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1978-04-20 第84回国会 参議院 商工委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十日(木曜日)    午前十時三十六分開会     —————————————    委員の異動  四月十九日     辞任         補欠選任      市川 正一君     沓脱タケ子君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         楠  正俊君     理 事                 大谷藤之助君                 福岡日出麿君                 対馬 孝且君                 安武 洋子君     委 員                 岩崎 純三君                 下条進一郎君                 中村 啓一君                 真鍋 賢二君                 大塚  喬君                 小柳  勇君                 森下 昭司君                 安恒 良一君                 馬場  富君                 峯山 昭範君                 藤井 恒男君                 柿沢 弘治君    国務大臣        通商産業大臣   河本 敏夫君    政府委員        公正取引委員会        委員長      橋口  收君        公正取引委員会        事務局経済部長  妹尾  明君        経済企画庁綜合        計画局長     喜多村治雄君        通商産業大臣官        房長       宮本 四郎君        通商産業大臣官        房審議官     島田 春樹君        通商産業省産業        政策局長     濃野  滋君        通商産業省基礎        産業局長     天谷 直弘君        通商産業省生活        産業局長     藤原 一郎君        中小企業庁長官  岸田 文武君        中小企業庁次長  児玉 清隆君        中小企業庁計画        部長       小松 国男君        運輸省船舶局長  謝敷 宗登君        労働大臣官房審        議官       谷口 隆志君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    説明員        大蔵省関税局国        際第一課長    野崎 正剛君        林野庁林政部林        産課長      輪湖 元彦君        通商産業省通商        政策局国際経済        部通商関税課長  宇田川治宣君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○特定不況産業安定臨時措置法案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  特定不況産業安定臨時措置法案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 安恒良一

    安恒良一君 まず最初に、本法対象になる業種の数でありますが、本法では法定業種が明確にされておりますが、残りは政令で定めることを予定しております。ですから、政令で定められる、予定をされておる業種は幾つあるのか。衆議院審議過程等では九つぐらいだろうと、こういうことがされておりますが、まず最初にどういう業種予定をしているのか、このことをひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  4. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 本法対象となります指定業種、これは二段階になっておりますが、ただいまの御質問の御趣旨を一号から四号までの法定業種のほかに、五号によりまして、まず第一段階政令指定をいたします候補業種に何を考えておるかと、こういう御質問というふうに理解をいたしまして御答弁申し上げますが、私ども、この法律対象になります五号の業種につきましては、法律ができました後に、いろんな観点から考えまして、この要件に該当する業種を選びたいと考えておりますが、その際には、御案内のように審議会意見も聞く、こういうことになっております。  ただ、法案作成過程におきまして、私ども一応部内におきまして検討をした際に念頭に置きまして、いわば候補業種として考えましたものはどんなものがあるかということを申し上げますが、一つは、いわゆる化学肥料業種、それから二番目は、綿、スフ、合繊あるいは羊毛といったような繊維関係紡績業、それからフェロシリコン、それから段ボール原紙、それから塩ビ樹脂等、私ども通産省所管業種としては大体そういうものを頭に置いて考えております。  そのほかに、農林省所管業種といたしまして、合板あるいは精糖業というようなものも対象業種たり得るのではないか。なお、運輸省所管業種といたしましては、船舶用の機関でございますとか、あるいは船舶用品、こういった業種がこの五号の対象業種候補たり得るのではないかと、こういう考え方でございます。
  5. 安恒良一

    安恒良一君 これからの御答弁は通産省中心でありますが、いま言われたように、運輸省農林省等関係がありますから、それぞれ関係局長も御出席いただいていると思いますから、所管事項についてはそれぞれ所管省の方でひとつお答えをお願いをしておきたいと思います。  この法案を準備されるに当たって、いわゆる第二条の一項五号の規定に基づいて考えられるものがいま明らかにされました。その中で、たとえば、いま言われなかったものの中でゴム履物ですね、ゴム履物についてはどういうふうにお考えなんでしょうか。
  6. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) ゴム履物産業につきましては先だっての御質疑にもございましたわけでございますが、近隣諸国の追い上げといいますか、韓国等からの輸入もございまして非常にむずかしい、業界としては困難な事態に陥っておりまして、そういう意味合いからある意味で構造的な問題を抱えている業界であるということは言えようかと思います。したがいまして、条件が整いますれば、この法律によってということが考えられるわけでございますが、実はゴム履物業界、大きな大企業に属するものと中小企業に属するものと相当バラエティーに富んだ業界でございまして、その業界内部で一致して、本法目的といたしますような設備処理というふうなことで意見の一致を見て申請がありますればわれわれとしては受けて立ちまして、この法律にございます条件に合うかどうかということを勘案いたしまして対処いたしたいと、このように考えておるわけでございます。
  7. 安恒良一

    安恒良一君 私は、ゴム履物もいわゆる本法目的とされているところにこれは合致をするものだと、こういうふうに考えておりますが、いずれこれは後で個々業界問題は御質問することにいたしまして、次に、この法案の性格について少し御質問をしたいんであります。  これは法案目的、第一条においても明らかにされておりますが、特定不況産業に対する過剰設備処理について、特定対策をとろうとするものである。でありますから、それがゆえに私はいわゆる個々産業が循環的な不況ではなく、過剰生産能力が長期にわたって継続することが見込まれている、こういうことが一つの大きな判断の基準になっているというふうに考えるわけであります。そこで、これは大臣にもお聞きしたいんでありますが、しからば、過剰能力があるからそれを廃棄したからといって、本当にこの法案によって不況からいま挙げられたような業種が脱出できるんだろうか、どうだろうか。それからいま一つは、衆議院においても「目的」の第一条にさらに雇用の安定ということが追加されたわけでありますが、不況から脱出することが中心目標ではなくして、雇用安定を行い、そして国民生活国民経済の健全な発展を期すると、こういうふうに明確にこの目的でなっているわけでありますが、本当に設備廃棄することによって目的一つであります雇用安定にどれだけ有効な期待ができるだろうか。それはなぜかというと、いわゆる私は過剰能力廃棄だけじゃなくして、その他の諸般の政策の併存がなくしてはなかなか効力は上がらないと思われる産業もかなりこの中にはあるというふうに考えられます。  そこで、まず大臣に以上の前提を置きまして、大臣といたしましてはこの特定不況産業安定臨時措置法によって構造不況業種を安定させる確信をお持ちなのかどうか、この点についてまず大臣に承りたいと思います。
  8. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 私も御意見に賛成でございまして、設備廃棄をしたからといってすべてが解決できるものではございません。しかしながら、いわゆる構造不況業種共通をいたしております不況最大原因は何ぞやと言いますと、これは設備の過剰であると、こういうことが言えると思うんです。業界によって違いますけれども、ある業界によっては二割、三割の過剰があり、またある業界によっては六割、七割という過剰が存在をしておる。この過剰設備廃棄するということがやはり共通最大の課題である、このように理解をいたしておりますが、これだけでは問題が解決しない。やはり他にもいろいろ工夫が必要である、このように思います。
  9. 安恒良一

    安恒良一君 そこで、これは各担当の方々にお聞きをしたいのですが、いま挙げられました私はこの構造不況業種というものについて、大臣共通しているのは設備の過剰なんだ。だからまずそれを除くことだと、こういうふうに言われていますが、私は、構造不況業種に追い詰められた原因はいろいろあると思うのですね。設備だけではないと思います。  そこで、いま当初ここで書いてある四つの業種、それからあといわゆる二条の第一項第五号に基づいて追加されるであろうと予定されている業種、こういう問題について、ひとつ通産省運輸省、それから農林省等々から構造不況に追い込まれた原因について御説明お願いをしたい。
  10. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 所管構造不況業種について逐次申し上げます。  第一番目が平電炉でございますけれども、平電炉につきましては、おおむね昭和四十五年くらいから企業家先行き需要につきまして強気になりまして、非常に積極的な設備投資を行ってまいったわけでございます。で、昭和四十八年、例のあの過剰流動性のときでございますが、小棒の不足、小棒をよこせというような全建総連の大デモが行われたりいたしまして小棒の価格がトン十万円に暴騰するというような事態が起こりました。このときには、産業構造審議会等でも小棒の先行き需要につきましてかなり大きい見通しをいたしておったわけでございます。したがいまして、この平電炉設備投資昭和五十年くらいまで大体年間百万トンを超すようなそういう能力拡張が行われてきたわけでございますが、ところが、例のオイルショック以後昭和四十九年までまだ小棒の需要は強かったんでございますが、五十年から急速に冷え込みまして、現段階におきましては六百万トン程度過剰設備を有するに至ったということでございます。  したがいまして平電炉の場合、構造不況に至りましたところの大きな原因は、設備投資段階におきまして企業経営者先行きについて非常に強気であったところ、昭和五十年度以降この予想に反しまして景気が急速に冷却し、需要が急速に落ち込みましたために、大きな需給ギャップが生じたということ、これが平電炉の場合には最大構造不況原因であるというふうに考えられます。  それから、次がアルミ製錬業でございますが、アルミ製錬業につきましては、これは石油危機以前におきましては日本アルミ製錬業は余り行政の対象にならないで企業が自由な判断のもとに経営をし、それでおおむねうまく動いてきた産業でございました。で、石油危機以前におきましては日本アルミニウム産業が使用いたしておりました電力コストはおおむねキロワットアワー当たり三円程度でございまして、若干国際競争上問題はございましたけれども、なおそれで輸入に一応対抗し得る程度競争力を持っておったわけでございます。ところが、昭和四十八年のオイルショックによりまして石油価格が四倍にも暴騰をいたしました。諸外国アルミ産業におきましては使用電力のうち水力割合が非常に大きいわけでございます。あるいは石炭そして石油に頼る割合が比較的少ないのでございますが、日本の場合はアルミ電力のソースといたしましては、水力割合は一けた程度でございまして、大部分を石油による火力発電依存をいたしておるわけでございます。したがいまして、現段階におきましては電力価格が九円近くに上がってしまっておる。これに対しまして諸外国におきましては、ばらつきがございますが、安いところでは一円、高いところでも五円というようなことでございまして、アルミニウム電気かん詰めと言われておるのでございますが、その電力コストにおきまして内外に著しい差が生じました。その結果、安い地金の輸入がふえておりまして、そこで過剰設備ができたわけでございます。  したがいまして、アルミニウムの場合の構造不況原因は、第一番目には内外電力コストに著しい格差が生じたこと、第二番目には輸入が増大いたしまして過剰設備発生したことというのがアルミニウム製錬業の構造不況の主たる原因であるというふうに考えられます。  第三番目が化学肥料工業でございますが、化学肥料石油危機以前におきましてはきわめて有力な輸出産業でございまして、生産のおおむね六、七割が輸出をされておったわけでございます。しかも、その輸出もまた六、七割が中国向け輸出をされておるというような、そういう特殊の需要構造を持った産業でございました。ところが、石油危機発生をいたしまして、この肥料製造の主たる原料としてナフサを使っているわけでございますが、このナフサ価格が御承知のとおり著しく高騰をいたしました。他方、アメリカあるいは中近東あたりでつくっております肥料原材料は、天然ガスに主として依存をいたしておるわけでございますが、この天然ガス価格というのはナフサと比べまして著しく低い。日本ナフサ価格は世界的に見て著しく高い。こういうような状況でございまして、主要原材料コストに関しまして国際競争力が著しく落ちたわけでございます。第二番目に中国、インドネシア、インド等々、こういうような従来の大きな輸出先におきまして、肥料国産化する動きが着々と進んでおるわけでございます。たとえば中国ではアンモニア千トンプラントが十三基建設中であるというようなこと等でございまして、輸出先で次第に国産化を進めるものでございますから、輸入需要が減る。  したがいまして肥料の場合は、構造不況原因は、大きく言えば一つ日本ナフサ価格ナフサコストが国際的に見て不利になったこと。第二番目には輸出先におきまして肥料国産化計画が進行していること。したがいまして肥料輸出が急激に落ち込みまして、そこで大きな過剰設備が出てきたということ。大体この三つが肥料構造不況原因であるというふうに考えられます。  以上が私の関係業種の御説明でございますが、あとまだこの法定以外の分も申し上げた方がよろしいんでございましょうか、フェロシリコン塩ビ等々。
  11. 安恒良一

    安恒良一君 どうぞ言ってください。
  12. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) フェロシリコンその他のフェロアロイ産業がやはり非常な不況に陥っているわけでございますが、この場合の不況最大原因は、フェロシリコン製造に当たりまして電気炉を使うわけでございますが、電気炉電力価格がさきのアルミニウムの場合と同様、高騰をいたしましたためにフェロシリコン製造コストが急騰をしてしまったということ、そのために今度は国際競争力がだんだん低くなりまして、南ア連邦等からの輸入が増大をしてきておるということ。したがいまして、原因といたしましてはアルミニウムと大体同じような原因によりまして不況に直面をしているわけでございます。  次が塩化ビニール樹脂製造業でございますけれども、これにつきましては石油危機以前におきまして非常に強気の需要見通しに基づいて設備を拡張いたしまして、特にこの業界におきましては十八社企業がございまして非常な過当競争を行ったわけでございます。ところが、石油危機によりましてまずナフサの値段が上昇し、ナフサからつくるところのエチレン価格高騰をいたしました。御承知のとおり塩ビ主要原料エチレン及び塩素でございます。このエチレン及び塩素のうちエチレン価格は、ナフサ価格上昇に伴いましてエチレン価格高騰をいたしました。他方塩素でございますけれども塩素は御承知のとおり塩水を電気分解してつくるものでございますが、これは昭和四十八年以前におきましては水銀法による苛性ソーダ製造法によって、そこから出てきたものでございます。ところが四十八年十一月に、水銀等汚染対策推進会議の決定によりまして苛性ソーダ製法転換というような問題が起こりました。水銀法から非水銀法への製法転換という問題が起こりまして、そのために約三千億円の投資が行われたわけでございます。その結果、新しい設備がつくられたわけでございますが、その過程におきまして非常に多くの過剰設備発生をいたしました。しかも新規設備投資を行いましたために設備コストが署しく高い。そこで、そこから出てくるところの塩素苛性ソーダコスト価格上昇するという問題が起こったわけでございます。  そこで塩ビにつきましてはコスト上昇が非常に目立ったわけでございますが、他方需要の方は石油危機以後、塩ビ等に対しまして消費者あるいはユーザーがこれを節約するという気風が顕著になったわけでございます。たとえば塩ビフィルム等でございましても、従来たとえば〇・一ミリの厚さであったものを〇・〇八ミリにするということをやりますと、直ちに二割需要が減少するというようなことになるわけでございます。そういうわけで石油危機以後、特に不況過程を通じまして需要は著しく落ちてしまう。他方、強気の見通しでつくった設備は過大になる、コスト上昇する、こういうようなことが塩ビ産業不況の大きな原因であるかと思われます。  アルミニウム圧延業、これにつきましては、過剰設備存在最大原因かと思われます。過剰設備存在しておりまして不況にあえいでいるわけでございますが、他方アルミ圧延品の主たるユーザー自動車産業あるいは家電産業等非常に強い産業でございます。好況産業でございます。ところが、市場におきましてはこういう好況産業の方が強い価格交渉力を持っておるのに対しまして、アルミ圧延業の方は価格交渉力が著しく弱いために買いたたかれると。大きな過剰設備存在と、他方市場におけるバーゲニングパワーの不足ということが、アルミ圧延業不況の主たる原因であるというふうに考えられます。  私の所管のところの構造不況あるいは構造不況的産業原因はおおむね以上のごとくでございます。
  13. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) 私の所管しております産業の中で、構造不況業種と大体言われておりますものの構造不況原因について概略御説明申し上げます。  主たるものは繊維産業でございまして、法律案に掲示されておりますものは合成繊維産業でございますが、短繊維紡績業あるいは羊毛紡績業を含めまして繊維産業全体として構造不況業種というふうに私どもは考えねばならぬだろうというふうに思っております。  繊維産業全体としての今日の構造不況に至りました原因と申しますと、大まかに申しまして第一には、やはり繊維産業が全体として日本輸出の大宗になっておりましたところの輸出産業であったと、それが輸出産業としては非常に不利な状態に立ち至ったということが一点であろうかと思います。  それから第二点といたしましては、今日の構造不況になりました大きな原因といたしましては、天然繊維産業に対しまして合成繊維産業というものが急速な発達を示しまして、天然繊維合成繊維代替率といいますか、合成繊維をやっている方から言いますとどんどん合成繊維天然繊維を食っていくであろうというふうな需要見通しを立てますし、天然繊維の方から見ますとそれほどでもなかろうというふうなことになりますから、どうしても過大な需要というものを期待をするような状態が基本的にあるわけでございます。そこへもってきまして、従来からの歴史的な原因といたしまして、日本繊維産業の特徴といたしまして、いわゆる川上、川中、川下という構造がございまして、繊維産業自体が横断的に切られておりまして、それが輸出産業という性質とも絡みまして、きわめて国際的な景気変動と絡みまして市況産業的色彩を非常に帯びておる、いわゆる市況を目当てに生産をするということで、実需と必ずしもマッチしないところの生産が行われる体質にあるというところに繊維産業の非常に他産業と違った特質があるわけでございます。  したがいまして、仮需生産というものが行われがちであるというところからどうしても設備が過大になってくるという傾向があるわけでございます。それが特に国際的な景気変動と関連して動くということになりますので、従来からとかく設備が過大になる傾向が常にあったということでございます。ところが、最近に至りますと、日本繊維産業国際競争力といいますものがやはり非常に落ちてまいりまして、天然繊維について見ますと、ほとんど輸出というものがネグリジブルな数字にまで落ちてまいっております。合成繊維だけは装置産業であります関係もありまして、なお輸出が全生産の五割以上を占めておるわけでございますけれども、その辺に輸出というものがなくなって、むしろある部面では輸入も迎え入れざるを得ないということになりまして、基本的な過剰設備というものが発生してまいります。これを何とかして新しい繊維産業の構築をする必要があるというところに、いま繊維産業構造問題の基本的問題があると存じます。  そういうものを踏まえまして、繊維工業審議会におきまして今後の繊維産業はどうあるべきかというふうなことが一年がかりで審議をされまして、一昨年の暮れに一応繊維工業審議会答申——提言ということで一応の結論が出されておるわけでございますが、これの骨子となりますところは、いま申し上げましたような横断的な産業構造を改めまして、縦断的な縦型の構造改善をして実需にマッチした繊維産業を構成すべきであると、こういう結論でございまして、国内の多様化いたしました繊維需要に対して対応できるような繊維産業に再編成すべきである、こういう結論でございます。したがいまして、そのためにはいわば前さばきとして過剰な設備処理するということが必要になってきておるわけでございます。当時、なおその過程におきましては、合成繊維につきましては設備過剰はないというふうな強気の考え方も多かったわけでございますが、やはり原料問題あるいは輸出面におきます国際競争力問題等を考えますと、現状ではそういうふうな繊維産業の再建を考えます際にやはり設備過剰分処理せざるを得ないだろう、こういう結論になっておるわけでございます。そういうふうなことで、繊維は全体といたしまして、綿も毛も合繊もあわせましてバランスのとれたスタイルをとる必要がございますので、そういう意味合いから適切な過剰設備処理というものが必要になってきておる、こういうことでございます。  それから、段ボール関係でございますが、段ボール原紙につきましては、そもそも段ボール関係景気変動に非常に敏感な業種でございますが、今日非常な過剰設備になっておりまして、これもその処理が必要になっておりますが、この過剰設備になりました原因は、一つはやはり石油ショック後の異常なブーム時に過当競争ぎみ設備投資が行われまして、それが後を引いておるということが言えるわけでございまして、やはりそういう意味合いから絶対的な過剰分が相当あると、こういうふうに考えられておるわけでございます。
  14. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 運輸省所管業種であります船舶製造業等について御説明申し上げます。  船舶製造業いわゆる造船業が今日の構造不況を招いた原因につきましては幾つかございますが、基本的には、この中で国内の船主を中心といたします中小の造船業、たとえば内航船あるいは漁船の建造を中心といたします中小造船業につきましてはそう大きな需給の変動はないと考えておりますが、きわめて大きな不況に、深刻な不況に見舞われておりますのは、いわゆる外航船、国際航路に従事する外航船をつくっております中型以上の造船所というふうに見ております。この問題は、基本的には国際的な船腹のきわめて極端なアンバランスが原因でございます。この国際的な船腹のアンバランスは、これは四十八年のオイルショックを契機にいたしまして、主としてタンカー、それからその後の国際的な景気停滞によりまして、一部の貨物船に船腹のアンバランスが見られておるわけでございます。したがいまして、日本の造船業はこの四十年以降ほとんど世界の五割を占めており、かつ日本の造船業の生産の中で七十数%が輸出船である、こういう二つが日本の造船業としての特徴として持っておりますが、したがいまして、国際的な船腹のアンバランスによりまして国際的に造船の需給が崩れる場合には、非常に大きな影響を受けるということでございます。  この点につきましては、船舶の特徴といいますか、注文してから極端な場合には二年ないし三年、完成までずれ込む。日本においてはもっと比較的短い期間で生産が行われますが、一般的にはそういう特徴がございます。したがいまして、四十八年の秋以降におきましてもすでに発注をしておりました船舶が建造されてまいりまして、昭和五十年に国際的にはピークになっておりまして、約三千六百万トンという進水量を出しております。したがいまして、四十八年のオイルショック以降の経済変動の影響が出てくるわけでございますが、それが後ろにずれ込んでいるということでございます。  したがいまして、国際的な問題でございますから、OECD等におきましても、この状態の改善のために各国が協調して生産能力を削減していくというガイドラインが五十一年の六月に出たわけでございます。したがいまして、わが国もそれに沿って生産能力の縮小をやっているさなかでございます。考え方といたしましては、ピークにおきまして、これは日本では四十九年度でございますが、いわゆる着工量ベースで申し上げますと二千万トンをちょっと超えた量でございましたが、これが昭和五十五年に至りますと、国際的に三千数百万トンが千二百万トンに落ちて、日本としましては六百万トンが妥当な生産ラインであろう、それに加えて五十万トン程度の小型船等が加わる、こういう数字を目標にいたしまして、五十二年度から操業調整に入ったわけでございます。  こういうことでございますが、もう一つ構造的な問題として出てまいっておりますのは、いわゆる輸出におきます国際的な協調という面が新しい局面として出てまいっております。これはわが国と他の主要造船国であります欧州諸国との関係一つでございまして、それまでいわゆる市場経済主義といいますか、フリーな国際競争によってやってまいりました輸出市場におきまして、いまのような国際的な協調を保ちながら、生産能力を縮小をしていこうという動きが出てまいったことが新しい要因でございます。さらにこれに加えまして、いわゆる発展途上国の造船の量がまだそう大きな量ではございませんが、しかし自国船の建造を自国造船所で行うということを中心にいたしまして、これが四百万トンから五百万トンの数量になろうとしております。したがいまして、こうなりますと、この二つにつきましては従前と様相が変わっております。こういうことから、従来と違うやり方で現在の生産需要とのアンバランスの是正を図る必要があるということで、今回設備処理を内容といたします構造改善に取り組もうということを考えている次第でございます。特に昨今におきましては、円の高騰によりまして、船舶の輸出は主として円建てでやっておりましたので、この面も加わりまして、昨今ではさらに不況の度が深刻化いたしまして、これにつきましては構造改善の実施と並びまして、新しい分野におきます需要の創出ということもあわせて考えていかなければならないかと思っております。  それから造船業に関連いたしまして、種々の船舶用の機械が船に搭載されるわけでございますが、そのうちで船に特有なものをつくっております主機関のメーカーでありますとか、あるいはチェーンとか、アンカーとか、あるいはプロペラとか、こういったものをつくっております機械工業におきましては専業度がきわめて高うございまして、その意味では造船の不況をもろに受けるということでございます。ただ機械工業でございますので、造船と違いましてたとえば陸への転換等もございまして、この点については問題点を認識しながら業界の意向を聴取し、必要があり条件が整いましたら、現在御審議いただいています法案対象業種になる候補として検討を進めたい、こう考えております。
  15. 輪湖元彦

    説明員輪湖元彦君) 合板製造業につきまして御説明いたします。  普通合板製造業は戦後復興住宅用資材等の需要から始まりまして、対米輸出産業の花形、こういうような経過を経まして、現在その後の高度経済成長期におきまする建築活動に支えられまして、急激な発展を遂げた産業でございます。昭和四十年の生産量と四十八年が戦後のピークでございますが、生産量を比べますと約三倍に伸びているという産業でございますが、その後の現在追い詰められました原因につきましては、大ざっぱに申し上げまして三点あろうかと思います。  いずれも需要構造の変化ということになると思いますが、まず第一点は土木建築用のコンクリート型枠の需要が金属製のメタルフォームに置きかえられてしまったというのが一つ考えられるのでございます。第二点は、アメリカを主体とする輸出向けの合板が後進国でありまする韓国、台湾に追い上げられまして、三十年代の前半には総生産量の三割以上を輸出していたわけでございますが、現在は北海道産の広葉樹合板を除きまして、ラワン合板につきましてはほとんど完全にわが国の輸出がなくなったという点がそれでございます。三つ目は、昭和四十八年のオイルショック以降の住宅着工戸数の急減、そういったことが需要の停滞を招いていると思われるわけでございます。
  16. 安恒良一

    安恒良一君 私にはわずか五時間しか与えられていない中でこんなに貴重な時間をとったのは、率直に言って不況原因ということをまず明確にしないと私は施策を誤ると思う。それはなぜかと言うと、これからこれは大臣にお聞きをしたいんですが、いま大臣承知のとおりに、不況原因一つにはいわゆる経営者の産業政策といいますか、経営政策の失敗といいますか、強気な投資というのがうんと出てきましたね、一つは。これが幾つかの産業で特徴的に出たということ。それから第二番目には、いわゆる設備過剰だけの問題じゃない。たとえば電力コスト問題であるとか、原料高のコスト問題であるとか、こういう問題も共通的な問題として出てきたわけです。  以下いろいろ各企業ごとにお聞きをする時間がございませんから、そこで総体的にまずお聞きしたいんですが、私は自由主義経済体制のもとで、企業が自分の責任で行った設備投資の後始末ということを政府の援助で今度はやろうとされているわけですね、その大義名分はどこにあるんだろうか。いま言ったような原因がそれぞれ各担当官からずっと説明をされたわけですね。そうしますと、私は従来の政府、それから業界産業政策、それから経営政策の反省、こういうものがまず一つの前提にならなきゃならぬというふうに考えるのですが、どうもいまお聞きをしましたところにおいては、当面の行き詰まりのみが強調され、それがほとんど設備過剰にあるんだから、まず設備廃棄についてこのような特別立法を緊急避難的に立てて救済をするんだとこう言われているんですが、ここらの問題について大臣はどういうふうにお考えなんでしょうか。
  17. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 通産省の基本的な考え方は、こういう法律ができましても、こういう法律依存しないで自主独立の立場から、その業種あるいはその業界の再建、建て直しを図っていただくということが一番望ましいと思うのです。一、二の業界ではこの法律のお世話になりません、自分たちだけで解決をいたしますと、こういう業界もまれには存在をいたしております。しかしながら、事情が非常に緊迫をいたしておりまして、かつ重大化いたしておりますので、大部分の業界は、やはり構造不況問題を解決するために、設備の過剰という問題を処理する上におきまして何らかのこの政府のお手伝いが必要である、このように考えます。たとえば、過剰設備廃棄するにいたしましても、その設備そのものは担保に入  っておる、どうにも手がつけられない、こういう場合には、やはりこれを廃棄するためには若干の資金が必要であります。これを調達しませんとどうにもならない。こういう緊急の場合でありますから、ほうっておきますと業界ごと全部が倒れてしまう、こういう重大な事態にもなりかねないのでございます。そうなりますと、雇用問題がますます重大化する、こういうことでございますから、この際はこういう緊急立法をいたしまして、政府がある程度の力をかさないとやっていけない業種は、これによって再建を図っていく。もちろん先ほども申し上げましたように、これだけでは何もかも解決できるというものではございませんが、とにかく再建のとっかかりはつかめると、このように私どもは考えておるのでございます。
  18. 安恒良一

    安恒良一君 私の質問がはっきりしなかったのかわかりませんが、私は、いま、緊急避難的に手当てをするということ、そのものを全体的に否定しているわけじゃありません。しかし私が言っているのは、これは業界だけじゃないんですね。いま大臣の話を聞きますと、何か業界だけが誤ったようなことを言いますが、この業界を指導された通産省初め、政府の産業政策にも問題があったと私は思う。高度経済成長時代に、たとえばいま問題になりました合成繊維一つ例に取り上げて少し議論してみるとわかると思いますが、各産業企業の強引な投資、それから、スケールメリット論による生産規模の拡大、これを促進したのはだれかというと、一つは銀行であると同時に、政府側にも私はやはり合成繊維の場合に責任があると思うんです。ところが、そういうことの反省は残念ながらいま大臣の口からも聞けませんし、関係局長に、構造不況原因は何かと聞いたんですが、全然そういうお話はないわけであります。そして、当面の行き詰まり状態のみがいまの大臣の答弁にもクローズアップされる。ですから、いわばこのやり方というのはいわゆる緊急避難的な政策であって、しかもこうなってくると、あたかもそれが全く正当性があるかのごとき議論にこれがなってくるわけですね。しかしその前に、当該の業界経営者陣、それからそれと同時に、これらの産業政策の推進をされた政府通産省の反省というものがまずあってしかるべきだと私は思うんです。でなければ、ただ単にその当該業界を取り巻く環境条件が変化したことだけが大きな理由として挙げられるということでは私はいけないと思う。  たとえば合成繊維の例を一つ挙げてみますと、いわゆる過剰設備かどうかということについては、五十一年十二月の繊維工業審議会の答申案議論の際も、合繊には設備過剰はなしと、五十一年にもそう当該審議会も言っているわけですね。私はこういういろいろな見通しの誤りがあると思うんです。  それから、いわゆる東南アジアからの追い上げという問題が出ていますが、これは、その大部分は日本の大手の合繊企業の進出によるものでありまして、日本人の手によって建設された、そしてそれが急速に生産化した——たとえば帝人は韓国で鮮京合繊を初め東南アジア諸国に十件、東レでも韓国ポリエステルを初め二十件以上が進出しています。その他日本合繊メーカーが進出してない会社はないぐらい、いわば自分で自分の首を絞める、こういう状況になる。さらに、日本における二次加工段階中小企業経営者を大きく圧迫をしておるわけですね。  こういうことについて全く反省をしないまま、今日の段階過剰設備処理問題に取り組んでいって、本当に政策的な効果、実効を期すことができるだろうか。必要なことは、設備廃棄を前提とした企業の統合とか合併とか、産業再編成の前に、従来の政策体系を見直す、いわゆる国民生活優先の上に、国の経済的中期計画の中で日本繊維産業合繊をどうするか、こういうことがまず出されることが必要でないだろうかと、実はこう思うわけです。そういう観点から私はいま、この構造不況原因はどこにあるんだということを時間をかけて各局長にお聞きをしたんですが、いま申し上げたようなことについてはお触れにならなくて、いわば現象的に言われている。私はこういうような問題点についてひとつ大臣の御見解を賜りたい。  たとえば一つのわかりやすい例として私は合成繊維の例を挙げました。これは御承知の戦後手厚く政府みずからがいわゆる合繊産業の保護育成をずっとやってきているわけです。そういう中で、いま言ったような状況が展開をされて今日になっているわけですが、こういうような問題点等について私は何らかのやはり政府みずからの反省、それから業界の反省、そういうものがなくて、とにかくもう設備が過剰で行き詰まっているのだから、国民の税金であろうと何であろうと使って、設備廃棄をすればいいんだということだけでは国民的なコンセンサスを得ることができないと思うんですが、そういう点はどうお考えになるんでしょうか。
  19. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 構造不況業種がこの法律対象として認められて、そして設備廃棄をしようとする場合には、安定基本計画というものをつくることになっております。これは設備廃棄だけに限らず、その業界が今後再建される、将来の見通しがつくためには一体どうしたらいいか、こういうことを判断するわけでありますから、幾つかの要素を織り込んで総合的に業界としての再建策を考えていくということがこの安定基本計画であります。いまお述べになりましたような幾つかの要素も当然織り込まれると思います。  それから、こういう構造不況業種になったということは、それは政府の見通しの誤りであり、その業界見通しの誤りである、こういうことをお述べになりましたが、確かにそういう面もあろうと思います。その点は私どもも謙虚に反省をしなければならぬと考えておりますが、ただ同時に、昭和四十八年のオイルショックまでは大体世界経済全体がバランスをとりまして、また日本経済も全体としてのバランスがとれまして順調にずっと推移しておったと思うんです。しかしながら、何しろエネルギーの中心である油を一遍に四倍、五倍に値上げをする、こういう、これはもう私は世界戦争にも匹敵するような大変化であろうと思いますが、こういう予想もできなかったような、こういう大変化が起こったわけであります。そのために、その直後に直ちに需給関係に変化を生じた業種もございますし、一、二年たってから需給関係に大きく変化を生じた業種もございますが、いずれにいたしましても産業全体に大変動が起こったと、こういうことだと思うんです。さらに同時に、その間、発展途上国が相当一部の産業分野で充実をいたしまして追い上げてきた、こういう変化もあったと思います。でありますから、すべて現状を、政府の見通しが誤っておったんだと、あるいはまた業界見通しが誤っておったんだと、それだけに原因を押しつけるというのも私は少し行き過ぎであろうと、いろんな要素が重なっておったと思います。  しかし、現状は余りにも深刻で緊迫化しておりますので、責任を押しつけ合いしておってもこれは前進をいたしませんので、とにかく現状を率直に、かつまた謙虚に認めまして、そしてその上に立ちまして、先ほど申し上げましたような緊急対策というものを実施していこうと、そしてもしその業種業界が希望されるならば、この再建の対象として政府の方としてはお手伝いをしていこう、こういう考え方でございます。
  20. 安恒良一

    安恒良一君 私もすべてを政府、業界産業政策なり経営政策の失敗に求めているのじゃありません。しかし、まず一つそれに対する大きな反省があってしかるべきではないかということを言っている。いま初めて大臣の口からそういうやや反省めいたことを聞きましたが、いまさっきまで説明をされました各局長さんの中からは一つもそれがないわけです。たとえば、私はいま詳細な時間をかけて説明してもらったのはそこにあるわけです。それはなぜかというと、すべてをオイルショックに私は原因を持っていくのもこれもまた誤りだと思う。なるほどオイルショックという大臣のお言葉をかりますと、大戦争に匹敵するようなことが経済現象の中で起こったということも承知していますし、それが構造不況原因になった産業もあるわけです。そうでないところもあるわけですね。たとえば、いま大臣も言われましたが、発展途上国の追い上げというものは、これはオイルショックには関係ないんです。むしろ日本経営春が低賃金、低労働、長時間労働を求めて、たとえば繊維なんかはどんどん東南アジア、韓国、台湾等に進出をしていったと。これはわかりやすいのでいま繊維を挙げているわけですが、そういう中から発展途上国における追い上げというのが来ているわけでしょう。そうしますと、これなんかは私はいわゆるこのオイルショック原因を求めることは全く当を得てないと思う。  ですから、そういうようなこの日本における資本輸出といいますか、こういうような問題等についても私はそれなりに、政府は政府なりに当該業界との問の御指導等もあったと思うんでありますが、そういうような意味から言いまして、私はやはりまずそういう問題についての反省というものがされなければ、たとえば安定計画の中でいろんな要素をということでありますが、ところが、この安定計画を立てるときに、やはり私はまずそういう反省がなされた上で安定計画が立てられなければ、りっぱなものはでき上がらないと、こう思うわけです。   〔委員長退席、理事大谷藤之助君着席〕 そこで、そういうことを申し上げているわけですが、まあこの反省の点についてはこれより以上重ねて答弁をお願いをしようと思いませんが、私は、まずひとつそういう点を十分に考えておかなけりゃならぬ点があるということを、この際申し上げておきたいと思うわけであります。  それから、そこで問題になりますが、安定計画の中身については、また後からこれは入っていきますが、私は、大臣も認められましたようにいろんな要素があると。そうしますと、この安定計画をつくるときに、「安定計画に定める事項は、次のとおり」であるということで、第三条二項等々ずっと書いてあるわけですが、いま大臣の御説明によりますと、いろんな要素は安定計画を定めるときに考えればいいと、こういうふうに言われていますが、この三条で読めるところの安定基本計画というものは、いろんな要素がこの中で立てられるようになっているかと思いますと、どうも本法を読みます限りにおいては、やはり特定不況産業設備処理に関しての安定計画でありまして、いろいろ私が申し上げたような要素の問題を、この中で議論をして決められるようになっているんでしょうか。どうもこの法文を読むとそういうふうに読めないんですが、どうなんでしょうか。
  21. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 第三条の第二項ですね、安定基本計画に定める事項を決めておりますが、これは主として設備の過剰問題を決めておるわけでありますが、どの程度設備が過剰であるかということを決めるにつきましては、いまいろいろお述べになりましたようなことを十分事前に総合的に判断をいたしまして決める必要があると、こういうことを申し上げたわけであります。
  22. 安恒良一

    安恒良一君 総合的に判断をしただけでは片ずかない問題があるんじゃないでしょうか。ですから、私はこの安定計画だけで無理だと言う。たとえばいま一つの例を挙げますならばアルミにおける電力コストの問題ですね、これ。アルミがなぜ行き詰まったかというのは、最大原因はいわゆる電力コストでしょう。コストが国際的な競争にならぬ。そして地金の輸入が増大をしている、そこで設備が余ってくる、こういう方程式になっているわけです。そうしますと、アルミの場合にはこのやっぱり電力問題というのをどう解決するかということなくして、とにかく設備をのけてみたところでこれどうにもならないんであります。それから繊維の場合とか造船の場合にもいわゆる低開発国からの追い上げがあってくると、特に繊維の場合。そうしますと、これをそのままの形において幾らこの機械を設備廃棄をしましても繊維産業というのは立ち直らないんです。わが国はもちろん保護貿易主義をとっておりませんし、貿易自由主義であります。しかし、そういう繊維のような特定のもの、これはゴム履物でも言えることなんですが、そういう問題の場合においては、たとえばアメリカ等が行っておりますような二国間の秩序ある輸入と、そういう貿易協定、こういうようなもの等も私はやっていかないと、とてもこの構造不況産業というものの立ち直りができないと思うんです。ところがどうもこの法律の中ではそんなことはこれではやれることにはなってないんですね。なってないわけです。  そこで、私はまずお聞きをしたいんでありますが、構造改善事業を進める上で業界の自主的努力で行うべきことと、政府がなすべきことの区分、政府は何をされようとしているのか。構造改善事業ですね、いわゆるこの特定不況産業指定をして、これは構造改善を進められるわけでありますが、業界がみずからの努力でやるべきことは何と何があるのか、それからどうしてもこの本法の精神を生かして不況産業を安定させるために、政府は何をなそうとしているのか、何と何をやるのか。たとえば電力コストの問題はこうするんだと、後進国からの追い上げに対する輸入についてはどういう輸入秩序を持つんだと、こういうようなこともあわせて御提起を願わないと、私はいまの大臣の御答弁だけでは、結果的にもろもろのことを安定基本計画の中でやればいいんだと、それは当然安定基本計画を議論するときにはそういうことも議論するんだと検討するんだと。これだけでは、いわゆるこの第一条の「目的」を達成することはできないと思いますから、いわゆるこの構造改善を進める上での業界の自主努力で行うべきこと、政府がなすべきことの区分、また何をされようとしているのか、こういう点について御説明お願いをしたいと思います。
  23. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいまの御質問を二つに分けましてお答えを申し上げます。  第一は、この法律のいわば仕組みと申しますか、この中で政府のやることと、それから業界の自主的に自主努力で解決すべき方向と申しますか、範囲というものをどういう考え方でこの法律の仕組みをつくっているかという点でございますが、これは、この法律はたびたび大臣からの御答弁にもございますように、あくまでも設備処理を進める、その根底には関係業界、あるいはその業界に属しておる事業者の自主的な努力を前提にしてやっていくと。政府といたしましては、その自主的努力の一つの目安になります安定基本計画を審議会の場を通じまして、単にその業界のみならず、関係業界の代表、労働組合代表あるいは学識経験者等広く意見を聞いて、その目安をつくるということ、それから最後のいわば担保の手段といたしまして、いわゆる指示カルテル制度という制度を設けまして設備処理の最終的な担保を図る仕組みをつくること、さらに信用基金によりまして債務保証という行為を通じまして設備処理を支援をすると、こういう仕組みをとっておりまして、その意味で、政府のこの法律の仕組みの中でとるべき範囲というのはそういう考え方でできておるわけでございます。  それから第二の問題といたしまして、それじゃ具体的に、個々業種を取り上げまして安定基本計画をつくるときに、どこまで民間でやることであり、どこが政府のなすべきことであるかということでございますが、一般論として申し上げますが、ただいま御質問のございましたように、この安定基本計画をつくるに当たりましては、この法律設備処理を円滑に進めるということがこの法律の内容として規定をいたしておりますいわば中心の問題となっておりますために、安定基本計画は第三条の二項の一号から三号に掲げておりますように、設備処理に関する事項が安定基本計画の内容になると、こういうかっこうになっております。ただこの一号のたとえば設備処理量をどうするか、あるいはその処理の方法をどうするかという設備処理の基本的な問題を決めるに当たりまして、いわゆる長期的あるいは中期的な将来の需給関係というものをどう判断するか、それから当該業種というものが将来の日本産業構造なり経済の大きな運営の中でどうあるべきかというような問題が当然議論をされ、一つ見通しが立てられなければならぬと思いますし、ただいま御指摘のございましたようなその際に、業種によりましてはいわば生産構造と申しますか、コスト構造を考える上でどういう問題があるか、たとえば電力料の問題についてその業種としてはどういう考え方、どういう要請があるかというような点が当然大きな問題として議論をされる業界があると思いますし、あるいは繊維産業等を中心といたしまして、これからのいわば輸入問題にどう取り組むか、それは業界としてどう取り組むか、あるいは政府としてどういうことをやってもらいたいかというようなことが、この設備処理量を決める前提として非常に大きな問題の一つとして取り上げられる業界があると思います。  私はその場におきましてすべての問題について具体的にどういう、たとえば電力コストをどう考えるというような具体的な数字を、その場で直ちに全部の結論が出るかどうかは別といたしまして、やっぱりその設備処理量をその業種として決め、それを進めていく前提としてその業界の抱えておる問題、政府がその中で考えていかなきゃいかぬ問題というものが出てまいりまして、そういう問題につきましては、そこで少なくとも方向を政府として取り上げ、その業界設備処理の今後の方向を固めるいわば基本についての問題、政府が処理すべき問題、それは政府が取り組んでいくと、こういうかっこうになるんではないか、一般論としては私はそういうふうに考えております。
  24. 安恒良一

    安恒良一君 私は一般論ではなかなか納得ができないんです。それはなぜかというと、たとえばアルミならアルミの例を世界的にとってみますと、いわゆる世界各国のたとえば北米におけるアルミ製錬会社、かなり大幅な増収、増益を上げていますし、フランス、豪州等々代表的なアルミ会社の売り上げ、それから対前年同月比の伸び、それから純利益率等を私はいまここに持っていますが、これを読み上げるのは時間がもったいないから。しかしわが国にはこうなっているわけですね。そうしますと、私は抽象論、一般論では困るわけなんです。私がお聞きしているのは、たとえば電力料金について業界がどんな要望をされるだろうか。その時点でと言われるけど、そんなことはもうわかっておるわけですね。業界が一番要望しているのは、何とかアルミというのは電力を食っているようなものだからひとつ電力料金を下げてもらいたい、もしくは電力料金に対する政府の補助をぜひ出してもらいたい、こういうことはこれはもう要求しているわけですね。それから繊維の場合でも、これはもう労使一体となって、いわゆる秩序ある輸入という問題についてももう何回も問題を提起をしているわけでしょう。  ですからそういうような問題について、それはいわゆるこの法律が設定をして、そして業界からいろんな申し出があったときに考えたり、やればいいということじゃどうにもならぬわけなんです。だから、私は第一条のこの法律目的を達成するためには、ここに書いてあるようなただ単に設備廃棄をやる、そしてそれが廃棄をやりやすいためにいわゆる資金的なめんどうを見ると、それからどうも中には言うこと聞かないのもおるんだから、指示カルテルで、言うことを聞かせるようなできるだけ努力をする、こういうことだけでは特定不況産業というものは直らぬでしょう。だから、この際に私はやはりこの問題は業界でやってもらいたい、これは政府みずからが、この問題とこの問題は政府でやりましょう、たとえば二国間の貿易協定であるとか、電力コストの問題などというのは、業界に任したってできるもんじゃないんです。そうでしょう。業界が、たとえば極端なことを言いますと、アルミならアルミ電力をもしも下げると、こういうことがくれば、他の業界からも、それじゃうちも非常に電力使っているから下げてくれという問題が出てくるわけでしょう。とても業界の話じゃないですね。やっぱり政府の産業政策です。ですから、そういうものを私は明らかにしながら、なお特定不況安定臨時措置法が必要だということになるならば説得性がある。  私どもは社会党はこれは反対している、衆議院において反対しました。そういうものが明らかにされないから。ですから、私がいまお聞きをしようとしていることは、本来ならば、これはわが国は自由資本主義の社会だ、だから、政府みずからがこういう問題に介入すべきものじゃない。しかしながら、あえて政府みずからが介入されようとする場合には、国民に対してわかりやすい大義名分と、それからいま一つは、政府がやるべき施策、業界がやるべき施策、そういうものが明らかにされる、その中で私は国民的なコンセンサスというものが得られると思うんですが、重ねてそこのところについて、一般論では困ります。後から後から——どうも衆議院における答弁を読みましても、まずこの法律を成立さしてくれ、そして審議会段階で後から後から考えますということであなたたちの答弁は終わっている点がありますが、私はいけないと思う。幸いいま二院制で参議院というところは専門的にそういうことを議論をする場でございますから、どうか一般論、抽象論じゃなくして、いま二つの事例を挙げました。たとえばアルミ産業についてはどうするんだ、繊維産業についてはどうするんだ、こういうことについての考え方をひとつ聞かしてください。
  25. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 先生御指摘のとおり、アルミニウム製錬業につきましては設備をある程度処理しただけでは、問題が基本的に解決するかどうかということは疑問でございます。アルミのような構造不況産業、これに対しましてこの構造不況産業を何か政府がうまい手を打てば、これが構造好況産業にかわるというような、そういう妙手があるのであろうかといいますと、これは残念ながらないというのが実情であろうと思います。アルミの問題につきましては、先ほど原因のところで御説明申し上げましたとおり、電力料金、それから内外コスト格差、それから過剰設備等々が大きな問題であります。  まず、第一の電力料金でございますけれども、これは正確に申し上げますと、電力料金というよりも油の値段と申し上げた方がよろしいと思います。電力料金といいましても、九電力からアルミ会社が買っておる電力量は総消費電力量の二割でございます。したがいまして、九電力会社の料金を仮にアルミに向かって安くいたしましたところで、それはアルミ会社が消費する総電力量のわずか二割、これにつきまして安くなるだけのことであります。あとの八割近くは自家発、共発の油の値段でございますが、それではこのサウジアラビアの王様に対しまして、日本アルミ会社が買う油だけ特別安くしてくれというようなことは不可能でございます。そうしますと、アルミ会社の使う油の料金を一体、それじゃ油の代金を特別安くする方法があるのかということになりますが、これは政府が補助金を出す以外にはあり得ないというふうに考えられます。そういたしますと、アルミ産業を生き延びさせるために、アルミ会社に対して巨額の補助金を国民の税金から支出するということが、果たして妥当であるかどうかというような問題になってまいりますが、われわれはそのことにつきまして、それが妥当であるというような判断を下し得るような状況には現在なっておりません。将来のことはわかりませんが、現在までのところにおきましてそういう判断はいたしておらないわけでございます。  そういたしますと、第二番目の問題といたしまして、輸入制限という問題が発生いたします。先生御指摘のとおり、海外のアルミ製錬会社は皆もうかっております。もうかっておりますのは、先ほども申し上げましたとおり、彼らの使用するところの電力のソースが水力であるというところにあるわけでございます。この水力オイルショックがあろうとなかろうと、水力の値段は変わっておるわけではございませんから、−変わっている場合もございますが、概略変わっておるわけではございませんから、したがいまして彼らの方は非常に有利な立場に立つ。日本に入ってきますアルミは、いまや海外から入ってきますアルミ価格は関税込みで二十七、八万円というような値段になっております。他方、国内のアルミ産業コストは三十七、八万というようなところでございますから、競争力が非常にないというような、そういう状況でございます。  それで、それでは輸入制限できるのかどうか。輸入制限をいたしますれば、アルミ産業の問題が解決するということはわれわれもよくわかっておるわけでございます。できることならば、輸入制限をしたいと。しかしながら、現在東京ラウンドをやっておる真っ最中でございますし、その輸入制限をする根拠法規であるガット第十九条につきましては、これをいかに改正すべきかというようなことが東京ラウンドの中の一つの議題になっておる。こういうような四囲の情勢があり、かつまた輸入制限をするといたしますならば、代償報復というような厄介な問題がございまして、そういうことを考えますと、現段階において輸入制限を発動すべきかどうかということにつきまして、われわれはまだ確信を持って発動した方がいいというような判断をできるような状況にはないわけでございます。  そういうような状況下におきまして、われわれといたしましては、いまこの設備の凍結等をやるということが残された現実的なアプローチということでございますので、先般、大蔵省とも交渉をいたしまして、関税割り当て制度をとると、そして関税から約三十億の財源を捻出いたしまして、これによって設備を凍結する。凍結した設備に絡まっておりますところの債務の金利をその三十億でもって支払いをして凍結を促進するというようなことを考えているわけであります。で、この凍結をいたしますれば、アルミ産業の病気が全部治るというような性質のものではないと思います。一服薬を飲めば病気はけろりと治るというような、そういうような状況にはなっておりません。まことに残念なことでございますが、しかしわれわれといたしましては、この一服の薬を飲ますということは、飲まさないよりははるかにましであるというふうな考えのもとにやっておるわけでございまして、病気が全然治らないでは、完治しないではないかという御批判でございますならば、これは甘受せざるを得ないわけでございます。
  26. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) 繊維産業輸入問題についてのお尋ねにお答え申し上げます。  現在、私ども設備処理対策を考えております前提として、輸入問題についてどう考えておるかということであろうかと思いますが、繊維輸入につきましては非常に多くの問題が提起されていることは御承知のとおりでございますが、実は繊維のわが国の輸出入について考えてみますと、これはかってのような、繊維の大半を輸出して外貨をかせいでいたという事態は変わっておりますけれども、現実には繊維製品の輸入量と申しますのは、年度間で約十五、六億ドル程度でございます。一方、日本繊維製品の輸出量といいますものは、四十五億ドルから四十六、七億ドルというふうな計数でございまして、そういうふうな輸出入貿易の面から見ます限り、圧倒的な繊維輸出国であることはいまだに間違いないわけでございます。なお、国内の繊維製品の中で、内需と関連いたしまして、どの程度輸入比率かといいますと、やはり一〇%内外ということでございまして、そういうマクロの数字で見ます限り、決して輸入がそう大きな問題であると、現在時点において言うことはできないであろうというふうに考えるわけでございます。  ただ、もちろんマクロの問題はそうでございますが、ある特定部門につきまして、特定の品物が、かつて日本のドルブラウスがアメリカに殺到いたしましたような形で、ある分野にショックを与えるということはあり得るわけでございます。したがいまして、私どもとしましては、一昨年の繊維工業審議会の提言の際に、一年かけてその問題も十分に検討いたしまして、輸入については、これに国内の産業競争力を増して、多様化した国民のニーズにこたえるような繊維産業に必ずすべきであり、かつその可能性は十分にあるはずであると。ただしその経過におきまして、特定部門においてフラッドして問題が生じた場合には、先生御指摘のように、多国間繊維協定というものもあるわけでございますから、それを援用して、適時適切な措置をとるということは可能でございます。またわれわれの方も、そのための体制といたしましては、繊維工業審議会の中の需給貿易部会の中に調査小委員会というのを昨年の一月から設けておりまして、臨機応変、そういうフラッドの事態が生じました際には、これに対応するというふうな体制をとっておるわけでございます。
  27. 安恒良一

    安恒良一君 私はね、どうもお二方の御意見わかりかねるんですが、まあ一服だと言われますけれどもアルミの場合に、いわゆるいま申されましたような設備廃棄ないし凍結をやる、やってみたところで将来どうなるだろうかと。たとえば、私はアルミの自給率というものは、やはりどうしてもわが国として確保しておかないと、全部輸入に頼るわけにいかない。こういうことになるならば、やはり私はその自給率五〇%なら五〇%のアルミを確保するためには、どうしてもいま申された電力問題ですね、コスト問題に手をつけないと、一服という意味で設備をある程度廃棄されておって、それじゃアルミ産業が一部の設備廃棄したからということで、国際的な競争ができるのかと言ったら、できないんじゃないですか、現実に。だからどうも、とりあえず安楽死をさせるために、ここらで一服景気づけておこうというなら、それはまた……私はそのことに賛成じゃありませんよ。どうもお聞きをすると、そういう国際競争力を失ったこの産業については、やや安楽死をさせる、そういうカテゴリーをお考えになっているんじゃないかという心配をするわけですね。こういう点はどうなんでしょうか。  それからいま一つは、安楽死じゃないというなら、じゃ、あなたがおっしゃったような設備を、いわゆる約三十億かけて凍結をしておくと言われたんですが、それだけで本当にうまくいくのかどうか。どうも見通しがはっきりしないのですね。それから繊維問題についても、私はこれはわが国の輸出輸入構造、そういうことになっているの知っています。しかし合繊繊維について、この際はいわゆる設備処理をやるわけですね。設備処理をやるという緊急事態の場合には、一定の規制というものがあっていいんじゃないだろうか、一方においては。平常とは違うわけですね。この際はこういう緊急立法をつくって、そして設備廃棄をやるという状況が出てきているわけです。そのときに、私も何も保護貿易主義をとるものじゃありませんし、しかし一定のやっぱり規制というものを何らかの方法において考えなければ、設備をせっかく廃棄してもその実効は上がらぬでしょうということを言っているわけです。繊維の場合、合繊の場合上がらないでしょうということを言っているんです。でなければ金のむだ遣いになっちゃうんですよね、金のむだ遣いに。そういうところについて、いまのお二人の局長の答弁に重ねて質問をします。
  28. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 産業なり企業なりが生きるか死ぬるかということは、原則はマーケットが決定する問題であると存じます。政府がこれを安楽死させるとか安楽死させないとかいうことを考えるということは、きわめて例外的な事態ではないかと思われます。  アルミについて申し上げますならば、アルミ産業をたとえば安全保障のため五〇%を維持しなければならないとか、維持するためのコストは国民の税金で賄うとか、これは非常に重要な問題でございまして、われわれは現段階におきましてそういうことを否定しているわけでもなければ、あるいはぜひともそうしなければならないというふうに考え方を決めているわけでもございません。今後アルミニウム産業を生き延ばさせるために一体どの程度コストを国民が負担すべきなのか、この点につきましてはさらにコンセンサスを形成して一歩一歩手探りしていくよりほかにいい案がないのではないかとわれわれは思っております。政府が一方的に、たとえば五〇%を維持するとか、そのために何百億の税金を払うとかいうことは、少なくともいまの段階におきまして、まだそういう世論が熟しているわけではございませんから、われわれとしましても、そういう方針を一方的に決めるというようなことは、仮にそれがいい方針であると信じておったところにいたしましても、現実的ではないというふうに考えております。  しかしながら、油の価格にしろあるいは輸入制限の問題にしろ、今後とも経済情勢の推移や世論の推移をよく見ながら検討を進めていきたいというふうに考えております。
  29. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) 合成繊維設備輸入の問題につきましての御質問でございますが、合成繊維につきましては、先ほども説明申し上げましたように、合成繊維のうち輸出に回っております分が製品ペースまで込めますと六割を超えるかと思います。現実に過剰設備の圧迫が一番大きくかかっているところが輸出でございまして、いわば赤字輸出をせざるを得ないキャパシティーを保有しておるというところに合成繊維産業構造的な問題としては一番重点があるわけでございます。  したがいまして、ある程度設備処理をいたします際に問題になりますのは、いま非常に無理をせざるを得ない赤字輸出の部分をカットするむしろ形になるわけでございまして、輸入とはむしろ関係が薄い問題であろうかと思います。
  30. 安恒良一

    安恒良一君 この問題も、これより以上論争しても意見のすれ違いになりますが、私はやはりいま申し上げたような問題を、この法律を決定するに当たっていま少しわが国の産業政策というのですか、そういうものをぜひ明らかにしてもらいたい。でなければ、何となくいまの行き詰まりの現状を設備廃棄だけに求めて、果たして当該の特定不況産業というものが安定するだろうかどうかということについては大変疑問に思います。いわゆる設備廃棄というのは一つの手段にしかすぎない。しかし、それだけに物事を求めておれば、私は本法の第一条に書いてあるようなことになり得るというふうには考えられません。  そこで、この問題はこれぐらいにして、各業界ごとにやっておりますとまた大変な時間がたちますからこれぐらいにしておきたいと思うんでありますが、次の問題に移っていきたいと思います。  次の問題は、いまいろいろ過剰設備廃棄——設備の過剰率についての認識の問題について少し議論を進めていきたいと思いますが、私はこの設備の過剰率については、経営者と政府、それからそこで働いている従業員、労働者の間にはかなりの相違があるのではないかと思います。たとえば一つの例を挙げますと、稼働回数を考えなきゃならぬ。その場合に、いまやもう週休二日制というのは世界的な問題でありますが、この中期的に週休二日制に移行を考慮していく場合といかない場合では、稼働率の計算というのはぐっと違ってくるわけであります。週休二日制というのは御承知のように先進諸国の常識となっていますが、この常識に反するような計算方法といいますか、計画方法をとって将来を展望することは妥当であるのかどうか。この点について、ひとつまず設備の過剰率を計算をされる際に、これは安定基本計画の中で議論になることでありますが、どういうふうにお考えになっているのか。  いま申し上げたように、どうも私は過剰だ過剰だと言われていますが、それには経営者、政府と労働者、国民との間にかなり認識の違いがあるようですが、その認識の違いの一つの例として、世界的な流れとして週休二日制がとられておる。こういう問題についていまそれぞれ大変設備が過剰だ過剰だと、過剰というのは稼働率の問題になるわけですから、そのことについて御見解を示していただきたいと思います。
  31. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 稼働率の算定につきましては、ただいま御指摘のような問題が私は当然あろうと思います。週休二日制問題、これは労働福祉向上の問題あるいは今後のいわゆる労働環境と申しますか、あるいは労働福祉環境の向上というふうな問題から、労働省当局等におきましても、これは方向として推進をしていくという方向、これはとられておると思いますし、私ども大分前でございますが、この七〇年代に入りまして一九七〇年代の通産政策という方向を取りまとめましたが、その中におきましても、将来の方向といたしまして、やはり週休二日制と申しますか、こういう方向はとらるべきであるということを、産業政策の観点からも一つの柱として打ち出した経緯がございまして、私ども方向としては週休二日制が推進をされていくべきであると考えております。  では、具体的にその稼働率の計算に当たりまして、その点がどう考慮されているかということでございますが、これは現実の各業界業界でいろいろな慣行がございますし、それから、私ども一般論のお話ばかりになりますが、稼働率の計算とそれから個々の労働者の週休二日制の問題とは必ずしも一致しない場合があるのではないか。そういう問題もあると思います。結論的には業種別にこの設備処理量の算定等をやります際に、それでは稼働率を将来どういうふうに考えていくか、そのバックグラウンドをどう考えるかというようなことで、関係者の間で将来の方向等も踏まえて十分議論されるべきことであると、こういうふうに私は考えております。  なお、現在どうなっているかということにつきましては、ただいまでも業種によっていろいろな検討が行われておりますので、もし関係局長に発言のあれがございますれば答弁を願いたいとこういうふうに考えます。
  32. 安恒良一

    安恒良一君 これも全業種長々としゃべられたのでは持ち時間が少なくなりますから、私はそれじゃ、関係局長の方で一つだけやってもらいたいと思いますが、いわゆる段ボール原紙、これにはどういうような計算をし、どのような形で設備廃棄をお考えになるのか。いまの問題と関連をして、ひとつ段ボール原紙についての考え方一つのわかりやすい例として。一般論でやっておったら物事が詰まりませんから、段ボール原紙でひとつ議論しましょう。いまの問題ひとつ説明してください。
  33. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) 段ボール原紙設備廃棄問題でございますが、実は段ボール原紙につきましては、まだお話がまとまっている段階には至っておりません。設備廃棄をするにいたしましても、どういう方法で壊すかという一つ大きな問題がございますし、大企業中小企業と非常に混在した企業群でございますので、その中でどういう計算をするかという点、今後の課題として目下作業を始めるという段階であろうかと思います。したがいまして、いまの御質問に対しまして的確にお答えできないのははなはだ残念でございますが、まだそういう状態にあると思います。
  34. 安恒良一

    安恒良一君 いや、あれじゃないでしょうか、通産省の紙業課が段ボール原紙は月に二十八日間の運転、年間三百三十六日の操業を前提にして生産能力を算定をしている。一方、需要はGNPの伸びに弾性値を乗じまして計算をし、そこから稼働率をはじき出している。この試算では三年後の一九八一年の稼働率は七二%にしかならない。だから、二五%の設備廃棄を行うべきだ。こういうような廃棄率の算出を通産省の紙業課で行われているということを私は聞いているわけです。ですから、このやり方できわめて単純な計算をちょっとしてみますと、たとえばここはいわゆる年間フル操業をやっているわけですね。でありますから、ここで週休制をきちっととっていくとすれば、稼働率は七七・九%になりますし、隔週週休二日制の割合で休んでいけば、稼働率はこれは八五%に上がるわけなんです。ですから、稼働率とその週休制の関係は余り関係ないと、ストレートにはないということを前の局長言われましたけれども、私はやはりこの稼働率を——設備が幾ら余っているかということをはじき出すためには、やはり稼働率というものが基礎にならないとできないわけです。  そのときに、いま前の局長は、一般論としてわれわれは週休二日制に向かって進んでいくんです、ですからその方向でと。しかし、現実にこの特定不況業種対象になる段ボール原紙の場合の通産省の、いわゆる——局長はないと言うけれども、私の手元にはそういう計算をされたもの持ってるんです。ないわけないんです。あるならあると。うそを言うてもらったら困りますよ、国会で。あなたたちがそういうあれを計算されているのを私は手元に資料としていただいているわけですから。そういう状況の中で、私はここのところについて、やっぱりどう考えるかということは、非常にこれは重要なことだと思いますが、これらの点については大臣どうなんでしょう。私はせめて、少なくともなるほど特定不況産業であっても、今日日本に向けられている欧米先進諸国の、いわゆる円高の問題等々、いろいろ考えますと、公正競争の原理というものを私たちは貫かなきゃならぬ。  そういたしますと、まず週休二日制の問題であるとか、そういうような問題について、——御承知のように紙パルプ産業というのは、六〇年代から連続操業をやっていますね。そして、年間三百六十五日のフル操業で、そして当初は三組三交代でしたが、これではとてもたまらないということで、現在は四組三交代制が六〇年代後半からしかれていることは御承知だと思います。そういう中において、私は今回のこの操業率を、いわゆる過剰率をはじき出す場合に一つの問題として、こういうような先進諸国並みのこの労働条件というのは、これは全体がやっぱり考えていかなきゃならぬ問題ですが、以上のようなところについて、いま藤原さんは、通産省としてはまあこれからだと言われていますが、どうも、これからだと私にはおっしゃってますが、一方においてはそういう計算が、大体段ボールにおいては二五%ぐらいのあれがあると、こういうふうなことを言われているようですが、そこらはどうなっていますか。
  35. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) 段ボールにつきましては、いま御説明申し上げましたように、いろんな試算というものは業界でも行われておりますし、私の方でも内部的な試算というものはあるわけでございますが、いろいろ問題点が多うございまして、これでというふうな数字は実はございませんので、そういう意味合いでまだ数字がないと申し上げたわけでございます。いまお話ございました、ように、操業日数の問題、稼働率の問題、いろいろ複雑な問題がございます。特に、紙パルプの、大手の企業は別といたしまして、段ボール関係になりますと、非常に中小の会社が多いわけでございます。したがいまして、これを全部一律に考えられるかどうか、その辺非常にむずかしい問題ございまして、マクロの計算としてどの程度の過剰率になるかという点につきましても、まだ結論を得ていない状態が実態でございます。   〔理事大谷藤之助君退席、理事福岡日出麿君着席〕
  36. 安恒良一

    安恒良一君 どうも、これはこの次の質問とも関係しますが、緊急避難立法だということで法律の設定を急がれる、わが党の理事から聞きますと、何か知らぬけれども、連休前に上げてくれ上げてくれなんという話が、理事会の中では出ているようですね。ところが具体的なことを聞くと、いやそういう中身はこれからです。これじゃ私は、大臣いけないんじゃないでしょうか。少なくとも、この法律を出す背景のバックグラウンドとして、たとえば段ボールの場合にはこれぐらいの設備の過剰があるんだと。その過剰があるということの計算根拠というものがなけりゃ私は過剰があるとは言えないと思うんですね。  だから、少なくともこの法律をお出しになる以上は、私が、それがためにどういう業種をお考えか、法律に書いてある四業種のほかに各業種を言ってもらったのはそこにある。そうすると、少なくとも最初に局長が挙げられたような業種についてはいま言ったようなことが、これは最終確定はいわゆるそれぞれの業界の申し出に応じて、そして審議会の中で決められるにしても、少なくともバックグラウンドとして通産省なり関係省はお持ちでなければいけないと思うんです。そうしたら、いや、いろんなことがございまして、中小企業も多いものですからどうだこうだということでは、私はこの法案審議を進めるにはなかなかむずかしいと思う。  ですから、それならば次のところに問題を移していきたいと思いますが、まず、本法が成立をしたと予測しまして、どの程度過剰設備廃棄をするお考えなのか、どの程度のお考えなのか。これはまあ業界が決めることでありますが、バックグラウンドとしてどの程度のことを、いまずらっと挙げられた業種について、この業界についてはこういういわゆる過剰設備があるんだ、大体これぐらいは廃棄をしなきゃならぬと思っているんだと。それから、それのいわゆる算出のある程度の根拠、こういうことについてひとつ、それぞれ関係局長から御説明お願いをしたい、こう思います。
  37. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 過剰設備処理量が大体どの程度の目安になるかということでございますが、先ほどからお話し申し上げておりますように、私ども、この法案作成段階でいわば対象候補業種につきまして、その幾つかの業種を先ほど申し上げましたが、これを申し上げましたのは、いろいろ詰まり方、あるいはその議論をしている場、いろいろございますが、結論として、いわゆる短期的な需給調整では片づかない、設備処理の問題を取り上げなければならぬのじゃないかと、こういう感じの強い業種を取り上げたわけでございます。  そこで、いま最初に私から、大体結論的なこの程度の数字というのを申し上げまして、その算出の若干の根拠等は関係局長から御答弁することにいたしまして、まず平電炉でございますが、これは平電炉基本問題研究会という場を使いまして、三百三十万トン程度という数字が出ております。それからアルミ製錬業でございますが、これは産業構造審議会アルミ部会で昨年検討を続けまして、昨年末に約四十万トン程度過剰設備の量を算出をいたしております。それから繊維関係で、合繊関係でございますが、合繊関係はなおいろいろな、むしろ正式のそういう審議会等の場ではございません、いままで関係者の間でいろいろ議論が行われました結果、大体現有設備の二割五分から三割程度の数字がいわゆる過剰設備に該当するのではないかと。それから綿紡につきましては、現有施設の約二割、錘数にいたしまして二百二十万錘程度、それから毛紡につきましてはやはり二割程度、錘数にいたしまして四十五万錘程度、これが過剰と見なされるのではないかという一つの目安を持っております。それから、フェロシリコンにつきましては、現在フェロアロイの基本問題研究会という会で議論が行われておりますが、これも現有設備の二割、約十万トン程度過剰設備と目されるのではないかという一つの目安ができております。それから肥料は、現在産構審の場で検討中でございますし、ただいま御質問のございました段ボール原紙と、それから先ほどお話のございました塩ビ樹脂等につきましては、現在業界内の研究会を中心に具体的な検討が行われてると、結論的にはそういうかっこうになっております。
  38. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 平電炉アルミにつきまして、補足して御説明を申し上げます。  平電炉アルミにつきましては、この構造不況法案審議が始まる前から廃棄問題をずっと協議をしてきたわけでございますが、そこで、基本的な物の考え方でございますけれども、われわれは廃棄につきましては、業界が合意するということを前提に考えております。これは先生の先ほど御指摘になった責任問題と関連する問題でございます。すなわち政府であろうとあるいは業界であろうと、何年か先のことの需要見通し等を予測しなければならないわけでございますが、神様でない限りにおいて一〇〇%正確な予測をするということは不可能でございます。そうしますと、予測が外れた場合に一体その責任はだれがとるのかという問題が起こってまいります。  先ほども簡単に申し上げましたけれども、現在の平電炉過剰の一つ原因として、昭和四十八年の産業構造審議会におきまして小棒の需要予測を行ったのでございますが、その需要予測では昭和五十二年度の小棒の需要見込みは千六百万トンだと言っておるわけです。ところが現在は実際は千三百万トンしかない。そもそも産構審がそういう過大な見通しをしたから現在の過剰設備が生じたのではないかというような批判があるわけでございます、一体だれが責任をとるのかと。で、私はやはりこの資本主義経済の原則というものは、それは政府なり産構審なり新聞なりあるいは評論家なりいろいろ予測はあると思いますけれども、最終的には経営者が責任をとるべきものだというふうに信じております。そこで廃棄量等の見通しをやる場合には必ず業界が合意する、そしてそのとおりに三年先、五年先の経済が動こうと動くまいと、その判断の結果については経営者が責任をとるのだということはよく念を押してやっておるわけでございます。  そこで、アルミにつきましても平電炉につきましても業界の合意を前提にしておるわけでございますが、平電炉の場合にはカルテルインサイダーが五十二社だったか三社だったかありまして、そのほかにアウトサイダーが九社ぐらいございまして、アウトサイダーに関しましては合意を得ていないわけでございますが、インサイダーに関しましては一応合意を得た上でやっておる。それによりますと、現在の平電炉設備は二千万トンあるわけでございます。この二千万トンの算出根拠というものにつきましては、私はここで記憶はしておりませんが、年間何日稼働するとか、一日何時間あるいは何回転するとか、すべて細かいデータはございます。しかし一々そういうことをいま記憶はいたしておりませんので御説明はできませんけれども、もしお求めとあれば非常に細かいデータはバックにはございますが、ともかく二千万トンだと、そして一体昭和五十五年でその二千万トンが多いのか少ないのかという想定をいたしました。  昭和五十五年の需要想定はどうやってやるのか。これは主として経済企画庁の中期見通し、中期計画を前提にいたしまして、そこでいろんな計算をいたしました。マクロエコノミックモデルを使ってやる需要予測であるとか、あるいは小樽を使うところの建設業であるとかのそういうところの個別の需要推定であるとか、いろいろなものを算定いたしまして、結論といたしまして三百九十万トンないし五百五十万トン過剰である。このないしになっておりますのは自信がないからでございます。将来の見通しにつきまして不確定性が高うございますので、過剰の度合いを少なく見積もれば三百九十万トン、多く見積もれば五百五十万トンだと幅をもって推定をいたしました。しかしながら、万一昭和四十八年に起こったような小棒不足というような事態が起こっては大変だという用心をいたしまして、五百五十万トンではなくて、三百九十万トンをとったわけでございます。この三百九十万トンを平電炉分と高炉分に分けますと、平電炉分は三百三十万トンになるということで三百三十万トンが過剰であるというふうな判断をこの懇談会はいたしておるわけでございます。  次にアルミニウムでございますが、アルミニウムにつきましては需要推定をすることはそんなにむずかしい問題ではございませんが、輸入量の推定をするということは至難のわざでございます。これは為替相場の動きであるとか海外市況の動きであるとか等々、非常に複雑な要因がございますので、輸入がどれくらいになるかということは判断がきわめてむずかしい。したがいまして、そういう意味での内需量の何といいますか、科学的といいますか、根拠のあるような推定をするということはきわめて困難でございます。そこでアルミニウムの場合には過剰があることは明瞭でございますから、業界としてどれくらい一体凍結できるのかと、業界といたしましては、今度は個別に凍結するということになりますと、総論はともかく各論は非常な苦痛を伴うわけでございますので、耐えられる限度はどれくらいであるかというようなところから、業界でまあぎりぎりこれくらいはやれますというのを推定いたしますと、三十九万トンというような要凍結量というものが出てきたわけでございます。  以上でございます。
  39. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) 繊維産業関係設備廃棄の比率の根拠でございますが、繊維産業につきましては、綿紡績、羊毛紡績等につきましては、先ほど御説明いたしました繊維工業審議会の提言を出す過程におきまして、一昨年の夏ごろに大体の見通しがつきまして、その段階でやはり二割程度の過剰ではないかという意見が圧倒的であったわけでございます。当時は合成繊維につきましては、先生先ほど御指摘のように、設備過剰なしというふうな結論が出ておったわけでございますが、その後事態の推移、特に輸出環境の変化その他から、急激に合成繊維につきましても設備が過剰ではないかということで、昨年四月ごろから急遽検討を開始いたしまして、協調懇談会小委員会というところにおきまして設備過剰問題を詰めたわけでございます。ここではやはり五十五年ぐらいを目途にしまして合繊化率というふうなもの、それから輸出比率というふうなものの前提を置きまして、その五十五年時代におきまして絶対的過剰というものがどのくらいであろうかという計算をいたしたわけでございます。  いま天谷局長からもお話がありましたように、あくまでも見通しでございますので、それが環境の変化その他により必ずそうなるという保証はないわけでございますが、設備過剰率を計算いたします場合に、いわば絶対的過剰といいますか、多少の振ればあってもこの程度はどうしても過剰であろうというのを基準に計算をいたしておるわけでございまして、合成繊維につきましては現有設備年産約百五十万トン中二五%から三〇%見当が過剰であろう、こういう結論になっております。もちろん合成繊維と申しましても、中に品種がいろいろございまして、品種別にたとえばナイロンフィラメントのようにある程度過剰率の少ないもの、特にポリエステルフィラメント等におきましてはそれほど過剰率は高くないのではないかという見通しのものもありますし、非常に過剰率が高いと考えられるものもあります。この辺はやはりいろいろ輸出環境あるいは国内の合繊化率の進展度合いによってなお変化の要素を含んでおるわけでございますけれども、一応の見通しとしてそういうことを考えておるわけでございます。  羊毛紡績及び短繊維紡績につきましては、同様に先ほど濃野局長からお話がございましたような数字を、需給見通しを基礎に当面の絶対的過剰設備として計算をしておるわけでございます。  段ボールにつきましては、先ほども申し上げましたように、現在まだ意見が分かれておりまして、需要見通しにつきましても若干確定しがたい点がございまして、一〇%から二五%の間ということで現在いろいろと作業をやっておる状態でございます。
  40. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 委員長、訂正がございます。  先ほど平電炉につきまして三百九十万トンないし五百五十万トンと申し上げましたが、五百九十万トンに訂正をさしていただきます。どうも失礼を申し上げました。
  41. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 造船の関係につきましては、ほかの業種とちょっと違っていろいろむずかしい問題があります。といいますのは、造船の生産をいたします施設としましては建造ドックなり建造船台でございます。ここにおきましては、たとえばタンカーでございますとか、あるいは非常に付加価値の高いLNG船とかいろんなものができるわけでございまして、したがいまして設備能力とそれから生産高という問題については、そのときにおきます船の種類がいかなる構成によるかということで変わってまいります。非常に概括して申し上げますと、五十一年の六月にいろいろ検討いたしまして今後の見通しを決めております。このときは国際的な各物資の今後の見通し、これは国際的な推計なり統計なりと、それから国内におきます各種の推計、統計を用いて国際的な物資の荷動き、それによりまして必要な船腹量、それから現存の船腹量、それからスクラップなりあるいは係船なりこういったものをそれぞれプログラムをつくりまして計算をするわけでございます。  その場合に、非常に正確にやります場合には物資別にそれに非常に適した船の船型なりを考慮に入れまして非常に精密にやってまいるわけです。ただ、これは非常に精密になればなるほど、場合によりますと仮定の一つが狂いますと問題が出るということで、マクロ的な別のプログラムでの見当もつけておるわけでございます。  それで五十一年の六月の数字を申し上げますと、四十九年ないし五十年におきまして三千四百万トンとか三千六百万トンという世界の生産量に対しまして、五十五年までは大体世界全体で千二百万トン、五十五印から六十年までは世界全体で千六百万トンないし二千六百万トンと、これはきわめて大きな幅がございます。こういった見込みで私どもとしましては、日本として当面五十五年までは千二百万トンを頭に置きまして、日本として六百万トン、さらにそれに国内の内航船等を加えて六百五十万トンと、こういう見込みをもとにいたしまして、設備ということではなくて、いわゆる総操業時間の短縮をやるということで、四十九年度を一〇〇にいたしますと目標といたしましては五十二年度七五、五十三年度七〇%と、こういう目標を立てて五十二年度から実施をしておるわけでございます。実績は五十二年度が七五に対して六七ということでございまして、五十三年度以降さらに厳しい情勢であるということが出てきております。  これは、いろいろ今後の設備廃棄の議論をいたしますときに問題があるわけでございますが、言うなれば国際的に先ほど触れましたように、他の造船国との協調の問題、それから発展途上国のいわゆる工業化計画の一環として行っています造船所の整備、こういったものをどう勘案するかということがこれからの新しい課題であると考えております。現在は、さらに五十五年以降の先ほどの作業の見直しをやっておりまして、これを精力的に詰めた上で、いま申しました問題点をどう売り込むかと、こういう点が出てまいります。  それから先ほど触れましたように、たとえば四十九年度二千百六十九万トンという鉄鋼量の実績がございますが、これは設備を使いまして、たとえば残業でございますとか、こういったことによりまして達成した数字でございます。かつ工事時間の少ないタンカーの量が七五%と、こういったことででき上がっている生産量でございます。したがいまして、今後は生産能力を設備で見ますときには、どういう船の種類ということも必要でございまして、先ほど先生御指摘のいわゆる一人当たりの操業時間も当然問題になってまいります。こういったものを勘案しながら、設備の能力とそれから稼働率を決めて、その稼働率を需給バランスに合わせて、かつ、ある時期の間適正な稼働率でやっていけるという意味で設備能力の問題に立ち返って、設備をどのぐらい処理をすればいいかということになろうかと思います。現在これらの点については、業界それから海運造船合理化審議会、私どもそれぞれ作業をしている段階でございます。
  42. 輪湖元彦

    説明員輪湖元彦君) 普通合板製造業の昭和五十一年末におきまする年間の生産能力は四ミリメートルの合板に換算をいたしまして約二十四億六千万平方メートルございます。これに対しまして昭和五十二年の生産量は十八億四千万平方メートルでございまして、差し引き約六億二千万平方メートルのギャップがございます。今後の合板需要の伸び及び短期的な需給変動を考慮いたしましても、二十一億六千万平方メートル程度の年間生産能力があれば十分対応できるというふうに見られまして、現在日合連、日本合板製造組合連合会が行います改善事業といたしましては、現有生産能力の一二一%、三億平方メートルに相当する設備廃棄を行うことを計画している段階でございます。
  43. 安恒良一

    安恒良一君 ちょうど午前中二時間になりましたから、ここで一遍切っていただいて、質問の区切りがいいわけですから……。
  44. 福岡日出麿

    ○理事(福岡日出麿君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      —————・—————    午後一時五十五分開会
  45. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  特定不況産業安定臨時措置法案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  46. 安恒良一

    安恒良一君 それでは、午前に引き続いて御質問をしたいと思いますが、いま午前中に、どの程度設備廃棄を考えているのかと、こういう点についてそれぞれ担当局長さんからありました。ただ、遺憾に思いますのは、まだこれからだという業種が何業種かありました。私はやはりこの点は大変遺憾に——それはなぜかというと、何回も申し上げますように、この法案を提出するに当たってのバックグラウンドとして、また第二条の一項五号に基づいて、これぐらいの業種は予測されるということになれば、——そこまで話が出ているわけですから。そうしますと、予測される以上、大体見当でどの程度の過剰施設があるのかと、こういう点についていわゆる私はお答えがあってしかるべきだと思いますから、一遍ここのところ、もうダブらなくて結構ですから、過剰設備をこれぐらい廃棄をしたいというところは終わったわけですから、数字がまだ検討中という業界が何業界かございましたが、そこのところについて重ねて質問します。
  47. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 先ほど御答弁申し上げましたように、業界と、それから海運造船合理化審議会の議論と二つございます。現在、海運造船合理化審議会ではいまの部会を活用いたしまして、需給の見通し、それから供給量の見通しの、供給量の算定の準備作業をやっておりまして、本法案が成立いたしました暁におきまして、直ちに新しい対策部会を設け、さらにその下に小委員会を設ける等いたしまして、大体安定化の方策の基本的な事項については、六月末ぐらいを目途にそれぞれのところで詰めていきたいと、こう考えております。
  48. 安恒良一

    安恒良一君 いまの質問に関して、通産省関係で、数字が明らかにされなかったところがあるんじゃないですか。
  49. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) 段ボール関係につきまして、はっきりした数字を申し上げなかったように思います。繊維関係につきましては、大体のめどを申し上げたと思いますが、段ボール関係につきましては、先ほども申し上げましたように、目下需要見通しを含めましてさらに詰めておりますので、先ほど申し上げましたように、一〇%ないし二〇%前後ということで大体めどをつけて作業を進めておる、こういう状況でございます。
  50. 安恒良一

    安恒良一君 それなればまあ少し、一〇%から二〇%と言っても、これはもう倍なんですからね、設備廃棄のね。ちょっと話がラフ過ぎると思うんですよ。一〇%と二〇%では倍なんですからね。ですから、まあしかしこれはこれ以上追及しても、そこのところ数字が出なければやむを得ませんが、どうかこの点も、ちょっと大臣にお断りしておきたいんですが、私はきのうこれ質問とりにお見えになったときに、まだこれからもずうっと数字の話に入っていきますけれどもね、そういう数字はきちっと、きょう質問しますと、だからちゃんと計算して持ってきておってくださいと、それによって審議が延びることを私はきらいますと、こういうことで数字を通告してありますから、どうか数字の点については、これからも聞きますことについては、それぞれ関係局長は、質問とりに来た方からお聞きになっておると思いますから、きちっとした数字を言っていただきたいと思います。  そこで次に、このことについてお聞きをしたいんですが、いま私がお聞きをしました前段の中には、操業率を含めて廃棄をどの程度考えているかと、操業率をはじき出す場合に、ひとつやっぱり重大な問題は労働条件にあるんだ、こういうことで、たまたまぼくは段ボール原紙のことを引き合いに出して聞いたわけです。いま各局長が御答弁くださった中のやつにおいては、もちろんその操業率は計算をされていると思いますが、大体廃棄をこの程度やるんだということだけだったんです。ですからそれの出てくる小さい資料は持っているというふうに局長言われましたから、細かい資料を一々ここで言っていただいたら大変ですから、いわゆる操業率と労働時間の関係ですね、特に私がお聞きしたいことは、週休二日制に移行すると、これがもう先進諸国では移行していますし、わが国の場合でもこれは当然やらなければならぬことでありまして、いかに不況産業だからといってこのことは私は許されないし、また国際競争力の公正という観点からも許されないと思いますから、いま言われました設備廃棄をこれぐらい行いたい、行う見当だと言われたんでありますが、その場合の労働時間については、いわゆる操業率との関係でどういうふうに計算の基礎になるか、そこだけを簡潔に、この産業はこうなっている、この産業はこうなっているというふうにひとつ言ってください。
  51. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) いまお尋ねの数字につきましては、現在ここでは手元に持ち合わせておりません。  平電炉について申し上げますならば、先ほども申し上げましたように現在二千万トンあって、そのうちから平電炉分は三百三十万トンの廃棄をするということでございますが、その際に計算基礎として一体週あるいは一日何時間労働を前提にしておるかということは、調べればわかると思いますけれども、現在手元には持ち合わせておりませんので、御容赦をお願いいたします。
  52. 安恒良一

    安恒良一君 それでは議論が進まないわけですね。少なくとも何百万トン設備廃棄をするという計算の一つの大きい根拠が、私はやっぱり労働時間だと思うんです、労働時間。そういうものを全然いま手元にないとか、用意してなくて、きょうの私の質問に答えられるというふうにお考えになるのが間違いじゃないでしょうか。少なくとも過剰設備廃棄をする、その場合の廃棄率というものが当然論議になる。その廃棄率を出す場合には、どの程度のいわゆる労働時間なのかと、年間総労働時間なりそれから週休の問題、そういう問題が手元にいまないということじゃ困りますから、すぐそれは調査して答えてください。
  53. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 設備能力の算定方法についてお答え申し上げます。  アルミニウムにつきましては、アルミニウム電炉がございますが、炉ごとの使用電流掛ける理論析出量掛ける電流効率掛ける年間操業時間——この年間操業時間は三百六十五日掛ける二十四時間でございます——掛ける作業率というのがアルミの場合の設備能力の算定方法でございます。  次に、平電炉につきましては、製鋼一時間当たりの鋼塊量掛ける二十四時間掛ける操業日数掛ける作業率ということで算出をいたしております。
  54. 安恒良一

    安恒良一君 そんなのは答弁になりませんね。たとえばいまのいわゆる平電炉の場合でも、私がお聞きしていることは結局週休二日について、その計算のときに組み入れられたのかどうか、もしくは隔週でやられているのかどうか。これはいまのそれぞれ産業界の実態においても違うわけでしょう。そうしますとですね、アルミの場合には、いまあなたが言われたことは、これはもう年間フル操業ですわね。だから週休二日制は入ってないということはいまのでわかりました、それは。全然入ってないと。もう年間フル操業です。私はきょう大臣にも前段に聞いたことは、世界の傾向としては少なくとももう週休二日に移行しなければならぬのだと、だからどんな不況産業であっても、その方向に移行するという角度を持ちながら操業率を出したらどうかということを私は聞いているわけですよね。その中で、しかしそのことはさておいても、いま操業率を出されたときにどうかということで、鉄鋼の場合には年間稼働日数だけだと、こう言われているけど、その年間の稼働日数がどうなっているのかと、こういうことでお答えにならないとお答えにはならないんですよ、お答えには。だから、各いま挙げられたところの業種別——これはなぜかというと、この次に雇用問題が出てくるわけです、雇用不安が。そうすると、雇用不安と労働時間というのは相関関係にあるわけですからね。だからいずれきょう、この中で雇用問題についてまだ私から質問があるということもちゃんと通告してありますし、ですから、そういうものについてはきちっとやはり用意をしていただかないと、まさか幼稚園、一年生のように私が質問するやつを全部細かく、小さく言わなきゃわからぬようじゃ、お役人は勤まらぬと思うんですね。少なくとも操業率はどうなるかとか、雇用人員がどうなるかということを聞くということになれば、それとの関係の中で総労働時間をどう押さえるのか、それから稼働日数をどう押さえるのか、これは当然——たとえば生産計画を、いわゆる安定基本計画をお立てになるときでも、それは一つの重要なファクターであることは事実でしょう、これは率直に言って。ですからいま少し、いまのところの、いわゆる午前中の質問で明らかになったことは、特定不況産業設備廃棄の量については、大体これぐらいの設備廃棄をやりたいんだということ。しからばいま一遍聞きますが、その場合における総労働時間なり休日の問題なり、労働時間等はどういう計算になっているか、そこだけを答えてください。
  55. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) 繊維産業関係についてお答えを申し上げたいと思いますが、午前中の御審議におきまして過剰設備処理ということで、全体の需給バランスから見まして年間このくらいの生産量をカットせざるを得ないということで、おおむね合繊、綿紡、羊毛、紡績、それぞれにつきまして二〇%ないし三〇%のそれぞれの品種別の過剰をはじき出しておるわけでございますが、この過剰を処理するために幾らの設備の、フィジカルな意味で——過剰と申しましたのはいわば生産量の過剰でございまして、その過剰に相当する設備を落とすにはどれだけの設備を現実に落とせばいいかということは、先生御指摘のとおり、稼働日数あるいは総労働時間と非常に密接な関連があるわけでございますが、これは現実に各企業によりまして稼働体制というものはいろいろと、必ずしも斉一ではございません。また機械によりまして、合繊等におきましては連続運転をしないと非常に能率の悪いところもございます。  したがいまして、必ずしも一律にはじき出すということは非常にむずかしいわけでございまして、ともかくも生産量としての過剰をまず確定をする、そこからどの程度のフィジカルな意味で設備を落とすかということが出てくるわけでございまして、その後の処理等につきましては、安定計画をつくる過程におきまして細かな積み上げをするよりほかないだろう。これは三交代制あるいは二交代制、いま繊維産業におきましてはその辺のシフトも変動している状態でございまして、必ずしも一定の形をいまとっていないわけでございます。
  56. 安恒良一

    安恒良一君 これまた答えになってませんね。というのはね、衆議院でもやはり修正がされて、あの中に雇用安定ということを、「目的」の第一条以下にも衆議院修正では入っているわけでしょう。そうしますと、いまあなたが言われたように、とにかく生産量から設備廃棄だけをはじき出せばいいということじゃないわけでしょう。第一条の「目的」の中に明確に雇用安定ということが入ってくるわけです。そうしますと、少なくともそれは形態は二つあろうと三つあろうと、どのような時間がとられるのかということが。それと関係なくして稼働率が出てくるはずがないんですよ、稼働率というのは。そうでしょう。稼働率が出てこなくて、今度設備廃棄量は出てくるはずがないんです、これはね。  そうすると、あなたはたとえば一〇ないし二〇%とかなりラフな数字です。しからば一〇ないし二〇%の設備廃棄ということになれば、その場合の稼働率はどうなのか、その場合の労働時間は、年間一人労働者の総労働時間は何時間なのか、そしてそれは三直交代でやられるのか、二直なのか、四直交代なのか、それとも隔日、そういうものが基礎にないとあなたが言っている一〇−二〇というのは全くもうラフな数字で、そんなことの積み上げが全然ないというふうに聞こえますよ。そんなことでこういう重要な法律審議できないですね、私たちは。私はやっぱり少なくとも設備をこれだけ廃棄する以上は、それだけのやっぱり積み上げの中から考えていただかないと、まず廃棄するやつだけ決めておって、あと総労働時間なり、時間はそれによって割っていくというわけにはいかないのですよ。そんなわけにいかないんですよ、現場で生で働いている労働者にとっては。ですから、そこのところについてもう少しきちっと答弁してください。でないと、いまのようなことでいったら今度は人のところへいくとますます話がおかしくなってきます。どれだけ余剰人員が出るかという話、これから議論を進めていかなきゃならぬわけですから、ますます話がおかしくなってきますよ。
  57. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) 少し数字の説明等で混乱があるようでございますので、ちょっと丁寧に申し上げますと、先ほど申し上げました段ボール原紙について一〇%ないし二〇%と申し上げましたのは、その需給想定につきましてなお意見の相違がある。生産量の問題として需給想定として、あるいは将来の需要見通しと関連いたしまして、まだ確定するにちょっと至らないという問題があるという意味合いでございます。
  58. 安恒良一

    安恒良一君 じゃあ繊維はどうですか。
  59. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) 合成繊維等につきまして、二五%ないし三〇%と申し上げましたのは、需給想定から申し上げまして、合成繊維と申しましても、フィラメントからステープルからいろいろございます。したがいまして、それぞれにつきましてあるいは二〇%、あるいは二五%というものがございますので、それ全体としてひっくるめて申し上げまして二五%ないし三〇%と、こういう趣旨でございます。  これは要するに、生産量としてこれだけのものが過剰であるということを確定したわけでございまして、それを実現するために、いかほどの設備を具体的につぶすかということはまさに先生がおっしゃいましたように勤務体制といいますか、三直をとるか、二面をとるかというようなものと関連するわけでございまして、生産量全体としてこれだけは絶対過剰であろうと。ただし幾らの機械なり何なりをフィジカルにつぶすかという問題はまさにその労働条件、あるいは稼働日数というものと密接に関連するわけでございますので、そこのところは具体的なケースに即して、いわば連立方程式を解くようなことになりますので、そういうことで関連して具体的に詰めていかざるを得ないだろうと、こういうことでございます。
  60. 安恒良一

    安恒良一君 あなたが言われたのは需給想定のほかに、具体的に四十五万錘なら四十五万錘は廃棄すると、こういうふうに答えられたのですよ。量だけじゃないですよ、設備廃棄をする数も言われたのですよ。そこまで言われたら、私は少なくとも労働時間というものはやはりある程度きちっとしておかなければ、出せる問題じゃないんです。でなければこの法律の第一条に何と書いてあるかと言っているんです、私は。しかも、衆議院修正をさらにつけ加えて「雇用の安定」ということを明確に入れているでしょう、明確に。それなのにいまお聞きしてますと、いわゆるこれは需給総量を押えたのだ、需給総量を押えて、そして今度それから削減をする施設だけを押えたのだと。これじゃ議論が進められないですよ。  じゃ、その削減をした場合に、どれだけの今度は人が余ってくるかという議論になるわけです、今度は。どれだけの人が余ってくるかということになる。そういう議論にこれは発展をしていきますから、それじゃそこのところをあわせて聞きましょう。そのときにこの点は保留しておきましょう。あわせて聞きます。人が余ることはまさかできないとは言わないでしょうから。数が計算ができないとは言わないでしょうから。それはいまのところは保留しておきます、労働時間と人の関係がありますから。  そこで、この点は保留をしておきまして、次に進みたいと思いますが、この過剰設備処理は、私は率直なことを言って、設備量の減少ということにとどまらないんじゃないだろうか。場合によりますと、産業によっては業界の再編成とかもしくは大企業の支配強化、それから中小企業の淘汰、こういう形がいまお聞きをしました限りにおいて、設備廃棄していきますと、そういうことが起こり得る業界も出てきやしないかという心配を実は設備廃棄に伴って考えるわけです。特に問題になるのは、中小企業やそれから関連下請ですね、こういうことに対してもいわゆる経済的必然性という形で、整理が強行が迫られがちじゃないかというふうに考えますが、ここのところについてどういうふうにお考えをお持ちなのか、いまずっと業種では明らかになっているわけですから。それから、設備廃棄の量もほぼ皆さんの御答弁で明らかになった。そうすると、いま言ったようなことが起こりやしないか。たとえば、構造不況産業安定のために業界の再編成とか大企業の支配強化、中小企業の淘汰、そして、下請や関連業界に対してもそれが及んでいく。これは経済的な、生き残るという必然性といいますか、安定という必然性のもとで整理が迫られやしないか。こういう心配を実は私はするものでありますが、こういう点についてどうお考えになりますか。
  61. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいま御指摘のように、この特定不況産業指定になりまして、この法律の定めるところによりまして安定基本計画を定める。さらにその後、設備処理が進められるという段階で、一つ業界の再編成というようなかつこうがあるかどうかということでございます。私は、業種によりましては単にその業界に属している事業者が一率に設備処理が進められるということではなしに、ある程度一律処理もむずかしい業界業種の実態によってはあると思います。そういたしますと、全体で業界として、業界の協力、話し合いができまして進みます場合にも、いまのままの形でそのまま全部の業種が継続していけるということができない業種、別の言葉で言えば、再編成というものが進められている業界というものはあり得ると考えております。  それから第二以下、大企業の支配強化あるいは中小企業の淘汰あるいは下請関連事業への影響という問題でございますが、私ども基本的には、いわゆる構造不況業種は非常に長い不況の中で、単なる循環不況の問題だけではなしに、つまり過剰設備を抱えるということによりまして、それだけ問題が深刻化をしておるわけでございまして、むしろこのままほおっておくことが、ただいま申し上げましたような下請問題あるいは関連事業者への影響問題等、むしろ非常に大きな影響がある。したがって、この業界設備処理を進めることによって、もちろんこの設備処理のやり方なりテンポというものにはいろいろそういう影響を考慮をして安定基本計画を作成し、それを実施していかなければならぬと思いますが、やること自身が関連企業なりあるいは下請企業へむしろいい影響を与えるということが、この法律一つのねらいであると、私どもこういうふうに考えておるわけでございます。  なお、業界の内部の態勢あるいは業界の組織のあり方によりまして、一つ業界の中で大企業と中小、それ以外の企業との関係の問題、これは設備処理の進め方等につきまして問題を抱える業界もこれはあり得ると思いますが、これは一つは安定基本計画の中で設備処理の方法、期間等を定めるわけでございますが、このときに、関連の方々あるいは学識経験者の間で十分議論をして、その辺の問題点を十分議論をすべきでありますし、私どもはそういうことで進めていくべきであると思っております。同時に、下請関連事業への問題につきましても、同じような意味で、特にそういう業界構成、産業構成がございます事業の共同安定基本計画をつくり、設備処理を進めるに当たりましては、そういう点が十分議論が行われ、その点の配慮の上でつくられるべきである。こういうふうに考えておるわけでございます。
  62. 安恒良一

    安恒良一君 これもまた一般論、抽象論のお答えですが、そうしますと、いま産業政策局長が言われましたように、いわゆる業界の再編成をも考えなきゃならぬ業種もあるということですが、具体的にはそれはどういう業種なんでしょうか。いま九つぐらい挙げられました中で、具体的には業界の再編成も考えなきゃならぬ、でなければなかなか設備廃棄がうまくいかない、こう考えられている業界は何でしょうか。
  63. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) あるいは藤原局長から御答弁を願った方がいいかもしれませんが、私、その一つの例としてたとえば化繊業界、いろいろ先ほどからのお話にございますように、過剰設備処理問題というのが私どもと一緒に検討が進められておりますが、たとえば、化繊の設備というものが、果たして一律の設備処理個々企業ベースに分けたときにできるかどうかというような問題がまず基本にあると思いますが、なお、業界の中でもそういうものを踏まえまして、化繊業界の今後のあり方というようなことが議論をされておることは御案内のとおりでございます。たとえば、そういう意味で化繊業界等は単に設備を一律に廃棄するという問題のほかに、将来の方向を踏まえたいわゆる再編成の問題というようなことも議論されるのではないかと私は考えております。  そういう意味で、この安定基本計画に定めます事項、三条の二項の一号から三号まで挙がっておりますが、三号の中で「事業の転換その他の措置に関する事項」という三号がございますが、私どもはここで、たとえば事業の転換あるいは生産の委託関係あるいは共販会社の設立というような販売関係の提携の問題、さらに進んでは合併とかいうような問題も業種によっては、ただいま申し上げたような意味で、この設備処理を進めていくこれからの方向として、議論になる業界があるのではないか、こういうことでございます。
  64. 安恒良一

    安恒良一君 そうすると、さしずめいま問題になっている十幾つかの業種があるんですが、その中で、業界の再編成などというのは化繊業界だけと承っておっていいわけでしょうか。
  65. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) アルミニウム産業につきましては、アルミ製錬業でございますが、再編成をしなければ設備処理ができないのかといいますと、それは再編成がなくても設備処理は可能であるというふうに考えます。しかしながら、設備処理とは別に再編成が必要であるかどうかという問題がございます。これにつきましては、現在のアルミニウム産業が置かれておる状況から考えますと、再編成をした方が好ましいのではないかというふうに私どもでは考えておりますけれども、しかしながら、おまえとおまえは合併しろとかどうとかいうことは、政府が言うべきことではありませんから、それは一応業界ベースでそういう話が進むことを期待をいたしておるような状況であります。  次に、平電炉につきましては、これも平電炉の再編成をしなければ設備処理ができないかというと、そういうことではございません。しかしながら、現在、平電炉企業の中には、倒産寸前のものが幾つかございまして、そのまま放置すれば倒産してしまうというようなものにつきましては、いろいろ企業系列等もございますので、たとえば新日鉄系の平電炉の統合であるとかいうようなことが、民間ベースで行われておるような状況でございます。
  66. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 造船業の場合には、一律に操業度を落とすということにつきましては、五十二年度、五十三年度とやってまいっておるわけです。したがいまして、今度の法律案に基づいて検討をされるべき安定基本計画の中では、まず設備処理の問題が第一でございますが、それに関連いたしまして、いわゆる構造改善といいますか、再編という言葉が、どこまでどういう内容かは別といたしまして、たとえば過当競争防止のための窓口の数を減らすとか、こういった問題も行う必要があるんではないかということで、業界の中ではそれぞれのグループに分かれて検討もしておりますし、全体の問題としても検討を進めております。したがいまして、今後、海運造船合理化審議会の場でもその議論は当然行われてくるものと考えております。
  67. 安恒良一

    安恒良一君 そうしますと、いまお聞きをしました限りにおいては、まず合繊、それからアルミ、それから平電炉、それから造船産業が、場合によればこれは業界の再編成もしくは望ましいと、これは自主的に決めることだけれども望ましいと、こういうふうに承っていいわけですね。以上だけですね、いま当面対象になっているところで。よろしゅうございますか。そこのところをはっきりしてください。よろしゅうございますか。
  68. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私ども構造不況業種を抱えておる局長おられまして答えがございませんから。——従来の私の受けております感じから申しましても、大体ただいま申し上げましたものがそういう可能性を持っておる、今後検討される問題として可能性を持っておると、こういうふうに考えております。
  69. 安恒良一

    安恒良一君 はい、わかりました。それじゃ、その点はそのように承っておきます。  続いて、そこで問題になりますのは、少し中小企業や下請関連の関係を、今度はその関係でお聞きをしたいと思いますが、これは局長答弁の中にもありましたように、たとえば合繊なんかの場合に、原糸段階設備廃棄は当然川の中とか川下、いわゆる繊維の中小第二次加工部門と非常な関連を持つと、こういうことを言われました。これは、私は合繊だけではないというふうに思うわけです。  そこでお聞きをしたいのは、本法が成立をして予想どおりに過剰設備廃棄された場合、いわゆる工場閉鎖等で関連の、いわゆる川下とか川中とか言われています中小企業に及ぼす影響はどの程度あるでしょうか。これも、いま言われた各関連も、中小企業の非常に関連のある産業とないのもあります、これは率直に言って。ありますが、かなりいま対象になっておりますところの、この法律に明記されたところ、もしくはこれからやろうとされているところにおいて、私はいわゆる設備廃棄する、もしくはそのことによって一部工場閉鎖等も起こってくると思います。それから工場閉鎖に至らなくても、本体の設備廃棄されることによって関連の中小下請等に及ぼす影響はかなりの大きいものがあると思いますが、こういう問題についてはどのように考えられているか、それをまた、ひとつ言ってください。
  70. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) いまお話しの中小部門への影響のお話でございますが、中小企業関係が非常に広範な分野を占めておりますところの繊維産業についての御説明を申し上げたいと思いま  す。  繊維産業構造不況問題につきましては、午前中冒頭、繊維産業全体のあり方についてるる御説  明を申し上げた次第でございますが、最終需要の冷え込みというふうなところから、繊維産業全体として非常な供給超過ということで需要不足状態に陥っておるわけでございまして、したがいまして、まず最初に、末端のいわば川下部門に問題が起こったわけでございます。したがいまして、実は繊維につきましては、すでに綿におきましても、あるいは合繊におきましても、あるいはちょっと関係違いますが、絹織物関係につきましても、中小企業の分野でありますところの二次製品の部門あるいは織物部門という部門におきまして、織機あるいはメリヤス機械、こういうふうな部門におきまして、広範な振興事業団の融資によりますところの設備の共同廃棄事業が、すでに五十二年度よりスタートをいたしておる次第でございます。  ここでもちまして、大体これも約二〇%程度設備廃棄が着々と進行いたしておりまして、したがいまして、これが進んでまいりますと、いわゆる川上部門といいますものがアンバランスに大きくなるということに当然なるわけでございまして、その部門での非常な供給超過という問題が当然起こってくるわけでございます。したがって非常に糸段階の乱売というふうなことから業界の混乱が起こるわけでございまして、したがって、実は中小企業の方の手当てが先に先行いたしておるわけでございます。したがって、それに見合ったいわば繊維産業で言えば川上部門での設備の調整というものがどうしても必要になってくる。こういう構造問題になっておるというふうに御理解いただきたいと思います。
  71. 安恒良一

    安恒良一君 繊維の状況は、私もそういうものを研究して知っていますが、私がいまお聞きしたのは、いわゆる関連工場閉鎖もしくは過剰設備廃棄等で、本法案対象になっている各産業中小企業に及ぼす影響はどの程度あるのか、またそれに対するための対策はどのように用意されているのかということで、繊維のことはいまお聞きしました。わかりました。それ以外のところについてどの程度影響が出てくる、またそれに対する対策はこういうふうにするということについて、各産業別にひとつあれしてください。
  72. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 平電炉につきましては、平電炉業七十四社のうち三十九社が中小企業でございます。まず、この中小企業経営が危機に瀕しているわけでございますが、これにつきましては、小棒の価格が現在やや回復をいたしましたけれども、過去三年間にわたりまして、一トン売れば一万円損をするというような厳しい状況が続いておりましたので、こういうコスト価格の逆転現象を是正するということが、平電炉に属するところの中小企業経営健全化のために、まず必要なことであると、そのために構造改善を行う必要があるというふうに考えております。  次に、関連の中小企業でございますが、平電炉関連の中小企業は、上流に参りますとくず鉄回収業がございます。これは大部分中小企業でございます。ところが、このくず鉄回収業者は平電炉業といわば運命共同体になっております。平電炉の主要な製品である小棒、形鋼等の景況が回復いたしませんと、くず鉄の値段が著しく安くなってしまう。たとえば、昨年の秋ぐらい一万六千円というような値段でございましたが、そういう値段ではくず鉄回収業者の経営は著しく困難でございます。したがいまして、平電炉構造を改善し、平電炉業の経営を健全化するということが、上流の中小企業であるくず鉄回収業の経営の改善につながるものでございます。  次に下流でございますが、下流にはこの小棒を使うところの建設業者がございます。この建設業者の中には、大手もあれば多数の中小企業も入っておるわけでございます。先ほど来申し上げておりますように、過去三年くらいの間は平電炉業が一トン売るたびに一万円損して売るということは、いわば平電炉業が一トン売るたびに下流の方の建設業者の方に一万円ずつ差し上げておったというようなことでございまして、大いにこれは下流の中小企業に裨益しておったと思いますけれども、しかしながら健全な現象であるとは思われませんので、小棒の値上がりということによって、下流の建設業者にある程度の影響は及ぶとは思いますけれども、これはしかしコスト割れ販売をなくすということでございまして、その限度における影響はこれはやむを得ざるものではなかろうかと思っております。しかしながら、小棒の価格が暴騰をするというようなことでございますと、言うまでもなく下流の建設に大きな影響を及ぼすということになりますから、そういうことのないように設備廃棄あるいは不況カルテルの運用等に当たりまして、万全の注意を払いたいと思うわけであります。  それから次にアルミでございますけれどもアルミは六社の大企業から成っております。上流はボーキサイト、アルミナの輸入でございます。あるいは電力企業でございます。ですから、そこでは中小企業の問題はございません。下流につきましては、これまたアルミ圧延業者というのは大手企業でございまして、そこでも直接中小企業問題はないと考えております。
  73. 安恒良一

    安恒良一君 ないところはいいんですよ、あるところだけ言ってもらえたら。
  74. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 造船について御説明いたします。  造船の場合に、中小企業関連工業の問題のうち、造船業固有のものをまず申し上げますと、約千五百社ほど造船業ございます。この中で、いま私ども設備処理を含む構造改善の中に対象として考えるべきと思っておりますのは外航船、いわゆる国際航路に従事します外航船の建造を中心にしました四十五社、あるいはもうちょっとそれに加わるかと思いますが、そういうところでございまして、それ以外のいわゆる中小造船所は、これは国内の内航船なりあるいは漁船なり、あるいは遊漁船等をつくっておりまして、これはそう大きく構造問題として取り上げる段階には至っていないと、こう考えております。それでは外航船等をつくっております約四十数社、あるいはそれに若干加わる造船業につきまして、一つは、大体総船価のうちで七割程度はいわゆる外部からの買い物でございます。   〔委員長退席、理事福岡日出麿君着席〕 そのうちで二割前後はこれはいわゆる高炉メーカーからの厚板等を中心とします鋼材ですから、いまの問題とは関係ないと思います。  それから、五〇%近いいわゆる関連機械工業でございますが、これはエンジンその他をつくっておりますのは総合機械メーカー等であり、かつ、かなり陸上の機械の生産もやっておりますので、これは主としていわゆる対象産業種の転換といいますか、そういうもので対応していくという方向で業界も考えております。  先ほど申し上げました、たとえば船に特有なプロペラでありますとか、あるいはチェーンとかアンカーでありますとか、あるいは主機関製造業のうちの一部の中型の主機関をつくっているところとか、これは造船とともにもろに不況の影響をこうむるわけでございますので、これは構造改善対象とする必要があるかどうか、業界においても検討をしているところでございます。  それから、造船所の構内で働いております下請関連事業者でございます。これは溶接技量を持った者、あるいはガスとかその他もろもろの技量を持った関連下請事業者が造船所の構内で下請として働いているわけです。この点で一番私ども心配をしておったわけでございますが、たとえば五十二年の十二月末で四十九年十二月末と比べますと、約五万一千人ほどの従業員の減少になっておりますが、この中で、従来見られました下請の減少が多かったのが、五十一年十二月以来からは本土と下請工との減少の絶対値はほぼ等しくなってきたということで、そういう意味におきましては、他のたとえば建設でありますとか、その他鉄鋼構造物の製造業者でありますとか、こういったところに移っていかれたということで、そういう意味ではこれからまた厳しい事態にはなりますが、その際は構造改善計画と並んで、需要の新しい分野への展開等もあわせて考えていく必要があると、こう考えております。
  75. 安恒良一

    安恒良一君 もう少し声を大きくしてください、私の声聞こえるはずですから。  いま御説明がありましたが、そうすると、いま御説明がなかったところは、本法案が成立をして予想どおり過剰設備廃棄された場合も、余り関連中小企業に及ぼす影響はないというふうに承っていいんでしょうか。たとえば塩ビ関係であるとか、その他いま御説明のない業種がございましたね。それはそういうふうに受け取っておっていいんでしょうか。
  76. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 塩ビ等につきましては、まだ設備廃棄の規模その他につきましてどの程度になるか、業界で目下相談をしておるというところでございますので、現段階におきまして、どの程度の影響があるかということにつきましては、われわれとしましても申し上げにくい状況でございます。
  77. 安恒良一

    安恒良一君 何回も言っているように、同じことを言わさないでほしいんですがね。それでは答えにならないんですよね。午前中からの質疑応答よくお考えいただければ、なるほど業界はまだそういう相談しているところも承知の上で、しかし、あなたたちがこの法案を立案をされるに当たってどうお考えなのかと、いわゆる背景の問題としてどうなるんだという中から、たとえば化学肥料とか塩ビ樹脂ですね、等々ずっと言われたわけでしょう。そうして、こういう話を詰めていきますと、いや実は業界の方でまだどの程度やるかということを考えているんだから、それがわからないということでは議論がかみ合わないんですよ。少なくともこの法案のバックグラウンドということの中でお考えになった以上は、私はまだ最終的に設備廃棄の量が決まるのは、これは業界がまず自主的にやることなんですから。しかしあなたたちとしては、大体私がずっと聞いたときにはこれぐらいの設備廃棄が必要じゃないか、もしくは需給のバランスがこれぐらいあるじゃないかと、こういうことをずっと答えられたわけでしょう。そうしますと、今度はそれの答えの上に基づいて、関連の中小企業なり下請企業にどういう影響を与えて、またそれに対するどういう対策をお持ちかということについては答えていただかぬと、そこになると業界が決めてねえからどうにもならぬということでは議論かみ合いませんね、これ。その点どうですか。
  78. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 午前中にもお答え申し上げましたとおり、設備廃棄量につきましては第一義的に業界判断する問題であると。その量が決まりませんと、われわれとして定量的にどういう影響があるかということを申し上げにくいわけでございます。ただし、定性的に申し上げますならば、塩ビにつきましてはそれが関連の中小企業等に大きな影響を与える性質のものではないと考えております。それから肥料でございますが、肥料もこれは生産者もそれからユーザーも——ユーザーは全農でございますから、これまた大きな中小企業問題を引き起こすことはないというふうに考えております。
  79. 安恒良一

    安恒良一君 そんならそれで答えていただいたらいいんですよ。私も民間出身ですからね、総評に長くおりましたから、肥料がどうだの、塩ビがどうなんて知っているんですよ。だからそんならそのように素直に影響ないならないと。私が間違えば間違いだと、そういうふうに議論を進めてください。こちらがつり込まないと言わないということじゃ、時間がいたずらにたつばかりじゃないですか。そのことについて、いま御答弁のよし悪しは別にしまして、お聞きをしておきます。そういうふうに聞きました。  そこで私は、次のことをお聞きをしたいんです。いわゆる造船業のケースでちょっとお聞きをしたいんですが、いま造船業問題について船舶局長から答弁があったんですが、造船産業のケースでは大手の船台では中小の船はつくれるわけですね、これ。ところが中小の船台では大きな船をつくることはできないわけです、これは。ですから従来までは分野別に受注調整を、行改指導等で採用されてきたと思うんですが、今度のこの法律関係の中で、分野問題についてはどう扱われる考えなんですか、この法律との関係で分野問題についてどういうふうに扱われるか、お考えなんでしょうか。そこのところにいわゆる中小企業にしわ寄せのないやり方について、具体的にどういう施策が用意されているのか、その処置についてお伺いをしたいと思います。
  80. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 先生御指摘のように、大型の建造船台あるいは大型のドックでは中小型もつくれますし、その逆はできないというのは仰せのとおりでございます。そこで従来、私どもが中手造船業に対する配慮といたしまして、一つは操業規制のときに総操業時間の短縮を行ったわけでございますが、専業度の高い中手を二つのグループに分けまして、それぞれ平均といたします操業度短縮の率よりも多くしてあると、こういうのが一点でございます。したがいまして、その点に関連いたしますと、大手の造船所といえども総操業時間を超えて操業をしないという業界のコンセンサスがありますから、その意味で全体の生産量が規制されることになります。  それから第二点の方法といたしまして、大型のドックで、たとえば五十万トンなり、八十万トンのできますドックで現在行われております貨物船を建造いたすとすれば、並列に六隻なりそれ以上の数を並べて、同時に建造できるわけでございますが、それを大型ドックといえども同時には一・五隻以上は建造しないという並列建造の制限をしております。こういうことでございますが、今後のこの法案に基づきます設備処理に当たりまして、どういう中手造船業に対する配慮をするかはこれからの検討の課題でございますし、それぞれ業界等においても、この問題については十分念頭に置いて、コンセンサスづくりをやっていくことになろうかと期待しております。
  81. 安恒良一

    安恒良一君 いまもちょっと言ったんだが、公取委員長はどんなおそくても二時半までに来ると言っておきながら、もう二時半過ぎていますね。質問できません。委員長がわびられたから私は進めたんです、二時半までに来るからと。恐らくあれ講演していると思うんですよ。そんな不まじめなことでどうして進められます。だめです。
  82. 福岡日出麿

    ○理事(福岡日出麿君) それでは、暫時休憩いたします。    午後二時五十一分休憩      —————・—————    午後二時五十六分開会   〔理事福岡日出麿委員長席に着く〕
  83. 福岡日出麿

    ○理事(福岡日出麿君) ただいまから商工委員会を再開いたします。
  84. 大谷藤之助

    大谷藤之助君 公取委員長にお尋ねをしたい。  本日の審査に当たって、安恒委員から事前に政府委員として出席要求をされておったにもかかわらず、本日ただいま御出席に相なった。  実は、いままで話を聞いておりますというと、昨日は連絡なしで、けさになって、しかも午前の終わりころ安恒委員に連絡があって、公取委員長の都合についてお話があって、一応安恒君もそのことは承知の上で、しかも、あなたの方は大事な会合は一時半からあるけれども、それはお断りを申し上げて本委員会に出るということで了承を一応得て、いま質問をしておられました。  ところが、一時半になって公取の職員から連絡を得たところでは、一時半で——二時半でないとここに着けないということで、断りをするのにそんなに時間もかかるわけはなかろうということもあったわけでございますけれども、一応質疑者の方では、それでは質疑をやりくりして公取委員長の出席を待つということでもう二時半過ぎて、いま三時に相なったわけでございます。  その間に与党の理事としては公取の職員に、公取委員長がなるべく速やかに、このままでいくというとまた二時半の時刻を過ぎるぞという注意を指摘したけれども、その効果なしで、ただいままで一体断りに行ったのか、何をしておられるのか、どこにおるのか、赤坂の近所ということですから至近距離だから、もう当然出て来られると思いながら待っておって、出られない。政府委員として要求されておった。さような事故があって出られないということは、きょうになってわかったことではないと存じます。そこら辺の御都合は当然委員長にも与党の理事にも質疑者にも、通告が事前にあってしかるべきでございますが、さような処置はとられていない。まことに遺憾千万でございます。  しかもまた、曲げて委員会を始めておられるにかかわらず、二時半と言いながらいま三時の時間、余りにもどうも国会を軽視したという、これは与野党の皆さん方、委員の方は全員さよう思っておられるところで、公取委員長のさような国会に対する政府委員としてのあり方については、私は非常に不満とまた遺憾の意を表明するものでございます。厳重に注意を指摘しておきたいと思います。
  85. 安恒良一

    安恒良一君 私は、与党の理事から厳重な注意——事実関係をちょっと聞いておきたいと思うんですがね、私はきのう質問通告をいたしまして、きのうの三時ごろでしたか、公取からもお見えになりまして、こういうことについてお聞きをしたいと、そして御出席いただけますかということを確認しました。そのときは御出席いただけるということで、何らございませんでした。たとえばきょう運輸省は、運輸大臣はどうですかと言ったら、実はこうこうこうで委員会がありますとか、労働省は社労日でありますと、わかりましたと、それならば関係局長にしてくださいと、そうしたら、いや実は局長もこうして大臣のお供していますというところがあった場合には、私は、審議官で結構でございますということで、労働省なんかは審議官がお見えになっています。ですから、私は権威主義じゃありませんから、国会の御都合やその他やむを得ない公用で出られないというときには必ずしもこだわりません、私は。いわゆる担当審議官でも結構だと。  ところが、公取委員長の場合にはそれがなかったわけですね。それで私が、朝、一生懸命質問しているときにもメモが来たわけです。そのメモに何て書いてあったかと言ったら、あなたは講演会と書いてあったんですね。講演のために一時からここの問をあけてもらえないか、ときた。そこで私は事務当局に言ったわけです、それは困りますと。講演というのと国会の要務がどちらが優先するのかと、こういうことなんです。それで、昼休みになってあなたのところの課長以下が私のところ——エレベーターのところにおいでになりまして、何とかしていただきたいと言うから、それはだめですと明確に言いました。私は、だめですと明確に、そういうことは許せませんと。もしもそういうことを認めますと、今後ちょいちょいやられる、そんなことを。ですからだめですと断っておきました。そして、昼食が終わってここに入ってきた。入ってきたときに今度また重ねて要請があったことは、あなたからだめだと言われたから、講演する相手に断りに行っていますと言う、断りにですよ。断りに行くのに何でそんなに時間がかかるんですか。場所は赤坂だと言っている。あなたは講演をしてきたのじゃありませんか。もしくは座談をしてきたのではありませんか。これはうそを言うと後でわかりますよ、後でわかることなんです。断わりに行くと。本当に断られるのにそんなに時間がかかったんですか。いかに車が込んだからといって、込んだからといって、赤坂ということですから、場所が。赤坂のどこか知りません、事務当局は赤坂と言っていますから。国会と赤坂の距離でそんなに時間がかかるはずがない。そういう事実関係について明らかにしてください。
  86. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 一言釈明と陳謝をいたしたいと存じます。  いまお話がございました問題でございますが、率直に申しまして事務当局の連絡不手際でございまして、この辺は大変申しわけないと存じております。  で、事実関係につきましてお尋ねがございましたので、正確にお答えを申し上げたいと思いますが、場所は赤坂ではございませんで、狸穴のアメリカンクラブでございます。これは数カ月前から、実はある経済人と私が対談をいたしますのを、大ぜいの人間に聞かせるという企画でございまして、中には地方から出てこられる方もおりますから、講演というふうに申し上げたのは不正確でございまして、私が対談をいたしますのを大ぜいの人間に聞かせると、こういう企画でございまして、場所は狸穴のアメリカンクラブでございます。  それから時間は一時半ではございませんで、二時でございます。で、二時ちょっと前にお許しを得まして、二時ちょっと前に参りまして、まだ十分集まっておりませんで、二時少し過ぎから始まりまして、お断りをいたして、お断りをいたすついでに、率直に申しまして十分ぐらいの話をいたしました。それからすぐ車で帰りましたら、どういうわけか、狸穴から虎の門の間が大変込んでおりまして、こちらに着きましたのが二時四十五分ぐらいであったと思います。  事実関係は、正確に申しますとそういうことでございまして、いずれにしましても、委員会の審議に御迷惑をかけたことは大変申しわけないと思っておりますから、謹んで陳謝をいたしたいと思います。
  87. 安恒良一

    安恒良一君 いや、事実関係だけは明らかになりました、しかし私は、やはり事務連絡が不十分ということでは困ると思うんですね。あなたが言われたように、数カ月前から明らかになっていることが、どうしてけさになって、しかも、けさになって、たとえばきのう私の出席要求したのは三時過ぎなんですから、あなたの耳に入るはずです。そうして、その中であなたが、いや実はということで、事務当局がきのうのうちならきのうのうちに私のところに、実は安恒さん、あのときはそう言ったけれども、公取委員長はこういう重要な仕事で行くから御勘弁願いたいということがあれば何でもないことなんですよ、これは。私は、けさになって言われるということは、どうもわからないんですね。だから私はやはり国会審議を軽視をしてはいけないと思う。一遍出ると約束したら、そういうものについては明確に断るべきだと思うのです。それが公人じゃないですか。あなたは国会承認人事でなられている公取委員長ですから、だからそういう点について、しかもいま私が問い詰めたらはっきりしたわけでしょう。やはり対談に行っておられるわけですよね。断りに行くと言っている、事務当局は。これもまたうそなんです。断りに行くと言って断りに行くのにそんなに時間がかかるはずなんかないのであります。対談すれば、それは何らかの議事録はすぐわかるのだから、そんなことは。そういう点について私は大変遺憾に思いますし、私は率直に言って、公取委員長に対する質問は、こういう雰囲気の中でやることはこれを遠慮したいと思う。  遠慮するというのは、私はこの点は保留します。ほかのことをやります、きょうは。と言うのは、大変不愉快なんです。言われたことが、事務当局が私たちに、またいまさっき委員長にしゃべったことども中身が違って大変不愉快です。ですからこの問題は、いずれ議運なんかでひとつ議論していただきたい。国承認人事ですから議論していただくということで、その処置が決まって——公取委員長に関する質問事項だけは保留をして質問をさしていただきたい、こう思います。(「理事会やろうよ」「委員長どこへ行った、大事な問題ですから。委員長どこへ行った。」と呼ぶ者あり)   〔理事福岡日出麿君退席、理事大谷藤之助君ますよ。質問はやりますが、公取委員長に関する質問は外しますと言っている。
  88. 大谷藤之助

    ○理事(大谷藤之助君) 保留しないでやっていただくわけにいきませんか。
  89. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 理事会やりましょう、だめだよこんなことでは。  いまのあなたの、公取委員長の、事実関係を含めてのお答えになったけれども、それは理由にはならないよ。委員長が自分の部下を統括できないでどうするのか。公取委員長なるものが国会で重要法案を抱えて、しかも不況という最重大な課題だということはあなた通告でわかっているだろう。しかも私が言いたいのは、断りに行くのだったらだれだっていいんじゃないか。それが悪かったのは、ぼくは事務レベルだけでないよ、公取委員長としての国会に対する責任感、国会に対する基本的な姿勢が私はなっていないと思う。そういう意味でぼくは安恒君の言うとおりですよ。  きょうの質問は、私は理事としてもこの質問保留して、改めて理事会でこの問題は後日、二十五日改めて質問することをちょっと明らかにしていただきたい。
  90. 大谷藤之助

    ○理事(大谷藤之助君) ただいま対馬理事から御発言がありました。  なお、安恒委員の公取委員長に関する質問は本日は残して改めて質疑をする、保留ということで委員長も了承をいたします。  重ねて橋口委員長に、大変あなたは急いで来られたかもしれませんが、国会の場についてはほかの公取委員長さんよりも長年にわたってよく御承知の国会の場でございます。今後重ねてこういうことのないように、ひとつ事務当局にも庁内の連絡事項については遺憾のないようにやっていただきたいと思います。  それでは質疑を続行していただきます。  特定不況産業安定臨時措置法案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  91. 安恒良一

    安恒良一君 さっきの質疑応答の中で、一応設備廃棄をされた場合に、関連中小企業に与える影響についてということについて議論をしておった最中でありますが、率直に言ってなかなか問題が明確にならないところもあります。ありますが、これもこれ以上やりますと、時間をとりますから私は続いて次の問題に入っていこうと思います。  問題は、この法律が成立をして、予定どおりに過剰設備廃棄をされた場合に予想されるいわゆる離職者の数はどの程度に見込んでいるのかと。これはあえて私が見込んでいるというのを聞いているのは、申し上げましたようにまだこれから業種間で相談をするなどという答えが返ってこないように聞いているわけですから、各業種別に、本法対象業種別にひとつまず労働省の方から明らかにしてほしい。
  92. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) ただいま、この法案予定どおり実施された場合の離職者の見込みについてお尋ねがございましたけれども、現在の段階で、この離職者の発生の見込みにつきまして見込みを立てますことにつきましても、実はこれらの産業をめぐります今後の経済状況の推移がどう動くかとか、あるいは個々企業によりまして、これらの産業に属する企業経営の実態等によっても異なりますし、また、解雇等の問題は労使間で交渉されるような事項にもなりますので、そういう点から見まして、この離職者数を見込むということは非常に困難でございます。  ただ私どもとしましては、離職者の見込みが幾らかというようなことよりも、問題は   〔理事大谷藤之助君退席、委員長着席〕 この設備処理等が実施されるという計画なり実施について、早期に情報を把握して関係の労働者についての雇用の安定を図るということが基本でございますから、そういう点につきましては関係省庁、関係機関と十分連携をとりながら、雇用の安定に努めてまいりたいということで考えておるわけでございます。
  93. 安恒良一

    安恒良一君 全然答えになっておりません。  衆議院でもこの議論をされまして、第一条以下に雇用安定に関する追加があったことは谷口さんも御承知のとおりだ。そうしますと、一応通産省なり関係各省から設備廃棄量もしくは生産量について明らかにされているわけですね。そうしますと、それから直ちにそれは解雇につながらないにしても、どれだけの余剰人員が出てくるのか。それはなぜかというと、労働集約産業とそうでない産業がありますから、そういう場合には配置転換等もきく場合もあるわけです。だから、私はどれだけの余剰人員が今回——きょうの朝からあなたも審議を聞いておられてわかると思いますが、本法指定されている業種、さらにこれから指定をされるであろうという業種、それに対してそういうものが全然予測が立ちません、それではどうして雇用安定ができるんですか。出たとこ勝負で、出たら出たでそこで考えるということでは、雇用安定にはならないじゃないですか。  ですから重ねて聞きますが、たとえば平電炉で三百三十万トンなら三百三十万トンの廃棄を行っていく等々ずっとありました。それに基づいてどれぐらいの余剰人員が大体出てくるのかと、こういうことについて労働省が全然見当がつかないと。それは今後の経済情勢とか生産量を見なきゃならぬ、そんなばかなことないじゃないですか。少なくとも設備廃棄するのは、そういうことを勘案をしてこれぐらいの設備廃棄しようということになるわけでしょう。そうするとそれに基づいてどれだけの余剰人員が、直ちに解雇になるか、配置転換になるか、いろいろそれはあります。しかし、そういう点について労働省が全然わからなくてどうして労働行政、それから雇用安定ということができるんですか。重ねてお聞きします。
  94. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) この法律に基づきます設備処理等によりまして、関連する業界の労働者がかなりの影響を受けると。それはすぐ解雇につながらない場合もあると思います。そういう相当数の労働者が影響を受けるということは私どもも認識いたしまして、それに対してどういう雇用安定のための対策を打つかということでございまして、概括的に、たとえば繊維とか平電炉等につきましては、すでに過剰設備を抱えて他の部門への配置転換とか関連会社への出向とか、いろいろ行われておりますし、けれども、そういう関係からそれほどたくさん出ないんじゃないかとか、あるいは化学肥料塩ビ等について配置転換、出向等でかなりの従業員の離職につながらない措置が可能じゃないか。そういうようなことにつきましては、関係の省庁と連携をとってやっておりますけれども、どの業種でどれだけというようなことにつきましては、先ほど申し上げましたとおりでございまして、同時に労使の交渉事項等にも関連いたしますし、必ずしもここで、あるいはそういう数字を別の場でも、どのくらいというようなことを表に出すのも必ずしも適当ではなかろうというようなことも考えますし、はなはだむずかしい問題であろうかと思うわけでございます。
  95. 安恒良一

    安恒良一君 私はどうしても納得できません。それではこの法律をつくる意味がないじゃないでしょう。この法律は、何回も言いますように、ただ単に特定不況産業を安定をさせるために設備廃棄だけをうたっているわけじゃないんですよ、設備廃棄をうたっているわけじゃないんですよ。そうしますと、いわゆるさらに衆議院でも問題を明らかにされましたように、「雇用の安定及び関連中小企業者の経営の安定に配慮しつつ特定不況産業における不況の克服と経営の安定を図り、もって国民経済の健全な発展に資することを目的とする。」と、こういうふうに「目的」に書いてあるわけです。そうすると、いまあなたが言ったように、何々であろうとか、であろうなんという話はいけないんです。少なくとも関係省と、通産省農林省、それから運輸省との間にどれぐらいの大体の、たとえば造船業界であるならばどれぐらいの余剰人員が出るだろうか、平電炉であればどのくらいあるだろうか、アルミだったらどのくらいぐらい、おおよそ見当的に出るんではないか。そのうちで社内にいわゆる他に配置転換ができるのはどのくらいだろうかという見当を、全くあなたつけないままにいわゆる労働行政ができるんでしょうか。  それから、しかもこの条文の中には、第十条ですか、二項に「国は、特定不況産業に属する事業者で」云々ということで、「雇用する労働者について、失業の予防その他雇用の安定を図るため必要な措置を講ずる」と書いてある。また三項に「国及び都道府県は、」云々と書いてある。こういうことをやるのに、数字をある程度把握しなくてできるはずないじゃないですか。どうして労働省として、労働省だけで作業ができなければ通産省なり、農林省なり、運輸省との間に話し合いを詰めて、そしてこの法律を国会で審議するときに、そんなことが聞かれぬと思っている頭がよっぽどどうかしています。当然国会審議の中で、総数どのぐらい大体出るだろうというのは審議で聞かれるのはあたりまえじゃないですか。どうしてそういうことが……。そうするとこれはあれですか、通産大臣どこへ行かれたか、ちょっといま外されていますが、この法律ですね、これは単なる名目ですか、これは。これは書いてあるだけですか。書いてあることを実行しようと思えば、必ず私は労働者の大体余剰がどのくらい程度出るだろうかということが業種別につかめないなどと、そんなばかな話はない。それではとても次に議論を進められません。明確にしてください。
  96. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 確かに御指摘のように、この法律案に基づきました設備処理等が行われます場合に、関係業界なり事業所のかなりの労働者に影響が及ぶということがございますので、私どもといたしましても法案の立案の過程から、通産省その他の関係省庁と連携をとりまして、いま御指摘のありましたような十条の「雇用の安定等」の規定についてもいろいろ連携を保って、そういう規定を設けることとして進んできておるわけでございまして、この雇用の安定等について国が、あるいは地方公共団体が努力する旨を明らかにいたしておりますけれども、これは具体的には、たとえばこの特定不況産業として指定された業種について、雇用安定資金制度を積極的に活用して、そういう業種が配置転換するとか、あるいは出向する、あるいは一時休業する場合の賃金助成するとか、それからまた、昨年の臨時国会で成立いたしました特定不況業種離職者臨時措置法も効果的に活用して、離職を余儀なくされた方々につきましては各種の手厚い措置をする。  たとえば雇用保険法につきまして、四十歳以上の方々につき延長するとか、あるいは訓練手当なり訓練待機手当を支給するとか、その他いろいろございますが、そういう各種の措置をいたしますことは、業種指定されますと、そういう事業を実施する場合はいわばそういう賃金助成なり、あるいは手当の支給等は義務的経費になるわけでございまして、そういう面は年度当初に一定の予算額を計上いたしておりますけれども、この法律の施行に伴いまして余剰となりました労働者の方々の失業の予防とか、職業転換あるいは離職者の対策ということにつきましては、そういう予算措置で十分対処し、また必要な場合は所要な予算措置をさらに実施するというようなことで対応しようということで考えているわけでございます。
  97. 安恒良一

    安恒良一君 ますます話がわからないですね。いいですか、予算措置をするときに、基礎人員がないで予算措置がどうしてできますか。予算措置をするときに、いわゆるこの十条に書いてある二、三項を実際やる、その場合に予算措置はいろいろ講じてありますと。予算措置を講ずる場合には、いわゆる予算を決める場合には、該当人員が何人ぐらい発生する、それに加えて手当を、法律によって決まった手当で総額幾らと、こういうことが決まるんじゃないですか。どうしてあなたは、いわゆる特定不況産業の出てくるであろうそういうものについて、予算措置が講じられておるなら、人員が言えないはずないでしょう。人員がないままどうして予算措置が講じられるんですか。基礎人員がちゃんとあって、基礎単価と人員掛けて総額幾らと、たとえば特定不況産業に対する、いわゆる十条に基づいてそういうことは予算措置しているとおっしゃったならば、その中から人員を言ってください。どうして人員を言うことをいやがるんですか。
  98. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 先ほど来申し上げましたように、この法律の施行に基づきまして設備処理をすることにより、個々業種でどの程度離職者が出るかということにつきましては、その業種の経済環境なり、あるいは個々企業によって違うとかそういうことで、非常に見込みを立てることがむずかしいわけでございますけれども、いま申し上げました、たとえば雇用安定資金制度を活用するというような場合に、今年度につきましては、昨年度の四百七十八億円に対しまして七百十二億円というようなことを見込んでおりますし、特定不況業種離職者臨時措置法につきまして……
  99. 安恒良一

    安恒良一君 金額じゃないんだよ、人員だ、人員。
  100. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) いや、その点につきまして申し上げますが、予算額といたしましては、雇用保険の給付の延長分を含めまして百二十億円という予算を計上いたしておりますけれども特定不況業種離職者臨時措置法の予算額を決める場合の根拠といたしましては、この議員立法の過程でいろいろ与野党で話し合いのありました人員が、いわゆる構造不況業種と言われております業種につきまして、たとえば繊維等につきましては流通部門を含めて四百万というようなことをもとに、一割が過剰だとか、あるいはその三%ぐらいは自然退職するんじゃないかとか、それから、そういういろいろな結果十三万人くらいが離職者として出るならば、その半分弱が今年度ではないかという、そういう非常に腰だめ的な見通しでしか組めないことでございまして、要は先ほど来申し上げておりますように、それに応じて出てきましたものにつきましては、こういうものを活用いたしまして、万全の措置をいたすわけでございますし、必要ならばさらに予算措置をする、こういうことでございます。
  101. 安恒良一

    安恒良一君 どうも納得できません。何か腰だめ的とか何とか言われますけれども、昨年の臨時国会で特定不況業種離職者臨時措置法が議員立法で議論されました。そのときも一つの具体的な、ある程度の数字が議論されているわけですね。そのことをあなたは腰だめ、目安と言われているのかも。それならばその後、昨年の十二月にこの法律が成立をして今日まで何カ月たっていますか。そしてさらに、この法案を今国会に出すということの議論は、すでに一月ごろから始まっているわけですね。そしてこの法律が、すでに衆議院の議論を経て参議院に来ているんだ。その場合にあなたたち労働省が、どうして通産省なり関係各省との間にこういう問題について、一つは昨年の秋にいわゆる議員立法によって一つ法律が成立している。今度新しく成立する。しかも大体、ほぼ指定を受けるであろうという業種も明らかになっている。そして一方、通産省農林省運輸省は、廃棄をすることも明らかになっている。それなのに労働省は、どうしてきょうまでそこの作業を進めないんですか。それで労働行政、雇用の安定というのができるんですか。どうしてやらないんですか。  もうきのうきょう始まった議論じゃないでしょう。去年の秋に臨時国会で特定不況業種の離職者臨時措置法というものが議論になっている。そのときの答弁ならそれでいいです。しかし、その後数字というものが五十三年度予算を——あなたたちは五十三年度予算を要求されているわけでしょう。もう国会通過しましたね。その中に、当然特定不況業種離職者臨時措置法に基づいてきちっと予算をはじき出されていると、それからまた、この法律がこの国会にかかってもう数カ月たっている。そういうふうなのに、何で——だから私は、これは大臣にお聞きをしなきゃならぬのですが、せっかく衆議院目的の中に「雇用の安定」という条文を入れても、いまのようなやりとりであるならば、訓示規定以外何物もない。訓示規定以外何物もなくて、どういうことになりますか。それじゃたまったものじゃないです、失業する者は。  だから私は、もう一遍労働省に聞きます。具体的な数字をひとつ示してください、少なくとも。  それからいま一つは、今度は通産省なり関係各省にも聞きますが、恐らく設備廃棄をやる以上、これぐらいの余剰人員が出るだろうという見通しは、ある程度産業政策を担当する側としても、そうして労働省とのお話し合いが進められているはずです。ですから、もう一遍労働省並びに関係各省に、いわゆる業種別の余剰人員がどの程度見込まれるのか、この点について重ねてお聞きをします。
  102. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) 先ほど来たびたび申し上げておるところでございますけれども、この法律案の施行に基づきまして設備処理が行われた場合に、各業種ごとにどのくらいの離職者が出るかということにつきましては、非常にむずかしい問題もあるわけでございまして、どれだけということの見込みを申し上げるものを持っておりませんけれども、私どもの方の雇用の安定のための対策というのは、雇用安定資金制度とか特定不況業種離職者臨時措置法に基づく措置とか、こういうものは業種指定がされまして、個々の事業主が実施される場合、あるいは離職者が出た場合は、いわば義務的経費になるわけでございまして、そういうものの予算措置は十分確立しながら対応していきたい。そういうことによって雇用の安定を図ってまいりたいということで考えているわけでございます。
  103. 安恒良一

    安恒良一君 大概私は黙ってがまんして聞いているけれども、いいかげんな答弁してもらっては困りますね。義務的経費、それだけであなたたちは役所勤まるんですか。失業手当を出せばいい、職業訓練手当を出せばいいじゃないんじゃないですか。雇用の安定というのは、それを再就職させるということなんでしょう。再就職させるためには具体的な数字を把握しなくてどうしてできるのですか。だまってさっきから聞いておったら、いいかげんな答弁してもらっては困りますよ。何か失業したら義務的な経費で手当を出し、訓練手当だけ出せばいいような、そんなことで労働省が勤まりますか。労働大臣来てください、労働大臣
  104. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) ちょっと私の言葉が足りませんで申しわけございませんでしたが、雇用安定資金制度を活用して失業の予防、職業の転換を円滑に行うということにつきましては、あるいはそれから特定不況業種離職者臨時措置法に基づいて各種の手当を払うというその前段のところを私説明を落としたわけでございますけれども、まず、そういう設備処理によりまして、関係の労働者に影響が及ぶというような場合はできるだく早く把握して、その人たちの失業につながらない措置がどうかというようなことの詰めもやらなきゃなりませんし、そのために職業安定機関に再就職の援助の計画等も事業主から出していただくとか、そういう措置もあるわけでございますし、また出向等の場合に、安定資金制度を使うということがあるわけでございまして、予算の方ばっかり申し上げましたけれども、そういう失業の予防のための努力と、それから離職者が出られた場合の各種の保険を含む手当を支給しながら、再就職の促進に努めるということについては、職業安定機関として当然全力を上げて努力しなければならぬ点でございます。
  105. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃこれもこのまま労働省とやりとりしても進みませんから、私はこの点も保留しておきたいと思いますが、ひとつぜひ、私は雇用安定ということは、一つは失業の防止であるし、そして、それでもこれだけの設備廃棄をすると、残念ながら失業は、短期的に見ると出ることはやむを得ないことになるわけです。いいことでないけれども、出るわけです。その場合に、その人をどう再就職をさせるのか、こういうことについては、具体的な数の把握がなくしてはできないんです、具体的な数の把握が。ですから、次回までにひとつ労働省はぜひそういう数字について、これは私が聞くことになるのか、同僚議員が聞くことになるかは別にいたしましても、これはきわめて重要なことでありますから、次回までに業種別にどの程度の数になるのか、これも正確には出せないでしょう、いろいろなことがありますから。しかし、大体の数字をつかむことはやろうと思えばできないことはないんです。それはなぜかというと、おおよそこれぐらいの設備廃棄されるだろうと、通産省農林省関係各省が言っているわけなんですから、そうでしょう。そうすると、計算をしようと思えば私はできないことはないと思うんです。ですから、ぜひひとつ次回までにはその数字を労働省は比してもらいたい、それから、どうもこういう重要な問題ですから、次回はぜひ労働大臣が出てきて、そこのところを明確にしてもらいたい。  そこで、今度は各省側にお聞きします。労働省はどうしても数字をよう言いませんので、各省側にお聞きしますが、各省側としては、いわゆるこの設備処理量というものを言われましたが、いわゆる各省側としてどの程度の余剰人員が業種別に出るというふうにお考えなのか、以下通産省それから農林省、林野庁、それから運輸省ですね、船舶局、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  106. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) おしかりを賜るかもしれませんが、当省所管業種全体につきまして今後、ただいままでに御説明をしましたようないわゆる過剰設備処理というものが進んだ場合に、余剰人員が出るかということを数字でもって予測することは、まことに容易なことではございません。私ども数字として現在持ってはおりません。ただ、この問題に対する私ども考え方なり過去の経緯につきまして、若干私から御説明を申し上げます。  私ども今回のこの法案の御審議を願うに当たりまして、当省所管業種の、いわゆる構造不況業種候補業種の中から平電炉繊維化学肥料それからアルミ塩ビ樹脂、段ボール原紙、それから、これは私ども所管ではございませんが、たとえば造船という非常に大きな業種等主要な構造不況業種の雇用調整の経緯を若干把握いたしまして、結論的に申し上げますと、昭和四十九年末と、これは昨年いたしましたが、五十一年の末の間の調整のテンポを見てみますと、全産業をいま申し上げました構造不況業種とその他の業種に分けて考えてみますと、構造不況業種の雇用の減少の割合は、その他の業種に比べまして倍以上のかっこうになっておりまして、すでにそういう意味での雇用調整が構造不況業種についてはより多く進んでいる。こういう数字が出ております。  これはなぜかと申しますと、構造不況業種はすでに四十九年以来、相当長期のいわば不況でございまして、いわゆる過剰設備というのはいわば長期で見た一つのこぶになっておるわけでございますから、やはりそういう意味で他の事業部門への配置転換とかあるいは関連会社への出向等々、それぞれの企業の進め方によりまして雇用調整が行われてきたと考えておりまして、したがって今後の方向といたしまして、仮に、先ほど申し上げましたたとえば繊維で申し上げますと、大体二割から三割ぐらいのいわゆる生産余剰、その背景の設備の余剰ということになっておりますが、その余剰率に応じてさらにその余剰の数字に比例いたしまして、今後いわゆる雇用調整が進むとは私ども考えておりません。したがって、余剰人員が発生することは、これは私は方向として当然だと思いますが、その発生がどういうかっこうになるかはなかなか一概に言えないと考えております。  それから第二に、やはり業種によりまして、いまも若干触れましたが、兼営部門を持っておるとか、あるいは新規分野への進出計画を企業として持っているかどうか、あるいは出向を受け入れる関連企業を持っておるか、あるいはその関連企業側の今後の景気情勢はどうかというようなことによりまして、個々企業ごとに非常に異なっておると思いますし、しかも先ほど労働省当局からお話ございましたように、雇用調整問題は労使の間でも最も重要な問題でございまして、私どもいろいろな推定を立てるに当たりましてもなかなかその辺の感触はつかめないというのが実情でございます。  ただ、非常に大胆に私ども関連の業種についての離職者発生の感触を幾つか分けて私どもの感触を申し上げますと、第一に、配置転換、出向等の措置によりまして、いわば企業の内部で対応がほぼ可能ではないかと考えるものが、化学肥料とか塩ビ樹脂と申しましたようなこういう業種につきましては、そういうことで対応が基本的には可能ではないか、こういう感触が第一でございます。  それから第二に、平電炉問題、これは一番早くいろいろ議論になりまして、業界通産省の間でもそれぞれ個別の問題といたしまして、各企業別あるいはグループ別の話し合いが進みまして、それですでに現在までに相当に雇用調整が進みまして、今後はもはや余り多数の離職者と申しますか、余剰人員が見込まれないのではないかというのが平電炉業でございます。この点につきましては、私の記憶によりますと衆議院での参考人の御発言の中にもそういう趣旨の御発言があったやに記憶をいたしております。  それから三番目のグループといたしましては、場合によって、と申しますのは、これからの設備処理の進め方なり方法によりまして、離職者の発生の懸念される業種アルミ製錬、段ボール原紙業界等、これが一つのグループであろうと考えております。  それから、相当程度これからの設備調整の進め方等によりましては、離職者発生の懸念がどちらかと言うと総体的に高いものが繊維産業、こういう私ども感じを持っておりまして、今後設備調整の内容が詰まっていく、それに合わせまして各企業設備処理の規模なりテンポに合わせてどういうふうに考えていくか、私どもその辺の感触をつかみながら労働省当局とも十分連絡をして遺憾なきを期していきたい、こういうことで対処をいたしておるわけでございます。
  107. 安恒良一

    安恒良一君 労働省が労働省ですから、通産省の方がそういうあれがあると思いますが、どうも私は、やはりいまの答弁を聞いて大変不満に思うんです。というのは、これはもう一遍通産大臣にお聞きをしなきゃなりませんが、雇用安定ということがこの法律に何カ所か入っていますし、衆議院においてさらに追加を「目的」以下にされています。ところが、いま大臣お聞きのとおりで、その数すら肝心の労働省がようつかまない。しかも、つかまなきゃならない機会は何回かあったわけです。一つは去年の秋、議員立法でいわゆる法律を設定をいたしました。そのときにも、やはりこの数の問題というのは国会の関係委員会の中でかなりいろいろ議論をされているわけです。それから今度は、通産省が中心になられまして特定不況産業安定臨時措置法をおつくりになった、立案をされるその場合にも、一つ不況業種が明らかになり、これもイコールじゃありませんが、大体設備廃棄の量についても議論がされている。  そうすると、大体その中でどれぐらいの人が、たとえばいま業種別に言われましたいわゆる配転、出向ができるのは化学とか樹脂関係だろう等々を言われたんですが、それならそれのように従って、たとえばアルミの場合はどうなるんだ、段ボールの場合はどうなるんだ、繊維はどうなるだろう。私はあるアルミ産業の会社へ行きましたら、いままでは出向さしてました、これは大手です、しかしもうどうにもなりませんと、出向では。年が明ければどうしてもいわゆる希望退職なり人員整理なりをせざるを得ない、こういうことをあるアルミの大手の会社の実態調査へ行ったとき聞いたこともあります。でありますから、そういう角度からいいますと、私はこの法案審議に当たっては、どうしてもやはり本当に大臣が雇用安定ということをお考えであるならば、まずそういう数字というものがつかまれなければ最終的な対策は立たないわけなんです。こういう点について、きょうは労働大臣お見えでございませんし、法案提出の責任者であります通産大臣がお見えでございますから、この点についてお考えを聞かしていただきたいと思います。
  108. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) この法律は、過剰設備廃棄する手続を決める法律でございます。しかしながら、過剰設備廃棄をいたしますと、いまお話しのように、当然雇用問題が表裏一体の問題として出てまいります。そこで、第三条の安定基本計画をつくるときによほどしっかりこの雇用問題というものを議論しなければならぬわけでございますし、第十条もそういう意味から、衆議院審議段階におきましても一番大きな問題点として取り上げられ、議論されたところでございます。若干の修正も加えられております。したがいまして、設備廃棄法律でありますから、直接的には雇用問題について細かく決めてはおりませんけれども、精神といたしましては、いま申し上げましたように重大に取り上げておるわけでございます。  そこで大勢は、いま産業政策局長が申し上げたのが大勢だと思うんです。ただしかし、現時点で正確に幾ら失業者が出るのかということを示せと言われましても、これはなかなか難事だと思います。現在、いわゆる構造不況業種に働いておる人たちの数は正確に掌握しております。大体どれぐらいであるかということは正確にわかっております。ただしかし、正確にわかっておりますが、この中から何人失業者が出るかということはなぜ言えないかといいますと、一つは私どもは一番大切な構造不況業種対策ということは、これは設備廃棄ということもさることながら、その前に景気の回復にある、内需の拡大にある、このように私ども理解をしておるんです。景気の回復が進み、内需の拡大が進んでまいりますと、現在は構造不況業種であっても、あるいは数カ月先、一年先には構造不況業種でなくなる、こういうことも当然考えられる。たとえば、セメントなどはつい数カ月前までは構造不況業種でございまして、いわゆる不況カルテルをやっておった業種でございます。しかしながら、公共事業の拡大によりましていまでは構造不況業種ではない。むしろある程度よくなった産業である、こういうことが言えると思うんです。  でありますから、この安定基本計画をつくるときに、景気全体がどの程度回復しておるか、また内需の拡大がどの程度進んでおるかと、そのことによって廃棄すべき設備の中身も変わってまいりますし、安定基本計画そのものも変わってくるということでございますから、先ほど申し上げますように、現在働いておる人たちの数字は正確に掌握をしておりますけれども、これはこの雇用——雇用といいますか、この整理の対象になる、こういうことはなかなか現時点では言いにくい。なぜかと言いますと繰り返して恐縮でありますけれども、政府が全力を挙げまして景気の回復と内需の拡大に努力をしておると、こういうことでございますので時期によって異なる、こういうことであります。
  109. 安恒良一

    安恒良一君 大臣、私の言うことを正確に聞かれてないし、また大臣としては本音が出たのじゃないかと思いますが、私は決してどれだけの人員が整理されるかというふうに聞いてないんです、それは労使関係もありますから。余剰人員がどの程度出るだろうかと、そして出た余剰人員の中で、いわゆるこれは配置転換やあれもあるし、場合によっては解雇もある、しかし私はそこまで細かく聞いてない。業種別にどの程度の余剰人員が出るだろうかと言ったら大臣は、それはある程度わかっているということですから、わかっているならお答え願いたい、業種別にどの程度の余剰人員が出るだろうかと、出た人員が解雇になるかどうか。これはその次の問題ですからね。まず最初に余剰人員。それから安定計画をつくった後々と言われますが、これも大臣、ちょっと矛盾しているんじゃないでしょうか。業種指定を行う期間は法律施行後一年に限っておられますね。一年ですからね、五年も三年も先のことじゃないんですよ。そうすると、この一年の経済成長はどういうふうになるかというのは、これももう耳にたこができるほど予算委員会や関係委員会の中でいろんなこと言われているじゃないですか、七%の成長問題を初めとして。  そうしますと、そんな遠い将来の見通しを聞いているわけじゃないんです。業種指定法律施行後一年ですから、そうすると一年以内の見通しというのはほぼお互いが立てられるところじゃないですか。そういう中でどの程度の余剰人員が、いまこの法律に書かれている四業種ですか、これから設定されようとするのに出てくるんだろうかと。それがまずつかめないと、いろんな雇用の安定計画というのは立てられないんですよ。そこで、私は重ねてこのことを、たまたま大臣は、この法律は主としていわゆる設備廃棄に重点があると。これは本音でしょう。しかしそれだけじゃ困るわけですね、設備廃棄だけに重点を置かれたんじゃ困る。と同時に、国民経済の安定ということが結びにきちっと入っている。国民経済の安定ということはいわゆる「国民経済の健全な発展に資することを目的とする。」とするということは、余剰人員が出た場合にはそれがきちっと再就職がされると、これがなければ国民経済の健全な発展に資することにはならないのです。  だからそんな言葉が出てきたらいかぬと思うから、衆議院の方でさらにその中に修正が加わったことも大臣承知のとおりなんです。そうしますと、少なくとも業種別に余剰人員がこの程度くらい出るというところぐらいまではつかんでおいていただいて、そしてそれを国会の中の議論に供していただかないと、この法律について賛成、反対ということをこれから議論していかなけりゃいかぬわけですが、議論が進まないんじゃないでしょうか、その点はどうなんでしょうか。
  110. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 私が正確にわかっておるということを申し上げましたのは、いわゆる現在の不況業種に雇用をされておる現時点における従業員の数がわかっておる、こういうことを……
  111. 安恒良一

    安恒良一君 そんなのはあたりまえです。
  112. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) そのことを申し上げたわけでございます。   〔委員長退席、理事大谷藤之助君着席〕  それから余剰人員というお話でございますが、安定基本計画をいつつくるかによって、たとえば半年先につくるか、あるいは一年先につくるかによって、この中身はうんと違ってくると思うんです。と申しますのは、景気の回復いかんでは、たとえばある業種は現在操業率が六〇%であるけれども、安定基本計画をつくるときには七〇%とか七五%になっておる場合も当然考えられるわけです。セメントの例を先ほど申し上げたのもそのためでございますが、つまり数カ月の間に不況業種から好況業種に変わる、こういう業種もあるわけでありますから、現在の情勢が半年先、一年先そのまま続くとこういうことでは決してありませんので、どれだけ人間が余っておるかということは、これはその時点における操業率によって違ってくるとこういうことを申し上げたわけでありますし、それからさらに先ほども局長が答弁しておりましたように、ある程度余剰人員ができてまいりましても、力のある企業は全部他にこれを吸収することが可能であります。でありますから、いろいろ複雑な要素がたくさん絡み合っておりますので、そういうことを全部いろいろ細かく分析をしながら、とにかく雇用の安定ということが一番大事でございますから、雇用の安定のためには全力を傾けていかなければならぬ、こういうことを言っておるわけであります。
  113. 安恒良一

    安恒良一君 現在不況業種にどれだけの人員がおるかわかっておるというのは、大臣そんなことはもうあたりまえじゃないですか。不況業種じゃなくても、産業別にどれだけの労働者が雇用されているかなんて、そんなことはもうわかっていることですから。問題は、いまあなたがおっしゃったことにかなり内部的な矛盾があると思いますのは、いわゆる安定基本計画を半年先なり一年先に立てるときになると、たとえばセメントが一年ぐらい前までは不況産業と言われておったけれども、いまフル操業をしているじゃないか、だからどうなるかわからぬ。どうなるかわからないようになったら、こういう業種指定というのはないんじゃないですか。一年先ぐらいになって非常に景気がよくなってフル操業をする、そういうことになるなら何も第二条に一、二、三、四、たとえばここに書いてあるような平電炉とかアルミとか合成繊維とか船舶製造というのは、少々日本景気がよくなっても、しかも五年も十年も先じゃないんですよ、一年そこそこの間でよくなってそんなセメントのような状態になるのなら、初めから特定不況産業とはならないわけでしょう。  特定不況産業というふうにここに、本法に名前まで書いてある四つ、さらにこれから追加されるというところは、率直に言って短期的な景気循環じゃないということでしょう、私の午前中の議論の中で。短期的な景気循環論における不況なら、それはあなたが言われたことが当たるわけです、短期的ないわゆる景気循環論に基づく不況産業なら。それはそうじゃないんでしょう、ここにされているのは構造不況産業。そうすると、構造不況産業というものはそう簡単にこれから一年や一年半で好況産業になるはずがない。何とか生き残れるためには、どうしても構造不況産業として指定をして、ある程度設備廃棄する以外には生き残れる道がまず、それが最大公約数だというふうに午前中にあなたは御説明になったじゃないですか。そうなりますと、当然余剰人員がやはり設備廃棄の量に従って出てくる。ただし、出てきたやつを、それは直ちに首切りにつながるかつながらぬか、それは企業の形態にもよります。  たとえば一つの例を挙げるならば、造船産業のような労働集約産業の場合には、私はなかなか簡単な配置転換もできないだろう、繊維産業の場合もそうでしょう、等々。一方ある程度配置転換ができる、もしくは関連部門に出向させるということができるのもあるのです。ですから、そういうものについての数字をつかまないと、何か私が聞きますと、いわゆる安定計画は一年ないし一年半ぐらいの間に立てるんだ、そのときの経済情勢がどうなっているかわからぬ、その企業は場合によれば立ち直っておるかわからぬと、これじゃこの法律のいわゆる特定産業不況産業というものはどんな基準で指定をしたのかという議論からまた振り出しに戻らなきゃならぬ。しかし、私は指定をされる基準というのは、午前中に関係局長から御説明があっていますし、大臣からもあっていますから、私は振り出しに戻ることはいやなんですが、どうも私はある程度設備廃棄を行うなら、大体この程度という数字はお持ちじゃないのですか、お持ちなのにどうしてお隠しになるのか。たとえば局長が言われたように、衆議院のときに関係業界の参考人を呼ばれていますね、参考人が意見を言っています。その中に数字もある、私は衆議院における議事録は全部勉強さしていただいて質問しているわけです。  そうすると、また参議院においてはそういう問題が議論になるということはあたりまえじゃないですか。その場合に、たとえば衆議院において参考人が述べたことについて、どうしてあなたたちは検証してここの場において答えないのですか。私は衆議院において参考人が述べられたところの議事録をここに持っています。私はこれも勉強しています。私は私なりに独自調査をした。そういうことで聞いているのに、どうしてそういう数字について触れることを避けられるのか。しかし、何も私は解雇と言っているんじゃないんです。設備廃棄量に従ってどの程度、たとえば平電炉ならどの程度繊維産業ならどの程度。どの程度の人員が過剰になるのでしょうかと、こういうことを聞いている。法案審議を急がれるなら急がれるほど、そういうことについては的確にお答えをしていただかないと議論が進まないわけです。
  114. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 過剰設備処理を進めるに当たりまして、どの程度のいわゆる過剰人員が出てくるかという問題、先ほど申し上げましたように私ども幾つかのグループに分けまして、業種としての感触は持っております。ただ、私ども業種別に過剰人員がどうだということの算定ないし見通しははなはだ困難でございます。  その理由は先生十分御案内のように、過剰設備処理量の算定、これは午前中の御質疑、御指摘のようにいろいろ問題がございますが、長期の需給見通し生産需給ということを前提に、そういういわばマクロ的なアプローチを中心にアプローチができるわけでございますが、過剰人員が幾らであるかということは、たとえば過剰設備処理量が二割、したがってその二割が過剰人員なんだというような算定、あるいは過去のすでに行われました雇用調整から見て、これを何割と見るんだというようなマクロ的なアプローチはまことにむずかしゅうございまして、結局詰めてみますと、個々企業が、自分の将来あるべき設備処理後の体制の中でどう判断するかということの積み上げでございませんとはっきりとした一つ見通し、目安というものはできません。そうなりますと、先ほど労働省当局の御答弁、あるいは私も触れましたように、労使間の非常に中心の重要な問題に触れるわけでございますので、私ども業種別のアプローチにおきましても、全般的に個々企業がどういう数字を持って、したがってそれを集計するとこうなるという、そういう意味での見通しをつくることははなはだ困難でございまして、現段階ではそういう数字の見通しを持っていないというのが事実でございます。
  115. 安恒良一

    安恒良一君 いや、はなはだ困難であるとか、現段階では、では困るんですよ。じゃ、この法律はあれですか、設備廃棄だけやればいいと、どれだけ人が余ってどうなろうとそんなことは知っちゃいねえとこういうことですか。現段階ではとか、現段階でははなはだ困難、そんな無責任なことでは困るじゃないですか。書いてあることとやることは違うじゃないですか。書いてあることとやることが違ったんじゃ困ります。私は、少なくともまあこれぐらいの余剰人員が出るだろう、しかし余剰人員が出たときに何もそれは直ちに解雇の話をしているんじゃないんですよ。出てもできるだけその企業で抱えておってほしいという行政指導があるのはあたりまえなんですよ。  しかし、この法律審議する以上、国政の場においてわれわれ国会議員が、設備は何百万トン廃棄になりますと、紡績でやれば何万錘廃錘になりますと、ああそうですかと。じゃどのぐらいの人員が余剰になるでしょうかと、わかりません、困難です、そう言われて、はいそうですかと、そのことはネグレクトして審議しましょうということになりますか。あなたと私が立場を入れかえて、あなたここへ座ってごらんなさい、どうなりますか。あなたがここに座って国会議員としてこの法律審議するときに、どの程度の余剰人員が出るかということもつかめなくて、ただ単に、いやそれはいまわかりかねますと、困難でありますと、そういうことになりますか。私は少なくとも、それは正確に何百何人とか、何人首切りが出るとか、それは最終的には労使の関係のことなんですから、そこまであなたたちを問い詰めているわけじゃないんです。業種別に廃棄をする量が決まる。ほぼ見当がついておるならば、それならどの程度の余剰人員が業種別に、たとえば繊維産業なら繊維産業にはこの程度、平電炉だったらこの程度でしょうと、アルミだったらこの程度でしょう、造船だったらこの程度でしょうということが出て、それから先どうするかというのはこれはまた労使問題であるし行政の問題でもあるわけですから、私はそこまであなたたちを詰めようと思ってない。しかしどの程度の数字が出る、余剰が出るというぐらいのことぐらいは、私は通産省としても労働省としても、いわゆる当該業界との間のヒヤリング等もされて、国会議員の審議に答えられるべくそれだけのあれはあっていいじゃないでしょうか、どうですか。
  116. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 平電炉アルミ産業につきまして御言及がございましたので平電炉アルミ産業につきまして、余剰人員がどの程度出るかということを申し上げるのがむずかしい理由を少し言いわけをさしていただきます。  平電炉、それからアルミニウム等につきまして、平電炉は三百三十万トンの設備が余剰であると、アルミニウムは三十九万トンの設備が余剰であると、これは通産省が一方的に勝手に申し上げている数字ではございません。これを発表するに当たりましては、平電炉に関しましては基本問題研究会を開き、その場におきまして業界それからユーザーを代表する人たち、それから学識経験者、そういう人たちが全部出席をしておりまして、それでその三百三十万トンにつきましても、そういう出席者の合意を得て発表をしておる数字でございます。アルミニウムにつきましては、産業構造審議会アルミニウム部会の御審議を経て発表しておる数字でございます。したがいまして、そういうような審議会等で関係各方面の合意を取りつけずに一方的に通産省が私企業設備について三百三十万トンはよけいだとか、三十九万トンは凍結すべきであるとかいうようなことを申し上げる立場にはないわけでございます。  そこで余剰人員につきましても、もしそういう数字を発表するといたしますならば、これは関係企業あるいは労働組合、そういう人たちから全部御意見を聞き、それからコンセンサスを得た上で発表するということが手順ではなかろうかと思いますが、いままでのところそういうことにつきまして、その審議会等で議論をしていただいておりませんので、現段階で数字を申し上げることはむずかしいわけでございますが、ただ平電炉について申し上げますならば、先ほども濃野局長から申し上げましたように、五十一年の七月くらいでは平電炉の雇用は四万三千ございました。それが五十三年一月には三万五千に減っております。したがいましてこの過程におきまして相当な雇用調整が行われているわけでございまして、現段階におきましては平電炉産業において希望退職等を募集しておる事例はないと承知をいたしておるわけであります。したがいまして三百三十万トンの設備処理が進みましても、それに伴って出てくるところの余剰人員あるいは整理人員は定量的には申し上げられませんけれども、定性的にはかなり少ないものであろうというふうに申し上げられるのではないかと思います。  アルミニウムにつきましては、これは五十年には一万四千九百名おりましたんでございますが、五十二年末では一万一千六百人というふうに雇用調整が進んでおりますので、三十九万トンの設備凍結をやりました場合も、もちろん余剰人員は出るとは思いますけれども、この場合も、出てくる数といいますのはかなり少ないというふうに、その程度には申し上げられるというような状況でございます。
  117. 安恒良一

    安恒良一君 委員長、いまの話するまでこれだけ時間がかかるわけですよ。何でそういうことになるんでしょうか。何でこんな時間がかかる。というのは私は少なくとも平電炉なら平電炉アルミならアルミの勝手につくった数字じゃないことも知ってますし、基本問題研究会で議論をする。しかし基本問題研究会で議論をするときには、そういう設備廃棄が幾らというときに、人員のことを考えぬで議論する審議会なんかありません。私もたくさんの審議会に過去においては関係さしていただきました。必ず設備廃棄等をやるときには、大体そのことによってどの程度労働力に影響があるかということを議論しない審議会なんか一つもありません。もしもそういう審議会通産省の中にあるとすれば、これは非常識きわまりないですね。恐らく私は平電炉の研究会にしてもアルミ審議会にしても、十分そのことは御議論されていると思うんです。ですから、私が聞きたいことは、そういう数字があるならそれを聞かしてほしいと、こう言っている。  たとえばいまあなたも言われました、平電炉の場合にはもう余りないだろう、それはないはずですよ。いまあなたも言われたように、実にここ数年間で四人に一人の労働者が離職しているんですよ。だからこれはないはずです。アルミの場合はこうだ、しかし少しあるだろう、そのときにはいそうですかと、少しありますかということだけで、あなたがここに座ったときに議論になりますかとぼくは聞いているんですよ、少しあるでしょうとか、多少あるでしょうとか。だから少なくとも設備廃棄をあなたたちが関係審議会に諮って、議論をされて一つの数字をお持ちのときには、一つの目安があるはずなんですよ、雇用量についての、業種別に。それをいま聞くところによると、どうも国会で幾ら責められてもいわゆる労働組合とか——そういうときだけ労働組合を尊重されているようですが、経営者の御意向なり学者の御意向を聞かないと審議会意見を発表できないということですか。それは審議会によって非公開の審議会もあるでしょう。公開の審議会もあると思います。  しかし、国政の場においてそれに必要な法律をつくるときにおいても、そういう審議会の資料が出せないということじゃ私はないと思う。何となく関係のないときに聞いているわけじゃないんです。いわゆる特定不況業種安定臨時措置法の議論をするに当たってそういう審議会が持たれて、審議会意見を聞いて設備廃棄量が一応ほぼ目安がついているとすれば、その場合においてどれだけの人が余剰になるかということぐらいを、国政の場において発表されることがどうして審議会の運営に抵触しますか。私は抵触するとは思いません。いまあなたはただ単にいわゆる鉄鋼と電炉だけを、いわゆるアルミだけを言われましたが、ほかの方の関係はどうなんですか。
  118. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 造船業におきましては、現在の状況を御説明申し上げましたときに述べましたとおり、昨年の十月−十二月の第三・四半期と本年の一月から三月までの昨年度の第四・四半期との様子が非常に変わってきております。したがいまして、私が先ほど御説明をいたしましたように、こういう新しい情勢を見ながら六月の末を目途にいたしまして、安定基本計画の骨格ともなるべき安定化の方策につきまして審議会で御議論をいただき、そのための議論をいまやっているさなかでございます。したがいまして、そういう時点で申し上げるべきだと考えております。基本的には需要見通しがまず第一でございまして、従来の需要であればこのぐらいと、それから新しい分野に対する需要の創出を考えていきまして、その上で操業時間が決まる。さらに、先ほど先生が御指摘のように稼働率が決まり、設備能力が決まると思いますが、現在、需要の見直しを至急にやっているところでございます。
  119. 安恒良一

    安恒良一君 お願いをしたいんですが、私はこういうことで余り時間をとりたくないんですが、私は私なりで自分で調査をある程度しているわけです。しかし、これは私の調査でありますから、どうしてもやはり政府側からこういう基本に、これは本法案一つの大きな基礎になることでありますから、その数字が明らかにされないまま次に進めていくわけにはまいりませんので、ちょっとこの取り扱いについては理事会の方でひとつ御相談を願って、できることならば、私はある程度の数字は、それぞれ関係審議会も進められていることなんですから、基礎的な数字はあると思うんです。ですから、そのことをここに出していただいて、さらに、それならば雇用対策をどう進めるかということに議論を進めていただきたいと思いますが、一応理事会の方でお取り扱いについて御相談をお願いをしたいと思うのです。
  120. 大谷藤之助

    ○理事(大谷藤之助君) ただいまの安恒委員の御要望に対しては、理事会において後刻検討をいたします。(「じゃ、ちょっと休憩して扱いを確認してよ、後でなくて。」と呼ぶ者あり)いや、それはいずれ理事会は、きょう委員会が終わりましてから理事会を持つことになっております。
  121. 安恒良一

    安恒良一君 委員長、この数字をひとつ明らかにしていただかないと、次の質問に進みにくいわけですね。私はもう進めるところはどんどん進めているわけです。たとえば、公取なんか飛ばしてやろうというんならやりますけれども、これはこの法律一つの重要なかなめなんです。そうして私は数字というものを明らかにできないことないと思っているんですよ。それなのに明らかにしないのですから、そこで私はひとつ理事会で取り扱いを御協議願いたいということをいま言っているんですから、後でと言っているわけじゃないんですから、誤解がないようにしてもらいたい。(「ちょっとの時間休憩してやってください。」と呼ぶ者あり)
  122. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 問題のこの法案の一番のポイントはここにかかっているわけですよ、質問のポイントは。それはやっぱり数字が、設備廃棄によってどれだけの過剰があり、どれだけのことが救われ、どれだけのなにが救われる、ということがポイントですから、若干休憩してこの取り扱いをどうするかということを、ひとつちょっと打ち合わせをしてもらいたいと思います。
  123. 大谷藤之助

    ○理事(大谷藤之助君) 取り扱いというのは、政府側にこの資料を提出してほしいという御要望でございましょう。さように委員長は受けとめておりますが、それは間違いございますか。
  124. 安恒良一

    安恒良一君 結局、この数字が明らかにされないと、次の質問が進みにくいんですよ、これは。だから発表してもらいたいと、こう言っているのですよ。ところが発表しねえと、こう言うから、だからその取り扱いをどうするかと。というのは、数字が明らかになれば、今度はじゃそれに対する具体策をどうするのかという議論を、これから質問を展開をしていくわけなんですから、(「若干の時間、理事会開いてくださいよ」と呼ぶ者あり)そんなに長くなくてもいいから、取り扱いだけきちっとしてください。
  125. 大谷藤之助

    ○理事(大谷藤之助君) いままでのやりとり、委員長もよく承知をいたしておりますが、政府側にこの資料が後刻、いま理事会を開いてすぐ出るものか出ないものか。必ずしもいままであれほどの質疑、答弁のやりとりがございましたから、即刻開いてということであっても、資料提出する政府側の都合もあるんじゃないんでしょうか。そうすれば、いますぐやりましても、後一時間半後にやりましても、この点は質疑時間はこれはまだ残りがあるわけでございますから、私は、後刻の理事会のときにあわせて検討さしてもらう方が妥当じゃないかと委員長は思うわけでございます。
  126. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 まず委員長の責任において……
  127. 大谷藤之助

    ○理事(大谷藤之助君)速記をとめて。   〔速記中止〕
  128. 大谷藤之助

    ○理事(大谷藤之助君) 速記を起こして。  ただいまのやりとりは政府委員におかれても御承知のとおりでございます。政府側の方でいまの数字について、ただいますぐ理事会を持ちまして発表できるかどうか、その辺承知したいということもございますが、いかがでございますか。その辺すぐ間に合うということであれば、これは理事会も開いてやりますが、さしあたり関係政府委員から順次御発言を願いたいと思います。  速記をとめて。   〔速記中止〕
  129. 大谷藤之助

    ○理事(大谷藤之助君) 速記を起こして。
  130. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私ども先ほどから御答弁申し上げておりますように、先ほど幾つかの感触に分けまして、私どもの持っておる余剰人員と申しますか、あるいは雇用調整の業種別の感触を申し上げましたが、現在までのところ、審議会のような一つの場を使いまして議論をいたしましたのは、先ほど天谷局長から答弁ございましたような平電炉とそれからアルミ、これは産構審のアルミ部会でございますが、この場で議論が行われましたが、この中でいわゆる余剰人員幾らというような議論は行われておりません。その他の業種につきましても、先ほど私ないしは関係局長から御答弁申し上げましたように、業界の場あるいはわれわれのいろんな役所の中の場で、設備処理の大体の枠はこのくらいではないかという議論をやっておるだけでございまして、ただいまここでお出しをするその余剰人員についての数字というのを私ども持っておりませんので、提出は不可能でございます。
  131. 安恒良一

    安恒良一君 私はますます遺憾だと思いますね。というのは、何も、何回も念を押しておりますように、すぐそれが解雇ということを言っているんじゃないんですよ。設備廃棄をやる場合に余剰人員が全く出ない産業はいいんですよ。しかし余剰人員が残念ながら出る産業があるわけですよ。あるときに、どの程度かということが全然議論されてないなんて、そんなばかな審議会ありませんよ、そんな。そんなことが労働者側の代表が出ておって、そういうことについて触れないようなことはないと思います。そんなうそを言ったらいけないと思うんですよ、私は。どの程度の人が、設備廃棄されて、たとえばいやもう過去にこれだけの人員が済んでいるから今回は出ないという議論があるとか、何か私はそういうものについて、またあなたたちがこの法律をつくるときのバックグラウンドとして、これだけの設備廃棄をするというときに、余剰人員のことを全然考えないで、どうしてこの法律ができますか。  そうするとあなたたちは、口ではうまいことを言っている、法律の中身には書いているけれども、余剰人員のことを一つも考えてないということになりますよ。余剰人員のことを一つも考えてないということになりますよ、これ。この十条等うたってある、いろんなことが書かれておって、余剰人員のこと何も考えてないということになりますよ、あなたが言うことを言われぬのなら。少なくともあなたこの法律を出す以上、そのバックグラウンドに当たるどの程度ぐらいのことぐらいのことを議論しないまま、どうしてこんな法律が出せるんですか。人をペテンにかけてはいけませんよ、ペテンにかけては。雇用の安定というのは、数字がつかめないでどうして雇用の安定ができるんですか、大変むずかしいとか、正確な数字は言えないと、こう言うんならまだ話はわかります、正確な数字は。しかしおおよそこれぐらいというぐらいのことぐらいはつかまなくて、どうしてこの法律があなた出せるんですか。
  132. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 先ほどから御答弁申し上げたように、私どもこの不況に入りましてから、先ほども触れましたように、その後のこの不況の経緯の中で一体構造不況業種の雇用調整というのがどういうふうに進んでいるかというようなことの実態、あるいは大臣御答弁ございましたようないまの業種別、特に業種と申しましてもこの法律対象としてとらまえる業種に、どういう就業状況であるかというような実態把握に関する資料はございます。ただ、先ほどから御答弁申し上げているように、この目安をつけますということは、二割の仮に設備処理をしたから、それでは幾ら業種として出るかということを、何と申しますか、自信を持ちまして一つの目安、見通しをつくる、その余剰人員の発生率をつくるということははなはだ困難でございますし、また雇用問題という非常に重要な問題に絡みましてその辺の議論もなく、私ども限りでそういうものを考えるのは大変むずかしい。またそういうことはかえってすべきではないんじゃないかというのが私どもの感じでございます。  なお経緯を申し上げますと、雇用調整、特に先ほどから先生御質問の、設備処理が進んだときに今後過剰人員がどうなるかということについて産業官庁なりあるいは労働省としての、労働当局として一つの目安を持つ必要があるというのは私どもまさにそういう感じを持っております。実はこの法案のいろいろ立案にかかります前、昨年のたしか暮れごろだったと思いますが、事務的には労働省当局と、何かひとつそういうものをつくり上げるあれはないかということで、重ねて何回も協議連絡等もいたしました。結論といたしましては、役所のベースといたしましてこの余剰人員の見通しについて、一定の比率でこの程度見通しが出てくるということ、そんなのはむしろ大変問題ではないかということで、今後、先ほども触れましたように、この余剰人員を幾ら見るかということはむしろミクロの積み上げでいろんな問題の詰まりましたときの企業家側が、各企業がどういう対応をするかというミクロの積み上げ、あるいはそれを踏まえての感触からその段階でとるべきであって、現段階で何か一つの数字を計算上出すことはむしろ問題ではないかと、こういうことで私ども現在構造不況業種全体に対する余剰人員発生見通しについては数字を持ってない、こういう経緯ないし次第になっております。
  133. 対馬孝且

    ○対馬孝且君 ちょっと関連で質問しますが、いま安恒委員から出ておる問題は、まさにこの法案一つの大きなポイントになっておるわけです。どうも私わからないのは、これは予算関係で明らかになっておるように、出資、開銀が八十億、民間が二十億と、それで百億を財源にして信用基金として保証規模は一千億だと、こう出したわけでしょう。これを出すからには、私が聞いている限りでは、私も北海道ですけれどもね、現実に楢崎造船とか、ドックなど全部聞いておるんだよ、そしたら、これからの廃棄あるいはこれからの造船再建のための一応の目安というものを出してくれということを、道庁からも言われたと言うんです。それは全部上に上がっておると、こう言うんですよ。それが土台にならなければおかしいんじゃないですか。いま少なくとも不況業種あるいはこれからゴム産業とかいろいろ先ほど指摘されているように、全体のそういうものが積み重なって、ある程度信用保証規模というものが一千億になりましたと。その一千億とは、たとえばグロスで言って、いわゆる造船が大体そのうちの五百億ですとか、あるいは合板は三百億ですとかと、これはもちろん業界はこんなものでは話にならぬと、こう言ってますよ。  言っているがそういう何らかの、あなた方がこの法案出すときの一つの基礎ベースになるものがなきゃ私はおかしいと思うんですよ。法律つくる自体が、たとえば私も法律二本ばかりつくったことあるけれども、立法の立場で法律つくったときに、この予算は何ぼにするんだいと積算しなきゃならぬでしょう、議員立法出すにしたって。それをね、土台になるものが私はないということはないと思うんだ。それがやっぱりわれわれポイントになって、これからどういう対策なりどういうこの法律の中で生かされていくのかという点から言ったって私はそんなことおかしいと思うよ、やっぱり。そういう面で質問しているんであって、そういう点のこの法律をつくる土台になったときの基礎数字があるはずだから、そのぐらいのことはやっぱりアウトラインとして、この場でもって発表したって差し支えないんじゃないかと、こういうことを言っているわけですから、局長、その考え方がないというのは私はどうも納得できないよ、その点は。現実ちゃんと北海道庁の人はちゃんと持ってますよ。どうなんですか、この点。
  134. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 繰り返しの同じ答弁で恐縮でございますが、私どもそういうことで構造不況業種設備処理に伴っての余剰人員の発生見通しについては、現在までのところ数字を持ち合わせておりません。   〔理事大谷藤之助君退席、委員長着席〕
  135. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いま対馬さん、一千億だから、一千億の計算があるはずだから大体見当ついておるんではないかと、こういうお話でございますが、実はスタートのときは大体一千億ということは予定をしておりますが、もし必要とあらば、途中で通商産業大臣と大蔵大臣が協議をいたしまして、金額は幾らでもふやすと、こういうことになっておるんです。でありますから、一千億が決まってしまっておると、こういうことではありませんで、必要とあらば二千億にもする、三千億にもすると。しかしまあ見当がつかぬものですから、そこでとりあえず一千億ということでスタートしてみようと、こういうことでございます。  それから先ほど来の繰り返しに若干なりますけれども、とにかく構造不況業種対策というのは内需の拡大、景気対策によりましては大部分この問題は解決するんです。でありますから、現時点で一年後までのことを想定をしてきちっと何もかも数字を出せと、こう言われましても、そこに若干の私は無理があると、こう思います。それと、先ほど運輸省からも御答弁がございましたが、私はそれを聞いておりまして感じたことでございますけれども、新しい仕事によって雇用の造出を図りたいということを言っておられましたですね。事実、運輸省あたりでは新しい仕事をどんどんひとつつくり出してみようと、こういうことでいろんな計画を進めておられるわけなんです。でありますから、なるほど造船はある程度減りますけれども、一方でこういう仕事を新たに始めると、こういう計画も一方で進んでおるわけですから、だから何もかもいま計算をするということは非常にむずかしいと、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  136. 安恒良一

    安恒良一君 通産大臣の御答弁はそういうのを語るに落ちるということになります。それはどういうことかというと、運輸省では造船は減ると。減るけれど新しい仕事を一生懸命つくっていると、当然なことなんですよ。労働者が首を切られたら、その人の再就職の道を保障する。しからばどの程度減るのか、新しい仕事はどの程度なのか、新しい仕事に吸収できるのはどの程度なのかという数字がないじゃいけないじゃないですか。何も私は一年先のことを言っているんじゃないんだ。この法律を立案されるに当たって、いま特定不況産業というのはこれとこれとこれだと、これから指定はこれだ、じゃその時点においてどの程度の人が余ると思われたのか、余剰が出る。当然私は、それに基づいて次に聞こうと思っているのは、それならば、しからばどういうふうに新しい雇用をつくってくれるのか、雇用をどういうふうに……。私はきょうは商工委員ですが、社労委員会の中においても各省全部聞いているんです。  各省新しい雇用の創出についてどう思うかと言ったら、精神論だけなんですよ。農林省はどういう雇用を創出しますか、運輸省はどうしますか、全部私はいまの日本の政治経済の重要な課題の一つとしては、百三十何万といわれている労働者が失業している、さらにこういうことをやられてふえてくる、こういう中において一日も早く雇用をつくり出す必要があると思いますから、その意味でこのことを聞いている。大臣はいま言われた、運輸省は造船の方は出るけど、新しい仕事も急ぐ、だから私は何も数が出ることを責めているわけじゃないんです。ただその数字を知っとかなければ対策が立たないでしょうと。いや金も一千億何ぼでも出すからいいじゃないかと、それは余りにも暴論じゃないですか。金を何ぼでも出したからといって労働者の就職がそれで片づくんですか。この一千億というのは設備廃棄、それから伴う問題について使うんでしょう。再就職の金じゃないでしょう、この一千億という金は。再就職の金じゃないでしょう。金は何ぼでも出すから、おまえ足らなきゃ、君一千億、二千億でもいいよと、それはあなた通産大臣だし、次の総理になられるといううわさの人ですから、実力あることはわかります。しかしそのことと雇用安定とは別でしょう、雇用安定とは。金を出すということと雇用安定は。いまでも百三十何万の労働者が失業してるんですから。  そこで私は執拗にこのことを聞くのは、ある程度の数を把握をして、そしてそれならば救済措置はどうなのかと、具体的に。救済措置はどうなのか。たとえば新しい雇用の創出というものについてはどういうふうにお考えになっているのか、こういうことを私は国政の場で聞くのはあたりまえのことだと思うのです。ですから、こういう点についてぜひひとつ、私はきょうはこれ以上やってもこの数字が出ないというならば、この問題についても保留をせざるを得ませんが、ぜひ数字を、どの程度の余剰が考えられるのか、こういうことについてあれをしていただきたい。運輸と農林、どうですか。
  137. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 造船の場合に、昨年の暮れ以降かなり様相が変わっていると申し上げておりますが、昨年の四月から九月ぐらいまで月間五十万トンぐらいずつ新造船の受注をしております。それが十月から十二月で四十万トンに落ちまして、一月からは月二十五万トンベースで落ちております。したがいまして、前に海運造船合理化審議会で御議論をいただいたときから様子が急激に変わっているということで、先ほど来私御説明さしていただいておりますように、いま非常に回数を熱心にその需要見通しをやっているさなかでございます。したがいまして、年末にいろいろの工業会等で御議論のあった数字があるかもしれませんが、私どもはそれも、各業界でもまだまとまってない段階に聞いております。したがいまして、六月を目途としてやってまいります過程で、ぜひいまの御趣旨の点も頭に入れまして、具体的なその数字について詰めて検討をしたいと、こう申し上げているところでございます。
  138. 安恒良一

    安恒良一君 ちょっと待ってください。私は余り言葉じりをとりたくないけれども、船舶局長ともあろうものが、あるかもしれないけどというのは何ということですか。これだけの重大なことをやるときに、特に造船業の場合には労働集約産業で、人が余るだろうという心配・いままでもうんと合理化が進んでいる、そういう数字があるかもしれないけどというのはどういう意味ですか、不見識じゃないですか、あんた。
  139. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) 言葉が不十分でございまして、おわびをいたしますが、あるかもしれないと申し上げましたのは、十二月の段階で各業界で議論をしていたことも事実でございます。そのときの数字につきまして、たとえば大手で五割でございますとか、中手以下ではまだ議論が煮詰まってなくて、数字は出てないということも聞いております。で、これらの数字は十二月の末ごろまでいろいろ議論されている数字でございまして、いわゆる業界の中でコンセンサスが得られている段階ではないということを申し上げたわけでございまして、言葉の説明が足りなかった点についてはおわび申し上げます。
  140. 輪湖元彦

    説明員輪湖元彦君) 合板製造業の離職者がどのくらい出るかということでございますが、設備廃棄計画全体としては、先ほど申し上げましたように、一二%の廃棄をするという計画をつくってございますけれども、個別の具体的な張りつけをいたしませんと数がはっきりしないという段階で、現段階でまだそういった具体的な積み上げもいたしてございませんので、数字をきょうお示しするわけにはまいらないということでございます。
  141. 小柳勇

    ○小柳勇君 関連して。  全般的な問題は、また別途——運輸省だけに質問しておきます。  昨年の予算委員会以来、造船業界の大変な問題で、私どもも再三各委員会で質問しています。きょう、運輸委員会も造船所の現地調査に行っています。私どもにも、造船業界から詳しい資料を出して、善後策を陳情されている。特にいま、通産大臣が言われたように、現在失業しようとする、数字も私は知っています、そういう諸君を新しい仕事に振り向けて、なるべく一人でも失業者を出さないようにしようと、したがって、海の方の労働者を陸に上げたり、あるいは解撤作業をしたりということで、具体的に業界から出ています。しかも、全国の造船業者の数といってもしれているし、したがって、これだけいま安恒議員が系統立ってずっと質問しているわけよ。  それは、この法律ができても雇用安定というのは、ただ第一条に修正点を書いただけで、ちっとも雇用安定など考えないでこの業界再編成というか、整理してそのための赤字の保証だけやっていく、そういう法律ではないかと、これではいかぬ。この法律が昨年できた離職者臨時措置法の方につながって、しかもそれ以上にこの法律で新しい雇用を創出していかなきゃならぬ、それにはこの審議の中でもうちょっと前向きに、ただ後始末でなくて前向きにこの法律を肉づけしていこうという立場で、社会党は五人ちゃんとこの課題を整理して受け持っていま質問しているわけ。だから、完全に、いや、たとえば二万三千名この造船所で失業が出ますとか、全般では五万出ますとか、正確に言わぬでいいから、大体このくらい出ますけれども、陸の方にこのくらい行くし、あと解撤作業にこのくらい使います、そのためには金はこのくらい保証してもらう、あるいは新しく政府の補助がこのぐらいかかりますよと、なぜそれが言えないかということをいま安恒君言っているわけ。そういうものが出ると、それじゃひとつ、この法律によって前向きに雇用創出もしようし、雇用者が不安にならぬように、そういうのが本当の国会の任務でしょう。  だからまあわかっておっても言ったら後また大変だからというようなことではなくて、もう少しわかったものをはっきりしてもらいたい、まだこの指定業種のほかにもたくさん合理化の話が出ているわけですよ。それも知っています、みんなあります資料が。しかし、とりあえずはいまこの指定業ここに十二ありますがね。これはもう昨年から商工委員会で問題にしている不況業種ですよ。その中で四つしかこの法律に書いてない、具体的には。だからとりあえずは四つをモデルにしていま論争をしているわけだから、もう少し前向きにあるものはこれだけですと、全部さらけ出しながらどうしたらいいでしょうか、それがぼくは政府の態度だと思うからもう少し実のある答弁してください。
  142. 謝敷宗登

    政府委員(謝敷宗登君) いま先生から非常に造船業の雇用の安定につきまして、いろいろ御示唆をいただいたわけでございまして、その点につきましては、私どもも運輸大臣も種々の委員会で雇用の創出についての発言をしておるんです。私ども、従来のやり方で一般商船だけを対象にしてやっていきますと、これは先ほど来私が御説明いたしましたように、非常に極端なむずかしいケースで言えば月二十五万トンぐらいのベースで推移していくと、それにどれだけ需要を上乗せできるかという点で、いろいろいま議論がなされておりまして、まあいわゆる官公庁船の代替建造とかあるいはスクラップ・アンド・ビルドとか、それから解撤需要とか、いろんな議論はされております。私どももそれを具体化を急ぎまして、そういったものの進捗の度合いをいまの段階でこのぐらいということを、私どもはまだ詰め切っておりませんので、申し上げる段階でございません。  したがいまして、安定化の方策についての作業をまとめていきます段階で、逐次具体的な数字を積み上げていきたいと、こういうことを申し上げたつもりでございまして、それらの想定につきましてもまあ業界同士の、たとえば海運業界と造船業界との間でスクラップ・アンド・ビルドについてもまだ意見の調整が終わっておる段階ではありませんし、その他の問題についても具体的に詰めなきゃならぬ問題が残っておるわけでございますんで、それらを十分詰めながら、具体的に積み上げられる新しい需要については積み上げた上で、安定化のための方策の作業に十分反映をしてまいりたいということをまあ申し上げたつもりでございますが、言葉が足りなかったかと思いますが、そういう意味で六月の、片方でそういう何といいますか、一般商船の需要見通しをさらに詰めると同時に、片方でそういう具体策を積み上げていくということで、できれば六月末を目途としてということで申し上げたつもりでございます。
  143. 小柳勇

    ○小柳勇君 各省にもうちょっとお話をしておきたいんですが、造船の新しい仕事のことも通産大臣にも陳情してあるんです、業者も運輸の衆議院委員の諸君もね。だから通産大臣からさっきちょっとこれは出たわけです。だからここで論議するとき、互いに商工委員の諸君に各省のものをさらけ出して、特にこれはこの法律通産省が担当だから、やはり担当大臣なり担当主管の局長が各省の局の動きを知っていないと総合的な計画立たないんです。また、これを運用しなければならないのだから、これから五カ年間運用するんだから。そのためには各省のいろいろ、知っているけれどもこれは言ったら大変だではなくて、それは国会が責任を持つから、したがって、もっとざっくばらんに現状はこうですと。いまの佐世保重工だってあれ何とかしなけりやなりませんね。私どもはその問題もこういう場で論議しておきたいと思うんですよ。ただ、具体的にいろいろ皆さんが出さないと公式の論争にならないわけね。私ども持っている資料を出しても、あなた方はもうそれはちょっと違いますと言われたら論争にならないでしょう。  そういう意味で安恒君が詳しくの数字を朝から取っているんだから、こちらにあるんですよ。あるけれども、一応政府が認めないと論争にならないから言っているんだから、したがって、もう少しこれからも論争していきますからね。まず、そういう労働者のこれからの異動、そんなものを言わなければ、そこから論争にならないわけだ。各省とも、各局ももう少しざっくばらんに論争してもらいたいと思う。そういう意味で、私もこれから論争しますからね。質問に答えてください。
  144. 安恒良一

    安恒良一君 ですからこの雇用のところは、これもまた私はきょうはもうこれ幾らやったって進まぬと思いますから、保留しておきますから、どうかいま小柳委員からも言いましたようにひとつ次回までに、私は、資料はないことはないと思いますから、資料出していただきたい。その上に基づいて、雇用の安定について少しこちらから質疑をしたり注文をつけたいと、こう思います。特に労働省は中心になって、通産省とよく打ち合わせをして、次回にはひとつぜひこういう数字をあれをしてもらいたい、こういうふうに思います。  それで、私実際は五時間使ってません。使ってませんが、次の御質問の方もお見えになっていますし、お約束は四時四十五分ということになっていますから、残された時間は保留をいたしまして次回に、まだきょうは公取の問題も残してますし、それからこれで大概時間とりましたから、いろいろ聞きたいことがあったのですが、質疑取りませんから、その点については他党に御迷惑をかけるわけにもいきませんので、四時四十五分までと、こういうことでありますから、ここで私は保留をして終わりたいと思います。
  145. 馬場富

    ○馬場富君 本不況産業安定法に関連いたしまして、いま問題となっております五十二年度の実質経常収支の黒字が先般も発表されましたが、百四十一億ドルという膨大な額でございますが、やはり、日本の自由貿易の推進の立場から大きなこれは障害の問題である、こう思いますが、この点につきまして通産大臣は、この点の各国間、特にアメリカ、EC等との収支のバランスを今後どのように考えていくか、ひとつまず最初質問いたします。
  146. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 昭和五十二年度の貿易収支の黒字は約二百五億ドルで、貿易外の赤字を差し引きまして経常収支は約百四十億ドル前後と、こういう数字になったわけでございます。で、こういう状態が続きますと、政府が昨年の末に設定をいたしました経常収支を六十億ドルにもっていこうというこの目標は大きく外れますので、そこで、いま懸命に軌道修正をしておるところでございます。で、軌道修正のやり方は、抜本的にはこれはもう、内需を拡大をいたしまして輸入を増加さしていくということ、オーソドックスなやり方に待つよりしようがないわけでありますが、しかし、それには時間が相当かかりますので、やはり直ちに現状をある程度修正するということには間に合いませんので、そこで輸出につきましては、とりあえず数量的に五十二年度横並び、こういうことで行政指導をすることにいたしております。  また同時に、輸入につきましては、緊急輸入の拡大ということで去る三月十一日にもある程度の作業をやりましたが、あの程度ではその後の状態では大変不十分であるということから、さらにずっと引き続きまして作業を検討しておりましたが、大体いままとまりつつあるところでございまして、あすじゅうには多分関係閣僚会議を開きまして、何をそれじゃ緊急輸入するか、数量はほぼどの程度かというふうなことについておよその見当が出るのではないか、こう思っております。そのことによりまして、何とかいまの貿易の流れ、経常収支の流れというものを変えたい。そういたしませんと、日本の現在の国際収支が導火線になりまして、そうして世界全体に保護貿易の機運が起こらないとも限りませんので、そういうことになりますと、世界経済全体が縮小均衡になる、こういうことを心配をいたしまして、ぜひともいま申し上げました方向で結論を出したい、かように考えて努力をしておるところでございます。
  147. 馬場富

    ○馬場富君 じゃ大臣説明によりますと、明日の閣議では特に緊急輸入の点についての論議が焦点となる、こういうように理解してよろしゅうございますか。
  148. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 閣議でなく、多分関係閣僚会議を開いて決めることになろうと思っております。一番の中心は緊急輸入の拡大策でありますが、あわせて、経済協力の拡大、それから、円高差益を消費者に還元するという差益還元の問題、これもあわせて議論することになろうかと思っております。
  149. 馬場富

    ○馬場富君 これにつきまして、いまの特に黒字の増の問題につきまして、いまアメリカ、あるいはEC、日本間に進行されております東京ラウンドについても、大臣の見解をひとつ御説明を願いたいと思います。
  150. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 東京ラウンドの当面の責任は牛場国務大臣が担当しておられるわけでございますが、これまでの会議で、主要国間で方向が確認されておりますから、それは七月中旬を目途として、何とか東京ラウンドを成功させようじゃないか、こういう合意ができまして、それに従いまして必要なあらゆる対策を立てておるというのが現状でございます。
  151. 馬場富

    ○馬場富君 特に五月に日米首脳会議のそういうのを迎えまして、やはりその中の一つの議題としては、東京ラウンドの問題がかなり議題になるんじゃないか、こういうように考えるわけでございますが、こういう面で、日本側の経済情勢からしてこの点が非常に集中的に各国からのまた議論も呼ぶと思いますが、ここで政府は実はこの東京ラウンドに対する取り組みについては積極的に臨むというのが姿勢でございますけれども、この点につきまして、ひとつ具体的に通産、大蔵のもう一遍見解をお尋ねしたいと思います。
  152. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いま、牛場国務大臣が二、三日前に帰ってこられましたので、牛場国務大臣の報告を政府部内関係者の間で受けまして、できるだけ早く日本としての対応策というものをまとめ上げたいということで、いま関係各省で懸命に調整中でございます。  その方向は、先ほど申し上げましたように、七月中旬までにこの東京ラウンドを成功させなきゃいかぬ、これを基本的な目標といたしまして、せっかく関係方面の意見を調整中であるというのが現状でございます。
  153. 馬場富

    ○馬場富君 大蔵は来てませんか。——これに対する見解。
  154. 野崎正剛

    説明員(野崎正剛君) ただいま大臣の方から御答弁ございましたように、大蔵省といたしましても、一月十七日の閣議決定の基本方針に基づきまして、各省協力し合いまして、今後ともオファーの改善を各国相互主義にのっとって積極的に対処していくということで現在作業中でございます。
  155. 馬場富

    ○馬場富君 それじゃ、その一月に提出されました関税引き下げのオファーの大幅修正の点ですね、その内容を大綱的に説明いただければお願いしたいと思います。
  156. 宇田川治宣

    説明員宇田川治宣君) 通産省で関税引き下げ交渉を担当しております宇田川でございます。  御説明をさしていただきたいと思いますが、一月に主要各国間の合意に基づきまして、私ども関税の引き下げのオファーを日本政府として提出したわけでございますが、これにつきましては、鉱工業関係の品目、これは税目数で約二千八百ほどございますけれども、それにつきまして、スイス方式というふうに言われております関税引き下げのいわば方程式と申しますか、フォーミュラというふうに言っておりますが、そのスイスフォーミュラというものを頭に置きまして、それぞれの品目について可能な限りの引き下げを行うということでオファーを提出したものでございます。  もちろん、一部なかなかスイスフォーミュラまで達しない、いわば例外、部分的な例外というふうなものもございますし、他方スイスフォーミュラよりもさらに大幅なカットをする、いわゆるフォーミュラ以上の引き下げ可能というふうなものもございます。そういうふうなものをオファー全体として評価いたしますと、これも主要国間で合意を得ております四〇%——平均引き下げといたしまして、四〇%の引き下げ率というものを確保しようではないかという合意がその前に主要国間でなされておりまして、その合意されております四〇%という目標を超えたオファーを提出したというのが一月の状況でございます。
  157. 馬場富

    ○馬場富君 過日ジュネーブで牛場さんが、ECやあるいはアメリカ等から相当強く、関税引き下げの品目とセーフガード等についての要望がなされたと、こういうように聞いておりますが、この修正内容についてちょっと説明してもらいたいと思います。
  158. 宇田川治宣

    説明員宇田川治宣君) 関税の問題につきましては先ほど御説明いたしましたように、日本は一月の十八日にガットに関税の引き下げオファーを提出したわけでございますが、これはいわば日本、が先駆けて提出いたした次第でございますが、その後EC、それからアメリカというその他の主要先進国も、それぞれ逐次関税の引き下げオファーをガットに提出してございます。その後各国の間でお互いのオファーの内容を分析し合い評価し合って、それぞれ相手の国、自分の国にとって関心のあるものについてさらに改善をしていこうではないかということで、現在その作業をこれから進めるという状況になってきた。で、ただいま先生御指摘の四月十日の牛場国務大臣、ハフェルカンプECの副委員長及びアメリカのシュトラウス特別通商代表部の大使の三者の会合におきましても、そういうこれから具体的な交渉を、それぞれ改善をお互いにし合って、早急かつ相互に納得のできる状態に交渉妥結に持っていこうということで合意を見ております。  またセーフガードの問題につきましても、アメリカ、日本、ECの見解が現在必ずしも同じといいますか、意見の一致を見ているわけではございませんが、これにつきましても、相互の意見交換といいますか、交渉をこれから精力的に進めていこうということで基本的に合意を見た次第でございます。
  159. 馬場富

    ○馬場富君 一月末に本格的に交渉に入った時点から、この関税引き下げについての各国のオファーが全部出そろったわけでございますけれども、いまだに何一つ実っていないというのが大体実情ではないか。そういう点からしまして、わが国は今後アメリカあるいはECを納得させるようなオファーを出せるかどうかという点について大臣のひとつ見解をお尋ねいたします。
  160. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先ほど申し上げましたように、七月中旬には何とか長年にわたるこの交渉を妥結、成功させたいというのが政府の基本方針でございますし、各国の合意でございます。でありますから、その方向に向かっていろいろ工夫もし、作業もしておるわけでございますが、この交渉の途中で詳細申し上げるということは、交渉も非常にやりにくくなりますので、この点は担当官も申し上げないと思いますが、しかしながら、とにかく交渉を妥結させなければならぬという意気込みで取り組んでおることは事実でございます。
  161. 馬場富

    ○馬場富君 それでは、大臣、この東京ラウンドの最大の焦点は、何といってもやはりセーフガードにあると思うのです。そういう点については、これはいままでの経過から見ますと、EC、アメリカ等の強行策においては、自由貿易の原則に一つは反する点も今後考えられる、心配される。この点についてはどういうお考えでしょうか。
  162. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) アメリカはやや日本に近い考え方でございましたが、ヨーロッパが御存じのように日本と全然違う立場をとってきたわけでございます。しかしこれを成功させるためには、意見が違いましても、やっぱりある程度意見交換をしてみる、そして妥結点はないかということをやることはどうしても必要だと思うのです。意見が違うから、おまえとはもう物を言わぬというようなことでは、これは前進をいたしませんので、そこで意見交換をしながら何とか妥結点はないかと、こういうことでいま進路を探っておるというのが現状でございます。
  163. 馬場富

    ○馬場富君 では、私も東京ラウンドの推進は反対ではありませんが、やはり、推進の中にそういう内容が多分に出てくるものですからお尋ねいたしました。いままでの交渉の経過からいたしましても、やはりお互いに日本あるいはアメリカ、EC等の利害が表面に出たのが非常に目につくわけですね。こういう点については、果たして東京ラウンドの本当の目的である秩序ある公正な貿易が考えられるかどうか、これは各国間の利害の追求に終わってしまうんではないか、この点はどうでしょうか。
  164. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 幸い何回かの意見交換を通じまして、アメリカも自由貿易の原則を守って、何とか世界経済全体を拡大均衡の方向に持っていきたい、こういう考え方でございますし、ECにおきましても、そういう考え方が底流として流れております。フランスだけは、やや感じが違う点もございますけれども、それとても、自由貿易の原則を否定しておるものではございません。やはりヨーロッパ全体としても拡大均衡の方向に経済を持っていきたいというのが目標でございます。そういうことで目標が合致をいたしておりますので、そこでわが国といたしましても、これは工夫と努力によっては必ず妥結の道があるであろう、このように考えまして努力をしておるのが現状でございます。
  165. 馬場富

    ○馬場富君 もう、妥結の大詰めにきておるわけでございますけれども、そういう点で、やはりわれわれは非常に気になるのは、この交渉のテーブルに、いわゆる発展途上国が参加してないという、たな上げされておる、こういう点については、他面、大国横暴だというそしりも出ておるわけですけれども、この点の大臣の見解をお尋ねいたします。
  166. 宇田川治宣

    説明員宇田川治宣君) 御説明申し上げます。  現在交渉を行っております東京ラウンドと申しますのは、数年前に東京でガットの閣僚会議を行いました、いわゆる東京宣言というものが採択されたわけでございますが、その中に、いま先生が御指摘の発展途上国の問題も十分頭に置いて交渉を最終的にまとめていこうということがうたわれております。で、それとの関連におきまして、現在、主要国間が話し合いを行いますと同時に、発展途上国の方々とも何回となく会っておりまして、そういう発展途上国の国々の要望というものを十分考慮し、それと話し合いをしながら全体的な交渉の妥結に持っていきたいというふうに考えている次第でございます。現に四月十日の、先ほど御説明さしていただきました三閣僚の非公式会合と申しますか、その際におきましても、開発途上国との話し合いということを、三閣僚が開発途上国の代表の方々と話し合いをしたというふうなことで、先進国側も発展途上国側と十分意見交換を行いながら、全体としての妥結に持っていきたいというふうに考えている次第でございます。
  167. 馬場富

    ○馬場富君 じゃ、今後同じテーブルに着く可能性が、発展途上国、ありますか。
  168. 宇田川治宣

    説明員宇田川治宣君) たとえばということで申し上げさせていただきますと、東京ラウンドのガット交渉におきましてはいわゆる熱帯産品グループというグループがございまして、この東京ラウンド交渉の幾つかのグループの一つのグループになっているわけでございますが、そのグループにおきまして、発展途上国から主として熱帯地方の開発途上国と申しますか、特に関心の強い先進諸国において、市場開放を行ってほしいというふうな希望を熱帯産品グループで披露されました。それに対して先進国が、こういう程度応じられる、いろいろ国内的にもむずかしい問題があるにしてもこういう形で応じられるというふうな、いわばリクエストに対するオファーと申しますか、そういう話をやっております。  わが国の場合には、現にその成果を、昨年の四月から取り入れて実施をしているということで、いわば先駆けて実現をしているわけでございますが、そういう熱帯産品グループというふうなものにつきまして、これからも開発途上国は引き続き要求をし、先進国のさらに追加的なオファーを要請したいというふうな希望も出ております。そういうような東京ラウンドのいろいろなグループの中におきまして、先生御指摘の開発途上国と先進国との話し合いというふうなものが持たれるかというふうに思っております。
  169. 馬場富

    ○馬場富君 では、同じテーブルには着けないが意見がこの中に入る、こういうように理解してよいですか。
  170. 宇田川治宣

    説明員宇田川治宣君) 先進諸国におきます関税の相互オファーというふうなものと、それから開発途上国と先進国の間柄と申しますのは、先生御承知のように内容が変わっておりますので、全く対等な交渉ということではなくて、意見交換というふうな、話し合いというふうないろいろな形を通じながら、開発途上国の意向というものを取り入れたかっこうで交渉の妥結に至るというふうに考えております。
  171. 馬場富

    ○馬場富君 それでは大臣、いままでの経過からずっと見まして、このラウンドの運び方ですね、やはりどうしても各国の要望が先に出てきている。それについてのいわゆる妥協ということで一つは終わる可能性が強い、お互いの協定はできないという結果からもそういう弊害に陥りやすい、私はこういうふうに思うわけでございますが、こういう結果に終わってしまうと、その目的である自由貿易の危機というものは、このラウンドの締結によって解決されるのではなくて、近き将来に再びそういう問題点がここに押し寄せてくる、世界の自由貿易の上にのしかかってくる、こういうことが相当心配されるわけですけれども、この点はどうでしょうか。
  172. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 東京ラウンドは成功のうちに妥結したといいましても、それで貿易上の問題がすべて解決されるわけじゃありませんし、将来問題が発生をしない、こういう保証になるわけでもありませんから、それは、幾多の問題は残ると思います。しかしながら、過去数年間関係各国が取り組んでまいりました一つの大きな国際貿易の課題が、一応目鼻がついたという意味において私は大きな意義があるのではないかと、こう思います。特に先進国首脳会議がこれまでに三回開かれております。今回が四回目の会談でございますが、過去三回の会談で、必ずこの東京ラウンドの成功をうたい上げてきたわけでございますが、それがたまたま七月の中旬にドイツで開かれる、そのころと相前後して、これを成功させたいということで作業をしておるわけでございますから、私はこれはこれなりに大きな意義があると考えております。
  173. 馬場富

    ○馬場富君 私はこの交渉の過程を見まして、やはり日本の集中豪雨的な輸出とその相対したアメリカやECの保護主義が、この間の中にかなり台頭してきているということを見るわけでございますが、その点で、日本においても市場の開放だとか、相手側の要求をのむという、こういう考え方ばかりでなくて、この時点に来てやはり貿易の構造を改めるという考え方、ここらあたりが一つは焦点にならなければいかぬじゃないか、そのためにはやはり経済政策の大きい転換が政府の対策としては本筋である、こういうふうに考えますが、その点どうでしょう。
  174. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 御意見の中心は、日本を中心とする貿易問題がこれだけやかましくなっておるんだから、この際、日本として貿易構造を転換するためには産業構造そのものを転換しなきゃいかぬじゃないか、こういう御議論じゃないかと思いますが、産業構造の転換につきましては、これは、政府といたしましてもぜひ必要であると、こういう考え方に立ちまして、ここ数年間取り組んできております。しかし、何分にもこの産業構造の転換ということは、一つの目標を設定をいたしましても、経済が非常に不況である、活力を失っておると、こういう中ではなかなか転換がやりにくい。どうしても経済がある程度の活力を保持しておる、景気がある程度よくなったと、こういう中でありませんと、なかなか産業構造の転換というものはやりにくいということは、これはもうよく御承知のところでございますが、そのために一つの方向を示すことも大事でありますけれども一つの環境づくりも大事である、それは景気の回復であると、こういう考え方の上に立っていまこの問題と取り組んでおるところでございますが、御指摘のようにその方向にやはり行くべきであると考えております。
  175. 馬場富

    ○馬場富君 もうここらあたりで、国民生活の福祉や、そういうものが中心となった政策転換の兆しがやはり強く私は日本の中にあらわれてこなければ、安定成長の兆しがないんじゃないかと、このように見るわけですが、どうでしょうか。
  176. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 福祉政策は、きわめてこれからの政策の大きな柱でなければならぬと考えております。ただしかし、福祉政策だけで世の中のことは解決できませんので、やはり一つ政策の柱として進めていきたいと、このように思います。
  177. 馬場富

    ○馬場富君 じゃ次に、本法案の問題点について質問いたします。  第二条の関係ですが、業種指定でございますけれども、いま一、二、三、四と四業種が載っておりますけれども、それ以外の関係も指し定を受けることができるというのが五の条件の中にありますけれども、これは具体的にどのようなことでしょうか。
  178. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 第二条の一項五号に載っておる「政令」、これは今後法案の御審議を終わりまして、成立後、審議会に諮りまして決めるかっこうになりますが、したがって、現在五号に何がなるかということ、そういう手続が要るわけでございますけれども、この法律案立案の過程で、私どもどういう業種がこの五号の対象たり得るか、いわばそういう感触を御説明申し上げますと、この四業種のほかに通産省所管業種といたしましては、化学肥料関係業種、それから短繊維紡績、綿、スフ、合繊紡績、それから羊毛紡績、そういう紡績業関係、それからフェロシリコン業界、それから紙の関係段ボール原紙業界、それから同じく化学の関係塩ビ樹脂の業界と、こういうものが通産省所管業種として一応検討の対象と申しますか、議論の対象になった業種でございます。そのほかに農林省所管業種で、合板、精糖業というようなもの、それから運輸省所管業種で、四号の船舶製造業のほかに船舶用の機関でございますとか、あるいは船舶用品の製造業というようなものが一応検討の対象になるのではないかと、こういうことでございます。
  179. 馬場富

    ○馬場富君 同じくやはり指定条件の中で、「当該製造業を営む者のすべての数の大部分を占め」という一言がございますが、この大部分を占めるというのはどのような割合なのか、ひとつ説明してください。
  180. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 御指摘の点は、第二条の第三項の「大部分」という解釈だろうと思いますが、この「大部分」と申しますのは、従来の立法例その他から推しまして、全体の三分の二以上というのが大部分と、こういうのが公定の解釈でございます。
  181. 馬場富

    ○馬場富君 この点まあ本案が出る以前の通産の意思表示の中には、二分の一というような数字も出ておりましたが、ここらあたりの点はどうですか。
  182. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) この法律の立案の過程でいろいろな議論が出まして、先生御指摘のようなこの「大部分」が相当部分というような案が検討されたときもあったと記憶をしております。相当部分というのは二分の一以上、過半数というのが法律上の公定解釈でございます。しかし、いろんな検討の結果、やはりこの申し出は、その業界の自主的な努力というものが相当まとまった業界でないと、後の手続きに載せるべきでないと、こういうことから、最終的に御審議お願いしているように「大部分」ということになったわけでございます。
  183. 馬場富

    ○馬場富君 それでは現実、まあこの法案の中に指名してありまする平電炉だとかアルミ製錬業あるいは合成繊維、船舶等の中で、実質やはり三分の二が絶対条件で、この数に満たなければだめだという条件になってくると、やはり現実的に私はずっと見てみても、かなり厳しい点があるのじゃないかと。やっぱり二分の一と三分の一あたりの、ここらあたりのところが非常にこの組織を結成するかせぬかについて焦点になってくる。ここらあたりについてはもう少し柔軟性が考えられるかどうか、お示しになっていただきたい。
  184. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) この法律は、ただいままでの御審議過程でも基本的な考え方を御説明申し上げましたように、やはり設備処理につきまして、この法律で定める基本計画の策定とか、あるいは最後の共同行為の担保の手段といたしましての支持カルテルとか、あるいは債務保証基金というような幾つかの柱を入れておりますが、一番基本には、やはりその業界が、当該業界がまとまってやっぱり一緒に設備処理の問題に取り組んでいこうと、こういう協力といいますか、団結関係というのが前提でなければならないと、こういう基本的な考え方に立っておりまして、確かに「大部分」というのは三分の二以上という条件でございますし、しかもこの第三項は数のみならず、「数」とそれから「事業活動」と二つの面でまあ「大部分」という縛りをかけております。しかし、いま申し上げたような基本的な考え方から申しますと、やはりその程度のまとまりのある業界、これがこの法律によって設備処理を進めていく資格のあると申しますか、そういう業界として考えるべきではないかというのが考え方でございます。
  185. 馬場富

    ○馬場富君 この数字の問題ですけれども、まあでき得ればこれは三分の二を基準として、その業態、業態をして実質廃棄を焦点にして当たった中で、やっぱり具体的の中でもっとこの問題は実質考えていくべきでないか。そういう三分の二とか数字だけにこだわって、そうしてこの目的である事業が推進されぬようになっては、かえってこのやはり結局法案も意味がなくなってしまうのじゃないかと、この点はどうでしょうか。
  186. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) この「大部分」ということは、別にこれは三分の二とは書いてないわけでございますが、いま申し上げましたように、いろいろな立法例その他から、「大部分」というのは三分の二というのが法的解釈になっておりまして、確かに設備処理を進めていくということを考えますと、あるいはなかなか三分の二まで数の上でまとまらぬというような問題も、現実問題としては出てくる可能性もございます。しかし私どもといたしましては、いまお話申し上げましたように、やはり三分の二程度業界の方々の意思が、一緒に問題の処理に当たっていこうと、こういう意思の統一がない場合には、この法律が何と申しますか、政府が非常に先に立ちまして、いわば統制的にと申しますか、強制的に設備をやると、こういう考え方でございまするので、やはり民間の自主的な努力あるいはそういう協力関係というものを前提に、それをバックアップをするという考え方でございますので、そういう面から見ますと、大体ここに書いてございますような三分の二程度の方たちの意思統一があるということがやはり前提になるのではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  187. 馬場富

    ○馬場富君 まあその点については、第四条に、事業者の自主努力の点が明記されておりますから、そういう点について私は、通産が、二分の一から三分の一にこういろいろな伸展した過程を見て、かなり外部的ないろいろな問題等もあって、修正もなさったと思いますけれども、私はこの点が、そう強くやはり自主努力というのが前提になっておりますから、それでこの一三分の二がやはり自主努力の一切の目標だというようなとり方は、ぼくは過酷だと思うんですよ。その点どうでしょうか。
  188. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 先生のお気持ちもわからない点はございません。三分の二——たとえば半分以上ぐらいの方がまとまってやろうというときに非常に過酷ではないかというお気持ちもわからぬことはございませんが、繰り返して恐縮でございますけれども、やはり設備処理の問題というのは大変企業の、非常に企業運営の中核にまつわる問題でもございますし、やはりその業界全体として、この法律に書いてございますような三分の二程度の方たちが集まって一緒にやっていこう、こういう意思の統一がやはり必要なのではないか、こういう感じがいたしております。
  189. 馬場富

    ○馬場富君 だから、それはそれじゃ条文に三分の二と書いたらどうですか。どうなんですか、そこまで主張されるなら。
  190. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) この条文には「大部分」と書いてございますので、たとえば三分の二、一人減ったらどうか、こういう問題がどうかと、こういうことは現実問題としてあり得ると思います。私は、「大部分」というのはほぼ三分の二程度と、以上と、こう申し上げたわけでございまして、現実にそれでは三分の二が一人切ったというときにどうするかというのは、そのときどきの実態に合わして、私ども法律の運用で判断し得る余地があるんではないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  191. 馬場富

    ○馬場富君 あなたたちの意見を聞いておると、魂が抜けちゃうんですよ、法律の。大事なのは、その精神を生かされなきゃいかぬのであって、保護とかそういうことがあれば、はっきりとそういうことをおっしゃいよ。いかにも三分の二は絶対的な数字のように言ったら、これおかしくなりますよ。いいですか。  じゃ次に移りましょう。  次に、五条から八条の中で「共同行為の実施に関する指示」が出ておりますが、この対象業種はどういう業種かということです。
  192. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) この対象業種になりますのは、まず法律の仕組みから申しますと、二条の関係で、ただいま先生の御指摘のございましたその業界の申し出によって指定業種特定不況産業というのが決まりますと、特定不況産業ごとに三条によりまして安定基本計画が定められます。安定基本計画が定まりますと、各事業者は四条の規定によりまして、自主的な努力によりましてこの安定基本計画の定めるところに従って設備処理の手続を進める、これがいわば基本的な設備処理の進め方でございますが、しかし、設備処理を行うに当たりまして第五条の指示カルテルというのがどうしても最後の担保の手段として必要になってくるのではないか。  これはそれじゃいかなる場合にするかと申しますと、五条の要件に書いてございますように、自主的な努力だけではこの安定基本計画に定めるところに従った設備処理が実施ができない、しかもその不況産業がやはり全体としてなお事業者の経営の継続が困難というような事態が引き続いており、しかもそれは国の立場、国民経済全体の立場から見ても必要であるというようなときに、判断をして指示をするわけでございまして、現在どの業種についてこの指示をするかということについての具体的な業種は何ら決まっておりません。
  193. 馬場富

    ○馬場富君 じゃいまの局長の説明でいきますと、それはインサイダー規制ということでしょう。どうですか。
  194. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) この五条の共同行為の指示は、当該業界に属する全事業者に対して個別に指示をいたしまして、みんな事業者共同して共同行為を締結をしなさいという指示でございますから、対象は全事業になると思います。  ただ、現実問題といたしまして、先生御指摘のように、最初からたとえば一緒に設備処理を進める意思なしというような方はその指示を受けても共同行為には参加しないということは十分に考えられます。
  195. 馬場富

    ○馬場富君 ここで、この法案の一番やはり、かなりいままで提出された中でかなめとなった、いわゆるアウトサイダーの問題が出てくるわけでございますが、やはりこの中でアウトサイダー規制については、一つは当初からその案があったようですが、除外されたと。この経緯についてちょっと説明してもらいたいと思いますが。
  196. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) この法案の立案の過程におきまして、私どもの中で、この共同行為の指示について、いわゆるアウトサイダー命令を入れるべきであるかどうかということは一つの議論のと申しますか、一つの問題点でございました。  なお、お断りを申し上げておきますが、その場合のアウトサイダー命令と申しますのは、この五条の中にいわゆる指示の対象といたしまして、設備処理と、並びに設備処理とあわせて行うべき設備の新設、増設等の制限、この二つが指示カルテルの対象になるわけでございますが、私ども、いま申し上げたように立案の過程一つの問題といたしましたのはこの後半でございまして、設備処理までアウトサイダー命令をかけるべきかどうかということは最初から議論の対象外でございまして、やはり設備処理をやる以上は、アウトサイダーの人が少なくとも新しい設備をつくったりなんかすることは抑えるべきではないかというのが一つ意見でございました。  しかしこれについては、御案内のように私どもそういう一つの問題意識に対しまして、いろいろな意見がございました。最終的にはこの法案にございますようにその設備の新増設に対する制限のアウトサイダー命令は削除をいたしまして御審議を願う、こういう経緯になっております。
  197. 馬場富

    ○馬場富君 だから、新しい設備についての規制については、アウトサイダー規制というのは外したというわけですね。そういう点で、非常にこの点が一つ法案を推進していく場合の矛盾点になってくる、こういうように思うわけでございますが、   〔委員長退席、理事大谷藤之助君着席〕 この点やはり今後このためにかえって、規制をするが一方では新増設するという不公平が起こってくる場合、この点はどういうふうに考えてみえますか。
  198. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 設備の新増設に対してアウトサイダー命令の規定があるかどうかということは、確かに設備調整問題をそういう法律の規定の存在によりましてより容易にと申しますか、できる可能性があると私も考えております。  ただ一方、この設備処理問題を中心にこういういまの何と申しますか業界の自主的な努力でやる、努力を前提とする、こういう考え方等、いろいろ両方の点から考えてみますと、設備の新増設につきまして法的なアウトサイダー規制命令を入れるということまでやるべきかどうかという点からの議論から落としたわけでございますが、確かにアウトサイダー命令が、そういう意味でのアウトサイダー命令がございませんと、いわゆる行政指導の面ではいろいろ、よりむずかしい問題が出てくるかもしれません。  しかし、一方考えてみますと、過剰設備処理というのは、先ほどから申し上げましたように、やはりその業種あるいはその中に含まれている個々の事業者の方から見ますと、やはり一つ法律的な強制権をもって、アウトサイダー命令があるからといって一方的にこれを発動することではなかなか解決する問題ではございませんで、やはりその前提といたしまして、できるだけアウトサイダーになる方には、行政指導を通じまして十分な話し合い、納得をしていただくということにより努力をすべきであろうと思いますし、そういう努力を通じて、このアウトサイダー命令の規定はございませんが、業界全体としての設備処理問題を進めていく、そういう方向に私どもとして産業官庁として努力をしていくべきである、それによって解決をすべきである、こういうふうに考えております。
  199. 馬場富

    ○馬場富君 この安定法というのは、やはり構造不況発生したと、こういうやはり一つの解決策の中から生まれた法案であろうと私は思いますよ。それ以外にないと思うんですよ。そういう中で、片やそのために設備過剰がこれは規制されなければならないということで、自主的ではあるけれども一つ法律に基づいて、こういうようないわゆる設備廃棄規制というものが考えられるという問題が出てきたと思う。片や、それに関して参加しない人たちの、アウトサイダーについては、新増設については何らこれがコントロールができないというような矛盾点はおかしいじゃないですか。よしんばあなた方が、国が法律でもってこういうものを考えなけりゃいいですよ。考えた以上の中には、ぼくはそういう一つの不公平さというものを、どういう点で是正するかは明確にしなければだめよ。はっきりしてくれよ。
  200. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) アウトサイダーに対しますその規制に関する取り組み方の問題、いろんな御意見がございましたし、私どもの中でもいろんな意見がございました。ただ先ほども申し上げましたように、設備処理問題をいわば国の統制的な、非常に統制品的な色彩の強い方法でやっていくのか、あるいは設備処理という企業の運営、その業界の今後のあり方のいわば基本にかかわる問題につきまして、当該業界ないしは関連業界等の協力体制のもとに自主的に進めるか、このどちらをとるかということになりますと、現在の情勢におきまして全体のコンセンサスを得たところは、まさに自主的な努力で解決をし、アウトサイダーの規制等のいわば強制的な規定は置くべきでないというのが全体のコンセンサスでございます。この法案はそういうかっこうをとったわけでございます。しかし、いま御指摘のとおり一方で設備処理をしながら、一方でどんどん設備の新増設があるというような事態はこれは避けるべきでございますし、そういう事態になる場合には設備処理が全体として進められないと、こういうことになると思います。  そこで私は、アウトサイダーの方が非常に多くていろいろなお話し合いの中で一緒にやっていこうという空気が出なければ、先ほどの話に戻りますけれども、当該業界としてのこの特定不況産業としての設備処理を進めていくいわば申し出がないというような事態になると思いますし、それはそれで、業界の自主的な解決の努力ということを前提とする考え方に立っております以上、やむを得ないことになってくると思います。  一方、大部分の方が何とかひとつ業界全体でまとまって設備処理を進めていこうということに統一いたしました場合には、先ほど申し上げましたように法律の規定はございませんけれども、やはり産業担当官庁といたしまして、関係業界特にアウトサイダーの方等とも十分な話し合いを進め説得に努めまして、全体としての設備調整、過剰設備処理問題が進められるように努力をすることによって解決をしていきたいと、こういうふうに考えるわけでございます。
  201. 馬場富

    ○馬場富君 私は業界の方の自主性について云々というものは一つもありませんよ。だが新しい廃棄が行われる中に、片一方新しいやはり新増設がどんどん行われるというようなこういう事態が起こって、法というのはやはり公平でなけりゃいかぬし、平等でなきゃならぬと、そういう立場から言ったらぼくは法の精神から外れるんじゃないかという点で言っておるわけです。ちょうどたまたま通産がこのアウトサイダー規制を含めた一つ案を発表した直後に、一部の学者の中に、あるいはまたこの規制に反対する業界の中からいろんな意見が出ておりました。私はそれを読んだときに、その意見の中には、この案というものは、一つは通産官僚が二年か三年ぐらいで持ち腸持ち場も回って、そういう点で研究が足らぬためにこういうような法案が出たのじゃないかという批判も出ていましたよ。それからもう一つは、政府の、やはり通産の指導どおりやっていけばかえって損をしてしまうので、政府と反対の方向行くと得したから、結局はその方がいいのだというような意見も出ていましたよ。これはちょうど競馬の穴をねらうような意見なんですね。そういうような物の考え方の中からこういうものを論議されたんじゃ、ぼくはこの規制に従ってやはり皆さん方に協力して一生懸命やっていこうとする前向きの業者たちの立場はどうなるかということですよ。そういう点で、法律とはやはりまじめに物を考える者の方向性に立って考えなければならぬのじゃないかと。そういう点どうでしょうか。
  202. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 御指摘の点は私方向としては全く同様に考えておりまして、やはり業界の大部分の方たちが一緒に過剰設備処理を進めていこうと。その場合にその方たちがやはり自分らの新しい設備の新増設等は押さえていこう、こういう方向をとられることはもう確実であろうと思います。しかし、そのときに不幸にして何人かの方がいま御指摘のようないろんなビヘービアから反対の動きをされる方もあるかもしれませんし、それがやはり全体の業界の前向きに問題を取り組もうと、その業界として物を片づけておこうということに障害になるというような場合も当然予想されますが、私どもはこれはそのアウトサイダーの法律的な規制の条文がないにせよ、繰り返しになりますが、ひとつ私ども産業担当官庁といたしましてそういうアウトサイダーの方たちと十分な話し合い説得に努めて、やっぱり大部分の方たちに合わせて設備の新増設の抑制をみずから努めてもらいたい、そういう方向にやはり指導に努めていくということで解決すべきであり、今後ともそういうふうに努めていくつもりでおるわけであります。
  203. 馬場富

    ○馬場富君 この点については論議しても時間に制限がありますから、ここで大臣に、やはりこういう法律が出て規制がなされ、一つは国の線に沿って不況からお互いを守ろうという立場で協力し合う中に、自分は自分勝手の意見で、それが自主性だと、こういう考えがあったら、私はいろんな問題については対策が何もできなくなってくると思う。そういう点で、法的な枠は外したにしても、やはりこれに従って一生懸命前向きに考えておる業者がある、それについてこれから外れていく人たちについても、この条文の中にはないけれども、しっかりとした私は監視のもとの行政指導を強力に続けるべきだと、これがあって初めて公平に法が適用されるということになるんですが、大臣どうでしょうか。
  204. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 御趣旨は全く賛成でございます。そのとおりやります。
  205. 馬場富

    ○馬場富君 次に九条の関係で、国は資金確保の問題については、この「措置に必要な資金の確保に努める」こう書いてありますが、この「必要な資金」とはどのような資金を回されるか説明してください。
  206. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 九条のこの規定は、安定基本計画が定められまして、設備処理を行う上にいろいろな資金が必要になってまいります。一つは、設備処理に当たって担保抜きの運転資金が必要になる、あるいはさらに今後設備処理をやるに当たりまして、単なる設備処理にとどまらず、これからの業界のあり方等を含めましていろんな問題点が出てくると思います。広くそういうこれからの業界の進み方等に関しまして、金融界その他との協力関係等につきましても、国ができるだけのそういう支援の措置をやっていくという姿勢を示したものでございます。  それから第二には、この後に出てまいりますいわゆる債務保証基金というもののための原資の確保を図るというようなことも、具体的にはこの内容に入ってくる、こういうふうに私は考えております。
  207. 馬場富

    ○馬場富君 いや、そんな説明じゃなくて、「資金の確保」と書いてありますから、具体的にはどのような、政府が力を入れられるんですから、資金かということです。私も非常にこれは担保の提供だけかと思ったらば、こういう御配慮もあるというので、にっこりしておるわけですけれども、ちょっと説明してもらいたいと思うんですけれども
  208. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私ただいま御説明したようなのがこの政府の努力規定としての内容でございますが、繰り返しになりますけれども、具体的内容としましては、ただいま申し上げたような一般的な問題のほかに、五十三年度からたとえば安定基本計画に基づきまして、将来の方向として事業転換をやろうというようなことがその業種としての一つの大きな問題点で出てくるというような業種も考えられると思います。そういう場合には、たとえば転換先の事業のために必要な設備資金につきまして、日本開発銀行にそういう枠をつくって、これで、いわゆる政策金融でございますから、低利で融資をするというような制度等は、その具体的な事例として頭の中にある考え方でございます。
  209. 馬場富

    ○馬場富君 それでは大分この文章と外れてきますけれども。あなたの説明でいきますと、いわゆる開銀からの事業転換資金が、国が「設備処理その他の措置に必要な資金の確保に努める」そういう資金だということになると、ちょっと条文から外れてくるような気がしましてね。これは私は転換の何か必要な資金が政府資金の中から出るかと。そのままずばり言いますと、そういうように読めますよ。その点どうでしょうか。
  210. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) この言葉は、いわば設備処理に当たりまして、一般的な意味での設備処理につきましては、いろんな面での金融的な支援の関係等が出てまいりましょう、こういうものにつきましては、一般的に国としてできるだけの要するにバックアップをするということのほかに、ただいま私が申し上げましたような、たとえばある業種につきまして、事業転換の問題あるいは販売提携云々というような広い意味でのいろんな提携関係問題等が出てくると思います。具体的には、いま申し上げました昨年度、五十二年度から開発銀行の融資対象といたしまして、事業転換の方向が出ましたときに、転換先の設備資金等を見るという枠がございます。これはまあ一つの例でございます。  しかし、今後私どもは、この法律の運用につきまして、たとえば来年度の問題等といたしまして、新しい前向きのそういう資金を国の機関から供給をする考え方はないかというようなことを当然私ども考えたいと思っております。私がいま御説明いたしました開銀の特別な融資枠というような考え方でいろいろな知恵を出してみたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  211. 馬場富

    ○馬場富君 そういう方向性も前向きで考えてくださると、こういうことですね。よろしゅうございますか。
  212. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) そういう方向で考えたいと思っております。
  213. 馬場富

    ○馬場富君 次に、十条の雇用の安定の関係でございますが、衆議院ではこの点につきまして特に修正がなされて、労働組合あるいは中小企業の配慮が特に追加されてうたわれてきておりますが、これは具体的にどのような対策をなされますか。
  214. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 第十条は、雇用の安定等に関します一項が事業者、二項が国、三項が国と都道府県のいわば努力義務を定めた規定でございます。  一項は、国会に御提出をいたしました政府原案について、ただいま御指摘のように衆議院において修正が行われました。特定不況産業に属します事業者は、先ほど御説明しました安定基本計画が定まって、それに従って設備処理等を行います場合に、その事業所におきます労働組合と協議をして、雇用の安定を図るために必要な措置を講ずるように努めなければならぬという、まさに努力義務の規定でございます。  第二項は、むしろ国が現行の雇用安定資金制度等を活用いたしまして雇用の安定のために努力を、失業予防その他雇用の安定を図るために措置を講じろという努力規定でございまして、現実的には、ただいま申し上げました現行の制度を十分に活用いたしまして、雇用の安定に努めるということでございます。  第三項は、国と都道府県が、むしろ不幸にしていわば離職をした労働者に対しまして、職業訓練の実施その他その条文に書いてございますような職業、生活の安定のために必要な措置を講ずるように努めるものとするという規定でございまして、これも現行のいろいろな労働関係の仕組みを使いましてできるだけの努力をする。私ども通産省の立場といたしましては、労働省当局と十分連絡をとりまして、この規定に盛られておる精神を守りまして、雇用安定に努めていきたいと考えております。  なお第四項といたしまして、衆議院で「関連中小企業者について、その経営の安定に資するため必要な措置を講ずるよう努めるものとする。」という規定が入りました。私どもはこの規定の御趣旨を尊重いたしまして、中小企業関係につきましては、先生御案内のような、すでに現行の中小企業施策、非常に多くの施策が用意をされておりまして、これを十分に活用いたしまして中小企業経営の安定に努めていくと、こういう意味での規定でございます。
  215. 馬場富

    ○馬場富君 特にいまこの実施前において、この対象となる業種の下請とか関連の中小企業の中で心配されておるのは、やはりその設備処理によりまして、どうしてもそのためにその圧迫が中小企業にくる。たとえば織物やそういう関係で、繊維関係でいきますれば糸代等が高くなっておる関係も起こるのじゃないか、あるいは品物等の出回り等についても調整されるんじゃないかとか、こういうようなことで、かなり一つはこれに対する圧迫感を中小企業関係の人たちは思っておるわけですけれども、この点はどのように是正されますか。
  216. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 私ども中小企業者に会いまして、この新しい法案についてのいろいろな見解を聞いておるわけでございますが、おおむね申し上げますと、中小企業経営の安定のためにいろいろ努力をしましても、大企業の方がふらふらしておりますと結局業界として安定しない。やはりこういう法案は方向としては結構な法案だというふうに受けとめております。  ただし、設備廃棄ということになりますと、やっぱり現実の影響が具体的に出てまいります。従来過剰設備として遊休しておったものを廃棄する限りにおいてはそう問題ないわけでございますが、やり方によっては影響が出てくる場合が当然考えられるわけでございます。  私どもは、安定基本計画をつくりますときには、極力中小企業の立場というものを配慮してつくっていただきたいし、私どもも積極的に意見を言うということによって、その点の改善を図っていきたいと思っておるところでございます。で、現に一つの工場が閉鎖をするというようなことになりますと、それと取引関係のある中小企業の方々は、早速仕事を確保しなければならないという問題も出てまいりましょう。また、つなぎの資金を用意をして、次の新たなる分野への展開に対する対応を助けていかなければならないという問題もございましょう。それらの問題につきましては、私どもも諸般の制度を持っておりますので、これはもうフルに活用して応援をしていきたいと思っておるところでございます。   〔理事大谷藤之助君退席、理事対馬孝且君着席〕
  217. 馬場富

    ○馬場富君 次に、十三条のいわゆる信用基金の点でございますけれども、ひとつこの構想を説明していただきたいと思います。
  218. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 特定不況産業信用基金は、この法律で十三条から以下かなり長い条文を割いておりまして、五十一条までこの法律のかなりの部分を割いております。  簡単に全体の仕組みなり考え方を御説明いたしますと、この信用基金はまず十三条の「目的」でございますが、目的に掲げてございますように、何を目的にするかと申しますと、設備の要するに計画的な処理を進めていく、このために必要な資金等の借り入れの債務保証をするということが目的でございまして、「資本金」が次に十六条に書いてございますが、資本金は一つは開発銀行、大ざっぱに言えば国が開発銀行を通じまして出資者になる、それから開発銀行以外のものが出資をすると、こういうかっこうになっております。それで当面発足は開発銀行が八十億、民間が二十億の出資または出損を基礎といたしまして百億円の出資をいたしますが、以後民間の出資の状況をにらみ合わせまして——開発銀行は百億まで出すというところまで財投計画で決まっております。しかし、その二項にございますし、先ほど大臣御答弁にございましたように、その資本金の増加は大蔵大臣通商産業大臣が認可をすれば、資本金の増加を行うことができる、かようになっております。これが資本金の関係でございます。  次に、じゃどうやって設立をするかということが二十二条から書いてございますが、設立に当たりましては十五人以上の発起人が、その設立の手続を進めるかっこうになっておりまして、この設立は大蔵大臣と通産大臣が認可をする。つまり、大蔵大臣と通産大臣が監督大臣というかっこうになっております。  第二十七条に定款の内容が書いてございます。  それから二十八条に役員といたしまして理事長一人、理事三人以内、監事二人以内ということで構成をいたしますが、私どもといたしましては、できるだけこれは非常に専門的技術的な問題も多うございますから、非常に簡単な機構で金融機関等の協力を仰ぎながらぜひやっていきたいと、かように考えております。  その点で以下業務の内容につきましては、三十九条に「業務」の主たる内容が書いてございますが、先ほど目的のところで御説明をいたしましたように、対象といたしましては「設備処理のために必要な資金」と「処理に伴つて必要となる資金の借入れに」関する債務の保証ということが中心でございます。  なお先ほど申しましたように、私どもなるべく簡素な規模でやっていこうということから四十条に「業務の委託」の規定がございまして、主務大臣の認可を受けまして、開銀その他の金融機関にその保証業務を委託することができると、こういうことになっております。  以上が、大体この基金の主な内容でございます。
  219. 馬場富

    ○馬場富君 資金の内容につきましては、先ほど通産大臣が状況に応じては幾らでも出すぞと言っていた。まあしっかりと意思を示されましたから安心しましたが、この内容の中に民間の出資金が含まれておりますけれども、かなりこの構造不況業種の中にはやはり業界についての出資能力というのはほとんどなくなってきておるんじゃないかという点で、この点についてはどのような配慮があるか、御説明願いたいと思います。
  220. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいま御指摘のように、現在のような不況状態の中で、しかもいわゆる構造不況業種、この法律対象となります業種にこの出資または出損を期待することは大変むずかしい問題でございます。ただ、国の考え方と申しますか、財政当局の基本的なたてまえとしての考え方は、こういう保証基金、しかも自主的な業界の努力をバックアップするという意味での保証基金は、本来たてまえとしては国と民間が一対一でやるべきであるというのが基本的なたてまえをとっておられました。しかし、いま御指摘のような問題から当面発足といたしましては、これを八十対二十、あるいは百対二十プラスアルファということになるんだろうと思いますが、そういうことで発足するわけでございます。  そこで、この民間の出資または出損をどういうかっこうで集めるかというのは、この関係業界にこれを期待することは私ども大変むずかしいと思いますので、関係業界のみならず、関連業界、たとえば金融界あるいは商社等を中心とする関係業界、さらに広くはこの不況業種の問題が片づくことが日本の経済全体の運営を明るくするわけでございますから、広く経済界の御協力を得てこの出資金を集めたいということで、私ども内々打診を行っておるところでございます。   〔理事対馬孝且君退席、理事大谷藤之助君着席〕
  221. 馬場富

    ○馬場富君 それでは、この民間出資というのはひとつそういう点で、金融機関とか商社とかそういう関係の配慮もあるということで理解いたしましたが、その点についても、力をなくしておるそういう人たちが構造不況業種ですから、そういう点ではやはり当局の指導がなされるかどうか、その点もあわせてお願いします。
  222. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 御質問の御趣旨ちょっとはかりかねるところもございますが、まず出資の関係から申しますと、いま御答弁申し上げましたように、むしろ広く経済界全体の御協力を得るということで、私ども大いに努力をいたしました。もし法案の御審議、御成立、御賛同が得られました暁には、なるべく早い機会に具体的にこの発起人がこの出資に当たります資本金を集めるというのが法律のたてまえになっておりますので、こういう発起人の方を通じまして私ども大いに関係業界の、広く経済界の御協力を得たいと考えております。  なお、ただいまの御質問の趣旨が、この構造不況業種の立て直し問題に別の意味でも協力願うようにやるかどうかと、こういうふうにとるといたしますと、私ども構造不況業種問題というのは、その業界の自主的な努力ということが必要でございますが、あわせて、たとえば金融機関あるいは関係業界の全面的に協力がございませんと、なかなか業界全体として立ち直りはできないと、こう考えておりますので、そういう意味では、この設備処理の問題を討議するに当たりましても、そういう関係業界の全面的な協力をお願いすると、そういうことで物事の仕組みなりそれから考え方を進めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  223. 馬場富

    ○馬場富君 これは信用基金の債務保証につきましては、この条文の中に、「計画的な設備処理を促進するため、これに必要な資金等の借入れに係る債務」、こういうことになっております。そういう点では、設備廃棄する場合に設備そのものが一つありますが、それからそれの関連のものがあります、付属のもの。それからもう一つは、この機械についていらっしゃった従業員の方々の退職金との問題もあります。それから、これを廃棄するについてはいろんな廃棄関係の費用も要ります。こういう点についてのこの範囲、これはどんなものでしょうか。
  224. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいま御指摘のような範囲をどうするかという問題は、具体的には業務方法書が定められまして、その中でどういう範囲で、どういうかっこうでやっていこうかということが決められるわけでございますが、私ども、その準備段階といたしまして四月の初めから通産省、大蔵省の担当者、それから先ほども申し上げましたように保証問題というのは非常に技術的な問題も多うございますから、金融機関、いろんな角度から金融機関の代表の方、あるいは商社の代表の方というような実務家の方のグループをつくりまして、もう何回かすでに検討を始めております。   〔理事大谷藤之助君退席、委員長着席〕  ただいまお話しのありました中で、設備本体の処理のための資金、これは当然でございますし、あるいは関連設備の資金対象、あるいは雇用調整問題、労使の間で円満な話し合いがつきまして、そのための退職金に対する資金の保証の問題、この辺は大体はっきりいたしております。  最後にちょっと触れられました設備処理に要する資金の問題、この辺どうするかということでございますが、実は設備処理ということが物理的に全部設備を破砕してなくしてしまうというようなことよりも、大体これは今後どういうかっこうで設備処理を進めていくかということは、これからこの安定基本計画で具体的に議論になると思いますが、いま一つ設備の中の非常に中心的な、中核的な部分をたとえば壊すというようなことで、全体の設備廃棄と見るようなケースが非常に多いんではないかと考えられますので、したがってこの設備廃棄に直接廃棄用費用というのは僅少なものではないかと、こういう感じもございまして、したがっていまの段階では、設備廃棄費用まで入れるかどうかということになると、むしろ否定的な感じで物を考えておるというのが現状でございます。
  225. 馬場富

    ○馬場富君 それは機械等においては廃棄の仕事については、かなり予算も伴うようなものも現実あるというふうに私どもは聞いておるわけですよ。そういう点について、いますぐということじゃなしに、今後のそういう問題にぶつかった時点でひとつ前向きに検討していただきたい、それも設備廃棄の中の一つの内容でございますから。その点どうでしょうか。
  226. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいまの御質問の点は、いま私が答えましたように私どもがいままで議論しておりますところでは非常に大きないわゆる廃棄の直接費用のかかるものはないのではないか。また、たとえば工場ぐるみ廃棄をしてしまうというようなときには、むしろその工場のいわば処分に対しましてお金も出てくるというようなことでちょうど担保抜き運転資金に対する保証というものと同じような意味でこの保証の必要があるかどうかというような感じでおりますが、しかしいま御指摘のようにこれから考えてみますと、業種によりましてはこの廃棄費用というのが非常に大きくなるというようなことも考えられる。その場合には当然弾力的に対処しなければいけませんので、今後の問題として十分考えさせていただきたい、こういうふうに考えています。
  227. 馬場富

    ○馬場富君 それから、現実設備廃棄は各構造不況業種を回りましてもわかりますように、もうほとんどとまっておる状況のところもずいぶんあります。そういう点についての対象にも考えていかなければいかぬと思いますが、そういう個所においてはいままでそこの従業員等の退職金等については、その業種はやはり金融機関から借り入れして前払いというような形で進行されて、設備だけは残っておるというふうなところも現実に実はあるわけです。こういうような場合も実例の中として出てきますが、そういう点での配慮はどうでしょうか。この法律発生主義をとっておるようですけれども、そこらあたりの配慮も少しは考えていかぬと手落ちになるのじゃないかと思うのですが。
  228. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) たてまえ論で申しますと、いま最後にちょっとお触れになりましたように、支払い済みの資金につきましては、すでに何らかの方法でいわば資金調達が行われて、その裏打ちもできている、こう判断をしなきゃいかぬと思いますもんですから、たてまえとしてはこれから新たに信用基金の保証になるような、いま発生主義とおっしゃいましたが、そういうことで考えていくことになるんではないか、こういうふうに考えております。
  229. 馬場富

    ○馬場富君 次に、この安定法の中で特にいまの対象の一になっております平電炉業界についてのちょっと具体的な問題で二、三点質問いたしますが、この平電炉生産調整というのはいままでもずっとなされてきておるわけでございますが、五十二年の二月二十八日に通産の諮問によって平電炉の基本問題研究会の提言というのがなされておりますけれども、この内容について説明してもらいたいと思います。
  230. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 基本問題研究会の提言の骨子は三点ございます。  第一点が、五十五年度までの電気炉の新増設を抑制するとともに、今後の電気炉の設置に関するルールの確立を図るということでございます。第二番目がいま申し上げました枠組みの中で過剰設備電炉分三百三十万トンを処理するということでございます。それから第三点が、この三百三十万トンの処理を前提といたしまして、その実行の過程及びその効果が生じるまでの間所要の生産調整措置を講ずると、以上の三点がこの提言の骨子でございます。
  231. 馬場富

    ○馬場富君 いま御説明の中にありましたように、メーカーは通産に対して電気炉の新増設を抑制することを一つは前提として三百三十万トンの設備処理することを申し出ておるわけですけれども、その後の経過と現状はどうでしょうか。
  232. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 設備の新増設ルールの策定につきましては現在産業構造審議会鉄鋼部会平電炉委員会におきまして御審議をいただいておるところでございます。ルールの内容につきましては、平電炉基本問題研究会の報告において指摘されているところの五十五年度まではリプレース以外の設備の新増設は不要であるというような方向を盛り込んだものになるだろうというふうに考えております。新増設の動きにつきましては、東京製鉄が岡山工場において五十三年四月から百トン炉二基稼働させた以外は当面新増設は行われないものというふうに考えております。  それから、三百三十万トンの処理の件につきましてはインサイダーの各社から個別にその処理の計画を聴取しているわけでございますが、この各社が自発的に申し出ましたところの処理量を総計いたしますと三百三十万トンは達成できるものというふうに考えております。
  233. 馬場富

    ○馬場富君 この関係一つとして小棒関係では中小企業団体法によりましてその推進がひとつは図られておりますけれども、この推進状況をひとつ説明してもらいたいと思います。
  234. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 御質問の趣旨は小棒カルテルの経過でございますね。
  235. 馬場富

    ○馬場富君 そうそう。
  236. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 小棒のカルテルにつきましては、当初独禁法によるところの不況カルテル、次いで中小企業団体法によるカルテルということになっております。少しこれを詳しく申し上げるわけでございますか。
  237. 馬場富

    ○馬場富君 どのような規制がいま続けられておるか、経過です。
  238. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 現在、昨年の十月からことしの六月末まで中小企業団体法による不況カルテル、これは生産数量制限と価格規制でございますが、さらに安定命令によりましてアウトサイダー規制命令もついておるわけでございます。ただし価格規制につきましては三月末で価格規制のカルテルは廃止いたしまして延長をいたしておりません。したがいまして現在は生産数量の規制に関するところのカルテル、アウトサイダー規制命令のものが六月まで続いておるということでございます。
  239. 馬場富

    ○馬場富君 この中小企業団体法のによって通産の指導のもとにその規制がなされて、かなりそういう点については安定をしつつあると、こういう状況を聞いておりますが、そのひとつ安定の状況は価格やそういう面ではどんな状況ですか。
  240. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 昨年中は大体小棒の価格がトン当たり五万二千円というような状況でございまして、よく言われるのでございますが、一トン売れば一万円の赤、そういうような惨たんたる状況が続いておったのでございますが、ことしに入りましてからかなり急速に市況が好転いたしておりまして、現段階におきましてはおおむね六万円というような市況になっておるわけでございます。したがいまして、八千円ばかし価格が好転したわけでございますけれども、ただこれは重要原材料であるところのくず鉄の価格も同時に考えなければならぬわけでございまして、くず鉄の価格は昨年安いときには一万六千円程度でございましたけれども、現在はこれが二万四、五千程度に上っております。したがいまして、六万円という価格水準はもちろん昨年の五万二千円から比べましてはるかに好転しており、平電炉企業の中のかなりな部分はようやく採算相償うというところにまで到達しておるのではないかというふうに思われますけれども、片一方のくず鉄の価格との関係もございますので、これでもうすべて構造不況は終わったというようなことはとうていございません。依然問題は残っておりますが、昨年と比べればかなり状況は好転しておる、こういうことでございます。
  241. 馬場富

    ○馬場富君 この点については非常にいまの局長の説明もよく理解できますが、そういう点で六月まで数量カルテルとアウトサイダーが規制が使われておりますけれども、やはり現状はかなりこの効果というのは上がったという点で、私見るべきものがあるのではないかということは思うわけですが、まだ一歩という感じがしてくるわけです。やはりここでこの問題放置してしまうと、もとのさやにおさまってしまうおそれも十分あるわけですが、そういう点で、私はこの規制については六月までかけられておりますけれども、今後この状況からいたしまして一年ぐらい延長の間の中に、この調整を考えて安定したやはり方法をとるべきではないかと、こういうふうに考えますが、その点どうでしょうか。
  242. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 私どもも基本的には先生のお考えに賛成でございます。しかしながら六月までに経済情勢がどういうふうに変動いたしますか、まだよくわかりませんし、それからまた公正取引委員会その他の御意見も聞かなければなりませんので、それらをいろいろ勘案してもう少したった上でよく方針を決定したいというふうに思っております。
  243. 馬場富

    ○馬場富君 もう一つそこにあわせまして、先ほどの通産の指導のもとに、平電炉業界においては平電炉構造改善促進協会というのができまして、やはりこれなりの、業界なりの基金制度が持たれておるようですが、この状況はどうでしょうか。
  244. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) この構造改善促進協会につきましては、昨年の予算要求時におきまして一般会計の予算を要求いたしまして三億五千万の予算がつきました。他方民間からの拠出金三億五千万円合わせて七億円の基金をつくり、十倍の七十億円の保証ができるというようなそういう基金をつくったわけでございます。これにつきましては、こちらの構造不況法によるところの基金と余りばらばらの動きをするわけにはまいりませんから、この構造不況法案の成立等をよく見ながら歩調の合った運営をしていきたいというふうに考えております。
  245. 馬場富

    ○馬場富君 その点われわれの見る範囲では、今度の基金制度とは別にいたしまして、やっぱり民間団体の推進ですから、そういう点については金融機関や何か等の保証等についても非常に弱い面がある。そういう点で今後もこの点については御配慮を考えていただきたいと思うわけですが、何にいたしましてもこの三百三十万トンの設備廃棄は絶対に必要だというのが、まだ現状の平電炉業界の立場からいけば考えられるわけですね。そういう点について今度の安定法の適用もぜひ受けていままでの効果をなお発展的に考えていただきたいと、こう思うわけでございますが、この資金との両方の兼ね合いについてちょっと具体的に説明してもらいたいと思うんですが。
  246. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいま動いております平電炉の保証基金、これは保証規模が七十億でございまして、すでに協会が設立し現在個別会社の具体的な内容について話を詰めているやに私承っております。ただ、この七十億というのが足りるのか足らないのか、あるいはもはや七十億ではとても全体カバーできないという話も承っておりまして、そこで、考え方といたしましては、今度の保証基金ができましたときに、いまある平電炉の保証基金では保証が不可能な、それを超える部分はこの保証基金で保証すると、こういう方針で進んでいきたいと、こういうふうに考えております。
  247. 馬場富

    ○馬場富君 それぜひお願いしたいと思いますが、中には設備の中のある一部がこの基金によっての設定ができたと、残りは今度の安定法によるやはり保証をお願いせにゃならぬというようなのも具体的には出てくると思うんですが、ここらあたりの問題も考えられますか。
  248. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいま御指摘のような問題を含めまして、既存の基金と今度できます基金との間でどういう調整をやるか、こういうことにつきましては、今後十分具体的な問題として詰めまして、支障のないようなかっこうで運営をしていきたいと、こういうふうに考えております。
  249. 馬場富

    ○馬場富君 次に、先日わが党の峯山議員も、また私がかつて今度の経済協力の中の無償援助の関係の中で小棒が、構造不況業種の製品が、そういう開発国への無償援助になるんだということについては、大臣関係の局長も前向きで検討するという状況でございましたが、現状五十三年度の分につきましては、平電炉については考えられておるようでございますが、その点の内容についてどのように考えられておるか、御説明願いたいと思います。
  250. 天谷直弘

    政府委員天谷直弘君) 平電炉製品の無償援助は外務省の予算として計上されておりまして、金額ははっきり決まっておるわけではございませんが、おおむね百億円前後というくらいの分が小棒の無償援助ということになるはずでございます。これにつきましては、援助を希望する国の申し出等を外務省でいま審査しておる段階というふうに承知をいたしております。
  251. 馬場富

    ○馬場富君 この点については、ここに私一覧持っておりますけれども、小棒につきましてはいままでもその開発途上国への輸出実績がずいぶんあるわけですね。そういう点については、二百九十万トンあたりの実績も持っておるわけです。先回大臣も、一つは黒字減らしの一環として無償援助もひとつ来年度からは増額も考えていきたいという御意向でしたが、そういう点について小棒とあわせて、やはり関係構造不況業種についてもいまどのように、考えられておる点があったら説明していただきたいと思います。
  252. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) これはいま拡大の方向で検討しております。
  253. 馬場富

    ○馬場富君 じゃ次に、この安定法に関連でございますけれども、いまの綿、スフ等については現状、設備廃棄が推進されておりますけれども、たとえばいまの綿、スフの関係の綿工連あたりの設備廃棄の実情について、ひとつ説明していただきたいと思います。
  254. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) 日本綿スフ織物工業連合会、いわゆる綿工連でございますが、実施いたしております過剰綿、スフ織物織機共同廃棄事業でございますが、これは五十二年度から五十四年度にわたりまして約七万五千台の織機を同連合会が買い上げまして廃棄する予定でございます。このため、必要な資金の九五%になりますところの約三百二十八億円を中小企業振興事業団から借り入れることといたしております。この資金の返済につきましては、買い上げ代金の一部の支払いの際に控除いたしまして、その控除部分を債券購入等により運用いたしまして行う、こういうことに相なっております。同連合会の織機共同廃棄事業計画は、昨年十月に当初関係道府県及び同連合会等から説明を受けまして検討の結果、指導会議を開催いたしまして関係者の了承が得られたわけでございます。その際、借入金の返済に充てますところの資金の運用に関しましては、利付債及び割引債の利回りをそれぞれ七%及び六%と見込んでその計算をいたしておるわけでございます。なお、五十二年度から事業が実施されておりまして、すでに約九十二億円の借り入れが行われまして、約二万六百台の廃棄を終えておるわけでございます。
  255. 馬場富

    ○馬場富君 三年にわたる計画がちょっと発表されたわけですが、特に五十二年度についての状況は、いまスタートしておるわけでございますけれども、これにつきまして、いまの金額でも示されましたが、具体的に台数と資金ですね、それからまた、その資金の中で業者に渡る金額ですね、それから綿工連がこれを商工中金に預金する金額と、それから中小企業振興事業団からの融資額、ここらあたりについて説明していただきたいと思います。
  256. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) 先ほども申し上げましたが、綿工連がやります設備廃棄の総資金量といたしましては、五十二年から五十四年度まで三カ年でございまして、約三百二十八億円に相なります。このうち五十二年度が約九十九億円でございます。その九五%が中小企業振興事業団からの融資と、こういうことになるわけでございまして、五%が組合の負担と、こういうことでございます。その九五%のうち、そのうちの四二%につきまして組合におきまして分担金として一応留保をいたしまして、そのほか一〇%を保証金として取るわけでございますので、実際の買い上げ代金として直ちに手に渡りますものは、その残りでございますから四八%ということになるわけでございます。で、その保留いたしました金を十六年にわたり運用いたしまして返済をしていくと、こういう計画になるわけでございます。その運用の方法といたしましては、商中債、先ほど申し上げましたような方法によりまして運用をしてまいる、こういうことでございます。
  257. 馬場富

    ○馬場富君 そこで、この綿工連から商工中金に預金される金利が一つはこの運営費にあたってくるわけですね。そういう点で、この商工中金の預金に対する金利の状況はどのようになされておるか、説明していただきたいと思います。
  258. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) これは実は預金ではございませんで、商中債の利付債と割引債を運用してやるわけでございます。現在御承知のとおり、公定歩合の引き下げに伴いまして、利付債、割引債ともに金利が下がってくるわけでございますが、本計画で考えております金利は、それぞれ七%、六%でございます。これは過去十六年間ぐらいを見まして一応平均を見た数字でございますが、現在確かに想定いたしました金利よりは実行金利が下がってくるわけでございますが、なおこれは返済まで十六年ということでございますので、現在の短期的な金利だけからこれを考えるわけにはまいりませんで、やはり長期的な観点から一応この辺の金利で見ていくべきであろうと、こういう考え方でございます。
  259. 馬場富

    ○馬場富君 この点につきまして商工中金の金利ですね、やはり利付信託でこれが七%のものが六・二%に、現在公定歩合の引き下げで下がっています。それからワリショーやリッショーの関係ですね、これが一年物で六%が五・一四に下がっております。これが綿工連全体でいきますと、総額の約三%が食い違ってくるわけです。その金額にしては約三億二千七十五万円ぐらいの一つは金額になってくるわけです。これが綿工連が背負わなければならぬと、こういう問題ですが、ここでまあいま局長の説明のように、十六年もあるからその中で何とかなるじゃないかという点もございますが、これは一つは計画の立案から、実は今度四月の十五日に融資がなされております。この間の変動の状況なんですね。それでこれは五十三年、五十四年と今後も実施していかなきゃいかぬという状況でございますから、こういう点について、計画を立てたときと実施段階に移ったときとのこの観点について、私はやはり今後の中で、その後の移動等についてはこれはやむを得ぬといたしましても、少なくとも計画から実施に移る間に公定歩合が引き下げられたような場合は、やはり実施段階で見積もるべきじゃないか。そして五十三年度、五十四年度についてもその都度やはりその時点で考えて、そしてこれは推進するのが妥当じゃないかと、こういうように思うんですが、どうでしょうか、その点は。
  260. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) 御趣旨もよくわかるわけでございますが、何しろ十六年間という長期にわたる返済計画でございまして、そのときどきの、きわめていま、現在は非常に金利は極度に低くなっている状態ではないかと思うわけでございますけれども、そのときどきの金利を基準にするといいますよりは、過去ないし——この場合過去十六年ぐらいの平均をとったわけでございますが、平均値をスタンダードにいたしまして計算をした方がむしろ妥当ではなかろうか。もちろんそのときの金利状況につきましても、余り非常識になりますのはおかしゅうございますから、もちろん勘案するわけでございますが、考え方の基本としては余り短期的な視点にとらわれぬ方が長期的には好ましいんじゃないかと思っております。
  261. 馬場富

    ○馬場富君 それは局長の意見もわかりますがね、こういう一つは変動の多いときについて、私が言うのは、ずっとその都度その都度十六年間変えようということじゃなしに、その基準は、たとえば住宅金融公庫等につきまして、やはりその契約の時点の金利状況というものがその基準となって、その後の変動は、これは一つは結局あと原資の関係もございますから、どうすることもできぬのが実情じゃないかと思うんです。少なくともここらあたりの配慮は考えていくべきじゃないかと、なぜかというと、余りにも変動が多い時期に入っておりますからね。そういう点でかつて業界がそのために通産省に要望を出した。それはそういうようなことも考えて、ひとつできればその償還の緩和ということで、六年据え置きの十年返済ということを特に通産に強く要望したようでございますが、まあこの基準からいきますと、やはり一%弱になって、そしてその差額は一億円以内におさまるわけでございますが、そういう点、今後の状況等によっては配慮が考えられるかどうか。この制度というのは、やはり利益が上がっても必要ないものでございますし、またそのために損失が起こっても、これはお互いに関係間において非常にむずかしい問題が起こると、まあそういうような状況で、この点についてのひとつ考えを聞かせていただきたいと思います。
  262. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) まあ、お示しのお考え方もわかるわけでございますが、この制度につきまして基本的に住宅ローンその他と非常に違います点は、そもそもこの金融自体としては無利子の金融でございます。で、これをまあどのように返済するかという返済計画の問題でございまして、その返済計画について現実の金利は変動するわけでございますので、いずれにしてもそれによって運用するわけでございますが、その返済計画を立てる際にどのような金利を想定するかと、こういう問題でございます。したがいまして、現実の負担は結局現実の金利の変動に伴って起こるわけでございますから、最終的に十六年たったときに過不足を生じました際には、その際にまた処理をするというふうな仕組みになっておりますので、一応それでつじつまは合っているんではないかと思います。
  263. 馬場富

    ○馬場富君 じゃ最終段階の点で調整される機会があると、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  264. 藤原一郎

    政府委員藤原一郎君) そうでございます。
  265. 馬場富

    ○馬場富君 それでは最後に、先ほど来、一番初めに大臣質問いたしましたように、円高と、あるいは国際収支等についても非常に大きい数字が出てきております。そういう関係で、いまやっぱりその影響というのは中小企業不況産業に極度に圧迫が加わってきております。そういう点で、この不況の中でやはりいま政府が中小企業対策やあるいは不況対策について何点か金融対策等も考えてみえるわけでございますが、そういう点につきまして、一つは枠の拡大なりあるいは金利の問題等について見直しをする必要があるんじゃないかと、またそういう態勢でもって中小企業不況からしっかりと守る態勢をつくってもらわなきゃいかぬじゃないかと、こういう点について、いままでの状況から推しましてかなり特殊なようなものもございますけれども、そういう融資問題等についての枠の拡大と金利等の引き下げ等についての配慮はどのように考えてみえるか、御説明願いたいと思います。
  266. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先月、また再び急激な円高になりましたので緊急調査をいたしました。相当な影響が出ておりますので、これはやはり現在の融資制度、ある程度内容を改善しなければいかぬのではないかということで、いま中小企業庁が中心になりまして政府部内、関係各省と調整中でございます。何らかの強化策を打ち出したいと考えております。
  267. 馬場富

    ○馬場富君 特に政府系の中小企業三機関のいまの金融問題についても、やはりぜひその点について是正してもらいたいと、こういうふうに考えますが、長官どうでしょうか。
  268. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 政府系三機関の基準金利につきましては、公定歩合が下がりますのと並行いたしまして、絶えず引き下げのための折衝を大蔵省といたしまして、実は御承知のとおり先般も〇・五%の引き下げを実施したところでございます。なお、それに関連をしまして特利の水準をどうするか、それから従来特別の制度として運用しておりました制度金融の金利をどうするか、こういった点の問題がいま調整中でございまして、中小企業の声も十分聞きまして、少しでも改善ができるように努力をいたしたいと考えております。
  269. 馬場富

    ○馬場富君 特に為替変動の対策資金やあるいは事業転換あるいは倒産対策の資金等についての御配慮をお願いしたいと思いますが、その点どうでしょうか。
  270. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) いま御指摘のような諸点も含めまして、私どもも大蔵省と調整を図りたいと考えておるところでございます。
  271. 馬場富

    ○馬場富君 これで、まだ質問したい点が何点かございますけれども、きょうはこの点で打ち切らせていただきまして、次は次回にお願いしたいと思います。
  272. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 他に御発言がなければ、本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後六時三十分散会