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1978-06-06 第84回国会 参議院 商工委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月六日(火曜日)    午前十時十七分開会     —————————————    委員の異動  六月六日     辞任         補欠選任      森下 昭司君     大森  昭君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         楠  正俊君     理 事                 大谷藤之助君                 福岡日出麿君                 対馬 孝且君                 安武 洋子君     委 員                 岩崎 純三君                 下条進一郎君                 中村 啓一君                 長谷川 信君                 真鍋 賢二君                 前田 勲男君                 増岡 康治君                 穐山  篤君                 大森  昭君                 小柳  勇君                 矢田部 理君                 馬場  富君                 峯山 昭範君                 市川 正一君                 藤井 恒男君                 柿沢 弘治君    国務大臣        外 務 大 臣  園田  直君        通商産業大臣   河本 敏夫君    政府委員        外務省アジア局        長        中江 要介君        外務省アジア局        次長       三宅 和助君        外務省条約局長  大森 誠一君        外務省条約局外        務参事官     村田 良平君        資源エネルギー        庁長官      橋本 利一君        資源エネルギー        庁石油部長    古田 徳昌君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    説明員        外務大臣官房外        務参事官     井口 武夫君        自治省行政局選        挙部政治資金課        長        岩田  脩君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸  棚の南部共同開発に関する協定実施に伴う  石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特  別措置法案(第八十回国会内閣提出、第八十四  回国会衆議院送付)  (派遣委員報告) ○連合審査会に関する件     —————————————
  2. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから商工委員会開会いたします。  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚南部共同開発に関する協定実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特別措置法案を議題とし、まず派遣委員報告を聴取いたします。福岡日出麿君。
  3. 福岡日出麿

    福岡日出麿君 日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚南部共同開発に関する協定実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特別措置法案審査に資するための福岡地方公聴会及び現地調査について、その概要を御報告いたします。  まず福岡地方公聴会は、楠委員長前田委員穐山委員小柳委員馬場委員市川委員藤井委員柿沢委員、それに私福岡現地参加遠藤委員を含めて十名が参加し、去る六月二日、福岡市で開催されました。  公述人には、高尾昌弘福徳船員労働組合書記長住江正三長崎漁業協同組合連合会会長森彪丸徳船員労働組合書記長石崎貞九州経済同友会代表委員山口誠三井楽漁業協同組合職員組合委員長蟻川五二郎九州商工会議所連合会会長の六氏が出席し、それぞれの立場から意見の陳述があり、派遣委員全員から熱心なる質疑が行われましたが、その詳細につきましては、委員長の手元に報告書提出してありますので、委員会のお許しを得て、本日の会議録の末尾に掲載させていただきたいと存じます。  ただここで、各公述人意見を簡単に申し上げますと、地元漁民代表して高尾、森、山口の各公述人からは、共同開発区域はわが国でも有数の好漁場であり、開発実施されれば、操業が制限されるばかりでなく、漁場が荒らされ、魚群の回遊も変わってしまうおそれがあること、また、海洋汚染の心配があること、さらに日中漁業協定内容や再延長問題に悪影響を及ぼすおそれがあることなどの反対意見が述べられました。  一方、経済界代表して、石崎蟻川公述人からは、「地盤沈下の著しい九州経済の厳しい実情が訴えられ、その浮揚を図るためには波及効果に大きな期待が持てる日韓大陸だなの石油開発が望まれるので、同法案早期成立を要望する」との賛成意見が述べられました。  また、漁業関係者代表である住江公述人からは、「開発区域日本寄りに過ぎるため将来二百海里経済水域が設定された場合大きな禍根を残すこと、協定効力期間が五十年と長過ぎること、中国が激しく非難していることからその影響が懸念されることなどの事情から、心からは賛成できないが、エネルギー確保という国益優先日韓の間での安全操業考えれば賛成せざるを得ない」と、微妙な立場からの意見が述べられました。  いずれにしましても、地元関係者から直接意見を聴取する機会を得ましたことは、きわめて有意義なものであったと存じます。  次に現地調査について申し上げます。  現地調査は、翌三日、小柳委員を除く九名が参加し、海上保安庁のYS11機にて日韓大陸だな共同開発区域の一部を視察してまいりましたが、その概要につきましても提出してあります報告書をごらんいただきたいと存じます。  なお、公聴会に先立ち、第七管区海上保安本部及び水産庁福岡漁業調整事務所からそれぞれ概況説明を聴取いたしましたこともあわせて御報告申し上げ、派遣報告を終わります。
  4. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 以上で派遣委員報告を終わります。  次に、本案に対する質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言ください。
  5. 安武洋子

    安武洋子君 私は一日の質問に続きまして質疑を行わせていただきます。きょうの冒頭の私の質問と申しますのは先日の質問関係がございますので、一日の質問を少し整理をさせていただきたいと思います。そして政府の御確認をいただきたいわけです。  まず、政府外務省はいままでの国会の御答弁の中でも、また一日の私の質問に対しての御答弁でも、共同開発については一九七二年九月、第六回日韓定期閣僚会議の際原則的に合意した、その経過としては、第一点は、九月の四日に大平外務大臣——当時ですけれども、この大平外務大臣朴大統領表敬訪問された、そしてそのときに朴大統領共同開発の話を提案なさった、こういうことでございました。  私、資料外務省の方から御提出をいただいております。この資料は、文書で私どもが「第六回日韓定期閣僚会議の際、日韓共同開発に原則的に合意しているが、原則的合意に至るまでの事実経過を詳細に文書報告されたい。」こういう私どもの要求についての文書での御回答でございます。  これは第一点は、「昭和四十七年九月五日、六日の両日、ソウルで第六回日韓定期閣僚会議が開かれた。」第二点は、「九月四日午後ソウルに到着した日本側閣僚は青瓦台に朴大統領表敬訪問し、表敬大平外相朴大統領との間に会談がもたれた。その席上、朴大統領より共同開発構想が提案され、これに対し大平外相より検討してみることとしたい旨答えた。」こうなっております。  それからまた「第六回日韓定期閣僚会議の際の日本閣僚の詳細な行動日程」これにつきましても私ども資料の御提出をお願いいたしました。これは出席閣僚の共通の問題なんですけれども、これは一九七二年九月四日月曜日には、十一時三十分に羽田を立って十三時四十分には金浦に着いて、十六時には朴大統領表敬訪問。それから大平外務大臣表敬後引き続き会談。十七時には金国務総理表敬——これは大平外務大臣を除く五大臣である。十八時には韓国側主催レセプション。そして引き続いて韓国側主催晩さん会。  こうなっております。  また九月の五日火曜日は、十時には全体会議。それから十三時十五分から十四時五十分までは個別午さん。これは後で注釈の一に出てまいります。それから十五時から十六時までまた個別会議。この個別会議についても後で注の二に出てまいります。それから十六時五十分から十六時五十一分までまた全体会議です。十八時三十分から十九時三十分まで日本側主催レセプションです。そして二十時以降は韓国側主催晩さん会。  こうなっております。  そして引き続く九月六日水曜日は、十一時二十一分ですか、これから十二時まで全体会議。それから十三時から日本側のみの午さん。十五時三十分金浦発−十七時三十分羽田着。ただし足立農林大臣牙山等、それから中曽根通産大臣浦項等視察の後九月七日帰国。  こうなっております。  そして、個別の午さんは次のとおり行われたというふうになっておりまして、大平外務大臣金溶植外務部長官個別午さんです。それから植木大蔵大臣韓国南財務部長官です。それから足立農林大臣金農林部長官です。中曽根通産大臣李商工部長官です。佐々木秀世運輸大臣金交通部長官です。それから有田経企庁長官と太副総理経済企画院長官です。  それからまた、個別会議というのは次のとおり行われた。こういうことになりまして、大平外務大臣金外務部長官、それから植木大蔵大臣有田経企庁長官南財務部長官、太副総理経済企画院長官です。それから足立農林大臣金農林部長官中曽根通産大臣李商工部長官佐々木運輸大臣金交通部長官。  こういうふうになっております。  ところが、この詳細な行動日程のどこにも出ていない大平外務大臣中曽根通産大臣金溶植外務大臣、こういう三者会談が持たれたのではないかということが四十八年十月九日の衆議院決算委員会に出ているわけです。これはすなわち協定締結前ですけれども、ここのところで、質問は「この日韓閣僚会談あと秘密会が開かれておることについては御承知でありますか。その秘密会には大平外務大臣中曽根通産大臣、それから韓国側から金外相が御出席であります。」、こういうことについて中曽根国務大臣が御答弁なさっていらっしゃいます。この間私が引用いたしましたのは、「そういうことでわれわれも強く要請をし、先方共同開発でいくことがいいだろう、そういう考えを持たれて、そこで朴大統領もそれに賛成されたということが出てきて、それでは、そういう基本的考え方がどういうふうに運用できるか、ひもを解いていくことができるかという相談をしようということで、いまのように、向こう外務大臣当方の私と大平さんが話をしました。そして基本的に共同開発路線でいこうということをそのときに話し合ったと、そういう事実はあります。」これを引用させていただきました。  そこで、こういう国会答弁があるし、また、いままでの政府の御答弁あるいは私が御要求したこの資料の中と国会答弁と大きな食い違いがあるではないかということで、第一点は、共同開発政府とは逆に日本側から持ちかけた、こういう中曽根通産相の当時の御答弁ではないか、そしてそのために金・大平中曽根会談が開かれている、資料と全く食い違っている、こういうことを申し上げました。そのときに園田外務大臣調査をしてみよう、こういう御答弁をいただきましたけれども、いま私が確認させていただきました事実は間違いございませんでしょうか。御答弁をいただきます。
  6. 中江要介

    政府委員中江要介君) まず、安武先生の方かか外務省提出いたしました二つの文書による報告、その第一点は、「第六回日韓定期閣僚会議の際、日韓共同開発に原則的に合意しているが、原則的合意に至るまでの事実経過を詳細に文書報告されたい。」これに対しまして出しました文書による報告のうち、いま先生がお読み上げになったところはそのとおりで間違いがございません。   〔委員長退席理事福岡日出麿君着席〕 私ども文書による報告ではその先にもう二点ございまして、一つは、「韓国側提案をもちかえった大平外相は、中曽根通産相、随行の事務当局と協議を行った。」四といたしまして、「韓国側提案に対する日本側回答——これは原則的合意でございますが、これは「九月八日、後宮大使より金外務部長官に対して行われた。」と、この部分がございます。それを加えますと、第一点についての文書報告はいまおっしゃったとおりでございます。  第二点の「第六回日韓定期閣僚会議の際の日本閣僚の詳細な行動日程」、これは注の一、二を含めまして、いま先生がお読み上げになったとおりで間違いがございません。  そこで御質問でございますが、先般の委員会で、この共同開発構想というものを持ち出したのは、いままでの政府答弁によれば、日韓定期閣僚会議開会の一日前の九月四日に、朴大統領表敬訪問いたしました閣僚のうち、首席代表であった大平外務大臣朴大統領との間で表敬の後に話し合いがあって、そのときに韓国側から、共同開発という構想でやってはどうだろうかという話があって、それを日本側で、先ほど申し上げましたように、検討した結果原則的にこれでうまくいくかいかないかやってみようという返事を九月の八日にいたしましたという日本政府説明に対しまして、先般の委員会で御指摘の、昭和四十八年十月九日の決算委員会における当時中曽根通産大臣答弁によれば、この共同開発構想日本側から持ちかけたのではないか、そういうふうに読めると、こういうことで、その点は調べてみようという外務大臣の御答弁がありまして私ども調べたわけです。  その点について結果を御報告いたしますと、まずこの中曽根国務大臣、当時通産大臣答弁でございますが、先生の御引用になりますところはその答弁の後段でございまして、つまり「われわれも強く要請をし、先方共同開発でいくことがいいだろう、」と、そういうふうにお読みになるものですからそんなふうにも考えられるのかと思いますが、この答弁のこの部分を全部読みますとこういうふうになっております。「この石油共同開発の問題は、韓国側はいわゆる自然延長論大陸だな説を固執しており、日本側中間線論を固執して、事務レベルでは膠着状態で、どうしても動きがとれなくなった状態であったわけです。それでわがほうは、大平外務大臣、われわれ相談をして、いつまでもこういうふうに膠着状態にしておくなら貴重な資源が寝てしまうし、油の問題というものは日本の国家にとっても重要な問題でもある、これを打開しよう、そういうことでわれわれも強く要請をし、」と、こう読んでいただくべきでございまして、これは中曽根総務会長にもお確かめいたしましたが、これにあるとおりだと、つまり日本側要請したのは、これはやはり法律論膠着状態でどうしても動きがとれなくなった状態だ、これは打開しようということを強く要請していたという趣旨で、「先方も」というところからは、「先方共同開発でいくことがいいだろう、そういう考えを持たれて、そこで朴大統領もそれに賛成されたということが出てきて、」というのは、つまり、そういう朴大統領の方から大平外務大臣に対しまして、先ほど申し上げました表敬訪問の際にそういう話が出てきて、「それでは、そういう基本的考え方がどういうふうに運用できるか、ひもを解いていくことができるかという相談をしようということで、いまのように、向こう外務大臣当方の私と大平さんが話をしました。そして基本的に共同開発路線でいこうということをそのときに話し合ったと、そういう事実はあります。それ以上のことはございません。」、こう言っておられるわけで、私ども先般の委員会の後で、当時外務大臣であった大平自民党幹事長、それから当時の通産大臣でありました現自民党中曽根総務会長に改めてそれぞれ当時の事情を思い起こしていただきましたところ、これは九月六日、つまり閣僚会議の第二日目でございますが、その閣僚会議開会に先立ってであったか、あるいは休憩時間中であったかはこれは定かではないけれども中曽根大平大臣金溶植外務大臣とが短時間ではあるが非公式に話し合う機会があったことは記憶しているということでございますので、第一点の三者の秘密会談があったということは、これは全く事実ではございません。で、こういう閣僚会議開会に先立ってか、あるいは休憩時間中の短時間の非公式の話し合いというようなものは、私どもが要求されました定期閣僚会議の際の日本閣僚の公式の日程の中には性格として入らないものでございますので入っていないというだけのことであるわけです。  そこで、その三大臣が短時間非公式に話し合われた内容は、これは先ほど先生議事録から引用してお読みになりましたように、それに先立ちます九月四日に朴大統領から共同開発というのはどうだろうという話がありました。これにつきまして、共同開発というのは何しろ世界に例のない考え方でございますし、こういう大きな大陸だなの開発共同開発ということが一体どういうふうに成立し得るものか、韓国側にもう少しアイデアがあるなら確かめてみることもいいではないかというのが、この中曽根当時の通産大臣答弁の表現をかりますと、「それでは、そういう基本的考え方がどういうふうに運用できるか、ひもを解いていくことができるかという相談をしようということで、」「向こう外務大臣当方の私と大平さんが話をしました。」と、こういうことでございますので、私どもが従来説明してまいりました事実、それから文書によりまして提出いたしました行動日程、それから改めて確かめました中曽根大平両当時の閣僚記憶、そういったものを総合いたしまして私どものいままで説明してまいりましたことには間違いがない、正確であったと、こういうことが確認されたということを御報告する次第でございます。
  7. 安武洋子

    安武洋子君 いま外務省から御答弁いただきましたけれども、いずれにしても短期間でもあってそして休憩時間か閣僚会議に先立ってかわからないと、こうおっしゃっておりますけれども、この点についてはなぜわからないのかということをお伺いしたいんですが、三者が会われたということだけは間違いございませんね。そしてなぜそのことが先立ってか休憩時間かおわかりにならないんでしょう。その点をひとつお伺いいたします。
  8. 中江要介

    政府委員中江要介君) これは先ほど申し上げましたように、非常に非公式に短時間お会いになったということでございまして、私どもの公式の記録には一切残っていないということは先般も申し上げました。これはこういう大ぜいの両方の閣僚が会いまして、この個別午さん個別会議というふうに先ほど先生もお読み上げになりましたこの注一注二のようなものは、これは事前にきちんとアレンジして公式の個別午さんであり公式の個別会談ということでございますので公式記録にございますが、それ以外に午さんなり晩さんなりリレセプションなりの席で何人の閣僚がどういう問題で話をするかということについては、これはもちろん事前の準備はないのみならず、事後もそれについて正式の記録をつくるということはないわけでございます。ただ、この共同開発構想についてはこれが初めての試みでありますので、その機会朴大統領の方からこういう示唆があったときに、それについてもう少し韓国の方で直接の責任者の一人である外務部長官から具体的な構想のあらましでもわかればということで、適当な機会に三人でお話し合いになった、そのときに主として通産大臣は、これは資源問題の責任閣僚といたしまして強い関心をお持ちになっていたということはこれは当然でございますし、大平外務大臣閣僚会議首席代表であるのみならず、いよいよ協定を結ぶとなりますとこれは外交の問題でございますので、外務大臣通産大臣先方外務大臣に、大統領が言われた共同開発構想についてもう少し具体的な考えがあるんなら承りましょうということをお聞きになっても、それは自然ではなかったかと思いますが、そのことがそれでは一体閣僚会議の前だったのか真ん中の休憩時間だったのかがわからないのはなぜかと言われますと、これは正式の記録がないということが一つと、それからもう数年前のことでございますので、両当時の大臣とも記憶としてさてどの場面だったかはっきりしないと、こういうふうにおっしゃっているということ以上の御説明はできないわけでございます。
  9. 安武洋子

    安武洋子君 いずれにしても三者がお会いになったということはこれは御否定できないわけです。お認めになったと。記憶がいま前か後ろかはっきりしないとおっしゃるのはそれはそのとおりでしょう。いまもうこの問題があってから六年近くたっているわけです。ですから、御記憶としては、ちょうど四十八年の十月の九日、この決算委員会が開かれておりますのはこういう問題があってから一年です。ですから、この当時の御記憶の方がはっきりしているということはこれは客観的に言えると思うんです。そして約三年間も事務レベルで膠着していてどうにもならない問題だと、こういう問題がちょっとあった、正式にじゃないと。しかもどの場面だったかわからないと、そういうことの本当にごくささいな、正式に事前にもセットもされていない、そして話し合おうという予定もないところで国の主権にかかわるような重大問題が話される、そういう不十分なことの方がもっとけしからぬのじゃないんですか。そして私が先ほどいただいた閣僚行動日程でもはっきり出ておりますように、中曽根当時の通産大臣は九月七日にお帰りになっていらっしゃる。そして九月の八日にはもう金外務部長官に対して共同開発でいこうと、原則的な同意をしましたと、こういうことを後宮大使がお返事をなさっていらっしゃる、こういうことだけはこのいただいた記録でもはっきりしているわけです。こういう国の主権にかかわるような大切なことをそういうちょっとした席で話し合われる、そのことの方が私はよっぽどけしからぬと思うんです。  それからもう一つです。決算委員会のこの中曽根国務大臣議事録を私が後の方だけを取り上げたから、私の読み方の方がおかしいんだというふうにおっしゃいましたが、これはこの三者会談があったと。そして大平外務大臣中曽根通産大臣、それから韓国側からは金外相出席していると、こういう問いに対してお答えになっていらっしゃるんです。その中身なんです。それでいまおっしゃったのは、膠着状態を打開しようと、それは確かです。「そういうことでわれわれも強く要請をし、先方共同開発でいくことがいいだろう、」先方がとは書いてないんですよ。「先方共同開発でいくことがいいだろう、そういう考えを持たれて」と、自分が言ったことにだれが賛成するんですか。その後を読みますと、「そこで朴大統もそれに賛成された」こういうおかしな論法になります。この点についてはいかがなんでしょうか。
  10. 中江要介

    政府委員中江要介君) この議事録によりますと、いま先生が言われましたように記録にとどまっておるんですが、何しろこれは論理的に詰めて文章として提出されたものでなくて、答弁としてお話になったことでございますので、その答弁をされた方の意思がどこにあったかということを先ほど私が申し上げたわけでございます。この共同開発のところは、これは「先方も」というのは、中曽根当時の通産大臣答弁趣旨は、先方事務当局でもという意味で言ったことになっているはずだというのは、先方膠着状態は何とか打開しなきゃならないと思って、そして先方の方では共同開発というのがいいんじゃなかろうかという案があったと、それを朴大統領が吸い上げてといいますか、朴大統領もそれでいいだろうと、それに賛成ということで、初めて大平外務大臣に、韓国としては共同開発ということを考えてみたらどうかと思っているんだというお話があったと、こういう経過というふうに中曽根当時の通産大臣も認識しておられまして、そのことをここで言っているんだと、こう言われるわけでございます。  したがいまして、そういうことで「われわれも」というのも、これも膠着打開をしようということを強く要請したんで、共同開発要請したということではこれは全くないと、これははっきりしておるということでございます。で、「先方共同開発でいくことがいいだろう、」というのは、膠着状態を打開する一つの方法としては共同開発でいくのがいいだろうということを考えていたところが、そういう考えに対して朴大統領もそれに賛成されたということが大平大臣表敬のときに出てきて、そしてそれではそういう基本的考え方がどういうふうにワークするか、具体的な意見があるなら聞いてみようじゃないかということで、非公式に三人の閣僚が会われた、こういうふうに中曽根当時の通産大臣もおっしゃっておられますし、それが私どものいままで一貫して御説明してきた経緯ということに御認識いただきたいわけでございます。
  11. 安武洋子

    安武洋子君 記憶が薄れていると言いながら、いま国会で責任ある御答弁をなさっていらっしゃるのに、日本語ではどうしてもそういうふうに読めない。それをそういうふうにおっしゃいますけれども、その点は後で私反論申し上げます。  私があのとき調査をお願いしたのにもう一つ、金鍾泌首相と中曽根氏が連日会っていらっしゃると、こういう事実についてはどうなのかということもお尋ねいたしました。それはいかがでございますか。
  12. 中江要介

    政府委員中江要介君) これはたしか当時の日本の新聞の報道にもあるように、六日の朝ですか、中曽根通産大臣がこの日の朝も金鍾泌首相と朝食をともにした、そしてもっぱら舞台裏外交に精を出した、こういうところを引用しながらおっしゃったわけでございますが、この六日の朝の金鍾泌当時首相との朝食について、当時の通産大臣でおられた中曽根自民党総務会長に確認いたしましたところ、金当時首相と会ったことについては記憶をしているが、いつだったかなどについては記憶していない、しかし、いずれにせよ金首相は友人として会ったものであるし、閣僚会議、ましてや大陸だな問題とは全く関係のないものであるというふうに御説明をいただいております。これは御引用になりました新聞の記事でもそうでございますが、この舞台裏外交ではもっぱらお互いに絵をたしなまれる閣僚同士として、前に金鍾泌首相がかかれた富士山の絵を贈ってもらって、それは東京の自宅に飾ってあると、今度はお返しに波の絵を進呈するんだと言って進呈されて金鍾泌首相が喜ばれた。この後、この波の絵を差し上げたのは「日韓両国日本海の波で結ばれているので波の絵をさし上げました」という話をしていたという、「美術外交で融和を図ろうとしたものらしい。」という、これは記事でございますが、そうなっておりまして、こういう閣僚会議のときには公式に決まった会議あるいは事前に打ち合わせられた議題、そういうものだけを話をして帰ってくるということはあり得ないことは、これは安武先生も御理解いただけると思います。  それぞれ外交といいますものは、そういう公式の会議のほかに美術外交もございましょうし、その他友人同士の旧交を温めるということもございましょうし、それぞれにまあ舞台裏と言えば舞台裏かもしれませんが、個人的な行動をされる、このことは当然伴うわけでございまして、そういった個人的な行動の一つ一つについて外務省がこれを記録にとどめて、そしてまたその記録ににとどめるためにせんさくしてということはやらないわけでございますので、当時の記録から見ますと、行動日程といたしましては文書によって差し上げたものだけであるということで、中曽根当時の通産大臣が金鍾泌首相と会われたことにつきましては、この朝の食事のことを含めまして、いつどこでどういうことで会ったかということは中曽根当時の通産大臣としてははっきり記憶はしていない、しかし、いずれにしろ絵をたしなむ友人同士として会ったのであって、閣僚会議の議題について、いわんや大陸だなの問題の解決の仕方という、そういうような問題について話し合ったものではない、こういうふうにおっしゃっているということでございます。
  13. 安武洋子

    安武洋子君 その金鍾泌首相と中曽根氏が会っておられるということが実は重大なことなんです。そして共同開発日本側から要請したのではないと、こういう御答弁をなさいましたけれども、そのこととも関係がございます。この金鍾泌首相と中曽根氏が会っていられるということですけれども、私が重大だとなぜ言うかといいますと、共同開発、この舞台裏で活躍した日韓協力委員会常任委員の矢次一夫氏がはっきりとおっしゃっているわけですね。この方は、共同開発は当初、韓国側は大反対だったんだ。それをたまたま協力委員会のとき、金鍾泌総理晩さん会で同席した後宮大使、その前の金山大使から共同開発構想を打診してくれるよう頼まれたんだ。考えてみたら大使が申し入れて断られたらかっこうがつかぬ、そこでぼくが持ち出したんだが、簡単にいいですよと言う、そこでぼくの役目が終わったんで、後は政府同士の話になったんだ、こう言っておられます。これは一九七七年十一月十一日号の朝日ジャーナルに御本人が言ったと掲載されているわけです。さらにそれだけではないんです。岸信介氏も共同開発日本側から提案したと、これは新聞紙上で対談ではっきりと御自分でおっしゃっておられる。だから、こういう事実を見ると、中曽根氏と金鍾泌氏が会っておられるというのは、単に私的なものではなくて、共同開発問題、この問題が話し合われた疑惑、これが非常に濃厚だと私は申し上げざるを得ないわけですけれども外務省いかがですか。
  14. 中江要介

    政府委員中江要介君) いま先生の御引用になりました新聞記事それから雑誌の記事、これは私どもも読んでおりますし承知はしております。しかしそれが事実ではないということ、またそういうことは外務省としては全く知らないし、またそういうこととも関係なしに政府レベルでは、従来申しておりますような経緯を経て共同開発構想を双方で考えることになったということも、またすでに明らかにしているところでございまして、矢次さんという方がどこでどうおっしゃっておりますか、それはどういう根拠に基づいておられるか私は知りませんけれども、とにかく外交チャンネル、つまり国と国との関係政府政府との関係では大統領から外務大臣に話があり、そして在韓国日本国大使から韓国政府に正式に原則的な合意を返事をするという形で、初めてこの共同開発構想が本当にうまくアレンジができるかどうかの話し合いを始めてみようということになったわけでございまして、それにまつわって政府チャンネル以外の方がいろいろ御心配された方もあるかと思いますけれども、そういう方の発言なりお考えというものがどういうふうであったかということについては、私どもとしては関知しないところであると、こう申さざるを得ないわけでございます。
  15. 安武洋子

    安武洋子君 まあ、大変苦しい御答弁です。  さらに私は読売新聞を引用さしていただきます。これは昭和四十七年九月十九日に掲載されておりますけれども、「自民党有力筋は十八日、今月初旬ソウルで開かれた日韓閣僚会議秘密会で、世界最大の〃石油の宝庫〃といわれる東シナ海の石油資源を、日韓両国共同開発することで正式に合意したことを明らかにした。これは同会議出席した大平外相中曽根通産相と金溶植外相との間で合意したもので、朴韓国大統領も了解している。」、それからさらに「さる五、六の両日開かれた日韓閣僚会議では、わが国政府の対韓借款供与が中心議題で、政府は一億七千万ドルの借款供与を決めた。政府はこの借款供与の見返りに東シナ海での開発は共同でする——との韓国政府の譲歩を得たといわれ、今後は政府事務当局の交渉に従って鉱区権をもつ日本石油開発開発に着手する段取りである。」とこういうふうにも報道されております。私がいま申し上げましたのは一応新聞報道ですけれども、その前のことについては当事者御自身が語られたことです。外務省は関知しないと、こういうふうにおっしゃいますけれども、こういうことは大変疑惑があるというふうには外務大臣考えにならないでしょうか。
  16. 中江要介

    政府委員中江要介君) 後の方は、先生御自身も新聞の記事を引用したものですとお断わりになりましたので、新聞の報道としてはそういうことがあったと思いますけれども、それは事実とは異なるということをはっきり申し上げる以外には御説明のしようがないと、こう思います。  韓国に対します経済協力の問題は、これは日韓大陸だな共同開発というようなものとは別に、従来とも韓国の民生の安定向上と経済の発展に資するものであれば、これは重要な隣国として日本としてなすべきことを筋を通して行っていくという基本方針に変わりはないわけでございまして、当時の閣僚会議で経済協力の問題が議論されたことは、これは正式の議題としてまじめに双方の閣僚の間で議論されたわけで、そのことと共同開発構想との間に何らかの関係があったかのごとき報道が仮にありましても、それは政府としてはすべて否定するという以外にございません。  共同開発構想が生まれてきましたについては、毎回申しておりますように足かけ三年に及ぶ大法律論争をやりまして、双方ともこういう法律論争で膠着状態にあることによって、資源開発がおくれることが資源小国である日韓両国にとって本当にいいのか悪いのかという、これは政策的判断の問題といたしましてこの一九七二年の時期に、やはりこれはぼつぼつ法律論争だけに明け暮れるべきではないという認識が高まってきたということと、そういう場合の実際的解決の仕方としては、国際司法裁判所が北海の大陸だな問題で示しました判決の中にも、境界線について合意に至らないときには、共同利用だとか共同開発だとか、そういったことも考え得るではないかということもすでに示唆しておるわけでございまして、前回も申し上げましたが、日本側でもこれを打開する実際的解決の方法としては、第三の境界線を設けるような考え方、あるいはこの共同開発のような考え方、あるいはジョイントベンチャーのような考え方、いろんなことは、これは事務的には考え得る問題ではあったわけでございまして、何も借款と引きかえに共同開発の譲歩を韓国からかち得たと、そういうような性格とは全く違いますので、そこは誤解のないようにお願いいたしたいと、こう思います。
  17. 安武洋子

    安武洋子君 矛盾をいたしませんか。関知をいたしませんとこう断言なさりながら、どうして事実と違うとそういう断定ができるのでしょうか。三者会談だって御指摘を申し上げた、調べてみると、やっぱり短時間にしろあったじゃありませんか。そしてすべてを否定せざるを得ませんというお答えをいまでもまだなさる、私はこういう外務省の姿勢に対して本当に憤りを感ぜざるを得ないわけです。  さらに続けますけれども、同じような趣旨の報道というのが、何も私がいま引用したこの新聞だけではないわけです。東亜日報でも、また七七年一月二十七日の朝鮮中央通信でも報道されているわけです。これには朴大統領は早期批准と借款導入のため中曽根通産大臣に十余万ドルを賄賂として提供した、こうも書いてあります。私はこれは事実だとは断定はいたしません。しかし疑惑は一向に晴れていないわけです。この問題は、議論されても論議されても一向に晴れない。そして外務省は本当に具体的な事実——者会談なんかでもそうですけれども、こういうことでもお出ししない限り、関知しませんと突っぱねられる、私ども記録に残っておりません、ロッキードのときの運輸省の姿勢と全く一緒ではありませんか。私はこういうことでは疑惑はますます深まるばかり、一向にこの疑惑は晴れない、このことをはっきり申し上げたいと思います。外務大臣いかがでございましょうか。
  18. 園田直

    国務大臣園田直君) いま局長から答弁いたしましたとおり、新聞その他でいろいろ報道があったにいたしましても、外務省記録あるいは当時の立ち会った事務当局から聞きましても、また常識から考えても、そのようなことはあり得ないと存じます。
  19. 安武洋子

    安武洋子君 いかに大臣からあり得ないと思いますという御答弁をいただきましても、私の疑惑はますます深まるばかりです。それで私はこの問題はますます疑惑があるということで、一応この問題については質問を留保いたしまして、次に進ませていただきます。  外務省にお伺いいたしますけれども協定十一条、これで一日も早い石油資源開発をという名目のもとに掘削義務というものが設けられておりますね。「掘さく義務に関する交換公文」、これが締結されております。この「掘さく義務に関する交換公文」によりますと、九つの小区域がある。その九つの小区域のうち第二、第三、第四、第六、この四つの小区域については掘削義務が完全に免除されている。第八区域については最初の三年間は免除、または第一、第九区域は単一の区域とみなす。つまり掘削義務があるのは第五小区域、第七小区域及び第一もしくは第九、この小区域と、こういう三つだけでございましょうか。その点を最初に確認させていただきます。
  20. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) そのとおりでございます。
  21. 安武洋子

    安武洋子君 ところで、この掘削義務がある第五、第七、第一あるいは第九、この小区域における韓国の鉱業権者、それから日本側の先願権者、これはどうなっておりますか。日本韓国、これ鉱区ごとにお答えください。
  22. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 第五鉱区に関しましては、日本側日本石油開発でございます。それから韓国側の租鉱権者といたしましてはテキサコ・コーリア・インコーポレーション、第七に関しましては、日本側日本石油開発韓国がコリアン・アメリカン・オイル・カンパニー、第九に関しましては、日本側は西日本石油開発韓国側、コリアン・アメリカン・オイル・カンパニー、普通コアムと言われている会社でございます。
  23. 安武洋子

    安武洋子君 つまりいまおっしゃったことは、当面掘削可能なのはこれだけしかない、こういうことですね。そうでなければ、義務免除の必要はないと思うんですけれども、それはいかがなんでしょうか。
  24. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 交換公文の一項の(3)に書いてございますように、第一小鉱区と第九鉱区は単一の小鉱区となっておりますので、その限りにおきましては、両方単一にいたしまして一つの掘削義務がございますが、それ以外につきましては先生のおっしゃるとおりでございます。
  25. 安武洋子

    安武洋子君 ですから、いま確認いたしましたのは、当面掘削可能なのはいまおっしゃったところだけだと、それでなければ義務免除の必要はないはずですねと、こういうことを私は聞きました。
  26. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) そのとおりでございます。
  27. 安武洋子

    安武洋子君 では次に、韓国側鉱区権者はすでに相当数がこの鉱区権を放棄しているはずですけれども韓国側鉱区で言えばどことどこか、そのことを明らかにしてください。
  28. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 韓国側鉱区の第二、これはガルフがやっておったわけでございます。それから第三、これはシェル、第四のガルフ、それから第六のシェルがやっておる。この地区につきましては、すでに契約期限が切れておりまして失効しております。したがいまして、現在有効なのは韓国の第一鉱区、これはテキサコがやっております。それから第五のテキサコ、第七のコアムが受け持っておるこの三つの分野につきましては、依然として開発契約が有効であるということでございます。
  29. 安武洋子

    安武洋子君 いままでのお話を整理しますと、つまりガルフ、シェルは鉱区権を放棄している。日本側から見てもガルフ系の帝国石油はこの義務がない。またシェルと三菱系西日本石油開発一つだけと。残るのは韓国側でテキサコ、コアム、こういうことになりますね。そして日本側ではテキサコ系の日石、西日本、こういうことになりますね。確認しておきます。
  30. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) そのとおりでございます。
  31. 安武洋子

    安武洋子君 ところで、韓国側鉱区ですでに試掘しているのはどの鉱区なんでしょうか。またその鉱区権が存在しているのはどこなんでしまうか。
  32. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) ちょっと明らかにしておきたいんでございますが、実は韓国側がみずから設定した鉱区と、それから共同開発の小区域というのは問題は別でございまして、実は共同開発にかかわる地区につきましては韓国側は試掘していない。ただ韓国共同開発関係のない地区につきましては、それぞれガルフなりテキサコあたりがやっておるということでございまして、共同開発の中の地区と、それからそれ以外の、すなわち韓国だけが、日本関係なく鉱区を設定しているというところはございますが、共同開発というところはないということで、ちょっと誤解を明らかにしておきたいと思います。
  33. 安武洋子

    安武洋子君 つまりいまの御答弁韓国側の鉱区で言えば第五小鉱区ですね。ここだけが鉱区権が存在していると、こういうことですね。
  34. 三宅和助

    政府委員(三宅和助君) 最初に先生が御指摘になった掘削義務と、これはあくまでも義務を書いたものでございまして、その最小限の義務、過重な義務を課してはいけないということで交換公文上義務を書いたものでございまして、実際に掘削、現在までにやっているか、やってないかという問題とは若干この問題の性格が違うということでございますし、したがいまして、先生の御指摘の韓国側の第五鉱区につきましては一回試掘しております。それから第六につきましては三回やっておる。それから第二鉱区につきましては二回やっておるということでございまして、いわゆる共同開発の中のこの小区域における掘削義務に関する交換公文とは関係ない、こう御理解いただきたいと思います。
  35. 安武洋子

    安武洋子君 ですからね、ここにもおたくの方から資料いただいているわけですよ。この中で韓国側の七つですね、この鉱区の現状については、三つがいままで試掘しているし、その中で鉱区権があるのは五だけだと、このことは間違いございませんでしょう。ですから、つまり韓国側の鉱区、こういうことで言えば第五小鉱区が最も有望だと、こういうふうにテキサコが判断していると。現に第五小鉱区の日本側先願者である日石ですね、ここの瀧口社長自身が、社内報なんですけれども、これは七十八年二月ナンバー二百六十八「こうもり」こういう社内報を出しておられますけれども、この中で「今期の通常国会で〃日韓共同開発特別措置法案〃が成立する見込みであり、試掘も今年中に行われよう。東シナ海鉱区でも有望な鉱区を持つ日石グループが活躍する時である」こういうふうに話しておられます。こういう経過を見ましても、日石がいち早く先願権者となった、こういうことを考え合わせてみても、この鉱区こそが最も有望であって掘削が可能だと、こういうことではありませんか。
  36. 古田徳昌

    政府委員(古田徳昌君) 先ほど外務省からの御答弁にもありましたように、韓国側の鉱区は一から七に分かれているというわけでございまして、その中で、二、五、七、につきまして、それぞれの鉱区権者が従来まで試掘をしたことがあるというわけでございます。これはもちろん共同開発鉱区とは関係のない地域でございます。  それから共同開発区域につきましては、小区域が九つに分かれておりまして、その中の一、五、七、八、九につきましては、それぞれ掘削義務が課せられているわけでございますが、その他の小区域につきましては、海の深さとかあるいは面積というふうなことからしまして、掘削義務を課するのは過酷であるというふうな判断から、この取り決めでは義務が課せられていないという関係になっております。
  37. 安武洋子

    安武洋子君 要するに掘削義務を課していないということは、課しているところが有望であると、こういうことなんでしょう。掘削義務を課していないところは、ここは有望でないということなんでしょう、言葉をかえれば。
  38. 古田徳昌

    政府委員(古田徳昌君) 有望か有望でないかという判断に基づくものではありません。ただいま申し上げましたように、鉱区が余りにも小さいとか、あるいは海の深さが非常に深過ぎるとか、現在の技術では急に探鉱に着手するのが非常にむずかしいというふうな考え方で、この掘削義務を課したとあるいは課さなかったりというふうなことが行われているわけでございます。有望か有望でないかということは、結局これから先の具体的な探査活動が行われた結果判明するものでございます。
  39. 安武洋子

    安武洋子君 そうはおっしゃいますけれどもね、ここを共同開発にすることにしたとおっしゃるのは、一日も早くエネルギー資源がほしいからだと、こういうふうにおっしゃる。それなら多少のことはあっても、全部にこの掘削義務を課すはずでしょう。だけど、その中で掘削義務があるのは三つのうちの一つだと、こういうことになれば、そこがまず最も有望だと、こう考えるのはあたりまえじゃないんですか、どうなんですか。
  40. 古田徳昌

    政府委員(古田徳昌君) 石油の埋蔵の有望性というものにつきましては、ある広い範囲にわたりましてこれが有望かどうかというふうな判断を地質的に見ましてまずやるわけでございます。この共同開発区域につきましては、まず最初は、エカフェの調査から始まりますけれど、そういうふうな全体としての概査活動の結果、全体として有業性がある、高いというふうなことで、この地域の探鉱開発の促進ということが両国にとりましても非常に重大な関心事となってきたわけでございます。そういう関係でございまして、具体的な小区域のそれぞれについて、これが有望であるあるいは有望でないというふうな判断をするというのは、先ほど申し上げましたように、かなり詳細な探査活動が進んでから、この有望度の判定ができるわけでございまして、全体としての判断に基づいてこの共同開発区域につきましての探査活動の促進ということを現在考えているわけでございます。
  41. 安武洋子

    安武洋子君 一番利害関係の深いこの日石の瀧口社長御自身が、「東シナ海鉱区でも有望な鉱区を持つ日石グループが活躍する時である」こう語られているわけです。実はこのことが大変重要なんです。この協定を見たときに、いま資源を早く開発しなければならないとか、エネルギーの危機の打開とかいろんなことをおっしゃってきましたけれども、結果としては日石、テキサコの利権を保障するものだけではないかということを申し上げたいのです。そういうふうにはお考えになっていらっしゃらないのでしょうか。もう一度確認しておきます。
  42. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) この坑井の掘削義務につきましては、先ほど石油部長からお答えいたしましたように、義務として法律的に課する以上、やはりその鉱区の鉱況、あるいは技術的に可能性を判断するための水深、こういった物理的な判断から決められたものというふうに承知いたしております。  かように坑井掘削義務がかかっていない地域につきましても、別途いわゆる鉱区の減少義務がかかってくるわけでございまして、八年間の探査期間の中で初めの三年、次の三年、さらに最後の二年にわたりまして四分の一ずつ鉱区を減少していくといった義務がかかるわけでございますから、鉱業権者といたしましては、坑井について掘削義務がなくともやはり自主的な判断に基づいてボーリングをやっていくというのが通常ではなかろうかと思います。さようなところから、強いて申し上げるならば、日石開発の地域の水深が他の小区域に比べて比較的浅いと申しますか、技術的に可能性が高いということは言い得るかと思いますが、そこの賦存の可能性ということは、やはり探査あるいは試掘、探掘を重ねていかないと判断ができない。一言で申し上げると、物理的な判断に基づく坑井掘削義務制の決定であるというふうに認識いたしておるわけでございます。
  43. 安武洋子

    安武洋子君 お伺いたしますけれども、通産省や外務省、ここは日石開発や、それからあるいはテキサコ、シェブロン、この要望を受けて、それに沿って協定とか国内関連法案、これをまとめ上げられたのではありませんか。
  44. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 御指摘のような企業あるいは企業グループから要望があったからということではございませんで、先ほど来外務省からもお答えいたしておりますように、共同開発協定、それを実施するために必要な法律と、この二つの関係において共同開発を進めようということでございまして、業界からの要請に基づいてというものではございません。
  45. 中江要介

    政府委員中江要介君) ただいま資源エネルギー庁長官が御説明されたとおりでございます。
  46. 安武洋子

    安武洋子君 昨日この商工委員会で参考人の質疑がございました。その際に、わが党の市川議員が伊藤治郎日石開発常務に対まして、通産省等に企業としての要望書を出したことがあるのではないか、こうお聞きしたのです。伊藤常務は、記憶がない、こういうふうに言われまして、必ずしも要望書を出したということを否定されなかったのです。  改めて通産省と外務省にもう一度お伺いいたしますけれども、そのような要望書を受け取られた。そういう要望を聞いた。こういうことはございませんか。
  47. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) かつて御指摘のような御質問もございましたので、当時私たちといたしましても資料調査いたしたわけでございますが、企業から提出された要望書というのは存在しません。ただ、共同開発に当たりましていわゆるヒヤリングと申しますか、意見を聴取したということはあるようでございますが、それはあくまで通産省としてこの問題にどう取り組むか、最終的な意思を決定するに当たりまして参考にしたということにすぎないということでございます。
  48. 中江要介

    政府委員中江要介君) 外務省といたしましては、いま御指摘になりましたような要望書を受け取ったとか、そういう要望を受けたとかそういうことはございません。外務省は通産省の方に技術的なあるいは資源についての専門的な知識はいろいろとお教えいただきましたけれども協定、つまり、共同開発構想というものを本当に資源開発に役立つものとしてりっぱな協定にできるかどうかという点に専念して交渉したわけでございます。
  49. 安武洋子

    安武洋子君 確認しておきますが、外務省はこの協定をまとめるに当たって、利害関係者である企業の意見は全くお聞きにならなかった。こういうことでございますね。
  50. 中江要介

    政府委員中江要介君) 外務省立場からいたしますと、そういうことを聞く必要がなかった、こういうことでございます。
  51. 安武洋子

    安武洋子君 通産省にお伺いいたしますが、協定案文作成の過程の中で、経過について企業にお話しになったことがございますか。
  52. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 先ほど関係の企業から意見を聴取したと申し上げましたが、その段階においては日韓の交渉の過程というのを頭に置きながらヒヤリングをいたしておりますが、会社側——関係企業側からの意見によってわれわれの判断が左右されたということはございません。
  53. 安武洋子

    安武洋子君 協定の案文を作成する過程の中で要望はお受けにならなかった。しかしいろいろと協定をまとめ上げていく過程、協定そのものをまとめていく過程ですね、この過程で企業に話をされたことがあるんですねということで、もう一度そこのところを正確にしてお答えください。
  54. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 当時の資料を十分と調べてみないと申し上げかねる点もあろうかと思いますが、あくまで関係企業から事情聴取したということでございます。
  55. 安武洋子

    安武洋子君 一九七三年の一月の業界誌の中で、日石の瀧口社長がおっしゃっているんですけれども、「日本韓国との共同開発構想でやる。両国がそれぞれ一本に合同した開発会社構想も出たが、それには日本は反対で、地域地域で日本開発権者と韓国開発権者とでやろうということがまとまった。」と、この問題につきましては一番利害関係がある日石の社長が、どうしてこういう交渉の協定を練り上げていく過程をかくも熟知をなさっていらっしゃるんですか、そのことをお伺いいたします。こういうことをお伝えになったんですか。
  56. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) ただいま御引用になりました瀧口社長の発言がどういう根拠に基づいてなされておるかということは私たちわからないわけでございます。と申しますのは、やはり関係企業としてはそれぞれの情報網と申しますか、たとえば技術提携をしている外国企業あるいはそういった関係からの情報ということもあろうかと思いますが、私の方からさようなことを申し上げたということはないと思います。
  57. 安武洋子

    安武洋子君 外務省は先ほど企業の意見は全く聞かなかったと、こう御答弁でございました。  そこで、私は五十二年十一月二日、衆議院商工委員会で、わが党の工藤議員の質問に対して中江アジア局長が御答弁をなさっていらっしゃいます。これは、「日本側では、まず出願地域ごとに参加企業を分けまして、そして共同事業方式、いま協定で具体化されておりますが、こういう方式でやろうというのを示したのに対しまして、韓国側は、最初は、共同事業方式には反対である、むしろ対象地域全体を日本側企業と韓国側企業の合弁による単一事業体で行おうという立場をとったというのが記録に残っておりますが、」この御答弁、瀧口社長の言っておられることと全く合致するわけなんです。けしからぬではありませんか。いかがなんですか。
  58. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私は、瀧口社長が言われたといって御引用になってることが、けしからぬか、けしかるかということとは別に、外務省といたしましては、どういう方式で共同開発が可能であるかということについては、まず主管官庁である通商産業省と緊密に連絡をとりながら、その御意見を聴取しながらやるのはまず当然でございますし、またそこから生ずる、たとえば漁業に及ぼす影響ということになりますれば、これはその主管官庁である農林省水産庁の御意見を徴しながら進めるというのも当然のことでございまして、外務省はりっぱな協定をつくるために関係各省庁と緊密に連絡をとりながら各条項の交渉を進めたということでございまして、外務省が直接、その関係業界なり会社なりに何らかの相談をするとか、意見を聞くとか、そういうことはやらないわけでございます。したがいまして、いまの御指摘のような企業者の発言について、それがどうであるかと言われましても、私どもとしては何ら知らないところの話である。で、協定の中でどういうことが行われているかということは、これは、共同開発という構想日韓間が長年の法律論争をやめて実際的解決に向かっているなということは、これは一般に知られておるところでございまして、その中の共同開発というのは国際社会に先例がないわけでありますので、一つ一つが新しい道を開くという意気込みで、粗漏のないものをつくる努力をしたと、こういうことを申し上げるほかはないと、こういうことでございます。
  59. 安武洋子

    安武洋子君 私は、協定案文作成の過程で企業から単に意見を聴取したということなら絶対にわからないという、こういう、一番利害関係のある企業がなぜこういうことを熟知していたのか、こういうことを問題にしているわけなんです。まあこういうことを見ましても、また、さきに私が指摘しました協定の中身を見ても、日石開発やテキサコ、シェブロン、この利益を擁護するものだ、こういう疑惑が出てくるのも私は当然だと思うんです。そして、このときに岸信介氏、この方が暗躍をされたのも、まさにこういうふうなテキサコ、日石開発の利益を守るためではないかという疑惑も出てまいります。  岸氏と日石カルテックスグループの結びつきというのはきわめて深い、こういうふうに言われておりますけれども、岸信介氏の事務所はどこにあるか、自治省に御答弁お願いいたします。
  60. 岩田脩

    説明員(岩田脩君) 岸信介氏の事務所がどこにあるかということについては、自治省は存じておりません。
  61. 安武洋子

    安武洋子君 日石開発の建物の中にありますね。  そしてさらに、自治省に続けて聞きますけれども、岸氏の政治団体である信友会、国政研究会、これは四十一年以降四十九年までの十年間に日本石油及び日本石油精製からどれだけの政治献金を受け取っているんでしょうか。
  62. 岩田脩

    説明員(岩田脩君) 御指摘のありました信友会、これは山地寿という方の代表者である団体でありますけれども、及び貫田淳作という方が代表者をしておられる国政研究会、この二つの団体につきまして、その団体から提出されました政治資金の収支報告書、それから、すでに報告書の一般閲覧期間を過ぎておりますものにつきましてはその要旨を公表いたしました官報の記載に基づきまして調査をしてみましたが、信友会からの報告の中に記載されておりました日本石油株式会社からの寄付金の額は、昭和四十一年分から四十九年分までを合わせまして四百六十万、同じく日本石油精製株式会社からのものが同じく四百六十万でありました。また、国政研究会に対します寄付金も同様でありまして、調べてみましたところ、日本石油株式会社からとして記載されておるもの四百六十万、日本石油精製株式会社からとして記載されておるもの四百六十万でございました。
  63. 安武洋子

    安武洋子君 まあ金額にしてはね、少ないと思われる方がいらっしゃるかもわかりませんけれども、政治献金というのはまあ、こういう公表された寄付金というのは氷山の一角であるというのは、これはロッキード事件を見るまでもなく常識になっております。しかし、この国政研究会の公表された企業献金中、日石からのものが最大である、こういうことから見ましても、岸信介氏と日石の結びつきの深さが私は一面証明できるのではないかと思います。  さらに、この岸信介元首相、矢次一夫氏、田中龍夫元通産大臣、まあいわゆる韓国ロビーというふうに言われてなさる方たちですけれども、こういう方たちの集まりである日韓協力委員会、この働きかけが通産省や外務省になかったかどうかということをお伺いいたします。
  64. 中江要介

    政府委員中江要介君) この東シナ海の大陸だな開発に関連しまして日韓協力委員会から働きかけがあったかという御質問でございますと、そういう働きかけは一切なかったということでございます。
  65. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 当方に対してもさような働きかけはなかったと理解いたしております。
  66. 安武洋子

    安武洋子君 あなた方は御否定なさいましても、岸信介氏、それから矢次一夫氏、このお二人は御自分が体験なさったことを語っていらっしゃる、御自分で介入したことをちゃんと話しておられます。たとえば矢次氏は、「わが浪人外交を語る」こういう御自分の著書ですけれども、この中で「まずモデル・ケースとして、日韓間の大陸棚を中心に話を進めようということになった。ところが、新聞が俄然といってよいほど、この問題で大騒ぎをし、大きく書き立てるものだから、以来極秘というか、忍者的方法でよきタイミングをとらえつつ話を進め、四七年五月、日韓協力委員常任委員会ソウルで開かれた際、うまいチャンスがあったので、私が政府首脳に話を持ち込み、これがトントン拍子にまとまったわけですよ。それでこれを駐韓・後宮日本大使の手に渡して外交ルートに乗せ、帰国後通産省にも話の内容を伝えた。以後はいっさいノータッチですから、詳しい事情は知らないけれども、具体的に進行しているように聞いてますよ。」こういうふうに言われてますし、さらには、「もう一つは、日韓の間に大陸棚をめぐる領海問題の紛争があり、しかもこの紛争にアメリカのおかしな、あまり好ましくない石油利権会社が絡んでいるのが目ざわりだったんで、領海問題は一応タナ上げしたうえで、日韓共同開発という方式で解決の道を探ろう、という考えがあって、韓国側の有力者とひそかに懇談したり、外務省や通産省の担当者とも話しあうとか、大いに根回しをやったんです。そのうえで、これはやれると見当がついたから、アメリカ大使館の知人にも相談をもちかけ、蔭ながらの協力を取りつけたりしたんです。」矢次さんはこうおっしゃっておられます。  重ねて通産省と外務省にお伺いをいたしますけれども、こういう日韓協力委員会、この場合は矢次さんに限定してもよろしゅうございますけれども、通産省や外務省に働きかけがあったのではありませんか。
  67. 中江要介

    政府委員中江要介君) 矢次さんから外務省への働きかけはありませんでした。
  68. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) いつどのような時点でどのようなお話になったかということは、私たちとしても関知いたしておりません。
  69. 安武洋子

    安武洋子君 ではさらに、御自分たちの体験を語っていらっしゃるのはここにもあります。これは朝日ジャーナルです。「しかし、大陸棚共同開発は当初、韓国側は大反対だったんだ。それをいろいろな角度から論議した。たまたま七三年の協力委の時、金鍾泌総理の晩餐会で同席した後宮大使、その前の金山大使(いずれも当時)から共同開発構想を打診してくれるよう頼まれたんだ。考えてみたら、大使が申し入れて断られたんじゃ格好がつかん。その点、ぼくが出して断られても、その場の話ですむ。そこでぼくが持ち出したんだが、案ずるより生むが易しで、簡単に「いいですよ」という。それでぼくの役目は終わったんで、あとは政府同士の話になった。」先ほども引用しましたけれども、こういうことを重ねて言っておられます。どうお思いでしょうか。
  70. 中江要介

    政府委員中江要介君) 日韓協力委員会はこれは政府機関ではないことは御承知のとおりでございまして、そこでどういうことがあったかは私どもは存じません。共同開発構想が具体化されるに至りました経緯につきましては、いままで私どもが繰り返し申し上げているような経緯で政府間では話が進んだわけでございますので、いまおっしゃいましたようなことは私どもの存じない話でございます。
  71. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 大使についてのお話でございますんで、そういった意味からも私たちとしては全く関知いたしておりません。
  72. 安武洋子

    安武洋子君 ちょっといま聞こえなかった。もう一度おっしゃってください。
  73. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) ただいまお話しになった件は、後宮大使あるいは金山大使といったようなことでございます。私たちとしても全く知らないことでございます。
  74. 安武洋子

    安武洋子君 働きかけがなかったというふうなことを一貫しておっしゃっておられますけれども、さらに私は、ではここで岸氏も介入した事実を御自分で認めていらっしゃる、矢次氏も語っていらっしゃるという件を取り上げたいと思います。  これは新聞にちゃんと報道されております。七七年五月二日の新聞の中で、これは矢次氏が、「その時、金総理の歓迎の会があった。大使は金山君から後宮君に代わっていたが、そこでたまたま金山、後宮新旧大使がいてね、いいチャンスだったと思ったんだろうが、金山君に「ここでひとつ言ってみてくれないか」とそそのかされた。そこで「総理共同開発でやりましょうや」と切り出した。そうしたら金総理は「ええ、やりましょう」と簡単に受けたんだ。「お聞きのとおりだ。あとはひとつ外交ルートに乗せてください。ボクの用事はこれですみました」というのがウソも隠しもない、ありのままの経過なんだ」、こういうふうにおっしゃっているんです。私は、こういうことから見ましても日韓協力委員会の介入というのはどんなに否定なさろうと明白な事実である、これを一点申し上げたい。  それから、共同開発方式のこの提案は、政府がおっしゃるように朴大統領から大平外相に対して話がされたのでは絶対ない、日本側から韓国に対してなされたんだと当事者たちが明白に語っていらっしゃる。こういうことについて政府は全然反対の答弁をなさったりあるいは関知しない、こういう態度をおとりでございますが、外務大臣この点いかがでございますか。
  75. 中江要介

    政府委員中江要介君) いまの新聞ですか雑誌ですか、出ました話は私ども知らない話だということは何回も申しておりますが、事実関係につきまして、一つ全くあり得ないことになることがございますので。  これは金山大使と後宮大使の交代期であったので云々のようにいま伺いましたけれども、金山大使は昭和四十三年の七月十五日に着任されまして、四十七年の一月八日には帰朝しておられるわけでございまして、昭和四十七年の七月の二十八、二十九の両日ソウルで行われました日韓協力委員会の時点ではすでに金山大使は韓国大使をおやめになって半年を経過しておるわけで、交代期で双方の大使が、後宮、金山両大使がいたというふうにもし言っていられるとしますと、それは記憶違いのことをおっしゃっているんじゃないかと思います。それだからすべて記憶違いと私は言う気持ちはございませんけれども、この共同開発構想が出てまいりますのに日韓協力委員会がいろいろと苦心をして、それを日本側考え方として韓国側に持ち出してそうしてこうなったんだというようなお話は、私どもの承知しております事実とは違うということを何度も申し上げておるわけでございます。
  76. 安武洋子

    安武洋子君 では申し上げますけれども日韓協力委員会のこの正式なレポートですね、これを見てもはっきりしているんです。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕 このレポートというのは、わが党の小笠原議員に対する国会答弁の中で、日韓協力委員会については正式な議事録のようなものだという御答弁があります。これを拾ってみますと、日本韓国中間線論、それから自然延長線論、これで論議をしていたその時期から日韓協力委員会が介入をしているということがちゃんと議事録に載っているんです。  例を挙げていきますと、一九七〇年八月四日、五日、この記録では、日韓協力委員会第四回合同常任委員会に関する報告、この報告で、日韓両国間の海洋共同開発案、矢次一夫発表、論議、それから、継続的に研究、両国政府当局とも協議し、第五回常任委に提出することで合意、それから議事録の中で、共同開発案を強力に推す、こういうふうに書いてあります。  それから、一九七〇年九月、このときは岸元首相、矢次一夫、堀越禎三、日韓華三国共同開発を提案、こういうふうになっております。  一九七〇年十一月十一日から十二日、これは日韓協力委員会第五回常任委員会日韓華三国連絡会議を合わせて開く。同会議において海洋開発問題について実質的討議を行い、十二月二十一日、二日海洋共同開発に関する特別委員会の開催、これを採択しております。  さらに、一九七一年一月十九日から二十日に、この議事録です、日韓協力委員会第六回常任委員会、一月二十日には日韓海洋開発連合委員会開会し、日本側提出報告書に基づき討議、こういうふうになってるんです。こういう結果を見ても、日韓協力委員会、この暗躍が効を奏したというふうに議事録がちゃんと語っているではありませんか。そして、私どもはそのときの当事者にも直接会ってこの事実を確認しております。  私は政府のごまかしは許せないと思いますけれども外務大臣に今度は御答弁をいただきます。日韓協力委員会の働きかけが本当になかったのかどうかということをお答えいただきます。
  77. 中江要介

    政府委員中江要介君) 事実関係につきまして御説明しておく必要があると思いますのは、ただいま先生が御指摘のように一九七〇年、つまり昭和四十五年のころからの議事録をいろいろ御引用になりましたが、この一九七〇年という年はどんな年であったかと申しますと、これは韓国が一方的に国内法をつくるのではないかということで、日本政府として重大な関心を韓国側に申し入れていた時期でございます。その翌年の一九七一年から、再々申しておりますように、日韓大陸だなの紛争、法律的な紛争が明確になりまして、そこで法律論争を重ねたのが一九七〇年、七一年、七二年と続いたわけでございます。いま御引用の日韓協力委員会の常任委員会はそのころの委員会でございまして、それが政府に圧力をかけるというようなことは全くなくて、むしろ政府といたしましては正々堂々の国際法の理論を韓国側に展開し、韓国側はまた韓国側自然延長論に基づく権利主張をいたし、これが何回やってもなかなからちが明かない、いわゆる膠着状態へと進んでいくその時期に、政府関係のない民間の方々が日韓協力委員会の席で一九六八年にエカフェが行いました調査に基づいてこの東シナ海の全域の石油資源の利用という問題を真剣にお取り上げになっても、そのこと自身は決して不思議でないと思います。  しかし、その中に出てまいります日韓華三国共同開発というようなものは、これは政府として考えようはずのないものでございます。政府としては、日本の国際法上の立場を主張しております最中でございますので、そういうときにいま申されたような意見政府に対する圧力となり得るはずがなくて、むしろもし政府意見が仮に求められましたならば、その共同開発というものは日本の法律的立場から言えば百点のものではない。いま日本としては一〇〇%の権利主張を韓国との間で論争しているところだと、こういうことを言ったに違いない時期に当たるわけでありますので、そのころの日韓協力委員会の常任委員会記録の中にそういうことがあるからといって、そのことが政府に対する圧力であるとか、政府間の話し合いの裏面で何かがあったというふうにおとりになることは、その時間の経緯から見ましても現実的でないということが一つと、いずれにいたしましても政府はまじめに最初は国際法上の論争として韓国話し合い、そして実際的解決という政治的判断がなされました後はそれに基づく協定を鋭意作成したと、こういうことで御理解いただきたいと思います。
  78. 安武洋子

    安武洋子君 この議事録の中には継続的に研究、両国政府当局とも協議しと、日韓両国政府と協議したとなっているのです。これは要点だけが書いてあるわけなんですよ。だから私は日韓協力委員会からそういう働きかけを受けなかったのかと、協議をした事実はないのかと、こういうことを聞いております。いかがですか。
  79. 中江要介

    政府委員中江要介君) そういうことはなかったと先ほど来申しておるわけでございまして、私自身が一九七一年の法律論争の最初からずっと本件の交渉に直接参加してまいりましたので、はっきりと申し上げられることでございますけれども日韓協力委員会との関係というものは一切なかったと、これは断言しておるわけでございます。
  80. 安武洋子

    安武洋子君 では、私の方で外務省に対しまして、「日韓協力委員会もしくは岸氏、矢次氏に対して、外務省として日韓大陸棚について説明したことがあると思うが、誰がいつ、どこで、誰にどのような説明をしたか。」こういう私ども文書を出しました。そして文書回答を御要求申し上げました。これについては御回答が参りました。一は、「本件協定締結の経緯は二のとおりであって、日韓協力委員会等とは何の関係もない。」二は、「共同開発政府の独自の判断によって決定したものである。」いまの御答弁と御一緒でございます。で、この二のとおりというこの二というのは念のためにもう一度申し上げますけれども、の一は合意に至るまでの事実経過報告昭和四十七年九月五日、六日の両日、ソウルで第六回日韓定期閣僚会議が開かれた。」ということです。それから二は、「九月四日午後ソウルに到着した日本側閣僚は青瓦台に朴大統領表敬訪問し、表敬大平外相朴大統領との間に会談がもたれた。その席上、朴大統領より共同開発構想が提案され、これに対し大平外相より検討してみることとしたい旨答えた。」それから三番は、「韓国側提案をもちかえった大平外相は、中曽根通産相、随行の事務当局と協議を行った。」四は、「韓国側提案に対する日本国回答原則的合意)は、九月八日後宮大使より金外務部長官に対して行われた。」こういうふうになっているわけですね。これでは答弁になっていないではありませんか。  私どもは「日韓協力委員会もしくは岸氏、矢次氏に対して、外務省として日韓大陸棚について説明したことがあると思うが、誰がいつ、どこで、誰にどのような説明をしたか。」ということについては、そういうことをしたことがあるんですか、ないんですか、二のとおりだと。共同開発は云々って、私は念のためにいま読み上げましたけれども、これが私どもが出した文書についての回答にはならないじゃありませんか。斜めの御回答よこされても困るわけです。  この席でお伺いいたします。「日韓協力委員会もしくは岸氏、矢次氏に対して、外務省として日韓大陸棚について説明したことがあると思うが、誰がいつ、どこで、誰にどのような説明をしたか。」こういうことでございます。御答弁いただきます。
  81. 中江要介

    政府委員中江要介君) 先ほど申し上げましたように、私個人の記憶及び外務省で持っております記録によりますと、日本外務省といたしまして、日韓協力委員会日韓大陸だな協定の問題について説明ないし意見を求められて何らかのお話をしたとか、あるいは岸信介氏矢次一夫氏に何か説明に行ったかというようなことは、何ら残っていない、こういうことでございます。
  82. 安武洋子

    安武洋子君 だから中江局長、あなたのおっしゃることは御信頼できないわけです。あなた御自身が五十二年六月四日参議院の外務委員会でちゃんと御答弁なさっていらっしゃいます。これは「御承知のように、日韓協力委員会というのは政府と独立に別個に設けられた機関ではございますけれども日韓協力のために勉強しておられると、そういう機関でありますので、ときどき日韓政府間でどういう問題がどういうふうになっているかということについての説明を要求されたことはございます。そういうときは私どもは現状を率直に御説明してきたと、こういうことでございます。」それだけではありません、まだあります。これは中江要介政府委員の方が答弁なさっていらっしゃいますけれども、「そこで私、先ほどの御説明で申し上げましたように、私どもがたとえば具体的にこの大陸だなの紛争について御説明に参りましたときに、日韓協力委員会の方から共同開発というようなアイデアが示唆されたことは一度もなくて、むしろ私どもの方から、いまこういう法律紛争になっている、その争点はこういうところだと、見通しとしてはこういうことではないだろうかというお話をしたと、こういうのが事実でございます。」ちゃんと日韓協力委員会関係を持って、日韓協力委員会に御説明をなさっておる。いままで日韓協力委員会の方に出向かれて率直に現状を説明してきたと、こういうふうに国会の御答弁をなさっていらっしゃるではありませんか。私ども日韓協力委員会もしくは岸氏云々ですが、日韓大陸だなについて説明したことがあると思うが、だれが、いつ、どこで、だれに、どのような説明をしたか、そういうことはありません、なぜそういう御答弁をなさるんですか。なぜうそをおつきになるんですか。しっかりした御答弁をお願いいたします。
  83. 中江要介

    政府委員中江要介君) 御承知のように、日韓協力委員会というのは、日韓の主として経済、技術協力の問題で、民間で、政府以外の分野でいろいろ御研究になっているところでございますので、私ども日韓協力委員会に実情を説明いたしますときは、日韓協力の現状、日本韓国に行いました経済協力のプロジェクトならプロジェクトの実施状況、あるいは韓国側がそれに対して持っている不満なり希望なり、そういったものについていろいろ御勉強になりました。日韓大陸だなというのは、こういう日韓技術経済協力と関係のない話でございます。日本政府として、先ほど来申しておりますように、そういう具体的な開発以前の国際法上の論争として行われておるわけでございますので、そういったものを韓国と論争しておりますときに、その内容の詳しいことをそういうところに申し上げるということは、これはできないわけで、許されないことですし、いわんや共同開発構想が具体的に政治的に決断になりまして、この協定の交渉に入りますと、協定内容というのは、これは外には出せないと、これは私どもとしては常識になっておりまして、日韓経済協力委員会で、日韓大陸だな協定あるいは大陸だな共同開発というものについて説明を求められましても、私どもとしては、それはまとまるまでは話のできない話である、こういうことでございまして、私が日韓協力委員会から日韓大陸だな協定なり共同開発構想について説明してくれと言われて説明したということはないということを言っているわけでございます。
  84. 安武洋子

    安武洋子君 だんだん御答弁が、少しずつおかしくなっていくわけです。日韓協力委員会とは何の関係もないというふうに斜めの御答弁をこの文書でよこしておられます。そしていまのようにおっしゃる。国会ではこういう答弁をなさっていらっしゃる。  私は、ここで委員長に提起をしたいわけなんですけれども、この問題というのは、いままで再三再四取り上げてこられましたけれども、まだ真相が全然究明されていないわけなんです。そうしてこの問題は、協定とかそれから本案がどういう経過で結ばれたかというのを明らかにする上では、これは欠かすことができない。それどころか、この協定というのが本当に日本の利益を守るのかどうかという根本にもかかわる問題だというふうに思うんです。そして外務省は、いままで私がいろいろと質問をいたしましたけれども、何だか斜めの御答弁ばかりなさる。一方、岸氏を初め日韓協力委員会などのメンバーは、御自身で関与、介入したと、こういうことを言っておられる。まことに御本人たちが言っておられることと政府の御答弁は食い違っているんです。私は重大なことだと思うんです。そして私ども調査では、この問題について日韓協力委員会での討議経過の速記録、これがあることを確認しております。ですから、当委員会として、私は、日韓協力委員会に対して速記録の提供をお願いしていただきたい、このことを委員長にお願いいたします。
  85. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 理事会で検討いたします。  速記とめて。   〔速記中止〕
  86. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 速記起こして。
  87. 安武洋子

    安武洋子君 この問題につきましては、討議をすればするほど、御質問を申し上げれば申し上げるほど、疑惑が深くなるばかりです。介入した御本人たちが御自分の口からちゃんとおっしゃっている。そうして自分の著書にも書かれる。新聞でも堂々と座談会で話しておられる。それなのに、政府は一貫してそういうことはないと。疑惑が深くなるばかりです。  ですから、私も、時間、いま委員長がおっしゃいましたので、疑惑があるというふうなことで、この問題についても留保をさせていただくということで、午前中の質疑は一応終わらせていただきます。午後からやらせていただきます。
  88. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 午前の質疑はこの程度とし、午後一時五分まで休憩いたします。    午後零時六分休憩      —————・—————    午後一時二十六分開会
  89. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚南部共同開発に関する協定実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特別措置法案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  90. 安武洋子

    安武洋子君 私は、午前中質問をさせていただきましたけれども日韓協力委員会の御答弁一つとってみましても、日韓協力委員会に具体的に携わってなさるそういう方々が、御自分の体験として語っておられる、そのことと全く違うことを外務省の方は御答弁なさるとか、あるいは先ほど私が挙げました中に中江アジア局長の御答弁がございましたけれども、主語として日韓大陸だな問題というのがないだけのことで、日韓大陸だな問題について討議をしている中で出てきた御自分の御答弁でございます。それを苦しい言い抜けをなさっていらっしゃる、あるいは中曽根通産大臣決算委員会の御答弁でも、とても日本語ではそうは解釈できないというふうな解釈をなさっていらっしゃるというふうな問題がたくさん出てくるわけです。  で、私午前中に岸氏、矢次氏、こういう日韓協力委員会のメンバーの方が、日韓大陸だなの共同開発問題に介入してきた疑惑についていろいろ取り上げたわけですけれども外務省の御答弁を聞きましても、午前中申し上げたように依然として納得ができないわけです。理由は、いまも申し上げましたように岸氏とか矢次氏とか、こうおっしゃる方は御自分の体験を語っていらっしゃるわけです。したがって一体岸氏とか矢次氏とか、だれにどのように働きかけたのか、また金鍾泌氏に具体的にどういうお話をなさったのかとか、また日韓協力委員会でどういう議論がなされてきたのかとか、あるいはこのレポートで私が先ほど読みましたような議事録、こういうふうなことがどういうふうに話し合われてきたのか、これは要点だけでございます。  こういうふうなことについて私はここでひとつお願いがございますが、岸氏、矢次氏に本委員会に参考人として御出席いただいて疑惑の解明をする必要があると考えます。委員長の方で理事会にひとつお諮りをいただきとうございます。お願いいたします。——私は午前中にいろいろと質疑を続けさせていただきましたが、岸氏とか矢次氏とか日韓協力委員会のメンバーの方々が日韓大陸だなの共同開発問題に介入をなさったという疑惑については依然として晴れないわけです。外務省がいろいろ御答弁くださいましたけれども、食い違う事実というのが出てきているわけです。と申しますのは、岸氏とか矢次氏とか御自分の体験を語っていらっしゃる。あるいは著書にあらわしていらっしゃる。だから、一体岸氏とか、矢次氏が通産省とか外務省のだれにどういう働きかけをなさったのか、あるいは金鍾泌氏に具体的にどういうお話をされたのか。また、日韓協力委員会でどういう論議がなされてきたのか、私は先ほどいろいろとこの日韓協力委員会会議録の件を申し上げました。そういうことで、岸氏とか矢次氏に当委員会に参考人としてお越しをいただいて、疑惑の解明をする必要があると考えるわけなんです。ですから委員長の方で理事会に諮っていただくようにお願いをいたしとうございます。
  91. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 理事会に諮ります。
  92. 安武洋子

    安武洋子君 では、私はいまの現行の鉱業法、それからまた日韓大陸だな開発関連法案、いずれも鉱業権者または特定鉱業権者の資格を、これを「日本国民又は日本国法人」、こういうことに限定してあると思うのですけれども、なぜこういうふうに「日本国民又は日本国法人」というふうに限定したのか、その立法趣旨について御説明をお願いいたします。
  93. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 鉱業法は、一般に地下鉱物資源を採掘するための基本的な法律でございます。地下資源ということは、これ国民全体の利益という立場からいたしまして、日本人及び日本国国籍を有する法人という限定的な形において鉱業権を賦与することといたしておるわけでございます。
  94. 安武洋子

    安武洋子君 おっしゃるとおりに、資源というものは、私たち日本国民、日本国家にとって重要だと、その利用を決定するすべての権利というのが日本国民になければならない、そういう意味でまさに資源主権立場というものを法文上に明らかにしてあると、私はこう解釈いたしますけれども、この解釈でよろしゅうございますか。
  95. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 御指摘のとおりでございまして、鉱業法第十七条に、「日本国民又は日本国法人でなければ、鉱業権者となることができない。但し、条約に別段の定があるときは、この限りでない。」かような規定は御指摘のような趣旨に立脚するものと理解いたしております。
  96. 安武洋子

    安武洋子君 では重ねてお伺いをいたします。「鉱業権」あるいは「特定鉱業権」、こういうのは具体的にどういうことなんですか。その中身について御説明をお願いいたしとうございます。
  97. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) わが国の鉱業法に言う「鉱業権」とは試掘権と採掘権でございます。それから特別措置法で「特定鉱業権」という場合には、探査権と採掘権でございまして、概念的には探査権の方が試掘権よりも広いというふうに認識いたしております。
  98. 安武洋子

    安武洋子君 いわば平たく言いますと、探査する権利、試掘する権利、それから採掘する権利と、この三つに分けられると思うんですが、この三つの「鉱業権」あるいは「特定鉱業権」ですね、これは探査権、試掘権、採掘権、おのおの別個に独立して「鉱業権」あるいは「特定鉱業権」と言えるのかどうか。わかりやすく言いますと、たとえば探査権だけ、これでも「鉱業権」あるいは「特定鉱業権」、こういうふうに言えるのかどうかと、こういうことですが、一体いかがでしょうか。
  99. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 鉱業権の種類として申し上げたわけでございますから、探査権あるいは採掘権もそれぞれ独立して「鉱業権」と言い得るものと解釈いたしております。
  100. 安武洋子

    安武洋子君 もう一度重ねて聞きますけれども、「鉱業権」、「特定鉱業権」というのは一つだけでも「鉱業権」あるいは「特定鉱業権」と、こういうふうに言えるわけですか。そう解釈してもよろしゅうございますか。この法文上、現行鉱業法云々というこの鉱業法の規定ですね、この規定はそういうふうに読むわけですか。
  101. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) おっしゃるとおりでございます。
  102. 安武洋子

    安武洋子君 重ねてお聞きいたしますけれども、外国人、外国法人に対して「鉱業権」あるいは「特定鉱業権」を賦与していない、それはどういう理由なんでしょうか。
  103. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 先ほどもお答えいたしましたように、地下鉱物資源というものは広く国民一般の利益に通ずるものであるという認識でございます。
  104. 安武洋子

    安武洋子君 はい、わかりました。  それでは次に具体的にお伺いいたしますけれども、昨年の十一月の二日に衆議院商工委員会で私どもの工藤議員が指摘をいたしておりますけれども、いわゆるこの共同開発区域に日石開発、これが先願権を持っております。この日石開発がテキサコ、シェブロンと共同開発契約、これを締結していることは御存じでございますか。
  105. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 御指摘のとおりでございます。
  106. 安武洋子

    安武洋子君 いま締結しているとおっしゃいました共同開発の契約というのは通産省に届いておりましょうか。
  107. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 私たち、持っております。
  108. 安武洋子

    安武洋子君 契約の内容につきましては、通産省は御存じでございますか。
  109. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 承知いたしております。
  110. 安武洋子

    安武洋子君 この共同開発契約、これは私は実に重大な内容のものだと思うわけです。ですから、私はその内容を御説明したいと思うんですが、一九七〇年十二月十日、これがこの日に締結されたものは間違いないと思うんですが、そうでございますね。
  111. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 契約の年月日は、昭和四十五年十二月十日と承知いたしております。
  112. 安武洋子

    安武洋子君 契約当事者は日本石油開発とシェブロン・オイル・カンパニー・オブ・ジャパン、テキサコ・ジャパン・インコーポレーション、こういうことになっておりますね。そして対象区域は西九州沖、参加比率は日石開発が五〇%、シェブロン、テキサコ、これがそれぞれ二五%ずつ、この点はまず間違いないかどうか確認させていただきます。
  113. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 御指摘のとおりでございます。
  114. 安武洋子

    安武洋子君 日石開発は本当の契約をしていないと否定をしているというふうに聞いておりますけれども内容については認めていらっしゃると、こういうことでございます。  それで私は、この日石開発、テキサコ、シェブロンのこの契約ですが、ここに契約書を持ってきております。大変膨大な契約書でございますので、ひとつどういうふうに契約書がなっているかということを要約して確認させていただきます。  まず、この契約書には、日石開発とテキサコ、シェブロンの契約ですけれども、第一は、日石開発は、日本の鉱業法のたてまえに対応するための対政府係、手続係になっている、こういうことなんです。コンセッションを取得したり効力を維持、更新、延長、または処分のときに適切な措置をとることになっている。そして、一方のテキサコ、シェブロンは独自の仕事、独自の費用でやることは技術力を生かして探査、採掘を行い、商業的発見が行われるまで事業を続ける、そして共同開発事業に移る、このような両者の仕事の分担になっているはずと思いますけれどもいかがでございましょうか。
  115. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 御指摘の日石とシェブロン、あるいはテキサコとの契約というものは、申すまでもなく、民間における私契約でございます。企業の秘密にかかわる部分については私といたしましてもお答えしかねるわけでございます。先ほど安武委員から御指摘になったような事項につきましては、すでに企業みずからも公表いたしておることゆえ私たちといたしましても確認いたしたわけでございますが、それ以上にわたる部分については差し控えさしていただきたいと思いますが、  ただ、一般的にこういった共同事業契約の通例の形といたしまして、いわゆる操業管理者というものが決まるわけでございますが、日本企業がタッチする場合には必ず日本企業が操業管理者になる。そういった操業管理者といたしましては、共同事業を実施、管理することになっております。その機能といたしましては、政府及び地域社会との折衝、事業計画、予算案の作成、事業所施設設備の設置、帳簿記録の作成、要員の管理、資材の購入契約の締結、費用の支払い、共同計算の管理、輸送の評価、生産予測、訴訟事項、各種事業報告提出等、こういった事業を行うことが通常共同事業契約の中に定められておる事項でございます。そういった一般的な形でしか私としても御答弁できませんので御理解賜りたいと思います。
  116. 安武洋子

    安武洋子君 私は、この契約書の中身が大変重要だと思いますので、一般的な確認しかできない、こういうふうにおっしゃっておりますけれども、私は、さらにこういう内容があるということを指摘申し上げます。大筋がそのとおりかどうかということで確認していただきとうございます。  第二番目といたしましては、テキサコ、シェブロン、これは非常に有利な条件になっております。テキサコ、シェブロンの最初の支出といいますのは一千万ドルを限界とする、あるいは二千三百マイルの物理探査を行った後はいつでも脱退することができる。そして、成功した暁には初期の支払いを取り戻すことができるようになっている。このようにテキサコ、シェブロンがきわめて有利な条件に置かれていると思いますけれども、これはいかがでございましょうか。
  117. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 私たちの理解いたしておりますところでは、共同事業を行うに当たりまして、経費負担は、先ほど御指摘になりました三社の参加比率によって経費を負担し、あわせて生産物もその比率によって分配するというふうに理解いたしております。
  118. 安武洋子

    安武洋子君 私はさらに中身を続けさしていただきます。  ここに現物があるので、私の要約したのは外れてはいないと思うんです。この契約では、日石開発がオペレーターになっておりますけれども、あらゆる共同事業、作業は運営委員会が承認する方針、計画、予算に基づくようになっている。実質的には日石開発は支配をされている。しかも、さらに重要なことは、この契約書、付属書四、これがありますけれども、これでは技術調整グループがつくられて、これがオペレーターである日石開発にかわって予算や計画を作成することになっている。そうして、この技術調整グループはテキサコ、シェブロンのエキスパートから成っている。予算ばかりではなくって、作業計画、技術作業の実施要領、また手続の決定、作業地域における技術作業の監督、生産また引き取りに関する予測及び技術的研究の立案、これを行なう。こういうふうにオペレーターは日石開発ではありますけれども、その上に運営委員会、これがあるわけです。そうしてさらに技術調整グループ、これが設けられている。このグループが一番重要な作業を取り決めることになっている、こういうふうになっていると思いますけれども、これもお答えができませんですか。
  119. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 先ほども申し上げましたように、私契約であるということと、契約両当事者の話し合いによって決まるものだということでございますが、先ほども申し上げましたような、一般、通常の共同事業契約の例について申し上げますと、御指摘のように運営委員会というのを設置するのが一般でございます。この運営委員会では、探鉱あるいは開発地点の決定、予算の決定等、事業遂行の基本的事項を決定することになっております。この構成は、通常、当事者双方が選任した同数の委員から成る、こういうことでございます。しかもその決議は、双方の運営委員の合意をもって行われるということになっております。ただいま御指摘になりました技術調整グループにつきましても、場合によりましてはこういった運営委員会、あるいは操業管理者を補佐する機関として技術委員会なるものが設置されまして、この技術委員会石油等の探鉱開発にかかわる技術的事項を諮問する旨が定められておる、これは一般的な形態でございます。御指摘のような技術調整グループといったものがあるということも事実であろうと思います。
  120. 安武洋子

    安武洋子君 この契約は私は大変驚くべき内容だと思うんです。日石開発と言いますのは、鉱業法の手続など書類を提出する政府との折衝係、こういう立場です。日本国法人という肩書きを貸すだけだというふうになっているわけです。また、共同開発事業の実際は当然メジャーであるテキサコ、シェブロン、ここが行う。契約書でも技術調整グループが実質的にはすべてを取り仕切ると、こういうふうになっているわけです。さらにテキサコ、シェブロンは一定の探査をした後はこの契約から脱退する権利を有すると、こうなっているんです。  それに対して日石開発はその権利を制約されているんです。日石開発が鉱区を放棄したい、売却したいと、こう言っても権利の保全、こういう名目でテキサコ、シェブロンの権利、特権、これに悪影響を及ぼすことなく実現される方法を決定し、実施した後でなければ日石開発は鉱区権の放棄、契約からの脱退を行わない。こういうことになっているんです。このように、日石開発というのは日本の資本、日本の法人、こういうことで共同開発事業契約を結んでいるだけであって、実質的には全くテキサコ、シェブロンの使い走り、これでしかないということがこの契約書からはっきりしてくるわけなんです。テキサコ、シェブロンの監督下でがんじがらめに日石開発がなってしまっている。日石開発はまさにこの鉱業権などのコンセッションを取得するためのメジャーのかいらい企業である。実質的に鉱業権者とはとうてい言えない。私は、この契約書からそのことが明白になっていると思うんです。特定鉱業権の立法趣旨、こういうのは先ほどおっしゃいました。こういう趣旨から見ても、このような共同開発契約が全く問題がない。通産大臣はそのようにお考えでございましょうか。
  121. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) ただいま契約の破棄あるいは譲渡についてお触れになりましたが、これも先ほどの通常一般の例で申し上げますと、契約の両当事者は事前の通告により、随時共同事業契約を破棄することができるが、相手側の同意がなければその共同事業上の地位を他者に譲渡することができない旨を定めるのが通例である。これは一般の形態でございます。  ただ、ここで申し上げたいのは、石油の探鉱開発というのは、私から申し上げるまでもございませんが、非常に多額の資金を要する、またリスキーな事業でございます。そういったところから石油の探査、探鉱あるいは開発に当たりましては複数の事業が共同してこの開発に当たるというのは現在世界の一般の通例でございます。それはできるだけ資金的あるいは技術的にベストの組み合わせによって開発を円滑に行おうという趣旨から出ておるものと思うわけでございますが、ただいま日本の例をお挙げになったわけでございますが、たとえば北海の例について申し上げますと、これは英国あるいはノルウェーが参加いたしておりますが、英国の場合にもBPが当然これにも参加いたしておりますが、そのオペレーターはモービル、シェブロン、ユノコ、ユニオン、アムコといったふうにアメリカの企業がそのオペレーターになっているといったようなケースもございます。ノルウェーの場合にはフィリップスあるいはモービルがオペレーターになっている。かようなことでございまして、決してこれは日石の力がどうのこうのという問題ではございませんで、世界的に石油の探査、開発に従事する事業の一つの一般的な傾向である、あるいは形であるということでございます。
  122. 安武洋子

    安武洋子君 共同事業、結構です。共同事業をやるための契約、結構です。  しかし私が指摘をしましたのは、日石開発が、この契約書から見ると、鉱業権などのコンセッションを取得するためのメジャーのかいらい企業になってしまっているではないか、平等に結ばれたこれは契約ではないじゃないかということを三点にわたって要約してお伝えいたしました。ですから、先ほど鉱業権などの、鉱業権の立法趣旨、これを御説明でございました。日本国民にとっては資源というものは大変なもの、大切なものである。その立法趣旨に照らして具体的にはメジャーのかいらいになってしまっている。こういう契約を好ましいものとお考えかどうかということを私はお尋ねいたしております。いま一度御答弁をお願いいたします。
  123. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 共同事業契約に当たりましての鉱業権は、必ず日本企業が行使するということになっております。ただその場合に、かいらいであるかどうかという問題でございますが、私たちの理解では、先ほども申し上げましたように、多額の資金を要し、かつリスキーな事業でございますので、できるだけ資金なり技術を活用する立場におきまして共同契約が結ばれておるというふうに考えておるわけでございまして、決して日本の地下資源に対する主権が侵害されているとか、あるいは日石が外国企業のかいらいになっておるといったようには考えておりません。
  124. 安武洋子

    安武洋子君 そういうふうにお答えになりましても、この契約書を見る限り、なるほど鉱業権は、それは日本企業でございます。しかし、先ほども申し上げたように、日石開発というのは、日本人でなければ、日本国の法人でなければ鉱業権が取得できない。そういうために使い走り、対政府の手続の使い走り、こういう関係になっていることが果たして好ましいのかどうかと、こういうことでございます。  で、エネルギー庁長官は、私どもの工藤議員の質問に対しまして以前、開発された石油日本に持ち込まれるかどうか、こういうことが最も関心の強いところだ。こういう御答弁をなさっていらっしゃいますけれども、いまもそのお立場変わりございませんか。
  125. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 昨年だったか、工藤委員に対してさような答弁をしたことを私自身も記憶いたしております。しかし、その生産物がすべて日本国内に持ち込まれる、あるいは日本の国土で消費されるということに重大な関心を持っておるとお答えしたその背景には、やはり日本の地下資源日本みずからが活用するといった、地下資源に対する主権的な管理というものがその根底にあるということでございます。いまだに私もその考えは変わっておりません。
  126. 安武洋子

    安武洋子君 それではお伺いいたしますけれども、いまなるほど日本の地下資源日本が使用するというふうなことをお答えでございました。そして、石油日本に持ち込まれるかどうかという問題は大切な問題だ。そういうことでございますが、石油日本に持ち込まれるかどうかという問題は、これは鉱業権に属する問題でしょうか。
  127. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) それぞれの契約当事者は、その経費の負担区分において生産物を取得するという関係に立っておるわけでございますが、これを国内で消費するかどうかという点につきましては、まず一つ考えられますのは、日本自体が巨大な、特に石油の消費市場であるということからいたしまして、わざわざよその国へその周辺大陸だなで開発され、取得された石油を持っていくことはまず考えられないわけでございます。  それから、第二段の問題といたしましては、共同事業契約の中で経費負担に応じて生産物の分配をやるにいたしましても、それは日本国内での販売を認めるということであって、日本国内で消費するのだといったようなことを契約ベースで約束させると申しますか、そういった第二段の措置があるわけでございます。  さらに、さような場合においても、なお他に持ち出すといったような場合には、貿易管理令によりまして、強制的に国外に持ち出さないように、日本国内で消費するようにわれわれとしても措置し得るものと考えております。  さような点から、直ちに鉱業権に基づいて日本国内で消費するということにはならないと思います。他の鉱物資源でも、日本の企業が鉱業権に基づいて生産、取得したものを海外に輸出するということもあり得るわけでございますから、そういった意味合いにおきましては必ずしも鉱業権に付随したものであるということにはならないかと思います。
  128. 安武洋子

    安武洋子君 私は、鉱業権に属する問題かどうかということを端的にお伺いいたしましたのに、そのお答えは一番ラストにぽんときただけで、お伺いしたことをお答えくださいませ。  そこで、私はもう一度確認いたしますけれども、最初に私は何度も確認をさせていただきました。鉱業権というのは探査権、試掘権、採掘権、これを指している。そして、探査権というのはいわば石油があるかどうかを探すことである。試掘権、これは探査をして、そこに石油がありそうだと、こう判断したら掘ってみる権利だと。そして、採掘権というのは石油があることが確実になったら、その石油を取得する権利だと。こういうことになりますと、石油日本に持ち込むか持ち込まないかということは、これは鉱業権のいかなる権利にも属さないわけです。いまの御答弁のとおりです。全く別の概念になりますね。何だか混同したように一括して御答弁くださいましたが、これは全く別の概念ですね。
  129. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) いわゆる鉱業権と申しますのは、与えられた鉱区内において登録された鉱物につきましてそれを生産し、取得する権利でございまして、取得した後どのようにそれを処置するかということは必ずしも鉱業権に直に結びついてくる問題ではございません。
  130. 安武洋子

    安武洋子君 そういう御答弁を最初からいただければ、混線しなくていいわけなんです。  鉱業権が資源に対する主権という立場からどんなに重要なものか、こういうのは、たとえば明治三十九年十二月十九日、鉱業法九の八号、これに書かれておりますけれども日本国人にあらざる者及び外国法人は単独に鉱業権者たることを得ないのはもちろんであるが、鉱業権享有能力者と共同して共同鉱業権者となることもできない、こういうふうに規定していたというふうなことからも明らかなように、日石開発、テキサコ、シェブロンの、この私が先ほど読み上げました開発契約というものが実質的には鉱業法の精神を踏みにじる——脱法とは言いません、違法じゃありませんから。しかし、脱法行為的なものである、こういうことは明らかではありませんか。私は通産大臣の御見解を伺います。
  131. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 大臣がお答えする前に申し上げます。  本件はあくまでただいま御指摘の共同鉱業権者という立場ではなくて、共同事業契約の当事者ということで外国企業が参加しておるわけでございます。ということが一つ。  それから、地下資源と申しましても、これは採掘して地上に上せてこれを消費の用に供しない限り、これは価値がないわけでございます。したがいまして、地下資源をできるだけ効率的に経済的に開発するということが本来の趣旨からも出てくるわけでございまして、特に石油につきましては、先ほど来何回も申し上げましたように、非常にリスキーな事業である。そのためには現在利用し得る技術の最高のものを活用していこうといったようなところから共同事業契約が締結されておるわけでございます。そういった意味合いにおきまして、私といたしましては、この共同事業契約自体はおかしいというふうには考えておりません。
  132. 安武洋子

    安武洋子君 私は契約の結び方がおかしいなんて一言も言っておりません。契約書の中身の問題を具体的に指摘をして、これでは立法趣旨がゆがめられてしまっているというふうなことで見解をお伺いしているわけです。ですから、実質的に日石開発というのがテキサコ、シェブロンの、このかいらい企業になってしまっている。これでは鉱業法の精神を踏みにじる脱法的な行為ではないか、こういう見解を通産大臣にお伺いいたしております。通産大臣の御答弁をいただきます。
  133. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 石油開発事業というのは非常にむずかしい事業でございまして、そういうことで世界的に見ましても、ほとんどいずれもがメジャーとの合同開発事業になっております。そういう意味におきまして、日本といたしましてもメジャーとの共同開発が多いわけでありますが、先ほど長官が答弁をいたしましたように、仮にいよいよ石油の採掘に成功いたしまして石油が出始めた場合に、もし日本以外の地域にこれが持っていかれるようなことがあれば、これはもう貿易管理令等を発動いたしましてそういうことのないように、日本の市場で消費できるように、これはもうきちんとするつもりでございます。でありますから、メジャーとの契約は、これはもう普通のことでございまして、別に私は目新しいことではないと思っております。
  134. 安武洋子

    安武洋子君 通産大臣は、先ほど私が契約書の中身をいろいろ申し上げましたとき、お聞きくださっていなかったんでしょうか。こういうことが実際に契約書の中に書いてあっても、なお私が申し上げている日石開発が実際上はテキサコ、シェブロン、こういうところのかいらい企業にされてしまっているんだという実情をお認めになろうとなさらないわけです。そして、貿易管理令だとかあるいはいろんなことを、日本で使うんだとかと、こういうふうにおっしゃる。確かに日本石油を使うというふうになるかもしれません。しかし、値段が折り合わない、こう一言言われればどうしようもない。貿易管理令、いまメジャーから、わずか一%ほどの石油、それをそういうことでとめてしまったら、メジャーから大多数のいまの石油日本が輸入できない。そういうことになったらどうなるんですか。そういう、いまのメジャーに対して強力な発言ができるというふうな日本立場にないと思います。  私はそれだけではなくて、日石開発というのが事実上メジャーのダミー的存在である。これは契約だけではないんです。鉱区出願した経過を見てもこれは明らかなんです。  たとえば、石油業界誌がありますけれども、これは日石会長の上村英輔氏、この方がちゃんとこの業界誌の中で言っておられるんです。どう言っておられるか。「東シナ海の場合は、最初、カルテックスとの話はどういうことだったんですか。」こういう質問に対して、「むこうから持ってきた。むこうから、こういうところがいいと思う、井戸掘りたいが、日石もいっしょにやってくれないかと。ということは、あそこで鉱区がとれるのは日本人でなきゃとれませんから。あの当時は日本領海と思っているんですから。」こういうふうな経過を通産省は御存じですか。
  135. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) ただいま御指摘のありました上村会長の発言については、私たちは承知いたしておりません。通産省としては、企業から出願を受け付けただけであって、その間どのような裏の事情があったかといったようなことにつきましては、関知しておらないわけでございます。
  136. 安武洋子

    安武洋子君 会長がはっきり業界誌でこのように明言されておられる。こういうことを好ましいとお思いでございましょうか。大臣、いかがでございますか。
  137. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) まあ契約締結に至る過程にはいろいろなことがあったと思います。しかし、いろいろな過程を経て契約というものが成立したわけでございますから、私どもはその内容につきまして一々調べる、こういうことはいたしておりません。
  138. 安武洋子

    安武洋子君 御存じないのはわかりました。しかし、いま私は日石の会長が御自分で、日石も一緒にやってくれ、あそこは鉱区が取れるのは日本人でなきゃ取れませんからと、こういうことがカルテックスから持ち込まれたということを言ってなさることについて、好ましいことだとお思いでしょうかどうでしょうかということで御答弁を求めております。
  139. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) せっかくの御指摘でございますが、その間の事情なりあるいは事実関係については私たち承知いたしておりませんので、それに対して何らコメントをする立場にはないわけでございます。  ただ、何度も申し上げておりますように、鉱業権者はあくまでも日本企業。ただ、いかに有効に開発するかということについてメジャー等の技術を活用していくということは、先ほど北海の例で挙げましたように、別に意とするには当たらない。どのように与えられた地下資源を有効に開発していくか、というところに一つの大きな判断の根拠があるというふうに私は思うわけでございます。
  140. 安武洋子

    安武洋子君 それだけではないんです。まだあります。なぜカルテックスが目をつけたかということです。これも上村会長が明らかにされております。それはアメリカ海軍の調査、それからカルテックスの技師が秘密裏に調査をしたからだ、こういうことを言われております。これも業界誌ですが、「あれはたしかアメリカの海軍も調査してたり……その調査がいちばん行き届いていたんでしたかね。」こういう問いに対して「日本石油がやろうっていったって、日本石油には技術ないですもの。やっぱりアメリカに頼んでやらなくちゃできないんですから。だからどうしても三国共同というような……日本、中国ということになるけど、日本の内部にはアメリカがはいっているというような形態で掘っていかざるを得ないのじゃないかと思いますがね。」こういうことをちゃんとおっしゃっているのです。こういうことが事実としましたら、まさにわが国の主権が侵されている。主権を侵して調査をした、こういう事実があるということになるんですけれども、こういう事実を通産省は御存じでしたか。   〔委員長退席理事福岡日出麿君着席〕
  141. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) ただいまお話しの米国の海軍あるいはカルテックスの技師がこの地域について調査をしたということについては、私たちは関知いたしておりません。
  142. 安武洋子

    安武洋子君 関知をしておりませんということで済まない問題ではないでしょうか。日本主権的権利を侵して調査をしたということがこういうふうに語られているとしたら、私は日石に対して事実を調査なさるべきだと、こういうふうに思いますけれども、事実調査はなさっていただけますか。
  143. 古田徳昌

    政府委員(古田徳昌君) 石油の探鉱調査をいたします場合に、最初に地表調査あるいは地表に出ております岩石の調査、あるいは一部物理探査というようなことをやるわけでございます。従来の鉱業法におきましては、そういうふうな物理探査につきましては鉱業法の鉱業権の対象といたしておりませんので、自由にできるということでございます。  それから、今度のこの協定に基づきます特別措置法では、特定鉱業権の対象が、中身が探査権と採掘権となっておりまして、この探査権につきましては先ほど長官のお答えにもありましたように、従来の鉱業法に基づきます試掘権より若干範囲が広いわけでございまして、そういう関係から、この共同開発のための協定交渉が韓国との間で行われ始めましてからは、ただいま申し上げましたような地表調査とか、あるいは物理探査といったものは行われていないわけでございます。
  144. 安武洋子

    安武洋子君 一方では関知をしません、こういうふうに御答弁になりながら、それ以後はそういうことは行われておりませんと断定なさる。大変矛盾をいたしております。なぜ日石開発に対して調査をするということをおやりにならないのですか。こういう経過があるからこそ、私どもは東シナ海大陸だなに日石開発が先願権を持っていると、まさにメジャーに主導されて鉱区先願権を取った、こう言えるのではないかと、このことを問題にしているのです。事実がわからないならすぐに調査をしてみようというのがこれがあたりまえではありませんか。少なくとも活字になったこういう証拠資料があるわけです。ですから、私はこういうことをぜひ調査をしていただきたい。このことを御要求いたしますが、いかがでございますか。
  145. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 先ほど石油部長からもお答えしたわけでございますが、たとえばエカフェの調査というものが四十三年の十月から十一月にかけて行われております。あるいは国の基礎調査共同開発地域そのものは入っておりませんが、四十七年から五十年度まで実施しておる。あるいはこの共同開発地域につきましても日石あるいは西日本石油開発、これが四十六年あるいは四十四年から四十八年にかけて調査をいたしております。かように鉱業法あるいは協定に基づく特別措置法といったような体系になる以前は法律上自由にできる行為でございます。そういったところからいま改めて日石に対して調査をする必要はないというふうに私は考えております。
  146. 安武洋子

    安武洋子君 この中には「陸上をこそこそ調査していましたよ、技師がきて。長崎県やそのへんを。帝石の技師と会ったなんて笑っていましたよ、山の中でね。」こういう事実がやはり報道されております。探査権というのは鉱業権に属すると、こういうふうにおっしゃったのではございませんか。
  147. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 探査権はこの特別措置法に基づいて初めて設定される権利でございまして、現在この審議をいただいている段階では探査権という概念はどこにでも行使されておらないということは当然のことではなかろうかと思います。
  148. 安武洋子

    安武洋子君 立法趣旨をお述べになった。外国の海軍あるいはメジャーが来て日本の国でこそこそと山の中で調べたり、長崎県あたりでこういうことをしてもよい、こうおっしゃるんですか、その点をはっきりしていただきます。
  149. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 特別措置法における探査権あるいは現行鉱業法に試掘権と呼びますのは、一定の手続を経てそれだけの権利設定されたものでございますが、権利設定をされないでそういった調査をするということは、現行鉱業法上自由でございます。そういった立場でやっておるものをとがめ立てするわけにはまいらない、こういうことでございます。
  150. 安武洋子

    安武洋子君 では外国企業が来て日本じゅうどこでもこそこそとこういうふうにやってもよいというふうにおっしゃるわけですね。
  151. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) いい悪いの問題ではなくて、鉱業法上の試掘権ではない、こういうことでございます。
  152. 安武洋子

    安武洋子君 私は立法趣旨に照らしてどうなんだと、いま立法趣旨、一番最初に確認いたしましたのはそういうことでございます。そして明治の古いこの鉱業権の一番最初の条文を取り出したのも、私は資源主権というものが日本主権の中でも大切なものだと、こういうことで確認させていただいたはずなんです。それがこういう形で先願権を取っていく、メジャー主導型で先願権を取っていく。そういうことがいま申し上げたようなことが重ねられてきてこういうふうなことになってしまった。そういうことは一体好ましいのかと、立法精神から見てどうなんだと、なぜ調査をしてそのことを明確にしないんだと、こういうことを申し上げているんです。重ねて御答弁いただきます。
  153. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) いわゆる地下資源に対する主権という観点から、御指摘の点心情的にわからないわけでもないわけございますが、ここでは別に権利の設定という問題じゃないわけでございます。たとえば外国の学者が日本の山にやって来てその岩石を学問的興味を持った場合に、それに対してどういう対応するか、別に権利を設定しているわけでもございませんので、この御指摘の点につきましては、いわゆる鉱業法というものは鉱業権の設定ということをスタートとして始まっていくわけでございますので、そういった一般的な権利を伴わない、権利で裏づけされていない行動というものを一々とがめ立てするわけには私はまいらない、かように思うわけでございます。
  154. 安武洋子

    安武洋子君 一般的な問題にすりかえていただいては困ります。私は一番最初に東シナ海の場合は最初カルテックスとの話はどういうことだったんですかという話から入っていっております。一連の問題です。ですから、一般的な問題でなく、東シナ海の場合に、ここに日石開発が先願権をとっている、このことを問題にしているわけです。その一連の中で出てきておりますので、そういう一般的な問題で答えていただいては困ると思います。この件に関してお答えをいただきます。
  155. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 先願権と申しますのは、いわゆる権利設定の申請という段階でございまして、いわゆる試掘権だとか特別措置法による探査権だとか、ましてや採掘権の設定を見たということでございませんで、単純に出頭、申請という段階でございまして、法律的にそれを保護するという意味合いにおきましては直ちにそれに対して他の人を排除するというところまでの効果は伴ってこないわけでございます。
  156. 安武洋子

    安武洋子君 あくまでもそういうおっしゃり方で、立法趣旨がゆがめられてしまっているということを御否定でございます。  それじゃ私、重ねてお伺いいたします。共同開発区域、ここに先願権を持っている三社の各技術者数、これはどうなっているかお答えいただきます。
  157. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) この地域に先願権を持っております三社のうち、帝国石油の技術者の数は百三十七人、西日本石油開発は十七人、日本石油開発は三人でございます。
  158. 安武洋子

    安武洋子君 三人の技術者で石油開発というのはできるんですか。
  159. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) これはあくまで先願権を有する者でございまして、いわゆる特別措置法に基づいて特別鉱業権者になった者ではございません。この特別措置法に基づきまして、特別鉱業権の設定を申請してきた場合には、経理的基礎のほかに技術的能力があるかどうかということを判断するわけでございます。その場合、仮に日本石油開発がそういった申請に及んだ場合、果たして日石みずからが持っている三人の技術者のみならず、あるいはいわゆる共同事業契約によりまして他の企業の技術陣を動員し得るのかどうか、あるいは途中でそういった動員した人が撤退した場合にも事業遂行が可能であるかどうか、さような観点に立って検討するわけでございまして、いまの段階におきまして日本石油開発が技術的能力があるかどうかということを判断する段階でもなければ、また判断し得ないということでございます。
  160. 安武洋子

    安武洋子君 私はそんなことをお伺いしたんではございません。三人の技術者で石油開発はできるものなんでしょうか、どうでしょうかということをお伺いいたしました。
  161. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) これもやはり具体的ケースに当たってみませんと何とも判断できかねるわけでございます。たとえば、すでに十分に探査活動が行われている場合と、しからざる場合もあろうかと思います。したがって、抽象的に三人でできるかできないかということの判断は困難だと思います。しかし、一般的に申し上げて、技術陣が三人程度、それだけでは非常に事業遂行は困難ではなかろうか、これは一般的な判断でございます。
  162. 安武洋子

    安武洋子君 日石開発が三人だとお答えになった。三人の技術者で石油開発が可能かどうかということをお伺いいたしました。これは素人の私にでもわかります。あの日石開発が先願権を持っているところが三人で開発できると、そうは思えません。そこで、日石開発が技術者をどのようにして獲得しようとしているのかというふうなことを通産省は御存じでございましょうか。
  163. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 日石開発からまだ具体的な話が出ておるわけじゃございませんので、この会社に限ってお話しすることは適当でないかと思いますが、一応開発に当たる場合には、国内の各社からの技術陣の協力を期待するとか、あるいは外国企業の技術陣を活用するとか、あるいはその設備を活用するとかいったようなことが通例行われておるケースであるというふうに考えております。
  164. 安武洋子

    安武洋子君 具体的に言いますと、いまの御答弁を。テキサコ、シェブロンの技術者に全面的に依存しようと、こういうふうに日石開発考えているんではないんですか。
  165. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 日石がどう考えておるかということは私はわからないわけでございますが、特定鉱業権設定の申請が出てきた段階において、技術的能力があるかどうか、その判断といたしましては、当該企業がどの程度の技術陣を持っておるか、あるいは国内からあるいは海外からどの程度の技術スタッフなりあるいは設備を動員し得るかといったようなことを判断することになろうかと思います。
  166. 安武洋子

    安武洋子君 はっきりしているんですよ。共同開発契約、この中で技術調整グループ、これがあると先ほども申し上げましたけれども、テキサコ、シェブロンを中心にこの技術調整グループというのが構成されることになっているんです。それだけではないんです。日石の上村会長御自身が、日本石油には技術がないんですもの、やっぱりアメリカに頼んでやらなくちゃ、こう明言されている。結論はおのずと明白ではないんですか。
  167. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 日本石油開発はあくまで現行鉱業法に基づく先願権者でございまして、これが特定鉱業権者になるかならないかという問題はまだいまの段階でとやかく申し上げるべき段階ではないかと思います。  先ほどお答えいたしましたように、本措置法が成立いたしまして、先願権者は告示等の後一カ月以内に申請することになっておりますから、その段階で申請してくるかどうか。申請してきた場合に、その経理的基礎なり技術的能力というものをいかに判断し得るかということに一にかかっておるわけでございまして、いまの段階であらかじめどうのこうのということを申し上げるべきではないと、かように考えております。
  168. 安武洋子

    安武洋子君 いまの御答弁の中にありましたように、通産省はまだ日石開発を特定鉱業権者には指定なさっていらっしゃいませんね。確認しておきます。
  169. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 何度も申し上げますが、この法律が通らないと特定鉱業権という概念自体が現実のものになってこないわけでございます。したがって、さような権利を与えているはずはございません。
  170. 安武洋子

    安武洋子君 では、この日石開発が現在アメリカまで行ってテキサコとシェブロンとの共同開発契約のこの改定、これを交渉している。まだおっしゃるとおりに現在この法案は審議中です。特定鉱業権者にもなっておりません。しかし着々と準備中。改定交渉をアメリカまで行って、普通ならこちらが先願権を持っている。アメリカから来て当然なのに、アメリカまでわざわざ行ってこういう改定交渉をしていると、こういうことを通産省は御存じですか。
  171. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 日石開発がテキサコ、シェブロンとの間に共同事業契約を現在持っておるということは先ほど来お答えいたしておりますように承知いたしておるわけでございます。それについて現在改定交渉を進めておるかどうかということにつきましては私たち全く関知いたしておりません。
  172. 安武洋子

    安武洋子君 これは日石の瀧口社長が、創立九十周年の記念パーティー、ここではっきりと改定交渉中であると明言しておられるんですよ。しかもそこで、野党のわけのわからぬ反対で批准がおくれている、まあこういうけしからぬ発言も御一緒になさっていらっしゃる。大体、日石開発が特定鉱業権者にもなっていない、なるかならないかもわからない、そういう状態であるにもかかわらずメジャーの意のままでこういう改定交渉をもう始めている、しかも国会に対して中傷をしている、こういう不当な非難まで行っている。こういうことについて通産省にお聞きいたしますけれども、こういう日石開発の行為に対し、会長の発言に対し厳重な注意をすべきではないですか、いかがでしょうか。
  173. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 私自身、記念パーティーがあったかどうか、あるいはその場で社長がどのような話をしたかということは全く知りません。また、私としても確認する立場にございません。コメントを差し控えさしていただきたいと思います。
  174. 安武洋子

    安武洋子君 なぜ調査をなさらないんですか。まだ特定鉱業権者にもなっていない、なれるはずがありません。なれるかどうかもわからない。こういう段階なのにアメリカまで行ってテキサコ、シェブロンと共同開発契約の改定交渉をしているということを会長御自身がこの九十周年記念パーティー、ここではっきりとおっしゃっているということを私が申し上げております。事実を御確認いただきとうございます。そしてそのときに、野党がわけのわからぬ反対で批准がおくれている、こういうことも言われているわけです。こういう事実すら確認をなさろうとなさらないんですか。これは現実に聞いた者から私どもはちゃんと聞いているわけです。
  175. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) いま、御指摘のようなことがあったかなかったかということを私も判断し得ないわけでございますが、私たちの立場としては鉱業法あるいはこの特別措置法に基づくところの申請があった段階で判断するというのが行政の立場でございますので、私のいまの立場からそういったものについて調査するということの意味が理解できないわけでございます。
  176. 安武洋子

    安武洋子君 大臣にお伺いいたします。  いま討議をお聞きだと思います。まだ国会法案は審議中でございます。それなのにこういう日石の瀧口社長が——創立九十周年の記念パーティー、場所までちゃんと私は申し上げております。ここではっきりと改定交渉中である、アメリカまで行って改定交渉をしているんだと、こういうことを言っていらっしゃる。そのときにつけ加えて、野党のわけのわからぬ反対で批准がおくれている、このことも言っておられるということは私どもは確認をしているわけなんです。こういう事実をやはり確かめられて、日石開発に対してこういう軽率な行為は厳重に注意をなさるべきではないんですか、御見解をお伺いいたします。
  177. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) せっかくのお話ですけれども、先ほど来長官との質疑応答を聞いておりましたが、やはりどうも長官の言っていることが大体私は常識じゃないかと思いますが、いかがなものでございましょうか。
  178. 安武洋子

    安武洋子君 大臣から私に質問をされても私は困りますので、私は常識だと思わないんです。やっぱりまだ国会法案が審議中なのに、もう自分がまるで鉱業権者になったようなつもりで改定交渉にアメリカまで出かけているんです。社長がそのことを明言している、どうなんでしょうか、この点。いまおっしゃるように、大臣が本当に常識的にお考えになるなら、そんな軽率な行為はすべきじゃない、そうおっしゃるのがあたりまえじゃないですか。これが私は常識だと思います。——私の答弁です。大臣はいかがでしょう、御答弁いただきます。
  179. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 大臣がお答えする前に、先ほどから申し上げておりますように、日石が契約改定のために渡米しておるかどうかということは私は承知いたしません。その事実がどうであるかは別といたしまして、私契約である以上、その締結も自由であるならば、その改定も自由であるというふうに私は考えるわけでございます。また、どのような意図のもとに仮に改定交渉をいたしておるかということにつきましても、これは企業みずからの責任においてやっておることでございまして、そのこと自体が直ちに特定鉱業権に結びつく問題ではございませんので、やはり私たちとして直ちにそれをもってとがめ立てをするということにはならないんではないかというのが私の判断でございます。
  180. 安武洋子

    安武洋子君 事実も確かめないで、なぜそうおっしゃるのですか。こちらの方は事実を確かめて申し上げている。特定鉱業権者になる、改定のためにアメリカまで交渉に行っているんだとこう言っているのに、事実を私どもは知らないとこうおっしゃる。だから、私は大臣に政治判断をお伺いしているんです。こういう軽率な行為をとっている企業に対して、私は注意ぐらいなさるのがあたりまえじゃなかろうかと、こういうことを申し上げておりますが、いかがなんでしょうか。
  181. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) これは仮にそういう事態があったにいたしましても、ある仕事のためにその企業がいろんな準備をするということは、これは一概にけしからぬではないかというのは私は行き過ぎじゃないかと考えます。
  182. 安武洋子

    安武洋子君 特定鉱業権者になるということが、じゃ、決まっているんですか。
  183. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 決して決まっておるわけではありません。申請が出ておりませんし、またその前提としての法律も成立しておりませんから、そういうことは決して決まっておるわけではございませんが、そのときの準備のためにいろいろ備えるというふうなことを仮にやっておったとしても、それはけしからぬと、法律ができてからやれということまで言うのはいかがなものでございましょうか。
  184. 安武洋子

    安武洋子君 それでは反論申し上げます。  先ほどから私が申し上げてきたことは、鉱区権の出願から探査、試掘それから掘削、これまでまさにメジャーそのものなんです。私、契約書をそのために出しました。御自分のところの技術者は三名です。技術者も持たないこういう日石開発に、私は特定鉱業権者としての資格を与えることというのは考えられない。それがこういうテキサコ、シェブロンと、法律が審議中なのにかかわらず改定交渉に入っている。私はこういう日石開発には特定鉱業権者としての資格を与えるべきでない、こう考えますがいかがお考えでございますか、大臣に御答弁いただきます。
  185. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 私たちは鉱業法あるいは特別措置法に決める要件に準拠いたしまして鉱業権を設定するかどうかを判断し得る、さような立場でございます。鉱業法では御承知のように先願主義をとっておるわけでございますが、本特別措置法におきましては、いわゆる事業を遂行するに足る経理的能力、技術的能力があるかないかを判断するということでございまして、事前に自己の責任において契約の改定交渉やっておるからといって、それは拒否理由にはならないということでございます。
  186. 安武洋子

    安武洋子君 政府はエネルギー資源が大切だとこうおっしゃる。そして、国家の権益は守らなければならない、こうおっしゃる。しかし、実際の過程を見てくると、そうしますと先ほど私が言いましたように、鉱業権をとる、この出願、探査する、試掘する、掘削する。実際は、この日石開発というのは看板を貸しているだけで実態はメジャーではありませんか。政府がおっしゃっているけれども、国家の権益を売り渡す、こういうことをなさろうとしているからこそ私はこのことを問題にしているんです。一貫して、こういう協定が結ばれてきた黒い疑惑がある。そしてこういうメジャーが権益を得ようとしている。ここにこの協定締結の問題があるということを指摘しているんです。私はこういう協定は批准すべきでない。また日石開発に特定鉱業権者、こういう資格を与えるべきでない、このことを強調いたします。大臣の御答弁をいただきます。
  187. 河本敏夫

    国務大臣(河本敏夫君) 特定鉱業権者としての資格を与えるかどうかは、先ほど来長官が繰り返し答弁をしておりますように、   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕 いま御審議をしていただいております法律に幾つかの要件がございまして、経理的な条件とか、あるいは技術的な条件、こういうことを十分調査をいたしまして総合的に最終判断をすると、こういうことになっておりますので、申請が出た段階でどういう内容であるかを十分調べまして、その上で判断をしたいと、こう思います。
  188. 安武洋子

    安武洋子君 いま申請が出た段階で、どういうふうな内容かということを調べるとおっしゃいました。私がいま申し上げたような内容も含めてちゃんとお調べいただく、そして私が主張いたしましたように日石開発、こういうメジャーのかいらい企業に特定鉱業権者としての資格を与えないようにしていただきたい、このことを申し添えます。  さらに質問を続けさしていただきます。  第七期の国際海洋法会議が開かれたと思うんですが、この七期の国際海洋法会議の動向です。それから、特に大陸だなの定義に関する問題、これは第六期と相違しておりましょうか。こういう動向をお聞かせいただきとうございます。
  189. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) お答え申し上げます。  第七会期は三月二十八日から五月十九日まで続けられまして、これは第六会期の続きでございますから、大陸だなに関しましてはあくまでも議論は従来の延長でございます。したがってこの内容は、自然の延長ということで大陸だなの外縁を二百海里以遠にとると主張する国と、二百海里が原則であるという対立がございましたが、やはり自然の延長の方が有力でございまして、今回も最終的な結論には達しませんでしたけれども、やはり二百海里以遠の自然の延長で、その場合に自然の延長の外縁をどう決めるかという点に議論が集中いたしまして、その場合の議論は二つに分かれまして、二百海里以遠の自然の延長をとらえる場合に、地形的に斜面の基部というのがございまして、そこから堆積層の厚さで決める、もしくは補助的に六十海里の距離基準を使うという案と、さらに二百海里以遠に百海里を加えるという新しい案が出まして、どちらも多数を制することができなかったということでございまして、最後の議長報告にもこの点についてはコンセンサスがなかったということでさらに来たる夏会期に続けて交渉が行われます。夏会期は実は第七会期の継続でございまして、この八月の二十一日から九月十五日まで続けられるということになりました。  それから境界線の画定に関しましても、やはり従来どおり第六会期の延長でございまして、公平の原則というのと中間線の原則というのが対立いたしまして、今会期は中間線の原則に関しましては二十カ国ぐらいの国が中間線を原則とするという提案を出しまして一これはわが国もその中に加わっております。それに対して三十カ国近い国が公平の原則だけでいきたいということで中間線を明示しないという案を出しまして、どちらも結局コンセンサスというか、大勢を制するに至らないということで継続交渉になった次第でございます。
  190. 安武洋子

    安武洋子君 海洋法会議で、大陸だなの定義につきましていままで政府はどういうふうな主張をなさってこられたんでしょうか。
  191. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) 大陸だなに関しましては若干経緯がございますけれども、いままでに外務委員会等に差し上げている資料があるわけでございます。カラカスにおいてはわが国は二百海里という立場を主張いたしまして、自然の延長というものには実は賛成しなかったわけでございます。あくまでも海底の鉱物資源に関する沿岸国の主権的権利は海底地形に関係なく一律に二百海里までとすべきことを主張いたしましたし、相対する国の境界画定、一般的に中間線原則ということをカラカスで主張いたしました。  それから昨年でございますが、自然の延長が優勢になってまいりまして、二百海里ということではもはや大陸だなの外縁の決定ができないということが有力で、議長報告にも一昨年からそういうふうに書いてあるわけでございますが、したがってわが国としては二百海里という立場を原則的に主張しながら、しかし自然の延長論に立って二百海里を超える大陸だなを認めるというような場合には、その外縁は客観的かつ明確に決定し得るような基準がなければならないということを主張いたしました。それで今度の会期では、妥協として、実は二百海里以遠ではこの収益を国際機関と沿岸国が分与するということがもう定着してまいりましたので、それが大勢であるという前提で、なおこの外縁の画定ということに客観的な基準がないということで、先ほど申し上げましたようにこの二つの主張が対立したわけでございますけれども、わが国はこの堆積層の厚さを基準としてはかるということはいろいろ不正確であるし、概念的にも不明確であるということで反対いたしまして、やむを得ない場合にはこのスロープフット、大陸斜面の基部から六十海里の補足的距離基準によって画定すべきであるということが適当であろうというコメントをいたしました。
  192. 安武洋子

    安武洋子君 海洋法会議の非公式統合交渉草案の第七十六条、「大陸棚の定義」ですね。これはどうなっておりますか、読み上げていただきとうございます。
  193. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) お読みいたします。「沿岸国の大陸棚とは、海底地域の海底であってその国の領海を越えその陸地の自然の延長をたどってコンチネンタル・マージンの外縁までの部分、又はコンチネンタル・マージンの外縁までの距離が領海の幅員を測定する基線から二百海里ない場合には二百海までの部分をいう。」ということでございます。なお、これはまだ定訳じゃございませんで、交渉中でございますから、外務省の海洋本部の責任において仮訳したわけでございまして、あくまでも定訳でもなければ、また関係省庁と合意して法制局をクリアしたものではございません。
  194. 安武洋子

    安武洋子君 では、この定義は当てはめてみますと、つまり二百海里までは大陸だなのあるなしにかかわらず、基線二百海里ですね、大陸だなとして認める、こういうことでございますね。
  195. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) 二百海里まで自然の延長というものがない場合には、二百海里までを大陸だなと見るという趣旨でございます。
  196. 安武洋子

    安武洋子君 この海洋法会議大陸だなの定義の「コンチネンタル・マージンの外縁が領海の幅を測定するための基線から二〇〇海里の距離に達しない場合は同基線から二〇〇海里までの海底区域からなる。」すなわち大陸だながあろうとなかろうと、基線二百海里まではその沿岸国の大陸だなだと、こう認めることは、これは国際的なコンセンサスを得ておりますね。
  197. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) まだ議論の過程でございますけれども、これがもうほとんど大勢を占めた案というふうに考えていただいて結構だと思います。
  198. 安武洋子

    安武洋子君 外務省はこういうパンフレットをお出しでございますね。「日韓大陸協定」「早期締結の必要な理由」外務省です。外務省情報文化局一九七七年四月、ちょっとお出しになってみてください。——よろしゅうございますか。四ページをおあけくださいませ。ここの中で、国際海洋法会議自然延長論が優勢だと、こういう趣旨のことをおっしゃっておられますね。「「自然延長論」がますます大勢を占めつつあり、」と、このことは結局は基線二百海里以上の自然延長を認めよう、こういう意見が優勢だということでございますね。
  199. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) そのとおりでございます。
  200. 安武洋子

    安武洋子君 では、要するに基線二百海里の線引きをした場合、他国の基線二百海里の線引きとぶつからない、この場合にのみ二百海里以上が認められるということ、こういうことでございますね。
  201. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) 御質問趣旨がちょっとわからない点がございますが、二百海里というのはいま申し上げたように、二百海里以遠の自然の延長が有力でございまして、二百海里以遠の自然の延長が国際海底と接するようなところに外縁を探しているわけでございます。  それから二百海里の、いまほかの国とぶつかる問題言われましたが、これは定義のところではございませんで、この「境界画定」の規定がございまして、「衡平の原則」によって合意によって解決する、適当な場合には中間線を用い、しかもすべての関連ある事情を考慮するという規定になっておりまして、実は境界の画定の条項というものは、いま御指摘になった点とは別に書いてあるわけでございます。
  202. 安武洋子

    安武洋子君 要するにいままでの御答弁を整理いたしますと、基線二百海里、ここまではこれはもうたながあろうとなかろうと無条件にその沿岸国の大陸だなだと、こういうふうに認める。だから外務省が国際海洋法会議自然延長論が優勢だと、こうおっしゃっているのはすなわち、基線二百海里以上の自然延長を認める、こういうことが問題、こういう意見が優勢だと。問題はむしろ先ほどおっしゃったように、「コンチネンタル・マージンの外縁」までの定義、それからその沿岸国の権利をどういうふうに認めるか、そういうことが争点になっている、こういうふうに先ほどの御答弁を解釈してもよろしゅうございますね。そしていまの海洋法会議の現状なんですね。
  203. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) 問題点が二つございまして、一つは、国際海底につながる場合に自然の延長をどういうふうに客観的に決めるか、自然の延長二百海里以遠にあるという場合にそれをどういうふうに定義して基準を明定するかということに一つの焦点がございます。もう一つの焦点はでございますね、これは相対する国あるいは相接する国でこの大陸だなが重なり合う場合にはこれは別個に「境界画定」の規定がございましてそれで中間線もしくはその他の「衡平の原則」というものが対立しているわけでございまして、この二つの問題はそれぞれ別に扱われております。
  204. 安武洋子

    安武洋子君 私が確認したいのは、基線二百海里までというのは、大陸だながあろうとなかろうとそこまではその沿岸国の大陸だなだと、こういう権利を認めるということは国際的に合意が得られていると、そうすると、外務省が「「自然延長論」がますます大勢を占めつつあり、」というふうに書かれているのは、これは基線二百海里以遠の自然延長、これを認めるかどうかというこの論が「ますます大勢を占めつつあり、」と、こういうことですねというふうに確認をしたわけです。それは間違いございませんでしょう。
  205. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) その点はそのとおりであろうと思います。  ただつけ加えさせていただきたいのは、経済水域大陸だなとの関係で、きのうも実は公聴会でも参考人の教授の方も言われましたけれども大陸だな経済水域に包摂されるかあるいは補完するのかあるいは大陸だな経済水域と独立した別個の制度と考えるべきかということで、いまの海洋法の草案全体として見た場合には、やはりこの大陸だな経済水域より独立した別個の制度であるというのが大勢であるという御説明がございましたが、そのとおりであると思います。経済水域の改定に関しては大陸だなの規定が適用されるということが現に統合草案の五十六条の三項にございまして、やはり経済水域の改定は大陸だなの規定によって法的に処理されるという考え方が出ているわけでございます。
  206. 安武洋子

    安武洋子君 そういたしますと、このパンフレットの「「自然延長論」がますます大勢を占めつつあり、我が国のように一律の距離基準論を強く主張している国は少数派にすぎません。」こう書いてあるのは、二百海里までは基線ですね、二百海里までは国際的なコンセンサスをもう得ていると、日本が権利を主張できると、こういうわが国に有利な一面、これが書かれていなくて、あたかも不利に見える一面だけを不正確な書き方をなさっているんではありませんか。
  207. 村田良平

    政府委員(村田良平君) この日韓大陸だなに関するパンフレットとの関係で、先ほどの井口参事官の答弁を若干補足さしていただきたいと思います。  確かに、この非公式統合草案におきましては、先ほど読み上げましたような規定があるわけでございますけれども、ここには二つの基準が書いてあるわけでございます。すなわち、自然の延長がその二百海里以上の場合に、その外縁までの延長を認めるということが第一の基準でございます。海洋法会議におきましてこの点いろんな議論がございましたときに、幾つか相当多くの国から、自国の大陸だなは二百海里までには満たない、たとえば百五十海里であるとか、百七十海里というふうな国が南米等にもございまして、そういった国国がそれでは不公平である、少なくとも二百海里までは、大陸だなが地形的になくても、そこまでは認めるべきであるという主張が出たものでございますから、交渉の結果、この第二義的と申しますか、補助的な基準といたしまして、二百海里まで自然の延長がない場合も、これは大陸だなとみなすという規定が入ったと、こういうことでございまして、いま申し上げました第二義な規定というのは、いわば交渉の妥協の産物であったわけでございます。  したがいまして、公海に向かってある国の、よその国の管轄権と一切競合しないというふうに大陸だなが延びておる場合には、二百海里を超えた自然の延長、それからそこに満たない場合には二百海里までという、この現在の七十六条の規定がそのまま適用されるわけでございますけれども、もしもある国がその第一の基準でございますところの自然の延長というものに基づいて管轄権を主張しております場合に、他方の国の主張が重なり合うというふうな場合には、この第二義的な基準で自動的に二百海里の距離基準ということにはならない。少なくともそういう明文の規定はないわけでございます。そこで、先ほど井口参事官が申し上げましたように、そのような場合におきましては結局、境界画定の法理によってこれを処理するということになりまして、このパンフレットで自然の延長云々ということが書いてございますのは、二百海里以遠という考え方が出てきました根拠には、とにかく海底の地形が自然に延長しておって、急に深くなると、そこまでは大陸だながあるというのが根拠でございますから、まさに韓国がわが国に対して主張したその基本的な考え方というものが、距離の問題は別といたしまして、この海洋法会議でも強く主張され、それがいわば一般的に支持を受けるような情勢になってきておる。そういうことからその海洋法会議の大勢も、必ずしもその点に関してはわが方にとって有利でないということを記述した、こういうことでございます。
  208. 安武洋子

    安武洋子君 この大陸だなの定義のところ、よくごらんくださいませ。私は、「コンチネンタル・マージンの外縁が領海の幅を測定するための基線から二〇〇海里の距離に達しない場合は同基線から二〇〇海里までの海底区域からなる。」このことを問題にしておりますし、また、前段の「沿岸国の大陸棚は、その国の領海を越えその領土の自然の延長全体にわたり、コンチネンタル・マージンの外縁まで、」——どこにも相対する国があるとかないとか、そういう前提は遣いてございません。ですから私は、「大陸棚の定義」について最初から問題にいたしております。ですから、「大陸棚の定義」について、いまの海洋法会議の中では、基線二百海里まではたながあろうとなかろうと国際的にコンセンサスを得ていると、これは御答弁いただきました。  だから、わが国としてはここまでは主張できる、こういう二百海里までは主張する権限を持っている、そういう有利な側面を書かないで、いま争点になっているのは、そこからさらに自然延長があるときに、それを認めるという、そういう大勢がますます有利になっているのに、なぜわが国の方の基線二百海里までこれは国際的に合意を得ていて、そこまでは主張できる権限があると、そういう一面を抜かして不利に見える方だけをなぜお書きになったのですかと、不正確な書き方ではありませんかと、こういうことを申し上げております。
  209. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) この点は不正確ではないと思います。と申しますのは、この「大陸棚の定義」は、まさに公海に延びて、さらにいわばほかの国の大陸だなにぶつからないで、経済水域とか大陸だなにぶつからないで、国際海底に延びている場合の定義だという前提でございます。現在この幾つかの提案がまだ議論されておりますが、結局補足的な基準をつくるということでございますけれども、その場合に、この七十六条の定義が公海そして国際海底に連なっているという場合の定義であるということをより明確に書くべきであるという主張もございまして、考え方としては、あくまでもこれはほかの国の大陸だなとか経済水域にぶつかるという前提ではございませんで、国際海底、今後国際機関が管理するであろう国際海底につながる場合に、沿岸国がどこまで主権的権利を主張し得るかということの定義であるというふうに解釈されております。
  210. 安武洋子

    安武洋子君 私が言っているのは、基線二百海里まではもう国際的な合意が得ているんだと、だから相対する国があろうとなかろうと、わが国の現状に立って見れば、そこまでは主張ができる、何も韓国の一方的な自然延長、そこだけを掲載する必要はないじゃないですかと、なぜわが国に国際法の、この国際海洋法会議の中で基線二百海里まではわが国の主張を、これを言う権利があると、こういうことが並列的に書けなかったんですかと、この書き方は不公平ではないですかということを盛んに申し上げておりまして、そういうふうな境界画定の話なんか私はまだいたしておりません。大陸だなの定義について、いま大陸だなはここまでコンセンサスが得られているんだと、だからなぜそういうふうなことを書かないで、自然延長というのも正確にお書きになるべきです。それを自然延長というのは、まるで基線から全部自然延長、これを認めようとする勢力がはるかに優勢になっているというふうな書き方をなさっていらっしゃる。おっしゃるように妥協の産物なんですよね。なぜこういう書き方をなさるのか、そのことを先ほどから申し上げているわけです。
  211. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) いま申し上げましたように、七十六条の定義は、やはり国際海底につながっている場合の、この国際機関が管理する国際海底と沿岸国が主権的権利を行使する大陸だなとの境界線を決める定義でございまして、ほかの国と大陸だなが接している場合にはわが国は中間線という立場を主張しておりまして、それによって十分国益は全うできるんじゃないかという判断で、そういう形の主張をしております。  いま、境界画定の問題と絡めて御質問がございましたから、その部分もお答えしているわけでございますけれども、現に今会期、わが国は中間線原則の共同提案国として中間線原則ということで、強くこれを主張したわけでございます。
  212. 安武洋子

    安武洋子君 この外務省のパンフレットでは、海洋法会議の動向について、「このようないきさつからして、海洋法会議の結論を待ってみても、我が国にとってこの協定内容以上に有利な結果を獲得できるとは考えられません。むしろ、待てば待つほど、我が国にとって不利な情勢が固まりつつあるといえましょう。」こういう表現が四ページにございますね。しかし、海洋法会議の動向というのは、こういう書き方ではこれは全く不正確ではありませんか、ここも。国際海洋法会議の動向といいますのは、たなのあるなしにかかわらず二百海里までは大陸だなだ、これを認めることには、これは国際的な合意がある、こういうことですね。ですからこの結論は、なぜ待てば待つほどわが国にとって不利な情勢が固まるんでしょう。納得できませんけれども、御答弁いただきます。
  213. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) この境界画定の問題に関しまして五月十九日に終わった会議で、議長が次のように実は結果を要約しております。「今会期においても中間線支持派と衡平原則支持派の対立は顕著であり、妥協は成立しなかった。しかし、境界画定に関する措置は合意に基き行われるべきこと、及び、関連する、又は、特別の状況を考慮に入れて行われるべきことの二点についてはコンセンサスがある。」こういうふうに議長は要約しております。したがって、この境界画定は結局自動的な形で中間線で決まるわけでございませんで、大勢としては合意によって、しかも特別の事情、関連する事情を考慮に入れるということが大勢であるということで、委員長はコンセンサスがあるということを言っているわけでございます。したがって、自然の延長とか地形とか、地質とか、海溝の存在とか、そういうようないろんな特別の関連する状況を考慮に入れるということはやはり必要であるということで、そういう観点から先生が御引用なさっている文書に書かれました考え方は不正確ではないというふうに考えます。
  214. 安武洋子

    安武洋子君 異論があります。それは日本の、おっしゃるとおり等距離中間線のみが大陸だなの境界画定、これをする必須の条件でなくなったということはそのとおりです。しかし基線二百海里までのこの権限の主張ができるということ、それからすべての関連事項を考慮すると、近隣国と「衡平の原則」で話し合いをして合意をするというふうなこと、これは中間線のみが大陸だな境界画定の必須の条件ではなくて、こういうこともやらなくてはいけないというふうになっただけで、それを大きくわが国のいままで主張していたことを後退だけさせるものではないはずなんです。それなのに待てば待つほどわが国にとって不利な情勢が固まりつつあるというのは納得ができませんし、それどころか統合交渉草案これが条約化されれば有利になる、このことは明白じゃありませんか。
  215. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) ただいま申し上げましたように、この中間線という立場がわが国に有利だという立場でわが国も原則的な主張をしておりますけれども、やはり最終的には合意によって行われるべきであるし、関連するまたは特別の状況を考慮に入れて行われるべきであるということで、この会議の趨勢というものはもうほぼ固まっているということでございますから、もちろん関連する特別の状況というのがどのようなものであるかということは、それぞれの立場からいろいろな議論があると思いますけれども、方向はそうであるということでございまして、やはり自動的に中間線ということで固まるという可能性は、これは非常に残念ながらほとんどないということでございます。
  216. 安武洋子

    安武洋子君 その関連するすべての条項というものを考慮したときに、わが国が不利になるばかりかどうかということは後で十分論議させていただきます。  それで、等距離中間線、これは先ほどのお言葉の中にも出ておりましたので確認するまでもないと思いますけれども、等距離中間線というのは、これは境界画定に当たっての日本側の主張、これであったと思うわけですけれども、この点は間違いございませんね。
  217. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) そのとおりでございます。
  218. 安武洋子

    安武洋子君 それなのに、共同開発に踏み切った理由というのは一体何んですか。
  219. 中江要介

    政府委員中江要介君) この点はすでに協定の御審議をいただきましたときに私ども説明したことでございますけれども、   〔委員長退席理事福岡日出麿君着席〕 いまも安武先生御自身もおっしゃいましたように、等距離中間線というものが決め手でないということが問題であるばかりでなくて、その前提になる日本韓国との間に中間線をもって境界を画定するような一つ大陸だながあるという認識に立つのか、そもそも境界画定を要しない、つまり境界画定を必要とするような一つ大陸だなを相対して共有しているのではなくて、韓国の方からは、先ほどの定義にもありますように、大陸部から、この場合は朝鮮半島から黄海の方に向けて自然の延長が延びてきて、それが沖繩海溝のところで終わっている。したがって、日本側には大陸だなの主張はないと、こういう韓国考え方とが対立したわけでございまして、これについてクリアカットに結論を出すような基準というものが国際法上存在しない。  そこで、これをあくまでも法律論争で継続していくのがいいか、それとも国際法の未熟な現段階では、その問題のみにこだわっているのではなくて、双方の共通の目的である海底資源の有効利用というところに着目して実際的解決を図るのがいいかということの岐路に立ったのがけさの委員会の審議でも先生が御指摘になりました一九七二年の段階であったわけで、そのときに日韓双方が政治的に、これは有効利用の方に踏み切ろうということでその一つの方法として共同開発というのが出てきたというわけでございまして、一口で言いまして、なぜ共同開発にしたのかということは、これは法律的に決着が得られないからだと、こういうことになります。
  220. 安武洋子

    安武洋子君 では、いまの御答弁は結局、韓国の主張というのは、境界画定のための主張ではなくって、韓国だけに主権的権利がある大陸だななので境界画定にはなじまない、こういう韓国の主張だったということですね。
  221. 中江要介

    政府委員中江要介君) 韓国はそういう主張をしたということでございます。
  222. 安武洋子

    安武洋子君 ではお聞きいたします。一九七〇年当時の大陸だな境界画定で等距離中間線で境界を画定したのは何件中何件なんでしょうか。
  223. 村田良平

    政府委員(村田良平君) ただいまの御質問が一九七一年とおっしゃいましたので……
  224. 安武洋子

    安武洋子君 一九七〇年当時。
  225. 村田良平

    政府委員(村田良平君) 七〇年でございますと、十六件でございまして、中間線をとっております。
  226. 安武洋子

    安武洋子君 何件中何件かとお聞きしております。
  227. 村田良平

    政府委員(村田良平君) 十六件で十六件とも中間線をとっております。
  228. 安武洋子

    安武洋子君 それから見ましても、一九七〇年当時というのは世界の大勢としましては等距離中間線、これが大勢を占めていた。そして自然延長論というのは、その当時の新しい一つの主張であったと、こういうことですね。
  229. 村田良平

    政府委員(村田良平君) 私どもは必ずしもそのように考えておりません。この中間線理論というのは、すでに一九五八年の大陸だな条約においても出ておる考え方でございまして、恐らく一般的には最も妥当な方法であろうと思います。ただし大陸だな条約の第六条に定めておりますように、二つあるいはそれ以上の国が同一の大陸だなに相対している、あるいは隣接しているというときに等距離線あるいは中間線という準則があるわけでございまして、わが国と韓国との間には同一であるかどうかという、つまり境界画定とは別の次元の点について認識の差があった、こういうことでございます。
  230. 安武洋子

    安武洋子君 だれもいま、韓国とどうだとは言っておりません。十六件中十六件、一九七〇年当時の大陸だな境界画定、等距離中間線を用いたと、等距離中間線で境界を画定した、こうおっしゃる。だから一九七〇年当時は、世界の大勢としては等距離中間線が大勢を占めていたんですねと、自然延長論というのはその当時の新しい一つの主張ですねと、こういうことを私は、世界の大勢としてお伺いをいたしております。
  231. 村田良平

    政府委員(村田良平君) 大陸だな条約の第六条で定めておりますような要件のもとにおける等距離中間線というのは、すでにその際に確立しておった考え方であろうと思います。それから、自然の延長という考え方がこの七〇年前後に初めて出てきたかということになりますと、それは必ずしもそうは言えないのではないかと思うわけでございます。ただし、それが条約あるいは判決のかっこうで明確に示されましたのが一九六九年の北海大陸だなの判決である、こういうことでございます。
  232. 安武洋子

    安武洋子君 大変回りくどい御答弁でございます。   一つお伺いいたします。一九五二年のサンチャゴ宣言、この中身はどのようなものでしょうか。少し具体的にお答え下さい。
  233. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) 実は、サンチャゴ宣言のテキストは持っておりませんけれども、これはラ米のペルー、チリ、エクアドル等の国が二百海里の領海を宣言したものであるというふうに記憶いたします。
  234. 安武洋子

    安武洋子君 少し不正確じゃございませんか。
  235. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) テキストがございませんので、不正確であればおわびいたします。
  236. 安武洋子

    安武洋子君 調べてくださるのですか。
  237. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) はい、調べます。いますぐテキストを取りまして調べます。
  238. 安武洋子

    安武洋子君 それじゃ、それまで休憩させていただきます。ちょっと十分間……。ちょっと休憩宣言してください。
  239. 福岡日出麿

    ○理事(福岡日出麿君) 暫時休憩いたします。    午後三時二十三分休憩      —————・—————    午後三時三十四分開会   〔理事福岡日出麿委員長席に着く〕
  240. 福岡日出麿

    ○理事(福岡日出麿君) 委員会を再開し、休憩前に引き続き質疑を行います。
  241. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) サンチャゴ宣言に関しまして現在わかっているのは、先ほど私が申し上げましたようなラ米三国の二百海里宣言でございますけれども、そのテキストの全文いま取り寄せるようにしておりまして、まだ外務省から持ってくる途中でございますので、まだ手元にございません。
  242. 安武洋子

    安武洋子君 それじゃ引き続きまして、一九七〇年のラテンアメリカ九カ国によるモンテビデオ宣言、この中身はどういうふうなものになっておりましょうか。
  243. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) この点について実は資料要求がございませんのでいま手元に持っておりませんが、これもやはり二百海里の問題に関する関係国の宣言で、もっと国の数がふえたものであるというふうに記憶しております。
  244. 安武洋子

    安武洋子君 いえ、それは私はラテンアメリカ九カ国によると申し上げましたので、ですからモンテビデオ宣言の中身ということを御質問しているわけです。リマ宣言もおわかりになりませんか。
  245. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) リマ宣言についてもテキストを手元に持っておりません。
  246. 安武洋子

    安武洋子君 困っちゃうんですけどね。せめてこういう論議をするときには、サンチャゴ宣言とかそれからモンテビデオ宣言とかリマ宣言というのを私のような素人でも読んでくるわけです。ですから、それぐらいのことはお答えいただきとうございます。——何かお答えくださるんですか。
  247. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) リマ宣言は七〇年八月四日から八日までにペルーのリマで開催された際に出た宣言でございまして、海洋法に関するラテンアメリカ諸国の会議が採択した宣言でございます。この宣言において、「沿岸国は、各国の地理的、地質学的および生物学的な特徴ならびにその資源を合理的に利用する必要性を考慮して、合理的な基準によって海洋への主権または管轄権の限界を決定する権利を有する」ということを宣言しております。この会議にはラ米及び西インド洋諸国が参加しております。国の数は、アルゼンチン、バルバドス、ボリビア、ブラジル、コロンビア、チリ、ドミニカ、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ジャマイカ、メキシコ、ニカラグア、パナマ、パラグアイ、ペルー、トリニダードトバゴ、ウルグアイ及びベネズエラが参加いたしましたが、ボリビア、パラグァイ、ベネズエラがこの際には、リマ宣言には反対の立場を表明いたしました。  それから先ほど申したモンテビデオ宣言でございますが、これも沿岸国が海洋への主権または管轄権の限界を決定する権利を持つという宣言でございまして、アルゼンチン、ブラジル、チリ、エクアドル、エルサルバドル、ニカラグア、パナマ、ペルー及びウルグアイの九カ国が加わっております。
  248. 安武洋子

    安武洋子君 サンチャゴ宣言の中身はおっしゃっていただけませんでしたが、このサンチャゴ宣言の中身といいますのも、いまのモンテビデオ宣言とかあるいはリマ宣言、これとよく似通っておりまして、二百海里水域の排他的宣言、まあ領海のような考え方ですね、これが盛られているわけです。これらの宣言をなぜお伺いしたかといいますと、これらの宣言は二百海里というような距離を一定の基準にしまして、沿岸国に主権的権利が存在すると、こういう考え方を基本にして主張をしているわけなんです。当時、大陸だなの境界画定に当たっては等距離中間線によるものがもう圧倒的だということは先ほどの御答弁でも明確でございますけれども、同時に大陸だなの考え方として自然延長説あるいは二百海里説、こういうふうなものもあったということですね。
  249. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) 海洋法会議が七一年に準備段階に入りましたときに、まさにこの領海二百海里というものがラ米諸国でずいぶん宣言されておりましたけれども、その内容が必ずしも純粋な領海ではございませんで、資源に関する主権的な権利を行使する海域という考え方で、たとえば領海と違いまして、船舶の航行に関しては自由航行を認める、それから航空機の上空飛行も自由なものを認めるというような規定があったわけでございまして、したがって、これは資源領海というような種類のものだというふうに考えているわけでございます。したがって、この海洋法会議で七四年ぐらいにカラカスで大体固まりました経済水域というものも、資源に関しては主権的な権利、排他的管轄権を行使するという水域で、航行、上空飛行に関しては自由を認めるということでございまして、これはラ米の領海二百海里派もほとんどが現在経済水域という概念を支持しておるわけでございますから、領海あるいは経済水域といっても必ずしもその内容が違うことではなくて、ラ米の場合にも資源領海という考えから相当この考え方に近かったわけでございます。それから後ラ米諸国が大陸だなの自然延長というものをさらに二百海里以遠に認めるというようなパトリモニアル宣言、パトリモニアルシーというような概念も実は打ち出したりしておりまして、そういうものが全部収斂しまして現在の統合軍案の規定になったということでございます。
  250. 安武洋子

    安武洋子君 私はいま大陸だなの境界画定に当たってという前提を置いてお伺いいたしましたが、大陸だなの境界画定というのは、ここにもうたってありますように、この第三次海洋法会議の第六会期のこの大陸だなの定義を当てはめて考えてみると、これは排他的経済水域の境界画定の条項と同趣旨の規定ぶりとなっている、こういうことになっておりましょう。それで私が問題にしているのは、当時二百海里というような距離基準、これを沿岸国に主権的権利が存在するんだという考え方を基本にして先ほどのサンチャゴ宣言とかラテンアメリカ九カ国のモンテビデオ宣言とかリマ宣言がなされている。大陸だなの境界画定は等距離中間線によるものが圧倒的だったということは御答弁いただいています。でも大陸だなの考え方としては自然延長説とか二百海里説、こういうものもあったわけですねということを申し上げているんです。
  251. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) そのとおりでございます。
  252. 安武洋子

    安武洋子君 私どもといたしましては、この協定のような大陸だな共同開発、決して容認するものではございません。しかし、境界画定はたな上げにして両国共同開発を行おう——境界画定の問題ではないわけなんですね。こういうときに共同開発の決め方の一つ、本協定に盛られているわけですけれども、境界画定でなくて共同開発の問題である以上、その区域を決めるに当たっては、日本側がなぜ二百海里の線まで主張する、こういう方法をとらなかったのか、こういう方法もあったのではないか。決して私ども共同開発容認するものではないです。しかし、こういう方法もあったのではないかということを政府にお聞きいたしとうございます。
  253. 中江要介

    政府委員中江要介君) その点は先ほど海洋法本部の井口参事官の説明にもありましたけれども、海底の地形のいかんにかかわらず二百海里を主張するという場合は、大陸だなに関して言いますれば、これは公海に向かって自然の延長が延びているときに、二百海里の距離基準まで実際の大陸だなが延びてないときでもそこまでは大陸だなとしての主権的権利が主張できるという有力な説がある、こういうことでございますが、もう一つは海底の地形のいかんにかかわらず二百海里というもう一つのシステムはいわゆる経済水域の制度でございます。  日韓両国でいま問題になっております大陸だなについての主権的権利の争いをいたしましたときには、これは経済水域ということでもなければ、公海に向かって延びていく自然の延長の距離基準が二百海里以内であっても二百海里まで主張できる、そういう立論を適用し得る地形ではなくて、先ほど私が申し上げましたように、そもそも日本韓国一つ大陸だなをはさんで相対しているかどうか、そこの論争であったわけでございまして、そのときにもし一つ大陸だなであるということでありますればこれは中間線になる、これはいつも私どもが主張しておったということを御報告しておるとおりでございますが、韓国立場は、先ほど先生御自身もおっしゃいましたけれども、みぞがあるのでそこまでは自分の大陸だなで、日本はそのみぞから手前の方には、つまり韓国、朝鮮半島の方には日本は主張できない、こういう主張であったということで、この主張は現行国際法にのっとりますれば相当の根拠があったということでございます。
  254. 安武洋子

    安武洋子君 お断りいたしておきましたように、境界画定の話をしているんではありません。共同開発になった、境界画定はあなた方はたな上げにした、こうおっしゃっている。そして両者の立場を損なわないものにする、こうおっしゃっている。それならと、私は共同開発容認するものではないけれどもと、わが国の国益に一とって共同開発区域の北限を中間線にする、それとわが国から基線二百海里までの距離とするということではどちら、が一体有利になるんですか。
  255. 中江要介

    政府委員中江要介君) 境界画定の話でなくて、大陸だなの主張はどこまでかということですと、これは日本は……
  256. 安武洋子

    安武洋子君 共同開発の話をしています。
  257. 中江要介

    政府委員中江要介君) 共同開発区域を規定する前提として、日本はどこまで大陸だなを主張をしたかといいますと、これは日本立場は、毎度申し上げておりますように、日本韓国との間には一つ大陸だなしかない、したがってその場合の主張は中間線までである、こういうことになるわけでございます。
  258. 安武洋子

    安武洋子君 韓国は、日本が境界画定のための主張をする権利を持たない、韓国だけの大陸だなだと、こう言っているんだとお答えでございましたでしょう。いま言うているのは、境界画定、韓国立場を一生懸命おっしゃっているけれども、そんなことを聞いてないんですよ。両方の境界画定はたな上げなんだと、そうすると、だれが考えたって、わが国は基線二百海里、これが主張できる権限があるわけでしょう。共同開発になったらなぜそれを宣言なさらなかったか、そういう主張をなさったことがあるんですか、ないんですか、その点をお伺いいたします。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕
  259. 中江要介

    政府委員中江要介君) 日本政府立場は、毎回申しておるんですが、日本から大陸だなが延びていきまして朝鮮半島に至っている、こういう立場でございまして、何も二百海里に限定するなんというような必要がない、つまり一つ大陸だなを朝鮮半島まで日本からは延長して延びている、朝鮮半島からはまた日本列島に向かってちょうど大陸だなが延びている、その間にみぞがなければ両方ともにどこまでも主張していく、だからどこまでも主張していくのが重なればそれは中間線によるというのが一般国際法だということを申しておるんで、境界画定をたな上げにすれば大陸だなの主張をするわけでしょうと、そのときに日本はどこまで主張されますかというときには二百海里もくそもなくて、日本の領土から延びていく大陸だなの終わるところまでが、まず日本側の主張であるわけです。そこに今度は韓国の方から、朝鮮半島の方から同じような主張が出てくる。それがすなわち大陸だなの条約の表現をかりますれば一つ大陸だなをはさんで二つの国が相対している、こういうことになるわけでございます。     —————————————
  260. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 委員の異動について御報告いたします。  本日、森下昭司君が委員を辞任され、その補欠として大森昭君が委員に選任されました。
  261. 安武洋子

    安武洋子君 繰り返しますけれども韓国側の主張というのは、この大陸だなというのは境界画定を必要としない、韓国側大陸だなだと、こう主張しましたね。だとするならば、共同開発なんです、境界画定じゃないんです。共同開発に当たって何ゆえに日本政府のみが境界画定、このラインである中間線、これに固執しなければならないんですか。おかしいではありませんか。境界を画定するわけでもないのに、共同開発区域の設定の問題なのに、日本側としては最大の権利を主張する、これがあたりまえじゃないですか。韓国側の主張の一方的なのだけを受け入れる、そして日本には不利な開発区域の決め方に合意をする、こういう問題を一つ見てみても、日本の対韓姿勢、私はきわめて屈辱的なものがあると思うんです。外務大臣はどうお考えでございましょう。
  262. 中江要介

    政府委員中江要介君) 日本が、日本から出ている大陸だなをどこまでも主張していく、これはあたりまえのことでございまして、何も二百海里に限る必要がなくて、自然の延長の終わるところまでいまは主張できるという説すらもあるわけでございますから、伸び伸びと主張していけばいいわけですが、そのときに、その向こうに公の海ではなくて相手の国があり、相手の国の領海があり、そしてそこからこちらに向かって大陸だなが延びていると、そういう状況のときに、国際法上日本が主張し得る限度はどこかと言うと、これは中間線であるというのが日本立場で、これは境界画定以前の問題として、日本が相手の国に対して主張し得る限度が、国際法上中間線までであると、この立場には何の疑問もない、またこの議論の立場には何の別な考慮もないと、こういうふうに御理解いただかなければならないと思います。
  263. 安武洋子

    安武洋子君 論理が矛盾してるんです。韓国の方の自然延長だと、こういう言い方を一方的に受け入れてるんですよ、今度の共同開発には。そして、日本が主張しているのは境界画定の中間線なんですよ。向こうがその自然延長を主張するなら、わが国はなぜわが国に一番有利な基線二百海里、これを主張しないんですか。私どもは別にこういう共同開発を容認するものじゃありませんからね、この議論、深追いはいたしません。しかし、あなた方はこういう共同開発に踏み切ったときですら、日本に有利な主張をしないで共同開発——中間線を引くとずっぽり日本側に入るのにこういうふうな決め方をなさっているわけです。  そこで、私は政府に改めてお伺いいたします。資源主権というものを一体どのようにお考えになっていらっしゃるでしょう、基本的なことをお伺いいたします。
  264. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 最近、ここ数年、特に開発途上国におきましての資源主権問題に対する主張が国際的にも非常に強くなっていることも事実でございます。翻ってわが国の場合にも、資源というものはきわめて少ない、乏しい国でございます。国内にある資源をできるだけ日本の国益に役立つようにこれを活用していくべきだという基本的な姿勢をもって臨んでおります。
  265. 安武洋子

    安武洋子君 天然資源に対する永久的な主張、すなわち資源主権については、国連でもたびたび決議がされていると思うんです。国連の事務総長報告ども出されていると思います。まあこれらの決議とかあるいは国連の事務総長報告、こういうもので、資源主権について一体どのように述べているか、この点をお伺いいたします。
  266. 橋本利一

    政府委員(橋本利一君) 外務省からお答えいただいた方が適当かと思いますが、いわゆる御指摘の点はエチェベリア憲章と申しますか、資源に対して恒久的主権、それの処理については主権国が自由にするんだと、こういった思想が根底にあろうかと思うわけでございます。
  267. 安武洋子

    安武洋子君 天然資源に対する主権についての国連の意思というのはもう明白になっているわけです。私はここに第二十五会期の国連事務総長報告、これを持ってまいりましたけれども、この中にも、天然資源に対する主権は、国家たる資格を持つものに固有のものであり、領域主権の本質的部分を構成する、また、あるいは、天然資源に対する主権は、いかなる権力に対する忠誠または従属をも排除するものであるから、その意味するところは資源の利用を決定する完全な行動の自由が国家にあるということである、こういうふうに書かれております。まさに資源主権というのは、その資源主権に対する態度というのは、国の政治的、経済的独立、これと不可分のものなんです。きわめて重要なものだと私は思います。この点で日韓大陸だなの共同開発、これがわが国の資源の利用を決定すると、完全な行動の自由、国連でうたわれているこの完全な行動の自由、これが確保されていない、重大な問題ではないですか、いかがですか。
  268. 中江要介

    政府委員中江要介君) 資源主権についていろいろの解釈、あるいは実質的内容がいかようにございましても、それがあるからといって国際法を無視することはできないわけでございます。したがいまして、この日韓大陸だな協定の、特に南部共同開発区域になっております部分につきましては、これを国際法にのっとった解決に到達すべく努力した結果、それが法律的に平行線になって、膠着状態になったと。そこでどうするかということが問題でありまして、そのときに、国際法を無視して一方的に主張をいたしますと、これはもとの紛争に戻ってしまうわけで、資源の有効利用には何ら役立たない。したがって、そこは政治的に、この法律論争はそこまでとして、双方が資源を有効に利用するということで、この双方の資源の、もし先生のお言葉をかりますれば資源主権の重なるところを共同で開発して、そして、その資源主権の行使として、その開発から出てくる果実を折半するというのが、この実際的解決方法としての共同開発構想であるわけです。
  269. 安武洋子

    安武洋子君 なぜ資源主権が重なり合うところになるんですか、境界画定の問題でもないのに。相手の一方的な自然延長、これだけは認める、そしてわが国は境界画定の中間線、これを固執する、これではおかしいじゃありませんか。資源の有効利用、わが国の立場を放棄しないなら、中間線を放棄しないなら、境界画定の、これは全部わが国の主権的権利が排他的に行使できる、そこにずつぽり入るじゃありませんか。私はそのことを問題にしているんです。だから、共同開発というのは、結局、わが国の主権的権利、これを放棄するものだと。そうして、中間線論のたな上げだと、こうおっしゃるけれども、結局のところ主権的権利、これを放棄する、合理化する口実だと、こう申し上げたいんです。外務大臣いかがでしょうか。
  270. 中江要介

    政府委員中江要介君) そのことは私、何回も御説明したつもりでおりますが、日本が中間線までの大陸だなの部分について主権的権利を行使し得るというのは、日本立場でございます。他方、この沖繩海溝で落ち込んでおりますところまで自然の延長として、ここに主権的権利を行使し得るというのが韓国側の主張であります。日本は決して韓国の主張を認めたのではないのと同じように、韓国日本の主張を認めているわけではないのです。そこで、双方の主張を認め合うために話し合って、法律的に解決しようという努力を重ねましたけれども、遺憾ながら国際法の制度がまだ未熟であるために、こういう立地条件のところではっきりした境界の画定を示唆するような基準がまだできていない。そこで、法律論争を重ねるのではなくて双方が主権的権利を主張し得ると、主張をしている部分で重なった部分ができます。したがって、その重なった部分についてはそれぞれが自分の主張を半分ずつ主張するという実際的解決というのが今度の共同開発という考え方でありまして、こういう考え方は北海の大陸だな論争に関する国際司法裁判所の判決の中でも、こういう場合に一つの解決の仕方として共通の管轄権を持つ方法、共同で利用する方法、共同で開発する方法、そういうものが示唆されておるわけで、そういうものにのっとって解決しておるわけで、日本が一方的に韓国に対して日本の権利を譲って韓国の言うままになったというような御議論はよくあるんでございますけれども、これは国際法と現在あの地域に眠っております海底の地形の状況をごらんいただきますと、決してそうではないということは御理解いただけるものと信じておるわけでございます。
  271. 安武洋子

    安武洋子君 いろいろとおっしゃいますけれども一つはこの海洋法会議の非公式統合草案が、これが条約化されたときには日本はまさに有利になるではありませんか。それが一つです。  それから共同開発区域、わが国がもし二百海里を主張しているなら韓国も二百海里を主張してくる。共同開発区域韓国の二百海里からだってわが方にはみ出しているんですよ、どんなに客観的に見てもわが国の権利を害しているということははっきりしております。  それから、いま北海大陸だなの判決の問題が出ましたけれども、あれは等距離中間線、それを一般的にそれだけで行うというふうなことにしなくって、関連するすべての事項、これを考慮するとか、あるいは自然の延長、それから「衡平の原則」、合意、こういうものがうたわれた。だから、片方の自然延長だけ大幅に認めてわが国はあくまでも譲歩してよい、そういうことにはならないわけです。両者がぶつかり合ったときにそれをどう境界画定するかというときに「衡平の原則」をどう働かすかということでそれが四分の一になってみたり四分の三になると、オーバーラップするところがというふうなことじゃありませんか。  私、重ねてお伺いいたしますけれども、一般国際法上二国間条約というのは第三国の主権的権利を害してはならない、こういうふうになっておりますけれども、このとおりかどうかということをお伺いいたします。
  272. 中江要介

    政府委員中江要介君) そのとおりと思います。
  273. 安武洋子

    安武洋子君 第三国の主権的権利にかかわる問題、これを二国間で締結するということは国際法上違反にならないんでしょうか。そして、こういう状態で結ばれたというのは、第三国の主権にかかわる問題を二国間で締結する、こういう協定は有効な締結なんでしょうか、その点をお伺いいたします。
  274. 中江要介

    政府委員中江要介君) 一般論といたしましては、国と国が締結する協定は、その国と国とがそれぞれ主権のもとで持っている権利、権限に関連して合意をするわけでございますから、第三国の権利、権限に及ぶということはあり得ない、直接及ぶということはあり得ない。もし第三国の部分が関与をしてまいりますれば三国間の協定にしなければならないだろう、こう思います。
  275. 安武洋子

    安武洋子君 いまの御答弁、結局言葉の裏を返せば第三国の主権的権利にかかわる問題を二国間で締結するということは国際法上違反だと、こういうことですね、一般的に。こういう協定はあり得ない、あったら無効だと、こういうことですね、確認いたします。
  276. 中江要介

    政府委員中江要介君) そういう二国間で第三国の権利を第三国とかかわりなく処分するというような合意がございますと、その合意自身は二国間では国際法上は一応有効なものとして成立することはあり得ましょうけれども、第三国が自国の権利侵害についてその両締約国に対して抗議を申し込むでありましょうし、そういった場合の帰趨はもちろん権利を侵害した方に利があろうはずはないとこう思います。
  277. 安武洋子

    安武洋子君 パンフレット、これをお出しいただきとうございます。この九ページで、政府はこの「日韓大陸協定は、日韓両国だけに関係のある大陸棚に限って話合いを行い、合意したもので、中国の立場を損うことなく、」ということで、「中国の立場を損うことなく」と書いておられますけれども、中国の立場を損なうとか損なわないとかという判断は一体だれがするものなんでしょうか。
  278. 中江要介

    政府委員中江要介君) 客観的には国際法がするものだと思います。
  279. 安武洋子

    安武洋子君 それなら、なぜこういう書き方ができるのでしょうか。当事者である中国が入っていなくて、これは日本韓国だけ、そしてこのパンフレットを発行しているのは日本政府でございます。この日本政府が中国の立場を損なっているとか損なっていないかとかというふうなことを判断なぜされるんでしょう。お聞きいたします。  中国側から正式に佐藤・韓会談で抗議を日本側に伝えてきている、こういうふうに思いますけれども、どのように言ってきておりましょうか。
  280. 中江要介

    政府委員中江要介君) まず第一点は、日本国政府としてはこの協定が国際法に照らして中国の権利を侵害していないというふうに確信があるわけでありますので、中国の権利を侵すものでないとこれに書かれておるわけでございます。  他方、中国は何と言ってきているかという御質問ですが、中国はきわめて一般的な表現といたしまして、中国大陸から延びている東シナ海の大陸だなは、これは中国の了解なしにはいかなる個人も国もその開発にあるいはその資源に手をつけては相ならない。もしそういうことをするならば、それは中国の主権的権利を侵害するものだと、こういう言い方をしております。
  281. 安武洋子

    安武洋子君 一方で韓国の自然延長を認めると、そして中国に対しては等距離中間線を主張する、こういう立場では中国に対して毅然として等距離中間線を主張する、こういうことはできなくなるんではありませんか。
  282. 中江要介

    政府委員中江要介君) まず理論的な問題といたしましては、日本日韓南部共同開発に関す刈る協定を締結いたしましても、その二十八条の規定にございますように、これが日本大陸だなの境界画定に関する国際法的に最終的に画定したものでない、またこの境界画定が、国際法上これが最終的に画定したものでない、つまり立場もまたこの境界、共同開発区域の境界線もいずれも最終的な国際法上の解決でないということをはっきり留保しておりますので、これによって日本の法的立場が害されるということはまずないということははっきり言えると思います。  もう一つ中国との関係では、日本は中国との間にこの共同開発区域の西南部に大きな大陸だなを共有しておるわけでございますので、この境界画定の話はこれは中国といたさなければならないわけですが、いま話しておりますところは、いま問題になっておりますところは韓国と中国との境界線の韓国側部分について話をしてまとめたものでありますので、そういう意味で中国の権利を害していないし、中国との話し合いというものには何ら影響がない、こういうふうに認識しておるわけでございます。
  283. 安武洋子

    安武洋子君 私は政府の矛盾した態度をついているわけですよ。一方では韓国に正当な主張もしないで、自然延長をそのまま認めるというふうな共同開発に入る。一方では境界画定の問題みたいに等距離中間線を主張する。これじゃ政府の態度は矛盾してしまって中国に毅然とした態度がとれないんじゃないんですかと、このことを言っているんです。海洋法会議の草案が条約化された場合、これは東シナ海の境界画定について改めて関係国間で協議が必要になりますね。
  284. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私は、海洋法会議のいまの草案が正式に条約となろうとなろうまいと、何度も申しておりますように、この地域の大陸だなの開発には最も理想的な姿は関係国が話し合うことであると。したがって、今日でも日本と中国と韓国と朝鮮買主主義人民共和国が一堂に会して境界を決める、境界画定の話をする、これが理想的であると思います。その点では中国も日本も完全に意見が一致しておるわけですが、現実の国際政治環境がそれを許さない。そういう中でどういうふうにするかという一つのあらわれがこの協定でございます。したがって、海洋法会議の統合草案ができたから四カ国は話し合えると、そういったたぐいのものではなくて、四カ国が何事によらずお互いに主権を認め合って話し合いができるような国際政治環境になるかならないかということが問題であると、こういう意識でございます。
  285. 安武洋子

    安武洋子君 どちらにしても、これが条約化されれば私は境界画定が必要になりましょうと、そういう話し合いが必要になりましょうと、こう申し上げているんです。それは必要でございましょう。
  286. 中江要介

    政府委員中江要介君) それはですから、この統合草案が条約になろうがなろうまいが境界が必要なんです。なりましても話し合う気持ちのない国とは話し合いができないわけですから、これはやむを得ないと思います。
  287. 安武洋子

    安武洋子君 それでは、海洋法会議のこの非公式統合草案では、境界画定について合意が得られない場合は暫定取り決めを締結しなければならないと、こういうふうになっておりますけれども日韓大陸だな協定というのはこの暫定協定なのですか。
  288. 中江要介

    政府委員中江要介君) まだ発効していない条約のどの条項に当たるかということは、これは言えない話でございますが、条約が発効いたしまして関係国がすべてその条約の加盟国となってお互いにこの条約のもとで話し合いをしていくということになりますれば、これは当然その条約の規定に従ってそれぞれ境界画定なり何なり行われていくと思います。いまの時点ではまだそれをどういうふうに予見するかということは不可能な状況だと、こういうふうに言わざるを得ないと思います。
  289. 安武洋子

    安武洋子君 ですから、非公式統合草案のこの境界画定について合意が得られない場合は暫定取り決めを締結しなければならないという、こういう協定ですね。日韓大陸だな協定はもちろんこの暫定協定ではありませんねということを御質問申し上げております。
  290. 中江要介

    政府委員中江要介君) 日韓大陸だな協定は、この海洋法会議の統合草案とは無関係に現行の国際法にのっとって日本韓国とが話し合って決めたものでございます。
  291. 安武洋子

    安武洋子君 ではさらに、この境界画定で「関係国間に有効な協定が存在する場合には、」というふうになっておりますけれども、「その協定の規定に従い決定されるものとする。」という、この「有効な協定が存在する場合には、」云々の「有効な協定」とも違いますね。
  292. 中江要介

    政府委員中江要介君) これは違うとか違わないとかを決定するのは、恐らくこの条約ができましたときに、その条約の加盟国が決定する問題だろうと思います。一般的に協定が有効かどうかというのは、これは国際法に照らしまして有効に成立すべきものは有効であると、この一般論に立って申し上げるよりしようがないと思います。その立場に立ちますと日韓大陸だな協定は国際法上有効な協定である、これは間違いのないところだと思います。
  293. 安武洋子

    安武洋子君 日韓大陸だな協定は境界画定なんですか。私はここで読んでいるんですよ。境界画定で合意に到達することができないときに「暫定取極を締結しなければならない。」ということと、それから「関係国間に有効な協定が存在する場合には、」云々ということとでお伺いしているんですけれども、この「関係国間に有効な協定」になるんですか。境界画定の問題とも違うし、関係国ということになれば、境界の問題になれば中国も参加するというふうになりますけれども、「有効な協定」なんですか、そういう意味で。
  294. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私が申し上げましたのは、日韓大陸だな協定、これはさらに細かく言うと北部協定南部協定がございますが、いま南部共同開発協定が問題になっておりますので、この南部共同開発協定に即して申し上げますと、これはまず、日本韓国との間で締結された「有効な協定」である、これははっきりしております。この協定が境界を画定しているかといいますと、これは私が先ほど申し上げましたように国際法上最終的に画定しているものではない、これは二十八条ではっきりしているとおりでございます。
  295. 安武洋子

    安武洋子君 では、この草案の境界画定の規定である「適当な場合には中間線又は等距離線を使用し、かつ、すべての関連する状況を考慮に入れ、衡平の原則に従って、合意により行われるものとする。」これが条約化された場合にはもちろんこういう趣旨に従って境界画定をされるおつもりでございましょうね。
  296. 中江要介

    政府委員中江要介君) それは、最終的に条約化されました姿を見て決めることになると思いますが、また、相手国がその条約に拘束される意思を持っているかということもあわせて重要な要素だと思います。
  297. 安武洋子

    安武洋子君 過去の国会答弁の中でおっしゃっているわけなんですよね。やはり、「衡平の原則」に立って関連するすべての状況を考慮に入れなければならないということは国会の御答弁の中でも出ているわけです。それで私が聞いたんです。ですから重ねて伺います。「すべての関連する状況を考慮に入れ、衡平の原則」に従う、こういう中身なんですけれども、これはどういうことなんでしょう。具体的にお伺いいたします。
  298. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) 実は、「衡平の原則」というもの自身がかなりあいまいな内容でございまして、まさにそういう観点から、実は海洋法会議の中でも議論がございますし、「衡平の原則」が一番明確であるという主張も私どもしたわけでございますけれども、やはり「衡平の原則」の一番端的なものが中間線であるという考え方があるわけでございますし、それから、「衡平」というのは要するに、すべての関係国にできるだけ広くその大陸だなをとるんだというような国際司法裁判所の実は関係条文もあるわけでございまして、「衡平の原則」という場合に、やはり主張としては、地形とか地質とかあるいは海岸線の長さとか、資源の賦存状況とか自然の延長とか、いろいろなものを考慮しなければならない。そしてその中で合理的な、双方にとって公正な形で画定するということでございまして、その場合に、すべての関連ある事情あるいは特別な事情というものについては、いま申し上げたようないろんな考え方がございまして、これはやはり交渉の中でお互いに主張し合っていくということで相当弾力的な内容であるというふうに考えております。
  299. 安武洋子

    安武洋子君 では具体的にお伺いいたしますが、いま関連する考慮すべき事項ということでいろいろお挙げくださいました。それでは、境界画定の際に考慮すべき一つである自然の延長について、韓国の自然の延長は、政府としてはどこまでと御判断でございましょう。
  300. 中江要介

    政府委員中江要介君) 今回の協定交渉の過程におきましては、それを論ずることが日本立場を害するということでございますので、韓国は自然の延長ならここまでだろうというお話は一切しておらないわけでございます。
  301. 安武洋子

    安武洋子君 では、境界画定の際に考慮すべき一つである中国の自然延長は、政府はどこまでとお考えなのでしょうか。  それから、やっぱり同じことで、境界画定の際考慮すべき一つである自然の延長について、政府としてはどこまでだとお考えなんでしょうか。
  302. 中江要介

    政府委員中江要介君) まず、中国がどこまでかという、そういう具体的な問題について、残念ながらいままで中国政府からは何のヒントも与えられて……
  303. 安武洋子

    安武洋子君 政府として。日本政府として。
  304. 中江要介

    政府委員中江要介君) 日本政府は、したがいまして、この沖繩海溝は……
  305. 安武洋子

    安武洋子君 中国ですよ。
  306. 中江要介

    政府委員中江要介君) 一つのひだでありますから、中国が、自然の延長であって、ここまでだというような立場をとることは認められない。これは、一つ大陸だなを日本と中国が相はさんで対している。つまり、韓国に対しましてと同じ立場をとっておるわけでございますから、中国はここまでだろうということを中国ははっきりしておりませんのみならず、いわんや日本はそれを言う立場には全くない、というのが政府の基本的な立場であるわけです。
  307. 安武洋子

    安武洋子君 では、境界画定の際考慮すべき一つである、地質学的にという、そういう判断は、その国と地質学的に関係がある、こう見る基準は何なんですか。
  308. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) これはいろいろ地質学者に議論があるところでございまして、やはり、陸地に属する地質と、それから深海底に属する地質とございますし、それからその間に、いろいろ地質的に堆積層とか、私も非常に専門的な問題でございますからあれでございますが、いろいろ地質学的な議論があるわけで、そういうもので、自分の方にどれだけ帰属するかというような議論になるわけであると思います。
  309. 安武洋子

    安武洋子君 具体的にもう少しお伺いいたしますけれども、境界画定の際考慮すべき一つである地質学的には、韓国との関係のある大陸だなはどこまでと、政府としては判断なさるんでしょうか。
  310. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私どもは、そういう地質学的にどこまでかというようなことを、今回の協定を締結する場合には考慮に入れておりません。
  311. 安武洋子

    安武洋子君 今回の協定じゃないですよ。
  312. 中江要介

    政府委員中江要介君) 一般的にどこまでか、ということも考えておりません。なぜならば、この地域の日本韓国との間での話というのは、一つ大陸だなであれば、中間線が最も「衡平の原則」に沿うという考えのもとに、日本は、一つ大陸だなだから中間線という議論をしたわけでございます。
  313. 安武洋子

    安武洋子君 では、地質学的に中国と関係のある大陸だなはどこまでと、政府としては判断されるのか。  さらには、地質学的に、日本関係のある大陸だなはどこまでと、政府は判断されるのか、このことをお伺いいたします。
  314. 中江要介

    政府委員中江要介君) ただいま私が申し上げましたように日本としては、この辺は一つ大陸だなを四つの国が囲んで存在しているという立場でございますので、地質学的にどうであるからどうするというような考慮の余地がないという立場で臨んでおるわけで、それに対して反論がある国がありますれば、その国がその問題を取り上げて反論されるでありましょうが、日本としては、一つ大陸だなであるから、それぞれの国の間は中間等距離線で区分するのが最も正しい、という基本的な立場であるわけでございます。
  315. 安武洋子

    安武洋子君 いまの共同開発地域は、学者の中では、あれは日本列島から地質学的につながっていると、こういう説がほとんど定説になっておりますね。  さらに伺います。境界画定の際考慮すべき一つである地形学的に、こういうとき、その国と地形学的に関係があると判断する基準をお伺いいたします。
  316. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) 地形の問題は、これは結局大陸だながだんだん深海底の方にいく場合に、大陸だなの斜面とかフットとか、いろいろ議論がございますし、海溝の存在とか、そういうことでございまして、やはりある程度角度が急になっているところから、たとえば先ほど申したような六十海里の距離基準を計るとか、いろいろ専門家の案があるわけでございますが、これは一つの判断の要素というふうに考えております。
  317. 安武洋子

    安武洋子君 結局、確たる基準がいまお示しになれないわけですよね。  ですから、具体的に聞くわけですけれども、では地形学的にというときに、境界画定の際考慮すべき一つですからね、ですから大切な問題になってくるんです。それは、韓国関係のある地形はどこまでと政府は判断するのか、あるいは中国、日本、こういうふうなのはどこまでと判断するのか、こういうことは境界画定の際に考慮すべき一つとなってくるわけなんです。ですから、これを具体的にどこまでと判断されているのか、さらに重ねてお伺いいたします。
  318. 中江要介

    政府委員中江要介君) 具体的にこの問題の東シナ海の大陸だなに関しては、日本は等距離中間線でそれぞれ区分するのが日本立場からは最も正しいという立場でございます。そのほかの、四つの国のうちのほかの国がお互いに隣接しております場合には、湾口の、湾の入り口の切れ込み方だとか、そういったことがいろいろ問題になるでしょうが、日本の場合は相対しておりますので、この場合は中間線が妥当であるということを重ねて申しておるわけでございます。
  319. 安武洋子

    安武洋子君 そういうあいまいなお答えをなさるから困るんです。エカフェの調査でも、黄河と楊子江の堆積作用で形成されているというふうに、一定の地形学的な問題も出ているわけです。地質学的な問題だって出ているわけです。そういういろんなことを、関連するすべての状況をこれは考慮に入れなければならないんでしょう。  ですから、もっとよくわかっている問題でお伺いいたします。海岸線の長さについて、東シナ海大陸だなに関係する韓国の海岸線はどれくらいなんでしょう。
  320. 中江要介

    政府委員中江要介君) 存じておりません。
  321. 安武洋子

    安武洋子君 では、境界画定の際考慮すべき一つである、中国の束シナ海大陸だなに関係する海岸線の長さはどれくらいなんでしょう。
  322. 中江要介

    政府委員中江要介君) これも存じておりません。
  323. 安武洋子

    安武洋子君 では、いまと同じことを繰り返します。日本の海岸線の長さは幾らなんでしょう。
  324. 中江要介

    政府委員中江要介君) 外務省としては承知しておりません。
  325. 安武洋子

    安武洋子君 いま、境界画定の際にはすべての関連する状況を考慮に入れ、「衡平の原則」に従うと、こういうふうになっているときに、「すべての関連する状況」を私具体的にお伺いいたしました。こういう条件の基準すらもはっきりしない。海岸線のようなはっきりしているものもちゃんと資料もお持ちにならない。そういう状態の中で、なぜ中国にだけ等距離中間線を一方的にわが国が宣言することができるんでしょう。海洋法会議の統合交渉草案、これが条約化されたときにはどう対処なさるんですか。中国に有利とも不利とも不明なんでしょう、いかがなんですか。
  326. 中江要介

    政府委員中江要介君) 二つの問題があると思います。一つは、いま次々と先生が列挙されました要素は、草案の中で考えられている問題点であるということで、海洋法本部の井口参事官が説明しましたように、これはまだ成文化されておりませんし、慣習国際法として確立しているものでもないわけで、これは立法の問題として、いまそういうことが考えられているということでありますので、それはそういうふうにお受け取りいただくのが正しいと思います。中国との間で日本が中間線といっておりますのは、いまのところは韓国と中国との間の中間線から韓国側部分について、日本韓国が話をしたのであるから、中国の主権的権利は害してないと、こういう言い方をしておるわけで、これは韓国と中国との間の中間線の問題をそこで中国に対する説明で申しておるわけであります。  それはなぜかと言いますと、韓国と中国との間のあの地形にかんがみまして、いまの、将来の立法ではなくて、いま現在行われている国際法によれば、あの部分は中間線で境界を画定するのが、これが通常であるという前提であるわけでございます。それについて中国が、その線ではないというのであれば、韓国と話をされればいいし、また日本としてもそれを最も望ましいと思うわけですけれども、それがいま行われていない。日本と中国との関係はこれは先ほど来申しておりますように、これは全然ノータッチ、何ら触れずに、南西部の方については何ら主張もしておりませんし、中国はその抗議声明の中で、一般的に中国も自然延長論をとるということだけが言われておるわけで、それ以上具体的に、どういうふうにして日本と境界画定をするかということについてはまだ考えが出ていないわけでございます。日本側は中国との関係についてはまだ何にも言っていない、こういうことでございます。
  327. 安武洋子

    安武洋子君 そういう御答弁をなさりながら、あなた方は関連する状況として考慮しなければならない、境界画定に当たって関連する状況として考慮しなければならない既成事実をいまつくってしまおうとなさっていらっしゃるから、私はこのことを問題にしているんです。海洋法会議の草案が条約化されたとき、先ほどすべての関連する状況、この中で五十二年六月二日参議院の外務委員会で井口参事官が「それぞれの国の立場から、やはり自分たちは重要な要素であるということを当然主張するわけでありますけれども、」こういう御答弁をなさっていらっしゃる。それはそうでしょう。境界画定に当たっては、それぞれの国の立場からやっぱり自分たちにはこれは重要な要素であるぞ、こういう主張があるのはこれは当然なんです。そうすると、韓国共同開発区域韓国の中、この韓国の既得権、これを重要な要素として主張してくる、こういうことになります。韓国の既得権、これを主張するということは、日本が主張する中間線、この日本側にいまの共同開発地域があるのです。ここに韓国の既得権ができてしまって、境界画定のときに考慮すべき関連する事項、重要な要素だと韓国は言ってくるじゃありませんか。このことが十分に予測される、どうなんですか。
  328. 中江要介

    政府委員中江要介君) まず第一点といたしまして、海洋法会議が結論を出すまではいかなる既成事実も相ならぬということになりますと、海洋法会議の結論が出るまで境界画定も大陸だな開発も全部ストップする、いわゆるモラトリアムのようなことが国際社会で成立しておりますんであればともかく、そうではなくて、大陸だな開発というのは世界各地で次々と合意のできたところから実際は行われておるわけでございますが、そういう実際に開発をするに当たって海洋法秩序というものがいかにも未熟であるために方々に紛争があり、また未解決の問題で着手ができない。そういうことでありますから、いろいろの国が寄ってひとつきちんとした秩序をつくろうというのがいまの海洋法会議でありますから、この帰趨は確かに重要でありますが、それをすべて待たなければならないというようなものではなくて、それを待たずに開発されることがすべて既成事実であると、そういうふうな受けとめ方はやはり現実とは少し違うように思います。  次に、韓国がここで共同開発をしたことが既成事実として将来最終的に境界画定をするときに考慮に入れられるではないかということでございますけれども、この大陸だな、いま共同開発の対象になっております大陸だなの部分の、この持つ大陸だなとしての性格といいますものは、そういう共同開発ということを必要としたほどさように国際法的に非常に性格づけのむずかしい大陸だな、簡単に言えば一つ大陸だなか、中で切れている大陸だなかということでございまして、その部分については海洋法会議の草案を見ましても何ら回答が出てこない。結局は関係国間で合意で決めなさいということになっておるわけでございますので、その点はこの共同開発をするということが、将来日本側に決定的に不利になるというふうには私どもは受けとめておりません。これは日本が、改めて新しい条約が仮にできまして、そのもとで中間線を強硬に主張いたしましても、それが必ず正しくて韓国はその中間線より南には南下することができないというようなそういう境界線画定になるかというと、その前提になる大陸だなの性格が、この場所にある大陸だなが何かのぐあいですっかり様相を一変すれば別ですけれども、いまの姿で海底に眠っている限り、同じ議論になるわけでございますので、これはこの条約の成立によって大きく何かが変わってくるというふうには私ども考えていない、こういうことでございます。
  329. 安武洋子

    安武洋子君 そうおっしゃるなら、なぜ韓国の不当な自然延長というものを容認されるんですか。沖繩トラフ、ここで切れている、韓国の主張はこうなんでしょう。それなら私は通産省の資源エネルギー庁、五十一年七月にお出しでございますけれども、沖繩トラフの水深はどれぐらいございますか。
  330. 古田徳昌

    政府委員(古田徳昌君) この日韓共同開発区域にかかっております海溝の一番深いところで約千百メートルでございます。
  331. 安武洋子

    安武洋子君 いただいた資料には水深二百から千メートルの海溝と書いてあります。水深二百ならこれは旧大陸だなの定義でもこれは大陸だなに入ります。千メートル、こんなものがどうして海溝になるんですか。それが一点です。  それから百歩譲って沖繩海溝、ここで切れているとしたら、東はどこでどのように切れているんですか、水深は何メートルあるんですか、どういうふうにしてこれが決められるんですか、その点をお伺いいたします。
  332. 中江要介

    政府委員中江要介君) まず、東はどこで切れるかと言われますが、日本立場はあのみぞは飛び越え得ると、まさしく先生が言われたような主張を私ども韓国にしたわけです。二百メートルから千百メートルと、こういったものでどうして大陸だなが切れていると言えますか、これは一つ大陸だなじゃありませんかということを韓国に主張したわけでございます。で、したがってこの九州及び琉球列島と朝鮮半島との間に中間線を設けてこれを境界とすべきであるというのが日本立場であったわけです。ところが他方、韓国がこの沖繩海溝の二百メートルから千百メートルまで、そして海溝の幅が相当南の方は広がっておりますが、この地形を前にしてこれが一つ大陸だなで、このみぞがあってもそれは大陸だなを区分するものでないという主張は、これは国際慣例にのっとって、また国際法の自然延長の思想から見て認めるわけにいかないと、こういう反論をいたしました。  この双方の議論はあらゆる学説、論文、判例、慣行、そういったものを基礎にして足かけ三年間やったということは私が何度も申しておるわけですが、それが決着を見ないというところで、共同開発にという構想に移って実際的解決を図ったわけでありまして、私どもはいまでも日本の主張としてはこの海溝によって大陸だなは切れているものでないという主張はいたします。しかしそれがどこの国も認めなければならないほど強いものかどうかという点については、国際法的にはその法秩序が未熟であるために決め手がない、そういうことでございます。
  333. 安武洋子

    安武洋子君 韓国の反論ぐらい簡単ではありませんか。いろんなことに国際的、国際的とこうおっしゃる。それでは国連の定義、これがどうなっているか、これはいま自然延長というのは「コンチネンタル・マージンの外縁まで、」こういうことですが、これは「コンチネンタル・マージンの外縁」ということになれば、コンチネント、シェルフ、スロープ、ライズ、こう続くと、それでコンチネンタルライズ、このラストのとこですね、一番、コンチネンタルスロープよりも緩やかに海洋側に傾斜している海洋底の地域で、コンチネンタルスロープのふもとから通常水深二千メートルから五千メートルの範囲の深海にまで広がっている。なぜ沖繩のトラフ、わずか二百から千、そして東は全く不明確、こんなもので話がつかない、話がつかない。韓国に譲る必要がどこにあるんでしょう。これがおかしいです。  それから先ほどの御答弁に反論いたします。韓国がこういうところにつくっても既得権を言ってはこない、既得権というのがおかしい、こうおっしゃいましたね。しかし協定が調印されたのは七四年の一月です。この後の一九七四年七月二日、国際海洋法会議カラカス、ここで韓国代表が演説をしております。この演説の内容大陸だなのすでに得ている権利についてどのように演説しているか、これをお伺いいたします。
  334. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) 韓国がカラカス会期においては次のような趣旨の演説をいたしました。「自然の延長の外縁までがすべて大陸棚として沿岸国に帰属すべきである。」「朝鮮半島周辺海域のような状況では、近隣国間の大陸棚に対するクレイムは重複するが、かかる場合は関係国間の合意により解決されるべきと考えるが特別の合意がない場合あるいは特別の事情が存在しない場合は中間線の原則が適用されるべきである。」「相対する国の大陸棚の範囲に関する主張がくいちがったり、合意に到達できないような場合には、一九六九年の北海大陸だな国際司法裁判所判決が示唆している如く、「共同開発レジーム」による問題解決が考慮されるべきである旨主張」いたしました。なお韓国のこのような立場はその後も基本的には変わっておりません。
  335. 安武洋子

    安武洋子君 私は大陸だなのすでに得ている権利についてどのような演説をしているか、こうお伺いいたしております。
  336. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) そのようなすでに得ている権利ということについては具体的な演説はなかったように記憶いたします。
  337. 安武洋子

    安武洋子君 とんでもございません。私の方でちゃんと手に入れております。この中には、大陸だなの自然延長を主張しつつ、いかなる海底自然資源に対するすでに得ている探査及び採掘権に関しての主権は、影響を受けるべきでない、こう既得権の擁護を主張しているわけです。御記憶ございませんか。
  338. 井口武夫

    説明員(井口武夫君) その点についての記憶は私個身はございませんけれども、さらに調べます。
  339. 安武洋子

    安武洋子君 協定が調印されましたのは七四年一月です。その後の一九七四年の七月の二日、国際的な国際海洋法会議カラカスで韓国代表がこのようにすでに既得権を主張する、こう言っているんです。いかなる海底自然資源に対するすでに得ている探査及び採掘権に関しての主権は影響を受けるべきでない、私は当然境界画定のとき既得権を主張してくる、このことを予告している、政府としてはどう対処をなさるんですか。
  340. 中江要介

    政府委員中江要介君) 将来どういうふうになるかはこれからの成り行きに待つよりしようがないわけでございますけれども、一般論といたしましては新しいレジームができたときに、それができるまでのレジームのもとでなされた、つくられた秩序というものを大きくこわさないというのはこれは一般の考え方だろうと思います。今度の共同開発協定で、いまの先生の御質問ですと、いつも日本側のみが譲って韓国側のみが利益を得たと、そしてそれを既得権として守り抜くんじゃないかと、こういうふうなお立場でございますけれども、私が先ほど来申しておりますように、その前提になる大陸だなそのものの所属について、新しい統合草案が仮に正式に条文となりましても、いまのこの地域についてはっきりした基準を与えるには至らなくて、最後は関係国間の合意によれということになるわけでございます。  そういう場合に、日本の主張しております中間線が必ず保障されるということであれば、あるいは先生の言われるようなこともあり得るかとも思いますけれども、これはその前提になる大陸だなの認識の仕方がそもそも日韓両国で違うと、その違いを解決するようなものにはならないという見通しでありますので、これは日本側からいたしますと、韓国自然延長論でこの南の方まで韓国が単独で開発できるという立場から考えますと、中間線まで押し返しているということで、双方の立場が重なったところを共同で開発して折半するんでありますので、その既得権という言葉をもし言いますならば、既得権も五分五分で持っているということになろうかと思います。  で、問題は、こういう協定二十八条のような最終的な国際法上の立場を留保した形での共同開発構想あるいは共同開発というやり方、これが非常にまずいということでありますならば、海洋法の新しい条約ができようとできまいと、これを改善していく道は合同委員会その他協議機関があるわけで、それで改善していけばいいわけでございますし、このいまの協定でごらんいただきますように、この大陸だなの海底資源というのは非常に長期間の大きな事業でございますので、新しい条約ができたから全部御破算というようなことはこれは一般論として考え得ない、こういうふうに思います。
  341. 安武洋子

    安武洋子君 政府は中間線を捨てていない、こうずっと繰り返しておっしゃってきたんです。ここにいっても共同開発区域というのはずっぷり全部日本の中に入るわけです。中間線、これが動かないものだと、そうは断定は私もいたしておりませんよ。考慮すべきいろんな関連事項がありますから、だから日本に有利にだって動くことが、国際的にそういう条件になることだってあるわけなんです。そうすれば日本はますます不利になりますけれども、ですから、なぜ韓国の方にばかり立って物をおっしゃるんですか。韓国はすでに調印後にこの大陸だなの自然延長を主張しつつこういう既得権の擁護、これを主張しているんです。ですから、すでに自分たちはこういう既得権を放棄するものではないと予告しているんですよ。いまおっしゃたような御答弁なら、じゃ協定の中にこういう既得権については一切認めない、百歩譲ってもそういう条項ぐらいはお入れになるべきではありませんか。
  342. 中江要介

    政府委員中江要介君) 韓国側自然延長論を主張しつつ既得権を維持するという表現がもしそうだといたしますと、余り私は論理的にはわからない、理解のできない考えだと思います。韓国自然延長論を主張しつつということでございますれば共同開発は相ならぬのでありまして、この区域は韓国自然延長論に従って韓国がそもそも昭和四十五年に考えましたように、自分が一方的に開発できるというのが韓国立場であるわけですから、それを半分、中間線のところまで日本側に譲歩したというのが、韓国自然延長論からいえばそういう立場になるわけでありますので、これは既得権ということにはならなくて、もし既得権ということがあるといたしますれば、自然延長論ではあるけれども、その上ですでにいずれかの国と合意に達している部分があれば、それは自然延長論にかかわらず尊重していくというのであれば、これは論理的に理解ができるかと思います。これはしかし、そもそも韓国代表の発言そのものについて私ども手元にございませんので、それ以上御議論しても余り意味はないのかもしれませんが、いずれにいたしましても、この長期的な協定を両方の国際法上の立場の違いを乗り越えて、隣国同士でいつまでも紛争としておくことなく、実際的解決を図ったというのは、一九六五年の日韓基本関係条約の精神に沿った、紛争を話し合いにより解決し、かつ双方の利益のために海底資源を有効利用するという目的に沿ったものであると、こういうふうに私どもは一貫して認識しているわけでございます。
  343. 安武洋子

    安武洋子君 中間線論はたな上げ、相互の立場は害さない、こう言いながら実際にはわが国の主権を放棄している。このことは私は申し上げました。そして、韓国の既得権を認めることがいまからわかっている条約です。外務大臣、先ほどから私が韓国代表大陸だなの自然延長を尊重しつつ既得権の擁護、これを協定調印後に国際海洋法会議でちゃんと演説をしている。こういうことについて大臣の御所見を伺いとうございます。
  344. 園田直

    国務大臣園田直君) 中江局長がしばしば申し上げておりますとおり、共同開発によってわが国の中間線の主張を損ねるものではないという一カ条が入っておりますから、中江局長の答弁で妥当であると考えております。
  345. 安武洋子

    安武洋子君 わが国の主権を損ないっぱなしではないですか。そして、こういうことを認めるからこそ中国側は共同開発区域韓国側の既得権、こういうものを盾に日本に譲歩を迫ってくる、こういうことだって起こり得るわけなんです。そのときに日本政府としては毅然とした態度がとれないじゃありませんか。この点はどうお考えなんでしょう。
  346. 中江要介

    政府委員中江要介君) まだ中国側が自然延長論だと、しかもそれは東シナ海大陸だな全域についての自然延長の理論だということを言っている以上に、たとえば北朝鮮なり韓国との間をどうするのかということについても具体的な所見が出ておりませんので、いまここで中国との間でどうなるかということを予見することは時期尚早と思います。ただ日本といたしましては、韓国に対して主張をしましたのと同じように、あの沖繩海溝の存在はあの大陸だなを二分するものではない、一つ大陸だなの上に日本と中国が相対して接しているという立場で、もし将来交渉が持たれるときにはそういう交渉をするという基本方針は申し上げられます。  で、再々日韓大陸だな協定日本主権を放棄したということをおっしゃいますけれども、これは決してそうではないというゆえんのものは、いままで何度も申し上げましたように、そもそも日本が国際法的に見て客観的に一〇〇%中間線まで主張し得るものをもし譲ったのであれば、これはおっしゃるように主権の放棄になるかもしれません。しかし、国際法的に見て客観的に中間線まで必ず間違いなく日本主権的権利のもとにあるんだと、それが確立されていない国際社会の情勢であるということをぜひ念頭に置いていただきたいと、こう思うわけでございます。   〔委員長退席理事福岡日出麿君着席〕
  347. 安武洋子

    安武洋子君 どうして都合がいいときだけ境界画定の話をお持ち出しになるんですか。境界画定で中間線だと、これはたな上げにしたと。共同開発区域なんでしょう。共同開発区域を私はもし仮に境界画定をしたときにはわが方の中に全部入りますよと、こういうことで申し上げている。あなた達には申し上げました、共同開発を認めるものではないと。しかし境界画定ではない、共同開発になったときになぜ基線二百海里を主張なさらなかったんだと、日本に権益を守ろうと思えばこれが一番有利な主張ではなかったのかと、このことも申し上げました。ですから私が申し上げているのは、将来、それも遠くない将来です、境界画定、こういうときに大きな問題を残す、境界画定の大紛争、この火だねを残す、こういうことになるということを申し上げているわけなんです。日本政府は一体将来、境界線画定、等距離中間線、等距離中間線、こうおっしゃる、それを貫かれるおつもりなんですか、明確にしていただきとうございます。
  348. 中江要介

    政府委員中江要介君) これも何度も申しておりますが、等距離中間線を言うためには、この大陸だなは一つであると、日本韓国日本と中国との間で共有している一つ大陸だなであるという共通の認識に立てばこそ中間線理論が主張し得るわけでございまして、韓国との間で苦労いたしましたと同じように、中国との間でこの大陸だなの開発の話をしますときに、果たして中国がこれは日本と中国との間に横たわる一つ大陸だなだと、だからその境界線は合意で決めようという主張に立ちますれば、これはもう日本は言うまでもなく中間線論を貫くわけでございます。そうでなくて、中間線論を論ずる以前の問題として、日本と中国との間には共通の大陸だなはないというような、ちょうど韓国が当初主張したようなことをもし中国も主張いたしますれば、そちらの方の議論をしなければならない。そのときは私ども韓国との間でやりましたと同じように、この沖繩海溝というみぞは深く入っているけれども、これは一つ大陸だなを二分するものではないという議論をするわけで、そのときには中間線論か何かという話はないわけでございます。
  349. 安武洋子

    安武洋子君 境界を画定するときには相互の立場を害さない、二十八条でこれがうたってありますね。こういう特別の二十八条を設けながら、じゃなぜ、海洋法会議の結論が出るまでと、こういう規定を置かなかったんですか。
  350. 中江要介

    政府委員中江要介君) その御議論も協定を御審議いただいたときにいろいろございました。しかし、海洋法会議の帰趨というのはまだまだ未知数でございまして、現にこの協定が締結されました七四年のこの協定署名直後の国会における議論におきましても、海洋法会議を待てばその夏に結論が出るじゃないかと、仮にそれが出なくても翌年に出るじゃないかという御議論がございましたが、それ以来一九七八年になりますがまだ出ないわけでございます。これは各国の主張が、何も日本韓国が争っているような問題ばかりでなくて、大陸だなを全然持たない内陸国の問題もございますし、またお互いに隣り合わせの国の境界画定の問題もございます。また、開発の技術的なあるいは財政的な能力のまだ足りない国の大陸だな資源に対する関心もございまして、非常に複雑に入り組んでいる。それはやはり、国際会議でだんだんと煮詰まっていくことは望ましいことでございますけれども、その行方について確たる見通しがないわけでありますので、この共同開発大陸だな協定につきましては、双方の立場を国際法的にコミットしないということをはっきりすることで十分であるというのが私どもの判断であったわけであります。
  351. 安武洋子

    安武洋子君 国際海洋法会議の動向ということを私が最初にお伺いしたのは、基線二百海里までは、大陸だながあろうとなかろうとこれは自分の国の大陸だなだと主張できる、こういうふうに国際海洋法会議の動向が有利に動いてきているんです。こういう有利な動向がある。政府が何とおっしゃろうと、日本に有利な結論が出る、こういうことが明らかだ。それなのに、海津法会議の結論が出るまで、こういうことも明記なさらない、暫定期間すら明記をしないで五十年、こういう長期にわたって日本主権を、しかも乱暴な韓国の主張なんて、反論しようと思えばすぐに反論できる。それなのに、乱暴に放棄する。こういうふうな協定の批准は、これは認めるわけにはまいりません。こういう協定は当然破棄すべきだ、こういうふうに思いますが、外務大臣、いかがお考えでしょうか。——外務大臣に聞いております。
  352. 中江要介

    政府委員中江要介君) まず、協定そのものにつきましては、協定の御審議は国会では御承認をいただいておるわけでございます。日本が二百海里までの大陸だなが主張できるじゃないかとおっしゃいます点は、確かに太平洋あるいは日本海に面しまして、広い公の海に向かって延びていくところに対しましては、もしいまのような草案で固まっていきますれば、主張はできると思います。しかし、先ほど海洋法本部の井口参事官も説明しましたように、相手の国が前にはだかつているときの問題は、そう簡単に二百海里ということにならないことは、これはもう常識的に言ってもおわかりだと思います。  いずれにいたしましても、この条約ができまして海洋法会議が幸いにまとまりまして、そして多くの国がこれに署名をするなり、その後加入をするなり、署名した国が批准をするなり、そういうふうにして国際的にだんだん効力を発生していくまでにはまだまだ長い道のりがあると思います。したがいまして、日本といたしましては、いま結ぶ協定は、いま有効な国際法のもとでどこに出しても恥ずかしくないものにするということでこの協定を締結しておりますし、現行国際法によれば、これが日本の一方的な主権の放棄であるというふうには見れないということを再々申し上げておるわけでございます。
  353. 安武洋子

    安武洋子君 外務大臣に御答弁求めております。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕
  354. 園田直

    国務大臣園田直君) いま局長が申し上げましたとおり、すでに協定の署名は終わり、批准は願って国内法の問題でございますので、ぜひひとつ御審議をお願いしたいと思います。
  355. 安武洋子

    安武洋子君 どこに出しても恥ずかしくないどころか、私は国際的に物笑いの種だと思います。この外務省のパンフレット見ていただきとうございます。三ページです。読み上げます。「我が国の場合、李承晩ラインの例を引くまでもなく、海上で韓国との間にいろいろな係争問題を抱えた経験があります。」過去形です。いま韓国との間に海上で何も問題がないんですか。
  356. 中江要介

    政府委員中江要介君) 海上というお言葉の定義の問題でございますけれども、もし海上というものが海の水の存在するところで何があるかとおっしゃいますれば、これは日韓漁業協定のもとでの漁業操業というものが一番頭に浮かぶ問題でございます。
  357. 安武洋子

    安武洋子君 それだけですか。
  358. 中江要介

    政府委員中江要介君) この漁業操業をめぐりまして、いろいろの問題があることは、これは漁業共同委員会の席上で毎年双方でレビューしておりまして、双方とも沿岸漁業の盛んな国でございますので、漁業秩序についていろいろの問題が起きているということは承知しております。
  359. 安武洋子

    安武洋子君 よもやお忘れではないと思います。五月の三十日にここで総理に対しまして日韓の紛争になっている竹島の集中審議を行いました。このときにも、竹島二百海里から漁民が締め出されて大変な目に遭っている、そういう実情も出ました。しかし、私はこのとき竹島が韓国の武力によって占拠されている、こういう状態をお話ししました。これをお認めになりました。戦闘機による威嚇あるいは発砲事件三件、武力の先制行使によって竹島がいま韓国に侵略されている、こういうことを確認させていただきました。私が韓国の武力行使によって占領されている、竹島はこういう状態ではないかとこう質問したのに対して、総理はおっしゃるとおり韓国政府が竹島は実力をもって支配しておる、こういうふうに御答弁をされましたし、韓国が竹島を占領してから二十六年です、明らかに侵略されている、こういう状態をどう考えるか、こう御質問したのに対して、総理はまことに遺憾な事態である、このように存ずるわけですが、何といたしましてもわが国の固有の領土であるというたてまえは貫き通さにゃならぬ問題である、こういうふうに御答弁なさっていらっしゃいます。  外務大臣にお伺いいたしますが、総理がお認めになったように、竹島は韓国の武力によって侵略されている、こうお考えでございましょうか。
  360. 園田直

    国務大臣園田直君) 私もそのように考えておりますから、日本韓国の間で紛争があった場合には平和的に話をつけると、こういう線から逸脱をいたしておりますから、この問題については早急に交渉をするつもりでおります。
  361. 安武洋子

    安武洋子君 国連で決議をされました「侵略の定義」がありますが、「侵略の定義」の三条(a)はどうなっているか、お知らせいただきとうございます。——時間がかかるようですから、私の方で読み上げます。(a)は「国家の軍隊による他の国家の領土に対する侵入もしくは攻撃、一時的なものであってもかかる侵入もしくは攻撃の結果として生じた軍事占領または武力の行使による他の国家の領土の全部もしくは一部の併合」です。竹島の事態というのは、この「侵略の定義」にも該当するようなものなんです。しかも、竹島は一時的なものではないんです。二十六年にも及んでいるんです。まさにこの国連の侵略、これに該当するわけです。  さらに聞きます。「侵略の定義」の三条(g)項、これはどうなっておりましょう。
  362. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 三条で(a)から(g)まで種種の規定がございますが、それらを含めまして、(g)項では、「上記の諸行為に相当する重大性を有する武力行為を他国に対して実行する武装集団、団体、不正規兵または傭兵の国家によるもしくは国家のための派遣またはかかる行為に対する国家の実質的関与」、このような規定ぶりとなっております。
  363. 安武洋子

    安武洋子君 いまお読みのように、正規の軍隊でなくても、「不正規兵」、「傭兵」、「国家によるもしくは国家のための派遣またはかかる行為に対する国家の実質的関与」、この「国家の実質的関与」については、韓国はこれはもう明白です。   〔委員長退席理事福岡日出麿君着席〕 これは韓国は五月の十七日、韓国国会で除鐘哲国防部長官は、韓国政府は独島——竹島ですね、——に対する何らかの侵攻がある場合、当然自衛権を発動し、徹底的に防衛する。有事の際は各種の増員計画ができており、これを実践に移すことができる準備を完了している、こういうことを言っております。国家の関与もまことに明白です。ですから、竹島に対する韓国の侵略というのは、これは国連で定義をされている侵略にまさに該当する、こういう行為になります。  そこで、私お伺いをいたしますけれども、いま外務大臣は侵略だというふうにお認めになりました。侵略ということになれば、私は、これは国際信義に反する行為であると思いますが、いかがでございましょうか。外務大臣の御答弁をいただきます。
  364. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 侵略という概念につきましては、一般には他国に対する違法な武力の行使を中心とする行為と考えられておりますが、国際法上一般的に確立された法的概念といたしまして「侵略の定義」があるわけではございません。先ほど先生御指摘の国連における「侵略の定義」についての決議の採択でございますが、これは国連憲章第三十九条が示している安保理事会による侵略行為の存在の決定に際して、安保理事会のガイドラインとして設けられたものにすぎないわけでございまして、安保理が、侵略行為が存在するか否かは、個々の状況に応じて決定すべきものとされているわけでございます。  なおわが国といたしましては、竹島の事態は、わが国固有の領土であるという立場でございまして、したがって、竹島は現在韓国によって根拠なく不法に占拠されている事態であると、かように認識している次第でございます。
  365. 安武洋子

    安武洋子君 いま私が、国連で決議をされた「侵略の定義」ということをわざわざお断りしたはずです。で、武力の先制行使があったということも、事実問題でこの前確認をさせていただいた。だから、この三条、これが竹島のどこと違うんですか。「国家の軍隊による他の国家の領土に対する侵入もしくは攻撃、一時的なものであってもかかる侵入もしくは攻撃の結果として生じた軍事占領または武力の行使による他の国家の領土の全部もしくは一部の併合」なんです。竹島は「一時的なもの」でない、二十六年も続いている、このことを御指摘しました。  そして三条の(g)項、これは正規兵でなくてもいいんだと。「武装集団」、「傭兵」、これが「国家によるもしくは国家のための派遣またはかかる行為に対する国家の実質的関与」ということで、私は、韓国国会で、除鐘哲国防部長官、この方がどうおっしゃっているか。実質的に韓国国家による武力の威嚇、こういう問題をちゃんと取り上げました。  だから私は、これは国連で定義をされている侵略、これに該当する。この竹島の状態はこういう侵略だということで、国際信義に反する行為になりませんかということを外務大臣にお伺いしております。外務大臣答弁ください。——外務大臣にお伺いしております。
  366. 大森誠一

    政府委員大森誠一君) 私の方からは、事務的にこの経緯について御説明申し上げますと、繰り返しになりますけれども先生御指摘の「侵略の定義」と申しますのは、あくまでも国際連合の安全保障理事会が侵略行為の存在を決定するに際してのガイドラインとしての性質を有するものでありまして、ある行為が侵略であるか否かがただいまの定義によって直ちに決定されるといった性質のものではございません。
  367. 安武洋子

    安武洋子君 昭和三十五年安保国会、これで当時の岸総理は、侵略とは何かということをはっきりさせよ、こういう質問に対して、不法に日本の領土、領空、領海に対しまして、武力を用いて計画的、組織的に侵してくることを侵略と言います、こう御答弁なさっていらっしゃいます。竹島というのは、日本主権行使、これが武力によって妨げられている。これが侵略でないと言うなら、岸総理答弁と全く食い違います。外務大臣いかがでございますか。
  368. 園田直

    国務大臣園田直君) 国際法的には条約局長が答えたとおりでありますが、われわれはこれを不法占拠と解釈をいたしております。日韓条約ができたときには、すでにいまの事態にあったわけでありまして、武力をもって侵攻してきたわけではない、不法占拠であります。しかし、それは国際信義はもちろん、日韓の信義にも反するということはお説のとおりであります。
  369. 安武洋子

    安武洋子君 国連で決議をしているこの定義に当てはめてみてもぴったりなのに、お認めにならない。大変おかしいです。最初お認めになった。  具体的に、では私はお伺いいたします。  どうして竹島から韓国を撤去おさせになりますか。不法だとお認めになっていらっしゃる、国際信義に反する、こうお認めになった。では、具体的にどういう手段を講じて韓国を竹島から退去する、こういうことをおさせになりますか。外務大臣、お伺いいたします。
  370. 園田直

    国務大臣園田直君) 紛争はすべて平和的な話し合いで解決するということになっておりますから、平和的な話し合いであくまで解決をいたします。そうして、あるいは第三者の調停であるとか、あるいは国際裁判所に提訴するとか、あるいは場合によっては国連に持ち出すとか、そういう手段があると存じます。
  371. 安武洋子

    安武洋子君 アメリカは韓国に領土を侵略もされておりません。しかし、アメリカの下院では、アメリカ政界の買収工作事件の中心と見られております金東祚元駐米大使、現在は大統領補佐官です、この宣誓証言に応じなければ、六千万ドルに上る対韓経済援助を削減もしくは打ち切る、こう決議をしているではありませんか。領土を侵略されながら、私は、なぜこういう毅然とした態度を日本政府も打ち出しになれないのか、大変不思議に思います。外務大臣いかがでしょうか。
  372. 中江要介

    政府委員中江要介君) 竹島の問題は、いま外務大臣もおっしゃいましたように、一九六五年に日韓関係を正常化いたしますときには、すでに韓国の不法占拠のもとにあったわけでございまして、その由来は、先般総理もこの委員会の集中審議のときにおっしゃいましたように、占領中のマッカーサーラインから始まって、李承晩ラインというものに受け継がれ、そして日本から見ますと、韓国の不法占拠というままで日韓正常化の長い交渉がございまして、この問題だけが決着を見なかった。で、最後の落ちつき先は、この問題は紛争解決に関する交換公文によって解決しようということになっておるわけでございますので、先ほども大臣がおっしゃいましたが、いま平穏無事にわが方が実効支配しているところに、どこかの国が急遽武力をもってこれを占領し、侵略してきたという問題とは違うわけでありまして、正常化のときにすでにこの紛争、この竹島の領有権については韓国韓国の主張をしている、しかし日本は固有の領土だという主張をしているという、両方の主張を十分議論し合って、結論を見ないままで、これは紛争解決の交換公文に従って解決していこうと、こういうことになっておりまして、その交換公文によりますと、まず外交上の経路により解決の努力をするということでありますので、そういう平和的手段の手順を踏んで解決していく。  で、アメリカがいま金東祚元大使の証言問題で下院が決議をいたしました。そういうことが日本にできないかというような御意見に承りますけれども、アメリカと韓国関係は、これはアメリカと韓国関係でございまして、日本韓国との間には日韓関係、これを律する基本関係条約及び国交正常化のときのいろいろの取り決めがあるわけでございますので、それを忠実に遵守して、そしてそれに沿わない部分、それは厳しく追及していく、そういう態度で臨んでいるわけでございます。
  373. 安武洋子

    安武洋子君 なぜあなたがそういうことまで答弁なさるあれがあるんですか。私は外務大臣にお伺いしている。国際信義に反するとお認めになったと、韓国の竹島に対する侵略というのは、これは国連で決議された侵略に該当するような行為である。そうすると、私は何も平和的に解決をしてはいけませんと言っていません。平和的に解決をするという立場を貫いていただくのは、これ結構です。しかし、侵略をされたら当然日本としても対抗の権利がある、これは外務大臣、こういう権利があるとお思いになりませんか。——外務大臣にお伺いいたしております。
  374. 園田直

    国務大臣園田直君) 毅然たる態度をもって折衝いたします。
  375. 安武洋子

    安武洋子君 国際信義に反するというふうな行為をとっている相手に対しては、これは対抗の権利、あるのがあたりまえです。そうはお思いになりませんか、重ねて外務大臣にお伺いをいたします。
  376. 園田直

    国務大臣園田直君) 毅然たる態度をもって折衝いたします。
  377. 安武洋子

    安武洋子君 毅然たる態度というのは対抗の権利をお認めになったと、こう解釈させていただいてよろしいんですか。
  378. 園田直

    国務大臣園田直君) 日韓の交換公文によって平和的に話し合いをやろうということでありますから、その話し合いがどういうふうに進展していくか、それを前もって聞かなければこういうことがある、ああいうことがあるということは答弁すべきことではないと考えております。
  379. 安武洋子

    安武洋子君 韓国は自分の固有の領土だ、紛争と認めてない、交換公文で処理できないではありませんか。相手が二十六年間同じテーブルに着いてこない。だからいまのままでは、単なる毅然たる姿勢というふうなことでは解決できないということだけは明白なんです。だから私は、園田外相御自身がおっしゃった経済援助や竹島問題が議題に上らないような日韓定期閣僚会議の延期などを含めて検討する、こう御自身で御答弁国会でなさっていらっしゃる。それなら何をなさるのかと。私は必ずしも経済援助を打ち切れとも、私の方から提案しているわけではありません。園田外相自身がこう御答弁をなさっていらっしゃる。侵略に対しては毅然たる態度をとる、国際信義に反する、こういうことについては対抗の権利がある。そうすれば領土回復のためにどういう手段をとられるか、いままでの交換公文、これだめです。相手が幾ら待っても二十六年も同じテーブルに着いてこないのに話し合いができるはずがないではありませんか。だから大臣としては、こういう発言に対してもどういう責任をおとりになって、どう具体的に手段を講じられるのか、ここのところを私はお伺いをいたしております。
  380. 園田直

    国務大臣園田直君) いままでどおりにやるとは申しておりませんので、毅然たる態度をもって折衝いたしますと答えておるわけであります。さてどうやるか、ああやるかということは、一言でわかりやすく言えば手のうちを見せるということでありますから、具体的なことは申し上げられません。
  381. 安武洋子

    安武洋子君 手のうちをお見せになればぐあいがお悪いのなら私は手のうちを見せてくださいとは申し上げません。しかし、ではいつごろまでに解決ができるんですか、その手のうちで。
  382. 園田直

    国務大臣園田直君) これからやる折衝でございます。
  383. 安武洋子

    安武洋子君 何とおっしゃったの、聞こえないです。
  384. 園田直

    国務大臣園田直君) これからやる折衝でございます。
  385. 安武洋子

    安武洋子君 ですからいままでどおりではいかない、手のうちは見せられない、折衝する。しかし、こういう手のうちなら竹島問題は遠からず皆さんに心配をかけなくてもよいようになりましょう、こういうふうに御答弁が出てこなくちゃおかしくありませんか。手のうちは見せられない、交渉はこれからやってみる、いままでとは違うのだと言っても私どもは何をしてくださるのか、具体的にどう竹島がなっていくのか、このことがわからないではありませんか、いかがですか。
  386. 園田直

    国務大臣園田直君) いままでどおりにはいたしません、決意をもって折衝いたしますと、こう申し上げているわけでありますが、さてどういう方法でいつごろからやって、どうやってこうやって、いつごろこうやればいいということでは外交にならぬと存じます。
  387. 安武洋子

    安武洋子君 大変申しわけありません。いま理事さんが来られてごちゃごちゃ言われたので、答弁が聞こえなかったんです。それでもう一度……(大谷藤之助君「持ち時間は超過しております。」と述ぶ)
  388. 安武洋子

    安武洋子君 委員長から「五時三十四分までにしてください、委員長。」とこういうふうになっておりますので、もう一度御答弁をお願いいたします。
  389. 園田直

    国務大臣園田直君) もう一遍答弁をいたします。いままでと違った決意をもって折衝をいたします、こういうことを申し上げているわけで、さていつごろからどうやってこうやって、結果はどうなっていつごろまでに解決いたしますということでは外交にならぬと存じます。もっと詳しく言えばこれ以上は聞かないでほしい、こういうことであります。(笑声)
  390. 安武洋子

    安武洋子君 これ以上聞かないでほしいとおっしゃいます。しかし、いま竹島から締め出されている漁民の状態というのはそんなに悠長なものじゃないんです。現実にもうイカが逃げてしまう、それからシイラ漁に対する韓国船の脅威だってある。漁業の問題については好転をしているとこうおっしゃいました。しかし、私どもは調べてみました。好転している中身何にもないじゃありませんか。海上保安庁に行ってみても、運輸省に行ってみても、外務省に行ってみてもどこも責任をお持ちになろうとしない。これでは漁民は安心して漁にも出られない。結局、日韓大陸だなが成立するまでは目こぼししている、これが好転の内容ではありませんか。  こういうことでは漁民も安心できないし、私たちも竹島の問題について大臣からもう少しちゃんとした御答弁をいただかないことには竹島の問題が、幾ら毅然たる姿勢をおとりになる、こうおっしゃっても解決、これができるだろう、そういう心境にはならないわけです。重ねてお伺いいたします。竹島について本当にどういう決意で臨まれるのか、漁民のいまの実情も踏まえてお答えをいただきます。
  391. 園田直

    国務大臣園田直君) いま困っておられる漁民の方々の長きにわたる心情を踏まえ、毅然たる決意をもって折衝をいたします。
  392. 安武洋子

    安武洋子君 私、大臣を前に置いておいて大変申しわけございませんけれども、こういう委員会の運営の仕方について大変不満がございます。私は、十時間の時間要求をいたしました。しかし、きょうは五時三十四分までにしてくださいという委員長のこれをいただきました。私は、まだ質問時間を残しております。市川議員もあと十時間、質問時間を残しております。いつも私どものこの質問時間について、大変質問時間を短縮なさろうとする、圧縮なさろうとする、そういう自民党さんの態度には、断固、私はここで抗議を申し上げておきます。  大臣には大変失礼をいたしました。先ほどからのやりとりで、私は、最後の自分の主張を申し上げるのを忘れておりましたので、この主張だけをきちんと申し上げさせていただきまして、質問は終わらせていただきます。  私は問題にしているのは、園田外務大臣御自身が国会の御答弁の中で、経済援助や竹島問題が議題に上らないような日韓定期閣僚会議の延期など含めて検討する、一つはこういう答弁があるんです。これぐらいのことはなさるべきではないか、経済援助の打ち切り、むずかしいかもわかりません。しかしアメリカはやっております。これはいささか内政干渉がましいです。しかし領土を侵略されているというふうな状態でもないのに主権を侵されれば、どこの国だって毅然たる態度をとる、領土回復を図らなければならない、そういう責めを負われる外務大臣としては、私は、先ほどの御答弁では納得がいかないわけです。御自分の言われた、竹島問題が議題に上らないような日韓定期閣僚会議の延期など含めて検討をする、あるいは経済援助の問題、これも含めて検討する、こうお答えになっていらっしゃいます。聞かないでほしいとおっしゃいましたけれども、しかし日韓定期閣僚会議の延期ぐらい、こういうものは検討の中に含まれておりましょうか。これも含めて、最後の決意をお伺いいたします。
  393. 園田直

    国務大臣園田直君) 私、発言したことを取り消しはいたしておりません。安武先生の発言の真意は十分理解をいたしております。そういう意味において、毅然たる決意と態度で折衝をいたします。  以上でございます。
  394. 安武洋子

    安武洋子君 ちょうど、おっしゃるとおりの三十四分ぴったりでございます。ですから、私はあとの質問時間を保留いたしまして、本日の質疑はこれで終わらせていただきます。
  395. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は、七時間の時間をいただきました。  そこできょうは、総論の序論的なものから入っていきたいと考えているわけでありますが、韓国の現在の政治状況、これはだれが見ても強権政治、人権抑圧の政治だと言うぐらいひどい実態になっています。その韓国と今後五十年間の長きにわたって大変に問題のある共同開発をやろうとしている現政府、とりわけ外務大臣として、韓国の今日の政治状況についてどのように認識をされておられるのか、その点をまず第一に伺いたいと思います。
  396. 園田直

    国務大臣園田直君) 外から見ればいろいろ問題がありますが、一応韓国の政治情勢は安定しておると思います。
  397. 矢田部理

    ○矢田部理君 政治状況が安定しているか不安定なのかということを伺っているのではなくて、その政治の質を私はお尋ねをしているわけです。どのように考えられますか。
  398. 園田直

    国務大臣園田直君) よその国の政治の質について外務大臣がとかく批判すべきことではないと考えております。
  399. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、ぜひ伺わなければならないのですが、韓国の問題というのは、単によその国だけの問題でしょうか。  先般、アメリカのワシントン連邦地裁は、韓国の在米実業家である金漢祚氏に対して対米買収事件にかかわる有罪の判決を下しました。この判決は在米韓国大使館の金相根参事官が対米議会工作資金として六十万ドルを流した、こういう事実にかかわるものであります。これだけではなくて、アメリカの対米議会工作について、韓国の政界筋から、あるいはまた直接大統領・青瓦台がかんでいると言われていますが、多額の政治工作資金が流されている指摘があることは御存じのとおりであります。しかも、これはアメリカだけのことではありません。日本にかかわる問題としても、具体的に幾つかの問題が指摘をされています。たとえば、韓国に非常に親しい首相経験者二人が韓国政界から献金を受けているという事実の指摘も最近ございました。こういう状況について、それならば外務大臣はどう考えておられますか。
  400. 園田直

    国務大臣園田直君) 米国と韓国の問題、遺憾なことでありますが、これは米国と韓国の問題でありますから、外務大臣がとかく言うべき筋合いではございません。わが国内の問題についてはいろいろ評判がありますが、事実かどうか、よく知っているところではございません。解明されている途中だと思っております。これまた外務大臣の所管ではございませんので答弁は……。
  401. 矢田部理

    ○矢田部理君 韓国の国内問題だからといって軽視できない問題があることはもうあるわけであります。それは人権や民主主義が根本的にやっぱり侵されようとしているときに、単に他国のことだからということでいいのでしょうか。日本とのかかわり合いでも金大中事件がございました。これは、日本政府の姿勢も当然責められなければなりませんが、一方では、韓国側の妨害によっていまだに解明をされていません。とりわけ、日本の警視庁が有力な容疑者として指摘をした者に対してすら、韓国は本格的な捜査を行っていないのです。そして、一方的にこれを打ち切ってしまった。日本主権と金大中氏の大変有力、貴重な人権を侵害しておきながらやみに葬ろうとしているのも、これまた韓国政府筋であります。こういう事実についてどう考えられますか。
  402. 中江要介

    政府委員中江要介君) 委員長……。
  403. 矢田部理

    ○矢田部理君 いや、外務大臣の基本的見解を聞くので、あなたの見解を聞いておりません。
  404. 中江要介

    政府委員中江要介君) 前提として、いま先生のおっしゃいました金大中氏事件につきましては、韓国がこれをやみに葬ろうとしているという御評価は私どもの見解とは違うわけでございまして、御承知のように、あの事件は日本国内で起きた事件でございます。想定されております加害者も、日本人が中にいるというような容疑者はまだ出ておりません。被害者は韓国人でございまして、そういう状況のもとで起きた非常にむずかしい刑事事件でございまして、日本の捜査当局の鋭意努力の捜査の結果にもかかわらず確たる証拠が挙がらないということで、いつまでも日韓関係がそれで基本から阻害されるということは、これは日韓両国にとって好ましくないということで、事件は事件として捜査を継続しつつ、日韓関係はもとに戻して正常な外交関係にしようというのが一九七三年十一月二日のいわゆる外交的決着であったことは御承知のとおりです。  その後、いま具体的な名前はお示しになりませんでしたが、恐らく金東雲元一等書記官のことをおっしゃっているんだろうと思いますが、これについての韓国側の捜査が十分であるか不十分であるかということは、これは韓国の行います捜査でございますので、それを日本が評価するということはできませんけれども、少なくともその捜査結果で通報を受けたものによりましては、日本側の捜査の解明、真相の解明には役立つようなものがなかったという点では遺憾であったということは言えると思います。  しかしこの問題は、事件としては未解決な問題でございますので、日本韓国も捜査を継続していくということで、その捜査の過程におきまして新たな事実が判明いたしますれば、これはそれによって韓国による日本主権侵害ということがはっきりいたしますれば、日韓間で外交的決着にかかわらず、再び話し合いをするという権利は留保されておるわけでございますので、決してこれをやみに葬ってしまっているとか、これを全く忘れ去っているというようなことではないという事実の認識について、私から一言御説明さしていただいたわけでございます。
  405. 園田直

    国務大臣園田直君) いずれの国を問わず、特に関係の深い隣国においては、人権が守られ、民主主義が行われることを希望するものであります。
  406. 矢田部理

    ○矢田部理君 いま指摘をした金大中事件がきょうの主題ではありませんから、各論には入りませんけれども、いま外務大臣が述べられた、いずれの国といえども人権が守られ、民主主義が行われるということは大事なことだと言われました。私もそのとおりだと思います。  ところがどうでしょう。五月十八日に韓国では統一主体国民会議の選挙が行われました。この国民会議大統領の選出権を持っています。国会議員の三分の一の選出権を持っています。さらには憲法改正の最終決定権まで持っている重要な国民会議であります。この選挙を行うに当たって、政党に所属していた者は立候補できない。かつて国会議員に立候補した者も被選挙権がない。それだけではありません。政府批判や政策論争を全面的に禁止している。これが本当に選挙でしょうか、民主主義でしょうか。当然のことながら野党はボイコットしました。学生が投票に参加しませんでした。宗教家もこれに大きく反発をしました。それに対して内務大臣は、ボイコットの扇動などをした者については厳重に処罰するというんであります。これで韓国に民主主義があると言えるでしょうか。外務大臣に、改めて重ねての答弁をいただきたいと思います。
  407. 園田直

    国務大臣園田直君) 最初に申し上げましたとおり、外務大臣として他国のことに対する批判はよくなし得るところではございません。
  408. 矢田部理

    ○矢田部理君 他国のことであっても、とりわけいろいろな意味で関係の深い、特にいま審議をされている大陸だなの共同開発というのは、五十年の長きにわたって共同で開発をやろうということでありますから、相手がどんな国であるのか、このことに深い関心を持つのは、外務大臣として当然じゃありませんか。  とりわけ、先ほど外務大臣御自身も指摘をされましたように、人権と民主主義が重大な脅威にさらされている国、これは言いかえれば強権、抑圧の政治だと私は思います。それを、他国のことだから一指をも触れ得ないんだ、さわるわけにはいかぬのだということだけでは、私は率直に言って納得しかねるわけであります。その答弁に変わりはございませんか。
  409. 園田直

    国務大臣園田直君) 重大な関心を持つことと、公開の席上で一国の外務大臣が批判をすることとは別個の問題であると考えます。
  410. 矢田部理

    ○矢田部理君 重大な関心を持っておられるというふうに受けとめましたので、それはそのこととして次の質問に入りたいと思いますが、重大な関心を持つことの意味は、今後対韓外交を推進するに当たって、そのことをやっぱり心の中に十分に刻み込んで対応すべきだというふうに思いますが、その点はいかがでしょうか。
  411. 園田直

    国務大臣園田直君) 政府は、立場はやや違いますが、少なくとも日韓間にはもっと率直にお互いに好意を持ち、お互いに積極的に遠慮なしに話し合う必要があるとは考えております。
  412. 矢田部理

    ○矢田部理君 日韓関係は、いろいろな問題が噴出をしております。ソウル地下鉄をめぐる問題、その他の経済協力にまつわる癒着や黒いうわさ、あるいは金大中事件、この委員会でも取り上げられました竹島の問題等々、大変な問題が山積をしている。そのすべてについて日本外交の特徴は、率直に言って全部と言っていいほど韓国側に押されている。この大陸だなの共同開発もその重要な一つだと私は思います。  そういう点で、外務大臣として今後の対韓外交についてどう考えるかということだけではなくて、従前とってきた韓国に対する日本外交の対応、これについて率直に反省してみる必要がありはしまいかと思うんですが、その点も含めて、従前の日本外交のあり方について、どういう考え外務大臣として持っておられますか。
  413. 園田直

    国務大臣園田直君) 韓国日本は特別の関係にあるわけでありますから、率直にいいことでも悪いことでも、いやなことでも、話し合う必要があると思います。過去の韓国に対する外交について話がありましたが、他の外務大臣がやられたことはペケであって、私がこれからやろうとすることは上等だと言うわけにはまいりませんので、その答弁は御勘弁を願います。
  414. 矢田部理

    ○矢田部理君 園田外務大臣としては珍しく逃げ回っている感じを受けるわけでありますが、もう  一つ重要な朝鮮問題に対する件についてお尋ねをして外務大臣の見解を伺いたいと思います。  朝鮮は南北に分断をされています。同時に一方では、統一の願いがいろんな点でやっぱり語られています。この朝鮮の統一は今日いい方向に進んでいると思われますか。それとも依然として緊張状態が続いている、うまくいっていないと、こういう認識に立たれますか。その点いかがでしょうか。
  415. 園田直

    国務大臣園田直君) 朝鮮半島で緊張の状態にあるとは考えておりません。しかし、われわれが願う平和的な話し合いで逐次統一の方向へという願いは必ずしも進んではいない、停滞をしていると、こう思っております。
  416. 矢田部理

    ○矢田部理君 朝鮮民主主義人民共和国は再三にわたって朝鮮の自主的な統一、平和的な統一を訴えています。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕 この朝鮮民主主義人民共和国の統一に対する基調、これは日本外務大臣としてどういうふうに受けとめておられますか。
  417. 中江要介

    政府委員中江要介君) いま先生の御指摘の統一に関しての三大原則というのは、御承知のように一九七二年の七月四日の南北共同声明の中にもはっきり定められて、規定されておりまして、第一番目が自主的に、第二番目は平和的に、第三番目には思想と理念、制度の差異を超越して、双方はまず単一民族としての民族の大団結を図る、こういうことが南北両朝鮮によって声明されている。私どもの態度は、朝鮮半島の問題は朝鮮半島の人たちによって決定されるのがこれが最も正しい姿である、こういう立場からいたしますと、南北双方が七月四日の共同声明で明らかにされたこの三つの原則は、私どもとしてそれが朝鮮半島の人たちの選択であるならば、それがいいとか悪いとかというのではなくて、その線によって平和的に安定していくことを願うという以外には道がないわけでございます。
  418. 矢田部理

    ○矢田部理君 外務大臣
  419. 園田直

    国務大臣園田直君) いま中江局長が答弁した方針でございます。
  420. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、朝鮮の緊張の緩和あるいは積極的な統一のために日本政府としてはどのような役割りを果たそうとしようとしているのか、その点について外務大臣いかがです。
  421. 園田直

    国務大臣園田直君) 朝鮮半島で南北が平和的に話し合いのできる国際環境をつくることが第一われわれの仕事であると考えます。次には、両方で対話ができるようにわれわれ自身も北の方とも問題あるごとに話をする機会をつくりたいと考えております。
  422. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこで、いま論議をされております日韓大陸だな協定あるいは共同開発ということは、南北朝鮮の統一に役立つというお考えでまか。どういうふうな位置づけで考えておられるんですか。
  423. 中江要介

    政府委員中江要介君) 日韓大陸だな協定が、南北の統一をもし朝鮮半島の人たちが希望されるといたしましてそれの妨げになるかという点では、私どもは妨げになるという考えは持っておりません。
  424. 矢田部理

    ○矢田部理君 五十年の長きにわたって韓国共同開発をやる約束になっています。これは南北の分裂を前提にしている協定ということにはなりませんか。
  425. 中江要介

    政府委員中江要介君) あるいは言葉使いの問題かもしれませんが、南北の分裂を前提としているというのではなくて、南北の現状を前提として締結されている。これは日本韓国との間にすでに存在しております漁業協定についても同じでございますが、現に管轄権を及ぼしている地域については、その管轄権を及ぼしている政府との間で合意をすればそれで足りるという、国際法の原則にのっとって締結されているわけでございますので、日本からわざわざ分裂をさせて一方とやるとか、あるいは分裂を促進するためにやるとか、そういうことではなくて、現実に即して締結をするといたしますればこのようなことになるということで、そういう意味で先ほど私が申し上げましたように、南北の分裂を固定化するとか、それを促進するとか、それの統一を妨げるとか、そういうことではなくて、現実に即した解決である、こういうふうに御認識いただきたいと思います。
  426. 矢田部理

    ○矢田部理君 それならばどうして、朝鮮民主主義人民共和国のこの大陸だなの共同開発について異議が出されていますが、これを一顧だにしないのでしょうか。朝鮮の人たちは朝鮮は一つだと考えています。地理的に、地域的に北の方は関係がないんだという議論で切るから、結局は朝鮮民主主義人民共和国の大陸だな協定に対する異議について、あなた方は関係がないということでこれに誠実にこたえようとしていないのではないでしょうか。その点いかがでしょう。
  427. 中江要介

    政府委員中江要介君) 北朝鮮の出されました抗議声明のよって立つ基本的な認識の中に、私どもと根本的に違うところがある。それは南半分に存在いたしますいまの韓国という国、あるいはこれを正当に代表しておりますいまの韓国政府、こういうものをそれとして認めないという立場からの抗議声明であるわけです。したがって、もし統一を論じられるのであれば、統一のための手だてなりあるいはそれの可能性なりというものについて、ある程度の具体的な現実的な見通しがありますならば、これはいろいろ考える余地もありましょう。先ほど私が引用いたしました一九七二年の七月四日の南北共同声明、あの声明が出されましたときは、南北間で政治的な話までしようということで調整委員会というものが設けられて南北間の政治会話が始まったわけです。そういう状況で南北の話し合いが順調に発展しておりますならば、これは朝鮮半島にかかわる問題の処理というのはいろいろとまたその先行きを考えた考慮というのもあり得たかもしれないと思います。多くの国がその南北共同声明を歓迎したことは、これは先生も御承知のとおりです。ところが、それが一年もたたないうちにこの調整委員会というものはとんざいたしまして、その後、先ほど大臣が言われましたようによくもならない、かといって非常に悪くはなっていないけれども、南北共同声明の線による南北間の対話というものはとだえて久しい。  そういう状況のもとで日本がこの地域の大陸だなの開発をするときに、一体だれと話をすればそれが国際法的に問題がないかということになりますと、これはこの地域を、この地域の大陸だなに対して主権的権利を主張し得る国、それは大韓民国であって朝鮮民主主義人民共和国でないわけでありますので、日本大韓民国との間で協定を結びましたことに対して、もし北朝鮮が韓国全体を代表するということで文句——文句といいますか、抗議を申されるならば、それは現実に立脚していないということで、現実に立脚いたしますと、朝鮮民主主義人民共和国の管轄しております領土から自然の延長の大陸だなは、このいまの共同開発地域にまでは及ばないわけでございますので、そういう国際法的に見ましても、また現実に立脚して見ましても根拠のない抗議声明でございますし、また、その中の言葉遣いから見ましても、日本が友好関係の維持に努めております韓国の存在を全く無視しているとそういうことがありますので、これに対して正面から云々するという立場日本政府としてはとれないと、こういうことでございます。
  428. 矢田部理

    ○矢田部理君 いまの局長の答弁には全く納得ができません。  本当に南北朝鮮の統一を願う立場に立つとするならば、今後五十年間にわたって韓国とだけ話を決めて取り仕切ってしまう、それでいいものだというふうには私は考えません。少なくとも朝鮮民主主義人民共和国から抗議が出された以上、それについては誠実にそれにこたえる外交的処理があってしかるべきだというふうに考えるわけでありますが、したがって、外務省の見解には非常に不満であり、納得できないということだけ申し上げて、何か休憩の時間が予定されているようでありますから後に質問をつなぎます。
  429. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 五分間休憩します。    午後六時二分休憩      —————・—————    午後六時十三分開会
  430. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 委員会を再開し、休憩前に引き続き質疑を行います。
  431. 矢田部理

    ○矢田部理君 日本、中国、韓国大陸だなに関する主張について、従前の論議の確認も含めて伺っていきたいと思います。中国は自然延長論を主張しているようでありますが、その範囲についての明確な中身は示されていないのでしょうか。
  432. 中江要介

    政府委員中江要介君) 中身については明確に示されておりません。
  433. 矢田部理

    ○矢田部理君 中国とは一定の接触をしていると思うのでありますが、日本政府としてこれを確かめたことはないのでしょうか。
  434. 中江要介

    政府委員中江要介君) 日本政府といたしましては、中国が一番最初に署名の直後に外交部スポークスマン声明を出されまして以来、十九回か二十回になりますか、中国とこの問題で話し合いますごとに、具体的にどういうお考えかを承りたいということは何度も申しておりますけれども、中国側の説明は、スポークスマン声明なり外交部声明に示されている原則的な立場、あの表現、文言以上のものはいままでないわけでございます。
  435. 矢田部理

    ○矢田部理君 その原則的な主張は、具体的な中身は示されないけれども、少なくともいま問題になっている共同開発区域はその範囲に当たるという主張と受け取っていいのではないかと思われますが、いかがでしょう。
  436. 中江要介

    政府委員中江要介君) いま共同開発区域に当たる範囲という言葉をお使いになりましたが、中国側は範囲とか境界とか区画とか、そういった地域を限定するような表現はいままで一切ございませんで、一般的に東海大陸だなは中国大陸の領土の自然的延長であり、中華人民共和国は東海大陸だなに対し侵すべからざる主権を有している、この立場と、それから日韓大陸だな共同開発協定は、これは完全に不法な、無効なものであると、そういう表現でございまして、どの区域がどうであるという、そういう区画についての意見はいままでなかったわけでございます。
  437. 矢田部理

    ○矢田部理君 それは私も承知をしておりますが、主張を読めば、どの範囲かということは明確ではないが、少なくとも共同開発区域の中に中国の主張すべき自然延長線が延びている、こういう主張ではないのかと伺ってるんです。
  438. 中江要介

    政府委員中江要介君) その点は、いま先生が言われますように解釈するには、相当想像をたくましくしないと出てこないというふうに思います。中国の態度は先ほど申し上げましたように、いかなる国、個人も中国政府の同意なくして東海大陸だなで勝手に開発活動を行ってはならないということでございまして、東海大陸だなのどこからどこまでであるとか、どこならいいがどこは悪いとか、そういうことでなくて、「東海大陸だな」という一つの言葉でしかあらわされておらないわけで、これを素直にとりますと、先ほど私が冒頭に申し上げましたように、中国大陸の領土の——中華人民共和国ではなくて、中国大陸の領土の自然的延長である、つまり、中国大陸の自然延長上の大陸だなが東海大陸だなであって、これはすべて、今度は中国じゃなくて、中華人民共和国の政府の同意なくしては手はつけてはならないと、こういうふうに読めますものですから、これはちょっと国際法的に見てもなかなか解釈がむずかしいので、一体どういうことであるのかということについて、具体的に何度も話をしようと、聞かせてくれと申しますけれども、いままでその話は聞かせていただけないままであるということが一つと、他方、中国の主張の中に私どもも完全に同意できる点があるわけでございまして、それは、東海大陸だながその他の国に及ぶ部分は中国と関係国が話し合ってどのように区分するかを画定すべきである、これは私は日本も、この大陸だなの境界画定は関係国が話し合って区分して決めるべきである、これはもう日本はそういう立場であることは中国にも何度も言っております。  したがいまして、望ましいことは、中国と韓国が話し合われること、あるいは日本と中国が話し合うこと、日本と中国に関しましてはあすからでも日本は中国と話し合う用意があること、そういったことは毎回中国側にお伝えしておるわけでございます。いままでのところそういうことが具体化されていないということははなはだ残念なことだと思いますが、いま言いましたように、大陸だなに対する一般的な国際法上の主権的権利の主張のもとになる国際海洋法秩序……
  439. 矢田部理

    ○矢田部理君 簡単に言ってください。
  440. 中江要介

    政府委員中江要介君) その部分は先般来議論になっておりますように、国連の海洋法会議で議論されておりますので、その部分については中国側も、後から入って国連に加盟したものですから、いままでの経緯も含めて海洋国日本考え方を知りたいということを、これは海洋法会議の席上でもそういう希望表明がありましたので、ことしの一月には東京から専門家を派遣いたしまして、日韓大陸だな協定ではなくて海洋法秩序また海洋法会議の論点、そういったものについては専門家の間での意見交換は行われております。  以上でございます。
  441. 矢田部理

    ○矢田部理君 局長に注意をしておきますが、答弁で時間を引き延ばされてはかなわぬです。私はかなり端的に物を聞いているわけですから、できるだけ縮めて物を言っていただきたい。  私は、国際法なり海洋法会議がどうなっているか聞いているんじゃなくて、中国の主張そのものをどういうふうに理解をしているのか、受けとめているのか、主張は何であるのかということを聞いているんです。  もう一回改めて伺いますが、私の先ほどの主張は想像をたくましゅうしなければそういう受けとめ方にはならぬという言い方、これ大変気になるところですね。私は二つの問題点を指摘をしていると思うんです。一つは、いまの共同開発区域は中国の大陸だなが自然に延長された部分と、範囲は明確でないが、少なくとも全部また一部重なっているという主張が一つ。二番目には、その共同開発区を画定するに当たって中国と何らの話し合いをしなかった。この二つの中身を持つ抗議だというふうに受け取るんですが、そうではないんでしょうか。
  442. 中江要介

    政府委員中江要介君) 必ずしもそうではございません。
  443. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうすると単なる話し合いをしなかったと、それが主権侵害だと、こういう抗議ですか。
  444. 中江要介

    政府委員中江要介君) 先ほど申し上げましたように、日韓大陸だな共同開発協定は完全に不法、無効なものである。いかなる国、個人も中国政府の同意なくして東海大陸だなで勝手に開発行動を行ってはならない、それだけのことでございます。
  445. 矢田部理

    ○矢田部理君 だから、中国は話し合いをしない、同意を与えていない、そういうことだけの抗議ですかと、こう言っている。中身については抗議は言ってきていないという受けとめ方ですか。
  446. 中江要介

    政府委員中江要介君) そこのところがはっきりわからないわけでございます。
  447. 矢田部理

    ○矢田部理君 わからないならそう言うべきであって、あなたの話は行ったり来たりしておる。中国と対韓国との関係、これは一つ大陸だなだという点では両国政府が一致しているのでしょうか、中国もまたそういう立場をとっているのでしょうか。
  448. 中江要介

    政府委員中江要介君) 韓国はそういう立場ですが、中国はどういう立場であるかはわかりません。
  449. 矢田部理

    ○矢田部理君 中国と日本との関係でありますが、中国と日本一つのたなを共有しているという主張、これは日本側がそういう主張を述べているわけですが、中国もそういう立場に立っているでしょうか。
  450. 中江要介

    政府委員中江要介君) わかりません。
  451. 矢田部理

    ○矢田部理君 韓国立場について聞きます。  これはもう従来言われてきたことでありますから、対日本との関係韓国自然延長論は沖繩海盆まで延びてきている、日本とはつながっていないという主張のように思われますが、そのとおりでしょうか。
  452. 中江要介

    政府委員中江要介君) 韓国の主張はそのとおりです。
  453. 矢田部理

    ○矢田部理君 そうしますと、従来からの説明ですね。中朝間では一つ大陸だなである、一つ大陸だなの共有であると、だから中朝間の境界は中間線で引きました、こういう説明があるわけですが、まずその前提である一つのたなであるかどうかで中朝間は一致しているかどうかわからないということになりますね。そうですね。韓国側一つのたなだと言うが中国側はわからないということになりますれば、一つのたなの案を前提にして中間線論を導き出すのは行き過ぎではないですか。
  454. 中江要介

    政府委員中江要介君) 行き過ぎとは思いません。
  455. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうしてですか。中国も韓国一つのたなだと主張して初めてそこで中間線論が出てくる余地はあるわけですが、中国の主張がわからないでどうして中間線論が出てくるんでしょうか。あるいは中国の主張を聞いてみれば済州島の南側には海釜がある、そこで切れているんだという主張も成り立たないわけではないわけでありますから、そういう中国側の意向を確かめずして、一つのたな論を前提にして中間で区切るというやり方は、一方の意思確認がないという点で前提を欠くんじゃありませんか。
  456. 中江要介

    政府委員中江要介君) 第一点は、韓国が中国と本件について話し合おうと呼びかけたにもかかわらず、中国がこれに応じて話に入らなかったために中国の考え方がわからないということが一つでございます。  第二点は、客観的に見て韓国と中国との間には一つ大陸だながある、したがってこれを中間線で区分するというのは国際法に照らして正しいことであると、こういうことであります。
  457. 矢田部理

    ○矢田部理君 それはあなた方の一方的な主張、韓国側の言い分であって、納得ができませんね。中国は従前、韓国大陸だな開発の国内法を制定しましたときに異議を出しておりますね、韓国に対して。その内容はどういうことだったんでしょうか。
  458. 中江要介

    政府委員中江要介君) 中国外交部スポークスマン声明、七三年の三月十五日の北京放送でございますが、これによりますと、中国沿海海域の海底資源は中国の所有に属するものである。中国が隣国と黄海及び東海における管轄権をいかに区分するかについてはいまなお未確定である。いま南朝鮮当局は公然と一方的に外国石油会社を引き入れて上述の地域でボーリング探査を進めているが、こうしたやり方がもたらすであろう結果に対して中国政府はあらゆる権利を留保すると、こうなっております。
  459. 矢田部理

    ○矢田部理君 そのスポークスマン声明を見てもわかりますように、中国側も一つのたなだと認めて初めて分割なり分割の基準が出てくるわけでしょう。その問題が一つ。  二番目の問題点として、一つのたなだとしてもその境界をどう画定するかは中間線論が唯一不動のものでしょうか。
  460. 中江要介

    政府委員中江要介君) これは韓国と中国の間で決める問題ですが、客観的に見まして、あの地域の大陸だなを韓中で境界を画定するとすれば中間線が最も妥当であると、こういう判断でございます。ちなみに、いまの中国外交部スポークスマン声明が三月十五日でございますが、すぐ翌日の三月十六日に韓国外務部声明が出ていることも御承知と思いますが、この声明の中では、「黄海及び東シナ海における海底資源開発に関し三月十五日に中華人民共和国当局が行った声明について、大韓民国政府は、探査及び採掘計画が実施乃至意図されている区域は、国際法に基づき大韓民国の管轄内であることを確認するものである。大韓民国政府は、さらに、両国間の大陸棚区域の境界画定問題について中華人民共和国当局と話合いを開始する用意があることを表明する。」このとき、初めて大韓民国は中華人民共和国を正式国名で、両国間の話し合い開始の用意があるということを申し入れたことになっておるわけでございます。
  461. 矢田部理

    ○矢田部理君 私の質問は、一つのたな論の立場に立ったとしても、中間線で区切るというのは唯一不動の基準か、中間線論は唯一不動の基準ですかと、こう言っているんですよ。
  462. 村田良平

    政府委員(村田良平君) 唯一不動の原則ということは必ずしも言えないと思いますけれども、五八年の大陸だな条約第六条におきましても、同一の大陸だなをはさんで二つの国が相対しておるとき、あるいは隣接する場合には等距離中間線を原則とするということがうたわれておりますし、また従来のいろんな各地の先例を見ますと、ほとんどが中間線ないし等距離線をとっているという意味におきまして、基本的な原則であるというふうに考えております。
  463. 矢田部理

    ○矢田部理君 残念ながら、その条約には中国も韓国も、あるいは日本も加盟しておりませんね。その点だけ……。
  464. 村田良平

    政府委員(村田良平君) これらいま先生御指摘の三国がその条約の締約国でないということは御指摘のとおりでございます。
  465. 矢田部理

    ○矢田部理君 あわせて、海洋法会議の先ほどから問題にもなっておりました非公式単一交渉草案、これは中間線論を前面に打ち出しているんじゃないんです。「衡平の原則」論を出している。それはお認めになりますか。
  466. 村田良平

    政府委員(村田良平君) そのとおりでございます。
  467. 矢田部理

    ○矢田部理君 そこでまたアジア局長の話はおかしくなってくるんです。この草案は七十条で「衡平の原則」によって行われるものとする、その「衡平の原則」の一つとして、「それが適当であれば中間線又は等距離線を使用」する。適用の一つにすぎないわけです。だから当然に中間線論なんだ、それ以外にはないんだということを前提として中間線で境界を決めるというやり方は第二の問題としてきわめて疑問がある。おかしいというふうに思いますが、いかがでしょうか。
  468. 中江要介

    政府委員中江要介君) まず単一草案と申すものは法典化の過程にあるものでございまして、現行国際法ではないということが第一点でございます。  第二点に、韓中中間線をこれで決めたとはどこにも書いてないわけでございまして、この韓中中間線を想定して、それを基準にして共同開発区域を設定したけれども、これは国際法上の最終的な境界ではないということをはっきり協定二十八条で明らかにしておるわけでございまして、そういうことであるから、関係国で話し合って正しい境界線を合意によって決めると、その余地があるし、それを日本はする用意がある、韓国もする用意があるということを言っておる。それに対して、まだ中国との間に具体的な話し合いが行われていないと、こういうことでございます。
  469. 矢田部理

    ○矢田部理君 草案ですからまだ明確な意味で国際法にはなっていません。しかし大陸だな条約も加盟批准をしてないんだから、これも関係当事国にとっては国際法的拘束力を持つわけではない。そこでどういうふうにして区分けをするかということになれば、いま国際的に大筋の合意を得つつある幾つかの基準、原則に従って考えるのが筋だと思います。その大きな基準として出したのが「衡平の原則」論、その「衡平の原則」の一つの適用として、適当であれば中間線で区切るべしと、こう言っている。その点で局長の答弁はおかしいというのが第一点。  それから二番目、この韓中中間線というのはまだ画定したものではないと、言葉ではそう言っております。この中間線で仕切られる日本側部分開発区域に入れているわけです。これは事実上画定したと同じような効果を発動させる、だからまだ画定をしておりません、今後話し合いでという言い方は、事実が先行するという意味ではナンセンスです。いずれにいたしましても、この中朝中間線論を基準とした共同開発区域の決定はその意味でもおかしい。  三点目に申し上げます。この単一草案は、これまたあなたに言われるまでもなく、まだ条約として成熟したものではありません。重要な三つ目の要件として合意を前提にしているわけですね。あなた方は客観的に見てそうだとかいうことを繰り返し主張をされる。合意を得ていないのは、全く私から指摘するまでもなく明らかなんです。そうなってきますと、この中朝中間線というのは三つの問題点を持っている。整理をいたしますれば、中間線で区切るには少なくとも一つのたなであると、関係国がその一つのたなを共有しているということが両国間で一致をしなければならぬということが第一であります。  二番目には、そういう場合でも当然に中間線で区切るという議論はありません。むしろ「衡平の原則」に従ってこれを割るというのが二番、この原則にも率直に言って従っていない。むしろ当然のごとく中間線論で議論を一方的にしているというのが二番目です。  そして三番目には、一番大事な関係国間の合意が全然得られていない。そういう線引きを前提にして、座標——たしか六、七、八です——共同開発区域の一辺が区切られる、仕切られる、全くおかしい、納得できない線引きではないのでしょうか。
  470. 中江要介

    政府委員中江要介君) 全くおかしいとは思っておらないゆえんは、何度も御説明申し上げたわけですが、いま先生が言われましたような区画が設けられることが最も望ましいということは、これは日本政府も繰り返し申しておるところですが、それが現実の国際関係から見て実現不可能であるときに何ができるか、これは国際法の先ほどのたとえば大陸だなに関する条約の中にも、慣習国際法としてすでに、条約締約国でなくても拘束し得るにまで成熟した部分と、そうでない部分とがあるわけでございますが、国際慣習法と国際慣行に従ってなされているところは、これはいずれの国も一つ大陸だなの中のそれに接している一国が同意しないからといって、いずれの国も手がつけられないというのではなくて、手のつけられる国同士で、つまり話し合いのできる国同士で話し合う部分を決めていく。それに対して異議があり、意見があれば、具体的にその国と話し合って調整していく、これが国際社会の通例でございまして、一国が話し合いはしない、しかし、話し合わないでは手をつけてはならぬということで手がつけられないというようなままで放置されておるわけではないわけでございまして、したがってそこで客観的な情勢、地形、そのあり方、それから国際慣習法、それから国際法、そういったものにのっとってこれは中国の権利を侵害しないでできていると確信しているということで、署名に先立ち、また署名後も機会あるごとに中国側に説明しているというのが現状でございます。
  471. 矢田部理

    ○矢田部理君 日韓大陸だな協定を締結するまでに三年間の法律論争をしたといいます。最終的には共同開発区域として妥協した、日本側はおりた、事実上おりたと言って差しつかえないと思いますけれども、そういう議論の際に中国側に声かけたことありますか。あなたは、話し合いができない条件ではこういう現実的処理はやむを得ないんだと言っておりますが、事前関係国として説明をしたり、話し合いを求めたりしたことがかつてありましたか、協定を締結前のことについて伺いましょう。
  472. 中江要介

    政府委員中江要介君) 一九七四年の一月四日に、当時の大平外務大臣は、当時の姫鵬飛外交部長に対して北京でこの協定内容について説明をいたしました。これは署名に先立っておりました。そのときに中国側は何と言ったかといいますと、中国政府はまだ大陸だなに対してどういう主張、理論をとるかということを決めていない、いま検討中であると、こういうことであったわけでございます。
  473. 矢田部理

    ○矢田部理君 それはもう韓国との間では決めてしまって、内容を煮詰めてしまってから一応形式的な報告なり説明をしただけにすぎないんじゃありませんか。こういう共通の利害を持つ、あるいは大陸だなという広がりを持つ地域の決め方に当たって、少なくとも当初の段階から実質的な相談をするとか、話し合いをするということでは全くなかったのじゃありませんか。
  474. 中江要介

    政府委員中江要介君) 先ほど申し上げましたように、韓中中間線というのが大前提になっておるわけでございまして、その韓中中間線について韓中間で話ができないということでありますので、日本としてできることは、その韓中中間線というものが国際法的に見ておかしくないかということを日本なりにこれを判断する、そしておかしくないということでありましたので、日本韓国との間で韓国側部分について話をしている。しかし、この大陸だなは中国に言われるまでもなく、ずうっと南西に延びて、将来日中間で再び開発の問題について話をしなければならない、そういう大陸だなにつながっておるわけでありますから、これは単に儀礼上話をしておけばいいとか、そういう軽い扱いをしてはならないことは政府も重々承知しておるわけでございます。したがいまして、署名に先立って、異例のことでございましたけれども、最も外交チャンネルの最高のレベルで外務大臣同士でこの話を持ち出して、そして中国側の意見を聞きましたら、先ほどのようなことであったと、こういうことでありまして、日本政府としてはこの問題について中国がいろいろ関心を持ち、いろいろの抗議声明を出しておられることもこれを軽んじてはいないばかりでなくて、これは将来のこの大陸だなの南部の問題にもかかわることでありますので、重く受けとめて、誠意を持って中国との話し合いを続けていると、こういうことを何度も申し上げておるわけでございます。
  475. 矢田部理

    ○矢田部理君 というわりには事前に話をする、誠意を持って交渉をするという態度は期するところなかったんじゃありませんか、あなたのいまの説明にもかかわらず。韓国側が一方的に設定をした中間線、しかも、日本がそれを客観的に妥当であると判断した中間線、中国側の言い分に立てば、認めてもいないし、話し合いもしていない中間線、これを基礎にして大陸だな共同開発区域の一片を区切ると、これは中国として異議を申し立てるのは当然じゃありませんか。とりわけ中国は日本との関係については、日本は中国に対して一つのたな論を主張しておりますけれども、中国は果たして一つのたな論に立っているかどうかわからないというあなたの答えでしょう。そうだとすれば、中朝中間線に依拠した態度が問題であるだけではなく、日中中間線の引き方についてもまだ固まったものではないという説明かもしれません。これまた大きな問題じゃありませんか、その点はどう考えますか。
  476. 中江要介

    政府委員中江要介君) 誤解のないようにお願いいたしたいのは、中間線というのはこれは数字的にはかれば出てくる客観的には一本しかないものであるわけです。したがいまして、話し合いによって中間線が動く、いわゆる厳密な意味での等距離中間線が動くということではなくて、それを確認するということが正確だろうと思います。したがいまして、韓国と中国との間の大陸だなの境界が中間線によるのが国際法的に見て妥当であるということでありますと、あとはそれを正確に測定するということでございまして、これは日本日本で持っております海図によりまして正確に測定した韓中中間線というものを、韓国側が中国との間での韓中中間線と思って測定したものとの間の誤差その他があったわけでございますから、それを調整いたしまして、客観的に見てこれが中間線であるという線を想定してそしていまの協定に取り進めたわけでございまして、その辺のところは中国側には十分説明しておるところでございます。  日本と中国との間につきましても、あるいはいまの韓国と中国との間につきましても、いま先生の言われますような問題点を解決する一番いい道は、中国が韓国日本と具体的な各国境界画定の話に応じていただくことである、これをやる以外にはないと思います。
  477. 矢田部理

    ○矢田部理君 アジア局長、私は誤解をしていないですよ、中間線論については。中間線論をとる前提は、一つのたな論に立たなければならぬでしょう。一つのたなだと、東シナ海は中国と日本一つのたなを共有し合っているのだという前提があって初めて「衡平の原則」、中間線論とかという議論が出てくるんじゃありませんか。それはそのとおりでしょう。
  478. 中江要介

    政府委員中江要介君) 中間線を言う以上は、一つのたなを共有しているという前提があればこそ主張できることであると思います。
  479. 矢田部理

    ○矢田部理君 だから私は誤解をしていないんです。ところが中国と日本との間でも日本一つのたなだと主張をしておりますが、中国はそれをそのとおりだというふうには認めていないんでしょう。正確に言えば中国の主張はわからないということになるわけでしょう。とすれば一つのたなかどうかが日中間で確定をしない以上、中間線論で仕切るという議論は出てきません。まさに韓国との関係でもそのことが大変な議論になっている。あなたの言う現実的妥協を図ったということになるんじゃありませんか。  沖繩海盆がある。日本一つのたなだと主張したけれども、いやそれは韓国の自然延長だと、こういう議論がぶつかり合って決着のつかないまま妙な妥協をしてしまったのがこの共同開発区域じゃありませんか。したがってまた中国も、韓国と同じように、中国の自然延長が沖繩の海盆まで伸びているという議論ができないわけではないんでしょう。同時に、沖繩海盆で切れてしまう、日本とたなは共有しておりませんという議論が可能なんでしょう。そういう議論に立ってくるならば、あなたの言う中間線論は前提を欠くわけですから、崩れてしまうということに論理の帰結としてなるんじゃありませんか。
  480. 中江要介

    政府委員中江要介君) ですから、そのことを日中間で話し合いたいと、こう言っておるわけでございます。
  481. 矢田部理

    ○矢田部理君 だから私は申し上げたい。  日本の一方的な主張で、ここが中間線ですから、朝中間の問題も同じでありますが、そこまでは開発できるんですということで、単なる議論の上のことではなくて、現実にこれからボーリングや採掘をやるというんでしょう。これは行き過ぎじゃありませんか。これについて中国側の異議が出るのは当然じゃありませんか。その異議をやっぱり正しく受けとめ、最終的にどう解決をしたらいいのかということを考えるのが外交でしょう。韓国の主張と中国の主張は場合によっては同じ帰結になるかもしらぬ。沖繩海盆で切れている。そういうことになりますと、これは中間線論が成り立たなくなる。こういう結果になる危険性、可能性もないとは言えないわけです。  そこでもう一回私は伺っておきたいんですが、中国の主張はあなたの立場に立つと、不当、不法の主張だと言う受けとめ方になるのでしょうか。
  482. 中江要介

    政府委員中江要介君) 私は、中国の主張が十分な国際法上の立場についての説明を欠いているので、受けとめ方がむずかしい、これは日中間で話し合わなければならないし、また韓中間でも話し合っていただきたい、こういうことを言っておるわけでございまして、具体的にどこが不法であるか、不当であるかということを判定する以前の問題といたしまして、国際法的に分析するには具体性を欠いているということを指摘しておるわけです。  それからいまのお話で、日中間と韓中間が同じであるかのごとく言われましたが、そこが違うということは、これは先生も御承知の上でおっしゃっていると思いますが、日中、日韓の間には海溝があるけれども、韓中間には海溝がないのであるから、客観的に見て韓中の間は中間線が妥当であると、こういう判断をしていること自身については、これは間違いがないと私どもは確信しております。したがって、そういうことでやっているのだということを含めて中国側にはいつも御説明している、こういうことを言っておるわけでございます。
  483. 矢田部理

    ○矢田部理君 日中中間線が一応引かれてますね。とりわけ、先ほどから問題にしております座標六、七、八は、朝中中間線と若干のズレがあるようでありますが、朝中中間線にガードされた形で共同開発の一辺がそこから始まる、こういう日本側の主張、考え方は、いかなる意味でも異議を唱えられる筋のものではない、どこに持ち出しても正当なものだという立場に立っているのですか。
  484. 中江要介

    政府委員中江要介君) これは日本が持っております海図によって精密に調査しているという意味では正しいと思いますけれども、これはその島の存在あるいは測定の基準、起点、そういったものについて異なる意見もあり得ますから、そこは話し合いましょう、そういうものについてだんだん合意ができますれば、それによって画定していくという意味で二十八条を置いておるわけでございます。
  485. 矢田部理

    ○矢田部理君 二十八条は朝鮮との関係だけを決めたものでして、債権的効力はあっても物権的効力があるわけじゃない。朝鮮との、韓国との交渉でも非常に難航したように、沖繩海盆で区切られてしまえばこの日中中間線というのは本当に根拠を欠いてしまう、少なくとも薄いものになってしまう。そこで、中国側の主張が全面的に正しいかどうかは別として、少なくとも成り立つ余地がある、これはこういう不安定な線じゃありませんか。そこをやっぱり明確に受けとめておかないと、不動の線だという前提で開発を始めることが私は非常に大きな問題を残すというふうに思われるわけですが、再度答弁を求めます。
  486. 中江要介

    政府委員中江要介君) いま言われましたように、中国側の反論なり異論が成り立つ余地があるということを判断するには、中国側の抗議声明がまだ具体性を欠いている、国際法的に判断していくには、まだ十分に中国の国際法上の立場というものは解明されるような抗議声明ではなくて、一般的に東海大陸だなは中国の領海、中国との合意なしにはいかなる個人も国も勝手に開発してはならぬという程度にとどまっておりますので、しかし、そのことを言っておること自身は、これは重要なことでありますから、それを具体的な場所に即してあるいは協定に即して中国側とで意見を交換して、誤解があるならばお互いに誤解を解かなければいけませんし、合意のできるものは合意をしなければいけませんし、これを、具体的に話を進めまして、進めましょうということで臨んでおるわけでございます。
  487. 矢田部理

    ○矢田部理君 話し合いを進めるのはよろしいが、それならば、この共同開発区域話し合いが済むまで、解決がつくまで手をつけることはやめるべきじゃありませんか。一方で開発はする、ボーリングや採掘はやる、他方では話し合いですと言ったって、それは話し合いにならぬじゃありませんか。中国の主張の意味内容を確かめる、それをもとにして話し合いを行う。その話し合いが決着がついたところで扱いをどうするかを決めるべきじゃありませんか。中国の異議は重大だと受けとめているとすればなおさらなんですよ。それをやらずして既成事実だけを先行させる、ここに問題があるということをきょうは指摘しておきたいと思いますが、そろそろ時間が来ましたので、きょうの最後としては、大臣、日中平和条約の締結交渉が動き出しているというふうに全体的に受けとめられているわけでありますが、そういう中で日韓大陸だな協定に伴う国内法が政府自民党の手によって、中国の異議にもかかわらず、成立させられようとしている。これは日中交渉にとって障害にならないのでしょうか。日中平和条約の締結交渉に当たって、この問題はどのように扱うつもりなのでしょうか。その点、大臣から答弁を求めておきたいと思います。
  488. 園田直

    国務大臣園田直君) ただいま大陸だな関連法案の審議をお願いしているわけでありますが、今後とも中国に対しては理解を求めるべく努力をする所存でございます。日本と中国の間にはいろいろ問題があるわけでありますが、この問題自体が日中友好条約締結に大なる障害になるとは考えません。むしろ早くけりをつけていただいた方がよいと考えているわけであります。
  489. 矢田部理

    ○矢田部理君 日中交渉が始まりつつあるわけでしょう。そうだとするなら、本当に日中関係の条約の締結を積極的に推進するという立場に立つとするならば、その障害になるようなものは一応抑えるというのが、これは当然の外務大臣立場じゃありませんか。早く仕上げてもらった方がいいというのは全く逆じゃありませんか。時間が来ておりますから、私の意見だけで……。
  490. 園田直

    国務大臣園田直君) 日本も中国も友好条約締結はきわめて大きな問題と考えており、黄華外務大臣と会いました際に、これは単に日本と中国の二国間問題、ばかりでなくてアジアの繁栄、ひいては世界の平和に通ずる問題であり、きわめて重大なものであると、向こうも同様だと、こういうことを言われましたが、個々に問題ありますけれども、そういう問題で、こういう大きな問題が障害になったりあるいは蹉秩を来したりすることはないと考えております。  しかし、中国の抗議を無視するわけではなくて、これは大きく受けとめて理解を求めるべく尽力は続ける覚悟でございます。
  491. 矢田部理

    ○矢田部理君 きょうのところは終わります。次回によろしく。
  492. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 他に御発言もなければ、本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  493. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 連合審査会に関する件についてお諮りいたします。  日本国大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚南部共同開発に関する協定実施に伴う石油及び可燃性天然ガス資源開発に関する特別措置法案について、外務委員会、農林水産委員会及び公害対策及び環境保全特別委員会からの連合審査の申し入れを受諾することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  494. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会開会の日時は、明七日午後一時から開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  495. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時四分散会      —————・—————