運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1978-04-25 第84回国会 参議院 商工委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十五日(火曜日)    午前十時十五分開会     —————————————    委員異動  四月二十一日     辞任         補欠選任      植木 光教君     増岡 康治君  四月二十四日     辞任         補欠選任      沓脱タケ子君     市川 正一君      柿沢 弘治君     野末 陳平君  四月二十五日     辞任         補欠選任      大塚  喬君     矢田部 理君      安恒 良一君     浜本 万三君      市川 正一君     河田 賢治君      野末 陳平君     柿沢 弘治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         楠  正俊君     理 事                 大谷藤之助君                 福岡日出麿君                 対馬 孝且君                 安武 洋子君     委 員                 岩崎 純三君                 下条進一郎君                 中村 啓一君                 長谷川 信君                 増岡 康治君                 真鍋 賢二君                 大塚  喬君                 小柳  勇君                 浜本 万三君                 森下 昭司君                 安恒 良一君                 馬場  富君                 峯山 昭範君                 河田 賢治君                 藤井 恒男君                 柿沢 弘治君    国務大臣        通商産業大臣   河本 敏夫君    政府委員        公正取引委員会        委員長      橋口  收君        公正取引委員会        事務局経済部長  妹尾  明君        経済企画庁調整        局長       宮崎  勇君        経済企画庁物価        局長       藤井 直樹君        通商産業大臣官        房長       宮本 四郎君        通商産業大臣官        房審議官     島田 春樹君        通商産業省通商        政策局次長    花岡 宗助君        通商産業省産業        政策局長     濃野  滋君        通商産業省生活        産業局長     藤原 一郎君        資源エネルギー        庁次長      大永 勇作君        中小企業庁長官  岸田 文武君        労働大臣官房審        議官       谷口 隆志君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    説明員        大蔵省主計局主        計官       岡崎  洋君        大蔵省主税局税        制第一課長    矢澤富太郎君        大蔵省銀行局特        別金融課長    藤田 恒郎君        通商産業省基礎        産業局総務課長  堺   司君        通商産業省基礎        産業局非鉄金属        課長       原木 雄介君        通商産業省基礎        産業局基礎化学        品課長      児玉 幸治君        運輸省船舶局造        船課長      間野  忠君        労働省職業安定        局雇用政策課長  白井晋太郎君        自治省財政局調        整室長      小林  実君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○特定不況産業安定臨時措置法案内閣提出、衆  議院送付) ○連合審査会に関する件     —————————————
  2. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十一日、植木光教君が委員辞任され、その補欠として増岡康治君が、また昨二十四日、沓脱タケ子君及び柿沢弘治君が委員辞任され、その補欠として市川正一君及び野末陳平君がそれぞれ委員に選任されました。     —————————————
  3. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 橋口公正取引委員会委員長から発言を求められておりますので、この際これを許します。橋口公正取引委員長
  4. 橋口收

    政府委員橋口收君) 去る四月二十日の参議院商工委員会における審議に際しまして私が遅参をいたし、また、この件に関連して委員会及び関係委員に対する公正取引委員会事務局連絡等措置がはなはだ不適切でありましたため、委員会の御審議に多大の御迷惑をおかけしましたことをまことに遺憾に存じます。  今後かかることのないよう、事務局に対する監督をも含めまして十分注意いたしたいと存じます。     —————————————
  5. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  特定不況産業安定臨時措置法案審査のため、参考人出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 御異議ないと認めます。  なお、その日時及び人選等につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  8. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 特定不況産業安定臨時措置法案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 安恒良一

    安恒良一君 私はこの前、今回の特定不況産業安定臨時措置法によるいわゆる設備廃棄に伴って雇用がどれだけ、いわゆる余剰人員が出てくるかと、こういうことについてこの席上で徹底的に関係各省答弁を求めたのでありますが、残念ながら答弁がありません。  その後私の部屋に、委員長の御指示だと思いますが、関係各行局長がお見えなりましたが、これも残念ながら答弁がないのであります。しかし、もう残された時間は三十分しかありませんので、またこれだけでやっておったのでは公取委員長以下にも御出席を願っていますからこの問題は、数の問題については、私は次のことを言っておきたいと思います。  三局長にも言ったのでありますが、速やかに当該事業団体労働組合からヒヤリングをしてもらいたい。そしてその中で、通産省、それから運輸省等関係各省で今回の特定不況産業安定臨時措置法に基づいて、どれだけの余剰人員が出るかということを正確につかんでもらいたいということを申し上げて、残念ながらこの点については私の時間ではできませんので、後刻同僚議員にその点を引き継いでいきたいと思います。  そこで私は、まず、労働省もお見えになっていますから、それから通産大臣にもお伺いしたいのでありますが、本法の十条に、雇用安定について事業主、国及び都道府県の必要な措置、こういうことについて書いてありますし、さらに衆議院におきまして本法修正がございました。これらの衆議院修正雇用安定の修正を受けてどういうふうにお考えになるのか。雇用問題についてまず労働省、それから通産大臣から、衆議院において何カ所か雇用安定についての修正があっていますから、これをどのようにお考えになるのか。また、具体的にどうされようとしているのか。というのは率直なことを申し上げまして、どうも衆議院修正前の条文はいわば訓示規定である。具体的な対策はない、こういうことが衆議院においても議論をされ、そして、重ねてあのような修正衆議院において満場一致通っていますから、それらを受けて、具体的な雇用政策としてどうするのか、この考え方について、労働省並びに通産大臣の御見解を承りたいと思います。
  10. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) この法案によります「設備処理」が進んでまいりますと、それに伴いまして雇用影響が及ぶわけでございますが、私ども雇用政策を担当いたします者といたしましては、やはり失業予防という、離職者発生を防止するということが基本でございまして、そういう雇用政策上の課題と、この法律によります設備処理に基づく当該産業不況克服と、経営の安定をどうするかということを調和させることがきわめて重要な問題でございます。  ただいま御指摘の十条につきましては、そういう雇用政策上の観点から、事業者なり国地方公共団体につきまして雇用関係影響が生ずる場合に、雇用の安定に努力する旨の規定があるわけでございます。また衆議院におきまして修正も行われたわけでございますが、私ども雇用対策を担当する者といたしましては、この法律に基づきます設備処理ということが発生いたします前は、まず失業予防するという観点から雇用安定資金制度というものを活用するというのが一つの方法だと思います。  雇用安定資金制度につきましてはもう十分御承知のとおりでございますけれども景気変動とかあるいは事業転換で、一時休業とか教育訓練あるいはまた出向を余儀なくされるような場合に一定の助成をするということで、失業予防なり円滑な職業転換を図ろうという趣旨のものでございまして、これらの諸制度は労使で話し合いの上行われる、それに対する助成をするという仕組みになっておるわけでございまして、関係当事者十分話し合いが行われ、それに基づきまして事業転換事業規模縮小等に伴いまして、企業内での配置転換のための職業訓練とかあるいは企業外への出向その他、または教育訓練等について、やむを得ず発生する場合にはそういうことに対します助成を行う、こういうようなことでまず失業予防雇用の、安定を図るために努力してまいりたい。  それから、そういう努力にもかかわらず、離職も余儀なくされるという場合におきましては、さきに成立を見ております特定況業極離職者臨時措置法に基づきまして、業種指定等を効果的に発動いたしまして、そういうことを決定することにより、これも御承知のとおりでございますけれども雇用保険法失業給付につきましては、四十歳以上の場合の九十日延長とか、あるいは職業訓練手当待期手当等に基づきます訓練実施、それから雇用開発的な意味での雇い入れ促進という意味で、事業主に対します雇用促進給付金の支給、さらにはまた緊急避難的にはこういう離職者発生、多数発生される地域について地域指定をいたしまして、その地域で行われます公共事業につきましては、失業者吸収率制度によりまして離職者の就労の確保をすると、こういうような一連の施策を通じまして、離職者の再就職促進に努めてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  それ以外におきましても、新年度からの施策といたしまして、特にわが国の雇用失業情勢のもとにおきましては中高年齢者雇用がむずかしいわけでございまして、こういう中高年齢者方々雇用を開発するといような意味におきましては、従来高年齢者だけに限っておりました制度を大幅に拡充いたしまして、中高年齢者方々就職促進するというような制度も新設いたしましたので、そういうものも積極的に活用いたしまして、離職を余儀なくされた方々の再就職促進に努めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  11. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) この法律は、構造不況業種過剰設備廃棄の手続を決めた法律でございます。しかしながら、過剰設備廃棄をいたしますと、当然雇用問題に関連がございますので、衆議院審議段階におきまして、第十条の規定だけでは不十分ではないかということで、御案内のように若干の追加が行われたわけであります。労働組合との協議とか中小企業に対する配慮とか、いろいろな条項の追加が行われたわけでございます。それじゃさらに全体としての具体的計画はいかん、こういうことになりますと、いま労働省の方から御答弁なりましたような内容で対処してまいりたいと思いますが、いずれにいたしましても労働省十分協議しながら、万遺漏ないように対処してまいる所存でございます。
  12. 安恒良一

    安恒良一君 私は衆議院においても第一条、それから同じく第三条、そしていま申し上げたような第十条というふうに修正をされたのは、率直なことを言って、にもかかわらずにいまのような答弁が返ってくることを大変不満に思います。というのは、労働省のお答えはいわゆる雇用安定資金制度、それから昨年の十二月に成立いたしました特定不況業種離職者法内容から一歩も出てないわけですね。  ところが御承知のように、これでは私はせっかく十条の文章もまた衆議院修正も空文になるのではないのか、それはなぜかというと、数は私が幾ら追求しても明らかにされませんでしたが、私どもの調査によるとかなりのいわゆる離職者が出る、こういう問題について雇用の不安を促進するおそれがある。私は、数がわかりませんからあえておそれがあると言っておきますが、おそれがある設備処理を国の施策として推進する以上、市場メカニズムに伴う雇用問題に対する、一般的対策を越えた特別措置を考慮すべきではないだろうか。すでに一般措置としては、いま言われたような雇用安定資金制度、それから特定不況業種離職者臨時措置法等々があります。しかし、いま言ったように、国の施策として設備廃棄をする、こういう問題があるときには、一般的な施策じゃなくて、特別的な措置が考慮されてしかるべきではないかと、そういう意味で私は実は質問をしてみたんです。  ところが、率直なこと申し上げて大変失礼でありますが、いわゆる通産も通り一遍の御答弁労働大臣はほかの方の委員会があるから御出席いただいておりませんが、担当の審議官も、現在あります法律でやってまいりますと、そんなことなら私質問しません。現在ある法律全部知っています、中身も。  しかし、いま申し上げたように、国の施策として設備廃棄する、それから雇用不安が起こる、こういう場合には特別な施策があってしかるべき、それであって初めてこの条文の精神が、訓示規定じゃなくて具体策があるものとして生きてくると思いますが、重ねてそこのところをお聞きいたすます。
  13. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 国の施策として、この法律に基づきまして設備処理等が進む場合に、  一般施策と異なった特別の対策が必要ではないかという御指摘でございます。  私ども雇用対策各種施策を講じておることも先生承知のとおりでございますけどれも、いままでの雇用政策体系が、一般離職者に対します対策と、それからさらに、こういういわば産業別各種事情から発生いたします施策について特別対策というものを設けておるわけでございまして、そういう体系から言いますと、一般施策の上にこういう雇用安定資金制度とか、あるいはまた、特定不況業種離職者臨時措置法というものに基づきます各種施策があるわけでございます。  私どもとしましては、それではこの法律成立して設備廃棄が進んだ場合に、従来と同じかどうかというような点があろうかと思いますけどれも、要するに、雇用対策仕組みとしては、かなりそういう面でのいろんな施策が講じられておりますので、今後におきましては、こういう仕組みをいかに実情に合わして機動的に、また弾力的に、実情に合ったような運用をするかというところにも非常に重要な点があろうかと思いますが、そういう観点からこの諸制度発動して、効果的な運用を図ってまいりたいということで考えております。今後ともその実情に応じて、こういう仕組みの中でさらに充実した施策がとれるかどうかというようなことについても検討し、実施してまいりたいというふうん考えておるわけでございます。
  14. 安恒良一

    安恒良一君 それではお聞きしますが、雇用安定資金制度とか、それから特定不況業種離職者臨時措置法というのは、本法成立を意図してつくったわけですか、そうじゃないでしょう。雇用安定資金製度をつくるときに、本法のことを議論してつくった覚えはありません。それから特定不況業種離職者臨時措置法についても、労働省みずからが立案したわけじゃないじゃないですか。議員立法として、野党五党の要求、それを自民党が受けて、与野党でつくった法律じゃないですか。その後に、通産省が中心になって、関係各省との間に今度この法律ができたわけでしょう。ですから、いままでできている法律と今度の法律というものは関係が直接にはないわけですね。もちろんそれは運用はできる。  ですから私が言っていることは、今度新しく、いま何回も申し上げましたように、いわゆる雇用不安を促進するおそれがある設備処理を国の施策として促進する以上、市場メカニズムに伴う雇用問題に対する一般対策を越えた特別の措置があっていいじゃないか、こういう法律を改めてお出しになる以上、特別の対策があっていいじゃないだろうかと、こういうことを申し上げている。  ですから、この点について通産大臣、どうでしょうか。いわゆるこれからいろいろな、この法律成立したら速やかに、やはりいままでの二つの法律があるわけですね、それを再検討して、やはりそれを越えた特別の措置を前向きに検討してみる、こういうことについて通産大臣、どうでしょうか。
  15. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 構造不況業種対策は、昨年の春以降、個々業種ごとにそれぞれ行政指導で強力に進めてまいりました。その個々に進めております行政指導による構造不況業種対策を受けまして、昨年の年末に、構造不況業種離職者臨時措置法が各党の合意によってできたわけでございます。その前には、すでに十月からは雇用安定資金制度というものがスタートしておりましたが、これもやはり構造不況業種の深刻な現状にかんがみまして、昨年の瀞以降計画が進みまして、十月からこれが実施に移されると、こういうことになったのであります。  今回の法律は、これまで進めておりました構造不況業種対策というものをまとめた形でひとつやってみようというので、一本の法律化したわけでございますが、私どもは、これまでの幾つかの制度、それと先ほど労働省からも御紹介になりましたが、新年度からスタートいたしました、また幾つかの制度がございます。そういう制度を十二分に活用しながら対応していけば、雇用対策上十分な対応ができると、このように理解をいたしておるのでございます。  そこで先ほど来、具体的にどう対応するかという御質問に対して、労働省側から事細かくその対応策について御答弁があったところでございまして、関係各省の間で十分協議をしながら万全の策を進めてまいりたいと、かように考えております。
  16. 安恒良一

    安恒良一君 通産大臣だから無理もないけれどね、いま労働省は、事細く具体的対策言わないですよ。あれは特定不況業種のいわゆる離職者法の解釈しただけですよ。いわゆる雇用安定資金制度はこういうものでございますよという説明をしただけですよ。何も具体策じゃないですよ。法律説明をしただけですよ。だから、労働省が事細かくいま、いわゆる具体的な対策をおっしゃったというのは、具体的な対策は何もありません。  それから、通産大臣のような言い方されますと、すでに特定不況業種問題はもう昨年の秋から各企業ごとに取り組んできておったんだと、それを受けて安定資金制度ができたんだと、それを受けて与野党で、いわゆる特定不況業種離職者法というものができたと。そういうことになると、また議論が返るのですよ。それならどれくらいの数をなぜつかまぬかという話になる。あなたのところの局長運輸省局長やら労働省局長ががん首並べて私の部屋に来て、先生済みませんと、何と言われても数字はいまの段階ではようつかめませんと、こう言って頭を下げているんですよ。頭下げている。だから、きょうはスムーズに、うちの理事も、まあそれぐらいでやれと言うから、私は黙ってやっているのに、どうも趣旨答弁が食い違っています。これは通産大臣ですから、雇用問題は弱いと言えばそれまでですから、これ以上通産大臣には言いませんが、いま少しく……。  だから私はこの際、これもこれだけで時間をとっていると次に参れませんから、こういうことも、後からまた同僚委員の方にあれをしまして、私はここで労働省にも言っておきたいことは、いままでの対策と違った具体的ないわゆる特別対策というものを、速やかに数をつかんだ上で立ててもらいたい。このことだけはここで要望しておきます。このことは、もうこれ以上しますと、私の持ち時間がきょうは三十分しかありませんので、本当はもう少しそこを掘り下げたいわけですが、それと同時にいま一つ、今度は労働省にお聞きをしたいと思いますが、いわゆる今度のこの臨時措置法によりますと、たとえば造船なら造船のような場合には、すでに各地域でも大騒ぎになっていますが、地域的に大量に失業発生するおそれがあるんですね、雇用問題が。特に労働集約産業の場合には。たとえば、すでに愛媛県の今治問題であるとか、さらに、長崎造船がどうなるかということによって長崎なんかでも大変な問題。  だから、そうしますと雇用政策の中で、現行法の中で、やはりそういう場合には地域的な発動ということを積極的に考えられぬのか。どうも労働省地域的発動ということについて、非常な現行法が、いろいろ関係法がありますが、私は、いまここで時間がありませんから、法律の中身一つ一つ言いません。なかなか地域的な発動というのを考えられないんですが、今回この法律が制定をされ、そして地域的に一時的な雇用不安というのが起こるし、私は、それが地域経済にも深刻な影響を与えることが、特に、労働力集約産業においては起こりやすいと思いますが、そういう点はどうでしょうか。
  17. 谷口隆志

    政府委員谷口隆志君) 先ほども答弁申し上げましたように、やはり基本的には離職者発生予防するということが重要なことでございまして、造船業なら造船業でそういう受注が少なくなった場合に、これにかわるべきような、そういう仕事がないかどうかというようなことにつきましては、関係省庁等とも連携を密にしながらそういう需要の確保を図っていくことが基本でございます。そういうことが、造船業等につきましてはかなり地域的にそういう事業場が集中いたしておりますので、一つの重要な対策かと思いますけれども、さらに、そういう地域的に多くの離職者発生が余儀なくされるということにつきまして、そういう地域観点からの対策があるかということの御指摘でございますが、私ども、まず基本的には、こういう雇用対策を進めるに当たりましても各種の、たとえばそれぞれの事業官庁なりあるいは土木公共工事関係官公庁との連携も必要でございますので、地域地域にそういう関係者、さらに市町村等関係してまいりますから、そういうものを地域地域構成員とする一つ協議体のようなものをつくりまして、どういう対応をするかということの検討をし、また、それぞれ決めましたことについてのそれぞれの官公庁の分担に応じて各種施策を進めていくというような、まず態勢をひとつ考えております。  それから、いろんな施策について地域対策あるかどうかということでございますけれども雇用安定資金制度におきましては、経済的事情によりまして各種施策発動いたしますが、この場合は地域問題というよりも、その以前に業種の問題がございますから、現状業種対策で十分対応できるわけでございますけれども地域に大量に発生いたしますのを余儀なくされる懸念のある離職者等対策といたしましては、たとえば、そういう地域離職者臨時措置法地域指定するとか、あるいは中高年齢者の、雇用促進に関する特別措置法によりまして地域指定するとか、そういうことの指定を機動的に行いまして、それぞれの地域実情に見合って、たとえば公共事業の吸収率制度による確保を図っていくというようなことも、すでに五地域については指定をいたしましたし、今後も実情に応じて指定し、適用してまいるということを考えておるわけでございます。
  18. 安恒良一

    安恒良一君 さっきから盛んに失業の防止防止と労働省言われてますが、失業の防止防止と言われている労働省が、幾ら数字を聞いても数字もつかめなくて失業の防止ができるはずはないんです。  しかし、まあそのことはさておきまして、私は、この点も労働省に明確に申し上げておきますが、いま申し上げたような労働力集約産業等で、本法の施行に基づいて失業者が発生をした場合には、現在の雇用保険法以下関係法地域発動をやっぱり大胆にやってもらいたい。どうしても労働省地域的な発動ということについては、やや逡巡しがちでございますから、地域発動というものを大胆に行って、そして失業を救済をしていくということ、防止並びに失業した者の救済、こういうことをやってもらいたいということを申し上げて、次は、公取関係について御質問を、残された時間でしたいと思います。  先日のやりとりで、同僚の森下委員から公取委員長並びに通産省等に、いわゆる設備廃棄について、本法規定をしている「設備処理」と独禁法二十四条三の不況カルテルの「設備の制限」、それから中小企業団体法十七条の商工組合が主務大臣の認可を受けて行う「設備に関する制限」の三つの規定の定義についていろいろ聞かれまして、公取委員長以下関係者がお答えになったところであります。  そこで、どうも公取委員長の御見解を聞いておりますと、いわゆる設備に関する制限の中には、設備処理ということはもともと本来可能なんだ、含まれておったんだ、こういうことが森下委員とのやりとりの中で私は明らかになったと思うわけであります。それから、私も細かく記憶しておりませんから、いわゆる中小企業団体法の十七条の商工組合が主務大臣に認可を受けて行う設備に関する制限のところのやりとりについては、ちょっといまぼくは細かく記憶しておりませんが、いずれにしましても、やや可能だ、現行法においても設備処理ということができるんだというふうに私は聞き取れたわけです。そこで、そういうことになりますと、そういうことなのに、なぜ、この第二条の規定に大変念入りに「設備処理」ということについてうたわれたのかどうか、そこが一つわかりかねます。  なぜ、もうすでに独禁法もしくはいわゆる中小企業団体法十七条によってやれるということになっておるのに、なぜ今回、このようなことがうたわれたのだろうか。そこのところの理由。  それから、時間がありませんから一遍に質問をいたしますが、立案の過程における政府部内の調整でアウトサイダーの規制命令といわゆる会社合併の独禁法適用除外が削除された理由はどうなんだろう。また、主務大臣のカルテルの指示要件が、公取との協議から同意に修正された、こういうふうに聞いております。ですから、いまの独禁法なり中小企業団体法でやれると言いながら、片一方においては、最終的にはこの法律に落ちついたことも私は知っておりますが、それらの関係から、どうも、この前同僚の森下委員がかなりここのところはいろいろ突っ込んで聞かれましたが、まだすっきりとすとーんと来ないものがありますから、きょうは公取委員長もお見えになっておりますから、公取委員長並びに主務官庁の通産省等から、以上の関係についてわかりやすいように御説明をお願いしたい、もしくは見解を承りたいと思います。
  19. 橋口收

    政府委員橋口收君) 初めに私の方からお答え申し上げまして、通産省から補足してお答えをいただきたいと思いますが、独占禁止法第二十四条の三の「設備の制限」という言葉の解釈、内容の問題でございますが、前回お答え申し上げましたように、昭和二十八年に独占禁止法の不況カルテルの規定が設けられまして以来今日まで、一貫して、公正取引委員会の解釈といたしまして、設備の制限には設備の事業活動に関する一切の拘束が入る、こういう解釈をいたしております。したがいまして、設備の格納、休止、さらには処理廃棄等も含めた一切の行為が入る、こういう解釈を持っております。これは、前回申し上げましたように、独占禁止法の他の規定との整合性から申しまして、制限という言葉を広範に解することが法律の言葉に合致すると、こういう見解をとっているのでございます。  ただ、現実に運用がどうかというふうに申し上げますと、これは公正取引委員会運用方針といたしましては、従来は設備の制限についての取り扱いの方針をできるだけ限定をするという考え方をとっておりまして、現実には生産数量の制限等に伴いまして設備を休止するとか、あるいは格納するとか、そういう場合に限定をいたしておりましたために、解釈それ自体も狭いのではないかという一般に誤解を与えておったきらいはあろうかと思います。  しかしながら、有権的な解釈といたしましては、実際の設備の活動に関する拘束を含むという解釈をとっております。したがいまして、それとの関係で申し上げまして、今回の法律の「設備処理」についての詳細な規定、それからさらには、中小企業団体法における「設備に関する制限」の従来の中小企業庁との取り扱いの御方針等につきましては、これは通産省からお答えいただくのが妥当であると思いますが、さらにもう一回繰り返して申し上げますと、仮に設備の制限という言葉を狭く限定して解釈をいたしますと、設備廃棄に関する共同行為というものが独占禁止法の規制を受けない。これは大変不都合なことになるわけでございまして、この設備に関する活動は、いわば企業基本的な生存権に属することでございますから、そういうことに関しまして、企業がほしいままに共同行為を行うということを独占禁止法が是認するということになりますことは、これは適当でない。したがいまして、法律の解釈といたしましては、広く解釈するということで、従来からそういう方針をとっておったわけでございます。  それから、さらにお尋ねのございましたアウトサイダーに対する規制命令、それから合併についての規定が削除された経緯、これは前回の委員会でも詳細にお答えを申し上げたのでございますが、いま申し上げましたように、設備に関する活動について、政府が指示によって廃棄をさせる、あるいは新増設を禁止するというような行為は、これは本来好ましくないことであるのでございまして、できるならば、アウトサイダーの企業活動に対して制約を加えるというようなことは、できるだけやはり遠慮すべきではないかというのが基本的な考え方でございますし、それから合併につきまして、現在独占禁止法による審査がございますけれども、戦後三十年の間に幾つかの合併が行われてまいりましたし、構造転換に伴う合併等もあったのでございますが、これも、すべて現行の独占禁止法の運用によって対処いたしてまいってきておるわけでございまして、私どもの立場から申しますと、いささかの不都合もなかったというふうに考えておりますので、したがいまして、今回の構造不況の処理に関連いたしまして、合併についてまで例外規定適用除外を設けることも、これも適当ではないんじゃないかということで、これは政府部内の調整で御相談いたしまして、最終的には落ちたということでございます。
  20. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいまの三点につきまして、通産省側からお答え申し上げます。  まず、第二条で「設備処理」ということの内容を詳しく書いたのはどういう理由であるかという点でございますが、この法律におきまして、この法律のいわば内容の中核をなしますのが、まさに設備処理促進ということでございまして、設備処理という言葉は非常に広範な内容を含んでおります。したがって、この法律の中心になる「設備処理」という事項に関しまして、安定基本計画で何を決めるか。あるいは最後の担保措置といたしまして、設備処理に関するいわゆる指示カルテルをすることでもございますから、その内容をはっきりさせるということでございまして、廃棄と、それから廃棄にいわば準ずるといいますか、同じような効果を持つ長期の格納、あるいは休止というものにつきまして、さらにそれを技術的に法律で明文ではっきりさせるということで、この二条の規定を設けたわけでございます。  それから二番目の、アウトサイダー命令及び合併等に関します独禁法との調整の問題、御指摘のとおり、私どもこの法案を政府部内で調整をいたします最初の段階におきまして、私どもはただいまの二点につきまして、いわゆるアウトサイダー命令の設置の新設、あるいは合併等に関します特殊な手続等が考慮できないかという原案を持っておりましたが、ただいま公取委員長の御説明にございましたように、公正取引委員会を中心といたしまして、政府部内の調整あるいは本法案に対する各方面からのいろいろな御批判等がございました。そういうものを全部勘案いたしまして、政府原案といたしまして、両者とも法案から削除した、こういう経緯でございます。  協議を同意に変更したという点も、法案作成の段階で確かにそのとおりの経緯がございました。これは私どもは当初、協議という案でお話を申し上げましたが、この設備処理に関する独禁法の法体系との調整の問題で、これは公正取引委員会とのいろいろなお話し合いの結果、この法案にございますように、最終的に同意ということで、法案の最終案の作成に当たったと、かような経緯でございます。
  21. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃ、私の質問時間は四十九分だということの通告を受けましたから、最後に一問だけちょっとお聞きしておきますが、私はこれらの業界の中身をかなり知っておるのですが、たとえばアウトサイダーの規制命令がなければ、その業界としてはなかなかまとまらないということで、まとまりの悪い構造不況業界に対して、不況克服の効果が上がるのかどうかと、こういう問題についても、この法案が出たときに、いろんな各方面からしている。私、現実に何業界かについて、業界の経営者とも議論をしてみたんですがね、非常に、まず政府にやってくれなどという意見は私は間違いだと言ったのですが、そういう業界があるわけですが、そこのところについてはどうされようとしておるのか。また実際の実効が上がるんだろうかどうかと、公取の点からいうと、そこまでやるのは行き過ぎだということで、のけた方が妥当だとこう言われましたが、そこらの関係質問して終わりたいと思います。
  22. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) アウトサイダー命令の規定があるという場合におきましても、私どもこの法律自身が業界の大多数の方々の申し出によって、この法律の手続が進んでいくわけでございまして、そうい意味で、この法律の対象になる業界というのは、大多数の方々がこれからやっていこうという体側で進んでまいります。まず基礎的な業界の方向というのは、決まっておる業界と判断しております。その中におきまして、アウトサイダーの方が出てくるという業界は、当然これはあり得ると思いますが、私どもそういうアウトサイダー命令という法的な規制はない場合におきましても、いわゆるそれぞれの担当現局の当該業界との十分な話し合い、アウトサイダーの方の説得等を通じまして、何とか業界全体の方が設備処理の方向に進むように、いわゆる行政指導をさらに強く進めていく、こういうことで実際的に対処していこう、かように考えておるわけでございます。
  23. 安恒良一

    安恒良一君 ちょっと重ねて。そういうただ設備廃棄だけでは片づかない問題がたくさんあるでしょう。この前私がるるお聞きしましたように、輸入という問題があるわけですね。そうすると、なかなか輸入については二国間協定とか、輸入制限はわが国は貿易自由主義の立場からとれない。そうしますと、幾ら設備廃棄しましてもアウトサイダーが、たとえば韓国とか台湾とか香港から価格の安いやつを大量に輸入して、それを国内に売る場合には、規制のしようがないじゃないでしょうか。私は、だからこの前、いわゆる設備廃棄と同時に、そういう輸入問題についても、ある一定の限度を超えた場合には、やる意思があるんでしょうかということを大臣以下皆さんにお聞きしたのですが、いや、それはなかなかわが国の置かれている立地条件からいってそういうことはむずかしいと、こう言われる。だから本当にいま局長が言われたようなことで——輸入の問題がありますからね、たとえば繊維であるとか、ゴム履物とか、いろいろ大量輸入という問題が今日、それが一つの不幸になっている原因にもなっているわけですから、そういう点について、ひとつどうなんでしょうか。いまあなたが覆われたようなことで本当にできるんでしょうか。
  24. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 輸入の問題につきましては、業界によりまして非常に大きな問題であることは私ども十分承知をしております。ただ一方、ただいま先生お話のように、ただいまの日本の置かれた国際的な環境、立場の中で、輸入問題に直接政府が規制を加えるという方向はなかなかとれないということは、これまた十分御承知のとおりだと思いますが、私どもは、業種別の過剰設備処理問題を進めるに当たりまして、したがって、将来の需給計画の中で、業界ないしは関連業界を含めまして、いわば輸入というものをどういうふうに考えていくか、あるいは具体的に言えば、いわゆる秩序ある輸入という方式の中で、輸入のいわば増加というのをモデレートに国内との調整を図りながら、どう進めるかという点を十分議論しながら、この安定基本計画を定める。具体的に業種別にそういう方向で片づけていくと、こういう方針で進んでいきたい、かように考えております。
  25. 安恒良一

    安恒良一君 不十分ですが、時間が来ましたから終わります。
  26. 馬場富

    ○馬場富君 今回の不況法案業種の中に船舶製造業がございますけれども、この造船問題について質問いたしますが、日本造船工業会が最近まとめた五十三年度から六十年度までの造船の建造需要見通しというのが出ておるわけです。それによりますと、五十三年から五十六年の需要は現在の造船能力の四分の一程度であると。年間にいたしまして四百万トン程度しか見込めないというのが工業会の発表でございますが、前回の海造審の答申の数字を見ますと、六百五十万トンの見通しが立てられておるようでございますが、この食い違いについてはどのように考えてみえるか御説明願いたいと思います。
  27. 間野忠

    説明員(間野忠君) 先生指摘の六百五十万総トンと申しますのは五十一年の六月に運輸大臣の諮問機関であります海運造船合理化審議会が昭和五十五年における造船の工事量というもので見通しました数字でございます。その後若干の事態の変化がございまして、特に昨年初め以来の円相場の高騰というようなことがございまして、受注環境は非常に悪くなっております。そういうこともございまして、造船工業会の予測と申しますのは、ここ二、三年間の比較的短期間において現在の手持ち工事量とか、あるいは受注量から勘案して六百五十万総トンを相当下回るのではなかろうかという見通しを出したのであると理解しております。  ただ、やや長期的に見ますと現在四億総トンの船舶が世界にございますけれども、これの代替というようなことを考えましても、もう少し高い水準がそう遠くない時期に見込めるものと思っております。ただ、短期間におきましては、現在の非常に厳しい情勢から申しまして、六百五十万総トンを下回るような工事量が今年度あるいは来年度続くのではないかというふうに懸念されております。
  28. 馬場富

    ○馬場富君 それでは、じゃ、造船工業会のいわゆる見通しの現在の造船能力の四分の一、年間四百万トンということも実は考えなきゃならぬというのが現状ですか、どうですか。
  29. 間野忠

    説明員(間野忠君) 今年度五十三年度あるいは五十四年度におきましては、一般貨物船の需要につきましてはそのような事態が起こるのではないかというふうに考えられます。ただ、四百万トンと申しましても、あるいは一昨年の海運造船合理化審議会の六百五十万総トンと申しましても、これはかつてのようにタンカー中心につくっておりましたものとは違いまして、六百五十万総トンで申しますと、トン数ではかりました仕事の量としては三分の一になるけれども、かなり手の込んだ仕事でございますので、仕事量としては三分の二程度ではないかと予測しておったわけでございます。したがいまして、四百万総トンになりまして、確かにトン数ではかりますと四分の一とかいうことになりますけれども、仕事量としてはそこまでは落ち込まないというふうに考えております。
  30. 馬場富

    ○馬場富君 多少数字の食い違いがあるにしても、いずれにしてもやはりいわゆる需要と能力というのは大きく食い違いがあるわけです。そういう点について、いま今回のこの法案の対象業種にもなってくるんじゃないかと、こういう状況でございますが、それじゃ造船業界の設備処理についてはどのようなふうに現状考えてみえるか御説明願いたいと思います。
  31. 間野忠

    説明員(間野忠君) 先ほど申し上げました海運造船合理化審議会の見通しは、その後の事態の変化等がございましたので、現在海運造船合理化審議会におきまして、もう一度需給見通しの改定作業を実施しております。その結果によりまして過剰設備がどれだけあるかというようなことについて海運造船合理化審議会の御判断を仰ぎたいと思っております。ただ造船工業会あたりの方々がいろいろ非公式におっしゃったりしてそれが新聞等に出ておりますのを拝見いたしますと、ごく大ざっぱに言いまして、わが国の現在の能力が千八百万あるいは千九百万総トンといたしますと、半分は過剰ではなかろうかというふうに言われております。
  32. 馬場富

    ○馬場富君 それでは、この法案のやっぱり適用を受けて、造船業界の各種組合等についてもそういう廃棄の方向性で進むという進行性が現在あるかどうか、それだけもう一遍。
  33. 間野忠

    説明員(間野忠君) 過剰設備が現にある。それがどれだけであるかは別としまして、現に過剰設備があるということにつきましては各方面の意見は一致しておりまして、その過剰設備を背景に非常に厳しい競争が行われておるということも、各方面の方々が一致して認めておられるわけでございますので、すべての方々が大筋として設備処理の方向へ進まなければならないというふうに思っておられるというふうに理解しております。
  34. 馬場富

    ○馬場富君 この中でも、造船業界で特に中小の造船会社等についての、こちらあたりの意見等を聞いてみますと、やはり設備過剰になるのは大手がいわゆる中小の分野に食い込んできたと、そういうのがやはり中小造船の大きい一つの不況の原因だと。実際、大手七社の建造平均トン数を見てみましても、四十八年で四万七千トンが五十二年では一万四千トンと実は小型化しておるわけです。これは何を物語っておるかというと大手の七社が中小造船会社に仕事の分野で食い込んできておるという数字を如実に私は示しておると思うんです。こういう点がやはり一つは構造の不況の中でも特に中小造船業が圧迫されて非常にひどい状況が現状じゃないかと、こういうことを思うわけです。そういう点で、当局が中小造船に対する施策はどのように考えてみえるか御説明願いたいと思います。
  35. 間野忠

    説明員(間野忠君) 事態がこれほど厳しくなる以前に、五十二年度から操業調整ということをやっております。これは主として外航船を建造する四十社を対象としてスタートしたわけでございますが、この操業調整を実施するに当たりまして、一応過剰設備ということも考えまして、大手ほど厳しい操業調整を設けるということで実施してまいりました。また、大型ドックで小さい船を並べてつくるというようなことは確かに中小の分野を食うという事態が考えられますので、大型のドックあるいは大型の船台において二隻並べてつくる、二隻以上並べて建造するというようなことはしないように行政指導してまいっております。また、内航船につきましては、特に公団と共有で建造します内航船につきましては、一応大手での直接の建造は認めないというふうに指導しております。
  36. 馬場富

    ○馬場富君 特に、この本案の適用の中でも先ほど話したような実情が中小造船所に対する現実でございますから、ひとつそういう点も配慮の上、特に一般論以外に、中小造船のこれに対する一つ対策を特にひとつ考えてもらいたいと思いますが、どうでしょうか。
  37. 間野忠

    説明員(間野忠君) 設備処理に当たりましても、当然余剰設備がどこにあるかと、過剰設備を多く抱えておるのはどこかということは当然配慮しなければならない問題であると考えております。したがいまして、操業調整を行いましたときと同じような考え方で臨みたいと思っております。
  38. 馬場富

    ○馬場富君 それじゃ次に、同じ構造不況業種の中でもソーダ業界が一つはございますけれども、やはりこの需給見通し等も見てみますと、五十七年度にはやはり需要が三群十八万トン程度、あるいは塩素は三百三十五万トンというような報告書が一つ出ておりますけれども、現在のこの苛性ソーダ業界の能力と今度の過剰設備についてはどの程度の状況なのか、これを一遍説明してもらいたいと思います。
  39. 児玉幸治

    説明員(児玉幸治君) ただいまお尋ねのございました点でございますが、先生が御引用になりました需要の見通しというのは、ごく最近業界の方でつくりました一つの試算でございまして、五十七年ごろには三百十八万トンぐらいの需要があるだろうというふうに言われております。現在持っております設備能力は四百五十一万トンございます。仮にこの四百五十一万トンの能力がそのまま増減をしないままに五十七年まで行ったといたしますと四百五十一分の三百十八ということになりまして、稼働率は七割そこそこというふうになります。そういう意味におきましてはかなり設備が過剰のままに今後も推移するというふうに考えております。
  40. 馬場富

    ○馬場富君 それではこのソーダ業界の今度の法案に対するいまのギャップですね、これはやはり過剰設備設備廃棄の方に向けるのかどうかという点と、現状どのような方向性を持っておるか、ひとつ説明してもらいたいと思います。
  41. 児玉幸治

    説明員(児玉幸治君) 苛性ソーダ業界の抱えております非常に特殊な問題がございますので、過剰設備処理につきましては、実は率直に申し上げまして、いまのところ具体的にどうすべきかという結論は出ていないのでございます。  先生承知のとおりでございますが、現在の四百五十一万トンの設備能力のうち三分の二は隔膜法による設備能力でございまして、これは大体昭和四十九年から五十年ごろにかけまして新たに設置された設備でございます。残りの三分の一は水銀法による設備ということでございます。実は、その水銀法の設備が残っております最大の理由は、水銀法による品質のいい苛性ソーダでないと使い物にならない需要分野が存在するためでございます。そこで両方ひっくるめて考えてみますと、水銀法の方の設備をもしここでスクラップいたしますと、どうしてもそれでなければ役に立たない需要分断に対して供給ができなくなるわけです。それから一方、新しく設置いたしました隔膜法につきましては、まだ設備の設置をいたしたばかりでございます。償却も進んでおりません。借金もまだ非常に多額を抱えたままでございまして、この状態のままでスクラップに踏み切るかどうかにつきましてはなかなかむずかしい問題があるわけです。そういう意味におきまして、業界の中でもいまいろいろ検討はしておるようでございますけれども、このスクラップをどうするかについては確たる決心がつかない状況でございます。
  42. 馬場富

    ○馬場富君 いま説明されたように、特に苛性ソーダ業界においては、公害の問題からいわゆる水銀法から隔膜法への転換の問題が、政府の転換に対する計画の誤算が現在の設備過剰の中の大きい一つの要素になっておるというのは、これはもう事実と思うのです。そういう点で、ここらあたりの過剰設備の出題と今後の処理について、ひとつそんな抽象的な話じゃなしに、どのようにひとつ突っ込んで検討されておるか説明願いたいと思います。
  43. 児玉幸治

    説明員(児玉幸治君) 検討の状況はただいま申し上げたとおりでございますが、ただ、ソーダ業界もこのままの状態でずっと続いていっていいかどうかという点についてはいろいろ真剣に検討しております。私ども自身もこのままでいつまでも推移していいかどうかという点については、十分検討しなければならないというふうに思っているわけでございまして、今後ソーダ業界とも相談しながら、具体的にこの難局をどう切り抜けていきますか、早急に検討したいと思います。
  44. 馬場富

    ○馬場富君 大臣、このソーダ業界の点でございますけれども、いま関係局から説明がございましたが、大臣も御存じだと思うが、先ほど私が説明したような複雑な原因が一つ絡んでの不況ができてきておると、こういう点、ひとつ今後のこの過剰設備の進行については、この法案ともまた関係はございますけれども、そういう点についての慎重な検討を通産当局でひとつ再検討してもらいたいと、こう思いますが、どうでしょうか。
  45. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) ソーダ業界の抱えております問題は、いま質疑応答で御指摘がございました製法転換の問題あるいは過大な借入金の問題、それから転換した業界と転換しない業界とのコストの調整をどうするかという問題、それから全体としての過剰設備の問題、こういう幾つかの問題がございますが、そういう問題を今後総合的にどう判断していくかということは大きな課題でございますので、関係方面の意見も聞きながら善処してまいりたいと存じます。
  46. 馬場富

    ○馬場富君 じゃ、次に移りまして、先日私の質問でも大臣は、最近の国際収支の大幅な黒字や円高対策等について二十一日の経済閣僚会議において検討なさると、こういうことでございましたが、先般もこの国際収支対策及び円高に伴う物価対策というのが発表されておりますけれども、これについてひとつ当局から説明願いたいと思います。
  47. 宮崎勇

    政府委員(宮崎勇君) 国際収支の均衡を回復し、あるいは最近の急激な円高に対処するために、政府は従来ともいろいろの施策を講じてまいったところでありますけれども、今回四月二十一日に経済対策閣僚会議がさらに追加措置を決定いたしました。今回の対策は従来の延長線上にはございますけれども幾つかの特徴がございます。第一点は輸入対策をさらに拡充するということでございまして、特に外貨の貸し付け制度について一層の充実を図ったということでございます。それから第二点は、経済協力の問題を取り上げまして、それを質量ともに充実させるという形で推進するということでございます。この点は従来の国際収支対策が、どちらかと申しますと、経常収支の黒字削減ということにあったのを、若干幅を広げて資本収支の面も含めているというところに特徴がございます。それから第三点は、円高差益の還元の問題でございまして、従来、円高に対しましては円高を防止する、あるいはそこから生ずるいろいろのマイナスの点をカバーするというところに重点がございましたが、今回はその円高のメリットを生かすという点も含まれているという特徴がございます。  中身について簡単に申し上げますと、三つの柱からなっておりまして、第一が輸入等の促進でございます。この内容は、現在日本輸出入銀行が緊急の輸入外貨貸し付け制度というものを実施しておりますが、その短期なものにつきましては金利を引き下げる、あるいは長期固定金利でなければ実施困難な緊急輸入に対処するために、新たに長期の外貨貸し付け制度を設けたということが中心でございます。そのほか若干金額としては小さくなりますが、在外公館の土地及び建物等について、その早期購入を図るというようなことが含まれております。  それから第二番目の柱、経済協力等の推進につきましては、先ほど申し上げましたように、政府開発援助を質量ともに拡大するということを中心にいたしまして、二国間の経済協力、多国間の経済協力、それから国際商品協定等について述べております。主として二国間経済協力につきましては予算の完全消化を目指すということ、多国間の経済協力につきましては、貧困発展途上国の直面します債務累積問題を考慮に入れて援助を充実させるということ、それから、いろいろ進行しております国際商品協定について積極的に参加するということが含まれております。  それから第三番目の円高に伴う物価対策につきましては、できるだけ輸入品価格の低下の効果を国内の販売価格に反映させるという見地で物価対策を推進することとしておりまして、これは電力及びガス料金の五十四年度末までの現行料金据え置きの指導と、あるいは外国製たばこについての小売定価の引き下げの検討等約九つの項目から成っております。
  48. 馬場富

    ○馬場富君 それを実は拝見いたしまして、いま御説明も聞きまして、政府が三月十一日に黒字減らし対策の四項目を発表なさいました。そして、今度のやはり国際収支対策とあわせてみまして、いずれの点がひとつ前進したのか、私もずっとこう見て、いまも聞いておりましたが、その相違点というのは私は大きく言って円高差益の還元が一つ加わってきたにすぎぬじゃないかと、こんな感じがするんですが、どうなんですか。
  49. 宮崎勇

    政府委員(宮崎勇君) 御指摘の点が一つの大きな特徴でございますが、そのほかにも先ほど申しましたように、輸入の促進につきましては従来外貨貸し付け制度というのがございましたけれども、この貸付期間が三年でございまして、それを超える十年以内のものをつけ加えたと、それによって緊急輸入の対象物資を広げたという一つの特徴がございます。さらに経済協力の、項目を加えましたことは、経済協力はそれ自体の協力目的がございますけれども、国際収支という点でも取り上げて、これは従来の経常収支対策とは若干異なる範囲の広い国際収支対策だというふうに考えております。
  50. 馬場富

    ○馬場富君 大臣にお尋ねいたしますが、やはり五十二年度の経常収支が当初から大きく狂ってきたと、三月末にふたをあけてみたら実質百四十一億ドルの大幅黒字だったと、そういうような状況から、日米首脳会談等も五月に迫って、いわゆる世界的な信用とあわせて国民的な公約等の問題から、多くの意見の中では、今回の対策というのはかっこうをつけられたものが実情であって、実際は先ほどの何点か説明になったわけですが、そういう果たしてやはり異常な経済状況を打開するだけの内容がないじゃないかというのがもっぱらの意見でございますが、大臣、この点はどうでしょうか。
  51. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 大変厳しい御批評でございますが、私は幾つかの新しい制度等もできておりますので、運用いかんでは相当大きな私は効果があらわれるのではないか。でありますから、もう運用いかんにかかっておると、このように思います。でありますから、直接運用の面に当たられる方々がこの制度の真意というものを理解をされまして、そうしてとにかくいまの日本の国際収支の流れを変えなければいけないんだと、そのための緊急措置なんだと、通常の措置ではないんだと、非常緊急の措置なんだと、こういう判断に立って運用に当たってもらえれば私は相当大きな効果が期待できるのではないか、このように理解をしております。
  52. 馬場富

    ○馬場富君 それじゃ関係当局の方に、先ほど外貨貸し付け制度が輸入促進の中のこれはポイントです。大目玉ですね。これだってかつての四項目の中にははっきりありました。そういうことからいきますと、結局期間が延長されたのと利息が是正されたと、こういうことじゃございませんか。これ以外に何か特別のものがありますか。
  53. 宮崎勇

    政府委員(宮崎勇君) ただいま御指摘のように、金利が下げられたということと期間が延長されたということでございますけれども、従来はこの制度考えますのにある程度個々の物資を頭に入れて、それを入れるためにはどうしたらいいかというような考え方が行われていたわけですが、今回はできるだけその条件を輸入がしやすくする一般的な方式に変えているということで、金利の引き下げとあわせて、私どもは今回の措置によってかなりのものが輸入できるんではないかというふうに考えております。
  54. 馬場富

    ○馬場富君 じゃ次に、この一つ対策の項目の中に、老朽の外国船の解体に対する推進の問題が出ていますけれども、この点はどうでしょうか。
  55. 宮崎勇

    政府委員(宮崎勇君) 今回の輸入対策の中で、老朽船の解撤事業を行う場合の外国船の購入の円滑化のために必要な措置を検討するという項目がございます。これは現在造船業界が不況に当面しているということも含みまして、それの対策として行うわけでございます。これにはいろいろ問題がございますので、採算あるいはその方式等については十分に検討してみなければいけないと考えておりますが、ここで言っておりますのは、主として外国船を購入する場合に今回の緊急外貨貸し付け制度を適用するということができるんではないか、その点を早急に検討しようということを意味しているわけでございます。
  56. 馬場富

    ○馬場富君 それから経済協力の点につきましても、時間がございませんから、内容を一々私は質問したいわけですけれども、時間がございませんので、この経済協力の全般につきまして、これを見てみましても、結局これは実際に具体性が非常に薄い内容のものばかりだということですね。そういう点で、この経済協力が大幅な黒字の日本に対する外国からの一つの批判の目をそらすという効果はあったとしても、黒字減らしとして現実どのようにつながっていくのか、ここ説明してもらいたいと思います。
  57. 宮崎勇

    政府委員(宮崎勇君) 経済協力が促進されましても、先生承知のように必ずしも経常収支の黒字削減に直接貢献するわけではございませんで、むしろ資本支出あるいは無償援助の場合ですと移転収支という項目に出てくるわけでございます。今回の経済協力の促進という項目は、確かに従来の五年間で倍増を目指すという方針を百確認し、それを一層促進するということでございまして、数字的に特に新しいということはございませんけれども、たとえば二国間の経済協力につきまして従来ディスバースが非常におくれている、その点を非常に強調いたしまして、その促進を特に五十三年度予算につきましては完全消化を目指すということを具体的に掲げているという意味では、従来ただ単に予算をふやすというようなことだけではなくて、その実効を期するという意味で前進であろうかというふうに考えておりますし、また多国間の経済協力につきまして最貧国を含めた貧困の発展途上国がいろいろ債務が累積して問題になっておりますが、それにつきましても、前向きな姿勢を打ち出したということは私どもは新しい方向だというふうに考えております。
  58. 馬場富

    ○馬場富君 大臣にその点、私はそういうひとつ外国からの批判を避けるという効果は考えられると思うんです。だが心配するのは、かつて福田総理が東南アジアへ行っていろんな約束をしてきた。そのことは実際失効が薄いことから、かえって東南アジアの開発途上国から非難の声すら出ておるということですね。この経済協力については、そういう心配の要素が多分にあると思うんですよ。そういう点、大臣どうでしょうか。
  59. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まあ私も、基本方針としてはこれでいいと思うんです。これ以外には書きようがないと思うんですけれども、ただ問題は、具体的な数字その他が入っておりませんから、これをいかに具体的にかつ篤実に実行に移していくかということだと思います。そのためには、先ほども申し上げましたように、関係者がとにかく日本の置かれております非常事態というものに対して十分認識をいたしまして、とにかく問題を解決するんだと、非常の事態に日本はいま置かれておるんだと、こういう感覚のもとに取り組んでいけば、私は内容はこれで十分だと、こう思っております。
  60. 馬場富

    ○馬場富君 じゃ、最後に大臣に、今度の対策の中のやっぱり中心である、一般には遅過ぎたんじゃないかという声すらあるこの円高差益の還元について、結局国民の期待の電力、あるいはガス料金の公共料金の値下げまでという問題については、先般の衆議院あたりでも企画庁の長官も、今度の二十一日に対策考えるというような言明でございましたが、結局は据え置きというようなことで終わりまして、値下げということで、結局は政府自体がこのことについて確固たる国民に還元のことが示せなかったということとあわせまして、この円高差益の還元に対しての大臣の何点か出された問題について、特に石油製品については大臣も大分号令をかけているようですが、その具体性についてひとつ説明をしていただきたいと思います。
  61. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 円高差益を消費者には還元するということは、これはもういまの私は政治の大きな課題だと考えております。そこで、政府全体として積極的に取り組もうと、そういう姿勢を明確にしたわけでありますが、そのやり方は業種業種によっていろいろあると思うんです。一番いいと思う方法を具体的に考えていけばいいわけでございまして、たとえば電力とかガスなどは、これまでのいきさつあるいは料金の計算方法、そういうことを考えまして、ことしは値上げの年でありますけれども、値上げをしないで現行料金をできるだけ長く据え置く、こういう形で還元していくことが一番望ましい、こういう判断に立ったわけでございます。しかしながら、また、物によっては引き下げが好ましいというものもございますので、たとえば灯油等につきましてはすでに昨年の年末、円高差益を還元するようにという行政指導を行いまして、すでに値下げが行われておりますが、今回は石油製品全体についての円高差益の還元が必要であるけれども、特にこの国際競争力から考えまして、割り高な状態にありますナフサについては、至急に引き下げるようにと、こういうことも具体的に指示をしております。さらに、  輸入製品全体についての価格動向等をたびたび調査をいたしまして、消費者に情報を提供していく、これも有力な方法であろうと考えております。経済企画庁が中心になられまして、近く第三回目の価格動向の調査をされまして、その詳細を消費者に情報提供をする、こういうことも行われることになりました。幾つかの方法が行われておりますが、私はまず、全体として妥当であると考えております。
  62. 安武洋子

    ○安武洋子君 私きょうのところは、二時間という大変限られた時間でございますので、まとめてお伺いするようなことがあるかもわかりませんけれども、よろしくお願いいたします。  本法案の「目的」といいますのは、構造不況業種過剰設備処理促進することによって、これら産業の不況の克服と経営の安定を図るというふうになっておりますけれども、この過剰設備に陥るに至った経済的、それからあるいは政策的、こういう原因や問題、これが当然あろうかと思うんです。しかし、これは各業種によって異なっておりますし、この原因を究明してこの原因を取り除かなければ、法の趣旨である不況の克服とか、あるいは経営の安定を図るということはできないと思うんです。ところが、過剰設備に陥った政府のこの経済見通しの誤りですね、それからオイルショック後も膨大な資金をつぎ込んで設備投資を促進していった金融機関とか商社、あるいは大手メーカー、こういうところの責任などがこの法案では明確にされていないわけです。私は、この法案というのは構造不況業種や関連企業に働く労働者の首切り、人減らしなどの雇用調整、これを一層推し進めたり、あるいは中小企業関連企業の切り捨て、整理淘汰、これを推進することによって業界全体の縮小、減量を図るというふうなものだというふうに危惧せざるを得ないわけなんです。  そこで、私は質問を申し上げますけれども設備の過剰というのは本質的には構造的危機の結果であると思いますけれども過剰設備処理だけで一体不況克服、経営の安定が可能であると思われる構造不況業種があるのかどうかということが一点です。  それからさらに、「設備処理促進」という、非常に限定された対策がどの程度の効果を上げるというふうにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。  さらに続けますけれども本法案では過剰設備の背景として、内外の経済事情の変化、これを挙げておられます。具体的な内外の経済事情の変化とは、一体どういうことを指しておっしゃっているのか、主要な原因はただそれだけなのかというふうなこと、あるいはこういう全体の問題点とともに、個別の業種ですね、この本法案の中には産業ごと例示四業種が挙がっておりますけれども、この例示四業種の特殊な要因について、大臣は反省しなければならない点もあるという御発言もあったわけですけれども、政府の反省点も含めて、私はまず最初にお伺いいたしたいと思います。
  63. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいま御質問の何点かにつきまして、逐次お答え申し上げます。  まず、いわゆる構造不況業種、この法案が対象にしております設備処理だけで、その構造不況業種が抱えておる問題が全部片づくかどうかという点でございますが、私、設備処理だけで、それぞれの業界が抱えておる問題がいろいろございまして、全部抱えている問題が片づくとは考えておりません。ただこの法案は、いわゆる構造不況業種と言われております業種の共通の問題として、やっぱり設備処理ということが非常に重要な問題であるということに着目をいたしまして、設備処理を図ることが、その業種によっていろいろ違いはあるとは申しましても、今後の業界全体の立て直しという観点から見て、非常に大きな問題が片づき得る、こういうふうな認識からこの法案を提出をしたわけでございます。  二番目の、したがってどの程度の効果があるかということでございますが、この点はただいま申し上げた点と関連をいたしておりまして、私は設備処理というのが予定どおりに業界全体の協力で片づけば、業界がこれから新しい経済発展の中で新しい方向をとっていく場合のいわば基礎固め、大部分の基礎固めができると、こういう考え方を持っております。  それから、三番目の経済事情の変化でございますが、第一条の「目的」に「内外の経済的事情の著しい変化にかんがみ」と書いてございます。先生の御指摘のように業種によりまして、いろいろな原因ございますが、これを幾つかに分けて考えてみますと、一つは七〇年代、あるいはオイルショックを一つの境といたしまして、いわゆる経済成長のあり方に非常に一つの大きな変化が来た、つまり高度経済成長から減速経済の経済成長に移ったということでございまして、そのために、いわゆる需要が全体的に見ていままでの伸びが期待できない業種というのが非常に多くなってきた。特に構造不況業種と言われますものは、どちらかと申しますと基礎資材生産の産業というのがかなりたくさんございます。そういう意味での需要の変化ということが、共通の第一点として挙げられると思います。  それから二番目は、オイルショックを契機といたしましたエネルギー価格の高騰、これによってコストが急上昇したという、いわゆるコスト構造の変化ということが非常に大きな原因になっておる業界が幾つかあると考えております。たとえばアルミ製錬業でございますとか、その他化学工業の一部等はその点が非常にはっきり出ておるのではないかと考えております。  三番目の原因といたしましては、発展途上国の追い上げ等による——これは非常に長い歴史的な時間もあるかもしれませんが、追い上げ等によりまして国際競争力が非常に低下をしてしまった。なお、国際競争力の低下という観点から見ますれば、先ほど申し上げましたコストの上昇要因というような点も総体的に見まして、日本の産業のいわゆるコストを総体的に非常に引き上げた、そういう意味で、国際競争力がなくなったという要因もあるのではないかと思います。  さらに最近の問題から申しますと、昨年以来のいわば円高の傾向、これが特定の産業につきましては非常に大きな影響を与える、こういう情勢がございます。  こういう大体四つにいま分けて申し上げましたが、これらが最近における内外の経済事情の変化と、私どもこういうふうにとらまえております。
  64. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、特定不況産業の定義についてお伺いいたします。  法案では、第二条一項一号から四号までの例示業種のほかに、特定不況産業として政令指定を受ける対象としての定義づけが五号でなされているわけなんですけれども、この五号は、これはさらに細部にわたる要件を省令等で追っておつくりになるんでしょうか。
  65. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 特定不況産業のいわば選定の基準でございますが、御指摘のように一号から四号までは、いわば五号に書いてありますような政令指定の要件を充足をして、しかも従来からいろんな議論の中で特定不況産業として対象のいわば典型的な業種といたしまして四号まで掲げたわけでございます。  五号は、さらにそのほかに、いわゆるこの法律の対象たり得る、候補業種たり得る産業をどういう観点から選ぶかということを掲げてございまして、この五号にそれぞれ幾つかの要件が書いてございますが、この要件につきまして個別に、たとえばその下の段階の政令とかあるいは省令等の段階で、はっきりとした規定をするつもりはただいまのところございません。この五号の解釈、運用によりまして、対象業種の選定をして、政令で指定を図っていきたいと、かように考えておるわけでございます。
  66. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、設備過剰と、それに伴う経営の不安定が長期化するおそれのある業種があれば、何によってそうなったかというふうな原因は問わないで、政令指定の対象になさるんでしょうか。本年二月の通産省の構造不況対策の冊子の中で「予測せざる経済事情の変化」というふうに表現をなさっていらっしゃいますし、法案では経済事情の変化ということで、先ほどいろいろ御説明をいただいたわけなんですが、こういう事情に当てはまらなくて長期的な過剰設備が生ずるケースというのは、私はないのではないかというふうに思うのですが、現在構造不況に陥っているが要件を満たさないというふうな産業があればお伺いしたいのですが。
  67. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) いわゆるこの法律に申します「特定不況産業」という言葉と、それから通常使われておりますいわゆる構造不況という言葉と若干内容に差があるのではないかと思います。  通常使っております構造不況業種というのは、若干広い概念で使われておるのではないかと思いますが、いずれにいたしましても、まず二つの観点から御説明申し上げますと、この法律はいわゆる製造業だけを対象にいたしておりますが、ただいま先生指摘の広い意味での構造不況業種と申しますと、必ずしも製造業だけでございませんで、たとえば鉱山等のいわゆる第一次産業もございましょうし、それから海運その他、いわゆるサービス業等は製造業でございませんで、しかもそういう業種の中に、広い意味での構造不況問題を抱えておる業種というのがあると思います。そういう意味での構造不況業種というものは、私は存在をするのではないかと考えております。  第二に、製造業でありましても、長期にわたって過剰設備の状況が継続する業種というのは、これはあるいは私どもがこの法律に予定しておる以上に、いろいろな業種があるかもわかりませんが、この法律で政令といたしますのは、二条一項の五号の後半の方に、過剰設備を抱えていて、そうしてこの過剰設備処理を行うことによってその事態を克服することが云々と書いてございます。つまり、過剰設備を抱えながら、その設備処理というのがその業界の特徴からなかなかできない。たとえば設備処理、いわゆる業界の運営あるいは企業の運営の中で、設備の持っているというウエートが非常に小さくて、先ほどの御質問とも関連いたしますが、設備処理をやるだけでは、その業界の抱えている本質的な問題が片づくわけにはいかないという業種——ちょっと具体的に何かと申しますと、私ここで申し上げるのが頭に浮かびませんが、たとえば非常に労働集約的な業種等は、設備処理という問題ではいわゆる構造不況問題がなかなか片づかない。こういう業種もあるのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  68. 安武洋子

    ○安武洋子君 じゃ、もう少し基準をお伺いいたしますけれども、この中で「生産能力が著しく過剰」という、この「著しく」とは何を基準にしてどの程度を一体指すのか。それから「経営の著しい不安定」というこの「著しい」というのも、一体どういう基準で何をどの程度を指すのかというふうなことですね。で、鉄鋼などと言いますのは、現在操業率がかなり低下しているわけなんです。「著しい」という点ではこれは合致すると思うのですけれども、長期化しないという見通しで、対象にお入れにならなかったのではないかというふうに思うのですけれども、この「長期にわたり継続する」かどうかという点では、どういう判断基準をなさるのでしょうか。
  69. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) まず「生産能力が著しく過剰」という言葉でございますが、これは一般的に申し上げますれば、ただいま御指摘のように、現在の段階で生産能力の方が需要に比べて非常にオーバーをしているということ——業種はたくさんあると思います。ただ、第一には、いま申し上げたように長期、それがいわゆる循環的な不況と申しますか、景気変動なのか、あるいはやはり相当長く続くかというのが第一の判断でございまして、そういう意味から長期という言葉を使いました。  それじゃ「長期」が何年かということでございますが、これはいろいろな業種によりましてとらえ方も違うと思いますが、たとえばアルミ産業等は、五年先ぐらいの姿を見まして、しかも相当の過剰であるという、五年ぐらいの先の姿を見ながら過剰であるという検討を進めておりましたし、平電炉等におきましては、これも三年ぐらい先の姿を予想しながら、それで非常に大幅に過剰である、長期、さらにその先にわたる、こういう検討をしておりますので、やはり数年以上、こういうふうな観点から業種別にとらえていこう。「長期」という概念は以上でございます。  それから「生産能力が著しく過剰」、これも業種業態で非常に見方が違うかと思いますが、やはりその業種業種で過去の稼働率の実績等があると思います。こういう過去の実績、それから適正稼働率というのをどう考えていくか。こういういろいろな要素を勘案をいたしまして、この「著しく」という判断をしてみたい、こう思っているわけでございます。  それからその次の「経営の著しい不安定」という、この「著しい」という言葉がございますが、これはただいま申し上げた生産能力の判断と同じように、たとえばその業種の売り上げ高、あるいは売り上げ高利益率、こういう幾つかの指標があると思いますが、これが過去の実績等から見て、あるいは他産業との比較等から見て、正常な状態に対して、やはり相当低いというようなこと、あるいは産業全体で見ましたときの負債の状況、これが正常な状態に比して著しく多い、あるいはそのおそれがある、こういう観点から判断をしてみたい、こういうふうに考えております。  なお、この「著しい」という判断をどうするかという問題につきましては、他の立法例等も前にございまして、その場合の判断基準等も幾つかの前例等もございますから、今後そういう前例等も参考にしながら、この「著しい」という判断をしていきたいと、かように考えております。
  70. 安武洋子

    ○安武洋子君 私がいままで長々と基準をお伺いいたしましたのは、この法律の「目的」ですね。第一条に、「この法律は、最近における内外の経済的事情の著しい変化にかんがみ」ということで、ここの「特定不況産業について、その実態に即した安定基本計画を策定し、計画的な設備処理促進等のための措置を講ずることにより」「不況の克服と経営の安定を図る」と、こういうことになっておりますね。ですから、設備処理促進しても、不況の克服や経営の安定が図れないおそれのある産業というのは、特定不況産業に指定されないように受け取れるわけなんです。ちょっと一点聞いておきますけれども、これはそうですか。   〔委員長退席、理事福岡日出麿君着席〕
  71. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 先ほど御説明申し上げましたように、この「目的」は、非常に一般的に書いてございますが、その五号の指定要件で申し上げましたように、長期の過剰設備処理の存在と、もう一つは、設備処理をやることがその業界として将来の「不況の克服」あるいは「経営の安定」を図ると、その非常に大きな手段であると、こういう産業を特定不況産業として指定をするということでございまして、ただいまの御指摘のとおりと、考え方ではそう思っております。
  72. 安武洋子

    ○安武洋子君 そこで伺いますけれども、例示業種の中の造船業の場合ですね。この造船業は世界的な造船不況という状態のもとで、需要そのものが激減しているわけなんです。造船の場合は、他の製造業のように、規格品をつくって在庫を持つというふうなことではなくって、注文が来ればこれは建造するものなんです。ですから、設備が多過ぎるから製品がはんらんして需給バランスが崩れてしまうと、こういうものではありませんね。ですから、こういうふうな中で、船台を処理をするということが一体どういう効果を持つのかという疑問を持たざるを得ないわけなんです。まして、これによって不況の克服ができるとも思えないわけなのですけれどもね。しかし先ほどからずうっと基準をおっしゃっているこの基準に私としては当てはまらないと思うんですけれども、なぜ造船がこういうふうな、先ほどおっしゃった基準に該当して特定不況業種として指定をされるんでしょうか。
  73. 間野忠

    説明員(間野忠君) ただいま御指摘の点につきましては、この法案の作成過程において、政府部内でもいろいろ議論されたところでございます。確かに造船は注文生産でございまして、ほかの装置産業と申しますか、見込み生産によって在庫がふえるというような業種とは若干違う点があるかと思いますが、われわれ考えますに、本質的には全く同じでございまして、ただ、その効果と申しますか、その過程の現象と申しますか、それに若干順序の違いがあるという程度のことではないかと考えております。受注生産ではございますが、すでに設備を抱え、また人を抱えておりますので、できることならば、それだけの設備に見合った注文を取りたいということで受注活動をいたすわけでございます。現在非常に不況でございますので、まだ五十三年度の注文を取っておるところでございますけれども、もちろん五十四年度のものにも手がけております。五十四年度の受注活動は何によってやるかと申しますと、五十四年度にある設備を仕事で埋めるべく受注活動を行うということで、そのために過当競争が起こり、船価が下がる、そして経営が非常に苦しくなるという事態になっておるわけでございます。  それで、先ほどの御質問の際にも申し上げましたけれども、現在関係者のこの法案に載せたいという理解は、五十四年なり五十五年の過剰設備処理することによりまして、大体需要に見合った規模にしていきたいと、そういうことによって厳しい過当競争を排除して、できるだけ船価を適正な水準に戻し、経営の安定化を図りたいということだと理解しております。
  74. 安武洋子

    ○安武洋子君 私が先ほどから基準を事細かくずうっと具体的に聞いてまいったそのことを頭に置いていただきたいわけです。  先ほどおっしゃった基準の中で、造船業というのは、やはりおかしくなるわけですよ。繰り返して申し上げますけれども造船業のこの不況というのはね、やはりこれは世界的な造船不況の中で受注そのものが激減していると。ですから、設備が多過ぎるからと言って、需給のバランスが崩れるということを挙げられましたけれども、これで需給のバランスが崩れているものではないわけでしょう、てすから、船台を処理したということで、先ほどおっしゃったように、その業界の大きな問題が片づいて、業界が新しく発展を遂げていく基礎になるんだ、こういうふうにおっしゃいましたけれども、そのようになるというふうには考えられないわけですよね。ですから、私は結局この「目的」で言う「設備処理」それによる「不況の克服」「経営の安定」と、こういうことは特定不況産業の指定対象になる上での条件にしないことになるのではないかと、こういうふうに思いますけれども、御答弁通産の方からお願いいたします。
  75. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私ども船舶製造業を直接に担当しておりませんので、詳細についての業界の実情等つまびらかにしない点もございますが、ただいま運輸省の方から御答弁ございましたように、いわゆる日本の船舶製造業が今後非常に長期的に見て、従来の発展の方向なりあるいは、船舶は確かに受注生産でございますけれども、世界的に見た船舶の需要をどう見るかというような中で、非常に大きないわゆる設備の面から見ても過剰設備があるという判断をされ、そしてこの業界の将来の非常に安定的な方向、つまり過剰な船台、設備能力を抱えておるということは、常にそれだけ過当競争その他の、いわば業界の正常な発展を阻害をする要因と考えられますので、過剰設備処理を業界ぐるみで行って、いわばそのこぶを取り去ることによって、将来の長期の船舶の需給、製造の需給というものに合わしていくというお考えがもし業界全体のお考えであり、所管大臣としてのお考えであれば、私はやはり船舶製造業はこの法律に言う特定不況産業の一つの重要な候補業種たり得るものと、私どももそういうふうに考えておるわけでございます。
  76. 安武洋子

    ○安武洋子君 この法案は、これ通産省がお出しになったんじゃないんですか。そしていまの業界の内容はつまびらかに知らないとおっしゃるのは、私は余りにも不穏当な御発言じゃなかろうかと思うんですよ。ここにちゃんと「特定不況産業」ということで、第二条にこの法案にうたってあるわけなんですね。その業界の中身を余り御存じなくって、こういう法案にお挙げになるということは、一体どういうことなんでしょう。そして私が先ほどからるるこのいろいろ基準をお伺いしたことに、全然合致しないじゃないですか。造船がね、いまおっしゃったように、いろいろおっしゃいますけれども設備は確かに過剰でしょう。でもそれを廃棄することによって、特定不況産業というのは、いまほかのところとは違うと、どこも設備過剰あるけれども、特にこういう条件のところだということをもう繰り返す時間ありませんけれどもね、いろいろおっしゃってくださったわけなんですよ。そういう条件に当てはまらないじゃないですかという私は御質問をしておりますので、もう一度重ねて御答弁お願いいたします。
  77. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) この法案は、確かに私ども通産省がいわば幹事役になりまして、法案作成等の中心的な地位を占めまして法案の作成の準備にかかりましたが、内閣提出法案といたしまして、運輸大臣、農林大臣等それぞれ業種所管の大臣が共同して閣議の決定を受け、国会に提出して、国会の審議をお願いをするという法案でございまして、私ども通産大臣の所管する、全体を所管する法律ではございません。主務大臣がそれぞれの所管業種について、この法律の定めるところによって設備処理促進をしていくと、こういう法律でございます。もっとも、私ども中心的な幹事役を引き受けましたので、当然この法案にどの業種を載せるか、対象とするかということについてはいろいろ内部で議論をいたしました。私どもも、ただいま私が申し上げましたような事情から、船舶製造業は運輸省所管、運輸大臣が今後この法律で業界の自主的な努力と相まって設備処理を進めていく対象業種である、こういう私どもも了解と申しますか、判断をいたしまして、共同して法案をつくった。  以上でございます。     —————————————
  78. 福岡日出麿

    ○理事(福岡日出麿君) 委員異動について御報告いたします。  本日、市川正一君、安恒良一君及び大塚喬君が委員辞任され、その補欠として河田賢治君、浜本万三君及び矢田部理君がそれぞれ委員に選任されました。     —————————————
  79. 安武洋子

    ○安武洋子君 特定不況産業というのは、いろいろ御定義を伺ったわけですけれども、それで法の第二条にもこういうふうにして定義がございますけれども、いま私がお伺いしたところでは、設備過剰に陥った原因という点では、現在の構造不況下ではほとんどどんな原因でもこれは当てはまるんじゃないかと思いますし、また現在の設備の稼働状況とかそれから経営の状態、あるいは設備処理の効果などについても、柔軟な解釈で幅広い産業に適用なさるというふうなことでは、これはほとんどに当てはまるんじゃないかというふうに思うんです。しかしただ一つ、長期にわたり継続することが見込まれるかどうかと、先ほど私が鉄鋼でも申し上げましたように、そういう点が特定不況産業になるかどうかという重要な物差しになっているように思うんですよ。つまり、どのように状況が変わったところで縮小せざるを得ない産業というのは、この法で言う特定不況産業の対象にされているんだというふうに思うんです。  この場合、金融機関とか商社などが投機的な思惑とかそういうふうなのも手伝いまして無謀とも言える設備投資を行ってきた結果不況産業に陥ったというケースの場合もありますけれども、中心的にはやはり円高とか発展途上国の追い上げなどによって、政府の言う国際分業的な立場から、日本の産業構造上縮小すべき産業というものが本法の対象産業として挙げられていることになっているのではないか。政府はYXとか電子工業とか精密機械、こういうふうな機械工業などの先端技術産業、またあるいは知識集約型の産業については、政府資金もつぎ込んで保護育成に努めていらっしゃるわけなんです。ところが一方、いまこういうような不況業種の場合では、所管省庁と産業の中心的なメーカーの合意によって安定基本計画とかあるいは指示カルテルとか、こういうことで強力に業界を整理を進めて、最低限のところだけでは生き残る、そして中小企業や労働者を犠牲にして産業構造の転換を推し進める、そのための強力なてことして私はこの法案をお使いになるのではないかと、こういうふうに思うんです。やはりこういうことがいまの論議の中で私は考えられるわけなんですけれども、この点について一体大臣どうお考えなんでしょうか。
  80. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 広い意味では、構造不況業種対策を進めれば産業構造の転換になるということも言えないことはないと思いますが、今回この法律を出しましていろいろ御審議をお願いしておるわけでございますが、これは産業構造の転換という意味からお願いしておるわけじゃございませんで、構造不況業種実情が緊急大きな課題になっておる、このまま放置することはできないと、こういう立場から、構造不況業種に共通する設備廃棄を進めるについて、一定の手続をひとつ決めたいと、こういうことでお願いしておるわけでございます。
  81. 安武洋子

    ○安武洋子君 では過剰設備処理と言いますのは、いままで独禁法の二十四条の三の不況カルテルで多くの業界で進めてきたわけなんですね。じゃ、あえてこの法案を提出なさるというそういうねらい、不況カルテルによる処理を上回る一体どういう効果をお考えなんでしょうか。そういうものがあるのかどうかという点をお伺いさせていただきます。
  82. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 過剰設備処理の問題が、全産業を通じましてこういう大きな問題になったのはむしろ昨年ぐらいからでございまして、御指摘のようにその前におきましても繊維産業、どちらかと申しますと繊維産業の中でもいわゆる機屋さんを中心としました中小企業分野におきまして、当時は構造不況業種という言葉はございませんでしたけれども、非常に長い目で見た国際的環境の中での変化等々から、繊維産業についてのたとえば織機の買い上げ等の設備処理問題が取り上げられたことはございますが、いま御指摘のように、独禁法の不況カルテルの運用によりまして設備処理が行われたというケースは、私の記憶ではございません。ただ短期的な需給調整の際に、設備の封緘をいたしますとか格納をいたしますとか、これは構造問題ではございませんで、短期的な需給調整の手段として二十四条の三が、不況カルテルの運用によりまして、需給調整が行われたという経過はございます。  したがいまして、この法律は新しい、産業全体に非常に共通の大きくなりました過剰設備処理促進をするための法律として新しく考えたわけでございます。そこで、公取委員長からの御答弁にもたびたびございますように、公正取引委員会とされましても、従来はどちらかというと短期の需給調整だけに運用しておられました不況カルテルの制度を、長期の設備処理についても運用していこうと、こういう方針をはっきりされました。私どもこの法律でも、したがって四条で、できるだけ事業者の自主的な努力で設備処理を行っていくと、その中には不況カルテルの運用も当然のことながら入ると、こういうように考えておりますが、ただ新しくこういう法律をつくりましたのは、一つは、そうは申しましてもなかなか業界ベースで設備処理についての不況カルテルができないというケースが予想をされます、第一に。第二に、不況カルテルの運用は、二十四条の三と申しますのがいわゆる不況要件がございますので、長期にわたって設備処理をする場合に、この不況カルテルの運用だけではカバーができない法律的な問題等も生じてくるというような問題もございまして、そういう意味で最後の担保手段として、いわゆる指示カルテル制度を設けるというのが一つでございますし、それから第二は、この法律の柱になっておりますいわば金融的な援助と申しますか、バックアップ、つまり保証信用基金による保証を通じて、設備処理をバックアップをする、こういうことからこの法律を新しくお願いをしたと、こういう次第でございます。
  83. 安武洋子

    ○安武洋子君 本法では共通点、これ設備処理ということでくくっておられるわけですけれども、私がずっとお伺いしてきたところでは、設備過剰に陥った原因という点では、ほとんどもうどの産業にも当てはまるというふうなことですね。それからいまの設備処理の効果などについても、非常に柔軟にやられるというふうなことで、私、先ほども申し上げましたように、ただ長期にわたり継続するということが見込まれるかどうかということが、これがただ一つの物差しのような気がしてしようがないわけなんですよ。だから、つまり私は、この法で言う特定不況産業の対象となるのは、やはりいまの日本の産業構造の中で縮小せざるを得ない産業だと、こういうふうに思うわけなんです。こういうものを私はやはり整理淘汰をされるということで、この法案を使っていかれようとしているということを指摘せざるを得ないわけなんですけれども。  続いてお伺いいたしますけれども特定不況産業の信用基金ですね、これについてお伺いいたしますけれども、この法の第十三条の「目的」で「特定不況産業における計画的な設備処理促進するため、これに必要な資金等の借入れ」ということが出ております。これに対して債務を保証するということで、また三十九条の二項では、安定計画に従って設備処理のため必要な資金と、それから設備処理に伴って必要になる資金、あるいは譲渡を受ける者が支払う補償金などの借り入れの際の債務保証を行うこと、こういうことになっておりますけれども、担保抜き資金の場合がほとんどのケースではないかと思うんですけれども、それはどうなんでしょうか。またそれ以外に、具体的にどういう場合の借り入れの際に債務保証をなさるんでしょうか、この点をお伺いいたします。
  84. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 債務保証の対象でございますが、ただいま御指摘のような「目的」と信用基金の業務、三十九条を御指摘なりましたが、三十九条に書いてございますように、一つは「設備処理のため必要な資金」、これは何になるかと申しますと、ただいまお話のありましたような主として担保抜き資金が中心になるのではないかと考えております。それともう一つは、「当該設備処理に伴って必要となる資金の借入れに係る債務の保証」、これはどういう対象になるかでございますが、私どもがただいま考えておるのは、いわば附帯設備等もございます。これをやはり主設備処理に伴いまして、そういうもののいわゆる処理が必要になってくることもあり得ると思います。このための必要な資金、それの保証の問題、あるいはこの設備処理に伴って労使間で円満な話し合いがついている。そして、いわゆる雇用調整が進められる、退職金がない、この場合のたとえば退職金の借り入れに対する債務の保証、こういうものがこの基金の保証の対象というのではないか、基本的にそういうふうに考えております。  なお、それじゃ具体的に何についてどういうかっこうでやるということは、いわゆる業務方法書で具体的に定めることになりますので、この基金が設立されまして、この基金の業務方法書の中でさらに詳細の取り扱いについては定められると、こういうことでございます。
  85. 安武洋子

    ○安武洋子君 債務保証の場合に、担保抜き資金が多いというふうな御答弁がありましたのですけれども処理の対象になる施設の場合ですね、その中には全部とは申しませんけれども、いままで数次のカルテルを繰り返して休業を続けるというふうなことで担保価値そのものが低下をしているというものがたくさんあろうかと思うんです。構造的に過剰となっている機械設備ですから、これは担保価値などないのも同然ということすら言っても過言ではないというようなものもたくさんあると思うんです。こういう処理に伴う担保価値の減少を債務保証するというのは、私はこれは現状に全く合致しないのではないかというふうに思いますけれども、この点はいかがお考えでございますか。
  86. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) この設備処理に当たりましての債務保証につきまして、どういう基準でやるか、これは技術的に非常にたくさん問題がございます。いわゆる簿価で見るのか、何で見るのかというようなこと、これにつきましては、私どもこの基金の所管大臣が私どもと大蔵大臣でございますので、両省事務当局でこの法案作成の段階からいろんな問題の整理をしておりますが、大変技術的な問題が多いものでございますから、四月の初めから金融機関あるいはその他そういう専門の方たちのグループをつくりまして、現在までにすでに数回にわたりましてこの問題点の整理と、これをどう考えるかという技術的な詰めをやっております。  そこで、いまの担保抜き資金の担保の価値がいろいろ減少していくというような問題等も当然のことでございましょうが、私どもそういう観点でいろいろ検討してみたいと考えております。
  87. 安武洋子

    ○安武洋子君 検討していただくのは結構なんですけれども、現実問題として、いま私が申し上げたように、担保抜き資金、それがたくさんあるというふうなお答えでございましょう。そして、その担保そのものがほとんど担保価値がないということを申し上げているのです。これはもう現実ですね。ですから、こういうものに対して債務保証するというのは、全く現状にマッチしないのではないかということなんですね。検討なさるまでもないことじゃないですか。
  88. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私が個々業種につきまして、ただいま御指摘の点はいろいろな実態の相違があると思いますし、それから、これからの設備処理、どれだけの量をどういう設備でやるかということにつきましても、個々の業界で非常に違った要素があると思います。したがって、現在の段階で、御指摘のような点についてこの債務保証を行うことの意味がないんではないか、という点について的確にお答えを申し上げる段階ではございません。ただ、私はやはり、その設備処理を進めるのが非常にむずかしいという一つの要素といたしまして、やはり設備処理をやるためにはこの担保抜きをしなければいかぬ。したがって、それの逆転資金の借り入れ、ここに非常に大きな問題があると、こういうふうに私ども考えておりますので、やはり設備の担保抜き資金の借り入れとそのための保証ということは、設備処理を進めていく上で非常に大きなやっぱりウエートではないか、こういうふうに私ども了解をしているわけでございます。
  89. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、この法の三十九条の二項の処理に伴って必要となる資金の場合ですね、これは修正で、法目的もですけれども、安定計画に「雇用の安定を図るための措置」これが明文化されたわけなんです。これによって設備処理に伴う人員整理の際、いま退職金というふうにお答えになりましたけれども、解雇を防ぐためとか、あるいは雇用の安定を図るためとか、広くこういうものに要する資金の借り入れなどについても債務保証をなさるかどうかということを確認しておきとうございますが、これはいかがですか。
  90. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 今度の衆議院修正によりまして、安定基本計画の中にも「雇用の安定を図るための措置を含む」という規定が第三条の二項の三号に入りました。それで、政府原案の際に私ども答弁申し上げましたのは、この法律設備処理促進をする、したがって、その背景に当然のことながら雇用の安定を図りながら、いかにスムーズに設備処理を進めていくかということがこの法律のねらいでございますので、雇用の安定に関する直接的な事項というのは、この安定基本計画の中にすることとは直接の対象とは考えておりませんと、こういう御答弁衆議院でいたしておりまして、ただ、衆議院では「雇用の安定」という問題が非常に重要な問題であるということで、御指摘のような修正が行われました。  したがって、私ども今後安定基本計画をつくる上で、それじゃあ具体的に雇用の安定を図るための措置というものをどういうふうにやるかを至急に考えたいと思いますが、ただいまのところではその不況産業、個々の産業によっていろいろ実態は違うと思いますが、当該不況産業の状態あるいは雇用の状況、あるいは設備処理内容——それは設備処理量のみならず、どういうテンポでやっていくかというような設備処理内容等によりましていろいろ違った面はありましても、企業内の配置転換それから関連会社への出向の問題、それから新たな技能の修得のための教育訓練実施というような労働省とも十分御協議話し合いの上、事業者に対して何らかの指針を示す、そういうことをこの安定基本計画の中に盛り込んでいこうと考えております。  なお、ただいま御質問の後半のこの保証基金の運用の問題の中で、私どもは、先ほど申し上げましたように退職金、スムーズな雇用調整、これで労使間で話がついた場合の雇用調整による退職金のための資金の保証というものを対象にすべきではないかと考えておりまして、御指摘のような一時帰休というような点につきましては、これは先ほども答弁ございましたような、労働省雇用安定資金制度といういわば枠が残されておりますので、そちらの問題であって、この保証基金の対象とすべきではないのではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  91. 安武洋子

    ○安武洋子君 しかし、この修正によりまして雇用の安定を図るための措置というのが入ったわけなんですね。そうしますと、この基金の中にもやはり債務保証する際には、雇用の安定を図るための措置についてやっぱりおやりにならなければいけないのと違うのですか、これでしたらおかしくならないですか、その点お伺いいたします。
  92. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私ども雇用の安定ということが非常に重要なことであるということは、衆議院による修正の前におきましても繰り返し御答弁申し上げてきたところでございます。衆議院修正によりまして、いろいろな場所に「雇用の安定」という言葉が入りまして、その点は非常にはっきりした。  なお、先ほど御答弁申し上げましたように、安定基本計画内容等につきましては、新しく私ども事業者に対する指針等について定めるべきという新しい問題も出てきております。ただ、債務保証につきまして確かにおっしゃる点はございますが、繰り返しの答弁なりますけれども、そういう一時帰休というようななるべく雇用の安定と申しますか、外に離職者を出さないということに対するそれを確保するための必要な手段といたしましては、先ほど申し上げましたような雇用安定資金の制度等で、いわば国が用意しております大きな仕組みがございますので、そちらで処理すべきものではないかと考えておるわけでございます。
  93. 安武洋子

    ○安武洋子君 私はやっぱり修正目的にそれでは沿わないと思うのです。それで、設備投資について、自己資金で行うというよりも、いまのところ外部資金ですね。とりわけ金融機関からの借り入れで行ってきているというのがわが国の通常の企業のやり方だろうと思うんです。例示四業種の場合、処理対象になるような施設を担保として、取って、それで資金を出している、こういうところは一体どういうところが主なんでしょうか。
  94. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 御質問の御趣旨が必ずしもはっきりいたしませんで恐縮でございますが、ただいま御指摘のように、現在の日本の産業、長い間いわば他人資本と申しますか、借入資本に依存をしてやってまいりましたので、主として金融機関でございますけれども、金融機関からの借り入れ。したがって、その背景としての設備の担保の問題等は主として金融機関との間であることは、これは当然であろうと思います。
  95. 安武洋子

    ○安武洋子君 ちょっと聞こえにくいんです。
  96. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 繰り返して御答弁申し上げますが、日本の各産業が現在までのところ設備投資を行うに当たりまして、自己資本というよりはむしろ他人資本、借入資本、特に銀行からの借り入れで設備投資を行ってきた、これは事実でございますから、金融機関から非常に多額の借り入れをしておる。したがって、各企業の持っております設備につきまして、金融機関との間にいろいろな担保その他の関係があるということは事実であろうと考えております。
  97. 安武洋子

    ○安武洋子君 そういう金融機関とか、それから融通手形で商社とかというふうなところだと私は思うんですよ。こういう銀行とか商社というところは、構造不況業種へ貸し付けを行っているわけですけれども、銀行とか商社というのは無暴な投資を進めて現在の設備過剰を生み出した張本人の一人なんですよね。そういう不況業種に貸し付けをしているその貸し付けを、保証基金によって不良債権のリスクを政府に肩がわりさせる、こういうことになるわけですね。ここに私はこの法案の大きなねらいの一つがあると思わざるを得ないわけなんです。政府資金をつぎ込んで債務保証をする限りは、私は銀行とか商社が不良債権を政府に肩がわりさせて、その企業から手を引いて倒産などに追い込むということも予測をされないこともないわけなんですね。こういう点で、政府は金融機関とか大手親企業、そういうところへの責任の明確化、それから指導、やはり措置をおとりにならなければいけないと思うんですけれども、こういう点をお考えお持ちでしょうか。こういう措置をおとりになりますでしょうか。
  98. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 現在の過剰設備を各産業が持ったその背景なりその責任はだれか、これはただいまの資本主義体制下でございますから、経緯の中にはいろんな事情があったかもしれませんが、最終的にはそれぞれの企業家の責任と判断において行われたことであろうと考えております。  それは別といたしましても、先ほど御説明いたしましたように現在の各産業、特にいまここで御議論になっております構造不況産業が、設備処理を中心にこれから産業全体の立て直しをやっていこうというときに、金融機関なりあるいは総合商社等を中心といたします関連業界というものがそっぽを向いたのでは、これはその業界の新しい方向というのはとれないと私どもは判断をしております。したがって、こういう保証とかいうようなこの法律の前提といたしまして、この安定基本計画を作成し、業界がこぞって協力をして設備処理をしていこうという場合には、当該業界のみならず、関係の金融機関なりあるいはただいま御指摘のような関連業界というものの全面的な協力、バックアップがなければできないと思いますし、私どもはそういう意味で、そういう金融界を中心とした関連業界に十分な協力を要請をし、そういう方向で努力をしてもらうということに期待すると同時に、事に応じていろいろ要請をしていきたいと考えております。  なお、具体的に申し上げますと、今回この信用基金による保証ということを考えるに当たりましても、たとえば信用基金に対する金融界あるいは関連業界等広く協力をお願いいたしますし、あるいは保証の仕組み等についても、ただいま先生の御指摘のような、何か従来の債権を国が肩がわりをする、こういうかっこうにならないような仕組みというものを考える、金融界を中心とする関連業界の協力によってこの特定不況産業の設備処理を進めていく、こういうことでやっていきたいと考えております。
  99. 安武洋子

    ○安武洋子君 まだこの問題についてさらにお伺いしたいのですけれども、時間が限られておりますので、次に移らせていただきますけれども、安定基本計画をこの不況産業は定めることになっておりますね。三条の二項一号で、処理する設備の種類、二号で生産設備の新増設、それから制限または禁止が定められているわけなんです。三号ではこれらの設備処理とあわせて行うべき事業の転換その他の措置、「雇用の安定を図るための措置を含む。」、こういうことで、これに関する事項が定められておりますけれども、この法案設備処理に伴う人員整理、人減らしを促進するものである、こういう批判がいま非常に高まっているわけですね。この中で、この雇用安定措置については政令事項になっていないという問題があるわけなんです。どういう内容になるのか、果たして実効のあるものになるのかということが大きな問題になるわけなんです。私は、主務大臣として通産大臣にお伺いいたしますけれども、この安定基本計画に定められる「雇用の安定を図るための措置」、これはどういう内容になるとお考えなんでしょうか。
  100. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私からその点お答え申し上げます。  先ほどちょっと触れましたように、今度新しく衆議院修正によりまして、三号に雇用の安定に関する措置、これが安定基本計画内容に含むというかっこうになりました。私ども労働省といろいろ御相談をしながら取り進めていきたいと思いますが、ただいまのところでは、先ほどちょっと触れましたように、なるべく失業者を出さないという意味で、設備処理のテンポ、これをひとつ考えるという点は一つでございましょう。ただ、これはむしろ一号の問題かもしれません。三号直接といたしましては企業内の配置転換をなるべくやっていく、どういうかっこうでできるか、あるいは関連会社等への出向というような点についてどういう見通しがあり、そういうことができるかどうかというような問題、それから新たな職種に向くように、必要な技能等の職業訓練教育訓練、この実施等の問題がございまして、こういう点を労働省と連絡をとりながら、この業種業態に応じたかっこうで事業者に何らかの指針を与えるということが、この三号の雇用の安定に関する措置内容にしたい、現在のところそういうふうに考えております。
  101. 安武洋子

    ○安武洋子君 これはひとつ、ぜひ大臣にお伺いしたいのですけれども、安定基本計画は、当該産業界の需給動向などを考慮して、設備処理等については政令で定めるこの方法によって具体的な事項を定める、こういうことになっておりますけれども、一方、この雇用安定のための措置というのは、労働者の雇用の安定について十分な考慮が払われたもの、三条五項にはこうなっています。また関係審議会は云々ということで、「労働組合の意見を聴かなければならない」もの、六項ですね、こういうふうになっているわけなんです。労働組合事業団体の意見や考慮が払われたものとされておりますけれども、これについて主務大臣としては、こういうことは本当に払われたか、意見や考慮が払われたか、こういうことはどういうふうにして判断をお下しになるのでしょうか。それからさらに主務大臣はこの雇用安定のための措置処理計画と並行したものであるかどうなのか、あるいは一方的に労働者だけの処理が行われるものになっているかどうか、妥当なものかどうかについて判断し指導できるものとお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  102. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 衆議院段階でこの雇用問題いろいろ追加等あるいはまた一部修正等がございまして、内容が変わったわけでございますが、それによりましていろいろ具体的な対策を織り込むことになっておりますが、その一つは先ほど局長答弁をしたような対策でございます。  それからいまのお話は、それじゃその労働組合企業者との間に十分な配慮が行われたかどうかはどこで判断するのかということでございますが、それは必要とあらば双方から報告を聞けば判断できるわけでございますから、判断の仕方は私はいろいろあろうと思いますが、いずれにいたしましても、十分事情を調査をいたしまして、いま御指摘がございましたような点で抜かりのないようにしてまいりたいと存じます。
  103. 安武洋子

    ○安武洋子君 いまの御答弁については後でもう一度お伺いいたしますけれども、では重ねてお伺いいたしますけれども、主務大臣として通産大臣は、このような雇用安定のための措置について、責任ある措置が講ぜられるものだというふうにお考えでしょうか。
  104. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) こういう厳しい状態のときでありますから、主務大臣が、たとえば仮に万一失業者が出たような場合、その一人一人に対して全部全責任を持って何もかも解決するということは、これはよほどまあ工夫と努力が必要だと思いますが、しかしながら、この法律趣旨に沿いまして、できるだけのことはしていかなければならぬと考えております。
  105. 安武洋子

    ○安武洋子君 労働省にお伺いいたしますけれども、この法案特定不況産業に指定されますと、安定基本計画の中に、主務大臣によって雇用安定を図るための措置が定められると、こういうことになっているわけなんです。労働行政をつかさどられる労働省として、基本的にどのようなことが含まれれば雇用の安定が確保されるとお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
  106. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  いま通産省の方から御答弁がありましたように、安定基本計画は主務大臣が定めることになっておりまして、労働省は事前にお話を受けて協議をするということになろうかと存じますが、法律の上で見ますと、三条二項に「雇用の安定を図るための措置」が修正で新たにつけ加わったわけでございますが、これは国としての、設備処理とあわせて行うべき雇用面に関する措置を指すものであるというふうに読めるわけでございますが、これについては、十条で二項、三項におきまして規定されておりまして、したがって、十条二項では、「設備処理その他の措置を行うものの雇用する労働者について、失業予防その他雇用の安定を図るため必要な措置」及び十条三項では「職業訓練実施就職のあっせんその他その者の職業及び生活の安定に資するため必要な措置」ということが書いてございますが、これに該当すると思います。  したがいまして、先ほどいろいろ御答弁ありましたように、具体的には対象業種の実態によって異なる面もあるかと思われますが、まず、なるべく失業者を出さないという措置で、いろいろな事業主側の努力とそれから安定資金制度業種指定その他の活用、それから特定不況業種離職者臨時措置法の活用や、先ほどお話がございましたように、職業訓練それから安定所におきます職業相談、職業紹介、それらのものを施策として該当させるということになるかと思います。この法律が施行されるにつきましては、先ほど通産省からもお話がございましたように、通産省運輸省、主務官庁と十分協議してまいりたいというふうに思います。
  107. 安武洋子

    ○安武洋子君 私のいま御質問申し上げましたことの答弁になっていないと思うんです。該当施策をおっしゃっておられますけれども、そうじゃなくて、やはり安定基本計画にはこれはどういうことが含まれるなら、労働省として雇用の安定が確保されるのかというふうにお考えかと。この安定基本計画というのは非常に具体的なものなんですよね。ですから、具体的にどのようなことが盛り込まれれば、労働省としては雇用の安定というふうにお考えなんでしょうか、それが確保されると。
  108. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) いまお話し申し上げましたような施策をもってその設備処理その他によりまして生じます余剰人員と申しますか、そのような人々の配置転換、それから出向その他の措置が図られると、それから、さらに失業した場合にはいま申し上げましたような措置が図られるというようなこと、安定計画にそういうふうなものが盛られるべきじゃないかというふうに思っております。
  109. 安武洋子

    ○安武洋子君 まあこれ、重ねて労働省にお伺いいたしますけれども、いま政府はさまざまな雇用立法を行って施策を講じているわけなんです。で、本法案の雇用安定の措置を講ずるために、現行の雇用対策で一体十分だとお考えなんでしょうか。新しい私は立法措置が必要になるのではないかというふうに思うんですけれども、その点はいままでは、現行法で弾力的に実施をしていけばいいんだというふうな御答弁が繰り返されておりますけれども、そういうことなのかどうかということ。それからまた、安定基本計画には雇用関係法の具体的な措置までが含まれるものか、あるいは含まないのか、含まれるべきなのか、こういうことはどういうふうにお考えなんでしょうか。
  110. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  一点の、現行法で完全に雇用対策実施できるかという点でございますが、雇用対策自体につきましてはわれわれとしては万全を期してやっているつもりでございますけれども、すべてこれで完璧ということではないと思います。しかし、先ほども申し上げましたように、安定資金制度や先ほどの離職者臨時措置法を適用することによって、一般対策以上の対策を講じていくということで、雇用の安定を図ってまいりたいというふうに思っているわけでございます。  それから、具体的な施策自体がここに盛り込めるかどうかは、先ほど申し上げましたように、対象業種の実態やその設備廃棄その他の安定計画内容によりまして、主務官庁と御相談してまいらなければならないというふうに思っているわけでございまして、その辺につきましては通産御当局から御答弁がございましたように、まだ十分この第二項第三号の雇用の安定を図る措置をどこまで定めるかということは御協議してないわけでございますが、これは一般的には業種全体をとらえて、産業全体をとらえての計画を立てられるわけでございまして、さらに具体的に企業におりていった場合に、どういうような設備廃棄その他になってくるか、雇用の面では、むしろその場面での具体的施策というものがさらに重要になるかと思いまして、産業全体に対する施策の中でどこまで具体的な施策が立てられるかどうかという点については、さらに協議を進めていかなければならないというふうに思っております。
  111. 安武洋子

    ○安武洋子君 こういう法案が提案された限りにおいては、やはりいままで以上に手厚い保護がなされなければならないと思うんですよね。で、この安定基本計画に基づいて、まあ十条の「雇用の安定等」では、事業者、国、都道府県に対して、その雇用する労働者あるいは雇用されていた労働者について、雇用の安定のための努力が、これが規定されているわけですね。ですから、雇用する労働者とか雇用されていた労働者については、失業予防離職者対策、これは現行法では確かに措置が講じられております。しかしいま、一般対策以上の措置を云々とおっしゃいましたけれども、なぜ現行法を適用していく中で、一般対策以上のこの措置ができるんでしょうか。
  112. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  先生御存じのとおり、雇用安定資金制度、それから特定不況業種離職者臨時措置法につきましては、特に業種指定を行いまして、たとえば、端的に申しますと、四十歳以上の者については失業保険給付を受ける場合に九十日に延長されるとか、それから、そのさらに就職できない場合には訓練待期手当とか訓練手当をもって、訓練を受けながら再就職を図っていくとかいうような措置が講じられているわけでございまして、その業種指定を受けた業種から出てくる離職者について、一般失業者よりもさらに厚い保護がなされているということを申し上げたわけでございます。
  113. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、この法案特定不況産業として指定された業種に関する雇用対策ですね、措置をとるために何か特別の優遇的な取り扱い、これはする必要がないというふうなことでございますか。
  114. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) この法案で指定されました特定不況産業につきましては、いままでの経過とは異なりますが、しかし特定不況業種離職者臨時措置法と表裏一体に運用されていくということによりまして、離職者法の対象業種となるように配慮していくことによって、離職者に対する対策を進めてまいりたいというように思っているわけでございまして、そのほか本年四月から新たにできました中高年齢者雇用安定給付金とか、そういうものを活用することによって特定不況業種離職者の再就職を図っていきたいということで、そういう法律施策施策を連動することによって対策を進めてまいりたいというふうに思っております。
  115. 安武洋子

    ○安武洋子君 それじゃ本法によっての特別な優遇的な取り扱いをしないということと一緒になるんじゃないでしょうか。いま優遇的な取り扱いの一つの例としましては、失業予防については雇用保険法六十二条によって雇用改善事業として行われておるわけなんですね。それから、失業予防離職者法の第五条、高年齢者雇用安定給付金について行われておりますけれども、これについてお伺いしたいんですけれども、この給付金というのは二月の末でわずか約二千人でしょう、いま対象になっておりますのが。いまおっしゃいましたけれども、十分これが機能しているとは言えない状態ですね。それから、中高年齢者雇用情勢はきわめて厳しい、これは私が申し上げるまでもないことなんですけれども、この法案によって中高年齢者失業する、この増大が見込まれているわけなんですよ。ですから、期間などの一定の指定基準がありますけれども、この見直しの必要ぐらいはなさるべきではないかというふうに思うのですけれども、いかがお考えでしょうか。
  116. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  先生いまおっしゃいました給付金がどれを指すのかちょっと聞き取れなかったんでございますが、雇用安定資金制度業種指定、または基準の問題につきましては、その業種指定その他は弾力的に進めておりますし、さらに金融その他につきましては法の範囲内で弾力的に読めるように、たとえば下請企業に対する基準等につきましても検討を重ねるというようなことで、雇用安定資金の弾力的活用を図っていくようにいたしております。
  117. 安武洋子

    ○安武洋子君 話がすれ違っているんですよ。私は、いま雇用保険法雇用改善事業の各種給付金の概要の中からいろいろおっしゃるから、じゃあ一例として取り出しますよということで、高年齢者雇用安定給付金についてお伺いしているわけなんですよ。これ一つ見ましても、二月末で二千人しか対象になっていないということで、いかにいろいろおっしゃいますけれども、これ一つだって機能していないじゃないですか。しかも、この法案によっては一番対象になるのは中商年齢者ですよ、中高年齢者離職失業、これが増大しようとしているときに、それを受けて立つ高年齢者雇用安定給付金については、調べてみたところ全国で二月末でまだ約二千件しか対象になっていないというようなことでは、これじゃ何にもならないじゃないですか。これには問題がありますね、これにやはり基準がありますけれども、この指定基準で、期間などの指定基準というのを見直さない限りはこういう状態が続いて、いかに手厚くしたいとおっしゃっても手厚くできないわけなんですよ。ですから、こういう基準を見直しになる必要があるんではないですかということを申し上げております。
  118. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) 失礼いたしました。わかりました。  高年齢者雇用安定給付金につきましては、実はこれ昨年の募れから指定いたしまして、二月末ちょうど二カ月ぐらいのところで二千人ということで、これはPR不足その他もあるかと思いますが、その支給自体につきましては、五十五歳以上の人で安定所の紹介、または安定所の紹介でなくても雇用保険の失業給付の資格のある人を雇い入れた場合に支給されるということで、厳しい基準はつけてないつもりでございますが、先生のおっしゃいます期間等の問題につきましては十分弾力的に運用いたしまして、これは六カ月で期間を切ってございますが、さらにこういう失業情勢の中で弾力的な期間の延長その他を図っていきたい、検討さしていただきたいというふうに思っております。  それからなお、先ほどちょっと申し上げましたが、この高年齢者雇用安定給付金をさらに年齢を下げまして四十五歳以上の者から、高年齢者給付は五十五歳以上でございますが、五十四歳未満、四十五歳から五十四歳までの方につきましても、この安定給付金制度を活用していくということで、四月から実施いたしております。そういうようなことで、この安定資金制度全体につきまして活用を図られるよう、今後も検討を続けてまいりたいというふうに思っております。
  119. 安武洋子

    ○安武洋子君 しかし、厳しい基準でないとおっしゃいますけれども、この高年齢者雇用安定給付金の期間の指定基準といいますのは、高年齢労働者の失業率の最近三カ月連続の三%超または最近三カ月連続上昇しかつ最近月三%超でしょう、これ変わっておりませんですね。
  120. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) はい。
  121. 安武洋子

    ○安武洋子君 それから、高年齢者の有効求人数というのは、最近三カ月の各月の数値、前年同月比増とこういうことになっておりまして、こういうことでほとんど該当しないじゃありませんか。ですから、私は全国的に約二千人対象になっているにすぎないというのもここに原因があると思うのです。こういう基準を見直していただく必要があるのではありませんか、こういう本法成立し、中高年が失業に追いやられるという状態がある中では、そういう検討お願いできませんかということを言っているわけですが。
  122. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  若干基準についての説明が私の方足りないかと思いますが、いま先生がお読みいただきました基準は期間を指定するための基準でございまして、それに基づいて昨年の暮れに期間を指定いたしておりますので、それ自体は六カ月間はその指定によって、その基準の中身がどう動こうとも、その指定したときの状況から六カ月間はこの給付金が支給されるということになるわけでございまして、個々就職者が就職するための基準ではございませんので、その個々の人、二千人の人がその基準によって排除されるということではございませんので、その辺御了解いただきたいと思います。
  123. 安武洋子

    ○安武洋子君 わかって言っています。人が個別にということでなくて、こういう基準があるからこれに当てはまっていく人が必然的に少なくなると、だからやっぱりこの基準を見直していただかないといけないんではないかということを言っているわけなんです、一つの中高年対策の方法として言っているわけなんです。  それからお伺いしますけれども、主務大臣としてはこの安定基本計画実施について責任があるわけなんですけれども、五十五条の「報告の徴収」ということでは業務、経理については報告を求めることができることになっているわけです。しかし、雇用の安定の措置については規定がないわけなんですね。雇用の安定の措置の執行状態とか、それから進行状況とか、こういうのは一体どういうふうにして把握をなさるのでしょうか。
  124. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 御指摘のように報告徴収の規定は「業務又は経理の状況に関し報告をさせることができる」とこうなっております。ただ、先生御案内のようにこの報告徴収の規定に基づきまして、法律的に報告を徴収をするというケースは実際の法律運用上はきわめて異例のケースでございまして、むしろいわゆる行政指導と申しますか、日ごろの各業界と私どもそれぞれ担当の局との通常の連絡を通じまして、この安定基本計画につきましても、この雇用の安定問題を含めて安定基本計画実施の状況というのを常時把握をし、必要な話し合い、指導等をやっていくというのが今後の方針でございます。
  125. 安武洋子

    ○安武洋子君 しかし、そうはおっしゃいましても、業務、経理については報告を求めることができるということになっておりますけれども雇用の安定の措置については規定のないことだけは間違いございませんね。ですから、雇用の安定のこれは非常に重要な問題だということで考えているとおっしゃいますし、そう考えていただかなくってはいけないわけですから、雇用の安定の基本計画が、本当に実施について責任があるわけですから、この中の重要な雇用の安定の措置の執行状況、進行状況、これを具体的にどのようにして把握をなさるのかという具体的な措置をお伺いしたいわけです。
  126. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) この「報告の聴収」で、「業務又は経理の状況に関し報告をさせる」という規定を置きましたのは、実はたとえばこの安定基本計画が定められまして、その後、事業者の自主的行為で設備処理が進む、必要なときにはいわゆる指示カルテル制度、指示カルテルによって最後に設備処理の執行を担保をするということ。その中で非常に重要なことは、各条文にございますけれども、たとえば「経理の状況」、つまり相当部分の事業者の経営の継続が困難になるとかいうような法律的な要件の判断の規定幾つかございます。これは設備処理を進めていく経緯におきましても、いろいろ法律的な問題が出てくる条文でございまして、そういうものは先ほど申し上げましたように、通常の設備処理の執行というものを担保をし、これを推進をしていくのはこの法律規定にあるということはきわめてまれな例でございまして、むしろこの法律規定発動するのは、そういう法律的な条件の判断でありますとか、あるいは指示カルテルをする場合のアウトサイダーの方との関係の問題でございますとか、そのぎりぎりの場合を予想してつくってあるわけでございまして、通常の安定基本計画の執行は、通常の私どもの接触を通じて十分把握をし指導がしていけると、こういうふうに考えておるわけでございます。
  127. 安武洋子

    ○安武洋子君 設備処理についてはそれでいいでしょう。しかし、この基本計画に定められている雇用の安定のための措置というのは、仮に労働者の雇用に配慮を払ったもので、そしてまた労働組合の意見を聞いたものであっても、設備処理はうまく進んでも、人にかかわる雇用の問題というのはそう単純に進むものじゃないわけなんです。さまざまな問題が発生してくるということが予測をされているわけなんです。ですから、雇用については当初の基本計画に定めたように進捗しない場合というのがこれは大いに出てくると。だから、私はこれが義務づけられていなくって、ほかのはいまおっしゃったようなことで済むかもしれませんけれども、この基本計画に責任を持たれる主務大臣としての通産大臣は、本当にこういう人の問題について厳正な指導をし、執行が可能だというふうにお考えかどうかということをただしているわけなんです。その点を御答弁いただきます。
  128. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 安定基本計画内容といたしまして、三条二項三号に「雇用の安定を図るための措置を含む。」、という規定衆議院修正によりまして入りました。私ども今後、この点についてどう考えていくかという点、先ほど考え方を御説明を申し上げました。労働省からも先ほど御答弁ございましたように、私ども労働省当局とこの「雇用の安定」ということを安定基本計画の中にどういう趣旨でどういうかっこうで入れるかという点を、なお今後とも詰めていきたいと思います。そして、ただいまの御質問に直接関連いたしますが、したがって、その雇用の安定を確保していくという点で、これはその専門家である労働省当局とも十分具体的に、どういうかっこうでこれをフォローアップしていくかという点は、今後なるべく早く協議連絡をいたしまして、ただいま御質問の御趣旨に沿って、この安定基本計画がスムーズに連行されるような、そういうことを考えてみたいと、こういうふうに考えております。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕
  129. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、私が考えますのに、この安定基本計画が立てられまして、そしてこれはたとえ、先ほど申し上げたように労働者の雇用に配慮を払ったとか、それは労働組合の意見を聞いたとかと、こういうふうに言っておりましても、いろいろの問題が発生してくるということは考えられるわけですよ。こういう問題につきまして、私は本来行政は労使の関係に介入すべきでないと、こういうことが原則になっております。介入すべきでないと考えます。しかしこの基本計画計画段階とかあるいは進行しているとき、労使の合意が崩れるということだってあるわけです。うまくいかないことが起こった場合、あるいは労働争議が起こった場合、こういうときには計画の策定者である通産大臣は、一体どう対処をなさるんでしょうか。基本計画には責任を持たなければいけないということですけれども、こういうこが起こるということは十分あり得ることなんですよ。ですからこういう点をお伺いするので、先ほどの御質問もしたわけなんですが。
  130. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 御指摘のように、労使の関係は原則的には労使の間で解決をすべき問題で、直接いわゆる行政機関が介入をすることは私も適当でないと考えておりますが、しかしこの法案は、ただいま御議論ございますように安定基本計画の中にも安定に関する事項というものを定める、あるいは十条で事業者のいわば雇用安定のための努力義務、これも衆議院修正でより組合との協議という規定が入りましてはっきりいたしました。したがって私どもはそういう直接介入はいたしませんにいたしましても、やはり安定基本計画は、ただいま御指摘のように決定後、労使間の問題としてうまくいかないというときには、これは設備処理ができなくなるという事態も予想されるわけでございますし、したがってその具体的なケースに応じまして、あるいはこの十条の事業者の努力義務を、実際にどこまで事業者が誠実に実行していこうとしているのかというようなこと等につきまして事業者とも十分話し合い、必要があれば指導を行うことによって、当初決めました安定基本計画が円滑に進むようにやっていくのが私どもの務めではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  131. 安武洋子

    ○安武洋子君 いまの御答弁からもわかりますように、そしてこの法案趣旨からもわかるように、この法案というのは設備処理とそれからそれに伴う人間の処理、これが目的なんですね、ですから主務大臣としては通産大臣です。通産大臣はあくまでも設備処理、これを主眼にした指導をなさるというのがいまの御答弁の中でもはっきり出たわけですから、そういう指導にならざるを得ないと思うわけなんです。じゃ、これは私は雇用の安定ということにはなかなかなりにくい。労使の間にはこれは行政は介入すべきでないという原則があると、こういうことに対して、こういう立場に立たれたら一体どう対処をなさるんですか、この点を明確にお答えをいただきとうございます。
  132. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいま私御説明申し上げましたように、やはり設備処理という問題が円満に進みますためには、その背景といたしましてやはり労使間の円満な話し合い、それは雇用の安定、さらに大きくは円滑な雇用調整問題も含めまして、そういう話し合いがないと、設備処理というのもスムーズに進まないと思います。したがって私ただいま御答弁申し上げましたのは、私ども雇用の安定ということを余り考えずに設備処理を一本で進めていくと、こういうつもりは全くございません。ただ、政府部内では労働問題はもちはもち屋と申しますか労働省当局、あらゆる面でいろいろな経験と行政的ないろいろな手段もお持ちでございます。私ども雇用の安定という面につきましては労働省当局と、これは衆議院修正でも入っておりますが、十分に連絡、協力をしながら、両省、両方相まって私どもの目的とする設備処理というものが円滑に進むことを期待して進めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  133. 安武洋子

    ○安武洋子君 基本計画にやはり雇用の安定ということをうたったにしても、やはり通産大臣がこの雇用対策、これに責任を持つということはできなくなって、せいぜい労働省との連絡だと、協議だという形の御答弁しかできないと思うし、私は現実にそういうことになってしまうと思うんですよ。ですから、雇用問題というのはいま大変深刻な事態なんです。政府は、中高年やら身障者の雇用について施策を講じているとおっしゃいますけれども、私は、中身を拝見してみますと、何ら具体的な対策を講じていないばかりか、前にも御質問したように雇用調整という名で、やはり出向、配転、こういうことを強制している事実もたくさんありますし、それから自然減あるいは新規採用減、こういうことが行われております。で、雇用の不安を増大させているとしか言えないわけなんです。政府は、こういう大企業雇用対策、減量経営ですね、不当な合理化、人減らし、こういうことに有効な手を打たない限り、失業促進するというふうなことになってしまいます。この法案も、こういうところに手を打たない限りは、やっぱり本当に大企業の手前勝手な人減らしに手をかす、これに使われるという法案にならざるを得ないと思うわけなんです。  私は、最近の調査でも、企業は常用労働者を減らして、それからパートなど臨時雇いなどをふやしているわけです。これは総理府の就業構造基本調査です、七八年の四月に発表されておりますけれども、これを拝見してもこういうふうになっているわけです。ですから、これは常用労働者を減らしてしまって、安く雇えていつでも首を切られるというふうなパート、臨時雇い、こういうもので企業は自分のところの減量を図っている。労働省の調査の中でも、雇用調整の名のもとに依然として出向とか配転が計画されているというふうな統計もあるわけです。  私は通産大臣にお伺いしたいんですけれども、こういうふうな企業雇用の変化につきまして、雇用を安定させる方向で通産大臣として指導したことがおありになるのかどうか、これからはそういうことをなさるのかどうかと、やっぱりこういうことがない限り、先ほどから申し上げているように、この本法案というのは、やはり大企業の手前勝手な減量にしか使われないというふうに思うわけなんですけれども、こういう点はいかがなんでしょうか。そして私は、通産省というのは、雇用安定の措置そのものはとれるはずがないと思うんですよ。これは労働省に任せてしまうということになれば、余りにもこれはおかしいと思うんですけれども、一体こういう矛盾について、通産大臣としてはどうお考えなんでしょうか。
  134. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まず最初に一言申し上げておきたいと思いますが、この法律成立をいたしましても、政府としての希望は、この法律の力をかりないで、自主的な努力でその業界の立て直しを図っていこうとする業種が出てくることを私どもは期待をしておるんです。何も法律のお世話にならなくて結構だと、こういう気魄のある業種というものが私は幾つかあらわれることを期待をしているわけでありますが、現に一、二そういう業種もございます。したがいまして政府が、何もこの法律ができたからといって、すべての業種をこの法律に従えと、こう言って強制しておるものでは決してないということを申し上げておきたいと思います。  それからこの法律の適用を受けたいと、こういう業種は、三分の二以上の方々が合意をいたしまして、それじゃよろしくお願いをいたしますと、こういうことで初めてスタートをするわけでございますが、ただし、ここに至りますまでの間、場合によりますとアウトサイダーが非常に強大である、だからとてもこの法律の適用はむずかしいと、こういう業種もあろうと思います。しかし、また中にはアウトサイダーがある程度強大であっても、政府はこの分については行政指導をしてくれると、だからこれにひとつ大きな期待をして、そしてやってみようと、こういう業種もあろうと思います。あるいは中には条件が整いましても、労使のとても話し合いができないと、こういうことで無理だと、こういういろんな私は業種が出てくると思うんです。でありますから、この法律ができましても、全部が全部構造不況業種がこの法律によって対策が進められるものではないと、こういうことをあらかじめ申し上げておきたいと思います。  そうして、いよいよそれじゃひとつ進めてみようという場合には、一体雇用問題に対してどうするのかというお話でございますが、それについては先ほど局長が繰り返し繰り返し答弁をしておりますように、設備廃棄の進め方にいろいろ工夫を加えていくとか、あるいは出向それから企業内における配置転換、あるいはまた、これには第三条の安定基本計画をつくる場合に、「設備処理と併せて行うべき事業の転換」云々と、こういう規定もございますから、事業の転換をする場合には再教育と、こういうことも当然しなければなりません。だから、そういう幾つかの具体的な計画を織り込んでいこうと、こういうことでございます。
  135. 安武洋子

    ○安武洋子君 通産大臣としては雇用を安定させるということでいまるるお述べになりましたけれども、しかし、具体的に雇用安定措置をおとりになることはできないと思うんですよね。  それで私、現在の雇用問題といいますのは、定年制の延長とか、あるいは週休二日制を含めた労働時間の短縮を図るとか、それからさまざまな制度をいまのところ逆手にとって、大企業がやっぱり悪用しまして合理的な首切りをしているけれども、こういうことができないようにするとか、それから膨大な内部留保を持った大企業に対しては解雇を規制するとか、こういうことを具体的におやりにならないと、雇用の安定などというものは図れないと思うんです。  それで、構造不況業種を生み出しているのは、私はやっぱりこれは政府の施策の結果であると思うわけですけれども、大企業とか商社、金融機関、ここにも大きな原因があります。その後始末を労働者の切り捨てでやるというふうな、ここに手をつけないということ、ここを放置したままで抜本的な雇用対策を講じないということは、これでは私は片手落ちだと思うんです。こういう状態をつくり出した責任という、特に雇用問題について通産大臣としては、産業政策と並んで抜本的な雇用対策をお立てにならないといけないと思うんですけれども、いま申し上げたような抜本的な雇用対策を、産業政策とあわせておとりになるおつもりはございますでしょうか。
  136. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いま私どもは、内政問題で最大の課題は何ぞやと言いますと、これは雇用問題だと考えております。したがいまして、雇用問題を前進させるために幾つかの一般的な政策を進めなければならぬことは当然でございますが、この法律との関連において、一般的な政策も同時に進めなければならぬということになりますと、これはもう大ごとになりますので、この法律はとてもやれないわけでございます。だから、この法律法律といたしまして、先ほど申し上げましたような、とりあえず四つ五つの具体的な対策というものを安定基本計画をつくる場合に織り込んでまいりますと、それと並行して、雇用問題というのは非常に重大な課題でございますから、政府としてはこれを大きく取り上げて前進をさしていくと、こういうことでございます。
  137. 安武洋子

    ○安武洋子君 五十七条に、主務大臣と労働大臣の連絡、協力についてというのがありますけれども労働大臣との協力というのは、これはきわめて重要だと思うんです。また、主務大臣の権限について、先ほどからいろいろ御答弁をいただいておりますけれども、なかなか労働問題についてはすっきりした御答弁が出ないし、主務大臣の権限について私は疑問も大変多いと思うんです。この法案については、文字どおり緊密な連絡、協力が必要だろうと思いますけれども、主務大臣として従来の省庁間の協議、これではだめだと思うんです、この法案の中身から拝見いたしましてね。ですから恒常的な機関とか体制とか、こういうものをとらない限りは雇用問題に対処はできないというふうに思いますけれども、こういう点についてはいかがお考えでしょうか。
  138. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私ども、御指摘のように五十七条連絡、協力の規定ございますが、特に今回の非常に長い不況の中で、私ども労働省当局とは非常に密接な連絡をとってきたと考えております。それは単に雇用の安定という労働問題のみならず、むしろ労働省側には、私ども産業の実態、問題点等も十分ひとつ御連絡を申し上げると、こういうかっこうで、労働省のやっておられます労働行政が非常にスムーズに進み得るような御協力体制もとってきたと思っております。  ただ、この構造不況問題につきましては、そういう一般的な連絡調整のほかに、御案内だと思いますが、昨年の秋に労働大臣、企画庁長官、それから私ども通産大臣と、これにその後運輸、農林大臣等関係大臣お入りになりまして関係閣僚会議が持たれておりますし、その下に私どもも代替のベースでの幹事会と申しますか、連絡の体制もとりまして、構造不況問題に限りましては随時この問題点を整理をしながら、機敏な対処、それからお互いの情報の交換等によりまして、それぞれ各役所、立っております、持っております仕事の範囲というのは違うわけでございますが、その場を通じて非常に密接な連絡の体制をとろうと、こういう体制もつくっておるわけでございます。
  139. 安武洋子

    ○安武洋子君 いや、私は恒常的な機関、体制が必要ではないかということをお伺いしているんです。こういう体制をおとりになるお考えは全然ないんですか。いままでの単なる、密接におやりになったとおっしゃいますけれども、従来の体制では不十分ではないかと、いまもこう御答弁いただきましても、労働問題については、本当に権限の問題につきましても私は疑問も大変多いですし、すっきりしたお答えが出ないわけなんです。こういうことではなくって、恒常的な機関、体制をおつくりいただかなければならないと、こういうふうに思うんですけれども、いかがお考えでしょうか。——通産省に聞いているわけですから。
  140. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私はただいま御答弁申し上げましたように、ただいまのいわゆる内閣の仕組みの中で、各省はそれぞれの立場、それぞれの法律によって与えられました所掌事務と権限の範囲で仕事を進めておりますし、そういう目から見ますと、労働問題というのは労働省が中心に処理をされる体制になっておりまして、私はしかしいろいろな問題が、そういう各省割りの行政の中でだけでは処理ができない問題がだんだんふえてきておるということは、これは十分に承知しております。したがってこれを片づけるには、あるいはいま御提案のような新しい機構という問題も、それは一つ考えとしてあり得るとは思いますが、私はそういうことになりますと、もうあらゆる問題につきまして同じような考え方が出てくるのではないかと思っておりまして、やはり労働問題は労働省が中心になられまして、そうしてたとえば構造不況問題のように、産業政策の観点からとらまえなきゃならない問題が非常に多いと。その場合には、やはり関係各省が単なる事務的な連絡だけではなく、やっぱり閣僚ベースでのこういう連絡体制をつくることによりまして、そこを連絡の強化と、それから必要なものの判断を閣僚ベースでお願いをする、こういう体制で、現段階では十分ではないだろうかと、私はそういうふうに考えております。
  141. 安武洋子

    ○安武洋子君 大臣のお考えをお伺いいたしますが、大臣もそのようなお考えでしょうか。
  142. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) そのとおりであります。
  143. 安武洋子

    ○安武洋子君 きょうはいろいろ御都合もおありで、まあ出席をお願いするのはこれは無理だったと思いますけれども、しかしこの法案では、労働問題というのが大きくクローズアップされて、大きな問題になっているわけなんです。ですから、きょうは労働省の方から局長さんもお見えでございませんし、労働大臣もお見えでないというふうなことで、こういう労働問題について通産大臣にいろいろお伺いしても、通産大臣としては御答弁なさるやっぱり限界があるというふうなことで、質問する私も大変困るわけなんです。  そこで私は、まあいろいろ労働省施策の問題でおっしゃいましたけれどもね、中高年の問題、これは特に問題が多うございます。中身を拝見しまして、中高年の問題については、これはひとつ十分に政治的な判断もしていただいて、改めていただかなければならないという問題が山積しているように思うわけなんです。しかしこれでは、いまこういう政治判断をきょう御出席の方に求めるのも無理だろうというふうに思います。しかし労働問題というのは、これは非常に重要な問題でありますので、私はぜひ労働大臣局長出席をしていただいた席で、中高年の問題については質疑をやらせていただいて、ひとつ改善を求めさせていただきたい、こういうふうに思うわけです。  まだ公取の質問とか、質問がありますのですけれども、やはり中高年の問題にしぼって質疑をさせていただきたいと思いますので、きょうもうわずかの時間ですけれども、この時間を残しまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  144. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、休憩いたします。    午後一時十七分休憩      —————・—————    午後二時十七分開会
  145. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  特定不況産業安定臨時措置法案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  146. 藤井恒男

    藤井恒男君 最初に、大臣にお伺いいたしますが、いま審議されております特定不況産業安定臨時措置法衆議院審議段階から本院の審議状況をずっといままで聞いておりましても、それぞれの委員の中から、本法に示すところの法案の名称と内容が著しく違うじゃないかと、設備廃棄それ自体はやむを得ない措置であろうとも、このことだけをもってしてはいわゆる特定不況産業を安定に導く道ではないと、抜本的な経済政策が必要だという論がなされ、大臣もしばしば同様趣旨の御答弁をなさっておるところでございますが、しかし実際個々の構造不況産業を見てみますと、たとえば段ボール原紙などの場合も昭和四十八、九年、この当時行政指導によって重要物資指定を受けて三割の生産アップという行政指導がなされ、その後オイルショックという波を受けて現在ぬぐいがたい構造不況になっておる、あるいは合繊それ一つをとってみても前回の委員会でも私申し上げましたように、キロリットル七千円から八千円、この円周の中では九千円もの国際価格との差を持つナフサによって合繊の国際競争力が署しく減退し、それが構造不況に拍車をかけている。あるいは平電炉を見た場合でも、物不足経済時代の、どちらかといえば通産省の指導によって、あるいはそれに商社、金融筋が拍車をかけて設備拡充競争に類する行為をやった。  このようなことを考えてみますと、それがすべて政府の責任と私は申しませんが、やはり政策的な面も大きく寄与して、構造不況の要因をなしておるのが今日の構造不況の実態だと思うんです。抜本的な経済政策によって、まず内需を拡大することが第一だというふうに大臣もおっしゃるわけだけれども、本年度七%の経済成長が可能であったとしても、製造業の操業度、現在私は七〇%ぐらいが平均だと思うわけですが、これを一体どれぐらい押し上げる効果があるんだろうか。総理もたびたびの本会議、予算委員会で、ここ両三年は七%近い経済成長をやらなければいけないというふうにおっしゃっておるが、これが二、三年続いたとしても、われわれが希望する製造業の九五%ほどの操業度を満たすという状況にはなり得ないのじゃないか、こういうふうに考えてみますと、いま民社党はこの特定不況産業の臨時措置法は一日も早く成立さすべしという考えを持っておるわけでございますが、よしんばこれが成立したとしても、これだけで構造不況それ自体を安定に導くことにはならない。  あるいは、わが国の景気がまばら景気と言われておるわけだけれども、この構造不況産業ということが存在することによって、全体の好況感が沸かないという非常にむずかしい問題にあると思うんです。そういった点を踏まえて、最初からでございますが、大臣の見通し、御見解などを承わっておきたいと思うんです。
  147. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まず現在の産業の操業度でありますが、つい先般、これを示す統計のとり方が変わりましたので、これまでの数字とは少し変わっておりますが、大体現在は全産業平均をいたしまして七五%強ではないかと、このように私ども考えております。そうして、五十三年度政府目標の経済運営が成功いたしますと、ほぼ八〇%強になるであろう、このように理解をいたしております。それじゃ、まあどの程度の操業率になれば好況感が出てくるかということでございますが、私どもはおよそ九〇%操業ということであれば、ある程度の好況感は出てくるであろう、このように理解をしておりますが、五十三年度末では先ほど申し上げました程度でありますから、なかなかよくなったという感じは出てこないと思うんです。ただしかし、方向転換はしつつあるという感じは出てくると考えております。したがいまして明年度以降も引き続きまして、いま御指摘がございましたように七%程度の、あるいは七%近い経済成長を継続することがぜひ必要である、このように私ども考えておるところでございます。  そこで、この構造不況業種問題でございますが、内需が拡大し、景気が回復をいたしますと、構造不況業種の大半の問題はもう解決するわけなんです。しかし、いま先ほど申し上げますように、なお全般的な景気回復には若干の時間が必要でございますし、過去長い間の不況によりまして、構造不況業種と言われる業種の体力というものが大変衰弱をしておりますので、この際ある程度の対策というものを立てませんと、相当大きな打撃というものが出てくるのではないだろうかということで今回、従前からも構造不況業種対策は進めておりましたけれども法律をつくりまして、そうして自力では立ち直ることがむずかしいと言われる業種につきまして、もし希望があるならば、この法律を背景としてその再建を図っていきたい、こういう考え方でございます。
  148. 藤井恒男

    藤井恒男君 基礎のとり方が変わったということでございますが、それにいたしましても、七%経済成長が達成されて、昭和五十三年度末に操業度がおおむね数%上がって八〇%程度だろう、好況感というのは九〇%ということになると、そこにまだ一〇%の乖離がある。これは製造業全体、製造業の中にはもちろんフル操業のところもたくさんあるわけでございまして、構造不況業極などの場合は五〇%ぐらいの操業を余儀なくしているところもあるわけですから、その意味から言いますと、やはり過剰設備処理というものは避けて通れない喫緊の課題であろうと私は思うわけです。そういった意味で、先ほども申したように、自分ではどうしようもない。しかし、これからの操業度というものをながめてみた場合でも、安定的に生きていくためにはこの際過剰設備処理しなきゃいかぬということになるわけでございますが、そこで、きょうは時間が私に余りございませんので、本法の具体的な問題について少し突っ込んでお聞きしたいと思うんです。  この特定不況産業信用基金の問題についてまずお伺いいたしますが、これは通産省にお伺いするんですけれど、この法文にもうたわれておることですが、「設備処理のため必要な資金」というふうなことになっておるんですが、現実に設備処理する場合に企業サイドが必要とする資金、それにはどのようなものがあるというふうに想定なさっておるか、これをまず承っておきたいと思うんです。
  149. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 設備処理を業界ないしは企業が進めてまいります上では、いろいろな種類の資金が必要であろうと思いますが、まず本法におきましては、この信用基金の業務の内容といたしまして、三十九条の一項に中心的と申しますか、この基金が取り扱うべき業務を明記をしてございます。これによりますと、一つは「設備処理のため必要な資金」、それからもう一つが「設備処理に伴って必要となる資金」とこの二つに分けてございます。具体的に私ども考えておりますのは、一つ処理の対象となる、直接処理の対象となる主要設備のいわゆる担保抜き資金、それから主要設備処理いたしますに伴いまして、付属設備等が使用不能となりまして、これもまた同様な意味で担保抜き資金、担保解除資金と申しますか、これが必要になると考えておりまして、これを、この基金の業務の主たる内容としたいと考えております。なお、処理に伴って必要となる資金の中の一つといたしまして、労使間で設備処理に対しての合意ができ、かつその後の雇用調整に関する円満な話し合いができまして、そのためにたとえば必要な退職金の借り入れが必要になるというような、そういう資金につきましても、この債務保証の対象とし得ることとしたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  150. 藤井恒男

    藤井恒男君 設備処理をするだけで企業は食っていけるわけじゃないんであって、そのことによってできるだけ雇用確保して設備処理をしておこうとすれば、勢いその企業業種転換を図っていかなければいけない、そのための転換資金、あるいは設備処理するために資産を減ずるわけですから、そういう意味における運転資金、これもきわめてタイトになる、これらについてはいまのお話からは除外されておるので、これは本法の対象にはならないのかどうか、重ねてお伺いします。
  151. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいま御指摘のございましたような資金も設備処理を中心として、これから当該業界が新しいその方向をとっていくという上では、必要な資金であることは私もそのとおりであろうと思います。ただそういう資金につきましては、私どもその業界がこの法律に基づきまして、いわゆるこの安定基本計画をつくります場におきましても、当然のことでございますが、その業界としての今後のあり方とか、方向というのが十分に議論されると思いますし、ただいま先生のお話のございました、たとえば業界挙げて一つの方向転換と申しますか、事業転換とか、あるいは、いわゆる業界の広い意味での再編成の問題とか、いろんな問題が出てくる業種もあると思いますが、私はそういう安定基本計画策定の場、審議会等を中心として、かつその審議会の意見等を踏まえまして、やはり関係の金融界あるいはたとえば商社等とのつながりの非常に多い業界におきましては、そういう商社を中心とした関係業界、そういうものを含めまして、今後の業界としての進むべき方向というものに、全面的な協力をお願いをするということが必要になってくると思います。  私ども通産省としましては、業種別の議論をいたします際に、そういう意味での資金的な問題を踏まえた今後の業界のとるべき方向についての協力を、それぞれ関係者にお願いをするということで、ただいま御指摘のような問題の解決の一助としていきたいと考えておりますし、また、いわゆる転換資金等につきましては昨年五十二年度以来、開発銀行を通じまして、いわゆる前向き資金、転換先の必要な設備資金等についてのめんどうを見る、そういう一つ仕組みができ上がっておりまして、五十三年度におきましては、財投計画作成の段階で、たとえばこの構造不況業種につきまして、この法案による転換問題等が議論をされた場合には、そういうその方向に対しては開銀の特別枠によりまして、これをバックアップをしていこうと、こういうことも一応予定と申しますか、用意をいたしますし、また今後の方向といたしましては、私ども、大きな意味での政策金融のあり方の中で、構造不況業種問題を含めて、そういう前向き資金をどういうかっこうでめんどうを見ておるかということを、さらにいろいろ知恵を出してみたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  152. 藤井恒男

    藤井恒男君 後ほど触れようかと思っておったんだけれど、たまたま局長の方から政策金融という言葉が出てきましたので大蔵省にお伺いいたしますが、今度の本法の改正について、私、後ほど通産省にお伺いいたしますが、いわゆる必要資金の債務保証だけでは足りない。だから格段の金融を講じてもらいたいという声が圧倒的に業界に多いわけです。そうした場合に、いま言われた政策金融ということが大きくクローズアップしてくるわけでございますが、たとえば、現在の開銀法を改正して業務範囲を拡大する、そのことによって、いわゆる後ろ向き資金、たとえば設備廃棄に伴う運転資金、これは後ろ向き資金だと、あるいは設備廃棄に伴い人員を淘汰せざるを得ない、その場合の退職金、これは御承知のように、それだけの、これまでの積み立てじゃとうてい賄い切れないということになるわけですから、この種の資金。さらには、先ほど私ちょっと触れましたところの不況業種の転換資金、あるいは不況業種が位置しておる産地の地域振興を図るための特別な融資体制、こういったものを開銀法を改正して業務範囲を拡大し、政策金融として使っていく用意があるのかどうか、これについて、大蔵省の考えをお聞きしておきたいと思うんです。
  153. 藤田恒郎

    説明員(藤田恒郎君) 先生承知のように、開銀法はただいまのところ設備資金にしか融資ができないことになっております。ただ、こういう経済の情勢が、従来のように高度成長時代から低位成長と申しますか、安定成長時代に入って、かつまた不況が浸透するに伴いましていろいろな問題が出てきておるという状況の中で、開銀の従来のような融資方針と申しますか、現在の開銀のたてまえの中で、果たして政策金融として十分であるかどうかという問題については、まさに御指摘のとおりであろうかと思います。ただ、直ちにその問題を契機にいたしまして開銀法を改正して運転資金、いわゆる後ろ向きの運転資金あるいは設備廃棄に伴うもろもろの運転資金、こういったものを融資するようにしたらどうかという御指摘につきましては、私ども一つの問題点であろうと思い、これからも十分検討していかなければならない点であるとは思いますけれども、ただ、運転資金の問題になりますと、非常に民間金融機関との競合する問題、これがすぐクローズアップされてくるのではないかと思います。  開銀法のたてまえも、民間金融機関との競合禁止規定というものが入っておりまして、現在でも、われわれもいろいろとその問題については苦労しているところでございますけれども、運転資金の分野にまで進出いたしますと、その問題をどういうふうに調整すればいいのか、これは非常にむずかしい問題でございまして、相当時間をかけて検討しなければいけない問題であろうかと思います。したがいまして、私ども先生お持ちの問題意識というものは十分念頭に置いておりますし、今後ともに、開銀を含めました政策金融機関のあり方につきましては、さらに慎重に検討していかなければならない問題というふうに考えておりますから、なお日時をかしていただきたいというふうに思っております。
  154. 藤井恒男

    藤井恒男君 これは、通産省衆議院審議段階で、濃野局長の方からすでにこの政策資金のあるべき姿というものを求めて産構審の資金部会で検討に着手しておる、そしてこの趣旨に基づいて大蔵省当局とこれから論議を進めたいという積極的な前向きの姿勢を持っておるわけですから、どうかひとつ大蔵当局でも前広にこれを検討してもらいたい。  同時に、通産省にお聞きするわけだけれども、この構造不況業種をスムーズに転換さしていくために、中小企業にはこれまでもとられてきたことでございますが、高金利の既往の貸し出し金利をある程度引き下げる、あるいはこれも中小企業にケース・バイ・ケースで行ってきたところですが、個別企業に対しても返済猶予の措置をとる、先ほど触れた開銀の事業転換融資対象業種に、今度の特定不況業種を織り込むというようなことを通産省としてもすでに検討しておるんだということを、私会議録で承知したわけだけれども、これはいま私が申したようなことで承知してよろしいものかどうか、お聞きしておきたいと思います。
  155. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) いわゆる構造不況業種のみならず、これからの、先ほど私政策金融という言葉を使いましたが、私どもいろいろな産業政策を進めていきます上でいわゆる開銀の融資のみならず広い意味での政策金融についていろいろ検討する問題があるのではないかという問題意識を昨年以来持っておりまして、いろいろ準備を進めておりました。大体の方向と問題の整理ができましたので、ただいま先生指摘のように、産業資金部会の中に特別なグループをつくりまして、ひとつこの問題の討議に入る、こういう体制づくりをいたしております。  同時に、いま構造不況問題だけに限って申し上げますと、御指摘のような企業によりあるいは業種によりましては、過去の非常に高い金利、これを何とかしなければいかぬという問題も当然のことながらございまして、いわゆる政府系金融機関から貸し出したもの等につきましては、中小企業で行いましたと同様な意味で、金利の軽減措置をとり得るものはとる。なお、広い意味での構造不況業種の中で、個々企業の実態に応じまして、ある程度返済猶予等の手段をとらなければならないものについては、すでに個々の問題といたしましてそういう対応もいたしておるわけでございます。  先ほど大蔵省から御答弁のように、今後の方向といたしましては、金融政策の全体のあり方の問題等もございましょうし、あるいは財政と金融等の絡みをどう考えていくかというような問題もございましょうし、私どもは私どもなりの問題意識から勉強をなるべく早くいたしまして、いろいろタイミングを見、かつ合わせながら、大蔵省当局とも十分打ち合わせをし、私どもの要請等も十分伝えて善処をお願いしていく、そういう方向で進んでいきたいと思っております。
  156. 藤井恒男

    藤井恒男君 大蔵省にお聞きしますけれども、先ほど局長から答弁のありました設備廃棄に伴う必要資金、これは、本法によって開銀による債務保証が行われるわけだけれども、必要資金それ自体は市中銀行から借りる、そうなった場合にはその金利はどうなるのか。あるいは返済期間はどのような形になるのか。この点についてお聞きしたい。
  157. 藤田恒郎

    説明員(藤田恒郎君) 民間金融機関が融資いたします場合の金利あるいは返済期間、こういったものはまず、構造改善に必要な事業が進展される期間を見て、かつ、民間金融機関が一般に行っております金利水準、現在、たとえばプライムレートが七・一%でございますけれども、そういった基準に基づいて行えることになろうかと思います。
  158. 藤井恒男

    藤井恒男君 重ねてお伺いしますが、債務保証の場合に、保証の規模、たとえば合繊であるなら、一系列廃棄しようとしてもきわめて大きな額になる。したがって、業界などでは少なくとも簿価に類するものは保証をしてもらわなければいけないという強い希望が参考人意見として衆議院でも述べられておるわけです。実際問題として、この法案を見る限りにおいては保証があるというのだけれども、何割くらい保証するんだというようなことは、これからは読みとれない。したがって、それぞれの担当業界で非常に苦慮しておる向きがありますので、すでに法案がかなり審議も進んでおる段階だから、確としたお考えをお持ちだと思うんでその点お聞きしておきたいと思います。
  159. 藤田恒郎

    説明員(藤田恒郎君) ただいまの御質問は、構造改善を民間企業が進めていく場合に、構造改善に必要な資金、すなわちいま先ほど産業政策局長の方で御答弁なりました資金の範囲について、どの程度この債務保証基金を保証するかという問題であろうかと思いますが、ただいま産業政策局長が申し上げました資金の範囲につきましては、債務保証基金が一〇〇%の保証をしていく、こういうことでございます。
  160. 藤井恒男

    藤井恒男君 わかりました。  同時に、これまた構造不況業種、ほとんどの業種から出ておる声でございますが、もう説明するまでもなく、構造不況業種の置かれている立場、これはよくおわかりのとおりだと思います。この構造不況業種がいま大変疲弊しておる状況の中で、なお巨大な設備廃棄しようとするなら、これは何とか利子補給という道が開けないものかという強い希望があるわけでして、この点について大蔵省はどう考えておるか。  なお、格段の、一般金融機関ということになると措置がむずかしいがわからぬけれど、たとえば政府系金融機関等を通じて市中銀行からの通利の金を借りるんじゃなく、格段の融資というものの配慮があるのかどうか、この点についてお聞きしておきたいと思います。
  161. 岡崎洋

    説明員(岡崎洋君) ただいまの利子補給の点でございますけれども、本制度基本的な性格が民間の業界が集まって自助努力をもってやる、それについて政府として適当な形での助成あるいは御協力をするというたてまえから考えまして、私どもといたしましては、そのお手伝いの仕方は基金をお出しするという形でお金をまとめて使っていただくということが一番最も適当な形であろうというふうに判断いたしまして、今回の制度を整えたわけでございまして、いま先生おっしゃいましたように、それぞれの企業大変苦しい状態にございまして、金利は安ければ安いほどいいというお気持ちもよくわかりますけれども、いま置かれた状態でこの制度考えております限りにおいて、私どもは利子補給というところまでは考えておりません。
  162. 藤田恒郎

    説明員(藤田恒郎君) 政府系金融機関、どの程度お手伝いできるかというお話でございますが、これは御承知のように、開銀につきましては設備資金しか融資ができないことになっておりますので、構造改善に伴います運転資金、こういったものは融資できません。ただ、先ほどこれも産業政策局長の方から御説明ございましたように、こういった構造不況業種企業事業転換、そういったものをやっていこうというふうな場合には、開銀から事業転換に必要な設備資金を融資できるような道をこれから検討していくことになっております。
  163. 藤井恒男

    藤井恒男君 大臣にお伺いしますが、大蔵省大変おかたい役所でございまして、なかなか書いたこと以外は絶対できぬというようなことになりかねない。開銀については転換資金は前向きに考えていこうということでございますが、基本計画が実際問題としてできても、正直に申し上げていまの業界は金の問題が一番重要な問題、構造を改善する、債務保証をしようといったところで、金をどうするかということに尽きると思うんです。そういった意味で大臣として、これから法律が歩き出すと、もう目の前で実際問題として金の手当てをどうしていくかということをお考えにならなけりゃいかぬと思うんだけれども通産省としては、いま私が申し上げたことなどについてどのような御見解でしょうか。
  164. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 金利は安いにこしたことはないと思いますけれども、しかし、利子補給というのは現在のところは考えておりません。私はむしろ、現在は金利水準が相当下がっておりますから、金利水準も大事でありますが、必要な資金の量が確保できるかどうか、そこの方がむしろ大切な点ではないかと考えておりまして、いずれにいたしましてもせっかくこういう法律ができます以上は、円滑に計画促進されますように関係方面で十分打ち合わせをしながら進めてまいりたいと存じます。
  165. 藤井恒男

    藤井恒男君 大蔵省にお聞きしますけれど、今度の法律によって附則第六条によって開銀が信用基金に対して出資を行うという道が開かれたわけです。これは従来の開銀の性格変更というふうに解釈していいかどうかですね。  同時に、信用基金に対して出資を行うということになると、信用基金の業務運営についてどのような介入をしていくのか。言ってみれば開銀が基金に対して八〇%の株主になるわけです。そのことについて、当然大蔵省としてそれ相応の業務の範囲等についてはお考えのことと思うんだけれども、どうでしょう。
  166. 藤田恒郎

    説明員(藤田恒郎君) まず第一の、今回の改正によりまして開銀がこの債務保証基金に出資ができることになったんでございますが、それが開銀の基本的性格を変更したのかというお尋ねでございます。確かに開銀に新しい分野を設けましたというか、新しい分野に開銀が進出いたします以上、一つの進展と申しますか、開銀の業務の拡張と申しますか、そういった種類のものであろうかと思います。しかし、この債務保証基金に対する出資が、従来からの開銀のたてまえと全く違うものであり、基本的に性格を変更したのかと申しますと、私は必ずしもそうではないんじゃないかと思っております。と申しますのは、開発銀行は産業の開発あるいは国民経済社会の発展、こういったものに寄与するために民間金融機関を補完するという役割りを持っております。御承知のように、開銀は従来から設備資金を融資してまいりましたが、その融資先にも数千億に上る、いわゆる構造不況業種に属する企業があるわけでございます。で、こういった企業の再建と申しますか、構造改善のために開銀が債務保証基金に出資していくというのは、従来からのその開銀の役割りの一つの継続と申しますか、一つの流れに沿ったものではなかろうかというふうに思っているわけでございます。特にまた、今回の債務保証基金が特定業種というものではなくて、広く構造不況業種に対する債務保証基金ということになるわけでございますので、開銀法の目的の範囲の中で解釈できる種類のものではないかというふうに私ども考えております。  それから二番目の、開銀が出資をした以上、出資をするからには信用基金の業務運営に対してどういうふうに介入していくかというお尋ねでございますが、まずこの債務保証基金の運営につきましては、通産大臣と大蔵大臣が監督をするというたてまえになっております。したがいまして、開銀が出資者の立場としてこれに介入という言葉は適当じゃないと思いますけれども、関与していくということは、これは開銀も政府系金融機関であり、また開銀に対しては大蔵大臣が監督をしておりますし、また債務保証基金については、通産大臣と大蔵大臣が共同して監督の責任に当たるということになっておりますので、出資者として、開銀が特にこれに関与するということはないというふうに申し上げてよろしいのではないかと思います。  ただ、先ほども申し上げましたように、この債務保証基金の仕事を進めていく上に当たりましては、開発銀行の機能と申しますか融資機能と申しますか、こういったものを十分活用していくということが必要でございますので、たとえば債務保証基金の業務、審査、そういったものの仕事を開発銀行と協力してやっていただく、こういうことは必要ではあろうかと思います。そういう意味で、開銀と債務保証基金両方相互に情報交換し合いながら連絡体制を密にして、開銀法の目的にございますような産業の開発、経済社会の発展に寄与していくという開銀の役割りを果たさせていただきたい、こういうふうに思っております。
  167. 藤井恒男

    藤井恒男君 前段の法附則第六条による出資の業務が拡大された、そのことは現在の開銀法に言うところの産業の発展、拡大を通じて経済社会に寄与するという目的が合致したものである、決して性格変更ではないと言うのであるなら、先ほどちょっと触れた政策金融的な窓口を設定するということも、これまた開銀法を大上段に構えていじくらなくたって、業務の範囲として私はできることだと思う、変わらぬわけですわね。この出資それ自体は、基金に対する出資であって個別企業ではない、なるほどそうかわからぬけれど、この基金それ自体がそれじゃ保証する相手先は何かと言えば、構造不況業種ですね、日本の産業の中でも最も危険な業種と言っても過言じゃない。であるなら、その同じ企業に対して同様趣旨に基づく資金の融資という窓口を設定することは、これは著しく開銀法の性格変更にもつながるわけじゃない、目的にも合致するわけだから。これはひとつ前向きにやろうということだから、これはできると私は踏んでおるのでございますが、余りかたくなに考えずに、どうぞひとつ真剣に取り組んでいただきたいと思います。  時間がないから、それじゃ先に進みますが、大蔵省まだ残っていてくださいよ。  通産省にお聞きしますが、いまおっしゃったように、基金については特段開銀が介入するものじゃない、どちらかと言えば基金は大蔵省が監督するものであるが、基金はウエートがむしろ通産省サイドにあるというふうに私はとったわけです。そうしますと、基金の業務運営というものについて、基金の利用者である特定不況産業、それが当然意見を反映されることにならなければいけないと私は思うのですが、まあ担当官庁としてどのようにしてこの基金の業務運営について特定不況産業を参加さすのか、意見を反映さすのか、いかがでしょうか。
  168. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私どもの方にウエートがかかるということで、特にそう思っておりませんで、大蔵省と御一緒になりましてこの基金の運営に当たっていきたいと思っておりますが、ただ、先生いま御指摘のように、対象が主として私どもの所管の業界でございます。信用基金の保証業務の運用に当たりましても、やはりそういう関係業界の考えておる問題なり方向なり意見というものは、反映させる必要が御指摘のとおりあると思います。御案内のように、この基金の運営は役員のほかに、いわゆる評議員会、三十六条にその規定がございまして、その運営に関する重要事項を審議する機関として評議員会を置くというかっこうになっております。評議員は二十人以内で組織するというかっこうになっておりますが、私ども将来のこの基金の運営のあり方といたしまして、たとえば重要な問題につきましてこの評議員会等で関係業界の意見も代表できるような、そういう構成等も検討していってみたらいかがかと、こういうふうに考えておるわけであります。
  169. 藤井恒男

    藤井恒男君 局長にお伺いしますけど、基金の資本金は幾らで、それはどことどこが出すことになるのですか。
  170. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) この基金の資本金は、法律によりますと十六条に、その設立に際し、日本開発銀行とそれから開発銀行以外の者が出資する額の合計額となっております。で、二項で、その後必要があるときは、大蔵大臣と通産大臣の認可を受けて、資本金を増加することができるとなっております。  まず、この基金の発足に当たりましては、すでに御案内と思いますが、開発銀行から当面八十億、それからいわゆるる民間資金を二十億集めまして、一応百億で発足をする。なお、民間の資金が二十億以上集まり得るという場合には、さらに開銀から二十億追加いたしまして、結局開銀から百億、民間から二十億プラスアルファということまで現在の段階で数字として固まっておるわけでございます。
  171. 藤井恒男

    藤井恒男君 そうしますと、現時点で現実問題としてとりあえず出資金は百二十億プラスアルファと解釈をした方が正しいと思うのですが、どうでしょう。
  172. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 民間の出資または出捐の見通しでございますが、見通しが立ちました場合には、ただいま先生指摘のようなかっこうになると思います。
  173. 藤井恒男

    藤井恒男君 以外の者、つまりこれは民間を指すわけだけれど、これはどのような範囲を推定しておられるか。
  174. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) この種の信用基金は過去にも幾つかの例がございまして、非常に一般的な広く民間からの資金を集めておるもの、それから当該業界が民間資金の出資の源泉であるものといろいろございます。私どもは民間と申しましても、もしこの法律の対象になるような業種のみを対象にすることは、何分とも構造不況業種と言われておる非常に厳しい情勢にある業界でございますので、それは期待することはできませんし、いままでの御議論にもございますように、構造不況問題と申しますのは金融界あるいは関係業界、さらに広く申しますれば構造不況問題が片づくことが、日本の経済全体にいい影響を与えるわけでございますから、私どもといたしましては、いわゆる民間財界から二十億というものを広く御協力を願うということで、内々瀬踏み等をやっておるところでございます。
  175. 藤井恒男

    藤井恒男君 これは簡単なようで非常に私むずかしいと思うので、関連業界といっても、本法の対象とするところはむしろ業態から言えば川上に属する部分であって、しかもどちらかと言えば大手、したがって関連業界というのは川中、川下であって、それは中堅企業中小企業というふうにつながっている。むしろこれは、大手がどっちかと言えば手を差し伸べているところであって、そこから出捐もしくは出資を仰ぐということは関連業界として不可能だろうと思う。しからばそれは金融機関以外にないというふうに私は思うし、いま仮に広げたとしても、それは取引のある商社、その範囲になろうというふうに私は思うのです。  そうした場合に、大蔵省にお聞きしておきたいんだけれど、現在すでに構造不況業種というものが膨大な貸付残高を持っておる。そういった中で、さらにみずからの資産を落としていこうとするわけですね。そういう状況に対して金融機関が応援しなかったら、これは成り立たぬわけでしょう。金融機関が広く日本経済のためだ、あるいはそれが立ち直って安定し、しかも成長していけば金融機関にとっても大変なメリットになることは間違いない、多少のリスクはある、というようなところだと思うんだけれど、これはじっと手をこまねいておったら、進んで金融機関が名乗り上げて出てくるものとは思えない。当然いままでも同じだけれど、大蔵省が大きく旗を振らなければ本法成立しても法律が動くことができないということになりかねないわけでして、その意味において大蔵省として積極的に、私は金融業界に対して音頭をとり、しりをたたいて援助、応援の体制を組まさなければいけない。これは普通の通り一遍のことじゃどうしようもないというふうに思うわけだけれど、具体的にどのようにするつもりか、その指導方針を聞いておきたいと思います。
  176. 藤田恒郎

    説明員(藤田恒郎君) 構造不況業種に対する金融機関の協力体制ということでございますが、確かに構造不況対策は国の問題でもあり、もちろん金融機関の問題でもあり、同時にまた民間業界、産業界全体の問題であろうと思いますし、三者が一体となって協力していかなければならない問題だと信じておりますが、御指摘のように融資をしている金融機関というものが、やはり相当の役割りを果たしていかなければならないというふうに私ども思っております。ただ、いつも渋いことを申し上げて恐縮でございますけれども、金融機関の問題につきましては、金融機関としてもそれぞれ預金者の預金を預かっておるという立場にございますし、企業に対する金融の支援を行っていく場合には、健全経営の観点から申しますと、やはり金融機関としてもおのずから限度があるのではないかというふうに思います。  ただ、もちろん御指摘のように、金融機関が、企業が非常にみずから真撃な企業努力を行いつつ支援を求めてきたというふうな場合には、単に銀行が短期的な観点、あるいは収益力とか担保力とか、そういった観点からだけで企業を判断するということは、私どももそれは間違いであろうと思います。むしろ中長期的に見てその企業が再建し得るめどが立つかどうかという観点かに立って判断をして行動をすべきではないかというふうに考えておりますので、われわれとしてもこういった状況をにらみ合わせまして、構造不況のもたらす雇用問題あるいはその他の影響、そういったものを慎重に考えながら、と同時に、金融機関の公共的責任と申しますか、社会的責任と申しますか、そういったものも考えて、前向きに金融機関を指導していくということにいたしたいと思っております。
  177. 藤井恒男

    藤井恒男君 これは大臣よく聞いておいてくださいよ。これから法律が動き出すと、大蔵大臣と通産大臣話し合ってこれは措置していかなきゃいかぬのだけれども、やっぱりここでうまくいかにも大蔵省らしい答弁をしておるわけなんで、従来も通産サイドで、中小企業については政府系三機関によっていろいろな金の貸し出しをやる、中堅企業についてはこれはひとつ市中銀行でやろうと、大蔵省とパイプをつないで応分の応援をするという体制ができるということをよくわれわれ耳にする。現場は、地方に出てみるとなかなかこれはそうじゃない。銀行窓口はやはり銀行それ自体のまさにいまおっしゃった銀行としての社会的使命がある。多くの預金者に対する保全の義務がある。したがって、そう簡単にはいきません。これも一つの論ですわね。こういったことで現実の貸し出しというのがとまっちまう。だから結果は絵にかいたもちになってしまって、中堅企業は何の手当ても受けられないということに泣くわけです。  したがって、本法で言う状況は、先ほど来言うように構造不況業種に対する貸し付け、それがまさに基金の十倍の信用力があるという前提にこれ立っておるんです。これをよくわきまえてもらわぬと、百億基金ができたと、一千億枠をつくったといっても、いまの解釈だと、これは法ができたって実際問題として動かぬということにこれなりますよ、大臣。いまもうまさにその答弁がある。だから、この法律それ自体は構造不況業種である、自分でやれないから政府はお手伝いという言葉を使っておるわけだけれども、申し出たらその十倍の信用力をつけてやろうということなんだから、だから私はもうどっちかと言えばこの特定不況業種に指定されたところは無条件だと思う、ぼくは。でなければ、これは参加するものおらないですよ。大臣、その辺についてどのようにお考えでしょうか。
  178. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まあ安定基本計画をつくるときに、よほどいろんなことを考えてつくらなければならぬと思っております。総合的に判断をしながら安定基本計画がきちんとでき上がれば、それに沿って構造改善事業を進めるわけでありますから、やはりそれが計画どおり進むようにいろいろ配慮が必要だと思います。そういう趣旨に立ちまして、関係方面とよく連絡をとりながら円滑に実施してまいりたいと考えております。
  179. 藤井恒男

    藤井恒男君 どうですか、大蔵省。私の先ほど言ったことは矛盾だとお考えですか。
  180. 藤田恒郎

    説明員(藤田恒郎君) 金融機関といたしましても経営の問題と、さらにまた社会的責任を果たしていく上で、構造不況業種にできるだけの協力をしなければいけないという問題、この二つの問題を抱えておるんで、できるだけわれわれとしても前向きに指導していきたいということを申し上げたわけでございます。特にこの債務保証基金との関係で申し上げますと、債務保証基金が金融機関に融資いたします融資の一〇〇%の保証をするわけでございますので、むしろ金融機関といたしましては、この保証を受けることによりまして融資に踏み切りやすくなると申しますか、構造不況対策に協力するのが容易になるような仕組みになるのではないかというふうに思っております。私どもいろいろと金融機関と接触しておりますけれども、金融機関は金融機関なりにそれぞれ問題を抱えておりますので、構造不況対策については金融機関としてもできるだけの協力をしていくという問題でございますから、先生の御指摘の点も踏まえまして、われわれもそういう方向でできるだけ努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  181. 藤井恒男

    藤井恒男君 これは保証規模が基金の十倍、言葉をかえて言うなら、金融機関は十倍までの信用力があるということを容認しておるわけですから、一番最初に言われた渋い物の考えはやめて、きちっと対応していただきたいと思います。  次に通産省にお聞きしますが、担保力の不足を補完するということが信用基金を設ける目的であるはずでございますが、今度の措置については裏保証をとるということになっておる。これは本法趣旨に矛盾を来すんじゃないかというふうに思うわけだけれども、この辺どう解釈したらいいものでしょう。
  182. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 信用基金の保証に当たりましていわゆる裏保証をとるという点でございますが、御指摘のように裏保証をとるということについてはいろんな御批判の御意見等もございます。ただ、私ども考えまするに、この構造不況問題は先ほどからの御指摘等もあるように、やはり金融機関なり、私先ほど関連業界と申しましたが、むしろ関連業界という意味はダウンストリームという、川下という意味ではございませんで、関係業界と申し上げた方がよかったのかもしれませんが、構造不況業種の中にはいわゆる総合商社等を中心とした商社との関係の非常に深い業界等もございまして、設備処理を進めるに当たりましても、やはりこういう業界、関係者との間の密接な連絡、別の言葉で申せば相当全面的な協力体制が要るということが一つ。  それから第二に、一部の御批判、御指摘もございますように、従来の金融機関との関係あるいは商社との関係が、いかにもこの基金が何か全部肩がわりをするというものではないかという御批判等もございまして、そういうことではなしに、やはり保証に当たりましてもそういう何と申しますか、協力関係をはっきりさせる意味におきましても、いわゆる裏保証制度というものを方向としてとっていくべきではないかというのが私ども考え方でございまして、具体的にどうするかという点は、大蔵省当局あるいは関係金融機関等も含めまして現在検討をいたしておりますが、やはり一定の裏保証というものを、この信用基金による保証に当たりましてとるべきではないだろうかと、こう考えておるわけでございます。
  183. 藤井恒男

    藤井恒男君 大蔵省にお聞きしますが、裏保証の分担割合というのはどうなるんでしょう。
  184. 藤田恒郎

    説明員(藤田恒郎君) ただいま産業政策局長の方から御説明のございましたように、この構造改善は国のみではなくて、金融機関あるいは関連業界、関係業界と申しますか、こういったものが一体となってやっていくべきだというのがこの債務保証基金を設立いたしました基本的な考え方でごいます。そういった考え方に立ちます場合に、われわれとしては大体金融機関及び関連業界にそれぞれ三分の一ずつの裏保証を提供していただきたいということで現在お願いをして、関係者間での検討を行っておる最中でございます。
  185. 藤井恒男

    藤井恒男君 それじゃみんなが相寄ってやるということは、これは結構なことではございますが、現実の問題として裏保証がとれないという場合にはどうなりますか、大蔵省。
  186. 藤田恒郎

    説明員(藤田恒郎君) 現実の場合、裏保証が取れない場合というのは具体的にどういうケースになるのか、ちょっと私どもも理解に苦しむわけでございますけれども、結局、これは開銀を通じまして国の資金を債務保証基金に出資いたしまして、それが債務保証を行っていくという以上は、債務保証を受けます企業が債務保証を受けて、金融機関からの資金を受けて構造改善を行うことによって、今後何年間のうちには必ず立ち直るものであるということが大前提であろうかと思います。  したがいまして、民間企業あるいは金融機関がそういうものを対象にして債務保証基金に保証の申請をしてまいります場合には、私どもは当然裏保証の提供はしていただけるものであるというふうに思っておりますので、具体的に裏保証が提供できない場合という場合が、どういうふうになるのかということにつきましては、むしろ当然裏保証は提供していただけるものだと、また裏保証を提供して国の保証も受けて、一体となって再建をしていくんだというようなものを企業は取り上げていくんだというふうに私は思っております。
  187. 藤井恒男

    藤井恒男君 局長、お伺いしますけれども、これは絵でかいていくとそうなると思うんですよ。だから、産構審などに審議を仰いで基本計画を策定して、そして今度は、大多数の業界の申し出によって設備廃棄をやろうと、そうなったときに初めて基金からの保証を取りつける。保証を取りつけるに当たっては、そういう過程を踏んでおるんだから、当然関連業界あるいはメインバンク、あるいは商社から三分の一、三分の一の裏保証は取れるだろうと。これは絵にかいたらそういうふうにすっとなるわけだけれども、現実にこの裏保証が取れない場合には法は動かぬのでしょうか、どうでしょう。それは取るように行政指導するというお答えだろうと私は思いますけれども、法の趣旨から言ってどうなんですか。
  188. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私二つの面からお答えします。  一つは、ただいま先生指摘のように、個々企業の安定基本計画に沿った設備処理を具体的に企業ベースで詰める場合には、当然のことでございますが、その企業関係をしている金融機関ないしは関係業界との、たとえば商社等との関係のあるところと十分な、金融面を通じてどう持っていくかというお話し合いが当然ございまして、そこの見通しがつかない限りは、設備処理というのは具体的には進まないということになると思います。私どもはその段階で、もし問題のあるところには関係業界も含めましていろいろお話し合い等に応ずる、あるいは応ぜざるを得ない、そういうかっこうで進めていかなければならぬという問題が一つでございます。  それから第二は、この裏保証のあり方につきましては、先ほど私から御答弁申し上げました、また大蔵省の特金課長から御答弁ございましたように、技術的な問題もたくさんございますので、関係者の間で詰めております、両省中心になりまして。それで一つのいわば基準ができるんだろうと思います。それで、具体的にはこの基金の業務方法書の中で決められることになると思います。ぎりぎり問題詰めまして、それではある特定企業につきまして、そこの基準で決められたとおりの裏保証というのができないという事態、しかも、それが具体的にその基準とどこまで違うのかというような問題になってまいりまして、そのときの判断になるのではないかと、私はそういうふうに考えております。
  189. 藤井恒男

    藤井恒男君 これはまだ固まったことじゃないんだろうけど、おおむね三分の一、三分の一ということだろうとは思うけれど、全く裏保証が取れないということは、私はそれはなかろうと思う。通産省も首に綱つけてでも引っ張ってくるというお気持ちだろうけれども、大蔵省、非常にかたいですからね。だから、条件に満たなかったらこれはだめだと。だから、裏保証あるけれど、いま言ったようにパーセンテージに満たないものはだめだということになれば、これは法の趣旨と私は相反することだと思うんですよ。その辺は私は、やっぱり弾力的にその置かれておる業界の特性というものを見てやっていかなければいけない。特定不況業種それ自体がさまざまですからね、中長期に見ても、どういう姿を描いていくのか。これはこれからの作業というものも大変多岐にわたる分野だから、私はそこのところをきわめて弾力的に運用するということでないといかぬと思うんだけれども、これは大臣、そういう考えでよろしいでしょうね。
  190. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) これはまだ最終の結論は出ておりませんで、大体そういう方向でいま詰めつつあるところでございます。最終段階でどういう判断をいたしますか、参考意見として伺っておきます。
  191. 藤井恒男

    藤井恒男君 おおむねきょうの持ち時間が来ましたので、最後の質問をいたしますが、次の機会に、アウトサイダー規制と輸入問題について御質問したいと思います。きょうは基金問題だけにしぼったわけです。  最後に、この基金の保証規模の拡大によって、おおむね百億あるいは百二十億という開銀出資では不足するということがこれまでの審議の経過で明らかになっておるわけです。当然それに見合って出資はふやすということですが、これは法が成立して動き始めて、希望者がふえ、融資というか出資の額が不足するということになれば、幾らでもふやす用意が大蔵省にあるわけですね。どうでしょう。
  192. 藤田恒郎

    説明員(藤田恒郎君) 構造改善計画が進展いたしまして必要となりました場合には、その必要に応じて開発銀行からの出資を大幅増加していくという考え方でございます。
  193. 藤井恒男

    藤井恒男君 最後に、大臣、これは言質をとるわけじゃないけれど、これは大変業界にとっても重要なことでして、実は、衆議院の中村委員質問に答えて通産大臣は、信用基金は、大体当初は百億前後予定しておる、保証額はその十倍、こう考えておったが、その後変更した、必要な資金は幾らでも追加していく、こういうことにしませんと本当の対策はできません、こういうふうに答えておられる。だから、私はあえて大蔵省に言っておいたんだけれども、必要に応じてじゃなくて、幾らでも。だから、何ぼでもどんと来いというのが大臣の答弁なんだから、それは大蔵省よく聞いておかぬと……。  そこで、これは大蔵大臣と通産大臣が臨機応変に相談して決めていくということになろうけど、この法の主管は通産省ですからね、だから大蔵省で、自分は金庫番だから金しぼるんだという気持ちじゃ、これだめなんだから、幾らでも来いと言うのだから、その用意を十分しておいてもらいたい。武士に二言はないと私は思うのでそう申しておるわけです。
  194. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いま大蔵省から御答弁もございましたが、表現は違いますけれども趣旨は同じだと思うんです。初めは、先ほど産業政策当局長から申しましたような形でスタートいたしますけれども、必要に応じまして、やはり資金を必要なだけふやしてまいりませんと仕事はできませんからそのとおりに、衆議院答弁をいたしましたとおりにするつもりでございます。
  195. 藤井恒男

    藤井恒男君 終わります。
  196. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 幾つかの点について質問をしたいと思いますが、まず、公取委員長にもおいでいただいておりますので、共同行為の実施に関する指示カルテルの部分についてお聞きをしたいと思います。  この第五条では、事業者の自主的な努力のみをもってしては、設備処理等実施されないと認められる場合という要件が規定されておりますけれども、「自主的な努力のみをもってしては、当該特定不況産業に関する安定基本計画に定めるところに従って」の処理ができないと、困難と認められるというのは、具体的にはどういう状況を要件と考えているわけですか。
  197. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 指示カルテルの要件の、ただいまの御指摘のところでございますが、この法律の立て方が、安定基本計画ができました場合には、第四条によりまして、「特定不況産業に属する事業者は」この計画に定めるところに従って、「自主的に行うよう努めなければならない」かようになっております。この自主的な努力と申しますものは、私ども内容としては二つの場合があると考えております。  一つは、この基本計画を参考と申しますか、にらみまして、個々の事業者が自分の判断で単独に設備処理に着手をする、あるいは共同して着手をするという場合でございます。この共同してやる場合には、一つの方法といたしまして、現在独占禁止法の二十四条の三の不況カルテルの結成によって行える場合もあり得ると考えます。五条のこの指示カルテルは、そのような自主的な努力ではできない。一つは、試みたができないという場合がございましょう。もう一つは、たとえば循環的な生産調整の場合等にも見られますように、なかなか業界としてカルテルというかっこうにまとまりにくいというようなケースも考えられまして、そういう場合を含めまして自主的な努力、自主的な努力のみをもってしてはと、こういう表現をしたわけでございます。
  198. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 現在想定されております不況業種特定不況産業、その中で、このスタートの段階で指示カルテルの第五条が適用されると見込まれるところはあるわけですか、それとも全部そうなるわけですか。
  199. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) この五条の指示カルテルの制度でございますが、私ども現在のところ、この指示カルテル制度まで発動いたしまして結果を担保しなければならないといういわば予定業種はございません。  それから第二に、この運用といたしまして、私どもは、これはもう最後のいわば担保手段でございまして、できるだけ各関係業界が四条の自主的な努力によって問題の解決を図ってもらいたいと、かように考えておるわけでございます。
  200. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 今度の法案につきまして、一つは、内容が不十分だという点からの批判もございますけれども、同時に、こうした形での対策企業の自主的な努力を弱める、それによって自由経済体制としての活力をそぐことになるのではないかという側からの懸念もあるわけでございます。そういう意味で、指示カルテルその他が安易に発動されるということには問題があろうと思いますので、その点については、いま通産省からお話しのような慎重な運用が必要だというふうに私ども考えております。  その意味で、通産省からすでにそういう御発言がございましたので大丈夫だと思いますけれども公正取引委員会としていかがお考えか、その点もお聞きしたいと思います。
  201. 橋口收

    政府委員橋口收君) その点に関しましては、通産省からお答えがあったところと全く同じ考え方でございまして、できれば個々の事業者あるいは個々の事業者が共同して行う自発的な行為によって、設備処理が行われるということが一番望ましいというふうに考えているわけでございます。どうしても業界としての合意ができない、あるいは個々の事業者だけでは十分な目標に到達することができないというような場合に、初めて第五条が発動することになるわけでございますから、あくまでも最終的な保証担保というふうに考えておるわけでございます。
  202. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 それからアウトサイダー規制でございますが、この点については、この中には規定されておりませんけれども、たとえば、衆議院の附帯決議の中では、強力な行政指導でこれを調整するということを書いてございますけれども、この点について、この附帯決議の運用の仕方、これについては通産省としてはどうお考えになっておられますか。  それから、特に当面、適用対象と想定されるような不況業種について何らかのアウトサイダー規制が必要かどうか。その辺の判定についてはどうお考えかお伺いをしたいと思います。
  203. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) いわゆるアウトサイダー規制に関しまするいろいろな御意見、非常に幅のある御意見が本法案の立案過程においてございました。この法案の最後の御審議を願うかっこうになりましたのは、いわゆる法律によるアウトサイダー規制ということは落としたかっこうで法案の御審議をお願いしておるわけでございます。  なお、アウトサイダー規制と申します中に二つございまして、一つは、設備の新増設のみならずいわゆる設備処理に関しましてもアウトサイダー規制命令があるべきであるというような御意見もあったわけでございます。ただ私どもは、この指示カルテル制度にせよ、この指示という言葉が非常に強制的な感じを与えますが、この法律的効果は独占禁止法の指示に従って行う共同行為について、独禁法の適用除外になるという法律効果があるだけでございまして、指示というのは、何らそれ自身は強制でないわけでございます。同様に、アウトサイダー規制命令というものも、いろいろ御意見はございましたが、結局は、一方的にこれを命令を出しても片づく問題ではございません。結局は、私どもがそれぞれの業界、特殊事情を抱えておりましょうが、いわゆるアウトサイダーの方が非常に強い方があれば、やはり話し合いと説得の上で全体の設備調整と申しますか、設備処理に御協力を願うといういわゆる行政指導に努めていかなければならないと考えております。  で、この法律は、二条の第二項、三項にもございますように、つまり申し出制を前提といたしまして、しかもその業界の数で大多数、及び事業活動で大多数の方の申し出が前提でございまして、その申し出に従って安定基本計画をつくり、設備処理を進めるというかっこうになりますから、少なくとも三分の二以上の業界の方の数としても、いわば協力をしようという少なくとも発足のときの体制があるわけでございまして、先ほど御指摘の私どもこの法定四業種あるいは五号で予定をしておりますいわば候補業種の中には、すべてが一〇〇%まとまるとは考えておりません。どの業界にも若干のアウトサイダーの方が存在し得ると思いますし、今度は個々設備処理議論が始まりますと、またそこで新しい御意見等も出てくることも考えられると思いますが、衆議院の御決議にもありますように、全体が大勢としてひとつ設備処理をやっていこうという空気にあるときは、最後までいわゆる行政指導によりまして説得、話し合いに努めていく、これが私たちの仕事であろうと、こういうふうに考えております。
  204. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 そのアウトサイダーに対する行政指導実施しようとするとき、公正取引委員会には、報告なり、御相談なりということはなさるわけでございましょうか。それは全く必要ないというふうにお考えでございましょうか。
  205. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ここで総括的に、相談の必要ないとかあるいはしなければならぬ等はちょっとお答えのしにくい問題でございまして、私どもは私どもの産業行政の遂行の中で、やはりこれは公正取引委員会に御相談しておいた方がいいというような問題があれば、この法律上の問題を離れまして御相談することも十分あり得る、私どもはこう考えております。
  206. 橋口收

    政府委員橋口收君) いまの点に関して補足して申し上げますと、通産御当局がアウトサイダーに対しまして行政指導なさることは、これは独禁法で別に問題はないと思います。ただ、行政指導の結果としてアウトサイダーの方々が集まってまた共同行為をなさるということになりますと、これは独占禁止法上の許可がなければ法律上の問題が生ずるということでございまして、通産御当局が、個々の業者に対して、個々の事業者に対して設備廃棄をこの程度したらどうかという説得行為をなさることにつきましては法律上の問題はない、このように考えております。
  207. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 その点に関しましても、両方からの批判といいますか、不満が出ているわけですが、一つは、行政指導ではなかなかアウトサイダーの規制といいますか、協力は得られないだろう、だから立法措置が必要だという考え方と、それからアウトサイダーに対して行政指導をしながら、結局、その全体としての規制をしていくということはある意味企業活動の活力、自主性、自由というものを阻害することになるという批判があるわけでございまして、その点では、なかなか運用上むずかしい問題があろうかと思います。その点に関しましては、抽象論になりますけれども、やはり個々企業の活力を阻害しない範囲内で、できるだけ法の趣旨を生かしていくという判断が必要だろうと思います。その点に関しまして、ひとつ中小企業団体法ではアウトサイダー規制ができることになっておりますけれども、この構造不況業種の中で、中団法によって設備処理のアウトサイダー規制を行うというケースが出てくるのかどうか、その点についてはいかがでございますか。
  208. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 団体法において、アウトサイダー規制が認められておる背景というのは、私なり考えてみますと、やはり中小企業が非常に零細であり数が多いというところが背景にあるのではないかという気がいたします。数が多いという点について申し上げますと、大企業であれば、先ほどの御答弁にございましたように、行政指導によって一つ一つ問題を解決するということが可能でございますが、中小企業の場合には対象が余りにも膨大でございまして、そのような手段によることが事実上不可能である場合が多いと思います。また、零細であるという面について申し上げますと、大企業であればアウトサイダーが多少わがままな行為をしましても、それを受けるための体力の余裕がございますが、中小企業の場合にはそれが即企業経営の存立にかかわってくるという問題がございますことが、背景にあるのではないかと理解をいたしておるところでございます。  具体的に団体法の活用についてでございますが現在団体法におきまして、設備に関してアウトサイダー命令を幾つか用意をいたしておりますが、その内容を見ますと、設備の登録、設備の封印、操業の短縮、こういったことがその内容として盛り込まれておるところでございます。これらの措置につきましては、構造不況業種と言われている業種について、特に中小企業で問題がある場合には、積極的に活用して問題解決に役立たせるということが十分考え得ることではないかと考えております。  ただ、問題の中で設備廃棄をするということについてアウトサイダー命令をかける、これは現に大きな資産を処理をするということでございますので、これはアウトサイダー命令にはなじみにくいと、こういうふうに私ども考えて、そのように運用しておるところでございます。
  209. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 この指示カルテル、それからアウトサイダー規制につきましては、いま通産省からも当面伝家の宝刀であって、実際に発動することは考えていないというお話がございましたし、公正取引委員会の方からもその点は同じような御答弁がありました。中小企業庁からも、設備廃棄については団体法のアウトサイダー規制はむずかしい、なじまないという御答弁がありましたので、この点については問題は当面は起こってこないというふうに考えられますので、できるだけ自由経済体制のやはりメリットといいますか、市場原理というものは生かしながら、構造不況業種対策を進めていくというふうに、政策の運営上お願いを申し上げたいと思います。——公取委員長結構でございます。  それから次に、衆議院修正なりましたこの都道府県知事の意見の申し出の件についてちょっとお伺いをいたしたいと思います。  五十六条で、「都道府県知事は、安定基本計画に従って行われる設備処理その他の措置当該都道府県における地域経済に著しい悪影響を及ぼし、又は及ぼすおそれがあると認められるときは、主務大臣に対し、意見を申し出ることができる。」という条文が挿入されておりますが、この知事は、いかなる時点でどのような内容の意見を申し出ることができるのか、この点については衆議院側の修正者の意見を聞かなければいけないのかもしれませんけれども通産当局としてどう判断をしていらっしゃるか。
  210. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 衆議院における御審議の過程におきまして、この構造不況問題というのは業種によりましては、あるいは地域によりましては大変大きな影響特定地域に与える。この点をどうするかという御指摘がたくさんございました。  私どもといたしましてはまず第一に、安定基本計画の策定の段階におきまして審議会に諮りますが、審議会の場におきまして、その業種が、そういう特に地域性の強い業種でございました場合には、あるいは審議会の委員等にも御参加を願う、あるいはそこまでいかない場合におきましても審議会の場で、関係地方公共団体の御意見等を伺うということは、法律に何ら明文の規定がなくても十分そういうかっこうに努めていきたいということを申し上げておりまして、実はこの法律による流れを見てみますと、安定基本計画をつくります段階地方公共団体の長の御意見をいただく。それを基本計画策定の段階で取り入れるのが何と申しますか、タイミングから申しましても一番いい手段ではないかと考えております。  ただ、この条文は安定基本計画に従って行われる設備処理その他の措置が云々となっておりまして、ちょっと読みようによりましては、時期的に安定基本計画策定後のようにも読める規定でございまして、私どもこの運用をいかがするか、まだ最終的に内部で検討しておりませんが、仮に安定基本計画ができました後、現実の設備処理に当たりましていろいろな問題が起こったと、こういうケースも予想されますので、あるいはこの条文に従いまして基本計画確定後にそういう御意見が出る場合も予想されると思います。  その場合には、私どもそこでその地域の問題として基本計画自身にまた再検討を加えるとかこういう必要性もあるいは出てくるかもしれないと思っております。ただ、繰り返しといたしましては、私ども基本計画策定の段階で十分地域的な問題として御意見を承る。こういうことで運用していきたいと考えております。
  211. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 いまの局長の御答弁にもありますように、安定基本計画ができてしまってから知事から意見が出てまいりましても、なかなかそれを生かしていくことがむずかしいのではないかと思います。その意味で、五十六条としてはむしろ安定基本計画の策定に関して都道府県知事の意見を聴取するとか、そうしたものに変えていく方がいまの通産省の実際の運営とはマッチすることになると思いますけれども、その点についての御意見は、この五十六条の条文を若干手直しをするという点については通産省はどういうふうにお考えなりますか。
  212. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私、先ほど御答弁申し上げましたように、この条文規定にかかわらず、私ども地域的な非常に大きな問題がある業種につきましては、安定基本計画策定の段階審議会等の場を通じまして十分御意見を取り入れるという方向で運用していきたい。この点は変わりございません。この条文衆議院修正の場合に入った条文でございまして、この条文を素直に読みますと、基本計画の策定後、いつでも御意見の申し出があるように読める条文でございまして、私どもこの条文に従いまして、策定後に現実に設備処理が進んだ結果、それを中心にして非常に地域経済に予期しない事態が起こった、いわばそれを予想した条文とも私ども解釈をいたしたいと思っております。その場合には確かにいろいろむずかしい問題が出てまいりますが、安定基本計画までさかのぼって計画のいわ見直しをするという問題、あるいは安定基本計画をそのままにして、実際の設備処理に当たりましてこれを地域の情勢に応じて変更するというむずかしい問題が出てくるかもしれませんが、その地域経済の状況なりあるいは不況産業の実態、そういうものを判断をいたしまして、この条文趣旨に沿いました運用をしていきたい。したがって、この条文のただいま修正というお話もございましたが、これはこのままでございましても十分運用はしていけると、こういうふうに考えております。
  213. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 いまもお話のありましたように、意見の申し出がありましたら通産省なり主務官庁としては、安定基本計画修正をしなければならないという事態になるわけですけれども、これはなかなかむずかしいのではないかと思うのです。そういう意味で、その地域について特別の地域経済対策を行うとか、そうしたことで、その意見なり急激な変動に対して緩和措置をとっていくということも考えられると思うわけですけれども、その意見の申し出を受けた主務大臣は、その意味で、たとえば労働省であるとか自治省であるとか、そうした関係大臣と何らかの協議をするというようなことになるわけでしょうか。
  214. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいま先生指摘のように、構造不況問題、設備処理だけの問題ということではなしに、その影響というのは各般の方面にまいりますし、仮に通産大臣として都道府県知事からこの規定による申し出があった場合、私どもだけで処理をできない問題というのはたくさんあると思います。特にその地域の労働、雇用の安定問題等も含めて問題の御提起があることは十分予想されます。その場合には、ただいま先生が御指摘のように労働省当局、あるいは他の産業との関連で、他の要するに主務大臣等とも十分御相談の上、しかるべき対応をしていく、こういうことになるのではないかと考えております。
  215. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 自治省の方はおいでになっておりますか。  自治省としては、この都道府県知事からの意見が主務大臣に出された場合に、何らかの形で関連をされるのか。もしくは知事の立場に立って、地方経済対策を立てるための協力をされるのか。たとえば特別交付税どうするとか、いろいろな対応策公共事業を特別に配分に留意するというようなことも考えられるとは思うんですが、その点について、自治省としてどのような対応をお考えになっておられますか。
  216. 小林実

    説明員(小林実君) 現在、地方公共団体におきましては、地域経済対策に関連いたしまして体制を整備いたしまして、主としては公共事業等の施行促進を中心として積極的に取り組んでおるわけでございます。御質問の五十六条に関連する取り扱いにつきましては、まず不況業種を所管いたします担当の省庁におきまして、地方公共団体に対して対応あるいは指導、あるいは適切な措置をしていただくということになると思いますが、自治省といたしましても、地域実情に即応して適切な措置がとられるよう関係省庁にも働きかけてまいりますし、必要に応じて私どもなりの努力をしてまいりたいと、こういうふうに考えております。
  217. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 労働省の方はお見えになっていますか。  もし五十六条で当該地域についての雇用の安定のための施策を求めてきたときに、労働省としてはどのような対応考えられますか。
  218. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  いま通産当局からお話がございましたように、五十六条では主務大臣のところに都道府県知事から申し出があるということになっておりますが、五十七条では労働大臣と相互に密接な連絡のもとに協力してということになっておりますので、当該地方の実態の把握に努めますとともに、都道府県知事の意見を体しまして主務大臣といろいろ協議してまいりたいと思いますが、さらに雇用安定の面について、いろいろと施策の申し出その他があった場合には、たとえば今回の造船関係では今治、長崎、佐世保その他、失業者の吸収率制度の適用とか離転職訓練の機動的実施とか、いろいろ実施いたしているわけでございますが、これらの施策実施していきたい、このように思っております。
  219. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 この都道府県知事の意見の申し出を挿入をされた意味なり、その役割りなりは十分わかりますけれども、具体的なこの適用といいますか、それに従ってこの不況業種対策をどう手直ししていくかというのは、必ずしも容易ではないと思うわけです。もしも、その点について円滑な行政上の処理ができませんと、せっかく安定計画を立て実施に踏み切ろうとしていた段階で、各地域からのクレームが続々と起こってくる、いざ手直しをするとなれば一カ所の部分的な手直しではうまくいかない、総合的な手直しということになれば安定計画をまた頭からつくり直す、こういうことになりかねないと思うわけですが、その点せっかくの不況業種対策が、そうした形で実施がおくれていくということに関しては、私ども懸念を持たざるを得ないわけでございます。その点運用上の問題だと思いますけれども、できれば、先ほど局長からもお話がありましたように、安定基本計画作成の前に何らかの形で意見を聴取して、その段階でこなしていくということが必要ではないか。その点では、どうもこの五十六条必ずしも実際の運用に適した条文にはなっていないというふうに感じがするわけでございますが、その点運用について、ぜひ十分の御配意をお願いをいたしたいと思います。そういうことでよろしゅうございますか。
  220. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 先ほど御答弁申し上げましたように、私ども、いわゆる構造不況業種の中で、何が特に地域的に密接な関連を持った地域経済に非常に大きな影響を与える業種であるかということは、それぞれの主務官庁におきまして大体了知をしているところでございますし、しかしまた、地方公共団体方々の御意見等も十分に伺わなければならぬということで、先ほど御答弁申し上げましたように、安定基本計画の策定の段階で十分にそういう御意見を入れまして、後でその安定基本計画まで戻って問題が起こることのないような運用を図っていきたいとこういうふうに考えております。
  221. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 それでは次に、信用基金に関して質問をしたいと思います。  信用基金につきましては、「資本金」として「日本開発銀行及び日本開発銀行以外の者が出資する額の合計とする。」というふうになっておりますが、同時に三十九条の「業務」を見ますと、三十九条の第三項では、「基金は、」「出資された金額と基金が負担する保証債務の弁済に充てることを条件として日本開発銀行以外の者から出えんされた金額の合計額に相当する金額をもつて第一項第  一号の業務の資金に充てるものとする。」ということで資本金及び出捐金ということになっているわけですが、先ほど来といいますか、従来から御説明のあります八十億プラス二十億というものにつきましては、これは資本金であるというふうに考えてよろしいわけでしょうか、それとも出捐金も含まれた金額でございましょうか。
  222. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 出捐金も含まれた金額と解釈しています。
  223. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 そうしますと、開発銀行以外の者からの出資金と出捐金の割合、それはどういうふうに想定をし、期待をしているわけでございますか。
  224. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 現在のところ出捐金と出資金との割合をこうだと、はっきりまだ一つの目安を持っておりません。むしろ出される方のそのお立場の問題というのもいろいろあると思いまして、一応二十億をめどに、衆議院並びに本委員会でも御答弁申し上げておりますように、私、内々打診を続けておりますが、その中から出資金と出捐金をどう分けるかということについてのめどはまだ持っておりません。
  225. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 自治省の方、結構でございます。  いまの御答弁ですけれども、そうすると、会員以外からの出資金がゼロになることもあり得るわけでしょうか、それとも二十億の過半は出資金だと考えてよろしゅうございますか。
  226. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいまの見通しでは、ゼロになることはないと私ども考えております。
  227. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 これは大蔵省の方、銀行局の方かもしれませんけれども、受ける立場として出資金と出捐金、どういう違いを考え、また出資ないし出捐する場合にどういう基準で選択をすることになるわけでしょうか。
  228. 藤田恒郎

    説明員(藤田恒郎君) 受ける方と申しますか、基金の立場に立って申し上げますと、いずれにいたしましても、基金の基本財産として信用保証の裏打ちと申しますか、裏づけとなるわけでございますから、基金の立場から申し上げますと、いずれの形で行われようが同じことではないかというように思います。
  229. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 それでは伺いますが、この出資金の場合と出捐金の場合とで、出資ないし出捐をした金融機関等の税法上の扱いはどうなるわけでしょうか。
  230. 矢澤富太郎

    説明員矢澤富太郎君) 御承知のように出資金は解散のときに出資者に返ってくるものでございます。それから出捐金は、この場合には解散いたしますと残余財産で出資金を上回った額は国または地方公共団体に帰属するということでございまして、その辺が税法上の取り扱いの違いでございます。したがいまして、出資金につきましてはそれを出したときに必要経費あるいは捐金に算入されないわけでございます。それから出捐金につきましても、そのこと自身によって直ちにそれが必要経費あるいは損金に算入されるというものではございませんが、たまたま租税特別措置法の中にそういう受けざらがございまして、たとえば商品の価格安定を主たる目的とする業務であるとか、それから債務保証を主たる目的とする業務であるとか、特定の業務につきまして特定の要件を満たす場合、その要件の中には国の法令に基づいて行う業務でございますとか、残余財産は出資金を除き国等に帰属させるというふうに、寄付行為に書いてあるというような特定の要件を満たした場合には、損金算入を認めるという租税特別措置の中の特例がございます。  私どもとしては、基本的にはこの債務保証基金に対する出捐金は、この租税特別措置の特例に乗り得るんではないかと、実際に乗せるためには大蔵大臣の告示が必要でございますが、そういった考え方のもとに、細部につきまして通産当局とただいま折衝中でございます。
  231. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 そうしますと、出資金については損金扱いはしないと、出捐金であれば損金算入ができるという税法上の取り扱いの違いがありますと、これはその民間の人として出資をされるだろうか、その点については、それにもかかわらず出資する人があるというふうにお考えになっていらっしゃるわけでございますか。
  232. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 先ほど申し上げましたように、私どももまだはっきりした出資金と出捐金がどうなるかという点についてのめどは持っておりませんが、私どもいまの税法上の問題と絡みましてどちらを選ばれるかの問題、非常に大きな問題でございます。しかし先ほど御答弁申しましたように、出資金がだからといってゼロになるとは私ども考えておりません。
  233. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 それから解放の場合の残余財産の処分でございますが、いまのような形でもしも債務の保証の履行額が、基金の保有する資金の中に食い込んでいくというような場合には出資金の返還も一〇〇%行われない場合がある、その場合には戻ってこない出資金については損金算入されるということになるわけでございますか。
  234. 矢澤富太郎

    説明員矢澤富太郎君) 出資金の場合でございますが、通常はその純資産が出資額を下回ってしまったということが確定した場合に損金算入をするわけでございますが、事業の運用中にその資産状態が著しく悪化いたしまして、出資金の価額が著しく低下したと認めた場合にはその評価損を計上することも可能でございます。
  235. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 それはその年度でということでございますか、各年度の決算に基づいて。
  236. 矢澤富太郎

    説明員矢澤富太郎君) 恐らくその出資をした企業のその年度の決算を締める際に出しました出資額が著しく出資あるいは持ち分の価額を下回っているかどうかという判断をされることになろうと思いますので、年度末の決算の際にそういった判断が一回働くんではないかと思います。
  237. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 それから債務の履行額が基金の保有する総資金額を上回ってしまったという場合には、その差額については、その段階追加の出資なり出捐を求めていくということになるわけでしょうか。こちらの残余財産がある場合の配分の規定はあるわけですけれども、決算をしたときにむしろ総資金額では債務の履行が不十分になるというような状況も当然予想されると思いますが、そのときの対応策というのはどういうふうに考えていらっしゃいますか。
  238. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 卒直に申し上げまして、この解散時におけるただいま御指摘の問題についてどうするか、詳細の議論を詰めておりません。関係金融機関及び先ほどから申し上げておるような関係事業者の全面的な協力を前提として、この保証基金を使ってやっていこうと、こういうことでございますから、私ども現実には基金が代位弁済を行わなければならないような事態はそう多くないのではないかと、こういう期待、期待感が中心でございますが、持っておりまして、したがって現在のところ具体的に詳細どうするかという点までのまだ詰めを関係者の間ではやってないというのが現状でございます。
  239. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 先ほどから他の委員からも出ておりますように、どんどんつけろという声がこれから強くなってくると思いますので、果たしていまのような楽観的な御答弁で済むのかどうかというところが一つ心配になるところだと思います。  それから、その民間の部分について金融機関からこれから協力を要請し、協力を求めるわけですけれども、これは各金融機関にいわばお祭りの寄付のように一律に割り当てることになるわけですか。それとも構造不況業種と言われるものに対して主として融資をしている企業のメインバンク等を中心に、協力を求める、関連の金融機関等に協力を求めるということになるのか。それともそれとは関係なしに、一律に協力を求めるということになるのか、その辺の通産省なり大蔵省としての方針はどういうことになっているんでしょうか。
  240. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 民間の出資分につきましては、ただいままで何回か御答弁申し上げているように、私どもこの法律が御審議の結果成立をいたしました暁には、基金の設立の第一の段階といたしまして、いわば発起人の方々、だれになっていただくかこれを決めまして、この発起人の方々が中心になってこの基金に対する出資と申しますか、資本金を集めるというお仕事をやっていただくかっこうになると思います。私どもいま両省間で、内々どういう方に発起人をお願いをするかということを詰めております。同時に、当面二十億を集めるということについて内々打診をしておりますが、ただいま先生から金融機関へというお話もございました。私は金融機関にも御協力を願うというぐらいのが率直なところ私ども通産省の感じでございまして、私はこれは広くいわゆる財界の御協力を願おうという基本的な方針に立ちまして、経団連を中心に広く財界の御協力を願おうと、金融機関もその一員として御協力を願うということでお願いをしております。したがって金融機関の中でどなたに持っていただくかというような問題は、むしろ非常に自主的な御判断と申しますか、それぞれの事情に応じた御判断で御協力を願えばいかがというのが私ども考え方でございます。
  241. 藤田恒郎

    説明員(藤田恒郎君) ただいま金融機関の中の配分はどうなるかというお尋ねでございますが、私の方からお答え申し上げますが、先ほど産政局長の御説明にもございましたように、われわれといたしましても民間金融機関に対して、こういう趣旨にかんがみできるだけ協力してほしいという要請はいたします。しかし、その中で金融機関がどういうふうに負担をしていくかということは金融機関相互の話し合いなり自主的な問題であろう。われわれが関与すべき問題ではないのではないかというふうに考えております。
  242. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 それではこの信用基金の構成といいますか機構について最後にちょっとお伺いをしておきたいと思うんですが、信用基金、これは開発銀行の中に置かれるというような感じのものになるのか、形式的には独立の法人格、特殊法人になるわけですけれども、完全に独立した理事長を持ち、理事を持ち、何人かの職員を持ちという形のものになるのか、それとも兼務の形で簡素な組織になるのか。ほかの林業基金とか、漁業法金とか、いろいろ例もあるようでございますけれども、この特定不況業種対策のためにまた新たな特殊法人をつくり上げて、そこにまた職員数の多い組織をつくるということはこれは本旨ではないのではないかと思うのです。その意味で、できるだけ私どもとしては、つくるにしても簡素なもの、できればそれぞれの役員の中で兼務をしてもらうというようなことでつくっていくべきではないかと思いますし、預金保険機構のように日銀の副総裁が理事長になっているというようなものもあるわけでございますからそういうものを期待しているわけですけれども、その点についてはどういうお考えでございましょうか。
  243. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいま大蔵省御当風といろいろ相談をしておりますが、基本的にはただいま先生指摘のように、きわめて簡素なかっこうでやっていきたい、こう考えております。によりまして理事長ほか理事三名以内、幹事二名以内となっておりますが、   〔委員長退席、理事福岡日出麿君着席〕 できれば、たとえば理事長さん等につきましては、特別のこの仕事だけをやられる方ではなしに、むしろ非常勤の方で財界全般のめんどうと申しますか、を見ていけるような方であると、たとえばそういう構想でございますし、事務局自身につきましてもこの法律の中に開発銀行へのいわば事務委託の規定もございますが、その事務委託の問題を別にいたしましても、いわゆる関係金融機関の御協力を得て、いわば出向のような形で、非常に簡素な機構で運営をしていきたいというのが基本方針でございます。
  244. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 私もそう思っておりますが、この第三章の信用基金の条文はかなり仰々しい感じがしますね、その割りには。役員についての詳細な規定、それから職員の任免、それからさらには業務方法書の問題、財務諸表の問題、いろいろとこうかなり詳しく出ておりまして、さらには退職給与の引当金の話まで出ているわけですけれども、その全体の職員数、それはどのくらいに考えていらっしゃるわけですか。
  245. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 御指摘のように、この法律の中で特定不況産業信用基金の規定というのは非常に多くの規定になっておりまして、若干奇異の感じをお持ちになるのもある意味で当然と申しますか、そういうお感じをお持ちになるのではないかと思いますが、これは法律にこのような信用基金の前例が幾つかございまして、私どもなるべくこの法案審議に当たりまして簡素な、簡単な規定にしてもらいたいという希望も持っておりましたが、やはり法律をつくるとなりますとこういうかっこうになったというのが結論でございます。  それから全体の事務局職員をどのくらいにするかという問題でございますが、まだ大蔵省といろいろ御相談をしておりますが、現在のところでは十五人から二十人程度ではないかと、こういうふうに考えております。
  246. 柿澤弘治

    柿沢弘治君 それで安心をしましたけれども、私、この法律を読むとどうも不況業種の話よりも、信用基金の役員の話とか職員の話とかばかり書いてありまして、これは一つこういう特殊法人をつくるために不況業種を種にしているんじゃないかというような不安すら感じるわけでございまして、その点ではごく簡素に兼任のきくものは兼任にする、出向で間に合うものは出向にする、業務委託はできるだけ任していくというような形の運営が望ましいと思います。むしろ行政の簡素化、特殊法人の整理が叫ばれている中で、不況業種対策として大きな法人ができ上がるというのは、これは国民の目から見ても大変奇異なことでございますので、その点だけはぜひ実行上も御配意をいただきたいというふうに思っております。  いろいろまだ聞きたいこともございますけれども、きょうはここのところで終わらせていただきます。
  247. 福岡日出麿

    ○理事(福岡日出麿君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  248. 福岡日出麿

    ○理事(福岡日出麿君) 速記を始めて。
  249. 森下昭司

    ○森下昭司君 私は先日の委員会におきまして、第二十四条の三の問題でいろいろ質問いたしたわけであります。午前中安恒委員からも若干の質問がございましたが、重ねて公取委員会の見解をお尋ねいたしておきたいと思うわけでありまして、まず最初に独禁法の施行がいたされました後に今日までこの第二十四条の三の条項を生かして公正取引委員会に対しまして不況カルテルの承認を求めた件数はあるのかどうか、まず最初にそのことをお尋ねいたします。
  250. 橋口收

    政府委員橋口收君) 独禁法の不況カルテルの規定に基づきまして共同行為の認可をした件数でございますが……。
  251. 森下昭司

    ○森下昭司君 設備廃棄内容にした……。
  252. 橋口收

    政府委員橋口收君) はい、わかりました。設備の共同廃棄につきまして認可した事例は今日まで一件もございません。
  253. 森下昭司

    ○森下昭司君 なぜそれが申請がなかったのか、その理由はどうお考えになっているのか。
  254. 橋口收

    政府委員橋口收君) なぜ認可の申請がなかったかということでございますが、これは実態的な理由と法制上の理由と二つあるだろうと思います。  で、実態的な理由をまず申し上げますと、設備廃棄ということは当該企業にとっては大事件でございます。したがいまして、個々の事業者が自分の事業の将来についての展望を持って、それぞれ自己の判断に従って廃棄をするあるいは転業をするということは、これは十分考え得ることでございますけれども、しかしながら、業界そろってたとえば一定の割合で、あるいは残存者負担方式等で合意を得て共同廃棄するということは、これは実際問題として、よほどのことがない限りなかなかむずかしいというのが実態上の理由ではないかと思います。したがいまして、お互いに共同行為をして公取の門をたたくということは、従来なかったのでございます。  それからもう一つの第二の理由といたしましての法制上の理由でございますが、これは前回の委員会でもお答えを申したところでございますけれども法律の解釈といたしましては、設備の制限というものを狭義に解釈をいたしておりますけれども公正取引委員会の従来の運用の方針といたしましては、主として短期的な循環的な不況に関連して生じた特定の商品の需給のアンバランスに対応して、生産数量の制限とかあるいは供給数量の制限等を行うのが主たる事例でございまして、そういうものにつきましての認可の件数はございますけれども、そういう主たる問題に対する対応措置が可能であれば、設備の共同廃棄という大変むずかしい問題につきまして、公正取引委員会として運用方針の窓をあけるということについての多少のためらいがあったのが従来の歴史的な経緯であったと思います。  それに対しまして、これも前回の委員会でお答え申し上げたところと重複いたしますけれども、昨年の秋に従来の公正取引委員会運用の方針につきまして修正を加えましたのは、やはり現在の構造不況の深刻さということに着目したのが第一点でございますし、それから第二点といたしましては、昨年独禁法が改正になりまして、仮に共同行為をいたしました結果として、将来需給に緊張をもたらして価格が上がるというような事態が生じました場合には、これは課徴金の対象になるということになるわけでございます。従来でございますと、仮に共同行為をやっておりましても、それが発見をされて、違法の共同行為であるということが判明をいたしましても、それは将来に向かって是正をするということでいわば許されたのでございますけれども、しかし昨年の改正独禁法に基づきまして、仮にそういうことで価格が上昇したというような事例がございますと、これは当然課徴金の対象になり得るわけでございます。つまり、そういう独禁政策の強化ということを考えますと、やはり設備の共同廃棄について業界で意思統一ができました場合には、こちらとして受け入れ体制を整備する必要がある、こういう認識に基づきまして、昨年の秋になりまして、従来の運用方針に対して修正を加えたのでございますから、それよりもまだ数カ月ということでもございますし、まだ今日まで事例がない、こういういろんな理由によって今日まで認可をした件数がない、こういうことであろうかと思います。
  255. 森下昭司

    ○森下昭司君 先ほどもちょっと御質問があったようでありますが、通産当局もいまだこういうような設備の制限について、廃棄というような点については私は行政指導をなさらなかったと思うんであります。私は、独占禁止法によりまして設備の制限の中に廃棄が含まれる、こういう理解が成り立ちますならば、当然私は行政指導の中に設備廃棄問題を含めて御指導をなさるのが必要ではなかったかと、こう思うんであります。行政指導段階で、私は過去に設備廃棄問題を含めて御指導をなさったということは、寡聞にして聞いておらないわけでありますが、そういった事実はなかったのかどうか、なかったとするならば、なぜ行政指導の中に廃棄処分を含むことができなかったのか、この二点についてお尋ねいたします。
  256. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 過剰設備処理の問題につきましては、ただいま公正取引委員長からお話のございましたように、公正取引委員会が独禁法の運用と申しますか、解釈の問題とされまして、昨年末に至られまして、不況カルテルの運用によって設備処理も可能である、窓口を開けて待っているという態度をとられました。それまでの間は、私どもはどちらかと申しますと、不況カルテルの運用は短期のいわゆる生産の需給調整、しかも、期限を限ってそういう循環不況に対抗するものとして運用されるもの、こういう前提で考えておったわけでございまして、したがいまして、たとえば構造不況問題ではいわゆる平電炉業界に対する通産省関係業界との話し合い、これが一番先に話が進みました。昨年一番早く手がついて進んだわけでございますが、その段階におきましては、ただいまの御方針も非常にはっきりしてなかったという点が一つございます。  それから第二に、個々の業界によりまして、たとえば平電炉業界等につきましては、一律の廃棄というのが業界の実態からなかなかむずかしい、そこで個々企業あるいはいわゆる高炉メーカーの系列としてのグループあるいは商社のグループというようなことで、むしろそのグループ別あるいは大きな企業企業別に、通産省との間で全体の廃棄率が大体三百三十万トンというと一六%ぐらいになると思いますが、これを全体として達成するためにはどうかというような個別の話、計画の詰めということがございまして、そういう業界の実態から、不況カルテルで話を進めていこうというような指導はいままでしてなかったというのが実態でございます。その他の業界につきましては、本委員会におきましてもいろいろ御答弁申し上げておりますように、アルミ産業が昨年末に産構審の場におきまして、将来の設備処理一つの目安をつくり上げたわけでございますが、この業界におきましては、全体として五年後に約四十万トンの過剰設備処理をするというラインは出ておりますが、この処理の方式をどうやってやるかということについては、まだ業界間、あるいは役所との間でも詳細な詰めができておりません。したがって、まだ不況カルテルの運用廃棄をするかどうかというような段階まで全体として至っていなかったというのが現状でございます。
  257. 森下昭司

    ○森下昭司君 局長、ちょっと解釈上間違いがあるんじゃないですか、公取委員長は独禁法で設備の制限は廃棄を含むと言ってるんです。いまあなたの答弁運用の上から設備廃棄は可能だと言うんですが、そこをはっきりしてください。何だったら公取委員長、もう一遍答弁してください。
  258. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私のただいまの御答弁公正取引委員会委員長の御説明と間違っておる点があれば、これは独禁法の解釈の問題でございますので、公正取引委員会委員長の御発言のとおりと、そういうふうに私は訂正をいたします。
  259. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで、後ほど私小形棒鋼の組合の問題を通じて、この点に対する具体的な回答をいただきたいというふうに思うわけでありますが、言うならば短期的な循環不況に対処するのが独禁法で言う不況カルテルであり、言うならば構造的不況に対するものは独禁法の二十四条の三の不況カルテルの解釈は成り立つけれども、不況カルテルを適用することは、運用することはこれは妥当を欠くというような考え方で今日までやってきておる、たまたま昨年橋口委員長が就任をされまして後に、運用の窓を開くため、設備廃棄問題も不況カルテルとして考えてみてもいいのではないかということになるわけでありますが、いまだ日が浅いために申請が一件もないという状況を考えてまいりますと、大別をいたしますと、独禁法では構造不況に対する設備制限の中の廃棄問題は、これはやはりただいま審議をいたしておりまするこの本法案によることの方が行政上は妥当であるという考え方に立っていいのかどうか、公取委員長の見解を求めたいと思うんです。
  260. 橋口收

    政府委員橋口收君) 昭和四十九年から続きました長期間の日本経済の停滞現象というのは、戦後三十年の経過の中には恐らくなかった現象であろうかと思います。先生よく御承知のように、従来の景気の繁閑と申しますのは、大体一年半か長くても一年八カ月ぐらいたちますと景気が好況局面に変わると、こういう事態でございまして、したがいまして、いわゆる構造的な不況状態が五年近くも継続するという事態は初めての経験でございます。したがいましていまお話がございましたように、確かに昨年の秋、公正取引委員会が方針を転換いたしますまでは、できるだけ短期的な循環過程に対応するような法の運用をすると、こういう運用方針をとっておったのは事実でございます。しかしながら、いま申し上げましたような、日本経済が経験したことのないような未曽有の長期的な停滞現象、それに加えて繰り返しになりますが、昨年の改正独禁法というものを踏まえて考えますと、やはり現行の独禁法の運用に対しましても、構造的な不況現象に対応できるような運用方針をとることがやはり時代の要請にマッチしているんではないか、こういう基本的な考え方に基づきまして方針を決めたのでございまして、したがいまして、本来内在的に現在の独占禁止法の不況カルテルが短期的な需給状態にのみ対応するものである、こういうふうに断定することはわれわれとしては適当でない。昭和二十八年にできました当時から、やはりそういう考え方のもとにできておったのでございますが、しかし日本経済が要請する内容が、短期的には循環過程の結了によって好況局面に早く到達すると、こういう経済体質でございましたから、自主的に設備の共同廃棄を行うような必要性はなかった、今後はそういう必要が出てくるだろう、こういう基本的な認識に立って運用方針に対して修正を加えたものでございます。
  261. 森下昭司

    ○森下昭司君 そういたしますと、今後の構造不況業種に対しまする要するに不況カルテルの適用という問題は、本法案に盛られました四つの具体的な業種あるいは第五号でしたか、政令で申し出によって決める、いわばこういう本法案に構造不況業種として対象にならなかった業種でも、公正取引委員会がたとえば離職者法で示す構造不況業種というのとこの本法案の構造不況業種と概念的には一緒に立っておりましても、指定の中身が相当違ってくると思うのでありますが、そういたしますと、本法案で示す政令で指定するものも含めました構造不況業種のほかに、公正取引委員会が独自の立場で判断した構造不況業種というものは二十四条の三で不況カルテル、つまり設備廃棄を含めたカルテルを申請した場合に、それは短期的な循環的な不況ではなく、いま申し上げたように構造不況という立場で問題を考えた場合には、そのカルテルのいわゆる承認はあり得るという理解をしていいのかどうか。
  262. 橋口收

    政府委員橋口收君) 森下先生が従来から独占禁止法の不況カルテルと、この法案に基づく指示カルテルとの性格の相違ということを追究しておられるのでございまして、大変問題点を正しく御指摘いただいておると思うんでございますが、どちらの対象範囲が広いか狭いか、要件が同じか違うかといういろいろ細かい議論はございます。しかしながら、いまおっしゃいましたようなここに掲げられております四業種プラスアルファ以外のものにつきまして、独占禁止法の不況要件に該当する設備の共同廃棄についての申請がございますれば、内容審査して、要件に該当しておれば認可する用意はございます。
  263. 森下昭司

    ○森下昭司君 しかし、仮にいま具体的な細かい点までまだいろんな問題点があるというお話でありますが、仮に突っ込んでいまお話があったように不況カルテルを認めましても、たとえばここにありますいわゆる信用基金制度のようなものがないと、事実上設備廃棄をする場合に相当金融面において問題が出てくる、あるいはまた、いろいろ雇用の問題について雇用の安定をどう確保していくのか、これは不況カルテルの中にそういうような条項が盛られればともかくとして、そうでなければそのものずばりでいけば、業界の立場に立った設備廃棄のみにとどまってしまって、本法案のごとき雇用問題に対する配慮というものがいわゆる加えられないまま実施をされるということに私はなりかねないと思うんであります。そうだといたしますと、私はやはり雇用の問題を考えました場合には、独禁法で言う不況カルテルの承認よりも、むしろ構造不況業種に対してはやはり私は本法案を前提といたしまして考えていくということの方が、非常に妥当性があるという考え方を持つものであります。さっきも申し上げましたように、きっぱり言えば短期的、循環的な不況に対しては独禁法、長期的、構造的な不況に対しては本法案をという立場で問題を考えた方がかえって雇用という問題を考慮に入れる、たとえば衆議院における修正趣旨等を生かすという立場に立ちますと、私は行政上はそこに一つの妥当性が生まれてくるのではないかと思うのでありますが、この片について通産大臣はどうお考えになるか、お尋ねいたしたいと思います。
  264. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 私はいまの御意見に全く賛成でございます。
  265. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで私は、橋口委員長がどこかで言われた中で、従来いわゆる構造不況業種も含めまして、たとえばこの場合出ております小形棒鋼でありますとか、また将来私は指定されるであろうと思うのでありますが、合板の問題でありましょうとか、いろんな事業転換を含めまして問題点がたくさん出ているわけでありますが、そういう従来のいわゆる不況カルテルの中で生産制限でありますとか、あるいはまた価格制限でありますとかというようなカルテルの繰り返しが行われてきているわけであります。しかし、そのようなカルテルが行われてまいりましても、結果におきましては体質改善なり、あるいは構造改善というものがこれはでき得ないというようなことを考えてまいりますと、委員長が言われましたように、生産数量制限と設備廃棄という二つのカルテルを組み合わせることを検討する用意があるということを述べられたと私は承知をいたしておるのでありますが、この二つのカルテルを組み合わせるということは、具体的にどういうことを想定してお考えになっておるのか、具体的にひとつお答えをいただきたいと思います。
  266. 橋口收

    政府委員橋口收君) 現在の不況カルテルの運用におきましても、生産数量制限と設備の制限とを組み合わせておる事例がございます。ただ、これは先生承知かと思いますが、設備の制限に関しましては格納とか封印とか、こういう程度のもので対処いたしておるのでございまして、これはどちらかと申しますと、生産数量制限のための手段でございまして、それ自体独立の機能と申しますか、効果を持つものではないとすら考えられるものでございます。私が申しましたのは、片方で生産数量制限をして、同時に片方で設備の共同廃棄を行うと、こういう組み合わせも可能ではないかと、あるいはその方が事態の急速な解決にはプラスになるのではないかと、こういう趣旨のことを申したのでございまして、これもたしか前々回の委員会でお答えを申し上げたところでございますが、かつて麻糸につきましては五年半も長期間にわたって生産数量制限を認めたことがございます。ところが、実は五年半の間に生産数量を制限しながら自然に設備廃棄をされたのでございます。今日のような運用方針をとります場合には、場合によっては生産数量制限と設備廃棄とを組み合わせることも可能ではないか、こういういわば原点に立ち返っての考え方に基づいて、そういう意見を言ったのでございまして、この点につきましては通産御当局とも御相談して、あるいは一つの過程としてそういう組み合わせが可能ではないかということは、今日においても考えておるところでございます。
  267. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで、先ほど柿沢委員とのやりとりの中で若干私誤解をしたのかどうか存じませんが、その点について確かめたいと思うのであります。中小企業庁長官、お帰りになりましたので、大臣からお答えをいただければ幸いだと思うのでありますが、中小企業庁長官柿沢委員質問に対しまして、設備の件に関して、設備の件というのは私は廃棄という意味だと思いますが、廃棄に関しましては、たとえば中小企業団体の組織に関する法律で商工組合が行って調整規程等を設ければアウトサイダーに対する命令を行うことができるわけであります。その命令をすることは中小企業にとってはなじみにくいという表現です、なじみにぐいとお答えになった。柿沢委員中小企業団体法だって設備廃棄はできるじゃないかということに対しまして、なぜそれを運用しなかったかという点については、なじみにくいとお答えになった。ところが、小形棒鋼の工業組合をおつくりになって、現に団体法を適用して、これカルテル行為をおやりになっているのですよ。しかも今回の本法案にはちゃんと小形棒鋼、つまり平電炉関係業種は不況業種として具体的にいわゆる指定業種になっておる。なじみにくいという理由と、なぜ中小企業団体法でもできるものを、本法案の中で改めて設置しなければならないのか。これは私はこの前から聞いておる公正取引委員長の見解をもとにすれば、二重の取り扱いになるのではないかという具体的な実例でありますが、その点についてお答えをいただければお答えをいただきたい。
  268. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 先ほど中小企業庁長官なじみにくいという言葉を使いましたかどうか、私はちょっと申しわけございませんが記憶がございませんが、中小企業庁長官答弁趣旨は次のようでなかったかと思います。  なぜ中小企業団体法にアウトサイダー命令があるかと言えば、これは非常に中小企業で数が多いと、この法律は主として大企業、大きな企業を対象としているので、アウトサイダー命令がなくても個々企業とのいわゆる行政指導による話し合い、説得の余地が十分あるけれども中小企業性の強い業界はそういういわば余地が非常にない。したがって、全体の調整をするためのアウトサイダー命令というのが必要なのではないかというのが第一の点ではなかったかと思います。  それから第二の点といたしまして、アウトサイダー命令についてはたしか設備の登録、それから設備の封印とか、こういう操業短縮といったものはできると思います。それと設備の新増設のいわば制限のアウトサイダー命令はできると思うというのが第二の点。  それから第三の点は、設備廃棄ということは財産処分の強制につながるという、そういう性格から見てアウトサイダーを規制するのはいかがかと、法解釈としてそれはできないのではないかと、こういう答弁をしたのではないかと私は記憶をいたしております。  現実の問題からいたしますと、先生御案内のように中小企業関係設備処理が大分ございましたが、これは団体法の規定の適用と申しますよりは、いわゆる事業団によります設備共同廃棄仕組みを使いまして行ったのが非常に多くて、この団体法の規定によって設備廃棄処理を行ったというケースは、つまり法の運用でアウトサイダー命令を使ったというケースは現実の問題としてもなかったと、こういうふうに私は記憶をいたしております。
  269. 森下昭司

    ○森下昭司君 あの、そこでお聞きいたしたいのは、中小企業団体の組織に関する法律の第十七条第一項第四号のイで「生産の設備に関する制限」という表現が使われています。したがって、これは数量だとか価格だとか、あるいは合理化規定等はいろいろあるわけでありまして、安定事業と合理化事業、大別すれば二つになるわけであります。その安定事業の中に「生産の設備に関する制限」という表現はあるわけでありますが、いまの局長の御答弁からまいりますと団体法で言う「生産の設備に関する制限」ということと、独禁法の設備の制限というのと何か違うように私は受け取れるわけなんです。はっきり申し上げておきますが、公取委員会設備の制限の中には設備廃棄は含まれるという法解釈をおとりになっている。これはもうずっと法成立以来そういう解釈だというふうに強調されている。運用面で昨年の十一月からこれを実際に課したいということが今日までの答弁の推移であります。  ですから、私は中小企業団体法の第十七条の第一項四号のイで「生産の設備に関する制限」とありますれば、これは独禁法上の解釈からまいりましても、あるいは独禁法上の関連からまいりましても中小企業団体法の安定事業及び合理化事業というものは、これは共同行為でありまして、最後の公正取引委員会の承認を必要とするというたてまえからまいりましても当然廃棄処分が含まれているという理解に立たざるを得ないと思うのでありますが、法律用語といたしまして団体法の設備に関する制限と独禁法の設備の制限とは具体的にどう違うのか。これはひとつ通産省として明らかにしていただきたい。
  270. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 中小企業団体法の解釈の問題、ここで私から公式の御答弁を申し上げる立場にございませんので、直ちに中小企業庁長官から答弁を得たいと思います。
  271. 森下昭司

    ○森下昭司君 長官を呼ばなくても、大臣監督者だから、大臣答えてくれよ。そういう答弁をするのなら大臣答えろよ。——委員長、大臣に指名してください。大臣は全部の監督者ですよ。
  272. 橋口收

    政府委員橋口收君) 私からお答え申し上げるのは適当かどうかわかりませんけれども……。
  273. 森下昭司

    ○森下昭司君 適当ではない。
  274. 橋口收

    政府委員橋口收君) 衆議院中小企業庁長官が同じような質問に対しましてお答えをした記録がございますので、これをちょっと申し上げてみたいと思います。  中小企業庁長官は、いろいろ議論のあるところであり、通産省としてはこれまではっきり詰めないまま運用してきた。こういう答弁をしておられるのでございまして、私どもいまお示しがございましたように、こちらも協議を受ける立場でございますから多少補足して申し上げますと、午後に中小企業庁長官答弁されました趣旨は、アウトサイダー規制命令をかけ得る内容なり得る設備の制限でございますから、したがって、企業の財産権に対する重大な侵害を伴うような行為について、アウトサイダー規制命令を出し得るということは、法の運用の方針として適当でないんじゃないか。それをなじみにくいという表現をされたというふうに私は理解しておるわけでございまして、確かにアウトサイダー規制命令の対象として、個々の事業者に対しまして設備廃棄しろと言うことは、やはり法の精神から見て適当でない。私どもの方は、先ほど来申し上げておりますように、事業者の方で合意をして公正取引が自発性に基づいて認可の申請をした場合に、これはどういうふうに対応するかという問題でございますから、あくまでも受け身の問題でございまして、こちらから指示をするとか、こういう性格のものでございませんから、したがいまして、運用の方針につきましても緩和する余地がある。こういう趣旨で昨年の秋に方針を展開した、こういうことでございます。
  275. 森下昭司

    ○森下昭司君 いやいや、公正取引委員長、この中小企業団体法に基づく商工組合も、またこれ全事業者が集まって合意をするわけであります。その合意に基づきましてまず通産大臣が、その商工組合が提出をいたしました、たとえば合理化計画なり、あるいは安定事業計画というものが妥当かどうかという判断をなさった後に、公正取引委員会がそれを最終的に承認をするという私仕組みになっているというふうに理解をいたしておるわけであります。この場合でもやはり受け身なんです。全部業界の意思を無視して、通産省は勝手に行政指導して、こういうふうにしなさい、ああいうふうにしなさい言うものではないんです。私は、だから問題は運用の問題として財産権の侵害にも当たる重大な問題でありまするから、通産省としては運用として、従来はこのいわゆる設備廃棄という問題についてはアウトサイダー命令を出すことを考えなかった。ただこの団体法の中のいま寄った十七条第一項第四号イの「生産の設備に関する制限」とは廃棄のものも含んでおりますよという回答があればそれなりの一応の私は答弁になると思うのです。そのことを御否定なさるなら、制限という表現——日本語むずかしいのでありますが、独禁法で言う設備の制限と、団体法で言う設備の制限と、どう違うのですかと、こういう質問でありますから、通産省としての見解をこの機会に明らかにしていただければいいということを申し上げたわけであります。  ただ濃野局長のように、所管でありませんからということでありますならば、私は総監督の通産大臣がお見えになるのですから、通産大臣からお答えを願わなくちゃいかぬ。まだそういった細かいこと御存じないというなら御存じないで結構ですよ。大臣がもしお答えになれるならお答えいただきたい。
  276. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 法文解釈の問題でございますので、大臣からお答えをいただくのもいかがという感じがいたします。  第二に、ただいま公取委員長の御答弁にございますように、私も衆議院での長官の答弁は記憶をいたしておりまして、ただいま公取委員長の言われましたように、この設備に関する制限については、従来これに廃棄が含まれるかどうか、明らかにする要するに機会がなかったということ、現実の運用上。しかも、現実の運用上これは明らかにしないままきてしまったというような答弁であったことは記憶しておりますが、法律の解釈で問題でございますので、私からこの席で御答弁申し上げることはひとつ差し控えさしていただきたいと思います。
  277. 森下昭司

    ○森下昭司君 もしも時間があれば中小企業庁上長官に御出席の手配をお願いをいたしたいと、こう思います。
  278. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいま担当の政府委員がすぐ参ります。中小企業の担当政府委員がすぐ参ります。
  279. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで次に、橋口委員長にもう一つお尋ねいたしておきますが、これも柿沢委員の御質問になったことについてのやはりちょっと誤解を与えるんじゃないかと思うのであります。つまりこの指示カルテルができ上がりまして、指示カルテルは公正取引委員会で同意をしたということになりますと、いよいよ実施段階になる。ところが、アウトサイダーがたくさんお見えになる、そこでアウトサイダーに対しまして通産省がこの指示カルテルの、同意を受けた指示カルテルを実施するに当たって、アウトサイダーの皆さんに話し合いで協力を求める、いわば行政指導をするという点について先ほど橋口委員長は、その行政指導そのものは、これは法律違反でも何でもない、説得行為であるというような趣旨の御答弁をなさいましたが、それでいいわけですか。
  280. 橋口收

    政府委員橋口收君) まあ通産御当局なりあるいは通産大臣個々の事業者に対しまして、この程度設備廃棄したらどうかと、こういう話をされること自体は法律に触れるとは申しにくいと思います。これは、たとえば独禁法を大変広く解釈いたしまして、およそ競争制限的な行為になる疑いのあるものは一切いかぬと、こういうふうに解釈をすればそれ自体も問題になり得ると思いますけれども、しかし、あえてそこまで解釈を広げて網にかける必要は私はないと思います。したがいまして、個々の事業者と主務省との間にお話し合いをされて、この程度設備廃棄したらどうかと、じゃ、そういうふうにいたしましょうということをやられる行為自体を、独禁法上問題にするということは私は適当でないと、こういう趣旨柿沢委員にお答えしたのでございます。
  281. 森下昭司

    ○森下昭司君 そうだといたしますと、個々の事業者がこれは複数になる、二以上になる、たとえば五つの仮にアウトサイダーの会社があった。その会社と通産省個々行政指導をして、それぞれA社にはどれだけ廃棄をしてください、どれだけ格納してください、あるいは休止してくださいというような話し合いをする。その結果、五つの社が集まって、こういう話はおれのところにもあった、いやおれのところにもあった、それじゃ、こうこう、こうしましょうかと言って相談をしますと、これは共同行為の範囲に私は入るのではないかと思うんでありますが、その点はどうですか。
  282. 橋口收

    政府委員橋口收君) これも柿沢委員にお答えしたところと同じでございますが、いまおっしゃいましたように、まあ主務省当局が示唆を受けて、当事者が集まって共同行為をいたしますと、これは当然独禁法に触れると、こういうふうに考えております。
  283. 森下昭司

    ○森下昭司君 次の問題といたしまして、私はこの法案が通りまして実際に指示カルテルに基づきまして、設備廃棄が行われるというようなことを前提といたしまして、次の場合、ひとつお尋ねをいたしたいと思うんであります。  たとえば一つ企業内で、古い設備と新しい設備があった場合でしたら、新鋭設備は資本費は食うが、ランニングコストは一番安いわけでありまするから、新鋭のものをフル操業にして、古いものをつぶすことができる、こういう可能性はあるわけです。ところが、古い設備だけ持った企業、新しい設備だけを持った企業という問題になりますと、これはどちらかと言えば、古い設備を持ったところと新しい設備を持ったところが手っ取り早く合併をした方が一番効率的ではないかというふうに思われるわけであります。こうした結果を見てまいりますると、今回のいわゆる指示カルテルを実施をしますれば、当然グループ化あるいは合併という問題は必然的に各業種において起きてくる可能性があるわけであります。そうだといたしますると、独禁法の運用の緩和が今後もとられれば、合併に関する独禁法の運用の緩和等が配慮されれば、私は通産省が最初原案に盛りたいと考えておった、営業権の譲渡でありまするとか合併の問題を、独禁法の適用除外にするという考え方の趣旨と、結果においては全く同じような形になるのではないかと、こう思うんでありますが、いわゆるこの点について、通産当局は指示カルテルを実施する場合に、どういうような事態を御想像なさっているのか、そのことをまず最初にお尋ねいたしたいと思うんです。
  284. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私、ただいま先生の御指摘のようなケースを、指示カルテルの前提として考えますのは大変むずかしいのではないかという感じがございます。むしろ指示カルテルは、もう少し設備を原則的にプロラタで処理をするということにウエートのある業界でございませんと、指示カルテルの内容として大変むずかしい問題になるんではないかと、むしろただいまのような御指摘の問題は、安定基本計画をつくりますときの問題でございまして、安定基本計画の三号にございます、「その他の措置に関する事項」とたしかそういう規定であったと思いましたが、事業転換だけを特記いたしまして、「その他の措置に関する事項」と書いてございますけれども、その中で私どもが予想しておりましたのは、ただいま先生が御指摘のような技術的に一律の設備処理が非常にむずかしいという場合、あるいはいまのように、私、業界の中で大変古い設備、新しい設備を非常に片寄って持った業界というものがいまの現実の姿としてどこまであるか、ちょっと思い当たりませんが、しかしまあいまのような御指摘のような場合に、この設備処理計画、安定基本計画をつくることを契機といたしまして、広い意味での合併、提携というような問題が出てくる可能性はないことはないと考えておりまして、むしろその時点での問題なのではないかと考えております。  第二に、私どもが今回の法案立案の最初の段階におきまして、その広い意味での合併、提携という問題を一つの問題意識にいたしましたのは、業種によりましては、ただいま御指摘のような問題が出てくるということも考えておったわけでございますが、ただその問題と、それから企業の合併提携について、現在の独禁法の運用によって処理をする問題とは、結果において仮に一本になる同じ結果が期待できるといたしましても、やはり法律のたてまえあるいは法律仕組みの問題としてはまた別個の問題ではないかと、こういう感じがいたしております。
  285. 森下昭司

    ○森下昭司君 先ほどもちょっと藤井委員が御指摘なりましたが、たとえば繊維関係ですね、合繊関係でまいりますると、一つのプラントがありまして、このプラントを減産、つまり操業率を低下させるというようなことで設備を制限をしていくというようなことでは、効率的に非常にむだがあると言われているんです。したがって合繊関係におきましては、思い切って一つの工場全体を閉鎖してしまう。つまり設備を格納するか、休止するか、廃棄するかは別にいたしまして、一つの工場全体をもう閉鎖してしまう。そうして一つのプラント当たりの操業率を上げていくということが必要ではないかと。そういうことがいわゆる減量経営にとっては必要だというふうに私は言われているわけであります。こういうような大がかりなと申しまするか、大変大胆な大なたをふるうというようなことは、やはり私は企業のグループ化というよりも、合併という道を必然的にたどらざるを得ないことになるのではないか。  そういたしますと、指示カルテルを実施することは、合併を促進する一つの素材にもなる。まあ局長がいま言われましたように、現実に合併問題が出たときは、その時点で他の法律上、まあ独禁法だと思いますが、そこで判断する以外にありませんよということになりますが、いわゆる指示カルテルを実施して、その指示カルテルを実施しなければ構造不況業種の立ち直りはあり得ないという前提があるわけなんですよ。ボールを受けた公正取引委員会は、むげにと言っちゃ語弊がありますが、むげにこれはだめですと、なかなか切れるものが切れない場合も私は出てくるんじゃないかと思うんです。だから次のいわゆる段階の問題であることはわかりますけれども、結果においては、私は独禁法緩和という結果に通ずるのではないかと思うのでありますが、その点についての公正取引委員会の御見解があれば承りたい。
  286. 橋口收

    政府委員橋口收君) 企業の合併、提携、合同等に対する方針でございますが、これは国際的に見ましても、近年強化の方向にあるのでございまして、まあ日本の公正取引委員会におきましては、合併後の事業分野における占拠率が二五%を超える場合には厳重な審査を行うと、こういう方針をとっておるわけでございます。で、しかしながら、前回の委員会でもお答え申し上げましたように、戦後三十年の日本経済の経過を見ますと、大きな産業構造の転換が進展をしてまいりましたが、その間に企業の再編成とか合併、合同というような、そういう事件があったのでございますが、これも従来から公正取引委員会で持っております方針のもとに対処いたしてまいりまして、そう大きな不都合はなかったと、こういう認識を持っております。  したがいまして、今後予想される構造転換、設備の共同廃棄に伴いまして生ずるであろうある意味での企業の再編成、そういう事態に対しましても、現在の審査の基準のもとにおいて十分対処し得ると、こういうふうに考えておるのでございますが、ただ、いま申し上げましたような合併後の事業分野における占拠率が二五%という基準だけで判断するというのは、これは適当でないというふうに考えておるのでございまして、たとえば代替商品があるかどうか。それから輸入圧力があるかどうか、あるいは衰退産業であるか成長産業であるか、それから国際的な企業規模、企業単位がどうであるか、こういう国際的な観点からの評価も必要になるのでございまして、したがいまして二五%という基準を機械的に適用するということは、これは適当でない。ことに、いまお示しがございましたように今後どういうふうに展開をしてまいりますか確たる展望を持ち得ないのでございますけれども、仮にやはり国際的な企業単位というような観点から、あるいは国際競争力を保持するという観点から、ある程度企業の再編成が必要になります場合には、その事業の実態、業界の性格あるいは国際的な評価というようなものを総合的に勘案いたしまして正しい判断をしたい。一口で申しますならば寛ならず厳ならず、こういう態度で臨みたいというふうに考えております。
  287. 森下昭司

    ○森下昭司君 次に私は、指示カルテルに関しまする若干の問題をひとつお尋ねいたしておきたいと思うわけでありますが、指示カルテルが具体化しますと必然的にカルテルの正当性、それからカルテル不参加企業の不当性というような価値感が一般化してくる。カルテル不参加企業への規制問題、これはアウトサイダー規制ということですね、あるいは企業のカルテル依存体質の言うならば定着を招くというような問題点が二、三指摘をされているわけであります。先ほどもちょっとお話がございましたように、カルテル不参加の企業に対しましては、今後の話し合いを通じて協力を求めていくというようなことが出ているわけでありますが、私はやはりこういった問題が出てまいりますと、いま申し上げたようにカルテル参加企業及び不参加の企業との間における摩擦と申しますか、そういうものが激化する場合も予想される、あるいはまたカルテルに入りました参加企業によりましては、公取委長長は、独禁法は強化される方向で運営をしていく、それは世界の趨勢でもあるというような趣旨のお話がございましたが、一面においてカルテル不参加企業は、こういう意見が指摘しておりまするように、さらにこういう不況時代こそ、カルテルによって過去の経緯から見ましても不況を克服するんだというようなカルテル依存体質の定着を招くという指摘もまた私は妥当ではないかと、かように実は考えるわけであります。  そういうような点から考えてまいりますると、今後の問題といたしましては、やはり一つは安定基本計画で総量を規制する場合、その総量を規制して、さらに企業基本的な競争力を、各企業ごとに割り当てがありますが、そういった問題でありますとか、あるいはまた対象業種の指定が——対象業種の指定というのは第五号のことでありますが、そういった問題が独禁法と無関係な形で政令で行われようとしておったり、指定業種に主要産業が含まれるということになりますれば、統制経済的な何と申しますか、枠組みというものが決定的な方向をたどるのではないか、いろいろとこう実は指示カルテルの問題をめぐりまして多くの意見が出ているわけでありますが、こういった点におきまして私は、最初に指示カルテル自身の運用いかんによっては、統制的な傾向を否定することはでき得ない。したがって私は、指示カルテル等は産業調整政策上からまいりましても、この本法案に含むべきではないという見解を実は述べておいたわけでありますが、いま申し上げたような諸点について、安定基本計画の作成に問題があるといえばそうなると思うのでありますけれども、前提といたしまして安定基本計画ができ上がった後に、指示カルテルの実際の実施の点については私は相当慎重な配慮が必要ではないかと思うのでありますが、それについての御見解があれば承っておきたいと思います。
  288. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私どもこの指示カルテル制度というのは基本計画のできました業種について、その大部分が指示カルテルにいくというようなこと、別の言葉で申し上げますれば、指示カルテルを非常に乱発をするようなことは考えておりません。むしろ指示カルテル制度と申しますものは、過去のこういう基本計画的な計画をつくり、それの最後の実行担保手段という仕組みの問題といたしまして私ども考えたわけでございまして、むしろ指示カルテルはなるべく発動しないと、むしろ四条の事業者の自主的な努力によりまして安定基本計画が達成をされると、こういうことを期待をしているわけでございます。  なお、指示カルテルという言葉が、たびたび私御答弁申し上げておりますが、大変強制的なにおいのする言葉でございますが、私率直に考えまして、指示カルテルを一方的に出したからこれで関係業界の事業者がカルテルを結び、アウトサイダーに指示カルテルの指示発動を説得をするというふうなことには現実の姿はまいりませんで、むしろ安定基本計画を作成し、業界の自主的な努力の様子を見ながら、そのアウトサイダーの動向、そこで説得、話し合い等があって、とてもこの業界はまとまらぬという場合には、むしろこの指示カルテルの指示が発動できぬのじゃないかと、むしろ全体が、アウトサイダーの方も大体方向に沿ってやっていけるという自信を持って、それから指示カルテルということに移っていくのではないかと、現実の姿はむしろそういうふうな形を私は予想をいたしておりまして、繰り返しになりますが、指示カルテルはなるべく発動しないで、四条の自主的な努力によって解決ができる方向に持っていくことが、私どもとしては最上の方法ではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  289. 森下昭司

    ○森下昭司君 次に私は、政令と四つのいわゆる具体的な業種とをお分けになったわけでありますが、私はやはり不況業極というものは、でき得る限り本法案を提出する段階におきましては、構造不況業種として指定できるものは、すべて具体的に私は業種として挙げておく必要があったのではないか。それは公正取引委員会がいつも指摘いたしておりまするように、政令で定めるということになりますると、構造不況業種をどしどし行政権の範囲内で認定すれば事足りる、これは指定を申し入れなくちゃいかぬという問題がありますけれども。そういたしますると、さっきも言ったように、安定基本計画ができる、あるいは指示カルテルができるということになりますれば、独禁法外のところで独禁法的内容を含んだものが一人歩きする危険性なしとも言えないと私思うんであります。特に私は、この前の離職者臨時措置法のときにも、いろいろと不況業種というものはどういうものかという点についての議論があり、また政令で指定すべきものについてそれぞれ労働省が指定をいたしておるわけであります。通産省は非常に限定した考え方に私はお立ちになっているのではないだろうかという感じなきにしもあらずであります。それはたしか離職者臨時措置法からまいりますれば、労働省は二十三の業種を指定したというふうに私記憶をいたしておりますが、もっと多かったかもしれません。第一次は二十三業種だつったと思います。  とすると、本法案は四業種しか指定してありません。五号は政令の問題であります。従来、たとえば中小企業事業転換対策臨時措置法等にも対象になりました合板の問題が出ております。あるいは構造不況業種としてこの本法案が提出される前は、化学肥料でありまするとかあるいはまた農林関係におきましては精糖業も構造不況ではないかということも言われたんです。あるいは綿、スフ、毛紡、段ボール原紙、フェロシリコンというようなものは——段ボール原紙でありまするとか化学肥料でありまするとか、あるいはフェロシリコン等は、通産省自身が構造不況業種に該当するといって御調査までなさっている。こういった業界が具体的に記載されずに五号の政令事項に任されたのはどういうわけなんですか。
  290. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいま先生指摘のように、この法律をつくります際に、できるだけ対象業種を法定をするということも一つ考え方でございました。私どもそれに努めたいと思ったわけでございますが、率直に申し上げまして関係業界の取り組みの態度、あるいは私どものいろんな場での検討の経過等を踏まえまして非常にはっきりとしておりますのが、私ども通産省の所管では一号の平電炉業界、それから二号のアルミ製錬業界、三号の合成繊維製造業界、この三つでございまして、その他につきましては、感触といたしまして、昨年の春以来いろいろなこの面からの検討は進めてまいりましたが、ここに法律として挙げてしまうにはなお検討しなければならぬ問題がございまして、しかも法律はなるべく早く出しまして御審議を仰ぐ必要があるという、この二つの要請の調整をどうするかということで、この五号の規定を設けまして、そのかわりこの指定の期間は、ずるずると持っていくのではなしに、第二条の第六項で、結局一年以内に決めるということにいたしました。そこの調整と申しますか、これを図ったわけでございまして、基本的には、はっきりしたものはなるべく法定すべきだと私どもも率直に考えております。  それから第二の問題といたしまして、ただいまいろいろな業界の名前をお挙げになりました。私も何回かこの席で御答弁を申し上げておりますが、この五号の規定をこのまま読みますと、抽象的に読みますと、あるいはそれ以外にもいろんな対象業種たり得るものはあるかもしれませんが、私どもの検討してまいりましたところでは、この法案作成の段階で、一応対象として考えられる念頭に挙がった業種は、肥料、フェロアロイ、フェロシリコン、あるいは農林省所管でございますれば精糖業、合板等幾つかの業種が挙がってまいりましたので、いろんな点を勘案しまして、この五号は、恐らくそういう業種が対象となり得るのではないかと、こう考えて御答弁申し上げてきた次第でございます。
  291. 森下昭司

    ○森下昭司君 公正取引委員会委員長は、構造不況認定の要件が、設備が過剰で経営が不安定なものという表現になっているか、この要件は緩やか過ぎると、さらに法律によらず、政令で認定するのはおかしいという判断だということが新聞の報道に記されているのでありますが、この見解からまいりますと、私は、本法の第二条一項の第五号というのは、相当問題が残るのではないかと思うのでありますが、公正取引委員会委員長の御見解があれば承りたいと存じます。
  292. 橋口收

    政府委員橋口收君) この法案を契機として、日本経済の寡占的な体質がますます進むのではないかという先生の御指摘ないし御心配でございますが、その点はまことにごもっともでございまして、法案の政府部内における調整の際には、私どもいろいろ意見を申し上げましたのは、やはりそういう点に対する配慮からでございまして、いま通産御当局から御答弁がございましたように、政令指定業種につきましては、一年以内という期間を限っております。それから、法案につきましても五年ということで、臨時立法ということで期間を限定するという考え方も入っておりますし、それから、いま先生がお挙げになりました問題につきましては、たとえば第二条の一項第五号のおしまいの方でございますが、「その事態を克服することが国民経済の健全な発展を図るため必要であると認められるもの」、国民経済的な観点というものを導入をいたしております。  それから、第五条の中におきましても、単に事業者の相当部分の事業の継続が困難になるという場合だけではなくて、「国民経済の健全な発展に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めるとき」という国民経済的な観点を入れておるのでございまして、単に個々の業界とか、個々の事業者の経営の不安定ということだけで問題を処理するのは適当でないという考え方が法案の中に生かされているというふうに私は考えております。
  293. 森下昭司

    ○森下昭司君 国民経済の健全な発展を図る、これは私どもと、いろいろと各党は国民経済の概念について、また健全な発展の具体的な考え方について相当隔たりのあることは事実であります。そのことをいまここで論じようとは私は存じません。したがって私は、公正取引委員会委員長に期待をいたしたいのは、こうしたいわゆる趣旨というものを体して言うならば、十分ひとつこの特定不況産業の政令指定によりまして、独禁法外の事実上の一人歩きが行われないように厳重な私はやはり何と申しますか、立場に立った今後も行政上の措置が必要ではないかというふうに考えているわけでありますが、ここでひとつ現在の構造不況産業と称せられておりまする各業界の不況カルテルの実施状況につきまして、お示しを願いたいと思います。
  294. 妹尾明

    政府委員(妹尾明君) 独禁法に基づきます不況カルテルの実施状況でございますが、今次の不況におきまして、昭和四十九年以降合計十一品目について独禁法上の不況カルテルが実施されております。現在実施中のものは七品目でございますが、この十一品目のうち、いわゆる構造不況業種と目されている業種を御紹介いたしますと、小形棒鋼、それから短繊維紡績糸、梳毛糸、合成繊維、塩化ビニール樹脂、外装用ライナー、中芯原紙、大体この辺がいわゆる構造不況業種と言われている業種ではないかと思います。
  295. 森下昭司

    ○森下昭司君 まあ合板なんかは、これはもう不況カルテルが何回も何回も実施をされて、実は漫性化しておる。小形棒鋼自身も、これはもう昭和五十年九月から行われてきたわけでありまするから、相当不況カルテルが漫性化しておるというふうに私どもは思うわけであります。こういうように不況カルテルが漫性化している現状というものは、私はやはり非常に憂慮すべき事態にはなっているのでありますが、一応不況業種として指定されていない業態、たとえばいまお話があったような外装用ライナーの問題でありまするとか、いろんなものをいま言われましたけれども、こういう不況業種として出されておらないのにかかわらず、不況カルテルが漫性化しておるというような問題については、私は、やはりこれは不況業種として第五号の指定を受けるように通産省は指導する考え方があるのかどうか、そのことを一つお尋ねいたしておきます。
  296. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいま公正取引委員会からお話のありました、四十九年以降長期にわたって不況カルテルの行われている業種をながめてみますと、大体短繊維紡績糸、それから塩ビ樹脂、それからただいま御指摘の段ボール原紙等につきましても、この法案の対象とすべく何と申しますか、検討をそれぞれの場で行っておる業種でございます。
  297. 森下昭司

    ○森下昭司君 それでは、ひとつ各業態別に実態について御質問をいたしたいと思います。  まず最初に、アルミ製錬業でありますが、現在、いわゆる構造不況業種法案の対象になりまするアルミ製錬会社は何社ありますか。
  298. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) 現在正確に申しますと七社ということになりますが、一つは営業が同じでございますので、実質上六社という形になります。
  299. 森下昭司

    ○森下昭司君 このいわゆる六社によりまして、日本のアルミ製錬関係は一〇〇%のシェアを持っているというふうにいわれておりますが、これは間違いありませんか。
  300. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) 国産分については、一〇〇%のシェアを持っております。
  301. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで稼働率の問題について若干お尋ねいたしますが、通産省の調査によりましても、稼働率が五十年度が六八・三、五十一年度六四・二、五十二年度は不況だ不況だといわれながら七二・五と稼働率が上がっておるわけであります。これはどうして稼働率が上がったのですか。
  302. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) 五十二年度につきましては、ことしの上期につきましては相当程度需要が堅調であろうという予測もございまして、各社やや増産に入ったわけでございますが、遺憾ながら上期以降において落ちてしまいましたけれども、アルミニウムの製錬——操業上の特殊性といたしまして、一遍通電いたしました炉というのは急激に、ほかの装置産業と違って落とすわけにはまいりませんので、稼働率が上がったままというかっこうになったと思います。
  303. 森下昭司

    ○森下昭司君 そうすると製品は滞貨しているという理解でいいですか。
  304. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) 現在二月末で約三カ月程度の在庫を抱えております。
  305. 森下昭司

    ○森下昭司君 この調査によりましても経常利益は四十九年に十五億円程度の赤字でありましたが、五十年百三十億円、五十一年三百十億円、五十二年三百六十二億円と、経営が悪化の一途をたどりつつある。これはアルミ製錬というのは、前回はちょっと端的な表現をいたしましたが、電力多消費型産業と言われておりまするために、電気料金の値上げによりましてコストに占める料金の原価の割合は非常に高いということが一つの問題点として指摘をされているわけでありますが、現在アルミ地金を製錬するに当たって、電気料金はコストの何%程度を占めているのですか。
  306. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) 現在のところ約三十数%でございます。ただし、電気料金ではございますけれども、九電力からの買電というかっこうではない面もございます。
  307. 森下昭司

    ○森下昭司君 それは八割程度が自家発電でありまするし、あるいは共同発電の電気を受電しておるということは承知しておるんです。したがって問題は、やっぱり九電力で買おうと買うまいと、石油の原価が高いのですから、当然高くなるということになると思いますが、そのことはいいです。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕  そこで、いまお話がありましたような三十数%というような高コストで、今後このいわゆる世界の製錬会社と国際的に競争することができるかどうか、この点についてはどうお考えですか。
  308. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) 御指摘のように、三〇%強をエネルギーコストで占めております現状におきましては、海外との競争力がまるっきりないと……現状ではございません。
  309. 森下昭司

    ○森下昭司君 将来はどう思われますか。たとえば、何年後にはこのコストで対抗できるとお考えですか。
  310. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) 産業構造審議会でいろいろ先々の議論もしていただきましたけれども、約五年程度たちました段階におきましては、エネルギーコストはまだ格差がございますけれども、今後の世界的な需要増を賄うために新設されるであろう工場は、建設費負担が非常に高くなってまいりますということから、わが国のアルミニウム製錬業もある程度のいろいろな施策を伴えば競争力ができるであろうという御答申をいただいた次第でございます。
  311. 森下昭司

    ○森下昭司君 その答申は非常に私実は見通しの甘いものだというふうに理解をいたしている一人でありますが、私は、たとえばこの本法案によりまして将来指示カルテルができるか、あるいは会社の自主的な努力によって設備の制限が、廃棄等が行われるというふうになりましても、この電力料金のコストに占める割合からまいりますると、国際競争力を回復することはなかなか至難な問題ではないだろうかというふうに実は考えているわけであります。  問題は、一つには世界の有名な各アルミ製錬会社が非常に日本の、いわゆる何と申しますか、現状とほど違って相当高収益を上げていると、こういう実態等を見てまいりますと、ただ単に設備廃棄だけでは不況の克服をする、五年後には、審議会からそういう答申をもらったと言われただけでは、いささか私納得しがたいような実は感じを持っているのでありまして、問題は、電気料金問題等について何らかの対策を示す必要があるのではないだろうかと、こう思うのでありますが、その点についてはどうですか。
  312. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) 御指摘のように、エネルギー問題となりますと、電気料金というよりもむしろ共同火力に対する石油価格の引き下げということを伴いませんとエネルギーコストは安くなってまいりません。しかしながら、現時点におきましてOPEC等の値上げその他がございまして、現行の体制の中で油の価格を引き下げろということは非常にむずかしいのではないかと私は考えております。
  313. 森下昭司

    ○森下昭司君 それに共同火力発電をどこの会社もほとんどと言っていいほどみんな経営が非常に圧迫されておりまして、赤字の会社が多いというふうな状況からいたしますと、なかなか私はむずかしい問題だと思うんでありますけれども、これは、やはり私は政府がこういった国際競争力をつけさせるという観点からまいりますれば、その共同電力等に対する油価格についてはやはり特別な措置をしていく、あるいは油価格を安く入れる——バーター取引ではありませんが、製品の一部を石油供給国にたとえば安く提供するとかいうような方法などを考えていけば、ある程度の打開策があるのではないかと思うのでありますが、こういったネックの解決について大臣としてはどうお考えですか。
  314. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) アルミのコストに電力が非常に大きなウエートを占めておるということは、これはもういま御指摘のとおりでございますが、しかし、本委員会でたびたび議論になっておりますように、アルミ製錬会社は電力会社から必要電力量の約二割強しか買っていない。あとは共同発電、自家発電ということになっておりますので、電力会社の電力料金問題だけではもちろん問題は解決できません。ただ、将来に対して非常に大きな期待を持てることば、アルミ業界の需要はいまは世界的に停滞をしておりますけれども、相当大きく伸びるのではないか。日本の場合でも現在の設備は百六十万トンでありまして、今度約その四分の一の四十万トン凍結するという考え方でございますが、これは数年後を考えました場合に相当大きく伸びるのではないかと、このように私どもは理解をしております。であればこそ、他の業種と違いまして、設備廃棄してしまわないでこれは凍結していこう、置いておこうこういう考え方でございます。  一方、最近の設備投資に必要な資金等を見ますと、非常に高騰しつつございまして、これも大変な金額になりつつあります。だから、新規に需要がふえまして、そうしてそれに対応するための設備をつくるということは、これはもう大変なことでございます。新設工場でつくるコストは、金利償却等を入れますと相当高いものになるわけであります。そこらあたりを背景といたしまして、いま課長が答申のことを説明したわけでございまして、私は若干の時間をかければ、アルミ業界も日本で十分立ち直ることが可能であるというように理解をいたします。
  315. 森下昭司

    ○森下昭司君 電力料金の問題だけでは解決しない、もっともな話であります。それはもう一面はアルミ地金の輸入問題をどうするかという問題がまた一つあります。現在までの輸入の実績ですね、ここ数年間どういうような形になっているのか、それをちょっとお尋ねをします。
  316. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) 四十九年から申し上げますと、四十九年度の輸入が三十四万九千トン、五十年度三十五万八千トン、五十一年度四十二万六千トン、今年度の見込みでは、まだ確定はいたしておりませんが、約四十三万トン程度になろうかと思います。
  317. 森下昭司

    ○森下昭司君 四十五年が二十万トンでありますから、ことしは四十三万トンということになりますると、ここ七年間で約倍増したというような数字になってくるわけでありまして、私は後ほどこのアルミ地金輸入の問題等についてやはりちょっとお尋ねをしておきたいと思うわけでありますが、そこで、なぜこの日本のアルミ製錬会社だけが経常利益を上げずに経営が苦しいのか、たとえば北米のアルミ製錬会社はいずれも大幅な増収、増益になっております。たとえばアルコア社あるいはアルキャン社などの経営状況、私自身も数字を持って参りましたが、これは相当の大幅な増収、増益ですね。たとえばアルキャン社はこれはもう純利益で前年比にいたしまして何と三五六%というような増益になっております。あるいはアルコア社はこれまた三六%というような非常に増収、増益の結果が昨年度の決算から出ているわけであります。あるいはフランスのペシネー社に至りましては、純利益は、前年の三千三百万ドルから八千八百万ドルというふうに純利益が増益でありまするし、あるいは豪州のコマルコ社もことし五千万ドルでありましたが、前年に比較いたしますと六四%の増益になっておる、こういう数字が具体的に出ているわけであります。  なぜ日本のアルミ製錬業だけが構造不況の状況に陥ったのか、将来的には構造審議会等で審議されましたように、五年後にはかなり国際競争力を回復できますよということを言っておりますが、現状からいたしますれば、このアルミ製錬業は構造不況にならざるを得なかったことが解明できなければ五年後に期待をつなぐということはあり得ないわけなんであります。でありまするから、いま申し上げたフランスや豪州や北米のアルミ製錬会社に比較いたしますと、日本の製錬会社が非常に不況に陥っているその理由は何にあるのか、それをひとつ具体的にお答えいただきたいと思います。
  318. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) 御指摘のとおり、海外の各社は総じて史上空前と言われるほどの高収益を上げておるのは確かでございます。ただ一つ、アルキャン社が昨年度に比べまして相当な増益をなした、と申しますのは、アルキャンが渇水等で一昨年非常に不利益といいますか、利益が上がらなかったというものもあるかと思いますが、海外の各社全体としてはやはり相当程度の増収増益となっております。こういったことを考えますと、一つはこれら各社が垂直統合と申しますか、川上から川下まで——アルキャンを除きますと全部川下まで支配いたしておりまして、したがいまして製品段階までのコスト配分というものをある程度自由にやりながら、そこの価格競争を適当にやっているということでございます。しかも、アメリカの景気の回復等もございまして、アルミ自体の下流といいますか、製品への需要、それから価格等が非常にわりに割り高でございますので、各社が増益というかっこうになっているかと思います。  日本の場合と比べますと、やはり日本は川上だけでございますのと、それからもう一つ、最近特に収益率がもう一つ変わってまいりましたのは、自己資本比率が日本の場合には非常に低うございまして、ほとんど金利負担が世界の各社と大幅に違う、もちろんエネルギーコストも違いますが、金利負担が非常に大きいというところが、やはりこれら海外各社と日本との場合の大きな格差の一つになっておるかと思います。
  319. 森下昭司

    ○森下昭司君 大変私不満足な答弁だと思うんであります。たとえば、私が先ほど申し上げましたように、アルミ地金の輸入の問題も一つの問題点であります。それから電力料金の問題も一つの問題点であります。私はやはり北米なり豪州なりフランスの電気料金なり、その国のアルミ地金の輸入の状況等々から判断をいたしまして、日本が不利な状態に陥っているのではないだろうかというような感じを持っているわけであります。川上から川下、日本は川上の方へ——どういうことを具体的におっしゃっているのか、専門家でない私らはわかりません。わかりませんが、私はただ単に自己資本率が低い、金利負担が大きい。それも理由になることは当然だと思うんでありますが、そんな私は単純な問題ではない。もっと言葉をかえて言えば、総合的貿易政策と申しますか、総合的経済政策と申しますか、そういう立場に立って私はアルミ製錬業というものをながめてみませんと、ただ単に視野の狭い、と言うと非常に語弊がございますけれども、構造不況だから何とかしなければいかぬというような立場だけでこの問題が解決するものではないということだけは指摘することができるわけであります。  そこで、先ほどからお話がありましたように、産業構造審議会のアルミ部会の中間答申で、いわゆる適正規模が百二十五万トン体制を確立する、現有設備三十九万トンの効率的な凍結処理を五年間実施する必要がある、だが単にこの三十九万トンの設備の効率的な凍結処理だけによっていま申し上げたように構造不況を私は克服することは非常にむずかしいというふうに考えているわけであります。したがって、たとえばこのアルミ地金の輸入問題と関連をいたしまして、たとえば関税割り当て制度というものを実施する、あるいは関税の引き下げ分の金を、これを生かして製錬業の不況を克服するというようないろんなことが実は考えられているわけであります。当面私はこのTQ制と言われる関税割り当て制度というものを実施してやってみたらどうだろうと思うのでありますが、この点についてはどうお考えですか。
  320. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) 関税割り当て制度につきましては今年度から実施、四月一日から実施されておりまして、輸入割り当てを受けた方は三・五%関税が安くなりまして現在五・五%でお入れいただくということになっております。現在手続を行っておりまして、割り当て票の交付が近日中に行われる予定でございますが、三・五%を構造改善促進協会に積んでいただきまして、アルミニウム製錬業に交付するわけでございますが、構造改善協会も昨年度中、三月中に設立総会を終わりまして、いま各輸入者からのあるいは需要者からのお金の納付をいただくという準備は全部できております。したがいまして、諸手続がまだ最初でございますが、少し時間がかかるかと思いますが、第一回の製練業界に対するお金の交付と申しますのは六月中にはできるのではないかと思っております。
  321. 森下昭司

    ○森下昭司君 この産業構造改善促進協会にいま申されたように三・五%の拠出をして、これは何か設備凍結の際の利子の補給に充当するというふうに聞いておりますが、そういたしますと本法案が成立いたしました後に、安定基本計画とか指示カルテルを行うかどうかは別にいたしまして、信用基金から金が出される、設備を凍結する、その場合に協会は一定部分の利子を補給する、そういう趣旨として理解してよろしいのですか。
  322. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) そのとおりでございます。
  323. 森下昭司

    ○森下昭司君 それで私は、この製錬のコストが先ほどから申し上げたように改善をされない、そしてこの円高相場が続くというような状態が続いてまいりますと、抜本対策とは本法案だけではこれは言いがたいということは先ほどからいろいろ指摘した点で御理解をいただけると思うわけであります。そこで、たとえばある会社の会長は一社統合というようなアルミ製錬業の国有化をすべきではないかというような主張をなさっておりまするし、またある会社の社長さんはこれを支持しながらも、さらに二つか三つの社に統合すべきではないかというような話が業界でちらほら出ている。これに対しまして通産当局は、二、三社の統合ならばこれは独禁法上も通るのではないか、一社国有化ということになりますれば、これは問題が起こるわけでありまして、いろいろ問題が出るわけでありますが、二社の合併という点については相当乗り気だというふうに業界では伝えられているわけでありますが、このアルミ製錬業の今後の五カ年間の構造審議会アルミ部会中間答申に基づく設備の凍結処理の問題と関連して、国際競争力を回復できるという前提に立って現行のアルミ製錬業の体制でいいのか、あるいは数社統合が好ましいと考えているのか、将来の問題についてお答えをいただきたいと思います。これは大臣から。——大臣だよ、委員長。こういう重要な問題は大臣が答えなければおかしいじゃないですか。
  324. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) まだ現在、先ほど申しましたように六社あると申しましたけれども、これの構造改善計画といったものは各社いま委員からお話がございましたように、一社あるいは数社といったようにまだ意見がまちまちということもございますし、具体的にそれではどういったことをやって、二、三社にした場合のどういう機能を持たすかということはまだ検討中でございまして、何が最適かということについての結論が出ていない段階でございます。私どもむしろ事務レベルといたしましては、そういった問題を業界と一緒になって検討しているという段階でございます。
  325. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) アルミ業界の問題は、一つは関税割り当て制度という新しい制度、この問題があるわけでありますが、問題を議論をいたします場合に、輸入問題等もありますから、現行程度のものでいいのかどうか、こういう問題もひとつ検討をする必要があろうと思うんです。もう少しこれを将来強化するということを検討してみる必要はないかと、こういう問題でございます。  それから、やはりこれはもうずうっと前から懸案になっておったのでございますが、垂直統合、こういう問題がございます。外国でもこういうふうな例が多いわけでございますが、こういう問題もあろうかと思います。それから業界の集約化、こういう問題もあります。これらはいずれも今後さらに私どもはよく研究してみなきゃならぬ課題だと思っております。対策幾つかあろうと思います。
  326. 森下昭司

    ○森下昭司君 ただ問題は、この価格の維持、つまり独禁法の立場で申し上げますれば生産費を上回る販売価格ということになるわけでありますが、価格の維持という点で言うならば、高い販売価格になりますれば、私は相当、先ほどもちょっとお尋ねいたしましたように、ユーザーがそんな日本のアルミ製錬会社から商い地金を買わなくても、輸入に依存して輸入のアルミ地金を購入すればいいじゃないかというような現象を起こしかねないのではないだろうかという感じがいたしておるわけであります。思い出してみますれば、あの石油ショックのときに、言うならば石油の値上がりを理由にいたしまして、わずか四十八年の十二月に一カ月間に二回にわたって合計たしかトン当たり九万五千円という値上げをおやりになったわけであります。これは未曽有の高いアルミ地金で販売をされた。ある会社の社長なんかは翌年の一月の記者会見で、アルミ製錬会社は余り値上げし過ぎたよと、トン当たり一万円も余分に取り過ぎたなんという放談かあるいは失言かは存じませんが新聞で報道されるという始末がある。このときたしかアルミ地金はトン当たり三十万五千円という高値を呼んだわけです。  もういまは、私からもう説明するまでもなくそのような状況は見る影もないわけなんです。そしていわゆる円高で一ドルについて十円値上がりをいたしますと地金の輸入価格は一万円値下げになる、事実上値下げになる。したがって、いま二百二十八円程度、きょうも二百二十八円程度だと思うのでありますが、二百九十円、三百円時代に比べれば少なくとも七十円円は高くなっている。この計算で参りますると、過去の輸入地金と国内価格とを考えてまいりますと、輸入地金が円高によって値下げをすれば国内の地金もまたこれによって値下げをせざるを得ない、円高によって輸入地金が値下げになれば国内価格も値下げになってくる、国内産も値下げになる、そういうようなことで、七十円の円高によって国内のアルミ製錬業は約七百七十億円程度の事実上の損害を受けたのではないかというようなことが実は言われているわけであります。こういうようなことになりますれば、幾ら私は二社や三社統合して構造不況業種として設備を凍結するにいたしましても、輸入規制問題——関税割り当て制度になったのは一つ進歩でありまするけれども、もっと輸入規制問題を明確にしなければ、私は日本のアルミ製錬業は、そんな構造審議会のアルミ部会の中間答申で言うように、五年後国際競争力を持って立ち向かえるというような事態には立ち至らないのではないかというふうに思うのでありますが、その占についてはどうですか。
  327. 原木雄介

    説明員(原木雄介君) 御指摘の点が幾つかございますので、私から順番にお答え申し上げたいと思います。  いまユーザーが全部輸入で賄おうというようなことを思っているかと申しますと、必ずしも、価格的には輸入に頼りたいというのはございますけれども、世界の貿易量と申しますのが年間三百万そこそこでございまして、わが国が買っておりますのがそのうちの一割強でございまして、そういった意味で、日本がこの日本の国内製錬を全部つぶしてしまいまして、それを輸入に頼れるかというと、これは頼れないというのは全部知っております。ただ、やはりユーザー同士の競争がございますので、輸入を欲しがるという点はございますけれども、日本が買いあされば世界の値段も上がるであろうということもございますので、輸入については適正な量を入れていただければいいということも一つの発想でございまして、ある程度は割り高でも国産の物を買っていくということになっておりまして、その具体的な方法その他についてはいろいろまだ検討中でございますけれども、ユーザー業界を含めた検討会といったものを持っております。  それからもう一つ指摘ございました円高によります値下げ、価格の低下といった問題の対応ぶりについてもございますけれども、円高で相当価格、三十万を割ったような輸入価格が現実にございます。国産のコストとは相当程度乖離があるのは確かでございますけれども、とにかくもうけもしないけれども、資金が回るという状態までにはどうすればいいかといったようなことを発想していきますと、いろんな方法があろうかと。その辺をねらっておるわけでございまして、そのためにただ、いまの五社あるいは六社となりますと在庫の圧迫がございまして、やはりただでさえ赤字のところに、また安売り競争をしている気配もございます。そういったものとそれから体質改善というものを考えますと、ある程度の統合といったものが効果を奏するというようにも考えられまして、いろいろと検討を重ねている次第でございます。
  328. 森下昭司

    ○森下昭司君 自由貿易の担い手としてあるいは旗手として握っておりますアメリカまたEC諸国が、なりふり構わない輸入制限対策をとっている。これは日本の自動車にいたしましても鉄鋼にいたしましても、あるいはテレビという現状をお考え願えますればすぐ理解できることと思っております。わが国も自由貿易という立場をおとりになっていることは理解をいたしますが、こういったいわゆるアメリカやEC諸国の、言うならば輸入制限対策等を考えますと、私はいま輸入されたアルミ地金が日本の国内需要のもう三〇%を超えようとしておる、いままさに超えつつあるというような現在からまいりますれば、私はさらに一段と輸入規制の強化というものが必要ではないかということをこの機会に指摘をしておきたいと思うのであります。——  大変公取委員長申しわけございません。それじゃいま中小企業庁長官見えなりましたので。長官には質問通告がございませんでしたが、質問のやりとりの際にどうしても答弁が必要になりましたので……。  簡単に申し上げますと、お聞きになったと思いますが、中小企業団体の組織に関する法律の商工組合の要するに共同行為、その中の「生産の設備に関する制限」ということと独禁法の中の「設備の制限」と解釈は同じかということを実はお尋ねいたしているわけであります。中小企業団体法の中の設備の制限というものは、廃棄処分を含まないなら含まない、含むなら含むというふうに、私はいわゆる中小企業団体法で言う設備の制限とは具体的に、先ほど柿沢委員の御質問に登録とか格納とかという御答弁がございましたが、廃棄というものが含まれているのかどうか、そのことをまず最初にお尋ねいたします。
  329. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 先ほどの答弁、舌足らずで申しわけございませんでした。ただ、一言でお答えするにはちょっと複雑でございますから多少お時間をちょうだいいたしたいと思いますが、いまお話ございましたとおり、団体法の中に設備の制限という規定がございます。これを実際にどういうふうに運用してきたかと申しますと、先ほどお答えいたしましたように、設備の登録それから設備の封印、操業の短縮、設備の新設制限、大体この四つの態様をもって運用してきたというのが実績でございます。ただ、「生産の設備に関する制限」という字句自体を単純に素直に読みますと、もっと広い解釈が当然あり得るのではないかということが言えるだろうという気がいたします。ただ、そうは申しましてもこれを背景にしまして仮に設備廃棄に関するアウトサイダー命令を出すというようなことになりますと、これは私有財産を侵害するということになりまして、恐らくは補償の問題というのが法律的に用意をされていなければ発動しにくい規定なのではないかというふうに感じておるところでございます。したがって解釈の問題は別としまして、運用の問題としてアウトサイダー命令を設備廃棄について行うということはなじまないのではないかという旨を先ほどお答えを申し上げたわけでございます。  そういたしますと、さらに話をさかのぼりまして、アウトサイダー命令は出せないけれども、業界団体の共同行為というような形でやることは果たして可能であるかどうかという点が問題になってまいります。一つの解釈としまして、設備廃棄に関する共同行為もこの法律でできるんだというふうな解釈をとり、しかし、アウトサイダー命令は出せない、こういう解釈をとれば一つ説明なり得るだろうという気がいたします。ただこれについては、次のような反論がございまして、実はその問題で私どももいろいろ議論を交わしているというのが実情でございます。と申しますのは、アウトサイダー命令を出しますときには、組合の調整規程をアウトサイダーも従うようにしろという形で発動されるわけでございまして、そうなりますと、アウトサイダー命令も出せないような調整規程というものを用意していいんだろうかどうだろうかという点が問題になるかと思ったわけでございます。しかし実際問題としては、すでに御承知のとおり中小企業団体がいろいろもう設備廃棄の問題に取り組んでおります。五十二年度で五業種、五十三年度で七業種計画を進められております。これらの現実に進められております計画は、実は協同組合の共同施設という形で行われておるわけでございます。したがいまして、先ほどの問題、解釈上いろいろ問題があり得るだろうというふうに思いながら、この問題について統一的な解釈を行わないままに今日に至ったというのが率直な経緯でございます。その辺ひとつお含み置きいただきたいと思います。
  330. 森下昭司

    ○森下昭司君 そうしますと、中小企業庁としては、中小企業団体法の中の「設備の制限」という項目に廃棄処分まで含むかどうかという解釈上の問題については結論を得ていないと、まだ最終的な煮詰めをしていないということで、運用上としてはいま財産権の侵害とか補償の問題とか、あるいはまたアウトサイダーに対する命令は出せないとか、共同行為としては可能かどうかとか、いろんな運用の点で今日まで判断をしてやってきたんだということ、私、そういうふうに理解をいたしたわけであります。  そうだといたしますと、私さっきもちょっと、日本語のむずかしさですが、団体法の「生産の設備に関する制限」ということと、独禁法の「設備の制限」ということと、内容が違うんじゃないだろうか。公取委員長ははっきりと先日の委員会から、設備の制限の中に設備廃棄処分も含まれるんだと、これは何もいま新しい解釈ではなくって、昭和二十八年に独禁法の改正案が施行されて以来、そういう見解を持ってきておる。ただ運用上、そのことを直ちに実施することの妥当性の問題があったから今日までは差し控えていたんだというような、実は御答弁があるわけであります。この点私、ちょっと若干やはり同じ法律用語でありますので、中小企業庁の長官の言われる実態論としては、そういうことは実は理解をすることにやぶさかではございませんけれども、その前段として、私はさらに、通産省が過去行政指導なさっているときに、なぜ設備廃棄処分という問題にまで触れて行政指導をなさらないのですかという実は質問があるのです。  それにつきましては濃野局長から、過去はやはりそういったことをしてこなかったんだというお話があったんで、その辺法律的な見解として、やや独禁法の関係と違うような感じは受けますので、煮詰めていないということであれば仕方がないと思うんでありますが、もう一度ひとつその点についてお考え方をお尋ねしておきたいと思うのであります。
  331. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 私先ほど申し上げましたように、解釈論としては設備の制限というのはすべてを、設備廃棄も含んで解釈するという解釈、十分成り立ち得る、しかし運用の問題としてアウトサイダー命令だけができないのか、あるいは運用の問題として設備廃棄の共同事業も慎むと、こういうようなやり方でやるのかどうか、この辺が一つの問題になってくるんじゃないかというふうに思うわけでございます。これは協同組合法あるいは団体法それ自身も大変長い歴史を持った法律でございますし、それなり運用の経過というものがございまして、法律ごとにやはりそれぞれの背景があるんじゃないかという気がいたします。したがって、法律が違った場合に、同じ用語は同じに解釈しなければならないと必ずしも言えない面もあろうかと思いますが、やはりその辺少しでも混乱を少なくするようにということで、研究せよというのが御趣旨だろうと思いますので、私どももその辺の解釈についてもう一度詰めさしていただきたいと思います。
  332. 森下昭司

    ○森下昭司君 いままでこういった問題について通産と公取は御相談なさったことがありますか。できれば公取の方からひとつ。
  333. 橋口收

    政府委員橋口收君) 先ほど来お答え申し上げておりますように、解釈は解釈といたしまして、昭和二十八年に不況カルテルの制度が導入されまして以来、公正取引委員会も制限的な運用方針をとっておったのもこれまた事実でございますから、昨年の秋にこの運用方針につきまして修正を加えます場合に、通産御当局とも御相談をいたしまして、運用の問題、法律解釈の問題等について御相談をし続けてまいったのでございます。しかしながら、いま中小企業庁長官からお答えがございましたように問題を詰めてまいりますと、やはり法のたてまえが違うというところに突き当たるわけでございまして、私どもの方は中小企業団体法のようないわば障害がないということでございますし、また、法律を広範に解釈するということの方が時代の要請にマッチしていると、こういうことで、いわば障害がないと、つまりそういうふうに運用しても差し支えないと、そういう見地に到達したのでございまして、いまお話のございました同じ文言を違った解釈しているのかというふうにお詰めいただきますと大変困るのでございますけれども、やはり法律の解釈は解釈として、方針は方針、こういうことで、法のたてまえはそれに基づいて対処してまいったのでございまして、私はそれなりに妥当性を持っておるのではないかというふうに考えております。
  334. 森下昭司

    ○森下昭司君 時間の関係もございますので、この問題はまた次の機会に譲るといたしまして、私といたしましては、やはり法律というものが、いまお話がございましたように、法律の目的、趣旨等が違っておりましても、やはり同じ文言が使われておれば、その概念というものは同じように概念を持つべきではないだろうかという素朴な気持ちを持っておりますので、そういった点を申し上げてこの問題は打ち切りたいと思います。公取けっこうです。  それから次、私、小形棒鋼問題に関連いたしまして、具体的な問題を一つお尋ねいたしたいと思います。  資本金一億一千万円、従業員二百名、年間売上高九十億円のいわば典型的な中堅会社と言われました南部製鋼、これは現在どうなっているのですか。まず、そのことをお尋ねいたします。
  335. 堺司

    説明員(堺司君) お答えを申し上げます。  いまお話のございました南部製鋼は、昭和五十二年の五月に東京地裁に対しまして商法に基づき会社整理の申し立てを行いまして、七月に全従業員の解雇通告を行って、八月に同社の労組から会社及び三菱商事に対しまして——大口債権者でございますけれども、三菱商事に対しまして地位保全と給与支払いの仮処分申請を千葉及び浦和地裁に行った。これはそれぞれ工場がございますので、工場関連の地裁に仮処分申請を行ったわけでございます。その後、十二月に三者の間で和解が成立いたしまして、生産再開に踏み切ることになりました。会社は、ことしの二月一日、会社整理の申し立てを取り下げまして、自主的に整理に移行することになっております。この自主的な会社整理及び生産再開については、三月の四日に債権者総会の承認を得まして、現在船橋工場において小形棒鋼の生産が行われていると聞いております。一方、川口工場は閉鎖いたしました。  以上でございます。
  336. 森下昭司

    ○森下昭司君 この結果従業員はどの程度解雇されましたか。
  337. 堺司

    説明員(堺司君) 正確な数字は私ども承知いたしておりませんが、解雇いたしました従業員の相当数は再雇用したというふうに聞いております。
  338. 森下昭司

    ○森下昭司君 いやいや、私はあらかじめちゃんと南部製鋼の問題についてお尋ねしますよと予告してあるわけでありまして、先ほどもどなたかからの、委員の御発言がございましたように、構造不況業種の対象になるような会社の実態が具体的に答えられないということは、私は実態認識論の上から言ってみても非常に疑問を持つものです。当然川口工場が閉鎖になれば従業員は解雇されているんですよ。解雇された数はわからぬが、どっかに再雇用されている。じゃ、再雇用された先言ってください。そういう御答弁なさるんなら再雇用、何名、どこへ行ったんですか。そういう、あんた、つまらぬ答弁するなよ、本当に。
  339. 堺司

    説明員(堺司君) 昨年の七月に従業員九十八名の解雇通告をいたしましたけれども、従業員の総数は会社の整理申請時には百八十六名というふうに聞いておりまして、その解雇通告をいたしました全従業員について通告を撤回したというふうに聞いております。
  340. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで問題は、いま経過がございましたが、実は会社更生法との関係について、この問題をめぐりまして若干のやりとりがあったわけでありますので、その点をちょっとお尋ねしておきたいと思うわけであります。  問題は、そういういまお答えになりましたような経過をたどってきたわけでありますが、実際問題といたしまして、いわゆる会社整理の申し立ては当時主力の取引商社でありまする三菱商事の指示に従って会社が行ったと伝えられているわけであります。したがって、労働組合が地位保全の裁判に訴えたという問題が一つ残るわけであります。  ところが会社顧問の紺野という弁護士は、言うならば、会社整理による申し立てでは会社の再建はおぼつかない。いわゆる金融機関等の利子をたな上げしたりすることのできる会社更生法に基づいて会社の再建を図るべきであるという考え方を実は持っていたわけであります。これに対しまして言うならば、天谷基礎産業局長は、要するに構造不況業種といわれておりまするその業種の会社は、会社更生法で更生を申請することはおかしい。会社更生法で更生を開始を決定するかどうかは、これは裁判所が決定することである、という前提をお出しになっているのでありますが、好ましいこととは思わないという見解を述べているんです。この見解はどう思われますか。
  341. 堺司

    説明員(堺司君) 天谷局長構造不況業種については、会社更生法の申請、申し立てをするのは適当でないということをおっしゃったということは事実でないと思っております。
  342. 森下昭司

    ○森下昭司君 これは何だったら後で、公式なこういう場でありますので私も問題があると思いまするから、これは日本経済新聞社が「倒産」という題目で連載物をつくったレポートなんですよ。そのレポートの中にちゃんと書いてあるんです。したがって、まあ天谷さんがどういう記者にどう語ったかは存じません。しかし、この日本経済新聞社が編さんをし、日本経済新聞社の記者が書いた記事の中に明確に出ていることは、これは私は否定でき得ない事実であります。そこで、そういうことがあり得ないとおっしゃるならば、天谷さんの議論はこうだと思うんです。つまり構造不況業種でありますから、まあどういうことになるかは別ですよ。三百三十万トンも需給ギャップがあるんですから、これからどんどんどんどん小形棒鋼の電気炉や平炉は廃棄処分にしていこうというような、その廃棄処分にしようとするのに倒産の会社が出た、つまり会社整理、倒産ですね、その倒産から会社が会社更生法で再建をしようとする。つまりつぶれるならそれでいいじゃないか、手間が省けて。何も会社更生法を適用してまで再建させないでいいじゃないか、端的に私はそういうことを指しているんじゃないかと思うんですよ。これは中小企業庁長官さっきも言われた、私は個人の財産権に対する侵害じゃないですか、こういうのは。  私はそこでお尋ねいたしますが、構造不況業種の倒産あるいは倒産寸前で会社更生法の適用を受ける会社が出た場合に、通産当局としてはそういった会社更生法を受けることが妥当だとお考えになっているのか、そうでないとお考えになっているのか、この見解をお尋ねいたします。
  343. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 一般論として申し上げます。  会社更生法は、まだ更生の見込みのある会社につきまして、いわゆる会社更生の手続を踏むことによって、関係債権者あるいは雇用の安定というようないろんな観点から、その会社が再び立ち直ることを認める一つの手続でございまして、それはそれなりの私は意味があると申しますか、そう思っておりますから、構造不況業種に属するがゆえに会社更生法の手続をとるのはおかしいという議論は私どもとしてもとるべき筋道ではないと、こういうふうに考えております。
  344. 森下昭司

    ○森下昭司君 そういたしますと、たとえばこの設備廃棄などの安定基本計画が決まったその段階で、AならAという会社が会社更生法の申請をしたというような場合でも、やはり一応会社の再建と申しますか、そういったものについては通産省としては会社自体が努力なさることは当然ではないかという見解、そしてその後にこのいわゆる設備廃棄処分等を含めた制限を行う場合に当たって、その会社の設備が制限、つまり廃止等を受ける場合が出たといたしましても会社更生法の適用を受けることは当然ではないかという見解でいいですか。
  345. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 御案内のように、会社更生法の手続に入りますに当たりましては、いわゆる裁判所のこれは決定と申しますか事項でございますが、更生法の規定によりまして主務大臣の意見を求める、あるいは詳細私条文忘れましたが、更生計画案につきまして主務大臣は意見を申し述べられるというのが更生法の中の規定であったと記憶しております。したがいまして、先ほど私、が申し上げましたのは、一般論として構造不況業種に属するがゆえに、いわゆる会社更生法の適用を受けることによって非常に大幅な金利の軽減を受けて総体的に有利な地位になるというメリットがあるがゆえに更生法の手続をとるべきでないと、こういう意味で私申し上げたわけでございまして、具体的にはただいまの御指摘のこのケース、あるいは私ども耳にしておりますのには、その他の業種におきましても関係業界の中から同様な意見が出て、そういう意見が私どものところにもきておるということも承知をいたしております。したがって、個々のケースになりますと、先ほど私が申し上げたその会社の今後の再建の方向あるいは債権者の保護、それからそこに働いておる労働者の雇用の安定という観点、それからその関係業界の中全体でのその会社のウエートなりそういうものを判断して通産省としての意見を申し述べる、こういうことで対処をしていくのが私どもの立場ではないか、かように考えております。
  346. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで、先へ問題を進めますが、次に雇用問題若干お尋ねしておきたいと思うわけであります。  最初に労働省にお尋ねをいたしますが、この構造不況業種と言われておりまする事業に従事しておりまする従事員、労働者ですか、製造業全体の中では大体何万人と御想定になっているのか、そういうことをます。
  347. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) 構造不況業種のとらえ方がいろいろあると思いますが、私たちの方では先ほど先生からもお話ございました特定不況業種離職者臨時措置法の対象業種として現在三十二業種を指定しておりますが、その対象従業員者数は約百四十五万人というふうにとらえております。
  348. 森下昭司

    ○森下昭司君 ここに通産省の方でお調べになった数字がございますが、構造不況業種は、昭和五十一年末で百九十七万人という数字が出ておりますが、むしろ私は先ほど質問の中で、構造不況業種として対象がたった四つしか出てないじゃないか、あとは五号で指定するだけだ、政令で定めるだけだと、離職者臨時措置法の方は二十三と申し上げましたが、いま聞きましたら三十二でしたが、むしろ不況構造業種としての指定は多い方だという点を申し上げたんですが、通産省が少ない不況構造業種を指定なさっているにもかかわらず、百九十七万、労働省が百四十五万というお話でございますが、これは年数の取り方の違いがありまして、多少の差はあってもいいですけれども、こんなに違うのはどうかと、五十万人も違うのはどうかと思うんでありまして、通産省の百九十七万と計算されましたまずその内容を聞きたいと思います。
  349. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私どもただいま御指摘のございました百九十七万という数字の計算の根拠等について若干御説明を申し上げます。  私どもがここで構造不況業種として取り上げました対象業種は、繊維産業、これは化繊も含みます。それから平電炉、それから化学肥料、それからアルミの製錬と圧延、それから塩ビ樹脂、段ボール原紙。当省所管で大きく分類いたしまして六業種でございます。それに造船業の数字を加えまして、これら業種における従業員者数を——若干私ども通産省限りの推計が入っておりますが、と申しますのは、化学工業等はかなり複合生産の工場でございますので、そういう意味での推計を入れております。以上七業種考えまして、これの数字を足したものでございます。そして四十九年末に二百七万、五十一年末に百九十七万、こういう数字を出しております。
  350. 森下昭司

    ○森下昭司君 製造業全体で一千一百二十万と実は五十一年末出ているのでありますが、総理府の労働力調査報告書によりましても、五十一年は一千三百四十五万人と出ているんです、製造業は。ですから、通産の数字は、非常に私はとり方が、何を基礎にしておとりになっているか理解しがたいんです。総理府の労働力調査というのは毎月ちゃんと出るわけであります。五十一年の平均が一千三百四十五万人です、一千一百二十万人ですが、どうしてこんなに違うんですか。
  351. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 手元の積算の根拠の詳細のデータでございませんので、早速調べまして御説明申し上げます。
  352. 森下昭司

    ○森下昭司君 これは安武委員の午前中の造船質問ではありませんが、やはり私は構造不況業種に対するこういう法案審議するときに、衆議院修正されて、雇用安定問題、雇用問題というものが非常にクローズアップされている、そのときに、こういう基礎的な数字について通産省の認識が政府の統計発表と著しく違っているというような認識は、私は雇用問題について、おれのところは所管外だというような気持ちが働いてこんな結果になったのではないか。これは全く私は雇用安定問題軽視と言わざるを得ないのでありまして、まことに遺憾なことだと言わざるを得ません。したがって後ほど私は数字の問題については、積算根拠等をお示しをひとついただきたいと思うのでありますが、いずれにいたしましても、まず通産省の統計によりますれば、構造不況業種は四十九年末で二百七万人、五十一年末で百九十七万人ですから、約十万人いわゆる解雇あるいは希望退職、出向というようなことで構造不況業種に働く従業員が減っているわけであります。  これはいわゆる減少率からまいりますれば四・八%、非構造不況業種は二%ですから、これはすなわち構造不況業種は二倍以上の言うならば減少になっている。これは通産省の数字ですからあるいは労働省の数字と若干違うかと思いますが、これはパーセンテージが仮に違ったといたしましても、数字の取り方が違うわけでありますからここでは問題にいたしません。しかし、構造不況業種が非常に雇用について不安定な状況にあるということは、指摘することができると思うのであります。現に衆議院商工委員会における参考人として出席をされました鉄鋼労連の千葉書記次長は、いわゆる平電炉業界における状況について、昭和五十年六月から五十三年一月までに全員解雇が六件、一千八十三人、希望退職募集によって退職をした者が二十八件、三千八百八十八人、合計四千九百七十一人の人々が職場を離れざるを得なかった。平電炉は全体での雇用調整の総数が同じ期間において下請関係も含めて一万一千人に上ると推定されている。五十年四月現在の在籍労働者数が四万五千人に対し、実に四人に一人が離職を余儀なくされているという状態であるというのであります。大変私は深刻な状況であると思います。  そこで、安恒委員もきょう午前中質問いたしましたが、衆議院修正によりまして第三条第二項第三号で「雇用の安定を図るための措置を含む。」とか、あるいは五項で安定基本計画は、当該特定不況産業に属する事業者の雇用する労働者の雇用の安定について十分な考慮を払わなければならないとか、あるいは十条についても雇用の安定を図る点等がそれぞれ修正をされているわけでありますが、これで一体、先日もお聞きいたしましたように、設備廃棄という職場を縮小する内容を持つこの法案によって、こういった修正が行われたといたしましても、雇用の安定を図るということは訓示規定等の性格からいたしまして私は非常にむずかしいというように考えているのでありますが、労働省といたしましてこういうような、言うならば離職者に対しましてはどのように今後おやりになろうとするのか。午前中、離職者臨時措置法に基づいて云々という御説明がございましたが、私はやはり離職者臨時措置法対策のみでは不十分ではないだろうかという感じがいたしますので、改めてお尋ねをいたしておきたいと思います。
  353. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします  非常に厳しい雇用情勢にあるわけでございますが、この法律と午前中お答えしましたように連結しまして離職者臨時措置法、それから安定資金制度等の活用を図ってまいることはもちろんでございますが、そのほか失業予防その他につきましては、関係各省と十分連絡をとりながら、たとえば公共事業その他に関連しましては関係閣僚会議、それから雇用問題につきましての関係閣僚会議等によりまして、たとえば造船につきましては、いろんな仕事をふやす面での需要の喚起のための対策等を進めていただくというようなことで施策を行いますとともに、雇用安定資金制度を活用して失業予防をまず図ってまいりたい。それから、失業を余儀なくされた者に対しましては、雇用保険制度を積極的に活用することによりまして失業給付の延長その他を図りますとともに、さらには関係各省と緊密な連絡のもとに今後の成長産業や不足職種に対する的確な情報を把握しまして、これに対応した職業訓練体制の整備、また機動的な助成を図ってまいりたい。さらには公共事業におきます吸収率制度の適用とか、それから先ほどもお話申し上げましたが、中高年齢者を雇い入れる事業主に対する助成措置の活用等によりまして、民間の活力を生かした雇用機会の拡大に努めてまいりたいというふうに思っているわけでございまして、今後とも雇用対策に十分配慮して施策を進めてまいりたいというふうに思っているわけでございます。
  354. 森下昭司

    ○森下昭司君 あえて私が鉄鋼労連の参考人内容説明いたしましたのは、たとえば小形棒鋼の業界が、中小企業団体法に基づきまして、現在共同行為が行われている。その中小企業団体法によりますと、第二十六条で「従業員に対する配慮」という規定がございます。この内容は、「商工組合の組合員は、調整規程に従いその事業活動を制限するに当っては、その従業員に不利益を及ぼぼすことがないように努めなければならない。」こういう二十六条の「従業員に対する配慮」という規定がありながら、四人に一人というような大変深刻な離職者が小形棒鋼の業界において行われてきたという事実を指摘をすれば、本法案の修正になった雇用安定——ただいまもいろいろと御説明がございましたが、そういうものがいかに空文化されつつあるのが現在の実態ではないかという点を私はこの機会に指摘をし、通産当局及び労働省当局の今後の善処を期待をいたしておきたいと思うわけであります。  そこで最後に私、時間の関係で御質問一ついたしておきたいと思うのでありますが、最近のいわゆる労働力の情勢の問題についてであります。いわば、雇用労働者が全体として減少し、そして所定外時間労働、要するに超過勤務ですね、超過勤務が増大をし、かつ一時石油ショック直後、言うならばパートタイマー的な臨時労働力というものが減少しつつありましたが、最近は再びパートタイマー等家事の傍らの従業者の数が増加が目立ってきていると言われております。五十二年四月−六月の三月間に限定して考えましても、前年に比べまして三十四万人増の最近最高の七百万人のパートタイマー等家事の傍らの従業者数があると言われております。こういうような状況を考えてまいりますと、言うならば雇用の創出という点、雇用安定という観点からながめたときに、私は余り好ましい現象ではない。労働者の常用者が減って、労働者一人当たりの生産費が高まってきておるということも統計上指摘をされているわけでありますが、労働者の一人当たりの生産指数が高まることの是非はともかくといたしまして、こうしたパートタイマー的な臨時労働力によって企業が生産を維持しようとしたり、あるいは人間を減らして超過勤務によって生産を拡大しようというやり方は、今日の労働事情からいたしまして私は逆行するような感じなきにしもあらずであります。こういうような労働事情の情勢といたしまして、私は指摘いたしましたことについて、労働省としての見解があれば承っておきたいと思います。
  355. 白井晋太郎

    説明員白井晋太郎君) お答えいたします。  雇用者数全体につきましては、年平均で必ずしも減少はいたしておりませんが、中身を見ますと、いま先生指摘のような点もございまして、一つは製造業、第二次産業で減っておりまして、第三次産業でふえているという点がございます。それから、従来の景気変動期におきましては、景気回復に向かいまして求人の先取りと申しますか、求人の増加があったわけでございますが、長期にわたる先行き不安その他から、必ずしも求人が伸びてないという面と、もう一つはいま御指摘の超過勤務の時間でそれに対処している。それから日雇い、臨時は、実数自体としては横ばいでございますが、ふえてきているというような状況ございます。中身を見ますと、女子の労働力がふえているというような関係もございますが、その点につきましては、いろいろと労働時間その他の点での議論もあるところでございますが、常用労働者が伸びるように、それにはいずれにしましても、景気が回復して七%成長が達成されるということが目標でございますが、そういうことで常用労働者の常用化が進むということが望ましいというふうに労働省としても思っております。
  356. 森下昭司

    ○森下昭司君 いまお話になりました点、私案は理解をいたすわけでありますが、しかし、たとえば昭和四十五年と四十八年の平均を対比いたしますれば、日本の労働力人口は約百七十万人増加をしております。四十八年と五十一年に比べますれば増加はわずかに五十二万人にすぎません。一方、十五歳以上の人口は四十八年から五十一年の間に約三百万人ふえているにもかかわらず、失業者を含めた労働力人口がふえないのでそのまま非労働力人口の増加につながっていると見るしかないと思います。こういう潜在的な労働力というものが、労働市場におきまして需給を緩和させる要因と私はなっていると思うのでありまして、言葉を変えて言えば、このいわゆる数字の実態は中高年齢層がいかに就業の機会を失しているかという数字になってあらわれていると思うのであります。  したがって、私は今回の法案にあたりまして、雇用の安定という、しかもその設備廃棄に伴って職場を去らざるを得ない人は中高年齢層が多いのではないだろうかという点等を考慮いたしますと、雇用の安定というものもまた深刻な状況下に相なっているという点を指摘したいのであります。  さらに製造業は四十五年から四十八年の間に六十五万人増加したけれども、逆に四十八年から五十一年にかけましては九十八万人の減少を示しているのであります。つまり、いわゆる全体としての就業者数は停滞しつつある、製造業や大企業における雇用の絶対量は減少に向かっているということをこの数字は物語っているのであります。したがって、失業が表面化しないと申し上げましても、雇用内容が悪化をし、低い労働条件の不安定な雇用が増加をしているということを、この数字は物語っているというふうに私は指摘せざるを得ないのであります。  こういう点を十分ひとつ労働省通産当局も念頭に置かれまして、本法案の雇用の安定の問題についてそれぞれ具体的な施策を講ぜられるよう希望いたしまして、私の質問を終わります。
  357. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 他に御発言がなければ、本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  358. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 連合審査に関する件についてお諮りいたします。  特定不況産業安定臨時措置法案について、社会労働委員会、農林水産委員会及び運輸委員会からの連合審査会開会の申し入れを受諾することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  359. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十八分散会      —————・—————