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1978-06-01 第84回国会 参議院 社会労働委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月一日(木曜日)    午前十時十四分開会     ―――――――――――――    委員の異動  五月二十五日     辞任         補欠選任      片山 甚市君     丸谷 金保君  五月二十六日     辞任         補欠選任      丸谷 金保君     片山 甚市君  六月一日     辞任         補欠選任      遠藤 政夫君     真鍋 賢二君      小笠原貞子君     山中 郁子君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         和田 静夫君     理 事                 遠藤 政夫君                 佐々木 満君                 片山 甚市君                 小平 芳平君     委 員                 浅野  拡君                 石本  茂君                 斎藤 十朗君                 広田 幸一君                 渡部 通子君                 山中 郁子君                 柄谷 道一君                 下村  泰君    国務大臣        労 働 大 臣  藤井 勝志君    政府委員        労働大臣官房長  石井 甲二君        労働省労政局長  北川 俊夫君        労働省労働基準        局長       桑原 敬一君        労働省婦人少年        局長       森山 眞弓君        労働省職業安定        局長       細野  正君        労働省職業訓練        局長       岩崎 隆造君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        通商産業省生活        産業局通商課長  保延  進君        通商産業省生活        産業局繊維製品        課長       赤川 邦雄君        労働大臣官房国        際労働課長    石田  均君        労働省労働基準        局監督課長    小粥 義朗君        労働省労働基準        局賃金福祉部長  森  英良君        労働省職業安定        局特別雇用対策        課長       清水 博雄君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○労働問題に関する調査  (第六十四回ILO総会に臨む労働大臣の所信  に関する件)  (国際人権規約批准に関する件)  (労働時間短縮及び週休二日制と雇用創出に関  する件)  (特定不況地域における雇用失業対策に関す  る件)  (労働大臣の私案にかかる現下の雇用失業情勢  に対処する雇用創出対策に関する件)  (ILO第一三七号条約及び第一四九号条約の  批准に関する件)  (女子労働者雇用調整に関する件)  (家内労働最低工賃に関する件)  (個人織物業者に対する助成に関する件)  (日立造船神奈川工場及び日本鋼管京浜製鉄所  における特別休日制度に関する件)  (佐世保重工における退職金支払に関する件)     ―――――――――――――
  2. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  片山甚市君が一たん委員辞任されましたため、理事に一名の欠員を生じました。つきましては、この際、理事補欠選任を行います。  理事選任は、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事片山甚市君を指名いたします。     ―――――――――――――
  4. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 労働問題に関する調査議題といたします。  これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 片山甚市

    片山甚市君 大臣がこのたび第六十四回ILO総会に御出席のようでありまして、お聞きするところによれば、六月八日には出発、本日が今国会ではお会いをするのが最後といいますか、なろうというときでありますから、一言ILO総会に臨まれる基本的な態度についてお聞きをしようと思います。と申しますのは、国の内外の労働情勢をどういうふうに踏まえ、そしてこの問題点にどう対処されるのかということについて、議題もそれぞれ示されておるようでありますが、大臣がジュネーブへ行かれましたら、どういう態度をとられるかについて明確な態度をお示し願いたいと思います。
  6. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 国会が延長されまして会期中でございますけれども、お許しを得て、私は来る六月八日日本を出発いたしまして、御指摘ILO総会出席をさしていただく予定にいたしております。それで、この総会は、御案内のごとく、百三十六の国が政労使者構成という、こういった組織でILOがいわゆる本来の使命が達成できるように、長期的な観点からいろいろ議論が出ると思うんであります。特にことしは、もともと一九一九年でございましたか、ILOベルサイユ条約のもとに誕生いたしました当時、その中心的役割りをしたアメリカILO脱退直後の総会でございますから、非常に私は今度の総会は一層重要な意味を持ち、日本立場も一層その役割りは重要であると、このように認識して臨むつもりでございまして、世界の中の日本という立場に現在なっている日本としては、やはりこの貧困と不正というものが平和を乱す基礎的な前提条件であると、こういう観点を踏まえて、いろいろな問題について、私自身はいわゆるビジティングミニスターという立場でございますから、まあ政府代表あるいはこの労使代表、それぞれ具体的な討論に参画をされる方々のよく意見も聞きながら、同時にまた、このILO総会事務総長の提言を踏まえて、私としてどのような見解を述べるべきか、現在その構想を練っておる最中でございまして、これを一口に申しますと、ILOの誕生した原点を踏まえて、絶えずこれが公正な運営ができるように、所期の目的が一歩でも二歩でも前進するような方向努力いたしたい。特に、アメリカILO脱退直後の総会であるから、なおさらその点を踏まえて適切な言動をいたしたいと、このように考えているわけでございます。
  7. 片山甚市

    片山甚市君 実は、日本政府にとってはILOというのは非常に鬼門なところでございまして、御承知のようにドライヤー勧告が出ました。公務員の、公務の諸君の結社の自由等では大変お世話になり、先進国としては珍しく諸外国の手をかりないとできないようなことでございましたので、今回も引き続き諸問題が残っていますが、できるだけそういうようなことについてはみずからの手で国内問題を含めて対処し、そして国際的にもよきリーダーシップ、むしろそういう国々に対する助言をする立場に立つように、ひとつ御努力を願いたいと思いますが、いかがでしょう。
  8. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 昨年のILO総会において第一次討議の結果といたしまして、公務における団結権の保護及び雇用条件決定手続に関する条約案と、それから公務における雇用条件決定手続に関する勧告案が作成をされております。今年六月の総会におきましても、これをもとに第二次の討議が行われる何らかの国際文章――条約かあるいは勧告か、そういったものが採択されるであろうと予想しておるわけでございまして、わが国といたしましては、公務員地位のいわゆる特殊性公共性という面から考えまして、また公務員各国制度多様性という、こういう面を考慮いたしまして、そして採択される文章というのは広く各国事情に適応する可能性が持たれる内容になるような立場で私は意思表示をいたしたいと、このように考えておるわけでございます。
  9. 片山甚市

    片山甚市君 大臣の言葉は非常に歯切れがよくないのは、ほかのこともあると思いますが、私がお聞き申し上げるのは、もうILOの場で日本労働問題、労使関係の問題を論じてもらわなくても済むようにしてもらいたい。主としてわれわれの代表が、相当労働代表の方がネゴシエーションするというか、会議に始まるところのそれぞれの舞台をつくらなきゃならぬ、こういうことについては、近代的な産業を持っておるわが国としての労使慣行が非常におくれておるという印象があっても、これは国際的にいい影響を及ぼさないと思います。ですから、いまお聞きをしているのは、これを契機ILO総会でいろんな決議をされるときには、率先、いわゆる先進国と同じように実施をしていく姿勢を持つ、多様性をもって、限定して実施をしない、できるだけILO勧告について、条約については国内特殊性を主張する、こういうことのないように、今回はやはり政労使代表が行くのでありますから、受けとめてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  10. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 確かに、世界は非常に狭くなったわけでございますけれども、やはりそれぞれの国々に生まれた制度というのは、長い歴史と沿革があるわけですから、日本には日本としてのやはり特殊性、こういったもの、それぞれの国々にも同じようなことがあろうと思うのでありまして、そういったことに対して、やはり根本のILO精神といういわゆる原点を踏まえながら、すなわち不正と貧困というこういったことをもたらさないような労働条件というものをいかにして確立するかという、この点を踏まえながら私は各国々に弾力的に対応できるという、こういったことだけやはり基本的に堅持していくべきではないかと、このように思うわけでございまして、やはり各国事情から飛び離れた方向というのは、一応そういったことを言ってみたところで実現をするわけじゃないし、かえってまたそれが逆効果になるということも配慮して、要はILO趣旨といいますか、精神といいますか、そういったことを踏まえて改善をされるような方向努力をしていきたいと、このように思うわけでございます。
  11. 片山甚市

    片山甚市君 じゃ、これ以上聞いても大臣お答えをできないようでありますから、それでは五月三十日に国連総会特別総会出席した園田外務大臣国際人権規約署名を託したという、そのときにどのような条件でどのようにこれを批准していくのかについてお聞きをしたい。
  12. 北川俊夫

    政府委員北川俊夫君) 五月三十日に外務大臣国連総会出席をされまして、国際人権規約につきまして署名をされたわけでございますが、政府としましてはA規約につきましては三つ留保を付しております。一つは、第七条の(d)項の規定のうち「公の休日についての報酬」、これが第一点でございます。それから第二点は、八条一項の(d)項の規定のうち「同盟罷業をする権利」、これについて留保を付しております。これが第二点でございます。第三点は、十三条二項の(b)項及び(c)項の規定のうち「特に、無償教育の漸進的な導入」、この部分についてそれぞれ留保を付したわけでございます。  なお、この理由につきましては「公の休日についての報酬」の規定に関しましては、御承知のように、国民の祝祭日にも報酬を払うこととするか否かは、一般に労使の合意にゆだねることが適当でございまして、わが国の場合にいまのところそういう法制あるいは慣行というものがございませんので、法令をもってこれを義務づけることは適当でない、こう考えておる次第でございます。  次に、同盟罷業に関する権利に関しましては、現行わが国法制では国家公務員地方公務員、それと公共企業体職員につきましてその職務の公共性、その地位特殊性ということから、御承知のように争議行為禁止をいたしておりますので、人権規約に合致しないところでございますので、これにつきましても必要な留保を付したものでございます。  なお、所管外でございますけれども、「無償教育の漸進的な導入」という規定に関しましては、後期中等教育及び高等教育の中で私立学校の占める割合が非常に高いというわが国現状等にかんがみまして、文部省といたしましては留保をすべきであると、こういう意見と聞いております。  以上でございます。
  13. 片山甚市

    片山甚市君 それでは十二年間、この規約が成立してから日本の国が受け入れることができなかった理由、いまようやく批准をするという態度をとっておるようですが、いつ国会などの手続をとられるのか、これが一つであります。  二つ目には、あなたの方は、御承知のように、ILO条約批准のときに、御承知のように、国内法手続について大変問題があったように、今回のいわゆる国際人権規約批准するに当たって、基本的な人権問題に関する批准に伴ってのいわゆる国内手続法整備ということで、いわゆる人権を尊重するという立場の方に、精神にもとるような立法措置をとるようなつもりはないか。あなたの方はILO条約批准するときには労働組合を弱める、こういうことを目的にした手続法を非常に熱心にやられましたから、今回はそういうことはないか、お聞きします。
  14. 北川俊夫

    政府委員北川俊夫君) 批准につきましては、今国会批准案件が出せるよう、近々事務的な手続を進めて閣議決定をお願いすることになろうと思います。  次に、八十七号条約批准に関連して、国内関係法令整備をしましたことを御指摘の上で、労働組合の力を弱めるというようなことをしたんではないかという御指摘でございますが、その点は私たちはそういう事実はないと考えておりますが、その点はともかくといたしまして、今回の場合、人権規約批准に伴って、これに関連する法制の変更ということは現在のところ考えておりません。
  15. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、外相が署名をされた。そしてそれなりに政府としてはこの人権規約を受け入れるということになったんでありますから、いま言われた三つ留保条項については、これは将来改正がされる場合に受け入れる用意がある。いまこういう状態でございますね。公の休日についてお金を払うことについて、スト権の問題について、無償教育について、これらについては、国内法が変わったならば全面的批准をする、こういう態度である。今日のいわゆる国の法律上から留保条項をつけておるんであって、将来にわたっての問題ではない。現状受け入れるとすれば三つ条項が合ってないから留保しておる、それ以外の何物でもない。といいますのは、あなたの方は、六月の中旬ごろに、いわゆる専門懇から出た、専門会議の、中間報告といいますか、結論といいますか、出たときのことについては、総理大臣が、尊重すると。それを見てみますと、民間形態にならなければスト権を与えない、こう言ってますから、あらかじめそういうことで先取りをして、国際人権規約をいわゆる批准をするという名において、これについて政府としての回答を出しておるんではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  16. 北川俊夫

    政府委員北川俊夫君) 国際人権規約に関連して、三つ留保条件をつけておりますのは、現行法制人権規約趣旨に照らして抵触するところがある、そういう理由から三つ留保条件を付したわけでございまして、先生御指摘のように、将来、現行制度法制というものが変わりまして、批准できる条件になれば、留保条項を削除するということはあり得ると思います。
  17. 片山甚市

    片山甚市君 それでは、ILO八十七号批准のときの手続のような、国内法改正というか、改定というようなことをもって、国会に対する批准手続をとるということは、国際人権規約に関してはない、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  18. 北川俊夫

    政府委員北川俊夫君) いまお答え申しましたように、三つ留保条件については、現行法制あるいは現行制度と反しておるわけでございますから、その法制がこの人権規約に合致する状態というのは、いまの法制が変えられる状態に至ったときだと思います。したがいまして、スト権の問題、あるいは公の休日に対する報酬問題等につきまして、そういう状態になるということは、やはり法制改正するということがうらはらとなって出てくるんではないかと思います。
  19. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、私のお聞きをしたかったことは、国際人権規約の中に、いま禁止をしておるという公務員公企体労働者等スト権については、現法律の中に禁止をしてあるから、それは留保条項をつけておる、それ以外の何物でもない。新しく法律をつくって、さらに手続上の問題でそれを制約するようなことはいまない、こういうように考えてよろしゅうございますか。
  20. 北川俊夫

    政府委員北川俊夫君) 今度の批准契機としまして、さらに規制を強化するというような考え方はございません。
  21. 片山甚市

    片山甚市君 スト権の問題は、それぞれ関係機関関係者議論をしておる最中でありますから、ここの場をかりて余り深く内容についてタッチすることを私は好みませんから、このぐらいにいたしますが、ILOの第六十三回総会における公務員会議における討議の一部については、大臣が言われました、決意について。そこで、今度のいわゆる総会で、先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、いわゆる六十三総会で言われたことから、いわゆる六十四総会でまとめられる段階では、さらに日本の国の政府として、これを尊重していくような形に、具体的に説明をしてもらいたいんですが。
  22. 石井甲二

    政府委員石井甲二君) 六十三回のILO総会におきましては、いろいろの活動がございました。たとえば公務の問題につきましては、先ほど大臣が御答弁を申し上げましたような経過をたどっております。また、看護職員につきましても、看護条約についての採択が行われた。あるいは労働慣行につきましても同様でございました。また、労働行政につきましては一次討議が行われた。あるいはその他いろんな問題がございましたが、その一連の六十二回の総会に引き続いた問題について、今度の総会においても当然のことながらこれが継続いたしますので、従来の経過を踏まえながら対処をしていくということになろうかと思います。
  23. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、大臣、今度の六十四総会に臨むに当たっては、それぞれの国が受け入れられやすいような条件を盛った条約あるいは勧告が作成されるようにと、こうおっしゃっているんですね。日本の国としては、いままで討議された、六十三総会で言われたようなことについてはおおむね了解をされる立場なのか、否定的な立場なのか、こういうことを聞いておるのであります。余りいいかげんなことを聞いていません。六十三総会でおおよそまとまり始めましたね、ありましょう。私、詳述しなくてもわかっているから言わないんですよ。むしろ、ほかの委員皆さんは、何だ、あんな質問しかしなくて、と思うけれども、あなたならびんとくるように言うてあるはずです。だから、それであればそれは尊重されるのか、いわゆる後手に回って、よその国の先頭に立って、もうあんなものは結ぶなと、うちは困るんだから、よその国はいいけれども日本は困るんだと言って、泣き言を言って回るのか。むしろ先進国らしくやってもらいたいんです。先ほど申しました国際人権規約でも、それでは先進国であれをいままで批准してない国はどこなんですか。二つ聞きましょう。  いま聞いたのは、一つは、あなたたちは、六十三総会討議されておおむねまとまり始めたものがありますね、これは尊重されていくのかどうか、こういうことが一つです。二つ目に、国際人権規約というようなものを結んでいない先進国というのはどこの国ですか。お答えください。
  24. 石井甲二

    政府委員石井甲二君) 六十二のILO総会主要議題の継続の問題の一番大きな問題は、先ほど大臣からお答え申し上げました公務員労働基本権に関する国際文書の問題であろうと思います。これにつきましては、先ほど大臣からも申し上げましたように、今度の六十四ILO総会におきましては、第二次討議のために文書案が準備されているわけでございまして、これにつきましては、先ほど大臣お答え申し上げましたように、広く各国に適用される場合に実現可能な内容を持った、弾力性を持ったものであるべきだということを従来から主張してまいっておりますが、なお第二次討議の現在準備されている文書案につきましては、わが国公務員制度現状を踏まえながら、広く各国に受け入れられるような文書になることが望ましいという考え方対処をいたしてまいりたいと考えております。  それから次に、国際人権規約で現在いわゆる締結をしてない国でありますが、主要な国を申し上げますと、A規約につきましては、フランスベルギーインドオランダというようなところであろうと思います。それから、B規約につきましては、フランスベルギーインドオランダ、オーストラリアというようなところがまだ締結をしておらないということでございます。
  25. 片山甚市

    片山甚市君 まあ、EC各国においてもそういうことでありましょうし、それぞれの国が批准されておって、日本の国は経済成長にはうつつを抜かすけれども、国民の、いや国際的な人権を尊重できないのは、日本におる在日朝鮮人あるいは韓国人、こう言われる方々人権のこともおろそかにしておったということが明らかだ。われわれは門戸を開放して、経済的には物を売りたいという考えがありまして、よその国からの人たちを受け入れる度量がない。一つの例で言えば、ベトナムの難民の方が来ても日本の国では住まれないようにしてある、生活ができないようになっておる、こうあります。私は日本の人々がよその国に行って住めれるようになっておるけれども、日本の国では外国の人が来てゆっくり落ち着いて日本国民になって暮らせるというふうな気風も状態もない。こういうことで、物だけ売り出して貿易で金をもうけて、こんなことしとったら日本の国は大変だと、こう考えるからです。国際人権規約の問題についてなぜこれほど執拗に聞くかというと、これは皆さんの力よりもいろんな外圧があって、そしてようやく結ぶようになる。こんなことは、ドライヤー勧告受けて公務員団結権をようやく認めた、こういうようなことになる。こういうことを知っておる者にとって、はだ身で感ずる者にとっては、もう少し労働大臣は前に出て労働者やそういうものについての状態を守るべきだと、こう考えておるんであります。大臣の所見をお聞きしたいと思います。
  26. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) いろいろ御意見、また私もお答えを先ほどいたしたわけでございますけれども、やはり基本的には私は広く世界各国から受け入れられる原則というものを、これから踏み外すことはこれはもうもちろんすべきではないと思う。各国が受け入れられる可能性のある方向努力をする。ただ、それぞれの国々事情というものがございます。法制上の事情、いろいろあるわけでございますから、それはやはりそれぞれの国の社会的、歴史的な背景の上に立った制度でございます。そういう面において、細部にわたっていろいろまだ詰めなきゃならぬ問題があり、また日本の場合はやはりこちらに批准する意思表示をしたら、それを国内法との整合性においてきちょうめんに実行に移すという、こういう姿勢でずっといままで臨んでまいったわけでございまして、よその国がどうこうということをあえて言おうとは思いませんけれども、日本は律儀にきちんと批准したものは徹底的にこれが遵守できるように国内体制法制整備していくという、こういうことでありますから、やはり受け入れる以上は国内法との整合性においていろいろ検討していく時間的な余裕が必要であると、このように考えておるわけでございまして、私は御指摘の点、やはり前向きでいきたいと。ただ、たとえばこの公務員スト権の問題、これは長い間の懸案でございまして、労政のやはり決着をつけなきゃならぬ問題でありますけれども、これがいまだにこの問題を取り扱う機関として公共企業体等基本問題会議において結論がまだ出ておりません。そういうこともございまして、やはり慎重に対応をしていきたいと、このように考えるわけでございまして、その点はひとつ御理解をいただきたいと、このように思っておるわけでございます。
  27. 片山甚市

    片山甚市君 それでは、いま申しましたILO第六十四総会に臨むに当たって、大臣は繰り返し各国が受け入れられやすい原則をと、こうおっしゃった。各国のことはいいですから、日本の国が受け入れられにくいものをつくられとるのかどうか、これを聞きたいんです。よその国のことよろしい、まだね。日本の国としては受け入れがたいものがつくられ始めておるのか、大体受け入れる用意を持っておるのか、こういうことについて官房長でもよろしいよ、大臣が答えられなかったら。私の質問はそんな一般論を聞いとるんじゃないです。早くしてくださいよ。ちょっと言うとわかるでしょう。原則的に、日本政府は今回勧告されるだろう、また条約としてされるものについては尊重していくような立場なのか、いやこれはもう引っくり返そうと思って一生懸命裏でやっとるんだというのかどっちか、こういうことです。どちらですと言ったら、はいと言うんですよ。だから官房長でもよろしいし、大臣でもよろしいが、きちんとした一言をお答えをいただきたい。余り詳しいことを聞いとるんじゃないんです。
  28. 石井甲二

    政府委員石井甲二君) 特に、六十四回の総会においての公務員の問題であろうかと思いますが、経過を申し上げますと、最初の第一次案のときからのいろんな経過がございますが、第二次案につきましては、これから討議をされるということでございます。まあ第一次案に比較をいたしまして、かなり弾力的な内容になりつつあるように感じますけれども、いずれにせよ、今後ILO総合あるいはILOの中で第二次案の討議が行われる段階でございますので、ここで詳しく申し上げるだけの――これからのプロセスを見る必要もございますので、そういうことでございます。ただ、先生御指摘のように、ILOにつきましては全体として日本におきましては、大臣が先ほど御答弁申し上げましたように、前向きに対応するという基本姿勢は変わっておらないというふうに御理解願いたいと思います。
  29. 片山甚市

    片山甚市君 官房の方が前向きに取り組んでおるはずだ、取り組むと、大臣もそう先ほどおっしゃっておったようでありますが、これは大臣よろしゅうございますか。
  30. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) わが国公務員制度現状というものを、改革すべきところは当然改革しなきゃなりませんが、その現状を踏まえつつ、各国が理解し納得のできる方向というものを、私は今度のILO総会において確認をして帰りたいと、またそのようなひとつ方向づけをして帰りたいと、このように考えておるわけでございます。
  31. 片山甚市

    片山甚市君 わかりました。私は日本政府代表ですから、各国のことはいいけれども、日本の国として納得して帰ってもらいたいと思ってます。わかりました。国連総会事務総長みたいなお話を承って。私は主務大臣として、また日本政府代表して、日本として納得して帰りたい、そして一緒に政労使が円満にやりたいとおっしゃるかと思ったが、外国のことをいろいろお考えになるようでありますから、りっぱな大臣だと思います。私は余り外国のことを考える前に、まず日本の国ができるのかと。できるとなったら、それは各国にどう適用できるのか、こういうように考えるのが私たちの考えだと思います。まあそうじゃなくて、外国の貿易のことを考えたり、外国の政治を考えたりするような話ですから、これ以上聞きません。しかし、私は何回も念を押しておるのは、労働大臣また労働省がどのようなお考えでジュネーブに行かれるのか、こういうことについての本心を聞きたいからです。本心がわかりましたから、これ以上聞きません。労働者も余り幸福になりませんよ。やっぱり政労使というのはそれだけのいわゆる立場があって行くんでありますから、労働者側に立つわけにも全部いきませんし、資本側につく、経営者代表だけにつくわけにいきませんが、日本の国としては労使が円満にやっていける国際的な労働基準を実行したい、こういうことだと思うのです。アメリカのためにとかドイツのために考えるとは思わなかったけれども、先ほどから外国のことばかりおっしゃって、よろしゅうございます、それ以上聞きませんから。そのかわり覚えといてほしいんですよ、私は。何回も言いますけれども、労働省が働いておる者、国民の大変な部分の生活を守っておるんだと。いわゆる雇用労働者を数えてみても五千万を超える人たち、これは直接関係しておるんでありますから、よその省とまた違った意味の重さなり、しかもそれは労働者を守るという原点であって、政府でもいろいろ違うんであります。通産省とは違うのであります。けど、まあ大臣のお考えは通産省もおるし、どこもおるようでありますが、私はILOだけは労働者を守りながら、そして資本あるいは政府がどういうふうにカバーしていくのかと、こういうことだと思ってきました。原則的な考え方はと言われてもわかりません。演説はこれくらいにしておきます。お答えを求めようとは思いません。言っても同じことを言われるので余り胸くそよくないんです、私の気持ちは。いい答えをしてくれと言っているんじゃないんですよ。日本の国のことを考えずに外国のこと々考えて、今度やりますとか、日本の国は、言うまでもなく、帰ったら、いまの政労使がテーブルについて話ができるように、精いっぱい努力してきますとか言うかと思ったら、それを言わないということさえわかればいいです、この席上通じて。ILO日本代表に私らの友達も行きますから、よく伝えておきましょう。向こうへ行ってからそんなこと言われてもしようがないんです。園田外務大臣は、御承知のように、軍縮では、八月六日の日を、これを国際の軍縮デーにしようじゃないかと言いながら、みんなから賛成々受けて帰ったそうです。帰ったらすぐにやってもらわにゃいかぬですね。外国行ったときだけ仲よくするわけにいきませんで、日本の国の中へ帰ったときもやってもらいたいと思っています。ジュネーブでのILOのいわゆる問題が、政府政府労働者労働者、資本家は資本家、経営者は経営者で分かれてやっておることはわかりますけれども、岡内の問題が一致しなければ、国外へ行けば非常に大きなひずみが出る。これをいまから、行くときから政府はそれをどのように調節をするのかということについて、少なくとも労使が一体となってそれぞれの所見が述べられるというふうに思ったんですが、できませんから、このくらいにしておきます。  一番問題になりますところの雇用失業問題についてのことをお聞きをしたいんですが、国内における雇用情勢はどういうようになっておるか、まず現状についての御説明を願いたいと思います。
  32. 細野正

    政府委員(細野正君) 現在のところ、雇用失業情勢は、総じて申し上げますと、なお厳しい情勢が続いているという状況でございます。  ことしの四月現在で見まして、就業者の数は五千四百十三万人ということで、前の年の同月に比べまして四十八万人増加しているという状況でございますが、依然完全失業者が百二十三万人、季節調整をいたしました完全失業率も二・二%ということで高い水準にあるわけでございます。他方、有効求人倍率を見ますと、〇・五五倍ということで、若干、何といいますか、三月に回復をしていたその水準を続けているわけでございますが、しかし、依然として大幅な求職超過である点においては変わりがないわけでございます。  今後におきましても、現在の積極的な景気対策と相まちまして、いろいろな雇用対策を推進いたしまして、景気の回復が一層着実化するのに伴いまして、雇用失業情勢も徐々に一般的には改善をしていくんじゃないかというふうに見ているわけでございます。
  33. 片山甚市

    片山甚市君 いま御説明があったように、完全失業者は本年の二月でおおよそ百三十六万人、四月で百二十三万人、三月には百四十一万人、過去二十年間で最も大きな状態、緊急な最悪な状態になっておると思います。しかも、雇用情勢の実数としては、表面上の労働経済指標よりははるかに悪く、大量の過剰雇用があり、数百万の潜在的な失業者、また半失業者が存在しておると言われているんですが、ことに男子雇用者が大幅に、五十五歳以上の方々雇用がうんと減っておるなど、中高年齢者の雇用の対策は非常に重要な問題になっておると思います。  労働省は、さきに昭和五十三年度の年次雇用計画を発表されました。本年度の重点施策及び具体的な対策をどう立てておるのか、お聞きをしたいと思います。
  34. 細野正

    政府委員(細野正君) 御指摘のように、五十三年度の年次雇用計画を発表いたしておるわけでございますが、その重点は、失業の予防と再就職の促進と雇用機会の拡大ということの三点を重点としているわけでございます。  具体的に申しますと、雇用安定資金制度を弾力的に適用いたしまして失業の予防を図ってまいります。それから、失業を余儀なくされた方々に対しましては、雇用保険制度を積極的に活用する、あるいは特定不況業種の離職者臨時措置法の適用を、これも弾力的にやっていく。それから、職業紹介活動を充実するというふうな形で再就職の促進を図ってまいりたいというふうに考えているわけでございますが、さらに関係省庁とも密接な連携をとりまして、今後の成長産業や不足職種等につきましても、的確な情報を把握しまして、これに即応した形で職業訓練体制の整備を図っていく、あるいはその機動的な運用に努めるということをやってまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  さらに、ただいま御指摘ございました中高年齢層の問題が非常に問題でございますので、そこで、これらの人を雇い入れる事業主に対する助成措置を本年度から創設をいたしたわけでございまして、今後とも製造業の中でも付加価値の高い産業、あるいは現在非常に雇用が伸びております第三次産業、そういうところに重点を置いて、この制度を活用いたすことによりまして雇用機会の拡大を図ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。  さらに、失業者の多発地域がところどころに生じておりますので、御存じの失業者の吸収率制度を活用しまして、公共事業における就労機会の確保にも努めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。  さらに、こういうもののほかに、高年齢者の問題あるいは身体障害者の問題等につきましても、御存じの雇用制度を中心にしながらも、各種の助成制度あるいは指導というものを強化して、いろいろな地域問題、あるいは年齢なり、あるいはハンディキャップを負った方というふうな方々に応じた、きめの細かな対策を講じてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  35. 片山甚市

    片山甚市君 局長のお話の中に、第三次産業にこれから吸収していきたいとおっしゃっているんですが、私の手元にある日本経済新聞の五月三十日の欄によると、「第三次産業雇用吸収 全体では期待薄」と、これは住友銀行の調査でありますが、その中で、「第三次産業雇用吸収力についての調査報告をまとめた。それによると、医療、保健、教育など福祉関連の公共サービス部門は今後も雇用機会を拡充する余地が大きいが、第三次産業全体としては必ずしも十分に雇用機会を供給していけるとはいえず、製造業の雇用維持には賃金を抑制しつつ労働時間を短縮するといった〃選択〃が必要になる、」と、こういうまとめをしておるのでありますが、いま、あなたたちがこの間から、職業訓練法をやるときに第三次産業について求めていきたい、こう言ったから、それじゃ、パチンコのくぎ打ちの訓練もそのうちに入るのか、こう言ったら、余りまともに答えなかった。私も余りそんなことはやゆ的になるから言わなかったけれども、どうも第三次産業がそのように伸びていくように見えない。  そこで、福祉関連のところでは大体そうだと、こういうことになりますが、局長はどういうふうにそれについてお考えですか。
  36. 細野正

    政府委員(細野正君) 従来のところ、三次産業についていろいろな新しい職種が起きたり、あるいは新しい部門が起きたり、場合によっては、従来の第二次産業部門が三次産業部門を切り離すことによって、そちらの方の雇用が拡大するというふうな傾向が過去においてありました。現在もその傾向は続いてはいるわけでございますが、しかし、御指摘のように、一方において三次産業もある程度、何といいますか、雇用の伸びが鈍るということもある程度想定をしておかなければいかぬわけでございまして、そういう意味で、先ほど申しましたように、各種の助成措置を強化することによってそういう雇用機会を刺激をしていく、あるいはそれに対応した労働者の誘導施策というようなものを強めていくというふうなことを、検討してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  37. 片山甚市

    片山甚市君 現在設置されている雇用対策協議会としては、中央雇用対策協議会、地方雇用対策協議会、地域雇用協議会及び産業雇用会議、地方雇用会議等がありますが、これらの協議会等の設置の目的と検討協議事項及びその具体的な雇用対策等について、その内容を御説明願いたいと思います。
  38. 細野正

    政府委員(細野正君) 御指摘のように、雇用問題について検討するためのいろいろな会議があるわけでございまして、一つのカテゴリーとしましては臨時雇用対策本部がございます。これは現在中央と地方と両方にあるわけでございますが、中央の方で申し上げますと、現在のような非常に深刻な雇用失業情勢対処しまして、労働省の名所、各局が緊密な連携をとって総合的な雇用対策を、しかも機動的に対処してまいりたいというふうなことで本部が置かれているわけでございまして、そこにおきまして総合的な雇用対策の企画、推進をやってまいりたいというふうに運用されているわけでございます。  同じような意味で、各都道府県におきましても、単に労働関係の部だけではなくて、産業関係の各種の部とも連携をとり、しかも知事さんなり副知事さんなりの首脳の方にキャップをやっていただいて、各都道府県段階において総合的な雇用対策を講ずるようにしてまいりたいというのが臨時雇用対策本部でございます。  一方、雇用対策協議会というのがございまして、これも中央と地方両方にあるわけでございますが、これは、たとえば中高年齢者の雇用の促進というふうな問題、あるいは技能、技術労働力の養成、確保の問題、そういうふうなやや具体的な当面の問題につきまして、産業界なり、あるいは労働団体なり、あるいは関係行政機関なり、それぞれにおきまして検討、協議をするための組織でございます。これはいま申しましたように、中央におきましては中央雇用対策協議会というのがございますほかに、各都道府県におきましても同様な問題について地方雇用対策協議会をやっていただいているというふうな状況でございます。  そのほか、いわゆる雇用会議というのがございまして、これはいま先生の御指摘ございました年次雇用計画なり、あるいはそれのもっともとになります雇用対策基本計画なりというものに即しました雇用対策を推進する、あるいはそれについての御理解をいただく、こういう趣旨労使及び関係行政機関を構成員としまして、雇用の実情の把握と意見交換を行うという趣旨のものでございます。これは中央のものは産業別に置かれておるわけでございますが、都道府県におきましても、これは産業というふうに分けずに、地方一本で雇用会議をやっていただいておるというふうな状況でございます。  なお、地域雇用対策連絡会議というものを最近において設けたわけでございますが、これは造船業等を中心に構造不況業種が集中している地域等におきまして、あるいは円高の影響が非常に深刻になっておるというふうな地域におきまして、そういう地域に大きな失業問題が起き、その影響がその地域全体にも及んでいるというふうな、そういうところにおきまして安定所ごとにその地域のいろいろな行政機関と連携をとって、先ほど申しましたような情報の収集のほかに、総合的な施策を講じていくというふうなもののために設けられているものでございまして、いま申しましたように、構成員なり、それから扱います対策事項なりというものがそれぞれ異なっておりまして、それにその検討事項に対応した組織なり構成、運営をやっていくという状況でございます。
  39. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、たとえば兵庫県では産業雇用政策会議、こういうものをつくっておるのと、省の方で推進をしてきました雇用対策協議会あるいは産業雇用会議等は十分な連携をとって、そこで施策がいくようになっておる。こういうように理解をしますが、先ほど申しましたように、五十五歳以上の方々雇用が昨年と比べても、数字にして幾らでございますか、十五万人ぐらい減っておったかと思います。相当ですね、若い人の雇用はふえておる。こういうことでありますから、中高年齢に対する特別の措置をとってもらわなきゃならぬ、これは幾ら努力してみても過ぎることはない、こう思うのです。  そこで、実は本年の二月に当委員会で、大阪府及び兵庫県における構造不況産業雇用等の諸問題について調査報告を行っておるところです。また運輸委員会、衆議院の社会労働委員会も同じように調査を行っております。労働省自体が特定地域における雇用情勢についての調査結果を報告しておりますが、これはことしの三月二日です。これが調査報告に基づきいかなる措置を講じられておるのか。その内容について御説明願いたいと思います。
  40. 細野正

    政府委員(細野正君) 御指摘ございましたように、ことしの三月に雇用失業情勢が特に厳しい地域につきまして、大臣の特命によりまして、政務次官を長としまして調査団を派遣しまして、その実態を把握をいたしたわけでございます。主として造船関係の地域が非常に問題が厳しいわけでございまして、そういう意味で造船不況に伴う雇用対策としまして、雇用安定資金制度の対象業種にできるだけ弾力的に指定をしていく、そのことによって失業者の発生を予防すると同時に、円滑な職業転換を図ってまいるというのが一つの対策でございます。  さらには、特定不況業種離職者臨時措置法につきましても、造船関係につきましては、単に狭い意味の造船業だけでなくて、かなり広く造船関係の業種を包括的に指定をいたしまして、したがいまして、下請関係についても漏れることのないようかなり弾力的な運用をいたしているわけでございまして、そのことによって離職者の生活の安定と再就職の促進を図ってまいりたいというふうな措置をとっているわけでございます。  さらに、先ほど申しましたような同じ離職者の中でも、年輩者の方の問題が大きゅうございますので、そういう中高年齢者を雇い入れる企業に対する助成制度を新設しまして、これによって雇用機会の拡大に努めていこうというふうにしているわけでございます。  さらに、失業者の多発地帯におきましては、すでに中高年法によって特定地域というものが指定されているわけでございますが、さらに離職者臨時措置法によって五つの地域を追加指定をいたしまして、これらによりまして公共事業への失業者の吸収率制度を積極的に活用するということにいたしているわけでございます。  このような各種の制度を活用しますとともに、それぞれの事情に応じて各都道府県もいろいろな工夫をこらしていただいているわけでありまして、そういう各都道府県の御努力と、私どもの設けております制度とを総合的に運用して対処してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  41. 片山甚市

    片山甚市君 それで、それぞれの地域の情勢について調査をされたうち、まず今治地区についてでありますが、造船業離職者は今後さらに増加をし、三月末には三千八百人程度になる見込みであると言われています。これらの者の雇用保険が終了するのは八月から九月になると思いますが、情勢が深刻化するのではないか、そういう報告であります。これに対して具体的な施策はどうとられるのかについて聞きます。  すなわち、八月、九月になれば雇用保険が切れる、それから後どうなるのかということについてお答えを願いたい。これが対策として、局長の方から言われるように、職業訓練の機動的弾力的な実施を要望しておられるについて、その内容及び再就職への連動についての措置を具体的にどうとられるのかお聞きをしたいと思います。
  42. 細野正

    政府委員(細野正君) 今治地区は、五十三年四月末現在で有効求職者が四千五百三十八人あるわけでありますが、その中で造船の関係は二千百五十三人でございます。これらの方々は現在雇用保険を受給中なわけでございます。  これらの方に対する雇用対策としては、先ほど申しましたように、離職者臨時措置法を適用しまして、これによって御存じの雇用保険が延長になる、あるいは職業訓練を受ける方に対しては訓練手当を支給する、あるいは訓練所に入るのに時間がかかる場合には待機手当を支給するというふうな形で、離職者の再就職の促進を図っているわけでございます。  それから、訓練につきましても、単に公共訓練校の中の施設内の訓練だけではなくて、委託訓練なり速成訓練を拡充しまして、機動的弾力的な訓練を実施しているわけでございます。  この点につきましては、知事さんが非常に熱心でございまして、県の訓練校等も非常に活用し、あるいは県立のいろんな学校の施設等も活用される等の形で、非常に訓練に熱心に機動的な措置をとっていただいておるようでございまして、そういう形で県が非常に積極的に訓練とそれから再就職の促進に力を入れていただいているわけでございまして、私どもも非常に知事さんの御努力に評価をしているわけでございます。その際に、先ほど申しましたような中高年齢者の雇用開発給付金というようなものも、そういう努力をしていく過程で年輩者の方が採用される刺激なり奨励になればということで、この制度の拡充をも図ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。  なお、緊急にどうしても一時的なりとも所得が必要であるというふうな方に対しましては、先ほど申しましたように、公共事業への就労促進を図って、そういう方々の一時的ないわば緊急避難的な就労の場を確保してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  43. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、八月から九月に大体雇用保険が切れるということで、調整が非常に厳しくなるということについては、幾つかの施策を積み重ねるので、そうして職業訓練を受けた場合、就職できるような見込みを立てておるので、そう心配しなくてよろしい、こういうことでよろしゅうございますか。
  44. 細野正

    政府委員(細野正君) 先ほど申しましたように、それぞれの地域の実情に応じて、たとえば今治の場合には知事さんが非常に就職先等もお考えいただきながら、その訓練というものを非常に熱心にやっていただいているわけでございますが、しかしその場合でも、今治地区内で果たしてどれだけの再就職ができるかという問題があり、かたがた、他地域で再就職が可能としても、労働者が移動が可能かどうかという問題もございまして、いま先生御指摘のように、非常に楽観的な状況というわけにはまいらないわけでございます。しかし、先ほど来申しておりますように、こういうものを、施策を総合的に活用して、極力再就職の促進を図ると同時に、万一その再就職がむずかしいという方が出た場合に、しかも移動が不可能であるというふうな方が出た場合に、先ほど申しましたような緊急避難的な就労の場として、公共事業への就労の確保を図ってまいりたいというふうな考え方でいるわけでございます。
  45. 片山甚市

    片山甚市君 いまお答えをいただいたように、今治地区の離職者は地元の人が非常に多く、特に中高年齢の方が六割ということになっておりまして、地元就職を望む。しかし、愛媛県全体から見ると、ことに今治の公共職業安定所の管内における有効求人倍率を見ると、きわめて悪いということを聞いておるんですが、それはどのぐらいの割合でありますか。
  46. 細野正

    政府委員(細野正君) 今治地区の有効求人倍率でございますが、これは昨年の中ごろまでは大体〇・五程度でございましたが、最近に至ってやはりこの造船等の離職者の発生に伴いまして、この有効求人倍率が低下してまいりまして、現在時点といいますか、では〇・四を若干切るような状況になってきているわけでございます。
  47. 片山甚市

    片山甚市君 中高年齢の方々の就職が非常にむずかしいと同時に、いわゆる求人倍率というものを見ても大変だと。そうして移動がきかないということでありますから、もう一度お聞きするんですが、今治地区が本年の三月の二十日の日に特定不況業種離職者法の適用を受けて、特定地域に指定されたと聞いています。四月一日から適用されておるのですが、これによる公共事業の実施状況、内容及び就労対策、それから吸収率の達成見込みなどはどのようになっていますか。
  48. 細野正

    政府委員(細野正君) 御指摘のように、四月一日から離職者臨時措置法の指定地域に指定をしまして、吸収率の適用をいたしているわけでございますが、しかし現在のところ、造船関係の離職者等はまだ雇用保険の受給中の方がほとんどでございまして、そういうこともありまして、公共事業そのものの実績の数というのはまだかなり少ない段階でございます。しかし、今後は、先ほど申しましたように、あるいは先生の御指摘がございましたように、問題が発生してくるという可能性が強うございますので、そういう情勢の推移を見ながら関係機関との連携を密にしまして、積極的にこの吸収率制度の活用を図ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  49. 片山甚市

    片山甚市君 非常にしつこく聞くんでありますが、今治地区におけるような失業の多発に対しては、再就職の困難なところにおいては特に雇用機会の創出、まあ拡大のための特別措置、特別な措置が必要だというふうに考えるのですが、先ほどから幾つか並べておられますが、この地域では特にこれから特別にこのような措置をすべきだと考えておられることについて述べてもらいたい。
  50. 細野正

    政府委員(細野正君) 愛媛県では、公共事業の実施に当たりまして、その地域配分等におきましてもこの今治地区に対して非常にこの事態を重視して、重点的な配分等もお考えでございまして、そういう点についての関係の省庁に対する公共事業実施についての要請も愛媛県から出ておりまして、その愛媛県の要望は関係の省庁も十分これを尊重して決めていきたいという考え方でございますので、まずそういう意味での公共事業の配分、それへの吸収の確保という点については、かなり実現性が高いんではないかというふうに私どもは期待をいたしておるわけでございます。そういう制度と相まちまして、先ほどの助成金制度による民間への吸収という二本立てで対処してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  51. 片山甚市

    片山甚市君 公共事業の重点的配分というか配置等、県が努力をすることになり、国の制度としての助成を行うと、そういうことはいま考えられるということで確認しておきます。  次に、長崎・佐世保地域における唯一の基幹産業である佐世保重工が千八百人の整理案を発表して、今日再建できるかどうかということになっておるのですが、そのために雇用不安が拡大しておるという報告を聞きますが、しかしその地元出身の中高年齢者が大半を占めておるので、今治と同じように県外へ就職あっせんをされてもむずかしい状態だと聞いています。そこで、職業訓練による地元産業への転換促進の要望についてどのような措置を講じて、再就職がどういう状況に進んでいくのかですね、佐世保・長崎について。大変商工委員会等でも運輸委員会等でも相当議論をして、不況業種の問題やっておるんですが、それについて省としてのお考えを述べてもらいたい。
  52. 細野正

    政府委員(細野正君) 佐世保重工につきましては、ことしの五月二十六日現在でございますが、希望退職した者が千六百八十一名でございます。このうちで、長崎県内の安定所に出頭して求職の申し込みをされた方が千四百十名で、全員が雇用保険の支給を受けているという段階でございます。  なお、特定不況業種離職者臨時措置法に基づきます求職手帳の発給状況を見ますと、いま申し上げました千四百十名全員が手帳の発給を受けておるわけでございます。現在のところ、すでに百九十四名の方が再就職をしておられるわけでございますが、そのほか、まあ職業訓練を受けておられる方が二十七名いらっしゃるというふうな状況でございまして、先ほど来申し上げておりますような離職者臨時措置法による特例措置等の適用等、助成金の適用それから若い方はできるだけ、まあ総体的にという意味でございますけれども、移転をしてでも再就職をしていただくための援助措置等も強化をしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  53. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、雇用失業の情勢は厳しいまま長期にわたっておりまして、現行のいわゆる雇用対策制度によっては離職者についての救済措置というのは、限度が、いまのような状態ではあると思うんです。  再就職を促進するための対策について、今後さらにどのようなことをやるのか、これについてお聞きします。
  54. 細野正

    政府委員(細野正君) 基本的には、やはり景気全体が回復の足取りを確実にしてくるということが非常に重要なことだというように考えているわけであります。そのことによりまして、造船その他の一部の雇用問題を大きく抱えている特定不況業種、これはやむを得ないといたしましても、その他の産業におきましては、たとえば現在の交代補充要員すら埋めないみたいな形で行われる減量というふうなものが、ある程度緩和をされること。それから、他の産業におきましては、むしろ従来の高度成長のときに比べればテンポは落ちるにしても、ある程度雇用が拡大をしていくというふうな、そういう情勢が出てまいりますれば、いま申し上げましたような地域におきましても、ある程度の再就職ということの可能性が出てくるわけでございまして、そういう意味での全体としての景気の確実な回復ということ、それから、それの持続ということが、私どもはやはり基本的に重要なことではなかろうか。幸いに、昨年の十一月ごろ以来、経済関係の指標はいずれも着実な回復の足取りを示し始めておりますので、それに私どもは強く期待しているわけでございます。そのことと相まちまして、先ほど来申し上げておりますような諸制度を活用することによって、再就職の促進を図る。そういうことの非常に困難な、一部の移転が非常にむずかしい、しかも、緊急に臨時の所得というものはどうしても必要だという方については、先ほど申しましたような公共事業への就労によって一時をしのいでいただくというふうな形で、私どもとしてはこの難局を乗り切ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。  なお、その後の推移を見ながら、先ほど申しましたように、各府県におかれましても、公共事業の実施の仕方とか、自分の県で独自におやりになる県単事業の配分の問題、そういうものにおいても、こういう雇用対策との関連を十分意識してやっていただくということも、これも一つの大きな対策となるわけでありまして、そういうものを総合的に活用して対処してまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  55. 片山甚市

    片山甚市君 後でまた御質問しますが、やはり大臣のよく言われるように、いま仕事がある、それを少しは分け合うようなこともという意味の時間短縮や休暇の問題や、相当労働基準法に関係する問題含めた措置が、大臣の方からも意見を述べられていますから、後から触れますから、いまはしませんけれども、やはり全体の問題として、雇用をどのようにつくっていくか。先ほど、福祉関係では若干雇用が第三次産業としては伸びていくが、一般の第三次産業は、住友銀行の調査によればむずかしいのじゃないか、こう言われておる。そうすると、やはりそれは公共的に公の立場からつくられてくる問題だと思いますから、そのあたりについては一層力を入れてもらわなきゃならぬ。いわゆる国全体がつくるというよりも、サービスの部門につきまして公的なサービスが今後広がっていく、こういうことで、その雇用の安定を図らなきゃならぬ。特に、五十五歳とか五十歳以上の方々が失職をしていくということは、年金までの間の綱渡りができないということで、非常に若い人の失職よりは、私は憂慮するわけです。若い人は、まだ就職する機会があるけれども、年いった人は実は年金への綱渡りができない。非常に困難である。掛金によって年金が変わるような世の中でありますから、そういうことでも非常に意見があるところです。ですから、それは私の意見として述べておきますから、十分にくんでもらいたいと思います。  その次に、函館地区についてでありますが、造船関連で約千八百名の離職者に加えて、漁業基地でありますから、三万五千人の季節労働者の就労対策が大きな課題となっているということで、労働省の調査によれば、五つ対策として要望があると書かれています。造船関連企業への優先発注、工事の確保。国、北海道が計画する大型プロジェクト、公共事業の促進による雇用拡大。造船特定地域の指定等による交付税の交付その他の財政援助。地方自治体の行う臨時就労事業に対する金額または高率補助。最後に、雇用安定資金、雇用援護制度の強化と職業訓練の充実。このように書かれおるのですが、これらについて、どのような措置を函館についてとられたか。特に、漁業離職者法による適用状況はどのようになっておるかということをお聞きして、各種給付金の支給状況について詳しくお聞きをしたいと思います。
  56. 細野正

    政府委員(細野正君) 函館地域におきましては、造船業を中心にしましていろいろな不況業種が集中しているために、地域的に問題が起きているわけでございまして、いま御指摘のございました五項目の要望について申し上げますと、まず一つは、造船関連企業の優先発注、それから工事の確保等につきまして、去る三月二十五日の雇用問題閣僚懇談会の席上、労働大臣から官公庁船の早期発注とか、付帯構造物等の需要促進等の大型プロジェクトの推進というような点についての御提案をしていただきまして、この閣僚懇談会の席上におきまして、そういう点についての対策を進めることについて決定をしていただいたわけでございます。  それから、公共事業への就労の促進に努めることは当然でございますが、さらに雇用安定資金制度雇用援護制度等の積極的な活用を図っておるところでございます。  それから、訓練につきましても地元の実情に応じまして、その拡充と弾力的な運営、機動的な実施等について現在努めているところでございます。  そのほかの地方公共団体の財政面にかかる問題につきましては、自治省におきましても、公共事業等について都道府県が行う場合の裏負担の問題と、それから県単事業についても、その財源措置について十分配慮していくというふうな方針をとっておられるというふうに聞いておるわけでございます。  もう一つ、漁業関係の適用状況についでのお尋ねがございましたが、函館地域では、国際協定の締結等に伴う事業離職者臨時措置法に基づきまして求職手帳を発給された方は、四月末現在で十六名ということになっております。なお、これは事業離職者の方が、陸上に求職活動をされる方について十六名ということを申し上げたわけでございますが、そのほかに海から海へということで、運輸省所管関係の船員安定所において求職手帳を発給された方は、このほかに三百七十名いらっしゃるわけです。これらの方は、現在は保険の適用になる方は当然保険の適用になりますけれども、そうでない方については促進手当が支給されることになりますが、その支給の実績等は、ひとつ現在把握中でございますので、数字的にはまだ把握されておりません。
  57. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、函館の五項目のいわゆる対策に対する要望については、おおむねこれにこたえつつある、こたえておる、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  58. 細野正

    政府委員(細野正君) 趣旨は、その実現に向かって努力中であるということでございます。
  59. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、北海道においては一般的な雇用対策のほかに、いま言った国際協定に基づくいわゆる漁業離職者及び季節労働者等の対策が重要だということで、これが特別の対策はとられておりませんか。
  60. 細野正

    政府委員(細野正君) 先ほど申しましたように、地域の実情に応じて、知事さんなりあるいは労働部長さんなりが先ほど申しましたように、諸対策等、それから公共事業なり県単事業なりというものの組み合わせ、あるいはそれの連携を十分とっていただいて、実効のある対策をとっていくというやり方をとっているわけでございます。
  61. 片山甚市

    片山甚市君 お聞きして、今日の厳しい雇用失業情勢の中でも、特に高度不況業種が集中しておるところでは、その実態はより深刻だと思って聞きました。現行制度による失業の予防とかあるいは離職者に対する雇用をさせるというような措置については、一応の制度的な体制は整っておるといまお話を聞いて考えますけれども、長期的な不況のもとでは雇用機会をどうしてつくるのかということについてが非常に大きな問題で、この制度をいじるんじゃなくて、むしろ雇用の機会をどのようにつくるかということでは、政府関係者が相当力を入れないとできないと思うんですが、これはどういう展望を持っておるか。これはもう特に大臣がいままで言われたことですから、大臣に御答弁を願いたい。
  62. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 雇用問題にいかに対処するかということについては、本当に不況脱出とうらはらの関係でもございますけれども、私はそれ以上に日本産業構造の基調が変化を現在遂げつつあるわけでございますから、当然雇用の基調も変化をそれに対応してしなければならぬ、そういう観点から、私は雇用機会の創出ということを積極的に受けとめてこれに対処しなければならないと、このように常日ごろ就任以来考えておりました。先般は衆参両院の院議において、雇用安定に対する決議をしていただいたわけでございまして、まさに私はあの決議の線に沿うて、いろいろ現在対策を検討をいたしておりまして、すでに公にも新聞発表をいたしましたが、これはやはり各省にまたがる問題でございますから、私は政府与党という立場において、党の方にも問題提起をいたしまして、当面急ぐ、即効性のある、また地域的に集中しているこの対策、こういった問題点に対応すること、それからやはりいま申しましたような中長期にわたる産業構造の変化に対応して、日本はやはり物をつくって輸出するということに偏り過ぎておるという、これはやはりお互いの生活を充実していく、生活の質を向上するという面においていわば福祉型産業構造に基調を修正していく、こういったこと。これはやはり日本は資源のない国で、一億二千万が生きていかなければなりませんから、貿易立国という基調を曲げるわけにはまいりませんけれども、余りにも偏り過ぎておる現状に対してはこれを変えていって、そしてそういう方向にサービスがふえていくように体制を整えていくために、その結果、雇用が拡大をしていくという、こういったことであるとか、やはり戦後から振り返ってみまして、自動車産業が非常に伸びたというのも、技術革新をうまく取り入れたわけでありますから、あくまでこの技術開発という、こういった方向に対して雇用の機会を拡大をしていくために努力する大型プロジェクトの技術革新ということ、こういったこと、並びにやはり長期的に見ましてワークシェアリングという考え方、もう一つ、前後いたしましたけれども、やはり日本のすぐれた労働力というものを世界の中にひとつ雇用の場を拡大をして、そして単なる移民ということでなくて、相ともに繁栄するという、こういった方向に向かって日本労働力を海外との雇用と結びつけていく、海外産業発展に協力し合うという、こういうようなことを一応考えまして、いま党の方へ持ち込んでおるわけでございまして、これはやはり皆さん方のまたお知恵を借り、お力を借り、また適当な時分には私は雇用対策閣僚懇談会がございますから、ある程度一つの案がまとまるのを見定めて、ひとつ積極的に雇用安定のための雇用機会創出に内閣としても対応してもらうように努力していきたい、このように考えておるわけでございます。
  63. 片山甚市

    片山甚市君 五月の十二日、労働大臣の私案ということで「現下の雇用失業情勢対処する雇用創出対策について」というものを出されたようであります。一口で言うと、総論はあるが、まず各論がない、見出しはあるけれども、実際本文がないというように思っておる。ところがいまお聞きをすると、それはそれなりにいま討議が始まったところだ、自分の考えだ、こういうふうにおっしゃるのですが、大臣がお考えになっておる基本は、いまの雇用失業問題は日本産業構造が変わるということが前提ですが、雇用の拡大を、福祉産業といいますか、を中心として、また技術革新をそれに伴わせるのでありますが、それをさせるべきだ、こういうふうにお考えですか。
  64. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 福祉型産業構造といいますか、そういった点を十二分に取り入れていく、従来の日本がここまで経済が復興した背景というものを考える場合に、それを全然百八十度転換するというわけにはまいりません。ただ、余りにも物をつくってそして輸出するという輸出依存型の経済体質というものは、バランスのとれた経済構造に体質を変えていくということが必要ではないか、そういうことを通じて雇用機会の拡大も図れるではないか、こういう考えを持っていろいろ工夫をしておるわけでございまして、これは確かに一つの目標であり総論でございます。これを裏づけるのには各省庁の連絡、協調、協力というものがなければ、これが実現をすることはできませんから、これからひとつだんだんに積み上げていく努力を私は私なりに最善を尽くしたい、このように考えておるわけでございます。
  65. 片山甚市

    片山甚市君 労働大臣が主体的にこのようなものを考えられたということについては評価をしたい。ところが、私の方がお聞きするところによると、もなかの皮だけは用意したけれども、中身が詰まっておらない、中身をいまこれから各省庁で詰めるというふうにお聞きをしたと思うのですが、そういうような前提に立ちますと、いわゆるここで提案をされておる「「限られた仕事を分ち合う」ことによる雇用の維持」という意味はどういうことなのか。というのは、大臣がよもやそういうことをおっしゃってないと思いますが、小さいまんじゅうをたくさんに分けて食べてしんぼうし合おうということになるのであれば、これは雇用創出にならないと思っておるのです。たとえば、時間短縮を実施するとしても、付加価値が低められたとして、時間外労働が実際増加する、そして実質賃金が下がる。先ほどのお話のように、お答えがありましたように、われわれとしては労働時間がいわゆる延ばされるということであればこれは時間外労働ですよ。法定の時間は下がったように見えても、実質時間外労働でごまかされることがあってはならぬ。こういう立場から、まず「限られた仕事を分ち合う」というのはどういうようなお考えなのか、これについてお伺いをいたします。
  66. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) これからの労働条件の改善という場合、いままではとかくベースアップ、賃金ということを主体に考えられておったけれども、これでいいのか。やはり生産性向上、経済成長の成果というものを、ただ賃金のアップだけでなくて労働時間の問題等を含めて労働条件の改善を図っていく、このために私は労使が話し合いをしてもらうような環境づくりをすべきである、このように考えるわけでございまして、やはり経済成長していき、これからも伸びていくわけでございますから、また伸びなきゃならぬわけでありますから、そういった場合にただベースアップだけで能事終われりとしないで、労働時間の問題あるいは週休二日制の問題、こういったものを踏まえて、そしてお互いが生きがいのある、そしてまた日本人がとかく働き過ぎだというような、国際的誤解を受けないような方向に持っていく、それが不必要な円高を招かない原因にもなる、こういうふうに考えるわけでございますから、これはいまのような不況の現状を考えますと、すぐできる問題ではございませんけれども、やはり中長期的にそういう目標を持って粘り強く労使の話し合いの環境づくりを労働省としては努力をいたしたい、このように考えるわけでございます。
  67. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、「時間短縮を進め「限られた仕事を分ち合う」ことによる雇用の維持」という意味は、大臣がどう考えておるかわかりましたが、そうすると、時間短縮の積極的導入の意義というものについてお伺いしたいんですが、労働省の本年四月に発表した五十二年度労働時間制度調査結果速報において、時短実施困難な主な理由というものを挙げておるようですが、何でしょうか。これが一つです。  また、人件費コストアップは一五・三%であるとされており、足踏み経済が時短を実施できない理由ということにならないと思っておりますが、それはいかがでしょう。  昭和五十二年度における製造業の時間外労働は一人、月間平均十三時間となっておる。昭和五十年度の有給休暇消化率は一人、年間平均で八・一日で、新規採用時に付与される労働基準法上の最低の六日をやや上回る程度で、ほとんど年次有給休暇がとられておらない。そういうことについて考えてみますと、年次有給休暇不消化の解消と時間短縮、これは週四十時間制、あるいは週休二日制を実施すればどのぐらいの人数が雇用できるのか。そのようなことについての雇用拡大について、労働省がこの間からしきりに御指導をしておるように思うんですが、そのことについてお聞きをしたいと思います。
  68. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) 御質問の週休二日を採用しない理由でございますが、一番やはり多うございますのは、「取引上の都合等の関係から」というのが多うございますけれども、これが四八・八%、それから二番目に「同業他社が実施していないから」というのが二六%ということでございまして、どうもやはりお互いによそを見ているという感じがございます。したがって、私どもはそういうような企業の考え方というものを、やはり行政指導を進める場合に十分そこの辺を含んでやっていかなきゃならない、こういうふうに思うわけでございます。  それから、年休の消化の問題でございますが、大体大企業でも七割程度しか消化してないというのが統計でございますし、また一般的な全産業で見てみましても、半分以上年休を消化しているという人は半分程度と、こういうようなことで、なかなか年休をとっていないということでございます。これは企業の方にも事情ございますし、それから労働者の方にもとろうというお気持ちが必ずしもまだ慣行化していないというようなことで、この辺もやはり私どもがそういった実態を十分のみ込みながら指導していけば、この年休についての消化が可能であろうと、こういうふうに思います。  問題は、そういうふうに非常にいろいろ気がねしながら週休二日の施行も進まない、あるいは年休もとりにくいということでございますので、そういったまず前提づくりをすることが大事だろうと思います。したがって、私どもはそういうところに行政指導の最重点を置きながら進めてまいりたいと思いますけれども、したがって、年休を全部消化して、あるいは週休二日を企業が全部とったらどのくらい雇用量がふえるのかという計算は、計算としてはできますけれども、そういった現実の実態を、十分とりやすいような実態をつくり上げませんと、数字そのものは単なる計算にすぎませんので、私どもはそういう計算よりも先に実態が、そういう労使の方たちがとりやすいような慣行をつくり上げていくというところに重点を置きたいと思っております。
  69. 片山甚市

    片山甚市君 時間短縮をしたり休暇をとれば、何百万人とかという人が雇用されるなどと言うと、また大変なあれでしょうから、心配するから言わないんだと思います、数字はですね。しかし、現実に残業は御承知のように労働省が調べておる形でも、五十二年度には一カ月十二時間に増加しておるように見えますですね、残業だけでも。これがなぜいわゆる採用にならないのかと言ったら、人件費コストを下げていきたい、企業が安定をしたいと、こういうことでしょう。それから労働者権利であるということで、休みの場合は九〇%以上消化しておるのは全体の二三%、こういうものについてやはり放置をしておって雇用不安という論議をしても、実際はバランスがとれておらない。お互いがきちんとしたことをしなきゃならぬと思うんですが、自分たちだけ何とか残れるだろう、こういうことではできないだろう。仕事をつくることもそうでありますが、公正に仕事を分け合うということ、これについては先ほど言ったように、福祉に関するサービスなどというものをもう少し大々的にやってもらいたい。今度は五月二十八日の新聞によると、労働省が有給休暇をふやすために大型休暇をとらせようという宣伝をする、指導をしておるということになっておるんですが、そのことはどういうことでしょう。
  70. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) 私ども年次休暇、先ほど申し上げましたようになかなか十分とられていないということでございます。このとり方についての私どもやっぱり指導もしていきたい。やはり、年休というのはまとめて計画的にとるということがいいわけでありますが、特に日本みたいに湿度の高い夏におきまして、まとめてとるというようなことを推奨することによって、年休の消化を進めたいという趣旨でございます。  それから、先ほどの時間外でございますが、確かに時間外労働を減らすということが雇用を分け合うという意味においてもきわめて重要でありますので、特に長い残業時間を前提にした生産計画というようなもの、あるいは超勤込み幾らというような発想が非常に日本ではまだありますけれども、こういった考え方を、私どもは現地現地の事業所の指導の中に織り込んでいきたい。  それから、私どもは一日何時間という残業の協定を結ばしておりますけれども、やっぱりこれは週何時間とか年何時間というような形でそういう協定を結ぶような指導もしていきたいと、こういうふうに思います。
  71. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、大臣の方で書かれておるこの私案で「即効性」ということを書かれておるんですが、どの程度の規模でどのくらいの期間に効果を上げるのか。たとえば「雇用創出を促進する具体策」として「直接的かつ即効性ある対策」ということで「産業振興、地域経済振興の上からも検討に値しよう。」ということで、「浮体空港」から始まる(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)、(ヘ)とあるんですが、これについての内容、各省庁と協議の上内容をつけていきたい、これは看板を掲げただけだと、こうおっしゃっておるんですが、つくられたのは大臣でありますから、これを書かれておるのは。大臣考え方をお聞きをしたいんですが、いかがですか。
  72. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 特に直接的、即効性ある雇用対策の問題提起でありますけれども、これはすでに具体的に動いているのは遊休船舶の解体事業、これは造船工業会の方が具体的に計画を立てて、すでに下におろしておると聞いております。主体は運輸省でございますから運輸省に努力をお願いをする。それから、海上保安体制の整備等のために、巡視艇等を早期に前倒し発注をしてもらう。こういう問題については、すでにこれは去年からいろんな機会に話しておりまして、いずれ今度また予算措置が行われるときには、そのような配慮を十二分に海上保安庁はやってもらっておると、このように聞いておるわけでございまして、そのほかの問題、石油備蓄船の問題、これもいろいろ技術的な問題あるいは海上公害問題、こういった問題があって、いろいろ困難な条件があるようでございますけれども、これまた運輸省の方を中心に推進をしてもらっておる、こういうことでありまして、浮体空港あたりはこれは一つのビジョンでございまして、なかなかそう簡単にいくわけじゃございませんけれども、問題提起をしておくということは、これは後退ではなくして前進をするという一つの目安ではございますから、大いに今後こういう方向へ向かって努力をするということで御理解いただきたいと、こう思います。
  73. 片山甚市

    片山甚市君 大臣が、何はともあれ具体的な問題を取り上げてアピールした、こういうことに価値がある。しかし、これを実行しようとすれば相当、先ほどから申し上げている各省庁全体が協力する体制がなければできないと思っておるんです。  そういうことで、実は労働省が週休二日制についてこれを推進するために、五月二十五日労働次官通達を出されております。五月二十四日の参議院の本会議における雇用の安定に関する決議もあり、当然のことと思いますけれども、先に出されましたところの労働省発基第五十六号についての実効性というのは非常にむずかかしいんじゃないか。と申しますのは、労使の合意の環境づくりというけれども、労働省側が問題とするのは賃金とか労働条件とか職場環境の切り下げがないかどうかということを非常におそれる、こういうことでありますから、要は経営者のこれに対する姿勢がどのようなことなのか。政府産業政策及び時間短縮実施のための法制化に進んできちんと強力な指導をしなければ、おまえたちでしかるべくやれと言ってもしかるべくやれるものでない。環境づくりによることはできないし、さりとて、大臣もおっしゃるように、にわかに一片の通達を出した、一片の法律をつくったということでできませんでしょうが。これは大変労働時間対策についての実効性を上げるのにはむずかしいんじゃないか、こう思いますが、いかがでしょうか。
  74. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 確かに御指摘のような私は前途が控えていると思います。特に現在、まだ不況から脱出しておりません。しかし、問題の本質に対する理解というものを労使に対して持ってもらうという、こういった粘り強い努力をやって、そして考えの前提にはいわゆるワークシェアリングという、こういったことも背景にしながら、私は関係方面に対して、地方は地方で都道府県、あるいは中央は中央において関係省庁連絡をとって、やはり一度ともした灯というものは、これはひとつ消してはならない、またそうせざるを得ない今後の日本の経済の路線である、このように考えておりますから、あくまでしんぼう強く努力をしていくということ以外に道はない、このように思うわけでございます。
  75. 片山甚市

    片山甚市君 大臣が常日ごろ言われていることですから、ここで聞いても余り変わった返事をいただけないと思いますが、やはり政府でありますから、今日の情勢で国際的にも労働時間については改める――基準法上四十八時間になっていますが、改める時代に来たと私は思う。いや、あなたはもうだめだと、産業がつぶれると、こうおっしゃる。それはつぶれると言うに違いないと思うんです。それはどういうことかというと、日本の国は一ドル二百二十円になったら全部つぶれておったはずですね、経済。評論家の説によれば、そうだったですね。先ほど言ったように、そういうことをしたからといって、いわゆる負担は、一五%程度しかコストが上がりゃせぬ、週休二日制やっても。そうなっていますね。それで、一五%ぐらい上がって、企業がつぶれないんなら、私は、先ほど申しますように継続的、計画的な時間外労働、いわゆる常時時間外労働を前提にした産業計画をとらせない、それについて厳しくやっぱりやってもらいたいと、こう思う。  それから、年次有給休暇等は必ずとれるような環境づくり、それこそ。そういうことをしないんならば、むしろ幾つかの法的なというか、指導的な立場でやっていく、それで年次有給休暇はきちんととれるような状態にする。しかも、かためてとれるような情勢であって、一日に三時間とか二時間ずつ切ってとるところがたくさんありますね、実際。そういうようなやり方をたくさんとられておる。それがいいのかどうかは別でありますが、そういうことを考える。いま大臣は、皆さんでお話をしてもらいたい、そしてそういうような環境をつくってもらいたいと言っているんですが、労働省としてはやはりこの際きちんと週休二日制を実施ができる条件としては、労働基準法、一週四十時間、それで時間外労働についての問題は、一月なり半年なりこういう一つの、いわゆる四週なりに区切った問題でありますから、一日でありませんから、そういうことで制約をする。むしろ労働時間を決めるならば、時間外労働が特殊な問題でなければできないような形でないとこれは野放しになる、こう思います。  私はいま時間外労働を制限しようということに中心を置いておるんじゃなくて、時間外労働をしなきゃならぬようなところは人を雇えるように指導をし、そして時間外労働は事実上恒常的に行われない、行うのがあたりまえだというようなことでないと桑原局長もおっしゃっておられますが、そういうようにお願いをしたいと思うんです。  幾つか言いましたけれども、大臣に何としても、いまそういう環境づくりになってきたんだが、環境だけではだめだから、いわゆる労働基準法を一週四十時間に、国際的に認知してもらえるような状態に変えていく決意と努力はないでしょうか。私は恐らく、いまの福田内閣で労働大臣にここでそんな大それたことを確認をしようということはむずかしいから言いにくいんでありますけれども、しかし、先ほど、ILOの六十四総会に行かれるということになっている。日本の国際的な労働基準についてはいいことを言っておるんです。もう年金とか賃金は国際水準に達したなどとおっしゃる、大臣といいますか、総理大臣でも。しかし、実質どうでしょう。肉を一つとっても、一キログラム千円未満で買えるフランスやドイツや、そういう国と、日本がちょっといいなら百グラムで六百円か八百円ぐらいするという国とで、家賃があれだけ違うところで、何でわれわれは為替計算上の、いわゆる日本の円の国際為替相場で上がったとか下がったとかいうのでしょうか。このあたりが納得できないわけですよ。  そうでありますから、世界じゅうでこれは国際的に公正な競争をしているがどうかは、賃金もありますが、一番いいのは労働時間だと思う。いかがでしょうか。日本ほど不公正にというか、労働時間を先進国で使っておる国はない。この間イギリスへ行っても言われましたけれども、表向きと裏とは違う。そして、おまえの方は終身雇用と言っているけど、五十五歳とかそんなになったら首切って、後つないでないじゃないか。うちの方は若い者の首は切っても年寄りはちゃんと守っておる、人道主義だ。おまえのところは犬を殺したり、イルカを撲殺するような国民だから、ろくなことない、こういうように言われました、本当の話。こんなものをなくしていかなきゃならないし、そういうことがいいと言いませんよ。いま大臣に余り直截的なお答えをしてもらえぬから、ずっと回っておるんです。回って話しておるんです。少しわかるように、いまの話は。とにかく、労働基準法を改正して、とにかく一歩進めていくようなことをせなければ、多くの人を引き連れて政府が指導できないんじゃないか。一つのよりどころがなければなかなかできないんじゃないか。いままで多くできたんですから、あと残された問題というのは銀行屋がどうだとか、いわゆる農協がどうだとかというような問題があるだけだ。こう言っておるようであります、週休二日制の問題は。しかし、週四十時間の問題になると、残業で仕事をさせているようなところになれば、大変抵抗があるでしょう。しかし私は、今日、大臣がワークシェアリングと、こうおっしゃる以上は、明確に労働基準についての一つの検討を加える、そして速やかに法改正を私はすべきだと考える考え方についての御所見を賜りたい、御所見を。以上です。
  76. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) いろいろ多岐にわたった御意見を踏まえて、結論として労働時間対策の進め方については、やはり労働条件の最低を決める基準法をきちんとひとつ改正する方向で検討しなきゃだめではないかと、こういう御趣旨でございまして、私は一つの見識としてそういう考え方も十分理解できます。ただ、労働時間対策の進め方につきましては、去年の暮れ、私が就任いたしましてまだ早々でございましたけれども、公労使の一致した建議として、とりあえず行政指導によって事を進めなさいと。その理由日本の現在、産業、企業の実態というのが非常にまちまちであると、こういったこと。あるいはまた特に零細中小企業、不況にあえぐ。そういった場合、これを一律にやることによって、かえって雇用の機会を拡大するというのが、結果は逆になるぞと、こういうふうな意味の趣旨を踏まえて、公労使が三者一致して行政指導によれという、こういうことになった建議を受けたわけでございまして、私はここ当分この建議の趣旨を踏まえ、そして積極的に行政指導によって、御指摘のいろんな問題を勘案しながら、やはり労働生産性の向上あるいは経済成長のこの成果を、ただベースアップだけでなくて、労働時間という問題をもあわせて分かち合うという、こういうことに労使が深い理解を持ってもらうような環境づくりをやっていくということが、これが問題を前進さす前提であり、当面私に課せられた使命ではないかと、このように考えておるわけでございまして、あえて御理解をいただきたいと、このように思います。
  77. 片山甚市

    片山甚市君 大臣はかねてそういうふうな話をしておるんですから、私と意見が合わないことは事実です。実は労使と言われるような団体をつくったり、労働協約を結べるところはよろしいですが、実はそうでないところを皆さんに守ってほしい。皆さんと私とは全然違うんです。労働組合がないようなところ、あるところはほっておきなさい、あんなもの。かってにやっておるんじゃ。いざとなったら、あなた、労使関係じゃないか、そんなの賃金はかってにやれと、こう言うておるんだから。かってにやれるような人たちのことは余り考えぬでよろしい、そんなごね得の方は。むしろごねられないやつをしなさい。私はここへ来てずっとそう言っていますよ。あなたたち知りませんでしょう。私が演説しておるときは、大きい組合のことなど余り気にしないでよろしいと、組合もできないようなところをどうしますのかと、こう言っておるわけなんです。そう言っておるんですよ。あなたたち、基準法を変えなけりゃ労使などないところはどうなるんですか。ほっとけと言うんです。それでそういう零細なところは休ますようなことのできる経営体制にせなけりゃならぬ。共同化やいろんなこともやりましょう。そういうことが進まなきゃならぬでしょう。私は大臣が言われておることは、大きなところについての話し合いは、環境づくりはできるでしょう、労使の、何とかかんとか言っても。しかし、小さいところ、労使でないところ、いわゆるおやじと雇われと二人、三人ぐらいのところでは、そんなことは言えませんし、物を言うたらまたひどい目に遭いますよ。そんなことですよ、世の中というのは。労働組合などつくれて、団体交渉などと言えるところはほんとに日が当たっていますよ。言えないんですよ、言うたら明くる日解散しておるんじゃから、組合が。首切られるんですから、不当労働行為がどんどん起こるんですから。どんなに苦しくても黙っておれば雇っておってくれるんですから。そんなところに対して、労働基準法を改正してくれと言っておるんでありまして、四十八時間のやつでも守られてないところもたくさんある。それを摘発されて何とかなっておると、こういうことでしょう。私きょう申し上げておるのは、あくまでも、大きなところは大きな社会的責任を持って、国際的な場に出れば、ILOに行って頼んで、何とかILOの力を借らなきゃならぬような日本ではいかぬ。日本労使というものは、資本家もそうだが、きちんと国内を治めて、先進国らしい労働環境をつくってせなきゃならぬが、日本だけとにかくILOへ行って頼んでやらなきゃできぬようになっておる。しかし、それについては先ほどから言うように意見が違う。  次の労働基準法については、それはみんなは基準法を変えられたら仕事をせにゃいかぬから、でしょう。いわゆるそのとおり守らなきゃならぬから、できるだけ基準法を変えずに適当にやろうじゃないかという話はわかる。不況だ、倒産だと言っておるんですから。しかし、私は今日ほど仕事を分け合おうじゃないか、一方的な独占はやめようじゃないかというときには、一つの強制力を持たなければできないことがあるんです。それは労働基準法変えたら何でもできるなど言いません。環境づくりをせなけりゃならぬ。これは事実です。労使が合意をせなきゃならぬことも事実です。しかし、それ以前の問題で、それらの枠外にはみ出た相当たくさんの人たち、三分の二になりましょうか、とにかく組織労働者が三分の一ぐらいですから、残りのいわゆる三分の二近い人たちは枠外におるわけです。その人たちにどうするのかということが、私は責任を問われておると思いますから、何といっても、意見が違うことを言いながら、ひとつ、しかしそういう人たちの落ちこぼれがないようにしようという大臣の考えだと理解をする。私は方法論の違いだと考えております。しかし、不況だ何だと言って、時間外労働だけふえる。若い人は雇うけれども、年寄りは首切っていくって、それは非道じゃないですか、大臣。二十年も二十五年も働いた人間の方が首切られて、ついこの間学校出た者が、安いから、しっかりしておるから、若いから、安いんで雇えるからと言って、そんな鬼みたいな企業ばかりじゃないですか。違いますか。あなたたちはそれは首切られへんからそう思うけれども、われわれの仲間は、私らのような五十五――五十三ぐらいになって、もうしたときに、まだ生活が安定できないようになっておるのがいまの世の中だ。昔と違うてお金が要るんですよ。昔なら隠居さまですと言って、じっとしておったらよかったけれども、何かもろうたり。そうでならなくなっておる。精神的にも肉体的にもそうなんです。しかし、疎外されたら、それほどつらいです。これは寝た切り老人が投票権で最高裁へ訴えておって、認められましたけれども、それは投票してきたからあれだけの権利を言うわけです。生まれながらにして寝た切り老人でないんですよ。ある時期まで自分はどんどんと選挙に参加して投票してきた。寝てしまったら投票する権利がないということで、裁判所に言うと、もっともだというようになる。私がいま申し上げるのは、どうか、この労働基準法を形式的に変えてくれというんじゃありません。労働基準法を変えることの議論、方法を出すことによって、みんなが引き締まってくる。いわゆる四十八時間すら適用されてない者が、本当にきちんと。四十時間にせなきゃならぬほどの日本の円高なんだ。国際的な競争ではこれは不公正だと言われておるんだ。日本の国の円がこれだけ高くなって、これだけになれば、こう言われなきゃならぬ。国内でそれだけのことを労使がぐるになって四十時間の制定もできないで、そしてやったって、私は勝てそうもない。国内事情がいろいろありますけれども、国際競争力の基本では労働時間が基本になりますよ、賃金の問題の前に。やはり、日本の国がそういう点では意見があると、こう申し上げる。大臣がおっしゃることについて全面否定しておるんじゃありませんよ。意見が違いがある。そして、しかし私は労働基準法をつくられれば、それによって守ってもらえるのは組織のない者が守ってもらえる。組織のあるのはそれよりもいい条件を持っておるんです。そうでしょう。持っておるんですよ。付加給付だ、いろんなことでも、いろんな持っておるんです。だから、それ以上言いませんから、特に。  最後に、地場産業のことについてお聞きします。この間、大阪へ調査に行ったときに、東大阪市で陳情を受けまして、線材の関連商工業者が非常に困難になって、いわゆる韓国の方へ仕事を持っていってしまって、そこではもうつぶれてしまっておる。そして計画的にもそういうような状態です。しかし、これはもう御承知と思いますが、明治の初めというか、明治の前からでもくぎをつくったりいろいろなことをしておったところです。これについての特別の対策をひとつお願いをしたい。この間陳情を受けまして、なるほどこういうように自分の企業を外国に持っていって、そしていつの間にか倒産させていくという、こういうやり方は納得できないと思うんです。調査をしておられると思いますから、東大阪の線材関連の事業についての問題について御答弁願いたいと思います。
  78. 細野正

    政府委員(細野正君) 御指摘のように、線材関連の業種につきましていろいろ問題が起きているわけでございますが、私ども雇用対策としましては、まず第一には安定資金制度の対象業種にいたしているわけでございます。これによりまして、失業の予防と円滑な職業転換を図ってまいりたい。二番目には、特定不況業種の離職者臨時措置法、これの対象業種に先月これをいたしたわけでございます。したがいまして、この関係の業種からの離職者に対しましては、四十歳以上の方については保険の延長がございますし、それから、訓練手当、待機手当、これは年齢に関係なく訓練を受講される方について支給されるわけでございます。こういう制度と、先ほど来申し上げております中高年齢者を雇い入れた場合の助成措置というふうなものを総合的に活用しまして、この再就職の促進を図ってまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  79. 片山甚市

    片山甚市君 わかりました。御答弁ありがとうございました。実は、これになるまでの間に、労使間で解雇の問題で紛争になってしまっておるわけです。それで、労働委員会にかかっておる事案があります。これはどうしても業者が、いわゆる経営者が故意にやったと言いませんけれども、倒産をして、いわゆる倒産をするというか、みずから会社をやめる等、倒産だけじゃなくてそういうようにやった結果起こっておることでありますから、この労働問題、解雇問題が速やかに解決するようにひとつ、局長の担当ではありませんけれども、そのことは事前に言ってありませんでしたから、あなたからひとつ、大臣もおられますから、善処してほしい、速やかにそういうことをして、就職を他に求めなければなりません。労使紛争しておる間はこれは余りよくありませんから、解雇反対何とか闘争をしておるようなときに、雇用安定もありませんで、やっぱり労使がそこのところは和解をする。一銭も金を払いたくないからといって、夜逃げしたような形の問題やそういうのがありまして、具体的に労働委員会にかかっておる事案について、ひとつ省として正しい情報を入れて、それに基づく措置をとってもらいたい。きょうは具体的ケースを用意しておりませんから言いませんけれども、幾つかの会社、十社ほどが対応していますからお願いをしておきたいと思うが、いかがでしょうか。
  80. 細野正

    政府委員(細野正君) ただいまのお話でございますと、労働委員会に係属中ということでございますので、そうなりますと私どもの行政機関の動き方にもいろいろな制約もございますが、関係の労政局ともよく連携をとりつつ、大阪府と一体となりまして実情をよく確かめた上で、適切な処置をとってまいりたいと、こういうふうに考えます。
  81. 片山甚市

    片山甚市君 最後に大臣ですね、先ほどからもういやなことばっかり言いましたけれども、やはりお願をしておきたいと思うのは、ILO六十四回の総会に行かれましたら、可能な限り労使がやはり安定をして国際基準が守っていけるように御努力を願いたいと思います。と申しますのは、先ほど申しましたように、労働基準法の改正も言ったように、われわれが一つの見本なんです。その労働代表になるようなところでもめておったんでは、私は組織のないところは最も大きな被害をこうむると思う。ですから、国際的な役割りを果たさなきゃならぬ、アメリカもおらないときだし、日本がいい意味のリーダーシップ――言葉はそう言いませんけれども、とらなきゃならぬという気負われることについては当然だと思いますが、もう一度、六十三総会を踏まえて、六十四総会に当たって、日本政府としてひとつ決意を述べていただき、そして御努力を賜りたい。最後に大臣の御答弁を願って終わりたいと思います。
  82. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のように今度の総会アメリカ脱退した直後の総会であり、日本は自由国家群としては中心的な存在になっておるわけでございますから、御指摘のようにILO設立の原点を踏まえて、その趣旨に十分沿うような今後日本としての努力をいたしたい。特に、労働外交ということが非常に大切になってきておるきょう今日、私はILOの場をまたそういう意味においても大いに活用いたしたいと、このように考えておるわけでございます。
  83. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分再開することとし、休憩いたします。    午後零時十六分休憩      ―――――・―――――    午後一時三十五分開会
  84. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、労働問題に関する調査議題といたします。  質疑を続けます。質疑のある方は順次御発言願います。
  85. 渡部通子

    ○渡部通子君 最初に、港湾労働者の問題について若干お尋ねをいたします。  港湾労働をめぐる環境は、荷役の機械化とかあるいは省力化等による長期的傾向としての需要減、それに加えて景気の沈滞ということがございまして、荷動きの低下等で就労確保が最大の問題となっている。これはもう御承知のとおりでございます。ここで伺うんですが、ここ数年来の港湾労働者数の推移、常用、日雇い、これを別にいたしましてどうなっておりましょうか。
  86. 細野正

    政府委員(細野正君) お尋ねの港湾労働者の数でございますが、コンテナ化の進展とか荷役方法の機械化というふうな輸送革新の影響を大きく受けまして、とりわけ日雇いの労働者の著しい減少を招いているわけでございます。法の施行当時、これは昭和四十一年度末でございますが、そのときの港湾労働者の数と、それから本年三月末のそれとを比較してみますと、常用の方は五万七千人から四万七千人と比較的減り方が少ないわけでございますけれども、登録日雇い港湾労働者につきましては一万五千二十八人から二千二百二十五人というふうに非常に大幅な減少を示しておりまして、日雇い依存度が低下が著しいということがうかがわれるわけでございます。
  87. 渡部通子

    ○渡部通子君 その傾向は、去年、ことしあたりもずっと続いていることですか。
  88. 細野正

    政府委員(細野正君) 御指摘のように、ここ数年ずっと続いている傾向でございます。
  89. 渡部通子

    ○渡部通子君 次に、昭和四十年、港湾労働法が制定をされましたけれども、その際の制定の理念は、前近代的な労働慣行を打破して、港湾の近代的秩序を確立して雇用の近代化、安定、こういうものを目指すとされておりますけれども、こうした理念は実現したとお考えでございますか。
  90. 細野正

    政府委員(細野正君) この法律は、御指摘のように、日雇い港湾労働者の登録制度を中心にしまして、港湾における一つには必要労働力の確保という問題があったわけでございますが、その面で大きな役割りを果たしてきていたわけでございますし、それからいま御指摘のような港湾における前近代的な雇用慣行の排除とか福祉の増進という面では、この法律の施行を契機にしましてかなり改善をしてきているのじゃないかというふうに考えているわけでございます。
  91. 渡部通子

    ○渡部通子君 かなり改善をされてきたという御認識のようですけれども、そう簡単にはなかなかいってないんだろうと思うんです。ですから、大きな港を抱えております兵庫県あたりでも、県議会としてこれを決議をして、労働省に陳情してもう少し何とか施策を進めてほしいと、こういうような現実が繰り返されているわけでございまして、実情はなかなかそう至っていないと、私はそう認識をしております。やはり一つの港を一つの工場とみなして、そうして使用者全体と労働者の間が共同雇用、この関係として処理されるという姿にならなければ、それが労働法の理念が実現したと、こう言える状態ではないと私は思うんです。こういう共同雇用考え方ですね、これがいまだに実現をしておらないで、港ごとの雇用保障についても前進がほとんどこれは見られない。そればかりではなくて、使用者側では現在の登録制すら後退させようという、こういう動きすらあると聞いております。この共同雇用の実現についての労働省の御見解を伺っておきたいと思います。
  92. 清水博雄

    説明員(清水博雄君) 御指摘の共同雇用の理念、これは非常に相当幅の広い考え方が中に含まれているのじゃなかろうかと思うわけでございます。諸外国の港湾労働のあり方等を見ましても、いろんな考え方がとられております。わが国の港湾労働法もその共同雇用という考え方に立ちまして、港ごとに港湾労働者のプールをつくって、そこからいわゆる荷役の波動性に対応した労働力の需給の調整を行っていく、こういう考え方に立っているわけでございますし、そうした考え方というのは、その法律の運用の上におきましても、一つの中心といたしまして実施をしてまいっているわけでございます。毎年、港湾の雇用調整計画ということを策定をいたしまして、それによって当該年度の雇用の調整に当たっているわけでございますけれども、そこにおきましても共同雇用の理念に基づいた運用を行っていくということを明記をいたしておるわけでございます。  御指摘のように、ここ数年、いわゆるオイルショック以来荷役量の面あるいは輸送革新の面、相当就労日数の確保という上におきまして苦しい事態が続いてまいっておるわけでございまして、そういう中におきましては、とりわけそうした理念に基づいた考え方で各方面の御協力を願っていかなければならない、このように思っておりまして、私どもといたしましても、現在事業主が共同して就労保障というようなことを行っておるわけでございますけれども、そうした面の継続実施という点について、いま申しました理念の上に立って指導をいたしておりますし、さらに、いわゆる短期の常用雇用をできるだけ抑制をいたしまして、日雇い労働者の就労機会の確保という点について、できるだけお互いに努力をしてもらうと、こういった方向で指導をいたしてまいっておるわけでございます。
  93. 渡部通子

    ○渡部通子君 具体的な方策があったら、施策があったら私は伺っておきたいんですけれども、それは理念としてはりっぱなんですけれども、いま申し上げたように、逆行する動きすらあるという現在の状況下において、具体的にどういうことをなさるのか。
  94. 清水博雄

    説明員(清水博雄君) 非常に港湾労働をめぐりまして、いろいろとさまざまな問題が実は起こっているわけでございます。これは相当、施行後十年を経過をいたしまして、いわゆる前近代的な労働慣行、手配師の排除でございますとか、そういった点につきましては、この法律の施行を契機といたしまして相当環境が浄化されてきてまいっているというふうに考えております。しかしながら、一方におきまして登録制度、それから雇用調整手当制度、それから就労保障、こういったぐあいで、比較的身分を安定した形で登録労働者について保護を加えてきてまいっておりまして、そこから、これは人情の常といたしまして、非常に就労意欲が欠如してくるとかいうふうな問題点が一方においてございます。それから、高齢化をしてまいってくる。そうすると、質の面で非常に低下をしてきているというのが現実の事態としてあるわけでございまして、そこへ加えまして、いわゆる輸送革新、それから不況、こういったことで就労日数の面で問題が起こってくる。一方、そういう制度を支えていく上についての費用が増高をする。そういったところから、いわゆる登録日雇い港湾労働者の使用をできるだけ抑制しようという、そういう一方において動きもこれは相当強く出てまいっております。  そういうことで、先ほど申しましたように、二千数百名という規模になっておる。それが一つの大がかりな制度として維持するに足りるかどうかという議論すら一部において出てきている。これはいま先生御指摘の問題につながる意見だと思うわけでございまして、私どもといたしましては、港湾労働法そのこと自体がいわゆる港湾労働をめぐる諸環境の浄化ということに非常に大きな役割りを果たしてきた、そういう考え方というのは今後も維持していかなければならない、このように思っておるわけでございます。そういったことで、安易にそういう方向へ考えるということは、これはとるべき方向だとは思っておりませんけれども、いずれにいたしましても、そういう就労日数の面におきまして非常に困難な事態が続いております。そこを、先ほど申しましたように、ここ二、三年来事業主ができるだけ就労を保障をするという方向での協定を労使の間で結びまして、就労日数の確保という点についての方向をとってまいっております。したがいまして、そういう面の継続実施というふうなことについて強力な指導を行ってまいりますと同時に、できるだけ短期の常用を雇用することによって、日雇いを使うのを禁止しようという、そういうふうな傾向も一方にございますので、そうした面のないように指導を行っているということでございます。
  95. 渡部通子

    ○渡部通子君 登録制度についてでございますけれども、法律上登録をする、これ大変結構なんですけれども、やっぱり登録するということは、その港湾の必要労働量を確保することを職業安定所長が定めたということですから、一般の会社で言えばこれは採用と、こういった考え方に同じだと思うんです。こういった意味で、雇用の充足を確保するだけではなくて、登録するということは雇用の保障も与えるものでなければならない、こう考えますけれども、現在の運用はとてもそこまではいっていないと思いますけれども、そこまでいくようにその意義を明確化すべきだと思いますが、いかがでございますか。
  96. 清水博雄

    説明員(清水博雄君) 登録というのは、制度的にはあくまでも登録ということでございまして、各港湾における必要と思われる日雇い港湾労働者の数を一定の定数の範囲内で登録をいたしまして、その登録をした人たちについては職業安定所への出頭の義務を課し、そうして不就労の場合には他の日雇い労働者よりも手厚い形での雇用調整手当を支給する、そういう形でプールをした人たちを波動性に対処するために需給調整を行って紹介を行っていく、これが登録制度内容でございます。したがいまして、登録制度そのこと自体については、完全にその雇用を保障するというようなところまで含んでいるわけではございませんけれども、しかし、あくまでも登録制度を維持するというのは、港特有の波動性というものに対して常用だけでは賄い切れない、そしてそれを国の手から放置をしておけば、いわゆる労務を調達するためにいろいろと前近代的な慣行というふうなものが根強く残っていく、そういうところに対する対策としてこの制度が生まれてきたわけでございます。したがいまして、そのこと自体に直接雇用の保障というところまで法律上機能を持っているということにはなっておりませんが、いずれにいたしましても、やはり登録された人たち雇用、就労の安定を図るということは、これはもう非常に大事なことでございますので、そういった意味合いにおきまして、先ほど申し上げましたような、事業主が共同して実施している就労保障の継続実施その他につきまして、できるだけの努力をわれわれとしても指導を通じて行ってきているということでございます。
  97. 渡部通子

    ○渡部通子君 よく考え方わかりました。ですけれども、雇用の充足を確保するというだけでは、やはりこの法律の意思には沿わないと思いますので、できるだけ雇用の保障ということへ、そっちの方向でひとつ指導、御努力をいただきたい、こう思うわけです。  それで、いま調整手当金の問題ですけれども、いまの手当の日額の算定というものは、九ランクに分けられた賃金日額をもとにして、それで就労日数を乗じて点数を出す、その点数によって九ランクの調整手当のいずれかに定める、こういうシステムだと伺いました。この方式でまいりますと、就労日数が減少したりあるいは賃金ベースが非常に下がったような場合、そうすると手当の金額も二カ月後には減るというダブルパンチを受けるということになると思うんです。こうした手当日額の低下には歯どめが必要であると私は思います。このクラス別算定方式自体についても検討を要するのではないかと思いますが、その点はいかがでございますか。
  98. 細野正

    政府委員(細野正君) 就労日数が低下する場合に、雇用調整手当も等級が低下するという点は御指摘のとおりでございますが、従来から五ランク以上は低下しないように保障措置を講じていたわけでございますけれども、この四月から中央職業安定審議会の御答申も受けまして、四ランク以上は低下させないことにするように改善措置を講じたというところが現状のところでございます。
  99. 渡部通子

    ○渡部通子君 いまの御答弁で、四ランクの低下まで認めていたのを三つのランクにしたと。まあこれがいわゆる答申の指摘に答えたとお考えのようですね、改善をしたと。中央職業安定審議会の答申の中にもこの改善要求が出ているわけですから、それに対するお答えとして三つのランクの低下までにしたと、こうお答えのようでございますけれども、まあ多少上げたということだと思うんですね、それですと。ですから、制度の改善というこの指摘趣旨にまでにはいってないと思うんです。十分だとは私はとうてい言えないと思うんです。ですから不就労日、その日数の増加が手当に反映するような制度を何らかの形で改善をする必要があるのではないかと思いますが、こういう不況下においてなかなか大変だとは思うけれども、その点いかがでございますか、努力をなさっていただけませんか。
  100. 細野正

    政府委員(細野正君) 御存じのように、雇用調整手当というのは雇用保険の日雇い労働の求職者給付金から分離してできた制度でございまして、給付水準もこの日雇い労働求職者給付金を上回っておりますし、それから就労日数による支給要件等も設けていない等の非常に例外的な措置をとっているわけでございます。そういう事情が一方にございますほかに、先ほど来申し上げておりますように、輸送革新に伴いまして、日雇い依存度が非常に低下をしていると、こういう問題もありまして、ここ数年非常に赤字が累積しておるわけでございまして、そう意味で御指摘のような抜本的な改定、再検討するという点については、非常に困難な状況にあるというふうに申し上げざるを得ないわけであります。
  101. 渡部通子

    ○渡部通子君 大変冷たいお返事でございますけれども、おっしゃろうとしている御苦労はよくわかるんですけれども、やっぱりそういう中で何とかしてやろうという心といいますか、お役所にそういう姿勢というか、真心というか、そういうものが感じられたときに、多少なりとも改善をされていくのではないかと思いますので、そういう冷たい御返事ばかりではなくて、そういう中で労働省の置かれている役目、そういうものに立脚なさったときに、少しでも前進の方向へじゃ努力をしようと、ひとつこういう姿勢を持っていただきたい、こう要望をするわけです。  もう一点伺っておきますが、ILO条約批准の問題でございますね、この百三十七号条約。これは私は当然批准してしかるべき条約だと思いますが、港湾労働条約と言われている部分です。これ採択の際には、政府もそれから労使も三者代表が一致して賛成をしているようでございますが、採択後すでに五年近く、なかなか批准されないようですけれども、この労働省の見解はこれに対していかがなものか、それから何がネックとなっているのか、その点つまびらかにしてください。
  102. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘ILO百三十七号条約批准の問題でございますが、港湾労働法そのほかの関係で、大体内容的には日本もその条約に沿う国内制度が一応整っておると理解しております。ただそれから先、先ほど担当課長からもお答えをいたしましたように、港湾労働関係の客観情勢が大変変わってきたという、昭和四十年港湾労働法ができたときの事情とすっかりそれを取り巻く経済情勢が変わったわけでございまして、変わり方が、さま変わりが大変な根本的な変わり方になっておるということから、いま現在、この港湾調整審議会、これは総理府の担当でございますけれども、この審議会においてそういう問題を含めて検討しておる。そして、この港湾労働対策をいかに進めるべきかということについての根本的な検討をしなきゃならぬような実情に直面をしておる関係から、そのような審議会の結論を待って、どういうふうに対応するかということを考えざるを得ないような状態に立ち至っております。ただ御指摘のごとく、労働省は労働者生活の安定と福祉の向上という、こういったことをその使命としておるわけでございますから、港湾労働者、特に日雇い労働者生活の安定については十二分の配慮をしていかなければならぬと、このように考えるわけでございます。
  103. 渡部通子

    ○渡部通子君 いまの大臣の御答弁聞いてますと、これ全然批准なさるおつもりはないようでございますね。しかも、五年間で情勢が非常に変わってきたと、ただごとではない変わりようだから抜本的に見直しだと、こうおっしゃいますが、そうすると総理府の審議会か何かでそれを検討して、その結論はいつごろお出になるんですか。
  104. 清水博雄

    説明員(清水博雄君) 一昨年から、総理府の雇用調整審議会におきまして先ほど申し上げましたような諸問題が出てまいっておりますので、審議会として私どもから御諮問申し上げたという経緯ではございませんけれども、港湾労働をめぐる問題点の整理を行い、いろいろ検討していこうと、こういうお考えで現在いろいろと御審議をいただいているわけでございます。したがいまして、ILOの問題、私どもといたしましても現行法でおおむねその方向に沿っているというふうに考えておりますけれども、一部にはいろいろ御議論もあるところでございます。そしてまた、これからの港湾労働対策のあり方、そういったことについて、いま申し上げましたように検討が行われておりますので、そうした方向をやはり見きわめつつ慎重に対処をしていく必要があると、こういう考え方でございまして、審議会それ自体としていつまでという目標はいまのところ置かれてはいないんでございますけれども、しかし情勢が情勢でございますので、できるだけそういう何がしかの方向づけが早期になされることを私どもとして期待をしているということでございます。
  105. 渡部通子

    ○渡部通子君 まるでそれでは私は御答弁になっていないと思いますよ。それじゃ審議会が隠れみのだと言われてもいたし方ないと思うのです。やはり批准なさろうとする、この条約批准する意思がない、情勢が変わったから審議会でそれは検討してもらっているんだ、それはめどがいつだかわからないで、ともかくやっているんだと、これじゃ結局サボっているのを正当づけているにすぎないと、こう受けとめられてもいたし方ないと思うのです。私はILOのこの条約は、批准をやめなきゃならないほどの中身のものかと伺いたい。それじゃ中身をどういうふうに受けとっていらっしゃるのかと伺いたいのです。少なくとも国際条約としてこれだけ認められていて、労働者の福祉の向上のためには必要な条約として世界じゅうが大体認可をしたと、そういうものを日本の国がこの五年間ほどの情勢変化で、一たん採択したものをまたひっくり返そうかと、批准をやめようかと、これほどの重大問題の審議会ならば、当然めどぐらいはきちっとつけて、その中間報告もきちっと私どもにもしていただくと、こういうことでなければ、それこそ港湾で働く人たちは納得をしないと思いますが、その点いかがですか。
  106. 清水博雄

    説明員(清水博雄君) ILO条約をめぐる情勢が変化をしてきたと、こういう意味合いではございませんで、港湾労働をめぐる諸情勢が非常に大きく変化をしてきたということでございます。したがいまして、先ほど現行法のもとにおきましてこういった条約方向に沿っているというふうに私ども一応考えているわけでございますけれども、これからの港湾労働のあり方ということについて、やはり一つの転機に差しかかりつつあるという現在の段階にございますので、やはりこれからの今後の方向というのを見きわめるということが、その批准とも関連いたしましてもどうしてもそういう態度をとっていくことが必要だというふうに私ども見ておるわけでございます。  いつまでにその審議会の審議が終わるかということにつきましては、先ほど申し上げましたように、審議会が自発的にそういう御検討に入っていただいている、私どもできるだけそういう審議につきましては協力をいたしておりまして、そういった意味合いにおきまして、時期というのは私どもの口から特定するわけになかなかまいらないという面もございますので、ただいま申し上げましたようなお答えになったわけでございますけれども、決してその条約条件云々というふうなことでサボっているとかいうことじゃございませんことをひとつ御了承いただきたいと思います。
  107. 渡部通子

    ○渡部通子君 まあ結論としてはサボっているというふうに受け取られても仕方ないと思うんです。それで、やっぱりこれなかなか批准しないということは国際的な日本の信用とか、労働問題のことにもかかわりますから、やっぱり批准方向で私は検討を続けていただきたいと思うわけです。港湾労働の使用者を単に雇用主に限定することなくして、やっぱり情勢がこれだけ変わって、荷役方法の変化などで利益も変わってきているはずなんでございますから、荷主等の関連企業を含めて納付金も企業にも負担させる。それから、登録日雇い港湾労働者雇用保障も充実すると、こういう方向でぜひ一歩進めていただきたい、これをお願いしておきたいと思います。  そこで、ILO条約批准についてもう一点伺っておきたいと思うんです。  これは看護条約について御意見を伺っておきたいと思いますけれども、その前に、現在ILO条約及び勧告の中で日本の国が批准しているのはどのくらいあるのか、ちょっと数の上で教えていただけますか。――すぐ出なければ私の……
  108. 石井甲二

    政府委員石井甲二君) ちょっといま調べまして御答弁いたしたいと思います。
  109. 渡部通子

    ○渡部通子君 じゃ結構です。これで間違いなければ、私の掌握しているところでは、一九七七年までに条約数としては百四十九条約、そのうち日本の国が批准した数は三十五と、大体そういうふうに承知しております。
  110. 石田均

    説明員(石田均君) 大変失礼いたしました。先生御指摘のとおり、現在までできておりますのが百四十九でございまして、日本は三十五でございます。
  111. 渡部通子

    ○渡部通子君 そうしますと、パーセントにすると二三%というふうになると思います。これ少ないと思うんですけれども、その中で特に日本現状から見て、私がただいま質問をいたしました百三十七号条約、これともう一つ百四十九号条約ですか、看護職員雇用労働条件及び生活状態に関する条約、この二つぐらいは早々に批准してもいいんではないか、こう考えるわけでございますが、この百四十九号条約についてはどういうふうにお考えでございますか。
  112. 石井甲二

    政府委員石井甲二君) お尋ねの看護条約看護職員条約につきましては、昨年のILO総会におきまして採択をされました新しい条約でございます。一つは、まだ細部につきましてその解釈が明確になってない点もございますし、また、この条約批准につきまして具体的にも現在の国内法との関連におきまして、特に労働省関係で言いますと、看護職員が特に労働時間等の分野におきまして、まあ具体的に言いますと、日本のほかの労働者と同等またはそれ以上の条件を享受する必要がございます。そういう意味で、現在の労働基準法上で言いますと、一般の労働者はいわゆる八時間、週四十八時間ということでございますが、特例におきまして、現在看護職員につきましては九時間、五十四時間ということになっておりまして、その面についての具体的な国内法との関連もございます。それから、そこにおいて厚生行政との関連もございますので、今後厚生省とも連絡をとりながら、この問題についての詰めを行っていくということが、現在の労働省としての態度でございます。
  113. 渡部通子

    ○渡部通子君 きょうは厚生省をお呼びしておりませんので、それはそれでまた別に私は質問を続けていきたいと思いますけれども、やはり医療問題がこれほど大事になっております折から、この看護婦さんの問題というのは早急に一つでもいいから解決をしていかなきゃならないことと思います。この条約の中には、看護職員の主体性の確立、それから看護政策、教育及び訓練の確立、あるいは労働条件の改善等、こういった基本的な問題が非常に含まれていると思いますので、これを受けて今後は保助看法にしても見直さなければならないでしょうし、看護婦さんの立場というものを明確にしていくことは非常に大事なことだと思うんです。だから、昨年でまだ新しいとおっしゃるかもしれませんけれども、これは緊急を要する日本の国の国内の問題であると思います。ですかう、いまネックになる問題を多少お述べになりましたけれども、基本的にはこの問題、批准方向で御検討なさるのかどうか、基本的にさっきの港湾と違いまして賛成なさるのかどうか、これ労働大臣からお答えをちょうだいしたいと思います。
  114. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) この問題は、私は港湾労働者の関係は、先ほどもいろいろ御答弁いたしましたように、客観情勢が大変な変化をいたしておりますから、それを見きわめた上で港湾労働法そのものをどうするかという、これがむしろ急務ではないかとさえ、私は先般大阪の現場でいろいろ要請を受けまして、実感として持ったわけでございます。  看護婦関係の労働条件の問題につきましては、私は雇用拡大という、こういう面からもできるだけこの問題は前向きに整備すべきである。ただ、厚生省との関係もございますから、われわれとしては厚生省があるから、責任をそちらに転嫁という意味ではなくて、十分相談をして積極的に改善されるように努力をしていくべきである、このように考えておるわけでございます。
  115. 渡部通子

    ○渡部通子君 それはよろしくお願いしたいと思います。  もう一点伺っておきますけれども、今度の国会政府提案されるということをちょっと仄聞をいたしましたけれども、それができなかった理由は何でございますか。
  116. 石井甲二

    政府委員石井甲二君) 先ほど申し上げましたように、昨年の総会において採択されたという非常に草々の感もございますし、また、申し上げましたように、現行法の中、あるいは現在の看護行政との関連の問題もございまして、今国会に批準をお願いをするという考え方は実際問題として準備ができておりませんでした。したがいまして、先ほど大臣お答え申し上げましたように、非常に重要な問題でございますので、今後とも努力を続けてまいりたいというように考えております。
  117. 渡部通子

    ○渡部通子君 それじゃ準備が間に合わなかったという理由のようでございますから、ぜひ次の国会によろしくお願いをしたいと思います。  次の問題に移らせていただきます。最近の雇用調整について、女性の立場から若干質問させていただきます。戦後の労働市場を見ますと、三十年代には男子労働者の中に本工と臨時工、こういう身分差を設けて雇用調整の安全弁に使われてきたと思います。ですけれども、その後の情勢変化によりまして、今度は女子労働者が大量にパートタイマー、こういう形で不安定な雇用者層になりました。昔の男の臨時工にかわって今度は女性が雇用調整の手段として使われているというのが現在の実情であると私は思います。こういう労働市場の姿に対して、労働行政としては保護がなされていないんではないか、これが実態ではないかと思いますが、どういう御見解をお持ちでございますか。
  118. 森山眞弓

    政府委員(森山眞弓君) 先生御指摘のように、女子労働者が一種の雇用の調整の方法として使われているという面が全くないわけではございませんが、最近の女子の雇用の状況を少し御説明してみますと、確かに、女子の雇用が男子に比べまして景気変動の影響を受けやすく、不況のときに減少し、また好況のときに増加するということが男性よりもはっきり出ていることは事実でございます。そして、女子の雇用者が景気変動の影響を受けやすいと申します理由一つは、女子の方が男子に比べまして臨時日雇いの割合が比較的高いという点にあるかと思います。しかし、おっしゃいましたパートタイマーというのは必ずしもそれだけではございませんで、女子の労働力はむしろ常雇いの方でふえているくらいでございまして、最近の産業の構造の変化にも女子労働力の増加と関係があるかと思います。一言で申しますと、製造業が以前ほどではなくて、いわゆる第三次産業であります卸・小売であるとか、サービス業などで雇用がふえている。その面には女子の雇用機会が比較的多いというようなことで、必ずしもパートタイマーでなく、常雇いも含めた女子労働者がふえているということが言えるかと思います。  四十八年ごろの、いわゆるオイルショックのすぐ後にございました不況では、確かに女子の雇用者が減りまして、そういう感が非常に強かったわけでございますけれども、最近、特に昨年の昭和五十二年の数字を見てみますと、女子の労働者の数はいままでにない数を示しておりまして、千二百五十万ほどになっております。これは、生産がやや回復をしてまいりまして、労働力の需要がふえてきたということと、また、女子自身の就業意欲が非常に高まっていると、両方の理由ではなかろうかと考える次第でございます。
  119. 渡部通子

    ○渡部通子君 そういうことも言えると思うんですけれども、私は、それはパートタイマーだけにも限らず、短期常用ということもあると思います。そういったことで、やはり女子の労働力というものが一つ雇用調節のクッションとして使われているということ、なきにしもあらずという御回答でございますけれども、そんな微々たるものではないと思うんですよ。実情というものはそんな簡単なものではないということはたくさん資料を私は持っております。あるいはそういう生の声もいろいろ聞いております。現に、これは昭和五十一年のときの不況のときですけれども、これは日経か何かの新聞に出た文ですけれども、やはり人員整理は女性、身障者からと、こういう日経連の怪文書が出たとか出ないとか騒がれたこともありました。やはり、首切り推進の手引書として、こういうものが一部活字になって出たということも事実なくらいですから、これはもう常識論として短期労働者である女性、しかも低賃金でございますから、それが雇用調節の安全弁に使われるということは当然のことです。ですから、この間、あれですか、ある民間団体で主婦が失業者宣言をしようというような行動も起こっているような実情でございまして、これはやはりなきにしもあらず程度の認識でいられちゃ困るわけなんです。特に、たったお一人の局長さんなんですから、その辺はがんばっていただかなきゃならないんですけれども、じゃ、この認識は、大臣はどういうふうにお持ちですか。
  120. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 確かに、経済社会の実態から考えますと、渡部委員の御指摘のような、私は景気が悪くなるとしわ寄せを受けやすい立場に女性がある。それはいわゆる臨時雇い、日雇いあるいはパートタイムという、こういった関係から起こりやすいわけでございますが、ただ、いま局長から御答弁いたしましたような数字の趨勢になっており、やはり女子の労働者としての数がずっとふえてきておる、特に第三次産業が相当伸びておるという現状から考えますと、やはり女子なるがゆえに職場において不利な扱いを受けないように、労働省としては最善の注意をする。そして、だんだんに、特に女子なるがゆえに簡単に不利な扱いを受けやすい、解雇されやすいということのないような配慮を監督行政において十分心得ていく、こういうことで対応していきたい、こう思っております。
  121. 渡部通子

    ○渡部通子君 最近になって、常用でも女性労働者がふえてきているんだという先ほどの御答弁でございますけれども、これはむしろ私は男子の期間労働力の切り捨て、いわゆる失業者というようなものが、女子の短期労働とか低賃金労働とか、そういう形でむしろふえてきているということも一つは考えられると思うんですね。ですから、そういったことに対する御認識をどうお持ちか。そうしてまた、それに対する対応をどう考えていらっしゃるか。その点を伺っておきます。
  122. 森山眞弓

    政府委員(森山眞弓君) ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、職場において女子が女子であるということを理由にして不利な扱いを受けないようにと申しますのは、採用されるときも、またその採用された後のいわゆる身分などにつきましても、また待遇についても、退職についても、すべてそういうことを注意して指導しているわけでございますが、特に待遇の面につきましては、労働基準法の第四条に、女子であることを理由として差をつけてはいけないということがはっきりと決められておりまして、これは監督行政において特に重点的に監督をしていただいているところでございますし、私どももあらゆる機会に広報活動をしているわけでございます。同じ仕事であるのに、女子であるからということだけの理由で賃金に差があるということがもしあれば、それは厳重な監督をしていかなければならないと思いますし、またそれ以外の場で、婦人であるからということで不利な扱いを受けるというようなことのないように、たとえば経験が少ない、あるいは訓練を受ける機会がないというような婦人のためには、職業相談あるいは職業講習、あるいは職業訓練の行政におきましても、特に婦人には格別の配慮をしていただくように、最近はいろいろの措置を講じていただいておりますし、たとえば寡婦等につきましては訓練手当も特別支給されるというようなことで、いろいろなきめの細かい配慮をした上でこの行政を進めていきたいと考えておるわけでございます。
  123. 渡部通子

    ○渡部通子君 一般論はよくわかりました。  やっぱり、私、きょう細かな実情をたくさん持ってくればよかったんですけれども、やはりまずパートが全員解雇されたとか、あるいは子供がいるからといって、幾つ会社を訪ねても採用が全部だめになったとか、そういう実例は枚挙にいとまかないほどあるわけでございます。そういう女の不利な労働状況の周辺、身辺というものも私はわからないわけではありませんけれども、だからといってこのまま放置しておいて、婦人雇用という問題に力を入れていただきませんと、ますます縁辺労働者に退けられてしまって、そうして雇用調節の安全弁にされてしまって、やっぱり女が働くのは無理だというような状況がこういう中ではつくり上げられやすいと思うんですね。  ですから、一般論はわかっておりますけれども、ひとつ、全力を挙げて、それは男の人にも応援をしていただきたいと思います。というのは、やはり労働組合幹部あたりでも、不況になってくると女から切られるのは仕方がないんではないかという考え方を、労組の中でも認めているというような報告もいろいろ受けております。ですから、その点、特段の御配慮をお願いをしたいと思うんです。  家内労働について一点質問をいたしたいと思います。五月下旬を家内労働旬間ということでおやりになったそうでございます。そうでございますと言うのは、余り認識をされなかったという認識が私にはあるからでございます。この広報活動を展開されたそうですけれども、そのねらいと成果をどうお考えか、まず伺います。
  124. 森英良

    説明員(森英良君) 家内労働は、御指摘のように一般に自宅で行われておりまして、なかなか家内労働法の趣旨でありますとか、その内容等につきまして浸透を図ることが非常にむずかしい法律でございますので、四十五年に法律ができました当時から、毎年五月の下旬を家内労働旬間ということにいたしまして、いろいろとその周知徹底のためのキャンペーンをやってまいってきたわけでございますが、本年も五月の二十日から三十一日までそういう旬間をやったところでございます。ことしの旬間の成果は、これから取りまとめるところでございますが、こういう経過を通じまして、家内労働手帳の普及でございますとか、家内労働手帳に対する記入の状況等も、法制定当時に比べますと格段に前進してまいっておりますし、それなりに周知の効果を上げておるというふうに考えております。
  125. 渡部通子

    ○渡部通子君 旬間などと言わずに、こういうときは毎日毎日が旬間であると、こういうことで具体的に施策を伸ばしていただきたい、こう希望いたします。不況が長期になってまいりましたので、内職希望者は非常にふえています。それから、工賃の不払いとか注文の一方的な打ち切りとか、こういったことで苦しんでいる人もふえてきております。ごたごたごたごたしているところがたくさんございます。そういう当事者間の紛争を防止することが、いわゆる契約関係を明確にする家内労働手帳制度、これは大変結構なことでございますけれども、この手帳がどのくらい普及をしておりますのか。あるいはそれに対する啓蒙、そういった点では、具体的にどうなさっていらっしゃるのか、まず伺います。     ―――――――――――――
  126. 和田静夫

    委員長和田静夫君) この際、委員の異動について御報告いたします。  遠藤政夫君及び小笠原貞子君が委員辞任され、その補欠として真鍋賢二君及び山中郁子君が選任されました。     ―――――――――――――
  127. 森英良

    説明員(森英良君) 昨年の五月の家内労働旬間中に実施しました監督結果によりますと、手帳を交付しております委託者は約六七%という数字になっておりまして、このうち手帳に対する記入も完全に行われておるというものが約四八%という数字になっておりまして、確かにまだ決して十分な数字ではございませんが、しかし、法施行当時から比べますと、格段の普及になってきておるという経過はうかがわれるところでございます。  そこで、この家内労働手帳の普及についてどういうふうに進めるかという点でございますが。   〔委員長退席、理事片山甚市君着席〕 これにつきましては、家内労働審議会におきまして、その点についての勧告的なリポートをいただいておりますので、それによって措置するようにすでに示達をいたしておりまして、なかなかむずかしいのでございますが、協同組合等の委託者団体におきまして、一括して手帳を印刷するということを勧奨するとか、あるいは委託者団体や地方公共団体等に対しまして、家内労働手帳を持っておる者については労災保険料の負担をしてあげるとか、あるいは子供さんを保育所に入れる場合の入所要件の面で、手帳を持っておれば、一応お母さんが働いておるというふうに認めてもらうようにしまして、そういう一種の便宜を与えてもらうように委託者団体や地方公共団体にいろいろお願いするようにということで、この点を進めてまいっておるところでございます。
  128. 渡部通子

    ○渡部通子君 工賃ですけれども、昨年十月の労働省の調査ですと、一時間当たりが男子が五百十六円、女子が二百四十二円と、こういう平均の賃金が出ているようでございます。ずいぶん差があるなと、まあ職種も違うでしょうけれども、半分以下ですね、女の方が。平均すると二百六十円、月収にして三万七千円。これは労働省の調査でこう出ているようです。まあ、内職の世界では、まだ銭という貨幣単位さえ生き残っているということは、非常に前近代的な感じがするんですけれども、この賃金の平均というものは、一般労働者の給与と比べまして、伸び率ですね、この月収にして三万七千円、それから、時間給にして二百六十円という平均賃金は、一般労働者の給与と比べてどんなもんですか。
  129. 森英良

    説明員(森英良君) 家内労働の市場とそれから雇用労働者労働市場、やはりこれ別々でございまして、必ずしもパラレルにいかないところが一つの問題でございますが、そういう意味で、家内労働の工賃の伸びというものは、確かに雇用労働者の賃金の上昇に比べますと、かなり低いものであるということは言えると思います。大体四%ぐらいの伸びであるというふうに見ております。
  130. 渡部通子

    ○渡部通子君 それは同じには考えられないでしょうけれども、私、ちょっとここで資料を一あれですね、一般労働者の給与の伸び、四十五年あたりからずっと考えてみますと、やっぱり一般労働者では、大体三倍ぐらいになっているわけなんですね。家内労働者の場合は、やっぱりそこまではとても追いつかないということで、労働者生活という面から視点を当てていただきますと、やはりもう少し何とか手厚くしていかなければならないのじゃないかというふうに思います。家内労働法では、最低工賃を設定することができることになっていますけれども、その恩典に浴している人というのは、百五十万人ぐらい家内労働者がいると、そのうち四十万人足らずと、こういうふうに承知をしております。この普及、適用の拡大、工賃額の引き上げ、こういったものに強力な行政指導が望まれますけれども、具体的にどのように御指導を進められておりますか。
  131. 森英良

    説明員(森英良君) おっしゃるとおり、家内労働者の工賃につきましては、最低工賃制度がございまして、これをだんだんに拡充しまして、それによって保護を加えていこうというのが家内労働法の趣旨でございまして、そういう意味で、私どもも家内労働最低工賃の決定をなるべく拡大するように、従来とも努力してまいりましたし、今後ともそういうことでやってまいりたいと思っております。実際には五十二年の三月末におきます数字が、先生御指摘のように、三十七万数千人というのが最低工賃の適用があるわけでございますが、かつては、四十六年当時は十二万七千人程度でございまして、だんだんにふえてまいっております。また、これまでに決定されております最低工賃の決定件数は百五十七件という数字になっておりまして、最近だんだんに、一遍つくった最低工賃の改定が必要になってきている現状がございますものですから、新しくふえるものは毎年十数件ぐらい程度しかふえておりませんけれども、既存のものの改定と、さらに新しい分野における工賃の設定と両方、できるだけ努力してまいりたいというふうに考えております。
  132. 渡部通子

    ○渡部通子君 工賃の設定は、具体的にどういうふうにやっていらっしゃるのですか。たとえば、紙袋張りしたものが幾らというふうに決めるのでございましょう。それは現在は大体どのくらいになっているでしょうか。たとえば、紙袋十枚張った場合には幾らというふうになると、どれくらいの単価になっていますか。
  133. 森英良

    説明員(森英良君) 家内労働最低工賃は、いずれも委託されます物品の単位ごとに工賃を決めるということになっておりまして、したがって、最低賃金の場合のように時間当たりで決めるのと違いまして、非常に複雑である。それぞれの業界の非常に細かいところまで調査いたしませんとなかなかできないということで、設定自体が非常にむずかしいわけでございますが、一般には、まず諮問に先立ちまして実態調査を地方局の方でやりまして、最低工賃の設定をするとなれば、最低賃金審議会または家内労働審議会にそのための部会ができまして、そこで委託者側、家内労働者側及び公益側の代表を入れた三者構成の部会でいろいろ調査審議をしていただきまして、そうして大体どういう単位について幾らという決め方をしているわけでございます。そこで、先ほど銭とか厘とかいう単位がまだ残っているということなんでございますけれども、これはたとえば割りばしを入れる袋張りのような仕事がございまして、こういうものになりますと一枚当たりに換算すれば、単位のとり方によるわけでございますが、やはり相当安い金額になってしまうわけでございますけれども、これは単位のとり方の問題でございまして、必ずしもそれが工賃の低さとは直接に関係ない問題であろうと思っております。
  134. 渡部通子

    ○渡部通子君 これは昭和四十五年の工賃ですけれども、そうすると、たとえばシャツのそで縫い一枚二十円、所要時間十分というふうに計算をされているわけです。それから、シャンデリア用の電球口金づけ百個二十二円、十五分。コイル巻き一個三円、二分。紙袋張りは十枚で三十八円、これ三十分の時間と。こういうふうに見られているわけですけれども、こういう形では現在の時点では掌握をされているわけですか。
  135. 森英良

    説明員(森英良君) 最低工賃の設定の場合には、当然その仕様における一単位当たりの単価がどのくらいであるかという実態調査も必要でございますけれども、同時に、それをつくるについて標準的な人はどの程度能率を上げられるかという点の調査をいたしまして、標準能率をもってある時間やった場合にどの程度の収入になるかということも当然調査いたしまして、その上で決めておるというのが実態でございます。
  136. 渡部通子

    ○渡部通子君 いや、いまこういう形の掌握はされているのかと聞いたんです、これは四十五年の資料だもんですから。
  137. 森英良

    説明員(森英良君) いかなる場合にも、いかなる時点におきましても、最低工賃をつくります場合には、その時点においてそういう調査をいたしましてやっておりますし、それから既存の最低工賃を改定します場合にも同じような手続でやっておるわけでございます。
  138. 渡部通子

    ○渡部通子君 これは資料要求しておりませんから無理だと思いますけれども、こういった工賃が現時点でどのくらいになっているかということを、後ほどで結構でございます、紙袋張りというのが十枚三十八円が四十五年ですから、いまは幾らぐらいになっているのか、それをひとつ、後ほどで結構でございますから、資料をお出しいただきたいと思います。  最後に、京都府や神奈川県、こういったところでは一部、行政が積極的に内職団体を育成して、分散している内職者に自営の道をつける、また委託側の業者にも利便を供する、こういうグループつくりをやっているというふうに聞きました。いいことではないかと思うんですが、国としてもこういった方向に乗り出すお考えはございませんでしょうか。
  139. 森英良

    説明員(森英良君) 御指摘のように、一部の地方公共団体におきましてはそういう援護措置を、いわば都道府県の固有事務の一環としておやりになっているところがあるということは私どもも承知しております。しかしながら、国の立場で一体これどうするかにつきましては、やはり家内労働者というものが本来はいわば雇用労働者と違いまして、一種の独立自由業者であるという実態があるわけでございまして、それに対して、しかし家内労働者の場合にはいろんな経済的な意味での従属性というものがあるために、ある限度で労働法的な規制の対象にしようということで家内労働法ができているわけでございますが、この家内労働法の施行の実態も先ほどから申し上げておりますような状況でございまして、なお、いまの現行法さえも十分に実は実行されてないという面がございますので、さしあたってはやはり現行家内労働法の適用、適正な運用というものをしっかりやっていきたい、そのための努力を徹底いたしたい。また、内職相談センターというものにつきましては、これはまた補助を行っておりますが、そういう既存の線を今後とも踏まえて、さらに努力してまいりたいというのが現在の私どもの立場でございます。
  140. 渡部通子

    ○渡部通子君 以上で質問終わりますけれども、苦情処理というものがどういうふうに行われているかということが、私は一番心配でございます。苦情も言っていけない。下手なことを言うと仕事を打ち切りにされてしまうという弱い立場におりますので、この家内労働者に対する苦情処理の窓口をひとつお考えいただきたいということを一まあいまでもあるとおっしゃるかもしれませんけれども、とうていそこまで手が伸びないというか、そこまでは頭が回らないというか、弱い立場にいる人たちであるということをひとつ御考慮をいただきたいと思うんですね。いま御答弁をずっといただいてまいりましたけれども、やはりこういう不況の状況下にありますと、最も弱いところが一番泣いているわけでございまして、ひとつそういうところに温かい強力な指導をお願いしたい、これを最後に要望いたしまして質問を終わらせていただきます。
  141. 小平芳平

    ○小平芳平君 限られた時間でありますので、一点だけ質問をして終わるわけでありますが、その私のいま問題提起したい点は、労働省としては雇用安定のためにあるいは雇用創出のために、これこれこのような対策をしているということをけさからも再三答弁しておられますが、また、確かにこの特定不況業種離職者臨時措置法あるいは雇用安定資金、そうした労働省の対策も進んできております。しかし、一方で、たとえば繊維産業で個人で、要するに自宅でやっている機屋さん、こういうような方に対する雇用問題はどこが扱うかというわけですね、雇用じゃないわけですから、そもそももう。したがいまして、私がいま直接申し上げるのは山梨県の郡内地区というところでありますが、同じケースとしては各地に、また繊維に限らないいろんなケースが全国にあるわけであります。そこで、総括的にこの機屋さんが個人で自宅で機を織っていると。それが郡内地区の繊維業者は九五%までが個人企業で、雇用労働者じゃないわけです。雇用労働者が五%弱なんです。そういうところで今回の、今回のというよりもむしろ長期にわたる不況を受け、また今回のこの設備を一部廃棄すると、そういう状況に立ち至っているわけでありますが、これらの点に対して労働省はどういう対策をとる可能性があるか、あるいはとってこられているかという点についてまずお伺いいたしたい。
  142. 細野正

    政府委員(細野正君) 個人営業の方が雇用労働者になろうというふうに求職活動なさいます場合には、当然安定所におきまして紹介等を申し上げるのみならず、その方がどうしても特別の訓練をしなければ就職がむずかしいと、しかも年配者の方であるというようなことでございますと、たとえば訓練手当を支給しながら訓練をするというふうな道も開かれているわけでございまして、そういう角度から雇用労働者を御希望になる場合につきましては、私どもの職業安定所の方において扱いますと同時に、いま申し上げましたようないろんな対策も準備をしているということでございます。ただ、その方々が、たとえば保険とかそういうことの対象になっておりませんから、したがいまして、雇用保険に類するようなそういう制度はないわけでございますが、私もよく詳しくございませんが、たしか中小企業の共済事業団というのがあって、そこでいわば退職金類似みたいな制度をお持ちのようでございますから、そういうものが一つの保険にかわるような役割りをするんじゃないかなというふうに考えているわけでございます。
  143. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、こうした方は就職活動ですね、要するに安定所へ就職の窓口を訪れるか、もしくは訓練を受けるという以外、労働省としては対策がないというわけでありますか。もとより、この雇用保険もなければ失業者にもなってないわけでしょう。雇用労働者で初めからないわけでありますから、そういう点、いまの渡部委員指摘される家内労働法の関係はどういうふうに考えますか。
  144. 森英良

    説明員(森英良君) 御指摘のように、家内労働者と申しますのは、いわゆる雇用労働と違いまして、実態は一種の特別自営業者であるという性質を持っているわけでございます。しかしながら、その実態が経済的な意味で非常に従属性を帯びておるということから、ある範囲でこれを労働法的な保護の対象に取り上げようということでできましたのが家内労働法でございまして、この関係では主として家内労働手帳の交付でありますとか、最低工賃の決定でありますとか、あるいは労働する場合の安全衛生対策という点にしぼりまして規定ができておるわけでございまして、したがって、いわゆる家内労働者の就業問題については特段の規定がないわけでございます。しかしながら、実際にはいろいろ産地等で業績がふるわないということになりますと、実際には最低工賃が守られないというような形で、あるいは工賃不払いが起こるという形で問題が出てまいりますので、その場合にはもちろんその履行を督促するわけでございますが、同時にその業績が何とかなりませんと、その点が解決しないということでございますので、関係の地方公共団体あるいは通産省等ともいろいろと相談いたしまして、その業界の業績が何とか立ち直るように、いろいろ側面から協力をするというふうなことはこれまでもやった例はございますし、今後もそういう形で努力してまいりたいというふうに考えております。
  145. 小平芳平

    ○小平芳平君 こうした問題は、労働省全体としては細かい問題だというとらえ方をしておられるかもしれませんし、そうした問題はつかまえておられないかもしれませんが、いま部長がおっしゃるような最低工賃が守られない、あるいは不払いが起きる、そういうことはもとより、それ以前の問題で家内労働手帳を受けてない人がほとんどなんですね。ですから、旬間が終わったと、きのうで家内労働旬間は終わったとは言いながら、私が行きましたのはちょうどその旬間、まさしく家内労働を強調している旬間でしたが、全く役所の動きもなければ特立ったそういう運動もありませんというようなわけで、まあわずかに労働省として常時タッチできるかという面は家内労働法の関係ですが、この面もこの手帳の制度も十分生かされてないという、そういうような実態と思われませんか。
  146. 森英良

    説明員(森英良君) 御指摘のように、家内労働手帳の交付ということは、家内労働法の最初の基本でございますけれども、これがなかなか実際に普及しないという実態があることは御指摘のとおりでございます。そこで、私どもも毎年の家内労働旬間に集中的にこの法律の周知徹底を図っておるわけでありますが、その場合にも家内労働手帳の普及ということを毎回の家内労働旬間の最大のスローガンにいたしまして、特に重点を置いていろんなマスメディアを通ずる広報でありますとか、委託者団体を呼んでのいろんな集団指導でありますとか、それなりに努力はいたしておるつもりでございます。現在、だんだんにこの実績もよくなってまいりまして、われわれのつかんでおります数字によりますと六七%は家内労働手帳を交付しておると、さらに完全に記入している者が四八%というところまではきておるわけでございますが、これをもってとうてい満足すべき数字じゃございませんので、今後ともこの普及につきましては特段の努力をしてまいりたいというふうに考えております。
  147. 小平芳平

    ○小平芳平君 また、家内労働法についてはもうちょっと触れたいんですが、その前に通産省に伺いたいのですが、結局次々と仕事が減る。そして失業する。実際上の失業ですね。首切られるわけじゃないんですが、仕事がなくなるわけですから。したがって、家にいても仕事にならないので、大体はもう行商あるいは日雇いあるいは婦人の方は東京まで来てキャバレーやバーのホステスさん、そういうようなケースがほとんどになっているわけです、現実に。そこで、何とかして地元に産業を興すなり、あるいは千年来の伝統の地場産業を守っていくなり、何らかの方策を見つけないことには、活路を見出さないことにはどうしようもないというのが現状なんですが、通産省ではそういうようなことを御存じですか。
  148. 赤川邦雄

    説明員(赤川邦雄君) 機屋さんで自営の方につきましては、まず根本はやはり経営の安定であると、こういうことで、需要の喚起等一般の施策のほかに、金融措置または信用補完制度さらには今度のような不況業種指定を行いまして、より一層の金融の措置を講ずるというのが第一でございます。  第二点、そういう状況にもかかわらず、先行きの見通しがよくないと、この機会に機屋をやめたいという方には、そういうふうな転換が円滑にいきますように、事業転換法の指定のほかに、現在共同廃棄事業を行いまして織機の買い上げを行っております。  第三に、しかしやはり産地としても先行きがどうなるかという心配がございます。そういうことで、本年からは産地振興策ということで、特に繊維産地につきましては地域指定を行いまして、そこでいろんな産地振興のビジョンをつくったり、それから新規企業が来やすいようにいろいろ工業配置補助金の割り増しを行う等の措置を講じておりまして、産地ぐるみの振興を図りたいというふうに考えております。
  149. 小平芳平

    ○小平芳平君 廃棄処分については、前のときとは大分今回は変わったやり方をするんではないかということに対する不満があるわけですね、十分これは御承知と思いますが。その廃棄処分については、どういうふうにお進めになるか、ごく概略で結構ですから御説明をいただきたいのと、それから工業再配置促進法に基づく特別誘導地域でありますか、この指定は富士吉田市等が指定になったというふうに聞いておりますが、その点については地元としては大変に感謝しているわけですが、感謝するというところまでいくかどうか、指定地域になったということで、問題は事業が進むのはこれからでありますが、期待を持っておりますが、それらの点についてもう少し具体的な方策がありますかどうか伺いたいんです。
  150. 赤川邦雄

    説明員(赤川邦雄君) まず織機の買い上げ、共同廃棄規模でございますが、前回と申し上げますと四十六年から四十七年でございますが、このときとの相違いかんという点でございます。それで、大きな相違点は前回の場合は対米の輸出規制、または日米繊維協定に関連しまして非常に窮状に陥ったので、繊維構造改善事業協会が買い上げを行って、その買い上げ事業に対して国が補助金を払うと、こういう仕組みでございます。今回はそれに対しましてそういう救済措置ではないという観点から、業界団体が設備が多過ぎるという観点から自主的に廃棄をいたしたいと、そういう事業に対しまして中小企業振興事業団が高度化資金を、すなわち無利子で据え置き四年、十六年間の融資を行うと、そういう方向で業界が行う自主的な需給バランス調整に対して援助いたしたいということが相違でございます。  それから、特別誘導地域でございますが、これにつきましては補助金の割り増しとか、そこに立地する企業に対する金融の優遇等を行っておりますが、単にそういうもののみならずいろんな機会をつかまえまして、新規に立地する場合は、特にそういう特別誘導地域に立地するような指導をやってまいりたいと思っておりますが、何分、現在まだなかなか不況が回復しておりませんので、具体的にはそういう話は非常に少ないというのが現状でございます。
  151. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまのこの工業再配置促進法による誘導でありますが、この点については地元でどういう青写真をつくられるか、それが一番基本になろうかと思います。あるいは実際そこへ行く企業があり得るかどうか、それもまた非常に基本的な課題であります。ただ、地元としては、同じ機屋さんがあるのに、ある仕事はほかへ持って行かなくちゃできないというようなことがないような、一貫作業ができるような、そういう工業の、産業の誘導をしたいという強い希望を持っておりましたが、そういうような点も今後の検討課題にしていただきたいと思います。  それからもう一つは、繊維産業というともうすぐああ不況だと、なぜ不況かというと、それは輸入のせいだと言われるわけです。ところが、一体どれだけ輸入がふえているのか、そして、たとえば韓国、中国、台湾、そうした輸入量を検討してみますと、成約量を検討してみますと、ふえてないじゃないかというのですね、そんなには。その辺はどうなっておりますか。
  152. 保延進

    説明員保延進君) 繊維の輸入につきましては、御指摘のとおり昨年につきましては国内の繊維産業の不況の影響もございまして、その前の年に比べまして大体横ばいという水準で、比較的現在は鎮静化しておるというふうに考えております。
  153. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあ、正確なことは私もよくわからないわけですが、要するに韓国や台湾の商人が山梨県へ売り込みに来ているんじゃないというんですね。そうじゃなくて、輸入がふえたふえたと言って値段をたたくのは、日本の商社なり問屋なりそういう人がやっているんだということなんですね。ですから、結局輸入がふえたふえたということを口実にして、そして値段をたたいているんじゃないかというようなことを言われておるわけであります。ある書類を見ますと、これはマスコミや組合紙等へは絶対に避けるようにしてほしいというようなことで、輸入成約量というようなものが書き込まれた書類があるんですけれどもね、そういうようなことは、輸入成約というものは、これは公式に発表される数量であって、そういうマスコミであろうが組合紙であろうが秘密にすべき何物もないわけでしょう。いかがですか、そういう点は。
  154. 保延進

    説明員保延進君) 輸入成約統計につきましては、われわれのところで調査をいたしておりまして、その数字につきましては毎月新聞にも公表をいたしております。
  155. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは韓国とかそういう成約先の国別に数量が発表になるわけですね。
  156. 保延進

    説明員保延進君) 国別そのほか詳細な分類につきましては、統計の精度の問題、それからこれが相場等に悪影響を及ぼすというおそれ等もございますので、主な品目についての発表にとどめております。
  157. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあ結論は、そういうことは秘密にすべきものは何もないわけですね。
  158. 保延進

    説明員保延進君) この調査につきましては、非常に多数の輸入商社はあるわけでございますけれども、統計の技術的な制約もございまして、サンプル調査にいたしておりますので、細かい数字になりますと統計の精度が落ちるという問題がございますので、そういう細かい数字を発表いたしますと、まあ精度の低い数字につきましていろいろ判断をされまして誤解を招くということもございますので、先ほど申しましたように主な品目の発表にとどめておるということでございます。
  159. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、この国内価格とそれから産地による――台湾、中国というふうな産地別による価格ですね、この価格の問題はどうですか。
  160. 保延進

    説明員保延進君) 価格につきましては、輸入関係につきましては、金額の統計と数量の統計とございますので、それを割り返しますと大体のレベルは把握できるわけでございます。
  161. 小平芳平

    ○小平芳平君 把握できるから、価格のアンバランスが、価格の比較をした場合に高い低いが、高過ぎるので問題は起きませんか。
  162. 保延進

    説明員保延進君) 現在、輸入については、後進国は競争力が比較的ついてまいりましておりますので、輸入品の方が国産品よりもやや安いという傾向を示しておるかと思います。
  163. 小平芳平

    ○小平芳平君 まあ、輸入品の方が安いということで、輸入がふえてくるということで、先ほど来申し上げるようなことが起きているわけですから、それに対する通産省の対応がなければ何ともしようがないんですがね。
  164. 保延進

    説明員保延進君) 輸入問題につきましては、現在のところはやや鎮静化いたしておりますけれども、今後円高とかそれから後進国の追い上げ等によりましてふえることも予想されますので、その動向につきましては、今後とも十分ワッチをいたしてまいりたいと、かように考えております。
  165. 小平芳平

    ○小平芳平君 何を努力するのですか。
  166. 保延進

    説明員保延進君) 輸入動向につきまして、十分これを監視してまいりたい、こういうふうに考えております。
  167. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ、国際関係はいろいろとてもここで議論している時間がありませんので、労働省にまた伺いますが、この家内労働法が――労働大臣、先ほど来ごくその概略の問題点指摘しましたし、また政府側からもきわめて概略的な御答弁が、御説明があったにすぎませんけれども、労働省が本来は雇用労働者を対象とした労働政策が行われるということ、これは当然の姿でありますが、そうした雇用労働者でない方々に対する家内労働法――家内労働法についてもいろいろな経過をたどって、今日に来ていることも御承知のとおりでありますが、やはり現段階で、こうした雇用環境の厳しい、雇用情勢のきわめて厳しいこの現段階で、家内労働法もそういう観点から点検してみる必要があるんじゃないかということを申し上げているわけであります。  先ほども申しますように、家内労働手帳がそもそも普及してないわけですから、九六%ほどの方が、九五・九%の方がその地域内では自分の家で機屋をやっているわけです。わずか四・一%の方が雇用労働者ですが、この雇用労働者も社会保険等の適用になっている方はまずないわけですね、ごく零細な事業所でありますから。そうなると労働省は全く打つ手がないのか、ないといってただ傍観していて済むのかというような点を申し上げたかったわけですが、いかがですか。
  168. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) そういう繊維産業地域におきましては、いろいろな形の業種業態があろうかと思います。私どもの家内労働法の立場から見ますと、専属的な家内労働者的な方が非常に多いんではないかと思います。一般には家内労働者はほとんど内職的な方でございますけれども、そういう産地にはむしろ専業的な家内労働者が多いんではないかと思います。したがって、非常に行政の対応もむずかしくて、個々の、一種の個人業種でございますから、先生御指摘のように、通産行政として手を打っていくところと、私どもの家内労働者的な立場で保護あるいは助成をしていくという立場と二つあろうかと思いますが、いずれにいたしましても、私どもが通産省、特に中小企業庁と連携をとりながらいろいろと対応をしていっておるつもりでございます。  また、家内労働審議会にも中小企業の方もおいでいただいて議論を一緒にしていただいているわけでございます。問題は、社会保険の問題なんか一番問題になってまいりますが、家内労働審議会でも、まず家内労働手帳をどういうふうに普及したらいいかというようなことでまず御議論いただいたわけでございますけれども、いま御指摘のような社会保険の問題についても、次の議題にしようというお話になってきております。この問題をどういうふうに仕組んでいくかという、非常に技術的な問題、また基本的に雇用保険的な失業というものがあり得るのかどうかという議論もございますし、いずれにいたしましても、私どもは家内労働審議会の場において、非常に性格的にとらえにくい対象でもございますので、その辺を十分詰めながら、関係省も御参加いただいた中でこれから御議論をいただくことになったと、こういうふうに考えております。
  169. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣はどうですか。
  170. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) まさに労働省のいわゆる家内労働法の対象としての面は、当然われわれが積極的に、最低工賃実施であるとか、あるいはまた家内労働手帳の普及であるとか、あるいは労働安全の確保であるとか、こういう点を推進しなければなりませんけれども、またこれが零細自立業者であるという半面を考えますと、これは中小企業庁の対象という、両方が相提携し合って、そのような立場にある人たち生活の安定、所得の安定ということを考えなければなりませんから、いま局長が御答弁いたしましたような、絶えず両省が連絡をし合ってそして問題ごとに対策をしていく。特に労働省としては、基準監督署が窓口となってひとつよく現状認識を怠らないように努めていきたいと、このように考えておるわけでございます。
  171. 小平芳平

    ○小平芳平君 これで終わりますが、要するに、第一にはこうした緊急課題としての生活問題をどう切り抜けていくかということ、それには工業の再配置、そんなことも課題となってきております。  それからもう一つは、先ほど来申し上げますように伝統産業なんですね、千年来どうしてそこへそうした産業が発展してきたかという、そうした技術、伝統産業というものをただみすみす見捨てることができるのかどうかという、そういう事態にもあるということを申し上げて、労働省、通産省の施策を期待し、要請して終わります。
  172. 山中郁子

    山中郁子君 労働時間の問題についてお尋ねをいたします。  国際的に見ても、いまの日本労働時間が長いということは定評があるところですし、また生産力資本主義国第二位という経済大国だと言われておりますけれども、労働条件の上では多くの問題点があることもまた周知の事実です。  それで、初めに五月二十五日ですか、「労働時間対策の推進について」という労働事務次官通達が出されておりますけれども、これは一言で言ってしまって、労働時間の短縮の問題に関して言うならば、その趣旨は、労働条件を切り下げることによって労働時間短縮を行うということではないと、当然のことだと思いますけれども、そこを初めに確認をしておきたいと思いますので御答弁をお願いいたします。
  173. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) 今回の通達の考え方は、御承知のように、昨年のたしか十一月末だったと思いましたけれども、中央労働基準審議会の建議を受けまして、その考え方にのっとって出したわけでございます。  その基本は、そこに書いてございますように、個々の企業の生産性の向上の成果なり、あるいは日本の経済の成長の成果なりというものを賃金だけではなくて、時間短縮というような形の中でひとつ労使が話し合って決めていくということでございますので、現状労働条件を切り下げて時間を短くするということは私ども毛頭考えていないわけでございます。
  174. 山中郁子

    山中郁子君 労働時間の短縮を考える場合に、いろいろ実際問題としても起こってきているわけですけれども、現実には所定外労働時間、つまり残業がかなり常態化しているという面もあります。これはそのときどきの景気の動向によっても変わりますけれども、そういうものがもう一つの側面としては、低賃金のもとで労働者の必要収入の要因をなしているということも、これまたかなり常態化しているということも無視はできないと思います。賃金についてはもちろん基本的には労使間で取り決めるということではありますけれども、当然のことながら労働行政の果たす役割りというものは大変大きい、このことも当然のことだと思います。したがって、支出を抑えるという観点から労働時間を短縮をして押さえ込んで、そして経費を節減すると、こういう傾向が具体的に出てきているということを私はきょうは問題にしたいと思っておりますが、具体的に申し上げますと、労働時間の短縮、総時間の短縮ということで、実際に残業をした人を対象にその残業分を休日にして休ませる。もちろん、これは賃金カットで休ませる。無給で休ませるわけです。そういうことがいま企業で出され始めてきている。これは私は大変問題だと思いますし、いま御確認もありましたように、この労働省の事務次官通達の理念とか考え方にも反するものだということは明らかだと思うんですけれども、不況下に企業の防衛策の一つとして、結果的には労働者にしわ寄せをする形でのこういう方策が現に出てきているわけですけれども、この点について今後もそれが拡大されるという心配は大いにあるという状況だと思いますが、対策についての基本的な見解をお伺いをしたいと思います。
  175. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) 具体的な事案の中身、承知いたしませんので、一般論になるかと思いますが、私ども先ほど申し上げましたように、現行のいろんな労働条件をこの不況下でいろいろ見直すという動きがあることも承知をいたしております。私ども五十三年度の行政運用方針におきましても、とかくそういうことが行われることも予想できますので、労働条件の切り下げについては、特に地方の第一線の監督機関は目を光らせてその指導に当たれと、こういうふうに言っているわけでございます。考えてみますと、そのいまの問題も法定以上の問題と法律に決められた条件以下に下げるものと二つあると思います。法律に違反するような形で労働条件を切り下げることは、これはもう基準法の認めるところではございませんので、厳正な措置を講じてまいりたい。それから、法律を上回る問題につきましては、これはいろいろ労使のお話し合いの問題で、とかく監督機関としては価値判断を加えることはできませんけれども、少なくともやはりそういう労働条件の変更につきましては、そこの労働組合と十分お話し合いをされて合意をしていくということが、ぜひ私としては望ましい。それからまた、そういったことで合意されても、手続的に就業規則なり労働協約なりの改定を通じてそういうことが行われるということを、私どもは地方の第一線を通じて指導をしてまいりたいと、こういうふうに思っております。  それで、お話しの問題は恐らく法定以上の問題になろうかと思いますけれども、問題はそれによって、いままで何と申しますか、賃金が減るのかどうかという問題、具体的に聞いておりません、わかりませんが、いずれにいたしましてもそういうのは労使で十分お話し合いをいただきたいというふうに思います。
  176. 山中郁子

    山中郁子君 具体的にはおいおい引き続きお話をいたしますけれども、私は一つは、やはり労働基準法というのは最低の基準なわけですよね、労働省の皆さんにそんなことをいまさらここで申し上げる必要はないわけですけれども、そこのところははっきり踏まえて、基準法に一つは違反していさえしなければよろしいということは大変消極的な、行政としてですね。現状どうなっていて、それをどういうふうに変えようとしているのかということが、不況を口実にした形での労働者へのしわ寄せという点をはっきり踏まえて、労働省としては労働者保護という立場から基準法自体もそういう精神にのっとって立法されているわけですから、そこのところは申し上げておきたいと思います。  それで、こういう形だけでなくて、さまざまな形での労働条件の切り下げが行われています。たとえば、希望退職に名をかりた強制退職ですね。これも形だけは希望退職ということでなっているけれども、実際上はもう強制退職そのものであるというケースが大変多いというよりは、むしろほとんどそうであろうと思います。これはテレビのニューズ報道なんかでもかなり報道されておりますし、私も先般の予算委員会で高齢者の退職賞与の問題に関連して指摘したところでございますけれども、それが一つあります。それから他社へ、全然違ったところへ、たまたまある企業が暇になってくると、そうするとその隣の会社へ会社同士が契約を結ぶような形で出向させるということですね。それとか定年制を縮小するというんですか、定年を、いま定年制を引き上げるということで労働行政もちゃんとはっきりしているにもかかわらず、さまざまな方策をもって定年を引き下げていく、逆に。そういう動きも出ている。これも予算委員会で同じく指摘したところですけれども、こういうふうに不況を口実にしてというよりも、不況に絡んで企業防衛という立場から一面的に労働者にしわ寄せをさせて労働条件を切り下げていくということが行われることに関しての歯どめを、やはり労働行政としてかける必要はどうしてもある問題だと思っておりますけれども、まず一般的にこうした問題に対する労働省の見解を具体的に伺って対策を示していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  177. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) 先ほど申し上げましたように、私どもは不況下においてそういう問題が起こりやすいので、第一線の機関を通じて具体的な事象事象に応じて指導をしていきたいという基本的な考え方を持っております。それで、お話しのように消極的とおっしゃいますが、監督機関というのはそういう司法警察権まで持っておりますので、やはりその判断というのは、そういう伝家の宝刀を持っているだけに、その指導についてもきちっとしたやっぱり考え方を持たなきゃいかぬと思いますので、申し上げましたように法に違反については厳正な措置をしていく、法を上回る分については労働者意見を十分聞いて、そして処理をしてほしい。ただ、私どもはその会社が、ある程度雇用調整をしないと会社全体がつぶれるという緊急避難的な問題が出てくるということがあると思います。そういうものについては労使が十分話し合って一つの合意が出る。しかし、私どももそういった事象については当然に手続的に就業規則、労働協約の改定という形でタッチができるわけですから、そういった緊急避難的な事態が解消するならば、その時点でやはりきちっともとに戻すというような、やはりそういった歯どめと申しますか、そういった労使の一時的ながまんの仕方についても十分指導をしてまいりたいと、こういうふうに思っておるわけでございます。
  178. 山中郁子

    山中郁子君 権限を持っているんだからきちんと慎重にという御趣旨だと思いますが、そういうことについてもちろん否定するものではありません。  それで、具体的な問題ですけれども、一つは川崎市の日立造船の神奈川工場での問題です。神奈川工場では、四月一日から経営の危機を乗り切るためにという理由で、残業ゼロ体制というのをとっているんですね。それで、その中身ですけれども、先ほどちょっと申し上げましたけれども、フレックス制というように言っておりますけれども、具体的には、残業をしますでしょう、するというのはつまりその日には残業をする必要があったわけです。企業の側から言えば残業させる必要があったわけですね。それで、残業をします。一人の労働者がその残業が八時間に達すると、この場合は一三〇%――割り増し賃金ですね。その一三〇%の賃金を、一日二時間したとすればもちろん残業手当含めて払うわけです。その一人の労働者が八時間に達すると、今度はそれを一日分の特別に休暇をとらせる、休ませる。休暇というより休業ですね、休業をさせる、こういう方式をとっているわけなんです。細かい規定は、取り決めはいろいろあるんですけれども、時間の関係で余り細かくは申し上げませんけれども、基本的にはいま申し上げたようなやり方です。ですから、八時間残業をしたと。そうしますと一日休ませる。この休みはもちろん休業ですから給料出ない、賃金は出ないわけです。だから、八時間働いて八時間分の残業賃金をもらったとしても、三〇%分は別として、八時間分はまたその一日の休業で取り戻されちゃうわけです、労働者の側から言えば取り戻されちゃうわけです。しかも、自分が休みたくて休むわけじゃないんですが、企業の方で休みなさいということで指定して、そして休ませる。これは強制的に休ませるわけです。そういうやり方で、結局企業の方から言えば、必要なときには残業をさせて、そしてその残業分の大方は今度は自分が都合のいいとき、つまり暇で、稼働をそんなにする必要はないというようなときに恣意的に休ませるわけです。そして、八時間必要な残業をさせた分を結局取り戻す、こういうやり方になっているわけです。そして、これを称して残業ゼロ体制と、こう言っているんです。大変欺瞞的な言い方であるということもありますけれども、私は、内容的には結局企業の方で働かせたいときに働かせておいて、そしてその分は逆なところで取り戻すという、こういうやり方でもって労働者労働条件を切り下げるという形で経営の合理化を図るというやり方になっていると言わざるを得ないと思うんです。  それでお尋ねをしたいんですけれども、こうしたやり方が残業ゼロというふうに言えるのかどうか。当然のことながら、三六協定に基づいて残業の協定を結ぶわけでしょう。それに基づいて残業するわけです。だから、当然それはAならAという労働者にとっての所定外労働ですね。その労働として労働省にだって報告がされるものだし、何らかの統計なり何なりだってそこで入るわけでしょう。だけれども、片方ではそれを残業ゼロ体制だということで企業が、経営合理化のためのスローガンですね、そういうことで労働者にハッパかけている、こういう状況になるんですけれども、一つ考え方として仮に、こういうことが実際に、これは仮にじゃなくて、行われているわけなんですけれども、こういうものを残業ゼロと言えるのかどうか、そこのところの労働省の見解を伺っておきたいと思います。
  179. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) お尋ねの件は、川崎の南労働基準監督署の方にも申告がありまして、現在監督署の方で調査をしております。
  180. 山中郁子

    山中郁子君 日立造船です。
  181. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 日立造船でございますか。失礼しました。
  182. 山中郁子

    山中郁子君 日本鋼管のは後でまた申します。
  183. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) その詳細はまだ私の方承知いたしておりませんが、いま先生お話しの内容からお答えできる範囲で申し上げますと、残業ゼロ対策というレッテルがいいかどうかは別としまして、少なくとも八時間の時間外労働が現にあり、それに対して割り増し賃金が三〇%でございますか、その割り増し賃金がその八時間分について払われている以上、残業がないとは言えないと思います。
  184. 山中郁子

    山中郁子君 当然そうだと思うんです。所定内労働と所定外労働とは全然違うものですから、そういうものを残業ゼロ体制というふうな欺瞞的なスローガンをもって労働者に押しつけているということ自体、私は大変問題だと思いますので、そのことについての御見解も伺いたいと思います。  それから、同時にこういう、これはちゃんと制度化しているものですから、新しいやり方ですね、いままで恒常的にどこでもやっていたという問題じゃありません。こういう新しいやり方について、いま私は日立造船の川崎工場を申し上げました。それで、引き続いて日本鋼管を問題にいたしますけれども、そのほかにもどのようにいま行われているのか把握をされている状況をお知らせいただきたいと思います。
  185. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 全国的に全体の動きを調査したものはございませんが、不況の中で、特に不況色の強い業種の中で、いまお話しのように、業務に繁閑がございます場合に、忙しい時期に残業して、それが一定時間数たまるとそれをその後・において無給の休日を設けるという形で処理している事例は二、三聞いております。また逆に、事前に、暇なときに事前に休日を与えておいて、それで事後残業がまた八時間たまるとその分が消えていくというような事前という、まあ言うならば代休の先取りと申しますか、これはきわめてレアケースだろうと思いますが、そういう事例もあるやに聞いております。
  186. 山中郁子

    山中郁子君 ひとつこれはぜひ調査をしていただきまして、もちろん全国くまなくというわけにもいかないでしょうけれども、そちらもちろん専門のところですから、大きなところで、大体それは大手ですわ、調査をしていただくということと、資料を御提出いただきたい、調査の後、把握されたものについていただきたいということのお願いです。  それからもう一つは、いま先取りというか、代休の先取りみたいな形のは具体的にどこでやっていますか。もし一つでも企業の名がわかりましたら教えていただきたい。
  187. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) これは私どもが把握したわけじゃございませんで、衆議院の委員会の場において御指摘がございまして、愛知県の事例でございますが、あったものでございます。
  188. 山中郁子

    山中郁子君 愛知県のどこですか。
  189. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) ちょっと正確なところをいま記憶いたしておりませんので、後ほどまた御報告申し上げたいと思います。
  190. 山中郁子

    山中郁子君 最初にお願いをいたしました、調査の上把握されたところをお示しいただきたいということはよろしいですね。
  191. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 調査と申しましても、結局、監督官が事業所へ行っていろいろ状況を尋ねるというかっこうになるわけでございますが、その場合に、いま御指摘のような事案が、基準法に照らして好ましくないというような問題ですと、まとまった調査ということにもなるのでございますが、その辺はもう少し事案の性格を私どもとしても検討してみませんと、これを全国的に調べるというわけにもなかなかまいらない点がございますので、事案の中身についてもう少し検討さしていただきたいと思います。
  192. 山中郁子

    山中郁子君 事案の中身の検討ももちろん結構で、おやりにならなければいけないことだと思いますので、そういうことに基づいて、当然それが、問題があるなしにかかわらず、新しいこういう形でのやり方がされている場合、当然労働省としては状況を把握すべきだと思っておりますし、別に労働条件、基準法に違反しない問題だっていろいろ調べていらっしゃるわけでしょう。そういう限りで私は申し上げておりますので、その点はよろしいんでしょう。そう何かめんどうくさいことがあるわけじゃないんでしょう。
  193. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 申し上げましたのは、監督官を使って全国的にある程度の規模で調査をするということになりますと、やはりそれなりの必要性なり何なりという問題が出てまいるわけでございます。その場合、基準法との兼ね合いが一つのポイントになってまいるものですから、そういうようなかかわり合いを持つ事柄になっていくのかどうか、そういう意味で申し上げたわけでございます。  それ以外の、いま御指摘のような事案以外で、もちろん不況業種について労働条件の切り下げの実態があるものについては、できるだけ本省に報告するようにも督励をいたしておりますから、そうしたものの中で同じような事例のものがあれば、それは報告等としてもまとめ得るかと思いますが、そういう意味で申し上げたわけでございます。
  194. 山中郁子

    山中郁子君 当然、そうした把握をされることだと思います。それで、現状は余りつかんでいらっしゃらないわけなんですけれども、先ほど御答弁の中でありましたように、日本鋼管で、京浜製鉄所です、同じような問題で労働者が川崎の南基準監督署に提訴をしています。中身は全く同じです。八時間が七・七五時間とかないしは七・二五時間とかいう若干の開きはありますけれども、これは労働時間の取り決めとの関係で違うだけであって、やり方としては同じです。会社からの指定によって休日をとらされるということで不当であるという申告をしていますけれども、その内容について初めに簡単に御説明をいただきたいと思います。
  195. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 川崎の南労働基準監督署に五月三十日、日本鋼管京浜製鉄所の五人の労働者の方から申告があったわけでございます。  その申告の中身は、かいつまんで申し上げますと、同製鉄所ではことしの一月一日から特別休日制度導入しているわけでございますが、この制度は、一カ月の残業時間が七・七五時間、連続勤務のときは、七・二五時間以上となった場合にはこれを一日分として、月に二日を限度として相当日数分の特別休日を与え、その日の賃金は支給しないというものであるということでございます。これは、残業時間について割り増し賃金相当分だけではなく、七・七五時間に相当する賃金も支払うべきなのに支払っていないという申告の内容でございます。さらに、たとえ支払うべきでないとしても、特別休日は労基法第二十六条で言う使用者の責めに帰すべき休業であるから、平均賃金の六〇%以上の休業手当を支払うべきであるが、支払っていないので基準法に違反するという内容の申告でございます。これにつきましては、現在同監督署でその事実関係等を調査中でございます。
  196. 山中郁子

    山中郁子君 先ほども申し上げたんですけれども、これは局長に御答弁をいただきたいんですが、新しく出てきている形態ですよね。それで、いま御答弁だと川崎南基準監督署でこれから調査をすると、こういうことですので、私はやはり労働者が賃金上も労働時間上もさまざまな形で不利益を受ける、こういうやり方に対しては私はそういうふうに把握、認識して理解をしていますけれども、少なくとも新しいケースの企業の対応であり、労働省としては十分に慎重に調査もし、検討もするべきだと、まずそのことを要求をしておきたいのですが、いかがでしょうか。
  197. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) 先ほど申し上げましたように、この不況下の労働条件のいろんな変更問題について私どもも地方、本省含めまして関心を持っておるところでございます。したがって、御質問の事案につきましてもよく調査をして慎重に対処したい、こういうように思います。
  198. 山中郁子

    山中郁子君 労働大臣にもぜひ具体的に、いま私が問題を出し、それで御答弁もされている中身をよく知っていただきたいと思うんです。  それで、具体的に申し上げますと、いまのようなやり方で、結局超勤しますよね、残業ですね、まあ約八時間とします、日本鋼管の場合に。八時間超勤をする。そうすると、本当ならばその人は一カ月の中で超勤分が収入面だけで言えば増収になるということになるんですけれども、いまのこの日本鋼管の新しい制度を実行していることによりまして、賃金上どういう結果が出てくるかと言いますと、これは労働基準監督署に提訴をした人の例ですけれども、――委員長、恐れ入ります、これちょっと労働大臣にお示ししてよろしいですか。賃金明細です。(資料提示)  一番上の方のを見ていただきますと、一番上の段に赤で囲んだところがありまして、「1」という数字があります。これは一日指定の休日ですね、休業です。これは会社が特別休日指定通知書といってこういう通知書がちゃんとできているんです。あなたは八時間もう超勤をしたから、だからこの日に休みなさいと、休業しなさいと言って指定するわけです。これは強制的なんです。何ら私は休みはとりたくないですという選択の余地はないわけなんです。そういうやり方になっています。それで、一番上の段の赤で囲んだ「1」というのは、一日特別休日をとらせたということですね。で、その二段目の左の方に出ている数字は、これは二十五時間五十分の超勤、残業をしたということです。それで、三段目の「超労給」となっているところですね、これは超過勤務手当、残業手当ですね。そしてその下の段の左に七千七百七十七円となっていますでしょう。これが一日分休んだことによる減給分なんです。カットなんです。そして支給金額が十九万二千七百三十九円と、こういう仕組みになっているわけです。だから、残業をしたけれどもその中で七千七百七十七円、この人の場合ほぼ八千円ですね、八千円は一日休まされたことによってカットされているわけです。減収ですね。これはまあこのときはまだ一日だったわけです。それは企業の方が一日休めということで自分の都合で一日休ませた。だけど、この協定によりますと二日まではよろしいということになっているんです。二日もし休ませたら八千円の倍の一万六千円です。一万六千円を減給されるわけです。結果的には収入がそれだけ減ると、こういう状態になります。一万六千円といいましたら、全体が十九万二千円ですから一割に近い減収になるわけです。これは労働者にとっては大変大きなものです。そしてしかも、残業というのは企業の都合でやらされているわけです。企業の都合できょう残業しなさいということでやらされるわけでしょう。そして今度、そこの分をまた自分の都合のいいときに休ませて取り返す、こういうやり方はいかにもえげつないし、しかもこれでもって残業を実際上なくすみたいな形に持っていくわけでしょう。  私は、先ほどから基準局長がいろいろおっしゃっておりますけれども、きょうは時間の関係もありますから法律論争は避けますけれども、やはり労働省としては問題ありとして、これを労働者を保護する立場から検討していただかなければならないと思っておりますが、三枚ありますのは三人の例で、私は一枚目だけをいま御説明いたしましたけれども、そういう内容なんです。労働大臣いかがでしょうか。ひとつぜひ私が申し上げているところの理解もいただき、労働省としても取り組んでいただきたいと思いますが、お考えを伺わせていただきます。
  199. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 事実関係いま御説明を聞きましたが、よくひとつ実情を調べまして、やはり労働条件の一方的な切り下げという、こういったことであるならば、われわれとしては労働監督の立場において善処しなきゃならぬ、こう思っておりますが、一応事情をよく調べてまた対処したい、こう思います。
  200. 山中郁子

    山中郁子君 重ねてですが、少なくとも企業がこういうことを推奨すべきではない。労働者が自分が休みたいと思うときでなくて休まされて、しかも賃金カットをされるというような、しかもそれでこういうふうに大変入り組んだやり方をしているわけですよね。そういうやり方は推奨すべきことではないということははっきりしていますね。その点はいかがでしょうか。
  201. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 労働条件の変更、こういった問題につきましては労使が話し合って、そして労働条件の最低基準に、まあそれ以下でない場合はわれわれとしてはこれをどうするというわけにもいきませず、実態をよく調べまして、労使の話し合いがどのようになっているか、一方的な私は使用者側のやり方で御指摘のようになっておればこれは適当でない、このように思っておりますからよく事情調査いたします。
  202. 山中郁子

    山中郁子君 当然のことながら、もし一方的に企業者側がやっていることだったら中身に照らして適当でない、こうおっしゃっているわけだから、私はそういう意味ではフランクに率直に、この事案だけを、中身だけを考えれば適当でないことだと。いいことなら事業者側がやったって一向に問題ないわけだから、ごく基本的に言ってですね。もちろんこれは労使協定されている問題です。そのことについては、私はだから労使協定そのものについていま特に触れていません。いませんけれども、中身の問題として賃金も基本的には労使間で決めるものであると、とは言いながら、問題があることについては、労働行政が責任持って労働者保護の立場からいろいろ考えるべきことでしょうということを初めに申し上げたわけなので、その点ははっきりさせておきたいと思います。当然のことながら、そういうことも含めて労働省において厳密にやっていただかなければいけないことだと思います。先ほどから基準局長は、法定上のものであろうと思われると、こうおっしゃっているでしょう。私はだからいま重ねて申し上げますが、法律論争はいたしませんが、基本的な問題として問題があるということは、問題を拡大していけばわかるんです。というのは、こういう形で企業の側が、自分たちが必要なときには労働者を残業しても働かせると。今度は、必要でないときには強制的に休ませると、そして賃金カットすると、それで賃金は結果的には相殺するみたいなものになるわけですね、三〇%というものは残るにしても。そういうやり方が問題ないとするならば、たとえばその規模がもう少し大きくなって、ビール産業なんかは夏の間は非常に忙しいわけでしょう。それじゃ夏の間はうんと超勤させる、それで今度は冬場にきて休みなさいと、レイオフみたいなものですわ、そういうふうにしてやるようなところまで理論的にはいくんですよ、理屈から言えば。そういうことを申し上げればおわかりになると思うんですけれども、だから問題がある、こういう形でのやり方が問題があると私は申し上げているんです。そういう点はいかがですか。もしそれがそういうふうに拡大されていったら一体どうなるのかと、基準法なんてどっかへすっ飛んじゃいますよね。
  203. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 理論的純粋に理屈で詰めていけば、いまのようなお考え方も一応頭の中では考えられます。ただ私は、労働条件を引き下げるということが一方的にやられるということは、これは好ましくないことは当然であります。ただ不況のとき、よく言われる減量経営といいますか、そういった点で労使が十二分に話し合って、よろしいと、そういう方向でいきましょうという、こういう相談ずくで問題が提起され、また実行されておるならば、それが労働基準法の線に抵触しない、また手続上瑕疵がないと、こういう場合は私はやむを得ない、やむを得ないというか、別に問題とすべきではないと、このように考えます。
  204. 山中郁子

    山中郁子君 それではやっぱり大臣、もう一つ伺いたいんですけれども、いま私はビールのことを申し上げました。ビールだけじゃないんです。季節だけにも限りません。非常に繁忙の時期と、比較的一カ月の中をとってみても、前半は非常に忙しいという事業だってあるでしょう、企業だってね。それで後半になると暇になると。前半をずっとみんな超勤させといて、そしてその分後半にきて相殺すると、休ませて。そういうようなことはやっぱりできないでしょう、ビールまでいかなくても。できるんですか、何かそういうことは。また、していいんですか。
  205. 小粥義朗

    説明員(小粥義朗君) 休日の与え方の問題になろうかと思うんでございます。いま先生挙げられましたような例で、たとえば振りかえの休日が連続することによって、労働者生活に大きな影響をもたらすというふうな場合、これは一つ問題点を生じてくるかと思うんです。ただ、先ほど来の例ですと、休日分は無給になるかわりに、その分は残業八時間の中でそれに見合う収入はすでに得ているというような関係もございますから、その点は一概に言えない点があろうという感じはいたすんでございますが、実はそういう休日の振りかえと申しますか、あるいは特別休暇を与えるというのは、特に長時間残業をやった場合あるいは深夜業をやった場合に、労働者の疲労度を考えて、翌日代休を与えるというケースは、これは間間あるわけでございますが、その代休が無給の場合もあるわけでございますんで、そういう面からしますと一概に言えない点もあると。ただそれが振りかえの休みが連続して、労働者生活収入に非常に重大な影響をもたらす場合に、果たして妥当かどうかという点は、それぞれのケースによってもう一度改めて判断をしなきゃならないと思いますが、休日の与え方としては、以上申し上げたようなケースがあるわけでございます。
  206. 山中郁子

    山中郁子君 それは休日、代休を与えることがあると。たまたま無給であるとおっしゃるけれども、そこが問題なのよ。無給であることが問題なんですよ。たまたま無給であるなんて、そんな言い方をしたんじゃだめなんで、無給だからこそ問題で、これはだから一種のレイオフだと言うのよね、その話をずっと続けていけばですよ。休日の与え方が問題だとおっしゃる。だから、この考え方自体が、この構築自体が問題があるわけでしょう、先ほど労働大臣もおっしゃいましたようにね。そういうことで、いま私が申し上げた、そういうことは一体できるのかということについては、できるということにはならないんですよ。常識的に考えたってできないし、法律的に考えたってそういうことはできないんです。じゃあ、程度の問題としてできるのかと、どの程度までならいいのかと、こういう問題に入っていくわけでしょう。入っていかざるを得ないわけです、労働省がこれがもしできるとすれば。ただあなたの方は、いま結論的にできるんだとおっしゃってないし、これから慎重に調査もして検討もなさると、こういうお話ですので、私はあえてそれ以上のことは申し上げませんけれども、実際問題として、いま申し上げましたこの問題の中身が、結果的には労働者を都合のいいときにオーバーワークをさせて、そして今度は自分の都合のいいときに休ませて、そしてしかもオーバーワークのときには労基法三十七条によってちゃんと割り増し賃金を払わなきゃいかぬと、こうなっているにもかかわらず、それをまた取り戻すと、何回も申し上げますが、その割り増し分だけは残る、結果的に数の上からは残るとしましても、数字の上からは残るとしましても、結局はそれを取り戻してしまうと、こういうやり方を企業が不況というもとで、いま日本鋼管や日立造船がそういうことでやり出している。他の大手企業も鉄鋼なんかは、大手の五つの鉄鋼はやっているんではないかというような情報も聞いているわけですけれども、そこは私も定かにはつかんでおりませんが、そういう状況になったら私は大変ゆゆしいことだと思っておりますので、重ねて大臣にお伺いいたしますけれども、というかお約束をいただきたいんですけれども、いま申し上げましたことの本質を御理解いただけているならば、ぜひとも理屈だけで法定上であるということだけで、結果的には企業を擁護して、労働者の利益を損ずるというような立場にゆめゆめ労働行政は立ってはならないと、こう思っておりますので、重ねて所見を伺っておきたいと思うわけです。
  207. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 具体的な事例を踏まえながら、一般的な一つの筋論として御質問があったわけでございますが、具体的な事情はひとつよく事実を調査してこれに対応いたしたいと、このように思いますし、また一般的な問題提起としてのお答えとしては、やはり結局労働条件の問題でございますから、やはり痛みのない改正で、痛みという言葉は適当であるかどうか、そこら辺を労使が話し合って、そういうふうに実行しようと、こういうことになっておれば、別に私は問題にすべきではないと。やはり痛み分けであって、それを労働者だけにしわ寄せするという、こういうふうに事実上なっておれば別として、やはりそれを両者が相談で結論を出しておるとするならば、いわば痛み分けでありますから、片一方の立場だけから見るといかにも労働者にしわ寄せになっているというふうに理解するのは、一面的な理解の仕方ではないかと。要は労使が十二分に話し合った納得の上での結論であるかどうかと、これが基本であると、このように考えるわけでございます。
  208. 山中郁子

    山中郁子君 じゃあ、もう一つお伺いしますけれども、労使が十分に話し合って納得したということならば、何でもいいんですか。どんなことが行われていてもいいんですか。そうじゃないでしょう。それだけちょっとはっきりしておいてくださいよ。
  209. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 先ほども申し上げたように、労働基準法を前提として、法律に反しておったらいけません。だから、法律に抵触しないという前提の上に両者が話し合う、こういうことが基本でありまして、できるだけ労働者生活の安定と福祉の向上ということがわれわれの任務でありますから、これは御指摘を受けるまでもなく、労働省としては十分配慮しなければならぬ。ただ、企業がなくなってしまうようなことになっては、これはもう元も子もなくなりますから、そこら辺は十分配慮しながら、われわれとしては労働者の所得というものを十分配慮していかれるような対応をしていかなきゃならぬと、このように思うわけでございます。
  210. 山中郁子

    山中郁子君 日本鋼管や日立造船がなくなるような事態であるなんて、ゆめゆめ労働大臣だってお思いになっていらっしゃらないでしょうし、事態はそんなもんじゃないです。一面的に見るとか見ないとか問題じゃなくて、客観的に見て予算委員会のときに私も再三申し上げましたように、中高年齢者の雇用の促進だとか定年の延長だとか言いながら、企業は防衛のために労働者に結局しわ寄せさせる形で、そうした労働行政の基本と相反する方向にいま動いていると。それに対して労働大臣はやはり基本的には労働行政の基本を貫く方向労働省としても努力をするんだと、こういうふうに言われておりましたけれども、私はそういう一つの重要な中身としてこの問題を申し上げております。新しい問題でもあります、再三申し上げました。御答弁もありましたから、そういう点ではよろしいんですけれども、労働省が企業の立場にも立ちます、労働者立場にも立ちますというような形で、問題の本質をあいまいにするのではなくて、労働者の保護のために労働省というのはあるんですよ、そうでしょう。そういう立場にしっかり立っていただくと、基準法にさえ違反してなければいい、基準法というのは最低の基準であって、それより高いことが望ましいんでしょう、そういうことはやはり労働大臣がちゃんと立っていただかなきゃ困りますわ。
  211. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 私はこういう経済情勢のもとでは、それぞれの企業が欧米諸国のように簡単にレイオフをしないで、できるだけその企業に労働者を抱え込むといいますか、そういった雇用を安定さすという、こういうこともやはり考えなきゃならぬ。したがって、総合的に考えて、ただ労働条件、これが労使が話し合って悪い線になったということだけでなくて、できるだけ失業者を出さないように経営者として配慮しておるというようなことがあるとするならば、十分そこら辺も勘案して対処すべきである、このようなわけでございますから、そこら辺は私は日本鋼管であるとか、そこら辺の大きな企業だと、労働組合そのものが相当しっかりした主体性のある立場で交渉されるであろうと、こういうふうに思っておりますから、そこら辺を十分踏まえて、実態をよく把握して対処したいと、労働行政として誤りなきを期したいと、このように考えております。
  212. 山中郁子

    山中郁子君 最後に一つだけ。労働省がやはり労働者の保護という立場で、こうした特に、不況時において企業が新しく出してくるケースですね、こういうやり方の最初の審査する事案になるわけです、日本鋼管からの具体的な提訴が。十分な労働者保護の立場労働省の理念の上から立って、労働者の利益を守るという観点を貫いて慎重な対応をされるということを強く重ねて要求をいたしまして、質問を終わります。
  213. 柄谷道一

    柄谷道一君 雇用創出対策及び佐世保重工業退職者の退職金問題について質問をいたします。  さきに片山委員からも触れられましたが、労働省では二月末、労働次官らが三班に分かれて今治、長崎、佐世保、函館、沖繩など造船業を中心とする特定不況地域雇用情勢の現地調査をされまして、三月二日調査結果をまとめておられます。大臣も御承知のように、その内容を見ますと、雇用情勢はまさに深刻の一語に尽きます。特に県経済の四割を造船業で占める長崎、佐世保などでは、造船の操業度は四十九年をピークといたしますと半減いたしております。新造船の手持ち工事量も三割以下に落ち込んでおります。そして離職者の増大、再就職の困難さ、関連中小企業の倒産、縮小など、いわゆる町ぐるみの不安が深まっているというのが率直な実態であろうと思います。これらの地域の雇用創出対策につきましては、後ほど質問したいと思うわけでございますが、会社より希望退職者の募集を初めとする合理化案が提案されまして、労使で十分の協議が尽くされ、労働組合も会社の置かれている現状と造船業の今後の展望などを慎重に検討いたしまして、その結果、四月十五日千六百八十一名の方々が希望退職されているわけでございます。ところが、すでにそれから相当の期間を経過いたしておりますが、五月十日に労働組合が一億六千万円、五月二十六日に会社側が一億六千万円の退職金を支払っておりますが、なお総額約八十億を超える退職金が依然として支払われていないわけでございます。佐世保労働基準監督署は五月二十二日に、五月末日までに退職金を全額支払うようにという勧告を行われたやに聞いておりますが、五月末日に至るもなお支給がされておりません。現在約三百五十名をもって退職者の会が結成され、場合によりましては、いわゆる訴訟にこれが発展するのではないかということも伝えられているわけでございます。訴訟が行われ、差し押さえが行われるということになりますと、これは退職者の問題はもちろん、広く再建にも大きな支障を来たすということになりますならば、佐世保の雇用不安は頂点に達するのではないか、このようにも憂えられるわけでございます。退職金支給問題について大臣の善処を求めながら、その御所信をまずお伺いをいたしたいと思います。
  214. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 造船不況を背景として、いま具体的に佐世保重工の不幸な現在の状態に対して、私も実はきのう関係労組の代表者からいまのような御趣旨の要請を受けました。労働大臣としては労働者生活の安定と、こういった面から、私は関係方面にそういう立場からの要請をし、できるだけひとつ問題解決への努力をいたしたい。なかなか非常に厳しい情勢のようでございますし、経営の実態について十分私は承知いたしておりませんけれども、極力努力をいたしたいと、このように考えます。同時に、このようなことに立ち至った背景に対して、緊急、即効性のある対策としては、やはり造船所に仕事ができるだけふえるようにという、こういう配慮をしなきゃなりませんから、先ほどもお話を申し上げたように、できるだけひとつ仕事をふやしていくための応急対策、こういったことを提言をし、運輸省当局を中心にいろいろ手配を進めておるわけでございまして、それとまた、やはりこの佐世保重工の再建問題という、こういったことについては、なかなか私の立場において簡単にお答えを申し上げるわけにはまいりませんけれども、これまた関係方面に対してできるだけの手配をいたしたいということを、実はきのう御要請を受けて、かねがね感じておりましたけれども、ひとつ努力をしてみたい、このように考えております。
  215. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、一つは、千六百八十一名の方々は、造船業の実態というものを客観的にながめて、自分たちが希望退職することにより適正人員になるならば、その本体の維持も可能であろうと、こういう気持ちから退職をされていった人々でございます。それらの人々に労使協定の退職金がまだ支払われていない、ここに一つの問題がございます。  それから第二には、労働組合も、残余の約六千の人員をもって何としても再建をしなければならない、それが雇用を守る道であり、地域を守る道である、こういうことでいまがんばっているわけですね。ところが、大口債権者の意見がなかなかまとまらないということで、その労使の協定すら守られない。しかも、その退職していった人々の気持ちに報いることもできない。これは放置できる問題ではないと思うんです。  いま大臣は、今後の雇用創出策というものに対して努力したいということは述べられましたけれども、それは再建に向かう一つの方法であるんですね。まず、この問題を解決しなければ再建は軌道に乗っていかないわけでございます。ぜひこの問題については、単に運輸大臣の所管であるということだけではなくて、これは重要な労働問題、雇用問題でございますから、大臣としても積極的に関係省庁に働きかけられまして、この再建が緒につく、そして緒についた後、いま大臣の言われました仕事量を確保するための施策がこれに並行して進められていくということが必要ではないだろうか、こう思うのでございます。時間の関係もございますので、この点は強く大臣の善処を求めておきたい、こう思います。  次に、私は予算委員会や当社労委員会におきまして、再三雇用創出問題について取り上げてまいりましたが、五月十二日、労働大臣が現下の雇用失業情勢対処する雇用創出対策に関する労働大臣試案をまとめられた。私はその意欲を率直に評価いたしたいと存じますし、その内容を通読いたしますと、われわれの要求いたしておるところともほぼその方向が一致いたしておるわけでございます。その試案の中にも指摘いたしておりますように、雇用対策の第一のフェーズ、すなわち雇用維持、失業防止につきましては、今日まで雇用保険法の制定、安定資金制度の創設などの対策や、構造不況業種等に対する補完的対策を拡充してきたという努力を、これは率直に認めますし、第二のフェーズである失業者の生活安定、再就職の促進につきましても、不満足ではございますが失業給付の改善が行われたり、さらにこれに対する種種の対策が講ぜられてきた、そういうことは率直に評価いたしております。  しかし、この第一のフェーズにつきまして残されている問題は、法制化を含めた定年延長制度の問題と労働時間短縮の実効を上げる施策を進めることであります。この点につきましては、さきにも触れておりますので、本日の質問からは省略いたしますが、大臣の引き続きの努力とその実行を期待いたしております。  ところが、フェーズの第三、すなわち長期的、持続的雇用の拡大、それから、ただいま造船等でも見られております不測緊急の事態に対処する雇用創出対策につきましては、これから緒につこうというのが実態であろうと、こう思います。雇用対策の三本柱を完成する道は、こりからの問題であると、こう思えるのであります。  そこで、まずこの労働大臣試案をまとめられたそのお考えと、今後の決意というものについて、大臣のお考えをただしたいと思います。
  216. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 私といたしましては、現在の雇用失業情勢を考えますとき、従来の労働省の雇用政策あるいは失業対策だけでは、なかなか問題が解決ができない。何とならば、日本産業構造の基調が変わってきておると。したがって、その基調の変化に対応していくという点において、やはり積極的な対応策を労働省自体が推進すべきであると。労働行政だけでなくて総合的経済政策という、こういった面を十分踏まえて対応すべきであるという、こういうまず認識を前提にいたしております。  それと同時に、やはり日本の経済が高度成長からいわゆる安定成長に移り変わるわけでございまして、その場合にやはり従来のような手法ではなかなか問題が解決できない。したがって、これから進むべき日本の経済路線に沿うて対応すべきである、こういったこと。  それと、いままでとかく日本産業がいわゆる貿易立国で輸出を大いにするという、物をつくって大いに輸出するという、こういう仕組みだけでは国際摩擦も起こしますし、やはり国内の、欧米諸国と比較して立ちおくれた部面を掘り起こし、これを充実さすことによってお互い国民生活の質を向上する、こういう面に着目すれば、その方面にも雇用が拡大するではないか、こういうことをいろいろ考えて、しかもわれわれとしては現場の切実な声を直接こういった委員会の場において、あるいはまた直接労働者皆さん方の要請を聞いておるわけでありますから、そのような現実を踏まえた立場からやはり問題提起をしようと。そうして、多岐にわたっておりますから、これは労働省として正式の案とするわけにはなかなかいかない。なんとならば、労働省として案を出す場合には、各省庁と連絡をとらなきゃならぬ。そんなことをやっていると百年河清を待つ思いである。思い切ってひとつこの際労働大臣――私が試案として提言をして、そして、いまは政府与党でありますから、党の方へ持ち込んで、各省庁との調整を図ってもらおうと。そのようなことを踏まえながら、適当な時分に雇用対策閣僚懇談会あたりにも私自身が提言をする。相呼応して前進を図れば問題の解決に何がしか役立つんではないのか。これを座してじっと見ておるわけにはいかないと。労働省は労働省だけの仕事をしておればいいという従来の発想では問題の解決につながらないと、こういう考え方で提言をしたわけでございまして、まだ全く提言をし、打ち上げたばかりでありますから、これを実らすためには皆さん方の御協力、先般は院議において雇用安定に関する決議をしていただいたわけでございますが、そういう決議を背景にこれから大いにひとつがんばりたい、努力をいたしたいと、このように考えているわけであります。
  217. 柄谷道一

    柄谷道一君 私も、フェーズI、II、III、これが立体的に組み合わされることによって、雇用対策というものが進められていかれるべきである、それは全く同感でございます。そこで、昭和六十年度の労働力人口は約五千七百八十五万人と推定されております。もちろん、完全雇用を目標とすることは当然でございますけれども、われわれの現時点におけるいろいろの施策を組み合わしてみましても、この昭和六十年度における完全失業者は七十五万人以下、失業率が一・三%、そして有効求人倍率が一・二と、これが当面の目標ではないだろうか。この程度の雇用情勢を昭和六十年にはつくり上げるというその目標を置いて、その目標を達成するためにいかにすればいいか、ハウツーの問題として雇用創出対策が位置づけられる、そういうことが私は望ましいのではなかろうかと、こう思うわけでございます。労働大臣がこの私案をつくられるに当たって、中期的な雇用指数をどの程度のところまで到達せしめようとしておられるのか、お伺いをしたいと存じます。
  218. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 私が私案として提言をしました背景として、いま御指摘のような中期雇用計画の指標を踏まえて、そしてそれに到達するためにずっと積み上げて作成をしたというものではございません。俗に言えば、どれもこれもいいと思うものは取りまとめて提言をした、いいところから片っ端からやろうではないかと、こういう、実に考えによっては粗雑な提言でございます。緻密なことをいろいろやったところで、現在の体制が自由主義経済体制でありますし、やはりなかなか生きた経済の動向でありますから、むしろどれでもこの際正しい方向であるならば、それを一つ一つ実行していくというこの方向へ衆知を集め力を合わせると、こういう方向をひとつ推進いたしたい、その結果がいま御指摘のような雇用情勢あるいは有効求人倍率、失業率、こういうようなものが到達される、私はそういうようなことをやらなければ、なかなか現在の状態で、ただ従来の発想でやっておったんではそれすらできないではないかと、こういうふうに思っておるわけであります。
  219. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは、中期の目標を置いて、それに位置づけられたものではないということはわかったんでございますけれども、それではそういう目標設定が困難であれば、仮にこの労働大臣私案がそのまま実行されたと、こうする場合、どの程度の新しい雇用創出がこれによって行われると試算していらっしゃいますか。
  220. 石井甲二

    政府委員石井甲二君) この大臣私案につきましては、先ほど大臣が申し上げましたような性格のものでございまして、私はむしろ大臣のブレーンとしていろいろ御相談に乗ったわけでありますが、いま先生御指摘のように、今後の雇用問題についての、言ってみれば新しい方向といいますか、そういう出発点を踏まえた新しい方向をどういう方向に持っていこうかという一つ考え方の私案であろうというふうに、私は大臣のお考えを受け取ったわけでございます。したがいまして、全体の経済計算あるいは全体としての労働力計画の中に、数量的にどう位置づけていくかというところまでは率直な話、このペーパーをまとめる段階の基礎的な条件というものを設定したわけではございません。ただ問題は、現在たとえば中期の経済企画庁の計画もありますし、また労働省におきましても五十五年までの労働力計画もつくってございます。ただここで私が、大臣のお考えを受け取りましたのは、少なくとも単なる経済成長あるいは有効需要創出策というものだけでは今後の雇用の問題を処理できない。また、従来のような単なる、たとえば卑近な例でありますが、失業対策事業というような非常に現象的な面で一時的な一つの対策を打つということだけでも、この構造的な時代を解決できないという面であろうかと思います。したがいまして、ここで大臣がお考えになった面は私は三つあるというふうに考えておりまして、一つは、直接的かつ即効性のある対策というものが、それぞれの地域あるいは産業において今後少なくとも要請されるであろうと思われる各事業につきまして、そのときの雇用情勢に応じてその計画をそれに合わして、緩急といいますか、これに対処するということ、つまりそれがその地域あるいは産業の将来の発展につながるという、言ってみれば価値を生む形の即効的な対策をやるということが第一点だろうと思います。  それから第二点は、先ほど申し上げましたように、いわゆる産業構造が変化をいたしますから、少なくとも有限の成長率の中で雇用を確保していくという場合に、昔のように二重構造という形でこれを確保するということは、これは本来の政策的な方向でありませんから、少なくとも産業構造全体として日本のあるべき姿を考えるときに、いわゆる経済合理性というものをいままで追求してまいりましたが、ある意味では非常に世界的におくれている福祉、いわゆる公共福祉的なもの、そういうものを少なくともバランスを持って拡大をするという方向が正しいのではないか。したがって、その方向をやはり広げながら構造全体で雇用を確保していくという考え方であろうと思います。その他ワークシェアリングがございますけれども、したがいまして、少なくとも私が大臣のお考えを聞いた限りにおきましては、そういう方向でいろいろな経済計算あるいは成長率から見た一つ雇用の需給バランスというものは確保されるような計画はそれぞれいままで立ててございますけれども、そういうものの内部構成というものを、少なくともこういう観点からアプローチをする必要があるのじゃないかということを、言ってみればアピールをするということであったと思います。したがいまして、具体的なことが少なくとも幾つか並んでおりますけれども、これをたまたま自民党の政調におきまして雇用に関する小委員会を設置しており、しかもその内容につきまして同じような目的を追及するということを聞いておりますので、各省にわたりますので、これについて各省の意見を聞きながら、少なくともそういう方向についての議論をしていただこう、またその過程において労働省におきましても労働省の観点から各省に対してアプローチをしていこう、こういう考えでございまして、先生御指摘のようなぴしっとした経済計算あるいは労働力需給計算というものを積み上げて、たとえば失業率が何年にどのぐらいにするためにこうするんだということを厳密にやったものではございません。そういう意味でございます。
  221. 柄谷道一

    柄谷道一君 いままでの御答弁を聞いておりまして、労働大臣私案は提言であり、アピールであり、言葉をかえれば起爆剤である、このように理解がされるわけでございます。  そこで、雇用創出を促進する具体策につきましては、直接的かつ即効性のある対策として六点、福祉型産業構造を支える職業をふやしていく対策といたしまして五点、国際的活躍の場を拡大する対策として三点、研究開発の推進により高学歴化に対応した新規事業分野を開拓する対策といたしまして六点、さらにこれにワークシェアリングの推進をここに書かれているわけでございます。こういう分類も確かに一つの分類であろうと思いますが、今度これを実行していく手法ということになりますと、私は、政府が直接雇用を拡大していく分野がございます。第二には、政府の公共投資の拡大によって民間産業雇用拡大を図っていく分野がこの中には含まれております。第三番目には、政府の奨励誘導政策によりまして関連民間産業雇用の維持拡大を図っていく分野が含まれております。そして第四番目には、政府の研究開発投資を通じてこれが将来の企業化につながり、そのことが結果として雇用機会拡大につながっていくという分野があるわけでございます。私は、きょうは時間の関係で多くを語れないわけでございますが、このフェーズⅢを実現していくためには、いわゆる政策実行の手段というものの一つの分類といいますか、配慮が必要になってこよう。したがって、ケース一の場合は予算でどう配慮していかなければならないのか、ケース二の場合はどういう奨励誘導政策が必要であるのか、助成策が必要であるのか、こういったものを具体的政策としてこれをつくり上げていきませんと、なかなか実効を期しがたいのではないか。そういう面についての、さらに労働大臣私案を実現する手法といいますか、という意味でのさらに検討というものを深めていただきたい、こう思います。しかし、それらを考えてみましても、この私案を拝読いたしますと、大臣も申されましたようにこれは労働行政の範囲をはるかに超えておりまして、通産、運輸、厚生、文部、建設、農水、外務、大蔵、科学技術、防衛などなど、これはもう全政府にまたがる提言がこの中に含まれているわけですね。ということになりますと、これから与党たる自民党で検討され、その結果を持って各省庁で検討をするということはもちろん必要でございましょうけれども、私は政府の最高責任者である総理大臣が、この労働大臣のせっかくの提言というものをひとつ原則的に了承して、これでいけという旗が振られなければ、なかなか実効を上げるというのはむずかしいのではないか。この私案をつくられました前後に労働大臣として総理にその決断を求め、本院における本会議決議を具体的に推進していこうという心構えといいますか、決断を総理に要請されておりますか。
  222. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) まだ総理のところまではこの問題を提言しておりません。まず、とりあえず党の政調会長のところへ私がじかに参りまして、いろいろ説明をいたしまして、非常に力強い賛成を得まして、党の政調会ではこれをひとつ積極的に推進しよう。で、先ほど官房長から御報告いたしましたような、いま委員会に付託されまして、現在検討が進んでおるわけでございまして、私は本当に根回しよくずっとやっていかないと、総理から号令がかかればすぐ問題が片づくというような政治情勢ではないと、御案内のようなこともよく承知いたしております。したがって、ずっと全体的に私は党のことを言いましたけれども、院議であのような決議もできておるわけですから、雇用安定に関してはまさに雇用機会の創出をやれという、こういう提言もありますから、もう全体与野党ぐるみ、そして執行部もあるいは議会も渾然一体となってこの問題をひとつ推進してもらおう、こういうことを考えた場合、総理大臣に私はお話しすることによって問題が解決するような、何といいますかそう生やさしい問題ではない。言い方がちょっと適当でありませんけれども、大変な私は大きな課題を担っておると、このように思いますから、決して総理の立場を軽んずるわけではございませんけれども、この問題が余りにも重大性を持っておる、総ぐるみでやるべきだ、このように考えております。したがって、適当な時期には、私は先ほど申しましたような閣僚会議をやると同時に、総理にもまた事情を報告をして、総理の立場でも推進をお願いをする、このように考えておる次第であります。
  223. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣にははなはだ失礼なことかもしれませんけれども、マスコミの一部には歴代労働大臣いずれも三木派から出ておられまして、内閣の姿勢雇用問題についてやや冷たいのではないか、こういう風評も耳にすることが多いのでございます。私は雇用問題に関しては、そういう派閥の問題もなければ与野党の問題もこれはないと思います。本会議で議決されたところでございますし、野党といたしましてもこの大臣私案というものが実現されるために、われわれもまた野党ながら全力を尽くしたいと思っておるわけでございますけれども、ぜひそういう一部マスコミの風評をはね返して、大臣に御努力を願い、これが実ることを私は強く期待いたしたいと存じます。  そこで、それにいたしましても雇用問題閣僚懇談会があるわけでございますけれども、これを政党レベルで検討することは当然としても、やはりこれを実務的に推進していこうとすれば、関係省庁を網羅したいわゆるプロジェクトチームといいますか、そういうものの機構が必要になってくるのではないか。これに対するお考えとあわせまして、労働省内部で、いま縦割り機構でございますけれども、どの局といいますか、どなたが大臣の私案を推進し労働省内部の責任をとって指揮をとられるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  224. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) まず、この問題が労働省だけで処理できる性質のものではない、そういったことから考えまして、どのようなこれが取り扱いの機構をつくっていったらいいか、こういうこともまだ現在この問題提起して日が浅いわけでございまして、審議の過程を見ながら、外の機構の問題のつくり方、同時にまた、労働省の内部におきましても、とりあえずは、総括、取りまとめの官房、その責任者である官房長に一応相談相手になってもらったわけでございますけれども、外の機構ができると同時に、労働省の内部においても、もっと専管の推進機関、これは職業安定局、職業訓練局、そのほかいろいろな方向に関連がございますから、この機構と労働省内部の担い手の問題についても、従来の機構だけで横の連絡をとるという程度ではなかなかむずかしい。これまた事の運び方を見ながら、これが対応できる機構を検討したいと、考えたいと、このように思っております。
  225. 柄谷道一

    柄谷道一君 新聞の報道によりますと、八月が労働省として、各省庁もそうでございますが、予算概算要求の時期でございます。このすべてが行われるかどうかには、これからの検討にまつべきものだと思いますけれども、大臣としては、この試案のできるだけ多くが、来年度予算概算要求の中に関係省庁で盛り込まれるように努力していきたいと、こういうお心構えと受けとめてよろしゅうございますか。  あわせまして、冒頭申しましたように、造船業を初めとする構造不況業種の実態はきわめて深刻でございますし、特にそれが特定地域に限定されておる傾向がございます。とするならば、来年度予算を待たずとも、補正予算が編成されるかどうかはわかりませんけれども、総理は、大胆かつ機動的に対処すると、予算委員会でも答弁されているわけでございますので、そういう雇用対策に対する緊急施策が、補正予算の中にもひとつできる限り織り込んでいこうという大臣の意欲と受けとめてよろしゅうございますか。  この二つをお伺いいたします。
  226. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 五十四年度の予算編成、ぼつぼつ始まりかけておると理解いたします。私は、極力ひとつ各省庁と連絡をとって、盛り込まれるようなタイミングを考えて推進をいたしたい。同時に、景気浮揚――ある程度明るい兆しも指標としてはうかがわれますけれども、   〔理事片山甚市君退席、委員長着席〕 まだ手放しの楽観を許さない、こういう認識も、私は、直接、現場の雇用の面から感じております。したがって、補正をしなきゃならないというような必要性が迫った時分には、ひとつ極力これにも、チャンスを失わないように、わけても造船関係は、あるいは海上保安体制の整備のためには、巡視艇の増強あたりは、これはもう一石二鳥の問題だと思いますから、機を失しないで、この提言を実現すべく努力をいたしたいと、このように考えております。
  227. 柄谷道一

    柄谷道一君 私はいままで、大臣の試案を評価するという立場に立ちながら質問をしてまいりました。しかし、この大臣の試案を実現しようとするならば、総理以下全閣僚の合意と、やはり決意というものがその前提でなければなりませんし、また、与党の体制もそれに向かって結集されなければならないと思います。同時に、やはり、中期的な目標というものを置いていくということもこれ必要であろう。来年度予算でこれ全部できるわけではないわけですから、やはり中期的計画というものを策定していく必要もあろう。  さらには、大臣も述べられましたけれども、行政機構、これを推進実現せしめるための全政府的かつ労働省内部としての体制というものも配慮していかなければならない。さらには、総理がいつも言っておられます参加の問題でございますが、野党、労使、学識経験者がこれに積極的に参加するという、全国民的体制をとっていく配慮も必要であろう。  こういうものが相整いませんと、せっかくのこの大臣試案というものが、砂上が楼閣といいますか、単なる蜃気楼に終わってしまう。それは、まことに深刻な雇用情勢のもとで苦しんでいる労働者としては不幸なことにつながっていくわけでございます。大臣の、この試案をつくられ、また冒頭大臣の決意を伺ったところでございますけれども、勇断を持ってこの試案実現のために、残されたいま私の指摘いたしました点を含めて推進されますことを強く期待いたしておきたいと存じます。  そこで次に、五月二十八日の日本経済新聞を読みますと、次官通達をもちまして労働時間短縮に対する通達が行われているわけでございますが、もちろんそれは強力に推進してもらわなければなりませんけれども、なかなか労使協定による時間短縮というものは、きょう言ってあす実現できるものではないわけですね。そのことに着目されまして、残業協定についてモデル案を業種別に示すことを考えていると、これは当面の緊急策としては有効な手法であろうと、こう思うわけですが、このモデルを当然いま検討されていると思うのでございますけれども、その内容なり、もし内容がコンクリートされていなければ、その基本的な構想というものについてお伺いをいたしたい。  最後にもう一点でございますが、これまた新聞を読みますと、埼玉県が五月から失業者生活安定特別資金融資制度をスタートさせる。貸付額三十万円、年利三%、貸付期間三年、六カ月据え置き、その後は月ごとの償還。これは現行雇用確保に対する施策を補完するものとして、新たな着目すべき構想ではないかとも思われるわけでございます。この新聞の中には、労働省保険課の方でも、地方自治体の失業対策一つとしてどう活用されるか注目していきたい、という意見も述べられているわけです。このことに関して、当面はこの実態を観察されることだと思いますけれども、私は今後、国自体の施策として、こういう方法をひとつ前向きに検討するという姿勢がないかどうか、この二つをお伺いいたしまして、時間も参りましたので私の質問を終わります。
  228. 桑原敬一

    政府委員(桑原敬一君) 次官通達の後、追っかけまして詳細な局長通達を出したいという考えでございまして現在詰めているところでございますので、大筋だけお話を申し上げたいと思います。  私どもの基本的考え方は、三十六条協定をやればどんな長さの残業でもいいというのが法のたてまえになっておりますけれども、これではやはりやむを得ない緊急臨時なときにやるという考え方にやはり徹しなければならないと思います。したがって、恒常的な一定の残業時間を前提にした生産計画と申しますか、作業計画と申しますか、そういうものはやはり基準法の労働時間の制度趣旨に反するという考え方を持っておるようなわけでございます。したがって、現行は一日何時間という協定でいいことになっておりますけれども、やっぱりそれではいけないんで、やはり週とか月とか年とか、そういった期間にわたるような形での残業協定をぜひ結んでいただきたい。ただ何時間がよろしいかというのは、これは業種業態によって非常に違ってまいりますので、そこになりますとむしろ労使産業ごとにお話し合いをして、一種のガイドラインみたいなものを決めていただきたいと、こういう考え方でございます。  それからまた、交代制勤務の場合で二十四時間二交代というようなことになりますと、予備員がおりませんと、当然それも残業になるというかっこうでございますから、そういうものについては改めてもらいたい、そのシフトの組み方を改めてもらいたいというようなこと等を考えておりますし、また三六協定はいま労使協定でございますので、労働組合がない場合の代表のとらまえ方というのが非常に問題がございます。たとえば、親睦会の代表というふうなかっこうになっておる場合もありますので、こういう問題についても本当の意味の労働者の過半数の意見代表しているかどうかというようなことについてもチェックをしていくというようなことで、幾つかの問題を列記しながら詰めておる最中でございます。
  229. 細野正

    政府委員(細野正君) 埼玉県で、先生御指摘のような特別の融資制度をやっているわけでございますが、労働行政なり職安行政としましては、けさほど来御議論がございましたように、失業の予防とかあるいは再就職の促進とか、それから雇用機会の拡大とか、そういうのが重点でやってきているわけでございまして、そういう観点から見ますと、保険のない方あるいは保険の切れた方の生活費の融資というのは、やや住民福祉的な側面の非常に強い制度でございまして、そういう意味で、いま申し上げたような行政としてなじむかどうかという点、いろいろ問題があるかと思いますが、なお今後ともその推移を見守ってまいりたいと、こういうふうに考えているわけでございます。
  230. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 本調査に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。本日はこれにて散会いたします。   午後四時四十三分散会      ―――――・―――――