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1978-05-09 第84回国会 参議院 社会労働委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年五月九日(火曜日)    午前十時二十一分開会     —————————————    委員の異動  四月二十八日     辞任         補欠選任      斎藤 十朗君     大谷藤之助君  五月二日     辞任         補欠選任      大谷藤之助君     斎藤 十朗君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         和田 静夫君     理 事                 遠藤 政夫君                 佐々木 満君                 片山 甚市君                 小平 芳平君     委 員                 石本  茂君                 上原 正吉君                 亀長 友義君                 斎藤 十朗君                 玉置 和郎君                 福島 茂夫君                 森下  泰君                 高杉 廸忠君                 広田 幸一君                 安恒 良一君                 渡部 通子君                 小笠原貞子君                 柄谷 道一君                 下村  泰君        発  議  者  片山 甚市君        発  議  者  柄谷 道一君    委員以外の議員        発  議  者  粕谷 照美君        発  議  者  柏原 ヤス君    国務大臣        厚 生 大 臣  小沢 辰男君        労 働 大 臣  藤井 勝志君    政府委員        厚生大臣官房長  山下 眞臣君        厚生大臣官房会        計課長      持永 和見君        厚生省公衆衛生        局長       松浦十四郎君        厚生省社会局長  上村  一君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        厚生省年金局長  木暮 保成君        社会保険庁年金        保険部長     大和田 潔君        労働大臣官房会        計課長      加藤  孝君        労働省職業安定        局失業対策部長  細見  元君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        社会保険庁長官        官房総務課長   正木  馨君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○公衆浴場法の一部を改正する法律案粕谷照美  君外九名発議) ○戦時災害援護法案片山甚市君外四名発議) ○母子保健法の一部を改正する法律案柏原ヤス  君外一名発議) ○児童福祉法の一部を改正する法律案柏原ヤス  君外一名発議) ○母性保障基本法案柄谷道一君外一名発議) ○原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○社会保障制度等に関する調査  (低所得者福祉対策に関する決議の件)     —————————————
  2. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  国民年金法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  これより質疑を行います。質疑のある方は順次御発言願います。
  3. 片山甚市

    片山甚市君 今国会における衆参両院を通じての審議を見てみますと、年金制度基本構想懇談会年金懇中間意見、これは昭和五十二年十二月十三日に提起されておりますが、の諸問題を見ますと、国民年金を目指すわが国年金制度の確立に大きな意味を持つと考えるんでありますが、これにとどまらず、各種諮問機関答申提言各界の建議など、今日出るべき意見は出尽くしていると考えます。政府として現状をどう認識をして、これからまだ検討をするというようなことで引き延ばす段階ではない、こういうように考えるのでありますが、いままで審議会、あるいはそれぞれの諮問機関提言等について参考にせられて、日程として抜本改正についてどのように進められるのか、まず構想についてお聞かせを願いたいと思います。
  4. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) おっしゃるように、基本懇、あるいは制度審等から年金制度改革についての御意見をいただいておりますし、それぞれ各党からもナショナルミニマムというものを考えてこうあるべきだという御提案等も承っておりまして、まさにこれらの各界各層の御意見を承りながら、私ども抜本改正を決断をしなければならない時期だと考えておりますが、御承知のように、年金財政というものは、相当長期的に見通しを立てていかなければいけませんので、遺憾ながら相当の期間を与えていただきませんと、最終的なこの方針が決まらないという実情にございます。私どもは、今年いっぱいをお借りいたしまして、何とかその基本的な方向だけでも決めたいと、かように考えまして、これから鋭意それぞれの御意見検討さしていただきまして、私ども基本方針を固めていきたい、その方針を得まして抜本改正の成案を得る、こういうつもりで鋭意努力をいたしておるところでございます。
  5. 片山甚市

    片山甚市君 そういうように、まだ検討する余裕がある、こういうことでは意欲が非常に乏しい、こういうように考えますし、非常に残念であります。  各種公的年金加入者数、それで、そのうち幾らが厚生省管轄になるのか、こういうふうに見てみますと、大体四二・四%、厚生年金国民年金が四七%、船員保険が四%というように思います。そうすると、全体の九〇%強を占める年金加入者を管轄している厚生大臣が、これだけたくさんの提言が出され、審議会からの答申を受けておって、これについて具体的にまだ案ができ上がらない、長期の見通しを立てなければならぬ、こうおっしゃるのですが、それならば、足元すぐにその日からの問題で、私がいま提案をしていますところの四千円では特例納付金は高いではないか、もう少し引き下げたらどうか、あるいは在職老齢年金打ち切りについて、せめて一般の民間の所得を得ておる人の十五万円程度にまで引き上げて、打ち切りをもう少し緩和したらどうだ、こういうことについても当面の問題としても解決していない、抜本もしていないということであれば、これは厚生省が熱意を入れてやっておると言えないと思う。そういうことで、厚生大臣も御承知のように、数年後には国際的な水準にいわゆる成熟度が達すると言われるわが国年金制度については、もう少し突っ込んで、それらことしいっぱいに骨格と言わないで、どれとどれとを出していく、こういうことについての決意を承りたいんです。
  6. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 無年金対策につきましても、保険料の面で御意見はいろいろいただいておりますが、私どもとしては、三回目の無年金者対策については、どうしても従来とのいろいろな関連、あるいは今後の国民年金の健全な発展等考えまして、御提案申し上げているような線で御理解をいただきたいと思っておるわけでございますし、また、在職老齢年金の御指摘の点につきましても、このたびは相当の改正をいたしておるわけでございますが、なお、不十分な点については今後とも一層努力をしてまいります。  なお、御指摘のように、どうもまだ根本改正の案もできていないというのははなはだ怠慢ではないかという御意見でございますが、何分年金制度というものは非常に長期的な見通し等も必要でございますし、しかも、国民負担等の問題も十分考えていかなければならない点でございますから、しばらくなお検討さしていただきたいと申し上げているわけでございまして、少なくとも、来年の通常国会には私ども考え方を御提示いたしたいということで鋭意検討をいたしておりますし、また、懇談会等審議を再開していただいておりますので、御意見十分参考にいたしながら、今後の年金制度改善方向について鋭意真剣に努力をしてまいりますから御了承いただきたいと思います。
  7. 片山甚市

    片山甚市君 いまのところ、具体案を示されるのは来年の通常国会になろう、こういうことでありますが、それはどの程度提案がなされる予定ですか。
  8. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 法案の形で御提案は、いまのところ私自信がございませんが、少なくとも国会で私ども考え方基本はお示しできるだろうと思っておるわけでございますので、もちろん、でき得れば法律改正方向まで持っていきたいとは思いますけれども、まだ現在検討中でございますから、いま慎重に実はお答えさしていただいているわけでございまして、少なくとも基本方針だけはお示しができるようにいたしたい、かように考えております。
  9. 片山甚市

    片山甚市君 そうすると、年金が成熟化してきた、こういうことでまず問題がありますのは、婦人の問題でありますが、わが国のいわゆる年金を見てみますと、一つは、被用者年金の中の遺族年金水準の設定及び支給要件について。二つ目には、任意加入者とそうでない者との間で将来の年金給付保障に大きな開きが生じていること。異なる世帯、いわゆる単身者、夫婦あるいは子供の世帯累計間で給付水準に不均衡があること。四つ目に、国民年金任意加入していない婦人高齢離婚した場合、年金保障がない、こういうことについては、すでに論議をされてきたことであります。  年金懇中間答申では、国民年金で言えば、婦人に対し個人保障年金給付をせよ。二つ目には、いわゆる扶養者年金世帯保障的性格を強め、被用者の妻を被用者年金での保障などということを言われています。抜本的な改正に向けて、いま申しました問題について所見を述べてもらいたい。具体的にどういうようなプロセスで進んでいくのか。
  10. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) ただいま先生が御指摘になりました、婦人年金権に関しまする四つ問題点につきましては、私ども、これからの年金改正にはぜひ取り組まなければならないというふうに考えておるわけでございます。  ただいま先生の申されました基本懇中間意見でも、この点はかなり議論を詰めていただいておるわけでございまして、ある意味では選択肢まではっきり出していただいておるという段階でございます。  まず、被用者年金におきまする遺族年金水準でございますが、現在五割でございますけれども、私ども、これはやはり七割程度にはぜひいたしたいというふうに考えておるわけでございますが、この遺族年金水準を上げるに当たりましては、幾つかの条件整備がございまして、一つには、これも御指摘のございました単身者の方が年金を受給される場合と、世帯として年金を受給する場合の給付のウエートのつけ方ということを、一つ考えてみなければなりませんし、また、これもすでに御指摘のあった問題でございますけれども国民年金任意加入されておる被用者の妻の方とのバランスというようなものも、考えてみなければならないというふうに思っておるわけでございますが、こういう条件をどういうふうに整備するかということを詰めまして、遺族年金水準引き上げにつきましてはぜひ取り組んでまいりたいと思っておるわけでございます。  それから第二の、国民年金に対しまする被用者の妻の任意加入の問題でございますが、現在までの年金水準でございますと、被用者の妻の方が国民年金任意加入していただくということは、婦人年金権の確保のために非常に大切な役割りを果たしてきておると思うわけでございますが、被用者年金遺族年金水準引き上げるということにいたしますと、どうしてもその調整を図らなければならないということになろうかと思うわけでございます。中間意見では、国民年金被用者の妻を強制加入させるというのは一つ方法であろう。もう一つは、やはり被用者年金のサイドで解決をすべき問題で、徐々に、被用者の妻は被用者年金の中で年金権を確立するようにすべきであると、その二つのいずれかの方法をとらざるを得ないんじゃないかどうか。しかし、この二つの従来の経緯がありまして、非常にむずかしいということであるならば、任意加入制度を続けるにしましても、被用者年金との調整は最小限度しなけりゃならぬという意見をいただいておるわけでございまして、さらに詰めまして、いずれかの方法によりまして年金制度改善をも図りたいというふうに思っておるわけでございます。  それから三番目の、異なる世帯累計に対しまして現在の年金が出ます場合には、余りその世帯累計に応じたニードを満たすという形にはなっておりませんけれども、やはり先ほどの遺族年金給付率引き上げの問題もここに絡むわけでございまして、こういう点につきましても積極的に取り組んでまいりたいというふうに思っておるわけでございます。  それから、被用者の妻の方が高齢になって離婚をいたします場合に、国民年金任意加入をいたしておりませんと年金がない、あるいは年金がありましても非常に少額なものになるという問題があるわけでございます。この問題につきましても、中間意見では、一つは、一定条件をつけて夫の年金権を分離するということも考えてみるべきであるということを御提案いただいておるわけでございます。また、諸外国では、民法上の問題といたしまして、離婚後の結婚中の共同財産の分離の問題というふうな面からも取り上げられるじゃないか、あるいは離婚後の妻の扶養の問題という側面からもやれるかもしれないという御意見をいただいておるわけでございますが、これも方向二つ、三つ出していただいておりますので、できるだけ検討しまして、一番いい方法を選んで実現を図りたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  11. 片山甚市

    片山甚市君 局長の方のお答えを聞いておると、矛盾点について、困難点について御指摘がございました。いま調査しておる、こういうことで、こういう御意見があるんだから十分にお聞きをしてと言われておるんですが、大体、厚生省として、政府としてどういう方向具体案をまとめられるのか、これについて、もう一歩突っ込んで答弁を願わないとこれはわかりませんから、御答弁願います。
  12. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 現在の段階では、ただいまの先生の御質問にお答えするところまで私ども検討はいっておらないわけでございます。  いまの四つの問題も、年金体系全体に関連をいたします問題でございますので、全体的な体系の問題と一緒に選択をしていかなければならないというふうに考えておるわけでございますが、大臣からも早く方向を出すようにという指示をいただいておるわけでございますが、できるだけ早い機会に方向を固めて御批判をいただくようにしたいというふうに思っております。
  13. 片山甚市

    片山甚市君 長期的な展望に立ってどうするかということについては、まだ結論を得ていない、ここで述べることはできないということでありますから、大臣が言ったように、来年の通常国会までの間に広く意見をまとめたいというんでありますから、いわゆる素案をつくって多くの人に判断を求めるようにひとつしてもらいたい、大臣よろしゅうございますか。
  14. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) よろしゅうございます。
  15. 片山甚市

    片山甚市君 そういたしますと、目の前にある問題ですが、各種福祉年金の問題ですが、年金制度全体が給付がばらばらであるとともに低いということもあり、憲法二十五条で言う健康で文化的な生活を行うということになっておりません。これは、もう厚生省認めておるところでありますが、年金を不労所得だという考えや、うまく金をもらっているような考えを持つなら別でありますが、私たちは、低所得者、特に身寄りのない老人には日々の生活の支えであると考えるわけでありますから、この問題についていわゆる各種福祉年金について、どのように引き上げていくのか。これについて当面の問題、抜本改正でなくて、いまある数少ないと言いませんけれども、この問題について、まず基本的な考え方をお聞きしたいと思います。
  16. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) わが国年金制度基本的にはかなりの水準を目指すところまで来たというふうに思うわけでございますが、ただいま御指摘のございました福祉年金あるいは五年年金、十年年金といったような経過年金につきましては、必ずしも十分な水準になっていないわけでございます。福祉年金につきましては、ここ五年間ぐらいの間にできるだけの引き上げを図ってまいったわけでございますが、実は、それが壁に突き当たってしまったということでございます。壁に突き当たったと申しますのは、一つには、福祉年金が五年年金、十年年金とほとんど額が違わないところまで来てしまいまして、これを引き上げますと五年年金、十年年金を突き上げていく、さらには十一年年金以上の年金につきましても年金額引き上げなければならない。年金体系全体の問題に影響するところまで来たわけでございます。  一方、現在、福祉年金に要します予算は九千億になって射るわけでございますが、月額千円を上げますのにも六百億近く金がかかるということで、財源的にも難関に突き当たっておるわけでございます。この点につきましても、基本懇で十分な御議論をいただいたわけでございますが、基本懇といたしましては、やはりこの経過年金引き上げというのは緊急にやるべき問題の一つであるというふうに位置づけをしていただいておるわけでございます。ただいま申し上げました二つの点につきまして、一つは、これ以上福祉年金引き上げると年金体系全体に影響を持つという点につきましては、経過年金ということでございますので、恒久的な年金体系全体の問題としてよりも、応急的な引き上げというような便法と申しますか、そういうものをぜひ考えていかなければいけないという御指摘をいただいておるわけでございます。財源につきましても、一般会計引き上げるのには、これは確かに限度があるであろうと。これにつきましても、特別な財源対策考えていこうという御意見をいただいておるわけでございますが、さらに基本懇でも詰めていただきまして、できるだけ早くこの点につきましても結論を出したいというふうに思っております。
  17. 片山甚市

    片山甚市君 審議会とか年金懇に頼り過ぎる感じがある。私は、現在のいわゆる高齢者、こういう方々を守っていく。若い世代にそういう責任負担をする、こういうことをちゃんと言わなければ、金が噴いてわくような話、どこかにあるような話ばかりしますけれども、使えばなくなるのでありますから、この問題については税金と掛金と、こういうことで賄っておるのでありますが、これからの政府考え方は、どういう考えに立ちますか。
  18. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私、先生のおっしゃったような方向が、経過年金についてはやはり必要なんではないかという物の考え方をいたしております。やはり、一般税金と、それから若い者が、現実に年金に入り得なかったこの福祉年金対象者について、ある一定額負担をして、そして老後の所得保障として、ある程度いわば制度審で御提言のあるような基礎年金的な額まで引き上げていきたいなあと私は考えておるわけでございますが、これは今後全体の体系検討して方針を決める際に、やはり決めてまいらなきゃいかぬものでございますから、いま私は余り勇ましいことを言いまして、また実現できなかったなんというようなことになってもいけませんし、しかし、どうしてもそうあるべきじゃないかなあという、私は信念といいますか、考えを持っておるわけでござまして、なお学者やあるいは懇談会その他の先生方意見も十分聞きまして、そのやり方等詰めてまいりたいと、かように考えておるところでございます。
  19. 片山甚市

    片山甚市君 先ほど申しましたように、遺族年金の問題、政府の方から出してもらった寡婦加算にも関係しますが、その問題とも関連するんですが、老齢福祉年金受給者の数を見てみますと、昭和五十一年三月で四百十二万四千人と、こういうことになっておって、今日、五十三年三月では三百七十一万七千程度と推計され、六十五年には、八十七万ぐらいに減っていくことになる。これは老齢福祉年金に関する限り言えば、死に絶えるのを待つという考えですか。あしたすぐにでもこのことについて改善を図っておく。一つ物差しですから、政府物差しですよ。減っていくんですからね。これは大臣、先ほどの遺族年金のことをちょっと答えてもらったんですけれども、私の説明の中で。七割給付をしようじゃないかと、こういうことであったのが、他の年金制度との関係があるということで、あなたの方が折れたということになっておる。もう一つは、これは老齢福祉年金は、やはり生活に、所得に値しない。これについて、速やかに来年度に向けて、特別に検討を加えてでも対処する、こういうことに努力を願えませんでしょうか。私は何かいろんな審議会をつくれということを言っておるのでなくて、そういうようなものを当面、老齢福祉年金は順々に減っていくのですから、死ぬまで待とうというのでないという姿勢であれば、すぐにとりかかってもらって、これについての給付の問題、あり方、これは抜本改正でないのです。抜本ではないのですよ、これ。抜本はちょっとかかるというのだから、これだけでもまずきょう約束してもらって、最大努力するということで、できませんでしょうか。老齢福祉年金に対する、死に絶えていくまで待たないで、大体生活のできるように、どうするかということについては特別に出してもらいたい。  それからもう一つは、遺族年金七割を申し上げたのについて、他の問題等ありますが、これについての検討を加えてもらいたいということを申し上げるのですが、いかがでしょう。
  20. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 前段の福祉年金については、そうありたいと私も念願をいたしております。ただ、ここで来年度予算編成前でございますので、いま直ちに先生にお答えして、そうやりますとはっきり言えないわけでございますのは残念でございますけれども、そうありたいと思って最大の努力をいたしたいと思います。  それから、遺族年金の七割問題でございますが、これはまさに根本的な年金制度全体の体系にも絡みますもんですから、これはひとつやはり根本改正方針決定まで留保さしていただきたいと思うわけでございます。
  21. 片山甚市

    片山甚市君 遺族年金の問題は、私どもの方の安恒委員からもいろんな角度から申し上げたはずでありますが、とにかくどちらにいたしましても、この問題は、年金国民のだれも等しく保障される状態ができるまでの間の矛盾点、先ほど言いましたように扶養者の妻、国民年金加入をしていない妻、それぞれについて、すべて矛盾点がありますから、抜本的改正が先ほど申しますように将来に延ばされるならば、一つ一つの問題について可能な限り拾い上げていくのは妥当だと思う。それを全部直すまでということになれば、そのときにはまた新しい矛盾が出てくるのじゃないか、こう思いますから、先ほど申しました老齢福祉年金に対する改善について、特別の期間を設けるなり措置をするなりして、改善を図っていただけましょうか。
  22. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私、御意見のとおり努力をいたしますと、先ほども申し上げたつもりでございます。
  23. 片山甚市

    片山甚市君 なかなかむずかしそうですが。そこで、実は年金額額上げに関する問題ですが、物価スライドの時期が昨年末、厚生年金が六月、国民年金が七月となっておりました。福祉年金についても、その改定時期を早め、四月実施ということで、いわゆる厚生大臣の勇断、実施可能な政策スライドをやるべきではないかと、福祉年金についてこそ早めて支給さるべきじゃないかと思うのですが、また厚生年金国民年金改定時期を早めることは事務的に困難だと言われておるのですが、それならば毎年改正せずに、四月なら四月にするという制度を決めてやれないか、こういうように考えます。それには、実は事務体制というものが裏づけられなければならないのですが、共済組合の場合は追給をする、それは何かというと、そういうような事務体制ができておるから追加して遡及できる、こういうことになっておると思います。四月では物価の問題、あるいはその他の見直しの問題で予算措置が無理だと、こう言うのならば、予測をして、まず決めて、秋に手直しをする、こういうことはできないか。まず四月に決めておいて、それから八月、九月に手直しをする、こういうことはできないか、こういうことを申し上げるのです。そのためにはどうしても年金の、いわゆる背番号的なコンピューター化をしないと、これはなかなかできない、こういうように言われているのですが、厚生省はどう考えますか。
  24. 大和田潔

    政府委員(大和田潔君) 事務的な面につきまして御説明申し上げますが、ただいま先生おっしゃいました四月という問題は、これちょっと制度論になりますが、現行のたてまえで申し上げますと、スライド率がわかりますのは何と申しましても四月の下旬から五月といったようなことになりますと、私どもの方はプログラムとの関係から、先生おっしゃいましたように、一ヵ月半、六月の半ばまでどうしてもプログラムでかかる。その間は新規裁定とかあるいは失権、年金額の変更といったものがストップしてしまう。それを六月十五日つまり一ヵ月半のプログラム作成の時期を見まして、その後六月十五日からスタートいたしまして二十日間で仕上げなければ八月の支払い期に間に合わぬという、こういったような問題がございまして、現行のたてまえでは、おっしゃいましたように、物価スライドをいまの六月からさかのぼらせるということは不可能ということになっておるわけでございます。
  25. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 現在の事務体制では、六月より早くスライドを実施することができないということをいま部長から御説明申し上げたわけでございますが、先生からの御提案は四月にさかのぼるということにしておいて、実際には十月なり十一月なり差額の形で出せばやれるんじゃないかということかと思いますが、この問題につきましても現在の事務体制では差額を後から出すということがまだできるところまで整備されておりませんので、そういう実施体制との関連をにらみながら検討さしていただきたいというふうに思っております。
  26. 片山甚市

    片山甚市君 私は十月に支払ってほしいというのではありません。四月に予測したいわゆるスライドをしておいて、それで十月に調整をすれば四月一日から改正ができるではないか。それをするのには、いわゆる電算機を入れないとできないのではないか。コンピューターを入れてしなきゃならぬじゃないか。そういうことまでして、全部年金について体制を整える用意があるのか。先ほど厚生省は、日本の年金加入者の九〇%を持っておるではないかと言っておるんです。あなたの方がやる気になればできるはずでしょう、人任せでなければ。窓口ということになりますと、支払いは郵便局でしょう。そのことについて問題はないんですね。支払いの問題は、厚生省だけが決めてやれるんですか。あらゆる形で郵便局の方の、郵政省の方のお手伝いを得てやっておるんです。そうすると、郵便局の方も結局コンピューターを今度入れて動かすことになっていますね。そういうことについて厚生省と郵政省とが手を組んで、どういうように早めて支給するかというような工夫は、大臣、とられませんか。片一方は郵便貯金いろんなものでコンピューターを入れようとしておる。そして、年金についてはいろんなことありますから、ちゃんと台帳つくらにゃいかぬ、こういうことになりますと、相当大きな機械化をする、事務量をはけるようにしなきゃならぬ。そのためには予算を組まなきゃならぬと思うんですが、大臣、そのようなお考えはありませんか。
  27. 大和田潔

    政府委員(大和田潔君) いま先生お話しのように、郵便局はどういうような関与をしているかということにつきまして御説明申し上げますと、郵便局は年金の支払い機関として銀行と同時に、並行いたしまして、郵便局も支払い機関という形でもってお願いをしておる。したがいまして、郵便局につきましても事務量というものにつきましては、郵政省自体が非常に問題にしておるわけでございまして、こういった先生ただいま申されましたように、一たん仮払いをして、さらに精算払いをするというような形のものにいたしますと、郵便局の方もとても対処できないという、こういうようなことになってくるのではないかというふうに私ども考えております。
  28. 片山甚市

    片山甚市君 大臣、これよろしいですか。
  29. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 現在非常に困難だというのは、実は年金受給者がどんどんふえてまいりますので、それに追われているという実情が一つございます。これを解決をするためにオンライン化を計画をいたしておりまして、これが大体前期が五十六年、五十九年に全部完成と、こういうことになっております。それができました場合、また郵便局の方も御承知のとおりオンライン化の全国的なあれを進めておりますから、これができ上がりますと私はいまのいわゆる一般年金受給者の増加に対応する事務処理が非常に円滑にまいりますから、おっしゃるような問題についても解決をすることができていくんではなかろうかと思っております。その辺のところは、大変遅くなっておって恐縮なんでございますが、なかなかオンライン化の全国的な確立ということが相当の時期がかかってまいりますので、もちろん予算等の折衝において今後努力して少しでも縮めたいと思いますけれども、そういう実情でございますから、御理解をいただきたいと思います。
  30. 片山甚市

    片山甚市君 四月にとにかく福祉年金を支払えるようにしてもらいたい。それほど少ない金額でありましても、年金支給について早めてもらいたいというのは、生活費であります。いわゆる所得として、生活をするに必要な糧として受け取って、余分なものでありませんだけにこれを改正してもらいたい。そのためには、どうしても事務のいわゆるスピーディーな処理をしなければならぬ。そのための努力が五十六年、五十九年、もう昭和六十年にならないとやらないというんですから、ゆっくりしていますね。抜本改正というものもそういうような中でデータが出てまいろう。  私はそういうような意味で、次の問題で、物価スライドの問題です。これはいわゆる安定成長期に入りましたら調整をするということになります。そうすると、財政再計算期は昭和五十一年から五年ですと昭和五十六年になるんですが、いまのような情勢の中で一年でも早めていわゆる調整をしてもらいたい、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  31. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 前回の財政計算は、ただいま御指摘のございましたように昭和五十一年度にやりましたわけでございますので、法律では少なくとも五年に一遍ということでございますので、五十六年にはやらなければならないというふうになるわけでございます。過去の財政再計算を見ますと、五年たってやっておるというのはむしろ少のうございまして、四年目ぐらいにやっておるということが多いのでございますが、御承知のようなオイルショックの後の変動が激しい時期には、三年目にやったということもあるわけでございます。現在の段階では、賃金とか物価の動向から言いまして再計算をどうしてもやらなければならないというふうに判断はしていないわけでございますが、一方、先ほど来お話しのございます年金の大改正の問題でございますが、遺族の問題にしろ何にしろ、すべで財政再計算をしなければできない問題でございます。そういう社会、経済情勢の今後の推移とか、あるいは年金改正問題の煮詰まり等を勘案いたしまして、次の財政再計算を決めたいというふうに考えております。
  32. 片山甚市

    片山甚市君 次の財政再計算時期を早めてもらいたい。理由は、私たちとしては、物価が一%上がってもそれを計算するというカナダの例もありますけれども、私たちとしては、もうどうしてもいまのような物価スライドになりますと一年ずつおくれて支払うのでありますから、そういうことになりましたらどうしても再計算の時期をこの時期に早めて実施をしてもらいたい、そのことが私たちの生活を守ることになる、こう思いますが、いかがでしょうか。
  33. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 各国のスライドのやり方はいろいろございまして、わが国は五%でございますけれども、三%ぐらいのところもございますし、また四半期ごとにというようなところもあるわけでございます。スライドのあり方につきましては厚生年金部会でもかなり御議論をいただいておりまして、物価スライドがいいのか、あるいは賃金スライドの要素を入れるべきではないか、というような御議論をいただいておるわけでございますが、これも次の改正を目指しまして検討をしていただく予定になっておりますので、ただいまの御指摘も踏まえまして検討さしていただきたいと思います。
  34. 片山甚市

    片山甚市君 私の意見についてはどうも、早めるということについては意味が十分に理解をしてもらえないようでありますが、もう一度言っておきますが、物価スライドという形になりますから、物価上昇がある限りそれはちゃんと再計算をして保障されるべきだ。賃金でございません、物価についてちゃんとしてもらいたい、こういうことを申し上げて、含んでもらいたいと幾ら申し上げても、計算の事務ができないそうでありますから、私の意見を申し述べておきますから、それで次に移ります。  無年金者の問題ですが、これはいわゆる現状は、有資格者の状況及び所得水準について統計的にどうなっておるのか、こういうことについてお聞きします。
  35. 大和田潔

    政府委員(大和田潔君) お答え申し上げます。  無年金者がどの程度おるかという問題が一つございます。これにつきましては、一応私どもは百万という予定をいたしておるんでございますが、これらの無年金者の実態につきまして、どういう所得階層になっておるかという問題を私ども一番実は問題にしておるわけでございます。これをどう調査するかというのが実は非常にむずかしゅうございまして、私ども、いままで無年金者の実態として把握いたしましたのは、ただいま申しました百万といった数を把握いたしましたのが精いっぱいのことでございますので、所得につきましては具体的な把握はできておりません。申しわけないことでございますけれども、そういう状態でございます。
  36. 片山甚市

    片山甚市君 年金を当然受けるべき資格がある者で受けてない者が約百万だと推定をする、こういうことで、所得水準ということについても把握をしてない、こういうことでございます。特に、都市部と農村部のいわゆる納付組織というか、そういうことはどういうことになっていますか。
  37. 大和田潔

    政府委員(大和田潔君) 農村部につきましては、比較的人口移動が少ないというような観点から、無年金者が少ないわけでございますが、その納付組織は、たとえば国民年金委員であるとか、あるいは文字どおり納付組織、つまり納税組織のような形の組織というものがございまして、そこで保険料を集められるというようなケースが多いようでございます。  それから、都市につきましては、人口移動が激しゅうございます。したがいまして、なかなか納付組織というものがなじまない。結局、納付書方式といいますか、市役所あるいは区役所等から納付書というものを個々に差し上げまして、それによりまして銀行、郵便局等から保険料を納めてもらう。その間、国民年金委員あるいは集金人といった人たちが各戸を回りまして集金をするといったようなことも並行してやっておるわけでございますが、実態は、いま申しました、具体的に個々の人たちに納付書を発行いたしまして、個々の方方から納めていただくといったような実態が多いというふうに私ども把握しております。
  38. 片山甚市

    片山甚市君 無年金者の中には、医者はおりませんか。
  39. 大和田潔

    政府委員(大和田潔君) 実は、先ほどの御質問の無年金者のやはり実態のあれでございますが、無年金者の職業というのもなかなかつかめないんでございます。したがいまして、お医者さんもちろんおられると思うわけでございますが、どういったような方々がそこにどの程度おられるかということにつきましては、ちょっと把握いたしかねておる状況でございます。
  40. 片山甚市

    片山甚市君 所得の低い者が大体無年金者になっておるというように理解してよろしゅうございますか。
  41. 大和田潔

    政府委員(大和田潔君) 必ずしもそういうようなことではないというふうに私どもは聞いております。
  42. 片山甚市

    片山甚市君 そうしますと、今回特別納付措置をとって年金加入をさせる、こういうことになりましたけれども、諸般の事由で納付が困難な者への配慮がなされておらない、また無年金者の解消を日常的にどう図っておるのかということについて、いまお聞きをいたしましても明確にならない。そして、こういうような措置をとりましても、これから無年金者ができるような仕組みになっておる、こういうように思いますが、いかがですか。
  43. 大和田潔

    政府委員(大和田潔君) 無年金者の解消は、今回の特例納付というものを機にいたしまして、私ども最大限の努力をするということでございます。いろいろとやり方があろうかと思いますけれども一般的には当然のことでございますけれども一般的な広報というものを使いまして呼びかける。これは、こういった特例納付という制度がある、いまこれに入らなければ年金権が確保できないということを繰り返し申し上げたいと思うのでございますが、さらに個々に、これは未適用者、つまりこの制度に入ってないという人もございますし、それから被保険者になっておりながら保険料を納めておられないという方もおられるわけでございますが、そういった方々に対しましてそれぞれの方法、たとえば未適用者につきましては住民台帳というものと照合してみるとかというようなことで把握をするとか、あるいは未納者につきましてはそれぞれ国民年金台帳から未納者リストをつくりまして呼びかける、個々に呼びかけましてそういった無年金者というものがなくなるような最大限の努力を私どもしてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  44. 片山甚市

    片山甚市君 実は、ほかのことを聞きたいんですが、時間が制約されていまして少しはしょりますが、せんだって安恒委員の方からも指摘しました特例納付金の貸し付けの問題について、どのような措置をとって解消を図るのか。私の方では、四千円というのはべらぼうに高いというか無理である、こういう立場をとっておるのでありますけれども、これについて具体的に、新しく納付金を納めていただく方々に対する措置説明してもらいたい。
  45. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 安恒委員にもお答えをいたしましたように、低所得者の方で保険料納付に非常な支障を来たすというような人がございまして、ぜひこの際無年金を解消して年金に入りたいという人がございましたときには貸付制度を実施していきたいと思っておるわけでございます。  ただ、その際にも申し上げましたように、やはりこの実態等がよくつかめませんと、どれぐらいの枠を必要とするのか、この点もなかなか把握できませんので、しかるべく実施の状況を、もちろん長いことではございませんが、見さしていただいてから、この貸付制度をやってまいりたいと思いますが、どこの資金を貸すのかということでございますと、これはやはり世帯更生資金を活用する、こういうことしかないのではないかと思っておるわけでございます。
  46. 片山甚市

    片山甚市君 実施の状況を見ながらと言わないで、これが二年間の時間でありますから、とにかくすぐにそのような態勢がとれるように手配をしてもらいたい。いわゆる実施を見なくても、これはそれぞれ低所得者と、こういうことを言われているんですけれども、先ほどの、お医者さんのような方に貸す必要はないだろうけれども、低所得者じゃないだろうと思うから。当然私は、日雇いだったり季節労働者だったりしている人が心なららずも、日銭が入りません、いろいろなことがありますから、入ってない者、ですからこの際、皆さんの方から言えば四千円は普通だと言うけれども、その者たちにとっては、建設労働者など含めてですが、大変これは額をいまの保険料にならしてもらいたいということで要求して、せんだってからここで何回も議論していますからこれ言いませんけれども、具体的に、そういう大臣の答えだったんだが、局長、具体的にもう少し答えてください。
  47. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 前回、貸付制度のことが強く御質問がございまして、私どももその線に沿いまして検討いたしたわけでございますが、やはり今回の特例納付が国民年金全体の運営に大きな支障にならないようにということを一番私どもとして考えさしていただかざるを得ないということでございます。そこで、とにもかくにも、できるだけいろいろな方法で御努力をしていただいて、自主的に納付をしていただく、それの状況を見ながら、また私どもの方の貸付制度を整備したい。その際、せっかく厚生省世帯更生資金というものがございますので、これを使って貸し付けをするということが低所得対策にとって最もいいんじゃないかということで、省内の意見一致したわけでございまして、実施状況を見ながら世帯更生資金の貸付制度を利用してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  48. 片山甚市

    片山甚市君 私は、その実施状況を見ながらと、こう言われることについて、あらかじめそういうような必要なものについては措置をとるようにしてもらいたいと、もう一度繰り返しておきますが。  それと同時に、せんだってから議論があります在職老齢年金厚生年金で受けておる方々の所得制限がございます。これについては、御承知のように、共済組合年金等と比べてみても大変不当な措置だということで、何回も議論をしておるんでありますが、これについての改善を早急に図っていただくように願いたい。すなわち、私たちの言い分は、先ほど申しましたけど、民間の賃金が大体平均十五万円ですから、いまの十三万円というラインから十五万円ぐらいまではすぐに手直しをするような措置がとられるべきだと思いますが、これはなぜかといって、一生懸命働いた結果得たものであります。共済組合年金の場合はもらえて、片一方の方はもらえない。それは、あなたの方は低い方へ引き下げることに一生懸命になりますが、高い方は何か均衡を言いますね、大臣、悪い方を好きなんですね。厚生省というのは何でしょう、涙があったり、やさしかったりするのが力じゃないですか。いわゆる昔で言うと、お地蔵さんのような、菩薩のようなものでなきゃいかぬけど、その悪魔を払う力がなくて、弱い者が来たらほったらかしになっておるんじゃないですか。これはきょうもう一度聞きますが、在職老齢年金所得の制限については、速やかに審議会を開くなり委員会をつくるなりして改善をしてもらいたい。これはもう私の方の委員から何回も前のときに言っておることでありますが、もう一度この席上で努力することについての確認をとりたいと思います。いかがでしょう。
  49. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 毎年努力をして法律案を提出をいたしまして、引き上げをやってきておりますことは、御承知のとおりだと思います。それで、十五万程度まですぐ持っていけと、こういう御指摘でございますが、まあ、いま私がここで腹をたたいて、引き受けましたと言うわけにはいきませんが、引き上げには努力いたしますが、いま十五万という線をここで言えと、こう言われましても、いろいろ関係方面との折衝等もございますから、十分努力いたしますから、この点でひとつ御理解をいただきたいと思います。
  50. 片山甚市

    片山甚市君 努力するということであっても、私の方は実現の方法について審議会開くなり委員会を設けるなりして、一度そのことについては在職老齢者に対する、さらに言えば、福祉年金に対する、これについての温かい気持ちを出してもらいたい。そうしなけりゃ年寄りは一番先首切られるんですよ、いま。若い者は雇ってくれますが、年寄りになったらすぐに首切られてほうり出されて、そして年金もらおうと思ったら、こういうことになる、世の中冷とうございますね、年寄りには、日本の国は。外国は年寄りは首切られぬで若い者が首切られるから暴れる、暴れるから失業対策をしてくれる。日本の国は年寄りだから落ちついて下を向いておるから、ついでに踏んだりけったり、所得制限まで受ける。これは大臣、十五万円をいませいと私言っておるんじゃない。たとえばそういう標準があるんだから引き上げるように、この一年間の間にちゃんと努力するという——金額を言えば、それはありましょうが、私たちとしてはそういうような努力をしてもらいたい、こういうことです。
  51. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) ちょっと答弁が言葉が足りませんで、大変失礼いたしましたが、実はこの問題につきましては、五十三年度の改正につきまして、厚生年金部会に御意見を伺ったわけでございますが、さしあたり、従来の水準をその後の物価、賃金の状況ににらみ合わせて上げておけと。引き続き低所得者在職老齢年金の支給のあり方の問題について当部会で検討をするという御意見をいただいておりまして、これは厚生年金部会で検討をしていただく予定になっておるわけでございます。
  52. 片山甚市

    片山甚市君 時間が来ましたから、もう一度言いたいんですが、少し省略します。  そこで、最後ですが、福祉手当について実は今度の改正では月額六千二百五十円になっています。ところが、家政婦あるいは看護婦を雇いますと、一日分で六千二百七十円です。これは在宅の身障者に対する、いわゆる障害者に対する福祉手当ですが、これではやっぱり少ないし、その算出根拠というものはいつもはっきりしていません。これでは納得できないんで、このことについての改善が急がれると思いますが、いかがですか、ぜひともお願いをしたいんですが。
  53. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) おっしゃるとおりだと思いまして、在宅対策については力を入れなきゃなりません。実は厚生省予算概算要求は六千円でございましたんですが、党の方で別に追加要求等がございまして、二百五十円実は増したわけでございます。確かに、私ども努力は足りないと思っておりますので、今後とも十分ひとつ努力をいたしまして、この引き上げに向かって前進をいたしたいと思います。
  54. 渡部通子

    ○渡部通子君 年金の問題につきましては、もう議論としてはかなり尽くされております。重複する部分も出てまいりますけれども、ひとつ私も若干御質問をいたしますので、よろしくお願いしたいと思います。  さんざん議論になってまいりましたが、在職老齢年金について、一、二点お伺いをいたしますが、今回の在職老齢年金の支給制限緩和、これを行いますと、大体恩恵をこうむる人数というのは何人ぐらいになりますでしょうか。
  55. 大和田潔

    政府委員(大和田潔君) 昭和五十三年度予算の見込みということでございますけれども、これは新たに受給権者となる者の数は、これは老齢年金で四万六千五百七十二人、それから通老、通算老齢年金で四万五千八百七十七人というふうに見込んでおります。合計いたしまして、九万二千四百四十九人でございますが、これが新たに受給権者になるという人たちの数字でございます。  それからなお、いわゆる七十歳改定につきましても、ちょっとつけ加えさしていただきたいと思いますが、これの対象者につきましては、老齢年金が十万六千五百八十四人、それから、通算老齢年金が六万四千二百六十九人ということになっておりますので、つけ加えさしていただきます。
  56. 渡部通子

    ○渡部通子君 そうすると、大体今回の改正であれですね、恩恵をこうむるという人が、いま申された数の総合計ということになりますですね。
  57. 大和田潔

    政府委員(大和田潔君) それからなお、いわゆる支給割合の変更、御承知のように、支給割合がございますが、それが、支給割合が高くなるといった人たちはこれ以外にございますので、そういった者を含まない数字でございます。
  58. 渡部通子

    ○渡部通子君 わかりました。  六十五歳以上の在職者に対するカット率二〇%、これはそのものをなくすのが適当ではないか、全額支給すべきだと思っておりますが、社保審の意見等にも、適用自体について検討することと、こういうことが言われておりますが、これに対する対処、今後の方針等をお聞かせ願いたいと思います。
  59. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 六十五歳以上の方の在職老齢年金は、いまお話がございましたように、十三万円までは十割でございますが、それを超えますと二割カットするということになっております。実は、これは五十一年度改正まではすべて二割カットでございましたんですが、五十一年改正で十一万円までの方は全額支給ということに改正をいたしまして、さらに今回それを踏襲して十三万四千円までは全額ということにいたしたわけでございます。  六十五歳以上の方につきまして、年金でどういうふうに取り扱うかというのは、いろいろ議論がございまして、やはり現在のように被保険者にし、保険料を納めていただくという形がいいという考え方もございますし、もう六十五歳になれば、そこで厚生年金の上では脱退ということにして無条件給付を出し、保険料はいただかないという整理もあっていいんじゃないかという議論があるわけでございます。厚生年金部会でもこれは大きな問題で議論をしていただいておるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、今後厚生年金部会で議論をしていただく議題の一つになっておるわけでございます。
  60. 渡部通子

    ○渡部通子君 六十五歳未満の標準報酬月額の上限ですね、今回十三万四千円、これの算出根拠はどこにございますですか。
  61. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 今度の改正までは十一万円でございましたんですが、この十一万円を決めましたのは昭和五十一年度の改正でございます。その後五十一年、五十二年と物価上昇がございますので、それを掛けてみまして十三万四千円ということにしたわけでございます。いわば二年分の物価騰貴を掛けたわけでございます。  その前の十一万円は、それならなぜ決まったかということでございますが、従来の支給制限の限度額は、これは年金の問題でございますので、年金受給者とのバランスを考えまして、モデル年金の額に水準を置いておったわけでございます。具体的に申し上げますと、昭和五十年度のときにはモデル年金が七万二千九百円でございましたので、支給限度額が七万二千円ということにしておったわけでございます。五十一年度の改正のときには、標準年金は九万円でございまして、従来のやり方でございますと、九万円を支給限度額ということにすることになるわけでございますが、これにつきましては、できるだけ高齢の方が就労することを促進する意味も含めて、上げるようにということがございまして、従来のルールと違ってモデル年金の九万円を超えて十一万円ということにいたしたわけでございます。今回はその十一万円に二年分の物価の推移を見た、それで十三万四千円にしたということでございます。
  62. 渡部通子

    ○渡部通子君 そのモデル年金は、受給者とのバランスで決めたといまおっしゃいましたけれども、その中身をちょっと説明してください。
  63. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 在職老齢年金、これは年金を特例的に支給するということでございます。原則的には退職をした場合に老齢年金を出すということでございますが、高齢の方の場合には、就労条件が必ずしも恵まれておりませんので、やはり退職とみなして出すということを考えなければならないということであるわけでございますが、一方、退職された方に当然年金が出るわけでございますが、退職された方とのバランスというものを考えまして、年金だけで生活をされる方と余り違いが出ないようにと、こういう意味でございます。
  64. 渡部通子

    ○渡部通子君 そこで、賃金との見合いはどう考えられているわけですか、平均賃金との。
  65. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 現在は平均賃金との関連考えておりませんで、年金受給者とのバランスを主として見る。それも現実に出ている年金が若干低うございますので、モデル年金を基準として考え、さらに五十一年改正ではモデル年金を若干上回るというところに基準を設定しておるわけでございます。
  66. 渡部通子

    ○渡部通子君 これは事務的なことですからこれ以上伺いませんが、やはり平均賃金という見合いが当然考えられなければならなかろうと思います。そういう意味では、さんざ議論になったことでございますけれども、現在の平均賃金というものを考えてみたときに、やはり所得制限の緩和という点ではもう少し大幅に改定をしていただきたい。これは希望として議論のたくさんあったところでございますから、私もその意見として申し上げさせていただきたいと思っております。  年々、いままで交通費等も上がっているわけでございます。交通費の値上がりというものが月額報酬として算入される。それは受給額がふえるのですから、年金としては結構なことでございますけれども、在老の場合はやはりこれが、カット率とか、停止の場合に大きく響いてくる、こういう影響力があると思うわけでございまして、そういう意味からも、ちょっとした交通費の値上がり等で二〇%、五〇%、八〇%、あるいは一〇〇%、こういったカット率にぶつからなければならないという、こういう階層がたくさんあるわけです。特に月収八万円から十万円程度の人々、実はこれが平均的な所得では集中していると思うのですけれども、そういった人たちにとって交通費の値上げ等がすぐに響いてくる。こういった意味で減額率の見直し、こういったものも検討していただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  67. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) いま標準報酬で支給区分をいたしておるわけでございますが、標準報酬の立て方といたしましては、健康保険とあわせまして、交通手当とか、住宅手当も一切報酬の範囲に入れるということでございますので、交通手当だけを別に考えるわけにいかないわけでございます。ただ、そのおっしゃるようなことがございまして、二割、五割、八割というような刻みがございますので、その刻みの前後でかなり不利益になったりすることがあるわけでございます。これはいまの在職老齢年金制度の泣きどころでございまして、前には四段階にしておったわけでございます。四段階では多少そういう刻みを踏み外す問題が緩和されるわけでございますが、しかし四段階でありますと、また非常にわかりにくいとか、あるいは下の給付率のものがございますので、いま三段階に改めたわけでございますが、おっしゃるように刻みの問題が非常に泣きどころでございまして、これはいろいろ研究しておるわけでございますけれども、なかなか名案が出てこないということでございますが、さらに研究をしてみたいと思います。
  68. 渡部通子

    ○渡部通子君 カット率が高いから、刻みの問題がいろいろ問題になると思いますので、それを低くしていただけばずいぶん緩和もされてくると思いますので、その点御検討をお願いしたい、見直しをお願いしたいと思うわけです。  これは基本的なものになりますけれども、在老年金所得制限、これに関して勤労所得年金の関係ですね、これはいま大変問題になっておりますから、ひとつ御意見だけ承っておきたいと思います。  要するに、在職老齢年金制度を利用して、高齢者の賃金抑制あるいは安上がりの高齢者対策、こういうものが行われている傾向、これは御承知のとおりでございます。年金制度は本来働いているときは支給されないのが原則で、したがって生活を支え得るに十分の賃金を保障することがやはり在職者の道筋でなければならないと思います。そういう逆に使われてきている在老年金について、この年金制度そのものの位置づけをどうお考えになっているのか、あるいはこういう逆用されているようなことに対して、何か対応をお考えになっていらっしゃるのか、その点を伺っておきたいと思います。
  69. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) ただいま御指摘の問題も、在職老齢年金のあり方の大きな問題でございまして、在職老齢年金が出るために、事業主の方が賃金を在職老齢年金をもらえるところまで下げるというようなことが行われておるという批判があるわけでございます。また一方では、しかし、在職老齢年金が出るので、賃金が安くても就労の口ができると、やはりそれなりに雇用をつくり出す効果があるんだという見方もあるわけでございます。  それで、五十三年度の改正をどうするかというときに、社会保険審議会厚生年金部会でもその両方の議論がございまして、五十三年度改正ではやはり雇用創出の効果を果たしている面があるんだから、現在のやり方で基準を上げようということになったわけでございますけれども、その問題についてはこれからも掘り下げていこうと、在職老齢年金がそういうマイナスの作用を持たないふうにするためにはどういう制度にしたらいいのか、御研究をいただくことになっておるわけでございます。
  70. 渡部通子

    ○渡部通子君 この制度の位置づけについて、大臣からも御所見をひとつ賜っておきたいと思います。
  71. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) いま局長が申し上げましたように、実は引き上げますと賃金を抑制するということがあらわれてくる、また引き上げなければ非常にそういう在職老齢で、しかも高齢者対策としては不十分だと、こういうことになりますので、労働省ともよく相談をしまして、賃金の抑制に向かわないような、国民全体あるいは企業者全体の理解を得ながら、やはり逐次引き上げ努力をしていかなきゃいかぬではないかと思っておりますが、どうも賃金の動向について、これを余りやかましく言いますと、今度雇用促進になりませんし、実は痛しかゆしで非常に私どももジレンマに悩んでおるわけでございます。社会保険審議会の厚生部会におきましても、その議論が相半ばするような状況でございましたんですが、やはり実態が実態でございますから、逐次引き上げさしていただこうと。ことに物価の上昇率ぐらいは、これはやむを得ないんじゃないかと。これによって賃金の抑制というものは——だから引き上げ方を研究しないと、賃金の抑制というような逆効果が出てくるおそれがありますものですから、ことしは物価上昇ということにとどめたわけでございますが、先ほど来また御意見がございますように、この所得制限ははなはだ不合理じゃないかという御意見等もございますので、来るべき方針を決定する際には、これらを含めまして、どうしたらいいか、十分ひとつ私ども検討さしていただきます。
  72. 渡部通子

    ○渡部通子君 女性の年金について一点伺っておきたいと思います。  先ほどちょっと議論になりましたけれども、先ほどの御答弁は、私は伺っていてはなはだ不満でございます。現在、被用者年金は、離婚した妻、これは年金権を失ってしまうわけですが、その救済措置、先ほどいろいろ年金懇等の、基本懇等の答申を踏まえての御答弁がございました。一番いい方法で何とか案をまとめるというような御答弁だったように思います。  それで、いわゆる離婚した妻の年金保障考えられる改善方向というものはすでに示されているので、どれを選択するかという段階まできているんだと、こういうお話でございますね。しかも、来年の通常国会に間に合うように何とかその基本的な態度を決めたいという、そういう御答弁を伺っておりますと、かなり煮詰まってもきているんではないかというふうにも私は感じられるわけです。  先ほど、選択する段階に来ているとおっしゃいましたけれども、それ、もう少し具体的に御答弁願えませんか。どういう方法考えられているのか、あるいはこういった方法二つなり三つなり、あるいは答申以外に案をお持ちなのか、その辺いかがなんでしょうか。
  73. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 高齢離婚をした場合の年金権の問題でございますが、抽象的には先ほど申し上げましたように、中間意見で、一つは夫の年金の分与ということを考えたらどうかということがあったわけでございます。もう一つは、やはり離婚の場合に一般的にございますように、結婚中の共同財産の分配の問題という処理の仕方もあるんじゃないかと。さらには、離婚する場合の子供の扶養をどうするかというようなことが現実によくありますが、妻の生活をその中に加えて考えるということも可能ではないかということの、その三つの提案があるわけでございます。  後の二つは、これは民法上の問題ということになりますので、直接年金改正に結びつかないということになろうかと思いますが、第一の方法は、これはアメリカでとっておる方法なんかを委員さんが頭に描かれておるんだろうと思います。アメリカの場合には、六十歳以上で離婚した場合だったと思いますが、夫の年金の半分を出すということをしておるわけでございます。そういうことを頭に置いて御意見をいただいたわけだと思うのでございますが、いずれにいたしましても、離婚の場合の扱い方は、女性の年金権全般の問題の一環として解決しなければなりませんので、大臣から言われております年金改正方向の中で、ほかの婦人年金権の問題との絡みの中で方向を決めたいというふうに考えておるわけでございます。
  74. 渡部通子

    ○渡部通子君 国民年金任意加入を、妻の場合これを強制加入として、すべての女性が年金権を持つという、そういう考え方はいかがなんでございますか。
  75. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 国民年金、いま被用者の妻の方は任意加入でございますが、これを強制にしろという御意見を述べられておる団体もございますし、基本懇でもそれが一つの有力な方法ではなかろうかということを言っていただいておるわけでございます。  ただ、そういうことにいたしますと、女性の年金権、確保されるということになるわけなんでございますが、国民年金保険料というのもだんだん高くなっていくということになりますと、国民の側から言うと、厚生年金で夫は妻の分も保険料を掛けておるということになろうかと思いますが、さらに、国民年金任意加入じゃなくて、強制加入国民年金保険料も掛ける、その国民年金保険料もだんだん高くなっていくということになりますと、負担がかなり重いものになるんじゃないかと。また、その事業主負担というのは、被用者の場合には妻の生活も見る、そこまで事業主負担があるというふうに考えますれば、やはり被用者保険で被用者の妻の問題を解決するということも考えなければならないと思うんでございますけれども、仮にいま申し上げましたように、被用者の妻を強制加入にするということであれば、やはり国民負担が余り重くならないような調整厚生年金との間で考えなきゃならないということは、どうしても残るんじゃないかというふうに思っております。
  76. 渡部通子

    ○渡部通子君 いま残るんではないかとおっしゃられた問題、当然制度改革をやればいろいろな問題は調整なさらなきやならないことでございまして、強制加入という言葉、私はきらいですけれども、義務加入でも強制加入でも同じですけれども、じゃ任意加入のままの方がよろしいと思いますか、それとも強制加入にした方が年金制度としては前進だとお考えですか。
  77. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 国民年金任意加入にするか強制加入にするかということでございますが、これも先ほど来議論がございましたように、厚生年金遺族年金水準を一方では引き上げなければならないという要請がございまして、私ども厚生年金遺族年金水準はぜひ引き上げたいと、こう思っておるわけでございます。そういたしますと、年金水準が必ずしも高くないという現実を踏まえて、被用者の妻が国民年金任意加入をするという道を開いておったわけでございますので、厚生年金遺族年金水準を上げるときに、やはり被用者の妻の国民年金に対する任意なり強制加入の問題もその関連検討をしなければならないと思うわけでございます。  いずれにしましても、制度間の非常にややこしい調整を要する問題だと思うわけでございますが、これはやはりどうしても踏ん切りをつけませんと、遺族年金水準の向上等もできませんので、ぜひ技術的な問題も含めまして検討を進めて結論を出したいというふうに思っておるわけでございます。
  78. 渡部通子

    ○渡部通子君 ぜひ踏ん切りをつけていただきたいと私も思うんですけれども、いまの御答弁を伺っておりますと、確かに年金制度の複雑な状況から見れば、これ踏ん切りつけるのも大変でしょうし、制度間の調整ということは非常にむずかしいと思うんですけれども、また見方を、立場を変えて見てみましたときに、やはり年金を個人としてとらえるか世帯としてとらえるか、そういったところでまた大きく違った見方もできてくるんではないかと思うんです。私、やはりいまの日本の生活形態から考えれば、家族構造から考えても、世帯でとらえるということも大事だと思うし、それからいままでも厚生年金なんか全部そういうことで行われてきているわけですけれども、やはりこれだけ人間の生き方が多様化してきておりますし、女性の自立ということもこれだけ見直されてきている。憲法で保障されている個人の生存権、こういった点から考えてみますと、やはり個人について年金権が確立しているということは当然だという議論も私はまたうなずけると思うんです。そういう面からのアプローチ考えてみますと、やはり結婚したから、しなかったからといって年金における権利、義務というものが、一個の人間として考えた場合には、当然確立していなければならなかろうと私は考えます。そういう意味におけば、強制加入というよりは当然加入と、こう言ってもいいことを前提として、そういったことを踏んまえて制度調整をなさるおつもりはないかどうか、そういったことを導入する方向でお考えはないかどうか、それを伺っておきたいと思います。
  79. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 国民生活実態というのは、やはり世帯を中心としているということが事実だろうと思うわけでございます。したがって、社会保障考えます場合には、原則的には世帯でとらえていっていいと思うんでございますけれども、先ほど来お話のございましたように、たとえば高齢離婚した場合には妻の年金が全くなくなってしまうということがあるわけでございまして、必要な場合には個人としての年金権もはっきりしておるということには少なくともしなければならないだろうと思います。それで、制度審議会で出しておられる御意見も、基本年金と社会保険年金の二本立てということを、意見出していただいておりますが、その基本年金の方は個人の年金権を確立するという意味合いを含めて御提案をいただいておると思うんでございますが、まあ社会保障世帯単位に考えていくのが原則だと思いますけれども、必要な場合にはその個人の年金権がどこへ行ったかわからないということではいけないわけで、最小必要な場合に、どの人の年金も確立しておるということにはぜひしたいというふうに思っております。
  80. 渡部通子

    ○渡部通子君 そういう立場からお考えになって、この任意加入の問題はいかがですか。制度を一歩踏み切るというおつもり、方向はございませんか。
  81. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 繰り返しになりますが、中間意見でも、強制加入なり当然加入にするのが一方法じゃないかという御提案をいただいておりますので、十分その点についても検討さしていただきたいと思います。
  82. 渡部通子

    ○渡部通子君 この女性の年金権の問題について、厚生大臣からもひとつ御意見を承りたいと思うんです。私は、この問題はどうしてもどこかで踏ん切りをつけていただかなければならないし、確かにむずかしい問題はあるでしょうけれども、それはそれでまた片づけることとして、どこか一歩踏み出していただきたい。そのためにこれだけ答申も案をしぼってきていることでございますし、当然来年の通常国会に何らかの基本的な態度をお示しいただくためには、そろそろこの辺で厚生大臣もお考えをまとめていただかなきゃならないころだと思うんです。どこからか手をつけていただけないかどうか、いかがでございましょうか。
  83. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私は、この問題の解決は、やはり国民全部に基礎年金的な構想を確立するという先生の方の党の構想なり、あるいは制度審議会構想なり、そういう構想をやっぱり基礎的に考える方が、よりこの個人の年金権の確立と、この妻といいますか、女性の年金権確立の問題から見て、私は今日個人の、実はまだよく討議しておりませんけれども、私としてはその構想の方がいいのではないかなというふうに思っておるわけでございます。たとえば、いま妻の当然加入をやるといたしますと、遺族年金等の引き上げ問題に絡んでまいります。しかも、いま厚生年金の被保険者の保険料には、一部事業主の負担というものもありまして、これは当然遺族年金という制度がある以上、その妻の保険料、健康保険において保険料を計算しますときに、家族は七割ではありますが、家族の給付全体、医療費全体を見た上で保険料を決めているというような意味においては、この保険料の中に家族保険料も入っているという見方をせざるを得ないわけでございますが、そうしますと、厚生年金保険料の中にもはやりそういう面を考えていかなきゃいかぬだろう。とすれば、もし当然加入ということを妻にやる場合には、これは保険料の、しかも遺族年金というのを考えた場合に、負担が増と同時に、二重に保険料という問題が出てくるおそれがある、個人個人の年金権から見ますと。少しダブるという面を、二重ではありませんけれども、ダブる面が考えられなければならない。いろいろやってみまして、どちらの方をとるのがいいのか、被用者の妻でございますから、離婚した場合のことは一応特例として別途解決をするとしまして、局長が先ほど答弁しました、夫の年金権の分与方式を考えるのが、被用者のいわゆる厚生の立場から見ると当然ではないかなと思うんでございますけれども、いま先生がおっしゃるように、やっぱり国民一人一人が全部個人の年金権を持つということの重要性等も考えますと、それだけでこの問題を割り切ってしまうというわけにはいかない。いろいろ考えてみますと、やっぱり基礎年金構想案というものは一つの大きな魅力ではないかなというふうに考えておるわけでございまして、ただ問題は、制度審で提起をされておりますように、財源問題をどうするかという点でございますので、今日渡部先生に私が、すぐこれはこちらの方向でこうしますということはなかなか申し上げられないわけでございますが、ただ構想としては非常に私自身にとって基礎年金構想というものは魅力ある構想だと、それが一つのやはり基礎的に全国民年金考え、確立していく道として非常に魅力ある構想だというだけにとどめさしていただきたいんでございまして、まだ来年の、少なくとも今年度いっぱいかけて私ども基本方針を決めるという段階の、婦人年金権の問題は一つの大きな問題でございますので、非常に絡みが多うございますし、いまここで明快にお答えできないのはまことに申しわけありませんけれども、私の感じだけを申し上げさしていただきたいと思います。
  84. 渡部通子

    ○渡部通子君 基礎年金構想、それと私が申し上げております個人の基本年金権の確立ということは、矛盾することではないと私は了解しております。その構想の中にあってお考えいただきたいというのが、私の申し上げているということ、その点だけ御了解をいただいておきたいと思います。いま大臣が御答弁になりましたように、大変むずかしい問題だということはよく了解をしております。私もこの基本懇がお示しになった答申、こういった中でどれがいいなどと自分で判断ができることでも当然ございません。ただ、先ほどるる申し上げましたように、国民一人一人が全部人間として年金権を持つということを、やはり制度改革においては前提として踏まえるべきではないか、これを申し上げているわけでございます。まだ余りさばさばと御答弁いただけないようでございますから、またこれは時を置きながら伺ってまいりたいと思いますし、私自身も勉強していきたいし、それから何といっても年金は皆さん方がやっぱり納めるんだという一つの義務意識、権利意識というものが育たない限り成熟するものでもございませんし、そういった意味では何も厚生省さんに全部おんぶするわけではございませんで、私ども一般の啓発ということについては全力を挙げてまいりますので、ひとつ制度改革については思い切った方向でなるべく早く御提案を願いたい。先ほどからダブリをおっしゃっておりますけれども、支払いにダブれば受給のときもダブって受けられるわけですから、それはそれなりに私は決して悪いことばかりではなかろうと思うんです。で、払えないという人に対して費用負担を強制することが適当かどうかということに対しても、やっぱり応能負担で減額処置だってできるわけでございますから、何かひとつこういった方向で制度改革をやろうという、踏み出せば、それについて方法はまた幾らでも知恵を集めることができると思いますので、長くなりますからこの辺でとめますが、よろしくお願いをしたいと思います。  それから、もう一つ伺っておきたいんですけれども、最近非常に話題になります企業年金のことでございます。これはやはり経済の低成長、人口の高齢化、こういったものを背景にして、わが国でも企業年金の必要性が非常にクローズアップをされてきております。今後の政府年金とともに、この企業年金役割り、これがむしろ期待をされているようです。体系的な論議も求められている昨今だと思います。やはり企業側にとっても、退職金の年金化という方向は進んでいるようでございますし、労働側にも一種の労働条件としてとらえる意見、こういったものが台頭してきているようでございます。そういう意味厚生省もこの企業年金、これを公的年金制度を補強するものとして位置づけておられるのかどうか伺っておきたいと思います。
  85. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 企業年金につきましては、私ども積極的に助成をしてまいりたいというふうに基本的には考えておるわけでございます。と申しますのは、一人一人の国民の方の老後というのは、条件がさまざまでございます。個人的な条件はこれは私的貯蓄とかそういうことで備えていただくということになろうかと思いますが、職業なり企業なりに応じましてそれぞれ望ましい老後の条件というのがあろうかと思うわけでございます。一方、厚生年金なり国民年金につきましては、やはり、言葉が適当かどうかわかりませんが、平均的な方の老後に備えるというようなところにどうしても限界があろうかと思うわけでございます。したがいまして、企業企業で労使の相談の上で老後の設計を考えるということであれば、それは非常に結構なことではないかというふうに思うわけでございます。ただ、やはり企業年金があるということによって、厚生年金なり国民年金が果たすべき役割りは怠ってはいけないと思うわけでございまして、厚生年金国民年金給付水準を確保しながら、また企業なり職域によって必要な年金につきましては企業年金でやっていただくということは、今後だんだん必要になってくるんじゃないかというふうに思っております。
  86. 渡部通子

    ○渡部通子君 おっしゃるとおりだと思います。ですから、どうしても公的年金、これを生活できる年金考えて充実するという、それを中心に置いていただきませんと、本末転倒になるんではないかと思うんです。ですから、それをよく踏んまえていただきたいことと、それからもう一つ、企業年金できるところはいいんですけれども、できない企業というものがたくさんまたあるというのが実情だと思います。そうでなくっても、年金間の各種の格差ということが問題となっているやさきでございますから、できない企業、こういったことに対してはどうお考えかということもあわせ伺っておきたいと思います。
  87. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) やはり、企業年金年金でございますので、かなり長期的な見通しがございませんとやっていただくわけにはいかないわけでございまして、そういう意味から言いまして、どうしても企業年金がやれないというケースも実際問題としてはかなり多いと思うわけでございます。ただ、企業年金の場合にも、総合基金と言っておりますが、中小企業が合同でやるという道も開かれておるわけでございます。そういう形で中小企業もやれるわけでございますが、しかしその場合にもやはり長期的に資金を積み立てていくわけでございますので、率直に申し上げましてどこでもやっていただけるというわけにはいかないんじゃないかと思います。そういう点でも、やはり厚生年金なり国民年金なりの充実も努力していかなければならないと、こういうふうに思っております。
  88. 渡部通子

    ○渡部通子君 最後に一点だけ、年金業務の問題ですね、これについてひとつしっかりやっていただきたいと申し上げておきたいと思います。  過日に、厚生年金の老齢年金からの所得税の取り過ぎが問題になったことがございました。これはコンピューターのミスということになっておりましたけれども、原因のより大きな理由は、やはり社会保険業務、この作業が過密なためではないかとこう思われるわけでございます。これはちょっと私の持ち時間が一ぱいでございますので質問はいたしませんけれども、毎月の新規裁定件数、それからそれに対応する職員の配置状況、こういったものが非常に過密になっているんではないかというふうに私は思われるわけでございます。年金制度が成熟するにつれて、業務体制というのは非常に繁雑になってくるんではないかと想像しているわけでございまして、そういう中でひとつサービスの徹底、相談の対応、これを十分にやっていただくためには、むしろ職員はふやすべきであろうと思われるわけでございます。定員は減らせという御時世でございますけれども、必要な部分にはどんどん確保していただきたいし、こういうところにこそ人手を一人でも二人でもふやしていただいて、ひとつこれから非常にふえてまいります年金業務に対して、万全の受け入れ体制をつくっていただきたい、これを最後に申し上げさせていただいて私の質問は終わりにさしていただきます。
  89. 大和田潔

    政府委員(大和田潔君) ちょっとお答えさしていただきます。  ただいまの御質問、まことにそのとおりでございます。私ども数字を見ますと、昭和四十年に実は受給者が六十何万だった。ところが五十一年、十年たちました五十一年には六百七十何万と十倍になっておる。それが今後とも非常にまた急ピッチでふえ続けておるといったような状況でございまして、これを処理するには、何と言いましても定員を確保すると同時に、コンピューターというものを使いまして処理をしていかにやならぬ。今後非常にまたふえてまいりますし、新しく百五十万人ぐらいの新規裁定を毎年やっていかなきゃならぬというようなことでございまして、これをやりますには何といってもコンピューターを使っていかにゃならぬということで、従来からもやってまいったのでございますけれども、最近とみに、いま先生おっしゃいましたように、相談という問題が非常にふえてきた。これも抽象的な相談じゃなくて、私の年金はどうなりますかという、こういう非常に具体的な相談がふえてまいりまして、こういった相談に対応するのに、高井戸の業務課には年金相談センターをつくったり、あるいは各県にぼつぼつでございますがこれは年金相談コーナーというものをつくってまいったんでございますが、なおこれからそういったものはどんどんふえてくる、しかも事務量がふえてくるということで、私どもオンライン計画、先ほど大臣からも申し上げましたけれども、社会保険業務をオンライン。これは社会保険事務所二百数十ヵ所ございますけれども、全国の社会保険事務所に中央のデータセンターというものと直結したオンラインを結びまして、そこで相談に対応できるという体制を持ってくる、非常にこれは住民に身近な場所でございます。したがいまして、わりあいに簡便にそこへ相談に行ける。そうしますと、具体的にキーを押しますと御本人の個々の記録が出てくるという仕組みになっておりますので、それを見ながら具体的に相談に応ずることができる。それから、さらにその社会保険事務所の窓口で新規の裁定までできるという体制に持ってぐる。いま業務課で裁定をする、中央一本で裁定をしておりますけれども、それを社会保険事務所で裁定をするというようなことにいたしまして、かなりこの業務体制というものをそういった面でしっかりしたものにしていくことができる。これは昭和五十四年度を初年度にいたしまして六ヵ年計画。先ほど大臣からも申し上げましたけれども、五十九年度、これで完成をする。こうなりますと、先生おっしゃいましたようなことがかなり業務体制としてしっかりしたものができ上がると思いますので、一生懸命この計画の推進に努力してまいりたいと思います。よろしくどうぞお願いいたします。
  90. 渡部通子

    ○渡部通子君 じゃもう一点だけ。  この年金相談コーナーの設置ですね。これいま確かにおっしゃるとおり、私の年金はどうなっていますかという質問が非常に多いわけです。そういう方たちがどこへ行けばいいか、まあ社会保険庁と、こう言いますけれども年金相談コーナーというのは全国にどのくらいあるものなんですか。それで、一般のそういう直接個人的なことを聞きたいという受付窓口ですね、それあらゆるものをトータルすると、どの程度の受け入れ体制になっておりますでしょうか。
  91. 大和田潔

    政府委員(大和田潔君) これはまず中央には一ヵ所ございます。センターがございますが、年金相談コーナーといたしましては現在九ヵ所ございます。その九ヵ所は、いまおっしゃいましたようにそこで具体的に記録がぴたっと出てくるという、そういう窓口になるわけでございまして、今年度、五十三年度はさらに三ヵ所増設をするという計画で進めております。十二ヵ所。まだまだこれでは足りませんので、五十四年度は、むしろその五十四年度からは全国の二百数十ヵ所の社会保険事務所に同じような、何と申しますか装置を入れる、同じような装置を入れて、そこで具体的な相談ができるようにする、これがオンライン計画になるわけでございますが、現状は、ただいま申しましたように、相談コーナーは九ヵ所、五十三年度にあと三ヵ所、それから沖繩に一ヵ所でございますが、したがいましてそれを入れますと五十三年度に四ヵ所ということになるわけでございますが、それを予定をしておるということでございます。
  92. 渡部通子

    ○渡部通子君 終わります。ありがとうございました。
  93. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十五分再開することとし、休憩いたします。    午後零時四分休憩      —————・—————    午後一時二十分開会
  94. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、国民年金法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑を続けます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  95. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 国民年金に対する期待と関心というのは近年非常に高くなってまいりましたし、いろいろ御質疑を伺わせていただいている中で、制度審なりまた基本懇なりでいろいろ御審議もいただいているわけですけれども、やっぱりこんなに年金に対する期待と関心が多くなったということは、何といってもやっぱり安心して暮らせるその保障がほしいという、それに尽きると思うわけでございます。年金の問題に関しましては、いろいろと各制度間の格差の是正の問題とか、また制度の統合の問題、そして負担の問題といったような本格的な解決、制度の充実ということから考えますと、いろいろ御審議いただいている中で、まだまだ問題が残されて今後にかかってくると思うわけでございます。しかし、それが本当に解決されるためには、先ほど私が申し上げましたように、国民が何を願っているかということを基本にしてこの制度というものを見直して整理もしていただきたいと、これがやっぱり基本的に一番大事なことだと思うわけです。その暮らしを守っていきたいというようないろいろな階層の方、たくさんございましたけれども、   〔委員長退席、理事片山甚市君着席〕 私はその中で一番苦労しながら生きていらっしゃる障害者の方たちに、どうしても目を向けざるを得ないというわけで、この連休の間、障害者の方たちとも特にお目にかかっていろいろお話を伺ってまいりました。その中で、やっぱり一番私問題だなと思ったのは、所得制限の問題でございました。特に、本人の所得制限という問題を私はやっぱりお考えいただかなければならないと、そう思ったわけでございます。御承知のように、わが国年金制度で、加入前の障害というものが認められていない、年金加入後にある障害者ですと二十歳までは特別児童扶養手当が親に支給される、二十歳以後になると障害福祉年金が適用される。しかし、それが所得制限が非常に厳しいという問題でした。五十三年度はいろいろ御配慮いただきまして、前年度に比べますと十万円ですか、所得制限が所得で九十万と。総収入で言うと百五十万二千円という制限で、それ以上の場合には支給されないということが起こっているわけです。この所得制限というものを考えてみると、ここに一つ矛盾が出てくるのではないか。つまり、年金加入後障害を受けた人は、ともかく障害年金がもらえる。しかし、小さいときから障害を持っていらっしゃる人たちは、年金加入しても掛金をかけても障害年金はもらえないと。年金の立場から言えば仕方がないんだと言われるのだと思いますけれども、障害というものを持って生きている者にとっては、これは大変な矛盾みたいに私は考えられたわけです。障害福祉年金があるとおっしゃると思いますけれども、先ほども申し上げましたように、本人の総収入で百五十万二千円ということで支給が限られてきている。こうしますと、どうしてもここに障害、同じ障害を持っても障害年金を受ける人と受けられない人というのが実際に出てくるという問題で、この方たちも非常に悩んでいらっしたわけなんです。それで実はこれはいままで機会がございませんでできなかったんですけれども、ことしある方からお手紙をいただいたわけです。その方は、この社労委員会としても調査に入りました北海道の札幌の隣の町の広島というところのリハビリ、授産施設なんです。この授産施設でいろいろと私たちお話を伺いまして、それが縁になりまして、その後お手紙をいただいたわけです。ここに言われていることは、実は障害者で、そのリハビリに働いて、授産施設に働いていらっしゃる矢野さんという方なんですけれども、この矢野さんという方が知事さん、そして国会議員みんなにどうしても手紙を出したいんだということで、その手紙がここにございますけど、カナタイプで書かれた手紙、これをカナタイプで読みにくいだろうというので、この授産所の指導員やっていらっしゃる方が私にお手紙をくだすったわけです。これはこう書いてあるんですね。「限度額を一円でも超えると、年金が停止(ゼロになる)という制度の非情さ」と、これが大変な悩みの種なんだと、こう書いてあるわけです。実はこの方も授産施設で働いていらして、そして訓練手当をもらって、そして一生懸命がんばっていた。たまたまお父さんが亡くなられて遺産が入ったというようなことで、そして制限オーバーしちゃったと。それがもううんとたくさんもらったんならいいけれども、ちょっとでもオーバーしたということによって、その福祉年金が停止されたということなんですね。  そこで、年金というものを何とかふやしてもらえないかという内容なんでございます。このカナタイプ、一生懸命私も読んだんですけれども、「コトシモ ヤガテオワロウトシテイマス」、去年のことなんです。「アマリニモ アナタ タチノセードト イウカ ヤリカタガ キタナクテ ミモ ココロモ タイヘンツメタイデス サテネンキンノ ゼンガクノテーシノテガミヲミテカラ ネテモ オキテモ ユメノナカデモ イマニモ バクハツスル ココロヲ オサエテイルノニ ナンデスカ キノウ テレビデミマシタ アナタノボーナス」、「アナタ」というのは国会議員のボーナスがテレビで出たわけですね。国会議員と知事さんも同じだと、それをわれわれに向けて言っているんですけれども、「アナタノボーナス 一四〇マン コエテイマス ネ ヨクフカクアリマセンカ ソレデニンゲンデスカ アナタハ オソロシイ オニデス」、まあ鬼にされちゃって私もちょっと困っちゃうわけですけれども、この方にしてみれば、そういうふうに思えたんだろうと思います。「スコシ オダシナサイ テヲムネニアテテボクノキモチニナツテクダサイ ヒトリノネンガクシヨトク キメテ 八〇マン ヨリ オーカツタラ テーシスル ソレヨリ スクナカツタラダス イマノホーリツマチガツテイマセンカ イチニチモハヤクハヤク オナオシクダサイ アナタノ ボーナスミテ マスマス ムネノナカガハリサケマス アナタガナツテゴランナサイ」と、こういうふうに訴えているわけですね。私はね、これ非常に素朴な考え方だと思うんですね。自分は障害を持ちながら一生懸命に働いていて、そしてちょっと所得がオーバーしたということでその障害年金停止されてしまう。もう働いている者にとってはたくさんの給料もらっているわけではないから大変つらいというふうに、その裏ににじんでいる気持ちが私は痛いように感じられたわけなんです。そして、この方は直接私にお手紙くださいましたけれども、いろんな団体から、調べてみますと御要望が出ております。社会福祉法人日本盲人会連合の会長高尾正徳さんという方からも要望書が出て、それにもやっぱり所得制限というのが書いてございましたし、この間連休中にはり、きゅう、あんまの方たちの連合会の方たちともお話をいたしましたけれども、やっぱり障害福祉年金所得制限、特に本人の所得制限は何とか考えていただきたい、こういうふうなお願いでございました。私も本当にそうだと思いました。  そこで、大臣にお伺いしたいんだけれども、その所得制限というものを撤廃していただきたいと、いう要望なんです。撤廃してほしいというんだけれども、撤廃というのは大臣としてはとてもだめだとおっしゃるんだろうと思いますけれども、そういう御要望に関して、大臣としてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか、一言伺わせていただきたいと思います。
  96. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私は、福祉年金につきまして、本人の所得制限はどうしても引き上げまして、できるだけそういう方々を少なくしたいという気持ちでございます。  そこで、今年も実は老齢福祉年金につきまして、あるいは世帯で大きな八百万を超えるような方々に支給をすることをやめて、むしろ本人の所得制限は思い切って引き上げ方向をとるべきだ、こういう考え方のもとに直したわけでございまして、現在停止率が約二%切れる、一・九三%ぐらいになっておりますが、前は、それが五十二年の十二月末では約二%ぐらいでございました。改善をいたしたわけでございますが、今後とも、本人の所得制限につきましては、できるだけひとつ引き上げをうんとやっていくように努力したいと思います。
  97. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ぜひ御配慮いただきたいと思います。  局長さんにお伺いをいたしたいと思いますが、年々引き上げていただいたというのは私もわかって、大変ありがたかったと思うんですけれども、この本人の所得制限というのは、基準はどういうふうな基準でお考えになっていらっしゃるでしょうか。
  98. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 本人の所得制限でございますが、基本的には地方税の非課税限度額を基礎に置いております。これは現在八十万円でございますが、大臣が本人の所得制限を緩和するということを方針として打ち出されましたので、これを九十万円という形に置きまして所得制限の基準といたしておるわけでございます。配偶者がおります場合には、所得税の配偶者控除を三十五万円積む。さらに別の、配偶者以外の扶養親族がおります場合には、それに所得税の扶養控除を積むという形で基準を考えまして、それを収入ベースに置きかえたということで、現在の所得制限の基準を設定しております。
  99. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 基準の考え方、わかりました。  それで、その基準の考え方はわかったんですけれども、問題なのは、その額が多いか少ないかということに問題が移っていくと思うんですけれども、平均的な勤労者の収入というものはどれくらいというふうに見て、これとの関係ではお考えに——済みません、私、それを申し上げてなかったから、その数字をおとりになっていないかもしれませんが、私、いろいろ調べさせていただきまして、それで平均的な勤労者の所得というものがございますね、数字で出しますと。それよりもうんと多ければ所得制限というものがあってもいいと思うんです、私は。しかし、その勤労者の平均所得というものを労働省の毎月勤労統計というのを見せていただいたわけです。そうしますと、五十一年で言いますと、所得がそのときは七十万でございましたね。そして、収入でいきますと百二十万というのが制限になるわけです。その五十一年度国家公務員初級職高校卒業の収入、十八歳で古二十二万二千三百七十六円という額になります。それから二十になりますと百三十六万四千百四十八円、こういう額になる。つまり、そのときの収入ベースで考えましても、十八歳の高校卒の人の収入よりも低いという数字が出てまいりますね。この数字というのは、残業手当なんか含まれていないわけですから、現実にはもっと多くなってきているというわけです。それから、五十年を比べましても、五十年は所得が八十万、収入が百三十三万二千円に引き上げていただいたわけですけれども、そのとき十八歳は百三十万二千三百六十一円。それから、二十歳になりますと百四十五万五千九百四十八円という数字になるわけなんです。そういたしますと、この方たちの所得制限というのが、これが国家公務員の高校卒業の採用年度の収入よりも低い——低いというよりも大変な低さでございますね。それが勤労者平均——十八歳、二十歳じゃなくて、勤労者平均で言いますと、五十年度は百六十四万五千四百五十円になるわけです、平均の勤労者の所得というのが。そうすると百六十四万五千四百四十円が平均なのに、この障害者本人の収入でいっても百三十三万二千円、約半分ということになるんですね。こういう数字から見まして、こういうふうな基準で出したというふうにおっしゃったわけですけれども、十八歳、二十よりも低い、全国的な勤労者の平均で言うと半分以下だというような額が数字として出てくるので、私はこれは大変だなと思ったんですけれども、こういう数字からごらんになって、大臣どういうふうにお考えになりますか。
  100. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 御指摘のように、非常に、まだまだ所得制限は引き上げなければならないと思っておりますので、一般の平均賃金と比較をいたしますことが合理的であるかどうかの議論はいろいろあると思います。  実は、福祉年金につきましては、少なくとも地方税なり国税なり、要するに、税金から支払うものでございますから、税金を払っているような人は御遠慮願おう、こういう趣旨がいままででございましたので、そのからを一応今年度はちょっと突き破ってみたわけでございます。したがって、今後努力をしてまいります。私もそのつもりでございますし、決意を持っております。  ただ、その基準のとり方をどうするかということは、いろいろ議論があると思いますので、なお検討をさせていただきたいと思っております。
  101. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 本当に、数字を出してみて、びっくりいたしました。平均よりも半分以下だということで、障害を持っていらっしゃるということで本当に暮らしていらっしゃるのは大変だなと思いまして。いまの大臣の御答弁でも、また改善していただくということになったんですけれども、少なくとも平均所得ぐらいまでは、所得制限の撤廃までいかなくても、平均所得ぐらいまでは制限を緩和するというふうに考えますので、ぜひそのことも念頭に置いて御配慮いただきたいと思いますので、その辺はよろしくお願いします。どうですか。
  102. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) いま申し上げましたように、平均賃金まで——毎年毎年平均賃金上がっていくわけでございますから、平均賃金との比においてこの所得制限の限度額を定めるかどうかは、いろいろ理論的に検討しなければいかぬと思っておりますので、私はまだ不勉強でございますが、どこに基準を置いたらいいのか、できるだけ本人の少なくとも所得制限は、私は相当緩やかにしたい。そうして一方、現行の扶養家族の所得制限につきまして、現在は八百七十六万、あるいは本人の場合の福祉年金等につきまして扶養義務者の所得につきましていろいろ高額なものまでやっておりますが、これらはなるべく合意を得なければいけませんけれども御遠慮願って、その財源をできるだけ本人所得制限の方へ振り向けたいと、かように考えております。
  103. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ぜひ御努力のほど、くどいようですけど重ねてお願いしたいと思います。  それから、いろいろ年金ていうの本当にむずかしいですね、ややこしくて。私もいろいろ読みまして、自分で読み切れないんですね、書かれたものだけ見て。実は、私は頭がこんなに悪いのかなって自信喪失するぐらいにややこしいです、年金というのが。それで私ら仕事ですから、わからなければちょっと教えてちょうだいよというのができるわけですけれども一般の人たち年金に対する関心非常に高いんですね、高いんだけれども、わかりにくいということが大きな問題だということがわかりました。たとえばこれ「国民年金のしくみ」というの、これ九十円で出ているんですけれども、こういうのをいろいろとお出しになっていらっしゃるんですけどね、これがなかなかわかりにくいという内容なんですね。特に年金に期待を持っている方というのは、生活も苦労の中で働いていらっしゃるという方も多いわけなんで、せっかくお出しになるんなら、これは御答弁いただかなくても結構なんですけれども、もっと普通の人がわかりやすい言葉で、専門的な言葉使わないで、普通の人がわかりやすいような言葉でこういうものをぜひつくっていただきたいというのを、それをぜひお願いしたいと思うんです。これは「国民年金のしくみ」です。今度私行きまして——児童扶養手当というのがございます。児童手当というのはわりとみんな知っていたんですよね。ところが、児童扶養手当というのはもう知ってない方が非常に多かったんで、私びっくりいたしました。一晩だけちょっと札幌で私あの人どうかなと思って電話しましたら、聞いた三人、三人とも知らない。そういうことがあるというのは知らなかったと。それで、お母さん苦労して子供を養っていらっしゃるんですよね。だから私、いやこういう制度があるんだから、あなた行けばもうそれすぐもらえるはずだからと、私一人で一晩ちょっとかけただけでそれだけだったわけなんですね。だから、そういうようないろんな制度を努力をしていただいて逐次改善されてきているわけだけれども、これが本当にみんなのものになっていないということが、私はいま非常に大きな問題だと思ったわけなんですよ。こういう問題について厚生省としてもいままでどういうふうに考えて、毎年毎年出されているものなんかも点検されて、これはちょっとむずかしいじゃないか、こういうふうにしたらどうかというようなところまで目をつけていただいていたかどうか、その辺のところはどうなっておりますでしょうか。
  104. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 年金制度がむずかしいという御批判、私どもしばしばいただくわけでございます。それでいろいろ工夫もし、特に社会保険庁でPRをしてもらっておるわけなんでございますが、どうしても基本的にはむずかしい部分が残ってしまうということがあるんでございます。と申しますのは、厚生年金で申し上げますと、定額部分というのは千六百五十円に加入年数を掛ければいいということで、これは理解していただきやすいんでございますけれども、報酬比例部分はその方の現役時代の報酬の平均をとるということになるわけでございます。第一、一人一人の国民の方が過去の自分の月給を全部覚えているということはなかなかむずかしいと思いますし、仮に自分の手元に月給が全部あります場合にも、物価が変わっておりますのでそのまま使わないで、何年前のは幾らの倍率を掛けるというようなことは決まっております。その倍率を全部掛け合わせるということで、非常に複雑になるわけでございます。それで、そういうふうに生の給料を使わないでポイント制みたいなことを考えたらどうかというようなこともあるわけでございますが、現役時代の報酬全部を計算の基礎に使わなければならないというところで、どうしてもむずかしい面が残るわけでございます。言葉使いも生の給与じゃございませんので、標準報酬というような言葉をどうしても置きかえなければならないということで、非常に限界があるんでございますが、基本的な組み立てはわりあいわかりやすいんじゃないだろうか。ですから、保険庁のコンピューターシステムが進めば、自分たちのデータもすぐ教えてもらえるというようなことになればよろしいかと思いますけれども、今後とも一努力してみたいと思いますけれども基本的な制約がどうしてもあるというふうに思います。
  105. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 本当に詳しく全部ということを私は言っているんじゃなくて、たとえば母子福祉年金だったら、子供を抱えて苦労しているお母さん、こんな制度がありますよみたいなキャッチフレーズで、どこへ行ったらわかりますよというふうな簡単なことでいいんですよね。計算の方法どうだなんて、これもちょっとできませんから、だからそういうのが私はやってほしいと思ったんです。  それで、無年金者の問題もございますけれども、一回、二回やって三回目で、まだ百万からと先ほどのお答えございましたね。この間からの質疑を承っておりますと、知っていて、どうせまた救済されるだろうなんて、知っていてずるくいままでやらなかったというのもあるからと、そのバランスを考えなきゃというようなお答えありましたけれども、私が聞いた中ではそういうずるくて出さなかったというのはいなくて、やっぱり知らないという人がたくさんまだ残っているわけなんですね。そうすると、今度三回目で、もうこれ以上はなさらないおつもりだと思いますし、いつまでもずるずるやるというのはいいことじゃないと思いますから、私は今度三回目で、本当にもうそういうの知らなかったとかわからなかったというようなことがないように、これもひとつどうしても考えていただきたいということと、それからいま言ったように、いろいろこういう年金ありますよというようなことの、いま本当に宣伝をして、知ってもらわなかったらまた落ちこぼれが出てくる、制度があってもその制度に、恩恵に浴せないということがございますので、ぜひそれを具体的に考えていただきたいと思うんです。いま局長さんいろいろ制限あるというのはわかりましたけれども、やっぱり受ける側の一般庶民ですよね、庶民の感覚を通してわかりやすいかわかりにくいかというの、もう一苦労していただきたい。やっぱり苦労ないんですよ。私につくらしたらもっとわかりやすいのつくります、私だったら。そういう苦労していただきたい。  それから、テレビや何かもずいぶん使っていらっしゃるんだろうけれども、余り視聴率のないときにばっと出されても困るわけなんですよね。だから、たとえば朝の「奥さんごいっしょに」というような時間なんかを使うとか、そういうような視聴率の高い時間に民放なりNHKなりに交渉して宣伝していただきたいということが一つ。  それから、こういう年金の問題で一番力あるの婦人団体だと思いました。今度婦人団体の人と話しして、こういう問題どうなのって聞いたら、わあそれ知らなかったと。それはもうたくさんの婦人団体ございますので、それぞれの婦人団体にもこういう問題を話ししてほしいというような具体的な要請というのも、私ら民間でやりますけれども厚生省の立場でもそういうところに協力を要請するというように、いろんな手を考えていただきたいと思うんですけれども、それは考えていただけますでしょうか。
  106. 大和田潔

    政府委員(大和田潔君) ただいま先生おっしゃいましたように、今回これが最後と、こういうようなことでございますので、漏れなくやはり知っていただかにゃならぬ。これはもう最低すべての人に、この制度が特例納付は今回最後である、これに乗らなければ無年金として残るぞということについては、ぜひ知ってもらわにゃならぬというふうに考えております。そのためには、やはり一般的な広報というものはどうしてもやっていかにゃならぬ。と同時に、個別的な広報といいますか、周知といいますか、それもやっていかにゃならぬと私ども考えておるわけでございますが、一般的な周知徹底の方法といたしましては、いま先生がおっしゃいましたように、やはり各報道機関にお願いをする。テレビ等も先生おっしゃいましたように、たとえばNHKで「くらしのけいざい」なんか、これ非常に聴視率が高いようでございますし、その辺からかなり浸透しておると思うんでございますが、なおいろいろとお願いをしたいと思いますし、また週刊誌等につきましてもすでにお願いをしております。そういったもの、あるいは新聞の何といいますか、小さな欄でございますけれども、そういったところを利用させていただきまして、周知徹底に全力を挙げたいと思います。それから、そういう一般的な広報だけではなくて、やはり個別的にお知らせをせにゃならぬ。これは従来もやってきておるわけでございますけれども、これからやらにゃならぬ。これからもなお一層やらにゃならぬ。それは、たとえばまだ適用されてないといいますか、未加入者という人たちに対しましては、住民票というようなもの、あるいは国保の台帳、国民健康保険の台帳といったようなものからピックアップしていって、まだ入っておられない、したがってあなたは無年金者であると、これは今回の特例納付について納めなければいけませんというようなことをお知らせをする。それから、加入しておって保険料を納めてない方にはまた納付書というようなものをお出しして周知徹底を図っていくというようなことを、いろいろ工夫しながらやってまいりたいというふうには考えております。
  107. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ぜひお願いしたいと思います。いままで一生懸命やってくだすっているんだけれども、効果が上がってないというのは、やり方下手だと思うんです、言葉遣い一つにしても。だから、その辺のところを、ここのところでもう一工夫して、わかりやすくというように、どうしたらばっとわかるかという、その苦労をもう一つお願いしたいと思います。  それじゃ次に、遺族年金の問題なんですが、基本懇遺族年金のあり方の内容を検討するという課題の中で、保障の必要性の高い高齢の寡婦と有子の寡婦に対する重点的配分を検討する必要があるというふうに出ております。これは当然だと思うので、これは私もそのとおりやっていかなければならないと思いました。それ以外に、やっぱり検討する課題があるんじゃないかということをひとつ申し上げたいわけなんです。  それは、夫婦とも厚生年金加入している場合で、婦人遺族年金とか妻の年金権というのがありますけれども、逆の立場なんです。妻が死亡した場合の遺族年金のあり方の問題でございます。夫が死亡したら妻または祖父母等に遺族年金が出されるわけです。ところが、奥さんが亡くなっても、夫が廃疾の状態にあるとか、六十歳以上とか、または十八歳未満の子供がある場合に限ってしか、遺族年金は支給されないというのがいまの制度でございます。遺族年金がいままでの考え方生活水準を維持するに資するという点からいっても、また何より年金における男女平等という観点からいっても、これは制度的におかしいんじゃないかと、逆の立場を考えてみますと。昔はだんなさんが働いて奥さんは家庭にというふうになっておりましたし、大体社会通念上実態はそうだと言われますけれども、このごろ大分さま変わりしてまいりました。やっぱり男の方でも料理教室に行く人たくさんふえてきまして、そしてもう外には向かないんだ、お母ちゃん行って働いてくれと。おれは子供のめんどう、料理やって——実際あるんですよ、笑っていらっしゃるけれども、私ずっと見まして。そうすると、女は家庭にいて夫は外に出て働くというのは、これは国際婦人年の決議においてもそうなっていませんね、やっぱり男女平等、社会的な役割りを果たすと、こうなっているわけだから。そうすると、男の人が家庭を守って女が外に出て働くと言っても、これちっともおかしくないことです。現実にそういう家庭もあるということになれば、ここのところは大変遺族年金の問題としてちょっと制度的にも片手落ちの、一つの問題があるんじゃないか。だんなさんの収入が低いという人たくさんいますし、家庭の仕事が向いているというふうなこともあるという現実から私は申し上げているわけです。婦人保険料の再検討というのが言われているわけです、支給年度だとか保険料の問題で。取る方ばかり男女平等というのではなくて、この問題もひとつ再検討していただきたい。働く婦人がふえてきているというような状態の中でございますから、これひとつ考えてみるというお気持ちになりませんか、大臣
  108. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 確かに、夫が死んだ場合に、妻やその家族に出る遺族年金と、被保険者である妻が死んで、夫やその遺族に出る場合の条件が違うわけでございますが、現在夫が遺族年金をもらう場合、障害者である場合と六十歳以上ということでございますので、原則的にはこれでいいんじゃないだろうか。やはりこの条件に当てはまらない場合には働いていただくということがあってもいいのではないかというふうに思っておるわけでございますが、非常に特殊な場合もあろうかと思いますので、研究をさしていただきたいと思っておりますが、ただ一方、夫が死んだ場合の遺族年金につきましても、表現悪いんですが、子なし若妻にも遺族年金が出ておるのは、今後老齢化が進んで年金財源が非常に膨大なものになるということを考えれば、むしろ男子が遺族年金をもらう場合のようにするということも考えられていいんじゃないかという提案があるわけでございますが、両方を踏まえて検討さしていただきたいと思います。
  109. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 まあたくさん検討する問題がございますから、そのたくさんの中の一つに入れていただいて、今後御検討もいただきたいと思います。いろいろこの年金の問題に関しまして問い合わせがあったり、実務的にも大変だと思うわけなんで、ひとつこれは簡単なことなんですけれども、苫小牧市から前から陳情をいただきまして、今度もいろいろ話を聞いてまいりました。社会保険事務所をぜひ設置してほしいという要望でございます。もうお調べいただいていると思いますけれども、これは北海道というのは非常に広うございますね。そしていま室蘭にございます。室蘭からこの室蘭の管轄の、歌で有名な襟裳岬、森進一の。あの襟裳岬までというのはどれくらい距離があるかと言いますと、実に百六十四・八キロあるんですよ。北海道広いですから、室蘭まで行くというと百六十四・八キロでございます。これが車で行けば何とか行けるけれども、これ汽車で行きますと、ここが日高線と千歳線の乗りかえになりますのね。私、車持ってませんから汽車で行くということで考えたら、朝六時に様似というところから汽車がありますから、その前、襟裳からだとバスに乗らなきゃなりません。もう五時起きして、そして六時に様似発で、苫小牧に九時二十九分に着いて、十分後苫小牧発で、室蘭に着くのが十時四十分ということですね。それから今度は社会保険事務所まで行って、そして私、すぐと言ってやってもらえればいいけれども、ちょっと込んでたりしたら待たなければならないというと、もう非常に大変な遠距離でございます。汽車賃が急行一回だけにいたしまして片道千五百円、往復三千円という形でございます。苫小牧というのは、御承知のように北海道の中でいま一番人口伸びておりますから、だからそこで人口の伸び率というのがもう実に激しいですね。五十年から五十五年を見ているわけですけれども、就業人口の伸び率が一・七倍と、さっき言ったように距離が非常に間隔がある。そして、現在は苫小牧に週一回来てもらって相談業務なんかやっているというので、これで一日来てもらったときの利用者というのが三百人も来ているというようなことなんですね。これは、人口的に言えばいろいろ問題あろうかと思いますけれども、いま言ったような、非常に遠距離と、これから非常に人口もふえるという中で、やっぱりここに社会保険事務所をつくってほしいというのは私は当然の要求だと思いますので、ぜひこの趣旨を考えていただいて、どういうふうに見通しを持っていらっしゃるか簡単にお答えいただければと思います。
  110. 正木馨

    説明員(正木馨君) 社会保険事務所についての御質問でございますが、先生承知のように、社会保険事務所は現在二百四十八ヵ所ございますが、本年度新たに二ヵ所認められまして、本年度中には二百五十ヵ所になる予定でございます。社会保険事務所は、やはり国民サービスの向上というのを使命としておりますので、できるだけ住民の身近に設置することが望ましいわけでございます。私どもとしても、できるだけ社会保険事務所の増設に努めておるわけでございますが、現在社会保険事務所の新設を要望している県が二十数県に及んでおります。それらを総じて見ますと、人口の急増地域、これはとりもなおさず被保険者の急増地域に当たるわけでございますが、こういったところに設置するようにと、あるいは社会保険事務所が相当大規模になって、住民サービスの面でもう少し分割した方がいいじゃないかというような御要望もございます。あるいは北海道の例のように、地域が非常に広大であって、地理的条件からもう少し設置をしたらという、いろいろな要望がございます。  先ほど申しました二十数ヵ所の要望を見ておりますと、率直に申しまして苫小牧の場合にはかなり後順位にあるわけでございますが、それぞれの御要望の趣旨は私どもは十分理解をいたしておりまして、できるだけ増設に努めてまいりたいというふうに思っております。苫小牧の事情につきましては、先生のお話しのとおりでございます。現在、室蘭にあります社会保険事務所が管轄しておりまして、相当広域にわたっておりますが、苫小牧は住民急増地域でもございますので、週一回相談をするというようなことで何とか対処しておるようなわけでございますが、北海道の場合を考えますと、現在あれだけの広域な地域に十三ヵ所の社会保険事務所がございます。北海道における社会保険事務所のあり方をどうするかというのは基本的に考えていかなきゃならぬ問題でございまして、それには、北海道にございます社会保険事務所の再編成問題というものを道と一緒になりまして真剣に取り組んでいかなきゃならぬ。そういう再編成の一環として苫小牧の御要望についても十分承知をしておりまして、方々、他の府県の要望等も勘案しながら、できるだけ検討を進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  111. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ぜひ早急に、住民サービスの上からもつくっていただけるような御努力をお願いしたいと思います。  次に、子供の問題、大臣にぜひ伺いたいと思うわけなんですけれども、子供を取り巻く環境が非常に悪いということは、もう大臣としても心を痛めていただいていると思うわけです。働く婦人というのが非常にふえてまいりました。そこで、きょうお伺いしたいのは、学童保育と私ども言っております。厚生省通達の用語を使えば都市児童健全育成事業ということになろうかと思いますが、そのいわゆる学童保育というのの要望が非常に多くなっているわけなんです。全国学童保育連絡協議会というのができていて、大臣は御承知ないかと思いますけれども、これは全国的な学童保育をつくろうというお母さんたち、お父さんたちが集まりまして、これ大臣、きょう差し上げますので、お忙しいと思いますけれどもちょっと目を通していただきたいんですけれども、「学童ほいく」というのは、これは毎月月刊で出しております。これを見て、都市児童健全育成事業なんてむつかしいことを言わないで、学童保育として厚生省もきちっと位置づけていただけるように、きょうはお願いをしたいわけです。  この学童保育連絡協議会の調査によりますと、昭和五十年に全国で千九百三十ヵ所です。数多いですよ。千九百三十ヵ所あったと。それが現在は二千四百六十ヵ所以上にふえているわけです。私もこの間札幌へ帰ったとき調べました。去年、札幌市直営でやっているのが二十七あったのが、一つ削られて二十六。そして、そこに入り切れないから共同でお母さんたちがつくっているのが四ヵ所だったんです。この間行って調べてみたら九ヵ所にふえていました。一年で五ヵ所ふえた。これはもう本当に子供のことを考えて、お母さんたちがやむにやまれずつくられたという数だと思います。品川区では千二百八名に対して九十名しか入れませんでした。十何分の一ですよね。それから足立区、葛飾区、中野区などでもたくさんの児童が入りたいというのでしたけれども入れなかったと。こういう非常に大きな高まりになっている学童保育。勤労婦人はますますふえていると。こういうことから、児童の福祉を所管される厚生大臣として、これらの問題をどう考えていらっしゃるか、簡単に御所見を承りたいと思います。
  112. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 留守家庭児童の対策につきましては、これはもうおっしゃるまでもなく、私どもとしては児童の健全育成の見地から見まして非常に重要な問題だと思います。したがって、この連絡協議会の御要望のような、学校の中で特別な部屋を設け指導教員を置き、あるいはまた健全育成事業というものを人口五万未満にも適用し、あるいはいろいろな補助、助成を大幅にやっていくというような御要望を逐次解決をするように努力していかなきゃいかぬと思いますが、御承知のとおり厚生省としては児童館の設置だとか、あるいは都市の児童健全育成事業をできるだけ個所数をふやして努力をしておりますが、同時に文部省にも連絡を申し上げ、学校体育施設の開放事業の推進をやっていただきましたり、あるいは労働省では働く婦人の家の設置を促進していただきましたりいたしておりまして、総理府で各省の連絡調整に当たっておりますが、今後とも地域社会と一緒になり、また学校と一緒になり、私どもの児童館その他の施設とも一緒になりまして、児童の健全育成のためにできるだけの努力をしたいと思っております。   〔理事片山甚市君退席、委員長着席〕
  113. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いま申し上げましたように、いま非常に大きな要求になって具体的に運動が起きて、そしてそういう雑誌をつくりながらお母さんたちがともに勉強していこうというその盛り上がりになりましたのは、やっぱり何といってもいま環境が非常に悪化しているということなんでございます。大臣やここにいらっしゃる方の周辺の環境というのとは違うわけですね、いま本当に子供が置かれている環境は。  それで、ちょっと警察庁の方に調べてくださいと言って調べてもらったわけですけれども、強姦されたとか、いたずらされたというのが、非常に数あるわけなんですね。どれくらいの数かというのを伺いましたら、昭和五十二年度をいただきましたけれども、これは十四歳未満の子供に対しての強姦というのが二百七十三件ございました。それから、強制わいせつ行為をされたのが千四百八十九人でした。これは警察が認知した件数でございます。だから、こんなことは恥ずかしくて言えないし、むしろ隠すというようなのが親御さんの気持ちだと思うわけですよね。だから、これはもう本当に氷山の一角にすぎないと思うわけですよね。だから、大臣にぜひ聞いていただきたいんだけれども、この氷山の一角でも強制わいせつにさらされる子が千五百人からいるのですよというような実態を、本当に考えていただきたいと思うわけです。それで、子供たちが帰って、お父さんもお母さんもいない留守家庭になって、何をやっているかというふうに調べてみると、やっぱりテレビが一番相手になっているわけですね。これは青少年白書の五十二年度版から私見せていただいたわけなんですけれども、ふだん何を見て遊んでいるかというのの一番上のが、テレビを見る、七八%、男の子。女の子で七五%。そうすると、テレビというのが非常に大きな影響を与えるということが考えられます。そのテレビの影響がどういうふうにあらわれているかというと、これもこの青少年白書にございます。「少年非行の背景には、少年を取り巻くあらゆる社会環境が大きく影響を与えているものと思われる。」、そのとおりですよね。そして「雑誌の売春記事にヒントを得た中学生が、売春を行っていた事犯や、小学生がテレビドラマを模倣し、連続して脅迫電話をしていた事犯など、低俗な雑誌、映画、テレビなどに影響」というのが非常に多いと、これはもう大臣も頭で御承知のことだと思うわけなんです。  こういう状況の中に置かれている子供、その子供たちがことし五月五日に子供の日を迎えました。その子供の日の新聞の社説やいろいろな発言を見ますと、そこで強調して言われていることは、子供に健全な遊びということが一つ言われているわけですよね。勉強することと一緒に健全な遊び、健全な体づくりということが言われているわけです。そうしますと、この子供たちに対するお母さんたちの願い、学童保育というようなことの願いの中には、やっぱりこの学童保育によって集団の中で指導員に指導されてそして健全な遊びをする、そしてそこで勉強も見ると、そしていろいろな学年の違う子供たちがお互いに助け合って、そこで本当に学校だけではできない非常に友情というものがつくられているということでございます。そして、その子供たち自身が、差し上げました本の中にも出ていると思います、作文をたくさん書いているわけです。本当に学童保育に行ってどんなに楽しいかと、子供が非常に喜んでいるわけですね。それから今度、お母さんたちも、そこで子供が学校教育では得られないそういう学童保育の中の教育というものに目を見張るような思いでいる、生活規律も確かによくなってきたと、そして子供のめんどうを見るようになったというような、いろいろなことが出てくるわけです。だから、私は保育所を出て小学校に行く低学年のその子供たちには、どうしてもやはり学童保育というものが制度的につくられていくというのが必要だと思うわけですよね。そういう制度的に学童保育を考えるということについて、大臣はどういうふうにお考えになりますでしょうか。
  114. 石野清治

    政府委員(石野清治君) 留守家庭児童の問題でございますけれども、これは先ほど大臣から御答弁いたしましたように、やはり児童の生活圏に見合った形で児童館なりあるいはちびっ子広場を含めた児童遊園の整備、そういうものと、それからあるいは先生おっしゃるように、社会教育の分野の施設がいろいろございますが、そういうものとの適切な組み合わせをしていって、本当に留守家庭児童の対策を進めていかなければ効果が上がらないというふうに実は考えておるわけでございます。厚生省といたしまして、いままで考えております問題は、あくまでも留守家庭児童というだけに焦点を合わせないで、留守家庭児童を含めた、いわば健全育成施策というものの観点から、いろいろの施策をやっておるわけでございますけれども、最近特に婦人労働の数がふえてまいっておりますので、これについては相当の決意で対処していかなきゃならないんじゃないかなと、こう思っておるわけでございます。それにいたしましても、やはり基本的には児童館の整備というのをまず急がなきゃならないし、それから同時に児童館の周囲にございます児童遊園の整備、これもやはり急がなければならないと思うわけでございますが、それでは都市部におきます問題というのは、それでは解決できないわけでございます。確かに、田舎の方に参りますと、土地もございますので、児童館の整備もわりあいにたやすくできますし、それから児童館を中心としました母親クラブなり、あるいは児童クラブというものの育成もなかなか簡単にできるわけでございますけれども、特に大都市を中心としました都市部の児童に対します健全育成施策というのは、なかなか進み得ない状況でございまして、そこで都市部におきます、そういう留守家庭児童を含めた児童の健全育成施策を進めますために、児童館が整備される間、何らかの措置をしなくちゃならないということで、御案内のとおり五十一年度から都市児童健全育成事業という形で、いわばメニュー化方式によって一番その市町村、その地域がやりやすい方法、そういうことでやったものに対しまして助成をするという方向考えたわけでございます。五十一年度、五十二年度の情勢を見ますと、五十一年度は新規事業でございましたので、なかなか徹底してまいりませんでしたけれども、五十二年度にようやく徹底する芽が出てまいりました。私は現在でも都市におきまする留守家庭児童を含めた健全育成施策というのは、やはり地域が中心となってやるのが一番いいし、それに対して、国が助成をするという道が最もいいんじゃないかというふうに考えておりまして、現在この都市健全育成事業の方式については、もっと内容のあるものにしなきゃならないというふうに実は考えておるわけでございます。制度的に学童保育所をつくるべきかどうかにつきましてはいろいろ議論があるところでございまして、私どものいまの施策は、あくまでも留守家庭については、都市児童健全育成事業を充実していくということに最大の焦点を当てて、努力をいたしておるわけでございます。
  115. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いろいろおっしゃいました児童館つくるのもいいし、遊園地をつくるとか、それから校庭開放もいいということも、確かにいろいろなことをやっていただかなければならないわけですけれども、いま私が申し上げましたのは留守家庭ですよね。だから、留守家庭の子供だけを集めると、これはほかの子と差別になるから、だから一般に込めて公平にやるというふうによくおっしゃるんだけど、これ逆の公平ですよね。つまり留守家庭で親御さんがいないというそういう条件の中の子供たちだから、やっぱりその子供に特別のそういう学童保育というものが必要になってきているという、こういうふうに思うわけなんですよね。だから、そういう意味において、いろいろ一般の子供を含めての児童対策ということは、当然していただかなければならないけれども、やっぱりお父さんお母さん、働きに行ってるとかいろいろな事情で、留守家庭に置かれる子供には、その子供の状態の中で必要とされる学童保育というものは私は当然必要だと思う。だから、そういうものは将来的に制度的に検討するという必要な段階にきたんではないかと思う。それは大臣、お聞きになっていてどうでしょうか。——むずかしくないですよ、大臣。率直な御意見を伺いたい。
  116. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) いま児童局長申し上げましたのは、何も先生の御意見の中にある学童保育を否定して申し上げているわけじゃないんです。その地域全体の事情というものにマッチしたやり方でやった方がいい。だからその場合に、もしその地域で学校とよく連絡をとって、そしてある施設の一部を利用して指導員置いてやろうという場合には、これは都市児童健全育成事業のメニュー化の一つだと考えて、われわれはやればいいわけでございますし、ちょうどたまたま敷地もあって児童館もつくれる、そこに付属して若干の遊び場もできる、遊園地もできるという場合には、それを中心にしておやりになればいいし、そういう意味で申し上げたわけでございますから、それは決して否定を申し上げているわけじゃありません。したがって、あらゆる方法考えまして、児童の健全育成に資するように私ども努力していきたいと思います。
  117. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 御趣旨わかりました。私も児童館建設するなと言ってるのじゃなくて、私も児童館は児童館でそれなりにつくっていただきたいと思うわけです。児童館どうしてもつくりたいと積極的な御発言いろいろいただいているわけですけれども、中学校区に一ヵ所ぐらいをめどというふうにお考えになっていらっしゃいましたですよね。そうしますと、ちょっと数、数えてみたら約一万館ぐらい要るわけでしょう、中学校区一ヵ所と。毎年度つくられるのが百二十から百三十ぐらいですよね。そうすると一体何年かかるかなと、現在二千三百館あるわけですわ。残りが七千七百館、これは毎年百二十ないし百三十つくると、計算してごらんなさい、六十年かかるんですよ一大臣、六十年かかるんです、児童館つくるのに。もう児童館じゃないですよ、老人ホームつくってもらわなきゃならないようなそういう数になるわけですよね。だから、児童館もつくってもらいたいけれども、その間の措置としては、六十年なんて、これ、とてもその間なんて言えないけれども、当然もっと積極的に学童保育のめんどうも見てもらいたいということですよね。中学校区で六十年かかるんですから、子供、低学年ですから。私らの希望で言ったらやはり小学校単位でほしいですね。さっき言いました強姦だ、わいせつ行為されたというような子供たちのいろいろな状況を見ますと、やっぱり近くだったらいいんだけれども、やっぱり学童保育遠くまで行くというような、途中でそういういたずらをされたというようなこともあるわけですよ。だから、やっぱり児童館つくる、これ、結構です。つくってもらいたい、中学校区なんて言わないで小学校区につくってもらいたい。六十年なんて言わないで、少なくとも五年計画、十年計画ぐらいで考えてほしいというのが私の考え方で、これは否定なさらないと思うわけですが、そういうふうに大臣ひとつ積極的に、六十年じゃだめですよ、おじいさんになっちゃうんだから、おばあさんになっちゃうんだから。だから、児童館つくるんだったらつくるんで結構です、応援もいたしますから、早急に六十年なんという計算するようなことにしないでいただきたい、もっと早くつくっていただきたい。  そこで、財源の問題になりますよね、つくりたいのだけれども財源がないと。しかし、財源は出せるんじゃないか。つまり今度の児童手当法改正で福祉施設費というものを使って、これ、できるんじゃないでしょうか。そういたしますと、五十三年度三十七億使っても十億余るというふうな数字が出てくるわけですね、私、計算いたしますと。そうすると都市健全育成事業というのは大臣、それもやっていますとおっしゃいましたけれども、やっていただいているのはいいけれども、六十年先にできる児童館の当面の問題として出しているのが、わずか一億一千万ですよ。一億一千万。そして一クラブ年わずか三十万という程度なんですね。これではとても、御趣旨はわかってやっておりますと言われても、お金から見てはとてもとても御趣旨わかっていただけたとは私、思えないわけですよ。まあ来年は国際児童年にもなりますし、大臣としてもこの点は非常にお考えをいただきたいし、今度の法改正財源もできるということを私は申し上げたいと思います。積極的に取り組んでいただきたいと思いますが、大臣の御見解を伺って終わりにしたいと思います。
  118. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) もうおっしゃるとおり、できるだけ私ども努力してまいります。
  119. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 本当にしてくださいね、六十年たったらおじいさん、おばあさんになりますから。
  120. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣も御承知のとおり、わが国の六十歳以上の高齢者は、現在、総人口の一二%、千三百五十三万人でありますが、昭和六十年には一四・一%、千七百二十六万人、昭和八十五年には二三・六%、三千二百六十二万人に達するであろう、このように推定されております。  このような高齢化社会の急速な進展に伴いまして、年金受給者年金成熟度も急速に増大することは当然でございます。厚生省の推定によりますと、年金受給者は、五十一年、六十年、八十五年と対比いたしますと、百七万人から二百五十七万人に、そして八百六十六万人に増大をする。成熟度も四・三%から九・三%へ、さらに三三・九%に達するであろうと言われております。国民年金の場合も同じく、二百九十二万人が昭和八十五年には六百四十二万人、成熟度も一一・七%から二四・八%に増大をする。また、公務員、公共企業体等の共済年金についても、公企体の場合、現在すでに八十年代の厚生年金成熟度に見合い、今後はさらに増大するであろう、こう見られております。このような展望は、今後加速度的に年金受給者の比率がふえ、年金給付年金の費用負担との関係が重要な課題になるということを意味しておると思うのであります。  まず大臣から、高齢化社会への突入を現実の問題として控えて、今後の年金に対する基本的な見解というものについてどのようにお考えになっているのか、冒頭お伺いいたします。
  121. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) おっしゃるとおりでございますから、私ども過般来、基本懇談会の先生方あるいは制度審等の御答申を踏まえまして、また各党の御意見等も踏まえまして、今年いっぱいかかりまして、何とかひとつ基本方針を固めたいと思っておるわけでございまして、いま構想をと言われましても、私まだ自信を持ってお答えするような回答が用意できておりません。  ただ、問題点の中で早急にやらなければならぬと考えますのは、まず当面の経過年金の方々のあり方をどうしたらいいかということが第一点。それから、将来の受給者の増大、それから老齢化社会、働く者と六十五歳以上との比率の問題等を考えてみますと、いま御指摘成熟度等から財政的にも見通してみますと、厚生年金等における支給開始年齢等、これらを一体将来どうしたらいいのかという点も考えてみなきゃいけませんし、いろいろ問題点はいま整理をしている最中でございますので、もうしばらくお待ちを願いまして、来年度はぜひひとつ基本的な方針を固めて御提示を申し上げたいと思いますので、御了承をいただきたいと思うわけでございます。
  122. 柄谷道一

    柄谷道一君 新聞の発表によりますと、大臣は、ただいま述べられました公的年金の支給開始年齢について、将来六十五歳とすべきではないか、このようなお考えを持っているやに受けとめられる新聞記事がございます。事実、基本構想懇談会の中間報告をながめてみましても、諸外国の被用者年金の支給開始年齢と対比して、わが国の場合は最も早いグループに属する、したがって、厚生年金の場合は、人口の高齢化、制度の成熟化に伴って急激な費用負担増をもたらすであろうから、支給開始年齢の引き上げ段階的に実施していくことが必要であろうという点において大方の意見の一致を見たと、こう中間報告に書かれているわけです。また、共済組合についても、受給者の増大、さらに恩給期間部分の減少と新法期間部分の増大によって、将来給付費の増大と被保険者の負担増加が避けられない。よって、厚生年金の場合よりも支給開始年齢の引き上げの必要性は強いと、こう中間報告に指摘されているわけです。  大臣の言明、このような中間報告、こういうことを総合して考えますと、支給開始年齢は今後、段階的ではあろうけれども、逐次六十五歳段階まで持っていきたいというのが大臣のお考えではございませんか。
  123. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私は、何も近々そういうふうにしたいと考えておるわけではありませんで、遠い将来にはそういうようなことを考えざるを得ない事情が来るんではないだろうか。したがって、そのためには高年齢層の雇用対策というものを労働省と連絡をとりまして真剣に取り組んでいかなきゃいかぬだろうと。現実に、定年が六十を超えている事業所等はほとんどございません。〇・数%というような状況でございますので、したがって、定年後、各企業あるいは各官公庁省との定年の問題と、それから老齢年金の支給開始年齢との間、これを一体どうするかという問題等も十分対策として考えていきませんと、ただ開始年齢だけを財政上の都合で引き上げましても、これは非常に私は混乱が起きると思いますので、その辺のところは慎重な対応の仕方を考えていかなきゃいかぬと思っておるわけでございます。
  124. 柄谷道一

    柄谷道一君 年金支給開始年齢と雇用対策、これが密接不可分の関連にあることについては、私も同感でございます。  そこで私は、本年の三月二十三日の社労委員会及び三月三十日の予算委員会の第二分科会で、労働大臣に、昭和四十八年第二次雇用対策基本計画では、五十二年度に定年年齢を六十歳とすることを目標にしておったが、六十歳定年は三六%にしかすぎない、五十五歳定年が依然として四七・三%を占めている。第三次雇用対策基本計画でも同様の目標を定めておるけれども、減速経済のもとで、企業が減量経営に腐心しているという現状を踏まえると、省令措置のみをもってしてはその達成は困難なのではないかという点を指摘しつつ、当面、定年年齢を六十歳とするか、また、アメリカの例にならいまして、六十歳未満の者に対する年齢を理由とする差別の禁止、いわゆる年齢差別禁止法の制定を行う必要があるのではないか。そして将来、この法制化された六十歳のいわば定年を六十五歳に延長していく。アメリカにおいてもとり得る方法であるわけであるから、このような長期展望が望ましいということを、提言を含めて質問をしたのでありますが、労働大臣の答弁は、法制化についてきわめて消極的でございました。  そこで、これは所管は違われますけれども、一方老齢保障の両翼の一翼としての年金を抱えておられます厚生大臣として、また国務大臣として定年年齢の法制化についてどのようなお考えをお持ちなのかお伺いをしたい。
  125. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私は、法制化は別問題にして、基本的には現在の健康状態あるいは平均寿命の状況等から見て、六十歳でまだまだ社会に貢献するということはうんと私はできると。われわれお互いを考えましてもそう思いますんですが、ただこれを法律によって規制するかどうかという点になりますと、非常に私は労働大臣が心配するように、なかなか実現性が困難だろうという見方から消極的な意見になったんじゃないかと思うんですけれども、私は、個人的にはちょっと余談になりますが、私の同郷の総理大臣が出ましたときに、直ちに総理から、定年六十歳ということをまず教育の方面から断行するということを進言いたしまして、非常に同感を得まして、総理みずから文部大臣を呼んで指示したこともございますので、私は個人的にはそういう気持ちを持っておりますけれども、所管でない者が法制化賛成だなんて言いまして閣内不統一になってもいけませんし、よく検討さしていただきたいと思います。ただ私、厚生大臣になりまして考えますのは、もっと高齢者の就職を社会福祉なりその他いろんな面で活用する方法はないのか。これを厚生省としてもっと研究をしてみる必要があるんじゃないか。特に医療、福祉面を含めまして雇用造成等の面からも考え、ことに高齢者の就職の場を与えるのは福祉や医療面が一番私は適当じゃないかというふうに思いますので、この研究をいま進めていただいております。そういう面から現実に解決をしていく努力を積み重ねていきたいと思っておるわけでございます。
  126. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、一口に高齢者と言いましてもライフサイクルがあると、こう思うわけであります。すなわち六十歳代の前期、六十五歳までは主として定年延長を初めとする雇用保障制度の確立というところにその前提が置かれるべきであろう。そして、後期には所得保障、いわゆる公的年金等の充実と医療保障などの社会福祉的な施策が重点に据えられる。これが有機的に結合する。これが今後わが国のあるべき老齢保障の姿ではないだろうかと、こう思うんであります。ところが、わが国の行政はもう大臣承知のように縦割り行政になっておりまして、前期の部分は労働省、後期の部分は厚生省、こうなっているわけです。しかもなかなか有機的な結合が図りにくい。まあいま大臣の個人的見解を伺ったわけでありますけれども、私はもうこれ総合した、いわゆる高齢者対策というものを推進していくためにはこの二つの省というものを横断した、いわばプロジェクトを組みまして、この問題の解決について両省一体の体制をとる。これがとられませんと、なかなか一方高齢化社会というのはもう自動的に進んでいくわけですね。しかもスピードが速いわけです。一方、雇用保障の方は各駅停車、もしくは一つの駅でとまってなかなか進まない。だんだん距離があいてくるわけですね。こういう現実を考えると、私はそろそろもう二十年ぐらいたてばこんな時代がくるわけですから、早急に両省横断をするプロジェクトを組んで総合施策を強力に進めるべきである。なわ張りの問題を言うべき時期ではないと、こう思うのであります。いかがでしょうか。
  127. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 大変いい御提言だと思いますので藤井君と相談をいたします。同時に、与党とも相談をいたしまして、そういう体制をできるだけ早くとり得るように私は努力をいたします。
  128. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣のそのようなせっかくの努力は期待いたしますが、それではこのように確認していいですね。  そのような雇用保障体制が実のある前進を示すということと、支給開始年齢とは不可分である。よって、片方の方が進まなければ支給開始年齢を引き上げていくということはむずかしいと、こう大臣考えになっていると理解してよろしゅうございますか。
  129. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) そうありたいと思いますが、なかなか現実はそういきますかどうか。そういう努力をいたしましても、直ちにそういうつなぎがきちっといく体制が何年後に見通されるかということについて、まだいまのところ自信がございませんので、直ちにおっしゃるとおりだと回答はできませんが、気持ちとしてはそれはもう当然そういう気持ちでいかなければいかぬだろうと思います。ただ六十を、定年を、支給開始年齢の引き上げ考えます場合には、相当の期間を置かなければいかぬと思います。相当、いま決めまして直ちに次から実施するというようなものじゃないわけでございますので、前のときもそういうように相当の期間をかけているわけでございますから、したがって、その間にいまおっしゃいましたようなつなぎの努力を十分とりたいということにとどめさしていただきたいと思います。
  130. 柄谷道一

    柄谷道一君 何回も繰り返しますが、高齢者対策の両翼なんですね。片翼が育たないで片翼だけで空を飛べるはずがないんです。どうしても両翼で飛ばなければならない。両翼で飛ぶためにはやはり雇用保障対策、これが本当に伴わなければ年金財政というものはパンクするという時代を迎えるであろう。一方を持っておられるのが厚生大臣なんですから、本当に私はくどいようでございますけれども、両省を横断する常設的プロジェクトチームぐらいを組んで、一方の基本問題懇談会の進捗状態と相見合いつつ、これに相適応する雇用保障政策について一体的な施策が、これは内閣一つなんですから、閣内でとれるような体制について強く大臣努力を希望しておきたいと思います。  次に、これに関連する在職老齢年金の支給制限についてでありますけれども、いま大臣も言われましたように、受給開始年齢が六十五歳以上になることはないですね。これは段階的ではありましょうが、そこらが大体受給開始年齢のめどであろうということですが、となると、現行制度では在職老齢年金の支給制限として、六十五歳であってもなお二割の制限が課せられているわけですね。私は六十五歳未満の在職老齢年金についての年齢制限についてもいろいろ問題はありますけれども、まず当面少なくとも将来俯瞰から見ても、六十五歳以上についてはこの支給制限というものを撤廃するということが適当ではないか。こう思うのですが、いかがでしょうか。
  131. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 在職老齢年金のうち六十五歳から出すいわゆる高在と、それまでの低在とは確かに性格も違いますし、長期的な視野に立った場合には、さらに意味合いが違ってくるのは事実だと思います。そういう観点からいたしまして、五十一年度の改正では高在につきまして二割カットをしておりましたのを、十一万円までは十割ということにしたということだと思っておるわけでございます。高在のあり方につきましては非常に基本的な問題でございまして、六十五歳になればもう年金の被保険者から外して保険料も取らない、給付をするという考え方が一方にあるわけでございます。また一方では、やはり将来の年金財政というものを考えれば、六十五歳でも健康に恵まれ、また雇用の機会に恵まれている方には被保険者として残っていただいて、それ相応の拠出もしていただくという考え方もあるわけでございますが、そこら辺にらみ合わせまして在職老齢年金のあり方につきましては検討をさらに加えてまいりたいと思っております。
  132. 柄谷道一

    柄谷道一君 ここでは明確な答弁むずかしいと思うんですが、私は基本的に六十五歳未満の在職老齢年金の支給制限というものに対する物の考え方と、六十五歳以上の場合というものを同一の物差しではかっていいかどうか、ここに基本的な私は問題が存在するように思うわけでございます。この点篤と今度の懇談会等でも議論を詰めていただいて、ひとつ明確な答えが出るように御努力を願いたい。  私は、わが国の公的年金制度は私なりに大別をいたしますと、八つばかりの問題点と弱点を抱えているのではないかと、こう思っております。しかし、きょうは時間の制限がございますので別の機会にまた大臣にただすことといたしまして、きょうはそのうちの二つの問題にしぼって御質問をいたします。  その第一の問題は、給付水準にかかわる問題でございます。厚生省は数次の改正によって給付水準は向上し、厚生年金は国際水準に達したと、こう時として述べられております。しかし、わが国年金制度は長期加入条件でございます。したがって、無拠出の老齢福祉年金国民年金の五年、十年年金といういわゆる経過年金につきましては、大臣も御承知のとおりその水準が低い。しかも、これらの年金受給者が現時点では老齢年金受給者の過半を占めている。これが現実でございます。したがって、この意味において、高齢者生活保障する機能を現行水準が果たしているかどうかというところに一つの問題があろう。第二には、個々の年金水準間もしくは同一制度内で給付水準に不合理な格差があるという問題ではないか。これを解決していくためには従来から、基礎的生活レベルを保障するナショナルミニマムを設定して、これを各制度を横断する基礎年金とすることが適当ではないかという意見が強く各方面から出されております。この基礎年金構想に対する大臣の所見をお伺いいたしたい。
  133. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 先ほどもお答えいたしましたが、私は非常に個人的には魅力を感じておりまして、この一年間で方針を決める場合に有力な構想としていきたいと考えているわけでございます。ただ、財源問題等この提案の中にはいろいろ問題点もございますものですから、これらの点については十分検討をさせていただきたいと思っているわけでございます。
  134. 柄谷道一

    柄谷道一君 かつて元厚生大臣でありました田中さんは、この基礎年金構想を大々的に提言されました。私はお伺いしたいんですが、大臣、田中さんの意欲と後退しているんですか、前進しているんですか。
  135. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 田中大臣のやつを私、委員として実は予算委員会なりその他で聞いたことございますんですが、少なくとも有料老人ホームに入れるようなものをいまの経過年金にはやりたいという構想一つ。それと関連しまして、やはり国民全体の老後の目標として、一応全部が期待し得る年金を、その程度の、個人については考えていくんだと、そういうことで、当時たしか有料老人ホームに入る一ヵ月の費用というものが二万五、六千円じゃなかったかと思うんですが、そういうものを目指していきたいという決意の表明を国会でされたことがあったと私思います。この金額については、それがいいのかあるいは最近の有料老人ホームの人件費その他から見ますと、たしか若干上がっているようにも思いますし、そういうことでなくて、制度審のような考え方あるいは民社党御提案の前年度の給与の約三割、夫婦で全体の四割五分というような構想、あるいは各政党でそれぞれお出しになっているいろんな構想ですね、これらを踏まえまして、制度審意見等もございますから、私は田中元大臣より後退しているのか前進しているのかと言われますと、もう彼が構想を打ち出しましたのはたしか三年前だと思いますので、やっぱり物価の状況等考えますと、その程度ではなかなか納得いかないだろうと思いますし、さて財源をどうするかということになりますと、なかなか一遍に回答が出るわけでもございません。ただ、基礎年金構想についての魅力を感じている度合いは相当強いと御認識をいただいていいんじゃないかと思います。
  136. 柄谷道一

    柄谷道一君 基礎年金構想と一口に言いましても、問題はこの基礎年金水準、これが問題になろうと思うんです。しかし、ここで水準問題を議論しておってもなかなか前へ進まないと思います。そこで、この水準をある程度高めようということになると、その費用負担の問題が出てくるわけですね。私は基礎年金というものを将来つくるとすれば、それは被保険者期間や収入に関係のない、これは定額制が少なくともとられるということであろう。同時に、財政はこれ世代間の負担という立場に立てば、あるいはこれは賦課方式という方式をとるか、スウェーデンの基礎年金制度がとられておりますような税移転の方式をとるか、いずれにしてもそういう方式というものが検討されなければならない。いま大臣は強い意欲を持っておられると、こう言われたわけですが、その財源、いわゆる費用負担問題についていま現在構想をお持ちでございますか。
  137. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 基礎年金のやり方も幾通りかあろうかと思いますが、ただいま先生がおっしゃったように、特殊な条件をつけないで年齢で一律に出すということでありますれば、これはなかなか保険料になじみにくいと思うわけでございます。やはり、保険料の場合には、掛金に比例して年金額が上がるということが一つのメリットになり、国民の協力を得るという面があろうかと思うわけでございますが、そういうふうにフラットなことであるとすれば、保険料ということではなかなかうまくいかないであろうと思うわけでございます。中間意見でも、やはり基礎年金のケースワークみたいなことをしていただきまして、その際には各制度の保険料の持ち寄りという形で作業をしたんでございますけれども、中間報告の表現にも出ておりますが、やはりもう保険料じゃなくて一般財源なり何なりを考える方が適当かというような結論になっておるわけでございます。今後の年金体系のあり方、それが直接に財源の問題とも絡みますわけでございますので、どういうふうに将来の年金体系を組むかということの関連で、財源につきましてもさらに詰めてまいりたいというふうに考えております。
  138. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、もちろん中心は基本問題懇談会で詰められていくと思うんでありますけれども大臣、ひとつこの問題について各党それぞれが考えを持っていると思うんですね。だから、そういう政党レベルにおいても、こういう時間の限られた質疑ではなくて、大臣が虚心坦懐に各政党の年金将来構想というものを一度聞かれて、そしてそういう意見というものも一つの大きな参考にしながら基本問題懇談会でそれらを消化していく、こういう行政段階といわゆる立法段階というものがやはりある程度の連携を持ちつつこの問題の検討を進めていきませんと、ちょっとやそっとの問題のこれ改革じゃないわけですから、また健保と同じような問題を繰り返す危険があると、こう思うんです。いかがでしょう。
  139. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) おっしゃるとおりだと思いますので、私ども今度は相当期間がございますものですから、どの段階でそういうことをお願いしたらいいのかいろいろ御意見を承りまして、できるだけ、これはもう本当に国民のための制度でございますので、私どもだけじゃなくて、皆様方、先生方と十分打ち合わせをし、また御意見を承って案をつくりたいと、かように考えます。
  140. 柄谷道一

    柄谷道一君 私はもう一つ大臣にこの問題で要望しておきたいことは、老齢福祉年金及び国民年金のいわゆる経過年金の問題でございます。これもやはりナショナルミニマムといいますか、基礎年金というものをやはり前提に置いて、そして年次計画的にこのようなステップを踏みながらその段階に到達していくんだ、こういう整合性を持つやはり検討というものがあってしかるべきではないか。そういうものがないと、一体何を基準に引き上げていくのか、将来構想というものがぼけたままで、年度年度物価上昇その他を勘案しつつ、これらの経過年金、無拠出年金改善を図っていくということについては、必ずしも老後保障に対する将来のともしをともしたことに私はならぬと、こう思うわけです。そういう考えについてはどうでございましょう。
  141. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 全く私も同感でございます。
  142. 柄谷道一

    柄谷道一君 それでは第二の問題に移ります。それは婦人年金保障の問題でございます。わが国婦人に対する年金適用につきましては、年金局長も述べておられますように、わが国独自の仕組みが取り入れられております。制度的にはかなりの保障が行われていることは承知いたしております。しかし、三つの問題点を抱えていると私は思います。その一つは、無職の婦人について老後保障体系が整備されていない。特に、夫が死亡した場合、妻に支給される被用者年金遺族年金水準が低い。これが第一の問題ではないか。第二には、被用者年金の妻の加給額が少ないという問題がございます。第三には、国民年金任意加入していない妻が夫と離婚した場合、老後の年金保障に欠ける場合がある。この三つの問題点婦人年金保障問題については現行制度では抱えていると、こう思うんであります。大臣の御所見、いかがでしょう。
  143. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) いまの御指摘の問題は、そのとおりだというふうに私ども考えておりまして、今後の改正にはぜひいい案をつくって御提案をしたいというふうに思っておるわけでございます。  それで、被用者の妻が無職の場合には、これは被用者年金でカバーをするということになっておりまして、遺族年金という形になるわけでございますが、現在これは五割でございます。これを水準を上げることは非常に大きな問題でございまして、私どもも数年来取り組んでおるわけでございますが、現在寡婦加算という形で一応の充実を図っておるわけでございますけれども、私どもこれでいいというふうに考えておりませんで、これにつきましても水準引き上げ考えてまいりたいというふうに思っておるわけでございます。これも先ほど来お話がございましたけれども、その際には、いわゆる子なし若妻というようなケースにも出るのをどう考えるか、あるいは単身者が受ける場合の年金——これは御指摘の第二の問題に関連しますが、単身者が受ける年金と夫婦が受ける年金とのバランスをどう考えるか、あるいはこれも御指摘の第三の問題に絡むわけでございますが、国民年金に対する妻の任意加入をどういうふうに考えていくか、そこら辺の関連を見まして対案をつくりたいというふうに考えておるわけでございます。  それから、妻の加給が少ないということでございますが、これも現在の厚生年金年金世帯の種類に応じたニードを見てないということが言えるのではないかと思います。欧米では五割の加給をするというような例があるわけでございますが、それはまた逆に言えば、老齢年金が夫が死んで遺族年金になる場合に、七割給付なり何なりになるという基礎にもなるわけでございまして、世帯の実情に応じたウエートをつけた年金額ということにもぜひ持っていきたいというふうに思っておるわけでございます。それから、任意加入をしていない場合、高齢離婚した場合に年金がなくなってしまうということがあるわけでございますが、この問題につきましても、中間意見で二、三の方法が述べられておるわけでございますが、全体との体系の絡みを見ながら、どれが一番適した方法であるかを検討してまいりたいというふうに思っております。
  144. 柄谷道一

    柄谷道一君 大臣、いま局長が答弁されましたように、私が指摘した三つの問題を現行の婦人年金保障に関して抱えている、これはもう現実でございます。私は基本的にはさきに述べましたナショナルミニマムとの関連において、これをどう解決していくかという検討が行われるべきが本筋であろうと、こう思うのでありますが、しかしそれにはある程度時間を要するわけですね。そこで、いま寡婦加算のことを言われましたけれども、これは前回の年金改正時に厚生省は七〇%要求したのですね。ところが、大蔵の強い抵抗に遭ってこれがなかなか実現できなかった。そこで、妥協的産物としてせめてもということで生まれてきたのが寡婦加算の方式である、これが実態なんです。そういう経過からいたしますと、私は遺族年金基本年金のやはり八〇%というのが目標であろうと思いますけれども、一挙にそこに行かないにしても、次期の改正で本腰を入れて七〇%を実現する、こういうことをお約束願えませんでしょうか。
  145. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 遺族年金七割を私どもも財政当局に持ち出したことは事実でございますし、これは何とか実現をしたいというふうに思っておる事項でございますが、先ほど申し上げましたように、前回これが実現を見ませんでしたことは前提条件、いろいろ整理をしなければならないということがあったためでございまして、一つには遺族七割ということは、高齢の寡婦なり子供を抱えておる寡婦の方に手厚くしようということでございます。その裏には、私どもの制度の場合には外国と比べまして、若い、子供のない未亡人の場合にも遺族年金が出るというようなことがございまして、そういう点の整理が一つどうしても要るのではないかと思うわけでございます。それからもう一つは、これも先ほどの御指摘の問題と絡むわけでございますが、仮に七割給付ということを考えますと、いまちょうどモデル年金が十万円でございます。いまは夫の分が五万円、妻の分が五万円、夫が死ねば残りの五万円が出ると、簡単に言えばこういうことだろうと思いますが、七割給付というものの考え方は、十万円のうち四万円が世帯共通経費で、夫の分が三万、妻の分が三万、夫が死ねばその夫の三万が消えるだけで、後の七万が出るのだということだろうと思うのでございます。これ、言いかえますと、先ほど御指摘がございましたように、夫の年金を百と考えれば、いま六千円の加給金ということじゃなくて、五割ぐらい加給をつけるということになるわけでございますが、そういう単身の場合それから世帯の場合のニードに応じた年金額の構成ということも、どうしてもやらなければならない。それからもう一つは、一番むずかしい問題かとも思いますけれども遺族年金を充実していけば、国民年金に妻の任意加入を認めておった事情の一半は消えるということになるわけでございます。これをそのまま残しますと、国民からいたしましても保険料の二重負担のような面が出てまいりますし、国全体から考えましても先行きかなり年金財政が膨大なものになっていくわけでございますが、やや節約してもいいという面も出てくるわけでございまして、ここにもどうしてもメスを入れたい。そこら辺の問題がございまして前回実現をしなかったわけでございますが、基本懇審議も非常に進んでまいりましたので、そこら辺に回答が出せるんじゃないか。それと並んで遺族給付引き上げをしたいというふうに考えておるわけでございます。
  146. 柄谷道一

    柄谷道一君 私も前回実現を阻んだいろいろの問題点が、この中間報告を見ますとある程度解決の方向が示唆されてきておるわけですね。しかも、その中間報告には、要保障度に応じ計画的に改善を図っていけということも最後に締めくくりとして述べられているわけでございます。私は、ぜひこれ厚生省の在来の主張なんでございますから、相関連する問題の解決を図りながら、このやはり遺族補償は七〇%の水準を当面実現すると、このことに対して大臣の御努力を願いたいと思います。御努力を願えますか。
  147. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) いま年金局長が言いましたように、妻の任意加給の問題、それから子なし若妻の年金、夫がなくなった場合の遺族年金の問題等に、相当の、言葉は適当でありませんが、整理ができるのかどうかということが、この問題の私はポイントじゃないかと思うんでございまして、一方、先ほど渡部先生がおっしゃったような、国民すべてに年金権というものを考えなければならないという御議論等もございますので、この遺族年金を七割に引き上げるという方針を決める場合には、どうしても相当年金抜本改正に対する基本的な考え方をぴしっとまとめてからいきませんと、なかなか私はこれだけを取り上げていくというわけにはいかぬ問題があるだろうと思うんでございまして、したがって、そちらの方向を重視するか、あるいは先ほど言った基礎年金構想というものをどうやって組み立てていくかということの方を重視するのか、この辺は一年かかって根本改正をやると申し上げたポイントの一つでもございますので、いまここで私が七割を必ずやりますという決意を表明するには、もう少し検討さしていただきたいと思っておるわけでございます。専門家の先生ですから御理解いただけると思っております。
  148. 柄谷道一

    柄谷道一君 同じくこの遺族年金につきましては、いま指摘したような問題のほかに年齢、継承順位にも制度間で格差があるわけでございます。たとえば厚生年金では、夫、父母、祖父母の場合、加入者の死亡当時に六十歳に達していないと受給できないということになっておりますけれども、共済年金はこれは五十五歳でございます。死亡時に若くても五十五歳になれば受給できると、こういう制度が共済年金には開かれております。また、厚生年金では遺族年金を受給していた妻が死亡や再婚によって受給資格を失った場合、子が引き続き受給できますけれども、その子が満十八歳を超えて受給資格を失うと、遺族年金打ち切りとなり他の家族員に受給することはできません。ところが共済年金では、生計をともにしたなどの受給要件があれば祖父母にまで継承ができる、こういうことになっているわけですね。これは同じ被用者保険でありながらそのような年齢、継承順位、こういった問題にも格差がいまあるわけです。これは一つ矛盾ではないか。これは大臣、制度の抜本問題ではなくして、これらをいかに調整を図っていくかということは、決断さえあればできる問題だと思うんです。あわせて前向きの御検討を願いたいと思いますが、いかがでしょう。
  149. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) いま御指摘のように、共済とか厚生年金で遺族の範囲とか転給問題取り扱いが違うのは事実でございます。これはかなり沿革的なものだと思うわけでございますが、共済組合が恩給を受け継いでおるということからくる点が多かろうと思うわけでございます。厚生年金の場合には、やっぱり遺族の生活保障とかそういうものを社会保障的な観点からそういう整理がされていると思うわけでございまして、外国の立法例もむしろ厚生年金と同じようなやり方が多いということだと思っておるわけでございます。したがいまして、沿革からくる違いでございますが、これを整理するというのはそれぞれの制度が別でございますのでなかなかむずかしいわけでございますが、私どもとしましては、むしろ厚生年金の行き方が社会保障体系としては妥当なんではないかというふうに思っておる次第でございます。
  150. 柄谷道一

    柄谷道一君 私の見解とそれは異なっております。しかし、ここで論争しても前へ進まないと思いますから、これは改めての機会に私の意見委員会でなくてもまたお伝えをしてまいりたい。  しかし、官民格差が唱えられて水準問題等が論議されておりますけれども、いま言う遺族という非常に深刻な状態を抱える人のそういう継承順位等についても、なぜこんなに差があるんだろうか、これはもう率直な国民の疑問であろうと、こう思うんです。低きにそろえることは容易だと思いますが、私はむしろ高きにそろえるべきだという意見だけを述べておきたい。  そこで、年金は基礎年金の上に私は生涯資産的な報酬比例年金が上積みされるべきだと、こう思いますけれども、その内容につきましては別の機会に行うことといたしまして、次に企業年金の問題について三点ほど御質問いたしたいと存じます。  その第一は、企業年金の育成についてであります。アメリカ、イギリス、フランス、西ドイツ、スウェーデンなどでは、新しい法律とか再保険などで各種の工夫が行われてスライド制をとっております。わが国もこれが行えるような国の助成、指導が必要ではないだろうか。また、公務員共済につきまして大蔵省は、時として公務員共済の中には公的年金のほかに企業年金的性格のものが含まれていると、こう答弁をいたしております。そして、これを含めて国の財政負担または援助が行われているから、一般の企業年金にも国の援助によってつくりやすいようにして公務員の場合と見合うようにしなければ、この意味における官民格差というものは解消されない。これは大蔵省の考えをそのまま前置しての話でございます。私はそういう視点からいたしますと、諸外国の実例等を精査をして、そして官民格差を解消するという中にこの企業年金というものをどう位置づけていくべきなのか、そしてその企業年金育成のための財政助成措置というものについて一体どういう形でこれを強めていくのか、これは今後の年金問題について一つの大きな課題ではないかと、こう思うのであります。お考えをお伺いします。
  151. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 企業年金ができまして十年になるわけでございますが、それなりに基礎が固まってきつつあるということかと思います。現在の時点に立ってみますと、一方では企業の従業員の老齢化が進んでまいりまして、退職金の圧力というものがかなり企業の経営を圧迫するようなことになってきておりまして、その面から退職金を年金化するというようなことがかなり言われており、また若干そういう方向で進んでおる実態もあるわけでございます。  それから、もう一つの面としましては、厚生年金かなり高い水準になってまいりまして、経過的な年金は別といたしまして、国際的に見ましても遜色のないところまできておると思うわけでございますが、さらに自分の老後の設計に合わせた年金を欲しいという希望もあるわけでございます。厚生年金なり公的年金としましては、将来の財政を考えると限度があるということになろうかと思いますが、そういう面も企業年金で受けてもらうという可能性があるのではないかと思うわけでございます。  もう一つ、これは先生から御指摘のありましたいわゆる官民格差問題でございますが、一方では共済組合に企業年金部分があるという見方がございまして、確かに否定できない点だろうと思うわけでございます。そうしますと、官民格差問題というものを考えます場合には、民間の場合には厚生年金と企業年金をあわせて考えるというような視点が必要になってくるわけでございます。いま申し上げました三つの事情等から、やはり企業年金というもののあり方をもう一回見直してもいいのではないか。公的年金と企業年金の組み合わせ、守備範囲の問題、見渡してみなければならないと思うわけでございますが、基本懇中間意見でもこの点かなり突っ込んで検討していただいておるわけでございますが、率直に申し上げまして、婦人年金権とかそういう問題ほど掘り下げがまだいっておりません。一方、基金連合会もそういうような状況の中で、やはり企業年金のあり方をもう一回振り返ってみようということで平田冨太郎先生に座長をお願いをいたしまして、研究会を発足さしておるわけでございます。これはかなり時間を区切って結論を出そうということでございますので、そういう基金連合会自体の研究会の結論も見ながら、これからの年金体系の中で企業年金の占める位置というものを確かめ、また各国でもかなり企業年金が盛んになっておりますので、今後も企業年金の助成というものに努力をいたしたいというふうに考えております。
  152. 柄谷道一

    柄谷道一君 私はいま言われましたもののほかに、このような減速経済下、しかも月千五百に及ぶ企業倒産が出てくる、そういう労務債権確保の視点から、退職金というものについてひとつ年金化、そしてこれをさらに公的なものへという保障措置を求める労働者の声は相当強まっていると、こう思うんです。そういう視点も含めて、ひとつ全体の老後所得保障の一環として、この企業年金というものがどう位置づけられるべきか、その位置づけによってはそれに必要な私は援助、助成の政策というものがこれに伴ってこなければならぬ、こういうことだと思います。  そこで、企業年金につきましては、運営の方法によりまして自社年金、租税上の適格年金厚生年金基金のこの三つに分けられると、こう思います。そして、これのそれぞれに対する国の指導も現在まちまちでございます。ということになると、これから企業年金というものの意義というものを解明し、これを老後保障の一環として位置づけていくということになりますと、果たして現行の多岐にわたっておる制度をそのままに置いておっていいのかどうか、むしろその一元化というものを図っていくということについても検討が必要なのではないか、これは相当強い意見として最近出ておる議論でございます。これに対する御所見をお伺いをいたしたい。
  153. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 企業年金は、ただいま御指摘のございましたように、厚生年金基金それから適格退職年金と、さらにこのいずれにも入りません会社単独でやっておる自社年金と言われておる三つのグループがあるわけでございます。自社年金の場合には、これはもう企業独自でやっておりますので別といたしましても、厚生年金基金制度と適格退職年金制度、これは国の制度として二つ並んでおるわけでございます。実は率直に申し上げまして、それぞれのメリットがあるというようなことで、会社が自分に適する方を選んでおるということでございます。厚生年金基金の場合には、税法上の優遇措置が徹底しておるというようなメリットがございますし、また適格年金の方は税法上は厚生年金の企業年金ほど優遇はされておりませんけれども、設計が自由であるというようなことでこちらを選ぶ場合もあるわけでございますが、確かに御指摘のように両方てんでんばらばらということよりも、できるだけ統合と申しますか、同じような形で運営をしていく方がいい問題でございますので、関係省庁ともよく連絡をとりながら、将来の持っていき方につきまして研究をしてみたいと思います。
  154. 柄谷道一

    柄谷道一君 本来、厚生年金基金は労働者、労働組合の同意を経て設立されるものであります。その事業のうちで、公的年金の代行部分は政府の規制に従って運営される、これは当然でございます。しかし、そのプラスアルファ部分及び福祉事業につきましては、労使が団体交渉を経て自主的に決定し、それぞれの具体的なニードに即応する、そういうたてまえでございまして、これは健康保険組合の場合のように事務費を国庫で負担し、そして財政の最終責任を政府が負うという性格とはこれ異なっているわけですね。そういうことを考えれば、私はその代行部分は別として、このプラスアルファ及び福祉事業につきましては、労使のこの自由な創意というものがもっと生かされていいのではないか、この部分に対して余り行政が画一的な指導をやりますと、かえってその健全な発展というものを阻む一つの素因にもなりかねない、原因にもなりかねない、このように思うわけです。その点について、今後の指導方針をお伺いいたします。
  155. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 企業年金の場合、代行部分につきましては、これは国のやるべきことを代行していただくわけでございますから、まあ定額部分と同じような厳格な指導監督をしていかなければならないと思うわけでございます。その上乗せ部分でございますが、上乗せ部分もこれは労使の合意でやることでございますけれども、やはり被保険者と申しますか、そういう方々の将来の年金の問題でございますので、ある意味では同じように厳格に指導監督していかなければならないというふうに思うわけでございます。ただ、せっかく企業年金をつくりました理由は、その企業に適した年金制度をつくりたいと、それも労使の協調でやりたいということでございますので、せっかくつくった以上はそういう労使の創意なり合意が生かされるということも大切なわけでございまして、そういう両方のバランスをどこに求めるかということだろうと思いますが、御指摘の点はよくわかりますので、福祉施設その他につきまして労使の創意なり合意が生かされるように指導上も気をつけてまいりたいと思います。
  156. 柄谷道一

    柄谷道一君 年金問題は、以上私が質問しましたほかに、国民年金における所得比例保険料制と付加年金制度検討の問題とか、年金業務処理体制の強化及びサービスの向上の問題とか、年金の非課税問題、五人未満事業所の従業員に対する年金適用の問題、積立金管理運用に対する労使の参加の問題、また、無年金者対策としての特例納付金制度と貸付金制度の問題、数多くの問題がございますけれども、これらの問題につきましては、さきの委員の方々が御質問されたところでもあり、時間の関係からこれを省略いたします。  最後にお伺いしたいことは、今後の年金改正の時期をいつとお考えになっておるのか。その次回改正の場合は、年金の将来構想というものを前置して、その第一段階としての改正という意味を持つものであるのか、この点について大臣の明確な御答弁を求めまして私の質問を終わります。
  157. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 当然、そうしたいと考えております。将来構想を描きつつ、その第一歩という意味改正にいたしたいと思っておりますが、ただ、先ほど来私が申し上げておりますように、ことし、今年度いっぱいかかって基本的な構想をまとめたいと思っております。当然、制度審等の御審議あるいは社会保険審議会等の御審議、いろいろ、たとえば法律改正案そのものでなくとも、御意見も承りたいとも思っておりますので、相当時間がかかるんじゃないかと思っております。また、各党の御意見も十分承りたいと思っておりますものですから、果たして、来年度の予算編成が十二月といたしまして、それに基づいて来年改善を若干とにかくやらなきゃいかぬ、毎年やらなきゃいかぬ部分もございますので、それがその根本方針を前提にした一環ということになるかどうか、時間的な問題等もございますので、そうありたいとは願っておりますが、現実にそうなるというふうにまだ言い切るだけの、何といいますか、自信はございませんので、そう願っているというふうにとどめさしていただきたいと思うわけでございます。
  158. 下村泰

    ○下村泰君 伺っておりますると、本来ならば、話というものは、大ぜいの方のいろいろの御意見を伺っていると、話の内容で、いま論議されているしんというものがわかってくるはずなんですけれども年金に関しては聞いているうちにますますわからなくなる。先ほど小笠原先生も、御自分で御勉強なさったが、私はこんなに頭が悪いのかとおっしゃっていましたけれども、私はそれ以上にひがんでおりまして、読むどころか、読んでるうちにいやになって、厚生省の方に御意見を聞いたり、あるいは調査室の方に意見も聞いたんですけれども、聞いているうちにいやになってくるんですね。もういいよ、これ以上聞いてもわからないというようなもので、ほかの委員先生方は本当に政治家というものを目的としてここへお入りになっていらっしゃる方々でございますが、その方々ですらわからない。まして私みたいな者にわかるわけがない。それで、まことに恐れ入りますが、素朴な質問をいたしますので、お腹立ちのないようにお願いをします。  まず最初に伺いたいのは、なぜ一般の人がわからない、まして専門委員の方でもわからなくなるような仕組みになったのか、その辺からひとつ御説明願いたい。
  159. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 実は大変むずかしい御質問でございますが、年金の一番の原理は非常に簡単なことだと思うのでございます。それは、若い人と言いますか、現役の人が掛金をしまして、それに国庫負担をつけてお年寄りに年金を出すということでございますので、非常に簡単なことだと思うのでございます。それがなぜわからなくなるかと申しますと、いまの日本のやり方は、掛金をたくさん掛けた人にはよけい年金を出しましょうというシステムをとっておるわけでございます。一部の外国や、それから基本年金というような議論が先ほどからございますけれども、それはもう掛金に関係なく、六十五歳になって日本にいれば年金を出しましょう。それはだれでもかれでも三万円なら三万円と、こういうような制度をやっておる国があり、また日本でもそうしたらどうかという意見があるわけでございますが、現在の日本のやり方は、たくさん保険料を掛けた人にはよけい年金を差し上げましょう、こういう仕組みになっておるわけです。これはこれ自体自分の掛金が年金に結びつくわけでございますから、国民に協力をしていただくのに非常にわかりやすい面があるわけでございます。  ところで、そのたくさん保険料を掛けた方には年金をたくさん出すという場合でございますが、比較的わかりやすいのは、何年掛けたかというのはわかりやすいのでございます。自分は年金に入って三十年掛けたから、十年掛けた人よりも三倍もらうというようなことはわかりいいんでございますが、給料に従って保険料を掛けていただいておりますから、掛けた期間だけじゃなくて、給料に応じて金額をどのくらいよけい掛けたかということが必要になってくるわけでございます。現在では給料の九・一%掛けていただくわけでございますが、自分が一生の間どういう給料だったかということは、国民はなかなか覚えていないわけでございます。仮に覚えていましても、これは物価が変わってきておりますので、昔の三万円は九万円分の保険料を納めたものとみなすとか、そういう規定がございます。ですから、自分の一生の給料がどうであったか、それをいまの価格に換算ずるとどうであったか、そうすると、過去納めた保険料はいまの価格で言えばどのくらいになるかというような読みかえをいたしまして年金額を決めるということになるわけでございます。そこで、非常にわかりにくくなってしまうというのが、簡単に申し上げまして難解になる理由だろうというふうに思います。
  160. 下村泰

    ○下村泰君 説明なさる局長も、お困りのような顔して説明していますよね、実際のこと言って。私はいま一番簡単なつもりの質問をしたのです。ところが、お答えになる方が苦しんでいらっしゃる。なんでこんなばかばかしい制度にしたのか私自身もわからない。  いま局長がお話しになったような、たとえばPRの仕方をなさったことがございますか。PRの分はこちらですか。そういうような形のことをたとえばテレビ、ラジオでもおやりになったことありますか。
  161. 大和田潔

    政府委員(大和田潔君) お答えいたします。  いま局長が申し上げましたようなことといいますか、むしろ制度の中身につきまして、国民年金制度は何年掛ければ幾らになる、保険料は幾らでございますといったようなことのパンフレット等は、幾つかつくりましてお配りしておりますし、リーフレット等もお配りしております。  それから、厚生年金につきましても、できるだけわかりやすいようなかっこうでつくりまして、事業所等を通じましてパンフレット等をお配りしておるということはございます。  ただしかし、それにしても、やはりむずかしいと言われることもございますので、その辺はわれわれも一生懸命簡単にしたいと思っておりますけれども、そう簡単にならない。そこで、実は私どもは、先ほどちょっと申し上げましたけれども、ずばりあなたの場合の年金はどうなります、あなたの場合の資格期間は何年だ、それで標準報酬を——先ほどのお話がありましたように読みかえて、標準報酬はこうなります、それで計算いたしますと、六十歳から幾らもらえますという、ずばりお答えできるような仕組みを業務処理体制という形で、相談体制という形で進めていこうというふうに私どもはしておるところなんでございます。
  162. 下村泰

    ○下村泰君 ある新聞の投書欄には、そういった相談室といいますか、あるいは相談員をもっとふやしてほしい。実際に一般大衆というのはわからないのですよ。ですから、先ほど皆さんのお話を聞きながら、私こんなことをちょっと書いてみたんです。国の制度がこれだけ多くあって、形の上では国民福祉向上に役立っているようですが、あるんだと自画自賛しているのは当事者だけ、というふうに私はいま書いてみたんですけれどもね。事実、やっている者本人というのは何から何までわかっているはずなんです。そして、その非常に単純な私のいまのようなまるで基礎的な——基礎なんという言葉の使えないような無知に近いような質問をする人間に対して、非常に不親切なことが多いわけですね。  これは問題がまた全然違いますけれども、これはいずれ厚生大臣にまた粘っこく食い下がるつもりでおりますけれども、サリドマイド児というものを発掘して、それでふるいにかけられた子供さんたちがいます。その方たちが厚生省に御相談に来たときに、どこが窓口になるかもわからない。しかも、薬務局へ行けば違う、児童家庭局違う。窓口すらないんです、そういう方々は。この話けいずれまた後でゆっくりやりますけれども。  ところが、いまこういうようなお知らせの仕方をしておりますというふうにお答えでございましたが、いま手元にこういう記事がある。これ、ほとんど年金のことについては、このくらいのことはあたりまえなんじゃないかと思われるような質問が来ています。念のために読んでみましょう。  「私は現在五十四歳(大正十二年六月生まれ)の主婦で、会社員の主人と三十年前に結婚しました。私は勤めたことがありませんが、先日、国民年金加入しました。政府がこんど、無年金者対策として特例納付措置を実施するので、私も将来「より多くの年金をうる」ため、申し込みたいのですが、できるでしょうか。」、こういう質問。これに対して答えがちゃんと書いてございます、いろいろとね。  次が、「私は四十歳になる主婦です。主人は十五年間会社勤めをし、現在四十七歳です。最近、新聞で遺族年金が極めて低いという記事を読みましたが、万一、主人に不幸があった時は、年金はいくら出るのですか。私たちには子供二人=長男(十二歳)二男(九歳)=がいます。」、これに対してちゃんと答えがここにも出ております。子供の加給金加えて月に四、五万円はあなたに支給されるでしょうと、こう出ています。  次が、「私は昨年夫と死別し、夫の加入していた厚生年金遺族年金をもらいながら、会社に勤めています。今後も会社に勤めることにしていますが、せっかく保険料を払っても、自分の老齢年金は夫の遺族年金調整されてしまうと聞きましたが、本当でしょうか。」、これに対してもやはりいろいろと答えが出ていて、こういうふうにした方が得ですよ、こうやると損ですよという答えが出ています。  次が、「私は亡夫の加入していた共済年金遺族年金をえています。同時に、私自身会社勤めをし、厚生年金に入っています。将来、私が老齢年金の出る年齢(五十五歳)になった場合、夫の遺族年金と、自分の老齢年金が両方出るのか、それとも何らかの調整が行われるのでしょうか。」「年金の制度違うから出ます」、こう出ています、これ。  次が、「私は六十一歳になりますが、昨年、会社を退職し、別の中小企業に再就職し約十万円の給料をもらっています。年金を請求したところ「在職制限」のため、本来の年金の二割しか出ないということでした。公務員を退職し、同じ職場にいる友人は、年金を全額もらっているうえ、昨年もいくらか上がっています。厚生組は、もう少し優遇できないでしょうか。」、これは先ほどから問題にされているやつでございますね。  次が、「老夫婦二人の世帯で、私はすでに七十歳を過ぎているが「所得制限」があって、老齢福祉年金が出ません。収入といっても、小さなアパートからの収入で、五十一年所得で百万円ちょっと程度ですから、生活にとくにゆとりがあるわけでもない。基準が少しきびしすぎませんか。」、その方に対して、いろいろ計算をしまして、これこれこういうふうになります、というようなことが書いてございます。  次は、「女子事務員として十三年勤めた会社を、先月退職しました。退職後も老齢年金に結びつくまで「厚生年金」に加入しつづける方法があると聞きましたが、どのような方法でしょうか。なお会社に入ったときは三十八歳でした。」——「六ヵ月以内に必要な手続きを ただし支払う保険料はふえる」、全部計算もされて、答えが出ています。  これは最後になりますが、「私は、現在六十歳で、今年から厚生年金を受けています。妻は、五十八歳(大正八年十一月七日生まれ)で、最初から国民年金加入しています。妻は、あと何年かける必要があり、将来いくら年金が出ますか。また、夫婦で年金を受ける場合、金額の制限のようなものがありますか。」、それに対して答えが出ております。「六十五歳から三十五万九千円余出ます」よという答えが出ています。  いまお聞きになって、一番年金として単純な事柄じゃないんですかこれは、年金の内容としては。どうですか、局長
  163. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 全部基本的な御質問だと思います。
  164. 下村泰

    ○下村泰君 これだとわかりますね。私もこれ、この記事を読みまして、なるほど年金というのはこういうものなのかとわかるんです。ところが、突如わからなくなる。  こちらにこういうのがありますな。「中野区に住む未亡人のF子さん(五二)からこんな手紙をいただいた。「厚生年金遺族年金と、妻自身の厚生年金の老齢年金は両方はもらえないということを知り、大変ショックを受けています……」」ということで、いろいろ説明がされております。この中に、何ですか併給の調整というんですか、併給調整とおっしゃる。こういうことをして、たとえば遺族年金をもらった方が得ですよとか、別にこれだけの額がつきますから、これしかもらえないものはこっちへやるとこれだけもらえますよというような説明が書いてあるんです。その中に、併給の調整が設けられたのは昭和四十六年からなんだそうですな、この併給調整というのは。局長、そうですか。——そうですね。いや、いいですよ、それならそれでいいです、そうなんですね。
  165. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) はい。
  166. 下村泰

    ○下村泰君 そうしますとね、厚生年金夫婦の場合でも、四十四年十二月以前は共済年金と同じように完全併給されていたと、これ書いてある。これも事実ですか。
  167. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) そうです。
  168. 下村泰

    ○下村泰君 どうしてこれ、やめちゃったんですか。それを聞かせてもらいたいんです。
  169. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 一人の方に、自分の老齢年金と夫が掛けておりました遺族年金、両方もらえるということでございますけれども、やはり一つ年金制度でございますので、それ相応の調整をしなければいけないということで改正をいたしたわけでございますが、初めどちらか片一方しかもらえないという併給調整でございましたのを、四十六年に現在のように夫のもらうべき老齢年金額までは受給できるというようなことに緩和をしたと、こういう経過でございます。
  170. 下村泰

    ○下村泰君 四十四年十二月以前は、共済年金と同じように完全併給だったというんです。それが何でこんなふうになっちゃったんですかと聞いている。
  171. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 一つ年金制度から、まあいろいろ年金が出るケースがあるわけでございます。この場合には御本人の老齢年金と夫の遺族年金でございますね、二つもらえるわけでございますが、やはり年金制度のあり方から言いますと、受給者生活実態に合った年金を差し上げるということにすべきであって、まあ将来の費用の問題等がございますんで、二つ受給できるようにするということは、財政問題等から考えましても適当ではないということで、そういうふうにいたしたわけでございます。
  172. 下村泰

    ○下村泰君 そうすると、こちらのいわゆる共済年金というのがありますね、これは国家公務員とか地方公務員とか公共企業体とか私立学校の、こういう方々の、これはもう最初から出ているような話だと思うんですけれども、こっちは両方とも出るんですね。片方は国がやっているから出なくて、こっちは組合制度だから出るんですか。こういうところが私らにはぴんとこない。どうにもわからない。
  173. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) ごもっともでございますが、共済制度の場合でも、受給者生活保障所得保障ということであれば、当然しかるべき給付一つということでいいということであろうかと思うんでございます。そういうことでございますので、現在はバランスがとれておりませんけれども、やはり厚生年金でやってる方が——ちょっと言い方が語弊があるかと思いますけれども、正しいやり方だというふうに考えております。
  174. 下村泰

    ○下村泰君 非常に何ですかね、いま局長の顔見て私は気の毒になるんだ、非常に答えにくい顔をしていらっしゃる。それで、これ、うっかり何か言ったらえらいことになるなんというふうな顔しておる。わかります。これだけほかにやかましい委員がたくさんいらっしゃるんですから、私以上にこわい先生がいっぱいいらっしゃいますから、うっかりしたことも言えないでしょう。それはわかります。わかりますけれども、それじゃ大臣に伺いますがね、たとえばラジオのいま生放送やっておるんですよ。そうすると、こういうことに関する質問が来ているんです。質問というよりもはがきでね、歌謡曲のリクエストが来るんです。そのときに、今度年金がこれこれこういうふうになるそうですけれども説明していただけませんかと来るんですよ。私はわからないから説明できないんです、目下のところは。で、あしたは華々しく説明しようと思ったんですが、やっぱりわからないんです、これ、いまのようなお答えではね。そうしますと、聴取者の中には千差万別、いろんな形の方がいます。共済組合に入っていらっしゃる方もいましょう。国民あるいは厚生年金に入っていらっしゃる方もいらっしゃいましょう。その方たちは少なくともある程度新聞の活字やなんか見て、それ相当の不満を多く持っています。  せんだっても、武蔵小山というところがあるんですが、私の家の方なんですが、商店街を歩いておりまして、ある洋品店に入った。そこのおやじが何と言ったか。「師匠」、「何だい」、「国民年金ってどうなっているんだい」、「おれも知らねえんだよ」と言ったら、「知らねえわけねえだろう、国会議員なんだから」、「いや、実のことを言うと、おれよくわからねえんだ」「どうもおれたちの感触じゃ、昔の戦時中の国債を思い出すよ」と言うんです。「いつの間にか吸い上げられちゃって、返ってこねえんじゃないか。何となくだまされているような気がする」と言うんです。「やらずぶったくり食うんじゃないか」、こういうのが一般大泉のいま頭の中にありますよ、この年金に対する考えというのは。ですから、年金という字は、老齢年金とか福祉年金とか、年の金になっていますけれども、これ一般大衆にしてみれば、ことにお年を迎える方、ぼくだってもう間もなく迎えるんですが、迎える人間にとっては心の中で思わず両手を合わせて念じる念金ですよ、これは。政府の方はひねり出す捻金です、これは。これがやっぱり一つの文字になるような感覚にならなければ本当の年金意味はなさないと思うんです、ぼくは。ですから、そういう一般大衆が抱いている疑念といいますか、疑惑といいますか、そういうことに対して私がたとえば説明をする場合、どういうふうに言ったら一番安心ができるのか。厚生大臣はこう言っていましたよ、御安心なさいませと、どうしたら言えるのか、ちょっと教えてください。
  175. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) ただいま御指摘の点は、昭和四十八年まではそういうような不安を国民が持ったと思いますけれども昭和四十八年の改正物価スライドということをするようにいたしまして、物価が上がりただけは必ず年金額を上げるということになりましたので、その点では御安心いただけるというふうに思います。
  176. 下村泰

    ○下村泰君 いまあなたはそうおっしゃるけれども、いま私が読んだの全然頭の中に入ってないじゃないですか。あなたは四十八年から安心していると言うけれども、安心してないから来るんじゃないですか、こういうふうに。そこのところが私と食い違うのよ。だから、さっきも申し上げましたように、当事者の方はわかっているのよ。当事者の方はわかっているんだけれども年金を納めている一般大衆の人はそこまで把握してないということなんですよ。理解に苦しんでいるということなんです。だから、いま申し上げた共済年金の問題と、それからだれがこれ決めたか知りませんが、一つ年金制度から二つ年金は受けられないという大原則、何が大原則だと言うんだ、私に言わせれば。こんな大原則、原則の上に大をつけたのはだれがつけたんだと言うんだ、私は。こんなものを一体だれがつくったんだと私は言いたい。納めているものをもらうのはあたりまえじゃないですか。郵便局へ行ったって銀行へ行ったって納めればもらえるんですよ、どこへ行ったって。それを政府が預かれば利息をつけるのはあたりまえです、そんなことは。簡単に言えばそういうことになるんです。ところが、その考え方でいくとまるでこの話はわからなくなるんですよ。ですからいま大臣にお伺いしたいのは、こういう質問が来る、さっきも申し上げましたように、共済年金では遺族年金も老齢年金ももらえるのに、どうしてこっちはもらえないんだと。二つあるのに一つ取らなきゃならない。しかも、へたに取り損なうと減っちゃうという。これ新聞では教えてくれていますからね、遺族年金の方を取ったが得ですよと。基本年金百二十万あればその半分の六十万は来るんだから、あなたの老齢年金五十万の上に足せば御主人と合わせて百十万になりますよと教えているんですよ、これは。そういうふうに、こういう質問をしてこそ初めてわかるんです。  その来た質問に対して、いや、厚生省はこういうふうに考えているんです、これだからこういうふうになるんです、だから年金というものは安心なんですよということを私は説明したいんですよ。だから、厚生大臣として、三十六年から始まって二十年とすれば五十六年です、二十五年掛けている人は六十一年です、その一定期間が来て完全実施されるようになったら、本当に安心していられるのかいられないのか、それをまず聞かしてください。
  177. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 一定期間が来まして老後になった場合に、十分安心できるような所得保障が必ず出ますよとおっしゃっていただいていいと思います、一定期間ということをおっしゃれば。標準的な期間が来れば大丈夫ですよと言っていただいていいと思うんです。ただ、その官民格差の問題は、厚生大臣にこういう格差をそのままにしておくのはけしからぬじゃないかと言ったら、将来はこれはどうしても直していかなきゃならぬと言っておりましたと、こうおつしゃっていただきたい。いま直ちにはできません。将来はこれを必ず国民は平等な方向でやっていくように努力すると、こう言っておったとおっしゃっていただきたいと思います。
  178. 下村泰

    ○下村泰君 それは大臣はいまそういうふうにおっしゃっていて気が楽なんですよね。あと何年大臣がおもちになるか。すると、果たしてそのいま小沢厚生大臣がおっしゃったことを、次の大臣がどれだけ受け継いでくれるのか、そういうことが問題でしてね。何かお話しございましたら、局長、してください。
  179. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) いま大臣がお答え申し上げたとおりに私も思っておるわけでございます。大臣の御趣旨を体しまして努力をしてまいるつもりでおります。
  180. 下村泰

    ○下村泰君 別に私は、厚生省を敵対視しているわけじゃありませんからね。より以上にわれわれが生活する上において——私もついこの間までは本当にそこらでうろうろしておったんですから、感覚的には私はずれてないつもりです、庶民の感覚というのは。ですから、先ほどお断りしたように、お腹立ちのないように単純な質問をしますから答えてくださいよということを申し上げたわけです。ほかの先生方のを聞いていると、私は本当に頭が痛くなるほど、もう皆様方はごりっぱないろいろな角度からの御質問をなさいます。  ここに、けさのこれは毎日ですけれども、「老後の不安ひしひし」というタイトルで出ておりました。老後になったわれわれの社会は一体どういうふうにあなたは見つめていますか、厳しくなるであろうというのが八二%。してみますと、いま生活なさっていらっしゃる方は、極度にこれからの老後社会というものに不安を感じている、少しも安心はしていないということなんですね。そうしますと、いまの厚生大臣のお答えですけれども一定期間をちゃんとお掛けになった方は、これだけ安心ですよというお答えがここに果たして出てくるかどうか、これも大変問題になりますと思いますよ、それ。  三月の四日に、スイスの方で——これは余り言うていいことか悪いことかちょっとわかりませんが、老齢遺族年金法の改正をしまして、年金の受給資格の年齢を男六十歳、いま六十五歳だそうですね、スイスは、女の方五十八歳、現行は六十二歳、これをスイス進歩組織のPOCHですか、ここの組織がこういうことを提案した。ところが、国民投票の結果、これは否決されたんだそうですね。この案に賛成が三十六万、二〇%ですね、反対派が百四十六万票で八〇%。で、この人たちはこういうことを喜ばない。どこに喜ばない原因があるか。つまり、このスイスでは第一世代、第二世代、第三世代というふうに分けられるんだそうですね。第一世代というのが青少年で、第二世代というのが働く世代、そして第三世代というのが定年で、おまえは向こうへ行け、つまり姥捨山に捨てられる世代が第三世代、ここへ入るのがいやだというんですね。それからもう一つは若い世代に反発を食っている。結局負担はわれわれにかかってくる、そんなに多くの老人のめんどうを見るのではわれわれの将来はたまったものじゃない。これはやっぱり税金が多くなるからだろうと思います。これは先ほど柄谷先生も御指摘なさっていらっしゃいましたけれども、大変老齢社会になる、そうなれば当然若い働いていらっしゃる人たちの肩にかかってくることから、こういう反発が来るんだと思います。スイスの話じゃないんですよね、これは。もう日本に目の前に迫っている。これはもう局長もおわかりだろうと思います。大臣も、もうこれは逼迫している状況だと思います。それだけに、こんなわかりにくいことをごそごそ言っていないで、もっとわかりやすいようにして、そして本当に年金というものをかけていてよかった、なるほど日本という国はおれたちを見捨てていない、こういう社会機構になることが私は一番喜ばしいことだと思うし、ことにお子さんを抱えて働いていらっしゃるお母様方に、安心のできるような社会をつくらなければ、幾ら経済大国なんて言ったってへみたいな大国ですからね、わが国は。資源は何にもないんだし、マラッカ海峡とめりゃ三日間で死んじまうという国なんですから。そういうことを考え合わせれば、よほどの覚悟がなければ私はこの一つ年金の問題を取り上げても、いま大臣がおっしゃったようないわゆる桃源郷のような形にはなりにくいと思うんです。それだけに、最後に大臣のお考えですな、これからこういう年金に対する、先ほどからしばしば伺っておりますけれども大臣としてはこれこれこれこれ、ここまでこういうふうにやりたいんだというお言葉を聞いて、私の質問は終わらせていただきたいと思います。
  181. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私が先ほど申し上げましたのは、拠出制年金制度をとっておりますわが国におきましては、標準的な期間をお掛けになりました方々には、物価スライドの規定等もございますので、所得保障としては私はそうひけをとらない制度を必ずつくっていきたいと思っておりますし、逐年改善はいたしていきたいと思っておるわけでございますから、したがって、ただその現在のこの年金制度に、標準年金までいけないような方々、現在のまた経過年金の該当の方々、福祉年金受給者、あるいは五年年金、十年年金の方方、こういう方々については特別な対策を考えていかなきゃいけませんけれども厚生年金にしても、国民年金にしましても、一定の標準的な期間を掛けていらっしゃる方々については、その老後保障として決して私は他の国々に劣らないような、いわば老後の所得保障が必ずできるように持っていくべきだし、また持っていけると考えておるわけでございまして、もちろん財源問題としていろいろな問題がございますけれども、老齢化社会を迎えるわれわれとしては、どうしてもその点は確立をしていきたい。他の費用をできるだけ節約しても、重点的に厚生省としては老後保障所得保障の面に対策をつぎ込んでいきたいと考えておりますので、なお、おっしゃるようにいろいろな設例の場合には、具体的に遺族年金の問題やら、あるいは他の年金との調整の問題やら、あるいは格差の問題やら、等がございますが、これも逐次私は、一億一千万国民がなるべく平等な老後の所得保障ができるように、今後も一層ひとつ努力をしていきたいと考えておるわけでございますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。
  182. 下村泰

    ○下村泰君 これだけ質問があったんですけどね、全部ほかの方がおやりになりました。時間は余っておるようですけど、これで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  183. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 他に御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  184. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようでありますから、これより直ちに採決に入ります。  国民年金法等の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  185. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、片山君から発言を求められておりますので、これを許します。片山君。
  186. 片山甚市

    片山甚市君 ただいま可決されました国民年金法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、民社党、第二院クラブの共同提案による附帯決議案を提出いたしたいと存じますので、御賛同をお願いいたします。  案文を朗読いたします。    国民年金法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、次の事項について、適切な措置を講ずべきである。  一、公約年金制度全体を通じ、各制度間の整合性と人口の老齢化に配慮し、速やかに年金制度抜本改善を図ること。  二、遺族年金については、被用者年金加入者の妻の年金の在り方及び加給年金の問題を含め、総合的な見地からその改善に努めること。  三、厚生年金について、五人未満事業所の従業員に対する適用を促進するとともに、在職老齢年金制度の支給制限の在り方を検討すること。  四、各福祉年金について、受給者生活実態、最低生活基準とのバランス等を考慮して、その年金額を更に大幅に引き上げるとともに、その実施時期について検討し、併せてその所得制限及び他の公的年金との併給制限の改善を図ること。  五、国民年金の特例納付の実施に当たつては、今回の措置の特殊事情にかんがみ、実施状況を見つつ低所得者に対する方策を確立するとともに、今後とも無年金者の発生を防止するため、制度の周知徹底に努めること。  六、スライド制の在り方について更に検討するとともに、併せて電算組織を総合的に活用して年金の業務処理体制の強化、年金相談体制の充実を図ること。  七、老齢年金及び通算老齢年金は、非課税とするよう努めること。  八、積立金の管理運用については、被保険者の福祉を最優先とし、被保険者住宅資金の転貸制度の普及に一層努力するとともに、積立金の民主的運用に努めること。  九、児童扶養手当、特別児童扶養手当及び福祉手当の支給額を一層増額する等支給内容の改善充実を図ること。  十、児童手当制度については、長期的展望に立つて更に改善について検討を進めるとともに、当面は低所得者層を重点とした給付の一層の充実に努めること。   右決議する。  以上でございます。
  187. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいま片山君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  188. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 全会一致と認めます。よって、片山君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、厚生大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。小沢厚生大臣
  189. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) ただいま御決議になりました附帯決議につきましては、短期間には困難な問題もございますが、十分検討をいたしまして、御趣旨を踏まえまして努力をしてまいります。
  190. 和田静夫

    委員長和田静夫君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  191. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  192. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 公衆浴場法の一部を改正する法律案を議題といたします。  発議粕谷照美君から趣旨説明を聴取いたします。粕谷君。
  193. 粕谷照美

    委員以外の議員(粕谷照美君) 公衆浴場法の一部を改正する法律案提案趣旨説明。  この法案は、参議院日本社会党、公明党、日本共産党、民社党、第二院クラブの各党各派提案によるものでございます。  公衆浴場法の一部を改正する法律案提案趣旨を説明申し上げます。  売春防止法制定より二十二年を経過した現在、政府公認の集娼制度は解体されましたが、売春の形態は多様化し、潜在化して、第三者による女性の搾取は後を断ちません。中でも、個室付浴場業の業態は売春の温床と化し、特殊浴場業の距離規制の悪用によって新たに全国各地に集娼地域を発生させており、そこで役務を提供する女性に対して、浴場業者及び彼らと結託するヒモ、暴力団などによる売春の強制及び搾取が増大しています。  ここに個室において異性による役務を提供させることを禁止し、売春の温床を除くことを目的として、公衆浴場にふさわしい営業形態に改めるため、公衆浴場法の一部改正提案するものであります。  この法律案の内容は次のとおりであります。  第一に、浴場業を営む者(以下「営業者」という。)は、浴場業の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供し、または異性の客に接触する役務を提供する者に当該役務の提供のために当該個室を使用させてはならないものとすること。  第二に、都道府県知事は、必要があると認めるときは、当該吏員に公衆浴場に立ち入り、第一の規定の遵守の状況を検査させることができるものとすること。  第三に、都道府県知事は、営業者が、第一の規定に違反したときは、浴場業の許可を取り消し、または期間を定めて営業の停止を命ずることができるものとすること。  第四に、第一の規定に違反した者は、これを六ヵ月以下の懲役または一万円以下の罰金に処するものとすること。  第五に、この法律は、公布後二ヵ月を経過した日から施行するものとすること。  第六に、この法律施行の際、現に適法に営んでいる個室付浴場業については、その際、現に設けられている個室によるものに限り、この法律の施行の日から一年間は、なお従前の例によるものとすること。  第七に、風俗営業等取締法第四条の四の削除その他所要の措置を講ずるものとすること。  以上でございます。よろしく御審議のほどをお願いいたします。
  194. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 以上をもって趣旨説明の聴取は終わりました。  本案の自後の審査は後日に譲ります。     —————————————
  195. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 次に、戦時災害援護法案を議題といたします。  発議片山甚市君から趣旨説明を聴取いたします。片山君。
  196. 片山甚市

    片山甚市君 私は、ただいま議題となりました戦時災害援護法案につきまして、日本社会党、公明党、日本共産党、民社党、第二院クラブを代表いたしまして、提案の理由を御説明申し上げます。  終戦後三十余年を経た今日も、なお、戦争の傷跡がさまざまな形で、原体験を持つ人々の生活を圧迫し、理不尽な戦火にさらされ、生命と健康を失った多くの一般戦災者は、国から何らの援護を受けることもなく、戦争犠牲者として、傷病苦と生活苦にあえぎながら、余命をつないでいる実情にあります。  私は、これら戦災者の心情と、報われることなく高齢で亡くなられる方々の続出する日々に思いをいたすとき、援護の手が一刻も早く差し伸べられる必要を痛感せざるを得ません。  振り返ってみますと、さきの大戦では、原爆による被災者を含め、米軍の無差別爆撃はとどまることなく、銃後と思われていた非戦闘員とその住居までも一瞬にして戦場に変え、わが国全土にわたる諸都市を焼き払っていきました。  昭和二十年四月十三日「状況窮迫せる場合に応ずる国民戦闘組織に関する閣議決定は、新たなる兵役義務により、兵として動員し、統帥権下に服役せしめ得る必要な法的措置を講ずること」を決め、昭和二十年六月二十二日に、即時交布された義勇兵役法では、「国民義勇隊に参加せしむべきものは、老幼者、病弱者、妊産婦等を除くの外は、可及的広範に包含せしむものを徴兵」し、いわゆる国民皆兵体制をつくり上げたことによっても、当時すでに平和な銃後は存在せず、戦場そのものとなっていたことは明白であります。  これによる一般市尺の死傷被害は、沖繩を除いても、優に八十万人を超え、罹災人口は実に一千万人を超すと言われています。  中でも昭和二十年三月十日の東京大空襲は、わずか二時間余りの爆撃によって、全都の四割が一瞬にして灰じんと化し、炎の中で約十万の都民の生命を奪いました。その惨状は、イギリスの一物理学者が、原子爆弾攻撃による荒廃化を除けば、今までになされた空襲のうち、最も惨害をほしいままにした空襲と指摘するほどでありました。  しかるに政府は、今日まで戦争犠牲者対策を軍人軍属及びその遺家族など、昭和五十二年十一月末現在約十四万人に限定してきているのであります。  法制定後、準軍属と言われる人々など、わずかな範囲の拡大はあったものの、銃後の犠牲者に対する援護の手は基本的に皆無に等しいまま今日に至っているのであります。  一方、今次大戦の同じ敗戦国である西ドイツでは、すでに昭和二十五年に、戦争犠牲者の援護に関する法律を制定し、公務傷病と同視すべき傷害の範囲をきわめて広範に規定したため、援護の手はあまねく一般市民にまで行き届き、その対象は、昭和五十一年末現在においても、実に二百三十万五千人にも上っています。  わが国の戦争犠牲者対策については、原爆被爆者に対する特別措置は別として、あくまでも軍人軍属等に限定しようとするわが国政府の態度には、大戦の過ちを、衷心から悔い改めようとする姿勢に欠けるばかりか、その態度のよって来るところが、軍事優先の思想にあるのではないかとの疑念さえうかがわせるものであります。  戦後三十余年を経た今日、いまだに放置されている一般戦災者に対する国の援護措置を望む国民の声は、戦災地域あるいはそれ以外の自治体から決議、意見書が多く寄せられている事実とともに、もはや一刻の猶予も許さないところにきています。本案はこのような国民の声を背景に、本案成立の日までいまだ戦後は終らないとの確信をもって作成し、提案したものであります。  次に、本案の要旨について簡略に申し述べますと、さきの大戦で空襲その他の戦時災害によって身体に被害を受けた者及び死亡した者の遺族に対し、戦傷病者特別援護法及び戦傷病者戦没者遺族等援護法(以下それぞれ特別援護法、遺族援護法という)に規定する軍人軍属等に対する援護と同様、国家補償の精神に基づく援護を行おうとするものであります。  ただし、遺族に対する援護については、遺族年金に加えて、一時金たる遺族給付金六十万円を支給することとしております。  援護の種類別に申し上げますと、第一に、療養の給付、療養の手当、一万三千七百七十円支給及び葬祭費七万四千円を支給することであります。  第二は、更生医療の給付は、補装具の支給及び修理、国立保養所への収容並びに日本国有鉄道への無賃乗車等の取り扱いであります。  第三は、障害年金または障害一時金を支給することであります。  以上、支給要件給付内容はすべて軍人軍属等におけると同様であります。  第四は、遺族給付金、五年償還の記名国債として六十万円の支給であります。  遺族の範囲は、死亡した者の父母、子、孫、祖父母で、死亡した者の死亡の当時、日本国籍を有し、かつその者によって生計を維持し、またはその者と生計をともにしていた者といたしております。  第五は、弔慰金五万円の支給、遺族の範囲はおおむね軍人軍属等におけると同じであります。  なお、この法律による援護の水準を、特別援護法または、遺族援護法による軍人軍属に対する援護の水準と同じレベルにしたことに伴い、これらの法律による準軍属に対する援護で、なお軍人軍属に対する援護の水準に達していないものについては、同一レベルに引き上げ措置を講ずることといたしました。  最後に、施行期日は、公布の日から、一年以内で政令で定める日としております。  何とぞ、御審議の上、速やかに本案の成立を期せられんことをお願いいたしまして、提案理由の御説明を終わります。
  197. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 以上をもって趣旨説明の聴取は終わりました。  本案の自後の審査は後日に譲ります。     —————————————
  198. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 次に、母子保健法の一部を改正する法律案及び児童福祉法の一部を改正する法律案、以上両案を便宜一括して議題といたします。  両案の発議柏原ヤス君から順次趣旨説明を聴取いたします。柏原君。
  199. 柏原ヤス

    委員以外の議員(柏原ヤス君) ただいま議題となりました母子保健法の一部改正案につきまして、その提案理由と概要について御説明申し上げます。  近来、わが国の母子保健活動は昭和四十年に制定された母子保健法によって実施されてまいりました。  顧みて、当時の法案を諮問した社会保障制度審議会答申にも、「母子の健康確保の方向にわずかに一歩を踏み出したにすぎないもので、今後引き続き改善をはかるべきである」と指摘していることは御承知のとおりであります。しかしながら、法律の不備のまま今日に至っているため、妊産婦の死亡率は先進諸国に比べて二倍ないし四倍の高率を示しているなど、なお努力を要する幾多の課題が残されております。  しかも激動する社会情勢下にあっては、勤労婦人の著しい増加や核家族化の進行、公害あるいは食品添加物の影響、また高層住宅や遠距離通勤など、母性を取り巻く生活環境は大きく変化しております。  さらに、心身に障害のある児童の出生が妊娠から出産の間の母体に関係が深いことが明らかにされております。  また、出産に要する費用につきましても、各種社会保険の給付の額は格差があるばかりか、実際に要する費用としては不十分で、多額の自己負担を余儀なくされている現状であります。  このような状況にかんがみまして、これまで何度か改正案を提出してまいりましたが、さらに今後、母子保健の向上に関する対策を強力に推進してまいりますために、この改正案を提出する次第であります。  次に改正案の概要について申し上げます。  まず総則の部分についてでありますが、母子保健に関する国及び地方公共団体の責務の強化を図り、その施策については、産院や母子健康センターなどの医療・保健施設間並びに医師や助産婦などの従事者間の有機的な連携によって実施されるようにするとともに、母子保健に関する教育については、学校教育・社会教育においても、より普及に努めるべきことといたしました。  また、母子保健に関する重要事項を調査審議させるため、厚生省に中央母子保健審議会を置くこととし、都道府県並びに市町村にも母子保健審議会を設置できることといたしました。  次に母子保健の向上に関する措置についてであります。  第一には、出産費の支給を新たに設けました。  出産費は十五万円を限度とし、社会保険と調整して支給することといたしました。  第二には、健康診査の徹底強化であります。  妊産婦または乳幼児に対する健康診査を拡充強化するとともに、新たに、妊娠可能な年齢の女子に対して健康診査を行うことといたしました。  第三には、妊産婦等の受診に関する援助であります。  健康診査の結果に基づき、妊娠または出産に支障を及ぼすおそれがある疾病にかかっている疑いのある者が、必要な診療を受けることができるようにするため、医療費の支給等の援助を行うことといたしました。  第四には、妊産婦ホームヘルパーの派遣であります。  日常生活あるいは乳児の保育の上で必要と認められる妊産婦の家庭にホームヘルパーを派遣することといたしました。  第五には、家族計画に関する施策であります。  家族計画に関し、相談に応じて必要な指導及び助言を行うとともに、必要に応じて受胎調節のための器具または医薬品を交付することといたしました。  第六には、母子保健のための地域組織の育成等であります。  母子保健に関する活動を推進するため、母子保健推進員を置き、地域組織の育成を図ることといたしました。  第七には、母子保健施設の充実であります。  従来の母子健康センターは、母子保健センターと改称し、従来の助産事業中心から本来の保健指導業務を中心にするとともに、家族計画に関する業務も加え、名実ともに母子保健のセンターとし、市町村に設置することといたしました。  また、必要に応じ、安静を必要とする妊産婦の休養、乳児の養育を目的として母子休養施設を設置できるようにいたしました。  第八には、市町村長の事務の拡大であります。  以上のような各施策がきめ細かく実施されるよう、都道府県知事から市町村長にその事務を移行いたしました。  第九には、助産婦等の専門職員の確保であります。  国及び地方公共団体は、保健婦・助産婦等の専門職員の養成に努めるとともに、現在の職員に対しては研修の実施に努めることといたしました。  最後に、その他、調査研究体制の整備及び安全な出産を確保するための体制の整備等に対しても、国及び地方公共団体が努力すべきことといたしております。  なお、わが党の医療政策としては、将来出産費については疾病と同様、すべて医療保険の現物給付で行うこととする所存であります。  以上がこの改正案の骨子でありますが、何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。     —————————————  次に児童福祉法の一部改正案につきまして、その提案理由と概要について御説明申し上げます。  国の将来はその国の児童を見よと言われているように、子供の健康を守り、丈夫に育てるということは、家庭の幸福にとっても社会の繁栄にとっても重要なことは申すまでもありません。  まず、健康な子供を産むことであり、このためには母性の健康管理が第一であります。  また、児童の健康診断、保健指導並びに医療給付を徹底強化し、もって健全育成を図る必要があります。  しかしながら、児童が罹患する疾病は複雑化、長期化しており、これに対する医療費の援助は必ずしも十分なものとは言えない現状にかんがみ、慢性特定疾患の児童に対し、医療の給付を行い、児童の福祉の向上とあわせて患者家庭の医療費の負担軽減に資するために、この改正案を提出する次第であります。  次に改正案の概要について申し上げます。  第一には、小児慢性特定疾患医療に対する給付についてであります。  都道府県知事は、血友病・悪性新生物、その他の治療が長期間にわたり、医療費の負担も高額になる疾病にかかっている児童に対し、その治療のために必要な医療の給付を行うことによって児童の健全な育成とあわせてその家庭の負担軽減を図ることといたしました。  第二には、小児慢性特定疾患医療の給付の内容についてであります。  その内容は、一、診察、二、薬剤または治療材料の支給、三、医学的処置手術及びその他の治療、四、病院または診療所への収容、五、看護、六、移送、といたしました。  第三には、小児慢性特定疾患医療の実施についてであります。  この医療の給付は、厚生大臣の指定した病院・診療所または薬局に委託して行うものといたしました。  第四には、小児慢性特定疾患医療の給付に要する費用についてであります。  この医療の給付に要する費用は国及び都道府県の負担といたしました。  以上がこの改正案の骨子でありますが、何とぞ御審議の上速やかに御可決あらんことをお願いいたします。
  200. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 以上をもって趣旨説明の聴取は終わりました。  両案の自後の審査は後日に譲ります。     —————————————
  201. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 次に、母性保障基本法案を議題といたします。発議柄谷道一君から趣旨説明を聴取いたします。柄谷君。
  202. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、公明党及び民社党を代表して、ただいま議題となりました母性保障基本法案について提案の趣旨を説明します。  母性は、子が心身ともに健やかに生まれ、かつ育つための源として女性に固有な特性であります。  したがってこれを尊重し保障することは、世代を担う健全な子の育成を保障することであり、後代の発展に寄与することはもちろん、わが国の歴史を通して形成された女性べっ視の弊風がいまなお残る現状を改め、民主社会にふさわしい真の男女平等を実現させる意義がきわめて深いのであります。  日本国憲法の公布以来、女子の権利保障や女性保護の目的のもとに労働基準法、母子福祉法、母子保健法、勤労婦人福祉法及び女性保護と深いかかわりを持つ児童福祉法等が制定、実施されてきましたが、このうち労働基準法を除く他の立法は、社会の変化、発展の過程で女性保護に関する社会的欠陥を補完する意味措置されたものであって、女性の人たるの尊厳、その尊厳なるべき母性の保障という立場からの立法措置は、いまだ行われていないのであります。  したがって、本法案の制定により母性保障にかかわる諸制度の再検討を行うとともに、本来の母性保障にかなう新しい体制を確立し、あわせてわが国民全体の社会生活並びに私的な生活面においても、母性の尊重を軸とする新概念の形成を図ることは、わが国社会が健全かつ民主的発展を期す上で必要不可欠と信ずるのであります。  以上申し述べましたことが、本法案提案いたします根本的な理由でありまして、以下法案の内容について簡潔に説明申し上げます。   第一章総則においては、本法案の目的と理念を明らかにするとともに、本法案が、母性保障の総合的な施策を推進する基本法であって、すべて母性の尊重とその保障の理念のもとに、国、地方公共団体はこれを実現する責務を負うこととし、また、国会への年次報告、施策の提出を求めること等を規定いたしております。   第二章では、母性保障思想の高揚を図るため、国、地方公共団体が教育その他の手段を通じて健全な母性に関する知識の普及、母性保障思想の高揚に努めなければならないことを規定いたしております。   第三章では、すべての女子が毎年一回以上の健康診査を受ける機会を与えるよう必要な施策を講ずることといたしております。   第四章では、妊産婦に対する施策として、無料の保健指導、栄養補給等を行い、助産についてもその無料化を進め出産に伴う物品あるいは手当金を支給しようとするものであります。   第五章では、女子労働者及び労働者たる妊産婦に対する施策を定めたものでありますが、女子労働者の労働条件として、安全衛生、労働時間、深夜業、危険有害業務、生理休暇等、その安全及び健康を保持するようにしなければならないこと。また女子労働者が、妊娠、出産、育児の機能を有することを理由に不利益な取り扱いを受けることがないように規定するとともに、さらに妊産婦に関しては勤務時間の変更、通院休暇、つわり休暇、軽易業務への転換、補食時間、産前産後の休暇、育児時間、有給の育児休業等を与え、十分に母体を保護しなければならないこと等を規定いたしております。   第六章では、勤労婦人たると、家庭婦人たるとを問わずその負担を軽減し、婦人として最小限に必要な知識を正しく得さしめるため、国、地方公共団体が保育施設の整備拡充のほか、妊産婦ホームヘルパーの派遣、母子保健センターの設置等によって、妊産婦世帯の家事手伝い、出産、育児等の相談、指導等を行なうよう規定いたしております。   第七章では、母性保障政策を総合的かつ効果的に推進するため、一定数以上の婦人代表を含めた審議会を設け、内閣総理大臣または関係大臣の諮問に答えるとともに必要に応じ意見を具申するよう定めております。  以上きわめて簡単でありますが法案内容の説明を申し上げました。  何とぞ慎重審議の上、速やかに御可決くださるようお願いいたします。
  203. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 以上をもって趣旨説明の聴取は終わりました。  本案の自後の審査は後日に譲ります。     —————————————
  204. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 次に、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。これより政府から趣旨説明を聴取いたします。小沢厚生大臣
  205. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) ただいま議題となりました原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案について、その提案の理由及び内容の概要を御説明申し上げます。  昭和二十年八月広島市及び長崎市に投下された原子爆弾の被爆者については、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律により健康診断及び医療の給付を行うとともに、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律により特別手当、健康管理手当、保健手当その他の手当等の支給を行い、被爆者の健康の保持向上と生活の安定を図ってまいったところであります。  今回、被爆者の福祉の一層の増進を図るため、原子爆弾被爆者に対する特別措置に関する法律について改正を行おうとするものであります。  以下、その内容について御説明申し上げます。  改正の第一点は特別手当の改善であります。特別手当は、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律の規定により原子爆弾の傷害作用に起因する負傷または疾病の状態にある旨の厚生大臣の認定を受けた被爆者に対して支給されるものでありますが、この特別手当の額について、現に当該認定に係る負傷または疾病の状態にある者に支給する特別手当の額を現行の月額三万円から三万三千円に引き上げ、その状態にない者に支給する特別手当の額を現行の月額一万五千円から一万六千五百円に引き上げるものであります。  改正の第二点は健康管理手当の改善であります。健康管理手当は、原子爆弾の放射能の影響に関連があると思われる造血機能障害等の特定の障害を伴う疾病にかかっている被爆者で特別手当の支給を受けていない者に対して支給されるものでありますが、この健康管理手当の額を現行の月額一万五千円から一万六千五百円に引き上げるものであります。  改正の第三点は保健手当の改善であります。保健手当は、爆心地から二キロメートルの区域内において直接被爆した者で特別手当または健康管理手当の支給を受けていない者に対して支給されるものでありますが、この保健手当の額を現行の月額七千五百円から八千三百円に引き上げるものであります。  また、これらの改正の実施時期は、昭和五十三年八月といたしております。  以上がこの法律案を提出する理由及びその内容の概要であります。  何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  206. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 以上をもって趣旨説明の聴取は終わりました。  本案の自後の審査は後日に譲ります。     —————————————
  207. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 次に、社会保障制度等に関する調査を議題といたします。  低所得者福祉対策に関する件につきまして、今朝来理事会などで協議いたしました結果、本委員会として、これに関する決議を行うことに意見が一致いたしました。  ただいま自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、日本共産党、民社党、第二院クラブの共同提案に係る決議案が委員長のもとに提案されておりますので、委員長から提出することといたします。  まず案文を朗読いたします。   低所得者福祉対策に関する決議(案)  最近の社会経済情勢にかんがみ、政府は、所得税減税に対応して、減税を受けることができない生活保護被保護者、福祉年金受給者、失業対策事業就労者等低所得者を対象に早急に、一時金の支給又は就労日数の増加の措置を講ずべきである。   右決議する。  以上でございます。  お諮りいたします。本決議案を本委員会の決議とすることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  208. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認めます。よって、さよう決定いたしました。  ただいまの決議に対し、厚生大臣及び労働大臣から発言を求められておりますので、順次これを許します。小沢厚生大臣
  209. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) ただいまの御決議につきましては、昭和五十二年分所得税の特別減税に対応するものであるとの性格にかんがみ、やむを得ないものと考えますので、政府といたしましては、その趣旨に沿ってできる限り速やかに措置いたしたいと存じます。
  210. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 藤井労働大臣
  211. 藤井勝志

    国務大臣(藤井勝志君) 御決議のありました失業対策事業就労者に対する就労日数の増加の措置については、昭和五十二年分所得税の特別減税に対応するものであるとの性格にかんがみ、やむを得ないものと考えますので、政府といたしましては、その趣旨に沿って、できる限り速やかに措置いたしたいと存じます。
  212. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十二分散会      —————・—————