけです。そういう意味では、年金というものは余り身近には感じないという一般的なパターン、これはあるわけでありますけれども農業者年金の場合には六十歳までに二十年間掛ければいいということでありますから、何もそうあわてて若いうちに急いで掛けるということもない、四十歳になるまでに入ればいいじゃないかという感じがどうもあるのじゃないかと。  それから、農業者年金ということでありますから、普通の一般的な老後保障ということとやや違って、経営移譲による経営の若返りとか経営規模の拡大、そういった政策的な意味を持っておるわけでありますが、そういった意味との関係で、本人自身自分農業を将来どういうふうにしていくのだというようなことがあって年金加入するという場合があるわけでありますが、若い人の場合にはやっぱり本人農業経営を将来どうするか、そういった目標というものは必ずしも定かではないと、そういうようなこともあるのじゃないかと思うわけであります。  そういうことで、結局はやっぱり若いうちに入っておけば将来にわたって老後の設計が立つと、そういうようなことがどうもまだ自分自身の問題として身近に感じていないというようなこともあるわけで、片方、それから年金が支給開始されましたのが二年ぐらいでありますから、現在入っている方々は、先生御存じのとおりせいぜい五年か六年ぐらいの掛金しか払ってないわけで、そういう意味で相対的に掛金水準が低いということもありますので、そういうような現実の低い掛金水準というものを前提にすれば、やはりそれほど興味は感じないというようなこともあって、どうも一般的に言えば、若い人は年金というものをそれほど身近に感じていないのじゃないかと、まあこういうふうに思うわけであります。  いま御指摘になりました保険料の問題につきまして、そういう声もございます。保険料が高いとか、あるいは経営移譲要件が厳し過ぎるとか、そういうようないろいろな声もありますが、そういった措置につきましては、御存じのとおり、経営移譲要件というのを緩和してきておりますし、それから保険料水準につきましても、特定後継者につきましてはいわゆる学割りという制度を開いていただきまして、かなり一般のものに比べて三割引きというようなかっこうで緩和をしておりますし、それから給付水準というもの、これは何回も上げて、今回もまたスライドアップをお願いしておるわけでありますが、逐次その制度改善という効果は出てきているというふうに思いますので、われわれのPR不足ということもかなり一方にあると思います。そういったことをPRをすることと合わせて、制度改善効果というものが逐次私どもは浸透して、今後われわれ努力によって加入率を高めていこうと思っている次第であります。
  12. 吉田正雄

    吉田正雄君 今回の改正案で、四十九年度に引き続きまして保険料納付特例措置というものが講ぜられるわけです。制度発足当時の趣旨の不徹底等を直すということも含んでいると考えますけれども、それならば未加入の当然加入者並びに既加入の当然加入者任意加入者について時効にかかった保険料特例納付を認め、年金を受給できるようにするだけでは不十分であり片手落ちではないかと、そういうふうに思うわけですね。未加入任意加入者、とりわけ高齢後継者、つまり四十歳を過ぎてなお土地の権利名義がなく、年金加入しようとしたときにはすでに年金受給に必要な保険料納付期間を満たすことができなくなっている者についても、いまから加入すれば年金受給に結びつくようにすべきではないかと思うわけです。  後継者とはいっても、いずれは権利名義を持つこととなる者であり、そうした意味で、当然加入任意加入実質的区別はつけがたいわけですし、できるだけ多くの者が年金に結びつくようにすることが、本年金制度目的に合致するものであるというふうに考えておるわけですので、この点についてどういうふうにお考えになっておるか。これは非常に大きな問題でありますが、また年金制度趣旨からして放置をするわけには私はいかない問題だと思うんです。そういう点でどのように考えおいでになりますか、将来の見通しも含めてぜひお聞かせ願いたいと思うんです。
  13. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) いまの御指摘は、保険料時効にかかっている者というものを救済措置対象としていま私ども審議をお願いしておりますのは、当然加入者とそれからすでに加入している任意加入者ということで限定しているわけでありますが、それをそれだけに限定せずに、任意加入者とかつて入らないまま残っている任意加入者、ことにその中には後継者もいるわけでありますが、そういう者を救済措置対象に拡大することについてのお尋ねだと理解しておるわけでありますが、理屈を申し上げて恐縮でありますけれども任意加入者につきましては、やはりその本人が私は加入しますという意思表示があって初めて加入するということになっておるわけでありまして、やはりそこは当然加入者、黙っておってもその資格があれば当然加入するということになる当然加入者とはそれは根本的に違うということであります。  ですから、そういう意味後継者任意加入者でありますから、同様に制度上その本人加入意思申し出たときから被保険者ということになるわけで、現に加入していない者は、残念ながらもともと加入意思がなかったというふうに、冷たい言い方になるかもしれませんが、そういうように考えざるを得ないと思うわけであります。  それから、任意加入者の中で後継者につきましては、自分が入るという意思のほかに、やはり親が、複数後継者がいる場合にはその中の特定人を特定してこの人が自分後継者であると、こう言って意思表示をするということが加入要件になるわけでありますから、さかのぼりまして、その複数の子供がいた中で、その中の一人であるその者を後継者として指定する意思がその当時親にあったかどうかということまで類推せざるを得ないというような、非常に技術的な困難さがあるわけであります。そういう意味で、その加入申し出があり現に加入できなくなっているという任意加入者については、さかのぼって加入特例措置を講ずるということは、社会制度のたてまえ、いろいろ選択、逆選択を防止するというようなこととか、手続の面から言っても非常に困難性が伴っているということを申し上げざるを得ないわけであります。  現に国民年金では、やはり任意加入者につきましては、こういった時効保険料給付特例ということにはしておりませんので、そういうような他の制度とのバランスも実はある。しかし、任意加入でありましても、私どもはことさら差別をしているわけじゃありません。現に、任意加入者でも申し出をしている者はそれは加入意思ありということで加入資格を取得して、そしてそういう者につきましては当然加入の者と何ら差別的な待遇はしない、こういった措置をとっておりますので、ただ任意加入の場合には、いま私がるる申し上げましたそういった本人意思加入ということをかかわらしめているということに、実はむずかしい問題があるというようなことであります。  しかし、心情的には先生のおっしゃいましたような、高齢後継者がいて、しかも親はなかなか譲ってくれない、したがって自分後継者経営者になりたくてもなかなかできない、こういうような実態もあるわけでありまして、よく存じておりますし、それから後継者につきましては、いわばいずれ経営者になる者でありますし、経営者予備軍でありますから、そういう者を何らかの形で救済できないかどうかという御指摘は理解できるわけであります。ただ、いま現在において、それをいま申し上げました理由から直ちにすぱっと割り切って解決するということは、率直に申し上げまして現在のところなかなか知恵がないということで、これはもう少し検討さしていただきたいと思っているわけであります。
  14. 吉田正雄

    吉田正雄君 いまの答弁の中で、国民年金任意加入者の例も出されたようですけれども、私は後継者任意加入の問題と、それから国民年金の場合のいわゆる妻の任意加入者性格というものを同じに見るべきじゃないと思うんですね。もうこちらは、明らかに後継者になるということがはっきりしているわけです。ところが趣旨が不徹底であったとか、いろんな理由によって実はいままで入ってこなかったということなんですので、一定期間を区切ることによって、たとえば何年何月までにそういう人については再度それではその申し込みを受けつけるというふうなそういう制度を設けることによって、本当に意思があって、しかしいままでは入れなかった、入り損ねたという人については、私はこれは当然対象にしていくべきだろう、これがまた本年金制度の私は趣旨だと思うんですよね。  なるほど、他の年金との比較であるとか、いろんなことがあると思うんですけれども、繰り返し言うようですが、他の年金任意加入者性格が本質的に違っておるということと、本年金制度制度趣旨目的からするならば、本来はこれは当然含まれるべきだったんですね。それを、任意加入という方向にむしろ分けたこと自体が、私は不自然だったと思うんですよ。そういう点で、これは大臣から実は答弁いただきたいところなんですが、ちょっと大きな問題ですからね。局長、答えられますか。それとも、政務次官おいでになりますが、これは政務次官も、この制度趣旨からするならば私は当然これは何らかの措置を講ずるべきだと思うんですが、この点いかがでしょうか。  また、その前にちょっと聞きたいんですが、人数がどの程度であって、私は財政的な負担というのはそう大したことないと思うんですよね。それらもあわせて考えてひとつ御答弁をいただきたいと思うんです。これはもうぜひ前向きに検討してもらわなきゃならない私は大きな問題だと思っておるわけです。
  15. 初村滝一郎

    政府委員(初村滝一郎君) 先生のおっしゃることはよく私も理解するわけでありますが、年金制度としての仕組みが果たして妥当かどうかという並びもあるようでありますので、制度研究会等とか、これがあるようでありますから、そういうものによく研究さした上で、できるだけ期待に沿うように努力いたしたいと考えております。
  16. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 人数お尋ねがございましたが、後継者ということで申し上げますと、五十二年の十二月現在で四十歳以上の後継者はおよそ二十六万人存在しているものと見込んでおります。これは全部いま国民年金加入しているということでありますが、しかし、まだ親がおって自分自身農地自分名義で持っていないという者の全体であります。このうち実際に農業者年金加入している者はその半分の約十三万人、これは四十歳以前に加入しているという者でありまして、残り十三万人が未加入者になっていると。この十三万人は四十歳にならない前に加入しないで、その後時日の経過とともに四十歳を超えてしまって加入資格を失った、こういうような方々で、約半数が未加入のまま存在している、こういった状況であります。
  17. 吉田正雄

    吉田正雄君 それでは、いま政務次官の方からも、質問趣旨はよく理解できるということで検討したいということですので、私は前向きに検討していただくということを確信をして、その問題についてはそれで終わりたいと思うんです。  なお、細かいことなんですけれども、この今回の特例措置によって救済をされるいま言った人の数ですね、今回の特例による救済者の数というのは大体どれぐらいになるんでしょうかね。
  18. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 大体、時効完成者が私どもの推定では全体で七十万人ぐらいいるであろうというふうに思っております。しかし、この七十万人全体が時効、いわば今回の救済対象になるというものではございませんで、ただいま議論になっていることと実は関係があるわけでありますけれども任意加入者というものが外れるわけでありますから、七十万人のうち、仮に一〇〇%みんなが手を挙げて救済してくれという仮定でいきますと、四十数万人というものは救済対象になる、こういった状況であります。
  19. 吉田正雄

    吉田正雄君 次に、この特例納付措置に伴う掛金の問題について若干お尋ねしたいと思うんですが、御承知のように、この保険料の額というのは五十二年の一月から十二月までの月分が二千四百五十円、それから五十三年一月から十二月までの月分が二千八百七十円、それから来年度、五十四年の一月から十二月までの月分が三千二百九十円となっているわけですね。ところが、今回の特例納付に伴う保険料については三千六百円ということで非常に高いわけですね。そうでなくても国民年金と一緒になって加入をしているわけですから、そこへまた三千六百円ということになるわけです。まさかペナルティーという、そういう趣旨がこの中に含まれておるというふうには解したくないわけなんですね。  そうすると、年金趣旨、先ほど来申し上げておりますように、まあいろいろ趣旨が不徹底であったとか、あるいは中には、後ほど御質問も申し上げますが、実は末端事務不手際等によってこの保険料の納入が中断をされておったということも私は聞いておるんですよね。本人責任外なんですね。だから、その責任は一体どこへいくのかという問題も出てきますけれども、話がこんがらがりますからそこは外しましても、とにかく三千六百円というのは高いじゃないかということで、積算根拠がどうも明らかでない。単に一〇%増しと、来年度の保険料に一〇%増しで三千六百円だなんて言ったってこれは理屈にならぬという意見が非常に強いわけですね。  そういうことで、少なくとも五十四年の一月からの掛金と同じ三千二百九十円ということならまだ理解できる。ところが、さらにそれを上回って三千六百円ということですから非常に高いじゃないか。高いというよりも、受けとめる方は、これはいままで納めなかった何か罰則、罰金的な要素がここに入っているんではないかという、こういうふうに受けとめておる方もあるようですね。そういう点で、なぜこういう三千六百円という数字が出てきたのか、その辺をひとつ明らかにしていただいて、今後のこの年金制度に対する理解と協力が得られるという、そういうやっぱり方向にいってもらいたいと思うんですね。その点についてお聞かせ願いたいと思うんです。
  20. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 罰金ないしはペナルティーというふうにおとりになる方があるいはいるかもしれませんけれども、それは誤解でございまして、私ども、そういう保険料を納めなかったために年金受給資格が発生しない、それはいろいろな事由があるかもしれませんが、いずれにしても年金がもらえないという方々をやはり救済申し上げるという意味でこの例外措置をとった、救済措置をとろうとしているということでございますので、決してペナルティー的な考えは毛頭ございません。あくまで救済という考え方でお願いしているわけであります。  そこで、時効救済ということでございますが、これは理屈を申し上げて恐縮でありますけれども、やはり保険制度上、保険料というものをやはりきちんと決められた期間に一定期間を納める、そして初めて年金の受給権が発生するというのはこれは制度の根幹でありますから、いつ納めてもいい、後になってから納めてもいいという形では、これはやっぱり保険制度というのは成り立たないというわけであります。現に、九五%の方が現実にきちんと決められた法定期限内に保険料を納められて受給資格を取得されると、こういった手続を踏んでおられますので、そういうような考え方からすれば、あくまで特例的な、例外的な措置ではないかと、かように考えるわけであります。そういう意味からすれば、保険料水準をどうするかということは一つ議論になるわけでありますが、過去にその人が時効になったときに納めるべき保険料と同じ額をいまになって納めればいいという考え方は、やっぱり妥当ではないのじゃないかと。  それは過去においてきちんと納めた九五%の方とのやっぱりバランスを欠くということにもなりますし、それから、現在、現行の保険料をそのまま納めればいいということも、同様な理由でやっぱりバランスを欠くのじゃないか、公平を欠くのじゃないかと、こういうような考え方で、現行のいま御指摘のありました五十四年の一月以降の三千二百九十円という月額保険料が決まっておりますが、その一割増しというところの水準で他の九五%の方々とのバランスをとったと、こういったことであります。これは何もほかの制度そのものをまねするというわけではありませんが、この農業者年金の根っこの部分になっておる国民年金というものも、そういった時効救済措置をとっているわけでありますが、それもやはり現行の保険料の最高額の一割増しということをしておりますので、それと平仄を合わせたというような経緯もあるわけであります。  それから、時効にかかって現実保険料を納めないで年金の受給発生しないという方々は、いろんな事情があるわけであります。いま御指摘になりましたように、農協とかあるいは農業委員会、そういった窓口の方の趣旨の不徹底というようなことで本人が知らなかったというような、つまり本人の責めに帰するような事由じゃないという事由で本人が納めなかったというようなこともあるわけであります。しかしながら、一方において、やっぱりわかっていながら加入しない、あるいは加入しても納付をしないまま一定期間経過して現実年金の支給時になって初めて自分年金はもらえないと気づいてあわてると、こういったケースもかなりあることも事実であります。  どっちがどっちということを議論するつもりはございませんが、両方あるのじゃないか。しかし、今回の措置は、そういった理由がどうあるということは一切これは議論してってもなかなかけりがつく話じゃありません。理由のいかんを問わずとにかくそういう時効にかかっている方々をすべて救済すると、こういったことでとっているわけでありますから、そういう意味で一種の特例的なことと、それからもう一つは、特例的なことであるというたてまえで保険料はほかのやっぱり九五%の方々とバランスをとって一割増というところで措置をしたいと、こういうふうに考えておるわけでありまして、決してペナルティーとかそういったつもりはない。むしろ救済措置であるというふうに認識しているわけであります。
  21. 吉田正雄

    吉田正雄君 これは国民年金もそうであるというふうなことでおっしゃっておるんですけれども、私は同額では確かに均衡を失するというその説明は常識としちゃわかるんですね。しかし、ペナルティーでないということになると、これは一割もの掛金を上積みするという点については、これは非常に問題だと思うんですね。そういう点で、これは大蔵省の方からも出席をされておると思うんですが、答弁はいただかなくて結構ですけれど、この問題についてはひとつ大蔵省あたりでも、一体一割なんというそういうものがいいのかどうなのか。これは国民年金等も含んでみんな話にもなると思うんですが、特に私は、農林省の場合には、この点については何も国民年金国民年金って、悪い方は全部国民年金に勢ぞろいする必要はないんですよ、これは。特に政策年金として発足をしていった趣旨からしても、私はやはりできるだけ改善をすることこそ本制度趣旨を生かすものじゃないかと思いますので、これについても今後ひとつ検討するぐらいのことは、ここでぜひ御回答をいただきたいと思うんですが、その点はいかがですか。
  22. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 私がペナルティーではないと申し上げたことをもう少し御説明申し上げたいわけでありますけれども一つの例を申し上げますと、いま大正五年一月生まれの方が現在六十二・五歳ということになっております。そういった方々保険料を過去において払ってなかったために年金をもらえない、こういうケースは現にあるわけでありますが、過去に一切もう払ってなかったという方々、そういう方が今回全部一遍に納めるということになりますと、保険料を五年分納めることになるわけでありますが、二十一万六千円納めるということで年金受給資格が発生するわけです。過去においてこれは一回も納めてなかった。  そういう方々はそれじゃどの程度もらえるかということになりますと、六十歳から六十五歳までの間は経営移譲年金がもらえるわけであります、経営移譲しますと。そうすると、いま六十二・五歳ですから、二年半もらえるということになりますと九十一万円もらえる。それから、六十五歳以上ということになりますと、仮に七十六歳ぐらいまで生きるという前提で、六十五歳以上は経営移譲年金が四十万もらえる、老齢年金が五十万もらえる、合わせますと六十歳から七十六歳までの間に百八十万円もらえる、こういった計算になるわけであります。つまり、いま大正五年一月生まれの方が、現在六十二・五歳の方で過去において一回も納めていなかった方、それが二十一万六千円納めれば、その方が仮に七十六歳まで生きたと仮に仮定すれば、百八十万円の年金額をもらえる、こういったことでありまして、決して本人に不都合ではなくて非常に有利な形で救済をするということになるわけであります。  二十一万六千円をどの程度俗な言葉で言えば元が取れるかということで計算いたしますと、経営移譲年金を七カ月もらっていればこの二十一万六千円がもとへ戻ってくるということでございますので、逆にこれは年金の財政計算上からすれば別の議論が出てくるわけであります。その分だけ後代負担とかいう議論が別に出てくるわけでありますけれども、私どもがいま救済申し上げている方方について見れば、一割増ということでいろんな御批評はあろうかもしれませんが、しかし、現実にはそういうような収支計算ということが成り立つということでございます。
  23. 吉田正雄

    吉田正雄君 私は、そういう説明を聞くために質問したのではないんですよ。年金自分の掛けた金よりも少なくなって戻ってくるなんて言ったら、だれが年金制度に入りますか。よくなるのがあたりまえの話であって、そんなことをいまあなたから得々と説明をされて、そんな説明で、はいなんというつもりで質問したんじゃないですよ、それは。そういう言い方をするのなら、いいときだけではないということなんですよ、年金制度では。かつての恩給制度の場合どうですか。  たとえば、公務員の恩給制度だって、これはきょう質問の予定にはなかったのですが、私も公務員関係の出身ですから、年金制度のことはある程度よくわかっておりますよ。かつてどうでした。三十七年の十二月に公務員の恩給制度が現在の共済の長期の年金制度に切りかわったとき、たとえば公務員関係だけ見た場合、特別会計じゃないんですよ、一般会計でどんぶり勘定でやってきているんですね。しかし、その年金制度への移行に伴って、戦後だけですよ、どれだけのいままで掛金が積まれておるかということについては、当時大蔵省が認めただけでも実は六千億円からあったのです。学者の計算では一兆円を超えておったのじゃないかという人もあったんです。  ところが、その年度の公務員に対する恩給支給総額というものが幾らかというと、二百七十億程度です。六千億の年七分の長期運用やったって、利息だけで四百二十億円も出てくるんですよ。ところが、実際に支給する恩給額は二百七十億程度です。しかし、そこには軍人恩給、遺家族恩給等その他の扶助料等が全部入ってくるもんですから、八百五十億とか千億という金になるんですよ。かつての恩給がいかにも公務員に対して恩恵的であるような言い方がされたんですけれども、実は元を取らない。しかも、その当時の受給年数なんというのはわずか三年そこそこだったんですよ。だから、みずからの互助制度を持っておった方がよほどよかった、こういうことなんですよ。  だから、いまあなたが説明されたように、計算してみればこうなりますなんと言って、そんなのあたりまえの話であって、よくない年金制度にだれが入りますか。それは後で言いますよ。そういう人もあるでしょう。しかし、逆に言えば損をする人だって出てくるんです、これは後ほどの質問でしますけれども。だから、そんな説明というのはいまの質問に対しては回答になりませんよ、それは。そんなの回答になっていませんよ。私が言っているのは、いま言ったわずか二年前に仮に中断しておったという者に対して、一割もの掛金の増額が果たして妥当であるのかどうか。もっとそれは、本年金制度趣旨からして軽減をすべきではないかということを言っているんですよ。年金に入ったら得する計算をあなたから聞こうなんて思って質問したんじゃないんですよ、それは。まあ、それはそれといたしまして、もういいですよ。何もあなたをやり込めるために質問しているんじゃないですから、それはそれでいいです。  そこでもう一つ、私はいまのこの救済制度に絡んで、次のこともあることを忘れてもらっては困ると言うんですよね。それは、現時点でまだ未加入者があり、また保険料の納入が中断をし、時効が完成したため年金に結びつかなくなった者が発生しているということで今回救済することになったんですよね。その背景には、農業者年金の業務を執行する体制、とりわけ農業者年金基金から業務を委託されている末端の農協や農業委員会における事務体制が即応し切れないという、そういう不備の面があるんですね。もちろん、中には加入を勧められても入らないとか、あるいは保険料の納付を催促されたけれどもつい忘れて納めてこなかった、それが時効にかかってしまったというような農業者個人の責任に帰するべきものもあるでしょう。それは幾らかはあると思います。  しかし、私が聞いているところでは、農協や農業委員会の体制の不備というものを指摘をする声が非常に強いんですね。たとえば金でも自動振りかえでやるとか、現金を一々納めに行かないでも貯金から回すとか、いろんなことがあるわけです。ところが、皆さんの方からは、県を通じたり市町村を通じたりして農協や農業委員会に業務を委託しているわけでしょう。専従者がおるわけじゃないんですよ。その委託経費も出されております。しかし、この委託経費がまたきわめて安いんですよね。そういう点で、専従者もない片手間でやる、臨時に人を雇うといってもその委託経費では賄い切れない、いろんな要素が重なって、つい加入業務というものが停滞をする、あるいはいま言ったような掛金の納入が何らかの手違いによってつい滞ってしまったというふうなことがあるわけなんですね。そういうところから生じた人もおるんですよ。  その責任問題だって本来出てくるんですね。本人の責めに帰すべきでない理由によって実は二年間知らぬ間に中断されておった、気がついてみたら、実はもうあなた年金資格がありませんと言われているということですからね。その問題は、これは農協と本人との間の責任になるのか、あるいは政府との間にその責任問題が出るのか、私はいまここでその問題を追求しようとは思わないんですけれども、そういう原因もあるということを皆さんは認識しておいてもらいたい。  そこで、こうした点について国として今後どのような体制整備のための指導方針をお持ちなのかどうなのか。もっと端的に言いますと、その仕事を頼んだ農協なり農業委員会に対する委託業務費というものが非常に安いという批判に対して、これを大幅に上げる考え方が一体あるのかどうなのか。もしそれがだめだというと、こういう声すら出ているわけです。もうこの事務はお断りだと、そんなのだったら年金基金の方でひとつ専従者というものを市町村なりに配置をして、直接農業者と個々にやってもらいたいという、そういうような開き直ったということじゃないでしょうけれども、そういう意見すら私は聞くんですね。そういう点で今後の指導体制をどういうふうにされるのか、あるいはいま指摘をしたような委託費の増額とか、そういう問題についてはどのようにお考えになっているのか。  確かに、人を一人ずつ市町村に配置するというのは実際上不可能でしょう。だから、そういう点では委託費をある程度増額をして協力をしてもらうということは、私は必要だと思うのですね。その点についてどのようにお考えになっているか、お聞かせください。
  24. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 御指摘になりましたように、農協あるいは農業委員会の窓口の決定が十分ではないというために、資格を持ちながら入っていなかったというような農家の方々に迷惑をかけている事例はかなりあったと思います。そこは非常に問題だというふうに、私どもは認識しております。そこで農協等が窓口になっているわけでありますけれども、率直に申し上げまして、地域によって、あるいはその団体によってばらつきがかなりあります。加入の多いところも、それから保険料がきちんと入ってきているところもありますし、それから本制度目的であります経営移譲がスムーズにいっているところとそうじゃないところと、それぞれの問題を洗ってみますとばらばらなところが非常にありますので、私どもといたしましては全般的に農協、農業委員会というものを基金を通じて指導し、あるいは県を通じて指導いたしますけれども、ことにこれからの重点といたしましては、そういった問題のあるような地区を重点に現地指導をする、現地の監査指導というところを特に強化をしていきたいと思っているわけであります。  もちろん、窓口の職員の資質の向上という意味で研修制度というものをやったり、あるいは受託機関同士の担当者会議の開催等を通じて業務の運営の的確化を図っていくという、従前のラインの指導というものは続けていきたいと思いますけれども、いろいろ今後加入の問題、加入をふやすとか、あるいは本制度がなかなかPR不足であるという種々の御批判をいただいております。そういったことにこたえるために、現地の指導活動を通じてそういう声におこたえしていきたいと思っているわけであります。  しかし、もう一方、先生指摘になりましたように、委託手数料というものについて増額の要求がかなり強いということは私ども承知しておりますので、一昨年よりは昨年、昨年よりはことしというぐあいに増加はしておりますけれども、まだ決して十分だとは思っておりません。財政当局の御理解も得ながら、五十三年度におきましてはかなり増加したつもりではありますけれども、しかしこれで十分だと認識しているわけではありませんので、今後その増強についてはさらに努力していきたいと。  ただ、専任職員ということになりますと、これ、はかなり膨大な財政負担を先生御存じのとおり伴いますので、またそういった人件費というようなことにつきましては財政当局の抵抗が一倍多い予算でもありますので、非常に問題が多いわけでありますが、委託手数料の引き上げにつきましてはこれは御趣旨のとおりだと思います。努力したいと思います。
  25. 吉田正雄

    吉田正雄君 大体いまの答弁でいいんですけれども、私も細かい手数料がどういうふうに積算をされているのかわかりませんけれども、地方交付税等での積算などを見ますと、小規模の場合と大規模の場合同率ではないわけですね。そういう点で、実際の各農協なり、あるいは農業委員会なりの経営規模なり実態なりというものをもちろん参酌されていると思いますが、その辺も十分ひとつ考慮されて、増額に特段の配慮をお願いをいたしたいと思います。  次にお聞きいたしたいと思うのは、今回の改正によって年金給付額のいわゆる改定給付額と改定実施時期についてお伺いをいたしたいと思うのですが、この給付額の改定については附則十条の二項によって、総理府の五十二年度全国消費者物価指数の上昇率に見合うものということになるわけですけれども、改定率が大体予想の数字が出ておりますけれども、どうなるのかということ。  それから、改定実施時期なんですけれども、これはいろいろこの年金に限らず、その他の公的年金についても官民の給与ベース改定の時期に合わせるべきだというベースアップの時期等とも絡んで、従来非常に論議をされてきておるところです。私は、原則的には五十二年度の消費者物価の上昇率に見合ってということですから、当然本来ならば、この五十三年の四月から他のベース改定とあわせて実施をしていくのが当然だと思うんですね。ところが、公務員の賃金等についても、かつては翌年の一月から十月になり、九月になり、あるいは七月、五月というふうにして、ようやく現在は四月にまで来たわけです。そういう点で、理論的からしてもこれは後追いになっているわけですね、五十二年度の消費者物価の引き上げに見合ってやろうというんですから。本来だったらさかのぼっていいんですが、そこまでは無理としても、五十三年の四月からこれは実施をすべきだと思うんです。ところが、これは従来からも大蔵省が財源難を理由にして、このベースアップ等についても実施時期を値切ってきたというふうなことがあるわけですね。  そこでお尋ねをしたいんですが、七月実施にした場合と、それから四月実施にした場合に、財源的に一体どの程度のものが必要になってくるのかということと、他の年金との関係ということで七月とおっしゃっただろうと思うんですけれども、何で四月に実施できないのか、その理由は何なのかということ。  さらに、将来に向けてこの実施時期というものは四月に繰り上げていくべきだと思うんですが、将来の見通しをどのように立てておいでになるのか。これは、私はこの年金制度という趣旨からして、これは私はもう物価の後追いになっているわけですから、一日も早く実施時期というものを繰り上げるべきだというふうに思うんですね。そういう点で、農林省当局と大蔵省当局の実施時期等についての見解をお聞きをいたしたいと思うんです。
  26. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) まず、パーセントでありますが、五十二年度のCPIの対前年度の上昇率でありますが、六・七%ということでありますから、これは五%を上回っておりますから、当然その率だけスライド条項でスライドアップするということであります。  そこで、まあ繰り上げ時期でありますが、本則で言えば、いま先生指摘になりましたように、来年の一月からということになっているわけでありますが、半年繰り上げて七月からということであります。それをなぜ四月にできないのかと、こういう話でありますけれども、実は絶対的なルールはぼくは率直に申し上げまして必ずしもないだろうとは思うのですが、この前の五十二年にやったときも、実は七月ということでやった例もございますが、七月でなきゃいけないか、あるいはほかの月であっちゃいけないのか、その辺のところは必ずしもきちっとした絶対的な基準というものはあるのかどうか、私は疑問には思っておりますけれども、しかし私どもの立場から申し上げれば、この根っこになっている国民年金も、やっぱり一月を六ヵ月繰り上げて七月にしているということでございますので、私どもの方はまた先生からおしかりを受けるかもしれませんが、国民年金の付加年金的なポジションで運営しておりますから、それと平仄を合わせるということも一つ考え方だろうと思っているわけであります。  なぜ一月にということが逆に問題になるわけでありますが、それはやはり従来の経緯論があって、財政再計算を一月にやっていたというようなことも本則の一月になっている根拠ではないだろうかと思いますが、そういうような考え方で私どもは七月ということでお願いしているわけであります。  将来それをどうするかということにつきましては、いろいろ私ども農業者年金だけの問題ではございませんので、ほかの年金制度とのバランスとかいうこともございますので、それらを比較考量して各省打ち合わして対処したいと思うわけであります。  それから、七月からさらに四月ということにいたしますと、細かい正確な計算はまだしておりません。しておりませんが、目見当で申し上げますれば、財政増が単年度で約二億円というようなことであります。
  27. 吉田正雄

    吉田正雄君 額はわかりましたけれども、私は大蔵省の方にお聞きをしたいと思うんですけれども、ことしのこのベース改定等でも、予算案に成られたものと実際の今度勧告あるいは仲裁裁定等の間に開きが出てきた。金がないときには、人事院の場合でもそうですが、勧告が出されても、かつては実施時期等については値切られてきた。つまり、金がすべてであったということなんですね。その後に理由づけが行われてきたということだろうと思うのです。ですから、私はこの実施時期の問題について、その他の問題についても、すべてこれは金がもとになってくるわけですけれども国民年金が七月だからこれに右へならえだと。じゃあ国民年金の七月というのはどこから出てきたかというと、やはり大蔵省と、あるいは厚生省なりとの間に、この財源等についていろいろ相談が行われて七月というふうな話になってきただろうと思うのですね。  七月というふうに踏み切った財源的な見通しと、それから今後、ことしは七月と出ているわけですから、ここですぐ法律を修正するなんてことはこれはちょっと不可能ですが、来年度以降について、四月に向けてさかのぼる努力を一体される意思があるのかどうなのか、このことをお聞きしたいと思うのです。
  28. 古橋源六郎

    説明員古橋源六郎君) 年金のスライドの実施時期の問題でございますけれども、本年一月を七月にさかのぼったというのは、まさにいま構造改善局長が御説明いたしましたとおり、こういう制度の恩典をやります場合には、どうしても実際の考え方として、いろんなやっぱりバランスというものを考えませんと非常にむずかしいわけでございます。理論としては、それはできるだけ受ける側がたくさんもらうということはいいわけでございますけれども、しかし実際のこれだけの大ぜいの人たちに、いろいろな利害関係のあるものにつきまして、それをうまくまとめていくということのためには、よその制度とのバランスということは、行政当局としては非常に重要なことでございます。  そこで、農業者年金の場合につきましては、先生におしかりを受けるかもしれませんけれども国民年金との関係考えて従来からやってきておるわけでございまして、この点につきましてはこういうことで御了承をいただきたいと思います。  さらに、来年以降の問題でございますけれども御存じのように、財政というものは非常にいま窮迫状態でございます。したがいまして、来年以降の問題について、そういう方向で検討するということをお約束いたしましても、それはそのときのまた財政状況というものがございますので、その段階におきまして農林省当局と十分御相談をしていきたい、こういうふうに考えております。
  29. 吉田正雄

    吉田正雄君 多分、そういう回答が返ってくるんじゃないかということは予想しているわけです。まあしかし、これはきわめて紋切り型の回答でありまして、それで結構ですというわけにはいかないわけですね。しかし、ないそでは振れぬと言われるとこれまた困るということは事実なんでして、しかしそうは言っても、私は金はやっぱり使いようなんですね。どこに重点を置くかという政策なんですよ。  そういう点で、私は大蔵省にもお願いをいたしたいと思いますけれども、もう御承知のように、いまの日本農業というのは十年後には壊滅するんじゃないかと言われるほど、実はいま私は重大な状況に立ち向かっていると思うのですね。これは農業だけでありません。漁業しかりです。そういう点で、ますます後継者難に陥ったり離農する人がふえる。あるいは専業農家であっても経営がきわめて困難である。そういう状況の中で、私は日本農業の将来というものや、あるいは日本の食糧というものを考え、そして何よりも先進工業諸国においても農業は国のもとであるという点については、これは西ドイツを見ても、イギリス、フランス、イタリーを見ても、またアメリカが世界最大の農業国であると同時に工業国であるという点からしても、やはり農業に対する国の力の入れ方というのは、私は日本よりはるかに重いものがあると思っているのです。  そういう点で、私は報われざる現在の農業従事者にせめてこの年金制度の面だけでも、いまお聞きをしても、七月から四月に実施時期をさかのぼらしてもわずか単年度で二億円程度の財源しか必要ないんですよ。この程度のみみっちい金がないとは言わせられないと思うんですね。要は、どこに金を入れるかという、使うかというやっぱり財政政策だろうと思うんです。そういう点で、ここで財政論議をやるというあれはありませんけれども、置かれておる現状、それからこの年金制度が発足をしたその趣旨等からして、その点については大蔵省としてもよりひとつ前向きに取り組んでいただきたいことを要望いたしたいと思うんです。その点いかがでしょうか。
  30. 古橋源六郎

    説明員古橋源六郎君) 農業者年金の方では二億円ということでございますけれども、それに伴います国民年金との関係もございます。国民年金の方で非常に大きな金額を食うわけでございます。したがいまして、先生の御趣旨はよく私どももわかるわけで、できればみんなやりたいと、私どももいつもしかられているばかりじゃいやでございますからやりたいわけではございますけれども、その中で全体とのバランスを考えて努力をしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  31. 吉田正雄

    吉田正雄君 これ以上幾ら言っても、何かのれんに腕押しのような感じになりそうですが、しかし申し上げている趣旨は御理解いただけると思いますから、ひとつ今後とも十分御努力、御検討をお願いをいたしたいと思うんです。  次に、老齢年金の額の引き上げと、それから支給要件改善についてお伺いをいたしたいと思うんですけれども、御承知のように、経営移譲をやむを得ない理由で実施できなかった加入者は老齢年金しか給付をされないわけです。しかし、保険料は他の人と同様に納付をしておるわけです。そして、経営移譲者と非移譲者の間に、この給付については非常に大きな差があるわけですね。したがって、私はこの老齢年金については現行では余りにも低過ぎる、安過ぎるという点で、少なくとも倍額くらいには引き上げるべきだという意見、要求というものが非常に強いと思うんですけれども、それについてはどのように考えおいでになるのか、また仮にこの老齢年金を倍額に引き上げた場合、必要財源は一体どの程度になるのか、それもお聞かせ願いたいと思うんです。  また、この加入条件も、経営移譲者と比較をして非常に厳しいわけですね。そういう点で、この老齢年金受給条件というものを、保険料納付済み期間というふうに限定をしたらどうかという要望が非常に強いわけですね。その点についてどのようにお考えになっておるのか、あるいは将来に向けて改善をするというそういうお考えがあるのかどうなのか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  32. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 農業者老齢年金を引き上げるべきである、こういう御意見はたびたび私どもも伺っております。いろいろこの法律を従来御審議願った過程におきましても、国会におきましてもそういった御意見を伺っておりますので検討しておるわけであります。農業者年金は実際に支給をされるのは御存じのとおり昭和五十六年からでありますから、決してそれまで何もしなくてもいいという意味で申し上げるわけでありませんので、その検討期間の間に何か検討して解決をしてみたいと思っております。ただ、この給付水準につきましては、実は制度の基本に触れるという問題もありますので、その辺の調整をどうするかということもありますから、それも一つの検討課題だろうと思っております。  それから、これはあたりまえの話なんですが、所要費用ということも出てくるわけで、相当なあるいは保険料のやっぱり引き上げということを伴わざるを得ないのじゃないだろうか、そういうこともありますので、そういったこととの兼ね合いも考える必要があるだろうというふうに思っております。  それから、これは本制度経営移譲あるいは第三者移譲ということによる経営規模の拡大とか経営の若返りという構造政策をねらっている制度年金であるというところから、ある程度宿命的な点もあるわけでありますが、老齢者年金のレベルを余り上げますと、いわゆる経営移譲した者と経営移譲しなかった者とのメリットといいますか、その差が非常になくなって、いわゆる構造政策の政策効果というものの効果が薄められるというようなきらいも実は出てくるおそれがあるということでありますので、その辺のところをにらみ合わせながら検討させていただきたい。現在は六十五歳から支給される年金で比較いたしますと、経営移譲した者と経営移譲しなかった者との比較をすると大体七〇%ぐらいというようなことでありますが、それがいいかどうかという議論も含めて、今後の検討課題とさせていただきたいと思っているわけであります。  それから保険料、財政負担でございますが、二倍に仮にしたということでございますと、ちょっといま金額をはじいておりませんが、保険料も、これは一定の前提を置くわけでありますが、やはり半分以上、五〇数%上げる必要が出てくるのじゃないだろうか、あるいは財政負担も五五、六%ぐらいやっぱりアップする必要が出てくるのじゃないだろうか、こういうような目見当を立てております。
  33. 吉田正雄

    吉田正雄君 経営移譲者と非移譲者の間の格差がなくなったんではこれまた困るしというお話なんですね。私は、格差をなくして全部同じにせいと言っているんじゃないんですよ。余りにも格差が開き過ぎておるんじゃないかということで、老齢年金をもう少し引き上げたらどうかと。絶対額が低いんですから、倍にしてみたって大したことないんですよ、もともとの額が低いわけですから。そういう点で、倍額というといかにも大変な額になるようなんですけれども、もともとが低いわけですので、そう驚いた私は額にならぬだろうと思いますので、単に割合で五〇%ぐらい掛金はというふうな言い方でなくて、私がいまお聞きしたのは、実際に倍額にしたら金額そのもので大体どれぐらいふえるのかなということをお聞きしたんですよね。  そうでないと、五〇%も引き上げなきゃならぬなんて聞きますと、要求そのものがしぼんじゃうということになるんですけれども、必要財源でどれぐらい増額になるのかということをお聞きすれば、国庫補助の増額等そういうことによってでも幾らでも賄えるんじゃないかというふうな感じがするものですからお聞きしたんです。  これは、いますぐ数字が出なけりゃこれは後ほどでいいんですが、そういうことでこれはぜひひとつ、強い要望でもありますし、これは衆議院等でも附帯決議もついてきておるわけですから、前向きとか善処なんという言葉は余りにも日本的な言葉なんですが、実現に向けてひとつ具体的な検討をぜひやっていただきたいと思うんですが、いかがですか、この点は。
  34. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 金目が具体的に幾らになるかということは、私もよくわかりません。専門的な知識と多少時間を要するので、ちょっといまこの段階では、決して隠すという意味じゃ毛頭ございませんので、出るまで若干猶予をいただきたいと思うわけであります。  それから、この老齢年金の問題につきましては、ただいま申し上げましたように、いろいろなところからそういう御批判といいますか、御指摘があるわけで、私どももそれはそれなりに受けとめて研究課題とさせていただきたい。これだけじゃございません。ほかの農業年金制度、ほかのいろいろな御指摘があるわけで、婦人の問題だとか、あるいは遺族年金だとか、もろもろの御指摘があるわけであります。そういったこと等含めてそういうことをどうするかということで、昨年の十月に農林省内に制度研究会というものを開きまして、そこでことしの三月、四月といろいろ具体的な問題につきましていま御討議願っているということでございますので、そういったところで討議していただいて、そしてこの問題をどうやって解決していくのかということの指針を得たいと、かように思っているところであります。
  35. 吉田正雄

    吉田正雄君 次に、国庫負担の引き上げについてお聞きをしたいと思うんですけれども、御承知のように、農業者年金の場合にはその前提条件として国民年金加入をすることが必要なわけですね。したがって、国民年金と合わせて保険料を払うということでありますから、負担というものは相当大きいわけです。加えて、先ほども申し上げましたように、この農業者年金そのものの掛金が、他の公的年金と比較をして定額であってしかも高いんですね。これが厚生年金やその他の官公労関係の共済の長期の掛金の場合ですと率でいきますから、低額所得者はそれなりの掛金ということになりますけれども、これは定額でいっているわけですので、そういう点で、先ほども若年者にとっては非常に高い負担になるんじゃないかということも御指摘を申し上げたんですね。  そういうこともありますので、今回また国民年金保険料が高くなるということで大変だと思うんです。そういう点で、保険料負担を軽減をするという観点から、国庫負担補助というものを引き上げるべきだという非常に強い要望が出ていると思うんですね。これについてはどのようにお考えになっておるのか、すでに検討をあるいは開始をされておるかもわかりませんが、その辺、将来の見通し等も含めてお聞かせ願いたいと思うんです。
  36. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 保険料水準をどうするかということは、片方、受給者、加入者の側からすればできるだけ安くしてほしいという御要望があるのはこれは当然の話でありますが、全体の保険、年金の財政設計ということからすれば、これはかなり非常に問題があるということはおわかりのとおりだろうと思います。ことに農業者年金の場合に、冒頭先生指摘になりましたように、やっぱり加入者目標に比べてまだ低いというようなことも財政上非常に問題であるわけでありますし、それからこれも御指摘になりましたように、年齢の構成というものが非常に高齢者に偏っておる、若い人が少ない、これはこれなりに別の御議論がおありだろうと思うわけでありますが、財政計算からすればやっぱり一つの大きな問題だろうと思うのですね。  それから、経営移譲率もかなりこれは高くなってきているということは構造政策の効果があるというようなメリットでありますが、逆に財政計算からすればこれも一つの問題であるということでありますので、将来の年金財政をどうするかということと実は大きく絡む問題でありますので、まあ御指摘の点はよくわかりますが、そこのところは財政計算と絡んで検討いたしたいと思います。  それから、国庫負担はこれは農業者年金は給付時三分の一としておりますし、拠出時には十分の三ということで、給付時だけの厚年とか、あるいは国民年金というものに比べまして、国庫負担率はいわば独特の政策年金ということから、かなり高額の国庫負担としているということも事実でありますので、これにさらに上乗せするということは、それなりにまた別の問題が財政当局との折衝という問題も出てくるわけであります。そういったことを考えて五十二年に財政計算をしたわけでありますが、五十七年のときには今度は五年目ということでありますから、もう一回財政再計算をしなきゃならないという時期になるわけであります。あるいはそれ以前にしなきゃならないと、こういう問題も実はあるかもしれません。そういうこともありますので、その財政再計算の過程でいま御指摘になりましたようなことは検討させていただきたいと思うわけであります。率直に申し上げまして、財政が非常にやっぱり心配だという御懸念も、片方においては非常に強く農業者年金に寄せられているという事情もあることを、御理解願いたいと思うわけであります。
  37. 吉田正雄

    吉田正雄君 国庫負担率が確かに他の年金に比較をして高いということは、おっしゃるとおりだろうと思うんですね。しかし、それは当然またそうでなきゃ困ると思うのは、これが政策年金として出発したということや、それから悪循環で因が結果となるということはないんですけれども、やっぱり若年層が入らないということがこれはやはりどちらが最初かとも言えないと思うんですね。掛金が高いからおれはしばらく入らぬで待っていようとか――それは中にはありますよ、そういう人だって。まだ先の話だという話もあるでしょうしね。だから、本当の原因はわかりませんが、いずれにしても加入促進にやはり努めていただくと同時に、やはり魅力のある年金制度にしておくことが必要だという、これは両々相まつということになると思いますので、いずれにしても再計算が来るまで、五十七年まで待つなんということでなくて、さらに検討も早めていただきたいということを要望しておきたいと思うんです。  その次に、これももう今日までいろいろ論議もされてまいったと思いますが、御承知のように、日本農業を支えているものはよく三ちゃん農業と言われたりしておりますけれども、婦人の果たしておる役割りというものがきわめて大きいわけですね。むしろ現在の日本の農業の担い手の中心というものが婦人であると言っても、私は過言ではないんじゃないかというふうに思うわけです。そういう点からしても、この農業者年金経営主とその後継者という形で加入を限定するのでなくて、農業の担い手になっておる婦人についてもこの加入の道を開くべきであるというふうに思うわけですね。そういう点で、婦人あるいは後継者のそのまた妻とかというぐあいにこれを広げていく考え方というものがあるのかどうなのか。これも、衆議院等でも、附帯決議等で強く要望されておると思うんですね。この点についてのお考えをお聞かせ願いたいと思いますし、またこれからの見通し等についてもお聞かせ願いたいと思います。
  38. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) この問題につきましても、衆議院それから当委員会におきましてもたびたび御指摘をいただいた事柄の一つであります。いま御指摘になりましたように、農業者年金というものが経営移譲ということを保険事項として設計されております関係上、やっぱり地権者、土地の所有者、所有権を持っている者あるいは使用収益権を持っている者ということに勢い加入資格がならざるを得ないということになりますので、そういうことになりますと、結局経営主またはその後継者ということになるわけであります。  そこで、農業を実際やっている者との関係からすれば、実際は主婦がやっている、あるいは別の農業従事者がやっているということとの関係で、どうしても心情的にどうもおかしいのじゃないか、こういう御議論が出てくるわけであります。だから、経営主体、地権者ということでありますと、妻とか、あるいは農業従事者というものは受給資格というか加入者にはなれない、そういうようなことになってくるわけで、その辺のところが実は非常にむずかしい事柄だというふうに思っているわけであります。  ただ、農家の妻の場合でも、主婦の方々の場合でも、専業農家の場合とそれから兼業農家の場合とはやや対応が違うと思います。兼業農家の場合には、これは夫がむしろ都会的、非農業的な部門において働きに出かけて行って、厚生年金等の被用者年金にむしろ入っている、で、主婦の方が実際は農業を担っていると、こういうのが実態だろうと思うわけであります。そういった場合には、むしろやや技術的な対応かもしれませんけれども、夫から妻が土地を借りるとか、名義を変更するとか、そういった対応をすることにすれば、当然妻は農業者年金加入資格を得るということになりますので、そういった対応をしている方も中には私はあるのじゃないかと思います。現在妻の方で加入している方が五万三千人おられるわけでありますが、そういった方々の中には、そういう対応をしている方もおられるだろうと思うわけであります。  ただ、専業農家の場合ですね、妻も夫も働いていると、こういった場合にそれをどうするかという問題は、つまりそういった家族共同体というものを農業経営単位としてどう考えるかという問題とか、それから妻の場合には経営移譲というものをどう考えるか、それから妻の農業に従事しているということをどう把握するかというのは、いろいろな技術的な問題もありますし、そういった問題を詰めなければならないということも実はあるわけであります。  それから、農業経営実態ということと地権者が加入資格になっているということとのつながりをどうさせるかということが、実は保険制度として非常に大きな問題でありまして、その辺のところが今後の検討課題ではないかと思っているわけであります。それからまた、妻は当然御存じのとおり国民年金には加入し得るわけでありますから、そういう意味で六十五歳から年金を支給するということになりますと、国民年金加入者であるそのほかの婦人とのバランスをどうするかというような別のサイドからの議論もまた出てこないとも限らないということがありますので、こういった問題を含めて検討しているところであります。  これは、先ほど申し上げましたように、農林省の中に制度研究会というものをつくっておるわけでありますが、その中でいろいろな老齢年金の問題、婦人の問題、あるいは遺族年金の問題等々あるわけでありますが、そういった問題を御議論願っているわけですが、その中で特にこの婦人の問題、これは同時に遺族年金の問題と絡むわけでありますが、それを先にいま順位としては先に御議論願っていると、こういった三月、四月にその問題を集中的に御議論願っているというようなところが現在の経過でございます。
  39. 吉田正雄

    吉田正雄君 この問題についてももうちょっと突っ込んでやりたいところなんですが、余り時間がなくなってまいりましたので、もう四、五点ほどお聞きしたい点があるものですから、質問も要領よくやりますが、答弁の方もそっけなくても困るんですが、納得がいけるように簡潔にひとつお答えいただきたいと思うんです。  例の遺族年金制度、もう説明はやめます。遺族年金制度の創設についても非常に強い要望が出されているわけですし、これらについても本院で今日まで論議もされてきておると思うんですね。それについてどのような検討がなされたのか、またこれについて創設をするという前向きの検討なのかどうなのか、その点をお聞かせ願いたいと思うんです。
  40. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 結論から申し上げますれば、検討会はさせていただきたいということであります。問題点としては、私どもいままでの検討の過程で問題になっております事柄は、一つは基本的には国民年金との関連調整をどうするかということであります。具体的には、母子年金とか寡婦年金というものが国民年金ではあるわけでありますから、そういうものとの調整をどうするかということと、それから経営移譲という構造政策をこの年金はねらっているわけでありますが、それを促進する上でどういうような意味を持つのかどうかということと、それからこれはほかの制度と同じような意味でありますが、保険料のアップというような問題も出てくるわけでありますが、そういったことが一つの課題になっていると、こういったものをどうやって解決するかということが課題になっている、こういった状況でありまして、これも先ほど御答弁申し上げましたように、実は婦人の問題と絡む問題でありますから、同時に研究会等において御議論願っているということであります。
  41. 吉田正雄

    吉田正雄君 じゃあ次に、水田利用再編計画が出されて、農民にとってはしゃにむに国権による強制的な押しつけだという強い不満があるわけですね。しかし、協力しなきゃならぬということで現在ほとんどの農民がこの新しい生産調整、減反政策に協力をしておるわけです。ところが、この使用収益権を設定して後継者移譲した場合、その農地を農協に管理転作に出すと年金の支給が停止されてしまうという点が出てくるわけですね。農協が保全管理をしている間はよいということになっているわけですけれども、第三者に貸さないでよいという指導は現在ないし、そういう点でこの管理転作に出しても年金を打ち切らないという措置をとるべきじゃないか。  国の政策に、減反政策に協力したは、協力した途端におまえの年金はだめだなんていう、まさに泣きっ面にハチというふうなことでは、これは大変だと思うんですね。これこそまさに政策的に私はこの支給除外からまた外すべきだと、特別の考慮を払うべきだと思うんですよね。大臣おいでになりませんが政務次官おいでになりますので、これはもう何としてもここでその方向だという回答をいただきたいと思うんですが、いかがですか。
  42. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) ちょっと事務的に私からお答え申し上げます。  所有権の移転ではなくて使用収益権の設定で経営移譲した場合に、御指摘のようなことがあるわけであります。つまり、子が親から土地を借りてそれを管理転作に出すということになりますと、第三者に対して使用収益権を設定していたということになるわけで、みずから耕作しないということになるわけで、これはやはり親の年金の受給資格が停止されるということになるわけでありますので、これはたてまえから言って、後継者移譲というものは親の土地を子がやはりそのまま耕作すると、そういうことによって農地の細分化を防止し経営の若返りを図るということが本則でありますから、それを自分で耕作しないで他に耕作を依頼するということになりますれば、やっぱりこの経営移譲年金趣旨というものとはぶつかるわけでありますから、それはやはり受給停止ということの措置をとるのはやむを得ないのじゃないかと、かように思っているわけであります。  それから、ただそれが保全管理という形でとどまっている限りは、これは使用収益権の設定ではございませんので、親の年金の受給というものとは関係ございません。  それから、これが管理転作というような使用収益権の設定ではなくて、部分作業の委託という形で対応すれば、それはやはり自分が、子がみずから耕作するということとぶつかるわけではございませんので、そういった場合には親の受給資格停止ということにはならない、かように思っているわけであります。
  43. 初村滝一郎

    政府委員(初村滝一郎君) 国の政策で水田を転換して管理転作をされたために、せっかく受けられるはずの年金が受けられなくなると、これはもう当然そういうことをさせちゃいかぬと、そういうことのないように指導していかなければいけないというふうに考えておりますので、やっぱり受けられる権利のある者、国の政策でやったからこれがだめだというようなことは、当然やるべきでないと私は考えております。
  44. 吉田正雄

    吉田正雄君 そうすると、いま局長と次官の答弁の中では私は違いがあるというとあれでしょうけれども局長の舌足らずの点を次官の方で十分補われたというふうに理解をいたしまして、この点については私が指摘をした点については心配がないようにひとつ措置をすると、こういうふうに受けとめてよろしいわけですね。
  45. 初村滝一郎

    政府委員(初村滝一郎君) 局長答弁と私の答弁が食い違っておるのじゃないかというようなことですが、私はやっぱり国の政策でマイナスになるようなことはしちゃいけないというのが根本的な考えでありますので、そういうことにならないように具体的な指導をしていくと、あわせてそういうことをやっちゃいかぬということに考えておるわけであります。
  46. 吉田正雄

    吉田正雄君 指導というのは、私は特に内部的に農林省としてそういう体制を、そういくような内部指導を、私はひとつ次官として大いにやっていただきたいということと、本制度が、それによって部分的にでも不利をこうむる層が出てくるということにならないようにするといういまの次官の答弁ですから、それじゃ再度くどいようですがお聞きしますが、私が指導をしているような点については、心配のないようなひとつ農林省として措置をとるというふうに理解をしてよろしゅうございますね。
  47. 初村滝一郎

    政府委員(初村滝一郎君) あなたの趣旨に沿うように、周知徹底して指導していくという考えであります。
  48. 吉田正雄

    吉田正雄君 それじゃ趣旨が御理解いただいたようでありますから、そのことがそのとおり行われるよう再度要望申し上げまして、その問題については打ち切ります。  あと時間が二、三分しかございませんので、二つの問題を続けてお尋ねいたしますので、これも簡潔にお答えいただきたいと思うんですが、御承知のように、特定処分対象農地農業の振興、発展に資する施設であるとか、あるいは用排水路、農道等を造成したときに、年金給付停止措置がとられるということになるとこれは大変なわけです。そのような場合、土地収用法適用の場合と同様に、その年金給付停止措置から除外すべきではないかと思うんですが、この点についてどのようにお考えになっておるのか。  それからもう一点は、畜産あるいは施設園芸農家等、専業農家であってもいわゆる農地面積が三十アール未満のために加入できない制限があるわけですね。これらの人についても、日本農業の振興に果たしておる役割りというものが非常に大きいわけです。そういう点で、これも片手落ちの措置ではないかということで、この年金加入制度を開くべきだという強い要望がこれらの農業者から出されておるわけですね。これらの点についてもどのようにお考えになっておるのか、また加入の道を開くということで検討される意思があるのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。  以上で質問は終わります。
  49. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) まず第一点の、親から子に使用収益権を設定して移譲した場合でありますが、そういった農地は第三者移譲と違いまして親が比較的処分しやすいと。そういう意味では、年金支給というものをかなり厳格な要件で縛っているということは事実であります。親から子に貸してそして子がそれを耕作するということは、やはり子が自分自身でそれを農業用として使用収益するということを前提としているわけでありますから、それと違った形でその土地が利用されるということになりますと、やはり年金支給に影響を及ぼさざるを得ない、かように考えておるわけであります。そういう意味で、経営移譲をしやすくしているということで使用収益権の設定という道を開いたわけでありますから、それがさらに緩和されるということになりますとややむずかしい問題もありますが、検討はしてみたいと思います。  それから第二点の、三十アール未満の畜産農家あるいは施設園芸農家、こういうようなものについての加入の問題でありますけれども、御承知のとおり、いま三十アール未満は除いているわけであります。やはりこれは、将来とも農家らしい農家としても発展する可能性を持っている農家をどう把握するかということでありまして、やはり私どもとしては、確かに畜産農家、施設園芸農家は資本集約的なものでありまして、土地との関係というのは、養豚だとか、あるいは施設園芸農家は希薄ではあります。ありますけれども、しかし、三十アールぐらいの土地の保有というものはやはり必要じゃないだろうかと。ことに、この農業者年金というものは、経営移譲による経営の若返りと同時に、やっぱり規模拡大ということを一つねらっているわけでありますから、そういう意味農地というものの流動化というところにことに着目した制度でありますから、やはり三十アール程度の規模は必要ではないだろうかというふうに思っているわけであります。
  50. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 農業者年金制度は、昭和四十五年の五月に発足して以来八年目を迎えているわけでありますが、この間四十九年度、五十一年度、そして五十二年度においてその改善充実が図られております。その後における社会経済情勢の変化、それから国民年金等の関連諸制度における制度改善状況などとにらみ合わせて、この制度を再び改善充実しようということで今回改正されることになったわけでございますが、衆議院の審議では、基金の理事長さんを参考人に呼んで意見聴取等もされたわけなんですが、参議院における当委員会では審議の日数もきわめて限られてきておりまして、意見聴取ができる余裕がとれないことを残念に思っております。  そこで、まず本制度を、満七年を経過して一体どのように評価をしているのか、ひとつ政務次官の方から御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  51. 初村滝一郎

    政府委員(初村滝一郎君) 農業者年金制度は、農業者老後の生活の安定並びに福祉の向上を相まってやるわけでありますが、今日農業経営近代化及び農地保有合理化に資することをねらって大体やるわけであります。  本制度は、先生いまおっしゃったとおりに、発足後七カ年を経過しております。この制度の中心である経営移譲年金の支給も開始後二年を経過しておりますけれども、五十二年の十二月末現在で年金受給者は約四万一千人弱となっているようであります。したがって、経営移譲年金の支給は開始後二年を経過したばかりであり、現在のところ制度の政策効果一般的に見定める段階にはないけれども、これら経営移譲を行った者の経営については、経営移譲を通じて確実に経営担当者の若返り、あるいは経営規模の拡大の効果が見られたところであり、今後経営移譲年金の支給件数が増加するにつれて農業経営近代化経営規模の拡大等の政策効果を逐次発揮していくのではなかろうかというふうに考えております。  また、後継者の確保、経営規模の拡大は、農業者年金制度のみによって達成し得るものではないので、農業基盤整備の促進とか、あるいは地域農政特別対策事業とか構造改善事業等の推進等一連の施策の実施と相まって、今後とも政策の効果が一層発揮されるように農林省としても努力をしてまいりたい、かように考えております。
  52. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 今後の推移を見なければ政策的なこの制度が一層効果を発揮するかどうかまだ定かでないと、こういう結論だと思うんですが、過日社会保障制度審議会が昭和五十二年度の報告を発表している中に、農業者年金基金法の一部改正についての答申が次のように出ております。「国民年金等の改正に併せてスライド制の実施時期を繰り上げること、保険料未納者に年金権を与えるため特例納付措置を講ずることは、了承できるが、本審議会がしばしば指摘したように、社会保障制度としての年金と企図されている農業経営近代化政策との関連について、なお疑念がはれない。」、こういうように答申されております。農林省としては、この答申をどのように受けとめておるんでしょうか。特に、「企図されている農業経営近代化政策との関連について、なお疑念がはれない。」という点ですね。以前からも指摘されている点だと思うんですが、この点について、明確なひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  53. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 社会保障制度審議会でいろいろ御議論があったわけでありますが、それの御議論は、おおよそ制度の仕組み方としてこの農業者年金が一種独特の制度であると、構造政策というものをねらって年金の支給だとか、あるいは加入要件についてかなり厳しい要件というものをつけている。そういうことについて、一般年金制度では見られない独特な制度であるという点が一点。そこのところがどうも理解が十分に、われわれの説明不足ということもあるかもしれませんが、十分ではない。それから高率の国庫負担ということで、これも他の社会保障制度との関係でやっぱり一種独特の制度であるというような認識があるということ。  それから、最後の先生が御指摘になりましたことについては、年金的手法をもって構造政策を実現しようとしているわけでありますが、その構造政策としての効果が、二年しかたっていないということと、それから元来、本来的にその構造政策という効果がそう目立って即効的に出てくるものではない、目で見てすぐわかるというものではないということと、それから理屈になるかもしれませんが、構造政策というものは何も農業年金だけが担う事柄ではなくて、他のもろもろの農業政策と相担い合ってやっていく事柄でありますから、その中での農業年金の位置づけをどうするかということもこれもなかなかいろいろ議論が分かれるところだと、そういう意味で御理解が十分にはなってない側面が残っていると。そういう意味で、今後いろいろ年金の具体的な運営とか、われわれの説明という形で対応していく余地が多分に残っているというふうに私どもは理解しております。
  54. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 農林省がこの制度をつくるに当たっての目的、これについてまだ十分社会保障制度審議会の委員の方たちがのみ込んでいらっしゃらない、また、農林省としても説明に対する努力が欠けている点がまだまだあるのじゃないかと思うんですが、いま局長おっしゃったように、この制度目的は、農業者老後の生活の安定と福祉の向上を図ることが一点と、農業経営近代化農地保有合理化に寄与すると。すなわち、構造政策というものを大きな柱にしているわけでして、いわば政策年金としての性格が強いわけであります。  そこで、私は、この農業経営近代化農地保有合理化という立場から、この制度についての改正案についての質疑を進めたいと思いますし、また同時に、経営者の若返り、いわゆる後継者づくりという点についても若干触れてお尋ねをしていきたいと思います。  最初に、本制度の実績についてなんですが、この制度の中核をなしている経営移譲の中身について若干お尋ねをしたいと思います。  経営移譲実態についてなんですが、昭和五十二年十二月末の成果が報告されていると思いますが、後継者移譲と第三者移譲に分けてまず数字的に明らかにしてほしい。  それから、この数字なんですが、それは局長おっしゃるように発足してまだ二年しか経過してないわけですので、本制度の実績が上がったかどうかを判定する材料とすることは果たして妥当かどうかということは別として、農林省が当初考えていた農業近代化合理化目標と比較してどのように評価をされるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  55. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 五十二年の末の年金受給者でありますが、約四万一千人であります。そのうち後継者移譲が約三万八千人、それから第三者移譲が約三千件と、こういうようなことになっております。  この効果でありますが、もうちょっと政策効果を見るにつきましては時間をいただきたいと先ほど政務次官がお答えいたしましたが、それなりに私ども経営移譲を通じて経営担当者の若返りとか、あるいは経営規模の拡大の効果は出始めているというふうに認識しております。  具体的に申し上げますれば、経営移譲を受けた者につきましては後継者平均年齢が約三十一歳ということでございまして、平均でございますが、これはやはり確実に経営担当者の若返りというものが行われているというような認識をしていいのじゃないかと思っております。  それから、第三者移譲でありますけれども、その規模拡大ということがねらわれているわけでありますが、その実績を見ますと、経営移譲を受けた相手方に即して見ますと、内地では取得前に平均一・三ヘクタールであったものは取得後一・八ヘクタールに、北海道の場合には、取得前九・四ヘクタールであったものは取得後十二・六ヘクタールというぐあいに拡大をしております。そういう意味では、第三者移譲における経営規模拡大というものの効果は出始めてきているというふうに認識しております。  当初、具体的な数量でどれだけの目標を立てておったかということにつきましては、当初、経営移譲が幾ら、あるいは第三者移譲が幾ら、後継者移譲が幾らというふうに具体的な計量的な目標は実は立てておりませんので、当初目標との比較はちょっと困難でございますけれども、ただいま申し上げたように、まだ短期間ではございますけれども、それなりの効果は発揮し始めているというふうに私ども考えております。
  56. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 当初目標との比較は無理だとおっしゃるんですが、そうすると、何年度ぐらいから農林省として考えていた目標とにらみ合わせて検討するようになるんですか。
  57. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 制度発足当時、長期目標として何人というようなそういう数字は設定されていなかったということでございますので、そういう意味で長期目標との対比ということは現段階ではちょっとできないということを、御了承願いたいと思います。
  58. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 この制度をつくるときは相当勢い込んで農林省としての方針を貫いてつくった制度ですから、やはり本制度効果を上げたかどうか一つの目安になるものとして、   〔委員長退席、理事青井政美君着席〕 長期計画を策定されて、実際にその目標どおりに達成できているんだという証拠をつかんで、さらに自信を持ってこの制度の中身をよくするというようにしていくことが必要じゃないかと思いますが、いかがでしょう。
  59. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 私ども制度をつくりましたときには、いろいろ年金として年金財政の観点から、何年にはこれだけの人に加入してもらうとかいうような、そういうような年金設計という観点からの数字は一応もくろんだことはありますが、何年度に何人の経営移譲とか、そういうところまでの実は設計は、もくろみは立てておりませんでしたので、残念ながらそういうお答えはできなかったということであります。しかし、御指摘のことは御趣旨のとおりであると思いますので、今後検討さしていただきたいと思います。
  60. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 先ほどの御答弁の中にあった後継者移譲が約三万八千人、これは全体の九三%。これで経営者の若返りはある程度進んだということは理解できるんですが、この三万八千人の後継者のうちで、経営規模拡大ができた人は一体何人ぐらいいるのか。それから、その面積はどれぐらい拡大できたのか。もしか、細かくそういうふうに分けての数字をつかんでいらっしゃったら説明をいただきたいと思うんです。  それから、第三者移譲の方が約二千八百人、これは全体の六・八%になりますけれども、この総合計の面積は何ヘクタールになっておるのか。  それと、一九七八年版の「農林水産統計」の農地の権利移動を調べてみますと、昭和五十一年の許可件数でいきますと三十七万四千件あって、約十三万七千ヘクタール、こういうように発表されておりますけれども、この農地の権利移動の中で、第三者移譲の動きについて、一体農林当局としてはどういうようにお感じになっているんでしょう。特に、この制度がこの数字上から見てどの程度寄与しているというようにとらえているのか、その点のところを御説明いただきたいと思うんです。
  61. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) まず第一の、後継者移譲という場合で経営規模拡大ということにどの程度役立っているのかと、こういうようなお尋ねがあったわけでありますが、五十二年度中に経営移譲をした者のうち後継者移譲をしたという者が約三万三千人弱あるわけであります。そのうちの二万七千人が経営規模拡大を伴わず、別の言葉で言えば単純再生産といいますか、経営規模が変わらない形で移譲していると。これが八四%程度。残りの一六%が経営規模拡大ということにつながっていると、こういったことであります。  参考までに経営移譲を受けた子供の方に即して申し上げますと、経営移譲を受ける前にその子供は二十アールぐらいを持っておって、経営移譲百六十六アールを受けて百八十六アールに規模拡大していると、つまり親の代には百六十六アールであったものが経営移譲した結果、子の代には百八十六アール、二十アール増加していると。これは全部やった者もやらない者も平均して申し上げたわけでありますから、やった者について言えば、十数%という経営規模拡大ということにつながった農家について見れば、これは一ヘクタールとか、あるいは場合によっちゃ数ヘクタールというぐあいに規模拡大しておる者もかなりあるわけであります。やらなかった者が、やらなかったといいますか、親の代と子供の代と経営規模が同じであったという者が八十数%あるということで、それを薄めてしまうからそういうことになるわけでありますが、薄めましてもそういうような結果になっているわけであります。ですから経営規模拡大、後継者移譲というものは当然細分化防止ということであるわけで、それの機能を果たしているわけでありますが、同時に、経営規模拡大ということにも貢献しているということは言えるのじゃないかと思うわけであります。  それから第二点の、第三者移譲で権利移動した面積と、それから御指摘になりました農林統計で農地の権利移動が十三万七千ヘクタール、こういったこととの関係で全体の権利移動の中でどの程度第三者移譲による権利移動が寄与しているのかどうか、こういう御指摘であるわけでありますが、五十一年度に第三者移譲で権利の移転設定のあった農地の面積が約千三百五十ヘクタールというようなことになっております。一方、お話ありましたように、昭和五十一年農地の権利移動は十三万七千ヘクタールということになっておりますが、この十三万七千ヘクタールというものは全部が全部第三者移譲ということではございませんので、その半分以上、五二%はつまり自作地を無償で所有権移転したと、つまり後継者に所有権を移転したというものであって、それが七万一千ヘクタール、つまり五二%に及んでいるということであります。  そういう意味で、この十三万七千ヘクタールと直ちに第三者移譲というものと比較するのは妥当ではなくて、もし比較するとすれば、後継者移譲を含む経営移譲の全体とそれからいまお話しのありました全農地移動の十三万七千ヘクタールというものと比較するということは、一つの参考ではないかと思うわけであります。そうしますと、経営移譲後継者移譲それから第三者移譲を含めました移譲が、五十一年の四月から五十二年の三月までで申しますと約二万七千ヘクタールあると。一方、国全体の農地の移動は、御指摘のありましたように、十三万七千ヘクタールあるということでありますから、約二〇%と、こういうようなことになっております。全体の中で約二〇%ぐらい占めていると、こういう状況であります。
  62. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 次に、農地の買い入れ、売り渡し事業と融資事業についてお尋ねをしておきますが、買い入れ、売り渡し事業はそのほとんどが北海道が該当しています。ここへ一覧表をつくっていただいたんですが、五十二年十二月末の累計でいきますと、買い入れ件数で北海道が二百六十九件、その他都府県が三件、こういうことになっておりますし、売り渡しの方も北海道の件数が三百四十三件、その他都府県が九件。その他の都府県の場合は余り数字的には成果が見られないようなんですが、この原因についてどのようにお考えでしょうか。それから今後も同じような推移をたどるのかどうか、その点の見通しをお聞きしておきたいと思います。
  63. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) いま御指摘のありましたように、基金が行っている売買の実態は北海道に圧倒的に多いということは事実であります。この理由は、結局北海道に偏っていると、集中しているというのは、その基金の売買の業務の対象となる第三者移譲ですが、これは北海道に比較的多いということになるわけでありますが、これは御存じのとおり、北海道の場合には、その第三者移譲が離農というものと結びついて農地の流動化というのは内地に比べてかなりスムーズにいっている、こういったことだろうと思うわけであります。そういったことが理由ではないかと思うわけであります。  それからもう一つ、今後の見通しの話でありますが、北海道だけではなくて、次第に内地につきましてもこの制度の浸透に応じて、買い入れ、売り渡しというかっこうではなくて、むしろ融資というようなかっこうで農地の流動化が進むと、そういう傾向が出てくるのじゃないかと私どもは見ています。
  64. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 確かに、北海道の場合は離農と絡めてですから件数が多くなるのはわかるんですが、そこで一方の融資事業についてなんですけれども、これは一定要件に該当するものは年利三%、そして償還期限が三年の据え置き期間も含めて三十年という長期でありますし、それから貸付限度額もないということで、非常に利用者にとっては有利な条件の融資事業でありますので、大変全国的に農家の皆さんからの希望も多いわけで、融資事業の方の実績を見ますと北海道が八百四十七件、その他都府県が六百二十三件、合計で千四百七十件の件数になっておるわけですが、農地の売買と融資の資金配分、この関係については一体どうなっているんでしょうか。たとえば資金枠で、買い入れ、売り渡しの実績の多い地方はそれに応じて資金配分も厚くなっているのか、それとも全然そういうことは関係ないのか、その辺のところはどうなっておるのでしょう。
  65. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 買い入れ、売り渡し事業の資金とそれから融資の資金ということになるわけでありますが、買い入れ、売り渡し事業の資金配分につきましては、従来から特別に地域別配分というのはしておりません。買い入れ、売り渡しの申請が出てきた場合に、審査してそれが適格なものであれば農地の買い入れで基金は買い入れる、そしてそれを長期低利で売り渡す、こういった措置をとっているわけであります。それから、片っ方農地を取得するための融資事業の融資枠でありますけれども、これは被保険者が離農跡地を一括して取得して経営規模を拡大するという場合に適用されるわけでありますが、実態から先に申し上げますと、北海道、東北あるいは九州、そういった農業地域を中心に順調に行われておる、こういったことであります。  資金枠の配分につきましては、過去の実績、最近の資金需要というものを勘案しており、一応の枠というものは決めておりますけれども、これも必ずしも固定的ではございませんで、現実の需要の動向というものと対応して再配分するというような形をとりまして、実態に沿うような形で具体的な融資はしているというようなことであります。
  66. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 北海道とその他の都府県と分けて申請件数とそれから許可件数、この比率ですね、これはわかったら後からひとつ資料をください。  じゃ次に移りまして、特例納付の実施についてお尋ねをしておきたいんですが、本委員会でもこれまでにも附帯決議を行って政府に要望していた年金資格喪失者の救済措置については、今回やっと念願が実現しまして、関係者の皆さん方喜んでいると思うんです。しかし、保険料については、先ほど吉田委員からもかなり時間を割いていろいろ論議ありましたように、三千六百円というのは高いんじゃないかとこれは率直に思うわけなんですが、特にこの保険料の計算根拠というのがどうもはっきりしない、こういう御不満がずいぶん寄せられてきておりますけれども、これをもう少し明確にしてほしい点。  それから、この措置によって救済される見込み数、これをもう一遍数字を繰り返してひとつお知らせください。
  67. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 三千六百円という特例保険料のレベルの話でありますが、これはまあ根拠ということになるかどうか、いま現実保険料が五十四年いっぱい三千二百九十円という月額でありますが、その一割増しということで三千六百円というふうにしたというのが根拠ということであります。  これをどうして一割増しにしたかということでありますが、これはペナルティーとか罰則という意識は毛頭ございません。あくまで救済ということがねらいであるわけでありますけれども、ただやはり保険料を、後から時効になっている者を救済するというのは、やっぱり例外的な措置であるということをはっきりする必要があるということでそうしたわけで、いつ納めても、きちんと納めた者と変わりはないということであれば、これはだれでもみんな後になって納めると、期限内に納めないということになるわけでありますから、九五%の者はきちんきちんと納めていると、そういうこととのバランスというものを考えて、一割がいいか五%がいいか、そこは御議論のあろうところと思いますけれども、まあ一割としたというのが経緯であります。  それから、時効を完成している者、この措置を適用し得る者というのは、いま時効完成している者は約七十万人ございます。七十万人のうち任意加入加入していない方は対象になっておりませんから、それを除きますと約四十四、五万人という者が、その方の御意思があればこの時効救済を受けて受給権を獲得すると、こういうようなことは可能であります。
  68. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 まあ、たしか局長のおっしゃったように、これまで加入しなかった人を救済するんですから、若干のそこに保険料の割り高ということは考えられますけれども、昭和五十四年四月以降の月分保険料三千二百九十円よりも高いということについて、これは五十四年以降の現行保険料でもよかったのじゃないかという点はどうしても出てくるんですね。これまたひとつ検討していただきたいと思うんですがね。  それから、この措置は今回きりなのか、それとも今後においてもこの種の措置はまたおやりになる考え方を持っているのかどうか。  それから、今回の措置をとったことによる年金財政に及ぼす影響については、どのように政府としてはお考えになっておるか、伺っておきたいと思います。
  69. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) まあ、特例措置はかつて四十九年に、御存じのとおり、特例措置といいますか救済措置はやっているわけであります。今回は二回目ということであるわけで、将来やるかということのお尋ねにつきましては、やはりこれは特例であるから将来やる、現時点において将来やっぱりやりますというお答えは、私はするつもりはございません。やはり今回限りで、ただことしの七月から来年いっぱいですから、一年半の余裕がありますから、その間にいろいろ私どもPRして積極的に入っていただく。また、農家の方々も入っていただく努力をするという形で救済したいと思いますので、当面そこへ全精力を注ぎたい。  将来時点において永久にないかどうかということでありますと、これは別でありますけれども、いままた将来にやるということになりますれば、入る意欲も失われるということでありますので、私は現在時点で申し上げることは、やっぱりあくまで特例であって今回限りにしたいというお答えであります。  それから、この財政に及ぼす影響の話ですが、これはいまちょっと手元に数字を、いろいろ専門的な知識がありますので手元に持っておりませんので、後ほどいろいろ御説明をさしていただきたいと思いますが、いずれにしても財政再計算のときに全部あらゆる要素をひっくるめて、もう一回保険設計をしなければならないだろうというふうに思っておるわけで、いま幾らということは、私ちょっと数字を持っておりませんので御宥恕願いたいと思います。
  70. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 一年半の期間があるので、PRをしてできるだけ落ちこぼれのないように加入促進したいということなんですが、これまでの加入者に対するPRの中身と比べてこの一年半の間に相当効果を上げるためのPRの中身、いままでとは違ってこの点をもっと強調してというような新しい方策、それからPRに対する予算的な措置、それについてはどうなっていますか。
  71. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 漫然と従来の惰性延長線上でPRをやるということだけでは、これはいけないことは十分承知しております。そういう意味で、いろいろパンフレットとか、その他広報紙の配布とか有線放送での呼びかけだとか、そういったものはもちろんやりますけれども、ことに今後の問題としては、やっぱり未加入者資格がありながら入っていない方々、そういった者の名簿等を拾い上げて、そういった方々に個別に当たっていくと、そういうような努力をしていきたい。ですから、一般的な啓蒙と同時に、何というのですか、マン・ツー・マン的な形で対応して加入というものを呼びかける、そういったところに今後の努力の重点を置いていきたいと思っております。
  72. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 それから、これも先ほど吉田委員から質疑があったんですが、毎回この附帯決議に出てきます主婦の本年金制度への加入問題、それから遺族年金制度の創設の問題、制度研究会で鋭意研究、検討はされていると思うのですが、現在どのように検討が進められて、どの辺が一番ネックになっているのか。  それから、主婦の加入問題と遺族年金制度とはどうしてもこれは絡むので、どちらが早くということはないんでしょうけれども、できるとすれば同時にできるものなのか、それとも片方の方から先に実施して、また少し期間を置いて検討した後で両方がそろうというふうになるのか。その辺の見通しについてお聞かせいただきたい。
  73. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 主婦の問題と、それから遺族年金の問題、これはやはり同時に相互関連する問題でありますから、やはり同時に議論して解決するということじゃないだろうかと、いま私どもは思っております。  そこで、いま制度研究会等でいろいろな議論のある問題の中で、この問題をひとまず先に御議論願っている過程でございますが、最大の問題は、やっぱりこの制度経営移譲年金ということを主眼としていると、やはり農地の伴う権利移動と経営移譲ということを主眼としておりますから、農地の地権者、所有者であるか、使用収益権者であるかは別として、地権者である、経営主体であるというところを加入者としてそういう者の年金という形で仕組んでおりますから、一方妻を加入しろと、こういう御議論は、実際は夫がやっているのじゃなくて、実際の農作業は妻がやっている、こういう実態関係が別途あるわけですね。そういうことと、あるいはこれは妻だけじゃなしに、農業従事者という者も同じような関係があるわけですが、そういうことと、先ほど私が申し上げました地権者が加入者であるということとの関係をどう調整するかということが一点。   〔理事青井政美君退席、委員長着席〕  それからもう一つは、妻の場合には国民年金加入しているわけですね。六十五歳から老齢年金の支給が始まるわけでありますが、それをさらに乗せるということになりますと、一般のその他の主婦の方々とのバランスをどうするかという御議論も別の方にまたあり得るわけであります。そういったところは今後の大きな課題じゃないだろうかと、どう調整するかと、そういうようなことで、ですから行政が決意すれば簡単にできるというような事柄でも実はないわけで、制度論がかなり絡んでいるというようなところが現在までの検討課題の主な問題になっております。
  74. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 確かに、制度的にむずかしい点があることは理解できるんですが、この専業農家の主婦の加入の場合、これは制度的に一番むずかしい点だろうと思うんですけれども、やはりいま日本農業を支えているのは、特に主婦の農業従事者によって支えられている点が大きいわけでありますので、この制度的な問題を克服してこの主婦の本年金制度への加入が実現されると、日本農業の崩壊を食いとめるやはり一つの大きな力になると思いますので、これについては、ひとつ制度研究会でより一層検討をぜひ進めていただきたい点を要望しておきます。  それから、被保険者の継承措置についてなんですが、保険加入者の要望が非常に強いわけでして、被保険者が死亡した場合、配偶者等が保険料納付期間を継承できる措置、これについても新たに検討してほしいという声が非常に強いんですが、これについてはどの程度まで検討は進んでおりましょうか。
  75. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 被保険者が亡くなったという場合に、配偶者等が継承して保険料を納付してその権利を継ぐと、こういうようなことができるかどうかということでありますが、年金は被保険者保険料をある一定期間納めることによって、その人の生きている間の生活を年金給付を通じて保障する、こういう制度でございますから、保険料を納めることと、それから年金を受ける権利というものはいわばその人の一身専属的な性格を持っているわけで、そういう意味で譲り渡すということはもちろんできませんし、相続の対象にもなっていない、こういったことであります。  そういう意味で、いま御指摘になりましたように、被保険者の継承措置をとるということは、年金制度そのものの実は根幹と非常に関係が出てくる問題で、ほかの制度においてもこのような措置はとられていないので、農業者年金だけで実施するのは非常に困難を伴う問題だというふうに、私ども現在の検討過程では思っております。やはりいままでの検討過程の議論としては、そういった場合には、やっぱり死亡一時金というような形で対応するのが筋ではないだろうかという議論が非常に強うございます。
  76. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 それはわかりました。  業務体制の確立でお尋ねしておきますが、農業者年金制度では経営移譲年金給付の開始や、それから制度が再々改正されておりますので、そういったことに伴って非常に農業者の関心というのは高まっていると思うんです。それにつれてこのための相談の指導や、それから事務処理というものは非常に最近増加をしているということでして、今後この制度は一層確立されるためには、やはり指導と業務体制、これをきちっと確立してあげないと、なかなかスムーズにいかないのじゃないかと思うんですが、今後県段階、それから市町村段階にどうしても専従職員を配置することが必要だと思うんですが、これは予算を伴うことでありますのでなかなか一気にはいかないと思いますけれども、これに対する農林当局としての援助策、これについては具体的に検討を進められるべきだと思いますが、この点についてはどうなっておりましょうか。
  77. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 末端の農業委員会あるいは農協等、基金の授受をお願いしている窓口に専従職員を置いたらという御要望は、私ども多方面的に伺っております。しかし、専従職員を置くということにしますと、かなり御承知のとおり財政負担を伴いますし、それから財政当局との折衝でも、やはり人件費そのものの補助というかっこうでやりますと、これは非常に抵抗が多い予算であるわけで、専従職員というかっこうで対応はなかなか率直に申し上げてむずかしいと。私どもそれは一遍にはいかないという御不満はいろいろ聞きますけれども、具体的に業務委託手数料、そういったものの増額という形で堅実に努力していきたいということで、逐年その努力はして引き上げて、たとえば、今年なんかは県段階におきましては前年度に比べまして五割ぐらいの増額をしておりますけれども、決して十分であるというふうに認識しておりませんが、そういった業務委託手数料等の引き上げという形で、末端の業務活動の強化というような御要望にこたえたいと思っております。
  78. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 これは基金の方の方たちの声なんですけれど、実際に現場へ行って委託している農協の担当者の方等、いろいろ指導したり教え込んだりするんですが、どうも窓口の担当者がわりあい早いサイクルでかわってしまうと、せっかくのみ込んだと思って、次に新しく変わった点等をさらに詳しく教えたいと思って行くと、もうすでに窓口の担当者がかわっているということで、またもう一遍新たに教え込まなきゃならないということで、非常にその点業務がスムーズにいかないんだと、こういう苦情が出ているわけですね。御苦心があるようなんですよ。  そういったことで、委託のための手数料を今後アップしていくと同時に、やはりこういった専門的にかなり詳しく覚え込む能力の必要な担当者というもののサイクルは余りかえないように、それは出先の県や市町村段階の農協の中の人事配置、いろんなそれは内部事情があると思うんですが、その辺に対する協力もお願いして連携をとって進めないと、なかなかこの業務というものはうまくいかないんじゃないかと思いますが、その点に対していかがですか。
  79. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) まさに御指摘のとおりだと思います。余り人がくるくるかわってしまってはこれは非常に問題でありますから、そういった声も聞いております。そこで、基金等を通じて農協等に、人間の配置についてはよく考えてもらいたいと、そうちょこちょこかわるようなことであっては困るので、そこのところは考慮してもらいたいというような指導はしておりますが、今後さらにまた強めたいと思います。  それから、いろいろ窓口でふなれなために、農家の方に御迷惑をかけるということもあり縛るわけでありますから、そういう部門につきましては研修、ことに新人の研修の強化というところに今後の重点を置いて、私ども努力していくつもりであります。
  80. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 それから、昭和五十二年十月に発足した農業者年金制度研究会、これの構成メンバーのことでちょっとお尋ねしておきますが、構成メンバーが十二名になっておりますね。この十二名の選出に際して、この選考基準というのは一体どういうふうになっているんでしょうか。  それから、農民代表として現職の農業専従者、これを選出すべきだと思うんですが、この点はどうなっているか。  それから、この十二名、名簿をいただいて見ましたけれども、全部男性で女性は一名もメンバーに入っておらないんですが、やはり女性も一名や二名は今後加えるべきでないかと思いますが、この点についていかがでしょう。
  81. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 私どもこの十二名の方方を御委嘱申し上げておりますが、別に排他的でそのほかの方々を入れないというつもりは毛頭ないわけであります。選考基準というようなきちっとしたものが必ずしもあったわけではありませんが、およその考えとしては、やはり農業問題に詳しい方、農業団体の方、それから農業年金だけじゃなしに、ほかの年金との関連性もありますから、年金制度一般に詳しい方ですね、そういった方あるいは学者、それから地方行政の代表者の方方、年金実務者、そういった方々を御委嘱申し上げているというのが実態であります。  そこで、女性の方々だとか、あるいは農業の従事者という方々につきましては、御意見を伺うのはやぶさかではないのです。これは積極的に御意見を伺っていきますが、いまのところの議論は、やはり制度論というところに重点を置いておりますので、それは議論を進めていく過程で当然農家の主婦の方々とか、農業の実際の従事者というような方の御意見も伺っていきたいと思います。これは積極的に御意見を伺いたいと思います。
  82. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 特に、主婦の年金加入の問題を大きく取り上げておりますので、ぜひ意見を聞いていただきたいし、また、できることならこの委員の中へ女性も加えるように努力していただきたいと思います。  それから、農業者年金の財務状況についてなんですが、いただいた損益計算書によりますと、昭和五十二年三月末、これで百六十五億円当期の欠損金として計上されておりますが、この理由について明らかにしてください。  それから、今後の年金財政上の問題が残ると思うのですが、その対応策はどのようにお考えになっていますか。
  83. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 農業者年金は、財政方式として御存じのとおり積立方式をとっているということでありまして、そういう意味で、将来どのぐらい給付財源が要るだろうかという見込み額と、それから将来保険料収入がどの程度入ってくるだろうかという見込み額の差額を責任準備金としてとっておく、その責任準備金に見合う実際の積立金というものを保有していかなければならない、こういうような経理になっているわけであります。そういう意味で、いま御指摘になりましたように、五十二年の三月ではその見合う金として百六十五億円というものが不足している、こういうことが出てきて、それが当期欠損金という形になっているわけであります。これは、要因としては、経営移譲が予想以上に進んだこと、私ども当初は四〇%ぐらい経営移譲が進むのじゃないかと思っていたのですけれども、現にいま大正五年の方が経営移譲年金の支給を受けておられますが、それが六十一歳代ですでに五一・八%の方々経営移譲している、こういったことでありますから、これが六十五歳になるまでにこの方々がもっと経営移譲が進むだろうということもありますので、経営移譲率が予想以上に進んでいるというようなこと等があって、こういった百六十五億円という欠損金が出てきているのじゃないかと思っているわけであります。  それから、この百六十五億円ということは確かに問題ではありますが、直ちに年金支給に金繰りとして支障を生ずるというわけではございませんで、そういう意味で困るということではございません。ただ、将来の年金財政のロングランの設計というものを考える場合には、それは一つの大きな要素として考えておかなければならない事柄だろうということで、直ちに問題は生じておりませんが、今後の年金計算上の一つの大きな検討課題であるというふうには思っているわけであります。  それから、このほかに、年金財政上の問題としてはスライドアップというようなこともありますし、そういうことも含めて長期設計というものは考えておく必要があるだろう。百六十五億というものは直ちに支給に障害を及ぼすということではございませんが、財政設計上もろもろの判断要素があるわけです。その中の重要な要素としてやはり考える必要があるだろうと思っております。
  84. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 五十一年度は百十三億円赤字だったと思うのですけれども、そして五十二年三月で百六十五億円、こういうように今後も欠損金がふえ続けるとすると、一体将来給付財源がなくなってしまうのじゃないか、こういう不安をどうしても皆さんお持ちになりますし、また一方、毎月の保険料というのが今後どんどん高くなっていくのじゃないかという不安も持ちますし、結局年金に対する未来像に大きな不安を持つ。逆ピラミッド型年金というイメージがどうしても強くなってくるのですけれども、全く心配ないのだと局長おっしゃるのでしたら、明確な見通しというものをこの際はっきりとお示しいただきたいと思います。
  85. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 全く心配はないのだということを、私毛頭考えておりません。心配しているのでありますけれども、ふえております理由は、先ほど申し上げましたように、経営移譲率というものが進んでいるということ、それから、ちょっと申し上げましたが、年金スライドアップというものも、これは過去にさかのぼることはできないわけでありますから、やっぱりこれからの人に持ってもらわなければならないということで、いま加入している方々の負担になっていないわけです。そういう意味で欠損要因になっているということもあるわけです。これだけではございません。もう一つは、その加入率が当初の設計よりは残念ながら下回っているということもありますし、それから年齢構成ということも実は関係があるわけでありまして、そういったもろもろのことを考えて、次の財政再計算のときには財政の健全化というようなことを考えていかなければいけないだろうと思っているわけで、御指摘になりましたように、非常に大切な問題だというふうに思っております。
  86. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 この際、離農給付金の支給状況についてお尋ねをしておきたいと思います。  離農給付金の受給者は、四十六年からずっと二千人台になっていますね。それから、支給金額の方は五十年度から非常に増加傾向にあるのですが、この傾向については、農林省の見込み計画と比較してどういうように判断をされているのか。それから、この離農された跡地について、むだのないように農地拡大政策の中へ組み入れてやっているのかどうか。その点を明らかにしてください。
  87. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 離農給付金は、五十二年の十月で約一万六千五百件、金額で七十七億ということであります。この実績については、必ずしも制度発足当時明確に目標を設定したということではありませんので比較はできませんけれども、かなり年々増加する傾向にある。今後もやはり相当数受給者が出てくると考えております。一応この制度は五十五年五月までということでありますから、それまでにはかなりテンポは上がってくるのじゃないかと思っております。  それから、離農した方々の跡地利用の問題でありますが、この離農給付金は、いわゆる本来の年金である第三者経営移譲と同様な形で、単に離農するということではなくて、いろいろ形式要件も決めております。たとえば基準日において三十アール以上の自作地を持っているとか、そういう第三者移譲と全く同じような形で離農した者に対して給付金を支給する、こういったことで制度が仕組まれておりますので、その離農跡地が荒れているということではなくて、やはりそれは別の第三者の経営規模拡大に組み込まれている、そういうぐあいに私どもは見ております。
  88. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 この年金制度関係なく、全国の農地での現在離農状況、これは一体どういうふうになっているのか、お尋ねしたいと思うのです。  それから、特に農山村の過疎地では、現況どんな実態にあるのでしょう。現在、過疎の第二次崩壊危機説ということも言われておりますので、農林省の実態調査というものが一体どの程度行われているのかを明らかにしておきたいと思うのです。また、こういうような農山村の過疎地については、農業経営近代化農地合理化政策、こういったものがどういうように推進されているのか、あわせてお尋ねをしておきたいと思います。
  89. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 過疎地域の、人口で言いますが、最近は一ころに比べて減少はゆるやかになっているということは言えます。昭和四十年の前半は一三・四%というふうに激しい減少をしたのに対して、後半では八・一%というような減少率になって、ゆるやかになってきておりますけれども、しかしかなりの減少であるということは言えるわけであります。ことに過疎地域は農林漁家のウエートが高いわけでありますから、若年層の減少を中心として第一次産業の就業人口が減少がはなはだしいということは言えるわけであります。農家数につきましても、過去五年間に八・二%の減少というようなことであるわけで、かなりやはり過疎地域の過疎化現象というものはややスピードダウンしたということは言えるにしてもとまってはいない、こういった状況であります。  それから、そういった過疎地域、これは山村であるわけでありますけれども、それに対する私ども農林省の対策としては、林道だとか造林だとか、あるいはその他の農道の問題だとか、一般的な事業というものはもちろん積極的に実施するわけであります。林業構造改善事業だとかいうもの、土地改良事業というものもあるわけでありますが、そういった一般的事業のほかに、山村振興法に基づきましていろいろ特別対策事業というものを計画的に実施をしているというようなことで、相当額の予算を毎年計上して山村地域の振興を図っていくというような対策を講じている次第であります。
  90. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 新しい農地開発の問題でお尋ねしておきますけれども、農林省の調査によりますと、日本の農地開発可能地帯というのは今後二百八十二万ヘクタールはあるんだと、こういうようなことなんですが、こういった新たな開発可能地ができた場合、この年金制度を利用をしようにもできないというのが現行の規定になっているようなんですが、しかし、新しい開発農地経営規模拡大のために農業者年金の融資制度を利用したいという要望は当然今後出てくるのだろうと思うんです。それについて農林省は、こういったケースの場合新たな融資対象として道を開いてあげるべきじゃないかと思いますけれども、この点についてはどのように判断されますか。
  91. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 基金の行っている農地の買い入れ、売り渡し事業につきましては、結局経営移譲をして離農しようとする人から農地を買い入れ、これを規模拡大しようとする年金加入者に売り渡す、こういった措置をとっている。それから融資事業につきましては、年金加入者が、一方離農しようとする人から農地を買い入れて規模拡大しようとする場合に融資すると、いわば年金加入者対象として農地の流動化ということに資するような形で買い入れ、売り渡しをし、それのために融資をするということでございますので、いわばそういう意味では、既耕地というものの流動化ということをねらった対策であります。そういうことでありますし、またその財源は、保険料の財源というものを一時流用させてもらうという形で対応しておりますので、そういう意味で使い方はそういうふうに限定しているということであります。  いまお話のありました未開発地域の開発ということにつきましては、これも同じ意味で必要ではございますが、これは未墾地取得資金等でやはり対応するというのが、融資としてはそういうルールということではないだろうかというふうに思っております。
  92. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 本年金資格者のうち後継者加入促進について、年金の将来性との関連性が非常に大きいわけでして、論議も盛んに行われておると思うんです。しかし、後継者の方の関心はいまひとつ薄くて、なかなか農林当局の思惑どおりには加入促進の効果が上がっていないという現状であろうと思います。  そこで、今後の対策としてPRの方法の検討や説得の仕方、こういったものの改善を図らなきゃならないと思うんですけれども、新しい視点に立って、後継者加入の促進について研究されている内容についてありましたら御説明をいただきたい。  それから、後継者加入促進については、やはりバックに後継者づくりの、若者を育てる環境づくりというものがなくちゃならないと思うんですが、宮崎県ではこういったことを目的にしたSAP運動というものを十五年間も実施をしているということで、私も論文を読みましたけれども、こういった後継者づくりの土壌というものがあって初めて日本農業の政策全般が活力もついてくるだろうし、それからこの年金制度に対する後継者の理解も高まるんだろう、こういうように思います。こういうような視野を広げた考え方というものが、どうしても本年金制度には必要になってくると思いますけれども、これについてはひとつ最後に政務次官から御答弁いただいて、時間が来ておりますので、私の質問を終わりたいと思います。
  93. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 前段のことにつきましてお答えいたします。  若い人の加入促進ということでございますが、従来から未加入者に対する加入促進ということはやってきておるわけでありますが、とかくやっぱり加入の到来期限が来た高齢者ということがどうも重点的になりがちで、若い方の方に手が回らなかったといううらみは感じております。そこで今後の重点といたしましては、もちろんほかの方々を排除する意味ではありませんが、特に重点としてはその経営移譲を受けた後継者については必ず加入させる、経営移譲の時点をつかまえて加入してもらうという形で積極的に個々に働きかける。それからそれ以外の後継者につきましては、国民年金保険者名簿というものがありますから、そこから特定後継者予定者名簿というものを拾い上げて、そうしてそういった方には保険料の割引制度というものがあるわけでありますから、そういった割引制度というものを徹底して、個別に加入というものを具体的に進めていきたい、このように基金を指導していきたいと思っております。
  94. 初村滝一郎

    政府委員(初村滝一郎君) 農業後継者を育成確保していくためには、やはりこの農業の担い手が活力を持って農業に取り組めるような魅力ある農業、そうしてまた、住みよい農村をつくることが私は基本的に重要であろうかと思います。そのためには、やはり農業生産基盤とか、あるいは農村生活環境の整備等の諸施策を講じなければならない。中でも私は、やはり学校教育の段階から農業に理解と関心を深めるために学校教育との連携の強化が必要ではなかろうか、あるいはまた、農業後継者たる農村青少年に対する研修教育の実施、充実、それから自主的集団活動の促進、こういうものが必要であろう。さらには、農業後継者育成資金等制度金融の拡充等の措置を強力に進めていく必要がある、かように考えます。
  95. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 本案に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後二時再開することとし、休憩いたします。    午後零時五十八分休憩      ―――――・―――――    午後二時三分開会
  96. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農業者年金基金法の一部を改正する法律案議題とし質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  97. 下田京子

    ○下田京子君 農業者年金基金法改正案で、今回の場合には特に二つの点、一つは物価スライド実施時期を来年一月からのをことしの七月に繰り上げるということと、それから二つ目には、保険料特例納付措置というふうなことになっているわけです。  御承知のように、これは他の委員の皆さんからもいろいろお話がありましたが、もう東北・北海道農業者年金対策協議会の方々であるとか、あるいは基金の皆さんも、それから多くの関係団体の方々から、特に保険料改善と国庫補助率の引き上げのことだとか、農家の主婦の加入、そしてまた遺族年金の創設問題など、大変議論になっているところでありますし、要望の強いところだと思います。その点でいろいろと検討はしている、こうおっしゃっておりますけれども、基本的な今後の対応の姿勢ですけれども、何度も何度も国会の審議の過程の中でも附帯決議等でも出されている、そういうことについて今後いつの時期にこれが改正を約束できるのか、その見通しについてお尋ねしたいわけです。
  98. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 問題といいましてもかなり多方面にわたる御議論があるわけで、それから事柄の性質として、御存じのように大蔵省がうんと言えばとか、あるいは行政が決定すればというようなことだけで解決できない性質の事柄もあるわけです。制度そのものをどう仕組むかということと非常に絡む問題でありますから、非常に厄介な問題であるということは御理解願いたいと思うわけであります。  そういう意味で、検討はしているわけでありますけれども、われわれとしてはその都度その都度解決できるものは解決して、国会に御提出して御審議をお願いするという態度をとっているわけで、当委員会等におきましても御決議を願っております中で、いま御指摘になりました二つの問題、特定時効救済の問題と、それからスライドアップを繰り上げるという話については、当面、可能なものとして着手してお願いしている、こういったことでございまして、残余の問題についてそれじゃいつまでにという、こういう具体的な目標というものが、それはいまの段階でははっきりお約束するというわけにはいきませんけれども、事柄の性質がそういう性質であるということだけは御理解願いたいと思うわけでございます。
  99. 下田京子

    ○下田京子君 事柄の性質上非常に多方面に絡む、制度的な根本的なことが絡むということは、これはもう御説明をいただくまでもなく承知しているわけです。ただしかし、少なくとも国権の最高機関であります立法府でもって何度も何度も当委員会で附帯決議も出されていますし、各関係団体方面からの御要請も強い、そのことについて制度研究会もつくられていて何度かやられている。それはもう十分承知なんです。そういうふうな中で、しかしいつということなしに、検討検討ということにもならないと思います。制度上に絡む研究であればこそ、具体的なお見通しを持ってやることが必要かと思うんですね。ですから、その点で、少なくとも来年度あたり改正という方向でもって具体的にさらに詰めた検討をお約束いただきたいと思うんです。
  100. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) ですから、制度の絡む問題ですから、それをいかにどういう形で解決すれば制度と調和ができるかということをいま御研究願っているわけで、その研究のやっぱり進化に応じてその解決が出てくるということでありますから、具体的にいつまでというようなところまでいまセットして、それはちょっとまだそこまでは研究は進んでいないということであります。  ただ、来年という話でございますが、仮にいま検討の結果いろいろ問題はあるわけであります。その中で来年度までに結論が出ますれば、それはもちろん私どもはできるだけ検討は進めるように努力はしますが、出ますれば、それはもちろん国会にお諮りして御審議をしていただく、そういうつもりでおります。
  101. 下田京子

    ○下田京子君 現時点でのお話としては一つはわかるわけですけれども、ただ、むずかしいだけに、たとえば遺族年金の創設問題なんかについても、国民健康保険絡みだと、こうまず出てきますよね。それは、国保の方では、一体いまどういうふうに検討が進んでいるのかというふうなところになると思うんです。その点でちょっと厚生省、どういう研究がいま進んでおりますでしょうか。
  102. 山本純男

    説明員(山本純男君) 国民年金をめぐりましては、改善すべき点が幾つもあるということでいろいろ御指摘をいただいておりますし、また、昨年の暮れには、大臣の私的諮問機関であります年金制度基本構想懇談会から中間的な御意見をいただいた段階でございますし、また、そこで引き続きいま御審議をいただいております。実は私どもとしては、一年程度の間に一つ考え方をまとめるようにということを大臣から指示されておりまして、そういう点で、国民年金制度のこれからのあり方というものについて鋭意努力をいたしているわけでございます。
  103. 下田京子

    ○下田京子君 厚生大臣の諮問機関であるとか、あるいは総理大臣の諮問機関であるとか、そういったところで年金全体の提言等が出されていることは私どもも承知しておるわけですが、その絡み、そして特に国民年金の上に政策年金として出てきたこの農業者年金でありますから、いつまでも営営と検討ということだけでなくて、いま少なくとも一年の期間にというふうなのが出ているわけですから、そういった点からして、農業者年金の側でもより積極的にこれらのことを改善する方向でもって、来年はいいお答えがいただけるように努力いただきたいというふうに思いますが、その姿勢だけ、しつこいようですが再度お聞きします。
  104. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) もちろん、そういう積極的に改善したいという姿勢は持っております。
  105. 下田京子

    ○下田京子君 次に、今回の法改正に絡んでの第一の物価スライドの問題なんですけれども、これも他の委員からお話がありましたいわゆる実施時期の問題等ございますけれども、同時に、この時期をもう毎年毎年法改正という手続を踏まないでもって、附則の十条の二項、これらの絡みでもって実務的に可能な方向が出ないものだろうかと思うんですが、いかがでしょうか。
  106. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 現行制度が翌年度の一月ということになってそれを繰り上げるということになっているわけですが、それを恒久化してしまうということになりますれば、その繰り上げるべき時期をいつにするかということも実は議論としてまだいろいろ尽くさなきゃならない問題があるわけで、これは農業者年金だけの話ではございませんで、厚年あるいは国民年金すべてやっぱり共通するような話であります。  財政負担ということもございますし、その辺は今後の課題として研究いたしたいと思いますが、いずれにいたしましても私ども考えとしては、いまお話がありましたように、国民年金の上に乗っかって政策年金として付加年金としての農業者年金をつくっているわけでありますから、やっぱり根っこの国民年金というものとのバランスというものを考えていく必要があると、そういう意味で今回の恒久化するかということについても、そつちの方との対応というものを考えていく必要があるだろうと思うわけで、いまお願いしております七月からという時期も、国民年金と合わせてという意味でお願いしているわけであります。
  107. 下田京子

    ○下田京子君 午前中の質疑の中でも出ましたが、七月ということについても、四月からできないかという御意見もございますよね。これは財政当局のお話ですと、単年度で二億ぐらいの負担ということになると、ただ農業者年金では二億ぐらいだけれども特に国民年金絡みでいくとそれが大変でございますという、財政的なことはひとつ七月か四月かという議論では御答弁いただいているわけなんですが、それとあわせて同時に、七月なら七月実施ということについて、その点での毎年の法手続ということではなくて、その四月か七月かということもありますけれども、同時に、それだけもう決まりましたらあとはもう速やかにずっと恒常的にやられるようにというところにこそ、本当に物価スライドということですから、そこに意味があるわけですから、その基本的な考え方からいったらば、もう当然それは恒久的な手続が保障されてしかるべきではないでしょうかと思うわけなので、その点も含めて来年度あたりまでに速やかに方向が出されるようお願いしたいと思います。
  108. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 御趣旨はよくわかっておるつもりであります。ただ繰り返しますが、農業者年金だけの問題では実はございませんので、各種年金に共通した問題でありますので、そういったことと担当の部局あるいは財政当局含めまして御相談して対処しないと、われわれだけが一人で歩むわけにいきませんので、検討さしていただきたいと思います。
  109. 下田京子

    ○下田京子君 検討ということですが、改善という点で検討いただくというふうに受けとめておきます。  次に、特例納付の問題です。今回の法的措置として出されておりますが、この特例納付のことについては大変喜ばれている点もあると思うんですけれども、具体的に私お尋ねしたいのは、前回の特例納付の改正がなされたのはたしか四十九年だったかと思うわけです。その四十九年改正時点では、当時の特例納付保険料はお幾らだったでしょうか。
  110. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) その当時の保険料は、たしか月額千六百五十円であったと思いますが、それと同額であります。通常の保険料と同額でございます。
  111. 下田京子

    ○下田京子君 確かめの意味でなんですが、通常の保険料を、すなわち一般保険料と同じものを四十九年改正のときには特例納付保険料として決めたということでありますね。  それから次に、この特例納付でどの程度救済されたでしょうか。
  112. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) そのときに約三千人弱、その当時の対象者数というのは五千七百人ということでありますから、半数強ということでございます。
  113. 下田京子

    ○下田京子君 四十九年のときの特例納付救済措置のときには大変効果が上がったというふうなことだと思うんですけれども、その時点でどういう人たちが特例納付対象になったものでしょうか。  また、その原因は、先ほどいろいろ御説明はありましたけれども、改めてお尋ねしたいわけです。何が原因で一体特例納付対象になったのか。
  114. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 四十九年のときでありますから、その制度発足して間もない時期であった。それから、時効完成期間が、いまと違ってわずか二年間にすぎなかったということであります。それから、対象者数も大正五年と大正六年というふうな比較的小規模のものであったというようなことで、まあ比較的率が上がったということは、やはりそういうような広範にあったわけではない、そういうものが限られておったということだと思います。  それから、措置をとったという趣旨は、制度発足二年間である、時効完成も二年間である、そういうようなことから考えますと、やはり制度発足したばかりで制度趣旨そのものがよく周知徹底していなかった。これは農民の方の側に問題があるよりも、むしろ制度実施者の方に、あるいは窓口の方の努力で対応に欠ける点が多かったのじゃないか、こういったことでそういう措置をとったということであります。
  115. 下田京子

    ○下田京子君 四十九年の際には、制度が発足してまだ日が浅いということもあって、大体実務的なPR不足等もあったんじゃないか、しかし、その時点でやっぱり約半数近い人たちがそれでもなおかつ漏れたという事実は一つあるわけですね。同時に、今回のことに移るわけなんですけれども、今回の制度改正でもってその特例救済される対象人数ですか、それはさっきのお話ですと約四十数万人いるとおっしゃったわけですけれども、その四十数万人おる中で、今度は具体的に一年間という特例納付期間の中で、見込み数字で結構ですが、どの程度救済されるとお思いでしょうか。
  116. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 四十数万人というものが手を挙げれば救済制度に乗ってくる可能性を持ったものだということをお答えいたしましたが、その中でどの程度これから上がっていくか、実はこれからのわれわれの努力の仕方、PRの仕方にも依存することが多いので、いまのところ何名というふうに限定的には考えておりません。一年ではなく一年半でありますから、ことしの七月から来年いっぱいということで一年半の間に今後の努力をしたいと、そういうふうに思っております。
  117. 下田京子

    ○下田京子君 しかし、それにしても、見込み人数というものは一応お立てになっていると思うんですね。必ず何かやるときには目標を立ててこれはやられておるわけですから、大体どの程度見込んでおられるでしょうか。
  118. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 対象になる人の大部分は、結局四十数万人の中へどういう方々が上ってくるかということでありますが、非常に可能性の強いものは、たとえば年金額が低いために入らないとか、経営移譲要件が厳しいために入らないとか、あるいは制度の内容がよくわからないから入らない、こういった未加入理由がある方が相当あるわけです。そういった方々が合わせますと約十五、六万人ぐらいいらっしゃるわけですね。その方々を、少なくとも当面第一義的には可能性が多いわけですから、重点的にやっていきたい。  予算としては五十三年度に計上しておりますが、これはもちろん限定する意味じゃありません。一応の、ただ仮の数字でありますが、三万人から三万数千人程度のものを予算としては計上しております。しかし、これはそれ以上入ってくればもちろん対応できるわけであります。
  119. 下田京子

    ○下田京子君 制度がわからないだとか保険料が高いだとか経営移譲がどうだとか、いろいろあるけれども、十五、六万人がおるだろうと。ただ予算とのかみ合いでは三万人台を見込んでいるというお話でしたが、これはこれとしてまた後で絡みでお聞きしたいんですが、この三万人から四万人を見込んで救うというふうなことで保険料を今回三千六百円にしたというその根拠について、先ほどのお話ですと、これは過去と同じということにもいかないし、それから現行でいいというふうにもいかないんで、公平を期すという意味でやったんだというふうなお話であったわけなんですけれども、公平を期すと言いますけれども、果たしてこれで公平かどうかということなんですね。皆さんの方では公平だとおっしゃいますけれども、具体的に対象となる昭和四十六年一月以降から五十一年の六月まで、月数にすると六十六ヵ月ですね。ですから、五年半というふうになります。それを単純に比較してみたい。  その際に、一般の方が年金創設当初からまじめにお掛けになってきた方々の場合、これは当初は七百五十円だったわけですね。ですから、この七百五十円の掛金というのが四年間続きました。四十八カ月掛けますとこれで三万六千円、それからその次の四十九年の改正でもって保険料は一カ月千六百五十円になりました。これが一年半ですから十八カ月分になり、二万九千七百円ですね。合計六万五千七百円です。いままで積んできた方は六万五千七百円で済んでいるわけです。公平を期すんだということで、今回の三千六百円の保険料を六十六カ月で掛けると幾らになるか。二十三万七千六百円になるわけです。大変な額ですね。  ここでちょっと確かめたいわけなんですが、一番最初に聞きましたが、四十九年の改正のときには一般保険料でそのままおやりになったわけです。ところが、今回は一般保険料ではなくって、現在の保険料でもない、来年度の保険料を適用して、しかもその来年度の保険料の約一割増しというふうなかっこうでやることが、果たして公平だと言い切れるんでしょうか。少なくとも前回と同じように改正時の一般保険料、三千二百九十円になりますね、その六十六カ月で二十一万七千百四十円ということでもこれは十分ではないかと思うわけなんですが、その改正時の一般保険料のさらに一割増しというかっこうでやってきたのが果たして公平と言えるかどうか、これはペナルティーと呼ばれても仕方がない中身ではないか、こう思われるんですが、この辺どうですか。
  120. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 私は、やっぱり時効救済というのは、特例中の特例だというふうに保険制度上は認識しているわけです。保険料というものを決められた期限内にずうっとそれを払って、受給資格が発生するというルールがやっぱり根本だろうと思うのですね。これは御存じのとおりだと思うわけです。そういう意味で、ただいろいろな事情で時効が来ちゃって気がついてみたら年金がもらえないという方があった場合には、それを放置しておくのはやはりそれは適切ではないだろうという判断で、これを救済するという意味で、特例中の特例というかっこうでとるという措置だろうと思うのです。そういう意味で、保険料というもののその水準はやっぱり特別な水準であるというようなものだろうと。そうすると、現在の保険料と同じレベルでやるということがいいかどうかということは、やっぱりほかの九五%の方々はきちんと保険料を納めていらっしゃる。その者とのバランスからいって、やはり問題は出てくるのじゃないか、いまの保険料でいいということが。  仮に、今後永久にしないという話でありますれば別でありますけれども、今後また仮にあったような場合に、将来またそのときの保険料で払えばいいやということになりますれば、保険としてはなかなか成り立たないということもありますので、そこはやっぱり特別な水準であるということが必要ではないかというふうに思っているわけでございます。
  121. 下田京子

    ○下田京子君 いまのお話の中では、幾つかなるほどというのもありますけれども、大きな問題が幾つかあると思うんですよ。それはどういう点かと言えば、その問題点の一つは、いろいろな理由があるということをお認めになっているわけです。そして、私が実際に現地の皆さんといろんなお話しをする中でも、すでに局長自身がお話しになっているように、制度発足後八年目だという現在においても、これはかなりいろいろとむずかしい問題があって十分理解されてないという、PR不足という、実務的ないろんな、一カ月足りないとか二カ月足りないなんということはもうどんどん起きているわけです。これは、他の年金においても同じようなことが言えるわけです。しかも、特例中の特例だというお話がありましたが、特に農業者年金の場合には政策年金ですから、政策年金であるという立場からいったらば、その特例中の特例ということも他の年金と同じような考え方であっては私はならないと思うんです。本当に、農業者の問題という点からの政策的な意味考えなければならないと思うわけです。  そういう点からいけば、これはすでに出されてしまっていることでありますけれども、しかし公平だということには私はならないということだけは、ここでしっかり指摘しておきたいわけなんです。あくまでもペナルティーというそれは誤解ですよと、救済でありましてとおっしゃっておりますけれども、これは救済という側面があるけれども保険料そのものにおいてはこれは決してそうじゃない。少なくとも一般保険料並みのところでいい。すでに前の人たちから、まじめに掛けていた人たちと差がはっきりあるんです、もう。ですから、来年度から徴収される保険料のその一割増しというところは必要なかったんじゃないか。その指摘だけは私ははっきりここでしておきたいんです。  同時に、次にこの関係なんですが、こういうふうに大変な保険金額ですから、先ほど局長のお話ですと、仮に二十数万を納めても大正五年のときの人が該当したらば六十二歳六カ月云々で、その期間で九十一万円もらえますよみたいなお話ありましたけれども、それはそれだけうまくいった場合の話であって、途中で亡くなる場合だとか、不幸なことだっていろいろ考えられるわけなんですよ。それが保険設計上の問題であると思うわけですけれども、一方では当然のことでもあると思いますが、そういう中で、とにかく四十六年の一月以降特例納付をする人が今回納めようとしたときにその金額がどのくらいになるかといいますと、いままでの分が実に二十三万七千六百円からでしょう。さらに、今度ことしの分からも入ってきますね。特例納付期間は五十一年の六月までですから、五十一年の七月以降からずっと今度の部分も入るわけです。そうすると、おおよそ納める金額が何と三十四万円近くになるんです、一回で。  ここでお願いしたい点なんですが、納付の方法ですね。これは機械的に一回で支払うというふうなことではなくて、ケース・バイ・ケースでいろいろと御相談に乗っていただける方法がないか、その点お尋ねしたいわけですが。
  122. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) もちろん、一回でお払いいただけばそれはもちろん結構なんですが、分割納付という対応は可能ですから、一年半の間に支払い能力に応じて分割して払っていただく、そういったことで御要望にはこたえたいと思います。
  123. 下田京子

    ○下田京子君 ぜひそういう具体的な対応をしていただきたい。その際にやはり大事な点だと思うんですが、特に出稼ぎ者が多くなってきておりますし、実はまだまだPR不足だということはお認めのとおりでありますので、なかなか御答弁はいただいても、しかし実際には御活用いただけないということにもなるかと思うんで、この点は十分体制もとられる、あるいはPRもするというふうなことで、その決意をさらに新たにしていただきたいというふうに思います。  次に、後継者加入のことなんですけれども後継者の問題は、どうも農業全体が一方でもって輸入問題、一方でもって米の減反ということで非常に厳しい情勢の中で先細り的だ、そういう中で農業者年金も先細り、逆ピラミッド的だと、こう言われているのは、何と言っても後継者加入問題が今後どうなのかということになるかと思うわけです。その点については、先ほどの他の委員の御答弁にもありましたけれども、若い皆さん方が加入されないその理由としては、四十歳になるまでまだ間がある、それから将来の農業に対する目標が定かでない、あるいは若いという点から老後のことはまだぴんとこないとか、そのほか保険料が高いとか、経営移譲の問題とか、給付水準だとか、いろいろ理由は述べられました。しかし、そういう中で、とれるべき問題としていま現に進められております三十五歳以下の後継者に対する保険料軽減措置、この三割引き、これをもっと拡大していくというふうな方向でお考えはないでしょうか。
  124. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 三十五歳未満後継者について、いわゆる学割りとわれわれ称しているわけですけれども、これを三割引きということでやっておりますが、この趣旨は、将来農業生産の中核的担い手となる後継者の育成確保を図る、そういったところにねらいはあるわけで、この措置をつくっているわけでありますから、ただ三十五歳という年齢をそう切ったということにつきましては、これはいろいろ六十歳になって経営移譲が始まるという場合の親と子との大体平均年齢の格差がどのぐらいかというようなことも考えて三十五歳未満という形で切ったわけでありますが、これをさらに拡大するということになりますと、将来若手を育てていくということと若手に積極的に入っていただく、そういったことと、どうなるかということで、やはり三十五歳ということは、四十歳未満のかなりの部分を拾っているということでありまして、これをさらに拡大するということはちょっといまのところ考えておりません。  ただ、三十五歳未満特定後継者につきまして、いろいろな資格要件がありますね。ありますが、これは将来の検討課題として考えてはおりますけれども、しかしいまの資格要件も、そんなに私どもの認識ではむずかしい要件ではない。このために、三十五歳未満の希望者がおっても入れないというようなことではないのじゃないかと思っております。しかし、むずかしいという実態があればよく調べまして、それなりの対応は今後していきたいと思います。
  125. 下田京子

    ○下田京子君 ただいまの御答弁の中で、三十五歳以下の特定保険料の適用者の問題で、いろいろとむずかしい問題もあるかと思うけれども検討課題に入れたい、こうおっしゃっていますが、これは皆さんの方でお調べいただく気になれば調べられる問題じゃないかと思うんですよ。といいますのは、先ほどのお話もありましたけれども、現在三十五歳以下の方で約半数方々が適用を受けていないというふうなお話かと思うんですよ。なぜその約半数方々が適用を受けていないかというと、やはり特定の要件等が厳しいから、あるいはそれに類したことがあるからと思われるわけなんです。半数方々がこれに加入というふうなことになりますと、本当にこれはまた、先細り年金ということではなくて、むしろこれを切り開いていく方向になるのじゃないかと思うわけなんですが、再度この点、三十五歳の後継者加入の問題、特定保険料適用者の問題ですね。特定適用条件を早く検討して、早くその改善の策を出していただきたいと思います。
  126. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 繰り返しますが、私どもはそんなにむずかしい要件をつけているという認識は余りないのです。しかし、半分近くの者が入っていないということはありますが、これは資格要件がむずかしいために入っていないのじゃなくて、むしろ農業意欲の問題だとか、あるいは私どものサイドの制度内容の周知徹底がまだ十分ではない、そういったところによるのじゃないかと思います。しかし、重ねての御指摘でございますから、三十五歳未満の者についている要件が本当にそれを阻害しているのかどうか、実質的に。希望者があって加入を阻害しているのかどうか、よく吟味して、もし吟味して、それが非常に阻害しているということであれば善処したいと思います。しかし、現在でも面積要件あるいは親と子がペアで加入していかなきゃいけないという要件がありますが、それはそれなりに、それぞれ特例を開いておりますので、そんなにそれがじゃまになっているというふうには私ども実は認識していないわけであります。
  127. 下田京子

    ○下田京子君 面積と労働時間の問題だけでも、単純に申しますと福島県の場合には百十アール以上の面積、そしてこれは労働時間は全国共通でしょうけれども一千五百時間、これは施行規則附則の二条ですか、で定められていると思うんですけれども、百十アール以上が仮に百アールだった場合どうなるかというふうなこともあるわけでして、意欲はある、規模拡大も考えている、受けたいと思うんだけれども、しかしその差でもって該当にならないというところで、おかしいのじゃないかと。むしろ政策年金的なところから言ったら、おかしいのじゃないかという指摘をしているわけです。さらにまた、一千五百時間の話にしても、いろいろ関係の皆さん方からお話を聞くと、シイタケ栽培の時間は労働時間に入らないとか入るとか、そんなことまであるわけです、詰めていきますと。ですから、本当にいま後継者がないといって困っているときですから、入りたいと思う者でしたら、むしろ意欲があるからなんですよ。それを面積がちょっと足りないとか、時間がどうだとかいうのじゃなくて、むしろ、そういう意欲をもっともっと保障していく、そういう立場でもって検討していただきたいということであります。  次に移りますけれども経営移譲に関する件で、これは厚生省にずばりお尋ねしたいんですけれども経営移譲年金がもらえる、もらえないで、相当やっぱり差がついてくるわけですね。そこで、保険料の計算根拠なんですが、現在一人の一カ月当たりの所要財源をどのぐらいに見ておりますでしょうか。経営移譲年金分がどのくらいで、それから老齢年金分はどのくらいで、また一時金分はどのくらいというふうに見ているか。いわゆるその必要保険料、現在、来年から施行しようとしている三千二百幾らのその根拠になっている保険料計算根拠、これをちょっとお示しいただきたいわけです。
  128. 山本純男

    説明員(山本純男君) 保険料の金額を決めます場合に、現価計算をいたすわけでございますが、給付現価の中に占めるそれぞれの種類の給付の割合というものを御紹介させていただきます。現在給付現価は一兆三千五百三十七億円ということになっておりまして、そのうち経営移譲年金に必要な部分が七千百億円でございますから、約五割、六割弱でございます。老齢年金に必要な部分が五千三百二十三億円でございますので、大体四割程度。一時金分が千百十四億円でございますので、これは八%足らずというような状況でございます。
  129. 下田京子

    ○下田京子君 全体的な現価計算はいま御説明いただいたわけです。私、質問しましたのは、一人当たり月所要財源に分けると幾らになりますかとの質問です。
  130. 山本純男

    説明員(山本純男君) わかりました。   一人当たりの保険料は、平準保険料額が現在国庫負担を含めまして……、
  131. 下田京子

    ○下田京子君 国庫負担含めないで……。
  132. 山本純男

    説明員(山本純男君) 五千八百円でございますから、国庫負担をどけますと、一般保険者は三千百七十六円、特定後継者が二千二百六十九円ということでございまして、これに先ほどの率を掛けてまいりますと、ちょっと計算ございませんので概算になりますけれども経営移譲年金部分が二千四百五十円ですか……
  133. 下田京子

    ○下田京子君 違いますね。
  134. 山本純男

    説明員(山本純男君) 違いますね、これは。どうも失礼をいたしました。約六割足らずでございますから、千八百円ほどでございます。
  135. 下田京子

    ○下田京子君 ちょっといまの数字あれですね、全体的な割合でいけば経営移譲年金分が五二%になる、それから老齢年金の方が約四割、一時金が八%。私いただいた数字では、一人月の所要財源にして分けた場合には五千八百円、そのうち経営移譲年金分が三千四十二円、それから老齢年金分が二千二百八十一円、一時金分が四百七十七円。それでよろしいでしょうか。
  136. 山本純男

    説明員(山本純男君) ただいま先生から御指摘のありました数字は、保険料に国庫負担を含めました所要財源のトータルの額でございまして、仰せのとおりでございます。
  137. 下田京子

    ○下田京子君 そうしますと、とにかく経営移譲がされないというときには、もう本当にこれはまた大変な状況になるわけですね。これは、政策的に経営移譲をということで出しているから、当然と言えば一方ではそういうことにもなると思うんですけれども、この点で、今後も経営移譲できたい人がおった場合に、いろいろと相談に乗ったり、あるいは手続をするというふうなことで、今後必要な問題としては、実務体制ですか、これらも大いに検討することがいま迫られているんじゃないかと思うんです。  福島県の場合ですと、福島市ですが、九七%近く農業者年金にお入りになっていて、経営移譲の方も非常に速やかに進んでいる、申請者のうちほぼ一〇〇%もう裁定になっているというお話でした。どうしてそういうふうにいいのかと聞きましたら、実は、経営移譲の条件なんかいろいろ備えている人には、まず二、三カ月前になりましたら通知を出すんだそうです。そして、いろいろこれとこれとこれをそろえていつまでに持ってきてください、こういうふうにやるそうです。それから加入を進める際に当たっても、全部書類をそろえておいて、あなたの場合には任意加入であるけれどもこう入れますよとか、あるいはあなたの場合には当然加入なんだけれどもまだ入っていない、こういう点でよくなりましたのでどうぞということで、いろいろこう手を尽くされているんですね。  ところが、手を尽くすに当たってはもう大変苦労されているようです。相談員を三十人配置しているとか、それからそういうPRのために一人当たり年間三百円皆さん方からお金をいただいているとかというふうなことで努力していまして、こういった「農業者年金のしおり」なんて、こういうのもお出しになっているんですよ。これを見ますと大変わかりやすくなっておるんですが、こういうことをやるに際して、どうしても末端事務体制ですね、ここのところをもっともっと改善していくことが必要ではないかというふうに思います。  特にその絡みでもって、農業委員会の問題なんですけれども農業委員会の中での超過負担が大変な額になっているわけですね。この辺の改善点もあわせてお願いをして、私の質問を終わります。答弁いただきます。
  138. 佐々木富二

    説明員佐々木富二君) 農業委員会の超過負担の問題でございますけれども農業委員会には必須事務と任意事務という二つのものがございまして、そのうち必須事務に係る人件費部分につきまして国が補助金を交付しているわけでございます。この補助金が実態に比べまして不十分であるという御指摘がございまして、その解消についていろいろと御要望があるわけでございますけれども、こういった御要望も念頭に置きまして、農林省としては年々この補助金の改善に努めてきておるわけでございます。  たとえば、農業委員会の委員手当について申し上げますと、毎年度補助単価の引き上げを図ってきておりまして、五十二年度には新しく会長手当を新設しましたし、その他の委員手当についても一〇%強引き上げを行ったわけでございまして、五十三年度におきましてもさらに会長手当、それからその他の委員手当につきまして、それぞれ一五%強、一〇%強の引き上げを行ったというような経緯がございます。また、職員設置費でございますが、これについては毎年ベースアップを行っておりますほかに、五十年度には補助基準号俸を五号俸相当引き上げを行った。さらに、五十二年度には、補助対象経費の拡大を行い、五十三年度には、昨年秋、五十二年の秋でございますけれども、大蔵、農林、自治三省共同実態調査というものを行いまして、その結果に基づきまして、全国で五百三十二人分相当の職員設置費の増額を図っておるわけでございます。  こういう累年にわたる改善の結果、五十三年度、本年度の予算におきましては、対前年比二二%強増額されておりまして、合計で百二十三億円の予算措置を行っておるわけでございます。この金額は五年前に比べますと約二・四倍でございまして、この補助金につきましては私どもとしてはすでに十分措置されているというふうに考えておるわけでございますけれども、今後とも必要に応じまして、さらにその改善に努めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  139. 三治重信

    ○三治重信君 この農業者年金制度は、農業者老後生活の安定というものと農業経営近代化とを二つかみ合わせて考えておるのでしょう。その裏づけとして、金融の手段としての基金も設けるという、一つの何と申しますか、農家というものを育てようという非常に画期的なこれは考え方の制度だと思うんです。ただ、それがうまいとこ寄与をするかどうかというところが、いまから私は特にお伺いしたいと思うところでございます。  そして、ことに社会保障制度審議会の方面からでは、社会保障制度としての年金と企図される農業経営近代化政策との関連についてどうも農林省の説明ではわかりにくいと、こういう疑念が呈されていると報告されているわけなんですが、まず最初に、この関連を疑念に持っておられる社会保障審議会の方は、もちろん農業の方の専門家よりか社会保障制度の方の専門的な立場からの理解だろうと思うんですが、そこで主に疑問とされているまた議論の中でこの関連が疑問とされている点がどういうふうな議論があったか、またそれに対して農林省はどう考えているか、それをまず御説明願いたいと思います。
  140. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) この農業者年金制度は、一種独特の制度で、わが国の社会保障制度の中でほかに例がないということから、他の社会保障制度との比較においていろいろな議論が出ているということだろうと思うのです。  一つは、やはり年金、要するに一般的な老後保障というものは国民年会制度で満たされていると、その上に乗っかって国民年金制度では到達し果たしにくい農政上の要請というものを果たすために、付加年金として創設したということになっているわけでありますが、そういったことからしてやっぱり年金加入者資格の問題だとか、あるいは支給の条件とかいうものは、ほかのものに例を見ないような形で仕切りがされている。  それから、厚生年金というような社会保障制度と比べて給付時の負担だけじゃなし、国庫負担については、拠出時の負担までしてかなり高額であると、それが一般的な社会保障制度との関係でどういう関係にあるのかというのが二点。  それから、第三点は主として先生がおっしゃった点でありますが、要するに構造政策を年金的手法で到達し得ると、こういうことについてこの制度は試みているわけでありますけれども、その効果が一体どの程度出てくるのだろうかと、こういうようなことが第三点だろうと思うのです。  主としていま御指摘になりましたのは第三点の問題だろうと思うのですが、私どもはそれに対しては確かにわかりにくい制度であるということは、そういう委員の皆さんの御指摘のとおりだと思いますけれども、やはり構造政策の効果ということ自身、それ自身もなかなか測定しがたいという点が一つあるのと、それから制度が七年たったとは言いながら実質的には二年しかたっていないわけですね。そういう意味でちょっともう少し時間をかしていただきたいと、こういう御説明をしているのと、それから経営規模拡大とか農地の流動化というようなものの構造政策というものは年金というものはもちろんねらっているわけですが、年金がすべてを負っているわけじゃないので、そのほかいろいろな制度と絡み合って担っているわけですから、その中で年金のファンクションといいますか、機能をどれだけ評価しているかということになりますと、これまた議論の分かれるところだろうと思います。そういうようなことでお答えしているわけですが、いずれにいたしましても、この制度が一種独特な制度であってかなり高度な構造政策を目指しているということでなかなかわかりにくいと、われわれの説明技術もあるのかもしれませんが、わかりにくいということが、どうも皆さんのコンセンサスが十分に得られていないというところじゃないかと思います。
  141. 三治重信

    ○三治重信君 大体非常に専門的な御説明で、その方向だろうと思うんです。それで、その方向で、ことにこの農業経営近代化というところをいまの御説明では構造政策と、こういう表現で言われたわけですが、その主たるねらいは農業経営規模の拡大というところに私はあるんではないか。そこをこの農業者年金制度との関連で、社会保障制度だけでなくて構造改善、構造政策をやるんだというところに、この農家の経営規模の拡大だとか、それは農家として農業として飯の食えるといいますか、生活所得が得られる経営規模にする、要するに自立経営農家を育てるんだと、こういう線を強く出していかぬとこの農業者年金制度というものはやはりぼけてくると、こう思うわけですが、その点についてこの農業者年金制度というのは自立農家を助長し育成するその強力なバックボーンの一つにしているんだと、こういうふうに理解をし、またはそういうふうなことをやっていくんだと、こう理解していいわけですか。
  142. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 仰せのとおりであります。結局、将来自立経営として発展する可能性を持っている農家層を漏れなく年金集団として抱え込んでこれを育てていくというかっこうで、加入制度では当然加入者は五十アールという基準を引き、それからそのほかに任意加入、これで三十から五十アール、そのほかに労働時間ということも加味して考えておりますが、そういった層をつかまえて、そういった層が発展した形でその自立経営農家に育っていくと、そういうような考え方でこの年金制度というものは考えているわけであります。
  143. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、その五十アール以上の者、北海道だと二ヘクタール以上の者は全部この保険金の保険料から年金額というものを一つにしているわけでしょう。これはやはり適正な規模を自立経営するということになってくると、最低基準の五十アールというのでは非常に低いですね。そうすると、その自立経営という、標準的な農家ということになってくるともう少し上にいかなくちゃいかぬ。そうすると私は、この農業者年金制度というのは一つだけの保険料一つだけの年金というのじゃなくて、もう少し大きな自立農家の方にはもっと有利なのをと、そこへ努力をして上がっていったらどうかという、全部余り細かいのは、いわゆる労働者年金みたいにはいかぬ。老齢保障の老齢者年金みたいな、賃金労働者みたいには段階は必要ないと思うんですが、何かそこにもう一つ経営の努力目標といいますか、自立農家という標準的なものとそれ以外のものとの二段階、最小限は二段階ぐらいはあってしかるべきだと思うのですが、そういう意見に対してはどうお考えですか。
  144. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) かなり広範な層を対象としてこの年金はつかまえているわけでありますが、その中から分解していくということだろうと思うのです。将来農業として発展しない者も出てくるでありましょうし、それは離農という形で残存する者に農地を手渡して経営規模拡大をすると。その場合に老後の保障ということで裏打ちしてそういった離農促進をすると、こういうようなことがこの制度のねらいであるわけであります。  それから、いま先生が御指摘になりました農家の階層を分けてこの年金を仕組んだらどうかと、こういう御着想といいますか御構想につきましては、確かに検討に値する課題だと思います。ただ別の議論があるわけで、たとえば農家の規模の大きい小さいに応じて年金給付額も必ずしも一定じゃなくていいじゃないか、保険料も少し高い割りに逆に給付すべき水準も高くていいじゃないか、こういった議論もあり得るわけで、その場合に、同じ農村の集落という社会でこの農家は高くこの農家は低いということが、農家の集落の実態に合うかどうかということも実はあるわけです。これはわれわれの一つの、そういう御議論もありますので、検討の課題としては認識しているわけであります。それはもう少し検討さしていただきたいと思います。
  145. 三治重信

    ○三治重信君 それは何というんですか、専業農家がちっともふえない。むしろ兼業農家のうちでも第二種兼業農家がふえていく。この家計調査を見ても、むしろどっちかと言えば所得の伸びは第二種兼業農家の方のが多いと、こういうようなことを見ていって、しかも農業者年金ということになると、そういう第二種兼業農家もそれから専業農家もみんな同じ保険料で同じ年金というのでは、経営規模拡大の何か焦点が私はぼけるんじゃないか。やはり農村もだんだん分解し、農村の中で自立、いわゆる専業農家あるいは農業所得以外、農業所得が主でそのほかの兼業収入があるのまで農家にしても、そのほかのいわゆる第二種兼業農家、ほとんど農業収入はむしろ副収入だと、こういうような農家というものは、やはり同じ部落集団におっても、農業に対する意欲または部落の中で農業問題に対するいろいろな議論というものは、やはり分けていった方がむしろ農業合理化に進むんじゃないか。  それを、何でも集落のものは全部同じですと、こういうのでは、政策の目標はいいけれども、実は現実にやるときは何もこれもみんな同じだというんじゃ、やはりこういう立体的な非常に着想のいい政策というものが私は現実には生きないじゃないか、こう思うわけなんです。  それで、その中で、この移譲の問題で、私たちの年齢がちょうど一緒に百姓やっている者は移譲の時代で、私がよく聞くのは、移譲しろといって所有権を息子に渡すというのはこういうのは反対だと、経営を任すのはいいと。経営を任するのはいいけれども、所有権を子供に渡すのは反対だと。そういうものについて三治おまえどう思うかと、こういうのが非常に多い。どっちかというとまあわれわれの年代、六十前後に達する人たちは、やはりまだ自分の受け継いだ農地は先祖代々の農地だと。自分の代でこれをなくするというのは先祖様に済まぬことであり、自分の目の黒いうちは親から引き継いだ農地は少なくしたくないと、こういう意欲が、これはまあ何といいますか、非常に強い。それと、私はこの非常に近代的な考え方の農業者年金制度とはぶつかると思うんです。聞くところによれば、いや所有権の移譲からそれが大分緩和して経営の移譲でいいようにしたんだと、こういう御説明で、これは現状に合わした状況だろうと思うんですが、そういうふうにすると移譲がスムーズにいく。  しかし、そういうふうになったときに、もう一つここで御質問したいのは、そういうふうに現実におやじが主として百姓やっているのはいいんですけれども、三ちゃん農業で、お母ちゃんに任して自分は勤めに出ている。だけれども、恐らくこういう初め所有権の移譲で出たもんだから、みんな実際はお母ちゃんやおばあちゃんや嫁が百姓やっているんだけれども、農家という肩書きは、会社へ勤めたり、先生をやったり、役場へ勤めているその人が農業者となっている例が多いと思うんですが、そういう場合に、やはり移譲という場合には社会保障の移譲よりか、むしろ農家の方としては主婦が実際農業をやっていたんだと。  そういう意味においては、非常に主婦の年金を何とかもらえるようにしないかという議論が出てくるのではないかと思うんですね。そうすると、いままでの農村の観念から見れば、会社や工場へ勤めたり、官公庁へ勤めている主人たる農業者よりか、実際やっている主婦に主人から経営権を移譲して、その主婦がむしろ農業者として加入する道というものは開けているのか開けていないのか。また、そういうことに対してどういうふうに実際指導され、また取り扱っておられるか。
  146. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 農家の主婦の場合は、実は専業農家の場合と、それから兼業農家の場合と違うと思うのです。いま先生が設例されました、夫が外に働きに行っているという場合は、これはむしろ安定兼業といいますか、そういったかっこうで外に働きに行っていると、こういう場合はその夫は被用者年金にむしろ入っている例が多いのじゃないか。たとえば厚生年金とか、あるいはその他の共済組合とか、そういった被用者年金的なものに入っているということが多いと思います。ですから、そういったケースのときには、その夫が農業者年金資格者になっているということはまずない。そういう場合にはむしろ夫から、これは所有権も何も妻に移転する必要はないので、借りるというかっこうでもいいわけですから、使用収益権を設定して、妻が経営主体になるという形をとれば、これはその妻が当然農業者年金加入資格になるということになるわけであります。  それから、ただ専業農家の場合には、夫も妻も実際一緒になって野良で仕事をしていると、こういう場合には、この農業者年金というのは土地の移動ということに着目して地権者ということを加入資格者としておりますから、実際に農作業に従事している妻という場合は土地の名義人ではないわけですね、経営者でありませんので。そういう意味で、直ちには農業者年金加入者になり得ない。こういう問題があるので、しかし農業経営実態、作業の実態からすれば、主婦がかなり重味を持っていると。そういうものと地権者としての資格というこの制度の仕組みをどう解決するかということが今後の課題になっていると、こういうような実情であります。
  147. 三治重信

    ○三治重信君 わかりました。被用者保険に入っているとこっちは入れないのですな、法制上。そうすると、そういう農地の所有権はサラリーマンが持っていると、しかし、実際耕作しているのは主婦だと。そういう場合には、主人がいわゆるこの農業年金に入れぬから主婦が入れると。一人だから入れると。わかりました。  そういうことでやっていけば、この女性農業者のいわゆる老後の保障というものが相当救われるであろうとともに、農業のいわゆる機械化が進み、技術が進めば、私は日本の過小農のこの単純な米や麦や一般のちょっとした野菜ぐらいなやつの農家なら、むしろ女性の方がまじめで農協の方なり技術者の指導さえ得れば、その方がむしろ私は農業の振興に被農業者として役立つと。むしろ今後こういう日本のような農業の、一定の規模以下の小さい過小なところは、むしろ女性の専業的な農業経営者というものを私は育てるべきだと思う。農業後継者というと男ばかりというのは、やはりこれから時代おくれになろうかと思うわけなんで、その点、農村の御婦人の経営者たる資格、また経営者意欲というものをひとつ出すように、これで利用していただくことをお願いしておきます。  それから、こういうので実際にいままだ二年ぐらいで大した効果が、どこをどういうふうにいくかというものがまだめどがつかぬと、こういうふうに言われておりますが、具体的な二、三の例で結構ですが、やはり経営規模の拡大につながったというティピカルなモデル的なケースというものを、それがどういう条件のときにそういうモデル的なケースが出てきたか、ティピカルな具体的な例をごく簡単にひとつ一、二御説明願いたい。
  148. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 具体的な何の太郎兵衛というような話ではないのですが、たとえば第三者移譲の例で見ますと、取得する前と取得後と、つまり経営移譲があった前と後と比べてみますと、たとえば五十アールから七十アールのものが、それがかなりの部分、たとえばその二倍の一ヘクタールから一・五ヘクタールに育っているというものも、これはかなりあります。もちろんちょっとしかふえてないものもありますが、かなりある。それから、七十アールから一ヘクタールというのが経営移譲の前の姿であったのが、取得後それが一倍半の一町以上になっているというものもありますし、極端なのは取得前五十アールのものが取得後には三ヘクタールになっている、こういった例も、これはそう多くはございませんがあるにはあります。  それから、第三者移譲だけではなくて、後継者移譲の場合でも、親の代と子の代と比べてみますと、これは平均的に言って、親の代には大体百六十六アールであったものが子の代には百八十六アールにふえて、その間に二十アール確実にふえている。これは、親と子の間で親の耕地がそのままふえないで子の耕地にいっている、単純再生産という形で受け継がれているという例もかなりある、むしろそれが多いので、八十数%はそういうかっこうで、残りの十数%が、むしろ子になってからふえたという例が十数%と少ないわけでありますけれども、そういうもので平均いたしましても二十アールふえているということでありますから、現実にふえている個々の例で見ますと、これはやっぱり親の代から子の代になってかなりの経営規模拡大が行われているという例は、これはかなりございます。
  149. 三治重信

    ○三治重信君 それから、今度はちょっとこれとかわって、もう一つ農業経営の維持のために非常に画期的な措置がとられているのが、租税特別措置法の贈与並びに相続の税金の猶予だと思うんですが、何というんですか、そういう農業後継者の養成で、いわゆる農業を単に第三者に移譲するというやつは、これの租税特別措置法の対象にならぬで、ただ自分の息子やなんかに譲ったものだけ税金がずっと安くなる。経営規模拡大のために第三者に譲って農業年金者として引退する、こういうようなやつはこれの対象にならぬわけでしょう。なるのか、またそういうものとの関連においてこの問題をどう考えられているのか。  それからもう一つは、私はこの租税特別措置関係、これは一般農業経営の規模の拡大と直接は関係はないかもわかりませんけれども、やはり市街化区域の中の農地というものと農業の発展地域の農地というものについて、こういう農業者年金保険とか、それから租税特別措置なんかでも何か少し区別があってしかるべきだと、そうしないといわゆる農地への宅地や工場の進出が常に絶えない、やはり市街化区域の中の土地が宅地や工場地としてなかなか使われないためにそういう問題が出てくる。そうすると、農林省とすると、やはり市街化区域内の農地についてはもう少しやはり宅地化といいますか、こういう農業経営の規模拡大の政策からやはり段階的に外していく、その差別――差別と言っちゃ語弊があるかもわかりませんが、区別する対策をとってしかるべきじゃないかと思うんですが、そういうものに対する御所見をお伺いいたします。
  150. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) まず第一点の贈与税あるいは相続税の納税猶予でありますが、これは贈与を受けた者あるいは相続者が農地を細分化しないで親から受けた農地をそのまま、あるいはそれより拡大して耕作する、こういう細分化防止という前提で納税猶予はされておりますから、それをさらに他の者に使用収益権を設定する、耕作しないでというような場合には、これはやっぱり課税の特例措置のその趣旨と違うわけでありますから、それはやはりその限りにおいて、特例措置の軽減というものが除外されるということは、ある程度これはやむを得ないことではないだろうかと思っておるわけであります。  それから二番目の、市街化区域内についての農業者年金法あるいはそういった課税の問題、これは確かに御議論があるわけでありますけれども、まず農業者年金につきましては、加入の時点において少なくともその農家が農業をやっている、しかし厚生年金その他の被用者年金に入っていれば別ですけれども入っていない、そういう農家がいて、実質的に専業的に農業をやっているという者もあるわけですね。それで、いざ経営移譲の段階でそれもやはり従来と変わらずに存続して経営をやっているという者について、年金の受給がおまえは市街区域内だからだめだと、こういうのはやっぱりいささか酷に失するということでありますので、それは現実農業をやっているということに着目して、それはやっぱり年金の受給から外すのは適当ではないのじゃないか、こういう判断をしております。  しかし、市街化区域内の農業者を全部当然加入という形で強制的に加入しておく、これも問題がありますので、それはやはり市街化区域内の農地農業者経営のほとんどが入っちゃうという場合には、それは当然加入者とはせずに任意加入、脱退という特例を開いております。そして、そういう場合には、できるだけ脱退するような形で現実には指導をしているということであります。  それから、課税の特例の問題でありますが、具体的には相続税とか、あるいは贈与税、そういった問題でありますが、これは農業現実にやっているということに着目して、農業のやっぱり生産性、収益性ということから判断して経過措置をとっているわけでありますから、やはり市街化区域内におきましてもそういう場合には、相続税あるいは贈与税の猶予措置というものはとるべきであるというふうに判断しているわけであります。  それで第三番目の、市街化区域内の農地の今後の基本的な取り扱いにつきましては、これは農林省としては割り切っているわけでありまして、いわゆる効用が長期に及ぶような基盤整備事業、そういったものは原則的にはやらない、ただし、当面営農をしている者については、それのいろいろ世話役的な機能はもちろんする、こういった形で整理しているわけであります。市街化区域内の農地現実にはかなり存在しているわけで、いわゆる固定資産税とか、そういった課税をどうするかという話はこれは非常にむずかしい話で、原則としては、三大都市圏の特定の市につきましては宅地並み課税で現在も踏み切っているわけでありますが、その原則とどうやって適用していくか、こういったことになりますと、市街化区域における農地の分布の状態、具体的に申し上げますと、三十一万ヘクタールを取り入れて八万ヘクタールがすでに宅地化されているけれども、まだ二十三万ヘクタールが宅地化されないままに広範に残っているというようなこともありますし、それからやっぱり一応わが方としてはそういった広範に残っている農地というものを宅地として積極的に使っていただきたい、こう思っているわけです。  しかし、現実には、やっぱり都市関連の施設設備がどうも十分ではないというようなことで、農地農地のままとして残らざるを得ないという事情もありますので、その辺の実態考えてこの問題は対処していきたい。ただ、原則的には、やはり市街化区域の農地というものは現実市街化されている、あるいは十年以内に市街化されるわけでありますから、非農業的利用に供するという形で、そういうような方向で農地というものは取り扱っていくべきだというふうに考えているわけであります。
  151. 三治重信

    ○三治重信君 もう一つこの農業者年金等をめぐる問題で、いわゆる農業者年金の適用者でない第二種兼業農家、お母ちゃんも入ってない、そういうようなところで最近請負耕作、いわゆる何というんですか、土地を手放すことはいやだと、しかし百姓はやらぬでもいいと、だからだれかがつくってくれればそれに任すと、ところが農地経営の移動というものがいわゆる耕作権ということになってくると、今度はいざ売るというときになって、その耕作権としていわゆる三割なり離作料をとられるようなことが予想される。  これは小作には出せない、こういうことで、請負耕作というのがずいぶん出てきたと、こういうふうに言われておるわけなんですが、この請負耕作というものと農業経営、いわゆる農業者年金経営拡大の政策というものになってくると、そういう農業者はこの農業者年金制度によっても経営拡大するけれども、もう一つはいわゆる請負耕作、そういう第二種兼業農家の土地を耕作権を持たぬで請負耕作で経営規模を拡大していくと、こういう制度、あるいは農協がそういう人の農地を農協預かりにして特定の農家にそれを耕作さして仲介をすると、こういうようなことも最近聞いているわけですが、このいわゆる請負耕作と経営の移譲というようなものとの調整が今後は出てくるか、これはこれに別々に発達していき、何というんですか、耕地の移動の大道は農業委員会が今後耕作権の承認というんですか、それによってが主力になっていくのか。いま現実にはどうも農地のいわゆる耕作利用の経営の拡大には請負耕作の方のがどうも進んでいるんじゃないかと、こう思うわけですが、これとの関連を、具体的なかっこうをどういうふうに農林省は考えられておるのか。
  152. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 私は農業者年金制度による経営移譲経営規模拡大あるいは経営の若返りということと、いまおっしゃった請負耕作によって、実質的に賃借権というものの農地の利用集積によって経営規模拡大をしていくというふうな両方あっていいと思うのです。両方が重なってそれぞれ経営規模拡大ということで結びついていくと、そういうようなことが、個々の具体的な集落についてはあるのじゃないかと思っております。  ただ、具体的なその調整は、農業委員会なり、あるいは集落の問題なり、あるいは市町村と、そういったところで計画的に調整をとりながらやっていただくということで、いわゆる請負耕作といいますか、私どもはいわゆる農地法あるいは農振法に基づく農用地利用増進事業というような制度を創設していまその普及を図っておりますが、要するに所有権の移転によらない使用収益権の、利用権の集積という形で経営規模の拡大を図っているわけですが、これは農業者年金制度による接近と、それからそういった利用集積という形での接近と、両方同じ集落で私はやった方がいいのじゃないかと思っております。
  153. 三治重信

    ○三治重信君 政務次官に最後に締めくくりでお尋ねしますが、私はこの農業者年金制度というのは本当に日本に政府が自立農家をつくろうという政策にこれを使おうというと、これは非常なやっぱりいろいろな対策が出てくると思うんです。これをだから社会保障制度の方へ持っていくと非常に矛盾があるというんですか、国民年金との関連でああでもない、こうでもないといういろんな問題が出てくる。老後の保障ですから、保険料が少なくてよけいもらえればそれにこしたことはないわけなんだが、そういう関連も必要なんですが、私はことにきょうはいわゆる自立農家の育成、いわゆる構造政策の一環としての自立農家の育成というものにこれを利用してといいますか、この制度を大いに活用して、その長期目標を立てて計画をやっていただきたい、こういうふうに思います。そういう問題について、日本の農業はむしろ健全な農家を育てることが中心にならなくちゃいかぬ、こういう考え方に対してひとつ御意見を述べていただいて、これで終わりたいと思います。
  154. 初村滝一郎

    政府委員(初村滝一郎君) 今回の年金制度は、いま先生がおっしゃったように、社会保障制度的なものであらねばならぬと思うけれども国民年金よりもさらに政策的な意味を持って今回年金制度を改正するわけでありますが、将来の日本の農業考える場合には、やはり若い人方に対する年金加入とか、あるいはいま先生がおっしゃったとおりにそういうものを含めて前向きで検討していきたい、かように考えております。
  155. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  156. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 御異議ないと認めます。  本案に対する討論及び採決はこれを後日に譲ります。     ―――――――――――――
  157. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 次に、農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案議題といたします。  本案の趣旨説明は前回聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  158. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 私は、いま議題になりました農林漁業金融公庫法等の一部を改正する法律案質問を行うわけでありますが、実は私の出身地であります三重県あるいは静岡、岐阜等にいま新聞でも御案内いただいていると思いますが、イネミズゾウムシというアメリカ渡りの害虫が発生をいたしまして、防除体制確立の上にきわめて緊急性を要しますので、私の持ち時間の一部を、これに関する防除体制の質問に充てていただくことをお許しをいただきたいと思います。  イネミズゾウムシの関係につきましては、実は三重県で五月の中旬に発見をされまして、そうして五月の十六日、それから五月の十七日、二日間にわたりまして緊急の調査が行われたわけであります。そうして五月の二十一日からおおむね県、関係市町村あるいは関係農業団体等含めまして緊急の防除対策推進協議会等、具体的な対策を進めるための組織あるいはその対策がとられることに相なりました。その間に農林省の農産園芸局、その中の植物防疫課の方で大変な御配慮をいただきましたし、また、私自身も御無理を申し上げてその対策に対する協力をお願いをしたところでありまして、御努力につきましては感謝を申し上げておるところでございます。  ただ、このイネミズゾウムシにつきましては、アメリカのミシシッピーの流域に分布をしておるものが、かつて日本に持ち込まれてまいりました。具体的には、愛知県の方でちょうど二年前にこれが発生をしたわけであります。同時にまた、昨年も出ており、近隣でありますだけにその発生については憂慮され、その対策が検討されておったところではありますが、不幸にして本年いま申し上げましたように、三重県の北西地方を中心にいたしまして発生をすることになったわけであります。このイネミズゾウムシは空を飛びますし、それからもちろん陸上にはい上がってくるわけでありますし、かつまた、水の中でも生息をするという陸海空の大変な害虫でございますし、繁殖等についても相当な勢いがあるんじゃなかろうかというふうに想像をされるわけでございます。  また、成虫になりましてから冬眠をしまして、そうしてまあ出てくるという性格がありますし、さらにまた現場を見に行きましても、太陽の上がっておる間は全部水中の中に隠れておって、表面からながめておってもなかなかわからない、こういう大変厄介なしろものであります。それだけに、早くこれの根絶に向かって対策をとっていかなければならぬ。もちろん、この対策につきましては農林省のみの責任ではございませんで、当然営農者あるいは関連する系統の団体あるいは県、市町村、それぞれ力を合わせてこの対策をとっていかなければならぬという問題でありますが、残念ながら三重県だけではなくって、先ほども申し上げましたように静岡の方、あるいは岐阜県下にも発生をしておる、こういう状況でありますので、この対応について概略掌握をされておる範囲の中で、農林省としてのお考えをお教えをいただきたい、こう思います。
  159. 小島和義

    説明員(小島和義君) イネミズゾウムシの発生の経過等につきましては、いま先生から御指摘があったとおりでございまして、昭和五十一年に愛知県下におきましてまず発見をされまして、その後愛知県内におきまして   〔委員長退席、理事山内一郎君着席〕 次第に発生町村数がふえて、今日に至っております。  五十一年度、五十二年度におきましては、本虫の生態並びに防除方法の確立のための研究の助成等行ってまいりまして、本年度からは愛知県におきましてかなり本格的に防除を進めようと思っておったやさきでございます。また、その愛知県下のほかのまだ発生してない地区及び隣接の三重県、岐阜県、静岡の三県につきまして、本虫の侵入を警戒するための調査も実施しておりましたところ、このほどこれら三県におきまして、いずれもイネミズゾウムシの発生の発見が報告をされております。三重県の場合で申しますと十八町村、岐阜県で八町村、静岡県で三町村と、こういうふうな状況になっておりまして、農林省といたしましては早速その発生面積、発生状況等を調査しておるところでございます。これらの調査がまとまり次第、本年度愛知県について予定しておりますような防除対策と同じような対策につきまして、これらの三県にも実施すべく前向きに検討いたしたいと、かように考えております。
  160. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 愛知のいままでの被害の状況は、五十一年に七百三十ヘクタール、五十二年には四千五百九十八ヘクタールと、こういう状況からながめていって、今回三重、静岡、岐阜県下に広がっていくということになりますと、これは相当深刻に考えていかなければならぬ、こういう性格のものであろうというふうに考えるわけでございます。  具体的な中身等についてはあんまり触れる必要はなかろうと思いますが、三重県下の被害状況といいますか、そういう立場でながめていきますと、いま御説明のありました四市十四町、いわゆる十八の市町村ですが、これで発生地域の今日までの田植え済みの面積が一万八千百九十三ヘクタール。そのうちにこのイネミズゾウムシが発生をしましたのが六千六百六十ヘクタール、発生率は三六・六%、こういう状況になっておるわけでございます。少しわいているところ、真ん中のところ、多くわいているところ、大変被害の多いところ、こういうふうに分けてみますと、少しのところがいまのところでは一・九一%、真ん中のところで二一・六六%、多いところで九・七七%、非常にひどいところは三・二六%、こういう総体の発生の地域における被害率は出ておるわけです。  ところが、特に中心部になっております四日市を中心にいたしましたたとえば赤水町だとか、そうしたところの町村をこうながめていきますと、おおむねもうそこでは調査をしました株の被害率は一〇〇%というような状況になっておりまして、三重県の北勢県民局が北の方にありますが、その北勢県民局では昨年の水稲の植えつけ面積が一万ヘクタール、このうち減反で約一割減りましてことし予想をされておりますのが九千ヘクタール、そのうちのおおむね六千、タタールがもうすでに侵されているという状況になっておりまして、この虫に侵されますと、稲そのものは枯渇をするということはまずないようでありますが、問題は分けつをしない、したがって何もならないという形になりまして、何としても植えかえをしなければならぬ、こういう事情等も出てくるわけであります。  そこで、三重県としては、緊急国に対する要望というのが相談の結果まとめられてまいりました。その一つは、緊急防除を強力に推進をするために、薬剤費等防除経費を国で何とか負担をしてもらいたい、それが一つの具体的な問題であります。この薬剤の防除経費ということになりますと、おおむね今日までの専門的な防除薬その他それの使用等見ていきますと、成虫で田植え直後の場合に十アール当たりサンサイド粒剤を約三キロ必要とする。これの単価が六百円、こういう状況になっておるわけでありますし、それから新成虫、これは七月から八月に卵がまた再び新成虫として出てくるわけであります。これの段階ではパイジット粉剤、これも同じく十アール当たりおおむね三キロの薬剤を必要とする、こういう形になってまいりまして、大変経費的にも問題が出てくるわけでございますんで、ぜひこの要望についてひとつ真剣に御検討をいただきたいというふうに考えるわけであります。  なお、この薬剤をまくわけでありますから、ちょうど三重県で言いますと、北勢地方は桑の産地、それから鈴鹿地方、四日市地方へ行きますとお茶のいま刈り取りの大変重要な時期であります。これらに対します副次的な被害、これをどう防いでいくか等の問題もあわせて検討を加えられながら対策が講じられていかなきゃならぬ、こういう状況にありますので、こうした実情をぜひひとつ詳しく御承知いただいて、資金的な問題についてもお願いをしておきたいと思います。  それから二つ目の具体的な課題は、市町村単位で緊急に一斉防除を実施をするわけでありますが、問題は、その農薬散布の防除機具が圧倒的に不足をするという実は現実にぶつかって困っておるわけですね。したがって、この防除機具を至急購入をしなければならぬ。これは現物の問題がありますし、同時に、この防除機具を購入する場合の購入費の問題等が出てくるわけであります。これらについてもぜひひとつ御検討をいただきたい。  それから三つ目の問題は、発生及びこの被害の実態というものを、いま御答弁がございましたように、的確に把握するということがまず第一でありますし、相当安全圏を見定めた一つの区域設定というものをしていく必要があるだろう。そうして、効率的な防除計画というものを万全に樹立をしていくということが必要でありますが、そのためには調査費等をやはり大幅にひとつ御検討いただいて措置を願いたい、こういうふうに考えるところであります。特に、先ほども申し上げましたように、この稲が大きくなりましてからの被害というものは余り考える必要がない。それだけに、あと越年をしますもののいわゆる防除対策、越年をして次にまた生き返ってくるというものに対するこういう体制がどうしてもおろそかになりがちの性格がそこにあると思うんです。  そういう意味からいきますと、成虫になってからの冬眠態勢に移っていく段階で駆除をしていくという、こういう構えになりますと、あぜはもちろん、くろ、あるいは土手あるいは休耕の田畑というものが最も彼らの冬眠をしやすい条件をつくっているということになりますので、そこまで目が届いていかないといけませんし、そういう監視体制を強化をしていくということになりますと、何としても私は資金だけの問題ではなくて、動いていく人の問題がそこに含まれてくると思う。いつの場合も防災対策で、特にこの農業関係についての防災ということになりますと、人の問題が一番大きなかかわりが出てくるわけであります。  最近の農家は専業農家はごく少なくなりまして、いわゆる兼業農家、こういう形態の中で人を配置をしそれに対応していくということは、なかなか並み大抵のことではございません。そうした人間の配置等も考えながらの全体の防除体制について、ぜひ御検討をいただきたいというふうに思う次第であります。ただ、愛知での経験を生かしてということは、きわめて貴重なことでありますし私も賛成でありますが、防除体制について愛知方式でという原則は、それにこだわらないでひとつ大胆な防除体制について御検討いただきますようにお願いをしたいと思いますが、その辺、ひとつ基本的な課題としてのお答えをいただきたいと、こう思うわけであります。
  161. 小島和義

    説明員(小島和義君) ただいまお話がありました防除関係の国から助成いたします内容でございますが、本年度愛知県で予定いたしております防除事業の内訳といたしましては、MPP粉剤、PHC粒剤、カルタップ粒剤、そういった薬剤を四回ないし二回それぞれの地域の発生状況によりまして散布用の薬剤費を補助する、こういうことを予定をいたしておるわけでございます。三重県の場合におきましても、その発生の状況なり態様なり見定めまして、どの程度の助成をすることが適当であるかということを見定めました上で前向きに対処いたしたいと、こういうふうに思っております。  お話がございましたその防除用の機具の問題でございますが、こういう防除関係の機具につきましては、確かにこういう特定の虫のために必要だというふうな事態もわかるのでございますが、通常の稲作防除のために農家が何らかの機具機材は持っておると、こういうのが普通でございますので、こういう緊急防除の対策の中身といたしましては、なかなか助成対象に乗りにくいという性格を持っておるわけでございます。ただ御指摘がございましたように、ほかの作物との配置の状況ということによりましては、一概に利用できるばかりとは限らないわけでございますが、もしもその状況が許せば、このような広域の一斉防除ということについては、他の分野で利用しておりますような空中散布ということも、一つの研究課題ではなかろうかというふうに考えております。愛知県の場合におきましては、中間に愛知用水が流れておるというふうな事情がありまして、なかなかこれが利用できなかったわけでございますが、地域の状況を見定めました上で、もしそういう道がとり得るということでございますれば、それも一つの研究課題というふうに考えております。  それから、その対象とする地域をどのように押さえるかという問題につきましては、お話ございましたように、当然こういう被害はその周辺部分に波及していくというおそれがあるものでございますから、できるだけその安全を見まして、適切な地域を対象とするように心がけるつもりでございます。  それから、単に田植え以降の段階というだけではなくて、御指摘がありましたように、虫が越年をする段階におきましてこれを徹底的に駆除するというのが非常に有効な措置でございまして、愛知県における事例におきましても、畦畔とかそれから雑木地とか、こういうところの防除ないしは焼き払いということも極力やっていただくようにお勧めをいたしておるわけでございますが、場所によりましては簡単に火を放ち得ないというふうな状況もあるようでございまして、それがまた、越年の虫を徹底的に退治できないということの一つの原因ともなっておるわけでございます。  こういう防除体制をとります上の人の問題、御指摘がございましたように、かつては水田の病害虫防除の体制というのは、一つのチェーン的な防除組合というふうなものを中心にいたしまして非常にうまく組織ができておったわけでありますが、農村における労働力の流出、特に兼業化の進展という中におきまして、地域的な防除体制というのは非常に弱体化しつつあるという心配を持っております。県の方の側におきましても、病害虫の防除員というふうなものを補助職員で小人数ながら配置をいたしておりますし、またそれを補助するための補助的な職員というものにつきましても予算的な措置を講じておりますのでございますが、そういう職員の有効な応援体制、あわせて試験研究の面におきましても、愛知の場合に国の試験研究機関から二名ほど支援体制をとっておるわけでございますが、そういった活用できますいろんな人的な体制というものをフルに動員いたしまして、また全国各地に配置されております普及員の応援も得まして、極力そういう防除の体制面の応援もいたしてまいりたいと思っております。  それから、先ほど愛知県について二回から四回と申し上げましたが、一回から四回の間違いでございますので、訂正いたします。
  162. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 これから御検討いただいて、いろいろと現地の声等もさらにまた出てこようというふうに思いますので、ぜひその辺をお受けとめいただきながら、最善の策を講じていただくようにお願いしたいと思うんです。ちょうど大臣がお見えになっておりませんので、初村次官、ぜひいまのこのやりとりをお聞きをいただいて、ひとつこの問題に対する御認識をいただいて、そしていまお願いをしましたことについて、実行力のある次官でございますので、私は大臣よりも頼もしいと、こう理解をしておるところでございます。ぜひひとつ具体的な対策についてお力をかしていただくように、御答弁をいただきながらその辺を確認をしておきたいと、こう思うんです。
  163. 初村滝一郎

    政府委員(初村滝一郎君) 災害の復旧というものは非常に重大なことでありますので、ただいま先生質問に対して審議官からるる細かに答弁があったようでありますが、その答弁が実行されるように、私の方からもお力添えをいたしたいと思います。
  164. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 ありがとうございました。  それでは本論に入ってまいりたいと思いますが、お配りをいただきました資料で二つ、三つお聞きをしたいと思うんです。  一つは、二ページ(3)の資本金、五十三年三月末一千六百九十五億円余、これは(6)の原資、政府からの出資金一千六百九十五億円余、五十三年三月末、これと同じものだろうというふうに思うのでありますが、「農林金融の動向-昭和五十二年度版-」の中の統計表、ちょうど三百ページに当たるわけでありますが、ここには四十八年、四十九年、五十年、五十一年と四年間のいわゆる出資金、借入金等、いわゆる農林公庫資金の原資構成の流れが記録をされておるわけであります。これによりますと、この出資金の関係は、四十八年に八千二百万、それから四十九年に二億一千二百万、五十年に三億四千八百万、五十一年に六億五千百万、こういうふうに順次この出資金はふやしておりませんから減っておる流れになっておるんですが、この資料としていただきました千六百九十五億円という額は、実は五十二年の三月、いわゆる五十一年度末のこの表からいきますと、これには千六百三十八億八千百万と、こうなるわけでして、むしろこの数字と比較をしてみましたときにずっとこう減ってきた流れがあるんですが、急にこの段階でふえておるんですが、何かこれについては根拠があるんでしょうか。
  165. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 御指摘の「農林金融の動向」の三百ページのところの出資金と書いてございますのは、一般会計からの繰り入れましたのと産業投資特別会計のところとの計で、累計が千六百三十八億八千百万円になっておるわけですが、実はこのほかに六十五億の経済基盤強化のための資金を繰り入れた分がございます。したがいまして、ここにあります数字の千六百三十八億にプラス六十五億を足していただきますと千七百三億になると思いますが、これと千六百九十五億との差が約十億ございます。この十億は、開拓財産を承継をいたしまして、その後開拓農家からの貸付金が、開拓特別会計で貸しました資金の償還ができないということで、その償却を約十億やったわけでございます。したがいまして、千六百三十八億に、いま申し上げました整備基盤強化のための資金として受け入れました六十五億を足しまして千七百三億円、それから開拓財産の償却分十億を引きますと、ここの提出いたしました資料の二ページの千六百九十五億円に相なるわけでございます。
  166. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 わかりました。  それから、この政府からの借入金ですが、この構成をながめていきますと、資金運用部資金、それから簡保特別会計からの資金、それから返済金、借入金残高と、こうあるわけですが、これはこの「農林金融の動向」の最後の表からながめてみたときに、この資料の五ページにあります五十二年度の五千億、これをプラスをして考えれば間違いないんでしょうか。
  167. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 農林公庫の借り入れ残高でございますが、これは五十一年度末の残高が二兆一千九百四十四億ございます。それだけございますが、それに五十二年度におきまして返済をいたした分が九百二十二億ございます。で、さらに五十二年度に借り入れをいたしましたのが、いま五ページに出ております五千億でございます。したがいまして、この差し引きをいたしますと、五十二年度末の残高が二兆六千二十二億円ということに相なるわけでございます。
  168. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 わかりました。  それからもう一つ、三ページですが、この融資の実績の関係でここに貸付決定額が五十二年度、それからもう一つは貸付金の残高が掲げられておるわけですが、この対象になっておるのは直接貸し、それから委託貸しあるいは代理貸し、この三つを含めた数字というふうに理解をしていいのかどうか。  それから、同時にもう一つお聞きをしたいのは、それぞれ公庫資金は貸付計画を額的にも計上をしているわけであります。そうしますと、この計画額に対して貸し付けの決定された額、いわゆる貸付額、これの割合というものは一体どうなっておるんでしょうか。資料によりますと、五十一年度は貸付計画額に対する貸付決定額というのは六五・二%、五十二年度は六四・〇%、こういうふうになっておるんですが、これは間違いないんでしょうか。
  169. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 第一点もお話のとおりでございます。  第二点の御指摘も、お話のとおりに相なっております。
  170. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 わかりました。資料の関係はそれで。それを参考にして少し論議をしてみたいところもありますので、後ほど触れてまいりたいと思います。  一つは、今回の改正提案の内容に関してですが、現行の年利五分以上のものについてのみそれが引き下げの対象になりました。そして五分以下のもの、いわゆる三分五厘のものもあるわけでありますが、これが据え置きになっておるわけであります。この関係はいわゆる五分を境にして下げるものと据え置いたもの、こういうふうに区別をした根拠というのは一体何か、この辺をまずお聞きをしたいと思います。
  171. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 実は、三分五厘資金をどうするかというのがいろいろ問題の存するところでございますが、一つは、公庫の三分五厘は実は天災融資法におきます特別農林漁業被害者に対しまして貸し付けます金利が三・〇%でございまして、これに次いで実は低い金利に相なっておるわけでございます。したがいまして、今回これをどうするかということはいろいろ検討をいたしたわけでございますが、総合資金等の金利水準と財投等との金利水準の問題も一つございますが、三・五%のような超政策的金利につきまして、これを法律改正によりましてある程度財投資金と連動させるという、そういうことはいかがなものであろうかという感じが一ついたしておるわけでございます。したがいまして、今回は三分五厘資金の引き下げということをいたさなかったわけでございますが、今後公庫の金利の体系をどうするかという問題も含めまして、この点につきましては検討をなすべきものだというふうに考えておるわけでございます。
  172. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 考え方はわかりました。  次に、年利五分五厘以上のものは、これは全部同じ総なめで四厘五毛ずつ、それから年利五分のものはこれは四厘で五毛が削られておるんですね。この五毛の差をつけた理由というのは一体何でしょうか。
  173. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) これもなかなかむずかしい問題でございますが、金利のわりあい高いところはさっとこう引き下がるのでございますけれども、だんだん五分というところになりますと、そういう従来から低い水準の金利でございますから、これを財投引き下げ幅イコールに引き下げるということにつきましては、若干いろいろ問題もあるわけでございます。考え方として言いますれば、五・五%を〇・四五引き下げたと同じ引き下げの幅のウエートで五%を引き下げますと、大体〇・四%ぐらいに計算としては相なります。
  174. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 それは、もとが高ければ同じ率をどんとこうやれば、それは計算上の問題はいま説明されることはわかるんです。それは当然数字の上で出てくることなんですよね。それじゃ、もとの数字を何でそれだけの差をつけておったんだと、こういうことになるわけでありまして、あえて私は根拠はなかろうと思うんですよね。しかも、五毛の差って一体どれだけ影響するんだろうか、こういうふうに考えていったときに大変疑問に感じます。  それから、さらにもう一つは、今回この改正がここで法案として通れば、これは適用されるのは新規貸し出しでしょう。いままでに貸し付け済みの残高も含めまして、現在貸し付け中のものも含めまして、そうして金利改定をするというのなら私はわからぬではないんですよ。しかし、これから新しく貸し出そうとするわけでしょう。それに対して五分のところで区切りをつけて、言うてみますと、それは五分資金のものというのは、そう全体から見ましたときに多くありませんわね。それをなぜこれだけ削ったのか、どうも納得ができないのです。しかも、これは法令でもって固定をしているいわば政策資金ですね、明らかに。そういう政策資金の問題が、なぜここでそういう差をつけなきゃならぬのか。これはやっぱり考え方のどっかに少し事務的というか、官僚的というか、そういうところが働き過ぎているんじゃないか、こういうふうに考えるんですが、どうでしょう。
  175. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 実は、この前にも、その公庫の別表二の金利をどうするのかといういろいろ御質問等がございまして、実は政策的に決めておる金利を、財投金利等と余り連動してフロートをすることは政策的にいかがなものであろうかというふうに考えて折れたわけです。そこで、しかしながら、こういう低金利のときに別表二の金利についてもこれを引き下げるべきであるという考え方は、私はそのとおりであろうと思うわけでございまして、そこで、実は大蔵省といろいろその点について折衝をいたしたわけでございますが、今回提案をいたしております別表二の金利の改定の法律改正案は、天井を固定をいたしまして、そうしてその下にだけ下がるように相なっておるわけでございます。財政当局流に言いますと、たとえば六分五厘の資金を七分五厘なり七分なりに上げて、そうして六分五厘資金を六分にすると。そのかわりに、今度財投のコストが上がりましたときには六分五厘資金を七分にするというのが、これが本当の連動といいますかフロート方式でございます。  しかし、私たちは、そういうふうな形で政策的な色彩のきわめて強い金融をフロートをさせるべきではないという主張を持っておったわけでございますから、そこで頭を打って下方にのみ連動するという法律案を提案をいたしておるわけでございます。そうしますと、財投資金は今度下がりまして六分五毛でございますから、六分五毛以下の金利というのは全部財投から言いますと持ち出しでございます。そこで、気持ちとしまして、財投の六分以下の金利についても下げるわけでございますから、そこは気持ちとしてそういう形をとりますことは、まあ頭打ちながら下へしか下げないという法律案を了承をするところの過程におきましてそういうふうな形に相なったわけでございますから、その点はひとつ御了承をいただきたいと思うわけでございます。
  176. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 大蔵省との政策合戦で、政策が通らずに事務的に押し負かされたという言いわけのようであります。そうでなかったら御答弁を再度いただきたいのですが、いまのお答えを聞いていると、私はそういうふうに受けとめざるを得ません。   〔理事山内一郎君退席、委員長着席〕  そこで、中身でありますが、「当分の間」というふうになっておりますね、今回の改正の措置。この「当分の間」というのは、私なりに理解をいたしますと、今日経済動向が安定をしていない。したがって、公定歩合を含めて金利が定着をしてない。こういう状況ですから、この「当分の間」というのは、安定成長時代といいますか、そういう時代が到達をして、一応のこの金利がある程度定着をすると、こういう実感といいますか、具体的に数字がおさまってきたときまでの間と、こういうふうに理解をするわけですが、この理解の仕方に間違いがあるかどうか。  それからもう一つは、いま私が申し上げたような形でここに「当分の間」というふうに規定をしているとすれば、この安定成長時代を迎えた場合の想定をされる金利水準というのは一体どの程度にいま事務当局として推定をされるのか、この辺をひとつ御説明いただきたい。
  177. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 第一点の財政当局に押しまくられたのではないかという御指摘でございますが、私はその頭を打って下へ下げることばかりやるということは、これは農業側にとって非常に有利になる法律改正であるというふうに思っておるわけでございます。大蔵省的に考えれば、六分五厘、別表のたとえば五分なら五分でもいいですけれども、五分を下げますときには、その法定金利の五分をある程度上げまして、そうして上にも下にも動かせるようにして金利を下げると、こういう低金利のときには。したがって、いまの法定されています五分なら五分を五分五厘なら五分五厘にしまして、そうして、いまの現在の五分の資金を四分五厘なら四分五厘、四分六厘なら四分六厘にするというのは、これは通常の考え方ではないかと思うのでございます、法律改正しますときに。それは私の方としては適当でないということで、天井を打って、したがって下方にのみ下げられると、上には法律改正をしないと上げられないという形にしたわけでございますから、これは農業にとって私は非常に有利になる改正であろうと思います。  したがいまして、そういう経緯の中におきまして、五分の資金もそれは四分五厘まで下げればいいのですが、大部分、なかなか満つれば欠けるということもございますから、そこでその辺に落ち着いたということでございます。  それから、「当分の間」ということの考え方は、ただいま先生のおっしゃられましたとおりに私たちも理解をいたしております。  それからさらに、今後どうなるのかということは、これは公定歩合が一つはどういうふうに動くのかという問題と当然関連しまして、公定歩合の動向の問題でございますから、ちょっと私としましては、今後公定歩合はこのくらいの幅で推移するだろうということは、ちょっと申し上げられないのでございます。
  178. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 一点目の問題は、満つれば欠けるというその欠ける部分を了承したところを私は指しているわけでして、法律で固定をしているいわゆる金利を上げて、あるいはそれを真ん中に置いて上げ下げを自由にというんなら、これはもう全く大蔵ペースでして、そんなものはもう何もあったものじゃない。ですから、そういう意味でこの五毛の問題については、さらにこれからも機会があるんでしょうから、しかも今度の法律改正によると、下限の問題については省令で決めることになるんでしょうから、だからその辺は大いに配慮をしてもらいたい、こう思っております。  それから、安定した場合の金利水準は、なかなかそれは言いづらいというふうには思うんですけれども、まあまあ諸外国の安定をした金利、これは生産性とのかかわりその他から見まして相当低くなる、このことだけは間違いがなかろうと思うのですね。先ほど五分以下の据え置いた理由の中にいわゆる災害の資金の関係が言われておりますけれども、災害の資金三%にしましても、安定をした一つの経済体制の面からとらえていきますと、これでもなおかつ高いのではないのかという指摘を私どもとしてはやはり持ち合わせるのです。そうなりますと、私は、将来の金利政策という観点から考えていったときに、確かに今日までの高金利政策当時の段階では、これがまだ下へ向かって流れておるさなかでありますから、確かに局長の方でいま言いづらいし、果たしてこれが他の金融とのかかわりの中でどうなんだろうかという気持ちがあられようというふうには思いますけれども、政策資金という位置づけからいけば、相当私は思い切って下げていく一つの気持ち、そうした展望、これを持っていいのではなかろうかというふうに思うんであります。これは意見でありますから、当然違う意見があって結構でありますが、率直に考え方を申し上げておきたいというふうに思います。何かありましたら、また言ってください。  次に、これからも公定歩合の変動がある、こういうふうに予測をするわけであります、いま申し上げましたようないろんな経済事情の中で。したがって、公庫資金の貸出金利も、そういう流れに従って当然これからも改定があるというふうに見るわけですが、それは間違いありませんか。
  179. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 今後公定歩合それから金利水準はどうなるかということはなかなかむずかしい問題でございますが、公定歩合からいきますと、西ドイツが三%であり、それから日本が三・五%、それからアメリカは七%と、それからイギリスなんかは高うございまして九%でございますから、日本の三・五%は相当低い水準にあるのではないかと思います。今後の景気の動向その他によりましてどういうふうな動きをするかは、なかなか予断できないところでございますが、まあ私の感じといたしましては、経済が安定し、ある一定水準に金利水準が落ち着くという、しかもそういう安定成長路線に乗ったという事態のもとにおいて、公庫金利の水準はどうあるべきかということは当然検討をする必要があると思っております。  それから、同時にまた、公庫資金につきましても非常に資金の種類が多くて、金利体系としては非常にわかりにくいという点もございますから、そういう点も含めまして、現在直ちにということではございませんけれども、ある一定の期間をかけまして、これらの点については十分勉強していきたいというふうに思っております。
  180. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 明確なことはなかなか答弁むずかしかろうというふうには想定をしながら質問をしてきたんですが、次に進めましょう。  次に、先ほども少し論議が出ましたように、一定の金利、これは法定金利ですね、この法律で決められている金利、それを今回は以内にして、それを政令で定める利率と、こういうふうに法改正がなされるわけですね。そこで、これからの金利改正というものは現在の法律で定められておる範囲内であれば、引き下げはもちろんの話でありますが、引き上げにつきましても、その範囲内であればこれは政令で行う、こういうことになるわけですね。
  181. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 法定の天井の中でございますれば、お話のとおりでございます。
  182. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 そうしますと、政令で実施をできることになるという、こういう制度の中に、今日までのいわゆる制度と比較をしてみたときに、大変問題点が出てくるんじゃないかと思うんです。結局、他の金融とのかかわりの中で即応的にそれに素早く対応していくという意味では、これは政令で定めていくという制度というものですね、これは一つの利があると思うんです。ところが、一面ひっくり返して考えてみたときに、従来は法律改正を伴うから、当然その利率の妥当であるかどうかということがこうした委員会の場で、いわゆる国会の場で十分に政策論議とあわせて展開をされる、こういうことが当然保証されておったわけですね。ところが、今度は政令でもって自由に変えられる、こういうことになってまいりますと、いわゆる国会論議の場というものは必要がなくなる。言うならば、それに付随をしてその時に合ったいわゆる政策論議の場というものが必然的になくなってしまう。私はこれは大変な問題ではないのか、こういうふうに思うのですが、この重要な政策論議の場としてこの金利問題が論議をされる、このことの代替補償というのは何かお考えがあるんでしょうか。
  183. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 全体の金利を政令で決めるということになりますれば、おっしゃるとおりかと思いますが、現在の頭を打たして、しかもそれを引き下げる場合のみ政令で下げるということになりますと、たとえば五%なら五%の中でどういうふうに動くかということでございますから、これは現状よりもよくなることはありましても悪くなることはないわけでございまして、悪くしようとする場合には、これは当然国会に法律を上程いたしまして御審議をいただかなければいけないわけでございます。したがいまして、五%の中で動くということで、仮にその中で金利が上がるということも将来ございますから、そういうときに国会の御審議を受けないで金利が上がるということはおかしいという御議論はあると思いますけれども、これはそういう制度を法律上とりまして、その五%の天井の中でどう動かすかということでございますから、それは政令で決めることを、もし動かすとすれば政令で決めることが適当ではないかというふうに考えた次第でございます。
  184. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 問題をすりかえてもらうと都合が悪いんですがね。結局それぞれの用途別に、いわゆる制度的に金融の種類が決まっているわけですね。その種類に基づいて法律でこの資金の使用についてはたとえば七・五%あるいは六・五%あるいは五・五%、こう決まっておるわけでしょう。そのそれぞれの頭の以内について今回引き下げが行われるわけですよね、おおむね〇・四五。すると、今回〇・四五を引き下げるということは、頭をなぶらないで引き下げるわけですから、今回下げた分とこの法律で決められておる頭との間には差があるわけでしょう。今回〇・四五引き下げて、次に今度は〇・二上げようというときは、当然これは法律にこの論議が必要ないわけでしょう。そのときに、じゃあ引き下げた形から見て、今度たとえ〇・一にしろ、〇・二にしろ引き上げたことは、これも得するんですか、いまの話では。
  185. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) それは得をしないわけでございまして……
  186. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 でしょう。
  187. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) そうしますと、下がるときは下がるけれども、上がるときはまあ何と申しますか、都合が悪いということになりますと、いまの制度をなかなか仕組みますことが非常にむずかしいわけでございまして、そういうふうに長期低利の金利でございますから、それぞれの時点で別表にも法定化すべきものであって、たとえば下げるなら下げるということで五%を四・五%にすると、これは法律改正でやる、しかもそれを固定化する、しかも今度また四・五%を五%にするときも法律改正をする、しかも、このとき法律改正をするという形をとらないと御趣旨に沿わないことに相なるだろうと思います、法律の形としましては。そうしますと、これはなかなか、一定の金利の動向につきましていまの水準よりも上がらないようにしながらある一定の連動をしていくということは、なかなか困難なことではないかと私は思います。
  188. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 ちょっと誤解があるようですが、私は下げるのばっかり言っているのじゃないんです。一つの頭の以内の中で、下げるにしても上げるにしても、以内の中なら政令で自由にできることになるわけですね。自由にという物の言い方が適当かどうかわかりませんよ。結果としては政令でやれることになる。そうしますと、現行少し下がっておったものが上がることについては現実的な損です。しかし、全体から考えてみればそれはさほどでないかもしれません。しかし、この使われておる資金の量からいきますと、これはもともとは国民の税金を政策的に農業育成のために使おうと、こうして定めておる形なんですから、そうなりますと、たとえ〇・一であろうと〇・二であろうと、その上げ下げ一つについては大変政策的な意味が含まれているはずです。  そういうものが、今日までは仮にそれをなぶろうとすれば、たとえ〇・〇五でありましても本来ならこの法律をなぶらなければ改定ができなかったわけでしょう。ところが、今度は政令でそれがやれることになる。やれることになる場合には、こうした論議が必要なくなるわけですね、はっきり申し上げて。そうしますと、その重要な政策とかかわり合って、たとえ〇・〇五にしろ、あるいは〇・一にしろ、いらうことについて論議をする場というものは一体どこへいってしまうのか、なくなるわけですから、それにかわるような補償というものは全然考慮に入れられなかったのかどうなのかということなんです。――わからぬですか。
  189. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 国会に金利については審議する場を設けたらいいということは事実だろうと思いますが、局長から答弁ありましたように、最低限を決めて、そういった枠の中での引き下げについては時々の金利状況に応じて弾力的に運用することが農政を推進する上にいいのではないかということで、もし一定のものより上げるという場合にはこれは当然国会の審議を経なければなりませんが、一定の頭打ちの範囲内で操作することは政令におゆだねいただいても、もちろん〇・四五下げて〇・二上げる場合もあるかもしれません、政令ですから。  しかし、それでもまだ〇・二五は現在の金利より下がるわけで、これより上がることについてならば国会の審議を経なければなりませんが、一定の頭打ちの中で国会の承認を得まして操作することをお許しいただきたいというのが今回の法案のお願いでございまして、むしろ大蔵省では一定の金利からある程度の、一分なら一分、〇・五なら〇・五の範囲内を上げたり下げたりする自由にしてくれというのが大蔵財政当局の意向だったわけですが、上げることについては絶対だめだ、下げる部分の操作だけということで、財政当局に押し切られたのじゃなくて、財政当局を押し切って下げる部分だけの、いいところ、おいしいところだけ持ってきた農林当局の努力といいますか、苦労といいますか、気持ちというものもひとつ買っていただいて、これがいまの金利より上げるところまで持ってきたのならおしかりを受けても結構ですが、下げる範囲内での操作というものを、いいところだけ、あんこだけ持ってきたというふうで、このあんこの大小については、それはひとつ政令で時々の金利情勢の実態等そのくらいの幅は行政当局に持たしていただいても、農政推進の上に大きな支障を与えるようなことは絶対いたさない、この点はひとつお任せいただきたいと、こういうのがお願いの趣旨でございます。
  190. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 余りくどくは言いませんですけれども、たとえば資金を使う方の側からいきますと、むしろ今回法律改正で、いままで五分五厘で決まっておったものが五・〇四に決まった方が安心なんですよ、はっきり言えば。政令で決めるのじゃなくて、頭を引き下げてもらった方がもっとプラスになりますよ。しかしそういう意味からいきますと、弾力を持たすということが果たしていいのかどうか、問題は弾力を持たすだけの問題じゃなくて、運営としては先ほども言いましたように即応体制といいますかとりやすい、全体に合わせやすい、こういう立場のメリットは当然私はわかる。ところが、肝心の政策金融であるだけに、肝心の政策論議の場というものがそういう形でなくなっていくことについては、私は何らかの代替措置というものをひとつ検討をいただいておく必要があるんじゃないのか、これが一つ。この辺は、大臣真剣に御検討いただきたいと思います。どうでしょうか。
  191. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 言われる趣旨はよくわかるわけなんです。今度下げるのも、〇・四五下げたところでばつっと決めておく、そしてまた、上げなけりゃいかぬときにはまた上げるように御議論をいただく、これも一つの方法かと思いますが、御承知のように、現在の公定歩合並びに財投資金の金利というものは臨時応急の今日の不況対策に対する対処であって、これが恒久的なものだということであるならば当然法定してきちっとしておいた方がいいと思いますが、これはいつ何どきまた状況が変わるかもしれないという場合に、臨時のものに法定化しておくということがこれが本当にいいことかどうかということであって、その点は反論はいたしませんけれども、今日の三・五%という公定歩合というものはそうあり得ることではない。  あり得ることでない時期でございますから、政令でその辺のことに対応できるような若干の緩みを持たしていただいたというのであって、決して国会を軽視して、下げるときも国会、上げるときも国会とやるべきだということを否定するものではありませんが、今回の情勢がそういう「当分の間」という、いつまでかわからないということに対処するのには、こういう弾力的なやり方が一番いいのではないかと、こう思うわけでございます。
  192. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 私も労働金庫を担当していまして、金利の変動について、結局先ほども少し触れましたように、現行貸付残高を全部適用して一緒にひっくり返すのですとこれは簡単なんです。もっとすっきりするんです。ところが、改正をした以後のあとの部分にしか適用されませんね。そうしますと、金利が動くたびに現在の貸し付けをしておる額が幾つかの種類に金利計算をはじかなきゃならぬ。大変なことなんです、実際には。ですから、そういう意味合いでは、なるべく動かさない方がいいということははっきりしています。ただ、動かさないでおったときに、この相場から見ていくと大変問題が出てきますから、これはそうばかり言っておれない。そこの問題をどう調和をさしていくかというのが、大変重要な課題になるわけですけれどもね。その辺は時間の関係もありますから、余りそのことで論議をする気もありませんので次に移ります。  もう一つだけ絡んでお尋ねをしておきたいことは、農林漁業金融公庫法の中で、いわゆる政令で定める貸付利率と今回幅を持たせようとする別表二の関係ですね。これと、それから政令でもって行う別表第一の関係ですね。やはり金融公庫法が成立をしたときに二つに区分をされているわけですから、区分をしたのには区分をしただけの明確な根拠というものがあって、これは固めておかなきゃならぬ、これはある程度弾力的にやってよろしい、こういう立場で別表一、二というものが当然配置をされたと思うんですね。そういう意味から言って、その当初の成立をした意味合いというものが、今回の法改正によって崩れてしまうということになりはしないのか。崩れた場合に、その崩れてしまわせるだけのいわゆる今日的な状況の変化というものが一体どうなっているのか、その辺についての認識をひとつ明確にお尋ねをしたいということです。
  193. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 別表二ができましたのは昭和三十八年でございまして、当時構造改善その他を推進をいたします場合に、これに対応する金融政策としてつくられたわけでございまして、そのときに構造改善の補助残でありますとか、あるいは特に非補助、それから果樹園経営、それから畜産経営拡大という政策的な低利資金をつくるということで特に別表二を設けたわけでございます。その際、恐らく別表一のような形で何分以内ということにいたさなかったのは、御指摘のように、政策的色彩のきわめて強い資金であるというふうに考えたのだろうと思います。  したがいまして、私たちも先ほど大臣がお話を申し上げましたように、この資金をこれを中心にして上下幅を設けまして、この上下幅の中で変動をさせるということは、別表二の資金のそういうつくられましたときの政策的意図というものは後退するという、そういう観点から、この水準を動かさないで、下方に引き下げのみができるような法律改正ということにいたしたわけでございまして、したがいまして、別表二をつくりました当初の意図を今回の改正によって損なうものではないというふうに考えているわけでございます。
  194. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 その辺は見解の相違になりそうですね。全体が下がってきたんですから、決めてあったものがその価値がなくなったんだから、やっぱり下げなきゃならぬ。ところが、それをいろっていると、固定のままでこれからの対応に間に合わないから、だから以内というふうに決めたのじゃないんですか。私はそういうふうに考えているんですが、もし基本的に私の言っていることが間違いなら、ひとつ指摘をしてください。  時間の関係がありますから私は先に進みますが、提案理由の説明によりますと、法律改正を必要としない資金の利下げがすでに行われたというふうにあるわけですね。これは五月一日に改定をされました漁船資金外五種の七・一%の関係、それから土地改良資金外八種の六・五%の関係、あるいはまた造林資金外四種の五・五%の資金の関係、それから沿岸漁業経営安定資金外六種の五%資金の関係、それから五月の八日の日に改定をされております近代化資金、いわゆる基準五%、特利四・六%の関係と、こういうふうなものを指すのだというふうに思うんですが、法律改正によるものが、省令によって五月一日あるいは五月八日近代化資金を含めて実施をされたのと、おおむねこれは一カ月実質的に出発が差がついていますね。この間、差について、一カ月のおくれによって今日までの実績の中で実質的な影響、あるいはその影響をながめた上の話ですが、いわゆる不公平というものは発生をしないんでしょうか。その辺、ちょっと心配なんです。
  195. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 大体五月一日に財投資金が引き下げられるということでございますから、それが引き下げが決定したのは四月の末二十七日でございまして、それ以後一日に大体どういう方針で処理をするかという法律改正以外のものは処理をいたしたわけでございます。  法律改正のものは十二日に閣議にかけまして国会に上程をいたしたわけでございますが、施行までに約一ヵ月のずれに基づく損失ということはどの程度かというお話でございますが、これは当年度としては大したことはないのですが、借りてしまいますと遡及できないことになりますから、そこはなるたけ貸付決定を新しい法律が通ってから、どうしてもそのときにその金利でもいいから早く借りたいという農家の方がおれば別ですけれども、そうでなければ、若干の余裕がある農家につきましては、新金利が適用されるように私の方としては対応をしていきたいと思います。そうしますと、大体のところはまあ若干のおくれはございますが、もしそういうことでございますれば、十分対応をしていきたいというふうに思っております。
  196. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 一応引き下げられるであろうということを想定をしながら、新規貸し出しについてはそのように対処をしてきたと、そういう指導をしてきたというふうに受けとめていいわけですね。そういうふうに受けとめておきましょう。  そこで問題は、そういうふうに対応してきたということによって救われるかもわかりませんが、いわゆる法改正の提出というものが大変おくれたわけですね。おくれた理由については郵貯金利の関係ですね、これは郵政審の審議、これがまあ大変もたもたしましておくれた。そのことから財投資金全体のものが決まらなかったんで、そしてこの公庫資金の法案提出というものがおくれたんだという、こういうような説明になっておるようでありますが、私は郵便貯金というのはいわゆる零細性の預金を吸収しまして、そして預金の利率の関係なんですよね。預金利率の関係と貸し付けを受ける方の利率の関係とは、まるっきりこれ立場はあべこべなんですよね。そこの関係が郵政審議会の審議がおくれておって、郵貯の利子の関係がはっきりしないから、だから貸し付けの利息が明確にならなくて提案がおくれたという理由は、ちょっと私はそういう意味合いからいっていただけないと思いますが、いかがなものでしょう。
  197. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) お話のとおり、郵政審議会の答申を得て郵貯を下げるということでございまして、答申が四月十八日、引き下げの実施が四月二十五日ということでございまして、財政当局といたしましては、郵便貯金金利はどうなるかということによって財投金利がどうなるかということでないと決められないというお話でございますから、従来からもそういう方針で貫いてきているわけで、したがいまして、資金運用審議会も四月二十七日に開かれまして、財政資金の金利の引き下げ五月一日ということでございますから、私たちとしましては、五月一日以降できるだけ早く話をまとめて国会に提出をいたしたいというふうに思ったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、天井を打ちながらこれを下げていくということにつきましては、なかなかいろいろ問題もありましたけれども、できるだけ早く私たちとしてはその努力をいたしたつもりでございますが、国会提出が十二日になったというのが実情でございます。
  198. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 財投金利の連動ということはわからぬではないんですけれども、しかし資金構成、初めに質問しましたこの資料からいきましても、財投資金の利率にそこまでこだわらなきゃならぬかどうかということについては、少し見解があるんです。余りもう残された時間がございませんから、きょうもこれはできなくなってしまいました、肝心なところで。私自身としても不本意ですが、やむを得ません。最後に、これからもいまの考え方等についてはもう一遍抜本的に検討をされるようにお願いをしておきたいと思います。  それで、農林中金ですね、この預貸率等をながめていきましたときに、最近の新聞報道でもありますが、預貸金利の利ざやが逆転をしたという報道があるんです。その実態のほどについて本来なら詳しくお聞きをしたいんですが、これは簡単で結構ですから、それに対する状況と同時に、農林省としてのいわゆる指導方針、それをお聞きをしたいのでありますが、各金融機関の預貸率をながめていきますと、大変おもしろい現象が出ているのです。たとえば農林中金、信農連、農協、信漁連、漁協、これらの一覧表がこの金融の動向の三百五十四ページ、三百五十五ページに出ておりますが、この預貸率をはじいていきますと農林中金は非常に高い。高いのは結構なんですね。ところが、それに続いて信漁連、漁協というのは、これは平均の預貸ですが、たとえば漁協の場合は八七・三八%、信漁連の場合は七六・五二%と、こうなっているんですね。  ところが農協、信農連の場合は五一・九八、たとえば信農連は四九・〇五%、こういうふうに非常に預貸が低いわけですね。こういう状況からながめていったときに、この漁協関係というのは、非常に金利が高いのになおかつ預貸率が非常に上がっている。これは、相当資金的な問題としては、総体の立場から検討しないといけないのじゃないだろうか。それから信農連あるいは農協等は、これは余裕金はおおむね農林中金に上げられるというふうに仕組みからいってなるので、そうしていろんな現象が出ているというふうに思いますが、問題は、この信農連あるいは農協等について新しい農業の金融形態というものを探求をしていく立場で、私は農民から出した資金が、いわゆる農業経営の将来の健全発展のために明確に使われる。そういう立場での預貸率をみずから上げていくという新しい運動というものが展開をされていかなければならぬ、こう基本的に考えるわけです。  そうした立場を踏まえて、ひとつ農林省として、所管のところとして、これらの指導についてこれからの考え方といいますか、それをなるべく簡潔に、もう時間が過ぎましたので私終わりますけれども、お述べをいただいて終わりたいと思います。
  199. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 現在のような状況のもとでは、まあ農林中金のみでなく、金融機関全般を通じまして、なかなか経営状況はむずかしい状況に相なっておるわけですが、特に御指摘のように農林中金におきましては、資金コストに対しまして貸出金利利回りが七・二〇でございまして、資金コストは七・三六と、こういうことで逆ざやになっております。これは現在御存じのように三段階制をとっておりますから、農協の段階で資金運用ができない資金は全部信連、中金というふうにたまってまいりまして、それでこういう金融緩和の時代ですから農林中金はまた資金運用に困ると。その資金運用の利回りが落ちてくるという、宿命的な性格を実は持っておるわけでございます。  したがいまして、この三段階制とそれから総合農協という、経済事業と信用事業を同一に行っているという、そこの本質的な問題を別にいたしますならば、一つの問題はどうしても、一つは資金コストを下げていくということであろうかと思います。これにつきましては、系統全体といたしましても構造問題の研究会ということで、これらに対してのいろいろな今後の検討を行っておるところでございます。したがいまして、これらの経営合理化、それから系統資金間の系統の資金の貸し出しの促進等につきましては、私たちとしましても特段の指導をいたしてまいりたいと思っております。農林中金といたしましても預金金利の引き下げを図ります一方、農業、農村地域への資金の積極的還元に努めますと同時に、系統内部の資金需要に十分こたえた残余の余裕資金については、バランスのとれた資金運用構成の保持に配慮をいたしながら、その効率的運用を図ること等によりまして経営改善に努めつつあるところでございまして、今後ともこのような方向が推進されますように指導してまいりたいと考えておるところでございます。
  200. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 農林漁業金融公庫法の一部改正につきましては、提案理由でもありますように、景気対策の一環として公定歩合の引き下げやら、また預貯金金利の引き下げが行われたことに伴って、金利水準というものが終戦直後に続いて戦後最低の水準になったわけでして、政府としてもこれに対応して政府関係金融機関の貸し付けの金利を下げられたし、また、農林漁業金融公庫の貸付金のうち法律の改正を必要としないものについて、すでに金利を下げたわけですが、今回法律で固定されているものの一部についても貸付金利を下げようということで提案をされていますが、今回の金利引き下げは特に政策性の強い資金でもありますから、一連の金利引き下げの動きの中で、事前に予測されていたんだろうと思うんですね。そういったことで、もっと早く提出をしてしかるべきではなかったかと思いますし、いろんな事情はあったと思いますけれども、できれば延長国会前あたりにこれが提出されて、もう少し早い時点で通過されていれば、全国の関係者の皆さん方にも大変喜ばれたんじゃないかと思います。ぜひ早く上げろという声も大分強まっておりまして、きょう私の持ち時間わずかでございますので、五、六点簡単に御質問をしておきたいと思います。  まず、農林省金融課が五十一年の十月に中核的農業生産者の資金需要等の実態調査報告書というものを発表されているんですけれども、それから一年半経過しておりますけれども、この実態調査の結果を踏まえて、その後農林省では制度金融政策上どういうような部門で改善を図ってこられたのか、具体的なひとつ例を挙げて御説明いただきたいと思います。
  201. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 中核的農業生産者の資金需要調査は、私たちの方でそれぞれ県に予算を配分し調査を依頼をいたしまして取りまとめたわけでございますが、その後どういうことをやったかというお話でございますが、まず一番大きいのは総合資金制度の内容改善をいたしまして、いままでの総合資金制度は一挙にといいますか、ある程度上がってきたところの農家が官立経営に達しようというときに思い切って金を貸すというそういう制度でございますが、自立経営に到達いたしますには、やはり一段階中核的なある水準に達しまして、それからさらに自立経営に到達するというそういうプロセスを経るということでございましょうから、私たちは二段ロケット方式と、こう言っておるのですけれども、ある一定水準に達したものにはそこで総合資金を貸し出しをすると。それからさらに自立経営に達しようとする段階に至った場合には、さらにまたそこで貸し増しをするという、そういう二段方式を採用いたしたわけでございます。  それから第二点は、貸付限度につきましていろいろ要望もございましたので、貸付限度額につきましては相当大幅にこれを引き上げたところでございます。
  202. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 今後も中核的農家の意向を十分取り入れて、積極的に育成されるように要望したいと思いますが、中核的農家の育成は当然のことなんですが、中核に入らない小規模の小さな階層の制度金融の取り組みについてなんですが、これについては実態調査や、あるいはそれに類する調査を行って、問題点の把握や制度改善等についてやっておられるのかどうか、その点現状と今後の方針について明確にしていただきたいと思います。
  203. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) その中核農家以外の小規模経営の農家が、これを中核農家まで上がるということにつきましては、制度としてはいろいろな制度があるわけでございますが、特に今国会において御審議をいただきまして、五年間の延長をお願いしたマル寒、マル南資金の制度も、その重要な一つであろうかと思います。  私たちといたしましては、小規模経営者を含めましてその者が本当に農業に精進し、したがって、中核農家さらには一番ヘッドの自立経営農家まで到達するという、そういう農家の御努力にこたえますためには、そういう農家の要望を十分くみ上げ、それに対応するような対策をとってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  204. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 次は、農業の新規参入の場合の融資についてお尋ねをしておきたいんですが、新たに農業生産に参入する場合、それから農業後継者の人たちが新規に農業生産への道を開く場合に、これは総合施設資金、これを利用することができることとなっています。  そこで、第一点として、最近この資金の活用状況が一体どうなっているのか。  第二点目として、この制度を充実させるために、昭和五十三年度から一体どういうふうな事業を実施されるおつもりなのか、この点について御説明をいただきたいと思います。
  205. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 農業を新たにやろうとします場合、農地法上〇・五ヘクタール以上の農地を持っておるということは必要でございますから、そういう点につきましてもし必要があれば農地取得資金、それから総合資金におきましてもその中に農地取得にこれを使用していただいていいわけですから、そういうふうな形で農業に精進しようとする方が土地を取得する、あるいはまた、それについての施設をつくるということにつきましては、現段階におきましては私たちは大体土地取得資金でありますとか、総合資金でありますとか、あるいは施設については近代化資金でございますとか等によって対応をしていけるのではないか。さらにまた、農業後継者が資金を利用いたします場合には、御存じのように、農業改良資金等がございますので、これらの資金を活用することによって、十分御要望にこたえてまいりたいと思っておるわけでございます。  それから、総合資金につきまして融資状況を見てみますと、この十年間にこれは飛躍的に拡大をいたしまして、五十二年度末の残高で二万八千二百五件、融資残高で二千五百五十九億円に達しております。このうち、新規参入農業者への貸し付けにつきましては、具体的な統計をとっておりませんが、酪農等の畜産部門を中心に幾つかの意欲的な経営が確立されておる事例も見られるわけでございます。五十三年度の総合資金制度につきましては、貸付計画を対前年に比べまして百十億円増加をいたしまして、六百八十億円と拡大をいたしておるわけで、農家の御要望にも十分こたえていけるのではないかというふうに思っている次第でございます。
  206. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 農林公庫を含めて、どうしても制度資金の種類というのはもう繁雑多岐になってきておりますんで、これは整理統合すべきじゃないかという意見もありますし、またこの貸付手続の簡素化とか、あるいは迅速化、これを図って融資の円滑化を図れ、こういった融資体制の整備ということについて全国各地からの要望が強く出されているんですが、これについて当局としての検討事項はどのように進められておるのか、その点を明らかにしてください。
  207. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) まず、公庫資金が非常に複雑であって整理統合すべきではないかという御意見につきましては、私たちも十分承知をいたしております。したがいまして、私たちといたしましては公庫資金の整理統合のみならず、マル寒、マル南資金との関係をどう考えるのか、あるいは自作農維持資金との関係をどう考えるのか、あるいはさらにまた、改良資金との関係をどう考えるのかという点も含めまして、これらの問題は今後真剣に検討してまいりたいというふうに考えておるところでございます。まあこれは整理統合ということになりますと、それぞれたとえば畜産なら畜産の分野、果樹なら果樹の分野として自分たちの資金だというふうに思っておるものですから、これを金融サイドで複雑であるということだけをもって統合するということになりますと、それぞれの特色が失われるということもございますので、そういう特色を生かしながら、しかも統合するにはどうしたらいいかという、これはなかなかむずかしい問題があるわけでございます。しかしながら、これらの点につきましては、私たちとしても今後真剣に検討をしてまいりたいと思っております。  それから第二の、手続が非常に複雑ではないかというそういう御指摘につきましても、私たち十分認識をいたしておりまして、いままでも手続の簡素化ということにつきましては非常にやかましく言いまして、公庫とともにその改善を図ってきたわけでございますが、今後ともその手続の簡素化ということにつきましては努力をいたしたいと思います。といいますことは、金融でございますから、農家にできるだけ早く、しかもできるだけ御要望をする金額を担保その他の問題ございますけれども、融資をするということが金融のメリットでございますから、そういうメリットが生かされますように、手続の簡素化等につきましては十分努力をいたしたいと思います。  それから、貸付体制の整備でございますが、これは御存じのように、公庫の支店等につきましては逐年これを整備をいたしておるところでございまして、現在は十五支店、四事務所を置いておるわけでございます。さらにまた、窓口として信連、単協等の委託の貸し付けも行っておりますので、これらの体制につきましてもいままでも努力をしてまいりましたが、今後も努力を重ねていきたいというふうに考えておる次第でございます。
  208. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 ぜひ、事務手続の簡素化については、一層の御努力をいただきたいと思うんです。  それから、林業関係でちょっとお尋ねしておきますが、最近の林業経営では、御存じのように間伐材の需要が大変減退をしておりますし、加えて国産材の価格が低迷しているために、特に民有林の分野で経営に非常に苦しんでおります。今国会で林業関係法案も精力的に審議されたんですが、その中で新しい金融制度の要望や、それから造林資金の据え置き期間や償還期間の延長、こういった希望も出されております。林業経営を取り巻く内外の環境が厳しい時期でもありますんで、林業融資において政府としてもかなりの改善を図っていかなければならないと思うんですが、この点についてどういうような取り組みをされているのか、お尋ねしたいと思います。
  209. 藍原義邦

    政府委員(藍原義邦君) ただいま御指摘ありましたように、林業問題につきましてはいろいろ現状が厳しい状況でございまして、私どもも今後林業の推進のためにそれなりの対応はしていかなければいけないというふうに考えておりますが、ただいま林業関係の金融関係で大きく分けますと、ただいま御審議いただいております公庫関係の資金、それから林業改善資金というものを五十一年度に設けております。この二つではなかろうかと思います。  公庫の資金につきましては、四十九年度に三百八十八億という実績でございましたけれども、五十三年度では七百四十五億という形で、約倍増になるような枠の拡大をいたしております。  それから、造林関係でございますけれども、たとえば造林公社あるいは森林組合等が行います造林につきましては、従前融資の貸付限度が八〇%でございましたけれども、これも九〇%に伸ばしておるという実態でございますし、また、保育をやります場合の貸付限度でございますが、これにつきましても、制限された山あるいは施業計画に基づいて行います保育等につきましては、十二年から二十年にこの期限を延長する等々の対応をいたしまして、造林が推進できるようなことを検討いたしておりますが、今後ともさらにこれらに関係いたします造林関係の融資については、私どもいろいろと勉強してまいりたいというふうに考えております。  それから、林業改善資金の方でございますが、これも五十一年度に新たに制度をつくったわけでございますが、五十三年度、三年の間に倍増いたしまして、五十一年二十億の枠でございましたけれども、五十三年は四十二・五億という形で枠を拡大いたしまして、今後積極的なこの活用を図ろうということを考えておりますし、特に間伐等々の関係でいろいろな施設に必要な資金につきましては、特認間伐施設資金というものを創設いたしまして、その改善に努めております。  このように、現時点でもわれわれもできるだけの努力をいたしておりますが、先ほど先生指摘になりましたように林業も非常に厳しい時代を迎えておりますので、林業のこういう金融制度につきましても、今後とも十分検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
  210. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 その中で造林資金なんですけれども、償還期間と据え置き期間をそれぞれ十年程度延長してはどうかという強い要望があるんですが、これについての見通しはどんなもんですか。
  211. 藍原義邦

    政府委員(藍原義邦君) 造林資金、ただいま二十年の据え置きという形になっておりますけれども、最近非常に間伐等々が十分いかない、あるいは超伐期という考え方が民有林の中にもあるというようなことから、これらについても今後検討すべき課題であるというふうに考えまして、ただいま私ども十分その辺の検討を進めておる次第でございます。
  212. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 最後に、漁業関係の資金についてお尋ねしますが、日本の水産界は昨年は史上最大の受難期だったし、ことしに入ってもサケ・マスで大幅に減退させられるということで厳しい状況下に置かれているわけでして、減船問題では大変関係者の皆さん方苦しんでいらっしゃるわけです。これに対応するための漁業制度金融では減船を実施するために必要な資金、これは漁業経営再建整備資金、これで対処されているんですが、二百海里時代の日本漁業は将来も厳しい漁業環境が予想されるのですが、その見通しの上に立って公庫融資も運用面で遺憾のないようにいま十分な配慮が必要だと思いますけれども、こういう点については非常に重要な問題なので、ぜひこの機会に明確にひとつ政府の対応を御答弁いただきたいと思います。
  213. 矢崎市朗

    説明員(矢崎市朗君) 水産業は、御指摘のとおり、北洋を初め二百海里時代を迎えまして国際的な漁業規制が非常に強化されている厳しい環境に置かれておるわけでございますが、ただいまお話しございましたように、こういう環境下にあって、五十一年度におきましては漁業再建整備資金を創設をいたしました。経営改善さらに減船対策等に対応しようと、こういうことで新しい制度を設けたわけでございますが、さらに五十二年度におきましては北洋等によります原魚の不足、これをカバーし、赤身の魚の利用の活用を図っていくというふうな趣旨で、新しく特定の目的のための水産加工金融の創設を図った、こういうふうなことをやってまいっておるわけでございます。もちろん、これで十分ということではございませんで、さらに状況の推移に応じ、必要に応じまして今後とも農林漁業金融公庫資金の拡充なり、あるいはさらに近代化資金の拡充また融資補償制度の適切な運用等によりまして、こうした需要に十分にこたえられるようにということで改善強化を図ってまいりたいというふうに考えております
  214. 下田京子

    ○下田京子君 農林漁業金融公庫法の改正案に当たりまして、去る三月の二十三日、本委員会で、私、マル寒、マル南法案の審議のときに、実は公定歩合の引き下げあるいは財投資金金利引き下げという状況の中で、農林漁業金融公庫の金利引き下げを考えてはいただけないかというふうに質問申し上げたはずでありまして、そのときに、このままもし農林金融公庫関係の金利引き下げがなされないとこれは大企業中心にメリットがいくのじゃないか、そんな指摘をしたと思います。  そのときに、実は局長こう答弁しているわけです。「政策色彩の非常に強い金利につきましては、これは上がった場合にも上げないし、同時に下がった場合にも下げないで置いておくことが政策的にベターではないかというふうに考えております。」、こういうふうな局長答弁がありまして、さらに大臣におきましても、「気持ちはわかりますけれども、むしろここで変えた場合には、やがてまた引き上げというような不安も来るのではないかと思いますので、これを変えない方がこの政策金融の目的を遂行する上においてはベターである、こう思いますので、どうぞひとつ御納得をいただきたいと存じます。」、こんなお話もありました。さらに、むしろ金利の引き下げというよりは枠の拡大であるとか、対象の拡大というこの二つの目玉をどうしていくかということに重点を置いておりますというふうな御答弁があったわけなんですが、こういう指摘答弁があってから一カ月ちょっとというその後に、実際にはすでにもう金利引き下げを実行に移しているわけなんです。この間どういうふうな経過がありましてこうなったか。  それから同時に、このときに、上がったときにまた上がるというふうなことを大変御心配されていたわけですが、今回の法改正から見れば、上限をきちっと抑えているわけですから上げる心配はない、むしろ下方に弾力的に運用するということでよりベストなものというふうに理解されるんじゃないかと思うのですが、そういうふうな受けとめ方でよろしいかどうか、まず局長の方にお尋ねいたします。
  215. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 先ほどもいろいろ御議論がございましたように、きわめて政策的な色彩の強いものについて、これを法定をすることがいいのか、動かさないことがいいのか、それともある程度のフロートをさせる方がいいのかというのは、議論の分かれるところでございます。従来私たちは、そういう政策的な色彩のきわめて強いものについては、長期の金利でございますからこれは動かさない方がいいというふうに思っておったわけでございます。といいますことは、動かすということになりますと、五分資金でございますれば、たとえば六分なり五分五厘なりというふうに決めまして、そして五分を中心にしてどういうふうに動かすかと考えるのが通常の考え方でございます。そういたしますと、現在の法定しておる五分資金が金利が上がるということに相なるわけでございまして、これでは、下げるときはいいのでございますけれども、上げるときには非常にそのメリットが失われる。そういうことのないような対策というのはどうしたらいいかということをその後検討をいたしまして、財政当局とも折衝の上、現在のような制度を提案いたしておるわけでございます。  したがいまして、御指摘のように、五・〇%でございますれば、これを天井にいたしましてその中で引き下げる一方の政令を、一方といいますか、その中でどういうふうに対応していくかという問題に相なるわけでございまして、そういうことでございますならば、フロートをさせるということによる何といいますか、デメリットというものはなくなるわけですから、現在のような法律案を提案いたした次第であります。
  216. 下田京子

    ○下田京子君 次に、大臣にお聞きしたいわけですが、御不幸があってお戻りになってすぐということで大変恐縮でございますけれども、いまの局長答弁から受けまして、いろいろと本当にベストな形での政策金融のあり方ということで、大分御努力をいただいて現在のような法改正というものをお出しになったという経過があったわけですが、そういう点で大臣も大変努力をされたと思うわけです。となりますと、今後とも、政策金融のあり方として、特に農林漁業金融公庫、それから中小企業だとか住宅金融公庫も、これは所管が違いますけれども、こうした国民生活密着型のいわゆる政策金融というものは、やはりより低利でもって運用される方向が望ましいということで、「当分の間」というふうなこともありますので、心配ですから大臣にお伺いするわけなんですが、そういった方向で今後とも努力いただけるでしょうか。
  217. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 前のマル寒、マル南審議の際に申し上げたことは、いまも変わっておらないわけでございますが、ただ、今回の金利引き下げというものは、公定歩合が三・五という戦後珍しい下げ方である。そこで、これをいじるとすれば、先ほど局長が申し上げましたように、メリット分だけではなくして今度はデメリットも覚悟せにゃいかぬというので非常にむずかしかったのでございますが、御批判はありましても、われわれとしては、デメリットの分はこれを返上して、メリットの分だけを「当分の間」ということで、今日の農業情勢あるいは金利情勢に対処することとしたのでございます。したがって、いまも、当初申し上げたような、そう変動させるものではないという基本的考え方は変わりませんが、今回に限り「当分の間」異常な事態に対処をしたということで対処いたしましたが、今後ともそういった姿勢で臨みたいと思います。
  218. 下田京子

    ○下田京子君 いまの大臣の御答弁の中で、非常に含んだ部分があったように思います。「当分の間」こういう措置と言う一方で、しかし、なおかつその上下が揺れ動かないようにやっていきたいというふうなことをいただきましたので、大蔵あたりからの圧力なんかも出てくるかとも思いますけれども、ぜひ、その上限を抑えて、それでそれ以上上がらないというような方向でもって、特に農林漁業金融公庫におかれましては引き続き実施がされますように、さらに要望しておきたいと思います。  次に、既往金利の問題なんですが、今回につきましては新規分から金利引き下げという取り扱いになるわけですが、既往金利の引き下げのことについて大蔵の方にちょっとお聞きしたいのですが、開発銀行や中小関係の公庫におきまして、特に赤字業種といいますか、不況業種に限って金利引き下げということがなされたかと思うのですが、いかがでしょうか。
  219. 藤田恒郎

    説明員(藤田恒郎君) 既往金利の問題でございますが、昨年の十一月一日から、非常に高い既往の金利につきまして、開銀、北東公庫あるいは中小三機関、これらの貸付金利を八・九%まで引き下げるという措置をとりました。これは、さらにことしの三月に長期プライムレートが下がりましたので、それに応じて〇・五%を引き下げまして、現在では八・四%まで引き下げることができるということにしております。ただ、これは一般的にすべての企業についてやったわけではございませんで、先ほど御指摘のように不況業種に属する、すなわち不況業種という場合には、中小企業信用保険法に基づきます通産大臣の指定した不況業種、あるいは今回成立いたしました特定不況産業安定措置法に基づくいわゆる構造不況業種、こういったものに属します企業で、かつ一定期間赤字を続けているものと、こういったものに限って、そしてさらにこれも未来永遠にというわけじゃございませんで、ことしの十月三十日まで一年間に限り行ったものでございます。
  220. 下田京子

    ○下田京子君 政府関係金融機関は、いまお話しのようなかっこうで取り扱いがなされていると、それから同時に民間の方なんですが、民間住宅ローンの金利引き下げ、これは大蔵省の広報で出されている「ファイナンス」という広報誌にも詳しく出ておりますので申し上げるまでもないと思うんですけれども、この住宅ローンの金利引き下げもなされていると、これは事実でございますね。
  221. 野田実

    説明員(野田実君) お答え申し上げます。  民間住宅金融ローンにつきましては、あくまでも民間金融機関の独自の引き下げによっているわけでございまして、原則的には民間金融機関が行うものでございます。ただ、私たちの考え方は、四十八年に金融制度調査会の答申がございまして、民間住宅金融につきまして新規の住宅ローンの貸付金利が引き下げられました場合に、原則的には既往金利につきましては引き下げをしないのが適当であるという原則を書いてございまして、しかし、非常に乖離幅が大きくなりましたりしましたときには、若干の調整をするのが適当ではないかという御答申をいただいております。それに従って、私たちも既往金利の引き下げの問題を考えております。
  222. 下田京子

    ○下田京子君 そこで局長の方にお尋ねしたいんですが、いま政府関係の金融機関でも赤字企業というふうな枠はありますけれども一定の金利引き下げを既往分についてもやったと、それから民間においてもそういうことがやられたというふうなことで、特に超低金利時代というこうした事態の中でもって、特に政策的な面から見て農業、これは非常に困難な事態でもありますので、その農業の特殊性というふうな点から見て、既往金利の引き下げというふうなことについてどういうふうな態度で対応なさってきたのか、あるいはどうあるべきかというふうなところでのお考えをちょっとお聞きしたいわけです。
  223. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 農林漁業金融公庫の貸付金利は、御存じのとおり、農林業の低収益性という観点から低利なものになっておると思いますが、一つは長期資金でありますから一定の計画性という問題がございます。したがって、その時点におきますその条件ということで借入者が借り入れておるという問題もありましょうし、考え方といいますか、そういう状況にもありますし、それからまた、同時に金利の引き上げをするというときに、またその引き上げについてどう考えるかという問題もあるかと思います。  今回、大蔵省いろいろお考えになりましたような不況業種につきましても、貸付金のうち、特に八%台の高利なものを対象として個別に一定の期間に発生する金利の一部を免除するというふうな取り扱いであろうと思います。したがいまして、農林漁業のような低利なものにつきまして、既往の貸し出しのものにつきましてこれを全体的に金利を下げるということにつきましては、いろいろと問題があろうかと思うわけでございます。
  224. 下田京子

    ○下田京子君 今回の引き下げというか、改正案に即して新しい人たちは該当するわけですが、いままでとにかく農業という大変厳しい事情の中で多くの負債を抱えて何とかこの負債整理ができないか、あるいは今回こういうふうな金利引き下げという事態になったら低利の資金の書きかえができないものだろうか、あるいは償還繰り延べというふうな措置ができないものだろうか、いろいろと御意見、御要望が出されているわけなんです。この既往金利の引き下げということ、どうしても大変だということになれば、いまのような低利資金の書きかえ等、具体的な農家の皆さんのいま困っているものに対応できるような措置をとっていただくことはいかがでしょうか。
  225. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 農家の方々経営が思わしくなくて、これにつきましてなかなか償還ができないということの事態がございますれば、これにつきましては、個別に農林公庫の方で据え置き期間の延長でございますとか、あるいは償還期限の延長でございますとか、そのようなことによって十分その農家の経営が立ち直っていくように従来からも指導いたしておるところでございますし、今後もそういう点については特に留意をいたしたいと思っております。  なおまた、負債が特にはなはだしいという場合におきましては、自作農資金を活用いたしまして、長期低利の資金に借りかえてこれに対応していくという措置も講じてきておるところでございます。
  226. 下田京子

    ○下田京子君 ケース・バイ・ケースでいままでも対応してきたし、今後は特に留意をして低利の資金の書きかえであるとか償還繰り延べをやっていくための指導を強めていきたいというお話かと思いますが、その絡みで具体的にお尋ねしますと、自作農維持資金の問題でありますが、実はせんだって私お尋ねしました岩手県の矢巾町の第二次構造改善事業での絡みの問題なんですが、大変な負債を抱えている、事業不振だということで。これは関係当局と相談をして具体的に対応をしていきたいというお話であったかと思うんですが、矢巾の皆さん方は、これは先般も申し上げましたけれども、本当にいま自分で抱えている負債について、特に農協のプロパー資金、これはいろいろありますけれども、運転資金であるとか、あるいは負債対策の資金、こういったものを何とかつくっていただきたいなというのが一番の希望だったと思います。特にこのことについては、県でも対応し、それに見合ったものができないかというお話だったんですが、なかなかどうもそれに乗せられるようなものがないということでもって、当時局長、いろいろ御相談をして対応しますということだったと思うんで、その辺どうなっていますでしょう。
  227. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 御指摘になりました地区の負債対策の問題につきましては、御存じのとおり、県は営農資金とか、あるいは系統農協が無利子の資金を貸し付けるという形で、地元でかなりの対応をしてくださっておるわけです。私どもといたしまして、そういったプロパー資金、県単独の制度資金以外の中央ベースでの制度資金につきましても御協力はできるだけしたい、こういうことで御相談には応ずるつもりでおりますし、応じております。ただ、そういう意味で、制度資金の据え置き期間だとか、あるいは償還期限の延長ということで、公庫の支店だとか県信連等でいま検討中でありますが、まだ最終的な結論というものを残念ながら得ておりませんが、地元の御要望に沿うような形で近く決着をしたい、こういうふうに思っております。
  228. 下田京子

    ○下田京子君 その後も現地とお話をしたりして努力されているというお話かと思うんですが、具体的に申すと決着の方法というんですか、新たに何か設けているんでしょうか、それとも現在ある自作農維持資金のところでもって何かめんどうを見るということなんでしょうか。
  229. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 新たな資金の貸し付けという御要望があれば、それはもちろんそれにも応じるつもりでおりますが、いま地元の御要望の方は、新たな資金需要につきましては、要するに負債整理の問題ですから、県の方でその半分を県単独の営農改善資金、これは御存じでしょうけれども、三分五厘というようなものですね、それを県で貸し付けると、それから三〇%程度は系統農協が無利子資金を貸し付けると、こういったかっこうで負債整理の対策を考えていらっしゃると。一方、そのほかに、いわゆる中央ベースの制度資金というものがあるわけですから、それについて何か御要望があれば、それにはできる限りの御協力はするつもりでおりますし、いま私が申し上げましたのは、現在負債として残っているのに制度資金がございますから、そういったものの据え置き期間あるいは償還期間ということの延長について考えて、地元農家の経営圧迫要因をできるだけ軽くしたい、こういったことについていま地元で検討して近く結論を出したい、こうお答え申し上げたわけです。
  230. 下田京子

    ○下田京子君 再度お尋ねしたいんですが、いろいろと対応してくださっているのはわかるわけです。ただ、農協のプロパー資金ですね、大変金利が高いわけです。これを抱えていて、いわゆる第二次構造改善事業の絡みでの再建方向が可能なんだろうかということなんです。ですから、具体的に申し上げれば、先ほど御指摘があった自作農維持資金のところで、これは負債整理であるだとか、あるいは災害であるだとかというふうに一応該当はするんですよ。しかし、枠が決まっておりまして、御承知のようにお一人でしたら六十万だとか、それから災害についても現在は百五十万ですね。そういうふうな状況ですから、なかなかこれはむずかしいわけです。そこで問題になっているんで、プロパー資金というのは、一方でそれは農協の信用事業やいろんなことでございます。  ですから、おしなべてどうというのじゃないんですが、事こういう具体的な事例に遭った場合に、その書きかえであるとか償還繰り延べだとかという点で、仮に現在あるものだったら、自作農維持資金との関係でもって、枠の拡大とかというかっこうでもっていくんだろうかということなんですが、これも含めて近いうちに決着を見るというふうに理解してよろしいでしょうか。
  231. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 自創資金という形で新たな資金需要、資金の御希望があるというふうに的確には聞いておりませんが、いずれにいたしましてもそういう御要望がありますれば、これはいろいろ枠があるわけでありまして、枠も何も私どもそう厳しく査定しているわけではないので、県の御希望というもの、あるいはは県の調査というものに基づいてその枠というものをつくっているわけでありますから、枠というものはできるだけ弾力的に運用していくつもりであります。現在でも実情に即した資金枠の確保ということはしているつもりでありますけれども、よく地元と御相談して、その辺のところにつきましてはできる限りの御協力はいたしたいと思っております。
  232. 下田京子

    ○下田京子君 自創資金の枠の拡大だとか運用についても、いろいろとこれはケース・バイ・ケースであるというふうなお話であったわけなんですが、構造改善局長、そういう立場で地元とも相談してやるということなんですが、戻りまして、その金利の問題でのこの自創資金の貸付条件というのは一応書いてあるわけですね。これは業務方法書等にあるわけなんですが、この業務方法書どおりではなくて、ケース・バイ・ケースで限度枠の拡大であるだとか、あるいは負債の整理の対象や原因、そういう資金対象の拡大をするというふうな方向でこれは担当の局長の方も検討はされていると思うんですが、よろしいですか。
  233. 今村宣夫

    政府委員(今村宣夫君) 御質問趣旨は、自作農資金の融資条件について弾力的に考えるのかというお話だと思いますが、これは、金利は今回の改正で金利が下げられるわけでございますが、その他の融資枠でありますとか、あるいは償還期限その他につきましては、法律の範囲内で弾力的に対処することが可能であろうかと思います。
  234. 下田京子

    ○下田京子君 その法律の範囲内で弾力的にという、そこの部分がまあ読み方でいろいろととられるわけなんですね。特にその貸付金額の最高限度額ですと、繰り返しになりますけれども一般ですと六十万円なんですね。それから災害等については、個人については現在まだ百万でしょう。今度の法改正でもって、四月一日にさかのぼり百五十万ということになるわけですけれども、しかし、実際にその個人の負債整理等々でこの六十万円の枠を何とか引き上げてほしいとかいうふうなお話、これも相談に乗るというふうなことで理解してよろしいんでしょうか。となれば、そうした場合の窓口はどこでどういうふうに手続をしていけばいいか。
  235. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 私の方が所管しておりますので、お答えいたします。  いまお尋ねのは、個人の農家の貸付限度額のことだろうと思うのですが、一般の場合には確かに、御指摘のように六十万円ということになっておりますが、これはこの限度額は超えてそれ以上貸すということはちょっとやはり困難だと思います。私が先ほど申し上げましたのは、県全体の枠がなくて個々の農家にもなかなか行き渡らないという場合には、それはそういうことがないように従来もやったし、今後もやっていきたいというふうにお答えしたわけでありますが、個々の農家についての貸付限度枠というものは、やはりこれは希望が多いわけでありますから、できるだけ多くの農家に行き渡るということが望ましいわけでありますし、一般枠としては六十万円、それから災害としては百五十万円、これは従来は百万円だったものをことし百五十万円に増額したわけですが、その範囲内で当面やっぱり運用せざるを得ない。  まあ今後の枠を拡大することについては、これは財政局等との折衝が残っておりますから、これは今後の課題にさしていただきたいと思うわけであります。
  236. 下田京子

    ○下田京子君 やはりよく聞いてみないと、どうもあいまいになってしまうんじゃないかというふうにいま感じましたが、農家の皆さん方が話しているのは、政府じゃありませんから、全体の枠がどうこう、そこはあんまり関係ないわけで、自分自身がいま抱えている負債をどうしたい、運転資金をどうしたいっていうそこなんですよ。ですから、まあ今後とも限度枠の拡大あるいは災害の対象の枠拡大というふうなところで御努力をいただきたい。  それから同時に、さっきの矢巾の問題に戻りますと、これはどうも個人ではなくてあすこの場合には団体ですから、いろいろと枠はあると思うので期待はしたいと思うんですが、その点御要望申し上げまして、最後にもう一点、土地取得資金の貸し付けのことで具体的にお尋ねしたいんですが、これは福島県の福島市で具体的に要望されたんです。  それは、農地等取得資金及び未墾地取得資金融通取り扱い要綱というのによれば、これは大体おおむね十アール前後云々というようなのが書いてあると思うんですけれども、ただこの人は五アールほどの土地を求めようと思ったそうです。ところが、八アールなければだめだよと断られたっていうわけなんですね。これは機械的にそういうふうにもう八アールだからだめだよというふうなものなのか、それとも、知事やなんかと協議したりして、地域の実情に合ってこれは若干のその運用という枠はあるんだろうかと、いずれなのかということが一点。  それから同時にまた、確かに五アールというのは、十アール前後ではこう離れてはおりますけれども、しかし、本当に農業経営に意欲を燃やしていて、いろんなこう地続き関係でもってお買い求めになるなんてことはあるわけですよ。そういったときの資金で欲しいなと思ったときには、これはやっぱりそこの事情に合って貸し付けを認めていただける行政指導なりをしていただきたい。この二点なんです。
  237. 大場敏彦

    政府委員大場敏彦君) 農地等取得資金の対象となる農地の規模でありますけれども、おおむね十アール未満農地ということで、おおむね十アール未満という、具体的な運用としては大体八アール未満程度農地の取得には融通している、こういったことで現実には運用しております。これは、御存じのとおり、農業経営規模の拡大だとか農業経営改善という意味から規模拡大に資する農地取得について融資対象とすると、こういった考え方からそういった基準をつくっているわけでありますけれども、ただこの基準が、最近の一件当たりの売買面積が二十二アールですから、特に厳しく障害になっているというふうには一般的には思っておりません。しかし、地域によっては非常に経営規模が零細な地帯というものはあるわけですから、そういったところでは知事が地域を特定して十アール未満、つまり八アール未満のところであってもこれは融資対象とするということは可能であります。そういうふうに弾力的に運用することは私は結構だろうと考えます。  それから第二点で御指摘のありました地続きというような形で、そこで地縁的にはつながっていて、そういったものが経営規模拡大で取り込みたいという場合にはまたそういう理由があるでしょうから、そこはよく知事の裁量によって弾力的に運用してもらいたいと思います。
  238. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  239. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 御異議ないと認めます。  本案に対する討論及び採決はこれを後日に譲ります。     ―――――――――――――
  240. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 次に、国有林野事業改善特別措置法案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。中川農林大臣
  241. 中川一郎

    ○国務大臣(中川一郎君) 国有林野事業改善特別措置法案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  国有林野事業は、昭和二十二年に特別会計を設置し、企業的に運営することとなって以来、国土の約二割を占める国有林野の管理経営を一体的に行い、今日に至っております。  この間、国有林野事業の運営に当たりましては、それぞれの時代における社会的経済的要請にこたえて、林産物の計画的持続的な供給、国土の保全等の公益的機能の発揮、地域振興への寄与等の使命の達成に努めてまいったところであります。  しかしながら、最近における国有林野事業の経営構造は、森林の有する公益的機能の維持や資源賦存状況から伐採量に限界があることに加えて、木林需給構造の変化等による材価の低迷、人件費を初めとする諸経費の増高等もあって、悪化傾向をたどっております。  このような国有林野事業の現状並びに国民経済及び国民生活におけるその使命の重要性にかんがみまして、長期的観点に立って、事業運営及び財務の改善を図り、国有林野事業の経営の健全性の確立を図ることとし、これに必要な特別措置を定めるため、この法律案を提出した次第であります。  次に、この法律案の主要な内容につきまして、御説明申し上げます。  まず第一に、改善計画の策定であります。農林水産大臣は、昭和七十二年度までに国有林野事業の収支の均衡を回復する等その経営の健全性を確立するために必要な基本的条件の整備を昭和六十二年度までに完了することを旨として、昭和五十三年度以降十カ年間を改善期間とし、この間における国有林野事業の改善計画を定め、これに従って国有林野事業を運営するものといたしております。  第二に、政府は、改善期間において、一設会計から、国有林野事業特別会計に所要の繰り入れを行うことができることといたしております。  このほか、改善期間における特別措置として、政府の国有林野事業に対する資金の貸し付けについての配慮、国有林野事業特別会計の利益処分の特例等に関する規定を設けることといたしております。  以上がこの法律案の提案の理由及び主要な内容であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  242. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) この際、本案の衆議院における修正部分について、衆議院農林水産委員長代理理事羽田孜君から説明を聴取いたします。衆議院議員羽田孜君。
  243. 羽田孜

    衆議院議員(羽田孜君) 国有林野事業改善特別措置法案に対する衆議院における修正の趣旨を簡単に御説明申し上げます。  修正の趣旨及び内容は、まず第一に、改善計画の趣旨について昭和七十二年度までに国有林野事業の経営の健全性を確立することを目標とし、これに必要な基本的条件の整備を昭和六十二年度までに完了することを旨とするよう改めること。  第二に、改善計画の事項に国有林野事業における造林及び林道の開設その他林業生産基盤の整備に関する事項を加えること。  第三に、一般会計から国有林野事業特別会計への繰り入れについて、繰り入れの対象となる経費に例示を加え、国有林野の管理経営上重要な林道の開設に要する経費その他の国有林野事業に係る事業施設費とすること。  第四に、附則に、政府は、改善期間において、改善計画の実施の状況及び国有林野事業の収支の状況について検討を加え、その結果に基づいて国有林野事業の改善を図るために必要な措置を講ずるものとする旨の規定を追加すること。  第五に、本案の施行期日がすでに経過していることにかんがみ、これを公布の日に改めることとしたことであります。  なお、この修正は、自由民主党、日本社会党、公明党・国民会議、民社党及び新自由クラブの共同提案によるものであります。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。  以上です。
  244. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 本案に対する質疑は後日に譲ります。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十七分散会      ―――――・―――――