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1978-04-18 第84回国会 参議院 商工委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十八日(火曜日)    午前十時十四分開会     —————————————    委員異動  四月十四日     辞任         補欠選任      竹内  潔君     植木 光教君      斎藤 十朗君     中山 太郎君      遠藤 政夫君     長谷川 信君      沓脱タケ子君     市川 正一君  四月十八日     辞任         補欠選任      浜本 万三君     安恒 良一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         楠  正俊君     理 事                 大谷藤之助君                 福岡日出麿君                 対馬 孝且君                 安武 洋子君     委 員                 岩崎 純三君                 下条進一郎君                 中村 啓一君                 真鍋 賢二君                 大塚  喬君                 小柳  勇君                 森下 昭司君                 安恒 良一君                 馬場  富君                 峯山 昭範君                 藤井 恒男君                 柿沢 弘治君    国務大臣        通商産業大臣   河本 敏夫君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       宮澤 喜一君    政府委員        公正取引委員会        委員長      橋口  收君        公正取引委員会        事務局経済部長  妹尾  明君        公正取引委員会        事務局取引部長  長谷川 古君        外務省アジア局        次長       三宅 和助君        通商産業政務次        官        平井 卓志君        通商産業大臣官        房長       宮本 四郎君        通商産業大臣官        房審議官     島田 春樹君        通商産業大臣官        房審議官     山口 和男君        通商産業省通商        政策局長     矢野俊比古君        通商産業省通商        政策局次長    花岡 宗助君        通商産業省貿易        局長       西山敬次郎君        通商産業省産業        政策局長     濃野  滋君        通商産業省基礎        産業局長     天谷 直弘君        通商産業省機械        情報産業局長   森山 信吾君        通商産業省生活        産業局長     藤原 一郎君        資源エネルギー        庁長官      橋本 利一君        資源エネルギー        庁石油部長    古田 徳昌君        中小企業庁長官  岸田 文武君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (日中間貿易問題に関する件)  (石油輸入問題に関する件)  (国際収支黒字減らし対策に関する件)  (円高による為替差益還元問題に関する件)  (電力会社設備投資に関する件)  (不況に伴う諸問題に関する件)  (中小企業者等健康管理に関する件)  (ナフサ問題に関する件)  (チッソ株式会社の経営問題に関する件) ○特定不況産業安定臨時措置法案内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る四月十四日、沓脱タケ子君、竹内潔君、斎藤十郎君及び遠藤政夫君が委員辞任され、その補欠として市川正一君、植木光教君、中山太郎君及び長谷川信君が委員に選任されました。  また本日、浜本万三君が委員辞任され、その補欠として安恒良一君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 大塚喬

    大塚喬君 私は、日中間長期貿易取り決めに関して質問をいたしたいと思います。さき予算委員会分科会でちょっと通産大臣お尋ねをしたことがございますが、きょうは少し突っ込んで本格的な論議をいたしたいと念願をいたしておるところであります。  新聞の伝えるところによりますと、稲山さんがこれの実現までの間に訪中が十一回、さらに経団連会長の土光さんは八十にも達する御高齢の方でありますが、このために四回あるいは五回かの訪中をされたそうであります。私ども立場は異なっておりますが、このお二人を初め関係者皆さんが、日中友好の熱意と今回の長期貿易協定取り決めのために、大変なお骨折りをいただいたことに深く敬意を表するものであります。  で、過去に、これは最近まで、あるいは現在までかもしれません、日中間貿易にもいろいろなことがございました。その責任の大半はこれまた日本側にあったようであります。このことは経団連日中貿易に関するリポート、この資料の中にもそのことを明らかにいたしておるわけであります。この内容を見ても、問題の責任日本側にあったことが明瞭であります。私は、今回の長期貿易取り決めに実りある発展を心から念願をし、この問題をめぐるいろいろの問題について、通産大臣初め関係皆さん方から御意見を聴取をいたしたいと考えておるところであります。  まず、日中平和条約の問題から入りたいと思うわけですが、日本は従来から政経分離——手前勝手な御都合主義の言葉をたびたび使ってまいりました。日本でもこの数カ月来、アメリカEC諸国から日本貿易政策貿易収支の莫大な黒字偏重と申しますか、集中豪雨的な輸出等に関して、ごうごうたる非難を浴びておるわけであります。このためにいろいろの国際会議が次々に持たれておる現状であります。小さな個々の取引ならともかくといたしまして、大きな国家間を挙げてのこの日中貿易協定のような問題に関しては、二国間の取引を総体で論じた場合、政経分離などということはこれはとうてい考えられないと思うわけでありますが、まして中国政治優先、または原則を非常に重んずる国であることを承知いたしておるわけであります。  こういうことで通産大臣お尋ねをいたしたいわけですが、通産大臣は七五年に訪中をされ、中国事情にも詳しくいらっしゃると思うわけであります。先ごろ私が聞いたところでは、通産大臣稲山さんと学校の同窓関係というようなこともあり、大変このたびの貿易協定には協力的なそういう態度をとってこられたと、こういうことを聞いて私どもも大変喜んでおるところであります。通産大臣職務柄、あるいは支払い条件等について通産大臣としてのお考えをお聞きして、それが直ちに全日本政府を代表するそういうお考えには至らないことがあろうかと思いますが、初めにお断わりいたしておきますけれども通産大臣としてそういうことに対するお考えをひとつ、また、直接職掌外の事柄につきましてもぜひ明快にお答えいただきますようお願いを申し上げるわけでございます。  この平和条約——現在いろいろ自民党内の党内事情等もおありのようでありまして、停滞と申しますか足踏みをいたしておるところでありますが、この現状は、今後の両国貿易の将来に私は暗雲を投げかけるものではないかと懸念を持っておるところであります。このいわゆる平和条約、そして貿易協定長期取り決め、この問題に関連して通産大臣の所感、具体的な事例を挙げて、ひとつこの問題に関する通産大臣見解をお聞かせいただきたいと思います。その和平条約がおくれておる、長期貿易協定取り決めができた、その中でどういう問題が今後予測されるか、これらの問題に関して、ひとつ率直な通産大臣見解をお聞かせいただきたいと思います。
  5. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 日中両国長期貿易取り決めが、関係者の長年の努力によりまして去る二月十六日実を結びまして調印をされたということは、私どももこれを非常に高く評価をいたしております。  この貿易取り決めに対する政府の基本的な態度でございますが、その一つはこの長期貿易取り決めが円滑に実施されるように、政府としてはあらゆる援助を惜しまないと、こういうことでございます。  第二点は、この長期貿易取り決めが将来拡大されるような方向で政府としては支援をしてまいりたい、このように考えております。以上二点が政府の基本的な態度でございます。  それからなお、これは貿易取り決めでございますが、これと並行して、御案内のように平和条約締結の段取りが急がれておるわけでございますが、日本といたしましては、すべての国と仲よくしていこうというこの基本原則の上に立って日中間平和条約を締結しようという考え方でございまして、いま具体的な交渉が進められておりますけれども、尖閣諸島の問題で、一時この問題がどのように影響するのかということを心配される向きもあるようでございますが、当然これはある程度の影響はあるとは思いますけれども、しかしながら、この平和条約を締結しようという両国基本的態度は私は変わっていないと思います。近くその条約締結実現することを私どもは強く期待をいたしておるところでございます。
  6. 大塚喬

    大塚喬君 日中貿易取り決めに関して通産大臣の積極的な決意の表明をいただいて、大変私どもも意を強くしておるところでございます。今後そういうお考えが、具体的ないろいろの問題で、難関に逢着することが幾つかあろうかと思うわけでありますが、ぜひただいまのお考えをもって、勇断をもってひとつ措置されるよう強く私どもお願いを申し上げたいと存じます。  この長期貿易協定の条文を見ても明らかなように、この日中貿易のポイントと申しますか、それは中国の主要な支払い手段石油輸出の問題にかかっておると思うのであります。石油の数量は、この取り決め内容を見ますと、初年度の今年度は従来の実績よりも低い七百万トン、これから始まりまして、五年目には一千五百万トン、計四千七百十万トンが確定数字のようであります。六年目以降の数字は確実には明らかにされておらないわけでありますが、最終の八年目には年三千万トンを目標考えていると、こう伝えられておるわけであります。  ここのところに幾つかむずかしい問題が生じてくると思うわけでありますが、日本石油自給率、現在はわずか一%にも足らないそういう現状であることは、これはもう日本国民だれもが承知をいたしておるところであります。で、七三年度石油パニック以前、日本石油の八割は戦争の巣とも言われております中東依存をしておりました。現状は一体どのようになっておるのか、その現状の中から、通産行政の大もとの責任者であります通産大臣として、このような現状をどのように把握をされ、どうされようとするお考えか、ひとつ通産大臣、あわせて関係政府委員の方から説明をいただきたいと思います。
  7. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) エネルギー政策の中でいろいろ工夫をしておりますが、しばらくの間はやはり石油中心だと思います。そこで、石油をいかにして安定的に確保するかということが非常に大きな課題になるわけでありますが、現在のところ、およそ八割前後のものは中近東から輸入されておるわけであります。この輸入ソースをできるだけ分散していこうというのがいまの基本的態度一つであります。その意味におきまして、アジア太平洋地域からの輸入を拡大をしようということで私どもも取り組んでおりますが、そのために中国石油あるいはインドシナの石油、マレーシアの石油、こういうものを対象に、全体としてどの程度日本として増量することが一番妥当であるかということ等考えまして、いまいろいろ工夫をしておるところでございます。  なお、詳細につきましてはエネルギー庁の長官から答弁をいたします。
  8. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 石油輸入地域分散化ということは、石油輸入依存度を低減するということとあわせまして重要な石油政策課題になっておるわけでございますので、ただいま大臣が申し上げましたように、中東地域からは以前八〇%程度輸入いたしておりまして、その他の地域につきましては、長期契約を結ぶとかいろんな手を打ってきておりすが、いままでのところ、率直に申し上げて必ずしも分散化効果は出ておらないというのが現状でございますが、幸い今回、日中間におきまして長期石油輸入契約が締結されました。これを一つの契機といたしまして、一段と輸入ソース多元化のために努力いたしたい、かように考えております。
  9. 大塚喬

    大塚喬君 石油パニック以来、ことしは七八年でありますのでもう五年を経過するわけですが、そういう問題についての政府の施策、そういうものが思うように進展をしておらないと、こういう実情はいまお答えで明らかになったわけであります。  もう一つの問題は、いわゆるメジャー依存率の問題であります。これは現状どのようになっておりますか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  10. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 五十一年度の実績で申し上げますと、いわゆるメジャーへの依存度は七〇%ぐらいでございます。御承知のように、メジャーといたしましては膨大な石油供給源を持っておる。そのほかに技術、輸送、販売と、こういった面で非常に大きな力を持っておるわけでございますので、今後とも将来ともにやはりメジャーが重要な供給ルートであるということには大きな変化がないんではなかろうかと、かように考えておるわけでございますが、一方御承知のように、産油国の方でいわゆるパーティシペーションと申しますか事業参加の度合いが進んでまいっております。あるいは一方で、将来の石油需給というものがタイト化してくる、かような情勢考えますと、今後ともメジャー経由原油確保ということにつきましても、引き続き努力をする必要があろうかと思いますが、さらに自主開発原油だとかあるいはGG原油と申しますか、政府間で直接取引する石油の量をふやしていく、いわゆる政策原油ウエートを高めていくということが必要になってこようかと思うわけでございます。  いま申し上げたような事情から、昨年の八月に総合エネルギー調査会石油部会中間報告を出しておりまして、昭和六十五年度までに、ただいま申し上げましたような自主開発原油あるいはGG原油といったいわゆる政策原油でもって、わが国が必要とする石油量の三分の一程度以上確保するように努力すべきであると、こういう指摘をいたしております。  ただいまメジャーについてどうかとお尋ねございますが、ただいま申し上げたような線に即応いたしまして、私たちとしてもメジャーとの関係を維持しながら、いわゆる政策原油確保に努めていく必要があろう、こういうふうに考えておるわけでございます。
  11. 大塚喬

    大塚喬君 いま総合エネルギー調査会お話が出ましたが、石油公団設立、これらはそういうことから脱却するために設立をされた。で、この問題は後刻その法案がかかってまいりますので、そのときに論議を尽くしたいと思うわけですが、石油開発公団、これは国民の税金を無限に消費と申しますか使って、いま巨大な官業企業にふくれ上がった。この問題の公団石油備蓄を行わせようと、こういうことも次に論議をされる予定でございますが、それは次回のその法案にかかったときにひとつ論議をすることにいたしまして、政府原油の三〇%を海外開発原油依存すると、こういう方針。このことに関連をして、アラビア石油の問題について少しく私はお尋ねをいたすわけでございます。  この三〇%の石油確保する、産地の分散を図る、こういう中で現状はいずれも思うように進んでおらないということを私は痛感するものであります。さき石油パニック、その後七五年に国は急速に省エネルギー前提とした長期エネルギー需給計画案を作成されたわけであります。私の手元には、四十八年の実績に従い五十五年と六十年の数字を記載した総括表しかありませんが、この数字は、その後数年を経過して現状どのようにこれが変更され、あるいはそのままで現在、政府のその方針を達成するための資料になっておるのか、この点はいかがでございましょう。
  12. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) ちょっとただいま先生が御指摘になりました五十五年ないし六十年の推定、私ちょっとどの資料かはっきりわからないわけでございますが、私たちのいまの立場を申し上げますと、昨年の三月以来いわゆる総合エネルギー政策を、整合性実効性のあるものに書き改めようということで、総合エネルギー調査会の場をかりまして検討いたしておるわけでございます。昨年の八月にその中間報告が出まして、ことしの夏、最終答申をいただこうということで、検討お願いいたしておるわけでございます。これは昭和六十年度と六十五年度と二年度を目標時点といたしております。  態様といたしましては、エネルギー政策現状程度で推移する場合とさらに政策努力を一段と進める場合、二つのケースに分けて算定いたしておるわけでございますが、御承知のようにわが国の必要とするエネルギーの四分の三まで石油依存いたしておるということから、当然のことながら石油依存度を低減する、そのために国産エネルギー積極的活用を図る、あるいは原子力、LNGといったような代替エネルギー開発していく。二番目には、そうは言うものの石油ウエートというものは必ずしも低くないということから、その安定確保を図る。さらには新規エネルギー開発省エネルギーの推進、こういった四つの柱を中心といたしまして総合エネルギー対策を進めようと、こういうことでございます。  六十年度について申し上げますと六%程度経済成長を続けるとするならば、全体で七億四千万キロリッター程度エネルギーを必要とするわけでございますが、そのうち八千万キロリッター、一〇・八%程度省エネルギー実現するとして、差し引き六億六千万キロリッターエネルギー確保する必要がある。こういう前提に立ちまして、各種個別エネルギーについてその実現可能性を詰めていっておるわけでございますが、いろいろと国産エネルギーあるいは代替エネルギー開発をいたしましても、六十年時点におきましては石油輸入量は四億三千二百万キロリッター、現在四分の三のウエートが六五%まで低減するものの、なお四億三千二百万キロリッター石油輸入が必要である、こういう中間的な数字が昨年の八月に出ておるということでございまして、今後二、三カ月の間に最終的な答申を取りまとめるべく審議会検討中であると、こういうことでございます。
  13. 大塚喬

    大塚喬君 ちょっと質問のお聞き取りにくかった点があろうかと思いますが、こういうことなんです。省エネルギー前提にして石油パニック以降、五十五年度の輸入石油は約四億トン、それから六十年度の輸入は五億トン弱、これは一九六〇年から一九七〇年、高度成長期石油需要伸び率を一〇%としてきた、そういうものを省エネルギーということで年間の伸び率を三・五%に抑えてそういう数字発表になった。その数字は私は承知をいたしておるわけですが、その計画に変更はないかということ。それから、その後時間の経過があって六十五年というお話がありましたので、六十五年というのは一体どの程度石油需要を見込んでおるのか、その辺のところをひとつどういう計画でどのようになったと、こういうことを明らかにしていただきたいと、こう思うわけであります。
  14. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) ただいま御指摘数字は五十年八月の総合エネルギー調査会数字ではなかろうかと思います。その点につきましては、先ほどお答えいたしましたように、その後の情勢変化を踏まえまして、昨年の三月以来見直し作業に入っておる。昨年の八月にその中間報告があり、ことしの夏最終答申が出ると、こういうことでございますので、御指摘数字は現在変更する過程にある、こういうことになろうかと思います。  それから六十五年につきましては、六十年度までは経済成長を六%程度と置いておるわけでございますが、六十年度以降、六十五年度までは政府見通しがございませんので、一応五%の経済成長前提といたしまして必要とする総エネルギーは、石油にいたしまして九億一千六百万キロリッターでございます。そのうち省エネルギーあるいは代替エネルギー等開発を進めることによりまして、石油輸入量を四億五千二百万キロリッター、これは先ほど申し上げました昨年の夏発表されました中間報告数字でございます。その時点トータルエネルギーに対して石油依存度は五七%、やっと六〇%を割る程度になろうかと、かような試算、中間的な数字が出ておるわけでございます。
  15. 大塚喬

    大塚喬君 いまのお考えを聞いてさらに感じますことは、エクソンの七五年に発表された予測の問題についてお尋ねをいたすわけであります。  これは世界的に評価の高い調査結果だと、こう見られておるようでありますが、これによりますと、アラビア半島産油能力も八五年以降になれば限界に近づき、調整余力が失われる可能性があると、こういう発表であります。この一九八五年と申しますと、わが国長期計画最終年度に当たる昭和六十年に当たるわけであります。で、このわが国長期計画とこのエクソン発表、この問題に関して通産大臣としてどのようなお考えを持っておられるか、ひとっここのところをお聞かせいただきたいと思います。
  16. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 先ほど六十五年の数字は、石油輸入量は四億五千二百万キロリッターと申し上げたわけでございます。それから六十年度につきましては四億三千二百万キロリッターと、こういう数字になっておるわけでございますが、これはいわゆる政策努力を続けることによってここまで石油依存度を減少さしたい、こういうことでございまして、六十年度、六十五年度、それぞれにつきまして現状のままに推移していった場合どうなるかということでございますが、六十年度につきましては石油輸入量は五億五百万キロリッター、それから六十五年度におきましては五億八千七百万キロリッター、非常に膨大な数字になるわけでございます。  それで、ただいま御指摘になりましたエクソンその他の調査機関発表いたしました数字、いわゆる内外の石油需給見通しといったようなものから判断いたしまして、いろんな政策努力を加味することによって六十年では四億三千二百万キロリッター、六十五年では四億五千二百万キロリッターというふうに、現状で推移した場合よりもかなり石油に対する依存度、逆に申し上げますと、日本の国の輸入可能性という観点に立って数字を置いておる、こういうことでございます。
  17. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) エクソンの一九七五年の発表数字に対してどう思うかということでございますか、エネルギー事情——エネルギー見通しは刻々に変わっておりまして、いまのお話は約三年前の報告でございますのでまた事情も若干変わっておると思います。たとえばアメリカ政府エネルギー政策など見ましても、オイルショックが起こりましてから昨年の一月にカーター発表いたしました政策は三回目のものなんですね。一九七四年、一九七五年に発表いたしましたアメリカエネルギー政策は一年足らずの間に大幅修正をしております。それから昨年発表いたしましたカーターオイルショック以降三回目の政策もいまなお日の目を見ないと。あるいは相当修正しなきゃならぬと、こういう事情でございまして、だから一九七五年のエクソン発表ども一つの参考にはなりますけれども、絶えず私どもが気をつけておりますことは、刻々に事情が変わっておりますから、その動きを的確にやっぱり掌握していかなければならぬと考えております。  それから、いろいろの事情はありますが概して申し上げますと、日本石油事情というものは非常に厳しい情勢のもとにありますから、絶えずやはり十分な準備というものをしておかなければならぬということだと思います。昭和四十八年の秋の時点におきましても、もう少し日本としても備えが十分であれば、あれだけの大騒ぎにならなかったわけでございますが、そういうことを考え、世界の石油事情必ずしも楽観は許さないと、こういう情勢でございますので、日本としてはいかなる場合にも対応できるような準備というものを、十分用意をするということが肝要であるということを痛感をいたしております。
  18. 大塚喬

    大塚喬君 通産大臣訪中されたのはたしか七五年十一月だったと記憶するわけでございますが、私はこのエクソン発表直後に訪中をされた通産大臣、まさに俊敏な行動力、そして今後大局的な見地に立ってエネルギー政策のために御奮闘いただいておったものと後で承知をして大変力強く敬意を表しておったわけでありますが、そういう事情の中で改めて通産大臣お尋ねをいたしますが、日本の大局的なエネルギー政策、その中で一体ポイントは何なんだと、こういうことについてひとつ通産大臣からもう一度お聞かせをいただきたいと思います。
  19. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先ほどエネルギー庁の長官からも大体のことについて御説明をいたしましたが、いろいろ工夫もし努力もしておりますけれども、ここ当分の間はやはりこの石油依存というこの大筋は変わらないと思います。少なくともここ二十年ぐらいの間は石油中心エネルギー政策日本としては立てざるを得ないと、こういうことだと思いますが、その間に石油にかわるべきエネルギー開発等をどんどん進めなければなりませんし、それから同時に石油につきましては開発、節約、備蓄、この三点について今後さらに一層の努力が必要であろうと、このように考えております。
  20. 大塚喬

    大塚喬君 ちょっといまのお答えでまだまだ満足というところまでまいりませんが、先ごろからずっと質問をした関連の中でこういうことについて疑問を持っております。  アラ石で一ころ売っておった半分の石油しか現在売っておりませんね。五十一年度対比で見ますと半分の原油も売っておらない、そういう実情であります。五十二年度決算は繰越金と別途積立金を取り崩してようやく年六分の食いつぶし決算をしたと、こういう記事が出ておるわけであります。主力のカフジ原油は重質油で硫黄分が多い。国内できらわれておると、こういうことも一つの原因だということでありますが、先ほどから政府総合エネルギー政策の中で、アラ石が現在陥っておるこの状態、こういうことに関してエネルギー庁長官はどのようにお考えでございますか。
  21. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 御指摘のように、アラ石のわが国への引き取り量が減ってきておるわけでございます。これはいろんな理由があるわけでございますが、一つは油の性質が重質油でサルファが高い。国内の需要は御承知のようにサルファの低い軽質油を利用しておる、求めておるといったような油の性状の問題が一つございます。それからいま一つは、やはり産業活動の停滞と申しますか、不振の結果、引き取り量が必ずしも全体としても伸びておらない、こういったことを反映いたしまして、アラ石の特にカフジ原油の引き取りが五十二年度では減少いたしたということでございます。私たちといたしましては、せっかく開発した原油を持ち帰れないということにつきまして、率直に申し上げまして非常に遺憾なことと思っておるわけでございます。  で、当面五十三年度におきましては、いわゆる石油供給計画の策定に当たりまして、こういったカフジ原油を含むこところのいわゆる政策原油の引き取り量というものを明示いたしまして、それからカフジ原油等の重質油につきまして関税を百十円キロリッター当たり減免することをいたしております。近く石油開発公団法の御審議をお願いいたしまして、その成立を待って国家備蓄を進めることになろうかと思いますが、そういった国家備蓄の対象の油として取り上げていきたい。さような努力をいたすことによってこの落ち込んだカフジ原油の引き取りというものを引き上げていきたいと、かように考えておるわけでございます。
  22. 大塚喬

    大塚喬君 メジャー関係資料を見ますと、クウェートの重質油、これらはいずれも結構さばいておるようですね。で、先ほどエネルギー庁が原油自給率を三〇%の目標と、こういうことで置いておるわけでありますが、このアラ石が困難になり、あるいはつぶれるというようなことになれば、エネルギー庁のそういう目標というのは一切吹っ飛んでしまうんではないかと、そういう素人考えの懸念があるわけであります。いまのようなそういう対策でこの自給率三〇%というのが確保できるのかどうか。その辺の具体的なひとつ内容をお聞かせいただきたいと思います。
  23. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) いま御指摘になりましたようにメジャー系のものについては重い油の引き取りもかなり進んでおるのが実情でございます。これは私たち考えますのに、メジャーというのは非常に多くの油田、いろんな種類の油を持っておるわけでございますので、そういった軽い油と込みで重い油の販売をいたしておるといったようなところから、メジャー系につきましては重質油もかなり販売実績を上げておるというふうに見ておるわけでございますが、アラ石の場合はカフジ原油のほかにフート原油というのがございます。このフート原油は非常に軽いいい油でございますが、量的に非常に少ない。結論的にはカフジ原油を単独で売らなくちゃいけないというところに問題があろうかと思うわけでございますが、先ほど申し上げましたような方策を講ずることによって、カフジ原油の引き取りに努力いたしたいと、こういうふうに思うわけでございます。  それから政策原油で六十五年度必要とする石油の三分の一以上確保するようにという石油部会の中間答申が出ておるわけでございますが、これの可能性いかんというお尋ねでございますが、これにつきましては二つの面があると思います。一つは、自主開発原油を積極的に進めていくということと、開発に成功した原油日本に引き取ってくるという開発面と引き取り面の両方の面での対応が必要かと思うわけでございますが、自主開発につきましては、石油開発公団の投融資率も、ことしから海外につきましては従来の五〇%から七〇%まで引き上げることといたしたわけでございます。そういったことの積み上げによって自主開発を進めていきたい。その引き取りにつきましては、ただいま申し上げましたような措置を講ずることによって、せっかく開発に成功した油の引き取りを円滑に進めるようにいたしたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  24. 大塚喬

    大塚喬君 私は一例としてアラ石のお話をしたわけでありますが、現在曲がりなりにも石油生産をしておる企業は十三社あります。で、これは累積赤字でいずれも四苦八苦の現状。一体、自給率三〇%ということを確保するために、先ほどアラ石で関税の問題等の対策がお答えあったわけでありますが、この処理を一体どうするのか。これは、今後このままに放置してそれらの企業の存続が見込まれるのかどうか。ひとつその問題について通産大臣に今度はお聞かせいただきたいと思います。
  25. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先ほども石油問題につきまして開発それから節約、備蓄と、この三本柱で石油政策を進めておるということを申し上げましたが、その第一の柱であります開発に関連をいたしまして、ただいま質疑応答のような内容の諸問題が起こっております。しかしながら、政府といたしましては、せっかくこうして積極的に開発を援助、指導してまいったところでございますので、できるだけいろいろ側面的に援助をいたしまして、そして当面する困難な問題が解決できるように工夫してみたいと考えております。
  26. 大塚喬

    大塚喬君 次に、本論の日中長期貿易協定石油に関して質問をいたしたいと思います。  いままで触れましたように、これは最初に申し上げましたように初年度は七百万トンと、こういうことで五年目に一千五百万トン、五年間総計四千七.百十万トンを輸入すると、こういうことになっておりますが、中国の大慶油田の石油は、重質油とはいいながら、ミナスと同じように低硫黄油、世界的に低硫黄油が不足をいたしておるわけでありますが、中国原油はそういうものであると、こういうことを聞いて私どもはまあ意を強くしておったと、こういうのが現状でございますが、ところが、現状は素人の思惑どおりにいかないで、私どもが、まさに有無相通ずる、しかも両国の友好にも貿易にも願ってもないことだと、いいことだと、こう思っておったわけでありますが、あにはからんや新聞や業界紙等を見ますと、石油業界の反対の記事が最近数多く見られるわけであります。ここの中にこの切り抜きも持ってまいりましたが、中国輸入石油業界の嘆き、というようなことでいろいろのあれが出ております。  そこでお尋ねをいたすわけですが、先ほども話の出ました経団連会長の土光さんが調停し、調印をしたこの協定、財界でも面と向かって堂々たる反論する人は数少ない。石油業界の反論もそういう幾らか遠慮しがちなような反論が見受けられるわけであります。しかし、このことは陰にこもった、この日中貿易協定を実らしたいと、こういう念願する立場から言いますと大変恐ろしいことであり、将来心配の種になる、こういうことだろうと思うわけであります。要はそのプラント業界、輸出関係のプラント業界や鉄鋼業、これは対中輸出で取引ができるんだからいいだろうと。しかし、石油業界は大変なお荷物を背負わされて、先ほど申し上げましたように陰にこもったうらみがどの記事にもその中に充満をしておるように私は読み取ったわけであります。この問題について実情どのようになっておるのか、ひとつ関係皆さん方から詳細に御説明をいただきたいと思うわけであります。
  27. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 大慶を中心とした中国原油は、御指摘のように非常にローサルファと申しますか、低硫黄原油という大きなメリットを持っておりますが、一方で常温では凝固をするという、凝固しやすいという特性がある、そのためには輸送なりあるいはタンクにつきましていわゆる保温装置など特殊な装置を必要とするわけでございます。あるいはいわゆる重質油でございます。通常の油は重い部分と軽い部分が大体五〇、五〇でございますが、重質油の場合は、そのままでいくと七対三ぐらい、重い方が七ぐらいになるわけでございます。したがって、これを通常の油のように改質していくと申しますか、分解していく必要がある。そういった面でコスト的に割り高になるんじゃないか、こういった点がただいま御指摘のような関係業界の不安を呼んでおる原因ではなかろうかと、かように考えるわけでございますが、御承知のように中国の油にかかわらず、今後世界の原油というものがだんだん重質化していく傾向にございます。  一方、需要と申しますか、消費段階ではむしろ軽質油を求める傾向があるわけでございますんで、そういった需給関係の乖離をカバーしていくためにも、この重質油をどのように処理していくか、いわゆる重質油分解装置の導入といったような問題が、中国原油の問題にかかわらず今後非常に重要な課題になってくるかと思うわけでございます。  それからいま一つは、当然のことではございますが、日中の貿易を将来ともに拡大していくためには、特にわが国としても乏しいこういった石油あるいは石炭といったものの輸入を拡大していく必要があるわけで、そういった中国原油あるいは中国原油の引き取りを円滑に進めていくというためにも、この重質油をどのように処理するかということも必要になってくるわけでございまして、そういったところから、先日通産大臣の私的な諮問機関といたしまして重質油対策懇談会というものを設置いたしまして、関係業界のトップレベルの方に集まっていただきまして、ここで今後の方向というものを議論していただく、このもとに委員会あるいはワーキンググループを設けることによりまして、さらに細部にわたって具体的にこのプロジェクトをどう進めていくかということについても検討お願いすることにいたしております。かような措置を講ずることによりまして、業界の不安感を払拭しながら重質油の輸入を円滑に進め得る、また進めるようにいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  28. 大塚喬

    大塚喬君 いまのお答えに関連をして電力用の生だき、これ以外に中国原油の使い道がないと、こういうような話も聞くわけでありますし、答弁のあった重質油の分解装置、どうしてもこれが必要だと。そのために中国原油はコスト高になって、他の原油に比して中国原油はトン当たり三ドル高くなると、こういうような話も耳にいたしておるわけであります。一体事実はどうなのか。本当にそういうことになるのかどうか。それから現在日本の日産五十五万五千トンの設備を有する設備枠、これを凍結して苫小牧に一日五万トンの処理能力を持つ重質油分解装置をつくる、こういう話があって、そこらのところが私にはどうもよくわからないわけであります。これらの内容、真相をひとつ明らかにしていただきたいと思います。  この構想に関して、石油業界の関係者から耳にしたわけでありますが、石油業界に多大の負担金をかけるのではないかというそういう不安、あるいは国営会社をつくって業界に君臨させようとする通産省の陰謀だと、こういうようなことを耳にするわけでありますが、これらについて後から耳にするわけでありますが、それらに関して一体どういうことなのか、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  29. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 幾つか御指摘あったわけでございますが、まず中国原油は電力用の生だきにしか使えないかという点でございます。御承知のように電力業界では、現在環境対策等の関係もありまして、一部原油の生だきということをやっておるわけでございます。本来原油を生だきするということは必ずしも好ましくないわけでございますが、環境対策上やむを得ないということでございます。これにつきましては、どちらかというと軽質油を燃しておるわけでございますので、それにかえてこの重質油を生だきしたらどうか、こういった意見もあります。これは私は一つ考え方かと思いますが、結局電力業界のいわゆる環境基準達成との関係考えるべき問題じゃないかと思います。  それから、三ドル程度割り高になるのじゃないかという御指摘でございますが、これは重質油分解につきましてはいろんな方法があるわけでございまして、接触分解法あるいは水素分解法といったどの方法をとるか、あるいはどの程度の規模の分解設備にするかということによりまして、おのずからコストも変わってくるわけでございますので、一概に三ドル高いということがすべてに該当するということにはならないのじゃなかろうかと思います。これもやはりどの程度のコストになるかということは、今後いろんなケースについて検討を続けていくべき問題じゃなかろうかと思います。  それから三つ目に、苫小牧に重質油分解装置をつけた一貫体制の大規模の工場をつくるのじゃないかと。それはむしろ国の支配を強くするんじゃないかという御指摘でございますが、これは先ほど申し上げました重質油対策懇談会あるいはその下に置かれる調査会あるいはワーキンググループの中で、いろんなケースについて検討する場合に一つのたたき台として検討の対象にするという程度でございまして、いまの段階におきましてこれでやるのだというところまでの結論には至っておらないと、こういうことでございます。
  30. 大塚喬

    大塚喬君 電力用の生だきについてお尋ねをいたしますが、現状使用量は年間二千二百万トン、こういうふうに聞いておるわけですが、中国からの原油輸入、これは、それを電力の生だきに回しても重油のシェアには大きな悪影響はないのではないか、こう私素人考えですが、そう考えておりますが、この点はいかがですか。
  31. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 五十二年度におきまして電力用の生だき原油は二千二百九十万キロリッターであったわけでございますが、先ほど申し上げましたように、生だき分を逐次減少していきたいということから、五十三年度におきましては二千二百三十万キロリッターというふうに考えております。それで、中国原油でございますが、先ほど御指摘になりましたように、初年度の五十三年度におきましては七百万トンの輸入を予定いたしておりますが、このうち電力用には二百八十万トンという予定になっておりますので、この二千二百三十万の中にこの二百八十万トンが含まれてくるということになろうかと思います。
  32. 大塚喬

    大塚喬君 先ほどの業界のいわゆるうわさと申しますか、陰にこもった反対の意見の中に、通産省か本格的に重質油分解装置をつくれば、各社とも製品のそれぞれの得率を大幅に変更せざるを得なくなる、こういうことを心配しておるのではないか、私はこう受けとめたわけでありますが、この点はいかがでございます。
  33. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 得率の変更と申しますより、むしろ業界に不安があるとするならば、一つはかなりコスト高になるんじゃないかという懸念じゃないかと思います。それからいま一つは、御承知のように石油需要が、特に産業活動が不振のためにむしろ横ばいぎみに推移しておるといったようなところからいたしまして、そこに新たなる設備が導入されてくると一段と供給過剰ぎみになるんじゃなかろうか、こういった点に懸念を示しておるんじゃなかろうかと思うわけでございますが、先ほど申し上げましたように、重質油対策懇談会あるいは重質油対策委員会の場で、関係業界も委員に参加していただきまして、そこで十分検討することにいたしたいと思っておるわけでございます。
  34. 大塚喬

    大塚喬君 この問題に関して、十年後の日本エネルギー政策を確立するためにも、また長い将来の日中友好貿易のためにも、この問題に関して通産省として確固たる方針を速やかに打ち立てていただきたい、明らかにしていただきたい、私はそういう業界の不安等を耳にする心配の余り、そういうことを強く要望いたしておきたいと思います。  次にお尋ねをいたしたいことは、日本の場合に重油の精製得率が非常に高いということについて、一体アメリカなりヨーロッパなりと比べて、大変私も疑問に思うわけでありますが、この点について、ひとつ説明をいただきたいと思います。
  35. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 日本の場合、御承知のように石油需要というのは産業部門に六〇%、民生用が二〇%、輸送部門が一〇%強というような関係に立っておるわけでございますが、その他の国につきましては、大体産業、民生、輸送部門につきまして三、三、三といったような均等な比率になっております。そういったところから、わが国では、どちらかというと産業部門に需要が、ウェートがかかっておりますので、重油を多く使用するということになってくるというふうに見ておるわけでございます。
  36. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは、私はきょうは短かい時間ですので二、三質問したいと思います。  昨日の大蔵省の経常収支の集計によりますと、今年度の経常収支百四十一億ドルの黒字がはっきりしたようでございますが、これは経済見通し、これから相当問題になると私思いますが、昨年春福田総理が五十二年度は、今年度は七億ドルの赤字にするということでがんばってきたわけですけれども、実際問題として、三回にわたりまして、昨年の十月には六十五億ドルの黒字、そしてことしの一月には百億ドルの黒字、こういうことできたわけですけれども、結果的には百四十一億ドルの黒字ということ一になりました。  さて、これは非常に重要なこれから問題になってくるわけでございますが、五十三年度のいわゆる当初の見通しとしまして、政府としては六十億ドルの黒字を見込んでいるわけですね。これは実際問題として達成されるんですかね。これは大臣どうですかね。
  37. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 六十億ドルの経常収支、五十三年度の経済運営の大きな目標一つでありますが、七%の経済成長が達成したからといいまして自動的に六十億ドルという数字にはならないことは、もうすでに御案内のとおりでございまして、現状から判断をいたしますと、幾つかの流動的な要素はまだ残っておりますけれども、相当大規模な緊急輸入が必要であろうと、このように私ども考えまして、この大規模な緊急輸入をどういう形で具体化していくか、今週じゅうには関係閣僚が集まりまして案をまとめたいと考えております。
  38. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは大臣、実際問題として、黒字減らしを何とかやらなければならないというのは、少なくともことしに入ってから相当政府としても力を入れてきたはずなんですね。昨年の十二月が二十一億ドルですかの黒字だったわけですね。それで三月には今度は二十四億ドルの黒字になっているわけですね。これは実際問題として、少なくとも黒字がこれは縮小される傾向というか、兆しが少しでもなければこれはもうとても見込み不可能なんですね。そういうような意味から、よほど私は腹を引き締めてこの対策を立てないと、ただ単に何というか、いま大臣は大規模な緊急輸入とおっしゃいましたが、これはあらゆる角度からの対策か必要になってくると、そういうように思いますが、大臣の所信をもう一回聞いておきたいと思います。
  39. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 日本が現在のような大幅な黒字を続けておりますと、これが導火線になりまして世界全体で保護貿易的な傾向が起こってくる危険性がございますので、これだけはどうしても避けなければならぬと考えております。そういうことから先ほどは緊急輸入中心お話を申し上げましたが、輸出の面も相当配慮をしなければなりませんので、これはもうすでに数量で五十二年度横並びという方向を決定をいたしまして、三月の二十五日、関係経済閣僚会議で正式に決定をしたわけでございますが、その線に沿いまして通産省の方でも具体的な指導体制をいまつくり上げたところでございます。だから輸出は数量で横並びに抑えまして、そして一方緊急輸入を拡大をしていく、こういうことを並行して進ながら、一刻も早く貿易のバランスを政府目標の方向に改善をしたいというのが当面の課題でございます。
  40. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 三月二十五日に引き続いて大臣は先ほど今週じゅうおっしゃいましたが、いつお開きになって計画を具体的に進める予定でございますか。
  41. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 多分二十一日ごろに関係会議が開かれるであろうと期待をしております。
  42. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ぜひあれしてもらいたいわけですが、この四月二十一日に開かれる予定の経済対策閣僚会議ですか、ここでは主にどういうことを審議される予定でございますか。
  43. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 一つは先ほど申し上げました緊急輸入の拡大ということが一つだと思います。緊急輸入の拡大の内容はもう少し具体的に申し上げますと、第一が製品輸入の促進拡大ということになります。それから第二が、資源エネルギーの備蓄の強化ということであります。それから第三点は、経済協力の拡大と、こういうことになろうと思います。  それから、あわせましてこの関係閣僚会議では円高の差益を消費者に還元をするという基本的な方針が正式に決まるであろうと期待をしております。
  44. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そうしますと、いま大臣がおっしゃいましたように輸入の拡大という一つの柱、それから海外経済協力の推進という問題ですね、それからもう一つ円高差益の還元というこの三点にしぼられるわけでございますね。
  45. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 分類の仕方はいろいろあろうと思いますが、そういうことだと思います。
  46. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それではもう少し、これは大臣でなくて結構ですが、私、三つにしぼったわけですが、まず輸入の拡大の問題では具体的にどういうことを考えていらっしゃるのか、まず初めにお伺いしておきたいと思います。
  47. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) 輸入の拡大につきましては、資源関係の備蓄と製品輸入の増大ということを中心に、関係各省間で話し合いを進めておるところでございます。
  48. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 どうも抽象的ですね。もう少し具体的におっしゃっていただけませんか。
  49. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) 第一点の備蓄につきましては、従来から九月の対策あるいは三月十一日の対策におきましても民間ベースを主体としました備蓄ということで、金融面の方を助成するといった観点から対策をとったわけでございます。ところが、最近さらに備蓄を拡大しようということで検討しておるわけでございますが、もうすでにほぼ民間の備蓄体制というのはこれ以上は無理ではなかろうかという感じがするわけでございまして、つきましては備蓄をこれ以上拡大するとすれば、かなりな程度国が関与した備蓄ということをしなければならないんじゃなかろうかということでございます。ところが、一歩国が関与いたしまして備蓄を拡大するということになりますと、これが仮に品目あるいは数量が外国に漏れるというようなことになりますと、かえって国際市況に悪影響を及ぼすおそれもあるということで、内々の検討を進めておるような次第でございます。
  50. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは実際問題として、民間がもう相当備蓄については拡大されている。国が関与しなきゃならないというところまで来ているわけですね。そういうような段階で、先ほど大臣もおっしゃいましたように、緊急輸入——黒字を本当に政府目標どおり六十億ドル達成——そこまで縮小してその目標を達成するためには、実際問題として大臣が先ほどおっしゃったように、相当大規模な緊急輸入というのをやらなければこれは達成できないと思うんですよね。このことは何もきのうきょうに言い始めた問題ではなくて、昨年の予算委員会のときから何回かこの問題言われているわけですね。実際具体的な話どんどんどんどん詰まってきているんですか、どうなんです。
  51. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) 備蓄につきまして昨年の秋からいろいろと検討しておりますが、現実にはかなり詰めておるわけでございます。ただし、詰めておりますけれども、いろいろな物資につきまして品目ごとに検討を詰めておるわけでございますが、いろいろと難点がある商品もありまして、なかなか最終的にどれぐらいという数量はまだ決まってないわけで、早急に決定いたしたいと思っております。   〔委員長退席、理事福岡日出麿君着席〕
  52. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 緊急輸入につきまして、実際問題として個々にどの程度の量ということは非常に言いにくいと私は思うんですね。しかしながら、相当大規模ないわゆる緊急輸入というからには、大枠としては大体この程度目標にというのは、これはわかるんじゃないかと思うんですが、どの程度目標考えていらっしゃいますか。
  53. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) タンカー備蓄につきましては、先般から五百万キロリットルということを目途に決定いたしまして、さらにこれが可能であればということでその増量につきまして検討いたしております。原油以外の金属あるいは希少金属につきましてでございますが、これにつきましてはできるだけと思っておりますけれども、いまのところ十億ドルもいけばいいんじゃなかろうか、あるいはそれ以下にとどまる公算が非常に多いと思っておりますが、できるだけ多額を備蓄したいと思っております。
  54. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これはやはりこういうところは相当詰めて、ここで言えないとしても、やっぱり皆さん方のところでは具体的な話が進んでいらっしゃるんだろうと私は思うんですけれども、十億ドルといいますとなかなか大変だと実際問題として私は思うんですがね。その点はぜひ真剣に取り組んでいただきたいと思います。  次に、もう一つの海外経済協力の推進という問題ですが、これはいろんな角度から幾つかの問題が言われているわけですが、この点についてはどういうふうにいま進んでおりますでしょうか。
  55. 矢野俊比古

    政府委員矢野俊比古君) 最初にお断りをいたしますが、経済協力の予算につきましては、実は外務省予算ということで現在外務省が取りまとめをしております。具体的にそれじゃどんなものが検討されているんだろうかということでございますが、やはりLLDC、特に最低貧困国といわれております国に対するいわゆる援助だとか、あるいは世銀とかそういった国際金融機関あるいは国際機関に対する拠出の問題であるとか、あるいは食糧等を含む無償援助といったようなこと、さらにその他医療協力の問題とかというふうなことが取り上げられるだろうと思いますが、現在そういう点をベースに外務省の中で調整を進めておるというのが現状でございます。
  56. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 無償援助のいわゆる予算ですがね、これは今年度幾らになっていますか。これはもちろん外務省でしょうが、ちょっとわかっているだけで結構です。
  57. 矢野俊比古

    政府委員矢野俊比古君) 今年度は三百九十億円ということで予算が組まれております。
  58. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは実際問題として、大臣、無償援助というのは、昨年は百八十億円でことしが三百九十億円というのですから、相当ふえているのは私もわかるのですけれども、実際問題として構造不況業種やいろんな業界を抱えている通産省としては、そういう業界の製品とかそういうようなものを、いわゆる無償援助に向けるということも考えられると私は思うんですよね。そういうふうな方面での政策、また方針というものは通産省ではどういうふうに検討をしていらっしゃるか、この点をちょっとお伺いしたい。
  59. 矢野俊比古

    政府委員矢野俊比古君) 今回の三百九十億円の中でほぼ百五十億円に当たるものがいま御指摘のようないわば不況産業の製品というような一つ考え方がございます。平電炉製品——棒鋼であるとかあるいは繊維とかあるいは肥料といったものがこの対象でございます。  ただ私どもは、やはり経済協力でございますから相手国政府の要請がそういう物にあるという前提でございまして、こういった要請をわれわれ受けますれば、できるだけそういうことのこの無償援助の中でそういう不況対策も大いに活用できることを期待しておるわけでございます。
  60. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 当然相手があることですから、何でもかんでもというわけにはいきませんけれども、通産省としてはそういうような方面のPRも相当やっぱり外務省に対してもやっていらっしゃると思うんですが、そこら辺のところは実際問題どういうふうになっていらっしゃるかですね。
  61. 矢野俊比古

    政府委員矢野俊比古君) 今回の予算編成におきまして、大臣からもそういったいま先生のおっしゃるような趣旨における指示もありまして、私どもの方から外務省に対しまして、いわば在外公館を通じて、そういった製品を、特に不況業種を対象としたような製品を頭に置きましてそういうような事情が、要請があり得るかどうかということを私たちとしては打診をさせていただいたわけでございます。そういった結果がいま申し上げた小棒とか繊維とか肥料といったものについて、そういう期待が持てるということでございますのでこの枠の拡大を、昨年度から見れば倍以上でございますが、こういうような措置をとったというふうに御理解いただきたいと思います。
  62. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この問題についてもう一点、この無償援助ですね。これは実際問題として三百九十億円ですからね。これはもう本当に億、ドルという段階で議論されている段階では非常に少ないわけですね。そういうような意味では、これは政府としてここら辺のところをもう少しふやす方向にできないか。この点、大臣どうでしょうね。
  63. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) これは外務省とよく打ち合わせをする必要がある項目でございますが、原則的なことを申し上げますと、日本としては百四十億ドルを超える経常収支の黒字を上げまして、一部の国からは第二のOPECであると、こういう非難も受けておるわけでございます。また、憲法の制約等もございまして、自由世界全体のための防衛に日本としては尽くすことはおのずから制限がございます。ドイツなどと事情が非常に違うわけでございますが、そういうことを考えますと、日本として世界全体の経済の発展のために、特に発展途上国の経済の発展のために、持っておる力というものをもっともっと私どもは活用すべきであると、このように根本的には理解をいたしております。そこで、この援助などもできるだけふやしたいというのが基本的な考え方でございまして、一つには日本の国内からの商品援助も一つの大きな柱でございますが、あわせてアンタイ援助、こういうものも大規模にふやすべきではないか、このような考え方のもとに、現在の数字では非常に少ない、日本としてはもっともっと大規模な援助をすべきではないかというのが基本的な考え方でございますが、いま関係方面で調整をしておるところでございます。
  64. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ぜひ大臣、いまおっしゃったように無償援助の拡大というのは、これは国内のいまの不況、構造不況業種の皆さん方のいろんな製品というものを一つ一つピックアップしてみますと、相当いろんな角度からの援助ができると、そういうふうに思います。そういうような意味で、こういう面にもぜひ真剣に取り組んでいただきたいと思うし、もう少し拡大できないかという方向に、そういう拡大する方向に今後も取り組んでいただきたいと思います。大臣がおっしゃいましたように、このひもつきでない援助というのはそれはそれで、そういうふうな方面で当然私は、東南アジアの諸国もこの日本の援助はひもつきだということで相当問題になっているわけですから、ひもつきでない援助というのは当然私は必要であろうと思います。そういう点で取り組んでいただきたいと思います。  それからもう一点、列のいわゆる円高差益の還元の問題ですね。これもかねがねから何回か言われておるんですけれども、この問題については、具体的にどういうふうに取り組んでいらっしゃるか、もう一回お伺いしておきたいと思います。
  65. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 円高差益は消費者に還元をしなければならぬというのが基本的な考え方でございますが、しかし消費者に還元する方法は幾つかあると思うんです。それぞれの業種ごとに最も適応した対策がいいのではないかと思っております。つきましては、電力、ガス、石油、それぞれの分野で還元の仕方は違うと思いますが、具体的な進め方につきましてはエネルギー庁長官から答弁をいたします。
  66. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) まず電力、ガスでございますが、五十二年度の平均レートの実績で計算できるという段階になりまして、いまの段階でいわゆる電力、ガスにおける円高メリットを計算いたしますと、九電力で約九百二十五億円、それからガス三社で約百六十億円という計算になるわけでございますが、毎々申し上げておりますように、ナショナルミニマムの上限の百二十キロワットアワーで計算しますと二十八円、平均使用量の百七十五キロワットアワーで計算いたしますと月四十円、こういう数字になるわけでございますが、一方、五十三年度以降OPECの原油価格に対応がどうなるか、あるいはレートの不安定性という問題もございますが、そのほかに減価償却、支払い利息といった資本比が非常に増大していく、あるいは人件費、修繕費等も上昇するというようなコスト増高要因が非常に多いというようなこともございまして、私たちといたしましては、従来から申し上げております、現在、料金の引き下げという形で還元するよりも、できるだけ長く据え置いて消費者に還元するという方途をとりたいということで考えておるわけでございます。  すでに五十三年度中につきましては、九社そろって据え置きということで話がついておりますが、五十四年度についてどうするかということにつきまして、大半の電力会社については据え置きに応ずるんじゃなかろうかということでございますが、一段と詰めてみたい、かように思っております。ガスについても同じようなことでございます。  それから石油につきましては、これも毎々申し上げておるわけでございますが、コストアップ要因もかなりあるわけでございますが、円高メリットがこれを上回っておるという状況にあることはすでに御承知のとおりでございます。ただ、昨年の十二月には家庭用灯油について引き下げを要請いたしたところ、十二月一日にさかのぼりまして元売仕切り価格の引き下げが行われておる、それが一月以降ずっと浸透してまいりまして、二月時点では灯油の小売価格が六百九十二円、昨年同期に比べて三十円程度引き下がっておるということでございます。それから、その他の製品につきましてもこの一月に一部の元売企業が平均して二千円の引き下げを発表したわけでございます。その後各企業にこれが浸透いたしまして、昨今では平均いたしまして二千円を超える値下がりあるいは値下げという形で消費者に還元されているんじゃなかろうか。月当たり平均二千円の引き下げといたしますと月間約五百億、三千円といたしますと約七百五十億円の事実上の消費者還元が行われている、こういう状況でございます。今後のOPECの動向あるいはレートの推移等を見まして適宜、適切に対処してまいりたい、かように考えております。
  67. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 当然差益の還元の方法としては料金の据え置きという問題もあるわけですから、それはそれなりに私は意味があると思います。しかしここで石油製品のいわゆる差益の還元の問題、それからいわゆる電気、ガスの、公益事業ですから、こういうふうな料金の還元の問題、これは何回か当委員会等でも問題になりましたので、それぞれ取り組んでいらっしゃると私は思うんですが、そのほかの輸入製品ですね、これの問題については先般経済企画庁で調査もいたしましたが、これは、そのほかのいわゆる輸入製品の差益の還元という問題は、これはいろんな角度からやっぱり通産省としても取り組まなければならない問題だと思うんですが、こういうふうな問題についてはどういうふうに考えていらっしゃるのか、この点もちょっとお伺いしておきたいと思います。
  68. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 一般の製品輸入円高差益の還元問題でございますが、ただいま御指摘がございましたように、輸入品の価格動向調査、企画庁が中心になりまして一次、二次と実施をいたしました。前回の調査は全体で三十四品目をいたしまして、その中で通産省の所管品目がちょうど半分の十七品目でございました。昨年の第二次調査の結果を見ますと、その前の調査に比べまして、私どもの所管のいまの十七品目を見ますと、輸入価格も下がりそれから同時に国内の小売価格等も下落したもの、これが八品目ございました。ただそのほかはかえってそのFOB価格が上がってしまったとか、いろんな分類がされると思います。私ども、また最近のこの円高傾向の中でやはり製品輸入の拡大という観点から考えましても、この輸入品の価格か円高を反映いたしまして国内の小売価格か下がるという方向をとることが基本的に必要であると私ども考えております。ただ、先生も御案内のように、ただいまの製品輸入の中では、率直に申し上げまして、日本の消費者の外国品指向と申しますか、むしろある程度高い物なるがゆえに買うというような、そういう品種、品目もございまして、一律にどうすべきであるという指導の方向をとるのはなかなかむずかしいものでございます。  そこで、今回は企画庁が取りまとめをやっておりますが、私ども改めて最近の情勢、小売価格の動向等の第三回目の調査をすることをまず検討し、その中で、基本的にはやはり輸入品の国内価格とそれから輸入価格との関係、ここら辺の実態を消費者によりはっきりさせることによりまして、消費者がよくその輸入品価格の価格の形成のあり方等を見て、消費と申しますか、輸入品を買うそのときの情報提供をさらに細かくやると、こういう方向で考えて、輸入品価格の下落という方向を、消費者の購買に当たっての選択の材料をより細かく提供すると、こういう方向で考えていったらどうかと考えておりまして、目下検討中でございます。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕
  69. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次にもう一点お伺いしておきたいと思います。いわゆる電力の設備投資の問題でございますね。これは前々から何回か大臣もこの委員会でも、今年度は五兆円の設備投資を期待をしているというふうな発言もしていらっしゃいますが、実際問題として現在の計画の進行状況はどの程度まで進んでいらっしゃるのか、一遍お伺いしておきたいと思います。
  70. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 現在のところは、正式に工事ベースで三兆二千億円、それから繰り上げ発注で一兆円強、合わせまして四兆二千億強という数字が決まっておりまして、政府全体といたしましてこの電力の投資の促進ということに取り組んでおります。そのために立地問題の解決を図っておるところでございますが、この立地問題の解決の進みぐあいいかんで、なお私どもは七、八千億ぐらいの追加を進めていきたいと考えております。だから、五兆円という数字はまだ最終的に確定はしておりませんので、立地問題の解決の過程において五兆円という目標に達したいと、こういう考え方でございます。
  71. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは大臣、実際問題としてこの四兆二千億というのは仮発注、繰り上げてやっているわけですね。これは実際これだけの金額が消化できているんですかね、これはどうなんですかね。
  72. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 後で詳細な数字エネルギー庁の長官から答弁をいたしますが、工事べースの三兆二千億のうち、三兆円はすでに着工中のものの累計でございますから、これはもう確実に進行をいたします。それから二千億はこれは新規着工の分を予定しておりますが、工事ベースで、この程度のことは十二分に可能であると私ども考えております。それから繰り上げ発注も、これも現実に着々進んでおります。だから、むしろ今後の立地問題の促進によりまして追加を若干図っていかなければなりませんが、これに今後とも力を入れていきたいと思っております。
  73. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは実際問題として立地条件がだんだん厳しくなってきているわけですが、現在全国で着工をしている個所は何カ所ぐらいあるんですか。そしてその中で特に問題が起きているといいますか、反対とかいろんな問題があるところはどのくらいあるのか、その実態がわかりますかどうか。
  74. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) お尋ねの着工地点数、いま数字を持ち合わせておりません。後刻調査の上お答えいたしたいと思います。  それから、どの程度の地点で問題があるかということでございますが、その問題の質なりあるいは種類によっても違ってくるかと思いますが、一応私たちは現在二十二の地点を、対策を必要とする重要地点ということで考えておるわけでございまして、この二十二地点を中心に対応を進めていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  75. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは二十二の地点というのは、実際問題として順調に話し合いは進んでいらっしゃいますか。
  76. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) この二十二地点につきましては、大きく分けますと、すでに電調審を通りまして着工の準備に入っておるものと、それから電調審に上程するための手続を進めようとしているものと分かれるわけでございますが、二、三の地点を除きまして、ここ半年ほどの間にかなり順調に進展してきているということでございます。ただ問題の性質上、この程度進んだんだと定量的に申し上げられる性質のものではございませんけれども、かなり進んできているというふうに考えております。  それから、先ほどお尋ねの電源地点、いまどの程度着工しているかということでございますが、水力、火力、原子力合わせまして六十地点、約二千六百万キロワットでございます。
  77. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それから、私は先般の予算の分科会でもちょっと質問をいたしましたが、和歌山県の新宮川の流域の問題で河川の汚染という問題が起きてきまして、それで発電所ができる時点で河川の汚染という問題がもう恒常的になってしまってどうしようもないという問題が現実にあるわけです。この問題について、エネルギー庁としてはどういうふうに取り組んでいらっしゃるか、一遍ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  78. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 電源開発を進める場合に、当然地元の理解と協力を得る必要があろうかと思います。さらには、今後やはり六千万キロワット以上もの電源開発をこの両三年中に着工しなければならないというふうなことでございますので、個別の立地点について地元の理解なり協力を得るに当たりまして、その場限りのようなことでびほう的にやるということはとうてい許されないことであると。地元との信頼をかち得るためには誠心誠意、工事中もあるいは工事完成後も、御指摘のような河川の汚濁といったようなことのないように努力すべきだと思います。新宮川につきましては、完成後台風時等の濁水によって下流地域にかなり広範囲にわたって影響を及ぼしておるようでございますが、電発といたしましても、これに対して誠意を持って積極的に対応しておるということでございますが、今後ともさような形で、関係の各省庁とも連携をとりまして、できるだけ濁水事故問題を解決していきたいと、かように考えております。
  79. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは長官、こういうふうなエネルギー資源の開発という面から発電所をつくるということは、非常に国としては進めなくちゃいけない問題ですね。しかも、新宮川系の発電所というのはたくさんあるわけですけれども、地元の人たちというのは現在まで、幾つかのところはもめているところも最近ではありますけれども、大部分がみんな非常に順調に、また地元の方も非常に賛成して、それで協力をして発電所をつくったわけですね、ところが、そういうところには国も電発も余り力を入れなくて、猛烈に反対しているところには国が物すごく力を注ぎ込むというんでは困るわけ、実際問題としてですね。  いま長官も新宮川のことをちょっとおっしゃいましたけど、全然認識が違うわけですよ。というのは長官はいま、台風が来れば当然川は濁りますね、だから濁るのは普通は発電所ができるまでは台風が来れば確かに水は濁る、けれども台風が過ぎてたとえば一週間、十日すれば水はぴちっと澄むわけです。濁度ゼロとか一とか二とかというように非常にきれいな水になるわけですね、従来は。ところが発電所ができたために濁った水がダムにたまる。そうすると、濁った水を濁った方から順番に川へ流すわけですから、年じゅう濁ると、こうなるわけです。ですから、そこら辺の対策をどうするかということで、地元ではたとえばもちろんいろんな問題、上水道にしてもふだんは自然ろ過の方式できちっとできたものが、急速ろ過にしなくちゃいけないとか、今度沿岸の漁業もいわゆる濁った水がどろを運んできますから、沿岸のノリとかいわゆる養殖全部だめになっちゃう。アユは全然揚がらなくなってくる。現実にそういうような問題がいっぱい起きてきているわけです。ところがそういう問題は起きてきても今度はあれこれ言ってまず政府からは、この間ぼくは大臣と約束しましたから、大臣が実態調査をするということを答弁されましたから私これ以上言いませんが、実際問題として政府の役人が実際に現地に行って、エネルギー庁の役人が現地に行って調査したというのはないんだ、いままでほとんど。  だから、それではやっぱり困るんで、こういうふうなところこそ、私は従来そういう電源開発とかそういうような問題に非常に熱心であり、協力的だったわけですから、そういうふうな人たちに反感を抱かせるようではこれらのいわゆる電源開発というのもうまくいかないわけですね。そういうような意味では、私はぜひこういうところはすぐ実態の調査をし、そして今後ともこういうふうな電源開発やそういうようなものが本当にうまくいくように、やっぱり政府としてもがっちり取り組んでいただきたいと思うのですが、この点長官並びに大臣の所信をもう一回お伺いしておきたい。
  80. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) まことに御指摘のとおりだと思いますので、できるだけ早く担当官を現地に派遣して実情調査をさしたいと思います。
  81. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) これは前にもお約束をいたしましたので、今度で二回目になりますので、至急に係官を派遣をいたしまして実情を調査いたしますと同時に、対策をどう進めるかということについて至急に案をつくってみたいと思います。
  82. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 終わります。
  83. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、休憩いたします。    午前十一時五十三分休憩      —————・—————    午後一時四分開会
  84. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  産業貿易及び経済計画に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  85. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は、円高不況の中でいま企業は不況の克服のため、それから国際競争力の強化を図るためにさまざまな合理化を行っております。企業、その中でも特に大企業の合理化の中心というのは、これは人減らしだと思うんです。大企業の雇用調整というのは国民経済に大きな影響を及ぼします。雇用問題が大きくなっているときに、大企業の雇用調整をどう見るかというふうなことは今後の雇用、失業の動きを見る重要な指標になると思うんです。  そこで大臣にお伺いいたしますけれども大臣はこのような大企業の雇用調整の動きが、雇用問題全体の中でどのような役割りを果たして、どのような影響を及ぼしていると御認識でございましょうか。
  86. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まず政府の経済政策でありますが、一番の重点に考えておる課題は何であるかと言いますと、これはもう雇用対策であります。雇用対策を一番の大きな柱といたしましてすべての政策を進めておるということでございます。ところが、残念ながら完全失業者の数はこれまでのところ一番悪い数字が出ております。二月の数字はもうすでに御案内のとおりでありますが、三月はどうも二月よりも悪い数字になるのではないかと心配をしておるところでございます。またこのいわゆる過剰労働力の問題企業内失業者の問題でありますが、現在の産業全体の平均操業率七五、六%という水準から考えますと、二百万ないし二百五十万人ぐらいな企業内失業者が存在するのではないかと、このように理解をいたしております。でありますから、いまの政府政策は完全失業者をだんだんと減していきますと同時に、企業内失業者の問題が、いわゆる過剰労働力の問題が表面化しないように何とか景気の回復を図り、産業全体の操業率というものを高めていきたいと、このように考えておりまして、そのための七%の経済成長ということを目標にいましておるわけでございますが、やはり雇用問題全体を通じて見ますとなお憂慮すべき点が多々あると、こういうことでございます。
  87. 安武洋子

    ○安武洋子君 大臣はいま雇用問題、これを第一番に考えているというふうにおっしゃいました。大臣、七%成長が達成されれば、景気が回復すれば雇用問題も解決できるんではないかと、雇用情勢もよくなるのではないか、前の委員会のときにそういう御答弁もなさっていらっしゃいましたけれども政府の五十三年度の経済見通し、これを拝見しますと雇用者が五十五万人増加すると、こういうふうに見込まれております。仮に七%成長が達成いたしましても、石油ショック以来雇用調整の名のもとに大幅な減量体制を進めております二次産業ですね、特に製造業、ここでは雇用吸収が進むというふうにお考えでございましょうか、まずこの点をお伺いいたします。
  88. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) これは大体労働省から御答弁があってしかるべき問題だと思いますが、大体の感じを申し上げますと、政府見通しでは完全失業者は五万人減るという、五十三年度七%経済成長を達成することによりまして五万人減ると、こういう見込みをしております。ただしかし、雇用全体を通じて見た場合には、これはいまおっしゃったように相当数ふえると、こう考えております。つまり、新規に学校を卒業いたしまして社会に出て就職をしたいと、こういう人たちを大部分吸収したと、こういうことになるわけでございます。しかしながら、もちろんことし一年で雇用問題が解決されるということではございませんで、ある程度改善されるというのが精いっぱいだと考えております。そこで、全体として雇用の数は相当ふえてまいりますけれども、その大部分は第三次産業になっておる、こういうことでございます。
  89. 安武洋子

    ○安武洋子君 では二次産業、ここにはほとんど雇用吸収、これが及ばないというふうなことでございますね。大体、じゃどれぐらいこの二次産業に変化が起こるというふうなことをお考えでございましょう。労働省というふうにおっしゃいましたが、大体の見通しというのは経済審議会のこの報告の方にも出ていると思うんですけれども。その点お答えいただきとうございます。
  90. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私からお答え申し上げます。  ただいま御指摘のございましたように、最近の就業者数の動きを見てみますと、製造業全体の就業者数の比率というのは、五十年度が全体の中で二五・八%、五十一年度の実績で若干減りまして二五・五%程度、五十二年度はまだ出ておりませんが、私はこの比率というのは横ばいないしあるいは若干——これは私の感じでございますが、若干下回るかあるいは横ばい程度考えておりまして、そういう製造業の動きに対しまして、ここ数年ふくれておりますのが第三次産業でございまして、昭和五十年が比率が五二・一%でございましたが、五十一年度にはこれが五二・六に上がっておりまして、ことしもただいままでの部門別の就業者数の動きを見ますと、この比率をさらに高めることになると、こういう感じがいたしております。
  91. 安武洋子

    ○安武洋子君 まあ昨年度のこの経済白書でも指摘をなさっていらっしゃいますし、いまの御答弁の中からもわかるように、それからまた昨年の十二月の経済審議会報告でも報告されておりますように、製造業、特に大企業の雇用調整ですね、これは四十九年度以降かなり進行して就業者が全般的に低下しております。で、就業者をふやしているのはおっしゃるように第三次産業です。ですから、大企業の合理化というのは、生産性向上というのは、雇用調整をてこにして行われているということは明らかだと思うんです。こういう趨勢的な変化ですね、構造的な変化と申しましょうか、こういうものは、通産省としても私は見逃すことができないものだと思うわけなんです。ですから、雇用動向は労働者にも大きな問題を生み出しておりますし、通産省としてもこういう企業の雇用動向の変化をどのように受けとめて、そして認識をしていくかということは大変大事なことではなかろうかと思うわけです。ですから、いまどのような調査をなさり認識されておられるのかということをお伺いいたします。
  92. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) いわゆる雇用問題がこれからの産業構造問題、あるいは経済全体の運営問題の中で非常に大きなウエートを占めてくるということは御指摘のとおりでございますし、私どもも実はそういう意識で長期のこれからの産業のあり方を考えるときの大きな問題点にいたしまして、御案内と思いますが一昨年、五十一年度に六十年を目指します産業構造の将来の姿を描きますときにも、将来の雇用問題というのを非常に大きな問題意識としてとらえてまいりました。本年度も、実はただいま少し長期のやはり産業の見通しというものを立てることをいろいろいま検討に着手をいたしておりますが、私ども従来にも増して、この雇用問題というものをどういうふうに考えていくかということを構造政策の一環として取り上げてみたいと考えております。  まあ方向といたしましては、ただいま御指摘ございましたように、長期の方向といたしましては今後ともやはり第三次産業のウエートというものがだんだん高くなってくるのではないか。特に社会福祉あるいは公共サービス等を中心といたしますいわゆるサービス部門を中心に、第三次産業のウエートというのが高くなってくると、こういうふうに考えておりますが、しかし、製造業の中でもただいま御指摘のように、この不況の中でいわゆる大企業と申しますか、基礎資材産業を中心といたしました大きな企業の部門、業種の部門で労働人口の停滞ないしは縮減の方向というものが出ておりますが、長期考えますと、やはり製造業全体で見ますれば、そこの製造業の中で雇用吸収力を期待をしなければならぬと、こういうふうに私ども考えておりまして、したがって、製造業の中を割ってみますと、これからもまた伸びていく部門というのがいろいろございますから、そういう業種が何であるか、そこでどういうふうに雇用の吸収というものを考えるか、そういう方向はぜひ考えてみたいと考えております。  なお、製造業をさらに含めまして二次産業というとらえ方で考えてみますと、建設業等も二次産業等に含めるといたしますと、二次産業の雇用におけるウェートというのは、少し長い目で見ますと、いまの情勢よりはさらに雇用の吸収の分野になっていくんではないかと、こういう方向で考えていかなければならないと思っております。
  93. 安武洋子

    ○安武洋子君 いまね、雇用の吸収は企業内でということを期待しているというふうなお言葉が御答弁の中にございましたけれども、まあいまそうではなくって雇用調整という名の人減らし、これが行われているわけです。解雇とか希望退職とか——希望退職の募集ですね。それから一時帰休とかあるいは出向、新規採用をしないとか定年の引き下げですね。まあさまざまな、形は違いますけれども、いろんな形がとられてこういうふうなことが行われているわけなんです。  私は前回の四月の十一日の委員会でも出向の問題についてお伺いいたしましたけれども、この問題で改めてお伺いしたいわけなんです。  不況が非常に深刻になっているというこれを反映いたしまして、私が前回も申し上げましたように、出向のあり方というのもここ数年来大きく変化をしてきていると思うんです。従来出向といいます場合は、これは関連企業への役員の派遣とか、あるいは技術の援助とか、こういう業務上の出向ということが主流だったと思うんです。ところがいまでは雇用調整だということを目的にした人減らし出向ということの、こういう形が大勢を占めているというふうに思うわけですけれども、通産省としてもそういう状態を把握なさっていらっしゃるかどうかということをお伺いしたいです。  それから、先ほど私が企業の雇用動向の把握のための調査を具体的におやりかどうかということをお伺いしましたけれども、具体的におやりになっていらっしゃるかどうか、調査目的とかそれから現在把握されている傾向とか、まとめられる時期とかというものもあわせてお伺いしとうございます。
  94. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私、ただいま御答弁申しましたのも、これからの少し長い将来にわたりまして、特に産業構造問題というのが議論をされておりますので、その中で雇用というものをどう考えていくかという点を御答弁申し上げました。  ただいまの御質問はむしろ最近の不況の中で、企業がいわゆる人減らしと申しますか、合理化の一環としてどういうビヘ−ビアで対処をしているかという問題でございますが、私どもこれを非常に詳細に労働問題につきましての調査、これは私事務当局といたしますと、先ほど大臣の最初の御答弁にございましたように、労働省とのいろいろな関係等で私どものタッチをする仕方等にもひとつの限界がございますが、私どもは、この不況の中で労働力の移動というものがどういうかっこうで行われているかというような傾向につきまして、この不況の始まったころから主要企業等に協力を依頼いたしまして、そういう傾向の把握はいたしております。それから見ますと、御指摘のように各企業、私ども調査に協力をしてくれました企業の大体の感じから申し上げますと、関連会社でございますとか、あるいは比較的業績のいい企業あるいは下請企業を含めまして、雇用調整策の一環として従業員を出向さしておる企業は決して少なくございません。まだ詳細の最近の数字まとまっておりませんが、大体の感触から申しますと、私どもが聞きました、事情聴取いたしました企業の回答から見ますと、大体半分ちょっとの企業が、ただいま申し上げましたような意味での出向という制度をとりまして、雇用調整と申しますか、それに取り組んでおるという感じがいたします。  ただこれは、半分と申しましたのは数でございませんで、企業としてとらえましたときに、半数ちょっとの企業が何らかのかっこうで出向という形をとっているように私ども把握をいたしております。なお詳細につきましては、現在五十二年度のものについていろいろとほかのものと一貫いたして取りまとめ中でございまして、なお若干の期間がかかると、かように考えております。
  95. 安武洋子

    ○安武洋子君 雇用調整のための出向といいましてもね、形態はさまざまです。ですからすべてのケースが一概にこれは不当だというわけではありませんけれども、前回私が指摘しましたように、元請の大企業が下請会社にもう半強制的に人を押しつけると。そしてこの下請が——出向先ですね、そこが賃金の大部分を負担すると、こういうケースとか、あるいは私調査をいたしましたけれども、ある繊維会社ではそこの社長さんが自分のところでお米を買っているそういうお米屋さんに出向だという形で人を押しつけている、こういう人の押しつけを下請会社が喜んで受けるはずはないんです。こういう受け入れをしかし拒否するということになれば、いまの繊維会社からお米を買ってもらえなくなる。そしてきのうも決算委員会で私どもの沓脱委員指摘しましたように、こういうことを訴えて出ればたちまち報復手段で会社がつぶれるというふうなことだってある。大変なデメリットがあるからこそ、こういうのを受け入れざるを得ない、受け入れましたら苦情を言っていくこともできない。そして余剰人員を抱えるから大変になる。じゃもとから自分のところにいる人を解雇したり、あるいは孫請にしわ寄せをしたりということで犠牲を下に下に押しつけているのがいまの実態なんです。  こういう出向は、場合によっては単なる雇用問題ということではなくて、下請関係の問題として大きな影響が出てくるわけですね。しかも一これが今後一層大量に行われようというところに大きな問題があるのではなかろうかというふうに思うわけです。ですから私はせんだっての質問の中でも、これを野放しにするのではなしに、一定のルートというものを確立する必要があるということを強調させていただきました。この私の質問に対して御答弁者が、昨年暮れに通産大臣と公取委員長の連名で通達で指導をしているということを言われたんですけれども、これですね、拝見しましたら、これは下請取引の適正化についての指導文書であって、私が指摘するようなこういう出向のケースについて、これをカバーできるような中身というのは含まれていないわけなんですよ。ですから下請二法はもとより独禁法の不公正の取引の項も、この問題では下請の、私がいま申し上げたような問題は擁護できないのではないかというふうに思うんですけれども、これはひとつ中小企業庁と公取の方にお伺いをさせていただきます。
  96. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 中小企業の労務の状況、私どもも気にいたしましてアンケート調査をいたしたところ、一方では不況を何とか乗り切っていかなければならない。その意味から、新規採用を調整したりあるいは超勤を抑制をしたり、労務費の節減を図るということでいろいろ苦労をしておるという実情が出てまいりました。ところが他方で、中小企業の中にはかなり多くいまだにまだ人手不足であると、特に技能者等がほしいというような声もあるような実情かと思っておるところでございます。いまお話ございました大企業から中小企業への出向の問題、これは正直に申しますと、下請代金支払遅延等防止法ではちょっと処理がいたしかねる問題でございます。そうは申しましても、下請企業の自主性という立場からいたしますと、不当に出向者を押しつけられるというようなことは好ましくないということは御説のとおりかと考えております。
  97. 長谷川古

    政府委員長谷川古君) お答えいたします。  御指摘のように、親事業者とそれから非常にそれに隷属している立場の下請事業者の間ではいろいろ不合理なことが行われていることはわれわれもいろいろ聞いております。しかしながらこれらのこのような問題に対して、先生の御指摘の例の従業員の派遣の問題でございますけれども、果たしてこれを独禁法でやることが、規制することが可能かということと、さらにそれが適当かという二つの問題があるかと思います。もちろんこれは新しい問題と申しますか、われわれかつて余り検討したことがない問題でございますから、余りはっきりしたことを申し上げかねるんでございますが、やはり下請法や、これはひいては独禁法もそうかと思いますけれども、主として取引条件ということに対象を限っております。  さらに、いま一つ非常に大きな問題としまして、これは先生も御案内かと思いますけれども、果たして独禁法がこういうふうな雇用問題とか、あるいは労働の問題に立ち入っていいのかどうなのかと、余談になりますけれどもアメリカの反トラスト法も、一番最初に事件になりましたのは、実は労働組合に反トラストが適用されたというような事情もございまして、アメリカでも非常に議論になりまして、その後反トラストの補完法としまして、労働は取引の対象ではないということが明文の法律で規定されているような事情もございまして、労働とか雇用の問題につきまして独禁法が立ち入るということは、かなり慎重でなければならないというふうに考えております。
  98. 安武洋子

    ○安武洋子君 大臣は、不当に下請を圧迫するようなことは好ましくないという御答弁をせんだってもいただいておりますけれども、それは何か法的な根拠に基づいてそういう御発言をなさいましたのでしょうか。それとも単に一般的な大企業の企業行動のあり方としてそういうふうな御発言をなさいましたのでしょうか。その点をお伺いいたします。
  99. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 一般的な考えを申し上げたわけであります。
  100. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、具体的にそういう望ましくないケース、私が申し上げましたようなそういうケースが出ました場合、どのような措置をとればこの不当な圧迫に苦しんでいる——独禁法でもだめだ、下請二法でもだめだ、穴があいているわけなんですね、そしてこういう企業行動としては好ましくないというものについて、じゃ一体どのような措置を講ずればこういう下請の人たちは救われるんでしょうか。まさにそういうことを訴えてきた、もし下請の企業があればどういうふうな擁護をなさるのでしょうか。そういう点を聞かせていただきとうございます。
  101. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 大企業から中小企業への出向の実態といいますのは、ずいぶんさまざまなケースがあるのではないかという気がいたします。先ほどもちょっと触れましたように、技術者がほしいとか特別の経験者がほしい、経理の明るい人がほしいというような意味合いで出向する場合もございますし、また逆の、極端には先ほど御指摘になったようなケースもございます。こういうケースについて、一つ一つこれはいいケースか悪いケースかということを画一的な物差しを用意するということは、恐らく大変むずかしいことではないかという気がいたします。ただ、いま御指摘のようなケースが好ましくないことはもう明らかでございますから、やはりそういう場合に大企業が常識ある行動をしていただく、それについて、やはり一般的なルールなり考え方というものを整理する、こういうことが当面の対応策なのではないかという気かいたします。
  102. 安武洋子

    ○安武洋子君 大臣はいかがですか。
  103. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 余りひどい例があれば通産省、中小企業庁といたしましてもいろいろ行政指導はいたしますが、基本的な考え方はいま長官から答弁をしたとおりだと思います。
  104. 安武洋子

    ○安武洋子君 何度も申し上げるようですけれども、いまどの法によっても保護されないというふうに、この一つの大きな穴があるわけなんですね。ですからそういう下請の、出向を受け入れた人たちは訴えていくところが本当にないわけなんです。ですから私は先ほど御答弁の中にもありましたけれども、雇用は企業内吸収が望ましいと、こういうことであれば私はやはり企業行動として人減らしのための不当な出向ですね、こういうものはやめるようにと、こういうものは自粛するようにという、せめて企業に対する通達、これも含めた強力な行政指導というものが必要ではなかろうかというふうに思うんですけれども、こういうものはいかがでしょうか。
  105. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいま中小企業庁長官の御答弁のように、私どももただいまの情勢の中でいろんなかっこうで出向という形か、いわゆる大企業とその傘下の下請の企業の間で行われていることは、先ほど申し上げたような多くの例があるわけでございます。ただ、この親企業と下請企業との関係、これは現在のような不況情勢、あるいはこれから少し先のことを考えてみましても従来の関係とはまた違ったいろいろな、改善と申しますか、組み合わせてその他でもいろいろ両方で考えなきゃならぬ問題がいっぱいたくさんございまして、この下請企業への出向という問題だけを浮き彫りにいたしまして、これに何らかの一つの基準をつくってどうすべきだということをするには、なおいろんな問題があるんではないかと、こういうふうに私は考えておるわけでございます。
  106. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 基本的な考え方は先ほどお答えいたしましたとおりでございまして、なかなかこれは、法律でこういう場合はいい、こういう場合は悪いというような物差しは用意できないと思いますが、この問題についてどう考えるべきか、どう対応すべきか、私なりに少し研究をいたしてみたいと思います。
  107. 安武洋子

    ○安武洋子君 これでは、下請企業は本当に不当な圧迫を受けましても救われないということになってしまいます。ですから、やはり私は検討していただかなければならないと思うんですよ。やはり企業行動として、本当に下請をいじめるような企業行動は慎みなさいと、そういう文書、通達ぐらいはこれはお出しになるべきだというふうに思いますね。その点をもう一度お伺いいたしますのと、それから下請振興基準でも、このようなやり方についてはこれは載せるべきではないかと思うんです。これではやはり私がいま申し上げているようなのは穴になってしまっていると。こういう御検討もいただけますでしょうか、そのことをお伺いいたします。
  108. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) いまの点検討さしていただきます。
  109. 安武洋子

    ○安武洋子君 ではぜひ検討していただきまして、私が再三取り上げておりますこういう出向——具体的な人減らしですね、これによる下請いじめというのが救われるような措置をぜひお考え願いたいというふうに思います。  それから、次に移らせていただきますけれども、私は中小業者の健康福祉の問題についてお伺いいたします。  今年度の予算の中で中小業者の健康福祉のための事業が、これか初めて行われることになりました。中小企業庁が業者の要望を取り上げられまして、こういうことをやっていこうという姿勢に対しましては、私は非常によいことだというふうに思っているわけなんです。そしてまた、内容から申しましても業者婦人とのかかわりも大変大きいと思いますし、婦人の地位向上のための国内行動計画の一環としても役割を果たすような事業として、ぜひ推進していただきたいということをお願いもしておきたいと思います。  この事業の内容に対しましては、業者の方々からも非常に大きな関心が寄せられております。まず、ですからこの事業の中身について、一体どういうふうな中身なのかという概要をお聞かせいただきたいと思います。
  110. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 中小企業行政の中でも、新しい分野として私どももこの問題については意欲を持って取り組みたいと考えておるところでございます。  具体的な予算の使い方でございますが、まず第一に考えておりますのは、中小企業の経営者、またそこに働く家族従業者、これらの方々の健康管理面、あるいは福祉面の実態調査を行うこと及びそれをもう少し掘り下げて勉強するために、経営指導員の中で特定の方約百五十名を健康福祉モニターという形で委嘱をいたしまして中小企業経営者、家族従業者等の健康福祉に関する意識の把握を行いたいと、これが第一の柱でございます。  それから第二番目には、中小企業経営者あるいは家族従業者等にかかわる分野について、総合的な健康福祉施策が講じられるように関係各省庁の学識経験者を含む連絡協議会を設けていきたいと考えておるところでございます。先ほど申し上げました調査等を受けながら、どういう実態になっておるのかお互いに勉強し合うという組織にしていきたいと思っております。  それから第三番目には、以上のような勉強を受けまして、一つの健康福祉事業についての実施システム、こういうものを考えていきたいと思っておるところでございます。このやり方はいまいろいろ議論をいたしておるところでございまして、テーマ別に分けるかあるいは地域のタイプ別に分けるか、いろいろなやり方が考えられるわけでございますが、四つぐらいのタイプについて実施システムを研究するための予算が一応用意されておるところでございます。
  111. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、一つずつお伺いさしていただきますが、一番最初に出ました問題の中でモニターの問題なんです。いまお伺いしますと、商工会議所の経営指導をするような人などというふうなことが出ておりましたけれども、具体的にはどのような人になるわけでしょうか。
  112. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 商工会、商工会議所に御承知のとおり経営指導員が用意をされております。それを補佐するために補助員等もございます。これらの中から、これらのいま申し上げました健康福祉問題について、特に関心を払っていただくことをお願いする人をモニターとして委嘱いたしたいと考えております。
  113. 安武洋子

    ○安武洋子君 もっと広く、中小企業団体の中で日常的に業者の方々に接触されておられるような人、こういう人も多いと思うんですけれども、そういう人も含めて委嘱すべきではないかと考えますけれども、この点はいかがでございましょう。
  114. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) いままでの中小企業対策、特に小規模対策につきましては、いわば商工会議所と商工会というのが二本の柱になりまして、経営指導体制を進めておるということになっております。そういう実績を踏まえましていま申し上げましたような考え方を採用いたしたいと思っておるところでございます。
  115. 安武洋子

    ○安武洋子君 やはり私は、一番最初に業者婦人の声をまとめて、そして中小企業庁長官にも本当に業者婦人の声を受け取ってほしいと言ってこられたのはこういうところではなかったと思うんです。実際に自分が日常的に仕事をなさっていらっしゃる、そういう業者の方が集まられた団体であったはずなんです。そういう団体の方の声もやはり聞けるような、そういうところだけを柱にするんではなくって、やはりもっと広くいろいろと意見が聞けるように委嘱をされるべきだというふうに思います。重ねて、そういう御検討をいただけるかどうかということをお伺いいたします。
  116. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 中小零細企業の経営者及びその家族従業者、これらの方々が健康管理面あるいは福祉面でどういう悩みを持っておられ、またそれについていまどういう対応策が現に行われており、何が残されておる問題か、こういった問題については、一番冒頭に申し上げました基礎的な調査によって、大体の方向を明らかにするということを考えておるところでございます。大体、いま計画いたしておりますところでは、一万ぐらいの調査対象を予定をいたしておりますので、大体そこで問題点が把握できると考えております。それらについて、さらに掘り下げてやります場合に、従来から経営指導員という組織がございますので、それを活用することが経費的にもまた経験的にも、とりあえずは一番便宜な手段であろうと、こう考えておるところでございます。
  117. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は、やっぱりいまの御答弁では納得できなくて、とりあえずはそうであっても、将来についてはやはり広くもっと意見が聞けるように、いろいろ中小企業団体の中で日常的にも業者に接触されている方はほかにもおられるわけですから、広く委嘱をしていただいて、平均的に意見が聞けるように、そういう検討をぜひお願いいたします。  さらに伺いますけれども、中小企業の福祉事業ですね、推進連絡協議会のことが第二番目に出ましたけれども、これはいつごろどういうメンバーで発足をなさいますのでしょうか。
  118. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 私どもは、いまちょうど予算の始まった時期でございまして、まず調査、実態把握ということを取り上げて、この結果を見た上で各省あるいは学識経験者を含めた連絡会議を催そう、こういう心づもりでおるところでございますから、これの開催はなおしばらくの時間を要するのではないかと思っております。
  119. 安武洋子

    ○安武洋子君 やはり広く意見を吸収するという立場にお立ちいただきたいと思うのです。私自身も業者の方々の健康や福祉の問題について再三いろいろと意見を申し上げてまいりましたけれども、業者団体の中にもさまざまな有意義な意見をお持ちの方もいらっしゃいますので、私は懇談会を開くとか意見聴取なども行っていただいて、ぜひこういう中に役立てていただきたい、そのことを検討していただきたいということを申し上げとうございますが、いかがでございますか。
  120. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 従来からもいろいろの方面の御意見は拝聴してまいったつもりでございますし、今後とも有益な御意見を賜ることができれば幸いだと考えております。
  121. 安武洋子

    ○安武洋子君 それから、第三点の実施システムですね。テーマ別、地域別で四つぐらいと、こういうふうなタイプとおっしゃいましたけれども、四つぐらいのタイプというのは具体的にはどういうことなんでございましょうか。
  122. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) これは先ほど申しましたように、どういうやり方をやるかということ自体をいまいろいろ勉強しておるところでございます。先ほど、例示のような形で地域別あるいは項目別ということを申し上げました。もう少しわかりやすく申し上げるとすれば、たとえば地域別というときには非常な大都市型のシステムはどうか、それから地方都市のシステムはどうか、都市近郊のシステムはどうか、あるいはもう少し農村部のシステムはどうかと、こういうような地域別の考え方をとるか、あるいは項目別ということであれば健康診断のためのシステムをどう考えるか。それから健康増進のためのシステムをどう考えるかと、こういうような項目別をとるか、どういう方向がいいだろうかということをいま勉強しております最中でございます。
  123. 安武洋子

    ○安武洋子君 業者婦人の問題を申し上げて、取り上げていただきまして、中小企業庁としてもこの問題を進めてこられたことについては、私は大変よかったことだというふうに思っておりますのですけれども、この業者婦人の問題は、いままでも窓口的な役割りとしては振興課の方でやっていただいていたということですけれども、今後もこういう事業もあわせて振興課の方でおやりになるのでしょうか。
  124. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 従来申し上げておりますように、業者婦人問題についての通産省の窓口といいますか、中小企業庁の窓口は振興課でやっておりました。ところが、実際こういうふうに仕事が広がってまいりますと、そういう体制だけでいいだろうかどうだろうか、なお私ども研究してみる必要があるだろうと思っておるところでございます。この健康福祉事業自身は恐らく振興課で続けることになりますが、もっと広い業者婦人問題をどういうふうな形で組織の中で処理をしていくか、なお研究さしていただきたいと思っております。
  125. 安武洋子

    ○安武洋子君 その御研究の中には、業者婦人の問題を取り扱う窓口を個別につくるとか、あるいはこういう問題と一緒に扱うところを特別につくるとか、そういうことが含まれておりますのでしょうか。
  126. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 機構の拡充ということはいまの情勢でございますからむずかしゅうございますが、一番実質的に行政が進められるような担当課をどういうふうに考えていくかということを研究さしていただきたいと申し上げたわけでございます。
  127. 安武洋子

    ○安武洋子君 それまでは振興課のいままでどおりの、従来の窓口で業者婦人の問題も扱っていただけると、こう理解してよろしゅうございますね。
  128. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 先ほど申し上げましたように、いま取り扱いをどうするかということをいろいろ中でも議論いたしております最中でございますが、業者婦人問題になりますと、非常に守備範囲が広うございまして、単に振興課だけでやっておりますよりは、むしろ指導官室のような組織の方がなじむのではないか、いま現に相当の仕事をそちらの方でも手伝ってもらっておるというような実態にございますので、その辺の調整を考えたいと思っておるところでございます。
  129. 安武洋子

    ○安武洋子君 ひとつ行政面でいつでも受け入れられるように、穴があかないようにというふうなことを私はお願いしておきます。やはりいま円高不況の中で業者婦人というのが、本当に生活それから経営、これらを維持するために心身をすり減らしていると、こういう毎日なんです。ですから、いわゆるお勤め人と違いまして社会保障の面でもまた健康管理、この面でもきわめて不十分な状態に置かれているわけなんです。ですからこういう実態とか要望とかは、根こそぎ解決してやろうという立場に中小企業庁ひとつ立っていただきまして、業者の方々の期待にこたえて、まあ大変大きな期待が私どもの方にも寄せられておりますので、実際にこういう期待にこたえて、喜ばれるような事業としていまいろいろ企画なさっておられます事業も進めていただきたいし、それに対応する組織も整備していただきたいと、こういうことをお願いいたしまして、最後に長官の御答弁を伺って私の質問を終わりたいと思います。
  130. 岸田文武

    政府委員(岸田文武君) 御指摘ございました業者婦人の実態につきまして、昨年調査をいたしましたその結果も近くまとまるというところにまいっております。私どもも中小企業者の中で約二百万に及ぶ方が自営業種として働く婦人で、中小企業政策の推進力になっていただいておることはよく承知をいたしておりますので、今後とも気をつけてまいりたいと思います。   〔委員長退席、理事福岡日出麿君着席〕
  131. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 大臣、きょうはチッソの問題を私取り上げて、大臣に率直な御意見を承りたいと思うわけです。  大臣御存じのように、私はチッソの労働組合、チッソの経営者、それから熊本の水俣の市会議員、市長からいままでいろいろチッソの問題を陳情を受け、大臣にもお願いしていろいろ御懇談申し上げた経緯もあるわけですが、今日大変な事態になっておりますので、きょうはひとつ率直に大臣のお考えをお聞きしたいと思うのです。  言うまでもございませんが、チッソは水俣病補償完遂という重い社会的責任一つ持っておる。同時に、チッソは関連の小会社を含めて約三千九百名従業員がおります。したがって、家族を入れると優に一万を超す人たちがチッソの企業で生活をしておるわけですが、この人たちの雇用の維持というこれまた企業としての社会的責任を負っておる。同時に、水俣に入ればよくおわかりのように、水俣市は現在三万七千の人口を持っており、知不火沿岸地域中心地でございますが、チッソの火が消えると水俣市の経済が壊滅状況になるという大変重要なポジションを占めておるわけです。  ところが一方、五十二年九月三十日までの水俣病の認定患者は千百九十名、これまでの補償金支払いは三百七億円、累積損失が何と資本金の四倍の三百十二億円、これがチッソの経理状況でございます。しかも、認定申請中の者が現在四千八百名おるわけです。五十二年六月の官公庁からの新認定基準が実施されるということになりますと、昨年の例で見ましても、一挙に認定患者が三、四倍にふくれる。そうなりますと、補償金の支出が、これまで年間五十億円という膨大なものであったわけですが、これがさらに上回っていくことになります。  一方、チッソの現在置かれておる環境でございますが、経済界全般が長期慢性的な不況の中にあるわけですが、チッソの企業が化学業界に属しておるというところから、幾多の構造問題を抱え、需要の停滞による低操業、そして市況が軟弱である、このことはチッソ企業が他産業に比してきわめて厳しい状況に立たされておるわけです。このために、五十二年上期のチッソの経常損益は八億円。四十七年以降の累積損失は資本金の四倍の三百十二億ということは先ほど申したとおりでございまして、チッソの経営状態を調べてみましても、もはや換金する何物もない、換金しようとすればチッソの本体である工場それ自体を売却しなければならない、こういうことになるわけです。このまま推移すると、先ほど申した社会的責任である患者の完全救済あるいは雇用の維持、地域経済への波及ということについて、全くこれを担うことができない、それどころかチッソそれ自体の企業が存立しないという状況に立たされているわけです。過日も水俣市の市長、議長以下各会派の市会議員がこぞって陣情に参りまして、何としても具体的な抜本策を講じていただきたいということでございまして、大臣もこのことはよく御存じだと思うわけです。こういった状況に立って、政府がこのチッソ問題をどのように解決しようとしておられるのか、具体的な対処の仕方についてお伺いいたしたいと思います。
  132. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 産業政策の面から申し上げますと、チッソの製品、いま御指摘がございましたように一部は不況業種でございますから、不況カルテル等によりまして緊急対策を立てる、これも一つの方法だと思いまして、現にそういうこともやっております。あるいはまた、チッソが再建のために新製品を開発していこうという場合に対しては、産業政策上できるだけの援助を惜しまない、これも一つの方法だと考えております。しかしながら、そういう基本的な産業政策の面からのチッソに対する取り組み方だけではこの問題は解決をいたしません。いまいろいろお話がございましたように、非常に根深く複雑なものがございます。しかも、事態は非常に緊迫化しておる、こういう状態でございます。私も、チッソの経営責任者からもいろいろ話は聞いておりますし、地元の方々からも話は聞いております。非常に経営状態もむずかしい時点に差しかかっておると理解をいたしておりますので、やはり政府といたしましても、何らかの私は対策について積極的にやっぱり検討する時期が来ておるのではないか、こう思っております。  現在のところ、内閣官房が中心になりましていろいろ作業を進めておるようでございますが、関係する各省も多いことではありますけれども、至急に私は関係者が集まりまして、何らかの対策を立てることが必要である、こういうことを痛感をいたしております。
  133. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 これは実際問題として関係閣僚会議が官房長官のもとに持たれておるわけでございますが、いままでの経緯を見てみましても、ほとんど機能しない、県債発行問題一つとってみても、県と国との関係がいろいろぎくしゃくしておるというような状況で、前へ向いて進まないという状況じゃなかろうかと私は思うんです。もちろん私はきわめて大切な汚染者負担の原則、これは公害行政の基本でございますから、これは厳然と守らなければならないわけでございますが、チッソの企業それ自体が存続しないということに立ち至れば、何もかも消えてしまうわけでございまして、同時に、先ほど言った地域社会への問題、あるいはそこで抱える家族を含めて一万ほどの人たちの生活の問題、社会的な大変な問題になるというふうに思うんです。したがって、いま大臣せっかくのお答えでございますけど、そういった形で、これは関係銀行に融資をさせたところでどうしようもない、動きがとれないわけですから、これからチッソを存続さすという前提を当然お持ちだと思うんだけど、それじゃどうやってチッソの企業というものを維持させていくのか、もう少し具体的なものがあればお聞きしたいと思うんですが。
  134. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) これまではいわばボールの投げ合いのような形になっておったわけでありますが、事態は非常に重大な時期に差しかかっておると思います。でありますから、これはやはり何らかの形で、政府がある程度の私はめんどうを見ないと前進しないんじゃないか、こういう感じがいたします。その点につきましては、内閣官房におきましても、事態を非常に重大に認識しておられるようであります。いまいろいろ案をつくっておられるようでありますので、私どももその案ができましたならば、その案に沿って至急相談をしたい、このように期待をしております。だから、これまではなかなか進行しなかったのでありますけれども、大詰めに来ておるような感じがいたしますので、もうしばらくの間お待ちいただければと思います。
  135. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 大臣は政調会長のときからずいぶんいろいろとお骨折りのことを私も存じておるわけですが、PPPの原則があるからといって火の粉を浴びることをきらって県や市とボールの投げ合いをやっておったって、これは事態はどんどん深みに入っていくわけだから、私はいま大臣おっしゃったように、政府としてやっぱり一はだ脱ぐという毅然とした態度、要するにチッソを存続さすという前提に立って、何らかの抜本策をとらなきゃいかぬ、そのためにはやっぱり特別立法でもして、何か考えなければいけない重大な問題だろうと私は思うんです。その辺で、私この問題についてはこれ以上のことは言及しませんが、どうぞひとつ大臣通産行政立場からも十分な施策をお願いしたいということを要望しておきたいと思います。  エネルギー庁長官おられますので、常々申し上げておりますナフサの問題ですね、これについてきょうはひとついい御返事をお聞きしたいと思うわけでございますが、円が二百二十円割れの状況の中から、最近とみに輸入差益の還元という声が非常に大きくなっておる。輸入差益の還元という言葉の裏に、必ずと言っていいほどナフサがくっついていますね。それほど私はこのナフサ問題が矛盾しておるというふうに思うんです。この円高差益というのは、苦労せずに手に入ってくるわけでして、基幹産業であるナフサ需要業界は、原料のナフサが高いがゆえに、しかも円高であるがゆえに壊滅的打撃を受けておる。片方供給側は、労せずして差益がころがり込んできておる。そういう中で、著しく国際的に割り高な原料をしょっておるわけですから、石化業界はもちろんのこと、構造不況業種である合繊業界もまた先ほどのチッソじゃございませんが、大変な状況に立ち至っておるわけです。いままでも何といっても価格決定に四十八年当時通産省は介入したことは事実でございますから、そのしりはやっぱりきちっと私はふかなきゃいかぬ。そして基幹産業である石化業界、そしてさらにその庇護にあります合繊の現状から照らして、その辺のバランスをやはりとっていただかなければいけないというふうに思うわけでして、エネルギー庁長官としてのお考え並びに決意を聞かしていただきたいと思うんです。
  136. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 御指摘の点、私も全く同じような考えに立っておるわけでございますが、御承知のように昨年の十月−十二月分につきましては輸入分も考慮いたしまして、実質三千円の値下げということで話し合いがついたわけでございます。現在ことしの一−三月分につきましての交渉が始まったというふうに承知いたしておるわけでございまして、いま需給両当事者間での話し合いが始まったばかりの段階でございますので、この段階で私の方としてどの程度下げられるだろうとか、あるいは下げられるべきだということは適当でないと思いますので、その点は差し控えたいと思いますが、先ほど御指摘になりましたような事情につきましても、あるいは石化業界の窮状につきましても、私としても十分承知しておるつもりでございますので、今後両当事者の交渉の経緯を見ながら、状況に応じまして私たちとしても指導に乗り出したいと、かように考えておるわけでございます。
  137. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 本質的なナフサ問題を解決しようと思えば、やはり石油製品の価格ですね、価格体系それ自体を本質的に洗わなければならないということだろうと思うわけでして、そのためにエネルギー庁に石油価格問題等懇談会というのが設置されておるというふうに私聞いておるんです。しかし、これも昨年末に顔合わせをして一度も会合を開いていないというような状況だそうでございますが、その辺のところどのような動きをしておるのかお聞かせいただきたいと思います。
  138. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 本来、石油製品価格の市場のメカニズムを通じて適正に形成されていくということが望ましいと思うわけでございますが、御承知のように、石油製品価格なるものは、それを処理する需要部門に対して多大の影響を与えるものでありますし、また石油産業自体としても、構造問題につながる問題であるといったようなところから、昨年石油部長の差益諮問機関の形で石油価格問題等懸談会を設置いたしたわけでございます。その後——石油部長もおりますので、その後の状況につきましては石油部長からお答えさせたいと思います。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕
  139. 古田徳昌

    政府委員(古田徳昌君) 石油製品の価格体系の問題につきましては、総合エネルギー調査会の中の石油部会でもいろいろと議論が出まして、結局石油部会の中の一小委員会あるいは一部会という形で議論をさらに進めるようにという御指示を、昨年暮れに受けたわけでございます。それを受けまして、私どもの方としまして学識経験者数名の方に御出席いただいて、とりあえず懇談会の形で発足したというわけでございます。昨年一応全体の問題点の検討といいますか、洗い直しを行いまして、それを受けましてことしの三月になりましてから二回目を開いて議論を進めている段階でございます。  その中で石油製品の価格につきましては、確かに体系的に見ますと他のヨーロッパ諸国あるいはアメリカに比べまして相当違った形になっているということで、それのもたらす影響、その影響が石油産業自体にもたらす影響、さらに需要サイドに対しての影響等いろいろあるわけでございますけれども、それらの点について十分洗い直した結果、新しい石油価格体系はどうあるべきかというふうな形で議論を進めていきたいというふうに思っています。
  140. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 私は前にもこの委員会で申し上げたことでございますが、通産省としてはできるだけ価格決定に介入しない。それは供給側と需要側の両当事者間の話し合いに待つべきだということをしきりにおっしゃるわけだけれども、これはやっぱり最初に行政が介入して標準価格というものを設定した経緯があるわけですから、中途半端な介入をすればどんどんどんどん深みに入っていくというおそれもあるわけだけれども、ここのところはやっぱりきちっとしなきゃいかぬ。それから現在の供給側と需要側の間には、交渉当事者としての資格に欠ける、交渉の力のバランスがとれない、その最大の原因がやっぱり輸入問題にある。だから石油業法によって安い、現に安いわけだけれども、安いナフサをユーザー業界が直接輸入するということを認められていない。  そういう仕組みの中で供給側とユーザーと交渉しろといったところで、もうどだい交渉の立場がないわけですから、この点について私は基礎産業局長の諮問機関の石油化学工業国際競争力研究会、ここが指摘しておるように、石油化学企業による共同輸入会社、共同備蓄会社の設立、これをやらして安いナフサがあったらどんどん需要側も買うという状況の中から、価格決定に対して両当事者間の話し合いをするという方法はきわめて妥当だと思うんだけれども、この辺についてどのようにお考えであろうか。  同時に価格決定方式にしましても、私は以前にもドル建てでいったら恨みっこないじゃないか。そのときの状態に応じて、要するに安いナフサをよこせと言っておるわけじゃないのだから、国際競争力を余儀なくする産業なんだから、その基礎的な原料であるナフサを国際価格並みにしろということだから、国際価格が上がれば上がったってよろしい。しかし著しく割り高の場合には国際競争力を欠くわけだから何とかしろ、そのためにはドル建てが一番正しいということも申し上げたわけですが、この研究会で同じように価格決定方式は四半期ごとに国際水準を考慮しつつ見直していくシステムを導入したらどうか。同時にトン当たり建ての方式が望ましいということを提言しておるわけでして、この辺について長官どのようにお考えかお聞きしたいと思います。
  141. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) いま御指摘になりましたナフサについては、輸入は自由化しておるが石油業法の供給計画の点から必ずしもユーザーの自由に輸入されないじゃないかという御指摘でございますが、この点については二つのポイントがあるかと思います。  一つはやはり石油製品連産品でございますから、ナフサも非常に大切でございますが、その他の製品についても安定供給しなくてはいけないといったようなところから、供給計画を策定いたしまして、各種製品の安定供給に資するようにいたしておるということと、もう一つは、輸入に伴いまして必要とされるシーバースだとか、タンクの保有状況といったような現実的な問題も考えざるを得ない。いずれにいたしましても、そういったことを前提として各種製品の安定供給ということを考えておるわけでございますが、そういった問題に関連していま御指摘の点、共同備蓄会社をつくる、あるいはドル建てばどうかというような御意見でございますが、私は一つ考え方だと思いますので、検討いたしたいと思います。もちろん御承知のように、各国によりまして石油の需給構造というものか異なっておるわけでございますから、各国等しく同じ価格の体系にあるということはむしろ実情にそぐわない面もあろうかと思います。一面、石油化学製品なるものが輸出を主とした国際競争力を非常に重要な要素として考えざるを得ない産業部門であるということとあわせ考えまして、御指摘のような点についても今後検討いたしたいと思います。  ひとつ御参考までに申し上げておきますが、五十二年度のナフサ輸入あるいはナフサ全体の需要の問題でございますが、五十二年度全体としてナフサの需要は八十万キロリッターほど当初予定したよりも減っているわけでございます。これは石化業界の生産動向との関連からさようになったと思うわけでございます。その場合にも輸入の方で私たちは五十万キロリッター程度増加いたしまして、むしろ国産品で百三十万キロリッターほど落としておるということで、さような状況ではございますが、まず割り安の輸入をふやし、一方で国産を減少させることによって調整をいたしておる、こういうことも御参考までに申し上げておきたいと思います。今後とも輸入を弾力的に考えていきたいという立場でございます。
  142. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 この価格体系を抜本的に見直す時期にある、ナフサも当然一−三月について値下げの方向でやらなきゃいかぬという大筋は長官もお認めのことでございますが、もう一つ深く入って、これまで禁句になっておるわけでございますが、消費者保護という名のもとに、わが国における灯油価格が余りにも安きに置かれておる。これはIEAがすでに指摘しておるところでございますが、そのつけが全部仮にナフサに回ってきておるんだということになりますと、そのナフサが基幹産業である石化業界の国際競争力を失墜せしめるし、同時に合繊維界に見られるように、すでに三分の一ほどの要員がいろいろな形において企業から去っておりますね。これが、ある場合には失業者、ある場合には関連下請への出向という形で食い延ばしをやっておるような状況ですから、何が大切かということをよくポイントを置いて考えていただかなければいけない。このことは非常に私重要な問題だと思いますので、その辺についてのお考えを聞かしていただきたい。  それから、昨年三カ月間はナフサ輸入を含めて三千円下げということでございますが、そうなりますと、一−三月の値下げは二万九千円に対して二万六千円というベースから話し合いに入っていくのか、これは国産品二千円、そして輸入製品が千円だから、二万七千円から入っていくのか、その辺のベースのとり方はどのようにお考えか、すでに話し合いに入っておると思うんで、長官のお考えをお聞きしておきたいと思います。
  143. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) まず灯油価格でございます。この点、先だってのIEAの東京理事会で対日審査結果報告の中で、消費節約との関連でこの価格問題に触れられておることは事実でございます。また、私たちがいわゆる石油危機の後、国民生活として非常に重要な家庭用燃料であるということで、この価格指導を続けてきたということも事実でございます。ただ、灯油の価格のっけが石化製品に固っているという直結したことは私はないと思うわけでございますが、いずれにいたしましても、先ほどの価格懇談会での一つのテーマになろうかと思いますし、あるいは灯油をとるのか、あるいは産業用のナフサをとるのかといったようなことは、やはり私は国民的コンセンサスと申しますか、日本の人たちがその環境をどういうふうに考えるかというような問題ともからみ合わせまして検討すべき課題ではなかろうかというふうに思うわけでございます。  それから、一−三月の値決め交渉のベースには二万九千円が置かれるのか二万六千円が置かれるのかという点でございますが、この点については私まだ定かに承知いたしておりませんが、ただ問題は、この一−三月における需給あるいは円レートの動向といった問題実績として出てきておるわけでございますから、そういったものを踏まえて両当事者間で、いわゆる円高メリットが適正に石化用ナフサ価格に反映されるように、そういう認識のもとで、需給両当事者で話し合いを始めているものというふうに私は理解いたしておるわけでございます。
  144. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 きょう私三十分の時間で、もう時間が参りましたので、大臣お願いかたがたお考えをお聞きするわけですが、いま私申しましたように、基礎産業局長の諮問機関である石油化学工業国際競争力研究会、ここが指摘しておりますように、わが国石油化学工業の国際競争上最大の問題は、欧米に比べ割り高な原料ナフサ価格であるというふうに指摘しております。それから、構造不況と言われておりますが、合繊業界における最近の国際競争力の失墜、これもすべてナフサ価格にある。その他の面においてはアメリカのデュポン等に比べても何ら遜色がない。ただナフサだけが世界各国に対してきわめて割り高であるがゆえに、いかんともしがたい。競争力がない。中国との貿易などにおいても、どんどんデュポンその他にシェアを奪われておるというのが現状でございまして、私は石化業界並びに合繊業界のこれからの生きる道というのは、まさにこのナフサにかかっておると言っても過言ではないと思うんです。  片方、民族系を含めて石油精製業界は莫大な差益を得るわけですから、この辺はやっぱり政治がそのバランスをとらなければいけない。通産省として、ちゅうちょすることなくこの一−三についてのナフサ価格決定に、勇断を持ってほしいというふうに思うわけです。大臣のお考えをひとつお聞きしておきたいと思うんです。
  145. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) ナフサの問題につきましては二段構えで考えておりまして、当分は業界同士の話し合いでやっていただきまして、話が妥結をすればそれでいいわけですが、妥結しなければ通産省としても適当な水準に落ちつけるように、話し合いが促進するようにいろいろ工夫をしていこうという考え方が一つであります。しかし、これでは抜本的な解決ができませんので、やはり、どんな形になりますかまだ最終的な判断はしかねておりますけれども、とにかく抜本的な解決方法を第二段階として考えていかなきゃならぬと、このように理解をしております。  そこで、この一−三月の問題でありますが、この分につきましては、石油化学業界も前回に引き続いて話し合ってみると、こういうことを言っておられます。まあ条件は十−十二月の条件よりも非常に変わっておりまして、一層の円高になっておりまして、したがってそれだけ現在のナフサ価格というものは国際水準から飛び離れて高いと、こういう状態であります。石油業界全部ではありませんが、大部分の企業というものが非常に大きな黒字の決算をしておる、円高の利益というものが非常に大きく出ておるという現状におきまして、一部の業界が非常に高い国際価格のために、その経営がうまくいかないというようなことは、これはどう考えても不公平な話でありますから、だからそこはよく話し合っていただきたいと、こう思っております。その話し合いの結果を見た上で、通産省としては何らかの判断を下す必要があるならば下しまして、そしてその解決のためにお手伝いをしたいと、こう思っております。
  146. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 きょうはお忙しいところを企画庁長官にもおいでいただいておりますので、少し基本的な問題についてお伺いをしたいと思います。  経常収支の黒字幅はいよいよ空前の百四十一億ドルということで、これからの経済運営ますますむずかしさを加えているように思いますが、政府は今週の金曜日、二十一日の経済対策閣僚会議で黒字対策等新規対策を決めるというふうに言われておりますが、その内容について、先ほど通産大臣からもちょっとお聞きをしましたけれども、取りまとめをしていらっしゃる企画庁長官のお立場でお答えをいただきたいと思います。
  147. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま関係各省からいろいろ検討お願いしておるところでございますので、まだ最終的にどういう姿になりますか、もう少したちませんとわかりませんが、大まかに考えておりますことは、一つは緊急輸入と申しますか、この際通常の輸入を超えていろいろ輸入を民間にも考えていただきたいと思っていることにつきまして、それをなるべくやりやすくするような金融等々の方法を一つ。それから国といたしましても何がしか自分で輸入をし得るものがさらに考えられるかどうかというものが一つ。それから、従来わが国がいたしてまいりました対外経済援助あるいは国際機関への出資等々、そういう面で新たに考えるべき分野がないかどうかということが一つ。それから多少系列は違いますけれども、いわゆる円高差益の還元ということについて、民間経済に属しております分野では、ある程度のことが行われつつございますが、政府が介入しております部分については必ずしもそれが、必ずしもと申しますか十分でないということがございますが、それがどのような理由に基づくものであるのか、理由がありとすれば、その理由は国民に示すべきだと思いますし、また努力によって還元し得るものがありとすれば、ある程度還元すべきだと思いますが、そういう問題。それらを主な研究の対象にただいまいたしておりまして、今週じゅうには結論を出したいと思っておるわけでございます。
  148. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 いまお伺いをいたしますと、緊急輸入と経済協力と差益の還元、三本の柱というお話でございますが、そのもう一つ手前の問題として、やはり内需の振興策というものがあるのではないだろうか。それに関しましては、企画庁長官なり政府の景気判断と私どもと違うところがあるのだと思いますけれども、その点を少しお伺いをしたいと思います。  まあここ三月、四月と景気は回復基調をたどっていると月例報告等で出ておりますが、昨年も振り返ってみますと、春三月、四月、景気回復基調をたどりまして、私たちはこのまま続くとは思わないと総理にも申し上げたんですが、いや、このまま順調に回復をたどっているんだと言って強気を突っ張られて六月、七月と寒い夏を迎えてしまったわけです。その意味では、春はぽかぽか陽気と回しように景気も実勢以上に明るくなるという点があるように思いますが、いまの回復基調を、そのまま続く安定したものだというふうにお考えでございましょうか。
  149. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 大分時間もたちましたし様子も変わってきたように思っておりますけれども、柿沢委員のお立場からは、別段余り変化がないというようなお考えでございましょうか。前回と同じようなお尋ねでございますけれども、私どもは、一般に私ども考えておりましたような路線に経済が動いてきていると考えておりまして、在庫調整もかなりもう進んでおると見ておりますので、前回ずっと御説明してまいりましたような路線が、大体私ども考えておるように展開してきたものと思っておるわけでございます。
  150. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 しかし、たとえば個人消費につきましても、三月の百貨店売上高は必ずしも順調とは言えないと言われておりますし、最近ぼつぼつ結果が出つつある春闘相場を見ましても、政府の予想していらっしゃる数字よりも一%程度低いということになりそうに思うわけですけれども、そうしたものを前提とした場合、個人消費支出について五十三年度の見通しどおりの線に乗っているというふうにおっしゃる根拠はどこにあるわけでしょうか。
  151. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) この点も、以前からやはり消費が一番おくれておって、統計にあらわれあるいは統計以前に現実に消費がかなりよくなってきたと感じられるのは、一番後になるのではないかということを申し上げてまいりました。それで前回いろいろお尋ねがありましてから以後、出ました消費関連の指標は十二月、一月とようやく十、十一の前年同期対比のマイナスを脱しておりまして、一月はかなりいい指標が出てまいりました。しかし、いずれにしてもやはり生産関連が先へ出まして、消費者がある程度消費の信頼を回復するのは、どっちみち少し時間がかかると見ておりましたので、ただいままでの動きはまあまあ予定した感じだなと思っておるわけでございます。  春闘のお話がございました。これについては前にも申し上げましたように、私どもとしては全く中立的な立場をとるということでございますので、特段のコメントを申し上げませんけれども、しかし、私ども考えておりますような経済運営がほぼ線に乗っておるといたしますと、消費者としてまず経済の最悪の事態は脱した、とすれば、雇用もこれ以上は悪くならないであろう。つまり御自分のところの家庭に振りかかる解雇であるとかいうようなこともこれ以上はないであろうし、場合によっては少しずつ残業手当もふえるかもしれない。そういったような物の感じ方、及び消費者物価が安定をしておるというその条件が、大体消費者にそのように受け取られましたようなときから、消費がほぼ着実に回復してくるのではないかと思っていまして、そのような条件は次第に具備されつつあるというふうに考えておるわけであります。
  152. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 景気の回復、明るさという点についても私たち若干違った見方をしておりますが、つまりこたつの中の暖かさといいますか、公共事業に足を突っ込んでいるところだけほかほかと暖かくなってきている。しかし、温風暖房機のように部屋全体が暖かくなっているわけではないという点に、やはり制約があるように思います。その意味で、特に公共事業等前倒しということで、年度前半に繰り上げ執行されるということになると、下期の景気の回復が失速をするかどうかという点が、判断の分かれ目だと思います。もちろん長官立場で補正予算を組むということはおっしゃれないと思いますけれども、民間の経済機関などは、補正予算を組んでなおかつ五%程度という見通しを立てているわけですが、私はそれに別にこだわっているわけではありませんけれども、下期の回復基調がそのまま続くかどうかというのは、公共事業で暖められた景気が、そこで関連の分野で出てきた在庫の調整が一般に順調に浸透していくかどうか。そしてさらにその上に在庫の積み増しと設備投資に火がつくかどうかという点にあろうかと思います。  参議院の予算委員会でも私申し上げましたとおり、昭和三十年代から四十五年までの見通し実績との対比をいたしますと、例外なしにといいますか、四十年一年を除いてすべて実績が上回っている。四十五年以降五十二年まで比べますと、二年間を除いてすべて見通しに対して実績が下回っている。これは偶然の一致というにはちょっとやはり形が決まり過ぎているように思います。その点では、三十年代高度成長期見通しというのはいわばへそくり型で、安定成長期見通しというのは上げ底型だというふうに申し上げたわけですけれども、それはつくる側にもそういう意図がある。何とかして景気を引っ張り上げたいと思うから、見通しとして高い数字をつくりたい。そして税収も少しでもふやしておきたいという意図があるわけですけれども、受ける方の民間企業でも、同じようなバイアスがあるんじゃないだろうか。高度成長期には政府が平均で七%上がるのだと言えば、わが企業は一〇%伸ばしてシェアを拡大したい、積極経営をやるところが結局成果を上げてきた。ところが、安定成長期になると、政府が七%だと言ったときに、七%以上伸ばす企業よりも、それより控え目に経営方針を立てる、その中で何とか企業収益の改善を堅実に図っていくというのが企業の経営者の行動として、これは当然起こってくる企業行動のビヘ−ビアだと思います。  そうした企業行動の原理の変化というもの、高度成長時代と安定成長時代には違うんだと、見通しに対するスタンスが違うんだという点を考えますと、今後の設備投資や在庫投資の積み増しについて、企画庁長官のように私は楽観的な見方に立てないわけでございますが、そうした企業行動の変化というものをどう評価され、それを経済見通しを立てる上でどう判断されているのか、その点をお伺いしたいと思います。
  153. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういうバイアスは確かに企業家にございまして、したがって、いまから二月、三月ほど前でございますか、政府が七%程度の成長と言いましたときに全く問題にされずに、むしろかなりからかわれたという感じがいたしますけれども、いまになりますと、それはかなり変わってきております。まだ七%程度の成長ができそうだとおっしゃる方はそう多くありませんけれども、何となく様子が変わってきたというようなことがいまの恐らく空気ではないだろうか。柿沢委員は、それは一時的なものであって、昨年もこの時期にそうであったではないかということを先ほど言われまして、昨年は確かにそうでありました。私どもは、しかしことしは違うと、それは在庫調整をごらんになりましても云々と申し上げるところですが、確かにそういうバイアスというものはございますから、いまから二月またたちますと、今度はずいぶんまた変わってきて、七%程度というものは、これはできるのではないだろうかというふうに企業家が私は思い出すのではないだろうか。消費者にもそういうコンフィデンスが私は戻るのではないだろうかと、そういうふうにむしろ考えております。
  154. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 私も別に七%が実現しなければいいと思っているわけでもありませんし、これはできるかできないかというのはまさに水かけ論といいますか、なりますので、あえてできないというふうに申し上げているわけではないんですが、ただ、やはりそうした景気回復への芽を確実なものにするためにもう一段、この際手を打っていくということは有効であり、適切ではないだろうかということを感じているわけです。その意味で、先般来、公共事業と大幅減税とを車の両輪として景気回復を図るべきだということを私ども言い続けてきました。最後の予算成立の段階では三千億の減税で妥協はしましたけれども、依然として基本的な考え方は変えているつもりはありませんし、その意味で、これからのこの経常収支の黒字の幅の拡大、さらに国内経済の中におけるデフレギャップといいますか、依然としてそういうものが残っている状態の中で、消費者物価が安定している、そうした好条件を生かすという意味で言えば、むしろ先手をとって内需振興策をもう一段強める必要があるし、強めることは望ましいことだと。もちろんやらなくてもできるという御判断もあるでしょう。しかし、やってマイナスがそんなに大きいのかどうかという意味で、内需振興策の追加を私たちは依然として主張をしたいと思っているわけでございます。  その意味で、今度の経済対策はこれで打ちどめとか、日米首脳会談用とか言われておりますので、もしもこれで打ちどめと、首脳会談用のきわめつきだというのであれば、先ほどのおっしゃった三本の柱では不十分なんじゃないだろうかというふうに申し上げているわけでございます。  それから、もう一つ不十分だと思いますのは、輸入が緊急輸入対策に限られているということだと思います。一つは、もっと経常的な輸入の分野で思い切った輸入拡大策とれないだろうか。思い切ったといいますか、むしろイコールフッティングの考え方に立つ市場開放というものに対して、この文章の中に、この文章といいますか、二十一日の対策の中にやはり一項目加えるべきではないのか。東京ラウンドをめぐる今後の関税引き下げの問題、それから農産物の輸入の問題、そうしたものについて、やはりこれがもし日米首脳会談用だというのであれば、きちっとした政府の姿勢をもう一度つけ加えていくべきだと思いますが、その点はいかがでございましょうか。
  155. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 実は東京ラウンドの問題を、今回閣僚協議会で決定すべきかどうかということを私も一度考えたのでございますけれども、これはまあ東京ラウンドが実際大詰めの段階に入りますのにもう少し時間がございますし、それから事柄の性質から申しますと、この方は余り大きな会議を開きませんでも、御所管の大臣の数は実は限られておりますものですから、いわゆる経済対策閣僚会議で、これは相当の数になりますので、御議論をいただかないでも、しかるべき時期に関係者だけで比較的小さな規模で決め得る問題であろうと、こう考えまして今回の議題にいたしておりません。が、実はすでにただいまお話しのいろいろな問題、東京ラウンドの対象になりますような問題については、所管省においてはすでに内々研究を進めておられまして、場合によりまして、しかるべきときにこれは小人数でよろしゅうございますので関係閣僚の間で御相談をしようかと、こう思っておりまして、今回の、今週予定されておりますものからは切り離してございます。
  156. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 まあ宮澤大臣に申し上げるのは釈迦に説法と思いますけれども、実は二月にアメリカへ行きましたときにも、アメリカ側から何度も聞かされたのは、日本が本当の意味で東京ラウンドに前向きに取り組んでくれるのかどうかという点、しきりに念を押され、それを彼らとしてはやはり一つの約束として気にかけているように思ったわけです。その意味で、やはり対外的な説得力の面でそれを落とすということはよくないのではないかというふうに思いました。  それから、ECから伝わってくる話でも、同じようにやはり日本が本当に東京ラウンドでECの関心品目に対して積極的な関税引き下げをしてくれるのかどうか。対米関心品目だけで終わってしまうのではないかという不信感なり懸念が、依然として残っているように思うわけです。その点で私は念を押しておきたかったし、それは当然この時期に加えるべきだというふうに考えたわけでございます。  それからもう一つ農産物の問題では、これは農産物については輸入拡大とか制限枠の撤廃を主張する政治家といいますか、議員は余りおりませんけれども、私は消費者の立場に立って、そしてさらに幅広い国際分業体制をつくるという点で、やはりもっと市場開放に前向きに取り組むべきだというふうに思っておりますが、これは本来は農林大臣にお伺いをすべき問題と思いますけれども、宮澤長官がドイツの経済相ですかに対して、農産物を除いてその他の品目については積極的にやっていきたいと、こういうふうに括弧をつけておられますし、頭から農産物を除いておられる。これは国際派の宮澤大臣としては、いささか納得のできない御発言でございまして、やはり地元の選挙区をお考えになっていらっしゃるのかなと考えざるを得ないわけですけれども、その点は括弧をつける必要があるんだろうか。農業は別だと、農業はハードコアだという終戦後の感覚が、現在の国際分業体制の中で依然として説得力を持っているというふうにお考えかどうか。  アメリカへ行きましたときにしきりに日本の議員が日本の農業の苦境を訴えて農産物は別だと、こういう説明をしたときに、アメリカ側から切り返される言葉は、日本の農家がそんなに苦しんでいる、だから輸入制限を求めると言うのなら、われわれは、アメリカの鉄鋼労働者が首になって苦しんでいる、家電製品の企業の労働者が失業して苦しんでいる、だからそれについて輸入制限を求めるんだという理屈と全く同じではないか、それを両方認れば結局保護貿易主義の高まりの中で損をするのはどちらですかと、こう切り返されたときに、一体どうお答えになるつもりか。果たして、農業はハードコアだという古い感覚が依然として通用するというふうにお考えかどうか、進歩的な宮澤大臣のお答えをお聞したいと思います。
  157. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 自分の選挙区のことを別に心配しておりませんで、実は、十五年余り前にケネディラウンドがございましたときに私はやはりこういう多角交渉の日本責任者でございました。そのときに残存輸入制限品目が百五十ほどあったと思いますが、それをほとんど四半期ごとに減らして今日のところまでまいりました。その苦労は、まあ口幅つたいようですが、私が一番知っておった一人だと思いますし、したがいまして、今日残りましたもののむずかしさもかなり知っておるつもりでございます。今日の日本の残存輸入制限品目の姿は、先進工業国のどの国に比べましても決して劣っておるとは思いません。どの国も、アメリカも含めて、わが国に対しておまえの国の残存輸入制限品目の姿は悪いではないかと言える資格がある国はありません。そういう意味では、私はアメリカ日本の農産物の、あるいは農業のいまの姿についてあれこれ言う資格はないと思っておるわけであります。  それよりもむしろ国内の問題として、消費者の立場からこれでいいのかなあという問題として私は取り上げるべきではないかと思っておりますので、そういう意味では、恐らくケネディラウンドで問題になりましたと同じように、東京ラウンドでも農産物の問題は問題になるわけでございますから、日米ということよりはむしろわが国自身の問題として、それから世界的な多角交渉の問題としてならばこれは考えてみる必要があるんではないか、私はそんなふうに実は考えておるわけでございます。
  158. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 私も日本の残存輸入制限が、ほかの国に比べれば姿として悪いということを申し上げているのではなくて、むしろ外国と比較してほどほどだからいいじゃないかという考え方、判断、それがやっぱり外国との比較の感覚を脱してないのではないか。むしろ外国との比較ではなくて、いま長官も最後におっしゃった国内の消費者の立場としてどうなのかということ、それから全体の国際収支の構造の問題の中で、いまのように空前の黒字が継続するかもしれないと言われている、OPEC・アンド・ジャパンと言われるような貿易収支構造を持っている中で農業の残存輸入制限というのをどう考えるべきか、それは全体の国際均衡の中の判断として主体的な判断があっていいはずだと思います。畜産の問題について言えば、これは自給率自給率といいますけれども、むしろこれも垂直的な分業にはすでになってしまっている。つまり、牛の食べるえさの大部分は外国製品でございますから、やはり日本の産業構造の特徴である原料を入れて製品を国産するという姿勢の中の全く同じパターンになっている。その意味では、本当の意味の国産ではないわけですね。畜産物というのは半分以上は外国品の肉を私たち食べている。ただ、えさで入れてそれをここで加工しているにすぎない。  そういうふうに考えたときにもう一つ違ったアプローチがあるのではないかと思うわけです。もちろん、国内問題におけるむずかしさ、いまおっしゃらなかったむずかしさというのは私も十分承知しておりますけれども、そこに思い切ったやはり蛮勇をふるっていくという姿勢がなければ、日本の国際均衡というものはなかなか到達できないのではないだろうか。それからフラストレーションを高めている消費者の立場といいますか、そうしたものに信頼を受ける政治をつくることはできないのではないだろうか、そういうふうに考えて申し上げているわけでございます。  それから、時間も余りありませんので別の問題に移りますが、輸出抑制の問題といいますか、その問題が入っていない。これも一つ問題ではないでしょうか。たとえば、自動車の輸出が依然としてほうっておけば戦後最高水準を上回りつつあるという中で、このまま輸出抑制策について何ら触れないでいいのだろうか。この点についてはいかがでございましょう。
  159. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) まず前段の問題につきましては、国内の問題として、消費者の持っておるいろいろな要望をどのように農業政策との関連で取り入れていくか、これが一つの視点であるという点については柿沢委員と私と同じ考え方、これは確かに一つの視点だと思います。しかし、いわゆる経常収支の黒字の問題との関連で、農業の残存輸入制限をということになりますと、表徴的な意味でならばそういう問題の提起は諸外国からもございますけれども、実際に輸入し得る幅というのは幾らもないということは柿沢委員もよく御承知のとおりでございますので、その視点は私は実は余り重要には考えていない。むしろ、アメリカの議員さんなんかが自分の選挙区のものとの競合、ものとの関連でいろいろ主張をする、そういう経済外とも言うべき要因ならばこれはまあ無視するわけにもまいらぬ点もございますけれども、経済の問題としては、大きな黒字幅との関連での農業の残存輸入制限云々ということは、必ずしも私は重視すべき視点ではないように考えるわけであります。  それから後段の問題でございますが、いわゆる輸出の抑制という問題は、いっとき、政府が貿管令を発動するかもしれないという報道がありまして、これは恐らくかなり駆け込み輸入をいろんな意味で刺激したのではないかというふうに考えております。事実、政府はそのような考えは持っていなかったのでありますけれども、そういう報道だけでそういう結果になったと見られる点もございます。しかもこの問題は、その法令を準備するということではない限り、所管大臣のいろいろな行政のおやりになり方で、似たような目的を達し得る種類の問題であると考えておりますから、あえて経済対策閣僚会議の議題にすることはなかろうと。もとより私ども内々ではいろいろ御意見も承り、こちらのことも申し上げておるわけでございますけれども、ああいうような正式の場で議題にして決定をするというようなことは、必ずしも必要がないのではないか。して悪いということではございませんけれども、必ずしも必要はないのではないかと私自身はいまは思っておるわけでございます。
  160. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 できれば、私は経済対策閣僚会議で出たメニューが、総体としての日本の国際均衡対策というものであってほしいと思いますので、そういうことをあえて申し上げたわけでございまして、所管大臣の所管だからといってこう切り離していってしまうと、ほかの問題もみんななくなってしまって、一体、企画庁長官の手元に何が残るのかという問題になろうと思います。  実は自動車の問題ですけれども、きょうの新聞にも通産省首脳が五十三年度の輸出目標を四百五十六万台に抑えると。これは去年の四百六十二万台に比べて一・三%の減ということをおっしゃっておられます。大体、前年より微減というところに抑えたいということのようでありますけれども、これは簡単なように見えてなかなか容易ではないんじゃないだろうか。それはたとえば、五十二年度の最後の月である三月の自動車の輸出を見てみますと、前年同月に比べて五二%増、五割増しの輸出になっているということは、五十二年度の年初と年末とを比べますと急激に年度内で大幅に上がっている。これで五十三年度を前年と同数に抑えるということは、逆に言えば今後は登った富士山を同じようにおりてくるというカーブを予想しない限り、前年同数にならないわけでございます。そういう形で、登った富士山を一合目までおろすんだろうか、どういう四半期別なり月別の輸出目標というのを考えていらっしゃるのか、私はやや前年同数というのが非現実的に見えて仕方がないわけですけれども、その点についてどうお考えでしょうか。
  161. 森山信吾

    政府委員(森山信吾君) 自動車につきましては、ただいま柿沢先生から御指摘がございましたように、五十二年度の実績が四百六十二万台でございました。これは通関統計ではございませんで、自動車工業会が調べました数字でございます。通関統計との差はノックダウンの取り方によって若干違っておりますので、通関統計よりは自工会統計の方が少し数量多いと思います。四百六十二万台でございまして、それに対しまして五十三年度どうするかという問題でございますが、輸出全体を五十二年度と五十三年度大体横並び、数量ベースで横並びにするという政府部内のコンセンサスはございますので、私どもといたしましては、そういうコンセンサスに従いまして、自動車メーカーに対しまして政府の現在置かれておりますポジションあるいは日本の経済が置かれておりますポジションというものをよく説明をいたしまして、各社別にそれぞれ輸出戦略というものをお考えいただきたいということを行政的なお願いとして申し上げたわけでございます。  その結果、各社からそれぞれ一年間の輸出計画というものをお出しいただいたわけでございまして、それをトータルいたしますと四百六十万台弱になるということでございまして、決していま先生が御指摘になりました四百五十六万台という数字を出しまして、それによって削減しろということではございませんで、各社が政府の置かれておりますポジションあるいは政府のとろうとしておる政策というものを理解をしていただきまして、その結果お出しいただきました数量がそういう数字になるということでございます。若干各社によって微調整を要するところがございますので、いまの段階では四百六十万台弱と申し上げておきますけれども。したがいまして各社の数字を合計いたしますとそういう数字になりますので、あながち私は無理な数字ではないということでございます。かたがたこれだけの円高でございますし、各社それぞれに円高の推移に応じながら海外での販売価格を上げておりますので、各社がお出しいただきました販売計画、輸出計画というものは不当な数字ではないというふうに考えておりますので、自動車に関します限りは、ほぼ前年横並びで推移できるというふうに考えておるところでございます。
  162. 柿澤弘治

    ○柿沢弘治君 何かしかられそうですので。時間が参りましたので、もう少しこの点掘り下げて伺いたかったわけですけれども、前年度同数というと安易にできそうに思いますが、さっき申しましたように、登り詰めた坂をずっと相似形でおりていくとしたら年度末に大変低い水準になる。かなり生産制限をしなきゃいかぬということになると思いますので、その点は一体どうなるのか。月別なり四半期別なりの数字を教えていただきたかったのですが、別の機会に譲りたいと思います。  これで終わります。
  163. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 他に御発言がなければ、本日の調査はこの程度にとどめます。  暫時休憩いたします。    午後二時五十四分休憩      —————・—————    午後三時四十七分開会
  164. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  特定不況産業安定臨時措置法案を議題といたします。  本案につきましては、前回趣旨説明を聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  165. 森下昭司

    ○森下昭司君 経済企画庁長官、出席要求いたしておりますが来ていますか——  それでは、まず最初に通産大臣に私お伺いをいたしたいと思います。そのことは、この特定不況法案が今回提出をされましたが、この法案でもちまして、構造不況業種と言われておりまする言うならば産業を安定させることができるかどうか、言葉をかえて言えば確信がおありになるのかどうか、まず法案提出者といたしまして、その所信をお尋ねいたしたいと思います。
  166. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) オイルショックが起こりましてから、比較的いい業種と非常に悪い業種とに分かれまして、非常に悪い業種につきましてはこれまで行政指導でいろいろその対策を講じてきたところでございますが、どうも構造不況と言われる悪い業種に共通する最大の課題は、過剰設備を抱えておるということであります。過剰設備をある程度廃棄をいたしませんと、どうしても立ち直りが不可能である。  ところが、過剰設備を廃棄をしようとする場合には、その設備が担保に入っておったり、いろんなことで相当な資金が必要になる。なかなか思うように個々の企業ではそれが進まない。それでは業界全体として皆さんがよくお打ち合わせになり、意見を交換されまして、こういう方向でひとつやってみようじゃないかと、こういう意見がまとまれば、そのまとまった意見に従いまして政府の方もある程度の援助をしていこう、こういう考え方でこの今回の法律を御審議をお願いすることにしたわけでございますが、私どもの基本的な考え方は、実際は政府の援助を借りないで業界が自発的にそういう御相談をされて、それじゃやってみようと、こういうことをされるのが一番いいのだと思います。しかし、一部の業界はそれでできるかもわかりませんが、大部分の業界はきわめて深刻な状態でありますから、それがむずかしいと、こういう判断のもとに、今回どうしてもやはり法律が必要じゃないか、こういう判断に立ちまして、今回の御審議をお願いしておるところでございます。
  167. 森下昭司

    ○森下昭司君 いまもお話がございましたが、業界が自主的にいわゆる廃棄処分なり、需給ギャップを解消する方策を講ずることが望ましい、しかし深刻な状況でありますので、政府が法律案を提出するに至ったという御説明があったわけでありますが、このことは言葉をかえて申し上げますと、この構造不況業種に対しまして従来、生産の問題でありまするとか、価格の問題などを通じまして、政府が行政指導という名のもとに介入をしてきた。したがっていまのようなお考え方があるといたしますると、構造不況業種に対しまして通産省が責任を負うということを明確にされている、そのことが法案提出という形になってあらわれたという理解をしていいのかどうか、重ねてお尋ねいたします。
  168. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 通産省が全責任を負って構造不況業種の立て直しをする、そういうことではありません。むしろ通産省は、その業界が相談をされて、こういう方向で業界全体を立て直していこうと、こういう判断をされた場合に、それに対して過剰設備の廃棄という面でお手伝いをしていこう、こういうことでございますが、先ほど申し上げますように、現在の構造不況業種と言われます業種に共通する課題は過剰設備の問題でありますから、この過剰設備の問題を解決いたしますと、その業界は私は必ず立ち直るであろう、このように理解をいたしております。
  169. 森下昭司

    ○森下昭司君 ちょうど経済企画庁長官がお見えになっておりますので、時間の関係もありますから、これに関連いたしまして長官にひとつお伺いをいたしておきたいと思うわけであります。  いま通産大臣は盛んに過剰設備を廃棄をすれば不況業種を立ち直らせることができるという点を強調されているわけでありますが、私ども見解からまいりますれば、これはやはり今年度の経済見通しが、経済企画庁が原案をおつくりになって閣議で決定されたとおり、成長率が七%、これが達成されるという私は一つ前提がなければ、この法律案がたとえ通りましても、不況業種を立ち直らせることは非常にむずかしいのではないかというふうに思うんでありますが、経済成長率の関連において、この問題についてはどうお考えになっているか、最初にお伺いをいたしたいと思います。
  170. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 御指摘のように、たとえば経済成長率が非常に低い、あるいはマイナスであるというようなときには、構造不況業種の立ち直り、改善というのはそれだけ非常にむずかしいわけでございます。七%というのは私は決して非常に高い成長率だとは思っておりませんけれども、それによりまして、昭和五十四年度には経済を自律的な拡大均衡に持っていくつなぎの年として五十三年度を考えているわけでございますが、そういう中で、ひとつ構造不況業種の立ち直りを図っていきたいと考えているわけでございます。七%程度の成長は私、十分可能であるというふうにただいま考えております。
  171. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで通産大臣お尋ねをいたしますが、七%もしも経済成長率が達成できないと仮定いたしました場合に、構造不況対策そのものに比重が偏ってくる傾向になりまして、非常に構造不況対策というものはうまくいかないというようなことが予想されると思うのでありますが、その点については通産大臣としてどうお考えですか。
  172. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 内需が拡大をいたしまして景気が立ち直る、こういうことになりまして、産業全体の操業率がさらに現状よりも相当上がるという場合には、私は構造不況業種の抱えております困難な問題の大半は解決できる、こう思っております。でありますから、いまお話しのように、景気をよくするということがもう何よりも大事でございます。したがいまして、私どもの現在とっております政策は、まず第一番に一般的な景気対策と内需の拡大策、それと構造不況業種対策、それと中小企業対策、この三本の政策を並行して進めていく。そこで初めていろいろな効果が生まれるであろう、このように理解をしております。
  173. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで経企庁長官にお伺いいたしますが、非常に七%を達成することは可能だというようなお考え方をお示しになったわけでありますが、いわゆる世間で言われておりまする経済評論家を加えまして、あるいは経済学の学者を加えましていろいろな議論が実はなされているわけであります。そのことの経過につきましては御承知であろうと思うのでありますが、そういった世上一般言われておりまするたてまえから申し上げますと、七%の達成というものは非常に困難ではないかということが言われているわけであります。たとえば、個人消費で名目を一一・九%、まあ、一二%ですね、実質で五%強という問題を一つ取り上げてみましても、これはやはり、今日春闘が先日の回答からまいりますれば大体七%台で、八%を超えないというような傾向が一つある。同時にまた、政府ですら、いま申し上げました来年度の経済見通しの中で、消費者物価指数は六・八%程度上昇するのではないか。というようなことを考えてまいりますると、実質賃金の上昇率は一%内外そこそこというような見通しが立ってくる。  かてて加えて、先般の五十三年度予算の問題をめぐりました修正の中で三千億程度の減税ということ等を考えてまいりますと、これで個人消費が実質で五%強拡大をされるというふうに判断することは、非常にむずかしいのではないだろうかというふうに私は思うわけであります。あるいは民間の住宅需要が名目で一三・六%、実質で一〇%弱ということを言っておみえになるわけでありますが、これも過去五十一年、五十二年で一%台程度の伸びしか実績は示していないのであります。これを一挙に五十三年度一〇%弱に伸ばすというようなやり方では、私は非常に達成がむずかしいのではないだろうかというふうに実は思うわけであります。  あるいは設備投資の問題につきましても、名目で九・九、実質で七%弱ということを指標の中におつくりになっておりまするけれども、これもやはり私は、一部の製造業や三次産業では投資がふ、える傾向にはあると思われるのでありますが、一般製造業全体では沈滞いたしておるというようなこと等々を考え合わせてまいりますると、これまた前年度に比較をいたしまして、いま申し上げたように、実質七%弱というものを期待することは非常にむずかしい。あるいは在庫投資は五十三年度かなり多く見込まれておるのでありますが、最近在庫の調整が終わって、いわゆる再び在庫投資が始まって生産が拡大する。しかし在庫投資をするためにはやや先行き製品の売れ行きが向上するとか、あるいは価格の上昇を期待できると、いろんな要素がなければ在庫をふやすといっても簡単にふやすことはでき得ないのであります。しかし、今日の状況からながめてみますると、そういったような先行きの見通しというものはなかなかむずかしい。などなど考えてまいりますると、長官が言われましたような七%のいわゆる実質成長率を保つための根拠というものは、今日の経済事情から考えますると、非常に厳しい環境下にあるということは私は言えると思うのでありますが、こういう諸点について、さらに詳細にひとつ御答弁を承りたいと思います。
  174. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 昨年の十二月に政府が七%ということを申しましたときに、各方面から非常な手厳しい批判を受けたわけでございます。国会における予算御審議の過程でもいろいろ御批判をいただいたわけでございますが、ただいまの時点になりますと、少し基調が変わってきつつあるということは世の中でだんだん言われ始めております。もちろんまだ決定的に七%云々ということは言っておられる方は少のうございますけれども、四カ月前のような情勢とは違うなあという感じはあちこちで持っておられるように考えていまして、私は、経済のここまでの動きは私どもがほぼ予測をしたとおりであったのではないかと考えております。ことさら議論の分かれました在庫調整の問題につきましては、一部に残っておるものがございますけれども、ほぼ一巡をしたということは、だんだん各方面で認められるようになってきたと思っておりまして、したがいまして、今回は政府の公共事業投資の波及効果が、本来期待し得る程度に期待し得るのではないかという判断を強めておりますので、それで先ほど申し上げました達成が十分可能であると考えておるわけでございます。  少し詳しく分析的に説明せよというお尋ねでございました。  で、やはり一番消費が国民総生産の中で大きい要素でございますので、これが一番その影響力が大きい重要項目でございますが、当初から申し上げておりましたとおり、恐らく消費は生産関連の動きから一つおくれてしか出てこないであろうということを申し上げておりました。ことに昨年の暮れには消費の傾向がかなり沈滞しておりまして、前年同月で対比いたしまして、十月にマイナス〇・五、十一月にマイナス一・五ということであったわけでございます。ただいま一月までしかわかっておりませんが、十二月にはプラス〇・七、一月にプラス二・八と、ここでかなりの目立った回復が見られます。この基調がこのまま続きますかどうかがなお定かでございませんが、一応沈滞を脱したのではないかと思っております。  で、春闘につきましては、私ども伝統的に口を差しはさむべきでないと考えておりますので、コメントを申し上げることを御遠慮いたしますけれども、しかし一般的に、消費者が経済は最悪の事態を脱したと判断するとき、つまり雇用の問題もこれ以上は悪くならないであろう、あるいは多少の残業手当もふえてくるかもしれないと判断するようになりました場合、しかも消費者物価が確かに、理想的に低いとは申し上げませんけれども、落ち着いた推移をたどっておるという場合には、かなり消費者も長年の間節約をしてきておられますから、普通程度の消費に戻っていくということは、私は期待し得ると考えております。すなわち昨年あたりに比べまして多少の消費性向の回復があるのではないか。これはそんなに無理な期待ではないという感じでございます。  民間住宅につきましては百六十万戸程度考えておりますが、今年は住宅金融公庫の融資条件あるいは融資の枠等々にかなりの改善を計画しておりますし、また多少の減税もある。これもやはり経済の最悪事態が過ぎたと判断するかどうか。しかも、建設資材は少しずつ上がっておるとは申しますものの、まだまだ十分余裕がある。こういう状況で、かなりの期待ができるのではないか。  設備投資につきましては、もともと大きな期待をいたしておりませんで、主として電力に期待をしておるわけでございますが、これは予算委員会当時の段階で申し上げました三兆一千億程度。これは年度が始まりまして、九電力、電発等の具体的な計画がスタートいたしますが、まず三兆一千億という数字に過大見積もりはなかったわけでありまして、それにある程度のプラスアルファが前倒し等で多少の期待ができるかもしれない状況であります。  それから民間在庫につきましては、五十二年度に考えましたものが三兆円程度、五十三年度に考えておりますのが三兆八千億円程度でございますから、これは大きな数字ではございません。私どもはこの点では、景気が最悪な事態を脱しましても、大きな在庫の積み増しがあるということはもともと期待できないであろうと考えておりますので、この点はまずこの程度のものはいけるのではないか。  総じて申しますと、七%程度の成長という路線に、まだ見通しをつくりましてからわずか四カ月余りでございますけれども、まずまずそういう方向に向かいつつあるというふうに判断をいたしておるわけでございます。
  175. 森下昭司

    ○森下昭司君 いまお話がございましたが、これはいろいろ意見の分かれるところだと思うのであります。ただ、私はこの機会にこういった点についてだけ指摘をいたしておきます。それは、雇用の問題につきましても、これ以上悪くならないであろうというようなお話がございましたが、二月が完全失業者百三十六万人であります。このいわゆる経済成長率が七%達成されると仮定いたしましても、企業内の余裕人員と申しますか、余剰人員と申しますか、いうのを若干抱えておりまするので、要するに完全失業者をさらに減少させるということは非常にむずかしいのでありまして、言うならば完全失業者の数については大した増減はないであろうというふうに言われているわけであります。したがって、私はここ過去一年有余にわたりまして、完全失業者が百万人を超えているというわが国の実態等を考え合わせましたときに、いま申されたようなことで、日本の景気を回復をし、構造不況業種も含めて景気の回復を期待するということは、いまの状況から言えば、非常にむずかしいのではないだろうかという点を一点だけ申し上げておきたいと思うのであります。  さらに、第二点として私が申し上げたいのは、長官は、十二月の経済見通しの問題と、それから現在のいわゆる見通しを立てる場合の基調とは若干の変化がある。それは在庫の一巡というような問題等も取り上げられ、あるいは消費景気の指数が若干上がりつつあるのではないかというようなお話があったわけであります。しかし、一面考えてまいりますと、こういう計画の見込みというものは、非常に見込みが食い違って思わぬ結果が出るということはもう私から申し上げるまでもないと思うんであります。きょうだって五十三年度の貿易経常収支が当初見込み十二月に百億ドルだと言ったんですよ、十二月、まだ三月前に。それがどうですか、百四十一億三千万ドルじゃございませんか。しかも、もっと言えば、一昨年の十二月が言うならばマイナス七億ドルと言われている。その後見込み違いだというので九月に六十億ドルだと言う、十二月に百億ドルだと言う。三月たってふたを開いてみたら百四十一億三千万ドルに相なっておる。このぐらい計画見通し、あるいは経済の見通しというのは食い違う場合があるんです。したがって私は、七%達成の問題についてはそういう点について、いま申し上げたように非常にむずかしい問題点があるということはこの際強調いたしておきたいと思うのであります。さらに、私がいま申し上げましたようなこの百四十一億三千万ドルの貿易の経常収支の黒字ですね、これはなぜ十二月というような時点で百億ドルと想定しながら、四割以上も増大になってしまったのか、その原因についてどうお考えか、お尋ねいたします。
  176. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) これはまことに大きな見通し違いをいたしまして申しわけないと思っております。原因は何であったかというお尋ねでございますけれども一つはいわゆる円高の基調というものを、私どもは輸出が多少はそれで影響を受けるであろうというふうに考えたわけでございますけれども、事実は円高がかなり急激にその後主として二月の中旬からではありますが続きまして、その結果むしろ輸出を急ぐ、輸入を逆に待つといういわゆる短期的に起こりますJカーブが生まれたということが一つであろうと思います。俗に駆け込み輸出というようなふうに申しますが、これはJカーブの一番典型的な形であったのではないか。   〔委員長退席、理事福岡日出麿君着席〕 それからまた、いっときそういう情勢なので、輸出規制が法的措置でとられるのではないかというような誤った報道もございまして、そこでもう一つ輸出を急ぐ、規制前にあるいは規制を考え実績をつくっておこう、動機はいろいろあったと思いますけれども、そういうようなことも見られたように思います。  それからこれは今回に限ったことではないのでやや弁解がましくなりますけれども、年度末の決算をいたしますのに、今回あたりは非常にその決算が企業でむずかしいものでございますから、それに合わせて決算時期に間に合うような通関をするというようなことも幾らかあったのではないかと思っております。政府も緊急輸入努力をいたしたわけでございましたけれども、なおそれを超えて経常収支の黒字幅が大きくなっている。  もう一つさらにつけ加えますならば、昨年の初めからことしの二、三月までぐらいの間に輸出価格が一四%ぐらい上昇をいたしております。これはなかなか円高に伴って価格引き上げをすることは簡単でないだろうと思われておりましたのが、意外に価格の引き上げが通っておるということでございますが、これは一つにはやはりアメリカ等々のインフレ傾向がございまして、価格の引き上げが市場で通った、許容されたということの結果であったのではないかと。いろいろ弁解がましくなりますが、分析いたしますとそれらのような要因の相互作用であったのではないかと考えております。
  177. 森下昭司

    ○森下昭司君 輸出は対前年比二〇%増、それから輸入は対前年比八%程度の増というような形になりますと、昨年来からいろいろEC並びにアメリカなどと経済交渉が行われまして、緊急輸入等の通称黒字減らしというような対策が十分行われていないことがうかがうことができるのであります。さらに、いわゆるアメリカは一九七七年の会計年度に当たりましては二百二億ドル、それからフランスは三十二億ドル、イギリスは一億ドルでありますが、それぞれ貿易経常収支はそういった数字の赤字になっているわけであります。ひとり日本と西独だけが黒字になっている。しかも最初申し上げたように、日本は国際的ないわゆる公約とは申しませんが、国際的立場でマイナス七億ドルということを最初に表現しておきながら、結果においては百四十一億三千万ドルという黒字を生んだ。この結果は私は国際的には日本に対しまする不信というものを助長するというような結果になりはしないかと思うのでありますが、この点について御見解を伺いたいと思います。
  178. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) その点は、政府が百億ドルと言いながら非常に短期間の間に四十億ドルも見通しを誤った、過小評価をした。しかもその間に実は円が上がっているのであるから、上がっているにもかかわらずなお経常収支がふえるということは、円の上がり方がまだ足りないのではないかという解釈を非常に生みやすい状況で、その点は私は森下委員の御指摘のような心配があると存じます。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕 そこで、実はこれは円が上がるということは長期的には輸出が減り輸入がふえることであるけれども、短期的には全然逆のJカーブというようなものがあることは知られているとおりであって、まさにその典型的な現象であるということを対外的にできるだけ説明を、機会を持ってしておるわけでございまして、せんだっても、米国の経済諮問委員長にこれは私が説明するまでもなく、先方は経済学者でございますから、先方の方から申しておりました。私としては、そのような誤解がないようにひとつ機会あるごとに、この場合は米国でございますが、指導者層にも説明をしておいてほしい、それは自分から説明をするということでございました。ですから、よく説明を聞いてもらいますと、納得、少なくともその範囲では、その限度では納得してもらえることでございましょうけれども、一般の大衆にはちょっとわかりにくいことでございますから、よほどそういう説明をしてまいりませんといけませんし、それにこれはこれといたしまして、これから先もこのようなことが続くかどうかということが同じように大事なことでございますから、本則の方法ではないにいたしましてもやはり緊急輸入のようなこともいたしたいと思いますし、それからこれも本則のことではないと思いますけれども、所管大臣におかれてある程度輸入輸出についての行政指導をされるというふうにも承知をいたしておりまして、われわれが精いっぱいの努力をしておるということについてだけは、誤解を生まないようにいたしたいと考えております。
  179. 森下昭司

    ○森下昭司君 この点についても後ほど通産大臣にお伺いをいたしますが、とりあえず時間がありませんので経企庁長官質問だけ限定してやっていきたいと思います。  そこで問題は、これ通産大臣のお答えをいただいた方が得策かとも思いますが、問題は今年度、五十三年度六十億ドルの圧縮をすると、いうことが十二月で決定をされているわけでありますが、このような状況下の中で、たとえばある程度通産が数量的に制限をするとか、あるいはいろいろ行政指導強化するとかいう点で、輸出がブレーキがかかったりいたしましても、百四十一億三千万ドルの経常収支の黒字を生んだという実態からまいりますと相当輸入を促進、たとえば石油の備蓄問題を促進するとか、言うならば緊急黒字減らしの対策というものが行われませんと、経常収支を五十三年度は六十億ドル程度にするということが実現でき得ないのではないかというふうに考えているわけでありまして、いわゆるいま長官から言われましたような通産の御協力もさることながら、一応今日の時点におきまして、経常収支を六十億ドル程度に五十三年度は抑えたいという目標は達成することが可能かどうか、この点一つお尋ねいたします。
  180. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 本来今年度経常収支の黒字幅が縮小する基調に入っていくのは年度の後半であろうと考えておりましたし、従来からそう御説明を申し上げておりました。これは当然のことだと思いますのは、政府の公共投資主導型の経済というものが、やがて民間の経済活動に影響していくというのにはどうしても時間がかかるわけでございますし、それから在庫調整の過程を通じて在庫というものはだんだん減ってまいりますけれども、調整するほどでございましたからゼロであったわけではない。そういうことからも、年度の初めからそういう徴候があらわれるというふうには思っておりませんでした。ただいまも、またそれに円高というものが加わっておりますから、ますます、仮に夏終わりあるいは秋の初めごろにはこの円高が輸出入に影響及ぼさないはずはない。これは幾ら何でもこれだけ円が上がってまいりますと、影響なしに済むということは、これはないはずでありまして、このことはこの黒字幅の縮減をもたらすのにかなり大きな要素だと考えておるわけでございます。  しかしそれはそれにいたしましても、年度後半のことでございますからなるべく早く、やはり年度前半において緊急輸入等のことをやりたいと考えておりまして、先般から何度か政府でも決定をいたし、またできれば今週にも新たな決定をいたそうとしております。それによりまして民間の輸入を容易に、さらに容易にするような金融上の措置あるいは政府自身も輸入し得るもの、あるいはこれは貿易収支そのものではありませんが、対外経済援助の拡大といったようなこと等々を集中的に上半期に行ってまいりたいと考えておりまして、この点は森下委員の御指摘のとおりでございますから、そのような努力を強めたいと考えているわけでございます。
  181. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで長官関係質問の最後に、減税関係についてちょっとお伺いいたしておきたいと思うんであります。これはもうよく議論されているところでありまして、私ども政府の公共事業拡大による景気回復というものは、これは全体として国民を潤すものではない。したがって非常に偏った回復になるおそれがあるという点を指摘をいたしてきたわけであります。そのためにはまあいわゆる所得税減税を行うことが一番普遍的である。したがって国民各階層にも、あるいは地域的にも不偏をしない、いわゆる景気刺激の政策として十分景気回復の効果をもたらすことができるということを、絶えず強調をいたしてきたわけでありまするが、私どもの試算によりますると、たとえば減税額の約八%程度が貯蓄に回りまして、他は全部消費に回ったというのが昨年の所得税減税の結果ではないかというふうに私どもの方の党の政審では調査をいたしているわけであります。中には四分の一程度が貯蓄に回って四分の三が消費に回ったというような見通し調査等も出ているのであります。  したがって私たちといたしましては、たとえば二兆円というような大幅な所得減税をすれば、少なくとも個人消費という面においては実質五、六%押し上げる結果になるのではないかというような試算をいたしているわけでありまして、言うならば大幅減税を行うことが個人消費の拡大にもつながり、景気の回復の一つの糸口にもなるという点につきまして、ことしの所得税減税は非常に私は僅少な額であったために、結果においては何らの刺激効果を起こすに至らなくなるのではないだろうかというふうに思うわけでありまして、将来、大幅な補正予算の要請等が出されるといわれておりまするし、またそういうような事態になるのではないかと予想されておるのでありますが、この大幅減税という問題について、先ほど申し上げましたような、五十三年度の経済見通し等経済運営の基本態度という観点からまいりまして、どうお考えになっているのか、そのことを最後にちょっとお尋ねしておきたいと思います。
  182. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 政府といたしましては、過般御審議をいただきました予算案が最善のものと考えて御提案をいたしたわけでございましたが、国会、ことに衆議院等の段階におきまして、ある程度の減税が必要であるという御判断が相当強かったというふうに承知をしておりますので、これは国会の最終的な御判断には従わなければならないと考えておるところでございます。もともと政府自身が、減税というものは必要のないものである、あるいは有害であると考えたわけではもとよりございませんでしたので、財政も相当今回は異常な形になってはおりますものの、それでもやはりそれなりのめどというものがなければなりませんし、将来についても考えておかなければならない。そうだといたしますれば、限られた財源をこの際どうすべきかということは、政府自身はやはり公共事業を中心に経済活動を起こすことの方が国民経済全体にとって好ましいことであると判断をいたしたわけでございます。で、同じような判断は実はただいまも多かれ少なかれ持っておりまして、私自身申しますと、この七%程度の成長というのは、ただいまの予算のままと申しますか、いわゆる補正予算を余りいたしませんでも可能なのではないかという気持ちを持っております。  と申しますのは、公共事業に二千億円程度のまだ予備費を持っておることでもございますので、七%程度自身でございますと、この当初予算だけでもやれるのではないかというぐらいな感じを持っておりますものでございますので、補正ということを、いま考える時期ではないという判断をしております。しかし、それに対して他方総理大臣御自身が、もしこの七%程度の成長というものが、もう決定的にむずかしいというふうに判断されるときには、いつでも臨機の果敢な措置をとると言っておられるのでございますから、そうなれば無論そういたさなければならないことであろうと思います。その場合、どのようなことがということは、実は閣内で議論をいたしたことがございませんので、私に私見はございますけれども、そこまで申し上げることはやや越権であろうかと思いますので、その点は控えさせていただきます。
  183. 森下昭司

    ○森下昭司君 いまいろいろとお話がございましたが、こういった問題は予算委員会等でも議論をされているところでありまして、それぞれ意見の相違というものが出ているわけであります。したがって今後私どもは、いま長官が言われましたような計画目標が達成でき、そういう経済情勢に向かうことを実は期待をいたしておきたいと考えております。結構でございます。  引き続きまして私通産大臣お尋ねをいたしておきたいと思うのでありますが、今後いわゆる産業政策立場で構造不況業種というものを考えてまいりますれば、これは国際競争力を維持していかなければいけない。いわば産業の効率というものをより高めていくという目標というものがあると思います。公正取引委員会という立場で問題をながめてみますれば、産業組織論的なたてまえからいたしましても、企業間競争というものが維持されていかなければならない。労働省的な観点からまいりますれば雇用を維持する必要がある。この三つの私は目標というものは必ずしも同方向に行ってないと思うのでありまして、この目標間の調整ということが、法案を実施するに当たりましては大きな私は課題になるのではないかと思うのであります。こういった矛盾というものを処置するために、どういうお考え方をお持ちになっているのか、そのことをお尋ねいたしたいと思います。
  184. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 日本経済が私は国際競争力を保持するということのためには、公正な競争と自由競争というものが行われることが必要だと思います。過保護の経済の中には、強力な競争力というものは生まれてこないと、このように理解をしております。そういう意味におきまして、産業政策と独禁政策というものは決して矛盾するものではないと、このように理解をいたしております。
  185. 森下昭司

    ○森下昭司君 私は、労働問題にいま触れられなかったんでありますが、衆議院における修正等を考えますと、私はやはり一つの問題点といたしましては、設備を廃棄をする、あるいはこれを休止をさせるということは、言葉をかえて言えば馘首につながるおそれがあるという心配があるわけでありまして、やはり私は、先ほど前段で大臣が述べられましたいわゆる設備を廃棄をしなければならないんだという点からまいりますれば、当然これは矛盾したことに相なるわけであります。この調整を目的といたしまして、私は衆議院修正が行われたものだというふうに実は理解をいたしているわけでありますが、いまはその問題について大臣は、縦行政の関係からかも存じませんが、その点について触れられなかったことは非常に私残念でありますが、そういう設備を廃棄するという問題点と、いま私が申し上げました労働省的な見解、見方からすれば雇用を維持するという問題点が残る。これをどう調整していくのか。この点についてもしも具体的なお考え方あれば、局長からでも結構ですから。
  186. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) ことしの政府の最高の経済政策目標は、七%の経済成長の達成と六十億ドルの国際収支の均衡ということでありますが、七%という成長目標を設定をいたしましたのは、これは雇用問題を解決していかなければならぬ、そういう考え方からでございます。六十億ドルという目標を設定いたしましたのは、余りにも大きな国際収支を出したのでは、日本が導火線となりまして世界全体が保護貿易傾向になりますし、保護貿易ということになりますと、これはもう当然縮小均衡ということになりますから、これはあくまで避けていかなければならぬと、こういう考え方に立ちまして、二つの目標を設定したわけであります。したがいましてこの一番の根本は、雇用問題が非常に大切であるという観点に立ちまして、すべての政策を進めておるわけでございますので、今回の法案の場合の雇用問題ということに対しては、最大限の配慮を払っていかなければならぬと、このように考えております。
  187. 森下昭司

    ○森下昭司君 ちょうどいま七%、六十億ドル問題が出たのでありますが、ことしの、五十三年度ですね、通産省が行政指導で当面数量規制、伝えられるところによりますと、自動車にいたしましてもテレビにいたしましても、その他の輸出品にいたしましても、五十三年度の輸出の数量は五十二年度の枠の範囲内、輸出実績の範囲内というふうなたてまえで行政指導を強化なさるというお考え方を聞いておりますが、これは六十億ドル問題と関連いたしまして、あるいは緊急輸入問題との関連もございますが、そういうお考え方でお行きになるのかどうか。輸出問題について通産省の考え方をお伺いいたしておきたいと思います。
  188. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) このままほうっておいたのでは、現在のような円高でありますけれども、六十億ドルの目標というものは達成できないのではないかと、このように私どもは心配をいたしまして、まず輸出の面では数量の上で五十二年度の範囲内に抑えていこうと、そういう形で行政指導していこうと、こういうことを決定をいたしております。三月二十五日の経済対策閣僚会議でこの基本方針が確認をされまして、それに従いまして通産省としては、いまそれに対応する具体的な措置というものをまとめておるところでございます。  それからあわせて、輸出をそういう行政指導をいたしましてもそれだけでは不十分でありますので、先ほど来質疑応答がございましたように輸入の緊急の拡大、これはどうしてもやらんければいかぬということで、先般来作業を進めておりましたが、大体いままとまりつつあるところでございます。先月十一日にも四項目からなる小規模な緊急輸入対策をまとめましたが、これではきわめて不十分でありますので、さらに大規模な内容のものにしようということで、先ほどのお話のように多分今週中に結論が出るであろうと期待をいたしております。輸出と輸入と両面からいろいろ対策を立てまして、何としても六十億ドル前後という経常収支の目標は達成をしたいというのが基本的な政府考え方でございます。
  189. 森下昭司

    ○森下昭司君 次に、私はこの法案が出されました必要性と申しますか、何が原因でこういったものが必要か、先ほど大臣は、業界の要するに廃棄なりあるいは休止なり、自主的なこういった問題に対する対処が必要だ、しかし通産省はなかなか深刻な問題を抱えているんだから、そういった業界の深刻さの中で何とかいわゆるお手伝いをしたいんだという趣旨の御発言が実はあったわけであります。私はやはり最初の当初伝えられた通産省側の意図からまいりますと、法案提出の際には削除がされておりまするけれども、相当統制色が強かった。また今回出されました法案の中で、指示カルテル等の問題が出ておりまするから、全く統制色がないとは私は断言できないと思うのであります。そういうような観点から考えてまいりますと、単なる、通産大臣が控え目に、業界の自主的な問題に私どもがお手伝いをするんだというような私はスタイルにはなっていないというふうに思うのであります。  したがって、今回の立法の必要性については、ただ単に過剰設備を廃棄をする、その必要性からこのような法案を提出したというような私は短絡的な発想ではないというふうに思うわけでありますが、どうしてこうした法律案を提出せざるを得なかったのか、その提出せざるを得なかった理由について主なものを二、三ひとつ挙げていただきたい。これは局長からでも結構です。
  190. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私から御答弁申し上げます。  この法律案の作成に当たりましていろんな議論がございましたが、その経緯を踏まえまして、この法案を提出するに至りました主な理由の幾つかを御説明申し上げます。  私ども昨年の初め以来、いわゆる構造不況問題ということに取り組むことなしには、現在の循環的な不況問題の対処だけではこれからの経済運営は乗り切っていけないと、こういう判断に立ちまして、構造不況問題にどう取り組むかという点をいろいろ検討をすると同時に、当面の対策といたしまして生産調整の問題等々の対策を進めてきたわけでございますが、やはり基本的には構造不況問題は個々の産業、業種で抱えている問題を、業界の自主的な解決への努力、協力というものを前提に私ども一緒にこの問題の処理の方向を考えていくと、こういうことが処理せざるを得ないということで、幾つかの業種につきましては、すでに昨年じゅうにいろんな議論を進めてまいりました。ところが、この議論を進めてまいります段階で幾つかの問題が出てまいりました。  第一は、昨年の補正予算で若干実現を見たわけでございますが、自主的な解決を図るといたしましても、先ほど大臣の御答弁にございましたように、設備の処理を進めるに当たりまして、いわゆる担保抜き資金というような面での資金の確保と申しますか、融通につきまして何らかの債務保証の措置が必要ではないか。昨年の補正予算で平電炉あるいは繊維産業の一部等につき、御配慮をお願いしたわけでございますが、こういう債務保証の制度というものをひとつつくり上げる必要があるのではないかというのが一つでございます。  第二は、設備の処理は、ただいま申し上げましたように、その業界の自主的な解決の努力前提にいたしましていろいろな手段で進めていく道があると思いますが、ただ単に産業官庁と関係業界とのいわゆる行政指導では片づかない技術的な問題等もいろいろ出てまいりますし、公正取引委員会におかれましても、従来どちらかといえば循環不況に対応する意味での不況カルテルの運用、これを続けてまいられましたが、こういう事態に対処して不況カルテルの弾力的運用という方針もはっきり打ち出されました。ただ、不況カルテルには不況カルテルの一つの本質的な要件もございまして、私ども長期立場に立って設備の処理をしていくためには、やはり独占禁止法との調整の問題というのを法律的に検討してみる必要があるのではないか、こういう問題も構造不況対策への取り組みの段階で出てまいりました。そのほか、関係業界の意見あるいは内部の意見等でいろいろな問題点も出てまいりましたが、ただいまのような問題意識から法案の作成にかかったわけでございまして、この法案内容も、したがってその二つの点が法律の内容といたしまして中心をなしておる。そして債務保証を行うにつきましても、あるいは設備の処理を進めるにつきましても、その前提として、一つ目標と申しますか、それが必要であるということからいわゆる安定基本計画というものを法律のもう一つの柱にした、こういう経緯でございます。
  191. 森下昭司

    ○森下昭司君 政府がこういった問題について関与する場合はきわめて限定的でなければならぬ。通常、資本と労働の調整を促すものといたしまして、先進工業国の間で使われておりまする一般的な方法は、調整の援助である。いわばこの場合、この法案で言えば、いまお話がありました債務保証に限定して問題を考えるべきだということが実は言われているわけであります。その意味からまいりますれば、二つほど理由を挙げられましたまず第一の点は、いわゆる担保抜き資金、債務保証だという点については、私は理解するにやぶさかではございません。しかし二番目の、個々の産業が自主的な解決への努力をする、それに対しまして通産省は行政指導という立場からいろいろと協力をしてやっていく。しかし問題が、行政指導の段階では片づけられない場合があるのだという趣旨のいま御発言があったのでありますが、具体的に、行政指導で片づけることができないような問題や課題というものは、どういうものがあるのか。たとえば、構造不況業種である小型棒鋼の問題の平電炉関係でありますとか、あるいはまたその他、段ボール原紙でありますとか、化学肥料でありますとか、もしも挙げられておりまする不況業種の中でそういった限界がある具体的な事例がありますればお示しをいただきたいと思います。
  192. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 具体的な業種につきまして、こういう問題があるという御説明を申し上げるのは、ちょっと今後のいろんな展開もございますので差し控えさせていただきますが、具体的な問題として、それでは、私がただいま御説明申し上げました第二番目の問題、つまり独占禁止法との調整ということを法律的な仕組みとして考えなければならぬ必要性ということの一つの例といたしましては、これはどの業種かこういうかっこうになるかは別といたしまして、今後長期的な設備処理を業界ぐるみと申しますか、共同でやっていく、つまり業者間の共同行為という形をどうしてもとらなければならぬというケースが考えられます。具体的には、設備処理に当たりまして残存者負担をどうするかというような問題につきまして、あるいはそこで金銭のやりとり、あるいは共同して設備処理をするための特定の機関の設立というような、どうしても業者間の共同行為という体制が予想をされる場合が多々あると私ども考えております。そういう場合には、先ほど申し上げましたように現行の不況カルテルの運用とか、あるいは従来私どもが進めてまいりました産業官庁とその業界との間の、いわゆる行政指導という縦の関係だけでは処理ができない問題ではないか、こういう感じがいたしておりまして、独禁法との調整の法律的な仕組みが一つあるということが今後の設備処理を進める上で非常にスムーズであるし、また必要ではないかというのが私ども考え方であったわけでございます。
  193. 森下昭司

    ○森下昭司君 最初に、不況業種と言われまする個々の業界の問題について今日まで行ってきた行政指導の中で何が問題として解決できないのか、どうしてこういう法律案をつくらなければならぬのかという私の質問に対しまして、個々の問題については今後差し支えがありまするから差し控えたいという御発言がございましたですね。これは私納得できないんですよ。この法案は、具体的に三つの業種については出ておりますが、他は全部政令に任しているんでしょう。私はその政令に任してあるところ、どこということは後ほどまた時間があれば質問いたしますが、少なくとも三つの言うならば法律の中に明記された業態については、その必要性から具体的にお出しになったわけなんですよ。とすれば、いまあなたが御提出になった提案の中に、行政指導に限界があるというなら、この三つの業界の中で行政指導の限界があったのは具体的に何かと言ったら、お答え願っていいのじゃないですか。どうして差し支えがあるのです。
  194. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 差し支えがあると申し上げたのがもし言葉が悪ければ私訂正をいたしますが、私が申し上げたかったのは、たとえばこの法律の二条に四つの業種か法律で特定をされております。この中で船舶製造業、これは私どもの所管でございませんので、一、二、三、平電炉業界、それからアルミ、合成繊維製造業が上がっておりますが、私どもすでに昨年以来これらの業種につきましては、この法律によりまして、いわゆる法律の条文に従って大多数の関係業界の事業者の申し出があるかどうか、この問題は別に置いておきまして、現実には昨年以来いろいろと関係業界と役所との考え方のすり合わせを進めてきたわけでございますが、ただいま御説明をいたしました、それでは今度の設備処理に当たりまして私がいま申し上げたような特定の処理機関をつくるかとか、あるいは設備の処理を進めるに当たりましてたとえば残存者負担をどうするかというような仕組みにつきまして、まだこれらの業界では固まっていない。今後関係業界の間でその仕組みの問題はいろいろ議論になると思いまして、そこが業界として固まっておりませんために、私はこの場で業界の名前を挙げて御説明するのは差し控えたいと、こういう意味で申し上げたわけでございます。
  195. 森下昭司

    ○森下昭司君 私は、仕組みができていないとかといういまお話がございましたが、そういたしますと、率直に言ってちょっと矛盾を感ぜざるを得ないのであります。まず、業界の自主的解決が第一義的に行われなければならぬ。第二義的には、そういったものはでき得ないから、この法律案で安定基本計画等をつくり指示カルテルをつくって、公正取引委員会の同意を得て実施をさせるということになるんじゃないですか、そういう仕組みに。
  196. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいまの点は仰せのとおりだと私考えますが、関係業界、いろいろ長い間、その業界としての設備処理に取り組む取り組み方の問題等について議論が進められておる業界がございます。ただ、その場合に一つ問題になりますのは、私かただいま御説明したような設備処理をこれから進めていく仕組みを業界として考える場合に、やはり独禁法との間の法的な安定性というものが確保できるかどうかという点も一つの大きな問題意識と私どもは了解しておりまして、そういう意味で、私どもは今後たとえばアルミ製造業はどういうかっこうをとるか、それから合成繊維製造業が設備処理の具体的な取り進め、仕組みについてどういうかっこうをとるか、先ほど申し上げたように、まだ業界としての意思は決まっておりませんが、こういう今度の法律によりまして独占禁止法との間で一つの調整ができるという仕組みを今後考えていく上の一つの何か目安と申しますか、法律的な独禁法との調整ができるということが、これからのやり方を考えていく前提といたしまして非常に重要なことではないか。若干鳥と卵の関係になるかもしれませんが、私どもそういうことでこの法律の指示カルテル制度というものの意義をそこに認めてこの法案をつくった、こういう次第でございます。
  197. 森下昭司

    ○森下昭司君 私はそれは率直に番えば、要するに法律を掲げて、この法律ができた以上は業界で多少の異論並びに業界内部における不統一な点があったとしても、こういうかっこうにならざるを得ないですよということを示す、そういうことが私は一つの統制につながるおそれになってあらわれてくるのではないだろうかという点を非常に心配をするわけであります。私は、大臣が強調されましたように自主的解決が望ましいんだと、通産省はお手伝いするだけなんだという考え方があるといたしますならば、いまお話がありました船舶製造業等におきましても、やはり私は積極的に行政指導でまず業界の意思を統一させることが必要ではないか。その統一をもとにいたしまして問題を考えていくという態度が通産省にありませんと、世上言われる指示カルテル等の併用等を考えますれば統制的な色彩が濃く、かつ産業政策に通産省が介入をするという印象を与えてしまうのではないかと思うのでありますか、そういう点についてはどうですか。
  198. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私どもは、先ほど大臣御答弁にございましたように、設備処理ということはやはり当該業界の全体の協力体制と申しますか、自主的な解決への努力前提でございまして、私どもはこの法律にございますような債務保証のための信用基金の設立とか、私がただいま御説明いたしましたような独禁法との調整ということを通じましてお手伝いをするという意味でこの法案をつくっているわけでございまして、したがって、ただいま統制的な色彩というお話がございましたが、私どもは、この法律は決してそういう意味で上からの、設備処理を政府の力によって強制をしていくというふうには私ども考えておりません。この特定不況産業のいわば対象につきましても、私どもは法定の要件から見まして、設備の処理を進めないと基本的には問題が片づかないという、そういう共通的な問題を抱えておる業種を対象と一応いたしますが、具体的にこの法律の手続に乗ってまいりますのは、やはりその業種の大部分の事業者、数においてあるいは事業活動において、大部分の事業者の申し出によって初めてこの法律のいわば適用の対象になってくるというようなこと、あるいは指示カルテルという制度につきましても、これは法律的にこの指示の内容を強制するというものではございません。  指示カルテルに従って行われる業者の自主的な共同行為が独占禁止法の適用除外になるという法律効果を持っておるわけでございまして、国の力による強制的な設備処理ではないと私どもあくまでも考えておりまして、むしろただいま先生のお話のように、これを進めていくためには、一片のカルテルの指示というようなことではなしに、むしろ関係業界のそういう自主的な共同の意思、解決への努力、それを前提に私どもは今後ともむしろ行政指導を実際の面でやっていく必要があるんじゃないかと、こういうふうに考えているわけでございます。
  199. 森下昭司

    ○森下昭司君 問題は、いわゆる安定基本計画をつくるに際しましては、それぞれ業界の代表ともお会いになってつくられるわけであります。ただ私が心配をするのは、いま申し上げましたように、船舶製造業という一つの問題を取り上げましたときに、業界内部の意見が不統一になっている、橋口さんが具体的にお答えになりましたように、たとえば処理期間の問題でありまするとか残存者負担の問題については、どういうような仕組みで行うかという点についてはまだできてないんだという、これは事務的に物理的におくれてできてないというならば理解をすることができるのでありますが、仮に業界の中でいろんな意見があって、不統一のために仕組みかできないということになりますれば大変だと思うんであります。そういう業界の中の内部的な統一ができないにもかかわらず安定基本計画一つの方向性及び方針が打ち出されてしまうということになりますれば、通産大臣か強調するような自主的な解決を期待する、それを手伝うという立場から離れまして、通産省か主導権を握ってこの安定基本計画が決まったんだからこれに従って実施をいたします、言うならば一方的宣言にならざるを得ないのであります。業界は安定基本計画をつくる場合に参画はいたしておりまするけれども、業界自体の意見が通らなかった場合は、私が申し上げたような結果になってしまう。  そこで私の言わんとするのは、そういうような場合に、安定基本計画をつくる場合には少なくともいまあなたが強調するような、このいわゆる業界内の大多数、政令で指定を受けようとしますと三分の二以上の事業者ということになるんだそうでありますが、少なくとも業界内部の大多数の意見がある一定方向に固まって、そしてそれが安定基本計画に乗ってくるというような事務的措置が行われるならば、この点については私は理解することができるんでありますが、実際運用問題についてはどうなさるお考えがあるのですか。
  200. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいま御指摘のように、ある業界におきましてその業界の中の意思がなかなかまとまらないという場合があると思います。私どもは、たとえばいま、私船舶製造業の内容の実態につきましてつまびらかに存じておりませんので、具体的に内容に触れるわけにはまいりませんが、ただいま船舶製造業を例にお話がございました。これは法定の業種にはなっておりますが、しかしもしいま御指摘のように、船舶製造業の内部でどうしても話がまとまらぬ、将来のあり方について。その場合にはただいまお話のございましたような、法律で申しますと第二条二項の申し出が、業界からの申し出がございませんので、したがいまして、主務大臣が仮に船舶製造業につきまして何とかこの法律の定めるところに従って設備処理の手続か進められるべきであると仮に思っておりましても、業界の意思が統一にならなければこの申し出がなかなかないと、そういうことになりますと、ただいま御指摘の安定基本計画の作成ということもできないわけになるわけでございまして、そういう意味で、私どもはむしろただいま御指摘のような問題ございますので、この法律の仕組みの上で、そういうまとまらない業界は残念ながらこの法律の手続には乗ってこないと、こういう法律の仕組みにしているわけでございます。
  201. 森下昭司

    ○森下昭司君 そこで私は、いまのようなお話があったんでありますが、仮にそういうようなお話がございますと、逆に指定の申し出をしなければどういうような事態になってもそれではこの法律に基づいて、設備の廃棄だとか休止だとか格納だとかいろんな措置が、新増設のことを抑えていくとか、この法律の意図をしていることが全然実行できないというふうな理解をしていいんですか。
  202. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) この法律は、構造不況問題への取り組みの姿勢あるいは取り組み方にはいろんな御議論があり得ると思いますし、この法律案の作成に当たりましても、私どもは内部におきましてもいろんな議論をいたしましたが、この法律の立て方は、最初に大臣の御答弁にございましたように、あるいはなまぬるいという御批判が一面ではあると思いますけれども、その業界がやはりみんなの意思、大部分の方の意思が統一されて設備の処理を進めていこうと、そういう方向の出た業界についてのみ安定基本計画の作成、必要な場合には最終的に指示カルテルまでを含む一つの受けざらと申しますか、仕組みの利用ができるような体制をつくること、そして債務保証、こういう仕組みになっているわけでございまして、ただいま御指摘のように業界が残念ながらまとまらないと、しかし別の観点から見れば何とかしなきゃいかぬという問題が将来起こり得る可能性は私否定はできないと、こういうふうに考えております。しからば、その業界にどう取り組むかというのにつきましては、先ほど申し上げましたように取り組みについての考え方にはいろんな幅があり、違いがあると思いますが、それはそういう業種をどうするかということとして、別途の問題として検討されるべき問題ではないかと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  203. 森下昭司

    ○森下昭司君 それからもう一つお尋ねをいたしておきますが、今回のこの立法化によりまする構造不況業種対策は、どちらかといえば先ほど申し上げましたように消極的な産業調整政策であると。できればこれは産業構造政策に属する立場からの積極的な産業転換政策考えるべきである。今回のこの構造不況対策から考えますると、非常にこの法律によって不況業種が立ち直ることは悲観的になるのではないか、また立ち直るためには相当な期間を要することになるのではないかというような見方がございますか、こういった点についてはどうお考えですか。
  204. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私どもただいまのようなこの経済の情勢の中、特にオイルショックを境といたしまして日本の経済発展のあり方と申しますか姿に非常な屈折が来たと、こういう受けとめております。つまり高度成長から減速経済成長という屈折がまいりました。その中で、御指摘のように今後ともいわゆる産業構造政策、産業転換、産業調整という問題がますわす重要な問題になってくるということを私どもは認識をしております。ただ、この昭和六十年代を通じての日本の非常に高い成長の時代、私は産業構造の転換とかあるいは産業調整と申しますか、これは高い成長の中で非常にスムーズに進んできたと思うわけでございますが、今度は減速経済下では大変これがいろんな摩擦問題等がございまして、取り組み方が大変むずかしい問題であると。そこで今後は、産業調整問題というのが大変むずかしい問題になると、まず第一にこう考えております。  構造不況問題を考えるということになりますと、構造不況業種が今後どうあるかという議論か大前提であるべきでございまして、この安定基本計画、この内容自身はこの法律の仕組みから申しまして設備の処理に関する事項、これが中核になっておりますけれども、しかし、これを議論を進めます、これを決めます前提といたしましては、やはり長期の当該業種の需給のあり方、あるいは将来この業界というのが日本の経済の中でどういう地位を占めるべきかというようなバックグラウドの十分な検討というものが必要であると思いまして、その意味でこの法律自身は設備処理という一見後ろ向きの対策というふうにもとられますが、やはり将来のそういう見通しの上に立って物事を進めていくということで、産業構造政策、産業転換という問題との関連をつけて考えていくべきであると、こういうふうに考えておるわけでございます。
  205. 森下昭司

    ○森下昭司君 後ほどアルミ製錬等の問題を個々にお尋ねいたしまして、こういった点についてさらに見解をただしたいと思うのでありますが、そこで公正取引委員会関係質問に移りたいと思います。  まず最初に、公正取引委員会委員長お尋ねをしておきますが、立法の過程で当初アウトサイダー規制でありますとかあるいは合併営業権の譲渡を独禁法の適用除外にする、これが削除されました経過に対しまして、伝えられるところによりますれば、公正取引委員会がこういった点は独禁法をないがしろにするという点から反対をしましたし、また、国会審議を通じまして野党の反対も強いというような判断等がありまして、結果においては断念せざるを得ないというふうに判断をされまして、この二つの問題点が原案から削除をされたというふうに伝えられているのでありますが、このアウトサイダー規制問題並びにこの合併、営業権の譲渡問題を独禁法の適用除外にすることの是非の点について、どういうお考え方を持っていたのか、まず最初にそのことをお尋ねいたしたいと思います。
  206. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 特定不況産業安定臨時措置法案が国会に提出されます前の政府部内における調整の問題でございますので、こういう席でお答え申し上げるのが適当かどうか、多少はばかるところもあるのでございますけれども、私どもの基本的な考え方を一応申し上げてみたいと思いますが、企業の活動、それから企業活動の基礎をなす設備の問題、設備の拡張、縮小あるいは廃棄というような問題は、これは企業の基本的な生存権にかかわる問題でございまして、本来、個々の事業者の判断に属すべき問題でございますし、さらに個々の事業者のみの判断では対処し得ないという場合に、初めて業界の問題になるのでございますから、したがいまして設備の投資、拡張、縮小あるいは廃棄というような問題につきまして政府の行政権が介入するという場合は、極力限定すべきであるというのが基本的な立場でございます。  したがいまして、アウトサイダーと申しますか、そういう業界の共同行為に参加しない、これも企業の自主的な判断でございます。そういう共同行為に参加しないアウトサイダーに対して何か規制命令を加えるというのは、これはよほどの場合に限定されるべきではないかということで、原則的な考えといたしまして、設備の廃棄というような企業の生存権にかかわるような問題につきまして、ことにアウトサイダーに対して命令を出すというのはこれはいかがなものであろうかというのがわれわれの考え方でございます。  それから合併の問題でございますが、これは昨年来の独占禁止法の改正の問題等を考えましても、また諸外国の最近における独占禁止政策のあり方を見ましても、企業の合併に対しましては、年々歳々厳しい基準が適用されつつあるのでございまして、また、日本の戦後の経済過程を見ましても、たとえば海運の集約化、その他の企業の集団の再編成というような事態がしばしば起こってまいりましたけれども、いままで戦後三十年の経過の中で、合併に対します独占禁止法の適用除外という事例は一つもございません。そういう点から申しまして公正取引委員会の審査の対象になじみ得る性格のものではない、したがいまして、アウトサイダーに対する設備廃棄の規制命令、あるいはそれに伴いまして生ずるであろう合併に対して、独占禁止法の適用除外をするということは、昨年独占禁止法の改正強化が成立したという歴史的な一例に立って考えましても、これは本来どうも適当なことではないのではないかということで、政策立案当局である通産御当局と折衝したのでございまして、そういう考え方は今日においても基本的には変わっておらないところでございます。
  207. 森下昭司

    ○森下昭司君 いまその理由をお述べになったわけでありますが、私お答えをお聞きいたしておりまして、後段の合併問題の項の中では諸外国の例、それからこういったものを除外するような事例がなかったのだと。諸外国が独禁法強化の傾向にあるということを強調されましたが、私は何をおきましても過去の日本の土壌からまいりますれば、こういう問題を独禁法の除外の立場に置きますると、行政当局がこの会社とこの会社は合併をするのがよろしいというような行政当局の認定次第で、合併が実現してしまう。言うならば競争的制限という立場から問題をながめれば、行政当局に問題がゆだねられるという点については、事実上独禁法の骨抜きになるという点か、私は一番大きな問題点としてまた言えるのではないだろうかというような考え方も実は持っていたわけであります。さらに私はいわゆる指示カルテル、この法律案に指示カルテルが実は出ているわけであります。主務大臣がこの指示カルテルを実施する場合には公正取引委員会の同意を得なさいという条項で一応の歯どめがなされている。  しかし、私は最初に申し上げたように、こういう指示カルテルの同意条項ですら、私はやはり問題が残るのではないだろうかと思うのでありますが、最初原案は公正取引委員会との協議、それが同意という形になったというふうに私ども理解を実はいたしているわけでありますが、この指示カルテル問題についての公正取引委員会見解をお聞きいたしたいと思います。
  208. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 指示カルテルという制度は、戦後の日本の法制に幾つか事例がございます。ただ先ほど来申し上げておりますように、企業の基本的な生存権にかかわる設備について廃棄を指示するという事例は、これはきわめて限られた事例でございます。もちろん全然例がないというわけではございません。しかしながら今度の法案は特定の産業についての問題だけではなくて、かなり広範な産業について設備の廃棄の指示をなし得ると、こういう法制のたてまえでございますので、従来のような軽い事案というふうに評価することは、これは適当ではないんではないかという感じを持っておるわけでございます。したがいまして現在の法制の中でも、主務大臣が措置をなさいます場合に、公正取引委員会に協議をするという事例が大部分でございますけれども、中には同意という事例がございます。  一例を申し上げますと、たとえば中小企業団体法に基づきまして調整事業を行います場合に、価格についての共同行為の場合はこれは主務省から公正取引委員会に協議がございまして、これに対して同意を与えるという法制になっております。つまり事案の重いものにつきましては現在の法制でもすでに同意という事例があるのでございまして、事柄の性質から考えまして、単に協議に対して応ずるということではなくて、協議に対しては同意を行うということで、産業政策と独禁政策とが対等の立場に立つと、同等の関係を持つということを明らかにしたのでございます。
  209. 森下昭司

    ○森下昭司君 さらに私はお尋ねいたしますが、私はこの指示カルテル問題は、要するにこの法案から削除すべきものである。先ほど申し上げたように、産業調整政策というたてまえからこの法案は私は立法されたのではないか、構造転換でもない、言うならば資本と労働力の微調整だ、そんならば率直に言って信用基金制度ぐらいが限定ではないかということを、最初に私強調いたしているわけでありますが、そういう観点に立っているということをひとつ御理解をいただきたいと思うんであります。したがって私は、指示カルテルそのものも統制的色彩を強く持つものであるという観点に立つのでありまして、指示カルテルそのものについて削除を求めなかった、つまり同意ということで一応産業政策と独禁政策とが対等になったというようなお考え方を示されたのでありますが、私ちょっと具体的に納得できないような感じがいたすわけであります。  私は、むしろ指示カルテル制度そのものを否定すべき態度で臨むことの方がよかったのではないか。一例といたしまして中小企業団体法の例をお挙げになりました。私はやはり中小企業団体法の中に、いわゆるカルテル行為についての同意を求めるという条項がある、あるいは中小企業団体法の中でカルテルを認めているということは、これは中小企業の保護と申しますか、あるいは中小企業の擁護をすると申しますか、そういういうような観点で、いわば弱い中小企業を守っていこうではないかという考え方も一端にあったのではないかと思うのでありまして、今回の構造不況業種、つまり特定の不況産業というものを対象としたものとしては、おのずから中小企業団体法に基づく同意とは本質的に違いがあっていいのではないか。これを中小企業者と同じような立場で問題を考えるところに、一つの私は問題点が残されたのではないかと思うのでありますが、この点について委員長の御見解を伺いたいと思います。
  210. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 前提条件を抜かしてお答えを申し上げましたので恐縮でございますが、先ほど通産大臣からお答えがございましたように、設備の廃棄を行います場合に、第一次的には個々の事業者の判断ということになるわけでございます。仮に個々の事業者のみの判断では業界全体としての調和がうまくとれないという場合には、業界が共同して独占禁止法の規定に基づきまして設備廃棄のための共同行為を行うということが現在の法制で可能でございます。これは昨年の秋に、従来公正取引委員会がとっておりました独占禁止法の運用の方針というものに修正を加えまして、設備の共同廃棄につきましても現行法で対処し得ると、こういう新しい見解を示したのでございまして、したがいまして、たてまえといたしましてはあくまでも個々の事業者の措置であり、個々の事業者が共同して行います場合にも、あくまでも業界の自発性に基づいて、それに対して独占禁止法上の行政が対応すると、こういう形が原則でございます。  ただしかし、そうは申しましても、これはあくまでもこちらは受け身の態勢でございますから、個々の事業者なりあるいは業界が全体として、あるいは共同して行為を行うという発意があればこれは対応のしようがあり得るわけでございますけれども、業界としてはどうしてもまとまりがつかない、あるいは業界としては共同して申請が行われないという場合に、一体どういうふうに対応したらいいかという問題が次に起こるわけでございまして、その際に、主務省が十分な法律的な根拠なしに行政指導を行うということは、これは独占禁止法との関係において紛らわしい問題を生ずるわけでございますから、そういう必要性があるとすれば、これは立法的な解決が必要である。そういう点から申しまして、日本経済についての認識、あるいは構造不況業種が日本経済に対して非常に大きな重荷ないし負担になっているという認識につきましては、産業当局と同じ見解を持っておるわけでございます。  問題はそういう事態に対してどういうふうに対応するかという手段、方法でございまして、いま申し上げましたような、たてまえはあくまでも個々の事業者なり業界の自発性に期待をし、どうしてもできない場合の最後の保障手段としての指示カルテルにつきましては、これは現状においてはやむを得ない措置ではないか、こういう認識に立って賛成をしたのでございまして、その場合に指示カルテルに伴う、まあ万一予想される弊害に対しまして、どうして競争秩序を確保するかという見地からは、やはり従来の協議に対してこたえるということだけではなくて、やはり同意ということではっきり対等の立場に立つ、独占禁止法の立場から十分なチェックを行うことが必要だ、こういう考え方でこの法案に賛成をしたわけでございます。
  211. 森下昭司

    ○森下昭司君 いまお話がありました現行法で設備の廃棄ができるということは、これは現行独禁法二十四条の三ですか。
  212. 橋口收

    政府委員(橋口收君) そのとおりでございます。
  213. 森下昭司

    ○森下昭司君 この条項は、生産数量、販売数量または設備の制限について共同行為を認めると定められているわけであります。従前は、いま委員長も御答弁の中でございましたように、設備の制限ということは、これまでは設備の封印や格納などの意味に限定して解釈されてきた。これが今回、設備の制限という部分は廃棄処理を含むと読むことができるといういま御見解をお示しになったわけでありますけれども、これは一体公正取引委員会としてお決めになった解釈なのか、事務当局の行政解釈なのか、その辺ひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  214. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 法律の文言の解釈でございますから、多少正確に申し上げてみたいと思いますが、法律では設備の制限というふうに表現をしてございます。われわれの理解では、設備の制限というのは設備に関する企業の一切の発動を含んでいるというふうに、そういうふうに考えておるわけでございまして、設備の保有、拡張、縮減、廃棄等全部を含む、こういう考え方でございます。これは第二十四条の三のみではなくて、独占禁止法全体を理解いたします場合に関連がございますので申し上げますと、これは第二条の第六項にも同じ規定がございます。つまり、設備を制限するという行為は、投資についての共同行為も含むということでございまして、仮にいまおっしゃいましたように封印とか格納とか、そういうものに限定をいたしますと、設備についての投資について共同行為を行う、あるいは廃棄について共同行為を行うということが法律の対象外になるわけでございまして、こういう考え方は公正取引委員会発足以来とっていないのでございます。  ただ、一般にそういう解釈をとっておるかのごとく伝えられておりましたのは、主として従来は循環的不況に対して生産数量あるいは供給数量の制限を行うということで足りるのが日本経済の状態であったと思います。いわば高度成長の過程においては、主として生産数量とか供給数量の制限行為によって十分不況から脱出することが可能であったわけでございますが、もう繰り返して申し上げませんが、こういうような構造不況状態になりますと、なかなかそういうことでは完全に不況状態から脱出することができないということで、従来公正取引委員会が法律の解釈の問題ではなくて、みずからの独禁法の運用方針に対して加えておりました自己制限を修正したというのが本当の姿でございまして、重ねて申し上げますならば、これは決して事務局の行政解釈ではなくて、委員会として正式に決めた方針でございます。
  215. 森下昭司

    ○森下昭司君 そういたしますと、法律を制定した当時から、そういったような実は解釈をお持ちになっておったというふうな理解の仕方をしていいわけですか。
  216. 橋口收

    政府委員(橋口收君) これは独占禁止法ができましたのは昭和二十二年でございまして、不況カルテルの法制ができましたのが二十八年でございますから、何と申しましても昭和二十年代の法制でございまして、現在仮に規定をいたすとしますと、もっと正確な表現と申しますか、もっと包括的な表現をとるべきであると思いますが、しかし、この設備の制限という言葉は、先ほども申し上げましたように、第二条におきましても使っておりますこと等を考えますと、解釈としてはかなり広範囲に読むということでないと、別に独占禁止政策の運用上支障を来すということで、これは二十八年に法律ができました当時から、設備の新増設から封印から格納から、それから廃棄まで一切を含む、こういう伝統的な解釈をとっておったのでございます。
  217. 森下昭司

    ○森下昭司君 委員長の答弁を要約いたしますと、従来は循環的不況であった、したがって設備廃棄まで至らなくて、ある程度生産を制限することによって不況を克服することができ得たというような見地から、設備の制限という問題について、設備の廃棄を含むのであったか、事実上そのことを実施しなくてもよかったのであるから、余り表面上論議をされなかったし、また理解をされていないきらいがあったんだということに私は尽きるんじゃないかと思うんです。  しかし、委員長がこういう見解をお述べになりました場で、直ちに設備廃棄の不況カルテルを認めるということではないということを断わっておみえになりますが……そういうふうに伝えられているわけであります。このいわゆる、いまのような御趣旨でありますれば、直ちにという言葉に日本語的発想の問題点がございますが、直ちに設備廃棄の不況カルテルを認めることではないというふうに断わっておみえになりまするが、私はまたお断わりになる必要はなかったのじゃないだろうか。今日の構造不況という、循環的不況と違った新しい情勢が展開をされているのでありまするから、公正取引委員会といたしましてはこういった問題については設備廃棄の不況カルテルを認めていく必要もあるというような御見解を堂々とお述べになることの方が、かえって私はいま委員長の述べられた答弁と合致するのではないだろうかというふうに思うわけであります。  しかし、私はそのことは別にいたしまして、いわゆる先ほどもお話がありましたように、世界の情勢は独禁法を強化する、これは運用の問題を含めて、運用面を強化する傾向にあるということは委員長自身がお述べになったことであります。というようなことを考えてまいりますと、たとえ法律的には可能であったと仮定をいたしましても、そして第二には循環不況と構造不況の相違があるという点を認めるといたしましても、いわゆる設備廃棄を、この二十四条の三で不況カルテルを認めていくというやり方は私は当を得ない措置ではないだろうかというような実は感じをいたすわけであります。  もしもこの問題を前提にいたしましてこの法案をながめてみますると、安定基本計画ができ上がりまして、それに基づきまして通産大臣が指示カルテルをする、公正取引委員会に同意を求めるといたしますれば、一つの歯どめといたしまして、消費者だとか、あるいはその他競争的制限の云々でありまするとか、いろいろな歯どめの要因がございますが、すべて一〇〇%イエスと言わざるを得ないような現実の事態になるのではないかと思うんでありますが、同意の空文化ということを心配するのでありますが、そういう点の心配はないのかどうか、明らかにひとつしていただきたいと思います。
  218. 橋口收

    政府委員(橋口收君) いろんな問題について御指摘がございましたが、前段の方から先にお答えを申し上げたいと思いますが、生産数量の制限でおおむね従来は不況から脱出できたということを申し上げたのでございますけれども、しかし三十年の日本経済の過程におきましては、やはり構造転換なり構造変革という事実があったのでございます。たとえば一例を申し上げますと、化学繊維に駆逐された麻糸の場合を考えてみますと、生産数量制限のカルテルを約五年半ほど継続をいたしたことがございます。そういう形で、数年にわたって生産制限を続けながら設備の廃棄を進めるというよりは、やはり今日の構造不況の実態から見ますならば、直載に設備を廃棄する、そういう形をとる方が、より合理的ではないか。仮に生産数量の制限が相当期間継続をいたしましても一向に市況が回復しないという商品がございます。これは考えてみますと、やはり背後に過剰な設備があるということがその一因をなしておるわけでございまして、単に数量制限とか在庫の調整だけでは問題は解決しない。  したがいまして、そういう場合に仮に業界が共同して設備を廃棄したいという申請がありました場合には、先ほど来申し上げておりますような二十四条の三という規定が用意をされておるわけでございますから、したがいまして要件に該当いたしますものにつきましては審査をした上、これを認可する用意がある、こういう趣旨でございまして、いまの先生の御意見でございますけれども、私どもは法制が与えられておりながらそれを活用しないというのは、私は法律の上に眠るものではないか、こういう考え方で、昨年の秋に方針を変えたのでございます。  それから、次の問題でございますけれども、安定基本計画ができました後は、直ちに主務大臣の指示カルテルということになる法制のたてまえにはなっておらないのでございまして、これは法律の第四条に「事業者の努力」という規定がございまして、安定基本計画ができました後におきましても、個々の事業者が設備の廃棄を行ったり、あるいは業界が共同して設備を廃棄をするということは可能でございまして、その場合に、仮に業者が共同して設備廃棄を行うという場合には、繰り返しになりますが、二十四条三の独占禁止法の不況カルテルの要件が十分対応できるのじゃないか、こういう仕組みになっておるのでございます。
  219. 森下昭司

    ○森下昭司君 私は前段のお答えを聞いておりまして、非常に大胆なお考え方をお示しになったと実は思うわけであります。要するに結論的に言えば、法律を休眠させるなということになると思うんであります。そういうお考え方がもしございまして、独占禁止法の二十四条の三で設備廃棄の不況カルテルができるというのならば、私はこういうような法律案で指示カルテルをつくる必要もないと思うのであります。これは個々の産業なり個々の業態が、それぞれ業界——お話がありましたように個々の事業所の判断。できなければ業界の問題になる。そして業界がこの問題をどうするかというようなことでいわゆる問題提起をするようにすれば、個々の業界がそれぞれ公正取引委員会へこのいま申し上げたような設備の制限の不況カルテルをかくかく認めてもらいたいという申請を出しまして、公正取引委員会公正取引委員会立場に立って御審査を願って許可を与えたり、あるいは不許可にする、こういうようなことで問題はなくなってしまうというように理解できるのでありますが、そうだといたしますと、こういう法律案を出すのは私は二重行政の弊害になるおそれがあると思うのでありますが、その点については委員長、どうお考えですか。
  220. 橋口收

    政府委員(橋口收君) これは二つ問題があると思います。その第一の問題は経済についての実態認識の問題でございまして、業界の自主的な共同行為のみによって十分対処し得るというふうに考えるか、それだけでは不十分というふうに考えるかという問題であろうと思います。先ほど申し上げましたように、当方としてはドアをノックすればドアはあきますよということをいわば産業界に対して申し上げたのでございます。申し上げてからわずか数カ月でございますから、まだ今日までドアのノックの音は聞こえてまいっておりません。したがいまして、そういう状態のままで仮に業界の自主的な行動のみによって本当に日本経済がこの状態から脱出できるかどうかという実態認識の問題につきましては、これは通産御当局と同じように、私はそれだけでは不十分ではないか、そういう感じを持っておりますだけに、最終的にはこの法案に賛成をいたしたのでございます。  それからもう一つの問題は、さっき通産省の産業政策局長がちょっとお触れになった問題でございますが、独占禁止法の二十四条の三の不況要件はやや要件として限定をされております。正確に申しますと市場価格が平均生産費を下回っている場合についてのみカルテルが許可になるわけでございます。したがいまして、設備廃棄というような行為はかなり長期間の時間を要すると思います。その間に何らかの事情によりまして需給に変動があって、仮に一時的に市場価格が平均生産費を上回るという状態になりました場合に、独占禁止法の規定ではいささか問題が生ずるわけでございます。  そういう法政上の観点から、今回の法律案によります指示カルテルでありますと、その点の生産費と市価とのつり合いという問題の要件が解消いたしておりますので、そういう点から申しまして、法の運用が長期にわたります場合にはその方がベターではないか。この二つの点から新しい法案に賛成をいたしたのでございます。
  221. 森下昭司

    ○森下昭司君 これはまた、私、矛盾していると思います。公正取引委員会がいわゆる国民の生活を守ったり、あるいは競争制限行為を廃止をする、認めないという立場に立ちますときに、平均生産費を上回った市場価格が出てきた場合に、不況カルテルを認めないというのは当然であります。いまお話の後段で、この法律案によりますれば、いわゆる市場価格が平均生産費を上回ってもカルテルそのものを認めていくんだという考え方は、公正取引委員会の持つ使命からいきまして、私は、矛盾してくるのではないか、かように実は思うわけであります。  そういたしますと、一体二十四条の三に規定するあなた方の解釈による設備の制限という問題と、この法律に基づく設備のいわゆる廃棄を含む制限問題、大きく言えば。という問題とは、公正取引委員会立場から見れば二つの解釈が成り立つ。一つは純公正取引委員会立場一つは、産業政策と対等だと言いながらあなた方が最も恐れている産業政策のしもべに立つような考え方で、いわゆる設備制限というものを考えていくというような理解の仕方しかできないじゃないんですか。そういう理解をしないと、この中における指示カルテルに同意を与える公正取引委員会の姿勢というものを知ることができ得ないと私は思うんでありますが、この点についてもう少し重ねて考え方をお示しいただきたいと思うんです。
  222. 橋口收

    政府委員(橋口收君) これは主務官庁から協議がございました場合に、基本的な考え方でどういうふうに応ずるかという問題であろうと思います。したがいまして、いま私が申し上げましたような事態、つまり将来市価が生産費を上回るような状態になるような範囲まで設備を廃棄するということを容認するかどうかという問題であろうと思います。もちろん遠い将来のことについての的確な展望というものは、これは困難でございますけれども、現在得られる限りの資料なり材料というものに基づきまして判断をするわけでございますから、もっと具体的に申しますと、だれが見ても妥当と思われる範囲、つまりだれが見ても過剰と認められる範囲についてのみ同意を与える、こういう基本的な考え方をとるべきであるというふうに思っております。  もっと申しますと、絶対的過剰分と申しますか、絶対的という言葉が適当かどうかわかりませんが、現状においてだれが見ても過剰と認められる部分についてのみ、同意を与えるというのか公正取引委員会の基本的な立場であります。
  223. 森下昭司

    ○森下昭司君 そういたしますと、法律は五年という一つの時限を限っているわけであります。一応最初に同意をいたしますと、今後のいわゆる見通しいかんにかかわらず、いわゆるその業界は、市場価格が生産費を上回った、いわば産業界の立場からいけば、健全な状況、状態に戻るということに実はなるわけであります。私は、やはりそういう産業界の立ち直りに対しまして、言うならば公正取引委員会が手をかした、結果論からいけば、そういうような問題もなるのではないか。それは委員長自身がその産業自体の立ち直りのために設備の廃棄をどう認めていくのか、具体的にどの程度認めれば生産費を上回る市場価格を回復することができるかどうか、それは判断だということになるわけでありますが、その判断は非常に私はむずかしい問題になるのではないだろうか。なぜならば、安定基本計画という審議会の場で議論がされ、その審議会の場が出されたものを公正取引委員会立場で判断をする場合に、果たして妥当なと申しますか、正しいと申しますか、いう判断をなし得ることができるかどうか、若干の私疑問を感ぜざるを得ないのであります。  たとえば、具体的に一つお尋ねいたしたいんです。アルミニウム精錬業ですね、これはただ単に設備を廃棄しただけでは問題は解決しないと思うんです。こういう問題は安定基本計画でどういうように基本計画が出てくるかということが一つ前提にはなります。前提にはなりますか、この法律案をもとにいたしました場合に、設備を廃棄するということが前提であります。これは生産を幾ら局限して数量制限をいたしましても、コストが高いんですから、たとえば輸入制限をして外国からの地金の輸入を制限するとかいうような並行的な政策がとられない限り、幾ら設備を廃棄したって市場価格は生産費以上にならないんです。ですから、安定基本計画内容いかんによりますというけれども、この法律案の趣旨を前提とした場合に、こういった具体的なアルミ精錬業に対しまして公正取引委員会どうお考えですか。
  224. 橋口收

    政府委員(橋口收君) この法律案の規定の第二条一項の第五号によりますと、設備の廃棄というのは長期の格納または休止まで含んでおるのでございまして、常に廃棄をしなければならないということではございません。つまり、生産力を回復し得る余地を残しておるわけでございますから、したがいまして、アルミ精錬業についてお尋ねがございましたが、具体的な問題についていまここでお答えするのは適当でないと思いますが、設備の廃棄であるか、休止であるか、格納であるか、そういう設備の制限の態様の問題もあろうと思います。それからさらに、現在の判断におきましては、将来まず設備が不足することはないだろうという、いわば絶対的過剰部分について同意を与えました後におきまして、何らかの事情によりまして需要が急増するということもこれはあり得るわけでございますから、そういう場合におきましては、法律の第十二条に規定が置かれておりまして、これは公正取引委員会が指示カルテルを出しました後において、第六条の適正要件と申しますか、消極要件と申しますか、そういう状態に該当しなくなった場合、つまり指示カルテルを出したときの条件が変わった場合には、その指示カルテルの内容の変更あるいは取り消しを求めることができるという規定が置かれておるのでございまして、これがいわゆる措置請求権というものでございます。  したがいまして、先ほど申し上げましたように、現状において人知の限りを尽くして判断をいたしますか、人間のしわざでございますから、絶対に間違いないということはないわけでございまして、もし条件が変わりました場合には、公正取引委員会立場において主務大臣に対して措置請求をするわけでございますから、途中における事情の変更につきましても対処し得る、こういう考え方を持っておるのでございます。
  225. 森下昭司

    ○森下昭司君 そのことをちょっと言っておきますが、廃棄したものは幾ら取り消しを求めたって返ってくるわけじゃないんですよ。最初委員長が、どれだけ設備を——仮に廃棄の場合ですね、あるいは格納にするか、休止にするか別にして、どれだけ格納にし、休止にし、どれだけ廃棄にすれば、いわゆる市場価格が生産費を上回るかという判断の問題だというお話かあったんです。適合しなくなった場合に、幾ら取り消しを求めたって廃棄されたものはもう返ってこないんです、なくなっちゃっていますから。幾ら回復権があるとかなんとか言ったって、できない。とすると、公正取引委員会が、設備の制限という問題は、格納かいわゆる休止かという従来の二十四条の三の範囲しか出ないという結果にもなりかねないという点だけはちょっと指摘しておきたいと思うのであります。  私はアルミ精錬業問題は、これは通産省の方に聞いた方がいいと思うんでありますが、簡単に申し上げておきますが、設備を格納しようが、休止しようか——廃棄でなくてもいいですよ、休止しようが、格納しようが、これはもう生産費が市場価格を上回らざるを得ないような仕組みになっているんです。何かの機会に需要が急増するだろうというお話がありますが、それはそういったこともあるかもしれませんが、その場合でも、言うならば数量制限によっていわゆる価格が上がるか、あるいは物をつくり過ぎて価格が下がっているという面だけではなくって、言うならばコスト高か大きな原因になっているということだけは指摘せざるを得ないわけであります。  さらに私、公正取引委員会関係について質問を継続させていただきたいと思うんですが、そこで、このいわゆる私自身は過去の不況カルテル等の実施のパターンと申しますか、そういったものをながめてまいりますと、たとえば不況による過剰能力の発生が出ますと、当然採算割れがする、不況カルテルの適用をする、価格が回復をする、生産能力の近代化と拡大が行われる、再び過剰能力化という現象か起きる、こういう悪循環を従来は繰り返したことが実情ではなかったかと思うのであります。したがって、もうカルテルが認められなくなった今日、初めて本格的に過剰能力の整理に立ち上がったと、この法律案をもって立ち上がったというふうに私は理解をいたしている一人でありますので、この不況時にカルテルを直ちに安易に適用したところに問題点が一つあるのではないかというふうに思うわけであります。  最近も産業界や実業界の人は、こういうようなときだからこそ昔のように不況カルテルの実施について独占禁止法の運用の緩和を図るべきであるというような意見が非常に強い、また公正取引委員会委員長自身も本年の二月八日の記者会見でありまするとか、先ほど申し上げた十一月段階における経団連の首脳会議等の場におきましてとか、あるいは先ほども通産省の局長が言われましたように、不況カルテルの弾力的運用を図るという点を強調されておりますが、私は従来のパターンからまいりまして、不況時に不況カルテルを安易に認めたところに、先ほど申したパターンによって今日の過剰能力というものが出てきたというふうに考えているわけでありまして、むしろこういうときにこそいわゆる独占禁止法の運用というものはこれは強化をしていくことの方が妥当性を帯びるのではないだろうかというふうに思うのでありますが、不況カルテルの問題等について先ほどもこの場で弾力的運用を図るという通産省側の御発言もございましたので、その点についての公正取引委員会委員長のひとつ御見解をお伺いいたしておきたいと思います。
  226. 橋口收

    政府委員(橋口收君) 産業の行います共同行為、カルテルにつきましては各国ともいろんな考え方を持っておるのでございまして、先生御承知かと思いますが、アメリカはカルテルにつきましては大変厳しい態度をとっております。西独はアメリカに次いで厳しい態度でございまして、一番緩やかな態度をとっておりますのがイギリス、オランダでございます。つまりアメリカ原則として共同行為は禁止をすると、こういう考え方でございますし、イギリスは原則として弊害があれば規制をすると、こういう考え方でございます。日本の法制はそのちょうど中間にあるわけでございまして、一定の不況要件があります場合には共同行為を認めると、こういう制度をとっておるのでございまして、先ほど申し上げましたように、不況カルテルという制度につきましてはいろんな御意見がございまして、いろんな議論がございます。しかしながら、われわれといたしましては独占禁止法を適正に施行する立場でございますから、二十四条の三の法律を不胎化するということはこれは適当でないというふうに思うわけでございまして、したがいまして要件に該当いたしますものにつきましては従来から不況カルテルという認可をいたしてきたのでございます。その考え方は今後とも変わっておりません。  それからただ、お話の中にございましたように、不況カルテルの運用を弾力化するとか弾力的運用というようなことがございましたけれども、たとえば設備の共同廃棄を不況カルテルの対象にするという考え方は、これは見方によっては独占禁止法の弾力的運用ということでございますけれども、私どもは必ずしもそういうふうには考えておらないのでございまして、独占禁止法の厳正な適用領域の拡大というふうに考えておるわけでありまして、そういう点から申しまして、昨年改正されました独禁法の強化の路線に沿うものだというふうに考えておるわけでございまして、いまお話がございましたような世界的な大勢、ことに昨年日本におきまして三十年ぶりに画期的な改正独禁法か施行された、こういう事実は十分踏まえて対処いたしておるつもりでございます。
  227. 森下昭司

    ○森下昭司君 ここにことしの四月十二日、東京商工会議所第二百五十九回常任委員会決議というのがございます。その中にも、「設備廃棄を進めるに当たり、生産調整等が必要とされる場合には、不況カルテルの認可等を弾力的に行うこと」という「構造不況産業対策に関する要望」というものが決議をされているわけであります。こういうようにいま厳正な執行の拡大だというふうに委員長考えになりますが、世上では弾力的運用という言葉になってあらわれている。このこと自体が公正取引委員会の基本的姿勢にいわゆる批判が行われる場合もあるのではないだろうかというふうに思うわけでありまして、きょうは予定をいたしておりました時間が来てしまいまして、なお細かい点についてお尋ねをいたしたいと思いますが、その点はひとつ次回に譲りまして、質問終わりたいと思います。
  228. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 他に御発言がなければ、本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十六分散会      —————・—————