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1978-04-11 第84回国会 参議院 商工委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月十一日(火曜日)    午前十時十四分開会     —————————————    委員異動  三月三十一日     辞任         補欠選任      中村 利次君     藤井 恒男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         楠  正俊君     理 事                 大谷藤之助君                 福岡日出麿君                 対馬 孝且君                 安武 洋子君     委 員                 岩崎 純三君                 下条進一郎君                 中村 啓一君                 真鍋 賢二君                 大塚  喬君                 小柳  勇君                 馬場  富君                 峯山 昭範君                 藤井 恒男君                 柿沢 弘治君    国務大臣        通商産業大臣   河本 敏夫君    政府委員        通商産業政務次        官        平井 卓志君        通商産業大臣官        房審議官     島田 春樹君        通商産業省通商        政策局長     矢野俊比古君        通商産業省通商        政策局次長    花岡 宗助君        通商産業省貿易        局長       西山敬次郎君        通商産業省産業        政策局長     濃野  滋君        通商産業省立地        公害局長     左近友三郎君        通商産業省機械        情報産業局長   森山 信吾君        通商産業省生活        産業局長     藤原 一郎君        資源エネルギー        庁長官      橋本 利一君        資源エネルギー        庁石炭部長    宮本 二郎君        資源エネルギー        庁公益事業部長  服部 典徳君        特許庁長官    熊谷 善二君        中小企業庁次長  児玉 清隆君        中小企業庁計画        部長       小松 国男君    事務局側        常任委員会専門        員        町田 正利君    説明員        労働省職業安定        局業務指導課長  田淵 孝輔君        自治省財政局調        整室長      小林  実君        日本国有鉄道常        務理事      吉武 秀夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (石炭政策に関する件)  (危険ボタ山危害防止対策に関する件)  (産炭地域振興整備に関する件)  (不況に伴う諸問題に関する件)  (景気浮揚対策に関する件)  (石油タンカー備蓄に関する件)  (中小企業円高対策に関する件)  (円高による為替差益問題に関する件)  (対アジア諸国との経済関係に関する件) ○特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律  案(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る三月三十一日、中村利次君が委員を辞任され、その補欠として藤井恒男君が委員に選任されました。     —————————————
  3. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  4. 小柳勇

    小柳勇君 きょう時間を得まして石炭政策産炭地振興と、それから危険ボタ山崩壊防止及び最近発生いたしました安川電機あるいは月星ゴムなどの合理化に対する緊急措置についての質問であります。以上四点で質問いたします。  まず第一に、石炭政策のところでは大きく石炭政策とそれから鉱業権設定の問題で質問をいたします。  まず通産大臣に、石炭政策現状というものを私も読ましていただいております。特に、国内炭についてはもう一応の限界でありまして、これから輸入炭及び調査をして新たに輸入基地をつくろうという方向にあるようでありますが、全般的な石炭政策と、それから新たに調査活動を起こす国際的な石炭見通し、そういうものについて、石炭政策全般についての大臣の御見解をお尋ねいたします。
  5. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まず、エネルギー全体において石炭の果たす役割りでありますが、昨年の八月に総合エネルギー政策中間答申通産省の方がちょうだいをいたしておりますが、これからは石油がだんだんと減る傾向になりますので、それにかわって石炭が大きな役割りを果たすことになります。  そこでわが国といたしましても、石炭対策というものをこれまで以上に重視していこう、日本だけではありません、世界全体が石炭政策を重視していこうという傾向にありますから、その中にありまして、日本といたしましても今後は石炭にウエートをより一層大きくかけていこうと、こういう考え方でございます。  もう少し具体的に言いますと、国内的には二千万トン体制堅持をしたいと考えております。二千万トン体制を続けるための幾つかの対策が必要でありますが、その諸問題は解決をしていきたいと考えます。  それから、あわせまして、国内石炭はおのずから限界がございますので、海外からの輸入石炭、これを大きく伸ばしていきたいと考えておりますが、これまでは原料炭輸入中心でございましたが、この原料炭も一時的には減っておりますけれども、中長期的に見ますならば、さらに相当ふえるのではないかと考えられますが、あわせまして発電用石炭、これを昭和六十年には千六百万トン、昭和六十五年には四千万トン発電用炭としての開発輸入を進めていきたい、いまこのように考えております。だから、今後は一般炭につきましては開発輸入とそれから国内の二千万トン体制堅持と、この二本柱を中心といたしまして石炭政策を進めていきたいと考えておるところであります。
  6. 小柳勇

    小柳勇君 いまの開発輸入の問題で一、二お聞きしたいのですが、先般通産省予算勉強会でも開発輸入に対する予算の計上がありまして、どういうところを目途に開発輸入考えておられるのか、具体的なものがあればお聞かせ願いたいと思います。
  7. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 御承知のように、石炭というのは石油と違いまして、世界の至るところにある。特に太平洋をめぐる各地域にも非常に石炭賦存量が多い、こういうことでございます。特に豪州地域等につきましても、二、三のわが国企業がアプローチをしておるということを聞いております。豪州に限らずその他の地域においても賦存量が多いということでございます。
  8. 小柳勇

    小柳勇君 いまの言葉はっきりしませんが、豪州という言葉だったように思いますが、豪州だったですか、いまの言葉は。
  9. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) オーストラリアでございます。
  10. 小柳勇

    小柳勇君 豪州はもういままで石炭は来ているんですからね。私どもが聞いたのは、豪州とかカナダとかというようないままで輸入しているところではなくて、別に開発しなきゃなりませんと、そういうような話だったからきょう特に質問しているわけでして、ここにもありますが、海外炭開発輸入の促進、開発に対する保証、このための公益事業団設置等開発輸入体制整備と書いてあります。この前勉強して、時間が足らなかったものだから、いま質問しているわけですが、もう一つ、この間経済団体中国で五百万トンぐらいの長期契約をしてこられたようでありますが、そういうものはこれには入ってないんですね。
  11. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 中国ももちろん輸入ソースとしては考えておるわけでございますが、いわゆる開発輸入という場合に、日本企業が現地へ赴きまして、開発可能性調査あるいは探鉱事業等もやるわけでございます。中国の場合は、中国採掘したものをわが国輸入してくるというかっこうに、お国柄としてなるんではなかろうかと思います。地域としてはもちろん中国考えておりますが、単純輸入になるだろうと思います。
  12. 小柳勇

    小柳勇君 さっきの豪州炭の話、予算は組んであるんですよ、開発費。ちょっといま数字は忘れましたが。まず予算を言ってください。だれか詳しい人がいたら、それちょっと開発輸入予算とそれから具体的な計画があるような話だったから聞いているわけでして、ないならないでいいです。
  13. 宮本二郎

    政府委員宮本二郎君) お答え申し上げます。  五十三年度の予算におきまして、海外開発関係予算を申し上げますと、海外炭開発可能性調査補助金一億二千五百万、それから海外炭探鉱資金貸付金二億五千二百万、それから海外炭開発資金債務保証基金一億一千万、大体合計で五億程度の予定でございます。それで、これにつきまして現在のところ、実績がございますのは上の二つでございまして、大体豪州それからカナダと両方にわが国企業がこの制度を利用いたしまして探鉱をいたしておる次第でございます。
  14. 小柳勇

    小柳勇君 そうすると、いままで豪州カナダから買っている輸入炭のほかに、みずから開発調査する、こういうことですか。
  15. 宮本二郎

    政府委員宮本二郎君) 原料炭につきましては、すでに六千万トン程度輸入しております関係でかなり開発輸入豪州カナダで行われて大量に入っております。一般炭につきましては、輸入数量割り当て制度を厳しく実施いたしておる次第でございまして、大体一般炭の、燃料としての石油に基づく情勢がございましたために、一般炭国際貿易というのは非常に少のうございます。それで、現状は今後輸入を拡大しようということで、本年度におきましては一般炭輸入は八十万トン程度、その程度でございます。
  16. 小柳勇

    小柳勇君 先輩や通産省努力で、石炭産業というのが一番計画的であるし、何といいましょうか、見通しもちゃんと立っております。にもかかわりませず、さっき大臣の話のように、二千万トン出炭目標をとおっしゃっておるので、少し外向けの話は非常にルーズなんです。たとえば実績を見てみましても、四十八年ごろ二千九十三万トンのがもう五十一年の暮れには一千八百三十三万トンに下がっています。これを二千万トンに上げるということは大変なことです。にもかかわらず、いや二千万トン体制ですと言ってPRしている。石炭産業計画性が確かであればあるだけに、そういうものがベースになってこれから産業計画などしなきゃならぬでしょう。他のエネルギーなどは見当がつかぬのです。いまは一番この石炭というのが頭の中にはっきり入りますね、計画的に。それをたとえば千八百三十三万トンしかないのに、二千万トン出炭と、こう言っているもんだから、あたかもそれがベースのようにして今度はほかのエネルギー計算していくわけです。  そういうところにもいまの産構審の計量ができないような大きな問題点があるんじゃないかと思って、わざわざこれを一つの問題としていま取り上げておるわけでして、だから、たとえば五億の金でうんとこの出炭ができるなんて言っても考えません。考えられぬ、それは。ただ、豪州からもカナダからも輸入しているんだから、そのほかにまた豪州カナダに金かけて日本自体調査いたしておりますということも、それは考えとしてはいいけれども、すぐこれを、エネルギーの中の部分として計算に入れることはなかなか大変じゃないかと思うが、どうですか。
  17. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 私たちは、海外炭開発輸入というものを国内一般炭需要開発需要の拡大に結びつけて考えておるわけでございます。もちろん二千万トン維持するためには、生産技術面から効率的で安全な出炭ができるようにする必要もございますが、一方で利用技術開発いたしまして、需要部門を広げていくということも必要かと思います。さまざまの努力も必要でございますが、一般炭需要を拡大するための一番端的なあらわれといたしましては、石炭火力を進めていくということになろうかと思います。その場合に、石炭火力を建設する企業といたしましては、それに供給される一般炭が量的、質的に確保されるということが前提になってくるわけでございます。そういった場合に、私たち計画的に海外一般炭開発輸入いたしまして、それと国内炭とブレンドいたしまして、必要とする一般炭確保したい、こういう考え方、基本的な立場開発輸入をやろうとしているわけでございます。  そういう本来の趣旨でございますから、当然国内一般炭を優先的に活用する。その足りないところを海外炭で補完しながら、必要とする量を確保していく、こういう考え方で対処してまいりたいと、かように思っているわけでございます。
  18. 小柳勇

    小柳勇君 いや、考えはそれでいいですけれども、わかっているんですよ。わかっているが、言葉が、われわれがやっぱり千八百三十三万トンなら、それでエネルギー計算していかなきゃならぬわけです。将来二千万トン確保しますということは当然なことですけれども、簡単でありませんそれは。簡単でないことをあたかもそれがすぐできるような錯覚を与えて論議はできないのですよ。そういうものをいま言っているわけでして、だから開発はうんとがんばってやってください。そのための金五億ぐらいはとてもそれは大変だと思うが、もしそれがめどが立てばうんと金を使う、そんなものが本当の政策じゃないかと思いますから、このことだけ言っておきます。これは一つのポイントとしていま質問したわけです。  次は、鉱業権の問題について質問いたします。  私は、去る三月十七日に危険ボタ山崩壊防止緊急措置法案を提案をいたしていますが、これをつくりまして一番大きな問題点は、多くのボタ山鉱業権者が無資力であったり、所在がわからない。だから、ボタ山の整理ができませんというのが県、市町村の言い分なんですよ。この鉱業権設定するときのやり方をもっと変えていかなければ、将来もこういうことが起こるんではないかと思うわけです。で、鉱業出願許可は現在どのような基準で行っておるのか質問いたします。
  19. 宮本二郎

    政府委員宮本二郎君) 鉱業権設定基準でございますが、これは鉱業法によりまして許可する場合の積極的な基準が具体的に並んでおるわけではございませんで、石炭鉱業区の設定一般鉱物同様先願主義でございます。設定に当たっては、都道府県知事とも協議するということが要件になっております。それで、一般に逆に法律の中では鉱区設定できない場合が条文として書かれておりまして、たとえば鉱業法公益一般公益に非常な影響を与える、そういったところの鉱区禁止区域、それから日本国民日本法人申請者がない場合、それから採掘する価値のない場合、明らかにそういう鉱区が存在しない、そういう価値のない場合、こういう場合に設定できない、こういう規定になっております。  なお、石炭鉱区の場合には、このほかに追加的要件がございまして、石炭鉱業合理化事業団その他によりまして、閉山いたしました後の鉱区、消滅しております鉱区がございますが、そこへの鉱区設定原則的に禁止されております。ただこれには若干例外規定ございまして、隣接鉱区その他と一体的に開発するのが有効である場合には、例外的に設定できる場合がございますが、原則禁止でございます。  大体鉱業権設定につきましては以上のような規定になっておる状況でございます。
  20. 小柳勇

    小柳勇君 それでは、石炭亜炭目的とする鉱業権と、それ以外の鉱物目的とする鉱業権の付与については許可基準に違いがあるのかどうか、お聞きします。
  21. 宮本二郎

    政府委員宮本二郎君) 石炭の場合には、先ほど申しました合理化事業団措置によりまして、閉山しました鉱区原則禁止規定、これだけが一般鉱物石炭との差でございます。
  22. 小柳勇

    小柳勇君 もう一回ちょっと、よくわかりません。
  23. 宮本二郎

    政府委員宮本二郎君) 石炭鉱業権の場合には一般鉱業権の場合と同様でございますけれども、差がございますのは、石炭鉱業合理化事業団措置によりまして消滅した鉱区がございます。石炭鉱業権を消滅させた閉山地域でございます。そこの閉山した消滅鉱区に新たに設定する場合には、原則として石炭の場合には禁止されておる。これが一般鉱物石炭の場合の差でございます。あとは同様ということでございます。
  24. 小柳勇

    小柳勇君 もちろん、それは閉山した後は危険だから許可しないでしょうけれども、聞いているのは、石炭鉱業権と、たとえばこれから大陸だななどの採掘権などの問題がありますが、その許可基準は違いますかと聞いているんです。
  25. 宮本二郎

    政府委員宮本二郎君) 別に差はございません。
  26. 小柳勇

    小柳勇君 先願主義とおっしゃいましたので、その先願主義というので問題が発生しておるのではないかと。たとえば、資力のない者でも先願しておけば、その人が優先して石炭を掘る。そして、もう自分がいいところだけ取ったら、後はボタ山がどうなろうと鉱害がどうなろうと行方不明になってしまう。そんなのがいまのあの危険ボタ山なり閉山地区惨状じゃないかと思うんですよ。したがって、その先願主義に対する私は能力主義、ちゃんと後の始末ができるような資産の問題などを、一つ基準として採用しなきゃならぬと思うが、どうですか。
  27. 宮本二郎

    政府委員宮本二郎君) 鉱業権設定の場合の資格についての先願主義をどうするかという問題は、これは鉱業法自身体系に関与するもので、非常にむずかしい問題であろうかと存じますが、実は鉱業権設定いたしますれば直ちに石炭が掘れるわけではございませんで、現に、日本の場合でございますと、坑内掘りになるわけでございますが、坑口開設許可基準というのがございます。合理化法生産数字や何かを押さえておりますし、それから、現実に採掘段階に至りました場合に、施業案認可ということで、この施業案認可がございませんと採掘ができない、こういう状況になっております。施業案認可に当たりましては、資源の合理的な開発、それから鉱害防止保案確保、こういった基準施業案認可がなされておる次第でございます。
  28. 小柳勇

    小柳勇君 昭和三十七年三月に鉱業法改正審議会答申で、亜炭石炭鉱業権については能力主義を採用すべきであるという意見も出ております。それが今日まで実現しないというのは、さっきおっしゃったように先願主義を重点にしてやっておられるからだと思うが、掘るだけ掘って、いいところだけ取って、後はもう鉱業権者が逃げてしまうような、それをほったらかしておった。そういうものがいまのあの閉山地区惨状じゃないか。そういう見解についてはどうお考えになりますか。
  29. 宮本二郎

    政府委員宮本二郎君) 鉱業権鉱山閉山に当たりましては、実は鉱害債務、それから賃金債務、こういったものを全部閉山交付金ということで補助をいたしまして、そういうかっこうで実は閉山いたしておる次第でございます。それで残る一般保安問題につきましては、鉱山保安法で、鉱業権消滅後五年間は管理をする、こういうような体系になっておるのが現状でございます。
  30. 小柳勇

    小柳勇君 それじゃ、いまあれだけ閉山されておりますけれども、あの閉山された山で鉱業権者が不明などというのが通産省調査報告に出ておりますけれども、許可された鉱業権者閉山したその後の状態など調査されたことがございますか。
  31. 宮本二郎

    政府委員宮本二郎君) 先生のおっしゃいますボタ山につきましては、調査をしたものと承知いたしております。
  32. 小柳勇

    小柳勇君 この石炭鉱業権だけじゃなくて、いろいろ問題が今後も発生してまいりましょうが、これは大臣見解を聞いておいた方がいいと思うんです。鉱業権許可する場合、特に、採掘権に、なりますけれども、そのときに、その鉱業権を持つ人が石炭なりその他の鉱物採掘して、それでその後始末もできないようなものに、先願主義を優先して許可することは、将来とも国土を大変疲弊させはしないかと思うわけですね。したがって、鉱業権を与えるときは能力を十分考えて、そしてその会社の実態など、将来に対しても後始末ができるかどうかということを十分に調査した上でなければ許可しないという原則を確立しておかなければならぬと思いますが、いかがでしょうか。
  33. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 先ほど石炭部長からお答えいたしましたように、鉱業権設定する場合には一般先願主義をとっておりますが、施業案認可段階におきまして、資源合理的開発のほかに鉱害防止あるいは保安確保といった観点から判断いたしまして、認可の適否を決めるという法体系をとっております。  一方、御指摘ボタ山の問題につきましては、鉱山保安法におきまして、採掘権者に対しまして、危害または鉱害防止立場で必要な措置をとるように義務づけをいたしておるわけでございます。ただ、三十九年度以来ボタ山災害防止工事補助金制度、こういったものを設けまして、義務者が無資力または存在してないものにつきまして、地方公共団体が行うボタ山災害防止工事に対して国が補助金を交付する、こういう体系現状はなっておるわけでございます。その体系で対応いたしておるわけでございますが、鉱業法の中に、能力主義を入れるかどうかということは十分検討すべき問題だと思います。いままでずっと先願主義のみで来ておるわけでございますが、鉱業法の中に能力主義を導入するかどうか、先ほど先生指摘になりました三十七年の審議会でも答申されておるわけでございます。今後の検討課題といたしたい、かように考えるわけでございます。
  34. 小柳勇

    小柳勇君 いま一つは、後でまた危険ボタ山整備質問をいたしますので関連して質問しておきますが、通産省調査を見てみますと、鉱業権者がそのままある人もあります。不明というのもあります。不明については調査をされたかどうかというのが一つと、鉱業権者がわかっておる人に対しては、その会社なり個人に対しては、ボタ山を処理するように勧告なり指導なりやるべきであると思うが、そのやった事実があるのかないのか、関連して聞いておきます。
  35. 左近友三郎

    政府委員左近友三郎君) 鉱業権者が存在する場合のボタ山対策でございますが、これについては、鉱山保安法規定によりまして、危害防止とそれから発生する鉱害防止ということから、必要な工事を義務づけております。したがいまして、このボタ山危害防止、扞止堤をつくったりあるいは水路をつくったりいたしまして、付近の住民に危害を与えない、あるいは鉱害を出さないというふうな工事をやらしておるということは、あらゆる鉱業権者に対してやっておるわけでございます。
  36. 小柳勇

    小柳勇君 その仕事をやった後、調査したことがございますか。現にやった跡形はないじゃないですか。
  37. 左近友三郎

    政府委員左近友三郎君) これについては、鉱山保安監督局において定期的に監督検査をやっておりまして、鉱山保安監督官巡回検査をやっておるわけでございます。
  38. 小柳勇

    小柳勇君 産炭地振興の問題に入りたいんですけれども、いま危険ボタ山の排除の話に入りましたから、二、三質問いたしておきましょう。その方がかえって話が——危険ボタ山が、いまその処理の法律を出しましたけれども、全国に一体ボタ山というのがどのくらいあるのか、その中で通産省危険ボタ山と指定したのがどのくらいあるのかお聞かせください。
  39. 左近友三郎

    政府委員左近友三郎君) 私の方の調査では、全国ボタ山が大体九百七あるという計算になっております。そのうちで、鉱山保安法対象になっておりますものが大体三百四、それから先ほど申しましたものについては鉱山保安法対象外になっておるもの、つまり義務者不存在、無資力という者が六百三ということになっております。その中で工事が必要とされる、つまり危害防止工事が必要だというものについては九州地区で大体百四十カ所ぐらいあるという調査になっております。
  40. 小柳勇

    小柳勇君 先般福岡県を調査いたしました。あと佐賀県なり長崎県なり、北海道なりを調査してと思いましたけれども、時間もありませんし、また今後佐賀県なども一緒に行って調査したいと思っていますけれども、福岡県だけの調査をいたしましても、危険ボタ山だけで九十ぐらい通産省が認定しています。そして現在やったのはまだ十二、三です。あと全部残っています。しかも、やりました工事も土砂の流出を阻止するだけの防壁、へいみたいなのをやっているだけですと言うのです。これではまた雨が降れば流れてきますし、県などが言うのは、現在のような三分の二の予算で、ただ防壁だけやりましても、これはボタ山の処理ないし災害防止でもございません、根本的に国がやってくださいと言っているわけです。ボタ山整理は国がやってくださいと。国が鉱業権設定をして、許可をしてやらした事業の後始末ではございませんかと、それを県や市町村がいま市町村などはたとえば工業団地やあるいは公園をつくる、そういう喜びで金をかけて自分でやっていますけれども、県はただもう県の費用と国の費用で防壁をつくるだけですと、これでは永久にこの危険ボタ山が残りますと言っているわけですね。  したがって私どもは、いまのこの失業者多発のときでもありますから、ボタ山処理などを雇用創出の一つの方法とも考えて、国土をりっぱにしようと、たとえば私どもが国をずっと回りまして、ボタ山と、荒れ果てた炭住と公害と、もう目を覆うばかりです。本当にもう政治家として心あるならば歩けないくらいです。それをもう石炭産業が廃退いたしまして二十年でしょう、それがまだ野放しですね。風が吹けば砂が飛んでくる、雨が降れば流れる、そして川を埋めてしまう。たとえば最近宮崎大学などで牧草が開発されて、年に三回トウキビみたいなのが成長するそうです。牧場をつくったらどうかとか、あるいは青年向きのゴルフ場をつくったらどうかとかいろいろ——あるいは公園つくったらどうかとかあるいは野球場をつくったらどうか、いろいろ案はあるというわけです。ところがそれには金が足りませんと、しかも鉱業権者が文句言って入られぬ、立ち入りもできないというようなことですね。しかもそのボタ山のある土地の所有者と、ボタの所有者が違いますと。だから土地の方の人はやってくれというけれども、ボタの所有者は、私は知らぬと言う。  そういうものがいまのあの惨状です。それは佐賀県も長崎県も同じだと思う。北海道も、常磐も同じだろうと思うですよ。したがって県や市が言うのは国の責任じゃございませんかと、鉱業権設定して石炭をとらした、そうして相当の利益も得た者がおるだろう、その後始末を県や市町村だけにやらせるのは酷じゃありませんかと。もちろんそれはりっぱになったら、それは県の土地であるし、市町村の土地でありますから、それはわれわれはそれをりっぱにしたいと、ただ金もないし、ということです。したがってここに危険ボタ山の、——だからボタ山全体と言いますと、ボタ山所有者が、いや私はもうそれでいいですと言ったら、どうも手をつけられぬというわけです。しかし危険ボタ山ならば、これは公益上やらなきゃならぬでしょうからということで、私は危険ボタ山と限定いたしました、法律を。そういう配慮をしております。  言うならば、危険ボタ山全国で百ぐらいあると思いますけれども、あるいは長崎県、佐賀県など、北海道を加えればもうちょっとふえるかもわかりません。少なくともそういうものは五年ぐらいのうちに国が責任を持って排除すべきである。鉱業権設定さした国の責任であると、私もそう思うし、県、市もそう言っています。もしどうしても国直轄はできないならば、地域振興整備公団などもちゃんとありますから、地域振興整備公団などの仕事の分野を広めて、そうして予算をつけて、また利益が出たら利益を還元したらいいんですから、ゴルフ場になったらゴルフ場からちゃんとその工事料を取ったらいいんだから。そういうような方向を考えられないものであろうかと。まだいまは議運にこれ、かかっておりまして、法律商工委員会に来ないから、この法案の審議はできませんけれども、私はそういうことでいま危険ボタ山の処理の法律を出しています、社会党が。それは危険ボタ山の処理と同時に雇用創出も考えています。そういうことでこのボタ山処理に対する見解大臣からお聞きいたします。
  41. 左近友三郎

    政府委員左近友三郎君) 大臣の御答弁の前に、事実関係を少し申し上げさせていただきたいと思います。  このボタ山崩壊防止の問題につきましては、従来からいろいろ検討してまいったわけでございますが、従来のやり方は、要するに鉱業権者がおりますときは鉱山保安法に基づきまして危害防止のための措置を義務づける、それから先ほどエネルギー長官が申しましたように、義務者が不存在の場合あるいは無資力という場合には県が工事をやりますが、それに対してはボタ山災害防止工事補助金制度というものを創設いたしまして、これについて国が三分の二補助をしながら工事をやっておるということでございまして、地方公共団体の負担を相当軽減する措置を講じておるわけでございます。  ただ先生おっしゃいますように、この危害防止工事のやり方でございますが、鉱山保安法考えております危害防止というのは、とにかく崩壊しない、あるいは鉱害が発生しないということを念頭に置いて処理をしておりまして、それに対する必要な崩壊防止措置、たとえば、扞止堤を設けるとか、水路を設けるということで、現在われわれとしては危害防止が十分なされておるというふうに考えておるわけでございますが、そこを抜本的にそれを除去してしまう必要があるかどうかということについては、やはり諸般の情勢を考えなければいけないし、あるいは個々のケースについて検討を要するんではないかというふうに考えておりますので、従来からの考え方は、やはり先ほど申しました鉱山保安法と、それから補助金制度の運用によってやっていくということで、現在まで地元の御了解も得て進めておるというふうにわれわれは考えておるわけでございます。
  42. 小柳勇

    小柳勇君 いまの局長言葉じりをとらえるんじゃありませんけれども、危険ボタ山の危険だけは防止しているといまおっしゃったけれども、そういう認識でやるならあなたは交代してもらいたいと思うんですよ。  県の陳情やあるいは市町村の陳情など受けられたこともあるだろうし、私どもは実際現地を見た上でいま問題にしているわけですよ。現地の通産局だって、危険ボタ山が全部完全に危険性をなくしたと、そういう答弁はありません。私は、それは怠慢だと思う。立地公害局長やめてもらいましょう。大臣見解聞きましょう。
  43. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) このボタ山の問題は、これは長年の懸案でもございますし、政府といたしましても、先ほど局長が答弁をいたしましたような方向で取り組んできておるところでございます。今後とも、いま局長の答弁をいたしましたような方向で、全力を挙げてまいりたいと考えております。
  44. 小柳勇

    小柳勇君 ボタ山処理の問題については、立地公害局長のおかわりになった後でやりましょう。そういう見解では話になりません。  それでは、次は産炭地振興の問題を質問いたします。  まず、鉱害復旧の問題について質問をいたしますが、これももう毎年陳情も受けましたし、国会でも問題にしてまいっております。現在の五十二年度末の鉱害復旧の進捗率についてまず報告を求めます。
  45. 宮本二郎

    政府委員宮本二郎君) お答え申し上げます。  鉱害復旧につきましては、昭和四十七年以来十年間でこれを処理しようということで、農地については七千二百ヘクタール、家屋については約二万六千、こういうものを予定して、年々鉱害復旧をやってきておるわけでございます。最新の時点で、五十二年度末の進捗率、これを試算してみますと、農地につきましては、これは物量ベースで約三五%、家屋について約五五%、こういうことでややおくれを見せておる、こういうような状況でございます。
  46. 小柳勇

    小柳勇君 石炭鉱業の跡地、閉山地は、下の方はもう全部空洞なんですよね。それで新しい鉱害が五年ぐらいで安定しますが、また古い鉱害は十年ぐらいで安定いたしますが、ところが、その一つの層は五年か十年で安定するけれども、その下にまた層がありますから、ずっと鉱害が累積してきているわけです。二、三年いきませんと——田舎の方で一メーターぐらい道路から家が下がっているわけですよ。で、このボタ山やあるいは荒れ果てた炭住や鉱害、本当にもう地元の心ある者ならば、どうしようもないものを感じます。  いま、進捗率についてはおっしゃいましたけれども、これを完全に、もう福岡県、あの筑豊炭田は全部済んでいます。山も全部閉山です。鉱害復旧はいつ完全に終了いたしますか。
  47. 宮本二郎

    政府委員宮本二郎君) 昭和五十六年までの十年間で処理する計画で現在まで進めてきておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、ややおくれを見せておるわけでございます。そういう関係で、当方といたしましては、これに最大の重点を置いて復旧に努力いたしておる次第でございまして、五十三年度予算におきましては、石炭勘定全体の増加分の六二・五%を鉱害復旧に充てておる、こういう次第でございます。  今後とも、長期計画の達成を目標に、とにかく最大限の努力をいたしたい、こういうのが現在の私どもの心境でございます。
  48. 小柳勇

    小柳勇君 産炭地振興計画全般に対する基本姿勢を質問いたします。  五十二年の八月に改定された産炭地振興計画の、計画改定の基本的考え方を見ると、現に石炭を生産している地区の環境問題、生産態勢については後ろ向きの表現であるが、このような地域に対する通産省の基本姿勢をお尋ねをいたします。これは衆議院商工委員会でも質問しておるようですけれども、もう一遍質問しておきたいと思います。
  49. 宮本二郎

    政府委員宮本二郎君) 産炭地振興につきましては、昨年八月、その実施の基本となります産炭地域振興実施計画を改定いたしました。改定について産炭地振興審議会答申を八月に得まして、その趣旨を踏まえまして十一月に計画の改定を行いました。  今後、その改定いたしました計画の線に沿いまして、引き続き産業基盤の整備企業の誘致、地方財政援助等の施策を進めていく次第でございますが、特にその計画改定の際指摘されました点といたしましては、いわゆる六条地域の基盤整備を促進すること、それからもう一つは、六条地域の中でも疲弊の著しい地域に対する企業誘致の促進、この二点につき特に配慮いたしたい、こういうように私ども考えておる次第でございます。
  50. 小柳勇

    小柳勇君 次は、地域振興整備公団の仕事の問題でございます。  地域振興整備公団が工場団地などの造成をやってこれを譲渡しておりますが、なかなかいま工場団地も売れないような情勢です。それで、もう少し仕事を広げて、たとえばボタ山処理とかあるいは炭住の改良とか、あるいは跡地利用で公園をつくるとかグラウンドをつくるとか、そういうことまで、いわゆる閉山跡地の整備事業ができるように、地域振興整備公団というものの業務を拡大するお考えはないかどうか、お聞きいたします。
  51. 宮本二郎

    政府委員宮本二郎君) 地域振興整備公団の業務につきましての、いわゆる閉山跡地の整備対策ということについての業務拡大のお話でございますが、地域振興整備公団、これは御案内のとおり、産炭地振興のための企業の誘致ということのために、工場団地造成事業をしておるわけでございます。現に、工場団地を造成しますために、その土地の利用といたしまして、ボタ山を利用いたしまして団地を造成いたしております。たとえば九州でございますと——全国平均で約半分近くの団地は、とにかくボタ山をつぶしまして利用しておる、こういうような状況でございます。  要するに地域振興整備公団といたしましては、跡地整備と俗に言うんでございますが、単なる整備そのものだけを目的にしてやはり国費を使うというのはいろいろ問題があるのではないだろうか。やはり跡地を何に利用するかという観点において国費を投じ、それを整備していくと、こういうことではないかと、このように考える次第でございます。いわば地域振興整備公団としては、やはり工場団地の造成ということに任務があると、その所掌上限らざるを得ない。その範囲において利用できるボタ山はすべて利用していく、こういうような方向で考えざるを得ないのではないかと思っております。  なお、ほかの跡地につきましては、昭和四十七年から五十二年の間、当方の調査によりますれば五年間で約七十ヘクタールのものが地方公共団体に公共事業用用地として提供いたしております。道路、住宅、学校、工業用地、水道、公園、こういうかっこうで公共事業の用地として利用されます場合には、これは産炭地でございますれば産炭地振興法によりまして補助費をかさ上げしたり、いろいろ助成措置を講じておる次第でございます。  なお、炭住のお話がございましたわけですが、炭住につきましても炭住改良事業、これにつきまして住宅地区改良法の適用によりまして市町村に対し約全体の八三%の費用を、実質的に計算いたしますと八三%の国庫補助がいろんな形で出ておる次第でございまして、そちらの市営というかっこうで、市の事業ということで現実は進めていくべきものではないだろうか、このように考えている次第でございます。
  52. 小柳勇

    小柳勇君 もちろん、公共事業の場合についてはやれるということでしょうが、私が言っているのは、いまたとえばボタ山処理にいたしましても、跡をただ危険性を除去するんではなくて、国土として再生すると、そういうような立場からいたしますならば、地方公共団体がやるよりもむしろ地域振興整備公団がやって工場団地を誘致するように、と同じような立場で国土利用の方向の仕事ができないのであろうかと。もちろん法律上できませんから、それは法律改正しなきゃなりませんが、閉山跡地の整備事業としては地域振興整備公団が一番仕事もわかっているし、まとまってできはせぬかと思うわけでして、いま工場団地をつくりましてもなかなか誘致工場はないわけです。しかも、誘致された工場はこの間もう閉鎖いたしました。一応誘致しますけれども、これから論議します不況産業のあおりなどで会社は撤退していきます。せっかくつくりましても工場団地に来る工場がないわけですよ。それは工場団地と言うから来ないんであって、たとえばグランドにしたり、あるいは青年のスポーツ振興のためにいろんなものもできましょうし、あるいは公園もできましょうし、そういう広い仕事ができないものであろうかと、そういう方向にもっと事業拡大をする意思は全然ございませんか。
  53. 宮本二郎

    政府委員宮本二郎君) いろいろ跡地につきまして公共事業の一環として、公共用地として、地方公共団体に買い取っていただきまして利用されておるわけでございますけれども、地域振興整備公団、やはりこれはわれわれといたしまして企業誘致によるそういう工業出荷額を通じまして、その所得向上を図るという観点からできている機関でございます。もちろん工場団地利用度が、特に筑豊の六条地区の奥地につきましては譲渡率低いし、われわれとしても非常に問題持っておりまして、その誘致に努力しておる次第でございますが、これを地域振興整備公団が住宅団地や何かというわけには、これはおのおのそこの専門のつかさつかさの機関がございます、そちらの方でやはり考えていただく。これが行政の一つの筋ではないかと私ども考えざるを得ないのでございます。
  54. 小柳勇

    小柳勇君 先般、地方自治体とも相談した過程で、閉山地区整備については特に危険ボタ山の処理なども地方自治体がやるより、むしろそれだけの金を地域整備振興公団の方に回して、振興整備公団の方でおやりになって、そして今度はそれをたとえば利用して、そこから利益が出たらそれでペイしていったらいいではないかというような意見もありました。これは後またボタ山処理の法案の審議のときに再度問題にいたしますけれども、もう一度、通産省でこの地域振興整備公団の仕事の内容をもう少し拡大をして、閉山地区の振興、国土の再利用、そういう面に事業拡大ができないかどうかを検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  55. 宮本二郎

    政府委員宮本二郎君) 先生のお気持ちよくわかる次第でございます。先生のようなお気持ちの観点でいろいろ検討した次第でございますが、やはり跡地整備、何のために整備するのかということではなかろうかと思います。無目的に何か先行きがわからずに、一つの機関が国費を使って処理するということはなかなかこれはできがたいことだと思います。要するに何にそれを使うのか、そういう観点から、そのおのおのつかさつかさのところで考えていただかなければいかぬと思います。私どもは、地域振興整備公団でとにかく地域振興のために企業を誘致する、所得水準を向上させよう、そのために団地造成しておるわけでございまして、そのために利用のできるボタ山はできるだけ利用しておる。先ほどちょっとボタ山の数申し上げましたが、九州地域では七十二団地のうち四十五団地ボタ山を利用いたしまして、ボタ山を完全に使いまして団地をつくっておる次第でございます。やはりこういうような形で、おのおののところで考えていただきませんと、地域振興整備公団自体が道路計画やら住宅団地まで設計できる能力も手腕もない、こういうことを考えざるを得ないと思います。  そういうことで非常に先生のお気持ちよくわかる次第でございますが、もう少し私どものより広い立場で、何か御検討いただく必要があるのではないだろうか、このように感じておる次第でございます。
  56. 小柳勇

    小柳勇君 また各党ともいろいろ御相談をいたしまして、次の機会に問題にすることにいたしましょう。  それから自治省に、市町村の財政、特に産炭地域町村財政の充実強化について質問いたしますが、産炭地町村の財政を安定させるため、地方交付税の産炭補正を拡充強化すること、あるいは産炭地域振興臨時措置法十一条を改正して、特定公共事業に対する高率補助制度を確立するとともに、起債の特別枠と、その元利償還補てん制度を創設すること、以上の二点について質問いたします。
  57. 小林実

    説明員(小林実君) 産炭地域の市町村につきましては、その財政状況にかんがみまして御承知のとおり産炭地域振興臨時措置法によりまして最高二五%までの国の補助負担の割合の引き上げを講じておるところでございます。  また、地方交付税におきましても、いわゆる三就労事業に係る事業費補正、それから質問がございました、地元では産炭地補正と言っておりますような措置によりまして、事業額の割り増しを行っておるところでございます。こういう措置を講じておりますわけでございまして、さらに現在の規定を変えて特別の財政制度を新設するということは困難というふうに考えておりますが、関係市町村の事業実施につきまして、支障の生ずることのないように適切な措置を講じてまいりたいと、こういうふうに思っておるわけでございます。産炭補正は鉱業人口の減少に伴います基準財政需要額の激減を緩和する目的でつくったものでございまして、今後の取り扱いにおきましては、交付税におきます産炭地域に適用される事業費補正、あるいは数値急減補正というのがございますので、それをあわせまして総合的に検討をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから産炭地域の事業関係につきましては、先ほど言いましたような国庫補助率のかさ上げ、その他いろいろな措置がございますが、その地方負担分につきましては、現在は大半は九五%の起債を充当しておるわけでございまして、学校等あるいは下水道等になりますと、その元利償還金につきましても交付税で措置をしておるところでございます。今後ともこれらの措置の充実により対処してまいりたいというふうに考えております。
  58. 小柳勇

    小柳勇君 次は国鉄ですが、産炭地域振興のためにたくさんの陳情をしています。特に石炭輸送のための列車がたくさん走っていた。で、石炭がゼロになりまして、列車の間引きなどでそれが非常な不便感を与えておるようでありますが、産炭地振興という立場と同時に、辺地地区が多いのでありますから、地元住民の国鉄に対する陳情に対して、いまどういう話し合いになっているのか、途中でもいいから、その結果についての御報告を求めます。
  59. 吉武秀夫

    説明員(吉武秀夫君) 地元の方からいろんな陳情がたくさん参っております。いま私の手元にありますのはことしの二月付で来ておるものでございますが、この中身を拝見いたしますと、各方面にわたって陳情がございます。それから項目もたくさんございまして、現在私どもの方で各項目につきまして勉強をしておる段階であります。  率直に言いまして、この中にはなかなかむずかしいものも含まれておりますが、われわれといたしましては、旅客の流動の実態とか、あるいはお客様の扱いの必要性、そういったものを勘案しながら必要性のあるもの、あるいはできるものについて輸送の改善をやっていきたいと思います。ただ、これ現在勉強をしておりますので、特にこの中の項目のうちの大部分は、鉄道管理局長の所管にかかわるものでございますので、その辺のいろんな管理局の中の実情ともにらみ合わせて、現在検討をしておるところでございます。
  60. 小柳勇

    小柳勇君 私も大体見てみまして、鉄道管理局長の権限が大部分のようでありますが、ただ油須原線の早期開業とか、あるいは桂川−臼井の短絡など、これは運輸省の問題でありまして、いま運輸省に話をしています。したがいまして、門鉄局長の方に産炭地域振興の問題でいまたくさんの陳情団も来ていますし、問題にしておるので、商工委員会で問題になっておるので、局長権限のものについては早急に結論を出すように指示しておいていただきたいと思います。  最後は雇用問題ですが、けさの新聞にもありますように子供たちの運動ぐつをつくっております月星ゴムという大きなこれは会社でありますが、それがきのう千人ばかりの合理化が提案されました。工場は福岡県や栃木県にあるのでありますが、福岡県の一つの工場と栃木県の工場が廃止になるようであります。これは原因は、韓国にみずからも投資し、会社をつくっている、その韓国からの追い上げ。韓国の品物が、ほとんど同じ物が日本に来まして、三分の一の値段で来る。そういうもので、もう日本の方の労働者が要らないというような合理化案です。  それから先般来、安川電機というこれも古い会社でありますが、安川電機が千六百名ぐらいの人員縮小を組合に提案してまいっております。安川電機はこれは鉄鋼産業、鉄の冷え込みによる合理化です。われわれはいまの軽電、家電などが平気でありますから安川電機もそんなにないと思っておりましたのに、突然昨年ごろから経営不振ということが発表されてまいりました。もちろん経営に対する問題もあるように考えますけれども、それにしても労働者千六百名の首切りというのはなかなか大変な問題です。  また、日本板硝子というのが若松工場が撤退をいたしました。言うならば今度国会に提案されております特定不況産業に入りません業種で、いま人員整理、会社の経営合理化というのがどんどん進んできておるわけです。そこの労働者諸君の心配は、離職者臨時措置法にも指定されないのではないか。もちろん通産省の特定不況産業にも入っていません。  だから、たとえば安川の場合は重電機でありますから、重電機は離職者臨時措置法に入っていないといって心配をしているので、これはどういうふうな扱いになるかと。月星の場合、これから交渉になりますから千名がすぐ退職になるかどうかについてはわかりませんが、きのう組合長が参りまして、恐らく月星というのは今度の特定不況産業の指定に入らぬでしょう、なぜかと聞いたら、いま政府が考えているのは、工場の設備を一〇%か一五%削減したら金を融資しましょうという考えですと。私どもの産業は設備を削減するんじゃなくて、人間が皆縫ったりつくったりしているんだから、人間を減らすことが即合理化です、だから恐らく通産省などはとても考えておられぬでしょうと、そういう話です。恐らく通産省はそうではないかと思うが、このようなものが私は福岡だけじゃないと思う。いまの私が申し上げたのは福岡だけの会社ではありません。日本板硝子などは舞鶴にもやっています。全国的なものです。こういう現象に対してどう通産省としてもおとりになっておるのか。明日から特定不況産業の法案が論議されますけれども、中途半端な——機械を削減するならば、労働者の数を減らすならば金をめんどう見ますよという法律、それでは救えないと思います。  したがって、まずいま発生しておりますこれらの、たとえば発展途上国からの追い上げ、あるいは鉄鋼生産の見通しが立たぬために不況産業になっているような産業、あるいは住宅産業、どんどん景気刺激するために公共投資をしておりますけれども、板ガラスなどという住宅産業に必要な板ガラスが不況になっているという、こういうものを一体どう把握されておるのか。まず、この産業の姿を大臣からお聞きしなきゃならぬ。特にけさの新聞は、倒産件数も史上最大だと報じている。まず通産大臣から、特定不況産業に対してはもっとわれわれは真剣に論議しなきゃなりませんけれども、それ以外にいま発生しておる、きのうからあるいは一ヵ月前から発生しておりますこういう問題については、通産省はどうお取りになっているか、大臣からお聞きいたします。
  61. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いまの日本の産業の特徴の一つは、非常にいい状況の業種と非常に悪い状況の業種、この二つが同時に存在をしておるということでございます。そこで政府といたしましては、一般的な景気回復対策のほかに、こういう特別に悪い業種を救済するための一連の対策一つといたしまして、構造不況業種の緊急立法をいまお願いをしておるわけでございます。この構造不況業種対策、もう一つは、特に円高によりまして中小企業が大変な苦境にございますので、円高緊急対策、これを中心とする中小企業対策でございますが、以上三本の柱を中心にして経済政策をいま進めておるところでございます。  いまのお尋ねは、特定の一、二の企業が今回の政府の提案をしております構造不況業種の緊急立法で救えないかどうかというお尋ねだと思いますが、今回のこの法律案の趣旨は、非常に状態の悪い業種の一番の原因は何ぞやといいますと、それは業界全体として設備が、ある業界では二割、三割、多い業界では五割、六割、それだけの設備が余っておるわけでありまして、その設備を業界の自発的な創意によりまして共同で廃棄をしていこう、こういう考え方がまとまりますと、それに対して政府の方は、設備を廃棄するに必要な資金の援助をいたしましょう、めんどうを見ていきましょう、また万やむを得ず、ある程度の人減らしをそれに伴ってしなければならぬ場合には、それに対するめんどうも見ていきましょう、こういうことがこの法律の骨子でございます。でありますから、業界全体としての意見がまとまっておる、そして業界全体としての設備の過剰を廃棄していこう、こういう意思ができ上がっておることが前提になるわけでございますので、個々の企業対象に救済をしていく、こういう考え方ではございませんので、個々の企業に対する救済の仕方というものは、別にそれぞれの企業の困っておられます経過、理由等を聞きまして、それに対してできるだけ具体的に援助、お手伝いをしていく、こういうまた別のやり方をしなければいかぬと思います。  でありますから、いまお示しの一、二の企業につきましては、構造不況業種の今回の緊急立法による救済は対象になるかならないか、これは業界全体としての意向がまだはっきりしませんので何とも申し上げかねますけれども、仮にならない場合には、いま申し上げましたような方向でできるだけ御相談に乗りまして、そして再建できるものなら再建の方向にお手伝いをしていったらいかがかと、このように思います。
  62. 小柳勇

    小柳勇君 業界全体といいましても、月星は学生の運動ぐつをつくる会社でして、恐らく業界として大部分のシェアを持っているんじゃないかと思います。ただし、この法律は、今度通産省で出される法律はいま大臣がおっしゃったようなものですから恐らく法律の適用はできないかもしれませんが、特に機械、設備などの削減でございませんので、人間をやめさせるだけだからあとは労働省の問題だと思うんですが——労働省からお見えになっておりますね。だからまず安川の問題を離職者臨時措置法に適用させるということが一つ、それから最悪の事態になった場合、月星の場合も離職者臨時措置法の方は適用できるかどうか、この二つを質問いたします。
  63. 田淵孝輔

    説明員(田淵孝輔君) まず安川電機の件でございますが、私どもの把握しております状況では、本年三月六日に七百五十名の希望退職と百五十名の移籍出向等九百名の削減について労組に提案があったということでございますが、労使間で構成する経営協議会で労働組合側が白紙撤回を要求して、三月二十日現在で凍結を提案され、現在一応凍結された状態になっていると聞いております。そういうことでまだ現実には解雇、整理等は行われていないという状況でございます。私どもとしては、事態の推移を十分注目してまいりたいと思って深い関心を持っております。なお、昨日も福岡県の春闘共闘委の方々等の陳情も私直接受けまして、事情もいろいろ聞いたわけでございますが、皆さん方の御要望は雇用調整給付金の業種指定などをできないものかというお尋ね、御要望がございました。雇用調整給付金の業種指定につきましては、産業とか雇用の実態等に照らして、指定基準に基づいてなるべく弾力的に運用してきているところでございますが、いずれにしても業種という観点から適用してきておりまして、企業単位というようなことは考えにくうございます。ただ、安川電機につきましては事業内容等を十分調査いたしまして会社の属する業種の生産、雇用等の状況を見きわめながら対処してまいりたいと思っております。  次に、月星ゴムでございますが、月星ゴムにつきましては四月の六日に千名の人員削減について組合三役へ提案があり、十日に、昨日組合へ正式提案があったと聞いておりますが、私どもとしては、福岡県の職業安定課長が七日の日にその状況をキャッチいたしまして本社を訪問し、事情を聴取するとともに、必要以上の人員整理を行ってもらっては困るということ、それから特に高齢者とか身体障害者等にしわ寄せがいかないような配慮をお願いしたところでございまして、これにつきましても今後、さらに推移を見守っているところでございます。  なお、この月星ゴムにつきましては特定業種としての指定ができるかという件につきまして、現在のところ特定不況法案の業種指定につきましては、業界として強く要望があると聞いておりますが、設備処理等今後の計画につきましては、業界でもまだ統一が、十分意見の一致が見られず、今後の具体的な方向につきましては、通産省を含めまして労働省とよく相談して、検討しておるところだというふうに承知いたしております。
  64. 小柳勇

    小柳勇君 この表に、おたくが決めているこの表に入っていないものですからね、この表に入れてくれというのが要求、願いです。いま安川の場合も凍結をしてあることも知っていますけれども、早晩凍結は解けるのです。解けましたらやはり合理化になるでしょう。したがって、その場合にこの表の中にこれも入れてくれということですから、いまあなたの言葉は非常に慎重に表現しておられますけれども、端的に言えばそういうことですから、よく通産省とも御相談して、千数百名の人たちが路頭に迷いませんようにしてもらいたい。特に中小企業、関連企業たくさんあるわけです。この会社としては千名から千六百名の話ですけれども、安川などでも二千数百名の関連企業が倒産し整理をするわけですね。先般の日本板硝子の問題だって関連中小企業四十社ばかり切り捨てられています。表面で、たとえば法案をこの委員会などで論議するときの、こういう論議がもう間に合わない情勢で進んでいます。そのことを十分ひとつ労働省も通産省も心しておいてもらいたいと思う。でないともう間に合わぬのです。法律ができて適用するとき、もう一年先になりましたら全部首切られてしまっている情勢ですね。そのことを十分ひとつ心してもらいたいと思います。  それから、通産大臣質問いたしますが、これから特定不況産業の安定基本計画をつくらなきゃなりません。それには一体、経済成長率なり、国際収支なり、あるいは為替相場なり、どのように——これから五年間の安定ですけれども、これから五年間一体どう考えておられるのか。まあ評論家あるいはけさの新聞などでも、とうてい七%達成は無理だと、五・三ぐらいが精いっぱい、しかも経常収支も六十億ドル、そんなになりませんと、こう言っています。また、為替相場も二百円ぐらいになるでしょう、それが四、五年続くんじゃないでしょうか、というのが研究家の意見です。いま皆さんが考えているこの特定不況産業というのは、七%で六十億ドル、そして、二百五十円ぐらいを見当にしてこれから考えられるでしょうけれども、このベースがぐらぐらして、それがまた不況の原因だと思います。  たとえば産業構造審議会が、四十九年には、鉄鋼の生産を五十五年に一億八千万トンと、ちゃんと数字を出しております。ところが、昨年の八月出た産構審のビジョンでは、鉄鋼産業は全部削っています、書いてないんです。鉄鋼産業という基幹産業のそのベースがなくて、一体どの産業が計量ができましょうか。そういうものがいまの不況の原因ではないでしょうかね。だから、昭和五十五年には鉄鋼が一億八千万トン生産できますとなると、平電炉も鉄鋼産業もそれに設備をそろえてやってきたわけですよ。それがちゃらになりました。産業構造審議会が結論を出し切らぬのですから、福田総理があんな大きなことを言ってますけれども、あれはただ自分の推定だと思う。それほどの不安定要素の中に皆さんがこの法案を、これから安定基本計画をつくっていかれる。通産大臣は、これから三年でもよろしいから、経済成長率とそれから国際収支、それから為賛、円相場と、あるいは鉄鋼生産はどのくらいにお考えになってますか。ちょうどいい機会で、時間もありますからお聞きしておきたいと思います。
  65. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 安定基本計画をつくります場合には、いまいろんな要素についてお述べになりました。経済成長率を中心といたしまして、需給の動向、特に貿易関係、幾つかの要素がたくさんあるわけでございますが、そういう要素を全部取り上げまして、およそ五ヵ年間の動きを調査をいたしまして、そして、安定基本計画をつくるのにはどのような方向に持っていけばいいかということを、まず関係審議会で議論をしていただきまして、それを受けて政府が最終的に判断をすると、こういう手続きをすることにまあなっております。で、いまのお尋ねは、それはそれとして、そういういろんな基本計画をつくる場合に、産業の一番の骨格である鉄鋼の生産の見通しもわからないでどうしてつくるんだと、こういう御質問でございますが、一昨年はいわゆるローリングプラン、具体的な数字答申をいただいておりません。四十九年に産構審から答申をいただきまして、五十年、五十一年と見直しをいたしました。昨年は見直しをしませんで、ことしは見直しをしていこうと、こう思っております。  そこで、いま一番最近の見直しの数字は、昭和五十一年につくったものでありますが、その五十一年の見直しでは、昭和五十五年の鉄鋼生産の見通しは一億二千七百万トンないし一億三千万トンであると、こういう報告を受けております。ことし見直しをいたしました場合に、果たしてそのとおりにいくかどうか、これはよほど研究する必要が、現状から判断いたしますとあろうと思いますが、全然数字がないわけじゃございません。ただしかし、ことしはいろんな計画をつくらなければなりませんので、先ほど申し上げましたように、ローリングプランを産構審でつくっていただこうと、こういう考え方でございます。
  66. 小柳勇

    小柳勇君 その他の経済成長とか、それから国際収支とか為替相場とか、どう御見解ですか。
  67. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) ことしの政府の経済運営の一番の基本は、七%の経済成長と、それと国際収支、経常収支六十億ドルを達成しようというのが基本になっております。民間のいろんな調査機関ではいまお示しのように、まあ五%前後の経済成長しか達成できないのではないかという数字に大体なっておると思います。七%成長ということを言っておる民間の調査機関は一つもないと私どもも承知をいたしております。  ただ、そういういろんな調査機関等がおつくりになりました背景の数字をいろいろまあ私どもも研究してみるんですけれども、それはまあ、単に方々からいろんな統計を集められまして、それを総合的に判断して、いやあ、五十三年度は四・五%だ、いや五・五%であるとか、いろんなことを言っておられるわけでありますが、それはそれなりに私は評価しなければいかぬと思っております。熱心な方々、権威者がそういう判断をしておられるわけでありますから、それはそれなりに私どもも評価をしておるわけです。  ただしかし、そういう調査機関が一つだけ見落としておられる大きな事項があると思いますが、それは、政府の方では繰り返し、今回の五十三年度予算中心に経済運営を間違いなくやっていくならば、七%成長は達成できると思ってるけれども、しかし、経済情勢の変化で、もし不測の事態が起こって達成がむずかしくなる、こういう場合には、臨機応変に適当な追加措置を講じますと、しかも、機敏かつ大胆に対応いたしますということを、繰り返し総理大臣から答弁をしておるところでございまして、政府があらゆる政策手段を総動員をいたしまして、そして追加政策を臨機応変にやっていくという、その決意というものは私はこれはもう非常に大きなエネルギーになる、不足分は全部追加いたしますということを言っておるわけでありますから。この政府の決意に伴うエネルギー計算というものは全然できていないわけでありまして、だから、民間のいろいろ言っておられます統計の上にこのエネルギーを加えていくならば、私どもは七%成長は達成できると確信をしております。  ただ、繰り返して恐縮でございますが、もちろんそのためには総合的かつ機動的に、いろんな政策手段を総動員をしていくということが必要である、それをやらなければ臨機応変に対応したということになりませんので、そういう政策手段を、臨機応変に打ち出していくということはもちろん必要でありますし、それからまた国際収支の面では、いま緊急の輸入対策を進めておりまして、これも近く大体のアウトラインが決まると考えております。現状では、ややもしますと六十億ドルを相当オーバーしそうな気配にもなりがちでございますので、そういうことになってはいろいろトラブルが拡大をされますので、そういうことのないように緊急輸入によってある程度の調整を図っていきたい、こういう考え方でございます。
  68. 小柳勇

    小柳勇君 産構審の見直しなども、ことしは出るようでありますから期待しておりますが、政府なりあるいは産構審などの確たるこの見通しというもの、それが産業の振興の一番大きな基礎ではないかと思います。設備投資をやろうといたしましても見当がつかない、そういうものが不景気の原因ではないかと思います。いまたとえばドルの円相場につきましても明言は避けられましたけれども、恐らく二百円になるだろう、しかもそれが何年か続くだろうという見解です。そうしますと、円高による不況産業というものは、これからまた莫大に出てきはせぬかと、輸出産業が相当の打撃を受けはせぬかと思います。したがって、特定不況産業の問題もこれから論議いたしますけれども、続々発生する企業倒産なり、その他下請産業の影響につきましても、迅速に時期を失しないように手を打っていただきたいと思います。でありませんと、幾ら法律をつくりましてももう救えないときになりまして法律ができるということになりはせぬかと、そういうふうな気がいたします。  以上、私の方はそれできょう質問を終わりますが、なお次の法案審議のときに、もう少しいまの基礎になる経済論争といいましょうか、通産大臣なりあるいは通産当局の経済に対する基礎の数字の論争をやった上で、不況産業の法律を論議していきたいと思いますので、きょうはこのくらいにいたしておきたいと思います。  それじゃ、私の質問を終わります。
  69. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 午前の質疑はこの程度にとどめます。  ちょっと速記とめて。   〔午前十一時四十四分速記中止〕   〔午前十一時五十九分速記開始〕
  70. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 速記を起こして。     —————————————
  71. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 次に、特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律案を議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。河本通産大臣
  72. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  本法律案は特許協力条約を実施するための手続を定めることを主たる内容とするものであることにかんがみ、特許協力条約の概要についてまず御説明申し上げます。  特許協力条約は、近年における国際的な経済活動の緊密化及び技術交流の進展に伴い、外国における特許権の確立がますます重要となっている状況にかんがみ、外国出願の容易化、各国の特許庁における審査に要する労力重複の軽減を図ることを目的として一九七〇年に採択されたものであり、一八八三年の工業所有権の保護に関するパリ条約以来の画期的な条約であります。本条約によると、一の国際出願をすることによって同時に複数の外国へ出願したのと同様の効果が与えられます。また、国際出願がされると、それが新しい発明であるかどうかについての事前調査、すなわち国際調査や予備的な審査、すなわち国際予備審査が行われ、その結果は出願人及び関係国の特許庁によって活用されます。  特許協力条約に加盟すれば、外国への出願が容易となり、外国における特許権の確立に大いに資するとともに国際間の技術交流を促進することとなるため、わが国が今後とも技術立国、貿易立国として発展をしていく上においてきわめて有益であり、また、本条約は特許の分野における開発途上国援助を行うことをも目的としており、この点においても意義深いものであります。  特許協力条約はすでに本年一月二十四日に発効しており、いわゆる特許大国である米国、ドイツ連邦共和国、フランス、連合王国、ソビエト連邦を初め十八ヵ国が加盟しております。また、わが国が本条約を締結することにつきましては、今国会において御承認をいただいたところであります。  本法律案は、この特許協力条約を実施するために必要な手続を定めるとともに、特許法等関係国内法の整備を図ろうとするものであります。なお、本法律案につきましては、昭和五十一年六月から工業所有権審議会において慎重な審議を重ねた結果、本年二月に特許協力条約への加盟に伴う特許法等の改正に関する答申が提出され、この答申に基づいて作成したものであります。  次に本法律案の概要について御説明申し上げます。  第一に本法律案は、特許協力条約規定を受けまして、国際出願、国際調査及び国際予備審査についての特許庁と出願人との間の手続を定めることとしております。具体的には、日本語で日本の特許庁に国際出願をすることができることとし、国際出願をしようとする場合の提出書類、それに欠陥がある場合に特許庁長官が行う手続の補完、補正の命令、特許庁長官による国際出願日の認定手数料を納付しない場合の措置等について規定しております。また、国際調査、国際予備審査に関しましては、特許庁長官は審査官に国際調査報告、国際予備審査報告を作成させることとし、その場合の手続、出願人の補正書、答弁書の提出等について規定しております。なお、特許庁が受理する国際予備審査の請求の件数については、当分の間は、これを制限することができることとしております。そのほか、国際出願の手続の正確かつ円滑な遂行の確保が強く要請されていることにかんがみ、特許庁に対する手続の代理を行う者の資格につき必要な規定を設けております。  第二に、わが国の特許または実用新案登録を取得しようとする国際出願について、これを現行法の国内手続につなぐために必要となる特許法及び実用新案法の改正を次のとおり本法律案の附則において行うこととしております。すなわち、わが国を指定国に含む国際出願は、その国際出願日にわが国にされた特許出願または実用新案登録出願とみなすこととし、出願書類が外国語で作成されている国際出願につきましては、原則として最初の出願の日から二十ヵ月以内に翻訳文を特許庁長官に提出しなければならないこととしております。この段階以降は、この翻訳文に基礎を置いて出願の処理または審査を行うこととしており、そのための所要の規定整備しております。なお、国際出願が正確に翻訳されなかったために、出願に係る発明、その出願に基づいて与えられた特許等の範囲が、原語の国際出願の範囲を超えることとなる場合については、審査の段階では異議申し立てにより拒絶することにより、また、特許または実用新案登録後においては無効審判の請求とそれに対する権利者の訂正審判の請求とを組み合わせることによって措置することとしております。そのほか、翻訳文の国内公表、条約に基づく補正の取り扱い等につき規定しております。  第三に、弁理士の業務に国際出願に関する事務を追加することに伴う弁理士法の改正、特許庁が国際調査及び国際予備審査に関する事務を行うことに伴う通商産業省設置法の改正等を本法律案の附則において行うこととしております。  なお、本法律案は、特許協力条約わが国について効力を生ずる日から施行することとしております。  以上が、この法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ、慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  73. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 次に、補足説明を聴取いたします。熊谷特許庁長官
  74. 熊谷善二

    政府委員(熊谷善二君) 特許協力条約に基づく国際出願等に関する法律案につきまして、ただいま大臣が御説明申し上げました提案理由及び要旨を補足して御説明申し上げます。  本法律案は今国会において御承認をいただきました一九七〇年六月十九日にワシントンで作成された特許協力条約を円滑かつ、適切に実施するために必要な手続を定めるとともに、特許法等関係国内法の整備を図ろうとするものであります。なお、本法律案につきましては、昭和五十一年六月から工業所有権に関する有識者等から成る工業所有権審議会において慎重な審議を重ねた結果、本年二月に特許協力条約への加盟に伴う特許法等の改正に関する答申が提出され、この答申に基づいて作成したものであります。  本法律案におきましては、第一に、特許協力条約規定を受けて、国際出願、国際調査及び国際予備審査についての特許庁と出願人との間の手続を定めることとしております。具体的には、国際出願の出願手続に関し、日本国民または日本国内に住所もしくは居所を有する外国人は日本語で特許庁長官に国際出願をすることができることとし、国際出願をしようとする場合には願書、明細書、請求の範囲、必要な図面及び要約書を提出しなければならないこと、それらの手続に欠陥がある場合には特許庁長官は手続の補完または補正をすべきことを命じなければならないこと、所定の要件を満たしている国際出願については特許庁長官はその国際出願が特許庁に到達した日を国際出願日として認定しなければならないこと、所定の期間内に手数料を納付しない場合等においては特許庁長官は国際出願が取り下げられたものとみなす旨の決定をしなければならないこと等について規定しております。また、先行技術についての事前調査いわゆる国際調査に関し、特許庁長官は審査官に国際調査報告を作成させることとし、所定の事由に該当する国際出願については国際調査報告を作成しないこと、国際出願が発明の単一性の要件を満たしていない場合には追加して手数料を納付すべきことを命ずること等について規定しております。  次に出願人からの請求に基づいて行う国際出願が新規性、進歩性及び産業上の利用可能性を持つか否かについての予備的な審査いわゆる国際予備審査に関し、特許庁長官は審査官に国際予備審査報告を作成させることとし、国際調査の場合に準ずる規定を設けるとともに、出願人は補正書、答弁書を提出することができること等について規定しております。なお、特許庁が受理する国際予備審査の請求の件数については、当分の間、これを制限することができることとしております。そのほか、国際出願の手続の正確かつ円滑な遂行の確保が強く要請されていることにかんがみ、特許庁に対する手続の代理を行う者の資格につき必要な規定を設けております。  第二に、わが国の特許または実用新案登録を取得しようとする国際出願について、これを現行法の国内手続につなぐために必要となる特許法及び実用新案法の改正を次のとおり本法律案の附則において行うこととしております。  すなわち、わが国を指定国に含む国際出願は、その国際出願日にわが国にされた特許出願または実用新案登録出願とみなすこととし、また、出願書類が外国語で作成されている国際出願については、原則として最初の出願の日から二十ヵ月以内に所定の翻訳文を特許庁長官に提出しなければならないこととし、その提出がないときは、その国際出願は取り下げられたものとみなすこととしております。また、原語の国際出願に記載されている事項であっても翻訳文に記載されていないものについては初めからなかったものとみなすこととしております。この段階以降はこの翻訳文を国内法上の出願書類とみなし、この翻訳文に基礎を置いて出願の処理または審査を行うこととしております。なお、国際出願が正確に翻訳されなかったために、出願に係る発明、この出願に基づいて与えられた特許等の範囲が原語の国際出願の範囲を超えることとなる場合については、審査の段階においては異議申し立てにより拒絶することにより、また、特許または実用新案登録後においては無効審判の請求とそれに対する権利者の訂正審判の請求とを組み合わせることによって措置することとしております。そのほか、国際段階においてされた補正については、所定の期間内に翻訳文の提出等がなかった場合は、補正がされなかったものとみなすこととしております。また、出願人から提出された翻訳文については国内公表を行うこととし、外国語で作成されている国際出願についての補償金請求権は、この国内公表を基礎として発生することとしております。  さらに、国際出願についての国内段階における補正、出願の変更、出願審査の請求については、所要の手続をした後でなければすることができないこととしております。  第三に、特許出願または実用新案登録出願とみなされた国際出願の意匠登録出願への変更については、所定の手続をした後でなければすることができないこととすることに伴う意匠法の改正を本法律案の附則において行うこととしております。  第四に、弁理士の業務に本法律案の規定による国際出願に関する事務を追加することに伴う弁理士法の改正を本法律案の附則において行うこととしております。  第五に、特許庁が国際調査及び国際予備審査に関する事務を行うことに伴う通商産業省設置法の改正を本法律案の附則において行うこととしております。  以上、この法律案の趣旨及び要点につきまして補足して御説明を申し上げた次第でございます。  何とぞ、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。
  75. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 本案に対する質疑は、後日に譲ります。  再開は午後二時十五分とし、休憩いたします。    午後零時十二分休憩      —————・—————    午後二時十七分開会
  76. 楠正俊

    委員長楠正俊君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  77. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは初めに、通産大臣、今月の三十日から来月の七日までですか、東南アジアを回ってこられるというような報道が流れているわけですが、これはそういうふうにやっぱり行かれるわけですか。
  78. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 国会開会中でございますので、国会の御了解が得られれば、そのような日程を組みたいと考えております。
  79. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 今回の東南アジア訪問の目的は、大体どういうふうな目的でございますか。
  80. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 一つは、昨年の八月に福田総理が、ASEAN諸国及びビルマをお回りになりましてから相当時間も経過をいたしますが、その間ASEAN諸国には若干の政情の変化もございますし、かつ世界各国から首脳の歴訪が相次いでおります。そういう情勢でございますので、ASEANの首脳とあらゆる分野にわたっての意見を交換をしたい。そうして日本とASEAN諸国との協力関係の進め方の方向等についていろいろ意見交換をしたいと、こういうことでございます。
  81. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 昨年の八月に福田総理が行かれましたときの、いわゆる日本とASEAN諸国との共同声明があるわけですが、その共同声明に基づいていわゆる幾つか約束したことがあるわけですが、この問題については現在どういうふうになっておりますでしょうか。
  82. 矢野俊比古

    政府委員矢野俊比古君) 御質問のASEANと日本との間の共同声明に基づくいわば合意事項でございます。これは十二項目に大きく言えば分かれると思いますが、その後の推移といたしましては、昨年の十一月に東京におきまして日本・ASEANフォーラムというものを、第二回の会合を持ちまして、この問題点をそれぞれ詰めている段階でございます。  その中ですでに実施が行われましたものは、一つは、この四月一日からASEANに対します特定関税制度におきますグループ・オリジン制度の創設、これが四月一日より実施になることになっております。それから、貿易ゼミナーを持つ。これは、ことしの二月から三月、一ヵ月かけまして相手方の関係者を呼びまして、日本の貿易管理制度というふうなことのゼミナーを行っております。それから、今回通りました予算措置で今後実施に移せるものは、いわゆるすず協定に基づきます緩衝在庫への拠出でございますが、この資金供与を海外経済協力基金を通じて行えるような体制になりました。それからもう一つ、ASEANの常設展示場を東京に置くということを約束をしておりますが、これも今回予算を通しておきましたので、近くこの展示場自身の設置の実行に入るという状況でございます。  そのほか一番大きな問題でございましたASEAN工業プロジェクト問題、現在インドネシアが一応すでにASEANの手続を経て尿素プラントをつくりたいということを、ASEANプロジェクトとして申し出ております。これに伴いまして、現在この二月に政府の方から国際協力事業団を通じて、いわゆるフィージビリティースタディーに入っておるわけでございます。これは五プロジェクトありますけれども、現在動いているのはこれ一つでございます。そのほかSTABEXの問題でございますとか、あるいは文化交流の問題とか、項目がそれぞれございますけれども、これらは要するに相手方のフォーラムを通じまして、あるいは個別にも現在これを研究を進めている、こういう実情で、順調に動いているということが結論だと思います。
  83. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いわゆるこの工業プロジェクトですね。五つの大きなプロジェクトがあると聞いておりますんですが、これは、こういう点には相当やっぱり力を入れて進めるようにしないと、なかなか具体性を帯びてこないと思うんですけれども、これは実際問題、通産省としては具体的には、この一つ一つについてはどういうふうに進めていらっしゃるわけですか、現在。
  84. 矢野俊比古

    政府委員矢野俊比古君) いま申し上げましたように、まずインドネシアの、ASEANの尿素プロジェクトはすでにフィージビリティースタディーに入っておりますので、これをインドネシアとの間でよく詰めまして、合意ができたところで現実に実行に移すというつもりでございます。  それから、いまその次に動いておりますのが、マレーシアのやはり同じ尿素プロジェクトでございますが、これは恐らくことしの六月過ぎにASEANプロジェクトとして確定するということが見込まれておりまして、その後ASEAN側からの申し出で、フィージビリティースタディーを開始すると、こういうつもりでございます。  それから、その次はまだはっきりしておりませんが、可能性のあるのがシンガポールのディーゼルエンジンのプロジェクトでございますが、これはインドネシアとの間での調整が大体ついたというふうに聞いております。しかし、まだASEANプロジェクトとして私どもにはお話がないものですから、その状況を見定めておるという実態でございます。  それから、なおタイのソーダ灰の問題、フィリピンの過燐酸石灰については、実はまだそれぞれの当該国で、ASEANプロジェクトとして、このASEANのフォーラムに持ち出すという体制になってないものでございますので、私どもはこの状況を見ておりますが、いずれにしましても、大体彼らの期待は、全プロジェクトで十億ドルを一つのめどとして供与してほしいという体制でございますが、これはすでに総理もお約束されたことでもございますし、私どもはこの五プロジェクトは、ASEANプロジェクトとして提示されれば、積極的に取り組む、こういうつもりでございます。
  85. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは大臣、実際問題として昨年の八月から現在まで、やっぱり半年以上たっていますね。そういうような意味では、閣僚レベルでもっと積極的ないわゆる交流といいますか、話し合いといいますか、そういうようなものは、やっぱりきちっとした定期的なものとかいうものは現在ないんだろうと私は思うのですが、そういうような意味でも、きちっとしたその交流が必要ではないでしょうか。
  86. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 一部の国とはあるのです。定期閣僚会議というようなものがございますが、やはり各国ごとにそういう方向にいった方があるいはいいのかもわかりませんが、これは政府部内でよく検討いたします。
  87. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ぜひ、これからの日本の経済を考えた場合に、そういう点にも十分力を入れて配慮していただきたいと思います。  そこで、この点はこのくらいにしまして、次にきょうの新聞等でも報道になっておりますが、今年度のいわゆる実質経済成長率、政府の七%達成というのが非常にむずかしいと、こういうふうな経済予測が出ておるのですが、これに対して大臣、どういうふうにお考えですか。
  88. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 一部の民間の調査機関では、いまお話のように七%の経済成長はむずかしいと、こういう調査結果を発表いたしております。ただしかし、ことしの政府の最高の経済政策の目標は、七%の経済成長の達成と六十億ドルの経常収支に持っていきたいと、こういうことを目標にいたしておりまして、これを実現をするために、情勢の変化に即応いたしまして、必要な政策を臨機応変に次から次へ打ち出していこうと、こういうことを繰り返し政府として申し述べておるわけでございます。でありますから、民間の方々は、ああいう見通しを立てておられますが、もし政府の方で、全体としてのエネルギーが不足である。エネルギーと申しますか、景気回復力が不足であると、こういうことでありましたならば、必要な対策を緊急に打ち出していくと、こういう考え方を持っておりますので、その点は万難を排して、この幾つかの目標を実現していこうというのが、これはもう政府の最高の政策でございますから、万遺漏ないようにぜひやっていきたいと、こう思っております。
  89. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 この二つの経済見通しを読んでみますと、それぞれあれなんですね、実質経済成長率をいわゆる修正しているわけですね。初め国民経済研究協会の四・七%から五・三%というように修正をしている。その修正した理由はこれこれと。またもう一つの山一の方も、それぞれ〇・三%上向きに修正をしている。それぞれ政府がいままでとってきた、いわゆる大臣がおっしゃった臨機応変に次から次へと、こうおっしゃっておりますその一つ一つの要素をずいぶん取り入れて修正をしていらっしゃるわけです。実際問題この七%達成するための、大臣がお考えになり得るところのいわゆる目玉ですね、これとこれはどうしてもやらないとこれだけにはならないというふうな要素は、やっぱり幾つかあると思うのですが、そのポイントになるところを幾つかおっしゃっていただけませんでしょうか。
  90. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まず政府の基本的な考え方は、民間の経済活動がいま活力を失っておりますので、政府主導型の公共事業中心に投資を進めていきたい、しかもその投資を上半期、ことに四月−六月の第一・四半期に集中をしていこう。この公共事業の総額は一般会計それから地方財政、それから財政投融資合わせますと、去年よりも三割以上ふえておりますので、相当大きな金額になっております。これを上半期七三%、しかもおよそその七割見当を四月−六月に集中していこうということでありますから、非常に大きなエネルギーが生まれてくるであろうと私どもは期待をしております。そうして、それが誘い水になりまして、ある程度の民間経済が活力を取り戻すということを期待をするというのが、ことしの経済運営の一つの基本的な考え方でございますが、もし第一・四半期年間公共事業の恐らく五割を成約をするというそれだけの大規模なことをやりましても、なお他の民間の経済分野で力が回復をしてこない、動いてこない、こういうことでありますならば、やはりそこで何らかの必要な対策考えられなければならぬと思います。  それじゃ、民間経済活動の柱は何ぞやといいますと、それはやはり個人消費あるいは住宅投資、設備投資、こういうことでないかと思います。輸出につきましては、最近の円高等に伴いまして、ドル表示では数字が相当ふえますので、数量は横並びという、そういうことで行政指導をすることにしておりますので、輸出の面からは経済成長に寄与するものは期待をしておりませんが、以上申し上げましたような民間の経済の重立った柱等の動きを見まして、そこで判断をしていこうと、こういうことであろうと思います。
  91. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 幾つかの問題点がありますけれども、まず一つはこれは円高にも関係があるんですが、ドルですね、これはいわゆるどの程度まで予想をしていらっしゃるか。現在二百二十円前後しているわけですが、これは大臣言えるかどうかちょっとわかりませんが、実際問題七%成長を達成するために、今後の経済見通しいろんな角度からやらなきゃいけないわけですけれども、国民経済研究協会は昨年十二月に円相場を二百四十円と想定していたわけです。それが二百二十円まで現在なりましたので、それをまたきちっと計算の中へ入れている。しかもその後、下期には一ドル二百十三円ぐらいまでになる、そういう見通しのもとに、想定のもとにこの経済成長率というのを算定しているわけです。そういうふうな観点からいきましても、一つは先ほどの六十億の黒字という問題にも関連してくるわけですけれども、こっちの方はもうとても無理だという話が出ているわけですが、その点はいいとして、まず円高の問題と絡みまして一ドルをどの程度まで見ていらっしゃるか、この点まずお伺いしたいと思います。
  92. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 為替レートの背景には、御案内のように日本の大幅な黒字とアメリカの大幅な赤字と、この二つの事実があるわけであります。日本の大幅な黒字というのは、これは五十二年度の貿易はドル表示では二割以上の激増になっておりますが、数量では六、七%ぐらいな増加ではないかと私どもは考えております。しかし、何分にも円がこれだけ高くなりますと、ドル表示では金額が相当ふえてまいりますので、何としてもこの流れというものは変えなきゃいかぬということで、いま緊急輸入の拡大ということに取り組んでおるところでございます。つまり日本の大幅黒字を減少する方向に持っていきたい、こういう考え方でございます。そうすると、まあアメリカの考え方はどうかといいますと、これが一つは大きく作用するわけでありますが、三月に、大統領が二回にわたりましてドルの立場について説明をしておりますが、大統領の言い分は、ドルは決して弱くないんだ、こういうことを操り返し言っておるわけです。ドルは弱くないんだと。ということは、つまりほかの通貨がまだ割り安ではないかということにも通ずるわけでありますが、そういうことは言ってないんです。そういうことは言わないで、ドルは決して弱くないんだということだけを二回にわたって強調しておる。こういうことを考えますと、アメリカの考え方もわからぬではないような気がいたします。  しかし、いまの段階でアメリカと突っ込んだ話し合いをするにはやや日本としても準備不足である。だから思い切った緊急輸入の拡大、国際収支の流れを変えるという努力をいろいろ工夫をいたしまして、そして適当な時期に、適当な方法でアメリカと突っ込んだ話し合いをする、こういうことが当然必要だと私どもも考えております。いまは、日本としてとるべき態度を最終的に調整中であるというのがいまの段階でございまして、こういう情勢でございますから、それじゃ円の相場はどうなるかということについて、いま具体的な数字を挙げまして言うのは、これはいろんな意味で言いにくいことでございますから、これは御容赦いただきたいと思います。   〔委員長退席、理事福岡日出麿君着席〕
  93. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それではもう一点、政府のいわゆるこの七%実質経済成長率を政府が盛んに言っているわけですが、非常に無理だという声が至るところから上がっているわけです。しかし、政府の方針ですからこれを変えるというわけにもいかないと私は思うんですけれども、実際問題として、この経済研究協会のそれぞれの予測の中で、先ほど公共事業の話についても政府が相当力を入れてやっていらっしゃるのはわかるわけです。しかし、その報告書の中でこういうのが載っているわけです。公共投資一辺倒ではやっぱり効果にも限界があると。これは経済企画庁の調査の中にもこのことは出ていたと私は思うんですけれども、いわゆる公共投資一辺倒ではやっぱり四・二%増しか期待できない。大臣も先ほどちょっとおっしゃいましたけれども、民間投資なり民間のいわゆるそれに期待する以外ないわけですが、それ以外に、個人消費の支出を伸ばすために大幅な減税が必要だと、こういう提言をしているわけです。それで七%を達成するためにはその大幅減税も、大幅な所得税減税をやるべきであると。七%を達成するための試算としては総額二兆五千億の減税が必要であるという試算をしているわけです。  そういうような意味では、私たちかねがねからこの所得税の大幅減税というのを主張してきたわけですけれども、ここら辺の問題についてはこういうふうな研究所のそれぞれの予測も、これはやっぱり検討に値するものではないかと私は思うんですが、これはどうでしょうか、大臣
  94. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 公共事業だけでは、景気は回復しないではないかというのがいまのお話の趣旨でございますが、私もそのとおりだと思います。一般会計、財政投融資、地方財政全部を合わせましても、重複部分を除きますと国民経済全体の三割にも満たない、三割以下であります。したがいまして、その三割以下の分野である程度の積極策を講じたからといって、一遍に経済が変わるものではないわけでございまして、先ほども申し上げましたように、積極的な公共事業投資が導火線になりまして民間経済の活力を回復をする、そのような経済運営をするということがことしの目標でございます。でありますから、もし民間の経済が政府の考えておりますような方向に動いてこないということでありますと、その場合には、どれだけ有効需要の喚起がさらに必要であるかということをできるだけ早い時点で検討をいたしまして、そしてその有効需要を喚起するためには、どの方法が日本の経済にとって一番いいかということを総合的にそこで判断をすべきであると、こういうことだと思います。   〔理事福岡日出麿君退席、委員長着席〕  ただしかし、いまの段階では私どもはとにかくとりあえず緊急輸入の拡大をいたしまして、貿易収支のバランスをある程度回復するということにいま全力を挙げておるわけでございますが、そして四−六の公共事業の集中によりましてある程度の流れは変わるであろう、まあまあ補正予算等も組まないで何とかやっていけるのではないかというように見通しを立てておりますが、経済のことでございますから、情勢の変化等もありましょう。でありますから、第一・四半期の終わったところあたりで総合的なやはり判断というものをもう一回加えていく、こういうことが必要だと思いますが、そのときの具体的な内容につきましては、やはりそのときに判断すべきものだと心得ます。
  95. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そこで、もう一つの柱であるいわゆる経常収支六十億ドルの黒字に持っていくということですが、これはことしは最終的にはどの程度でおさまったんだったですかね、わかりますか。
  96. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) 最終的な計数はまだ中旬にならなければ判明いたしませんが、大体百三十億ドルから百四十億ドルぐらいの間、しかも大体百四十億ドルに近い線の黒字になっておるかと思っております。
  97. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは結局、昨年政府も何回か修正をしてやってきたわけですけれども、これはもう政府の何回かの修正も予想を裏切るような大変な黒字になっちゃったわけですけれども、これは六十億ドルのバランスを保つ——六十億ドルに持っていくということは、相当な何というか大幅黒字を減らすためのいわゆる作戦をいろいろやらないと、これはどうしようもないわけですが、政府はいまのこの六十億ドルに持っていくためのいわゆる基本的な考え方ですね、まず基本的な構想から、一遍お伺いしておきたいと思います。
  98. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) やはり一番基本的な構想は景気の回復、景気の回復による内需の拡大、内需が拡大をいたしますと無理して輸出をすることもだんだんと減ってくると思うわけでありますし、さらにまた内需の拡大によって輸入する力も増大するわけでありますから、自然にバランスがとれるということになります。ただしかし、これはあくまでオーソドックスな考え方でありまして、これには相当な時間が必要であります。そこで、のんびりとそういうオーソドックスな方法だけに頼っておるわけにはまいりませんので、緊急対策としていま考えておりますことの一つは、五十二年度は数量的には六、七%ぐらい伸びたと思いますが、これを減すといいますと、これがたちまちのうちにして景気に大きく影響をいたしますので、減さないで数量的には横並びに抑えていくと、これは強力な行政指導が必要でございまして、いま重だった商品ごとにその行政指導の詰めをしておるところでございます。これはもう一番の基本的な緊急対策でございます。  しかし、それだけではやはり最近の円高によるドルベース数字の増大ということには対応できませんので、緊急輸入対策をいま作業をしておるところでございまして、三月十一日には四項目からなる緊急輸入対策を実施をいたしましたし、三月初めから三月中旬にかけまして対米貿易ミッションを派遣をいたしまして、アメリカからの緊急輸入も若干決定をしてまいりました。しかし最近の円高から見ますと、それだけではもうとても不十分である、もう少し規模を思い切って拡大しなけりゃならぬというので、先月の下旬からずっと連日のごとく関係各省が相談をいたしまして、いま緊急輸入の拡大策について相談をしておる最中でございます。大体大詰めに近づいてきましたので、もうしばらくたてば大体案がまとまるのではないかと、こう思っております。  以上、二つの点を考えながら対策を進めておるところでございます。
  99. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いま大臣がおっしゃった緊急輸入四項目、三月の十一日に発表になった分ですね、これはこれだけでは十分ではないということで、さらに拡大策を検討していらっしゃるということでございますが、その後の方は後でお伺いするとしまして、この四項目につきましては、これは順調に準備は進んでいらっしゃるわけですか。
  100. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) 三月十一日に決定いたしました四項目の緊急輸入でございますが、このうち第一の民間航空機の輸入促進につきましては、ただいま運輸省において鋭意検討をしております。第二の航空機のリース方式による輸入でございますが、これにつきましては特に金融面あるいは現実の運航面につきましての検討を進めておるところでございます。第三のタンカーによる原油備蓄でございますが、これは五十三年度に五百万キロリットルの備蓄を行うことを目途といたしまして、鋭意その泊地あるいは配船につきまして検討を進めておるところでございます。第四のニッケルなどの希少金属あるいは鉄鉱石のペレットあるいはウランその他の備蓄に関しましても、特に緊急な外貨貸し制度の活用ということで、この運用につきましてただいま鋭意検討しておるところでございます。
  101. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これはまず民間航空機の輸入の問題ですが、これについては運輸省がいま検討しているということですが、運輸省に対してはどういうふうな相談をしていらっしゃるのですか。運輸省としては、たとえばいつごろまでにその計画を立てるとか、あるいはもっと具体的などこどこの航空機をどういうふうにするとか、いろいろ具体的な報道もなされているわけですけれども、そこら辺の相談は運輸省と相当詰めてやっていらっしゃるわけですか。
  102. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) もちろん航空機の輸入は非常に急ぎたいということで運輸省に申し入れてはおりますが、ただいまのところ昭和五十三年度に入着いたします分の航空機につきましては、すでにもう契約は完了いたしております。さらにこれを増加するか、あるいは五十四年度の入着分につきまして、運輸省でも検討を急いでいただいておるということでございます。これにつきましては、あるいは路線の拡張の問題もありましょうが、そのほかこの現在の事態にかんがみまして、運輸省としてもできるだけ早い時点で輸入できるような検討を願っておると思っております。
  103. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これはやっぱり運輸省だけではなくて、通産省、大蔵省含めましてそれぞれ関係の省庁とも相談するということになると思うんですが、まずこの航空機の問題については大体いつごろをめどとしていらっしゃるわけですか。
  104. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) めどといたしまして、もう御承知のように、航空機につきましては契約時におきまして頭金を大体二割払うということになっておりまして、入着時に残余の金額の決済を行うわけでございますが、したがいまして、その頭金二割、これも大きゅうございますけれども、できるだけ残余の八割が早く支払えるようにと思っております。ただし、航空機はジャンボで見ますと一機四千万ドルの非常に高価なものでございます。航空会社の都合もございましょうが、その辺はできるだけ調整をして急いでいただきたいということで運輸省にはお願いいたしております。
  105. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 急いでもらいたいと言っているということで、一つのめどについては具体的に答弁ないわけですが、航空機の国際リースの問題ですね、これは金融面でいま相談を進めているということですが、もう少し具体的におっしゃっていただけますか。
  106. 花岡宗助

    政府委員(花岡宗助君) 本件につきましては、経済企画庁、それから運輸省、通産省、大蔵省と、四省が集まりまして金融条件その他についての話し合いを行っておりますし、なおその場合の外貨貸しの条件——輸銀等を通じます外貨貸しの条件につきましても、四省と相談の上、さらに輸銀も加えまして現在検討いたしておるということでございます。
  107. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは緊急輸入対策ですから、やはり相当力を入れて検討して進めないと、実際問題間に合わないわけですがね、これはそれだけの力を入れて、この問題についてはこの四省が相談しているということですが、実際問題としてこういう話は具体的に進んでいるのですか、またあるいはどこの省が中心になってこの話をまとめようとしていらっしゃるわけですか。
  108. 花岡宗助

    政府委員(花岡宗助君) この四省の窓口は経済企画庁でございます。それで経済企画庁を中心にいたしまして、できるだけ早く東南アジア等の航空機会社にオファーを出して、具体的なリース会社が話し合いに入れるようにということで四省庁の話し合いを詰めておるところでございます。
  109. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それではこの問題はあれしまして、次に、タンカー備蓄の問題についてお伺いをいたします。  これは五十三年度に五百万キロリッターといま言いましたですかね、これは大変な量なんですが、具体的にどの程度話は進んでいらっしゃるわけでしょうか。
  110. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) 先般財団法人の日本タンカー石油備蓄協会を設立いたしまして、現在特に泊地につきましての検討を進めているわけでございますが、この五百万キロリットル、実際内容を申し上げさせていただきますと、二十五万トンのタンカーを二十杯ということで検討いたしておるわけでございます。
  111. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これは、場所とかそういうふうな問題については話はどういうふうになっておりますか。
  112. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) タンカーの泊地でございますが、万一石油が漏れるようなことがございますと、漁業問題その他非常に近所のいろんな住民あるいは漁業者に迷惑をかけることもありますので、その辺は慎重を要する。さらには、二十五万トンのタンカーでございますから非常に大きな船でございます。この辺を、そう簡単に二十杯を狭いところに置きますと、そのタンカーが故障を起こすというようなこともございます。あるいはそれに乗り組みます船員の問題その他もございますので、慎重に取り計らなければならないわけでございますが、われわれとしましては早急にこれを実現したいということで、特に泊地につきまして検討を進めているところでございまして、その具体的な内容につきましては、ただいまちょっとお答えは差し控えさせていただきたいと思います。
  113. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 これはいつごろまでその結論は——たとえば候補地とかそういうような問題もあると思いますし、実際問題としてこれは五十三年度中にやらないと緊急対策じゃないわけですよね。それで五十三年度、四月からいま始まったところですけれども、これはよほどやっぱり急いでやらないと間に合わないわけでしょう、実際問題として。それで、六十億ドルという目標達成にも実際問題として間に合わないわけですから、そういうような意味では、やっぱり相当私はタンカー備蓄という問題については場所の問題もありますし、環境汚染という問題もありましょうし、これは一つ一つの合意を得て、備蓄が完成、達成されるまでにはいろんな問題があると思うんですね。それがことし五十三年度中にできるかどうかということになると、これはまた大変な問題になってくると私は思うんですけれどもね。実際問題これは間に合うと思ってやっていらっしゃるわけですか、どうでしょうか。
  114. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) もちろんただいま資源エネルギー庁と運輸省が窓口になりまして鋭意進めておりますので、私としては五十三年度中に五百万キロリットルは実現できると思っております。
  115. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 そのできるという構想の中身を、やっぱりもうちょっと具体的におっしゃっていただかないと、われわれが聞いておりまして、緊急輸入とは言え、とても間に合わないような気がするわけです。緊急対策として政府が打ち出した対策にはとてもなり得ないんじゃないか、こういうような感じがするわけです。もう一回ちょっとお伺いしたい。
  116. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) この問題、実は昨年の秋からおいおい準備を進めておるような次第でございまして、そういうことでございまして、かなり計画は順調に打ち合わせができておるとわれわれは思っておりますので、もちろん五十三年度内には実現可能と考えております。
  117. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは第四番目の問題ですが、これは具体的にどういうふうに進んでおりますか。
  118. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) 第四番目の問題につきまして、ペレットでございますが、今年、五十三年度のうち開発途上国あるいはわが国から協力をいたしましてペレットを生産してできますものがかなりあるわけでございます。そのうちの大体九百万トンぐらいというものは、これを備蓄したいということで具体的に検討を進めております。さらにニッケルなどの希少金属でございますが、これらにつきましても大体一億ドルぐらいのものはやりたいということで考えておりますが、何分こういった希少金属あるいはそういった物資につきまして、日本政府がその備蓄を進めるということが軽々に出ますと、相手方の価格をつり上げるとか、そういった思わざる被害も生じますので、その辺は慎重に進めなければならないと思っているわけでございます。
  119. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 いまのこの第一から第四項目までございましたが、これで大体合計で何億ドルぐらいになるんですか。
  120. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) 大体これ申し上げますと、またその数字がもしもひとり歩きしますと、非常にわれわれとしては困るわけでございますけれども、大体におきまして十億ドルから二十億ドルぐらいのものはこの辺でカバーしたいということで考えております。その辺は非常に数字をぼかさしていただいて恐縮でございますが、この辺につきましては、われわれのいろいろな期待額とそれがいろんな対外的に影響するところもありますので、その辺は慎重に発言さしていただきたいと思います。よろしく御了承願いたいと思います。
  121. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 確かに十億ドルから二十億ドルと言うととんでもないぐらいに幅があるわけですが、実際問題、それの最大限、マキシマムをとったとしても二十億ドルですね。これで実際問題、いまのことしの百四十億ドルという黒字を六十億ドルにしようと思ったら、八十億ドル減らさなければいかぬわけですね。これはやはり私はいろんな角度から見て大変なことだと、純粋に数だけ計算してみてもそういうようになるわけですから。これは実際達成可能であるかどうかということについては、私も非常に疑問に思わざるを得ないわけです。  先ほどの初めにやりました民間の調査報告によりましても、経常収支の黒字についてはいい方の推定でも七十八億ドル、もう一つの方の推定ではやっぱり今年度も百二十四億ドルという試算が出ておるんですが、これはそういう点から見ても、この四項目以外に、先ほど大臣が新たな拡大策を考えているということですが、これは新たな拡大策をたとえ考えたにしても、とてもじゃないけれどもこの六十億ドルの達成というのは並み大抵のことではないということを大臣思うわけですが、これはよほどやっぱり引き締めて、大幅黒字解消という問題については取り組まないと達成されないと思うんですが、大臣どうでしょうか。
  122. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) おっしゃるとおりでございまして、現在の情勢では相当大幅な緊急輸入をいたしませんと現在の経常収支の流れは変わりませんので、この三月の初めの案に加えまして、いまいろいろ工夫をして打ち合わせをしておりますが、これらを全部加えますと相当大規模なものになると思いますし、またそういう方向にしなければいかぬということで、いま努力をしているところでございます。
  123. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それでは次に、この円高差益の還元の問題ですが、これは私この問題をいままですっと何回か取り上げてまいりましたんですが、最近もこれは大幅な円の上昇によりまして為替差益が相当出てきたと、それもただ単に石油業界とかあるいは電気、ガスだけではなくて、いろんな範囲に広がってきております。そういうような意味で、これはどっちにしてもこのメリットを国民に還元する必要があるというふうに、いろんな角度からそういう声がだんだんだんだん高まってきていると私は思います。そういうような意味で、現実に日銀総裁もこの点については四月七日の談話の中で発表していらっしゃいますし、最近はまた日々その声が高まってきているわけです。  そういうふうな意味でやっぱり通産省としても具体的にこの円高差益の還元という問題について、これは積極的に行政指導に取り組まなければならない事態に立ち至っていると、私はこういうふうに思うんですが、初めに大臣どうでしょう。
  124. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 昨年の初めから比べますと、実に七十円以上の円高になっておりますので、膨大な為替差益というものが当然発生をいたしております。その金額は非常に大きいと私どもも計算上理解をしておりますが、そこで去る三月二十五日に内需拡大のための経済対策閣僚会議を開きまして、七項目にわたる内需拡大策を決定をいたしましたが、その際も為替差益の消費者還元ということを正式に決めまして、そしてその具体策等について近く決定をしようと、こういうことになっております。本日も閣議でそういう発言もございまして、いま政府の関係者の間で作業をしておりますが、最終的にどういう形にこれを結論づけるか、若干の時間が必要だと思います。しかしながら私は、政府といたしまして、この為替差益の還元という大方針をまず決定をして、そして各省ごとにいろんな具体案を進めていく、こういうことにせざるを得ないのではないか。そして、各省ごとに強力な対策というものを私どもは期待をしていきたい。通産省関係する品目が相当たくさんございますので、いろんな角度から、やり方はいろいろあろうと思いますが、いま研究、検討をしておるところでございます。
  125. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 それは、確かに大臣おっしゃるように、政府としてもこの際、この差益を消費者に還元しようという方向で検討をしていらっしゃるということですから、これ以上多くを申し上げることはないわけですけれども、現実の問題として、たとえば通産省では管轄の電気料金、ガス料金の問題があるわけです。この問題につきましては、前々から何回か私もこの委員会のたびに発言し続けてきているわけですけれども、これは消費者に還元する方法として、実際問題として、ただ料金を下げるというだけではなくて、いわゆる値上げをしない期間を延長すると、そういう方向で通産省エネルギー庁の答弁は終始しているわけですね。ところが実際問題として、それだけではもう済まなくなってきたんではないか。やはり、たとえ一世帯当たりの金額にすれば非常に少ない金額であったにしても、やっぱりその分を消費者に還元した方が、たとえば消費者の消費意欲の拡大とか、そういうことに、非常に少ない金額だから、つながらないといえばつながらないかもわかりませんけれども、私は波及効果がやっぱり大きいと思うんですね、いろんな物価に対する。そういうような意味では、やはりただ単に延長すると、値上げをしない期間を延長するというだけでは済まなくなってきたと、そういう感じがするわけですが、この点についてはどうでしょう。
  126. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いまの電気料金は、御案内のように昭和五十一年の前半に、五十一年度、五十二年度の二ヵ年間の原価計算をいたしまして、そうして決定をしたものでございます。で、五十三年度以降は、さらに原価計算をいたしまして新料金を決める、こういうスケジュールになっておったのでありますが、円高による差益等も相当期待できますので、一方で値上がりの要素も相当強いんです。たとえば、一昨年の年末にはOPECが、五%値上げのところと、それから一割値上げのところとございましたけれども、一応値上げをしたわけですね。そして昨年の中ごろには、五%値上げのところは一〇%値上げに同調する、こういう値上げ問題も起こっておりますし、それから人件費、修繕費、それから資本の負担費用、こういうものも相当ふえております。でありますから、もしここで値下げということになりますと、これは円高によるメリットは幾らなのか、あるいはまた、コスト計算による値上がりの要素は幾らなのか、そういうことを全部洗いざらい新しい角度から総検討をして、そうして五十三年度、五十四年度の数字というものを決めていく、こういう必要があろうかと思うんです。  しかし、そういうことになりますと大ごとで、数ヵ月間の計算期間等も必要といたしますししますから、一応値上がりの要素はあるけれども、しかしとにかく円高によるメリットというものも大きいんだから、まあこの際は、五十三年度はとにかく値上げはしないと、一年間料金は据え置きだと、こういう基本方針をまず決めまして、そしてできることならば五十四年度も引き続いて値上げをしない、こういう基本方針を決めようと思っております。すでに五十四年度の分につきましては、数社でありますけれども、全部ではありませんが五十四年度も値上げはしない、こういうことを表明しておるところもございまして、何とかそういう方向に持っていきたい。私は現時点からいろいろ総合的に判断をいたしまして、値上げをしないという期間をできるだけ長期間据え置く、これがやはり現在の料金体系から見て一番いい方法ではないかと、こう思うんです。わずかであってもこの際は値下げをしろと、こういうことになりますと、さっきからのことをまた繰り返して恐縮でありますけれども、値上がりの要素等もこの際は検討しなきゃならぬ大変なむずかしいことになりますので、先般決めましたこの据え置き方針、これを堅持をしていきたいと、こう思っております。
  127. 峯山昭範

    ○峯山昭範君 ぼくは確かに大臣おっしゃるのもわからないではないんですけれども、ぜひこれは今後の円の動きもまだ見なけりゃなりませんけれども、二百二十円というところが、大変なもう高値になっているわけですから、そういうような意味では私は各社とも相当やっぱりあれですね、大臣、それぞれ各社ごとに為替差益がどの程度出ているかということもきちっとつかんで、それぞれきちっとした指導をすべきだろうと思うんです。それで、五十三年度は値上げしないとしても、五十四年度約束したところもあるし、しないところもある。やっぱりあいまいなままに放置しておくというのは、私、いけないと思いますんで、その点はきちっとしていただきたいと思いますし、それからこれは公益事業ではないにしても、この為替差益関連のいわゆる石油業界、これはやっぱりそれぞれ相当な差益が入っているわけです。現実の問題として、たとえばボーナスにしたって、賃上げにしたって、いろんな角度からやみボーナスが出たりいろんな問題が出て、やっぱり新聞やいろんな報道の中でもその会社がその為替差益によって得た利益を消費者に還元するというんではなくて、社内でそういうふうな処理をしている、そういうようなのが現実に出てきつつあるわけですね。そういうような点もやっぱり私はきちっとそれぞれの業界を指導するとともに、その為替差益還元の方法を、消費者に還元する方法をそれぞれ具体的に検討すべきではないか、そういうふうに思うんですが、これはどうでしょう。
  128. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 為替差益が幾らあるかということについての計算方法は若干複雑な点もありますけれども、しかし、とにかく電気料金というのは公共料金でありますし、電気事業法に基づきまして原価計算をするという、そういうたてまえにもなっておりますので、私はやはり料金を据え置く場合でも、為替差益による数字は幾らあるかという計算を明らかにいたしまして、それは社外に流出しないように、これが先ほど申し上げました料金の据え置きという形であっても、これは消費者に還元されることになるわけでありますから、そこらあたりの計算は明確にいたしまして、いやしくも誤解を生じないようにしなければならぬと考えております。その方向で行政指導をしてまいる所存でございます。  なお、石油につきましては、これも非常に大きな為替差益が出ておることは御指摘のとおりでございます。ただしかし、この石油業界はやはり一面相当大幅なコストアップ要因もございます。たとえば、先ほどOPECの昨年における値上げについては申し上げましたのでこれは省略をいたしますが、ことしの六月と十二月にはまたOPECの総会がございます。いまのところ、この総会で値上げをするかしないかは判然といたしません。六月のOPECの総会では、あるいは値上げをしないのではないかという説が比較的強いのでありますが、十二月の総会では値上げをするのではないかという説の方がまた逆に強い。こういうこともありますし、かつまたこのドルの動き等の微妙な関係から、この際は値上げをすべしという強硬な意見もあるようでありますので、こういうOPEC総会の動き等も見なければなりませんし、それから、現在の二百二十円という水準は、果たしてこのままずうっと継続するのか、あるいは先ほど申し上げますような緊急輸入対策あるいは日米首脳会談における両国の話し合い、こういうことによりまして、ある程度安い水準に返るのか、そこらあたりの模様ももう少し見きわめなければならぬと考えております。  それから、現在の需給関係から考えまして、現実に相当石油業界は値下げもしております。それから昨年の十二月には灯油の値下げの行政指導もいたしましたし、つい先般は、ナフサの値下げも実現をいたしております。だから、一般的な値下がりのほかにこういう特殊な品目についての行政指導による値下げも加わっておりますので、必ずしもまるまる為替メリットが残っておるわけではありません。  それから、さらに石油業界では、前から内容の非常にいい企業と非常に悪い、いわゆるコンビナートリファイナリーを中心とする企業が混在をしておりまして、経営内容が非常に違うわけであります。だから、その間の違いを一体どう対処するかという複雑な要素等もございますので、そういうことを見きわめながら、もうちょっと時間をかしていただきたい、最終判断をするのに時間をかしていただきたい。しかしながら、国民の皆さんからごらんになりますと、とにかく石油業界はそういうコストアップの要因があってもなおそういうものは吸収して十二分におつりがあるのではないか、だからこの際はやはり、とりあえず電力料金と違って比較的簡単に値下げの手続きもできるわけでありますからこれを断行すべしと、こういう強い世論があることも私どもは承知をいたしております。もうしばらく時間をかしていただきまして、最終の判断をしたいと考えております。
  129. 馬場富

    ○馬場富君 いま新年度予算と景気回復の見通しについて質問が運ばれましたが、その中で重複する点を避けまして、特にこのようないまの予算も実質いま執行に入ったわけでございますけれども、予算の立案の当時の環境と状況ですね。たとえば円にしても、二百四十五円というものを想定のもとに立てられた新年度予算が、いま実質執行段階に入って二百二十円を割ったと、こういうような状況下の中にありまして、先ほど来何点か峯山議員が質問をされましたが、その中での政府の答弁は、鋭意検討するという言葉が私のあれに残っただけであって、具体的な推進の状況というのはやはり明確でない、こういう点がはっきりしておるわけでございます。  特に当面しておるこの円高問題につきましては、先般も予算委員会で大臣質問をいたしましたけれども、やはりこれは速効性がなければ何にも意味をなさないというような事態に実は日本経済は追い込まれてきておる。こういう立場からも、先ほどの質問の中でも、最終段階におきまして検討の余地のあることを大臣は言ってみえましたが、そういう点、この浮揚が執行段階においても考えられなかった場合の対策として、何か考えてみえるかどうか、まず第一点質問します。
  130. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まず一番政府がいま急いでおります点が二つございますが、その一つは、一週間ばかり前に成立をいたしました予算を上半期、特に四月−六月に、どうすればこれを集中執行することができるかということにつきまして、いま内閣を挙げて取り組んでおるところでございます。今月の二十日過ぎには、経済関係の閣僚が全国を回りまして、この公共事業の促進について地方と打ち合わせをする、こういう計画もいま進めております。これが第一点でございます。  第二点は、国際収支の現在の状態から考えまして、緊急輸入を思い切って拡大をするということ。特に来月の日米会談、七月の先進国首脳会談を控えておりますので、何とかそれまでに、日本として世界から評価を得られるような対応策というものを打ち出していきたい、こういうことで緊急輸入の拡大策について検討をいたしております。  この二つが最緊急課題でございますが、いま私どもの考え方を率直に申し上げますと、四−六にとにかくすべての経済政策、公共事業を集中して執行いたしまして、その反響が民間経済にどのような影響を及ぼすか、これによってそれからのこの経済運営を判断をしたいと、こういう考え方でございます。
  131. 馬場富

    ○馬場富君 大臣の答弁でいきますと、特に一つは、いま新年度の予算の早期実施を目標にしていく、もう一つは緊急輸入対策によって考えていくという状況でございますが、立案の当時二百四十五円の円高一つ中心にして想定された新予算——現在二百二十円を割るようなところまで追い込まれた状況の中で、完全に一つ基準が私は狂ってきたと思うのです。そういう中で、この問題についての一つの浮揚というものは、やはり非常にむずかしい問題がある。国民の中でもこの点について大きい疑問がみんな持たれておるわけです。そういう点について大臣は、その実施あるいは緊急輸入によってこれを回避すると言うけれども、国内事情というものはそう甘いものじゃないと思う。円高の長期にわたる不況のために、本当に国民生活も追い詰められてきておる。こういうのが実態ではないか、私はこういうふうに感ずるわけでございます。そういう点について、最近ではこのポイントとしては、内需の拡大以外にないというような一つの見地から、新年度予算の実施と緊急輸入の拡大だけではとうてい追いつかぬのではないか。そのために補正予算の声すら出ておりますが、この点について大臣はどのようにお考えになりますか。
  132. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) まず、補正予算の前に一言申し上げたいと思いますが、二百四十円時代から二百二十円時代になって大きく変わっておるではないかというお話でございますが、まさにそのとおりであります。ただしかし、昨年秋の二百七十円から二百四十円までに急上昇をいたしましたあのときは、日本の産業界がもう大変なショックを受けまして、通産省一般産業の調査、それから中小企業関係調査でも、非常に深刻な見通しが出ておったのであります。私どもも非常に心配をしておりました。これだけの円高になると輸出も相当減るのではないか、このように心配をしておったのでありますが、最近この三月の中旬に二百三十円に近づいてまいりましたので、これはほっておくわけにいかぬというので、もう一回緊急調査をいたしたのでございます。ところが、これは一般企業もそうでありますが、中小企業におきましても、一部の産業はとても対応できないあるいは一部の企業はとても対応できないという状態でありますが、しかし多くの企業はその間いろいろ工夫をされまして、やはり生きるためにはこれはもう死にもの狂いだということで、いろいろな対応策を考えられまして、そして昨年の秋の心配のような状態は、ある程度回避できたという結果を私どもは得たのであります。  ようやく愁眉を開いたのでありますが、そこで一番心配をしておりましたのは、輸出が数量的に減りゃせぬかということを大変心配しておりました。ところが、数量的には大体五、六%伸びておりまして、現在はそれを横並びに指導しなければならぬというのが現状でございます。だから、二百四十円から二百二十円になったために直ちにデフレ的な要因が働いておる、そういう状態ではございません。ただ、中小企業関係は、これはもう微妙な影響を受けるものですから、三月の中旬に全国調査をいたしまして、さらにそれが二百二十円に近づいてまいりましたので、つい先般も中小企業庁の三部長をチームのヘッドといたしまして全国緊急調査をさせました。中小企業関係はやはり相当な影響が出ましたので、これに対しましては緊急の何らかの対策がやはり必要だと考えております。特に金融的な面でもう少し配慮が必要だということで、いま関係各省と相談をしておりますが、そういう緊急対策は、この中小企業等に対しては当然考えていかなければなりません。  しかしながら二百四十円が二百二十円になったからもう大ごとだ、すぐに補正予算だと、こういうところまで、先ほど申し上げましたような経過、調査等から判断をいたしますと、これは少し早いのではないか。それよりも、先ほど申し上げましたように四−六の様子を見まして、なお政府が考えておりますように、公共事業を誘い水にして民間企業の活力を取り戻したいという、その政府の考え方が思うとおりいかない、どうしてもこの際は何らかの対応策が必要である、こういうことになれば、そこで改めて、どのような追加対策が必要かということを判断すればいいのではないか、その時期はもうちょっと先でもいいのではないか、いまは、補正予算を直ちに組むべしという判断は少し早い、このように理解をしております。
  133. 馬場富

    ○馬場富君 それでは、その補正予算につきましては今後の経済見通しの中で考える、こういうような理解でよろしゅうございますか。
  134. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) これはもう総理大臣が繰り返して国会の場を通じまして、七%成長、それから六十億ドルの目標を達成するためにはあらゆる政策、手段を動員してまいります、臨機応変に対応します、しかも機敏でかつ大胆に対応します、こういうことを繰り返し言っておられるわけでありますから、あらゆる政策、手段の中には当然補正予算も含まれるものと理解をしております。
  135. 馬場富

    ○馬場富君 じゃ、この点はこの程度でおきまして、特に景気対策の中で、昨年の秋以来何点か政府においても対策が持たれ、今年の中でも四項目、七項目等の対策が持たれましたけれども、先ほど来の質問を通しまして、重複を避けてやめますけれども、やはり一番大事なのは、確かに政府は問題点のあったときに実は対策の発表はあるわけでございますが、私は、今日の景気回復を見ないところについては、やはりその実行がおくれておるのではないかという点に一番ポイントがあるということを感じます。そういう点について、ひとつ対策に対する早期実施を強く要望するわけでございます。  次に、いま開かれておりますガットの東京ラウンドに臨む日本の姿勢につきまして——アメリカとECから関税の引き下げ等について強く要望されておるようでございます。またあわせまして、経常黒字の問題についても、一−二月については最高の更新をしております。こういう点を、東京ラウンドと黒字減らしをあわせまして、いま日本の通商政策大臣はどのように考えてみえるか、質問をいたします。
  136. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 日本の通商政策の最高の基本方針は、自由貿易の原則を守っていきたい、世界で保護貿易あるいは制限貿易の台頭するのをとにかく抑えまして、自由貿易による拡大均衡、これを堅持、拡大をしていきたいというのが最高の基本方針でございます。そのためにはガット東京ラウンドというものはぜひ成功させなければならないわけでございますので、紆余曲折はあろうと思いますけれども、とにかく妥結の方向で、成功の方向でアメリカ、ヨーロッパと交渉していこうというのがいまの考え方でございます。
  137. 馬場富

    ○馬場富君 その一つは、交渉段階の中で、やはり追加品目についての問題も出ておりますし、それからあわせまして、九日のECの副委員長と牛場大臣との対談の中でも、七月末の終結の線で合意したという点と、あわせましてセーフガードの創設の問題が出ておりますけれども、この点についての大臣の御所見はいかがですか。
  138. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先般の牛場・ハフェルカンプ会談によりまして当面のアウトラインがしかれたわけでありますが、それは七月には妥結をしたいということと、それからもう一つ日本の経常収支を目標のおよそ三分の二にすべきであると、その方向で日本政府も努力するということがうたわれておりますが、いま正式の日本の経常収支の見通し、政府見通しは、昨年の十二月に改定をいたしました百億ドルでございまして、いま貿易局長は、三月末で百四十億ドル近くなるであろうということを言っておりましたが、これは単なる現時点では見通しでございまして、正式の数字は百億ドルということになっております。だから三分の二ということになりますと、およそ六十億ドル強、そういうことで共同声明にあるような表現をしているところでございます。
  139. 馬場富

    ○馬場富君 セーフガードの創設についての意見はどうでしょうか。
  140. 花岡宗助

    政府委員(花岡宗助君) セーフガードの問題につきましては、先日、牛場・ハフェルカンプ会談の場におきましても取り上げられておりますが、日本側といたしましては、従来からセーフガードはやはりガットの枠組みの中で無差別適用を原則とすべきであるという主張をいたしておりますので、その線で話し合いを行ったということでございます。
  141. 馬場富

    ○馬場富君 次に、話は変わりまして、円高差益の還元の問題の中で、公共料金等電力料金につきましては質問がありましたので、特にナフサやC重油の値下げの、還元の問題でございますけれども、この点について政府はどのようなお考えを持っていらっしゃいますか。
  142. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) ナフサの価格は、昨年の第三・四半期、十−十二の分につきましては先般妥結をいたしましたが、この一月以降の分についてはまだ妥結をいたしておりません。  ただしかし、石油業界には非常に大幅な黒字というものがあり、ナフサを使う石油化学業界は非常に大幅な赤字で呻吟をしておる、こういう状態でありますので、しかも昨年の十−十二月から比べますとさらに一層の円高にもなっておる、こういうことから考えますと、私は両業界で実情を十分認識をされまして、良識あるこの話し合いが進むことを期待をしておるのであります。  それからまた、C重油を使う産業界におきましても、現在の不況のために苦しんでおる業界がたくさんございますので、このC重油の価格等につきましても、石油業界等それぞれの関係の業界におきまして良識のある話し合いが進むことを私どもは期待をいたしております。
  143. 馬場富

    ○馬場富君 それでは、この円高によって——ほかの方でも結構ですが——五十二年度に石油会社関係がこの円高差益でもうけた利益というのはどのように推定してみえますか。
  144. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 来月になりますと大体石油会社の決算が判明をいたしますが、したがっていま企業ごとの計算はまだ最終的にはいたしていないと思います。いま作業中だと思いますが、ただ、一円上がりますと石油業界の利益はおよそ二百五十億、こういうことが言えますので、一方でコストアップの要因はありますけれども、コンビナートリファイナリー等を除きまして相当膨大な利益が各企業とも上がっていると想定をいたします。
  145. 馬場富

    ○馬場富君 私の方の調べた金融筋のいわゆる一月末決算の調べでは、二千六百億という数字がこれ出ておりますけれども、これは表面的に見ましても、このようなやはり数字が出ておるわけでございます。このように一つは利益が上がっておる  他面、国民生活の必需品の原料となっておるそういうナフサについては、政府は昨年九月に円高対策として価格を調整することを発表なさいましたけれども、実質は、石油会社石油化学会社との双方の協議ということにこれをゆだねてしまって、指導することについて積極性を欠いたと私思うんです。そのために、この交渉というものは、いわゆる石油会社が有利な立場に立っての実は交渉でございます。そういうために結局は、その間今日まで非常に莫大な差益ができたにもかかわとず、やっとここれは三千円の値下げということで実は終わったわけでございますが、これは一ドル二百六十円というときの状況でございます。このときですらいまの国際ナフサと国内ナフサとの差は千七百円の差があったわけです、三千円値下げして。ところが、今日一ドル二百二十円の場合にどのくらい国際ナフサと国内ナフサとの差があるか、ひとつ答弁してもらいたいと思います。
  146. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私輸入ナフサの点につきまして直接は取り扱っておりませんので詳細はわかりませんが、最近の円高傾向から従来大体四、五千円と言われました輸入ナフサの価格と国内価格の差は、今回三千円の値下げはなりましたが、いまの六千円下がったと計算いたしますと、やはりなお四、五千円の差がある、こういうふうに言われておるということでございます。
  147. 馬場富

    ○馬場富君 私どもの計算では、二百六十円の場合に二万四千三百円、そして二百二十円になった場合に一万八千三百円とその差はキロリットルが六千円の差になるわけでございます。こういう状況でございますから、これに対しまして大きい差もできておるわけでございますから、この差についての調整についてどのような考えか、はっきり答弁してもらいたいと思います。
  148. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) ナフサの値下げについてのこれまでの通産省考え方は、とりあえずは両業界の話し合いによりましてとにかく下げられるだけ下げてもらいたい、三千円でも四千円でもとにかく早く妥結するようにしてもらいたい、ただしかし、三千円下げても四千円下げましても、なお数千円の差というものは存在をするわけでありますから、これは若干時間をかけて、さらに第二段階としての話し合いを詰めていく、こういう二段構えでやってもらいたいということを言っておったわけであります。でありますから、この一月以降の分につきましても、これまでの方針に従って両業界が話し合ってもらいたい、こう思っております。
  149. 馬場富

    ○馬場富君 次に、昨年私はこの問題が出たときに、あの円高の最初のときに質問した、そうしたらエネルギー庁長官が、値下げよりは輸入ナフサでこれを補うとおっしゃった。今年はそのために百五十万キロリットルふやして九百万キロリットルを輸入しましょう、こういうことをおっしゃいましたが、五十二年度は現状何万キロリットル輸入されたでしょうか。
  150. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) ナフサの五十二年度の輸入でございますが、百五十万トン追加するということは現実に実行いたしております。したがいまして、五十二年度の輸入実績は約九百万トンになっておると考えております。
  151. 馬場富

    ○馬場富君 これはしっかりと見てもらわなきゃ困ると思います。そういう点でやはり八百五十万キロリットルを切れる状況現状だと思います。もうこれは完全に三月で締め切っておるわけですから、おたくの方はちゃんと出ておらにゃいかぬ。どうですか、それは。
  152. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) 通関の実績はまだ集計中でございまして、先ほどもお答え申しましたように中旬にならなければ判明いたさない次第でございます。
  153. 馬場富

    ○馬場富君 これは業者間の推定等でも、多く伸びたとしても八百五十万キロリットルまでいかないだろうという見通しがみんなはっきり言われております。そういうふうな状況で、私は、輸入の問題一つあわせてみても、政府がもっとそういう点で円高の問題を解決するといって踏み切ったならば、積極的にやらなければならぬじゃないか、ところがこういう大きな差額ができたときに、本当に輸入が自由にできるものならどんどんとできるわけでございますが、この輸入ナフサについてはどのように輸入許可をなさっておりますか。
  154. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) ナフサは自由化品目でございますので許可はございません。
  155. 馬場富

    ○馬場富君 それでは、実はこのナフサの輸入につきましては、現状局長大臣はどうお考えか知りませんが、石油会社しか輸入ができないような実情でございます。あなたが自由に輸入なさるとおっしゃるから、それじゃ仮にナフサを輸入業者が輸入許可を申請したならばあなたは許可なさいますか、必ず。はっきりと答弁してもらいたい。いいかげんなことを言っちゃ困るよ。
  156. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) 許可品目でございませんので、許可の申請はあり得ないんじゃないかと思いますが、詳細ちょっと調べてみますけれども。
  157. 馬場富

    ○馬場富君 これは申請によって許可されることになっているわけですよ。これは後で調べて、きちっとこの輸入に対する許可制のことについて御説明願います。
  158. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) ナフサは自由化品目でございますので、許可は要しないで輸入できると思っております。
  159. 馬場富

    ○馬場富君 それではこの問題につきましては、時間もございませんからこの辺にいたしますが、このように二百二十円を割るようなこういう状況の中に来ておりまして、そしてナフサは現在国際ナフサというと安価な値段でついておるわけですよ。それが実際自由にできるものならどんどん輸入されて、日本のナフサ相場は下がらなきゃならぬじゃないですか。ところが、九百万キロリットルという枠がある。それでその枠を下回る分しか輸入もされていない現状からちゃんと見てみますと、日本の国産ナフサが使用された残りしか輸入されてないというのが実情じゃないでしょうか。どうでしょうか。
  160. 西山敬次郎

    政府委員西山敬次郎君) まことに恐縮でございますが、ナフサの需給の状況は詳細存じませんので、よく調査いたしたいと思っております。ただいまのところはこれで御了解願いたいと思います。
  161. 馬場富

    ○馬場富君 じゃこの質問はこれでとどめますけれども、このように円高によって輸出入の問題というのは実は極地に来ておるわけです。輸入するものについては差益があるが、輸出する分には差損があるというようなそういうアンバランスの状況になってきております。こういう中で、やはりこの問題の解決の一つは、対策の中でいろんな諸対策はあるとしても、まず第一点は何といってもこの円高によって起きるアンバランスの調整だけはしっかりやらなければ、その上に立ってほかの対策があると思うんであります。ところが、今度はほかの対策は幾らとっても、根本的な輸入と輸出の問題につきまして、輸出は損害を受けておる、輸入については一つも見返りがされぬという実情ではとてもじゃないが景気対策は私はできぬと思います。大臣はいかがでしょうか。
  162. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 仰せのとおりでございまして、政府の方もその点を最近痛感をいたしておりますので、そこで円高による差益メリットの還元ということにつきまして強力な対策を進めていこうという決意をしておるところでございまして、いまその具体策につきまして各省の間で最終の打ち合わせをしておる、こういう段階でございます。
  163. 馬場富

    ○馬場富君 政府の関係石油製品の価格の見直しの話もあるといいますが、その点について意見がありますか。
  164. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 石油製品の価格は業者間の話し合いで一応決まるたてまえになっておりますが、しかし情勢いかんでは政府が行政指導することができることになっておりますから、そういう意味で先ほど申し上げました灯油などは行政指導によって引き下げも図ったわけでございますが、先ほども答弁いたしましたが、いろんな未確定の要素があるものですから、そういう要素をもう少し見きわめまして、その上で最終的な判断をしたい、こう思っております。
  165. 馬場富

    ○馬場富君 次に、いわゆる耐久消費財等に使われております品質保証書についてちょっと質問いたします。最近、そういう保証書があるにもかかわらず、そういうものが結局効果がなかったというようなことで、非常にこの問題をめぐって消費者とメーカーや販売店のトラブルが絶えない実情が多くなってきております。そのために社会問題にもなりかねないというような現状でございますが、この点について、ひとつ順を追って質問したいと思います。  この問題につきまして、昨年夏、産構審の消費経済部会におきましてアンケート調査をされたと、こういうふうに聞いておりますが、その耐久消費財の保証書の添付率はどの程度であったか、お尋ねしたいと思います。
  166. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいまの御指摘の、昨年夏、五十二年の六月から七月にかけまして、私ども、消費生活改善監視員というのを使いまして添付状況調査をいたしました。そのときの調査によりますと、全体で延べ六千三百品目程度でございますか、そのうちの約四千五百三十品目、率にいたしまして七二%弱がこの保証書を添付をしておるという結果が出ております。
  167. 馬場富

    ○馬場富君 そのアンケートの中で、保証書があるのに修理代を請求されたとか、あるいは修理をしてもよくならなかったとか、そういう極端な問題が出ておりますが、その点に対するパーセントはどんな状況でございますか。
  168. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいまの御指摘の点、私ども、この調査でいろいろな苦情が出ておりまして、ただいま御指摘のパーセントで整理をしておりませんので、なんでございましたら後で改めて御報告申し上げますが、苦情の一番多いのは、やはりその保証期間が余り長くないとか、それからどうも保証書に、売った販売店の名前が入っておらぬ、あるいは売った年月日が入ってない、それからどうも保証書について十分な説明がなかったとかいうような点、あるいは先ほど御指摘の、保証書がついていたのに、無償で修理をしてもらえなかったというようないろんな苦情が、申し出がございました。
  169. 馬場富

    ○馬場富君 私どもの調査におきましても、実はそういう保証があったのに対してお金を取られたとか、そういうものについても約三〇%近くもございましたし、あるいはこの保証書についても、いろんないまおっしゃるような問題点が私どもの調査の中からも出てきております。この点についてどのように対処されますか。
  170. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) 私ども、やはりこういう耐久消費財の保証書の添付というのは、ついております以上、ちゃんと保証書の中に書かれてあるように守られるのが当然しかるべきだと思います。ただ、いろいろ法律上の問題とか、あるいは実施上いろんな問題ございますので、昨年の十二月から産構審の場でこれの検討を始めまして、現在までに、もはや数回いろいろな角度からの検討を進めております。  なお、ただいま私が申し上げました、たとえば保証書に販売年月日が入ってない、あるいは販売店名が入っていないということは、これは保証書の効力の問題でございますので、早速ながらこれは今後、販売店に確実にそういうものを記入するように指導いたしたいと考えておりますし、それから保証書について十分説明がなかったというようなのも、十分これは売るときに消費者にわかるように指導いたしていきたいと思います。それから保証期間の問題等は、これはその耐久消費財の種類によりまして、あるいはいろいろ一律にはいかない問題もございますし、今後この辺をどう考えるかというのは、早急に産構審の場で議論をいたしまして、私どもの今後の方向を出していきたい、こういうふうに考えております。
  171. 馬場富

    ○馬場富君 いまおっしゃったように、大変これは社会的にも大きい問題になってきております。消費者の立場からいけば、保証書があるから修理等も保証されるという期待があるわけですから、それが裏切られるわけでございますから、私は道義的にも非常に問題があるし、また、これはひいては法的にも一つは疑義のある問題ではないか、このように考えるわけでございます。そういうために、現在の保証書の発行あるいは表示する事項、内容等の決定は発行するメーカー側の自由に任されているのが現状でございますが、そのために、いままで幾つか問題点が起こってきたわけでございます。そのために、これにたまりかねて、地方自治体では神戸だとか、東京だとか、川崎等の各地方自治団体は条例を設けて、政府の手ぬるさのためにもう踏み出してしまったという状況すらあるわけでございます。そういうために、こういう耐久消費財のような全国的な流通をする、そういう関係の商品でございますから、地域的の規制だというと、これはずいぶん問題があるんではないか。そういう点で、この点を通産省はどのように改善を考えてみえるか、また、あわせて大臣の所見を賜りたいと思います。
  172. 濃野滋

    政府委員(濃野滋君) ただいまの御指摘の点、ごもっともな点でございまして、私ども、やはりこういう耐久消費財は、地域の問題というより全国流通の商品でございますから、各地方公共団体でそれぞれのお立場でつくられる、これでは全国的な統一が図れないという問題も出てまいります。ただ先ほど申し上げましたように、この保証書の性格とか、その内容の問題につきましては法律上の問題等もいろいろございますし、それから対象商品でもいろいろな考え方をしなきゃいけませんので、先ほど申し上げましたように、私ども、特に法律問題につきましては学者の専門の方、学者の方だけ集めた法律の小委員会等をつくりまして、特にその辺は早急に結論を出そうと思っておりますし、全体の考え方がまとまりましたときには、私どもとしましては、やはりこの保証書の今後をどう考えていくかということについて、たとえばガイドラインをつくるとかいうようなことで全国的な統一をし、消費者が保証書に従ってちゃんと修理等が受けられる、そういう方向をとっていきたいと、基本的にはそういうふうに考えております。
  173. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 局長の答弁したとおりでございます。
  174. 馬場富

    ○馬場富君 終わりました。
  175. 安武洋子

    ○安武洋子君 私も先ほど論議されております円高の問題についてお伺いいたします。  昨年来急騰してまいりました円相場といいますのは、この三日、とうとう二百二十円台を割りまして二百十円台に突入したわけなんです。円高は私は新しい深刻な事態を迎えていると思いますけれども、いまなおこれに対して有効な手が打たれていない。円はさらに切り上がる情勢を見せているのではないかと思います。大臣は、先ほど一部の企業は対応できないところもあるけれども、多くの企業は対応策を考えて対応されている、心配したようなことはなかった、輸出も伸びて、横並びの指導は必要だけれどもデフレの要因は働いていない、こういうふうに御答弁なさっていらっしゃいましたけれども、しかし、日本の全企業の中で九九%を占める中小企業、こういう中小企業が受けている打撃というのは大変大きくて、この打撃は否定できないと思うんです。ここは単なる金融対策だけではこれは私はだめだと思います。昨年の通産省調査などでも、中小企業、特に輸出関連の中小企業は重大な影響を受けていると、こういうことが指摘され続けてきております。私は、最初に、大臣も新しい緊急措置が必要になったというふうにも言われておりますけれども、いまの二百二十円割れ、しかもさらに円が切り上がろうとしているようないまの状態をどのように受けとめていらっしゃるか、基本的なことを最初にお伺いいたします。
  176. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 二百四十円のときに全国七十九地区、これは輸出中心の産地産業でございますが、それを調査をいたしました。そのときはほとんど全部の企業が、二百七十円でないとやっていけない、二百四十円ではこれは大ごとだ、一月以降はとても新しい注文はとれない、こういう非常に深刻な打撃を受け、また悲観的な見通しを持っておったことは事実であります。ただしかし、反面、原料なども下がりましたし、あるいは物価も安定ぎみでありますし、金利なども下がった、こういうことからさらに合理化努力が加えられまして、二百四十円のときの調査では大変大事な結果になるのではないかということを心配しておりましたのでありますが、ある程度は対応できたということで、われわれも胸なでおろしたということでございますが、しかし、最近の二百三十円、二百二十円ということになりますと、また事情が違ってまいりますので、立て続けに三月中句以降二回にわたる調査をいたしております。中小企業関係には、この二百四十円以上の高い水準になりますと、非常に大きな影響が出ておりまして、これはほっとくわけにいかぬというので、いま金融を中心とする緊急対策を政府部内で相談をしておるところでございまして、近く決定をいたしまして、直ちにこれを実施に移したいと考えておるところでございます。
  177. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は金融対策だけでは不十分だということを先ほど御質問申し上げたと思うんです。まあ輸出関連の中小企業とか、円高不況の中で苦しんでいる企業、商社、こういうところがいまこぞって望んでいるのは、これは為替相場の安定なんです。安定してこそ初めて事業計画も立てられる。それから契約条件も、安定した中で結べるということで、安定して経営を進めるということができるわけなんですけれども、いま成約がゼロだという産地さえ出ているということが報道されているわけなんです。産業政策を預かる大臣として、少なくとも相場の安定を図るということで何らかの歯どめ対策、こういうものを私は講ずべきではないかというふうに思いますけれども、大臣の御見解を伺いとうございます。
  178. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 二百四十円のときの打撃がある程度立ち直れたというのも、一応二百四十円でどうも続きそうだということで、それじゃひとつ輸出をやってみようということになったんだと思います。そこで、いまお述べになりましたように、相場の安定ということがやはり成約の前提条件になりますので、私どもも何とか一刻も早く円の水準を安定させたいということを強く期待をしておるわけでございますが、しかしながら、その背景には、先ほども申し上げましたように日本の大幅な黒字、アメリカの大幅な赤字、しかもアメリカが大統領が三月には二回も声明をいたしますようにドルは弱くないんだと、こういう基本的な認識を持っておるということから、なかなか思うようにはいかない。そこで、日本としてとるべき対策を早く立てまして、そしてその上でアメリカ側との突っ込んだ話し合いに入るべきであるということで、緊急の輸入対策等も含めまして、来月の日米首脳会談に臨む政府としての対応策をいま進めておるところでございまして、おっしゃるように一刻も早く、何とか安定の方向に持っていきたいと、かように考えております。
  179. 安武洋子

    ○安武洋子君 さらに伺いますけれども、日銀は乱高下には介入すると、こういうことを言いまして、二百四十円台では介入してきておりましたけれども、最近は介入姿勢を示しておりません。円高が産業に及ぼしている影響というふうなところから見まして、日銀のこのような姿勢を、大臣としては一体どういうふうにお考えでしょうか、お伺いいたします。
  180. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 乱高下の場合には各国の中央銀行は介入してよろしいということになっておりまして、これまで何回か日本銀行が必要な介入をしてまいりましたが、私もいかなるときに介入をしておるのか、またいかなるときに介入していないのか、そういうことについては詳しいことを知りませんが、ただ、ついこの間の予算委員会では、日銀総裁が出席をされまして、質問に応じて答弁をされておりますのを聞きますと、何とかここらあたりで円も安定をさしたいと強く期待をしておりますという趣旨のことを予算委員会で答弁をされておりましたので、私たちも、とにかく円が早く安定することをひたすら期待をしておるところでございます。
  181. 安武洋子

    ○安武洋子君 しかし、円高が進行しても円高によるメリットを生かせば十分日本の産業は成り立つのだと、こういう円高を歓迎するという一部の見解もあるわけなんです。大臣も御存じだろうと思いますけれども、いまの産業の苦境に照らしてみて、こういうふうな見解についてはどういうふうな御見解をお持ちでしょうか、お伺いいたします。
  182. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 為替相場の変動も、ドイツのように相当長い時間をかけまして徐々に変動したという場合には、対応策も十分立てられると思うんですが、何しろ日本の場合は昨年の秋からわずかの間に急上昇したということで、産業に与える影響は非常に甚大なものがございます。しかも二百三十円から二百二十円になりましたときの通産省調査では、特に中小企業ではようやく二百四十円水準で何とか苦心惨たん目鼻がつきそうになったというところへ、再びこれだけの円高でございますから、さらに大きな打撃を受けておるのでございます。かつまた、一般の産業界も対応したとはいいながら、これは一、二の業界を除いてはもう限度に来ておるという感じでございます。しかしながら、出血輸出でもやらないととにかく失業者を出さざるを得ないということで、背に腹はかえられぬというので、操業度を維持するための出血輸出というのが現状だと思います。そういう意味で、円高になれば日本の経済が評価されてそれでいいんだと、そういう簡単な理論にはこれはとてもついていけないと、こう思います。
  183. 安武洋子

    ○安武洋子君 円高につきましては福田総理も打つ手がないと、こういうふうな御答弁をなさっていらっしゃいますし、いま一つの焦点になっているのが黒字減らしでございます。私どもは黒字減らしにしましても、数字だけの操作で実効はないというふうに思っているわけです。宮澤経企庁長官も、これまで打てる手はもう出し尽したと、奇想天外な案はないと、こういうふうに言っておられます。政府の唱える黒字減らし、これは数字合わせであって、もし効果があるとしても、これは私は大企業のための石油備蓄とか、あるいは飛行機、エアバスとか、そういうようなものの購入であるとかいうふうなことで、実際に国民生活に役立つものではないと、一時的なものであるというふうに思うわけです。こういう目先だけの手段だけで円高を生み出している原因そのものを、取り除くことが一体できるというふうにお考えなんでしょうか。こういう点をお伺いしとうございます。
  184. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いま政府のとっております緊急対策は、一つは何としても大幅黒字という貿易の流れを変えなきゃいかぬと、そのためには、一つはほうっておいたのでは数量的にも現状では六、七%ぐらい伸びる傾向にありますので、数量で抑え込んで、数量はとにかく横並びにしようという強力な行政指導をしておるということが一つでございます。それからあわせて輸出を抑えながら緊急輸入の拡大ということで、いま最後の詰めをしておるところでございまして、とにかく現在の大幅な黒字の流れというものを、六十億ドルに近づけるという方向に持っていかなきゃならぬというのが、最大の努力目標でございます。こういう態勢をとりまして、そしてアメリカ側とある程度の話し合いも可能になると、このように考えておるわけでございますが、いまお述べになりましたことは、そういうことをやっただけでは問題の根本的の解決にはならぬではないかというお話でございますが、問題がすべて解決するわけではありませんが、とりあえずは貿易対策としては、いま政府のとるべき対策としてはその二つしかないと、このように考えております。  抜本的な対策といたしましては、先ほど来申し上げておりますように、ここしばらくの間の経済の動きを見まして、必要とあらば総合的な対策考えていかなければならぬ、これまた別問題として処理していきたいと考えております。
  185. 安武洋子

    ○安武洋子君 総合的な緊急対策が要るのではないでしょうか。いま国民は大きな不安を抱いているわけです。このままでは二百円を割るのも時間の問題だというふうにすら言われているわけです。その中で、国民は一体日本の経済というのはいまからどういう方向にいくんだろうということで、不安を抱くのは私はあたりまえだと思うんです。大型倒産も続出しておりますし、このまま円の急騰にただ手をこまねいているというふうな、先ほど大臣いろいろおっしっいましたけれども、根本的な要因を取り除くことにはなってないということを、私御指摘しているわけですけれども、このままでいきますと、円高パニックと言われるような経済の大混乱、これを引き起こさないとも限らないと思うんです。そういう危険性に対して一体どのように対処なさいますでしょうか、そのことをお伺いいたします。
  186. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) そこでこの現在の円高の背景でありますが、一つは先ほど来繰り返し申し述べておりますように、日本の大幅な黒字にあるわけであります。まあ一つは大幅なアメリカの赤字と、それからアメリカの、現在のアメリカの経済に対する認識というところにあるわけでありますので、日本としてなすべきことは、まず現在の大幅な黒字という国際収支の流れというものを変えていこうというので、先ほど来緊急対策として二つの大きな柱を考えておるということを申し上げたわけであります。その上でアメリカと話し合いをしよう、世界経済全体の立場から話し合いをしていこうと、こういうスケジュールでございます。
  187. 安武洋子

    ○安武洋子君 いまアメリカの大統領が、ドルは弱くないと、基本的な認識をそう持っておるので大変理解してもらうのにむずかしいというふうなことも御答弁ございましたけれども、いま円が急騰し続けている要因の一つというのは、確かに大臣のおっしゃるようにアメリカの基軸通貨であるドルの安定策、これはアメリカが放棄していると、私はこういうふうに思うわけです。これが原因の大きな一つです。やはり強い通貨としての円に、いま投機が集中しているというところが円の相場のやはり高騰を招いている、円の相場の安定を図るために、単に目先の対策だけではなくってアメリカのドルのたれ流し、こういう政策をやめさせると、さらに強力なドルの安定対策をとらすことがこれはどうしても必要だろうと思うんです。アメリカとの話し合いをする材料は決して不足していないわけですし、時期的に見ても悠長に構えている段階ではないというふうに思うんです。私はアメリカの国際通貨のこの政策ですね、ドルに対する放置ですね、無策の策といいますか、これらによって日本の経済が打撃を受けているわけなんです。  で、経済政策を変えざるを得ないような打撃を受けて、このまんまでいていいのかというふうな問題があるわけです。日本の産業ばかりが犠牲にされているというときに、もっと毅然たる態度でアメリカに対処されるべきではないかというふうに思いますけれども、先ほどからの大臣の御答弁確かにアメリカと話し合うんだとはおっしゃっておりますけれども、根本的にやはりアメリカのドルのたれ流しですね。そしてアメリカがドルに対して無策であるというふうなこの点について、日本の経済を守るという毅然たる立場をおとりいただかないと、幾ら話し合っていただいてもだめだと思うんです。そういう点いかがでございましょうか。
  188. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先ほど来繰り返し申し上げておりますように、日本の五十二年度の経常収支というものは、昨年の五月にはマイナス七億ドルであると言っておりましたものが、たびたび修正をいたしまして、いま貿易局長が言いましたように、最終的には百四十億ドル近い黒字になったと、こういうことでございます。かつ日本としては昭和五十三年度はこれを六十億ドルにするということを、対米、対ECとも共同声明まで出して、そういう方向を確認しておるわけであります。ところが、現実は残念ながらそれと違う方向に行っておる。円高という事態もありますので、日本が申し述べた方向と違う方向に行っておりますので、このまま何もしないで、日本として君がやっとることけしからぬじゃないかということをアメリカに言いましても、アメリカの日本に対して言うべき言葉はわかっておるわけです。だから日本としてはいまなすべきことを十分する、それは輸出を数量的に横並びに抑えて、そして緊急輸入を拡大をいたしまして、まあまあ六十億ドルの線は何とか行けそうだとこういう方向を明らかにして、そしてアメリカに対して、君の方のどうも経済運営はどうですかと、少しおかしいんじゃないですかとか、いろんな意見をそこで初めて言える、そういう段階でございまして、日本としてまずとるべき政策というものを確定するということが必要だということを申し上げておるわけであります。
  189. 安武洋子

    ○安武洋子君 その論議につきましては、私、後で本当にとるべき措置がどのようなものであるかということを申し上げたいと思います。  その前に、私はひとつ申し上げておきますけれども、いま必要なことは、国民生活を守れるような円相場の確立のために、政府が毅然とした姿勢をとることだと、そのことがどういうことかということは後で論議をさせていただきます。  少し為替差益の問題についても先ほどから論議をされておりますので、この問題にも触れとうございますけれども、この為替差益の問題についても、私は全く片手落ちだと思うのです。輸入品に対する経企庁の調査でも、依然として円高に見合うだけの物価引き下げが行われていない、こういうふうになっているわけですね。石油業界とか電力、ガス各社の差益というのは、これは早く国民に還元しなければならないというふうなことで、大臣も先ほど消費者にこの為替差益を還元するのが原則だというふうなことをおっしゃっておられましたけれども、まあ関電一つを見てみましても、五十三年の三月期百二十八億、それから五十三年の九月期には八十億、一年間で計二百八億円と、これだけの為替差益を得ると見込まれているわけなんです。電力、ガス会社というのは、これは通産省の指導で今後値上げはしないということを打ち出しておりますけれども、私は電力料金とかガス料金など、通産省認可されるものについての還元方法ですね、差益の。こういう方法とか手段とかというものをまず明確にして、積極的に還元を進めると、こういうことが必要ではないかと思うわけです。  先ほどいろいろと言われておりましたけれども、値上げの要素があるとか、計算の方法があるとか、こういうふうないろいろなことをおっしゃっておられました。しかし、まず方法、手段、これをどうするのかということを明確にして、国民にやはり差益を還元していくのが基本であるという姿勢で進めていただかなければならないと思うんです。五十二年度だけでも一千億を電力、ガス、利益を得ているわけですね。ですから、こういう点について、どういうふうにして積極的に国民に、先ほど大臣が言われた大原則である差益を還元される手段、方法をとられるかということをお伺いいたします。
  190. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 円高に伴う為替差益を消費者に還元するという方向に行政指導を強力にしなければならぬというのが、政府の基本的な考え方でございます。  そこで、再び電力料金についての御質問でございますが、電力料金にもいまお示しの程度の差益はあります。ありますが、この差益の還元方法はいろいろあると思うのです。業界ごとによって違うと思うのですね。ある製品は値下げをすべきだと思いますし、ある製品は場合によればこれは値上げをしないで横並びでいくと、こういう場合もあろうと思いますが、電力料金のことにつきましては、これも先ほど来繰り返して申し上げますように、これは五十一年度、五十二年度の現在は電力料金がそのまま続いておるわけであります。電気事業法によりますと、コスト計算をしなきゃならぬということになっておりまして、もしこれを値下げをするということをさせますと、これは当然値上げの要素等も十分勘案いたしまして、プラスマイナスがどうなるかということについて、これはやっぱり数ヵ月がかりで計算をしていかなきゃならぬと、こう思います。非常に複雑な要素がたくさんあるものですから、一日二日でやれる問題ではありません。  そこで、この一月以降五十三年度は値上がりの年になっておるけれども、値上げをしないでとにかくしんぼうしなさいと、それが結局は消費者に利益を還元することになるんだから、そして同時にとりあえず一年間は値上げをしないだけではなく、五十四年度もできるだけ値上げをしないように、ひとつ工夫と努力を重ねてもらいたいということを要請をしておるわけであります。私は電力業界ではこの料金の据え置きをできるだけ長くする方が一番いい方法だと、こう思っております。
  191. 安武洋子

    ○安武洋子君 関西電力だけ六ヵ月の輸入原油代金などドル建て支払いが約四億ドル、一円の円高になると四億円の円高益が発生するわけなんですね。私は少なくとも低収入の母子家庭、それから失業者の家庭あるいは老人ホームや保育所、それから身障者向けの施設、それからまた学校、病院、こういうところに対しては、電気とかガス料金の低廉化の措置を講ずべきだと、これはぜひやっていただきたい、こういうふうに思いますけれども、大臣いかがでしょうか。
  192. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 前回の値上げ、一昨年の値上げのときにはそういう要請が出まして、とにかく次の予算が成立するまでの間、部分的にそういう福祉料金というものを考えますと。ただし、これは電力会社が自分自身の合理化によってひねり出して、そして、その分を一部福祉料金として値引きしましょうという、数ヵ月間にわたる暫定措置をとったことがございます。しかし、原則はあくまで電力料金というものは原価計算で、一部の者には安く、一部の者には高くと、こういうことをしないというのが電気事業法のたてまえでございます。  でありますから、今回の場合は、実は衆議院でもそういう御意見があったのでございますが、前回と違ってむずかしい。福祉政策というものは一般会計でやるべきものであって、電力料金で政府のやる福祉政策を肩がわりするというのは、これはいささか政策としてなじまないと、こういうことを申し上げまして、むずかしかろうという御返事をしたところでございます。
  193. 安武洋子

    ○安武洋子君 何も自分の企業合理化でひねり出したものじゃなくて、ただ黙っていても円高差益で転げ込むもの、しかも福祉政策でやるとおっしゃいましても、今度の予算を見てみても福祉はばっさりなんですよね。ですから、せめてこういうところに少なくとも電力料金それからガス料金、通産省として指導なされるわけでしょう。なぜこういう指導をおやりにならないんですか、重ねて伺いますけれども。
  194. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) これは、電気事業法で電気料金の計算方法がちゃんと決めてありまして、法律のたてまえからそうなっておるわけであります。
  195. 安武洋子

    ○安武洋子君 では、前にやったことが間違っているとでもおっしゃるんでしょうか。前にできたことが、いまは電気事業法のたてまえでできないというのはおかしゅうございませんか。
  196. 橋本利一

    政府委員橋本利一君) 先ほど来大臣がお答えいたしておりますように、現在の電力料金というのは、原価主義と公平主義に立っておるわけでございまして、特定の需要者に対して特定の料金を課するということはできないということになっております。  ただいま大臣が申し上げましたのは、前回電気料金等の改定をいたしました際に、御指摘の要保護世帯につきましては、まだ予算措置が講じられておらない年度途中のことであった。したがって、新年度までの間のつなぎとして、特に指導して、暫定的に従来の料金で供給した。その従来どおりの料金で供給するに当たりましての財源としては、一般のその他の消費者に、需要家に負担をかけないように、正規のコスト計算をした後、電力会社企業努力によって賄ったと、こういう趣旨でございまして、今回のように、新年度を待って云々といった場合と事情が異なる、こういうことでございます。
  197. 安武洋子

    ○安武洋子君 この原価主義については、私はずいぶん論議があるんです。しかし、きょうは立ち入って論議できませんので、これはきょうは置いておきますけれども、これについては異議がございます。  いまちょうど円高の問題で質問しておりますので、ちょっとそれに関連しまして、輸出関連中小企業現状、二月下旬から三月の上旬にかけて中小企業庁が行われておりますけれども、この産地調査の結果、これは私手元にいただいております。それで、四月に入って二百二十円割れという当時にも、再度現地調査にお入りになっていらっしゃいますけれども、現地に入られた方から直接に見聞された実態を伺いたいと思いますけれども、おいででございましょうか。
  198. 小松国男

    政府委員(小松国男君) 中小企業庁といたしましては、円高の影響につきましては随時調査しておるわけでございますけれども、いま先生おっしゃられましたように、二月末ないしは三月の初めを起点として、七十九産地についての調査をいたしたわけでございます。  ところが、その後さらに急速に円が高騰いたしまして、二百二十円を割るという段階になりましたので、中小企業庁の三部長をそれぞれチームの長といたしまして、七十九産地のうちの十四産地について調査をいたしております。なお、それと並行いたしまして、各通産局の地方円高対策連絡協議会というものも開きまして、そこでは、各七十九産地の代表の人、都道府県の人たちお集まりいただきまして、いろいろ事情を聴取しているという段階でございます。  私も、実はその調査団の一員として現地を回ったわけでございますけれども、端的に申し上げまして、十二月から一、二月という段階では、比較的二百四十円前後ということで円が安定しておりましたので、それをベースに産地はお互いに協力し合いながら、苦しい状況ではございますけれども、対応姿勢を整えつつあった。その結果、昨年と比べますと、まだ受注その他落ちておりますけれども、むしろ受注残にしましても新規受注につきましても、若干の回復基調にあった段階でございます。それに二百二十円割れというような事態が参りまして、産地としては、私どもちょうど行きました段階では、一様に、こういう形で円が動いてしまっては長期的な対応策もむずかしいし、バイヤーとの話も進まぬということで、三月それから四月の初めにかけましては、なかなか受注も思うようにいかない、それからバイヤーとの話もつかないと、先行きも不安であるというようなことで非常に心配をしておったという状況でございます。  そういう状況のもとに、私どもに対する一番強い要望としては、やはり円を安定さしてくれと、円が安定しない場合には、その対応策として何か考えてくれないかという点が第一点。それからさらに、当面こういう状況でございますので、企業が経営をつないでいくために、いろいろの金融対策その他の道についてもさらにいろいろ考えてくれないかという、この二点を重点にいろいろの要望があったという状況でございます。
  199. 安武洋子

    ○安武洋子君 いろいろ要望が出ているということで、それから検討されてゆっくり対策を立てられるというふうなことでは、対策が立てられた時点では、もう事態はもっと深刻な状態になっているというふうなことがいままでの繰り返しなんです。  ですから、私はいまここで、もう思い切って、やはり円高対策法のこの金利の引き下げですね、それから貸出条件の弾力的な運用と、こういうことをおやりになるべきだというふうに思いますけれども、大臣はどうお考えでしょうか。
  200. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 調査の結果、やはり何らかの対策が必要だと思います。金融政策を進める場合には、やはり金利の引き下げということが一つの大きな柱になると思いますが、いま政府部内で調整中でございます。
  201. 安武洋子

    ○安武洋子君 いつごろそういう結果が出ますんでしょうか。
  202. 小松国男

    政府委員(小松国男君) 現在、私ども調査に行きまして、その調査結果、それから各通産局の円高対策協議会の要望その他をまとめて、それについてのいま検討に入った段階でございますけれども、中小企業対策につきましては、先生御承知のように、まず二月十四日から円高法を施行して、もう抜本的な対策をやったわけでございますし、その後も、三月二十五日の閣僚対策協議会の七項目、これに基づきまして、金利の引き下げ、それから中小企業円高対策法の業種の指定の追加、それからさらには中小企業の不況業種の指定、これも業種の追加を三月末にいたしております。それからさらに、中小企業の倒産対策緊急融資制度の廷長も行っておりますし、また、過般に通していただきました中小企業の倒産防止共済法の施行につきましても、四月一日から施行ということで、できるものから逐次手を打ってきておりますし、これからもそういうことで、検討をしながら、結論の出たものから対策を打っていくということで、ただいま為替変動対策緊急融資制度の問題その他についても検討をし、関係省庁ともこれから協議に入ろうというふうに思っております。
  203. 安武洋子

    ○安武洋子君 その結論の時期はいつごろになりますかという、見通しをちょっとお聞きしたんですよ。
  204. 小松国男

    政府委員(小松国男君) これは、ですから、対策一つではございませんので、結論が出次第、一つ一つ早目に実行していくということで、いま、いつということを定かに申し上げられる段階ではございません。
  205. 安武洋子

    ○安武洋子君 その対策がいつも手おくれ手おくれになるから、早急にやっていただきたいという御要望を先ほど申し上げて、早くやっていただきたい、いつごろになるんですかということを申し上げているわけなんです。  私は、ここで大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、輸出関連の中小企業の場合、二百六十円から二百七十円が採算レートと、こう言われていたわけなんです。いまの状態では契約もとれないし、とれたとしても採算割れで出血サービスしている、出血輸出をしている、こういうところがほとんどなんですね。しかし、企業の減量を図ろうとしても、中小企業では、そういう規模ではもう減量も限界に来ている、こういうふうな状態です。しかし一方、家電とか、自動車とか、精密機械ですね、こういう一部の大企業、こういうところは、通産省調査でも依然として成約が順調な業種になっているわけです。精密機械や自動車というのは収益面でも他の業種に比べて影響がほとんどない、円ベースの契約単位も横ばいで、まあないしは上がっている状況ですね。こういう大企業が一体国内でどのようなことをやってこういう競争力をつけているというふうな御認識をお持ちでしょうか、ちょっとお伺いいたします。
  206. 小松国男

    政府委員(小松国男君) 大企業合理化が進み、輸出が非常に伸びておるという点につきましては、いろいろ事情があると思いますので、簡単にここで私が申し上げることもできませんけれども、こういう非常に苦しい状況でございますので、関連企業同士お互いに協力し合うという点もございまして、私ども中小企業庁の立場からしましても、関連の下請自身もやはりある程度忍んでおるという実情があることは確かでございます。ただ、この辺大企業もやはり相当お互いに忍び合っておる。さらに輸出価格についても、私どもの調査ではかなり上乗せも進んでおるという状況でございますので、そういう状況にこたえながら、コストダウン、新製品の開発合理化、さらには関係者の協力ということで従来輸出が行われてきておると、かように理解しております。
  207. 安武洋子

    ○安武洋子君 大臣からも。
  208. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 中小企業の緊急対策につきましては、中小企業庁の三部長を緊急に全国重だったところへ派遣をいたしまして調査をしたくらいでありますから、対策として非常に急いでおるわけであります。そういうことでありますから、できるだけ早く結論が出るようにいたします。何月何日ということはいまここでは申し上げませんが、とにかく急がなければならぬということは、これはもう申すまでもありませんので、そのような方向で結論をつけたいと思います。  それから一部の産業は、現在の二百二十円という水準になってもなお輸出余力があって、しかも大幅な黒字を出しておるが、大幅な利益を出しておるが、その競争力はどこから生まれたのかと、こういう御質問でございますが、やはりこれはもうたゆまない合理化努力のやっぱり結晶だと私は思います。新しい科学技術におくれないように次から次へ最新鋭の設備をしていく、そして合理化をやっていく。そして世界全体の動きをよく見まして、こういう商品を開発すればこの国との競争には負けない、しかしこの国との競争に勝つためには、さらに新しい商品の開発が必要である、こういう世界市場をにらみながらの新しい商品の開発、そういう創意工夫、合理化努力、すべての結晶が現在の競争力保持、こういうことになっておるのだと考えます。
  209. 安武洋子

    ○安武洋子君 いま大臣のお答えになった、たゆまない合理化の結晶だと、競争力が身についているのは、というふうな御答弁ですけれども、このたゆまない合理化の結晶というのがどんなものかということを私はここでひとつ具体的に申し上げたいんです。  三菱電機では、去年の暮れに社長通達で、五年間に四千人減らせ、こういうふうな通達を出されております。それに従って減員された人件費と言いますのは、三菱電機の伊丹では昨年一年間で十二億円です。こういうふうに言われているわけですけれども、この陰では出向ということで、四十代、五十代、こういう人が大量に出向をさせられているわけなんです。これは人が出向するだけでなくて、人とともに部品加工などの仕事も出向先に一緒にいくわけなんです。そうすると、三菱で加工すると千円のものが、五百円から六百円でつくることができる、こういうふうになるわけなんです。出向者の手にする給料の七、八割というのは出向先のこの下請が出しているわけなんです。第一次の出向先というのは、三菱電機が確かにここに出向しなさいというふうなことで出向させるわけですけれども、ある程度参りますと、一部の人たちには、次の出向者がつかえているから自分でどこか仕事を探してこいというふうなことを言われる。もう必死になって仕事を探しにいく。やっと見つけてくる。そこになるほど三菱電機の籍がありますから話をつけるというふうなことをしますけれども、こういうふうな形で下請は出向を断れないわけですね。断ると仕事を次から絶たれてしまうというふうなことで、下請は余剰人員を抱えなければならない、経営に非常に影響するわけです。ですから、もとからいた人を首切らなければならないというふうな実態も出てくるわけなんです。  で、労働省の雇用調整事業の中の出向給付金、これが三菱には出ますから、三菱は痛くもかゆくもないわけです。それよりも減量のメリットの方が大きい。出向労働者はひどい状態に置かれておりますけれども、関連事業への出向ということで、労働省の見解というのは、出向の際は本人の意思を確認する、本人の意思を確認しない出向はあり得ないと、こういう態度をとっておられますから、一定のわずかな保障というものがあるわけですけれども、じゃ一体この下請というものはだれが擁護するのですか。こういう実態についてはどういうふうにお考えでございましょう、お伺いいたします。
  210. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いまの日本の産業の現状を見ますと、つい先ほども労働省から二月中の完全失業者の統計が発表されておりますが、百三十六万人。これまでの一番悪い統計でありますが、しかも三月末ではこれが一層ふえそうだ、こういう気配になっております。それだけかと言いますと、実はそれだけではありませんで、企業の現在の七五%前後という操業率から判断をいたしますと、わが国企業が抱え込んでおりますいわゆる過剰労働力、企業内失業者とも呼んでおりますが、これはいろいろ説がありますが、二百万とも二百五十万とも言われておるわけであります。ここで景気が回復をする、操業率が上がる、こういう方向が明らかになりますと、各企業もせっかくオイルショック以降数年間しんぼうにしんぼうを重ねてきたわけでありますから、何とか人減らしをしないでがんばっていきたい、こういうことだと思いますが、しかしなかなか需要が回復をしない。なお、仮に需要が回復するにいたしましても、若干の時間がかかるということでありますと、これはどうしてもやはり企業が生き延びていくためには、ある程度企業内失業者に手をつけざるを得ないと、こういう事態が発生するということを私どもは非常に心配をしておるわけであります。  そこで政府といたしまして、ことしの経済政策運営の目標を幾つか設定をしておりますが、その国内対策としての最大の課題はこの雇用問題に置いておるわけであります。企業が抱え込んでおりますいわゆる過剰労働力、これが表面化しないように、何とか一刻も早く景気の回復を図っていかなければならぬ、産業の操業率を上げていかなければならぬ。雇用問題を最重点に考えまして、現在の経済政策を立てておるわけでございます。国際的には国際収支のバランスの回復、こういうことでございますが、国内的にはいま申し上げます雇用問題、これを最重点政策考えておるわけでございまして、仰せのような一部の企業では、ややもすると雇用問題が表面化する気配がありますので、何としても、先ほど来繰り返して申し上げております七%経済成長によるわが国産業の活力の回復ということは、ぜひ達成しなければならぬ課題だと考えております。
  211. 安武洋子

    ○安武洋子君 いえ、私が申し上げているのは、大企業の出向さす方は、これはちゃんと出向手当も出てるし、痛くもかゆくもないって言っているわけなんです、メリットがあると言っているんです。そうして一方労働者の方は、これは本当にわずかなものですけれども、関連企業に出向するというふうなことで、労働省サイドからの一定の保障もあるわけなんです。しかしこれを受ける下請関連企業は一体どうなるのですか。しかしこれを受ける下請関連企業は一体どうなるんですかということを御質問しているんです。産業政策を預かる大臣として、ここはどこからも保護されない。上からはこういう出向者を受けなければ仕事とめられちゃうと。そして自分のところの、もとから抱えている人たちを何とか整理しなければ減量できないというふうなこともなかろうかというふうな個々の中小企業、下請け、ここはだれが保護するんですか。これに対してどういう政策をお出しになって、ちゃんとこういうことのないように歯どめをするとか、何かお考えにならないといけないと思うんですよ。この点をどうなさるかということをお伺いしているんです。
  212. 小松国男

    政府委員(小松国男君) 下請と大企業関係というのは、これ非常にむずかしい関係でございまして、双方話し合いの上にお互いに協力関係をとっていくということで、そういう従業員自身の出向の問題が起こったり、また実際の製品の納入その他価格についてもお互いに協力し合ういろいろ話し合いが行われるというのが実情でございます。ただ、これが大企業が不当に自分の立場というか、優越的な立場を利用しまして不当な措置をとっているということでありますれば、下請関係のいろいろのそれが契約関係に影響する、また支払い条件に影響するということであれば、下請代金支払遅延等防止法に基づきまして、われわれも調査すると同時に、独禁法上の不公正取引に該当するとすれば、公正取引委員会の方に要請するということもありますし、その他の問題につきましては当然各原局その他行政庁を通じまして十分な行政指導も行ってまいりたいと、かように考えております。
  213. 安武洋子

    ○安武洋子君 私、そういうことを聞いていませんよ。正常な出向ならいいですよ、これはね。しかし、人数もつかめないほど膨大な出向をしていると。そうしてこの出向については、何度も繰り返しているように、受けなければ関連企業、下請は仕事切られちゃう、いろいろの不利を受けるわけなんですよ。こういう出向を受ければ、大企業は減量できますよ。しかし、受けた方は減量できませんでしょう。やはり自分のところのもとの従業員切らざるを得ないとか、いろいろと不利益なことばっかり受けるけれども、一体ここはどこが擁護するんですかと。やはり産業政策としてこれ穴になっているから、通産省がこういう点についてはちゃんとした産業政策をお出しにならなければいけないんではないですかということを私は言っているわけです。大臣に御答弁をお願いいたします。
  214. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 先に小松君が説明します。
  215. 小松国男

    政府委員(小松国男君) いま先生の御指摘の件につきましては私どもも憂慮しておりまして、大企業に対してそういうことはないようにということで、昨年末も中小企業庁長官と公正取引委員会の委員長の連名で五千の大企業等に対しまして、そういう形での下請のしわ寄せ、これを絶対しないようにという通達を出し、協力も要請をしておりますし、今後とも具体的にそういう問題があるとすれば厳重に指導してまいりたいと、かように考えております。
  216. 安武洋子

    ○安武洋子君 大臣に。
  217. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) いま中小企業庁の部長が答弁をいたしましたような方向で、不当なしわ寄せが行われないように十分指導してまいります。
  218. 安武洋子

    ○安武洋子君 そればかりじゃないんですよ。まあそれは指導していただくのはいいんですけれども、じゃ、もう一例申し上げます。  東洋工業というのがありますけれども、ここは出向させると、出向先から帰ってきた労働者の中から下請企業合理化推進のためのプロジェクトチームというのをこう編成するわけなんです。ミツバチ作戦と称する、下請に対する人減らし、合理化を押しつけているんです。ここにマル秘文書がありますけれどもね。これは東洋工業では関連企業九十四社に対して本社から技術指導、経営指導、人を派遣するわけですね。で、徹底的なコスト低減作戦、これを実行するというふうなことで、三〇%のコスト削減を目指してむだをなくすとか、それから遊休設備を処分せよとか、それから生産工程の合理化を行えとかいうふうに、こうなっているわけなんです。  で、実際これ実態を見てみますと、徹低した人減らしなんですよ。これ昨年の七月から十月にかけて、まず十社で行われた成績というのが報告されているわけなんです。各企業ごとに、しかもラインごとに人員削減計画と、それから実施状況、これが具体的に報告されているわけです。それによりますと、三〇%から五〇%の人員が削減されている。それでいまも一層これが強化をされているわけなんです。また中間在庫を減らすということで、国会でもいままでに大きな問題になりましたように、いわゆるかんばん方式と同じようなやり方が行われつつあるわけなんです。こういう状態について私はどうお考えでしょうかということをお伺いいたしとうございます。大臣いかがでございましょう。
  219. 小松国男

    政府委員(小松国男君) 親企業と下請企業関係にございましては、お互いに協力し合うという観点から合理化の指導をしたり、それからいろいろの診談、コンサルタントをしたり、また技術者を派遣したりということは、いろいろ行われております。私どもはこれ自身は決して悪いことではない、むしろお互いに合理化し、コストを下げ、それによって国際競争力を養っていくということが親も子も含めまして、その産業として生き残っていく道でございますので、これはそれ自身問題ないと思います。  ただ先生がおっしゃるように、それが非常に不当に、中小企業の了解もなしに、また大企業の優越的な地位を利用して、そういう不当なしわ寄せないしは不当な人員削減が強制、強要されておるということであれば、これは非常に問題でございますので、そういう実態があるとすれば今後厳重に指導してまいりたいと、かように考えております。
  220. 安武洋子

    ○安武洋子君 この東洋工業といいますのはね、これは上期の経常益というのは五十億なんですよね。ここには、「東洋工業の今四月中間決算は円高にもかかわらず輸出が比較的順調に推移しているため、経常利益は五十億円程度(前年同期二十四億二千八百万円)を確保できる見通しである。このため、今十月期通期については「今後国内販売を軌道に乗せ、経常利益百二十億円前後をめざしていきたい」」というふうに、ここの常務さんが言っておられるというふうになっているわけです。「輸出はノックダウン分も含めて順調に推移し、二十六万六千台を確保できる見通しはついている。」と、 こういうふうに報道されております。で、こういう裏に、私がこの何も下請の関連企業は自分のところで計画立てているわけじゃないんですよね。こういう計画を東洋工業の方が立てて、自分の下請関連のところまで人員削減を強要しているんですよ。こういう問題はやはり重視していただかなければならないと思うんです。まあ下請企業と労働者の犠牲でやはり国際競争力をつけて、大企業が集中豪雨的に輸出できると、こういうことを可能にしているのはやはりこういうやり方なんですよ。だから私は円高を招く大きな要因の一つはここにあるということを申し上げたいんです。  それに東洋工業というのは、いまも申し上げたように、二百二十円台態勢の中でも着実に輸出を伸ばしていると、こういう状態を放置して私は円高対策というのはあり得ないと思うんです。自動車工業というのは、高利益を維持しつつ輸出認証三月というのは、前年比の四七%増になっているのではありませんか。ですから、こういう状態を放置して、円高対策だ、円高対策だと言ってもだめだと思うのですけれども、この点大臣いかがお考えでしょうか。
  221. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) 日本といたしましては、この資源エネルギーに非常に貧弱な状態でありますから、やはり高度の国民生活の水準を確保していくということのためには、国際競争力というものが世界一強くなければならぬと考えております。国際競争力を保持するためには絶えず工夫、努力合理化が必要でございますが、ただその場合に、私どもが非常に心配をいたしますのは、人口も多いし、何しろ毎年百八十万人の学校卒業生が社会に巣立ってまいりまして、そのうち百万人以上が就職をしたいと、こういう状態であります。しかも先ほど来申し上げますように、企業内失業者が二百万とか二百五十万あると、こういう状態でございますから、なかなかこのすべての条件は、この激しい世界競争の中で生きていくということのためには、非常に私は厳しい条件が幾つか存在をしておると思うんです。だからちょっとでも甘いことやれば、たちまちのうちにして国際競争の中から取り残されてしまう。  こういうことになりますので、各産業、各業界とも生き残るためには必死の私は努力をしておると思うんです。だからその努力は大変結構だと思いますが、しかしながら、それがいまおっしゃるように、中小企業や下請に非常に不当にしわが寄るとか、あるいは社会的に不公正を招くと、こういうことになりますと、これは一面社会問題ということになりますので、そういうことのないように、これはよほど気をつけなければなりませんし、政府といたしましても、そういう面は別の政策対策を立てていく、救っていくと、こういうことをしなければならぬと思います。  そこで、繰り返すようでありますが、政府の基本政策というものは、雇用問題を解決するために何としても一定の経済の成長というものを維持していきたいと。一定の経済成長というものが維持できませんと、雇用問題がますます深刻になりまして、これはいまお述べになりましたような事態がもうどうしても発生してくる危険がございます。だから、何としても雇用問題が解決できるようなそれだけの力を持った経済運営というものを日本経済としてはやっていかなければならない。これをやりませんと、なかなか抜本的には解決しない、不景気の中で、おまえのやっていることはけしからぬじゃないかと言いましても、みんな生き残るために、ちょっと油断をしますと、やはりこれはいかがかなあと思うようなこともいたしますので、とにかく景気をよくするということが最大の課題であると考えております。
  222. 安武洋子

    ○安武洋子君 企業が生き残るためじゃないんですよ。これはいまの日本の円が集中攻撃を受ける原因をつくっている。黒字の原因をつくっている企業を私は例に挙げているんです。ここでは、出向させられる労働者だけじゃなくて、残っている労働者の中にも、職場によっては、余剰人員だということがはっきりわかるように、ヘルメットのところ、それから腕章とか胸にワッペンを張らせるとか、そういうことまでもしているわけなんですよ。ですから、私は下請いじめをしたり労働者にしわ寄せを持っていったりというふうな、こういうやり方については問題がある。そして、下請に関しては本当に救済措置通産省考えていただかなくっちゃ救われないわけなんです。大企業だけが黒字をどんどんどんどんこういうことをやって累積して、日本の円がねらい撃ちされると。それでいいとはお考えにならないと思うんですよ。この中で下請が泣き、労働者が泣いているわけなんです。この下請については、やはり通産省として、産業政策の中で救う道というのを検討していただきたい、こういうことを御要望いたしますが、いかがでしょうか。
  223. 河本敏夫

    国務大臣河本敏夫君) これは、抜本的に解決するためには、やはり景気がよくならなければ私はならぬと思うんです。景気さえよくなれば、いまお述べになりました大部分の問題は、これは自然に解消するわけであります。日本といたしましては、いま政策の最高目標を完全雇用というところに置いておるわけでございますが、人口が多くて資源のない非常にむずかしい状態の日本でありますけれども、オイルショック以前、昭和四十年代の前半から数年間というものは、完全雇用を達成をした、そういう時代もあるわけでございますから、だから何としても、いまのむずかしい条件を工夫をしながら克服をいたしまして、経済成長を軌道に乗せるということが最大の課題だと、こう思います。  しかし、いまのお話は、これは円高のせいだと、こういうお話でございますが、そういう議論になりますと、鶏と卵の議論になりますので、そこまではいたしませんが、いずれにいたしましても、景気の回復を図りながら抜本的な解決を図っていきたい。同時に、いまお述べになりましたような、社会的に考えてもどうしても不公正だと、このような事態が起こりましたならば、それは政策的に適当な対策をとりまして、救済あるいはまた必要な対策をとっていきたいと考えます。
  224. 安武洋子

    ○安武洋子君 私は、いまのような企業のやり方、これを放置しているところがやはり円高を生む原因だということを再三申し上げているわけなんです。だから、こういうものを放置しておいては景気回復も成り立たないというのが、私の申し上げている主張なんです。ですから私は、こういう救われない下請については、どうしても通産省対策をお考えいただきたい。そのことを強く要望いたします。  大臣とは、きょうは議論がすれ違っておりますけれども、こういう下請企業を泣かさないということで、通産省として対策をお立ていただくことを強く要請いたしまして、きょうの私の質問を終わらせていただきます。
  225. 楠正俊

    委員長楠正俊君) 他に御発言がなければ、本日の調査はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十五分散会      —————・—————