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1978-06-06 第84回国会 参議院 社会労働委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月六日(火曜日)    午前十時五分開会     —————————————    委員異動  六月二日     辞任         補欠選任      真鍋 賢二君     遠藤 政夫君      山中 郁子君     小笠原貞子君  六月五日     辞任         補欠選任      小笠原貞子君     神谷信之助君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         和田 静夫君     理 事                 遠藤 政夫君                 佐々木 満君                 片山 甚市君                 小平 芳平君     委 員                 浅野  拡君                 石本  茂君                 上原 正吉君                 斎藤 十朗君                 玉置 和郎君                 福島 茂夫君                 森下  泰君                 高杉 廸忠君                 広田 幸一君                 安恒 良一君                 渡部 通子君                 神谷信之助君                 柄谷 道一君                 下村  泰君    国務大臣        厚 生 大 臣  小沢 辰男君    政府委員        内閣総理大臣官        房管理室長    小野佐夫君        外務省国際連合        局長       大川 美雄君        厚生大臣官房長  山下 眞臣君        厚生省公衆衛生        局長       松浦四郎君        厚生省医務局長  佐分利輝彦君        厚生省薬務局長  中野 徹雄君        厚生省社会局長  上村  一君        厚生省保険局長  八木 哲夫君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        科学技術庁原子        力安全局原子力        安全課長     中戸 弘之君        科学技術庁原子        力安全局原子力        安全課放射能管        理室長      米本 弘司君        科学技術庁原子        力安全局原子炉        規制課長     早川 正彦君        科学技術庁原子        力安全局放射線        安全課長     金平 隆弘君        科学技術庁放射        線医学総合研究        所遺伝研究部長  中井  斌君        文部省学術国際        局情報図書館課        長        遠山 敦子君        資源エネルギー        庁公益事業部原        子力発電安全課        長        逢坂 国一君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付)     —————————————
  2. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二日、真鍋賢二君及び山中郁子君が委員辞任され、その補欠として遠藤政夫君及び小笠原貞子君が選任されました。また昨五日、小笠原貞子君が委員辞任され、その補欠として神谷信之助君が選任されました。     —————————————
  3. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 遠藤政夫君が一たん委員辞任されましたため、理事に一名の欠員を生じました。つきましては、この際理事補欠選任を行います。  理事選任は、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事遠藤政夫君を指名いたします。     —————————————
  5. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 片山甚市

    片山甚市君 原爆被爆者に対する特別措置法質疑に当たりまして、若干の問題について質疑をしたいと思います。  初めに、最高裁判決で孫振斗さんが外国人被爆者に対して原爆医療法適用を受けるべきだという、適用を認められたことは御承知のとおりです。その判決文を見ますと、原爆医療法制定理念についていろいろと書かれております。大臣所見、今後それに対してどのような対策をとっていただくのか、まずお伺いしたいと思います。
  7. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 今回の最高裁判決文にございますように、この両法案根底には国家補償的配慮があるという御指摘でございますので、これらの性格等を十分認識いたしまして、今後とも被爆者対策を推進していきたいと考えております。
  8. 片山甚市

    片山甚市君 これに関連いたしまして、実は在米被爆者現状、その問題点と今後の対策というものをお聞きしたいのですが、御承知のように、日本におられまして戦後アメリカに渡られ、アメリカの国籍を取られておりますけれども、その人々が幾つかの問題を提起して、そのための救済措置自分たちのグループ、協会等もつくられているようでありますから、どういう状態なのかについて局長の方から説明を求めたいと思います。
  9. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) アメリカに在住しておられる被爆者の方についてでございますが、米国被爆者協会という協会がございまして、そこの調べによりますと、約千名ぐらいの被爆者アメリカにおられるのではないかという推定をいたしております。それで、そのうち約四百名がこの協会に加入しているというふうに私ども聞いております。在米被爆者の中には、現実問題として言葉問題等がございまして、十分健康診断や適切な医療が受けられない状況にあるというふうに聞いております。そこで、そういう事情もございまして、昨年、財団法人放射線影響研究所とそれから広島県の医師会主体となりまして、共同作業として昭和五十二年の三月−四月にわたりまして、専門医師団アメリカに派遣いたしまして、カリフォルニア等におきまして健康診査を行ったということがございます。このアメリカに在住している方々被爆者につきまして、さらに今後医師団を派遣するかどうかということにつきましては、アメリカ政府等話し合いをいたしまして、今後の方針を定めてまいりたいと思っております。  なお、聞きますところによりますと、アメリカにおきまして、いわゆる原子爆弾被爆者に対する医療法、いわゆる医療費補償をするという法律案が現在議会にかけられているということを伺っております。
  10. 片山甚市

    片山甚市君 せっかく御努力をいただいて、そういう対策が進み始めておるところでありますが、実は、松浦局長は、海外被爆者に対して専門医派遣など、具体的な対策をとられたことについて説明があったんですが、健康手帳交付条件であります日本に滞在する期間が一ヵ月なければならないということで、社会的、経済的、肉体的な制約を受けておるこの人たちにとっては、大変な条件だと思う。一カ月おるということは大変だと考えるんですが、そのために事前調査などを十分に留意をして手帳取得条件としては、いわゆるもう少し簡単と言いますか、速くやれるようにして、そして海外での治療がそのために可能になる方法はないか、日本まで来なくてもその人たちに対する治療対策はとれないか、これについて考え方をお聞きしたいと思います。
  11. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) まず第一に、手帳につきまして、一ヵ月いなければいけないというようなことになっておるということでございますが、この判決もございまして、そのようなことなく、判決によりますれば、現に日本に現在すると、こういうことでございますので、そのようなこともなく手帳交付するというふうにいたす処置をいたしました。  それから第二に、外国におられる方に何とか手を延べろということでございますが、現実問題といたしまして、外国におられる方になりますと、それぞれの国の、何といいますか、主権の問題がございまして、現実問題としましては、外交的にきちんと両政府の間で話し合いができて、もちろんそれが民間ベースで行われる場合もございますが、少なくも、私どもが何らかのことを行うという場合には、それがお互い同士話し合いがスムーズにいきますれば、でき得る限りのことは、私ども、やりたいというふうに考えております。
  12. 片山甚市

    片山甚市君 そういたしますと、日本からその関係医師が派遣されて、治療というか、それに当たるということはできませんか。アメリカとの関係でそういうことについての約束はできませんか。
  13. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 実際に、昨年やりました場合にも、これはアメリカの方のエネルギー省ともお話しいたしまして、受け入れをするということがございました。一つの前提としてございました。  それから第二の前提としまして、それぞれの地域の医師会の、アメリカ医師会方々とも話し合って協力しようということもございまして、向こうへ行ったわけでございますが、やはり一つ問題になりますのは、アメリカ国内におきまして、アメリカのいわゆる医師免許証といいますか、そういうものがない者がアメリカの人に対して診断治療を行うという、日本医師向こうでは資格がないものでございますから、そういうようなやはりネックというものがどうしてもございまして、向こうのお医者さんと一緒に立ち会うような形でしかできなかったという実情であったというふうに聞いておりますが、少なくも現段階では、そういった、何といいますか、アメリカではアメリカのいわゆる医師免許を持った者でなければ治療できないというものに対して、特例にするというところまでは、現在のところ、とても、ほかの問題と絡みまして話がまだ進んでおらない。これはいま言ったようなやり方をさらに積み重ねる中で、漸次改善していきたいというふうに考えております。
  14. 片山甚市

    片山甚市君 そういたしますと、被爆者の方が日本に来られて滞在をされた場合は、国内におる被爆者と同じように措置をとっていただけることが、今度の最高裁判決から具体化した、こう理解してよろしゅうございますか。
  15. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) そのとおりでございます。
  16. 片山甚市

    片山甚市君 そこで、昨年の国会を通じまして、国家補償精神に立つべき国の立場が、委員会附帯決議でも明らかになりました。それですが、いまも社会保障一般の延長線上にあるのではないかとか、あるいは社会保障理念国家補償の中間にあるのではないか、こういうふうな政府答弁がございました。先ほど大臣は、国家補償というものを基本にした中身を持っておるものだ、こうおっしゃっておるんですけれども被爆の本質を考えてみますと、これはいわゆる明らかにすべき時期が来たんではないか。すなわち、アメリカ原爆投下責任に対しては、平和条約締結賠償請求を放棄したことは事実でございます。日本戦争遂行国家的責任が消えたのではございませんで、むしろ国民求償権、償いを求める権利に対しては国が肩がわりをする責任を持っておるということで、より国家補償を明確にすべき時期じゃないか。一般的な社会保障でこれを行っていく、この対策をするということは、もう終わりになったんではないか、そういうふうにすべきではないかと思いますが、大臣、いかがでしょう。
  17. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 最高裁判決を、御承知のとおりよく拝見をいたしますと、そこまでの判定をされているわけではありませんで、やはりこの救済を図る、特殊な被爆という実態に即応して救済を図るということが本体ではあろうけれども、しかし、その根底には国家補償的な配慮があるんだということでございまして、しかもそれを否定できないという表現を使っておるわけでございます。  そういうような意味で、私どもはやはりこの二法の内容を見ますと、医療法の場合には、御承知のとおり、所得制限等も行っておりませんし、今日のこの二つの法案を特に純粋な意味での国家補償という観点から考え直さなきゃいかぬとは思っておりません。ただ、そういう国家補償的な配慮制度根底にあることは否定できないわけでございますので、そういう意味において内容前進その他については十分今後とも検討していきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  18. 片山甚市

    片山甚市君 現に、戦傷病者戦没者遺族等援護法あるいは軍人恩給では、国と身分関係があるということで限定責任を負っております。しかし、その他の戦争被害者に対する補償一般社会保障政策で対処をするということは、加害者立場にある国の責任国民全体の相互扶助で負担をするということについては、すりかえ、隠蔽だという見解を持ちます。私は、大臣がいまおっしゃったいわゆる国家補償というものについて、最高裁がきちんとそういうふうに認定はしていないと言われても、国が負うべき責任として明らかにされたものと思いますが、私の意見に対してはいかがでしょう。
  19. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) そういう見方もあるとは思いますが、やはりこの最高裁判決にもありますように、「いわゆる社会保障法としての他の公的医療給付立法と同様の性格をもつものであるということができる。」とまず最初に認定をされまして、しかし、さはさりながら、戦争という国の行為によって被爆というものがもたらされたものであること等を考えると、やはりそこには「戦争遂行主体であった国が自らの責任によりその救済をはかるという一面をも有する」、こういう意味で「国家補償的配慮制度根底にあることは、これを否定することができない」、こういう結論をとっておるもんですから、私どもが従来申し上げておりますように、この性格自身援護法的なものに変える必要はないんじゃないか。しかし、この内容については、確かにいままで私ども考えている以上の配慮をそれぞれの個所においてやっていかなければならぬだろうと思いますので、そうした配慮については今後とも前進をいたしたい、こういう考えでございます。
  20. 片山甚市

    片山甚市君 判決文の一部にこう書いてありますが、「被爆者の多くが今なお生活一般戦争被害者よりも不安定な状態に置かれているという事実を見逃すことはできない。原爆医療法は、このような特殊の戦争被害について戦争遂行主体であった国が自らの責任によりその救済をはかるという一面をも有するものであり、その点では実質的に国家補償的配慮制度根底にあることは、これを否定することができないのである。」と書かれていることについて、大臣は繰り返し述べられたと思います。私は、そのところ、「一面」という言葉を言っているのは、立法措置がいわゆる援護法となっておりませんから、当然裁判所としては法律に基づいてやるんでしょうから、相当理解のある態度を示したと思いますが、私の立場から言いますと、援護法を制定してもらいたいという立場でありますから、一面を全面に広げないで、それは一面をいわゆる全体的に広げて、そのことを確立してもらいたいという立場です。これは見解でありますから、きょう大臣にもう一度確認しようとは思いませんが、衆議院における審議の過程をもう一度確認されるか、いわゆる原爆二法についても、いまの措置法についても、これから漸進的にいろんな改善を図っていきたいというような御答弁があって、具体的なことをここで申しませんが、それにはこの委員会においても同じお考えでしょうか。
  21. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 同じ考え方でございます。
  22. 片山甚市

    片山甚市君 私は、先ほど在米被爆者援護について具体的な措置を講ずることを要求し、政府の方もそれについては可能な限りやられるようにお答えがあったと思っておるんです。いわゆるアメリカに対して原爆被爆賠償請求を放棄した日本が、逆に国家補償立場戦争責任をとるという以外に、アメリカにおる方に国内法適用するという積極的な理由がどこで見出せるか。私はそういう意味でも国家賠償という立場に立たなきゃならぬ、こう思うんですが、いかがでしょう。
  23. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 現在、法律的には、アメリカにおられる方には私ども法律はかかりません。ただ、その方が日本へおいでになって、日本の土を踏んだらば、日本法律がカバーすると、こういうたてまえになっております。
  24. 片山甚市

    片山甚市君 先ほど聞きました。それで結局、それはどういう意味でそれを適用することになるんですか。社会保障として適用するんですか。
  25. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) これは、そういうふうに適用することは、この判決にもございますように、結局、国家補償的な基盤を持った社会保障という法律のたてまえから適用するということでございます。
  26. 片山甚市

    片山甚市君 いろいろ法律の経過がありますから、私はこれ以上愚問を呈することはやめておきますが、とにかくこの根底は、最高裁も言っているし大臣も言っているように、国家補償ということが根底にありながら、社会保障制度を使っておると、こういうように理解をするんですね。国家補償という考えがありながら、方法論としては社会保障制度を使っておる。だから、アメリカの人が来ていただいても、韓国の人、朝鮮の人が来ていただいても、それについては、日本の国に来られた限りはそれをちゃんと援護をするというか、治療をする、こういうことだと理解してよろしゅうございますか。
  27. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) その理解でいいと私ども思います。
  28. 片山甚市

    片山甚市君 実は、昭和五十年の六月十七日、第七十五国会で、参議院委員会参考人を呼んで意見聴取をしたときに、高野雄一先生がこうおっしゃっておりますが、広島長崎原爆被災者被害は、違法な行為に基づくと考えられること、これは国の機関である裁判所の判断にもそういうことで、昭和三十八年十二月七日、東京地裁の「広島長崎原爆判決」というところに出ておるのです。これは「戦争災害に対しては当然に結果責任に基く国家補償の問題が生ずるであろう。現に本件に関係するものとしては「原子爆弾被害者医療等に関する法律」があるが、この程度のものでは、とうてい原子爆弾による被害者に対する救済、救援にならないことは、明らかである。国家は自らの権限と自らの責任において開始した戦争により、国民の多くの人々を死に導き、傷害を負わせ、不安な生活に追い込んだのである。しかもその被害の甚大なことは、とうてい一般災害の比ではない。被害がこれに鑑み、十分な救済策を執るべきことは、多言を要しないであろう。」こう言って、「しかしながら、それはもはや裁判所職責ではなくて、立法府である国会及び行政府である内閣において果さなければならない職責である。」「終戦後十数年を経て、高度の経済成長をとげたわが国において、国家財政上これが不可能であるとはとうてい考えられない。われわれは本訴訟をみるにつけ、政治の貧困を嘆かずにはおられない」これは昭和三十八年に判決を出されておるわけです。私はこういう立場から、当然裁判所は、これに救済を与えなかったことについては、違法な行為に基づく被害が、いかなる角度からも法的救済対象とされないということは法理的にも問題があり、常識的にも違和感がある。いわゆる裁判としては、これに救済を与えなかったということは納得できない、こういうように言っておるのですが、私は、いま大臣あるいは局長の方から、漸進的にこれからこの問題を取り扱おうというお話がありましたから、これについての所見はいかがでしょうか。
  29. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 昭和三十八年東京地裁判決でございますが、これはまず、原子爆弾投下国際法上違反ではないかということにつきましては、この判決では、国際法上の原則にも違反すると、こうされましたが、しかし同時に、そうかと言って、この問題について原告の国に対する請求権を認めるということはできない、こういう趣旨だったと思いますが、しかし、それについていろいろ法理論的に解明をいたしまして、最後に国際法原告責任は認められないけれども、やはり国がいろいろそういうような趣旨を考慮に置いて、それぞれの原子爆弾被爆者に対する救済策というものを十分にとりなさい、こういう御趣旨だろうと思っておりました。したがって私どもとしては、原爆医療法なり措置法なりによりまして、できるだけその改善を図って、被爆者救済策を講じていると、こういうように理解をいたしておるところでございます。
  30. 片山甚市

    片山甚市君 裁判所が、やっぱり立法府が当然とるべき措置があるではないかという御指摘がありますので、それに基づいて、われわれといたしましては、きょうも立法府として、新しくそれに対して解明をしていきたいという立場で話ししました。これはこのぐらいにしておきましょう。  特に問題になりますのは、一部で原爆被爆者に対する援護国家補償精神に基づいて行うことが、一般戦争犠牲者補償にも波及すると恐れている向きの発言がございますが、本来、国家補償精神によって、戦場と化した国土における戦争犠牲者に対する援護法があって、さらにその被害特異性にかんがみ、手厚く原爆被爆者対策がなされるべきであるにもかかわらず、今日いまだに放置されたままの一般戦争犠牲者に対して何の措置も講じてないものが、それと比較して原爆被爆者対策国家補償にすることについて問題があるというのは納得できないんですが、それについてはいかがでしょうか。
  31. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 一般戦争被害者について国が何らかの救済をすべきだという御意見が、もうずいぶん長い間いろいろ御議論のあることであることは承知いたしておりますけれども、しかしどうも国がそこまで国家補償精神でやることは、国家補償という考え方から見ましてとうていできない。したがって、社会保障の側でこれを考える。ところが、社会保障の側で考える場合には、他のいろいろな障害者との関係等もございますので、一般社会保障の推進によって国民全般に対するそれぞれの被害状態に応じて政策を立てていく、対策をとるということで十分ではないだろうか、こういう考えでございますが、しかしその中で特に原爆という被爆実態を見ますと、これは余りにも特殊な、被害程度、質から見まして、そういうものでございますので、特別に原爆被爆者に対してはこの二法を立法することによりまして一層手厚い、しかもその中には、やはり先ほど最高裁の言われましたような、この根底戦争遂行責任の側から見た国家補償的配慮というものも十分行いながら、特別な社会保障立法をいたした、こういう考えでございますので、これをもって他の全部の戦争犠牲者にまで特別立法をしなければいけないというふうには私ども考えていないわけでございまして、いろいろ御議論があることは承知いたしておりますが、そこまでは踏み切れないでおるというのが現状でございます。
  32. 片山甚市

    片山甚市君 それではお聞きしますが、戦後処理の重要な問題として、引き揚げ者に対する在外資産補償の問題はどのように取り扱われているか、また旧地主に対する農地解放に伴う報償についてどのようにやられたかということについてお聞きいたします。
  33. 小野佐千夫

    政府委員小野佐夫君) お答えいたします。  引き揚げ者等に対する特別交付金の支給の件でございますが、終戦に伴いまして、終戦日以後に引き揚げてこられた方々に対し在外居住期間が一年以上の方に特別交付金交付いたしました。対象となった方は約三百十九万人で、交付総額は約千六百三十五億円でございます。  それから、農地被買収者等に対する給付金の支給でございますが、これは戦後の農地改革で農地を買収された方に対して給付金を交付したものでございまして、交付対象となった方は約百十六万人、交付金額は約千二百四十億円でございます。
  34. 片山甚市

    片山甚市君 戦後処理の中でまだ終わってない問題としては、いま進行中の原爆被爆者に対する処理が終わってない。もう一つは、民間の方々で焼夷弾等で手を失ったり足を失ったりしておる人たちに対するものがない。それは社会保障でやっておるじゃないか、こういうことですが、いま申しますように、総理府が申し上げましたように、実は引き揚げ者に対しても三百十九万人に対して千六百三十五億円、地主に対しては百十六万人に対して千二百四十億円という国債をもって、国としてのいわゆる償いというか、あるいは報償というか、こういうことをやっておる、こういうような立場から見ますと、やはり物に対してはえらい熱心にやられるけれども、人の痛みというものについてはやっぱり日本の国は余り感じないと感ずる。これは後刻申しますけれども、私たちは物はまた取りかえることができますが、体というもの、心というものは取りかえることができないんだという立場に立ちたい。その人たちの心が安らぐということは日本の平和への道だと思う。まあそのところが一般社会保障があるじゃないかという一般であったのかどうか。何もないところで防空法の適用を受けて、子供たちを工場に送り、自分ら守っておる中で焼夷弾や爆弾が落ちてくる。その人は国との間に雇用関係がないというだけで、一般社会保障でいいじゃないかと言われても、ひとつ温かみと人間の血が通うようなものがないような感じがする。   〔委員長退席、理事小平芳平君着席〕 これはもうせんだっての冒頭のときに大臣に申し上げている。どうしてもそういう調査もできるならば検討してみたいと、こうおっしゃっておりましたけれども、私はそういう立場から、戦後の問題で終わってないのは原爆被爆者が今日もなお、将来に向けても心の中に何がしかの大きな悲しみや、憂いや、不安を持っているということ。それから若き青春を失った、もう六十を過ぎるおばあちゃんやおじいちゃんが、いわゆる防空法を守り、いわゆる国土を守るということで傷ついても、何一ついたわりの言葉がない。こういうことについては、私はここでそのことについて回答を求めようとはしませんけれども、本当はここにおる方々の心ある理解を得て、本当は議員立法のような形でこうしようじゃないかと、政府じゃなくて、言うべきだと思いますが、どうも金にならぬのか、票にならないのか知らぬ、動きが非常にちょろいと思うんです。これは失礼な言い方ですが。もう少しいろんな利権にまつわるようなことだったら、もう議員立法一生懸命つくりますが、この問題についてはわりにおくれました。今度大臣も御承知のように、野党全部がまとまって参議院ではそのようなことをしようと思っていますから、議員立法出していますから理解をしていただきたい。これはもう御答弁を求めようとは思いません。  そこで、不十分であったとしましても、いわゆる引き揚げ者に対する在外資産補償とか、あるいは戦争直接被害に対する国の補償の形になっておるし、あとの農地、いわゆる旧地主に対する戦後の、国の占領政策による政策に対して国に協力したということで報償を出しているということですから、これはいまのところ国と身分関係があるかどうかでなくて、原子爆弾被爆者に対してはそれは当然身分関係を越えて対処される、こういうものだと思っておるんですが、いかがでしょうか。
  35. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 引き揚げ者に対する交付金並びに農地解放に対する補償問題等については、それぞれやはり他の法律をもってしてはどうも救済の道がない、また特に農地解放につきましては、解放後それを受け取った側の方と提供した側の方々との非常な不均衡という点に着目されたんだろうと思うんでございますけれども、おっしゃるように、私は片山先生のいろいろるるおっしゃいました一般戦争犠牲者方々の心情や、あるいは身体的な、あるいは年齢的な現状等思いますと、確かに心痛む問題でございます。したがって、十分頭に置きまして私どもも検討していかなけりゃいけない問題だとは思いますが、何分まあいろいろなこの実態がございまして、これをどこで線を引けば御趣旨のような考え方が貫き得るのか、いろいろめんどうな点もございますので、社会保障全般の最終的な責任をあずかる私といたしまして、この辺のところは非常にいろいろ他の関連等も考えますと、なかなか踏み切れない点もございますので、なお十分ひとつ実態を把握さしていただいたり、あるいはまた取り扱いの方法等について検討をさしていただきたいと思っておるわけでございますので、きょうここで結論をなかなか私としてできないことははなはだ遺憾に思いますが、お気持ちは十分理解をしながら、今後とも検討を進めてまいりますので御了承いただきたいと思います。
  36. 片山甚市

    片山甚市君 できるだけ早く調査をしていただいて、実態を把握するなど御努力を願うようにお願いしておることについては進めてもらいたい。来年度の予算でそういうものができればよしとし、それまでの間でも可能な限り努力をしたいと、こうせんだってもおっしゃっておられましたから、ひとつそのようにしてもらいたい。  私が先ほどから念を押しておりますのは、実は一般の戦災者の方、原爆方々に対して具体的な国家補償という立場が貫けるものができれば、戦後処理としては体系ができるんじゃないかという考えですから、これはもうそう言いましても、厚生大臣がそれはよろしゅうございますと言うことについて、きょう答弁によって回答を得られると思っていません。大変複雑な、私も四年間こういうことを言い続けてきましたが、今日のような気持ちで受け答えをしてもらえるようになったのは初めてです。なかなかとむつかしかったです。ですから、そういうことで大臣は何げなくおっしゃっているかもわかりませんが、私国会議員になって四年間こういうことについて言い続けてきた者にとっては、ひとつもう一歩進められるように、臨時国会なり通常国会なりになりましたならば、何かの方向に発展するように期待をしておきます。約束してもらったと、こう言いません。それは約束したって簡単にできるものでないということですから、ひとつ私の気持ちを述べて具体的なことについて触れていきたいと思います。  いままで明らかにされた主な問題点のうち、原爆被爆者実態調査及び放射能に対する医学的究明などについてお聞きをしたいのです。  一つは、昭和五十年、原爆被爆者実態調査で明らかになった問題点と、これに対する大臣の所感は、御所見はどういうことなのか。と申しますのは、これについて医学的な究明、被爆者の要求などについての調査が不十分であり、結語にも欠けていると言われておるので、私としては大臣のお考えをお聞きをしたいと思います。
  37. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 昭和五十年度の原爆被爆者実態調査と申しますのは、原爆被爆者生活、健康の現状を総合的に把握するということを目的とした調査でございまして、調査には二種類ございまして、一つはいわゆる一般的な統計調査としての基本調査と、それから訪問面接調査と二つございました。  それで、最初に申し上げました前段の、いわゆる統計的な調査につきましては、これは数字で発表してございますが、要点を申し上げますと、被爆者方々の老齢化が進んでいるということ。それから、被爆者の方が広島長崎両県、両市から、次第に外側の別の地域の方へ移動が進んでいることが目立っているということ。それから、健康診断の受診率が八一%であって、そのうち約一七%には異常があったというようなこと。それから生活環境の調査では、一般に比べまして高齢者世帯の割合が高い、あるいは高齢者のいる世帯が高いというようなこと。それから、傷病状況につきましては、一般の普通の世帯に比べまして有病率が高い。それからなお有業率、いわゆる仕事についている率とか、あるいは現金の支出額等につきましては、余り一般とは大差がなかったということが出ておりました。  なお、これにつきまして余りコメントをつけないで発表いたしておるわけでございますが、こういう事実のみをごらんに入れて、各側の皆様方にいろいろ御自由に解析していただき、御自由な御意見をいただくということで、ほとんど解説も抜きで、これはそのまま発表したいということでございます。  それからもう一つの事例調査というのは、これは専門の学者の方が各家をお回りいただきまして、そのそれぞれの世帯についていろいろ御意見等を伺ったというようなことで、それを記述的に、統計的処理ではございませんで、こういうふうな考え方であったとか、こういう事情と自分は感ずると、そういうようなことを記述的に書いた事例調査と、この二つでございました。
  38. 片山甚市

    片山甚市君 特に、昭和五十年十月の一カ月間のデータとして、生活調査のうち傷病状況で見ると、いまおっしゃったように、有病率は非被爆者の二倍、放射能障害の深刻さがそれで端的にあらわれておると思います。このことによって、社会生活面での制約、不安感というものが大変大きいということがわかるんですが、そのことについて具体的な除去の方法について、いわゆるそのようなことを除去すること、いわゆる生活面での制約や不安感をなくするということが一番大きな課題だと思うんですが、そのためにどういうような策をとられましたか。
  39. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 現在、私ども法律でもっていろいろ行っております施策は、御承知のように、いわゆる原爆の放射能というものが人間に非常に大きな影響を与える、そういった不安感も含めて、それから疾病の状況をあわせていろいろな手当等を出しておるわけでございますが、やはりそういったものを中心にずっと手当等の増額をふくらましております。それからまた、健康診断につきましても、健康診断内容を充実してまいりました。それから、いろいろな家庭奉仕員につきましても、あるいは相談員の問題につきまして、そういうような方面からこういった方々にいろいろの手を伸べるということで努力をしてまいった次第でございます。
  40. 片山甚市

    片山甚市君 私が聞きたいと思う不安感をなくすることは後で申しますが、それでは事例調査のうち広島市における自営業及び職員、常用勤務者の記述の中で、後段に示されているケース——と申しますのは、「また夫が死亡し、あるいは後遺症に見舞われた場合に、子供、特に男児の存否が重要なのも自営業の場合と同様である。しかし家族に後遺症が出た場合等をも含めて、これを克服する困難はさらに大きいようである。特に娘が残った場合には、彼女が働いて一家を支えている間に婚期がおくれ、それが更に次の世代の再生産をおくらせる傾向もみられる。また世代交替とともに子供が他出するという核家族化の傾向も、自営業より顕著である。」などということを書かれておる。「自営業の典型」に示されている問題について、どういうような程度なのか、いわゆる「現行の被爆者への措置程度では」という現行の程度をお聞きしたい。冒頭に申しましたのは、いわゆる調査をしたうちの対象件数はどのぐらいこういう特殊なケースがあるのか、こういうことについてお聞きいたします。
  41. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 先生ただいまお読みいただきましたいわゆる事例調査につきましては、その名前が示すとおり事例調査でございまして、この事例調査は集計された世帯——集計されたといいますか、世帯は四十七世帯というふうにこの報告には書かれてございます。それで、そのうちどれがどうだということにつきましては、多分先生がごらんになっていらっしゃるその調査報告書は私どもと同じものであろうかと思いますが、それ以上にこの中には記載されておりませんで、御承知のように事例調査ですから、調査された先生方が御自分の頭の中でいろいろ考えられて、その世帯に行かれたときのお話を伺ったときの印象から、頭に組み立てられて記述されておられますので、先生がいまおっしゃいましたどういうふうな数がそれはあったかということにつきましては、私ども調査を行われた先生方のリポートの中からはその数は読み取れないという結果になっております。
  42. 片山甚市

    片山甚市君 すると、特異なケースには他の援護措置で便宜的に適当に対処していいのか、こういうようなケースについては特別に何か措置をする必要があるんじゃないかと思いますが、調査をされた決果、行政的にどのように生かされましたか。
  43. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 先ほども申し上げましたように、各種の手当の増額をすることによりまして、医療を受けるるいは医療が受けやすいようにということ。それから、相談員を充実していろいろの相談に乗る、あるいは家庭奉仕員も充実いたしまして、そういった面からも御援護申し上げる。ただ、ストレートにいわゆる援護的な、お金をというようなことは、私ども特にこの調査からは受けて被爆者対策としてはいたしておりません。
  44. 片山甚市

    片山甚市君 自営業あるいは常勤、常用勤務者等について、家族の問題あるいは核家族の問題等については、一般の家庭よりも大変困難なことがあるということですから、それに対しては特別な措置をされるべきことだという立場で聞いております。してないというんですから、いまのやつで大体やっておるということですから、それについてはそういう調査かと、こういうふうに思います。もう少し調査は生かしてもらいたい、こう思う。書かれた文章は特殊なケースということで出されていますから。  事例調査で特徴的なのは長崎市の部ですが、いわゆる心の問題であります。体験による意識や思想的営為の調査は、単に肉体的条件のみで生きていない、人間をとらえておる。人間というのは肉体的条件のみで生きておりませんから、社会的条件に対応する被爆者の意識の問題は大変重要だと思います。生き残ったがゆえにむごい死を見た。むごい生き方をしなければならないということに対し、命、暮らし、心の三つの障害を平等にとらえることが、原爆被爆者被害を総合的に把握するということにはならないか。同時に、このことを満たし得る政策となっているのかどうか、私が申し上げるのは命と暮らしと心の三条件医療生活それから精神の三つの条件は、個々の問題と同時に、障害は必ず相互に悪循環し、悪影響を拡大再生産するということでありますから、その解決を求めなきゃならぬと思います。とすれば、医療生活などの保障と同じに心の障害を取り除く具体策を示さなければならないと思います。このことは後にも述べますけれども、放射能が世代を超えて影響を与える点に大きくかかわりがあります。そして、精神的安定とは口先で慰謝的な——慰めの言葉で解決するんでなく、医学的に解明される性質のものではないか。不安を除去するいわゆる医学的な解明がなきゃならない。この種の調査は戦後三十年を経てますます実態に迫ることが困難になっておると考えます。必要に応じてというような場当たり策でなくて、他の戦争被害調査とあわせて、具体的計画を急ぎ対策をしてもらいたい。もう年がいっておりますから、そう悠長に、慎重にやっておりましたら、その人たちは生きておらないことになるということで、この長崎の命と暮らしと心の三条件についてどのように定めるか。きょう質問しておるのは、命については治療の問題で最善を尽くされることになる。暮らしについてはいろいろございまして、国家補償の問題も含めまして社会保障で何とかする。あと心ですが、不安を除いてあげるということは、われわれにとって大変重要なことではないかということを訴えたいんです。不安です。言っちゃいかぬ、こんなもの言っちゃいかぬ、それは心配するから、こういうことを言えば差別になるから、こういうような心配する。そんなことがない証明をどうしてつくっていくか、起こらないような状態をどうつくるのかということが、私は原爆被爆者援護法をつくっていく過程の一番大きな問題ではないだろうか。いまの二法に対していわゆる決定的に迫るべきことでないだろうかと思いますから、それについてお答えを願いたいと思う。
  45. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) その心の問題で不安を除くということでございますが、これはもう先生御承知かと思いますけれども、いわゆる放射線影響研究所を中心にいたしまして、この放射線の影響というのをずっとABCC時代から三十年以上続けておるわけでございまして、これにつきましては私どもいまでも非常に力を入れて研究を促進させておるわけでございます。この中でもう相当いろいろなことが明らかになっておるわけでございまして、たとえば現時点におきましてはもう三十数年の蓄積において、これはあるいは先生いろいろ御意見おありかと思いますが、現時点においては二世等には影響は出てないというようなことを現在言っております。私どもこういった研究をもっと進めて、不安を除けるということはさらにさらに努めていきたいと思います。なお、これ、もう当然でございますが、健康診断等検査項目等もふやして、受診の機会をふやすことによって、病気じゃないかと心配される方にいろいろ検査を受ける機会をふやして、そういう方の不安を除くということも必要でございますので、そういった点につきましてもわれわれさらに努力をしていくというふうに考えております。
  46. 片山甚市

    片山甚市君 実は、この事例調査の中で、心の問題ということを言いますと、放射能の与える影響についてはその一つに、世代を超えて影響があるのかどうか、すなわち遺伝という問題については非常に重要な深刻な問題があります。そこで参議院における審議での政府答弁では、白血病の発生率及び死亡率等の比較研究以外には、放射能の遺伝的影響は解明できないということでありますが、これはそのとおり今日も考えられますか。
  47. 中井斌

    説明員(中井斌君) 放射線の遺伝的影響につきましては、実験動物、たとえばマウス、ショウジョウバエ等を用いまして、起こるということは明らかにされております。またその危険度を推定する際に必要な線量効果関係につきましても、かなり詳細なことがわかっております。しかし人につきましては、人の遺伝的影響につきましては、先ほどの御答弁にありましたように、放射線影響研究所において研究が続けられておりますけれども、その影響があるという確実な証拠は現在のところ得られておりません。  それからなお、わが国におきますもう少し低い、低レベルの放射線の影響についてでございますけれども、放医研におきまして人に近いサルを用いて現在研究を行っております。また、国立遺伝研におきましても、蚕その他を用いまして、同種類の研究を現在やっておるところでございます。
  48. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、現在の医学的見地から見落とされた結果、将来影響が明らかになり、取り返しがつかないような段階が起こったとすれば、どのような対処を厚生省としてはされますか。いま大体余りないと、こういうことです。それでいったと。将来そういうことが起こったときにはどういうような対処をされるわけですか。その責任をとって、その時代になったら余り四の五の言わずにちゃんと措置をするつもりですか。
  49. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) ただいまお話ございましたように、いろいろな子孫に対する影響を調べておるわけでございますが、さらにさらに科学が進んでまいりまして、そういった影響が事実あるということがわかり、そしてまたその影響が現実にあるということ、現実に支障を来すような影響が出たということでございますれば、それは当然その時点におきましてそういった何らかのそれに対する対策をとるということは当然のことかと思っております。
  50. 片山甚市

    片山甚市君 実は、被爆二世の結婚や就職などの、限られた人々への社会的差別を懸念するだけの問題でなくて、日本の民族全体がどういうように生き延びていくのかということの関連があると思います。  と申しますのは、今日、原子力発電がエネルギーのもとになるような計画で国のエネルギー政策は進められております。放射線による健診や治療ということで、それも放射線をたくさん使っております。これらが相互に関連し合い、不幸にして何らかの形で、水、空気、食糧、土壌から被曝したものの体内には、必ず放射線物質が蓄積され続けるわけです。決して三十年前の悲劇に対する問題じゃなくて、現実にいまそれを再生産している社会的問題だと考えるんです。それはもう三十年前の原爆の問題じゃなくて、いま原子力発電をやって、放射能を使ってレントゲンを使って医療をしておるということから起こってくる問題として、慎重にそれは考えなければならぬと思いますが、いかがでしょうか。
  51. 逢坂国一

    説明員(逢坂国一君) 私の方から原子力発電所につきまして御説明いたします。  原子力発電所の放射線問題といいますのは、一つは、平常時運転のときの微量に出します放射線の影響がございます。この件につきましては先生御心配のことではございますが、現在の原子力発電所から出ております放射線のレベルと申しますのは、原子力発電所の周辺で五ミリレム以下ということでやっておりまして、自然の放射線のレベル、われわれが平常受けております百ミリレムに比べて非常に小さいわけでございます。  それから、もう一つの観点といたしましては、事故時に何らかの影響があるんではないかということが御心配かと思いますが、現在のところ、商業用の発電所で、日本ではもちろんでございますが、世界で約二百基ございますが、二百基の運転しておる原子力発電所で、そういう周辺の公衆に害を与えたような事故というものは皆無でございます。  そういうことで、原子力発電所につきましては十分な対策がとられておると思いますし、御懸念のことはないと思っております。  以上でございます。
  52. 金平隆弘

    説明員(金平隆弘君) ただいまの答弁の補足になりますけれども、放射線による被曝を総合する形で問題となりますのは、医療とか職業被曝の問題もありますし、それから、いまの御説明にあった環境放射線による影響も考えられます。  そういうことについて、科学技術庁の放射線医学総合研究所では、従来から全国レベルで項目ごとに順次調査を実施いたしておりますてそういう調査が全体としてまとまった段階で、国民線量という観点からの全貌が把握できるかと思っております。目下そういうものについて鋭意努力中でございます。
  53. 片山甚市

    片山甚市君 いま資料を集めておる最中だと、こういうことです。  通産省おいでですか。お聞きしますのは、いわゆるわが国にありますところの原子力発電所の数、発電能力、それと稼働の状態、これをひとつ説明してください。
  54. 逢坂国一

    説明員(逢坂国一君) 現在の原子力発電所の建設、運転状況について御説明いたします。  現在、原子力発電所は営業運転中のものが十五基でございまして、約九百万キロワットでございます。それから、営業運転に入る直前の試運転中のものが四基約四百万キロございます。それから、建設中のものは六基五百万キロでございます。それから、建設にまだ着手しておりませんが、電調審を通りまして、国の計画として認められておりますのが六基約六百万キロ、合計三十一基約二千四百万キロでございます。  先ほど先生御指摘のように、エネルギー政策上、石油代替エネルギーといたしまして、原子力発電の必要性が強調されておりまして、最も有望視されておるわけでございますが、エネルギー庁といたしましては、昭和六十年度末で三千三百万キロを開発目標にしていろんな施策を講じておるところでございます。
  55. 片山甚市

    片山甚市君 先ほど申されるように、五ミリレムだから大丈夫だとおっしゃっておる。百ミリレムよりは少ないじゃないかと、こうおっしゃっておるようでありますが、そういうような考え方は、先ほど申しましたように、放射性物質が蓄積され続けるということについて、私たちとしては非常に心配をします。  そこで、後でまた原子力発電所の問題については、東電の福島第一発電所のことを聞きますから、そのときにいまのようなことをおっしゃられるかどうかは後日聞きますが、特に私がこのところをもう一度お聞きしたいのですけれども、いわゆる放射線の影響はこれからも大きくなってくる。いわゆる原子力発電所もできますし、放射線を使うということですから、これについては制御をしていく、制限をしていく、規制をしていくという考えに立つというのが厚生省の考えでしょうか。影響、被曝の規制。
  56. 中戸弘之

    説明員(中戸弘之君) 原発に従事しております者並びにその周辺の一般住民を含めまして、これの被曝をなるべく少なくしていくというのは、政府としてのこれまで一貫して取り続けてきました対策でございます。これはICRPと言われておりますけれども、国際放射線防護委員会の権威ある勧告によって裏づけられているわけでございます。  その具体的な方策といたしましては、現在特に問題となっておりますのは、一つの原発から次の原発へ渡り歩く、いわゆる渡り鳥労働者という問題がございますが、これにつきましては、中央で線量を一括して登録しておきまして、それがなるべく線量を浴びないようにするという制度も発足させた次第でございまして、そういった具体的な方法によりまして、従事者の被曝線量を、単に許容値の中に抑えるというだけではございませんで、なるべく低く抑えるというのが私どものこれまでとってまいりました方針でございます。
  57. 片山甚市

    片山甚市君 先ほどから申しますように、原爆の問題は、三十年前の問題でなくて、現実にそのようなものを再生産しているという社会的問題がある、こういうように申し上げておきます。これについてどういうように対処するかと言えば、やはり、先ほどからお話があるように、完全にそういうものを防護し得る状態でなければ、人類の破滅というか、日本の民族の大変な問題になると、こういうように私は思います。  こういう立場から、この機会に、放射線の持つ危険性を十分認識し合うことが重要だと考えますから、まず第一に、自然放射線と疾病との関係について、二つ目に、放射線障害と放射線量との関係について質問をしたいと思います。初歩的な放射線の特徴をお聞きいたしたいと思います。どういうことでしょうか。
  58. 中井斌

    説明員(中井斌君) お答えいたします。  自然放射線と疾病との関係につきましては、種々研究はされておりますけれども、まだ一般的に明確でございません。日本におきましては、東北大の粟冠教授のところで、白血病あるいは死産と自然放射線の関係について調べたところ、これについては有意な相関がないというのが現在の報告でございます。  それから、遺伝的な影響につきましては、ブラジルに自然放射線の高い地域がございますけれども、約六倍ぐらい高い地域がございますが、そこでの染色体異常は対象値に対しまして約二倍増加するというのが現在得られております、まあほとんど唯一に近い確実なデータではないかと思います。  なお、インドのケララ地方、これも非常に自然放射線が高い地域でございますけれども、その地域におきましてダウン症が増加するという報告はございますけれども、これは種々まだ国際的に、学問的に確認されておりません。非常に重要なことは、いま先生のおっしゃいました自然放射線に限らず、低いレベルの放射線の線量と、それから生じる効果との関係を究明することが、低い放射線の人間への影響を推定するのに非常に大事なことであると、そのように思います。  日本におきましても、そういった自然放射線と、たとえば染色体異常の関係ということについては、今後研究する必要があるのではないかと考えております。
  59. 片山甚市

    片山甚市君 アメリカのアーサー・タンブリンという核物理学者が、「人間は、放射性核種によって、体外又は体内に被曝を受けた場合、放射線質や半減期に関係なく、生体組織の一部分が、その照射時間内に、どれだけの放射線量を吸収したかによって、影響をうけ、生物学的効果はかわらない。」と、こうおっしゃっているんですが、この説についてはどういうふうに受けとられますか。
  60. 早川正彦

    説明員(早川正彦君) 自然界に、あらゆるところに放射性物質が存在するわけでございまして、先ほどもお話がございましたように、平均的に申しますと年間百ミリレムの自然の放射線を浴びているわけでございます。同時に、その放射線はばらつきがございまして、六十ミリレムぐらいから百五十ミリレムぐらいのばらつきがございます。同時に、放射線の内容から申しますと、いわゆる大地から受ける放射線、それから宇宙から受ける放射線、それから同時にいろんな意味で食物から受ける放射線と、この三つのカテゴリーがあるわけでございまして、いま御指摘いただきました体内に飲料水だとか、あるいは呼吸によって組織内に取り組まれた自然の放射線を考えてみますと、カリウムの40、これが主となりまして年間約二十ミリレムの被曝を現在自然の状態でわれわれは受けているということが言えるのではないかと思います。この現実にあります内部被曝のことからしまして、実際にその有意な影響の程度が出ているかと申しますと、必ずしもこれは出ていないということが言えるわけでございます。私ども、まあICRPの勧告もこういう事実も踏まえまして勧告をしております。先ほども話がございましたように、原子炉等から出ます放射性物質による被曝につきましても、単にICRPの基準を守るというだけではなくて、できるだけ低くするということで、その百分の一である五ミリレムを目標に管理をしているということを考えますと、現在のところ私どもは問題ないと、原子力発電所によりましても一般の公衆の安全については十分確保できるというふうに考えている次第でございます。
  61. 片山甚市

    片山甚市君 現実、大丈夫だという説明を本日していただいたと思う。私はタンブリン氏が、生体組織の一部分が、その照射時間内にどれだけの放射線量を吸収したかによって影響を受けるとおっしゃっておるのですが、それは間違いありませんか。
  62. 早川正彦

    説明員(早川正彦君) いま申しましたように、自然界から取ります自然の放射性物質によりましても体内に入るわけでございまして、そしてそれが体内に残留をする。それが実際に被曝をするという意味では、あらゆる放射性物質について同様なことが言えるというふうに思っております。
  63. 片山甚市

    片山甚市君 ストレートに答えていただかないところに何か伏線があるのでしょうが、私は専門家でないですからわからぬです、その答弁が正しいのかどうか。ですから、私はわからぬことはわからないと言っておかないと。わかって、次にしたらおかしいですから。  放射性物質が体内に蓄積される。したがって、蓄積された線量は、その後の生物学的変化と因果関係を持つ。こういうことはよろしゅうございますか。
  64. 早川正彦

    説明員(早川正彦君) 放射線の影響のメカニズムの問題になるわけでございますけれども、体内に取り組まれました放射性物質が、相互の因果関係におきましていろいろな影響をするということは事実だと思います。
  65. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 先ほども専門家の方からいろいろ御答弁ございましたけれども、いろいろな急性障害、晩発性障害、またいま問題になっているのは遺伝的な障害じゃないかと思いますが、遺伝的障害は、すでに約五十年前——一九二七年にH・J・マラーがショージョーバエで証明しております。その後ショージョーバエ、ムラサキツユクサあるいはいろいろなハッカネズミ等の動物では、実験遺伝学的にはかなり証明されているわけでございますが、人間ではまだ確たるものはございません。動物あるいは昆虫、細菌、植物、こういったものでわかるように、やはり放射線というのは、それが細胞に吸収されれば一定の障害を与えるということは間違いないことであろうと思います。   〔理事小平芳平君退席、委員長着席〕 ただ現在は、幾ら微量な放射線でも有害なのだというような仮説に立ってICRPの勧告等も考えられておりますけれども、これにつきましては、ほかの化学物質なんかと同じようにある程度のしきい値があるんじゃないかと。ある量以上になって初めて生物に悪い影響を与えるのじゃないか。また特に人間のような高等生物についてはそのしきい値が高いのではないかというような有力な意見もあるわけでございます。したがって、関係各機関、日本では広島長崎財団法人放射線影響研究所、そのほか科学技術庁の放射線医学総合研究所、文部省の遺伝研究所、こういったところが中心になって、各国の関係機関とも連絡をとりながらその解明に努めているところでございます。
  66. 片山甚市

    片山甚市君 私が質問した以外のことで御答弁をいただいて感謝しますが、非常に親切で御丁寧で本当に心から感謝いたします。  私が聞いているのは、放射性物質は体内において蓄積されるかどうか。蓄積された線量は、その後生物学的変化と因果関係を持つのかと聞いたのです。そのくらいにしておきます。聞いたと、そういうお答えがあったと、りっぱなお答えがあったということにしておきます。いいです。  日本における自然放射線量の値は幾らであろうか。アメリカ及び日本一般許容線量の値はどういうことか。アメリカ日本とは同じか違うのか。こういうことについてお答えを願いたいと思います。
  67. 中戸弘之

    説明員(中戸弘之君) 日本各地の自然放射線の量でございますが、場所によってかなりばらつきがあるわけでございます。全般的に見ますと、関西の方が高くて関東の方が低いと、こういうことになっております。具体的には、日本で一番高いところは広島でございまして、年間約百三十ミリレムというレベルでございます。一番低いのが横浜ということになっておりまして、これが約年間四十ミリレムと。この間に約九十ミリレムの差が日本国内でも見られると、こういうことでございます。  それから次のお尋ねは、許容被曝線量につきまして、日本アメリカでどのように違っておるかと、こういうお尋ねかと思いますが、日本一般公衆に対する許容被曝線量につきましては、ICRPの勧告に基づきまして日本の法令で決められているわけでございますが、一般公衆に対しまして年間最大五百ミリレムという規定になっております。アメリカの場合には、これに対しまして許容被曝線量としては年間五百ミリレムと。これはいわゆる個人に対する許容被曝線量という意味で、年間五百ミリレムと規定されておりまして、これは日本の場合と同じでございますが、アメリカはこのほかに集団に対する許容被曝線量といたしまして、一年間百七十ミリレムというのも規定しておるわけでございます。これは国民全体に対する遺伝的な影響を考えての値であると、このように私ども理解しております。
  68. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、なぜアメリカは集団的な許容量を決めたかというと、遺伝的なことを考慮したということですから、遺伝関係には影響を与えることをアメリカは認めておる、日本はないと、こういうことですね。  その次に移ります。昨年、五月二十四日の社労委における私の質問に答えて佐分利医務局長は、自然放射能の遺伝的影響は、赤ちゃん百万人に対して五万五千人ぐらいが変化を持って生まれてくるとの説を示されました。これは人口一億と見ると五百五十万人が何らかの影響を受けていることになり、生殖能力を持つ成人、十五歳から四十五歳、約五千五百万人と見ると、十年後にはすべての赤ちゃんが何らかの変化を持って生まれてくるという算術計算になります。これは事実ではありません。放射線においてこれだけの影響を否定し得ない自然の法則があるということについて、自然であってもこれだけのものがあるということについてはどういうように受け取られますか。これは佐分利局長がおっしゃったことについて逆説的に、言葉じりをつかまえておるんじゃなくて、算術計算してそうなるほど非常に恐ろしいものだと思う。こういうことで御答弁願いたい。
  69. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 昨年五月二十四日の私の先生に対する御答弁は、自然発生の突然変異全体について述べたものでございまして、その根拠はICRP、国際放射線防護委員会のパブリケーション8、一九六五年四月の資料でございますが、それに基づいて申したものでございます。大ざっぱに申しますと、普通の状態でも百人赤ちゃんが生まれると五人から十人ぐらいは異常者が出ると。そこで、あと放射線を浴びたことによってどれぐらい上積みされるかという問題が起こるわけでございますが、その前に、先生が御指摘になったように、百万人で五万五千人も出るなら十年もたつと全部ということにはなりません。また、放射線によってどれぐらい上積みされるかという問題でございますが、去る六月四日の長崎で開かれました原爆後障害研究会、学会でございますが、そこで長崎大学の原爆後障害研究施設の遺伝研究室が国連の資料を分析して報告いたしておりますが、劣性遺伝、突然変異の場合で四代目、世代でございますが、四代目ぐらいで十万人について二人か三人ぐらい上積みになるであろうか。また、いわゆる優性の突然変異につきましては、これは六代目ぐらいについて〇・〇一%ぐらいの増加になるであろうかというような報告もいたしております。要するに、自然発生的にも染色体異常というようなものはそう少なくないということを申し上げたわけでございます。
  70. 片山甚市

    片山甚市君 自然放射能についても、これだけの変化が起こることについて、私たちは強い関心を持っていきたい、こう思います。  さらに佐分利局長は、放射線被曝は全国民の問題だとして、医療被曝、エックス線などについて、昭和四十九年以前は三レム、ちょうど自然放射能の約三十倍ぐらいだったものが、四十九年以降〇・五レムになり、さらにこれは〇・一とか〇・〇五、自然放射能の水準にすべきだと、こういうようにおっしゃっておるんで、民族の将来のためには当然だろうと、その認識に立って今後行政が努力をされるのかどうか、こういうことについてお聞きをしたいと思う。
  71. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) 行政的な努力といたしましては、四十九年、結核予防法を改正いたしまして、それまで幼稚園から中学校まで毎年結核の定期の健康診断を行っておりましたのを、回数を少なくいたしまして、就学前に一回、小学校で一回、中学校で一回というようなことをいたしております。また、これに関しましては放射線医学会、また国立のがんセンター、研究所等もそうでございますが、昨年の学会では、現在すでに機械もよくなってまいりましたし、また医師とか放射線技師も努力をしておりますので減ってまいっておりますけれども、さらに五%ぐらい医療被曝を減少させたいというような発表とか勧告をいたしております。そういうふうな意味から私どもは、いま先生もおっしゃいましたように、できるだけ医療用の放射線被曝も少ない方がいいわけでございまして、もしむだなものがあるならばそれは取り除いていかなければならないという努力を、学会とか研究機関と一緒になって進めているつもりでございます。
  72. 片山甚市

    片山甚市君 放射線の被曝というものが蓄積されるものであり、そういうことから可能な限り必要でないものというか省略できるものはしていき、少なくしたいということだと素人の立場から受け取ります。  実はBEIR、いわゆるベア報告、放射線の生物学的効果に関する全米科学アカデミーの全米研究諮問委員会報告というのがございます。ベア報告ですが、これが一九七二年十一月に出されていますが、それによると、自然放射能と同量の百ミリレムでのがん、白血病の発病率のデータを承知されておるだろうか、ちょっとお聞きいたします。
  73. 早川正彦

    説明員(早川正彦君) 御指摘のベア報告では、全米市民による年間百ミリレムの被曝が、白血病あるいはその他のがんによる死亡率にどの程度の影響を、あるいは増加をもたらしたかということについて検討しているわけでございます。前提といたしましては、非常に高いレベルの領域での線量とその効果、これが直線性を持っておるという安全側の仮定に立ちまして、試算を行っているというふうに承知しているわけでございます。同時に、この報告でも書いてございますけれども、かなりオーバーなバリュエーション、オーバーエスティメーションをしているということも事実でございますが、このレポートの一つの内容としては意義あるものではないかというふうに考えております。御承知のように、ICRPで被曝線量を決めております。同時にできるだけ低く線量を抑えるという考え方適用しておりますので、私どもとしましては原子力開発によりまして現実に疾病の発生は無視できるというふうに考えておりますけれども一般の人あるいは従業員を含めまして、できるだけ線量を低くしていくという努力はしていきたいというふうに考えている次第でございます。
  74. 片山甚市

    片山甚市君 私の質問しましたがん、白血病の発病量のデータというのはどのぐらいになっていますか。
  75. 早川正彦

    説明員(早川正彦君) これは二億人をベースにして調べてございますけれども、白血病で五百十六人から百三十八人、その他のがんとしまして千二百十人から八千三百四十人というものが二億人の一年間ということでございます。
  76. 片山甚市

    片山甚市君 言葉に直しますと、百万人について五人から十一人ぐらいの間に入りますか。
  77. 早川正彦

    説明員(早川正彦君) 二億人でございますから、おっしゃるとおりだと思います。
  78. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、ノーベル賞受賞者のジョシュア・レダーバーグ氏あるいは先ほど核物理学者のアーサー・タンブリン氏のことを言いましたが、またアメリカの著名な科学者の説によると、現在の疾病の五%か一〇%は自然放射線に起因すると推定をされていますが、それについての御所見はいかがでしょうか。
  79. 早川正彦

    説明員(早川正彦君) 先生のおっしゃいますように、レダーバーグとかタンブリンの二学者が、現在の疾病の五から一〇%ぐらいは自然放射線に起因しているんではないかという見解をとられているのは事実でございます。先ほどにもお話がございましたように、自然放射線の問題につきましては非常にむずかしい問題でございまして、私どもは長い期間にわたるエックス線あるいは放射性物質の使用の経験、あるいは人間その他の生物の障害の発生に関する調査研究、こういうものから判断をいたしますと、自然放射線の程度の低い線量で障害が発生するというのは、現実的には障害が発生するというのはまだ断定できないんではないだろうか。現実に、自然放射線の差がある地域によりまして、そこにおける疾病の有意な差が出ていないということも事実ではないかというふうに考えております。仮に、自然放射線を被曝することによりまして障害が発生し得るとしましても、その発生の確率はきわめて小さい。具体的に現在の疾病の何%が自然放射線に起因しているかということについて、現在の段階で判断をするのは非常にむずかしいというふうに私ども考えております。
  80. 片山甚市

    片山甚市君 私は手元でBEIR報告を見ますと、その発病率は人口一億に対して大体五百から千名程度が死亡率だけでも考えられる。在米科学者の説では、七千から一万四千人ぐらいが自然放射線量においてがん発生をする因果関係を持つと、こう言われております。私は、自然の問題でありますから、それをどういうふうに制御するかということについては大変むずかしいと思いますけれども、こういう事実があるということを指摘をしておきたい。これらのデータは今日までのものであり、がん死亡、死者の増傾向、いま現在、がんで死亡する人がふえています、と放射能汚染の増傾向から予測すればどういうことになるんだろうか。それなりの数値を見込むとすればその影響は大きいと見るのが常識ではないかと思いますが、これからのがんの死者に対する予測はどういうことになりましょうか。
  81. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 予測というのはちょっとむずかしいのでございますが、大体最近の傾向の数字を申し上げますので、私ども予測はいたしておりませんが、それから大体先生おくみ取りいただきたいと思います。昭和四十年が十万六千名、四十五年が十一万九千九百、それから五十年が十三万六千、五十一年が十四万、こういう死者の数字の傾向でございます。
  82. 片山甚市

    片山甚市君 逐年がんの死者がふえておるということについて注目をして、今後の対策をしなければならぬということについて申し上げておきたいと思うのです。私は今国会において、先月、五月十一日の社会労働委員会で、広島長崎原爆による大量の被曝と異なって、アメリカの原子力センターに働く二万五千人のがん発生率を二十九年間にわたって記録をした、そのもとに調査をした結果、微量放射線において発がんをするとのいわゆるマンクーゾ報告、ERDA施設労働者の健康と死亡研究最終報告ということですが——の結論について、わが国の労働安全衛生の視点からそのことについて指摘をいたしましたが、これに対してまことに不十分な答弁しか得られませんでした。このことについては具体的にもう少し事情がわかった中で追及したいと思うのですが、公衆衛生の立場からも看過し得ない重要な問題だと思っておるところです。そこで、わが国において後追い行政しかとり得ないような状態であるのを見ると、科学技術庁の担当課長は、この報告については検討の対象にはなるが、現行許容基準は、ICRPの新しい勧告がない限り手直しをやる気もないと言っておりました。新聞の報道が真実かどうかわかりませんが、放射線は幾ら厳重に管理しても生態系のいずれかを通じて循環し、体内に入れば蓄積するという厄介なものでありますから、環境汚染を含めこのような対応で公衆衛生行政は満足し得るのかどうか。私は働いておる職場の立場から、いわゆる労働環境的なことで聞きました。それについてはいい回答を得られませんでした。きょうは公衆衛生行政の立場から、このことについて御検討されたならば御所見を賜りたい。今後この報告についてどのような取り扱いをされるのか、検討した結果をまずお話しをいただきたいと思います。
  83. 早川正彦

    説明員(早川正彦君) マンクーゾの報告は、ピッツバーグ大学のマンクーゾとバーミンガム大学のアリスチュアート女史、オックスフォードのジョージ・二ールが共同でまとめたものでございます。この研究の内容は、ハンフォードの原子力施設で働いた従業員で死亡した者の死亡の原因と被曝線量等を調査解析いたしました。がんによって死亡した者のうち六%は放射線が原因となってがんによる死亡した者というのがレポートの骨子だというふうに考えております。このレポートは、一九七七年の三月に出しておりますが、その後一九七八年の三月にIAEA主催の放射線の晩発効果に関するシンポジウムにおいても第二回目の報告がなされておりました。先般新聞に載っておりましたのは一九七七年三月のレポートの新聞ではないかというふうに考えております。マンクーゾ氏の調査は、従来の原爆被爆時のデータ、それから医療被曝者についての調査にかわりまして、ハンフォードというアメリカのAECの原子力施設を対象にしまして従事者の疫学調査を実施しまして、被曝線量とがんの死亡率の関係を研究しようとしたという点では非常に特色があるというふうに考えております。しかしながら、低線量被曝におきまして放射線とがんの死亡率の関係につきましては、自然に発生するがんの死亡と、放射線によって発生するがんの死亡とを区別して検出することは非常にむずかしいわけでございまして、マンクーゾ氏が用いました研究書も他の研究者からはその点についての疑問も表明しているというふうに聞いております。いずれにしましても、一九七七年におきますマンクーゾの報告では、倍加線量が非常に低い値でございますけれども、一九七八年の論文では三倍程度に倍加線量を変えておる。つまり、母集団の取り方等いろいろな関係処理の問題につきましても問題があるというふうに考えておりまして、私どもはこういうデータをもとにしまして、十分謙虚にこの内容についてはデータの一つにしていきたいというふうに考えております。
  84. 片山甚市

    片山甚市君 放射線は、これまで考えられていたよりもずっと低い線量でがんや白血病を引き起こすというような内容のマンクーゾ報告だと見ました。がん死亡者の個人当たりの平均外部被曝線量は一・三八ラド——レムと読みかえてもよろしいが、だと、がん以外のそれは一・〇七ラドのデータを示しています。ということは、単純に言って自然放射線の十倍を超える数値であれば何らかの影響を与えるということになるのではないか。推定される倍加線量ががん全体に対して一二・二ラドであるということは、いままでの通説を変えることになると思うが、それは間違いでしょうか。
  85. 早川正彦

    説明員(早川正彦君) 先ほど申しましたように、一九七七年の論文では倍加線量が一二・二ラドというふうになっておりますが、一九七八年の三月の論文では三三・七ラドというふうになっているわけでございます。マンクーゾの報告につきましては、いろいろな意味での御議論がある存でございまして、ICRPのメンバーの方等においても次のような点の御指摘をいただいております。統計処理において被曝分布の取り方あるいは統計手法の選択に問題がある、あるいは倍加線量の値を小さく取り過ぎている。この倍加線量では、米国内の自然放射能レベルの差による死亡者数の差は説明できない、あるいは死亡率に影響する他の因子が十分配慮されていないというような御指摘もあるわけでございます。それから、米国のNRC、原子力規制委員会の公聴会におきましても、ハーバード大学のロースマン教授はマンクーゾ報告が調査の対象としている線量の範囲では、放射線作業従事者の危険性に事実上の増加は認められないということもおっしゃっているわけでございまして、本報告が許容基準を変更するような一般的な知見を新たに与えるという一つのデータにはなろうと思いますけれども、これらのペーパーはICRPの委員会においても検討されまして、そしてその上でオーソライズされるのではないかというふうに考えている次第でございます。
  86. 片山甚市

    片山甚市君 これは一九六五年以来、いわゆる米原子力委員会の委託でハンフォード原子力センターに働く人を調べた、こういうことだそうです。それについては御都合のいいようないろいろと御意見もあるようでありますから、それはお聞きしましょう、専門家でないんですから、そういうことですと。ただし、非常に低い線量でもガンや白血病を引き起こすような状態があるという指摘があったことだけは覚えておいてほしい、忘れがちですから。原子力発電所つくって、何とかエネルギーを日本の国でつくればいいとばかり思っておる者は、化け物は化け物しか考えませんから、だからそれ以上言いません、抵抗だけしておきます。大体、こういうものが出ると本気で考えてもらいたいと思います。  そこで、先ほどから大丈夫の話ですが、微量放射線についてですが、たとえば東京電力福島第一原発の昭和五十二年度第一・四半期四−六月における被曝従業員は三千七百八十五名のうち百三十ミリレムから四百ミリレムの被曝者八百六十九名、四百ミリレムから一般許容量の五百ミリレムを超える千三百ミリレムの者が九百二十一名、千三百ミリレムから三千ミリレムが七十七名というデータがあります。いままでの議論を経て、被曝者のみの問題ではなく、これらの放射線が公衆衛生行政上、環境に与える影響を考えて問題はないかどうか。先ほどから原子力発電所は五ミリレムしかありませんと、大丈夫です、何を言うとるか素人がと、こういうような態度で盛んに言うておるようでありますが、私これを見たら、これは間違いですね、この東電の福島第一原発などでは、それをはかってみると四百ミリレムから一般許容の五百ミリレムを超えて千三百ミリレムまでの人が九百二十一名、千三百ミリレムから三千ミリレムの人が七十七名という、低線量が、線量の低い者がうんとふえておるのです。これは労働の日に、この間いろいろと説明を私からしたんですが、これについての御所見を厚生省としていただきます。厚生省まず答えてください、公衆衛生行政上どうか。
  87. 中戸弘之

    説明員(中戸弘之君) 私ども、ただいま先生がおっしゃいました数字につきまして、東電の福島第一原子力発電所の被曝実績でございますが、先生いまおっしゃいましたように、五十二年度の第一・四半期について見ますと、〇・四レム以上で九百二十一名、一・三レム以上三レム未満が七十七人で、先生おっしゃった数字のとおりになっております。  なお、この際ちょっと先ほど、私日米基準の比較のことで御答弁した際に若干足りない部分がございましたが、日本の基準、年間五百ミリレムというのが、いかにも遺伝のことを考えていないような印象をお与えしたかと思いますが、それはそういうことはございませんで、五百ミリレムという数値をとっておけば、遺伝については十分これをカバーし得る、そういう内容でこの五百ミリレムというのを日本で決めておるわけでございます。それにつきまして言い足らない点があったやに思いますので、この際訂正さしていただきます。
  88. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 恐縮でございますが、従業員の被曝問題でございますと、実は労働省の方で所管いたしておりまして、原発から一般住民の方へ放射線が曝露したということになりますと、私どもの方で考えるわけでございますが、これは労働行政の問題ということで私ども特にいまのところお答え申すすべを持っておりませんので、お許し願いたいと思います。
  89. 片山甚市

    片山甚市君 もう一度申し上げておきますが、原子力発電というのは五ミリレム以下にしてあって、大変安全にしてありますと言ったけれども、ここで働いておる人たちは、五百ミリレムを超える人たちがたくさんおるし、低線量で、発がんあるいは白血病にかかるというマンクーゾ報告が、そんなことはない、あんなものはインチキだというばかりの話で、心配するなという話でありますが、もしあれば、後日、これがいつかそうなれば、国の責任ですからね。いま警告しておるんですから。先ほど、そんなことはない、ということですから、それだけ言うておきます。もう答弁は要りません。  大丈夫だと言うとるのやから、大丈夫に据えてほしい。もう、大丈夫だ、大丈夫だというコーラスで、そうでしょう、この間、成田空港でも、無理やりに、警察まで入れてやった。開いたら、もうやかましゅうてしゃあないから寝られへん、こんなものは羽田に行ったら一度でわかっとるはずじゃ、そんなことは。何を言うとるか。十二年もかかって航空騒音があったのかなかったのかわからぬなんて、いま、できたからそろそろやろか、十二年もかかって何で騒音対策ができなかったか、一体。初めからそんなこと言うてやっとるでしょう、たとえば。これは関係ないのよ。ないことを言うとる。あんたたちのやることは、この間までやきもき、なんや、左翼が来る、破壊活動家が来る言うて、わっとやりよる。やるはいいけれども、飛行機が飛んだ明くる日から、もうやかましくて寝られへんとか、航空騒音だとか言うてますね。なったらしまいですよ。いまのうちにやったらよろしいが。警告だけですわ、あんたたちは言うたってわからへんのやから。自分の頭の上のハエを追うだけが忙しいんで、責任がないようにだけ答弁したら済むと思うとる。私はまだ生きとるんで、まだあと任期は二年ありますから、二年のうちにあるかどうかわからぬが、ちゃんと言います。もうよろしい。大丈夫だと言う前に、やっぱり謙虚に対策をすることについて約束してやっていく、こういうことを期待をします。  次に、体内被曝の危険性についてですが、体内被曝線量の推定値をどういうふうに見られますか。これが一つ。  胎児、子供、成人の場合のそれぞれの放射線感受性の違いがあると思うけれども、どの程度に見積もられますか。  高速中性子などの線量の当量をどのくらいに考えられますか。  四つ目に、妊娠期間中の総量の胎児への規制値はどのようなことでしょうか。  五つ目に、白血病の場合の倍加線量というのはどんなものでしょうか。おわかりでございましたら御答弁願いたい。  念のためにお聞きするんですが、植物と動物の細胞は、基本的に同一のものであるのか。細胞に与える放射線の影響を考えた場合に、人間の細胞のみ影響はないか。  こういうことについて簡単にお答え願いたいと思うが、いかがですか。
  90. 中井斌

    説明員(中井斌君) 私の専門でカバーできる範囲だけお答えいたしたいと思います。  一つは、植物の細胞と動物の細胞について違いがあるか、おしまいの方の御質問かと思います。  放射線が当たりました場合、プライマリーにはほとんど相違はないと思います。しかしながら、それが後代に伝わります遺伝的な影響に関しましては、動物と植物とでシステムが違いますので、たとえ同じ線量を被曝したといたしましても、それは非常に違うのではないか、そのように私ども考えております。  それから、たくさん質問がございましたので。これは実は私の専門外でございますので、余り正確にはお答えできませんが、成人と胎児の違い、これは、調べます身体的もしくは遺伝的な影響の種類によりまして大変異なっております。たとえば、遺伝的な影響につきましては、これはアメリカのセルビーなんかの仕事でございますけれども、胎児の場合の方がかえって危険度は低いという結果が得られております。がんにつきましては、私の承知しておる範囲では、いろいろ異論がございまして、広島長崎のような場合の結果と実験動物で得られております結果と、必ずしもいまのところ一致をしていないように思います。ただし、ある種の奇形、たとえば広島長崎の小頭症なんかの場合ですが、先天性異常の場合につきましては胎児に非常な影響がある、比較的低い線量でも大きな影響があるというようなことになっているというふうに理解しております。不十分でございますけれども
  91. 金平隆弘

    説明員(金平隆弘君) 御質問の許容線量との関係でございますが、現在成人に関しましては、職業人を考えますと、現行法上三月三レムという被曝限度がございますが、胎児を持つところの妊婦につきましては、妊娠をしておるというふうに診断されたときから出生までの間、最大で約十カ月あると思いますけれども、その間につき一レムということで、非常に制限した被曝限度を設けてございます。以上です。
  92. 中井斌

    説明員(中井斌君) こちらの答弁が用意されます間に、前の御質問にありました件でお答えが多分不明確だったことについて、ちょっとお答えをしておきたいと思います。  一つは、放射線が蓄積するかどうかという質問が前にございました。一般的に申しまして、これはそのとおりでございます。特にステムセルと申しますが、骨髄であるとかあるいは生殖細胞のように細胞分裂をいたします組織につきましては、受けた線量が蓄積されます。これは一般的に研究者はそのように考えております。  それから、放射性物質が蓄積するかという御質問がもう一つございましたけれども、これは私の専門ではございませんけれども一般的に申しまして、これは核種によって非常に違いますけれども、ある種のものは体内に取り入れられまして、また体外に出てまいります。ある部分は蓄積されます。でございますので、一般的に申しますと、ある平衡状態に達するというふうに私ども理解しております。  以上、前の課長の答弁で漏れたところをちょっとお答えいたしました。  それから先ほどからの、これは私、一研究者の立場で申し上げるのでございますけれども、微量の放射線が生物にどう影響するかという基本的な考え方でございますが、この微量の放射線に限らず、化学物質も生物に影響を与えるわけでございます。そのような関係にございますので、ゼロリスクということはないと私ども科学的には考えております。非常に大事なことは、じゃその微量のレベルでどのくらい危険度は上がるのかというのが大変に大事な問題ではないかと思います。量的な問題でございます。これにつきましては、先ほどのハンフォードそのほかいろんなことがございますけれども一般論と申しまして、明確にされていないとお答えするのが正直なお答えではないかと思います。それを明らかにすることは、われわれ研究者にとりまして、こういう放射線に限らずいろんな問題を判断される場合に非常に大事なことになると思いますが、これについて、そういう非常な微量自然放射線のレベルは現在明確にされておりませんし、まあ一部はある程度わかっておりますけれども、今後研究しなければならないというふうに研究者は思っております。
  93. 金平隆弘

    説明員(金平隆弘君) 御質問の中性子の関係でございますが、現行法でもICRPの勧告を採用いたしまして、中性子線が持つエネルギーをそれぞれいろいろランク分けをいたしまして、それぞれが持つ粒子フルエンスをもとにレムに換算するという方式が法定されております。それに基づいて中性子線の影響というのは、レムとの関係で合算するということで規制を受けております。  なお、関連ですが、中性子線の影響としましては、健康診断との関係で中性子線を扱うような職場では、目の関係の健康診断をやるという必要があるというふうに現行法では規定いたしております。以上です。
  94. 片山甚市

    片山甚市君 私の方の手落ちで事前通告をしてありませんからお答えが——体内被曝線量の推定値と、もう一度白血病の場合の倍加線量についてどういうことになるかちょっと御説明願いたいと思います。私、事前に質問通告してありませんから、突然でありまして、お答えがむずかしそうでありましたら、検討しておいてもらって、次の項に入らせてもらいます。もう一度言いますと、体内被曝線量の推定値はどういうことか、白血病の場合の倍加線量はどういうことになっておるか、こういうことについて説明を願いたいと思います。それはいまよろしゅうございますから、後からでよろしゅうございます。  アメリカの下院商業委員会、保健と環境小委員会のいわゆる公聴会で、三月十四日ですが、アプトン博士らの証言内容承知しておられるだろうか、こういうことです。
  95. 佐分利輝彦

    政府委員佐分利輝彦君) その証言は、簡潔に申しますと放射線の被曝によって乳がんがふえるのじゃないか、ふえているのじゃないかという証言でございます。こういった意見は、すでに三年ぐらい前からアメリカの学会を中心として出ている意見でございましたけれども、現時点におきまして先進国の女性の死因のトップは乳がんでございますけれども、二五%が乳がんで死んでいらっしゃる。これはWHOその他公式機関の現在の統一見解では、放射線の影響というものも考えられるし、大いに今後調査研究を進めなきゃならないけれども、むしろ脂肪のとり過ぎとかホルモンの異常とか、そういったものが主体を占めているんじゃないかという意見が多数説になっております。なお、広島長崎におきましても、最近の調査結果でございますが、やはり被爆者の女性の方には乳がんが少し多いようだというようなことが二、三年前から報告され始めております。
  96. 片山甚市

    片山甚市君 アメリカの話ばっかりで余り私も気の進まないことですが、しかし、そういう資料が入っておるのでお聞きをした。特に、できるだけそういうことについては科学的に究明をしてもらって、安心をするものはし、警戒をすべきものは警戒をしてもらいたいと思います。  次に、米国防総省の米軍将兵、政府職員の放射線による後遺症の全面調査を実施することを承知しておられるか。同時にこの背景についてどういうことから、いわゆるアメリカの国防総省が米軍の将兵、政府関係職員の調査をするようになったのか、こういうことについて御説明願いたいと思います。
  97. 米本弘司

    説明員(米本弘司君) ただいま先生のお話しの件につきましては、背景につきましては、本年の二月から国防総省が、一九四六年から一九六三年の間にネバダ等で行われました核実験に参加した人、軍人とか民間人を含めた参加者についての放射線障害と、それから当時の放射線の被曝状況についての調査を開始したということでございますけれども、その背景になったことは、この二十一年前のネバダでの核実験に参加した、当時の核実験に参加しました元軍人が二月の九日に死亡したと。これはその原因が白血病であると言われておりまして、それが当時の核実験に参加したための白血病ではないかということで、そういった関係の因果関係の調査が約一年前から実施されていたということが大きく取り上げられまして、国防総省としては当時の核実験に参加した人たちの追跡調査を行うことになったと承知しております。
  98. 片山甚市

    片山甚市君 中国新聞の記事によりますと、三十万人の軍人が被爆をしたのじゃないかということで、そのいわゆる調査に対して届け出した者が一万名を超したということ。すでにそのうち百四十名が白血病患者だということで報告されておるようでありますが、特にこれと関係いたしますビキニについて、これはもう被曝の害はなくなったと、消滅したということになって、九年後に再び島に帰ってきたんですが、いまビキニはもう一度その島を立ち去らなきゃならぬと、こういうことですが、その事情について説明してください。
  99. 米本弘司

    説明員(米本弘司君) 私ども、まだ詳細に承知しているわけではございませんけれども、報道等によりますれば、内務省の五月の二十二日に行われました公聴会で、一九五四年の核実験が行われた南太平洋のビキニ環礁で、その同実験に先立って退去しました住民が、十四年たちました一九六八年にもう放射能汚染の状況はないということを米政府が判断をして、居住可能であるということで現在百三十九名の方が戻って島に居住しておるわけですが、それがまた最近健康診断をした結果、体内にセシウムが増加しているということが判明したので、これを今後三カ月以内の間に近くの他の島に移住させるということが決定されたというように承知しております。
  100. 片山甚市

    片山甚市君 アメリカは放射能については万全の措置をとられて、こういうようないわゆる演習あるいは原爆、水爆の実験をされたものと思う。されたものであっても、先ほど言った三十万ぐらいの関係者のうち、二週間足らずで一万人ほどの人たちが後遺症が心配だということで検査をしてもらうように申し入れがあったと、たった二週間で一万人の人が申し出たといわれる記事があります。そういうことでビキニの場合は大丈夫だといって帰ってみたら、もう一度地下水、そういうものを調べると、飲めないというか、飲むと大変だと、ココヤシとかそういうような果物を食べても放射性物質が出ると、こういうことになっておるということについては、私はいままで安全だ安全だと言っていたことが、そう簡単でないという、原子力に基づく放射線は大変恐ろしいものだということに考えるんですが、大臣いかがでしょうか。
  101. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 放射能の人体に及ぼす影響につきまして、私は専門家でもございませんので、確たる御答弁はできませんが、しかし先ほど来の質疑応答で明らかでございますように、これはもう全く影響皆無という科学的なデータはございませんので、十分安全の上にも安全を考えましてやらなけりゃいけない問題だと考えておりますから、また人の健康に責任を持つ私としては、当然それらの関係の部局に対し、できるだけひとつ安全性の確保に、許容限度についてもできるだけのひとつ配慮をしていただくように申し入れをしなけりゃいけないものと考えております。
  102. 片山甚市

    片山甚市君 いままでにも明らかにされましたことですが、低い線量、低線量の被曝でも、いかに人体に有害な影響を与えているかということについては、その例を示し得たと思います。まして、好ましい遺伝などというのはあるはずがありません。百歩譲って、若干好ましい突然変異があるとしても、その数十倍、数百倍というものが放射能の影響により生命を維持し得ず、闇から闇へ消えていく、さらに何らかの形で生き延びる条件を得たとしても、社会的にハンディキャップを負うと想像することはかたくありません。そういう意味で、私たちはこれからの放射線の取り扱いについては非常な慎重な態度をとってもらいたい。目に見えないだけに、測定をするのに、先ほど大臣も言うように専門家でなければ答えられないようなことであります。ですから、われわれは素人でありますから、自分たちの危惧することについては科学者が解明をして、これはこうですという責任を持ってもらわなければ、これを進めるわけにいかない問題だという意見を述べます。  そこで、本題の原子爆弾被爆者に対する問題に移りますが、特別措置法による保健手当支給要件である二キロの線引きについて、根拠はどうなっていますか。
  103. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 先ほどからしばしばお話に出ております国際放射線防護委員会の勧告がございますが、それに基づきまして、いわゆる一生に一度被曝する場合の最大許容線量二十五レムという勧告が出ておったわけでございます。それを受け、またそのアメリカの放射線防護測定委員会の勧告におきましても、その危険地帯に立ち入る基準を二十五レム以下としているということ。それから、従来から全身一回の被曝で人体に障害の徴候が起こるという最低線量は二十五レムというようなことが言われておりますので、そういうことを総合いたして判断いたしまして二キロメートルにいたしますれば、その外側は二十五レム以下になるということで二キロという線を引いてあるわけでございます。
  104. 片山甚市

    片山甚市君 いままでのおさらいをしたのですが、実はいままでに明らかにした被曝線量の数値に対して二十五レムというのは、いかに人体に影響を大きく与えるかということで、私はもう一度再考すべきもの、だと思います。  まず、自然放射線量でも、いわゆる先ほどから言いますように影響を持つということです。自然放射線量は〇・一レム、年間。それに対して二百五十倍。放射線作業者の異常被曝と同じに扱っているけれども、この場合はおおむね健康な成人であり、事故に対する環境も異なる。ICRPの一九六九年勧告によれば、事故時の被曝において作業者の最大許容線量五レムの二倍を超えたら専門医の検討が必要だと警告しているのに対して、これはそれに対する二・五倍、一般許容線量の〇・五レムの大体五十倍、アメリカの基準は先ほど国民全体で言いますが〇・一七レムで言えば百四十七倍、こういうことについて私は問題があろう。マンクーゾ報告によると、がん全体に対する推定倍加線量は、先ほど十二・二ラドというのはその三倍ほどにことし訂正されたといっていますが、私たちから言えば二倍。それから二キロ以上の距離においても多くの人が死んでおるわけです。これは昭和二十一年八月十日、市役所調査で二キロ以内の人たちは、死亡者が〇・五キロメートルが一万九千三百二十九名、一キロメートルが四万二千二百七十一名、一・五キロメートルが三万七千六百八十九名、二キロメートルが一万三千四百二十二名。それから二・五キロが四千五百十三名、三キロが千百三十九名、三・五キロが百十七名、四キロが百名、四・五キロが八名、五キロメートルが三十一名、五キロ以上が四十二名ということでありますから、私がいま申し上げる二キロメートル二十五レムこういうことについて安全だというなら、この人たちは死んでないはずなんです。私は重傷やあるいは軽傷、こういうものについて言っておりませんけれども、そういうような意味で、この二十五レムということを決めた時代と今日では大きな隔たりがある。もう一度検討すべきでない、だろうか、こう思います。  胎内被曝の影響ですが、成人の、大体私の方は三倍の影響があるとすれば、これは二十五レムというのは七十五ラドに相当するということで、考えてみると、二十五レムというものは再検討すべきだと考える、再検討するということは国際防護委員会で決めておるじゃないか、日本だけでできるか、こういうような意見があるかもわかりませんけれども被爆したのは日本でありますから、日本が独自にそういう実態について検討する必要があると思うのですが、いかがでしょうか。
  105. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) これは二キロメートルというのは、先ほど先生の御指摘もございましたように、保健手当の支給でございます。保健手当というのは、この中の被爆された方は非常に大量の被曝を受けておられるということから、健康に十分留意するための手当ということで保健手当が出ているわけでございます。御承知のように二キロメートルの外側の場合にありましても、当然健康診断を行って、そしてその結果、病気があれば手帳交付が行われ、健康管理手当があり、さらにまた医療費が見られると、こういう姿になっておりますので、そういう意味からこの二キロメートルの外だから原爆被爆の方が特に医療等においてほっておかれるということではございませんで、当然そういうような措置はなされておるわけでございます。そういう意味で、この二キロメートルというのは、ただいま申し上げましたように、ICRP等の考え方を入れまして、ここの中の方は特に多量の被曝を受けられたということで、何と申しますか、ふだんよくお気をつけくださいという意味の保健手当を出しているということでございますので、これから外はもう何もやってないということではございません。そういう意味から、一応この二十五というICRPの考え方適用しておりまして、現在のところICRPの方の考え方が現在のままであるならば、私どもそのまま踏襲したいというように考えております。
  106. 片山甚市

    片山甚市君 国際防護委員会の名前を出すと、おまじないでそれが一番権威がありましょうからやむを得ませんけれども、私が申し上げるのは、二キロまでの人じゃなくて、四キロまでの間に相当の数の人が亡くなっておるのを見ると、それは多量ということについての判断は被曝をしておる量が少ないか多いかといっても、検討する必要があろう。私は単に何キロメートルを延ばせというんじゃなくて、二十五レムというのが検討される対象物である、距離ではありませんよ。それから防護、いわゆる保健手当を何名ふやしてほしいなどということではないんです。そういうことにして初めて深刻な問題がたくさん出てきましょうから、いままでおらなかった人が出てくるかもわかりませんよ、保健手当を支給するようになったりしたらね。ですから、私はこれについての再検討を要求しておきます。あなたの方は国際防護委員会の方が決まらなければ、いまのところ検討することはできないと言うんだから、それは意見の対立をしたままで、私の方の要求として明確にしておきたい。何回繰り返しても、これは時間もったいないですから。いまのところ局長がなりかわって、それは検討しましょうと言ったら、大変でしょうから、検討することになってないでしょうから、私の方は検討せよ、これはすべきだ、低線量でもこんなことがあるのに、二十五レムなどというのはとんでもないこっちゃと、こういうことです。いや、それはまあしかし権威者がおって、物すごいりっぱな学者が集まってきてやっておるのに、ただし、りっぱな学者でもマンクーゾみたいな気に食わないやつが来ると、この報告はどうも怪しいと、こういうようになっておるようですが、学者というのは都合よろしいね。学者になるべきだった、これはほんまにね、自説だけ言うておればいいから、失礼だけれども。私、非常にそう思うんです。私の所見を述べて回答を求めない、これが私のやり口です。都合がいいんです。だめだということしか聞かしてもらえへんからね、あなたのところは。  次に、米下院対外通商委員会健康環境小委員会におけるポーツマス海軍工廠での原潜建造に当たった労働者の、放射線によるものと見られるがん死亡者の多発について御承知をされておるかどうか、知っておればお答え願いたいと思います。
  107. 中戸弘之

    説明員(中戸弘之君) 本年二月十九日付のボストン・グローブ紙に載っておる記事でございますが、アメリカのニューハンプシャーのポーツマスにございます米海軍工廠、ここで原子力潜水艦の建造とか修理とかを行っておるわけでございますが、ここに働く造船工のがんによる死亡率が全米の平均よりも多いという記事がこの紙面に掲載されておるわけでございます。この事実につきまして、私ども早速外務省を通じまして調査をいたしましたわけでございますが、本件につきまして二月二十八日にアメリカの上下両院委員会の合同公聴会というのが開催されまして、ここで海軍の関係者とかあるいは新聞社の調査に協力をいたしました専門家等の証言が行われたということでございます。その公聴会におきましては、新聞社側といいますか、の専門家は大体新聞の記事と同様の趣旨を発表しておると。これに対しましてアメリカ海軍の方は、海軍工廠におきましては十分被曝管理をしているので、そういう問題はないということを反論しているわけでございます。科学技術庁といたしましても、その後さらに詳細な情報を得るべく努力しておるわけでございますが、本件につきましてはアメリカ海軍の、アメリカ当局の公式な見解もまだございませんので、そういった段階におきまして、本問題に対する具体的なコメントというのは差し控えたいと、このように考える次第でございます。
  108. 片山甚市

    片山甚市君 とにかく五レム以下に抑えておいても、このような形でとにかくがんの死亡率が三八・四%も起こっておる。影響があったか、なかったかと言ったって、そこで働いておるんですから、全くないと言えませんでしょう。一般の造船の方々ですと二一・四%、一般の人はアメリカ人たちは一八%、そうして通常の造船所の人よりも多くかかっておると、いわゆるがんになったということを言っておるんですから、警戒をする必要があるということには間違いがない。調べてみなくても、そういう人ががんになったということだけは事実です、がんであるということは。それから放射線があったのかなかったのかと言えば、水かけ論になり得るようなことをするのは、チッソ水俣以来、今日までのイタイイタイ病初め、双方が言えるんですから、学説で言えば。けれども、病気になったり、痛んでおる者だけは消えないんですから、お互いに論争しておるけれども。だから、それだけ言うておきます。答弁求めてもしようないでしょう。  それから、放射線の障害は一世代を見るのみでなく、二世代以降にいわゆる推定することができない。大体、先ほど佐分利局長おっしゃったように、五世代というか、四世代ないし五世代ぐらいでないと、遺伝というものがどういうことになるか明確にならない、こういうことでありますから、被爆二世のように、これを見るときには体が虚弱な体質になっておる。それについてただ白血病だということでなくて、合併症、いろんな病気について二世の方々については見てもらいたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  109. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 実は、被爆二世の方について先ほど申し上げましたように、少なくも現在までの研究段階におきましては影響があるというデータは何にもございません。そういう意味で、差しあたり現在までのところ、被爆二世の方について特別の対策考えておらないわけでございます。  ただ、もう一つ問題になりますのは、被爆二世の方で逆に、私どもはほうっておいてほしいと、いろんなことを言われるということは困るんだという声も一方にございますし、一方ではまた、いま先生おっしゃいますように、いろいろ心配だから見てほしいと、こういうようなお話がございます。私ども、それぞれの個人の方々のお気持ちを考えますと、大変微妙な問題であろうかと思います。ただ、そういうことでやはり一部に不安があるということは当然のことでございます。私ども、いわゆる調査研究ということは、これからももっと進めていかなきゃならないと思っておりますが、今後本人が御希望するというような、市で健診をしてほしいというような御希望がある場合に、そういうこと、いわゆる調査研究というのの一環として何かできないだろうかということを、今後にわたって検討していきたいというふうに考えております。
  110. 片山甚市

    片山甚市君 先ほどから申しますように、遺伝の問題は大変な誤解を生むし、むずかしいことでありますから、私は即断をして言うておるんじゃなくて、危険というか、そういうような危惧がたくさんあることについて、医学的にもまた環境的にも解決してほしいと思う。たとえば、川崎市にお住まいの森川清詩君ですが、彼は被爆二世だと自分で言っておるし、そのとおりですが、市条例で健康診断を受けたいということを勤め先の病院に願い出ても、有給休暇など特別の処遇はできないため、大変に本人としては大きな負担を受けておると。厚生省として、せめて病院など、指導し得る一番手近な事業体ぐらいには、こういう被爆二世の方々が、明確に被爆二世です。健康診断を受けるようなときには特別な計らいをして、これについての心の安らぎ、先ほど申しましたように、治療生活ですね、そうして精神——心ということでありますから、本人が医療を受けるときには、受けやすいような状態をつくるのが当然でないだろうか。二世が申し出たら、そういう健康診断を受けられるようにしてくれ、診療を受けられるようにしてくれと言っても、なかなか厚生省の方では明確に言っておらぬようでありますけれども、この措置について局長の方から善処方してもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  111. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) ただいま森川さんの話というの、ちょっと私よく存じませんでしたが、いま先生のお話伺いましてよく事情をわかりましたので、よく市民病院の方と話し合いまして、そういうような健診が受けられるように私ども十分お話し合いしたいと思います。
  112. 片山甚市

    片山甚市君 長い時間をかけまして、私素人でありますから、少したどたどしい質疑をしたかもわかりませんが、厚生大臣、冒頭に申しましたように、やはり戦後の終結は、いま生きておる証人としては、原爆被爆者に対してきちんとした援護措置を確立することであり、残されておる問題としては一般の民間の戦災者、戦時災害によって障害を受けた人たちに対する具体的な措置ができるかどうか検討してもらうことである。そうして、原爆被爆者の問題については、三十年の間に実は老齢化をしておる、三十年たって。ですから、その人たちのこれからの年月はそう長くありませんから、急いで来年には、衆議院でいろいろと議論をしたことについて実現をするようにお願いをしたい。大変むずかしいことでありますから、私衆議院で議論をしたことをもう一度ここで確認をしたり、附帯決議について申しませんから、そういうことについて大臣として格段のひとつ努力をするようにお約束願えぬだろうか。できるだけ、細かいことでありますから、大臣に一々きょうは御答弁をしてもらうつもりはない。むしろ、専門家の先生方にお聞きをしたい。私の方が入れた資料というのは、少なくとも専門誌あるいは仲間の中から出たものでありますから、議員そのものは余り詳しくありませんから、少しぐらい迂遠な、また間違った答弁されてもこたえてないんです。だけれども、まあこれ帰ってから研究者集まりまして、皆さんが私の答えにどれだけまじめにしておるかによって、厚生省に対する、科学技術庁に対する、通産省に対する信頼が高まるか薄まるかは、素人だませば玄人が悪いんですからね。玄人と素人が碁をしたときに、玄人が勝ったってだれも喜ばぬです。だから、そのつもりでおってください。きょうはだまされたような顔をしておることもありましょう。それから力まないのは——悲しゅうございます。原爆の問題はもうこれで言いたくないと思う。悲しゅうございますから、余り力んで言わない。だけど、大臣以下が誠心誠意答えていこうという態度でこの委員会に臨まれていますから、特別に非難がましくは言いません。もし、先ほどからの答弁の中で私の質問と全然違うことを言っておったとすれば、後でもよろしゅうございますから、御訂正していただきたい。  それから、先ほど質問いたしました中で、通告していない突然の問題がありましたが、このことについては文書で後でひとつこういうことです、ということで御通知願えれば結構ですということで、大臣の所信といいますか、御決意をお聞きして、長い質問でありましたが、終わらしていただきます。
  113. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 片山先生から、衆議院においていろいろ約束したことについて、来年度予算からでも一歩、一歩ひとつ実現を必ずやるかというお尋ねでございます。私は、衆議院の段階におきまして最後に特に与野党一致で御相談の上で申し出があり、それについてお答えをいたしました。これは必ずその方向で実行をいたしてまいりたいと思います。  なお、一般戦災者の方々についての御要望、御意見は十分わかっておりますので、よく今後とも検討をいたしていきたいと思っております。
  114. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時四十分再開することとし、休憩いたします。   午後零時三十一分休憩      —————・—————   午後一時四十四分開会
  115. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。質疑を続けます。  質疑のある方は順次御発言願います。
  116. 渡部通子

    ○渡部通子君 外務省にお越しを願っておりますので、最初に若干御質問をしたいと思います。  五月十八日付の新聞報道によりますと、国連本部での長崎広島の合同原爆展において出展が予定されておりました五枚の写真、いわゆる「熱線熱傷」の少年の記録とか、「全身熱傷の少女」とか、あるいは「ケロイド」とか、こういった五枚の写真に、残酷というクレームがついて差しかえを要求されたということでございますが、新聞報道で存じていることでございますので、その経過と事実をお知らせ願いたいと思います。
  117. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) お尋ねの写真展は、五月の二十三日から六月の二十三日まで、約一カ月間国連本部の中で開催され、広島長崎両市の協力のもとに、国連事務局職員で構成されているブッククラブ、それからカメラクラブが主催するという形をとっておりますけれども、実体はもちろん広島長崎両市が材料を提供しておられて、いわば実際の主催者は両市でございます。  こういった催し物を国連本部の中で行います際には、一つのいわば内部規則がございまして、それによりますと、国連自体のいろんな機関でありますとか、あるいは国連の専門機関でありますとか、あるいは国連事務局の職員が開催することが認められて、それ以外の人は認められないということになっておりまして、また、その実際の展示物も、国連事務局の中に設けられております審査委員会にかけられることになっております。  今回の両市の写真展も、その審査委員会にかけられまして、いまお話しのとおり、五点ほどこれは差しかえたらどうかというような意見が出たように承知いたしておりますけれども、最終的には、広島長崎両市が展示しようとしていた展示物が全部結局展示を認められたということで、その展覧会は目下開催中でございます。
  118. 渡部通子

    ○渡部通子君 その差しかえ要求をされたときに、国としては、外務省としてはどういう対応をなすったわけですか。
  119. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 日本政府としましては、こういう催し物を国連本部で開催いたします以上、先ほど申しました規則には従わなければならないという立場でございましたけれども、同時に、こういった写真展を催すこと自体は有意義なことであるというふうに考えまして、私どもも、現地の日本代表部を通じまして、これが円滑に計画どおりに実施されますように、いろいろと事務局との間にあっせん、助言あるいは仲介に入りまして、側面からお手伝いした次第でございます。
  120. 渡部通子

    ○渡部通子君 側面からお手伝いをしたということでございますが、私は、こういったことこそ長崎広島両市の主催という形に任せておかないで、もう少し国として責任を持つべきではなかろうかと思います。  この広島長崎は、平和推進委員会、こういうものを組織して、昨年の八月から、世界五カ国八都市、海外原爆展を催している、こう承知をいたしておりますけれども、こういったことにこそむしろ、特に国連の場で催しをやるときなどは、国がその主催者としてなるべきではなかろうか、それだけの姿勢はとれなかったものかと伺います。
  121. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) あるいはおっしゃるような形でこれを開催し得たかもしれませんけれども、昨年からのいきさつからいたしましても、両市が最も積極的に計画しておられたことでもございますし、両市の発意と申しますか、を尊重した方がいいんではないかというふうに思った次第でございます。
  122. 渡部通子

    ○渡部通子君 そうおっしゃられると言葉はきれいなんですけれども、やはり今度のNGOの一つの国際社会に与えた影響性などにも考えてみましても、もちろん園田外務大臣との間にあれだけの交流もあったし、両者協定できたという、それで初めてあれだけの成果が上がったわけで、むしろ日本政府の対応よりはNGOの対応の方が強烈に世界には響いたと、こういう報道もされております。やはり現場にいる方たちの声というものは最も強いんで、国がそれをバックアップして初めて国際世論にまでぶつけるだけの力になると思うのですね。私は、長崎広島両市を尊重なさったと言えば、それはきれいに聞こえるけれども、むしろ国の姿勢のあいまいさというものを露呈したにすぎないのではなかろうか。いろいろ努力をなすった、仲介をなすったというけれども、それはやはりプロセスの問題でございまして、もっと精神的な意味でも積極的にこれからそういう問題は推進してほしいと思うのです。  常時、広島長崎について国連ではPRをしていないのか、あるいは日本の非核三原則についてどんな国際的にPRをしているのか、文書、写真、あるいは映画等、こういったことで、常時のPRは、被爆国として外務省はどういうことをなさっていらっしゃるのか、伺っておきたいと思います。
  123. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) 常時のPRにつきましては、外務省は世界じゅうにございます在外公館を通じまして、いろいろな形で平素からやっておりますけれども、最近たとえば日本はやはり核兵器を持つことになるんじゃないかというような誤った報道が、幾つかの国で行われておりますやさきでございますので、いままでのPRに対する力の入れ方をもっと強化すべきであるということを私ども目下反省して、いろいろ考えているところでございます。
  124. 渡部通子

    ○渡部通子君 きょうは国連局長さんの御出席でございますので、このケロイドの写真の問題についてだけ私は冒頭に一言伺っておきたいと思いました。ですけれども、情報文化局長さんなんか、きょうはお見えではございませんけれども被爆国の日本としては、常時広島長崎等については強力にPRをしていただくということの方が、むしろ外務省としては力を入れていただきたいことだと思います。やはり被爆の問題というのは、三十三年を過ぎたというけれども、日々新しい問題として、むしろ否、強く訴えなければならない問題として、そういう国際的な状況にあると思うわけです。ですから、私は日本立場としては、外務省が率先してこういった情報、PR活動というものに常時御努力を願いたい。これは国連局長に申し上げても、一面かもしれませんけれども、外務省代表の御出席として、その御答弁をちょうだいして、冒頭の質問として終わらせていただきます。
  125. 大川美雄

    政府委員(大川美雄君) まことにおっしゃるとおりだと思います。原爆の悲惨な問題につきましては、本当にこの日本だけが世界に対していろいろ訴える立場にありますので、その立場から今度の軍縮総会にも臨みました次第でございますし、今回いわゆるNGOの各種民間団体五百余名の方々があちらに渡っていかれましたけれども、その方々とも常時対話を維持して、私ども政府としては、政府考え方はできるだけ御説明申し上げて御理解をいただくように努めますと同時に、ああいった民間団体の方々の御意見なり御要望にはできるだけ耳を傾けるように努力してまいった次第でございますし、今後もそういったようなことで、民間の方々との対話を続けてまいりたいと、こういうふうに思っております。
  126. 渡部通子

    ○渡部通子君 外務省、ありがとうございました。  次に、法案そのものに入らせていただきたいと思いますが、まず制度の基本的なあり方からお伺いをしたいと思います。  先ほどの御質問の中でもございましたけれども、去る三月、現行の原爆医療法社会保障法性格に加えて国家補償性格もあると、こういった意味最高裁判決が出たわけでございます。この最高裁判決にございます、原爆二法は、国家補償性格配慮する、その配慮があると、こう認めている最高裁配慮とはどういうものと受け取っておいででございましょうか。
  127. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) この判決文の中に書いてございますのは、たとえばということで引いてございます「同法が被爆者の収入ないし資産状態のいかんを問わず常に全額公費負担と定めていることなどは、単なる社会保障としては合理的に説明しがたいところであり、右の国家補償的配慮の一端を示すものであると認められる。」、こういうふうに例示として言われておりまして、御承知のように、普通公的医療を行う場合には、資産がある方は、あるいは収入がある方は適当な一部負担というのを徴収することをいたしておりますが、この場合にはそういうことと無関係に全部医療費を見る。こういうやり方をやっておるということなどは、その通常の社会保障の線をさらに超えている形でございまして、こういう点が国家補償的な配慮ということではなかろうかと思います。
  128. 渡部通子

    ○渡部通子君 この被爆者の問題を国家補償としてとらえてほしいという議論は、長年行われてきたところだろうと思いますし、あえて私もここでくどくど言うつもりもないのですけれども最高裁でこういう一歩前進的な判決が出ました以上、厚生省の対応というものも国家補償としてとらえる方向に多少なりとも前進をすると受けとめてよろしいのですか。
  129. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 私ども従来からも、この原爆関係につきまして私どもの行っております施策というのは、私どもの口からよく申し上げておりますのは、普通の社会保障と違う特別の社会保障だという言い方、あるいは社会保障といわゆる国家補償の間のようなものというようなことで私どもも申し上げておったわけでございます。そういう意味から、今回の判決が、そういうことを別の側面から国家補償的な配慮根底にあると、こういうような表現をされておるわけでございまして、そういう意味では大体似たような感覚で私どもも受けとめておったわけでございます。  ただ、この原爆被爆者対策ということは、私どもあくまでも原爆という特殊な放射線を浴びたという、そういう特殊な条件ということを考慮いたしまして、できるだけこういう方々に手厚くいろいろな施策をしたいということでございまして、そういう意味からも私ども今後こういった判決を受けて、さらにこの施策をもっともっと充実さしていくというように考えておるわけでございます。  ただ、いわゆる援護法といいますか、特に遺族の特別給付金を支給するというような御議論をいただいているわけでございますが、これは私どもしばしば申し上げておりますように、ほかの一般戦災者との均衡というような問題もございますので、従来の線をさらに進めていくということで、その辺は非常に大きな問題で、遺族一般戦災者との均衡の問題というのは非常に大きな問題で、これは十分考えなければならない一つの別の問題かと思いますので、そういうふうに私ども現在のと  ころ考えているわけでございます。
  130. 渡部通子

    ○渡部通子君 その一般戦災者との均衡を考えるとむずかしい、こういう御答弁を間々なさいますけれども、やっぱりその議論に執着している間は、被爆問題の本質を理解しているとは言えないのではないか、こう思うわけでございます。ですから、被爆ということは戦争という国家行為が起こした悲惨な事実でございますし、その国家アメリカに対して損害賠償責任まで放棄した以上は、やはり国家責任を持つべきではなかろうか、国家補償としてとらえるというのは筋としては私は当然なように思うわけです。この議論がずっとなされてきたことも承知しておりますから、私のように新しい人間がふいっと言っても、いろいろな経過があったことは承知をしておりますし、それからむずかしいとおっしゃるお気持ちもよくわかりますけれども原爆問題というのは、いま先ほども申し上げましたように、何年たってもこれは月日を重ねるごとに世界の民族にとって大変な重大問題になってきている。ですから、日本の国が唯一の被爆国として、いま国としての姿勢を示す、これが人類のためにも、国際的な立場に立つ意味からも非常に大事なことではなかろうか。そういう見地に立ったときに、これは三十三年前の被爆の問題ではなくして、もうまさに今日的課題です。ですから、日本の国が国としていま思い切った態度を示すということこそ、私は国際的に時代を先取りする大事なリーダーショプになっていくんではないか。そういう観点からも、ぜひ国家補償として、まあいま均衡論だけおっしゃいましたけれども、一歩踏み出せないものか。まあ午前中にも答弁がございましたから、まあそれ以上のものは要求しても無理かもしれませんが、一言御答弁いただきたいと思います。
  131. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) おっしゃるお気持ちは私もよくわかるんでございますが、国家補償という、ずばりそういう面からこの問題をどうしてもとらえなきゃいかぬというよりは、私やっぱり被爆者の現実というものをよくわれわれが踏まえまして、できるだけこの援護救済の道を手厚くしていくという実質論でひとつ生かしていきたいと思いますので、いろいろ長い間国会国家補償の見地からする補償法的性格法律は直すべきだという御議論はございますが、その辺のところはやはり他の戦災者にいたしましても、戦争を引き起こした国家責任という点から見ると同じことでございますし、いろいろその結果起こったそういう被害でございますので、しかしこの原爆という特殊な身体的、精神的な非常に強い障害あるいは被害について特別こういう法律ができておるわけでございますので、とにかく内容でできるだけひとつ努力をさしていただきたいと思うわけでございます。
  132. 渡部通子

    ○渡部通子君 特殊な立場精神的、経済的不安定な立場とおっしゃいますけれども、いまの大臣の御答弁では、一向にその特殊な立場を御理解いただいているとは思えないわけでございます。実態的に手厚くしていただくのは当然なことでございます。ですけれども、むしろそれよりは被爆者というものの不安定な人生というものに対して、国がどういう姿勢で扱うかという、そういう基本的な立場をきちっとしていただくことの方が、よっぽどもう根本的にはうれしいし、それから一般戦災者についても、これは国家行為による戦争によってこうむった被害だとおっしゃいますけれども、やっぱり一般戦災者と被爆者においては、特に子供に対する不安とか遺伝的なものとか、そういったものを含めますと、ずいぶん不安の度合いは違うわけでございまして、だから大臣がいま御答弁、それ以上のものは出ないと思いますけれども、私のこれは意見として、やはり特殊な立場とおっしゃるからには、実体論の上での手厚い保護というだけではなくして、国の姿勢をこの際はっきりしていただく。それを法律の上にきちっと制度化していただくということの方がより大事なことではないかと考えます。  この二法が、社会保障の側面を持っている理由として、第一に原爆医療法による一般疾病医療費支給制度において、社会保険医療が優先させられていること。それから第二に、原爆特別措置法による手当支給に所得制限が付せられていること。この二つの制限を外すという方向は考えられませんか。
  133. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) まず第一点の一般医療に保険優先するという問題でございますが、これはもう先生御承知かと思いますけれども、極端なことを言いまして原爆と全く関係ない、たとえば自動車にぶつかってけがをしたとか、あるいはまあ何でもよろしいですが、そういう無関係の病気あるいはけがというものに対しても、いわゆる本人負担をゼロになるような施策をやっておるわけでございます。そういたしますと、その辺になりますと、いわゆる原爆で厚生大臣認定する疾患ということになりますと、これは学問的にも明らかに原爆が原因である、あるいは原爆が原因でないことが明らかにならないと、こういうものは厚生大臣認定の方で、いわゆる公費優先になっておりますが、そうじゃない疾患につきましてもすべて患者負担分をゼロにしておるわけでございまして、そういう意味から、これは社会保険優先ということになっておるわけでございます。  それから、第二の所得制限の問題でございますが、これも各種手当につきましてやはりある程度の所得制限はあっても、まあ現時点においては一応納得できるようなラインではなかろうかというふうに思っておるわけでございますが、これにつきましては、私ども毎年所得制限の撤廃ということで大蔵省要求もいたしておりまして、現在約九五%がカバーされて、いわゆる所得制限にひっかからない方が九五%になっております。そういう意味合いでは、相当まあ高い水準のところに所得制限のラインが引かれておると、まあこういうことでございますので、これは今後私ども撤廃ということについてさらに努力をしていきたいというふうに考えます。   〔委員長退席、理事片山甚市君着席〕
  134. 渡部通子

    ○渡部通子君 撤廃という方向へ努力したいということでございますから、それは大変結構なことで、九五%にも達しているんなら、いっそのこと撤廃なすってしまった方が、より国家補償的な性格を帯びるという上では一歩前進になるのではないかと思います。  第八十国会の当委員会での附帯決議に、「被爆者の療養と生活の保障をさらに一段と充実するための援護体制を検討すること。」と決議されておりますけれども、それ以後どのような援護体制が検討されたでございましょうか。
  135. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 大分まあ、その内容につきましていろいろ広範にわたるわけでございますが、主なものを申し上げますと、いろんな各種の手当の支給額は、これはもう年々増額しておるわけでございます。それから、手当につきました所得制限でございますが、ただいま申し上げましたように、これも年々何%か、たとえばことしは九五%でございますが、昨年は九三%の所得制限でございました。大体そういうふうにこれも漸次緩和の方向をたどっておるわけでございます。  それから、たとえば健康診断につきまして、これもいろいろ問題があるわけでございますが、これも次第にその検査の範囲を広げるというようなこともやっております。本年度につきましては、いわゆる患者さんが問診をするのに、結局裏返して申しますと、単なる健診だけぽんと受けるんじゃ何となくものさびしいと。もう少し健診をやってくださる先生方とゆっくり話し合いの場ができるような、そういう雰囲気をつくってほしいというような御要望ございまして、そういうことも含めまして、こういった問診表をつくるといったようなこと。あるいは昨年度は原爆の小頭症の方々に対しまして、これは指導費を差し上げておったわけですが、今年からそれを増額し、さらに手当にするというようなことで、その量、質、両方につきまして改善したわけでございます。  そのほか、相談事業に対します国庫補助というものを新たに設けまして、相談員を長崎広島両市に置く、あるいはそのほかの県におきましては、相談員が十分相談できるような講習会をやるというようなことで、十分御相談に応じられるというようなことで、いろいろな面にわたって雑多に申し上げましたけれども、そういうことで、それぞれについていろいろと内容を充実してまいったわけでございます。   〔理事片山甚市君退席、委員長着席〕
  136. 渡部通子

    ○渡部通子君 その後、努力の跡は私もそれなりに評価をしております。そして手厚いお手当というものを今後ともお願いをしたいと思うわけでございますが、社会保障制度審議会の答申を見ますと、制度の基本的なあり方に対して、審議会がたびたび指摘してきたにもかかわらず、何ら前進が見られない、こういうふうに書かれてあります。この社保審の答申に対する御所見を伺っておきたいと思います。
  137. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 制度の基本的あり方というのは、これは制度審議会におきますこの中の御議論は、もう先生御承知かと思いますが、先ほど先生御指摘いただいたと同じように、いわゆる援護法的な考え方で、この法律をもっとしっかり組み立てろと、こういったような御意向もその中にあるわけでございまして、これは先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、内容充実ということで、私どもはこれにおこたえしたいというふうに考えております。
  138. 渡部通子

    ○渡部通子君 医療法について伺いますが、被爆者という定義ですけれども、第二条からでは、被爆者及び胎児ですから、被爆者が結婚して、生まれた子供ですね。あるいは被爆をされた胎児がその後大きくなられて、結婚して生まれた子供、被爆二世というものは、被爆者という範疇にはこの法律では入らないわけでございます。先ほどもその点議論がございました。その人たちにもし原爆によると思われる病気があったり、それが懸念されたりという、こういう実態が生じた場合の対策を伺っておきたいと思います。
  139. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 少なくも現在まで、特に放射線影響研究所において行いました研究におきましては、三十数年たっておるわけでございますが、いままでの研究の中では、やはり被爆二世に関しまして、何ら普通の人と特に変わった死亡の状況にない。あるいは死産とか、そういうことを含めまして、いままでのところ何にも証明されておりません。私どもとしては、さらにこういった二世に対する影響ということの研究に力を入れて進めていくということは当然のことで、今後も推進してまいりたいと思っておるわけでございますが、なかなかいままでも証明されておらないわけでございまして、非常にこれは、あったとしても微細な変化で、なかなか見つけるのも大変なことだと思います。しかし、実際に何らかの変化があり、そしてそれが、その方が通常の生活をなさる上に何か問題を生ずるというような結果を生ずるということになれば、そのときは私どもそれに対して十分な措置を講ずるということを考えております。
  140. 渡部通子

    ○渡部通子君 いま変化があればということでしたけれども、変化までいかないで、懸念を持っている方はかなりいるんです。やっぱり自分が被爆者で、お子さんが学齢期に達したとか、婚期を迎えたとかというころ、その子が将来大丈夫だろうかという懸念を持っている場合というのはかなりあるんです、私の知人の中にも。そういう場合に、被爆者に準じた扱いで健診とか、そういったものを受けることができるのかどうか。いま検討なさると、これは調査研究の一環として行うというような御答弁でございましたが、こういう具体的な問題に対してはどうでございましょうか。
  141. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 現在、国の段階におきましては、被爆二世の方の健診という措置は何もいたしておりません。その理由は、先ほど申し上げたようなわけでございます。これもやはり先ほど申し上げたわけでございますが、二世の方はほっといてほしいと、健診するから来なさいなどということは言ってほしくないと、あるいは二世の健康調査をやるからひとつ調べさしてほしいと、こう言っても、いやだと、こうおっしゃるような方もいらっしゃいますし、一面、いま先生から御指摘いただきましたような、どうも心配だから診てほしいと、こういうふうな声も私ども聞いております。そういう意味で、大変微妙な心理状態の問題がこの中に含まれておりまして、私どももそういう意味で、何と申しますか、この問題を扱う場合に、やはり十分そういった方々の心持ちを生かしたり何かやっていくというのが一番いいんだろうと思います。そういう意味合いで、たとえばいわゆる調査研究の一環として、いわゆる希望者については健診をやると、そういったようなことが何らか方法がないだろうかということで、私ども具体的にいま考えて、何かの方策ができないだろうかというふうに考えておりますのが、私どもの現在の状況でございます。
  142. 渡部通子

    ○渡部通子君 そうしますと、この原爆二法という法律は、あと三十年、四十年ないし長く考えても五十年たてばなくなる法律と、こういうふうに理解をしているわけでございますね。
  143. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 原爆二法というのは、原爆放射能の影響を受けた方を被爆者ということに規定いたしまして、その方々にいろんな対策を講ずるという法律でございますから、観念的ではございますが、その目的が達せられないうちは、この法律は当然働かなければならないと思います。なお、まあ形式論で申しますれば、法律は廃止しない限りは法律として残っておるということだろうと思います。
  144. 渡部通子

    ○渡部通子君 こんな、とんちんかんというか、こういう質問をしたのは、二世の扱いをどうしていただけるかということで私は伺ったわけでございまして、先ほどの微妙な問題があることもよく存じておりますし、それで私も、健康で暮らしている人をほじくり返して、被爆者の二世だからと言って、健診するなどということはむしろ反対でございます。ただ、そういう実態があることも承知をしていただいて、そういう場合にどう扱うかということをこの法の精神にのっとってやっていただきたい、これをお願いしておくわけでございます。
  145. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私は被爆二世の健康面の不安についてはよく理解できますので、予算上のその取り扱いについては、私ども調査研究の一環として取り扱うということを申し上げておりますが、実態的には、自分の不安を解消したいから、ぜひ健康診断をいろいろやってほしいという御希望のある方については、必ず実施したいと思います。で、何らかの措置を来年度の予算編成のときにはとっていきたいと思っております。
  146. 渡部通子

    ○渡部通子君 よろしくお願いをしたいと思います。措置法の中の第五条の二の二キロメートルのことについて若干伺います。  先ほどの議論の中で、二十五レムの話が出てまいりました。これは一九五八年、ICRPの許容線量の二十五レム及び一九七一年の緊急時の事故の際の当該区域立ち入りの許容線量二十五レムによっていると、こういうことで、専門家でない限り、こう科学的に言われますと、そんなものかと。理由として、よりどころとしているのは、こういうことでございますね、二十五レムというのは。それでよろしゅうございますね。じゃ、それはそれとして、そこの二キロという線引きですね、これが二キロという、原爆投下された地点から二キロという、同心円で円をかいたという形で一応は線引きをされていると思うのですけれども、現実の放射線の量というものは、そこに建物があったとか、そんなことによってずいぶん違ってくるのではないかと思います。ですから、二十五レムと一概に決めましても、ずいぶん中がまちまち、違ってくるのではないかと思いますが、そういった意味で、二キロで線引きを一概にするということは、少し乱暴過ぎやしないか、こう思いますが、いかがでございますか。
  147. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 二十五レムの数字につきましては、先生も御承知でございますので省きますが、これは原爆投下された、その原爆が爆発した地点から、いわゆる円錐状に放射能を浴びるわけでございますが、その直線距離で計った被爆量でございまして、そういうことからしますと、建物などがありますと、これより減ることはございましても、ふえることはないわけでございまして、これはいわゆるストレートに受けたという数字でございます。そういう意味で、ストレートに受けたという線量とすれば、この二キロで引いておきますと、ちょうど二キロの線で申し上げますと、広島では四・四レムでございます。それから長崎では十八・三レムでございまして、二キロという線で引きますれば、その輪のもう少し中のところで二十五レムに達しておるわけでございまして、広島では四・四、長崎で十八・三がその二キロのラインになっておりますので、そういう意味ではすべてこの中は二十五レムでカバーできておる、そういうように私ども理解しておるわけでございます。
  148. 渡部通子

    ○渡部通子君 科学技術庁にお伺いいたしますが、周辺被爆線量目標値という言葉がございます。原子力発電所周辺の一般人の放射線被曝線量の新しい目標値だと伺っておりますが、これによりますと、ICRPでは年間五百ミリレムを勧告している。しかし、わが国では年間五ミリレムを目標値としている。この五ミリレムは複数の炉を持つ原子力発電所でも一カ所とみなして、世界で最も厳しいと、こう伺います。そこでお尋ねしますけれども、なぜICRPの百分の一にまで目標値を下げたわけでございますか。
  149. 金平隆弘

    説明員(金平隆弘君) 私、直接炉の関係の担当じゃございませんですけれども、ICRP勧告を担当しておる者としてお答え申し上げますと、ICRPは、平素からALAPとかALARAとかというふうに略称されておりますように、できるだけ線量を低く保つべきであるということを一方で言いながら、また他方で職業人については年間五レム、公衆については五百ミリレム、その十分の一を勧告しておるわけです。そういう二つの原則の調和を図るという意味で、現在の、特に軽水炉の関係考えられる技術を駆使すれば、そういうふうにすれば日本現状ではその百分の一までおろすことが可能であるというふうに原子力委員会の安全審査会では判断して、そういう目安線量を決めておるんだというふうに考えております。
  150. 渡部通子

    ○渡部通子君 厳しいというのは大変結構なことだと思うんです。そこで伺いますが、二十五レムといいますとICRPの勧告五百ミリレムの五十倍になります。それからわが国政府の行政指導の五ミリレムの五千倍という数値になるわけです。ですから、これだけ多量の放射能を原子爆弾被爆者に対しての一つの基準にしているということは、私はちょっと納得がいかない気がするんですが、その点はどうお考えですか。
  151. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) この二キロメートルの範囲というのは、いわゆる保健手当の支給の条件でございます。二キロメートル以内のところで被爆された方に保健手当を差し上げる、こういうことでございます。この保健手当というのはどういう目的かといいますと、現在そういった方々が特に病気という状態になってない、いわゆる現時点において健康な方に差し上げる手当でございまして、これはそういったたくさんの線量の被曝をされた方が、いわゆる健康の保持増進のために特に配慮を払うということをなさってくださいという意味合いでつくってある手当でございます。そういう意味合いで、特に非常にたくさん被曝しておられるから、ふだん健康に気をつけてくださいという意味の手当であるわけでございまして、これをお受けになる方は先ほど申しましたように健康な方でございます。ところが、実際に健康でなくなったらどうなるかといえば、今度は逆にこの保健手当がなくなりまして、そして疾病に対してもちろん医療費の給付も行われますし、それが厚生大臣認定した疾患であるということになりますれば、これは特別手当あるいは医療手当というのが支払われることになりますし、それから厚生大臣認定疾病でない場合におきましても、十の疾病障害の状態にある方に対しましては健康管理手当というものが支給されまして、それについてはこの二キロメートルとは別に、もっと外に大きな一つのエリアを設定してあるわけでございます。そういう意味で、この二キロは特別ということでその保健手当の算定のための根拠になっている、そういう区域でございますので、そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  152. 渡部通子

    ○渡部通子君 それはよくわかります。そういたしますとICRPの五百ミリレムあるいはわが国の五ミリレム、これで爆心地からいまは二十五レムで二キロというこういう円と考えた場合に、五百ミリレムあるいは五ミリレムで考えると、爆心地からどのくらいの距離の円がかけるとお考えですか。
  153. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) ちょっと先生、失礼しました。先生、いま五百とおっしゃいましたか。
  154. 渡部通子

    ○渡部通子君 それはICRPの勧告した五百ミリレムです。
  155. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) ちょっと私どもここでは、いま持っております表では、爆心地からの距離をラドに換算してございます。ガンマ線と中性子線合わせました総線量でラドで換算してございまして、レムと大体考えていただいてよろしかろうと思いますが、地上距離で、地上へ戻しまして、地上の距離を申し上げますと〇・六ラドですから六百ミリラドになると思いますが、これが地上距離で二千三百メートルでございます。これは広島の場合でございます。〇・六が二千三百メートル、〇・三が二千四百メートルでございますから、〇・五というと大体この真ん中ぐらい、間に入ろうかと思います。いまのが広島の例でございます。次に、長崎の例で申しますと、総トータルで〇・五ラドで、地上距離で三千メートルでございます。
  156. 渡部通子

    ○渡部通子君 私が御質問をしたのは、自分で計算してくればいいのですけれどもね、ごくごく単純な数学的な発想で御質問したわけです。いま二十五レムで二キロメートルという円をおかきになっているのですから、これが五百ミリレムあるいは五ミリレムというような、特に五ミリレムというような小さな数になりますと、五百ミリレム、五ミリレムという数になったら、放射能を受けている人までも含むとなったら、想像に絶するような、二キロどころではない大きな円になるはずですと、これを申し上げたかったわけです。これは結構です。これは単純な数学的な意味の御質問をしたわけです。だから、おわかりいただけたかしら。二十五レムの範囲内で考えると、二キロの線ならば、これがもし五百ミリレムあるいは五ミリレムの放射能を受けた人までというものを含めるとしたならば、ずいぶん大きな、二キロどころではない円になるでしょうということをちょっと申し上げてみたかったわけです。ですから、私の言わんとしていることは、この二十五レムで二キロという線引きというものを、もう少し幅を持たせていただいてもいいんじゃないか、これを申し上げたいためにこういうとてつもない計算を試算を申し上げたわけでございまして、言わんとしていることはそれなんです。こんな計算なんかどっちでもいいんですけれども。だから、厚生省のお出しになった資料の中でも、四キロのところですでに脱毛の人などがいるということも報告されているわけでございますから、先ほど片山先生の御質問にもあって重なりますから、答弁は結構でございますけれども、私どもの要求としてはもう少し二キロという線引きを大きくお考えいただきたい。そして保健手当というものを出していただいて結構ではなかろうか、こう主張したいところでございます。  特別手当、健康管理手当それから保健手当、こういう認定状況はここ十年間でどういう推移をたどっておりましょうか。
  157. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 特別手当につきまして昭和四十三年が千二百八十六名、五十二年では三千五百六十七名でございます。それから健康管理手当につきましては昭和四十三年が九千五百十六名、五十二年が十一万九千八百七十四名でございます。
  158. 渡部通子

    ○渡部通子君 その受給認定者が増加の一途をたどっております理由は、どういうふうにお考えでございますか。
  159. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) まず第一に、ただいま申し上げました数字で、健康管理手当につきましては特に九千名から十一万九千という非常にふえておるわけでございますが、一つの理由は、以前は年齢制限をしておったわけでございます。それが年々、その年齢制限を四十六年以降四十六、四十七、四十八、四十九ということで、四十六年以前六十五歳であったのを、四十六年から六十歳に引き下げた。年々五年づつ引き下げまして四十九年には四十五歳まで、それから五十年には年齢制限を撤廃いたしました。そういうことがございましたので、適用者の範囲がずっとふえたということがございます。  それから、障害の範囲。健康管理手当というのは現在十の疾患、本年度の予算で五十三年度においては十一に広げることになっておりますが、昔、昭和四十三年は七つの疾病でございました。それが四十四年に一疾病追加、四十九年に二疾病追加ということで、この健康管理手当を支給される条件の疾病の方もいろんな疾病をふやしてきたということがございます。  それから、もう一つのファクターは、さっき申し上げましたように所得制限が次第に年々緩和になっております。昭和四十八年は八〇%でございましたが、先ほど申しましたように現在九五%まで来ておる。こういった所得制限がどんどん緩和いたしてまいりますと、もらえる方がふえるということがございます。  それからもう一つ、これは医学的な条件といたしまして、被爆者は当然固定された方々でございますので、だんだん年をおとりになってまいりますと、それに伴って病気をお持ちになる方が多くなるわけでございます。そういった意味で、それぞれが重なり合いましてこの支給の人数が非常にふえてきておる、こういう状況でございます。
  160. 渡部通子

    ○渡部通子君 いまの御説明よくわかりましたが、これからもふえるというお見通しでございますか。  それから、潜在被爆者といいましょうか、いろんな所得制限がとれたりあるいは疾病の範囲が広がったりということで拾われてくるというのを、潜在被爆者と言えばそうなっちゃうかもしれませんが、そういう方がかなりいるとお思いでございますか。
  161. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 一つに、潜在被爆者、ちょっと私、あるいは誤解しておるかと思いますが、少なくも年齢が、どんどんどんどん老齢化してまいりますと、いままで病気のなかった方がまた病気になってくるということがございますので、そういう意味では、その面でふえるということは当然あることではないかと思っております。
  162. 渡部通子

    ○渡部通子君 そういうのをなるべくこの現行法でできるだけカバーをしていただきたい。これは実態を手厚くすることということの大臣の御決意にもつながりますけれども、ぜひよろしくお願いをしたいと思います。  今度は、施設の整備の問題でございますけれども原爆病院の整備、運営体制、こういったものではかなりの前進があるというふうに私も承知をいたしております。しかし、日本赤十字社広島長崎原爆病院の設備整備、本年度予算は昨年と同じ一千二百万円と聞いておりますが、また助成金にいたしましても昨年と同じ二千六百万円、国家予算あるいは厚生省予算も二〇%近く伸びているという、こういう折から考えてみますと、多少、財政助成に配慮が足らないんではないかと思いますが、いかがでございますか。
  163. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) この病院の経営という問題がなかなか微妙な問題でございまして、一つは、つい先日、ちょっと日付忘れちゃったので恐縮でございますが、診療報酬の改定がございました。これ診療報酬改定いたしますと病院の経営というのは従来よりここでぐんとよくなって、そして本年度は相当楽になるであろうということが現在の段階でも見込まれておるわけでございます。そういったやはり診療報酬の改定ということがあったということを私ども承知しておりましたので、十分この補助金でやっていけるのではないかというふうに考えたわけでございます。
  164. 渡部通子

    ○渡部通子君 それわかりますけれども、それの裏づけをぜひ知らせていただきたいと思うわけですね、無理だとおっしゃるかもしれないけれど。診療報酬が上がれば病院経営にそれが必ず反映されて楽になる、また逆にいろんな値上げ等も絡んでおりますから、一概にそう言えるかどうかということは、ひとつ裏づけの数字を大まかで結構でございますから、いま間に合わなければ後ほどでも結構です。病院経営というものが診療報酬でどの程度楽になるかという点については御説明をいただきたいと思います。
  165. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 非常に単純に申し上げて失礼なんでございますが、少なくも、ある時点において診療報酬の引き上げが行われますと、当然全く同じ診療行為を行っているとすれば、そのときの診療報酬の引き上げ率だけその病院の入るお金は、たとえば一割なら一割診療報酬の引き上げがございますと、一割だけ大体病院の収入が上がるということで、いわゆる点数表の改正が行われますと支出と無関係に収入だけが上がるという形になりますので、それがまるまる収入になるのではないかというふうに私ども考えております。
  166. 渡部通子

    ○渡部通子君 その点、私も反論の数字を持っておりませんので、後ほど、また後の機会に伺いたいと思います。  これも言い古された議論かもしれませんが、原爆病院の国営論ですね。これ、いま国営にしろなどとは言いませんけれども、この日赤にお任せしておいた方がいいという国の姿勢であるようでございますが、先ほどから私が一貫して申し上げているように、原爆というものに対する国の姿勢、これを考えるならば、国営にするというのが当然ではなかろうかと思います。これに対して前向きの答弁は出ないと思いますけれども、国営という問題について現時点でどういうお考えをお持ちかどうか、またそれが行われない場合に、赤十字社に対してどういう姿勢で臨まれるのかを伺っておきたいと思います。
  167. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) もう先生御承知のように、広島市あるいは長崎市でずっと戦後経過いたしておりまして、それぞれの病院がやっぱりそれぞれの歴史の中でこの原爆問題等取り扱ってこられたわけでございます。そういう意味からいたしますと、やはりその日赤は日赤なりのいい点も持っておりますし過去の歴史もございます。そういうことから、私ども現在国立病院にこれを変えるとか、あるいは国立病院を新たにつくるという考え方は持っておらないわけでございます。  なお、これらの二つの病院が当然のことながらこの原爆という特別の対策を行っておるわけでございますので、そういうことは当然私ども勘案しながら、これらの病院に対しましていろいろな補助を行っていくということはさらに続けていきたいと思っております。
  168. 渡部通子

    ○渡部通子君 やはり、これは資料を作成するということでも、この病院は大変なお金のかかる一つの対象を扱っている病院になると思うわけですね。だから、原爆などということが二度と世界にあってはならないし、日本が初めてで終わりと、こうしなきゃならないわけですから、日赤の病院にあって被爆資料の作成というのにもうんと力を入れていただきたいと思うわけです。そういった意味で、単に病院の経営とか治療とかという立場だけではなくして、手厚い姿勢で臨んでいただきたい、これをお願いをしておきたいと思います。  最後に、もう一点在外被爆者の取り扱いについて伺います。  諸外国にいる被爆者を初め原子爆弾の障害作用の影響を受けた人は何人ぐらいと把握をされていらっしゃるんでしょうか。
  169. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 正確に申しまして、私ども数字は持っておりません。ただ、アメリカにおきまして被爆者が約千人ぐらいいるということは、アメリカ被爆者協会の方から話は伺っております。  なお、韓国につきましては、これも私ども直接調べたわけでもございませんが、約二万名ぐらいいるのではないかということを、現地の被爆者団体の方の言っておられる数字をそのように承っております。ただ、その中でどれだけ健康を害している人があるかということについては、これは私ども全然存じておりません。
  170. 渡部通子

    ○渡部通子君 この間、長崎造船大の鎌田教授という学者さんから初の推計というものが出て、多少なりとも外国人被爆者の数が活字の上に載ってきたような段階です。やはり、この法律社会保障国家補償の中間に位置する、こう言いますけれども社会保障の色彩が多分に強いわけです。したがって、その線に沿いますと、日本に住居を構えない限りはこの法律の恩典には浴せないということでございますね。
  171. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) この間の裁判の判決を受けまして、住居を有するじゃございませんで、日本に現在すると、こういうことで当然被爆者手帳交付を受けられる条件にある方には被爆者手帳交付しておるわけでございます。
  172. 渡部通子

    ○渡部通子君 それじゃ、密入国であっても何でも、ともかく何らかの手段を用いて日本国に入国すれば、それで手帳が受けられると、まあこれ言い過ぎかもしれませんけれども、ともかく日本の国へ来ればいいわけですね。そうすると手帳が受けられるということだと思います。しかし、原爆によって健康を害していると思われる諸外国にいる人たちに対して何らかの方法、手を差し伸べるということはお考えにはならないわけですか。
  173. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) これは国と国との間の問題でございまして、大変私どもむずかしい問題ではないかと思っております。と申しますのは、われわれがよその国に対して、こういうことをやりますよと、こういうふうに勝手に言うことは、やはり国と国は相互に独立しておるわけでございますので、なかなかむずかしい微妙な点が含まれておると思います。ただ、私どもといたしましては、向こうにおられる方に希望があり、そして二つの国の間できちんと話し合いができて、やってもらいたい、やりましょうと、こういうふうな状況になれば、私どもそういうふうな方々に対して何らかの手段を講ずるということは十分考えていきたいというふうに考えております。ただ、前提といたしまして、そういった国と国がちゃんと話し合いができまして、こういうことをわが国に来てやってもいいとか、あるいはやってくれと、こういうことがはっきりいたしますれば、その時点においては私どもはいろんなことが考えられると思います。
  174. 渡部通子

    ○渡部通子君 質問は以上で終わりますけれども、私時間の間じゅう一貫して申し上げてまいりましたことは、日本国が唯一の被爆国として世界に対しても、被爆者に対してこういう人種の分け隔てもなく、国境の分け隔てもなく、被爆ということに対しては国が毅然たる姿勢を保てと、これが私の主張したい根本的な点でございました。大臣を初めとして、この法律の上でお手当をふやしてなるべく手厚い保護をしてくださろうと、この財政の困難な中で努力をしてくだすっている跡はうかがえるわけでございますけれども、それはもう当然のこととして、どうか、世界の国から見ても、日本の国は原爆ということに対しては、軍事的な意味だけではなくて人間を守る、人の命を守るという立場日本の国は毅然たる態度をとっているなということが、細かい施策の中から外国人たちにでも伝わっていくような、そういう姿勢をとるのが私は厚生省としてのお立場ではなかろうかと思うし、それがいま人類にとって一番大事なことであると思うので、つたない質問の中からですけれども、それを強力に主張したかったことでございます。  最後に、厚生大臣の御所感だけを伺って終わらせていただきます。
  175. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) まさに、世界で初めての被爆国並びに被爆国民でございますから、おっしゃるような精神で私どもはこの原爆問題には対処しなけりゃならぬと考えます。この前の軍縮総会で園田外務大臣がわざわざ広島の市長、長崎の市長等を演説の中で紹介しながら、被爆実態を訴えましたのも、その政府としての姿勢のあらわれと御理解をいただきたいわけでございます。私どもは今後広島長崎被爆者に対する対策についても、おっしゃるような気持ちで十分対処していきたいと、かように考えます。
  176. 渡部通子

    ○渡部通子君 終わります。
  177. 神谷信之助

    神谷信之助君 時間が限られておりますから、簡明にひとつお答えをいただきたいと思うんです。  まず、大臣にお伺いしますが、先ほどから大分議論になっておりますが、最高裁判決では、被爆者対策について国の戦争責任あるいは国家補償性格という点を非常に強調しておるわけでありますが、端的に言ってこの判決をどう受けとめておられるか、まずお伺いしたいと思います。
  178. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 率直に言いまして、従来厚生省の、私着任しましてからいろいろ事務当局からも聞きましたり国会答弁を読んだりいたしておりますと、社会保障立法国家補償の中間だとか、原爆被爆者の特殊性にかんがみ、特にこういう何をつくりましたというようなことになっておったんですが、まさにやっぱり最高裁だなと思いましたのは、この二法の性格を非常によく端的に解析をしてくださったと思っておりまして、根底国家補償的な配慮を否定できないほど、根底には国家補償的な配慮のある社会保障立法だと、こう定義していただいたものと受け取っておるわけでございます。
  179. 神谷信之助

    神谷信之助君 被爆者対策について、従来厚生省の答弁というのは、社会保障国家補償の中間というよりは、逆に国家補償対象としてはなり得ない、あるいはなじみ得ないといいますか、そういう見解の方が露骨であって、しかも、地方裁判所最高裁と同じような判決が出ましても、そういう点では最高裁でなければ拘束力が弱いというような態度を従来とってこられたんじゃないかというように思うんです。その点今度の最高裁判決は、地裁のそういう判決を受けて、さらに遠慮がちながら国家補償の面というのを私は強調しているというように思うんです。したがって、いままでそういう厚生省のとってきた態度が態度ですから、被爆者の方の要求と比べてみますと、非常にというか、かなり隔てたものになっている。したがって、われわれ共産党を含めて野党の側が援護法法案を作成をし提案をせざるを得ない、そういう状況になってきたと思うんです。いまここで最高裁判決も出たことですから、ひとつ思い切った被爆者に対する援護を強化をするということが必要ではないだろうかというように思うんですね。  いま大臣もおっしゃっていましたが、今日軍縮の特別総会が開かれまして、五月三十日には園田外相が演説をする、あるいは国民の代表団が五百名を超えて参加をして、原爆展の開催やあるいは集会、デモ、いろんな多面な行動を展開をして、そして核兵器の禁止とともに被爆者援護の声、これがいま国際的にも広がりを強めてきているというときでありますから、一層この点強化をしてもらう必要があるんじゃないかというように思うんです。したがって、もう一度重ねてお伺いいたしますが、この国家補償精神に沿って、来年度はこの二法の内容について再検討してもらって、そうして一層の援護の充実を期してもらう、そういう必要があるんじゃないかというように思いますが、まず総括的にこの点について具体的にお尋ねしたいと思うんです。
  180. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 援護の充実を期してまいることは、私はもう先ほど片山委員あるいは他の委員の御質問に答えたわけでございますが、ただ、先生がおっしゃる国家補償の見地に立ってと言われますと……
  181. 神谷信之助

  182. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) ちょっとそのまま、そのとおりでございますとは申し上げられない。この二法の特殊性というものは、私は最高裁判決をいただいて、いみじくも実によくこの性格をあらわしているんじゃないかなというふうに思ったわけでございますが、従来の観念からする社会保障立法ではない、さりとて国家補償精神に基づく国家補償立法ではない、そこがこの特殊性でございますから、国家補償という従来の概念だけで、むしろ実質的に内容で十分その配慮をしつつ内容改善をやると、こういうふうに考えていただきたいと思うわけであります。
  183. 神谷信之助

    神谷信之助君 私がいま申し上げましたのは、先般の衆議院の社労委員会の決議の前文ですよ。国家補償精神に沿って、そして二法について再検討すると、充実を期するという趣旨が前文にあるでしょう。まあ、いずれにしても、この内容の充実を思い切ってやる必要があるという点はお認めいただいたようでありますから、具体的にひとつ内容について質問に入れていきたいと思うんです。  健康管理手当の問題ですが、先ほども答弁になっておりましたが、四十三年度九千五百十六人が、五十二年度ではもう十一万を超えるというように、年々これは増加をしてきています。そこでお尋ねしたいのは、この健康管理手当の受給者のうちで、症状が回復をしたということで手当を打ち切られたという方はほとんどないと思うんですが、あるとしたらどのぐらいか、お答えいただきたいと思います。
  184. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) ちょっと私ども、全体の数字をつかんでおらないんでございますが、少なくと五十二年度におきまして、症状が回復したために健康管理手当の支給を停止した方は、広島県・市、長崎県・市、この四つの地域におきまして三十七名というふうに把握いたしております。なお、広島県・市、長崎県・市におきますところの支給人員というのは、ちょっとはっきりとらえておらないわけでございますが、先ほど申し上げました全体約十二万のうちのほぼ半分がこの広島長崎でございますので、六万ぐらいだろうと思いますが、その中で三十七人でございます。
  185. 神谷信之助

    神谷信之助君 ですから、きわめて少ないのが事実だというように思うんです。ところが、実際には健康管理手当についてですが、一年ごととか三年ごとで更新の手続、これをやらなきゃなりません。実際にこうやって何といいますか、症状回復をして支給を打ち切るという者がきわめて少ない。ほとんどないという状態に等しいわけですから、この点ひとつ再申請の期間実態に合わせて延長する必要があるんじゃないだろうか。たとえば、一年を三年ないし五年に、三年を五年ないし八年にというように延長するというお考えはないかどうか、お伺いしたいと思います。
  186. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) この健康管理手当の支給でございますが、これはもう御承知のとおり、特定の疾病の状態にある者に支給すると、こうなっておりますので、原理的にはそういった疾病の状態にあるということが前提で支給しておるわけでございます。そういう意味合いからいたしまして、疾病の種類ごとに、一年の疾病もございますし、三年の疾病もございますが、疾病ごとに決めて、その時点においてその状態にあるかないかということを確認している。これはさっき申し上げましたように、やはりそういった疾病の状態にあるかないかという確認なしにはできないというたてまえでございます。現実にこれを定めた時点におきましては、私どもの方にございます審議会の原爆医療審議会などの専門家の方々によくお伺いいたしまして、こういった病気は大体どのくらい続くものだろうかというようなことで、そういった方々の御意見を承って、これ一年、三年という期限を必要な期限というふうに決めたわけでございます。そういうことから、いま先生御指摘ございましたように、あるいはまた私どももこういった数字もございますので、私どもさらにその問題をどうするかということについて、もう一度審議会の専門家等の御意見を聞きまして、もう一度検討さしていただきたいと思います。
  187. 神谷信之助

    神谷信之助君 具体例を申し上げますが、たとえば慢性の肝臓障害ですね、これは現実には症状が治るというよりも、むしろ年をとるにつれて悪化をする方がずっと多いわけですね。ところが、これは更新は一年で手続しなければならぬと。ところが、同じ慢性の肝障害で認定患者の場合は、特別手当の更新は三年の切りかえですよね。同じ疾病で片一方は一年ごと更新、片一方は三年ごと更新、これも一つの矛盾ではないかと思うんです。  それから、もう一例申し上げますと、三年ごと切りかえの場合でも、たとえば運動機能障害ですね、この中の骨の変形、これなんかはほとんど治るというのはむずかしい、ほとんどないと言われているわけですが、しかも被爆者の年齢は高齢化する一方で、六十歳以上の人が約三五%、平均五十四歳という状況です。したがって病気は重くなり、またふえていく傾向にあると。これが三年ごとの切りかえをせなきゃならぬと、こういうことになります。  そこで、その切りかえの問題ですが、具体的にたとえば診断書の料金についてお尋ねしたいと思うんですが、この診断書の料金が医療機関によって本人負担が五千円の場合もあれば、二千円の場合もあるというような状況ですが、そういった点についての実態あるいはそれらの内容については御調査なさっておるでしょうか。
  188. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) これに伴います診断書料につきましては、これは私ども申請のときの診断書でございまして、それが各医療機関において、いわば自由料金という形で病院が患者から受け取っておると思いますので、私どもその実態についてはいまのところ把握いたしておりません。
  189. 神谷信之助

    神谷信之助君 実態は、大体診断書を書いてもらうということになりますと、症状のデータの整理をしなきゃいかぬ、そういう技術的にも時間的にも相当時間を食うということで、実費は約二万円ぐらいだという話を言われている。実際にはしかし本人負担も要りますし、それから医師によっては持ち出しだと、あるいは指定医療機関でも診断書をつくってもらうという点については、そういう点からもあって出し渋るという状況もあるわけですよ。ですから、これはいま言いました健康管理手当の更新手続を、そういう意味からも更新の期間というのを延ばしていただくということが必要でないかと思います。先ほど審議会にかけてひとつ検討したいということでございますが、ひとつこの点、実際の姿、実態に合わない面もありますし、食い違いもありますから、これらを含めて一年は三年ないし五年にするとか、三年は五年ないし八年にするとかいうような点をひとつ御検討いただくということをもう一遍確認をしておきたいというように思います。
  190. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 先ほど先生御指摘いただきました肝臓疾患については、健康管理手当の方は一年で、認定疾病の方は三年はおかしいじゃないかと、こういうふうなお話がございましたが、これも私ども検討の段階では認定疾病の方になられた方は、いわゆる普通の健康管理手当を受けられる方よりも平均的に言って重い方が多いということから三年ということで、こちらと変えておるわけでございます。一般的に申しまして、いま先生がおっしゃられたような問題につきまして、私どもさらに専門家と十分検討したいと思います。
  191. 神谷信之助

    神谷信之助君 じゃその次に、葬祭料の問題についてお伺いしたいと思います。  特別措置法が四十三年につくられまして、四十四年から葬祭料が支給されておりますが、原爆投下をされました二十年の八月、直接死亡された人、それからそれ以降死亡された人、すなわち二十年から四十三年までの間に死亡した人、これらにさかのぼって葬祭料を支給すべきであるというように思いますが、この点についてのお考えをまずお聞きしたいと思います。
  192. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 現在のところ、葬祭料をさかのぼるという考え方は持っておりません。
  193. 神谷信之助

    神谷信之助君 昨年の四月の衆議院の社労委員会で、共産党革新議員団の田中議員の質問に答えて、当時の渡辺大臣も、これは社会保障制度でございまして、やはり国家補償制度でないから、新しい制度ができた時点から支払うというのが慣例であるということで、中間どころか社会保障制度だからだめだという答弁になっています。しかし、先ほども申し上げましたように最高裁判決が出ておりますし、この点では小沢大臣も具体的には実態の面では積極的に配慮をしていきたいと、国家補償的な配慮をもっと強めていきたいという御答弁もあるわけですが、この点で、私は二十年までさかのぼってやれないとすれば、少なくとも当面医療法ができた三十二年から四十三年、この間について亡くなられた方に対する支給というのは考えることができないものかどうか、この点について重ねてお聞きしたいと思います。
  194. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 実は、この葬祭料のお支払いする理由でございますが、この葬祭料は現在被爆しておられる方が特別の状態にあると、そういう方々に何といいますか、精神的な安定感を持っていただけるようにという意味合いで、この葬祭料というのは設定されておるわけでございまして、いわば何といいますか、過去にさかのぼるという意味合いではなくて、いまの病気しておられる方が御心配になっておられる、そういう精神的負担をできるだけ軽くしようと、こういう意味合いでございますので、ちょっとそういう意味ではこの趣旨が前大臣もあるいはそういう発言あったかと思われますが、そういったいまいらっしゃる方の不安を除くという社会保障的な意味合いのものでございますので、いまのところそういった考え方でこの支給を行っているというのが実態でございます。
  195. 神谷信之助

    神谷信之助君 いまの御答弁ですと、恐らく三十二年から四十三年の間の被爆者の方で亡くなった方の実態調査はなさっておられないし、どのぐらいの人数がおられるかということも当然おわかりじゃないということでしょうね。
  196. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 過去に亡くなられた方の数字、いま先生おっしゃられたそういう時点の数は把握いたしておりません。
  197. 神谷信之助

    神谷信之助君 私はいまの答弁、大変重大だと思うんですよ。四十六年の三月の第六十五国会、衆参の社労委員会附帯決議がなされています。「弔慰をこめて、葬祭料の全額を大幅に増額するとともに、過去の死没者にも遡及して支給するよう検討すること。」これが附帯決議です。衆参です。この決議は五十二年まで毎回衆参の社労委員会で同様事項が決議されています。決議をされたらその附帯決議に対して当該の厚生大臣は、趣旨を体して善処いたしますと、そういう答弁をしています。歴年こういうことが決議をされながら、調査もしないし検討もしない。これは国会の決議の無視じゃないですか、軽視じゃないですか、あるいは無視じゃないですか、どういうことですか。
  198. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) たしか大分以前に、そういう決議があったことは承知いたしておりますが、最近はいまおっしゃいましたようなことを、葬祭料のさかのぼった支給という考え方でなくて、亡くなられた方に対して弔意を表する意味において何らかの措置を検討をするということに、特に御議論はなっておると思います。たしか五十二年のときは葬祭料を大幅に増額と、それから過去の死亡者にも適用したらどうだという御決議があったわけでございますが、私——失礼しました、大分先と言いましたが、最近の御議論が頭の中にたくさんあるものですから、ついそう申し上げたんですけれども、やはり私ども、葬祭料の本質から見ますと、先ほど局長が申し上げましたように、ちょっとさかのぼってということは、これは適当ではないんじゃないかと。ただ、亡くなられた方に対する弔意をあらわす具体的な方法をどうしたらいいかということは、御趣旨にも、附帯決議にも今年度ございますので、今後ひとつ検討をいたしたいと、こう思っているわけでございます。
  199. 神谷信之助

    神谷信之助君 ここには、これは参議院の社会労働委員会調査室がつくってくれた参考資料ですよ、その中に歴年の附帯決議内容が全部あります。四十六年以来五十二年の、参議院で言えば五十二年の五月二十四日、参議院の社会労働委員会で決議をいたしました。その十一項には——四十六年のときは「弔慰をこめて」というのがありましたけれども、十一項で「葬祭料を大幅に増額するとともに、過去の死亡者にも遡及して支給することを検討すること。」、同じ内容が七年間続いて決議されている。自民党を含めて全会一致でこれは決めた決議です。各党が一致をして、これ四十六年から五十二年ですから七年間毎年決議、衆参両院で、社労の両委員会で。調査もしなければ、そしていまのような社会保障的な問題だから過去に遡及するのはおかしいとおっしゃっているけども国会の意思はそういう政府側の意思を乗り越えて過去に遡及して支給せよと決めているんです。それじゃ国会の意思を無視してやるというわけですか。去年——特定の年だけができて、それがもうなくなったとかどうとかいうんじゃないんですよ。ずっと同じ文章でこれ決議されている。私は、この点ひとつ認識を新たにしてもらって、しかも最高裁判決でありますように、ずばり国家補償立場を明示をしていませんが、根底にそれがあるということを明らかにしているわけですから、そういう点も考慮に入れて、そういう点で早急に検討して、そして来年度予算の編成にはそのことが具体化できるような措置をひとつ検討してもらいたいというように思うんですが、いかがでしょうか。
  200. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 決して無視を——まあ、結果的には実現しないんだから、それは無視だと言われてもやむを得ませんが、私ども精神といいますか、態度といいますか、そういうものは国会の決議を無視しているわけじゃないんで、十分検討しろと、こういうあれでございますから、いろいろ検討をいたしまして、どうも葬祭料の性格上、これをさかのぼるということはなかなかできぬなあと。しかし、過去の死亡者に対して何らか弔意をあらわす方法を検討しなければならぬなあというような気持ちで、ただ、いろいろその具体的な措置については、他のいろいろな均衡等も考えなきゃいけません、政府がやる場合には。そういうような意味でなお検討をしていると。調査もしないじゃないかとおっしゃいますが、調査をやる以上は、調査をしたらある一定の目的でやっぱりやらなければいかぬもんですから、その基本方針が決まらないうちは、ちょっと調査をするということもいかがかと思いますので、そういう点で、決して粗略にいたしているわけじゃございませんので、なお十分検討さしていただきたいと思います。
  201. 神谷信之助

    神谷信之助君 基本方針が決まらなければ調査をするわけにもいかぬというようにおっしゃるんですけれども、しかし、具体的に検討するとなればやっぱり調査をして、そしてそれがわれわれは二十年、原爆投下の日にさかのぼって遡及しなさいと言うんですけれども、これはなかなか大変なことでしょう。少なくとも、三十二年に法ができて、そして葬祭料が出るのが四十四年からですから、その間の調査ぐらいはできるだろう。現実の実態がどうなのか。そして、戦争を引き起こし、そしてあの原爆投下というものをつくり出した、そういう戦争責任、これらとかみ合わせて、政府としては被爆者に対してどういう態度をとるべきかというのをやっぱり総合的に検討してもらう必要がある。すなわち、もちろんおっしゃるように、すべての戦争犠牲者、これとの関連もあります。すべての戦争犠牲者に対しても私は政府戦争責任を明らかにすべきだというように思います。しかし、そのことも必要であると同時に、いまこの被爆者問題というのは国際的にも大きな問題になってきているわけですから、ひとつうやむやにしないで、しかも前向きで検討してもらうようにひとつ要請をしておきたいと思うんです。  あともう時間がありませんからもう一つの問題ですが、次は遺族年金の問題です。  最高裁判決文の中にもありますように、先ほども引用されておりましたが、「原子爆弾被爆による健康上の障害がかつて例をみない特異かつ深刻なものであることと並んで、かかる障害が遡れば戦争という国の行為によってもたらされたものであり、しかも、被爆者の多くが今なお生活一般戦争被害者よりも不安定な状態に置かれているという事実を見逃すことはできない。」と、こういうように指摘をしています。この点は五十年に行われました被爆者実態調査からも明らかだと思いますが、そういう意味からも、この被爆者の家族が生活的にも精神的にも大変な負担を負ってきておられるということは御理解いただけると思います。したがって、こういう遺族の方々に私どもは年金を支給すべきだというように考えるわけです。被団協もこの点を声明の中で、遺族年金の給付を行うことなくして国家補償に基づく援護法とはなり得ないものであるというように指摘をしております。この点について厚生省の御見解を聞きたいというように思います。
  202. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) まさにその点が、この法案性格論争のポイントになるだろうと思うんでございまして、私どもは、どうもおっしゃるような御説にまで踏み切るだけ、まだこの二法案性格をそこまで国家補償のいわゆる戦没者の遺族に対する問題、あるいは軍人軍族に対する援護法の問題と同じようにはちょっと見切れない点がございますので、いろいろ検討はいたしておりますが、また続けなきゃいかぬと思いますけれども、そこまでの判決法案性格を規定をし、あるいはまたそうあるべきだという判断を示されたものとは実は考えていないのでございます。この辺のところが一番皆さん方の御主張と分かれるところじゃないかと、具体的な援護措置考えてみた場合に、国家補償としての援護法にするかしないかの、そこが非常に大きな分かれ道になるんじゃないかと思いますが、そこまで踏み切らなければ、何らかのそうした遺族に対する具体的な措置ができないものかどうかという点も含めて、なお私どもは慎重にひとつ検討さしていただきたいんです。
  203. 神谷信之助

    神谷信之助君 恩給とかそういう関係の、国家権力によって戦争に駆り出された方々に対する遺族年金とか、そういう制度、これとは一律にいかないというようにおっしゃるわけですけれども、しかし、私はそういう議論政府自身が戦争責任について痛切にこれを認識をしてはいないところに根本問題があるというように思うんです。まさに国家総動員法によって戦争にすべての国民が駆り出され協力させられた。その戦争に反対をする者は、皆つかまえられて監獄に放り込まれ、殺された。そうしてその中で、原子爆弾投下をされ、そうしていまに至るまで苦しみの中で暮らしを立てなければならない。この国家責任といいますか、戦争責任について、自民党政府自身が痛切に自覚をしていないところに、そういう段階をつけ、そうしてできるだけ対象者を少なくしようという、そういう態度が根本にあるというように思うんです。しかし、もう時間がありませんから、この点についての議論はいたしませんが、私はせめて原爆症と明確に認定をされている認定患者、これに対してとりあえず緊急にその遺族に対し年金を支給するという措置からでも、きわめて段階的でありますが、そういう措置からでも一歩この点踏み出すというところに、ひとつ厚生大臣立ってもらって、来年度予算に向けてがんばってもらいたいというように思うんですが、いかがでしょうか。
  204. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) どうもこの点につきましては、私は余り勇気がございません。なお、慎重に検討してまいります。
  205. 神谷信之助

    神谷信之助君 じゃ終わります。
  206. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、原爆被爆者対策につきまして、本会議以降、本委員会で四回にわたってこれを取り上げてまいりました。特に、昭和五十年七月一日の社会労働委員会では、昭和三十八年十二月七日の東京地裁判決を中心にいたしまして、原爆国際法で禁止されている毒ガス、生物化学兵器以上の無差別大量殺戮兵器であって、その熱線と爆風によって大量の生命と財産が奪われたのみならず、戦後三十年を経過した今日においても、その放射能によって多くの人々が肉体的、精神的、社会的、生活的、いわば四重苦を受けている、そういう実情を引きながら、国家補償のたてまえを貫くように強く求めました。しかし、これに対して当時の田中正己厚生大臣は、「皆さんが御提出になっている法律」いわゆる、原爆援護法でございます、「については一体何で政府としては同調ができないかということになりますると、施策の内容について、われわれとしては、第一には、やはりいろいろ議論がございますが、他の戦争犠牲者とのバランスの問題、」「第二は、やはりこうした政策内容を実施する場合においての財政上の考慮も払わないとは、率直に言うて申さなければならないと思うのでありまして、要は、バランス論と財政論等々といったようなところに大きな論拠があるというふうに考えております。」こう答えておられます。すなわち、この当時の答弁は、一般戦災者とのバランス論、社会保障の枠内論、財政論から抜け出るものではなかったわけでございます。しかし、さきに他の委員からも指摘されておりますように、三月三十日の最高裁は、孫振斗氏の被爆者健康手帳交付申請却下処分取り消し事件に関する福岡県知事の上告というものについて、これを棄却いたしまして、社会保障法として他の公的医療給付立法と同様の性格を持つものであるが、実質的には国家補償的配慮制度根底にあることは否定することができない。こういう見解を示されております。  そこで、こういうふうに再確認してよろしゅうございますか。これについていままでの質問に対して、局長は、原爆二法は国家補償的配慮根底に置いた社会保障法であると、こういう見解答弁されました。大臣は、国家補償的配慮が必要であるとの最高裁判決を踏まえて、今後一層その充実に努めたい。こう答弁されております。そのとおりで再確認してよろしゅうございますね。
  207. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私がもし言葉国家補償的配慮が必要であると申し上げたら、ちょっと訂正をさしていただきたいと思います。  判決にはそう書いてないんです。根底国家補償的配慮があることは否定できないと、こういうふうに御指摘でございますので、そういう意味においてさらに一歩進んだこの両法に対する内容改善を今後も努力していきたいと、こういうことでございます。
  208. 柄谷道一

    柄谷道一君 それはしかし大臣言葉のあやであって、社会保障立法ではあるけれども、その根底には国家補償的な配慮が否定できないということは、必要であるということですからね。そういう最高裁の意図を受けながら、今後はその充実に努めていきたい。私は国家補償制度にしろと、こう言っているんじゃないですよ。そういう配慮というものを加えるならば、当然現行法についての一層の配慮、充実というものはあってしかるべきだと。そういうふうに大臣はお考えになっていると。こう再確認したいわけです。
  209. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) いまのおっしゃるようなら、そのとおりでございます。
  210. 柄谷道一

    柄谷道一君 そこで、これもさきの質問でアメリカ在住被爆者約千人について、かつて医師団を派遣し、局長も今後とも外交ルートで具体的要請があればこれにこたえるべく善処したいと、こう答弁されておるわけでございます。しかし、現在韓国には約二万人に及ぶ被爆者がいると言われております。これに対して、核禁会議では同盟などが中心になりまして浄財を集めまして、慶尚南道陜川郡陜川面に韓国被爆者診療センターを設置すると、四十八年十二月にはその建設費として千二百万円の寄付を行っております。五十一年十一月にはさらにこれを二階を増設する必要があるということで、四百六十万円の寄付を行っております。そのほかに、医療機器の補充、医薬品、医師の派遣費及び被爆者実態調査費など約二千万円の寄付を行っているわけでございます。こうした民間ベースによる被爆者対策というものに呼応いたしまして、韓国政府では人件費、運営費などの維持費ですね、約年間一千万ないし千五百万円の国家支出を行うようになってきたということがわれわれ聞いておるわけでございます。しかし、このような民間の援助、協力というものに比較いたしまして、国としては何らの援助も行っていないわけでございます。  で、今回の最高裁判決にも、「わが国の戦争被害に関する他の補償立法は、補償対象者を日本国籍を有する者に限定し」ているが、「原爆医療法があえてこの種の規定を設けず、外国人に対しても同法を適用することとしているのは、被爆による健康上の障害の特異性と重大性のゆえに、その救済について内外人を区別すべきではないとしたものにほかならず、同法が国家補償趣旨を併せもつものと解することと矛盾するものではない」。こう理由書の中に明らかにされているわけでございます。  この最高裁判決をそんたくするということであれば、もちろんこの日本に来る者に対して援助を与えるのは、これは二法を適用するのは当然でございますけれども外国に在籍する、いわゆる韓国在籍の被爆者に対しても、当然その外交ルートによる要請があれば、これに対しては国家として最高裁判決趣旨を尊重しつつ、できる限りの国としての援助を、措置を講ずるべきではないかと、こう思うわけでございます、か、いかがでございますか。
  211. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) その国から要請があれば、できるだけのことをしなければいけないと思っております。
  212. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、この民間ベースによる援助、協力について、国が何らかの助成策を講ずるというお考えはございませんか。民間団体に対して。
  213. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) これが事柄によると思いますので、たとえば今度のアメリカ被爆者の団体がいらっしゃる場合に、いろいろな意味で私どもはお手伝いをすると。金ばかりじゃないと思います、外交上の措置、あるいは向こうへ行った場合のいろいろな取り扱い等について、先ほど外務省から言いましたように、できるだけの御援助をするということは、これは当然のことだと思うのですが、ただ、いまの御設例によりますと、韓国の被爆者対策に対する問題でございますと、これはやはり外交上の一国の主権とのいろいろな関係もございますものですから、やり方は慎重にその辺の配慮をしてやらなければいかぬだろうと思うのでございまして、具体的な問題別に考えさしていただくことになるんじゃないかと。一般的にそういう場合に国が大いに援助をするのだということを、いまここで私いろいろ外交上の問題等もありますから、支障があってもいけませんので慎重に検討さしていただきたいと思います。
  214. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、これらの被爆者方々が、戦争中いわば徴用によって広島に在住し、その期間中に被爆をされたという方が非常に多いわけでございます。もちろん、そのそれぞれの主権を持つ国家でございますから、外交ルートを通じないで援助云々ということは、いろいろ問題はございますけれども、そういった実態を考慮するならば、私はそれらの国々からの要請があれば、より積極的にこれに対して援助を与えていくという姿勢を大臣が明らかにされる。それを受けてその国が何を要請してくるか、これはもう別でございますけれども、少なくともわが国とすれば、そういった要請があれば積極的にこれに応じていこうと。それが厚生大臣の姿勢であるということは、この委員会を通じて明らかにされるべきだと思うのです。いかがでしょう。
  215. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 結構でございます。ぜひそういう国から御要請があれば、私としてはおっしゃるような態度で臨みます。
  216. 柄谷道一

    柄谷道一君 ぜひそのようにお願いをいたしたい。  それから、原爆二法につきましては、最高裁判決考え方を十分認識されまして、今後さらにその充実に努めていきたいという大臣のお考えを受けとめますけれども昭和五十三年度の被爆者対策を見ますと、いわば例年どおりの改善でございます。特別手当につきましては、認定患者で認定疾病の状態にある者、認定患者で認定疾病の状態でない者の、両ケースとも増額は一〇%にとどまっております。原爆放射能の影響を最も強く受けた者に対しては、より厚く処遇するというのは、これ当然の政治の姿勢でなければならないと、こう思うのであります。今回の手当の増額、全部一〇%ですね。こういった実態考えますと、特に私は、この特別手当については、今後一層増額を図るべきであろうと、こう思うんでございますが、いかがでしょうか。
  217. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 確かに先生がおっしゃいますように、本年度の予算につきましては大体フラットな感じということはございます。確かに御指摘のように、いわゆる原爆放射能の影響をうんと強く受けたという方々、これは特別手当の支給対象になるかと思いますが、そういうことにつきまして特に手厚くという先生のただいまの御指摘につきまして、私ども十分それを肝に銘じまして、来年度の予算要求において十分検討したいというふうに考えております。
  218. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は他の手当はそのままでもいいって言っているんじゃないですよ。もちろん、これは増額は必要だけれども、余り一〇%フラットという物の考え方について、どうもまだ理解がいかない面があるわけです。そういう点も十分配慮されまして、特に今後の御配慮を強く求めておきたいと、こう思います。  そこで、社会局長にお伺いするわけでございますが、その特別手当につきましては生活保護の認定基準からはずすべきではないか。それがここ数年当委員会議論されている精神にかなうものではないか、こう思うんですが、いかがでございますか。
  219. 上村一

    政府委員(上村一君) これまでも検討するように、あるいは努めるようにこの委員会で論議されておることは承知いたしておるわけでございますが、この原爆各種の手当の中で、この特別手当と申しますのは生活援護するような性格がある手当でございまして、生活保護の上ではどうしてもこれは収入認定せざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。  ただ、被爆した方の特別の事情というのがあるわけでございますので、それに対応いたしますために、生活保護の運用上特別手当の半額相当額、五十二年度で申し上げますと、一万五千円ということになるわけでございますが、そういう放射線加算というものを設けまして処理をしておるわけでございます。さらに、五十一年の十月からは、こういう加算のほかに、暫定的な措置を講じまして、実質的には特別手当の六割が手元に残るような取り扱いをしておりますので、全体として五十二年度では一万八千円の補償ということになるわけでございます。
  220. 柄谷道一

    柄谷道一君 横並び論というものを基礎におきまして、多少色をつけてやろうという、そういう考え現状だと思うんですね。そこで、五割が六割になりと、こういう運用をしておるわけですけれども、私は、今回最高裁判決も出たことでもありますし、そこで、認定基準における国家配慮とは、国家補償的配慮というものを考えますと、現状で決して私はいいとは言えないと、こう思うわけです。この点だけ議論しておりましても時間の規制がありますので、明年度、現行制度によしとすることなく、さらにこの認定基準からはずすという問題について前進を図るべくこれは御検討を願いたいと、こう思います。言いっ放しにいたしておきます。  それから次に、健康管理手当でございますが、今回支給対象範囲を十障害から十一障害に拡大をされている、それから潰瘍を伴う消化器機能障害を追加しておる、こういう点については評価をいたします。しかし、この範囲につきましては一層その拡大に努める必要があると、こう思うのでございますが、いかがでございますか。
  221. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 健康管理手当の支給対象でございますが、この疾病はいわば原子爆弾被爆に関連のある疾患、こういうことになっておりますので、四百四病すべてが入るというわけにはなかなかまいらないのではないかと思います。  また、現在のところさしあたり拡大ということは考えておらないわけでございますが、やはり医学の専門家と十分御相談いたしまして、そういった関連のある疾患ということがまた見つかるようであれば、さらにこれは拡大していくという方向に進みたいと思っております。
  222. 柄谷道一

    柄谷道一君 次に、各種手当にかかる所得制限の問題でございます。  今回、所得税額を二十三万三千六百円から三十五万四千三百円に緩和しておることは評価いたします。しかし、毎年のこの附帯決議では、この所得制限については撤廃の方向で検討せよというのが一貫した附帯決議精神でございます。  この際、厚生大臣の方から、今後その撤廃に向かって検討を進めたいという明確な御答弁を賜りたいと思うんです。いかがですか。
  223. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 特別の部分については、ひとつ撤廃に向かって最大の努力をいたします。まあ結果的にどうなりますか、うまくいくだろうとは思いますが、なかなか相手のあることでもございますから、私は、ここでは最大の努力をさせていただきたいということで、ひとつお許しをいただきたいんです。
  224. 柄谷道一

    柄谷道一君 臨時国会がいつあるのか、そしてどのような補正予算が組まれるのか、これはまだ今後の問題でございます。  しかし、私は、五十三年度の予算が編成された後に最高裁判決が出ておる。しかも、いま局長が言われましたように、フラットの考え方で今回の予算は組み立てられているということになりますならば、私は、諸手当の額について、もちろん来年度の予算で善処を求めなければなりませんけれども、補正予算の際にこれらのひとつ洗い直しをして、必要なものについては考慮するというお考えが出てまいりませんか。
  225. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) さしあたり、いま私ども補正予算というところでこれを持ち込むという考えを持っておりませんが、少なくも来年度の要求に当たりましては、所得制限撤廃ということで、大臣を旗頭に全力を尽くしたいと思いますので、どうぞそのように御了承願いたいと思います。
  226. 柄谷道一

    柄谷道一君 私の言ったのは、手当の、額でございます。これは、これ以上言ってもなかなか、大臣、そのとおりいたしますという答弁はないと思いますのですが、まあこれ、われわれ野党の一員として、社会保障全般の、この種の問題を含めた要求もいたさなければならぬと、こう考えているわけでございますんで、これは厚生省といたしましても、その際にはやはり判決の趣意も踏まえながら、これに呼応する大臣の姿勢をこれは求めておきたい、こう思うわけです。  それから、次に昭和五十年の原爆被爆者実態調査を拝見いたしますと、二つの特徴が私は読み取れると思います。  その一つは、被爆者の年齢構造が、四十歳から四十九歳の者が男女とも最も多い。以下、男子の場合は、三十九歳までの者、六十歳から六十九歳までの者、七十歳以上の者の順番になっております。女性の場合には、五十歳から五十九歳の者、三十九歳までの者、六十歳から六十九歳までの順になっているわけであります。  したがって、その読み取れる第一は、全般的傾向として、これは当然のことでありますけれども、高齢化の現象が急速に進んでいるという特徴が一つあらわれております。  それから第二の特色は、地域分布の問題であります。広島長崎両県在住者は二十三万八千五百五十人、これは全体の八一・二%を占めておりまして、四十年調査では八七・一%でございますから、全体比率としては両県の居住者が減っているわけですね。ウエートとしては減っておる。逆に、埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡という大都市またはその近郊在住者は三万二百七十二名。これは、四十年調査の五・八%の比率に対して逆に一〇・三%と、約倍近くこれはふえている。そのほかの地域在住者が二万四千八百七十一名、これは全体の八・五%を占めている。いわゆる地方への被爆者の分散がこの十年間進んでいるということをこの実態調査の結果はあらわしていると、こう思うわけです。こうした情勢の中で、本年度被爆者相談事業運営費補助金制度及び被爆者相談業務講習会助成制度が設けられたことは評価いたしますけれども、しかしその予算は、前者が三百五十七万円、後者は二百七十七万円と微々たるものでございます。  私は、この実態調査の結果が示す高齢化、地方への分散化、こういう実態をとらまえるならば、相談業務の内容について今後各段の考慮をしていくべき必要があるんではないかと、こう思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  227. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) ただいま先生から御指摘いただきましたように、二つの補助金でございまして、一つは長崎市、広島市にそれぞれ相談員として保健婦を設置するということでございます。  それからもう一つは、全国的に散らばっている方々に対して、各県に相談員が仕事をどうやったらいいかということをいろいろ知らせるという費用でございますが、いずれにしましても、本年度初めてこれは予算化いたしまして、この成果をどのように進めていったらいいかということを、この中から方法論も十分くみ取りまして、来年度以降さらにこれを発展させるよう努力をしたいと思っております。
  228. 柄谷道一

    柄谷道一君 これとあわせまして、家庭奉仕員制度でございますけれども、本年度派遣費及び沖繩県への渡航費の増額や、さらに原爆小頭症患者手当補助金制度を新設する、これも前進をしていることは認めます。しかし、さきにも言いました被爆者の地方分散等の実態を踏まえますと、奉仕員の数も全国で六十三名、補助先も広島長崎、沖繩に限定されております。私はこういった実態考えますならば、地方において専任の奉仕員制度を置くべきか、さらに奉仕員というものに、これは先齢者もあれば身障者もいろいろありますね、そういうものの中に包括して地方に分散している被爆者に対して、より温かい奉仕員制度というものを拡充さしていくというのも一方法ではないかと、こう思うわけです。今後の全国に分散しつつある被爆者に対する家庭奉仕員制度に対するひとつお考えをお伺いいたしたい。
  229. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 先生ちょっといまので訂正させていただきますが、現在沖繩に置いてでございませんで、広島長崎のみ置いておるわけでございます。沖繩にもというような声もむしろ承っているという段階でございます。ただ、いま先生おっしゃいましたように、各県にばらまかれている皆さん方に対して、大体老化というのが非常に大きなファクターでございまして、いわゆる一般の家庭奉仕員制度と一緒に進めた方がいいのではないかという考え方も私ども持っておりますが、もう一度これは十分検討しまして、どういう奉仕員制度、独特にした方がいいのか、あるいは一般の奉仕員制度の中に包括していった方がいいのか、ということを十分検討して、いい方法を選びたいというふうに考えております。
  230. 柄谷道一

    柄谷道一君 それも御検討願いたいと思います。あわせて、沖繩在住被爆者につきましては、昭和三十二年四月一日に原爆二法が施行になっております。それ以来四十二年の復帰までの過去十年間、これは原爆二法の恩典を受けていないわけですね。衆議院の質問の中では、答弁はきわめて消極的答弁でございます。これは約三億円と推定されるということでございますけれども、同じ日本国民ですね、しかも外国人まで国家補償的配慮のもとに援護していこうというこの御時世の中で、十年間の自費支払い医療費というものについてはそのままでいいんだということはいかにも冷た過ぎるのではないか。何らかの措置というものが、このブランクの十年間行われるべきではないかと思うのですが、衆議院同様冷たい答弁なら私は答弁をいただかなくても結構でございまして、一歩前進の御答弁をお願いいたします。
  231. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) まことに恐縮なんでございますが、先生のおっしゃられる意味合いというのは非常によくわかります。しかし、ほかにも福祉年金とかあるいは一般戦災者問題でいろいろの問題を含んでおりますので、十分これは慎重にも慎重に検討をしなければならないと思います。さらに時間をおかしいただきたいと思います。
  232. 柄谷道一

    柄谷道一君 繰り返すようですけれども国家配慮とは一体何か、それが根底にあるとは何かということを問い直してみなければならぬと思うんですね。確かに横並びというものを無視することもできないでしょうけれども、それにプラスして同じ日本国民ですね、ただ本土復帰がおくれた、そのために自費でその間十年間医療費を払っておったということに対して、私は現状のまま放置すべきではないとこう思います。ぜひ、この点につきましては、明年度再び同じ質問を当委員会でしなくていいように、ひとつ大臣お願いいたしますよ。  時間もございませんので、あと二問質問をいたしまして私の質問を終わりますが、第一は、被爆者二世の中には健康不安を訴える者が多いと聞いております。これらの方々生活と健康状態については、やはり政府としても実態調査をする必要があるのではないかとこう思います。実態調査にいろいろ問題があるとすれば、少なくとも健康不安を申し出た者に対しては、公費による健康診断というものを行うべきではなかろうかと、こう思うわけでございます。これに対する御所見を承りたいというのが一つでございます。  第二は、広島原爆病院は五十一年に五億九千万円、うち国が三億二千万、県及び市がそれぞれ一億二千万、日赤三千万円を投じまして百五十床の増設を行っております。当時、これは広島原爆病院を視察いたしました当委員会の視察報告等も勘案されまして、このような措置がとられたと思うのでございますが、長崎原爆病院は三十三年五月に建設されておりまして、現在相当老朽化いたしております。聞くところによりますと、地元では、三百六十床それに要する経費約三十数億円、これをかけてこの際長崎原爆病院の建てかえをしてはどうかという検討が進んでいるやに聞くわけでございます。しかし、広島の場合は増設でございましたが、今度は建てかえということになりますと、経費も三十数億円、地方財政窮迫の折りから、これはよほど国が本腰を入れた助成をしていかないと、この計画は金で行き詰まってしまうということにもなるのではないか。この問題に対して、どのように国は対処しようとしておるのか。  この二点をお伺いいたしまして、私の質問を終わります。
  233. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 最後でございますから、私からお答えしますが、二世の方々で特に希望のある方々につきましては、健康診断の費用は私ども費目はいろいろ任していただきたいのですけれども、何とか安心のいく健康診断ができるようにいたしたいと思っております。  それから、長崎原爆病院は、確かに悪いものですから直さなければいけません。しかしどうも、移転改築なんですけれども、土地が決まらないでおるようでございまして、もし移転をして新しくつくるとなると、相当の金額が必要になってくるだろうと思います。公的な融資なりその他いろいろ助成の道を考えて、やはり必要な医療施設というものはやっていかなきゃいかぬだろうと思っておりますが、何分どうも適地の選定に非常な難航をしているということを聞いておりますが、もし県がやるということになりますと、私どもとしては、あるいは主体がどういうことになるかわかりませんが、十分現地の考えを聞いて助成を考えていきたいと思います。
  234. 柄谷道一

    柄谷道一君 終わります。
  235. 下村泰

    ○下村泰君 本法案に関しましての質問をさせていただきますけれども、何ですか、先ほどから各委員のお話の大臣あるいは政府側の方々の受け答えを聞いておりますと、いわゆる原爆というものに被爆して生まれた患者というのは、一体どこの国の人の話をしているのかなという気になるんです。世界でとにかく原爆を落とされてその被害国になったのは日本だけしかないはずなんです。そういった世界で唯一の経験の原爆の患者方に対して政府のとっている施策というものが、一体どこの国のどういう患者のめんどうを見るためのお話なのかなという、非常な何か私疑問に感じたんです。たとえば、いまの柄谷先生のおっしゃいました広島原爆病院にしても、国が三分の二近く出してあとは地方。長崎原爆病院にしても移転地がもちろんなけりゃそう簡単に建物というのは建たないんでしょうけれども、そういうことに対して何でもっと国というものが真正面に取り組んでないのかな、なぜもっと積極的にそういうことを、こういう場所で討議される前に国がなぜそういう手を打っていかないのかな、こんなような気がします。これは私の感想でございます。これに対してどうのこうの言うわけじゃございません。   〔委員長退席、理事片山甚市君着席〕 私が質問するころになりますと、皆さんいつもお疲れでございますから、もうややこしいことは抜きにいたしますけれども。もっともあんまりややこしいことは私は言えませんけれども。  まず、簡単に厚生省の方に伺いますけれども、現在の被爆者に対する諸種の医療治療技術でございますけれどもアメリカと比較してどちらが優でどちらが劣なんでしょうか。まず、これを伺いたいと思います。
  236. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 一般的に申しまして、いわゆる被爆者の病気というのは特に何か特別な病気があるということではございませんで、がんになるとかあるいは肝障害が起きるということで一般の症状として出ているわけでございまして、その間に何らの区別はないわけでございますが、そういう点から考えまして、わが国の現在の医療水準はアメリカと同程度、少しも劣るということがないのではないかと思っております。
  237. 下村泰

    ○下村泰君 そうしますと、それだけのいわゆる治療技術といいますか、医療技術というものが進歩していながら、なぜそれではいま現在この被爆者が苦しんでいるのかという、今度はひとつ次の疑問にぶつかることなんですけれども被爆者実態、総数というのは完全につかんでいらっしゃいますか。いわゆる患者でも結構です、被爆手帳でも結構です、もらっていらっしゃる方々の総数というのは、厚生省は自信を持ってこれが総数であるとは言えますか。
  238. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 現在、被爆手帳を持っておられる方は、五十一年度末でございますが、三十六万六千五百二十三名でございます。
  239. 下村泰

    ○下村泰君 これ以外にも、要するに被爆手帳を持たない潜在的な被爆者もいらっしゃるというふうに承っておりますが、どうですか。
  240. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 確かにそういう方は、どういう定義かは別といたしまして、もらうべきはずの方でもらってない方がおられるということは否定できないと思います。
  241. 下村泰

    ○下村泰君 実は、私たちの仲間の江戸家猫八といういま現在物まねをしている方がおります。あの方も実は広島で放射能を受けておる。彼は一時非常にノイローゼになりましてね、NHKに出演しているときなどでも目まいがしたり、あるいはときどき吐き気がしたり、出演時間に抵抗できないような体力が衰えたりというような症状がありまして、本人が大変悩んでおりました。たしか彼は被爆手帳を持ってないはずでございますけれども。いま幸いにして健康を回復しているようでございますけれども。  長崎の方へ参りましても、いろいろ御当地の方に伺ったんですけれども、いまも柄谷先生のお話の中にありました二世の方々で、なまじ被爆手帳をもらったがために結婚ができないとか、あるいはそういったような障害が出てくるとかというようなことで、あえてもらわない、あえて受けないというようなことがあると聞いておりますが、やはりそのようにおつかみになっていらっしゃいますか。
  242. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) ただいま先生おっしゃったような意味合いで手帳をもらわないという方がいらっしゃるということは聞いております。
  243. 下村泰

    ○下村泰君 そうしますと、先ほど局長がおっしゃったように、大変わが国は水準的に医療技術が高いのであると。というのにもかかわらず、そういう方々がいるということは、やはり医学的にある程度の物の解明ができてない、こういうことにつながるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。つまり、そういったことに対して被爆者方々が不安を感じているということ、不安があるから言えないという面もあるわけです。本来はそういう症状が出るかもわからない。出るかもわからないんだけれども、そういう手帳をなまじもらったがために、おまえはそうなんだと烙印を押されることがこれからの人生に支障を来すということでもらいたがらない、こういう方々もいるんじゃないかというような気がしますが、いかがですか。
  244. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 多分に、親御さんがお持ちになっていると、お子さんの就職あるいは結婚などに差しさわりがあるということで親御さんが遠慮してしまうということがあると、そういうふうに先生のいまのお話伺うわけでございますが、私どもそういう意味合いからいろんな機会に放射線の影響研究所の方のデータもすでにこれは公表されておりまして、少なくも現時点までにおいては、二世についてそういった被爆した方から生まれたお子さんと、そうでないお子さんとで何らかの障害なり何なりということでいままで三十数年間の研究では差がないということは、一生懸命私どもも、研究所の方も世間にはちゃんと申し上げているわけでございます。
  245. 下村泰

    ○下村泰君 そうすると、そういう不安を少しでも早く除くためにも、その道の方々は鋭意努力していくことだろうと思います。  私が、決算委員会の二員としまして、去る昭和五十一年七月六日より七月八日までの三日間、福岡県と長崎県に参りました。当該地区における地方行政、産業、防衛あるいは大学等について調査に行ったわけでございますけれども、その折、この国立長崎大学ですね、あちらの方々説明によりますと、二つのユニークな学部があると。一つは水産学部であり、一つは医学部である。なるほど、わが国で長崎県というのは有数な水産県でありますから、この水産学部というのも結構でございましょうし、また医学部は旧制の長崎医科大学が主体に引き継がれたものであると。しかも、原爆の被災という不幸な事態に遭遇した事実がありますから、なおのことこの医学部もユニークな存在だと思います。この大学の付属機関であります原爆被災学術資料センター、舌が回らなくなりますけれども原爆被災学術資料センター、ここを主に調査さしていただいた、視察をさせていただきました。でき上がりが昭和五十年三月二十二日で、定員として助教授の方が二人、助手の方が四人、技官の方が五人。この中のたしか助教授の方がその原爆被災学術資料センター、前はそこはたしか病棟だったそうですが、そこでその助教授の方も被爆したというような説明も受けました。その被爆された助教授の方が私たちに説明してくださった。米国からの返還原爆資料というのが整理保存されておりましたけれども、もうこれは見るに耐えないものです。いわゆる死亡した患者の脳髄ですとか、皮膚ですとか、もう五分いたら気持ち悪くなります。そんなものが何で向こうへ持っていかれてしまったのか。ただ、その肝心の情報整理のためのコンピューター組織の導入がおくれて、ここにコンピューターが入るんですという部屋はまるで空っぽなんですね。建物ができても機能が十分に発揮できない。しかも、患者の方々を全部登録して、それがこのコンピューターに入れ込まれて、そして後の追跡調査から何から全部できるのにもかかわらず、この一日一日の空白が非常に心苦しいんだというふうにこの立場方々がおっしゃっておりました。このコンピューターが——文部省の方、来ていらっしゃいますでしょうか。このコンピューターがいつ設置されることで工事が始まったのか、そこのところ聞かせていただきたいんですが。これは完成したのが五十年三月の二十二日ですわね。コンピューターの入ったの知ってますよ。知ってますけれども昭和五十年三月二十二日という完成の目標が立っていながら、なぜコンピューターの設置がおくれたのか、そこのところの理由をちょっと説明してください。
  246. 遠山敦子

    説明員(遠山敦子君) 長崎大学の医学部に付属されましたいまの原爆被災学術資料センター、これは四十九年度にでき上がりまして、その際、そのセンターはそれまで四十七年度に別の名称ででき上がっていたんでございますが、四十九年度に名称変更いたしまして新たにまた発足するということで建物を新営いたしました。そのときにコンピューターを設置するためのスペースを用意していたことは確かでございます。その結果、実際にコンピューターが入りましたのは、先生も御存じのように五十二年度でございますが、それは学内におきましてコンピューターを導入することについてのコンセンサスができ、文部省の方に御要求がありまして、これは行政としましては比較的順調に予算要求が通りまして、五十二年度の予算要求にあったものは五十二年度中に通っております。この意味では大変順調にいったケースではないかと存じております。
  247. 下村泰

    ○下村泰君 おたくさまの方の御答弁と現場の方のお話とはまるで食い違っているんですけれども、とにかくコンピューターが入ったということでは許されることでしょう。ただ、ここで気になるのは、水産学部の方に鶴洋丸という船があるんです。この鶴洋丸という船が十七億円近くの予算をかけて建造してでき上がった。これと絡ませて考えますと、こっちの方があったためにこっちがおくれたんじゃないかというふうに私の方は勘ぐるんですけれども、どうですか。   〔理事片山甚市君退席、委員長着席〕
  248. 遠山敦子

    説明員(遠山敦子君) その内情については承知しておりません。ただ、コンピューターが導入されましてシミュレーションをしたりして、本当に研究的なアプローチがなされるというためには、資料をファイル化したり、どのような計算方式によってそのデータを活用するかというような研究も同時になされなくてはならないというようなことで、五十一年度には科学研究費補助金で、そういう資料をどのようにして扱って、どのような計算式を用いてやったらいいかというような研究をなされております。その意味では、そういう着々とした成果に基づいて五十二年度に導入されたコンピューターを駆使して、このたびの結果が出たというふうに私どもは了解しております。
  249. 下村泰

    ○下村泰君 どうも御婦人に答えられると、何か突っ込みにくくてしようがないんだ。何かけんかにならぬみたいだ。(笑声)——余談なことを言って済みませんでした。  本来ならば、だれがどう考えても、その資料センターができてそこにコンピュータールームがあるというものならば、完成した瞬間にそういったものが入って、そしてすべてが稼働していかなければ私は何の役にも立たないものだと思っているんですよ。ただ、いま入って動いていますから文句のっけようもありませんからね。入ってますよと言われたら、そうですかでおしまいになっちゃうんだからどうにもならぬことですけれども、こういうところのいわゆる基本的な物の考え方というのが、何かどっかに私は食い違いがあるような気がしてしようがないんです。  文部省の方々にもうちょっと伺いたいことがあるんですけれども、国立大学の付属病院関係。国立大学の付属病院、国立大学ですからこれは文部省の所管になりますね。それで国立病院は厚生省の方の管轄になるわけです。ここなんですがな、問題は。そうしますと、私らは簡単に考えて、厚生省がおいと声をかけても、大学付属病院の先生方というのは簡単に動けないものなんでしょうか。動けないんですか。厚生大臣、自信を持って首を振っておりますね。佐分利さんもそうですね。——そうしますと、私はたびたびここの場所で申し上げておりますけれども、難病対策として、いわゆる病理の研究班でございますとか何かを編成してください、こういうふうにやってくださいということが簡単にいかぬというのは、こういうところにも原因があるわけですか。
  250. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) 先生、ちょっと私、具体的にどういうことかわかりませんが、難病対策をやります場合には、やはり国立大学の先生方皆さん一緒に入っていただいて、研究班を組織して研究していただいております。
  251. 下村泰

    ○下村泰君 つまり、厚生省が声をかけたからといって、おいそれと向こうは動かぬということですな。動かぬというよりは、動いてくれますかくれませんか、どっちですか。
  252. 松浦十四郎

    政府委員松浦四郎君) いま、おいそれ声をかけてということでございますが、それは現実には違う官庁でございますから、一応の、何といいますか、ルートを通じてちゃんとお願いいたしますれば、これはいつも御協力いただいております。
  253. 下村泰

    ○下村泰君 あたりまえのことですわな、それは指揮系統が違うんですから。指揮系統の方へ申し出れば、それはすぐまとまることだと思いますけれどもね。  よく世間で言われますが、大学病院というところは白い巨塔とかどうのこうの言われまして、一番上にいる何とか教授という人のいろいろと推薦を受けなければ、その下で働いている人はどうにもこうにもならない。また、その下で働いている人が何か研究成果を上げても、その人の手柄にはならない。上の方にいる大教授の手柄になるというようなことをよく承っておりますけれども、どうなんですか、文部省の方として、いま局長からお答えになりましたけれども、すぐに、たとえばそういうプロジェクトチームをつくるとした場合に、すぐにこれは編成できるものなんですか、文部省の方から大学の方に要請した場合に。
  254. 遠山敦子

    説明員(遠山敦子君) 大変むずかしい御質問でございますけれども、大学におきます研究は、やはり基本的には研究者がそのテーマを考えまして、もちろんそれは、その場合には社会的な要請も考慮すると思いますけれども自分たちの自発的な意思によって研究のテーマが選ばれ、そこにふさわしい研究者が集まって、そこで研究が展開されるという様相を呈しております。したがいまして、文部省の役割りといたしましては、その御提案がりっぱな研究である場合には、これに対しまして科学研究費補助金であるとか、いろんな措置を講じまして、これに対する物的な援助を申し上げるという仕組みになっておりますので、事が起こったときに、たちまちに対処できるか、あるいは文部省の号令によってどうかということにつきましては、そのような仕組みで成り立っているということで御了解いただきたいと思うわけでございます。
  255. 下村泰

    ○下村泰君 どうも文部省ありがとうございました。これはどうやってもこれ以上進みつこないと思いますから、もう結構です。  厚生大臣に伺いますけど、たとえば区分けしますと、病理研究は文部省で、実務の方が厚生省という形になりますね。どういうことになりますか。
  256. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 必ずしも私そうじゃないと思いますね。基礎研究——文部省の方の医学は医学教育機関が主になって、教育のための病院という性格が多いわけでございます。そこで、大学病院ではいろんなそれぞれ専門家がいて、基礎的な研究、それから一般治療、研究ももちろんやっておられるわけでございます。基礎だけではございません。私ども大学病院との関連では、むしろ医師の供給源として非常に密接に連絡をとりながら、それぞれ医療機関については御協力を願っております。私の言うことが国立病院にはぴんと通りますけれども、国立大学には何かすぐ通らないんじゃないか。それは所管が違いますから、そういう若干の迂回はありますけれども医療問題については、ことに最近特殊疾病等の問題がございますので、非常に協力を得て円滑にはいっていると思うんです、それは若干の迂回、時間というものはあると思いますけれども。その点はそう私ども、いまさしあたって所管が違うために非常に対策がおくれたりするようなことはないようになっておるんじゃないか。ただ、病院の経営ということになりますと、文部省は文部省としての立場がございますので、予算が別でございますから、たとえば差額ベッド等について、国立病院でございますと、もう認めないぞということで、一遍に全部何月何日からこうやれと言えば通ります。ただ、大学病院にはそれがなかなか、特別会計であり会計も違う、予算も違うということで通りにくい面がありますけれども、その他医学技術の研究やあるいは実践の場合あるいは研究班のいろいろな措置については、わりに協力体制がうまくいっていると思います。
  257. 下村泰

    ○下村泰君 何かいまの大臣のお話を伺っていますと、私はいま実務と病理の方の研究と、こういうふうに申し上げたら、何か文部省の方は、つまり医者をつくるための病院でもありますがね、病理研究といっても基本教育みたいなもの。そうすると、大学付属病院の方に入った患者は完全なモルモットで、国立病院の方が幾らかましだということになりますな、いまの話の様子でいくと。これは危なくて入れないや、それは。  時間が余りましたので、ちょっと別のことをついでに伺いますけれども、これは新聞に出ておりまして厚生大臣も大変頭を悩ましていらっしゃるようですけれども、六月の五日の記事と本日の記事と、これは切り抜いてございますけれども、何ですか、武見太郎という方が、偉い方なんですね、この方は。私はどういう方だか知らないですけれども。この方が「健康保険法改正案を廃案に追い込むための第一波実力行使として今月下旬の一週間”院外処方戦術”、続く一週間、医師の拘束労働時間を八時間とする」、そしてその記事の下の方に、「武見会長は政府、自民党に打撃を加えるため「総選挙まで波状的に繰り返す」」と。偉いんですね、こっちの方のほうがね。ただし「処方の薬が手に入らないケースも考えられる」ので、「武見会長は「辺地など、医療機関以外で薬剤を求められないところは例外とする」」というようないろんなことが書いてございます。そしてきょうの記事になりますと、時間外診療の拒否と、この方は出ておりませんけれども、この院外処方せん発行、これだけはやるというようなことを断固としておっしゃっている。これは何らの条件闘争ではないと、こういうことをおっしゃっているんですね。そうすると、これ記事見ていますと、この一週間は病気にもなれない。病気になったら助からないというような感じがする。しかも、わが国では医薬分業というのははっきりしておりませんから、薬局に処方せん持って行ったって薬が完全にあるかどうか、これもわからないでしょう。そうなりますと、これは大変大きな社会的な問題で、どこにねらいがあるのか私もさっぱりわかりませんけれども、厚生大臣は鋭意お会いになって、これをどう解決なさるのか、ちょっと済みませんが聞かせていただきたいと思います。
  258. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私、常任理事会でその決定があったことを、実は私どもには通告がございませんが、新聞でわかりまして、そこで去る日曜日に、ちょうどたまたま柏の国立病院の落成式に私は参りましたので、少し前に行きまして、柏の武見会長の自宅へ参りまして自重を要望してまいりました。ところがその際、決して患者には迷惑かけないということもおっしゃっておりまして、医薬分業というものは将来の方向だと思うので、やった結果データ等も集めて、できるだけどこの地区ができそうかできないか、いろんなことのデータも十分調査もしてみたいんだというような話がございました。いずれにしても、ひとつ私の立場から言うと、若干でも混乱があってはいかぬから、ぜひ自重を願いたいという申し入れをいたしたわけでございます。私は各県の薬剤師協会あるいは薬の関係の諸団体と診療担当者と話し合いをしてもらいまして、ひとつぜひそういうような患者に特別な支障のないように、いろいろなこれから部内でも相談をいたしまして、まだ相当先のことでもございますから、できるだけ手を打っていきたいと、かように考えております。
  259. 下村泰

    ○下村泰君 実はここに「日医ニュース」というのがあるんですがね、これは五十三年五月の二十日なんですよ。この二ページを見て私はびっくりしたんですがね、「租税特別措置廃止法案 今国会見送り決定 医業の公共性否定する議員」といって、名前が書いてあるんです。いまお名前申しません。その上にバツ印がついている。そして慎重にせよと言った議員は二重マルがついている。で、次の通常国会まで待つべきだと主張した人は三角印がついている。この印は全部お気の毒にもこれ与党議員の方々ばかりです。野党の方は一人も入っておりません。そしてその最後に、こういうことが書いてあるのです。二世議員で結構勉強しているのがおると、日本の将来に向けて大切なことだと、ここまではいいんです。その次に、「それに引き換えバカの一つ覚えのように繰返し廃止論を唱えている議員を見逃すまい。」というんですよ。この「見逃すまい」という意味の中には、ずいぶんいろいろな意味があるんじゃないかと思うのですね。この次当選させるなとか、いろいろな意味があるのじゃないかと思う。これだけ何といいますか、大きなことがこういう活字になって言えるということは、よほど、何ですか、これは自民与党にとってはおっかない存在なんですか、日本医師会というのは。つくづくそう考えてしまうんですよ。そうすると、その中にいらっしゃる与党の議員から出ていらっしゃる小沢厚生大臣というのは、まことに頼りない存在じゃないかと、こんなように国民の側が受けても、これやむを得ないんじゃないかと思いますよ。ちょっと党の党籍を離れて、一議員としてどういうふうなお考えかひとつ聞かせてください。
  260. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私は今度の法案が、最も私が考えていい案だと思って出しておりますので、医師会がその案について反対をされるなら、反対の理由もよく聞いて、また医師会だけではないと思います、各関係者は労働組合もございますし、日経連もございますし、健保組合もございますので、そういう方々意見を十分聞いて、もちろん反省すべき点は反省しながらいかなきゃいかぬと思いますけれども、やはりそれぞれの団体が自分のエゴだけで動いたんでは、これは国民のためになりませんので、やはり私は冷静にそれらの意見を聞きながらも、国民のためにどれがいいかということを冷静に判断をして行動してまいります。たとえ与党出身の大臣であっても、国民のために厚生省を預かっておるわけでございますから、自分の損得を度外視して、国民のための一番いい方法を私は選んで実行していきたいと思っております。
  261. 下村泰

    ○下村泰君 どうぞひとつ、今月の末にこういう非常事態になりませんよう、よろしくひとつお働きのほどをサイドの方から見守っておりますから、もしまたそのぐあいが悪ければ、またいろいろなことを言わせていただきますから、よろしくがんばっていただきたいと思います。  終わります。どうもありがとうございました。
  262. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  263. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようでありますから、これより直ちに採決に入ります。  原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  264. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、片山君から発言を求められておりますので、これを許します。片山君。
  265. 片山甚市

    片山甚市君 ただいま可決されました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、民社党及び第二院クラブの共同提案による附帯決議案を提出いたしたいと存じますので、御賛同をお願いいたします。  案文を朗読いたします。    原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について速やかにその実現に努めるべきである。  一、原爆被爆が人道的にも、国際法的にも、医学的にも極めて特異なものである点にかんがみ、被爆者からの援護対策充実強化の強い要望を配慮して、被爆者の療養と生活の保障を更に一段と充実するための援護体制を検討すること。  二、各種手当のうち一部のものは、既に実質的に年金化している実態にも着目しつつ、各種手当の額の引上げ、所得制限の撤廃、適用範囲の拡大(地域を含む)等制度改善に努めること。  三、特別手当について、生活保護の収入認定から外すよう検討すること。  四、原爆症の認定に当たつては、被爆者の実情に即応するよう改善を検討すること。  五、被爆者医療費について全額公費負担とするよう検討するとともに、被爆者に対する家庭奉仕員制度、相談業務の充実強化を図ること。  六、被爆者とその子及び孫に対する放射能の影響についての調査、研究及びその対策について十分配慮するとともに、原爆医療調査研究機関相互間の連絡調整を図ること。  七、沖繩県在住の被爆者が、本土並に治療が受けられるよう専門病院等の整備に努めるとともに、沖繩県の地理的歴史的条件を考慮すること。  八、死没者に弔意を表すための具体的措置について、他との均衡を配慮しつつ検討すること。   右決議する。  以上でございます。
  266. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいま片山君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  267. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 全会一致と認めます。よって、片山君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、厚生大臣から発言を求められておりますので、この際これを許します。小沢厚生大臣
  268. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) ただいま御決議いただきました附帯決議につきましては、その御趣旨を尊重いたしまして、鋭意検討努力いたしてまいります。
  269. 和田静夫

    委員長和田静夫君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  270. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十四分散会      —————・—————