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政府委員(
村田良平君) そもそも第十九条におきましてこのような
規定をいたしましたのは、現在の一般国際法におきまして
大陸だなの位置に関しましては、沿岸国がそこに賦与されておる
天然資源に対して主権的
権利を持つということから、当然それに伴う管轄権というものを持っておる。したがって、その管轄権の発動といたしまして
法令の
適用があると、こういうふうな考え方で十九条を
規定したわけでございます。
しからば現在の国際法におきまして、どのような
分野が「
天然資源の
探査又は
採掘に関連する」ところであるかということになりますと、これは残念ながら非常にここまでがその限度だというふうな明確な
条約等の
規定もございませんし、また国連海洋法会議等でもその沿岸国の管轄権のあり方については
議論が行われておりますけれ
ども、まだ十分結論も出ておらない。したがいまして、「
天然資源の
探査又は
採掘に関連する
事項」、明らかにされるものがまずあると思います、まあ鉱山保安であるとか海洋汚染の防止というものがある。それから、事態が流動的でございますから、科学技術の進歩、社会的な通念の変化等によって徐々に
天然資源の
探査、
開発と関連のあると見られるような
事項があると思いますから、その辺はいわばグレーゾーンと申しますか、まだ完全に国際法的には少なくともはっきりしないというのがある。
それから、どう考えてみましても
天然資源の
探査、
開発とは関連がないと考えられる
事項というのはあると思うわけでございます。たとえば、先ほど
先生の御
指摘になりましたうちの思想
関係というようなたぐいの
法令でございますと、これは
天然資源の
探査、
採掘に関連する
事項とはちょっと考えがたいわけでございますけれ
ども、いまの国際法におきましてそのような点についてまで公海の上に、ある施設等に関して沿岸国が全面的な管轄権を持ち、
法令を
適用できるということにはなっておらないというのが私
どもの
認識でございます。
ただ、先ほど申し上げましたようなグレーゾーンというものもございますので、
現実にどれどれ法がその十九条でどう
適用されるか、あるいはどれどれの
法律の中の第何条は
適用されるが、何条は
適用されないということを現在明確に申し上げるということは、事柄の性質上困難でございます。したがいまして、社会通念なり常識なりというものでこれを
適用していくとともに、恐らくそういう点につき疑念が生ずるのではなかろうかということは、私
どもあらかじめ予想しておりまして、そういった
意味でたとえば二十五条に共同
委員会の任務が書いてあるわけでございますが、その一項の(e)というところにわざわざ「
法令の
適用に関連する問題を含む。」という
規定を置きましたのは、
法令の
適用に関していろんな問題が出てくるであろう。したがって、これを
両国間で十分話し合うために共同
委員会を活用しなければならない、こういう
認識で組み立てたわけでございます。
それからもう一点、この際申し上げておきたいと思いますのは、そもそもこの第十九条というものをとりましたゆえんのものは、その
共同開発地域というのは
日本及び
韓国が、それぞれ全面的に主権的
権利を行使するという
立場をとっておった
区域でございます。したがいまして、これを
共同開発にするという決断を
両国政府が下しました際には、当然その管轄権の抵触をどう回避するかという問題が出たわけでございまして、ずいぶん先方といろんな技術的な調整の方法等について
議論を進めたわけでございますけれ
ども、結局この十九条のオペレーター方式というのが一番よかろうということで、このように
規定をしたということでございます。
そこで先ほど来御
議論になっております
労働関係の法規、私そのもの自体の
専門家ではございませんので、
内容は十分承知しておりませんけれ
ども、あるいは
韓国の
労働関係の
法令が
日本の
水準にまだ劣るとか、あるいは
わが国の
立場から見て不適当だというふうなものもあるかと、可能性はあると思いますけれ
ども、これはそもそもこの
共同開発区域というものを設けて、その際に管轄権の抵触を回避するという必要が生じた以上は、いわば必然的にそういう事態はある
程度出てこざるを得ないということであろうと思うんでございます。ただ、その際の
法令の
適用ぶりが、たとえば
韓国側の小
区域におきまして働く
日本の
労働者に非常に不当な影響が及ぶんではないかというふうな場合におきましては、先ほどの二十五条の共同
委員会なりあるいは二十九条の協議条項等を通じまして、
わが国の国民に不当な影響がこうむらないように外交努力をいたすと、こういう仕組みに全体がなっておるということでございます。