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1978-03-28 第84回国会 参議院 大蔵委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十八日(火曜日)   午前十時三分開会     —————————————    委員の異動  三月二十八日     辞任         補欠選任      多田 省吾君     藤原 房雄君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         嶋崎  均君     理 事                 藤田 正明君                 細川 護煕君                 福間 知之君                 中村 利次君     委 員                 岩動 道行君                 糸山英太郎君                 河本嘉久蔵君                 戸塚 進也君                 中西 一郎君                 桧垣徳太郎君                 藤井 裕久君                 宮田  輝君                 穐山  篤君                 矢田部 理君                 鈴木 一弘君                 多田 省吾君                 藤原 房雄君                 渡辺  武君                 市川 房枝君                 野末 陳平君    国務大臣        内閣総理大臣   福田 赳夫君        大 蔵 大 臣  村山 達雄君    政府委員        経済企画庁調整        局審議官     澤野  潤君        外務省経済協力        局長       武藤 利昭君        大蔵政務次官   井上 吉夫君        大蔵大臣官房審        議官       米里  恕君        大蔵省主計局次        長        山口 光秀君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  田中  敬君        大蔵省証券局長  山内  宏君        大蔵省国際金融        局長       旦  弘昌君        国税庁次長    谷口  昇君        国税庁税部長  水口  昭君        国税庁調査査察        部長       藤仲 貞一君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        国土庁土地局土        地政策課長    佐藤 和男君        運輸省航空局管        制保安部長    飯塚 良政君        自治省税務局固        定資産税課長   吉住 俊彦君        会計検査院事務        総局第一局長   前田 泰男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○有価証券取引税法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関す  る法律の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  有価証券取引税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案便宜一括議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 穐山篤

    穐山篤君 租特国税収納金のことについての質問をしますが、最初に、質問する前に注文をしておきたいと思いますのは、最近大蔵委員会にかかります各種の法案を見てみますと、次元の違う品物を二つ持ってきて一本に合わせてこの一部改正案というのが、まあはやっていると言えば語弊がありますけれども、そういう感じがしてならないわけです。これはほかの委員会に関する法律案でもそうでありますが、今回の場合、租特というのは言ってみれば、時間的に言えば懸案の事項であるし、内容的に言えば税制の問題になるわけです。それから片方の収納金の問題につきましては、財源確保という言ってみれば全く違う次元品物ではないかと思うんです。そういうものを一つにまとめて、とにもかくにも銭に関することだから一本でいいじゃないかというのは、これは国会の審議の立場からいいますと非常に問題があるというふうに考えます。今回は法律案が出て現に審議しているわけですからこれを途中で引きちぎるということはむずかしいと思いますが、これからはそういうことがないようにして十分に慎重に審議することが正しい、妥当だというふうに考えます。返事は要りませんけれども、強く要求があったということを十分に意識していただきたいということを冒頭に申し上げておきたいと思うんです。  さて、最初質問税収全体の問題、特に所得税あるいは法人税の問題全体についてお伺いをしたいと思います。  昨年も一昨年も、過去五年間の実績を調べてみましたが、所得税あるいは法人税及びその他物品税などの間接税実績を見ますと、当初予算額との間に非常に乖離があるということが明々白々であります。これを言うならば所得税法人税は全く見込み違いが生じる、しかし一方、酒税だとか納付金などの間税税につきましては大体当初見込み額の前後のところでおさまっている、これが実績になっているわけです。心配しますのは、直間の比率七〇対三〇から判断をしまして、この所得税法人税見込み違いあるいは税収不足ということは財源確保の上で非常に重要なかかわり合いを持っているわけですが、昨年の第一次補正予算の際にも私は非常に大蔵当局が甘い見通しを持っているということを指摘をしたわけですが、今回の五十三年度予算税収入全体の問題について、これならば間違いなくいけるという強い展望を持って組まれたかどらか、まず第一にお伺いをしたいと思います。
  4. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) ただいまの穐山委員の御指摘は幾つかの点でおっしゃるとおりでございまして、税収全体の中で所得税法人税で六割以上というようなウエートを持っておりますが、法人税につきましても所得税につきましても、本予算を組みますときにはまだ前年度の十一月ぐらいまでしか実績がわかっておらない。その上に当該年度の残りを推計し、さらにそれの上に翌年度の本予算にかかわる年度につきまして経済見通しに盛られておりますマクロ的な指標を使って推計する以外に方法がないわけでございます。したがいまして、マクロ的な推計の基礎になりました指標に大きな変動がない限りは、所得税収法人税収もさほど大きな変動はなしに済むわけでありますが、ここ数年は残念ながら当初の経済見通しに比べまして実績見通しかなり修正される例が多い。率直に申し上げまして税収はやはり経済活動の反映で、その意味できわめて受け身なものでございますので、経済活動そのものが動きましたときにはやはり税収も動かざるを得ない。しかし、そうばかり言っておられませんわけでございまして、おっしゃるように私どもはできるだけ的確な見積もりをするように今後とも努力をしてまいりたいと思いますが、何にしても個別の、たとえばガソリン税というようなものはこれは年間消費量にそう大きなぶれはない、それからまた酒のようなものにつきましても、業界が持ちます出荷見通しというものもそう大きな狂いは出てこない。マクロ的にその生産がどうであろうかとか雇用者所得がどうであろうかとかというところはやはり経済見通しの方に乗らざるを得ないものでございますから、かなりのむずかしさがあるということはぜひ御理解をいただきたいと思います。
  5. 穐山篤

    穐山篤君 一般論としてはそういうことになるわけですが、これは後ほど今年度の半ば以降の財政展望についてのかかわり合いがありますので、もう少し伺っておきたいと思うんですが、政府が毎年発表いたします経済成長率、これは名目でも実質でもそうでありますが、最初発表したものと年度の最後になって明らかになりました実績というものを四十九年からずっと調べてみましても大変な誤差があるわけです。特にその中でも一番問題になるというのは、見込み実績の上で大いに誤差あるいは見込み違いが生じておりますのは、個人消費支出については、昭和四十九年はともかくとしまして、五十年以降は一%から三%以上の違いが現実にあるわけであります。それから顕著に出ておりますのは民間設備投資、これはもう御案内のとおりだと思います。あるいは鉱工業生産についても結果的にマイナス誤差を生じているわけですね。しかしプラス見込み違いというのは、数字の上ではっきりしておりますのは政府経常支出あるいは資本支出、さらには経常収支というものが、これは政府の思い切った財政措置ということや規模拡大という政策があるからでしょうが、これだけは奇妙に全部プラスになっているわけです。この見込み違いについて、まあ水かけ論になるおそれがありますけれども、しかし昨年の場合でも、第一次、第二次補正予算の際にも、皆さん方は六・七%について胸を張ってこの委員会でも絶対大丈夫だというふうにおっしゃった。しかし野党のそれぞれの委員は、これは希望としては六・七%というのは欲しいけれども現実それは無理じゃないかということを厳しく指摘をしているわけであります。  特に問題になりますのは、円の相場が二百三十円台ということに極端に変わりましたので、成長率についても、七%という希望はあるにしましても、もはや下方修正をしなければならぬ段階ではないか、これは非常に決断の要る話です。しかしそれは後で具体的に、民間設備だとかあるいは個人消費だとかいうものに具体的にあらわれてくるわけですから、いまのところ希望だけでものを考えられたのでは困る。当然それは法人税なりあるいは所得税という税の収入のボリュームにかかわる問題でありますので、なかなか言いづらい話とは思いますけれども現実にこういう事態があるわけですから、七%についての考え方、あるいは下方修正についてどういうふうに考えられているか、この際きちっとお答えをいただきたいと思います。
  6. 澤野潤

    政府委員澤野潤君) お答え申し上げます。  最近の経済情勢を見ますと、確かに先生のおっしゃいますように、民間需要には総じて盛り上がりが乏しいということも事実でございますし、雇用情勢も非常に厳しいという実態ではございますけれども、しかしながら、鉱工業生産を見てみますと、昨年十一月以来三ヵ月連続して増加しておりますし、また二次にわたる補正予算、これの効果が次第にあらわれてきておるということが数字上確かめられるわけでございます。また、設備投資関連民間からの受注、特に電力等中心とする非製造業中心としてこのところ設備投資先行き見通しに明るさが見えてきております。こうした中で、官公需需要の増加とかまた在庫調整進展、これはもちろん生産調整等も勘案しなければいけませんですけれども在庫調整かなり進展をしておるという実態がございますので、今後需給の改善を背景にいたしましてかなり先行き明るい見通しがあるのではないかという感じがしておるわけでございます。  こうした状況のもとに、政府といたしましては、先般の五十三年度予算、特に内需中心景気拡大ということを第一課題といたしまして積極的な財政運営を行う。しかも、それによりまして可能な限りの施策を講じてやっていくということにいたしておるわけでございます。これを受けまして五十三年度の当初予算が成立いたしましたときには、この施策効果が今後より速やかにより積極的にあらわれるように、実はせんだっての三月二十五日に内需振興中心といたします当面の経済対策というものを閣議決定いたしたわけでございます。  これによりまして最近における経済情勢、それが今後五十三年度に引き続いてまいりまして、いわゆる十五ヵ月の公共事業予算といったようなものの切れ目ない執行とその積極的な推進ということ、特にそれを繰り上げ施行というような方法を講じまして速やかにその効果をあらわせるということによりまして、年度後半には民需が民間在庫投資等も含めて次第に回復することが期待されるわけでございまして、私どもといたしましては、先般の十−十二月のQE国民所得統計速報でございますけれども、これが実質一%の成長ということも出ておりますし、それ以後の一−三月の状況等も勘案いたしましたときに、五十二年度におきましては大体五・三%程度成長というものはほぼその軌道に乗っておると考えておりますし、それを受けまして、五十三年度におきましては七%の成長というものは達成できるのではなかろうかとわれわれはいま考えておる次第でございます。したがいまして、下方修正ということはもちろん考えておりません。
  7. 穐山篤

    穐山篤君 その点はさらに後ほど細かくお伺いしますが、政府最初予算をつくられて、その後五十三年度GNP中身につきましておおむねの方向を示されたわけですが、それを見ますと、GNP一〇〇にしまして個人消費が今年度五六・九、民間住宅が七・一、民間設備投資が一二・二、政府支出あるいはサービスというものが二一・二、こういうウエートになっておりますね。これを去年なりおととし、その前、逐次調べてみると、たとえば民間設備の場合に今年度は去年に比べて〇・二%ウエートが落ちております。落ちているというのか落としているというのか。それから五十一年度と比べますと一・二落ちているわけですね。それから五十年度比較をしますと何と一・六、大変落ち込み民間設備の場合に多いわけです。それから個人消費の場合ですが、これと同様に五十年から五十二年まで比較をいたしましても、ほとんどウエート数字の上では大した変化がないというふうに見受けられるわけです。このGNPウエートから考えてみますと、個人消費購買力に何らか力をつけなければだめだということを一面では私は指摘をしているんじゃないかというふうに思います。それから民間設備投資では、いま議題となっております投資促進減税を加えてみても去年に比べて落ち込んでいるわけですから、政府は大騒ぎするわりあいには民間設備投資というのは盛り上がらないで、せいぜい下支えぐらいのものではないかというふうな感じがするわけですね。  そういたしますと、今回の投資促進減税ということを取り上げてみましても、これは思い切った措置にはなっていない。後ほど七項目の緊急問題にも触れますけれども、そういう意味では政府が発表しましたGNPでは国民にいろんなことを教えているわけですね。一言で言えば、もっと国民消費購買力をつけるような何らかの積極的な政策を打ち出さなければだめですよというふうに一面では指摘をしているし、一面では先ほど私が具体的に数字を申し上げましたように、去年に比べ、おととしに比べ民間設備投資はどんどん下り勾配になっている。これもいろんな公共事業投資で去年からずいぶん努力をしているけれども、第一次補正、第二次補正、今度の地方のを含めれば二十何兆円にもなろうとしております公共事業費設備投資をやりましても、民間設備投資につきましてはなかなか上がってこないという、こういう実績を示しているわけです。ですから、政策を発表されることは結構でありますけれども、こういう具体的な数字見ますと、政府政策というのが果たして民間設備投資というものを刺激をするかどうか、あるいはそれが実績として生まれるかどうかというのは大変疑問です。この点についてもっと明確にしていただきたいと思います。
  8. 澤野潤

    政府委員澤野潤君) 民間設備投資につきましては、先ほど申し述べましたように、五十二年の十−十二月の国民所得統計速報を見ますと実質で十二%伸びておるわけでございまして、七−九月がマイナスの〇・一でございました。この傾向からいたしまして、これがまた一−三月にどのようになるかというところはいまのところまだはっきりした数字はございませんけれども、こういった傾向伸びてくるものとわれわれは予測しておるわけでございまして、特に非製造業電力業とか小売卸売業金融業といったようなものの設備投資といったものにやや明るさが見えてまいりまして、五十三年度におきましては製造業では三%程度伸びを予測いたしておるわけでございますけれども、非製造業では一四%程度伸びを予測しておるわけでございまして、前半におきます財政主導型という公共事業等関連建設資材等々の生産出荷といったものを中心といたしまして、前半かなり財政主導型で伸びていくのが後半には民間主導にうまくスイッチをして、全体としてただいま申しましたような設備投資伸びになるであろうというふうにわれわれは考えておりますし、期待をいたしておるわけでございます。
  9. 穐山篤

    穐山篤君 これも非常に去年からいずれの委員も心配しておりますように、こうありたいというお話はよくわかるし、私どももそう望みますけれども、実際の実勢がそういうふうに動いていないという現実を直視をしていただきたいものだというふうに思います。  さてそこで、今年度全体の歳入目標二十一兆四千五百億、こうなっておりますけれども、これも中身を洗ってみますと、税制改正のこともあるだろうし、それから区分変更の問題もある。そういうふうに加除整理をいたしますと、純粋に今年度増収になる部分というのは八千四百八十億円、たったの四・六%ではないかというふうに見るわけです。たまたまこの八千億というのは五十二年度歳入の欠陥といいますか、歳入不足約八千億という数字と間々あっておりまして、どういう因果関係があるのかわかりませんけれども、しかし私はここで指摘をしたいと思いますのは、先ほども御返事がありましたけれども、この八千四百八十億円というものを、これは主として所得税なりあるいは法人税期待をしてこの数字が挙がっているわけです。少なくとも企業活動なり個人消費購買力がなければ、足腰がつかなければこの八千四百八十億円というのは期待ができない。これば全く見込みはずれになるのではないかという心配をいませざるを得ないわけですね。このことについて、たった八千四百八十億円しかない去年に比べての自然増収というものについて、私は過大に期待をすることはむずかしいというふうに思います。  たとえば、細かく私は数字つかんだわけでありませんけれども、一例として申し上げますと、最近住宅建設しようじゃないか、金をどんどん貸しましょうと住宅政策が発表されまして、大いにこれを活用している人もあるわけですね。残高おおむね二十五兆円ぐらいではないかと思います。その数字が明らかにしていただけるならなお結構ですが、そうしますと、この住宅ローンに対します金利というのは大ざっぱに計算しますと二兆円前後になる勘定ですね。これは一面では住宅取得をする、財産をもうける、取得をするという意味で、これは住宅建設景気浮揚になっていることは当然です。ところが、今度支払う側にしてみますと、二兆円の金利というのは去年の第一次補正予算のときの政府のいわゆる二兆円の規模と全く同じですね。それだけ個人消費購買力が落ちるわけです。ですから、いろんなことをやればそれが刺激を与えて波及効果は全般的に出ていくという理屈はわからないわけではありませんけれども、いま私が申し上げましたように二兆円の購買力不足をするということは大変なことだと思いますね。公定歩合の引き下げあるいは預貯金金利引き下げ一般消費者の貯金の目減りというのは二千億とか三千億という数字がありますけれども、それの十倍の金が市中に回らないということになるわけです。これは一例ですから全体を評価することはむずかしいと思いますけれども、こういうことを考えてみますと、八千四百八十億円というこの目標につきまして大変私は問題だと、過大に見積もりを立てているのではないかというふうに指摘をしたいわけですが、その点いかがですか。
  10. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 前段の税収見積もりの方でございますが、これは先ほどもちょっと触れましたように、政府の五十三年度経済見通し基礎にして見積もっているわけでございますが、おっしゃいました数字の中で、ことしの税収は確かにややこしいところがございますが、税制改正とそれからいわゆる五月分取り込み分を除きますと、大体十九兆円という見込みになるわけでございます。それが前年度当初予算比較しますと確かに四・数%になりますが、第二次補正後の十七兆一千一三百というものに比較いたしますと、九・五%ぐらいの増を見込んだことになります。ただ、全体のGNP政府見通し伸び率が一二%でございます。非常にマクロ的な姿としましては、かなりかた目感じというふうにお受け取りになる方の方がむしろ多いのかもしれません。ただ、全体が一二伸びるのに自然増収ベースで九・五しか伸びていないというのは、これは主として法人税伸びが見込めない。大体三%弱ぐらいというふうに私どものいま御審議願っている予算案ではなっておりますのですが、これはなかなか法人の方はいわゆるタイムラグがございまして、政府期待しているように生産活動が徐々に上向いてまいりましても、なかなか税収として五十三年度中にそれが入ってこないという面があるために、全体の伸び率から見て法人税が三%そこそこしか伸びないというような見込みをせざるを得ないというわけですが、まあいろいろな点から考えまして、私どもとしましては、いまの政府経済見通しに準拠いたします限り、やはり現在御審議願っております税収というのはそう大きく狂わないというふうに申し上げていいんではないかと思っております。  それから、住宅ローン金利分かなり圧迫要因ではないかというお話は、私素人でございますんで、何か変なことを申しましたら企画庁に訂正してもらいたいと思いますが、私どもが受けます感じは、確かにおっしゃるようにローン残高がふえてきておりますから、その金利分というのがかなりの負担になるというその面からの御指摘はごもっともだろうと思います。ただ全体としましては、大きさとしてはやはり個人消費支出全体が約百十九兆というか、大きなものでございますので、それで個人消費が非常に大きく下がってしまうというふうには実は受け取らない。  それからもう一つは、やはり資金というものは金利で払えばそれが金融機関に行って、それがまた預金に流れるというふうにぐるぐる回っておるわけでございましょうから、全体で、マクロで分析するときにはやはり企画庁がいま見ているような伸び率というものをそれぞれの需要項目について見てもいいんだろうと思いますけれども、もし必要があればもう少し企画庁から御説明いたします。
  11. 穐山篤

    穐山篤君 二兆円というのは大きい規模ですからね。
  12. 澤野潤

    政府委員澤野潤君) 個人向け住宅ローン残高はいま先生おっしゃいました二十兆六千億ぐらいでございますが、これは五十二年三月末の残高でございますが、そのうち公的機関が約四兆二千億でございます。それから民間機関が十六兆四千億、そのうち、せんだって住宅ローン金利引き下げを発表いたしました都市銀行、これは今度〇・三%引き下げて七・九から七・六にするという発表がございましたが、これが約三兆三千億の残高ということになっておりまして、今度の当面の経済対策の中でも、公的な面における住宅金利引き下げというようなものについても、これを金利引き下げ方向努力するということをうたっておりまして、全般として金利引き下げを行うということでやっておるわけでございますけれども金利のみならず、この住宅建設促進につきましては、先般いろいろ御説明しましたようないろんな措置を講じておりまして、住宅促進を図っておるということでございますので、住宅建設につきましては、先ほど先生もおっしゃいましたけれども、五十三年度名目では二二・六%の民間住宅投資が伸びるという予測をいたしておるわけでございます。
  13. 穐山篤

    穐山篤君 税収で全体の予算を組むわけですから、ぜひこれからも見込み違いがないようにしっかりやってもらいたいと思います。  さて、先ほどお話がありました嫌気浮揚の当面の七項目の問題ですが、少しいやみを言わしていただきますと、最初予算を提案をしたときに、これだけやれば名目で一二%、実質で七%成長は間違いがない、こう示されたわけですが、この二十五日に閣議で発表されましたものは、この調子でいくとどうも実質七%はむずかしいと、こう考えて、補強としてこの当面の七項目対策が生まれたのかどうか、その点についてはいかがでしょうか。
  14. 澤野潤

    政府委員澤野潤君) 先ほどもお答え申し上げましたけれども、今回決定いたしました七項目の対策というものは、最近におきますドル安円高傾向を踏まえまして、五十三年度予算の成立というものをまちまして、当面講ずべき経済対策を決定したものでございまして、この経済対策で決定した項目のほとんどのものはすでに五十三年度予算案の中に織り込まれておるわけでございまして、この予算案の早期かつ確実な実施ということによりまして七%成長というものをより確実にするというのが今度の当面の経済対策で取り上げた項目でございます。  したがいまして、もちろん今後中期的な面で取り上げていく大型プロジェクト等の問題についても入ってはおるわけでございますけれども、五十三年度につきましては、現在御提案申し上げております五十三年度予算案を一日も早く成立させていただきまして、その速やかなる執行とより確実なる七%成長への軌道に乗せるということを考えて閣議決定したものでございます。
  15. 穐山篤

    穐山篤君 この七項目を読んでみますと、大体いままで発表されたものを再確認をする、あるいは促進をするという上に、さらにこれからの考えられる政策を少し加えておる。それからもう一つの特長は、珍しくこういうものについては何用を目途にというように時間、タイムを明らかにしたのが特長のような感じがするわけです。  しかし、たとえば公共事業の中の坂出−児島間本四架橋についても、あるいは新幹線の問題につきましても、一応時期は明示をしておりますけれども現実に着手をする、工事の着手を行うというふうなしろものではないわけでありまして、現実に景気に刺激を直接与える、あるいは景気を浮揚するという具体策ではないというふうに見るわけですね。そのことについて多分皆さん方もそういうことは考えられてやっておられるだろうと思います。  さてそこで、特にこれは大臣にお伺いをしたいのですが、この緊急七項目を含めましていろんな景気対策をやる、これはいまの日本の場合から言えば当然のことだと思います。しかし、これだけのことをやって、できれば九月ぐらい、上半期ぐらいに繰り上げをしたり前倒しをして思い切って景気を引き上げていく。具体的に数字で言うならば、年間トータルの名目一二%を上回るようなものを上半期にやりたいと、やっていかなければならないというふうに私は政府政策、姿勢を見ているわけですが、そういうことでよろしいのでしょうか。
  16. 澤野潤

    政府委員澤野潤君) 全体、年度間を通じて七%を達成する場合に、それをどのように前半、後半に配分するかというところまでは私ども実は確実には計算してないわけでございますけれども先ほど申しましたように、前半公共事業等財政支出中心として現在の建設関連産業その他の生産在庫調整を進め、しかも在庫の積み増しを行っていくということを考えておるわけでございまして、それが後半においては民間設備投資とか在庫の積み増しということに結びついていくということで、それがどの程度の高さで前半七%以上、後半ややスローダウンするというふうになるかどうかというところまでははっきりした数字としては計算いたしておりませんけれども前半財政主導、後半民間主導というパターンを一応描いておるということでやっておるわけであります。
  17. 穐山篤

    穐山篤君 まあ抽象的にはそういうことだろうと思いますけれども、昨年も一昨年も前半でこのくらい嫌気をつけて後半ではこういうふうにしたいと、こういう説明が総理大臣からもしばしばあったわけです。年間トータルで一二%を予定しているわけですけれども、これだけ前倒しをしたりあるいは繰り上げをしたり工事の促進をするということは、成長率の面から言うならばこれは加速がついてしかるべきだと思うのですね。ですから、機械的に計算はできませんけれども、気持ちの上から言うならば一二%を超える成長期待をしなければ、後半民間設備投資を引き出すということは現実に不可能だというふうに私は考えるわけです。どうしても数字のことが言えないというならそれはやむを得ません。  さてそこで、いまお話がありましたように、思い切って前半にいろんな公共事業を中心にして、あるいは政府財政主導によって景気をうんとつけると、それから後半民間設備投資を引き出すと、この考え方はわかりましたが、しかし、それでなおかつ十分に国内の景気浮揚をすることがむずかしい、あるいは国際的に言えば経常収支黒字を半減をすることがむずかしいという事態になったときに、これは大変な事態だというふうに私は考えるわけです。率直に申し上げまして、いままで衆参両院で議論をされております、いろんな角度から景気浮揚策について、あるいは黒字減らしについて野党からも建設的な意見があるわけです。しかし、いままでの政策で言うならば、政府がほとんど発表されたものがそのまま昨年の第一次、第二次あるいは今回の経済政策につきましても政府のほとんどの考え方で経済全体が、あるいは財政全体が進められているというような感じがするわけですが、これでどうしてもうまくいかないと、お手上げだということになった場合に、実際に野党がいろんな注文や建設的な意見を出しているわけですけれども、そういうものについて十分取り上げる気持ちがあるかどうかということについて、冒頭お伺いしておきたいと思います。
  18. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) 五十三年度予算がまだ通らない段階でございます。五十三年度の経済成長見通しにつきましては、るる述べておるように、いまの予算並びにそれに関連する諸政策あるいは公定歩合の引き下げ等をやってまいりますれば七%程度成長は可能ではないかと、こういうことでいま見ておるわけでございます。  二十五日に決定いたしました関係閣僚の会議も、それを確かめる意味で、従来予算に盛られたもの、あるいは今度の公定歩合の引き下げに通ずる諸措置につきまして一種の——それを早く実施し、それを確実のものにしようということが中心になっていることは穐山委員が御指摘のとおりでございます。  そこで、問題をたとえば公共事業に区切って申しますと、あの会議では、上半期で契約率で言って七〇%でございます。昨年は七三%でございましたから三%落ちているわけでございます。しかし、そのうち第一・四半期にできるだけ多くやろうじゃないか、こういうことを言っているわけでございます。御案内のように、今度の第二次補正でいわば切れ目のないものを盛っておりますから、その点も考えまして七〇%程度をめどにしているわけでございます。契約ベースと、それからそれが実際着工になる着工ベースと、あるいはいろいろな建設資材に及ぼす資材の調達の時期というのはおのずから違うわけでございまして、その辺を十分に経験値に基づきまして考えまして決めましたのが七〇%の契約率ということでございます。  それによりまして、恐らく常識的に申しますれば、着工ベースで言うとつまり四ヵ月後ぐらいに五〇%ぐらい着工されてくる、四〇から五〇ぐらい。それから資材の調達は四ヵ月後でちょうどピークで七〇%ぐらい、こういうところでございますので、契約率で決めておりますけれども、それによりまして内需の拡大が相当図れるであろうと、もちろんこの補正予算効果をもずっと切れ目のない効果も考慮に入れまして決めているわけでございます。ねらいとするところは、先ほどから経済企画庁も言っておりますように、最初はどうしても政府主導型でありますけれども、最近は幾つかの明るい指標も見えておる。先ほど澤野君が説明したとおりでございます。こういったものがさらに刺激を受けましてだんだんよくなる、さらにはほかの指標にも影響を及ぼしてくるであろうというようなこと、  それから、あそこには雇用のところにしか、莫然としか書いてございませんけれども、公共事業の張りつけ方につきましても雇用問題を十分に考えて実施計画を組みたい、これは各委員会におきまして野党の先生方からもあるいは与党の人たちからも御注意があったところでございますので、そういう点も十分に踏まえながらやっていくように、こういう考えでおるわけでございます。  ところで、いま穐山委員がおっしゃいましたように、だから現在のところわれわれは七%の達成ができると思っておりますけれども、しかし手おくれがあって、そんなことを言って安心しておってはたまらぬわけでございますから、これは絶えず執行状況を見まして、その成果を十分監視する必要があることは言うまでもございません。各需要項目別に、それから全体としてどういうことになるのか、それからQEの方で一体どういう結果が出てくるのか、QEも恐らくそれぞれの第一、第二第三、第四というおのずから季節的な問題もあるわけでございますので、その辺の問題も十分読み取りながら、所期の目的が達成されているのかどうか、それを十分監視していく必要があると思います。われわれは現在この政策で何とかいけるのではないかと、こう思っておりますけれども、仮定の話として、もし非常に不十分であるという、あるいは何らかの措置が必要だということになりますれば、公共事業予備費もございますし、財投の弾力条項等もございますので、そういったものを活用する余地はこの当初予算にも盛られておりますし、弾力条項も発動できるということで何とか対処できるんじゃなかろうか。とにかく絶えず情勢を監視していくということが最も大事であるという点につきましては、委員と全く同意見でございます。
  19. 穐山篤

    穐山篤君 どうも時間が非常に少なくて残念ですけれども。  さてそこで、いまの問題に関連をしますけれども、別に数字だけにこだわるつもりはありませんけれども、七%に代表されるように、刺激をして景気を回復する、これは国内的な目標であることは間違いない。しかし、二面では国際的に、まあアメリカに対してもECに対しても、六十億ドルというふうに言った方がいいのか七十と言った方がいいのかよくわかりませんけれども、しかし公約としてはいまの黒字をおおむね半分にしていく、この二つの目標が国際的にも国内的にもあるわけです。この七項目を含めて、いままで発表されております政府政策感じで言うならば、七%成長の方にかなりウエートがかかっているわけですね。現実の問題としては、この前も申し上げましたように、交易条件指数なんかの推移を見ましても輸出押し出しの傾向にあるわけです。これはドルは、黒字はなかなか減らないという、そういう観測を持っているのは私一人だけではないと思いますね、ほとんどの人がその気持ちを持っていると思うんです。輸出を規制をするか、あるいは輸入をたくさん行うか、あるいは輸出をしながら思い切ってもっと輸入を行うか、いずれにしてみても物理的に言えばそういうことなんですね。しかし、チョコレートやチューインガムやあるいはオレンジを輸入しておっただけでは、膨大なボリュームの黒字を下げるということにはならない。ECでもアメリカでも製品を買ってくれ、こう言ってきておるわけですね。ただその製品もエアバスのように、いっとき買って金を払うというだけでは国内の景気刺激にはほとんど役立たない、なかなかむずかしい芸当だと思うんです。  現実にこの緊急対策を発表されたのは、ドル減らしを十分に頭に置いて景気対策を発表されたのか、それとも景気がなかなか浮揚しないので、七%のところに力を入れて、黒字六十億ドルにするというのはある程度やむを得ぬと、数字にはこだわらないというつもりでこの決意をされたのか、その点を明らかにしてもらいたい。
  20. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) いや、これはまあ同時達成ということがもう初めからあれでございますので、同時にそれを目的にしているわけでございます。  一つは、やはり何と申しましても財政金融を通じて内需の拡大を確実にしてまいりますれば、年度を通じまして輸入の力がふえるであろう、あるいは、いままでの輸出圧力が国内に向かうであろうということを念願いたしておるわけでございます。  輸出を関係につきましては、数量ベースで大体前年、五十三年度並みにするということを決定いたしたわけでございます。これは、いろんな考え方が巷間流布されたわけでございますけれども、その点をはっきりさせないと非常な心理的の動揺もあり、かつまた、数量ベースで前年より落とすというようなことになりますと、七%そのものに非常に影響があることは言うまでもないのでございまして、両面ねらいまして、数量ベースで横並びということを決めたのはその意味でございます。それだけに、また今度は輸入をふやさねばならぬということは当然でございまして、そのために緊急輸入対策をこの二十五日の決定でも再確認し、さらに引き続き検討するという拡大均衡の方を打ち出しているわけでございます。  円高の問題につきましては、確かに現在非常な大きな問題を生じているわけでございますけれども、この問題はわれわれの認識としてはやはり現在が非常に、二月、三月、これが輸出月でございまして、経常収支の実需を反映いたしまして相場が形成されておると見ているわけでございます。しかし、いつでもそうでございますけれども、そういうことによりまして為替相場に変動が出ますと、最初の間はどうしても価格効果が先に出るものでございますから、経常収支の黒字の方が最初はそっちの方に働いていく。しかし、変動為替相場の当然の論理でございますけれども、やがてはそのことは契約におきましてもあるいは受け取りにおきましても、だんだんと今度は数量効果があらわれてきます。そういったことを考えますと、年の後半以降はいまの円高の傾向というものがおさまってきて、場合によると情勢が逆転するということもいま考えているわけでございます。火が非常に燃え盛っているときにうかつに下手な手を打ちますとますます火が燃え盛るのでございますので、やはり基本的な施策を通じまして情勢の転換をわれわれは期待しているということなのでございます。
  21. 穐山篤

    穐山篤君 もう時間が来ましたので、具体的な租特中身はまた別の機会にお伺いするとして、国税収納金整理資金の問題について一言。  今回のこの問題にしろ決算調整資金にしろ、予算の編成技術とすれば近年まれに、うまいと言っちゃ語弊がありますけれども、やったなという感じを率直に言っておかざるを得ないと思うんです。  そこで、明治三十九年から会計年度というのは四月一日から翌年三月三十一日まで、こういうふうになっておって、財政法第十一条と十二条でそれを規定をしている、そのことはよくわかります。発生主義の立場から言うならば、それが一年おくれようが二年おくれようが追わなきゃならない、厳密な意味で言うならば。しかしなかなかそれはできないから四月末、そして技術的に言えば出納期間というものを置くというのが長い歴史と伝統と慣行であったわけです。また政府自身も、その考え方は誤りがありませんというふうに明治三十九年からずっと言ってきたわけです。  そこで私が指摘をしたいのは、発生主義に基いて最後まで追わなきゃならない金なんだけれども、しかしどこかで節度をつける、それが四月末であるという解釈できたのか、いやそうでなくて、丘月末まであったんだけれども四月末に解釈を統一してきたんだ、こういうふうに考えるのか、これは非常に微妙な問題だと思うんです。これはこの前の決算調整資金の場合でもそうでしたけれども、財政法第何条というものについて、あるいは財政法の精神について私どもかなり厳しく解釈をしておりますので、その立場から言うと、どうも空洞化、形骸化されるという心配を持つわけです。したがっていまの点について、金が二兆百四十億円ある、ぶら下がっているということは別にして、純粋に解釈の問題定義の問題としてどういうふうに判断をしたのかということをお伺いをしておきたいと思います。
  22. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 出納整理期間と申しますのは、いま御質問にもございましたように、年度所属区分というのは発生主義で区分しなきゃいかぬ。片方で予算の執行それ自身は現金で経理しているわけでございますから、その調整をどこかで打ちどめにしなきゃいかぬということでやっている制度でございます。それはもう前からやっている制度でございますが、それを何月にしたらいいかというのは多分に会計技術的な問題であろうかと思うわけでございます。現在は、国の場合は、国庫の中でのやりとりは五月末までやっておりますが、国庫類似のものも含んでおりますが、五月末。それから民間との取引は四月ということで経理しており、一方地方団体の方は五月ですべて経理しておるというようなことでございますので、一つの制度的な限界といたしましては、国で申しますと七月三十一日で出納を完結するという会計法の規定がございます。これの範囲内で、ただいま申し上げました出納整理期間をどこで定めるかというのは、率直に申しまして技術的な問題ではなかろうかと思うわけでございます。  今回の改正は、御指摘がございましたように、五十三年度財源確保という意味合いがありましたのでことし踏み切れたわけでございますが、こういう制度にすることが合理的でないかといえば、そんなことばないと思うのでございまして、従来からも研究しておったわけでございますが、何分とも制度切りかえに伴う財政的影響が非常に大きいものでございますから、時期を見計らっていたといってよろしいかと思うのでございますが、ことしは、まさにその財政効果をねらったがゆえにことしお願いしているというふうに御理解いただきたいと思うのでございます。
  23. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 有価証券取引税の方について伺いたいと思います。  最初にいまの証券行政、こういうことについて伺っていきたいと思います。  いま一番の証券問題での、証券行政での問題は公社債市場の拡大、それと円滑な運営、こういうことが中心の課題になっていると思うわけでございますが、だから最初に、こういう問題の改善について政府側の考え方を伺っておきたいと思うんです。  今回の改正案では、この法律の第十条の第一種の甲、いわゆる税率のところでありますが、第一種の甲と第二種の甲についてのみ五〇%引き上げる、こういうことで乙の方はまるっきり見送ってしまったその理由、先ほど申し上げた公社債市場拡大の問題、円滑な運営というようなそういった条件を踏まえながらひとつ説明していただきたい。なぜそうしたか。
  24. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 公社債市場の拡充という面につきましても、政策的な考え方等につきましては証券局長からお答えいたすと思いますが、今回の改正で株券等の税率については負担の増加をお願いしながら公社債券の動きについては現行どおりということで御提案申しておりますのも、まさしく同様の趣旨に沿うものでございます。
  25. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまのは公社債市場の育成拡大という点だけの答弁だったのですが、性格的にもこれは違ったものだろうと思うんですね、株式と公社債の性格の相違、こういった点も一つには大きな名目になった理由じゃないかと思うんですけれども、これは今後どういうように市場の拡大を図っていくつもりか、これはひとつ証券局から伺いたいと思います。
  26. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 公社債市場を大きく分けますと、発行市場と流通市場の両面に分かれると思いますが、まず発行市場の面で申し上げますと、一つはやはり市場実勢に応じた発行条件を逐次そういう形で実施に移していくということでございましょうし、それからまた、市場のニーズに応じた債券を各種供給するという意味合いで発行条件の多様化ということを考えていくということが次に出てくる問題であろうかと思います。  それから流通市場の問題といたしましては、従来から次第にそういう形に進めてまいっておりますけれども、たとえば国債の流動化の付与あるいはそれの拡大といったような問題を通じまして、流通市場が、できるだけ市場の価格形成が円滑に行えるようにという形をとってまいる。そういうふうな方向で、たとえば現在はほぼ年間二百兆を超えるような取引の大きな規模に非常に成長してまいっておりますが、そういった方向を今後さらに着実に進めていくということであろうかというふうに考えております。
  27. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次は税率の引き上げ、ここまで引き上げたそれが適当であるという判断、なぜそのパーセンテージにしたかという判断をひとつ聞きたいんです。
  28. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 税率の引き上げにつきましては、関係局と十分議論をいたしましたわけでございますが、考えるべき要素といたしましては、前回引き上げ後の市場の状況がどうかということが一つ。もう一つは流通税としてはやはりおのずから限度がある、それはどの辺と考えるか。さらには今回の負担の引き上げ幅が市場に与える影響というものも考えてみなくてはならぬ。最後に国際的にいろいろな議論がある、そういう角度からサイドチェックしてみてどうかといういろんな点を考えたわけでございます。  まず、前回に引き上げをお願いしましたときには二倍の引き上げをお願いして実施に移ったわけでございますが、これは二十年来初めて引き上げたわけでございまして、これは格段に市場が拡大しておったという事実がございますが、今回は前回引き上げのころに比べてさほど市場が大きくなったという状況じゃございません。むしろ非常に厳しい財政事情のもとで、ひとつ有価証券取引をなすっている方々に実質的な負担増加をお願いしたい。前回とかなり発想が違うという面がございます。それから上げ率につきましては、最後に申t上げました国際的に資本取引の専門家あるいは税の専門家の間でいろいろ議論がかねてございまして、一応正式な勧告にはなっておりませんけれども、この種の税というのは大体取引額の〇・五%前後が妥当ではないか。もちろん国によっていろいろ事情はあろうが、〇・五%程度よりも高くするという必要があるにしても、ぎりぎり一%ぐらいというような性格の税ではないかというのが、一応OECDの中でのいろいろな方々の議論の集約であろうかと考えております。それを考えあれを考えますと、市場への影響等から見まして、前回の引き上げ幅と同じということでこの際負担の増加をお願いしてはどうかと、引き上げ幅が同じでございますので、結果としては上げ率は五割アップというふうになるわけでございます。
  29. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 どうも私は、これはいわゆるキャピタルゲイン課税に近づいているんじゃないかという感じから質問しているんですけれども、有価証券に関するキャピタルゲイン課税、これをすでに行っている国は何ヵ国かあると思うんですけれども、大体どんなふうな方向で課税しているか、ちょっと言っていただきたい。
  30. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 各国それぞれでございます。キャピタルゲインを課税し、なおかつ流通税を課税している国もございます。  わが国の場合は、かねてから個人の有価証券の譲渡益について原則非課税とし、特定の取引、買い占めでございますとか、一定条件のもとでの公開譲渡利益でございますとか、あるいは事業譲渡類似でございますとか、あるいはよく言われます継続的大量取引という意味での年間五十回かつ二十万株以上の取引ということをひろい上げて課税対象にしておりますが、これを全面的に総合課税の対象にすべきではないかという御議論がございます。政府税制調査会でも、方向としては全面的に総合課税にする方が所得税制としては望ましいということにほぼ意見の一致を見ておりますが、やはり現実にその課税が適正に執行される環境を整備しないままで全面的な総合課税に移ると、何と申しますか、正直者がばかをみるというような新しい不公平を生ずるおそれが多分にあるから、この問題は全面的に総合課税が望ましいということを腹に入れた上で段階的に課税の強化を図っていくというのが適当であろうということが多数意見でございまして、御承知の中期答申でもそのような答申がなされております。したがいまして、いま私どもが持っております宿題は、現実に実行可能なということを十分頭に置きながら、段階的に課税を強化するという方策を探りつつあるという状況でございます。
  31. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 今回の法律改正、それはいろんな理由があると思いますけれども、私は今回のは、いま徐々にという話が答申にあったように、キャピタルゲイン課税のワンステップというふうに見ていいのか、それとも単なる引き上げということだけなのか。その改正のねらいといいますか意図といいますか、そういうものをひとつ伺いたいと思うんです。
  32. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 今回の引き上げをお願いしております趣旨は、端的に申しまして、有価証券の取引の背後にある担税力というものに着目して、厳しい財政事情のもとでぜひ負担の増加をがまんしてほしいという意味での実質増税をお願いしておるというものでございます。税の性格といたしましては、私は有価証券取引税とキャピタルゲイン課税というものは別個のものだというふうに割り切って考えております。  と申しますのは、鈴木委員よく御承知でございますからごく簡単に申しますと、たとえば法人についてはキャピタルゲインは課税されておりますし、個人の場合でもキャピタルゲインがあっても、キャピタルロスになっていても流通税というものは負担していただくわけでございまして、やはり税としては違うものでございます。  ただ、現実の問題としてキャピタルゲイン課税の段階的強化と有価証券取引税の税率の引き上げを同じ時期に仮に行うといたしますと、やはりそれぞれが違う税でありながら市場に与える影響、個人投資家が株から逃げてしまいたいと思うような心理的影響という意味では同じような効果を持つということも否定できないかと思いますので、キャピタルゲインの課税の強化につきましては引き続き勉強を続けるということを考えておりますが、やはり同じ時期に両方ということは避ける方が現実的ではないかと考えまして、今回は有価証券取引税の税率引き上げだけを御提案申し上げている次第でございます。
  33. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 確かに答申には「有価証券取引税については、有価証券譲渡所得課税との関連、」云々ということを慎重に考慮してということがありますから、御答弁の趣旨はよくわかるんですけれども、いわゆる中期答申の中でもキャピタルゲイン課税の方向に、いわゆる先ほどの答弁にあった総合課税の方向にすることが望ましいということになっております。  それから、五十二年十月にそれが出ていながら今回のがそういうものとは切り離した形で出てきております。すでに、先ほどは答弁ありませんでしたけれども、各国でキャピタルゲインをやっているところもかなりあります。そういうことから見ると、この有価証券のキャピタルゲイン課税の方向になぜ進まないんだろうかということが疑問でならないわけですけれども、その辺もう一度聞いておきます。
  34. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 考え方として中期答申のような考え方をどうも妥当な線だと考えておりますが、それがありながらなぜ具体化できないかという点は、まあ率直に申し上げてその実効ある適正な執行ができるという環境整備とあわせて考えると、なかなかいますぐにいい案が出てこないと申し上げたらよろしいかと思います。現在私どもが段階的な課税強化の一つの方式として、いまの事業譲渡類似なり買い占めという規定が現実にうまく動いているかということを勉強するほかに、継続的大量取引という五十回、二十万株というもの、その考え方についてもう少し課税を強化する方向で具体的な改正ができないだろうかということをここ一年以上部内で勉強を続けておりますが、申しわけないんでございますけれども、まだ法律として御提案するほど具体的な結論を得ておりません。別途証券業協会にもごく非公式に、仮に具体的なものを考えるとすれば何か案が、これなら何とかなるというのはないだろうかという御相談もしておりますけれども、もう少し時間をいただきまして、現実に実行可能であり、新しい不公平を生まないような方式というものを何とか探り当ててみたいというふうに考えているわけでございます。
  35. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは証券の方から見て、実効ある環境整備というのがあれば、いまの答弁から実効ある環境整備というもの、こういうものが一つ欲しい。それからいま一つは、先ほどの五十回、二十万株というこの条件、これをどういうふうにすればいいかということの結論が出ていないという二つの話なんですけれども、実効ある環境整備というのはどういうふうに証券局としては見ていますか。
  36. 山内宏

    政府委員(山内宏君) まず一つは、いずれにいたしましても現状以上に負担が重くなるという話でございますから、そういった負担が重くなるという問題をどのように解決をしていくのか。現在の株式市場はすでにそれなりの前提条件によっての経済活動を営んでおるわけでございますから、それに対して非常に重大なる悪影響が及ぶというふうなことは、これはできるだけ避けてまいらなければならないわけでございますんで、そういった面からどういうふうに考えるかということがまず一つございます。  それから、その問題が仮に解決をしたといたしました場合に、具体的にしからば実行上課税当局が大筋において不公平の生じない課税態様が考え得るか、そのための環境が整備をされるかという問題でございますが、この点につきましては先ほど主税局長からも申し上げましたように、過去ほぼ二年ほどにわたりまして証券局並びに証券業界においてもいろいろそういう方向についての具体的な研究は続けております。ただ現在までのところ、これでいけば何とかなるということまでは到達をしていないという現状でございます。
  37. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 先ほど取引回数五十回、株数が五十円株を基準として二十万株、いずれの条件をも満たしたときに初めて課税対象となるということに現行はなっておるわけでありますけれども、非常に優遇されたものだろうというふうに思うんですね。どっちか一方満足したらいいんじゃないかという感じがあるんですけれども、そういう点にはどうなんですか、いままでの検討の中では。
  38. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) ただいまの法制は、考え方として継続的でありかつ大量な取引というふうに考えておりますので五十回かつ三十万株、こういうことになるんだろうと思うんです。それを単純に大量であればとにかく課税対象になるという考え方はひとつないだろうかということは、一つの研究のテーマに現になっております。ただそれがなかなか決め手がない。大量であるということだけで考えます場合に、いまの二十万株より相当大きな株数というような議論もありまして、それがまた現実問題としてそういうことで御提案すると、何だけしからぬということになりはしないかとか、いろいろがやがやと議論をしておる段階でございます。
  39. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは私の言うのは適当かどうかわかりませんけれども、少なくも片方だけの条件にはできないということであれば、取引回数五十回を二十五回にする、二十万株を十万株にしていく、こういうような基準の厳しさを求めるという両面から行くという手もあるわけですね。そういう点の御検討はないんですか。私どもその辺までするべきだということを党としても主張しているんですけれども、いかがですか。
  40. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) かねてから鈴木委員御所属の党からはそういう御意見があることも承っております。ほかにどうしても知恵がない場合に、五十回かつ二十万株というのをもう少し縮めるという考え方もないではないと思うんです。ただ、先ほど申し上げた実効あるやり方、かつ不公平が生じないようなやり方というときに、その一回とは何であるかということもまた非常にむずかしい問題でございまして、その辺をあわせて引き続き勉強をいたしたいと思います。
  41. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 有価証券取引税についての税制中期答申、五十二年十月、それを見るというと、いわゆる「有価証券譲渡所得課税との関連、資本市場に与える影響等をも慎重に考慮して、その負担水準を検討する必要があるとの意見があったが、現行の負担水準からみて、なおその引上げを検討する余地があると考える。」と、こうなっているわけです。この答申の背後には、現在の取引状況の中で個人株主とかあるいは個人投資の部分と機関投資とを比較すると、機関投資が拡大するということではないかというようにぼくら思います。特に最近の証券市場の特徴として、一面では設備投資が停滞しておりますから、その一面では企業の手元の流動性というものも高まる、そうなれば余ったお金をどこ持っていくか、その余剰資金が収益性を求めて公社債に流れていくといったような現象が出てくる。  最近のまた株の方の動きにもいろいろ動きがあるようですけれども、こういう点から考えると、この取引税の問題についても五〇%アップということでなく、もう少し高い担税能力があると現在では判断ができるんじゃないかというように思うんですけれども、というのは、片方の譲渡所得課税との関連ということは、譲渡所得課税の方が足踏みをしている状態なら片方の方をふやしてもいいんじゃないか。確かにキャピタルロスの問題もありますけれども、だけれどもそういうのをふやしてもいいんじゃないかと、これは裏からいけばとれるわけでございますが、その点はどうでございますか。
  42. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 幾つかお答えしなければならぬと思いますが、かねてから具体的に法案として衆議院に御提出になっていた法案、今回撤回されましたけれども、それでは大体三倍程度の引き上げというようなことになっておりましたし、そういう御意見があることを重々踏まえました上で、先ほどお答えしましたように、今回の上げ幅がどの程度が適当かということを議論いたしまして、私どもとしては今回は前回と同じ上げ幅というのがいろいろな角度から見て妥当であろうというふうに考えて御審議をお願いしておるわけでございます。  ただいまのお話の中の法人投資と申しますか、最近の金融情勢からして法人かなり株式市場なり証券市場に大きく入ってきているのではないかという点、これは私よりむしろ証券局長からお答えした方がいいのかもしれませんが、そのときどきの情勢で税率を大きく上げ下げするということは、必ずしもまた適当でないのかもしれないという気もいたします。
  43. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 補足的に申し上げますが、最近の株式市場の売り越し、買い越しを見てみますと、買い越しの大手は投資信託と金融機関でございます。それからそれ以外の関係者、つまり個人なり外人なりあるいは事業法人なり、こういったものがすべて売り越しという形になっております。
  44. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 今後のこの取引税、これは一体どういうのを理想的に大蔵省は考えていきたいのか、今後どういう方向を取引税にはとろうとしているのかをお伺いしたいのですが。
  45. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) これはやはり定率課税の流通税でございますので、取引価格が上がればそれに伴って負担も上がるという性格のものになっておりますから、やはり流通税としておのずから限界があるであろう。先ほど御披露いたしましたように、その国ごとの事情によっていろいろあり得るだろうと言いながら、やはりおおむね〇・五%程度が妥当ではないかというような国際的な議論も考えてみますと、やはり今回お願いしております増税が実現しますと〇・四荘%という水準になりますので、少なくとも当面ここしばらくはこれが妥当な水準ではないかと考えます。しかし、将来一切これを固定すべきものだということに言い切る自信もございませんけれども、やはりこの税の性質からしまして、今回引き上げ後の〇・四五%というのはおおむね妥当な水準までまいったのではないかと私としては考えております。
  46. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次に、これは議論になられたかと思いますけれども、いわゆる大量な国債発行のもとでの銀行の国債窓口販売の問題、これについては確かに金融界と証券界が真っ正面からどうしても対決する形になります。この銀行の国債の窓口販売の問題について伺いたいんですが、昨年十二月の都市銀行懇話会での要望がございました。そのときから、何か大蔵省は認める態度を示したことから一遍に火を噴いてきたということはいま事実でございますけれども、このねらいは、一つは国債の引き受け負担を軽くするということだろう、銀行自身が負担することを軽くしようということだろうと思いますけれども、国債をより安定的に発行させるための状況づくりにもなるという面もあると思うんです、一面には。そういう点で、しかし一方では証券界にとっては明らかにいままでの既得権の侵害になる。こういうことからなかなか認めていこうということはないと思うんですけれども、この点大蔵大臣、将来どういうふうにこれは考えていかれるつもりでございますか、これをお伺いしたいと思います。
  47. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 窓口販売ということが言われておりますが、窓口販売というものを、まず一体どういうものを定義としているのかということを考えてみますと、まず新発債の募集の取り扱い、新発債を窓口で売るというのが一つの窓口販売の形態でございますし、あるいはそれを売ったもののはね返り、新発債のはね返りを引き取る、それの買い取り、さらに進んでは既発債の窓口による売り出し、あるいはその買い取りというところまでが恐らく窓口販売ということで定義できるものだろうと思います。そのほか国債の売買の問題といたしましては、金融機関がいわゆるディーラーとして大口の国債の直取引を行うというのもその窓口販売の変形した大きな形態としてあろうかと思います。いま、さしあたり問題をしぼりまして、銀行が申し入れられたのは新発債の募集取り扱い並びに引き取り、既発債の窓口による売買ということのようでございますが、鈴木委員が御指摘になりましたように、銀行側といたしましては、将来国債の大量発行に伴いまして自分の保有する資産の中の国債の割合が非常に多くなる、このポートフォリオをどうするか、あるいはその国債の価格の上下によって銀行の収益に及ぼす影響は非常に多い、あるいはこれの流動化ができるかできないかということで将来の貸出需要にどう対応するかというような、いろんな経営上に非常に大きな意味を持ってまいる。そういう問題意識から、銀行とすれば個人消化の促進あるいは安定保有数への売買を通じて、あるいはまた銀行の引き受けた負担を軽減するというようなことから窓口販売をやりたいという御主張のようでございます。  一方証券界では、個人消化という問題は、かつて一〇%そこそこの消化であったものが、昨昭和五十二年度には二四、五%まで証券会社の販売努力によって個人消化ができておる。ですから、個人消化については現在の証券会社の販売網あるいは販売努力によってもう十分である。あるいはまた銀行で窓口の販売をされる場合には、間接金融機関としての銀行が、いわゆる貸し出しあるいは預金集めということの傍らとしてこれを行う場合には、事業法人等への押し込みの売りつけがあるんではないか。そうなった場合には、それがはね返って市場へ出てきた場合には市場の安定を害する、こういうことから証券界としては公社債市場のためにも望ましくないんだというような反対の御意見を述べられております。  一方、私ども国債発行あるいは国債管理政策を担当いたします大蔵省といたしましては、将来国債が安定的に保有をされると。これが個人であれ法人であれ、あるいはよし金融機関であれ、発行された国債が安定的に保有されることが望ましい。そうしてまた、公社債市場において国債価格の乱高下がないことが望ましいという観点からいたしますと、公社債市場の拡大と申しますか安定化のためには、公社債市場への参加者が多くなり、公社債市場への資本参加が多くなって、流動化した国債の受け皿として十分の機能を果たし得るという、そういう市場が望ましいわけでございまして、それら彼此勘案いたしました場合に、この際この窓口販売をどう扱うかということは、証券界、銀行界それぞれの御主張、あるいはその御主張をどう判断するか非常にむずかしい問題でございますので、私どもは現在この取り運びといたしましては、いましばらく私ども部内で慎重に検討さしていただいた上で何らかの結論を得たいということで、いま結論を出すことを急ぐという立場に立っておりません。  以上でございます。
  48. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 最後に、いまの答弁から、管理政策としては従来のかっこうから何か脱皮をしなきゃならないと思っているけれども急いではいないという、何か前向きなような後ろ向きなような答弁をいただいたんですけれども、実際は国債だけを特別扱いにするような時代はもう終わってくるだろう。そういう点から考えると、強引に利回りを低く抑えていったり、市中の金融機関に過大な負担を強いるというようなこともできないだろう。もうこれは管理政策それ自体を直さなきゃならないところにきているのは事実だろうとぼくは思うんです。その点で、いま急ぐんだか急がないんだかわからないような御答弁だったんですが、大臣、その点は私はどうしてもこの管理政策の見直しはやらなきゃならないということが一つと、いま一つは、その中で重要な問題は、やっぱり金利の自由化ということが最大の焦点だろうと、こう見ているんですけれども、この両点について御答弁をいただいて終わりたいと思います。
  49. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) まあ二点指摘されたわけでございますが、いまの国債の窓販の問題は、いま理財局長からそれ自身として持っておる問題を率直に述べたわけでございますが、これは委員指摘のごとく、一つは公社債市場のやはり拡大化あるいは安定化、流動化と、こういう公社債市場全体を通じての問題点が一つあることはお説のとおりだと思うのでございます。その点につきましてわれわれは鋭意努力しておるところでございまして、発行市場におきましてもまた流通市場におきましてもそれぞれの工夫をこらしておりますし、また流通市場における流通利回りをできるだけ発行市場の方にそのまま反映できる体制を整えておるところでございまして、その意味で非常に弾力化を図っているところでございます。  しかし金利の自由化という、学者が言うところの金利の自由化、これが一挙にできるかということになりますと、実は日本の金融構造の持つ一つのある種の限界がございまして、急にはいけないのであろうと思うのでございます。御承知のように、日本は、特に戦中戦後を通じましてほとんど間接金融に大部分よっているわけでございます。それと直接金融、直接金融の方の拡大が望ましいわけでございますけれども、急激にはなかなかまいらない。これもやはりおのずから市場が拡大することによりまして漸次移行せざるを得ないわけでございます。  ところで、間接金融の方から申しますと、御案内のようにやはりそこの金利の自由化、貸出金利の自由化ということは預金金利の自由化を前提にしなければできないことは当然なわけでございます。現に、いま預金金利につきましても漸次弾力化を図っているわけでございますが、これを一挙に自由化いたしますとこれは大変な話になるわけでございまして、資金はやはり、当然のことでございますけれども金利機能がフルに働くわけでございますから、まあ言いますれば大口預金の金利が高くなり、小口のやつが当然安くなってくることはもう当然でございます。それから小口の貸し出しが金利との関係で当然上がってまいりますから、いまの消費者ローンとか住宅ローンであるとか、中小企業金融の貸出金利がこれはもう上がってくることは当然なわけでございます。そのことが金利の自由化の名のもとに許されるかどうか、これはかなりの問題を含むのではないか。さらには、そういうことをやりますといま金融機構の再編成にまでつながってくる問題でございまして、中小企業の分野を受け持っておるいまの中小金融機関、こういったものの統廃合の問題が起きまして、急激にやりますとやはり信用秩序の、信用不安につながってくるおそれがあるわけでございますので、そういう点を十分にらみ合いながらこの問題を解決してまいりたいと、かように思っているわけでございまして、しかし委員のおっしゃる、まあ自由化と申しますか弾力化と申しますか、この方向は賛成でございますし、それからまた公社債市場を拡大して、できるだけ流通市場の条件を発行市場に移していく、じみではありますけれどもそういう施策をこの一、二年非常に急速に努力をいたしているところでございます。そういう問題と相関連しながら、先ほど理財局長が申しました窓販の問題をやってみたい。現在試行的に、どういうことになるかまあいろんな試みをしておることは委員御案内のとおりでございます。そういうことも踏まえながら、一体今後どのぐらいのスピードで、そしてまたどれぐらいの量で、この問題を解決していくか、そのようないま試行錯誤をやっておるところでございます。
  50. 渡辺武

    ○渡辺武君 土地税制について伺いたいと思います。  今度の改正で、法人の供給する宅地に限って適正利益率要件をなくして、かわって適正価格要件にしたわけですけれども、いままでの適正利益率要件の場合ですと、法人が土地を売る場合に、その土地の取得費に造成費、それから販売費及び一般管理費、これを加えたものに二七%の適正利益率を掛けると。その二七%の中には支払い利子と利潤が含まれておるという形になっていて、その範囲の価格で販売すればこれは優良宅地というふうに見なして、それを超えた場合には税の重課が行われるという形になっておったと思うんですが、今回の改正でこの適正利益率要件をなくして適正価格で売ればよいと、重課されないということになったわけですね。そうなった場合に、従来二七%という枠のあった支払い利息、それから利潤ですね、二七%以上でも適正価格の範囲ならば土地の重課は免れられるということになるわけですね。
  51. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) おっしゃるとおりでございまして、仮説の例で申し上げた方がかえっておわかりになりやすいかと思いますが、たとえば平米五万円が適正価格であるというときに、非常に安く仕入れてあったので適正利益率ぎりぎりで計算すると平米四万円になる。しかし、土地利用の方から言えばここは五万円で売ってもいいし、土地を買いたい人には五万円で渡してもいいんだとなっておるときに、四万円で線が引かれてしまうから、五万円で売ると法人税のほかに二〇%の租税を負担しなければならない。それを今回の改正では、五万円で売るということであればそれは通常の法人税だけでよろしいという結果になります。
  52. 渡辺武

    ○渡辺武君 この改正が宅地の供給を促進するためだというふうにうたい文句でうたわれているわけですけれども、そうしますと、適正価格要件に変えることによって宅地の供給が促進されると、その理由はどこにあるんですか。
  53. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 具体的な計数は、建設省参っておるかと思いますので、そちらからお答えした方がいいかと思いますが、考え方としましては、先ほども例示でちょっと申し上げましたように、素地として非常に安く手に入ったから、適正利益率で計算すると公示価格以下になる。しかし、適正価格で売ってもいいと言われているのに適正価格で売ると二〇%法人税のほかに負担しなければならないのでちょっと売る気がしないという種類の土地が出てくるかという、そういう問題でございます。計数的にどういうふうに見ておるかは建設省からお答えした方がいいと思います。
  54. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、不動産会社にも大中小いろいろあると思うんですが、特に大手の場合ですと、比較的安く土地を手に入れて造成費も低い。ところが、それに二七%掛けて上乗せした価格と現在の適正価格を比べてみると適正価格の方が高いと。そこで、適正価格の方に引き上げて売ってもいいということになれば宅地の供給が促進される。これは大手不動産会社にとっては非常にありがたいことになるんじゃないですかな、どうですか。
  55. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) その辺私ども部内で議論をしてみましたのですが、どうも実際は、いわゆる大手と申しますのはかなり多種多様のものを持っておりまして、いわゆるグルーピングというものがいま税法上認められておりますものですから、グルーピングを使って、つまり非常に適正利益率が高くなる、あるいは安く歩どまる、一括して当該期内に造成して売り出すということができ、中小はそれができないということの方が実態に近いようでございまして、むしろ今回このことによっていままでなかなか売る気がしなかったものが売れるというのはむしろ中小の方なんだというふうに説明を聞いております。
  56. 渡辺武

    ○渡辺武君 それはちょっとどうですかね。私、不動産関係に詳しい人にいろいろ事情聞いてみましたが、むしろこれは大手の方にはるかに有利だ、もう言下にそういうことを言っていました。  なお、別の側面から伺いますけれども、大手不動産会社を初めとする大企業、これは普通の製造会社から商社に至るまで、あの昭和四十七、八、九年にわたる土地の買い占め、これを猛烈にやって当時の地価暴騰の根源になったと思うのですよ。ところが、この地価の暴騰のために庶民はもう宅地に手が出なくなった。ですから、不況とも相まちまして宅地の供給が非常に停滞したというのがその後の事態だったと思うのですね。  さて、従来のこの適正利益率の方式ですと、大体二七%というのは三年間というふうに期限がありますね。当時から数えますともう四、五年たっているわけですね。聞いてみますと、仮に当時六%の金利で銀行から融資を受けて五年間たったとすれば金利だけでも三〇%になっている、そういうことでしょう。それに適正利潤、まあ大体不動産会社は一五%ぐらい欲しいということだそうです。これを加えたら四五%というものを掛けないともうけが出ないという状態にいまあるというのですね。したがって、この二七%というのが邪魔になってしようがない。もちろん三年超えれば若干また上乗せできるという措置にもなっていますけれども、それではとても間に合わぬということですな。  それで、今回この適正利益率の要件を外して、そうして適正価格で販売するということにすれば、二七%を超えたものですね、これで売っても適正価格の範囲内ならば土地の重課を免れるということになるという話なんですね。私はやはりあの地価暴騰をあおった仕掛け人である大手不動産会社を初めとしての大法人の土地の買い占め、この責任を免罪して、宅地供給ということを口実として、彼らにもうこげついている金利の負担分、それからまた適正な利益、適正と彼らが言っているのですけれどもね、これを与えるということが今度の措置から必然的に生まれてくる結果じゃなかろうかと思いますが、どうですか。
  57. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 適正利益率の計算というのは、渡辺委員いま御質問の中でおっしゃいましたように、いわゆる倍率係数が三を超えるときには調整して加算できるということになっておりますので、年数がたってきたから二七で満杯になってしまったのでそこを助けるということにはならないと思います、つまり最高四七まで加算ができるようになっておりますから。  それからもう一つ、ちょっといやな言葉でございますが、一億総不動産屡と言われるような買い占めをした、それが地価を暴騰させて庶民住宅に手が届かないようにさせてしまったと、そういう強い批判があることは私ども重々承知いたしておりますが、少なくとも量的に申しますと、あのときに異常な買いあさりが起こりましたのは、調整区域なり市街化区域の方が圧倒的に多いように思います。調整区域なり市街化区域にあります土地というのは、どうやってみましても適用除外になりようがない土地でございまして、その場合はもともと利益率要件というのはなくて、幾らであれもうけがあればそれは必ず法人税のほかに二〇%出してくださいと、そこのところは全く変えていないわけです。したがいまして、今回改正の対象になりますのは、やはり開発許可をもらって優良宅地という認定をもらって、しかも公募して、それで販売価格が適正価格以内であるという場合でございますので、私どもとしてはこれは買い占め企業を救済するための措置とならないように一番きめ細かい議論をした結果御提案しておるつもりでございます。
  58. 渡辺武

    ○渡辺武君 いや、そうおっしゃっても、私どうしても実情からして納得できないですね。それは不動産業界の実情に詳しい人に一度私は聞いてみてほしいと思うのですよ。三年の期間を経て若干の上乗せ措置できるけれども、これだけじゃとてもしようがないと言うのですね。だから、ここのところ取っ払ってしまって適正価格で売る。そうするといままでたくさんかさんでいた利子負担、それから特別土地保有税、それにさらにプラスしてもうけも出てくるんだと、それをやってくれれば土地の供給もできるんだと、こういうことを盛んに強調しているのですよ。ですから、その辺が私は今回の措置の本質の一つになるのじゃないかと思う。これはもう大変ですよ。新聞なんかの論調でも、あの当時の賢い占めをやった元凶を免罪するつもりかという厳しい批判があったのを皆さん御存じでしょう。大変な措置だと思うのです。  私、それに加えてもう、点申したいと思うのですけれども、最近銀行の不動産融資ですね、これが上向き始めてきていると、これは二月二十八日のある新聞に出ていたものですけれども、「全国銀行の昨年十−十二月の不動産業向け融資は期中千九百六十八億円増加した。一年前の五十一年十—十二月は不動産融資がどん底だった時期だが、これに比べると、三・六倍という急増ぶりである。この結果、昨年末の融資残高は七兆九千四百二十七億円に達し」たと、こう言っているんですね。七兆九千億円と、八兆円近い融資が全国銀行から不動産業界に向けて出されている。金利だけでも大変ですよ。実情を聞いてみますと、不動産会社は土地を流動化することができない、抱え込んだままだと、金利の支払いも困っている、だから金利の支払い時期にくると手形で払った形にしておいて、銀行は手形を持っているだけだと、こう言うんです。ところが、今回の措置で適正価格の範囲内ならばどのくらいたくさんの金利負担も、これは売れれば流動化するという形になるわけですね、二七%の枠は取っ払われたわけですから。そうしますと、これは銀行にとってもこげついていたこの融資、これの回収だけではなく金利分も回収できるという条件になってくる。いま銀行があちらこちらの大手の会社の倒産でかなりいろいろ問題が起こってきていると。そうしてまた、貸出金利と預金金利の関係の問題もあって、いままでほどもうけも出てないんだという話を私聞きます。事実かどうかは今後調べてみたいと思うのですけれども。そういう事態で、銀行の窮状を救済するということも一つのねらいになっているのじゃないか、その点どう思いますか。
  59. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) なかなか売れない土地を抱えてしまって、金利負担がだんだんふえてきて、その分がまた新しい債務になっておるという実情がかなりあるだろうということは私も素人なりによくわかります。ただ、先ほども申し上げましたように、今回の改正は素地をそのまま転売するような場合は全く関係ないわけでございまして、ちゃんとそれなりの造成費用をかけて優良宅地にして開発許可をもらって公募して売る、その場合に手に入れられる消費者の側を考えてみましても、それは適正価格以下でしか売らさないわけでございますから、その両方考えますと、金利が払えなくて困っている土地を売って助けるための措置というふうにおっしゃるのはやや行き過ぎではないだろうか、先ほど申し上げたように、量的には圧倒的に調整地域なり市街化地域の方が大きいのではないんでございましょうか、そういうところは今回の改正は全く無縁なわけでございます。
  60. 渡辺武

    ○渡辺武君 国土庁からおいでいただいておりますので、適正価格ですね、これはどんなふうにして決められるものなのか、簡単に、簡潔にひとつ御説明いただきたい。
  61. 佐藤和男

    説明員(佐藤和男君) 今回の土地の法人譲渡益重課制度の改正に伴います適正利益率を適正価格に置きかえるという内容でございますが、これは一言で申せば国土利用計画法による適正価格におきかえるということでございまして、その国土利用計画法におきます適正価格の判断は、同法の中で地価公示価格を基準にして知事が判断するということになっております。
  62. 渡辺武

    ○渡辺武君 じゃあ、その地価公示価格ですね、これはどんなふうにして決められるのですか。
  63. 佐藤和男

    説明員(佐藤和男君) 地価公示価格は、地価公示法におきまして判断の基準が定まってございまして、まず一つは、標準地の近傍類地における数多くの取引事例のうち、特殊な買い進み等の事情を排除した取引価格を基礎といたします。かつ、それに土地の収益から算定した価格及び土地の造成原価という三つの要素を織り込んで土地鑑定委員会において正常な価格として判定するものでございます。
  64. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、投機的な地価の急激な値上がりというのはある程度これで、適正価格で抑えられるというと語弊がありますけれども、下がることになるわけですが、しかし、実勢として近傍類地の価格が上がったとか、あるいは土地の造成費のコストが高くなったとか、それからまた利益還元方式でやった場合の価格が上がらざるを得なくなっているという、そういう実勢ですね。実勢が上がれば公示価格もそれを追認するという形にならざるを得ないと思うが、どうですか。
  65. 佐藤和男

    説明員(佐藤和男君) 先生の御指摘のいわゆる実勢という言葉の意味にかかる問題だろうと思いますが、いわば通常実勢と言われておりますのは、市場において一般の不動産業者が土地の売買を仲介いたします際に呼び値として言われるものを通常実勢と言われてございまして、いわばやや投機的な含みがその経済情勢に応じて生ずる場合にはそういうものを織り込んだものが通常実勢価格と言われておるものでございますが、先ほど御説明しましたように、地価公示価格におきましては、取引事例におきましてもいわば投機性を帯びた取引事例等については景気事情を判断して排除するというようなことを行っておりますのと、それからいまほど申しました三つの面からの各要素を取り込んで土地鑑定委員会で判断するということでございますので、単に実勢の追認ということにはならないものと考えております。
  66. 渡辺武

    ○渡辺武君 今度の地方税改正で特別土地保有税ですね、これについては建物とか構築物などの恒久的なもののある敷地、これについては課税対象から除かれるということになったと思うけれども、そうでしょうか、簡潔に。
  67. 吉住俊彦

    説明員(吉住俊彦君) そのとおりでございます。
  68. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、もう時間がないので申し上げざるを得ないんですが、その適正価格というのが地価公示価格に連動している、その地価公示価格がそのまま追認するという意味ではないのですけれども、いまの御説明聞きますと、やはり実勢に応じて上がらざるを得ないような仕組みになっているわけですよね。最近の地価公示価格の動きを見てみますと、やっぱり地価の実勢がずっと上がっているときは公示価格も急激に上がって、実勢が下がっているときはやはり下がって、最近また上がり始めたと、こういう変動もやはりそのことを反映していると見なければならぬと思うのですね。この実勢をつくるものはだれなのか。私はやはり大手不動産会社、これが一番実勢をつくるしで大きな役割りを演じていると思うのですね。  この赤坂の辺の実情聞いてみますと、いま実勢価格は地価公示価格の約二倍だというのですね。それから市街化区域及び市街化調整区域、これは公示価格よりも実勢の方がほんのちょっと上がっているくらいだと、こういうのです。よく赤坂辺の動きを聞いてみますと、そうしますと特別街区に指定してもらって、そうしていままで建てられなかったところに大きなマンションを建てる。それを建てる場合に、さっきあなたが言いました、たくさんあっちこっちから土地を買い集めてやるんだと、その土地を買い集めてやる場合に、一番最後までがんばって地価が一番高かった、そこの価格がその土地全体の価格に評価されるという形になるというのですね。だから結局それが実勢価格なんです、最高価格が。だんだんとそういう方向に、傾向的にはそうなると私は思う。だからその公示価格に連動した適正価格の範囲内で売れば土地重課は免れるといっても、その範囲そのものがだんだん上がっていく。そういうことに私はならざるを得ないと思う。これはだから大手不動産会社を救済する、銀行を救済するだけでなくて、庶民にとってみれば、それは昔のような急激な土地の値上がりではないけれども、しかしじりじり地価が上がる。その上がった地価で土地を買わされるということにならざるを得ないと思うのです。これは大変なことですよ。  それで、ここに私昨年の十一月三十日号、不動産経済研究所の日刊不動産経済通信特集、特集号というのがあります。ここで三井不動産の会長の江戸さんがなかなかおもしろいことを言っているのです。時間がないから一言だけ言いますが、とにかく土地重課制度なんていうのは撤廃してしまえ、それがわれわれの望みだと、こういうことを言っている。これはちょっといまの力が、政治的な力関係で無理だから、私は今回のような措置にしたというふうに見ざるを得ない。同時に江戸さんは言っているのです。特別土地保有税、これは不合理千万な税制だと、こういうことなんです。いまお話しのあった、つまり耐久物を建てた土地、いままでは特別土地保有税がかかっていたけれども、これからはかからない。もし大手の不動産会社がここにマンションをつくった。その場合は、もうこれからは特別土地保有税はかからないのですよ。一方で土地重課ですね、これがかからない枠、これがぐっと広がって、その中でも金利も払えれば十分な利益も上げられるという条件をつくってやり、他方では特別土地保有税、これもかからないようにしてやる。まさに大手の不動産会社の土地買い占めそのものをいまここであなた方は免罪しようとしている。彼らを救済しようとしている。そう言わざるを得ないと思うのです。大臣こんな税制国民は大変強い批判を持っていますが、どう思われますか。
  69. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) この問題についてはいま渡辺委員指摘されたような、ようななんですけれども、そういう御意見がたくさんありまして、しかし一方におきまして、土地供給を促進しないところにやはり地価を上げていくと、需給の関係と両方の議論があったわけでございます。そこで、いまの土地の需給の状況をかんがみまして、かつての買い占めた人間に国民が納得しないような不合理な利益を与えない範囲で、できるだけ土地の供給を促進しようというのが今度の恐らく改正になったと思うのでございます。  土地の公示価格、私が承知しておるのでは、先般公示価格の改正が行われましたけれども、昨年に比べて二・七%ぐらいの値上がりではなかったか。そうすると、いわゆる適正価格というのも公示価格を基準にしてやるわけでございますから、ですからおっしゃるような御心配があるのかないのか、私はやや疑問に思うわけでございます。  いずれにいたしましても、今度の土地税制に関する問題は、かつての買いあさりをやった人間に不当な利益をあげないで、そして土地の供給を含めまして、いまの住宅問題に多少でもプラスにしたい。これは住宅投資によるところの経済の成長かなり期待しているところでございますので、そういうちょうど妥協点のところで折り合った税制であると、かように理解しておるところでございます。
  70. 中村利次

    ○中村利次君 有価証券譲渡益に対する課税の問題にしても、また租税特別措置にしても、これは特に租税特別措置なんかは、いまや政策目的の有無にかかわらず、政治判断として、やっぱり正しい是正がなかなかできないというのが私はずばり言って現状だと思うんですね。ところが毎々申し上げますように、五十三年度予算政府の言葉をかりると臨時異例の措置をおとりになっているわけなんです。また五十四年度以降についても、これは見通しとして、とてもじゃないけれども歳入歳出についてよほどの決意を持ってやらなければ、これは日本の財政というものは決定的な危機を迎えておる。まあ銭、金目の問題としては特別措置の整理是正というのは、国の財政の上からいけば金目の問題としてはそれほど決定的なものは確かに現状ではないだろうと思いますけれども、やっぱりいろいろの議論があって、消費税か直接税かという議論はあっても、増税をやらなければ台所は持たないんじゃないかという議論がすでにもう具体的にあるわけですから、その前提としての税制の問題というのは、これはやっぱり決定的な課題だと思うのですよ。  そうなりますと、私は非常に乱暴な提案のように聞こえるかもしれませんが、どうですか大臣、特別措置なんか全部白紙にして、どうしてもやっぱりあるものをなかなか撤廃しよう是正をしようとすれば、いわゆるまあいろんな何かによって政治判断ができちゃうのですね、伴っちゃう。ですからこの際白紙にして、そしてそこから改めて政策目的上どうしてもこれは必要であるというものを検討する。いわゆる逆から租税特別措置についての見直しをやるのも一つ方法かと思いますが、いかがですか、そういうことを検討される用意はありませんか。
  71. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) 委員のおっしゃるのは一つの発想であると思うのでございます。実は私たちがやっておりますのは、ややそれに近い考えでいまやっていることを御理解願いたいのでございます。三年間にわたりまして、ことしはちょうど三年目でございますけれども、企業関係のものは本当に根本から洗い直すつもりでやっておるのでございます。問題はその評価の問題であろうと思いますが、委員のおっしゃったのにやや近い考えでいま進めていることを御理解願いたいと思います。
  72. 中村利次

    ○中村利次君 大臣、近くないんですよ、近いと思いません。たとえば社会保険診療報酬に対する特別措置、これは政府の税調も、五十三年度でもしこれを是正しなければ国民の政治に対する不信感がつのるんだという、そういうきわめて強い表現まで用いて税の専門家が是正をしなさいと言っている、これはもうかなりの決意で。ところがそれができない。ということは、これはやっぱり政治判断以外に何にもないでしょう。そしてこの間の本会議のあれでは、福田総理は、これは五十四年度も——まあ衆議院では附帯決議までつけて五十四年度には実施するんだというのが院の意思になっておるにもかかわらず、それを受けた政府は、自由民主党がその気になって議員立法をする段取りで事を運んでおりますという逃げを打たなければならないほど政治判断が非常にむずかしい、このままいきますとまたこれはどうなるかということになるんです。  また、利子・配当の総合課税の問題についても、あるいは先ほどからの質疑等を伺っておりましても、有価証券取引税あるいは譲渡差益の取り扱いの問題についても、主税局長はやっぱりこれは方向としてはそうやるんだけれども、しかし下手に拙速をとると新たな不公平を招くことになると。やはり私はこれは、専門家としてはそうお考えになっていないと思うんですよ。これば相当に政治判断が加わっておると思うんですね。私は新たな小公正が起きるはずはないと思うんです。いまだって一〇〇%捕捉、把握されてまる裸なのは勤労所得だけじゃないですか。だからクロヨンだとかトーゴーサンというまことにけしからぬそういう言葉が出るくらいいまの税制そのものには、一〇〇%とらえられて、国際的な税負担率からいけば低いか高いかは別にして、重税感を常に味わっておる者もおるし、あるいは生活実態比較してみて、勤労所得者よりもかなり所得は上であろうと思う人たちが、そういう世帯が実際の税負担は非常に軽いという、そういうのがあるわけですよね。ですから、そういうものをそのまま政治判断に負けて放置をして五十四年度以降の財政を取り扱おうとするのはまことにこれは重大な問題だと思うんですよ。ですから、これは質問になるようなならないようなあれですけれども、私は問題の焦点はすべてここにある、だから税の専門家なんというものは、私は局長だって審議官だって、さっきのあれなんか聞いていますと、この五十三年度予算はまだ成立をしていないんだから、したがってこれはやっぱり、このりっぱな執行によっても景気の回復だって民間設備投資につなぐことだってこれはまあ非常に困難であります、実質七%の成長だって困難でありますということを言えない。全くばかげた事実の見通しを無視したような、五十三年度予算を成立させていただいてその執行によって七%の実質成長は可能であると考えていますなんて、頭のいい大蔵省の役人がそんなことを知らないはずはないんですよ。そういう虚偽に満ちた議論をやらなければならない国会のあり方というものはこれは私は改めなければ、それこそ国民の政治不信をつのらせる一方だと思うんですよ。  そういう意味でひとつ大臣、これは政治的な課題ですから、思い切ったゆるふんでない対策というものが必要だと思いますけれども、これは何もこういう歳入の上での租税特別措置あるいは議題になっておる有価証券取引税あるいは譲渡益の取り扱いの問題だけではなくて、景気対策、円筒対策を含めて決意をお伺いして、どうせもう時間ないんですから終わりますけれどもね。
  73. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) 私は、さっき同じような気持ちでやっておりますというのは、企業関係税制について申し上げたわけでございます。おっしゃるように、個人所得税につきましては幾多の問題が出ております。ただ、いま御指摘になりました多分利子・配当の総合課税、それから有価証券の特に株のキャピタルゲインのお話だと思いますが、これは政治判断でやっているわけではございません。るる述べましたように、この問題は下手に手をつけますと大変な不公平が出るだけでなくて、大減収になることはもう確実でございます。それはわれわれは長いこと税制に携わっておりますからよく承知しておるのでございまして、実効のある適正な課税ができるかどうかということでいま鋭意詰めているところでございます。  それから、社会保険診療報酬に対する課税、この適正化の問題でございます。この問題は長年の懸案でございますが、率直に申し上げて政府が提案できなかったというのは、実はわが自民党と政府の中でいろいろやっているのでございますけれども、これが発生した経緯等がございまして、なかなか容易に合意が得らられず、今日まで提案できなかったこと、きわめて遺憾としておるのでございます。このたび自由民主党においても決意を新たにしまして、自由民主党の責任において、現在の診療報酬課税の特例は五十三年度限りにするということを党議で決定いたしているわけでございます。もちろん、諸般の問題がありますから、それらの問題についてはあわせ解決するということを決定しておるのでございまして、私は今度の党の決断を高く評価しているのでございます。したがいまして、政府といたしましても、この党の決断並びに今後の作業と同時並行にいたしましてりっぱな改正案をつくりたいと、かように決意いたしているところでございます。その点を御理解賜わりたいと思うのでございます。  それから、七%の問題でございますが、これはもう予算委員会におきましても、至るところで議論があるわけでございますが、率直に申しまして、ことし五・三%程度成長の線は大体達成できるやに見えるわけでございます。大体五%台には乗せるだろうと思いますので、私は、いろんな問題がありますけれども、今度の予算の編成と、それに今後における実行をもってすれば七%の成長は達成できるのではないか、またぜひ達成させなければならぬ、このように考えておるわけでございまして、この間の所見が違う点をきわめて遺憾に思っているところでございます。いずれにいたしましても、政府は全力を上げまして、いま委員が御指摘になりましたことにならないように最善の努力を尽くしてまいるつもりでございます。
  74. 野末陳平

    ○野末陳平君 提案中のこの租特改正案に、いまも中村委員質疑にありましたけれども、例のお医者さんの優遇税制が入ってないのはどうも理解に苦しむんですけれども、先日検査院が発表されました平均経費率五二%という数字なんですが、あれに対して専門のお医者さんたちがいろいろと反論をしておりますので、その点を含めて再確認したいと思います。  そこで、まず反論の一つは、あの数字は歯医者さんを含めていると、歯医者さんは経費率が低いから歯医者さんを含めて計算したんでは正しい実態の反映にならないというようなことをお医者さんが言っているわけですが、会計検査院にお伺いしますが、歯医者さんをはずした場合の経費率というのはどういう数字になるかと。
  75. 前田泰男

    説明員(前田泰男君) 検査報告に発表いたしましたのは五三%という数字でございますが、歯科を含めております。ただ、この場合端数を一応四捨五入いたしましたんで、厳密に申し上げますと、検査報告に掲げました五二%は五一・七六%でございます。それで、歯科のお医者を除外いたしまして計算をいたしますと五二・二一という数字が出てまいりまして、その差が約〇・四%と、こういうことになろうかと思います。
  76. 野末陳平

    ○野末陳平君 次には、やはり検査院の五二という平均経費率はこれは所得一千万以上の高額所得のお医者さんのみが対象であって、所得一千万以上の、いわゆるお医者さんの言う零細開業医ですけれども、零細かどうか知りませんけれども、零細開業医を調査しなければ正しくて実態を反映しないと、こういうふうに言うわけですがね。  そこで、一千万円以下のお医者さんが経費はどれほどかかっているかそれはわかりませんけれども、大蔵省の方は去年の十月ですか、この委員会で、大蔵省の調査によるとやはり五二%程度というふうなことを答えているわけですね。そこで、この大蔵省の答えた五二という数字が検査院と同じく所得一千万以上というようないわば特定の所得階層について調査した結果なのか、それともどうなのか、その辺を答えてください。
  77. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 私どもが調査いたしておりますのは、特定の所得階層だけを取り上げたものではございません。
  78. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしますと、検査院の発表とあわせて考えますに、所得一千万以下とか以上とかいうことなしに、要するに引っくるめまして、特例の七二%の適用を受けた開業医に関しては平均経費率が五二%ですると、そういうふうに理解していいわけですね。
  79. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 私どもとしましては、おおむね五二%程度であると御理解いただいて結構だと思います。問題は、人ごとに科目ごとに非常にばらついておるというところに矛盾がございます。
  80. 野末陳平

    ○野末陳平君 そのばらつきなどを一律七二ということで控除することに、必要経費として認めることに問題があると思うんですけれども、それからまだこういう医師会の反論もあるんですね。これは新聞広告などによるアピールなんですが、要するにすべての開業医がこの特例によって経済的優遇を受けているわけじゃないんだと、五二%なんと言うけれども必要経費七二%以上かかっていて、ここからが新聞広告にはっきり書いてあるところですが、保険の全収入の二八%に課税するというのはむしろ多いと、こうなってんですがね、どうも医師会がよくわかってないんじゃないかとも思いますけれども、とりあえず検査院に聞きますが、確かにそちらがお出しになった数字はこの適用を受けていないお医者さんもかなりいたわけで、お調べになった五千三百七十二人のうちの二九%が非適用者ということになっておりますね。ですから、この特例の適用を受けていないお医者さんの経費率はどの程度であるか、これを具体的に答えてください。
  81. 前田泰男

    説明員(前田泰男君) 御指摘のございました一千五百五十三人につきましては検査報告には掲記してなかったわけでございまするけれども、これにつきましても別途調査いたしました結果、七二%台から一〇〇%を超えるものまでかなりばらついておりまして、この一千五百五十三人、七二%を超しました一千五百五十三人の方々だけの平均をとりますと約九〇%と、こういうことになっております。
  82. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうしますと、この非適用者は当然特例の恩恵にあずかっていないわけですけれども、平均でいきますとこの九〇%必要経費がかかっているというお医者さんは、社保収入に関してですけれども、これは大蔵省に聞くんですけれども、当然これはその実際の経費率がそのまま認められたと、まあ申告を受け付けてもらえて。その点においては他の申告所得者と同じであると、そういうことですよね。
  83. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) おっしゃるとおりでございます。
  84. 野末陳平

    ○野末陳平君 そうなりますと、やはりこれはお医者さんの方が間違っているんじゃないかと思うんですけれども、保険の全収入の二八%課税なんということは、こればちょっと誤解を招く表現だと思うんですね。要するに七二%以上かかっている医者は現実にいますね。いますけれども、その人たちは特例とは関係なく実際の経費率を認めてもらっているというわけでしょう。この七二%が問題なのは、この特例を受けているお医者さんたちに関してで、このお医者さんたちは経費率は平均で言えば五二であるが、かなりばらつきがあるけれども、まあ五二であるということですから、どうなんですか、改めて、くどいようですけれども、要するにこの平均経費率五二%を中心にこの医師優遇税制を問題、議論にするとき、七二以上かかっているお医者さんの方は全然範囲外であってこれは無関係と、こういうふうに見てちっとも差し支えないわけですよね。そうでしょう。
  85. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 制度の実態、またその制度が実際どういうふうな特典となって働いておるかということを分析いたしますときには、ただいま野末委員のおっしゃいましたように、この制度を利用している人が、ばらつきがあることに最大の問題がございますけれども、平均してみれば法定率よりもかなり低いというところに最大の問題があるという点はおっしゃるとおりでございます。
  86. 野末陳平

    ○野末陳平君 そこで、やはり検査院の発表した五二という数字は、いわば大蔵省の前回のここでの答弁も含めましてほぼ定着しているものと考えているんですが、大蔵大臣に最後にお聞きしますが、以上三点についてそちらでお答えになったことは大蔵大臣のお答えと考えていいわけですね。
  87. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) さようでございます。
  88. 野末陳平

    ○野末陳平君 そこで、大蔵大臣としては、先ほどのお答えにもありましたけれども、自民党が五十三年限りとするというようなことで議員立法を出すような動きを先ほどお触れになりましたが、大蔵大臣としてはどうですか、五十三年限りとしてよろしいと、そうすべきだということで理解していいですか。
  89. 村山達雄

    ○国務大臣(村山達雄君) さように考えてもらりて結構でございますし、またそのことを願っているわけでございます。
  90. 野末陳平

    ○野末陳平君 終わりです。
  91. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 午前中の質疑はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。    午後零時二十九分休憩      —————・—————    午後二時五分開会
  92. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  休憩前に引き続き、有価証券取引税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  93. 福間知之

    ○福間知之君 総理にお尋ねをしたいと思います。  まず成田空港の問題に関しまして、すでに御承知のとおり、過激派の法を無視した暴挙についてはもちろん許すことはできません。しかし、彼らがああいう行動をとるに至ったのは一体なぜなのか、なぜ彼らをそうさせたのかということを総理はどのようにお考えでしょう。  十一年余前に空港設置の方針が決まり、ずいぶん長年月この問題は国内的あるいは国際的にも注目を浴びてまいったわけでありますが、私は、今日までに現地の農民あるいは関係各位の理解なり納得なり、あるいはまたそういうふうに至った協力の態度というものを十全に取りつけることに失敗があったのじゃないのか。そういう反省がなければ、今後といえども私は現地の農民たちの学生に対する一定の期待なり、あるいはまたふんまんのやる方ない気持ちを学生に托すという、そういう気持ちが今後といえども背量的に持続していく、そして一向に事態の円満な解決というものにつながらない、そのように考えますが、総理はいかがお考えでしょう。
  94. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 成田空港、実は三十日開港式をやると、こういうことで準備万端整っておったんです。そのやさき、一昨日ああいう事態が起こりまして開港ができない、こういうことになって、これはもう本当に残念です。国際社会に対しましても申しわけないし、またとにかく国民に対しましても申しわけない。  いまどう反省しておるかというお話ですが、政府としてはやるべきことはやった。まあしかし、これは政府も神様じゃありませんから、それはこれからどうするか、これは大いに反省もし、やっていかなけりゃならぬ。ただ、どろぼうにも三分の理、こういうことがありますが、三分の理があるからああいう過激派の行動はいいんだと、こういうわけにはまいりません。法の秩序、これに対しましては、これは今後ともこれを守り抜くかたい決意を持ってやっていきたい、このように考えます。
  95. 福間知之

    ○福間知之君 法の秩序を守るために不退転の決意でやるということはもちろん必要であります。法治国家としてそれなくして市民の日常の安寧は保たれないわけであります。あるいはまた社会の秩序も維持されません。しかし、総理がかねがねおっしゃってこられたように、国内的にはもちろん、国際的にもお互いの人と人、民族と民族が心の触れ合う関係というものをつくり上げていくことが何よりも大事だ、こういうことをおっしゃっておられるわけであります。まさしくそのとおりりだと思います。  十年以上にわたって、しからばなぜ成田の問題が、いよいよあさって開港を控えたいまの時点でなお国民的な融和というものが確立されてないのか。これは私は心と心の触れ合いに欠けた成田空港問題の促進というところに原因があるんじゃないのか、こういうふうに感じざるを得ないわけであります。既成の事実を一つ一つ積み上げて、いわば権力的に所期の方針を貫くことのみに専念してきた政府の態度、あるいは政治責任というものは私は少なからず大なるものがあると思うわけでありまして、そういう点で、果たして総理は、けさほどの関係閣僚会議におきましても三十日の開港を見合わす、まあ四月の下旬ないし五月の上旬ぐらいに開港、運航を延期する、こういうことが官房長官談話で発表されたようでございますけれども、果たしてそれまでに、管制塔の機器類の再整備はこれは技術的に可能であったとしても、今日問題になっている開港反対という基本的な立場をとる現地の農民なり一部の諸君と政府の方針とが依然として融和を図られないまま、単に物理的に開港準備が整っても、再びあのような不祥事件が起こらないという保証はありません。現に報道されているところによると、アメリカの航空会社関係もこういう成田の状況を見て、アメリカの報道ではトップ扱いがされたそうでありますが、こういう報道を見て危なくって飛行機を発着させられないじゃないかという危惧が高まっているやに聞いております。政府はそういう点をおもんぱかっても、一刻も早く成田問題に対するいままでの姿勢の転換、その上に立った諸種の対話、話し合いというものをもう一度やり直してみるということが必要ではないかと私は思うわけでありますけれども、いかがお考えですか。
  96. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 政府がなぜ成田空港の開港を急ぐか、これは御承知のとおり羽田空港が非常な過密の状態になってきておりまして、あすこで事故が起きるということになったら一体どのような惨たんたる事故に発展するか、はかり知るべからざるものがあります。そういうことを考えますると、羽田の空港使用を一刻も早く国際空港としてはこれを取りやめなきゃいかぬ、あの過密状態をもう解消しなけりゃいかぬ。これはもしそういう惨事が起こったというときのこの責任、これは大変な責任であります。そのことを考えまするときに、成田空港、どうしても一刻も早くこれを開港を取り急がなきゃならぬ、こういうことになるわけですが、成田空港につきましては、農民その他関係者に対しまして政府は相当精力的に了解を得る努力をしてきたんです。しかしなお反対する人がある。反対する人はどういう人かというと、農民というよりはむしろ反対のための反対をする人なんです、これは。これは福間さんもよく御承知じゃないかと思うんです。そういう人たちと幾ら話し合ってもなかなかこれは私は話し合いの糸口というものは発見できぬのじゃないか。そういう間に羽田における危機というものはどんどんどんどん進行してくる、これを放置することはできない、こういうことで、反対のために反対する、そういうことにいつまでもとらわれているわけにはいかぬ、こういう立場にある。こういうふうに御理解願いたいのであります。  まあ、戦後どうも自分の主張を通すため、それを通すためには暴力もあえて辞さぬ、法の秩序も顧みないというような風潮が一部にある。私は非常にこれは残念だと思うんです。これをほうっておいたら本当に国家の崩壊に通ずる。このことにつきましては、これはもう透徹した考え方を持って断固対処をしなけりゃならぬ、このように考えておるわけであります。まあいろいろ反対の動きがあるんですから、いろいろな事態が起きてきますけれども、それに対しましては万全の対処策を講じながら、とにかく成田空港を取り急ぎ開港したい、このように考えております。
  97. 福間知之

    ○福間知之君 総理、万全の態勢をとって、力には力でと言うと語弊がありますが、ある程度警備の態勢を強化するということも必要でしょう。またマンホールなどが事前に検索されていなかったという、そういうこともあってはならぬでしょう。だけど、今後私はひとり成田空港のみならず他の国際空港、羽田とかあるいは大阪というところにおいても一種のゲリラ的な反抗闘争というものが惹起しないという保証はないわけであります。そうなりますと、警備に力を入れると言ってもおのずから当局に限界があるわけであります。それを推し進めていけば、無限にそれは悪循環を繰り返していく危険があると思うのであります。だから警備をやるということはもちろん必要です、それは否定いたしません。しかし私は冒頭申し上げたように、根本的に話し合いを通じて解決をするという姿勢を放てきしてしまった場合は、私は解決の曙光はやはり依然として見出せないだろうと、こういうふうに思います。  今日まで政府あるいはまた関係省庁、地元、それぞれ御努力が行われてきたことは言うまでもありません。しかし、いうならば国民的な信用問題だと言ってもいいと思うわけであります。また国際的にもしかりであります。こういう場合に、総理は単にこれはいままでの行きかがりにこだわっているということだけじゃなくって、私たち国会としても何らかの緊急の意思結集なり対策なりというものにコンセンサス、合意が得られるならばそういう方途をも講ずるべきではないか、このように思うわけであります。  私たちも、単に政府だけにその責任をこの際なすりつけて事が済む問題だとは思っていないわけでありまして、国会としてもなすべきことがあるんじゃないか、こういうことを感ずるわけでありますが、御所感はいかがですか。
  98. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) この機会にこそ、国会も成田空港をめぐってああいう事態が起きているその問題の本質をながめまして、国会としての意思を表明されたい、大変私はそれば歓迎すべきことである、このように考えます。  ただ、繰り返して申し上げるようでございますが、どろぼうにも三分の理がある、その三分の理があるからといって、しかし、どろぼうをしてよろしいということにはなりませんから、その辺は私は間違いなく御理解おき願いたいと、このように申し上げます。
  99. 福間知之

    ○福間知之君 次に、円高の問題についてお尋ねをしたいと思います。  けさほどの東京市場におきましては寄りつきが三百二十五円、当分それに張りついて日銀が徹底的なドルの買い支えをやった、こういうことのようであります。政府もつとに円高対策については心を砕いておられまして、緊急輸入対策あるいはまた輸出規制を行政指導によって効果あらしめよう等々の方針をとってこられました。しかし、今日までの推移を考えてみますと、政府のこのような方針だけでは、はなはだ効果的に疑問が多いんじゃないかと思います。現に、日を追って円は上昇を続けておるわけであります。ドル安に対して、総理は予算委員会におきましてもアメリカに積極的に対応するように要請をしている、私の質問に対してもお答えをされましたけれども、また、先般の経済閣僚会議でも改めてアメリカに対処策を要請する、こういうふうに確認されたようでありますけれども、アメリカがいままで一向に、見ていますとわが方の要請に対して受けて立つような気配がない。宮澤経企長官ですら、もうアメリカは円というものをローカル通貨だと考えているんじゃないかとすら思うなどなどの発言があるわけでありますが、総理はどのようにお考えですか。
  100. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 今日の国際為替不安、これは円高円高と言いますが、本質はこれは私はドル安現象であると、このようにとらえておるわけであります。それに円高要因というものがまた加重しておると、こういう円ドル現象であると、このようにとらえております。そこで、どういう対策が必要であるかと、こういうことになりますが、これは基本的にはアメリカが姿勢を正して、そうしてドルの価値の維持に努力をするということ、これがなければこの問題の解決にならぬ、このように考えますが、同時にわが円ドルの関係におきましては、円が、いまその背景としてのわが国の国際収支が大変な黒字状態でありますものですから、その黒字状態を是正するということに成功するということでないと、これはもう一〇〇%効果を生ずるということにはならないわけであります。しかし、どこまでも本旨、本体はドル安であると、こういうふうにとらえておるわけであります。  そこで、アメリカに対しましてはこれはもう本当に機会あるごとにドルの安定、そのための努力をすべき旨の申し入れをし、話をいたしておるわけであります。アメリカもわが国の立場、またヨーロッパの立場等はよく承知はして、おるのですが、しかし、何せアメリカといたしましてもあの膨大な国際収支赤字、これが一挙に改善というわけにはいかない。あの膨大な赤字が出てきたゆえんはどこにあるのかと、こういいますと、これは油の輸入が急激にふえてきた、これはアメリカにおけるエネルギー事情もあります。また、アメリカの経済がとにかく上昇過程をたどりつつあるという問題もあります。とにかくアメリカの石油輸入、これが激増したと、それだけアメリカの国際収支が悪化したと、こういうことでありますので、その点に着目いたしましてアメリカではエネルギー法案を議会に提案をいたしますとか、いろいろ努力をいたしておりますが、なかなかまだエネルギー法案の成立ということまでこぎつけておらぬと。  さあ、そういう過渡期の段階においてアメリカが何もしないというとそうじゃない。先般わが国ともいろんな緊密な連絡をとりながら、ドル、マルクの間のスワップ協定の拡大中心とする通貨安定の努力なんかをしておりますけれども、しかしこれがなかなか功を奏しないというのが実情だったわけですね。結局アメリカの国際収支、あの大幅な赤字状態というものについてまだ決定的な改善の動向が見えてこないというところだろうと、こういうふうに思います。  とにかく、そういう問題をどういうふうに打開していくかというと、やっぱり私は日米欧三極が本当に理解し合って、お互いの立場を捨てて、そしてこの通貨安定ということに格段の配意をしなければならぬ。その点で、すき間のない理解の一致というところへ来なければならぬだろうと、こういうふうに思いますが、そういうことについてわが国といたしましては、あるいはアメリカに対し、あるいはヨーロッパに対しできるだけの努力はしておりますものの、まだ確固たる展望が出てこないというのが現状でありますが、五月の初めに私はカーター大統領と会談する、またやがていわゆるサミットの会談も催されるということになりますと、そういう首脳会談を待つまでもなく、わが国が首脳以下の立場におきまして各国と緊密な連絡をとり、非常にむずかしい中でございまするけれども一つ一つ問題をくみ上げて、最終的にはただいま申し上げましたように、日米欧間に一つの固い理解ができ、ルールが形成されるようにということを念願して、その成果を期しつつ努力してまいりたいと、このように考えております。
  101. 福間知之

    ○福間知之君 最近、宮澤長官あるいはまた村山大蔵大臣等が、今日の為替相場制の新しい制度の創設ということを念頭に置きながら、アメリカ等にも呼びかけをしなきゃならぬという姿勢をとっておられるようです。そのことの是非は、あるいはまた妥当であるかどうかは別にしまして、いずれにしてもそれらは、仮に国際間における話し合いが進むにしてもかなり先のことでございます。政府は二十五日の経済対策閣僚会議で決めた当面の経済対策とい見解の中においても、まず冒頭で、「個人消費設備投資は依然として停滞を続けて」いる 「景気回復の足取りはなお弱く きびしい雇用情勢、企業環境が続いている。」と、こういうふうに言っております。あるいはまた、国内の不況感の影響によって輸入が伸び悩んでおる、一方輸出は数量的には相当鈍化傾向が見られるものの、円高によってドル表示の輸出額は高水準で推移している、このために経常収支の大幅黒字の基調がいまだに改善されるに至っていない、こういう御認識であります。まさしくそのとおりだと思います。具体的には国際収支はこの三月末で恐らく百四十億ドル前後に達するのじゃないかとも予想されておるわけであります。  一方、経済の展望として来年度七%成長目標にするとは言いながらも、ここに言われているような当面の情勢でございますので、当分は輸出ドライブというものがなお勢いを増していくのじゃないのか、結果としてはさらに国際収支の黒字が拡大するのじゃないのか、こういうような気がしてならないわけであります。そのことは、だから円相場の面で見れば今日二百二十四、五円の水準から旬日を出ずしてさらに二十円台に接近をする、あるいはまたそれを割り込むということがどうも国際的にも国内的にも一つの常識的な雰囲気になってきているようにも感ずるわけでありますけれども、総理はきょうの二百二十四、五円というこの水準、これはとても防ぎ切れるものじゃない、二十円台ぐらいまでは、もう二十円に近く接近することはもうこれはやむを得ぬことなんだと、こういうふうにお考えなんですか。
  102. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) まあ円相場の今後について私から展望を申し上げるということ、これは私は妥当でないと思うのです。いろいろな投機を呼ぶ要因にもなってくると思うのです。それは御勘弁願いたいというわけでございますが、まあしかし、三月はいろいろと会社なんかの決算の月に当たる会社が多いわけであります。そういうことで売り急ぎをするという傾向もある。あるいは輸出が何か規制をされるのじゃないかというようなことを考えながら、この際早く輸出をせいというような動きもあるやに聞いておりますが、とにかく三月の輸出の情勢というものはかなり活発であるというように見ております。  しかし、これからの貿易状態を展望してみますと、輸出はどうだといいますと、とにかくこれだけ円高になってきたんですから、これは輸出に相当の水をかけると考えます。これは必至だと思います。それからさらに、昨年来テレビの輸出規制の協定をアメリカとの間にやって、それがことしはまるまる実施されていくことになる。あるいは鉄鋼につきましてもトリガープライス、これが適用になる、こういうことでこれも鉄鋼輸出をかなり制約をする、そういうことにもなってくるわけであります。そこへもっていって、わが国のさらに大きな輸出品目である船舶輸出はどうだというと、もう御承知のように船舶の注文が激減してきておる、こういうような状態で、この輸出額も五十三年度については激減をしてくるであろう、こういうふうに見ておるわけであります。  それからもう一つの重要要素であるところの自動車はというと、高水準の輸出は続いております。おりまするけれども、これは自主規制の動き、これはかなり活発化してきておるわけでありまして、そういうことを考えますと、輸出全体としてそうふえるというような傾向にはございません。  それから輸入はどうかということでありますが、今日景気がとにかく上昇はしておる、上昇はしておりまするけれども、その上昇に見合った輸入の増加がない。なぜかといいますると、輸入原材料の在庫ストックが輸入を圧迫している。しかし、だんだんと輸入原材料のストックも少なくなる、そういうような状態でありまするから、やがて輸入の方にも景気を反映しての動きが出てくるであろうし、また政府といたしましては、いわゆる緊急輸入ということを考えているんです。御承知のように通産省、農林省を中心とする十億ドル輸入、これは大体目鼻がついておる。それからさらに原油の備蓄輸入、これも相当のものができるであろう。またウラン鉱、これはどうなるかわかりませんけれども努力をしてみたい、こういうふうに考えておる。その他いろいろ考えられる備蓄輸入、これはいまいろいろの工夫をしております。  そういうことを考えますと、黒字幅が少なくならないだろうというような見通し、それは私はそういう状態ではないと思います。私ども政府といたしましては、いまとにかく六十億ドルの経常黒字にこれをとどめたい、こういうことを経済見通しで言っているんですから、あくまでもこの六十億経常黒字、これを実現をする、そういう方向であらゆる努力をしたい、これが私は円対策の主軸をなすものであろう、主軸というか日本としてでき得る主軸であろう。これにアメリカ、これはもう円対策というか、通貨の安定対策の本当のかなめをなすものでありますアメリカがいろいろ手を打つ、それが奏功するというようなことになれば、初めて為替問題というものは安定していくのではあるまいか、そのように考えている。  先ほど申し上げましたように、そういう心持ちを持ちまして日米欧、この三極の間の調整、これに力を尽くしてまいりたい、このように考えております。
  103. 福間知之

    ○福間知之君 円高問題に関しましてもう一問総理にお聞きしたいんですけれども、いま総理もおっしゃられましたように、一日も早く国内景気を回復さし、需要拡大して輸入をふやしていく。これは政府が輸入するわけじゃないんですから、やっぱり民間がその主体になるわけでありますから、国内景気の回復がしたがって第一義的である。それに私は時間がかかるということを申し上げているわけです。いま総理がおっしゃったように、一方輸出についてもそうむやみやたらに伸びるものではない。円高の影響も徐々に効いてくる、これは私も否定はいたしません。しかし、少なくとも昨年の二百九十円台から一年たった今日二百二十円台になっているということ、それでいて数量的には横ばい、これは国際競争力のある先端企業、そういう場面では合理化なり生産性の向上によって、あるいは技術革新によって円高を吸収し得ている面が多分にある。だけれども、国内側が非常に不景気なために国際競争力もないがとにかく操業してなきゃならぬというので、幸い金融は緩和しているということから、言うならばタコが足を食うような形で出血輸出に血道を上げて何とか当面を糊塗しているというふうなそういう企業群がたくさんあるのじゃないか。恐らくそれらが国内景気が回復したときに逆にもう力尽きてばたばた倒れていくというそういう危険も出てくるんじゃないのかと、そういうふうに思います。  私は総理にお聞きしたいんですけれども、先日の報道によりましても、二月の自動車の輸出は前年同月比一六・五%も伸びております。輸出全体の伸びの何と六六%をこの自動車の輸出によって占めている。金額で三千億円、これは鉄綱よりも九百億円多い、こういうことであります。貿易管理令の発令などはやらない、行政指導によって自主的な規制を促進していく、こういうのが総理の基本方針と承っておりますけれども、それにしましてもいま申したような自動車に限らずそれに似た部類が、科学光学機械だとかあるいはまた金属加工機械だとかいうところであるわけであります。私は輸出を規制するとか、あるいはいわんや貿易管理令を発令するというなどはこれは賛成できません。また日本は貿易をして食っていかなければなりませんが、さりとて今日のこの国際収支の状況など、あるいはまた円高の問題など考えれば、やはり将来にわたっては日本の産業構造のあり方をも展望しながら、力のある者だけ、部分だけは輸出をしていく、それを野放しにしていくということではかえって円高を助長する。そしてまた、ついていけないところはそのまま野たれ死にを強いられていく、こういうことになりますので、競争力のある分野に対する行政指導、これは具体的にはどの程度力を入れられるのか、御所見を伺っておきたいと思います。
  104. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) いまの為替の状態を短絡的に申し上げますと、輸出が多いということになりますと、これは為替、円為替が上がってくるという傾向になるわけであります。また輸出が鈍化するというようなことになりますると、円が高くなるのではなくて逆に安くなる、こういうことなんです。非常に大づかみに申し上げますと、政策的には輸出を伸ばすかあるいは輸出をほうっておく、いまの状態でほうっておくか、あるいは輸出を抑えてそして円安というようなことにするか、そういう選択に迫られておるという私は一面があると思うんです。それを一〇〇%どっちを選択するというそういうわけにもまいりませんけれども、絵にかいてみるとそんなような傾向があるんではないか。  そういうことを考えるときに、いま輸出が非常に活発だと言うが、日本の全輸出が活発だと言っているわけじゃないんです。これは輸出が非常に活発な業種というのはごく限られておる、その限られておる業種の輸出が活発化しておる、そのために円為替が高くなる、そういうことになって全輸出産業が影響をこうむる、こういうことになるわけでございまして、そういう状態は妥当じゃないんじゃないか。これは限られた業種でございまするけれども、その輸出が余り伸び過ぎて、そしてそのために全体に悪影響を及ぼす円高現象ということになる、これは妥当じゃないんじゃないか、こういう考え方になるわけであります。そういう議論が政府部内にもあり、私もそういう議論ももっともな側面があるなあと、こういうふうに思っております。  さて、それじゃそういう限られた業種におけるところの輸出についてどういう措置をとるかということになると、これは貿管令というようなことになりますと、なかなかこれは技術的にむずかしい面があるわけであります。そこでやはり自主的に業界ごとにやってもらう。通産省ともいろいろやり方について話してもらう。いわば行政指導といいますかそういうような行き方、これでさしあたりやってみるというのが私は一番妥当な行き方ではあるまいか、そのように考えております。通産省とも全力を尽くしてそういう手法をもって目的とするところを実現をしてみる、こういうふうに言っておりますので、とにかく私どもも通産省のその行き方に期待をいたしたいというのが私の考えでございます。
  105. 福間知之

    ○福間知之君 総理、少なくとも五月の初旬にカーター大統領と会見をされる、会談をされる。その前までにいま総理がおっしゃられたような政策効果というものが、総理自身も期待されておると思いますけれども、今日のこのとめどない円高の中で呻吟している多くの業界、企業あるいはまた国民の立場に立ちましても、やはりそういう方針なりお説教だけじゃなくて、効果を早く、一日も早く期待をしたい、こういうことだろうと思うわけでありまして、総理の政治責任をかけてでもこのところをひとつ大いに憎まれ口もきく、やることも積極的にやるということで対処されることを強く要請しておきたいと思います。  次に、補正予算の問題につきましてでございますが、五十三年度予算も本院予算委員会で旬日を出ずして成立を、決定をみることになると思います。政府目標にしてまいりました七%成長を達成をしていく、こういうためにも、あるいはまた先般与野党間で所得減税の折衝が行われましたが、その折衝の経緯などからしましても、補正予算について考慮をせねばならない時期が来ると思うわけでございますが、総理はその時期をいつごろとお考えですか。
  106. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) いま五十二年度予算を御審議を願っておる段階でございまして、その予算審議の段階で補正予算をなんというようなこと、これは考えておりません。しかし、こういうことははっきり申し上げておるんです。とにかくわが国は世界におけるわが国としての責任を尽くす。そういう上からも経常黒字、これを大幅に縮減しなきゃならない。これは何が何でも実現をする。同時に、国内的には雇用の安定、また企業の経営の維持、そういうようなことを考えまして、目標とする七%程度成長、これもぜひ実現をいたしたい、このように考えております。いよいよあと数日たちますと新しい年度が始まるわけでございまするけれども、毎月毎月さて日本の経済はどういうふうに動いていくかということをチェックいたしまして、ただいま申し上げました二大目標、この目標に狂いがきそうだ、こういうようなことでありますれば、これはまたその時点においてそれなりの手を打たなきゃならぬ、こういうふうに考えております。  その打つ手というものはこれはいろいろあります。財政上の手もありまする、金融上の手もありまする、以外の手もあるわけでございまするけれども、その時点におきまして最も効果的であり有効である、そういう手段を選択いたしまして随時大胆にこれをとっていく、こういう考えでございます。
  107. 福間知之

    ○福間知之君 少なくとも、今通常国会は五月中旬ごろまでということが予定されているわけですから、その間には具体的な考え方というのはもちろん出てこないと思います。したがって、総理がいまおっしゃったように、予算執行あるいはまた嫌気対策の浸透ぐあい、そういうものを見た場合、補正予算を含めていろいろな施策を考えるにしても、それはやはり秋ごろになるというふうに考えてよろしゅうございますか。
  108. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 新しい年度がとにかく四月に始まるんですから、二、三ヵ月でその動きの全体がつかめると、こういうふうには思いません。まあ秋ごろになりますか、その辺はまだ時期的なことを具体的に申し上げるわけにはまいりませんけれども、しばらく様子を見まして、どうもただいま申し上げました二大目標実現、達成、これに異変があるという上におきましては、随時有効な手段を果敢にとってまいりたい、このように考えております。
  109. 福間知之

    ○福間知之君 次に、先般来予算委員会でも衆参を通じて議論になってまいりました大蔵省の例の財政収支試算等を拝見しましても、その中身はともかくとして、いずれにしても今日のわが国の財政、ひいては税制などなどにやはり一定の変革を考慮しなければならない、こういうことが察知されるわけであります。来年度以降、税制調査会の答申などにおきましても一定の示唆があるわけでありますが、言うならば今日までの税水準というものを本格的に改正する、言葉を変えれば増税の政策を本格的に考慮しなければならぬ、こういうような見方もあるわけでありますが、総理はどのようにお感じでありますか。
  110. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 五十三年度予算に関連いたしまして財政収支試算ですね、大蔵省から配付されておるわけでございますが、まああれはあれといたしまして、ああいう試算がなくとも私どもはこれから国費はだんだんと増高せざるを得ない、財源はどうかというと、低成長時代に入りますものですから、かつてのように自然増収の多くを期待することができない、そういう中で、いま今日この時点において大変な赤字、特に特例公債を負担しなければならぬという状態にある。そのわが国の財政が今後一体どういうことをしなけりゃならぬかというと、一方において歳出の効率化、合理化、これは大きな努力をしなけりゃなりませんけれども、同時にやはりこれから増高する国費、これをにらみますと、国民負担の増加、これももうやむを得ざる傾向として考えておかなけりゃならぬかと、このように考えておるんです。  ただ、それをどういうタイミングでどういう経路で実行するかということになりますと、これはその時点における景気の情勢、そういうものなんかよく見なけりゃなりませんから、いま一概に何年度にどういう規模のというようなことをここで申すわけにはまいりませんけれども、そういう考え方のもとに今後の財政には対処しなけりゃならぬだろうかなと、そのように考えております。
  111. 福間知之

    ○福間知之君 その問題は大変大きな問題ですから、もちろん総理よくお含みのように、今後十分な検討と、また国会における審議、あるいはまた与野党間での十分な意思疎通というものを必要とすると思いまするし、総理の適切な対処をひとつ要望しておきたいと思います。  最後に、本委員会で目下審議中の租税特別措置に関する改正についてお伺いしたいと思います。  今日の財政事情あるいは減速成長への経済情勢の推移などから見まして、不公正税制の是正というふうな観点におきましても、今回の特別措置改正に関する中身は大変不十分じゃないかと考えております。なかんずくこの医師優遇税制の据え置き、利子・配当所得などへの優遇措置の存置、各種準備金、特別償却措置の未整理などなど、きわめて不十分な面があるわけでございますが、総理は今後、具体的には来年度以降、もっと本格的にこの特別措置については是正をしていく、こういう決意をお持ちかどうか、お聞きをしておきたいと思います。
  112. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 特別措置はそれぞれ社会的、経済的要請がありまして、その要請にこたえてでき上がっておるものでございますが、その、要請が必要とする事情はなくなったということになりますれば、事前にこれは改廃しなけりゃならぬと、特別措置が既得権だというような状態になることは、これはもうどうしても避けなきゃならぬというふうに存じまするし、また税は公平でなけりゃならぬ、制度上も。そういうふうに思いますので、そういう考え方に背馳するような税制につきましてはこれを改めていかなけりゃならぬ、このように考えておりまして、まあ五十年来そういう方向努力はしております。ことしも、五十三年度につきましても努力はしておりまするけれども、五十四年度以降につきましてもその考え方を持ちまして、いわゆる不公正税制、この改廃につきましては鋭意努力をいたしてまいりたいと、このような決意でございます。
  113. 穐山篤

    穐山篤君 時間の関係もありますので、二つだけにしぼってお伺いをします。  ただいま福間委員からも指摘をしましたが、医師の特別措置の問題です。総理も大蔵大臣も、政府としては提案はできないが与党の五十三年度限りやめたいというその考え方について支持するというふうに害われております。これは考えてみますと、廃止をするという場合にいろいろな問題が起きることは当然です。まあ医療制度の問題もあるでしょう、あるいは報酬のこともありますし技術のこともある、あるいは医薬分業の問題も当然あります。しかし、この特例措置がそれらの審議を邪魔をしているということは基本的にないはずであります。そういうふうに考えてみますと、この特別措置というのは来年三月三十一日が来れば必然的にやめるものだというふうに理解をしていいかどうか、その点を確かめておきたいと思います。
  114. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) この問題はとにかく二十数年来の問題、まあ毎年毎年議論になって、しかも何らの解決案が出てこなかった、そういういきさつがある問題。政府といたしましては、なるべく早くこの問題に決着をつけたいという考えであったわけでありまするが、そういうむずかしい問題であるのでそういうことにならなかったわけでありまするが、幸いに自民党の方でこの問題、まあとにかくいまの税制は本年度限りだと、そしてその場合には後一体どうするんだというようないろんな問題を検討する、そしてまとまったところで議員立法で処理すると、こういう考え方を打ち出した。この特例措置はそもそもが議員立法でできた、そういういきさつ等も考えてみますると、これだけむずかしい問題がそこまでとにかくこぎつけた。これも考えてみますると、一つの具体的、現実的な行き方じゃないかなと、こんなような感じがいたしまして、自民党がそういう考えであるならばひとつそれに乗っかろうかと、こういうような考え方になったわけであります。まあいずれにいたしましても、現行の医師税制は今年度限りといたしまして、五十四年度以降は新しい制度のもとで行われるというふうにしたいと、このように考えております。
  115. 穐山篤

    穐山篤君 五十三年度限りでやめるということを政府が決意をする、あるいは衆参両院でこれを決めるということになれば、いまもたもたしておりますその他の諸問題ですね。その他の諸問題と言えば語弊がありますけれども、医療制度の根本的な問題だとか、あるいは技術の問題などについて検討が促進をされるというふうに考えるわけです。そうしませんと、いつまでたっても本問題の抜本的な解決が延びるだけだというふうに思います。また、この特別措置があることによってその他の基本的な抜本的な制度自身が十分審議できないという理屈はない。したがいまして、その今年度限りやめるということについて、ただ単に自民党に乗るということでなくて、総理大臣としての決断が本問題の解決のかぎになるというふうに指摘をしておきたいと思います。  それから最後に、予算委員会でこの税金の問題に関連をしまして背番号制度の問題について大蔵省内で検討をしているというふうに聞いております。これは大蔵省の中のごく技術的な研究であるのか、それとも政府全体としての統一的な考え方のもとに立って背番号制度を考えているのか、その点をきちっとお答えをいただきます。
  116. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 背番号につきまして、私はけさ新聞でそれを見て承知しておるんですが、まだ私の手元までこの問題が報告等されておりません、まあ恐らく事務当局で何か考えがあるのかどうか、事務当局の方からお答えを申し上げる、こういうようにいたします。
  117. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 昨日でございましたか、大蔵大臣が利子・配当課税について総合課税を一日も早くやるべきだと、一体どういう勉強をしているんだという御質問に対して、現在大蔵省の中で、端的に申せば主税局と国税庁が部内の勉強をいろいろ続けておる。その場合には、たとえば背番号という問題も含めどの程度電算機化できるかというのも含めていろいろ勉強をしておるというような趣旨でお答えを申し上げたわけでございまして、ただいまの段階はまだ部内の私ども国税庁限りの検討課題の一つでございまして、まだ総理はもとより大蔵大臣にもその採否について御決断を仰ぐという段階まで至っておりません。
  118. 穐山篤

    穐山篤君 わかりました。そうしますと、政府の統一見解ではないということで理解をします。  そこで、利子・配当総合課税の問題にしろ、まあマル優あるいは特マル優などの問題について、もしこれがお話がありましたように、背番号でコードが入るということになれば、単にそれは税制面のみならず、すべての問題にわたって重要な影響を与えるわけです。プライバシーの問題は当然のことながら、民主主義のあり方に言及をせざるを得ないというふうに考えますので、ぜひこれは、まあ研究することについては反対するわけにいきませんけれども、採用するということについてはぜひ総理としては考え直していただきたい、あるいは断念をしていただきたいということを強く注文を申し上げておきます。  以上です。
  119. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 初めに、総理に成田空港の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  この今回の開港、あのような過激派の行動によって開港がおくれざるを得ない、三十日の開港を見合わして式典も見合わすということになってきたようでありますけれども先ほど質問のように、五月下旬のころまでなりそうだというような話でありますが、この開港のおくれに伴う今回の事件についての政治責任について最初にお伺いをしたいと思います。  それは、この開港のおくれに伴う対外的な威信の問題があると思います。先ほども外国のパイロットの問題について福間委員から質問がありましたけれども、残念ながらそれについての答弁をいただけなかったんですが、まあ非常に諸外国にとっても、こういうのが起きたのでは日本の空港へ着陸すること、あるいは利用するということについて問題がある。また外国にまで宣明したことが延期せざるを得なくなったというような、対外的威信が非常に落っこったんではないかと思うんです。この点はどう総理は理解をしているのか。それから、この威信の回復についてはどういうように持っていこうとなさっているのか、この辺のひとつ所信を伺いたいと思います。
  120. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 今回の成田空港の事件はまことに残念しごくなんです。国際社会に対しまして顔向けがならぬような事態が起きたわけでございます。さらばと言って、この成田の空港の開港をじんぜんと延ばすわけにはいかないんです。これは先ほど福間さんにもお答え申し上げたわけなんですけれども、あの羽田の状態というものを考えて見ますると、これはもう一刻一瞬を争うような過密状態になってきておるんです。あそこで一朝何か事故が起きたということになったら一波万波、どんな重大な被害が起こってくるかもしらぬ。そういうことを考えますと、本当に成田空港の開港というものは、これはもうあせらざるを得ないんです。  ところが、一部の人がこれに、開港に反対をする。その反対をする人は一体だれだろうか、こういうことですね。これはあそこの農民というよりは、もうその農民を超えた反対のための反対だと、こういうような人々がやっておるわけなんです。ですからそういう人たちの説得説得と言っても、説得にそれはもちろん努力をしないわけじゃありません。ありませんけれども、これに引きずり回されてそして重大な羽田の過密問題、これをおろそかにしておくということはこれはできないんですから、早く成田を開港いたしまして、そうして恐れられるところの大惨事が起きないこと、予防すること、これが政府といたしましての責任であると、このように考え、成田新空港の開港を進めていった。しかるにああいうことになっちゃったと。私は本当にこれは残念なことだと思いまするけれども、残念だ残念だと言っておったんじゃこれはしょうがないことであります。やっぱり私は、これはもう本当に世界じゅうの人に安心して御着陸いただける、ような成田空港、その状態というものを早く実現いたしまして、そうして一刻も早くこれを開港にもっていくということだと、これが私は政府の今回の問題に対する責任をとるゆえんである、このように考えます。
  121. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そこで、きのうフランスかどこかのパイロットが言ってたのだと思いましたけれども、この事件に対してテレビかなんかで報道されていたのを聞きましたら、すぐれた民主主義の国だというか、民主主義が行き届いているという皮肉な意味のことを言われているわけですよ。ああいう事件が起きたのは日本が民主主義がすばらしいからだとか、行き届いているからだというふうな言い方をされた。こんな皮肉を言われて非常に残念で仕方がないという感じを受けざるを得ないんですけれども、総理はその辺の民主主義の問題、一番根幹にかかわる問題だと思います。それについてどう見解をお持ちですか。
  122. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 私は、いま日本の社会風潮というものはかなりゆがんでおる一面があると思うんです。つまり民主主義、これをはき違えて受け取っておると、こういう向きがあるんじゃないか。自分の主張を通す、そのためには他人の主張、他人の立場なんていうのは顧慮しない。まあ裏返して言いますと極端なエゴ、ゆがんだエゴ、この思想というものが戦後三十余年の間にかなり日本でも社会風潮の中に根を張っておるんじゃないか、そのように思うんです。そういうあらわれがあの極左グループの行動というものにもなってきておる。私はそういう社会風潮ということ、これは気をつけなけりゃならぬと思うんですよ。社会風潮と言えば社会全体の人々に関係する問題です。一部の人の中にああいう行動、ああいうものに寛容、寛大な傾向があることも私は事実だろうと、こういうふうに思いまするが、そういうこと、一体自分の主張を押し通すためにはこれはもう他人の立場、そういうものは顧みない、他人にいかなることが起こっても自分の主張は押し通すんだというような、そういうエゴ的な考え方、これが果たして許されるものであるかどうかという原点までこれはこの問題の本質を突き詰めて、そうしてこの際、そういうゆがんだ社会風潮というものに終止符を打つというところまで考えながらこの問題に取り組んでいく、これが私はこの問題に対処する政府の責任ではなかろうか、このように考えております。
  123. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 つまり総理が言われたいままでの答弁からわかってきたのは、総理以下関係閣僚の政治的な責任、これについては私は細かくいま分けてお伺いしたのですけれども、速やかに開港して、早く開港することが、それが責任であると、こういう理解でございますね。ここではこう理解してよろしゅうございますか。
  124. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 早くというのじゃないですよ。早くと言えばそればまた相当早く開港もできますけれども、そうじゃないのです。この搭乗される皆さん、これにいささかの心配も与えないような状態を速やかに実現をする。同時に、この問題を引き起こした問題は、これはたまたま成田で起こっておりますけれども、これは根が成田だけに生えた問題ではないと思うのです。この根っこからいろいろなところへいろんな現象となって出てきておるのじゃないか、このように思いますが、その根っこ、社会風潮というもの、そういう問題につきましてもこの際無視するわけにいかない、これも大事なことではないか、そのように考えます。いたずらに開港の早きということを望んでおるわけではありません。この機会にいろんな問題を処理して、そしてお客さんが安心して搭乗願えるような万全の備えをする、これが政府の責任であると、このように考えております。
  125. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いわゆるあせって見切り発車をしたり、あるいは拙速でいくというようなことでなしに、完璧を期して開港をされると、こういうふうに私は理解をしましたが、ぜひそのようにしていただきたい。  それからもう一つは、非常に大きな問題でありますけれども、今回の事件でずっと全部、いままでずっと成田問題でクローズアップされているのは地元の住民、いま農民だけではなくて反対のための反対のがやったというのがありましたけれども、それを後ろから支えていくようなものに、やはり地元住民に対しての防音であるとか、あるいは交通であるとか——交通問題はまだまだ成田空港に対しては不安があります。あるいは燃料輸送の問題、それから安全性の問題、補償、こういうものをかなりはっきりさせるようにしていく必要があるのじゃないか。そういうものが不十分だからというわけじゃありません。それがすべてというわけではないけれども、そういうことも一つのやはりああいう運動に火をつけていくエネルギーにさせているんじゃないかという気がしてならないわけでありますけれども、その点については総理どう取り組まれてまいりますか。
  126. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) まあ、今回の事態は地元の問題、これは多少あるかもしれません、あるかもしれませんが、これがしかし右たる私は原因ではないと思う。そうじゃなくて、これは反対のための反対だ。いわゆる極左集団の行動というふうに理解をしておるのです。しかし、地元にいろいろまだ問題があることばいま鈴木さんの御指摘のとおりだというふうに考えております。ことに騒音の問題ですね、道路交通の問題いろいろな問題があるようですが、これらの問題はまあ相当時間のかかる問題でありまするが、これは鋭意粘り強く地元の御満足のいけるように対処していきたい、このように考えております。
  127. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 先ほどの答弁の中に警備体制の問題がございました。警備体制をしっかりするという話があったんですけれども、現在かなりの応援部隊が入っている。これから先、十分な警備体制をとってもらわなければ、われわれとしても十分安心して各国にもあるいは人々に利用してもらえるというふうにいかないと思うのですけれども、今回のこれでちょっと調べてみて、新東京国際空港公団の予備費というのは五十二年度で五億円です。いま残っている残高は二億円。しかし、その残額は警察関係の警備等の費用に充てる予定で実質残額はゼロであると、こういうようなことが私が調べた中でわかってきたんでありますけれども、そうだとすると、これから先警備体制の問題についてお金もないということになってくるわけでありますけれども、その点はどういうふうにお考えですか。
  128. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 警官の警備の経費は、公団が指令しているわけではございませんので、公団の予備費がかなり使用済みであるというような、あるいは使用を見込んでおりますという事情は御承知のとおりでございますけれども、それとは直接関係のないことであろうかと思います。
  129. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いま一つは、今回の破壊された機器、設備、その金額は一体どのぐらいになるのかといってもいますぐ算定はできないだろうと私は思います。算定されるとすれば、これを建設されたときの費用がはっきりしているだろうと思うんです。つくったとき一体幾らぐらいだったんでしょうか。
  130. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 成田空港の被害状況あるいは復旧の見通しにつきましては、いま運輸省で調査中でございますので、どの程度になりますか、その辺ただいまの段階で申し上げるのはいかがかということでございます。
  131. 飯塚良政

    説明員(飯塚良政君) 今回の管制塔等の被害につきましては、きのう、おとついと連続して調査をしているところでございますけれども、管制室内の機器はほとんど破壊されております。それから、あとはマイクロ回線の施設、これも相当破壊されておりまして、その復旧と、それから管制塔の建物のガラスが十五枚のうち十三枚破壊されておりまして、この復旧の工事とその金額の見積りをしているところでございますが、現時点ではまだ正確にその数値が算定されておらないところでございます。
  132. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 概略わかりませんが、どのぐらいだろうという推定は。
  133. 飯塚良政

    説明員(飯塚良政君) 現在のところでは、これよりも金額はふえるかもしれませんが、大体一億円を超えることは間違いないであろうというふうに思っております。
  134. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは運輸省の空港整備特別会計から使用されるわけですね、その予備費から。これは残額どのぐらい残っておりますか。
  135. 飯塚良政

    説明員(飯塚良政君) 空港整備特別会計では現在大体五億円程度残っておりますが、その使用方につきましては現在大蔵省と協議中でございます。
  136. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 総理、そういうことで、成田の問題についてはぜひ拙速でなく着実な開港で、いまも見れば大体予算も残っているような感じでありますので、予備費があるようでありますから、着実にやっていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  次は、税制問題についてでありますけれども政府の税調が五十二年十二月にまとめた「昭和五十三年度税制改正に関する答申」、それはいわゆる中期答申、五十二年十月のその中期答申を踏まえたもので、大きな前進がなかったとわれわれ見ております。それで五十二年十月の中期答申にどうしても触れなければならないわけですけれども、そこで総理にお伺いをしたいのは、この先三年、四年なりの中期の期間で、先ほども増税の話がありましたけれども、どう税制を変えていくのか、この点が中期答申では余りビジョンがはっきりしていない。その点で税制改革に対する総理の見解と決意をちょっとお伺いしたいのでございます。
  137. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 中期税制改正に関する税制調査会の答申、これに待つまでもなく、これから先々の財政を展望してみますと、財政の効率化、支出面の合理化、効率化、これはどうしてもやらなければならぬ。ならぬが、しかしそれだけではどうしても財政の秩序を維持するというわけにはいかぬだろうと、かなり国民負担の増高ということを考えなければならぬだろうと、このように考えておるわけでございます。そういう同じ考え方で税制調査会の方でも答申をしてくださっておるわけですが、税制調査会の答申は、そういうことでいずれにしても所得税増税、これが無理だとするならば、これは一般的消費税方式を採用するほかないのじゃないかというような見解を示しておりまするが、これから先々負担をふやさなければならぬということは、私はこれは残念ながらそのように考えざるを得ないわけでありますが、その負担をどこに求めるかというその方向につきましては、その時点において経済の情勢、社会の情勢、そういうものをよくながめてということになるだろう。それからそういう増税をどういうスケールでどういうタイミングで実行していくか、それにつきましても、その時点における経済の動き、社会の状態、そういうものを見ながら決めなければならぬだろう、こういうふうには思いまするが、これからそういう経済、社会の情勢を見ながら財政の健全化、これを目指しながらいろいろと工夫をしなければならぬところである、そういうように思っております。
  138. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 それは、総理はいまスケールとかタイミング、そういうものを見て、経済の動きを見てやりたいという話があったんでありますけれども、しかし現在の時点で考えられるのは、すでに直税と間税の比率が異常に直税の方が多くなっている、こういう直間比率のことから考えていくと、だんだんだんだんいわゆる、いまも発言がございましたけれども一般消費税という方へこれは傾いていくんじゃないかということをば考えざるを得ないわけなんですけれども、だからタイミングというか、そういうものを見るのはよくわかるのでありますけれども、とるとすればそういうような間接税方向ではないか、特に一般消費税の実施ということになるのじゃ、ないか、こういうように憶測をされるわけですけれども、その点は総理の展望はいかがでございますか。
  139. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 結局非常に大観して申し上げれば、所得税の増税ということでいくかあるいは一般消費税という方針でいくか、この二つ以外には道はないのじゃないかと思います。いま所得税というと相当拒絶反応、そういうことが多かろうと思いますので、非常にいま大ざっぱに考えますと一般消費税方式かなあというような感じもいたしまするけれども一般消費税、そんなに多くこれに期待するということが妥当であるかどうかというような議論も出てくるだろう、こういうふうに思うのです。ですから、全部が一般消費税方式にいっちゃうのかというとそういうような状態でない。間接税にも直接税にも分担して負担を求めるというふうなことにもあるいはなる場合もなしとしない、そのような感じもするのですけれども、いまは国民の気持ちなんかをその時点でよく見て、さあ一般消費税方式を選択するのがいいか、あるいは直接税方式を選択するがいいか、あるいはその両者択一ということでなくてこれを適当に配分してやっていくのがいいか、その時点における社会、経済の状態、また国民の気持ち、そういうものをよく見きわめた上で具体的な制度を決めるべきものじゃないかというふうに考えております。
  140. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまの直税でいくべきなのか、それとも一般消費税のような間税でいくのか、それでなきゃそのどっちかというような二者択一じゃない方法を考えたいと。その択一でない方法というと、何か伺っていると付加価値税のような感じがするんですけれども、そういうことも加味されていらっしゃるわけですか。
  141. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) ちょっと補足させていただきたいと思いますが、ただいま御質問の中にありました中期答申そのものも、一般消費税だけで答えを出していくという答申ではございません。やはり一般的に税負担の増加を求めざるを得ないという判断の上で、まず歳出面の効率化、合理化をぜひやってほしい。それからいわゆる不公平税制の是正というものもぜひやらなくてはならない。さらに、いまある税制の中で負担増加を求める余地があるものは、これまたこれに大いに努力すべきである。しかし、なおかつそれだけで片づかないと思うので、やはり所得税一般的な負担増加か一般的消費税の導入かということを考えざるを得まい。そういう考え方の流れの中で一般的消費税をさらに具体的に詰めて、しかし、的にどの時期にどの税目でどのくらいの幅で負担増を求めるかは、それは各年度の財政、経済事情全般を考え、財政政策全体との整合性を保ちながら考えるべきであって、そこはまた税制調査会も各年度の答申でそれぞれ議論をした上で具体的な答申をすると、そういう答申でございますので、ただいま総理のおっしゃいましたように、今後の財政再建を考えるときに、二者択一的に一般消費税を考え、それしかないというような意味の答申ではないということだけはひとつ補足をさせていただきます。
  142. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 総理、冒頭に申し上げました直間比率から私は一般消費税の方向にいくんですかという話を申し上げたんですが、直間比率については現状でいくのか、それともまた間接税の比率をふやすべきというふうにお考えなのか、直税の比率がどんどん高まるばかりでございます。その点はいかがでございましょう。
  143. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 直間比率は、直接税にだんだんとウェートがかかってきておるような傾向になっておりまするが、直間比率というような、そういうことに着目して制度を考えるというんでなくて、五十四年になりますか五十五年になりますか、そういう税制改正を行うその時点における社会情勢また経済情勢、それから国民の気持ち、そういうことがどういう方向を指向しておるかというようなことを旨として結論を出すということにしたらいかがだろうかというのが私の感じでございます。
  144. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 今回の税制改正の中で投資促進減税、省エネルギーとか公害防止関連設備とか中小企業等の取得をする設備等に対して減税するというのがございますけれども、そういう投資促進減税といわれるようなものが入っているんですが、これから先も新たにそういうような方向拡大していくというお考えはおありなんでしょうか。
  145. 大倉眞隆

    政府委員大倉眞隆君) 今回の答申でお読み取りいただけると思うんでございますが、政府税制調査会の中では、理由は省略させていただきますけれども、やはりこの際新しいインセンティブをつくることにはかなり消極的な御議論が強うございまして、その意味で、設備投資促進するために大胆な政策をとるべきだという論者から見ればはなはだ不十分であるという逆の御指摘もまた受けているわけでございますが、やはり私ども感じております政府税制調査会のただいまの御意見の内容からしますと、今後これを一層拡充する、あるいは期限をどんどん延長していくというようなお答えはなかなか出てこないんではないかというふうに感じております。
  146. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 次に、円高について伺いたいと思います。  二十五日の合同閣僚会議の決定で、五十三年度の輸出については、その数量ベースで五十三年度と横ばいに抑えるということが第一項目に上がっておりますが、そうすると、五十二年度の輸出に対して金額で七%増という見通し、そういうことから見ると、今回の統一見解で実質五、六%に五十二年度並みの数量ということは減ってくるというふうになるんじゃないか。通産大臣が輸出量を五%落とすと円ベースで一兆円の減になる、そうして七%の成長達成は不可能であると、こういうふうに言っておりますけれども、五十二年度並みの数量ということは、これは円ベースで言ったら一体どの辺まで減るつもりなのか。また、こういうようなことをすると、政府の立てた経済見通しをみずから踏みにじっているというふうにしか考えられないんですけれども、その点はいかがお考えでしょうか。
  147. 澤野潤

    政府委員澤野潤君) せんだっての二十五日の経済対策閣僚会議での議論では、確かに輸出調整については数量ベースでおおむね横ばいとなるようしかるべく調整していくというような、通産大臣の述べておられる方針が了承されたことは事実でございます。現在、五十二年度の輸出輸入の実績を見ておりますと、先ほどからお話がございましたように、五十二年度の輸出は、最近の自動車の海外在庫等の問題、また機械器機が高い伸びを続けておるという、これもまた円高の問題とそれから企業の年度末における駆け込みの輸出といったようなものの影響を加えまして、輸出の数量をも含めまして若干伸びておることも事実でございますが、一方、輸入の方は内需の停滞からやや伸び悩んでおりますけれども、内需の停滞ということから、ある種の業種につきましては輸出圧力がかかってこれまた輸出の方の伸びというようなことが現実としてあらわれておりまして、五十二年度実績から申しますと、さきの実績見通しの七百九十五億ドルというものをかなり上回る金額になるかとも思うわけでございますけれども、五十三年度につきましては、この五十二年度の輸出実績といったもののほぼ数量的には横ばいということで推移すると考えられておりますので、まあ円高の影響で金額的には若干伸びるかとも思いますけれども、一応五十三年度の輸出のIMFベースでの金額の数字としては八百五十億ドル程度ということを考えておるわけでございます。この場合に、数量がほぼ横ばいで推移するわけでございますから、価格の面での伸びは約七%になるという計算になっておるわけでございます。また輸入の方は、大体数量がかなり増加していく、これが約五%くらいの増加ということが見込まれておるわけでございまして——失礼いたしました、数量では約七%程度の増加の見込みということでございまして、価格が約五%、全体といたしまして輸入金額といたしましては、四捨五入いたしますと一三%程度伸びということになるわけでございまして、そういうことで一応われわれの方といたしましては、先ほど総理の御答弁もございましたように、後半輸入の増加ということと、また緊急輸入といったようなものの効果があらわれてくるのと相まちまして、輸出の数量の横ばい、輸入の数量の増加ということで六十億ドルになるということを一応見込んだわけでございます。
  148. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 時間がきたようですから、最後にまとめて総理に二つ。  一つは、五十二年度も、本年度も円高が景気の回復に大変なブレーキをかけたことは御承知のとおりですが、来年度予算についても、すでに予算作成時は二百四十円台、二百四十五円と伺っていますが、その一ドル二百四十五円台から現在は、けさ二百二十五円というふうになっておりますが、そういうように高騰している。こうなると実質成長率七%、経常収支六十億ドルという、こういうように縮小させようというような目標の達成も困難だろうというふうに考えられます。経済運営についての再検討をどう考えていらっしゃるかということが一つ。  五月に日米首脳会談で、福田総理がカーター大統領に対して固定相場制への復帰を提案するかもしれないとマンスフィールド駐日大使が記者会見で言っています。もし持ち出さないとすれば私は非常に驚くだろうし、この問題を持ち出せば大統領も話し合う用意があると、こういうふうな話で、アメリカの大統領も話し合うような意向の発言がございました。この点について総理としては固定相場制へといいますか、あるいは富灘提案のようなのもございますが、そういうようなものへの復帰ということを五月には提案なさっていくのかどうか。  以上の二点について伺いたいと思います。
  149. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) まず、経済見通しを変える考えかと、こういうお話でありますが、経済見通し、これは四月からの十二ヵ月分のものですね。四月から年度が始まるわけで、まだ年度が始まる前の今日この段階であの見通しが立ったときと変化がある、変化があるのはやっぱり一番大きな問題は円高という問題です。これがかなり景気動向に水をかけていると、こういうわけです。また、それにもかかわらず輸出は一体どうだと、こう言いますと、かなりこれがまた強い状態なんですね。ほうっておきますと、つくりました経済見通しよりはかなりこれが上回るかもしらぬというような見通しさえ立つような状態です。それで、そういう状態だとこれはまた円が高くなる、こういう問題が出て、そして混乱が起こりますので、輸出についてある程度の規制をしなきゃならぬかなあと、こういうような先ほどからお話のあるような状態でございまするけれども、しかし、ある程度輸出が自主的であるにせよ規制されるということになりましても、見通しよりふえるその分がふえないというようなことになるわけであります。経済計画をつくりましたそれに影響がある問題であるというふうには考えておらないんです。あの経済計画におきましては七%成長、それに輸出入面、貿易がどういうふうに寄与するか、これはゼロです、寄与度は。そういうふうに見ておるわけでございます。それが先ほど申し上げましたように輸出が伸びそうだ、そうするとゼロでなくてある程度寄与するわけですから、多少抑えてもそれがゼロになるという程度の問題でありまして、経済見通しにこれが響いてくるという性格のものじゃない。これから問題は円高、そういうようなことになって国の経済全体の活動状況が一体どうなるか。先ほど申し上げましたように、多少これは景気には水をかけられることになりますが、この経済の実際の動きが一体どういうふうになっているかということを見詰めまして、そして七%成長、六十億ドル経常黒字、この二大目標を実現するのにどうもあやしいところができたなあというようなことがありますれば、その時点におきまして十分対策をとり、そして経済見通しの大筋はこれを実現していくというふうに考えております。これが私の今日の経済運営の基本的な姿勢でございます。  それから、訪米の際に固定為替制をどうするかという提案をするかというお話でありますが、結論から言いますと、そういう提案をする考えは持っておりません。もとより世界の通貨情勢、これは非常にいま重大な時点でございますので、この問題に触れないと、こういうわけにはまいりませんけれども、あれやこれやいろいろ話し合いはいたします、いたしますけれども、固定制に戻ろうじゃないか、そういうような考え、私いま直ちに固定制にまいろうなんていうようなそんな考え方は持っておりません。したがいまして、カーター大統領と固定制にすぐまいる、復帰する、これが通貨安定にとどめを刺すゆえんであるというようなそういう提案はいたしません。
  150. 渡辺武

    ○渡辺武君 初めに成田問題について一、二点伺いたいと思うんです。  私ども今回の空港を開くということについていろんな条件からして問題があると思っていますが、しかし、今回のあの反共暴力集団のやったこと、これはもう日本の民主主義を守るという点からもとうてい許すことのできないことだというふうに考えているんです。  ところで、きのう予算委員会でわが党の内藤委員質問して明らかにしたんですが、あの成田空港の周辺にこの暴力集団の団結小屋が三十三ヵ所もある。百六十人も常駐している。そうしてあの辺にある国有地、これを耕して野菜を栽培してそうして産直だとか称して売ったりしている、こういう状況なんですね。運輸大臣も世界の空港の中でこんな状態になっているところは国際空港で一つもないんだ、日本という国は大変な国だという趣旨の答弁をされておった。もうこの問題が起きてからずいぶんの年月がたっているのにもかかわらず、こういう状態がそのまま残されていて、そうしてそこを拠点として今回の襲撃があったわけですよね。こんな状態考えてみますと、どうも政府がこういう暴力集団を野放しにしていたと言っても、これはもうしょうがないんじゃないか、そう言われても。そう考えるんです。今度空港のこの開設が一ヵ月おくらされたというけれども、こんな状態そのままにしておいて国際空港を開設したということになったら、依然として危険は引き続き存在するというふうに見なきゃならぬと思いますが、こういう状態について、この暴力集団についてどういう態度をとられるのか。  それで、大臣先ほど社会風潮だと言われたけれども、社会風潮じゃないですよ。日本の国民のもう大多数はあんな暴力集団、これ支持も何もしちゃいないんです。あの一握りの連中がむちゃくちゃなことをやっている。ここを何とかしなければ今回のような事態再発を防ぐことはできないと思うんです。その点についてどうなさるのか。
  151. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 私が先ほどから申し上げておるわけでありますが、あの成田のあの動きですね、これは農民だとかそういう不満、そういうらちをもうこえた問題なんだ、反対のための反対、その反対という自分の考え方を押し通す、そのためにはいかに多数の国民に迷惑を、あるいは世界じゅうの人に迷惑を及ぼしてもあえてそれはかまわぬというような、そういう考え方の人たちの行動がああいうことを巻き起こした。そこで成田の空港ああいうふうにめちゃくちゃにされちゃった、これを修復いたしまして安全に開港できるように、これは事は急がなければならぬけれども、いま渡辺さんが御指摘されるように、これは問題もう少し根が深いんじゃないか。この深いところへメスを入れて、そうしてあの成田で事が起こっておりまするけれども、成田以外でもいろいろな形でああいう動きはあるわけです。その根っこを突かなければこの問題の解決にはならぬ、このような認識のもとに取り組んでいきたい、このように考えております。     —————————————
  152. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) この際、委員の異動について御報告いたします。  本日、多田省吾君が委員を辞任され、その補欠として藤原房雄君が選任されました。     —————————————
  153. 渡辺武

    ○渡辺武君 総理大臣自身も成田空港だけじゃないとおっしゃいましたけれども、今回のあの騒動に、襲撃に、一部だろうと思いますけれども、学校に巣くっている暴力学生集団、これが参加しているという状態があると私は思うんです。ですから成田のあそこだけに限って何とかしようと思っても私は無理だと思うんですね。だからやはり彼らの拠点である学校の問題、私どもは今度の予算委員会で衆参両院通じて京大、東大の問題取り上げましたけれども、こういう問題もこの際やっぱり解決していくということをお考えになるかどうか、これを伺いたい。
  154. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 非常に貴重な御意見でございますので、十分それらを腹に置きながらその問題の対策を考えてみたいと、このように考えます。
  155. 渡辺武

    ○渡辺武君 いまこの事件を契機にして、良識ある国民の中である程度の不安が起こっているんです。それは、政府がこういう事態を悪用して新しい何か治安立法を考えるんじゃないかという心配です。私はやっぱり、現行法を厳正に適用すればこんな連中の盲動くらいは抑えられるというふうに思うんですが、その点についてどうでしょう。
  156. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) いま法の不備があるから法を改正しようという、そういう前提で対策を考えておるわけじゃありません。しかし、不備があればこれはもちろん検討しなきゃならぬ問題であろうと、こういうふうに思います。思いますが、とにかく不備があれば法の改正もするということも含めまして、まあこのような問題の根源を突かなければならないというのが政府の考え方でございます。
  157. 渡辺武

    ○渡辺武君 この問題については改めて別の場所でいろいろ伺いたいと思います。  次に、円問題について若干伺いますが、総理先ほど、訪米してカーター大統領と会談をする際に、アメリカのドルの低落の問題ですね、これをどう防止するかという点の申し入れをしたいということをおっしゃったわけですが、総理も先ほど言われていましたように、日本政府もアメリカにいままでも何回も申し入れたということもおっしゃっていたですね。ところがこの日本政府の申し入れというのが私アメリカ側には十分に聞かれなかったんじゃないかという感じがするんです。なぜかといいますと、これは新聞記事で、アメリカ側の資料そのものを私まだ手に入れておりません。七七年のアメリカの国際収支ですね、これについて二百一億ドルを突破したと、経常収支の赤字が二百三億ドルを突破したと。七六年度の十四億二千七百万ドルの赤字に比べて一挙に十四倍に拡大したと、こういうことになっているんですね。まあ日本政府が申し入れて即座に効果が出るというふうにも私考えておりませんけれども、しかしこんなひどい経常収支の大幅赤字をアメリカが出して平気な顔しているというのは私は実情だと思うんです。ですから、今回やはり従来のこの申し入れだけではなくて、かなり強い具体的な申し入れをする必要があるんじゃないかという感じがしてるんですけれども、どういう申し入れをなさるおつもりでしょう。
  158. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 首脳会談で話すその中身をいまここでお答えするわけにはまいりませんけれども、まあとにかく世界の立場に立ちまして、一体どういうふうに経済を運営していったらいいのか。とにかくアメリカは世界第一の経済大国ですね、わが日本は自由社会において第二の工業力を持っておる国ですから、この二つの国が世界の経済にこれは非常に大きな影響を持つ立場にあるわけです。そのような認識のもとに、まあ世界を一体どういうふうに安定していくか、その点についてのあらゆる角度の問題を話し合ってみたい、このように考えます。
  159. 渡辺武

    ○渡辺武君 私、いままでのアメリカの対日態度を見ていますと非常に厳しいですね、言い分聞かなければ物すごい圧力をかけて円を急騰させるというような事態まで客観的には私ども見てきているわけですね。対抗手段を講じろということを私言おうとするわけじゃないんですけれども、しかし、この間あなた方の党の大平幹事長がどこかで講演をやって、政府のアメリカへの申し入れは不十分だということを言っているようですね。ですから、うっかり言い出してアメリカからお荷物をしょわされるという可能性さえあるんじゃないか。よくよく腹据えてそうして交渉に臨んでほしいというふうに思うんです。その点で、内容は言えないとおっしゃるんだけれども、大体どういう方向で交渉というか話し合いをされるのか、その点もう一回伺いたいんです。
  160. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 結局、日米欧が意見統一をいたしまして、そして通貨安定のための努力をするという以外に私は安定への道というものは発見できないと、このように思うんです。それを一体どういう形で実現するかということが、これからの世界の経済政策のかなめになってくるだろう、こういうふうに思います。その辺を踏まえまして、アメリカ、日本、それからその両国の首脳という、そういう立場のまず会談をするということでございます。
  161. 渡辺武

    ○渡辺武君 いまアメリカのローザがローザ構想を発表していますし、わが国では宮津企画庁長官がいわゆる宮澤構想なるものを発表している。当面の間際通貨の問題について何らかのやっぱり構想をそれぞれ模索しつつあるというのが私はいまの実情じゃないかと思うんですね。総理大臣としてどういう構想をお持ちの上で臨まれるのか、あるいは全然構想も持たないでただ話し合いということで臨まれるのか、その辺はとうですか。
  162. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 長い目で見ますと、これは固定制へ私は復帰するということが一番いいと思うんです。この固定制に復帰して初めて私は世界経済は本当に安定するというふうに考えますが、そういう展望を持つことは私はいいと思うんですよ。  さあそこへ、それじゃ時間をかけるにいたしましても一体どうやって持っていくのだということになると、その場合にローザ構想でありますとか、いろいろな考え方が出てくると思いますが、ローザ構想にいたしましても、いまのような有力な国が国際収支の大赤字を出している、他方において大黒字を出している、こういうような状態ではなかなかあれを実現するということはむずかしいんじゃないか。ですからまず日米欧、こういうものが相談いたしまして、そういう通貨安定への条件づくりというか基盤づくり、これをどうやっていくか。また、条件が完全に整わないにいたしましても、条件を整えつつある努力のその途上においてどういう通貨安定のための努力をするか、お互いにどういうマナーで通貨問題に対するかというようなことについてある程度の理解というものができることが私は望ましいんだろうと、こういうふうに思うんです。いまのように、一方においては大赤字だと、一方においては大黒字だというときに、ある一つの線を引いてみましても、その線を引くことがまた投機を呼ぶというような結果にもなりかねないんですよ。ですから、その辺はまだ条件整備というところに重点を置いた考え方の方が私は妥当じゃないか、そのように考えております。
  163. 渡辺武

    ○渡辺武君 いま総理もおっしゃいました、将来固定相場制に移る方がいいんだということをおっしゃっているわけですが、私、あこがれを持つことはだれもいいことだと思うんですけれども、しかし、やはり政治家としてはその構想を具体化するためにどういう条件が必要なのか、あるいはまたそこに到達するのにどんな段取りが考えられるのか、そういう点も十分に検討しておく必要があると思うんですね。その辺はどんなふうにお考えですか。
  164. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) やっぱり基本は主要国の経済政策、これが安定してくると、こういうことだろうと思うんです。一つの国はインフレ政策をとっている、他の一つの国はデフレ政策をとっている、そういう状態ではこの問題は解決しないんだろうと。インフレ政策をとる、これは妥当じゃありません、デフレ政策をとる、妥当じゃない。その中間の何らかの政策ということであろうと思いまするけれども、その辺について私は日米欧、大体この辺でひとつやっていこうじゃないか、その与える影響というものをお互いに検討し合って、認識し合って、そしてその示した経済路線というものを忠実にお互いに実行していくということが実現をされまして初めて私はこの通貨安定の基盤づくりと、こういうことになっていくんだろうと、こういうふうに考えております。
  165. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうおっしゃられると私心配になるんですね。昨年の先進国首脳会議でも日本の経常収支は赤字になると、成長率も六・七%でありましたかな、だというようなことで、これがいわば国際通貨問題を解決する一つの決め手みたいに言われたわけですが、今度もそういうことになりそうだという感じが非常に強くするんですよ。そういうことになるのかならないのか、つまり国際通貨制度そのものについて何らかの構想が打ち出される可能性があるのかどうか、その辺はどうですか。
  166. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) まあその前に経済政策についての調整が必要だろうと、こういうふうに思うんです。  昨年は失敗した、こういうお話ですが、確かに昨年はお互いに経済政策を出し合ってみてこれを忠実に実行しようやと、こういうことだったんです。それがそのとおりにいかなかったんですが、今度はその失敗を反省いたしまして、その反省のしに立ってお互いに目標を立てて努力し合おうと。これがない、そういう状態で為替の方の何か新しいルールを出しましても、私はそのルールは動いていかないだろう、このように考えます。
  167. 渡辺武

    ○渡辺武君 それから、先ほども話がありましたが、二百二十五円という異常な騰貴ぶりを円が示しているわけですね。これは何でしょうか、総理大臣としてば実勢からくるやむを得ないものだというふうに考えているのか、あるいは実勢を反映しない異常帯というふうに考えていられるのか、この辺はどうでしょうか。
  168. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 為替相場の現実の動きに対する評価、批判、これは私は、まあ私からはしない方がいいと、このように思いますので、ひとつ御了承を願います。
  169. 渡辺武

    ○渡辺武君 それからもう一点。  大臣、昨年の下半期からの円の急騰ですね。これは思いがけない事態だったということを繰り返し言われていたわけですが、今回の円の急騰ですね、これも思いがけない事態だったんですか、それともある程度予想はついていたことでしょうか。
  170. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) これも思いがけないとにかく動きであるという方が妥当であると、こういうふうに考えております。
  171. 渡辺武

    ○渡辺武君 その辺が私非常に、やっぱり一国の政策の最高責任者の言葉として、国民としては非常に心配なことだと思わざるを得ないんです。  先ほど総理大臣は、ドルの低落、それからこの円の輸出急増が続いていることからくる上昇、この二つの要因だとおっしゃっていた。ドルの低落については先ほど伺いましたが、どうも具体的に決め手になりそうなことが今回決まりそうもなさそうだなという感じがするんですよ。しかも、私ども質問しますと、いや七%の成長が実現すれば何とかなるという趣旨の御答弁が必ずはね返ってくる。七%の経済成長を達成し、六十億ドルの経常収支の黒ということがもし仮に達成したとすれば、一体円はどういうことになるだろうか。まあ何とかなりそうだという政府の答弁を仮に信用するとして、一方でドルの問題が解決しないでドルが低落するということになれば、この二百二十五円、これさえも今後維持できるのかどうなのかわからぬという状況にいま置かれているわけですね。その上に、総理大臣が今度のも思いがけないという趣旨のことを言われる。一体これから先、対内政策としてどういう対策を有効な対策として打ち出すというふうに考えていらっしゃるのか。この点どうですか。
  172. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 為替相場につきまして皆さんに聞かれた場合に、仮に私がある程度展望を持っておりましても、その私の答うべき答え方というものは、これはまあ予想もつかないことであったというほかないんです。そうしませんと、私がある程度の何か展望を持っておったということになると、その展望を持ったということ、これは私は大変またいろんな問題を引き起こす、そういう可能性がありますので、私は幾ら聞かれましても、これはまあ予想しない事態が起こっておると、こういうふうにお答えするほかはないと、このように御理解を願いたいわけです。  それから、まあ幾ら日本で努力したってそれは問題はアメリカじゃないかと、それはそのとおりなんです。しかし、先ほどから申し上げているとおり、この円ドル不安定、この要因の主たるものはアメリカだと、しかし、副次的に日本の国際収支の問題もあると、こういうふうに申し上げておりますので、その副次的であるにせよ、日本側の要因は六十億ドルという経常黒字、七%成長、これが実現されるということになりますればこれはまあ解消へ大きく実現をする、そういうふうに考えております。
  173. 中村利次

    ○中村利次君 私は、まず成田事件から質問をします。  総理は再三——再三というか、二回にわたって盗人にも三分の理という言葉があるという引用をされましたけれども、まあ私は、空港設置あるいは空港の開設に賛成か反対かで、反対というのにはそれなりの確かに三分でも四分でも理があると思いますよ。しかし、あの管制塔に乱入をして機器等を破壊したり、とにかく流血騒ぎを起こした、ああいうことについては、これは三分の理どころか一分も、全く理はゼロである、理はないと、こういうやっぱり断定でないといけないと思うんですよね、日本は法治国家ですから。そこで私は、あの事件なんかは暴徒だとか暴力集団という表現で律し切れるんだろうかと思うんですよ。これは明らかにどうも……。ところがこの集団は機関紙等によって空港の占拠をあらかじめ公表をし、それから、これは報道されるところによりますと、内戦という言葉まで使っておるという。ということになりますと、これは暴力行為だとか暴力集団とかということでなくて、彼らにしてみると明らかにこれは戦闘行為をやっておる。こういう者に対してどう対処をするのか、これはその基本姿勢が私はやっぱり大事だと思うんですよ。まずそれからお伺いします。
  174. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 法はこれを犯すことはできない、この何というかきわめて明快な理論をもってこの問題には対処すべきだと、このように考えております。いかに何というか事情がありましても法を犯すことは許されない、こういうことだろうと思います。三分の理とかなんとかといういまお話がありましたが、ややもするとこういう言い方があるんですよ。左翼暴力集団が、これがああいうことをしたその背景というものをひとつ考えてみろというような言い回しが、ややもすると、何かああいうことをしたことについて理由がありそうな印象を与えますから。それはいろんな御議論はありましょうけれども、いやしくも法治国家において法をみだりに——これは断じて許すことはできないことだ、これに徹してこの問題を処理すべきである、このように考えております。
  175. 中村利次

    ○中村利次君 いかなる背景があろうとも、ああいう暴力行為というよりも理不尽な行為、何というのか、ああいう行為が許されようはずはないわけですから、背景は背景、ああいう事実は事実と仕分けをして私はこれは対処をすべきであるのが当然だと思うんですよ。しかし、法は犯すべからずと総理はおっしゃったけれども、私は背景はいわゆる成田空港の背景がどうのこうのというよりも、国内においても流血騒ぎの背景がやっぱり過去にあった。あるいは国際的なテロリストによるいろんな事件があった。これは日本が直接かかわった事件でも二件すでにあるんですね。それに対しては人命尊重優先という立場から、やっぱり法を超えた対処を政府としてやられた。この間なんかはこれは十六億円でしたか、何か追い銭までぶっていわゆる法を曲げるようなことを、やっぱりこれはやらざるを得なかったというのか、おやりになったことは間違いない。そういうのが何か法秩序の破壊に対してどういう影響があるのか。あるいは今度の成田問題についても、燃料輸送を拒否をして動労がストライキをやった。これは労働運動と称するものに名をかりた明らかに違法行為ですよ、成田空港に絡む。これに対しても国民がなるほどと納得できるような対応はできない。まさに総理は法を犯すことは許されないとおっしゃるけれども、こういうぐあいに法治国家としてまことに遺憾な事態がいままで連続して起きているんですね。こういう背景が私はやっぱり問題である。だから画一的に単純に私はこうだああだと言うことはなかなかむずかしい問題でしょうけれども、やっぱりこれからこういう許すべからざる事件に対応する基本姿勢としては、こういうことも私はやっぱり加味して対応される必要があると思うんです。  それから、被害額は一億を超えることは間違いないだろうということでした。何か罪名をつければたくさんあるそうだけれども、仮に最高刑にしたとしても現行法律では、何ですか、これはけさのサンケイ新聞のサンケイ抄にあったんですがね、併合罪で十年半、最高刑として。現行法律では、総理は法律の専門家ではございませんから、総理にこういうことを聞くのが当を得ているかどうかはわかりませんが、行政の最高責任者としての姿勢として、ああいうあれに対して、十年前後ぐらいの、最高刑にしてもですよ、刑罰しかかけられない。そしてまた、何ということですか、また鉄塔を再び再建をして、きのうの夜中までかかってこいつを撤去したわけでしょう。こういうのだって、あそこへいろんなものをつくったり、設備をして、いわゆる彼らの言う内戦をしようというのに対して、まあ拱手傍観はしていないでしょうけれども、何かやっぱりそういう感じが、手の打ち方が緩いではないかという、こういう国民の歯ぎしりに対しては総理はどう対処をされますか。
  176. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 今度の事件は、私の認識では、これは成田空港で起こった事件でありますから、これは根っこがあって、そして成田空港にふき出した事件である、こういうふうなとらえ方をいたしておるわけです。やっぱりこの根っこについて、つまりこの事件を契機といたしまして、まあ、ああいう事態が再発しないようにどういうふうにしたら根本的な処置になるかということを、これはもう本当に根源的に考えなけりゃならぬ問題だと、このように考えておるわけであります。成田空港、これはもう安全第一として、その上に立って開港できるようにこれは急ぎます。と同時に、あのような何というか無法地帯がわが日本国の中に存在するというような状態、これをどうしてもなくさなけりゃならぬ。このためには本当にこの問題がその根源がどこにあるか、そこまでさかのぼって掘り下げて、そして事に当たらなけりゃならぬだろうと、このように思います。
  177. 中村利次

    ○中村利次君 もう時間がありませんから簡単に一音だけ質問をしますけれども、これは確かにいま円高問題は異常なことになっております。総理がおっしゃるとおり、これはやっぱりドルの価値が非常に下がっておる。ドルの信用が下落しておるというところに大きな原因がある。加えて日本がみずからの力で対応をしなきゃならないものもありますけれども、しかし、これは緊急に対応しなきゃいかぬとは思いますがなかなかむずかしい。むずかしいが、私はやっぱりきわめてショックなのは、この十五日に公定歩合を引き下げて、それから為替管理の強化と相まって、国内の景気回復だけではなくて、やっぱり円高対策も理由の中に入っていたと思うんです。ところが、そいつが何か引き金になったみたいに円はまず乱舞しちゃった。そうなりますと、予算がまあ間もなく上がる。こいつの執行を通じて様子を見たいというのはわかります。しかし、総理の政治日程の中にはやっぱりそんなにのんびりしないで、カーター大統領とお会いになるわけでしょう。そうなりますと、かなり大型の補正予算を含めて、日本の経常収支からあるいはアメリカのドル安問題から、そういうものを含めた対策というものをお持ちになりませんと、夏まで、秋口まで様子を見た上でというんでは、私は日本国の総理大臣としてはこれは通らぬと思いますがね。時間がございませんから細かくお伺いはできませんが、ぴたっとくるような御答弁ひとつやってくれませんか。
  178. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) まあ数日後に新しい年度が始まるわけですが、この年度に対しましてはとにかく七%成長、六十億経常黒字、こういう二つの大きな目標、願望を持っておるわけです。その目標をにらみながら毎月毎月のこの動き、これをよくチェックして、この目標を外れるというような動きがありますれば、その際はその時点における客観情勢に応じましてベストと思える施策を機動的に大胆にとっていくと、こういう考えであります。それが私は内外の期待にこたえるゆえんであろう、このように考えます。
  179. 野末陳平

    ○野末陳平君 くどいようですけれども、私も成田問題について一、二お聞きしておきたいと思います。  それで、反対運動がいまのままで続く中で、これからスムーズな開港ができるかどうかということは非常に心配に思っている人は非常に多いと思うんですね。問題は総理、これからも続くであろうこの反対勢力運動に対してどういう対策を具体的に打つかということになろうかと思うんで、先ほどからも総理の御意見もちらちら出ておりましたけど、まず総理のおっしゃる反対のための反対というようなのは、多分過激派ゲリラといわれるようなあの連中に対してだと思うんですよ。まず、これに対してはどういう対策を総理はこれから考えて打たれるんですか。スムーズな開港と安全な運航のためには、何か具体的にしなければまた起こりますよ。
  180. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) さしあたり警備体制を十分に厳重にすると、こういうことだろうと思います。同時に、いまの警備体制を十分にするということは、まあ今回の事件に顧みまして、いろいろいま警察当局も考えておるところがあると思うんです。そういうところを踏まえまして、まあできる限りのことをしていくということから始まったわけです。そういうふうに御理解願います。  同時に、今度はこの成田というスポットの問題というとらえ方でなくて、こういう問題、これは根が深いんだ、この根が深い問題に対しましてどういう対処の仕方をするかという検討をいたしまして、それぞれの対処方策を決める、こういうことだと思います。
  181. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあ根っこの方はなかなか時間もかかるしむずかしいだろうと思いますが、当面警備力を十分にしてというお話ですが、それは開港までですか、それともずっとこれからも予想される事態に応じて、十分なるというよりも、何か異常とも言えるような警備力を続けなきゃいかぬというふうにお考えなんですか。
  182. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) とにかく開港ができればそれでいいというわけじゃないんです。やっぱり安全運航ということですから、安全運航を確保するというための警備体制、これは万全を期さなければならぬと考えております。
  183. 野末陳平

    ○野末陳平君 次に、同じく反対でも地元民を中心にした反対運動もあるわけですね。総理はもうその方は余りないという御見解のようですが、やはりある程度あるんですね。この人たちはもはや意地と生活をかけているような反対で、ちょっとやそっとの説得じゃ無理だろうと、もちろんイデオロギー的なものもあるかもしれません、いろいろそれを支援する勢力には。しかし、地元民中心の反対運動というのは過激派とはまた別にあるだろうと、まあそれはぼくの考えなんですが。こういう人たちに対してはどういう対策をもってこれから臨まれますか。この人たちも廃港に追い込むまでがんばるというようなことを言っておりまして、スムーズな開港ができ、そして安全な運航ができるかどうか、それに対して非常に反対を意思表示しているわけですね。そこでどうでしょうか、対策は。
  184. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 地元の不満ということにつきましては、これは十分話し合いを今後も続けなけりゃならぬ。ことにいまの騒音対策というような点につきまして、これはかなり粘り強く対処をしていかなければならぬ、こういうふうに考えておりますけれども、地元地元と言いますけれども、ただ生まれが、出身が地元だと、戸籍が地元だということであって、いまや暴徒と一緒になって一緒の行動をしているという、そういう人があるんだということも御理解願います。
  185. 野末陳平

    ○野末陳平君 ですからぼくの言うのは、地元と言ってもいろんな人いるわけです。賛成、一日も早く開港してほしいというのも当然いて、むしろその方が数は多いですよ。しかし、いわゆるいままで長い間の話し合いに応じないでがんばってきたというのは、やはりかなりの数いるわけですね。この人たちもぼく個人は、もういまや反対運動続けるときじゃないじゃないかと思いますよ。だけどもやはりいままでのいきさつから言って、恐らくもう後に引けないでしょう。その人たちを含めて言っているわけで、過激派と一緒になっているからそこのところを理解してほしいとおっしゃるけれども、話し合いで果たしてこの人たちが説得に応じるなんて考えられない。それから騒音の問題とはちょっとまた違うわけですね。もっと根の深い反対をしているわけです。それについてお話ししているんです。
  186. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 純粋に地元という立場で、空港に不満があるという人に対しましては、これはもう説得を続けなけりゃならぬと、こういうふうに思うわけであります。それでも説得に理解を示さぬという場合には、やっぱり国民大多数がこれはもっともだという方向に従って結論を出すほかはない。幾らその一人、三人の人が反対だと言いましても、羽田で一大惨事が起きたら一体どうするんだという大多数の人の立場も考えなければなりませんから、一人、二人の人が反対だということで開港をおくらす、こういうことはできません。
  187. 野末陳平

    ○野末陳平君 恐らく、世論調査しているわけじゃないですけれども国民のうちの多数は、早く安全な開港ができてということだろうと思うんです。ですからぼくもそれをお願いしますが、力と力の対決になってしまわないように、ひとつ慎重に考えてほしいと、まあそういうことなんです。  それから、先ほどからも出ておりましたけれども、増税が不可避だというような感じになっております。総理は先ほどの御意見の中で、一般消費税とそれから所得税の増税の方と、二つをお話しになっておりまして、二者択一あるいはミックスするわけじゃないでしょうけれども、どちらも必要、どちらもやむを得ないということなのか。いろんな御意見をおっしゃっておりましたが、先日この委員会で参考人の学者の先生方が来まして、そのときの話で、一般消費税よりも所得税強化の方がいいということを参考人の方ははっきりおっしゃっておりまして、そうなるといよいよ二者択一しかないのかなと、じゃあどちらを選ぶべきかなあということになってしまうんです。ですから、たとえば私個人もどちらがいいのかということを考えなければならぬと思うんですが、総理、結論として総理自身は一般消費税とそれから所得税強化の方向と、この二つをどちらか一つと仮に仮定するならば、どちらが日本人になじむであろうか、どちらが日本人の国民性に合う税金であるとお考えなのか、それを改めてちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  188. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) その判断は税制改正を行う時点で、まあ社会情勢がどうだ、また経済情勢がどうだ、国定のふところぐあいとか、あるいは物価の情勢だとか景気の情勢だとか、そういういろんな条件をにらんで決めるべき問題であろうと、こういうふうに思います。同時に、国民がその時点においてどういう感じを持つだろうかということも重要な点だろうと、このように考えます。
  189. 野末陳平

    ○野末陳平君 国民感じというのはなかなかわかりませんでね。結局は増税は全部いやだとか値上げは何でも反対だとかっていう声もまた根強いわけですから、国民感じよりも政治家がどう決断するかと、あるいは国民の考え方をどういうふうに理解してどう把握してという方が大事だろうと思うんですよ。  そこで、いまの時代に合わせてというか、そのときそのときの時代によってどちらがいいかは決めなきゃならぬということですが、仮に来年どうしてもかなりの増税をしなければならないという場合にどうするか、どちらがいいかというふうにしぼりますと、総理の意見ばかり聞くんじゃ悪いからぼく自身が考えて個人的意見を言いますと、来年どうしても実現しなければならないという仮定があったならば、一般消費税は無理だろうと思うんですよ。来年どうしてもやらなきゃならぬとなれば、所得税強化の方がむしろ可能性があるんじゃないかと。しかし、来年どっちもとてもできないだろうと思いますよ。とてもそんな、タイミングも悪いし、経済状況も悪いと思いますが、総理はどうでしょう。ぼくも意見を言ったわけですから、総理もひとつ。
  190. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) 何じゃないでしょうか。来年の物価の落ちつき状態がどういうふうになっていくだろうか。また景気がどうなって、国民のふところぐあいがどうなっていくのであろうか。そういう客観情勢によって判断は違ってくるんではないでしょうか。それがいま、まだ的確に読みとれないというこの時点において、どっちがいいんだという結論を出すのは少し早過ぎるんではあるまいかと、このように考えます。
  191. 野末陳平

    ○野末陳平君 結論ば早過ぎると思いますが、そうすると総理の頭には、ともかく来年あたり一般消費税なり所得税強化というのは、これはもうかなり頭の中にあるということで、ただ判断がむずかしいということと理解していいわけですね。
  192. 福田赳夫

    ○国務大臣(福田赳夫君) これから先々増税必至の時代になります。なりますけれども、その増税をいかなる時点でいかなる規模で実施するか、いかなる態様で実施するかということは、これば先々において判断すべき問題であって、いまこの時点において判断するのは少し早過ぎる、こういうふうに考えます。
  193. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。  次回は三月三十日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十分散会