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1978-06-08 第84回国会 参議院 商工委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月八日(木曜日)    午前十時五十九分開会     —————————————    委員の異動  六月七日     辞任         補欠選任      藤井 恒男君     井上  計君      柿沢 弘治君     野末 陳平君  六月八日     辞任         補欠選任      井上  計君     藤井 恒男君      野末 陳平君     柿沢 弘治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         楠  正俊君     理 事                 大谷藤之助君                 福岡日出麿君                 対馬 孝且君                 安武 洋子君     委 員                 岩崎 純三君                 下条進一郎君                 中村 啓一君                 長谷川 信君                 真鍋 賢二君                 前田 勲男君                 増岡 康治君                 穐山  篤君                 大森  昭君                 小柳  勇君                 矢田部 理君                 馬場  富君                 峯山 昭範君                 市川 正一君                 藤井 恒男君                 柿沢 弘治君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君        通商産業大臣   河本 敏夫君        労 働 大 臣  藤井 勝志君        国 務 大 臣        (環境庁長官)  山田 久就君    政府委員        内閣法制局長官  真田 秀夫君        内閣法制局第三        部長       前田 正道君        内閣法制局第四        部長       別府 正夫君        防衛庁長官官房        防衛審議官    上野 隆史君        防衛庁防衛局長  伊藤 圭一君        環境庁水質保全        局長       二瓶  博君        法務省刑事局長  伊藤 榮樹君        法務省入国管理        局長       吉田 長雄君        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アジア局        次長       三宅 和助君        外務省条約局長  大森 誠一君        外務省条約局外        務参事官     村田 良平君        水産庁次長    恩田 幸雄君        通商産業政務次        官        平井 卓志君        通商産業大臣官        房審議官     松村 克之君        通商産業省立地        公害局長     左近友三郎君        資源エネルギー        庁長官      橋本 利一君        資源エネルギー        庁石油部長    古田 徳昌君        海上保安庁長官  薗村 泰彦君        労働省労政局長  北川 俊夫君        労働省労働基準        局長       桑原 敬一君        自治大臣官房審        議官       花岡 圭三君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    参考人        石油開発公団総        裁        徳永 久次君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸  棚の南部共同開発に関する協定実施に伴う  石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特  別措置法案(第八十回国会内閣提出、第八十四  回国会衆議院送付)     —————————————
  2. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚南部共同開発に関する協定実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特別措置法案の審査のため、本日参考人として石油開発公団役職員出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚南部共同開発に関する協定実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特別措置法案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 矢田部理

    矢田部理君 前回に引き続き、私の方から質問をいたします。質問手順としては、大陸だなにおける防衛、軍事問題、それから始める予定でありましたが、防衛庁長官がいまだ見えませんので、手順を変えまして労働問題を中心に労働大臣に伺っていきたいと思います。  まず最初に外務省に伺いますが、日韓大陸だな協定の第六条で、操業管理者操業に必要なすべての人員雇用するということになっておりますが、これは単に雇用だけを決めたものではなくて、労働関係一般を仕切るといいますか、ということになろうかと思うんですが、いかがでしょうか。
  6. 村田良平

    政府委員村田良平君) この第六条の規定は、いわば一般的に操業管理者がその開発に関していろんな事業を遂行するわけでございますけれども、それに関して責任を持つということを一般的に定めたものでございまして、もちろん人員雇用そのもの操業管理者が行うわけでございますけれども、その他の労働にかかわる事項等につきましてはむしろ協定の第十九条等の規定によってその操業管理者の属しますところの国の法律というものがかかるわけでございます。
  7. 矢田部理

    矢田部理君 十九条の問題は後で伺いますが、   〔委員長退席理事福岡日出麿君着席〕 つまり六条の意味するものは雇用責任者、つまり雇い主になるということでありますから、それに伴う労働問題、労働条件はもちろんでありますが、労働関係全般にわたっての責任者となるというふうに解してよろしいかと伺っているのです。
  8. 村田良平

    政府委員村田良平君) 雇用者立場に立つわけでございますので、そういった雇用者としての立場からの責任というものは当然出てまいると存じます。
  9. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、いま外務省からお話のあった十九条であります。この十九条の規定は、「天然資源探査又は採掘に関連する事項について」は操業管理者が属する国の法令に従うというふうに規定されているように思われます。そうだといたしますれば、韓国側操業管理者になった場合、その韓国側操業管理者雇用される労働者韓国法令適用になるというふうに受けとめ、理解をしてよろしいでしょうか。
  10. 村田良平

    政府委員村田良平君) 基本的には先生の御指摘のとおりであろうと思います。唯一の一つ問題は、この十九条に定めますところが「天然資源探査又は採掘に関連する事項について」ということでございます。したがいまして、労働というのは基本的には関連する事項と考えられますけれども労働分野というものは非常に広うございますから、必ずしも天然資源探査開発に関連のない労働法規というものも日韓両国それぞれにあるかと思いますけれども、そういう点を一応別といたしますと、御指摘のとおりであるということでございます。
  11. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、労働大臣に伺いたいと思いますが、いまの韓国における労働法制あるいはそのもとにある労使関係等々についてどのように理解をされておるでしょうか。
  12. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) お答えいたします。  わが国の主要な労働法令に対応する韓国労働法令は、基本的にはおおむね一致しておると理解いたしております。具体的な詳細な面については政府委員から答弁をさせますが、労働事情の問題、いろいろ日本韓国とには事実上相違があり、日本の方が関係法令を踏まえた労働事情も良好な状態が多いのではないか、このように考えております。
  13. 矢田部理

    矢田部理君 果たしてそうでしょうか。まず、労働法制の面から伺っていきたいと思いますが、労働基準法規定だけから見ますれば一定水準に来ているようであります。ところが団体法分野になりますと、日本とはかなりの違いがある。のみならず、団体法労働組合法等で決めたことが実は他の法令によってかなり大きく機能を停止させられている、こういう実態になっているわけですが、その点大臣はどの程度まで知っておられるでしょうか。
  14. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 法制上、法令上の基本的な制度としては私は先ほどお答えしたような状態になっておると思いますが、特に団結権、そういったこの労使関係の事実認識を踏まえた実態ということについては私も詳細韓国事情をわきまえておりませんから、政府委員をして答弁をさせます。
  15. 北川俊夫

    政府委員北川俊夫君) 労使関係法につきまして、韓国では日本労働組合法、それから日本労働関係調整法に相応するものとしましては、同じ名前の労働組合法それから労働争議調整法がございます。その内容、若干の差はございますけれども、概して言いますと、労働組合の正当な行為に対する刑事民事上の免責あるいは労働協約効力不当労働行為制度労働委員会設置等主要事項は大体日本内容と似ておるのではないかと思います。ただ先生指摘のように、現在国家保衛に関する特別措置法というものが韓国では施行されておりまして、それに基づきまして七十一年十二月以来、国家非常宣言が発せられております。この法律適用によりますと、非常事態のもとでは団体交渉団体行動権の行使につきましては、事前に主務官庁調停を申請し、その決定に従わなければならない、あるいは大統領は公益性の強い事業勤労者団体行動を規制することができる等々の内容がありまして、これに基づいて行政官庁の権限がかなり作用しておるというのが事実でございます。
  16. 矢田部理

    矢田部理君 いま局長の御答弁がありましたが、労働組合法それから労使関係の、紛争調停関係法律等々をながめて見ても、日本法制から見れば大きく労働者権利が抑えられているというふうに私は受けとめざるを得ないわけです。もともと権利そのもの法令規定に反しない限りという留保がついています。加えて、争議をするに当たっても一定予告期間といいますか、通常の民間企業であれば二十日間争議状態に入っておりながらストライキはできない、公益事業はさらに延期される等々の重大な規制があるだけではなくて、行政官庁そのもの労働組合解散命令が付与されている。組合の役員の改選、変更命令まで出せるというようなことで、基本的に労働組合法団結法労働者権利が保障されていないと受け取らざるを得ない法制になっているかと思うんですが、いかがでしょうか。
  17. 北川俊夫

    政府委員北川俊夫君) いま先生指摘のような条項があることも事実でございますが、基本的に申し上げますと、韓国労働組合法労働争議調整法では労働組合の正当な争議行為についての刑事上、民事上の免責あるいは労働協約効力についての規定不当労働行為制度等労働組合運動の保護に関する規定は私は完備をしておると思います。ただ、非常事態というような特別の背景のもとに、一定期限を限って現在の段階では制約を受けておるというふうにあることは事実でございますけれども、私たちが聞いておりますのでは、現在雇用労働者約六百万のうち百万近い労働組合員というものがおり、正常な労働活動というものを、こういう法制のもとでも十分行っておるというふうに聞いておるところでございます。
  18. 矢田部理

    矢田部理君 少しく法制についての理解あるいはまたそれが具体的にどういうふうに運用されているかということの実態についての理解が私とは違う、あるいは理解の不足がありやしまいかと私は思っているわけでありますが、その議論はさておくとしても、いま局長が読み上げられましたように、国家保衛に関する特別措置法が一九七一年につくられました。現実には労働組合運動は殺されてしまったという実態になっていようかと思うんです。首かしげていらっしゃいますが、そうじゃありませんか。この法律が現に動いている状況のもとで、韓国ストライキが何件ありましたか。争議件数がどれだけありましたか。皆無に等しい状態になっているんじゃありませんか。どうでしょう。
  19. 北川俊夫

    政府委員北川俊夫君) 韓国争議発生状況について、私資料手元に持ち合わしておりませんが、こういう法令のもとでも、それなりの正当な争議行為は展開されておると聞いておりますし、この法律のもと特殊な事情における制約はあるにしましても、基本的には韓国でも正当な労働組合運動をほぼ助長するという行政精神労働行政精神というものは確立をされておる、こう考えております。
  20. 矢田部理

    矢田部理君 そういう言い方をされるんなら、私は、ここに幾つかのデータがあります。あなたは資料を持たずに、そう理解しているという議論は困るんですね。たとえばこの法律が、つまり国家保衛に関する特別措置法が発効する前ですら争議件数は一九七〇年で八十八件、スト件数はわずかに四件なんです。これが韓国における労使関係が非常にいいという意味争議なりストなりが少ないというならこれはわかりますが、そうじゃなくて抑圧されて、抑えられてできないというのが韓国の実情じゃありませんか。  ある労働関係資料による指摘を一点だけしておけば、団体交渉権が全体的には機能せず、労使協議会現実には動いている。その労使協議会は、言ってみれば政府の施策を下におろす機能しか行っていない。つまり産業報国会になっているというようなことも専門家指摘の中ではなされているわけです。基本的には労働者権利は守られている、生かされているという議論は少しく距離があり過ぎるような気がしますが、局長にもう一度答弁を求めます。
  21. 北川俊夫

    政府委員北川俊夫君) 労使協議会については、労働組合法韓国では義務づけられて設置をされておるようでございます。その協議会団体交渉にかわって一方的な政府の方針の浸透機関であるというような御批判でございますけれども、私、外国のことにつきましてそういう批判を外から見てなかなかできないんではないか。たとえば日本の場合でも、企業内労使関係というのが往々にして御用組合であるとかカンパニーユニオンであるとかいうような批判外国から受ける場合がございますけれども先生御承知のように、戦後三十年日本労働組合企業内組合と言っても、その特殊性を発揮して日本の健全な労使関係の発達あるいは経済の振興、そういうものに大きな貢献を果たして、いまそれなり外国から日本企業内労使関係の再評価がされておる。そういう意味から見まして、先生のような御批判が一部にあるといたしましても、私たち軽々韓国内の労使関係が一方的に抑圧されておるとか、あるいは団体交渉が不十分であるというきめつけ方はいたしかねる、こう考えております。
  22. 矢田部理

    矢田部理君 あなたの立場は、他国のことであるからあれこれ言えないという立場ですか。それとも基本的には労働者権利、とりわけ団結法制については保障されているという立場ですか、実態的にですよ。制度上じゃなくて。とりわけ、さっきあなたが読み上げられた国家保衛に関する特別措置法下でもそうだとおっしゃる趣旨ですか。
  23. 北川俊夫

    政府委員北川俊夫君) 私は韓国労使関係の中について、その現実をよりよき資料あるいは認識に立って批判をするのでなければ、外からそれが抑圧であるとかなんとかいうことは決して軽々には言えないんではないかと、こういうことを申し上げておるだけでございます。  なお、先ほど、資料がちょっと手元にございませんのでお答えをいたしませんでしたけれども労働争議が大変少ないではないかという御指摘がございましたけれども、私の手元にございます一九七四年の資料を見ましても、年間の労働紛争は百三十七件、これ中身といたしましても、賃上げが五十五件、賃金遅払いが三十八件等々の争議が起きておりますし、先生のような御指摘が一部あるといたしましても、なかなかそう一方的なきめつけができないんではないか、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  24. 矢田部理

    矢田部理君 あなた、今度は資料持たれましたから、労働争議という表現であれしていますが、じゃ、ストライキは七四年何件ありましたか、あるいはその保衛法が施行されてから何件になりましたか。
  25. 北川俊夫

    政府委員北川俊夫君) 紛争が発生したというこの定義につきまして、この統計ではそのうち何件がストライキを伴うものであるかというものは、韓国労働庁資料でございますけれども明記してございませんので、ちょっとお答えをいたしかねます。
  26. 矢田部理

    矢田部理君 だから、あなたみたいな断言的なことを言うんじゃないと言うんですよ。争議件数スト件数というのは違うんですよ。保衛法ができる前ですら、一々読み上げるのはあれですが、たとえば七〇年は争議件数八十八件、ストライキ四件、あるいは六五年には——その前はずっと比較的多かったんです。争議件数九十七件、六五年であります。スト件数十二件。つまり争議件数スト件数というのは違うんです。ストライキそのものがやれないような仕掛けにもともと法制がなっている上に、この特別措置法で事実上完全にできなくなってしまうというのが実態じゃありませんか。従前ですら一けたの違いがあるような状況なんです、一けた以上の。スト件数もわからないでしかるべき発言をするのは、私の発言をいかにも軽々に言っておるかのように言っておられますが、おかしいんじゃありませんか。
  27. 北川俊夫

    政府委員北川俊夫君) 私は、スト件数について把握をしておらない、あるいは事情について明確に、実態を正確に把握をしておらないから、先生のような意見もありますけれども、だからといって私が同じような意見で断定することはできないと、こういうことを申し上げておるだけでございます。
  28. 矢田部理

    矢田部理君 それならそれで、それなり理解をできるんですが、明確に把握していないんならば、基本的に労働法制確立をし、かつ運用されているというような韓国側理解を示す発言もこれは軽々にしちゃならぬのじゃないですか。
  29. 北川俊夫

    政府委員北川俊夫君) 争議件数が少ない、あるいは法制がこうなっておるということだけでは、現実労使関係がこうだという断定はできないということは事実でございます。そのことは、先生のおっしゃるように、弾圧を受けておる、だから争議が少ないということにも通じないと私は考えております。と言いますのは、これは外国争議発生件数というのは国情で大変違いがございまして、たとえば西ドイツのごときは非常に自由な労働運動をやっておりますけれども日本に比べて半分以下というような大変争議件数が少ない。そういう事例もございますんで、単に争議件数の多少あるいは法制、そういうものだけで一国の、他国労使関係についての判断は下せない、こういうのが私の考えでございます。
  30. 矢田部理

    矢田部理君 だから、あなたがそういう立場をとられるんならいいが、あなたはそれを越えて評価をし、擁護をするような発言をしているじゃありませんか。それも、資料がないというんならばその擁護発言もおかしいじゃありませんかということを私は言っているんです。
  31. 北川俊夫

    政府委員北川俊夫君) 私が先ほど申し上げましたのは、労使関係については韓国でも労働組合法労働争議調整法というものでたてまえとして正当な労働組合に対しては育成、助長という政策が明確に出ておる。ただその運用について、先生指摘のように国家保衛に関する特別措置法というもののいま適用があるということを申し上げておるわけでございます。
  32. 矢田部理

    矢田部理君 この議論だけ重ねるわけにはいかぬのですが、どうもあなたは擁護論に立っている。データがないと言いながら擁護論に立っている。そこだけはきちっとしてもらわなければ困るということだけ申し上げておきます。  それから、労働基準法規定を見る限りは一定水準に来ていることは認めます。しかし、労働基準法適用される労働者数は全体のどのぐらいでしょうか。
  33. 桑原敬一

    政府委員桑原敬一君) 手元に詳細なデータを持っておりませんけれども韓国勤労基準法適用対象事業所は十六人以上でございますので、私ども大体そう多くの適用労働者数になっていないんではないか、こういうふうに思っております。
  34. 矢田部理

    矢田部理君 適用対象人数の点でも日本とかなり違いがありますが、一定水準労働基準法は来たといっても、実際の韓国就労人口といいますか、就業労働者の数のわずかに一〇・九%、これ七〇年のデータです、程度しか実は労働基準法適用になっていない。あとの九割近くの人たち基準法適用すら受けないで実際の労働に従事させられているという実態じゃありませんか。その点は大筋お認めになりますか。
  35. 桑原敬一

    政府委員桑原敬一君) 全体の情勢は御指摘のとおりだろうと私は思います。ただ、ちょっと韓国にしばらく最近までおりました者の話をいま聞きましたら、一九七四年に五人以上の事業所適用に新しく改正になったということをつけ加えたいと思います。
  36. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、たとえば労働災害等にもつまり補償がどうなるのか、あるいは補償の打ち切り期間なり、さらには金額がどうなるのかということも少しく議論しなきゃならぬわけですが、韓国のこの種規定については非常に日本よりも劣るということも一面持っているわけです。問題は、その種労働法制、とりわけ今日的状況から考えてみますと、国家保衛に関する特別措置法も含めて、韓国側操業管理者になった場合にはそこで働く日本人適用になる、そこで雇用された日本人にその法制がかぶってくるということになろうかと思うんです。それに対して、共同開発ではあっても向こう法律適用下で働かなきゃならぬという重大な状況が、実は労使関係あるいは労働問題の中でも出てくるわけですが、この点を労働大臣はどういうふうに考えているわけですか。
  37. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘の問題は非常に大切な問題だと私も認識しております。韓国が認可した開発権者操業管理者となる小区域につきましては韓国法令適用されるという、こういったことになること当然でございまして、そのように韓国法令適用された場合に、わが国法令適用を受ける場合と比較して不利になってくる、こういった場合には、その開発権者わが国企業であるときには、その企業の本社に対しまして必要な指導を行う、こういうことで解決をせざるを得ない、解決すべきであると、このように考えます。  なお、韓国法令適用される小区域に働く日本人が、いわゆる出張というような形で一時的にそれに従事するという、こういった場合には原則として当然わが国労働関係法適用される、こういうふうに理解いたしておるわけでございます。
  38. 矢田部理

    矢田部理君 いまの労働大臣理解ですが、これはもう条約で決めてしまったわけです、向こう法令適用について。だから行政指導でしかるべき改善措置をとるということはむずかしいんじゃないでしょうか。韓国側操業管理者であった場合、そこをどう考えるかということなんですよ。
  39. 桑原敬一

    政府委員桑原敬一君) ただいま大臣お答えいたしましたのは、韓国が認可した開発権者がオペレーターとして指定された小地域において働く日本人労働者につきましては、韓国労働法令適用されるということを申し上げたわけでございます。したがって、これはもう諸外国と私どもの国との関係はもう大原則で決まっておるわけでありますから、それは変更できないわけですけれども、もし韓国の方で開発を許可された場合に、日本人企業がそのオペレーターになった場合には、日本企業責任者に十分指導をすると、こういうことを大臣申し上げておるわけでございまして、原則は当然変えられないと、こういうことでございます。
  40. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、外務省に今度は先ほどから手を挙げておりますから伺いたいと思うんですが、協定の先ほどの文言ですね、「天然資源探査又は採掘に関連する事項」についてオペレーター国の法律が、あるいは法令適用になる。すべての法律ではないと思うのですが、非常にわれわれは注目しなければならぬのは、たとえばここに反共法という法律がある。あるいは韓国には国家保安法というのがあります。さらには、大統領の緊急措置令でしたか、という問題もあります。その手のものは適用の可能性、危険性がありはしまいかとわれわれは思っているんですが、いかがでしょう。
  41. 村田良平

    政府委員村田良平君) そもそも第十九条におきましてこのような規定をいたしましたのは、現在の一般国際法におきまして大陸だなの位置に関しましては、沿岸国がそこに賦与されておる天然資源に対して主権的権利を持つということから、当然それに伴う管轄権というものを持っておる。したがって、その管轄権の発動といたしまして法令適用があると、こういうふうな考え方で十九条を規定したわけでございます。  しからば現在の国際法におきまして、どのような分野が「天然資源探査又は採掘に関連する」ところであるかということになりますと、これは残念ながら非常にここまでがその限度だというふうな明確な条約等の規定もございませんし、また国連海洋法会議等でもその沿岸国の管轄権のあり方については議論が行われておりますけれども、まだ十分結論も出ておらない。したがいまして、「天然資源探査又は採掘に関連する事項」、明らかにされるものがまずあると思います、まあ鉱山保安であるとか海洋汚染の防止というものがある。それから、事態が流動的でございますから、科学技術の進歩、社会的な通念の変化等によって徐々に天然資源探査開発と関連のあると見られるような事項があると思いますから、その辺はいわばグレーゾーンと申しますか、まだ完全に国際法的には少なくともはっきりしないというのがある。  それから、どう考えてみましても天然資源探査開発とは関連がないと考えられる事項というのはあると思うわけでございます。たとえば、先ほど先生の御指摘になりましたうちの思想関係というようなたぐいの法令でございますと、これは天然資源探査採掘に関連する事項とはちょっと考えがたいわけでございますけれども、いまの国際法におきましてそのような点についてまで公海の上に、ある施設等に関して沿岸国が全面的な管轄権を持ち、法令適用できるということにはなっておらないというのが私ども認識でございます。  ただ、先ほど申し上げましたようなグレーゾーンというものもございますので、現実にどれどれ法がその十九条でどう適用されるか、あるいはどれどれの法律の中の第何条は適用されるが、何条は適用されないということを現在明確に申し上げるということは、事柄の性質上困難でございます。したがいまして、社会通念なり常識なりというものでこれを適用していくとともに、恐らくそういう点につき疑念が生ずるのではなかろうかということは、私どもあらかじめ予想しておりまして、そういった意味でたとえば二十五条に共同委員会の任務が書いてあるわけでございますが、その一項の(e)というところにわざわざ「法令適用に関連する問題を含む。」という規定を置きましたのは、法令適用に関していろんな問題が出てくるであろう。したがって、これを両国間で十分話し合うために共同委員会を活用しなければならない、こういう認識で組み立てたわけでございます。  それからもう一点、この際申し上げておきたいと思いますのは、そもそもこの第十九条というものをとりましたゆえんのものは、その共同開発地域というのは日本及び韓国が、それぞれ全面的に主権的権利を行使するという立場をとっておった区域でございます。したがいまして、これを共同開発にするという決断を両国政府が下しました際には、当然その管轄権の抵触をどう回避するかという問題が出たわけでございまして、ずいぶん先方といろんな技術的な調整の方法等について議論を進めたわけでございますけれども、結局この十九条のオペレーター方式というのが一番よかろうということで、このように規定をしたということでございます。  そこで先ほど来御議論になっております労働関係の法規、私そのもの自体の専門家ではございませんので、内容は十分承知しておりませんけれども、あるいは韓国労働関係法令日本水準にまだ劣るとか、あるいはわが国立場から見て不適当だというふうなものもあるかと、可能性はあると思いますけれども、これはそもそもこの共同開発区域というものを設けて、その際に管轄権の抵触を回避するという必要が生じた以上は、いわば必然的にそういう事態はある程度出てこざるを得ないということであろうと思うんでございます。ただ、その際の法令適用ぶりが、たとえば韓国側の小区域におきまして働く日本労働者に非常に不当な影響が及ぶんではないかというふうな場合におきましては、先ほどの二十五条の共同委員会なりあるいは二十九条の協議条項等を通じまして、わが国の国民に不当な影響がこうむらないように外交努力をいたすと、こういう仕組みに全体がなっておるということでございます。
  42. 矢田部理

    矢田部理君 あなたが反共法なり国家保安法等々のきわめて治安的色彩が強い、言うならばファッショ的な法律適用にならないと思うという認識はそれはそれとして、しかし韓国の現状を考えてみますと、きょうはそれを主題にするつもりはありません。在日韓国人やあるいは日本人までもが大変な弾圧なり抑圧を受けている実例は幾つもあるわけでしょう。問題なのは、韓国のオペレーターのもとで日本人労働者が働く、一応韓国法制でも、日本法制によればもちろんのことでありますが、そこには労働者の団結が考えられるし、労働組合等の活動が当然あり得ていいと思うわけでありますが、その団結そのものをやっぱりねらっている法律がいま言った一連の反共立法なんです。それが朴政権批判をやったり、一定の政治的見解を労働条件の問題だけでなくて述べたときに、あるいは労働条件の不満が場合によっては朴政権の批判につながるようなことになったとき、どうしてこの反共法その他の一連の立法が適用にならないという保障があるでしょうか。  特にこの反共法だけを一つ紹介をすれば、反国家団体というのがまず規定をされます。これは労働組合もその範疇に入る可能性がある。内容的には共産系列の路線に従い活動する団体を言う。法文としてはいかがかと思うんでありますが、共産系列の路線だと、こう言うんです。非常に抽象的あるいは一方的に判断できる路線というか、認定の仕方なんですね。しかもそういう団体に加入すること、加入を勧誘すること、あるいはその加入の予備まで処罰を受ける、ここまで広げられていくわけです。しかもこれに対しては密告制度が採用されている。あの人はそういう団体に入っている、共産系列の路線に従っているとか、それの予備的行為があったとかということをどしどし密告をしなさい、密告をした者には賞金を与えます。賞金の規定まであります。韓国のオペレーターのもとで韓国労働者日本労働者が一緒に働くような場合も十分に想定をされるわけです。  そういうことになりますと、いろんなそこでトラブルがあるかもしらぬし、労働条件に対する意見や不満もあるかもしらぬ、場合によっては政治的批判に発展する可能性もないわけではない等々のことに予備的にかかわったということが密告されてしまえば、自動的にこの一連の反共立法が作動をする、こういう関係になってくると思うのはそう常識に反していないと私は思っている。あなたのように、この手法律は先ほどの協定の十九条に言う法令には入らないと思うという認識はいかにも甘過ぎるんじゃありませんか。大体この種立法は日本の戦前等々の状況を見ましても、労働者の団結に適用されている事例が強いわけであります。もう一回外務省の考え方。
  43. 村田良平

    政府委員村田良平君) 先ほど申し上げましたことの若干繰り返しになると思いますけれども、現在の国際法によりますとそのような、いま先生指摘のような法令まで全面的に公海の上におきます施設に対して適用するというふうなルールはでき上がっておらないわけでございまして、私どもとしてはあくまで「天然資源探査又は採掘に関連する事項」に関する法令適用される、ただ若干のそのグレーゾーンがあるということは私先ほど申し上げましたけれども、しかし、明らかに天然資源探査開発等と直接、間接に関係がないというたぐいの法令に関しましては、それが適用されないということが十九条の当然の解釈としても出てくるわけでございます。いずれにいたしましても、そのような立場に立ちまして韓国側と個々の法令適用については今後具体的に、場合によってはケース・バイ・ケースに共同委員会、その他いろんな政府剛のチャンネルを通じまして話し合いを行って、適正な法令適用がお互いに行われるように努力すると、こういうことが私どもの方針でございます。
  44. 矢田部理

    矢田部理君 全く保証がないでしょう。労働組合法適用になるけれども、団体規制を目的とした反共法は適用にならない、韓国法令適用になるといっているのに、法令の一番中軸に据えられようとし、現に据えられてきている大統領の緊急措置令が適用にならないなどという保証はないでしょう。少なくともこの協定を締結するに当たって、もしあなたが言うような認識なら、そこにきちっとしぼりをかけておいてしかるべきだったんじゃありませんか。労働法令適用になるが、労働に深くかかわる団結とか団体活動とかということに関して問題になる法令適用にならないという根拠はいかにも薄い、とりわけ韓国の今日的実情から考えるならば、もう独裁国家であり警察国家だというふうにすら私は思っているわけです。そのために冒頭に外務大臣にも伺ったわけであります。そういう条件下でその種立法が働かないというのは、あなたの単なる認識にすぎないんじゃありませんか。いままでこの件について韓国と協議したことがありますか、交渉したことがありますか。
  45. 村田良平

    政府委員村田良平君) 治安立法がそもそも適用されるかどうかというふうなこと自体について交渉したということはございませんけれども、この協定をつくりました際の両国立場は、先ほど申し上げましたように、あくまでこの地域は一般国際法の基本的なルールのもとにおいて両国共同開発を行う、したがって「天然資源探査又は採掘に関連する事項」に関してのみその関連の法令適用するという考え方について意見の一致を見まして、第十九条の規定になっておるということでございます。したがって個々の具体的な問題につきましては、これは将来そのような考え方に立って具体的に処理ないし調整を行っていくということになるわけでございます。
  46. 矢田部理

    矢田部理君 国際法上決まってないわけです。それからあなた自身もグレーゾーンがあると言った。法文そのものを見ても、これは法制局長官に後で伺ってもいいんですがね、「探査又は採掘に関連する事項」、全く関係がない事項は私も常識的に見て適用されないだろうと思うんです。しかし、労働組合の団結というのは、しばしば治安立法によって侵されてきている歴史的経験を持っている韓国の実情、今日的状況からすればその危険性がきわめて高いと見るのはもう常識と言っていいんじゃありませんか。だから単なる条文の解釈の問題じゃもうなくなっている実態もあり得ると私は思うんです。いずれにしたって私は、この点はこういう条項を単に書いただけではなく、きちっと詰めるべきだと、それなしに日本人労働者韓国人のオペレーターのもとでは働くことできませんよ。労働大臣、同時に労働省は、韓国労働法制日本の法例、共通の部分もあります、法制上ですね。しかしかなり食い違った部分もあります。同じような共同開発区域で働く日本人労働者が、オペレーターが韓国になったか日本になったかによって労働条件が異なってくるということは、これは困るはずです。あるいはさらに団結法制適用が変わってくるということでも大変重要な問題をはらむわけです。ということになりますればこの間の調整、これはどうしたってやらなきゃならぬ課題なんですね。労働省として韓国筋とその面について接触したことはありますか。
  47. 桑原敬一

    政府委員桑原敬一君) 具体的に折衝した経緯ございません。
  48. 矢田部理

    矢田部理君 共同開発という非常に問題のある開発をやる、いろんな意味で新しい経験でもあるわけです。だから未知の分野が多いことも私は全くわからないわけではありません。それだけに、とりわけ相手が韓国だということになれば、この手の問題については、各論的な問題でありますけれどもきちっと詰めておかなければ非常に危険だ。とりわけこのばらつきが非常に——これは労働法制だけじゃありませんが、韓国の国内法令適用日本人労働者についてまで容認したということが実は私は問題だと思うんですが、その点について労働省としてはどういうふうに考えておられるか。いままで全くさわったこともないということでいいのかどうか、これは伺っておきたい。
  49. 桑原敬一

    政府委員桑原敬一君) 先ほども申し上げましたように、原則的にはそれぞれの法制適用になるのが基本的なルールになっておりますけれども現実にやはり同じところで同じような仕事をして違った取り扱いがあるということは労働行政全体から見れば決して好ましいことではないと私は思います。したがって外務省ともよく相談しながら、今後そういった面の具体的な細目について十分御相談をしていきたいと、こういうふうに思います。
  50. 矢田部理

    矢田部理君 今後どうするかということを余りいま聞いてもしようがないですよ。それから日本側の一方的理解だけを聞いてもしようがないです。問題は韓国側がどう考えているかです、共同開発を進めようということであるならば。そこをきちっと詰めて国会の審議に供すべきじゃありませんか。雇用の問題だってそうです。  もう一点労働省に関連して伺いますが、日本開発権者韓国開発権者がいます。それぞれ開発権者はまあ企業または個人となっておりますが企業でしょう。日本人労働者なり、あるいは韓国韓国人の労働者を雇っているわけですが、そのほかにオペレーターが雇う労働者というのは固有にあるのかどうか、あるいは開発権者が雇った労働者を出向みたいな形でオペレーターに預けるのか、その辺の関係は一体どうなるのでしょうか。
  51. 村田良平

    政府委員村田良平君) 現実労働者雇用がどのような形で行われるかということにつきましてはいろんな形態があるところだろうと思われますので、一義的に必ずこうなるということはちょっと御答弁申し上げかねるところでございます。
  52. 矢田部理

    矢田部理君 それぞれの開発権者がみずからの労働力で作業することになる場合もあるのか、それともそれぞれの開発権者は、その種労働力の提供は一切しない。オペレーターが日韓両国から適当にというか、オペレーターの意思で労働者雇用するのか、その辺の議論は全くなかったんですか、これだけの重要な規定を置くに当たって。
  53. 村田良平

    政府委員村田良平君) 基本的には、この第六条で先ほど先生指摘のような定めがございますので、操業管理者になる開発権者、日韓いずれかの企業になると思いますけれども、その企業がみずからの責任において必要な人員雇用するということでございますが、具体的にしからばその雇用される人間というものはどういうところから供出されてくるかということになりますと、開発権者同士の話し合いにおきまして、双方それぞれの国民が雇用されるという結果になることもございましょうし、一方の開発権者操業管理者となりまして、全く開発権者の独自の判断のみにおいて雇用するというふうなこともある。したがいまして、具体的にどうなるかということは、今後個々の操業管理者になる企業の判断に待つべきであろうと存じます。
  54. 穐山篤

    ○穐山篤君 関連でお伺いをしますが、第十九条は小鉱区、言いかえてみればナンバー一からナンバー九までに適用されるわけです。ところが、第六条の二項と第七条を細かく分析をしてみますと、必ずしも第十九条とは合致してないという状況が明白ですね。通産省、第十九条というのは、あらかじめ決めた鉱区一から九までの区域に限られるわけですね。ところが第六条の二項と第七条は必ずしも鉱区の中、区域の中だけを限定をしてないわけですね。これは要員の雇用の問題に深い関連がありますので、その点明確にしてもらいたい。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕
  55. 村田良平

    政府委員村田良平君) 第六条で定めておりますのは、その法令適用関係の問題ではございませんで、一般的に操業管理者という者がどういうふうに決定されてどんな責任を持つかということを規定したものでございます。  それから第七条は、この開発施設の取得につきまして、他方の国の領域内においていろんな施設をつくる、あるいは取得すること等ができるという法令適用の問題が書いてあるわけでございますが、このように一般的な法令適用に関しましては第七条のみならず後ほどの方にもございますが、第十六条、十七条、十八条等におきまして個別に法令適用関係は明らかにしてあるわけでございます。第十九条が定めておりますのは、この十九条の冒頭にございますとおり、「この協定に別段の定めがある場合を除くほか、」ということでございまして、第七条の規定は当然この十九条で申します「別段の定め」でございますから、その間の矛盾というものは特にないわけでございます。
  56. 穐山篤

    ○穐山篤君 第七条で「終点施設」というのがあります。これは第六条二項で言う「操業」の中に入るか入らないかという問題と深い関係があります。仮に「操業に必要な」というのが終点施設も入っていたとすれば、具体的にこういう問題が起きますね。韓国側がオペレーターになっておる。パイプラインを済州島に引く、そして終点施設が済州島に置かれる。その場合に、オペレーターが日本労働者を雇っておったと仮定をします。そうしますと、韓国の領土内で実際に日本人労働をするということに相なるわけですね。そうしますと、先ほど一連の問題の指摘をしておった、単に労働基準法のみならず、その他の法令というのは済州島では日本人にどういうふうに適用になるのか、プラットホームの上で適用になる部分と終点施設で働く労働者に対する法令適用の範囲というのは具体的にどういうことになるのか。いま私が申し上げた事例でひとつお答えいただきたい。
  57. 村田良平

    政府委員村田良平君) 第七条の定めておりますところは、いま先生が具体的に挙げられました例とは若干異なるわけでございまして、たとえばわが国企業操業管理者になります区域において石油が発見された、その最終的なターミナルを距離その他の理由から済州島に置くというふうな場合におきまして、韓国法令に従う必要がございますけれども日本企業がそういう施設を韓国の領土内につくることが許される、また逆に韓国側操業管理者がそのような施設を日本の領土内に日本法令に従って置くこともできる、これが第七条の規定でございます。  それからそれを離れまして、先ほどの御質問お答えを申し上げますと、仮に最終的な施設等がわが国あるいは韓国の領土内に設けられるといたしますならば、その施設というものは当然それぞれその施設が置かれております国の法令によって全面的に規制されるわけでございまして、そこで働く人間の労働条件等も、わが国に設けられる終点施設に関しましては、当然日本法令がこれはもう完全に全面的に適用されるということは当然のことでございます。
  58. 穐山篤

    ○穐山篤君 韓国の領土内に、オペレーターが韓国で、済州島で日本人が働く。その場合に、済州島の中におきまして労働したり、発言したり、行動したり、いろんな問題がありますわね。その場合に、先ほどから指摘をしておる反共法だとか、国家保安法だとか、その他の法律は具体的に日本人適用になるのかならないのか、はっきりしてください。
  59. 村田良平

    政府委員村田良平君) 済州等は韓国の領土でございますので、韓国法令が全面的に適用される地域でございます。
  60. 矢田部理

    矢田部理君 ですから、共同開発の延長線上でそういう施設ができた場合に、日本人労務者にも一連の治安立法が適用になるというきわめて危険な状況をこの協定は生み出すわけでありますが、法制局長官に伺っておきたいのは、従来の治安立法の適用というのは、率直に言うと歯どめなしなんですよ。とりわけ労働組合の団結等に対してはいち早くそれがやられる、あるいは一審強い攻撃が加えられるという歴史的経過もあるわけです。ここで、韓国人のオペレーターのもとで労働者が働く、団結をする、労働条件に不満がある、あるいは事故その他の対策について要求がある。これは操業管理者に対して出たることになります。そういう操業管理者を任命した韓国政府にも責任なしとしないというような活動だってないとは言えない。あるいはそういう活動をしたという密告される危険もあるわけです。そういう条件が一つ。  もう一つは、ここで天然資源探査または採掘に関連する事項について、先ほどの事例に徴して言えば韓国法令適用になるという規定になっている等々を考え合わせてみると、法制局長官の立場で絶対その種の法律適用になりませんということを言い切れますか。
  61. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 先ほど来、十九条に関連して大分御議論があるようでございますが、十九条は私の理解では、先ほど外務省政府委員の方からお話がございましたように、普通ならば、大陸だなにおける天然資源探査なり採掘に関しては沿岸国の法令適用されるというのが大体一般国際法だろうと思うんです。今回の共同開発区域につきましては、日本とそれから韓国との大陸だなの所属についての意見が必ずしも一致しておらない。そこで、天然資源探査及び採掘に関する法令の管轄の分配と言いますか、管轄が抵触するおそれがありますので、それを解決した条文だろうと思うんです。この「探査又は採掘に関連する事項」という範囲がどこまでかというのは、これは先ほど来お話がございましたように、多少グレードがあるという問題はありますけれども、その問題と、それから先ほど来おっしゃっておりまする反共法なり、あるいは何て言うんですか、私は韓国法律の名前よく知りませんけれども、それが適用があるかどうかというのは、これは韓国の国内法の適用の問題でございまして、十九条とは直接の関連はないだろうというふうに考えるわけなんです。  と申しますのは、たとえばわが国の刑法を見ましても、これは矢田部委員は百も御存じだろう思いますが、国外犯を処罰するという規定はございます。しかも日本人だけでなしに、何人であるとを問わず、国外犯を罰するという規定もあるわけなんですね。たとえば内乱罪のごとく。それを、ちょうど裏返しに韓国の方から見れば韓国の治安立法という名前に値するのかどうか、私知りませんけれども、この韓国の国内法の主権、つまり韓国の主権の作用として、何人であるとを問わず国外犯を罰するという法律ができても、これはいたし方ないんですね、これは韓国の主権の働きですから。ただ、それが現在の国際的な通念から見ていかにもひどいというような場合には、いかにもひどいと思われる韓国法律によって日本国民が処罰の危機にさらされたというような場合には、それは内政干渉にわたらない程度で外交努力によってここは救済の方途を考えるというよりほかにしようがないんであって、これは韓国の主権の問題であろうと思うんです。  したがいまして、そういう反共立法か何か知りませんが、そういう韓国法令共同開発区域内の、しかも韓国側がオペレーターである小区域において、日本労働者に対して韓国の国内法の適用があるといっても、これはもう主権の作用なんですからいたし方ないんじゃないかと。先ほど申しましたように、それがいまの国際的の通念から見ていかにもひどいという場合には、それこそ外交努力によって内政干渉にわたらない程度において救済の方途を考えるということに相なろうかと思います。
  62. 矢田部理

    矢田部理君 法制局長官はその種法令適用になってもやむを得ない、後は外交努力だと。外務大臣、そういうあいまいな形で韓国法令をやっぱり受け入れたのが実は今度の共同開発なんですよ。そういう危険に日本人労働者をさらそうとしているのも今度の共同開発の一つの側面なんですよ。そういうことで大臣としていいのでしょうか。外務大臣の所見と、それから直接所管をする労働大臣としての考え方を承って、きょう午前中の質問を終わりにしたいと思います。
  63. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 先ほど申しましたように、いまの韓国の国内法がどういう範囲で適用されるかということは、これは韓国の主権の問題なんですから、これは十九条がそれを受け入れたというわけじゃなくて、それは韓国の国内法そのものの効力の問題でございまして、たとえば日本人日本国内において韓国法令に違反したという場合には、通例はそれは適用ありませんよ。通例は適用ありませんが、もし韓国が、ちょうど日本の刑法において内乱罪はこれは外国人であろうと国外犯であろうと処罰すると言っていると同じような、ちょうどその裏返しにしたようなかっこうで、韓国法律がそういうものであれば、それは共同開発区域内でなくても、その日本国内における日本人にだって適用するという法律がもしあれば、それは適用されるわけなんですね。それが余りにもひどいということであれば外交努力によって救済の道を考えるということだろうと思うんです。それは、もうその理屈は矢田部先生よくおわかりだろうと思うんですが……。
  64. 矢田部理

    矢田部理君 もう一点だけ、外務大臣労働大臣答弁を求める前に。  十九条の解釈の問題は一つありますよ。しかし、これがあるなしにかかわらず、法制局長官の意見は、韓国が決めたものは韓国がそうやるんだからいたし方ありませんと言う。そういう国と共同開発をし、日本人労務者を韓国オペレーターのもとに提供する日本国政府として、きっちり物事を取り仕切らずに、相手方が決めることだからいたし方ないんです、それが国際的な著しい人権侵害だとか何かのときには改めて外交努力でやるしかないんですと。この法制局長官の対応も問題なんですが、それはそういう危険にさらされている。そういうことを、反共法の適用は一切除外する、あるいは日本人労務者に関しては少なくとも韓国法令は排除するというような外交交渉をせずして、共同開発に踏み切ったことにひとつ問題が多いわけです。そこら辺はきっちりしてもらわなければ困る。これは、むしろもう法制局の問題じゃなくて、外務省なり、それから現実にかかわる労働省の問題だと思いますので両大臣から、先ほどの問題も含めて答弁を求めて、午前中の質疑を終わります。
  65. 園田直

    国務大臣(園田直君) いまの御質問きわめて重大な質問であります。特定の大陸だなを複数の国が主権を留保しつつ共同開発を行うという事例は今度が初めてであります。しかも、共同開発にまつわるいま御発言等の種々の法令適用についての、国際法上の問題を検討するための先例等も全くないわけであります。したがいまして、そういう状況のもとで事務当局が苦労をして考え出したのがオペレーター方式だと私は考えております。  そういうわけでいま御質問のとおりに、国内法令適用問題が個々の条文についてすべて明快に割り切られていないと私も考えます。条文上の解釈から言えば、当然法制局長官が言ったとおりでありましょうけれども、その後、そういうことであるからこれは韓国法令に任せざるを得ない、不当なことがあった場合には外交上の折衝でこれを排除するということは、これは外務大臣としては、とうてい現実の問題として韓国の言うとおりにならざるを得ないとしか想像できません。したがいましてこの問題は、このような重大な問題でありますから、共同委員会等で的確に両方の意見も一致し確認をしてやるべきものであると外務大臣は考えます。
  66. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 労働大臣といたしましては、申し上げるまでもないことでありますが、労働者の生活の安定と福祉の向上という、こういうことを踏まえてすべての問題に対処しなきゃならぬと心得ております。  ただいま御質問のございました問題については、外務大臣から御答弁がございました関係に関連いたしますが、われわれとしてもどうしても問題が解決しないという、いま御質問の経緯を通じて初めての事態も想定できるわけでございまして、そういった場合はわれわれの立場を踏まえて外交ルートを通じて日本人労働者立場を十二分に守ると、こういうことで努力をいたしたい、このように思います。
  67. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、休憩いたします。    午後零時十一分休憩      —————・—————    午後一時二十分開会
  68. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  午前に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  69. 矢田部理

    矢田部理君 大臣出席状況が悪いためにまた手順を変えざるを得ないわけですが、海上保安庁等中心に、場合によっては法務省も含めてお尋ねをしたいと思いますが、まず海上保安庁は御承知のように海上警察権を持っておられるわけです。そこで、共同開発区域内の船舶または施設等で発生した犯罪はどういうふうに取り締まることになるか、その概況をまず承っておきたいと思います。
  70. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) いまお話ございました共同規制区域の中でいろんな犯罪が出てくることは予想されますが、法律の中身によりましていろいろ取り締まり方法が現実には変わってこようと思いますが、私どもは海上における法令の励行ということを所掌事務としておりますので、海上警察権に基づきまして所要の船艇を派遣をして取り締まりを行うということでございます。それぞれの法律によりまして取り締まりの態様というものは異なってまいりますと思われますので、法律を所管している省とよく打ち合わせをして、現実に取り締まりを協力をしてやるということを考えております。
  71. 矢田部理

    矢田部理君 問題は、その共同開発区域が小鉱区に分かれている、しかも小鉱区ごとに先ほどから話の出ております操業管理者が決まる、操業管理者が決まりますと、その所属する国の法例が適用になるということになるわけですが、その場合にいわば日本がオペレーターをとった小鉱区、韓国側がとったそれ、出てくるわけですね。そうなりますと、あなたが取り締まりの対象にするのは日本の鉱区だけなのか、それから全体の開発を進めるために船舶等の出入り等もあり得ると思うんですが、その船舶関係の取り締まりはどういうふうになっておるのか、そこら辺のところを伺っておきたいと思います。
  72. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) たしか協定内容に示されておりますように、日本側が開発権を持って、日本側が操業の管理者になるという小区域については日本側の法令適用がある。それからなお日本船については全部についてあるというふうに考えております。
  73. 矢田部理

    矢田部理君 そうすると、海の——ここにありますが、この全体の鉱区で幾つかに分かれますね。その中で、この部分は日本側のなわ張り、この地区は韓国側のそれというふうに海の上で線引きでもして取り締まり範囲を決めるということになるわけでしょうか。
  74. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 先生おっしゃるとおりの区域分けに従って法令適用が違う、私どもの対象が違ってくるというふうに心得ております。私ども、御承知のとおりでございますけれども、十二海里の問題にいたしましても二百海里の問題にいたしましても、海の上に線はございませんけれども、航海計器を利用してその位置を判定するということによって、私どもはその区域の中での取り締まり関係が区々になってもその取り締まりを行っていけると思っております。
  75. 矢田部理

    矢田部理君 そんなうまい話ができるもんでしょうか。一例を挙げますれば、韓国でも海洋汚染防止法がこの七月から施行されることになる。汚染についてはいろんな罰則規定もあります。したがって、海上保安庁として取り締まらなきゃならない、言うならばどこから流れ出た汚染物質であるのか、場合によっては汚染物質が全体に広がることもあるかもしれない。そういう場合はどうなるんですか。
  76. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 海洋汚染防止については、日本側が受け持つ区域につきましては御承知のとおりの日本法律の、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律というものを適用しまして、まず油などの場合には、油を流したその責任者がその防除の始末をしますけれども、それで足りないときには必要な措置を明示をしましたり、またそれで原因者だけで措置が足りないときには海上保安庁はみずからの手で防除作業をやるというような点で、海洋汚染防止の通常の手続に従って措置するつもりでございます。また、韓国側に仮に事故が起こって、日本側に流れてきたような場合には、協定の中に相互にどちら側が事故を起こしても通報するということになっておりますので、ほかの地域に影響が及ぶようなときには、その通報に基づいて日本側も日本側に影響があるときには必要な防除の措置をとるという考えでございます。
  77. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) ただいまの海上保安庁長官の御答弁の一部について補足させていただきますと、船舶につきましては大陸だなの共同開発区域は公海でございますので、原則として旗国主義に従うことになるわけでございます。  海洋汚染防止の点につきましては、先ほどの長官の答弁のとおりだと存じます。
  78. 矢田部理

    矢田部理君 いま、油の排出の問題について話が出ましたが、日本法律ですれば、農林大臣は油の排出により漁場の効用が著しく低下をし、またはそのおそれがあるときには運輸大臣に対し油の排出の規制のための適切な措置を講ずることができる、こうなってますね。韓国側法制はどうなっているのか、韓国側が原因でその漁場が荒らされてしまったときには、日本の運輸大臣の措置はできないはずです。できないことになっている。ここら辺のところはどういうふうに処理しようとしておられるのか。
  79. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) お互いに事故が起こったときには通報し合うという考え方になっておりますので、緯国側が事故を起こして日本側に影響のあるときには、私どもは引き続く油の災害が広がらないように、できるだけの手を尽くすということでございます。
  80. 矢田部理

    矢田部理君 いや、日本法制はわかっているし、これは通報するんだということも聞きました、さっき。ただ日本法令だと、運輸大臣そのものが適切な措置を講ずることができることになっているわけでしょう。韓国側法制はどうなっていますか。韓国側に原因があった場合に、日本はどう処置するんですかと……。
  81. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 韓国側法制については私どもちょっとつまびらかにしない点がございます。
  82. 矢田部理

    矢田部理君 共同で開発するんですから、しかも隣り合って海の上にいろんなしまが、しまというかなわ張りができるわけですか、あちらさんがどうなっているかわからぬでは取り締まりなり対策ができないじゃありませんか。
  83. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 韓国側につきましては、海洋汚染の防止につきましては先進諸国の先例に従いまして海洋汚染防止法が昨年の十二月の十一日の国会で成立しております。で、十二月の三十一日に公付されまして、本年の七月一日より施行されるということになっております。詳しいことは恐らく担当の省から御説明あるかと思いますが、海洋汚染の防止に関するわが国法制韓国法制は比較いたしますと、まあ外務省としては必ずしも十分に答えられるわけではございませんが、概要といたしましては非常に似ているということでございます。基本的な相違点がわれわれが了解しております限りは、わが国の海洋汚染及び海上災害防止に関する法律が……。
  84. 矢田部理

    矢田部理君 一般論はいいから具体的な問題だけ答えてください、あと聞きますから。
  85. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) ですから、相違点で、規定上の点で違いますのは、一つは、「放射性物質による海洋の汚染及びその防止については、適用しない。」ということがわが国法律上ではなっております。それに対しまして韓国法律では、放射性物質のほかに軍艦及び非商業用の政府船舶に対して適用しないということになっている、これが違う一点でございます。  それからもう一つの違う点は……。
  86. 矢田部理

    矢田部理君 いや違う点を聞いているのじゃなくて、韓国法制とこっちの法制の違いを一般的に聞いているのじゃなくて、いま私が提起した具体的問題について、どう処理すると韓国法制は書いてあるんですか。それについて海上保安庁は知らないと言うから、知らなくては対応ができないじゃありませんかと言っているんで、その点に関してだけ答えてください。一般論はまた後で次々に質問を予定しています。
  87. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 海洋汚染防止については先生も御承知のように、協定そのものは第二十条がございまして「海洋の汚染の防止及び除去のためにとるべき措置について合意する。」ということになっております。これは共同開発区域における問題であることは当然でございますが、これを受けまして「海洋の汚染の防止及び除去に関する交換公文」というものがすでに取り決められておりまして、その中に、海洋の汚染の防止及び除去のための基準が細かく決められております。それに基づいてそれぞれ国内法上の措置をとっておる状況は、韓国側についてはいま三宅次長の説明したとおりです。  そこで先生の御質問は、そういうことがあっても、食い違いから生ずる、あるいは片方がその国内法に基づいて何らかの措置をとっていても不十分な場合にはどうするのかという具体的な問いに答えます部分は、その交換公文の第四項及び第五項にございまして、第四項は「いずれの政府も、」いまのこの交換公文の「規定に従つて措置がとられなかつた場合又はとられた措置のみによつては海洋の汚染を防止し若しくは除去するために十分ではないと認める場合、」まさしく先生のおっしゃるような場合には、「いずれの政府も、」「海洋の汚染を防止し又は除去するため、必要な措置をとることができる。」ということでございますので、相手の政府だけで任せ切るというんじゃなくて、いずれの政府も協力して防止及び除去の措置をとる、こういうことになっておりまして、さらに、それを確保するために、第五項のところで、「両政府は、この取極の効果的な実施のため緊密に協力する。」、これは人類の共通の財産を守るという協力の精神で両政府が緊密に協力をして、汚染の防止及び除去に努める。こういう立て方になっておるわけでございます。
  88. 矢田部理

    矢田部理君 先ほど発言を始めて私が抑えたので恐縮しましたが、そのときに触れられたのは、適用除外項目が違う、つまり、放射性物質による海洋の汚染は日本の場合にも適用になっていない、これ自体問題なんでありますが、韓国もそのとおりでありますが、非商業用政府船舶の汚染、これが除外されている。つまり、政府の船なら海洋汚染してもよろしい、あるいは取り締まりの対象にしませんという規定だと思うのですが、この辺はどういうふうに韓国側は考えているのでしょうか。条文の意味だけじゃちょっとわかりにくい部分もあるんですが、政府であれ、個人であれ、企業であれ、海洋汚染してはならないということはだれでも考えることなんですが、政府用船舶だけ除いたのはどういう意味なのか。
  89. 中江要介

    政府委員(中江要介君) もし御質問の趣旨が韓国法制上非商業用の政府船舶に対して適用しないという除外が行われているのはなぜかという御質問ですと、これは韓国側法制ですので、韓国がなぜそうしたかということになるわけですが、私どもといたしましては、韓国日本も、先ほど私の指摘いたしました交換公文に沿って国内法をつくり、また、それによって協力するということでございまして、それぞれの国内法制の欠けているところあるいは規定していないところ、それは協力していくということで、汚染の除去と防止に努めるということ以上に、韓国の国内法の解釈を日本政府として行うわけにはまいらないということになろうかと思います。
  90. 矢田部理

    矢田部理君 両法制が食い違った場合の調整をどうするかという議論は、労働法制の場合にもさっき一つ二つあるいは重要な問題を含めて提起をしておるわけですが、調整の前に原則的にはやっぱりこの協定の十九条が適用になるわけでしょう。それぞれの国の法制がオペレーター国の法令として適用になるということは、これにもかぶるわけでしょう。
  91. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 第十九条は、午前の審議におきましても繰り返し御説明いたしましたように、「天然資源探査又は採掘に関連する事項について適用される。」わけでございますので、天然資源探査採掘から生ずる問題の一つとしての海洋の汚染ということならば当然十九条がかぶるわけでございます。
  92. 矢田部理

    矢田部理君 だから私が申し上げたいのは、従前は海洋汚染防止法がなかったから非常に問題があったわけですが、それが韓国なりにつくった。つくったけれども、依然として両法制上に幾つかの食い違いが出てきているわけです。そうなってくると、取り締まりの立場から見ますと、海洋という九州の二倍くらいある広い共同開発区域にいわば線が引かれているわけじゃないわけでしょう。ある線を越えると韓国法令、それからこっちの線に行くと今度は日本法令、それも同一なら問題がありませんがね、食い違いが出てきているような場合については非常に繁雑になり、現実にはなかなか取り締まりができない。またどこから出た汚染物質かすらも究明することが、広い海洋でありますから容易でない。そういう問題をきちっとやはりしておかないと大変な混線、混乱状態が起こりはせぬかということをひとつ指摘をしておきたいわけです。  そこで、次の質問に入りますが、環境庁長官見えておりますが、海洋の汚染状況あるいはその汚染にかかわるいろんな対策等々について現状をどう認識されておられるのか。まず冒頭に伺いたいと思います。
  93. 山田久就

    国務大臣(山田久就君) 現状の認識という問題になりまするというと、いろいろ現状把握の違いの関係もございまするので、われわれといたしましては、共同開発によって生ずる汚染防止、それに備えてできるだけの体制というものをあらかじめ準備して、そうしてその万一の場合に備えることに遺憾のないという点について十分の注意を払い、また関係各機関との協力を求め、そしてまた韓国側とのその点についての協力体制というものに十分注意を払って、遺憾のない体制をつくることに十分努力するということに重点を置いてやっているわけでございまして、現在の現状と申しますか、万一の場合に生じた汚染影響という点につきましては、関係方面との協力によってひとつ遺憾のないことを期したいと、こういう態度で臨みたいという、そういうわれわれの立場と思っております。
  94. 矢田部理

    矢田部理君 重ねて伺いますが、海洋汚染の一つの重要な原因は油の流出事故、これが非常に多いということであります。しかもそれが大量になった場合には率直に言って手がつけられない。オイルフェンスであるとか、中和剤であるとか、吸油板であるとか、油回収船であるとかということを水島の事故でもいろいろ問題にされました。しかし、あの静かな瀬戸内海ですら何の役にも立たなかった。結局はひしゃくとむしろできわめて原始的なやり方であれを解決するしかなかった。ほとんどと言っていいほど実際は結果としては回収できなかったわけです。まして、この波の荒い東シナ海で大量の油流出事故が起こった場合一体どうするのか。これは海上保安庁であり、あるいは運輸省の所管ということになるのかもしれませんが、環境行政責任者としてその辺はどういうふうに考えておられるか、長官に伺っておきたいと思います。
  95. 山田久就

    国務大臣(山田久就君) その御指摘の点は、それぞれ所管の海上保安庁なり所管の担当のところがございます。   〔委員長退席理事福岡日出麿君着席〕 そこにおいてあらゆる場合を想定し、それは静かな場合もあるし、ことに場所が非常に波の荒い、そういうことが予想される場合もある。そういう場合に処してとにかく遺憾のないことを期するということについては、むろん海上保安庁等において万全の策をとる備えをもって臨んでいるわけでございまするけれども、この点について一層そういう場合に注意をもってやってもらいたいというわれわれからの要望を申し上げまして、そしてそれに応ずる体制に遺憾のないようにというふうに努めたいと、こう考えておるわけでございます。
  96. 矢田部理

    矢田部理君 率直に言って、もう抽象的な話ではなかなか片がつかない状況になってきている。海上保安庁自身もいろいろ批判をされながら苦慮しているところだと思うのですが、なるほど韓国でも海洋汚染防止法はつくった。しかし油流出事故、特に大量の油流出事故などに対応する、さっき言ったようなことではちょっとどうにもならぬということではありますが、どういう設備なり対策なり、あるいは準備なりをしているか。その辺は外務省なり海上保安庁として実態をつかんでおりますか。
  97. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 先ほど海洋汚染の現況はどうかというお話がございました。あの日本の近海に幸いにしてこのところ水島事故以来大きな海洋汚染の事故がないのです。年間で二千数百件でございますけれども、これ五十二年の数字を最近集計してみましたら、おかげさまで数年間海洋汚染の件数はわりあいに減ってきた。私ども防除に一生懸命にやっておるわけですが、先生お話しのように、流したら非常に影響するところが社会的に大きいという意識が浸透したと申しますか、油を流してはいかぬという意識の高揚がありまして、おかげさまでここ数年間ずっと減少の傾向をたどっておるということでございます。しかし、一たん事故が起こったら大変な影響があるということは私ども承知をしておりますので、この共同規制区域につきましても、九州の七管、十管を中心にいたしまして、船艇、航空機を動員して所要の措置をとる。また船艇、航空機だけではなくて、先ほど先生お話しがございました防除用の諸機材、そういったものもこれに対処すべく準備をするという心構えでございます。
  98. 矢田部理

    矢田部理君 私が聞いているのはそんなことじゃない。韓国側がそういう準備はどんな状況になっていますかと聞いている。日本の話を聞いているのじゃない。
  99. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 韓国側は、すでに申し上げましたように、海洋汚染防止法を通しまして、この七月一日から実施になると同時に、現在細かいことは施行令で規定することになりまして作業中でございます。  もう一つは、韓国の多数国間条約に対する加入の問題でございますが、千九百五十四年の油による海水汚濁防止条約に対し批准書案を今年九月の定期国会に提出すべく準備中である。  このように承知しておりまして、一つは多数国間条約に入る。一つは海洋汚染防止法の施行令をいま準備中でございまして、その面からの法制の整備を急いでおる。こういうぐあいに承知しております。
  100. 矢田部理

    矢田部理君 どうもこの辺も私が聞いているのと違うのです。法制がどうなっているか、どういう方向に行っているかじゃなくて、具体的に油流出事故対策のための施設なり手段なりが、どの程度まで韓国にはあるのかと聞いているわけです。
  101. 中江要介

    政府委員(中江要介君) いま御質問のような、具体的な細かい事実については私どもは承知しておりません。
  102. 矢田部理

    矢田部理君 そこで、ここでも現場レベルで韓国の実情把握をほとんどしないまま、何かが起これば話し合いますとか、あれしますとかということで仕切ってきているわけですよ。日本の技術や対応でももうどうにもならぬことは先般の水島事故、その他できわめてはっきりしたわけです。特にこの東シナ海というのは波が荒い。しかも油を掘るという話でありますから、単に船舶からの流出、タンカーからの流出というだけではなく、大事故が発生する危険だってなしとはしないわけでしょう。  いつでしたか、サンタバーバラの大事故について議論しておって、いや北海油田は大丈夫です、最も近代的な設備を備えてやっているんだから大丈夫です、その北海油田並みの技術で今度は開発をするんですから、したがってまた共同開発の地域でも大丈夫ですと、こういう議論政府とわれわれとの間でやっている直後じゃありませんか、北海油田が暴噴出という大事故が起こったのは。  そこで、海上保安庁、仮に北海油田並みの事故が起きた場合、あれと同じような量の油が噴出した場合に一体どういう海域にどういう方向でこれは広がるか、想定してみたことがありますか。
  103. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 私どもは、やっぱり油の事故が一たん起こりますと影響するところは大きいということは考えております。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕 それで、この前に海洋汚染防止法の改正のとき、大災害にならないように、法制的な整備も行ったところでありますし、先ほど申し上げましたように、いろんな船艇、航空機の増強、それから機材の充実ということでやっているわけでありますが、大事故が起こったときに大変な影響があるということは私どもは覚悟してそれに対応すべくやっておりますけれども現実に北海油田というときに、これが東シナ海で起こったら、一番油の影響は海流の状況というのが大きいと思います。それから、波が静かなところは停滞をしまして、かえって油が固形化して影響があると。外洋は少ないんではないかということも、われわれ平素の経験としていろいろ研究はしておりますということでございます。
  104. 矢田部理

    矢田部理君 あの規模の油が流出した場合あるいは噴出した場合に、どの程度の海域にどういうふうに広がるか。それは潮流もありましょう。波の強さ、高さの問題もあるでしょう。あるいは気温等の関係があるかもしれませんが、そういう想定をした、あるいは試算をしたものはありますか。
  105. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 共同開発区域で掘削中に流出性の事故があったときにその油はどういうふうに漂流するだろうかという経路は、私ども実は調べて研究はしております。東シナ海を南西諸島に沿って北に上がります黒潮は奄美大島の西側の、共同開発区域で申しますと、一番南の端で二つに分かれまして、本流は屋久島の南側を通って太平洋側に出る。一方、他の分岐したものは共同開発区域を北上して、済州島の南海域、ちょうど、共同開発区域で申しますと、北の端の部分で北東に向きを変えまして、対馬海峡を経て日本海に入るんではないか。この間、共同開発区域内での流れの方向は一般的にはほぼ北向きであろう。流速は〇・五ノットないし一ノットであるかと。  しかし、大体この海域で事故が起こりましたら、いま申し上げましたような海流に沿って流れると思われますけれども、先ほども申しましたように、油は風の影響を強く受けるので、具体的な場合に一体どうなるだろうかということは、私ども大体海流の流れから二つの方向に分けて北上するということを試算しております。
  106. 矢田部理

    矢田部理君 時間がありませんけれども、たまたまここに地図を用意しておりますので、どういう方向でどの範囲に広がるのか、かいつまんでで結構ですから、地図で指しながらちょっと説明をしていただきたいと思います。
  107. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 黒潮の方向は大体南西諸島に沿って、方向としては先ほど申しましたように、この最南端で二つに分かれまして、一つの太平洋側に流れる方は、この屋久島の南側を通って太平洋側に出るだろう。これは奄美大島と屋久島の間を通って太平洋側に出るだろう。それから、片一方の方の分岐した流れは、この真ん中部分を突き切って済州島の南側、その主力はやはり対馬海峡に出るだろう、少しまた分かれて東シナ海の暖流に乗ってこちらに曲がっていくということを考えているわけです。
  108. 矢田部理

    矢田部理君 その流れる方向はわかりましたが、広がりの範囲というのは、この共同開発区域というのは九州の二倍ぐらいの広さだと言われておりますが、この何倍ぐらいの広がりになるというふうに考えられますか。
  109. 薗村泰彦

    政府委員(薗村泰彦君) 油の場合の試算というのは、一番むずかしいのはやはりそのときの海象、気象に支配される。それで、風によって、強い場合には拡散が速いというようなことで、いろいろな天然現象に沿って考えられますので、実はその油のもとの量をどう試算するか、そのときの天然現象をどう考えるかということによりましていろいろ試算しなきゃいかぬと思いますので、現状では、ちょっといま手元には持ってきていないということでございます。
  110. 矢田部理

    矢田部理君 水産庁見えておりますね。  そういう大事故なり大きな油の噴出事故等があった場合に、漁業等に与える被害、影響について、水産庁はどういうふうに受けとめているか。あるいはその影響の大きさについて何か試算なり検討したことがあるかどうか。
  111. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 私どもは、一般の場合に、事故が起きない場合には、それほど大きな影響は漁業にはないと思っておりますが、もし不幸にして事故が起きました場合、やはりここが相当な魚のいい漁場でございまして、一部サバ等につきましては産卵場になりますので、もちろんその事故の発生の時期その他によって違いますが、比較的影響は大きいものと考えます。  ただ、その額がどのくらいになるかは、いま海上保安庁長官がおっしゃいましたように、流出いたします油の量、それから波あるいは風、それから潮流の強弱、水温いかんによって影響は大分違い得ると考えられますので、それについては具体的な試算をいたしておりません。
  112. 矢田部理

    矢田部理君 いずれにしても、北海油田並みの大事故が起これば大変な広がりを持つ。どっちに向かうかはそのときの風向きとか気象現象その他がいろいろ左右するだろうと思います。被害も漁業等を含めて非常に大きなものになる。ところが、北海油田は大丈夫だといままで説明してきたんですね。しかも、技術もあれ並みだと、こういうふうな説明をしてきた。  通産省に伺いますが、北海油田の事故があったときには、結局収拾策が出ませんでした。やむなく、わざわざアメリカのテキサスから——とめ野という有名な人がいるそうです、油の噴出をとめる男でありますが、これを呼んできて、ようやくとめた。しかも、全体的には噴出の穴をふさぐ、いろいろなものを埋めてふさぐというやり方でしがなかったわけですが、この手の暴発を抑えるための技術というのはその後進んでいるのでしょうか。あるいはそういう技術が日韓両国にあるのでしょうか。通産省にお伺いします。
  113. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 御指摘の北海油田の場合には技術的と申しますか、設備あるいは装置面の問題よりもむしろ油の噴出防止装置というものをつけないで作業に入った。言ってみればケアレスなミスがあったということになろうかと思います。その後こういった技術については日進月歩であろうかと思いますが、北海油田の例からわれわれが教訓として受けることは、設備技術の開発と同時に、その作業員あるいは技術屋の教育訓練ということも非常に大切ではなかろうか、かように思うわけでございます。
  114. 矢田部理

    矢田部理君 余り抽象的でわかりにくいんですが、それほど完全なものではやっぱりいずれにしてもない。その他にもまた引き続き事故が起こっているわけです。タンカー事故もあります。しかも、その油の与える影響というのは非常に大きいわけですね。そういう点で環境庁長官、きのう連合審査での質問ではアセスメントなどは考えないと、あるいは場合によってはなじまないと言ったか、ちょっと表現は正確にはわからないのですが、これだけの危険な作業をし、かつ油の流出の危険性もあるという条件のもとで、しかもこれは漁業の宝庫ですよ。少なくとも環境庁として一言あってしかるべきだと思うんです。あるいは水産庁自身もアセスメントを含めて問題を考えなきゃならぬというふうに思うんです。この辺、長官なり水産庁としていかがお考えでしょうか。まず長官に伺います。
  115. 山田久就

    国務大臣(山田久就君) この海底油田開発に伴います海洋汚染問題といたしましては、採掘施設の不備等に起因する流出事故によるものが大体その中心である。こう考えられるので、これを防止するためには何よりも施設の安全性についての技術的なチェックを十分に行って、事故を未然に防止するということが肝要だ。この点についての注意、これについての関係方面に対してわれわれの意見を述べ、これについて、備えることについての協力をうながしてまいっておるわけでございます。  このような趣旨から鉱山保安法におきましては採掘施設の設備に当たって、事故防止のために必要な噴出防止装置等の設置を義務づけておりまするとともに、施設計画につき認可を受けることを必要としているところでございまして、これらの制度を厳正に運用することによりまして、事故発生の未然防止を担保し得るものと考えているような次第でございます。  したがって環境庁といたしましては、現在環境について事前にこの点についてのそれぞれの国内法において、これに備える点についての法の命ずるところがございます。これによって十分やっていただくということを主にいたしておりまして、特に改めてこれ以上にアセスメントを行うという点は、事の性質上余りなじまないというようなふうに考えております。  海洋開発全般についてどのように対処すべきものであるかということは、さらに今後の研究分野によって十分努力すべきところに属するんじゃないか、とこういうふうに考えておる次第でございます。
  116. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 私どもといたしましては、施設の設置によります漁業に与える影響につきましては、大体事業計画が固まりました段階では私どもなりに検討いたしてみたいと考えております。ただ、先生指摘の事故の問題につきましては、私どもとしては何か事故がございますれば多かれ少なかれ被害を受けることでございますので、そういう事故の起きないよう万全の措置を関係の各省庁にお願いいたしたいと考えております。  なお評価につきましては、先ほども申し上げましたように、いろいろな条件によりましてきわめてその状況が変わっておりますので、具体的に評価をすることはむずかしいのではないかと考えております。
  117. 矢田部理

    矢田部理君 環境庁長官ね、何か遠い海の果てで開発を行うんじゃないんです。五島列島の鼻先で開発が行われ、しかも流出したら大変なことになる油を扱う、そういう開発なんです。だから、なじまないという議論は少しく私はいただけない。  もう一点だけ伺いましょう。鉱業法という法律があります。本来、この鉱業法でまかなうべきものだと私は思いますし、また、特別法との関係における位置づけも後で議論をしなければならぬと思うのでありますが、この鉱業法ですら、と言ってはなんでありますが、この鉱業法の十五条には、公害等調整委員会のことについて書いてあります。特に、その内容から見ますと、「鉱物を掘採することが一般公益又は農業、林業若しくはその他の産業と対比して適当でないと認め、鉱物を指定して鉱業権の設定を禁止した地域は、その鉱物については、鉱区とすることができない。」という規定まで置いている。こういう視点から見るならば、鉱業法の延長線上にあると思われる共同開発という特殊のもう一つの状況もありますけれども、なぜ環境上の配慮がもっともっとなかったのか。いろいろ交換公文その他はありますけれども、少なくともこの条項に即して言えば「その他の産業」、ここでは漁業が一番大きな問題になるのでしょうが、その漁業にとって非常に重要な地区があったとするならば、その点については公害等調整委員会みたいなものを設けてもっときちっとした配慮、場合によっては、その点だけは鉱業権の設定をしない。特別鉱業権を認めないというぐらいのことはしてしかるべきだったんじゃないかと思うんです。こういう規定まではずされてしまったことについて、環境庁、一言あってしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか長官。
  118. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) アセスメントになじまないということを大臣から答弁申し上げたわけでございますが、従来環境影響評価といいますものにつきましては、開発行為等によりまして環境を汚染するおそれがあるというふうに見られます場合に、あらかじめ調査、予測、評価というものをして、環境を汚染するというようなことを未然に防止しよう、こういう趣旨のものでございます。問題は、その際にそういう開発行為なりにつきまして、正常な事業活動というものを前提にしてアセスというものをやっておるわけです。したがいまして、事故というような場合におきましては、事故に関するアセスというようなことは、現在アセスにはなじまないのではないかということで、その辺の手法の問題もございますし、やっております。で、今回のこの共同開発区域におきます採掘なりの問題につきましては、これは正常な活動といいます際には自然景観をどうするとか、あるいは大気を汚染するとか、水質といいましてもその辺の問題につきましてもそう大きな、正常に活動する場合には問題は大してないんじゃないかと。むしろ非常にやはり問題になるのは、ただいま先生から御指摘のございますように、事故というものはそれは起こしてならぬことでございますけれども、万々一起きた場合には、確かにこれは環境に対する影響というものは大きいと思います。しかし、その事故というものはどの程度のものがどう出て、先ほども広がりがどうかというような御指摘がございましたが、これに対する海上保安庁の方からの答弁もございますように、その辺の事故の場合のアセスといいますものはどうもアセスにはなじまない、こういうふうに考えておりまして、環境庁としては事故の場合のは考えておりません。  なお、ただいまのお話で、公害等調整委員会というようなものをこの法案の協議の際にこういうものを設けて、ここは鉱業権を設定しないというところまで徹底したようなことをやらなかったのかということでございますが、これにつきましても特にこの面での影響といいますのは、主として漁業ではなかろうか。で、その漁業の面につきましては大分この特別措置法案におきまして農林大臣との協議とか、そういう面がいろいろございます。現実問題としては漁業の関係が大きいというようなことで、環境庁としては特にここまでの規定を設けるべきであるということまでは申し上げなかった次第でございます。
  119. 矢田部理

    矢田部理君 いまの局長の説明にもかかわらず納得できないわけです。何も私は事故だけ問題にしているわけじゃない。試掘もやればその後施設もつくるということになれば、そのことに伴う環境に対する影響があることは当然であります。だから、事故についてはアセスメントになじまないという説明だけでは納得し切れないところでありますが、特に後者の方に力点を置いた質問でありますから、通産省、これは鉱業法は主として通産省が所管してきたわけでありますが、共同開発をやるんですから、恐らく通産省の立場としては開発先行型でいかざるを得ない。しかし、これは場所によっては他の産業と対比して適当でないという比較考量をやっぱりして他の産業を優先させて考えていくべきだというところについては、鉱業権そのものを設定しないという規定まで鉱業法は置いているわけです。とりわけ魚礁だとか魚の漁獲の非常に多いところ等々については少なくともこの手のものを置いて、とりわけこの委員会方式でそういう規制なり措置なりをとってしかるべきだったと思うのですが、通産大臣いかがでしょうか。
  120. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) ただいま鉱業法十五条の例を引用されての御指摘でございますが、漁業との調整につきましてはこの特別措置法案の三十六条に、御承知のように、指定区域制度というものをとっております。重要な魚礁が存在する地域につきましては、農林大臣と協議してこれを指定する、この指定された区域内における専業については通産大臣の許可にかかわらしめるといったようなことで、鉱業法に言う禁止区域というまでの規定ではございませんが、広域性の規定を置いているわけでございまして、これをもってこの十五条にかわるべき性格のものというふうに考えておりまして、また、こういった指定区域制度のほかに、法案の二十一条の中にございます共同開発事業契約の中に漁業との調整事項につきまして、たとえばいまも御指摘になりましたような、盛漁期あるいは産卵期等においてはボーリング等の事業を行わしめないといったような指導をし、それを契約の中に掲記させるという指導もいたそう、こういうことでこれに対処しておるつもりでございます。
  121. 矢田部理

    矢田部理君 いずれにしても、鉱業法の鉱業権そのものを認めないという規定から見ればかなりの後退した内容になっているし、まあ運用上の措置としてはいろいろ考えなきゃならぬのでしょうが、漁業者にとっては非常に重要な関心というよりも利害にかかわる問題としてこの問題を位置づけているわけであります。制度そのものの後退とあわせて、運用がさらに緩められるということになればこれは漁業にとって大変なことになるということだけ申し上げておきたいと思います。  関連して水産庁に伺っておきますが、この法律の三十六条で漁業生産上重要な魚礁についての規定がございますが、この図面で魚礁というのはどの辺にあるのか指示できますか。
  122. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 大体千メーター線がこれからこちらの方に抜けております。
  123. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと座標軸で数字を挙げて。
  124. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) それじゃ具体的に……。  魚礁そのものがやはり天然の岩礁地帯でございます。非常に散在しております。ですから、どの辺が多いかということを申し上げたいと思います。大体千メーターが大体この辺を通っているはずでございますが、これからいわゆる大陸だなの傾斜面になりまして、その周辺にそれぞれ二百メーター線から平らな地形に相なっている、こういうことでございます。大体これから三分の二ほどが二百メーター以浅にあります。大体その二百メーター線を中心に帯状に魚礁がずっと分布しております。さらにこちらの二百メーターより浅いところにつきましては沈船その他もございますほか、天然の魚礁がそれぞれこういうふうに細かく細部に分布しておるというのが現状でございます。
  125. 矢田部理

    矢田部理君 予定の手順どおり質問が進まないために、いろいろつまみ食いをせざるを得ないような状況なんですが、たとえば海底地質のこと私はわかりませんが、人工魚礁をつくるというようなことについても、水産庁なり通産省は十分配慮するというようなことにこの規定上はなっているんでしょうか、あるいは運用上はそういう考え方があるのでしょうか。
  126. 恩田幸雄

    政府委員(恩田幸雄君) 私どもの方では現在この区域に具体的な人工魚礁の設置計画は持っておりませんが、当然なことながら私どもが七カ年計画で進めております沿岸漁業整備事業によりまして少なくとも五島の南部の周辺には私どもとして将来設定いたしたいと考えております。
  127. 矢田部理

    矢田部理君 通産省。
  128. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 水産庁あるいは農林省からお話がありました場合にはそういった魚礁につきましても前向きに対応いたしたいと、かように考えております。   〔委員長退席理事福岡日出麿君着席〕
  129. 矢田部理

    矢田部理君 あわせて漁業の問題について伺っておきますが、ここは共同開発区域ではありますが、国際法上は公海になりますね。そうしますと、公海でありますから漁業そのものはどこの国でも自由になりはしまいかと思うんです。第三国がここが漁場だということでその種の開発にある種のクレームなり制限を求めてきたときにはどう対処されるんでしょうか。
  130. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 第三国が何らかの措置を求めてくるということ自身ちょっと理解がむずかしいんですが、先生がおっしゃいますように公海でございますので、公海においては公海漁業の自由が原則としてあるわけでございます。しかし、公海には漁業の自由のほかに航行の自由もございますし、いろいろ公海を使うに当たっての自由は公海に関する条約にも規定されているようにございますけれども、これは他の国の公海の使用の自由を妨げないようにお互いに配慮しなけりゃならない、こういうことになっておりますから、公海についてある国が一つの目的で使用しているところに、他の国が他の目的で使用したいというときにはそこに調整の問題も生ずるわけですから、これは具体的にもし第三国がいま共同開発区域の地域でわが国韓国大陸だなの探査採掘という一つの事業をやっているときにその公海部分について、他の目的で公海の使用について関心が示されましたら、これは当然のことですけれども話し合いによって解決するということになろうかと思います。
  131. 矢田部理

    矢田部理君 ですから、公海である以上は漁業の自由、航行の自由も含めて、他の国からそれを求めてきたときにはだめだと断るわけにはいかぬ、調整、話し合いということをせざるを得ないということになるわけですね。それはそう承っておきましょう。  それから、全体的な逐条の問題につきましては改めて別途承るといたしまして、法務省が来ておりますので、法務省の方に二、三の見解を聞いておきたいと思います。  先ほど海上保安庁から、取り締まりのための場所的な範囲あるいは適用法令等について伺いましたが、刑事犯罪等の扱いについては、これは国内になるのでしょうか、国外になるのでしょうか。
  132. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 共同開発区域は、先ほど来も御議論出ていますように公の海、公海でございます。したがいまして、刑罰法令適用上は日本国外である、こういうことになります。
  133. 矢田部理

    矢田部理君 そういたしますと、国外の日本人刑事犯罪ということになろうかと思うんですが、その犯罪の捜査なり取り締まりに当たっては、一つは場所的な関係では操業管理者が差配をする小鉱区が一つ入りますね、その操業管理者日本である場合、これは当然入ります。しかし、韓国である場合には韓国の法例が適用になると言っております。そこで働く日本人の場合には、日本刑事犯罪の国外犯、日本人の国外犯として取り締まられる、あわせて韓国法令適用になるという関係になろうかとも思うんですが、その辺の整理はどうなりましょうか。
  134. 伊藤榮樹

    政府委員伊藤榮樹君) 問題を二つに分けてお答えをしたいと思いますが、一つは刑罰法規すなわち実体法と言われるものの適用でございます。この実体法の適用につきましては、刑法の第二条あるいは第三条で国外犯を処罰することができる犯罪が列挙してございます。そのほかに先ほども出ておりましたが、海洋汚染防止法などのように、法律の性格上当然公海上で犯された場合にも刑罰を科するのが目的になっておる、そういう法律もございます。そういう刑法あるいはその他の国内法におきまして国外犯を処罰する趣旨が書いてございます。こういうものは適用がされる。この適用関係におきましてはオペレーターが日本側であれ韓国側であれ同じであろうと、こういうふうに思います。  次に手続法の面でございますが、もちろんわが国の刑罰法令上、罪にならないものについて捜査をするということはないわけでございますからこれは論外といたしまして、日本側が操業管理をしておる区域につきましては、もちろん完全なる捜査権が、処罰できる犯罪であれば完全なる捜査権が行使できると思います。それから、韓国側操業管理権のあります区域につきましても、理論上は同じことになると思いますけれども協定精神からいたしまして、韓国側に管理をゆだねられておる区域についての捜査権の行使は十分慎重に行われなければならない。そういたしませんと韓国の捜査権というものとわが国の捜査権というものが衝突をする、こういうことになろうかと思います。そういう意味で慎重を期する必要がある。これは運用上の心構えでございます。
  135. 矢田部理

    矢田部理君 金大中事件などを初めとして、韓国と捜査を共同にしなければならないような、とりわけ政治問題の絡む、あるいは社会的問題の絡むケースについては非常に困難な問題が幾つか出てきているわけです。したがって、日本側が韓国側のオペレーターのところで起こった事件についても、捜査権は持つが慎重にやるという態様であっても、必ずしも韓国側はそうだというふうには考えられない場合もあります。そこら辺について法務省なり外務省として、今後刑罰法令適用なりあるいは犯罪捜査に当たってどういうふうにすべきかということについて話し合ったこと、交渉したことがありますか。
  136. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 韓国との間でこの協定を締結するに当たりまして、いま矢田部委員の御指摘になったような問題も含めて、一般的にこの共同開発地域の国内法上の取り扱いということは、これは大問題であるわけです。これは一つの国がもっぱら主権的権利を行使し得れば、これは完全に自国の法令適用になるわけですが、そこのところが重複したところを共同開発するということですので、黙っておりますと国内法が完全にやはり重復する。そこをどういうふうに調整するかということで、午前の御審議でもありましたように、第十九条を設けまして、これはオペレーター方式という解決の仕方をした、その結果として操業管理者によってその国内法令適用協定上別段の定めがあれば別だけれども、そうでない限りは原則として操業管理者の属する国の法令がそこで適用される、こういうことになっておるわけであります。  したがいまして、しかしながら他方この地域は幾ら共同開発といい、あるいは一方的な大陸だなの開発であろうといいましても、この地域は公海であることには間違いがないわけで、またそこに設けられる施設が領土、領域でないことも事実でございますから、これは自国の国内法があたかも自国の領土内に適用があるごとく、あらゆるものが適用されるというものではなくて、天然資源探査及び採掘に関する法令のみが適用されるというかっこうになっておる、これも先ほど来御議論があったところであります。それだけの原則については、韓国日本との間でははっきり合意ができておりますために、協定にも書かれておりますし、合意議事録その他でこれを補充しておる。  で、いま刑事的な事件についてどうかといいますと、いま刑事局長が言われましたように、その法令適用のされ方が属地的であるか属人的であるか、あるいは国外犯か国内犯か、あるいはまたその手続上の問題として自国領土と認めるのか認めないのかというようなことがそれぞれの法令について問題がございます。その側面をどういうふうに解釈するかといいますと、私が冒頭に御説明しました原点に戻りまして、この地域は公海上である。この施設は領土ではない。しかし天然資源探査及び開発に関しましては、協定に別段の定めがない限り、十九条で操業管理者のオペレーターシステムによると、こういう原則によってそれぞれケースによって判断されると、こういうふうに御認識いただければ正確かと思います。
  137. 矢田部理

    矢田部理君 日本政府がどういうふうに認識しているかという問題、そのことについて韓国側と話が十分詰まっているかという問題、二つあるわけですね。とりわけ、専門家それなりの頭で一応の整理ができるわけでありますが、あそこに働いている人たちが一体このケースについてはどっちの法令になるんだろうか、両方がかぶるんだろうか、韓国なんだろうか、日本なんだろうかと、わからないような状態で仕事をしたり作業を進めるということは、非常に大変なことだろうと思うんです。法令によって区々にわたる、あるいは先ほど外務省からも話がありましたように、その法令の持ち込み方についてもまだ灰色の部分というか、どちらに入れるか不明な部分が、不明なゾーンがあるという話もありました。さらには法制局長官のように、韓国側が決めればどんどん韓国法令適用になるんですという議論もあります。そこら辺はいままで韓国側と詰めた話を外務省しているんですか、していないんですか。
  138. 中江要介

    政府委員(中江要介君) これは先ほどの答弁で触れたつもりでございますけれども、一般的に重複する国内法令適用ぶりについて一つの基準を設けた、端的に言えばオペレーター方式というものを認めた、その結果どういうふうになるかということについて、物の考え方はこれは韓国と十分詰めてこういう協定になっている。しかしながら一つ一つの法令あるいはその条文その適用について全部詰めているかというとそれは詰めておりません。そういうことはできないことでございますし、通常しないことです。それでは一体それはどういうふうに扱われるかというと、ここで基本的にやはり認識しなければいけないと思いますのは、輝国も同じ考えですが、これは共同開発をする、どっちかが排他的に自分の法令なり体制を押しつけるというようなことではそもそも成り立たない方式であるわけです。そのところを十分に話し合うて共同開発ということに踏み切った以上は、すべて共同で開発し、共同でその利益を探求するわけでございますので、そこから生ずるもし障害なり制限ができましても、それも共同で解決していくと、その趣旨が協定には一番最後の二十九条にございますが、いつでもこれは協議をしながら行っていく、それにもかかわらずそのときに予見されないような事件、事項、そういうものが起きたときには第二十五条の委員会の第一項の(e)項に書いてございますように、「この協定効力発生の時に予想されなかつた問題」、この中には「(両締約国の法令適用に関連する問題を含む。)」となっております。具体的な法令適用は一々全部詰めるということは事実上不可能なことでございますので、いまおっしゃいましたような具体的なケースについて締約国の法令適用に関連する問題を含んで、そういう具体的な問題については共同委員会が研究し、解決のために適当な措置について締約国に勧告するということで、ともに協力しながら開発していくという姿勢が基本にないと、この開発構想は生きてこない、自分の方の体制を相手に押しつけるというようなことではできないわけであります。  そういうところを手当ていたしますために、この協定及び合意議事録、付属交換公文、その他によって当時としてはできる限りの原則的な考え方の整理はし尽くしていると思います。それにもかかわらず、細かい具体的な問題について法令適用はどうであろうか、そういうことも原則的には、私が申し上げました協定に別段の定めがあればそれによるけれども、そうでなければ十九条のオペレーター方式によると。それでもなおかつ解決がむずかしいという問題があれば共同委員会でも取り上げることができますし、そのたびごとに両国間で協議するということで解決していく、これはこういう一つの新しい方式を生み出すに当たりまして、基本に流れる考え方というものからいたします私どもの仕組みということで、この仕組みについては韓国側とは十分な理解ができておればこそ協定が成立しているわけでございます。
  139. 矢田部理

    矢田部理君 長い説明にもかかわらず、率直に言って今後に持ち越される課題が余りにも大き過ぎるということなんです。条約を締結してから批准が遅い。国内関連法の整備ができないと、事あるごとに韓国日本の政治のやり方について国会にまで出張ってきて注文をつけています。にもかかわらず一番大事な法令がどうなるのか、労働立法もそうですし、刑事法令もあるいは幾つかの問題点を含んでいるかもしれません。公害問題も今後の課題ということになります。ということになれば、この間一体そういう実務の関係はどうなってきたのか、すべてが今後の問題に移行されるような形で、われわれはこの案に本格的な審議ができますか。そういう問題を含んでおると思うんですよ。  法務省に重ねて承りますが、出入国の管理の関係はどういうふうになりましょうか。共同開発地域をはさんで、日本共同開発区域韓国と非常に仕事を一緒にやっていく関係では行ったり来たりが多くなると思いますが、その辺の整理はどういうふうに考えたらいいのか、その点をまず伺いたいた思います。
  140. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) この共同開発区域は公海上にございますんで、わが本邦からこの共同開発区域に赴く日本人及び外国人はそのまままた日本へ戻ってくる限りは出入国管理の手続をしないで済みます。今度は日本人及び外国人がこの区域を経由しまして外国に赴く場合は、本邦を出るときに出国手続をとっていただくことになります。それからまたその逆に外国からこの区域に一たん入ってそれから本邦に入ってくるというときは、本邦へ入ったときに入国の手続をとっていただくことになります。
  141. 矢田部理

    矢田部理君 そのほかにも、このルートは麻薬その他の密輸ルートに利用される可能性があるとか、あるいはそうでなくてもいろんな出入りがあり得るところなんですね。従来直接韓国に行くという場合あるいは来るという場合といささか違った対応をしなければならない。それについて入管局は整備をしてきているのかどうか、あるいは韓国側一定の打ち合わせなり詰めを行っているのかどうか。物の移動についてはこの規定がありますが、出入国の関係についてはございません。その点どうお考えでしょうか。
  142. 吉田長雄

    政府委員(吉田長雄君) ただいま申しました点については原則的に了解がついております。それを実行に移す場合は、まず操業管理者によく説明をしまして、具体的にそのわが方の方針を体して操業管理者が協力をしてくれるものと思っております。
  143. 矢田部理

    矢田部理君 原則的な考え方と、あとは操業管理者に説明して理解してもらうんだという程度で賄い切れるのかどうか、この辺も少しく実務的な問題も含めて、とりわけ出入国の関係が場合によってはルーズになる可能性があり得るわけです。共同開発のために現場に仕事に行く、韓国と打ち合わせなければならぬ、あるいは韓国と行ったり来たりするというようなことも、全体としてはしばしばあり得るし、逆の場合ももちろん多いわけです。等々を考えますれば、ただ原則的にはこう考えていますというだけでは不十分というそしりを免れないと思う。その点、十分注意をしてほしいと思います。
  144. 福岡日出麿

    ○理事(福岡日出麿君) 五分間休憩いたします。    午後二時四十一分休憩      —————・—————    午後二時五十一分開会   〔理事福岡日出麿委員長席に着く〕
  145. 福岡日出麿

    ○理事(福岡日出麿君) 委員会を再開し、休憩前に引き続き質疑を行います。
  146. 矢田部理

    矢田部理君 防衛軍事問題を中心に伺っていきたいと思います。  まず外務大臣にお尋ねをしますが、日米安保条約の第五条では、五条発動の要件として、「日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」というふうに規定をされています。そこで問題は、「日本国の施政の下にある領域」というのは、大陸だなとか共同開発区域はこれに入るのかどうかという議論であります。もともと大陸だなをめぐる軍事防衛問題というのは、きわめて不確定の要素がまだ多い。議論、問題提起の段階だとも思いますが、しかし、現実共同開発をやろうとしている。その共同開発地区における、あるいはそれをめぐる軍事問題が一体どうなるのかということは、われわれにとって重大な関心を持たざるを得ないわけであります。  そこで、まず米軍等の出動の要件となっておる日本国の領域における外国からの武力攻撃という規定があるわけでありますが、この「領域」というのはどこを指すのか。そこをまず明らかにしてほしいと思います。
  147. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 私どもといたしましても、共同開発区域における探査採掘活動の安全の確保につきましては大きな関心を有しているところでございますが、この問題にどのように対処するかという点を、ただいま先生指摘の御質問に対してお答えいたします前提といたしまして、まず共同開発区域の法的性格について一言申し述べさせていただきたいと存じます。  共同開発区域につきましては、これがあたかも国家の主権が全面的に及ぶ領土あるいは領海と同一の法的性格を有するかのごとき議論もございますが、この区域は、その上部水域は公海でございます。また海底は国際法で言う大陸だなでありますので、領土と異なり、わが国はこれを探査し、及びその資源を開発するという限定的な目的のために主権的権利を行使するのでございます。このような資源を探査するための船舶あるいは採掘するための施設のみを対象として、物理的な侵害が加えられるというような事態が仮にあったといたしましても、これらにつきましては、海上保安庁等によります海上警備行動によって十分対処し得ると考えられます。  さらに理論的に申し上げますと、先ほど申し上げましたような物理的な侵害が組織的かつ計画的な武力攻撃とみなされるようなものであり、かつ、政府がこれまで述べてまいりましたような自衛権発動の三要件、すなわち第一に、急迫不正の侵害があること……
  148. 矢田部理

    矢田部理君 そんな聞かないことまで一々答えることはない。
  149. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 第二に、他に全くこれを防衛する手段がないこと、第三に、必要な限度にとどめなければならないこと、このような三要件に合致するようなケースにおきましては、自衛権の発動ということはあり得ると考えられます。しかしながら、実際に施設、船舶等のみに対しこのような攻撃があるとは思われないのでございます。  いずれにせよ……
  150. 矢田部理

    矢田部理君 質問に聞いたことだけ答えてくださいよ。
  151. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) はい。  いずれにしましても……
  152. 矢田部理

    矢田部理君 そんなよけいなことを一々読み上げろなどと私は一言も言ってないんですから……
  153. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 御指摘の点につきまして申し上げますれば、安保条約第五条は……
  154. 矢田部理

    矢田部理君 いいですか、ちょっと待ってください。  私が聞いておりますのは、日本国の施政のもとにある領域の中に、大陸だなないしは共同開発区域は入るのですかという質問ですから、入るか入らないかだけ答えればいいんですよ。
  155. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 入りません。
  156. 矢田部理

    矢田部理君 そうしますと、「日本国の施政の下にある領域」というのはどことどこなのかを明示をしてほしい。
  157. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) わが国現実に施政を有効に行使している領土、領海、領空でございます。
  158. 矢田部理

    矢田部理君 安保条約に言う「領域」というのは、そこに限定をされるというふうに確認をしていいわけですね。  そうだとすれば、外務大臣、当然のことながら、「日本国の施政のもとにある領域」に対する武力攻撃ということになっているわけですから、安保条約の五条は発動する余地がない、発動にならないというふうに考えていいと思うんですが、外務大臣、よろしいですね。
  159. 園田直

    国務大臣(園田直君) そのとおりでございます。
  160. 矢田部理

    矢田部理君 そうしますと、日韓大陸だなの共同開発区域には、いろんな施設等々も建設が予定をされることになりますが、五条は発動にならないということはわかりました。しかし、安保条約の他の条項を含めて、安保条約に基づく米軍の出動はない、あるいは自衛隊の出動はないというふうに考えてよろしいでしょうか。いかなる意味でも安保条約は作動しないというふうに考えてよろしゅうございますか。
  161. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 安保条約には、第五条のほかに第六条の規定が置かれております。安保条約第六条につきましては、共同開発区域にある施設等のみに対する第三国の武力攻撃によって、第六条の適用という問題が生ずるとは考えがたいところでございます。このような問題が生じますのは、第六条にございますように、「極東における国際の平和及び安全の維持」が危うくなるような事態が起きる場合でございますが、このような場合におきましても、事前協議によりましてわが国の同意がない限り、米軍が一方的に行動し得ないことは当然でございます。
  162. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと重大な答弁をされましたね。極東の安全と平和が脅かされた場合に第六条で事前協議ということはあるにせよ、出動できるかのようにもとれる発言ですが、そのとおりでしょうか。
  163. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 先ほど私が申し上げましたように、そのような事態が生ずるということは非常に考えにくいところでございますけれども、第六条に言うところの「極東における国際の平和及び安全の維持」が危うくなるような事態ということが起き得る可能性は理論的にはあるところと考えます。
  164. 矢田部理

    矢田部理君 大変なことだと思うんです。第六条をよく読んでいただきたい。五条は出動の要件を規定したものでありますが、第六条は、日本に米軍が駐留する目的を規定したもの、つまり極東の安全と平和のために、「安全の維持に審与するため」にという目的のために、日本の施設や区域を使用することができるとだけ規定しているのにすぎないんでありまして、この規定を論拠にして、理論上にせよ出動が可能だという議論は納得できませんな、これ。法文そのものは体系が違うじゃありませんか。外務大臣、それでいいんですか。
  165. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 私が申し上げましたのは、理論的な事態として申し上げたわけでございますが、第六条が規定しておりますように「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」合衆国軍は日本において施設、区域を使用することが許されているところでございます。したがいまして、米軍の行動というのは、そのような事態が生じた場合にはあり得るということでございます。
  166. 矢田部理

    矢田部理君 条約をよく見てほしいんです。米軍が駐留するのは極東の安全や平和を維持するためだという目的条項です、一つはね。その目的のために日本に駐留することができる、日本の施設及び区域を使用することが許されるという規定だけでしょう。そしてその駐留なり使用なりを許された米軍は第五条の状態、さっき言った要件があった場合にのみ出動が可能だというふうに読むのが条約の基本の筋じゃありませんか。いまの答弁は全く納得できません。論理的に見てそうでしょう、文言上からそうでしょう。外務大臣、どうですか。いまの答弁でいいんでしょうか、外務大臣
  167. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 委員長
  168. 矢田部理

    矢田部理君 いや、あなたに聞かない、さっきから聞いているから。
  169. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 第五条は、わが国の施政のもとにある領域に直接に武力攻撃が行われた場合に、日米双方が対処するためにとる行動の規定でございます。第六条は、先ほど申し上げましたように「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」に米軍が「日本国において施設及び区域を使用することを許される。」ということから、米軍の行動として第六条の事態においても米軍が出動するケースがあり得ると、その場合に施設、区域を使用する場合に当たっては日本の事前協議を必要とすると、かような仕組みが安保条約でございます。
  170. 矢田部理

    矢田部理君 六条は出動条項じゃないですよ。日本の施設ないしは区域の使用条項なんです。日本に駐留する根拠を決めた規定なんです。だから、米軍の出動には五条出動と六条出動があり得るという議論ではないはずです。これは重要な問題です。したがって外務大臣としてどう考えられるのか、ひとつ伺っておきます。
  171. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 委員長
  172. 矢田部理

    矢田部理君 いやあなたに聞いてない、もう聞いているから。
  173. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 私から事務的に一言お答えさしていただきます。
  174. 矢田部理

    矢田部理君 いや、いいです、事務的な話は聞いているから。委員長、外務大臣に答えさしてください。
  175. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) その第六条の根拠として米軍が出動するという事態があるからこそ、この安保条約が締結されました際に、いわゆる岸・ハーター交換書簡というものがございまして、合衆国軍隊が「日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする。」、かような交換公文も設けられているわけでございまして、第六条は米軍が出動する一つの根拠規定でございます。
  176. 矢田部理

    矢田部理君 外務大臣答弁を求めます。
  177. 園田直

    国務大臣(園田直君) 解釈論としては条約局長の言うとおりであります。共同施設区域に対して米軍が出動するということは現実にあり得ません。
  178. 矢田部理

    矢田部理君 外務大臣答弁共同開発施設が急迫不正の侵害を受けて、仮に米軍から事前協議を持ち込まれても、それはノーと言う、現実にあり得ないというのは、先ほどの条約局長答弁とつなげばノーと言う、こういうことになりますね。
  179. 園田直

    国務大臣(園田直君) そういう相談する場所が起こり得ないと、こういう意味でございます。
  180. 矢田部理

    矢田部理君 第三国から攻撃されることはあり得ないという議論でもあろうかと思うんですが、私は現実的にあり得るかあり得ないかという議論をしているんじゃないんです。侵害を仮に第三国かち受けた場合、米軍は安保条約に基づいて出動可能なのかどうか、安保条約が働くのかどうかという議論をしているわけですから、それに見合った答えをほしいと思います。
  181. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 米軍は第六条に基づきまして、日本の施設、区域の使用を認められているわけでございますが、その米軍が「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため」出動しなければならない事態と考えることがあり得るわけでございます。その場合には事前に日本政府に協議してくる、これが安保条約の仕組みでございます。大臣がおっしゃられましたのは、先ほど私も申し上げましたように、実際問題といたしまして共同開発区域の施設等のみに対する武力攻撃という事態が起こるということは予見しがたい、想像しがたいというところを申されたことと存じます。
  182. 矢田部理

    矢田部理君 予見しがたいか、あり得るかあり得ないかという議論ではなく、仮にそういうことがあった場合に、いま条約局長議論によれば、事前協議がある、この事前協議が持ち込まれれば外務大臣としてどう対応するのか、その程度のものでは事前協議をしてもノーと言いますか、というふうに考えておられるのかどうかということであります。
  183. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 委員長
  184. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと待ってください。委員長にちょっと。外務大臣の基本的な政治の構えを聞いているんですから、条約の解釈論聞いているんじゃない。
  185. 園田直

    国務大臣(園田直君) その事態が東洋の安危に関するか、日本の国の安全に関するかということでありますから、その事態によって決まることであります。
  186. 矢田部理

    矢田部理君 共同開発区域が侵された場合あるいは侵害された場合に、直ちに日本の安全に影響があるというようなことになりますか。これは後でいろいろ議論を展開をしていきますが、日本に対する攻撃ではなくて共同開発そのものがやられた、あるいは巻き込まれる危険も後でいろいろ指摘をしますが、その場合でも日本に対する安全とか、極東の安全とかという議論の展開になりますか。私はもうそれはならぬと思うんですよ。そんなことで米軍が出動すべきものでもないし、まして事前協議などということについては断じてノーと言うべきだと思いますが、大臣はどうでしょう。
  187. 園田直

    国務大臣(園田直君) 共同開発区域が第三国から攻撃をされた場合、まさにその攻撃の仕方あるいはその後の進展の状態、想像できる状態等によって決まることでありまして、これはいまここでどうこう言うわけにはまいりません。
  188. 矢田部理

    矢田部理君 もう一つ別な角度から議論をいたします。  米国と韓国との間には米韓相互安全保障条約が結ばれています。この米韓相互安全保障条約規定の中には、韓国行政的管理のもとにおける領域に対する攻撃ということになっておりますが、この米韓相互安全保障条約規定行政的管理のもとにおける領域というのは、韓国側にとって日韓共同開発地域はこの領域に入るでしょうか。
  189. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) これは、わが国から見ますれば第三国同士の間の条約でございますので、その条約の解釈について云々する立場にはないわけでございますが、御質問でございますのであえてお答えいたしますれば、この米韓相互防衛条約規定しておりますような、それぞれの行政的管理のもとにある領域という範疇には入らないものと考えております。
  190. 矢田部理

    矢田部理君 その点は韓国に確かめたことがありますか。
  191. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 特に確かめたことはございません。
  192. 矢田部理

    矢田部理君 これは先ほどの労働法制刑事犯罪にかかわるいろんな法例の適用の質をはるかに越えて、きわめて重大な問題じゃありませんか。  この共同開発区域に、米韓の軍事同盟あるいは条約が働くのかどうかということは、今後共同開発を進める上においてもきわめて重大な問題でなきゃならぬわけですが、どうしてその種のことを確かめもしなかったのでしょうか。
  193. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 米韓同盟条約は米韓間の条約でありますので、第三国たる日本からその解釈を確かめるというようなことはわれわれの立場からいたしますと見識のないことであると、こういう認識でございます。
  194. 矢田部理

    矢田部理君 不見識か不見識でないかじゃなくて、共同でこの地域を開発しようというんでしょう。それに安保条約が絡むのか、あるいは米韓条約が動くのかということは日本の平和と安全にとって重大な問題じゃありませんか。見識、不見識の問題じゃないんじゃありませんか。こんな大事なことを確かめておかないでどうしてこの条約協定が、あるいは特別法がつくれるんですか。外務大臣、これはどう考えますか。
  195. 園田直

    国務大臣(園田直君) 第三国が共同施設区域に攻撃してきた場合に韓国どうするのか、その第三国とはだれかと聞かれた場合には、外務大臣は返答に因るところであります。そういうことは考えません。
  196. 矢田部理

    矢田部理君 だれもそんなこと考えたくないです。考えたくはないけれども、にもかかわらず安保条約を結んだり米韓軍事同盟を結んだりしているわけでしょう。それがこの共同開発区域をめぐってどういうふうに動くのか、働くのかということは重大なことじゃありませんか。とりわけ共同でやるわけです。共同でやった場合に防衛問題、軍事問題はどうなるのかというのは当然の関心事でなければならぬはずでしょう。こういうことを聞くのは不見識ですか、韓国に問い内わせるのは。大事なことだと思いませんか、まず。外務大臣
  197. 中江要介

    政府委員(中江要介君) これは申し上げるまでもなく、国防というのは各国の最高の主権に属する事項でございまして、日本日本の国をいかに守るか。いまの具体的な例ですでに明らかでありますように、日本が日米安保協力条約をどういうふうに適用し、これを活用して日本を守るかというのは日本の問題であるのと同じように、韓国が自国を守るために米韓条約をどういうふうに解釈、適用して韓国を守るかというのは、これは韓国の問題であります。  また、共同開発区域は、大陸だなの天然資源開発するための協定でありまして、この共同開発についての防衛条約防衛協定ではないわけであります。したがいまして、国防はそれぞれの国の最高主権の問題として、自国の責任で自国の利益を守る。そのことで十分である。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕 また、それ以上のことを口を差しはさむべきでないというのが国際社会の通念であるというのが私どもの考え方であるわけです。
  198. 矢田部理

    矢田部理君 共同開発でなければ、私もあるいはその意見に賛成するかもしれません。ところが、韓国と共同で開発をしようというのでしょう。その場合に、軍事的なつながりなり、米韓の軍事同盟が働くのか、働かないのか。条約上その範囲に入っているのか、いないのか。これはきわめて重要なことじゃありませんか。共同開発というこの柱があることをひとつあなたは忘れちゃいかぬですよ。お互いに関係のない、かかわりが直接的にはその意味ではない国々の間柄のことじゃないんです。当然に確かめてしかるべきじゃありませんか、外務大臣。外務大臣に伺います。
  199. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 共同開発区域は、天然資源開発のための共同開発地域であるわけです。たとえば、漁業につきましては、日韓で共同規制水域における漁業の規制ということをやっております。国際社会におきましては、国同士がいろいろ共同で協力をしながらいろいろの作業あるいは事業を行うということはあるわけでございまして、そのたびごとにそのための共同防衛の話までするかというと、そういうことはしないわけでございまして、それじゃどういうふうにして守るかというと、自国の国民の権利、利益は、それぞれの国が自分の責任において守る。これが原則であるし、それ以上踏み込んだ共同防衛という考え方はないわけでありますので、いまのところ、いま先生がおっしゃいますようなことを韓国に確かめるというようなことは私どもは考えていない。こういうことでございます。
  200. 矢田部理

    矢田部理君 私が伺っているのは、共同防衛について話し合いをしたことがあるかなどとは伺っておりません。韓国側が米韓軍事同盟を結んでいる。そこに一定規定がある。この条約共同開発区域に作動するのかどうかということを確かめてみる必要はありはしないかと、こう言っているのです。正確に答弁してください。
  201. 園田直

    国務大臣(園田直君) 解釈論としては条約局長の言ったとおりでありますが、いやしくも第三国が共同施設区域に攻撃をするなどという現実、自衛権の発動、安保条約の発動をするということは現実としてあり得ない。したがって、あり得ないことを具体的に詰める必要はない。いままでされた質問の中で、労働問題、その他については確かにおっしゃるとおりであって、交換公文、さらにこれから進んで具体的に合同委員会で共同開発に先立って相談すべきであるとは存じますけれども、今日はすべての国々が平和を念願しておりまして、わが自衛隊が演習するに、仮想敵国をつくっただけでも攻撃を、非難を受ける時代に、第三国の攻撃を予想して相談するなどということは、見識、不見識にかかわらずやるべきではないと考えております。
  202. 矢田部理

    矢田部理君 現実的にそういうことがあってもらっては困る、またそうあろうはずもないという認識は私も外務大臣と基本的には同じであります。しかし同時に、にもかかわらず、米韓の軍事同盟条約が結ばれている、それがどういう場合に発動されるのだろうか、その発動の際にこの共同開発区域はどういう位置づけになるんだろうか、その対象となる可能性があるのであろうかということを議論をしておくこともまたきわめて大事なことだと私は思うんです。したがって、共同で施設をつくる、資本を投下する、事業を行うということになりますれば——理論上の議論かもしれません、あるいは仮定も交えた議論かもしらぬけれども韓国側のアメリカとの間における条約がどういうふうに働くのか、動くのかということについて改めてただしておくということは外交上そう奇異なやり方じゃないんじゃありませんか。  いずれにしても今後、外務大臣、少なくともその辺の——これはあと幾つか問題がありますけれども、問題は韓国にきちっとただしておくということだけはやっぱりしてもらわないとならぬと私は思うんですが、いかがですか。
  203. 園田直

    国務大臣(園田直君) 議論としては承っておきますが、少なくとも共同施設区域またはその地点が問題になるのではなくて、第三国の攻撃——現実にあり得ないと存じますが、議論として、あった場合にはその攻撃のあり方が安保条約第五条、第六条に適合するかどうかによって初めてその判断が必要になるわけでありますから、あらかじめそういうことを相談するつもりはございません。
  204. 矢田部理

    矢田部理君 韓国防衛問題について相談しなさいなどと私は言ってないんですよ。韓国とアメリカとの間に結んだ条約が、理論上でもいいです——まず働く危険、可能性があるのかどうかだけは確かめておく必要あるでしょう。  その一つとして、韓国行政管理のもとにおける領域ということにここは入るのか入らないのか。そこは条約局長は、局長の解釈としては入りませんと思うと言っているわけです。それはそれで結構です。したがって、その限りにおいては米韓軍事同盟は働かない。しかし、局長の見解だけではなくて、問題は動かすのは韓国側であります。韓国側にその点を確認をしておく必要はありませんかということが第一点。  それから二点目に、これ以外の条項が動く危険性、可能性はないかどうか。米韓相互防衛条約の中でその点についてもあわせて伺っておきます。
  205. 園田直

    国務大臣(園田直君) 一方的に解釈するわけでもなければ希望的観測を持つわけでもありませんけれども、共同施設区域について安全保障——安保条約、米韓条約の発動等をただすことは、私は考えておりません、これは意見の相違であります。
  206. 矢田部理

    矢田部理君 後段の質問に対して、局長、どうですか。
  207. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 私といたしましては、この米韓相互防衛条約の第三条が一番直接的なかかわりのある規定だと考えております。
  208. 矢田部理

    矢田部理君 ですから、どうなりますかと聞いているんです。
  209. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 先ほど申し上げましたように、これは米国と韓国との間の条約でございますので、私どもといたしましてこれに対して有権的な解釈をし得る立場にないわけでございます。
  210. 矢田部理

    矢田部理君 そうしますと三条というのは、先ほど私が読み上げた規定ですね。あなたの解釈では、米韓相互防衛条約はこの大陸だなには働かない、安保条約も第五条の発動はない、しかし第六条は理論上働く余地がある。しかしその場合には事前協議がある、したがって日本に協議をしてくるはずである、こういう組み立て、考え方になりますか。
  211. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 大体そのとおりでございます。
  212. 矢田部理

    矢田部理君 後でまとめますけれども、次の質問に入ります。  先ほど条約局長は、安保条約の動きと合わせて自衛隊の出動問題について言及をされ始めました。この自衛隊の防衛出動の要件は、たしか自衛隊法に規定がございます。七十六条に、「外部からの武力攻撃に際して、わが国防衛するため必要があると認める場合には」という条件を前提にして、内閣総理大臣の、自衛隊に対する防衛出動命令という規定になっているわけでありますが、このわが国防衛する必要があるという言葉の意味でありますが、「わが国」というのはどこを指すのでしょうか。先ほど、安保条約では「日本国の施設の下にある領域」という文言についての説明がありました。それと同じなのか違うのか、そこを明確にしてほしいと思います。
  213. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) わが国の施政権下にあります領土、領海、領空というふうに考えておりますので、先ほど条約局長お答えしたと同じように考えているわけでございます。
  214. 矢田部理

    矢田部理君 そうしますと、安保条約の言う「日本国の施政の下にある領域」というのと「わが国」というのは同じ意味であるというふうに伺ってよろしいわけですか。
  215. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 「施政の下にある領域」というふうに考えております。
  216. 矢田部理

    矢田部理君 同じものというふうに……。
  217. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) はい。
  218. 矢田部理

    矢田部理君 わかりました。  そうしますと、先ほど条約局長は自衛隊問題にも言及されまして、安保条約五条の米軍出動要件にはならぬが、自衛隊の出動要件にはなるかのような説明になっていますが、そのとおりでしょうか。まず条約局長の方の見解を承りましょう。
  219. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 私は先ほど、仮にこの地域に武力攻撃が加えられるような事態があったといたしましても、これらにつきましては、海上保安庁等による海上警備行動によって十分対処し得ると考えるということを申し上げたわけでございますが、理論的に言えば、わが国の自衛権が発動され得るケースはあり得ようと、こういうふうに出し上げたわけでございます。
  220. 矢田部理

    矢田部理君 それはどういう場合でしょうか。
  221. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 先ほど申し上げましたように、組織的かつ計画的な武力攻撃とみなされるようなものであって政府がこれまで述べてまいりましたような自衛権発動の三要件に合致するようなケースでございます。
  222. 矢田部理

    矢田部理君 わかりました。そうしますと、安保条約の言う「日本国の施政の下にある領域」と、自衛隊法にある自衛隊出動の要件である「わが国防衛するため必要」という「わが国」の意味は同じであるが、第三国の武力攻撃等々があった場合でも安保条約が発動する場合、自衛隊が出動する場合とは違いがあるということになりましょうか。
  223. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 理論的にはそのとおりでございます。
  224. 矢田部理

    矢田部理君 先ほどの日韓共同開発地区について言えば、安保条約五条の出動要件には当たらない。米軍行動の条件には当たらないが、自衛隊の出動要件に当たる場合があるというふうにとれるわけですが、そうでしょうか。そうだとすればどういう場合に自衛隊が出動要件に当たるのか、どこで安保条約と違ってくるのか、という説明をいただきたいと思います。
  225. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) これも私、先ほどちょっと申し上げたところでございますけれども現実共同開発区域にある施設、船舶等に対して、先ほど申し上げましたような武力攻撃があるということとは思われないのでございますが、いずれにいたしましても、どのようなケースが自衛権発動の要件に合致することになるかということにつきましては、種々の具体的な状況を考慮して判断する以外に方法はないというふうに考えます。  なお、自衛隊法上の取り扱いについては、防衛庁の方からお答えいただいた方が適当かと存じます。
  226. 矢田部理

    矢田部理君 これは防衛庁からも後で聞きますが、あなたが口火を切ったので、あなたに確認をしておきたいんです。  安保条約は「日本国の施政の下にある領域」に対する外部からの武力攻撃、自衛隊法は「外部からの武力攻撃に際して、わが国防衛するため必要があると認める場合」その「わが国」と「日本国の施政の下にある領域」というのは同じ意味だということになりますれば、安保条約五条は発動できないが、自衛隊は出動できるのだと、こういう議論はいささか矛盾しませんか。
  227. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 私の理解しているところによりますれば、自衛隊が行動し得る根拠規定としては、自衛隊法第七十六条のほかに自衛隊法第八十二条の警備行動ということも含まれていると理解をいたしております。
  228. 矢田部理

    矢田部理君 そうしますと、条約局長の言うのは、七十六条では出動できないが、八十二条の「海上における警備行動」ということで出動できる。そこが安保条約の五条の出動条件と違う部分だと。七十六条の防衛出動は、安保条約五条の出動要件と基本的には同じだ、というふうに理解してよろしゅうございますか。
  229. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 理論的な問題といたしましては安保条約第五条と自衛隊法第七十六条との要件は、理論的には全く同一ということではないと存じます。私が申し上げましたのは、この地域に武力攻撃というものが行われるということは一般には考えにくいことでありますけれども、そういう事態というものは、普通に考えれば警備行動といったようなことでまず海上保安庁等がそういう任務に当たり、その海上保安庁等の任務の手に負えないというような事態になった場合には、警備行動として自衛隊法八十二条による警備行動が発動されるのではなかろうかと、かように理解しているわけでございます。
  230. 矢田部理

    矢田部理君 答弁を大事なところだからそらさないでください。安保条約五条に基づく米軍等の出動はない。それは「日本国の施政の下にある領域」に対する武力攻撃ではないからである、共同開発区域は。こういう説明でした。同時に共同開発区域は自衛隊の防衛出動の要件である「わが国防衛するため必要」の「わが国」にも当たっていない。だから、この点でも安保条約五条の発動がないと同じ意味で自衛隊の防衛出動はあり得ないというふうに先ほど説明をされました。それじゃ、自衛隊と米軍の出動は同じか違うのかというふうにお聞きをしましたら、いや、自衛隊については八十二条がございます、こういう説明なんです。そして、確認的にまた安保条約五条と防衛出動の根拠条令である七十六条を聞いたら、必ずしも同じでないかのように言う。あなたの議論は非常に混線、混乱しているじゃありませんか、どうなんですか。
  231. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 先ほどから申し上げておりますように、自衛隊法の解釈について私の方から有権的な解釈はし得ない立場にあるわけでございますけれども、安保条約第五条は、「日本国の施政の下にある領域」に対して直接の武力攻撃が行われた事態を考えているわけでございます。それに対しまして、自衛隊法第七十六条の場合には単に外部からの直接の武力攻撃のみならず、その武力攻撃のおそれのある場合をも含んでいると、かように解しているわけでございます。
  232. 矢田部理

    矢田部理君 かなりわかりました。と言うのは、そちらの見解が。直接攻撃でなければ安保条約は発動しない、わが国の領域に対して。それから、防衛出動の方は直接攻撃でなくても、直接攻撃のおそれがある場合でも出動の要件になり得る、ここが違うんだと、違いはそこだけでしょう。
  233. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 繰り返して申し上げますけれども、私は自衛隊法について有権的解釈を行える立場にないわけでございますけれども、私の理解しているところはただいま先生指摘のとおりでございます。
  234. 矢田部理

    矢田部理君 外務大臣、それでよろしゅうございますか、外務省理解は。
  235. 園田直

    国務大臣(園田直君) 自衛隊の出動について外務省が有権解釈をすることはできません。
  236. 矢田部理

    矢田部理君 有権解釈は最終的には政府にやってもらうしかありませんが、外務省条約局長が答えた答弁外務省としてはよろしゅうございますか。
  237. 園田直

    国務大臣(園田直君) 条約局長は解釈上の理論を申し上げただけでありまして、これに対する見解は防衛庁または法制局長官から答弁するのが適当であり、外務大臣から答弁するのは適当でございません。
  238. 矢田部理

    矢田部理君 外務省局長が有権解釈ではないが、という前提のもとに、しかし重要な発言をされました。  そこで、それを一つの基礎にして防衛庁に伺っておきたいと思いますが、防衛庁もいまの外務省条約局長発言でよろしゅうございますか。つまり、安保条約五条の発動要件と自衛隊の防衛出動の要件の違いは、自衛隊の場合にはおそれの場合にも出動可能である、しかし安保条約は直接攻撃の場合に限るというふうに解釈をされたんですが、よろしゅうございますか。
  239. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 七十六条の防衛出動の場合は、わが国防衛するため必要がある場合に防衛出動が下令されるわけでございます。ただ、いま先生の御質問を伺っておりますと、自衛隊の行動としてその領域内しか行動できないかということでありますと、それは私どもはそう考えていないわけでございまして、公海上にあります施設であっても、わが国の施設が組織的あるいは攻撃的な急迫不正の侵害を受けるような場合、いわゆるその自衛権発動の三要件である場合には、行動としてはあり得るというふうに考えているわけでございます。   〔委員長退席理事福岡日出麿君着席〕
  240. 矢田部理

    矢田部理君 外務省局長答弁とは同じなんですか、違うんですか。
  241. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 局長の御答弁が私がいま申し上げたような内容だというふうに理解いたしておりますので、同じだと申し上げられると思います。
  242. 矢田部理

    矢田部理君 かなり違うんじゃありませんか。安保条約は直接攻撃だ、わが国が直接攻撃を受けた場合だと。しかし、自衛隊の場合は直接攻撃を受けただけではなく、直接攻撃を受けるおそれがある場合にも出られるんだ、こう言っているんですよ。そこが違うんだ、それ以外は違わないんだというのがまた議論でもあったわけです。いまの防衛庁の答弁とはかなり違うんじゃありませんか。——いや、ちょっと待ってください、あなたには、ゆっくり聞くから。
  243. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) この防衛出動の場合の「おそれのある場合」というのは、きわめて直接攻撃が直ちに行われるというような場合というふうに考えておりますので、私どもはそう違っているというふうには考えていないわけでございます。
  244. 矢田部理

    矢田部理君 そう違っていない——同じですか。同じでないのか。大きくは違わないのか。幾らかは違っているのか。そう違わないということになると、やっぱり幾らか違っているように思うんですがね。
  245. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 条約局長の御説明は違っていないと考えております。
  246. 矢田部理

    矢田部理君 そうすると、日韓共同開発区域に対しても、しかしながら安保条約五条では米軍は出動しないが、自衛隊は出動することがあり得るような言い方されましたね。それはおそれ論で説明をされるわけですか。そのおそれがない場合には、逆に言えば安保条約五条と同様自衛隊も出動できないということにもなりますか。
  247. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 共同開発区域に対する第三国の攻撃というのは、先ほど外務大臣も御答弁がございましたように、具体的にはきわめて考えにくい問題でございます。しかしながら、公海上にありますわが国の施設、そこで日本人も働いていると思います。そういう人々に対するいわゆるその自衛権発動の三要件、急迫不正の侵害があった場合、それから他に手段がない場合、それから最小限の自衛力というものを発動するということは理論的にはあり得るわけでございますが、先ほど来条約局長が御説明申しておりますように、そのほかに八十二条の警備行動というのがございます。したがいまして、通常の場合、平時におきましては八十二条によって対処するような場合の方がむしろ考えられることではないかというふうに考えているわけでございます。
  248. 矢田部理

    矢田部理君 八十二条の方の議論はまた別途に譲るといたしまして、七十六条の議論をしているんです。つまり第三国が共同開発区域に対して攻撃を加えてきた、武力攻撃があった。その場合でも安保条約五条は発動にならない。しかしながら自衛隊は出ていく場合がある。それはわが国に対する武力攻撃のおそれがある場合である。逆に言えば、共同開発区域に対する攻撃があったけれども、武力攻撃があったけれどもわが国に対するおそれがない場合には同様自衛隊も出れない、七十六条の関係では出動できない。こういうふうに整理をし、受け取ってよろしゅうございますか。
  249. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) このわが国というのは主権国家でありますわが国のことでございまして、領土、領海、領空であるということでございますが、公海上にありますわが国の船舶なんかに対する攻撃も、やはりそれがわが国に対して組織的な、計画的な武力攻撃の一環である。これを防ぐのに他に方法がないという場合に、わが国に対する外部からの武力攻撃と認められる場合がこれは絶無ではないと思います。そういった場合にはこの防衛出動ということも可能でございますし、またその具体的なケースはどういう場合かということでございますと、それはそれぞれのケースによって判断しなければならないというふうに考えているわけでございます。
  250. 矢田部理

    矢田部理君 そこまで発展がされるとさっきの条約局長のおそれ論とはいささか違う。そう思うでしょう、あなたも。——うなずいておられる。違うんですよ、条約局長理解とあなたの理解は。別の言葉で説明しているのを結論的にだけくっつけてどっちも同じようなことを言っているつもりだと言っているだけの話であって、しかも今度は船舶論的議論を出されてきているわけですけれども、おそれ論の一つとして説明をするなら論理的には理解できないわけじゃありませんが、逆に言えば、直接攻撃がかけられたと、とにかく後で議論をしなけりゃならぬのですが、韓国と入り乱れてきているわけですからね。韓国との間に何らかの戦争が起こって、そこで韓国の戦争が波及して大陸だなが直接攻撃にさらされる。しかし、日本を直接武力攻撃しようということではない。共同開発区域の各種施設が破壊をされる、直接武力攻撃に遭ったというような場合があり得ると思うんです。その場合には自衛隊は出動できないというふうにそうすると考えてよろしゅうございますか、おそれがないんですから。
  251. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) このおそれの問題でございますが、先生も御承知のように、七十七条に事態が緊迫した場合の「出動待機命令」というのがございます。したがいまして、ここでありますおそれというのは、もうまさにその直接侵略、武力攻撃に結びつくような事態であると思うわけでございます。そしてまた、そういったことがいま申し上げましたように、公海上におきます船舶がそういった組織的なあるいは計画的な攻撃を繰り返し受けるというような事態に、これはわが国の自衛権を行使してならないケースであるとは私どもは考えていないわけでございます。それは先ほども申し上げましたように、それぞれのケースによって判断すべきであると思いますが、通常、常識的に考えられるのは防衛出動に至る前に海上における警備行動というような形で対処できるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  252. 矢田部理

    矢田部理君 私がきょう議論をしているのは、そういう場合に現実的にどう対応するか、どういう手順でいくかという議論じゃないんですよ。つまり、安保条約の発動と自衛隊の防衛出動とがどう連動するのかしないのか、違いがあるのかないのか、やっぱりそのことを厳密にしておく必要があるだろうという議論をずっと重ねてきました。条約局長は、直接攻撃が日本になされない限り安保条約五条は発動にならない、六条の問題はひとつ置いておくとしまして。自衛隊も基本的には同じであるが、おそれの部分だけはみ出しているという見解だったわけですね。それから、八十二条の議論もされました。それもはみ出しと言えばはみ出しかもしれない、安保条約とは違った部分である。しかし、安保条約五条と七十六条との比較において言えば、おそれのあるなしで出動できるかどうかという議論の違いに尽きるという議論条約局長は展開をしているわけですが、それにあなたは真っ正面に答えずに、防衛出動の三要件的なことで説明をされようとする。その三要件とおそれ論とは違うんですよ。  違うということになれば、政府としての統一的な見解は一体どちらなのか、外務省は有権解釈だとは言っていないようですが、有権解釈は一体何なのか、外務省条約局長答弁は正確な、不正確な、やっぱりそこを明確にしておきませんと後で韓国の問題が同時に絡んでくるわけでありますから大変なことになると私は思うのですが、もう一回確認的な答弁をいただきます。
  253. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) ……
  254. 矢田部理

    矢田部理君 いや、ちょっと待ってください、こちらに確認的な答弁をいただきたい。
  255. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 委員長のお許しがありましたので、私から御説明申し上げます。
  256. 矢田部理

    矢田部理君 ちょっと委員長委員長。私はまず防衛庁に確認をしてもらって——あなたまだお呼びじゃないんだよ。(笑声)
  257. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 私はそう違っているというふうには考えておりませんが、いわゆる領海、領空の中で直接攻撃を受けた場合、そういった場合には五条というものが発動されるというふうに考えておりますが、公海上におきますわが国の船舶あるいは施設等が攻撃されるような場合、五条が直ちに発動されるというふうには考えておりません。しかし自衛隊としましては、警備行動なりあるいはケースによっては防衛出動というようなこともあり得るというふうに申し上げているわけでございます。
  258. 矢田部理

    矢田部理君 じゃ、一点だけどう違うかということを説明しましょうか、そう物わかりが悪いんでは。  防衛出動の三要件というのは、急迫不正な侵害があった場合と言っているわけです、わが国に対して。それが少なくとも一番重要な要件なはずです、そうでしょう。つまり、直接武力攻撃のおそれの問題じゃないわけですよ。具体的なもう急迫不正の侵害があったという問題が防衛出動の三要件の重要な柱だと言われているわけです。おそれの議論とは全然違うじゃありませんか。七十六条の防衛出動に限定をして議論をしていることもひとつ十分踏まえて話をしてほしい。
  259. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) この発動の三要件の中に、わが国に対する急迫不正の侵害があることということになっておりますが、これは当然七十六条にあります「外部からの武力攻撃」、括弧して、外部からの「おそれのある場合」というようなことと内容的には私どもは変わっているとは思いません。といいますのは、防衛出動を行うに当たって、いわゆる防衛出動というのは自衛権発動の三要件でございますから、とにかく攻撃を受けるまでは黙って待っておれということではないと思うわけです。いわゆる攻撃というものがまさに行われるというようなことがもう客観的に明らかにわかるというようなときには、当然急迫不正の侵害があることという中に含まれるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  260. 矢田部理

    矢田部理君 そうすると、従前から言い続けてきた防衛出動の三要件は、急迫不正の侵害があるおそれのある場合も含むのだと、こういう見解ですか。そこまで拡大をされるわけですか。
  261. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 大変失礼いたしましたが、いわゆる防衛出動をする場合は七十六条でございますが、自衛権発動をする場合の要件といたしましては、急迫不正の侵害があったときというふうに考えているわけでございます。先ほど私は、拡大するというような意味で申し上げたわけではございません。
  262. 矢田部理

    矢田部理君 そうすると、あなたの話はずいぶんいろいろ同じことを行ったり来たりしながら話しているけれども、拡大したかのように見えたら今度は混同しているんじゃありませんか。混同した議論で同じ答弁を繰り返されたんでは時間の浪費ですから。結局どういうことなんですか、条約局長の言ったことと、私は防衛庁の見解は同じなのか違うのかと聞いたら、るる説明をした。しかし、今度はその説明は混同しておったと、こういうわけです。混同を前提にして繰り返し同じような議論をしておったんではしようがない、整理してください。
  263. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 自衛権発動の三要件の中で言います急迫不正の侵害というのは、やはり先ほど御説明申し上げましたように、組織的、計画的攻撃というものが繰り返されるということでございますから、単におそれがあるというだけでは自衛権発動の要件というふうには考えられないわけでございます。
  264. 矢田部理

    矢田部理君 そうすると、自衛権の発動はおそれということではだめである、つまり直接攻撃がなされた場合に限る。防衛出動はおそれでも可能である。いいですか、その防衛出動条項と安保条約五条の条項の違いは、このおそれがつくかつかないかであるというのがさっきの条約局長答弁ですね、それと同じでいいんですか。
  265. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) それは、おそれだけではなくて、やはり領域といいますか、領海、領空の中で攻撃を受けた場合と、公海上におきます施設が攻撃を受けた場合との違いというものも当然あるわけでございます。
  266. 矢田部理

    矢田部理君 そうしますと、ようやくはっきりしました。さっきの条約局長答弁違うじゃありませんか。あなたはおそれの違いだけだとこう言っている、答弁が不統一ですよ。何度も私はあなたに対してどこが違うのか、それだけか、確認も含めて聞いておる。いまの防衛庁の答弁と違う。きわめて外務省防衛庁は不統一であります。
  267. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) 先ほどからの御論議を聞いておりますと、多少論点が混乱しているようでございますので、改めて私から申し上げます。  大体の結論は、最後に防衛局長がおっしゃった点が正確な解釈だと思いますが、改めて申し上げますと、安保条約の五条が発動されるための要件としてはこれはここの明文にありますように、「日本国の施政の下にある領域における」武力攻撃がなければならないと、ところが自衛隊法七十六条の「防衛出動」につきましては、これは先ほどのおそれ論もさることながら、まず武力攻撃の目標といいますか、対象が安保条約の五条のように、「日本国の施政の下における領域」に対する直接の攻撃というのには実は限らないんですね。その公海上における日本のたとえば海上自衛隊に対して組織的、計画的な攻撃が加えられてきたというような場合ももちろんこの防衛出動もあり得るし、場合によっては自衛権の発動もあり得る。  それからおそれ論は「おそれ」という言葉が確かに七十六条にありますので、その点は現実の武力攻撃がある前であってもそのおそれがあればここへ防衛出動はできる。しかし具体的な自衛権の発動は、そのおそれがあるだけではだめなんで、現実に武力攻撃があった場合であると、その武力攻撃があった場合という場合のあったというのは、一体その時点はいつかという問題はまた別に非常に微妙な問題がありますけれども、いまのおそれの関係で申せばおそれの段階でも防衛出動はできると、しかし自衛権の行使は、いわゆる自衛権発動の三要件に該当しなければ現実の自衛権の行使はできない。  それからなおついでに申し上げますと、八十二条の話が出ておりますが、これもいまの共同開発地域については、大体はその現実の問題としては七十六条の防衛出動じゃなくして、八十二条のケースで処理されるだろうと思われますが、八十二条は実はこれは警察活動でございまして、七十六条のような防衛出動とは性格が違うというふうに御理解願いたいと思います。
  268. 矢田部理

    矢田部理君 法制局長官の答弁があってまたもう一つ混線しました。私はこの質問の一番大きな前提として安保条約の第五条に書いてある「日本国の施政の下にある領域」と自衛隊の防衛出動の規定にある「わが国」というのは同じかと言ったら同じですということを外務省防衛庁も確認をした。その上に立って議論してきているんですから、その前提をまた混線させるようなことはしてほしくない。同時に防衛庁のいろんな答弁の混乱がありました。最終的に整理をされたことと外務省条約局長が言ってきたことは違う。有権解釈でないとは言っておりますが、違うなら違うように、政府の不統一でありますから、きちっと取り消すなり訂正なり謝罪なりをすべきだと思いますが、条約局長いかがですか。
  269. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) ただいま法制局長官から答弁されたところが政府の正しい解釈であろうと存じます。私の発出言中で、その点について足らなかった点についてはおわびいたしたいと存じます。
  270. 矢田部理

    矢田部理君 足らなかったんじゃなくて、ずいぶん繰り返し同じ議論をしてきたんですから、足り過ぎてきわめて不正確な物の言い方をしている、議論を長引かせているわけです。  そこで防衛出動の可能性を示唆された。これは衆議院の内閣委員会でもそのときの話を従前されておるわけであります。対象はここはいろいろ分かれておりますね。日本側の操業管理地あるいは韓国側のそれ、日本側の操業管理者の管理する小鉱区に限られますか、それとも韓国側のそれにも及びますか。
  271. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) それは当然わが国の自衛権の発動でございますから、日本の施設に限られるところでございます。
  272. 矢田部理

    矢田部理君 これは話し合いまたはくじ引きによっていろんな入り組みが今度は出てくるはずです。しかも先ほどの議論をさらに進めると、韓国側操業管理者になっても、これは日本開発権者韓国開発権者が共同でお金を出す、共同の施設になる、ただ管理者が韓国というだけのことである。こっちまで出動は可能なのでしょうか、可能でないのでしょうか。
  273. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 私どもはまだその具体的にどういう場合というふうに想定しているわけではございませんので、それはそのときのケースによって判断すべきものと考えております。
  274. 矢田部理

    矢田部理君 そのときのケースといっても、私がケースを指摘したんですから、それに答えてください。
  275. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 矢田部先生の指定されましたケースは、小鉱区に応じてその操業管理者がどちらの政府の認定を受けた開発権者であるかということによって防衛のあり方まで違うのではないかというようなお立場からのように思われるんですが、これは私先ほどはっきり申し上げましたように、この共同開発区域は公海であるわけです。公海であるという性格は変わらないということが一つと、それからその施設は、これは先ほども繰り返されておりますが、領域ではない、したがいまして公海上で領域ではない。しかしどこかの国の所有する施設がある、そこでどこかの国の国籍を有する人が働いているという状況があるのが客観的な状態であるわけです。それに対して何らかの攻撃かゲリラか何か知りませんが、何かこれに対する破壊活動があったときに何を何から守るかというのは、そのケースに応じてそれぞれの国なりあるいは国の機関がその防衛に当たるということでありまして、この小鉱区、これはどちらの守備範囲というようなものを決めるわけではなくて、小鉱区は、この協定にもはっきりしておりますように天然資源探査開発するために区分されているだけのことであると、こういうことでございます。
  276. 矢田部理

    矢田部理君 これはまた先ほどの防衛庁の答弁とも食い違いが出てきているわけです。つまり、日本国の施設あるいは管理する施設がやられた場合に限るんだと、こう言っているわけですが、つまり日本の船舶なら船舶が公海上を航行していたような場合の一つの例、準拠して一定の考え方を防衛庁は出しているわけです。あなたは資源論資源論で、何か防衛問題でないかのような押さえ方をしております。それは違うんです、話が。  先に進めます。衆議院の方でも待っているようでありますから。  共同開発区域は、もとより先ほどから指摘がありますように公海であります。公海は全くその航行なり使用なりは自由であるわけです。ところが公海であるがゆえに第三国が軍事行動をとるような場合にこれを抑えることはできませんね。たとえば軍艦の航行はもちろん、演習、機雷等の海中設置あるいは海底地下核実験、これは核防条約でも、いい悪いは別として禁止されていない。あるいは海底軍事基地をつくる、こういうようなことは、公海でありますから、共同開発区域であっても抑えるわけにいきませんね。防衛庁どうでしょうか。
  277. 伊藤圭一

    政府委員伊藤圭一君) 公海上でございますから、軍事行動をそこでとっていくことについて抑えるということはできないわけでございます。
  278. 矢田部理

    矢田部理君 そこで最後の締めくくりの話に入りますが、私は日米安保条約がこの共同開発区域をめぐって動く危険性がありはしないか、自衛隊が出動する可能性はないだろうか、同時に韓国側の動きはどうなるだろうかということを幾つかの観点、それぞれの問題点から指摘をしました。どうも全体の答弁を総括をいたしますと、この共同開発区域に対して第三国等の攻撃があった場合に、日米輪とも軍事行動に出る危険性、可能性が強い。いわば具体的に日韓軍事同盟といわれるものの重要な結節点になる危険性があり得る、この危険を実は指摘をしたかったんです。これは、私だけの危惧ではありません。ここに北村謙一という元海将、七三年まで艦隊の司令官をやっていたそうでありますが、「新しい海洋秩序と海上防衛」というのを「国防」という雑誌に論文を挙げておりますが、そこでも私と同じような危惧を別の側から実は指摘をしているわけであります。  どういうことを言っているかと言いますと、「四十九年に日韓両国政府間で、両国に隣接する大陸棚南部共同開発に関する協定が調印され、その批准が数年来の政治問題となっている。」等々の前書きがあるわけでありますが、「それはそれとしても、この協定に従って開発を進める場合には防衛上次のような問題が生じてくる。」「日韓両国はこの水域でそれぞれ鉱区を設定して開発することになっているようであるが、もし開発が順調に進捗して両国石油生産施設がここに設立された場合、その防衛警備はどうなるであろうか。両国がそれぞれ自国の施設は自国の部隊で守るということになれば、この水域では同国の部隊が入り混じって行動するわけで、移動する海、空部隊の問でトラブルが生起しないとも限らない。一つの生産施設を両国が共同して建設運営するとしても、いずれがそれを守るかについての問題が起こる。また、もし韓国が第三国と軍事紛争に入ったならば、この水域でわが国がそれに着き込まれるおそれが他の水域の場合よりも大きくなるのは避けられない。」   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕 こういう指摘を実は元防衛庁の高官がこの大陸だな協定あるいは共同開発に関連して重大な指摘をしているわけです。かねてから、朝鮮の在韓米軍の撤退問題を引き金にして日本が全体的に北のいかりとして、極東の軍事拠点としてこれに肩がわりをしていく、それを軸にして、日米韓軍事同盟が一層強化される危険をさまざまな角度から今日まで指摘をされてきました。まさにその重要な結び日になる危険性をこの日韓大陸だな協定共同開発自体は持っているのではないでしょうか。  外務大臣、細かい議論はこれはまだまだしなければなりません。安保条約第六条の問題も残っています。この点について韓国側と米韓軍事同盟があるわけでありますし、韓国はいまだに戒厳令状態、民主主義も抑圧されている現状、こういう状況の中でその危険性を全く考えない、アジア局長の言うように、これは海底の資源の開発ですから防衛問題に関係ありません。そんなことを聞くのはやぼですというようなことでこの問題の解決ができるでしょうか。大事なことです、大変なことです。その点でこの問題の締めくくりとして外務大臣答弁を求めて、次の質問に入りたいと思います。
  279. 園田直

    国務大臣(園田直君) まず第一に、いまの御発言の中に韓国からの米軍地上撤退によって、日本がこれに肩がわりするかのごとき発言がありましたが、これは全くそのようなことはございません。数回の日米首脳者会談あるいはそれぞれ担当大臣の会談等においても韓国から地上軍撤退することは、これはあくまで米韓の問題であり、米国はこれを補完し安定を損わない意味であるというだけであって、日本に対する軍事力の肩がわり等という話は一切ございませんし、話題になったこともございません。  なお、この地域における問題でありますが、この共同開発区域の設定及び共同開発等によって第三国の攻撃を誘引することはあり得ない。かつまた自衛隊の発動、自衛権の発動、安保条約の発動が問題となるような事態はないと確信をいたします。
  280. 矢田部理

    矢田部理君 きょうは他の質問も予定をしておりますので、幾つかの問題指摘にとどめておきたいと思いますが、ひとつくれぐれも日米韓の軍事同盟が具体的にこの共同開発区域をめぐって動くようなことのないように、制度上理論上の問題だけではありません。中国とも話し合いをしていない、朝鮮民主主義人民共和国からの異議についても一顧だにしない、そういう外交姿勢をとってきた、一方的にこれを強行していくことにまつわるいろいろな問題があること、十分に心してやっぱり外務大臣は今後の外交に当たっていただきたいというふうに希望しつつ、次の質問に移りたいと思います。  特別措置法案の逐条的な問題を幾つか指摘をしておきたいと思います。  まず、第八条でありますが、「共同開発鉱区の境界は、通商産業省令で定めるところにより表示する直線で定め、その境界線の直下を限りとする。」という規定がございます。境界を直線で定める、これでいいんでしょうか、若干の問題点を指摘をいたします。これは従前、大陸だな協定のときにも問題になりました。例の協定の第二条で鮫瀬島を、そういう島が日本にあることを外務省は見落とした、その結果、直線で御承知のように、この開発区域を区切ったわけであります。ところが、その後鮫瀬島という島、外務省にとっては大変なことでありますが、見落とした鮫瀬島があることを知って、またそれをもとにして御承知のように日本は領海十二海里宣言をしたわけであります。十二海里宣言をいたしますと、当然のことながらこの共同開発区域と重複をする部分が出てまいりました。しかも十二海里宣言は円で弧を描くということです。曲線で弧を描くということになります。当然のことながら、いま申し上げた協定の条項にある画線では結ばれないことになるはずであります。従来、協定上もその問題が出てまいりましたときに、外務省はそういう間違いがあったことは事実であります、鮫瀬島を見落としてしまったのは済みませんでした、そこで韓国に口上書を差し出した、それに対する返答もありました、そういう措置をとりましたから大丈夫ですという説明もありました。冗談じゃない、協定で結んだ内容法律的な効力のない口上書で修正をする。これはできる性質のものではありません。この点は法制局長官認めるでしょうね、まず、この点ぐらいは。あなたも法律家ならはっきりすべきだと思います。
  281. 真田秀夫

    政府委員(真田秀夫君) もともとが大陸だなの話でございますから、わが国の領海の中にそれが入り込んでくるということがもともと性質上あり得ないことでございますので、つまり十二海里の法律ができまして、日本の領海が一応広まった結果、自動的に大陸だなの共同開発区域はへっ込んだと、そういうふうに解釈しているわけでございます。
  282. 矢田部理

    矢田部理君 とすれば、条約を直さなきゃならぬのじゃありませんか。
  283. 中江要介

    政府委員(中江要介君) これは、昨日の連合審査においても御説明したことでございますが、いま先生の御引用になりました共同開発に関する協定の第二条の第一項に明らかに書かれておりますように、共同開発区域大陸だなの区域であるわけです。で、それはどういう大陸だなかというと、次の座標の各点を順次に結ぶ直線によって囲まれる大陸だなの区域であります。大陸だなの区域は領海を含まない。これはもう実に明らかなことでございまして、いずれの国の場合でありましても、領海の下が国際法上の大陸だなであるということは、これはもうどこにもないわけでありますので、大陸だなでなくなったところは幾ら線で囲みましても大陸だなにはならない。そういうことでありまして、この協定を結びましたときに領海三海里であったということ。それから一九五五年十二月の日本国海上保安庁海図第二一〇号新版という、この海上保安庁の海図には鮫瀬が記載されていなかったということ、そういうこともございまして、鮫瀬が当時認識されていなかったことは事実でございますが、これが領海が十二海里になりますときに、新しい海図でもう一度日本の領海の外縁を画定いたしますときに、この共同開発区域として囲んだ地域の部分に日本の十二海里領海が入るということになりました。  そういたしますと、日本の領海が十二海里に拡張されて、この共同開発区域で締結当時大陸だなであったところが、日本の領海が拡張された結果、当然そこが大陸だなでなくなる、そういうことでございますので、この協定の第二条の当然の解釈といたしまして、日本の領海内に入った部分は大陸だなでなくなる。したがって、大陸だなの区域でない、共同開発区域ではなくなる。こういうことで、私どもは国際法上自明であるということを協定御審議の際に何度も御説明いたしましたけれども、これは韓国との協定だから、韓国もそういう考え方であるかどうかということが何度もただされましして、韓国日本も同じ国際法に基づいて締結しておるわけですから、同じ国際法に基づけば、韓国もこれは大陸だなから外れるという認識は変わりがなかろう、念のために口上書で確認するということで口上書をもって確認したわけで、口上書で確認したから大陸だなから外れたのではなくて、日本の領海が拡張されて、この共同開発区域の一部分にまで及んだから大陸だなでなくなったと、口上書はそれを確認したものにとどまるということを御説明申し上げて、この協定についての御承認を得たわけでございます。
  284. 矢田部理

    矢田部理君 あなたの前提となる論理を全部私そのまま引き受けるといたしましても、それならば、協定は直線で結ぶと書いてある、領海は曲線で宣言をしている、直す必要がありませんか。解釈上どう考えるかとか、韓国がどう理解している、口上書がどうなったかということじゃないじゃありませんか。どうして協定直さないんですか。だけではなくて、この議論は、もう外務委員会などでもやってきました。またまたこの法律で、先ほど指摘をした第八条は直線で定める、国内の領海宣言とこの法律は一致してないじゃありませんか。領海十二海里の線は曲線、この法律は直線。アジア局長、ここへ来て、この直線と曲線の関係を具体的に説明してくれませんか。
  285. 中江要介

    政府委員(中江要介君) 私は、協定上の第二条第一項の解釈を申し上げたわけでございまして、これを受けてどういう国内法をつくり、これを実施するかというのは、これは通商産業省の方の御所管でこの法律案をいま御審議をお願いしておりますので、その部分は資源エネルギー庁の方から御説明いただくのが適当だと思います。
  286. 矢田部理

    矢田部理君 際どいところで逃げられたわけですが、通産省の方にも声がかかったようでありますから、この領海の曲線と鉱区の直線がどういうふうにこの図でうたわれるかを、この図を示しながら説明してください。
  287. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 図示する方は後ほど石油部長から申し上げますが、まずその前提といたしまして、ただいま御指摘になっております特別措置法は、二条二項における共同開発区域と領海十二海里幅との関係について私たちの考え方を申し上げたいと思います。  私から申し上げるまでもございませんが、この法案第二条第二項の規定は、「この法律において「共同開発区域」とは、協定第二条第一項に規定する大陸棚区域をいう。」こういう規定になっておりまして、単に協定第二条第一項に規定する区域とは言っておらないということがまずポイントの一つでございます。したがいまして、領海幅が十二海里に拡大されますと、これに伴って大陸だなではなくなる部分が生じてくるだろうと思うわけでございます。それに伴って、国内法案に言っておりますところの大陸だなの区域も変わってくるということでございまして、そういった意味、関連からいたしまして、国内法案の第二条第二項は修正する必要はない、かように考えておるわけでございます。  ただ、先ほども指摘にございましたように、領海幅を延ばしてまいりますと、共同開発区域の外周は、曲線と申しますか、当然円弧状になってくる、その点と協定の第八条に言うところの直線で定めるという関係でございます。これはわが国の現行鉱業法でも、鉱業法というものが財産権として重要であるという観点からいたしまして直線で定めるという規定になっております。韓国の法規でも直線で定めると、かようになっておるわけでございます。さようなところから、この曲線ないしは円弧状になっておる外周を直線で境界を定めると、そういった形でこの法案の施行の段階で共同開発鉱区を設定すると、こういう手順になろうかと思います。この間の状況については外務省の方から口上書をもって申し入れてある、かような関係になるわけでございますので、これにつきましては石油部長からお示しいたしたいと思います。
  288. 古田徳昌

    政府委員(古田徳昌君) 座標十五、十六、十七の間で、十六と十七の間及び十五と十六の間に小さな円弧によって区切られた部分ができるわけでございます。内側にこういう形でへこんでくるわけです。この部分につきまして、その小円弧の共同開発区域外におきまして、これを直線によって幾つかの点を設けまして結んでいくという形になります。そうなりますと、当然のことながらこの曲線と直線で結んだ部分の間に、ごくわずかながら共同開発区域でございますが、開発が具体的にできないという部分が、空白の部分が生じます。それにつきまして私どもの方で、仮に座標十五と十六の間に五本の線を引いていく、それから座標十六と十七の間に三本の直線でこの円弧をなぞっていくという形でやってみますと、掘削しない面積が約一・三平方キロメートルというふうな微小な面積になっております。
  289. 矢田部理

    矢田部理君 これは日本の主権にかかわる重要な問題を含んでいるわけですね、もともと。外務省の鮫瀬島見落とし論から始まって今日に至るまでこの文言は間違っているにもかかわらず、解釈上大丈夫なんだという説明をやってこられた。しかも今度に至ってもその立場を固執されておる。そして従前この地図で国会に対しても審議を求めてきた。この地図がさらに境界によって十二海里によってへこむとすれば、そのへこみを曲線であらわすんではなく直線であらわすとすれば、具体的に鉱区の形がどうなるのか、そこをやっぱり明確にしてしかるべきだと思う。委員長、この点はきちっと——資料の上でもこの手の図面で今日まで実は討議をしてきたわけです。国会審議の中に単なる説明ではなくて、審議の資料として出したものが重要な訂正を、面積の広狭ではありません、主権の問題と異質の問題が絡まっている問題でありますから、これはやっぱり政府として、通産省としてきちっとしたものを出して審議に供すべきだと思います。委員長としてその資料の提出を求めてほしいと思います。
  290. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  291. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 速記起こして。
  292. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) ただいまの御指摘の点でございますが、これは日韓の共同開発区域内での問題でございまして、さらに本法案の十八条の第一項第一号に「第十六条第一項又は第二項の規定により告示されたところと異なるものでないこと。」と、いわゆる同一という表現をとっておりません、「異なるものでないこと。」ということでございまして、本質的に変わりがないということであるならば、この法案の修正は必要としない、変更を必要としないというふうに私たちは考えておるわけでございます。
  293. 矢田部理

    矢田部理君 したがって、資料出せないということですか。——いや、いま私の質問というよりも、委員長資料を出せませんかという問いかけに対して、別の答えをしているんですから、少し詰めていただきたいと思います。
  294. 中江要介

    政府委員(中江要介君) いまそこに張り出されました地図で審議をしたとおっしゃいますその意味は、その地図のもとになりますのは、協定についております、協定に付属している地図のことであろうかと思います。それは第二条に、「この協定に附属する地図に表示する。」というこの地図、これが修正されるべきではないかと、こういう議論だといたしますと、それはその必要はないということは先ほど私が申し上げたとおりです。そこで、日本の領海が十二海里になって日本の領海の外縁といいますか、それがどこに当たるかという地図でございますと、これは日本国全体についての十二海里の外縁の地図はどうなっておるか、私の方の存じないところでございますけれども、この日本の領海が昨年十二海里に拡張されましたときに、この共同開発区域としてそれまで大陸だなであったところがどれだけ大陸だなでなくなったかという、そういう地図はこれは当時外務委員会にも出したことがございますし、御要望がございますれば、委員会の御決定によりましてお出しすることはできます。
  295. 矢田部理

    矢田部理君 委員長、ちょっと説明をいたしますがね。もともとはこれのもとになったのは協定に付属した地図であります。それがその後領海十二海里宣言で、今度は曲線でここに食い込むことになります。何カ所か曲線で食い込むことになります。そこまではある程度たちもわかってきたわけでありますが、同時に、今度は条文では曲線ではなくて直線だと言った、その直線は十二海里宣言の曲線をさらに食い込んだ形で何点か点を求めて直線にすると、こういう形になるわけですから、基本の部分はかなり変わってくるわけです。その直線については何ら説明を資料的にも内容的にもなされていなかったわけです。いま初めて口頭の説明があっただけなんです。したがって、その資料を出すのは当然のことだと私は思います。
  296. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 先ほどの答弁を繰り返すことになろうかと思いますが、いわゆるこの共同開発区域の内部の問題であるということが一点でございます。  それから領海幅が十二海里に拡大することによって、御指摘のようにその外周部が円弧状をなすということも御指摘のとおりでございますが、これを八条の規定に基づいて直線に直す場合に、先ほど石油部長から一つの例として申し上げたわけでございますが、線の引き方によって極力このいわゆるデッドスペース、本来共同開発区域ではありますが、開発できない部分をできるだけ小さくできるということも可能であるわけでございまして、このような点からいたしまして、この協定の本来の目的を損うといったようなものではございません。運用上行政段階でできると、かように考えているわけでございます。
  297. 矢田部理

    矢田部理君 目的を損なうとか損なわないとかということじゃないんです。大きく囲っておけば小さい話はどっちでもいいんだという議論になっているでしょう、あなたの話は。きちっとやっぱりこれ自体が論議の対象になっているわけですから、今度はこの区画とは違うんですということを座標等も決めて明示をすべきじゃありませんか、それをもとにして審議に供すべきではありませんか。だめです、いまの説明。
  298. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 補足して申し上げたいと思いますが、現実の段階といたしまして、関係企業と申しますか、申請者が申請に及ぶ段階におきまして鉱区図を付して出してくるわけでございます。そういった鉱区図を勘案して、(「おかしいよ、国会の審議を何と心得る」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)この法律を運用していくということになるわけでございます。
  299. 楠正俊

    委員長楠正俊君) お静かに願います。
  300. 矢田部理

    矢田部理君 同じ話を余り繰り返させないでほしいんですよ。  今後どうするかの問題じゃなくて、国会の審議がそれを求めているわけですから、また、正確なものを……これが主要なテーマなんですからね、出すのはあたりまえの話なんです。
  301. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 先ほどからお答えいたしておりますように、領海幅の拡大ということでございまして、むしろその意味では主権の及ぶ範囲が広くなっておるということでもあり、一方で共同開発区域が、従来共同開発区域の中で開発できない部分が出てくるという可能性はございますが、主権が侵されるとか侵されないといったような問題ではないということでございます。(「おかしいよそんなの、ふざけている」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  302. 矢田部理

    矢田部理君 条文で、八条で直線で結ぶと書いてあるわけでしょう。しかもこの直線ではないこともはっきりしたわけでしょう。適当に口頭で説明しただけでは不十分でしょう。不正確でしょう。単なる一主要じゃないんですよ、法律の主要なテーマになっている区域の問題なんですから。これはもう正確に出すべきです。
  303. 古田徳昌

    政府委員(古田徳昌君) 先ほど長官から御説明いたしましたように、この鉱区につきましての申請者が鉱区図を出してくるわけでございますが、その手順につきまして一応私どもの考えているところを御説明したいと思います。
  304. 矢田部理

    矢田部理君 いや、そんなことじゃない。資料を出すか、出さないかの話だよ。
  305. 古田徳昌

    政府委員(古田徳昌君) この法律案の十六条の通産省の告示におきまして、協定付表において定められております区域をそのまま告示するわけでございますが、特定鉱業権の許可の申請を行おうとする者は、この共同開発区域から除外されますわが国の領海部分を除外するような、つまり先ほど私が御説明したような曲線をなぞったような形での直線で申請させるということにしたいと思っているわけでございます。仮に当該申請が、申請の対象区域共同開発区域から除外されます、つまり領海部分が含まれるというふうなことになりましたならば、これは同じく法律案の四十四条に基づきまして修正して出させるということを考えております。  さらに、特定鉱業権の許可につきましては、このような形で共同開発区域から除外される領海部分は含まない直線で囲まれた区域ということになるわけでございます。
  306. 矢田部理

    矢田部理君 第二条見ていただきたいんですよ、全部座標一から二十まで。指定をしているわけでしょう。その指定に基づいてもともとこの地図がつくられている。これが法文として載っているわけですね、その座標そのものが、北緯何度とか東経何度とかということで。これが違うことになるわけですから、領海宣言やって、その後の今度は直線の引き方によって。すると、これは法案そのものが違うということになる。(「そうだ、後で直せばいいというものじゃない」と呼ぶ者あり)だから、後で単なる図面を書き変えればいいというものじゃないです。法案そのものなんですから。(「五十年間も拘束されるのだから」と呼ぶ者あり)こういうことを国会は認めちゃならぬと思うのです、断じて。
  307. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) 法政局第四部長でございます。
  308. 矢田部理

    矢田部理君 いや、法政局なんかいいよ。出すか出さないかの話だ。(「おかしいよ、そんなの」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  309. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) ただいま御質問のございました件につきまして、この法案を審査しました法政局の担当部長として御説明申し上げます。  まず、そこに張っておありの地図は、共同開発区域の地図ということでお張りになっておられると思いますが、共同開発区域につきましては、先ほど御指摘のございました法案第二条第二項で、「協定第二条第一項に規定する大陸棚区域をいう。」ということを書いてございまして、これは先ほどの協定の第二条第一項と同じ規定の仕方をしてございます。したがって、そこに張られている地図、それに関する限りは協定の付表と、その前にございます地図、それと同じものが掲げられているということで、そういう資料をお使いいただいたこと自身は、通産省のあるいは資料かどうかはっきりわかりませんが、資料自身として間違いがないものだろうと私は考えております。  次に、矢田部委員から御質問のございました第八条でございますが、第八条は共同開発区域の問題ではございませんで、共同開発鉱区の境界の問題でございます。そうしますと、共同開発区域というのが、そこの地図にございますように、座標二十を結んだ区域で決まりまして、その中で小区域が決まる。その小区域に一致するような鉱区をつくる際には、これは申請をしまして許可を得なくちゃならないわけでございますから、申請をして許可を得てつくられる際の境界としましては、曲線が境界になるよりも直線が境界になった方が権利関係が明確になるということのために、八条では直線を用いるという考え方をとったわけでございまして、その点は共同開発区域の境界がそこで直線で示される。それが先ほどアジア局長からの答弁のように、領海が決まったことによって、十二海里に拡張されたことによって変更されるということになったのを受けまして、小区域に一致するような、これは先ほどエネルギー庁長官が読み上げましたように、「異なるものでないこと」と書いてございますので、完全に同一ということでは必ずしもなくてよろしいと考えられますので、鉱業権の区域を明示するためには直線の方が適当だろうということで、わざわざこちらは直線と書いたというのがわれわれが審査しました際のいきさつでございます。(「そんなの聞いたって話にならぬ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  310. 矢田部理

    矢田部理君 そんな経過聞いてませんよ。二条そのものが間違っているじゃないかと言っているのです。訂正しなければならぬじゃないかと言っているのです。
  311. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) 委員長
  312. 矢田部理

    矢田部理君 いや、聞いてない、あなたには。そんなむだな話。  だから、まずその訂正なり、かかわる資料を図面として正確に出すかどうかということだけをきっちりしてください。これは河本通産大臣、もうそろそろ出番ですよ。だめです、この役人では。
  313. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 先ほど来お答えいたしておりますように、修正する必要は全くないと私たちは考えております。(「共同開発区域がはっきりしないじゃないか、それじゃ」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  314. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  315. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 速記を起こして。
  316. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) お答え申し上げます。  法案の第二条第二項は共同開発区域の定義でございまして、これは協定とすっかり合わせて、協定に基づく実施法でございますから、協定と同じ形で、「協定第二条第一項に規定する大陸棚区域」と書きましたことによりまして、アジア局長から答弁申し上げましたように、その部分は、領海を除いた形になるというのは当然の国際法に基づく解釈であるということでこのような規定をいたしました。  それから第八条は、重ねて申し上げますと、鉱区の範囲の決め方でございますので、鉱区の範囲は直線によって決めることが望ましいという考え方でこのように規定をいたしました。
  317. 矢田部理

    矢田部理君 この協定と同じ文言になったわけでしょう。その協定は十二海里宣言で改まったというふうにアジア局長は解釈をされる。そうすると、この条項を見ましても、共同開発区域は、大陸だなの区域と領海に属する区域と、二つあるわけですね。しかも、その領海に属する区域大陸だなの区域のうち、本来の線は円なんですが、大陸だなに入った形で直線で幾つかの座標軸を設けてつくるというわけですから、そこを明示をしなければこれは違ってくるでしょう、——いや待ってください。おわかりでしょう、委員長、おかしいでしょう。——座標を明示して、論議のテーマの対象になっている区画を明確にすべきだというのは無理からぬ要求でしょう。——明確にならないでしょう。委員長わかりますか。
  318. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  319. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 速記を起こして。
  320. 矢田部理

    矢田部理君 もう一回言いますよ。  共同開発区域というのは、これでしょう。ここに掲げてある地図ですね。その地図を、座標で、第二条は表示をしたわけでしょう。記載をしたわけです。この地図の中に、大陸だなの区域と、大陸だなでない日本の領海の区域が入ってくる。これは曲線で描かれることになります。ところが第八条は、曲線ではなく直線で結ぶことになる。そうすると、どういうふうな直線がこの中に引かれるのか、その座標はどうなるのか、それ自体が実はこの特別措置法の重要な審議対象でしょう。対象が定まらなくて、こういう抽象的な表現で、あいまいなまま審議をするわけにはいかぬじゃないか。その程度資料ぐらいは出すのがあたりまえじゃありませんか。むずかしい資料でも何でもありません。重要なしかし資料です。ぜひ委員長として再度要求してほしいと思います。
  321. 別府正夫

    政府委員(別府正夫君) お答え申し上げます。  まず協定第二条の第一項は、読み上げますと、「共同開発区域は、次の座標の各点を順次に結ぶ直線によつて囲まれる」その次でございますが、「大陸棚区域とする。」と書いてございますので、領海が三海里から十二海里に昨年拡張されたことによって、大陸だなの区域でなくなったものはこの中には入らないという解釈のもとに、昨年協定が一応国会審議を終わりまして成立しているということでございます。座標で結ばれたものが直線であっても、「大陸棚区域」と書いてあることによって、そこの部分は領海が入らなくなると、これは先ほどアジア局長答弁申し上げたとおりでございます。だとすると、それを受けまして、法案の二条の方もそう書くことが適当だろう、たびたび同じことを申し上げますが、その意見政府としては変えておりません。
  322. 矢田部理

    矢田部理君 これは私一人の何か発言ではなくて、大方ごらんになっていればわかるように……
  323. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  324. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 速記を起こして。
  325. 矢田部理

    矢田部理君 進行について申し上げたいと思います。もう繰り返して申し上げるまでもなく、第二条の法文そのものが修正されることになるわけですから、特にこの確認的に申し上げますれば、ここに掲示されておる図面の中で、領海の地域と大陸だなの地域にまず分かれる。その大陸だなの地域の中でも、曲線の外側を直線で結ぶことになりますからね。さらにこの削られる部分が出てくるということになりますれば、この表現ではきわめて不正確になるはずでありますから、それについて、座標も含めて、あるいはその図面も添えて、正確なものを審議の対象に出してほしいということを繰り返し申し上げました。いずれにいたしましても、その扱いをひとつ委員会として協議をしていただきたい、理事会として相談をしていただきたい、短時間で結構ですから。
  326. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 先ほど来申し上げていることをゆっくり申し上げたいと思います。  法案の第二条第二項に書いてございますのは、「「共同開発区域」とは、協定第二条第一項に規定する大陸棚区域をいう。」ということでございまして、規定する区域といったような表現ではございません。ここが一番のポイントになるわけでございますが、領海幅が十二海里に拡大されたということからいたしまして、大陸だなの意味内容が変わってくる。ここで言う国内法案には、「大陸棚区域」と言っているわけでございますから、その大陸だなの意味内容がそれに応じて変わってくるということでございますから、まず国内法案の修正は不要であるというふうに考えておるわけでございます。  それから、いま八条の直線問題が出ておりますが、これは大きく分けまして、共同開発鉱区の問題と、共同開発区域の問題があるわけでございまして、八条に規定してありますのは、「共同開発鉱区」の問題でございまして、いわゆる小鉱区の問題でございますが、この境界は「直線で定め」るんだと、こう書いてあるわけでございます。これをまた受けまして、十八条で「許可の基準」といたしまして、「第十六条第一項又は第二項の規定により告示されたところと異なるものでないこと。」というのがございますが、これは申請書に添付されてくる鉱区図から判断することになるわけでございまして、「異なるものでない」という表現は、同じものであるということといささか違うわけでございます。同一のものではなくとも、「告示されたところと異なるものでない」ということに、実質的に、本質的に同じであるということであるならば、この表現で十分に対応し得るということでございまして、私たちとしては十分に行政的に対処し得るものと、かように考えているわけでございます。
  327. 矢田部理

    矢田部理君 理事会で協議しないんですか。(「おかしい、おかしい、いまの。おかしいよ。共同開発区域がはっきりしないんだから、だめだよ。」と呼ぶ者あり)
  328. 楠正俊

    委員長楠正俊君) やらなくてもよろしい。やらなくてもよろしいから続行してください。(「そんなばかなことないでしょう。理事会、要求があったらやるのあたりまえだよ。」と呼ぶ者あり)
  329. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  330. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 速記起こして。(「理事会でちゃんと相談してくださいよ、理事会要求しているんだから。やってください、理事会でちゃんと。」と呼ぶ者あり)政府答弁しなさい。エネルギー庁長官
  331. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 何度も同じことを繰り返して恐縮でございますが、この第八条の共同開発鉱区の問題は、いわゆる企業が申請してまいりまして、その申請によってこの鉱区というのは固まっていくわけでございますので、われわれの方があらかじめこういう線を引くんだと、先ほど石油部長が申し上げましたのは、できるだけデッドスペースを少なくし得る余地はあるんだということで申し上げたんでございまして、これは関係企業が出願に及んでこないと最終的に決定できない問題でございます。そういった意味で運用の問題であると、かように申し上げておるわけであります。
  332. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 先ほど来、エネルギー庁の長官とそれから法制局の方からもう詳しく御説明がありまして、それで私は、もう十分だと思います。もしなにでしたら、もう一回ゆっくりお話しいただければいかがでございましょう。
  333. 長谷川信

    ○長谷川信君 ただいま……(発言する者多く、議場騒然、聴取不能)本案の質疑は……(発言する者多く、聴取不能)動議を提出します。(「おかしいじゃないか」「反対」「賛成、賛成」「委員長不信任だ、委員長不信任、委員長委員長不信任」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)
  334. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 質疑は打ち切ります。(「賛成」「反対」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)暫時休憩します。    午後五時四分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕