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1978-03-23 第84回国会 参議院 大蔵委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十三日(木曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員異動  三月二十二日     辞任         補欠選任      渡辺  武君     内藤  功君  三月二十三日     辞任         補欠選任      内藤  功君     渡辺  武君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         嶋崎  均君     理 事                 藤田 正明君                 細川 護熙君                 福間 知之君                 塩出 啓典君                 中村 利次君     委 員                 糸山英太郎君                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 戸塚 進也君                 中西 一郎君                 桧垣徳太郎君                 藤井 裕久君                 宮田  輝君                 矢田部 理君                 多田 省吾君                 渡辺  武君                 市川 房枝君                 野末 陳平君    国務大臣        大 蔵 大 臣  村山 達雄君    政府委員        経済企画庁調整        局審議官     澤野  潤君        大蔵省主計局次        長        山口 光秀君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省関税局長  戸塚 岩夫君        大蔵省理財局長  田中  敬君        大蔵省証券局長  山内  宏君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        大蔵省国際金融        局長       旦  弘昌君        国税庁次長    谷口  昇君        国税庁税部長  水口  昭君        国税庁調査査察        部長       藤仲 貞一君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君    説明員        国土庁土地局土        地政策課長    佐藤 和男君        大蔵大臣官房調        査企画課長    大竹 宏繁君        通商産業省通商        政策局国際経済        部国際経済課長  黒田  真君        通商産業省通商        政策局経済協力        部経済協力課長  河野権一郎君        通商産業省貿易        局輸入課長    斎藤 成雄君        通商産業省産業        政策局企業行動        課長       南学 政明君        建設省計画局宅        地企画室長    木内 啓介君    参考人        国際協力事業団        総裁       法眼 晋作君        日本銀行総裁  前川 春雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○有価証券取引税法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関す  る法律の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨二十二日、渡辺武君が委員辞任され、その補欠として内藤功君が選任されました。     —————————————
  3. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日参考人として日本銀行総裁前川春雄君及び国際協力事業団総裁法眼晋作君の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 有価証券取引税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案を便宜一括して議題といたします。  両案の趣旨説明は去る十七日の委員会において聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。福間君。
  6. 福間知之

    福間知之君 日銀総裁に御出席をいただいておりますが、時間の関係もおありと思いますんで、最初に伺いたいと思います。  申すまでもなく、当面円高ないしはドル安と言われるごとく、国際通貨がかなり変動を続けているわけでありますけれども、昨日の相場はどの程度になりましたですか。
  7. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 前川でございます。  昨日の東京市場、二百三十円三十銭でございました。ロンドンニューヨーク円相場も大体二百三十円三十銭前後で推移しております。  訂正いたします。  昨日の東京の終わり値は二百三十一円でございまして、それを受けましたロンドンニューヨーク相場は二百三十円三十銭前後でございます。
  8. 福間知之

    福間知之君 最近の円高をめぐる国際的な環境というものについては、先日来予算委員会でも取り上げて議論が行われてきているわけでありますけれども、現在のこの円高そのものは、総理の話によっても、むしろ基軸通貨であるドルが安いというか、実勢価値を反映しているとは思えない、こういうふうな意見があるわけでございます。だとするならば、もちろんアメリカ通貨当局のしかるべき適切な対応というものが強く要請されるべきでございますが、西ドイツアメリカとの間では、わが国アメリカとの関係以上に密接にこの通貨問題について連携をとっているやに聞くんですが、日銀当局はどのように受け取っておられますか。
  9. 前川春雄

    参考人前川春雄君) お説のとおり、最近の円相場円高の問題は、日本国際収支黒字の問題と、反面アメリカ国際収支大幅赤字に起因しておるわけでございますので、アメリカ国際収支は昨日発表されましたところでも、昨年じゅうの経常収支赤字が二百億ドルを超えておるという状態でございます。したがいまして、円が高くなると同時にドイツマルクあるいはスイスフランドルに対して上昇するという状況が出ておりますることは御指摘のとおりでございます。  アメリカはこういう状態に対しまして、まず国際収支赤字、この基礎的な不均衡を少しでも減らすという努力をしてもらわなければいけないわけでございまするが、それが為替面におきましては、ドル市場において買い支えるという介入操作が要請されておるわけでございます。現在までのところ、アメリカが自分の意思によって、イニシアチブによって市場介入し、ドルを買い支えておりまするのは、御指摘のとおりドイツマルクだけでございます。アメリカ考え方は、いまの世界為替市場取引の中でドイツマルクの占める地位が非常に高いということから、ドイツマルクドルの間の相場についてある程度の安定が得られれば、それがひいてはスイスフランあるいは円に対しても安定的な効果を及ぼすであろうというのがアメリカ考え方基本であろうと思います。円によりまして、円相場に対する介入につきましては、アメリカは現在のところ東京市場並びにニューヨーク市場において、日本銀行の要請によってアメリカ連邦準備銀行ニューヨークにおいては介入しておる。これで十分であろうというのがアメリカ基本的な考え方でございます。  私ども、こういうふうな円に対する介入を、各国共同して安定に努力するという事態が招来されることは望ましいことであろうというふうに思っておりまするが、その前に、実際の市場介入アメリカは現在のところはニューヨークにおいて日本銀行委託に基づくフェデラル・リザーブ・バンクの介入をもって十分だというふうに考えております。私どもも、まず相場の安定、介入ということを行います場合には、いままでのやり方をそのまま踏襲して、しばらくはニューヨークにおける介入を、日本銀行委託に基づきましてニューヨーク連邦準備銀行にしていただくというふうにしてまいりたいというふうに考えております。
  10. 福間知之

    福間知之君 副総裁がおっしゃった意味はわかるんですが、私、その一歩先をどう考えていられるかということをお聞きしたかったわけです。  たとえば、いまのお話しのように、アメリカマルクというものの位置づけを非常に重要視しているということはこれはわかるわけであります。しかし、そのことは結果として円に集中的な攻撃というか、円高を一層促進するという傾向をもたらすのじゃないのか。しょせん、国際的な通貨価値というものは多角的にやはり決まっていくというふうに考えられるわけですから、いずれ円高が一層強まれば、それは必ずまたマルクにはね返り、それがまたドル国際的信認を落とすということにつながっていくのじゃないかと思うわけでありまして、そういう点で、まず何よりも、マルクを買い支えるということと同時に、肝心かなめドル威信回復アメリカがどのような手を打つべきなのかということが非常に重要でございまして、昨日の報道でも、ブルメンソール長官が何かいま申し上げたようなこととは逆の発言をされているやに伺うので、これではなお円の一定の安定というようなものは期待ができないのじゃないかということで、非常に不安がまだあると思うんですがね。
  11. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 通貨不安は基礎的な国際収支の不均衡ということから起こるものでございまするので、いま世界的にはアメリカ大幅赤字、それに対応する日本あるいはドイツ大幅黒字、そういうことが大きな通貨不安の基礎になっておることは否定できないところでございます。したがいまして、この基礎的な不均衡状態を改善することがまず第一でございますが、それにはやはり時日を要しまするので、それまでの間、不当な思惑的な投機的な動きによって為替相場が混乱するという状態に対しましては、各国共同してこれが安定を図るということが必要であると私も考えております。  そういう意味で、まずどこからやるかという点で、ドイツと、マルクとの間の相場安定策がまずとられておるわけでございます。アメリカ考え方は、私が先ほど申し上げましたようにマルクとの間の均衡が、均衡と申しますか、相場の安定が少しでも回復できれば、それが他の通貨にも及ぼす、その安定が次第に及んでいくと考え方であろうと思いますが、いずれにいたしましても相場の安定につきましては各国共同した行為が必要であろうと私も思っております。しかし、その前にやはりいまの国際収支上の基礎的な不均衡、大幅な基礎的な不均衡を少しでも減らすという努力をいたしませんと、どうしても相場為替市場に対しましてはその不均衡を利用いたしました動きが働きましてなかなか安定が得られないという状態でございます。そういう意味で、一方で基礎的な不均衡を是正する措置を講じながら、同時に相場の安定に対しましては各国共同してそれぞれの方向において安定介入、安定に努力するということが必要なのではないかと思っておりますし、現在そういう方向措置がとられておるというふうに考えております。
  12. 福間知之

    福間知之君 いまの変動相場制というものが、まあ一般的に言って通貨流動性とかあるいはまた調整とか信認とかいう、こういう三つの要素で国際通貨問題というのが考えられるとするならば、いまの変動制は大分危機的な状態に直面しているんじゃないかという説があり、かつての固定相場制の末期的な事態に似通っているのではないか、こういう見方がございますが、副総裁はどのようにお考え——特にいまのお答えの中でもありましたように、基礎的な収支均衡というふうなものを考えた場合、先ほどのお話にも出ていましたが、アメリカが、けさの発表では昨年七七年二百二億ドル赤字、これは七六年が十四億ドルです、七二年が九十九億ドル、かつてない大幅な赤字であるということはこの数字で明らかであります。これは基礎的収支の不均衡の象徴みたいなものでございますけれども、しからばこれをアメリカはまずどうすべきかと、どうしてもらわなきゃならぬのかということ、これは日本日銀通貨当局としても重大な関心があろうと思うんですけれども、その点を含めて、これが放置されるならば私は確かに変動相場制そのもの一つの大きな転機に立たされているということも言えないことはない、こういうふうに思うわけですけれども、そのあたりはいかがですか。
  13. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 変動相場制は、御承知のように四十六年、四十七年、それまでのブレトンウッズ体制と申しますか、固定平価制度がどうしてもうまくいかない、ニクソン・ショックが四十六年で、固定平価制度はそこで崩れたわけでございまするが、その年の暮れにスミソニアン協定というのを結びまして、もう一度新しい平価的なものを基礎にした固定平価制度を試したわけでございまするが、それもわずか一年にして維持できなくなったという状態でございます。その結果、変動制に移ったわけでございまするが、各国経済成長率あるいはインフレ率というものが非常に差がありまする状態では、固定平価制度はなかなか維持できないというのがその当時の状況でございましたし、現在もそういう状態は続いておると思います。したがいまして、変動相場制度というのはいい制度であるからそれを採用したというよりも、固定平価制度がなかなか維持できなくなったという環境のもとに変動相場制度に移行したというのが実情であろうかというふうに思います。  変動相場制度基本的な考え方は、国際収支の不均衡相場変動によって調節をすると、そういうふうな対外的な影響は国内に及ぼさない、国内政策国際収支の制約から離れて遂行していくという基本的な考え方であったわけでございまするが、しかし、その国際収支の不均衡状態というものが非常に大きい場合には、なかなか変動相場制度ではそれを修正することが困難であるということは、最近の事例をもって十分これを証明しておるわけでございます。  一方、変動相場制というのはどうしても相場変動が行き過ぎる弊害を持っております。これも過去一年ぐらいの状況から見ましても、そういう相場制度変動相場制度弊害というものは非常に強くあらわれておるように思います。ただ、変動相場制度には弊害がございまするけれども、しかし、いま固定平価制度に返ってうまく運営できるかどうかということになりますると、先ほど申し上げました成長率あるいはインフレ率各国の差異というものが非常に大きい現状では、なかなかそれも困難であろうというふうに考えます。私ども考えから申しますると、やはり基礎的な不均衡というものを、それぞれの国が相場制度でなしに国内政策なり何なりによってこの不均衡を少しでも減らしていくという努力、これがまず第一であろうと思います。変動相場制には、弊害を先ほど申しましたけれども、一方いい面もあるわけでございまするので、変動相場制の持つ相場変動による国際収支調整力というものを活用しながら、今後経済の運営を図っていくということよりほかに方法はないのではないかというふうに考えております。
  14. 福間知之

    福間知之君 最近、欧米諸国における一つ傾向として、国内的あるいは対外的に何か統制色的な色彩を強めているような印象があるわけでございますけれども、たとえばまあ東京ラウンドによる多角的な貿易交渉、こういう面を進める一方において、保護貿易主義的、管理貿易的な対策が頭を国内においてもたげているというふうな傾向を感じるわけです。  最近、聞くところによると、スイスが緊急避難的とは言いながらも為替管理を強化する策を講じたと言われているのですが、具体的にはどういうことが行われているのですか。
  15. 前川春雄

    参考人前川春雄君) スイスにおきまして最近とられました為替管理面措置は、非居住者による債券の取得を全部禁止したということが非常に特色でございます。その他非居住者によるスイスフラン建て預金、それに金利をつけることを禁止することはもちろん、いわゆるネガティブインタレストと申しますか、逆に金利をとる、預金者から金利をとるというような措置も構じておるわけです。そういうことによってスイスに外資が入ってくるのを極力防遏する、それによってスイスフランの上昇を少しでも食いとめようという措置をとっております。その他先物相場等につきましても、その先物を、これは商取引上必要な範囲だけに限る趣旨から、先物の規制の強化を図っております。
  16. 福間知之

    福間知之君 これに関連して、後ほど大蔵大臣にもわが国対応策について一、二お聞きをしたいのですが、その前に、いま申し上げてきたような観点から見て、最近大蔵大臣も、予算委員会でこの通貨制度の改革についての一定意向表明された。あるいは宮澤経企庁長官も、大蔵大臣に先立ち、そういう意向表明をなされているわけですが、日銀当局としては、この経企長官なり大蔵大臣なりがまだ意向として表明されたにすぎませんけれども、確とした当局政策として出されたわけではありませんけれども、いわゆる一種の管理フロート制というようなものの是非について、まあかつてのローザ構想では不十分であって、それをさらに拡大した形での管理フロート制、こういうものが必要ではないかという経企長官なり大蔵大臣なりの意向のように受け取るんですが、だとするならば、日銀当局はいまそのような方向わが国として関係諸国に提起すべきであるとお考えかどうかということについて、いかがですか。
  17. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 為替相場の安定が望ましいことはもう言うをまたないところでございます。そういう見地からいまの世界、国際的な為替市場状況を見ますると、非常にそういう安定を願う気持ちとは逆な動きをしておることは御指摘のとおりでございます。こういう状態を、それに対応してどうやって将来安定さしていくかということにつきましては、基本的には関係各国が協力して同じ意識を持って安定に努力するということ以外にこの安定を期待をすることば困難であるということは、これまた当然のことであろうというふうに思います。ただ、そのときに各国が協力するためには、いまの国際収支上の非常に大幅な不均衡、こういうものをある程度減らすことができるか、あるいははっきりしたそういう見通しが立つかということがございませんと、この大幅な不均衡のままで為替面だけの安定を図るということは恐らく事実上は不可能ではないかというふうに考えております。将来の対応といたしまして、相場の安定を図るのに各国が協力するということは不可欠であると私どもは思いますが、そのためにはいまの不均衡状態がもう少し減るか、あるいは減ることにはっきりした見通しがつくということが必要であろうというふうに私は考えております。
  18. 福間知之

    福間知之君 大蔵大臣はいかがですか。
  19. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 基本的にはいま前川総裁が言ったことと全く同じでございまして、そこが一番大事だと思っているのでございます。  ただ、最近の事情を見ますと、やや投機的な動きが誘発されておる。それに対して日本アメリカドイツも、それぞれ困った事態であるということの共通認識は深まりつつあるように思いますので、その限りにおいてお互いにそういうものの動きをとめることによって、経済実勢を離れた為替相場変動をある程度抑制する、その必要性認識というものが漸次高まりつつあると、こういうふうに見ておりますので、一番大きな問題は、やはりアメリカ側に特にその認識が深まりつつありますので、できるだけその方向で協力してもらいたい、そういうことが私はいま基本であろうと思うわけでございます。  基本的には、言うまでもなく基礎収支の問題が片づかない限り、その末端のところでいかにやってみてもこれはどうにもならない問題であることは言うまでもありませんが、限られた分野において共通認識を持ち、そしてそれぞれの努力をする可能性があるのではないか、こういうことを申し上げているわけでございます。
  20. 福間知之

    福間知之君 大蔵大臣アメリカでも大分認識が高まってきたと、こういうふうにいまおっしゃったわけでありますが、私は具体的にはどうなのか、ちょっとそれだけでは理解ができないんですが、逆に報道されるところによると、ブルメンソール長官は二十一日のニューズウイークですか、インタビューにおいて、ドル価値の下落によって国際金融体制が崩壊するというふうな懸念は空想の飛躍以外の何物でもないと言って、何かわざわざしく逆説的な立場から強調をしているんですがね。私たちから言えば釈然としない感じがするんですが、大臣がおっしゃるように、そういう表向きの意向表明とは別に、ドルがどんどん下がっていくということについての新しい危機意識というか、認識が深まっているとするならば、いまが、先ほど来から触れられている管理フロート制といいますか、変動相場制の新しい構想、そういうものを積極的に提起しリードしていく役割りを果たすことがいいと、必要だというふうに大蔵大臣のお考えというのは大体聞き取れるんですが、それでよろしいわけですか。
  21. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 予算委員会でもしばしば述べましたように共通認識、それが一番大事じゃないか。やはり国際収支の大幅な不均衡が、ある国は大幅な黒字、ある国は大幅な赤字、そういうものを是正していくというところのいろんな国内政策をそれぞれ持つということ、これは基本的に大事であることは言うまでもございませんけれども、それにしても経済実勢を離れたような為替市場での動き、これも相互に困ることに違いない。そういう共通認識をまず深めるということがなければ、いかに具体的措置を提案してみても、これは初めから共通の土俵がないわけでございますから、実を結ぶはずがないということを私は強調しているのでございます。  その意味で、現在やや経済実勢を離れた短期資金の移動がある、そのことによって為替実勢以上に動いておる、それの防止の必要性というものについて、まず共同必要性についての認識を深めること、そこからやはり始めるべきではないであろうか。その点は、ブルメンソールはいろんなことを言っておるのでございますけれども基礎的な立場で物を言ってみたり、そのときの立場で物を言ってみたりしますから、それを統一的に解釈することはなかなかむずかしいわけでございますが、私は少なくとも米独の間であのような共同措置がとられたこと自身が、アメリカがやはりそういう認識を深めつつある、そしてそのことはやがて円にもすぐ好影響を及ぼす、こういう認識でやっていると思うものでございますから、漸次認識は深まりつつある、その認識をさらに一層深めていってもらいたい、そしてその点で合意が得られるならば具体的措置についてはおのずから出てくるのではなかろうか、こう申し上げているわけでございます。
  22. 福間知之

    福間知之君 大臣宮澤経企長官アメリカにすでに安定策について打診を始めたやの報道もあるわけですけれども、それはともかくといたしまして、いまの大臣意向からしても、もうしばらく推移を見守っていくということのようであります。  御案内のとおり、四月末にはIMFの暫定委員会がありまするし、五月の初旬には日米首脳会談もございます。あるいは七月の上旬には先進国首脳会議がボンで開かれる、こういうふうに重要な国際的な経済問題を話し合う場がございますから、一つの時期的めどとして、わが国通貨当局としては、やはり事態の推移を重視しながら適切に対応をしていくべきではないか。私は、特にやはりいまこれだけの不安定な円相場というものが持続しておりますだけに、一般の国民あるいはまた財界、企業経営者、それぞれとまどいがやはりあると思うんです。したがって、なかなか心理的に景気浮揚への意欲というものがわきにくい、阻害される要因になっているんじゃないかと思います。また、外人を初め日本の円に対する投機色というものが強まっているということも、これは国内対策としては非常に重要視しなきゃならぬ問題だと思いまするし、要するに当面考えられる、あるいは言えることは、私は国内の対策だけでは円高問題少しむつかしいんじゃないのか。為替管理だとか、あるいはまた国内の内需拡大だとか緊急輸入とか、いろんな策をいま打っているわけですけれども、それだけでは円高という問題は簡単には片づかないのではないのか、こういうふうな視点で先ほど来お聞きしたような次第でございます。  ところで、日銀総裁もおいでのうちに——公定歩合の引き下げというものが行われたわけでございます。金利のさらに引き下げに連動するわけでございますが、今回の公定歩合引き下げというのは、恐らく近い将来においてこれがまず最後じゃないかとも言われているわけであります、戦後最低の金利水準になっているという面からいきましても。したがって、景気回復策としては日銀の打つ金利政策としてはこれが最後じゃないのかと、こういうふうに言われているんですが、副総裁はどういうふうにお考えですか。
  23. 前川春雄

    参考人前川春雄君) いま御指摘のございましたように、公定歩合の引き下げも最低の水準まで下げられたわけです。私ども政府の財政面における施策とあわせて、金融面からも景気の回復を一日でも早く実現したいという点から公定歩合の引き下げに踏み切ったわけでございます。しかも、〇・七五というかなり大幅な引き下げにしたわけでございます。  金利につきまして、これによって企業の金利費用の負担軽減ということが少しでも景気回復に役立てばという気持ちを持っておるわけでございまするが、金利は企業にとっては借入金のコストでございまするが、一方、預金者にとっては所得になるわけです。金利はそういう意味でコストばかりでなしに、全体の国の資金の配分と申しますか、流れに重要な意味を持っておりますので、必ずしも企業のコストという面だけから判断するわけにはいかないものでございます。現に預金金利の引き下げをいたしまするが、これも非常にもうすでに低位にまで下がっておりますので、それが預金者に、国民大衆に及ぼす影響というものは決してわれわれは無視してはいけないというふうに考えております。  しかし、これが最後であるかどうかということにつきましては、金融政策は私どもも決して固定的に考えておりません。それぞれそのときどきの情勢に応じて、必要ならば私どももうこれで金融政策は出尽くしておしまいですというようなつもりはございません。そのときどきの情勢に応じて、必要があれば手を打たなければならないということもございますし、預金金利金利体系の一環でございまするので、そういう点で預金を含めた金利というものは、金利政策を遂行していく上においては無視できない要素であろうというふうには考えております。  しかし、いま先ほど申し上げましたコストと同時に資金配分の重要な機能を持っておるということから考えまして、私ども金利政策の遂行には十分慎重な配慮をいたす必要があろうというふうに考えております。
  24. 福間知之

    福間知之君 副総裁が主宰された金利調整審議会、昨日開かれたようでございますが、その決定の概要をお聞かせください。
  25. 前川春雄

    参考人前川春雄君) 金利調整審議会は、臨時金利調整法に基づきまして金利の最高限度を決めることになっておりまするが、最高限度を決めますのに、大蔵大臣の発議に基づきまして政策委員会から金利調整審議会に諮問があるわけでございます。それに基づきまして金利調整審議会といたしましては最高限度、預金金利の最高限度の引き下げをいたしたわけでございます。これに基づきまして預金金利の具体的な引き下げにつきましては、政策委員会におけるガイドラインによって定期性預金につきましては〇・七五、その他の預金につきましては〇・五の引き下げが行われたわけでございます。これは告示等の手続がございまするので、そういう手続がまだ未了でございまするけれども、引き下げの内容は定期性について〇・七五、その他の預金については〇・五の引き下げということでございます。
  26. 福間知之

    福間知之君 いずれ郵政審議会との関係で、例の郵便貯金の金利についても引き下げられるんじゃないのかという不安があるわけですが、先般予算委員会でも私総理にお聞きしたんですけども、保護すべき階層の貯金については考慮するというお話がございましたけども大蔵大臣、これはその枠をぜひ私は拡大をしていくべきじゃないかと思うんですが、いかがですか。
  27. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 公定歩合の引き下げは、貸し出し金利の引き下げをねらいといたしまして、財政と並んで金融面からの景気対策を支えていく、そのことはやがて国際収支にも大きくつながってくるであろう、また国内景気にも大きくつながってくるであろうと、こういうねらいでやっておるわけでございますが、しばしば申し上げましたように、現在の預金、貸し出し金利のさやから申しますと、すでに逆転しているものも相当あるわけでございますので、同じ程度の幅、ただいま副総裁から言いましたように、定期性預金については〇・七五、その他につきましては〇・五程度下げることが必要だと考えているわけでございます。しかし、おっしゃるように本当に零細な預金については考慮しなければならないということで、従来から福祉預金制度については六・七五の金利でやっているわけでございます。この点につきましては今回におきましてもそのまま据え置こうと、こういう考えを持っているわけでございます。  福間委員は、さらにそれをもっと広げるべきではないかというもしお話でございますと、これも予算委員会で申しましたように、これはなかなかむずかしい話でございまして、特に零細預金というものが中小金融機関の方に集まっておるという関係もございまして、それをもし特例を認めますと、いま一番救済の必要な中小企業への貸し出し金利は下げることができないということにもなります。やはり金利の問題は個々の預金者の個別事情を考慮するにはなかなかむずかしい事情にございますので、いま私たちといたしましては現在以上に特例を設ける範囲を広げようという考えは持っていない、このように申し上げているところでございます。
  28. 福間知之

    福間知之君 重ねてこれは、特に零細預金者立場からやはり私は考慮を願いたいと思うんです。まあざっくばらんな話は、金利が下がったからといって、じゃ預金を引き出して消費に使うかというふうな傾向にはなかなかならないものでありまして、今回の公定歩合なり金利の引き下げというもののねらいは、国際的な円高対策だとか、あるいはまたドルの流入防止だとか、あるいはまた国内的には景気浮揚、内需の拡大、民間設備投資の拡大などなどいろいろ多目的な意味を持って行われたわけでございますが、最も個人消費につながる範囲の大きな零細なそういう貯金者のいわば顔を暗くしないようにすることが私は景気対策上も肝要ではないかと、こういう観点で重ねてこれは要望をしておきたいと思うわけであります。  まあ副総裁、要するに今度の引き下げによって景気浮揚ということに大いにひとつ役立たせたいと、こういう考えだということは十分承知をしているわけでありますが、なかなかこれだけで切り札にならないということもありまするので、さらに日銀としてなし得ること、あるいはまたなすべきだと考えることはひとつ積極的にこの際やっていただかなきゃならぬかと、こういうふうに存じます。  きょうは副総裁お忙しい中ありがとうございました。あと少し別の問題に入りたいと思います。御退席いただいて結構でございます。  関連して、外人の債券買いの問題について最近の傾向をお聞きしたいんですが、ことしに入ってからの外人の債券取得額、あるいはまた自由円預金の増加というものの水準はどれくらいになってますか。
  29. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) ことしに入りましてからの外人の非居住者によります債券投資の額について申し上げますが、ことしの一月の取得と処分を差し引きましたネットで申し上げますと、一月が二千百三十九億円でございまして、二月が三千二百三十億円でございます。三月につきましてはまだ月半ばでございますが、一日から十五日までのこれは約定ベースでございますけれども、先ほど申し上げましたのはこれは決済ベースでございますが、ちょっとベースが違いますけれども、約定ベースでは十五日までですでに約三千四百億円という額に達しております。  自由円の残高につきましては、ただいま調べまして後刻御報告いたします。
  30. 福間知之

    福間知之君 国際金融局長、このふえ方は昨年あるいはまた一昨年に比べて私はかなり大きいんじゃないか、やや異常なんじゃないかと思うんですが、そうではないですか。
  31. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) ただいま申し上げました数字は、確かに御指摘のように昨年あるいは一昨年と比べましてかなり急増いたしております。五十一年一年間で申し上げますと、決済ベースで五十一年は五千二百七十四億円でございまして、五十二年は六千四百四十七億円でございました。したがいまして、その暦年の数字に比べますと一カ月で二千億、三千億ということは非常に大きな数字でございます。この傾向は昨年の暮れごろからかなり顕著になってあらわれてきたわけでございます。
  32. 福間知之

    福間知之君 円の先高感といいますか、そういう見通しである限り、このような投機資金の流入というものにはなかなか歯止めがかかりにくいということが言えるんじゃないかと思うわけであります。今回、公定歩合の引き下げとあわせまして発表されましたところの外資流入規制ですね、東京の外為市場ドルを売って円買いをしてもその運用上によるうまみを少しなくするような措置をとるということでございますが、具体的にはそれはどういう姿で行われ、果たしてその効果のほどについてどう見通していられますか。
  33. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 自由円勘定の規制のことであろうかと存じますが、この規制につきましては、御承知のとおり昨年の十一月十七日に発表いたしまして、準備率を五〇%、つまり一〇〇のものを入れますとそのうち五〇につきましては凍結するという措置をとったのでございますが、その後また、それがかなり凍結されてもなお先行き円高であるということであれば得をするということで、流入がふえてくる兆しが見えましたので、今般、これは十五日に発表しまして公告をいたしましたので十八日からでございますけれども、この準備率を一〇〇%に引き上げるということをいたしたわけでございます。  それからなお、先ほどお尋ねございました自由円の残高でございますが、昨年の十月には約五千億でございましたが、本年の二月には九千五百億程度になっております。
  34. 福間知之

    福間知之君 国際金融局長、一体いまだれが積極的に円を買っているんですか。これはすべてが投機だと断定するのはいかがかと思いますけれども、だれが主にこの円をいま買っていますか。
  35. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 非常にむずかしい御質問でございまして、証券市場で非居住者が買っておるということ、居住者がどれだけ、非居住者がどれだけということはわかるわけでございますが、非居住者というのが一体だれなのかということにつきましては私ども把握できないわけでございます。非常にむずかしい御質問で、その程度で御勘弁願いたいと思います。
  36. 福間知之

    福間知之君 まあそれは特別に私はせんさくする気はないのでございますが、一般常識的にほぼ判断もつくわけでありまして、何か聞くところによると、欧米の銀行における外為取引のディーラーの収入が歩合制になっているところが多い。だから、自分で相場を張ってもうかればそれだけ自分の収入がふえるという仕組みになっているらしいんですけれども、そういうこともこれはやはり影響があるんじゃないかと思うんです。大したことがないと言えばそれまででございますけれども、どうも最近の寄りつき、仲値、終わり値ですね、いろんな動きを見ていますと、さやかせぎをやっているような気配があるんですが、いかがですか。
  37. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) おっしゃいますように、欧米におきましては、日本と違いまして、日々の為替の売買をやっておる方々が会社に雇われておりますけれども、その仕組みが日本とは違うという点はあるようでございます。そういう方々がときどき各国を回ってその経済情勢などを勉強していくというようなことも聞いております。ただ、これは制度の違いでございますので、われわれとして何ともできることでございませんけれども、これがまた非常に勉強が進みますと、ある程度の見通しを持って現在のような傾向と逆にあらわれることもあるいは早いかというふうに感ぜられるのでございます。
  38. 福間知之

    福間知之君 何かうまいことをお答えになったようですけれども、それはともかくとして、日本の商社の海外支店なんかがもぐりで円を買っているという向きもあると言われているんですけれども、これは定かじゃありませんから感触しかないわけですが、またそれは一概にいかぬのだということで規制もできる筋のものでもないのですけれども局長はどういうふうにその点を、できればこうあってほしいというふうなお感じがありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  39. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 日本商社の海外におきます店が現地法人になっておるケースがかなりございますので、それらは法律上は非居住者でございます。うわさではそういう目の黒い外人も投機に参加してるんだということを聞きますけれども、しかしそれは確たる証拠はございません。私どもが調べておりますところでは、私どもが集められる限りの資料では、日本の商社が特に今回の混乱に手を貸しているということは見られないのではないかと、かように考えておりますし、また、日本の国全体がこういう状況でございますので、日本の国益のためにもそういう動きに走っていただかないよう願っておるところでございます。
  40. 福間知之

    福間知之君 次に、円建て外債についてお聞きをしたいと思います。  円高ないしドル安というのが進んでいるわけですが、外人の債券買いが急にふえているというふうに聞きますが、ことしに入ってからの実態はいかがですか。
  41. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) お尋ねは、円建て外債の中で外人がどのぐらいの割合買っておるかということかと思いますが、現在のところ、円建て外債全体といたしましては御案内のとおり非常にふえておりまして、月ベースで一千億円程度に現在なりつつございます。現在の規制といいますか取り決めでは、そのうち二五%までは新発債を非居住者が買ってもいいという手当てをしております。これは現在もそのままでございまして、ごく最近の実績につきましてはちょっと手元に資料がございませんけれども、昨年の末あたりではすでにそれは二五%ということでやっておりましたけれども、非居住者が買いました割合というのは一〇%ないし一五%、そのぐらいの割合ではなかったか、かように考えております。
  42. 福間知之

    福間知之君 版内の投資家が買った直後に外人に売るというふうな傾向もあると言われているんですが。
  43. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) いま申し上げましたのは、新発債が出ましたときに即座にそこで買った、非居住者が買う枠のことでございまして、いまお尋ねは、一度人が買いましたものを、既発債をマーケットでさらに売りに出たと、それを買うときはどうかという御質問かと思いますが、その点につきましては現在規制がございません。そこでまた、そういう市場でどのくらいそれが買っておるかということについては、私どもは円建て債だけとしては把握をいたしておりません。しかし、先ほど申し上げましたように、決済ベースで非居住者の債券買いがこれだけになったということを申し上げましたのは、その既発債も含めたところでございますから、先ほどの数字の中には円建て債を非居住者が買った分も含まれておるわけでございます。
  44. 福間知之

    福間知之君 黒字減らしという効果の面からいって、そういうドルが流れ込むことはドル減らしをしり抜けにするという一要素を持っていると思うんです。二五%以下というこのガイドラインは別に特に問題はないというふうにお考えになるんですか。
  45. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) この二五%は、現在のところこれを改定するつもりはございません。と申しますのは、円に対します関心というのが海外で非常に強まっておりまして、ある程度の穴をあけておいた方が日本に対する風当たりも弱まりましょうし、また長い目で見ますと、出ていくもの入ってくるもの、資本の交流というのは本来自由であるべきものであろうと考えますので、その点で特にこの際これを強化するという考えはございません。
  46. 福間知之

    福間知之君 その点私も同感なんでございまして、他面海外業者にも海外販売分に限ってのシンジケート団の参加をこの五月から認めようと、こういうこともお考えのようですが、そうですか。
  47. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) この点につきましては証券局の所管でございますので、私からお答えするのはいかがかと思いますが、確かにおっしゃいますように、海外で日本の会社等が外債を発行いたしますときには、日本の証券会社もこれに参加しておるわけでございます。あるいは国債のような場合にもそういうことがあったわけでございますが、日本で外国の債券を発行するときに外国の証券業者がこれに参加をほとんどしてないという現状に対しまして、非常に不満が強まっております。まして円建て債の市場が非常に大きくなりつつありますので、その際みすみす彼らが参加できないということに対しまして不満が強まっておりますので、私どもは証券局とも相談いたしまして、その辺何か弾力的に考えるべきではないかということをお願いしておるところでございます。
  48. 福間知之

    福間知之君 いまやりとりをしたような問題は、私基本的にはやはり円高という新しい事態の中でわが国の証券あるいはまた外債、そういう分野での新しい動きとして評価をしていいんじゃないかと思うんです。今後さらに開放的にこれは拡大をしていく筋のものだろう、こういうふうに思いますので、当局のさらに勉強と推進を要望しておきたいと思います。  次に、政府機関関係の予算の消費状況についてお伺いします。  公団とか公庫などの政府機関が五十二年度の予算でかなり使い残しが発生しそうな状況にあるというふうに言われております。そこでこの実態を、輸銀とか公団とか地域振興整備公団、公害防止事業団、石油開発公団、七つの機関における財政投融資計画を大幅に下回る実績だという中身をお聞かせ願いたいことと、それは一体なぜそういうふうになったのかということをお伺いします。
  49. 田中敬

    政府委員(田中敬君) 各個別機関の実態を申し上げます前に、一応概括的に申し上げたいと存じます。  と申しますのは、先般某新聞に政府関係機関の資金の使い残しが相当金額出るという報道が出ておりましたけれども、計数的に相当間違いもございますので、改めて私どもの現時点における見通しを申し上げてみたいと存じます。  大体、政府関係機関の財政投融資のうち、資金運用部資金の運用予定総額に対しまして五十二年度末、この三月末で繰り越し額の見込み額が昨年度一兆四千七百億円程度でございましたのに対しまして、本年度は二兆一千七百億円程度の繰り越しが見込まれております。  それから、繰り越し以外に不用額というものが見込まれておりますが、それも現時点での見通しでは、昨年の一千億円に対しまして本年度は約四千八百億円の不用が立つであろうと考えているわけです。  大きく分けまして、その繰り越し、不用の大きなものは、最大のものは地方公共団体でございます。地方公共団体の繰り越し予定額が一兆三千二百四十八億ということでございまして、追加後の現額二兆五千億に対しまして繰り越しが一兆三千億、半分以上の繰り越しが出るということになります。地方公共団体につきましては例年こういうことがございまして、地方公共団体が起債をいたしましていろいろ公共事業等を行います際に、現実には資金繰りは短期で金を借りる、あるいは地方銀行から金を借ります。そうしまして出納整理期間に入りまして、いわゆる財政資金でございます資金運用部に対しまして長期の借り入れに切りかえて、そこで起債措置をするということでございまして、二兆一千億のうちに地方公共団体が約一兆三千二百億ございますので、この分につきましては四月、五月にその過半が起債という形で消化されます。  この点につきましてよく報道されております、起債が十分に行われてないから公共事業の推進が滞ってるんではないかということが言われますけれども、実際の公共工事の進捗状況というものは、ただいま申し上げましたように、地方銀行等から、低金利時代でございますので短期資金を借りてやっておりますので、その進捗には問題がございません。  あと二兆一千億の繰り越しのうち地方公共団体が大半でございますので、その問題は解明できるわけでございますけれども、今度は約四千八百億の不用の問題が出てまいりますが、これの大きなものが先ほども指摘のありました住宅公団、輸出入銀行、住宅公団で約二千三百億、輸出入銀行で千百五十億、開銀で三百億、それから地域振興整備公団で三百三十億、大口が大体そのようなところでございます。  まず、御指摘のありました機関から申し上げますと、開発銀行につきましては、ただいま申し上げました三百の不用以外に、約四、五百ないし場合によっては八百億程度の繰り越しが出ることが見込まれております。これは御承知のような景気情勢でございますので、設備投資のおくれその他によりまして資金需要が低迷しているというのが最大の原因でございます。それともう一つは、長期金利が下がるんではないか、現に今回公定歩合め引き下げがございまして長期金利の引き下げが予想されておりますので、引き下げ後に借りようということで借り控えが起きているというのも一つでございます。  それから大口の輸出入銀行につきまして不用が一千億以上、約一千百億立つと申し上げましたけれども、この不用の原因は、こういう最近の景気情勢あるいは円高の情勢でございますので、海外から延べ払いで、物を日本から輸入して海外からの弁済が繰り上げ弁済になっております。そういたしますとその金が輸銀に戻ってまいりまして、繰り上げ弁済額が約一千億を超えるような額で予定よりも早まってきておりますので、その繰り上げ弁済額に相当する金額というものは、結局財政投融資計画といたしましてはその一千億を自己資金として輸銀に充当いたしますと、財政投融資の金額がそれだけ一千億不用に立てても結構だと、貸付計画には変動が起きないということで、そういう意味で一千億の不用が立っております。  一方、繰り越しが相当、輸銀につきまして先ほど申し上げましたように千九百五十億程度の繰り越しが予定されておりますが、これは一つには、こういう景気情勢のためにプラント輸出等も受け入れ先の方からも手控えられておるということで、プラント、船舶の輸出が当初計画よりも下回っておること、あるいは輸入金融につきましてもこのような景気情勢で輸入が伸びておらないというようなことで、輸出入銀行につきましては繰り越しが相当目立っておりますけれども、これは年度を越して五十三年度と通年すれば、いろいろプラント等の計画は現実にございますので順調な支払いが行われるものと考えられております。  それから住宅公団でございますが、住宅公団につきましては御承知のように空き家問題等がございまして、多くの問題を抱えております。そういう意味で住宅公団が事業計画の見直しを現在行いつつございます。五十年度当初計画で六万戸、五十一年度も当初計画で六万戸の計画を着工を予定いたしておりましたけれども、五十年度につきましては六万戸の消化は可能でございましたけれども、五十一年度は現実には六万戸でございませんで、五万戸の建築しか行えないということになっておりまして、ここで一万戸の減が立っております。それから五十二年度につきましては当初計画六万戸でございましたけれども、私どもが現在聞いておるのでは六万戸は建たずに、恐らく五十二年度は三万五千ないし四万戸で終わるであろうと、そういうことなどで新たに事業計画の組み直しを考えておりますが、それらに見合います金額といたしましてただいま申し上げました二千二百八十億というものが一応不用になってまいります。  そういう意味で住宅公団につきましては不用、繰り越しが相当多額になっておりますけれども、これらは不用は別といたしまして、繰り越しの二千三百億というものは、ただいま見直した新たな住宅建設計画に基づきまして五十三年度に繰り越された上で消化が進むというふうに考えております。  あと、地域振興整備公団につきましても約三百億の不用が見込まれておりますが、これも地方都市整備事業につきまして地元公共団体との折衝がつかないとか、あるいは工業の再配置事業につきまして、最近の景気情勢から工場移転というものが進まないというようなことからの不用でございます。  それから石油公団で不用が出てまいりますのは、石油の輸入単価が下がりましたために備蓄のための輸入原価が下がったことというようなことが大きな原因でございます。  大体以上のような機関で多くの繰り越し、不用が生ずるわけでございますが、不用の四千八百億ぐらいが出ることは本年度五十三年度の財政投融資計画を組みます際に私どももあらかじめこれを見込んでおりましたので、この不用見込み額の四千八百億円程度につきましては、これを五十三年度の財政投融資計画の原資に充当するということで、これは五十三年度の財投計画にすでに資金として計上済みになっております。
  50. 福間知之

    福間知之君 ただいま詳しい御説明がありました。何だったら少しデータをちょうだいして勉強をしたいと思います。特にいまの地方公共団体なんかのことは私も疎くて、いま聞いて初めてわかりましたから、さほど問題があるとは言えないというふうに理解をいたします。  これお聞きしたのは、結局公共投資にかなり力入れようと、景気浮揚のためにということですが、たとえば政府関係機関でもこういう状況だ。なかんずくいまのように住宅公団なんかは特にひどいような感じがするわけでありまして、住宅政策拡充ということとあわせ、かなりこれは抜本的にメスを入れないといかぬと、これは後ほど土地税制の問題もありますが、それと密接不可分で、まあ大げさに言えば少しゆゆしい問題じゃないのかと、こういうふうに感じたのでお聞きをしたわけです。  さらに、いまおっしゃったような財投資金の上に各機関が手持ちの自己資金を上乗せして事業計画を組んでいるわけでありますから、そういうベースで見ればさらに使い残しというのは拡大をするのじゃないか、そういうふうなことを感じておるわけでありまして、この点大蔵大臣御感想はいかがですか。
  51. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いまのような、繰り越しあるいは節約の状況はいま理財局長から御説明したとおりでございまして、その不用見込み額はすでに五十三年度財投の原資に入っているわけでございます。そういう点を勘案をいたしまして今度の五十三年度の財政投融資の組み方についてはその点を十分参考にいたしたところでございます。  住宅公団の空き家問題あるいは管理、保管の問題についてはしばしば話が出まして、今後これを有効にやるためには公団自身がどうやっていくか、とりあえず入る予定のないところについては住宅公社の方に払い下げの問題もいままだ検討されている段階でございますので、いずれにいたしましても、資金もそれからその現物である家屋も有効利用を図っていこうと、こういうことでいま鋭意検討しているところでございます。
  52. 福間知之

    福間知之君 理財局長、先ほど申したように、データをちょうだいしたいと思いますので、よろしくお願いをします。
  53. 田中敬

    政府委員(田中敬君) できる限りのものを用意して御説明に上がりたいと思います。
  54. 福間知之

    福間知之君 経企庁と通産省と両方にお聞きしたいんですが、要するに緊急輸入対策がまたいま、きのうあたりもかなり真剣に討議をされているようですけれども見通しはいかがですか。
  55. 澤野潤

    政府委員(澤野潤君) 三月十一日の閣僚会議において決定いたしました輸入促進措置、この内容についてちょっと御説明を申し上げます。  この輸入促進措置は一応緊急輸入対策と呼ばれておるわけでございますけれども、四つの項目から成っておりまして、まず第一が民間航空機の輸入促進、二番目がリース方式による航空機の貸与、三番目がタンカーによる原油の備蓄、四番目が希少金属、鉄鉱石のペレット等の備蓄、緊急輸入という四つの項目から成っておるわけでございます。  その第一の項目の民間航空機の輸入促進と申しますものは、もちろん航空機の機種選定ということは航空会社が自主的に決めるものでございますので、その点につきましては十分政府といたしましても留意しながら、今回のこの緊急輸入対策の決定によりまして、民間の航空会社が航空機を購入することを希望する場合に、その輸入の実現のために政府といたしましては必要でかつできる限りの側面的協力を行うというのがこの航空機の輸入促進措置でございます。  それからリース方式による航空機の貸与事業と申しますのは、これは結局需要がなければなかなかできないわけでございまして、今後需要がどのくらい見込まれるか、またこのリースのために、緊急外貨貸し制度というのが現在ございますけれども、これがどの程度活用できるのか、その他航空法との関係等の問題もございますので、今後ともこういった主として東南アジア等の開発途上国に対しますリースということの可能性を各省間で緊密な体制をとりながら検討を進めていきたいというのが第二項目でございます。  それから第三はタンカーによる原油の備蓄でございまして、これはもうすでにこの前の十二月六日のときの対外経済対策の中にも入っておったわけでございますけれども、五十三年度中の問題といたしまして、約五百万キロリットルの備蓄をめどにいたしまして、現在そのタンカーが停泊する泊地でございますけれども、泊地の決定とかその他具体的ないろいろな事項につきまして関係各省において鋭意検討いたしておるところでございます。  それから希少金属等の問題といたしましては、まずニッケル等の希少金属とか鉄鉱石ペレット、ウラン鉱石、そのほか民間病院用の医療機械等、こういった重要物資につきましてもそれの民間側からの輸入の意図その他在庫の実態といったようなものを調査いたしまして、それぞれその実情に応じまして必要な場合には先ほどの緊急外貨貸し制度、これの運用が果たして可能かどうかということをも含めましてその弾力的な運用を検討し、かつ備蓄とか緊急輸入の促進を図るといったものがせんだって三月十一日に決めました輸入促進措置でございます。
  56. 福間知之

    福間知之君 いまの鉄鉱石だとかニッケルなどの金属の緊急輸入ということと似たような意味で、昨日は濃縮ウランの輸入が結局アメリカとの交渉ではだめになった。総理が盛んに言っておったんですけれどもだめになったと。それにかわって濃縮ウランの代金を前払いする、ほぼ十億ドルぐらい前払いするというようなことが方針として出されたようであります。あるいはまた船ですね、わが国で船をいまつくるというのが、契約が非常に落ちているわけでありますから、仕組み船二百隻ほど手当てしたらどうかと。それに二十億ドルの金を充てることが可能じゃないかというふうな構想がきのう話し合われたようですけれども、御承知ですか。
  57. 澤野潤

    政府委員(澤野潤君) いま先生がおっしゃいました問題につきましては私承知しておりません。ですから、政府といたしまして決めました輸入促進措置の中には入っておらないわけでございます。
  58. 福間知之

    福間知之君 これはけさほどのテレビで報道されました。早速ひとつ把握をしていただきたいと思うんです。  かなりこれは、濃縮ウランの問題はさることながら、前々からウラン鉱の輸入が問題になっていましたが、仕組み船二十億ドルの金を出すというのは非常に新しいアイデアでございまして、先ほど来四項目の説明がございましたタンカーによる原油備蓄だとか、あるいはまたペレットの買い付けだとか、そういうものと似通ってかなりこれは影響が大きくて興味がある問題だと思うんであります。  通産省の方、たとえばそういう緊急輸入対策というもの、まあ旗を、アドバルーンを上げただけで、どうなんですかね、いつごろまでにどの程度実績を上げるのかということがやはり問題だろうと思うんでございます。昨夜来何か明け方までECとの通商協議でわが方もがんばっておられたようですけれども、ECの側が言うのは、結局今度の目標でも六十億ドルドルを減らすということを確約せいとまでかなり厳しい姿勢をとっているようですが、それはやっぱり、いま緊急輸入対策をわが国が決めても、そういうのは果たして実行できるのかどうかということに危惧を持っているからじゃないかと思うんですが、通産省の方はこれをどういうテンポで具体化していくというお考えでしょうか。
  59. 斎藤成雄

    説明員(斎藤成雄君) 緊急輸入対策につきましては、できるだけ早く実行に移すということで従来から検討をいたしておるところでございます。昨年の九月の総合経済対策あるいは対外経済対策にのっとって緊急輸入として予定をいたしたものは、本年の今月末までに大体予定どおり実施をいたしておるところでございます。今後の問題につきましても、できるだけ早く具体的な対策を確立をいたしてそれの実行に移りたいと考えておるところでございます。
  60. 澤野潤

    政府委員(澤野潤君) 先ほど実は濃縮ウランについてはお答えしなかったわけなんでございますけれども、濃縮ウランは、昨年の十二月六日のときの対外経済対策の中のいわゆる八項目でございます。その八項目の中に、七項目目に「備蓄、前払い輸入等の推進」というところで濃縮ウランの前払い購入という項目が入っておったわけでございます。これに基づきまして、いま通産省の方からお話がございましたように、いろいろと濃縮ウラン及びその濃縮ウランに関する、鉱石そのものじゃなしに、いま先生がおっしゃいましたような役務の問題等も含めました検討が進められておったわけでございますが、それがどのような結果になったかということについては私はまだきょうは存じておりませんけれども、それにつきまして前向きに検討いたしておることは確かでございます。
  61. 福間知之

    福間知之君 これは予算委員会でも取り上げてまいりましたので、要はどう確実に実行するかということに国内外の注目が集まっているということで、一種のこれは公約のような、コミットメントのような形になって扱われているわけでありまして、またそれが国内の景気浮揚と密接に関連をしているということでございまするから、ひとつ積極的に進めるべきではないかという立場で要望をしておきたいと思うわけであります。  そこで、経企庁おいででございますので、さて黒字減らしが見通しとしていまどういうふうに考えておられるかということであります。どうも三月末百三十億ドルというかなりの高い水準をも突破して百四十億ドルだというふうにも言われておるわけですが、果たしてこれで来年半分以下の六十億ドルに抑えることが可能なのかどうか、すでに危ないぞというふうな見方もあるわけでございます。
  62. 澤野潤

    政府委員(澤野潤君) 確かに最近の貿易の動向を見てみますと、輸出はかなり海外の需要が堅調なものがございまして、たとえばテープレコーダーとか事務用機械、それから科学光学機械でございますけれども、そういった海外需要の拡大と、それから自動車でございますが、海外在庫がかなり底をつきましてその補充の要望といったようなものがございまして、輸出といたしまして機械機器がかなりの数字を示しておるということが事実でございます。  ところが一方輸入の方は、内需の方がいま一つ盛り上がりが乏しいために、むしろ内需が低滞しているということの反面、輸出圧力というようなものがそういった業界にかかっておるようでございますので、それの輸出、これは多分衣料といったようなものではないかと統計上は考えられるわけでございますけれども、そういった海外の需要と輸出圧力といったもので輸出がかなり高水準に推移しておることは事実でございます。また、輸入の方はいま申したようにやや低滞ぎみであるといったことから、五十二年度の経常収支実績見通し百億ドルということに対しまして、三月末にはこれをかなり上回る数字になるんではなかろうかと思われるわけでございますけれども、それが幾らになるかということはいまのところ私どもはちょっとわからないわけでございます。すでに二月末の数字では季節調整済みで百十九億ドルという数字になっておりまして、これが三月末にどれくらいになるかということはいまのところちょっとわかりません。  しかし、五十三年度にどうなっていくであろうかという問題でございますけれども、五十三年度は御承知のように政府の政策といたしまして内需拡大政策、これは公共投資等を中心といたしまして前半は財政主導型、後半はそれによって明るい景気の見通しというものを持った民間主導に移ることを期待しての経済運営でございますので、そういった経済運営を通じます内需拡大ということを通じまして輸入が後半にはかなりふえてくるであろうということを考えておるわけでございまして、一方、輸出の方は円高等の影響から次第に輸出の拡大ということはスローダウンしてまいりまして、もちろん拡大均衡をやっていくというたてまえでございますので減少はいたしませんけれども、増加がスローダウンしていくであろうという見通しでございます。また一方、輸入の拡大のためには先般来いろいろの方策をとっておりますように、市場の開放措置とか、先ほど申しました緊急輸入対策をも含めた輸入促進措置といった対外経済政策を今後ともより強力に、しかも時宜に応じて大胆に行っていくということによりまして、われわれといたしましては、この五十三年度におきましては五十二年度のかなり高い水準である経常収支黒字幅を六十億ドルに持っていきたいというのがわれわれとしての強い信念なんでございます。その際に、もちろん輸出等を通じまして相手国の市場に対していろいろな撹乱的な要素を起こすというような、いわゆる集中豪雨的な輸出ということは極力これを避けてオーダリーなる輸出を進めていくというようなことは、通産省を通じてよく業界を指導してまいる所存でございます。
  63. 福間知之

    福間知之君 緊急輸入対策あるいはその裏措置としてわが国からの現物輸出という面で、昨年は当初テレビあるいは無線機器全般、電子部品あるいは鉄鋼等々に特にアメリカにおける輸出に対する規制問題がクローズアップしまして、その後自動車が目をつけられるのではないかという危惧があったんですが、最近はどうですか、自動車その他アメリカ側日本からの輸出に対する規制についての動静はやや下火になっているんですか、何か問題をはらんでいるんですか。
  64. 澤野潤

    政府委員(澤野潤君) 個別の自動車につきましての指導並びにアメリカからの要請等につきましては、直接私のところではタッチしておらないのでございますので、通産省の方に担当がございましたらそちらにお聞き願いたいと思うのでございますけれども、私の承知しておる限りでは、そういう輸出規制というふうな問題よりはむしろオーダリーなる輸出で今後ともやっていくというふうに聞いております。
  65. 黒田真

    説明員(黒田真君) アメリカ市場におきます自動車輸出問題につきましては若干問題があるのではないかというような御指摘が一部にございますけれども、私どもが理解しておりますところは、一部のアメリカの大きな自動車会社が輸入を問題にしているという事実はあるようですが、大部分の自動車会社は現在なお燃費規制の問題から輸入車自身を自分でやらなければならないという事情もございますし、直ちに輸出規制問題というものが当面起こってくるということは考えておりません。しかしながら、もちろん秩序ある輸出に心がけるということは当然のことと考えております。
  66. 福間知之

    福間知之君 通産省も、貿易管理令の問題はこれはもう消え去ったと見ていいわけですね。
  67. 黒田真

    説明員(黒田真君) 私どもといたしましては、できるだけソフトな形で業界を指導するということによって問題に対処していきたい、かように考えております。
  68. 福間知之

    福間知之君 経企庁にお聞きをしたいと思いますが、先ほど来の御説明あるいはまた最近の輸出の実勢等々から見て、過般発表されましたQEですね、国民所得統計速報、これについて、その調査結果をどういうふうに解析をされておられますか。
  69. 澤野潤

    政府委員(澤野潤君) 先般発表されました五十二年十月−十二月の国民所得統計速報、いわゆるQEでございますけれども、これは実質で申しますと、四−六月が一・七、七−九月が〇・四でありましたのに対しまして実質の伸び率が一・〇ということになっておりまして、しかもその内容を見ますと、次第に内需主導型になってきておる。海外要因の寄与度が非常に減っておりまして、ほとんどこれは横ばいになっておりまして、国内要因、内需が出てきておるということで、私どもといたしましては五十二年度における実績見通しとして想定いたしました五・三%の実質成長率、これを達成するための十−十二月の軌道としては大体それに乗っかってきておるんではなかろうか。したがって、五・三%へまいりますにはいい軌道の上に乗っておるというふうに解析いたしております。
  70. 福間知之

    福間知之君 最近三菱銀行の調査によりますと、昨年の十月からことしの一月ごろまで、ちょっと期間が一ヵ月近くQEとはずれがあるようですが、生産は年率で一七・四%、出荷は二三・四%と、かなり伸びを示したと出ております。この生産増のうち、輸出関連はわりあいに高うございまして三九%、公共事業関連で三七%、電力とか電話設備関連で七%をもたらしたというふうになっておるわけです。全く自立的なといいますか、内需の増加はわずか八%程度じゃないのかと、こういうふうな数値が出ているようでございますが、これはQEと比べてみると多少趣を異にしているような気がするわけです。  私お聞きしたいことは、これは多少二、三ヵ月ごとに変わりますから、そう神経質に考えるわけじゃないんですけれども、この一月から三月あるいはまた新しい年度の四月から六月というのは、先般の第四・四半期ですか、これの傾向をさらに引き続いて増大していくと、こういうふうな見通しが持てるわけですか。
  71. 澤野潤

    政府委員(澤野潤君) まず内需と外需との関係を数字で申し上げますと、この間の十−十二月の内需と外需の寄与度で申せば、実質国民総支出が一・〇の成長であるのに対しまして、そのうち内需が一・一で海外経常余剰はマイナス〇・一でございます。したがいまして、少なくとも十−十二月の実績で見る限りは、内需が中心となって伸びてきておるということでございまして、これを最近の経済動向との関連で見ますと、確かに昨年じゅう、いまの十−十二月も含めましてでございますけれども、個人消費と申しますのは所得の伸び悩みとか暖冬とかいうような一時的な要因も加わりまして、必ずしも伸びが高かったわけじゃございませんけれども、ことしに入りましてからは、先般発表になりました毎月勤労者統計の実質賃金の伸びというものがかなり力強い伸びを示しておりまして、十二月まではやや低迷でございまして実質で三・三であったのが、一月には五・三というふうに十分伸びておるという感じがするわけでございますし、さらに昨日発表になりました家計調査の実質の消費の伸び、これも十二月が一・九、その前はもっと悪いんでございますが、〇・四とか一・六という十月−十二月の推移に対しまして一月が三・五といったように、家計調査による実質消費の伸びもかなり先行き明るさが見られておるわけでございますし、他方消費者物価は御承知のように非常に安定傾向をたどっておりますので、消費支出は一−三月以降上向いてくるのではないかとわれわれは考えておるわけでございます。  また公共投資、これはせんだっての二つの補正予算がさらにアクセレレートいたしましたけれども、高水準の公共投資というものも、第二次補正予算の速かなる執行ということをもあわせまして、今後とも高水準に続いていくことが期待されるわけでございますし、またいろいろ議論になっております在庫調整も、この三、四月を一つのめどに順調な進展をしておるとわれわれは見ておるわけでございます。  また住宅投資というのは、この前の総合経済対策以来、民需の拡大のための中心になってきたわけでございますけれども、昨年八月の募集、十月の募集及び本年一月の募集の結果を見ましても、その効果が次第にあらわれてきておることが数字上見えておるわけでございまして、一−三月期も引き続き高い伸びが期待されるのではなかろうかと思っておるわけでございます。ちなみに、民間住宅の十−十二月の実質の伸びが四・五ということになっております。  また、先ほど先生がちょっとお触れになりました設備投資の方でございますけれども、最近の資本財の出荷の動向とか建設機械受注の動向というようなものを見ますと、十−十二月で実質一・二の伸びを示しておりますが、一−三月期もこれがそのまま引き続いて緩やかな増加をするというふうにわれわれは見ておるわけでございます。  このように、一−三月にかけまして民間需要というものが中心となって内需が十−十二月に引き続いて起こってくるというふうに見られるものでございますので、先ほど申しましたように、五十二年度におきましては実質五・三%の成長ということは可能ではなかろうかと見ておるわけでございます。また、これが土台になりまして、五十三年度におきましては、もうしばしば議論になっております七%の成長ということが、先ほど申しましたような前半財政主導、後半民間主導というようなパターンで七%の実質成長率というのが可能ではなかろうかと見ておるのが私ども立場でございます。
  72. 福間知之

    福間知之君 時間がありませんので、経企庁にもう少しお聞きしたい点はあるんですが、はしょりまして、審議官どうですか、五十二年度五・三%は仮に達成されるだろうとして、来年七%、国民総需要から言うならば、海外経常余剰まで入れて政府見通し七・四%、私ども八%ぐらいは必要と、こういうふうにも言っていますが、三月までで平均五・三が、四月から来年の三月までの一年間で仮に七・数%の成長を達成するとするならば、三月までは五・三ですから、四月一ヵ月をとってそれが七になるということは少し考えがたい。五月もそうではないのか。六月もそうではないのか。通算して一年間で七・数%になるためには、後半で九%前後の成長を月々達成していかなきゃならぬというふうに常識的に考えられるんですが、それは可能ですか。
  73. 澤野潤

    政府委員(澤野潤君) 一−三月、四−六月というのは比較的高い成長を示すと思います。これはそういう数字のパターンがございまして、まあある程度は季節調整で是正はされていると思いますけれども、やはり過去のパターンを見ますと、十−十二月が一・〇であれば、一−三月、四−六というのはかなり高くなりますし、先生御承知のげたの問題もございますので、それほど高い成長率を一−三、四−六から示さなきゃならないということじゃないと思うわけでございます。したがいまして、個々の需要項目別に考えた場合に、個人消費支出とか民間設備投資とか住宅投資等々、それぞれ先行き明るい見通しがあるわけでございますので、在庫につきましても、いまの順調な在庫の調整が行われた後には、緩やかながらも積み増しが行われるんではなかろうかと思っておるわけでございまして、それらを総合勘案いたしますと、七%というものは達成可能ではなかろうかと思っておるわけでございます。
  74. 福間知之

    福間知之君 私は、七%もちろん達成していくことが望ましいし、それを上回るということすら必要じゃないか。まあ二十兆円になんなんとするような需給ギャップを抱えている今日の経済からしまして、七%達成したときでも五万人ぐらいしか顕在失業者数は減らないというふうにも言われているわけですから、これは積極的に成果を上げていくという立場でお聞きをした次第であります。  次に、通産省にちょっとお聞きしたいんですが、国際協力事業団、長らくお待たせをして申しわけなかったんですが、五十二年度から国際協力事業団、あるいはまた通産省の補助事業として、発展途上国の大型開発プロジェクトヘの協力ということが政策として打ち出されました。最近までの実績を概略御説明願いたいと思います。
  75. 法眼晋作

    参考人法眼晋作君) ただいま御質問の点でございますけれども、大体本年度の現在の実績は八件四億三千万円に達しております。当初の見込みは四億四千万円でございましたから、私はこの執行率は悪いものではないというふうに理解いたしております。  御参考までに申し上げますというと、その八件はヨルダン総合開発、韓国の水資源総合開発計画、インドネシアの南スラウェシ水資源開発計画、ナイジェリアの港湾建設計画、セネガルのファレメ鉄道建設計画、メキシコの首都圏通勤鉄道建設計画、コスタリカの太平洋岸総合開発計画、ブラジルにおけるリトリア都市開発計画でございます。
  76. 河野権一郎

    説明員河野権一郎君) 通産省といたしましては、発展途上国から最近非常に要望が強い大型プロジェクトを積極的に推進するという観点から各種の施策を講じているわけでございますが、予算面では二つの制度を持っております。  一つは、大規模経済協力プロジェクト準備調査委託制度というものでございまして、これは政府ベースで実施が決まったプロジェクトにつきまして、国際協力事業団委託をいたしまして必要な調査をするという制度でございます。  いま一つは、複数の民間コンサルタントがコンソーシアムも含めて大型プロジェクトの調査を行う際に、海外コンサルティング企業協会に対して補助をするという補助金制度というもの、この二つでございます。  最初の国際協力事業団への委託費の面につきましては、これは鉱工業部門に対する大型プロジェクトに対する委託費でございまして、社会開発その他の面につきましては先ほど国際協力事業団法眼総裁から説明がございましたが、鉱工業部門の委託費について御説明申し上げますと、五十二年度五件六億三千八百万円という予算措置が講じられていたわけでございますけれども、そのうちすでに三件の実行を終わっております。  それから残りの二件につきましては、すでにプロジェクトは確定しておりますけれども、相手国の開発計画のおくれとか、相手国政府との調整その他に時日を要したということもございまして、これは五十三年度に繰り越して実施をするということになっております。したがいまして、これにつきましては五十三年度まで通年しますれば五件は全部実行できるということになります。  なお、海外コンサルティング企業協会に対する補助金でございますけれども、これは五十二年度において三件五千百万円の予算措置が講じられておりますけれども、このうち二件についてはイランのテヘラン市におきます新都市開発計画、それからアラブ首長国連邦における水資源開発、この二つについてすでにこの補助金制度を使用するということになっております。残りの一件につきましては、本年度中にはプロジェクトの確定ができなかったわけでございますが、これはもう先生御承知のように、この制度は本年度から、五十二年度から新たに創設された制度でございまして、制度の周知徹底、特に援助の受け入れ国におけるいろいろな普及、周知徹底等の問題がございまして、三件のうち二件ということになっております。  来年以降につきましては、制度発足後二年目に入るわけでございまして、私どもといたしましてはできるだけ国内業界及び相手国に対してこの制度趣旨の周知徹底を図ってその円滑な実施に努めてまいりたいと思っております。
  77. 福間知之

    福間知之君 法眼総裁、先ほどの御説明でかなり遂行率は高いと、こういうお話のようでございますが、その当否は別にして、かなり悩みといいますか、むずかしい問題が仕事をやっていく上でおありだろうと思うんですけれども、これは通産省などと有機的に横の連携をとりながら進められているんですか。
  78. 法眼晋作

    参考人法眼晋作君) 御指摘のとおりでございまして、われわれのところはどうしても関係各省庁の御協力を得なければできないことが多いものでございまするから、各担当事業部におきまして関係の省庁の各位と十分な連絡をとりながら協調して進んでおるわけでございます。  なお、繰り返して申しますというと、従来こういった開発調査というものその他一般の調査の執行率というものがなかなか上がらなかったのでございますけれども、過去一年間におきましていろいろなことを考えましてこれの進捗に努力いたしました結果、今年は恐らく事業団の執行率というものは九〇%ぐらいになるだろうという見込みでございます。これはまだ年末まで少しありまするから、それを見なければわかりませんけれども、大変手数のかかる仕事でありますけれども、われわれは過去三年半の経験をもとにいたしまして執行率を上げることに——と申しても金をむだに使うわけではございませんけれども、極力努力をいたしておる状況でございます。
  79. 福間知之

    福間知之君 私は、こういう国際的な環境の中にあるわが国でございますので、非常にこれは有意義なことだし興味を感じているのですけれども、大型プロジェクトですからこれはかなりの金額になるんだろうと思うんで、まあ一千億以上だとも言われているんですが、来年度いま申された八つのプロジェクトをさらに拡大していくということなのか、むしろこの八つの中身を遂行していくということに重点をかけるのかどうなのかということが一つ。  それから、いままでは民間がほとんどやっておったんですけれども、恐らく民間の場合よりも今回の方が規模は大きいのじゃないかと思うんですが、その点が二つ目でございます。いかがですか。
  80. 法眼晋作

    参考人法眼晋作君) 第一点でございますけれども、言うまでもなく始めた調査は貫徹することをしなければいけませんけれども、そのほかに本年度におきましても開発調査の費用は約五十五億いただいております。したがいまして、年間にいたしますれば多数の事業団からの調査団を派遣いたしまして、しかし調査団を派遣するだけでは実を結ばぬわけでございまするから、そういった技術協力による開発調査というものがいかにして資金協力に結びついていくかということが大事でございます。われわれはその点につきましても大体事業団の執行いたしまする調査執行のうちの約五〇%は協力基金その他からの資金協力でつながっておる。世銀、アジア開発銀行その他あらゆる国際間の開発銀行を合わせますというと七割近くが資金協力につながっているわけでありまして、これは大体として見れば相当な成績であるというふうに思います。御指摘のように、われわれはこの事業をますます拡大するということは時代の要請でございまするから、先生方の大変なサポートを得ながら、この上努力を続けたいと思っておるわけであります。
  81. 福間知之

    福間知之君 総裁、できれば事業団のそのような御活動のデータを参考までにいただければありがたいと思います。委員長、よろしくお願いをしたいと思います。
  82. 法眼晋作

    参考人法眼晋作君) 確かにデータは十分先生方に差し上げたいと思います。要すれば、どこへでも参上いたしまして説明に上がります。
  83. 福間知之

    福間知之君 ちょうど昼の時間が来ましたが、もう少しがんばらねばなりません。今度は大臣と主税局長でございます。  まず、有価証券取引税法の一部を改正する法律案につきまして、先般来私どもも申してきたわけでございますが、過去の引き上げの経過というのを概略御説明願いたいと思います。
  84. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 有価証券取引税は創設されましたのが昭和二十八年でございますが、それ以後公社債の税率を引き下げたことがございます、三十一年でございますが。引き上げというのはずっとございませんで、四十八年度の改正で創設以来初めて引き上げが行われました。そのときの引き上げ率は一〇〇%でございます。今回再度引き上げをお願いしておるわけでございますが、今回の引き上げ率は五〇%でございますが、引き上げ幅といたしましては前回と同様の幅になっておるわけでございます。
  85. 福間知之

    福間知之君 今回のこの引き上げでどれぐらいの増収になる見込みですか。
  86. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 初年度、平年度とも三百三十億を予定いたしております。
  87. 福間知之

    福間知之君 三百三十億という金額はかなりのものだと思うんですけれども、当然これは今日の経済がさらに回復に向かう、あるいはまた証券取引が一層活発化すると、こういうことによってふえていくという可能性を持っているわけですね。
  88. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 率直に申し上げまして、有価証券取引税というのはまことに税収が見積もりにくい税でございます。出来高、取引価格、まあそういうことを申し上げると恐縮でございますが、もしそれがわかれば私ももうかるわけでございますが、そこが全くわからない。したがいまして、前年度の実績をできるだけ近い時点まで掌握いたしました上で、翌年度は前年度と同額というふうに見込むということでずっときております。その意味で、五十三年度予算も増税前の額は今年度の実積見込みと同額を見込みまして、その上に今回の増税分をかぶせただけでございますが、上に積んでみますと三百三十億になるわけでございます。したがいまして、これが、証券市場が五十三年度全体を通じてどうなりますか、増収の可能性と同時に減収の可能性もあるという、非常に収入見込みのむずかしい税であるということを申し上げたいと思います。
  89. 福間知之

    福間知之君 登録公社債の譲渡についての所要の規定整備という中身について御説明願います。
  90. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 従来の規定は、創設以来ずっとそうであったわけでございますが、登録公社債については、この税法の適用上は登録名義の変更があったときに譲渡があったものとして課税をするという規定になっておりました。しかし最近に至りまして、御承知の現先取引というものが非常に活況を呈してまいりましたわけでございますが、これは性格的には買い戻し条件つきで売るわけでございまして、したがいまして、場合によりましては名義変更をしないままで売って買ってもとへ戻ってきたということが間々出てくるようになったわけでございます。その点はやはりこの税の性格上、譲渡があればその税を負担していただくんだ、登録名義の変更があってもなくても負担していただきたいということを明確にするために今回規定を書き改めたわけでございます。
  91. 福間知之

    福間知之君 この有価証券取引税法の改正に関して、わが党の場合はかねがね三倍ぐらいに引き上げてはいかがかなと、こういうことを申してきたわけでありますが、前回も〇・三に上がりました。今回もまたこれで〇・四五ですか、上がるわけでありまして、三倍にだんだん近づいてきているということで、今回それを一気にやるということについては多少考慮する余地があるかなと、こう思っているわけですが、主税局長、今後もこれはこの程度の水準で時期を見て上げていくと、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  92. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) その点のお答えは非常にむずかしいと思います。すでに御提案になっておりまして、先日衆議院の方では撤回されましたけれども、野党の御提案の法案では一%を目途にしておられました。現在の税率は創設時第二種につきまして〇・一五であったものが前回改正で〇・三になり、今回〇・四五になる。つまり前回の上げ率が二倍、今回の上げ率が五割アップ、したがって上げ幅は前回も今回も〇・一五、そういうことでございますが、終局的な水準として今回の〇・四五が妥当なものかどうかということになると思いますが、流通税ということの性格上余り高い税率であることは適当でないと思います。  これにつきましては、よく御承知のようにOECDで資本取引関係委員会と税の関係委員会と両方でいろいろ議論があった経緯がございまして、余り高いのは望ましくない、ただ共通認識としてはおおむね〇・五ぐらいがいいのではないか、しかしそれは各国の事情によっていろいろあるだろうけれども、〇・五ぐらいが大体いいんで、それより上げるとしても一を限度にするのが適当ではないかというような議論があったことを私承知しております。ただし、それは正式の結論になりませんで、別に理事会の勧告とか決議とかいうことにはなっておりません。ただ資本取引の面からの専門家の集まり、税の面からの専門家の集まり、両方でほぼいま申し上げたようなニュアンスの答えが出ております。したがいまして、日本の場合に将来の財政事情に応じましてこの税にさらにその負担をしていただくという可能性を否定するものではございませんけれども、当面の負担水準としましては、やはり今回引き上げ後の〇・四五というのがほぼ〇・五のあたりになっておるわけでございますので、少なくともここしばらくはこの〇・四五という水準で安定させて市場の反応を見るということが妥当ではなかろうかと私どもとしては考えております。
  93. 福間知之

    福間知之君 アメリカとかドイツとか、それぞれ状況は違いますから一概に比較をすることはできないと思うんですけれども、参考までに御説明を願いたいと思います。
  94. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) アメリカは、連邦税としてはこの種の税はございません。ございませんが、州に幾つかあるようでございまして、私どもわかっておりますのは、たとえばニューヨーク州では価額に応じ定額で課税をしておる、一セント五六から六セント二五というような税額が決められておるようでございますが、税率に換算してみますと、普通の取引値段を推定して計算してみてでございますが、大体〇・二三、それから〇・六ぐらいの幅に広がるのではなかろうかと考えられております。  それからイギリスの場合には、譲渡につきましての印紙税というものがございまして、これが買い入れ金額の二%でございます。これは譲渡印紙税というもので、通常の契約に対する印紙税と別のものでございますので、有価証券取引税にほぼ該当するものとお考えいただいてよろしいかと思います。  ドイツは税率が〇・一から〇・二五という税率で似た種類の税がございます。フランスも同種の税がございまして、これも〇・一五ないし〇・三という税率になっておるわけでございます。
  95. 福間知之

    福間知之君 次に、租税特別措置の今回の改正案につきまして、企業関係特別措置の廃止が九十一項目の中でわずかに十一項目である、しかもそのうち四項目が今年三月末をもって期限切れになるものであるということでございます。本会議でも私御質問したんですが、今回の改正で——昨年の場合平年度二千三百四十億円増収になった、それがことしはこの改正で四百九十億円ぐらい、五百億円弱だと、昨年の五分の一程度だと、こういうことのようでありますが、大変これはまだ不十分じゃないかと思うんですが、当局はどのように考えておられますか。
  96. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) お言葉でございますけれども、私どもとしては精いっぱい、ずいぶんやったというつもりでおりまして、御記憶のとおり、五十一年度の改正から特別措置、特に企業関係の特別措置につきまして、政策目的があるものであってもなおかつフェーバーの度合いを縮めていきたいということで鋭意作業を続けてきております。五十一年度改正では見直し五十九項目うち廃止九項目、五十二年度改正では見直し二十九項目うち廃止二項目、今回見直し三十七項目うち廃止十一項目という流れにございます。  それから改正による増収は、五十二年度は確かに相当大きな額になりましたんでございますが、これは利子・配当につきましての源泉分離選択税率の引き上げでかなりの金額になっておりまして、企業関係だけで申し上げますと、昨年度改正は平年度三百四十億でございました。五十三年度改正は四百九十億でございます。これは政策目的をそれぞれ持ってつくられておりまして、私どもはその既得権化、慢性化を排除したいということと、さらに、政策目的があるにせよこれだけ公平に対する要請が強まっているんだから、それはフェーバーの度合いは縮めてくれということで、関係省庁に協力をお願いして、大体八月ごろから作業を始めまして、四カ月ぐらいかけて相当のエネルギーを使って作業をいたしましたのでございますが、私ども担当官もその間非常なロードをかけて作業いたしておりますので、お立場からすればなお不十分であるという御批判もあろうと思いますけれども、まあひとつせっかく働いた連中も時にはほめてやっていただきたいというお願いもいたしたいと思います。
  97. 福間知之

    福間知之君 いまの後の方のお話は私も理解するにやぶさかじゃありません。昨年でございましたか、当委員会で、たまたま「日経ビジネス」が大蔵省官僚その他通産官僚、外務官僚などなどの意識調査をやったやつを私取り上げまして、それら優秀なわが国のお役人の方々がもうほとんどこの租税特別措置、特に企業優遇税制を廃止すべきだと、こういう意向で大体固まっておったデータを私申し上げた記憶があるんです。ですから、恐らく真剣になって昨年来やられたんじゃないかと、こういうふうに推察をするわけですが、それはともかくとしまして、少し具体的に、時間の関係で二、三はしょってお聞きします。  例の利子・配当所得に対する優遇措置、これはすでに何回も申し上げてきましたように、総合累進化していくというこのテンポですね、いかがかということ。  それから通産省に投資促進税制について見通しをひとつお聞きをしたいと思うんです。これは民間設備投資が今日までかなり冷え切ってきたというところから考え出された時限的な税制であるという意味で私理解はしておるつもりでございますけれども、実態として果たしてそのように効果を上げ得るのかどうか、全く逆の効果しか上がらないんじゃないかというふうな危惧もあるわけでございまして、これは主税局長初め、特に通産当局来ていただいていますので、まずこの二つ御答弁を願いたいと思います。
  98. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) まず前段のお尋ねでございますが、利子・配当所得につきましては、御承知のように多年分離課税一本であり時には非課税であったものを、四十五年度改正でやっと総合の方向に踏み出しまして、その機会に源泉分離選択制度をあわせて採用したわけでございますが、それ以後二回にわたって源泉分離選択課税の税率の引き上げを行ってきております。現在の制度は五十二年度改正で税率引き上げが行われまして、本年の一月以後の支払いの利子から適用になっているわけでございまして、五十五年分の支払い利子までという期限がつけられております。  税制調査会内部でも、かねてから総合課税が最も望ましいことは異論がないということになっておりまするし、総合課税を現実的に新たな不公平を招くことなしに実現できるような制度を早急に整理するように具体的に検討を進めろという御指示をいただいておるわけでございます。  現在の研究の段階をお答えいたしますと、昨年のかなり早い時期から私ども国税庁とで部内的に、総合名寄せをするためにどのような仕組みが必要であり、どの程度のコストが必要であり、どの程度の人員を必要とするであろうかということの勉強を始めております。別途、全国銀行協会の方に、銀行としてのいわゆる全店名寄せというものが可能であるかどうか、可能であるとしてどこまで協力していただけるか、またそれがどこまで私どもの方に資料として提供していただけるかということの、これもまたコストをあわせまして勉強をしていただきたいというお願いをしておりまして、全銀協は全銀協で別途ある程度の頻度で専門的な研究を続けていただいております。  で、いまの私の考え方では、できますことならばことしの夏ごろまでにそれぞれ一応中間的でいいから答えを出してみて、それを一遍突き合わせてみたい。その結果を見た上で、私どもから先方にお願いすることもございましょうし、先方からこちらにここはこうしてもらわないと実務が動かないというような御要望も出てこようかと思うんです。それを突き合わせました上で第二段の作業に進んでまいりたい。そういうじみな作業を重ねまして、できることならば五十五年末の期限切れの機会に現実的に実行可能な制度を探り当てるということを目標にして努力をいたしてみたいというのが現在の研究段階でございます。  後段につきましては、計数的な見込み、判断は通産省からお答えがあると思います。私ども立場で申し上げられることは、五十三年度の税制改正の答申に出ておりますように、税制調査会の中ではかなり消極論が強うございましたけれども、やはりそれをあえて多数意見として乗り切って、一年限りのものとして歯どめ効果、繰り上げ効果をねらう、しかも既存の特別措置との重複を避けるということであるならば、政府が民間設備投資が出てくれることを期待しておるんだという姿勢を示し心理効果を与えるということででもこれに踏み切ることはこの際としては意味があるであろうという結論になっておりますので、この一年限りの措置というのは税制調査会の答申としては非常にウエートを持った答申であるというふうに考えております。
  99. 南学政明

    説明員南学政明君) 通産省が考えております投資促進税制の効果でございますが、今回審議をお願いしております投資促進税制の内容は、第一にその対象でございますが、省エネルギー設備あるいは公害防止設備等きわめて政策的に重要なものに限定しております。また、第二に期間を一年と限時的なものとしております。さらに第三に、単なる税の繰り延べ措置と異なりまして、対象設備取得価格の一〇%を税額控除するというきわめてインセンティブ効果の高い方式を採用いたしております。  こうしたことから、一般的には需給ギャップがある現時点におきましても、対象設備につきましては私ども投資拡大効果は確実に期待できるものと確信いたしております。すなわち、先ほど主税局長からお話がありましたように、考えられる第一の効果といたしまして、歯どめ効果があると思います。今回の両局面を見てみますと、企業の経営者の投資マインドは非常に萎縮しておりまして、設備投資の実施時期を繰り下げる傾向がございます。ちなみに、通産省の所管の大企業の設備投資の当初計画と実績を比較してみますと、四十九年度から五十年度にかけまして、四十九、五十、五十一年度と三年間いずれも一割ないし二割当初計画を削減する実績となっております。本税制が導入されて一年間に限りインセンティブを与えるということになりますと、こうした繰り延べ傾向への歯どめが確実にかかってくるものと期待いたしております。  第二の考えられる効果でございますが、前倒し効果あるいは採算性向上による投資増効果、こんなものを私ども考えております。民間設備投資は御存じのように四十九年度以降四年連続の低迷状況にあります。したがいまして、省エネルギー投資あるいは中小企業の合理化投資等潜在的な投資需要というのは相当程度あるのではないかと、私どもこのように考えておりますが、本制度が導入されますとこうした潜在的な投資需要が顕在化いたしまして、将来やろうかと思った投資計画を繰り上げて五十三年度において実施するとか、あるいは採算性が向上して新しい投資に踏み切るとか、そういう効果が期待できると思います。また、心理的効果も無視できないものがあろうかと思います。このように、私どもは本税制の対象設備につきましては確実に効果があると考えております。特に中小企業につきましては、大企業と異なりまして対象設備を限定しない方式をとっておりますので、本税制が広く活用されまして効果を上げるものと期待しております。  もとより、私どもは本税制だけでもって民間設備投資が回復に向かう、冷え切った投資マインドが回復に向かうということを期待しているものではございません。本税制は民間設備投資促進のための有力な政策手段の一つと位置づけられるべきものと考えておりまして、積極的な財政金融政策等と相まって、鎮静化しておる民間設備投資の企業経営者の投資マインドというのが徐々に回復に向かう、このように期待もし、また考えている次第でございます。
  100. 福間知之

    福間知之君 一年間という時限立法というところにアクセントもあり、また、仮にこれを考える場合でも比較的考えやすいわけでございます。基本的に、私はやはり企業に対する特別償却制度など現行の制度とあわせてこういうものが中期的に併置されていくということには反対せざるを得ないわけでありますけれども、そういう点ではわりあいに考えやすいという中身のものとして提案されておるわけでありますけれども、これは仮に期待どおりインセンティブが上がらなかったという場合、来年継続するということはまずないでしょうねということと、もう一つは、中小企業にとって私これ一つ魅力があるんじゃないかと、こう思うんですが、大企業も含めまして中小企業、特にこれは無差別に一〇%税額控除すると、こういうことのようですけれども、全体トータルでどれぐらいの金額になると見込んでおられるのですか。
  101. 南学政明

    説明員南学政明君) 本税制の対象設備投資全体は約一兆三千億円を予定しておりまして、国全体の民間設備投資でございます二十五兆六千五百億の約五%を占めております。また、これによって減税額は大蔵省の方から答えていただいた方が適当なのかとも思いますが、約千二百億円を予定いたしております。  なお、この対象設備全体の一兆三千億の中の約三分の二が中小企業関係の設備とみなしております。
  102. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 前段の、延ばすことはないでしょうねというふうに御質問でございまして、私どもは、先ほど申し上げましたように一年限りであることがはっきりしておる、そのための効果というものをねらっているわけでございますので、やはりそういうものの考え方というものは尊重いたしたい。今回提案しております法案でも、一年限りということは法律的に明示されておるわけでございます。
  103. 福間知之

    福間知之君 次に、国土庁の方に、例の土地譲渡益重課制度の緩和ということについて、これは本会議でも私、この適正利益要件を適正価格に改めるということによって国民の生活擁護という観点から問題があるんじゃないか、そして今日の地価を追認するということにならないのか、現在の土地重課税が宅地供給を阻害しているというデータが裏づけとして存在しているのかどうか、そういう点を重ねてひとつお聞きをしたいと思うんです。
  104. 佐藤和男

    説明員(佐藤和男君) お答えいたします。  今回の法人の土地譲渡益重課税の改正は、これの適用除外要件でございますいわゆる公募要件、それからその宅地の質を担保いたします開発許可に対する適応要件という二つの要件はそのままにしておるものでございます。それで、そのうちのもう一つの要件でございます適正利益率の要件に関しまして、国土利用計画法による適正価格に置きかえようとするものでございまして、したがいまして、従来見られましたような一般の法人の土地ころがし等に関する重課の制度はそのまま残しておるものでございますので、これがかつてのような地価高騰とつながるということは基本的にないと考えます。  それから、いまほどの国土利用計画法の適正価格要件でございますが、これは私どもの土地鑑定委員会において公示してございます地価公示価格を基準として行うということになっております。地価公示価格は、先生御存じのように正常な価格として土地鑑定委員会が鑑定するという厳格な手続をもって行われているものでございまして、単なる売買事例の追認ということではございませんので、御指摘のようなことは起こり得ないというふうに考えております。
  105. 福間知之

    福間知之君 いや、その点が少し疑問があるわけでお聞きしたんですが、適正利益率二七%の制限をはずす、そして適正価格というふうに改める、この場合に、企業が売買してもうけるという場合の利益が青天井にはならない、適正な公示価格というものがやっぱりあるんだからこれはならない、こういうふうに考えていいわけですか。
  106. 佐藤和男

    説明員(佐藤和男君) いまほど御説明しましたのは、今回の法人重課制の改正は、いわゆる優良宅地造成事業者に対する宅地供給に絡まるものでございまして、一般の法人の土地の転々売買に関しては従前どおりでございまして、いわゆる利益率要件と申しますか、一般の今回の法人重課制度自体が残ってございますので、そのようなことにはならないということでございます。
  107. 福間知之

    福間知之君 過去の経過として、昭和五十年に地価が大体〇・五%、五十一年が一・五%、五十二年は五%近い上昇を示していると、こういうことですが、そんなに低いものですか。
  108. 佐藤和男

    説明員(佐藤和男君) いまほど先生御指摘のように、地価は昭和四十七年、八年に、いわゆる土地ブーム等の影響を受けまして三〇%以上の高騰を示したわけで、その後四十九年、地価公示価格と申しますと五十年一月一日の公表時点におきまして全国で九・二%の開きを示し、五十一年一月一日で〇・五、五十二年一月一日で一・五%という、まあ全国的な変動結果を示してございます。今回、いまほどお話ございました五十二年一年間、五十三年の一月一日の地価公示は近々四月一日に公表される予定でございますが、私どもが抽出調査といたしまして行いましたものによりますと、全国で二・六%の変動ということでございます。
  109. 福間知之

    福間知之君 時間が参りましたので、はしょりまして、主税局長大臣に少し所信をお聞きしてみたいと思うんですが、価格変動準備金についてもっと思い切った措置がやっぱりとられるべきじゃないか、こういうふうな点、さらにキャピタルゲイン、交際費、最後にどうしても触れなきゃならぬのは医師優遇税制でございまして、これらについて、今回触れられていないもの、不十分なもの、近い将来どうやら手がつくかなあと言われるもの、いろいろ申しましたけれども、総じて、主税局長の方では景気状況なり企業の活動が低迷しているということもありますが、かねがねこの税制については高度成長の時代からの遺物だというふうに私たちはやや批判的に見ておるわけでございますが、ちょっと長期の展望で、まだまだこれは改正をするということが必要だとお考えかどうか、お聞きをしたいと思います。
  110. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 一般的に申し上げまして、先ほどお答えいたしましたように、今後ある時期にどうしても一般的な税負担の増加を求めざるを得ないというところに財政は追い込まれておりまして、その場合に負担の公平に対する国民の皆様からの御要請というのがますます強まるということを私ども考えまして、それがありますがゆえに、五十年八月からこの改正を順次やるという作業をスタートしまして、三年がかりで私どもなりにかなりの整理ができたと思っておりますけれども、やはり引き続き同じ考え方で、その政策が、あるものは時には大胆に認めるということを含みながら、しかし、やはりいまある政策税制につきましては、既得権化、慢性化を排除するし、また情勢をよく考えながらそのフェーバーの度合いを縮めていくというふうに引き続き努力をいたしてまいりたいと思います。  なお、政策税制という言葉に該当しないかもしれない社会保険診療報酬課税の特例という特殊な措置につきましては、私どもとしましてはできるだけ早い機会に是正の方式をとっていただきたいということを引き続き関係方面に強くお願いしてまいりたいと考えております。
  111. 福間知之

    福間知之君 主税局長、自動車関係の税制について、これ目的税から一般税に振り向けていくという考えを持っているんですが、これはいまの局面で一面的に割り切るということについては、私自身も少し気持ちでは抵抗があるのですけれども、しかし、本来的にはやっぱりそういうふうにしていくべきじゃないか、後々これは当委員会でも石油新税の問題も出てまいりますが、それについても同様のことが言えるわけでございまして、その点どう考えるかということ。  それから、例の国税収納金整理資金について触れませんでしたけれども、これは、ことしは調子がいいけれども来年以降は調子が悪いのじゃないかと、こういう観点でつけ加えてお聞きをして、大臣の御答弁を求めたいと思います。
  112. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 大臣から総括的にお答えいたします前に、私からごく簡単にお答えしたいと思いますが、一般論としまして、あるいは税制、財政運営の基本的な考え方として、目的税というのはやはり歳出の非効率化、放漫化を招く危険があるし、資金配分としても問題があり得るということで望ましいものではない。基本的な考え方は私どもは変わっていないつもりでございますけれども、ただ現実の問題としましては、やはりいまの状況では五十二年度も五十三年度も、あるいは八次の道路計画を見ましても、いま道路財源として特定されておりますものでは道路整備費に足らない、どうしても苦しい中から一般財源を投入しないと道路整備が遂行できないという現状がございますので、やはりその現状を無視するわけにはまいらない。ただ、今後将来の問題として、現在特定されております使途を一挙に一般財源化するということではないにしても、たとえば総合交通対策に広げるという角度があり得るのではないか、あるいは燃料税につきましては総合エネルギー対策というふうに広げていく方向があるのではないかという御議論はすでに税制調査会でも出始めておりますし、将来の重要な検討課題であろうというふうに考えております。  それから、国税収納金整理資金の一部改正でございますが、これは五十三年度に改正をお願いいたしますと、五十三年度だけ十三ヵ月分の税収があって、五十四年度以降は十二カ月分に戻ってしまうという点は御指摘のとおりでございまして、そのような姿は予算委員会にお出ししました財政収支試算でもはっきりと数字的に出ているわけでございます。ただ、そういうことを十分知りながら、あえて五十三年度にこのような改正をお願いしておりますのは、やはり五十三年度に何とかしてトンネルの先へ出ていくはずみをつける、そのための地方財政対策、あるいはひいては財政投融資の原資を景気対策に活用するためにどうしても、来年度以降のむずかしさを知りながら、あえて五十三年度はこれだけの税収を確保して景気対策に全力を挙げたいというつもりで御提案をしておるわけでございますので、ひとつぜひその考え方を御理解いただければ幸いだと思います。
  113. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 御案内のように、ことしは実質三七%という大変な公債を出しまして、金融面とあわせて臨時異例の財政金融措置を講じているわけでございます。目的とするところは、何とかしてこれらの措置を講じまして財政主導型で民間の活力を回復し、やがては本来の姿である民間経済日本の成長を引っ張っていく、こういう形に持っていきたい、こういうことでやってるわけでございます。その結果といたしまして、公債費あるいは公債残高が非常にふえまして、今後財政収支試算その他でお示しすると思いますけれども、大変な公債費の累増が予想されるわけでございます。そのことはやがて財政硬直化を招くことになりますし、このままでやっていきますと今後の財政が国民の需要に応じ切れない、機動性をなくしてしまう。場合によりますと、民間の今度は資金需要が出てきますと、財政というものは急に減らすことはできないわけでございますから、いわゆるクラウディングアウトの心配があるわけでございます。そういうことを配慮いたしますと、何よりもまず特例債から脱却しなければならぬということを念願としているわけでございまして、そのためには歳出の方の一層の節減、さらには一般の負担増加を求めなければならぬ、こういう状況にございます。  そういうことを国民から理解していただくためには、どうしてもその前提としていわゆる税制の公平化というものに対してより一層政府が努力しなければならぬことは当然でございます。その一環といたしまして、特にやかましい、従来から論じられております診療報酬に対する課税の特例が一番大きな問題になっているわけでございます。これは御案内のように、わが党が、今度の措置は五十三年度限りにする、そしてそれに必要な諸措置をあわせて講ずるということを決定しておりますので、政府も党と一体となりまして、五十三年度限りで現行の措置を廃止しようと思っておるところでございます。  なお、その他の問題につきまして、いわゆる有価証券のキャピタルゲインの問題、あるいは利子・配当の総合課税の問題こういった問題につきましては、先ほど来主税局長言っておりますけれども、かなり年月がかかるし、じみちな実行体制を整えなければなりませんけれども、気持ちは全く同じでございまして、鋭意その実行力のある方法をいま検討いたしているところでございまして、どうかその点については御理解賜りたいと思うのでございます。  国税収納金整理資金の今度の特例でございますけれども、これも今年度の景気浮揚、限られた資金の中でどうやったら一番景気浮揚になるか、特に地方財政の関係あるいは財政投融資の資金を十分に活用するという問題あるいは全体の公債消化を円滑にしていくためにはどうしたらいいかと、そういう三つの見地から、今度いわば五月分税収を今年度の、五十三年度の税収に取り込んだわけでございます。  考えてみますと、納税義務が発生いたしておりまして出納整理期間まで収納するわけでございますから、従来と変わることは変わりますけれども、全く歳入区分の原則に反したものとは考えていないのでございまして、もうこれ以上延ばすことができないところまで、ぎりぎりいっぱいまで、最後のいわば五月分税収をこの際使っちまおう、こういうつもりで出したわけでございます。したがいまして、五十四年度以降それだけ財源が不足するということは十分承知しているわけでございまして、その点はさっき申しました財政の健全化によりまして補ってまいりたいと、このように考えているのでございます。  いずれにいたしましても、今度の五十三年度の財政措置というものは全く異例なことでございまして、これが成功することをわれわれは期待し、そしてその点一点に集中いたしまして、今後も執行面におきまして全努力を傾注してまいりたいと、かように思っておりますので、何とぞ御了承のほどをお願い申し上げます。
  114. 福間知之

    福間知之君 きょうはこれで終わります。
  115. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 午前中の質疑はこの程度とし、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      —————・—————    午後一時三十三分開会
  116. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、内藤功君が委員辞任され、その補欠として渡辺武君が選任されました。     —————————————
  117. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 休憩前に引き続き、有価証券取引税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法及び国税収納金整理資金に関する法律の一部を改正する法律案について質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  118. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは最初に、五十二年度の税収見積もりが当初の予算に比べて二度にわたって補正が行われ、所得税では八千六百十億円、法人税では三千二百七十億円、税収全体では実に一兆一千六十億円の減額修正が行われておるわけでありますが、このように大幅に租税収入が落ち込んだ原因はどういうところにあるのか、御説明願いたいと思います。
  119. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 一次補正、二次補正合わせますと、おっしゃいますとおり一兆一千六十億円の減額をいたしました。そのうち一次補正の三千億の減額は、与野党合意で行われました特別減税によります減収分でございます。二次補正で減額いたしました八千六十億円の中で所得税が五千億強、法人税で三千億強という修正減額をいたしておりまして、この二つが八千六十億の大半を占めておるわけでございますが、抽象的に申し上げますと、当初の経済見通しに比べまして一次補正が動き、個人所得、企業収益ともに当初の経済見通しを下方修正せざるを得ない状況を税収の方も受け身に反映しておるわけでございます。たとえば、源泉所得税の減収を四千二百四十億円と見ておりますが、そのうち給与の分の減収は二千億ちょっとでございます。  この減収を立てました背景は、当初見通しでは賃金の増加が一一・六%、雇用の増加が一・五%で、雇用者所得一三・三%という見通しになっておりましたが、十二月の改定実績見込みでは賃金が一〇・六、雇用が一・四、雇用者所得としては一二・一というふうに下方修正されたということが背景になっているわけでございます。  なお、四千二百四十億のうちの二千億が給与でございますから、残りは何かということになりますが、残りの中で大きいのは利子でございまして、これは金利の引き下げも影響してきております。それから、配当は中間配当の見送りというような、当初は予想できなかった事態が反映されております。  それから、三千二百七十億という法人税の減収の背景は、これまた経済見通しで当初と実績見込みを比較して申し上げますと、鉱工業生産は一〇九・二の見込みが一〇二・六に下方修正されている。卸売物価は一〇五・七の見込みが一〇〇・六に下方修正された。消費者物価も一〇八・四の見込みが一〇七・六に下方修正されたということでございますので、やはり生産、物価を相乗したものがほぼ売り上げに見合うというようなマクロ的な関係にございますものですから、企業収益としては当初に比べて伸び悩むと見ざるを得ない、実績としてもそういう傾向が下期にかけてあらわれているということで、法人税で三千二百七十億円という減収を見込んだ次第でございます。
  120. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今年度の最終的な税収の見積もりは、いまの減額修正したのに比べて大体どの程度の状況であるのか。
  121. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) ただいまのところ私どもの手元で正確にわかっておりますのは、一月末税収まででございます。一月末の税収は一般会計で十三兆五千九百七億円でございまして、二次補正後の、先ほど申し上げた八千六十億減額後の予算額十七兆一千三百四十億円に対しますいわゆる進捗割合を見ますと七九・三%ということになります。同じ時期の前年が決算額に対して幾ら入っておったかということを見てみますと七七・八%入っておったわけでございますから、進捗率対比ということで申し上げますとプラス一・五ポイントという姿を示しております。しかし、これは実は一月末がプラス一・五でございましたけれども、十二月末にはプラス二・三であったわけです。つまり、下へ向かって落ちていくという五十二年度の姿は、いつか決算調整資金のときに当委員会でいろいろ御説明いたしましたが、パターンとして四十九年度に非常によく似ておる。これからだんだん落ちていくという姿を残念ながら示しておるように思います。したがいまして、問題はいまあります一・五ポイントというプラスが年度末にかけてどれくらい落ちて、ゼロでとまってくれるかというふうに見なくてはならない年であるというふうに考えております。  これから以後の不確定要因といたしましては、一月決算の法人税はウエートは小そうございますけれども、それにしましても一月、二月決算の法人税と、それから現在ほぼ申告が終わりましてこれから月末にかけて収入が入ってまいります申告所得税が大きく税収全体を左右することになろうかと思います。私どものいまの感じでは、この十二月末、一月末の姿を見まして、また二月中に日銀ベースで入ってきておる金額は、非常にラフではございますがある程度私どもはフォローしております。二月中の税収の動き、それから三月に入りましてからの日銀への入り方などをフォローしてみますと、申告所得税が予期しないほどの落ち込みを見せない限りは大体補正後の税収は確保できるんではなかろうか。若干のプラスがあり得るかもしれない。しかし、その辺はいずれにせよ申告所得税の入り方次第というふうに考えております。
  122. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いま主税局長から、景気回復のおくれがこういう税収の落ち込みになったと、こういう点はわかるわけでありますが、昨年一年見ましても、かなり暦年で見ましても大幅に円高になり、そのために各地の輸出関連産業等もかなり打撃を受けておるわけであります。そういう点で、この円高というものが税収にもかなり影響してくるんではないかと、このように考えるわけでありますが、五十二年度における円高と税収との関係については大蔵省としてどのように分析をしておるのか、御説明願いたいと思います。
  123. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 大変むずかしい御質問でございまして、結論的に申し上げますと、企画庁長官がよく言われますように、少なくとも短期的には円高のピッチが早く幅が大きいという意味で、これが生産なり雇用なりに悪い方の影響を与える懸念があるということは否定できないんであろうと思いますけれども、税収の方でまいりますと、その結果全体の経済活動がどうなるのかということがある程度の時期的なずれを経た後に税収に響いてくるという関係になります。それが全体のGNPなり税収なりとの関係として結果にあらわれてまいるわけでございますが、もう一つより端的に、法人税収がどうなるかという問題が実はございます。ところが、法人税収はプラス・マイナス両方でございます。たとえば石油精製とか電力とかいうところはむしろ増益というのがわりあい早目に出てまいります。それから一部の流通業界では、これはよく分析できない面がございますけれども、中小企業の十二月決算などが私どもの予測ほど落ちないで済んでくれたらいいけれども、その意味では中小企業の中でも円高でむしろ減益しないで助かったと申しますか、むしろ若干増益になってくれたというようなところも確かにあるように思われるわけでございます。  しかし一方では、しばしば問題としてお取り上げになっておりますように、輸出関連で成約が減ってしまうとか、あるいは出しても赤字になってしまうとかいう面も、これまた否定できないんだろうと思います。したがって、その明暗両方がどのように結果的に出てまいるかというのは、やはり実績を見ませんと、どうもいかなるモデルを使ってみましてもなかなかぴたっと当たるものはないんじゃないかというのが現状のように私どもとしては考えております。
  124. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ここでちょっとお尋ねしますけれども、これは質問から外れるかもしれませんが、いま鉄鋼にしてもアルミにしても、あるいは平電炉業界にしても、かなりの過剰設備を抱えておるわけですね。これは高度経済成長政策と申しますか、どんどん将来需要が伸びるという想定のもとに設備投資をした。ところが、油ショックで以後経済変動があり、それが現在には金利負担になり、企業収益を赤字にしておるわけですね。これは油ショックという不可避的なものであるという見方もありますけれども、しかし、一方ではこれは政治の責任でもあると思います。そういう場合、そういう過剰設備による税収減というのは一体どの程度であるのかですね。もし現在適正な設備投資、適正な稼働率であった場合には税収の減というのはそれほど多くない。もっと税収増が相対的にはあると思うんですけれども、そういうような計算は主税局等ではやったことはないのかどうか。
  125. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) これもまた大変むずかしいお尋ねでございます。  全体として一つの手がかりは、設備がフルに動かない、しかし固定費はそれほど下がらない、そのために収益が圧迫されるということは、わりあい端的に探る一つの手がかりは売上高収益率ということになろうかと思います。売上高収益率が、企業統計で見ますと、一番最近の四半期はやはりその前に比べて下がってきていたと思います。しかし、ノーマルな売上高利益率というのは幾らであろうかということが実はなかなか決め手がないものでございますから、正常売上高利益率に比べてどれくらい減っておるかという計算がなかなかできにくい。しかし、傾向としてそういう傾向がマクロではあらわれている。それをさらに業態別に業種別に分析してみますれば、おっしゃるように設備の圧迫によるらしき業種とか、あるいは主として金利の圧迫によるらしき業種とかいうものは分析できると思います。ただ、税収全体といたしましては、法人税収は、将来に向かっての展望につきましては、やはり経済見通しとの整合性をもって御説明できるものにしかなり得ないわけでございますので、前回申し上げたように、将来の税収の展望としてはマクロ的な生産、物価というものに乗って見通しを立てさせていただく、そういうことでございます。
  126. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いま特定産業、特定不況業種をいろいろスクラップダウンをしていく、そういうような法案が審議されておるわけで、私は大蔵省としても、現在は過剰設備で異常な状態ですね、けれども、これが適正な設備になったときにはどういう税収があるのか、将来の予測をする上にはそういうような点の検討も当然必要じゃないかなあと、こういう気がするんですけれども、そういう点を今後検討する用意はあるかどうか、その点どうですか。
  127. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) そういう角度は私どもの部内ではいわば一種のサイドチェックとして議論はいたしております。つまり、マクロのGNPの諸要素の中に入っております要因の中で、法人税に影響するものを拾ってきて税収見込みを立てて、さてその結果が四兆何千億であるとか、あるいは五兆何千億であるとかという数字になったときに、いまの稼働率というのは過去のピークに比べてどうであろうか、過去のピークのときの税収は幾らであったか、それに比べて余り見当違いの数字になっていないかというようなチェックはいたします。
  128. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 五十三年度の予算作成段階では、円のレートは大体どの程度と見て編成をしているのか。
  129. 大竹宏繁

    説明員(大竹宏繁君) 実は予算の形成の前提になります経済見通しでございますけれども、これを作成いたしますときには円レートが翌年度どの程度になるかということを推定いたしまして、その上に立って見通しをつくるということをやっておらないわけでございます。もちろん、輸出入等の海外部門の計数を計算をいたしますけれども、それの換算のレートといたしましては、見通しを作成いたしました一番最新の時点のレートを仮に使いまして換算をいたしておるわけでございます。
  130. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 しかし、たとえば来年度の経常収支が六十億ドルですか、こういうやはり予測をしているわけですね。午前中の論議でも、私はよくわかりませんけれども、話を聞いておりますと、当然そういう経常収支のバランスいかんによって、それが当然為替レートにも反映されてくるということで、したがって、いますでに昨年の末に予算を編成したときから大幅に円高が進んで二百三十円と、こういうところにきておるわけですね。そういう点から、当然政府としても経済見通しというものを再度検討しなければならないんじゃないか、そういう感じがするんですけれども、そういうことはやらないわけですか。
  131. 大竹宏繁

    説明員(大竹宏繁君) 昨年からことしにかけまして円レートが上昇しておりますけれども、これに対しましては政府といたしまして個別的な輸入の拡大の措置を先般講じておりますし、また、公定歩合の引き下げあるいは直接的な短資の流入規制といったような施策を講じておるわけでございまして、円レートの安定のための施策を講じておる段階でございまして、現在のところ円レートの変動によって経済見通しを改定するということは考えておらないわけでございます。
  132. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 現在フロート制でございますので、円のレートが変動するのはある程度やむを得ない、これはわかるわけでありますけれども、今日までたびたび論議されたことですけれども、非常にわが国経常収支というのが余りにも見通しと実態が離れ過ぎる。年度当初ではマイナス七億ドル、それが六十五億になり百億になり、さらに午前中もお話がありましたように二月末ですでに百十九億ドルと、こういうように全く政府の予測は当たらないわけですね。優秀な人がたくさんおりながらなぜこんなに食い違いがあるのか。そういう原因がわからない人が予測したのでは来年度の六十億ドルも全くこれは当てにならないのじゃないか、こういう感じがするのですけれども見通しの狂いの原因はどこにあると反省をしておるのか。それを言ってもらわないと来年度は当たるということにはならないんじゃないかと思いますね。
  133. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) ただいま塩出委員の御指摘のとおり、五十二年度の当初の見通しと非常に違ってまいったわけでございます。いまおっしゃいますように、季節調整後で、二月末で百十九億ドル黒字になっていまして、調整前ですと百十七億ドルということになっておるわけでありますが、いずれにしましても非常に食い違ったのは事実でございます。  この原因は何かという御指摘でございますが、一番大きいのはやはり輸出が予想以上に増加してきたということではなかろうか。その輸出の中でも自動車とか自動二輪のような商品で海外で値上げをしておりますけれども、しかも価格以外の競争力も強いものですから、非常に需要が堅調であるというのが一つではなかろうか。  それからもう一つは、国内の景気がこういう状態でございますので、従来輸出に依存しておりました企業は、この際全力をふるってとにかく生きるために輸出を続けなきゃいかぬというような気分が強いんではないかというふうに考えます。  それから第三には、非常に大幅かつ急激な円高でありましたために、ドルベースの価格としては海外では値が上がる。したがいまして、ドルベースの統計をとりますと非常に額がふえてくるという点があろうかと存ずるわけでございます。  先ほどの国際収支見通しがなかなか当たらないということにつきましては、海外の要因が非常に大きい問題でございますので、そのために、日本のように予算を編成しますときに国際収支見通しを発表しておる国はないわけでございまして、それは一つにはなかなか当たりにくいというような点もあるんではなかろうかと、かように考えています。  たとえば、昨年の五月にアメリカブルメンソール長官日本会議に来ましたときに、去年の暦年のアメリカ経常収支は百億ドルないし百二十億ドルであろうということを言っておったんでございますが、三ヵ月後のIMFの総会のときには同じ暦年で百六十ないし二百億ドル赤字になるであろうということを言ったわけでございます。九月の段階ですと、あと三ヵ月しかないわけでございますが、その際でもなお四十億ドルのアローアンスを持って予測をしていたぐらいでございまして、どこの国でもなかなかこの問題はむずかしいということをひとつ御了承いただきたいと思います。
  134. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 したがって、六十億という数も余り確信はないと、これはやむを得ないと、こういうように理解をいたします。  そこで、一月、二月の輸出の伸びも非常に高い。私が聞いている範囲では、一月の経常収支黒字幅は十五億六千二百万ドル、二月は十九億一千五百万ドルといずれも最高の黒字となったと、このように聞いておるわけでありますが、昨年一年間円が二割も上がったと、相対的には海外におけるわが国の輸出品の値段が二割も上がったわけですけれども、そうして一方私のおります広島の地元においては、輸出産業であるやすりとかあるいは縫い針とかミシン針、こういうような中小業界はかなりの打撃を受けて、注文が非常に減っておるわけですね。特に造船においてもその打撃はもういまさら言うまでもないわけでありますが、そういう中でありながら、このような円高になってもなおかつ輸出が続くという、これは一体どこに原因があるのか。大蔵省はこの一月、二月の大幅黒字の原因となった輸出急増品目については通関統計で調査をしている、このように聞いておるわけですが、調査の結果はどうであったのか、これを御説明いただきたいと思います。
  135. 戸塚岩夫

    政府委員戸塚岩夫君) 一月、二月の経常収支黒字幅が大きいという第一の御指摘でございますが、これは輸出がふえているということと、もう一つは輸入が前年に比べて大変落ち込んでいるということの結果であろうと思います。私ども日本経済とのつながりにおいて輸出がどうだというとらえ方をしてまいりますると、ドル建てではなくて円建てでとらえているわけでございますが、一、二月の輸出が前年の一、二月に比べてどれぐらい伸びたかと申しますと、二・七%でございます。これに対しまして輸入の方は一〇・四%前年から落ち込んでいるという姿でございます。ドル建てでは輸出につきまして大変伸びたような数字が出るわけでありますが、しかし、円経済とのつながりにおいては決してそんなに大きな輸出の伸びを一、二月は示しているわけではないということを御理解いただきたいと思います。  それから、後段お話しになりました大蔵省で輸出急増品目について通関統計で調査をしているというお話でございますが、別に何かの目的を持って急にやっているというわけではなくて、毎月毎月私ども通関統計を出しますので、それについて、どういうものが伸びているか、あるいはどういうものが輸入が減ってきたのかというようなことを分析しております。一、二月の輸出で伸びましたものを若干申し上げますと、自動車が前年に対して三〇・二%、科学光学機器が二二・五%、二輪自動車が二三・五%、原動機が一五・八%、事務用機器が二一・四%。大きな輸出の金額のあるものの目ぼしいものから拾いますとそういうものは円建てで見ましてもかなり伸びているという実態でございます。
  136. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大蔵大臣にお尋ねいたします。  大蔵省としては、こういう輸出が非常に急増している品目については貿易管理令による法的な規制をすべきじゃないか、こういう主張をされたように新聞等では拝見しておるわけであります。しかし、最終的には通産大臣等の意見もあって、これはもう業界の自主規制でやっていく、このような方向であると聞いておるわけでありますが、そのあたりのことはどうなんでしょうか。
  137. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 大蔵省として、いまの輸出の伸びを輸取法とかあるいは貿易管理令で抑えたらどうだなどと言ったことは一回もございません。ただ、輸出の動向は絶えず注意しておるところでございますし、来年は七%、それから六十億ドル経常収支を目安にしておるわけでございます。したがいまして、現在の円高の問題もございまして、われわれとしては、為替相場の問題というのは終局的にはやはり基礎収支で決まるべき筋合いの問題であって、末端のところでいかに相場を操作してみてもそこには限度があるというふうに考えておるわけでございます。ただ、投機資金が入ってくるような場合、その分についてはある程度規制することもやむを得ない、こういう基本的な考え方をとっておりますので、常々やっているところでございますけれども、余り輸出が伸びていくということは、国内経済にとってはよくても、全体の世界経済考える場合、特にわが国のような影響の多い立場にある国では、喜んでばかりはおれないのでございます。そういう意味で節度のある輸出ということが今後望まれるのではなかろうか、そういう意味のことは言ったことはありますけれども、貿易管理令とかなんとかいうことは言ったことはございません。とりわけ、いろんな法律制度をやるということになりますと、非常にこれは機械的になりますし、時間もかかりますし、その間に見越し輸出が出ましたり、かえって結果的にはマイナスになる場合が多いわけでございますので、そういうことを発動するというのはよくよくの場合でなければならぬというふうに一般的には考えているわけでございまして、現在のこれからの中長期的なことを考えましても、また、さしあたりの円高の問題を考えましても、輸出にある自制を求めるとすれば、節度がある行政指導の方が効果的ではないだろうかという考えを持っているわけでございます。
  138. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 輸出が伸びて円の価値が高くなる、こういうことはある面から見れば日本の技術の高さを示すことで非常にいいわけですけれども、御存じのように日本の国は二重構造がはなはだしいわけで、そういう技術の進んだ国際競争力のあるものがどんどん輸出をしてその結果円高になり、被害を受けるのは国際競争力の悪い中小企業が受ける。そういう点から、先ほどお話がありましたような急速に伸びているこういう品種の輸出規制というもの、何らかの形でもう抑えていかなければならないところまで私は来ておるんじゃないか。これは、いままでも業界としては自主規制はやってきておるわけですし、現段階でもちゃんとやっておるんだと、こういうことを言っておるわけで、私たちもそういう点を非常に心配しておるわけなんですけれども、その点は大蔵大臣としてはどう考えますか。
  139. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) おっしゃるとおりに、国内的に考えますと、一部の競争力のあるもの、あるいはもう輸出以外はどうにもならないということで赤字覚悟で出しておる、いろんなものが業態によってあろうと思うのでございますが、そういう一部の輸出急増品のおかげで円レートが上がって、その結果としては全体の輸出産業に大きく響くわけでございますので、一部の企業のために全体が悪影響をこうむるということは決して好ましくもない。また、経済の公平という立場から言っても決して好ましくないことは私も塩出さんと同意見でございます。そういう意味で、通産の方では今後輸出の節度、あるいは秩序ある輸出について目下非常にいろいろな角度から検討を加えておると聞いておるわけでございます。  また、これは単に国内経済だけの立場ではございませんで、いまの世界経済の中に占めるわが国の地位から申しましても、日本があんまり大きな経常黒字を出すということは、これは世界経済全体の立場でやはり考えものであろう。その及ぼす影響は、やがてまた保護主義につながる問題になるわけでございますから、これまた国際経済立場からも好ましくない。こういう両面から考えまして、私たちは来年度の一種の目標のようなものを設定してそれに行っているわけでございます。しかし、この三月末のところではどうも残念ながら世間で言っているように百三十億ドル近くになるんではないかと、こう言っているのはどうもそうなりそうでございます。しかし、それはそれといたしまして、五十三年度以降いまわれわれがねらっておりますのは、そういうことを解消するために内需の拡大を精いっぱいやりたい。そして、いまの外に向かっている企業行動を内に向けてくる。あわせて民間の自立回復を促して、そして早く民間主導型の経済の糸口をつかみたい、こういうことでいま財政金融その他懸命にやっているわけでございます。今度の予算が通りますと、その意味でこれから執行面が大きい問題になるわけでございますので、われわれも全力を尽くしまして望ましくない結果にならないように努力してまいりたいと、かように思っているところでございます。
  140. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 通産省が輸入拡大のために補正予算を編成すべきだと、このように大蔵省に要請をしていく方針を明らかにしたと新聞では報じておるわけでありますが、この内容を読んでみますと、原材料備蓄をしたり、そういうようなものを購入するための補正予算を組むような、このように拝見するわけでありますが、大蔵省としてはこういう要請は受けているのか、また受けた場合大蔵大臣としてはどういう考えであるのか、これを承っておきます。
  141. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 通産省から補正予算を組んでくれというような要請は一つもございません。御案内のように、五十三年度予算がまだ成立もしていないわけでございますから、それは恐らく新聞の観測記事ではなかろうかと思うのでございます。  しばしば申し述べておりますように、五十三年度の予算は私は七%の成長というものに対して相当十分な裏づけのある予算だと思っておるわけでございますけれども、しかしこれも何遍も総理を初め私たちも答えておるのでございますが、経済はやはり世界経済との関係において動くわけでございますから、予算成立後、わが国経済の現況を絶えず見守りまして、必要に応じ適宜の措置をとっていく、こういうことは言っているわけでございます。補正予算云々するまでもなく、御承知のように財政投融資が主として非常に大きな弾力性を持っているわけでございまして、五割の弾力条項を持っております。また、五十三年度予算におきましても公共投資予備費が二千億あるわけでございますから、これらのものを適宜動かしていけば七%の達成は可能ではないであろうか。まだ予算も成立する前からすでに補正予算の話をするというのは、恐らく新聞の推測記事じゃなかろうか、かように思っているわけでございます。
  142. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今年度は百三十億ドル経常収支の黒があるということは、それだけ輸出をどんどんやったわけですね。しかし輸出を規制をするということは、輸出が業界の自主的な規制によってダウンしていくことは、これは当然内需の拡大あるいは景気回復、そういう点から見ればマイナスの要因になると思うんですね。そのあたりが通産省が輸出規制に反対をする一つの理由ではないか、このように私は考えておるわけですが、大蔵大臣としてはこの関係についてはどのように考えているのか。
  143. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 非常にむずかしいわけでございまして、先ほども通関ベースで話しますと、一月、二月は円ベースで二・七しか伸びておりません。しかし、ドルベースで計算すると、いや十五億ドルだ、十七億ドルだという数字が出てくるわけでございます。この辺がやはり国内の景気対策というものと、それから現在の基軸通貨でもって国際収支関係世界が見ておるという関係の一番むずかしいところであるわけでございます。その両面を達成しようというわけでございますから、なかなか容易ならぬことでございます。  言うまでもなく、ドルベースというものはそのときどきの為替相場によって変わってくることは当然でございますけれども為替相場そのものは何によって決まるかと言えば、これはやはり、まあドルベースで計算いたしますならば、そのドルベースにおけるところの基礎収支によって決まってくるわけであるわけでございます。その辺の兼ね合いが非常にむずかしいところでございまして、基本的に申し上げれば、何と言っても輸出に向かおうとする力を内に向けてくるということが何よりも肝心でございましょう。そういう意味ドルベースに、そのことはやがては為替相場も、基礎収支は変わってまいりますから相場にも影響してまいりますし、そのことはまたドルベースにおける経常収支黒字幅を縮めるということにもなるわけでございます。基本的にはそのことが一番大事だと思っておるわけでございます。五十三年度の予算というものは、実はそのところを志向しながら進めようといたしておるわけでございます。
  144. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 十五日に公定歩合〇・七五%引き下げ、それから為替管理の規制強化、いわゆる非居住者の短資規制を行ったわけでありますが、しかしこういう処置も、その後円が急騰し余り歯どめにはならなかったのじゃないか、こういうような声もあるわけでありますが、大蔵省としてはどう見ておりますか。
  145. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 塩出委員がいま御指摘になりましたように、十五日にマーケットが閉まりましてからいろいろな規制につきまして発表をいたしたわけでございますが、その十五日の終わり値で言いますと二百三十四円五十銭であったんでございますが、その翌日十六日の終わり値は二百三十三円になって若干円高になったのはおっしゃるとおりでございます。それからさらに十七日になりますと若干また円高になっておりますが、この辺は十五日の前に貿易統計の発表があり、十六日には国際収支の発表がある。いずれも日本の輸出がかなり伸びたという発表が続いたわけでございまして、そういう影響もあるんではなかろうかというふうに考えます。  それから、ただいま御指摘のいろいろな措置につきまして申し上げますと、公定歩合につきましては、これは為替相場に即効的に効くものでは必ずしもないわけでございまして、国内の企業の負担が減って景気回復の一助となるというような、一回り回ってこないとその効果があらわれない、それにはしばらく時間がかかるということでございましょう。  それから、御指摘の証券投資の規制などにつきましては、その後の数字を見てみますと、三月の初めから十五日までの証券投資の約定ベースでどのぐらいネットで一日当たり入ったかということを見ますと、大体二百六十億円外から入ってきております。その措置を発表しました翌日の十六日から二十日まで、これも同じく約定ベースで見てみますと、一営業日当たりネットで五十億円ぐらいになっておりますから、これは顕著に激減したということが言えるんではなかろうかというふうに考えます。
  146. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 政府は今日まで為替管理については自由化の方向に向かっていたわけであります。今回の短資規制はその逆の対策で、為替管理自由化の方向に逆行することになるわけでありますが、私たちはこういう為替管理の強化による円対策というものは本質的な解決にはならないんじゃないか、四月IMF総会、あるいは五月日米首脳会談、あるいは七月先進国会議、そういうような会議を控えて日本立場の好ましくない要因になるんではないか、このように心配するわけですが、その点はどうですか。
  147. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 御指摘のように、今回とりました手段は為替管理の強化でございます。したがいまして、日本として将来一層為替管理を自由化の方向に持っていこうという際にこういう措置をとらざるを得なかったのは、あくまでも一時的な緊急避難的な措置としてとったんだということでございまして、必ずしも望ましいことではございません。できるだけ早い機会にこういう為替管理の強化をはずしていける日がくることを望んでおるものでございます。  そういう措置に対する国際的非難ということでございますけれども、同じような措置ドイツスイスのような強い通貨の国ですでにとっておるところでありまして、日本はむしろおくれてそういう措置をとったということでございます。スイスのような場合には証券投資は全面禁止になっておりますが、それに比べますと日本の場合にはドイツ並みの措置でございまして、緊急非常の事態に対処するためやむを得なかったものだという認識は国際的にも得られるのではなかろうかと、かように考えております。
  148. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 緊急輸入とか、けさも同僚委員の質問にもありましたが、ウランの代金を前払いするとか、あるいは備蓄をするとかいうことは、備蓄も一回しちゃえばそれ以上要らなくなりますし、何となくこの場限りの政策のような気がいたします。これはどうなんですか、もちろん緊急としてそういうことも必要だと思うんですけど、当然それもやっていかなくちゃいけないと思うんですが、もっと本質的な政策というものが何かないのかどうか。結局は内需拡大する以外にほかには本質的な政策はないと、こう判断をしていいんですかね、この点どうですか、大蔵大臣
  149. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) それは何と申しましても内需の拡大、とりわけ民間企業が主導力を持つということ以外にはないであろうと、かように思っておるわけでございます。
  150. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 午前中の委員会日銀の副総裁は、やはり関係国は同じ意識を持たなくちゃいかぬと、こういうお話だったわけですね。私も何となくわかるような気がするわけですが、一番日本関係が深いのはアメリカとあるいは西ドイツ、ECの国ですね。アメリカとは、特に日本日米安保条約もあり最も緊密な関係にある国だと思うわけですが、そのアメリカ日本の間にいろんな点で隔たりがあるような感じがするわけなんですが、大体アメリカ日本との考え方において、この円高ドル安の問題について最も大きな隔たりというのは、どういう点で隔たりがあるのか、これはどうなんでしょうか。
  151. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) おっしゃるようにそんな大きな隔たりがないことはこの前の一致した共同声明が出ているわけでございますから、原則的にはどちらかと言えば同じ認識に立っておるということが言えるだろうと思うのでございます。まあ若干隔たりがあるとすれば、われわれの方は黒字減らしに日本も一生懸命出しているが、アメリカの方も赤字減らしにもう少し力を出してくれないかという点、程度の差でございますが、その点が一点と、それから現在のドル安円高という問題について、これは臨時の措置でございますけれども、やはり基軸通貨としてのドル価値の当面の安定にもう少し力を出してほしい、そこの程度の差ぐらいのところがやや違っておったんじゃないかなという感じがします。しかし、いま申しました当面のドル価値の安定という問題につきましては、だんだん認識がいま近づきつつあって、それであればこそアメリカドイツと先般の協定を結んだと。円と結ばなかったのは、恐らくアメリカ市場における外貨取引の中で、マルクが大体外貨取引の中の三〇%を占めておる、円は五%だというあすこの国内的の事情によるので、三〇%を占めておるマルクの安定はやがて円の安定につながると、こういう見地でやったものであろうと、あの前後の声明からいたしまして、われわれはそのように、またしょっちゅう電話連絡等でそれぞれやっているところから見ますと、そのような考えを持っているんじゃないかと、だんだんその点が近づきつつあるんじゃないかと考えます。  それから、基本的にやはり基礎収支あるいは特に経常収支について黒字国はなるべく減らしていく、赤字国はなるべくその赤字を減らしていくという基本方向、これはかなり中長期の話でございますけれども、その点の認識はちっとも変わっていないんじゃないだろうか、こんなふうに考えているわけでございます。
  152. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 私たちが新聞情報などを見て感ずるのは、日本ドル安だと言う、アメリカ円高だと言う、こういう違いが、これは相対的なものですから余り大した違いがないようですけれども、かなり大きな違いがあるんじゃないか。そういうところからアメリカマルクの方には積極的に介入するけれども円の方は余り介入をしない、そういう点にあるんではないかなというふうな、こういう感じがするのですが、それは違いますか。
  153. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これはきょうの午前中の、前川総裁も言っていますように、日本委託を受けてニューヨーク連邦準備銀行がすでに円の価値の安定について努力しておるということでございますので、円を見放しているということでは決してないというふうにわれわれも認識しておるわけでございます。そういう意味では、先ほど申しましたような当面のドル価値の安定あるいはまた円相場の安定ということについてはだんだん認識が近づきつつあると。基本的にやはり基礎収支とかあるいは経常収支均衡が必要であるという点は、これはもう全く同じわけでございます。
  154. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 したがって、経常収支というものが結果的に減らなければ、やっぱりアメリカ考え日本考えと一致するようにはこないんじゃないか。いま大蔵大臣日米考え方がどんどん近づいておると言うけれども、それは私は本当に近づいてきているのかなと。実際に貿易収支経常収支というものがある程度バランスがとれてこなければ、それ以外に、そういう証拠を示す以外になかなかアメリカ日本考え方の違いを接近することはむずかしいんじゃないかと、このように思うわけですが、その点どうですか。
  155. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) その点はもうすでに共同声明においてその方向、そういう物の考え方については完全に一致しているところでございまして、あとはいかにしてその目標に対して達成していくか、こういうこれから与えられた問題になるわけでございます。だから考え方はもうすでに一致していると思うのでございます。
  156. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 新聞では、宮澤経済企画庁長官が宮澤構想というものを発表しておるようでありますが、どうもローザ構想に似たような、あるいは違うのかもしれませんが、私たちの認識はその程度の認識なんですが、こういうものを考えている。そしてアメリカともすでに接触をしておると、こうしうようなことを聞いておるわけでありますが、大蔵省あるいは大蔵大臣としては、こういう考え方はどう評価しているのか。
  157. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 先ほども申しましたように、為替相場の安定という問題は、やはり基礎収支なりあるいは経常収支のアンバランスを直すということ以外には基本的にはないんだという点については、日米のみならす、また経済企画庁でも大蔵省でも、政府部内は恐らくみんな一致しているだろうと思うのでございます。その問題を離れて、現在の円高ドル安の中にもし投機資金のようなものが入っておるとすれば、それに対して相互の何らかの協力の方法あるいは認識の一致と、そういうものとして宮澤さんは宮澤さんなりに、ローザ構想じゃない、もっと緩いとか何か言っておりましたですけれども、ある種の認識の一致を求めたいと、こう言っているんだろうと思うわけでございます。その点はわれわれ大蔵省におきましても全く同じでございまして、まず認識の一致なくしてはその当面の問題さえなかなかうまくいかないということでございます。とりわけわれわれ見ておりますのは、米独共同声明ということがそのことをもうすでにあらわしており、そしてアメリカ自身もやはり経済情勢から見ると、ややいま為替相場経済実勢を離れておるというような、あの共同声明の第一項にうたっておるあたりを考えますと、絶えずわれわれはそのことを主張しておったわけでございますが、限られた部面ではありますけれども、だんだん認識が一致してきたんではなかろうか。そういう面をさらに深めていくことによって、いろいろな共同の、認識の一致さえ得れば共同の動作がとれるわけでございますから、まず認識をお互いに深めることからスタートしたいとわれわれ考えているわけでございますし、そしてまたそのことが一番大事なことであろうと、このように考えているわけでございます。
  158. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 まあ私たちは、先ほど大臣言われましたように、投機的な面とかそういうような点ではある程度の効果はあるかもしれませんが、本質的にはやはり経常収支のバランスをとるという実績を示さないと、なかなか米国やあるいはECの協力も得られないんじゃないか。そういう点でこれはある程度の効果はないとは言えないけれども本質的な解決ではない、このように考えるわけでありますが、その点大蔵大臣の見解を承っておきます。
  159. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 基本的には全くそういうことなんでございますが、もし実勢以上に円が上がったとすれば、その言うところの経常収支のバランスはますます崩れるわけでございますから、その意味で相互が結び合っている、因果関係に立っておるということであろうと思うのでございます。
  160. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは証券業界の問題についてお尋ねしますが、高度成長から非常に低成長時代を迎えまして、証券業界のあり方についてはどういう点を改善をしていく方針であるのか。また、現在証券取引審議会等において、こういう新しい時代における証券業界のあり方というものが審議をされておるように聞いておるわけでありますが、その審議の状況、またいつごろ結論が出るのか、このあたりを簡単で結構ですから御説明願いたいと思います。
  161. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 安定成長への移行に伴いまして、今後国民経済の中での資金の流れにも変化が生じてくるというふうなことが予測をされますので、資金の調達、運用の場としての証券市場につきましても、このような環境変化に即応いたしまして市場の整備が必要であるということであろうと思いますし、それからその市場の主たる担い手といたしましての証券会社の体質を、そういう時代の要請に即応した形で一層の強化を図っていくと、経営基盤の安定化を図っていくということが必要であろうかというふうに考える次第でございます。  具体的な点につきましては、すでに従来からも各種の手段が講じられておりますので、私どもといたしましては今後非常に目新しい方法を新たに開発するといいますよりは、やはり従来積み重ねてきた、いま申しましたような体質改善策、これをさらに忠実にかつ積極的に進めていくということになろうかと思います。  なお、いま御質問の証取審の審議につきましては、先般証券取引審議会の基本問題委員会というのを館東大教授の座長のもとに約一年間にわたって御検討願いましたが、その中身は、今後における公社債市場の問題点ということにしぼったものでございました。この点につきましては、すでにその委員会の報告として総会に報告がなされております。今後は改めて株式市場の問題点につきまして、引き続き御審議をいただきたいと考えておりますが、この点につきましてはまだ日程は未定  でございます。
  162. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 前々から、証行業界においては四大証券の寡占体制というものは改めていかなければいけない、こういうことが言われてきたと思うわけでありますが、証券局年報等見ましても、四大証券の占める割合というものはむしろ増大をしているように思うわけでありますが、こういう四大証券の寡占体制の弊害というものは是正されつつあるとお考えなのか、あるいはまだまだなかなか是正されていないとお考えなのか、その点はどうなんでしょうか。
  163. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 数字について申し上げますならば、たとえば株式の売買高を金額で見ますと、四十三年九月、つまり免許制移行の直後でございますけれども、この時期には四社は全体の五二%を占めておりましたが、それが五十二年九月期では四七%、やや下がっております。一方債券の売買高は、四十三年九月には六七%余りでございましたのが五十二年九月期には七二%、これは逆に集中度が上がっております。また債券の引受高で見ますと、これは四十三年九月期には七九%余りであったものが五十二年九月期では七五%余りと、これは下回っております。  このように、いわば寡占の状態と申しますものも指標の取り方によりましてはまちまちでございまして、必ずしも四社のシェアが増大の一途をたどっておるというものではございません。むしろいま申しましたように、債券の点を別にいたしますと、シェアとしてはやや四社以外の方が大きくなってきておるというふうなことが大観をして見えるところでございます。債券につきましては、御承知のとおり非常に大量のロットを動かします関係上、資金としても非常に多くを要しますし、かつまた、最近非常に大きくなってきた債券業務に対するたとえば人員の教育でありますとか、組織の問題でありますとか、そういったいわば先行投資的なものがやはりどうしても四社においてすぐれておるというふうなことから、いま申しましたような数字が出てきておろうと思います。  基本的な方向といたしましては、委員指摘のとおり、四社だけの寡占という形がこれ以上進んでまいりますことは全体の証券行政の観点から見ても好ましいことではないわけでございますので、いろいろな点をとらまえて四社以外の各社がいわばはつらつとした営業体制をとれるという方向に指導してまいりたいと思っておるわけでございます。
  164. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 今回、有価証券取引税が五割値上げになるわけでありますが、前回は二倍に値上がりをしたわけであります。私たちの党の見解としては、三倍ぐらいに値上げするべきじゃないかと、こういう主張をずっとしてきておるわけでありますが、五割値上げにした根拠は何か、また、この値上げが証券業界にどういう影響を及ぼすのか、この点はどうでしょうか。
  165. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 前段につきましては私からお答えいたします。  けさ、福間委員にお答えいたしましたことと重複いたしますけれども、有価証券取引税は御承知のとおり定率課税でございますので、従・量税あるいは定額税のようにある時期を置いて見直しをする、調整をするということは必要がない。したがいまして、今回お願いしておりますのは、純増税で負担の増加をお願いしておるわけでございます。  そこで、純増税の幅として、また増税後の水準としてどの程度が適当であろうかということを関係局を含めまして十分時間をかけて議論をいたしましたところでありますが、前回は二十八年創設以来約二十年たって引き上げた。そのときに二倍の引き上げを行ったわけでございますが、前回は非常なブームのときでありました。そのころに比べますと、今度は四十八年の引き上げのときに比べてそんなに取引量が大きくなっていたり、市場が大きくなっていたりしている状況ではございません、率直に申し上げて。したがって、非常なブームであるからうんと負担してもらってもいいではないかということはない。しかし、現下の厳しい財政事情のもとで、全体としての景気政策に矛盾しない範囲でできるだけの増収を図るという角度から、ぜひこの際実質的な負担増加をお願いしたいということであるわけでございます。その意味では、やはり前回と同じ引き上げ幅ということはかなり無理があるのではなかろうか。さらに引き上げ後の水準といたしましては、第二種で申し上げますと今回〇・四五になります。これについては、その理論的な決め手というものがあるわけではございませんけれども、やはりOECDで資本取引の専門家が集まり、また別途税の専門家が集まり、国際的なフォーラムでいろいろ議論がされましたときに、やはりこの種の税というのは余り高いことは望ましくない。大体〇・五ぐらいというのが妥当ではないか。しかしそれは国によっていろいろ事情が異なる面もあろう。しかし、〇・五よりも高くするとしても、まあ、一%が限度じゃなかろうかというような議論があったことも考えてみまして、今回の引き上げ率は前回二倍に対して五割増しでございますが、引き上げ幅は前回と同じ〇・一五でございますし、引き上げ後の水準が〇・四五ということで、いま御紹介しました国際的な議論から見てもまあまあ妥当なところかと。いろいろな要素を含めて、今回五割アップということで御審議をお願いしているわけでございます。  市場への影響につきましては、証券局長の方からお答えいたします。
  166. 山内宏

    政府委員(山内宏君) 株価の形成と申しますのは、御承知のとおり単一の項目ではなかなか判定しがたいものでございまして、やはり基本的には将来の収益増加への期待とか、あるいは市場に流入をしてくる資金量と市場における流通可能なる株式の量との相互関係とか、そういった各種のファクターも含めていわゆる価格形成が行われております関係上、この税率の引き上げだけを取り出してどの程度の影響があるかというのを判定することは非常に困難でございますけれども、やはりもちろん引き上げられることによってある意味でのマイナスの影響が生ずるというのは、これはいたし方がないことかと思います。私どもといたしましても、先ほど主税局長からの話のとおり、財政当局のつらい胸の中をいろいろ聞かせていただいた上で、私どもとしましても商売に及ぼす影響その他との兼ね合いを考えた上で、泣く思いで受諾を申し上げたというふうに御理解をいただきたいと思います。
  167. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 キャピタルゲイン課税の問題については衆議院、参議院でも論議をされ、また四十八年の有価証券取引税法の改正のときにも論議をされ、政府としてはやるやると、このようにいつもやるやると言っているわけでありますが、これは実際に可能なのか、本当にやる気があるのか、そのあたり簡単でいいですから決意をひとつ聞かしておいていただきたいと思います。
  168. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 塩出委員よく御承知のとおり、中期答申をいただきました機会に、キャピタルゲイン課税について税制調査会でも御審議を願っておりまして、多数意見といたしまして、やはりできるだけ総合課税の対象にしていくということが方法としては望ましいであろう。ただ、一挙に原則非課税を覆してしまって全面課税に移すということには非常に問題が多過ぎるから、段階的に課税を強化するという考え方を採用すべきであるという答申をいただいております。  そこで、段階的に課税を強化するというのは何を意味するかと申しますと、現行法は御承知のとおり全面非課税ということを一応原則としながら、買い占めの場合には課税をする、あるいは事業上取引であれば課税をする、あるいは大量継続的という意味で、よく御承知の年間一人五十回かつ二十万株以上の取引の場合には課税をするとか、あるいは公開した場合には特定の条件のもとで課税をすると、そういうふうに個別にやはりここはもう少し課税の対象にした方がいいというものを拾い上げて、原則非課税の中から課税分を取り上げるという体制になっておりますので、今後の方向としましては、その個別の課税という根拠をもう一遍実情に即しながら見直していくという作業がある。また、特に大量継続的という意味の五十回、二十万株というのがいまのままでいいかどうかということを課税を強化する方向考え直してみるということが、いま私どもに残されている宿題であるというふうに考えます。
  169. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 じゃあ、一応課税を強化し、そういう方向で進むと。ただ、進む進むと言って進まないんではなしに、本当に前進する気持ちは持っておると、こう理解していいわけですか。
  170. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 税制当局としてはそういう気持ちでおります。したがいまして、今後とも関係局と実情に即するような、かつ、実施に移した場合に新しい不公平が起こらないようなプラクティカルなものを探していきたいというふうな考えでおるわけでございます。
  171. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、地方証券取引所の問題は本日は省略をさしていただきまして、国土庁も来ていただいておりますので、最近の地価の上昇がどうであるのか。広島市内等においては、長らく四十万円で頭打ちであったようなところが四十五万円になって値上がりをしておるわけでありますが、そういう値上がりが宅地の供給が減ったためであると、こういうことを言っている人もいるわけですが、こういう地価の上昇の原因は何であると考えているか。  それから、これは建設省かもしれませんが、広島市等においては相続税の支払いとか企業倒産の場合とか、そういうときしか土地は動かない。全国的に見ても宅地の供給や取引は減少の方向にあると、このように先般何新聞かで私見たわけでありますが、現状はどうであるのか、たくさんまとめて質問いたしましたが、御答弁をいただきたいと思います。
  172. 佐藤和男

    説明員(佐藤和男君) お答えいたします。  最近におきます全国の住宅地の価格でございますが、一般の地価と同じような傾向をたどってございまして、四十七、八年には三〇%を超える上昇を見ましたが、四十九年には全国の地価公示の平均では八・九%のマイナス、その後五十年では〇・八、五十一年では一・九という状態でございます。五十三年一月一日の地価公示価格は近々四月一日に公表の予定でございますが、それの抽出調査によりますと住宅地に関しましては三・三%という変動でございまして、私どもとしましては全国的には一般物価の状況等から見れば安定的に推移しているというふうに考えます。ただ地域的に、たとえば交通施設の整備が急速に進みました地域、地下鉄等の整備、それから地域で都市施設が集中的に投資されまして区画整理事業等が行われました地域については、こういう平均的な変動率を上回っている事例がございます。これは実質的には土地の価格がそういう公共施設等の投資によりまして効用が増加したということだというふうに考えておりまして、全般的な安定的な基調については特に問題にするような事態ではないというふうに考えてございます。  ただもう一つ、たとえば首都圏等におきまして、いわば通勤の適地と申しますか、中心から二十キロないし三十キロあたりの地域について、全般的な中でやや住宅地の変動率の高いのが目立っているのは事実でございますが、このあたりは首都圏の一般宅地需要者の一番需要が集中する地域でございまして、かつその地域におきます計画的な宅地開発と申しますか、宅地供給について幾つかの困難な事態がございまして、多少停滞ぎみであるということも一つの原因であろうかというふうに考えております。
  173. 木内啓介

    説明員(木内啓介君) 先生お尋ねの最近の宅地供給の減少の状況でございますけれども、確かに先生御指摘のように、四十七年は一万四千五百ヘクタールばかり供給されているわけでございますけれども、それをピークにしまして、五十年ではたとえば一万八百ヘクタールというふうなことで大体七割くらいに減少しております。これは全国一本の数字でございますけれども、地域的にも三大都市圏では大体四十六年ベースの六割くらいの形に落ちております。それから、その他の地域では大体四十六年ぐらいのときの供給量というふうなことでございまして、全般的に停滞していることは御指摘のとおりでございます。
  174. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 ここ数年間は確かに地価は相対的には下がったわけでありますが、しかし、現状でも勤労者の所得等から見て非常に土地は高過ぎるじゃないか、やはり依然として異常ではないかと思うのでありますが、これについての政府の見解をお聞きしたい。  それともう一つは、土地関係の税制、特に地価抑制のための重課税が逆に必要な住宅宅地の供給を阻害し、その絶対数の不足により逆に地価上昇の要因になっているような事態はないのか、こういうことを言う人もいるわけで、私たちもなかなかそのあたりがよくわからないわけですけれどもね。実際に調査をしているわけではないわけですが、そのあたり政府として何らかの根拠を持ってこうだと言えるようなものがあるのかどうか、この点はどうでしょうか。
  175. 佐藤和男

    説明員(佐藤和男君) 最近の住宅地の状態と、それから、たとえばこれと一般物価の状況等を対比いたしますと、たとえば東京圏におきまして昭和四十五年あたりから地価の変動と、それに対応しますいわゆる一般物価の変動等を対比してみますと、最近五十二年の一月の時点、一応地価公示として確定しました時点の地価の状況は昭和四十六年の初頭の状況にあるということになってございまして、相対的にはいま先生もおっしゃいましたように、一応土地のブームの前の状態まで地価の状態は下がっているものと考えてございます。  で、地価政策といたしましては、このような安定的な基調を持続するということが一番かなめだと考えてございまして、一方、一般の国民の方々の土地取得を容易にするためには、こういう地価の安定の持続と含めまして、宅地供給の増進ということが当然のことながら必要だと考えてございます。
  176. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 後半の御質問でございますが、これもまた非常にお答えのむずかしい問題でございます。ただ、この機会にぜひ申し上げておきたい、私の立場からぜひ申し上げておきたいと思いますのは、税制というのはどこまで参りましてもしょせんは非常に補完的な手段でございまして、税によって土地の値段を左右する、あるいは供給を左右するということに過大な期待を持たれ過ぎると、かえって税制としては非常に混乱を招くのではなかろうかということを痛感いたしております。やはり、本来は土地の計画的な利用のための法制、利用規制、将来の問題としてはもう少し私的な権利の制限というようなところから入っていかないと、税を上げ下げして地価なり供給量に影響を与え得るということに過大な期待を持っていただいてもいい答えは出ないんではないかということを痛感いたしております。多年土地税制を担当さしていただいておりまして、ぜひそのことは申し上げておきたいと思います。  ただ、税をせめて利用する場合に、政策的に何に利用するのか、有効利用のためであるのか、供給促進であるのか、投機抑制であるのか、それらすべてを一つの税で片づけるということは不可能です。やはりそのときどきの社会的な要請に応じて、そのうちのどこかの部面を受け持っていくということにしかなり得ない。その意味では個人の問題、法人の問題がまたむずかしく絡み合っておりますけれども、供給促進というのであれば、私の考え方では、それは保有課税の強化と譲渡課税の軽課であると考えておるわけでございますが、現在の税制は譲渡課税を本則よりも重課いたしております。それは供給促進という意味から言えばマイナスに働くであろうということは、その税制を提案なさいましたときに私ども立場で十分申し上げました。それは供給促進なんということをいま考える時期じゃないと、投機抑制のためにぜひやるんだという声の方が非常に強くて、現在の重課制度はできております。したがって、せめて優良住宅の供給は阻害しないようにということで、法人の土地重課については適用除外を設けております。また、個人の持っております土地を供給してもらいますためには、やはり首都圏が最大の問題の地域、あるいは三都市圏が最大の問題の地域でございますから、三都市圏内のA、B農地につきましては、五十三年限りは累進課税をしない、比例税率であるということもいたしております。それが結果的にどれくらいの量的効果を持ってくれるかということは、やはりいまのような状態では、率直に私の受けております感じでは、地主さんはそういう制度があっても、いますぐ金が要らないんだから売らないということの方が多いようでございまして、なかなかA、B農地というものは宅地化してこないという点に問題があるように思います。やはり税に過大な期待を持たれましても問題は片づかないと私は感じております。
  177. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に、私たちも土地というものは有限のものであり、ある意味ではこれは国民全体の共有だと思うんですね。したがって、土地の投機や売買によって利益を上げるということはこれは許せないし、そういうものには断固税金を多くかけるのはまあ当然だと思います。しかし、一方そういう重課税のために不要の土地を手放さず、それが宅地の供給を阻害するというようなことも困るし、またそういう税金のために結局一般国民が買うときの値段が高くなってもやっぱり困ると思うんですね。大蔵当局としてはいま税収はよけい取った方がいいとは思うんですけどね。しかし、そういう気持ちはわかりますが、いまのそういう景気浮揚という点から考えても、何らかの処置をしてもっと土地が安くなるようにできないものかと。  もちろん、いま主税局長言われたように、土地税制だけでそれを解決しようとは思いませんけれども、しかし、税制もその一環として大事な役割りだと思うんです。したがって、現在の税制ができた時期といまと大きく社会情勢も変わってきておるわけですし、今回一部改定が行われておるわけで、その是非は別としても、いずれにしても私はもう少し国民により安い土地を供給し、やはりマイホームの期待を持たせるという、そういうことがまた心理的な景気浮揚策にもなっていくんじゃないかと思うんですね。そういう意味で、今回の改正は別としても、土地税制というもの全体について抜本的なやはり見直しを私はすべきじゃないかと思うんですが、そういう検討の用意があるかどうか。これは主税局長と、最後は大蔵大臣の決意を承って質問を終わりたいと思います。
  178. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 土地税制の問題を具体的に五十三年度の税制改正に関連して税制調査会で御議論いただきましたときに、ただいまの塩出委員のおっしゃったような御意見の方がいらっしゃいました。ただ多数意見といたしましては、答申でごらんいただきますように、やはり土地の売買によって生じた利益に対して、過去の経験があるがゆえに非常に特殊な国民感情がある、依然としてそれが根強く残っておるというところは無視できないんではないか、その意味で五十三年度は土地税制の基本的な仕組みを見直すべき時期ではないというのが多数の御意見でございました。そのように答申も出されております。  しかし、繰り返しになりまして恐縮でございますが、塩出委員のような御意見の方はございましたし、今後の首都圏における宅地供給がどのように展開するかによりまして、おっしゃるような御意見の方がだんだんふえてくる事態もあり得ると思います。そのような全体の社会的な雰囲気と申しますか、環境の変化に応じて、私どもも柔軟に物を考えていくべき性質のものであろうというふうに私は考えております。
  179. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) まあ土地の問題は、何しろこれは再生産のきかないものでございますし、特にわが国におきましては、国土利用面積のうちの二割五分しか利用可能面積がないというわけでございますから、また、日本は過去において高度成長があったわけでございますし、とりわけ四十七年、四十八年のころ過剰流動性による土地投機を見たところでございまして、一般の物価が上がったよりも土地価格は非常に上がっているわけでございます。こういう事態を背景にしまして、まず土地税制から先に始まりまして、その後国土利用計画法ができたことは御承知のとおりでございます。  私は、やはり土地の問題というものは国土利用計画法、あの運用でどうしていくのか、これが本格的な態度であろうと思うわけでございまして、これは国民の合意を見なければならぬところでございますけれども、やはりその価格が適正であり、価格面だけでなくて土地の利用方法もまた国民的の合意を得るような方法で持っていく、こういうことでもございましょうし、また公共の用に供するものにつきましては、これはまた特別の考え方をしていく必要もあろうかと思うのでございます。土地税制というものは実はそこのところを補完的にやっているわけでございまして、今度の土地税制も、いわば土地成金はつくらない、しかし、同時にその中において少しでも正常な土地供給を阻害している面があるとすればその部分は直そうというような、両面からにらんだ土地税制に終わったわけでございます。しかし、この問題は最終的には土地の利用の仕方、それについてどういうふうにやっていくか、国土利用計画法を中心にしまして、今後政府部内においてもまた国民的合意が得られる方向をわれわれは強く望んでおるわけでございます。税制は、もし必要があれば、そのはっきりした方針に向かって補完的作用を担っていただきたい、このように考えているわけでございます。
  180. 渡辺武

    渡辺武君 私は、緊急の問題でもありますので、まず税務行政の問題について伺いたいと思います。  大阪国税局管内に納税協会という団体がありますけれども、これはどういう性格の団体で、そして国税当局あるいは税務署とどういう関係にある団体か、まずお答えいただきたい。
  181. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 御質問の大阪納税協会連合会のことについてお答えをいたします。  同連合会は財団法人の組織でございまして、大阪国税局及びその管下各税務署と連絡協調のもとに税務知識の普及に努め、適正な申告納税制度の確立と租税道義の高揚を図り、もって税務行政の円満な執行に寄与し、これを通じて企業経営の健全な発展と明るい地域社会の建設に貢献することを目的として設立された団体であります。
  182. 渡辺武

    渡辺武君 民間の自主的な団体ですか、それとも税務署の下請のような団体ですか。
  183. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 民間の自主的な団体であります。
  184. 渡辺武

    渡辺武君 民間の自主的な団体を、まあいろいろあるわけですが、税務署もしくは国税当局が、ある団体についてはこれは非協力団体だ、他方についてはこれは協力団体だということで過度の差別をつけて、一方に対しては、この間決算委員会でわが党議員も千葉県の例を取り上げて追及しましたけれども、脱退を税務署員が仕事の中で勧告するというような不当な介入がある。他方で協力団体とみなしている団体に対しては、何と言ったらいいか、税務署とその団体との不当な癒着関係ですね、こういうものが生まれているというふうに私ども考えますけれども、その辺はどうですか、そういうことありませんか。
  185. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) ただいま御質問がありましたことの中で、民間団体の中に民間協力団体と非協力団体とがあって、税務当局は民間協力団体にはいわば好意的であるが非協力団体にはというお話がございましたが、私どもは税務行政を執行していく立場にあるわけでありますが、申告納税制度があくまでも納税者の方々の自主的な申告あるいは納税ということに期待しております以上、どうしても納税者に申告納税制度についての趣旨の理解、あるいは税法の知識の普及、あるいは自分で所得を計算し申告をする、こういった具体的な問題が必要であろうかと、このように考えておるわけであります。  そこで、民間の中にそういう自主的な団体ができまして、私どもがかねがね進めております申告納税制度の推進とか、あるいは青色申告の普及とか、そういうことに大変協力をしていただいておる団体があることについては私どもはこれは大変結構なことだと、このように喜んでおる次第でありますが、一方で私どもは納税非協力団体ということについて、これは具体的にそれがどうであるというんじゃなくて、私どもはたとえば税務職員が所得税の調査であるとか、あるいは法人税の調査であるとか、そういう調査に当たりまして納税非協力活動といいますか、非常に私どもにとりまして大変迷惑な、あるいは遺憾に思いますような事柄がしばしばある場合があるわけでありますが、そういうことがありますとこれは大変困りますということで、そういうことがないように、いろいろ私どもはお願いをしたりしておると、こういう事実はございます。
  186. 渡辺武

    渡辺武君 それじゃ具体的に聞きますがね、いまの大阪国税局管内にあるというこの納税協会ですね。この協会が、どこの税務署管内の納税協会も〇〇、何々納税協会便りというのを出していますね。まあ機関紙ですよ。ところが、この機関紙の編集や校正を税務署の管理、徴収部門の職員が勤務時間中に本来の業務の一環として行っているという例がある、そういうことを私聞いております。これは行き過ぎじゃないですか。やはりこういうことは改めるべきだというふうに思いますが、どうですか。
  187. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) まあ納税協会というお話でございますが、御承知のとおりに納税貯蓄組合法というものがございまして、その納税貯蓄組合法の中に、これは国税局あるいは税務署の仕事の中に納税貯蓄組合の推進ということについていろいろ書いてございますが、そういう場合に、私どもはこの納税貯蓄組合の仕事を税務署としていろいろお世話をするということでございます。納税協会の中に実はその納税貯蓄組合の仕事もある場合があります。そこであるいはそういうことをしておるのではないかというふうに、納税貯蓄組合としてしているのではないかという問題は考えられないわけでありませんが、先生の具体的なお話についてちょっと承知をしておりませんので、詳細は答弁を差し控えさしていただきます。
  188. 渡辺武

    渡辺武君 民間の自主的な団体なんだとさっきおっしゃっておられた。その民間の自主的な団体である納税協会の機関紙を職員が仕事中に編集やっていると、仕事の一環としてやっていると、こういうことなのです。これはやっぱり税務署とこの協力会との不当な癒着。あるいはこれは何ですよ、こんなあなた本来の税務署の仕事でない仕事をやって給料もらっているとすれば、これはとんでもない話だ、そう思いますね。どうですか、その辺。
  189. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) いまお話しの件につきましては、先ほど申しましたように、具体的な事実をちょっと承知をいたしておりませんので明確にお答えいたしかねますが、納税貯蓄組合の仕事でありますならば、先ほど申しましたように納税貯蓄組合についてはいろいろお世話をするということはあると思いますが、納税協会の中にその納税貯蓄組合の仕事をやっている部門がございますので、まあ全部の納税協会ではありませんが、そういうことがありますので、いま具体的にどういうふうなことについてどうやっておるかということ、ちょっと私も承知をしておりませんので、答弁を差し控えたいと思います。
  190. 渡辺武

    渡辺武君 それじゃもう一つ聞きますがね、税務署の中に、大体どこの税務署でもそうだと思うんですが、かぎのかかる大きな書庫があると思うんですね。まあいわば保管倉庫ですよね。これにはどういう書類が入っていますか。
  191. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 税務署の中にはいろいろ書庫があるわけでありますが、いま渡辺委員のお話しの書庫は恐らく保存書庫といいますか、保存簿書庫のことを恐らくおっしゃっているんじゃないかと思うんですが、あるいは耐火書庫と私どもが言っておるそういう場所であろうと思っておりますが、そういう場所には御案内のとおりに決議書であるとか、あるいは税務行政上大事ないろんな書類をそこに置いてある、こういうふうに考えております。
  192. 渡辺武

    渡辺武君 大体まあ外部の者には秘密という書類でしょうね。
  193. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) お話しのとおりであります。
  194. 渡辺武

    渡辺武君 そのおっしゃったような決議書だとか調査事績等の編つづりですね、こういうものはどういうふうにして管理されているんですか。
  195. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 大体その簿書庫には、御案内のとおり税務署にはそれぞれ総務課という事務がございますが、その総務課の所管の中にその簿書庫の管理というものがございまして、したがいましてこの課の事務になるわけでありますが、具体的にたとえばその決議書をどうやって見るかとか、あるいは他の書類をそこへ探しにいく、あるいは見にいくというような場合には、当然税務職員であります場合には、通常の場合には、先ほど申しましたように総務課の仕事をやっておる者に話をして行くとかいろんなことをそれぞれの署でやっているんだろうと、このように考えております。
  196. 渡辺武

    渡辺武君 私も事情を知っている方に伺ったら、非常に厳重に保管されておるわけですね。これは当然のことだと思うんですよ。公務員の守秘義務からいっても当然のことだというふうに見なきゃならぬと思う。それほど重要な書類ですよね。聞いてみますと、その決議書、何といいますか決議書つづり、これは各法人別に各法人の申告書、それから決算書類等を決算期別に税務署員の調査事項とともに一括してつづってあるということで、法人の売り上げ、製品や商品の原価、取引先、取引銀行、財産状態、経営成績などが一見してわかる、こういう重要な書類だと、こういうわけですね。  そこで私伺いたいんですが、いまおっしゃったように厳重に保管してあるものならば、それを税務署員以外の者、これが税務署の書庫に自由に出入りをして、そうして持ち出すとか、あるいはこれを書き写すとかいうようなことは私は不当なことじゃないか、むしろ法にも触れる行為だと思いますが、その点どうですか。
  197. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) いまお話しのように、税務職員あるいは税務職員以外の者——税務職員は先ほどのような手続でいろいろ仕事をさしていただいておるわけでありますが、税務職員以外の者がそういう書庫に入るということはちょっと私どもには考えられない、このように考えています。
  198. 渡辺武

    渡辺武君 考えられないのは当然ですよ。私どもも聞いてびっくりしたんですからね。ところが、その考えられないことが現に行われてた、あるいはいまも行われているかもわからぬ、こういう状況なんです。  大阪の住吉税務署でことしの一月下旬から二月初旬にかけて、住吉納税協会採用のアルバイト二名と住吉税務署採用のアルバイト一名が、住吉税務署の法人源泉第一部門で管理責任者の承認のもとに保管倉庫に自由に出入りした。そうしてこの住吉管内法人の決議書つづりから法源番号、それから法人名、所在地、代表者名、事業種目、決算月、資本金、売り上げ階級、各年度の申告額、それから関与税理士名等を転記している。これは国公法の国家公務員の守秘義務に違反する重大な事態だと私は思うんですけれども、どうですか。
  199. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) いまの住吉税務署のお話については、ちょっと私も正確にはまだ承知をしておりませんけれども、いまお話しのようなことは私にはちょっとないんじゃないかなと、こんなふうに思っておりますが、先ほどお話の中でアルバイトというお話がございましたが、このアルバイトはこれは職員、いわば税務署のアルバイトという場合には御案内のとおり国公法の適用をしておりますので、これは秘密、守秘義務もかかっておりますが、この人たちが命ぜられてそういう場合に行くということがあり得るとすれば、その場合にはきちっとしておるわけでありますが、いまお話しの納税協会のアルバイトだという部分については、私どもはそのような事実はないんじゃないかなあと、こんなふうにも思っておりますが、これはいま突然のお話でもありますし、ちょっといまのところわかりかねますが、私どもがかねがねそういう種類のことのお話について、そういう納税協会のアルバイトとかそういうようなものについてはそういうことはない、こんなふうに思っておりました。
  200. 渡辺武

    渡辺武君 ないと思います、と。あると言ったら大変なことですからね。そうおっしゃるだろうと思って、私、現物を持ってきたんです。ここに書き込んであるやつは全部消してあるんです。こういうものに……これは納税協会のカードですよ。これをちょっと差し上げましょう。これをリコピーしたものです。  ごらんのとおり、法源番号、法人名、それから所在地、代表者、事業種目、決算月、資本金。問題はこの売上階級、それから担当部門、関与税理士、年度の申告額、全部記入できるようになっている。いま言ったように二人のアルバイト、これは税務署の雇ったアルバイトも別にいますけれども、しかし住吉納税協会採用のアルバイト、これが二人その書庫に入り込んで書き写してきている。これがそれですよ。調べてくれますか。重大事態だと思う。そうして、もしこんなことをやられていて、これはもう書き写された人はたまったものじゃないですよ、こんなもの。個人の秘密に属することでしょう。書き写した方もとんでもないことです、これは。守秘義務に違反していますよ。こんなことは当然厳重にやめさせるべきだ、こう思いますけれども、どうですか。
  201. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 先ほど来お答えをしておりますように、私どもはそういう事実はないだろうと思っておりますので、いまのお話しの件については改めてもう一度調べてみます。
  202. 渡辺武

    渡辺武君 さっき指摘した納税協会の機関紙ですね。これを職員が職務中に編集しているというようなことについても一緒に調べて、やはりこんなものはやめさせる必要があると思うのですね。その点重ねて伺いたい。
  203. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 先ほど納税貯蓄組合に関連してお話し申し上げましたが、そのやっている仕事でございますが、先ほど申しておりますように、納税貯蓄組合にはその貯蓄組合としての普及育成の仕事が職員にはあるわけですね。そういうことについていろいろと納税貯蓄組合にお世話をするということは、これは仕事としてあり得ると思います。  それから納税協会がその納税貯蓄組合の仕事の一部をやっている場合があるということを先ほど申しましたが、仮にそうでありますとすれば、それは仕事の一部だと思いますが、渡辺委員の御質問の中には、そういう部面じゃなくて、どうも違う問題が何かあるのじゃないかなというような御質問のようでございますので、これは私どもとしては、その中身が、たとえばどういう仕事を具体的にしているかということもちょっといまのところわかりかねますので、気持ちとしては先ほど納税貯蓄組合の仕事として申し上げましたが、そういう仕事ならば当然私どもはもちろんいいというふうに思っておりますけれども、それと違って、たとえば何か特殊のことをしているのかどうか、この辺のことはちょっとわかりませんので、お答えをいたしかねる状況でございます。
  204. 渡辺武

    渡辺武君 何言ってるんですか。貯蓄組合でしょうと、だろうと、あなたも推測しているにすぎないでしょう。だからお調べなさいと。そして、もし民間の自主的な団体である納税協会の仕事を職員が執務中にやっているというようなことであったら、これは当然やめさせなければならぬでしょう。そうでしょう。お調べになるかどうかということを伺っているんです。もしそれが事実であったらやめさせるかどうかということを伺っている。
  205. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) ただいまお話しの件については調査をいたします。調査の上で必要な場合には処置をいたします。
  206. 渡辺武

    渡辺武君 こういう事件、私はこうやって具体的に材料を持ってきてあなたに申し上げているんですが、こういう税務署とそれから外郭団体とのこうした不当な癒着関係ですね。  別に、私もう一点御参考までに申し上げたいと思うんですけれどもね。東北の仙台国税局管内の税務署で、本年の確定申告、二月ですな、こういうことがあったんです。農業協同組合の職員に、農民の確定申告と納税相談を協力させようとして、税務署の所得税部門で保管している農業カード、これは御存じのとおり各人別に耕作面積とか収穫量とか所得とか税額等が記録されている、これを農協の職員に直接に手渡そうとした。これはほかの職員が見つけて、重大な守秘義務違反だということで追及をした。国税当局も守秘義務違反のおそれがあるとして取りやめさしたと、こういう事件がある。お耳にしていますか。
  207. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 聞いておりません。
  208. 渡辺武

    渡辺武君 これも聞いていなければ、あなた方の税務行政の一つの重大な側面を示している事件ですから、十分やっぱりこういう点は調べて、改めるべきことは私は改めなきゃならぬと思うのですね。まあ東北でもこういうことがある、大阪でもある、そのほかの地方にも私どもは探せば幾らでもあることだと思っています。  それで、言うまでもないことですけれども、憲法の第十五条ですね、公務員は全体の奉仕者だと、一部の奉仕者ではないということが明記されている。これはまあ言ってみれば公務員の不偏不党というか、国民に対しては平等な立場でもって対処しなきゃならぬという義務をうたったものだと私どもは解釈して差し支えないと思うのですね。ところが、一番最初申しましたように、あなた方が納税非協力団体だというふうにレッテルを張った団体については、執務中にその団体からの脱退を勧告するとかいろんなことをやる。その団体自身は、これは税務行政が不当だから、したがって適正な税務行政に改めてほしいという立場でやっている。あなた方の目から見れば非協力だと、こういうことになっているようですね。そうして、他方ではこういうような癒着関係をやっている。何でこんなことを、こんな者に極秘資料を写さしたかというと、これを渡して納税協力会が会員を獲得する、そのための材料としてこういうことをやらしている。こういうことは私はやるべきじゃないことだと思うのですね。ですから、こうしたやはり偏見に満ちた、そうしてまた国民を差別するような税務行政、これは全面的に改めてほしいと思うんです。これは大臣いかがですか。いま具体的な実例を挙げて申し上げたんだけれども……。
  209. 谷口昇

    政府委員(谷口昇君) 冒頭に申し上げましたように、私どもは申告納税制度というものを何とかして定着さしていきたい、しかもそれを一日も早くそういう状態でいきたい、こんなふうに実は思っておるわけでございます。そのためにはいろんな方の自主的な、何といいますか、活動については大いにこれは歓迎をしたいと、これは冒頭に申し上げました。と同時に、先ほどお話がありましたといいますか、私の方から申し上げましたが、具体的な調査のときに納税非協力活動があることについては、これは非常に困ったことだなと思っておるわけでありますが、そういう困ったことについては、何とかしてこれは私どもとして適正公平な課税を実現していきたいわけでありますので、妨害だとかそういうことがないようにお願いをしたいということはしばしばお話を申し上げておる場合があるわけでありますが、いずれにいたしましても、私どもは国家公務員でございますので、先生御指摘のように不偏不党といいますか、やはり公正にすべての方々に対して公平に仕事をしていくべき立場にあります。これは言うまでもないことであります。したがって、その立場でいろいろと仕事を進めていくわけでありますが、先ほど申しましたように、申告納税制度の一日も早い実現あるいは定着というものについて努力をしておる、あるいはそういうことについて理解のある方については引き続きいろいろとまたそういう自主的な活動もお願いしたいという気持ちはないわけではありません。同様に、先ほど申しましたように、くどいようでありますが、非協力活動がある場合には、これは何とかしてそういうことがないように、できるだけ御協力を得ないといいますか、納得がいただければ大変ありがたいと、こんなふうに思っておる次第であります。
  210. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 現在の税制は御承知のように申告納税制度でございます。したがいまして、一人一人の納税者にその意味を理解してもらうことが何より必要でございますが、同時にまた、いろんな団体から御協力を賜っておるところであることもまた御承知のとおりでございます。そういう非常に広い意味でのPR活動がやっぱり申告納税制度を支えていくためにはぜひ必要だと考えているわけでございますけれども、おっしゃるようなもし行き過ぎがございますと、これはまた大変な話でございます。そういう意味で、先ほど国税庁次長も申しましたが、早速事実を取り調べまして、調査いたしまして必要な措置をとりたいと、かように考えておるところでございます。
  211. 渡辺武

    渡辺武君 次に五十三年度の税制改正について若干伺いたいと思うんです。  今度のこの企業関係の租税特別措置の整理合理化、これは項目で見ますと廃止が十一項目、削減が二十六項目ということですけれども、これによる増収額ですね、これ一体どのくらいになりますか。
  212. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 増収額は平年度ベースで四百九十億円、初年度は十億円という推計をいたしております。
  213. 渡辺武

    渡辺武君 これは中身を見ますと、廃止あるいは合理化しないよりもした方がいいということはこれは明らかですよ。明らかなんだけれども、この間の財政収支試算を見ましても、昭和五十四年度から毎年毎年新しく増税をしなきゃならぬ。私ども概算してみましたら、その四年間の新税創設による税収総額二十六兆六千億円、これが現行税制での税収にプラスされるということになるわけですからね。二十六兆六千九百億円でしたよ。大変な大増税が先に控えている。国民の間からは何よりも不公平税制を是正すべきだという声が強いのは御存じだと思うんですが、いまおっしゃった数字、これから考えてみますと、余りにも遅々として進んでいないという感を強くするわけですけれども、これから先はどうなさるおつもりか、伺いたい。
  214. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) けさほど福間委員にもお答えいたしましたとおり、私どもとしましては、いま渡辺委員かおっしゃいますように、今後ある時期にかなりの一般的な負担の増加をお願いせざるを得ないところに財政が追い込まれてきておる。そうであるとすれば、やはり制度上不公平と言われているものを洗い直し、縮減合理化することがぜひ必要であると考えまして、五十年の八月から税制調査会に検討をお願いし、年度中に貸し倒れ引当金につきまして縮減をいたしましたほか、五十一年度改正以降本年度まで三年度にわたっていわゆる租税特別措置の整理合理化に鋭意努めてまいっております。三年間、私ども立場から申しますと——これはお立場上御批判があることは承知しておりますが、私ども立場から申しますと、かなりの整理合理化を進めてきたというふうにひそかに自負いたしておりますが、しかしこれで終わりだというふうには考えておりません。今後とも主として期限の到来するものを中心にいたしまして、既得権化、慢性化を排除する、同時に政策目的が認められるものでもそのフェーバーの度合いは順次縮めていくという方針で縮減合理化に努めてまいりたい、そのように考えております。
  215. 渡辺武

    渡辺武君 いまの御答弁の中に非常にはっきり出ているんですけれども、あなた方が一番やはり頭に置いているのは、いわゆる政策税制ですね、これの期限が来たもの、あるいはまた政策目的が終わったかどうかというようなことから考えておられる。しかし、私ども検討してみますと、一番不公平税制の最たるもの、むしろ特別措置の中に盛られている不公平税制というよりも、法人税、所得税本法に盛られている各種の引当金あるいは受取配当益金不算入等々が一番大きな問題点として残されているんじゃないかというふうに考えられるわけですが、この点はどうなさるおつもりですか。
  216. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 二つの問題を同時に御指摘になったわけでございますが、私どもはやはり何が不公平であるかということは議論を整理しておかないと、いかに私ども努力をしても何にもやっていないということになるわけであろうと思います。  そこで、まず政策税制とそれ以外のものという仕分けということで税制調査会に御議論を十分時間をかけて願ったわけでございまして、それは五十一年度改正に関する答申に書かれております。さらに、中期答申におきましても再度その点を御吟味願いまして御確認をいただいております。  そこで、おっしゃいます中の各種引当金でございますが、これは私ども制度としては企業優遇税制だとは考えておりませんし、税制調査会もそのような方針をとっておられるわけでございます。ただ、法令上規定しております繰入率が実情に即しないあるいは合理性に欠けるという点があればこれは是正をしなくてはならないと、その角度からの吟味を別途すべきであるということでございまして、具体的に金融機関の貸し倒れ引当金は、渡辺委員よく御承知のように累次にわたって引き下げを実施いたしました。ただ、最近の現実の情勢から見ますと、これは御意見が違うんだろうと思いますけれども、私は金融機関の貸し倒れ引当金の繰入率は少なくとも当面は現行のまま維持すべき状態ではないかと、経済情勢が、というふうに考えております。そのほかの引当金につきましては、いまの段階でどうしても見直さなくてはならないという必然性はないというふうに考えております。これもまた御批判があることは承知しております。  それから、受取配当益金不算入の問題あるいは配当軽課、配当控除の問題、これはそれこそ立場の相違でございまして、私どもは不公平税制だというふうには全く考えておらないわけなんでございます。これは個人株主の所得税と法人段階における法人税負担とを何らかの意味調整すべきであるという考え方の国の方が圧倒的に多いわけでございます。この制度をもってそれが不公平税制の典型であるというふうに先ほどおっしゃいましたが、それは率直に申し上げて見解の相違というふうなお答えしかできないと思います。
  217. 渡辺武

    渡辺武君 いろいろ税目を挙げて質問したいところなんですが、時間もないんで一つ伺いたいんですが、ここに「昭和五十一年度税制改正に関する答申」、税調のやつですね、出てますけれども、いま私議論しております「各種の引当金は、課税所得の計算方法を合理的なものとするために認められている制度であることから、これらについては、政策税制以外の制度として取扱うこととし、今回の見直しの対象とはせず、今後別途の観点から引続き検討することとした。」ということになっておりますね。これからもう二、三年たっているわけです。どういう検討が行われているのか。
  218. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 私ども部内で検討いたしまして、税制調査会に必要に応じて御審議を願うわけでございますが、私ども部内の検討の結果、先ほど申し上げましたことの繰り返しで恐縮でございますが、金融機関の貸し倒れ引当金は逐次千分の五まで引き下げていきたいということで御審議を願い、実施に移されております。そのほかの引当金につきましては、私どものいままでの検討の結果では特に縮減しなければならないというものは見当たらないという状況でございます。
  219. 渡辺武

    渡辺武君 いや、それではやっぱり国民は納得しないでしょうね。そう思います。  それで、具体的な問題に入りますけれども、これは所得税本法にうたわれているものですが、有価証券の譲渡益課税ですね、これについて伺いたいんです。  私、指折り数えればもう五年ばかり前になります。昭和四十八年の三月二十九日、この大蔵委員会でこの有価証券譲渡益課税の問題について質問いたしました。私当時主義しましたのはね、これ架空名義の株の取引をやられても捕捉が困難なんだということを盛んにおっしゃって、そのためにこの税制の改正がなかなか進まないという状態でありましたので、その道に詳しい人ともいろいろ一緒に研究しましてね、一つ提案をしているわけですよ。  どういう提案かといいますとね、証券会社が期末残高照合というのをやっている。これはお得意さんに対して、あなたの買った株は何株で銘柄はどういう銘柄で値段はこれくらいで買いましたと、それを当方は何株幾らでいつ売りましたと、こういうことに間違いございませんね、という手紙を出して返事をもらって照合をするという仕組みになっているわけです。架空名義の株の取引をする人がいればこれは郵便物が届かないで返ってくる。必然的にこれはもうその帳簿をこれをしっかりと把握しさえすればこれ名寄せができるという仕組みになっているわけです。それで、私は証券会社に一定の基準を示して、そしてこれこれの基準に適合する取引の場合は政府に報告義務を課せるというふうにしたらどうかと、そうして場合によってはこの残高照合の帳簿を政府が立入検査をするということができるようにしたらどうかという提案をいたしました。  そのときに政府側の答弁は、当時は小坂善太郎さんが大蔵大臣の臨時代理として出席されておられまして、いまの御意見も十分に頭に入れながら、税制調査会等でも議論していただき、将来の問題としていろいろ検討さしていただきたいというふうに答弁されております。それから大倉さん、あなたが当時官房審議官ということで出席されまして、研究いたしますという答弁をされているわけですね。その後もう五年たちました。どういうふうに研究をされたのか、また、税制調査会でどんな議論があって、どの辺まで進んできているのか伺いたいと思うんです。
  220. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) きょうそのお尋ねがあるということで、私当時の速記録をもう一度読み返してまいりました。  私が審議官で政府委員として研究させていただきたいと申し上げました部分は、現行法のもとにおける五十回、二十万株であれば課税をする。その課税を適正化するためにどのような資料が必要であるかあるいは可能であるかということを研究さしていただきたいと申し上げております。
  221. 渡辺武

    渡辺武君 それもあった。
  222. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) それから、期末照合の問題は証券局長が主としてお答えしておりまして、それを受けまして小坂大臣代理が検討してみたいと、こういうふうにお答えになっております。  そこで、まず期末照合の方でございますが、このときの証券局長は、取引の内容もそこに入っているような答弁をしておるのでございますが、これは実はちょっと実態とは違うわけでございまして、期末残高照合は、お客さんとの間の債権債務の関係一定期日で通知をするものでございます。したがいまして、端的に申しますと、株の場合には保護預かりで証券会社が株を持っていますというときにはこれが出ます。あるいは信用取引の未決済残があるというときには出ます。しかし、一般的に保護預かりでなしに取引をしておられる場合にはこういうものが出ないわけでございます。その意味でこれを資料として使うということではなかなか私ども趣旨には合わないなというふうにいまは考えているわけでございます。  それから、前段の問題の法定資料として取引の内容についての資料化ができないかという問題も勉強いたしてみましたんですが、その当時にいろいろと私も答弁いたしておりますように、やはりどこで線を切るのかという点が一番むずかしゅうございまして、線を引きますと、まあ残念なことでございますが、現実の問題としてはどうしてもその線以下に分散してしまう、なかなか決め手がないということで、その資料の問題は、まだ投げてしまったわけではございませんが、決め手が見つからないという状況でございます。しかしそのときの御質問は、とにかくいまの法令上課税できるもの、できるということになっているもの、それを適正に執行するためにせめてこういうことをやりなさいという御質問であったわけです。  それ以後私どもの方は、先ほど塩出委員にお答えいたしましたように、原則非課税であるけれども特定の場合には課税する、特定の場合というものをやはり適時洗い直し、特に五十回かつ二十万株というものをもう少し課税化の方向で直せないだろうかということにむしろ研究の主題を移しておりますんですが、その点につきましては、先ほどお答えしましたように税制調査会も、一挙に全部総合課税というのにはまだいろいろ問題があるけれども、段階的に課税強化するということを考えるべきであるというふうに答申をいただいておりますし、ここ一年証券局との間で私どもが勉強をし、また証券局から証券業協会に別途研究を依頼いたしまして、証券業協会内部でも、外国を調べてみましたり、いろいろと勉強してくれております。ただ、残念ながら今回の税制改正に間に合うような現実的な案にまだ到達しておりません。かたがた、今回は有価証券取引税の税負担の引き上げということを十月ごろからお願いを始めましたものですから、それは税の性格としては全く別のものではございます、有価証券取引税とキャピタルゲイン課税は、性格としては別のものでございますが、やはり市場に与えるインパクト、特に投資家心理に与えるインパクトとしてはいわば二重にかぶさっていくという面も考えざるを得ませんものでございますから、五十三年度改正に関してはキャピタルゲイン問題は継続審議にしようということにさせていただきました。したがいまして、継続していま申し上げましたような研究を続けまして、私の希望としましては、できるだけ早い時期に現実的な、一歩でも二歩でも前進する案というものを見つけ出したいというふうに考えておる次第でございます。
  223. 渡辺武

    渡辺武君 その残高照合の帳簿についてですね、これは私が現実にその道の専門家から聞いた話とちょっと違うので、あなたの方もちょっとお調べいただきたいと思うんです。私の方も調べます。  それで、しかしいまおっしゃった年五十回、二十万株以上というやつですね、これは政令事項になっていると思うんで、いつでも変更できると思うんですが、一番問題の根本は架空名義の取引、これの名寄せができないということが一つの大きな問題点となってあるわけですね。それをそのままにしておいて、そうしてこの基準をたとえば仮にもう少し下げるというふうにしても、やはり捕捉ができないという事態は依然として残るだろう、その点は御承知になっているわけでしょう。その辺はどうしますか。
  224. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) その点は、実はキャピタルゲインのみならず利子の総合課税でも終始つきまとっているわけでございます。仮に番号化をして電算機に入れましても番号がうそであったら一体どうなるか、だれが見つけてどうやって追及したらいいのかという問題がいま利子の総合課税の場合の一つのメインな研究テーマでございますが、それはしかし、いまのところは原則課税が行われないので、また証券局も行政指導をかなり熱心にやっているように私聞いておりますので、それからまたいろいろお客のところへ通知が出たりなんかして、幸いに架空名義が余りなしに平静に取引が行われているという面が強いのかもしれません。しかしこれ一たび課税が強くなるよというと、またもとの穴へ逃げてこもってしまうかもしれないというむずかしさは私も十分意識いたしております。これは非常な難問でございまして、最終的には納税者の信義の問題あるいは中間で資料作成の義務を負ってもらいます金融機関なり証券会社なりが本当に私どもの方に協力してくれるかどうか、率直に申し上げてそういうむずかしい問題がある、一気にこれを法律なり制度で片づけ得るというふうには思っておりません。しかし、だからといって何もしないでいいというふうにも思っていません。そういう問題を十分意識しながらも、一歩でも二歩でも前進する具体的なプラクティカルな案を探し当てたいと私は考えております。
  225. 渡辺武

    渡辺武君 私はどうもそれちょっと納得できないんですよ、そうおっしゃるのが。もうずいぶん長い間の議論の焦点になった問題でしょう。それがいまだに解決できないなんて、五年前に伺った御答弁とよく似ていますよ、いまおっしゃったことは。ひどいものだと思いますね。  それで、とにかく銀行預金については、これは世論の批判が一番大きかったと思いますが、大蔵省の指導もあったと思います。去年の九月五日に全銀協の税制専門委員会で総合課税への移行に伴う具体的問題の検討を始めているということを私聞いております。それで、いま全銀協はそういう方向で前進しようとしているわけだから、証券会社としてもそういう方向に進むという動きは何にもないんですか、その辺はどうなんですか。
  226. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 先ほど触れたかと思うのでございますが、私どもと証券局が部内的に研究を進めております。同時に、証券業協会にも別途研究を頼んでおりまして、かなりの頻度で会合があり、外国調査などもして、現実的な方法を探してくれておるということでございます。
  227. 渡辺武

    渡辺武君 この間、三月九日の日ですね、竹田委員が大蔵省に質問して、金融機関の架空名義の、銀行での架空名義預金の調査を試験的に大蔵省でやってみたらという御答弁がありましたですね。税務署で確認の対象とした支払い調書は三十一万二千六百九十七枚で、そのうち追徴した分は四千六百七十九枚、一・五%が架空名義であったというような趣旨の答弁でしたよ。新聞などもこれ大きくやっぱり書き立てているんですね。一・何%というとそう大きな数字じゃないなという気もしますがね、私は現実から考えてみましてね。少なくとも、やはり大蔵省として試験的にこの有価証券譲渡益についての実態、取引をしているお客の実態ですよ、これについて調べるというような意図はないですか。
  228. 水口昭

    政府委員(水口昭君) 株式の譲渡益でございますが、先生御案内のように、原則非課税で例外的に年五十回、株数が二十万株以上の場合に課税をする、こういうふうになっているわけでございます。そこで国税庁では、この法令にのっとりまして調査を進めているわけでございますが、税務統計といたしましては、前々からお答え申し上げているように、事業所得が幾らであるか、雑所得が幾らであるか、こういう統計はございますが、その中で株の譲渡による所得は幾らであるか、そういう個別的な数字はとっておりません。いま非常に人手不足でございまして、なかなかそういった方面に力を割くということはむずかしゅうございますので、いまのところは確たる数字はつかんでいない。しかしながら、いろいろ部内の課税実績の検討会等がございます。そういうところで話を聞きますと、いろいろ国会でも問題になりますし、われわれも第一線を督励いたしまして、そういう調査につきましては特に力を注いでやっておる、こういう実態でございます。
  229. 渡辺武

    渡辺武君 これは大臣ぜひひとつ御答弁いただきたいんですがね。銀行預金などについて、あっちこっちの銀行に架空名義で預金をしている、このためにかなりのいわば実質上の脱税をしているという声が強くて、それでいろいろ問題になって、それで税務署を通じて調べてみたところがこういう実態だったという報告がこの間あったわけですね。私も予算委員会で聞いていて、なるほど試験的にやったにしてもやったことは非常に結構だというふうに思いました。この株の取引についても、あっちこっちの証券会社と実名で取引している人もいるでしょうけれども、架空名義で取引している。このために、いま言ったように年五十回、一回二十万株という枠から全部外れちゃって課税されないという人たちがずいぶんあるんじゃないかという声は強いですよ。特に最近は不況下の株高で、また株式投機がかなり復活してきていると見て差し支えないんですね。一日の出来高おおよそ一兆円を超えるというのが普通の状態でしょう。そんな状態ですから、やはり大蔵省としても、これから先一般消費税等々で国民に大きな負担をお願いするなんて言いながら、現に大口の脱税があるんじゃないかと疑われているこういう問題を放置するということは私は許されないと思う。試験的にもやはりどこかの証券会社、これを通じて架空名義の売買やっている人たちの実態をつかむということを私はやるべきだと思う。脱税の摘発をやるべきじゃないかというふうに思いますが、どうですか。
  230. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) この問題は私がいまから十五年前ぐらいから、主税局長やっておったその前からの問題でございまして、非常にむずかしい問題でございます。鋭意検討を進めているのでございますが、一つは、譲渡所得の問題で言いますと、やはり名義の問題、架空の問題とそれから仮装の問題と名義貸しの問題、いろいろあるわけでございます。それからもう一つの問題は、いま五十回、二十万株でしたか、一回とは何ぞや、これがまたむずかしいわけでございます。一回とは何であるのか。それから、一体仕入れ値が幾らで売り値が幾らであるか、これがまた非常にむずかしいところなのでございます。それから税制的にむずかしい問題は、キャピタルゲインを課税するとしたらキャピタルロスは一体どうするのか、この問題があるわけでございます。  いま私が記憶しておりますのは、昭和二十八、九年ごろでございましたが、どっちかというとあのころは全部課税するというのでございましたが一キャピタルゲインよりもキャピタルロスの方が多分よけい出てきたと思うんでございます。これは当然の話でございまして、ロスの方は一生懸命出すわけでございます、これは実在でございますから。ゲインの方は逃げるのでございます。したがって、税制はやはり実効があるものでなければならぬわけでございまして、主税局も国税庁も鋭意検討しているだろうと思うわけでございます。  それからまた、先ほど申しました利子・配当の総合でございます。これもまたその方がいいに理論的には決まっているわけでございます。ただ渡辺さんも御承知のように、日本のようにこんなに間接金融に頼っている、それが大部分だという国はないわけでございます。それだけに非常にむずかしい。だから外国の人に、いやあ利子・配当の総合課税が日本では大問題になった、向こうの人はよくわからないんです、全然。向こうはみんな直接金融でございますから、大部分が。したがって、そういう問題は余りわからないのではないか。向こうでは余りそんなことは税務行政上あるいは税制上問題になっていない。こういう日本の貯蓄と投資との関係、こういった特殊な原因があるわけでございますので、そしてこの問題は下手に手をつけますとこれは大変な話でございまして、税収失うだけでなくて大変な不公平を起こすわけでございます。したがいまして、いま主税局なり国税庁が鋭意プラクティカルな実効の上がる仕組みを考えているということは私も賛成なのでございます。それから、意欲といたしましてはぜひ実現さしたいと、こういうことでいま前向きに鋭意検討しているところでございますので、その点御理解願いたいと思うのでございます。
  231. 渡辺武

    渡辺武君 大臣たくさん理由を挙げられましたね。さすが大臣だと思ったが、否定的な理由だけで、やっぱりそういうことだと何年たっても同じということになるんじゃないでしょうか。大臣言われたその十五年という年月の間も、そういう議論をきっと繰り返してきたんだろうと思うが、私はやはり大蔵省というのは官僚の組織の中でも大体切れ者が集まったところだと常々聞かされているんです。ひとつそういう切れ者らしい頭を働かして、一回とは何ぞやとか、買い値が幾らで売り値が幾らかなんて、そんなことは技術的な問題で幾らでも解決の道あるんじゃないでしょうか。だから私、素人ながら残高照合の帳簿ということを提起したんです。もしそれがさっき言ったように、預かっている株についてだけのものだというようなことであれば、これを全株式取引に残高照合を適用するという処置をとることだって不可能じゃないと思うんだ。やろうと思えば私はできると思う。その辺をひとつよく、大臣もぜひ実現したいというんで、少なくとも大臣の在職中くらいにどうですか、やる御意思ないですか。
  232. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いつまでやっているかわかりませんが、在職中鋭意検討して何とか実現したいものだと、かように考えているわけでございます。
  233. 渡辺武

    渡辺武君 在職中にできれば非常に結構ですが、さっきもおっしゃいました税の性質は全然違うけれど、有価証券譲渡金の課税がなかなかうまくいかぬので、いわばそのかわりということでもないんでしょうけれど、頭振っているから、取引税でやっているんだということでしたがね。やっぱりこれの税率を多少ずつ上げたということは、これはいいと思うんです。いいと思うんですが、もう少し上げないと私はやはり実態からかなり離れたものになるんじゃないかと、少なくとも所得税の税率七〇%、そこまでとは私言いませんが、しかし今度五〇%上げましたが、その前の水準でも五〇%程度でなくて二倍か三倍くらい一挙に税率上げたらどうかというふうに思いますが、そういう方向の検討というのは今後もやられますか。
  234. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 福間委員、塩出委員にそれぞれお答えしたところと重複してしまいますけれども、やはり流通税にはそれなりの限界があるのではなかろうか。所得課税に実質的にかわるほどの重さの流通税というものはなかなか考えられないのではないかということを率直にお答え申し上げておきたいと思います。  今回の引き上げ後の水準の〇・四五というのは、先ほど他の委員にお答えしましたように、国際的な感覚から見てもまずまず妥当な水準ではないだろうかと思っておりますが、しかし、もちろん将来財政事情、経済情勢いろいろの変化はあり得ることでございますので、もう絶対これで固定するとまで申し上げる自信はございませんけれども、やはり流通税には流通税としての限界があるということは申し上げざるを得ないのではないかと思います。  それから、なお御承知の上での御質問であったと思いますが、有価証券取引税を上げるからキャピタルゲインをやらないという趣旨で申し上げたのではなくて、全然違う問題でございますが、しかし投資家に与える心理的影響というものはダブっていくんで、その意味で同じ時期に両方上げるということはやはり差し控えた方がいいんではないかと私どもなりに考えた、そういう趣旨を申し上げたわけでございます。
  235. 渡辺武

    渡辺武君 もう時間も来ましたんで、最後に一問だけ伺います。  いましかし大倉さん、同じ時期に両方というのはどうかとおっしゃいましたけど、両方やっている国もありますね。有価証券譲渡益に対する課税と、それから取引についての課税と両方やっている国もありますので、そう私は遠慮することはない。合理的に持てるところから応分の税収を得るということで、ぜひやってほしいと思いますね。  最後にもう一つ伺いたいのは、私はまあいわばストック課税ともいうべきものをこの際大蔵省としてぜひ検討すべきじゃないかというふうに考えているんです。いま税収難で財政危機非常に深刻なわけなんで、これは私どもの大蔵省に対する一つの積極的提案なんですがね。  高度成長期に特に大企業を中心としてかなりの内部留保が、しかも非課税の内部留保が蓄積されてきている。ですからこれについて一定期間を限って、ある時期からある時期までに増加した分について一定率の税率を掛けて税収源とするということを考えるべきじゃないかというふうに思います。いま不況だ不況だと言ってますからちょっと手が出ないという感じもあるいはおありかもしれませんけれども、なかなかやっぱり企業も中小企業とは違って大企業の方で、私、この間構造不況業種と言われる造船の大手を調べてみたら、いやあもうとても、内部留保五年間に二倍にふえているというような実情になっているわけですね。ですからぜひその点を検討していただきたい。これは毎年毎年というわけにはいかぬでしょうから、一つの臨時的な課税になろうかと思いますが、検討すべきだと思います。どうでしょうか。
  236. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) やはり二つ問題があろうかと思うんです。  一つ制度考え方としまして、準備金をそれなりの理由があって認めた場合に増加額に対して別途課税をするということを行うのであるならば、むしろそれは積立率を操作することと同じでございますから、積立率を縮減するというようなことの方が筋であり、結果的には同じことになると思いますから、そういう制度的な検討をやはり必要とするのではないかと思います。  それから、まあ経済的な影響としましては渡辺委員も御質問の中でおっしゃいましたように、またよく御承知の上での御質問だと思いますが、引当金、準備金というのは別にそれだけ引き出しに入っているわけではございません。見合い勘定は資産化されて動いているわけでございますし、それにいまの時期に課税をするということは、いまの企業の収益状況全体から見ますと、まあ極端に申せば雇用にまで影響しかねないような局面になるので、やはりいまの時期にそれを取り上げることは適当ではないんだろうと私は考えますが、ひとつ御意見として伺っておきます。
  237. 渡辺武

    渡辺武君 大臣、これ有力な税源になりますがね、どうですか。
  238. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いまおっしゃっているのは具体的にどういうものを指しているのかわかりませんが、引当金では恐らくないであろう。また、一遍課税されたその積立金でもないであろう。恐らく非課税の準備金のお話ではないかなと、こう思っているわけなんです。
  239. 渡辺武

    渡辺武君 引当金入っているんです。
  240. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 引当金入ってますか。それはむしろ縮減の方向で、もしそれが問題であるならそういうことであろうと思います。まず第一にやらにゃならぬのであれば、それは引き当ての縮減の方からやっていくということからまず始まるべきであろうと思います。  それから準備金についても同様でございまして、よけい積み過ぎているというのであれば、まず積み立ての方からやめていくと、こういうことからスタートすべきではなかろうかと思うわけでございます。
  241. 中村利次

    ○中村利次君 五十三年度の予算は、政府の表現をかりますと臨時異例の措置であって財政主導型で公共投資を中心として国内需要を喚起をして景気の回復を図っていくんだと、そして結果として経済成長実質七%を達成するんだということでありまして、私どももやっぱりぜひそうあってほしい、そうでないとこれは容易ならざることですから。  ところが、やっぱり大変気がかりなのは、これは私は決して皮肉で言うわけではございませんけれども、いままでも深刻な不況に対して、決して政府が座していたわけではなくて、やっぱり景気対策打ってきた。しかし、やっぱりどうも十分でなかったというのはそういう答えが出ているわけでありますから。ことしもなお政府が予算を異常な決意で組まれたときからしますと、たとえば通貨問題なんかでもかなりの円高、現在数%円は切り上げられておるんですね。これは皮肉みたいなもんですけれども、先週公定歩合を引き下げて為替管理の強化等もやって、国内の景気回復に資するとともに円高問題にも対策としようとされたら、これがとたんに何だか円の一段高を呼ぶような結果になっちゃった。ですから、恐らくこれは企業倒産あるいは完全失業者もまた新しい記録を更新するんではないかと憂えられるんですがね。この円高が政府が予定されておる予算の執行等、これはまあ一生懸命になって効果のある執行をされるんでしょうけれども、どういう影響があると踏まれておるのか、影響ないとお考えになっておるのか、まずそこら辺からお答えいただきたい。
  242. 大竹宏繁

    説明員(大竹宏繁君) 非常に一般論として申し上げますと、為替レートが上昇するということによりまして輸出産業の輸出がむずかしくなるというような面があることは事実でございまして、それによりまして当該輸出産業の収益が減少する、あるいは雇用者が多く過剰になるといったようなことが一般論として考えられるわけでございます。したがいまして、円高は非常に急激であり、それが相当長いこと大幅な円高が続くというようなことになりますと、これは非常に経済にも影響が懸念されるわけでございます。したがいまして、これに対する対策といたしまして、けさほど来答弁の中で申し上げておることでございますけれども、公定歩合の引き下げあるいは個別の輸入促進あるいは直接的な短資の流入規制といったような対策を講じまして経常収支黒字幅の縮小を図る、レートの安定を図るといったような施策を講じておるわけでございまして、一方におきまして予算の円滑な執行と並びまして、このような政策の効果が逐次あらわれまして円レートが安定するものと期待をしておるわけでございます。
  243. 中村利次

    ○中村利次君 対策も伺いたいんですが、それよりももっと伺いたいのは、質問しましたように、五十三年度予算で七%の実質経済成長率を達成できるんだと、こういう立場を政府はとっていらっしゃる。ところが円高が、きょうも何か、前場というんですか、二百三十円ぷっつりとかなんとかだそうですよ。そうなりますと、これは明らかに予算を編成された当時とはもう一段高になっていて影響がないはずはないんですから、どう対策をするかということが一つ。  もう一つは、それによって日本の景気がどういう影響を受けるのか、果たして七%の実質成長が可能かどうか。影響ないはずはないんですから。その影響をどういうぐあいに考えられるのか、これ大臣いかがですか、どなたでも結構ですがね。
  244. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 今度の七%の成長の中身を見てみますと、経常収支余剰によるところの成長というのはほとんど見ていないのでございます。ですから結論から先に申しますと、五十三年度の七%は経常収支余剰による分はそんなに見ていない。ですから、問題はむしろ七%よりもそれによってもたらされるところの中小企業の問題あるいはミクロの問題、その方が私ははるかに大きい問題ではないか、七%に直接影響するというよりも、そちらの方に結果的には大きく響いてくるんだろうと思うのでございます。そのためにわれわれは、それにしても輸出に頼っている中小企業は非常に苦しいわけでございますから、円高緊急対策等を実施しているところでもあり、そしてまた一部の産業が、ドルベースで言いますと大変な輸出超過になっておるわけでございますから、そういうものについて節度ある輸出をいま望んでいるのでございます。  成長自体の方から申しますと、対内関係にほとんど計算いたしておるわけでございますので、これから本格的にこの財政を執行してまいりまして、そしてまた、それに関連していろんな住宅政策なり、あるいは設備投資につきましても通産当局がいろいろやっておるところでございます。そういったことを重ねてまいりますれば、いまわれわれが考えておりますのは、ことしが五・三%程度いくと大体見通されるようでございますから、七%の成長ということは不可能ではない、まあこんな感じがしているわけでございまして、問題はむしろミクロ対策の方じゃないであろうかと、そのように考えておるわけでございます。
  245. 中村利次

    ○中村利次君 どうももどかしいような感じがするんですがね。成長率という数字なんかは、本当はこれは、どうでもいいんですよ。六%の成長で倒産も抑えられ失業も抑えられて、そして国民生活も安定するんだったら、これは七であろうと六であろうと五であろうとそんなのは関係ない。私が言っておるのは、財政主導型の景気対策の予算を組んで、実質成長七%にこれはなるんだよと、そして企業倒産も失業者の増加も抑えられて、国内需要が起きて民間の設備投資につないでいけるんだよということですから、ですからそれを前提として考えますと、円高がまた一段高になる、二百四十円台から二百三十円ちょぼちょぼ、二百二十円台に——下手まごつくと日銀かとこまでこれは支えられるか知りませんがね。そういうことになると心配なのは、その影響は必ずこれはミクロ的に言ったってマクロ的に言ったって影響があるわけですから、やっぱり当初政府が五十三年度予算を編成するに当たって臨時異例のそういう措置を非常な決意を持って予算を組んだと。だからそれはあれでしょう、政府が予算を組んだ二百四十円台の通貨だったら計画どおりにいくかもしれないけれども、三十円台だとか二十円台なんかになった場合にはどういう影響があるのか、そういうことを想定されなければこれはおかしいんですよ。想定されないんだったら結局これはまた無策で、対策を誤っちゃって、後になって、政府はそう言ってたけれどもそうならなかったじゃないかという追及が残るんですから。それはやっぱりこれだけ円が一段高になった場合の影響はこういうことになりそうだから、その補完措置としてはこういうことをやらなければいかぬなんということがなきゃそれはおかしいでしょう。どうですか。
  246. 大竹宏繁

    説明員(大竹宏繁君) レートの変動がございますとやはりそれによって影響を受けるところ、それはあることは事実でございまして、仰せのように、マクロ的な対策も一方で講じながら個別の措置もいろいろ考えてやっておるわけでございます。特にこの円高によって影響を受けます中小企業に対しましては、去る一月に中小企業円高緊急対策ということを閣議で決定をいたしまして、それを受けました円相場高騰関連中小企業対策臨時措置法という特別立法が一月の末に成立をいたしました。二月の十四日から施行をされておるところでございます。これらのいろいろな措置の全体を申し上げますとまた細かい話になりますので……
  247. 中村利次

    ○中村利次君 いや、もういいですよ。いいです。
  248. 大竹宏繁

    説明員(大竹宏繁君) ございますけれども、申し上げたかったのは、要するに非常に個別的な対策も講じておるということを御理解いただきたいと思います。
  249. 中村利次

    ○中村利次君 そういうことを私は聞いているつもりじゃないんですけれども、やっぱりかみ合わないんですよ。それは、円高によって打撃を受ける中小企業に対しては対策をやっぱり考えていますよと。私が言っているのは、それはそういうのがもちろんあるでしょう、しかし、二百六十円でなければとってもだめですよと言われていたのに、やっぱり四十円になっても通関統計なんかから見れば大変なこれはまた黒字がふえそうだという産業もあるわけですよ。円高がかなり深刻になっても、一部にはそういうものを消化できるような面も日本の産業はある。あるいは中小企業なんかもほとんどそれでもうくたばってしまい、死に死にのところもある。だからそういういわゆるミクロ的な対策ももちろん必要でしょうが、私が申し上げるのは、日本経済全体についての影響があるでしょうと。それから政府がこの五十三年度予算でおとりになっておる景気回復に対する影響もあるでしょうと。だからそれを、影響があるけれどもこういう補完措置でちゃんと景気の回復は達成するんだというものがなければならないわけですから、そういう立場からすれば、どういう影響があるかということをやっぱり正確にとらえなければいかぬわけでしょう。それを聞いているんですが、どうですか。
  250. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) なかなかむずかしい問題でございますが、これはしばしば経企庁長官が言っておりますように、今度の経済見通しを立てるときに一体一ドル幾らで計算しましたかと、こういう話がよく出たわけでございますが、これは予算編成の直前の一カ月の平均相場二百四十五円をとりました、こういうことを言っているわけです。しかし、この二百四十五円でずっと推移するであろうというようなこととは無関係でございます。したがいまして、相場が幾らになるかということは、直接には七%とは関係のない数字で組んでありますと、こういう話なんです。そこで経済成長率七%の寄与率を見てみますと、海外部門のところはほとんどゼロなのでございます。ここなんですね。それで国内部門で大体七%いけると、こういう経済見通しになっているわけでございます。  そこで、いま円相場がずっと上がっておって困ってるじゃないかと、これが影響するんじゃないかなと、だから七%を大丈夫かと、こういういま御質問を中村さんされているのでございますけれども、それはさっき私ちょっとどなたかの質問についてお答えしたのでございますが、たとえば一月、二月ずいぶん、一月はドルベースで言うと十五億ドルも経常余剰が出たとか、あるいは二月になると十八億ドル出たとかいう話なんですが、円ベースで言いますと通関統計で二・七%しかふえていません、総価格で、こういう状態なんですね。それで経済成長というのはあくまでも円ベースではかるわけでございます。なぜそんなに為替相場が上がっているのに当然輸出が衰えるべきだと、こういうあれでございましょうが、やはり競争力のあるのが出ていくとか、あるいは出血でもって出ているのもあるかもしれないのでございます。ドルベースで言うとさっき言ったようなことなんで、例の来年経常収支が六十億ドルのプラスという点にはこれは大きく響いてくる問題であろうと。しかし円ベースで考えまして、成長率という問題からいうと、先ほど申しましたように二百四十五円というのは直接には関係ございません、こういうことを言っているわけなんです。  そこで、それらの問題からいいますと、確かに中小企業がまあお困りになることはよくわかるわけでございます。それはそれとして別途の対策を講じていかなければならぬことは当然でございます。しかも、一部の非常に競争力のあるもの、あるいは出血輸出でもやろうというものがドルベースで非常に不均衡を来たしておりますから、これは国際的の問題でもあり、同時にまた日本の問題でもありますから、その点は今後考えていかなければならない。当然基礎収支均衡、特に経常収支について節度を持っていかなくちゃならぬということは当然だろうと思うんです。しかしいまおっしゃっているやつが七%の問題だと、こうおっしゃいますから、だからその問題は計画上そんなに大きなそごの来る問題ではございません。しかし、ミクロとしては大変な問題でございますから、それは別途にいろんな手を講じているわけでございますし、そしてまた輸出全体も、これから中小企業がお困りになるんですから、やはり為替相場円高によって困るということは事実なんですから、だから輸出についてはやはり節度ある輸出が望まれると。通産当局の方でもせっかく行政指導でそのようなことをいま鋭意やっておるということを申し上げたわけでございます。
  251. 中村利次

    ○中村利次君 何だかわけがわからなくなっちゃうんですが、円高で企業倒産が記録更新して、完全失業者も記録更新をするということになれば、やっぱりこれは税収だって見込みが違ってくるし、財政も一段とおかしくなるでしょうし、経済も影響を受けておかしくなることは間違いないと思うんですよ。そうなりますと、どうしてこれは次元が違うんですか、景気の回復にどうして影響ないんですかね。円高によって倒産がふえる、失業者もふえる、そうなるとどうも不況が深刻化してくる。公共投資によって国内需要はふえるんだよということが、そういう足引っ張り要因によってなかなか思うように計画どおり国内需要がふえないということになれば、景気の回復だってこれはやっぱり影響を受けてくるんですがね。だから七%の経済成長という数字ではなくって、政府の政策そのものが破綻してくるおそれはないのか、これはありませんか。
  252. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) そこはミクロ対策で、そういう中小企業の倒産等がないように考えられるあらゆる措置を講じているわけでございまして、中小企業に対しての円高緊急措置法を発動いたしまして、そしてまた、産地ぐるみの一種の救済措置も講じているわけでございますし、また、不況の場合の信用補完措置も講じているわけでございまして、そのような倒産がミクロの場面で出ないようにあらゆる措置を講じていると、まあ第一に申し上げたいわけでございます。  それから雇用の問題でございますが、経済企画庁はマクロで大体これだけの成長をすれば五十五万人ぐらい雇用がふえるであろうと。しかしながら、新規卒業者もずいぶんあるわけでございますから、いわゆる失業率が減るというところまでにはなかなかいかないと、こういう話で、この間来予算委員会の中で五十五万人というのは一体どこから出したと、その積算の根拠を示してくれと、こういうことでございましたが、これはマクロでもっていろいろ考えましてそういうことになりましたと。公共事業だけで一体どれくらいふえるかというようなことも出しまして、それは大体十七万人ぐらい、これは積算の根拠のいろいろな仮定を置いての数字でございますが、公共事業の拡大だけで大体十七万人ぐらいいくんではなかろうかというような話。しかしまた、一方においてずいぶん構造不況業種が出ているから、そういったものから新たな失業も発生されるというような御意見もございまして、その点は公共事業の実施計画においてそういう点も十分ひとつ配慮しようじゃないか、個所づけの問題、さらには下請に対してそれがずっとどのようにいくか、あるいは、有効求人倍率の低いところに少しよけい張りつけるように工夫をしながら雇用問題にも対処していこうじゃないか、こういうことで鋭意努力しているのでございます。  したがいまして、数字的に倒産が絶対に出ないとか、そんなことはお約束できないわけでございますけれども、それはミクロの面でできる限りの手当てをしておりますし、また雇用の面におきましても、今度の構造不況業種の法案の中に労働大臣の方からもやはり十分意見を述べるようにしておりますし、また公共事業の施行についてもただいま申しましたようにいろんな配慮をいたしているのでございます。  そういうことでございまして、ねらいとするところはこの公共事業を中心とする今度の措置によりまして民間経済に何よりも力をつけにゃならぬということでございます。やはりそれがありませんと、最終的にいつまでも財政が支えるというようなことは、これはもうできないことはわかり切っているわけでございますから、何年も続けるわけにはいかぬわけでございますので、早くこういう措置を講じまして、それと合わしてミクロ対策もやりながら何とか七%の成長、それによるところの民間経済への自立回復意欲を早くもたらしたいと、こういうことでミクロ、マクロ通じましていろんな施策を講じているところでございます。
  253. 中村利次

    ○中村利次君 民間経済に力をつける、まことにごもっともですよ。それが私はやっぱり力がつかないんじゃないかと思うから、そういう心配があるからこういう質問をしているんですよ。  とにかくこれは、円高というダブルパンチ食って倒産も記録的なものになったんです。これは二百四十円台でそうだったんですから、二百三十円、あるいは三十円を割り込みそうだということになる、これはまあ投機による影響かなりあるとは思いますけれどもね。福田総理みたいに、円高というのはドルが弱くって、結果として円が高いんだという、そういう何か気楽な答弁ではとてもじゃないけれどもこれはもう心配でしょうがない。ですからこの円高によって、特に中小企業なんかに対策を講じなければならないということは正常な事態ではありませんね。正常な事態でないことがずっと続いていきますと、これはもうえらいことになる、日本経済そのものがえらいことになる。  そこで、これはどこまで行ったってかみ合わないんですから、私はこの円高対策を強く要望しますよ。それでやっぱり心配なのは、先ほど申し上げましたように、先週政府・日銀は手を打たれた。打たれたけれども、全くこれは打った手がかえって呼び水みたいになって一段高になった、これはどうすればいいのか。こういうことを求めるのは、それは少しおまえ無理言うなという気持ちが大臣にあるかもしれませんよ。しかし、お気の毒ですがそれではやっぱり日本丸のかじ取りはできないわけですから、それを乗り越えて円高対策を確立をして安定をさしてもらいませんと、とてもじゃないけれども国民は不安でどうしようもありませんよ。  そこで、もう時間もなくなりますから——これはもう本当に、たったこれだけ言ってるともう三十分時間がたっちゃうんですよ。  そこでまた、これは非常に繰り返してくどいようですけれども、やっぱり利子・配当、あるいは証券譲渡益等の問題についてですが、この租税の特別措置というのをこれは政策的にやるわけですね。そのときそのときには私は意義があると思う。そこでかなりここ二、三年ですか、特別措置の見直しを手がけてこられた。これは私どもは野党の立場から不十分だ不十分だと言うけれども、政府としてはこれはかなり力を入れて改善をされてきたとおっしゃりたいと思うんです。それは素直に私どもも受け取ってよろしいと思いますけれども、しかし、二〇%、二五%、三〇%、三五%と分離課税は修正をされてきましたが、勤労所得、利子所得、配当所得といって読んで字のごとくみんな所得なんですよ。勤労所得はこれは累進課税で、利子所得あるいは配当所得、こういうのは分離課税である。ですから金持ち優遇というそしりは、これが存在する限りはやっぱり逃げるわけにはいかないんですね、そういう批判から。だから政府がこれを何とか総合課税にしようという方向性をお持ちになっていることはいままでの各種答弁でわかりましたけれども、だったらやっぱり、それなりの必要が歴史的にあったということは認めますけれども、現在ただいまこれはどうなんですかね、五十五年までの期限だから五十六年にやればいいんだということにはならないような気がするんですが、どうなんですか。
  254. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 現在どういう勉強をしているか、どういう段階にいるかということは他の委員にお答えいたしましたので、時間の関係で省略さしていただきます。ただ、非常に時間がかかる問題であるという点はぜひ御理解をいただきたい。  先ほど私が申し上げました中の、たとえば国税庁と私どもが勉強しております分野というのは、技術的に申しますとインターバンクの名寄せの問題でございます。それは金融機関が全店名寄せをしてくれて、それを私どもの方の、もし電算機を入れるなら電算機の端末へつないできて、それを銀行、地方銀行、信用組合、信用金庫、農協というところにばらばらあるかもしれないものを一人の人にまとめてくるわけですから、一体どれぐらいの大きさの電算機があればどういう処理ができるのかと、そのためには一体どれぐらいのスペースが必要でどれぐらいのコストがかかって、これはまた入れただけでは意味がないわけでございまして、これを時に応じて出してきてチェックをしなくてはならないわけでございますから、それらすべてを含めたじみな勉強がかなり時間がかかります。それから、仮に用意ドンということになりましても、そこから先にまた時間がかかるという点はぜひ御理解をいただきたいと思います。  もう一つは、まだ考え方が熟しておりませんので午前中申し上げませんでしたけれども、私は個人的にはやはりそれを詰めていく過程でどうしても少額貯蓄の優遇制度と郵便貯金の非課税制度は何らかの改善を考えないとうまく動かないであろうと思っております。しかし、これは政治的にはかなり大きな問題になりますでしょう。それをいつごろどういう問題点を添えて国会に御報告をし、世の中にも問いかけていくのかという大作業が控えております。その意味で、法律的にもう源泉分離選択をやめたという法律を書くこと自身は何でもないことでございますけれども、結果として新たな不公平を生まない、また、金融秩序に異常な混乱を起こさないというためのプラクティカルな方法を考えるためには、やはり最小限五十五年末までかかることはもうどう考えても明らかである。さらにあえて申し上げれば、五十五年末に具体的な青写真ができて完全に実行に移るという自信は率直に申し上げて私にはいまはございません。しかし、できるだけ早くやっていきたいという構えでいるわけでございます。
  255. 中村利次

    ○中村利次君 少額貯蓄、郵便貯金の問題まで率直な御答弁でありまして、私はいまの答弁を理解したい。ところが、これは素人談義だからかみ合わないかもしれませんが、ですからかなりそれはむずかしい課題であることは、そこまでは理解できます。しかし、たとえば証券譲渡差益の問題なんかでも五十回かつ二十万株というのはこれは捕捉できているわけでしょう。そうですね、それがとらえられて差益を正しくとらえることは非常にむずかしいんだと言うのがわからないんですよ。年間五十回かつ二十万株というんだってこれはかなりむずかしいことだろうと思うんですよ。あえてそれをおやりになって——これはいつからでしたか、それをおやりになったのは。おやりになって、そしてこれは捕捉できている。ほかのことがなぜとらえられないのか、これは不思議でしょうがないんだ。どうでしょうか。
  256. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 国税庁が帰りましたので便宜私からお答えいたしますが、五十回でかつ二十万株であれば課税対象になるという規定を実行いたしますために国税庁としては非常な努力を重ねておるということはまず申し上げます。しかし、その実行は非常にむずかしいということも申し上げなくてはなりません。五十回であるか、二十万株であるかを調べるために、任意に、特定の人の問題としてでなくて、証券会社の帳簿を洗いざらい調べてしまうということはそれなりの弊害を招きますのでいたしておりません。それはたとえば銀行預金につきましても同様でございます。したがいまして、間接資料があり通税の懸念があり、そういう資料をずうっと積み重ねてまいりまして、さて特定のたとえば大倉眞隆という人はおたくに預金がありますかと、こう言って調べるわけです。株の場合でも大倉眞隆という名義でことしこれくらいの売買があったというふうに思うけども、そこを調べたいということで調べておるわけです。そういう意味で執行が非常にむずかしい。したがいまして、いま限られた人数になるでありましょう五十回、二十万株を一生懸命調べるのでも、国税庁のいまの人員ではなかなか大変な仕事です。それを法定資料がきちっと出ない状態でその回数を縮めてしまう、あるいは株数を減らしてしまうといっても、それが直ちに期待したようにうまく動くというふうにはなかなかつながらないというのがいまの実際のむずかしさでございます。
  257. 中村利次

    ○中村利次君 確かにそれはわかりますよ。だからこそ衆議院の大蔵委員会でも附帯決議がつくような、そういう非常にむずかしいことに挑戦をしていかれるわけですけれども、これはしかし、財政状態がこんなになって、歳出をどうして抑えていくかという点についてだってなかなかこれはむずかしいんですから、歳入増をどう図っていくか。それには不公平の是正を前提としてやらなきゃならぬ。ですから、これはお気の毒だけれどもしょうがない。やっぱりそれに挑戦をして、それを乗り越えて日本の財政経済のかじ取りをやってもらわなきゃならぬわけですよ。  どうも、私はまだ質問をしたいことが山ほどあるんですけども、時間がもう超過をしてしまいましたので、あきらめてこれでやめますけれども、がんばってくださいよ。
  258. 市川房枝

    ○市川房枝君 この委員会でのいままでの御質問と重複するようですけども、こういう問題についてほとんど知識がありません。素人の私に納得できない点が三、四点ありますので、それをお伺いしたいと思います。  まず、有価証券取引税法の一部改正についてでありますが、今回の法改正の主要な目的は、深刻な財政危機、つまり歳入欠陥対策としての増税であると理解しててよろしいでしょうか。
  259. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) おっしゃるとおりでございます。
  260. 市川房枝

    ○市川房枝君 有価証券、特に株券の所持者は大企業であったり、ある程度豊かな個人である場合が多いと思われるのでありますが、増税のためにはその税率をもっと大幅に上げたらいいんではないか。五〇%程度では少し低過ぎるという気がしますが、このパーセントの根拠は一体どこから出ておりますか。
  261. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 苦しい財政事情なんで、できることであれば三百三十億円ではなくてもっと収入が上がる方が望ましいということはございます。また有価証券取引税としては、いま御審議願っております五割アップではなくて、たとえば二倍に上げる、あるいは三倍に上げた方がいいじゃないかという御主張を他の党でもお持ちでございます。その点につきまして私どもも十分関係局と審議を重ねまして、最終的に大臣の御決断をいただいたわけでございますが、前回の引き上げのときは二倍でございましたが、それは引き上げる前の状態から二十年たっておりまして、証券市場の大きさ、取り引きの量というものが格段に大きくなった。そういう状態で二倍に引き上げをお願いしておると。今回は、その趣旨が現在の財政状態の中で他の景気政策に矛盾しないと思われるところではできるだけの努力をしたいので、ひとつ実質増税をお願いしたいということで私どもが始めた話でございまして、実は前回引き上げのときに比べまして市場はほとんど大きくなっていないんでございます。それから価格が上がりますと、この税は税率が幾らというふうに決まっておりますものですから、価格が上がれば負担もつれて上がってくるわけでございます。そのときには税制上の調整を必要とするという意味でお願いするんではなく、実質的にとにかく負担を増加して財政を少しでも助けていただきたいというお願いをしているものでございますから、市場の大きさなどを考えますとおのずから引き上げ幅に限度がある。  もう一つは、これはおっしゃいました中で法人が株を売買いたしますと、それが利益があれば法人税を払っていただいております。したがって並行してこの税を負担しなくてはならない、売買のコストとして負担しなくてはならないという性格のものでございまして、技術的に申しますと、流通税というものの持つおのずからなる限界があるわけでございます。  そこで、国際的に資本取引の専門家とか税の専門家がいろいろ集まって議論をした経緯もございまして、やはりこの種の税は課するとしても大体取引金額の〇・五%ぐらいというのが一つの目安ではないかという議論も参照いたしまして、今回御審議をお願いしております増税が通りますと、増税後で負担率は〇・四五ということでほぼ国際的な感覚にも合うことになりますものですから、引き上げ率は五割でございますが、引き上げの幅は前回二十年たって上げたときの〇・一五という上げ幅と同じ幅で、したがって、証券局は私どもの方の立場がよくわかってくれ説得に努めてくれましたが、証券業界としては非常な抵抗があったことも率直に申し上げて事実でございますが、やはりこの際だからぜひ頼むということで大臣の御決断をいただいてこの税率で提出さしていただいておりますので、私は、いまの状況では、また過去の経緯から見ましても、やはり〇・四五というのがいま考えられるものとしては適正でありかつ限界ではなかろうかと、そのように考えております。
  262. 市川房枝

    ○市川房枝君 いまも流通税だから余り上げられないとおっしゃいましたし、この間大蔵省から御説明を伺ったときもまあそういうお話だったんですが、流通税というのは大体本体があって、本体である税金の補完といいますか、補うというものであるというふうに私は思うんですが、しかし有価証券の利益に対しては、さっきも御質問が大分ありましたけれども、課税されていない、無税なんだということであるから、本体がないのに流通税というのはおかしい、素人にはそういうふうに思われるんですが、その点はどうですか、その点ちょっと伺いたい。
  263. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) その点がときどき、何と申しますか、誤解と申しますと言い過ぎかもしれませんが、誤解を招くわけでございまして、つまり税制として所得課税あるいは消費課税を補完するために流通税というものがあるということを申し上げたんだろうと思います。それで、具体的な特定のタイプの所得に対する課税を補うためにあるという性格のものではないわけでございます。したがいまして、税収としてもどの国の税体系を見ましても流通税の税収ウエートというのはきわめて微々たるものである。  なぜそうであるか、なぜ限界があると申し上げたのかと申しますと、それはやはり流通税というものは、その取引の背後にある担税力というものを非常にラフに考えて低い率で課税をするわけでございまして、その取引の結果もうかったとか損をしたとかいうことに関係なしに、一種の手数料的に負担をしていただくというものでございますから、それが仮にもうかったとした場合に、もうけに対して課税するものに対する率というものと直接に比べられませんし、また逆に、結果的にそれが所得課税に置き直して考えた場合に、所得課税としては五〇%になってしまうとか八〇%になってしまうとかというふうにはなかなか構成できない。くどいことを申し上げて恐縮でございますが、補完的税であるというのは、税体系全体の中で補完的な立場を持つ、流通税として限界があるというのは、所得という最終的に担税力を推定するのに最もいいものにかかわりなく負担していただくために余り高い税率にはできない、そういう趣旨で御説明申し上げたんだと思います。
  264. 市川房枝

    ○市川房枝君 有価証券を売ってずいぶん莫大な金をもうけている、そういうのに対して課税されていないということは、どう見ても一般の国民から言えば納得ができないわけでありまして、それは有価証券を売って損する場合もあるかもしれませんが、損した場合じゃない、もうかった場合になぜそれから税金が取れないのかという点が私どもとしては問題ですが、これは税制調査会でも、そのもうけをつまり総合課税としたらいいじゃないかというような方向が打ち出されているようですし、作家の城山三郎氏の有価証券譲渡益課税の必要性を主張しておられる文章も拝見をしておるんですが、これは結局何といいますか、つかみにくいということなんでしょうか、その理由がどうも納得できないんですが。
  265. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 原則非課税にいまなっておりますし、それでそもそも原則非課税にした考え方というのは、私どもはやはり一種の政策税制であったんだろうというふうに理解をいたしておりまして、当時の日本の資本市場というものは終戦後非常に壊滅的な状態でございまして、やはりこれから個人投資家というものを資本市場に参加させて資本市場を生き返らせなくてはいけないという判断があったんであろう、私のまだ駆け出しのころに始まった制度でございますが、私としてはそのように理解いたしております。しかしやはり全面非課税ということでは、おっしゃるように特定の取引で非常に所得が出たときに余りに公平感を逆なでするんではないかということで、幾度かの経緯を経まして、たとえば買い占めをやってもうけたらそれは課税しますよ、あるいはいままで公開していなかった株を公開して、そのときに一時にもうけが出てきたというときには特定の条件で課税しますよ、あるいは個人投資家がせいぜい年に二回ぐらい、まあ団地の主婦の方たが積立投資のようなことをやっておって売り買いをなすった、そこまでは追っかけなくていいだろうけれども、プロと申しますかセミプロと申しますか、相当の回数をやり、しかも相当の株数を売り買いしておるというのは、それはやはり課税対象に取り上げるべきではないか、そういう経緯をずっとたどってきているわけでございます。  いまの御質問の、そんなにおずおずと一つずつやらないで、全部とにかくやっちまおうということにすればいいではないかという御主張はかねてからございます。ただそれがなかなかそう踏み切れないというのは、率直に申し上げて、全面的に課税するということに踏み切った場合には、何と申しますか、先ほど大臣渡辺委員にお答えいたしましたようないろいろの技術的なむずかしさがあり、結果的に正直者がばかをみてしまって逃げる人はそのまま逃げてしまうということでは、新しい不公平が出てきてしまうんではなかろうか、そこをどうやってほぐしていったらよろしいか。いまの税制調査会でも、一挙に全面的に総合課税の対象にするというのはやはりなお問題が多過ぎるから、段階的に課税の強化をしたらどうかというふうに御答申をいただいておりまして、私ども具体的には段階的強化の一つとしては、やはりいまの継続的な大量の売買をなさる方、セミプロと申しますか、そういう方の課税の基準の五十回かつ二十万株というのを、何か一歩でも二歩でも課税強化の方向で直していけないかということをいま勉強を続けているわけでございます。
  266. 市川房枝

    ○市川房枝君 いまお話しのように、何ですか、さっきからも御質問が出ていて、五十回、二十万株なんというような話が出ているんですが、大蔵省はというか、国税局は、いわゆる一般の庶民から税金をお取りになることはなかなか上手で見逃しはなくて、国民みんなはフウフウ言っているんですが、だからもう少し、そんなに五十回、二十万株よりもっと下と言いましょうか、もっともうけている人から取り立てるような方法をうまく考えて取り立ててくださいよ。そうすれば一般国民は公平といいますか、大蔵省で出しておいでになるそれにもかなうわけですから。それを注文を申し上げておきます。  それから、同じ取引税が第一種と第二種でパーセントが大分違いますね。これは、第一種の方は証券会社の方であって、第二種が一般の個人の譲渡ということになっているんですが、その差が証券会社の第一種の方が割合が少ない、個人の方が多いんですね。だから私ども一般から見れば、これは逆であって、個人の方をむしろ少しパーセントを低くして、証券会社の方がうんともうけているんだからもっと高く取ってもいいんじゃないかという感じを持つんですが、それはどうですか。
  267. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) これは、技術的な言葉を使うことになりまして恐縮でございますが、おっしゃいましたように第一種の税率というのは証券会社が売り手になる場合でございます。第二種というのは一般の投資家が売り手になる場合でございます。証券会社が売り手になる場合というのは、いまの資本市場の中でどういう位置づけをしたらいいであろうかという問題がまずございます。よく言われますが、証券会社というのはブローカー業務に徹した方がいいんではないか、お客さんから委託を受けて買い手を探して証券会社は手数料をもらう、そういうものをブローカー業務と申しておりますが、それに徹したらどうか。そうなりますと世の中の取引は二種だけになります。現実に窓口へ行きまして、これをこの指し値で売ってくださいという売買をしますときには、それは売り手に二種の税率が一ぺんにかかって証券会社にはかからない、そういうことでございます。  そこで、証券会社が自分で売る場合というのは、ディーラー業務と言われますが、自分で持っている株を売るわけでございます、客は買うわけでございますが、なぜそういうことが必要かと申しますと、やはり証券会社がある程度たな卸し商品として株を持っておりまして、それで市場におきます出合いを調整するという機能がどうしても必要である。そればっかりになってしまっては困るけれども、やはりそうやって市場の出合いを調整いたしませんと、投資家からの委託売買だけでございますと、たとえば売り一方に偏ってしまう、買い一方に偏ってしまうということで、かえって市場が混乱するかもしれない。そこでそういう役割りとして位置づけますと、これはやはりある程度の量を持っておりませんとそういう機能が果たせない。したがって、どうしてもディーラー業務で自己売買をいたします場合には、ある程度の量でしかも一般の投資家に比べるとかなりの頻度で売買をしないと市場調整ができない。そういうことを考えまして、やはり流通税としましても、一種の場合の税率というのは低い方が市場の円滑な形成のためには妥当ではないかという考え方がございまして、この税の創設以来ずっと一種は二種に比べまして大体半分というような感じの税率になっております。  なお、証券会社の利益が非常に上がっているという年もございます。昨年のような年は証券会社は、まあ一、二の個別の例外はございますが、おしなべて債券売買を中心にかなりの利益を上げておりますが、これは法人税でちゃんと負担していただいているということでございます。
  268. 市川房枝

    ○市川房枝君 証券会社は私ども一般の国民から見れば、株が高くなるか安くなるかわかるんだから、高くなりそうなときに買っておいて、安いのを買っておいて、そうして今度は高く売ると、だからずいぶんもうけているんだという感じを持っているんですけれどもね。だから取引税はもう少し証券会社のやつは高く取ったって、取るのがあたりまえなんだ、それを取らないで非常に安くしているということは、政府といいますか、あるいは自民党といいますか、やっぱり証券会社を擁護しておるんだと、そういうふうな感じを受けるわけですが。  それの一つの裏づけは、私は政治資金のことを前からちょいちょい調べているんですが、証券会社からの政治献金が相当多い。表に出ているだけでも多い、下にはもっと多いんでしょうけれども。そういうこともあって、やっぱり証券会社に対しては税制の上でも特別な考慮が払われているのかしらと思うんですけれども、どうですか、それは少し……。
  269. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) そこは一概に——ぜひ誤解を解いていただきたいんでございますが、有価証券取引税というのは、税としては売り手が負担するのか買い手が負担するのか決めていない税でございます。そのために流通税と申し上げるわけでございますが、やはり実際は売り手を納税義務者にするというのは、売り手というのはお金を現に手にするものですから、そのお金の中から税金を払っていただくという方が、買い手は売った方の人にお金を払うほかにもう一遍税金を別のところに払いますというよりは現実的であろうということで、売り手側を納税義務者にしておりますけれども、それはどっちが負担しておるかということになりますと、通常の場合は恐らくお客さんが負担しているんじゃないかと思います、証券会社から買っておられる場合も。ですから、そういう角度から言いますと、むしろさっきの最初の問題に戻っていって、一種と二種の区別はなくたっていいじゃないかというような問題にもなりかねない、いろいろむずかしいことがございますけれども、しかし制度としてはどっちが負担するかというようなことは、それはマーケットに任せるということでございます。その意味で、一種の税率が高ければ証券会社の負担になるかということが言い切れないわけでございます。証券会社の利益が上がれば、それは法人税として当然に負担をしていただいているわけでございます。  それから、昨年の九月期の状態では、株式売買による利益というものはさほど大きくございませんでした。昨年利益が出ましたのはむしろ債券売買、それが最近急速に大型化いたしましたので、そちらの方の利益あるいは手数料収入というものが大きかったようではございます。なかなか専門家の株屋さんでございましても、自己売買で必ずもうけるというわけにはまいらないようでございます。
  270. 市川房枝

    ○市川房枝君 少し株のことも勉強させていただこうかと思うんですが、次は租税特別措置の合理化の問題、それからそれと関連しての交際費の問題を少し伺いたいと思います。  今回の法改正の目的については、大蔵大臣は税負担の公平確保を挙げておられますが、この租税の特別措置は主として大企業に対する減免税であって、高度成長のてことなってきたことを思いますと、公害防止準備金など十一の特別措置を廃止することは結構だと思います。それだけ財政の方が収入がふえるわけだから結構だと思います。しかし、投資促進税制を中で一つ新設されておりますね。これは税負担の公平確保というところから言うと、ちょっとその中に適合しないと思いますが、この点についてちょっと説明を伺います。
  271. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) いわゆる租税の特別措置につきましては、既得権化、慢性化を排除すると同時に、政策目的が認められるものでも、そのフェーバーの度合いは逐次縮減したいということで、ここ三年来私どもなりに鋭意努力をしてまいっております。今後とも基本的に同じ考え方関係省庁の協力を求めながら整理合理化を進めてまいりたいと考えております。  ただお言葉の中で、もっぱら大企業に対する優遇のためという御指摘がございましたが、私どもはいまや実態はそのようには考えておりません。やはり項目にしましても金額にしましても、中小企業のためとかあるいは一般の庶民の貯蓄のためというようなものがきわめてウエートが大きくなってきつつございます。それはいままでの企業関係の整理のときに、やはり中小企業向けのものにはそれなりの配慮を加えながら整理をしてきたということの結果であろうかとも思っております。  それから、今回片方で整理しながら片方で新設をしているではないかと。三項目新設がございますが、その中の一つがおっしゃいました投資税額控除、投資促進税制でございますが、これについては税制調査会でずいぶん御議論がございました。答申でお読み取りいただけると思いますが、かなりの消極論もございました。消極論の一つは、好況企業、好況な業種、いま調子のいい業種にボーナスを与えるだけのことになりはしないのか、あるいは特別措置を、いまおっしゃいましたように基本的に整理合理化で進みつつあるときに新しくつくるというのはどういうものだろうかというような御批判がございました。  第一の点につきましては、私どもなりに、税額控除の繰り越しという制度で、いまたまたま収益的に力がないところでも、繰り越しを楽しみにしてひとつ計画どおりの設備投資はやっていただきたいということで答えを出したつもりでございます。  第二の点につきましては、やはり既存の特別措置との重複を排除する。しかもこれは一年限りとする。一年限りとすることによって、来年、五十四年度以降の予定がもしあるならばぜひ五十三年に繰り上げてやってほしい。また、五十三年がどうももう少し景気がよくならないから五十四年以降に延ばそうかと思っているものも五十三年にぜひやってほしい。それでひとつ民間と政府と一緒になって何とか景気を引っ張り上げようではないかという政府の気持ちを示すということにしております。したがいまして、そのでき上がりました姿は、設備投資を誘発することこそ最大の決め手であり、そのためには大胆な政策をとるべきであるという論者から見ますと、範囲も狭くなっちゃったし、期限が切られちゃったし、特別償却との併用じゃなくて代替になっちゃったし、実にさびしいという御批判も実はあるわけです。しかし、両方の御意見をかみ合わせながら、やはり税制調査会であれだけの方にお集まり願って、何としてもこの際は設備投資が出てきてほしいんだということで、民間に訴えるという補充的な手段としてひとつ一年限り、しかも特別措置との重複をできるだけ避け、範囲も中小企業を主体にして、大企業の方は省エネルギーとか安全とかそういうものに限ってとにかくやろうじゃないかという結論になったわけでございまして、市川委員の御指摘のような御意見も十分片方で踏まえながら、政府としては時に応じては政策税制というものはやはり踏み切って大胆に入れるということもあってしかるべきではないか、基本的に縮減合理化をすると。しかし縮減合理化をするんだから新しいものは一切やらないんだというのでは、やはりこの税制が財政政策の一環であるということを余りに忘れてしまうことになるであろうという御判断であったように思います。
  272. 市川房枝

    ○市川房枝君 次に、税負担の公平確保の見地に立って当然問題となってよかったはずの交際費ですね、交際費の特別措置については全然今度は触れておられないですが、大蔵大臣はこの交際費に対する課税について、これは不公平な税負担とお認めになられるかどうか、伺いたいんです。
  273. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 交際費は、普通の企業会計原則というのがございまして、これは税と余り直接関係ありませんけれども、会社の経理として交際費というものは損金なのかあるいは損金でないのか、こういうことになりますと、やはり事業に関係する交際費というものは損金だ、こういうことになっているわけでございます。しかし、日本の税制はそれをある程度否定しまして、逆に、いわば逆の租税特別措置をやっているということをまず御理解願いたいのでございます。  なぜそういうことをやっているかと申しますと、一つは必要な交際費、確かに営業に、会社なら会社で事業を伸ばすのに交際費というのがある程度必要であろうということもわかりますけれども、交際費というのは主として飲み食いをしているわけでございます。だから、それは確かに会社のためにもなっているだろうけれども、実際人間が飲み食いしているということも事実でございます。実際の税制でいいますと、会社の方は損で、飲み食いした人が現物給与をもらったということなんですね。だからこっちの方の現物給与の方で課税しているならまだいいんでございますが、その分はとうてい課税技術上できないわけでございます。しかも、いわゆる社用消費というような傾向がございまして、必要もないのに交際費だといって使う面もないとはいえないわけでございます。そこで企業会計原則の逆をいきまして特別課税いたしますと、こういうことでやったわけでございます。  御案内のようにだんだんきつくなりまして、いまはもう定額控除の四百万円と資本金の千分の二・五、その合計額を超えたものは全部その八五%までは課税するということになったわけでございます。ですから、八五%まで課税でございますから、残るのはもう一五%しかないわけでございます。そういうことを企業会計原則とも考えますし、それからいま交際費がどんどんふえている状況かと申しますと、不景気でございますので、交際費の額そのものは少しふえているかもしれませんけれども、たとえば売り上げ千円当たりで交際費はどうなっているかということを見てみますと、むしろ鈍化しているのでございます。そういったことを考えますと、この際もう相次いで毎年やってきたわけでございますので、もう少し様子を見るべきではないかと、こういう常識論なのでございます。恐らく四百万円という定額控除の分、これは中小企業は多分交際費が要るだろうというので、あの四百万円を置いてあるわけでございます。あと、〇・二五%ですね、この分だけが資本金金額に応ずる控除額でございますし、この分をゼロにしてみてもほとんどもう差はないというところまで、大した増収が望めないと、そこまで実は交際費課税の強化をやっているわけでございます。そういうことでございますので、ことしは見合わすことになったのではなかろうかと、このように私は思っておるのでございます。
  274. 市川房枝

    ○市川房枝君 いまの大臣の、交際費は企業にとって必要経費だということであるのに、それを別に租税特別措置法というんで外へ出して規定しているというのはどうも私はちょっと納得がいかなかったわけなんですが、だからいまのような大臣のお考えなら、むしろ租税特別措置法から本法の方へお移しになった方がいいのじゃないかということを一つ考えるのと、それから千円当たりの交際費が減ったというふうにおっしゃるのですけれども、交際費の総額を見ると二十二兆以上でしょう、それはびっくりしちゃって……。
  275. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 一つ下です。
  276. 市川房枝

    ○市川房枝君 一つ単位が下がるの。それにしても二兆なんて私どもは見ることもできない、考えることもちょっとできないほどの大きな金なんで、それが交際費として使われているということですね、いま大臣もおっしゃったように、それは飲み食いが大部分といいますか、一体交際費が何に使われているかということですね。これは日本のは外国に比べてずいぶん緩いというか、多いというか、ということを前に調べたことがあるんですけれども、その点はどうですか。外国とお比べになったことありますか。
  277. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 最初の点だけ答えておきましょう。外国とのあれはいま調べておるのでございますが、恐らく日本の習慣でやはり交際費が多いだろうということは大体わかります、それは習慣でございますから。いま本法に入れたらどうかというお話でございますが、企業会計原則というのは、税法のむしろ損益の基礎になるものでございます。ですから、それは企業会計原則は企業会計原則で会社の損益の基本をなすそれぞれの専門家がおるわけでございます。税は大体原則といたしまして企業会計原則に乗っかりまして損益を計算するわけでございます。税はまた税の立場で、税としての公平とかそれから税としてのいろんな立場がございまして、その例外をつくっているわけでございます。そういったものでございますから租税特別措置に入っている、こういうことでございます。
  278. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 交際費の支出額が二兆円を超えましたのは五十年度でございます。五十年度にはついに二兆円を超えたということで課税強化をお願いいたしまして成立いたしました。五十一年度はさっきおっしゃいましたように二兆二千七百億ということで残念ながら金額はやはりふえております。ただ、大臣が申し上げましたように千円当たりの交際費額としましては五十年度が五円九銭でございましたのが四円四十六銭ということで、四円四十六銭という売り上げに対する支出の比率というのは、過去十五、六年間では最低でございます。その意味で、たまたまその特別措置によります交際費課税という、これは減収にならない、増収になるという特殊な特別措置でございますが、増収になる措置の期限が今回参りませんので、ひとつ来年期限が来るときにもう一度そのときの交際費の支出状況を見て、そのまま延長するのか、やめてしまうということは私ども考えておりませんが、そのまま延長するのか、あるいはもう一段課税強化の方法があるのかということを考えてみたいということでしばらく見送った。  ただ、もう一段の課税強化の方法というのは何があるだろうかと申しますと、ちょっと時間をいただいて恐縮ですが、いま全体としては交際費を一万円出しました場合に課税対象になっているのは三千百五十四円という計算になります、三一・四%。しかし、資本金一億円以上のところで申しますと大体六割五分方は課税対象になっています。資本金一億円未満というところでは課税対象が一割七分というふうに非常に低くなります。なぜそういうことになるかと申しますと、一社当たり四百万円までは課税対象にならない。それが大きな企業になりますと、四百万円というのは余り影響しなくなってしまう。ところが、中小企業の場合にはこの四百万円というのが実質的にかかり意味を持っておりまして、その結果として中小企業の課税対象割合が一割七分、大企業は六割五分六厘というふうになります。したがいまして、これから課税強化をするといいますと、やはり一社当たり四百万円というところに手をつけるかということを考えませんと、そこをそのままにしておいて資本金の〇・二五というのを〇・〇一にしてみても、それは課税対象のふえ方、増収効果というものから見ますと、もはやネグリジブルであるという状況まで課税強化がきているんです。その意味では、来年度の機会に課税強化を考えるとしますと、やはり中小企業問題というものにもろにぶつかるであろうという予測は持っております。ただ、従来は中小企業の問題であるからこの四百万円はむしろ引き上げようとか、あるいは引き上げないにしてもこれを切り込むのは絶対に反対だという御主張が国会では多うございましたけれども、ここ一、二年はむしろ四百万円を切ってもいいではないかという御主張が出始めておりますので、それらを含めまして来年の期限到来までに私どもももう少しいろいろと勉強いたしてみたい。  なお外国の例は、交際費の支出額の統計というのが実は手に入りません。ただ外国でも、大臣が御説明しましたように、原則としてはこれは販売促進費であるから課税はしないと、しかし、やはり交際費として支出するには行き過ぎであるというものは、日本のように枠で締めてしまうんではなくて、個別の支出で否認していこうというシステムの国が多うございます。たとえばヨットを持っているための支出はだめですよとか、あるいは狩猟に行くためのものは、これはまあ欧米流ですが、狩猟に行くためのものはだめですよとか、そういうことでやっている。いずれにしても原則は経費なんだという考え方各国とも共通でございます。
  279. 市川房枝

    ○市川房枝君 もう一つだけちょっと……  日本の交際費はいわゆる量といいますか、額だけの制限しておいでになるけれども、その内容、大臣のおっしゃったように飲み食いがほとんど大部分だと思うんだけれども、その中に機密費というのも入ってるらしいし、それから政治献金も入っているらしいし、まあいろいろだけど、その内容について前に伺ったことがあるけどわからぬというお話でしたし、いわんやいまお話しのように、外国では、私もちょっと見てきたのでは、西ドイツではヨットや別荘への招待経費は含めないと、あるいはアメリカでは社交施設、スポーツ施設への料金については損金算入を認めないとかというふうな具体的なあれがあるようですけれども、まあ来年それをもう一遍再検討して改正するといういまお話なんですが、ひとつそういう点も含めて、全く交際費をなくするということはまあ私はできないとは思うんですけれども、少し多過ぎるというか、われわれ素人から見て、あるいは家庭から見ますと……本当はあの交際費で息子とか御主人がただ酒を飲んで、そして夜酔っぱらって遅く帰ってくるということで迷惑を実はしていると。そして、ただ酒飲めるうちはいいんだけど、今度は仕事がかわったら自分で金払わなければならない。そこでまあいろんなトラブルも出てくるということで、だから交際費の担当の役割りになったのはみんな余り歓迎しないですよ。御本人は歓迎しても家族はむしろ歓迎しないんであって、そういう点もひとつ考慮して、少し交際費を締めるようにお考えをいただきたいと思います。  ありがとう。これでもって終わります。
  280. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) ちょっとお答え。  市川委員の御主張はよくわかるのでございますが、ただ何せ非常に少い人員で非常に多量の納税者を相手にしていま国税庁が一生懸命やっておるという状態もひとつお考えいただきまして、たとえば娘さんの結婚式の費用を交際費で見ていいか、それはだめなんです。それは全然損金にならない。それは社長さんの賞与として適正な課税をするということでございますし、たとえば交際費という名目で一カ月百万円、六百万円といって渡してしまえばそれも交際費ではない、それは賞与だというところはそれは厳重にやるようにいたしておりますが、交際費であるものの中でいまの枠を取っ払ってしまえということでございますが、枠を残してなおかつ個別の支出内容をトレースするということは、やはり実務上の手間というものも考えなくてはなりませんので、来年の研究のときに必ずその方向でというお約束まではできませんが、しかし、御趣旨は十分にわかりました。
  281. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 両案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。  次回は明二十四日午後一時開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十五分散会      —————・—————