運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-04-25 第84回国会 参議院 農林水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十五日(火曜日)    午前十時九分開会     —————————————    委員異動  四月二十二日     辞任         補欠選任      丸谷 金保君     吉田忠三郎君  四月二十五日     辞任         補欠選任      河田 賢治君     市川 正一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         鈴木 省吾君     理 事                 青井 政美君                 大島 友治君                 山内 一郎君                 川村 清一君                 相沢 武彦君     委 員                 片山 正英君                 北  修二君                久次米健太郎君                 小林 国司君                 坂元 親男君                 田代由紀男君                 野呂田芳成君                 降矢 敬雄君                 坂倉 藤吾君                 村沢  牧君                 吉田忠三郎君                 吉田 正雄君                 原田  立君                 藤原 房雄君                 下田 京子君                 三治 重信君    国務大臣        農 林 大 臣  中川 一郎君    政府委員        農林政務次官   初村滝一郎君        農林大臣官房長  松本 作衛君        農林省農蚕園芸        局長       野崎 博之君        農林省食品流通        局長       犬伏 孝治君        食糧庁長官    澤邊  守君        林野庁長官    藍原 義邦君        水産庁長官    森  整治君        水産庁次長    恩田 幸雄君    事務局側        常任委員会専門        員        竹中  譲君    説明員        外務大臣官房書        記官       久米 邦貞君        運輸省船員局労        政課長      松木 洋三君        労働省職業安定        局雇用政策課長  白井晋太郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○連合審査会に関する件 ○農林水産政策に関する調査  (昭和五十三年度農林省関係施策及び予算に  関する件)     —————————————
  2. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) ただいまから農林水産委員会開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十二日、丸谷金保君が委員辞任され、その補欠として吉田忠三郎君が選任されました。     —————————————
  3. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) この際、連合審査会に関する件についてお諮りいたします。  特定不況産業安定臨時措置法案について、商工委員会に対し、連合審査会開会を申し入れることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  6. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 昭和五十三年度農林省関係施策及び予算に関する件を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  7. 川村清一

    川村清一君 きょうは、実は農林大臣所信表明全般にわたっていろいろお尋ねをいたしたいと考えておるわけでございます。所信表明の演説の内容につきましては、私、実は熟読いたしたわけであります。全部赤線が引いてあるように、本当によく読んだわけであります。まことに結構な所信だと思っております。ただし、これがただ単に官僚のつくった作文で終わったらこれは大変なことでございまして、したがいまして、この表明内容につきまして、各般にわたって具体的にお尋ねいたしたいと思っておったわでございます。  しかし、現在当面の重大問題は、何といいましても中川農林大臣が先般訪ソされまして、日ソサケマス漁業の問題につきまして非常に御苦労されてまいりまして、いま全国民はその日ソ協定内容につきまして、中身はどんなことになっているのか、これは将来どういうことになるのかということに重大な関心を持っておるわけであります。特に、関係漁民あるいは関係水産加工業者あるいは関連産業各部門に従事されておる経営者並び労働者は、非常な不安な気持ちを持って注目しておるところでございます。したがいまして、私はきょうはこの水産問題、これに重点を置いて質問を申し上げたいと、かように考えております。したがいまして、せっかく食糧庁長官林野庁長官にも御出席をお願いしてありますが、あるいはそこまで質問が展開されないかもしれませんから、その節はあしからずひとつ御了承願いたいと、まず冒頭申し上げておきたいと存じます。  そこで、日ソサケマス漁業交渉の問題でございますが、最終的には大臣が非常に御健闘されましたけれども、粘り強く交渉されましたけれども漁獲量四万二千五百トンというところで妥結せざるを得なくなった。このことは、新聞報道によってでございますが、最終的にモスクワにおいて大臣記者発表をされたときには、非常に無念残念であったのか、涙を流して発表されたということを読んでおります。大臣の御心境は十分察知できるわけでございますが、しかし、私といたしましては、これはまあまあの線ではないかと思っておるわけであります。  と申しますのは、一九五六年、昭和三十一年に日ソ漁業条約が締結されてから今日まで二十年間、この二十年間の毎年の日ソ漁業交渉経過をずうっと顧みて、さらにまた、昨年二百海里時代に入りまして新しい時代の日ソ漁業協定を結んだわけでありますが、その間における鈴木農林大臣の御苦労、またその間におきましては、御承知のように、問題解決のために国会からも超党派の議員団が派遣されまして、大臣交渉をバックアップしたというようなこともありまして、私も実は参議院から派遣されて行ってきたわけであります。そういう経験の中から、ソ連外交というのは、特にこの漁業外交というものは非常に厳しいということを十分承知しております。  でありますから、ことしも当初三万五千五百トンと、こう出されたときに、新聞を見て私は率直に、ああ、これはことしはまあせいぜい四万トンだわい、まあうまくいって二、三千トン上積みされて四万二千トンか三千トンというところが最終のぎりぎりの妥結線ではないかというようなことを考えて、私はそのときに言っておりました。そこで最終的に四万二千五百トン、これはいたし方ないと考えております。しかし、政治は何といっても結果を評価されるわけでありまして、四万二千五百トンは客観的には妥当の線かもしれませんけれども、先ほど申し上げましたように、全国の漁業経営者あるいは漁業労働者関連加工業者の方々は非常に不平、不満を持っておるわけでありますから、強く今回の決定をこれは批判しているわけであります。  ですから、われわれも政治に携わる者として、やはりなぜこれがこういうことになったのか、交渉に当たるに当たって政府見通しに誤りがあったのではないか、甘かったのではないか、また今日あることを考えてもっと前々から手を打っておかなければならなかったんではないか、外交がまずかったんではないかというようなことも考え、政治家の一人として、野党ではありますが、やはり自分みずからが反省もしているわけであります。  こういう観点に立って質問いたしますが、まず中川農林大臣、きのう帰国されて国会報告されるのはいまが初めてでありますから、この交渉経過、また結果に対する大臣反省を含めての考え方、こういうものをできるだけ簡明に、要点だけで結構ですがまず御報告を願いたい、かように考えます。
  8. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) まず最初に、結果が御指摘のとおり思わしくなかった、相手のありますことではございますけれども、三割程度減船をしなければならない交渉の結果であったということに対しては、まことに残念であり遺憾であったことを、本委員会を通じて表明いたしたいと存じます。  川村委員指摘のように、一九五六年から締結をされておりました日ソ漁業協定、これも年々減ってまいりまして一昨年は八万トン台の操業でございました。ところが、昨年の二百海里時代を迎えまして二万トンの減少となり六万二千トンの操業、しかも約二割以上に及ぶ減船をして今年を迎えたわけでございます。ところが、昨年の二百海里時代に対処する鈴木イシコフ会談において新しい協定を結ぼうということではありましたが、その後四月二十九日をもって期限が切れます日ソ漁業協定破棄通告があったわけでございます。サケマスをとることについてのこの協定破棄通告があったわけでございますから、深刻な事態を迎えておりました。  そこで、政府向こうソビエト間において、新しい協定はどうするかというような話し合いは続けられておりましたが、いよいよ時期も迫りましたので、ことしの二月十五日、松原公使を団長とする政府交渉団松浦部長も現地に参りまして交渉に入りました。この交渉団には、民間水産関係団体の川端さん等を初めとして代表も加わったのでございます。鋭意交渉を重ねてまいりましたが、当初から沖どりは禁止すべきである、全面やめるべきであるという厳しいところからスタートをいたしたのでございます。  その後、交渉団の御努力によりまして、今年は沖どりは、漁民の経済のことを考えると、これは撤回してもいいという御返答があったわけでございます。その後、三月初めに、私の代理として内村前次官が農林省顧問ということで交渉に当たりました。そして、三万五千五百トンまではよろしいというところまではまいりましたが、それ以上前進がない。しかも、前の協定はこの四月二十九日をもって切れるということでありましたので、国会協定承認等の時期も考えますならば、どうしても四月十一日には出発しなきゃならぬということで、訪ソいたしたわけでございます。  私の臨みます基本的態度といたしましては、昨年二万トン削減をされており、しかも二割以上の減船をしたやさきでございますので、今年は何とか昨年並み操業ができること、これを基本的な考え方とし、もちろん資源を大事にいたさなければなりませんから、できるだけの資源保護のための協力はしなけりゃならぬ、こういうことで臨んだのであります。  ところが、向こう側考え方は、当初の案のとおりこれは全面禁漁すべきものである、すなわちゼロであるというところの基本からスタートいたしておるわけでございます。その理由は、二百海里時代を迎えて、二百海里水域はその沿岸国のものであると同時に、遡河性サケマスはこれは母川国に帰属するものである、したがって公海におきましてもサケマス母川国がこれの権益を有する。ソビエトにおきましても、御承知のように、二百海里時代を迎えまして、ヨーロッパその他において完全締め出しというようなことになっておりますから、二百海里内はもとより、自分の国に帰属します遡河性サケマスをまず大事にして、国民に魚の資源を供給しなければならないというたてまえをとっております。そうしたときに、公海においてすなわち沖どりをするということは、資源確保上非常にまずいことである。すなわち、未成魚等も入っておりますし、そういったところでとるよりは、沿岸あるいは河川に入ってからとることが、資源を大事にする上においてぜひとも必要なことである。そこで、何とか全面沖どりはやめたいと思ったのであるが、日ソ友好関係もあり、また従来操業実績もあるので、資源確保のために必要なあのいわゆる三角水域を除いては、これは従来どおり操業することを認めてもいい。しかしその場合でも、漁期あるいはとり方、規制等についてはやはりこれは厳しくしなきゃならぬという発想でございます。  したがいまして、私どもが従来どおり実績ないしは資源確保のための協力等というところからスタートいたしますのにに対して、相手方は沖どりはゼロであるということでスタートをいたしますから、なかなかその間の幅は大きかったのでございます。しかし、向こう側もいろいろと協議をいたしまして、数量において七千トン、それから漁期等につきましては従来どおり操業に支障のない漁期、あるいは規制につきましても旗国主義——初めは単独監視をいたしまして、すなわちソビエト監視船監視をして、違反をしているものはソビエトに連行してソビエト裁判権によってこれを行使するということも、理解をしていただきまして、最終的に話し合いがつきませんでしたのは、一部操業区域についても窓をあけてくれましたが、しかし、残りました三角水域の大部分については資源保護上どうしても譲ることができない、これは将来に向かって日本にとってもまたソビエトにとっても大事なことであるということで、お手元にお配りしてあろうかと存じますが、禁止区域が決まり、約二万トンの減量ということにならざるを得なかったのでございます。  私といたしましても、もっと粘り強く、あるいは多くの皆さん協力を得て、少々時間をかけてもと思いましたけれども、そういった制約された中身、しかも漁期が迫っておりますので非常に苦しんだのではありますけれども、この際、この案で妥結することの方が漁民にとって現実的にいいのではないかと判断をいたしまして、妥結をいたしたところでございます。  そこで、今後はどうなるのかという御質問がいまありましたし、国民皆さんも御不安のところだろうと思います。今度の協力協定は、本文にも書いてございますように、附則でございましたか、五年間の期限をもって、その後は毎年片方ないしは両方から通報がない限りはずっと続いていくということでございますので、いわゆる外交上の長期協定というふうに見て差し支えがなかろうかと存じます。そして、議定書によりまして今年度の操業の量を決めたわけでございますが、決めるに当たりまして、いろいろといま申し上げましたように資源論、将来の資源論というものについて、サケの流れであるとか、時期であるとか、漁獲方法であるとか、いろいろ議論をいたしまして得たのが今年の四万二千五百トンであり、水域であり、漁期であり、規制方法でございます。したがいまして、来年度以降相当の変化が起きたり、あるいは操業において許されないようなことがあるというような事態ができましたならばあるいはどうかわかりませんけれども、今年度確保し得たものは将来に向かってもでき得るものなりと、こう思っておるところでございます。  しかし、三割程度減船をいたさなければなりませんし、この減船者に対する措置等は昨年もいたしておった実績等もございますので手厚く措置をして、残りました七割の船につきましては今後しっかりした操業をやりまして、日ソ双方とも理解協力によってこれが長く操業ができるようにわれわれも努力をしていきたい。もとより、この議定書によりまして、毎年サケマス漁獲については両国間協議をするということになっておりますから、毎年の交渉によって結果が出てくるわけではありますけれども、私といたしましは数年間、いやそれ以上長くこれだけの漁獲だけは確保できるようにしたいし、やりようによってはできるものなりと、こう思っておるところでございます。  以上が交渉経緯並びに結果、そして将来に対する見通しでございます。いずれにいたしましても、二百海里時代を迎えまして沿岸国が非常に強くなったこと、そしてまた、遡河性サケマスにつきましては母川国発言権を持った、これはソビエトのみならず米国、カナダその他の国々におきましてもそういうことでございまして、非常に厳しいということだけは受けとめなければなりません。したがいまして、こういった水産外交について最善の努力をすると同時に、その操業についてもしっかりしたものにすると同時に、われわれも前浜でありますわれわれの二百海里、あるいはわれわれの遡河性サケマスというものの増養殖資源確保については、さらに一段と前向きで配慮し、わが国漁民あるいはわが国魚族たん白資源確保努力をしなければいけないと痛感いたしたような次第でございます。  以上が、交渉経緯あるいはその結果に対する私の考え方でございます。
  9. 川村清一

    川村清一君 ただいまの御報告によって、今回の交渉経過並びに結果、そして今後の施策の一端が述べられまして、承知いたしました。  そこで、私は、交渉に臨む日本政府態度について若干お尋ねしたいんですが、結論的に言えば、見通しが甘かったんじゃないかという言葉に尽きるわけであります。と申しますのは、ただいま大臣からお話がございましたように、遡河性魚類については母川国主義ということは、もうすでに海洋法会議においての一つの結論であり世界大勢である、こういう認識をまず持って臨まなければならなかったんではないでしょうか。いまのお話にもありましたように、アメリカ、カナダもそういう線をとって、そして過日の日米加会議のときには強く主張されまして、現在までは西経百七十五度以東を自主的に抑制する規制線と決められておったわけでありますけれども、それがさらに西の方に延びまして、東経百七十五度まで広げられたというこの事実、そしてまたソ連側態度としては、御案内のように、一九七六年の十二月十日のソ連邦の最高会議幹部会令の中には、もう明らかにこの遡河性魚類については母川国主義をとるということがうたわれておるわけであります。  そういうその基本線を持って昨年の二百海里時代日ソ漁業交渉がされておったという、こういう経緯等を考えますというと、ことしは実に厳しい線が出てくるということは予想されておるわけであります。昨年は当初五万七千トンということで強く主張して押しつけられてまいりまして、最終的に五千トン上積みされて六万二千トンというところで決定したわけであります。ことしはもう沖どりは認めない、それで三万五千五百トン、それが最終的には、これは大臣の御苦労であったと思いますが、四万二千五百トンまで上がったわけでありまして、それを昨年並みにこの公海上において沖どりができるという、向こうがまたそれを最終的には認めるとしても、その操業水域というものは相当強く厳ししく規制されるんではないかということは、これはもう最初から想像つくと思うんでありますが、こういうような点については一体どういうものか、少し甘い考え方を持って、また大臣は気負って、よしおれが行って少なくとも五万トン以上はとってくるぞといったような気負いを持って、気負いの姿勢で行かれたのではないかと思うんですが、この辺はいかがなものでしょうか。
  10. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 外交交渉でありますから、最初から弱気で行くのがいいか気負って行くのがいいか、暗いことがあるということで行くのがいいか、それは御判断に待つ以外ありませんが、少なくとも私どもが考えて間違っておったとすれば、向こう側イシコフさんは特にふ化場について非常に関心の深い人でございます。魚族資源をふやすためにはふ化場等前向きに資源保護をやるのだと、それについて日本もひとつ協力してもらいたい、こういうことが長年の主張でございましたので、この辺と結びつくならば、まあまあ実績そのものとは申しませんけれども、五万トンぐらいの漁獲はできるのではなかろうかと考えたことは事実でございます。しかし、交渉に臨みまして明らかになりましたのは、そういうことも必要ではあろうけれども、現段階においては、日本においては成加しておるかもしれぬが、ソビエトにおいて成功した例はないし、また成功するかどうかわからないということで、この点に対しては全く関心を従来とは違って示さなかったと、この辺が私どものまあ判断の違いがあったと言えばあったところではなかろうかと思います。  要は、水域さえやめてくれれば、あとのことは大体昔からの関係がありますから協力できると。ところが、あの禁止になりました水域が、向こう関心あるのと同様にこちらにも非常に関心があって、あすこ水域における資源論というものを連日にわたってやりましたが、なかなか意見の一致を見なかったということでございます。したがいまして、違いがあったとするならばその点であり、特に一〇%の入漁料というのですか、協力料というようなものも初めは強かったのでありますが、後半になりましてからは余り魅力を持たずに、まあ三・五%は国際的通例であると、それにプラス幾らしていただけますかということでございまして、わずか一%の上積みでそれほど議論なく決着を得たということでありまして、この点当初気負いがあったとするならば、協力費は相当思い切って政府にもお願いして、そして育てながらともどもにとると、こういう考え方を持って行きましたが、その点については方針が変更しておりましたということで、私の考えておったところと違ったことは確かでございます。  そういうようなことで、私が考えておったよりは厳しい結果となったことは事実でありまして、当初の判断が間違っておったと言われれば、それもあえて反論できないところでございまして、十分御批判はいただいても仕方がないと思っております。
  11. 川村清一

    川村清一君 まあ、外交に当たって強気、弱気論、それを私は言っているんではなくして、もちろん国民を代表し、国益を代表して外国と折衝するわけですから、これは強気という言葉で表現することが妥当であるのかその辺わかりませんけれどもできるだけ多くとってくるということは当然なことであります。しかし、結果論はどうであっても、最初出かけるときに、この天下の大勢というか、世界大勢というか、ソ連はことしはこういうところに視点を置いてこちらの方にかかってくるぞといったようなことぐらいは、察知して交渉に当たるのが外交のこれは第一手段でないかと、私はそう思うわけです。したがって、あすこには日本大使館なんかもあるわけで、ソ連がことしはどういうところに重点を置いてくるかといったような、そういう情報等は一向つかめなかったのかどうか。  と申しますのは、大臣がいまおっしゃったようにことしは非常に規制水域の話が厳しかったわけですね。   〔委員長退席理事長青井政美君着席〕  いままで一九五六年以降今日までの日ソサケマス交渉というものは漁獲量重点があったわけです。御承知のように。一番多くとったときには、十二万トンぐらいいっております。それが今度四万トンですから三分の一に減ってしまったわけですが、この二十年間の交渉というものは、ほとんどが漁獲量向こうから言ってきた線とこっちから要求する線、そしてそこの論議は資源論です。向こう資源が減ってきていると言う、こっちは資源は減らないと言う、そういうことで何万トン、何万トン、もちろんその過程の中においては規制水域というものがだんだん広がってきたことも事実でありますが、ことしの特徴は、これは新聞報道によってのみまあ知ったことでありますからあるいは間違いかもしれませんけれども、御案内のように、この一九五六年に締結された日ソ漁業条約というものは、北西太平洋上におけるサケマス資源を主体とし、それにニシンとかカニとかいったようなそういう資源を維持していくということ、そして将来にわたってこの漁業が永続的に行われるように、そういう一つの環境をつくり守るということが条約の目的であり、当時はこの規制水域というものは北緯四十五度以北であったわけですね。それがこの後に南に下がりまして、四十五度以北をA区域とし、それから南をB区域とし、そしてこの南の方も規制されるというようなことになったわけでありますが、当時は四十五度以北であったんです。  ですから、もともとは日ソ漁業条約規制ラインというものは四十五度であった。ところが、ことしは向こうから提案してきたのは四十四度まで下がったんですね。一度南に下がっちゃった。それから、先ほどアメリカとの関係で申し上げましたが、西経百七十五度、今度これが東経百七十五度まで西に寄ってきたでしょう。しかもいま大臣がおっしゃっている三角地域、これは全然だめだと、こういうようになってきた。まあ一部東経百七十五度までの線が北緯四十六度までいくようになったようでありますが、それから三角地域の一部に、その北の方もちょっとありますけれども、アメリカの二百海里の線のところまでちょっとありますけれども、とにかく最終まで禁魚区域をふやすか、その中で日本が少しでももっと北へ上げるといったようなことで交渉しておったようですね。これがことしの特徴ではないかと私は思う。そこなんです、聞きたいのは。  いままでは漁獲量をふやせ、ふやさないということで論議されて、もちろん禁魚区域というものはありましたけれども、特にことしはここが厳しかった。なぜ一体ソ連はこの操業区域を縮めること、禁魚区域を拡大することに最後までがんばったか、この辺は大臣はどういうふうに受けとられておりますか。
  12. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 資源論から申しまして、いわゆるソビエト系のサケマス、中でもソビネトが一番関心を持っておりますシロ、ベニというものがこの三角水域を通ってソビエト側に入る。そこで、まず東から入ります日米加禁魚区域の解除をされております二百海里の中、ここも実はソビエト側へ入ってくる魚の道である。アメリカは二百海里であるがゆえにここはあけてはあるけれども、これも実はソビエトサケの通るところである。まあアメリカがあけたのだから仕方がないがその下の方も西側から入ってくる魚道といいますか、サケマスの道である。でありますから、これを防ぎたかったのではあるけれども、ここはイシコフさんが、中川さんのお気持ちになり、あけたくないところではあるけれどもひとつあけて差し上げましょう、こういうことで、向こうとしては非常な配慮をもって東から入ってまいりますサケの道をあけてくれた。  さすれば、ここからはサケは入ってこなくなるだろう。その場合、下から入って北に向かってサケが来るこの道、この道の中でも特にシロとベニが非常に多い。これには五月、六月、七月、月別に見てこの月は多い、少ない、いろいろ議論をいたしたのでありますが、過去の実績、資料、データ等からいって、わが方にはこれを打ち破るべき資料といいますか、根拠がなかなかない。やはりソビエトの言われるところも、これまでふさいでしまうと、私としては四八船——小さい船でございますが、母船ではないこういった方々が操業区域を失いますと大変でございますので、何とかこの区域を、先ほど御指摘あったように、四十四度から四十五度、最後はそのうちの一部分でも、あるいはそのうとの月、五、六、七、三カ月ありますから、一月でも二月でもといろいろと議論をいたしたのでありますが、やはり資源量そのものよりは大事な帰ってくるサケの道である。特にシロ、ベニの多い道であるので、これはひとつ御勘弁願いたい。  私は、今回の交渉で、ソビエトも非常にわが国の立場を考え、あるいは日ソ友好のきなずなはサケマスである、こういう点を十分配慮はしてくれましたが、この東側の水域をぶっ通して上まで上げて操業する、これを譲ることが精いっぱいであるということでございましたが、私としては、何とかこの残りました水域のうちの四十度から何がしでも上へ上がれるようにということで交渉を続けたのでございますが、西側を譲ったといいますか、東側というのですか、ぶっ通しの線をあけたことが精いっぱいであるということで、どうしても壁を破ることができなかったということでございまして、確かに大事な水域であり、われわれとしても関心を持ち、資源論その他でずいぶんと熱心に、また向こうも熱心につき合ってくれまして、できるだけの配慮をしようということではありましたが、ソビエトも、先ほど申し上げますように、海外で漁場を失っておりますので、地先に帰ってくることがはっきりしておるこの大事なサケマス、その大事なサケマスの通る三角水域の残りました水域だけはどうしても譲ることができないということであったわけでございます。
  13. 川村清一

    川村清一君 私は、この問題では当委員会でいままで数回質問しているわけでありまして、その都度申し上げていることは、結局、先ほど申し上げましたように、漁獲量を多くせい、いや、だめだといったような議論がされておる。ところが、大臣承知のように、日ソ漁業条約というものは、資源を守るというところに一つの大きな目的があるわけであります。それから交渉の流れですが、最初はあくまでも資源論で、資源論になると私なんか全然然わかりませんし、大臣も、失礼ですが、おわかりにならぬと思う。やっぱりこれは専門家、科学者でないと、学者でないとわからないわけですね。そこで、この資源論を闘わしていって、そうしてそれに基づいて幾らという漁獲量を決めるというのが一つの筋なんです。ところが、資源論では幾らやっても決まらぬ。決まらぬもんですから、最終的にぎりぎり決着のところで、歴代の農林大臣あるいは農林大臣と同じような資格の人がソビエトへ行ったり、あるいは日本へ来て、そうして政治的には決着をつけてきたのがこの二十年間の一つの流れなんです。ですから、このやり方というものは、条約の趣旨からいってこれは誤りなんですよ。  そこで、資源論なんですが、わが国には、向こうとかけ合って向こうを十分説得するだけのそういう科学的なデータがないのか。いつもやり込められているのではないか、データがないのかということを質問すると、あると言う。そういう資源論を裏づけるいろいろな調査なりあれは十分してあるということを政府当局はおっしゃって、今日に来ておるわけなんです。ところが、どうもいまの大臣お話なんかを伺っても、資源論でやられてきて、そうしてこちらの方ではそれを反駁するところの資料がなかった——なかったと言えば失言ですが、十分説得するだけのものがなかった、足りなかった、こういうことをおっしゃっておるわけです。それが私は実態だと思うのです。  そこでもう一つ、いまソ連系の資源、特にベニやシロ、これが東からソ連の川に入っていく漁道になるこの三角水域、この辺をきわめて強く規制してきた。その水域規制論で多くの時間がとられ闘わされてきたというその裏には、こういうことがないですか。私は、いままでそれをずいぶん言いたかった時代があるのです。資料もちゃんと持っているのです。しかし、この資料をここで話すことができない。私は野党ですよ。野党ですけれども、幾ら野党であっても、わが国益に反するようなことはやっぱりここでは言えないのですよ。そういう形で来たのはこれは事実なんです。しかし、ことし朝日新聞にずばっと書かれてしまいましたね。  新聞に出たことだからもう言いますが、いままでは割り当て量の二倍も三倍も漁獲している、漁獲努力をしてきた、こういうことが出たではないですか。したがって、向こうもそのことは知っておるし、その資料は持っておったと思うんでありますけれども、やはりこれも言い出せない、確実なものがないわけですから。ところが、日本の、天下の朝日新聞にこうでたものですから、こういうことをやっているじゃないかといったようなことでそうすれば結論的にはどうなるかというと、漁業量をたとえば四万二千五百トンと決めても、実質的にその二倍も三倍もとられるなら漁獲量を縮めたって何にもならぬじゃないかと。だから、これはこの春の日ソの漁業協定の審議のときにも私申し上げましたが。スケトウダラ三十四万五千トンというものが日本に与えられたけれども、われわれが要求しておる五十度以北、これを切っちゃった。したがって、三十四万五千トンというスケトウの漁獲量の割り当て、クォータはあるけれども、果たしてこれを消化できるかどうかということを私は尋ねたはずです。そのときに岡安水産庁長官は、非常にむずかしいことであるけれども、何とか工夫して漁獲努力をするならばこれを消化することができるという御答弁をされておるわけであります。  こういう観点からも推しはかられるんでありますが、要すれば、あれは回遊魚ですから魚道を押さえてしまう、いわゆる魚のいない海を与える、そういう手段に向こうは出てきたんではないか。言うならば、宝の持ち腐れといいますか、絵にかいたもちといいますか、果たしてこの海でもって与えられたこの操業区域において四万二千五百トンという割り当て量が消化されるのかどうか、ここにも一つの問題があるわけであります。  そこで大臣にお尋ねしたいのは、そういうようなことが従前あったと思うんですが、ここで大臣あったかどうかということをお聞きするのではありません、私は一方的にこういうことを言ったんですから。ソ連は、そういうような考え方を持ってこの規制を強くしてきたのではないか。それから、今後ももしもそういうことがあればこれは大変なことになる。私はここに大水で出しておる資料を持っていますが、この資料には一九六三年から一九七五年までの、昭和三十八年から昭和五十年までの日ソサケマス漁獲量の推移ということで、割り当てが何ぼ、実績が何ぼという数字がずっとこう出ております。これは大水の出している数字でありますから、もちろんソ連に見られて文句のつけられるような数字は出てないのは当然であります。しかし、割り当てよりも実際とった実績は全部オーバーしているということだけはこれ確実であります、この数字で。しかし、一割程度の増は許容されていることですから、それはいいんですよ。  しかし、天下に堂々と出しておるこの資料で割り当てよりも実績が少ないという年はほとんどないんですから全部オーバーしている。ですが、これは違法ではないでしょう、許されている範囲内のこれはオーバーですから。しかし、実態はいま言ったようなことが確かにある。私はそのほかの資料も持っておるが、それは言いません。   〔理事青井政美君退席、委員長着席〕  しかし、それが今回このようになったのではないかということなんですが、大臣のお考えをお尋ねしたいと思います。
  14. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) その点につきましては朝日新聞、あるいはお示しの資料等について、いろいろ非難のあるところではありますが、今度の交渉においてソビエト側が、日本はそういうことをしておるではないかというようなことは一切ございませんでした。まあ皮肉めいた言葉はないではありませんでしたが、こういうことがあるからけしからぬのだと、したがって水域を閉めるのだというような発言はございませんし、われわれもいろいろ御批判はありますけれども、わが漁民を信じておりますから、そういうことはあろうはずがないと、こう確信もし、もし間違いがあるならば、今後そういうことのないようにしていかなければならないと。  あくまでもソビエト側が言いますのは、やはり魚道をひとつ南から北へ上がる分だけは閉めさせてくれと。東から西へ入る分は、これは従来の実績もありますから、私は、急激な変化はしてはならないと思ってあけたところでございますと、こういうことでございまして、一貫をして根っこは、資源確保のためには沖どりというものはいい方法ではない、これには反発のしようがないわけでございます。なぜならば、まだ未成魚というものがたくさん入っておる。その未成魚を含めてとるわけですから、やはり成魚になって、しかも筋子その他、体が十分育ってきたところでとるのが、これは資源確保の上にとって否定すべくもない現実でございます。したがいまして、沖どりはこれは資源確保の上からはよろしくないが、過去の実績もあり、東から入ってくるこの部分は、まあまあひとつ従来のこともあるからとろうではないかということであって、操業その他について非常にまずいからこの区域は閉めるのだという御意見はありませんでした。その点は、さすがソビエト理解をしてくれておるものなり、こう思って交渉した次第でございます。  ただ、あくまでも、先ほども申し上げましたように、南から上がってくる分だけはひとつ何とか理解をしてもらいたいという、きわめて現実的なまじめな御意見でありまして、そのことがこの水域を閉められる理由だということのお話し合いは一つもありませんが、しかし、今後魚のとり方については、やはり誤解がないように、そういった批判が新聞に載ったり、あるいは相手に皮肉めいたことでも言われないようなことをやっていくことに最善の努力をしなければならぬ、こう思う次第でございます。
  15. 川村清一

    川村清一君 沖どりに対する向こうの主張、それに対する大臣のお考え等もここに述べられたわけであります。沖どりは資源確保の上からいっても、あるいは未成熟の魚をとるといったような点からいっても、これは余りよいことではないと私自体も思いますけれども、しかし、大臣承知のように、北洋のサケマス漁業というものは、もう一世紀にわたって行われてきた漁業でありまして、もちろんこれはソ連水域、二百海里以内であるとか、あるいはアメリカの二百海里以内とかという問題もありますけれども、北洋漁業全体がサケマスが主体となって、これはわれわれの先輩、特に北海道の漁民がもう血と汗を流して開発してきた漁業なんであって、いわば日本のこれは権益であるこう言っても過言でないわけであります。  しかしながら、これは世界大勢でやむを得ず縮小、縮小、縮小されて今日に至っておるわけでございますが、そこでいまの大臣発言の中から私ちょっと気がついたんですが、これはもう沖どりはだめなんだと。冒頭、五カ年間は大丈夫だというようなことを言われましたが、これも私が考えるというと、本当に大丈夫なのかどうかという疑問を一つ持つわけであります。大丈夫であっても、四万二千五百トンが来年は三万トンになり、そしてその次には二万五千トンになり、五年後にはゼロになるんじゃないかというような気もするわけでありますが、この辺に対する見通しをひとつお聞かせいただきたいと思いますし、ここで一つ確認しておきたいことは、これからの問題に重大なんでちょっとお尋ねしておきますが、ことし決められてきた四万二千五百トンというクォータがいま決めたこの水域の中で果たして消化できるのかどうか、そして魚種もベニとかシロとかいう高価な資源はずっと減ってしまって、ほとんどなくなって、そしてマス資源だけがもう大半を占めるといったようなことになれば、今後の減船であるとか、それから今後残留して操業するにいたしましても、最もいままではその採算が安定しておったところの北洋サケマス漁業というものが、これではとても採算がとれないといったようなことでますますむずかしくなるんではないかと思うのでありますが、これに対する大臣見通しをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  16. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 沖どりというものに対して世間が厳しい、沖どりに対して世界各国が厳しい、これはアメリカ、カナダもそうでありますし、ソビエトもそうである。そういう中に、またわが国が百年あるいはそれ以上の長い伝統と苦労の中に開発してきた漁場である、そしてまたそれを根拠にして多くの人が生活をしておる、こういう実態もありまして、その妥協の産物が、両方から迫られておりますけれども、真ん中で操業ができ得るようになった、これが実態だろうと思うのでございます。もし資源論だけであるならば、いやおうなしに四十四度以北は一切入れないということになったのでありましょうけれどもわが国漁民が長年やってきたという実績を踏まえて、いわゆる政治的といいますか、そういった総合的な結果がこのような結果になったのであって、決してわが国操業を無視していなかった結果でもあろうと存じます。  そこでこの水域で四万二千五百トンとれるか、私は操業努力によって秩序あるとり方をすれば可能ではなかろうかと思っております。ただ、今後どうなるかと言うと、先ほど申し上げましたように、操業のあり方等について非難を受けるようなことがあれば、これはあるいは厳しくなろうと思いますけれども、ことしはことしの分として議論はいたしましたものの、先ほど申し上げましたように、協定そのものが五年であり、特別のことがなければその後もずっと継続するいわゆる長期協定であり、その初年度としての資源のあり方ということについて十分話し合った結果、これでやっていこうということになったわけでありますから、来年以降もこの程度で特別のことがない限りはやっていけるものと、またやっていくように努力をしなければならない、こう思っておるわけでございます。  今後、そういった事態に対処して、昨日来も漁師の皆様や業界の皆さんとこういった事態に対処していかにあるべきかということを真剣にお互いにざっくばらんに話し合って、これらの漁獲が今後とも継続されるように努力していこうではないか、そのためには業界の協力も、また政府の助成といいますか、やるべきこともやるということで話し合ったところでございまして、何とかこれだけの区域で四万二千五百トンを確保しつつ、しかも継続ができるように最善を尽くしていきたいと思う次第でございます。
  17. 川村清一

    川村清一君 事務的なことですから、水産庁長官にお尋ねします。  いま大臣のおっしゃっているように大幅に減少されますというと、これは三割程度漁獲量が減ったわけですからいわゆる操業隻数も三割程度これは減船必至だと思うんですが、いまの考え方とすれば一体、何隻ぐらい減船しなければならないのか、これを母船式、それからいわゆる四八というやつ、中型ですね、それから太平洋小型、それから日本海流し、この四つに区切ってそれぞれ減船を指導しなければならない隻数をちょっと教えてください。
  18. 森整治

    政府委員(森整治君) 太平洋の小型流し網、それから日本海の流し網、日本海はえなわ、これは手をつけないつもりでございます。ただ、クォータが非常に小さいし、また非常に零細漁民、また隻数も非常に多い、トン数も小さいという関係でそういたしたいと思っておりますが、四八以南の中型の流し網漁業につきましては三割でございます。
  19. 川村清一

    川村清一君 隻数。
  20. 森整治

    政府委員(森整治君) 一応単純な計算をいたしますと、二百九十八隻ございますから、三割というのは八十九隻ということになるわけでございます。ただ、この数字につきましては早々に決めたいと思っておりますが、ただいま業界と意見調整中でございますので、一応三割という数字は八十九隻になる。これ以上という考え方でございますけれども、どこに、どういう数字に落ちつけるかということについてはまだ決めておりません。  それから母船式でございます。これも、ただいま母船は六隻操業いたしておりまして、それぞれ独航船が四十一隻程度ついております。そこで、三割といいますと三分の一ということになりまして四隻、単純に申しますと四隻ということになります。ただ、これにつきましても、むしろ母船の数は三隻にいたしまして、独航船の数がふやせないかという問題がございます。この辺につきましても、大臣お帰りになりまして昨日じゅうも業界といま意見調整中でございまして、まだ決まっておりません。ただ、この場合には母船の操業、母船の隻数と、母船につきます独航船の数が果たして操業上可能かどうかという問題がございます。  従来は、一母船につきまして三十隻ぐらいであったのが去年四十隻、四十一隻になっております。ここで三隻にいたしましてできるだけ独航船の数を維持していくということになりますと、あるいは五十隻以上ということにどうしてもなるわけでございまして、一隻の母船で五十隻の操業というのが、漁のいかんによりましては非常にむずかしいのではないかという意見もございます。そこで、できるだけ母船の数は減らしたいのですけれども操業が不可能になるということではこれはどうしようもないものですから、その点も含めまして独航船の船主の団体、それから母船を持っておる会社、それぞれの意見の調整をいたしておりまして、まだ最終的には決まっておらないというのがただいまの現状でございます。早急に決めたいと思っております。
  21. 川村清一

    川村清一君 現在、母船式の独航船というのは二百四十五ありますね。算術計算で三割ということになれば、それは七十三になりますね。そうですね。七十三でなくて、いまあなたのおっしゃっておるのは、母船は六隻ですから、これはもちろん算術計算にするというと二隻減るわけですね。それを三隻にすると言うんですか。三隻にすると独航船がふえるというわけですか。どういうことなんですか。  それから今度は、減船数が三割でいくと二隻母船が減るわけになりますね。それを母船の方を二隻でなくて三隻にする、三隻にしてそれで母船式独航船をふやすということですか。ちょっとこの辺がわからぬから、もう一度言ってください。
  22. 森整治

    政府委員(森整治君) 私、残る数を申し上げたものですから、ちょっと混乱したかもしれませんけれども、要するに母船を四隻にいたしまして、二隻減船、四隻残す。そして御指摘のように、七十三隻減船いたしまして百七十二隻の独航船を残すということになれば、ちょうど大体三割ということで、現状の規模で一母船幾らになりますか、要するに一母船四十隻ぐらいの独航船で操業をする、こういうことになるわけでございます。ただ、母船をできるだけ減らしまして、漁獲量も落ちておりますから、それから漁場も非常に狭いということになっております。それから漁期の制限も非常にございますので、できるだけ母船を少なくした方が、そして一母船につきまして独航船をできるだけふやしてあげて、たとえば一母船に五十隻なりあるいは五十何隻なりつける。  そうすると、減船数は少なくて、母船は三隻減らすけれども、その独航船の減船数はいまのような七十三隻減船で百七十二隻をくっつけるというようなことができれば、三隻に百七十二隻をつけますと一母船当たり五十七隻になるわけでございますから、この操業が果たして可能なのかどうかというところのぎりぎりの問題がございまして、意見の調整をいま図っておるというのが現状でございます。結論といたしまして、三隻に減船はできないかもしれません。その辺は早急に決めたいと思っております。
  23. 川村清一

    川村清一君 どうも役人の方の御答弁というのは、余り親切丁寧に答弁されるので、頭が悪いものですからよくのみ込めないんです。簡単におっしゃってくれると一番わかるんですがね。  要するに、独航船の百七十二というものは動かさないと。それを今度は、母船を四にすると一隻当たりのやつが四十隻ぐらいになる。母船を、これを四でなくて三にすると、母船一隻当たりの付属独航船が五十隻ぐらいになる、こういうことにならないかといったようなことも検討しておると。結論は、母船式独航船の百七十二というものは動かさないと、こう受けとめていいんですね。
  24. 森整治

    政府委員(森整治君) 一応そういう考え方で、団体と意見を調整をしておるわけでございます。
  25. 川村清一

    川村清一君 そこで、大臣の時間も非常に短いんですから、まだお聞きしたいことがたくさんあるんですから、今度は簡単にひとつお答えいただきたいと思います。  これからの問題は、これは大変なことだと思うんです。これは大臣水産庁長官も、いま頭が痛くてどうにもならぬということは十分承知しております。そこで、去年は全部で四百三隻ですね。これだけ減らしましたね、減船数、全部で。母船式独航船、太平洋中型、小型、日本海の流しから、はえなわから皆入れて。それで、これは何とか去年は処理したわけですが、今度はことしです。これ、どうですか。新聞などを見るというと、特に北海道の新聞なんか見るというと、とてもじゃないが、これを自主的に業界で話し合って減船数を決めなさいというようなことを言われたって、とてもとてもできるものではないというようなことが新聞に出ております。  私、きのう北海道へ行ったんですが、北海道の新聞を見たら、それはでかでかと各業界の代表の方が発言しておるようでありますが、さて、いまの状態の中で、いま水産庁長官が述べられたようなこういう数の減船が可能かどうか。これが自主的に一体できるのかどうかということが問題だと思うんですが、そうすれば、できるとすれば、相当政府が補償する。これは昨年、二百海里時代最初の年で大変なことになりまして、資料によれば、大体政府の交付金が総額で七百九十六億、融資の対象額が五百四十五億ですか、合計で千三百四十二億という莫大な補償を政府がしておるわけです。お金を出しているわけです。そういうような結果、去年は何とか始末がついたわけですが、ことしは一体そういうことが可能なのかどうか。大臣いかがですか、御見解は。
  26. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) ことしの減船に当たりましても、昨年の減船のとった措置にならいましてやらざるを得ないであろうと思います。ただ、去年とは違いますのは、ことし減船されます方が共補償をしておる、したがって、これは共補償できなくなるわけでございますので、これを一体どうするかということでございます。また、もう一つの新しい問題は、昨年は残った方が共補償できましたが、ことしのような実態では残ります方もまた共補償ができないのではないか、こういう去年よりは二つの問題が加わってくることも事実でございます。  この辺を含めまして、いかなるやり方が適正であるか。ただ、財政上何ぼでも出せるというものではありませんで、私もきのう業界に申し上げたのでありますが、大使館に行ってまいりまして、大使館の建物を見ましたときに、田舎の役場でももっといいぐらい非常に厳しい大使館で大使館員が仕事をしておる、それぐらい国家財政というものは厳しいものであると、こういう一面も考えつつ、したがって国家財政は大事に使わなければなりませんが、出さなければならないものは出さなきゃならぬ、そして安定をさせるものはさしていかなきゃならぬ、こういう姿勢でこれからどうあるべきかを検討したい、こう申したところでありそのようにしてまいりたいと、こう思う次第でございます。
  27. 川村清一

    川村清一君 そのとおりだと、おっしゃっているとおりだと思います。それは自主的に減船をしなさい、そして業界でもって決めなさい、それから政府も補償するけれども残る者が共補償しなさいと、こういうようなことをことしは出しても、これはとても決まるものではないと私は考えております。いま大臣がおっしゃたように、残っている人が昨年の共補償の借金を皆しょっているわけですから、とてもとてもできる相談ではないと思います。しかも、漁獲量はずっと少なくなった、高価なベニザケ、シロザケはこれも少ない、こういうような条件、情勢ですね。そして、これから先来年はどうなるのか、再来年はどうなるのかということも確実なことはわからない、こういう情勢。そして漁期は、これは五月一日出漁ということになるわけですが、これに間に合わせていろいろ話し合いを進めていらっしゃると思うんですが、厳しい国家財政の中でもよほど思い切ったことをなさらなければとうてい不可能だと思います。これは五月一日に間に合わせてやるんだという決意を、ひとつ示していただきたいと思います。
  28. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 私が早期決着を見ましたのも、五月一日にはどうしても出したいと、こういう考え方でございますから、何とか業界の協力理解、そしてまた財政当局の理解も得まして、あるべき姿で決着を見て五月一日には小型船、中型流し網から出るわけでありますけれども、出漁に間に合うように措置をしたいと、こう思っております。
  29. 川村清一

    川村清一君 これは水産庁長官で結構でございますけれども減船隻数が、大体推定隻数がさっき出されました。それと、それに乗っているところの乗組員、漁業労働者、この数が私の計算では三千人ぐらいいるのではないかと思うんですが、この方々の雇用対策の問題が当然出てくるわけです。これをどうするのか。それからサケマスの水産加工形態が非常に多いわけです。これは本当に零細を含めて、言うならば、北海道だけでも三百ぐらいの企業体があるんではないか。そしてそこで働いている労働者の方々、御婦人のパートの方なんかも入れますというと九千人ぐらいはいるんではないかと、こう推定されるわけでありますが、こういう企業に対する救済措置、またそこで働いている方々の雇用対策の問題、構造不況で大変な事態にまたこういうような失業者が出てくるんですが、これをどうなさろうとしておるのか。  それからもう一点、これは大臣にお尋ねしなければならないんでありますが、たとえば大臣の選挙区であるところの釧路とか根室とか、こういうところはもう日本有数の、釧路なんか日本一の水産都市、水産の基地であります。特にサケマスはこれは根室が基地になるわけでありますが、このように船は減る、漁獲量はうんと減るということになりますれば、漁業者はもちろんのこと、水産加工も当然、そして関連産業としましては、これは先ほど触れませんでしたが、母船式の基地は函館ですから、網をつくる製網業であるとか、それから魚の箱をつくる企業であるとか、それから魚を運ぶ運輸、輸送に当たっているそういう企業あるいは漁船にいろいろ装備する電気器具ですね、そういうものの商売をやっている企業、こういう各般の企業に非常なこれは影響を及ぼすことと、今度釧路とか根室とか函館とか、この漁業基地の自治体の受ける財政的な負担といいますか、今度は財政収入が減るわけですから大変なことになるわけでありますが、こういう自治体に対する一つの対策。  それから、魚が減りますからどうしても魚が上がるわけですね。いまもう魚は上がってしまって国民皆さん方は魚離れ、これが現実の状態でありますが、こういう問題、いわゆる価格問題、消費者対策、こういうような問題にどのように対処しようとしておるのか。これらの問題が出てくるわけです。これらの問題に、細々と数字を挙げて申せとは申しませんが、ひとつ大臣のこういうような考え方でこういう施策をやって、そしてできるだけ手厚い対策によって心配をかけないんだというようなことを、ひとつここで明らかにしていただきたいと思います。
  30. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 今回のこの措置によりまして受けます影響は、海に働く漁船の方々あるいは関連加工業、自治体等々幅広いものがあろうと存じます。この点につきましては、昨年行いました北洋減船対策というものがございますので、その例にならいまして政府で手を打つべきものは打ちますし、また消費者対策等の魚価等については指導すべきものは指導すると。これからどういう影響を与えますか、減船の数が決まりましてそしてその対策を講じつつ、一方ではそれに関連いたします対策についても十分措置をしてまいりたいと、こう思っておるところでございます。まだ減船その他について話し合いがついておりませんので、そこまではいっておりませんけれども、北洋でとりました措置はとってできるだけのことはしたいと、こう思っておるわけでございます。
  31. 川村清一

    川村清一君 いまの時点ですから、ここで細々とこの対策はどうだ、この対策はどうだということをお聞きしてもお答えできないことはこれは十分わかりますから、これ以上お聞きはしませんけれども、とにかく大変な事態が起きるんだということだけ御認識をしておいていただいて、それでやっぱり政府の責任でそれに対処してきちんとしたことをするということを、ここで確約していただきたいということが一点であります。  それから、冒頭大臣の御報告の中に、今度の裁判管轄権の問題、これは旗国主義でやるんだと、これは当然だと思います。よかったと思っております。  そこでお聞きしたいことは、日ソ漁業条約のもとでは北緯四十五度以北をA区域として、A区域の中はソ連監視船がこれを監視しておったわけです。それからB区域になりますというと、ソ連監視船はこの中に入らない。向こうは入れろ入れろということを強く主張してまいったが、毎年これを拒否して去年までは入ってきてないわけです。そして、日本の漁船にソ連監視官が乗って監視をしておったということになりますが、今度は日ソ漁業条約がなくなって新しい協定、新しい時代に入りまして、そして操業区域にはA区域だとかB区域だとかという区別がないような状態になりましたね。そうしますと、ソ連監視船というのは、いままでのように四十五度以北といったようなことでなくて、要すれば、今度協定された全水域にわたってソ連監視船は入ってきて監視することになるのかどうか、この点を明らかにしていただきたい。
  32. 森整治

    政府委員(森整治君) 先生御指摘のとおりに、従来はA、Bの区域ということで分れておりました。今回は、その区分がなくなってしまったわけでございます。したがいまして、今回公海につきましては共同で取り締まる。この共同取り締まりという言葉の意味でございますが、それぞれの監視船監視に当たるということになるわけでございます。ソ連監視船が従来入れなかった下の方に来まして監視をするということは、今回は境がなくなりましたからそういうことに相なろうかと思います。ただし、これは公海に限るということでございまして、日本の二百海里、アメリカの二百海里はこれは別でございます。
  33. 川村清一

    川村清一君 そんなこと、水産庁長官よけいなことです。二百海里の中にソ連監視船が入ってくるなんて、日本監視船ソ連の二百海里の中に入っていったり、日本の二百海里の中にソ連監視船が入ってくるなんて、そんなばかなことがあったら大変なことでしょう。そんなこと言わなくたって、そんなことあったら冗談じゃないですよ。私が言うのは公海ですよ。ですから、いままでのわれわれの感覚は、領海、これは二百海里時代になってからは、二百海里の海域の中にある資源というものはその沿岸国の主権がこれを管理すると、こういうことになった。それ以外は公海だ。いままでは領海以外は公海だった。ところが今度は、領海のほかに二百海里というものができた。そこが変わったんだ、去年から。しかし、公海の漁業はこれは自由である。公海漁業の自由、これは原則であってわれわれの頭にこびりついているこれは思想なんです。  ところが、今回は公海におけるサケマス漁業をこれを規制されたんでしょう。そうでしょう。サケマスに限ってだよ。それは、遡河性魚類というものは母川国主義で母川を持つ国の主権がそれを管理するという、こういう世界大勢の中でこういうようになったのだから、したがって、公海の漁業は自由であるというこの思想をわれわれは払拭しなければならない時代に来たんだ。ところが、いままでは公海であっても、四十五度以北はソ連監視船監視し、四十五度以南には入ってこなかった。これを抵抗しておって、ずうっと抵抗して入れなかったんですが、ことしは入ってくるんでしょうということです。そのことだけ答弁すればいいわけです。そこで、そういうことになれば、いろいろなこれからトラブルが予想されるわけでありますが、どう対処しようとなさっておりますか、私は具体的に申し上げませんが。
  34. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 御指摘のとおりでございまして、A、Bの線がなくなって、公海における母川国が主権を有する——主権と言ったら言い過ぎかもしれませんが、管轄できるサケマスをとるに当たりまして、数量はどうの、水域はどうの網はどうの、いろいろの規制をお互いの間で約束をいたしたわけでございます。そこで、約束されたことが守られておるかどううかということは双方にとって責任のあることでございますから、お互いに監視をすると、これもやむを得ないことではないかと思うのでございます。ただ、その結果について、母国であるからと言ってわが国の漁船の裁判権ソ連側に与えるわけには断じていかないと、これがまさに公海であるということを主張いたしまして、向こうものんでくれたわけでございます。  したがいまして、監視船が、この船が操業区域を割っておったとか、あるいは操業期日を超えておったとか、あるいは網をたくさん持っておったとか、とるべき量以上のものをたくさんとっておったとかというような違反を指摘することまではソビエトわが国もできますが、ソビエト監視船もできる、ただしそれに対してどういう措置をとるかということについてはわが国が行う。しかし、わが国が行うに当たりましても、向こうとその規制についてどういう基準でやるかということについても大体話し合いをいたしまして、いろいろ向こうからも厳しい条件はありましたが、なるべく少ない規制ということで、まあ初回については二週間程度操業停止と、二回以上激しくやった人はその漁期ぐらいは休んでいただく等々、休んでいただくことを中心にして、罰金案もございました。  ソビエト式といいますか、二百海里の中では即刻罰金を科して召し上げるというような厳しいものもありましたが、わが国で裁判をしないで罰金を取り上げるということは法治国家としてできないということも申し上げて、行政上できる措置だけをとると、こういうことでやってまいりましたので、そういった極度な累犯を起こさない限りそれほど大きな罰則はかけないと。しかし、監視だけはやっぱり十分やって、お互い違反がないようにする努力だけはしていきたいと、こういうことに基本的にはなっておるわけでございます。
  35. 川村清一

    川村清一君 まあ裁判権は旗国主義でありますから、その漁船の所属する国の主権が裁判権を持っておるわけであって、これは異議がないわけであります。しかしながら、ソ連監視船がずっと南の方にも下がってきて監視するわけでありますから、それはちょっとお聞きしたいんですが、長官、そのことは、太平洋小型も日本の二百海里の外に出た場合にはその辺まで来るわけですか、その辺どうなんですか。ということは、よくのみ込めないからもう一回申し上げますが、いまの操業水域というのは、日本列島からずっと離れたところでありますが、漁業をやっておる太平洋小型や日本マスのようなものは、いわゆる小型ですから日本沿岸でやっておるわけです。沿岸と言っても二百海里の外に出ますね、その辺にもソ連監視船が来て監視するのかどうか、これをお聞きしたいわけです。
  36. 森整治

    政府委員(森整治君) 太平洋の小型流し網が公海、二百海里の外で操業できるようになっております。この部分については、そういう対象になり得るというふうに思います。
  37. 川村清一

    川村清一君 そうすると、もう日本のもちろん二百海里の中には入ってまいりませんけれども、端的に言えば、私は北海道の一番南端の襟裳岬のところにいるんだが、襟裳岬から二百海里の外へ出るというと、その辺にはソ連監視船監視しておる、こういうことですか。
  38. 森整治

    政府委員(森整治君) 二百海里の外につきまして共同取り締まりという、共同というか共同で監視をするということでございますから、先生のおっしゃるように、ソ連監視船がそこを監視するということは、今回の考え方では認めておるということになります。
  39. 川村清一

    川村清一君 先ほど大臣から、今後十分海の秩序を守るために操業規則を十分守らせるということをおっしゃっておりました。これはきわめて重大だと思うのです。それはぜひやらなければ、大変なトラブルが起きまして、そしてこれはもう来年の交渉に即影響するということを私は心配して申し上げているわけですが、先ほど一番先に申し上げましたように、今度の規制措置水域に非常に重点がかかったということは、過去においてわが国の漁業者が、決められた事項をよく守っておらなかったというふうに向こうに勘ぐられておるというこれは実態を私は考えておるんですが、そういう点もあり、大臣の不在中に北海道では二件ほどいやな事件が起きております。  新聞に出ておりますが、たとえば九・何トンといって許可されている船が、実態はどこでどうしたのかわからぬけれども、漁業許可証にはトン数がちゃんと書いてあるんですね。ところが、実態ははるかにでかい二十トンぐらいの船で操業しておったと、そこに監視船が来て見たと、違うじゃないかというので、すぐ今度穴澗湾に連行されていって、そして罰金を取られて釈放されたというような事件、これによく似たような事件がもう一件出ておるというようなことで、こういうようなソ連側に対して不信感を持たせるような違反が次々と起きるようなことになれば、当事者は、船は罰金を取られることはこれは当然でありますが、これが他の方にも大きな影響を及ぼし、さては来年、再来年のこの交渉に重大な影響を及ぼすものと私は考えて申し上げているんですが、この漁業規則、議定書で決められたことを十分守らせるように、どういう手を打とうとなさっているのか、その点を明らかにしていただきたい。
  40. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) いま申し上げましたように、罰則としては行政罰として二週間の操業停止ということでございますし、累犯で反省の意思のない者はもっと長くということでございます。そこで、どういう取り締まり、何をしたときにどういう取り締まりをやるというようなことについては相当専門家の間で詰めまして、大体この辺のところはこういうようなやり方というようなことを詰めて、その辺を詰めまして、お互いに考え方が大きな開きがあったというようなことにならないようにして、円満に実効の上がる方法ということになっております。その場合、トン数が大きかった、少なかったというようなところまでは恐らくないのではないかと存じます。要は、向こうはとる量全体が秩序あるものであればいいという趣旨でございますから、そのトン数が大きくなったかどうかについては、向こうで詰めておるところでございますので、もう少し研究してみたいと存じます。
  41. 川村清一

    川村清一君 いや、トン数が大きかったというのは、サケマス漁船ではないわけです。水産庁の方では御承知だと思いますので、そういう事件があったということは事実だと思う。ですから、許可されたトン数と実際のトン数ははるかに違っておったと。それから最近は、何かソ連監視官はあれをもって実際にはかるそうですから、トン数は縦、横、高さをはかるというと、この船のトン数は何ぼかということがわかるわけですから、はかるそうです。そういうようなことで、今度はそういう頻度が、数が多くなるんじゃないかと思いますので、これは大事な問題ですから、十分これは監視しまして、指導しまして、そして私に言わせれば、行政罰をもっと強くしてもらいたい。もうそういう皆に迷惑をかけることなんですから、そして国の信用を落とすことなんですから、そんな漁業者はどんどんもう許可を取り消してしまったらいいんじゃないか、私はそう思います。罰金を取られるよりも許可を取り消されれば一番痛いわけですから、どんどんそういう悪質なのは許可を取り消す、これが私は国の態度でなければいかぬと思っております。しっかりやっていただきたいと思います。  それから、外務省の海洋法関係の方が来ていらっしゃいますね。ちょっとお尋ねしますが、いまジュネーブで第七会期をやっていますね。これはどのような状態なんですか。それで、見通しはどうなんですか。
  42. 久米邦貞

    説明員(久米邦貞君) ただいまジュネーブでやっております海洋法会議、これは第七会期に当たりますけれども、三月二十八日から八週間の予定で開かれております。  当初、議長問題、これは、従来海洋法会議が始まって以来議長を務めてまいりましたスリランカの代表が、本国の政変によりまして代表団から外されたものでございますから、後任の議長をだれにするかという問題、あるいはその代表団から外されたまま議長を続けるべきかどうかという問題で、当初二週間ほど手続問題をめぐりまして意見が一致しなかったために、実質問題の討議は始まらなかったわけでございますけれども、第三週目の後半から実質討議に入っておりまして、漁業問題は大体方向が固まってきているわけでございますけれども、現在一番問題になっておりますのは、深海海底の鉱物資源の開発の問題でございまして、これをめぐりまして、開発途上国と先進国の調整がまだついておりません。したがいまして、本第七会期は、この深海海底の開発問題が中心になっていろいろなワーキンググループがつくられて、これがまあデッドロックに乗り上げたような状態になっておりますこの問題を、何とか解決したいということでいま努力が続けられておりますが、仮にこの問題につきまして実質的な合意が今会期に達成されました場合も、なお一、二回の会期は必要かと思います。
  43. 川村清一

    川村清一君 後の方をちょっと聞き漏らしたのですが、まだあと一、二回というようなことをおっしゃっていましたが、そうすると、今回の第七会期ではこれがいわゆる決定はしないという見通しなんですか。
  44. 久米邦貞

    説明員(久米邦貞君) 今第七会期で、いずれにいたしましても、最終的な条約の形で海洋法条約というものが採択される可能性はございません。
  45. 川村清一

    川村清一君 日本政府態度をお聞かせいただきたいのですが、日本政府としては、この会期でもって決着をつけようとして努力されておるのかどうか。どうもあなたのお話を聞いていると、私はこの会期で何とか決着をつけてもらいたいというこういう考え方に立って質問しているんですが、あなたの、外務省の考え方では、どうもことし、今会期では決着しないようだというような——日本政府としては何でもかんでもこれで決めるように、まあ結果的にはならないかもしれないけれども、そういう方針で努力しているのかどうなのかということをお尋ねしたいんです。
  46. 久米邦貞

    説明員(久米邦貞君) 主要な懸案事項に関する実質的な合意の達成は、今会期においてもこれがうまくいけば可能かと思われます。  それで、日本政府といたしましても、代表団といたしましても、主要な懸案事項、先ほど申しました深海海底の問題が最大の懸案事項になっているわけでございますけれども、この問題について実質的な合意の達成に努力するということで、今回も閣議でそういう方針を決定いたしております。ただ、私が申し上げましたのは、仮に今回実質的な合意が達成されましても、条文の作成のドラフティングの問題が残っておりますので、そのためになお一会期ぐらいは必要かということを申し上げたわけでございまして、いずれにいたしましても、その場合はもう一回ドラフティングのための会期というのは避けられないという趣旨で申し上げたわけでございます。
  47. 川村清一

    川村清一君 中川農林大臣に申し上げたいのですが、私は何で海洋法会議というものを重視しているかと言うと、これはやはり漁業に非常に大きな関係があるからでございます。いま決まらない焦点は、深海開発、海底の資源のいわゆる分配といいますか、開発をだれがするかといったようなことでもって議論されているということも重々承知しているわけでありますが、と申しますのは、もう議論されておった領海十二海里の問題も、それから漁業専管水域二百海里の問題もこれは一つの大勢として決定しておるし、それから、母川国主義の問題も海洋法会議では大体大勢が決定しておって、この海洋法会議が決定されないままにどんどんどんどんと各国が勝手に自分でやって、そうして世界の海の秩序を乱しこんがらかしてしまった。その渦中に日本も入って、今日まで苦労しておるわけです。  そこで、この一九七六年の十二月十日に決めましたソ連最高会議幹部会令におきましても、これは暫定的な措置だと言っているんです。向こうの漁業専管水域二百海里の問題も、暫定的な措置だと言っている。いつまで暫定かと言うと、これは海洋法会議において結論が出ればソ連もそれに従うのだ、それまでの暫定的な措置だと言っているので、そこでやはり国際法的にきちっと決めるべきである。私は、イシコフさんにも直接申し上げたこともあるんですが、アメリカ、ソ連という世界の大国が、いま海洋法会議でいろいろ議論しておってまだ結論が出ないときに、勝手に二百海里という線を引いてしまって、世界のいろんな海洋秩序をこんがらかしたことは非常に遺憾であるということを申し上げたら、それはあくまでも暫定の措置である、国際法で決まればそれに従うのだということを言っている。  そこで、このサケマスの事項に関連したことで、これも御承知だと思いますが、海洋法会議の中に、遡河性魚種の場合、母川国が管理するけれども、この規定が母川所有国以外の国について経済的混乱を招来する場合はこの限りでない。さらに、母川所有国は、この魚種を漁獲する他の国における経済的混乱を最小限のものとするため協力するものと。この際、これらの国の通常の漁獲量操業態度、漁業が行われてきた全水域を考慮に入れるものとするというようなことが、非公式の単二交渉草案の中に盛られているわけです。ですから、早くこれを決めて、新しい海洋法というものを国際的に取り決めて、そうすると、草案の中にこういうことがうたわれておるわけでありますから、この文章をきちっと入れることによって今後の公海上の漁業、いわゆる母川国主義でありますけれども、いままでずっと実績のある、特にここの北洋の漁業というのは日本が開拓したんですから、決してソ連の国が開拓したのではないんですよ。まさに日本人が、特に北海道の漁民たちが命をかけて切り開いてきたところの漁業なんだから、これをまるまるゼロにするなんということになれば、日本の国益の上から言っても、また、われわれは先祖に対してまことに申しわけないことだと思うんです。  世界大勢世界の秩序は秩序として守らなければならぬけれども、しかし、できるだけわれわれの権益を守る措置、これを国際的にひとつきちっと決めていただきたい。だから、海洋法会議に重大な関心を持っているというのは、私どうも日本の外務省の態度は少し軟弱というよりも非常に消極的でありますから、実力大臣、しかも担当大臣中川さんはもう少し外務大臣に強く話をつけて、これを積極的にやらしていただきたい、こう思います。  時間がありませんので、最後に初村政務次官にお願いします。中川農林大臣ソ連に行って大変御苦労されてきましたが、初村政務次官は少しの時間ですが、韓国に行かれて当面の問題で苦労されてきたんで、それでお聞きしたいんですが、議論されてきたことは北海道の漁民にとっては重大な問題であります。北海道の沿岸を韓国の漁船がトロール、それと大規模の漁業によって操業いたしまして、そして沿岸漁民に対して大きな被害を与えていることは、これは御承知のとおり。  そこで、私は昨年四月の二十七日の本委員会において日ソの漁業、二百海里時代における問題をいろいろ議論した際に、この点はきちっと質問いたしまして、そして日本の二百海里法というものは韓国には適用しないと。これは法十四条によって適用除外されておりますが、しかし、日本の漁業調整規則によって北海道の沿岸に底びきの禁止ラインあるいはオッタートロールの禁止ラインを引いておる。ここは日本の漁船といえども資源を守るという立場から入れない、操業できない地域であると。この区域に対しては韓国は絶対入りませんなと、入れませんなと言ったら、いや二百海里は適用しないけれどもその点は入れないという、それは確認できますか、確認するということを、鈴木農林大臣と私はここで約束しているんです。  ところが、もうどんどん入ってきている。そして、領海まではもちろん入らない。領海すれすれまで来る。領海から外はこれは公海ではないかと、公海は自由じゃないかと、二百海里法はうちの方には適用されていないのだからといってここで操業して、日本の漁船でさえ操業しないところへ入ってきて大きな被害を与えておるということは、これは水産庁の皆さん、北海道から大挙常に来て陳情されているから御承知のとおりであります。これを解決するために初村政務次官は韓国へこの間行くということをお聞きしたんで、私は敬意を表し、そしてその成功を祈っていたんですが、お帰りになりましたから、これはどういうことになったのか、お聞かせいただきたい。
  48. 初村滝一郎

    政府委員(初村滝一郎君) 去る二十一日に、北海道沖における韓国漁船の、いわゆるいま川村先生が申されました十二海里の外、いわゆるオッターラインの平均して約十八海里あるわけですが、この中で韓国漁船が操業して非常に北海道漁民とのトラブルがある、あるいはまた漁具、漁船等の被害等もあるというふうな陳情をかねがね聞いておったわけであります。そこで、一応日本の側の公的見解を聞きましたところ、韓国に対して二百海里を適用しないのだから非常にむずかしいのだというような話があるわけです。それで私は、これを、今回行ったのをきっかけに、特に農林大臣から、北海道におけるトラブル問題を余り刺激しないように自主的に解決をするように、もし民間関係で話ができない場合には、正規の外交ルートで両国間で話をするぞということを申し伝えてこいというふうな指示がありましたので、それを強く向こうの農水産部長官並びに水産庁長等と特にお話をしまして申し上げたわけであります。  私の感じでは、長官は、向こう大臣は、極力民間のベースで水産庁の間で解決をしたいという気持ちがいっぱいであります。でき得れば外交ルートによってしなくても、自分たちも積極的に民間と一緒になって解決をするからというお話がありました。そこで、とにかく大臣に対してはそういうことを強く申し上げて帰りましたが、その担当の水産庁長とじっくりこれは話しました。話した結果向こうの言い分もあるわけなんですが、こういう言い方をしているわけであります。  北海道沖で操業をしているトロール船は、従来韓国の漁船はカムチャツか沖で操業しておったのだ。これは韓ソ間の話し合いでやってきたわけですね。そこで、年間三十五万トンぐらいは漁獲しておったのだということであります。ところが、昨年の三月一日から韓国対ソ連の間が操業ができなくなったので、いま申し上げた昨年の三月一日から撤収をした。それが、結局北海道沖に回るようになったということらしいのです。そこで、大体北海道からカムチャツカに行っておった漁船の総トン数は七万四千七百トンあったそうです。二千トンの船もおるし、三千トンも五千トンもおったのでしょう。それを総計して七万四千七百トンであるけれども日本から非常にやかましく言われるので、総トン数を二万一千九百トンに下げておるそうです。そういうことで、紛争がないように被害等の調査にも十分協力する意味からして、漁業監督官を現場に派遣して忠実に仕事をやっておる。今後もそういう気持ちである。  被害に対する補償はどういう処置をしておるのかと、こう申し上げましたところが、客観的に見て証拠があればこれをお支払いしますというようような結論になって、現在八件の総額が四百七十九万六千円。これが、すでに民間の協議会から大日本水産会の北洋問題の協議会に書類を出しておるそうです、お支払いしますからということで。そういうことでやっておるし、さらにまた日本からの署名ももらっておるので、安全操業について両国が署名をした。したがって、日本の要求どおりに、五月の二十三日と四日に東京で正式な民間協議委員会というものが今度初めてできるわけなんです。ここでいろいろの問題を話し合いますというような、決意のほどがありました。私も、きのう北海道の方がそのことで来ましたので、民間の正式な委員会に何名ずつ出るのかと聞きましたら、日本側から七名、向こうから七名、計十四名だそうでございます。したがって、そこで話のできるものはひとつ詰めてください。できないものは後で相談をするが、外交ルートをもって正式にこれを訴えるという考えでありますよということでございます。  大体以上が今回行った経過報告であります。
  49. 川村清一

    川村清一君 時間がありませんからこれが最後でありますが、いまの次官の御答弁ではわれわれとしては納得できないわけであります。ぜひひとつ、初村政務次官も私が質問をしたときには、たしか委員席の方にお座りであってお聞きであったと思うのであります。  鈴木農林大臣は、このような答弁をされております。「この漁業水域法、これが成立いたしますればできるだけ早く政令も決定をいたしまして、直ちに韓国側と今度は政府間の協定を締結をいたしまして、現在のような無秩序な、履行されないようなことでなしに、この水域法の趣旨、目的が確実に実行されるように政府協定によってそのことを確実にしたい、こう考えております。」と、こういうふうに御答弁されておったわけで、その時点ではもう民間協定を結ぼうとして、民間の代表が行って何回も話ししてもらちがあかないから、そこで私が質問をいたしまして、そしてこの二百海里水域法をなぜ韓国には適用しないのかといったような質問から発展していって、そして政府が、水域法は適用しないけれどもこういうことは絶対ないようにやるという、こういう御答弁、これは約束されているのですから、これを早く実行してもらわなければ、もういまでも留萌の方の武蔵堆、とにかくたくさん行っています。それから、これはオホーツク海、網走の沖の大和堆、あるいはその時期によっては太平洋岸にやってくるわけであります。大変な被害を与えておると。  最後に一つ申し上げておきますが、これは韓国の地図ですが、韓国の周りにも、初村政務次官は長崎の方ですから十分御承知だと思いますが、ここに共同規制水域というのがあるわけですね。この共同規制水域わが国の底びきの禁止線、オッタートロールの禁止線にこれは匹敵する線ですね。この線の共同水域の中には、韓国の漁船も入ってこないんです。いいですか。これ、おわかりですね。この共同水域の中には韓国の漁船が入って操業ができない、資源を守るために、沿岸漁民を守るために。それと同じような思想で、わが北海道の周りにはその底びきの禁止ライン、そしてオッタートロールの禁止ラインがあって、ここには日本の漁船が入っていって操業のできない地点があるんです。これはやっぱり資源を守り、沿岸漁民を守るためにそういう線を引いているんですね。ここへ韓国の漁船が入ってきているんです。韓国の方には、韓国の漁船も入らないし、もちろん日本の漁船は入ってないんですよ。日本のこの周りの線には、韓国の漁船が入ってきておる。この事実。  私はここで、二百海里をなぜ適用しないんだと、こう言いたいんです。北海道人だから言いたい。言いたいけれども、これを適用すれば、あなたの長崎県だとかあの辺に大きな影響があるからそこまでは私は申し上げませんが、せめて、韓国の共同規制水域と同じような線の北海道の周りの線に入ってくる、こんなことを許しておったらこれは大変なことじゃないですか。西の方の漁民のために北海道の漁民は犠牲になれという、そういう思想ですよ、これは。私は北海道の者としてそれでは納得できないので、これは強硬にやってもらいたいということを要望いたしまして、まだまだお聞きしたいことがたくさんあるんですが、時間ですからやめます。  そして、きょうそのほかに、所信表明ですから農業や林業のことについてもお尋ねしたいと思いまして、担当の長官や局長さんにもおいでいただいておりますが、せっかく来ていただいて何も発言する機会を与えないで申しわけなく存じておりますが、こういうことですからどうぞ御了承いただきたいと存じます。  以上で私の質問を終わります。     —————————————
  50. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、河田賢治君が委員辞任され、その補欠として市川昭一君が選任されました。     —————————————
  51. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 まず、二百海里時代母川国主義時代を迎えまして、しかも背景には日中平和友好条約、尖閣列島のような複雑な問題のある中で、日ソ漁業交渉に大変な決意と熱意で当たられた中川農林大臣及びその関係者に対しまして、心から敬意と謝意を表する次第であります。  大臣の御努力でとにかく無条約状態は避けられたし、短期間の交渉で七千トンも漁獲量の積み増しもかち取りましたし、最も困難と思われました公海サケマスの沖どり問題については、今回の協定で毎年協議することになったというのは大変な収穫であります。それと、ソ連の当初案に比べまして、部分的にではありますが、操業区域に穴をあけていただいたということでありまして、私は大変大きな成果があった、心から御苦労さんと申し上げる次第であります。  外交の機微に触れる問題もあるかと思いますので、差し支えない範囲においてお答え願いたいと思いますが、ある新聞にこういう記事が載っております。今回のサケマス交渉は、「日中問題が直接にではないにしても、微妙な影を落としたことは事実である。沖どり禁止をめざすソ連が、今回、一気にゼロとはせず、四万二千五百トンまで認めたのは、日中平和友好平和条約締結に慎重派の中川農相に対する配慮だとの見方もできる。」十八日になって千五百トンを増枠したのは、これはいわばイシコフ漁業相の親ソ中川農相へのおみやげだと書いてある。まあほかの新聞も同じ論調で書いたものがたくさんあります。  そこでお伺いしたいのでありますが、もしそうであるならば、ソ連は、同時に来年以降のサケマス漁業の可否のげたを日本の対中姿勢に預けたということになろうかと思うんでありますが、その点についてひとつ大臣の感想をお伺いしたいと思います。
  52. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) まず、評価につきまして、おほめをいただきましてまことにありがたいのでありますが、おほめをいただくような結果ではなくして、厳しい事態にあったことに対して深く反省というわけではありませんが、遺憾な結果であったなあと、こう私自身に言い聞かせておるところでございます。  そこで、今度の折衝に当たりまして、対中国関係が影響したのではないかという話もございますが、私が交渉する限りにおいては、そういった中国との関係等は感じませんでした。ただ、非常に好意的に話し合いをしてくれた。日程をとるにいたしましても、あるいはまあ細かいことではございますが、宿の手配にしても、至れり尽くせりで協力をしてくれたことは事実でございます。また、福田総理の書簡に対しても、コスイギン首相がじきじき会ってくださって、いろいろと話し合いの場もつくっていただいたということで、姿勢としては非常に友好的に話し合いができたことは事実でございます。まあ得た結果が、向こう側がどう感じてどう対処したかは私にはわかりませんけれども、私としては、今度の問題の、厳しかったにしてもよかったにしても、資源問題について今後のサケマスどうあるべきか。過去を振り返り、現状を見、将来を語り合った中に出た成果であると、こう思っております。  なお、これ以外に問題のありました根室におけるコンブ操業が中断をされております。この問題も、日ソ友好親善のかけ橋ではなかったのだろうかと。イシコフさんと高碕さんの間でできた非常にいい橋が、去年からこれがこわれてしまった、何とか日ソ親善のためにもこれを復活してもらいたいとお願いをいたしまして、理解をいただき、亀長水産会長が、民間協定でございますから残りまして、いままじめに話し合いが進められております。また、懸案であります共同事業——合弁合弁と言っているものでございますが、これもひとつまじめに話し合おうということになっております。  なお、来年の二百海里における操業問題を話し合う日ソ、ソ日暫定協定についても、今度はイシコフさんをお招きしてそして話し合おうということに対しては、ぜひお伺いしたいと、十月とも言っておりましたが、期日は定かでありませんが、秋には見えて、飛行場での話は、ひとつ前向きにお互いによくなる話し合いをしようではないかということでございました。  このように、サケマス交渉のみならず、コンブの問題、共同開発の問題、あるいは来年の二百海里の問題等、非常に友好的な間で話し合いが行われた。結果は厳しいものもありますが、それは資源から来た厳しさであって、日ソ友好ということでの話し合いはできたし、そういう雰囲気で話し合いが進められたと、こう思っておるわけでございます。
  53. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 長官にお尋ねしますが、違反漁船に対する裁判管轄権の問題で旗国主義を貫いてきたわけでありますが、新しい日米加条約がこの点を協定本文に規定しているのに比べまして、日ソ条約の方が議定書に書き込んだということは、どういう経過があるわけでしょうか。
  54. 森整治

    政府委員(森整治君) 日ソの漁業協力協定の中に、その中にわが国としましてもサケマス漁獲に関する根拠規定並びにいま御指摘の取り締まり、裁判管轄権を盛り込む日本案というのはあったわけでございます。ただ、ソ側がこれにつきまして難色を示しておりましたのは、恐らく毎年サケマスについては会合を持って漁獲量規制措置等を決める、その議定書で書けばよろしいという考え方があったと思います。ということは、要するに、将来五年にわたって何か言質をとられるようなことを協定自身に書きたくなかったのではないかということがあったと。日米加につきましては、これは従来の共同委員会によります漁業の委員会がございまして、そこで付属書に書いてございますいろいろな規制措置を勧告しない限り、変えない限り、事前にその条約を破棄しない限り、また一年間これはそのままずっと存続していくというたてまえが書かれておりますが、裁判管轄権につきましても条約の中で取り扱われておるというふうに、理解をわれわれはいたしておるわけでございます。
  55. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 裁判管轄権は、漁民基本的人権の擁護のために大変重要なものであります。お話のように、この議定書は毎年内容を変更できるものでありますから、形式的な効力は非常に低いわけでありますが、結局このことは、わが国の裁判管轄権を不安定な状態で是認したということになると思うわけでありますが、ことしはもう決まってしまった問題でありますからこれからの問題として、やはり日米加漁業条約のようなバランスのとれる形で私は処理していくべき問題ではないかというふうに思いますので、要望をしておきます。  次に、大臣は終始一貫して漁獲量水域をリンクさして交渉に臨んできましたけれども、結果的に禁漁区に大きな風穴があかなかったことは大臣報告のとおりであります。その風穴のあかなかった状態で漁獲量を上積みさしたことで、日本漁船の操業はこれまでに比べて非常に効率が大幅に落ちる、特に三割減船とか禁漁区の拡大とか、あるいは何といっても漁期が五月一日から七月の三十一日まで縛られたとか、あるいは尾数制限とか、魚種別割り当て量の設定とか、いろいろ手かせ足かせがあるわけでありますが、こういった状態で、四万二千五百トンという大臣が苦労して積み増された漁獲量が本当に確保できるかどうか、空枠になるおそれがないかどうか、その見通しについてひとつお尋ねしておきたいと思います。
  56. 森整治

    政府委員(森整治君) 先ほど来大臣からもお話がございましょうに、三角水域それ自身がシロなりベニザケの非常に回遊の多いところである。だから、そこはなかなかあけがたいのであると、こういう向こう側の主張があったわけでございます。それを裏返しに言いますと、なかなかベニ、シロがいいところがあけてもらえなかったということで、マスが主力になるということはあると思います。ただ、そうは申しましても、その他の水域もあるわけでございまして、われわれといたしましては、ともかく五月一日からもう出漁するということで、操業ができるような状態を早くつくって、せっかく決められたクォータをみんなで達成できるように努力したいというふうに考えておるわけでございます。
  57. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 ひとつ早く出港して、そういう空枠に終わらないような御努力をお願いいたしたいと思うのであります。  次に、共補償の問題で、先ほど川村さんから触れられましたが、去年は減船を免れても何とかやっていけるという見通しがあったから共補償という事態が成立したわけでありますが、ことしは、残されたとしても自信がないという声が非常に強いわけであります。この共補償が、さっきも大臣御答弁されたとおりなかなかむずかしいということであれば、これは政府交付金をもう少し増額するというようなこと等が具体的な問題として出てくるわけでありますが、その点が一つ。  それから、先ほども話が出ましたが、このサケマスの大幅削減に伴って関連企業が非常に難渋するだろう。特に零細企業の多い水産加工業者の対策をどうするかという問題。それから、三、四千人の離職者が出るわけでありますが、これらの交付金や補償金が本当に末端の漁業労務者、離職した労務者に本当にうまく渡っているのかどうか、そういう問題について、やはり水産庁としてはきちっと追求すべきではないか。それから、これはある県で伺ってきたことでありますが、せっかく減船された交付金や補償金があるわけでありますが、これがふなれな土地投資等に使われて、本人も非常に困っている。変な場所を買ってしまって困っている。買われた公共団体も迷惑しているというような事例もあるようでありますが、せっかく転職をされて再生の希望に燃えて努力をしている者が、こういうふなれなものに手を出して苦しんでいるということになってくれば、これは非常に問題であります。ですから、単に補償料を払えばいいということではなくて、もっと親身に、これはほかの公共事業なら全部やっておることでありますが、生活再建対策についての行政指導をもう少し強化する必要があるのじゃないかと思うのでありますが、その点について御答弁をいただきたいと思います。
  58. 森整治

    政府委員(森整治君) 第一点の救済措置に関連いたしまして、いろいろ乗組員の問題がございます。これは大体推計でございますけれども、母船を含めましてもし三割ということで減船をすると、こういたしますと、約四千人が職を失うという可能性がある。ただ、いろいろ御承知のように、サケマスは裏作兼業でやっておりまして、サケマスのほかに、あるいはカツオ・マグロなり、イカなり、あるいはサンマなり、そういう漁業をあわせてやっておる場合が多うございますから、大体いままでの、昨年の北洋の減船対策の実例からいたしますと約半分、推定の半分が公共の職業安定所等にいろいろ参っておるということのようであります。そういたしますと約二千人、単純にそういう事態で計算いたしますと、そういうことに相なるのではないか。これにつきましては、いろいろ今後労働省なり運輸省とよく相談をいたしまして、昨年の例に準じた離職者対策についてのいろいろな措置を講じてまいりたいというふうに思っております。  それから、加工業者の問題でございますが、サケマスの関連の加工ということになりますと、冷蔵なり冷凍なり、かん詰めということになるわけでございます。北海道等ある特定県に相当限定されてくるということでございますが、サケマスだけを加工しているという形ではございませんで、むしろ北洋関係の魚種もあわせて原料の魚として扱って、それを加工しておるというのが一般的な現状でございます。したがいまして、これらのサケマスの原料の魚がそういう意味では一時供給が三分の二になるということになるわけでございますが、そういう問題でございますが、そういう加工場の操業でどういう著しい影響を受けてくるだろうかということにつきましては、昨年の例といたしましては、経営安定のために、融資枠二百八十億で長期の経営維持安定資金の融通を行ったわけであります。今回、その措置につきまして同様な措置をとる必要があるかどうかということは、今後の政策の判断事態の推移を見ましていろいろ判断をしてまいりたいというふうに考えております。いずれにいたしましても、これら加工業者の今後の操業状況というのを十分注意深く見守ってまいりたいというふうに思っております。  それから、いろいろ減船等に伴いまして交付金が出されるわけでございますが、その部分の中には、もちろん恐らく御指摘の一つは労務費の部分があるわけであります。これにつきましては、大体どういう考え方政府がいろいろ交付金を積算をしておるかという考え方につきましては、一応公表はいたしまして説明を十分いたすつもりでございますけれども、あと具体的に幾ら幾ら、こういう話になりますと、労使の雇用関係の問題まで立ち入るということになりますものですから、その辺は相互の話し合いでそれぞれ御納得のいただける線で解決をしてもらう。特に問題があるものにつきましては、御指摘があるたびにわれわれずっと調査いたしまして、十分従来とも指導をしてまいっております。  それから最後に、土地投資等につきましていろいろ問題を起こしているのではないかという御指摘でございますが、これにつきましては、確かに海上の方が専門でございまして、陸上の方に変更をするということにつきましてはいろいろふなれな面があろうかと思います。しかし、個々の減船者の経験なりそれぞれの地域等、実情がいろいろ異なると思いまして、一律、また具体的に指導を行うことは国といたしまして非常に困難な事情がございます。そこで、関係の漁業団体あるいは地方公共団体等の指導によりまして、個々の実情に即した生活の安定を図っていく、あるいは適切な事業転換が図られるように指導していくということにつきましていろいろ努力をするということではなかろうか。ちなみに、いろいろ減税等の税制上の問題、租税特別措置法による減税等の問題につきまして、政府といたしましてはいろいろ制度的に優遇措置を講じてまいるということを行っておるわけでございます。
  59. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 いまの制度を急激に変えるわけにはいかぬと思いますが、そういう問題がなるべく発生しないような行政指導を、ぜひひとつ強力にお願いいたしたいと思います。  それから、今回大臣が最終的に決められたサケマス漁獲の代償としまして業界から十七億六千万協力費を支払うということになっております。これはいずれにしましても、こういう費用はこれからのサケマス価格の値上げになって消費者へ返ってくる問題じゃないか。共補償が苦しくなればなるほど、これはまた業者が生きるために魚の値段を上げることにつながっていく問題じゃないか。五十一年のサケの価格は国内卸値よりも輸入価格が百五十円ばかり高かったんでありますが、五十二年は逆転いたしまして、輸入価格が国内卸価格よりも安いような状態があらわれております。ことし、こういった協力費や、あるいは共補償の苦しさでサケマスの価格が値上がりにつながってしまって、これが国民の負担になるんじゃないか。ちょうど牛肉と同じように、国内で生産され卸されるものよりも輸入した方が安く買えるという状態になるということになれば、これはサケマスは古くから国民にとって離しがたい親しみのある魚でありますから、これがそういう輸入価格よりも高くなるというようなことになれば大変問題だと思いますが、そのあたりの見通しとそれに対する対策についてお伺いしたいと思います。
  60. 森整治

    政府委員(森整治君) 昨年、確かに日ソ漁業交渉の中断という事態がございまして、いろいろそういう先行きの不安のために、サケマスの価格についきましても四月ごろから急上昇いたすということがございました。ただ、その後鎮静化しまして、本年につきましても三月以降横ばいの状況で推移をしてきているということでございます。  御指摘のような問題につきましては、コストであるからそれを上乗せして価格が上がるかということになりますと、これはやはりいろいろ卸売市場等の入札等の制度で価格形成が行われておるわけでございますから、価格に織り込んでいきたくてもなかなかいけないという事情もあろうかと思います。また逆に、今度はいろいろ価格をそういう事情で高くしようとする動きがございましても、昨年のやはり消費者の反応ということはすでに非常に業界では身にしみて感じておることでございますから、へたにつり上げても結局損をするという結果に相なったのが昨年の実態でございます。そういう意味で、消費者へのそういう影響等から取引が慎重になっているという事情もあろうかというふうに思います。  それからなお、在庫状況もわれわれ調査いたしておりますが、ことしなお在庫が比較的多いというようなこともございます。そういうことから、今後やはり適正な輸入というのは当然考えられると思いますけれども、いろいろわれわれも輸入価格それから国内の価格が不当につり上げられることのないように、今後とも十分監視もし、また指導もしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  61. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 それじゃ、大臣の御都合があるようですから、二、三まとめてちょっとお伺いしたいと思うんでありますが、二百海里あるいは母川国主義というものはもう国際的に確立されたと言っていいと思うわけでありますが、サケマス漁業は米ソ依存型ではもうこれ以上決してよくならない、ますます悪くなるという事実に立脚した対策が必要だと思うんであります。まあこれから日ソ対等の漁業交渉というのはできないのでありますから、一日も早くこのソ連のごきげん伺い外交から脱却しまして、抜本的な対策を講ずる必要があるんじゃないか。で、サケマスを含めましてわが国水産業の長期展望、こういうものを早く持つことが私は喫緊の要務であると思うんでありますが、これの長期展望、今後の見通し、対策等について大臣所信を伺いたいと思います。
  62. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 二百海里時代を迎えましたのが一昨年からでございますが、アメリカ、そして昨年はソビエト、そのほか二百海里でこれからニュージー、豪州等々ございますが、二百海里については日米の間でも、あるいは日ソの間でもある程度定着しつつあるのではないか。そこで、ことしから出てまいりましたのが、遡河性サケマスをどうするかということだろうと思います。そこで、日米加間においても話し合いができまして、本日調印の運びになる。そして、日ソ間におきましても五年間を目標にし、その後も自動延長という形になっておりますが、今度の調整がこれからの遡河性サケマスについての長期的な一つのスタートであろうということでございますので、せっかく決まりましたこのたびの調整を今後とも引き続いてこれが定着してやれるように、こういうようにしていくことが大事ではなかろうか。  毎年ごきげんとりというお話がありましたが、感じとしては、過去を振り返るとそういうこともないわけではありませんが、二百海里時代に対する二百海里の対応、それから遡河性サケマスに対する対応というものがようやく新しい時代に向かってスタートをした。これをひとつ定着をさしていくことが、大事なことであろうと思います。同時に、厳しい情勢もありますから、わが国の育てる漁業とか、あるいは沿岸資源を大事にする、こういった前浜の利用というようなことについてはこれまた真剣に考えなければなりませんし、あるいは魚資源の活用というようなことについても長期的展望に立って、十分踏まえて、国民に対する水産資源確保というようなこともこの際真剣に考えるべきだと。かくて、全体的にいま混乱をしております水産業界ではありますが、厳しい中にひとつ将来に向かって安定したものをつくり上げていくというのがいまのわれわれに課せられた任務であろう、こう思う次第でございます。
  63. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 いま大臣お話にもありましたとおり、前浜といいますか、二百海里内の増養殖、栽培漁業に力を入れるとの御答弁がありましたが、そこで大臣に注文をいたしますが、五十一年の四月二十日の閣議決定を見ました沿岸漁場整備開発計画、これは五十一年から七カ年でできた計画でありまして、総額二千億、予備費百五十億を含んで二千億の計画ができております。そのうち、いま大臣が力を入れますという御答弁された増養殖事業費は千億であります。これは七カ年で割れば、年間平均百四十億にすぎません。百四十億というと、各県でつくる中規模以下のダム、たとえば岩手県の綱取ダムとか福島県の東山ダムとか、県営ダムの小規模なダム一個分であります。この小規模のダム一個分で、日本全体の沿岸の本当に漁場整備開発ができるのかどうか。私は、少し大げさな表現でありますけれども、どうも水産庁は米ソ漁業交渉で破れる前に、国内で大蔵省との漁業交渉で破れているのじゃないかという気がするんでありますが、実力大臣中川大臣に、このについてぜひひとつ御答弁をいただきたいと思うんであります。
  64. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 水産庁としては、もう少し早くこういったことに気づいて事業量についても、あるいは予算額についても、もっとやるべきではなかったかという御指摘はあるいは当たるかもしれません。しかし、今年度の予算におきましては、たしか沿整事業は七〇%増ということで相当大幅に伸ばしてございます。いまのままでいきますと、七カ年計画を早期に達成、もっと早い機会に達成できるのではないかというぐらい力を入れたつもりでございます。現段階においては、これを七年と言わずに早く完成し、また新しい沿整事業に取り組むというようなことでやっていきたいとは思っておりましたが、今回参りまして、さらにこの事業は促進をしなければならないと。外国に負ける前に大蔵省に負けるという御指摘もありましたが、そのようなことのないように、これは決意を新たにいたしておるところでございます。
  65. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 力強い御答弁をいただきましたが、七〇%の伸びというのは根っこが小さいわけでありますから、率で議論しても私は大した話にならない。いつも思うんでありますが、水産行政のようなものはなかなか金が回らないというように感じます。一つは、日本農林大臣が非常にかわり過ぎるんじゃないか。今度の漁業交渉を見ていましても、相手のイシコフさんは三十年以上も在任期間があって一番漁業交渉については生き字引きでありますが、日本農林大臣漁業交渉のたびにかわっているというていたらくであります。私は、やはり中川農林大臣は非常に適役でありますから、これから四、五年とどまって、水産行政の立て直しに大いにがんばってほしいということを、ひとつ要望しておきます。  それから、大臣努力でこの沖どり問題は毎年協議するということになりましたが、そしてまた大臣も、来年以降も沖どり問題で大きな変化がない、五年ぐらいは何とか同じような状態でいけるのじゃないかというふうに御答弁されておりますが、私は、ソ連があの人工ふ化施設のような恒久施設的な施設の協力を拒んで、入漁料に値するような協力費を受け入れたということは、何といっても、やはりこの恒久的な施設をつくれば、今後わが国に沖どりを主張する手がかりを与えるということを恐れたのじゃないかというふうに思うんであります。ここに私は、ソ連が沖どりをいずれにしてもやめてもらおう、資源保護の観点からやめてもらおうという真意があるようにも見えるわけでありますが、これに対処しまする道というものは、やはり日本の河川を整備して、日本の国籍を持ったサケマスを増殖することにあると思うんであります。  そうすれば、サケマスは完全に沿岸ないし河川漁業となって、国際的トラブルが解消するわけであります。サケマスの開発技術は、すでに確立されております。金をかければ、人工的にふ化放流してもその回帰率も北海道では二%以上ある。しかも、近い将来に一〇%以上可能であるというふうに言われております。コストも成魚一匹当たり百三十二円前後だそうでありますが、これが一匹数千円になる、投下資本に対して四年後には二十倍以上の漁獲高を上げることができるわけでありますから、この技術的に可能でしかも採算的にも有望であるサケマスのふ化放流をなぜ強力に推進しないのか。その点について大臣にひとつお伺いしたいことと、それから時間の関係上続けてお伺いしますが、サケマスの放流は太平洋岸では最近かなり盛大に稚魚を放流して相当の漁獲を上げておりまして、世界の学者も注目し出しているところであります。  ところが、日本海の方は、サケマスは昔に比べまして、昔はかなりとれていたものがいまはもう非常にとれないわけであります。五十一年の日本サケマス漁獲量実績十二万六千トン、これを沖どりと沿岸漁獲で比べてみますと六対三。私はこの六の方はふ化放流によって近い将来に回復できる問題じゃないかと思うんでありますが、そういう前提に立って大臣に、特に北海道出身の大臣にお尋ねしたいんでありますが、私はサケマスのふ化放流が進まないのは、何といってもやはり政府日本海側のふ化放流に手を抜き過ぎているんじゃないかというふうな気がしてなりません。いま放流の実態を見ますと、北海道だけで六五・五%、本州は三四・五%にすぎません。しかも、本州でも太平洋側が六一・四%、日本海側は三八・六%、北海道と本州の太平洋岸側に限られていると言っても過言ではないわけであります。  北海道に国営のふ化場がありますけれども、文字どおり国営でありますから、この卵をぜひひとつ日本海側にも放流するようにしていただきたい。それが既存権益を害することであるとするならば、ぜひひとついま言ったような趣旨から、日本海の沿岸日本の国籍を持ったサケマスをつくる。しかも、昔日本海側で非常にたくさんとれたサケがいまだんだんとれない。そういう観点から、北海道の国営ふ化場の卵が日本海に持ってこれないということであれば、ぜひひとつ日本海側に国営のふ化場をつくっていただきたい。この点について、大臣のひとつお考えをお聞きをしたいと思います。
  66. 森整治

    政府委員(森整治君) 大臣から御答弁をいただく前に、私からちょっとお答えをさせていただきますが、御指摘のように、数字的に見ますと、確かに北海道のオホーツクで回帰率が四・四二%、北海道全体で二%ということでございますが、北海道でも日本海側の回帰率は非常に低くて〇・三五%ということになっておるわけでございます。本州におきましても同様な傾向がございます。  そこで、北海道と本州につきますふ化場の助成の仕方につきましては基本的に異なっておりまして、北海道は国営、本州については民営ということで、国が助成をするということでやっておりますが、日本海側で回帰率が低いという事情につきましてはいろいろな問題あろうと思いますが、地域によって実情が異なるにいたしましても、概して増殖の主体ととる人との、事業の成果を享受する人とが異なっているとか、また増殖をする主体が零細な内水面の漁業者であるというようなことから、その経営に不安定な面があるというような問題があるのではないだろうかというふうに思います。そういうことで、国といたしましても、先ほど御指摘のように、卵の確保につきまして各府県に、各県の主要河川の育成を図るということで国営ふ化場の卵の移殖を実施をいたしております。  しかし、ふ化の放流主体、事業の主体につきまして、先ほどのようないろいろな沿革もございますので、国営のふ化場を直ちに全部つくるということまではまだ考えておりませんけれども、そこのところの何といいますか、放流のいろいろな機構、システム、これにつきましては、もっとわれわれといたしましても検討を加えまして、運営が全体的にうまくいくように、ある意味では規制も必要でございます。人のところのいまの沖どり、外国との間で沖どり問題が問題になっておりますけれども、国内でも実はそういう問題があるわけでございます。沖どりと言わなくても、やっぱり定置と放流している人が違ったりするという、また県別にいろいろな調整も必要だと、こういう問題もあるわけでございますから、その全体につきましてのひとつ整理をいたしまして、計画につきましては、ふ化場を増設して相当なサケマスの回遊、帰ってくるのを図ろうということでやっておるわけでございますから、そういうサケマスの増殖の増大の再生産計画というものを十分達成できるような、そういうシステムを早急に考えてまいりたいというふうに思っている次第でございます。
  67. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 いま長官からお触れになりましたように、実は母川国主義というものは何も国際間だけではなくて、私の県の秋田県と隣の山形県でも同じような問題が起こっております。山形はこのふ化放流に力を入れておりますから、日本海側では一番力を入れておりますから、これが母川に帰ってくる途中で秋田県の漁業者が横取りするという苦情でありまして、これは総体的に私はやはりサケマスが足りないことに起因しているんじゃないか。で、回帰率が非常に悪いという話がありましたが、これは技術的には私は金をかければ解消できる問題だという見通しを持っております。ぜひひとつ、その点について北海道の国営ふ化場の卵を日本海に放流できるようなシステムを考えるとか、それが可能でなければ新たに日本海側に一つぐらいは国営ふ化場をつくってもらうというようなことが考えられないかどうか、大臣の方針をひとつ伺いたいと思います。
  68. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 私も、数年前からこのふ化放流ということに着目をいたしまして、もちろん政府側ではありませんでしたが、農林省やあるいは大蔵省にお願いをして、ふ化場予算というものに熱心にやってきたつもりでございます。今回、日ソ交渉に臨みまして、ソビエトに対しても、そういうことでふ化場をつくり、その資源ソビエトにもよくなると同時に、わが国にもよくなるということに着目をして訪ソしたわけでございましたが、確かに向こう側関心は持っております。持っておりますが、御指摘のように、共同でふ化場をつくったらいつまでもとらしてくれという根拠を与えるのではないかという危機を持ったのではないかという発言もあったようでございます。そこで、関心を示さなくなってきたということも一つございます。それから技術的に、回帰率がソビエトで本当にあるのだろうかという単なる技術専門的な意見もあって、今回は両国のふ化事業についての資料の交換を行うという初歩的なところでとまっておるわけでございます。  いずれにしても、ふ化事業というのはソビエト協力するだけではなくして、わが国でももっともっとやってみるべき必要があるのではないか。これぐらい投資効率のいい仕事はございません。五年間あるいは四年間で必ず大変に大きな魚になって帰ってくるわけでございますので、この上とも力を入れて長期のものに備えなきゃならぬ。これは国家的な仕事でもあろうと思います。  そこで、民営、国営両方のやり方ありますが、ともどもにひとつ力を入れてみたい。本州の方は民営を中心としてやっておりますので、北海道の国営のふ化場から卵をどれぐらい回せるか等々一回洗い直しをいたしまして、総体的に国営ふ化場が必要であるという結論に達すればまたその段階で判断をすることとし、いまにわかに国営ふ化場結構でございますと申し上げられませんけれども、非常に大事な、もう目に見えて帰ってくることでございますので、対ソ交渉を粘り強くやると同時に、やはり国内においても、もっともっと熱心にそういった方面に力を入れるべきだと、こう思っております。どうか、この上ともひとつ皆様方の御理解なりあるいは御指導なり御協力をお願いしたいと思う次第でございます。
  69. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 大臣を縛りつけてまことに申しわけありませんが、最後に一つだけ。  大臣も記者会見でいろいろ言われておりますように、今後各国との水産外交というのはますます重要な意味を持ってくると思うんでありますが、大臣は今後の水産外交をどのように進めていく覚悟でありますか、具体的な方針を承りたいと思います。
  70. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) この水産外交というのは非常にむずかしゅうございまして、各国統一したものではないのでございます。アメリカとはアメリカとの関係があり、ソビエトとはソビエトとのいろんな関係がある。あるいは豪州、ニュージーランド方面ではそれぞれのまた事情が違う。やはり各国それぞれ固有の問題と取り組みながら、一つ一つ、大変苦しいことではありますけれども打開の道を考えていく。そのためには外務省なりあるいは総理の訪米なり、いろんな機会をとらえてきめ細かくやっていく以外にないのではないか。また、そのためにも今度は水産省というようなことで、わが国の農林省ということでは、農林大臣では交渉ではもうそこからばかにされるというようなことで、まず水産大臣であると言って乗り込めるようなことも、水産外交を展開する上で大事なことではないかと思います。  四、五年やったらどうだと、これも水産外交の一つのあれかもしれませんが、私としてはこんなにむずかしい仕事はない。もう一年どころか半年ぐらいで逃げ出したくなる気持ちでありますが、そういった配慮というものを総合的にしなければならないなあと、こうつくづく感じてございます。
  71. 野呂田芳成

    野呂田芳成君 大変、大臣から前向きの御答弁をいただきまして、ぜひひとつ北海道の卵の洗い直しについては積極的にやっていただきたいと思いますし、いま水産外交に触れまして水産省の問題も出ましたが、そういう問題につきましても、ひとつ前向きに検討を進めていただきたいと思います。どうもありがとうございました。  最後に、長官に、時間がありませんから一つだお尋ねいたしますが、大臣は帰国後の記者会見で日本の前浜の開発整備の必要性を非常に強調をしております。まあ日本沿岸では、一番おくれているのは何といっても日本海であります。海の砂漠と言われるぐらい、日本海は魚がとれません。これは資源がないからではないのでありまして、資源がとれるような状態になっていないからだと思うんであります。これは、金をかければ十分やっていけると私は思うんであります。日本海側が太平洋岸に比較して不振である理由は、冬の波浪が非常に激しくって冬期間は出漁できないとか、あるいは養殖施設は冬期間に持ちこえられないとか、あるいは夏はべたなぎなのに肝心の魚が来ないとか、あるいは漁期が春か秋かの短期間しかないのに魚の足が早くて一カ所に滞留をしないとか干満の差が極度に少ないとか、尾が深くて漁場として向かないとか、いろいろあります。しかしこれは、考えてみますと、魚礁をつくったり、浮き魚礁をつくったり、いろいろ金をかければ解消できる問題であります。そこで、大臣が言われるような日本海側の前浜について、水産庁としては今後どういう整備、開発を進めていく御方針かどうか、そのことをひとつお伺いしたいと思います。  それから、つけ加えまして、いま申し上げましたような日本海のハンディをなくするために、私は一つの提案をしたいと思うんでありますが、浮き魚礁を日本海側にぜひ設置するような研究を進めていただきたい。この浮き魚礁をやりますと、波浪の問題は解決をいたしますし、夏のべたなぎ期に魚が来遊しないということもなくなります。優良種苗を放流できます。それから、魚の足の速さをとめることができます。こういう問題が解決できます。  ただ、この問題をやるためにはいろいろ問題点のあることも事実であります。従来の漁港や港湾の技術では、五十メートルよりも深い場所についての研究が非常に不十分でありますし、それからそういう高度な技術は、失礼ですけれども、水産庁だけのサイドではなかなか手が出ないことも事実であろうと思うんであります。ただ、現実にいま山形県の鶴岡市の沖合いで、科学技術庁が波圧を利用した発電所の試験をやっておりますが、それを利用して消波施設をつくって養殖を考えてみようという動きもありますし、それから、いつも水産行政のかたき役になる石油の掘削のための海中構築物の技術、これは非常に高度な技術でありますから、これと水産行政を結びつけていくというようなことが、大変にこれからの日本海のような問題、浮き消波堤のような問題を解決していくための非常に示唆に富んだあり方だと私は思うのでありますが、その問題を含めてひとつ御答弁いただきたいと思います。
  72. 森整治

    政府委員(森整治君) 日本海の沿岸につきましての開発がおくれているのではないかという御指摘でございます。確かに御指摘のいろいろむずかしい問題ございますが、ということは、海岸線が単調だとか、先ほど御指摘のような季節風の問題だとか、いろんなお話出ましたけれども、そういうような問題ございますが、魚礁を設置するとか、あるいは県営の栽培センターを整備するとか、先ほどのようなサケマスの放流事業に力を入れるとかというようなことで、いろいろ今後開発がおくれているそういう砂浜地域の漁場利用ということも相当努力をしてまいりたいというふうに思います。現に、すでに五十三年の着工予定ということで、県営の栽培センターにつきましてもいろいろな御要望を受けてやっておるわけでございまして、先ほど額が少ないという御指摘ございましたけれども、沿整の事業等につきましてもさらに力を入れてまいりたいというふうに思います。  それから、後段で御指摘ございました浮き消波堤の問題でございますけれども、いままでのところ、水深の深いところでも設置できるといういろんな利点があるようでございますが、いままで私ども承知をいたしておるところでは、さしあたり波長の短い内海性の海域では技術的な見通しとしてはそれは可能であるということで、今年度からそれに取りかかっておりまして、いわゆる海洋牧場の一環としてそういうものも導入してまいるということをやっておるわけでございます。ただ、御指摘のような日本海の沿岸等、外洋性の海域におきましていろんな問題がございますので、さらにその開発につきまして各研究機関とも検討を重ねまして開発を進めたいと思っておりますが、先ほど先生御指摘のような問題につきましても一つの考え方であろうかと思いますので、私どもといたしましても十分今後検討をさしていただきたいというふうに存ずる次第でございます。
  73. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 本件に対する午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時五十分再開することとし、休憩いたします。    午後零時五十六分休憩      —————・—————    午後二時開会
  74. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  75. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 本日は、農林大臣所信表明に対する質疑なんでありますが、わが党としては、前回、農業問題、特に米の生産調整については大臣質疑を交わしておりますので、きょうは水産問題、特に今回のサケマス交渉につきまして、具体的にいろいろお伺いをいたしたいと思います。   〔委員長退席、理事山内一郎君着席〕  今回の交渉は、サケマス母川国主義資源保護という立場をとったソ連が、サケマスの沖どり禁止を当初から打ち出すという厳しい状況の中で交渉に当たられまして、中川農相としても大変御苦労されたのではないかと思います。そういった意味で、大変御苦労さまでしたという一応ねぎらいの言葉を言わせていただきたいと思います。しかし、いま農相の心は、難交渉が終わってほっとしたという気持ちと同時に、また、きょうの外の天気のように大変暗いものではないかと思うんですが、最初に、二、三、今回の交渉に当たっての率直な感想を伺いたいと思います。  当初、ソ連側は沖どりの全面禁止と言っておったんですが、最終的に四万二千五百トンまでの漁獲量確保できたということを考えますと、漁獲量ゼロから見れば、一応まあまあの成功と言わなきゃならないのかもしれません。しかし一方では、今日までわれわれの父祖が苦労して開拓をしたこの北洋での実績、こういったものが昨年からさらに漁獲量の大幅な減量、そして禁漁区の設定、こういう点で大変な後退を余儀なくされて、わが国サケマス漁は大変な打撃を受けたわけですが、今回の交渉の結果につきまして、農相としてはどのように考えておられるか、率直な感想を伺いたい。特に、交渉中はなかなか言いたいことも言えなかったけれども交渉を終わったいまなら言えるという立場も踏まえて、特に苦労されたところの苦心談等もお聞かせいただければと思います。
  76. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 先ほども御答弁申し上げましたように、昨年が二万トンの削減でございましたし、今年は何とか大幅な削減を避けて従来に近い操業ができるようにしたいと、こういう気持ちで参りました。そこで、それを確保するためには、従来のように、ただ魚をとらしていただくというだけではなかなかむずかしいであろう。幸い、イシコフ漁業相を初め、資源を大事にするためには人工ふ化場等をつくりたいという話も前々から継続してありましたので、そういった点については、思い切りひとつ協力をして、そして実績に近いものを確保したい、こういう気持ちで臨んだわけでございます。しかし、結果は約二万トンの落ち込み、そして大切な水域が閉鎖をされたということでございますし、約三〇%の漁船の削減をしなきゃならぬ、操業停止をしなきゃならぬということでございますので、結果は、何と言おうと非常に厳しいものに終わっております。したがいまして、まことに残念であり、また申しわけないなあ、操業を期待しておりました漁船の皆さんのことを考えると、何とも申しわけないという気持ちでいっぱいでございます。  ただ、向こうに参りましてからことさらに強く感じたことは、そういった漁業協力等による増殖よりは、むしろゼロにすべきであるという非常に強い態度が根っこにある。私の方は六万トンから若干下がってもという気持ちですし、向こうの方はゼロにしたいのだというところからスタートしておりますから、そこに非常に大きな幅がある。しかも、協力的な人工ふ化場は興味あるけれども、それをもって資源確保の代償とはいたさない。もしそれが漁区なりあるいは漁獲量確保するための措置であるとするならば、一切お断り、御返上を申し上げて結構でございますという話でございますから、あとは取りつくところと言えば、日ソ関係の親善のためにというくだりと、もう一つは、日本における漁民が長年操業してきたこの漁業がそのように大幅に削減されると混乱をする、しかも、零細、小さな漁民の集団である、母船六隻は別でございますけれども、独航船にしても、四八船にしても、零細企業者ではないかという二つの攻め方でお願いするより方法がないわけでございます。  この第一点の日ソ友好につきましては、大変に大切であるからこそ本当はゼロであるところをこれまでやったのだし、それに大臣もお見えになったから漁区も外しました、旗国主義も認めることにいたしました、大切な大切な小さいとは言うけれどもあの窓もあけまして、ずっと上まで操業できるようにいたしましたので、日ソ友好があるからこそそういうことをし、また、漁民皆さんの大きな混乱があってはならないからこのような措置をしたのでございますという回答でございます。  それにしても、また去年は二割以上の減船、ことしまた三割の減船を覚悟しなければならぬとすれば、私にはとてもできないことだと言うと、実は私、ソビエトの方でも、EC等で完全に締め出されて全部転業させなきゃならぬという苦しみもしておるのでございます。あなたばかりに、日本にばかり苦しみをおかけしているのではなくて、わが国も二百海里時代を迎えて苦しんでおるのでございますと、こういう式でございまして、なかなか一致点を見出さないというわけでございます。このまま推移いたしますと、漁期も迫ってまいりますし、無条約状態にもなりかねないときでございますので、非常に残念なことではありましたが、向こうが言いますように、ゼロではなくして、かなりの道も開いていただいたことでもあるし、ここで決裂するか否かをずいぶん迷ったのでございますが、やはり、過去を思い、また将来を思い、そうしてまたすぐ出かけなければならないという緊急性を考えまして、政府判断を求め、地元から来ております顧問団の皆さんともよく相談をして最終判断をし、調印にまでこぎつけてきた次第でございます。  このようなことがいきさつのすべてでございますが、やはり申しわけない結果とはなりましたが、二百海里時代あるいは遡河性サケマス母川国主義というものが、これはソビエトだけじゃなくて、アメリカにおいても、カナダにおいても、非常に情勢はわれわれの予想以上の厳しい事態に来ておるということを真に受けとめまして、これからまたしっかりとしたことを、長期的には前浜を大事にする、資源を大事にするということについてさらに一段と考え方を新たにしなきゃならぬ、こう思ったことであります。また、協力協定が五年に及ぶ、しかもその後は、一方が破棄通告すれば別でございますが、ずっと長い間日ソ漁業協力というものをやっていこうという協定ができたということも一つ評価されることであります。しかも、無条約状態というものがなくて済むということも意義深いことであろう、こう自分を慰めつつも、また申しわけないなという気持ちも錯綜しながら帰国したような次第でございます。
  77. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 一緒に参加された業界代表の一部の顧問の中には、こんな壊滅的な規制をのんでまで議定書を取り交わさずに帰国すべきだというような意見もあったように聞いております。国連海洋法会議の草案では、公海上のサケマス漁は伝統的な漁業国の利益を配慮する、こういった趣旨も盛られているわけなんですが、それを最終的にこういうような形で決着をつけて終わらしてきたというのは、農相自身端的に言って、ソ連のごり押しに押し切られたという感じを強くするのか、それともソ連側も十分に日本の実情なり、これまでの実績なりを考慮はしてくれたのだと、これがぎりぎりいっぱいのところでやむを得ないのだと、こう言うのか、端的にお感じを述べていただきたいと思います。
  78. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 申し上げましたように、二百海里時代あるいは遡河性サケマスというものが母川国主義であるということからすれば、ゼロにすべきだということも一つの考え方でございます。そういう厳しい中において四万二千トン、あれだけの水域確保できたというのは、まさに現実とあるべき姿の妥協点ではなかろうか。あれくらいのところまで、もうちょっとやってくれればなおようございましたけれども、まああの辺までやってくれたということは、やはり社会的混乱を起こしてはならぬという気持ちからやってくれたものであろうということでございます。  特に、イシコフさんという人は、日本の漁業については非常に厳しい面も持っておりますが、理解する面もある。要は、資源を大事にしようと、午前も御答弁申し上げましたように、あの地域は一斉にソビエトに向かって帰るサケマスの帰り道でございます。帰り道を他の国の漁船が来てこれをとってしまうということは、もうソビエトにとっては耐えられないことだというのは、従来ならそういうことも公海ですから余り言えなかったのでありますが、二百海里時代を迎えてほかの地域でそういうふうに非常に厳しくされたものですから、やはりソビエト国民に魚を与えなければならない責任者としてはなかなか踏み切れないところであったろうと思う。  そこでもう一つ、三角水域の下の方をあけていただきたいと言ったら、その下から来る分を押さえることだけはどうしてもできない、西から入り込む分は、これはもう従来の実績があるからいたし方ないと、イシコフさん自身の判断で下の方の窓をあけたのだと。そして、ずっと上までとれるようにしたのだと。であるから、下の方だけは御勘弁願いたいという誠意ある、理屈のわかったと言えばわかった、わからぬと言えばわからぬのでありますが、誠意を込めて話をされますと、それ以上けしからぬ、打ち切って帰ってと言ってみましても、漁期はおくれる、行ってはみたが何もなかった、むしろいままでの話もやめましたと言われるようなことになっては責任者として申しわけないことだと。百は望めなくても五十でもいたし方ないかなあということで、妥結に踏み切ったというわけでございます。
  79. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 わが国は、昨年の交渉、そして今回も、世界大勢になっていますが、このサケマス母川国主義というものをいまだ認めない立場で交渉に臨まれておると思うんですが、今回この四万二千五百トンまで大幅に削減をされたということで母川国主義を認めざるを得ないと、こういうことに今回の交渉の結果なったと、こう判断するんでしょうか。
  80. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 私は、手続上はどうかわかりませんが、わが国もすでに今回の交渉以前に遡河性サケマス母川国主義であると認めざるを得ない——政府委員からその辺のところを答弁させます。
  81. 森整治

    政府委員(森整治君) 昨年の五月のわが国の漁業水域法で「我が国は、漁業水域の外側の海域においても我が国の内水面において産卵する遡河性魚種については管轄権を有するとの見地から、国際的協調の下に当該海域における遡河性魚種の適切な保存及び管理に努めるものとする。」ということで、去年の漁業水域法で「国際的協調の下に」という言葉は入っておりますけれども、一応母川国主義考え方わが国としても表明をしておるというふうに理解をいたしておるわけでございます。
  82. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 そうしますと、世界大勢に従って、わが国サケマスのような遡河性の魚種については母川国主義を認めざるを得ないという立場に現在立っているわけでして、いよいよサケマスも国籍時代を迎えたということで、来年以降もまた厳しい交渉を覚悟しなきゃならないわけです。ソ連としては、ますますその漁区なり漁獲量規制強化の方向を打ち出してくるということは十分予測されるわけですが、こういった厳しい将来の見通しに立って、北洋サケマス漁の抜本的なわが国の対策というものをいまからとっておくべきじゃないかと思いますが、今回の交渉を終えて、それに対する大臣の将来の方向性、決意というものはどういうふうに固まっているんでしょうか。
  83. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) サケマスにつきましては、特にソ連との関係ではだんだんだんだん減ってきた。去年とことしと二年減ったので来年からなくなってしまうのではないかと、一遍にはなくならないにしても、数年にしてなくなるだろうという感想を持つ方もあります。しかし、私はそうは思わないのでございます。というのは、いままでは日ソ漁業条約でございますか、これに基づいてだんだん減ってきたことは事実でございますが、昨年は二百海里での調整ということでございました。これは、前の条約に基づいて二百海里の対応をしたということでございます。ことしからは、新しい日ソ漁業協力協定というものによって新しいスタートをした初年でございます。しかも、五年間の約束あるいはその後も継続される可能性を十分に盛った協定を結び、その第三条でございましたか、サケマスについての扱い方は議定書によって毎年決めていこうということになっております。  そこで、ことしの分を漁獲量はどう、規制はどう、区域はどうというようなことで今年度の分だけを決めてきたことも事実でございますが、それに当たっては、今年だけこれがこうでということじゃなくて、過去から振り返ってみて、このぐらいならまあお互い譲り合えるところであろうということで決めたことでございますから、来年になってまた資源量が違うから、ああだ、こうだというようなことは私は出てこないのではないか。ただ、操業方法等について無理なことがあったり、あるいは資源について新しい発見をするようなことがあれば、これは変化というものがあろうとは思いますけれども、一年、二年でそう大きな変化はない。しかし、わが方としても、操業については十分誤解のない操業というものをやらなきゃならぬという前提はあろうと思いますが、従来減らされたから今後も必ず減らされるのだということではなくして、私は新しい時代に向かって新しいルールで発足したのであって、先々のことはわかりませんけれども、ここ当分については大きな変化はないのだと、こういう確信のもとに対応してまいりたいと思う次第でございます。
  84. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 農林大臣、二十三日の記者会見で、また、きょうの午前中の質疑も、今年の取り決めを基本とした沖どりは五年間できると解釈しているんだと、こういう意味のお話があったんですけれども、この点についてソ連側お話しのとき、イシコフ漁業相とのそういう裏づけになる具体的な発言があったのか、あるいは今後五カ年間はこれぐらいの量の沖どりができるんだということを示唆するような発言があったのか、それとも中川農林大臣として単なる希望的な推測というか、解釈としておっしゃっているのか、その点もう少し明確にしてほしいんです。
  85. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) もちろん、希望的なものも入っております。しかし、それだけではなくして、交渉話し合いの中にそれを裏づけるような印象として受けとめていいなというような発言も、もちろん五年間大丈夫ですよとかいうようなことは毎年決めることでありますからありませんが、私の印象としては、ことしのことは来年以降も継続されるなあと、外交交渉事でありますから、こういうことということは申し上げられませんが、私は印象としてできるものと、こう思っておる次第でございます。
  86. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 印象程度ではどうも来年のことが大変心配なんですが、日ソ交渉、この暫定協定にしても今後のサケマス交渉にしても、出漁期の間近に交渉が行われるために、出漁期に間に合わせるために交渉を早くまとめたいと、またまとめねばならないというわが方の事情があるために、どうしてもソ連側に足元を見すかされるといいますか、何としても日本側の出漁期には間に合うように妥結したいという気持ちがあって、最終的にはソ連側の言い分をのまざるを得ないということが繰り返されるわけなんですが、この交渉の期日をもう少し早くして、出漁期に十分間に合うような時間をとって腰を据えて資源問題、これの科学的な調査裏づけ、また日ソ友好の実をさらに上げるために細かい点までいろんな角度から話し合いをする、こういった交渉をすべきではないかと思いますが、向こう側の作戦上、いつもぎりぎりに迫ってでなければなかなかやろうと言わないと、こういうことがあって非常にむずかしいことはわかりますが、この辺については今回この交渉の時期ですね、日本政府側としてはなるべく早い機会にやろうという努力をどれぐらいされたのか、その辺のところを伺いたい。
  87. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 御指摘の点もわからないわけではございませんけれども、御承知のように、この交渉は四月から始まったわけでございませんで、二月の十三日には交渉団が訪ソいたしまして、ここにおります松浦部長も、二月十五日から向こう松原公使を団長として真剣に交渉しておったわけでございます。さらに、四月に入りまして早々には、内村農林省顧問を私の代理として真剣にまた話し合いを進め、そして最終版に私が訪ソしたということで、ぎりぎりに行ってどさくさに議論をしたというものではないのでございます。議論をする材料は十分整え合って、そしてお互いに話し合って納得したり、納得できないものがあっても、仮に時間をかけたからといって解決できるものではなく、逆に言えば、時間がないから話し合いができないというようなことではなくして、話し合いだけは十分できるような日程のもとに行われておると、少なくとも今回の交渉はそういうふうに見ておるわけでございます。  ただ、御指摘のように、印象としてはそういうこともあろうかと思いますから、腰を据えての折衝ということについては、十分今後とも配意してまいりたいと存じます。
  88. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 漁業区域についてなんですが、北緯四十四度線、東経百七十度線と、米ソ二百海里線で囲まれた公海というふうに決まったんですが、日本の中型流し網漁船それから母船式サケマス漁にとって重要な区域で、大変大きな痛手になるわけですが、この区域が禁漁区になったこと、それから漁期の問題、またさきの日米加条約の条件等も考えあわせまして、どうもこの四万二千五百トンの漁獲量、三千二百八十万尾、この漁獲尾数というものが達成できるのかどうかちょっと心もとない感じもするのですが、この見通しについて伺いたい。  それからもう一点は、シロザケの漁獲量が四百三十万尾、ベニザケ百六十万尾、これまでとれることになりましたけれども、この禁漁区は特にベニザケの好漁場ですので影響が相当大きいのですが、協定に決められた分まででも確保が果たしてできるのかどうか、その見通しについて御説明ください。
  89. 森整治

    政府委員(森整治君) 御指摘のように、新たに設定されました禁漁区というのは、確かにサケマスのいままでの漁場で、大きなシロ、ベニの漁場であるということは間違いございません。だからこそ強くソ側はそこのところをふさぐという、禁漁にするということを、カムチャツカの両岸のシロザケ、ベニザケの保護ということで強く要請してきたわけでございますから、そういうことではありますが、したがいまして、残された水域での操業というのはかなり窮屈なものとなることは避けられません。しかし、五月一日から、早くから出漁いたしまして、四万二千五百トンの漁獲を早く達成をするということで手続を早く進めたいというのが、われわれの気持ちでございます。ベニにしろ、シロにしろ、濃密な操業によりまして限度数量まで漁獲し得るのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  90. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 今後資源が回復すれば、今回の漁獲よりもさらにもっととらせてもらう可能性もあるのだと、そういう交渉もしていくのだという先ほどお話もありましたけれども、やはり今後国内河川での増養殖漁業が非常に大事になってくると思いますけれども、午前中もお話ありましたが、昔は東北、北陸の河川ばかりではなくて、関東地方の河川までサケがとれていたという事実がありますが、今後この国内河川の増養殖に相当力を入れなければならないと思いますが、この点に関しての水産庁の見解、それから今後の対策、これをひとつ明確にしていただきたいと思います。
  91. 森整治

    政府委員(森整治君) 御指摘サケマス増養殖につきましては、昭和五十一年を初年度といたしましてサケマス資源増大再生産計画、これを立てまして、その計画に従いまして最終年の昭和五十五年度には約十五億六千万尾、これは五十一年度の四割増ということになりますが、十五億六千万尾を放流することを目標といたしまして、再生産の親魚の確保のための漁業規制の適正化を行う、指導するということと、増殖施設の整備あるいは増殖技術の開発あるいはふ化放流事業の運営に必要な予算の拡充強化を図っているところでございます。  先般来いろいろ厳しいサケマスをめぐります国際的な規制がますます強まってくるということが予想されますので、こうした事態に対応しまして国内のふ化事業、放流事業を拡充いたしまして、資源の増大を図るということに最善の努力を払ってまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  92. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 太平洋、特に北海道の太平洋側の方は非常に力を入れて今日まで取り組んできましたし、実績も上がっているのですが、午前中の審議にもありましたように、日本海側はきわめて回帰率も低いということで、ぜひ今後日本海側における特に沿岸漁業者の振興対策というものに相当力を入れていただきたいと思うんですが、この日本海側のサケマス放流場あるいはふ化施設、こういうものに対する将来への取り組み、これをひとつ述べてください。
  93. 森整治

    政府委員(森整治君) 御指摘のように、北海道におきましても、本州におきましても、回帰率はどうも日本海側の方が非常に悪いようでございますが、北海道と本州ではちょっとふ化場の運営の主体等が若干異なってはおりますけれども、午前中も御答弁申し上げましたように、それぞれの地域に応じまして、いろいろな従来からのふ化の主体なりそれの運営なりにつきましての体制がそれぞれの地域ごとに異なっておる。また、それだけの歴史的ないろいろ事情があるわけでございます。しかし、それが、いろいろふ化放流する主体とまたそれをとる人が違っていたり、あるいは増殖をする者が非常に零細な内水面の漁協等であるというような問題もございます。これらの問題をやはりいろいろ全体的に、その増殖と、またとる、それからその資金関係、そういうものにつきましてさらに検討を行いまして、何らかのやはり再生産のメカニズムを、機構といいますか、そういうものを確立すべき時期に来ておるというふうに考えております。水産庁といたしましても、全般的にその増殖をさらに進める体制をただいま検討いたしておるところでございます。
  94. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 それから、以前ソ連資源枯渇を理由として沖どりの削減を日本に迫ったときに、その見返りとしてソ連領海内でのサケマス漁獲日本に認めるということを提案してきたことがあったというふうに聞いていますけれども、今回のように、サケマスの沖どりがだんだん締め出されてくる。まあ来年以降はますます規制が強まる可能性の強い中で、サケマス漁の漁船救済の一つの方法として、この点を再度見直すべきじゃないのかと。共同増殖に協力をする、あるいは入漁料を払って一定の漁獲量を認めてもらうといったやり方についての水産庁の考え方、これをお伺いしておきたいと思います。  また、この点について考え方があれば、今後ソ連と話し合う用意はあるのかないのか、この辺を明らかにしていただきたいと思います。
  95. 森整治

    政府委員(森整治君) 今回、大臣が訪ソされました中に、いろいろ共同事業とかそういう項目の議題もございました。それはそれなりにいろいろ話が、ただいま亀長大水会長が残られまして話を詰めておられますが、その中でサケマスという問題については、ただいまどちらからも議題が出ているわけではございません。まあ二百海里が引かれまして、サケマスの漁業がその外へ、中では禁漁になったわけでございます。そういういろんないきさつ、事情からいたしまして、いま直ちにそういうことで何か二百海里の中である一定のサケマス漁を考えるということは、ちょっと時期尚早ではないだろうかというふうにも考えます。いずれにいたしましても、どちらからもいまそういう話が出ているわけではございません。一つのそれは考え方としてはあるかもしれませんが、いまのところ、いままでの経緯からいたしまして、ちょっと少なくとも時期尚早ではなかろうかというふうに考えております。
  96. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 漁業協力費についてなんですが、最終的に漁獲高四万二千五百トンに対して魚価総額の四・五%、十七億六千万の金額というふうに聞いたんですが、ソ連としてはどんな名目でこの協力費を要求してきたのか、その点御説明いただきたいと思います。
  97. 森整治

    政府委員(森整治君) 今回の交渉におきまして、ソ連が自国起源のサケマス資源の保護、培養を図るために、産卵場の保護でございますとか、人工ふ化養殖等の事業を実施するのに、その費用は相当多額に上っているという話がありました。このようなサケマス資源を沖どりをするということは、ソ側が費やした費用というものにつきまして何らか応分の負担をすべきではなかろうか、こういう考え方が出てまいったわけでございまして、わが方といたしましても、今後北洋のサケマスの漁業の大部分の対象がソ連起源のサケマスでございます。そういうことにつきまして応分の協力を行うという考えのもとに、一応十七億六千万円の機材、機械及び設備を供与するという形で協力を行うということにしたわけでございまして、今後その具体的なメニューといいますか、どういうものの資材等、機械設備、そういうものになるかということにつきましては、今後両者で協議をいたしまして、その上で決定をなされるということに相なっておるわけでございます。
  98. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 日本としてはサケマスのふ化施設、それから自然再生産を促進するための総合実験センターの設置について、前年並みサケマス漁獲確保を前提として提案をしたとうふうに聞いていたんですが、この予算措置予算規模ですね、それからこの漁業協力を提案した理由についてはいま述べられたんですけれども、特にこの予算措置予算規模についてはどうなったのか、御説明いただきたいと思います。
  99. 森整治

    政府委員(森整治君) 先ほど大臣からお話ございましたように、ソ側のサケマス資源増殖につきまして、人工のふ化場なり実験施設のようなものをある一定の期間の計画をもちまして、日ソ共同でソ連の領土の中で、河川においてそういう共同事業をやろうではないかということで、わが方も一応計画を立てたわけでございます。この場合には、人工ふ化場は一応六千万粒のふ化場規模で十二カ所、それから実験センターが四カ所、いずれもどちらか選択ということで、規模といたしましては、一応北海道の単価で計算いたしまして百億程度のものということで、一応考え方を整理しておったわけでございます。  大臣からお話ございましたように、そういう人工ふ化施設につきましては、すぐ効果が上がらないという意見もございます。また北海道で成功は確かにしているけれどもソ連のあの奥地の方でそういう開発が可能であるかどうか疑わしい等々の理由もございまして、むしろ自然の産卵場を保護育成しているとか、そういうことに重点を置いてソ連としては考えておるから、別のそういう先ほど申しましたような協力費程度の話ということに、交渉の過程で話が落ちついてきたということでございます。
  100. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 この十七億六千万の協力費についての負担なんですけれども、聞きするところによりますと、費用は原則として日本水産業界が支払うものとするけれども、民間の支払い能力がない場合は政府負担も考慮するという方針らしいんですが、この点、現時点ではどこまで詰めたんでしょうか。
  101. 森整治

    政府委員(森整治君) これはいろいろな考え方がございますが、たとえば三・五%というのは、一応アメリカ等で行われている入漁料の額ということでございます。これは入漁料というものではございませんから、そういうものと直接比較をするというのはあるいは間違っておるかもしれませんけれども、そういう目安もございましょうし、あるいは機材、機具いろいろ、たとえて言いますと、研究所の機材みたいなものもソ連側の希望の品目に入っておるようでございます。したがいまして、考え方といたしまして、非常に大規模な設備だとか、何かやっぱり国自身がめんどうを見た方がいいようなそういうものと、あるいは民間がめんどうを見るといいますか、手配した方がいいようなそういう機械、機具、設備、そういうものの性格からの振り分けということもあるいは可能ではなかろうかというふうに思っております。いずれにいたしましても、現段階でどこまでどういうふうにするかということは、まだ決まっておるわけではございません。
  102. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 政府出資にしろ、民間出資にしろ、公海上の漁獲に対して、ソ連に対してサケマスをとらしてもらうかわりに、資金を出したり、入漁料的なものを政府が財政負担するのは筋が通らないという議論も一部あるのですが、いまのような考え方で、特に大型の施設に対する補助、政府の助成といいますか、そういうものならば出しやすいということだろうと思います。そこで、サケマス業界は、昨年に続く規制で相当打撃を受けているので、経済的に負担能力もほとんどないかと思いますけれども政府としては当初百億円程度ソ連側に対する協力の費用を考えていたということなんですけれども、その金額ぐらいは、名目いろいろ政府として出せる範囲のものに対しては政府出資百億円ぐらいは考えられるのかどうか、その点についての御検討はされておるでしょうか。
  103. 森整治

    政府委員(森整治君) 先ほど申しました人工ふ化場あるいはいろいろ実験センターというものも、これは日ソ共同でそれぞれやろう、それぞれ分担するということで、一応の考え方としては政府も半分持つという考え方でございまして、ただ今回の落ちつきました協力費というのは、またちょっと若干性格が異なっておるわけでございます。これにつきましてどの程度何か政府が負担するという、なかなか頭から決めるようなそういうものの性格ではなかろうというふうに思うわけであります。あくまでもやっぱり民間がまず対応いたしまして、それの足し前として政府も関与するということを一応考えておるわけでございます。そのやり方としましては、先ほど私が御答弁しましたようないろいろな考え方がございましょうということでございます。
  104. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 今回漁獲量が相当削減された、それから過日の日米加漁業条約の条件、二重の網をかぶせられた結果こうなった今回のこの北洋サケマス漁については、水産庁として昨年に比較してどれぐらい漁獲の面で後退になると試算をされているのか、数字的にひとつお答えいただきたい。
  105. 森整治

    政府委員(森整治君) ちょっと先生の御質問の趣旨がよくわからなかったのですが、去年六万二千トンということで、今回四万二千五百トンということでございますから、減船の規模、それからいろいろ救済の対策に要します費用、大体そういう比率で、そういうのを基準に、ベースに一応考えていきたいというふうに思っておるわけでございます。
  106. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 今回の交渉漁獲量が減った、数字の上ではわかるわけですから。さらに、日米加の条約によって、昨年よりも条件は悪くなっているという点が考えられるわけです。それで、業界も相当減船を余儀なくされるんじゃないかということは予測されますけれども、この減船に対する救済対策として、特に残存漁業者はもうすでに共補償をする能力がなくなっている現状ですし、午前中もお話ありましたように、やめた人の分を政府が負担しましたけれども、ここでサケマス漁船の権利代まで含めて政府が交付金、これで処理する考え方があるのかないのか、政府部内での検討はどうでしょう。
  107. 森整治

    政府委員(森整治君) 救済措置を講ずる場合に、いろいろ経費的なものをめんどう見る、すでに支出した経費的なものをめんどう見る、あるいは収益の一種、それの何といいますか、そういうものを中心に一種ののれん代的なものを何らか考えていく、いろいろ考え方はございます。その中でいろいろ相互補償といいますか、共補償ということが、   〔理事山内一郎君退席、委員長着席〕 今後のやはりサケマスの漁業を考えていく場合に、去年行われたようなそういう規模での共補償が今回行われるということは、非常に条件としてむずかしいのではないかという大臣お話もございまして、大体そういうことは定説でございますけれども、一切そういうものを考えないで措置をするということになりますと、結局みんなが余り評価しない漁業ということの補償金的なもの、あるいはそれに対する救済ということになりますから、逆にそういう救済金の額というのはむしろ非常に少なくなる。  たとえて申しますと、去年も一応収益の五年分——共補償のないような、相互補償のないようなそういうものについては、収益の五年分を見るというのは大体のルールでございます。そういたしますと、それと共補償というのは、いろいろ関連をしてくる話でございまして、去年の共補償の残額といいますか、それをいましょっているわけですから、そういうものについてはもう一種の経費的なものとしてわれわれが判断するということは、これは必要だと思います。  じゃ、今後共補償ができないからどのくらい見てもらえるか、見るかという話になりますと、これはいろいろ政府の救済措置としていままでの経過なり、減船の規模なり、やっぱり残存漁業者の負担能力、いろいろな事情をどういうふうに総合勘案して決定していったらいいか、非常にむずかしい問題でございますが、そういうような観点から、昨年の例に準じて、その適正な額を業界ともよく協議しながら決めてまいるということにいたしたいというふうに思っているわけでございます。
  108. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 それから漁業者についてなんですが、北洋からの転換漁業も、二百海里時代世界の各漁場から締め出しが強まっているわけで、大変困難を来すと思いますし、国利的にも不況の長期化で転業者の再就職も容易じゃない。こういう状況なんですけれども、今回さらに減船を余儀なくされる転業者の失業対策についてどのように考えられているのか、お伺いします。
  109. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  昨年十二月に、御存じのとおり、国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法が成立いたしたわけでございますが、昨年の日ソ漁業交渉等に伴いまして出てまいりました漁業離職者につきましては、この法律を適用いたしまして、就職促進手当や職業訓練を受ける者に対する訓練手当、待機手当等の支給によりまして、再就職の促進と生活の安定を図っているところでございます。今回の日ソ漁業交渉等につきましても、これに伴います減船によって発生いたします離職者につきましては、この法律の適用によって再就職の促進等を図るべく、御存じのとおり海の場合は運輸省でございますし、全体的には水産庁と関連いたしますので、関係各省とよく協議して対策を講じてまいりたいというふうに思っております。
  110. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 もう一つ、水産加工業者関連産業の救済の点なんですけれども、これまで何とかがんばってきた業者も、今回の大幅な漁獲量の削減で、いよいよ今年はさらにまた倒産業者もふえるんじゃないかと思いますけれども政府としては、この関連産業に対する救済の手は、今回は新しく何らか打ち出される用意はございましょうか。
  111. 森整治

    政府委員(森整治君) 一番何といいますか、水産の加工業でいろいろ冷蔵、冷凍、あるいはかん詰めの原料にサケマスを扱っておるというのが大きな例だと思いますが、それにいたしましても、サケマスだけでこういうことをやっているというわけでもございません。北洋関係のいろいろ魚種を含めまして、一応原料としてその取り扱いをしている、加工の取り扱いをしているということでございますので、今回のサケマス漁獲の削減によります加工場の操業にどういう影響があるかということを見きわめた上で、今後対策を講じてまいりたい。ちなみに申しますと、去年はそういう加工業に対しましても融資枠を確保いたしまして、低利の金を経営の維持安定資金として融通してきた例がございますが、そういう例に準じて、もし必要ならばそういう対策を至急とるつもりでございます。
  112. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 再度全国各地の関連の水産加工業者の実態等も調べた上で、ぜひ適切、前向きな対策を講じていただきたいと思います。  それから、現在わが国の商社、水産会社、団体、これらがソ連との間で合併漁業についての交渉を進めているようなんですが、ポリャンスキー大使も日ソ合弁漁業の促進を業界に呼びかけたと、こういうことが伝わっておりますけれども、現在、この日ソ合弁漁業を進めている会社、農林省としてはどれぐらいつかんでおられますでしょうか。その事業内容について、若干説明してください。
  113. 森整治

    政府委員(森整治君) 現在、民間ベースで日ソの共同共業といいますか、合弁事業といいますか、そういう動きがあるということは承知をいたしております。ただ、それにつきまして、正式に私どもだ申請があったわけではございません。ただ、一般的に——一般的というか、私どもが整理をいたしますと、たとえて言えば、ソ側に漁獲の技術がない漁業、あるいはソ側の国内需要の低い魚種を対象としておったり、あるいはソ連漁船の日本人技術者を受け入れるという、そういうことを通じまして、ソ連日本側の技術を受け入れると。それから、水揚げの大体二、三〇%をソ連が取得するというような特色があるようでございまして、たとえて言えば、ズワイガニなりあるいはアブラガニ、エビのようなものにつきまして、ソ側の二百海里内の一定の区域で、そういう両者の、日本の船と向こうの船と共同していろいろ事業をやるというようなことが話題になっておるわけでございます。  以上でございます。
  114. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 大臣、ちょっとお聞きしますけれども、今回日ソ交渉中に、こうした合弁漁業交渉の話はソ連から出たでしょうか。
  115. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 向こうから出たのか、こっちから出たのか定かではありませんが、いろんな話をしているうちに出てきたことは事実でございます。それで問題点が二つあると。一つは、こういう合弁方式でやると、八十五万トンまで合弁方式でやられちゃ困るのだということが第一点。第二番目は、ソビエトと仲よくした人だけが何かこううまいことをやって、ほかの業者とのバランスは一体どうなるのかと、ざっくばらんに私のことですから申し上げたわけでございます。  第一番目につきましては、八十五万トンには影響は与えない。特に今度合弁で考えておるものは、八十五万トンのクォータに入るものではない。あれ以外の、たとえば先ほどお話のあったカニ、あるいはエビ等のようなものを対象としてやりたいということであるから、日ソ、ソ日協定に基づくものには影響を与えないと、こういう話が基本的でございますから、それは結構でしょうなと。第二番目は、国内業界でソビエトとじか取引して、何か抜け駆けでやるような印象もこれは非常にまずいことではなかろうかと。そこで、大日本水産会が窓口となって全体のバランスをとっていく、そうして業界との話し合いもつけていくと、こういうふうにしたらいかがですかと言ったら、それも結構な方法でしょうなということになりまして、後でまた御質問があるようですが、コンブの話し合いもありますから、大日本水産会の亀長さんが、前向きで話し合いをという中で具体的に詰めるということで、十三日間も滞在して、一緒に国会もありますから帰りたかったのですが、そういった問題については民間協定にまでいく話し合いでございますから、亀長さんが残りまして話をするということになって御苦労を目下願っておると、こういうわけでございます。
  116. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 これで問題なのは、こうした合弁漁業は、ソ連にとって大変有利になるんじゃないかと思うのですね。合弁漁業をふやして日本の漁業を制限をしようという考え方が、どうしてもソ連側に出てくるんではないかということが心配されるのですけれども、たとえば合弁漁業ならば、ソ連の意向のままに契約できる。ソ連としては、今後も合弁企業をふやして漁業地域や漁期なんかを大幅に制限してしまおうと、日本からもし合弁企業の話を持ってくるんだったら積極的に受けようと、こういうことから今後の日ソ漁業交渉には強い圧力をかけてくるような心配が多分にあるわけなんですが、こういった自社の利益ばかりを図って国益をもし顧みないというような姿勢で大手の商社や企業がやろうとするならば、日ソ交渉関係から大変これは大きな壁になるんじゃないかと思うのですが、それについてはどういうようなお考えを持っているのか、あるいは今後何らかの規制措置を考えられるのかどうか、この点についてはいかがですか。
  117. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 先ほど申し上げましたように、その点が心配でございますから、八十五万トンとらしていただいておりますものと合弁事業とが接触を持って、だんだんだんだん八十五万トンの方がふやされて合弁に変わってしまったと、そうしてソビエトと話し合った人がうまいことをやって、普通の操業をしておった座敷がなくなるということは困ると、こういうことははっきり申し上げたわけでございます。それはもう全くそのとおりで、合弁事業と日ソ漁業暫定協定に基づいて操業をしておるものとは一線を画しますと、決してそちらの方に影響を与えませんと、その担保として、暫定協定にある魚種についてはなるべく避けたいと。大陸だな資源というのだろうと思うのですが、いまそういった協定とは関係がなく、日本の意欲のあるもので、これはズワイガニとか、あるいはエビとかいうような現在全く操業しておらない、日本関心があり、そしてまたソビエト協力してやろうというものがあれば話し合おうということでございますので、御指摘のようなことのないためにいまのような発言をし、向こう側の了解を得ておるというわけでございます。その後の話し合いは、それを基本として亀長大日本水産会長が具体的に話を進めておると、こういうかっこうになりますから、亀長さんの結果を見なけりゃわからぬというわけでございます。
  118. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 貝殻島周辺のコンブ漁の問題も、亀長さん残られて話をいま詰めておるのだと思うんですけれどもソ連日本操業を認める民間協定を結ぶ用意があるけども、見返りとして、ソ日漁業暫定協定で決められている日本の二百海里内の操業水域を広げることを求めてきているわけですけれども、この日本二百海里内操業水域の拡大について、いま時点で何らか最終的な話し合いの結果について報告が来ているでしょうか。
  119. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 貝殻島のコンブにつきましては、相当前にイシコフさんとわが国代表の高碕達之助先生との話し合いでできた日ソ間の友好のかけ橋として操業ができたものでございます。それが今度の二百海里によって打ち切られたというので、その後話し合いはしておったようでございますが、御指摘のように向こう水域に一応入ることになるわけですから、向こうもこちらの水域内で何かをと、まあ一例として漁船の寄港を認めるとかいう話もありましたが、今回の話し合いの結果としては寄港も困難である、あるいは二百海里の操業もソ日、日ソの間で話し合っているのであって、それをコンブと取引するということはできないという話で、大体ソビエト側も了解してくれまして、そういったことではなくて何か話し合いができまいか、向こう側協力したいということでございまして、イシコフさんも恐らく、これまた大日本水産会の亀長さんの方のお話でございますので、いまこれも話し合いを進めておる。  この点につきましては、川端さんが根室の出身でございますので、今度の顧問団の団長でございますか、非常に熱心にイシコフさんに、かつて高碕さんとあなたが築いたこのかけ橋を、いま外れておるけれども、ぜひとももう一回かけようではないか、かけ直そうではないかということで、根室の方と連絡をとりながら、これは民間協定でございますから大体いける方向は出ておりますが、具体的内容については根室の方と連絡をとりながら話し合いを進めており、まあいけるのではないかなあと期待をいたしておるところでございます。
  120. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 現在、第二貝殻島の造成が進められているんですが、仮に貝殻島での操業が認められるようになったとしても、これは当然第二貝殻島の造成事業というものは継続されるべきだと思うんですが、この点ここで確認をしておきたいと思います。
  121. 森整治

    政府委員(森整治君) 貝殻島のコンブにつきまして、いま大臣からお話のありましたような話し合いが進められておるわけでございますが、それが認められたといたしましても、根室の地先でコンブの漁場の造成事業を五十二年度から始めたわけでございます。したがいまして、貝殻島のコンブの関係漁業者も含めまして、根室地区のコンブ漁業者の経営安定を図るために、この造成事業は私どもといたしましては続ける考え方でございます。
  122. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 それから、日ソ、ソ日暫定協定交渉をことしの秋東京で開催することで合意を見たそうなんですが、この暫定協定交渉を東京で開催することに合意をされるに至った中川農相とイシコフ漁業相との間にどういう話し合い経過があったのか、この際若干御説明ください。
  123. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 私の参りました目的は、サケマスを中心とする協力協定並びにこれに基づく本年度の議定書の作成でございましたが、大体話し合いがつきました段階で、この際お話し申し上げたいことがございますと。そこで先ほどの共同事業の問題、コンブの問題、それから来年のソ日、日ソの問題がありますと。それで申し上げたところ、それじゃ民間団体でこっちの方は話し合おうと、それから秋、ひとつ行ってソ日、日ソ話し合いはしようと、こうなったわけでございます。そして帰り、飛行場で、ぜひひとつおいでいただきたいが、いつごろおいでいただけますかと出発間際に言いましたら、いつ行ったら一番いいかなあというお話でしたから、十月ごろではございますまいか、それじゃ十月行こう、こういうことでタラップで別れたと、こういうのがすべてでございます。
  124. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 この暫定協定は、ことしは一年限りとして延長されているんですけれども、来年の見通しについては大臣、どのように考えられていますか。
  125. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) そのときは単年度としての話だったと思いますが、私はまあできたら暫定ではない、もう定着したものにできまいかなあという気持ちは持っておりますが、相手のあることでございますから、今後また接触を続けて、向こうの気持ちも聞きながら、毎年毎年ではない、長期にわたるものにできるような努力をしてみたいと、こう思っておるわけであります。
  126. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 それから、罰金の問題とか、最近ソ連が通達してきた着底トロールの問題、早急に解決を図らなきゃならない問題が幾つかあるんですが、ことしの秋の暫定協定交渉を迎えるに当たっての準備、態度について現在どのように水産庁としては考えておられるでしょうか。
  127. 森整治

    政府委員(森整治君) 着底トロールの問題につきましては、ただいまモスクワで話し合いが続けられておりまして、ただいま参りました話では、話し合いはおおむね実質的合意に達して、きょう最終的に決着がつく見通しであるということのようでございます。まあいずれにいたしましても、この問題は非常に重要な問題でございますので、一応わが国の着底の規制が新たに行われないでまとめられる見通しとなりつつあるようでございます。  それから、罰金の問題につきましては、昨年の十二月だったと思いますが、ソ連側と細部にわたりまして、かねてからいろいろ問題になります、たとえば操業日誌の記載事項等、いろんな細かい点につきましての話し合いが行われまして、これにつきまして大体、それに基づきましてわが方のいろいろ漁民を指導するということで、最近はそのためにいろいろ問題が起こるということは非常に激減をいたしておるわけでございます。
  128. 相沢武彦

    ○相沢武彦君 ちょうど時間が来ましたので、終わります。
  129. 下田京子

    ○下田京子君 大臣所信に対する質問の第一点は、先輩委員皆さん質問されました、いまの日ソ漁業交渉をめぐることについてまず第一にお尋ねしたいと思います。  大臣の方から、午前中の質疑の中でも、いろいろとあったけれどもまことに残念であったというふうなことも、感想も含めて交渉内容等にお触れになった御答弁があったと思うんですけれども、そこの中でひとつ交渉経過ということと相まって、今後の問題ということでやっぱり踏まえておくことが必要でないかという点でお尋ねしたいんですけれども交渉の中でソ連側が、今度の交渉というのはソ連側が余り厳しい態度をとったと思わないでくれと、言ってみれば日本がアメリカやカナダと結んできた禁漁区の問題ですね、それをその枠の中でソビエトも検討したんだというふうな御発言があったと報道ではなされているわけなんですけれども、これは事実でございますか。
  130. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 交渉経緯では、アメリカのとっておる措置に比べて決してソビエトのとっておる措置が厳しいものではないはずだと、理解してもらいたいなあという話はありました。
  131. 下田京子

    ○下田京子君 そういうお話があり、しかも大臣としても、資源保護の問題等から見て沖どりということになれば未成魚がたくさん入っているわけですから、沿岸に来てからとった方がいいというふうなお話があり、また日本としても母川国主義というものを昨年の五月来打ち出してきているというふうなお話でありますから、となると、現在妥結した時点においての問題は後で御質問したいんですけれども、今後とも協定は五カ年間であるけれども議定書というものは一年間、サケマス協定については一年間ですね。  となりますと、今後ともずっと五年間にわたってソビエトが沖どりを認めるというふうな形では、大臣も安易には考えられておらないと思うんですよ。かなり厳しくなるんじゃないかという、そういう御認識も一方ではあると思うんですね。そういう点から見て総合的に今後の問題なんですけれども、アメリカからカナダ日本そしてソビエト沿岸四カ国を含めまして、このサケマスという有効な資源をいかにして活用していくかというふうなことでのルールづくりというものに今後真剣に取り組んでいく必要があるんじゃないかと。今回の日ソ漁業交渉の中で一つ得た教訓ではないかと思うわけなんですが、いかがでしょう。
  132. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) ちょっと補足をいたしておきますが、この地図にございますように、アメリカがずっと出てきたではないかというお話でしたから、私の方から、昨年ソビエトの二百海里時代を迎えて斜線にありますように全部これは出たわけですと、ソビエトがそういうことをやられたものですから、この絵にありますように黄色い線がアメリカの二百海里ラインでございます。同じようにこのラインを出してほしいと、こういうこともあったかに思えますので、ここへ出られたのじゃ困るので、こっちに横になっていたものを縦に操作しただけで、あなたの国に行った調整以上のものはやっておらないつもりでございますと、昨年やった分をことしやっただけでございますと、こう言ったのですが、向こうとしては、いや向こうの方が少し出過ぎていると、この線がこう来たと、こういう考え方を持っておりましたが、私はそういうふうな説明をいたしたわけでございます。  したがって、昨年あなたの方がやり、ことしそれに見合ったアメリカがやり、その上にあなたの方がやるのではございますまいかと、こういう話もしましたが、いろいろと議論をしておりますうちに、いずれにしても全面禁止は大変だろうから、いろいろ考えて、本来ならばこの三角水域全部を閉めるところだったのだがここは一つあけることにしたということで、いろいろ資源問題ずいぶん議論をして、こういった形で決着がついたわけでございます。  もちろん議定書協定は五年間、しかも三条だったと思いますが、サケマスについては毎年議定書で定めると、こうなっておりますから、来年のことは何も言っておらぬといえば言っておりません。ましてや、五年先どうなるかということは予測にかたいところではありますけれども、この協定を五年間結び、五年間についてサケマスについて話し合うということのうちの初年について、十分と資源のあり方について話したことでございますから、私としては先々を含め十分検討をしたと思いますので、来年になって、去年のことは全然なかったことでまた白紙からいきますというようなことはありますまいと。ことし議論したことに若干の修正がないとは言えませんけれども、まずまずこれをベースにして来年また話し合われるものと、決してそう変わった変化はないものと、期待だけではなくして話し合いをしましたいろんな角度から判断をしてそうあるものであると、こう思っておるわけでございます。
  133. 下田京子

    ○下田京子君 来年度の問題について、現在でどうかというふうなことではっきりした態度というものは、それは相手があることですから言い切れません。おっしゃるとおりですけれども、ただ日本政府として、現在の交渉経過を振り返ってみて、きちんと踏まえておかなければならない問題としては、やはり沖どりということが資源保護の問題からいってどうなのかということが大変議論になっているし、それから母川国主義ということがやっぱり議論になってきたというふうな経過の中で、一つには、あれこれ議論はあったけれども日米加の間での禁漁区というものがあったからというふうな言い分で向こうは言っているわけですけれども、そういう経過全体を見て今後とも楽観は許さないと、非常に原点に立ち返って今後どうあるべきかという検討を今後進めるべきじゃないかという点での警告といいますでしょうか、問題提起といいますでしょうか、御検討を今後日本としてもすべきだという御指摘を申し上げた次第なんです。  で、第二番目なんですけれども減船の補償の問題です。これは大臣お話では、昨年と違ってことしは非常に厳しい状況だということで、残るも出るも全く地獄のような状況にあるという御認識はいただいておるわけなんですけれども、具体的に補償をどうするかというふうにはいま国会の中で明らかにできないにしましても、業界あるいは関係者と懇談しているその基本的な考え方として、いままでやってきたような共補償というものはもうできないだろう、政府が本当に責任を持って具体的にどうするかという形でその問題の解決に乗り出すかどうかという点でお聞きしたいわけなんです。
  134. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 去年減船したときの措置が、まずべースでございます。そのベースの上に乗っけてことしはさらに厳しい、共補償ができないのではないかと、全部できないかどうかわかりませんが、できにくいのではないかと、その場合その措置をどう乗っけるか、また今度昨年共補償された方がことしは減船になってしまうと、そうすれば共補償を約束した分は一体どうするのかという問題が昨年よりはプラスとしてあると。具体的に、それじゃそれをどうするかということについては、業界並びに財政当局とも相談をして、ともに理解協力し合って早期に成案を得て、五月一日からは出漁できるようにしたいと。しかし、現段階においてどういう形になるかと、数字はどうかと言われましても、まだ話し合いが進められている段階でございまして、いまお答えできるまでには固まっておらないと、もうしばらくお待ちをいただきたいのでございますが、何とか話し合いができて、やめられる方も出て行かれる方も、まあまあこれならなあというものを出したいと、こう思っておるわけでございます。
  135. 下田京子

    ○下田京子君 そういう納得いくような補償と同時に、減船問題でございますけれども、先ほども御説明ありましたが、母船の方の減船は現在六隻だけれども、それを四隻にするか三隻にするかということではいろいろ話し合いの途中だというお話でありましたが、具体的に数字を詰めてみますと、可能かどうかということが疑問に出てくるんですね。母船を減らして母船式の独航船あるいは基地独航船をできるだけ減らさないという方針はもうぜひ貫いてほしいわけなんですが、そういう方針でいった際に、仮にその母船を現在六隻を四隻にした場合に、付属独航船は現在二百四十五隻ですね、それが百七十二隻に減らされると。で、母船の方が四隻だった場合には一母船当たり独航船四十三隻と、こういうことになりますね。もし母船が三隻になった場合には、一母船当たり独航船五十七隻というふうなかっこうになりますね。そうすると、これが果たして本当に可能なのかどうかという疑問が単純に出てきます。  そこで、新たな提案といいますか検討課題なんですが、母船は大いに減らしてできるだけ中小を守っていくという態度でいかれるならば、現在の母船を、何といいますでしょうか、基地のようなかっこうに使えないかと。なかなか大変かと思いますけれども、かってA区域と言っていたところ、いまあれですけれども、母船式の区域のところですね、そこに、母船そのものは減らすけれども減船した母船を基地のようなかっこうにして、何とか付属独航船は減らさない方向でやれないか、これは一つの検討試案ですけれども、とにかく母船を減らす、即付属独航船を減船というふうなかっこうにいかないように、できるだけ基地独航船あるいは付属独航船も含めて、その減船を少なくしていく方向で御奮闘いただきたいというふうに思うわけなんです。
  136. 森整治

    政府委員(森整治君) 御承知のように、基地独航船団、四八の中型流し網漁というのは、基地から二往復なり三往復なりしながらやっているということで、これはこれで三割、三〇%程度減船をお願いしたらどうかというふうに考えておるわけですが、そのほかに従来A区域というところで稼働をしておりました母船式に独航船がくっついているわけでして、その独航船が先ほど申しましたように、三隻にする場合に独航船の数をなるたけ減らさない、独航船の方は減らさない。母船三隻ということは五割ですけれども、それに付属しております独航船は、これもやっぱり中小船主の船でございますから、これも余り減らさないで、今度その三隻にうまくくっつけて操業できないかということを考えてみたい。  ただ、その場合に、いま単純に計算いたしますと五十七隻ということになりまして、それは母船操業上ちょっと問題があるのじゃないかということでございます。したがいまして、その場合にはそれが五十隻程度に減らさざるを得ない。五十七隻でなしに五十隻程度に減らさなきゃいけないということになりますと、三、七、二十一隻また減らさなきゃいけないという問題がありますから、それらを総合的に勘案をしてどうするかということを、いまの母船式の今度の独航船の船主たちの御意見、母船の人たちの御意見等いろいろ調整をしながら、ひとつ妥当な線で決めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  137. 下田京子

    ○下田京子君 いろいろ検討しているということなんですが、その検討の姿勢ですね、ぜひ崩さないでいただきたいのは、母船の減船ということはこれは進めていくということで、私どももいま必要だと思っているわけです。問題は、中型、小型の独航船を守るというこの立場を貫いてほしいということなんです。これは四月二十三日付の北海道新聞に出ておりますけれども、「水産庁は北洋サケマス漁の減船隻数を二十四日、業界に通知知、」云々と、こう書いるんですが、その報道の中に「業界の自主的判断によって減船の選定を行う方針である。」という報道があるわけですよね。これで大変また心配が広がっているわけで、業界任せではなくって、やはりいま言ったような観点からいろいろと検討されまして、ぜひ減船補償問題等についても水産庁それから農林省が責任をとって検討していただきたいというふうに思うわけです。  次に、三番目になりますけれども、漁業の離職者の問題ですね、これはすでに漁業離職者臨時措置法等ができておるわけですけれども、今回の減船に伴ってやっぱり直接的にまた大きな形で出てくるのが失業問題であると思うわけです。その乗組員の失業問題ですけれども、北海道ですと昨年の場合には二千二百七十六人、実際に漁船乗組員が離職しているというお話になっています。ことしは三千人を上回るんじゃないか。で、全道で見ますと、加工関係から含めればその関連の従業員というのは九千人近く、また離職問題で大変な事態に陥るんじゃないかというふうな心配がされているわけです。こういったことについて、いままでもいろいろと御討議がございましたけれども、実際に現在のそういう状況の中で、いろいろとその職を求めて相談に来ている求職申し込み者数ですね、この申し込み者数を五十三年の四月一日現在で見ると、全国では三千二百八十八人おる。で、うち北海道では千五百四十六人、東北で千五百四十一人もおるというふうに言われているわけなんです。こういうふうな求職申し込み者について、一体具体的にどういうふうに対応できるのかという問題なんです。
  138. 松木洋三

    説明員(松木洋三君) お答え申し上げます。  いま先生から数字のお話がございましたが、先生のお話の数字は、私どもの方の窓口へ四月一日現在で参っております離職者の方々の数でございまして、このほかにも労働省の職安窓口へ出ておる離職者の方々も何百人かおるわけでございます。対策といたしましては、なかなかこれは大変でございまして、基本的にはやはり先ほどお話にもありました昨年末の議員立法の趣旨に沿いまして就職促進を図りながら、給付金等の支給をしまして生活の安定を図っていくと、こういうこと以外にないわけでございます。  いまの段階では、ちょっと申し上げますが、先ほど申し上げたようなその求職申し込み者のうち私どもで把握している範囲内では、四百二十人の方がすでに再就職をいたしておるということでございまして、現在、積極的に広域的な職業紹介等もいたしたりいたしまして、再就職の促進に懸命の努力をいたしているわけでございますが、再び漁船員になりたいという御希望が多いのですけれども、求人倍率はすでに、〇・二を割っているというような状況でございますので、努力はいたしておりますけれども、大変むずかしい状態だというふうに申し上げざるを得ないと思うわけでございます。私どもとしてもなお積極的に再就職の指導を行い、また必要な訓練も行ってまいりたいと考えておるところでございます。
  139. 下田京子

    ○下田京子君 積極的に対策を講じたいというお気持ちはわかるんですが、お気持ちと具体的な対応がどうかということではちょっと問題があるような気がいたします。といいますのは、たとえば八戸の場合ですと、求職者が五百十一人おる。ところが専任の相談員ですか、これは職員が一人という実態。それから福島県の小名浜の場合ですね、三百十九人に対して専任の職員、これは五十三年度から振りかえで一名が配属になった。また稚内の場合ですと、四百十二人に対してこれまた五十三年度から専任職員がようやく一人という実態。全体的に見れば、北海道全体では二人今度プラスしまして八人。それから東北でいままでのところ六人だったものを何人かふやすというふうなお話ではありますけれども、実際これで対応できるのかどうかということですね。実態をお伺いいたしますと、ケース・バイ・ケースの相談どころか、給付金の支給で目いっぱい、手いっぱいというふうなことも聞いております。どうでしょう、体制強化ということでもって、もう少しこういう点での本格的に取り組むあれはないでしょうか。
  140. 松木洋三

    説明員(松木洋三君) いま先生から御指摘のような状況でございまして、船員の職業安定所は、職業安定業務に対します通常の行政需要を考慮しながら重点的に配置していままでやってまいってきておるわけでございます。人数は、おっしゃるように決して多くないわけでございますけれども、先生のお話の中にもございましたが、こういうことで北海道、東北を中心に離職者の方々は急増するという見通しでございましたので、私どもといたしましても、財政当局とも相談をいたしまして、本年おっしゃいましたように北海道地区におきまして二名、東北地区におきまして三名の増配置をいたしたところでございます。  なお、保険給付等の事務は相当やはりふえておりますので、これをカバーする意味でも増員ということだけではなくて、賃金職員等の配置ということも考えまして、それなりの手当てもいたしたところでございます。  なおさらに、この離職者の方々に対しましていろいろな意味での相談の役割りを果たしてもらう人たちも必要だということで、これも予算措置をいたしまして、現在北海道、東北で十名の離職者の相談員の方々を、民間の方でございますが、委嘱をいたしまして積極的に相談に乗り、かつ再就職を図っていくというようなことをやっておるわけでございまして、それなりに実は努力をいたしてまいっておるつもりでございますが、なお今回また減船というような動きになっておるわけでございまして、そういう動きにまた対応いたしまして、私どもとしても改めてまた作業の量については検討いたしたいと思っておるところでございます。
  141. 下田京子

    ○下田京子君 大変な数になりますし、より深刻な状況でありますから、減船補償問題とあわせて乗組員の再就職、生活補償という点では、ぜひより深刻に取り組んでいただきたいというふうに思いますので、大臣の決意のほどもお聞かせください。
  142. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 北洋のときにとりました措置もありますし、離職の人は本当に気の毒でございますから、最善を尽くしたいと存じます。
  143. 下田京子

    ○下田京子君 日ソ漁業交渉に絡んでの最後の第四点目なんですけれども大臣のいままでの御答弁の中でも、一つ大変これは今後考えなきゃならない問題だなと思ったのでは、資源の問題といいますか、研究問題というか、技術問題も含めまして、そういった点で本当にこれからもっと力を入れていく必要があるんじゃないかという御認識なんですけれども、私も同感であります。その点で、すでに日本の場合には、国内の増養殖技術というのは世界でも誇るものだというふうに言われておりますし、その回帰率を見ましても北海道では二・五、本州では一%前後と言われておりますけれども、そういう中で、これは東北水研の増殖部長さんがお話しになっていることですが、河口近くで生けすに入れて海中飼育に持ち込んでいって、七センチから十センチまで大きくしてこうやっていけば、回帰率が一〇%になるのじゃないかと、大変希望の持てるお話が出ておりますね。  こういう点で、もっともっとこういった研究についての予算措置も根本的に見直していって、技術的なことも含めて大いに拡大していく必要があるんでないか。政府としては、前年に比べて二五%増予算を見たというふうにおっしゃるかもしれませんけれども、このような事態ですから、努力は認めますけれども、まだまだ足りない。いままでやっぱりそういう研究が不足であったという点で、データ不足も認めておるわけですから、計画そのものを根本的に見直して、ひとつ御検討いただきたいと思います。
  144. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 今度の交渉を通じ、前々から思っていたことではありますけれども、ふ化事業の重要性というのを痛感いたしております。そこで、これはふ化事業そのものも、民間に対する助成、あるいは国営ふ化事業の強化、同時に技術会議等において試験研究といいますか、実験といいますか、どういったあり方が一番いい方法であるか、そしてサケマスはどういう動きをしておるのかというような基礎的なものから大いに試験研究を進めて、そして回帰率をふやす方法等について、技術会議でも五十二年、昨年から五カ年計画でやっておるようですが、さらにこれを強化してまいりたいと、こう思う次第でございます。
  145. 下田京子

    ○下田京子君 ぜひ、今回の日ソ漁業交渉で二百海里時代の幕あけ二年目という中での試練を生かした形で、日本の今後の漁業のあり方という点で、抜本的な面と当面する問題と、両面からさらに御苦労、御検討をいただきたいというふうに思います。  次に、不況問題に関係して個別的なことで御質問いたしますが、東海精糖の問題であります。  実は、これは昨年の十一月十七日に砂糖売り戻し特例法が本委員会でも審議になりました。私はそのときの経過から見て、これは東海精糖問題というのはもういい方向にどんどん向いているのだろうと、こういうふうに認識しておりました。ところがせんだって、三月の末でございます。私どもの方に以下のような形での要請書が参りました。その要請書を見てみますと、第八十二臨時国会で成立を見た砂糖売り戻し特例法に基づいて今後ともいい方向にいくだろうというふうに期待をして、会社は昨年十二月の二日に破産申請を取り下げて、ことしの二月二十五日に会社更生法を申請した。これは労働者の方も、それから経営者も、それからまた三井物産も、それから東海銀行も含めて、そういう方向でいっているものだと思っていたわけですね。ところが、要請書の後ろの方を見ますと、その後三井物産の態度が非常に変わってきて、その意見書を提出されて、協力するどころか、露骨に破産を意図した態度が見出されてきた。それで、いま大変困っているというふうな実態が訴えられたわけなんです。このことについて、農林省としてはどういうふうにまず御認識しているのか。  その御認識の際なんですけれども、実は昨年の十一月十七日のときに私も当委員会質問をしまして、当時の農林大臣が次のように答えています。「東海精糖等の問題につきましては、商社、銀行、経営者そして労組、いま本当に真剣にお話し合いを願っておる段階だと、こう聞いておりますので、私どももこの四者の本当に事業再建への熱意が実るように、政府としてもできるだけのアドバイスをしながら協力をしてまいりたい、こう考えております。」と、こう御答弁あるわけですね。ですから、いま私が尋ねたいのは、どうしていま三井物産は、何といいますか、露骨な破産を意図したような行動に出てきたのか、それに対して農林省は一体どういうふうに対応してきたのか、国会で私どもと約束したことに基づいてのその態度はいまも変わってないかどうか、以上まとめてお尋ねをいたします。
  146. 犬伏孝治

    政府委員(犬伏孝治君) お尋ねのありました東海精糖株式会社につきましては、本年二月の二十五日に会社更生法によります更生手続開始の申し立てがされておりまして、現在裁判所において手続が進められておるところでございます。裁判所に申し立てがされまして、その後、裁判所で手続を進める前段階といたしまして、各般の調査を行っておるというふうに承知いたしております。  私どもといたしましては、裁判所に会社更生法に基づきます申し立てが行われたことでございますので、同社の再建の是非でありますとか、再建されるとした場合の具体的方策等については、今後裁判所において判断がされていくものというふうに考えております。農林省といたしましては、長期にわたって操業を中止しております同社が再建され、円滑に操業を継続していくためには、いろいろ経営実態面での諸条件が整備される必要があるというふううに考えておりますが、何分裁判所による手続に移行しておるという段階でございますので、その手続の進捗状況、関係者の意向等を十分見守って、具体的なそれぞれの段階におきまして対処をしてまいるというふうに考えておる次第でございます。
  147. 下田京子

    ○下田京子君 昨年十一月十七日の大臣答弁の態度はお変わりないかどうか。
  148. 犬伏孝治

    政府委員(犬伏孝治君) この前の砂糖特例法の審議の際に政府の答弁として申し上げておることにつきましては、これは変更がないということでございます。ただ、情勢がいま申し上げましたように、裁判所の手続に係属をするということでございますので、その手続の中におきまして具体的に対処をしていくということでございます。
  149. 下田京子

    ○下田京子君 裁判所のいま結果待ちという状況でもって、そのこと自体についてどうこうということは私お聞きしておりません。問題は、昨年特例法が通った時点でもってシェアを確保すると、農林省も再建の方向で積極的に指導援助するというふうな立場で、その後具体的にどんな働きかけがあったかどうかということを問題にしているわけであります。  同時に、いま裁判所の問題が出ましたからお尋ねいたしますけれども、農林省が調査委託に対して答弁されている中身にも大きな問題があると思うんですね。いわゆる推移を見守るということなんですけれども、農林省としては一体どうなのかということについて全く見解を避けている。すなわち、裁判所の方から調査してきたことについては、日豪長期契約による豪州糖の問題について二つ出してきているわけですね。いわゆる未引き取り分の問題についてはどうなのか。それから二番目には、ペナルティーの支払い義務の問題はどうなのかというふうなことを第一に触れておいて、第二番目に、「その他右に関連し、農林省の行政指導上参考になる事項。」と、こう分けて調査依頼してきているわけですね。  ところが農林省は、前段の未引き取り分の問題とかペナルティー問題については触れないで、二番目の行政指導上の問題についてこういう形で言っているわけですね。「同社の再建について一般債権者、関係金融機関等の協力が得られ、また、豪州糖の引取り問題の解決が図られること等により、適正な更生計画が樹立される等同社が関係者の協力のもとに円滑な操業を行ないうることが確実と見込まれる段階において、具体的に判断すべきものと考えている。」と。これは、問題の責任を放棄している回答ではないかと思うわけです。農林省の責任ははっきりしているわけです。シェアを保証するかどうかなんです。同時にまた、融資の問題については東海銀行からの融資があるかどうかということになります。それから、原糖供給で三井物産がそれを保証するかどうか。それらがきちっといけば、労使協定がなされているんですから、あとはもう更生計画に基づいて再開となれば問題は解決するわけなんです。そういう御認識に立って積極的に農林省としてはシェア確保のために、再建のために今後とも御努力するお気持ちなのかどうかという点なんですが。
  150. 犬伏孝治

    政府委員(犬伏孝治君) 裁判所の調査嘱託に対する私どもの答えは、裁判所の質問が豪州糖の問題に関して場合を分けて、売り戻しがそれぞれの場合にされるかどうかということが第一の質問点でございましたが、この問題につきましては、豪州糖の引き取りに関する輸入カルテルがございまして、その関係者の話し合いで納得のいく解決が得られるべきものということで、そのそれぞれの場合に分けた、それぞれの場合につきましての売り戻しをどうするかという問題ではないという認識をいたしまして、総括的にお答えをしたのでございます。  要約をいたしますと、東海精糖が関係者の協力のもとに円滑な操業を行い得ることが確実と見込まれるか否かということにかかってくると。この問題につきましては、やはり一つの企業が存立をしていくかどうかという問題でありますので、やはり企業の経営の責任を持った方々が関係者とお話し合いをして、経営の実態面において条件整備をしていくべきことが基本であるというふうに考えておるわけでございます。その際、現在非常に厳しい条件のもとでこの精糖会社におきまして精糖の操業に従事をした方々が、再建に向けて大変な努力をしておられることは承知をいたしておりますが、やはり企業の存立の問題でございますので、それらの努力が、この会社の存続につきまして関係者の納得のいく形で事態が推移されるようにしていくべきではないかという見地から私どもは考えておるわけでございまして、その中で私どもとしては十分な話し合いがされるようにやってまいりたいというふうに考えております。
  151. 下田京子

    ○下田京子君 私が質問しているのは、農林省としての責任を果たすお気持ちがあるかどうかなんです。それだけ答えていただければよろしいんです。会社再建のために皆さん苦労しているんです。農林省はどういう苦労をしているんですかということなんです。シェアをちゃんと与えるのかどうかということなんです。  それからもう一つは、新たな事態なんですけれども、去る三月二十日だったかと思いますが、前後して輸入協定幹事会等あるいは全社会等が開かれて、その中でペナルティーという問題については、これは別個のことだと。だから、まずその豪州糖の未引き取り分を受けてもらって、あとは会社再建という方向で更生計画の中で処理していこうじゃないかみたいな話も出てきているわけです。そういう形で、農林省が積極的にそうした動きと相まって、シァア問題やあるいは行政指導も含めておやりになるかどうか。イエスかノーかだけでいいです。簡単にお願いします。
  152. 犬伏孝治

    政府委員(犬伏孝治君) 前回の特例法の審議の際にもお答えをいたしておりますが、この企業が将来にわたってきちんと操業ができるということになりますれば、特例法に基づきます「売戻数量」の通知は当然前向きに検討をしなければならない。そういうきちんと操業ができることになれば、そのようにしたいというふうに考えております。
  153. 下田京子

    ○下田京子君 きちんと操業ができたならばじゃないんです。できるようにするために農林省はどうするのかということなんです。全く問題の責任を感じてない御答弁じゃありませんか。それはもう国会の中で特例法の附帯決議で確認されていることや、あるいは大臣が御答弁されていること等も含めて、そういう方向になっていないじゃないですか。だから、積極的に農林省が行政指導をするかどうかなんです。それだけです。
  154. 犬伏孝治

    政府委員(犬伏孝治君) やはり企業の存立、今後の継続的な操業確保という問題でございますので、企業自体が責任を持って対処をする、それにつきまして、私どもがお手伝いできることがどういうことがあるかということで、その場面場面で検討をしてまいるという、そういうことでお答えをしておるわけでございまして、今後ともそういう態度でやってまいりたいと考えております。
  155. 下田京子

    ○下田京子君 場面場面で対処していくと言いますけれども、現在、特例法通過後具体的なそういう話し合いの場というものも非常に少ないわけです。ですから、その場限りの答弁じゃなくて、本当にシェア配分あるいは再開のためにどうするかという点で積極的な行政指導を待つわけです。大臣、その点いかがでしょう。
  156. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) やっぱり会社は自分で再建するのだと、世の中の人が見ても再建できましたというところになって初めて割り当てが行われるのであって、その段階で農林省が何をやったらいいのか、もし御指摘があって、銀行へ走れというのか、どこへ走れというのか、農林省のやるべきことがありましたならば御協力は申し上げますが、農林省のやるべきことは、しっかりできるようになったら割り当てはいたしますよと、これが農林省のやるべきことだと、こう思うのでございます。
  157. 下田京子

    ○下田京子君 やるべきことがあったら走るということですから、どうぞ、裁判所の結果待ちという事態でもありますので具体的な点までは触れられませんけれども、物産との話し合いであるとか、あるいは四社の経緯が、推移がどうなっているかだとか、今後も積極的に、情勢待ちというのじゃなくて、相談に応じていただきたいというふうに思います。  もう時間になってしまうわけなんですが、最後に一点だけお尋ねしておきたいと思います。これは大臣にお尋ねするわけですが、昭和五十二年度の「農業の動向に関する年次報告」が出ました。いわゆる農業白書と称するものです。この中でるる説明されておりますけれども、特に輸入の問題についてまとめて御決意のほどをお伺いしたいわけなんですけれども、この白書によれば、わが国が当面している農業の事態というのは大変深刻であるというふうな点で、「今後農産物の輸入を拡大する余地はかなり小さくなっている。」というふうに、これは具体的に言えば五十六ページに結論づけているわけです。一つは、これは政府全体の共通の御認識かどうかという点が一点。  第二点目は、共通の御認識であるとするならば、牛場対外経済相のいろんな御発言や、あるいはストラウスさんとの牛肉問題の例の一万トンの量の見解をめぐっての相違問題や、あるいは今後の日米首脳会談等もすべて踏まえて、本当にこういう見地から、あくまで大臣がずっと言われてきました日本の農業を圧迫しないと、そういう点から御奮闘いただけると解釈してよろしいかどうかという点です。
  158. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) やっぱり農政の基本は、いろいろありますけれども、食糧自給率の向上ということに置かなければなりませんし、また農家経済の安定。そこで、わが国農業では賄い切れないものは国民に安定的に輸入によってこれを補って確保していくと、こういう基本だろうと存じます。したがって、今後大きな期待が輸入によって賄えるものではないということも事実だろうと存じます。しかし、対外的な調整も農業の分野でやっていかなければならぬということも、日本の農業だけが避けて通れる道ではないということも事実でございます。そこで、対外調整としては、わが国の農業に大きな支障を与えない範囲内ででき得ることがあるならば御協力申し上げると、こういう基本方針で対処をしていきたい。したがって、無理難題を言われてもできないものはできませんし、また少々農家の皆さんに気に食わないことがあっても、でき得るものはやはり協力する姿勢ということも示していかなきゃならぬ。そして、最終的には国民に安定的な食糧を確保していく、そして農家経済を守っていくと、こういう姿勢で取り組んでまいりたいと存じます。
  159. 三治重信

    ○三治重信君 大臣、どうも大変御苦労な漁業交渉で御苦労さまでした。その上、お帰りになって早々、重要な協定の批准を控えて本日は大臣所信表明の一般質問ということでございますが、せっかくの機会でございますので、漁業関係の問題で御見解をお聞きしたいと思うんです。  朝来、具体的な今回の漁業関係の問題については解明されたと思うんですが、私は、こういうふうにいままで陸地が各国の領土であったやつが、急にこの二、三年来二百海里だといって大国から領有を宣言をし、そしてそこで魚をとるとなると入漁料を出せと、まあ一種の陸地で言えば、農地で言えば小作料を出せと。それからまた、やり方も非常に制限をする。今度はさらに、サケマスだけでしょうけれども母川国主義といって、その二百海里の外にまでおれのところの魚が行っているんだからそれを黙ってとるのはけしからぬと、こういうことでまた規制をされる。そうすると、これは二百海里といっても、実質上世界の海は全部何らかの形で規制をすると。いわゆる協定なり領海がなければ日本の漁業は、ことに遠洋漁業は成り立たないという時代が来るのか、来ないのか。また、そういうふうになった場合に、日本世界の海、いずれのところも非常に何といいますか、日本の食糧資源を供給する、またあるいはそれを加工して輸出する、日本の水産業として世界一の水産業をつくってきた。  ところが、それがこういうふうな領有関係規制で非常に痛めつけられる。まあこれは世界の趨勢かと思うんですが、こういうようなことに対して、日本の水産業を長い目で見て、いままでの行き方からどういうふうに大きく転換をしていくのか。だんだん技術やそれから造船の発達によって、世界の至るところどこでも日本の漁船が行って必要なものがとってこれるようになった。それが、こういうふうに世界公海といったものがみんなおれのものだと、あるいは純然たる二百海里以外の公海でもu協定がなければとれないというふうなことになってくることを予想して、日本の漁業の将来というもuのをどういうふうにお考えになっているか、それを農林省の立場をひとつお聞きしたいと思います。
  160. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 数年前から二百海里ということが議論され、海洋法会議で討論されておったわけでございますが、一昨年アメリカが海洋法成立に先立って二百海里というもuのを取り入れた。その結果、次々と世界各国が取り入れるところとなり、特に海洋といいますか、遠洋漁業によって成り立っておった日本ソビエトというものが非常に厳しい条件下にあることは事実でございます。ソビエトも一相当深刻でございまして、EC等からただ魚関係だけで締め出されるのではなくして、西ベルリンの承認をするならば魚をとらしてやろうというような政治的な発言もあったとかないとかというぐらい、非常に二百海里の問題というのはむずかしい。各国それぞれ一斉に厳しいのではなくて、また一斉の条件ではなくして、アメリカにはアメリカの条件、ソビエトにはソビエトの条件、豪州には豪州、ニュージーにはニュージー、あるいは北朝鮮人民共和国ですか、それにはそれの事情というものがありまして、それぞれの国についてそれぞれ対応して、一つ一つ決着をしていかなければいけない。厳しいその波を越えられるかどうか、最小限度の被害を受けながら対処していく仕事が一つだと存じます。  もう一つ、二百海里時代に付随的といいますか、関連をして、遡河性サケマス母川国が管轄権を持つという、これまた非常に厳しい問題があるわけでございます。これについて関係のある国は、日本を中心としてアメリカ、カナダ、そしてソビエト、この三つが主な関係国でございます。日、米、加についてはかなり厳しい条件ではありますが、将来に向かって一つのルールができたと。ソビエトが残っておりましたが、今回、非常に御批判があったり、あるいはまた業界の皆さん方が非常に苦労をするという結果にはおさまりましたが、新しいルールによって道が開けたと。したがって私は、遡河性サケマスについては、先ほど来御指摘のように、今後これは厳しいも一のがあるぞという指摘は受けながらも一、一つの方向ができ上がったもuのだと存じております。  二百海里については、アメリカ、ソビエト、豪州等については大体うまくいくかなと、結果としては余りよくないにしても一つのルールができてきた。今後ニュージーランド等々、かなり多くの国々と調整をしていかなければならぬ非常に厳しい事態でございます。これらについてはそれぞれの国に応じた外交折衝なり、あるいは民間団体の協力も一かりながら、この厳しい二百海里時代に定着をしたもuのを求めていく。これはこれなりに最善の努力を払って、被害を最小限度に食いとめて乗り切りたい。しかし、この二百海里問題というのは、日本の漁業に遡河性サケマスを含めまして非常に厳しい結果が残ることだけは間違いございませんので、今後はやはり育てる漁業、増養殖というようなこと、日本の国に関連する資源をやはりみずからも守るということについて、いままでもやってきたつもりでありますが、さらに一段と認識を新たにして努力をしなきゃならぬと、こう思っておるところでございます。  今後、沿整事業の強化や、あるいは試験場の強化、あるいはサケマス増殖事業等々ひとつ積極的に、まあ今年度も一相当やったつもりでありますが、来年度予算等についてはさらに一段と前向きで取り組んで、長期的には、海外で目減りをした分は、なるべく目減りのしないように努力はしますが、目減りのした分、あるいは今後もuまた目減りするかもuしれない分は、育てる漁業によって穴埋めをするのだ、こういう姿勢で取り組んでいくべきであろうと思う次第でございます。
  161. 三治重信

    ○三治重信君 こういうふうに、世界各国が自分のものだといって公海を占領し始めた場合に、日本がそういう国の——日本の船や船員や資本をもって外国の、米国やカナダやそれから中南米や豪州なんかでもu、日本がそういう全部資本を投資していく。その国の企業として設立して、そちらの方の国の漁業に協力をする。そうして、とったものは日本へできるだけ輸入するというふうな、日本のこういう減船されたり遠洋漁業関係の会社の人たちが、そういう技術をもって海外へ漁業会社をつくって、そっちへ、昔の移民とは違った、本当にその国の沿岸の養殖や、さらには沿岸漁業の保存とか漁業の技術とかいうもuのもu経済協力を伴って、そうして日本のいわゆる一体的なそういう企業の進出、漁業関係の進出が有効にできるというような交渉というのはできないですか。また業界の方に、日本の国内ではだめだけれどもu、そういうふうに外国へ一遍行って、そうしてそこを拠点として会社を発展させたいと、こういうような希望とか、そういうような折衝というものはできないものなんでしょうか。
  162. 森整治

    政府委員(森整治君) 確かに、二百海里時代に入りまして、この時点でひとつ海外におきますいろいろ合弁あるいは協力事業のあり方というものを検討する必要のある時期に来ているということは、否めない事実だと思います。  ただ、先生御指摘の問題につきましては、たとえて言いますと、案外なかなか国によってむずかしい問題がございます。たとえば、アメリカはアメリカ人の実際の指揮のも一とに、米国製の船を使って漁業をするもuのしか認めない。最近は、米国資本が七五%以上の企業に限るというような立法措置をいま何かやっているようです。それからカナダにつきましては、加工を除きましては漁業については合弁会社は認めないと、そういうこと。豪州は多少、豪州人が行っている漁業及び可能性のある漁業については合弁会社は認めないけれども、その他については認めるということで、現在一種の合弁の動きがあるわけでございますが、そういうように国々によりましてなかなかいろいろむずかしい問題を持っておるわけでございます。  したがいまして、できるだけわれわれといたしましては日本の船と技術と人と、これを有効に活用をいたしまして、大いに他の国々の経済的な協力関係も深めながら漁業を進めてまいりたいというふうには考えておりますが、いま個々のいろいろな魚種、向こうの国々と弾力的、機動的にいま合弁みたいな話に対応するということは、具体的にはなかなかむずかしい問題が起こっておるというふうに考えております。
  163. 三治重信

    ○三治重信君 そうすると、それに関連なんですが、農業関係だと海外から経済協力、技術協力で非常に申し込みが多いというのを聞いているわけですが、水産関係のいわゆる経済協力、技術指導とかいうやつの、まあ細かいことはいいですよ、大体の方向で、そういうことについての海外からの日本に対する協力、援助についての要請というものは相当あるものか、ないものか。また、こちらから働きかけていけばできるものか。  私は、これだけ減船をしていき、また船員が失業していくわけですから、むしろ日本からでもやはりこの海外経済協力にこういうような船や船員や技術者というものを来年度からでも、また今年度後半からでもできる限り海外協力事業団か何かひとつ努力をしていくということは、やはりだんだん縮小されておれたちの働く場所がなくなるんだという者から見れば、何かどこかにおれたちの働きがいのある場所を政府が見つけてくれると。これは、海外技術協力なり日本はその援助をしろと、こういうやつなんだから、こういうふうになってくると、黒字で困って、物と金と人があり、そうして非常に締めつけられるということで、海外が拒絶反応なら別ですが、何とか努力をしてそういうものができぬかと。農林省、これはことに通産省が中心になって、外務省も経済企画庁その他もひとつやって、何かこれは方法を、二、三のできるような努力をしたらどんなものだろうかと思っておりますが、そういうことについての御意見がありましたらお願いします。
  164. 森整治

    政府委員(森整治君) 確かに、日本の漁業に対します技術なりいろいろ造船、船の関係、あるいは加工施設、あるいは貯蔵施設等に対します要望は非常に強うございまして、海外協力事業団あるいは海外漁業協力財団というのもございます。これらを通じましていろいろ合弁の企業あるいは現地からいろいろ融資の申し込みを受けまして、それに対すますいろいろ技術の援助なり、あるいは融資なり、そういうことをやりながら、日本のまた入漁も認めてもらうということをあわせ行いながらやっておるわけでございます。ただ、現地の、発展途上国がもう主でございますが、こういう国々はなかなかそういう問題についてふなれな面があるということもまた否めない事実でございます。まあこれは精力的に話し合いを進めながらいろいろ漁場の確保、開拓、そういうことを図っていくしかなかろう。ただ、今後、そういう事業というのはますます必要であり、かつまたいろんな国からそういう要請が出てくると、またきつつあるというふうにわれわれは認識をいたしております。
  165. 三治重信

    ○三治重信君 ひとつどうぞ日本の何といいますか、水産業は世界一だというふうにわれわれは小さいときから聞いていたのが、こうやって締めつけられてくると、本当に漁船の人はことに気の毒だなあと、何かはけ口をやはり本気になってやったらどうかと。しかし、はけ口として、私は世界の漁場をよく知っておられる日本が、いろいろの経済協力なりそういうような体制でやったらどうかと思うものについて、まあ大変だけれどもひとつ努力をするという御回答を得たわけですが、これは本当に飛躍的にひとつ、単に経済協力とか何とかいうばかりでなく、私はそういういままで水産業のために働いてきた技術者や漁船員の方々の、まあ自分たちの将来の希望というものに何か火をつけてあげるということも非常に必要だと思うので、ひとつ特にお願いを申し上げておきます。  それから、サケマス関係で思うんですが、母川国主義でカムチャツカやアメリカやアラスカの川にどれぐらい魚がよく上るのかよくわかりませんが、日本の北海道や東北の河川も明治の初めには非常にサケが上ったと。先日も、石狩川の河口のサケ料理屋のおかみの三代にわたる話をNHKのラジオでやっているのを聞いたんですが、どうなんですか、これでだんだん沖どりが少なくなり、また日本の養殖業が発達したので、明治の初めに北海道を開拓したときのように、今後のサケマスの養殖によって、沖どりが非常に規制されるようになってくると、川がサケマスで埋まるような遡行状態に復するというのは何年ぐらいかかったらできるものなんですか。
  166. 森整治

    政府委員(森整治君) 沖どりが削減された分だけ直ちに沿岸の——沿岸といいますか、わが国の河川のふ化放流によって補うというわけにはまいらないかもしれませんが、ただ事実非常に回帰率も高まっております。北海道では二%ないし二・二%ということでございまして、一応五十五年度十五億六千万尾の放流を目標として、再生産の親魚の確保を図るということに努力をいたしておるわけでございます。五十一年度の約四割増ということをねらっておるわけでございまして、このことは現在の技術をもってすれば、きわめて可能な射程距離内の話でございます。放流の河川につきましては北海道では百三十三水系、内地では九十四水系ということで、それに伴うふ化場を国あるいは民営ということでいろいろ運営をいたしておるわけでございますが、さらに今後再生産の親魚を確保する、ことに日本海側の振興を図る。先ほどからいろいろ御意見がございましたけれども、そういうことと、未利用の河川の開発、それから養魚池等の施設の整備ということ、それから先ほどもお話ございましたように、えつけをいたしまして大きくいたしまして、海水にならしてから一定の温度になったときに放すと、こういうことで非常に回帰率が高くなっております。  こういう技術が非常に進んでまいりまして、最近の技術というのはまさにそこに焦点があるわけでございます。それから逆に、今度はやはり河川の環境の保全ということは非常にこれは大変な問題でございますが、逆にそういう必要が非常に出てきておるというふうに認識をいたしておりますが、あと放流の主体と、とる側とのいろんな組織的なシステムといいますか、機構といいますか、そういうものを今後再検討し、新しい機構を確立していくということが必要なのではないだろうかというふうに考えております。いずれにいたしましても、ともかく沖で失ったものはそういうところでわれわれは取り返すというつもりで、大いに今後努力してまいりたいというふうに思っております。
  167. 三治重信

    ○三治重信君 もう一つ農林省にお聞きしたいんですが、このように国際関係が非常に重要になって、農林省の方針が、先ほど大臣も、いつも大臣の方でもおっしゃっているように、日本の農業関係では食糧の自給率を高める、不足するものは輸入するようにして、安定した食糧の供給ということなんですが、それは一つの大方針はそのとおりだろうと思うんですが、いわゆる一億二千万余の人口を高度に養っていくからには、相当な自給率を向上する、自給率を図ると言って、国内農業、農林水産業を振興していくとは言うものの、やはり世界経済の中で、相当な輸入や、また世界経済の動きについて、日本農業は非常な影響を受けると思うんですが、そういうものに対して、今度の水産のこういうふうなこの二、三年来の激しい動きとともに、どうですか、農林省の方もやはり世界の食糧から——食糧というと、穀物から畜産物から水産物から、全体のそういう世界の動きや、将来戦略的にこの食糧が使われる時代も来るだろうと思うんですが、そういうものに対して農林省が内外のそういう動きについて網を張っていく体制に農林省の機構を持っていくと。  それで、ことに国内は生産ばかりでなくて、国内の大衆、消費者に達するまで価格の問題や流通の問題も、やはり生産段階でいかにたくさんやっていっても、それが十分消費者の方にリーズナブルの価格で届かないと、これが非常に高ければ消費が減る、消費が減ればそれだけ増産関係を何か言ってもそれだけの振興ができないと。やはり国民生活に合わした食糧の供給をやっていくと、供給量の増加に応じて食糧の全体の生活消費が相当ふえていくわけなんで、じゃどうして最大限にふやしていくかということになってくると、国内ばかりじゃなくて、もう少しやはり海外にも農林省の職員を、いままあ在外公館だと外務省へ配置転換してやるんですか。それから外郭団体や何かにも、私は相当いまの国内に使っている人員を、そういうふうに海外やそれから国内の流通部面へ相当配置転換する体制をとっていった方が、増産にも、また国内の食糧の自給率の向上にも、やはりもっと広い部面で検討されて私はいいんじゃないかと。  そういう意味において、この国内の部面の増産とか、いろいろの調査分析の精力を、もう少し海外やそれから消費の部面に人材を展開したらどうかと。水産の関係も、こういうふうに非常にこの二、三年の急激な問題や、畜産の牛肉の輸入のいろいろのトラブルなんかを見ても、やはりそういう考え方を、感じを持つわけなんですが、これはいずれ農林省の機構問題や任務の配分の問題については、逐次意見を開陳しながらまたお聞きしたいと思っておりますが、大きな立場でこういうようなのを見ると、やはり水産や畜産を考えていっても、国内が主だと、こう言うのはいいんだけれども、やはりその間にスムーズに国力の展開を図り農業の振興を図っていく場合には、農林省そのものがやはり機構的にも人材的にも、もう少しそういう部面の方へ精力を使う人材配置や、それから機構の改革をやる検討をすべきじゃないかと思うんですが、その点についてお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  168. 中川一郎

    国務大臣中川一郎君) 御指摘のとおり、農林省は以前は生産省といいますか、土地をよくして生産性を高める、これが中心でありましたが、最近は流通の問題やあるいは対外調整、特に水産外交、私も大臣になってみまして、外務大臣になったのかなと思うぐらい外国の方が多いわけでございます。したがって、外交方面に関する知識を持った人々あるいは流通関係に対してもっと強化をする等、やっぱり農林省の長期的あり方について工夫する必要があるだろう。今回設置法の改正に当たりまして水産関係を強化したり、あるいは食糧庁等の整備促進関係を入れる等々の改善をしたのも、まさにこのためではございますが、もう少し長期的に展望して、これに対応する人事の配置なり、あるいは機構の整備というものは考えていかなければならないと、こう思っております。また、この上とも御指導いただきたいと存じます。
  169. 鈴木省吾

    委員長鈴木省吾君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十五分散会      —————・—————