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1978-05-09 第84回国会 参議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年五月九日(火曜日)    午前十時十二分開会     —————————————    委員の移動  四月二十七日     辞任         補欠選任      丸谷 金保君     吉田忠三郎君  五月一日     辞任         補欠選任      市川 正一君     渡辺  武君  五月八日     辞任         補欠選任      穐山  篤君     佐藤 三吾君  五月九日     辞任         補欠選任      宮田  輝君     降矢 敬義君      佐藤 三吾君     穐山  篤君      多田 省吾君     矢追 秀彦君      中村 利次君     井上  計君     —————————————   出席者は次のとおり。     委員長         嶋崎  均君     理 事                 藤田 正明君                 細川 護煕君                 福間 知之君                 塩出 啓典君                 中村 利次君     委 員                 岩動 道行君                 糸山英太郎君                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 戸塚 進也君                 中西 一郎君                 桧垣徳太郎君                 降矢 敬義君                 宮田  輝君                 穐山  篤君                 佐藤 三吾君                 竹田 四郎君                 矢田部 理君                 鈴木 一弘君                 多田 省吾君                 矢追 秀彦君                 佐藤 昭夫君                 渡辺  武君                 井上  計君                 市川 房枝君                 野末 陳平君    衆議院議員        大蔵委員長    大村 襄治君    国務大臣        内閣総理大臣   福田 赳夫君        大 蔵 大 臣  村山 達雄君    政府委員        経済企画庁調整        局審議官     澤野  潤君        経済企画庁物価        局審議官     水田 治雄君        外務省経済協力        局長       武藤 利昭君        大蔵政務次官   井上 吉夫君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        大槻 章雄君        大蔵大臣官房審        議官       米里  恕君        大蔵大臣官房審        議官       渡辺 喜一君        大蔵省主計局次        長        山口 光秀君        大蔵省理財局長  田中  敬君        大蔵省証券局長  山内  宏君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        大蔵省国際金融        局長       旦  弘昌君        国税庁直税部長  水口  昭君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    参考人        日本銀行理事   山中 鉄夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○昭和五十三年度における財政処理のための公債  の発行及び専売納付金納付特例に関する法  律案内閣提出衆議院送付) ○昭和五十二年分所得税特別減税のための臨時  措置法案衆議院提出)     —————————————
  2. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員の異動について御報告いたします。  去る四月二十七日、丸谷金保君が委員辞任され、その補欠として吉田忠三郎君が選任されました。  また五月一日、市川正一君が委員辞任され、その補欠として渡辺武君が選任されました。  また昨八日、穐山篤君が委員辞任され、その補欠として佐藤三吾君が選任されました。     —————————————
  3. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  昭和五十三年度における財政処理のための公債発行及び専売納付金納付特例に関する法律案の審査のため、本日の委員会日本銀行理事山中鉄夫君を参考人として出席を求め、その意見を聴取いたしたいと任じますが御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 昭和五十三年度における財政処理のための公債発行及び専売納付金納付特例に関する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 福間知之

    福間知之君 大蔵大臣に、まず、この連休のかかりから例のIMF暫定委員会メキシコまで御足労されたわけでありますけれども、報道されるところによると、いろいろ中身があったやに伺うわけですが、概括的に、まず大臣の今回の暫定委員会出席を通じて、各国の主張なり、どのように受けとめて帰ってこられたか、お伺いしたいと思います。
  7. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 国会の方から御了承得まして、二十九日、三十日のメキシコ暫定委員会出席さしていただきました。二十九日の午前には十ヵ国蔵相会議がございましたし、三十日の朝にはまた五ヵ国蔵相会議がありました。その間を縫いまして、二十九日、三十日に正式の暫定委員会があったわけでございます。  感触といたしましては、何と申しますか、各国が非常に現実的にこの問題に対応しようという空気が非常に支配的でございまして、やはり現在の景気調整下におきまして各国が協力して共同目的を達成しなければならない。言いかえますならば、インフレなき拡大という問題をお互いに追求していかなければならない。それからさらに雇用の問題についても努力しなくちゃならぬし、赤字国赤字国で、黒字国黒字国でそれぞれ努力していかなきゃいかぬ。それからエネルギー問題も共通、全部で対処しなくちゃならぬ。こういう共同目標に向かって各国がそれぞれの立場で、各国のそれぞれの事情に応じて最大限の努力をすべきである。これが全体的なトーンでございまして、その意味では非常に現実的な空気であったと思います。  それから第二番目に言われましたことは、各国一様に、やはり基軸通貨国であるアメリカが、現在のドル安の問題について本当に努力しないと各国が全部えらい影響を受けるからしっかりやってくれと、こういう空気は一国残らず全部アメリカに対する要望としてあらわれておりました。これに対しまして、アメリカ側も率直に基軸通貨圏としてのアメリカの態度を表明いたしまして、現在エネルギー政策進行状況あるいはインフレ対策に対して、生懸命やっておると、こういうことを素直といいますか率直に答えておりまして、その問題が黒字国とどうだとか何かいう弁解は一切いたしませんでした。これは私は、非常にやはり基軸通貨国というものがいかに大事であるかということがよくわかったわけでございます。  それから第三番目に、もちろん黒字国の話が出ました。まあ私の感触で申しますと、大体二十カ国、その他OECDの事務局であるとか、ガットの事務局次長なんかも発言ございましたけれども黒字国もやはりしっかりやってくれという発言がございました。これはしかし全体の二分の一ぐらいの感覚でございます。それから、特に黒字国として日本とかドイツの名前を挙げたのは、またその半分ぐらいであったように思うわけでございます。それが第二点でございます。  第三点として、国際通貨の安定のためには、もちろん乱高下を抑えるということは大事ではあるけれども、それは補助的な問題であって、やはり基本的には実体経済における各国経済均衡が先決する。これはもうどこの国といわず、ほとんど一致した見解でございます。その上に立って、やはり乱高下を抑えるということはそれなりの意義はあるけれども実体経済の不均衡を抑えたままで、いわば通貨調整という技術的な問題でやろうとしてもそれには限界があるし、当然やはり投機筋をかえって誘発するおそれがある。これが全体のトーンでありました。  まあ第一議題世界経済見通しとそれから国際通貨調整過程、こういう議題であったのでございますが、大体以上申しました三点なり四点なりが注目されたところでございます。  第二議題IMF増資問題、あるいはSDRをもっと魅力のあるものにしたらどうか。それからSDR魅力あるものにするという提案と同時に、それを少しふやしたらどうか。あるいはその、ふやすに当たって各国がそれぞれドルを払い込むような方法で一極の不胎化をやったらどうか、こういう話題。  それから第四番目といたしまして、これはIMFの第二次協定の中にあるわけでございますが、今後国際通貨の安定のために各国がとっております国内政策あるいはその一部といたしまして為替政策、そういったものに対してサーベイランスをやるということが第二次協定でうたわれているわけでございますが、そのサーベイランスのあり方につきまして討議が行われました。  しかし、以上の問題を通じて各国一致して出ました点は、SORについてもう少し魅力のあるものにしろと、金利を少し上げろと、これだけは致したわけでございますけれども、それに関連して不胎化の問題であるとか、あるいはその額を幾らにすべきであるかというような問題については必ずしも各国見解が一致しませんでした。  それから増資につきましても、今度は第七次増資が問題になっているわけでございますけれども、第六次の増資の払い込みをいまやっている最中でございますので、これも必ずしも、やるからには一般的に五〇%以上必要であろうという点は大体一致しておりましたけれども、やる時期をいつにするか、こういう問題につきましては必ずしも一致いたしませんでした。  それから、サーベイランスのやり方につきましても、これも必ずしも各国一致しておりません。これらの問題は、次の世銀の会合がありますちょうど九月になりますけれども、そのときまでに事務局の方で検討して報告する、こういうことでございます。  以上が大体要約したところでございますが、その過程におきまして二つだけ申し上げておきますと、一つ専務理事ウィッテフェーンさんが、今度おやめになるわけでございますが、いわゆるウィッテフェーンシナリオを書いた、今後長期にわたりまして各国成長率をいかに見るかというやつがありまして、日本につきましては七九年、八〇年にわたって七・五%ぐらいを期待する、こういうのがありました。それに対しまして、私は十ヵ国蔵相会議でもまた委員会の席におきましてもそれは高きに過ぎる。恐らく日本潜在成長力余り強く見過ぎているんじゃないか、不況業極のいわばアイドルの設備の割引歩合が足りないんじゃないか、日本としてはもう国会でしばしば申し上げておりますように、長期経済計画では六%強と予定しておりますから、それ以上は無理でしょうということを申し上げました。これについては別に、一つシナリオでございますから、七・五%を強制するという意味ではもちろんございませんから、反論も何にもございません。ただ日本としての見解を述べておきました。  それから、やや新聞報道等で誤解があったようでございますが、減税を非常に日本に勧めたんじゃないかという話が伝わっておるのでございますが、実はそうじゃないのでございます。いわゆるシナリオにおきます一つの勧告といたしましてこういうことを言っているわけです。コストプッシュのある国においては減税とそれからその他の経常支出——資本支出ではございません、経常支出増加というのは主として振替所得の話だと思っておるのでございますが、どちらが有効だということになれば、それは減税の方が有効であろう、こういうIMFのいわば事務局見解参考までに述べられておるのでございます。コストプッシュのある国というわけでございますから、日本はいまコストプッシュが最もない国でございますから、当然これは日本は除外されておるのでございます。しかも公共投資減税との比較ではございません。減税と振賛所得増加、どちらが有効であるかという問題でございました。これは特にそういうふうにコメントがついておりますから、私からは何にも発言しませんでした。聞かれるときに日本の問題じゃございません、こういうことをお答えしておったわけでございます。  いずれにいたしましても、今度のIMF状況は、当初われわれは円高問題あるいは赤字国黒字国という問題からいたしまして、相当何と申しましょうか、少し激しい言葉のやりとりあるいは自国本位の考え方が述べられるのじゃなかろうかと心配しておりましたけれども、そういう空気は一切ございません。非常にそういう意味では、私も初めてでございますけれども条国とも現実的になってきたなという感じを持って帰った次第でございます。  以上でございます。
  8. 福間知之

    福間知之君 大体大臣の印象をいまお聞きを、したわけですけれども、昨年来からの国際通貨動揺といいますか、乱高下を含めたかなり長期にわたる動揺、そういうものがある程度この主要国通貨面で中間的なひとつの安定といいますかね、そういう状況に入りつつあるということが前提としてあるとするならば、いま大臣のおっしゃったように、余り激しい非難の応酬というものがなかったのかなと、こういうふうにも解されるわけであります。特にアメリカの最近の通貨に対する認識がかなり強まってきているという、したがって、対策を真剣に考えねばならないという姿勢がただいまの御報告でもうかがえるわけでありますけれども、しかし、まだ具体的に今後の見通しとなりますと、各国経済動向というものの展望が必ずしも定かじゃない。ウィッテフェーン専務理事さんの提起された中期の経済展望というものは一応別にしまして、たとえば西ドイツあたりでも最近五つの大きな研究所がそろって政府見通し三・五%の成長目標は無理である、二・五%ではないかなどの見通しを出しておるようでありますが、そういうことと専務理事の出された見通しとはかなり違うにもかかわらずそう厳しいやりとりに発展しなかったというふうに伺うわけでありますけれども、それは先ほど言ったように、一応中間的な通貨の安定という段階に入りつつあるということが前提ではないかと思うのですが、その点はいかがかということが一つ。  それからもう一つは、先ほど専務理事日本に対して七九年から八〇年までは七・五丘%の成長を期待するということを言われておるわけでありますが、確かにそうなんですね。大臣はそれに対してそれは無理だ、六%強ということが妥当だと、こういうふうにおっしゃったと替われていますが、それもまた理解できるわけであります。しかし、一方アメリカについては七八年度の見込み四・五%を四%に下方修正をしている、専務理事展望の中で。これは果たしてどういう認識からそういうふうになったんだろうか、そういうふうに思うわけです。  それから三つ目には、減税の問題についていま大臣はそれは日本に対することでは必ずしもないと、こういうふうにおっしゃられたわけでありますけれども共同コミュニケ中身として触れられている減税についてのくだりはどういうことになっていますか、正確にこれはわからないんですが、どういう表現になっているのか、教えていただきたいと思います。  以上三つお伺いしたいと思います。
  9. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 共同コミュニケの正確な文章については、国際金融局長から後で申し述べさしていただきます。  最初に非常になごやかな空気であったという背景には、いわば門ドルの関係が落ちついたことが影響したんじゃないかと、私もそのとおりだろうと思うのでございます。しかし、その背景にあるところが実は問題でございまして、アメリカは、御承知のようにカーターもインフレに対して、あるいは石油の消費節約に対しましてかなり強い決意を表明しておりますし、かなり具体策も述べているわけでございます。また為替相場調整につきましても、ドイツとの間にスワップを二倍に連銀相互間でやりましたり、財務省とそれからドイツ連銀の間に新たなスワップを結ぶとか、さらには金売却を開始したというような措置、こういったことでアメリカのこの問題に対する基軸通貨国としての責任、そういったものがやはり具体的に形に出ているわけでございます。またわが国におきましても、御承知のように短期資金については抑えるものは抑えましたし、それから乱高下と見られないようなものについての介入は慎んだわけでございまして、そういった意味では、それは世界は全部わかっているわけでございます。したがって、各国の基本的な政策のとり方あるいは為替市場に対するいわば介入の仕方の常識化、こういった問題が私はその背景にあったと思います。  それから、もう一つあえて言わせていただきますならば、やはりある程度、これは一般の見方でございますけれども為替相場はかなり落ちついたんじゃないかという空気があったんじゃなかろうか、これは私の想像でございますが、そういったものがやはりこの会議の全体のトーンを非常になごやかなものにすると同時に、共通目標というものに対しての各国努力というところに集結されたんじゃないか、この点は福間さんがおっしゃったのと大体同じ感触でございます。  それから第二番目の、アメリカ成長率が、いわばシナリオで書かれました成長率が低いということは、これはもう御案内のようにアメリカはいまインフレが非常に懸念されておる国でございます。したがいまして、恐らくIMFの全体の作業の具体的な問題はわれわれはうかがうことはできないのでございますけれども、常識的に申しましてアメリカはいまやはりコストインフレに入っておるんじゃないか、だからむしろ基軸通貨の安定を図るためには、成長よりもむしろインフレを抑える方が大事だと、これは各国もう共通したトーンでございましたから、そういったことは自然にIMFシナリオの中にもあらわれているのではなかろうか、こんなふうに私は観測をいたしたのでございます。  いまの正確なコミュニケ文章につきましては国際金融局長から申し述べます。
  10. 旦弘昌

    政府委員旦弘昌君) 先ほど御指摘の部分につきましては、仮訳でございますけれどもちょっと読ませていただきますと、「コストプッシュ要因が強い国については、減税による刺激策が、政府支出による同額の刺激策より、政府支出の増大が投資目的とするのでない限り、適切かもしれない」という表現になっておりますので、申しておりますことは、投資目的とする政府支出の場合は別ですよと、それ以外の政府支出によるものでありますれば、減税による刺激策の方が適切かもしれない、こういう表現になっております。
  11. 福間知之

    福間知之君 これは国際金融局長、どういうくだりでそういう減税問題がわざわざ指摘されているんですか。
  12. 旦弘昌

    政府委員旦弘昌君) これは、この委員会の全体のコミュニケの中でそのくだりがあるわけでございまして、世界経済全体の問題につきましてコミュニケが触れておる中で、その中でこういうくだりが入っておるわけでございます。
  13. 福間知之

    福間知之君 メキシコ暫定委員会の件はその程度にとどめまして、特例公債問題に移りたいと思いますが、御案内のとおり、昭和五十年以降かなり大量の国債発行が余儀なくされてまいったわけでありますが、いままでの実績でいいますと、発行量がほぼGNPの四ないし五%程度になっているようであります。ことしの年度末の残高がGNP比約三〇%を超えるという予想が立つわけでありますが、しかも収支計算、あるいはまた今後の財政需要あるいは税収の動向、いろんなことを考えますと、まだまだ五十四年度以降も増高を重ねていく、こういうふうに一応理解するといたします。四十年代の高度成長期におきましては、いわゆる建設国債発行されましたが赤字国債はありません。そしてその量はほぼ年々の成長通貨の範囲内であったからインフレーションその他の問題が起こる懸念が非常に薄かったと、こういうふうに理解されるんですが、当面、財政当局は今年度十一兆円に近い赤字公債建設公債を含めた大量発行に伴ってどういうふうな御認識をされておりますか、お伺いします。
  14. 田中敬

    政府委員田中敬君) 御承知のように、財政収支試算でも示されておりますように、ここ当分国債大量発行が続くということは見通されるわけでございます。私どもは大量の国債発行に伴いまして一番懸念することは、やはりこれがインフレを招かないかという問題でございます。インフレ大量国債発行の問題につきましては、私どもといたしましては、大量の国債発行というものは通貨供給量増加を招く要因にはなるけれども、しかし適切な金融調節があればこれは十分コントロールし得るものであって、即インフレに打ち当たるというものではない、そういうためには適切な国債管理政策あるいは金融調節手段を講じていくべきである、こういう前提に立ちまして、ごらんのような現下の経済夢精あるいは財政情勢にかんがみますと、この国債大量発行というものが直ちにインフレを招くものではないという前提で、当分の剛はこの大量発行を続けるのはやむを得ないと思っています。しかしながら、インフレが起こるかどうかということは、単に国債発行ということでなくて、その大量国債発行をするそのときどきの経済情勢あるいは金融情勢、いろいろの要因が絡んでおるわけでございますので、そういう要因を絶えず注意をしながら年々の発行処理に当たってまいりたいと。現在見通されます今年度経済金融情勢である限りにおきましては、本年度の十一兆円の国債発行というものが直ちにインフレを招くという事態は考えておりません。そういう意味におきまして、たとえそういう見通しであるにいたしましても、この十一兆円の本年度国債発行に当たりましては、その月々の発行額調整という点につきましても、細かくそのときそのときの金融情勢経済情勢に応じてこれを調整してまいりたいというふうな細心の注意を払って今後の大量発行に備えてまいりたい、かように考えます。
  15. 福間知之

    福間知之君 いまの理財局長の御説明もそれなりにわかるわけですが、先ほど指摘したように、いわゆる成長通貨は四十年代と比べて五十年代はかなり大きいものになってるんじゃないのか。そのわりにインフレというものはむしろ鎮静化を続けてきた。これはまさに通貨流通といいましょうか、それはまあ実体経済動向と絡んで非常に微妙なものだと思うわけでありまして、単に公式論的に成長通貨を上回ったからインフレーションだというふうにも理解しがたい面がある。  たとえば、当局もここ一、二年来かなり個人消化ということについて流通市場近代化といいますか大衆化といいますか、そういうものを進めておいでになった。これもあずかって個人債券取得というものがふえてきている。一方、景気余りよくないから資金需要余り強く影響しないということで、債券取得とか、あるいはまたよい悪いは別にして、一応株代投資とかいうふうな方向に個人なり機関投資家手持ち資金が流れ込んでいく、そういうことで、いわば現実の経済活動として資金が回転を速めるということを来さなかったというところに私は成長通貨以下に国債発行が行われたけれども、さほど懸念するような事態にならなかったのではないか、まあそういうような理解をしているわけです。  これは間違っているかどうか、あるいはまたお聞かせ願いたいんですけれども、むしろ問題はこれからですね。これからそういう、さらに大量発行が続いていくわ、資金需要は漸次高まっていくわ、これはもう景気を回復したいという立場から言えば当然のことなんですけれども、そうなったときに国債というものに対するいま機関投資家なり、あるいは取得されている個人なりの魅力というものに対する度合いが現状ではやや疑問があるわけでありまして、そうなると一斉に手放すというふうな危険も出てくる。そこらをこれからの景気動向、それは上向いていくという前提に立って考えた場合の一つの危惧があるわけで、適切な管理政策、適切な金融調節策を講ずればこれはいけるんだと、こういうことではありますが、余りにも量が多過ぎはしないのかということで、私どもはやはりインフレヘの危惧を感ずるわけでありまして、その点はいかがですか。
  16. 田中敬

    政府委員田中敬君) もし民間経済が自律反転をして、民間資金需要が出るということになりました場合には、御懸念のクラウディングアウトというような事態が起きないかということでございますけれども、財政政策、金融政策全般の考え方といたしますれば、成長のための総需要というものがどれくらいが適当であるかということから見てまいりますといたしますと、民間需要が伸び民間の設備投資が伸びた分だけは、それだけは財政が引っ込んでいいはずでございます。いまそれがないために大きな公共事業を組んでこのような大量発行をいたしておるわけでございますので、そういう事態になればおのずから財政支出を引っ込めるというのが基本原則だろうと思います。  そういう意味におきましては、そういう総需要管理あるいは民間との関連におきましてもそれが申せますと同時に、やはり財政の体質改善あるいは健全な金融政策を追求していくためには、何といっても国債管理政策前提国債発行額の圧縮を図っていくということが一番だろうと思います。その圧縮を図る努力を一方でいたしながらも、やはり財政支出面に示されておりますような相当の大量発行がいまから続くという事態でございますので、今後の日本経済成長経済の進展を見ながら、この民間の資金需要の伸びと申しますか、民間の経済活動の進展の度合いと、それから財政がそれをどの程度補完すべきか、現在の場合は財政がむしろ主導いたしておりますけれども、その兼ね合いを考えながらやはり国債政策というものも考えていくべきだろうと思います。  それと、第二点の委員の御指摘になりました、いろいろ今後民間資金需要が出た場合に、国債の引き受けというものがむつかしくなると同時に、現在の手持ちの国債が放出されて非常に危惧される事態が起きるんではないかということにつきましては、これはやはり今後国債管理政策といたしまして、そういう国債流通市場を、いわゆる公社債市場の受けざらというものをどういうふうに拡大し安定化してって、これら必要に応じて放出される国債というものを、その価格において余り乱高下がなく、どういうふうにして市場がそれを受け入れることができるかという市場育成策として、これを私どもは今後十分考えてまいりたいと考えております。
  17. 福間知之

    福間知之君 まあおおむね基本的にはそういう考えで私もいいんじゃないかと、こういうふうに思ってますが、一昨年ぐらいから金利が低下を始めております。既発国債流通価格はしたがって上昇ぎみになります。そこでキャピタルゲインが生ずるわけで、国債の市中消化が順調にいくという条件が生まれてきたのじゃないかと、まあ一つの、要素としてですね、そういうふうに……。一方、不景気資金需要がないという面もありますけども。金利の低下傾向は、景気が上昇面に入りますと必ずしも今後も続くというふうには、金利の低下傾向が必ずしも今後も続いていくというふうには考えられないで、反転上昇傾向をたどるということも考えられるわけであります。  その場合に、まあ一つの条件といいますか、傾向として、国債の価格の乱高下、むしろはっきり言えば下落ということが起こるというふうに一応考えられるわけでありますけども、そういうことを取得されている個人あるいは金融機関等がどのように感ずるだろうかと。また財政当局としては、その場合に国債発行規模が小さければ大して問題はないけども、かなりの規模であるということから、まあ価格の下落は恐らく好まないだろう、こういうふうに思うわけでありますけども、そういうふうなことを考えると、この流通価格の下落、逆を言えば流通利回りの上昇、これは一般民間の側からも、あるいはまた財政当局、両面から見てもかなり共通して問題だという認識がそこに生まれてくるのじゃないかと思うわけであります。  したがって、言うならばいままでこの国債価格の支持政策というふうなものが登場してきた。いわゆる、いま長らく議論している発行条件の弾力化だとか流通市場の整備だとか、金利の自由化を含めたそういう国債市場の新しい条件整備といいますか、育成といいますか、そういうものが観念的にはわかっておりながら、具体的にはなかなか思い切って手がつかなかったんじゃないかというふうに思うわけですけれども、今後はそういう価格支持政策という従来的な管理政策では、やはりこれからの国債発行に伴うデメリットというものが、あるいはまた混乱というものが生じてくるという、そういう危惧が私はかなりあると思うわけで、専門家もそういう点をすでに指摘をして、やっぱり金利の自由化を中核にした国債管理政策への転換を強く求めていると思うんですけれども当局はここ一、二年、特に今年、昨年の後半ぐらいからかなり積極的にこの流通発行条件の弾力化とか、流通市場近代化ということについて私は努力をされてきたことをこれは認めますけれども、やっぱり金利の自由化というところまでまだ踏み込む決意ができてないように思う。もちろんこれは一般金利との関係が連動が非常に問題視されるわけでありますけれども、この問題についての今後の手順といいますか、どういうふうにどういう時期にそこまで踏み込んでいくということをお考えなのか、これはかねがね私どもがお尋ねをしているところですけれども、お伺いをしたいと思うわけであります。
  18. 田中敬

    政府委員田中敬君) 御質問の趣旨を一点にしぼりまして、国債発行条件を今後変動するであろう金融情勢に応じてどうするかというところにしぼってお答えをいたしてみますと、先生にいまおっしゃっていただきましたように、国債発行条件につきましてはここ二、三年その弾力化を積極的に図ってまいっております。一時は国債発行条件、あるいは国債の市場価格というものはつくられた価格であって実勢を反映してないという御批判もいただいた時代もございます。最近の金融情勢に恵まれた点もございますけれども、私どもはそういう過去の国債発行条件の設定を省みまして、ここ一、二年、数次にわたる金利の引き下げに当たりまして国債発行条件をなるべく市場実勢に近づけるという努力を行ってまいりまして、実はいろいろ公社債について金利体系などということが言われておりまして、国債発行条件あるいは事業債の発行条件、これは信用度の格差というものがある、あるいは国の財政負担への影響もあるというようなことで、相当大きな格差が市場火勢と離れて設けられておりましたけれども、これを市場実勢に近づけるという努力をいたしまして、かつては一%以上離れておりました一般事業債と国債との発行条件の格差というものが現在では〇・二%に縮まっておるということで、日々の市場で発表されます店頭気配を見ていただきましても、現在の発行条件というものはほぼ市場の実勢にマッチしているというふうに考えております。  国債発行条件につきましては、私ども今後の大量発行が続く場合、やはり一方におきましては財政負担ということを絶えず念頭に置くことは当然でございますけれども、円滑な消化あるいは円滑な金融行政の遂行のためには、やはりつくられた国債の条件でなくて実勢に合った国債発行条件というものへ一層の努力をしてまいりたいと思っております。そういう意味におきまして、本年一月から資金運用部資金が保有いたします国債を売ります際に、これを入札制度にいたしまして実勢を反映するとか、それから今後の国債発行につきましては、諸外国におきましてはシ団引受方式と同時に、いろいろ多くの国債の種類を持っておりますが、その国債の種類によりましては入札発行ということをやっておる国もございますので、これらを参考にしながら、そういう点も今後の検討課題として努力してまいりたいと考えております。
  19. 福間知之

    福間知之君 先般、その運用部資金持ちの国債を何千億でしたか、二千億ないし三千億でしたか、いまおっしゃられたような市場の実勢というものを加味して売却をされた、これについての銀行筋等の評価はいかがかと、いうこと。  もう一つは、新たな中期国債発行ということを、短期のものをお考えになって、おるということのようですけれども、一説によると貯蓄国債などを考慮してみたらどうなのかと、こういう意見もあるやに伺うんですが、その点はいかがですか。
  20. 田中敬

    政府委員田中敬君) 運用部の保有いたしております国債を売りました総額は、この一月から三回売っておりまして、最初は三千億、次が二千億、それから最近三千億と、合計八千億売却をいたしております。  これを入札で売却しました評価という点でございますが、私ども直接の反応を、まだ金融機関からは聞いておりませんが、日銀等が、今後日銀が行いますオペレーションにつきましてこういう入札方法によるということを日銀は金融調節として考えておるようでございますが、それらの布石として非常にいい結果が出たと、あるいはまた市場筋におきましても、こうして入札によって実際の実勢価格が国債管理当局にはうきりわかってもらえたということはいいんではないかということで評価——今回の措置につきまして特にこれという御批判は受けておりません。  それからもう一つ、新しい国債の種類について貯蓄国債を考えておるかというお尋ねでございますが、現在のところ貯蓄国債というものは考えておりません。かつて貯蓄国債発行した事例もございますが、貯蓄国債につきましては、日本におきましては、いわゆる郵便局の定額貯金制度というのがございますし、これが国民の大きな貯蓄手段になっております。それらとの競合の問題というようなこともございますし、貯蓄国債につきましては将来の多様化の一手段として検討課題とはいたしておりますが、委員がただいま御指摘になりました、近々において予定しておる新しい国債の種類としては貯蓄国債は現在は考えておりません。
  21. 福間知之

    福間知之君 まあ、その貯蓄国債のことについてなかなかむずかしい問題があると思うんですけれども、当委員会でも後ほど、進学ローンの問題をめぐっても大蔵当局のみならず郵政当局等々との関係では、多少この見解の相違というようなものも生まれているようなわけでございまするから、国債面で再びまた貯蓄国債などを発行するとなれば問題は少なからずそこにあるとは思います。しかし貯蓄国債というのは、いわば市場性がないという意味でいままでの国債とはまた少し性格は違う。しかもまた、いま郵便貯金は多額なものになっておるし、マル優の枠をめぐっても、このもぐりの貯蓄で利得を上げておる者がおるんじゃないか、名寄せをどうするんだということがかねがね問題になっているわけでありますから、そういう観点から言うと、一部の郵貯資金というものを、貯金というものをそういう貯蓄国債などで吸収をして、それには税をかけない、別のマル優制度みたいなものにして優遇措置を講ずるというふうにすれば、私はいままで郵貯に行ってたものの幾分かが国債の保有ということで、単にそれは国債がより広範に保有されるというだけじゃなくて、新しい財政というものについての認識がそこに拡大をしていくということになって、三石二鳥じゃないかなあというふうな感じがしないでもないわけですけれども、ぜひこれはひとつ真剣に考えてもいい課題ではないかな、こういうふうに思うわけであります。  以上、時間がまいりましたので質問を終わりたいと思います。
  22. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 昨昭和五十二年度資金運用部資金の政府関係機関の実行見込みによると、大量の使い残しというのが見込まれておりますが、その原因は一体どういうところにあるか、まずちょっと伺いたいと思います。
  23. 田中敬

    政府委員田中敬君) 資金運用部資金の五十二年度の執行状況を見ますと、御指摘のとおりに多額の不用、繰り越しが出ております。計数的に申し上げますと、資金運用部資金の財投計画に計上しました予算現額が十二兆八千九百六十七億円であるのに対しまして、不用額が四千六百六億円、繰越額が二兆一千九百四十五億円ということで、予算の実行率というものは相当低率になっております。三月末までの年度内の実行率というものは七九・四%でございまして、五十一年度の八五・二%というものを下回っております。  この三月末までの進捗率が低かったという原因といたしましては、大きく分けて二つあろうかと思います。一つは、景気振興のために昨年の九月を最初といたしまして十二月までに数次にわたりまして財政投融資の追加を行っております。財投追加を行った金額が一兆二千六百億円余になりますけれども、これらが年度後半において追加をされたということで、この消化が若干おくれたという点が一つと、それからもう一つは、一般に昨年の秋から金利の低下が数次にわたって行われまして、そのうちに資金運用部資金の貸付金利も低下があるんではないかということを予測されて、有金を引っ張っていく機関がそれを見越してずらされた。特に地方債におきましてその傾向が顕著でございまして、例年、地方公共町体の債券を運用部が引き受けますが、これは四月にずれ込むのが通常でございますけれども、そのずれ込み度合いというものが金利低下を見越して非常に大きかった、この二つが主要な原因でございまして、これらの要因を除いてみますと、特に本年度が従前に比べて消化が悪かったというほどでもないと思っております。
  24. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 五十二年度の第三・四半期までの進捗率では、五十一年度よりも大幅に下回って三五・六ということ、ですから、いまのままでいくと実行見込み額が、いま御答弁のあった七九・四%よりも下がるということになるおそれはありませんか。
  25. 田中敬

    政府委員田中敬君) 私が申しました七九・四というのは、もうすでに三月、年度末を経過いたしておりますので、実績ベースでお答えを申し上げました。
  26. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 この運用部資金の政府関係機関への運用実績、こういうのを見ると、五十年、それから五十一年、五十二年、こういうふうに三年連続して、同じいわゆる政府機関、同一機関で大量の繰越額を出しているのがありますね。特定国有財産整備特別会計、日本開発銀行、それから日本輸出入銀行、宅地開発公団、年金福祉事業団、日本道路公団、こういうのが特にはなはだしいわけでございますが、これはどういうわけかということですね。
  27. 田中敬

    政府委員田中敬君) 五十二年度の実行状況から見て、御指摘の機関を分析いたしてみますと、特待会計につきましては筑波の研究学南都声の建設工事が現実におくれているという実態がございまして、それが繰り越しを生じた原因でございます。それから開発銀行につきましては、長期金利の引き下げというのが数次に行われましたために、金利引き下げの期待のために貸付契約が伸び伸びになって資金需要が起きなかった、実行がおくれたということでございます。それから輸出入銀行につきましては、円高が響きまして繰り上げ弁済がございましたために、輸出入銀行自体の資金繰りが好転いたしたために運用部資金の需要がなくなったということ。あるいはまた、繰り越しを生じました原因につきましては、世界的な景気停滞で、予定した船舶とかプラントの輸出というようなものが、延べ払い輸出というようなものが減少したというのが大きな原因だろうと思います。  そのほか目につきます機関といたしまして、住宅公団が例年繰り越しを多く出しておりますし、本年度は二千億余の不用をも計上いたしておりますけれども、これは御承知のように空き家問題を抱えましたために、政府部内において住宅公団の計画について洗いがえを行いました結果、本年度六万戸予定を四万戸に削減したというようなこともございまして、このような不用、繰り越しを生じたわけでございます。あるいは宅開公団でございますとか、地振公団でございますとか、常習犯がたくさんございますが、これらはいずれも自分の行います事業が、当該地方公共団体と、土地の問題とかあるいは環境アセスメントの問題とか、いろんな形で交渉が難渋いたした結果、事業のおくれを来しているものでございます。  あとは、海外経済協力基金が例年私どもの目では相当の繰り越しを生じておりますが、これは海外援助につきましてコミットはできたけれどもディスバースがおくれている、いわゆる日本の海外経済援助のおくれを反映した一つのあらわれだろうと思っております。  大体、以上のような点が原因でございます。
  28. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 年金福祉事業団はどういうことですか。
  29. 田中敬

    政府委員田中敬君) 年金福祉事業団につきましては、年金福祉事業団の中の事業を分析いたしますと住宅貸付等がございますが、この住宅貸付等は予想以上に進展いたしまして満杯でございますけれども、福祉事業団の行っております事業の中に大規模年金保養基地の建設でございますとか、そういう建設工事がございます。これらがやはり建設計画自体がおくれたというのが、五十、五十一、五十二年度につきまして繰り越しを生じた、使い残しが生じた原因であろうと思います。また、先ほど住宅貸付は好調であると申し上げましたが、被保険者に対する住宅貸付で、申請を受け付けても貸し付けの実行が審査の関係でおくれているということがあったための繰り越しでございます。しかし年金事業団の繰り越し状況、ここ五十年度から比べてみますと、五十年度が約五百七十億円、五十一年度が三百二十億円、五十二年度は約百五十億円弱でございますので、年々改善はされておるものと思われます。
  30. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 五十一年度のときには不用額が三百億を超えていますね。いまその辺は、どうしてそんなに急にそこのところがぼこっとふえているのか。何かやるべきことをやらなかったんじゃないですか。
  31. 田中敬

    政府委員田中敬君) 私もはっきり実態を確信を持って御説明できませんのは申しわけございませんが、恐らく大規模保養基地の関係が原因だろうと思いますが、よく調べました上で御報告申し上げます。
  32. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これはひとつ調べてから言ってください。  それから宅地開発公団の方を見てみると、五十二年度の計画は四百二億円、それが実行計画、それに対して不用額は二百四十九億円、繰り越しが百十八億ですか、そうなるというと、実行されたのは本当にわずか三十数億円ということになるでしょう。五十一年度も同じように実績は非常に少ない。五十年度もそうですね。いずれにしても二百億あるいは二百五十億というような金額の計画に対して、実績が二十八億円とか八十八億円とか続いてずっときておりますね。それに続いてまた繰り越しが大きい、そういう実行されないものが多くなってくるというふうになってくんじゃないか。実績が非常に少ない。どういうことですか、これは。こんなに少なければ見直しをして、これはいわゆる実行計画それ自体を見直さなければならないのかですね、洗い直しをしなきゃいけないんじゃないかという感じがしてなりませんし、そういう点、どういう原因でこうなったのか、先ほどの御答弁だけではちょっと納得できない。  それからもう一つは、そんなに実行額が少ない、これは実際問題、これから公団に対する態度を考えなければいけないということになると思うんですが、しかしこれから宅地開発公団の方と例の住宅公団の土地の問題等があるようですから、どういうふうに操作されていくか、まだ私わかりませんけれども、その点についてどういうふうにいま展開をしようとしていますか。
  33. 田中敬

    政府委員田中敬君) 宅開公団につきましては、御指摘のとおりに事業の進捗が非常におくれております。建設省から御答弁申すべき問題かもしれませんが、公団が設立されて以来、どこの宅地を開発すべきかというそのプロジェクト自体の選定に迷って数年を経過したのが実情でございます。そういう意味におきまして、毎年多額の不用、繰り越しを抱きましたが、特に五十二年度におきまして多額の不用を汁ししたということは、むしろ私どもが不用を計上させたという形でございまして、計画を洗いがえをいたしまして、従来計画を破棄して本当に建設可能なものだけにしぼるということで、従来のいきがかりをなくして洗いがえをしたという意味で不用を多額に出さしたわけでございます。明年度におきましては、従来からやっております竜ケ崎のニュータウンのほかに、新たなプロジェクトといたしまして、千葉県との折衝がようやく緒につきまして、千葉のニュータウンの引き継ぎができて、これを開発することができるということでございますし、新たに厚木地区につきましても開発をするという計画がございまして、これらに基づいて五十三年度の財投を計ししたわけでございますが、財投計上額につきましてはそういう経緯もございますので、五十二年度よりも約一四%少ない財投計画ということで対処をいたしております。
  34. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 道路公団については同様な問題がありますね、やはり繰り越しが非常に大きい。日本道路公団については五十年が四百九十七億、五十一年が八百九十六億、五十二年が八百四十何億という、こういうような見込みになっておりますね。そういう、いただいたのから見てもわかるのですけれども、そうすると、この辺についてもいまの宅地開発公団と同じような考え方でいくんですか。
  35. 田中敬

    政府委員田中敬君) 道路公団につきましては、数字は確かに御指摘のような繰り越し額が生じておりますが、実態は宅開公団と異なっておりまして、道路公団の建設計画というものは公共事業の進捗状況にもあらわれておりますように、契約べースその他につきましては予定どおり進捗をいたしております。道路公団に繰り越しを生じます大きな原因と申しますのは、たとえば道路用地として先行取得をする土地、その登記手続を年度末に行いますが、登記完了の際に支払う金額と登記の際に支払う金額というようなことで、土地代金の支払いが登記手続を要しますので、この登記手続のおくれというようなことで支払いがずれているということでございます。それから工事計画は予定どおり進捗いたしたけれども、いわゆる工事の検収のおくれによって支払いがずれているということでございまして、年々四百、五百の繰り越しが出ておりますけれども、これは過去数年実績を見ますと四月、五月にはきれいに清算されているという実情でございまして、道路公団につきましては私どもは特に心配する問題はないというふうに考えております。
  36. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 資金運用部の政府関係機関へのことを聞いてきたわけですけれども、この運用計画でいまの答弁のように二兆円を超える、二兆一千九百億ですか、そういうような、合計で二兆二千億を超えるようなのが出てくる。もっとですね、二兆五千億ですね、そういうことになってまいります。結局、計画の二〇%が年度内に消化できない。こういうことは前例があるんですか、いままでに。確かに御答弁のとおりにぎりぎりのところへきて財投の追加をしたということが大きな原因であろうということはそれは想定できるんです。推定できますけれども、いずれにしてもこんなに残すことが、もう計画のときにこれは本当はわからなければならないわけですね。私どももこんなときに追加して間に合うんだろうか、消化できるんだろうかという疑問はだれもがあのとき持ったはずです。持ったんだけれども、しようがないという、強いものには勝てないということでああいうことになったのかどうか、その点が一つ問題なんですけれども、こういうように二〇%以上が年度内に消化できなかったということは、これは全く前例がないようなことじゃないか。こういう事実をどう今後見ていくかですね。
  37. 田中敬

    政府委員田中敬君) 実績の数字で申し上げますと、五十年度が消化が八六・二、五十一年度が八五・二、五十二年度が不幸にして八〇を割りまして七九%台ということになったわけで、委員御指摘のとおりに、二〇%の繰り越し、不用を生じたわけでございますけれども、五十二年度におきますこの繰り越しの実態というのは、その大部分、三兆一千億のうちの大部分の一兆三、四千億というものが地方公共団体の起債の引き受け分がおくれているわけでございます。地方公共団体の起債と申すのは、御承知のとおり、地方公共団体は毎年年度が始まりまして四月、五月になりますと、実際に起債を財源とする仕事につきまして、資金を短期借りをいたしまして仕事は実行いたします。仕事を実行した後で年度が明けて四月、正月に一挙にこれを長期の起債手続に切りかえるということで、その段階で運用部の資金が出ていくわけでございまして、事業の実態というものは進捗している。ただ運用部に長期の借り入れという形で起債を運用部が引き受けるのが四月、五月になるということで、これは恒常的なことでございますので、私どもはその点については心配しておりません。そういう意味におきましては、御指摘のように二〇%以上の繰り越し、小用というのは非常に異常な数字でございますが、地方公共団体要因を除きますとそう大きな数字ではございませんので、かねがね御指摘いただきましたような機関につきましてより以上細心の注意を払うとともに、財投計画の編成にあたりましても今後注意をしてまいりたいと。そういう点で、本年度行いましたのは、財投機関が五十幾つかございますけれども、本年度はそのうち十八機関につきましては、実績を見まして、前年度と横ばいもしくは五%程度以内の増ということにとどめております。御注意もございますので、十分注意をしてまいりたいと思います。
  38. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 時間があれですから、日銀からもお見えになっているようですから、ちょっと外国銀行の問題について伺っておきたいと思います。  現在、日本に外国銀行が六十行、そして八十を超える支店があるということでありますけれども、この日本における営業問題について、これは午後総理にも伺おうと思っているんですけれども、いわゆる貿易の自由化、関税、その次は金融ということから、これからはこの問題が大きくなるんじゃないかということで伺っておきたいんですが、特に大蔵省、日銀の規制が厳し過ぎるという声が一部の外国銀行に出てきている。現在の金融市場の国際化という方向の中で、どういうようにわが国の金融制度の改革について考えているのか、これをまず伺いたいと思うんです。
  39. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 御指摘のように、いま外国銀行のわが国における数は六十行、八十二ヵ店に及んでいるわけでございますが、このように外国の銀行がわが国において金融活動をするということは、今後の経済、金融の国際化が進むに従いまして、ますます大きくなってくるわけでございます。  これらの銀行は、一応銀行法上はそれぞれ一つ一つが独立の銀行として許可されているわけでございまして、当然のことながら、日本の銀行を中心とする日本の金融制度にのっとって営業をすることになっておりますし、また、それを承知の上で日本に進出してきているわけでございますけれども、しかしながら、金融というのは本来すぐれてインターナショナルなものでございますから、したがって、外国銀行のわが国における活動が、わが国銀行の海外における活動、あるいは外国銀行の外地における、それぞれの国における活動と非常に翼なったものであるということはだんだん許されない情勢になっていると考えております。  もちろん、日本の金融制度はそれぞれの歴史もありますし、それぞれの理由があって成り立っているわけでございますから、これを一挙に変えるということは、これは好ましくないことは当然でございますし、金融秩序の安定ということも大事なことでございますけれども、しかしながら、金融制度全体の国際化と申しますか、諸外国で行われているような業務について必要なもの、あるいは日本の国民にとってプラスになるようなものは、これを取り入れていくというような態度が必要かと思います。  この点につきましては、実はいま御承知のとおり、金融制度調査会で銀行法の改正をめぐりまして、日本の銀行の業務のあり方についていろいろ検討いただいているわけでございますが、その検討に当たりましては、このような国際的な観点からの検討も進めていただきまして、そういうものを含めて適正な結論が出ることを期待しておりますし、またそのような結論が出ますならば、そういうものを踏まえて制度の改革についても検討してまいりたいと思います。  それから、このような法律の改正を必要としない事項につきましては、これは金融制度調査会あるいは金融問題研究会等におけるいろいろな審議の進み方、そこにおける審議の状況等を十分勘案しながら、できるものについては具体的に実行に移していきたい、このように考えております。
  40. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 日銀からもひとつ。いまの大蔵省の答弁に対して、日銀の規制も厳しいと、こういう話があるわけですけれども、日銀当局としてはどう考えていますか。
  41. 山中鉄夫

    参考人山中鉄夫君) お答えいたします。  日本銀行といたしましては、現在、先ほどお話しのように六十行外銀が出てきておりますが、これらの外銀に対しまして、基本的に日本の銀行と差別した扱いを現実にやっているわけではございません。日本銀行の在日外銀に対します預金の取引開始、貸し出しの取引といったような面におきましてはもちろんのこと、これらの銀行がたとえば円資金調達のためにコール市場からコールをとるとか、あるいは手形市場に参加するといったような面につきましても、国内の金融機関と同じような扱いをしておりまして、差別をしているわけではございません。また、国内で日本に来ております在日外銀が運用資金としてそれぞれの海外から資金を持ち込むことに対しましては、御承知のごとく日本では為替銀行全部に対しまして円転換の規制をいたしております、外貨を円に転換することを制限しておるわけでございまして、これは外銀にも適用になるわけでございますけれども、外銀に対しましては、国内での資金の吸収力が邦銀に比べて弱いといったような実際問題としての特殊性も十分考慮して、特別の措置を行っているような状況でございます。  ただ、それにもかかわりませず、外銀からいろいろ不平が伝えられたり、現実に要望といったような形で出てくることも絶えないわけでございますけれども、私どもはこのことにつきましては、結局のところ日本におきます取引の慣行とか市場のあり方といったようなものがいろいろ外国と違うのでございますし、また金利等につきましても、自由化といったような点につきまして外国と事情が異なっていることは争えない事実でございます。そういったことから、外銀がわが国の市場になじみにくいといったようなことになっているのではなかろうかと思います。そういう点につきまして、先ほど銀行局長がおっしゃったことも同じことでございますけれども、わが国にはわが国の実情にそれぞれの理由があるわけでございまして、急にこれを全部変えて、彼らの希望するような状態にもっていくことはできもしませんし、またすぐに即刻やることが適当だとも思いませんけれども、現実に海外の金融機関がこれだけ数多く店を開いているわけでございますし、資金の交流も内外ますます活発化していくわけでございますので、わが国の金融制度や取引慣行にも見直しを要する点がふえてくることは申すまでもないように思います。したがいまして、私ども日本銀行におきましても、経済、金融の国際化に即応して、常に前向きの姿勢で検討を進めていくということが必要であろうかと存じております。
  42. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの答弁で、日本国内における外国銀行の扱いについては、国内の銀行と同様平等に扱っている、それ以上の優遇の措置もしているという感じでしたね、答弁としては。それも十分わかるんですけれども、店舗数それから営業の規模、資金量、特に貸出先が小口じゃなくて大口へいっているところですから、そういう点で国内銀行より不利というようなことからいろいろな問題が出てきているんだろう。  円転換の枠についても現在は規制をされている、これについて見直しをしてもいいんではないか。話によると、二年ごとに見直しをしてきているという話ですけれども、現在外銀全体で、新聞等に伝えられているところでは二十六億ドルというふうな枠があると伝えられているんですけれども、大蔵省の通達によってですか、これ規制されておりますけれども、そういう枠を見直ししてもいいんじゃないかと思いますが、その点の御意見はどうですか。
  43. 山中鉄夫

    参考人山中鉄夫君) お答えいたします。  申すまでもございませんけれども、この円転換につきましては、先ほどもちょっと触れましたように、内外区別なしに銀行全部に待ち高規制をいたしまして、これによりまして海外短資の動きが国内の金融市場、外国為替市場に撹乱的に影響することを防ごうという趣旨でやっているわけでございますので、そういう点は今後も変わりなく私どもとしては十分注意しなきゃなりませんので、気をつけていかなければならないと思っておりますが、いま先生御指摘の、外銀の立場ということも確かに現実問題として理解できないわけではございません。この点につきましては、円転換拡大の要望がかなり強くなっておるようでございますし、大蔵省とも相談いたしまして、今後とも、いま申しましたような金融市場とか為替市場といったようなものに与える影響に気を配りながら、実情に即して検討していきたいと考えておりますが、機会を見て、なお一段の緩和の方向で考えてもよろしいのではないかと思っておる次第でございます。
  44. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 時間が来ちゃったようなんですけれども、もうちょっと、一、二問許していただきたいと思いますが、アメリカのナショナル・シティー・バンクの持ち株会社シティーコープの円建て債発行について大蔵省がまだ認めてない。現行の金融制度では、民間の銀行の金融債の発行はいわゆる長銀とか専門銀行しか認められていないので、現状では非常に困難だと思います。しかし、こういう要求がだんだん出てくるということは、十分に資金を集めるためにはやむを得なく出てくるだろうと予想される。それについては対策をとらなきゃならないというふうに思うわけですけれども、それについてはどう思うかということ。  それから、新聞等にも出ておりましたけれども、いわゆるCDの預金証書、譲渡可能の定期預金証書の発行についても外国は自由だけれども日本は自由でない。こういう点について、大蔵省では、現行制度のもとで国内で認めてないものを外国の銀行に認めるわけにいかない、これ当然のことだと思いますけれども、そういう意味はわかるけれども、これは何か考えていかなきゃならないところへきているというふうな感じがしてなりません。それについて——これは第二問でございます。  三番目は、日本の銀行に対して外国銀行が経営参加することが、現在独禁法第十一条で禁止というか規制されている。そういう点についての要求も強い。こういう点考えてきますと、この点について一体どう思っているか、対処するのかということを伺いたいと思います。  で、金融制度調査会の答申を待ってなんていうことじゃ間に合わないようなことも起きてくるんじゃないかという感じがしてなりません。速やかな対策というものを立てなきゃいけないところへきていると思うんです。そういう点は最後に総合的に大臣からでも答弁をいただきたいと思います。  以上四点御質問いたします。
  45. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) ただいま御指摘の金融債あるいはCDの問題につきましては、先ほど日銀からもお答え申し上げましたように、在日外銀の店舗数が日本の銀行に比べて非常に少ないわけでございますので、一般の大衆の預金を吸収することが非常にむずかしいわけでございます。そういう意味で、何らかの意味でのそういういわば卸売的な資金調達手段が欲しいということで、金融債あるいはCDについての要望が出てきているものと思われます。  このうち、いま金融債につきましては、わが国の場合には御承知のとおり長期信用銀行あるいは東京銀行に限られておりますし、制度の大きな変革につながるものでございますので非常にむずかしいと考えられますけれども、CDにつきましては、これは四十五年に出されました当時の金融制度調査会の答申におきましても、企業の余資の状況あるいは公社債市場の現状からは、当面は導入するのは適当ではないというひとつの条件つきの答申になっているわけでございまして、この点は金融情勢あるいは公社債市場の情勢というのは非常に変わっているわけでございます。  そこで、そういうものを踏まえまして、現在金融制度調査会あるいは金融問題研究会等においていろいろ御検討願っているわけでございまして、これは必ずしも法律の改正を必要といたしませんので、そういう各方面の御検討の結果を踏まえまして、いろいろこの問題については前向きに取り組んでいきたいと、このように考えております。  それから、外国銀行によるわが国の銀行の持ち株の保有につきましては、先生御指摘のとおり、独占禁止法の関係で制約がございまして、これは諸外国では余りそういう制約ないわけでございますけれども日本の場合にはやはり金融資本による企業の支配という問題について大きな関心が払われているわけでございまして、この点はむしろそういう独占禁止政策の観点からの問題ではないかと、このように考えております。
  46. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 外銀の問題につきましては、特にやはり一番大きな問題は円資金の手当てが非常にむずかしいというところから、いろんな自分の国で認められておるその制度を日本でも認めてくれと、こういう御要求であろうと思うのでございます。その円資金の手当ての問題につきましては、これは別途いろいろ考えてみたいと思っているわけでございます。別の方法もございます。  ただ、御承知のように、日本の金融市場というのは各国とは大きく違っているところでございまして、やはりとりあえずは間接金融主体のものでございますし、都銀から信用組合に至るまでずっとあるわけでございます。そういったものを考えますと、直接金融を主体にしております外国のように一挙にいけるのかどうか、これはなかなか大きな問題だと思っておるのでございまして、まあ漸を追いまして、やはり金融市場にも市場原理に合ったやり方をとってまいりたいとは思いますけれども、一挙にやりますと大変な混乱が来ることはもう御承知のとおりでございます。そういった点を踏まえまして、問題点をこれから煮詰めていきたい。とりあえずは、やはり外銀につきましては円資金の手当てという問題が一番大きいんじゃないか、そういうことをいま考えているわけでございまして、一挙に向こうの制度、向こうで認められているからこっちでというのには少し問題があるように私は思っているわけでございます。
  47. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 きょうは今回の法案に関連をして、国債の消化に関する問題で幾つかお尋ねをしたいと思うんですが、最近国債個人消化が進んで、個人国債保有残高が急激に上昇している模様でありますけれども、まずお尋ねをしたいのは、そうした保有の現状が、大衆投資家と企業がどの程度ずつ持っているのか、また大衆投資家の中で所得階層別に見ればどういう状況になっているのか、企業について見れば資本金階級別でどの層が主に国債を所有をしておるのかという概略の数字をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  48. 田中敬

    政府委員田中敬君) まず、国債個人消化でございますけれども国債個人消化割合というのを何によってとるかでございますが、一般的に、個人消化というものは証券会社が引き受けて販売をしたものというものを私どもは大きく個人消化ととらえております。この大きく見ました個人消化の割合はどういうふうな変遷であるかと申しますと、昭和四十年に国債発行いたしまして以来、例年一〇%に満たないものが個人消化の額でございましたが、五千一年、五十二年度とかけまして個人消化割合は非常にふえてまいりまして、国債の全発行額の五十一年度が一七・二%、五十二年度が二六・六%とふえております。  この個人が持っておるもので、純粋の個人と企業の割合というお尋ねにつきましては、純粋の個人が保有しております割合と申しますのは、年間で消化されました金額をベースでまいりますと、四十年発行当時は八八%が純粋の個人で、法人その他が二%でございました。これらの数字が四十年から五十二年にかけましていろいろ変化をいたしておりますが、四十六年度を真ん中でとってみますと、個人が八六・八%で、法人その他が一三・二%。それから五十二年度におきましては個人が八二・二%で、法人その他が一七・八%というふうになっております。この法人その他のうちで一般事業法人だけが区分されておりますけれども、五十三年度の数字をとってみますと、法人その他の七・八%のうちの六・一%が一般事業法人になっております。  また、さらに分類いたしまして、個人消化の内訳をいま個人と一般事業法人等で申し上げましたけれども、そのほか証券会社が引き受けましたものは、一般事業法人の六二%以外といたしましては、たとえば全信連でございますとか農協でございますとか、信用組合その他の金融機関に売りましたもの、これはわずかでございますが、やはり六・一%の比率になっております。それから地方公共団体に売ったもの、それから政府関係機関で余資を運用する機関がございますので、これらに売ったもの等を合わせまして、こういう全体が一七・八%が法人その他になっておるわけでございます。  それから、所得階層別でございますが、私ども個人消化につきましては所得階層別にどういうふうな消化がなされているかという統計資料はとっておりませんし、持っておりません。また、事業法人等が持っております金額というのも、これを資本金別には分類をいたしておりません。
  49. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私が調べたあれで、貯蓄増強中央委員会発行の「貯蓄に関する世論調査」という冊子が発行されておりますね。これによりますと、「国債保有の年間所得別保有所帯割合」という数字が出されておりますけれども、概略見ますと、百丘十万円未満、その保有割合が〇・九、百五十万から二百万が〇・九、以下ずっとこうありますけれども、上位へいきますとだんだん%が上昇をして、たとえば五百万から七百万は七・九%、七百万から一千万は八・九%、一千万円以上が二〇・五%、こういう数字が出ているわけですけれども、この点についての御認識はどうか。  それから、同じく政府統計の法人企業の統計年報昭和五十一年度版、これに「資本金別公社債保有の状況」、流動資産の関係ですけれども、これで見ますと、二百万円未満、ここが保有割合〇・三%、以下いろんなずっとランクがありますけれども、一億から十億、このランクが八・五%の保有、十億以上が八六・六%の保有、こういう数字が出ていますけれども、これなんかは一つの判断をする指標になるわけじゃないですか。
  50. 田中敬

    政府委員田中敬君) 御指摘の資料、貯蓄に関する調査というものがあることは承知いたしておりますけれども、これは個人等が保有しております昨年十三月末現在におきます四兆九千億の国債につきまして、全体を見たものではないと存じます。そういう意味で、私が先ほど申し上げました個人の所得階層別にこれを把握しておらないというのは、この個人消化とされた残高の四兆九千億がいかなる所得階層別にはまっておるかという数字は持っておらないわけでございますが、いま委員が御指摘の数字というものは、傾向としてそういう階層がそういうものを持っているということにつきましては、法人、個人ともに参考に値するものと存じております。
  51. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 念を押してお尋ねしますけれども、最初に挙げました「貯蓄に関する世論調査」の方はサンプル調査ですから傾向を示すものだ。後の方の法人企業の統計年報ですね、これによる資本金別の公社債の保有割合、公社債ですから概念広いわけですけれども、しかしこれもおよそ国債の保有割合がどういうことになっているか、資本金別に。それを示す指標にはなるわけですね。
  52. 田中敬

    政府委員田中敬君) 参考資料にはなろうかと存じますが、国債の保有とその国債以外の公社債の保有ということになりますと、大分様相が変わってくると思います。公社債の中には一般事業債も入ってまいりますので、企業にとりましては事業債の持ち合いというふうなこともございましょうし、その点でその分が国債の保有状況を資本金別に示しているという点につきましては、若干私ども疑問があると思っております。
  53. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 正確なそういう統計上の数字というふうには言えないにしても、判断できる指標になるんじゃないかということを言っているんですけれども、疑問があるというふうにおっしゃるんであれば、大蔵省の分析によればこういうことになりますという数字をひとつ提示をしていただきたいと思うんです。  少なくとも資本金別に見てどうかという、ここは出るんじゃないかというふうに思いますしね、まあいずれにしても、厳格な意味ではその数字上の、そういう流動性があるにしましても、しかしおおよそのところ、国債保有のほとんど大きな部分がさっき数字で挙げましたように個人の所有、たとえば一千万円以上であれば二〇・五%という数字ですし、資本金別に企業について見れば、十億以上が八六・六%ということで、明らかに累進的にずっと保有の割合が上昇をしているということは明瞭だと思うんですけれども、概念的にそういう状況だろうということは御確認になりますね。
  54. 田中敬

    政府委員田中敬君) まず、最初の大蔵省で統計資料ができないかというお話でございますが、御承知のように国債は無記名証券でございますので、国債の管理者として、あるいは国債をいろいろ登録しておるとか、そういう関係からはちょっとこれは統計作成は不可能に近いことだろうと存じます。法人企業統計で保有公社債の内訳まで、事業債でございますとか、政保債でございますとか、地方債でございますとか、出ておるか出ておらないかは存じませんが、その点は私ども確認をし、勉強いたしました上で、もし何らかの傾向が探り得るものがとれるとすれば、勉強して傾向を探り出してみたいと存じます。  それから三番目の御質問の、大体それが傾向ではないかという御指摘でございますが、確かに個人につきましては所得の低い方よりも所得の高い方がより国債を持っておられる割合が高いであろうということは、私ども十分推察ができます。まず流動性の預貯金を行って、その流動性預貯金の次に金融資産としての選好としてそういう債券に手が及ぶということを考えますと、やはり所得のより高い方の方がより旧債の保有割合が多いということは十分推察がつきます。  それから事業法人につきましては、これは私どもちょっと、いろいろ自業法人の資金繰りその他でこの国債の保有というものが永久な保有、安定保有であるのか、あるいはただいまの資金状況から見ますと、手元現金、手元資金があるため現先を利用してその現先玉に国債が入っているのか、そういうような様相がございますので、保有層として一般的に大企業の方が確かに資金的余裕があるとすれば持つ余裕はあると思いますが、それだけをもって私は資本金の多い企業というものがより国債を選好して国債を持っているということにはならないんだろうと思うんです。ただ、現状といたしましては御指摘のような金融情勢でございますので、そういう機関が必然的により多くの国債を持っておられるということは、委員の御指摘のとおり賛成いたします。
  55. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 私がきょうなぜこの問題を取り上げておるかといいますと、とかく政府の御説明では、国民的視野に立った景気浮揚を行うための財政主導の積極財政、大量国債発行もやむを得ないということを繰り返し強調されてみたりしているわけですけれども、ところが実際は国債がどういうふうに所有をされておるかというところを分析をすると、さっき幾つかの数字を提起をしたわけですけれども、反面そのことに、大量の国債発行に伴う国債費も年々増大をしていっているということで、たとえば昭和五十三年度の予算でいきますと、三兆二千二百二十六億の国債費のうち、内国債利子として支払われる予算上の計数が二兆五千七百二十七億ということで、八割方そういう大量国債に伴う金利が増大をしてきているわけですけれども、結局それの大きな部分が大企業や大資産家への国債保有を通して金利が再配分をされていくという仕組みになっているではないかということで、結局財政の所得再配分機能が損なわれるだけじゃなくて、国債大量発行によって財政の不公正が一層加重をされていくという結果になっているではないかということを私は強く指摘をしたいわけです。  そういう点で、ここらの問題についてぜひ大蔵省として必要な数字もはじき出して、財政の公正なあり方のためにいかにあるべきかというような問題についての見解を明らかにしていただきたいというふうに思うわけですけれども、その点についてどうですか。
  56. 田中敬

    政府委員田中敬君) 国債の利払いが二兆数千億に達しておって、この大部分が大企業に入っているという御指摘でございますけれども国債の保有状況を現状を見ますと、昨年十二月末現在におきます残高三十九兆円のうち、八兆円は運用部が持っております。運用部が利息の支払いを受けております。それから市中金融機関が十三兆持っておりまして、これが利息の支払いを受けております。  この受けた利息というものはどこに還元されたかというと、運用部が引き受けております国債に対しまして支払われた利息というものは、運用部の預託の大宗をなす郵便貯金や年金の掛金者、零細な貯蓄というものが運用部に預託されて、それの運用として国債を持っておるわけでございますので、これらの利息はそれらの預貯金者に還元されておるということを申し上げて間違いないと存じますし、市中金融機関が持っております十三兆円の国債に対します利子の支払いというものも、これは企業の預金もございましょうが、一般の預金者がやはり金融機関から受け取る利息の一つとして、金融機関の資産運用の一つといたしまして国債を持っているわけでございますので、その意味におきましてもそれらの利息というものは預金者に還元されておる、こういうわけでございまして、先生のおっしゃいます、大部分が高額所得者あるいは大企業に還元されておるのではないかということは、御指摘の論旨からしますと、先ほど申し上げました個人が持っております四兆九千億の国債に対する利子の支払いというものが、先ほど御指摘のような階層別にいっているのではないかという御指摘だろうと思います。  そこだけにしぼって見ますとそういう御指摘も成り立とうと思いますけれども国債の利子の支払いというものは、もともと所得再配分を目的として支払っているわけではございませんで、国債の保有者に対する国債保有の対価としての利子でございますので、これをもって所得再配分機能を考えるということは政策的にもおかしゅうございますし、考えるべきでない。財政の待ちます所得再配分機能というものは、歳出面なりあるいは歳入面における税法の公正という面で、財政当局としては常に適正な所得再配分というものを歳入歳出面を通じてグロスで考えておりまして、国債の利子の配分だけをもって所得再配分がどうであるかという御議論は当たらないのではないだろうかというふうに考えております。
  57. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 もちろん私がお尋ねをしておるのは、国債個人保有にかかわる問題としてお尋ねをしているわけですけれども、少なくとも、政策意図としてそういう大企業なんかに回るようにという政策意図から出発をしたということでないにしても、結果的にそういう結果を生んでいるということは、これは否めない事実だと思うんです。  さらにもう一つお尋ねをするんですけれども福間委員の御議論の中でも出ておったわけですけれども、今後民間の資金需要が増大をしてきたら、そういう段階で国債を手放す企業が、現在保有をしておる企業が、これがふえてくるだろうということですけれども、そういう場合には一体どこが引き受けることになりますか。
  58. 田中敬

    政府委員田中敬君) 御質問が、企業が手放すときにそれをどこが引き受けるかというお話でございますが、取引の実態とすれば、企業はそれを証券会社に売るということで、証券会社がそれを引き受けて公社債市場の中でそれをまたどこかに転売する。あるいは転売不可能な場合には自己金融によってそれを保有するというようなことになろうと存じます。
  59. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 しかし、結局行き着くところは日銀が買い支えをするということにならざるを得ないたわけじゃないですか。
  60. 田中敬

    政府委員田中敬君) 将来の国債管理政策としまして、先ほども福間委員から御指摘がございましたが、そういう光り物が出たとき、あるいは価格の乱高下があるときにどの程度の買い支えをするかということは非常にむずかしい問題でございます。一方的に財政負担の軽減を図って、支払い利子の、国債価格を維持して発行条件を低く抑えるということのみに着目いたしまして買い支えをいたしますと、御指摘のように通貨供給の増大を招きましてインフレのおそれがございますので、おのずからこれには限度がございます。そういう意味におきましては、将来の国債管理政策としましてはなるべく市場実勢に合うという意味で極端な買い支えというものは行うべきでない。乱高下は防ぐけれども、極端な買い支えというものは行うべきではなくて、ある程度これは市場の実勢に任せていく、そういう市場の実勢に任せることによって、おのずからそこに国債発行についても歯どめがかかるという議論もございますし、そういう点では国債が市場に売られたときには直ちにこれを日銀が買い支えるということにはならない、またそうすべきでないというふうに考えております。
  61. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いろいろと強弁をされますけれども、いまの傾向でいけばインフレというところへ行き着かざるを得ない危険というのはもう多くの識者が指摘しているところの問題だと思いますけれども、政府発行昭和五十二年度経済白書でも——いまお手持ちになっていなければ後からこらん願いたいと思いますが、二百三十ページのところに、そういう重大な危惧が予想されるんだということをかなり長い文章にわたって強調をしているというところの問題だと思うんですけれども、そういう点で最後に、ちょっと超過しておりますのでお許しをいただきたいと思いますけれども、そういうインフレの危惧を食いとめるための積極的な態度と、このような事態が起こってきた問題について、前回私の質問でも再三指摘をしてきたところでありますけれども、税制、財政の仕組み、運営のあり方を根本的に見直す必要がある。  きょうも、新たに結果的に不公正の積み重ねに行き着かざるを得ないという今日の国債問題ということで提起をしているわけですけれども、そういう点で大臣の、一つインフレをどう回避をするか、財政、税制の不公正をどういうふうに是正をするかという問題についての基本的な所見を重ねてお尋ねをしたいということと、それから最後にお尋ねしたいのは、最近の大蔵省の発表で、丘十二年度の税の自然増収二千億前後予想されるというふうに発表されておりますけれども、きょうも申し上げておる見地から言って、もしこういう税の増収が予想をされるのであれば、昭和五十二年度分の国債発行額の減額にこれを振り充てるべきではないかというふうに私は思うんですけれども、その点の基本態度をお尋ねしたいと思います。
  62. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 国債大量発行インフレにつながらないかという第一の問題でございます。私は、その点でやはり一番こわいのはいわゆる特例公債だと思っておるのでございます。なぜならば、特例公債は経常費を賄っておるわけでございますので、資金需要が出てきた、それじゃ特例債減らすか。これは法律に裏づけされているわけでございますからなかなか急には減らぬわけでございます。それは人件費に回ったり、あるいは振替所得に問っているわけでございまして、すべて法律の裏づけがあるわけでございます。したがいまして、私たちがかねて言っておりますように、早く特例公債から脱却する必要があるというのはそこにあるわけでございます。一方、四条国債について言いますと、いわば四条国債というものは社会資本の充実という問題を目指しておりますけれども、同時に、いまの資金需要から申してやはり景気対策を大きくねらっているわけでございます。したがいまして、もし資金需要が出てきて民間の資金需要がよけいになるということになれば、それは当然公共事業の方をモダレートなものにするということは当然なことであろうと思うのでございます。そういう意味で、インフレの危険というものは私はすぐれて硬直的な特例公債、それを早く減らすことが大事な問題じゃないかと、こういうふうに考えているわけでございます。  それから、金利が上がったときに相場が下がる、金利が下がったときには相場が上がる、これはもう当然の市場原理でございますので、乱高下だけを抑えるということがやはり市場原理を生かす問題であろう。持っている人は当然そのことは考えておられるわけでございます。  それから第二番目の、財政における不公平という問題でございますが、特に問題点は税制の問題で言われているわけでございまして、この点はかねがね申し上げているとおり、人によって不公平税制というものについての考え方は違いますけれども、私たちはまず一般的な負担増加が今後見込まれる場合には、何よりもいわゆる不公平税制というものを是正し、直していかなくちゃならない。そういう意味で、特に企業に関するいわゆる不公平税制については鋭意縮減してまいったところでございます。特にこの両三年は著しく私は是正されたように思っておりますが、今後ともやっていきたいと思っております。  医者の、優遇税制につきましては、もうしばしば申し上げておるとおり、現行の制度は本年度限りにするということで、ぜひ政府も党と一緒になりまして、そうしてこの制度を廃止してまいりたい、かような決意をしばしば申し述べているところでございます。  最後に、二千億ほどの自然増収が出そうでございます。おっしゃるように、私は、五十二年度のまだ特例債の発行残高残っております、この方の縮減をしたいと思っている点は委員と大体同じ考え方を持っているわけでございます。
  63. 中村利次

    中村利次君 大蔵大臣IMF暫定委員会出席をされてお帰りになったわけですが、まことに御苦労さまでした。  先ほど福間委員質疑による大臣の報告を承ったわけですけれども、これは福田総理の訪米、日米首脳会談にしましても、あるいは大蔵大臣出席された新聞定委員会にいたしましても、やっぱり日本世界の中に占める役刷り、大変なものがあるということをしみじみこれは再確認をさせられるわけですが、ただいま審議をしておりますこの特例法案、あるいはまた専売益金に対する特例措置にしましても、日本が非常に深刻な不況下での歳入措置としてやむを得なくとられているところですけれども、何といってもやっぱり日本景気をどう立て直し、世界景気をどう立て直すかということが決定的な課題、その中で日本が大変に大きな役割りを持っておるということ、これは大臣の報告からでもつくづく痛感をされるわけです。  まず第一に、七九年、八〇年で日本は七・五%の実質経済成長をやってくれぬかというこれは勧告なんですか。まあ大臣はこれは、どういう表現がいいんでしょうね、断られたというか、そういうことはできないということだったそうですが、しからば、五十三年度の予算が決まりましてこれからこの執行によって景気回復に成功しようとしておられる、そういう立場から、しからば七九年、八〇年あたりはどれくらいの成長をお考えになっておるのか。これは私どもは、すでに中期経済政策で公表をしておりますように、政府が特例債の発行を五十七年でやめる、そういう財政処理をするということは無理があるんではないかということ、それから景気の回復にしても、あるいは当面の経済成長にしても、やっぱり七九年あたりも七%台の成長率にしなければ、それだけの財政主導型の対策を講じなければ景気の回復、それから民間投資につないでいけないんではないかという立場をとっておりますから、したがって、そういう立場からこの特定委員会の勧告を大臣は受けとめられて、来年度、再来年度あたりの経済あるいは財政運営、そういうものをどういうぐあいにかじ取りをやっていこうとなさるのか、まず伺いたいと思います。
  64. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 来年、再来年の経済成長率につきましては、これは経済企画庁の中期経済見通しのもとで大体六%強を目指す、またそれが日本経済として最も妥当なめどであるということはすでにお話し申し上げたところでございます。その意味で、今度のウィッテフェーンのいわば七・五という数字、これはウィッテフェーン自身が言っているわけでございまして、計画でも何でもない一つシナリオだと。彼の表現をかりますとこれはシナリオだと、こう言っているわけでございます。われわれもそのように受けとめているわけでございます。日本経済計画というものとこのシナリオというものをどういうふうに考えるか。シナリオシナリオで望ましい数字だという一つ参考数字であろうと思うのでございますが、わが国においてはすでに中期経済計画を決めておりますので、六%強を目途にやるべきではなかろうか。可能であるかどうか、その問題でございますが、先般財政収支試算でお示ししましたように、それは可能であるという試算をお示ししているところでございます。  具体的なその政策手段はどうするのかと、これは試算でございますので、試算によればあのような一般的な歳出の節減あるいは一般的な負担の増を求めても可能であると、こういうことを申し上げているわけでございます。もとより、そのときどきに具体的にどういう財政政策をとるかという問題はまた次の問題になるわけでございますが、われわれはあの試算を一つの手がかりといたしまして、来年度における条件その他で考えて、具体的には考えてまいりたいと思っているのでございます。条件が許すかどうか、そういった点をこれから十分検討してまいりたい、かように考えておるところでございます。
  65. 中村利次

    中村利次君 大臣、これは私は大変に失望をするんですよ。先ほど大臣は報告の中で、各国が非常に何と言うか固執を捨てて素直であったと。ところがいまの大臣の御答弁というのはちっとも素直じゃないんですよね。やっぱり五十二年度六・七%成長はこれはできるんだ、かくかくしかじかでできないんじゃないんですか、いや、できるんだ、国会が終わったら、週間か十ぐらいで関係三省庁で五・三%スローダウンの統一見解を出すと、国会はまさにこれはばかにされているようなことですよ。こんなことを言うこと自体がどうも素人過ぎるのかもしれませんよ。ちっとも素直じゃない。それは確かに企画庁が六%強の経済中期見通しの中での成長率を公表してますけれども、しかしそういうものを踏まえて七・五%の成長をしてくれないかという話があった。素直だったらもっと素直に何かこう、何かしゃくし定規な木で即くくったような、それは国会答弁としては非の打ちどころのない優等答弁かもしれませんけれども、それでは私は、大臣各国が非常に素直であった、私もその報告をきわわめて素直に聞いて、素直な気持ちで大臣に質問をしてみたところが、大臣の答弁はまことに木で鼻をくくったような通り一遍の答弁であった。それ以上出ないんならしようがないですね。しようがないけれども、やっぱり同じですか。
  66. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) IMF事務局案で示しておるのも非常に弾力性のあるものでございます。方向としてインフレなき拡大とかいろんなことを言っておりますが、もちろんそのやり方は各国の事情に合わして弾力的に、それぞれの国の国情に合わしてやってもらいたい。だから、向こう自身が非常に弾力性をもった発言であるということは全体のこの中に出ているわけでございます。だから、これを押しつけるということではなくて一つ参考にしてもらいたいと、そういう意味であえてシナリオと言っているわけでございます。私たちもそういう雰囲気の中で自由の発言をいたしているのでございます。日本としても、これだけ大きくなった日本でございますから、できるだけ内需の拡大をやっていきます、ことしは七%を目推して全力を挙げております、これこれ、これこれの施策をやっておりますということを申し上げているのでございます。ただ、先ほど申しましたように、七九年、八〇年七・五%というシナリオは少し過大ではないでしょうかということを率直に申し上げて、やはり日本日本の実情を各国に、またIMFに理解していただくことが大事である。自分の実力を超えてやりますと、それは単に日本均衡を崩すだけでなく、ひいては世界にも迷惑をかけることになりますので、そういう意味で申し上げているのでございまして、きわめて弾力的あるいは素直に申し上げているつもりなのでございます。ことしは七%はぜひ実現したいし、また実現できると思います。それに向かっていまこれこれの施策を実施中でございます。しかし、七九年、八〇年のこのシナリオ日本について少しやはり潜在成長力の過大評価ではなかろうか、それは構造不況業種のアイドルの設備というものの割引の仕方にかかるのではないでしょうかということを率直に申し上げたのでございまして、別にそれに何の反論もございません。ただ、日本の立場をよく理解していただく、それがやはり終局的に国際協調につながる問題であろう、こう思いまして率直に申し述べたのでございます。ドイツあたりも、何といってもわれわれの経済はわれわれ一番よく知っているんですからと、こういう発言はしておりました。しかし、それについて全体の空気は、かたくなとか、そういうことは言っておりません。みんなそれぞれの国はそれぞれの事情があることはよく承知しております。国の事情に合わして可能なる限りやってくれと、シナリオとして描いたのはこんなもんでございますと、こういうトーンでございますので、まあ中村委員もひとつそんなふうに御理解願いたいのでございます。
  67. 中村利次

    中村利次君 それは私の質問がやっぱり無理なんでしょうね。現職の大蔵大臣に何かやっぱりもっと素直な発言を、答弁をさせようということ自体が無理な話で、国会の審議というものは大体そんなもんであるということを、私もこれは素直に自認しなければいけないのかもしれない。しかし、それにはものすごい抵抗を感ずるもんですからね。  まあ、大臣の御報告の中からも、やっぱりたとえば減税問題等も、これはコストブッシュの国で、投資ではないんだと、投資を伴わないという前提条件なんだから、だから日本でも減税論議はあるけれども、しかし公共投資というのは公共投資なんだから、これはこれに該当しないんだと、公共投資減税とどっちが有効かなんということは全然違う問題なんだということでございましたが、少なくとも暫定委員会景気刺激策として減税が取り上げられたことは間違いない。それがどういう比較であろうと取り上げられたことは間違いないわけですから、全部その比較は抜いて、減税だけ裸にしますよ。景気刺激策としての減税、それを、裸にして取り上げてみても、とにかく政府の——こんなことを言うとまたとんがらがられちゃ困るんですが、景気対策というものはだんだん公共投資オンリーを続けていく限りは手詰まりに来ておると思うのですよ、それは消化能力からいっても。私は公共投資を決して否定はしない。特にこれは大臣も何回もおっしゃった社会資本のおくれというものはかなり目立つわけですから、むしろ歓迎しますよ。歓迎しますが、しかし、景気対策として財政主導型で国内需要を起こしてそいつを民間投資につないでいくという、そういう何というのですか、使命を持った景気対策ということを考える場合、果たして公共投資による景気対策というものが、今後これを拡大して大規模に続けていけるのかどうか、消化能力その他から考えて。特に私は、これは大臣おきらいになりますけれども、ことしやっぱり大型補正予算はこれは必至だと思う。そういうものに公共投資をかぶせていけるのかどうか。そうなりますと、どんなにいやであってもその他の景気刺激策というものを考えざるを得ない。そうでなければ景気対策に対しては無策になるわけです。ですからやっぱり暫定委員会でも、そういう意味で私は暫定委員会で出た減税の議論というものを非常に興味を持つんですよ、いかがですか、大臣、どうお考えになりますか。
  68. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これは、画定委員会で問題にしておりますのは、コストプッシュのある国においてはというのでございますので、いまコストプッシュが始まっておる国あるいはまだコストプッシュが残っておる国、特定の名前は挙げません、挙げませんが、それはもうコストプッシュのある国と言えば、ああ、あの国かということは恐らくみんなわかっておるだろうと思うのでございます。そのときにおける振替所得増加減税がいいかというのは、減税の方がいいであろうと。これは私も率直に、まあ私の方の国ではございませんけれども、一般的な経済常識から言って当然のことであろうと、ごく素直に受け取っておるのでございます。ですから、あの問題はわが国に対しての話でないことは当然でございまして、みんながわかっておるわけでございます。  翻りまして、その問題とは切り離して日本の場合の問題は、しばしば申し上げましたように、わが国の現在置かれた経済情勢から申しまして、やはり限りある財源を使うとして租税負担率の税状から申しましてどちらがいいか、あるいははっきりその景気に及ぼす効果から申しまして、あるいは社会資本のおくれから申しましてどちらがいいのでございましょうかということを率直に申し上げておるわけでございます。そして、そのことによりましてわれわれはことしの七%はやさしいなどとは申しませんけれども、達成可能な数字であるし、またそれに向かって最善の努力をしようということを国会でも申し上げているところでございます。まあ、暫定委員でも同じことを申し上げておきました。それについては、それはそれぞれの国の自情があるという理解でございましょうか、それについては何ら批判もございませんでした。
  69. 中村利次

    中村利次君 残念ながらこんなことを続けて、きょうも時間がたってしまいましたからもうやめますよ、さっぱりかみ合わない。またいずれ新しい立場から質問をさしていただきます。  終わります。
  70. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 午前中の質疑はこの程度とし、午後四時まで休憩いたします。    午後零時二十三分休憩      —————・—————    午後五時七分開会
  71. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  委員の異動について御報告いたします。  本日、佐藤三吾君、多田省吾君、中村利次君及び宮田輝君が委員辞任され、その補欠として穐山篤君、矢追秀彦君、井上計君及び降矢敬義君が選任されました。     —————————————
  72. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 昭和五十二年分所得税特別減税のための臨時措置法案議題といたします。  まず、提出者から趣旨説明を聴取いたします。衆議院大蔵委員長大村襄治君。
  73. 大村襄治

    衆議院議員(大村襄治君) ただいま議題となりました昭和五十二年分所得税特別減税のための臨時措置法案について提案の趣旨及びその概要を御説明申し上げます。  この法律案は、今九日、衆議院大蔵委員会において全会一致をもって起草、提出いたしたものであります。  本案は、最近における社会経済情勢に顧み、中小所得者の所得税負担を軽減する等のため、おおむね次のように昭和五十二年分の所得税について特別減税を行うとするものであります。  まず、第一に特別減税の対象となりますのは、昭和五十二年分の所得税であります。ただし、利子・配当所得の源泉分離課税に係る税額、割引債の償還差益の源泉分離課税に係る税額、附帯税等を含めないこととしております。  第二に特別減税願は、本人六千円、控除対象配偶者または扶養親族一人につき三千円を加算しますが、昭和五十二年分所得税額を限度とすることといたしております。  第三に特別減税の方法でありますが、給与所得者については、転職した者、退職した者等特殊な者を除いて、原則として本年六月または七月に勤務先から還付することとしております。その他の者、すなわち確定申告をした者等については、本人の請求により税務署から還付することとしております。  なお、昭和五十三年六月二日以後に、昭和五十二年分所得税について確定申告書の提出、更正または決定などが行われる場合には、特別減税額を控除して税額を算出することとしております。  第四に特別減税を受けることができる者が死亡したときは、相続人が還付請求し得ることとしております。  なお、本案による国税の減収額は、昭和五十三年度において約三千億円と見積もられるのでありますが、衆議院大蔵委員会におきましては、本案の提出を決定するに際しまして内閣の意見を求めましたところ、卑下の財政事情からみてにわかに賛成いたしかねるところであるが、院議として決定される以上やむを得ない旨の意見が開陳されました。  以上がこの法律案の提案の趣旨とその概要でありますが、本案施行のためには膨大な事務量と経費のほか、民間の源泉徴収義務者を初め関係各方面の御協力が必要とされるのであります。  何とぞ速やかに御賛成あらんことをお願い申し上げます。
  74. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。——別に御発言もないようですから、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  昭和五十二年分所得税特別減税のための臨時措置法案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  75. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり、可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  速記とめて。   〔速記中止〕
  77. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 速記を起こして。
  78. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 次に、昭和五十一三年度における財政処理のための公債発行及び専売納付金納付特例に関する法律案議題とし、午前中に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  79. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まず、日米首脳会談についてお伺いをしたいと思います。時間が短いわけでありますが、まああしたは本会議もあることでありますから、なるべく簡明にお願いをしたいと思います。  まず、私ども今度の日米首脳会談で共同声明が出されなかった。一体何がどう話されたのかはっきりしないわけであります。総理は向こうで記者会見をやって、総理が感じたことはそれで述べられていると思うんですが、アメリカの政府の方は、何か政府筋がこれ新聞発表して、われわれはアメリカ側のこの会談の評価というものはアメリカ側の発表でわかるわけでありますが、その二つの発表を見てもどうも食い違っているといいますか、触れている個所に一致点がないわけです。でありますから、どうして今度の場合には共同声明が出されなかったのか、これは国民として余りよくわからない。その辺どうなんでしょう。
  80. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 大体、初めて首脳会談が行われますとか、特定な、巨大な問題がありまして、それでそれの結着がどうなったかというような大きな問題がありますと共同声明が出るのが例でありますが、しかし、最近は首脳外交でありまして首脳はしょっちゅう往来をしております。そういう際に、共同声明を一々出すということはいたしておらぬというのがこれは慣例でございまして、日本もことし特定の日米間の問題を抱えておるわけでもありません。そういうようなことで共同声明はあえて出すことをいたしませんでしたが、日本側でも外務大臣がこの会談の内容は事細かに記者会見で申し上げております。またアメリカ側でもやっております。そして、その主要な点につきましてはあらかじめ打ち合わせまでしておるわけでございまするから、そう食い違いがあるというふうには思いませんが、どの辺に食い違いがあるのか、御指摘がありますればお答えを十分にいたします。
  81. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 私ども連休であったわけですから、特に私ども質疑の時間をつぶして行かれたというわけじゃありませんから、それは構いませんわけですが、いま何か総理は、そんな重大な問題はなかったんだと、こういうふうにおっしゃっているわけなんですが、しかし私どもは、日米の関係が今日ほど経済的な摩擦を起こしているときはない、これを何とかしてほしい。特に日本の場合に、総理は行く前に、予算委員会等の最後のころはよくおっしゃっておりましたけれども、いまはドル安なんだと、円高じゃなくてドル安なんだと、これはぜひ直してもらわなくちゃならぬのだと、こういうことを盛んに私どもはあの部屋で聞いたわけであります。まあそれはアメリカの貿易赤字の問題、あるいは石油の大量の備蓄輸入の問題ですね。これらの問題があるからこそドル安になったんだと、この問題を実は日米間で解決をしていただいて、円ドルの関係というものをこのような乱高下の形ではなしにマイルドなものにしてほしい、これは私はやはり国民的な要求だったと思うんです。  しかし、両者の発表を読んでみて、どうもその辺はきわめてあいまいもことして、話し合われたのか話し合われないのか、これすらもよくわからない。あちらこちらにちょこちょことそれに似たような、それぞれの閣僚との間では話し合われたような感じもするけれども、話し合われたけれども結論は一体何だったのか、ちっともわからない。そういう点は一体どうだったんですか。あなたの調子では、ドル安を直してもらうためにカーターと話し合うんだと、行くときの意気込みはえらい大変だったわけですけれども、いま帰ってきてこの席で聞きますと、大した重要な、共同声明を出すような重大なことはなかったんだと、どうもその辺納得できない。
  82. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 今度の会談ではいろんなことを話し合ったんです。東西の問題も南北の問題も、あるいは残された今世紀二十二年間の問題も、さらに二十一世紀についての問題、非常に広範な話し合いをしましたが、その中で、いま竹田さんのお触れになりましたドルの問題ですね、これは私が最も強調したことなんです。つまりドルがいま世界的に減価を続けてきた、それが世界経済を非常に不安定にしておる、これは非常に、放っておきますとこれは経済世界的混乱にとどまらない、これはもう政治的混乱にまで発展しかねない重大な問題であるという点を指摘し、また、さらに象徴的なことを申し上げますと、いま石油の需給がこれは非常に緩和基調であります。したがいまして、いますぐこの石油の価格が上がるというような環境ではありません。ありませんけれどもドルが減価をさらにさらに続けるというようなことになると、世界経済の大動脈とも言うべき石油エネルギー、これに値段の問題というのが出ないで済ませるというようなわけにはいかぬだろう、そういうことになったら、またこれが世界的な経済の大混乱につながってくる、そういう点を私は本当に力説したんですよ。アメリカはこれに対しまして、それはよく心得ておる、対策といたしましてはインフレ、これを阻止しなきゃならぬ、それから国際収支の赤字、これを是正しなきゃならぬ、そのためには石油の輸入を縮減をさせなきゃならぬ、また、そのためにはいまアメリカ国会で審議中のエネルギー法案の早期成立を図らなければならない、このようなことで、ドルの価値の安定、これにつきましては相当私は強い印象を、その必要性についての印象を与えたと、こういうふうに思っております。  私は、カーター大統領と会談したばかりでないんです。上下両院に参りましてその主要な人々とお目にかかりましたが、その主要な上下両院の人々には、あえて陳情いたしますと、こう言ったんです、陳情しますと。何だと言ったら、エネルギー法案を早期に成立さしてもらいたいということだと、こういうことまで申し上げたくらいでございます。  それから、いま円ドルの問題がありますが、円ドルという立場から考えまするときに、アメリカは国際収支の赤字を縮減しなきゃならぬ、またインフレを阻止するという政策をとらなきゃならぬ、同時にわが国としては過剰な黒字、これを縮減をするという努力をしなきゃならぬわけなんです。そこで、私は私がとっておる黒字縮減のための努力を細々と説明してやりました。しかし、その結果、一体日本の対米黒字が、あるいは世界全体に対する黒字がどういう数字になってくるかと、これは申し上げるわけにはいかぬ。何となれば、幾ら私どもが、さあ鉄鋼の輸出を量的に抑えても、これは自然に一割、二割は減ると思います。テレビの輸出、これは私は一昨年のあのピーク時に比べると三割ぐらいはことしは減ると思うんですよ。また造船、これは何しないったって注文がないんですから、これもかなりの減少になってくる。自動車、これはアメリカの市民は日本の自動車が欲しい欲しいと言っておるんだけれども、全体の国際収支、日米調整ということを考えると、せめて昨年の実績、つまり台数です、それを上回らない程度に行政指導をするという考えですが、それも申し伝えました。そうすると、量的には私はかなりことしということしは対米輸出、対外輸出というものはこれは変わってくると、こういうふうに見ておりますが、さて、それじゃ一体そのドルという額にこれを引き直してみるとどういうことになるかというと、特にアメリカインフレが高進するということになれば、これはドルに換算した価格というものは断固膨大なものになっちゃう。私どもは全力を尽くします。そのかわりに本当に日米間の貿易収支というものを改善せんとすれば、アメリカにおいてこのインフレ阻止、それと非常に深い関係のあるところの貿易赤字、これをぜひ調整してもらいたいんだという話をしましてね、これは私は大統領もあるいは経済閣僚もすべての人々も、あるいは財界人も上下両院の人も本当に、私は真剣に申し上げたんですが、大方の理解を得た、このように考えております。
  83. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 あなたの主張はあなたの記者会見で十分おっしゃっているから、それはもういいわけですよ。私どもは一体それに対してカーター大統領があなたのそういう説に対して具体的にどう答えたか、これを聞きたいわけなんですよ。しかも、カーターさんとお会いになったのは時計を見い見い食事をする時間まで含めて三時間ですわな。福田総理は英語がお上手でしょうから、同時通訳も何も要らずにべらべらお話しができたんだろうから、その三時間は非常に有効にお使いになったと私は思いますけれども、しかし、三時間の間で時計を見い見いお話しをしていて、本当にあなたのおっしゃったことが向こうにはっきりと理解できたかどうか、私は大変疑問なんですよ。あなたは能弁ですから、これは大変力を入れておっしゃったろうと思うんですよ。  ところで、きょうの新聞の夕刊を見て私は驚いたわけなんですね。総理もごらんになっているだろうから、すでに情報は入っているんでしょうけれども、八日の日にアメリカの商務次官補のウエイルという人、この人が八日に、ニューヨークのジャパン・ソサエティーの昼食会で演説をして、日本の対米貿易黒字幅は本年度の百億ドルを上回って百三十億ドルに達するだろうとジャパン・ソサエティーで演説しているんですよ。あなたがそれほど多くの方々と、しかもかなり熱を入れてお話しになっているとしたならば、少なくともアメリカの商務省の次官補ですから、相当の幹部だろうと思いますよ。これが、ことしよりも来年の方が日本の対米貿易黒字が多くなるだろうなどと言うはずはないと思うんですよ。あなたは口ではおっしゃっているけれども、どうも向こうには響いていない、こういう感じがするんですがね、どうなんでしょうか。あなたはここでは日本向けには大変いいことをおっしゃったように聞こえるんだけれども、どうもカーターさんや向こうの方々とは世界の中の日米だぐらいの大見得を切った程度で、具体的にそれじゃアメリカドル安についてどうするんだ——抽象的な話は、これはわれわれだってわかるわけですよ。具体的にアメリカ経済政策どうするのか、国際通貨、しかも基軸通貨アメリカはおれたちはどうするのか、これは私は当然いま日米間の経済摩擦というのはあるわけでありまして、これからだって起こり得る可能性は私はあると思うんですよ。あなたのお話ですと数量は減るから金額も減る、こういうふうにおっしゃっているけれども、私は必ずしもそうでないと思いますよ。数量が減ったら金額が減るという感じじゃ私はない、これは宮澤長官もそのようにおっしゃっています。数量の減ることは事実である、しかし数量が減るから金額が減るということについては、言い切れません、こういうふうにおっしゃっている。私はその辺あると、思うんですよ。たとえば日本商品の非価格競争力、これが強い、しかもかなり上がっているわけですよね。向こうの自動車にいたしましても時計なんかにいたしましても、向こうでの値段というのは上げているわけですね。それだって光れているんじゃないですか。大方の見方にいたしましても、六月ごろまではまだ輸出がかなり伸びるだろう、こういうのが商社筋の人たちの話ですよ。  そうしますと、一体あなたは黒字減らしで、六十億ドルという数字はいろいろなものを見ても出さなかったようです、これは私は賢明だと思いますね。しかしどうも徹底してない、こういうふうな空虚な感じが、せっかく大福田、日本の大宰相がワシントンまで飛んで行って、後で返ってきた言葉はどうもあなたが言っていることと違う。空虚な感じがするんですが、どうでしょうか。
  84. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) アメリカの商務省ですか、の次官補が何やら言っているという話ですが、八日というときのうですか、きのうおよそそういうことを言っているという話ですが、私はまだそういう話は聞いておりませんけれども、私が先ほどから申し上げておりますのは、数量はかなり私は減ると、こういうふうに見ておるんです。ところが、竹田さんはいま、数量も減れば金額も減るというふうに私が申し上げたようなことをおっしゃいますが、そうは申し上げていないんです。数量は減りますけれども、さて金額でどういうふうになるかということはアメリカインフレが一体どうなるかと、これが決めるんだと。わが国は、これはよそでは言いませんけれども、ここでは、国会でずっと言ってきているんですから申し上げますが、経済運営の指針といたしまして六十億ドルの黒字ということを言っておるんです。それは諸外国に対してそれを話す場合には、そこのところはクエスチョンマークになるわけです。何でと言いますると、諸外国のインフレ、まあ自動車、その値が二割上がったということになれば輸出が二割ふえた、額において、そういうことになるんですから。その点を私は特に指摘して、まあインフレを起こしてもらっちゃ困りますよ、それを悪循環の関係にあるこの国際収支、これをぜひ改善の方向を出してくださいよということを言っておるんです。これはもうかなり私は浸透したと思いますよ。これは上下両院におきましても私はそのことをはっきり申し上げた。だれも意見も申し述べないというくらいな状態でありましたから、まあそのことの理解を得たということだけでも私は大変よかったというふうに思います。
  85. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 あなたの熱弁はよく、ここの席でも熱弁されるから私どもよくわかりますが、しかし、向こうから打ってきた電報が逆なことを打ってくるというのはわかってないという証拠ですよね。この電報一本見ただけで、どうもあなたの英語が通じなかったかなと、こんなことはないと思っているんですがね、そんな感じすらするわけですよね。これじゃ国民は一体何で行ってどんな話をしてきてどんなことを決めてきたのか、まあ余り細かい取り決めはしていらっしゃらないようでありますけれども、向こうがどんなふうにそれに対応するというような姿勢を示したのか、こういう点がどうも国民に訴えるものがない、新聞見ていてどうもわかりません、私ども見ていて。福田さんは一体何を真剣に向こうに訴えてきて、何で大体日米の協調が図られてきたのか、どうもその辺がはっきりわからぬ。共同声明があれば、私はこうこう言った、これに対して大統領はどういうふうに言ったとか、日本の福田総理はどう言って、それに対して大統領はどう答えたと、こういうのがあるんですが、今度の場合、それがないからよけいわからない。  またあれですね、いまやはり一番私は問題がある点は朝鮮半島の問題だろうと思うんですね。この問題というのは、国民も朝鮮半島の平和的、自主的な統一、こういうことを望みたい、こういう問題についても国民の、日本の安全保障に関係する重大な問題なわけです。いままで大体日米両首脳が会えば朝鮮半島についての評価と、こういうものはどこかで必ず述べられている。しかもかなり大きな表現を持って朝鮮半島問題というのは述べられる。しかし今度はこれはちっとも述べられない。  しかし情勢を見ますと、ユーゴスラビアのチトー大統領が朝鮮半島の問題について発言をした。あるいはルーマニアの大統領がこれについて発言をした。あるいはアメリカのブレジンスキー氏が訪中をする。あるいは今度の大韓航空機のソ連の扱い、こうしたものが、喜ばしいことであろうと思いますけれども案外早く釈放をされている。何か日本の外で、頭越しで朝鮮半島の問題というようなものも進められている。しかし、そういう問題は今度の日米首脳会議ではほとんど話が出たのか出ないのか。私どもにとっては大変重要な問題だろうと思う。隣の朝鮮半島における火種を消すか燃やしていくか、これはやっぱり重要な問題だと私は思います。そういう問題についても何ら話し合われていないということはどうも私ども納得できない。こういう問題はどういうふうに話されたんですか。
  86. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 園田外務大臣が詳細に記者会見をいたしまして、恐らく非常に報道に忠実な日本の報道界はこれを日本の新聞でも報道しているんじゃないかと、こういうふうに思いますが、アジア問題、これ一体どういうふうにするかという全局の問題ですね、これもとっくりと話し合ったわけです。  わが日本といたしますと、オーストラリア、ニュージーランドというわが国と資源的に非常に密接な関係がある国がある、わが国はこれらの国と友好関係を深めていく。またASEANという国々があります。これらの国々は中立的な政治姿勢、これを標榜しておる。しておるけれども、自立という精神に燃え立っておる。ベトナム戦争が終結をして以来、これらの国々の間にはまたベトナムと同じような余波が来るんではないかという心配があったが、私はそういう心配を伝え聞いて、たしか昨年の三月の二人の会談でその後の状況をお話ししたつもりであります。アメリカがもっと、ベトナムがああいうことになったからアジアはもうあきらめたんだというような、そういう態度でなくて、軍事的にもあるいは経済的にも政治的にもそのプレゼンスを毅然として維持すべきであるというはっきりした姿勢を示すべきであるということを申し上げ、それに対してカーター大統領は、それは確約をします、同盟国に対する責任はどこまでも尽くします、また経済的なプレゼンス、これは強化すればと言って弱体化させることはいたしませんと、私にそう言ってはっきり約束したんです。その約束を、私は昨年の八月のASEANの首脳会議の席上披露いたしました。大分アメリカに対する不安の考え、気分というものはやわらいできた、このように見てきておりますが、その状況をつぶさにカーター大統領にも今回も話をし、さらにアメリカといたしましてはアジアの安定のために努力をすべきである。世界の平和、これにアメリカ世界最大の責任を持っておる。その責任を持っておるアメリカとして、ヨーロッパだけが安定して世界の平和ということはあり得ない。アジアの安定ということは非常に大事だ、こういうことを強調し、カーター大統領もよくわかったと、そのとおりにするし、また、いま副大統領をしてアジア諸国を回らしておるが、私のこれからのアジアに対しての考え方は、副大統領がハワイに到着した場合に体系的に発表することになったというような話をしておるんです。  それから、私が強調したもう一つの点は、さあニュージーランド、オーストラリアあるいはASEAN、それらの国々とそれからインドシナ三国との間に対決状態というものができては困る。これは政治体制がインドシナ三国とその他の国々との間は変わってきた。変わってきたけれども、それを乗り越えて共存の道というものを発見し得るはずだ。わが日本はその道を進めようと思っておるという話をし、アメリカの理解を求めたわけでありますが、アメリカは、大統領は、日本の立場と私の国の立場は違うところはありますけれども日本の考え方につきましては深く理解し敬意を表する、このようなことでありまして、恐らく日本と同じような考え方が逐次進められるのではなかろうか、そのように思います。  お尋ねの朝鮮半島の問題につきましては、この間、地上軍の撤退問題について計画の変更がアメリカから発表されましたが、その説明がありました。私はそれに対しまして、これは現実的な処理である、こういうことで評価するとこういうお答えをいたしておる。とにかく朝鮮半島、一つの民族が二つに分かれておるということはこれはまことに残念な状態だ。終局的にはこの南北に分かれた民族が一つになるべきだ。しかしそれは時間もかかることであろう。それまでの間は南北のバランス、これの維持ということが大事である。こういうことにつきまして同者は意見の一致を見ておるわけであります。その際、私は、チャウシェスクなどのいろいろな報道が伝えられている、あれはどういうんですかと聞きましたら、私どもアメリカは韓国を抜きに、韓国の頭越しに他の国と韓国問題を論ずることは一切いたしません、こういう明快な答えをいたしております。  なお、わが国といたしましては、アジア政策といたしますと大陸に二つの隣国がある、中国とソ連。中国に対しましてはいまこういう状態だと、ソ連に対しましてはこういう状態になっておりますと、こういう話をし、それから中国につきましては日中平和友好条約、これは双方が満足し得る状態において締結をしたいという考え方、これは何回も言っておるわけなんですが、今回も申し上げたんです。成功をお祈りいたしますというようなことでございました。  まあ、大きなアジア政策全体の話でございまするものですから、個々の一つ一つの問題についてどういうふうに具体的にしていくかということまで話し合う時間はありませんでしたが、そういう問題はそういう基本的な考え方が決まれば、これから逐次外交ルートを通じまして詰めが行われる、こういうふうに御理解願いたいと存じます。
  87. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まあそういう点で、こんな短い時間、向こうの忙しいときを押しかけ何とか的に何で行かれたんだろうかというのも私ども一つの疑問なわけですね。どうせ行くならば、朝鮮問題についてもやはりもっとじっくり話し合ってきてもらいたい。いまカーター大統領は、韓国抜きで朝鮮半島の問題を処理することはない、こういうふうにおっしゃってたんですが、隣の、隣国の日本は何か置いてきぼりにされてこの問題が決まっていくような気が私どもしてならないわけです。確かにASEANのことも非常に重要であろうと思いますよ。しかし、何といっても隣国の問題については私どもはもう少し、アメリカの最近の動きというのは動いておるわけです、朝鮮半島を中心に、動きがあるわけですね。中心に動いているというとちょっと語弊があると思うんですが、朝鮮半島については動いているわけです、国際的に。こういうときにいかなる対応を日本が示すかということは、やはり隣国として非常に重大な関心を払うのは私はあたりまえ、どうもそういう点は焦点がぼけてしまっているような気がいたします。  まあASEANの問題にいたしましても、内外記者団とあなたの会見のときにこれ質問なかったわけですね、テレビ見ている限りにおいては。あなたの方から、ASEAN問題ひとつ聞いてくださいよと言って、あなたがこう何か話し始めたように私は受け取りましたよ。というのは、ワシントンの空気はASEANの問題というのは余り関心が強くない、こういうことだろうと私は思うんですよ。いま総理は、相当な時間を費やしてASEAN問題をお話しになった。向こうがあんまり聞く耳を持たないでいて一生懸命話したってこれは影響力は私はないと思うのです。なるほどアメリカの約束とプレゼンスはこれは表明をしたと、こうあなたもいまおっしゃられたし、新聞もそう書いてあった。これはやはり大統領と総理との話ですから、かなり言葉というのは私はえんきょくな表明を使うものだと思います。そう言ったからそれじゃ必ずしもASEANに対するアメリカの関心、これが深いかというと、私はそう思わない。むしろ今後ASEANにおけるアメリカを代位する役刷りを日本が食わされる危険性、この方が私は多いと思うんです。そうすれば、総理が去年フィリピンで宣言をされ、心と心の触れ合いという名せりふを残してきたことが果たしてそのとおりいくのかどうなのか、やはりASEANで日本が大国主義を発揮するんじゃないか、こういう心配を私どもは持つわけです。どうなんでしょうか。
  88. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、そんなふうな考え方をするのはどうかと思いますよ。最近におけるアメリカの対アジア態度、これは非常な変化がある。一時は確かにベトナムでこりごりした。アジアについてはもうあんまり手を出さぬ方がいいかなというような空気があったかもしれないと思うんです。しかし、その後のアメリカの動きというものはそうじゃありませんよ。カーター大統領自身まで、あの忙しい人がシンガポールを訪問する、マレーシアを訪問する、訪問し切れなかった部分につきましてはいまモンデール副大統領が回っておる。非常な関心を示しておるんです。アジアに対してホワイトハウスが関心がないなんというそんな状態じゃないんです。アジアを見直さなければならぬという、そういうまさに転換の時期に来ておると、こういうふうに思うわけであります。  それから、アジアにおけるアメリカの役割りを日本が肩がわりをすると、私はそんなことを夢にも考えません。アジアはわれわれの隣国ですよ。隣国に対してわれわれがその立ち上がり、安定のために協力すると、これはもう当然のことだろうと思うんです。それに対して、しかしながら軍事的な問題があるというようなことになれば、わが日本としてはそれでお手伝いするというわけにいきませんから、これはアメリカがその軍事的な意味におけるところの役割りを演じてくれるということはこれは私は大変にいいことだと、こういうふうに思うのであります。やっぱり、アジアの安定がなければ世界は安定しないという思想はかなり私はホワイトハウスに浸透してきたと。一時は確かに、私はアジア離れというような傾向があったような気持ちもするんですが、いまやそのようなことはない、こういうふうに私は確信を持って帰ったわけであります。
  89. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 時間がありませんから簡明にお願いをしたいと思いますが、今度の会談というのは、一つは七月のボンにおけるサミットヘの日米の間の意見を調整しようということだろうと思います。この点も何か私ども余りよくわからない。ただ成功させよう、成功させようということで握手をしたような感じであって、一体このサミットに対してどういう点で先進七ヵ国の協調を図っていくのか、ここら辺がさっぱりわからない。どうなんでしょうか。
  90. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 昨年もサミットをやったんですね。ところが、この一年間の実績を見ておりますと、サミットで期待したような動きになっておりません、どちらを見ても。一番サミットで強調されましたのは各国成長の問題です。成長率の問題です。もっともインフレを伴わない成長ということでありますから、成長問題というものが一番大きな議題であったんです。その成長にいたしましても、ドイツはあのとき五%成長という主張をしたんです。それが実際はどうなったか。二・四%成長しか実現できなかったわけであります。アメリカはどうかというと、六%程度成長だと、こういうことを言ったのでありまするが、これが四・九%にしか及ばなかったと、こういうことになっております。わが日本はというと、六・七%成長、これが五・三%成長に終わった、こういうことになって、どうも思わしい状態ではなかったんです。そのうらはらに、大きく論議はされませんでしたが国際収支問題というものが非常に深刻化しておるんだと。アメリカが当時言ったそのアメリカの赤字、これが百五十億ドル程度ふえてしまっておる。わが日本は、金額は言いませんでしたが経常収支を大いに縮減をすると、こういうふうに言ったんですが、これは縮減どころじゃなくて逆に大変な大黒字になってしまったと、こういうようなことがある。  そういうようなことを通じまして、大観いたしますと、昨年のサミット時点に加えまして今度の会談では、今日の事態では通貨不安と、こういう問題が加重されておる、こういう状態だと、こういうふうに思うんです。この通貨不安が加重された、そのような状態で推移いたしますとこれは大変なまた経済混乱が起こってくると、こういうふうに思われますので、経済成長の問題、またそれとうらはらをなす通商の問題、つまりこれは国際収支にも関係してくることであるわけですが、それから山北の問題、エネルギーの問題、これら昨年のサミットでも論議をされたわけですが、それに加えて今度は通貨問題、これも重大な問題になってくるであろう、こういうふうに思うわけであります。それらに対しまして意見の交換をする。一番大事な点はアメリカインフレ阻止に成功する、それから赤字減らしに成功する、このための石油の輸入を縮減できるかどうかと、こういう問題。それからわが日本といたしますと、この黒字が縮減できるかどうか、こういう問題になってくるわけでございます。それらについて十分意見を交わし問題意識を統一した、こういうことでございます。  その間、サミットの正式の議題ではございませんけれども、いわゆる東京ラウンド交渉、これを成功させなけりゃならぬ。こういう問題があり、日米ともにヨーロッパと協力をいたしましてこの成功のための努力をさらに進めようということで意見の一致を見たということで、まあサミットという問題はやはり日米欧と三極の関係する問題でありますが、少なくとも日米の間ではかなりの意見の調整ができたと、こういうふうに私は考えております。  なお、サミットのメンバーであるところのカナダ、これとの間の意見の調整が必要であると、こういうふうに考えまして、牛場国務大臣を、ワシントンの行事が終わった直後オタワを訪問さして意見の交換をさせております。またその後、引き続いてヨーロッパ、ECに大体回っていただきまして、これとの間の意見の調整もしております。何とかして日米欧相協力いたしましてサミットを成功させたいと、こういうふうに考えております。
  91. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これで終わりたいと思いますが、後、福間委員から関連がありますから終わりたいと思いますが、まだ聞きたいことたくさんあるわけでありますが、何といっても時間が少ないわけであります。  最後に、私、予算委員会でも二回ばかり問題を提起したわけでありますが、日米航空協定ですね。これはやはりいま日米間の大変な大きな問題であろうと思う。この前もこれは失敗しているわけであります。これについては話し合いはなかったんですかあったんですか、どうですか。それで終わりたいと思いますが。
  92. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、この問題は提起いたしません。これはもうこの前日米間で交渉がありまして、両方とも相当大きな意見の違いがあるんです。これは少し冷却期間を置きましょう、その間にいろいろ両方とも考えましょう、秋に交渉を始めましょう、こういうことになったので、私はあえてこの問題には触れなかった、こういうことでございます。
  93. 福間知之

    福間知之君 日本製のカラーテレビの対米輸出に関しまして、総理が向こうへ行かれるほぼ一ヵ月ほど前に、アメリカ側が、まあ率直に言って大変理不尽な、関税をさかのぼって適用しよう、こういうことが表明され、わが国関係業界は大変な衝撃を受けました。総理が会われたときに、報道されていますところによると、ハワイでの会談でカーター大統領が総理に考え画してもいいということをおっしゃったのか、それともその後牛場対外相とストラウス代表との折衝の中で考え直してもいいということを表明されたのか。その点、総理の口から応接御報告を承りたいわけであります。
  94. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は、このカラーテレビ問題の意識ですね、これはもう十分持っておりましたけれども、これは牛場、それから矢野という通産省の局長ですね、それと先方との間で話し合われております。かなり憂慮された状態は改善される方向で話合いが行われ、これからさらに詰めが行われると、こういう段階に相なります。
  95. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 最初に、今回の日米首脳会談、いま冒頭竹田委員からも指摘があったんですけれども共同声明も発表されない、気安く両国首脳が話し合ったということにとどまっております。  日米間はもちろん、世界経済、アジア問題、まあいま御答弁でかなり聞きましたけれども、具体的に対処することが一体どうなのかよくわからぬ、さっぱりわからぬというのが一般の論調です。総理は格調高く世界のための日本を語りあったと言っておりますけれども、総論の総論のようなそういう大きい話し合いでありましょうから、意見が違うというようなことはこれはとうていあり得ないだろうと、私はいまの日米の関係ではないだろうというふうに思うんで、そうなると格調高くということなのかどうかという疑問もあります。問題は、各論ないしは具体的な政策の準備があって総論が一致をした、こういうことが必要だと思うんですけれども、今回の首脳会議では各論抜きの総論という印象が強い。この点どうかということになるわけですが、ひとつ細かくいけば世界の中の日本の役刷りを話し合ったと言われている中で、たとえばそれならば国際経済の再建問題について言えば、ニクソン・ショック、それからスミソニアン体制、こういった問題がございました。それ以来、いわゆるたががはずれた世界経済ということになっています。その世界経済をどういう具体策で再建しようというのかということはどう話し合われたのか。ただ単に日本の黒字減らし、あるいはその約束とかアメリカインフレ傾向の指摘にとどまっていたのでは基本問題を忘れたということになるんじゃないか。さらに、一月に行われた牛場・ストラウス会談やコミュニケの追認程度の会談の内容では、首脳会談として中身が薄いと言わざるを得ない。その点はどういうふうに話し合いがなされましたか、伺いたいと思います。
  96. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 首脳会談でございますから、両国の間に非常に意見の違いのある重大な問題、去年でいえば核の問題ですね。これなんかわが国の今後死命を制するというような重要な問題だったわけですが、これなんかは首脳で話し合います。しかし日米間、いま経済問題、日米両国間の経済問題、これを除きますとそう大きな処理を要すべき案件というものはないんです。両国間の経済ということになりますと牛場・ストラウス、この会談が行われまして、そして事細かに両国の態度、これが了解されておると、こういうようなことで、それらの諸問題はあの共同声明の線をお互いに忠実に実行していくということで、それでいいわけで、忠実に実行しましょうやというその話し合いを両首脳がすればそれで事足りるのです。  問題は、やはりこれからの世界経済をどうずるか、こういうことになると、やっぱり七月のサミットを成功させなけりゃならぬ、それに一体どうするかと、こういう問題になってくるわけなんです。  同時に、わが日本といたしますと、やはりこれはアジアに住むわれわれでございまするから、アジア問題というものに特に関心を持つ。またわが国のこれからの非常に大きな関係を持つ中東問題、こういう問題もあるわけでありまして、その他世界各地にいろんな問題がありまするけれども、それは外交当局が随時情報の交換、意見の交換しておりますから、首脳会談であえて触れませんでしたが、とにかくアジアの安定につきましては、わが日本は大きな責任も持っておる。そういうふうに私ども考えておりますので、この問題をどういうふうに進めていくかということについて、わが国の考え方をアメリカに十分知らしておくということは必要だし、また、わが国の考え方にアメリカの許す範囲内における協力ということを求める、これも私は大事なことだったと思います。そういう点は私は遺憾なく話し合いができたと、このように考えておる次第でございます。  まあ、話はそればかりじゃないんです。これからの世界展望しますと、なかなかこれは波乱含みの小安定時代、あれはよく——ガルブレイスという人がありますが、この人が先般著書をあらわしまして、不安定時代というような題名でございましたが、あのような様相、これが予見をされるわけです。それに対して、一番大きな問題は何といっても私はエネルギーである、こういうふうに思うのです。エネルギーの今後をどうするか、このエネルギー開発問題、エネルギー政策問題、これは当面のINFCEをどういうふうに成功させるかという問題もありまするけれども、より以上に重大な問題は、この世紀末、また新世紀におけるエネルギー、いまから準備しないとどうにもならぬと、こういう認識のもとに、私はカーター大統領に対しまして、日米はとにかく世界でも最もすぐれた経済力ともっともすぐれた技術能力を持っておる。この両国がばらばらでそういう問題の勉強をするよりは、共同してやるということになればもっともっとより効果的にやっていけるんじゃないかという話をし、また日米ばかりじゃない、ヨーロッパで希望する人があればこれにも参加してもらう、そういうもとで新エネルギー、特に核融合、それから太陽熱エネルギー、こういう問題を組織的に日米協力のもとに検討しようじゃないかという提言をしたんです。それをカーター大統領は、これは本当に、何といいますか、ひざを乗り出すというか、そういうようなポーズでございましたけれども、ぜひそれはやりましょうやというような話でありましたが、これとても、そういう基本的な考え方についての理解が行われたということで、それをいかに具体化するかということは今後の問題である、このように御理解願います。
  97. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 世界経済にどう具体的に、どういうふうに再建をしようかということについては総論的な総理の答弁ございましたが、七月のサミットの成功のことを追うて当面は言われ、最終的にはエネルギーにお答えがあったのですけれども具体策になると今後ということになるのですが、一つだけ総理、ここで具体策を聞いておきたいのですけれども国会でしばしば国際通貨問題について固定相場論者であるということを主張しておられた。今度の会談でインフレ抑制ということについてアメリカに訴えておられますけれども、固定相場復帰が国際通貨安定に必要だということはおっしゃらなかったように見えるのですが、どうなんでしょうか、これは。
  98. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 通貨問題は具体的な処置、これはもう私が話をする問題じゃないんです。これは大蔵大臣の話をする問題です。私はドルの安定、これを強制するという立場にあるわけであります。私が終局的には固定制を支持しているということは、これはアメリカも知っております。カーター大統領には申し上げませんでしたが、アメリカの閣僚なんかの来る機会ごとにそういうことを申し上げておりますので、知っておりますが、それはしかしいますぐそんなことができるはずがないのであります。また、ローザ構想というようなことも言われまするけれども、それとてもまだ環境が熟しておりません。そういう中で、一体、変動為替制というものを採用せざるを得ない、その変動為替制をどういうふうに円滑にやっていくかということが当面の問題なんです。それに対しては、カーター大統領自身も大変頭にあるらしくて、私との会談の中で経済問題に事が及んだ場合に、冒頭私に話かけたのは、円ドル問題がどうも不安定だと、この問題をどうするかということですね、いろいろ考えてみましたが、やっぱり日米の間の連絡を強化することだと。これから大蔵省、財務省、それから日本銀行それから連邦準備銀行、そのいずれかの間で毎日連絡をとりましょうやと、こういうことを言って、私はそれを歓迎したわけです。
  99. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 自由貿易主義によって世界貿易の問題は解決しよう、そういう基本的の考え方は一致したということはもうこれは当然のことですけれども、これが、自由貿易主義の問題はもろ刃の剣となるおそれがあるわけですよ。というのは、たとえば米国が主張している農産物の輸入拡大、電算機等の工業品の輸入促進要求、こういうものにどう対処していくか、その対処の仕方を誤れば、相手国は、自由貿易主義ということで一致した考え方と違ってくるではないかということでこれは攻撃されてまいります。牛肉、ジュース、そういうことで日本への輸出の拡大、あるいは輸入制限撤廃ということに対しての関心が強い。しかし、アメリカだって国内産業の関係からはそう自由貿易主義は守れないということで、逆にこれからの日米会談で力関係が物を言うということになるんじゃないですか。そして農産物の輸入拡大、それから鉄鋼、家電の輸出の規制、これをいままでものまされてきている、こういう背景のもとで自由貿易主義ということを主張しただけということになり、その考え方も一致したということだけになってしまっていいんだろうか。逆に、われわれが今後さらに日本に対する輸入拡大や何かで迫られてくるときに切り返せないような、そういうもろ刃の剣になるんじゃないか。欧州諸国のいわゆる管理された自由貿易といった考え方も参考にして日米間で討論をするべきだというように考えられるんですけれども、そういうふうにはできなかったのかどうか、その点はいかがなものでしょうか。
  100. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは、保護貿易体制というのは大変危険な考え方でありまして、ある国が一たび保護貿易主義体制というものに踏み切るということになれば、それは今度はほかの国は報復的にやっぱり保護貿易体制をとりますよ。そうなればこれは世界が総沈みになっちゃう。その結果世界は一体どうなるかということを考えると、保護貿易体制というものはこれはもう何としても防ぎとめなきゃならぬ、そういうものだというふうに確信をしますよ。  そのことは、世界の首脳者にももう私は口をきわめて力説をしてきたところでございますが、しかし、社会七度と自由主義の間のようなもので、何といいますか、社会主義国といったって全部が全部社会主役というものじゃない。自由主義体制のいいところも取り入れていくというようにだんだんとなってくる。また、自由主義国においても管理体制の必要な部門、これも取り入れていくというようなことであって、絶対ということは私はいずれの主義をとるにいたしましてもあり得ないと、それはまた余りに硬直した考え方であると、こういうふうに思っております。保護貿易主義はだめだ、自由貿易主義でなきゃならぬと言っても、そこにはおのずから節度というものがなければならぬと思うんです。管理貿易体制と言うと、ちょっと国際貿易を何か一つの権威のもとに統制するというようなにおいがありますので言葉としてはよくありません。私は節度のある自由貿易体制、こういうふうに言いたいですが、そういう体制でとにかく自由貿易体制というものが維持されていくということが最大の問題である。このように考えております。
  101. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの問題で、私は、相手に両刃の剣と言えばそうなるし、また言葉が悪ければ相手に有力な武器を与えたということで、わが国がこれから先、農産物の輸入拡大の問題であるとか、あるいは輸出の規制とか、あるいは電算機等の日本への輸入の問題、こういったことがぐいぐいと相手に与える大きな武器としてこの自由貿易主義ということの一致が出てこないか。下手をすると約束違反ということでアメリカから追及されるんじゃないか。だから、この辺具体的にどの辺まで詰められていらっしゃるのか、大統領との話し合いの中では、それを伺いたいんです。
  102. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 大統領との間で、どの商品は自由で、どの商品は刷り当て制で、どの商品は関税をどうするなんていうそんな話は私しませんがね、しかし、それはお互いにわかっていますよ。たとえばわが国の農業、これが自由貿易体制でアメリカからどんどん安い物が入ってくるなんというようなことになれば壊滅する、そんなことはよくわかっているわけなんです。でありまするから、要は節度なんですね。わが国からの向こうへの輸出、これが一挙に五割もふえちゃう、そして相手の国の同じこういうような会社が倒産を続々するというようなことに、このようなことになったらこれは大変なことですから、そういう辺はお互いに節度を持ってやるということじゃないかと、こういうふうに思うんですが、その辺は私はアメリカでも十分な理解を持っておる、このように考えています。
  103. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 日米会談の中で語り合われた経済成長七%の問題ですね、その達成について伺いたいんですが、現在の経済の諸指標を見ていると、生産、出荷等に若干の明るさがある。しかし個人消費、それから民間設備投資、こういうのは動き出していない。これが基本的に公共投資に引っ張られたもので、民需の盛り上がりではない、こういうふうに思われます。果たして年度前半公共投資年度後半民需の拡大、こういったふうにつなげられるかどうかという点について非常に疑問を感ぜざるを得ないのでございますけれども、五十二年度も前半公共投資、後半は民需の拡大ということで、民間需要拡大というのが政府の経済政策であったけれども、五十三年度も全く同じスタイルを考えている。しかも、予算の執行も前倒しになっている。こういったやり方で、息切れを起こさないというふうには判断ができないような気がするんです。そうなると.民需の拡大に本当に結びつけられるのかという疑問と、息切れの疑問と、こういう両方から、昨年のいまごろと比較してどういう点の経済状態、条件が好転しているというふうにお考えになっていらっしゃるのか、この点ひとつ伺いたい。
  104. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 一番いまわが国の経済で問題になりますのは企業稼働率です。これがまだかなり低い水準にある。これが大方改善されるというところで企業の方は安定ということになるわけです。もっともいわゆる構造不況業種というようなものはこれは別なんでございますが、しかしそういういい方向に向かっていま日本経済全体として動いておる、こういうふうに凡ておるわけであります。私は、アメリカでも七%成長ということを各地で言ってきましたけれども、これは約束じゃありませんよ。わが国の経済運営の方針はこうなんだ。別に何も約束したからそれに従わなければならぬ、そんな性格のものじゃありませんけれども、とにかくそういうことを言ってきております。そして、そういう方向でいま経済全体は動いておる、こういうふうに見ておりまするが、ただ私、経済は生き物でありまするから、先々一体どうなっていくかという、これは毎月毎月もう本当に注意深くその推移を見守っていきたいと思っておりますが、何かそういう大きな経済展望、これに狂いがくるというようなことになりますると、これは私は内外の期待に反する、こういうふうに考えますので、その際はその際で、その際において最も適当と思われるところの追加景気政策をとると、かように考えております。
  105. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまのことで、追加景気政策をとれば民需の拡大というふうにつなげていかれるだろうかと、民間設備投資等が伸びてこないということや、個人消費の拡大が思うようでないということは、果たして公共投資が呼び水になってぴしっといけるんだろうかと。いま、そういう場合には追加でやりますからいいですというお話ですけれども、この点、いまの御答弁だけだと何か疑問が解けないような感じがするんです。総理はこれは果たしてうまくいくというふうに見込みはお持ちでしょうか。
  106. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) いま今日この時点の経済の動きは大体七%成長街道を進んでおると、こういうように私は見ております。諸指標も大体そういうことを示しておる、こういうふうに見ておるわけでございます。それが一つ大きな支えとなりますのはデフレーターが違ってくるんです。この要素、これを考えまするときに、まあ大体七%程度成長にはいくんじゃないかといま見ておりますが、また異変があれば異変があるで、また先ほど申し上げましたような処置をとります。
  107. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 まあ、最近は経企庁や政府筋から非常にいまの総理の答弁のような景気回復についての非常に声が強い。しかし昨年も一昨年も四、五月ごろは非常に調子のいい話だったですね。それが夏から秋に入って中だるみを起こしている。結局こういう姿は公共事業費の拡大といった措置だけによって支えられた経済運営のためだというふうに思わざるを得ないんです。いま大変強気の御発言で七%はいくというふうに言われていますけれども、どうも民間の研究機関や企業経営者から七%成長というものは望めないというふうに言われる。私どももそういうふうに思われる。  そうすると、日米首脳会談での発言、お約束じゃなかった、約束ではないんだからと言われるけれども、その発言が今度五十三年度経済運営について拘束することになってくるんじゃないかという心配もある。この点私どもどう見ても七%は無理じゃないか。中だるみの問題もあるし、民間研究所やそういうところからの指摘を見てもこれは心配な点が考えられるんですけれども、この点は大丈夫ですか。
  108. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ個人消費はこれは見通しよりはややいま低いところにあるんじゃないか、そのような感じがします。しかし公共投資、この方はかなり強気な動きをしております。そういうようなところへまたデフレーターというような要素もありますので、まあ私は大体七%街道をいま進んでおる日本経済である、こういうふうに見ておるわけでありますが、異変があれば先ほど申し上げましたようにそのときの処置はする、こういう考えでございます。
  109. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 国際収支の黒字の問題ですが、これを六十億ドルに圧縮する方策、その目途が果たして立つだろうか。五十二年度の経常収支は百四十、億ドルということで、政府の見込み百億ドルを大きく上回る。これは結局日本の産業構造それから国際収支構造から判断しても、百四十億ドルから八十億ドルも減らして六十億ドルに持っていくというような、こういうことが果たしてできるだろうか、前年度よりそれだけ減らすような。というのは、産業構造で言えば重化学工業化をされていて、鉄鋼、造船、自動車、電機、こういうふうに海外への輸出を織り込んだ設備投資を全部これはやっておるわけなんです。そういう産業構造の中で、これは重化学工業化の政策と輸出型の産業ということとは一体のものですから、そういう産業構造になっているし、国際収支の方で言えば日独の黒字体質とアメリカ、イタリア等の赤字体質、これはもうどうにもならないんじゃないでしょうか。こういう黒字国赤字国がもう体質化しちゃっているわけなんです。イギリスの場合もようやく変わったと、赤字体質が変わりつつあるというけれども、これは北海油田のおかげでございまして、そういうことで政策努力というふうには言えないということで、黒字定着の国際収支はわが国にはある。こういう加工貿易、輸出立国という日本の国の状態からするというと、輸出構造から見ていっても、こんな大きな六十億ドルにも圧縮するなんてことはできないんじゃないかというふうにも思われるのですけれども、この点はどうでしょうか。
  110. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 六十億ドルというのは、これは腰だめというか、政策運営の一つの指標として出しておるわけで、これは国際社会へ何も約束しているわけじゃない。私は今度アメリカへ行くとき、経済成長はこうだと、貿易収支はこうだと、あるいは物価はどうだと、こういう一覧表を持っていって大統領にも示したわけです。その中で五十三年度成長目標これは七と。ところが国際収支のところはブランクです、クエスチョンです。なぜクエスチョンと書いたかというと、先ほどもちょっと申し上げたのですが、量的には相当減ると私は思うのですよ。トリガープライス、これが響きましてわが国の輸出の大宗である鉄鋼輸出、これは量的には一割ないし二割減る。それからテレビですね、昨年協定したあれで、おととしが最高でありましたが、そのときに比べまして三割台数で減る。船なんか黙っていたってえらい減っちゃうのです。それから自動車、これはアメリカでは売ってくれ売ってくれと言うんだけれども、とにかく昨年の台数以上のものは売らぬ、こう言っているんです。しかし、アメリカインフレが起って自動車の値段が高くなる、鉄材の値段が高くなる、テレビの値段が高くなるといえば、ドルにするというと大きな額になっちゃうわけです。その点をよほどアメリカとしては理解してもらわなければ困る。  黒字問題を論ずる場合にこの点が私は大変大事な点である。わざわざ五十三年度、つまり一九七八年度の国際収支のところはクエスチョン、これはアメリカが決めるのですと、こういうようなことを言ってきておるのですか、しかし、それはそれといたしまして相当努力をしているわけです。いま申し上げたような四つの品目だけでも対米輸出の四三%に当たるのです。その他の品目といえども、今度は円高ですからなかなかそういままでのようなわけには光れませんよ。そういうようなことで全体としてかなり対米輸出は鎮静しちゃう。鎮静しますが額になりますと一体どういうことになるか、これは私ども責任はとれないと、こういう話をしてきておるわけですが、いずれにいたしましても百四十二億ドルというような経常収支の黒字を全世界に出すということはこれは妥当じゃありませんから、できる限りの努力をしていきたいと思います。
  111. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 最後に一つだけ。  円高のことを言われたんですけれど、円高でいわゆる日本を締めつけてみたけれども、結局材料費も下がってくる、輸入原材料が下がってきますから、円高になれば。そういうことでこれは締めつけられないと。じゃあ貿易の制限、これも問題であると。あと残っているのは、きょうも午前に質問したんですけれども、金融問題、いわゆる銀行の問題で、金融制度で日本が封鎖的じゃないかということをやられてくるんじゃないかという感じがしているんですけれども、そういう点については何かニュアンスをおつかみになられたりしましたか、あるいは総理の考えをここのところで伺っておきたいと思います。
  112. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 経常収支、それでは輸入面ですね、この輸入面におきましてもいろいろ工夫をいましているんです。円高になりましたのでそれが端的に影響を、輸入をふやすという効果を持つ、それからさらに経済成長、これが進みますればそれの反射的影響といたしまして原材料輸入、これがふえる、そういうことになるわけでありますが、それには時間が多少かかるんですよ。その間のタイムラグといいますか、つなぎを考える必要があると思いまして緊急輸入ということなんですよ。これも私はかなりのことができるんじゃないかと思います。ウランの問題ですね、これなんかも私は明るい見通しを持っております。また原油の備蓄輸入、これも実現化しそうな傾向になってきておるわけであります。その他非鉄金属でありますとかそういうもの、これもいろいろいま工夫をいたしておりますが、それにしてもやっはり経常収支の黒というものはかなりのものになるだろう。その場合に資本で一応調整をすると、こういう問題がある。  それで、一番私がいま考えておりますのは、やっぱり対外経済協力の強化という形の資本移動、これは大事なことだろう、こういうふうに思いまして、政府の方針といたしましていままで五年で倍増ということ言ってきましたけれども、今度は三年で倍増だと、こういうふうにしたいと思っております。  それから、海外から日本市場において起債をすると、そういうような向きに対しましては、これはそうむずかしいこと言わないで日本市場の起債を認めるとか、それからあるいは世界銀行、これは各地の発展途上国に対しましていろいろサービスをしておりますがね、そのとき全部が全部それに相乗りをするということは妥当でないと思うのですが、選択いたしまして、これは日本として好ましいと考えるものにつきましては相乗りをするとか、そういう資本移動の面につきましても十分考えて円対策に資したいと、こういうふうに考えております。
  113. 渡辺武

    渡辺武君 私は経済問題について伺う前に、若干今度の日米首脳会談での安保条約、防衛問題などについて伺っておきたいと思います。  総理大臣は、大統領と会談された直後の五月四日、アメリカ日本協会それから外交政策協会共同午さん会においてスピーチをしておられますけれども、その中で、戦後日米安保条約が果たした役割り、これを非常に強調された上で次のように言っておられます。  私は、この条約がひとり我が国の平和と安全を保障するという一方通行的な役割にとどまらず、今や、日米両国間の、「全面的な提携関係」を象徴するものしだというふうに述べて、さらにその後の方で、今回の会談でカーターが約束したと言われるアメリカがアジアに依然としてプレゼンスを維持するということについて触れられて、「米国が引き続き、具体的行動をもつてアジアに対するその関心とプレゼンスの維持の決意を示していくことは、きわめて重要で」というふうに述べて、その後さらに先の方で、我が国としては、今後とも、この重要な地域に「一層積極的にわが国の役割を果たしてまいりたい」という決意を表明されておられます。きょうの衆議院の本会議での総理の答弁を伺っておりますと、いや、それは安保第二条の日米経済協力に関することだという趣旨の御答弁をされておられます。  しかし、総理が訪米をされる直前の四月二十七日に、アメリカのあのブレジンスキー大統領補佐官がジャパン・ソサエティーでやはり演説しておられます。これは総理の訪米を意識してやられたものだというふうに言われておりますし、カーター政権の対日政策をいわば総括したものだと言われておりますけれども、その中でブレジンスキーは、アジア・太平洋地域に「強力で多様化された軍事的存在と積極的な外交を維持するつもりである。」と述べた後で、とりわけわれわれは安保条約を維持する、そして、「米国にとって、自衛能力を着実に向上させつつある日本との同盟関係は、東アジアにおける米国の立場を安定させるイカリの役目を果たし、太平洋地域でわれわれの戦略的・政治的影響力の及ぶ範囲を拡大している。」と、それからさらに、特に日米防衛協力は極めて良好である。日本は防衛体制を強化しつつある、「両国の制服要員の協力は増大している。」、われわれは、「こうした傾向がさらに進展することを期待している。」というふうに述べて、安保条約と日本の軍事力の増強をいわば連動さして、そしてアジア・太平洋地域における日本の防衛分担ですね、これを大いに強調しているという状態です。ですから総理の言われたことは、ただ単に経済協力の範囲にとどまるというふうにはちょっと考えられないわけですね。  それで、こうした両国のいわば首脳の間で共通した内容の演説が行われているわけですが、カーター大統領との会談の中で安保条約の問題、日本の軍事力の増強の問題、こういう問題が話し合われたんじゃないか、もし話し合われたとすれば、具体的にどういうような内容の話が行われたのか、まず伺いたいと思う。
  114. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 軍事問題については、両首脳の間におきましては、一切話は出ませんでした。
  115. 渡辺武

    渡辺武君 一時間カーターとだけ、二人きりで話したということでありますので、これは総理、そう言われても、われわれはなかなかそうでございますかというふうに納得できない感じが非常に強いんです。  特に私申したいのは、安保条約の第五条ですね、これを大体基礎にして、安保条約というのは片務的なものだということが言われております。ところが総理の言われるように、「一方通行的な役割にとどまらず、」両国間の「全面的な提携関係」ということになりますと、これは総理自身がこの安保条約をいわば双務的なものとしようと考えているんじゃないかというふうな感じが非常に強いんですけれども、その点はどうですか。
  116. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 安保条約は、日本並びに東アジアの安定のために大きな役刷りを果たす、そういう内容になっておりますが、同時に第二条というものがあるのです。これは御承知のとおりでありますが、これは経済その他の部面におきましても日米は相協力をすると、こういうことになっております。  最近わが国の経済の力が強くなってきた、そういう段階になりますると、この第二条というものが大変私は大きな働きをなしてきていると、こういうふうに思います。いままで渡辺さんなんかの話を聞いていますと、第二条のことなんか全然頭にないような話で、軍事関係だけのような印象を私は持ちますが、そうじゃないんですよ、この日米安全保障条約は。名前は私は忘れましたけれども、日米安全保障条約、相互協力及び何とかといって細かく書いてあるんですよ。その細かく書いてある、特に第二条で言っておるこの日米の軍事以外の協力問題、この問題が大きく浮かび上がってきておる、そういう時代になってきた。大変結構なことだと、こういうふうに思います。
  117. 渡辺武

    渡辺武君 なお、重ねて伺いたいんですけれども、先ほど申しましたブレジンスキーの演説の中で、日本アメリカの東アジア安定のいかりだということも言っておりますし、それからアジア・太平洋地域の安定のためにも日本の軍事力増強が果たす役割りが非常に大きいんだという趣旨のことを述べております。ところが安保条約の第四条は、この安保条約の適用地域は日本国及び極東というふうに一応限定されているわけですけれども、いま言ったブレジンスキーのこの演説などの内容からすると、この適用地域の拡大ということも考えているんじゃないかという感じがいたします。  それからもう一点、ついでにそれに関連して伺いたいんですけれども、総理大臣自身が長期にわたる日米両国の協調と連帯ですね、これを演説の中で盛んに強調しておられる。その点とも関連しますけれども、安保十条ですね、これについてやはり再改定を考えているんじゃないかという感じがいたしますけれども、この二点についてはどうですか。安保十条、十年たった後で締約国の、方が通告すればというやつです。
  118. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) ブレジンスキー氏が来アジアにおけるいかりであると、日本はいかりであると、こういう演説をしておる。私は、よくブレジンスキーはアジアの状態を見ているなという感じを持ちますね。つまりアジアの国々は日本に商品を買ってもらいたい。またいろんなインフラの施設に対して協力してもらいたいという考え方、これはもう本当に真剣にそれを希望しているわけなんです。そういうようなことを考えますと、自分から私は日本はいかりであるなんて言うて肩を怒らせませんけれども、ブレジンスキー氏がそういう見方をしておるということは、まあいいところを見ているんではないかなというような感じがいたします。  それから安保条約第十条という問題、私は条約に余り強くないもんですから正確なお答えできませんから、また次の機会にお答えさせていただきたいと思います。
  119. 渡辺武

    渡辺武君 それから、もう一点伺いたいんですが、アメリカの上院のロング財政委員長ですね。これが総理と会談した後での記者会見で述べている言葉なんですけれども日本の憲法が自衛力増大の障害になっているというようなことであれば憲法改正したらどうだという趣旨のことを述べているわけです。総理はそんな話聞いたことはないと、きょう衆議院の本会議で答弁されたようですけれども、新聞には明らかにそういうことが出ているわけですね。  それで、これは日本の内政に対する干渉を内容とする私は暴言だと思いますけれども、いずれにしてもアメリカの有力者がそういう点を考えているということは、私は無視できないと思う。特にいま言ったブレジンスキーの演説、総理は経済問題にどうも限って言っているようなふうに答弁されておりますけれども、さっき言ったように安保条約と、そして日本の軍事力増強を直結しているのです。連動して彼は言っているというところに非常に大きな特徴がある。ですから、それらとも僕通しまして、一体総理はこうしたアメリカ当局側の考え方についてどういうような見解を持っておられるのか。これを伺いたい。
  120. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私は上下両院の米国議員と会談をいたしましたが、ロング議員からも他の議員からも、日本の憲法を改正せいという意見はこれは全然聞いておりません。これはロング議員が別の何か記者会見のときにロング議員の感想なり所見を述べられたものであろうと、こういうふうに思います。よその国の議員の発言に対しまして私は責任は持てません。
  121. 渡辺武

    渡辺武君 この問題は、一方では安保第三条に私は関連すると思うんですね。というのは、安保第三条は「自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。」ということになっているわけですよ。そうすると、その憲法が邪魔だと言わんばかりの発言アメリカの有力者がしているということになってまいりますと、先ほど私申しましたように、いろいろ安保条約上で明文の規定とかなり食い違ったことをアメリカの有力者が言い出してきている。安保再改定ということも恐らく日米間で内々では話し合いが進んでいるんじゃないかという感じもします。その中に第三条という問題も入ってくるんじゃないかなという感じもします。  同時に、最近政府が憲法の解釈について、第九条も公然とじゅうりんして、そしてミサイルとかあるいは長距離爆撃機以外のものはこれは持てるんだとか、あるいは核兵器あるいは化学兵器、こういうようなものも、これも自衛の範囲ならば持つことができるんだとか、とんでもないことを言い出してきている。こういうようなことは、これは憲法の解釈を変えることによって事実上の憲法改悪をやっているというふうにしか考えられませんけれども、まさにアメリカ側のこうした意図と歩調を合わせてそういうような日本政府の態度が出ているんじゃないかというふうに思いますが、その点どうですか。
  122. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) わが国は平和主義の国であります。また人権尊重主義の国であります。また国際協調主義の国であります。このわが国の姿勢がよその国の圧力でどうのこうのなんていうことは、断じてこれはいたしませんから御安心願いたいと思います。
  123. 渡辺武

    渡辺武君 それでは経済問題について一、二点伺います。  今度の日米会談で、終わった後での総理の記者会見などを拝見しておりますと、経済問題については、もう従来言い尽くされたようなことがアメリカ側との間で話し合われたという感じが非常に強いんです。新味も余りない。しかし、従来はいわば事務当局レベルで話し合われたことが首脳会談で再確認されたという性格が非常に強いんじゃないかという感じがいたします。特に七%経済成長、あるいは輸入の拡大だとか、あるいは残存輸入制限の撤廃だとか、あるいは対外経済援助を三年間で倍増するだとか、きわめて具体的な約束を日本の方がいわば一方的に積極的にやっているという性格が非常に強いんですね。先ほど総理大臣は安保第二条の問題を非常に強調されたけれども、こうした日本側の経済上の約束、これは安保第二条の日米経済協力とい立場からされたものですか、どうですか。
  124. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 日本の国の首相なりその他の人が日本の考え方はこうだと、こういう話をするとそれが何か約束みたいにすぐ受け取りますが、そんな性格のものじゃありません。わが国はこの道を行くということをはっきり言って、そして友邦国にわが国の考え方を一つ一つ知っておいてもらおうということなんであります。これが安保条約のどうのこうの、こういうような性格のものでは断じてありませんから、その辺は誤解のないようにお願いいたします。
  125. 渡辺武

    渡辺武君 しかし総理自身が、あなたがやられた演説について、つまり、方的なものでなくてもっと全面的な協力関係にしたいんだということについて、これは安保第二条に関連してのことなんだということを言っておられる。今度の日米首脳会談で総理大臣が非常に強調したのは、これは日米間の協調と連帯だ、しかもこれが基軸になってアジアの安定あるいはまた世界経済への寄与ということがあり得るんだということを大いに強調している。それがいままでの事務当局レベルでの具体的な詰めとは変わった私は今度の日米首脳会談の新しい側面だと思う。だとすれば、あなた自身が言われているように、日本の七%成長等々、これは日本の国民に対して非常に大きな深刻な打撃をいま与えつつあると思うんですが、それはやっぱり安保第二条に基づく日米経済協力という立場から進められていることじゃないか、その点重ねて伺います。  それからもう一点、時間がないから伺いますけれども、マンスフイールド駐日アメリカ大使がニューヨークの日米協会で二月二日に演説をした。その演説の中で、牛場・ストラウス会談ですね、昨年の十二月から牛場対外経済相がアメリカを訪問し、その後一月中旬にストラウス大使と会談するというようなことで、この一連のラウンドを評価しているんですね。その中で見落とすことのできないことが一つある。  それは「日本は円の為替レートの急激な上昇を認めた。」ということが書いてあるんです、この会談の結果ですね。「これは多くの国内企業を危うくしたが、やがて日本の貿易収支に反映されるに違いない。」ということをアメリカ大使は評価しているんですね。一体こういう事実があったのかどうか、急激な円高を政府が認めたという事実があったのかどうか。私はどうも政府の円高対策、これが事実上この円高を容認しているという感じを従来から持っておりました。まさにここにアメリカ大使が、アメリカとの間でそういうことを日本政府が認めたということをはっきり言っているわけですね。その点を確かめたい。  それからもう、点、こうして急激な円高を認めることによって、この円高をてこにして日本の大企業のいわば人減らし、猛烈な勢いでいま首切りが進んでいる。中小企業の整理淘汰、あるいはまたアメリカの要求に従った農産物の輸入枠の拡大、こういうことが行われているわけです。アメリカ側からは日本経済の構造を変えなきゃならぬということが今回の会談の中でもかなり強調されているように見えますけれども、まさにこの円高をてこにしてこうした日本経済の構造、国民を犠牲にした構造の変化ということをやろうとしているのじゃないか、この二点について伺いたい。
  126. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 七%成長というものはアメリカに対して約束したからやるなんて、そんな性格のものじゃありません。私は日本がとにかく構えが安定してきた、そういう際にまだ景気が、不振である、こういう際に七%ぐらいの伺い成長をすることはこれは世界に対する責任でありまた国民の期待にこたえるゆえんである、そういうことでやっているのであって、アメリカに約束したからやるなんてそんなちっぽけな立場でやっているんじゃありませんから、これは誤解のないようにお願い申し上げます。  それからマンスフイールド大使が演説したと、それは私はよく見ておりません。おりませんが、あなたのお話を聞くと円高を認めたというような文句があるという話でありますが、円高があったことは事実ですから、それを認めたというか知っておるというか、そういうようなことは、それは知っておるというような意味でありますればそのとおりだろうと、こういうふうに思います。また、いろいろ受け入れたというような意味だとするとこれは違っておると、こういうふうに思います。  いずれにいたしましても、それに伴って、日本が円高を奇貨といたしまして企業の整理をしようというようなことを考えてというようなことはこれは全然ありませんので、円高が経済界に、企業に悪い影響を及ぼさないようにいろいろの手配をしておる、苦心をしておるということは御承知のとおりであります。
  127. 井上計

    井上計君 先ほどから総理の御答弁を聞いておりますと、ずいぶんお疲れになっているなと、こういう感じがいたします。大変御同情申し上げるんですが、強行日程に加えて、理解を求めるために大変御苦労されたなということがよくわかります。  ところが総理、大変カーター大統領やあるいは上下両院でいろいろ懇談をされて、最大限理解を求めるために大変御苦労されたわけでありますけれども、十分果たして納得をしてもらえたのかどうかというふうな点、幾つかあると思うんです。  その一つなんですが、新聞報道でありますけれども、グレン上院議員が、日本の防衛費はGNPの一%というのは少な過ぎると。日米がパートナーを組んでいるという上で、これではいろんな見解を生んでいるではないかと、こういうふうな質問を総理にしたという新聞報道がございます。それについて総理は、日本GNP自体が非常に大きいのでその実体は大きいんだと、こういうお答えをされたという、これまた新聞報道でありますが、しかし、果たしてその程度のお答えでグレン議員あるいはその他の議員が納得したのかどうか。ちょっと私、実は、まあ私自身は理解できないという感じがします。  去年の十一月でありますが、本院の内閣委員会で、私、総理に対して、GNPの一%の防衛予算にこだわることはおかしいのではないですかということを実は率直に申し上げました。総理もそのときに、やはり今度のグレン議員に対すると同じようなお答えを私実はちょうだいをしておるわけですが、ところが、GNP自体が日本が大きいからと言われますけれども、金額にしますと西ドイツの四〇%、それからフランスの約半分、それからイギリスの約六〇%程度しか日本は金額的にも防衛予算が計上されていない。それから一般歳出予算に占める割合からいきますとスウェーデンやベルギーの大体半分くらいであるということでありますから、GNP自体が大きいと行われますけれども、やはり相対的に見ると日本の防衛予算が低過ぎる、少な過ぎるということについては大変な不振を買っておるんではなかろうかと、こういう感じがいたします。特にアメリカでは、日本の自主防衛努力の欠如ということを盛んに問題にしているわけでありますから、それらを考えますと、グレン上院議員が果たして総理のそのような簡単なお答えで理解をしたのかどうか、その点ひとつ承りたいと、こう思います。
  128. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) グレン議員の発言は非常に簡単なものでありまして、いままさに井上さんがおっしゃるとおりの話なんです。それに対する私の答弁も井上さんがおっしゃるとおりのことを申し上げて、それでもう別にそれ以上の質疑はなかったとこういう状態ですが、しかしアメリカの議員の中に、日本の防衛費が一%というような程度はこれは少し少ないんじゃないかという、そういう意見がかなりあるということは私も感じ取っておるわけでありますが、しかし、私どもの国は他の国と比べまして特殊な政治姿勢をとっておるわけです。憲法もありますけれども、その憲法のことはさておきましても、いわゆる平和国家としての基本的立場をとっておるわけなんでありまして、まあとにかくこれだけのわれわれ経済力になってきて、そのGNPの一%というと、アジアではかなり大きな額にはなるわけなんであります。まあそういうことを考えまするときに、当分の間この七%という目標、これは私は堅持いたしていきたいと、このように考えておるんです。
  129. 井上計

    井上計君 この問題は、総理いま当分の間というお話でありましたが、また、ひとつ回を重ねて総理の御見解を、主張を変えていただくようなまたいろいろ発言もいたしたいとこう思っております。  そこで、次に日中条約の問題でありますが、カーター大統領が田中条約の締結について成功を祈ると、こう言ったように報道されております。これがカーター大統領のただ単なる外交辞令であるのか、あるいは本心であるのかということについて伺いたいと思うんでありますけれども、本心だとするならば、私当然総理とカーター大統領のお話の中で、じゃあ米台関係をどうするのか、あるいは今後これをそのまま現状で維持していくのか、あるいは米台関係については大きな変化を実はすでに考えておるのか、当然そういう話が出たんではなかろうかという、これは想像でありますけれども、そういうお話が出たのかどうか、あるいは同時にまた、尖閣諸島の中国漁船の領域侵犯の問題でありますが、これらについても当然日中条約の成功を祈るということをカーター大統領が言ったとすれば、やはりその辺の問題もカーター大統領の口から何か出たんではなかろうかというふうな想像をいたしておりますが、それについてのお答え、それから同時に、私は、今回カーター大統領といろいろ総理は突っ込んだお話をかなりなされたと思いますが、そういう中で、日中条約については、伝えられるところによりますと急いでというふうな空気もまた逆に出たと聞いておりますけれども、一面ではまたやはり慎重にやるべきだと、こういうふうな観測、見方も出たと、こう聞いておりますけれども、その点についてひとつ、どうお考えか、お伺いをいたしたいと思います。
  130. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) カーター大統領と私との会談で、尖閣列島の話は、私の方から、実は日中平和友好条約は双方が満足できる立場において早く締結したいんだと、これが基本的な考え方だ、それで環境もかなり熟してきたんだが、その交渉を始めるための環境も熟してきたんだが、尖閣列島問題が起こりましてとにかく苦慮しておりますという話をしたところ、尖閣の方には触れませんでした。それで、条約交渉の成功をお祈りしますという簡単な話であります。あなたの方は一体どういうことになるんですという私の問いに対しましては、上海コミュニケ、あの線に沿って努力をいたしてまいりたいと、こういうことでありまして、それ以上の話をするということはなかった、このように御理解願います。
  131. 市川房枝

    市川房枝君 総理のアメリカ訪問に関連したことは委員の皆様方から御質問が出ていましたので、私は毎日の生活で苦労している中産階級の主婦の立場で、きわめて常識的な問題について首相に幾つか伺いたいと思います。  総理初め各閣僚の方々は、国民の生活をよくするためにいろいろお骨折りをいただいておると思いますが、多くの主婦の人たちの間には現在いやなこと、心配なことがいろいろあるわけでございます。  第一の問題は、五十三年度の予算は、言うまでもなく非常に莫大な三十四兆何ぼというような予算、しかもそのうちの三二%といいますか、三七%は公債、借金している。この状態を主婦の立場から見ますと、主婦はそれぞれ自分の家庭の生計の立場から言って、一体どうしてそれでやっていかれるのかと、一体その金はいつ返すのかと、どういう方法で一体返せるのか、一体だれがこの金を出すのか、あるいはことしだけでなく恐らく来年も多額の借金をすることでありましょうが、まあこれは昔々のことになりますけれども、棒引きだの没収だのというようなことが前にあったことがあるんで、その点を心配をしておりますけれども、一般の主婦にわかりやすく、それを総理からひとつ説明をしていただきたいと思います。
  132. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) まあ私も、財政問題が一体これはどういうふうにやっていくかということ、これはもう本当に私は頭が痛いんです。しかし、財政が出勤して役割りを演じませんとこの不況は直らない。そこで思い切って三七%公債依存というような政策をとったわけでありますが、一番大事なことは、やっぱり早く景気を回復いたしまして自然増収が集まるようにと、こういうふうに考えております。それからさらに、やっぱりそれだけでは足らないので、これはいずれ暑気が回復したその時点では、まあ増税というか、余り国民は喜ばないかもしれませんけれども、国家秩序を維持するという立場から考えましても増税ということを考えなきゃならぬだろうと、こういうふうに考えます。余り公債財政を続けていますとインフレ、これになりますからね、インフレだけはこれはもう絶対に起こしちゃいかぬ。しかし、石油ショック後五年間の推移をずっとごらんになりますれば、大変その辺はうまくいっているんです、世界一うまくいっているんです。世界一物価は安定しておると、こういう状態だと私は見ておるわけでありますが、いやしくもいまの財政からそれが起こってくる、あるいは景気から起こってくる、いずれどういう状態であるにいたしましてもインフレが起こってくるという状態、そういう徴候が見えれば断じてこれを阻止すると、こういう政策を必ずとりますから、国民には御安心していただきたいと、このように考えております。
  133. 市川房枝

    市川房枝君 いま総理からお話がありましたように、インフレの問題も心配なんですけれども、直接にはやっぱりすぐ増税ということを考えるわけでありまして、今度の国会でもある程度増税されたわけですが、私ども国民としては、妥当な税金を払うことはやむを得ないと思いますが、現在の税制でお医者さんだとかあるいは大企業あるいは金持ちの人たちに対しての租税特別措置法等による優遇措置があって、つまり非常に不公平だという状態では、やっぱりいま以上に税金を払うという気持ちは持てない、こういうことでありまして、これは率直な国民の意見なんですが、今後の増税の問題に対して総理はどういうふうにお考えになっていますか。
  134. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 増税は、これは私は景気がよくなるというそういう段階においては国民にお願いをしなけりゃならぬ、そういうことにならざるを得ないと思うんです。そうしないというと、市川さんの御心配になる公債問題、これをとうするのかというようなことで、これはまあインフレという問題を引き起こさないとも限りませんから、これはまあ増税ということは避けて通ることのできないことじゃないかというふうに思うんです。ただ、いま御指摘のように、それにはそれなり前提としていわゆる不公平税制というようなものは是正しなけりゃならぬ、これは是正いたした上で国民にそういう新たなる負担はお願いしなけりゃならぬ、このように考えております。
  135. 市川房枝

    市川房枝君 総理初め政府は、景気をよくするためにああいう予算を組んだんだと、こういうことでそれは私どもにもわかりますが、しかし現状では倒産がますます多くなってきているし失業者もふえてきている。景気は少し光は見えてきたとはいうものの、向よくなってはいない。こういう状態では、私ども婦人の側から言いますと、働いている女の人なんかの場合には、こういう時代になるとまず第一に女が首を切られるという状態、それでいて婦人のパートの方はふえているんですね。結局企業もその方が安上がりだし、婦人の方も少しでも現金収入が欲しいというようなことで非常に労働条件の悪いパートがふえているというような実情なんですが、景気はいつになったら回復するのか。前にはいつごろとよくおっしゃったのですけれども、それなかなか当たらなかった、外れてばかりいたみたいですが、今度はどうなんですか。いつごろなら——そうすればそれまでがまんしようということになるだろうと思いますが、それをちょっと伺いたいと思います。
  136. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは施政方針演説でも申し上げておるわけですが、ことしの年度、つまり来年の三月、その時点では五年のトンネルの出口が見えるというところまで持っていきたい、このように考えております。
  137. 市川房枝

    市川房枝君 もう一つ、最後にちょっと伺いたい。  私どもは、政治は安くてそしていい政治ということが理想だとこう思うのですが、総理も、総理に御就任になったときに行政改革をしてむだを省くんだということをおっしゃり、私なんか非常に歓迎しておったのです。ところがなかなかうまくいかないで竜頭蛇尾に終わったというような現状なんですけれども、行政の簡素化、私どもが知っている限りでも、補助金なんというものがずいぶん何でもないところへいってたり、そういう不公平が非常に多かったり、いろいろな点が目につくのですけれども、やはり初心を堅持なさいまして、さらに行政改革を徹底的にやっていただくことを希望するのですが、その点はいかがでございましょうか。
  138. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私も、いまの行政機構は高度成長時代の体制だ、こういうふうに思います。これから世の中が変わってきていわゆる減速経済という時代になりますと、やはり政府の機構のあり方、それもその時代の変化にふさわしいような状態にしなければならぬ、このように考え、それでできる限りのことはやったつもりなんですよ。ただ、率直に申し上げまして中央省庁、これは私の思ったとおりには実現できなかったのです。とにかく役人は強いですね、これ。それで騒ぎが起こる。そういたしまして、時あたかも不況をどうするかというような非常に重要な時期、そのときに役所が行政問題でぎゃあぎゃあ騒いでおる、こういうような状態だとこれが果たしていいのかというふうに考えまして、中央省庁の問題だけはこれは見送りにいたしてしまったわけでございますが、その他のものはかなりのことをやっております。行政機構問題はしかしこれで終わりじゃありません。もうさらにさらにやっていくつもりでございます。
  139. 市川房枝

    市川房枝君 ありがとうございました。
  140. 野末陳平

    ○野末陳平君 アメリカみやげの方はばっとしたところを聞かせてもらえないようですけれどもアメリカは週休二日だと思います。日本でもこの大蔵委員会でもって、週休二日制を実現するために銀行が早く踏み切れるようなということで先日合意をしたのですが、週休二日というのは経済問題とも非常に関連してくると思うのですね。  そこで総理のお考えを聞きたいのですが、週休二日を一日も早く実現するということに総理は賛成なのか、それとも、働こう内閣の手前ですから、総理は日本ではまだ早いとお考えなのか、どちらですか。
  141. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) この問題は、これは主として企業の関係する問題でありまするから、これは企業が自主的にどういうふうな動き方をするか、その推移を見るということにいたしておるわけなんです。いま銀行の窓口、土曜日には完全にしまっちゃうというようなことになりますと、経済の動きにも相当な影響があるだろうと思いまするし、そういうことを配慮いたしまして、恐らく銀行等におきましても土曜開店ということをやっておるんだろうと、こういうふうに思いますが、だんだんと世の中が落ちついてまいりまして、そしてまあひとつ土曜は休もうやというような空気になってまいりますれば、それも一つの行き方だろうと、こういうふうに思います。  ただ、私は、少し長期的に見ますと、日本人はよその国の人よりもよけいに働かなけりゃやっていけないと、こういう考え方を持っておるんです。とにかく資源というものはほとんどないでしょう、資源を外国から買って、そしてこれを加工して輸出をしてそしてたつきを立てると、こういう現状。アメリカのように、資源は自分の国にあるんですから、そういう国とは違った立場にあると、こういうふうに思いますので、非常に長期的に見ますと、アメリカでこうやっているからわが国もこうだというところにはちょっと修正して考える必要もあるんではあるまいか、そのような感じがします。
  142. 野末陳平

    ○野末陳平君 アメリカがそうだから日本もと言っているわけじゃありませんで、これは世界の傾向であろうと思うんで、長期的にどうも働かなければやっていけない国だということは、やはり総理は週休二日制の早期実現ということには消極的だというふうに判断してよろしいですね、そういうことになりますね。
  143. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) そう短絡的に言われちゃ困るんですがね。これはもう世の中の動きがそういうふうになってくる、それに順応していったらどうだろうと、こういうふうに思うんです。世の中の動きというのは、国内の動きもありますよ。しかし国際的な動きもある。その動きに順応してやっていくということで、政府が、総理大臣が無理して週休二日制なんということになると、さなきだにいま苦労しておる中小企業の人なんかの立場を考えると、どういうふうな感情を持つであろうか、そのようなことも考えるんです。ですから、上善は水のごとし、それでいきたいと思います。
  144. 野末陳平

    ○野末陳平君 何かわかったようでわからないような、どうも老子の言葉が出てくるのも唐突ですがね。  それから例の医師優遇税制ですがね、総理に期待していたわけですが、この国会で何とかなると思っていましたから期待していたんですが、どうも委員会では総理は自民党の動きを受けて考える。五十三年限りで、五十四年からは新しい制度ということをしばしばお答えになりましたが、何か自民党の方の動きはぱっとしなくて、どうもこの国会は見送るようなお話も聞いているんですが、見通しはどうですか。この国会で出てきますか、総理の思われるような方向が。それとも次の国会になるんですか。一体いつになるか、見通しを聞かしてください。
  145. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 私が申し上げておりますのは、いまの制度は本年度限りである、こういうことでございます。そして次の年度におきましては新しい制度でやっていこう、こういうことでございます。ですから、いま実際の動きを見ておりますと、この国会でこれは提案し実現されるというのはちょっと見通しが暗くなってきておるというような感じでございますが、いずれにいたしましても本年度をもっていまの制度はおしまいだということには変わりはありません。
  146. 野末陳平

    ○野末陳平君 そこまで断言されれば、少々自民党の動きがもたもたしていようが、一応は安心をするんですが、しかし、ずっとあれですか、丘十四年まで総理はいまの仕事をおやりになっているという前提がないと、そのお言葉も途中で何かでもっておかわりになっちゃったら、またまたどうなるかわからない、そこも心配なんです。だから、総理がこの国会で総理の立場でおやりになっている間に何とかしてほしかったんですよ。絶対これは大丈夫ですか、総理の決断は、いいですか、五十三年度限り、これは政府の決断でもあると、間違いなく五十四年度からは医師優遇税制は改められると、新しい制度になると、こういうふうに判断していいですね。
  147. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) これは大蔵大臣も責任を持ってこの席で申し上げておることでございまするし、自民党もそういうふうに決定をしておるわけでありまするし、これは間違いございません。
  148. 野末陳平

    ○野末陳平君 それは安心しまして、そのとおりになることを——しかし、次の国会といいましても臨時国会なのかまたその後なのか、その辺がちょっと心配ではありますが、ひとっこれだけは確実にお願いします。  それから、たまにしか総則にこうやって質疑できませんからいろいろ聞きますけれども、最近総理は余りデノミのことをおっしゃらなくなりましたがね、あれまだ意欲満々といいますか、デノミはやるべきだというようなお考えか、アメリカ旅行で心境が変化あったかどうか、そんなことも聞きたいんですが、どうですか、デノミについては。
  149. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) デノミにつきましては、私から積極的に申し上げたことはございませんです、これは。聞かれるものだから私の所見を申し上げているわけです。聞かれればちゃんと率直に私の考えを申し上げておる。これはいつの日にかデノミというものは私はやりたいんだと、こういう考え方、これは依然として変わりはありません。しかし、それには前提条件があるんですよ。つまり経済が安定しなきゃだめなんです。安定した経済下でなければそれをやるということは混乱を起こすのみでございます。安定し、しかも国民がデノミというものについて十分な理解を持った、そういう段階においてやるべきものであると、そのようなことでございます。もう聞かれなけりゃ私はデノミのことは私の方から申し上げませんから、そのように御理解願います。
  150. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしますと、安定して国民が理解を持ったときにということになると、総理の任期中は無理じゃないですかね。いや、そんな気もしますね。しかし、デノミがいい悪いということではありませんで、まだそんなことを議論をする段階でないように思っていましたから、総理が聞かれているだけで、それほど意欲がないようなあるような、どうもこれはお話以上には出ないような気がするんですがね。  最後に、さっきから景気回復という言葉が総理から出ましたけれども、増税ですね、これは一番非常に問題だと思いますからしつこくお聞きしますが、景気が回復したら増税をというような、これは抽象的に言えば当然そうなんですが、景気の回復というのはどういうことを総理は具体的にお考えになっているんですかね。世の中はいろいろ物差しが違う言い方で景気回復ということを言いますからね。景気が回復したらと言ってもどんな状態がそれを指すのかわかりませんので、総理の物差しは、景気回復というのはこういう状態になったときだという何らかの数字でもって言っていただけると非常にありがたいと思うんですが、それをお願いします、最後に。
  151. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) 景気回復というのは、景気指数というのがありまして、これは何十とあるんです。それを総合いたしまして大体景気回復と断定できるかどうかという判断をすることになりましょう。そういう中で非常に大事な指標ですね、これはもう何十とある指標ですが、やはり稼働率指数、これは非常に私は大事だと思うんです。これはまた企業収益、これにつながっていくという問題であります。それから生産の指数、これも非常に大事な問題である、こういうふうに思います。とにかく企業がそういういろんな状態を踏まえてくれて景気動向指数というものが改善されます。その際におきましては、企業一つ、つが、特殊なものは除きまして、収益を上げ得る状態になる、そういう状態になりませんと私は景気は回復したと、こういうふうには申し上げられないというふうに思います。
  152. 野末陳平

    ○野末陳平君 どういう、改善と言ったらどこまでいったらいいですか、指数が。稼働率指数がどうなったらいいんですか、総合的に。
  153. 福田赳夫

    国務大臣(福田赳夫君) それはもういろんな指数がありまして、そういうものが大体肩を並べて改善されるということなんですが、その大事な指数はやっぱり稼働率指数、それから生産の指数、いろいろほかにもありましょうが、とにかく大体、何ですね、国民の皆さんが見て、ああ景気はこの辺だなというふうなことになったら、それはもう結構じゃないでしょうか。この指数を見て言うのと国民の実感、そういうようなものを見合わせまして判断すべき問題じゃあるまいかと、このように考えております。
  154. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  次回は、五月十一日午前十時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十六分散会      —————・—————