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1978-02-09 第84回国会 参議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月九日(木曜日)    午前十時四分開会     ―――――――――――――    委員異動  十二月二十二日     辞任         補欠選任      藤田  進君     吉田忠三郎君      田中寿美子君     竹田 四郎君      大木 正吾君     福間 知之君      村田 秀三君     穐山  篤君  一月二十六日     辞任         補欠選任      鳩山威一郎君     藤田 正明君  一月三十日     辞任         補欠選任      戸塚 進也君     衛藤征士郎君  一月三十一日     辞任         補欠選任      衛藤征士郎君     戸塚 進也君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。    委員長          嶋崎  均君    理 事                 藤田 正明君                 細川 護熙君                 福間 知之君                 塩出 啓典君                 中村 利次君    委 員                 岩動 道行君                 糸山英太郎君                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 戸塚 進也君                 中西 一郎君                 宮田  輝君                 穐山  篤君                 竹田 四郎君                 矢田部 理君                 多田 省吾君                 佐藤 昭夫君                 渡辺  武君                 市川 房枝君                 野末 陳平君    衆議院議員        大蔵委員長代理        理事       野田  毅君        大蔵委員長代理        理事       佐藤 観樹君    国務大臣        大 蔵 大 臣  村山 達雄君    政府委員        大蔵政務次官   井上 吉夫君        大蔵大臣官房審        議官       加藤 隆司君        大蔵大臣官房審        議官       海原 公輝君        大蔵省主計局次        長        山口 光秀君        大蔵省主税局長  大倉 眞隆君        大蔵省理財局長  田中  敬君        大蔵省証券局長  山内  宏君        大蔵省銀行局長  徳田 博美君        大蔵省国際金融        局長       旦  弘昌君        国税庁直税部長  水口  昭君    説明員        厚生省医務局総        務課長      森  幸男君        農林大臣官房審        議官       小島 和義君        通商産業省通商        政策局経済協力        部技術協力課長  中島 福雄君        通商産業省産業        政策局調査課長  杉山  弘君    事務局側        常任委員会専門        員        杉本 金馬君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○租税及び金融等に関する調査  (財政及び金融等基本施策に関する件) ○決算調整資金に関する法律案内閣提出、衆議  院送付) ○昭和五十二年度の水田総合利用奨励補助金につ  いての所得税及び法人税臨時特例に関する法  律案衆議院提出)     ―――――――――――――
  2. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る十二月二十二日、藤田進君、田中寿美子君、大木正吾君及び村田秀三君が委員辞任され、その補欠として吉田忠三郎君、竹田四郎君、福間知之君及び穐山篤君がそれぞれ選任されました。  また、一月二十六日、鳩山威一郎君が委員辞任され、その補欠として藤田正明君が選任されました。
  3. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 次に、理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い、理事に二名の欠員が生じておりますので、この際、理事補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事藤田正明君及び福間知之君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 租税及び金融等に関する調査を議題とし、財政及び金融等基本政策について、村山大蔵大臣から所信を聴取いたします。村山大蔵大臣
  6. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 今後における財政金融政策につきましては、先般の財政演説において申し述べたところでありますが、本委員会において重ねて所信一端を申し述べ、委員各位の御理解と御協力をお願いする次第でございます。  世界経済は、石油危機によってもたらされた激しい経済変動後の調整過程にあり、いまだに安定した成長路線を見出し得ない状況にあります。  一方、わが国経済においても、生産、雇用企業収益等回復がおくれております。また、経常収支は大幅な黒字基調を続けており、昨年、特に九月末以降生じた円相場の急激かつ大幅な上昇により、国内経済に対するデフレ効果懸念される状況にあります。  このような内外経済情勢のもとにおいて、私は、特に、次の三点を当面の緊要な課題として、政策運営に万全を期してまいりたいと存じます。  第一は、雇用の安定と増大を図り、国民生活の安定を確保するため、わが国経済を速やかに着実な回復軌道に乗せることであります。  このため、昭和五十三年度の経済運営に当たっては、財政が主導的な役割りを果たすことにより、景気の速やかな回復を図ることとし、臨時異例財政運営を行うことといたしました。  特に、公共事業等については、思い切って事業規模拡大するとともに、住宅建設民間設備投資促進するため、所要施策を講ずることとしております。  なお、産業構造の転換を促進し、雇用の安定に資するための個別的な施策についても十分配慮することとしております。  これらの施策推進するに当たって、政府は、物価の安定に一層配意していく所存であります。  第二は、対外均衡回復を図るとともに、世界経済の安定と発展に貢献していくことであります。  このため、わが国としては、経常収支黒字幅を縮小するよう努力するとともに、自由貿易体制維持強化していくことが急務であり、内需を拡大して輸入の増大に資することを基本としつつ、市場開放政策を含め、各般の対外経済対策を強力に推進する所存であります。なかんずく、現下東京ラウンド交渉が速やかに成果を上げるよう、その妥結に先立って、相当数の品目について関税率一括引き下げを繰り上げ実施するなど、国際協調のために一層の努力を続けてまいりたいと存じます。  さらに、世界経済均衡のとれた発展のため、開発途上国に対する経済協力を活発に展開することとし、その大幅な拡充を図ることとしております。  第三は、財政健全化を図るため一層の努力をすることであります。  わが国財政は、大量の公債、特に特例公債への依存から脱却し、財政健全化を図りつつ、同時に景気を速やかに回復させるというきわめて困難な問題に直面しております。  このため、一般会計予算投資部門経常部門に分けて検討し、投資的経費については、国民生活充実の基盤となる社会資本整備促進しながら景気回復を早めるため、積極的にその規模拡大することとする反面、経常的経費については、財政節度維持に努める見地から極力その規模を抑制することといたしました。また、公債発行につきましても、経常的経費財源に充てられる特例公債を抑制することに努めましたが、全体としての公債依存度はきわめて高いものとなっております。すなわち、公債依存度は三二%、また、特例公債依存度は一八・四%となっておりますが、後に申し述べます五月分税収年度所属区分の変更を行わないこととした場合の公債依存度は約三七%、また、特例公債依存度は約二四%にも達することになります。  今後の財政運営に当たっては、中期的な展望のもとに、財政健全化を実現していくことが最も重要な課題であります。しかしながら、財政収支の不均衡租税自然増収のみによって是正することはとうてい期待し得ない状況にあります。財政を再建するためには、歳出の節減合理化について強い決意を持って取り組む必要があり、また、同時に、租税負担一般的の引き上げが避けられないところであると考えます。  以上のような観点から、今般、中期的な財政収支についての試算を作成いたしたところでありますが、これを手がかりとして今後の財政運営について再検討を進める所存であります。  次に、当面の財政金融政策運営について申し述べます。  まず、昭和五十三年度の予算及び財政投融資計画を通じ、公共投資等規模を大幅に拡大することといたしました。特に、公共事業等については、いわゆる十五カ月予算考え方のもとに、昭和五十二年度第二次補正予算と合わせて、切れ目のない執行を図ることとしております。  また、一般行政経費の抑制、補助金等整理合理化推進受益者負担適正化等により財政節度維持に努めるとともに、財源を重点的かつ効率的に配分するよう配意し、特に、社会保障関係費につき各種の施策充実にきめ細かい配慮を払ったほか、文教及び科学技術の振興、中小企業対策拡充エネルギー対策推進経済協力充実農林水産施策充実等に努めております。  さらに、地方財政については、地方団体へ交付すべき地方交付税交付金所要額確保するほか、地方債の円滑な消化等を図るため、政府資金を大幅に増額するなど五十三年度の地方財政運営に支障が生じないよう配意したところであります。  次に、税制面におきましては、まず、財政健全化に資するため、酒税及び有価証券取引税の税率の引き上げを行うとともに、新たに石油税を創設することとしております。  また、租税特別措置について、税負担公平確保見地から引き続きその整理合理化推進する一方、現下経済情勢に顧み、住宅建設及び民間設備投資促進に資するため、住宅取得控除制度拡充するとともに、一年限りの臨時措置として税額控除による投資促進税制を実施することとしております。このほか、海外子会社等を通ずる租税回避対策中小企業対策等のため所要措置を講ずることとしております。  関税率及び関税制度につきましても、さきに申し述べました関税前倒し引き下げ等所要改正を行うこととしております。  なお、政府は、昭和五十三年度の税制改正において、所得税一般的減税を行うべきかどうかについても検討いたしましたが、次のような観点からこれを行わないことが適当であると判断いたしました。  まず、わが国所得税負担主要国のそれに比べかなり低い水準にあり、さきに申し述べましたとおり、今後、租税負担一般的引き上げが避けられないと考えられる状況において、所得税減税を行うことは将来における問題の解決を一層困難にすると考えられます。  また、景気対策観点からも、減税に比べ雇用増加需要造出等効果のより大きい公共投資拡大により対処することが適当であると考えられます。  さらに、昭和五十三年度の税収伸び悩みを補い、財源確保を図るとともに、地方財政対策等にも資するため、昭和五十三年度内に納税義務が成立し昭和五十四年五月中に収納される税収について、年度所属区分を変更し、これを昭和五十三年度所属の歳入として受け入れることとし、所要制度改正を行うこととしております。  最近の金融情勢を見ますと、金利水準は戦後最も低い水準に低下し、企業資金繰りも総じてみれば緩和基調で推移しております。このような状況のもとにおいて、当面の金融政策運営当たりましては、物価動向にも配意しつつ、必要な資金の円滑な供給を図り景気の着実な回復に資することを基本としてまいる方針であります。  また、昭和五十三年度におきましては、国債地方債等公共債発行が二十兆円を上回る巨額なものに達すると見込まれますが、金融情勢等に十分配慮しながら円滑な消化に努めていく所存であります。また、市中保有国債残高増加に顧み、今後とも安定的な投資家の育成、流通市場拡大整備など国債管理政策についてなお一層の配慮を加える所存であります。  以上、財政金融政策に関する私の所信一端を申し述べました。  現下内外経済情勢に顧み、昭和五十三年度予算及び予算関連法案が一日も早く成立し、実施に移されることが緊要であると考えます。  本国会において御審議をお願いすることを予定しております大蔵省関係法律案は、昭和五十二年度補正予算に関連するもの一件、昭和五十三年度予算に関連するもの九件、その他一件、合計十一件でありますが、このうち十件につきましては本委員会において御審議をお願いすることになると存じます。それぞれの内容につきましては、逐次、御説明することとなりますが、何とぞよろしく御審議のほどお願いする次第でございます。
  7. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 以上をもって所信の聴取は終わりました。  それではこれより大臣所信に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  8. 福間知之

    福間知之君 ただいま大蔵大臣から所信の表明をいただいたわけでございますが、もうすでに、衆議院予算委員会が連日慎重な審議展開をしておるわけであります。  まず冒頭に、私、大臣がいままでの国会における予算審議、あるいはそれに関連した経済成長をめぐる審議、なかんずく、財政に関しましては例の中期財政収支見通しをめぐっての論議などが真剣に行われているわけですが、一方、現実の経済景気動向というものも大変関心のあるところでございまするし、当然、当局としてはそのような状況についても情勢を把握をされていると思うんです。いろいろ申し上げたような今日までの国会審議を通じた、あるいは一般景気動向などと関連して、今次五十三年度予算というものが、果たして政府が期待するところの経済成長、あるいはその裏付けとしての国内需要の喚起、結果として国際収支の適正な水準への展開というふうな見通しを達成するということが、論議の結果ますます確信が高まっているのかどうか、大臣の率直な所感をお伺いをしたいと思います。
  9. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) ただいまの御質疑の件につきましては、予算編成過程におきまして、関係省庁で十分打ち合わせたところでございますし、なおかつ、衆議院予算委員会においても各委員から質疑が集中した点の一点でございます。  われわれといたしましては、この施策をやることによりまして七%程度までは大体いけるんじゃないか。また、われわれがそれに向かって最善の努力をしてまいれば必ず達成できる数字ではなかろうかと、かような感触を持っておるということでございます。
  10. 福間知之

    福間知之君 財政景気刺激の主導的な役割りを果たす必要があるというこの考え方は、私も否定はいたしません。しかし、いま政府の目標でいきましても、今日の百八十八兆のGNPを二百十兆強にまで引き上げる、実質七%、名目一二%引き上げる。こういう中で、三十四兆三千億程度の、一般会計だけをとってみればこの程度規模財政でございまするから、三分の一程度中身で果たしてそれが可能なのかどうか。主導的な役割りというのはわかるんですけれども、中身が果たしてつろくするのかどうか。さらにまた、個人消費というものが総支出の五割以上を占めているというこのファクターの大きさから考えまして、これの伸びというものがやはり景気に大きな影響を与えずにはおかないわけでありまして、その個人消費を支える中身として、これはいろんな所得がございます。特に私は、雇用者所得というものの伸びがどちらかというと少し少ないのじゃないかという懸念がするわけであります。これは経企庁の方をきょうはお招きしていませんけれども、当然、大臣としても関心のあろうところだと思うんでございますが、果たして、個人消費を支える雇用者所得というようなものが常識的には去年ほど伸びないのじゃないか、あるいは伸びたとしても政府が見積もっているほど伸びないのじゃないのかというふうな懸念があるんですけれども、いかがお考えですか。
  11. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) この点は、衆議院においてもずいぶん論議されたところでございます。私も、経企庁説明を聞いておったのでございますが、大体伸びといたしましては、御案内のように名目消費支出伸びを一一・九見ているわけでございますが、これを一人当たりに直しますと大体九・四%ぐらいの伸びでございます。また、逆に実質面で見ますと五・三%ぐらいの伸びを見ておる、これが大体の計数でございますが、さらに、その内訳について私が記憶しているところによりますと、大体個人消費支出、これは職業別に申しますと雇用者所得雇用者のもの、あるいは個人事業者所得伸び、あるいは財産所得伸び、こういったことに分数しますと、雇用者所得伸び個人消費のうちの大体六割を占めておると、こういうことでございます。しかも、そのうち所定内の賃金に係る分はほぼ半分くらいである。だから、その点はそう多くは見ていないので、大体まあ経済回復いたしますと、ベースアップが幾らになるかというようなことは大蔵省政府として言うべきことではないけれども、将来やはり景気伸びていきますれば、労働時間の延長ということも考えられる、それから雇用の増も若干は見込める、就業者指数で、大体の数で五万程度見込んでいるということでございます。そういったことをあわせ考えると、実質五・三%、それから一人当たり名目で九・四%ぐらい、これぐらいの、だから全体で一一・九ぐらいのことは不可能なことでもないし、そう無理ではないんじゃないか、こういう説明が行われているわけでございまして、私たちもそれを聞いてまずまずいけるんではなかろうかと、こんな感触を持っているわけでございます。
  12. 福間知之

    福間知之君 そこが一つやっぱり問題だと思うんですね。まあ雇用者所得個人所得の大体六割ぐらいと、さらにまた個人所得は正割強ぐらいを占めるということになりますと、雇用者所得というのは三割ぐらいしか伸びないということになるんじゃないですか。やはり雇用者というのは、何といいましても三千数百万人存在をしていまするし、日本の日常的な個人支出を支えている分野でございまして、実質その所得が三割ぐらいしか伸びないというんであれば、これは私は、全体として政府が見込んでいる一一・九%の個人消費の押し上げなどにつながるのかどうか、どうも数字の上からいっても疑問が大きいわけです。また、実体経済の面からいっても、個人消費とかあるいは民間雇用労働者消費とかというふうなものは、大きなそういう金額になかなかならないわけですね。小さな金額のものの総累積だと思うんです。何か大きな事業をやる、そのための投資をする、あるいはその原材料を購入する、そういう消費ではないわけですから、小さな個人個人消費の総累積、それが全国各地で行われることによって全体としての需要あるいは好況感というようなものがまあ漸次広がっていくという筋合いのものだろうと思うんです。したがって、それには当然時間もかかるでしょうし、そういうふうに考えますと、さしあたっての雇用労働者の賃上げ問題ということの行方も気になるところですけれども、政府が見込んでいるような一一・九%の消費伸び、あるいは雇用者所得の一一%程度伸びというふうなものを念頭に置いた場合に、どうもいまの雲行きというのはそれになかなか至らないのじゃないのかというふうな感じがするわけでございます。  それからもう一つ、それとまあうらはらの問題ですけれども、例の貯蓄率というものがオイルショック以降むしろ伸びているという事実ですね。そのことについても、大臣はどういうふうにそれを見ていられるか。なぜそういう貯蓄率が高まる傾向にあるのかという点についても所見を伺いたい
  13. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 先ほど、ちょっと訂正さしていただきますが、雇用者の増がどれぐらい、就業者がどれぐらいふえるか、五万人と申しましたが、五十万人の誤りでございますので、まずその点を申し上げておきます。  それから、さっきの三割という話でございますが、全体の個人消費支出のうちの六割が大体雇用所得者消費支出にかかるものであると。三割というのは、そのうち所定内賃金の占める部分が大体三割ぐらいであると、ちょうど半分強ぐらいだと、こう申し上げたわけでございます。  そこで、いま貯蓄性向の話が出ているわけでございますが、これは日本は非常に高いわけでございますが、高度成長時代は大体二〇%程度、まあ各国に比べるとかなり高いのでございまして、アメリカでありますと八%弱とか、最も高いドイツでも一五%に比べて日本一般的に高かったのでございますが、オイルショック以降特に上がりまして、昨年あたりですと二四から二五ぐらい、いろんな統計によって違いますが、ずっと四、五%上がってきておる。  それはなぜかという分析が行われているわけでございますが、やはり一番大きな要素は将来の生活に対する不安、これが一番大きな要素ではなかろうか。その特に大きなものは物価不安の問題あるいは雇用不安の問題、こういったものが心理的に作用いたしまして貯蓄性向を高めているのではなかろうかと一般に言われているわけでございます。確かに、私は相当の説得力のあることだと思うのでございます。その点から考えますと、経済企画庁の方では消費性向が一ポイントぐらい上がるんじゃなかろうか。その理由としては、消費者物価が五十二年度よりも五十三年度がやはり少し低目に出てくる。経済見通しによりますと、年度平均消費者物価が五十二年度は七・六、今度は六・八に下がるわけでございます。さらに今度の財政主導型による景気回復のその波及効果、さらには設備投資住宅投資等についてもろもろの財政措置を講じ、あるいは財投、一般会計税制がやっておるわけでございますし、また、ミクロ的な面でも構造不況対策であるとか円筒対策等やっておりますので、やはり雇用面にも先ほど申しましたように五十万程度就業が見込まれるということになれば、そちらの方の不安感というものも従来よりはやや緩和されるんじゃないか。そういったことから言いまして、一ポイントぐらいの消費性向の高まりを見ることは決して無理な見方でないんじゃないか。  それこれ合わせますと、結果的に一人当たり名目で九・四%ぐらいの名目消費支出の増を見ることは無理がないという結果になっておると、こういうことでございますので、私たちも、もちろん経済の話でございますからきちっと何ポイントまで出るとは言いませんけれども、まずまず説得力のある一つの計算ではなかろうかと、かように思っているわけでございます。
  14. 福間知之

    福間知之君 さらに関連しまして、最近民間労働組合の主要な組合の中で約二万人規模奥さん方、主婦に対する世論調査が行われたのです。いま私ここに資料持ってまいっておりませんけれども、いずれこれはまた機会を改めて議論に供したいと思っているんですが、いま大臣もおっしゃったように、不意の出費だとか、あるいはまた子供の結婚だとか病気だとか、さらには、いまおっしゃった将来の物価生活というふうなものを考えた場合に少しでも蓄えをふやしておきたいと、これは非常にいじらしい庶民の考えだと私は思うんです。それが貯蓄性向を高めているということにもつながっている。  同時に、そういう結果が一面出ていると同時に、私は特にいまの当面の景気対策との関係で、過去十数年の高度成長期時代のように、主として耐久消費財など、比較的消費物資とはいえ高価格な耐久消費財などを購買するという、こういう条件が急速に希薄になっているという結果が出ておるんです。ほとんど必要な耐久消費財というものはほぼ取りそろえてある。これ以上買う必要もあえてなければ、買ったって、それを置く住居内の場所にもう頭を痛めるとか、非常に、少し私どもが見過ごすような、気がつかないような事情が調査結果に出ておるんですね。御案内のとおり、もう自動車の普及率も、あるいはまたテレビその他電気製品の普及率もかなりの水準に達しておりまするから、そういう面から言っても一面うなずけないわけではございません。しかし、それでは必要な買いかえ需要も出てこないということになりますと、景気全体としてこれはゆゆしい問題でございます。そうすると住宅問題はやはりかなり真剣に考えなきゃいかぬかなと。あるいはまた、新しいタイプの住宅というものに見合った消費財というようなものを開発していくということも必要じゃないかな、そういうふうに感じられるわけでございます。  要するに、私申し上げたいのは、当面はそういうことで不必要な支出というようなものは極力抑えていく。結果として、それは需要喚起にしたがってならないということでございます。ましてや、高成長時代のように雇用者所得も年率二〇%あるいはそれ以上に伸びるということではなくなりましたものですから、むしろ住宅ローンなどで家を、マイホームを建てたというふうな人たちにとってはその返済に大変な苦労が要るわけであります。インフレ時代とか、あるいは所得が高度に伸びたという時代であれば、これはまた別でございますけれども、事態はもう大きく変化をいたしましたから、そういう過去における過大な債務というものの返済に追われてしまう。それが逆にまた目先の消費というものを抑制する、こういうことになっておりまして、先ほども申したように、今年度の所得伸びにつきましてもなかなか大幅なものが期待できないということになりますと、これは結局、個人消費伸びというものはめぐりめぐってやはり大きく伸びないということにどうもなりそうなんでありまして、私はそういう点で、一方における政府税制対策の中で、雇用所得者に対する減税なども今回はどうもやりたくないというのが政府基本の方針のようでございますけれども、それはそれで、したがってまた、先ほど申したように個人消費を引っ張るという結果、心理的な面でもそういう影響しか生まないんじゃないのか、こういうふうに思うわけでありまして、ここではひとつ、減税問題についてはいま野党が大いに考え方の調整を図りながら政府に強く要請しよう、こういうところに参っていることを御承知と思いますが、大臣はいまでも減税問題は考えたくない、こういうお考えでしょうか。いかがでしょうか。
  15. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま三点御指摘になったと思うわけでございますが、一つはやっぱり個人消費支出がどうも危ないんじゃないか、こういうお話、特に耐久消費財の例を出されたわけでございます。経済企画庁の方でも、耐久消費財についてはほぼ需要が一巡しておって、かつてのような三種の神器のようなものがなかなか出ない。この方の需要伸びには多く期待していないようでございます。その他の部門、特に第三次産業の方面に関係のある消費の方が伸びるんじゃないか、こういう観測で、そういうものを織り込んで最終的には一一・九を出しておる、こういうことでございます。  それから第二点の、いま民間住宅が、これがやはり大きな要素ではないだろうか。この点はごもっともでございまして、政府におきましてもこの点は大きく期待しておる。特に住宅建設が行われますと、それに伴う家具であるとかもろもろの物のやはり周辺の購買力が当然出てくるわけでございますから、波及効果が非常に大きいと、こう見ているわけでございます。そういった意味で住宅建設促進につきましては、一般会計におきましても財投におきましても、また民間の金融につきましても、それぞれ所要措置、できるだけの措置を講じているところでございますけれども、特にいま税制についてお尋ねがありましたのでその点をお答え申し上げたいと思うのでございます。  税制につきましてはなかなかむずかしい問題でございまして、三つぐらいの要請があるんじゃないかと思うのでございます。  一つは、かつてのような狂乱物価で土地が非常に高くなった。だから、その高くなったという理由はほとんど大部分は公共投資のおかげで本人の努力によるわけじゃないんだから、むやみやたらに金持ちをつくっちゃいかぬ、土地成金をつくっちゃいかぬ、こういう問題が一つございます。  それから第二番目の問題は、やはり土地価格というものをできるだけ安くする必要があると、こういう問題が一つはございます、最終需要者の面から言いますと。  第三番目には、しかし、そうかと言って土地の供給が円滑でなければこれはなかなか住宅ができない、何といっても土地の問題が優先するんじゃないか。だから土地成金をつくらないで、しかも土地価格を安定さしながら、しかも土地供給をふやせと、こういう三つの命題にこたえるためにはどうしたらいいかと、こういう問題なのでございます。  そこで、税制の方でございますけれども、土地税制の方から申し上げますと、今回やりましたのは、従来主としてこれはデベロッパーに適用されるのでございますけれども、いままでは二つのたががかかっておったわけでございます。一つは、国土利用計画法における公示価格を上回って売ってはならぬと、こういう歯どめが一つございました。それからもう一つは、税制上の歯どめというわけじゃございませんけれども、適正利益率二七%を超えた場合には、その根っこから普通の法人税のほかに二割という土地重課をいたしますと、税制上の規制があったわけでございます。  そこで、仮に公示価格で売った場合にそれが適正利益率を超えておりますと重課税がかかる。そのために公示価格違反ではないんだけれども税制上の負担がかかるので売らないと、こういういろんな御主張があったわけでございますので、今回はその適正利益率という問題をはずしたわけでございます。そして、売る価格は全部公示価格以下で売ればいまの土地重課の適用をやらないと、こういうことにいたしましたので、デベロッパー方面ではかなりの土地供給が行われることを期待しているわけでございます。なお、ほかにも要件がございまして、公募条件が非常に従来厳重でございましたけれども、それを一部はずしているところでございます。  それからさらに、ミニ開発の関係でございまして、これは小さな宅建業者に適用されるのでございますけれども、それにつきましても従来かなりしばりがあったわけでございますが、これも若干緩和いたした、こういうことが税制上行ったところでございます。  それから同時に、あわせて申し上げますと、それだけではなかなかうまくいきません。そこで言いますと、主として人口急増地域におきまして公共関連の施設、これが地方財政が非常に苦しいためにそれをデベロッパーに負担させる。公共負担と称して、そして土地の何割かはこちらに公共負担として出しなさい。企業の方ではその分を損するわけにいかぬものでございますから、その分を全部割りかける。したがって土地価格が非常に高くなるということがございますものですから、地方団体の方の負担を軽減することによりまして反射的にデベロッパーの負担をやわらげ、そして結果において土地の価格を従来よりも安く提供させるようなもろもろの措置を講じることをあわせ申し添えておきます。  それから、もう一つは今度は上物の方の関係でございますけれども、これも税制だけについて申し上げますと、いわゆる住宅取得控除、この制度でございますが、これは取得後三年間いままでは最高三万円引くことにしておりました。今度は住宅ローンと関連さしまして年間の償還額が三十万円を超えるものについてはその超える分について五%、最高三万円でございますから、従来の三万円と合わせて最高六万円住宅取得控除で引きましょう、こういうような税制措置を講じているわけでございます。もちろんそんなことだけで建物の取得が進むわけではございませんで、住宅金融公庫の住宅戸数の目標を高め、それに対応する資金量をふやし、そしてまた一戸当たりの貸付限度を引き上げ、さらには貸付条件、これを大幅にいろんな工夫をこらしまして緩和しているわけでございます。たとえて申しますと、木造家屋でいままで償還期限が十八年を二十五年にしますと、あるいは五十三年度限りの措置でございますけれども、一年間は元本据え置きで結構でございます、一年間は元本返さなくても結構でございますと、こういうようなことをやっております。  なお、民間につきましても、最近は住宅金融の伸びが非常に多うございまして、残高で申しますと、前年同期に比べて最近では一般が大体九%、全部で九%ぐらいの貸付残高の伸びでございますが、住宅の方の残高はたしか二四%ぐらいの伸びでございます。それだけ非常に需要が強いわけでございますので、民間につきましてもいろんな条件を考えてくれ、それで一年据え置きというやはりやり方を考えることになっております。  なお、一般の金融機関につきましては、近く住宅ローン相談所が一斉に発足すると見ているわけでございまして、そこでいろんな相談に応ずる。既往の住宅ローンの返済についても条件変更もケース・バイ・ケースで相談にあずかるように、かような指導をしているわけでございます。ですから言ってみますと、政府が持っておりますいろんな政策手段、一般会計、財投、税制、さらには民間金融機関に対する指導、このようなもろもろの措置を講じまして、そしていまおっしゃるように波及効果の最も高い住宅建設促進しようと、かようにしているところでございます。
  16. 福間知之

    福間知之君 大臣、得意のお話をちょうちょうとされたのですが、肝心の所得減税については言っておられませんが、いかがでしょうか。
  17. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) どうも相済みません。  所得減税につきましては、やはり同じような考えを持っております。ここに、いま先ほど述べたところでも言ったのでございますが、やや少し細かく申し上げますと、所得税負担はいま大体先進国の二分の一だと考えてまず間違いないんじゃないか。だから、収入に対しまして所得税だけで申しますと四%ぐらい、住民税を入れて六%ぐらいでございますから、まあ英国なんかは三倍ぐらいでございますが、ほかに比べて大体二分の一程度になっているわけでございます。特に、課税最低限につきましては御承知のように二百万を超える課税最低限でございまして、先進国の中では世界で一番高い課税最低限を置いているわけでございます。そういったことで、予算委員会でも話があったんですが、物価調整減税というのがあるじゃないかと、こういう話がありましたが、われわれは、いままでの控除の引き上げを見ておりますと、物価上昇率よりもはるかに高い課税最低限を引き上げているわけでございます。各国比較をとってみますと、四十年から五十一年度ぐらいだと思いますけれども、ほかのところの課税最低限の引き上げ物価上昇率すれすれ、あるいはそれを割っているところが大半でございます。超えているところは一カ国どこかあったと思います。しかし、日本はその場合大体一・五倍ぐらいの引き上げをやっているわけでございますので、ことし休んでも、物価調整減税をやらなくても、長い期間を見ればまずまずごしんぼう願えるんじゃないかと、こういうふうに考えているわけでございます。  それからもう一つは、財政収支試算でお示ししているように、ことしは全く臨時異例措置でございますが、やがて財政健全化という問題が単に財政の立場だけでなくて、日本経済の必要性から私は当然出てくると思っているのでございます。しかし、一般の傾向から申しますれば、減税は歓迎するけれども増税というのは非常に苦しいと、なかなか同意が得られないということはもう御案内のとおりでございます。そういうことを考えますと、ここで、安易と申しましては語弊があるかもしれませんが、将来の見通しなくして減税をやるということは、問題をいよいよ困難にするという認識もあるわけでございます。  さらに、景気のために、景気の浮揚効果から言ってどうであるかということになりますと、一般的にはこれは公共投資の方がよろしいということは、まずこれは異論のないところであろうと思うのでございます。何となれば、これは直接支出するわけでございますから、生産財その他直接それの需要に結びつきますし、また、雇用増加に直接結びつきますし、その波及効果が早いことは当然であるわけでございます。  一方、減税でございますと、そのうち一体どれぐらい消費に回ってくるか、これは結局貯蓄部分は回転がおそいわけでございますし、しかも、消費部門でございますから、その需要されるところが基礎的な資材ではございませんで、最後の民需のところの物資にくるわけでございますから、波及効果がおそいことは当然でございます。  いろんな計算がございまして、かつて高度成長時代経済企画庁の方では、片方は、減税の場合は一兆円やると八千億しか年間には出ないけれども、公共投資の場合は一兆円やってそのうち二割が土地取得費としても一兆四千億ぐらい大体あるというような計算をしたことがございます。その後、そのとおりうまくいっているかどうかというような問題で、新しいコンピューターも導入されているようでございますが、これはまだ実験の段階に至っていないようでございます。経済企画庁のそういうモデル計算をまつまでもなく、やはり公共投資の方が波及効果、特に一番大事な雇用の造出、あるいは需要拡大という点ですぐれておるということは、まずまず常識的に言えるんじゃなかろうか、こういう意味で、この苦しい財源のもとで臨時異例措置を講じておりますので、政策は何とか集中させていただきたい。その意味でことしは減税ということをひとつごしんぼう願えないかという希望はいまでも持ち続けているわけでございます。
  18. 福間知之

    福間知之君 私、まだいまの大臣のお説にはいろいろと反論したいことがありますけれども、これはまた別の機会に譲りまして、いずれにしても、いま私たち野党で強く要請している減税問題については、一度やはりまとまれば受けて立って真剣にひとつ考えていただきたい。  過去における景気政策の中で、じゃあ公共投資重点でやってきたこの三年ないし四年の実績はどうなのか、これも深く反省をしてみなきゃならぬのじゃないかと私は思っておるわけでございます。改めてこれは議論をする機会を得たいと思いまするし、さらに、中期財政計画をめぐる過般来の問題点だとか、あるいは今回一般会計の中で投資部門経常部門、こういうように分けたいきさつだとか今後のあり方とか、さらにまた、開発途上国等への経済援助の強化ということについて、少し過去を洗い直し、ことし以降どういう積極的なアプローチをしようとするのか、ドル減らし問題とも関連しましてこれは重要な課題一つと思っています。しかし時間がございません。あと竹田議員の方から関連して御質問していただくことにしたいと思います。
  19. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、最近の国際収支あるいは貿易のあり方、こういうようなものについてお考えがあろうと思うんですけれども、私の方から問題を出していきますが、いままでの商品の押し込み輸出というようなあり方というのが今度の円高を招いた一つの原因であったと思うんですけれども、そういう意味では、プラント輸出あるいは国内におけるプラントというようなものというのが政府産業構造の転換でも私は大きな役割りを果たすと思うんですが、大蔵大臣は、これからの産業構造の中で、そういうプラント等の焦点をなすところのコンサルタント企業といいますか、あるいはエンジニアリングという名前でも呼ばれておりますが、こういう産業の位置づけをどういうふうにしているのか、これはひとつ時間ありませんから簡単に言ってください。
  20. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 私は、この問題はやはり今後大きく日本にとっては大切な問題ではないかと思うわけでございます。  一つ観点は、やはり余り国際的なフリクションを起こさない分野である。つまり、輸出先が主として発展途上国でございまして、しかも発展途上国の要請に基づいてやるわけでございますから、その意味で摩擦が一つ少ないということでございます。  第二は、これはやはり経済協力の立場から言ってもかなり重視して考えるべきではないかと、かように思っているところでございます。
  21. 竹田四郎

    竹田四郎君 通産省の方にお伺いしますけれども、こういう企業は具体的に担保物件がないというのが大きな、内容として一つ問題があると思うんですが、特に独立したエンジニアリング、こういうのは実際金融などはどういうようにつけているんですか。独立した企業ですね。系列の子企業というのは恐らく親企業がめんどう見てくれるでしょうけれども、独立した企業の信用というのはどんなふうにつけていますか。
  22. 中島福雄

    説明員(中島福雄君) 特にコンサルタント企業の場合でございますと、政府金融機関あるいは特定の金融機関から業務を行うための資金を借りるという道が開かれております。コンサルタント企業の団体におきましては、そのコンサルタント企業に担保力がないということで債務保証業務も行っておるわけでございます。
  23. 竹田四郎

    竹田四郎君 外国に対してはどんなふうにやっていますか。外国のいろんなものがあるわけでしょう、そういうものにはどうしてやっていますか。
  24. 中島福雄

    説明員(中島福雄君) いま申し上げましたのは、海外で業務を行う場合に国内企業に対して金融措置が講ぜられておるということでございますが、そのほかに、円借の場合には、その円借の中にエンジニアリングの部分を含めて円借を行うという方策も講じられておるわけでございます。
  25. 竹田四郎

    竹田四郎君 そういうような若干の措置が最近始まっていると思うんですが、やはり担保力がない。私はこういう産業がさらに発展してもらわなくちゃ困るし、それがこれからの日本産業構造の転換にも大いに役立つと思うんですが、銀行局はそれをどういうふうに指導しているんですか。これは、私どもあちらこちらで話を聞くんだけれども、どうも銀行がやかましいことを言ってなかなか金を貸してくれない。しかもこれからかなり、プラントの規模とかあるいは国内の都市の再開発、こうしたものでも、こういうコンサルタント企業あるいはエンジニアリングの果たす役割りというのは大きいわけですね。あるいは産業においても私は同じだと思うんです。こういうのでバックのないエンジニアリングというのは大変金融がむずかしいということでありますが、これは確かに、機械もなければ、せいぜい自分たちの住んでいる会社のある建物と土地ぐらいしかないわけでありますから、――場合によれば土地もあるかどうかわからぬというような、もう本当に頭脳労働ですから、これは完全に。そういう意味では物的な担保能力というのは確かに私はないと思うんです。しかし、物的な担保能力がないから銀行が金を貸さないということでは、やはり日本産業構造そのものに、いままでと同じような外国から批判を受けなくちゃならない。あるいは国内でもうまくいかない。一つ事業の整合性とかあるいは完結性というような問題でも私は問題があると思うので、この辺は銀行局長、いまのところ細々程度しか金を貸さないと思うんですけれども、何か改善をさらに強化していかなくちゃ日本産業構造転換にも大きなマイナスになる。だからその点の金融だけは何とかここではっきり固めておかなければ、景気回復すると言ってみても、あるいは外国との貿易を円滑にやっていくにしても、その問題が一つのネックになっている、一つのネックだと思う。これはどんなふうにこれから改善していこうとしていますか。その辺の決意のほどを聞かせていただきたいし、大蔵大臣もその辺を一体どう考えているか。一般の、特に都市銀行が多いと思うんですが、そういうもののあり方、一つの問題点ではなかろうかと私は思うんですが、どうですか。
  26. 徳田博美

    政府委員(徳田博美君) 先生御指摘のとおり、これからの日本産業構造の上では知識集約産業を育てていくことは非常に大事なことだと考えております。御指摘のようなコンサルタント業その他は確かに担保物件は非常に少ないわけでございます。これに対する金融上の措置でございますが、先ほど通産省からお答えがございましたように、これに対しまして適当な信用補完機構を育成していくということも非常に大事かと考えられます。それからまた、これに対します民間金融機関の対応のしぶりといたしましては、やはり金融の貸し出しをいたすに当たりましては、もちろん預金者の大事な預金を運用するわけでございますから債権の保全ということは非常に大事でございますけれども、債権の保全と申します場合には、物的担保だけではございませんで、相手方企業の信用度を十分に調査して、いわば金融機関のそういう信用調査能力によりまして、たとえ担保がなくてもその企業の将来性、発展性あるいは信用力等を十分に調査いたしまして、その上に立って、場合によっては無担保であっても融資することが非常に大事なことでございます。したがいまして、こういう意味で、民間金融機関のそういう審査能力の向上、あるいはそういう深度、深みのある貸出態度というものについても指導してまいりたい、このように考えております。
  27. 竹田四郎

    竹田四郎君 大蔵大臣、何か意見ないですか。
  28. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま産業構造の転換の問題が大きな問題になっておりますが、やがてその次に来るのは、いまおっしゃったような、産業構造をどっちの方に持っていくかと。そのときにやはり知識集約型の産業に向けていかざるを得ないということを考えますときに、その金融制度をうまくやっていくということは非常に重大な課題であると思います。ただいま銀行局長が申しましたような線に沿いまして鋭意その方面の充実を期してまいりたい、かように考えているところでございます。
  29. 竹田四郎

    竹田四郎君 口先では、銀行局長、あなたのおっしゃったように言えるわけですよね。物的担保だけじゃなくてその他のいままでの信用と言うのだけれども、いざ金を銀行が貸すということになると、やっぱり物的担保がないと不安なんですよ。だからどうしてもちびってしまう。欲しいだけの金が借りられないというのが私は現実だと思うのですよ。この辺をもう少し直していかない限りは、大蔵大臣のいまのお話を聞いていても、いつのことになるやら、ずいぶん先のことになりそうな話なんです。産構審の答申というのは一昨年ですか、もう実は出ているわけでして、それ以前から、日本の産業の方向は知識集約産業の方向ということは決まっているわけですから、ずっと前に決まっているのをいまようやくこれからやっと踏み出そうということじゃ困るわけです。ですから、これは特に私は大蔵大臣、その点での改善を強くここで要求をしておきます。  終わります。
  30. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでは、大蔵大臣所信表明について二、三質問をいたしたいと思います。  まず最初に大蔵大臣にお尋ねしますが、大臣はこの所信表明の中で「臨時異例財政運営を行う」、このように言っておるわけでありますが、「臨時異例」というのは何が臨時異例であると考えているのか、その点簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  31. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 一言で申し上げますならば、今度のような財政主導型の、特に公共投資その他に重点を置いて結果において財政が非常に借金に頼る、このような形が臨時異例だと申しているわけでございます。
  32. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 五十年に赤字国債を出したときに、やはり大平大蔵大臣がその当時臨時異例ということを盛んに言っておるわけでありますが、あのときの臨時異例と今回とはどういうように違うんですか。
  33. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 財政法四条は、もちろんただし書きでも建設国債しか予定していないところでございます。実質的な意味の特例公債を出したのは五十年の補正予算のときが初めてだと、その意味で大平大蔵大臣は、全く財政法四条の例外をつくるという意味で臨時異例と申し上げたと思うのでございます。  今回の臨時異例というのは、その後残念ながら引き続き特例公債を出しているわけでございますが、今度は特例公債の方は極力、経常部門の経費を縮めることによりましてできるだけ縮めたつもりでございますけれども、やはり景気対策という点から言いまして、公共投資に多くを頼らざるを得ない。したがって、その両方入れますと大変な依存度になっておる。その意味で臨時異例。これは長く続けるべき性質のものでもないし長く続けられるものでもない、こういう意味で臨時異例と申し上げているわけでございます。
  34. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 大平大蔵大臣のときの臨時異例がもう以来今日までずっと続いて、そして今回の五十三年度予算では、そういう財政主導という臨時異例が出たわけで、これは私たち大蔵大臣の言うとおり、こういう財政主導というものをいつまでも続けるべきでないということは当然のことではないかと思いますし、そのように私たち大蔵省もぜひ努力をしていかなければいけない、まあこのように思うわけであります。  そこで、今年三四%もの公共投資がふえたと、まあそういうことで、この公共投資の執行にはいろいろなネックがあるんじゃないか。また、その公共事業消化に各業界が対応しても、来年以降は果たしてどうなるのか、こういう点非常に心配があると思うんですね。やはり私は、経済というのは余り大きな変動があるということは好ましくないんじゃないか、少々苦しいことがあってもそれを切り抜けていくように体質を変えていくことが先であって、カンフル注射のようなことをしても、またもとに返ったんではあんまり意味がないんではないかなと、こういう点を心配するわけでありますが、大蔵大臣はこういう点についてはどう考えておりますか。
  35. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いまの一番最大の問題でございまして、一つは、今度は編成は確かに臨時異例にやったのでございますが消化が大丈夫かと。実は私は、これからはまさにその問題だと思っているのでございます。そういう意味で、各省庁と連絡いたしまして、大丈夫、消化はできるという範囲で、まず各省からの公共投資需要を積み重ねたところでございます。  それから第二番目といたしましては、何と言っても予算成立を早くやっていただかないとなかなかむずかしいと思っているのでございますが、幸い第二次補正予算、本当に早くやっていただいてありがとうございました。でき得べくんば、この通常予算の方も早く成立さしていただきますと早く手がつくわけでございます。  なお、政府部内で非常にいま検討しておりますのは、できるだけ手続きを早くしたい、一つは実施計画を部内的に早くつくってまいりたい。そうして予算審議中でも、おおよその個所づけなどを、国会の方の御了解をいただきまして早く内部連絡をとっていきたいと、かように考えているわけでございます。  また、補助金交付の決定手続等につきましても非常な簡略化を考えておりまして、継続事業などはやめたらどうか、それから新規のものにつきましても、設計図は概略わかればいいじゃないか、あるいは部数なんかもごく簡単にするということで交付手続を早くやっていく。最後に、地方団体がいろんな入札手続その他あるわけでございますが、そのいろんな設計をいまから準備しておく。そして、すべて手はずを末端まで早く整えておくということが大事な問題ではないか。それから、公共事業を執行する場合に、私はいまの資金需要資金の需給状況、あるいは現在の在庫状況から申しまして、一般的に物価引き上げるという心配はそれほど多くないと思います。ただ、ある地域に集中的に時期的にかたまりますと、それはどうしても需給の関係で物は上がる、あるいは労務費は上がる、あるいは土地価格が上がる、こういった問題につきましては、いま関係省庁でそういうことはないように地方別に協議会をつくりまして、そして絶えず情報交換をいたしまして、所要の調整を全部とる手はずをいま進めておるのでございます。  最後に、何と申しましても公共事業の七割近くは地方団体が実際にやるわけでございますので、その財源対策資金手当て、これは最も今度苦心したところでございます。  以上のようなことによりまして、大体この第一段の問題は片づくのではないかと思っておるところでございます。  それからもう一つ、来年度以降でございますが、これは試算でございますけれども、来年度以降の財政収支試算、これは計画ではございません、試算でございますが、それを提出しているところでございます。まあそれのとおりもし実行できるといたしますと、公共投資はやはり相当大きな金額を盛っておるところでございまして、一つの例を申し上げますと、経済企画庁の方の暫定試算と最も整合性のあるものは私はCケースだと思うのでございますが、大体一四%ぐらいの伸びを考えているわけでございます。その場合の名目成長率が一二・五ぐらいでございますから、まずまずやはり公共投資についてはかなり景気刺激的であるということは言えるだろうと思うのでございます。
  36. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 この財政収支試算ですね、これを拝見いたしますと、全部でA、B、C、D、Eのケースがありますが、どのケースもいわゆる投資部門の歳出というものは大体一六・七%の伸びと、こういうようになっておるわけであります。しかし、今年度が三四%伸びて、そしてその後また急激に伸びがダウンしていくと、こういうような急激なやり方というものは私は余り好ましくないんじゃないか、こういう感じがするわけなんですけれども、そういう点はどうですか。
  37. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これは年度で申しますから、支出ベースで話すわけでございます。まあ実際には経済効果はずうっとずれてまいりますので、数字が示しているほど急カーブに落ちるということではなかなかないだろうと。それから、当然われわれはそのときには、今度やっておりますのは民間部門の需要伸びることを期待しての臨時異例措置でございますので、民間部門が相当伸びてくるであろうということでやっていると、この二点をわれわれは前提にしているわけでございます。
  38. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いまこの財政主導というのが非常に臨時異例であると、そういうお話だったわけですが、いまのしかし御説明では、ずっと五十四年度以降もこの公共事業の、伸びは今年よりは低いですけれども、予算伸びよりもさらに伸びていくわけですね。そうすると、どうしても五十三年度以降、五十四、五十五年以降も、やはり国民経済伸びよりも公共投資伸びが大きいということは、ますますこれは財政主導というものは高まっていくわけでありまして、そういう意味で、大蔵大臣の言われた臨時異例の処置というものが、かつての大蔵大臣のときと同じように、やがて二、三年するともうそれがコンスタントになっていくんじゃないかと、私はそういうことを心配するわけですが、そういう点はどう考えますか。
  39. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 御承知のように、政府におきましては、それぞれの社会資本充実につきまして中期計画を持っておるわけでございます。五十年から五十五年まででしたか、大体百兆という、あれは五十年価格でございますけれども、それぞれの中期計画を持っておるわけでございます。したがいまして、今度やりますのはその中期計画の中でいわば繰り上げてやるということでございます。残りの部分はどうなるかという点は、その中期計画との整合性、そしてまた、経済見通しとの整合性でやってまいりますと、大体私が申しましたようなことになるのでございまして、この程度であれば、これは別に財政主導型とは恐らく言えないのではないか。ただ、財政がいつも抑制型とかあるいは中立型とかあるいは刺激型だとか、財政主導型なんという言葉を使ったのは恐らくことしが初めてではないかと思うのでございますけれども、そういうことでございまして、引き続いていまのようなことをやろうなどということは考えていないということを御理解願いたいのでございます。
  40. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 いま大蔵大臣は、まあ社会資本の中期計画、これを繰り上げてやると、これはわれわれも、社会資本のおくれはあるわけで、それをやっていくことには何ら反対ではないわけなんですけれども、繰り上げてやれば後の分は減っていくのではないか、そういう急激な変動というものが結局わが国経済が低成長時代への対応をむしろおくらしていくんじゃないかと、そういう心配で申し上げているわけでありまして、この点は時間もございませんのでまた今後の論議に譲りたいと思いますが、その点私の意見を申し上げておきます。  それから、減税公共投資かということは、いろいろ衆議院でも論議をされておるところで、その論議を繰り返そうとは思いませんが、一つは、やはり公共投資は非常に地域的、業種的にばらつきがある。そのために、先ほども物価の上昇を抑えるように手を打つと言っておりますが、けさの新聞見ても、セメント、骨材ですか、骨材は二割値上げをする、セメントなどは、稼働率が上がれば本来ならば値段が下がるなら話はわかるわけですけれども、かなり各地でセメントがどんどん上がっておる。こういう非常に地域的、業種的なばらつきがあって、そこがやはり値段が上がっていくと、こういう心配があるわけでありますが、これがあるということは大蔵大臣もこれは否定ができないと思うんですが、その点どうですか。
  41. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いまの地域的に集中するんじゃないかという点についてお答え申し上げますと、私たちもその点は十分配慮するつもりでございまして、そういった意味で公共投資については、どちらかと申しますと生活関連の方に伸び率をうんとかけているわけでございます。また、地域配分につきましてもいろんな問題がございまして、やはり社会資本のおくれているところはそれだけ私は需要が多いだろうと思うわけでございますし、それからまた、雇用造出効果の大きいと思われるところ、こういった点をこれから実施本部で実際上の実施計画を決める場合には、そういった点を十分配意しながら御指摘のようなことにならないようにやっていきたいと思っておるわけでございます。  セメントの値上がりの問題につきましては、まあどの程度が、確かに上がったという話は聞いておる、新聞でも見ておるのでございますが、それがやはり正常なものであるのか、あるいは必要以上に上がっているものであるのか、これはひとつ通産当局の方からお答えしてもらいたいと思います。
  42. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 それでこの波及効果の点につきまして、いままで産業連関表等から公共投資の場合は二・一とか、消費の場合は一・八とか、そういうようなデータがたしか過去にはあったと思うんですがね。けれども、最近言われているのは、こういう非常に設備の稼働率の低い時代にはそういう波及効果というものは変わってきておると、こういうことがよく言われておるわけでありますが、大体現在のような経済情勢において公共投資消費支出、いわゆる減税との波及効果というものは数字的にはどの程度の差があるのか、これは一般論ではいろいろなこと言われているし、いろいろな説があるわけですね。しかし、私たちは五十年、五十一年、五十二年と公共投資主導でやってきたけれども余り効果がないと、そういう点から考えて、公共投資についても波及効果が本当に減税よりもはっきり高いという根拠はどこにあるのか、これは経済企画庁がそういう調査をしているのかもしれませんが、当然大蔵当局としてもそういう数字的な点については感触を持っていろと思うのですけれども、その点はどうですか、簡単で結構ですから。
  43. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 従来高度成長時代で、SP17というコンピューターではじいたところでございますと、通常言われておりますのは、一兆円出したときに片方は、公共投資の方は一兆八千億ぐらいの景気浮揚効果を持つ、土地価格をもし除きますれば一兆四千億になりますと、こういう試算をやっておりますし、減税の方は、同じモデルで計算したときには年間約八千億、一兆ではなくて八千億ぐらいだと言われておったのでございます。しかしそのことを、そのコンピューターが当たるかどうかという問題でなくて、一般的に言って私はその波及効果がいままで、特に去年あたり、あるいはおととしあたり出てこない最大の理由は、何と申しましても、常識的に考えてやはり中間在庫が非常に多かったということに求めざるを得ない。したがって、ほとんど在庫のところで吸収されてしまって稼働率にはなかなか影響は及ばない、そこに最大の問題があったと思うのでございます。  そこで、来年度の在庫がどうなるかという問題が最大の焦点でございまして、経済企画庁あたりの言うのを聞きますと、われわれも大体同じじゃないかと思っているのでございますけれども、特殊な分野を除いて、アルミであるとかあるいは平電炉であるとか、そういうのは別にいたしまして、大体今年度末、三月から四月ころには大体在庫率指数も平常になるのではなかろうか。そういたしますと、大分在庫調整が進んでおりますので、今度は来年の波及効果というものは五十二年度よりはかなり大きくなってくることは当然でございます。それでまた、在庫の問題から申しますと、減税についても同じことが言えるわけであります。もっとも在庫が高まりますれば減税をやりましてもやはり波及効果も落ちることは当然でございます。ただその場合に、一般的な民生物資とそうでない基礎資材のようなもの、あるいは建設資材のところの在庫率指数の違い、それはもちろんあると思います。しかし、一般的にそれらの点を総合いたしましても、雇用造出効果あるいは需要効果から申しまして、公共投資の方がより有効であるということは私は常識的に言えるであろう、かように考えておるところでございます。
  44. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 波及効果の点についてはいろいろ異論のあるところでございますが、これはまた次の機会の論議にしたいと思うのです。  もう一つ、私は減税公共投資かという点につきまして、これはある人の説でございますが、やはり資源配分というものが中央集権的な資源配分、これが公共投資であり、減税というのは個々の消費者が支出先を決定する非常に分権的な資源配分ですから、だから高ければもっと安いものを消費者が買えるわけですけれども、公共投資の場合は非常に硬直的で、どうしても一部の業界に集中して値段が上がる。したがって、イギリスの経済停滞を説明する一つの仮説は、経済活動に占める政府部門の比重の増大である。公共部門による意思決定の領域が拡大すれば経済が非効率になっていくんじゃないか、そういうことを言っておるわけで、私も確かにそのとおりじゃないかと思うんです。だから、やはり大蔵大臣財政主導臨時異例であると言う趣旨も私はそこにあると思うんですけれども、それならば余り財政に、いわゆる公共投資に重点を入れ過ぎますと、二年、三年とずっと続けば、それがやはり一つ財政硬直化の因にもなっていくんじゃないか、こういう点を心配するわけですけれども、そういう点はどう考えますか。
  45. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 私たちが一番基本的に考えておりますのは、やはり現在のような市場経済、あるいは個々の私的企業が責任を負っている市場体制でございますから、だからやはり民需の拡大という問題が最大の問題ではなかろうか。それを通じまして企業消費、つまり設備投資という意欲がだんだん出てくる。そしてまた、そこに出てくる民需における採算性が正常の状態に回復していく、それを通じて雇用者所得がだんだん上っていく、これを一番期待しているわけでございまして、その近道が何であるかということを考えているわけでございます。現在の経済体制から言いましてそれが最も近道であろう、そういう意味で考えておるわけでございます。  いまどちらの方がバラエティーに富んでいるか、こういう御設問でございますが、実は違う角度で考えているわけでございます。バラエティーという問題につきましては、確かにそういうことは言えるかとも思いますが、公共投資におきましてもできるだけあらゆる部門につきまして、つまり生活関連のもの、あるいは国土保全の問題、さらには産業基盤の問題、こういったところにまんべんなく、さらに、公共事業一般には言いませんけれども学校の問題、保育所の問題、さらには病院の問題、こういった点にも、あらゆる点を配慮いたしまして、そして施設ごとにも、また地域ごとにも配慮してまいりますので、できるだけ一方に偏らないように、つまり波及効果が全業種にわたって、地域的にもまんべんなくいくようにわれわれは全力を挙げて、おっしゃるような批判にならないように配慮しているところでございます。
  46. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 波及効果の点で、これは経済企画庁が発表しているわけですけれども、減税公共投資というのは非常に分野が違うわけですね。やはり減税やると食品とか繊維とかそういうところが非常に、化学等が波及効果が多い。ところが、公共投資の場合はいわゆる鉄鋼とかあるいは窯業、土石、こういうセメント関係、金属製品。したがって、いま最も基礎資材産業や資本財産業というものが非常に停滞をしておるわけですね。そういう意味では確かに、いま五十九の高炉のうち二十の高炉がストップしているような鉄鋼産業、そういうものには確かに一つの救済になると思うんですけれども、しかしそういう意味での救済はおかしいわけでありまして、本来高度成長時代の幻の成長の上に乗って――これは政府が悪いのか業界が悪いのか知りませんけれども過剰の設備をやったと、そのためにいま大きなこういう不況を招いておるわけでありまして、そういう意味では、むしろ私は構造改善というものをやっていかなくちゃいけないんじゃないかと。総理大臣大蔵大臣も方針の中で構造改善、産業構造の転換ということを言っておるわけでありますが、そのビジョンというものはどういうものか。  それともう一つは、タンカー、先般タンカーの備蓄構想というのがありまして、われわれも備蓄はいいんですけれども、ああいう形で行われるのは余り賛成はできないと思いますが、今度は鋼材の備蓄構想というようなものを通産大臣は打ち出しているわけですね。こういう行き当たりばったりのやり方は私は余りよくないんじゃないかと。国家資金を使って鋼材の半製品の備蓄をするという考え方、そうなると、じゃほかの不況業種全部をやらなけりゃならないし、そういうことはますます財政の硬直化にもなるし、断じてやるべきではないんじゃないかと。むしろそういうことよりも産業構造の転換、やはりそういう形で救済に政府は力を入れていくべきではないか、このように思うわけですけれども、その点についての御見解を承って質問を終わります。
  47. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 一般的な公共事業拡大により波及効果をねらう点はもちろんでございますが、やはり個別企業あるいは個別業種に対する構造対策、そういった問題にも十分注意しなければ私はいまの経済の立ち直りは困難だと思うわけでございまして、構造不況業種の構造改革、そういったものにつきましても、十分予算措置を講じておるところでございまして、この方にも大きく期待いたしているわけでございます。  さらには、いまタンカー備蓄の話がございましたけれども、これは九十日備蓄は大体民間でやっているわけでございますが、さらにその上に、その枠外でいまタンカー備蓄を考えておるわけでございまして、これはやはりある意味でエネルギー政策の安全の問題、さらには世界に対する油の値段にも影響してくる問題、こういったことでOECDベースで大体合意ができておる、まあその線にやっておるわけでございまして、それは私はそれなりの意味があると思うのでございます。  ただ、実際問題としてどこにどのようにして備蓄するのか、基地はどうするのか、こういった問題がまだ残っていることは当然でございますけれども、方向としてはやはり整合性のある考え方じゃないかと思うのでございます。  それから、最後にお述べになりました、いろいろな鉄鋼その他を買い上げるというような問題、この間、通産大臣予算委員会で発言されたところでございます。しかし、財政当局としてはまだ何にも相談を受けていない段階でございまして、おっしゃるような点十分わかりますので、もし相談があればわれわれは慎重に検討しなければならぬ、御趣旨の点も踏まえて果たしてどうであるかということは財政当局として慎重に考えねばならぬと、かように思っておるところでございます。
  48. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 相談なくても、大蔵大臣の見解を言ってくださいよ。相談がなくても、話が出ているんだから。
  49. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) あれは通産大臣が言われたことでございまして、その真意がどの辺にあるのか、まだはっきりいたしていないのでございます。非常に問題点が多いであろうということを述べるにとどめさしていただきたいと思います。
  50. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 もっと歯切れよくなってもらいたいな。
  51. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 ただいまも塩出委員からもありましたように、冒頭の大蔵大臣所信表明では、昭和五十三年度の予算案と財政方針が臨時異例のものだということが強調されているわけでありますが、全くそのとおりで、史上最高とも言うべき超大型の予算、この超大型をつくり出していくために国債を増発をする、税の前倒しを行う、さらには、景気浮揚に名をかりて公共事業費を、かつての田中内閣当時の列島改造政策、あの時期よりもはるかに超えるテンポで膨張をさせる。さらに、そのために決算調整資金あるいは公共事業予備費など、いわば国会審議権、財政民主主義もじゅうりんをするような、そういう方策も含めて今度の予算案が提案をされてきているというふうに私どもとして見ているわけでありますが、そこで、私は限られた時間でありますので、三つの点にしぼって大臣に質問をいたしたいと思います。  第一は、いわゆる公共事業に関連をする問題でありますが、三四・五%という異常な膨張をしておるわけでありますけれども、さっきも塩出委員から質問がありましたが、公共事業費の膨張という問題やら、あるいは国債の増発、税収の前倒し等々、さっき列記をしましたようなそういう財政方針、臨時異例といえば、言葉の意味において、二年、三年もこれが長期化をしていく場合には臨時異例という言葉は使わないと思うんでありますが、そういう点でことしのような財政方針はいわば今年度限りにするんだということの意味で言われておるのか、その点を重ねて質問します。
  52. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 公共投資を中心としてやる主導型、これは今年度限りでやめたい、かように思っておるところでございます。そのほか、租税の前倒しあるいは決算調整資金、これはそれぞれ別の目的を持ってやっているところでございます。  ただ、臨時異例と特に申し上げている最大の重点は、公共事業を中心に大型に財政主導型の景気回復策を講じたと、これを中心的に考えているわけでございまして、この点については、重ねて申し上げますが、今年度限りで何とかやめたいものだ、かように考えておるところでございます。また、その効果も期待しておるところでございます。
  53. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いまの御答弁にかかわる問題については非常に重大な内容が含まれていますが、それはまた後から個別の法案審議もありますから、その中で十分意見を述べたいと思います。  それで、私どもとしては公共事業拡充にあながち絶対反対をするものじゃないんですけれども、問題はその中身だと思うんです。先ほどの御説明で、従来に比べて生活基盤の事業、ここに力を入れたというふうに言われているんでありますが、なるほど従来のおくれに比べればそういう点は多少あろうかと思うんですけれども、そこでお尋ねをいたしますが、いわゆる産業基盤投資、それと生活関連分野における投資、ここのそれぞれ国際的に見ての立ちおくれがあると思うんですけれども、相比較をして、特に日本の場合どの分野がおくれているというふうにお考えですか。
  54. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま細かいことは計数を見て申し上げますが、特に一番われわれが言われているのは、たとえば下水道のようなものが典型的の例でございまして、下水道の普及率でいいますと日本はいま二四%、それからアメリカ七一%、英国九四%、まあざっとそんなものでございます。それから道路舗装率で申しますと日本は三四%、アメリカが四八%、英国が九七%等でございます。それから公園でございますけれども、これは問題にならぬわけでございまして、日本は一人当たりで東京で一・五平方メートル、ワシントンが四十五・七平方メートル、英国は二十二・八平方メートル、フランスは八・四平方メートル。なお、水洗便所つきの住宅、この比率も出ておりまして、米英独はいずれも九〇%を超えて一〇〇%近くになっております。フランスでございますが、これは五一%、日本は二九%。その他細かい質問ございますれば申し上げますが、社会資本充実は、やはり日本は高度成長になりましてから非常にまだ日が浅いものでございますから全般に未成熟であるということ、特に生活関連のところでおくれておるということはもう間違いないと思っておるのでございます。
  55. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 このパンフレットをもとにいま御説明があったと思うんですけれども、この数字自身についてはなお十分な吟味が必要だと思いますが、いまの答弁でもはっきりしておりますように、そういう生活基盤部分の公共事業、これが非常に国際的にもおくれておるということは明確だと思うんですが、それならばお尋ねをするんですが、なぜ今度の予算案で住宅政策にかかわって公営住宅、この建設戸数を昨年計画よりも削減をするという、不十分だというんじゃない、削減をするという、こういう暴挙をあえて打ち出してきたんですか。
  56. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これは住宅については最も力を入れており、またそれに期待しているところでございますが、公団住宅につきましては、残念ながらやはりいままでつくりました中でまだ空き家が一万六千戸あるとか、すでにつくったものでなお売り出すことができないのが二万戸あるとか、そういう需要が残念ながらつかないわけでございます。建設省方面のあれを聞きますと、やはり位置の選定あるいは関連公共施設との関連の配慮が欠けているためにそうなっているということでございます。適地がなかなか求められないというところに最大の問題がある。そこにはいろんな、急に人口がふえますと地方公共団体の負担の問題、さらにはそこにお住みになっておる住民のいろんな抵抗がある。こういったものがあってそういうことになっておるということでございますから、実際のニーズのないところにつけることはむだになりますので減らしておる、こういう事情でございます。
  57. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 いまの御説明では、公共住宅をつくっても空き家が出るという現状にあるということが言われておるわけですけれども、それは家賃の問題、また欠陥住宅の問題、そういう部分の改善をすることによって十分解決できる問題であるわけですし、私は、昨年計画に比べて後退をしているというのは、どうしてもことしの予算案の政府の一番の問題点であるというふうに思うわけです。そういう点でお尋ねをするわけでありますが、政府が言われておるのとは逆に、まだまだ公共事業の中で産業基盤の部分にウエートがかかっている。もっと思い切って生活基盤重視、ここの分野にこそ公共事業を強化をすべきだというふうに思うんですが、そういう点でたとえば本四架橋の問題、何もこの時期に一本ならともかく三本も同時に橋をつける、こういった問題については再検討をすべきではないか、あるいはいま触れました公共住宅の建設計画についてはもう一回練り直しをすべきではないか、あるいは公共専業の発注について、従来から官公需の中小企業向け発注を努力をするというふうに政府は約束をされているわけでありますけれども、ことし一段とそれを前進をさせるための施策を確立をすべきであるというふうに思うんですが、その点についての御答弁をお願いいたします。
  58. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま二点挙げられたわけでございますが、一つは、もうちょっと生活関連のやつで伸ばすべきではないかというわけでございますが、これを見ましても、生活関連の方は大体四一・三%ぐらい、それから国土保全で申しますと三六・六%、それから産業関連と申しますか、交通関係で申しますと二八%の伸びでございまして、全体的に生活関連に最も大きく力を入れておることは御了承いただきたいと思うのでございます。  それから、ただいま本四架橋公団の問題が出ましたけれども、これはルートとしてやっておるわけではございませんので、橋をつけようということで、それをその地域の交通の便あるいは雇用吸収という面から取り上げているわけでございまして、それぞれのルート全体をやっているわけではございません。そういうことでお答え申し上げておきます。  それから、第三点の官公の事業について中小企業に発注がいくようにということ、これはもうすでに政府の方で方針を決定しているわけでございます。なお、これに関しましてはいろんな点に問題があるようでございますので、われわれはこれから、いよいよ実施する場合の実施本部においてもその点を十分踏まえまして、その趣旨が貫けるような実効政策をとってまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  59. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 時間ありませんので二つ目の問題に移りたいと思いますが、国債の関係についてお尋ねをしたいと思います。  国債の増発が将来に重大な禍根を残すということについては、いままでも政府みずからもたびたび発言をしてこられたということで、国会の議論の中で一部の議員の方から国債依存率三〇%の限界というものについてはさほど固執すべきではないという議論もあったんですけれども、政府みずからが、たとえば当委員会でも私が質問をして、十月の二十七日の委員会だったと思いますが、当時の坊大蔵大臣が、やはりその点については明確な答弁を行われておったという経緯もあるわけですけれども、にもかかわらず、これがことしの予算案で大きく変化をしてきておる。これは政府のこの国会の各委員会、本会議における答弁というのは非常に重要な内容がある。そういう点で、いわば議会制民主主義に対する重大な否定になるんではないか。これがわずかの日数が経過する中で大きな変化が起こる。円高問題はすでに十月二十七日段階というのは重大化をしておった。その段階でも国債の問題についての見解が明確に述べられておったんですけれども、こういう点で、議会制民主主義との関係で、この点についてどういう見解を持たれますか。
  60. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) その点で臨時異例措置であるということを申し上げているわけでございます。  従来、三〇%を堅持したいとおっしゃっておることは私もよく承知いたしておるのでございます。恐らく昭和初年以降の経験的な国債依存率、これをめどにして三〇%というガイドラインをつくったと思うのでございます。もとより公債依存度が大きくなるということは、なかなか財政が機動的に動かないだけに将来大きな問題を持っておる。特に民間需要が出てきたときに財政の方が急に縮小できるか、こういうことを考えますと、やはり公債依存度というものは財政の体質から考えまして十分考えねばならぬと思っているのは私も同様でございます。今度取りまして全体として実質三七%にも及ぶという結果になりましたのは、まさに臨時異例財政主導型の予算を組んだために結果としてそうなったわけでございまして、願いとするところは一日も早く民間主導型の経済に移したい、それをもとにいたしまして現在の公債依存率三七%というものを、可及的速やかにその依存度を低めていく措置をとりたいと、こういう長期的な、中期的な考え方に立っているわけでございます。  特にわれわれがいま問題にしておりますのは特例公債の問題でございまして、今度経常部門投資部門を分けたのも当然でございます。ある種の説によりますと、公債消化できる限り差し支えないんじゃないかと、こういう議論さえあるわけでございまして、われわれはそうは考えないのでございますが、ですから、とりあえずは特例公債から早く脱却したい、これを第一の目標にしているわけでございます。そのことによって公債依存度を下げていく。いま試算では五十七年度をめどにしてやりたいと思っているわけでございますが、その後も引き続いて、建設国債であろうと何であろうと借金によらない方がいいに決まっているわけでございますので、できるだけ脱却後も公債依存度を低めていきたいと、かように思っていることは事実でございます。
  61. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 可及的速やかに国債依存を減らしていきたいというふうに言いながら、たとえば政府が今回提出をされておる収支見通しでも首尾一貫をしていないわけですね。経常部門では減らしていく、しかし投資部門はどのパターンを見ても年一九・五%という率で依然として国債が増発をされていくという、こういうパターンになっているという点から考えてみて、全体としての国債をどうやって抑えていくか、それぞれをどう抑えていくかという点が依然として明らかになっていないと思うんです。こういったことが起こってくるのは、予算上のいわゆる二分割方式を採用をして公共投資の分野ではどんどんと膨張をさせていく、その結果、経常部門で勢い社会保障や教育の予算や、こういうところが抑えられていくという結果にならざるを得ないということになっていると思うんです。  それでお尋ねをするのは、投資部門における国債依存率も減らす、五年先ということではなしに直ちに減らすという、そういう方向をとるという問題と、このような矛盾を生む二分割方式を改めるという問題についての見解はどうですか。
  62. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま試算においても公債依存度が余り変わらないというお話でございますが、一番整合性を持っているケースCで申しますと、このとおりいくかどうかはそのときの財政事情によりますが、一つの試算としてとりますと、五十三年度が御承知のように実質三七%、五十四年度が三四、五十五年度が二九、五十六年度が二四、五十七年度までございますけれども、総合依存率で一八、その後引き続いてこういくという形を描いているわけでございまして、決して依存度が下がらないというようなことを考えているわけではございません。  それから、公共投資依存としてずうっとコンスタントであるじゃないかということについてはすでにお答え申し上げましたけれども、伸びが大体一二・五%、それから五十六年、五十七年におきましては一一・五%ぐらいを考えているわけでございますが、その場合をケースCで申しますと、大体五十四年度、五十五年度で投資部門伸びは一三・八が二年続いて一二・八が二年続くと、こんな形でございます。したがって、これがいまの名目成長との関係においてこれは財政――公共投資主導型とは言えないんじゃないだろうか。大体日本の安定成長、まあ高度成長の場合とそうでない場合は違いますが、この開きを見てみますと、大体安定成長の形になっているんではないだろうか、このように考えているわけでございます。  なお、その場合にいまの社会福祉関係をずいぶん詰めるんじゃないかというようなことでございますが、試算では二年一六%、それから後半の二年は一四%でございますから、公共投資伸びよりはよけい見ておると、そういうことを見ているわけでございます。
  63. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 時間ですのであと一問。  税制に関する問題についてでありますが、かねがね不公正税制を是正する、これは税調答申でも、大企業に対する課税強化の問題についてはなお検討の分野があるということも指摘をしてきたという、こういう経過で、この五十三年度を一つの年だということで政府みずから約束をしてきたと思うんです。ところが、今回の五十三年度税制の案はそのような形になってない。  端的にお尋ねをいたしますが、たとえば大企業に対する減免税の租税特例措置を一部整理合理化をしますというのがことし出ていますけれども、これは当年度の収入が十億ですね。その額が示すようにわずかなんです。ですから、大企業減免税の大きな分野を占める貸し倒れ、退職給与引当金、あるいは利子・配当課税、受け取り配当、支払い配当、こういう問題になぜことし手をつけないのかということをお尋ねします。
  64. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 不公平税制に対する考え方が第一に違うわけでございます。いまお述べになりました退職給与引当金、これは私は企業会計原則上当然のことであろうと思うのでございます。  それから、いま述べられましたもう一つ、配当でございましたか。――利子・配当の、個人の方ですか、法人の方ですか。
  65. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 法人。
  66. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これはもう税制の仕組みでございまして、要するに利子と同じように配当についても二重課税を排除したいと、その排除の方法が日本では二段階で、支払い側と受け取り側で排除をしておるという仕組みでございます。これはもうほとんど各国、フランスを除きまして――フランスも一部やりましたけれども、ほとんど国際的に承認されておるわけでございまして、どちらで一体排除するかというのはそれぞれの国の違いはございますけれども、まず二重課税を排除するという方向には変わりない。皆さん方はこれは不公平税制だと申しますし、われわれは不公平税制の中に数えるべき問題ではないと、かように考えておるところでございます。
  67. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三分休憩      ―――――・―――――    午後一時四分開会
  68. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) ただいまから大蔵委員会を再開いたします。  決算調整資金に関する法律案及び昭和五十二年度の水田総合利用奨励補助金についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案を便宜一括議題といたします。  まず、決算調整資金に関する法律案について、政府から趣旨説明を聴取いたします。村山大蔵大臣
  69. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) ただいま議題となりました決算調整資金に関する法律案につきまして、その提案の理由及び内容を御説明申し上げます。  わが国経済財政の推移を見ますと、かつての高度成長期には、決算上租税自然増収を生ずる例が多かったのでありますが、石油危機後の経済のもとにおきましては、年度途中における景気の落ち込みにより、予期しがたい規模税収不足を招く蓋然性が高くなってきております。  このような予算作成時には予見しがたい税収の減少等によって、一般会計の歳入に不足が見込まれる場合に、それが年度途中であれば、歳出の節減等によって対処するほか、これによって対処し切れない場合には、補正予算によって対処することが通例であり、昭和五十二年度におきましても、現段階で見込まれる租税及び印紙収入の減少額八千六十億円につきましては、第二次補正予算において所要財源措置を講じているところであります。しかしながら、先ほど申し上げましたように、最近の経済財政情勢にかんがみますと、このように補正予算によって年度内にできる限りの措置を講じても、税収動向については、予見しがたい種々の不確定要因があるため、年度末間際あるいは年度経過後において結果的に決算上の不足を生ずることが明らかとなるような事態も常に考慮しておかなければならない状況にございます。  このような場合には、補正予算等によって歳入不足に対処できないばかりでなく、現行法令は、決算上の不足が生じた場合の財政処理について規定していないため、これに適法に対処する道がないのであります。  したがって、今後においてかかる事態が生じた場合に対処するため、昭和五十二年度から一般会計決算調整資金を設置し、この資金から一般会計の歳入歳出の決算上生ずる不足を補てんする制度を創設する必要があります。  このため、所要の法的措置を講ずることとして決算調整資金に関する法律案を提出する次第であります。  なお、今回の第二次補正予算におきましては、決算調整資金制度の発足に当たって必要な財源確保し、万一、昭和五十二年度の一般会計の歳入歳出の決算上不足を生ずることになっても、同資金制度によって対処し得るよう、決算調整資金への繰り入れに要する経費二千億円を計上しております。  以下、この法律案の内容について御説明申し上げます。  まず、先ほど申し上げましたように、予見しがたい租税収入の減少等による一般会計の歳入歳出の決算上生ずる不足を補てんし、同会計の収支の均衡を図るため、一般会計決算調整資金を設置することといたしております。  次に、決算調整資金財源として、各会計年度の一般会計において、財政法第六条の剰余金が生じた場合においては、剰余金の金額から公債等の償還財源に充てるべき金額を控除した金額の範囲内におきまして、翌々年度までに、予算の定めるところにより、一般会計から資金に繰り入れることができることとしておりますが、このほか、特別の必要がある場合には、予算の定めるところにより、一般会計から資金に繰り入れることができることとしております。  決算調整資金に属する現金は、各会計年度の一般会計の歳入歳出の決算上不足を生ずることとなる場合に限り、翌年度七月三十一日までに、その不足を補てんするため、一般会計の歳入に組み入れるものとしておりますが、この場合におきましては、資金からの歳入組み入れに関する調書を作成し、次の常会において国会に提出して、その承諾を求めなければならないこととしております。  また、決算調整資金によって決算上生ずる不足を補てんする際に、資金の現在額のみでは不足する場合に備え、当分の間の措置といたしまして、国債の償還等国債整理基金の運営に支障を生じない範囲で、同基金に属する現金を決算調整資金に繰り入れることができることとし、このような繰り入れを行った場合には、その日の属する年度の翌年度までに、予算の定めるところにより、繰入金に相当する金額を、一般会計から決算調整資金を通じて国債整理基金へ返済することとしております。  このほか、決算調整資金の管理、受け払い、増減の計算等について所要の規定を定めることといたしております。  以上が、この法律案の提案の理由及び内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  70. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 次に、昭和五十二年度の水田総合利用奨励補助金についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案について衆議院大蔵委員長代理理事野田毅君から趣旨説明を聴取いたします。野田君。
  71. 野田毅

    衆議院議員(野田毅君) ただいま議題となりました昭和五十二年度の水田総合利用奨励補助金についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案につきまして、提案の趣旨及びその概要を御説明申し上げます。  この法律案は、二月八日、衆議院大蔵委員会において全会一致をもって起草、提出いたしたものであります。  御承知のとおり、政府は、昭和五十二年度におきまして水田の総合利用を推進するため、その一環として稲作の転換を行う者等に対し、奨励補助金を交付することといたしておりますが、本案は、この補助金に係る所得税及び法人税について、その負担の軽減を図るため、おおむね次のような特例措置を講じようとするものであります。  すなわち、同補助金のうち個人が交付を受けるものについては、これを一時所得とみなすとともに、農業生産法人が交付を受けるものについては、交付を受けた後二年以内に固定資産の取得または改良に充てた場合には、圧縮記帳の特例を認めることといたしております。  なお、本案による国税の減収額は、昭和五十二年度において約三億円と見積もられるのでありまして、衆議院大蔵委員会におきましては、本案の提出を決定するに際しまして、内閣の意見を求めましたところ、稲作転換対策の必要性に顧み、あえて反対しない旨の意見が開陳されました。  以上が、この法律案の提案の趣旨とその概要であります。  何とぞ速やかに御賛成あらんことを御願い申し上げます。
  72. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 以上をもって両案の趣旨説明は終わりました。  それでは、これより両案に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  73. 穐山篤

    穐山篤君 決算調整資金に関する法律案の方から始めたいと思いますが、最初に、これも午前中からお話がありますように、臨時異例中のどちらかといえば異例な取り扱いではないかというふうに思いますが、この法律案の最も基礎になっておりますのは、歳入が非常に不足をする、あるいは歳入が非常に不足をしたと。政府見通しでいえば八千六十億円が歳入不足だというふうになっているわけです。  さてそこで、歳入の問題についてお伺いするわけですが、この一般会計の収支実績の推移という収入の推移欄をずっと調べていきますと、去年からことしにかけての例ですが、五十一年の七月から九月が三兆八千億円、これは収入ですね。それから十月から十二月が三兆七千億円、それから五十二年の一月から三月までが四兆一千億円台に入りましたね。四月から六月までが四兆七千億円、七月から九月までが四兆一千億円というふうに、過去の推移を見てみますと四-六月が一番実績としては多いわけです。これは当然のことだろうと思うんですね。そこで、大蔵省としては四-六月分の税収入を見て後半あるいは年間を通しての収入見込みを立てるのか、あるいは七-九月までを見てそれで後半の収入を考えるのか、その点ひとつあらかじめ表明をしていただきたいと思います。
  74. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) きわめて簡単に申し上げますと、本予算でございましても補正予算でございましても、予算編成の時点でわかっております一番最近までの実績を必ず基礎にいたしまして、それ以降につきましては主として経済企画庁の経済見通しに乗りまして税目ごとの積算をしてまいる。ただ、税目によりましては経済見通しではなくて、たとえば一例でございますが揮発油税収のようなものは、これは今後の揮発油税の売り上げの見込みというようなものを別途聞き取っていたしますけれども、全体としては一番最近までの実績にそれ以後の経済見通しに乗った推計を立てるというやり方でございまして、具体的には先般成立を見ました補正予算で八千六十億の減収という見方をいたしました基礎は、昨年、本年度内の五十二年の十月までの実績が当時わかっておりましたので、それを基礎にして、それ以後は経済見通しに乗ったわけでございます。
  75. 穐山篤

    穐山篤君 そこで、去年第一次の補正予算の際に大蔵委員会でも、あるいはその他の委員会でも論争になったのは、六・五%周辺というその成長率を実現をするためにいろんな努力政府の方針でいえば七つの総合的な項目を実施をすればほぼ六・五の周辺まではいくだろう。ざっくばらんに申し上げて強気の返事があったわけですね。私ども野党側としては、かなりあのときには慎重論であったと記憶をしております。政府が第一次の補正予算を出している当時、円は二百六十六円か七円だと思ったんですが、その審議の途中では二百四十五円あるいは二百四十円台に上がったわけですね。そうしますと、当然結果として成長率も下がるし、それから税収も少なくなるはずだった。この点についてもっと厳しく判断を、あるいは展望しなければならぬはずだというふうに私ども申し上げたつもりでありますが、その九月段階ですでに一兆円近い歳入不足が出ると考えていたかどうか、その点明らかにしてください。
  76. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) おっしゃいますとおり、第一次補正を私どもの手元で編成いたしましたのは九月の中旬でございまして、そのときにはまだ七月末までしかわかっておりませんでした。当初予算の五十一年度の決算に対する税収伸び率は一一六・五でございましたが、七月末の累計では一一六・八という状況でございました。それ以降の見通しの問題がもう一つございます。それにつきましては、閉会中審査で九月中に何度か大蔵委員会で御質問を受けまして、率直に申し上げて、自然増収がありはしないか、それを補正財源に使うということはどうだというような御質問がむしろあったわけでございますが、そのときに私どもは、どうも税収の足取りは形はよろしいけれども今後かなり心配な点もございますと。ただ、先ほども申し上げましたように、最近までの実績とあとは見通しに乗りますので、第一次補正を組みました段階では、おっしゃいました総合対策によって実質六・七というものは維持できるという政府の見方でございまして、改定見通し実質成長率は変わっておりませんでした。それに乗っておりましたので、第一次補正の段階では税収減を見込むだけの確たるデータがないということを申し上げておったわけでございます。それ以後の推移はただいまおっしゃったとおりでございます。
  77. 穐山篤

    穐山篤君 去年の第一次の補正予算のときには村山大蔵大臣ではなかったわけですから、その当時のことについてお伺いしても多少無理があると思いますけれども、財政金融の専門家の一人として、去年第一次補正予算を組んでいた当時の状況税収の面からどういうふうにごらんになっていたのか、お伺いしたいと思います。
  78. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 税収の面からどのように見ておったかというのは実はいま大倉主税局長が申し上げたとおりでございます。  別の面から申し上げますと、政府が六・七を五・三%に落とし、そしてそれに関連する指標を改定したのは、恐らく十二月の初めか十一月の下旬だと思うのでございます。経済企画庁の説明によりますと、約一・四ぐらい落ちたわけでございますけれども、その一つは五十一年度からの土台、その辺の計算違いが一つありましたと、これが第一点でございます。それで、ちょうど落ちた分の三分の一ぐらいがそれに原因しております。それから第二番目は、ことし――ことしといいますか、五十二年度の七-九の国民所得伸びの実績がやはり十二月ごろわかりました。これが四半期で〇・五というので、これは大変だということで、それで落ちた分の約三分の一でございます。残りは円満によりますデフレギャップ、まあそういうことでございますという説明でございますから、いずれも十一月末ないし十二月末の段階で初めて経済指数を変更したわけでございますので、税の方は別といたしまして、経済指標との関連において税収見積もりを変更せざるを得なかったといういまの政府委員の答弁でございますけれども、やむを得なかったんじゃないかなという感じがいたしておるところでございます。
  79. 穐山篤

    穐山篤君 まあ、こういうときですからなかなか見通しをするのはむずかしいというふうには思います。しかし、景気が落ち込んできたのはきのうきょうだけの話でなくてここ数年のことです。そういう意味から言えば、もう少し歳入の見通しについて甘く見るんでなくて厳しく見ていく、あるいは辛く計算をしていくというのが常識ではないかというふうに思うわけです。現在、八千六十億円というふうに言われておりますけれども、これも最終的に締めてみなければわからないというしろものだというふうに思うわけです。  そこで、資料としては十一月までしかありませんので、これから一、二、三月分を見通しを立てるというのはなかなかむずかしいやに思いますけれども、五十二年度予算あるいは第一次、第二次の補正予算を通して見ても、それほど多い歳入を見込むということはむずかしいというふうに私どもは考えるわけです。その点、この八千六十億円という見積もりについてどういう計算基礎を持たれて計算をされているのか、大ざっぱで結構ですから御説明いただきたい。
  80. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 第二次補正で八千六十億円の減額を推計いたしました段階ではまだ十月末までしかわかっておりませんでしたのですが、その十月末までの実績を基礎にいたしまして、同時に経済企画庁の方から経済見通しの改定、下方修正された改訂版が出てまいりましたので、それに乗りまして、マクロ的に今後の見当をつけて、私どもとしてできるだけ正確を期したつもりではございますが、第一次補正後の税収に対して八千六十億の減収になるのではないかという推計をさしていただいた。繰り返して恐縮でございますが、わかっております最新時点でございました十月までの実績、それを基礎にしてそれ以降は修正後の経済見通しとの整合性を保ちながら見積もりをいたしたわけでございます。
  81. 穐山篤

    穐山篤君 これほど誤差が出ると言っちゃ語弊がありますけれども、まあ、二、三カ月先のことがわからないでよく一年分の予算を組むもんだというひやかしも最近たくさん出ていますが、そういうのは私ども含めて心していかなければならぬじゃないかというふうに思います。  くどいようですけれども、五十三年度の予算についてこれから審議に入るわけですけれども、五十三年度においても同じような問題が当然可能性としてはあると、こういうふうに思うわけです。  そこで、政府側としてはそれを補強する意味で、この法案もそうでしょうし、あるいは月の区分の変更についてもそうだし、まあ異例なことを一遍にここに持ってきたという感じがしないわけでもないというふうに思います。  さてそこで、この中身についてお伺いをしますが、臨時異例のものの一つなんですけれども、これはたとえば今年度あるいは来年度というふうに一時的な措置にしないで、制度的にこの決算調整資金というものを置くというふうに恒久的なものにしようとした基本的な考え方は那辺にあるか、その点をお伺いしたいと思います。
  82. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 先ほど法律案の提案理由説明でも申し上げたところでございますけれども、最近におきますわが国経済なり財政なりの推移を見てみますと、かつての高度成長期でありますと決算上租税自然増収を生ずる例が多かったわけでございますけれども、石油危機後の経済のもとにおきましては、年度途中における景気の落ち込みによりまして予期しがたい規模税収不足を招く蓋然性と申しますか、確率が高くなってきているわけでございまして、こういう情勢は今後続いていくんではなかろうかと思うわけでございます。  で、財政収支を決算いたしました場合にぴったりと合うということはないんでありまして、プラスの剰余金が出たりマイナスの不足が出たりということは避け得ないところであろうかと思うのでございますが、従来でございますと剰余の例が多かった、ほとんどマイナスの例はなかったということで、いままではまあともかくしのいでこられたわけでございます。これからはそのマイナスの例も出てくるということが予想されるわけでございまして、プラスの剰余金の場合には財政法にも剰余金処理の規定がございます。いわば決算上の不足と申しますか、マイナスの剰余と考えていただいていいかと思うんですが、マイナスの剰余についても制度的な備えをしておかないと円滑な財政運営ができなくなる、そういう時代に入ってきているんじゃないかということで恒久制度としてお願いをしている次第でございます。
  83. 穐山篤

    穐山篤君 いまも説明があったわけですけれども、マイナスの剰余の場合にこれに適法に対処する方途がないということでこの法律案を考えられたと思うんですが、過去の大蔵委員会あるいは予算委員会の記録を少し読んでみますと、必ずしもこの種の問題が全く議論をされないままに今日まで来ているかというとそうじゃない、幾つか例があったと思います。昭和五十年の公債発行に関連をして与野党から相当厳しい質問が行われた。当時、大平大蔵大臣からの答弁の中身を聞いておりますと、やっぱりそれは、まあ増税を求めるという方法もあるが、公債発行でマイナスの剰余金の問題については処理するんだ、それがその当時としては最適の道であるというふうに歴史的には残っているわけですね。その過去の政府の態度あるいは答弁と今回のこの法案とのかかわり合い、これについて明らかにしてください。
  84. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) かつて大平大蔵大臣が申し上げたのは、歳出に対しまして税収その他の通常の収入が不足している、そういう事態に対して増税で対処するかあるいは公債で対処するか、財政収支のつじつまをどちらで合わせるかという問題であったかと思います。それに対して、当時の情勢では一般的な増税をするのは適当ではなくて、公債発行で対処するのが適当であるという答弁をされたように思います。  いま御提案申し上げておりますのは、そういう全体としての財政収支をどう構成していくか、その年度、その年度においてどういうふうに構成していくかという、いわば財政政策としての問題というよりは、決算の段階における摩擦的な収入不足にどう対応するか、そういう意味ではやや技術的な財政制度としての仕組みを御提案申し上げ、御審議いただいているわけでございまして、もちろん、ことしのように収入不足が年度途中で見込まれました場合に、補正予算を提出いたしまして、片方で税収の減少を見込みまして、足りません部分に対しましては公債発行でそれをオフセットするというような補正予算を提出する、それで国会の御審議をいただいて対処していくというのが、これが通例だと思います。しかし、四十九年度に私ども非常に苦い体験をしたわけでございますが、年度を経過いたしましてから税収の不足が明らかになってまいりました。その段階ではもう補正予算をお願いすることができないわけでございまして、あのとき国会にも御説明申し上げましたけれども、政府段階で税収年度所属区分の変更を政令改正というかっこうでやりまして、どうにかしのいだわけでございますが、いまやもうそういう手段もございません。  その後、そういう事態が起きましたときにどう対処するか、何らかの制度的な備えが必要でないかということで、政府部内におきましても財政制度審議会などにもお諮りいたしまして検討を進めてきたわけでございます。まあ、今日御審議いただいておりますような制度を結論として得ましたので、国会にお出ししたわけでございます。
  85. 穐山篤

    穐山篤君 非常にそこが問題だというふうに思います。いま指摘されましたように、四十九年、五十年度の議論の中にもあったように私ども記録の上では読んではおります。しかし、その当時大蔵大臣の答弁としては、赤字決算をするわけにいかない、別段法律に書いてあるわけじゃないけれども、法律全体の精神からいってみて赤字決算はできない。補強する方法としては、五月三十一日までの調整期間中に、出納期間中に公債発行でつじつまも合わせる、これが最適な道だというふうに言われているわけですね。毎年その後、去年もそうだしことしもそうですけれども、税収伸びがない、あるいは減収ということは当然計算をしておかなきゃならないわけです。そうしますと、景気浮揚の話を仮に外に置いたにいたしましても、三月三十一日に赤字決算をするわけにいかない。そうなりますと、従来の手法でいけば、この調整資金というふうなプールの金でなくて、大平大蔵大臣が言った道を本来ならとっているはずだと私どもは考えるわけです。あえてどうしてこの資金にしたか。それも、ことし減収で、まあ二千億円金を借りてきて、ことしだけです、臨時異例措置ですと言うならば、これも一つの理屈があると思う。ところが、この法案は期限のついてない恒久法になっている。ということは、新しく制度をつくるということになるものですから、私としてはもう一度、大平さんの当時の政府考え方と現在の政府考え方、どこでどういうふうに変えたのか、よくわかるようにひとつ説明をしてもらいたいと思うのです。
  86. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) この法律をお願いいたしました趣旨は、その法律の第一条にもございますけれども、予見しがたい租税収入の減少などによりまして決算上不足を生ずること、そういう事態を生じた場合の措置です。大平大臣が申されたのは、いわば予算措置としてどういう措置をとるべきかという御議論ではなかったかと思うんです。でありますから、赤字と申しますか、歳入不足と申しますか、歳出超過と申しますか、そういうびっこの予算を組むわけにいかないんで、それは当然他の手段がなければ公債発行を予定いたしまして歳入に組んで、それで歳入歳出バランスをとったかっこうで御審議いただくということになるわけでございます。そういう予算措置、これは当初予算でも補正予算でもそうだと思いますが、予算措置ができれば、そういうやり方をするのが常道だと思うわけでございます。  ところが、先ほど来申し上げておりますように、年度末近くあるいは年度が過ぎてから税収の不足が見込まれるに至った、補正予算をお願いするいとまがない、そういう事態があり得るわけでございまして、そういう事態に備えて、いわば補正予算等では対処できない事態に備えての措置をあらかじめ講じておく必要があるんじゃないかということでお願いしているわけでございます。
  87. 穐山篤

    穐山篤君 赤字の決算はしてはならない、したくない、しない方がよろしいということになるわけですが、財政法の立場から言うと、特に財政法第四条の立場から言うと、国債の話もありますけれども、前段としては、常に収支償うという健全財政の立場が明記をされているわけです。それが財政の悪法とも言うべきものだろうと思うんですね。これが数件前から国債発行ということで、法的には許されておりますけれども、財政の再建あるいは財政健全化という意味から言うと、大量の公債発行というのは、毎回の国会で議論されておりますように問題が多いわけですね。その上にもっていって、もう一つ別な政策といいますか、制度というものをつくることになるわけですね。そうしますと、その財政法第四条で言っている財政の憲法をわれわれとしては十分守っていきたいという気持ちがあるわけですが、こういうふうに皆に腹はかえられないということで、幾つか異例の措置が最近持ち込まれている例が多いわけですし、今回もそういうふうに私は思うわけですね。ですから、財政法の見地からいってみて私はこの資金制度というのは好ましくない。財政民主主義、財政健全化という意味からいってみてもまずいのではないか、歯どめがなくなってしまうというふうに危険を感ずるわけですが、その点についての見解はいかがですか。
  88. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 財政法の精神につきましてはただいまお話がございましたとおりでありまして、公債発行をしない財政、それが健全財政であるという考え方に立っていると思います。公債に対する依存をできるだけ早く脱却しなければならないということは、私ども財政当局常に申し上げているところでございます。  ただいま御提案申し上げております決算調整資金の話は、ちょっと次元が違うわけでございまして、仮に公債発行しない財政のもとにおいてもこういう制度は必要ではなかろうかと思うわけでございまして、何と申しますか、税収の摩擦的な、あるいは誤差的な収入不足というのは免れない。これは常にあるというわけではございませんが、そういうことが起こる可能性を常に秘めているという情勢でございますので、何らかの手だてが必要であるというふうに思っているわけでございます。
  89. 穐山篤

    穐山篤君 そこで、少し具体的な問題を明らかにして見解をいただきたいと思うんですが、たとえば、第二次補正予算がこの間上がったわけですね。公共事業に金を使う、しかし、現実に一月三十一日に補正予算が上がって、まあこの二、三月において一斉に個所づけを含めて用地買収をしたりいろんなことが行われるわけです。午前中パンフレットが配られておりますけれども、公共事業が果たして消化できるかどうかという心配をしているわけです。私は、まあ補正予算――現実的には三千何百億かの金なんですけれども、工事が順調に進まない、あるいはまだ個所づけの段階で円滑に公共事業投資が予定どおり進まないということになりますとおくれる、金の使い残しということになるわけですね。仮に二、三千億程度の繰り越しが起きるということも可能性としてはないわけじゃない。ところが、この資金というのは二千億円を準備をされているわけです。その程度の金と言っちゃ語弊がありますけれども、現実に予算の、あるいは補正予算を含めて執行をする過程にあるわけですが、二千億円程度資金を立てなければ帳じりが合わないというふうなことにはならぬじゃないかと、そこの部分だけで言えばですよ、と思うわけですね。  また、逆にこういう問題も私は起きるんじゃないかと思う。一応二千億円という金が資金でプールされる。ところが、現実の問題としてはその枠を超える三千億も――三千億もということは、一千億月以上余分にまたどこかから持ってこなければつじつまが合わなくなるという例も考えなければならないと思うんですね。そうしますと、この調整資金二千億円というのは果たして根拠のある数字であるかどうかということが非常に疑わしいわけです。いま申し上げました、前段と後段の具体的な例を申し上げたわけですから、その点をひとつ明らかにしてもらいたい。
  90. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 二次補正で公共事業を組みましたのが消化がどうかという問題につきましては、いまちょっととさておかしていただきまして、繰り越しがもし出たらそれは相当の金額になるだろうから、二千億が必ずしも要らないんじゃないかというお尋ねであろうかと思います。  私どもが決算上の不足額というのを考えます場合に、収入と支出の差額だけ、その年の収入と支出の差額だけ、それを決算上の不足額と考えるんではございませんで、翌年度に留保しておかなければならない金というのが実はあるわけです。たとえて申しますと、決算で国税三税の収入実績が予算を上回った、そうしますとその三二%というのは後年度におきまして地方に交付税として交付しなければならないということでございますから、その分は財源を保留しておかなければいかぬわけです。  それから、ただいまのちょうど問題になっております、たとえば公共事業なんかの繰り越しということがございます。歳出権限を繰り越すわけででございますが、財源を持たないで繰り越したんでは翌年度の財政運営たちまち行き詰まるわけでございますから、財源をつけて繰り越すわけでございまして、これも翌年度へ保留しておかなければならない財源でございます。そういう翌年度へ保留して持っていかなければならない財源、その分は引きまして、残りがいわばプラスの場合でございますと剰余金である、不足額でございますと符号を逆に考えていただけばいいと思うんですが、でございますから、たとえば繰り越しが千億とか二千億とかあったと申しましても、ただいま問題にしております決算不足額には響かないわけでございます。それは操作した後の数字で判断すべきではなかろうか、計算の方式もそういうふうにすべきではないかということをこの法律でも予定しているわけでございます。  それから、二千億というものの根拠でございますけれども、今度の第二次補正予算で認めていただきました。この制度、決算調整資金という制度を創設するに際しまして、いわば元金をどの程度計上するかという問題であろうかと思いますが、過去の経験に徴しまして税収の一%程度というのを一応のめどにいたしまして、いずれランプサムの数字でございますから、めどのつけようであろうかと思いますが、そういうめどで計上さしていただいたわけでございます。  これで足らない場合どうなるかというお尋ねでございますが、この法律の附則に書いてございますように、もしもそういう事態がありましたら、第二線準備といたしまして、国債整理基金からこの資金にいわば借り入れができる道を開いてございますので、それを活用するというものになろうかと思います。
  91. 穐山篤

    穐山篤君 また、いまの答弁の中で私どもの気持ちから言うと異例中の異例の問題がまた出てくるわけですね。もし二千億円で足りない場合に、国債整理基金の勘定の方から金を借りてきて積み増しをする。この国債整理基金というのは、釈迦に説法ですけれども、過去大蔵省がいろんな説明を加えておりますけれども、これは消費型の勘定だ、これは出ていくものだ、これを当てにすることはよくないぞというふうに言われていたし書かれていたし、またそういうふうに述べられているわけですね。どうして国債整理基金から持ってこなければならないか。これも、言ってみれば私は異例中の異例だというふうに思うわけです。これは積み立てて返す勘定であるはずなんです。そこから金を借りてくるというのは全く筋違いの話ではないかというふうに思うわけですが、その点もう一度明らかにしてもらいたい。
  92. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 国債整理基金は、これもいろいろの機会に論議されているところでございますけれども、ただいまなぜそういう資金がたまってまいるかと申しますれば、一つには定率繰り入れというものがございまして、前年度首の国債残高の一・六%というのを一般会計から繰り入れている。それでたまってくる。それからもう一つは、前年度剰余金の二分の一を下らざる額をこれまた一般会計から入れるということになっております。そのほか、予算繰り入れ、予算で特別に計上して繰り入れるという三つの繰り入れの道があって国債整理基金というものがたまってくる。片方で、国債の償還というのは満期償還制度をとっていますので、ある時期におきましては償還が少なくて繰り入れが多いという時代が続いてまいりますから、だんだん基金の残高がふえてくるということになるわけでございます。  この基金そのものは、単に積み上げているだけじゃございませんで、場合によりますと国債管理政策に活用するということをやっているわけでございますが、先ほど申し上げましたように、剰余金がかなり有力な財源になっているという点が一つあろうかと思うわけです。つまり、プラスのと剰余金というものは一般会計からこの基金に繰り入れてある。いわば、特別会計なんかで申しますと剰余金を積立金という資金に積み立てておるわけでございますが、それに近い機能を果たしているわけでございます。特別会計でございますと、今度決算上不足を生じましたような場合にはその積立金を取り崩して不足を埋めるという制度を採用しておる例がかなり多うございますけれども、それと並べて考えてみますと、そういうプラスの剰余金をためている国債整理基金から、一般会計が決算上不足を生じた場合、つまりマイナスの剰余金を生じた場合に、そこから一時流用して、借用して埋めるやり方をとることもあながち変な話じゃないんじゃないか。もちろん、国債整理基金の方の御都合が第一でございますから、そちらに支障を来すのではぐあいが悪いわけでございますけれども、支障を来さない場合にそういうことをさしていただいて翌年度までに返さしていただくということで一時のしのぎをつけるということも、第二線準備のやり方でございますけれども、あながち意味のない、あるいはいわれのないことではないんじゃないかということでお願いしているわけでございます。
  93. 穐山篤

    穐山篤君 私、気持ちの上で少し矛盾を感じながら質問をするわけですが、最悪な事態になって、二千億の資金では足りない、あと五百億なり一千億足りないんで国債整理基金の方から金を借りる道があるんだという説明があるわけですが、そうしますと、国債整理基金の方は約九千億円ぐらいあるんですか。それならば、最初から金を一時的に借りるという立場ならば、私は好きじゃありませんけれども、国債整理基金の方から二千億なり三千億なぜいきなり持ってこないで、幾つか重ねた上にその道もあるんだというふうに考えられたのか。私は国債整理基金を使うことは好ましくない、いやだという気持ちなんですけれども、金勘定の立場から言うならば、その道があけてあるならばなぜ国債整理基金の方から全部持ってこないんだという説だって成り立つわけですね。その点はどうされるのですか。
  94. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 恒久的な措置としてどうかという話と、それから、いま特例公債発行している財政でございます、そういう財政下においてどうかという話と、ちょっと二つに分けて考える必要があるんじゃないかと思うのです。  先ほど来申し上げておりますのは、ことしの二千億がたちまち足らない場合はどうかというお尋ねでございますので、まさにいまの財政状況特例公債発行しているいまの財政状況を前提にお話し申し上げたわけでございますけれども、特例公債を脱却いたしました財政状況下においてこの資金はどういうふうなかっこうで運用されるかということを申し上げさしていただきたいと思うわけでございますが、この法律の第四条の第一項にございますように、財政法六条に規定いたします剰余金を生じました場合には、財政法六条の規定によりまして、二分の一は国債整理基金に入れる、あとの二分の一はいわば一般財源として使っていいことになっているはずでございますが、その分はできるだけこの資金に繰り入れたいというのが一つ考え方でございまして、これは、先ほど来申し上げておりますように、プラスの剰余金を積み立てておいて、マイナスの剰余金と申しますか、決算赤字が出た場合に補てんしていくという制度というのは自然な姿ではないかというところにその発想があるわけでございます。そういうやり方でやっていくのが、いわば恒久制度といたしますとイデアールティープスに申しますか、理想型でなかろうかと思うわけでございます。でございますので、恒久的な制度として考えました場合にはそれがまずある。  で、ただいまのような特例公債発行下で剰余金の発生も少ない、あるいは剰余金につきましてもできる限り国債償還財源の方に回さなければいかぬというようなつらい財政状況のもとで、この資金が十分充実できないというような財政状況のもとにおきましては、国債整理基金からの一時借用という道を開いてつないでおくという、これがいわば第二線準備と申しますか、本来の姿ではない、いわば当分の問の仮の措置であるということで位置づけておるわけでございます。でございますから、やはりそういう意味での資金を恒久制度としては考える。要するに剰余金をもってマイナスの剰余金を補てんするというそういう基本構想に立った資金をつくるというのが恒久制度としては本来の姿ではないかと思うわけでございます。
  95. 穐山篤

    穐山篤君 国債整理基金特別会計法を読んでみても、それは国会で決めれば何でもいいんだということかもしれませんけれども、この金に他の理由で手をつけるということは、禁じてはいませんけれども、第一条、第二条の性格から考えてみて、他に使うということは私は精神的には許されてないものじゃないかというふうに思うわけです。これは第二、第三の緊急避難の道だというふうに言われるわけですけれども、つけていい道と手をつけてはならないものとあると思うんですね。私は手をつけてはならないのがこの国債整理基金ではないか。まあ、先ほど私が金額から言えば九千億の中から一時借用という荒っぽいことを申し上げたわけですけれども、たてまえから言えばこれには手をつけてはならない、つけない方がいいんだという長年の歴史、慣習というものがあったと思うんですね。  そこで、背に腹はかえられないから、いろんなものを見て、去年も積立金の手直しもいたしましたけれども、財源のあるものは全部手をつけるんだというふうなやり方では、財政法の精神が私は死んでしまうんじゃないかというふうに思うわけですね。特に財源捻出の方法として国債整理基金から持ってくる、これは私どもを含めてこれから将来子供や孫が銭をしようわけですからその金に手をつけていく、国民の立場から言えばとても納得できる筋道ではないと思うんですね。もう一度お願いしたいと思います。
  96. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 国債整理基金特別会計法の第一条第二項には、おっしゃいますように、「国債整理基金ハ国債ノ償還発行ニ関スル費途ニ使用スルモノトス」ということでございまして、そのほかに使うことを許していないということであろうかと思います。「国債ノ償還発行ニ関スル費途ニ使用スル」と申しますのは、使い尽くしてしまうという、消費してしまうという趣旨であろうかと思うわけですが、今回のように一時繰りかえて運用させてもらうということでありますれば、消費してしまうわけではないわけでございまして、数カ月あるいは一年程度の後には国債整理基金に戻るわけでございます。しかも、国債整理基金の方の都合がそういうことを許さなければそれはできないということに法律上なっておるわけでございますから、国債整理基金特別会計法第一条第二項の趣旨には反しないと思いますし、それから、ある意味ではその第四条の国債整理基金の運用の仕方を規定しているところの特則的な考えになるのではなかろうかと思います。
  97. 穐山篤

    穐山篤君 少しこだわりますけれども、もう一度そこを明らかにしてもらいたいと思います。  いまお話があったように、国債整理基金の方はまあ通過型、消費型の勘定ですね。したがって、それに差し支えない範囲で一時金を借りてきて、その次には返す措置をとる。それはそうなければつじつまが合わないわけですから手段としてはそういうことになると思うんです。  さて、少し例外の話を持ち出すわけですけれども、差し支えがあるという場合には金は使えないわけですね。現実に二千億円では足りないと、三千億円――あと一千億円余分にどこかから都合してこなければならないという場合にはどうするんですか。
  98. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 差し支えがある場合と申しますと、ただいま――ただいまと申しますか、五十二年度末では約九千九百億ぐらいに基金の残高はなろうかと思いますが、その中で国債管理政策上何がしかの金をそちらの方に使いたいということは十分あり得るわけでございます。それが何ぼであるかというのはいま申し上げるという段階ではないわけでございますけれども、九千九百億すべて使い切るということはまずなかろうかと思います。しかし、それがどうしてもないんだという場合にはいわばお手上げ状態にならざるを得ないということでなかろうかと思います。その場合には、何かその事態に即しまして特別立法をお願いするとか、そういう非常手段をとらざるを得ないのではなかろうかと思います。
  99. 穐山篤

    穐山篤君 常識論から言うと、年度の途中あるいは決算期であろうが、ごく常識的に補正予算を組んでいる、これは従来のやり方ですね。ところが、最近景気落ち込みでいろんな異例の事態が起きてくるわけですね。そこで、いまもお話があったように、国債整理基金の方には何らかの理由があって手がつけられない、しかし財源がない、何とかしなきゃならない。通常の場合で言えば、冗費を節約するとかあるいは年度の途中で増収対策を講ずる、あるいは徴税について努力をする、いろんな道が行われるわけですが、現在いろいろかかっております法律案を考えてみても、前広に十分に努力をしてなおかつ金が足りないという状況ならばそれほど問題にしなくてもいいと思うんですが、率直に申し上げて、それぞれ委員からも指摘がありますように、不公正税制の問題を初めとして、まだまだ努力しなければならない道が事前にあるはずだというふうに思うわけです。こういうようにせっぱ詰まった段階ではその話というのはなかなか軌道には乗りませんけれども、さて私がいま申し上げたように、二千億を資金としてプールしておったけれども現実には金は相当足りない、お手上げということで始末をするわけにはいかない性格を持っているわけですね。そうすると、一つの方法として、この二千億円の資金財源の一部の中に公債発行資金も入っておるわけですね。そう見ますと、お手上げだからというようなことで始末するわけにいかないとするならば、もっと常識的な道、あるいはやりやすい道、あるいは異例だけれども全会一致で国会の承認がもらえそうな道というのが私は正しいんじゃないかというふうに思うわけです。異例の事態が起きやすいから私は二千億円でも足りないという場面を想定するわけです。そうしますと、財政法第六条から上がってきた利益金を回したり、いろんなこともあるけれども、もっと別の道をとって、この制度によらないで金を、歳入歳出をおおむねとんとんにする道というものは他にあるはずじゃないかと私どもは思うわけです。幾つか私は例外の話を出しましたけれども、案外例外の話というのが最近当たっているんじゃないかと思うんですね。ですから、この二千億円の資金財源の出場所から考えてみても、この資金のため方については少し問題があるというふうに思うわけです。前段、私が昭和四十九年、五十年のときのお話を申し上げましたけれども、財源の一部に公債発行のものが含まれている。含まれていないというならこれはまた話は別ですけれども、含まれているなら、あえてなぜこの制度をつくることになったのかということがいまだに解明ができないわけです。その点大臣いかがですか。
  100. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いまの話でございますが、恐らく特例公債発行したらどうかと、こういうことでございますが、仮定は――いま特例公債発行の権限、これは歳入権限でございますが、これは限定されているわけでございます。これ以上出すわけにはいかないのでございます。仮定している場合は、その歳入権限を使ってもなおかつ不足する、こういう場合を想定しているわけでございますので、またその可能性もあるわけでございますので、これでひとつお願いしたい。  その場合、先ほどから申し上げておりますように、本来でございますと、本則的な考え方は何といっても決算上プラス、マイナスが出てくるわけでございますから、公債償還財源に入れた残りを入れるというのはこれは本則だろうと思います。その次が予算繰り入れかなと。最後は第二線準備で最後に借りる。こういう手をとったわけでございますが、本則の剰余金から入れるという道は、いま現実にはマイナスの危険が多いものですから、これは恒久制度として、制度として置いてあるわけでございます。とりあえずは元金を二千億程度入れさせていただきたい。われわれとしては二千億以上出ないことを望んでおりますし、そして、先ほど主税局長が申しましたように、最も的確にあの時点で見積もったわけでございますけれども、何分にもいまのようなことでございますので、二千億を超える場合が理論的にないというわけにはいきませんので、そこで一時借りる。それでどこから借りるかというと、やはり剰余金の処分と関係のある国債整理基金というのが一番やはり関係の深い特別会計である。しかも、二つの歯どめがありまして、これは使ってしまう――もらうのでなくてお借りするんだということでございますから、整理基金の方の第一には違反しない。四条でしたかに、運用については運用部あるいはみずから国債を持つというような運用が許されているわけでございますけれども、今度の考え方はこの決算調整資金に貸すという運用の道を、向こうの会計から見るとその道を開く、こういう関係でございます。できるならばそんなところから借りたくないわけでございますけれども、制度でございますので万一という場合の道を開いておきたい。これは要するに、先ほどお話ありました、ほかにもいろいろ道はあるじゃないかと。今度いろいろ財政審議会でも討議になったようでございますが、繰り上げ充用というのはどうであるか。地方財政でやっておるわけでございます。あるいは年度越しの短期証券を発行したらどうか。これはいずれにいたしましても現在の財政法が考えております単年度主義というものを言ってみますと崩すかっこうになるわけでございますので、いろいろ検討した結果、やはりそれは財政法の全体の趣旨に合わぬのじゃないか。やはりここに恒久的に健全財政――おっしゃるように公債、特例債がなぐなった場合、極端に言いますと、もう公債が全部なくなった場合にもこの問題は理論的にあり得るわけでございますので、恒久的な制度として設けさせていただく。特にことしは、先ほどから主税局長が申しておりますようにできるだけ確実に見積もった、見込んだつもりでございますけれども、なおマイナスのおそれなしとしないのでございますので、かねがね問題になっておりましたこのマイナスの決算をどうするかということは、五十年来財政審議会で討議いただきまして、そしてこの制度が一番よかろうということが、去年の十二月でございましたか、結論が出ましたので、この機会にひとつ恒久的な制度をお願い申し上げる。非常に財政状況が悪いものですから、いや、お前はどろなわ式でもってきたのじゃないかという気持ち、あるいはやりくりやるんじゃないかというようなお気持ちがあるかもしれませんが、決してそういうつもりではないことを申し上げておきます。
  101. 穐山篤

    穐山篤君 二千億円以上出ないように努力したいし期待をしていると。まあ気持ちはそうだろうと思いますけれども、現実的に二千億を突破をして、先ほど例を出しましたが、三千億円、四千億円も必要になると、そのときにはもうパアだと、お手上げだと。感情論としてはそれが通るかもしれませんけれども、財政を預かっている立場から言うとそれは許されない。そのときにはどうされるのですか、大臣。具体的に補てんの道ですよ。
  102. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) そういう事態というのは余り予想されないんじゃないかと思うんです。と申しますのは、いま国債整理基金に、先ほど申し上げましたように九千億余りのお金がある。これは国債整理基金の方が使っちゃ困るという事情があれば使えないんだということを申し上げたわけでございますけれども、まずそれほど多く国債整理基金の方で運用上必要だという――保留しなければならぬという見通しはいまのところないように思いますんで、かなり使えるんじゃないかと思うんです。二千億を上回る決算不足が出る可能性というのは無論ないわけじゃないと思いますが、その場合にも国債整理基金という第二線準備をもってこれを補てんし得るチャンス――チャンスと申しますか可能性と申しますか、それはかなり高いんではなかろうかというふうに思います。ただ、仮定の話でございますけれども、それでどうしてもだめだという場合にどうなるかということでございますが、いま私ども申し上げております決算不足額というのは、歳入歳出両面にわたりまして努力できる余地があればすべて努力をした後の不足額というふうにお考えいただいていいと思うんです。つまり、年度内にそういうことがわかれば補正予算をお願いするとか、あるいは歳出を締めるとか、いろいろな手だてがございましょう。そういうようなことがもうできなくなっちゃってからの話を申し上げているわけでございますので、ほかに手だてはないということになろうかと思います。その場合にはどうするかと。もうこれは、仮定の話でございますが非常事態であろうかと思いますので、その事態に即応しましていろいろ措置を講じなければいかぬ。場合によりましては特別立法といったようなことまで考えなければいけないようになるかもしれない。そのほか――そういうことまで考えざるを得ないのじゃないかということであろうかと思います。
  103. 穐山篤

    穐山篤君 年度の途中ならば補正予算という手続があると。しかし、予見できないという、そういう立場からこの話が出ているわけですが、それは見方、考え方によればあらかじめわかっているわけじゃないんですよね。あらかじめわかっていれば事前の措置を十分に講ずる道が法的にもあるわけですね。あるいは政治論としてもあるわけです。そうすると、それは一時的な問題ではないかというふうに考えるのが当然だと思うんですね。ことしはこういう状況でしたけれども、来年にいったら自然増収があるかもしれない。それはその年々によってみんなわからないわけですね。そうすると歳入不足、あるいは歳出に必要な歳入ですね、これは不足した部分を一時的に補うという性格のものだと思うんですよ。ところが、私、先ほども言いましたように、これは期限がついてないですね。期限がついてないということは、恒久的な制度として存在をするということになる。そうするとこれは一時的な、まあ予見することがむずかしいという立場から言うと、法律の根拠というのは非常に無理がある、法律をつくる根拠に非常に無理があるというふうに思います。その点はどうですか。
  104. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 先ほど来主計局からお答えいたしておりますように、補正予算で処理をする機会があれば当然まずそこで国会の御審議をお願いする。それが私どもの気持ちでございますし、この法律の運用上もそういうことであろうと思います。  ところで、それをもっと具体的に考えてみますと、万一の場合に備えてこの法律のようなことをさしていただきたいとお願いをしておる状態はことし限りであろうかということでございまして、たとえば補正を十二月にお出しするか一月にお出しするか、それはまた別の要因でおのずから決まりましょうけれども、ぎりぎり申せば、いわば政府部内で準備をするタイミングとしては、まあ三月の上旬というのが恐らくはぎりぎりでございましょう。その段階では実はまだ一月税収もよくわかっていないわけでございます、正確には。ましていわんや二月、三月、四月分の税収というのはわからない。しかも二月、三月、四月の税収の中には法人税収と三月の申告所得税収というかなり大きなかたまりがございます。それがかなりの誤差でもって動き得るわけでございまして、私どもそのための責任を負わされておるわけでございますから、できる限り正確に見積もるべき努力を当然いたしますけれども、率直に申し上げて、ちょっと神様でもわからないような誤差というものがあり得る。その誤差がわかってくるのは、三月三十一日が終わってから初めてわかってくるわけでございますので、少なくともその誤差部分と思われる程度のものは今後とも起こり得る。上方にももちろん起こり得ます。上方に起こり得ればそれは剰余金の問題になる。なるべく特例債を出している状態で剰余金が出ないように運営するというのは、出納整理期間内の特例債発行額の調整で行う。しかし、下方の場合には特例債発行額の調整という手段はもうきかないわけでございまして、やはり何らかの手段で決算が組めるようにしないといけない。  したがいまして、くどくなりまして恐縮でございますが、三月上旬ぎりぎりの時点で依然として三カ月分、また五十三年度以降は四カ月分の税収について判明いたさないという状況で、仮に年度が経過した後に万一の事態が起こった場合の処理方式というものを、四十九年度の決算で苦労いたしまして以来五十年度からずっと勉強してまいってみまして、主計局から申し上げるように、いまの財政法の考え方を一番崩さずに済む方式というのはいまお願いしておる方式ではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。その意味で、五十二年度が何とかなれば五十三年度以降はこういう種類の問題が発生しないかと申しますと、発生する可能性を考えざるを得ないと申し上げた方がよろしいかと思います。
  105. 穐山篤

    穐山篤君 調査室からの参考資料が入っておりますが、その四ページに、その他の方法というのは適法性があるかなしやで例が書かれています。「翌年度の歳入で支弁する。」これは地方公共団体の場合にはその道がありますけれども、確かに国の場合にはこれは無理だというふうに思います。一番最後に証券、あるいは日銀からの一時借り入れで支弁する。ここでは「法律上の根拠がない。」というふうに実は決めつけているわけですね。  ところが、皆さん方のお話でいうと、国債整理基金特別会計の方から、何にも書いてないから根拠があるとかないとかというのは言いがたいと思うけれども、こっちの方では金を借りてくる根拠があるんだと。どうしてこの証券なりあるいは日銀からの借り入れでは法律上の根拠がなくて、国債整理基金の方では法律的な根拠があるのか。これはだれが考えても不思議だと思うのですね。その点いかがですか。
  106. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) これは「財政制度審議会報告」を再録したものでございます。四ページのところは、いわば現行制度はどうなっているかということについての解説でございまして、現行法上は法律上の根拠がないのだ、ということを言っているわけでございますが、続きまして七ページ以下でございますが、決算調整資金以外の制度が考えられないか。というのは、これは立法論として今度は掲げてあるわけでございまして、それぞれにつきまして具体的に理由を挙げて適当でないという趣旨が述べられているわけでございます。最初のが、つまり現行制度としての解釈論、立法論としてはどうかというのは別問題として、その後の方に掲げられている、そういう構成をとっているわけでございます。
  107. 穐山篤

    穐山篤君 どうもまだ私すっきりしないのですが、過去何年か予算を組み、あるいは年度の途中でいろいろな財政的な努力をしてそれで決算をしてきた。そういう熟練を得ているわけですね。しかし、この段階になって――まあ金額は二千億とか、私は金額のことにはこだわるつもりはありませんけれども、事前のその努力を最大限やってみてなおかつ金が足りない、収支が均衡しないので方法を考えてもらおうじゃないかというのが道筋ですよね。私は二千億という数字にこだわるつもりはありませんけれども、たとえば増収対策を講ずる、あるいは徴税対策を講ずる。よく新聞にも出ておりますように脱税が多い。そうなりますと、皆さんの方では要員が不足をしているとか、いろいろなことをおっしゃられるでしょうけれども、この程度金額ならば、いま申し上げましたような最善の努力をすることによってつじつまを合わせるということは私は可能だと思うのです。これが五千億とか一兆円というような話になると、とてもじゃないけれども手が届かないことはよくわかります。不公正税制にしてみてもしかり。徴税について最善の努力をして漏れがないようにすることもそうだろうというふうに思うわけですが、その最善の努力というところが、われわれを含めて、政府がしっかりやっているというふうにはどうしても見るわけにはいかないというふうに思うわけです。特にその点について大臣考え方を伺います。
  108. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 二つの点の御指摘があるように思います。  一つは、先ほど申し上げましたように、補正予算国会審議をお願いするという物理的機会がついになくなった状態ということを予想していまお願いしておるわけでございまして、したがって、ごく簡単に申せば、三月末が過ぎてしまって、四月の終わりとか五月になってどうも足りないということがはっきりしてきたという最悪の事態のことでございますが、その場合に徴税面での手当てということは、私二つの意味でやはり適当でないと思います。  一つは、やはり徴税面での適正化を図るということは終始一貫常にやっていなくてはならないことでございまして、どういう言葉を使えばいいのかちょっと戸惑っておりますが、いわば弾を残しておいて足りないときにまとめてというようなこと、それはむしろやるべきでないことであろうと思いますし、技術的に申しますと、その四月、五月に更正した部分というのは、それはもう新年度に納税義務が発生する分でございまして、それを旧年度に取り込むわけにはまいりません。  それから、制度改正も同様でございまして、翌年度の四月なり五月になって千億ぐらい足りないなという状態をここで予想しながらお願いをしておる状態でございまして、そのときに法律なり政令を改正して、新しく負担増加をお願いして、それが旧年度の税収になるというふうには技術的にもできないわけでございます。
  109. 穐山篤

    穐山篤君 国債整理基金からの繰り入れというのが附則に出ているわけですね。国債整理基金の勘定というのは、神聖にして侵しがたいとは言いませんけれども、昨今の議論から言えば、きわめて重要な問題であるはずだと思うんですね。これを私は簡単に附則でやっているとは言いませんけれども、本来国債整理基金の一部改正とかあるいは財政法の一部改正があってこの資金に関する法律がつくられる。もとの根拠法である財政法を崩さないで、それの付随として法案が提起されるのではないかと見ていたわけですが、そのものずばりで、これは資金だからという気持ちがあったのかもしれませんけれども、そのものずばりで、そちらの方の基本は全然手を触れないでいきなりこういうふうに法案が書かれた。非常に大切な勘定である国債整理基金というのが単純にこの附則で取り扱われるということについて私は非常に危惧の念を持ちますし、財政法の立場から言うと、なし崩し的に健全財政あるいは財政法が崩れていってしまうのではないかと心配をする一人です。その点について御見解をいただきたいと思います。
  110. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) お答えが逆の順序になるかもしれませんが、財政法の関係から申しますと、こういう制度を考えます場合の一つの立場と申しますか、考え方の出発点になりますところは、財政法の諸原則にできるだけ忠実にと申しますか、財政法の諸原則を曲げないで制度が仕組めないかということでございまして、ただいま御提案申し上げていますような制度は実は考案したわけでございます。これは財政法の諸原則を曲げてないということが申し上げられようかと思いますので、そういう意味で財政法を改正する必要はない。しかし、機能的に言えば財政法を補完していると。財政法が規定しておりません事態、これは従来はそれほど必要性を感じなかった事態かもしれませんけれども、今後備えなければならない事態、決算不足という事態でございますが、それに対する制度的な対処をするということでございます。  それから、国債整理基金からの繰り入れが附則になっておりますのは、これは当分の間の措置として規定しておるわけでございまして、制度本来の姿といたしましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、剰余金、プラスとマイナスと、こう考えまして、プラスでもってマイナスを埋めていくということが制度本来の趣旨である。しかし、いま特例公債発行しているような財政状況でございますので、風下のところそういうことだけではとても対処できないので、国債整理基金からの道も開いておこうじゃないか、第二線準備として開いておこうじゃないかということでお願いしているわけでございまして、当分の間の措置として――本道ではございません、第二線準備として考えさせていただくということでそういう措置にさしていただいているわけでございます。
  111. 穐山篤

    穐山篤君 この第九条の二項ですね、「次の常会において国会に提出して、その承認を求めなければならない。」と、予備費もそういうことになっていますけれども、この資金というのは、制度というのは、財政法の立場からいえばかなり異例な事態で異例な法律をつくると。金額の多寡の問題は別にしましても、その資金をどういうふうにしたんだということは非常に注目しなければならないし、重要な課題だと思うんです。  さて、現実的な問題ですが、この資金というのはやっぱり年度末に使われるわけですね。その次の常会においてということになれば、理屈の上から言えば臨時国会、あるいはその翌年の――翌年のというか通常国会になる。かなり時間がかかるわけですね。予備費についてもどういうふうに使われたかということは私ども注目するわけですが、この資金というのは予備費以上に性格から考えてみれば重要な資金であることは間違いない。それが半年かあるいは一年後でなければわからないというふうなことでは、たてまえとしてよくないんじゃないかというふうに思います。まあこれは法律だからこういうふうに書いたんだと、できればその途中途中で大蔵委員会に報告したいというふうに多分おっしゃられるでしょうけれども、この資金の使用あるいは報告というものについての考え方はどうなんですか。
  112. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 予備費につきましては憲法に規定がございまして、本来歳出権限を付与するのは国会の権限であろうかと思うわけでございますが、予備費という特殊な制度があって内閣の責任において歳出権をつくる。したがいまして、事後において国会に承諾を求めて政治責任を解除してもらうというのが憲法の規定ではなかろうかと思うわけですが、そういう趣旨からいたしますと、この制度について、制度的なバランスとして必ずしも国会の事後承諾にかける必要がないんじゃないかという議論もあり得るわけでございます。  ただ、ただいまおっしゃいましたように異常な事態、異常な決算をしたという事態に対する政治的責任を解除する意味がございますので、まさに予備費の例にならいましてこのような規定を置いたらどうだろうかと、それが国会財政に対するコントロールの手段ではなかろうかと思うわけでございまして、制度的に申しますと予備費と同じやり方になろうかと思います。
  113. 穐山篤

    穐山篤君 最後に、大臣にお伺いをするわけですが、異例な事態というのは幾つかの時期にあったわけですが、昭和四十九年も五十年も財政の立場から言えば異例であったと思うんですね。そのときには、出納期間中に公債発行というふうな形の中で処理をした。ところが、あれがかなり評判が悪いということもあったのかどうなのかわかりませんけれども、他の道を、この決算調整資金でなくて他の道を考えたことがあるかどうか。もうこれだけでいくんだというふうに腹を決めて、それは国会審議を願うということだろうと思いますけれども、他の道を、幾つかいろんな道があると思いますが、具体的に大臣検討されてこの道以外にはないんだということになったのかどうなのか。あるいはこれができ上がりますと、とりあえずは二千億円という金でしょうけれども、場合によればどんどん枠が拡大をしていく。健全財政の立場から言って非常に心配をするわけですね。どこで歯どめをかけるのか、そういう点も含めて最終的にお伺いしたい。
  114. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) ほかの方法も検討しなかったのかという点について私からお答えさしていただきますが、先ほどの調査室がつくられました資料の七ページ以降でございますが、決算調整資金考え方以外の制度として考えられる諸構想について検討した結果を述べております。  まず最初が、地方団体でやっておりますような繰り上げ充用の制度でございます。これに対しまして、この審議会の検討の結果は、国の場合には地方団体のような専決処分といったような制度もないし、なかなかタイムリーに運用できないのじゃないかということと、それから翌年度の歳入を使っちゃうというやり方は、やり方次第ではあろうけれども、財政の節度を失うことになるんだということで否定的であります。  それから二番目の検討の構想は、年度越し一時借入金または年度越しの大蔵省証券の構想、これに対しましては、年度越しの所要額というものを年度末、つまり三月三十一日までに確定しなきゃいかぬわけでございますが、それは先ほど来議論されておりますように、きわめて困難であるというか不可能であるということが一点。それから、実際問題といたしまして三月三十一日に国庫に余資があるのに外部資金を導入するというフィクションを使うわけでございまして、それも余りにもフィクショナルではないかというのが第二点。それから、結局翌年度にその借入金なり大蔵省証券を償還しなきゃいかぬわけでございまして、その意味で翌年度の財源を使っちゃうということでございまして、これは繰り上げ充用と同じ欠陥が財政の節度面であるというのが第三点でございます。  それから三番目の構想といたしましては、長期公債発行によって決算上の不足を補てんするという構想でございますが、実際問題としましては特例公債で決算上の不足を補てんするという考えでありまして、こういう制度を恒久制度として設けること、いま特例公債は毎年毎年授権をいただいております臨時異例の制度でございますが、そういう制度を恒久制度として設けることは非常に問題じゃないか、財政運営の安易化を招くおそれがあるのじゃないかということで、それらの三つの構想については消極的でありまして、そこで六ページにさかのぼるわけでございますけれども、財政法の諸原則に沿った財政運営が安易化しない、節度のある財政運営というものが期待できる決算調整資金がいいんじゃないかという結論を述べておるわけでございます。
  115. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま一つの他の方法を選ばなかった理由につきましては、山口次長から申し述べたところでございます。  二つあと問題が残っておりまして、過去においては何とかやれたじゃないか、特に特例公債発行で調整できたんじゃないかと、こういうお話でございます。しかし特例債の方は、これは言ってみますと、いま予定しております事態は、特例債の発行をやってもなおこういう場合があり得るわけでございます。当然のことでございます。特例債がなくてもこういう問題があるわけでございますので、これは特例債があるなしにかかわらず問題が起きるわけでございます。特にわれわれが一番問題になりましたのは、四十九年のあの事態では、もうかろうじて、いわば三月末に納税義務が発生してそして四月収入になる分を年度所属区分をやりまして四千四百億ぐらいやったわけでございます。もうその道はないわけでございますので、どうしても何らかこういう結果的に起きる問題については考えていかなきゃいかぬということでやっているわけでございまして、過去の例が決して過去の例で片づけ得るという性質の問題では問題自体がないのでございます。  それから、最後の歯どめの問題でございますけれども、これは一番大事なものでございますけれども、第一に、一つはこれは全部国会の御審議をいただきましてたとえば予算繰り入れをやる。今度ちょうどいまお願いしておるのは、この法律の第四条第二項で予算繰り入れがございます。これはいま二千億ということでお願いし、それでその金額について御審議を賜るわけでございます。さらには、この決算調整資金は年度越しになりまして、結果的に歳入が不足した場合にしか使えないと、こういうことでその使途は限定されておるわけでございます。そしてまた、それを使いました場合には、国会に調書を出しまして次の常会で国会の承諾をいただくということでございまして、政府当局のとりましたその措置が妥当であったかどうか、これまた国会の御批判をいただくわけでございますので、その意味で歯どめが十分かかっておると、かように考えておるわけでございます。
  116. 穐山篤

    穐山篤君 また、この委員会に例の区分変更の法律が出るわけですね。歴史と伝統から言うならば、予想もしていなかったことなんです。財源が足りない、だから食えるものはどんなものでも食ってしまおうという意味では、これもそうだし、その区分変更もやや便宜主義的じゃないかというふうに思うわけです。それは、収支均衡を図るという立場からいろいろな苦労をされるのはよくわかりますが、少し歳出の方を苦労して抑える。今度も五十三年度予算の議論の中で天から銭が落ちてきたという話があるくらいで、あるいは私の出身のところなんかでもそうですが、要求した額の五割増しにつけてくれて実は困っているんだというふうな事例がたくさんあるわけですね。ですから、収支均衡というのは何も収入だけの問題じゃないと思うんですね。歳出のことについても十分に考えてもらわなければやっぱり増税という道をとらざるを得なくなってしまう。  そういう意味で、言いっぱなしで恐縮ですけれども、財政法の見地あるいは財政の憲法とも言うべき財政法というのがなし崩しに崩れていくというふうに私は危険を感ずるわけです。大臣は長い財政金融の経験があるわけですから、崩れないようにありとあらゆる努力をしていただいて、やっぱり財政法第四条に示す精神を回復をしていただきますように心から期待しておきます。
  117. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 後ほどまた別途、別の法律をもちまして歳入の五月末までの減収面について年度所属区分改正した理由を申し上げますので、その際に譲らしていただきますが、そのようなつもりでやっておるわけではございませんし、また、財政健全化という問題は最も大事なやはり財政当局として心得べきものと考えておることを申し添えまして、御答弁にかえさしていただきます。
  118. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、まず決算調整資金の問題について質問したいと思います。  本委員会あるいは予算委員会等におきまして論議されておりますが、私はもう一度尋ねたいのは、政府は五十二年度の歳入欠陥を八千六十億円と見ておりますけれども、昨年十一月ころの見通しでは五千億円程度の歳入欠陥であろうと見ていたわけでございますが、このように大幅になった原因は何であるか、もう一度お答え願いたい。
  119. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 昨年の十一月ごろにそのような新聞記事が出た時期がございましたが、そのころに衆参両院で御質問受けまして、私どもとしてはまだデータがそろわないのでどうにも的確な見通しが申し上げられないというお答えをした記憶がございまして、五千億という数字政府側から申し上げたことはございません。
  120. 多田省吾

    ○多田省吾君 これも再三論ぜられておりますが、五十二年度の一次補正予算では、政府は赤字国債を千百二十億円の減額修正したわけでございますが、これは徴収の伸びを見込んでのことだと思います。それを二次補正では十倍の一兆百九十億円の増額になったわけでございますが、このように、一次補正と二次補正に対する財政当局の考え方、姿勢というものが百八十度変わったということはこれはどういう事態でございますか。
  121. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 歳入面の方からお答えいたしますと、先ほど穐山委員にお答えいたしましたように、第一次補正を組みます段階ではまだ七月までの税収しかわかっておりませんで、しかも七一までの税収は進捗率で見ますとむしろプラスという姿をしておりまして、その上に年度内の予測を立てるわけでございますが、率直に申し上げて不足が生ずる危険の方が大きいのではないかと思うということを御答弁いたしましたけれども、不足額がどれくらいであろうかということを推定するに足るデータが全くない、政府の正式の経済見通しも下方修正されない、六・七のままという状態で一次補正を組みました。二次補正の場合には、政府経済見通しも下方修正になりまして、十月末までの実績も出まして、それに合わせて歳入見積もりを改めたわけでございます。
  122. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) ただいま主税局からお話し申し上げましたような税収入のほかに、歳出面におきまして第一次補正予算の場合には公共事業の追加、これは歳入と申しますか、財源といたしましては建設公債の増発と、あのときに御提案申し上げました特別立法いたしました産投会計からの繰入金によりまして賄ったわけでございます。それから、公共事業費以外の歳出につきましてはかなり節約をいたしましたのと、それから地方交付税三税の減収、あれは国会修正に基づきます三千億の減収を第一次補正でつけましたので、それのはね返りで地方交付税が減りました。そのような要素がございましたので、逆に特例債は減らすことができたわけでございます。  それから、第二次補正につきましては先般御審議いただいたところでございますけれども、税収の欠陥、それから若干の歳出の追加がございました。それから、不用見込みというものもそう多くは期待できませんでしたので、大体ストレートにその分が赤字公債特例公債の増発となっております。それから、公共事業につきましては建設公債の増発で賄っていると、そういう姿でございます。
  123. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまの御答弁で、昨年経企庁経済見通しを下方修正したことによって歳入欠陥が大幅に生ずるということになったのだとおっしゃっていますが、具体的に所得税法人税がどのように減収すると見込んだのですか。
  124. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 所得税は第二次補正で減額いたしましたのが四千二百四十億円でございます。そのうち、約二千億円は給与関係の源泉所得税の減を見込んでおります。残り約二千億円は利子所得、配当所得にかかわる減泉徴収税額の減でございまして、利子所得につきましては、当初予算のときに予想されなかった預貯金金利の引き上げ等の原因がございます。配当につきましては、これも同様一昨年の十二月の段階で予測できなかった新日鉄を初めとします中間配当の見送りというものがかなり大きく響いております。それから、法人申告所得税は、修正後の経済見通しによります経済活動の見直しに乗りまして修正いたしましたほか、譲渡所得についての土地の動きがどうも鈍いのではないかということと合わせまして、千三百七十億円の減を見込んでおります。法人税につきましては、十月税収まではまだ予算を十分達成できる姿をいたしておりますが、それ以降の予測といたしましては、当初の税収見積もりに用いました鉱工業生産、卸売物価消費者物価がそれぞれ改定経済見通しでは下方修正されておる。  一つずつ申し上げますと、鉱工業生産は当初見通しの一〇九・二が一〇二・六に、卸売物価は一〇五・七が一〇〇・六に、消費者物価は一〇八・四が一〇七・六に下方修正されておりますので、実績をベースにしましたそれ以後の見通しとしましては、改定後の生産、物価をマクロ的にベースにいたしまして見込みますと、十月までの好調さにかかわらず、年度を通じましては減収が立つのではないかということで三千二百七十億円の減を立てております。その他の税目につきましては、十月末の実績を勘案いたしまして、それぞれ増減を立てているわけでございます。しかし、大きな金額はいま申し上げた三つでございます。
  125. 多田省吾

    ○多田省吾君 昨年暮れに、このように経企庁財政見通しを六・七%から五・三%というように下方修正をせざるを得なかった原因というものを財政当局はどのように見ておりますか。
  126. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これは、経企庁予算委員会説明したところによりますと、結局成長率に全部反映しているわけでございますが、最初は六・七、それが五・三というわけで、約一・四ぐらい落ちているわけでございます。経企庁説明によりますと、それは五十一年、五十二年の国民経済計算の実績値がわかってきた。それが実績値が少し下方修正になりまして、一・四落ちたうちの約三分の一がその原因でございます。いわば土台が下がったわけでございます。第二番目は、七-九の第二一四半期の経済伸び率が十二月初旬にわかったわけでございますが、これがその期間を通じまして〇・五しか伸びないということでございます。それで大体一・四のうちの三分の一ぐらい、それから残りは去年の九月二十六日のブルメンソールの発言以来ずうっと為替相場が上がってまいりまして、約あの期間だけで一割強上がったわけでございます。それによるデフレギャップ、そういうものを見まして、そして下方修正をした。それで、それぞれの指標についてはそういったものと整合性をとりながらそれぞれ実績値を踏まえて生産、物価、その他を修正した、こういうことでございますので、われわれもそうであろうと、かように了解しているわけでございます。
  127. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣もそうですが、福田総理等も予算委員会等では盛んにこの円高あるいは不況によって予期しない八千億円程度の歳入欠陥が生じたんだということを言っておりますけれども、結局突き詰めれば、円高も少しは影響はあると思いますけれども、一昨年のロッキード問題における三木おろしのときの経済回復、また景気回復に対する処置が非常に甘かったんじゃないか、あるいは昨年の四月から六月期における対策のおくれ、こういった政治責任を非常に回避しようというような姿があるように思えるわけです。  それから、円高及び円筒不況の影響というものは少なくとも三カ月から六カ月のずれがありますので、円高等による法人税収への影響は四月以降にも厳しくあらわれるんじゃないかと、このように考えられますけれども、その点はどう考えておりますか。
  128. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 臨時国会でございましたか、坊前大蔵大臣が御質問に答えまして、最近の円高で税収にある程度影響が起こってくるということは避けられないだろうという御答弁をしたことはございますけれども、私どもとして今回の八千六十億の歳入減がすべて円高のせいであるというふうに強弁するつもりはございません。また、そういう御答弁をいたしたこともございません。  それから、円高によりまして企業ごとあるいは業体ごとにそれがプラスになる場合とマイナスになる場合が十分ございますのですが、いずれにしましてもそれは十月以後に具体的な影響が出てくるという点は御指摘のとおりでございます。ただ、五十二年度内に税収に全く影響がないかというと、それはそういうわけではございませんので、先ほど申し上げましたように、十月末までの法人税収は実績で申せば予算のペースより上回っておりますけれども、やはり年度内を見通しますと、法人税全体としては三千億強の減収になるのではないかという見通しをいまいたしております。さらに、その結果が五十三年度の法人税収にかなりの影響を与えるであろうという点も御指摘のとおりでございまして、私どももそのような要素を含めて五十三年度の法人税収の見積もりをいたしているわけでございます。
  129. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、決算調整資金の制度というものを特別会計にしないで一般会計にした理由は何ですか。
  130. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 決算調整資金一般会計に属する資金でございます。これを特別会計というかっこうで経理したらどうかという御質問であろうかと思いますが、資金からの受け払いは比較的簡単でございまして、特別会計をもって経理するほどの実益はなかろうかと思うわけでございます。
  131. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、この財政当局の見通しの誤り、五十二年度においては非常に激しかったと思います。国債依存率も最初の二九・七%からついに第二次補正によって三四%まで大幅にはね上がったわけでございます。これも昭和五十二年度の最終段階に来てこのような大きな見通しの誤りというものが明らかになったわけでありますが、この政治責任というものは私は非常に重大だと思います。ところが、この決算調整資金をもしつくったとすると、税収見込みが少しあるいは大幅に狂ったとしても何とか決算はできるんだということで責任の所在が非常に不明確になるのではないか、ある場合には放漫財政になるのではないかと、こういう危惧が大きくあると思うんですが、この点はどう考えておりますか。
  132. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 決算調整資金をお願いしておりますゆえんは、いろいろ、歳入歳出両面にわたりまして収支が均衡いたしますように努力をいたしましても、それはまた政府限りではございませんで、国会に対して補正予算をお出しして御審議を仰ぐというような手段を講じましても、年度末近くになり、また年度が経過しました後において決算上の不足が明らかになるというような事態が予想されますので、それに対する、何と申しますか、最小限の措置ができるように制度的な手当てを講じていただきたいんだということでお願いしているわけでございまして、これが放漫財政につながるというようなことにはとてもならないんじゃないか。むしろ私どもは、財政法の諸原則に一番かなったやり方、財政法は財政の健全性あるいは節度といったようなものについていろんな原則を定めているわけでございますけれども、そういうものに最も忠実なやり方で、さっき申し上げましたような必要性に応ずる制度を仕組んでみたらどうなのかということで、こういう制度が一番いいんじゃないかということでお願いしているわけでございますので、安易になるとか放漫になるとかというような御心配はないんじゃないかと思います。
  133. 多田省吾

    ○多田省吾君 いまの御答弁によりますと、この決算調整資金を使用するような事態にならないように全力を尽くすという意味で、その場合はぎりぎりまでは補正予算を組むんだ、しかし、どうしても異例の事態でどうしようもない場合のみである、このように考えられますけれども、じゃ、その接点はどうなのかと言うんですよね。何月ごろまでに、じゃ補正予算を組むお考えがあるのか。二月あるいは三月になっても補正予算を組まれるお考えがあるのかですね。  それから、先ほどの御答弁からわかりますように、二千億をオーバーした場合でもこの特別会計の方から、九千億あるいは五十三年度においては一兆円を超そうというような国債整理基金特別会計の方から繰り入れるんだと、こういう道が残されているんだというようなことで、これは補正予算を組まないでこの決算調整資金を当てにしていこうというような考えに陥りやすい面もあるわけですよ。その辺の接点をどう考えるかということ。
  134. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) この制度をお願いしております最大の理由が、税収が年度経過後に不足が判明したときということでございますから私の方からお答えいたしますが、主計局から申し上げておりますように、補正の機会がありますれば、まず補正で御審議をいただくというのが筋であるというのはおっしゃるとおりだと思います。  そこで、先ほど穐山委員にお答えをいたしましたように、物理的にいつごろがぎりぎりであろうかと申しますれば、それはやはり部内での意思決定、印刷、提出手続、審議の日数というようなものを考えますれば、やはり三月早々というあたりに政府としての判断を固めなくてはならないというのが一番遅い時点であろうと思います。その時点でなおかつ税収が正確に時計の針のように合わないという要素は何であろうかと申しますと、ただいまの制度のもとでは二月、三月、四月の三カ月分の税収でございまして、その中でかなりの誤差を持ち得るものはやはり法人税収と三月の申告所得税収でございます。二月、三月、四月の法人税収というのは決算期で申しますと十二月、一月、二月決算でございまして、これは大法人のウエートが非常に小さい月でございますので、大法人のウエートが非常に大きゅうございますとある程度予備的な聞き取りというような手段もできますけれども、中小法人の場合にはマクロの計数に乗る以外にただいまのところ私どもに確たる指標がないわけでございます。したがいまして、これに何と申しますか、五、六%というような上方、下方両方の誤差はどうしてもあり得る。ただ、くどくなって恐縮でございますが、私どもの立場で、あり得るからといってのんびりするというようなつもりは全くないわけでございまして、主税局長として歳入の見積もりの責任を持たされております以上、五十二年度はこういう法律をお願いいたしまして成立いたしましても、それは五十二年度は結果として八千六十億円の歳入減でとまった、数億の誤差でとまった、これは空振りになったというのが一番幸せな事態でございまして、これがあるから八千六十億という方をいいかげんにしてしまえというようなことは毛頭考えているわけじゃございません。ただ、物理的にその三月初旬という段階でなおかつわからないという要素がどうしても残ってしまうという点だけはぜひひとつ御理解をいただきたいと思います。
  135. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、この決算調整資金の制度をなぜ時限立法にしなかったのかという点も考えられると思うんです。先ほどからいろいろ御答弁なさっておりますが、私はまだしっくりしておりません。財政法四十四条の規定による一般会計所属資金の中に、経済基盤強化資金というように実際に動いていないものも現在ございますし、財政特例法による赤字国債発行に見られるように、財政当局の姿勢、性格というものは、最初は特別な事態だとして新たな制度をつくる、それがついに慣習化してしまう、そういう例が多いわけでございます。ですから私は、福田総理も、あと五十三年度から見て一両年、五十四年度か五十五年度には安定成長路線に軟着陸するんだと、それからはもう経済はスムーズにいくんだというようなことをしょっちゅう答弁なされておりますけれども、それぐらいの自信がおありなら、やはり昭和四十八年ごろまではこういった事態は起こらなかったんですから、また、安定成長路線に軟着陸するという確信があったならば、その事態が続くならばこういう決算調整資金なんかは不必要になるわけでございますから、私は自信があるなら時限立法でよろしいんじゃないかと。結局、こういう恒久的な制度にするというものはその自信がいまの内閣にはないからだと、このように思われてもしようがないんじゃないかと思いますが、この点どうですか。
  136. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 今度臨時異例財政措置をとりましたことは、できるだけ速やかに民間経済を正常の軌道に乗せまして、むしろ経済活動の基本が民需に移ること、これは設備投資を含め、また個人消費を含め正常な姿になることを望んで、ことしは、まあ言葉はオーバーかしれませんが、思い切ってやってみようと、それが結局一番早く日本経済の体力を回復する早道であるということで、あえて公債依存度がかなりの、実質三七%確保してやったわけでございます。したがって、われわれは少なくともいまのようなミクロの状態から早く脱出することを希望し、そしてまたそれが可能であろうと思っておるのでございます。  しかし問題は、いずれにいたしましてもかつてのような高度成長は望めないことは当然でございます。技術革新が一巡いたしておりますから、いま一番伸びておりますのは、何といってもちょうどかつての高度成長期のような中進国が一番伸びていることは御案内のとおりでございまして、日本もその意味ではもうかつてのような高度成長はできない。したがって、租税の弾性値というものは相当下がってくることは、安定成長路線に乗っても私は当然だと思うのでございます。従来でございますと、ずいぶん高度成長期にも見積もり違いございました。しかし、高度成長のときには弾性値が高いものでございますから、どっちかというとその間違いは高い方に間違っておるのでございます。今度安定成長になりますと、私は誤差はいつでもあると思うのでございますけれども、どっちかというとやはり下回る危険の方がどうしても税率構造その他からいって多いのではないであろうか。そのことがないために、先ほど来主税局長が言っているように、補正予算、そういったものの機会をできるだけとらえまして国会審議でやるわけでございますけれども、結果的にやはりそういった誤差というものが絶えずあり得るんだ、こういうことで今度の制度をお願い申し上げているわけでございます。
  137. 多田省吾

    ○多田省吾君 総理は、安定成長路線というのは大体実質経済成長率が六%程度、あるいは六%前後であるというような答弁をなさっておりますが、もちろん、高度経済成長の時代のように上方修正と申しますか、上向きに、まあ歳入がどんどん余剰になるというようなことは考えられないかもしれませんけれども、少なくとも私は、安定成長であるならばこのような下方修正にはならないんじゃないか、このようにも考えます。  それからもう一つ、当分の間の措置として国債整理基金特別会計との間に相互に運用し合うような姿になったわけでございますけれども、この国債整理基金特別会計法を改正しないで附則で片づけようとしているわけでございますが、先ほどの御答弁によりますと、これは国債整理基金特別会計を使うのは本道ではなくて第二の措置だから附則で片づけたんだというような御答弁をなさっておりますけれども、私はそれだけではちょっと御説明が不足じゃないかと、このように思いますし、また、当分の間というのはいつまで、どういう事態が存続する限り続くのか、その辺のことももう少し詳しく御答弁願いたいと思います。
  138. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 本来の姿でございますと、決算調整資金は、いわばプラスの剰余金をためておいて、マイナスの剰余金と申しますか、決算不足を生じたときにこれを取り崩して補てんすると、そういうかっこうでプラス、マイナスを調整して、年度をわたった、多年度にわたった財政収支均衡を図るということが基本的な考えでございます。これは本則の方に実は規定しているわけでございます。  ところが、いまの財政状況は御承知のように特例公債依存している財政でございまして、多額の剰余金が発生することを期待できないような状況でございますので、ただいま申し上げましたような本則の考え方だけではとても対応できない場合があり得るんじゃないか。そこでまあ、当分の間の措置といたしまして国債整理基金にございますお金を一時借用するという道も講じておく必要があるんじゃないか。国債整理基金にたまっております金は、すべてではございませんけれども、剰余金でたまっているという要素もございますから、そういうことを考えながら無理な話ではないんじゃないかということで、便法と申しますか、第二線準備と申しますか、当分の間の措置としてそういう道も開かしていただきたいということをお願いしているわけでございます。
  139. 多田省吾

    ○多田省吾君 いろいろの御説明聞きましたけれども、その御説明を聞いてもなおかつ決算調整資金として二千億円プールするということは、これは特例公債発行して二千億円プールしたことでございますから、   〔委員長退席、理事藤田正明君着席〕 これはあくまでもデフレ効果をもたらして好ましくないし、こういうお金があったならば所得税減税に回した方がいいんじゃないかとか、あるいは国債整理基金特別会計を、第二次的な手法とは言え、こういったお金を使うことをもくろんでいる以上は、その金があったならば、まあ特例公債をある程度発行しないでも済むようにしたらいいんじゃないかとか、こういう考えがどうしても残るわけです。ですから、そのほかのこういうことをしないで便法が考えられるんじゃないかと、こういう気持ちがどうしても残りますが、その点はいかがですか。
  140. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 決算調整資金と申しますか、決算に当たりまして不足が出ました場合に何らかの手だてを講じておかなければならないという必要性につきましては、先ほど来、主税局長並びに私の方からるる申し上げているとおりでございます。  そこで、どういう制度を用意したらいいだろうかということにつきまして、四十九年度の苦い経験を踏まえた上で、五十年以来財政制度審議会でも御議論いただいてきたわけでございますけれども、いろんなことが考えられます。考えられますが、財政法のいろいろな原則――財政法は財政の健全性でありますとか節度についていろんな原則を立てているわけでございますが、そういう原則にかなったやり方といたしましては、ただいま御提案申し上げているこの決算調整資金のやり方がいいんじゃないかということで、これは私どももそう思いましたし、それから財政制度審議会で法律の専門家の方々も入っていただいているわけでございますけれども、そういう方々にお諮りいたしましたところでもそういう結論でございましたので、こういう姿で御提案申し上げた次第でございます。
  141. 多田省吾

    ○多田省吾君 もう一本の昭和五十二年度の水田総合利用奨励補助金についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案、これは同僚の塩出委員の質問に譲りまして、私は若干一般財政経済問題について御質問したいと思います。  通産省からも来ていらっしゃると思いますけれども、宮澤経企庁長官は、この前の参議院の予算委員会におきましても、来年度実質七%成長に関しまして、在庫調整が非常に最近進んで、三月、四月ころには完了するんだと、こういうような見通しを述べられましたけれども、昨日、経済企画庁が発表いたしました法人企業投資動向調査によりますと、在庫の過大感というものがなお一層続くような調査結果が出ておりまして、これは非常にに厳しい状況でございます。   〔理事藤田正明君退席、委員長着席〕 また、三菱銀行等におきましても、在庫調整は政府見通しのように春ごろまでに完了するというようなことではないと、無理であると、こういうような調査結果を発表しております。ある場合においては日銀においてさえそのような意向があります。これはどのように現在考えておりますか。また個別ごとの見通し、これは簡単でよろしゅうございますが、どのように見ておられますか。
  142. 杉山弘

    説明員(杉山弘君) 在庫調整の問題についてお尋ねがございましたが、御案内と存じますが、流通段階の在庫につきましては昨年の三月にピークでございまして、それ以降ずっと低下をしてございます。それから原材料在庫の方は昨年の五月がピークでございまして、これからまたずっと下がってきております。これから若干おくれますが、製品在庫の方は昨年の六、七月をピークにいたしましてずっと下がってきております。まあ全体の指標を判断いたしますと、在庫調整は一応昨年後半から進行している、こういうふうに判断をされます。もちろんこういった在庫調整も、どちらかと申しますと、最終需要の勢いが強いためというよりは、在庫を多く抱えておりますところで減産その他生産調整をやっております。そういう関係でかなり在庫が減ってきているわけでございます。  これからの状況につきましてでございますが、全体といたしますと、流通在庫につきましてはあるいは年度内にでも在庫調整が完了するというような事態を迎えることになるのではなかろうかというふうに判断をいたしておりますが、メーカーの関係におきます在庫につきましては、まだ年度内に完了というところまではまいりませんで、むしろ来年度初めくらいまではかかるんではなかろうかと思います。  なお、以上申し上げましたのは全体としての在庫調整の推移でございまして、物資別にながめてみますと公共事業の関連での建設資材、これはもう在庫調整はほぼ完了と言っていい段階に来ていると思いますが、基礎資材関連、特に鉄鋼でございますとか繊維でございますとか、いわば構造不況業種と言われているものにつきましては、まだまだ流通段階、メーカー段階の在庫水準は高うございます。こういったものにつきましては一般的な在庫調整の完了の時期よりはもう少し後までずれ込むんではなかろうか、こういうふうに考えております。
  143. 多田省吾

    ○多田省吾君 すでにセメント等は在庫調整が進んでいるというような話もございましたけれども、今度は反対に、こういう公共事業の集中豪雨的な発注によりまして生コンなんかは二〇%以上も値上がりしているというような事態もあるわけでございます。このような生産基礎資材の値上がりを防ぐために通産省ではどのような手を打っておりますか。
  144. 杉山弘

    説明員(杉山弘君) 公共事業関連の物資の供給ないしはその価格の面から公共事業の円滑な遂行というものが阻害されてはならないというふうに考えます。通商省といたしましても、ことしに入りましてから省内に関係の部局を集めました対策本部をつくりました。また、全般的には建設資材につきましても生産能力には余裕があると判断いたしておりますけれども、地域的、時期的な問題が生ずる可能性が全くないということでもございませんので、こういった問題につきましては地方通産局を中心といたしまして、関係の事業執行官庁、それから都道府県、こういったところとの連絡を密にして、価格、資材の供給量、こういった点に問題がないように対処していきたいと、かように考えております。
  145. 多田省吾

    ○多田省吾君 大蔵大臣にお尋ねしますけれども、大蔵大臣所信表明の中で対外均衡回復を図ると、特に東京ラウンド交渉関税率一括引き下げの繰り上げ実施等に関しましても国際協調のために一層の努力をすると申されておりますが、今回またECから七項目の貿易是正に関する対日要求案が出ているわけでございまして、特に関税引き下げの繰り上げ実施の品目に関しましても、いわゆるEC関心品目リストの再検討というものを要求しておるわけでございますが、こういったECの要求に対して大蔵大臣としてこれはどのように対処していこうと考えておられますか。
  146. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 今度の関税の前倒し措置は、現在の国際収支状況にかんがみまして、また、わが国が置かれております国際的な立場から考えまして、日本は貿易立国で成り立っているわけでございますので、保護主義が台頭してはこれ大変なことでございます。そういう意味で、われわれは東京ラウンドを通じましてぜひとも保護主義の台頭を防ぎ、そして国際的な貿易あるいは資本の交流を望むところでございます。そういう意味で、われわれは今度の関税の前倒しを率先してやろうということでやっているわけでございます。それは単に対米関係だけを考えているわけではございませんで、当然グローバルな問題として考えておりまして、EC関心品目についても十分配慮したつもりでございます。したがって、いま新聞で伝えられておりますようなECとしては不満足だというようなことがございますけれども、それだからと言って、今度提案いたす予定でございます関税前倒しについて、この原案を修正するつもりはございません。ただ、東京ラウンドがいよいよ本格的な段階になるわけでございまして、これはもう御承知のように、それぞれオファーをしているところでございますけれども、それぞれが自国の利益とそれから対外、世界的な利益との調和点を図って交渉してまいるわけでございますので、その段階でECの希望があれば、それがまた入れられるものであるならばそれで交渉をしてまいりたいと、かように考えているところでございます。
  147. 多田省吾

    ○多田省吾君 最後に、金融制度の中でいわゆる金利の自由化というものが一部において唱えられております。これは需給関係で金利が決定される方向に変更し、国債累積残高の急増がもたらしているこのインフレ圧力を消すためだというような理由から金利自由化を叫ばれている面があるわけでございますが、大蔵大臣はこの点をどのように考えておられますか。
  148. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 金利の自由化ということは非常に魅力のある、そしてまた検討に値する問題であることは確かに間違いございません。いろんな意味で資金の効率的な使用の問題、あるいはそれを通じて資源配分が適正にいくという問題、あるいはそれを通じまして金融機関が相互に競争をやっていくと、こういう問題から考えまして非常に大事なポイントであろうと思います。しかし、日本の場合はやや違いまして、まだ現実問題として間接金融が中心でございます。ほかのところは大体内部資金によるところが多いのでございますが、外部資金による場合でも間接金融でなくて直接金融、つまり公社債市場とか株式市場から資本を調達しているわけでございます。その差は十分考えていかなければならぬのでございまして、単純にもしそういうスローガンで金利の自由化をいたすといたしますと、恐らくは、そこで言うところの意味は預金金利の自由化を含む金利の問題になると思いますけれども、そうなれば当然大口預金の方が金利が高くなりましょうし、それからまた、その金利の自由化に任しておきますと収益の高いところにその資金が回るということも当然考えられる。したがって、公害であるとかあるいはいろんな省資源の方に回さにゃならぬというときに、なかなか回りにくいという問題が当然あるわけでございます。したがいまして、われわれはとりあえずは金利の自由化のメリットを考えながら、そのときそのときの金融情勢に合わして少なくとも金利を弾力化していくという方法が最もいまの日本にとって現実的な方法ではないであろうか、こんないま感じを持っているわけでございます。
  149. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 昭和五十二年度の水田総合利用奨励補助金についての所得税及び法人税臨時特例に関する法律案についてお尋ねしますが、この法律案につきまして政府はあえて反対をしないと、こういう意見が開陳されたと書いてありますが、これは非常に大蔵省としては消極的な、あんまりよろしくないけれどもまあ仕方ないと、何かそういう感じがするわけでありますが、この点はどうなんですか。
  150. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) あえて反対しないというお答えで真意をおくみ取りいただきたいわけでございますが、やはり税制考え方といたしましては、この種の補助金ないし奨励金を受け取った場合には、それは本来は通常の事業所得にかわるべきものとして処理するのが妥当ではないかという考え方を依然として持っておりますので、ただ本件につきましては、国会の御意思でこういうことをおやりになるわけでございますから、まあ強いて反対しないと申し上げているわけでございます。
  151. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 こういう税法の問題が、特例は租税特別措置とかいろいろあるわけでありますが、そういうものの体系とは別個にこういう特例があるというのはほかには例があるのかどうか、その点はどうなんでしょうか。
  152. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) それは、それぞれの政策目的に応じまして租税特別措置所得控除、税額控除あるいは特別償却というようなことをいたしております。
  153. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 そこで、次にお尋ねしますが、この本法案と本質的に異なることのない法律、すなわち、まあ法案は違っても内容の同じようなものが昭和二十六年以来議員立法で継続して制定されてきているわけであります。昨年の本大蔵委員会における質疑においても、毎年毎年議員立法をし、これが一年間の時限立法になっているのはどういうわけかと、こういう点について各委員から質問が出されているわけでありますが、これがなぜ、一年ごとの時限立法になっておる理由はどこにあるのか、これは提案者の方に御答弁願いたいと思います。
  154. 野田毅

    衆議院議員(野田毅君) 実は、昨年も私どもの山下理事からいろいろ御説明申し上げたと思うんでございますが、まあ予算においてこの奨励金というものが一応単年度ごとに出ていくというようなこと、それと、この性格そのものが、租税特別措置法の中でいっそのこと見てしまったらどうかという議論があることも事実でございます。そういった予算と、それから税制そのものとして果たして取り組んでいっていいものかどうかということについての若干の疑義ということがあり、それから、これは私はその場に居合わしたわけではございませんが、まあ先輩諸氏から話をお伺いしておりますときに、やはり税制の筋論からいくと必ずしも実は素直にいけないところもあるかもしれない。まあしかし、政府は非常にみこしは重いけれども、それを毎年度、ひとつ立法府の議員の協力によっていわば政府を毎年度督励していくと、そういうような意味を込めて実は毎年度やったらどうなんだというような御議論がかつてあったというようなお話も承っておるわけでございます。私の承知しております単年度ごとに毎年こういうような法案を出すということについての理由といいますか、背景にはそういうものがあったと考えるわけでございます。  なお、来印度以降、昭和五十三年度以降におきましては、今回の水田総合利用奨励補助金ではなくて、別途農林省の方で、水田利用再編対策ですか、そういう形の補助金を交付すると、しかもそれが単年度ごとではなくて、ある程度長期的な見通しを持ってやろうというような形になっておりますので、来年度の問題としては、いま御指摘のとおり、果たしてこうやって毎年度毎年度立法措置を講ずることが適当であるのかどうか、もう少し恒久的な形に持っていったらどうなんだというようなことも検討させていただきたいし、また、先生方にもぜひ一緒に御検討いただきたいと考えるわけでございます。
  155. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 了解いたしました。  そこで大蔵省にお尋ねしますが、先ほど主税局長から、まあ大蔵省のいままでの考え方からすれば余り好ましくないというようなお話もあったわけですけれども、まあしかし、大蔵省が好ましいと思うこともやっぱりそれは議会の意向に従ってやっていかなくちゃいかぬわけで、恐らく主税局としては一般消費税等を早くやりたいという気持ちだと思うんですけれども、そういうことはそのとおりはできないわけで、やっぱり議会の意向というものに沿ってやってもらわなくちゃいけないんじゃないかと思うんですね。そういう点から、毎年毎年党派を超えてこのような議員立法が行われているという趣旨を体して、また、現在のわが国の議会におけるいろいろな立法のあり方から考えて、やはり政府提案とし、そして恒久的なものとして――もちろん恒久的ではなくても租税特別措置のように何年かの期限を限ってもいいとは思うんですけれども、いまみたいに毎年毎年というような形は改めていくべきではないか。私たちも決して、議員立法がどんどん盛んになるということ自体はむしろ望ましい方向ではあるわけでありますが、この問題についてはそのように考えるわけですけれども、大蔵省考え方はどうなのか、伺っておきます。
  156. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) ただいまの塩出委員の御指摘、また衆議院の野田委員の来年度以降の考え方、伺いました。  私どもとしましては、税制上は、意見を求められますれば先ほど申し上げたようなお答えがまず出てくる性質の問題でございますけれども、今後の問題といたしまして十分検討はさせていただきたいと思います。ただ一言、よけいなことかもしれませんが、やはりこれもまた政策税制でございますので、全体の流れとして政策税制というものはできるだけ縮減いたしたいという気持ちを持っておるということもつけ加えさしていただきたいと思います。
  157. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 農林省にお尋ねしますが、このようないわゆる減反と申しますか、水田をほかに転作をすると、こういうことはずっと行われておるわけで、昨年までは九十万トンであったのが五十三年度から百七十万トン、四十万ヘクタールでございますか、このようになっておるわけであります。これはやはりいままでの政府のいわゆる転作奨励というものが軌道に乗っていない証拠ではないか、これはどうなんですか。
  158. 小島和義

    説明員(小島和義君) お答えいたします。  昨今の米の需給事情をながめてみますと、米の潜在的な生産力というのはどうもますます高まっておるように見受けられますし、反面、米の消費量というのは実績値といたしましても減ってきておる、こういうことがはっきりいたしておるわけでございます。具体的に数字で申し上げますと、五十二年度私どもが想定いたしました需給の計画といたしましては、潜在生産量を千三百万トン、米の消費量を多少の政策的な努力による消費増を織り込みまして千二百十万トンと想定いたしたわけでございまして、その差の九十万トンを要調整数量と、このように考えたわけでございます。その後の実績によって当たってみますと、潜在生産力はどうも千三百四十万トンぐらいはあると、こういうふうに見られますし、消費量の方は最近の実績では千百六十万トンというふうな水準になってきております。これに対しまして、消費量の拡大も見込みまして、千百七十万トン程度消費量を見込みまして、差し引き百七十万トンというものが需給ギャップとしては厳然としてあるのではないか、こういう見通しに立ちまして今回の対策を考えたわけでございます。
  159. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 米が余るのは、単位面積当たりの生産量もふえているし、食べる方が少なくなるわけでありますし、そういう点で非常に米が余ってくるという、こういう事情はわかるわけですが、しかし、政府は四十五年ぐらいから米からほかの農産物への転作を奨励し、小麦とか大豆とか、そういう外国に依存している食糧の自給率を高めなくちゃいけないと、そういう政策を進めてきているわけですが、私の調べた資料では、小麦などは自給率が四十五年が九%が五十年は逆に四%に減っておる、大麦や裸麦が三四%が一〇%、大豆は四十五年四%が五十年も四%と、こういうように全然進んでいないわけですね。それで、四十五年からの減反でほかの作物へかわったのもまた米の方へ返ってきておるわけですね。したがって、こういうようなことは結局国の政策が全く前へ進んでいないということじゃないかと思うんですね。いつもこういう同じことが繰り返されておるわけでありますが、これはやはり米をつくるのが一番収入が安定をしているということなんですけれども、もうちょっとほかの作物をつくっても収入がある程度安定できるような、こういう態勢にはなかなかならないものなのか。努力します、努力しますと言うて結局いつまでたってもできないわけで、これじゃもう永久にできないとお手上げした方がいいんじゃないかと思うんですが、その点どうなんですかね。
  160. 小島和義

    説明員(小島和義君) これまでやってまいりました転作、面積にいたしますと約十九万ヘクタールぐらいのものでございますが、その中におきましてもいろいろな転作の態様がございますが、その地域の向き向きの作物を作付いたしましてかなり地域の農業経営の改善に寄与しておる、こういう事例も多く見受けられるわけであります。もちろん、全部が全部そのような状態であるということを申し上げるつもりはございません。したがいまして、転作の安定定着というものを図りますためには、奨励金の水準ということももちろん必要でございますが、そのほかに、転作をするために必要な圃場の条件の整備でございますとか、あるいは流通価格の条件を改善すると、こういった対策を総合的に講じてまいりまして、御指摘がございましたような特に自給率の低い作物を重点に置きまして、奨励金も特定作物としまして特に引き上げを考えておりますが、そういう作物の自給の向上を念頭に置いて進みたい、こう考えております。
  161. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 最後に。  いま五十三年度からの水田利用再編対策という新しい方針が出されまして各県に割り当てられ、各県から市町村、そういうことで各地で非常に大きな問題になり、農民の皆さんの大きな不安を招いておるわけでありますが、この米の新盆産調整が現状ではどういう状況なのか、特にどういうことが問題になっておるのか、それに対して政府としてはどういう考えであるのか、これを簡単に御説明をしていただきたい。
  162. 小島和義

    説明員(小島和義君) 転作目標の配分、これは正確には実は予算の決定を待ちまして正式通知になりますので、ただいまの段階では内定通知ということで、県以降の段階もそのような意味で下へおろしておるわけでございます。国が県に配分いたしましたのが昨年の十一月十九日でございますが、年が明けましてこの一月末で、一県を除きまして各市町村段階にはいずれも内定配分をいたしております。  配分を受けました市町村の段階におきましても、それぞれ地域によりましていろんな問題を抱えておりますが、現在までのところ、市町村数で見ますと約四分の一ぐらいの市町村が農協ないしは集落という単位に仮配分をいたしておる、こういう状況でございますし、全体の中の約五%ぐらいの市町村は農家段階までの配分を終わっておると、こういう状況でございます。大体二月中ぐらいには相当程度の市町村が配分を終わるのではないかと、目下の見通しはそういう状況でございます。  各地域におきまして転作に取り組むに当たりまして起こっております問題は、非常に区々まちまちでございまして、今回の対策がとにかく全国ベースで相当数の目標規模が高まっておりますので、各地域ともそういう意味においては大変厳しいものがあるというふうな受けとめ方をいたしておりますけれども、全体の米需給並びに今回政府が用意いたしました各対策につきまして、だんだん御理解が浸透していっておりまして、かなりな地域においては円滑に進んでおるのではないかというふうに見ておりますが、一部非常にむずかしいというふうなことでまだすっかり片づいてないと、こういうふうなところもあるようでございます。  かいつまんで申し上げればそういうことでございます。
  163. 塩出啓典

    ○塩出啓典君 どうもありがとうございました。
  164. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 この水田総合利用に関する法案の質問の前に、一点だけ午前中の質問との関係で、国債発行を抑える問題について、私はいわゆる投資部門国債発行の問題を指摘をしておったんですけれども、大臣の答弁はすりかえられておりますので、重ねてその点に限って質問をしたいと思いますが、政府提出の収支見通しを見ましても、どのパターンでも投資部門におけるこの公債発行は、絶対額の上でも、それから投資部門における依存率の点でも増大をしておるということは明らかでありますが、しかも、この公債発行に伴う公債費、これが経常部門に持ってこられるという形になっておるわけで、一方経常部門公債依存率を抑制をしていくという方針を掲げておるということで、結果的に起こってくるのは社会保障とか教育の予算が抑えられる、あるいは一般消費税を初めとする増税ということを導かざるを得ないという、こういう方式に予算全体の財政方針が組まれておる。ここを問題にしているわけで、そういう点で重ねてお尋ねをしますが、いわゆる投資部門における公債依存を低下をさせる、抑えていくという方針をなぜ掲げないのかという問題と、こういう矛盾をもたらすいわゆる二分割方式について、これを長期的な方針とすることなく改めるということを検討すべきではないかと思うんですが、この二点、長い説明はいいですから、簡単に述べてください。
  165. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) ただいま大量の国債発行依存している財政であるということはおっしゃるとおりでございますし、それからなるべく早く脱却しなければいかぬというのもお説のとおりであるわけでございますが、事柄の順序といたしまして、特例公債からまず脱却したい。財政法が四条でもって認めております建設公債の方から脱却するのはその次の話であるということではなかろうかと思います。  財政収支試算で投資部門はある程度伸び率をもって計上さしていただいているわけでありますけれども、これは経済審議会の企画委員会の暫定試算と平仄の合った姿で計上しているわけでございます。確かにその投資部門におきます建設公債の利子が経常部門国債費となってはね返ってくるという要素はございますけれども、それは当面そう大きな要素ではございません。それなるがゆえに社会保障等々が圧迫されるということにはならないと思います。財政収支試算の上では、社会保障と申しますか、振替支出につきましても、これも経済審議会の企画委員会の暫定試算の想定とはずのあった姿で計上しておるわけでございます。
  166. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 どうもまだ答弁が合いませんけれども、もう時間がありませんからまた次にやります。  それでは問題の水田総合利用に関する法案の関係で質問をいたしますが、この法案は、わが党としては圧倒的な農民の反対を押し切って減反、転作が押しつけられる、そういう状況のもとでの補助金について税法上の特例措置を行うという、これはまあ農民の苦しみを若干なりとも救うという、そういう点で毎回賛成をしてきたものではありますけれども、この根本である政府の減反政策には一貫して反対をしてきましたし、今後とも反対をするものでありますが、特に今回農林省の方針として、目標未達成の場合次年度にその計画を上乗せをするといういわゆる罰則規定というかペナルティー、これが衆議院予算委員会でもいろいろ議論を呼んでおるわけでありますけれども、他産業でも多々構造改善政策がありますけれども、余り他に例を見ないやり方であろうというふうに思いますし、自治体からも次々反対決議も強く出されてきておると、こういう点から考えてみて、この罰則規定を撤回をすべきであると、そうして減反方針についてはもっとよく農業団体や自治体の代表と話し合うべきである。弾力的な対応をすべきだということをまず指摘をしたいと思うんですが、どうですか。
  167. 小島和義

    説明員(小島和義君) 最近農村部におきましていわゆるペナルティー、罰則というふうな言い方が行われておりまして、私どもは実は罰則、ペナルティーというふうな言い方をいたしたことはございませんですが、どういうわけか、非常にわかりやすいという意味において使われておるようでございまして、私どもの意図するところとは大分違うものでございます。私どものこういうふうな仕組みを考えましたゆえんのものは、従来転作目標が毎年配分されるに当たりまして、特に四十六年二百三十万トンから始まりました調整目標が漸減していきました過程におきまして、前年の実績というものを翌年の配分の一つの参考にするというふうなことをやってまいったような経過もあるわけでございます。その中におきまして、どうもいわゆる正直者がばかをみるというふうな農村部の反応もございまして、今回前年をかなり上回ります目標を設定するというに当たりまして、ぜひ公平確保措置というものを何か講じてもらいたい。こういうふうな要望も強かったわけでございます。現に私どもが基本的な考え方の段階におきまして農業団体あるいは地方公共団体等に示しました段階におきましては、これは非常に困ると、こういうふうなお考えはなくて、むしろある程度公平を確保する、こういうふうなことをやってくれなければなかなか各地域とも積極的には協力できにくい、こういう雰囲気さえもあったわけでございます。そんなことを反映いたしまして、今回、五十三年度におきましてその目標がいろんな事情で達成できなかった場合に、それは結局は余剰な米をつくり出して全体の米需給に悪影響を与えるという意味におきましては翌年度それをやってもらわにゃいかぬ。これは、もしその当該地域においてやってもらわないといたしますと、全体の需給との関係がございますので、ほかの地域においてそれをやってもらわなきゃいかぬということになるわけでございますので、最低限度必要な公平の確保措置ではないか、いわゆる報復的ないしは恫喝的な意味での刑罰、ペナルティーというものではないというふうに考えておるわけでございます。
  168. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 どうも私の指摘に対してのまともな答弁になってないと思うんです。現にどれだけいまたくさんの自治体からの反対意見が出てきているか、農業団体からの意見が出てきているか、そこの現状の認識について食い違いがあるわけだし、他産業の構造改善の政策と対比をしても余りにも今回のやり方というのは強権的であり酷であるというふうに私は思うわけですけれども、ぜひともいま一度、もうこれ何回答弁求めたってあなたは同じことを言われると思いますので、よくひとつ農林省として再検討を加えてもらいたいというふうに思います。  そこで次の問題は、いま提起をされております補助金ないしは税法上の特例措置にかかわる問題でありますけれども、いずれにしても根本的には先ほど来出ております農産物の自給率を無責任に低下をさせていくこの自由化政策、それから価格補償が余りにも貧弱だという問題、そして当面の策としてはこの転作に当たっての補助金自身も非常に低いということの中から、当局の方々も御承知と思いますけれども、いま一部地域で相互補償というか共補償、これをやろうかという動きが出てきている。これは必ずしも私どもは根本から考えて減反そのものを強制をすべきではないという考え方を持っておるわけでありますけれども、そこで、そういう点で根本的には農家の経営に見合うように価格補償をしっかりやるという問題が根本ではあるわけですけれども、この共補償の問題について、こういうことが起こってくるということについて農林省はどういうふうにこの事態をお考えになるのかという問題と、税法上の扱いについて大蔵省側に何か見解があればお尋ねをしたいと思います。
  169. 小島和義

    説明員(小島和義君) 今回の水田利用再編対策を仕組むに当たりましては、先ほど申し上げましたような転作が進みやすい条件の整備ということに意を用いると同時に、転作奨励金の水準につきましては、米をつくった場合の所得というふうなものも十分勘案いたしまして、特に重点作物を中心に適正な奨励金水準が策定できますように努力をいたしたところでございます。したがいまして、全国的なレベルでながますならば、この水準というものは妥当なものであると私どもは考えておりますが、現実の村々の中におきまして、話し合いの中から、転作をやってもらうという人にほかの方々が金銭的な応援をすると、そういうふうな動きは現にございまして、私どもも二、三耳にいたしております。中には、これは県段階の農業団体が智頭を取りまして県下一円のものとしてやろうというものもございますし、農協単位あるいは部落単位というふうなところでささやかな話し合いのもとに行われるという事情もございます。その内容は本当に区々まちまちでございまして、なかなか制度的には把握しにくいと、こういう状況でございます。
  170. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 課税上の実際の取り扱いにつきましては、具体的にどういう形で、いかなる趣旨でそういう共補償的なものの金額を受け取られるかということに応じて判断をするということでございましょう。制度的にどう受けとめるかということにつきましては、ただいまの段階で申し上げられますのは、それが実体的に所得補償あるいは価格補償というものである限り、これを税法上非課税とすべき理由はないというのが私どもの考え方でございます。
  171. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 最後に一つお尋ねをしますけれども、このようにしてやむを得ず行われる転作に当たって、農民の皆さん方のできるだけ自主性を、どういう作物を選んでいくかということについては自主性を尊重していくという意味で、補助金を支給する対象については極力そういう選別をすべきではないというふうに考えるわけですけれども、そういう点で、たとえば採種用の蔬菜、チューリップなどの花卉、お茶、こういうものについても補助金支給の対象とすべきだと考えるんですけれども、その点の見解をお尋ねしたいと思います。
  172. 小島和義

    説明員(小島和義君) 私どもも基本的な考え方といたしましては、需給上特に問題のあります作物を除きまして広く作物が選択されるように指導するつもりでございます。ただ、いまお話のございました採種用の野菜あるいはチューリップでございますか、こういうものにつきましては、通常は冬期において栽培をされまして春先にとられると、こういう実態がございますが、その種の作物につきましては、本対策基本的には米がつくれるのにそれをつくらないでほかの作物をつくるという関係にございますので、夏場に完全に土地が遊ぶということは基本的には望ましくないと、こういう考えを持っておるわけでございますので、お話しの事例が米の作付の時期と実質的に重複をしておるというふうなことがございますれば、転作対象として取り扱えるものと考えております。  お茶につきましては、実は少々事情が違っておりまして、現在までのところお茶の作付面積は毎年増大をいたしておるわけでございます。現在までのところ大きく需給が崩れまして値段が下がっておるというふうな事態はないわけでございますが、何といいましてもお茶は永年性の作物でございますので、年々成長をいたしていくわけでございます。仮に作付面積がいまの水準より余りふえないにいたしましても、将来木が育ってまいりますと過剰事態に陥るというふうなことは温州ミカンの事例に照らしてみましても記憶に新たなものがございますものですから、そういう意味におきまして、将来の需給というものを考えますならば、お茶の新植というのは国が奨励金を出してまで推奨をすると、こういう時期ではないのではないか、こういう考えで現在の対象作物としては原則的に除外する、こういう考えを持っておるわけでございます。
  173. 佐藤昭夫

    佐藤昭夫君 よく検討してください。
  174. 渡辺武

    ○渡辺武君 大臣所信に対して質問いたします。  昨年の円の急激な変動が政府経済見通しあるいは予算に大番狂わせを演じさせたということは言うまでもないことなんですが、五十三年度について円レートをどんなふうに考えておられるか、つまり五十二年度のような大変動があるのかないのか、どう考えておるのか。  それから、五十三年度の政府経済見通しの計算に当たって円レートはどのくらいに考えて計算されたのか、伺いたいと思います。
  175. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これからの円相場がどうなるかということにつきましては、為替相場が非常に微妙な問題であり、また、私の立場から申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。ただ、言えますことは、やはり実勢によって動くであろうということだけは言い得るだろうと思うのでございます。  それから、第二点の問題でございますが、これも予算委員会で話がございまして、来年の対外収支の関係はどれぐらいの相場ではじいたのかという質問に対して、経済企画庁の方からは、ちょうど予算編成時の直近の相場――一カ月平均と申しましたか、二百四十五円を基礎にしておりますと、こういうことでございます。
  176. 渡辺武

    ○渡辺武君 予算編成時のいまおっしゃった二百四十五円、これを基礎にして計算されたということなんですが、もし政府経済見通しがまあそのとおりに仮に達成された場合、やはり二百四十五円というふうに考えて差し支えないのかどうか、どうですか。
  177. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) いまの御質問を突き詰めますと、もし経済見通しが予測どおりに達成されたならば二百四十五円という相場になるのかという御質問かと存じますけれども、為替レートの問題につきましては、いろいろな要素がございますので、政府見通しを立てました成長率その他の要素はある程度限定されておりますので、一方為替市場といいますのはいろいろな心理的な要素も大きな影響を及ぼすものでございますので、いま直ちに、政府見通しをつくります際のレートは二百四十五円ということでございますけれども、それが必ず二百四十五円で推移するということは申し上げかねるのではないかと存じます。
  178. 渡辺武

    ○渡辺武君 円レートは実勢で動くと、ところが二百四十五円で計算した政府経済見通し、これがどうなるのか、経済見通しが達成されても円レートどうなるかわからぬというようなことでは、この経済見通しとそれを基礎にしてつくり上げた予算は非常に不確定な要件の上でつくられたということになると思うのですね。  それで伺いたいのですが、経済見通しによりますと、経常収支が五十二年度は約百億ドルの黒字だろうと、五十三年度の見通しは六十億ドルの黒字だろうと、こういうことになっておるのですよ。つまり絶対額は少なくなっておるけれども、しかし、前の年に比べて六十億ドルも経常収支が黒字になるという予想になっているのですね。それでもなおかつ二百四十五円という為替レートで計算してこの経済見通しが達成できるのかどうか、及び、それを基礎にした五十三年度予算案、これ達成できるのかどうか、非常にこれは疑問なんだが、その点どうですか。これは大臣に答えてもらいたい。
  179. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いま計算した根拠についてはそれぐらいいっているわけでございます。しかし、大きな問題は経済成長率にあると思うのでございますけれども、それはもちろん円価に換算した場合の問題でございます。その場合は、恐らく七%という成長率の中で六十億ドルのあれだと言いましたけれども、円価に換算いたしますと大体〇・三%ぐらいの寄与率だと、こういうことでございますので、六十億ドルになるように恐らく経済企画庁の方ではいろんなことではじいておりますけれども、経済成長率にはほとんど関係がないと、このような結果になっておるようでございます。
  180. 渡辺武

    ○渡辺武君 それはおかしいですよ、大臣。去年を見てごらんなさい。円レートが急激に上昇して、経済見通しはすっかり狂っちゃったでしょう。それで総理大臣大蔵大臣も予想外の円の急騰だと、それが原因で経済見通しが狂いましたと言って、全部円の急騰に責任をなすりつけちゃったわけでしょう。そういう経験を踏まえているわけですから、だから五十三年度の経済見通し及び予算の編成に当たっては、やっぱりこの円レートの動きというものを十分に考慮に入れて編成しなきゃならぬと思うのですよ。それを実勢で動くのだからこれから先どうなるのか言えないんだと、恐らくわからないと言った方が真実じゃないでしょうか。計算のときには二百四十五円で計算しておる。それで、つまり経常収支は六十億ドルもまた黒字になるというのですよ。これが二百四十五円でおさまるかどうかなんというのは、これはわからぬでしょう。これは大変な疑問ですよ。そういう基礎の上に七%の成長があるだろうと、そうして税の弾性値幾らというようなことで恐らく今年度の税収の見込みもはじき出したのだろうと思いますよ。非常に不確定な基礎の上であなた方は国会にこういうものを提出していると言わざるを得ない、その辺をはっきりさしてほしいのです、どうですか。
  181. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これはまあ経済企画庁の担当でございますので、私が答えるのはいかがかと思うのでございますが、私が予算委員会で聞いているところでは、五十二年度におきましても第一・四半期は相当やはり経済余剰が経済を引っ張っていた。しかし、その後円レートが上がるにつれまして、ドルベースではかったよりもはるかに引っ張る力は少なくなっている。そういうことをずっと見てまいりまして、そして対内、対外の均衡をやるためには何よりも内需の拡大という形をとることが先決問題であると、つまり外に売るよりもやはり内需を拡大するということが国内的にもまた対外均衡を図る上でも最大の問題であるということで、今度臨時異例財政措置を講じたゆえんもそこにあるわけでございます。  あとは経済企画庁の方にむしろ聞いていただきたいわけでございますけれども、経済余剰が仮に六十億ドルだとした場合、それで二百四十五円ではじいたというわけでございますけれども、そういたしますと、結果的にはいまの成長率に対する寄与率はこれぐらいのものでございます。  為替相場が幾らになるか、これはもとよりわからぬわけでございまして、私が予測を申し上げるということは、これは私の立場で差し控えさしていただきたい。わからぬと言えばわからぬわけでございます。
  182. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間もないので改めてちょっと議論したいと思いますが、一音だけ確かめておきたいんですが、円のレートが五十三年度、これから先の推移ですね、どうなろうともこの経済見通しは達成できるという意味ですか、どうですか。
  183. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 大臣あるいは私が先ほど申し上げましたのは、来年度の経済見通しをつくります際に円レートをどの程度に見たかということを申し上げたわけでございまして、経済成長が来年度においていかようになろうとも、この推算の基礎の一つになりました二百四十五円は変わらないということを申し上げたわけではございません。先ほど申し上げましたように、相場といいますのは、経済見通しをつくりますときのベースになりましたもろもろの要素以外の、いろいろな多くの要素によって影響されるものでございまして、それらの要素はわれわれのコントロールできない要素も多々あるわけでございますから、そういうことを申し上げた次第でございます。
  184. 渡辺武

    ○渡辺武君 どうも私の質問の趣旨がよくおわかりでないようだが、改めてまた別の機会にやりましょう。  なお、大臣に伺いたいのですが、この間衆議院予算委員会の方で、総理大臣がローザ構想の問題で、訪米されたときの日米会談の主な議題の一つになるだろうという趣旨のことを言って、大分前向きの答弁をされていたようですけれども、ローザ構想について幾つか伺いたいと思うのです。  一つは、この構想によりますとアメリカと日本と西ドイツと、この三国の通貨を一定の目標を定めて、そのターゲットのゾーンの中でいわば変動を調整するということが一つ考え方だと思うのですね。いまのようにアメリカが大幅な赤字を出し、日本及び西ドイツは大幅な黒字を出すというような条件がもしそのまま残されていて、そうしていま言ったようなターゲットゾーンの中で変動を調整するということになりますと、結局ドルの低落を円及びマルクが、これがいわば振りかぶって、具体的に言えばドルがターゲットゾーンを割って低落しそうなときに、日本が円を出して盛んにドルを買い支えるというような形にならざるを得ないと思うのですけれども、この点どうですか。
  185. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) まあ、総理大臣からもそのときお答えしましたし、それから私からも同じような答えをしたわけでございますが、ローザ構想は、いまの変動為替相場に対しましてもう少し安定した、固定為替相場までいかないまでも、世界のエンジンカントリーの三国のターゲットゾーンの中で一つ安定した為替相場ができないものかどうか、こういう私案を示したわけでございます。  それに対しまして、総理大臣も私も申し上げたのでございますが、一つ考え方ではあるけれども、現実の問題としては、インフレ率も違いますし、国際収支の関係も違うわけでございますから、とうてい現在では無理な考え方であろうと、こういうことを申し上げたわけでございます。
  186. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうすると、全然これは実現の可能性はないというふうにお考えなんですか。
  187. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 大臣の御答弁を補足しまして、若干申し上げさせていただきたいのでございますが、日本におきましていわゆるローザ構想として伝えられておりますことが、非常に限られた、いわゆる先生がいまおっしゃいましたターゲットゾーンの構想だけにしぼられた報道がなされておるわけでございまして、ローザ氏自身も日本においてその部分だけ強調されて伝えられていることを点外に思っておられるわけでございます。ローザ氏が議会において証言されましたことの内容を、全体をひとつ日本で考えてもらいたいというのがローザ氏の真意でございます。もとより、ローザ氏は現在政府の方でもございませんし、一銀行の方でございますので、アメリカ通貨当局がこれを取り上げているということではございません。  しかし、ローザ氏の言っておられますことをごくかいつまんで申し上げますと、ドル価値の安定のためには、アメリカの経済に対する信認と、これに基づきます長期の民間資本がアメリカに流入することが必要であるということが第一点でございます。第二に、このような条件が成立した暁には、ドルを初めとする通貨価値安定のためにターゲットゾーン方式が有益であるということを述べておられるわけでございまして、その構想の前提には、あくまでアメリカの経済の安定、信認の回復、それによります海外からの資本のアメリカに対する流入ということが必要だと言っておられるわけでございまして、真意といたしますところは、いま直ちにこれができる、そのための条件が備わっているということではございません。
  188. 渡辺武

    ○渡辺武君 それではお願いしたいんですが、そのローザ氏の構想、これの詳細な資料をぜひいただきたいと思いますが、どうですか。
  189. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) ローザ氏の議会におきます証言につきましては、公表されておりますので、その要約を資料として提出いたします。
  190. 渡辺武

    ○渡辺武君 それで、ローザ構想についてもうちょっと伺いたいと思うんです。  そのターゲットゾーンの構想だけじゃないとおっしゃって、いま補足されましたが、なおそのターゲットゾーンに関連してちょっと伺いたいんですが、聞くところによりますと、ドルとマルクと円と、これがいま言ったように一定のターゲットゾーンの中で変動を調整するという形になって、そしてそれぞれの通貨がそれぞれの影響範囲にそういうことを通じて影響を与える、国際通貨体系全体にそういう形での安定的な作用を及ぼしていくんだというのも一つの構想の中に入っている考えだというふうに伺っておりますが、もしそうだとしますと、基軸通貨としてのドルの役割りは一体どういうことになるのか。ドルと円とマルクと、これが三つ一緒になってそれぞれ基軸通貨としての役割りを分担するのかどうか、この点どうですか。
  191. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 先ほど申しましたように、ローザ氏の提言は一私人の御提言でありますので、また、その内容も必ずしも明らかでない点もございますけれども、ドルの地位を変えるという考えは全然ございませんで、ドルの地位を安定さすということをねらっている構想であろうと思います。したがいまして、基軸通貨としてのドルの地位ということは変わらないと思う次第でございます。
  192. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、先ほどローザ氏が言った言葉だとおっしゃった、アメリカの経済が安定し、あるいは資本の流入が非常にふえるということを考えても、なおかつ、アメリカが戦後ずっと国際収支上の赤字を重ねてきた、近年では日本、西ドイツなどがいわば恒常的な黒字国としてあらわれているという、そういう基本条件がある以上、結局基軸通貨であるドルをマルクと円が補完して支えていくという役割になっていくんじゃないでしょうか。その点どう思われますか。
  193. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 確かに、おっしゃいますように、かつてはドルとポンドが基軸通貨であったわけでございますけれども、ポンドが脱落いたしまして、現在のところ基軸通貨として考えられますのはドルのみでございます。しかし同時に、その他マルクあるいは円のような、あるいはスイス・フランのような強い通貨も出てきているわけでございますから、それらの通貨当局は、協力して全体の国際金融情勢の安定に努力するということは、これは大方のコンセンサスになっておるところでございます。したがいまして、先生がおっしゃいますように、マルクあるいは円の通貨当局が一方的にドルを買い支えるというようなことではないであろうと思います。それぞれの通貨当局が協力しまして、全体としての国際通貨情勢を安定させるためには、だれがどういうことをできるかということを考えるべきでありまして、そういう線で考えるべきもので、一方的にドイツなり日本がドルを買い支えるということではないと、かように考えております。
  194. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでも、ドルが弱い通貨で円とマルクが強い通貨という条件がある以上、やっぱり一方的に買い支えるということの方がより現実的な姿として考えられるんじゃないか。  それともう一つついでに伺っておきますが、日本銀行とニューヨーク連銀とのスワップ協定が結ばれて、金額は約三十億ドルだったと記憶しておりますけれども、このスワップの額、これをもっと広げて、いま言った買い支え体制を強化していくというお気持ちがあるのかどうか。  それから、それがローザ構想のいわば一つの条件になる可能性があるんじゃないかと思いますが、その点どうですか。
  195. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 日本銀行と連銀とのスワップ協定につきましては、おっしゃいますように二十億ドルの協定がございます。これは、かつて日本国際収支上の困難を感じましたときにこれを利用したことがございますが、最近はほとんどその事例がないわけでございます。  それから第二点の、おっしゃいましたローザ構想とこのスワップ協定とが何か関係あるかという御質問でございますが、何分にもこのスワップ協定は非常に昔からできておるものでございまして、何らの関係はございません。
  196. 渡辺武

    ○渡辺武君 広げる可能性はあるんですか、スワップ協定を。
  197. 旦弘昌

    政府委員(旦弘昌君) 先ほど申しましたように、二十億ドルのスワップ協定を最近使いました例がございませんので、これが不足であるということはございませんので、現在のところこれを広げる可能性はございません。
  198. 渡辺武

    ○渡辺武君 総理大臣は、固定レート制に戻ることが望ましいんだということを言っておられるんですね。そしてこのローザ構想も、いわばその中間段階みたいに考えておられる趣旨の御答弁だったんですが、大蔵大臣は固定レート制に返ることが望ましいというふうに考えておられるのかどうか。それからこのローザ構想、これが固定レート制に移るいわば中間的なものだというふうに考えておられるのかどうか。
  199. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 総理大臣が固定為替相場が望ましい、あるいはこのローザ構想のようなターゲットゾーン、その中間的なものが望ましいと言ったのは、これは条件つきでございます。もしそれが可能ならばと、こういうことだろうと思うのでございます。総理もその種のことを述べられているわけでございます。しかし、現実の問題は恐らくそれは非常に困難であり、いまのところ固定為替相場に戻るなどということはほとんど実現不可能のことではないであろうか、そのように考えているわけでございます。
  200. 渡辺武

    ○渡辺武君 大分時間がたってしまいましたが、この法案について、決算調整資金制度について若干伺いたいと思います。  財政法の四十一条ですね、これは決算で剰余が生じたときの問題を規定しております。しかし、決算で赤字が出たという場合についてのことは、財政法のどこを見ても何の規定もないわけですね。それで、私、財政法学者の書かれたものをいろいろ見てみますと、いわば赤字決算ということはあり得ないというのが財政法の立場なんだということがほぼ共通した見解として出ているわけですね。それでこのたび、従来はもちろん経済の変動がありますから、政府か当初見込んだ税収経済の変動で達成できなかったという場合は当然あるし、また現にいままであったわけですね。従来はこれはほとんど、ほとんどというよりも全部補正予算で解決してきているわけですな。五十二年度も歳入欠陥が生じることは、これはもう現に生じているわけですが、二次の補正予算も組んで解決していると思うんですね。あるいは今年度さらに第三次の補正予算を組む、その条件もなきにしもあらずなんですよ。それなのになぜこういう新しい制度を発足さしたのか、これをまず伺いたい。  特に、先ほど山口さんの御答弁の中で、補正予算では間に合わないような事態が考えられるんだという趣旨のことを言ったけれども、一体そういう場合というのはどういう場合なのか、あわせて伺いたい。
  201. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 最初に、財政法の考え方から御答弁申し上げたいと思います。  財政法の考え方は、おっしゃいましたように決算の赤字について規定がないわけでございます。恐らく先ほど仰せられましたように、そういう赤字にならないように運営しなさいということは根底にあったんだと思います。従来は実はそういうことでやってこられたわけでございます。ただ、繰り返し申し上げておりますように、最近の経済財政状況、特に石油ショック以来の状況を考えてみますと、それでは対応できなくなってきている。補正予算で流れちゃうというお話でございますが、それは補正予算でやれるチャンスがございますれば、それはそういうやり方でやりたいわけでございます。補正を出して国会の御審議を仰ぎたいわけでございますが、これもるる申し上げているところでございますけれども、補正をするいとまがない、あるいは、もう年度が経過してしまって補正することが不可能になった段階で税収の赤字が明らかになるという事態もあるわけでございます。  過去においてはなかったじゃないかという仰せでございますが、実は四十九年度はそういう事態でございまして、これを乗り切れたのは税収年度所属区分の変更を政令段階で改正するということをやったわけでございまして、当時大蔵委員会で御説明申し上げた次第でございますが、いわばそういう非常手段を講じたわけでございます。もうそういう政令段階、つまり政府だけの考えでやれる手段というのは残されておりませんので、再び四十九年度のような事態が起こりましたときには対応できない。そこで、こういう制度を一刻も早くつくっていただきたいということで、補正予算にも計上いたしますし、これに関連した法案として緊急の御審議をいただきたいということでお出ししているわけでございます。
  202. 渡辺武

    ○渡辺武君 ちょっと入っただけで時間ですが、一、二点ついでに伺っていいですか。  いまの税収の制度によりますと、四月三十日までの税収は五十二年度の税収の中に入れられるわけでしょう。そういう意味では次年度の税収をいわば事実上前取りすることができるような形になっていますね、そうでしょう。この四月三十日までの税収というのは二月段階の各会社の決算ですね、これがそういう形になって出てくると思うんです。ですから、二月段階の決算の状況を見ていて、各会社の、そうして大体税収はこのくらいだろうという見積もりは、私はいままでの熟練した大蔵省の皆さんならば十分できると思うんです。何も新しい制度をつくらなくても私はいいんじゃないか。むしろ第二次補正予算で、その辺のことも万一ということがもしあるならばそれを考えて、第二次補正予算の中に十分それを織り込んでやっていく道だってなきにしもあらずだと思うんですね。  ところが、こういう制度を今回新たに制度として提起した。五十二年度の決算のためならば、これはそれだけだといって一年限りだということであればいいんだけれども、これ一つの制度として確立して今後ずっと長期にわたってこの制度でやっていこうということでしょう。私はこの点非常に疑問なんです。どういう点が疑問なのかと言いますと、むしろこういうことが必要になるのは五十三年度予算、これだろうと思うんですね。それは国税収納金の法律の改正やるわけですね。そして五十三年度は五十四年度の税収前取りして五月三十一日まで税金を五十三年度に使うことができると、こういうことになるわけでしょう。そうしますと、五月の三十一日までの税収というのは三月三十一日の各会社の決算で初めて出てくる税収です。三月三十一日と言えば五十三年度の年度がもう切れるときですよ。だから、これから先の税収については本当に予測できないし、処理もできない、こういうことになるわけですね。まさに五十三年度の国税収納金の一部改正、これが成立することを予想して、年度が切れた後で税収見通しが狂ったという場合のための処理としてこうした決算調整資金という制度を考えているんじゃないかというふうに思いますが、この点どうですか。
  203. 大倉眞隆

    政府委員(大倉眞隆君) 税収見積もりのことでございますので、私からお答えいたします。  なるべく簡潔に申し上げたいと思いますが、穐山委員、多田委員に対してこもごも申し上げましたように、補正を組める物理的な最終的な時期でなおかつ正確な予測が立てられないのは、いまの制度で申しますと二月税収、三月税収、四月税収であると申し上げたわけでございます。二月税収というのは十二月決算でございます。いまの御質問の中で十二月決算であればもう一月になればわかるではないかというような御趣旨がございましたけれども、実はこれはわからない。新聞などで予測が大企業について出ましても、それは申告所得とずいぶん違うことが多うございますし、中小企業関係はそういうものがないわけです。したがいまして、十二月決算の税収が二月末に入ってきて、それが主税局の方に国税庁からわかってまいりますのが三月の中ごろを過ぎないとわかってこないわけです。つまりそれはさっき申し上げた例で申しますと、もう補正のチャンスの後になってしまう。ましていわんや一月決算で三月末に入りますものは、年度が過ぎて三週間ぐらいたちませんと正確な計数が私どもにはわからないわけでございます。そういうことをお答えしたわけでございまして、その意味では五十二年度でも三カ月分の法人税収とかなり大きなかたまりでございます三月の確定申告の税収、それらがいずれも補正の最後の機会を物理的に持ち得るよりも後の状況でしか、あるいは年度を越した後でしかわからないというところを何とか御理解いただけないでございましょうか。私ども、だからと言ってずさんな見積もりをしていいとは毛頭思っておりませんけれども、できる限りの努力をいたしたいし、また、今度の八千六十億もできる限り狂わないようにという最大の努力をしたつもりでございますけれども、なおかつ、やはり何%かの誤差というものは万が一の場合にはあり得ると思わざるを得ない。  それからまた、後段の御指摘で、仮にこの次に、この次にと申しますより後で御審議を願います収納金整理資金の法律の改正で、さらに三月決算、五月税収というかなり大きなものが当該年度に入ってくるとすれば、一層予測の度合いが困難を増すであろうという点はこれは御指摘のとおりでございます。しかも根元のオーダーが大きいという点も御指摘のとおりでございます。
  204. 渡辺武

    ○渡辺武君 残念だがこの次またやります。
  205. 中村利次

    ○中村利次君 五十三年度の経済運営は、大臣所信表明によりますと、臨時異例財政運営を行って財政主導型の思い切った公共投資を実施をして雇用増大をし、景気回復を図っていこうということだと思うんです。そのためには、いままで公債依存度三〇%を固執されてきたんだけれども、これも思い切って踏み切って実質三七%、特に財政法で許されていない特例公債依存度を二四%までやって景気回復を図るんだということだったと思うんですね。その指標は実質経済成長率七%を達成すると。私はこれは批判も反対もあえていたしません。景気回復をして雇用を安定するということはもう絶対命題ですから批判も反対もしませんが、私どもはやっぱり本当にそれで景気が立ち直って雇用が安定をして、大臣さっきこれをやることによって五十万人の雇用増が実現するんだよということでございましたけれども、果たしてそういうことになるのか。そこで、この減税の主張だとか、あるいは社会保障を取り上げたり、それからまた公庫歩合の問題でも常にこれはくっついている。やっぱりそういうものも考えて実施をしていかないと雇用の安定、景気回復にはならないんではないかというのが、これはもう議論の焦点になっておると思うんですよ。  そこで私は、まあ大臣は、いや大丈夫なんだとおっしゃるんだが、もしやっぱり景気回復雇用の安定、七%の達成ができそうになくなった場合、いろいろ議論されていることを取り入れた手直しをされる、そういう御意思があるかどうか、まず伺いたいと思います。
  206. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これもまあ、予算委員会において大きく議論になったわけでございます。簡単に結論から申し上げますと、われわれはいまの予算措置あるいはもろもろのそれに伴う財投措置で七%は大丈夫じゃないかと思っておるのでございますが、詳細は省略いたします。  それから、途中で危かったらどうだということでございますが、これはもう御案内のように、公共事業予備費二千億を準備さしていただいております、一般会計におきまして。なお、財投で弾力条項が五割あるわけでございますので、随時機動的な発動ができると考えておるのでございます。まあ減税、社会保障という点、いろいろ御議論ございますけれども、何といってもミクロ経済回復を通じてやはり所得増大という方が本筋であろうと、それが一番、雇用増大あるいは所得増大というような問題はやはりいまの経済のシステムに乗かってやるのが最も早い、こういう認識に立っているわけでございます。
  207. 中村利次

    ○中村利次君 私がなぜこういうことをくどく言うかといいますと、一次、二次、これは政府オイルショックに端を発して、日本だけではございませんけれども、やっぱり大変な不況になり、雇用不安なんかで労働市場が荒れてきて、国民生活はこれはかなりの影響を受けた。また円高のダブルショックだかトリプルショックだか知りませんけれども、えらいことになっておる。これは一連のそういうあれに対して、ここ何年間か政府が手をこまねいて無為無策でやっていたわけじゃないですね。一次、二次、三次、四次の不況対策、五十二年度の予算、それから補正予算。いま大臣がおっしゃったと同じ趣旨のことを政府は答弁されてきたんですよ、大丈夫ですと。もう卑近な例では、まだこれ何カ月もたちませんよ、この間も、去年の十二月の二十五日でしたか、臨時国会の閉会は。あれなんかでも同じ議論が行われて、本当に六・七%の成長が達成できますかと、いまのままで行って。できると――できない場合にはどんな手を打ってでも達成すると言い続けてきたんですね。  ところが、あの臨時国会が終わって幾日もたたないで関係省庁で五・三%への下方修正を決めて、これはまだ五十二年度が終わったわけじゃございませんけれども、大体そうなりそうだ。全くこれは、大臣ができるんだ、できるんだ、そんなことは考えませんとおっしゃることをいままでここ二、三年ぐらいずっと体験し尽してきて、そうならなかった。ところがここへ来て、大臣がおっしゃるように臨時異例措置をとって公債依存度実質三七%、二四%の依存度に踏み切ってでも景気回復は何が何でもやるんだ、その指標が七%だ、これができるという保証は私はないと思う。  それから、これは何も私ども野党が国家、国民的な立場に立って、どうしても景気回復をしなきゃならない、雇用不安も解消しなきゃならない。これは何も国内問題だけじゃなくて、国際的な貿易紛争なんかでも決定的な影響があるんですから、ですからこれはなかなか、大丈夫だとおっしゃってもそうはどうもいかないんで、いままでの政府のおっしゃってきたこと、速記録見てごらんなさいよ。ですから、もし、仮定の問題じゃありませんよ、いままで現実にやってきたんだから。そうなった場合にはどういう手をお打ちになるのか。いろいろいま少なくとも政府の万年与党的立場にある人たちまで、あのいまの政府がやろうとしておる政策では四%台ぐらいにとどまりそうだということを言っているわけですからね。私はやっぱり責任ある政府としてはそれにこたえるものがございませんと、大丈夫だ、大丈夫だと言って、いよいよの段階になると下方修正をされたんでは、これはもうとにかく私は手おくれだというおそれがありますから、もう一回ひとつ御答弁を願いたい。
  208. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 従来も積極財政をとってきたにもかかわらず、やはり政府の言うようなことにならなくて、それで下方修正になったんじゃないか、これは総理も言っているところでございますが、一つは集中豪雨的な輸出によりまして、そうして円高、これはなかなか予想できなくって、これが一つ自分の見通しの誤りであったと、こう総理はおっしゃっております。これはまあ私の私見でございますけれども、何と申しましてもひとついままで大きな計算のミスはやはり在庫調整、これがいつ済むかというところに大きくかかっておったんではなかろうかと思っておるのでございます。したがって、いままでとりましたいろんな積極政策、これは中間在庫の方で皆吸収されてしまって、稼働率の上昇、こういったところに結びつかなかったのではなかろうか。われわれは景気対策というものは過去七回ぐらい経験ございますけれども、なかなか急に効くものではございませんで、効き始めるとぐんぐん効いてくることは御承知のとおりでございます。十一月末ぐらいの指数で見ますと、製品在庫率指数が五ポイント下がっておるのでございます。これはかなり大きな要素ではないであろうか。  それからまた、こういうことを考えてみますと、在庫にかなり正常化が響いてきておる。政府見通しで言いますと、民間との見通しの一番違いは私は在庫のところであろうと思うのでございますが、政府の方は大体四、五月ごろにほぼ特殊の業種を除いては正常在庫に近づく、こう見ておる。民間の方はまだまだと、こういうところが一番大きな違いじゃないかと思うのでございます。いろいろな政府段階で最近の指標その他を勘案いたしますと、大体三月か四月ごろに特殊なものを除いては正常在庫になってくるから、これから本当に稼働率に響いてくる、こういうことをわれわれは期待しておりますし、また、そうであろうと思うのでございます。したがって、稼働率はそんな無理なことを言っているわけではなくて、大体五十三年度末には九一、二ぐらいの稼働率、稼働率指数でそれぐらいでございますから、実際の稼働率はもう一〇%ぐらい落としてもいい。それぐらいのところでいま経済成長率を見ているわけでございますから、それぐらいのことは可能であろうと思うのでございます。  それから、もう一つつけ加えて申しますと、やはり過剰設備があるわけでございまして、オイルショック以来各国の設備投資状況を見ておりますと、やはり日本が一番あのときにオイルショック以降設備投資をやったのではなかろうか。これが大きく構造不況の問題あるいは現在稼働率が悪いということの一つの原因になっている。そのために構造対策もあわせて進めていくということは当然必要であるわけでございます。特に、経済成長率においてエンジンカントリーと言われる日米独、この中身を見てみますと、まあいずれもかつての高度成長よりはずっと下がっておることは事実でございますけれども、企業収益と財政状況個人所得伸びをずっと並べてみますと、同じような、経済マクロでは同じようでございますけれども、まあ西独はそこは本当に整合性を持っておる。アメリカは一応企業収益と個人所得の関係が非常にずれておったんでございますが、最近はそこは非常にパラレルになっておる。日本はそのしわ寄せはほとんど財政とそれからミクロの採算にきておると、こういうことを考えますと、どうしてもやはりミクロ経済の早い立ち直りが決定的な要素である、かように考えまして、在庫のことを考え、あるいは稼働率のことを考え、あるいは設備の凍結ないし廃棄のことを考えながら思い切ってやっていくこと以外にはちょっといまの財政手段としては考えられない、こういうところでやっておるわけでございます。
  209. 中村利次

    ○中村利次君 それは確かに在庫調整は現状がどうであるか、まあいろいろな要因がありますね。また、私は非常にこれは過酷なことを申し上げるようですけれども、集中豪雨的な輸出によって、それも原因をして、それがすべてではないと思いますよ、私は。アメリカがどうも油を買い過ぎてドルを弱くしたことなんかこれはかなりの要因になっておることは間違いないですから、そういうこともあって円高が予想以上であったと、これは見通し誤った、だからこうなったんだと。  ところが大臣、それは私に言わせると、過酷なようですけれども、これは政策の中に入っていなきゃいけないでしょう。それはオイルショックのときだって、政府の情報よりも民間企業の情報の方が正確で早かったなんてよく悪口言われましたけれども、円高があれほどまでということはちょっと想像しなかった、そういうことをぬけぬけと言って通っているところに私は日本政府のやっぱり政策のまずさがあると思いますよ。  国民の側から言えば、過酷であろうと何であろうと、福田首相がよくおっしゃるように、日本丸のかじ取りを福田総理が預かって、それで閣僚の皆さん方が分担をして責任を持っていらっしゃるんだから、すべて国民生活に影響がある、国の経済に影響がある、景気に影響がある、雇用に影響がある問題は、やっぱり間違いのない対応をしてもらわなきゃ困るんですよ。ですから、そういう立場から財政主導型の思い切った公共投資をやって、そして民間主導型に移行をしていくということでありますけれども、所信表明の中にもございますが、やっぱり何といっても内需、国内需要が起きないことには、これは貿易収支だって改善されませんよ、だれも要らない買い手がないものを輸入したってどうしようもないわけですから。まあ牛肉みたいな奇妙きてれつのあれもありますけれどもね。  そうなりますと、やはり国内需要をふやさなきゃいかぬ。国内需要の過半数は個人消費だと言われておりますけれども、これは国内需要を、内需をふやすというのは、どういうことをやれば内需がふえるんでしょう。まあ政府やいま大蔵大臣がおっしゃるのは、公共投資で思い切ったことをやるんだと、そうすれば在庫調整もかなり進んでおるし、操業率も上がって、そして雇用増大をして、したがって国民所得も平均してふえて個人消費もふえていくんだと、こういう計算をされておるように私には聞こえるんですが、そのとおりですか。
  210. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これはずっと先々のどういう波及効果がいくかということの筋道を申し上げたわけです。来年度につきましてはそんなところまではなかなかいかないであろうということで、経済企画庁の方ではかなり無理のない控え目の数字でこれぐらいになりますという説明をされているわけでございます。  一つは、何と申しましても公共投資それ自体が有効需要でございますから、それからそれの波及効果等を考えていることは当然でございます。しかし、一方におきまして住宅投資、これも大きい要素でございますので、住宅投資についてもかなりの期待を寄せているわけでございます。  また、民間設備投資は稼働率が仮に稼働率指数で九二ないし三になっても、そんなには大きな設備投資の期待はできないであろう、まあせいぜいいろんな税制における税額控除制度、こういったことをやって繰り上げ投資をやる、あるいは先へ行きまして、電力等を中心にいたしまして、どっちみちいずれはやらなくちゃならぬものについて早くお願いするというような数字を持ちまして民間設備投資を積み上げ計算でやっておるのでございます。  それから、消費につきましては、先ほど申し上げましたように、ずっとそれは回転して消費伸びるというようなところまでは計算いたしていないのでございまして、実質で申しますとたしか五・何%ぐらい、名目で一一・何がし、それで一人当たりで言いますと九・何%ぐらいでございます。それでいろんな計算をいたしまして、貯蓄性向が少なくとも現在、まあかつては二〇と言われたものが非常に上がりまして、最近では二四とか二五になっておる。それはほとんど経済企画庁の説明によりますと、いわゆる経済不快指数というんですか、将来物価が上がるとかあるいは雇用不安があるとか、そういうことによって上がってきているんであるから、今度の公共投資等をやりまして先行き明るいという見通しがついておれば、消費者物価見通しも五十二年度よりは下がる計算が立っており、雇用に対しても何ほどか明るい見通しもつくことであるんだから、一ポイントぐらいの消費性向伸びを見ることは決して整合性に欠けたことではないんだと、そういうものを見ました結果がさっき言ったような数字になります。それらを積み上げ計算いたしますと七%になるということでございまして、来年度に関する限り、経済企画庁の計算はそんな無理をしてないところであろう、われわれもそう思っているのでございます。ミクロが中心になりまして、それが主導型をとっていくということは、来年度以降、特に後半以降期待しておるわけでございます。それのもろもろの波及効果というようなものは来年中にはとうてい全部が出切るわけではないと思いますけれども、われわれが臨時異例措置をとるというものはそのきっかけを早くつかみたい、こういう念願でやっておるわけでございます。
  211. 中村利次

    ○中村利次君 どうもやっぱりわからないんですよ。公共投資波及効果が、今明年度それが出るとは計算をしていないとおっしゃる、そうして七%が達成できるとおっしゃる。そうしてどうなんですか、地方公共団体の負担分を含めると八兆ちょいの公共投資になるんですか。地方公共団体単独投資を含めれば十数兆になるようですけれども、その波及効果実質成長率七%というと、これは全くわからないですね。そうなるとは私は思わない。その公共投資ずばりの波及効果というか消費というか、それで七%実質成長達成できますよという話をされても、私はそれはできません。時間があれば、こんなこと大体二、三時間ぐらいじっくりやるべきだと思いますけれどもね。  それからまた、さっき大臣のたとえには出ましたけれども、集中豪雨的な輸出がありました。その当時のことを考えてごらんなさいよ。私どもはこれは指摘をしましたが、経済成長率は上がるんです。しかし、数字は上がるけれども、国内景気にまんべんのない、操業率の増加につながって雇用不安がなくなったり、景気回復にはほとんど影響がないでしょうということを言い続けてきたわけですがね。これは円面要因にはなったけれども、あんまり景気の割りには、あれは経済成長率を押し上げることにはなりましたが、あんまり国内景気回復をして、これはゼロとは言いませんよ、確かにある程度の関連産業は影響あった。しかし、好ましい無気の回復にはつながらなかった。いまだって公共投資オンリーということになりますと、午前中から何かセメントが上がり始めているというけれども、これは需要と供給ですから足りなくなれば上がるでしょう。それをどうするかも、やっぱりこれは政府の政策になりますが、そういう関連までは確かに波及することは否定しません。しかし、好ましいバランスのとれた景気回復になるのは、大臣が来年度あたりはそんなことは計算してないよとおっしゃるそれが実現し回転をしていきませんと、バランスのとれた景気回復にはならないと思うんですよ。需要がないところに生産はないんですから、在庫調整が幾ら進んでも需要が起きないところに生産の必要ないですから、生産の必要のないところに設備減税を単年度やってみたって設備投資をする人はいませんよ、そんなことをやったら構造不況をばらまくようなものですから。一体どういうぐあいにお考えになるでしょう。
  212. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 少し時間が足りないのではしょって申し上げましたが、ごく簡潔に申し上げますと、公共投資一般会計、財投を中心にしてやっているわけでございますが、その波及効果経済企画庁の話では、従来のようなマクロ的な、これだけ投資すれば幾らになると、波及効果は幾らだというようなことは、単年度でございますのでそういうことはいたしませんでした。それぞれの需要項目について積み上げ計算をいたしましたということをまず第一に言っております。  それから第二番目に、公共投資一本やりということではないのでございまして、住宅投資促進策を一般会計、財投あるいは税制でやっていることは御案内のとおりでございます。  そのほか個別対策といたしまして、構造改善あるいは円高不況に対する対処の仕方、こういったもろもろのことをやっておりまして、それらのものをずっと積み上げ計算いたしますと、大体七%ぐらいは無理のないところに結果的になるというのが大体政府の七%計算の中身でございます。
  213. 中村利次

    ○中村利次君 私は公共投資を、初めに申し上げましたように非難したり反対したりしているわけではないんです。結構それはもう公共投資は、特に社会資本の立ちおくれが目立つのに、先ほど少なくとも大臣が言われたような社会資本整備充実させるというなら大いにやるべきですよ。ただ、これはやっぱり緊急異例の措置までやってやらなければならないというところに問題がないわけじゃありませんけれども、しかし、大臣の言われた住宅にだって投資しますよ。それは確かに住宅金融公庫の貸付枠なんかでも思い切っておやりになったが、公団はどうですか、えらいどうも無効投資なんというものじゃありませんよ、あれは。金利を含めて日本住宅公団なんというのは本当に国民に対して申しわけのないような状態になっているでしょう。そして五十三年度は大臣は住宅投資もやるんだとおっしゃるけれども、住宅公団は手控えなければならないようなざまになっているでしょう。これはやっぱり政府の政策じゃないんですか。ですから、政策の誤りがそういうひずみを生んでいるんですよ。それから、構造改善もやっているとおっしゃるが、日本産業構造はなかなか――私はやるべきだと思う、やらなければこれはえらいことになります。えらいことになりますが、高度経済成長時代に構築をされた日本産業構造あるいは社会構造というものはそんなに、いままでオイルショック以来四年余りたちましたけれども、まだまだかなりやり足りないこれは課題ですよ。ですから、そういうものをみんな抱えているわけですから、だから私どもは、何も政府公共投資政策を非難するんじゃないんだが、批判したいのは政府のやっぱり硬直姿勢ですね。それはたとえば金融政策、公定歩合にしても思い切ってどういうことをやるのか、あるいは減税だとか社会保障なんかでも、個人消費なんていうものは、私は賃上げだとか減税によって消費は美徳だとか、むだな消費はこれはいけませんが、必要なものを買おうかという気になるんでして、貯蓄性向がどうも日本は高いとおっしゃるけれども、高い傾向にある貯蓄性向を一段と高くした責任はどこにありますか。やっぱり政府の政策が、賃上げをことしも来年も、どうもこれはこういう不況は立ち直りそうにないから賃上げをことしも来年も思わしくありそうにない、減税もしないということになれば消費手控えますよ。そういうムードをつくったのは、私どもに言わせるとやっぱり政策である。ですから、これはひとつお考え直しを願いたい。  きょうは、こういう議論をやってみたってもう時間過ぎちゃいましたからやめますけれども、余り硬直姿勢ではなくて、少しいろんな意見にも耳をかして、そして本当の景気回復を図れるような、政府がおっしゃる七%実質成長結構ですから、それが達成できるような政策をひとつ補完してくださいよ。
  214. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いまたくさん多岐にわたって申されましたので、一々申し上げる時間がございませんが、政府といたしましては、これで何とか軌道に乗るのではなかろうかという展望を持ってやっているわけでございます。目的はいま委員がおっしゃったことと全く同じなんでございますが、方法論が残念ながらやや違うのでございます。目的は全く同じところをねらっているところを御了解願いたいと思います。
  215. 市川房枝

    ○市川房枝君 私は、きょうは法律や予算と関係なく、消費者、特に消費を担当しています一般婦人の立場で大蔵大臣に幾つかの質問を申し上げたいと思います。  第一は、七%の経済成長の目標はアメリカとの約束なので、いやそうじゃないとおっしゃるんだろうけれども、達成されなければならぬと思うんですが、そのために、大臣消費者である婦人に対して何を期待しておいでになりますか、それをまず伺いたい。  それから、一般婦人にわかるようにGNPだのあるいは七%の内容についても簡単にちょっとおっしゃっていただきたい。
  216. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) まず、婦人に対して何を望むかというお話でございますが、家庭の婦人、われわれのところでもそうでございますが、家庭のかなめでございますので、ぜひひとつ堅実な家庭をつくっていただきたい、子供をりっぱに育ててもらいたい、そのことを特にお願い申し上げたいのでございます。  それから、いまの七%がもう少しわかりやすいように、なかなかこれはわかりにくい話でございまして、御案内のように、総生産で計算しておるわけでございまして、公共投資が一体どれぐらい伸びるのか、あるいは個人消費がどれぐらい伸びるのか、住宅投資はどれくらいなのか、民間在庫はどれぐらいなのか、さらには財貨サービスがどれぐらい伸びるのか、あるいは貿易、国際収支経済余剰でどれぐらい伸びるのか、こういうことを積算しておるわけでございます。しかし、いま政府の持っておる財政手段といたしましては、何と申しましても政府の持っておる手段としてはやはり財政手段という問題と、それから一般的な金融政策を持っているわけでございます。しかし、金融の問題につきましては、もう御承知のように、かつてない低金利時代に、戦後初めての低金利時代に入っているわけでございます。公定歩合の話はございますけれども、日銀総裁はこの間もおっしゃって、これは日銀の方の所管事項でございますので、日銀総裁のお考えを言いますと、いまの時点でやろうとすれば預金金利を下げざるを得ない。それはなかなか大変な、いまの物価情勢からいいましてこれは家計に相当打撃を与えるものであるから、その問題はやはりもうちょっと待って、もうちょっとタイミングを見てやりたい、このようなことをおっしゃっておられました。私も全く同感でございます、その点につきましては。  それから、財政手段につきましてはいろいろやり方がございまして、公共投資を中心にする、あるいは住宅投資を中心にする、さらには設備投資を中心にする考え方、あるいは構造不況を直すというような考え方、それに対して、直接消費を伸ばすというような考え方で、減税がいいとか、あるいは社会福祉を伸ばした方がいいというような考えがございますけれども、私が冒頭提案理由で申しましたような理由で、私たちはこの際はそうでない方法をとった方が日本経済の成長という点から言って、また、先々民間が早くよくなるということから言いまして効果的ではなかろうか。目的は同じところを目指しているわけでございますけれども、方法論としてわれわれはいまの政府案に盛られたものがいい、かような考えでおるわけでございます。
  217. 市川房枝

    ○市川房枝君 いま私が大臣に伺ったのは、消費者としての婦人と伺ったので、何も母親としてとか主婦としてとかというんじゃないんです。つまり、家庭で財布を握って、それこそ日常いろんな生活必需品を買い物をしているその主婦に対して何を期待なさるのかということです。
  218. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) これは家庭家庭の事情によって違いますので、どうぞひとつ賢明な御婦人が家庭に即したような家計を営んでいただきたい、かように申し上げるよりほかございません。
  219. 市川房枝

    ○市川房枝君 私が伺ったことに対する答えにはなっていないので、消費者というか、として私は伺っているのですが、先ほどからいろいろな御質問もありましたけれども、七%を達成するためには個人消費をふやさなきゃならない。それでいろいろいまも、前の方とも御質問応答があったんですが、現状で物を買う立場にいる少なくとも婦人たちが一体物を買うのか、みんな財布の口を締めていまのところは買っていないという状態なんですが、それが一体、五十三年度七%増強に対してそれを続けたら困るでしょう、それを伺っているのです。
  220. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) いいとか悪いとかという話ではございませんで、日本はもともと貯蓄性向の高い国民でございますけれども、最近特に高くなってきた理由は何かというと、やはり将来の生活不安によって高まってきているのではないであろうかということでございます。そうして、私たちのようなもし政策を実行していけば、雇用不安がおのずから少しは緩和されるでしょうし、物価も、見通しのように消費者物価は少し下がるであろうから、自然と一時高まった貯蓄性向あるいは低まった消費性向がおのずから直ってくるであろうということを申し上げているわけでございます。ぜひ使ってくれなどということを申し上げているわけではございません。家庭はそれぞれみんな状況が違いますから、子供さんのおるところ、あるいは病人のおるところ、いろんな家庭がございましょうから、賢明な御婦人がそれぞれお考えになって、一番家庭のためにいい家計の切り盛りをしていただきたい。これは消費者としても貯蓄者としても、また、そういう意味でそれぞれお考えになってやっていただければ結構じゃないか、かように申し上げているのでございます。
  221. 市川房枝

    ○市川房枝君 貯蓄の話がちょっと出たのですが、日本人は外国人に比べて自分の食べるものを食べなくても貯蓄するというぐらいな習慣があって、さっきいただいた書類によると、五十年にはアメリカ人は収入の七・九%貯蓄しているのに、日本人は二五・一%貯蓄しているという実情、これはどういう原因だとお思いになりますか。
  222. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 日本がわりと貯蓄性向が世界の先進国の中で一番商いということ、特に最近高まったということは私は生活不安だろうと思うんでございます。それにしても二〇%というようなかつてのものを考えましても、世界で一番高いことはもう間違いないのでございます。  どうして高いんだろうかということは、いろんな角度で分析されているわけでございます。アンケート調査をとりますと、第一に病気その他の不慮の場合に備えてと、第二番目に上がってまいりますのは子供の教育のためにと、それから第三番目がまあ家屋――安定した住み家を持ちたい、第四番目が老後に備えてというのが大体アンケートに出てくるわけでございます。しかし、そのアンケート調査は別にいたしまして、それは恐らく動機としてはそうであろうと思うのでございます。  そこで、実質的に一体どこが、何がそうなっているであろうかというのはまた別の話でございまして、これはいろんな分析が行われておりますけれども、特に言われておりますのは、一つ日本の給与体系の中にボーナス制度がある。これがやはり貯蓄率を非常に高めておるんじゃないかということは、まあ大方の認めているところのようでございます。  それからもう一つ言われておりますのは、日本賃金形態が終身雇用型、年功序列型ということでございますので、わりと先の見通しがつく、同時に子弟の教育が済みますとそこのところはわりと楽になる。給与はずっと上がってまいりますので貯蓄余力が出てくるんじゃないか、この二つが一番大きく言われているわけでございます。  しかし、アンケート調査の中で考えますと、やはり住宅の問題というものは、これは確かに諸外国に比べて日本は劣っておりますから、それも加えていいんじゃないかなと、私はそういうことを個人的でございますが、その辺がやはり貯蓄率が高いということの一番大きな原因ではなかろうかと、かように思っておるわけでございます。
  223. 市川房枝

    ○市川房枝君 なぜ貯蓄が高い、その原因いま伺ったんですが、これはある程度大臣の御意見にもありましたけれども、結局日本に社会保障制度が十分でない、つまり病気のときに困ると、あるいは老後困るということからだと、これは私ども一般の庶民といいますか、市民の人たちとつき合っていてそういう感じを特に持つんですが、これは結局私は政府の社会福祉政策の貧困と、貯蓄が高いということは貧困だということもあらわしているんではないかと、こう思うんですが、まあ貯蓄は美徳だなんというのは、その言葉もあると思うんですけれども、そうではない、やはり原因には社会福祉政策というもの、これは私の前の委員の方もその点お触れになったようですけれども、というふうに思っているんですが、これに対するお答えはいただかなくてもよろしいと思います。  ところで、大蔵省は銀行局に貯蓄奨励官があり、日本銀行には貯蓄推進部長がおいでになって貯蓄奨励、特に婦人や子供に対しての貯蓄奨励を宣伝しておいでになりますね。実は、さきの戦争中には、大蔵省内に貯蓄奨励局というのがありまして、三十余名の婦人団体の幹部が貯蓄奨励講師といいますか、というようなことで全国の婦人団体なんかに講演に派遣されたりしたんですが、まあ私もその一人であったからその問のことはよく承知しているんですが、戦後は少しく変わったけれども、前に申しましたように、大蔵省日本銀行に担当官があり、両方が共同して毎年全国の婦人を集めて貯蓄奨励の集会を開いておいでになる。現にこの一月の二十七、二十八日にも第二十回新生活と貯蓄全国婦人の集いというのが開かれたわけでございます。この費用は全部日本銀行ですか、大蔵省の方から出ているみたいでございますが、現在の時点から言えば、私はやっぱり個人消費拡大といいますか、それが一番大事なもので、果たしてそれが実現できるかどうかということがいろいろな方面で問題になっているんですけれども、そういう現在の時点で、片っ方で一生懸命貯蓄しろ貯蓄しろと、貯蓄したら困るなんて言いながら、ここちょっと矛盾のように思いますけれども、現時点での大蔵省の貯蓄に対する方針といいますか、態度というものを伺いたい。
  224. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) まあやはり貯蓄というのは大事な問題だろうと思っておるのでございます。逆に申しますと、浪費はしないで、それぞれの家庭でやはり貯蓄ということはなかなか大事なことであろう。いろいろな場合があるわけでございますから、これはもうやはりずうっと変わらず、貯蓄は各家庭にとっても大事でございましょうし、まあこれが国民経済に及ぼす影響などを私は論ずる必要はないのでございますけれども、それが結局好況のときには設備投資の原資に結果的になりましょうし、いまのような場合でございますと公共投資の原資にもなっているわけでございますが、そんなことよりも何よりも、家庭としては浪費を慎み、やはり堅実な家庭生活を営むという意味では、私は貯蓄というものはやはり大事な一つ要素であろうと思うのでございます。  いま消費してもらいたいと、こういうことをおっしゃいましたけれども、実は消費をおおいに進めているという立場にはないのでございます。ただ、見通しといたしまして、さっき言ったような消費者物価がことしよりも来年の方が下がる。それから雇用に対して明るい見通しが出るから、だから一時高まったその貯蓄性向が少しは落ちるんじゃなかろうかということで計算をさしていただいておると、こういう筋合いの問題でございます。
  225. 市川房枝

    ○市川房枝君 この委員会で、さっき大蔵省から、「所得減税に対する考え方」という印刷物をいただいたんですが、その中をちょっと拝見をいたしますと、七、八ページのところで、「所得減税を行わなかった理由」を拝見したわけですが、いま野党の方々で一兆円減税というようなことが話題に上っていると、そういう現在の時点で、この中でも、大蔵省はやっぱり減税してもそれは所得拡大にはならないということをこれで教わって、暗に減税のあれに反対の意思表示をしていらっしゃると、こういうふうに思えるんですが、その実例として、ここの中に、昨年の三千億円の特別減税は貯蓄に回っちゃってほとんど消費拡大にはならなかったと、そういう意味のことが書いてあるのですが、それをもう少し具体的に伺いたいと思います。  それからもう一つは、この中で家計調査個人消費支出には増加が認められなかったと、貯蓄へ行っちゃったんだと、こういうことをなんですが、もしこの減税がなかったら落ち込んでいったかもしれませんね。それの調査はありますか、それを伺いたいと思います。
  226. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 簡潔に申し上げます。  去年は実は三千億というのは国会修正でやったわけでございまして、政府提案は三千五百億別にございまして、住民税がやはり千五百億くらいございまして、全体で七千三百か七千四百かと思うのでございます。一世帯当たりにしますと大体月に二千円でございますが、大体まあそれくらいの感じでございます。  私たちはそれが全部貯蓄に吸収されたということを言っているわけではなくて、それによって消費性向は上がったということはとても家計のいろいろな調査、特に減税は戻し税でございますから、六月、七月、八月に集中的に行われたわけでございますが、特に前年度に比べて消費性向が上がったということは認められない。その程度の話をしているわけでございまして、そういった意味から言いまして、どちらが効果が多いのであろうかと、こういう問題を提起しているわけでございます。
  227. 市川房枝

    ○市川房枝君 私ども一般市民としては、物価が下がるとおっしゃるんだけれども、果たしてそうなのかどうか、どうも納得がまだいかないんですが、現在とにかく物価は高くなってきている。不景気で失業の心配もある。こういう現在、幾らかでもやっぱり減税になれば私はありがたいと思います。減税と同時に、社会福祉の予算に少し上積みをしてくだされば、いわゆるいろいろさっき申しました社会福祉政策の貧困というものが幾らか是正され、そうすれば国民も幾らか安心をすると。そこで減税されたのが消費の方に前よりも回ると、こういうふうにも考えられるわけでございます。しかし一方には、私は、その家庭の消費者として別に何にも期待はしないとおっしゃったけれども、これは婦人だけではなく、私はやっぱり国民に政府のそういう方針というか、七%増というか、そういうことをよくわかるように説明をして、そして納得させて、そして協力させるという努力政府当局といいますか、大蔵当局に私はあると、そう思うんですが、その点はいかがですか。
  228. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) それだからといって、消費を勧めるべき筋合いの問題ではないと思うのでございます。それぞれの家庭の事情があることでございますから、みずからの責任において、そして賢明な選択をしてもらいたいということはさっき申し上げたとおりでございます。  それから、社会保障の問題にちょっと触れましたけれども、私たちは現在は制度としてはすでに国際水準に来ていると思うのでございます。ただ、実際問題としてまだ支払いが来ていないというのは、高齢化社会がまだ来ていないのでございます。これはもう急速に上がってくることは間違いございません。ですから、二十八年勤めた標準的な場合の厚生年金をとってみますと、どこの国に比べても大体遜色のない金額になっているわけでございます。また、実際の支払いベースで、実際の受け取ったものの一人当たりの平均をとりましても、大体遜色のないところに来ておる。ただ、高齢化がまだ来ておりません。したがって、いまのところ振替所得が比較的に少ないということは、その資格に達する人がまだ少ないと、こういうことでございまして、水準としては国際水準にまずまず来ているんじゃないか、こういうことを申し上げているわけでございます。  医療の問題についても同様でございまして、むしろ少し、日本人はずいぶん医者が好きだとか薬が好きだとか言われているわけでございますけれども、全体の医療給付の状況を考えましても、大体国際水準並みではないか。特に国庫負担とそれからそれを賄う財源としての保険料の関係を見ますと、国庫負担、つまり税金で持っている部分が非常に多いということだけが特徴的だ。だから、この問題はしかしなかなかむずかしい問題でございまして、診療側でも支払い側でもいろんな意見があるところでございます。したがって、この問題は、やはりその専門機関でどうしたら一体よくなるのかということをこれから本当に考えていくことが大事だと思いますが、私は給付水準としてはまずまずのところに来ているんじゃなかろうか、こんな感じがしているわけでございます。
  229. 市川房枝

    ○市川房枝君 最後に一言だけ。  いま大蔵大臣そうおっしゃいますが、これじゃ困っている人が毎日の新聞、あるいは私どもの周囲でもたくさんあるんだけれども、一体それは、もう日本では社会保障制度はちゃんと外国に負けない程度にできているんだと言って、それで現状のままでいいと、そういうふうにお考えになっておりますか、それでは私は非常な何といいますか、それじゃ本当の政治じゃないと、こう思いますから、そのことだけ申し上げて、私の質問終わります。ありがとうございました。
  230. 野末陳平

    ○野末陳平君 大蔵省が出しました財政収支試算について質問をしたいと思いますけれども、その前に、ちょうどいま確定申告の時期になっておりまして、その確定申告に関して、税務署の窓口とそれから納税者との間で二、三食い違うようなところがありますから、それをはっきりさしておきたいと思います。  最初に、医療費控除が最近はPRされてきておりますが、医療費等の中でも歯の矯正というのはすごくお金がかかるわけですが、子供の場合などもずいぶんかかるようですけれども、これを税務署によっては医療費控除の対象で認めるところと認めないところがあるんですが、これは統一見解としてどっちでしょうかね。
  231. 水口昭

    政府委員(水口昭君) 歯医者さんにかかりまして、歯を矯正する場合の取り扱いでございますが、国税庁の方で基本通達を定めてありまして、それは医療費控除の対象となる、その医療費の範囲に関する通達でございます。そこで、歯科医師による診療や治療を受けるため直接必要な費用は、医療費に含まれるものとすると、こういうふうに書いてあるわけでございます。  そこで、実際の取り扱いでございますが、歯の矯正というのは、大部分の場合は、この診療、治療等を受けるために直接必要な経費である、こう考えておりますし、実際には税務署でそれを医療費の中に含めておると思いますが、ごく特殊、異例の場合、その歯の矯正をするが、それが診療、治療のためでないと認められるような場合には、例外として含めないという場合もあろうと思いますが、大部分の場合は認めるということでございます。
  232. 野末陳平

    ○野末陳平君 少しでも例外がありそうだと、そこが問題になるかもしれませんがね。ぼくのところに相談の手紙たくさん来た中で、幾つかあるのが矯正なんですがね、これ静岡なんですけれども、これはだめなんですよ、矯正は美容だと、治療でなくて美容だから認めないと言うのですね。これは子供ですよ。四十万かかっているんですよ。ほかにもあるんですが、たまたまこれが一番極端なんです。  それで今度は、医者はこの場合は領収書をくれているんだけれども、この領収雷を持って税務署に行ったら、医者に出っ歯は胃に負担がかかるから、これは絶対医療費だからと言いなさいとまで言われて、税務署に行くと、やっぱりそれでもだめだと、こう言われているんですね。こういう極端なのがあると、その通達どういうふうに読んでいるのか、さっぱりわからない。ほかにもあるのです。つまり矯正は美容なんだと、特に女の子の場合は、まあそういう面もないとは言えませんがね。しかし、そういうことになって、医療費控除、せっかく四十万かかった、三十何万かかった、これ認められないじゃ困りますから、その通達は、ちょっと聞いたんだけれども、例外がちらとでもあるというのは非常に困る。やはり子供の場合は、歯の矯正は確実に医療費控除の対象とすべきだというふうにはっきりしてもらえませんか。そうすると、納税者にもぼくの方もそういうふうに説明できますしね。これ実際あるから、こういうのが。
  233. 水口昭

    政府委員(水口昭君) 国税庁の通達でもちまして、細大漏らさずすべての場合を網羅して書くということは、はなはだむずかしいと思いますが、御指摘の点につきましては、国税庁といたしましてもよく検討してみたいと思っております。
  234. 野末陳平

    ○野末陳平君 検討なんて言われると困っちゃうな。そうすると、やっぱり美容という解釈成り立つのですか。まさか……。
  235. 水口昭

    政府委員(水口昭君) 私は大部分の場合は医療費に含めると、しかしきわめて特殊、異例の場合にはそうでない場合もある。その特殊、異例の一つの例といたしまして、そういう場合があるかどうかは別として、たとえば美容だけのために矯正をするのであって……。
  236. 野末陳平

    ○野末陳平君 子供が……。
  237. 水口昭

    政府委員(水口昭君) いや、ですからいまの個別案件とはちょっと切り離させていただいて、一般論として申し上げますが、美容のためだけにやるんだと、健康上の理由はないんだというようなことにもし該当するとすれば若干の問題がある、こういうことを申し上げているのでありまして、個別案件につきましてはよく検討さしていただきたいと思います。
  238. 野末陳平

    ○野末陳平君 子供の場合は当然矯正は医療の対象だと言っていいと思いますけれどもね。それは検討じゃなくて、当然認めてもらわなきゃ困りますよ。これは三十万、四十万かかれば数万円は返ってきますからね。  それから領収書の問題ですが、これもまた少し誤解があるので改めてここで確認しますが、領収書に名前が入ってない場合、最近はお医者さんでもレジで出すレシートもありますから、そういうものも当然領収書として通用すべきだと思いますけれども、中に税務署によっては名前の入ってないのは拾ってきたのを持ってきたかもしれないとか、だれのかわからないからすぐ認められないというような言い方をしているところもあるんですが、こういうことはちょっとおかしいような気がしますがね。つまり、レジから来たレシートでも通用する、そう解釈していいのかどうか。  それから、これは税務署員で変なのがいると思うんですね。印紙が張ってないのはだめだと、こう言うのです。普通の商取引は印紙が張ってなきゃだめかもしれませんが、お医者さんとか弁護士などは領収書に印紙が張ってなくたっていいわけですね、通用すべきですね。それを税務署員がそういうことを言って返されたという例もあるんですよ。こういう幼稚な何かミスがあるんですがね。  そんなことで領収書についても、まだもらえない話は後からしますが、とりあえずもらえた場合でもそういう二、三のちょっとした窓口における誤解がありますが、その点だけはっきりさしてください。
  239. 水口昭

    政府委員(水口昭君) 医療費控除に関連いたしまして、お医者様から領収書をもらう、その場合に普通の領収書には御承知のようにそのお医者様の名前と患者の名前と、それから幾らと金額が書いてあるわけでございますが、御指摘のように、最近大きな病院等におきましては、事務の合理化というふうなこともありまして、そういったような昔からの領収書にかえましてレジによって簡単に打ち出すといったような領収書があるようでございます。その場合には患者さんの名前は書いてない場合が多い、金額はもちろん書いてある、それからそれがどの病院が発行した領収書であるかということもわかる場合が多いようでございます。その場合には税務署としてはこれは領収書として認める。しかし、どこの病院が出したのかもわからない、患者の名前もわからないといったようなものがもしあるとすれば、これは領収書の名に値しないのではなかろうかということで認めない、こういう取り扱いをいたしております。  それからもう一点、領収書に印紙が張ってあるとか張ってないとかいう点でございますが、もしそういった先生のおっしゃるようなことを第一線の税務署の人が申していればそれは誤りでありまして、ごく特殊な株式会社組織の病院というものもほんの一部にあるわけでございますが、それはごく例外でございまして、大部分の病院、お医者さんの場合には印紙税法上印紙を張らなくてもよろしいということになっておりますから、印紙が張ってない領収書でもちろん結構でございます。
  240. 野末陳平

    ○野末陳平君 さて、これからが問題なんですがね。いままでは領収書をもらえたからいいですよ。このもらえないケースの方が実は多いんじゃないかと思っているんですがね。また、そっちの方に苦情が集中するのも当然だと思いますが、領収書がもらえないために医療費控除の特典を受けられないという人を救う手として、去年もちょっとほかの委員会で、確実であるという心証が得られればまあ税務署は認めるであろう、でも領収書が本筋だと、これは当然だと思うんですよ。  ところが、こういうのがまたあるんですよ。これも小学校六年の娘がというのですが、半年間歯医者へ通った、三十二万円だと。領収書をくれと言ったら領収書は出せないと言うんですね。何度頼んでも出せないと断られた。こういう場合、これははがきにはこう書いてあるんですが、証拠の娘を税務署に連れて行ったら何とかなるでしょうかというのですよ。これがさっきの税務署の窓口の解釈だと思いますが、こういう場合、当然家計簿なりメモがあればこれは認めてもらえるんじゃないかとぼくは思いますよ。しかしながら、領収書がもらえないというところにも本当は問題があるわけなんですがね。とりあえず、もう少しはっきりさしてほしいのは、何か確実であるという心証を得ればなんていう抽象的なお答えになると、結局窓口との問題でごたごたする、混乱するだけです。もう少しはっきり領収書にかわるべきものとしてこんなものがまずまず妥当ではないかという線は打ち出せませんかね。
  241. 水口昭

    政府委員(水口昭君) 非常に微妙な問題でございますが、われわれ国税庁の方といたしましては、先生ただいまお話しのように、領収証を出していただくことが原則である、この点は所得税法の医療費控除の規定を受けまして政令である所得税法施行令にきちんと書いてあるわけでございます。医療費控除を認めてもらうためには領収証を出さなければならないということが書いてあるわけでございます。ところが、実際にいろいろのケースがありまして、非常にお気の毒な場合もある。お医者さんに言ってもお医者さんは領収書をお出しにならないというふうな場合もある。しかし、どうもいろいろ聞いてみるとお医者さんにかかったことは確実のようである。そこで、特別の取り扱いといたしまして、そういった場合に税務署におきまして、その医療を受けた患者さんの氏名であるとか、いっそういう医療費を支払ったか、どのお医者さんに支払ったか、幾ら支払ったかといったようなことにつきまして納税者の方からいろいろお話をお聞きして、その結果担当者の方でこれはもう払ったに違いないという心証を得られた場合には特に認めてもよろしいということにしておるわけでございますが、これはまあ便宜の取り扱いでありまして、人によって確かに主観によって取り扱いが異なる場合もありましょうし、われわれの方としては必ずしも好ましいやり方ではないと思っておりますが、まあ万やむを得ずこういうことをやっておりますので、できれば領収書を出していただきたいというのが切なる願いでございます。
  242. 野末陳平

    ○野末陳平君 大体そんなのが妥当だと思いますけれども、問題は、税務署あるいは国税庁が領収書を出してほしいと医者にまさか頼むというわけにもいかないんで、ここがむずかしいところなんですね。いまのように、確実であるというメモとか、それから医者にかかったという証拠のようなものがそれはあれば多分いいでしょう。しかし、それでも認めてもらえない場合もあるかもしれない。そこでやはり領収書というのが大事なんで、国税庁がPRするときにやっぱりもう一言、医療費控除があると言うだけでなくて、納税者というが患者になったときは領収書を請求するくせがつくように、領収書を請求してもらうようにしてくださいという一言親切な助言をやっぱり医療費控除のPRのところに入れるべきですよ。ことし間に合いませんけれども、そうしてほしいと思いますよ。  で、問題の厚生省にお聞きしたいわけです。  そこで、医者がやはり出さないんですよ。いわゆる町の開業医は出しませんね、いろいろ聞いてみたんですがね。そこで、請求してもくれない医者に対して、じゃ納税者はどういうふうにしたらいいか。これは厚生省に何とかしてもらうのも一つの方法なんで、去年ぼくがこの問題について、医者の領収書というものを出しやすい環境をつくらなきゃいけない、患者と医者双方にとって。どういうふうにすべきか幾つかの提案をした折に、厚生省の方は領収書が出やすい条件をつくるべく行政の立場からもいろいろ考えなきゃいかぬというようなお答えでしたよ。確定申告になっちゃったから、もういまやっている最中ですけれども、この還付の場合は。そこで、その後どのくらい前進したか。そして、あとどのぐらいと言って期限を切るわけにもいきませんが、どのぐらいで医者が積極的に領収書を請求に応じて出してくれるようになるのか、納税者にひとつこれはやっぱりここらではっきりさしてもらわないと困るですね。
  243. 森幸男

    説明員(森幸男君) お答え申し上げます。  いま先生御指摘のいろいろなケースも実際にはあろうかと思いますが、私ども一般的に聞いております限りでは、お医者さんの場合でも歯医者さんの場合でも原則としては領収書を出しておるというふうには聞いております。ただ、いま先生も幾つかの事例を挙げてお取り上げになっておられるわけでございますし、それからそういう問題があるということにつきまして昨年野末先生からも御指摘を受けたわけでございます。  そこで、私ども厚生省といたしまして、どういうふうなことをしたらそういうふうな事態がなくなっていくであろうかということで、いろいろ検討してまいりました。特に、この医療費控除についての国民の関心が非常に高まっておるということでもございますし、私どもでこの際、領収書の円滑な発行ということにつきまして、それを促進するような指導を医療機関の方にするということがやはり必要なんではないんだろうかというようなことを考えておりまして、その御指摘のありました後、関係方面といろいろこれまで連絡し、協議をしてまいりました。まあ最近、大体基本的な線ではおおむね理解を得るようなめどもついてまいりました。そういうことで、今後できるだけ早い時期に必要な詰めを行って、いま申しましたような方向で何らかの指導を行ってまいりたいというふうに考えております。
  244. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあそのお答えを素直に聞けば、一歩踏み出したというか、見通し明るくなったような気がしますが、しかし、歯科医師会などはそういう通達を出してますよね、現実に二、三年前でしたか、出していながらやっぱりなかなか、これはお医者さんのモラルかもしれないですけれども、これは足立区の竹の塚なんだけれども、三十三万円歯の治療で支払った、領収書をくれと言ったら出せないと歯医者で言われました、どうしても領収書が欲しいのなら歯医者をかわりなさいと、こうですよ。優位に立っている医者ではこういうのがやっぱりいるわけです。だから、それが一般的には出てると思いますというような考え方はだめだと思いますね。  そこで、厚生省のサイドではいろいろと努力を期待しますが、ぼくは、医師会がここのところでかい広告を出してるでしょう、あの広告に自分たちの主張は書いてあるけれども、たとえば患者の皆さんから医療費控除のための領収書の請求があったら私たちは進んで出しますよとか、その程度のサービス、何行かつけ加えるべきじゃないかとぼくは思うんですよ。そういう、医師会のあんなばかでっかい広告に、一番肝心な――ほかにも大事なことあるけれども、いまこの時期に一番肝心な、納税者にとって医療費控除という権利を受けるための基礎資料である領収書、出しますよという医者の方からの、やはり一言あってもいい。  そこで、厚生省としてはどうなんですか、医師会に対して、広告にこの一項目を入れてくれてもいいじゃないかとか、あるいは入れるべきだとか、そういうことまでやるのがぼくは本筋だと思うんですが、それは行き過ぎなんですか。それともこれ、やってくれますか。それが一番大事だと思う。
  245. 森幸男

    説明員(森幸男君) いまの御指摘の点でございますが、歯科医師会の方は、先生御承知かと思いますが、すでにそういうようなことを窓口に張ってやっておるように私ども聞いております。  なお、医師会の方につきましては、現在先ほど申しましたようなことで、今後領収書を出していただくという方向で、いまいろいろ話を詰めております。ですから、そういう中でまた今後医師会の方とも相談をしてみたいというふうに考えております。
  246. 野末陳平

    ○野末陳平君 まあひとつ一日も早く、患者が請求をしたら医者は領収書をいやでもとにかく出すというふうになってほしいですから、お願いします。  まあついでですから、例の閉業医の税制の特例について、と思ったんですけれども、これは後の機会に譲って、この収支試算のことでちょっとお伺いしたいんです。数字の出し方その他について二、三問題があるようですけれども、そこへ行く以前の初歩的な段階で、大臣に二、三お聞きします。  まず、五十七年特例公債からの脱却ということで、これをゼロという前提でもってケースが幾つか出されていますけれども、さてこれ、五十七年度になぜゼロにしなきゃいけないのか、変な言い方ですがね。これを五十七年度をゼロにしたという根拠ですよ。この間は何か五十五年だって聞いてた、努力目標。まあ事情が変わった――確かにいろいろありました。だけども、それが今度二年延びた。また今度あればその次また延びるかもしれないし、何かこの数字に余り重みがないような感じにも受け取れてきた。  そこで、この収支試算お出しになったんだけれども、五十七年度をゼロという前提でいろんな試算をされましたが、六十年度ゼロという試算があってもいいわけだし、その他があってもいいんだけど、どうしてこうなっちゃったのか、その辺をもうちょっと説明してほしいんですがね。
  247. 山口光秀

    政府委員(山口光秀君) 財政が長期にわたって大量の国債依存していく場合には、財政自身の健全性、弾力性を損なうばかりではございません、経済に対しましてもいろいろな悪い影響を及ぼすわけでございまして、私ども財政当局としてはなるべく早く大量の国債依存から脱却したいわけでございますが、順序といたしまして、まず特例公債から脱却することを目標にしたいわけでございます。  いまおっしゃいましたように、現行の経済計画におきましては計画期間中、つまり五十一年から五十五年までございますが、計画期間中にできるだけ早く特例公債依存しない状況に復帰するということになっていたわけでございますが、その後、経済計画のフォローアップをいたしまして、昨年末にその報告が出たわけでございますけれども、どうも最近の経済情勢等を見まして、特例公債からの脱却は五十五年ということでなしに、ある程度おくれることもやむを得ない状況にあるということになったわけでございます。しかしながら、まあわれわれ財政当局の願いといたしましては、五十五年が無理といたしましても、なるべく早くこの特例公債から脱却したいんだということで、二年ずれました五十七年ということを目途に特例公債を脱却したい、そういう想定を立てまして財政収支試算を描いたわけでございます。さらにこの脱却年度を延ばすという考え方もそれはあろうかと思いますが、私どもの願いとしてはなるべく早くということでございますし、それから、仮にその目標年度をずらしたといたしましても、たとえば増税をいたしますような試算も出しておりますけれども、そういう所要増税額の規模が減少するということもないわけでございまして、かえってその延びただけ公債発行額が累増し、財政経済に与える影響も悪い影響が出てくるということで、目標年次を後に延ばすことは適当ではないんじゃないかというふうに考えております。
  248. 野末陳平

    ○野末陳平君 残る時間で、はしょって聞かないとこれは途中で終わりそうですから飛ばしますけども、五つまあケースが出ましたね。ケースのAは何しろ特例公債依存型ですから、何にもしなきゃこのとおりだと、おどかしみたいなもので、これはまあケースとしては保留して、このあとの四つの幾らか頭を使ったケースについて、これは要するに、どれかを国民が選択すればどれでも具体化できるということですかね、大臣。具体性において少し難易度なんかがあるのか、それとも、どれでも選んでくださいよと、選べば実現できますよ、という意味でわれわれの前にこのケースが出されたのか、そこのところをはっきりしてください。
  249. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) まあ一番目のは、野末さんがおっしゃるように、まあいまのままで特例公債でいくとこんなことになりますというわけでございます。それから二番目のは、まあ増税やらないで、歳出カットだけでいくと国民に対するサービスがこんなに減ります。こういうわけで、A、Bケースはいずれも極端な例でございます。  問題はC、D、Eの形でございます。経済企画庁の暫定試算と一番整合性のあるのはCケースでございます。しかし、場合によりましては増税よりももう少しサービスは少なくてもいいという人もありましょうから、その程度の問題としてD、Eを置いてみた、こういうことでございます。しかし、Eになりますとかなりサービスが減るので、恐らくはむずかしいんじゃなかろうかと思うわけでございまして、結局最後の選択というのは一番整合性のあるのはCでございますが、CかDかという程度の問題じゃなかろうかと、私はそう思っているわけでございます。
  250. 野末陳平

    ○野末陳平君 これを見ればもうそうですよね。つまり大幅歳出削減なんていうようなことは、これは考えられない、やりたくても。また、やる気もないかもしれない。それじゃやっぱり増税ですよ、どうしても。だからこれは増税のためになんていうようなことでもめたりするんだと思いますが。  さて、じゃ大臣、CとDだ。Cは累積で十兆です、五十七年度までに十兆の増税。Dの増税幅を圧縮したところで九兆ですよ。これどちらかでございますというんだけれども、どちらかが必ず実現できるわけですか。たとえば十兆のためにはどういう中身で増税できるんですか、これ。
  251. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) それはそのときどきの財政計画あるいは財政政策の問題に入るわけでございまして、試算は実はそこまで示していないわけでございます。現在の財政がどんなことになっておるかと、それで健全化を図るためには大体どれくらいのことが必要であるか、税でもって負担の増を選択するか、あるいはサービスの低下をするかということでございますので、どの税金を、消費税でやるのか所得税でやるのか、どういう措置をとるかというのはそのときの財政政策に入るわけでございますので、今度は事柄の性質上そこまでは入らないわけでございます。
  252. 野末陳平

    ○野末陳平君 それならば、このケースは足りないと思うんですよ。どうしてかといいますと、この五十七年度特例公債依存率をゼロにする、脱却するということですが、しかしそのために――いいですか、それが絶対であると、絶対目標であるというがために十兆、九兆の増税を考えなきゃならないと、結果的に増税の中身はどうあれ。しかし、ほかにじゃ考え得るケースとしてこんなのだってあるじゃないかと、大幅増税がいやだとなれば、もっとこれ以下の、もっと小幅増税で三十七年度に脱却はしなくていいんで、五十八年でも九年でも六十年でもあるいは六十年代、だんだんに減っていくのでもいいと、とにかく財政当局から見れば非常に好ましくない不健全な状態ではあっても、大幅増税にたえられない、あるいは大幅増税はいやだという選択を国民がすれば、そちらとしてはケースXだかYだか、あと幾つか、一つでもいい、いずれにしても五十七年度をゼロにしないで六十年代に向けて依存率を低下さしていくような、そういう方向における試算だって当然われわれの選択として出してもらわないとだめだと思うんですよ。というのは、増税の中身についてはまだ考えてないんだと、とにかくこうやるにはこれだけの増税が必要だということなんでしょう。そういう試算だったらばどんなものですか、ほかにもつくってほしいと思うので、たとえば具体的に言うと、せいぜいこれから公債の金利を払っていく程度の小幅増税で、それならいいと、そのかわり健全財政とは言いかねるけど、特例公債依存率はまだまだ続くと、よたよた余りかっこうよくないけれども、そういう財政が続く、こういうケースもあるぞというのも出してもらわないと、これだけだと、もう十兆、九兆、こういう税金でもって何とかなると、これを選んでもらえば何とかなるというような感じで、これは足りないと思いますよ。そんな意味でどうでしょうか。ほかのケース幾つか、五十七年度ゼロ以外のケースというものを試算する必要があるのではないかと、これをざっと見て思うんですが、その必要認めませんか、どちらですか。
  253. 村山達雄

    国務大臣村山達雄君) 二つ理由がございまして、先ほど山口次長からも言ったように、おくれればおくれるほど全体の増税幅が逆に多くなるという問題が一つ。それから財政当局といたしましては、やはり早く健全化を図りたいのでございます。中身の問題は申し上げるまでもございませんけれども、やがて民間需要が起きてまいりますれば、財政というものは急になかなか縮減ができないわけでございます。そのとき財政も相変わらず従来のように大きくなっていくということになりますれば、これは当然かつてのような、どっちかになるわけでございまして、いわゆるクラウディングアウトの問題を起こすか、あるいは財政が安易な道をたどったために通貨の過剰供給を起こして、その面から財政インフレを起こすか、これは過去の経験から言えるわけでございます。ですから、財政当局に与えられた財政健全化を図り、財政法四条の精神から申しますと、その方が結局いいんじゃなかろうか、こういう願いを込めているわけでございます。
  254. 嶋崎均

    委員長嶋崎均君) 両案に対する質疑は、本日はこの程度にとどめます。  次回は二月十四日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時六分散会      ―――――・―――――