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1978-04-25 第84回国会 参議院 社会労働委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月二十五日(火曜日)    午前十時十分開会     —————————————    委員異動  四月二十日     辞任         補欠選任      浅野  拡君     河本嘉久蔵君      浜本 万三君     吉田 正雄君  四月二十一日     辞任         補欠選任      成相 善十君     亀長 友義君      吉田 正雄君     浜本 万三君      山中 郁子君     小笠原貞子君  四月二十二日     辞任         補欠選任      河本嘉久蔵君     浅野  拡君  四月二十五日     辞任         補欠選任      浜本 万三君     安恒 良一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         和田 静夫君     理 事                 佐々木 満君                 片山 甚市君                 小平 芳平君     委 員                 浅野  拡君                 石本  茂君                 上原 正吉君                 遠藤 政夫君                 斎藤 十朗君                 福島 茂夫君                 森下  泰君                 高杉 廸忠君                 広田 幸一君                 安恒 良一君                 小笠原貞子君                 柄谷 道一君                 下村  泰君    国務大臣        厚 生 大 臣  小沢 辰男君    政府委員        社会保障制度審        議会事務局長   竹内 嘉巳君        大蔵大臣官房審        議官       米里  恕君        厚生大臣官房長  山下 眞臣君        厚生省児童家庭        局長       石野 清治君        厚生省保険局長  八木 哲夫君        厚生省年金局長  木暮 保成君        社会保険庁年金        保険部長     大和田 潔君        労働大臣官房審        議官       谷口 隆志君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        労働大臣官房参        事官       鹿野  茂君        労働大臣官房統        計情報部情報解        析課長      中谷  滋君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○連合審査会に関する件 ○国民年金法等の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     —————————————
  2. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいまから社会労働委員会開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十一日、成相善十君及び山中郁子君が委員辞任され、その補欠として亀長友義君及び小笠原貞子君が選任されました。     —————————————
  3. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 連合審査会に関する件についてお諮りいたします。  特定不況産業安定臨時措置法案について、商工委員会に対し、連合審査会開会を申し入れることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、連合審査会開会の日時につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。     —————————————
  6. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 国民年金法等の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。小沢厚生大臣
  7. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) ただいま議題となりました国民年金法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  所得保障中心である年金制度を初め、児童母子家庭心身障害者に係る諸手当制度については、従来より充実に努めてきたところでありますが、昨今の経済社会情勢にかんがみ、これらの制度について所要の改善を行い、老齢者を初め、児童母子家庭心身障害者福祉向上を図る必要があります。  今回の改正案は、このような趣旨にかんがみ、福祉年金並びに児童扶養手当特別児童扶養手当福祉手当及び児童手当の額の引き上げ厚生年金船員保険及び拠出制国民年金物価スライド実施時期の繰り上げその他の改正を行い、これらの制度充実を図ろうとするものであります。  以下、改正案内容について、概略を御説明申し上げます。  まず、国民年金改正について申し上げます。  第一に、福祉年金の額につきましては、消費者物価上昇率を上回る一〇%の引き上げを行うこととし、昭和五十三年八月より老齢福祉年金月額一万五千円から一万六千五百円に、障害福祉年金を一級障害について月額二万二千五百円から二万四千八百円に、二級障害については月額一万五千円から一万六千五百円に、母子福祉年金及び準母子福祉年金月額一万九千五百円から二万千五百円に、それぞれ引き上げることとしております。  第二に、拠出制国民年金昭和五十三年度における物価スライド実施時期を、昭和五十四年一月から昭和五十三年七月に繰り上げることとしております。  第三に、保険料の額につきましては、昭和五十四年四月から三千三百円に、昭和五十五年四月から三千六百五十円に、それぞれ引き上げることといたしております。  第四に、いわゆる無年金者対策につきましては、過去に保険料を滞納している期間がある者について、昭和五十三年七月より二ヵ年間特例納付実施することとし、その保険料については、四千円とすることとしております。  次に、厚生年金保険及び船員保険年金部門改正について申し上げます。  第一に、スライド実施時期の繰り上げにつきましては、十一月から六月に繰り上げることとしております。  第二に、在職老齢年金改善として、最近の物価等の動向に対応し、六十五歳以上の在職者に支給される老齢年金について、全額支給対象標準報酬月額十三万四千円以下の者にまで広げるとともに、六十歳以上六十五歳未満在職者に支給される老齢年金についても、その支給対象標準報酬月額十三万四千円までの者に拡大することとしております。  また、七十歳以後も引き続き在職している者の老齢年金年金額を、七十歳の時点で改めて計算する措置を行うこととしております。  第三に、寡婦加算額をそれぞれ月額千円引き上げ子供二人以上の寡婦の場合六千円、子供一人の寡婦の場合四千円、六十歳以上の寡婦の場合三千円とすることとしております。  なお、在職老齢年金及び寡婦加算額改善につきましては、昭和五十三年六月より実施することとしております。  次に、児童扶養手当等の額につきましては、福祉年金に準じて、本年八月から児童扶養手当の額につきましては、児童一人の場合月額一万九千五百円から二万千五百円に、特別児童扶養手当の額につきましては障害児一人につき月額一万五千円から一万六千五百円に、重度障害児一人につき月額二万二千五百円から二万四千八百円に、福祉手当の額につきましては、月額五千五百円から六千二百五十円に、それぞれ引き上げることとしております。  次に、児童手当改正につきましては、低所得者に対する児童手当の額を昭和五十三年十月より月額五千円から六千円に引き上げるほか、新たに児童の健全な育成及び資質の向上に資する施設をすることができることとしております。  最後に、資金の借り入れに制限のある特殊法人等について、当該法人年金福祉事業団から住宅資金を借り入れることができるようにすることとしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。何とぞ慎重御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願いいたします。
  8. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 以上をもって、趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言願います。
  9. 広田幸一

    広田幸一君 私は、厚生年金在職老齢年金支給制限について質問をいたしたいと思います。  私のこの支給制限に対する考え方としては、最近の、定年退職になって再就職する場合の、非常にこの就職条件がむずかしくなってきております。幸いにして再就職をしましても、不安定な職場が非常に多い、賃金も非常に少ない。最近はそういった人たち生活条件が非常に悪くなってきておる。そういうようなこととあわせて、さらに共済年金等に比べましてかなり開きがある。均衡原則から言いましても、私はこの制限はこの時点で撤廃すべき時期に来ておると、こういうふうに考えるわけでありますが、そういう考え方を基調にして、この問題について質問をいたしたいと思います。  そこで、まあ今度も改正になっておるわけでありますけれども制限が二〇%、五〇%、八〇%、こういうふうになっておるわけでありますけれども、今度の改正をされるに至ったそのいろいろな資料があると思うんですが、どういうような資料もとにしてこのような改正をなさったのか、まずその資料の問題からお聞かせをいただきたいと思います。
  10. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 今度の法律改正で、在職老齢年金につきましても改正をすることにいたしまして、御提案を申し上げておるところでございます。ただ、今回の法律改正の性格でございますが、厚生年金につきましては五年ごとに収支を見直して財政計算をするようにということになっておるわけでございます。最近におきまする財政計算は、昭和五十一年に行ったところでございます。それ以後二年を経過するわけでございますので、賃金あるいは物価等の変動もございますので、若干の手直しを必要と考えたわけでございますが、財政計算をして制度的に物を見直すという立場に立った改正ではないわけでございます。ただいま申し上げましたような観点に立ちまして、在職老齢年金支給制限は十一万円を基準にしておったわけでございますが、五十一年度改正以降二年間の物価上昇等を勘案いたしまして、十三万四千円に引き上げたいと、こういうふうに考えた次第でございます。
  11. 広田幸一

    広田幸一君 もっと私は内容的に詳しく知りたいわけですけれども、また後で逐次質問するとしまして、その前に私が先ほど申し上げましたような定年退職、やめて再就職をしようとする、いわゆる中高年齢者人たちがどういうような状況に置かれておるか。そのことについて、きょうは労働省からも来てもらっておりますので、労働省の方からまずお尋ねをしますけれども、いま定年制の問題がいろいろ言われております。そういった人たち就職の場を与えるために、定年制を延ばすようにということで、国策として労働省中心になってそういう呼びかけをしておりますけれども、一体いまの全国のそういった企業における定年制実施はどういうような状況になっておるのか。これをまずお聞かせをいただきたいと思います。
  12. 鹿野茂

    説明員鹿野茂君) 企業におきます定年制実施状況につきましては、昭和五十一年に労働省実施いたしました雇用管理調査というのがあるわけでございますが、この調査によりますと、定年制実施している企業は七四・一%になっておるわけでございます。しかも、この定年制実施している企業規模別に見ますと、大企業になるほど定年制実施している企業が高くなっているという状況でございます。また、この定年制の中身について見てみますと、五十五歳の定年制をとっておる企業は四七・三%でございます。また、五十六歳から五十九歳までの定年制をしいている企業は一五・九%になっております。六十歳以上の定年制をとっておる企業は三五・九%というふうになっておりまして、六十歳未満定年制をしいている企業は大企業に多いという傾向にあるわけでございます。このように、現在のところ五十五歳定年制をしく企業というものはかなり多いわけでございますけれども、ただこの雇用管理調査実施いたしました昭和四十三年時点との比較で見ますと、昭和四十三年におきましては五十五歳未満定年制をしく企業は六三・五%であったわけでございますが、五十一年におきましては、先ほど申し上げましたとおり四七・三%というふうに、定年年齢の延長の傾向というのが見られるというふうに考えておるところでございます。  なお、その後の定年制の実情につきましては、本年一月現在の状況については、現在調査を進めているところでございます。
  13. 広田幸一

    広田幸一君 この数字を私が見まして、いまの労働省の方から報告がありましたように、大体五十五歳定年が四七・三%ですか、それから六十歳が一五・九%で合わせまして大体六〇%ぐらいになるわけですね、以上になるわけです。これを見ましてもわかりますように、民間企業に働くところの労働者人たちは、年が若くてすでに半分はその職場を去らなければならない、こういう状況になっておるわけでありますね。そういうことが私は言えると思いますし、いま答弁がなかったんですけれども、再就職の最近の定着率でございますね、いわゆる求人倍率といいますか、そういったものあわせて後で御答弁を願いたいと思います。  それからもう一つ、続いて退職金の問題でございます。定年退職金実態はどういうふうになっておりますか。このことともう一つは、賃金実態であります。賃金実態で特に中高年齢者状況はどういうふうになっておるのか。以上三つの点をあわせて御報告を願いたいと思います。
  14. 鹿野茂

    説明員鹿野茂君) 中高年齢者の再就職状況でございますけれども昭和五十一年度及び五十二年度の状況につきまして、安定所の窓口におきますこの状況を見ますと、昭和五十一年度におきまして安定所求職を申し込まれた四十五歳以上の中高年齢者は約百二十万でございます。そのうち就職をされた方々は約三十八万件になっておるわけでございます。したがいまして、就職率で見ますと三一・三%というふうに言えるかと思うわけでございます。また、昭和五十二年度に入りまして以降の新規求職申し込み件数は約百二十一万でございます。それに対しまして、就職件数は約三十二万というふうに言えるかと思うわけでございます。この就職率は二六・六%と、五十一年度に比較しましてかなり低下を見られているところでございます。また中高年齢者有効求人倍率を見ますと、昭和五十一年におきましては四十五歳以上の有効求人倍率は〇・二三倍でございます。また五十五歳以上の方々につきましては〇・一〇倍でございますが、昭和五十二年に入りましてからは四十五歳以上の方々求人倍率は〇・一九倍、五十五歳以上の方々につきましては〇・〇九倍と、最近の厳しい雇用失業情勢を反映いたしまして、中高年齢者方々に対します求人倍率あるいはまた就職率も非常に厳しい状況になっているというふうに言えるかと思うわけでございます。
  15. 中谷滋

    説明員中谷滋君) 民間企業におきまする退職金状況について御説明申し上げます。  労働省昭和五十年九月に退職金制度総合調査というのを行っております。これによりますと、常用労働者三十人以上の規模企業退職一時金制度のみを有する民営企業につきまして調べたわけでございますが、定年退職した場合のモデル的な退職金というのを調べております。これは学校卒業後直ちに入社しまして模準的な昇進経路を経た者が、昭和五十年の九月に定年退職したという場合の退職一時金でございますが、これは学歴別にとっておりまして、男子中学卒生産労働者で六百四十四万円となっております。それから、男子高校卒管理事務技術労働者、これで七百三十二万円となっております。それからさらに、男子大学卒管理事務技術労働者、この場合が七百六十七万円と、このようになっております。  それからもう一つお尋ね賃金の件でございますが、労働省でやっております賃金構造基本統計調査というのがございますが、これの昭和五十一年の調査によりますと、全労働者平均賃金が五十一年の六月の場合に十四万三千円でございました。これを年齢別に見ますと、たとえば一番高いところが三十五歳から三十九歳で十七万五百円でございます。それからさらに高年齢につきまして見ますと、五十ないし五十四歳というところが十六万六千九百円でございます。それから五十五から五十九歳が十四万三千九百円、六十歳以上が十二万千五百円と、五十五歳以上からやや賃金が低くなるというような状況になっております。
  16. 広田幸一

    広田幸一君 いま労働省の方から中高年齢者就職状況報告があったわけですけれども、いま報告がありましたように、年々周囲の経済状況の厳しい状況によって、非常に悪くなっておるという数字が出ました。それから、退職金にしましても、いま申し上げたように非常に低いわけです。私が持っておりますところの、これは労働省賃金労働時間制度総合調査、五十年にやったもんでありますが、それによりますと、全部一々申し上げる時間がございませんが、私なりに大別をしてみまして、大学卒高校卒と中卒に分けまして、千人以上の企業では平均が千百五十万円、三百人以上では八百五十万円、百人以下では六百九十万円という額になっておるわけです。大学を出たり高校を出たり、学歴によって三つランクに分けておりますけれども、それほどの差はないようでございますけれども、私が見まして、ずいぶんと低い退職金だなあと、こういう感じがいたします。  それから、賃金の問題にしましても、いま報告がありましたが、私の持っておりますところのこの資料、これも賃金構造基本統計調査がやったものでございますけれども年齢別に見ますと、十八歳から六十歳までを一応見まして、五十歳から五十四歳のころが一番ピークで、それからずうっとだんだんと年がいくに従って非常に落ちておるわけです。こういう数字が出ております。こういう調査を私は今度の改正をする場合に、当然厚生省としてはこのような調査もとにして均衡の上からも調査をされておると思います。そうしなければいけないと思うわけでございますが、そこで、私はいまこの三つ四つ資料もとにして何を言わんとしておるかということは、いわゆる若くして五十五歳で半分が職場を離れていかなければならない。しかも、退職金は千人以上の大企業でも千二百万から千三百万、しかもこれ大学卒業であります。高卒で三百人以下のところは六百五十万円というような低い額になっておるわけです。賃金がこういう数字でございますから、在職中でも安い賃金で私は抑えられておったと思います。うまくいって再就職しましても、二度の勤めでございますから、いわゆる現職のときよりもずいぶん安い賃金をもらっておったと思うわけです。ですから、先ほど来から言っておりますように、最近の厳しい不況によりまして、再就職をしましても日雇いとかパートのような不安定な職場が非常に多い。一方、わずかな退職金をもらいまして、その退職金を貯金をして金利によって生活をしているという人もあるわけですけれども、それも最近どんどん金利を無情にも引き下げられていると、こういうような、私は中高年齢者——職場を離れて再就職をするしないにかかわらず、こういった中高年齢者の皆さんの生活実態というものは非常によくない、私はこういうふうに思うんですけれども厚生省としてはこの在職老齢年金支給制限を決めるに当たって、私が先ほど来から労働省のいろんな報告もとにして指摘しておる内容についてどういうふうに分析をしてこられたか、この点をお聞かせいただきたいと思います。
  17. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) ただいま労働省の方からいろいろ数字の御披露がございましたけれども、私どもの方も保険料を取るたてまえから、被保険者報酬を把握しておるわけでございます。これは労働省数字と大体同じでございますが、五十二年の三月末現在で私ども把握しておりますのは、全被保険者平均でございますと十四万二千円でございます。五十歳から五十四歳までの方につきましては、この全平均より高くて十六万九千円でございますが、その後だんだん下がってまいりまして、五十五歳から五十九歳までが十五万五千円、六十歳から六十四歳が十三万九千円、六十五歳から六十九歳までは十三万六千円、七十歳から七十四歳、ちょっと一つこぶがございまして、十四万一千円というふうに少し高くなりますが、七十五歳から七十九歳になりますと十二万三千円というふうに、次第に低くなっておるわけでございます。私どももこういう状況を勘案いたしまして、この在職老齢年金というものをつくったわけでございます。先生御承知のように、厚生年金の場合には六十歳になることと退職すること、二つの要件を満たした場合に老齢年金が出るわけでございますが、高齢者の場合は在職しておられても報酬状況がよくないということでございましたので、昭和四十一年に六十五歳以上の方につきましては、在職をしておっても老齢年金を出すということにいたしたわけでございます。その際、また六十五歳以上の方になりますと大体二つに分かれまして、管理職群の方もおりますので、一定の基準を置きまして、それ以上の給与をもらっておる方の場合には二割カットしていただくと、こういうことにいたしたわけでございます。しかし、六十五歳以上の方につきまして、在職老齢年金をこしらえたわけでございますが、その後の推移を見ますと、やはり六十五歳にならない、六十歳から六十四歳までの方につきましても、先ほど先生のおっしゃられましたような、職場を変わると賃金が低くなるというような現象がございますので、昭和四十四年に六十歳から六十四歳の方につきましても在職老齢年金を出すということにいたしたわけでございます。ただこの際、年金立場からいたしますと、どうしても年金だけで生活をされる年金受給者の方のバランスを見ざるを得ないということからいたしまして、現実に出ておる年金よりやや高い、制度が目指しております標準年金一つ目安といたしまして、給与とあわせて標準年金になるまでを一つ目安としまして、在職老齢年金を出すようにいたした次第でございます。
  18. 広田幸一

    広田幸一君 局長、いまおっしゃった標準年金ですね、あれは幾らですか。
  19. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 五十一年改正のときに、標準年金は九万三百九十二円でございました。これが物価スライドをいたしますので、現在十万円になっておるわけでございますが、五十一年度の標準年金九万円に対しまして、従来は標準年金までということでございましたけれども、五十一年度の改正では、標準年金よりさらにランクを上げまして、十一万円まで在職老齢年金を出す基準として引き上げたわけでございます。今回の改正は、そういう原則に立ちまして、先ほど申し上げましたように、その後の物価状況を勘案いたしまして、この十一万円を十三万四千円にいたしたということでございます。
  20. 広田幸一

    広田幸一君 いま、局長の方から支給制限をずっと緩和してきとるわけですね。そういうことについていろいろ経過をお話しになったわけですけれども、問題は、厚生省が、国が全く努力していないということを私は言っておるわけではないわけでして、もっと考えるべきではなかったかということを言っておるわけでございまして、実は私も勉強しておりましたら、こういうものが出てきたわけです。これは昨年の十二月十三日に出とる書類でございますけれども、これは厚生省局長もしかとごらんになっていらっしゃると思いますけれども年金制度基本構想懇談会中間意見というのがございます。この中に私が思っておることがぴったりと書いてあるような気がするわけです。私が思っておるというのはえらい僭越でございますけれども、ちょっと読んでみますと、この中に、「雇用政策と年金政策の有機的連携の必要性」ということが書いてあるわけです。私はここがいま厚生省年金政策を考える、片一方の雇用はうまくいってない、片ちんばなかっこうになっておるではないか、ここをこれは指摘をしておると思うのでありますね。皆さんに知っていただくためにもちょっと読んでみますと、「今後の労働力人口の高齢化傾向を踏まえた上で、長期的な高齢者雇用対策の確立が急がれる必要がある。労働の意志及び能力のある者の労働市場からの早期引退は、単に、年金財政に大きいインパクトを与えるだけでなく、長期的には社会的、経済的に大きな損失であり、このような観点から高齢者雇用機会の増大は緊要の課題であると言うことができる。」、次でございます。「しかしながら、一方において、先に述べた現下の厳しい高齢者雇用情勢の下で、在職老齢年金がこれら高齢労働者生活の保障に大きな役割を果たしていることも無視することはできないものと考えられる。」、ここでありますね。「わが国においては先に見たように今後長期的に高齢者を取り巻く厳しい雇用環境が予想されてており、」将来にわたってこういうことが予想されるということを書いておるのです。「高齢者雇用対策の積極的な推進と並んで、年金政策の面でもこれら高齢労働者生活安定のための措置を推し進めていくことの是非について検討を行う必要があろう。現在の在職老齢年金制度についても、従来その給付体系のあり方と雇用政策との関連はあまり関心が払われなかったが、雇用政策との連携という観点から検討を行っていく必要があろう。以上のように雇用政策と年金政策との関係は、両者あいまって高齢者生活を安定するものと思料される。しかしながら、従来は、両政策の関連についての実証分析、理論分析の蓄積がほとんどないところから、今後の労働力人口の高齢化を踏まえた分析、研究が緊要であることを指摘しておく必要がある。」「研究が緊要であることを指摘しておく必要がある。」、こう書いてあるわけですね。これは去年の十二月に出ておるわけですよね。こういうことが、私がさっき言っておるようなことが厚生省の中で、このような趣旨が本当に生かされておるのかどうなのか。きょう労働省がお見えになっているわけですけれども、片一方では定年退職になるとなかなか職場がない、賃金も安いと、そういうことを考えながら、一方は、この在職老齢年金支給制限というものを考えていかなければならない、こういうことが特に指摘してある緊急の要務だと言ってあるわけですね。このようなことが、私は厚生省の中でどのように生かされておるかということをお聞きしたいわけです。
  21. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) ただいま先生から御指摘のございましたのは、厚生省年金制度基本構想懇談会の中間意見でございまして、一昨年の五月から私ども年金の専門家の先生方にお願いをいたしまして、いろいろ御研究をいただいてきたわけでございます。それで、昨年の十二月に中間意見をいただきまして、この連休明けからさらに再開をしていただいて、一年ぐらいのうちに詰めていただくということであるわけでございます。それで、この年金制度の基本構想、将来構想を考えます上に、今後の人口の老齢化ということが非常に大きな問題になりまして、まあ先進国のかつて経験したことのないスピードで、なおかつ、先進国の経験したことのない大ぜいの老人を抱えるということでございますので、そういう点から将来構想を考えなければならないということを御検討いただいたわけでございます。その際、ただいま厚生年金の場合には六十歳から年金を支給するというたてまえになっておるわけでございますが、人口の高齢化が進むにつれて、六十歳で年金を支給するということでは財政がもたないというふうな推計がなされておるわけでございます。この六十歳を先進国のように六十五歳にするということが一つの課題になるわけでございますが、これは先生御指摘のように、雇用条件とかそういうものなしに、六十歳から先進国と同じように六十五歳にするということはできないわけでございます。  そこで、まずりっぱな年金を出すためには、支給開始年齢を六十五歳ぐらいに上げなければならないけれども、その間の雇用をどういうふうにしていくかということが大きな問題になってくるわけでございまして、年金制度の将来を考える上には、雇用問題ということにどうしても突き当たるわけでございます。さらに在職老齢年金は、現在六十歳からの方に一定の条件で出しておるわけでございますが、こういう厳しい経済情勢になってまいりますと、仮に就職ができましても、十分な処遇は得られないということがあろうかと思うわけでございます。その際、在職老齢年金の果たす役割りということも、もう一回考え直してみなければならないのではないかという御指摘なのでございますが、この中間意見にも挙げられておりますように、そこら辺の研究が私どももまだ不十分であったわけでございますし、また、先生方もさらにそこを詰めてみようということであるわけでございます。在職老齢年金一つは、経過的には、いまの高齢者雇用状況から考えまして、少し手厚いものにしていかなければならないんじゃないかという見方がある一方、たとえば、現在在職老齢年金にいろんな制限がかかっておりますが、この制限を仮に撤廃いたしますと、現在厚生年金保険料は千分の九十一でございますが、千分の二十七を必要とする非常に大きな問題にもなるわけでございます。また、やはり雇用の問題は雇用サイドから解決していただくべきで、年金が手を出すべきではないという意見も現実にはあるわけでございます。そこら辺を踏まえまして、さらに検討を重ねて私どもも勉強してまいりたいと思いますし、この基本構想懇にも詰めをしていただきたい、かように思っておる次第でございます。
  22. 広田幸一

    広田幸一君 私、局長の話を聞いておりまして、確かにそう一遍にはうまくいかないと思いますけれども、この年金財政事情のことが非常にウエートを持たれておるように思うんですけれども、わかるのですけれども、私は後でもっと言いますけれども、やっぱり大臣もおっしゃるように、公平の原則均衡を保っていくという、そういう考え方からするなら、利はもっと財政の問題もありましょう。財政も現在は五十三年度の末によると一応のあれですけれども、二十兆円の積立金になるわけでしょう。そうして、一方においては、年金制度の根本的な改正をもうことしか来年しなければならないわけでしょう。ですから、私はそれを持っておられない多くのそういう人たちがある、その現実をもっと考えてあげなければならないではないか、こういうことを私は言っておるわけです。私はこれをさらに読んでおりましたら、厚生年金の歴史というものがあるわけです、こう書いてあるわけです。「厚生年金は、昭和十七年の労働者年金保険が成立して以後、退職を要件として一般の勤労者は五十五歳」「昭和二十九年の厚生年金保険法の全面改正を契機に、二十年間の経過期間をおいて男子の一般勤労者について五十五歳を六十歳に引き上げ」ておるわけですね。厚生年金もあのときは五十五歳であったわけです。五十五歳になれば定年でやめても、私が先ほど申し上げましたように、五〇%のいま定年者がおるわけですから、ですから二十九年のときは、その当時の制度ならもらえるわけです。ところが、このときに変えておるわけです、六十歳に。私はいまから根本的な年金制度支給年齢を統一しなければならないという時期に、これをもとに返して五十五歳にいけと、そういうことを言っておるわけじゃないんですよ。ただ、歴史的に見ますとこういうふうになっておるわけです。そのときの理由がこうなっておるわけだから、私はやっぱりいけないと思うんですよ。これは将来の年金受給者数の増大及び保険財政上の理由を考慮したものと言われておるということでしょう。ですから、そういう民間に働くところの労働者の皆さんの生活条件が悪いのだと。だから、守ってあげようという考え方を一歩乗り越えて、財政事情が悪くなる、受給者がふえる、こういうところに私は過去の歴史的なものを考えてみると、もっと考えてあげていいではないか、そういうことを私はこれも言っておるというふうに思うのでありますが、この点は局長どう解釈されますか。
  23. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) ただいま御指摘のように、昭和二十九年に改正をいたします前は、五十五歳から年金を出すということになっておったわけでございます。これは俗に人生わずか五十年というような時期のことでございまして、その当時平均余命が延びるということが見通せましたので、それに対応して二十年間の経過期間を設けまして、五十五歳から六十歳に引き上げたということでございます。現在の時点は、さらに、非常に結構なことだと思いますけれども、国民の平均余命というものは非常に延びてまいりまして、現在でもうすでに男子、女子、世界最高水準に近づいておるわけでございます。そういうことになりますと、これからの年金というのは、大ぜいの年金受給者を抱えていくということになるわけでございまして、厚生年金の場合、現在のままいったらどういうふうになるかということを推計いたしてみましたのでございますが、現在千分の九十一の保険料を千分の二百ぐらいにしなければならないんじゃないかという推計が出てきておるわけでございます。一方、ドイツはいま千分の百八十でございます。外国の制度を必ずしも日本とすぐ比較できないんでございますが、ドイツの制度は比較的よく似ておるわけでございますが、千分の百八十のところで非常に往生しておりまして、物価スライドの時期も繰り下げるというようなことをいたしておるわけでございます。  そういたしますと、やはり将来を考えて、現在、年金の支給開始年齢が六十歳であるのを、これを、時間をかけてしなければならない問題でございますけれども、やはり外国並みの六十五歳にするというようなことは避けられないだろうと思うわけでございます。しかし、これを雇用の問題と切り離して年金だけでやるわけには当然いかないことでございますし、またその際、在職老齢年金もせっかくつくった制度がうまく機能していかなきゃならないと思うわけでございます。まあ外国の場合には、実は在職老齢年金みたいな制度はないと申し上げてもいいんじゃないかと思いますが、この在職老齢年金の役割りをどういうふうに果たさせつつ、また雇用等の条件が整備されるのをにらみながら年齢を変えていくということが、これからの私どもの課題だと思っておるわけでございます。ただ、御指摘の点は、一番その際の重要な問題でございまして、この基本懇もさらにそこを詰めてやろうということになっておりますので、できるだけ勉強してみたいと思っております。
  24. 広田幸一

    広田幸一君 私がいま、厚生年金が二十九年から五十五歳が六十歳になったということを言ったのは、まあわりに、その当時はその当時の事情があり、今日は今日の事情があるわけですけれども、そういう厚生年金を受ける人たちの条件は、私が前段から申し上げておるように——労働省の人はもう結構でございます。御苦労さんでした。——悪いんでね、ですから、そのような歴史をさかのぼってみても、やはり考慮してあげるべき要素というものがあるではないかということを私は言っておるわけでございまして、局長の方からこのことも非常に大切なことだから、将来考えていくということでございますので、ひとつこういうことを織り込んで将来考えてもらいたいと思います。  それから、私は前段にも申し上げたんですけれども、共済年金制度と比較した場合に、厚生年金制度はかなり格差があるわけです。これは、共済年金制度には歴史的な経過がありますから、私は共済年金が高過ぎると、そういうことを言っておるわけじゃないわけです。それはそれとして、やはり現実問題として、共済年金制度におった人がやめて民間の会社に入れば、両方合算をしてまるまるもらえるわけでしょう。そういうところのやっぱり格差の問題を、私はこの時点においては、こういう規制をする場合には、制限を加える場合には考えるべきではないか。誤解せぬようにしてもらわぬといけぬですけれども、やはりもっと厚生年金引き上げていく。私は財政上の問題を言っておるわけですけれども、国は国民全体の均衡の上に立って財政処理を考えて、財政調整を考えるべきであって、それは厚生年金の方にいま出しておるいわゆる補助率ですか、事務費等、ああいうのをもっとよけい出してやればいいわけですからね。私はそういう意味で、こういうような共済年金制度との格差を考えながら、支給制限をもっと緩和するというか、後でもっと言いますけれども、そういう考え方が私はあっていいではないかと、こういうふうに思うわけでありますが、大臣どうでございましょうか、私の考え方は間違っておるでしょうか。
  25. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 共済と厚生年金の比較の問題でございますが、二つに分けて申し上げなければいけないかと思いますが、一つ制度の立て方なんでございますが、制度のこの問題に関する立て方は、むしろ共済組合の方が厳しくて、厚生年金の方が緩いというふうな見方もできるわけでございます。  と申しますのは、いま日本の保険が八つに分れておりまして、それぞればらばらでございます。そこで、その年金を出すというのは、先ほど申し上げましたように、退職をすれば年金を出すということでございますが、ひとつ言いかえますと、厚生年金の方は厚生年金から離脱すると年金が出る、共済組合の方は、共済組合から離脱すれば年金が出ると、こういう形になっておるわけでございます。そういう点では全く同じであるわけでございます。  さらに、厚生年金の場合には一定の条件がございますけれども厚生年金から離脱しない場合にも、在職老齢年金というものを出すことにしておるわけでございますが、共済組合の場合には、共済組合を離脱しないと年金は絶対に出ないと、こういう形になっておりまして、その限りでは厚生年金の方が弾力的にできておるということになろうかと思います。  制度の立て方は、いま申し上げましたように、同じと言ってもいいわけでございますが、今度は実際問題でございますが、共済組合を離脱して厚生年金職場に来るというのは通例幾らでもあるわけでございます。ところが、厚生年金を離脱して共済組合の職場に行くということはまれにしか起こらないということになろうかと思うわけでございます。したがって、それぞれの保険集団を離脱すれば年金がもらえるわけでございますので、共済組合を離脱して厚生年金職場に来れば年金が出る。厚生年金の方も、厚生年金を離脱して共済組合関係の職場に行けば厚生年金年金と給料が両方もらえるわけでございます。  もう一つ、たとえば厚生年金を離脱しまして共済組合の職場に働くことはめったにないと思いますが、厚生年金を離脱しまして国民年金の方に入っていきますと、そこでまあ自営業者をやったり何かします場合には、あるいはまた五人未満職場で働く場合には、厚生年金の保険から離脱して国民年金職場なり職域に行きますんで、そこの収入と厚生年金年金が両方もらえると、こういう形になっておるわけでございます。  ですから、制度の立て方としては各保険それぞれ同じことをやっておるわけでございますが、現実にはその人の流れが民間から共済に行く人はほとんどない。共済から民間に来る方はある。厚生年金の場合には、厚生年金から国民年金の方に行くということは相当多い例で、その場合には両方一緒に併給されると、こういうことなわけでございます。  それで、この問題は、やはり官民格差の問題ということ、そういう側面もございますし、それから今後老齢者がふえてまいりまして、一つ一つの保険はもちろんそうでございますが、年金全体としても給付費がふえていくということで、やはり調整をしていかなければならない点だというふうに思っておるわけでございます。
  26. 広田幸一

    広田幸一君 確かに、いろいろなあれがあるわけですから、官民格差という言い方はあれとしても、いろいろ制度上にあれがあるわけですから、それを一本にしていこうという、局長が最後に結ばれたそのことは私よくわかっておるわけです、いずれそういう時期になると思うのですけれども。いまおっしゃった共済年金の場合で、やめて、共済年金の適用の事業所に行くというのはほとんどないと思いますね、ほとんどないと思うのです。共済年金が今度行けば、これは国民年金厚生年金職場に行くと思うのですね。ですから、制度としてはそういうふうな言い方が言えますけれども実態としては本当に格差というか、あるんですよ、それはね。ですから、私は共済年金制度をこうせいということではなくて、何回も私が言っておりますように、後で言いますけれども、七万円以下は二〇%というような、そういうカットしないで、あれをもう少しゼロにするとか、まるまる給付するとか、そこらの配慮があってしかるべきではないかと、こういうことを言わんとしておるわけでございまして、こういうような比較論についてもやっぱり検討してもらわなきゃならぬ。私は、最近の公社、公団等にいろんな人たちが行く、そこではあれですよ、私の承知しておるのでは公社、公団に行った場合の給料と年金とを合わせて合計の金額が、やめるときの金額と同じような金額に、とんとんになるようなことを基準にして給料を決めておるというのが今日の公社、公団の各地方公共団体の実態であろうと思うんですよ。私はそのことの是非は別として、そういうふうなことを片一方ではやられておるのだから、もっと民間の安い賃金でわずかな退職金で来た、そういった人たちを、もっと国の力によって金がないところは国が出してやって、そうして守ってあげなければならないということを私は言っておるわけです。大臣どうでしょうか、私の見解は。
  27. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 在職老齢年金支給制限、これはできるだけ実態を考えて撤廃なり、あるいはそれができない場合に逐次改善をしていくべきだという御意見は、方針としては、方向としては私もそう異存があるところではございません。ただ、収入のない方とある方とのことを考えますと、やっぱり別途賃金収入がある場合には若干の制限はこれはやむを得ないのじゃなかろうかと思いますし、それから、いま先ほど説明を申し上げましたように、六十歳以上の方の再就職の場合の平均賃金が、大体今度の改正の方向の十三万四、五千円のところでございますから、平均方々は大体完全に支給になると、こういうことでもございますので、これを平均以上の方にも持っていくということも一つ考え方でありますが、大分前進をした今度は考え方じゃないかと思いますので、これらを考えまして、逐次今後努力をしてまいりますけれども、今日のところはこれで御了承いただきたいと思うわけでございます。
  28. 広田幸一

    広田幸一君 それでは、私は具体的な内容からちょっと質問をしてみたいと思うんですが、今度のこの改正、現行から新しいのに変わっていくわけですけれども、私はこの表を見まして二、三疑問があるわけです。具体的に数字を挙げてみたいと思いますから、私が言っておるのが違っておったら、どんどんひとつ指摘をしてもらいたいと思います。いずれにしても皆さんをよくするような内容にしていかなきゃならぬわけですから。現行の制度を見まして、標準報酬が九万五千円の人で年金額が十万円と仮定をします。この場合には、これは五〇%カットになっておりますから、十万円が五万円になるわけですね。そうしますと、九万五千円と五万円をプラスしますと十四万五千円ということになります。それから、これをAとしまして、今度Bの人がAの人よりも標準報酬が千円多い九万六千円になった場合、この人はしかも年金がAの人と同じように十万円であったと仮定します。その場合に、これは八〇%カットでございますから二万円ということになるわけですね。そうしますと、これを合計しますと十一万六千円となります。同じような年金が十万円であって、給料が千円違うことによってAとBとの開きが二万九千円ということになるわけですね。私の計算が間違いでありますかどうか。そうしますと、同じような年金をもらいながら、職場によって千円高いことによって、その人がもらう金が月に二万九千円も低くなるというのは、制度制度としても、もらう本人としては大変なこれは矛盾だし不合理だと思うのですが、こういう点はどうでございましょうか。
  29. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) ただいまの御説例はちょっとそのとおりかどうか、いま確かめておりますけれども、そういう現象が実は起きるのでございます。と申しますのは、給料のランクで二割、五割、八割というふうに決めておりますので、その境目のところでは逆転現象がいまの制度では起きるわけでございまして、先生の設例もそういう点をつかれた設例じゃないかと思うわけでございます。これにつきましてはいろいろ議論がありまして、何とかそういう逆転現象の起こらない方法を考えようじゃないかということで、社会保険審議会等も御議論いただいておるわけでございますが、実は現在三段階でございますけれども、これは五十年の改正の前は四段階であったわけでございます。二割、四割、六割、八割の四段階にしておりまして、これは段階を刻めば刻むほどその逆転現象が起こりにくくなるし、起こった場合も額が少なくなるわけでございますが、これは関係者の方々のお考えもあり、また、二割、四割の人を五割とか八割のランクの高い方の支給率にしたいということもございまして、わかりやすくするということで三段階に直したわけなんでございます。それで従来からある逆転現象が、少しまた千円で出てくるというようなことになったわけでございまして、問題があることは承知しており、また、関係者の方々の御議論もいただいておるところでございますが、なかなか名案が出てこないというのが現状でございます。
  30. 広田幸一

    広田幸一君 やっぱりそういう現象があるんですね。いままで、そういった苦情というものは、矛盾というものが、その受給者から、該当者から出たようなことはありませんか。
  31. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 該当者の方からもいろいろ御相談がございますし、先ほども申し上げましたように、社会保険審議会の先生方も気がつかれておりまして、何とかしたいということなんでございますが、非常に目盛りをたくさんにすればほとんどなくなるわけなんでございますけれども、それも実際問題としては非常にわかりにくくなるというようなことで、研究課題になっておるというところでございます。
  32. 広田幸一

    広田幸一君 確かに、作業の面は目盛りをずっとしていけば大変な作業だろうと思うんですけれども、もらう本人にとっては大変なんですよ。私はそう思いますね。同じような人が二万九千円も月に違うということは、これは大変なことですよ。ですから、それはもしもこういったことで制度的に該当者の人が訴えを起こしたというようなことを仮定した場合にはどうなりましょうか。
  33. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 裁判所の判断の問題でございますけれども、法律で決まっておりますので、それは大丈夫なんじゃないかというふうに思います。
  34. 広田幸一

    広田幸一君 大丈夫というのはおかしい。  それでは、いまそういう矛盾もあるので、委員会等で十分にその矛盾をなくするためにいま検討しておるということでございますね。いずれ、そういう矛盾がなくなるようになると、こういうふうに確認してよろしいわけですね。
  35. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) この問題につきましては、すでに先生方から御指摘があり、また、研究しておるわけでございますが、わりあい——わりあいと申しますか、はかばかしく解決しないのは、うまい代案が見つからないということなんでございます。先ほど二割、四割、六割、八割の時代があったということを申し上げましたけれども、今度の二割、五割、八割というやり方にしますと、六割の方が八割になるとかあるいは四割の方が五割になるとかというようなメリットも実はあるわけでございまして、何かいままでの考え方と違ったようなアプローチをしないと解決つかない問題かと思いますけれども、課題にもなっておりますので、せいぜい知恵をしぼってみたいと思っております。
  36. 広田幸一

    広田幸一君 もう一つ、この表を見まして感じましたことは、これも間違っておれば指摘してもらいたいと思いますけれども、七万円未満の人は一律二〇%カットされることになっておりますね、そういうことですね。そこで、標準報酬が五万円と仮定します、年金が五万円としますと、合計しますと九万円ということになるわけでございますね。九万円で今度は生活できるかという問題が出てくるわけですが、先ほど局長おっしゃった十万何ぼだったですからね、そういうものからすると低いようなことがあるわけですが、もっと標準報酬が、いま全体平均が理論的には三万二千円ですか、そういうふうになっておって、実際四万円だろうということでございますが、四万円としまして、その人の年金が仮に四万円であった場合は七万円というようなことにもなるわけですね。ですから、私はこの七万円以下に抑えておるという——七万円以下を二〇%にしておるというのはどういうことなのか、やはりそういった最低の生活を保障してあげなけりゃならぬではないかということになれば、二〇%のカットというものは撤廃してしかるべきではないか、こういうふうに思うんですけど。
  37. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 現在の標準報酬は、いまお話にございましたように、一番下は三万円というランクがあるわけでございます。しかし、年金をはじきます場合には、その方の一生の標準報酬平均をとりますんで、必ずしも年金額がその三万円で計算されるということではないわけでございます。現在に至るまでの全経歴の標準報酬を基礎にいたしまして年金額をはじきますので、まあ高齢になられて、三万円というのはまず——先ほど申し上げましたように、平均で申し上げましても十三、四万にはなっておりますんで、三万ということはまず余りないんじゃないかと思いますけれども、過去の標準報酬等も勘案してその年金額は決まっておりますので、極端な例は出てこないと思っておるわけでございます。  そこで、その二割カットでございますが、先ほど来申し上げておりますように、やはり年金だけで生活しておられる方とのバランスを考えますと、年金額を若干カットさしていただくということにならざるを得ないかというふうに考えておるわけでございます。
  38. 広田幸一

    広田幸一君 いま局長答弁によりますと、年金だけで食っておる人との均衡上の問題をおっしゃっておるわけですね。まあ私はいまのこの例を言いますときに、やっぱり七万円とかいうような数字になるわけですから、七万円で生活するというのは大変なわけですから、年金だけで食べておるという人もあるでしょうけれども年金で十何万円で食っておる人もあるわけでございまして、ですからここらのところは、何か私感じますのに、どのランクにもみんなにとにかく何ぼかカットしておかなきゃいかぬという頭が先に立っておるような感じがするわけですがね。退職老齢年金だから一文もやるべき筋合いではない。しかしながら、生活実態を考えるから、こういうふうに制度を設けておると、そういうことが頭に私は先に立っておるような気がするわけです。私が終始言っておりますのは、やっぱり六万円、七万円じゃ食えないではないかと、そういう人たちをもっと考えてあげたらどうかということを言っておるわけでございまして、まあきょうここで二〇%のカットをやめなさいと言っても局長、大臣が、よろしいということにはならぬと思いますけれども、私が申し上げた趣旨をひとつ御理解をいただいて、将来の検討の事項にしてもらうということには相ならぬでしょうか。
  39. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 在職老齢年金につきましては、先ほど御指摘のありました中間意見でも研究していこうということでございますので、私どもも勉強してまいりたいと思いますが、基本的には先ほどもちょっと申し上げましたように、年金のサイドから賃金政策をやるということはできないと思うわけでございます。年金権が発生をしておってさらに働いておられるという場合には、退職さえされれば年金がストレートに出るわけでございます。そういうことで、退職されてない、働いておられる方が、御自分がもらえる年金をいわばたな上げにして働いておられる、しかし、その賃金等の処遇はよくないという場合には、年金のサイドから年金受給者として支えをすべきではないかという考え方に立っておるわけでございますので、やはり年金だけで生活をされていく方とのバランスというのは、どうしても見ざるを得ないんじゃないかというふうに考えております。
  40. 広田幸一

    広田幸一君 もう一つ私、問題があるように思うんですけれども、これは、いわゆる再就職した場合の賃金の決定でございますけれども、これはまあ経営者が給料を決めていくわけですけれども、経営者がみんな素直に考えてくれればいいわけですけれども、この人が年金を何ぼもらっておるというようなことを勘案をして、その人がこれだけの能力があるにもかかわらず正当な評価をしないで安く見たりするというようなことが、私は起こり得ると思うんですけれども、そこらの配慮については、これを決定なさるときにどういうようなことが考慮されたかどうか。
  41. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) いまの問題も、正直に申し上げましてよく聞かされることでございます。それで、在職老齢年金のあり方をいろいろ検討していただく際にも、そういうことが問題として提起されまして、非常に厳格に物事を考えられる先生は、むしろ在職老齢年金はやめた方がいいんじゃないかと、在職老齢年金があるために高齢者の方の賃金がそのあるべきところにいかないという主張もあるわけでございます。実際問題として、今度の法律改正の御提案のときにも、そういう議論があったわけでございますが、まあ非常に表現が悪くなりますけれども年金があるので賃金を少し安くして雇おうかというのは、ある意味ではそういう方の雇用の場がそれでできるという面もあるのではないだろうかと。今回はそういう基本的な問題までいかないで、それなりの機能を果たしていると考えて十一万円を十三万四千円に引き上げようというような関係審議会の御意見をいただいた次第でございまして、これも一つの大きな問題というふうに思っております。
  42. 広田幸一

    広田幸一君 老齢年金の問題はこの辺で終わりたいと思いますが、冒頭言いましたように、私の感じとしては、まあいろんな周囲の条件が整えばそんなに無理言わないわけですけれども、周囲の条件が悪いからして、今日撤廃の方向を考えたらどうかということを私は主張しておるわけでありまして、まあいろいろ年金制度そのものの本質的な性格があるわけですから、制度としての趣旨があるわけですから、一遍にはいかないと思いますけれども、私が申し上げた趣旨をひとつ十分に御理解いただきまして、できるだけカットの率を少なくしてあげると、こういうふうな方向でひとつ今後考えてもらいたいと思いますし、それから、いまありました二、三の矛盾な点は厚生省の方もすでにお気づきになって、先生方、関係者の皆さんで御検討なされておるということでございますから、そういうことが一日も早く解消するように御努力いただきたい。  私、終始言いましたことは、いずれにしても最近のこういった人たちは悪い条件にあることは間違いないわけですよね。そういう意味で、私は、一層厚生省が前向きなひとつ制度改正に向かって努力していただきたいと、そういうことをお願いをしてこの問題終わりたいと思いますが、ひとつ大臣の、まあ私のそういった考え方に対しての所見を承って、この問題を終わります。
  43. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私ども、この在職老齢年金支給制限改善をしていったり、あるいは撤廃の方向を考えたりいたしますと、どうもそれだけ高齢者賃金の抑制の効果が逆に働いてくるということも考えなければならぬ。しかし私どもは、この年金制度の方から賃金問題をどうも考えていくわけにもいきませんが、そういう矛盾点等をあります。  それからもう一つは、老齢年金というのは、生活保障といいますか、生活を保障するということよりは、現在のところはやっぱり所得保障でございまして、生活全体を年金でカバーをするというところまでなかなかいっていない。やっぱり、一定の所得保障という考え方に立脚しているということ。それから、逐次改善はもちろん考えなきゃいかぬとは思いますが、大幅にやるというようなことになりますと、たとえばこれを撤廃をいたしますと、比較的年齢の低い階層、それから高い階層、全部ひっくるめて考えますと、相当の金額、恐らく二千数百億の財源が必要になるだろうと思うんです。そういたしますとこれが料率にはね返ってくる——国庫負担もちろん別にしまして、料率にはね返る面が千分の二十七、八になってくるという点も、やはり一方においては考えておかなければならぬわけでございますので、いろいろそういう支障を来すような面もありますが、おっしゃるように改善の方向だけは逐次努力をしていかなきゃいかぬことは事実でございますから、御議論を十分踏まえましてこれからも逐次改善をさしていただきたい。ただ、大幅に改善が一挙にはいま申し上げたような事情でなかなかできないということも御理解いただいて、ただ、私どもとしてはそれらの改善に努力することはここで申し上げておきたいと思います。
  44. 広田幸一

    広田幸一君 次に、一点お尋ねしますが、いまの在職老齢年金制度の問題については、昨年の委員会の附帯決議は、この制度制限について緩和をせよという意見であったわけですけれども、ことし衆議院の方から回っております——私は論議はどういう論議あったか知りませんけれども、附帯決議だけを見ますと、あり方について検討せいということになっておりますからね。ですから、ちょっと一歩進んだといいますか、本質的に入っておるという感じがするわけですから、そのことも敷衍をして申し上げておきたいと思います。  物価上昇によるスライド実施についてお尋ねをしたいと思います。今度の改正案によりますと、物価スライドの時期が厚生年金の場合は五十三年の十一月を六月に繰り上げる。それから、国民年金の場合は五十四年の一月を本年の七月に繰り上げるというふうになっておるわけでありますが、これは歴史的に見ますと、昨年も同じような時期に改正になっておるわけですが、ずっとこれを調べてみますと、その前が八月だったですかな、ずっとなっておるわけですが、なぜこういうふうに変わっていくのか、何を根拠にこういうふうになっておるのか、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  45. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 厚生年金で申し上げますと、法律は十一月からスライドをするという規定になっておるわけでございます。法律の規定でございますと、前年度の消費者物価が五%以上上がった場合には、十一月からスライドをするということになっておるわけでございますが、オイルショックの後、法律が一つ目安として考えております五%をはるかに上回るような消費者物価の騰貴があったわけでございまして、この十一月というのはできるだけ繰り上げようということで八月実施ということを何年か繰り返してきたわけでございます。法律の規定どおり十一月実施したことは、法律の規定は四十八年に入りましたものですから、一遍もなくてきたわけでございます。昨年も八月実施ということで御提案を申し上げておったわけでございますが、昨年の予算の審議の段階で与野党がいろいろ御相談をなさいまして、二カ月繰り上げるということが決まった次第でございます。本年はその六月を踏襲さしていただいておるわけでございます。
  46. 広田幸一

    広田幸一君 結局、これはそういう物価の上昇というか、そういうことを考えて五十一年のあの法律の改正のときには、こういうふうになっておるわけですけれども物価の上昇等を考えてこういうふうに変更したわけですね。私は、最近の国民生活実態からいってもう少し、ついでというわけでありませんけれども、これをもっと上げる。たとえば、五月にし六月にするという、そういうようなことはできないものだろうかということを、私自身が考えるわけです。  昨年のいわゆる物価上昇というのはいつ決まるんですか、これは。
  47. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 例年、四月末か五月初めに確定をいたします。
  48. 広田幸一

    広田幸一君 そこで、これを時期をもっと早めるというようなことはお考えにならなかったでしょうか。
  49. 大和田潔

    政府委員(大和田潔君) 物価スライドの時期の繰り上げ、先生おっしゃいましたように厚生年金の六月を五月にする、国民年金の七月を六月にするといったようなことにつきまして、実は私ども業務課を中心にいたしまして非常に何遍も検討会議をしたわけでございますけれども、どうしても事務的に間に合わない、こういうような結論でございます。  やや技術的になるわけでございますけれども御説明申し上げますと、物価スライドが確定いたしますのが、ただいま年金局長から話がございましたように四月の終わりまたは五月の初め、こういう時期でございます。それから、物価スライド年金額支払いのための新プログラム、これを作成いたしますには、どうしてもその時期から一カ月半かかる、こういうようなことでございます。そういたしますと六月の半ばと、こういう時期になってしまう。六月の半ばにならなければ新プログラムの作成ができない。そういたしますとこの時期、六月という実施時期を繰り上げるということが事実上困難ということになるわけでございます。  もう少し技術的になるわけでございますけれども、その一カ月半、五月から六月の十五日までの一カ月半、この時期に新規裁定あるいは年金額の変更、こういったものが相当程度ある。一カ月七万七千件ぐらいあるというわけでございますが、そういったものは新プログラムができますまではストップせざるを得ない。いま申しました新規裁定とかあるいは年金額の改定、これはスライドを行いました後の段階で行う必要がございますので、いま申しましたような年金額の改定等につきましては六月の半ばまで待たなければならない。六月の半ばからいよいよ五月以降の新規裁定分の処理をしていく、これは二十日ぐらいしか期間がない。と申しますのは、七月の十日ごろからもういよいよ支払いのための通知書の印刷等の作業に入るわけでございます。この二十日間でいま申しましたような膨大な作業をしていかにやならぬと  いうことになりますと、どうしても間に合わなくなるという問題がございます。そういったようなことで、非常にむずかしいのでございます。  もう一つの議論としては、しからばそれを八月の支払い期に間に合わなくたって後の、厚生年金で言うならば十一月の支払い期にさかのぼって支払ったらいいじゃないかという議論もあるわけでございます。この検討もしてみたわけでございますけれども、どうも私どものシステムではいわゆる差額支払いシステムというものがない。これは毎年年金対象者、受給者が非常にふえてまいりまして、これが昭和四十年では六十数万、それがいまでは七百数十万というようなことで、十年間に十倍以上もふえるといったようなことでございますので、それを処理するには最も簡潔なプログラムを必要といたします。直近の記録のみをとどめまして、過去のいわゆるヒストリーというものは除いていかなければならぬといったような処理をしておったわけでございます。そういったようなことからいたしまして、十一月の支払い期にさかのぼって支払うということが不可能というようなことでございます。そういったようなことのために、まことにいろいろと議論したわけでございますけれども、現在のスライドの時期を繰り上げることはできないというような結論になってきたわけでございます。
  50. 広田幸一

    広田幸一君 いまの局長の話を聞いておりますと、事務的に不可能だということでありますが、これを国会が五月、六月というふうに仮に決めた場合に——これは議会はそういう権限があるわけですから、といった場合は一体どうなりましょうか。
  51. 大和田潔

    政府委員(大和田潔君) どうも非常にむずかしい御質問でございますが、そういたしましても非常にむずかしい。これを仮にやりますと、大変な実は混乱が起こるということを私どもは心配するわけでございます。
  52. 広田幸一

    広田幸一君 私も事務内容はわかりませんので、同僚委員もいらっしゃいますから、後でまたひとつ討論をやっていただきたいと思います。  それからもう一つ、せっかくの機会ですから認識を深めていくために御質問申し上げますが、四十八年のときに決まって、五%以上の物価上昇の場合にはずっと繰り上げるということになっておるわけですけれども、ことしは七・六%という物価上昇率が一応想定をされておりますけれども、最近は物価がちょっと下がっておる。まことに結構なことでございまして、果たして五%以下に下がるかどうかわかりませんが、想定として五%以下に下がった場合は、やはりどういうふうになるのか。この四十八年度のときの法律にさかのぼって改正をしなきゃならぬと、こういうことになるわけですか。
  53. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 仮に、物価騰貴が五%まで達しません場合には、その年はスライドを見送りまして、次の年の物価騰貴と足しまして五%になった段階でスライドをすると、こういうことでございます。ですから、仮にその五十二年度の物価スライドは三%といたしますと、五十三年度はスライドいたしませんで、五十三年度に三%今度また物価が騰貴すると、合わせて六%になりますと五%を超えますので、その段階でスライドをさせる、こういうのが法律の仕組みでございます。
  54. 広田幸一

    広田幸一君 そういう例、そういうことになっておればいいんじゃないかなという感じはするわけですけれども、外国の例をちょっと勉強してみましたら、外国の方では一%の場合でも二%の場合でもやるようになっておる国があるわけでございます。その側面だけ見て全体を見ないで、うちの国も、日本もそうせえということはいささかあれですけれども、そういうふうな外国との兼ね合いについてどういうふうにお考えになっておりますか。
  55. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 外国では三%ぐらいで動かす例もございますようですし、それから一年という区切りをとらないで、もう少し短期に見ていくという例もあるようでございますが、私どもの場合には、先ほど年金部長から御答弁申し上げましたように、非常に大ぜいの方の処理をすると、事務体制もまだ十分ではございませんので、しばらくは現状でやらしていただきたいと、こういうふうに思っております。
  56. 広田幸一

    広田幸一君 終わります。     —————————————
  57. 和田静夫

    委員長和田静夫君) この際、委員異動について御報告いたします。  浜本万三君が委員辞任され、その補欠として安恒良一君が選任されました。  午前の質疑はこの程度にとどめ、午後零時四十五分再開することとし、休憩いたします。    午前十一時三十四分休憩      —————・—————    午後零時五十二分開会
  58. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、国民年金法等の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑を続けます。質疑のある方は順次御発言願います。
  59. 安恒良一

    安恒良一君 これから与えられた時間、年金問題について御質問をしたいと思いますが、昨日一晩じゅう寝てませんので、ちょっと声なんかかれていると思いますが、御容赦を願いたいと思います。  まず第一に、大臣にお聞きをしたいんですが、本格的な老齢化社会を迎えつつあるわが国にとりまして、老人の所得保障、それから保健医療対策、さらに福祉サービスなどの問題は、いま最も大きな国民的な課題となっているというふうに私は思います。すなわち、老齢化社会におきまして社会保障がいかにあるべきかということについて、私は今日の時点でその理念と明確な計画、これを早急に図る必要があるというふうに私は痛感をしているものであります。特に、その中でも老後生活中心になるのは何といっても私は年金保障の問題だと思います。御承知のように、わが国も国民皆年金になりましてすでに十数年今日たっておりますが、こういう中で私は年金保障問題について政府が確固たる対案を樹立する。そのことが今日最も焦眉の急であるというふうに考えるわけでありますが、しかしながら、振り返ってみますとわが国の年金の現状でありますが、わが国の年金は六〇年代の後半からここ数年来かなり中身の拡充が図られましたし、また拠出年金受給者の数の拡大と年金水準の引き上げによりまして、年金が老後生活の重要な支えになりつつあります。しかしながら、現状の年金制度は八つに分かれており、さまざまな問題点があります。それゆえに、今日まで制度の改革に対して各方面からの数々の提言が行われていることも大臣御承知のとおりであります。たとえば、政府関係機関といたしましては、昨年の十二月九日、厚生大臣の私的諮問機関でありますところの年金制度基本構想懇談会から中間的な意見の取りまとめとしての報告書、さらに同じく十二月十九日には総理の諮問機関であります社会保障制度審議会から皆年金下の新年金体系について、こういう勧告が行われております。またわれわれ社会党といたしましては、昨年の六月に高齢者保障、年金改革の課題と報告という中間報告を世の中に明らかにいたしましたし、ただ単にこれはわが社会党だけでなくて、各野党からもさまざまな提言が今日まで行われております。  私はこういう状況の中で、年金はわが国の縦割り行政から言いますと各省にまたがってます。しかしながら、何といっても年金中心的な所管庁というのは私は厚生省だと思います。それはなぜかというと、厚生年金国民年金厚生省中心所管庁としております基本年金であります。そこで、私はこのような状況の中で大臣として今日の時点でわが国の年金はどうあるべきかというこの年金の理念、さらにそのどうあるべきかという年金の今後の改正の明確な計画、こういうものについてひとつ大臣の所信を明らかにしてもらいたい、こう思います。
  60. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 老齢化社会を迎えまして、年金、すなわち老後の所得保障という私ども考え方でとらえているわけでございますが、これを全国民に対しまして公平で、しかも所得保障としての一定の水準を保障するということは非常に重要なことだと考えております。従来とも厚生年金国民年金中心にしまして進めてきたわけでございますが、いま御指摘のとおり制度審なりあるいは年金基本構想懇談会等からいろいろ御提言をいただきましたわけでございますので、ちょうど私着任しまして間もなくいただきました。制度審の方ではいわゆる基礎年金構想を明確に打ち出されまして、その上に現在のいろいろな各種の社会保険制度としての年金を上積みして所得保障充実を期すようにという御提言でございます。非常な貴重な御意見だろうと思っております。やはり、国民全体の老後を考えました場合に、一定水準の所得保障というものが共通に、少なくとも基礎的な部分で行われているという構想は私も大変いい構想ではないかと考えておるわけでございますが、いずれにいたしましても財源が御提案どおりにいくのか、あるいは他の方法があるのか、これらの点について十分検討しなきゃいけませんし、また上積みをいたした場合に非常に厚い給付になるわけでございますが、果たしてそれが国民の負担なり国庫の負担なりにたえ得るのかどうかという問題点等、十分検討していかなければならぬと考えております。また、基本構想懇談会では特に経過年金の水準の問題、制度間の給付水準の格差の問題、それからいわば婦人の年金保障の問題、あるいは支給開始年齢等の問題等について、あるいは費用負担のあり方等について、いろいろと問題点を指摘していただいておりますものですから、これらの両御意見を十分参考にいたしまして、今年度いっぱいかけましてひとつ厚生省の基本的な方針を固めたいと思って、ただいま鋭意検討をいたしているところでございます。したがって、私どもは、やはり年金というのは御承知のとおり相当長期にわたる見通しをつけていかなきゃいかぬ問題でございますので、これらを踏まえながら、この一年間で所得保障としての老齢年金のあり方といいますか、必要な給付の統一的な基礎年金的な意味での制度を打ち立てることを胸に置いて、実は根本的に検討しているわけでございますんで、まだ成案を得ておりませんが、一年かかって十分各界の御意見も聞き、また御審議の経過等も踏まえまして検討を進めて成案を得たいと考えております。
  61. 安恒良一

    安恒良一君 まあ、初めて厚生大臣になられた人なら、そういう月並みな御答弁で結構だと思いますが、大臣は厚生省の御出身でありまして、年金、医療には非常にお詳しいし、意欲もお持ちな方なんですね。どうもいまの答弁いただけないんです。主として、その社会保障制度審議会が皆年金下の新年金体系についてということの問題点を挙げていることと、それから年金懇の問題点を挙げていることを解説をしていただきまして、まあこれは私よく勉強いたしておりますので解説は結構なんですが、それらをこれから一年間検討してと、こういうことではちょっと厚生行政に非常に明るい小沢厚生大臣答弁としてはいただけない。私がお聞きしていることは、すでに各界の提言が昨年からことしへかけてたくさん提言しています。たとえば、私どもは昨年の六月にこの提言を行っていますし、それから具体的に十二月九日、十九日という二つの提言が行われている。半年とは言いませんが、かなり数カ月たっているわけですね。  そこで、私が大臣にお聞きしたいことは、重ねてお聞きしますが、たとえばいま大臣はこれをよく一年検討いたしまして、一年後には何とかと言われますけれども、御承知のようにこの中にも数々指摘されているように、年金というものは現行八つの制度があります。それから、年金に対する既得権に対する考え方は、いわゆる掛金をかけている人は非常に強いわけですね。そうしますと、あなたがこの中に大きい問題がたくさんあることをこれを一年検討して、じゃ直ちに来年度何か抜本改正的なものが出せるのかといっても、年金というのはそんなものじゃないと思うんですね。ですから、私が言ったことは、一つは理念というのはあるべき姿というものを明確にする、しかし、あるべき姿というものを明確にして、それに資するためには相当の経過年齢が要るわけです。たとえば厚生年金の受給年齢を五十五歳から六十歳に引き下げるのにどれだけ年限かかったですか。年齢を五歳下げるだけでも相当の経過年限がないとできないわけです。そうしますと、私がだからあるべきいわゆる理念というのは、私が言っていることはこうあるべきだと、この問題点をいろいろ検討された中で年金というのは、年金の将来像は大体こういうふうに自分としては考える、しかしそれに至るカテゴリーとしての、たとえばこれから後、今年度改正にも入っていきますが、私は数カ年の経過措置を経ながら改正をしていかないと、一遍に年金などというのはできないと思う。ですから、そういう意味で私はあなたにいま冒頭お聞きしましたのは、今日時点年金の理念と今後の年金改正の明確な計画についてひとつお聞かせを願いたいと、こう言ったんですが、いや、これから一年検討して、何か来年にはいまのあなたとのやりとり聞いていると、まあこういうものを検討して、何かかなり——私はたとえば医療問題の十四項目にいたしましても、これは二年、三年かかるものです。しかし、年金は医療よりも経過措置というものを、しかし現状維持だけではだめなんです。一歩一歩前進をしていきながら、あるべき姿に到達をしていかなきゃならぬと、こう思うわけですが、重ねていま一遍聞きます、ここで。いま言った前提のもとで、あなたとして今日の年金のあるべき姿、さらにこれからの、ただ抽象的に一年間検討して来年なんと言っておっても、これはもうすぐ一年たちますからね、ですからそういう点についてどうお考えか、重ねて厚生行政に非常に明るい大臣、ほかの素人大臣が来たわけじゃないんですから、ひとつ聞かしてください。
  62. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 大変恐縮でございますが、そのあるべき姿あるいはその根本的な方向、それを残念ながらまだ明確にお答えできないのが現状だと思います。いろんな問題点がたくさんございますので、これらを十分よく検討してからその点を、いまお尋ねの点を明確にしたいと思っておるわけでございまして、大変私自身も前から関係はいたしておりましたが、まだ年金は、私が厚生省を離れましてから国民年金制度というものができたわけでございまして、年金については少し私は弱い方でございますんで、いろいろ各方面の御意見等が出ておりますんで、いまお尋ねの点のことを特にもう一年かからしでいただきたいと、こう申し上げておるわけでございます。
  63. 安恒良一

    安恒良一君 まあ、大臣そういう謙遜されておっしゃっていますが、私はたとえば年金の中でもこれからいろんな問題を聞いていきたいと思いますが、そういう問題についてやっぱり私は大臣は大臣なりの一定の考えをお持ちだと思うんですね。そういうものを持ちながら、さらに関係審議会の意見や各界の意見を聞きながら案を固めていかれると、こういうふうに私は思うわけですね。たとえば私がそっちに座ったら、私はそういうやり方をやりたいと思うんです。たとえば、妻の座の問題をどうするのかということについては、一定の所見を持ちながら、しかしこれは広くみんなの意見を聞きながらよりよきものにしていく、そして適切な時期に国会の審議を煩わすなら煩わすと、こういうことに年金というもの、また主管大臣というものはそういうやっぱり意欲をお持ちにならないと私はなかなか進まないと思うんです、これは。まあ、これこれより以上攻めましても、あなたはいやこれから勉強して一年先だと、こうおっしゃっていますからどうにもなりませんけれども、私は年金とか医療というものをやり大改正をするに当たっては、一つの基本的な理念というものをきちっと持って、それに基づいて各界の意見を聞きながらよりよきものをつくっていくと、こういうことにぜひしてもらいたいと思いますが、まあこの問題はこれぐらいにとどめておきまして、具体的に中身に入っていこうと思います。  そこで、まずそういうことになりますと、ことしのこの改正案ですね、これはまあ年金計算のときじゃありませんから、衆議院の説明その他から見ますといわば中間的な手直しだと、今度の年金改正は五十六年ですか、年金の再計算の時期は、たしか。ということだというふうに衆議院なんかのやりとりを聞いておりますとありますが、しかし私は、いま申し上げたように年金改正というのは一年や二年でできないんだ、少なくともかなりのやはり経過措置が必要だと。そうしますと、たとえばいま私たちがこれから審議をしますこの改正案も、やはりこの一つのあるべき姿というものを頭に描きながら、もしくは将来こうしたいというものを描きながらお出しになるのとそうでないのでは、全然違ってくるわけです。ですから、この改正案についてはあるべき姿、もしくは将来こうしたいということの考え方とこの案との関係はどうなってますか。まずそのことについて聞かしてください。
  64. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) ことし御提案申し上げました年金改正法案でございますが、ただいま御指摘のございましたように、昭和五十一年に厚生年金及び国民年金、再計算をいたしまして、収支両面にわたりまして見直しを図ったところでございます。次回の再計算は、五年以内ということでございますので、一番遅い場合には昭和五十六年になるわけでございます。今回の改正は、昭和五十一年の改正の枠組みに従いまして、その後の社会経済情勢の変化を織り込みました、いわば中継ぎ改正ということで御審議を煩わしておるわけでございます。
  65. 安恒良一

    安恒良一君 そこでお聞きしたいんですが、まあちょっとわかりにくいんですが、昭和五十一年の改正の枠組みに従いというのは、どういう枠組みなんでしょう。というのは、昭和五十一年度の改正のときも、直ちに改正で取り上げるべきことと、さらに五十一年度改正ではできないけれどもやってほしいということが、関係審議会の中からもいろんな意見がついてます。また、衆参の社労委員会における年金審議の中にも、付帯意見なりいろんな意見が出てます。ですから、いまあなたが言われたように、いや実は五十一年の枠組みの中で中継ぎ改正ということになると、全然進歩がないわけですね。ですから、少なくとも五十一年の大改正をやる場合には、直ちに取り上げるべき事項と、これから取り上げるべき事項に分けていろんな意見が出ていることを私は知っていますし、私は当時国会議員でありませんでしたが、国会の中における附帯決議を初め、委員会の中のやりとり、それにぶつかってやはり大臣も前向きにそういう問題を検討すると、こういうことを答弁をされている個所も何カ所かあるわけです。ですから、いまの木暮さんの御意見だけではちょっとことしの改正のことがわからないわけです。いわゆる改正の枠組み、中継ぎ改正などという、そういうことを言われてますが、少し話してください。
  66. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 昭和五十一年に財政計算をいたしまして厚生年金国民年金改正いたしたわけでございますが、そのときにもたとえば課題の一つといたしまして、遺族給付の充実の問題があったわけでございます。これはいろいろ問題点がございまして、寡婦加算ということで当面の充実を図ったわけでございますが、今回の改正昭和五十一年度の枠組みでと申し上げましたのは、その寡婦加算という形で、昭和五十一年度の改正充実を図りましたその線に沿いまして、寡婦加算の額の引き上げという形で改正をいたしたということでございます。で、大体従来の、昭和五十一年度の改正によりまして決まりました現行制度に沿った改正をいたしておるわけでございます。ただ、昨年の国会でいろいろ御議論がございました無年金対策につきましては、できるだけ早く着手すべきであるという考え方に立ちまして、今回の改正で無年金対策はお願いをいたしておるわけでございます。
  67. 安恒良一

    安恒良一君 無年金対策については、後から中身について議論しますが、どうもいま木暮さんの考えも試行錯誤というか、行ったり戻ったりしているんじゃないですか。たとえば、いまあなたがくしくも挙げられた遺族年金については、五十一年度改正のときに、さらにその後にもいわゆる改正のときに、厚生省自体がいまの遺族年金を七割に引き上げると、こういう原案をもって当時大蔵と折衝し、しかも当時の厚生大臣は院外の厚生年金の最大の団体である春闘共闘その他とも七割に引き上げを明確に言明をされ約束をされて、その実施にあなたたちはかかったのではありませんか。ところが、当時大蔵の抵抗に遭って残念ながらそれが日の目を見なかった。そして、寡婦加算となっていったのですね。ですから、その意味から言うと、これは後から遺族年金については中身について議論したいと思いますが、どうも今回の改正が五十一年改正の枠組みの中で、枠組みの中でと言われますけれども、遺族年金なんかはその当時の改正の、もちろん審議会もそのことを答申をしてますし、満場一致でこれは答申しているのですから。また、厚生省自身も遺族年金の現行の五割を引き上げという意欲を持たれたことも事実ですね。それがいまになると何かもうそんなことでなくて、当初からずっと寡婦加算でやってきたような御答弁ですが、そういうところはいただけませんね、少し正直に答えてもらわぬと。
  68. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 遺族年金の七割の問題につきましては、ただいま先生の御指摘のとおりの経過でございまして、私どもも国会や関係審議会の御意向を体しまして、遺族給付の七割ということで五十一年度の予算折衝をいたしたわけでございます。  その過程で、いろいろ問題が出てまいりまして、また後で申し上げますが、厚生年金だけを考えましてもいろいろ問題がございますが、共済組合等との御協力をいただいて前提条件を整備しなければならないことがあるということで、遺族七割は昭和五十一年度の改正では断念をいたしたわけでございます。しかし、遺族の年金充実するということはゆるがせにできない問題でございますので、寡婦加算という形で遺族給付の充実を図ったわけでございます。私どもこの寡婦加算のやり方で遺族給付がもうこれでいいんだというふうには思っておりませんで、今後とも遺族七割給付というようなことの実現に向かって努力をいたしたいと思っておるわけでございますが、この遺族七割給付が実現できませんでした問題点というのは、三つばかりございます。  一番簡単な方から申し上げますと、外国の遺族給付に比べますと、日本の遺族給付は五割という点では給付率が低いわけでございますけれども、いわゆる子なし若妻と言われておる若い未亡人の方にも年金が出るというようなことがあるわけでございます。外国の例では、子供のない若い未亡人には年金が出ないとか、あるいは遺族の方が被保険者とどのくらい結婚期間があったかとか、そういうことをわりあい細かく条件をつけた上で高率の遺族給付をしておるわけでございます。この遺族給付の充実を図るということにいたしますと、将来老齢者がふえまして年金給付が非常に財源的に大変になっていく折からでございますので、重点的な財源配分をするということは必要でございまして、その点整理をしていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。  第二の問題点でございますが、これは基本懇の中間意見でも御指摘をいただいておるわけでございますが、年金給付をいたします際に、単身者に対する給付と、世帯の方、夫婦に対する給付というものの考え方がはっきりいたしておらないわけでございます。十万円というのが大体現在の標準年金でございますので、十万円に例をとって申し上げますと、現在は老齢年金十万円というのは、夫の部分が五万円、妻の分が五万円、合わせて十万円というような考え方でございまして、夫が死んで遺族年金のある場合には、妻の分の五万円が出るという形になっておる。これは五割給付の考え方だと思います。しかし、夫婦で十万円で暮らして、夫に死なれたから五万円で済むかと言いますと、家賃とか、あるいは新聞代、電気代等を考えますと半分にはならないわけでございまして、世帯共通経費というようなものがどうしても考えられるわけでございます。仮に、十万円のうち四万円が世帯共通経費で、残りの六万円の半分の三万円が夫の分、その残りの三万円が妻の分ということでございますと、夫が死んだ場合には夫の三万円だけがなくなって、残りの世帯共通経費の四万円と妻の分の三万円、七万円が遺族年金として出るというのが七割給付というものの考え方だろうと思うわけでございます。そういう観点からいたしまして、年金給付の単身者に対する場合と夫婦に対する場合の分化というものを考えなければならないと思うわけでございます。言ってみれば、日本の場合には単身者の年金がわりあい優遇され、夫婦あるいは後に残されました妻の年金が余り優遇されてないという結果になっておると思いますが、そういう年金の組み立て方を考え直していかなければならないということでございます。  三番目が一番大きな問題でございまして、被用者の妻が国民年金に任意加入を現在いたしておるわけでございます。その数が六百六、七十万になるというところまできておるわけでございますが、現在、年金水準が必ずしも高くないわけでございますので、年金水準を高める役割りを一方では果たしておると思いますし、また離婚した場合の妻の年金権の確保にも役立っておると思うわけでございますが、だんだん年金保険料も上がってくるというようなことになりますと、被保険者からいたしますと保険料の二重負担ということにもなる面がございますし、また夫の老齢年金と妻の任意加入の国民の老齢年金を合わせますと、将来の問題といたしましては給付水準が高くなり過ぎるというようなこともあるわけでございます。これも制度審議会あるいは基本懇の中間意見にも御指摘をいただいておるわけでございますが、この妻の任意加入の制度をどうするかということをどうしても片づけなければならないということがございまして、五十一年度に見送ったわけでございます。その後、私どもといたしましては基本懇を中心といたしまして御審議をいただき、この考え、いまの問題点につきましての考え方をかなり突っ込んで整理をしていただいておるわけでございますが、今後、中間意見を出しました基本懇が再開していただける予定でございますので、その場をかりましてこういう問題を詰めて遺族七割給付ということを実現したいというふうに考えておるわけでございます。
  69. 安恒良一

    安恒良一君 どうも木暮さんのその三つの理由、これはもう私十分承知していますがね、これ大臣にお聞きしたいんですが、何か五十一年改正ではかなり意欲的に七割をやったと。ところが、なかなか当時は大蔵から主として財政的な理由で抵抗されたと聞いている。その後いろいろ勉強してみたら三つの問題点があったと、こういうことなんですね。じゃどうして——今度は五十三年度です、今度の改正は。そういう問題の解決に向かって一歩一歩前進をしようとせられないんですか。現実をどうしてそのまま放置されておるんですか。たとえば、きょうは年金の審議ですが、医療問題については大臣はかなりの蛮勇をふるわれているわけでありますね。たとえば一つの例を挙げますと、物と技術の分離ということについて大臣は全く履き違えて、いわゆる注射、投薬を保険から全部外す。これは注射、投薬というのは医療の重要な行為なんです。それを全部外して、これが物と技術の分離だなどという錯覚を持ちながら蛮勇をふるわれている。だから、私新聞を拝見しますと、当初賛成をしておった医師会も関係審議会の中でこの案は返上だと、こういうことを言われるぐらいの——きょうはそのことのよし悪しを議論するところじゃありませんから、いずれこれはまたゆっくりさせてもらいますが、そういう蛮勇を医療制度についてはふるわれるわけですね。そうすると、たとえばいま木暮さんが言われた三つの問題点、どうするのかということでして、何か後へ後へ送っておって解決するわけじゃないでしょう。たとえば、サラリーマンの妻の任意加入についても、いまになるとそういうことを言われていますがね、やはりサラリーマンの妻も加入した方がいいと、得ですというPRはやっぱりやっているわけですよね。そして現実にはすでに六百万に近い加入者が出たと。どうも今後このままいくと、サラリーマンの妻は厚生年金と両方の関係から高過ぎはしないかということであるならば、そういう場合の最高をどうするのかということについての明確な考え方を打ち出していかないと、これほっとけばふえる一方なんですよ、これ。ふえる一方なんですよ、これ、まだどんどん。いや、年金財政が豊かになるし、年金水準が低いから、当面は加盟しておってもらった方がいいなどという安易な考えじゃいけないんじゃないでしょうか。それならそれのように、早目にこれは考え方を——それを出してももうすでに六百万と加盟している人の経過措置は、これは大変な問題です、これは。六百万の人が既得権持っているんですから。掛金掛けてきているんですから。そうですね。それから、いわゆる子なし若妻の問題、そういう問題があるならあるように、関係審議会等に遺族年金引き上げについて、子なし若妻の場合にはこういう措置をするということの提起が意欲的に諮問機関に諮問されるわけでしょう。ないんです。こういうところで聞きますと、いや、実はこういう問題がありますと、こういう問題がありますと、こういう問題がある。それからいま一つ、遺族年金の場合に議論しなきゃならぬ問題としては、わが国の年金制度というのは、家族単位の、家庭単位の年金、これが厚年であり共済年金である。それから国民一人一人の個人の年金、これが国民年金ですね。この二つがあるわけです。この二つをこのまま併存させていくのか、それともこれを一緒にするのかと、これも大問題なんです。しかし、あなたたちはいまのところこのまま、そのままやられているわけであります。そういう問題についても、年金問題というのは早くとっかかって、いわばとっかかるほど——とっかからなければますます矛盾が拡大をしていくわけでしょう。私は私なりの一つの意見を持ってます。自営業者の年金雇用された労働者年金の二本立てというのは、必ずしも私は間違いじゃない。雇用の形態、収入の形態、働きの形態が違いますから、何も無理に一本にする必要はない。それは私は意見を持っているんですよ。だから私は、国民年金国民年金として育て、厚生年金厚生年金として育てていけばいいと、こう思ってますが、しかしあなたたちは、そういう一つの定見をきょう聞いたんですけれども、審議会がこんなことしてきました、あんなことしてきておりますと、これから一年間一生懸命勉強してと言われてますね。じゃお聞きしますが、本当に一年間の勉強の後に、いま言ったような、これは遺族年金だけでもいま言ったような三つ問題、さらに年金が単身、国民一人一人の年金にするのか、いわゆる家庭単位の年金にするのか、自営業者と雇用された人との年金をどうするのかと、こういう問題について、大臣、一年たって結論がおろされて、何か十分なものがつくれて国会に諮られますか。私はそう簡単なものじゃないと思いますが、どうですか、そこのところは。
  70. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 被用者を主体にした厚生年金あるいは共済等、これとその他の国民年金、国民一人一人についての年金制度、これはやっぱりそれぞれの性格というものを考えますと、そう軽々には一本化はなかなかできないのだろうと思っております。いま御指摘の寡婦年金等の問題については、いろいろ先ほど言いましたような問題点等もありますので、いろいろ根本的な年金制度のあり方について私どもが方針を決めますに当たりまして、この貴重な御意見を各問題点についていただいておりますから、これらをもとにして十分ひとつ基本の方向だけは少なくとも一年以内でやっていきたいと、そしてそれの具体的なやり方等については相当の年金については期間が必要でございますので、お説のような準備体制を整えてから逐次実施すると、こういう方向になろうかと思っております。
  71. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃ重ねてお聞きしますが、来年は財政の再計算期ではありませんが、しかし、何もいままで五年間ももてた場合もあるし、五年たたなくて、三年なら三年で財政計算をやったこともありますから、そうしますと、いまの大臣のお考えを聞いておりますと、まず基本的な年金の理念、あり方についてはこれから一年間勉強して、まずその方向をひとつ出すと。そして、それに基づいて来年度は財政計算期じゃないんですが、そういう理念が出れば、まさか五十一年の枠組みでなどということにはならぬと思いますから、やはりそれ相当の抜本的な改正を来年は財政計算期を繰り上げてでもやりたいと、こういうふうに受け取っていいでしょうか。
  72. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) あるべき姿や根本的な方向についての検討を一年間でさしていただいて、その回答を得たい。その結果、直ちに根本的な改正案として具体策をとり得るかどうかは、いろいろ長期的に見た財政の問題等もございますので、御承知のようにいま国の経済といいますか、財政経済がなかなか、相当長期にわたる安定的な見通しを得られないような状況でもございますから、これが来年私どもがつくります際に条件が整ってくるということをいまからちょっと予定はできませんものですから、そういたしますと、やはりちょっと来年直ちにその根本改正案というものが実現の運びになるかどうかは、いまから私はここで明確に判断できません。   〔委員長退席、理事片山甚市君着席〕 したがって、やはりたとえば物価スライドなりその他、給付内容改善等については、この五十一年の枠組みの中間的つなぎだという考え方ではありませんけれども、やっぱり改善すべき内容については御提案を申し上げていかなきゃいかぬのじゃなかろうかと思いますので、来年になってから、なんだ、お前の言うことは違うじゃないかなんて言われると困りますから、念のため申し上げておきますが、やはり年金は、長期的な見通しをある程度つけませんとなかなかできない問題でありますので、しかし、私どもとしては問題点をいただいておりますので、それらの問題点を踏まえながら、あるべき姿、あるいは根本的な方向、こういうものについてだけは、少なくとも一年間の間で決めていきたいと思っているわけでございます。
  73. 安恒良一

    安恒良一君 どうも内閣総理大臣と厚生大臣の言うこと、全く食い違いますね。内閣総理大臣は、すでにわが国のオイルショック以来の経済危機は、もうトンネルを抜け切るんだと、わが国の財政経済政策というのは、耳にたこができるほど、各予算委員会を初め本会議や各委員会の中で、うまくいってるんだと、ことしは、七%成長もほぼ間違いなしと、そして来年度以降もほぼその前後の成長率を維持しながら、わが国の日本経済は安泰である、これが内閣総理大臣の各委員会における答弁じゃありませんか。私たちは、大変心配をしてますよ。あなたも、国務大臣、内閣の閣僚の一人ですから、どうもいまあなたの話を聞いていると、なかなかそうは言っても、来年度経済が安定するやら——というのは私は、これはすでに予算委員会の一般質問でもあなたにも質問しましたように、私は、わが国がいわゆる低経済成長に入ったことは事実なんですよ、その中において国の中期経済計画、こういうものがやっぱり策定されるべきだ、その中における社会保障の中期計画というものが策定をされなきゃならぬじゃないか、医療についても年金についてもと、そのことを私は、予算委員会でもあなたに迫ったつもり。だから少なくとも、来年度におきましては、内閣総理大臣はそう言っておられるわけですから、経済はもう安定していくんだと、大体ことしの七%も間違いなしと、来年もほぼその前後の安定成長率をもってわが国の経済はうまくいくと、こう言われてるんですから、そのときにあなたが、いやそれはちょっといろいろなことを、要素を見てみにゃなんて言われたんじゃ、これはまた閣内不統一ということを言わざるを得ません。そこで私は、少なくとも一歩下がって、あなたが言われている一年間勉強したいとおっしゃるから、わかりましたと、それならば一年間このいろんな提言を勉強していただいて、少なくとも来年には中期経済の展望を踏まえながら、わが国の年金のあるべき基本理念といいますか、姿というものを出してもらいたい。これは努力したい。そうすれば、少なくとも来年度の改正というのは五十一年度の枠組みの延長ではあってはいけないわけです。ことしの改正は、木暮年金局長は、五十一年度の枠組みの中のつなぎの改正だと、こう言われてるんですね。だから、つなぎの改正というのはもうことしまでで終わりと、来年からはつなぎの改正じゃなくて、少なくとも中期経済展望を踏まえ、しかもいろんな提言を一年間勉強して、一つ年金に対する基本理念ができて、それに基づいたやはり改正案が来年は用意されると。これは、なぜ私がしつこく聞くかというと、この案の最終的なまとめるときのまとめ方にも関係するから、そこのところを私は聞いてるわけ。ですから、来年度はいま申し上げたように——私もこれだけの問題の提言がされてるのを全部一遍に解決するような案がたった一年でできると思いません。それはだれが厚生大臣になったってできっこありません。しかし、少なくとも基本的な理念というものが明確にされて、そして、それを具体的に実施するための、一年めどとしての、やはりやるべきものからやっていくんだと。でなければ、また来年になって、いや、実は財政の再計算期じゃないんだから、五十一年度の枠組みの中で、もしくは中間的ないわゆるその改正だと言われたんじゃ、これはどうにもならぬ、そこで来年度の改正のあり方についてしつこくここのところを聞いてるわけ。ですから、私がいま言ったような考え方でいいわけですね。
  74. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 今年度七%達成するということは、これは公約でございますから、私も異存あるわけではありません。不統一ではありません。また、来年六%強から七%近い経済成長をやっていくという総理の方針でございますんで、これはまあその線に向かってあらゆる政策をとっていくだろうと思うわけでございます。しかし、御承知のとおり、年金の体系というものを根本的に考えて一つの立案をし、その線に沿った改正案をとるためには、先ほど先生も御指摘のように、年金制度だけは特に長期的な見通しを立てていかなきゃならない、こういう性格のものでございますから、しかもその関連する事項が多々ございますので、したがって、たとえば共済との関係のあり方とか、被用者の年金につきましても相当いろいろな問題点がございますので、これらをひっくるめて全部一つの方向がもうまとまって、それに至る一歩、二歩の前進的な改正が来年ずばり出るかということになりますと、それには調整の期間というものが相当必要でございますから、その期間だけは待っていただかないとなかなかできないわけでございますが、さりとて、それでは御指摘のようないろいろなこの中身の改善をそれまで見送るべきかといいますと、やはり物価は毎年若干の上昇傾向をたどっております今日でもありますし、いろいろな点を考えて、全く改善に踏み切るのを待つというわけにはいかないわけでございます。ただ、私どもとしては、先生御指摘のように、一つの根本的な方向を見定めて、それに至る一歩でも前進になるような改正をやっていきたいとは思いますけれども、いま自信を持って来年のことについてここで私がお答えを申し上げられないという、まあいわばちょっと自信がない点かもしれませんが、この辺のところは、やはりここで申し上げることは非常に重要な意味を持ちますものですから、そういう意味でまあいわば慎重に内輪にお答えを申し上げてるというふうに御理解いただきたいわけでございます。
  75. 安恒良一

    安恒良一君 大変遺憾ですね。というのはね、私はもう決して無理なことを言ってるわけじゃない。私は、ことしの改正は五十一年度の枠組みの中で、その延長だと、こう言われていますから、私が一番——そしたらまた来年も五十一年度の枠組みの延長であってはいけませんよ、ということをまず言ってるわけ。それがためにやるべきことは何かというと、一年間勉強したいとおっしゃってますから、一年間十分勉強されて、年金の基本理念、中期的な展望を踏まえた年金の基本理念を確立をしてくださいと。その中で、来年やれることについて、それは何がやれるかこれから議論しなきゃならぬと思いますが、こういう改正と、——もちろん私はそれがないからスライドであるとかやらなきゃならぬことをやらないでいいなんて、そんなばかげたことを言ってるわけじゃないんで、それは当然やるのあたりまえなんです。あたりまえだけど、また、ことしと同じように五十一年度改正の枠組みの中でとか、延長でと言われたんではいけないから、そこのところを言っている。そうすると、やはり年金に対して、厚生大臣にあなたが就任したときの就任のあいさつの中には、年金と医療には並み並みならぬ意欲を燃やしてあなたは演説をしているんですよ。そのことを忘れて、ここになるととたんに慎重になってはいけませんね。自分のやった演説に対してはやはり自信を持ってもらわなきゃならぬ。そうすると、やはり少なくとも私が言っているようなことについてやるとか、いやそれはやはり来年も無理だと、再来年はやりますとか、そこらは明確に、来年もやはり枠組みの中でしかやれないならやれないように正直に言っといてもらなわきゃいかぬ。しかしそうじゃないと、五十一年度の延長じゃないんだと、枠組みの中じゃないんだと、しかしどの程度できるかということはこれは問題がたくさんありますから、そのうちのこれとこれはということは来年の問題だと思うんですが、そこらのことについて私は聞いているわけですから、もう少しやっぱり自信を持って——大臣に聞いているので、局長に聞いているんじゃないんだから、大臣、意欲的にひとつそこのところを答えてください。
  76. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 大体、お考えの線だというつもりでございますが、私はやはり慎重にお答えを申し上げているんでございまして、あるべき姿あるいは根本的な方向についての検討を踏まえまして改正案を逐次考えることは、これ当然のことでございますが、余り大きないろんな関連する問題がたくさんあるものですから、それから私の所管外の問題等もございますので、そういう点もありますので慎重にお答えを申し上げているわけでございます。ただ、おっしゃる方向は、それはもう確かに一遍にできない、逐次やっていくというようなことの御了解をいただいた上で、おっしゃる方向は同じ考え方だというふうにお答えさしていただきます。
  77. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃもう一遍ここだけ聞いておきましょう。五十一年改正の枠組みではないと、五十一年改正の枠組みの延長ではないということだけははっきりしておってください。いいことはいいんですよ。いいことは伸ばしていけばいいんですから、何も五十一年改正の枠組みということになると、おのずから問題がもう限定されるわけですよ。せっかく一年勉強されても、連係もう限定されますから。だから、五十一年度改正の枠組みだけにはこだわらないと、それはいいことはそのまま伸ばしてもらえばいいんですから、それはどうですか、そこは。
  78. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 事務的な問題につきましてちょっと申し上げさしていただきたいと思いますが、今後の改正でございますけれども先ほど出ました遺族の七割の問題一つとりましても、いままでは厚生年金国民年金を所管しております私どもが決心をし、財政当局と相談をしてやる、その結果、表現に少し適当でない点があろうかとも思いますが、共済組合なんかは右へならえをしていただくというようなことでこれたと思うわけでございます。この間の寡婦加算もそういうことであったと思うわけでございますが、これから遺族七割をやろうということになりますと、現在共済も五割でございますから、そこを合わせていただくと同時に、被用者の妻の取り扱いにつきましても御協力を得なければならないという問題が起きてくるわけでございます。中間意見で被用者の妻の処理の仕方として二つの方向が出されておるわけでございますが、一つは今後被用者年金で被用者の妻であるから引き取るべきであると、被用者の年金の中で妻の座を確立すべきであるという考え方があるわけでございます。もう一つは、国民年金に任意加入じゃなくて、被用者の妻を強制加入させるというような方向が考えられる、その二案について詰めていこうという中間意見をいただいておるわけでございますが、そのいずれをとる場合も、共済組合にかなりの改正をしていただかないとできないわけでございます。現在、厚生省の懇談会の中間意見が出、制度審議会の建議が出ておりますので、国民年金審議会も社会保険審議会の厚年部会も、連休明けには、厚生省が方向を出す前に勉強を始めるということを予定にしていただいておりますし、共済方面もそれぞれ勉強をしていただくことになっておりますけれども、いまの妻の年金一つとりましても、かなり共済と厚年、国年との関係が錯綜してまいりまして、その辺どのくらいの時間がかかるか。審議会も別々でございますので、キャッチボールをしなければならないというのが実際の運びになろうと思うわけでございまして、来年度の改正の見通し、そういう意味でもつけにくいというのが実情でございます。
  79. 安恒良一

    安恒良一君 むずかしい、むずかしいということを事務当局言っているけれども、だからどうするんですかと聞いている。たとえば、いまあなたが言われたように、わが国の行政が縦割りであるということを私は知ってます。たとえば、この国会の中におきましても共済年金の審議というのはこの社会労働委員会ではできないわけですね。そして、ここでは国民年金厚生年金の審議をしている。審議会も別だ。それがキャッチボールをしておったらいつまでも片づかないわけでしょう。それならそれなりに、大臣として縦割り行政の弊を改めるためにどうすればいいのかということについての意欲的な考え方なりを——私は私なりの意見を持ってますよ。たとえば、私から言わせると、これだけの年金に大きい問題が出てきて、しかも国民皆年金になって十数年たった場合には、やはり社会保障制度審議会というのは全体を網羅して議論できる委員会ですけれども、しかしこれはいわゆる高度な総理の諮問機関であって、何も年金だけやるわけじゃないんです。それならば、年金なら年金だけは、共済から国民年金から厚生年金船員保険までばらばらに審議するんじゃなくて、一つの具体的な総合的な議論ができる審議会をつくるならつくる。しかも、それはそれぞれの利害代表者がおりますからね。いまのたとえば社会保険審議会を発展的に大きくしていくとか、何かそういう意欲。  それからいま一つは、縦割り行政の場合に、主管庁は厚生大臣だといっても、なかなか厚生大臣一人ではむずかしいということになれば、年金の大改正に向かって、たとえば総理なら総理が年金問題全体の大改正の座長になられて、厚生大臣が事務局長なも事務局長になられて、あと関係大臣と横につなぐ、事務局をつなぐとか、何かそういう年金を前向きに進めていくための方向についても考えないと、木暮さんのように、これはあっちにもこっちにも関係します、キャッチボールの投げ合いになってむずかしいむずかしいと言ったら、いつまでもむずかしいんですよ。それは政治じゃないんです。政治というものはそういうものじゃありません。そういうむずかしいものであろうと、そこで私は前段に言ったわけですね、わが国の老齢化は急速に進んでおるじゃないですかと。財政負担問題も大きな問題になろうとしているじゃないですか。それは長い将来のことじゃないんです。昭和七十年代、八十年代すぐ来ますよ。それならそれのように、いまの縦割り行政をどういうふうに改めて、国の大きい問題というなら総理直属の機関として取り組むやり方もありましょう。それまでしなくても、それじゃ厚生大臣が主管の中心大臣として権限を持つということを内閣の中でお決めになる方法もあるでありましょう。いずれにしましても、もういわゆる高齢者社会というのが目の前に控えて、そして財政一つをとっても大変。これは後から中身に入っていきますが、すでに国民年金財政の困難、各種共済年金財政困難、目の前に控えておるじゃないですか。たとえば国鉄共済をどうするのかという問題、国民年金一つそうでしょう。収入と支出のバランスについて、もう積み立てができなくなっているじゃないですか。そういうような問題があるときに、とにかくむずかしいむずかしいということで一年送り、二年送り、三年送っておったらどうなるんですか。しかも、年金というのは答えが出てそれを実行するまでにはかなりの経過年限が要るんですよ。それをいたずらにどんどんどんどん送る。それは私から言わせたら事なかれ主義だと言うのだ。自分が大臣をしている間は無事平穏に終わればいい。自分が年金局長をしている、自分が年金課長をしている間だけは無事平穏に終われば次の局長になって、次から大体うまくいけば次官になって、位人臣をきわめてこれで終わりと、これじゃ国民たまったものじゃありません。むずかしいむずかしいだけではだめなんです。どうするのかと。いままではまだわが国の年金というのは未成熟で、老齢者社会でもなかったわけですから、当面の手当手当てで済んできたわけです。もう当面の手当てでは済まないんじゃないかということが、二つの審議会からも問題として提起されておったときに、ただとにかくむずかしいむずかしいと、いつになるやらわけがわからぬような話をここでされて、はいそうですかと引き下がるわけにはいかない。大臣、いま言ったような問題についてどういうふうにお考えなんですか、大臣。いや、これはもう事なかれ主義じゃ答えてもらわなくて結構ですから、大臣としてどうするのかと、やっぱりそれだけの意欲をお持ちにならなきゃならぬ問題ですからね、あり方について。でないと、このままでいきますと、来年もできません、再来年もできませんということになりますよ、いまの木暮さん的なやり方でいっておったら、これはとてもとても。
  80. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 決してそういう意味で申し上げたんじゃなくて、たとえば一つの例として、婦人の年金保障問題、まあいわば妻の年金問題についてのいろんな絡み合いの問題や困難な点を申し上げただけでございますが、私はあるべき姿なり根本的な方向というものを見定めることをまずやりまして、その中でもたとえば非常に重要な経過年金の部門、この水準をどうすべきかと、それが基礎年金構想につながってそうした案になっていくのかどうか、これらも検討事項の一つでありますが、したがって私は、今年いっぱいかかってそういう方向が見定められましたら、当然その一環の中でのこの改正案が、もちろん来年には出てくると思います。ただ、来年度ですぐできない問題もございますけれども、御説のように、そのうちでできるものから手をつけていく。そしてその中で、たとえば物価スライドの問題がやっぱり毎年逐次改情をしていかなきゃいかぬとすれば、これはあるいはその部面だけをごらんになると従来と同じパターンじゃないかと言われるかもしれませんが、それだけの改正案を考えているわけじゃなくて、根本的な方向に向かっての志向があらわれてくるような改正案も同時にやっぱり中には入ってくると、こういうふうに御理解願って、私は厚生大臣になりましたときに、医療と年金の根本的な改正には本当に意欲的に取り組みたい、私も、厚生省に長くい続けるか、政治家になろうかという判断の岐路に立ったときに、むしろ政治家の道を選びましたのも、その二つの問題をひとつ政治の場で何とか前進をさしたいという意欲で出てきたわけでございますので、この考え方は今日も私は捨てておりません。   〔理事片山甚市君退席、委員長着席〕
  81. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃ、少し聞き方を変えましょう、同じことで堂々めぐりを余りしてはいけませんので。それじゃ、わが国の国民皆年金が発足以来、もうすでに約十六年を経過しています。それではいま、十六年を経過した中で、あなたたちがわが国の国民年金の基本的な欠陥といいますか、問題点、それは何と何と何があるというふうにお考えでしょうか、問題点ですね。ただ問題点の指摘だったらだれでもしますから、言っておきますよ。それから、このいわゆる二つの提言の解説は結構でございます、あなたたちに負けないぐらいすでに読んでいますから、解説は結構です。解説は結構ですよ。あなたたちがいま考えられる問題点は何と何と何があるんだと、その問題点をどれから手をつけていこうとするのか、そのことによって議論をかみ合わせましょう。どれからあなたたちは——ことしはこの改正ですからね、来年度はどれから手をつけていこうとしているのか、わが国の国民年金厚生年金、きょうはこの二つ中心に審議してますから、そういうような、まあ共済との関係もありますが、そういう中で問題点は何と何と何があると自分は思うと、そして、それについてはどれからまず手をつけていく、これは単数の場合もあれば、複数の場合もありますね、相関関係がありますから。どういうものからとりあえずひとつ来年からは手をつけていこうとするんだ、こういうことについて答えてください。
  82. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 率直に申し上げさしていただきますと、第一に私ども心配をいたしておりますのは、年金財政の長期的な安定でございます。現在、日本の年金の場合には大体順調に改正をしできておるわけでございますけれども、人口の老齢化が急激に進んでまいりますと、かなり財政的にむずかしい局面を迎えてくるのではないかというふうに思っておるわけでございます。厚生年金につきまして、私ども試算をしてみますと、だんだん老齢者がふえ、年金の受給者がふえるにつれまして、現在千分の九十一の保険料は千分の二百を超える時期が来るというふうに思っておるわけでございます。御承知のように、ドイツでは千分の百八十でございますが、千分の百八十になりまして、非常に財政的にむずかしい局面を迎え、例の賃金スライドの時期をおくらせるというようなことで対処をしておるという状況でございます。厚生年金の場合も千分の二百を超える時期が来るということでございますので、先ほど来お話のございますように、年金は長期的な視野で早目に手を打っていかなければならないという観点からいたしまして、この財政安定化ということをひとつ基本的に考えなければならないと思っておる次第でございます。そういう観点からいたしまして、支給開始年齢の問題とか、あるいは日本の給付が年数加算制をとっておるという点、そういうことにつきまして検討をし、案を立てていかなければならないというふうに思っておるわけでございます。  それから、第二に申し上げたいと思いますのは、私も年金に参りましてから一年ちょっとでございますが、業務処理体制の問題というのが非常に重要な意味をこれから持ってくるというふうに思うわけでございます。いろいろな改革案が各政党あるいは各団体から出ておりますけれども、その基礎になります事務処理体制ができませんと、なかなかむずかしい問題に逢着するのではないかというふうに思うわけでございます。たとえば、経過的年金が低い、これを何か底上げをしてやろうということでも、御承知のように一人の人が通算年金とか本来年金とか幾つかの年金を持っておりますので、それをながめわたした上で最低保障をするというようなことをしなければなりませんし、また逆に幾つかの政党の御提言では、一人の人の年金額が総合して一定額以上になったらば、それは調整をするという御提案のあるのもあるわけでございますが、そういう場合にもいまの業務処理システム、八つの制度がばらばらでやっておるということによってできないわけでございます。それからまた、無年金対策が先国会から問題になっておるわけでございますが、仮に国民全部が一本の事務処理体制でつかまえられておれば、無年金者もコンピューターがはじき出してくるということになろうかと思うわけでございます。今後の年金制度を効率的に改善していくためには、この業務処理体制の整備がぜひ必要である。もし、あえて言わしていただくならば、一億総背番号のようなことを年金についてはやる必要があるのではないかというふうに思っておるわけでございます。  それからあとは、各審議会の言っていることを説明するなというお話もございましたけれども、そういう基本的な問題を踏まえまして、経過的年金の水準の問題、あるいは婦人の年金権の問題、そういうものにつきまして、やはり改善すべき問題があるというふうに考えております。
  83. 安恒良一

    安恒良一君 いま言われたのは、私は何が問題があるから——これからやる順序をも言われたんで、いま言われたとおりの順序と承っていいわけですね、あなたが挙げられた順序で。
  84. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) やはり、全体の改革案を見通して、そのいろいろな問題点につきまして整合性のある解決を図らなければならないと思いますが、順序を強いて言われますならば、やはり財政の長期的安定というものを一番私ども気がかりに考えておりますし、それから業務処理体制がすべての改正の根っこにあるというふうに考えております。
  85. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃ、それを前提にして質問を続けていきましょう。  あなたは順序を言われましたけれども、いま少し中身をよく勉強してほしいと思うんですが、財政の長期的安定について支給開始年齢一つ挙げました。支給開始年齢、あなたは何歳にお考えか知りませんが、審議会が六十五ということを提起しております。あなたは支給開始年齢と言われた。支給開始年齢というものが簡単に手がつきますか、簡単に。私はつかないと思うんですね。  それから、財政の安定と言われましたが、財政の安定問題についても、たとえばいわゆる制度審は一つの構想で目的税的な構想を出している。一つのいわゆる、こちらの方は財政調整的な考え方も出していますね。しかも、財政というのは制度の根幹に関しますね。だから、私はあえて順序を聞いたんです。そしたらあなたは一番だと、来年からやりたいと、こういうふうに言う。そう簡単にできますか。まだまだ手っ取り早くやれることがたくさんあるんじゃないですか。私から言わせると、たとえば支給開始年齢の問題というのは、これは後から労働省も来てもらってますけれども、わが国における雇用制度のあり方の根幹から考えて、定年退職問題と年金のつなぎという問題がある。何となしに国民年金が六十五歳だと、外国が六十五歳だからわが国も六十五歳にせよなんて、そんなばかげたことを言ったら笑われるわけですね。審議会もそこのところは慎重に書いてある。書いてありますが、じゃ、わが国のいまの定年制はどう現実になっているのか、どんどん延びる現状にあるのかどうか。一時高度経済成長期なり延びました。しかし、最近の雇用不安の中ではむしろ残念ながら定年はやや短縮の方向に現実にきつつある。そういうようなことを踏まえたときに、来年度財政問題に当たりたい。しかも、その中であえてあなたは支給開始年齢を言われましたが、そういうことができるでしょうか。
  86. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 前に挙げた問題の中で、順序をつけろということで順序を申し上げたのでございますが、それは実施の順序ということではございませんで、一番重要視しているという意味の順序を申し上げたわけでございます。
  87. 安恒良一

    安恒良一君 ああそうですか。それじゃ私の質問は速記録読んでください。私はそんな重要と言っておりません。私の速記録、後で見てください。  私は、いまわが国の年金の問題点を挙げてもらいたい。それから、来年度以降漸次実施をしていくものについての考えを聞かしてもらいたいと書いてあるはずです。重要の順序ということはあなたが一人で言われている。速記録見てください。そんな質問をしておりません。
  88. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 御質問の御趣旨を取り違えて大変恐縮でございます。答弁をし直さしていただきますが、いまの年金の問題で一番大切なのは、やはり長期的な財政の問題であろうというふうに考えております。  第二番は、業務処理体制をしっかりするということがいろいろな改善の基盤としてどうしても言わざるを得ない。そういう見通しの上に立ってほかの問題も考えていかなければならないと、こういう趣旨で申し上げたのでございます。
  89. 安恒良一

    安恒良一君 それじゃ、重要な問題はわかりました。  それじゃ、来年度以降実施の順序について考え方。いまあなたが重要点を何点か挙げられました。いま挙げられたのは重要の順序だということになります。それでは、来年度の改正からはその中でまずどれから取っかけていこうとするか。実施の順序ですね、重要じゃありませんよ。もう一遍言っておきますが、実施の順序についてお考えを聞かしてください。
  90. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 来年以降の年金制度の改革の問題でございますが、先ほど来大臣からお話がございますように、私どもにも一年以内に総合的な年金の方向を出せと、つくるように指示を受けているわけでございます。私ども、大臣のそういう方針に従いまして、現在年金でいろいろ問題とされております点につきまして、整合性のある方向を打ち出したい。その打ち出した結果につきましては、当然各界の御意見をいただきながら実施に移していくわけでございますが、そういう観点からいたしまして、私ども全体的な構想を発表いたしまして、御意見の合致するところから実施をしていくということが順序ではないかというふうに考えておるわけでございますが、これはまたそれぞれ給付の充実の面と負担の面がございまして、そこら辺のかね合いを見ながら御意見の合う点につきまして実施をしていくと、こういうのが私どもの考えておる手順でございます。
  91. 安恒良一

    安恒良一君 何言っているかさっぱりわかりませんね。私はできるだけ議論をかみ合わせたいと思ってさっきから苦労しまして——観点を変えて、それならばわが国のいまの現状における年金の問題点は何があるだろうか。こういうことを拾い上げていただいて、そしてじゃそれからとりあえず手をつけていくべきものは順序は何だろうかということになるとまた論議が、前のことに、とにかく一年間勉強いたしまして、検討いたしまして、いろいろな審議会の御意見を聞きまして、これじゃあ年金局長として全く意欲ないね、あなたは。一年半しかないから、勉強の途中か何か知りませんけれども、もう少し意欲を持ってくださいよ。大臣は抽象論かどうか知りませんけれども年金と医療におれは政治生命かけたんだと、だから厚生省やめて政治家になったんだと、こう言っておられるのですから。そういう大臣のもとで、いまあなたは年金局長として、全くあなたの言っていることは年金改正の意欲というのは一つも出てこないですよね。これではもう議論かみ合いませんね。どうですか、もうこれより以上、これで時間ですからもう、だめですから、中身に入っていきますけれども、もう少し大臣ね、あなただけが一人で意欲持ったってだめなんだ、これ。部下が意欲持たなければ進みませんよ、あんな調子で言っておったんじゃ。それはとても、また来年も五十一年度改正のいわゆる延長の改正ぐらいが出てくるのが関の山じゃないかと思います、来年度もね。だからこれは、幾らこれより以上やりとりしても、意欲というのは本人の考えですから、強制するわけにいきませんから。そこで、私はやはり少なくともこの際言っておきたいと思いますが、きょうはもう無理でありますから、年金のいまの時点における問題の重要性というのは出てきたわけです、重要点は。じゃ、それとりあえず来年からは何をいわゆる改正に向けていくんだと、これをできるだけ早く一遍検討してみてください。そして、前向きに出してもらいたい。でなければ、いまの年金局長答弁を、これ幾らこれより以上時間かけても、それは皆さんの方は私の受け持ち時間が二時間三十分だから、ちゃらちゃら言っておってそれで終わればいいと思われるかわからぬが、とてもそんなものではたまりません、こっちは。ですから、これから中身に入っていきますがね、もう少し意欲を持ってもらいたい。このことだけは明確に意見として申し上げておきます。  そこで、私はことしの改正の中身に少し一、二点入っていきたいと思いますが、いまわが国の場合の年金の問題点の中で、どうしても拾い上げなければならない問題は、適用漏れの問題があるわけですね。いわゆる無年金者の数がかなり多いと、こういうものであります。これは国民年金の場合に大体百万程度じゃないかというふうに言われていますね。それで、今回いわゆる特例納付のことを検討されまして、そこで四千円という案が出てきたのですね。この四千円の算出の根拠はもう耳にたこができるほど聞いています。私が聞いたわけでないけれども、同僚議員が衆議院で聞いていますから、その説明はもう結構です。なぜ四千円になったかということはもう議事録を見て百も承知しています。  そこで、私はちょっとお聞きをしたいのですが、ペナルティーではないんだ、いわゆるこれから二年間窓口をあけて、そして二年目に大体ほぼスライドを考えると、その時点年金が四千円ぐらいになるから、まじめに納めておった人のことを考えると四千円にせざるを得ない。これをもう繰り返し繰り返し衆議院であなたたちは答弁をされているわけです。そこで私は、どうも私は納得できないのは、いわゆるいま無年金者がこれからこの特例納付制度に入る場合、その金というものは、これから先のやつは今度は新しく設定された保険料で納めていくわけですね、これから入った時点から。過去の分を納めるわけです。過去の分で、これまた衆議院の議論の中で、計算をしますと十一年。二年間はいわゆる現行料金で遡及できるから、特例納付として納めるのが十一年。こういうことで、大体総額五十二万八千円程度になりますと、これも衆議院でやりとりがされたことなんです。私は、どうもこういう計算間違っているんじゃないかと思う。というのは、その人が過去に入ってなかった、入るべきものを入ってなかった。これはいろんな理由があったでしょう。だから、その過去の分を納めるときに、私はこう思うんですが、過去のいわゆる料金、ただし、過去の料金だけではだめだと思うんですね。というのは、まず一つは運用の利回り、厚生年金年金を積み立てて、それによって利回りをつけてきています。その利子をつけなきゃならぬ。それから、たとえばいまから十年前の二百円と、いまの二百円は貨幣価値が違います。そこで、物価スライドといいますか、物価上昇率、貨幣価値の変化というものも勘案をして計算をしなきゃならぬと思います。ですから、そのことについてはすでにきのう数理課長を呼んで、どういう計算になるのかということを計算をしてもらっていますから、私自身も手元に計算したものがありますから、いま申し上げた十年ないし十一年分をいま言った方式で計算する。当時の年金金額、それに運用利回りをつける。さらに、物価上昇率を掛ける。そうすると、いま一番問題になります、いわゆる十一年と言われています人の金額はどの程度になるでしょうか、ひとつそれを。
  92. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 五十二万八千円というのは、十一年分でございますので、その十一年を二通りとってみました。一つのとり方は、制度が発足しました昭和三十六年四月から十一年ということで、四十七年三月までをとりますと、いま先生の言われました数値は十四万六千五百五十一円になります。今度は直近の十一年をとると、具体的に申し上げますと、昭和四十二年四月分から昭和五十三年三月分ということで押さえますと、十八万五千七百二十四円になります。
  93. 安恒良一

    安恒良一君 それから、物価スライド分を除いて、いわゆる単純な当時の掛金と運用の利回りを掛けたらどうなりますか。
  94. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 三十六年からの十一年でとりますと、五万八千九百二十七円でございます。それから、直近の十一年でとりますと、十二万六千九百十五円でございます。
  95. 安恒良一

    安恒良一君 わかりました。私が自分で計算しましたものも、私の場合には物価上昇分をなかなか掛けるだけの時間がありませんでしたから、単純な方法で計算をしましたのと、ほぼ金額が合っていますから、これは間違いないと思います。  そこで、大臣にお聞きしたい。大臣、いま言ったように、いま問題になっている十一年の人が、これでいくと五十二万八千円納めなきゃならぬ、いまあなたたちのお出しになった案では。また、私が出した案、これは大臣おわかりだと思いますが、当時納めるべき保険料と、それをその後積み立てて、いわゆる年六分何厘で回してきていますから、それぞれ。六分二厘とか六分三厘で。それで、いわゆる回してきた利率もプラスアルファする。それから、貨幣価値が変わっていますね。いまから十年前の二百円といまの二百円は、それだけ物価上昇分が反映していませんから、それも全部計算をする。そうすると、いま木暮さんが言ったように、直近の十一年をとると十八万五千円、ラウンドナンバーしても十九万円だと。それから、三十六年から四十七年の十一年をとると、十四万六千円だと。そうしますと、私は少なくとも特例納付をやるときに、いわゆるまじめに納めた人に迷惑をかけない、まじめに納めた人の意欲をそがないということになるならば、これから納めるやつはいまの料金で納めるわけですが、過去の分については、いま言ったような計算でやることの方が私は正しいんじゃないか。それを、いや、これから三年先には四千円になるから、だからペナルティーとは言わないけど、やっぱり四千円出してもらわなきゃいかぬというところがどうしても私はわからない。そこで私は、この作業を、大変だったと思いますけど、きのう数理課長を呼んで、そういう複利計算から物価上昇分まで計算をして、ひとつ出してもらう。私自身も、私の方ではじき出したものと似てるんですが、大臣、この点はどうなりましょうか。
  96. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 安恒先生のお考えよくわかるわけでございますが、過去の滞納の保険料を納めるという場合でございますけれども、私ども理論的に考えますと、平準保険料を取るべきではないかと思うわけでございます。平準保険料は、昭和五十一年の再計算のときに五千四十円でありますが、その後のスライドがございますので、五千九百円ぐらいになっておろうかと思いますけれども、平準保険料を取るというのは一つの筋ではないかと思うわけでございます。しかし、平準保険料でございますと、五十一年当時の価格でもすでに五千円になるわけでございますので、今回の最終年度の保険料目安に置いた方が、前二回もそういうやり方をいたしましたので、多少とも負担が軽くなるというふうに考えたわけでございます。
  97. 安恒良一

    安恒良一君 いや、大臣に私は聞いているのですからね。平準保険料を取るということは、もう過去においてこれは退けられているのですよ。いまになって、それが理想的だと持ち出してもしようがない。問題は、私は高額負担の場合を考えたときに、過去の二回のときと違って、今回は余りにもいわゆる適用漏れの方について、これを救済をするために金額が大き過ぎる、四千円ということでは。そこで、衆議院では、同僚委員から、何とかこれは下がらぬのか下がらぬのかということでいろいろ大臣に言われた。言われたのですが、まあ後からこれは質問をしていきますが、若干の融資制度というところに衆議院段階では落ち着いているわけです。ところが、その後もこの適用を多く受けられる団体からもいろんな陳情が私どものところに参っております。そうすると、やはりこういうものをやるときには、何か理論というものがなければいかぬ、そういうふうに考えてまいりますと、私は平準保険料を取ればいいということではないと思う。それぞれの人が当然納めておかなければならなかった保険料、十年前に加入しておけば、その人は十年前からそれを納めればよかったわけでありまして、何も平準保険料を納めているわけじゃない。各人各人は、一人一人が十年前のときの金額は、十年前の金額で納めていっているわけですね。ですから、そういう意味から、御承知のように二百五十円から始まり三百円、四百五十円、五百五十円と、こういうふうに保険料がずっと上がってきておるわけですからね。それを局長が言うように、それじゃねえのだと、ということにはならぬ。そのことは、もう過去二回のときにも退けられている。そこで、いや、過去二回はこういうやり方だったから、今回もいいじゃないかと、こう言っている。私は、今回の場合に、いわゆる適用漏れを救おうと、これは無年金者を救おうということから、いま特例納付という制度を考えた。しかし、やってみると今回の場合に余りにも金額が、五十二万八千円、しかも二年間で五十二万八千円を納める。そうすると、すぐこういう反論がある。いや、二年間納めても、その人が六十五歳からもらえばこれだけ得をする。そんな論理を聞きたくないのです。得とか損とかという問題じゃない。これだけかければこれだけ返ってくる。民間の保険会社じゃあるまいし、すぐこれだけ金が返ってくるからそれでいいじゃないかと、こういう論争されますけれども、いま掛ける人、漏れている人、それなりにいろんな理由があって、またその中には非常に低所得者の人もいるわけです。そういう人々が、なかなかこれは五十万とか五十二万というものを納めるのは大変だと、こういうときに、政治として何か新しい論理を考えなきゃいかぬではないか。  そこで、私は私なりに一つ考えたのは、当然本人が当時加入しておったら納めるべき保険料に、その後本人が積み立てておりませんので、運用の利回り分も本人が持つ、物価上昇分、貨幣価値の変動分も本人が持つ、それが限度じゃないか、こういうふうに思うのですが、局長は結構です。大臣に聞いています。  私がこれから大臣と言ったときは大臣、局長と言ったら局長立ってください。指名しない人が立ったらこれから受け付けませんよ。
  98. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 先生の御主張のように、過去の金利を——自分が払ってなかったんだから、払うべき過去の保険料を払っておけばいいじゃないか。しかし、それだけじゃあれだから金利もちゃんとつけて、それで計算をして、それをやればいいじゃないかという意見もあるいはあるかもしれませんが、しかし昭和三十六年のとき、二十五年の標準年金で一応月に二千円という年金額だったんですね、そのときの百五十円。そうすると、いま三万五千円でございますから、それとの関係を考えていただかなきゃいかぬわけでございますね。その点だけは私ちょっと先生考え方の中に抜けているんじゃないかと思うのですが。
  99. 安恒良一

    安恒良一君 いや、抜けていません。
  100. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) したがって、われわれとしては、二千円のときの百五十円を納めておった人たち。それから年金額ずっと上げていきまして、それで保険料が今日の段階にきたわけでございますから、いま入る方は過去の年金額とは関係なく、今度の決められる年金額を受給するわけでございますので、その受給権が発生するわけでございますから、この点はどうも理論的にいろいろおっしゃいましても、私どもとしてはこれは勘弁していただきたい。
  101. 安恒良一

    安恒良一君 いや、そんなことないですよ。たとえば二百五十円で二千円だったときに加入した人は、それはすぐそこで二百五十円で二千円をもらっているわけじゃないんですよ、そうでしょう。現実は、その人は今日までずっと積み立ててきて最終的な年金をもらうわけですよ、そうでしょう。ですから、何か二千円と二百五十円がリンクしている。今日、三万幾らといまの三千幾らですか、二千何ぼ、それとリンクしている。だから、これからその人が過去の分もその料金で納めなきゃならぬということにはならぬですよ。それは、私は厚生年金ですが、たまたま国民年金の該当者とすれば、本来ならば十年前に当然入っておかなければならなかったが、いろんな事情があって入っていなかった。これは率直に言って、強制保険と言いながらも、現実は本人の任意届出制になっていますね。法律的には強制になっている、しかし、本人の登録制なんですよ、本人の申告制なんです。そういうところに、まだまだ年金の漏れる原因もあるし、それから御承知のようにわが国のいわゆる戦後特に人口の都会への集中化という問題がありますね。そういういろんな要素もこれは本人の責めだけじゃない要素も加味されているわけです。そういう中で、今日年金に漏れている人があるわけですから、そういう人の場合に、私はその人を、しかしやはりこの際は無年金者を全部なくそう、しかもどうも今回はやや最後の措置だとこう言われています。そういう場合に、一人でも多く無年金者をなくするために、そうかと言って筋道を全部崩すわけにはいかぬ、公平の原則を崩すわけにいかぬということになると、いまあなたが言われたように二百五十円対二千円、現在の二千円と三万幾ら、この関係だけで、これから二年後の期間をおいてする特例納付が四千円であらねばならぬという論理にはならぬのです。それじゃどうも厚生大臣の説明わかりません。
  102. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 今度の特例納付を再開いたしますにつきましては、昨年衆参両院でいろいろ御議論があったわけでございますが、そのときには私どもはできれば三回目の特例納付をやりたくないという気持ちでおったわけでございます。それはなぜかと申しますと、いま先生からも御指摘がございましたけれども国民年金というのは非常に変わった年金制度でございまして、厚生年金の場合には保険料を国会でお決めいただけば、事業主を通じまして強制徴収もできるわけでございますが、国民年金の場合にはこれは被保険者になる方が自発的に納めていただくということより仕方がないわけでございます。もちろん、強制徴収もできる規定はございますけれども、二千五、六百万人の方々について現実にそういうことはできませんで、被保険者の方の自主的な保険料納付意欲というのが制度の支えになっておるわけでございます。それで、特例納付を一回二回と繰り返してきたわけでございますが、それぞれ一回限りのものだということで実施したのでございますけれども、これを三回目やるということになれば、一定の間隔をおいて必ず特例納付というものが行われるという印象が出てくるのは避けられないということになろうかと思うわけでございます。そうしますと、若いときから余り多くない収入を割いて保険料を納めるよりも、もう老齢年金受給が間近くなってから特例納付に乗ればいいんだということになるのではないかということを、非常に心配をしておるわけでございます。で、三回目の特例納付自体やりたくなかったわけでございますが、もし無年金対策をやるということであれば、そういう弊害のない対策をぜひ考えたいということで、いろいろ検討いたしたのでございますけれども、結局すべての無年金者を救うためには、過去二回やりました方法を繰り返さざるを得ないという結論になったわけでございます。その際、これも率直に申し上げましてペナルティーを積極的にかけようという検討もいたしたわけでございます。普通の人は六十五歳から年金を受けるけれども、特例納付がある方は一歳か二歳先へ持っていくというようなことも考えたわけでございますが、やはり公的年金が余りそういうぎらついたことをするのはいかがかということで、それもやめた次第でございますが、保険料につきましては、ほかの被保険者に迷惑をかけないという意味合いからは、平準保険料ということになるのでございますけれども、これも前回と同様四千円ということで、そのときに納められている一般保険料を下回らないということで、安易な特例納付という印象をせめてそこだけ避けたいということで御提案を申し上げた次第でございまして、そういう意味からこの四千円の保険料をぜひ実施させていただきたいと、こういうふうに思うわけでございます。
  103. 安恒良一

    安恒良一君 幾ら聞いてもこれはわかりませんし、私はこれには反対ですし意見があります。そこで、この問題は、私の質問時間がなくなりますから、まだほかの関係省からもお見え願っていますから、これは意見の対立のままにしておきましよう。  そこで、いまひとつちょっとこの点でお聞きしたいのが二つあるんですが、厚生大臣が衆議院におけるわが党の同僚議員の質問の中で、特例納付に貸し付けの検討ということの答弁をいろいろされているんですね。ところが、どうも私は無年金者の——それから、いま一つ言っておきますが、やりたいとかやりたくないなんて、こんなこと失礼な言い方ですよ。国民皆年金のときに、落ちている人があればどうして救うかというのが政治なんですよ。だから、やりたくなかったんだけれども、何か衆議院と参議院で言われたから、しようがないからやるというような言い方ちょっとしましたが、そこの部分は訂正しておいてください。  審議会の意見でも、国民皆年金下における無年金者をどうして救うかということは十分検討しろとこう書いてあるんですから、何かやりたくないのを言われたというようなことですが、その点は後でちょっと訂正しておいてください。  そのことはさておきまして、そこで特例納付の貸し付けについて、どうも私はわからないんでございますが、実施状況を見つつやろうというような御答弁になっていますね。実施状況を見つつ、というのは厚生大臣が前向きに、意欲的に善政だと、こうある雑誌は書いているのですが、いわゆる低所得者にはとても五十二万円払えぬから貸し付けやろうというならこれは一つの方法です。それを実施状況を見つつというのはどういうことを意味されているのか。そこのところ、これ厚生大臣が御答弁され、実施状況を見つつということになっていますね。だから私は、そこ、わからないわけですね。いわゆる低所得者には五十二万円は大変なんだから、この際は貸付制度をやろう、こういうのならわかるんです。ところが、どうもどういうふうに納付がされているか、うまくされているならそれでいいけれども、納付の状況を見ながらというふうに読み取れてならない。これはあなたと私どもの同僚議員のやりとりの議事録を読むと何かそういう印象を受けるものですから、その実施状況を見つつという点について、大臣の考え方を聞かせてください。
  104. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 百万人と推定される無年金者の方々の中には、いろいろな方がいらっしゃると思うのでございますが、また市町村によって大分いろいろ人数等が違ってくるだろうと思いますし、そういう意味で、一体貸し付制度をやるといたしますと市町村なりその他の方の御協力も得なきゃいけないもんですから、したがって、そういう実施状況を見ないとなかなか見当がついてまいりませんので、そこで実施状況をしばらく見させていただいて、その結果ひとつやらしていただこうと、こういうことを申し上げたわけでございます。
  105. 安恒良一

    安恒良一君 どうもわからないのですよ。結局、率直に言って五十二万円なり五十万が納められるような財政状況にある、一定の所得の人はそれはいいんですよ。だから、低所得者の対策というのは、率直なことを言うとどっかで線を僕は引くしかないと思うのですね。これは全部に貸し付けするというならまた別ですが、どうもあなたのやりとりは、低所得者対策として貸付制度ということを言われているわけですね、そうでしょう。そうすると、低所得というものについて大体年間収入がこれぐらいの人については、以下の人は貸すなら貸すとか、何かそういうふうにここ明確にしていただかないと、何かうまくいっているのかどうか、市町村がどうやっているのかどうか、人数も違うからということでは、具体論にならないのですね、そこは、具体論に。だから私は、このことは後からまた同僚委員も詰めて、さらに私どもこちらの附帯決議の中でも明確にそこ、してもらおうと思っておるんですがね。どうも衆議院の附帯決議も、あなたに言われたもんですから、「実施状況を見つつ」なんて、これ附帯決議の中に書いてしまって、私は後からこれは誤りだと、こう言ったんですけれども、だからそこの意味は、低所得者対策としておやりになるならば、どこかでラインを引いて、そしてこれ以下の人に対しては五十二万円についてはこういう貸し付けをやりますという具体案がないといけないことになるわけですね。ですから、そこのところについて、きょうお答えがいますぐできなければ次回で結構ですから、「実施状況を見つつ」などということじゃなくして、こういう方針でこのようにやる、いわゆる低所得者対策としてこういうふうにやる、今度できれば私は百万人が皆それをしてもらいたいと思います。その場合に、とても五十二万円は納め切れない。しかし、政府が貸してくれるというならば、もしくは地方自治体を通じてこうしてくれるというならということによって、さらに無年金者がなくなるだろう。そうすると、「実施状況を見つつ」ではなかなか一歩前進しませんから、これはまあきょうじゃなくて結構ですから、ぜひこの法案を上げるまでの間に、どういうふうに具体的に実施するかということを検討して、大臣からひとつ答えてください。
  106. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 実は、やっぱり無年金者の方々に、保険料にも議論がありました。それから、もし保険料を是認するとすれば、五十数万円になるのだから何とかその手当てをしてやれというような御意見がございました。私どもとしては無年金者の中には、先生おっしゃるように現実に入ろうとしても入れなかった、あるいは移動があった、やむを得ない事情の方もあっただろうと思いますけれども、また中には、いいやそんな国民年金なんというものは大したことはないやというようなことで入らなかった人もあるんじゃないかと思うのですね。そうしますと、まじめにやっぱり払ってきた方々との関係もございまして、なるべく無年金者対策というのは余りいろいろな措置を、手厚い措置をやりますと、どうも一般のまじめな納付を自主的にやる方々に対する公平の問題等もありまして、問題点がありますものですから、なるべく貸付制度というのも、まあできるだけひとつお許しを願いたいと思って、いろいろあったんですけれども、各党先生方、これはもうどうしてもやらなければいかぬぞと言われましたし、それじゃひとつ思い切って、まあわかりましたと、私どももその線でやりましょうということになりました際に、やっぱり先ほど言いましたように、市町村で一定の数が把握なかなかできないと思うのですね。普通、どういう方がどれぐらいおられて、そしてその中で低所得者がどれぐらいということが、その無年金者の百万人の実態が正確にわかってないもんですから、そういう面もございますので、やはり実施状況をよく各町村でやっていただいて、それを見た上でないと、どれぐらいの資金量が必要なのか、どれぐらいのあれなのかということがよく見当つきませんので、そういう意味で実施状況を見さしていただいてからと申し上げたんですが、おっしゃるようにこの法案の参議院の審議までに、私どもの具体的な考え方をお示しいたしまして、また御批判いただきたいと思います。
  107. 安恒良一

    安恒良一君 私はぜひ示して——というのは、わかりました、やりましょうと言った以上は、やらなければならぬわけです。問題は限度の問題。そのときに私は、何も不心得の者に貸してやれと言ってるわけじゃないんです。実際上低所得者で、それを貸してもらえなければなかなか実際は納め得ない——これは年限が限られていますからね。十年も二十年も先でいいというならまた別ですけれどもね。ですから、その意味から言うと、やはり一定の基準というものを明確にして実施するということにしないといけませんので、これは大臣、検討するということですからぜひ検討してください。  それから、これとちょっと関連をしますが、これも私はかねがね問題にしておったんですが、国民年金における死亡一時金という制度がありまして、現在は二十年未満ですか、これはたしか二万三千円だと思いますね。二十年から三十年の間が二万三千円ですか、三十年なら三十年ぐらいからまた少し若干上がりますね。ところが私、今度つくづく考えたんです。たとえば、これ特例納付によって無理して五十万円納めちゃったと。ぽっくり残念ながら人間いっちゃう場合があるわけですね。そうすると二万三千円しかもらえないんですね、五十万円納めて。これはいままで納めておった人も、すでに十何万になっている。これについて、厚生年金の場合は御承知のように遺族年金制度というのがございますから、これはまあ五割で低いんですけれども。ところが、国民年金というのは個人単位になっていますから、だからこの死亡一時金の場合に、自分がかけた金額をはるかに下回っているわけですね、はるかに。だから、私はこれはやはり年金ですからね、年金。しかも保険財政に基づいている。そうすると、余りにも死亡一時金という金額が低過ぎはしないか。ところが、大臣はどうも、いやそんな死亡一時金制度やめたいのだ、こう言ってる。やめたいのだと、こういうふうに、これは衆議院の答弁の中であったかどうかしりませんが、私が雑誌を見る限りにおいて、あなたはやめたいと。しかし、私は少なくとも年金というのは個人一単位で、本人は一生懸命年金をもらうことを善意をもってかけておるわけですよ。しかし、志半ばにして、人生の半ばにして倒れたときに、私はこの一時金というもの——これは女子の脱退手当というのが厚生年金にありますね、これはもう今度なくすことになりますが、それの場合には、まあ大体これは年数にもよりますけれども、自分がかけた掛金ぐらいは戻ってくるとか、少し場合によれば若干の銀行利子ぐらいの、こういうことでかなり運営してまいりました。最近は少しそこが銀行利子までつかないようなんです。そういうことから考えると、死亡一時金のこの二万三千円というのはやめるのじゃなくて、私はやっぱりどの程度がいいかと、これはいろいろ議論のあるところです。私は私なりの考えを一つ持っておりますけれども、やはり考えるべきじゃないでしょうか。特に今度のように五十万円などというのを、一時金を納めなきゃならぬ人の場合には、特に目立ってきますからね。これは何も特例納付の人だけの話——現在掛けている場合でも、自分が営々と掛けているのに残念ながら死亡という場合があり得るわけですから、その場合のこの一時金の制度ということについて、これはどうなんでしょうか。
  108. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 死亡一時金の制度でございますが、いまお話のございました特例納付の場合につきまして、これは一般の保険料を納付した方とのバランスもありまして、特例納付の人はまとまった金を納めて年金に結びつかないうちに亡くなるのは気の毒ではないかということもあるわけでございますが、一般の被保険者の方も同じでございますので、やはり公平の立場から考えると現行でいかしていただくというふうに考えているわけでございます。
  109. 安恒良一

    安恒良一君 どうもあなたは人の質問をよく聞いてないね。特例納付者のことだけを言っているんじゃないですよ。私は一般の人も安過ぎやしませんかと聞いているんですよ。もう少し大臣がいたときにあなたが立つなら、よく人の説明を聞いてから立ってください。早合点しないでください。私は特例納付の五十二万のときに特に目立つけど、これは一般の人も同じなんだと、営々と掛金を掛けてきて志半ばで倒れたと、そのときに二万三千円というのは余りにも低過ぎやしませんかということを聞いているんです。
  110. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 死亡一時金は、お話しのとおり二万三千円でございますが、これは国民年金保険料を掛けられた方が病に倒れられるというふうなときに掛け捨てということになりますので、一部お返しをするというような趣旨からできた制度だと思うわけでございますけれども国民年金保険者の老齢化と同時に給付が非常にふえてまいります。したがって、財源を重点的に配分をしていかなければならないというふうに思うわけでございまして、死亡一時金は現行程度でやらしていただきたいというふうに思います。
  111. 安恒良一

    安恒良一君 やらしていただきたいじゃ困るんですよね。じゃ、ひとつ二万三千円のその掛け捨てではお気の毒だと、一部お返しをすると、二万三千円の理論的根拠についてどういう経過でこの二万三千円を理論的、数字的根拠ではじき出され、そしてそれがなお現行でよろしいということについて理論的に、数字的に説明してください。
  112. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 現在の二万三千円でございますが、これは従来とも過去三年程度、直近三年の保険料を返すというような考え方に立っているわけでございます。具体的に申し上げますと、四百五十円の時代が六カ月、五百五十円の時代が十八カ月、それから九百円の分が十二カ月ということで二万三千四百円というふうに計算をしておるわけでございます。
  113. 安恒良一

    安恒良一君 いや、だからその根拠は何ですか。計算をしておるということはわかったよ、その根拠は何ですか。何カ月という根拠は何ですか。
  114. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 死亡一時金につきましては、制度発足以来こういう計算をしてきておるわけでございまして、それに準拠をいたしたわけでございます。
  115. 安恒良一

    安恒良一君 それでは答弁にならないんですよ。制度発足以来なら制度発足のときにこういう論理だったと言いなさいよ。何ですか、あなた、おとなしく聞いておったら、ばかにしたらいけませんよ。制度発足以来やっておるというのは何だ、その言い方は。じゃ制度の発足のときにはどういう理論根拠でやったと言うべきじゃないですか。冗談じゃないよ。
  116. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 理論的根拠ということにはならないかもしれませんけれども、死亡一時金としては、その程度は適当であるという判断で三年分ということにいたしまして、それを改正の都度計算を変えてきたということでございます。
  117. 安恒良一

    安恒良一君 大臣、どうもね、この点も時間がありませんから、私はやりとりの宿題にしておきたいと思うんです。一遍、今日の時点において検討してもらいたい、ここのところについて。木暮君が言うように、制度発足のときそうだったからそれでいいということでは私はないと思うんです。それはなぜかというと、だんだん保険財政が大変ですから、掛金の金額は上がってきているわけですね。これからもまた上がっていくわけです。現在が直近の二千七百三十円というのがだんだん上がっていくわけですから、その場合において、私は掛け金を全額返せと言っているわけじゃないんです。それから掛け金を掛けた人の年数にもよるわけです。本人が十年掛けた場合、二十年掛けて死ぬ場合も違うんですよ。三年掛けて死ぬ場合もあるんです。そういうものについて私は少しきめ細かに、これだけ金額が高くなってくると、私は検討されてしかるべきだ。それをいま木暮君が言っているように、制度発足以来こういうことなんだから、こういうことでいいんですと、そういう突っぱねではいけません、政治というのは。私は状況の変化に対応して十分検討していただきたい、このことを希望として申し上げておきます。
  118. 木暮保成

  119. 安恒良一

    安恒良一君 大臣に聞いている。君に聞いてない。
  120. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) おっしゃることも私よくわかりますし、一時金制度というものを設ける以上は合理的に考えていかなきゃいけない。十年の人も二十年の人も同じじゃおかしいじゃないか。まあ掛金を一部戻してやろうという思想なら、長い人と短い人と同じじゃおかしいじゃないかという御議論もよくわかります。この死亡一時金といいますか、そういう年金の受給権を発生しないまま終わった方々の問題全般として、制度としてこの問題をどう扱っていくか、御承知のとおり私ども老齢年金額の引き上げの方に重点を置かなきゃいかぬと思いますので、あらゆる財源があればできるだけそっちの方にいかなきゃいかぬと思っておりますもんですから、恐らくいままでは、当初はなかったものをすぐ後を追っかけてこの制度をつくった、そのときにまあまあ三年ぐらいということで来まして、それをずっと踏襲してきたんだろうと思いますが、おっしゃるようにこの制度を置いている以上は、御指摘のような矛盾もあるわけでございますから、制度全般についてこういう年金制度の場合に、そういうものが必要だとすれば、一体どういう意義を持つものか、また必要であるのかということを根本的に検討してみまして、必要であるという結論に立てば合理的なものに直していかなきゃいかぬということは当然だと思いますので、それらを含めまして、制度論として検討さしていただきたいと思います。
  121. 安恒良一

    安恒良一君 はい、わかりました。それじゃあそういうことで一遍検討してみてください。  次に、大蔵省は何か三時過ぎには御退席だというふうに聞いていますから、まず、ちょっと飛びのかして年金の課税問題と財源問題についてちょっと大蔵省含めてお聞きしたいんですが、これも古くて新しいことなんですが、いわゆる年金に対する非課税というのが、これはもう院外の団体からも、また国会の決議も毎年のように書いてあるわけですね。今度もまたこれ書いてある。それに対して、皆さんの御答弁としては、いわゆる年金というのは、いまは厚生年金でも十万円年金なんだと。だから、老夫婦で十万円で年間百二十万であれば、もうこれはかからないんだと。老夫婦の課税最低限二百何万ですから、ですから、かからないんだと。しかし、他の所得がある場合には総合所得だと、こういうやりとりが、これはもう厚生省であろうと大蔵省主税局であろうと、繰り返し繰り返し議論が今日されているわけですね。しかし、それでは私は理論の発展がないと思うんですよ。いわゆる年金が今日高くなったといっても、十万円年金だから、年金には課税かかってない。いわゆる年金以外の収入があるから総合所得課税になるんだと、こういう論理の展開。そこで、私はお聞きしたいんですが、大蔵省どうなんでしょうかね。思い切って、わが国の課税体系というのは総合課税制度になっていますね。収入が二ところからあればそれを合算をしてそれにかける、この制度はわかります。しかし、老齢者年金受給者だけはやろうと思えば、それは税制改正できるわけです。私も税調委員、長くしておりましたけど、できるわけですから、そこだけは、年金についてはその分については分離課税を取る。ところが、年金以外にたくさんの収入がある人から、それはぼくは所得にかけてもいいと思う。そういう一つの発想を言い出さないと、これ毎年毎年——ことしのたとえば衆議院、「すべての年金は、非課税とするよう努めること。」ってね、これもう審議会も書いてあるし、これ審議会も満場一致で、また附帯決議ももういつも自民党含めて満場一致でつくけれどもね、実効がないんだ。だから何かこれね、私が言ったことは一つのアイデアなんですが、そういう実効あらしめるためのいわゆる税制改正について具体案か何かないですか。これは大蔵省主税局の審議官がお見えになっていると思いますから、そこの考え方をひとつ聞かしてください。  それからいま一つ木暮さんも財源論というのが非常に重大になってくると言われている。そこで、これはきょうは総理府の制度審議会からもお見えいただいていると思いますが、この財源論について、これは制度審議会と両方に聞いておきたいと思いますが、私は皆年金下の新年金体系に対するいわゆる制度審の提案というのは基本年金構想、よし悪しは別としてかなりユニークな提案だと思います、ユニークな提案だと。そして目的税的にいわゆる付加価値税方式、しかもそれは明確に目的税としての付加価値税方式というものがこの中に年金財源問題として出されておりますが、どうも審議会の審議の過程では、大体二%程度あれば当面いいじゃないかと、約二兆五千億程度というふうに審議会の審議過程を、同僚の審議会の委員に出ている人から聞いたり、さらに衆議院におけるやりとりの議事録等を見るとありますが、この問題について、やはりこれから財源論というのは大変な大きい問題になると思いますが、大蔵省自体としていわゆる年金財源という問題についてどう、特に制度審が具体的に一つこの方針を提起していますから、これは総理の諮問機関ですからね、大蔵省も知らぬと言うわけにいかぬと思います。そういう観点がありますから、この点について。  さらに、総理府からお見えくださっていると思いますが、総理府としてはこれを答申した方ですからということだろうが、これらの実現の問題について制度審等の話の中の問題について考えを聞かしていただきたい。
  122. 米里恕

    政府委員(米里恕君) まず第一点の税制の問題でございますが、しばしば当委員会におかれましても附帯決議をいただいておるということは十分私どもも承知しておりますし、それなりに私どもも勉強いたしております。しかし、先生よく御承知のように、現在障害年金あるいは遺族年金といったようなものは非課税になっております。問題は老齢年金であろうかと思います。老齢年金につきましては、私ども考え方としては、その性格がいわば給与所得に非常に近いものであるというような認識に私どもはまず立っておるわけでございます。いわば給与の後払い的な性格を持った一種の生活補給金といったような性質のものではなかろうかというふうに私どもは考えておりますので、そういう認識の上に立ちまして、現在給与所得控除も計算しておるということもございますし、また御承知の老齢者年金特別控除、いわゆる七十八万円でございますが、こういう制度もございます。こういったようなことで課税最低限、先ほど先生よく御承知のとおり、御指摘ございましたように年齢六十五歳以上の老齢者夫婦世帯の場合でございますと、現在二百十九万が課税最低限ということになっております。この場合、配偶者の方が七十歳以上でございますともう十万余ふえるというようなことになりますが、一般の給与所得者の夫婦世帯の課税最低限が百十三万という数字でございますので、かなり課税最低限面では配慮されているというように私どもは考えているわけでございます。これよりもさらに水準を超える高額な老齢年金を受けておられる方というのは、非常に数はわずかでございます。九〇%以上が課税最低限以下というふうに私どもは承知しておりますので、そういったような高額な方についてどういうふうに考えるかというようなことを考えますと、たとえば分離課税ということも一つの御発想かと思いますが、分離課税というのは、先生税制の専門家でいらっしゃいますからよく御存じのとおり、なるべく私どもは避けていきたいと、むしろ現在の幾つかございます分離課税をいかにして総合課税にもっていくかということで実は日夜苦心しておるというような状態でございますので、なかなかそういった形で解決するのはむずかしいんではなかろうか。こういったかなり水準の総体的には高い方々の課税というものは、働いて所得を得ておられる方とのバランスというような問題もございましょうし、それなりの税負担というのはやはりお願いしていかなければならないんじゃないかというように考えておりまして、新しい発想というお言葉でございまして、新しい発想が全然ございませんでまことに申しわけございませんが、私どもはそう考えております。  それから、第二の年金財源論の問題でございますが、付加価値税、目的税ということの答申をいただいておりますが、御承知のように、実は今後の財政問題あるいは税制の問題について、いま抜本的にいろいろ私どもも検討しておるわけでございまして、先生よく御承知のとおり、去年の秋には中期税制についての政府の税制調査会の答申もいただいておる。その中では、いわゆる政策税制を整理すると、あるいはまた既存の税制を見直すということをしても、なかなか財政需要全体というものを考えるとそれだけでは問題は片づかないので、やはり一般的な所得税の増税かあるいは一般消費税かどちらかではなかろうかというような答申をいただいておるわけでございます。今後、社会福祉関係、社会保障関係も含めまして財政需要はますます大きくなってまいるというようなことに備えまして、私どももこれは何か考えなければならないという意識は十分持っておりまして、その場合にどういう形の税金がいいのか、あるいは目的税ということも一つのお考えかと思います。そういった目的税がいいかどうかという問題も含めまして、現在私どもも研究しておりますし、引き続き政府の税制調査会におきましても、一般消費税の問題を中心にいたしまして、今国会明けから早急にまた審議を続けていただきたい、かように存じておる次第でございます。
  123. 竹内嘉巳

    政府委員(竹内嘉巳君) お答えいたします。  制度審議会の立場で、所得型の付加価値税という年金税を実現することについての考え方という御質問だというふうに理解してよろしゅうございましょうか。
  124. 安恒良一

    安恒良一君 はい結構です。
  125. 竹内嘉巳

    政府委員(竹内嘉巳君) 私どもとしては、この点は社会保障制度審議会はどうしても社会保障という問題についての総合調整的な立場で物を考えて、議論を進め、意見をまとめて総理に答申をする、あるいは建議をするという立場でございます。それだけに税制ということになりますと、ただいま大蔵当局の方からも御答弁がありましたように、税制審議会なりあるいは税制調査会とか、その他それぞれいろいろな分野の専門の機関もあるわけでございまして、社会保障制度審議会としては総理に、この際、こういう皆年金下の新年金体系というものの実現を期待をすると同時に、その実現についての前提として所得型の付加価値税というものの導入がぜひ必要であり、これを昭和五十五年には何とか実現さしてもらいたいということを御要望と申しますか、建議をし、意見具申をしているわけでございまして、この点大蔵省にも、あるいはまた厚生省その他年金関係の関係行政機関に対して建議の趣旨の御理解をいただき、それが何らかの形で意味のある、皆年金という理想の実現に役立ててもらえればというのが、大河内会長以下社会保障制度審議会委員の一致した意向だということを申し上げるのが、私どもとしては限界ではないかと思います。  大変申しわけございませんが、以上でございます。
  126. 安恒良一

    安恒良一君 そこで、いま一遍大蔵省と竹内さんにお聞きしておきたいんですがね、私はたまたま分離課税と言ったんですが、分離課税というのは問題があるというならば、ひとつ年金について税金をかけるなということが実現する、たとえばいまの課税最低限をある程度上げていくなら上げていくということについてのやっぱり方策を考えてもらわぬと、これは決議倒れになっちゃうんです。それと同時に、これはちょっと厚生省にお聞きしたいんですが、現在年金を支給されている人で税の対象になっている人は、厚生年金国民年金、まあ国民年金は余りないと思う、十年年金、五年年金ですから、思いますが、まあほかに収入があるからわかりませんが。それからいま一つ共済年金等を含めて、どの程度税金を取られている人がいますか。いま大蔵省から言わせると、九〇%はないと言っておられますが、どの程度の人がなっていますか。  それから、大蔵省の方には、その数字を言ってもらった後、せめて国会の決議というのは、これは空でやっておるわけじゃないんですから、具体的にやっぱり実現してもらわなきゃいかぬので、いい知恵ないと言われるけれども、やっぱりいい知恵考えてもらわなきゃならぬ。だから、分離課税がだめならだめで、いまの制度の中でさらに課税最低限を、老人の課税最低限をいま二百万ちょっと、かなり引き上げていくとか、そういうことを考えていただかないと私はいけないと思うんです。  それから、竹内さんの方にお聞きしたいのは、私が言ったように、大体これを計算されたときは二%ぐらいで、二兆五千億円程度のことを考えられたと解せる。それと同時に、制度審議会というのは、いまあなたが言われたように、総合的なことを議論するところですね。そこでそのときに、これは私の聞き方が悪かったんですが、老人のいまの大きい問題としては二つあると思うんです。一つ所得保障でしょう。それから保健医療対策。だから、総合的にやられたならば保健医療対策については、たとえば老人保険についても、これも目的税的なそういうことを横目ににらみながらとりあえずやられたのかどうか、そこのところについてちょっとお聞きをしておきたい。  それから、これは大蔵省に指摘をしておきたいですが、いわゆる賃金の後払いだと、給与所得というふうにとっていると、それはちょっと年金についてはひど過ぎるんじゃないですか。やはり、年金は所得再配分、それから老後生活の安定、こういうことが中心であって、何かいわゆる退職金のぐらいのところの論争なら賃金の後払い説とか老後とか、これはありますよ、退職金でも。しかし、年金までを賃金の後払いだ、だから——というそこの思想は、ちょっとぼくはいただけないんですけどね。これは府政の、大蔵省はそういう見解なのかしりませんが、私はこの点はちょっと政府の見解を聞いておかないと、賃金の後払い説を年金にとられたんじゃ、これは被用者年金のことを言われていると思いますが、たまりませんが、この点は厚生省考え方を明確にしておいてください。以上です。
  127. 米里恕

    政府委員(米里恕君) 課税最低限のお話が出ましたが、課税最低限、これまた安恒先生、専門家でいらっしゃいますからよく御承知のところでございますが、いろいろな諸控除から成り立っておるということで、問題はこういった諸控除自体を今後どう考えるかというような問題になろうかと思います。その場合には、もちろん特に老年の方に対する控除という問題と、一般の配偶者控除あるいは基礎控除というものと、両方から成り立っていると思いますが、この辺につきましては今後の税制一般の問題として引き続き検討してまいりたいというように考えております。
  128. 竹内嘉巳

    政府委員(竹内嘉巳君) 二点お尋ねありましたのでお答えいたします。  第一点の二%という問題でございますが、これは建議を出しました際に参考資料として添付いたしましたものに二%という数字を示しておるわけでございます。これは、昭和五十一年度の時点におきまして、約九百万の六十五歳以上の老人についての基本年金の所要額を推計しますと約三兆余り、その当時、昭和五十一年の国民所得が約百五十兆で、二%で三兆という一つ計算の根拠があったわけであります。  なお、国民所得の二%という考え方は、純粋な形における付加価値税というのが、いわば国全体における個人なり法人なりの付加価値の総集計されたものが国民所得になるという考え方から、国民所得で所得型の付加価値税の総額がおよそ推定できる。かつ、これが国民所得の変動に応じて国民のいわば消費生活水準、特に老人所帯の消費生活水準にもおのずから反映してくるので、国民所得の動向に応じて並行的に二%を確保すれば基本年金に関する限りこれはカバーできるのではなかろうかというのが、社会保障制度審議会の二%という一つのめどについての考え方でございました。  それから、この年金税と申しますか、目的税としての所得型の付加価値税を提案をいたしましたのに当たって、審議の過程では当然、これはむしろ社会保障税という形で医療保障なり所得保障なり、それらをすべてカバーするものという形で考えたらどうかという審議過程における意見は当然ございました。ただ、この建議を取りまとめるに当たりまして時期的な制約もございました。かつはテーマが皆年金体系、新年金体系というものをまとめるということでございましたので、この際そこまで広げるという積極的な意図は審議会の過程でかなりの方からの御意見はありましたものの、年金問題について意向を取りまとめるという形から、年金税としての目的税という形で、とりあえず所得型の付加価値税についての提案をしたと、かように事務当局としては理解をしているわけでございます。
  129. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 国民年金では恐らく課税対象の人は大体ない。厚生年金では大体八万ぐらいと考えておるわけでございます。私は、年金はやっぱり社会保障給付でございますから、これを厚生省側は給料の後払いという観念ではございません。ただ税の面から、そういう考えのもとに税制の体系を考えておるという御説明じゃないかと思います。まず、無税に、非課税にしろということについては、私どもも要求はいたしておりますが、これはなかなか言うべくして今日現在で直ちに採用願えるということは非常に困難だと思いますので、私は、限度額を上げてもらって、できるだけ課税対象の数を少なくしていくという努力は当然厚生省としてしなきゃいけないと思います。まあいろいろもう増税というような議論が出ているときでもございましたので、ことしはちょっと最後は身を引きましたけれども、なお、年金所得者のこの現状から見まして、この限度額の引き上げだけは今後ともがんばっていきたいと思っております。
  130. 安恒良一

    安恒良一君 わかりました。それじゃ、私も、これ無税無税ということだけではなくして、やっぱり具体的に、いま八万人ということですから、そういうことが減るようにやっぱりしていくために一段の努力をお願いをしたいと思うんです。  そこで、時間がだんだんなくなってまいりましたから、最後に婦人の年金権問題について少しお尋ねをしたいわけです。わが国の場合、これはやはりいろんな問題ほかにもありますけれども、一番ぼくは問題があるところだろうと思う。そこで、これは遺族年金のときにもすでに年金局長言われましたように、たとえば厚生年金の場合、離婚をしますと年金権なくなっちゃうんですね、これ年金権が。諸外国の制度をいろいろ調べてみますと、世帯単位の年金の場合に離婚をした場合には、二分の一だけ、夫と妻が協力して家庭を営んでいるということで約二分の一を年金権として認めるという制度等もあるわけですね。わが国の場合の被用者年金の場合は、いわゆるこれは若くて離婚しますと、それから国民年金に入ればと、こういうこともありますけれども、特に高齢者の場合に離婚しますとこれなくなっちゃうわけですね。こういう問題等。それから、逆にかん父で、たとえば、きょうはすばらしい年金課長さんがお見えになっていますが、年金課長さん働いて、だんなさんはどっかお勤めだと聞いていますが、そうでなくて、だんなさんがますらおで家庭でいわゆる主婦をやられておる。ばったり奥さんが死んじゃいますと、これ六十歳以上でないと女子の厚生年金適用者の場合にはだんなさんには一切年金権がないんですね、六十歳以上もしくは障害の場合じゃないと。等々、これはやはり婦人の年金権ということがわが国の場合に明確になっていないところに——まあわかりやすい例として私は二つの事例を挙げたわけです。このことは遺族年金との関係もあるわけですね。それからいま一つ国民年金における、それから厚生年金における自分の妻の障害の場合の障害年金の問題もありますね。等々、どうも日本の場合に婦人の年金権というのが極端におくれておるというふうに私は思うんです。こういう問題についてどうお考えなのか。  それから、具体的にこういうものはぼくは手のつけられるやつから早くつけていかないといけない問題だ。たとえば、国連婦人何とか憲章とかいって、最近は超党派で婦人問題を国会の中でも追及していく、総理府総務長官がいわゆるあれになられてと、いろんなことがありますけれども、しかし肝心の年金の中における婦人の年金権という問題は、どうも日本のいままでの議論の中においてはややネグレクトされている。まあネグレクトと言ったら言い過ぎかわかりませんが、重視されていないと思いますが、そういうような問題点についてひとつ考え方を聞かしてください。
  131. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 年金における婦人の取り扱いでございますが、働いておる婦人の場合には厚生年金が適用されておりまして、むしろ男子よりも支給開始年齢の面あるいは保険料の面で優遇をされておるわけでございますが、被養者の妻の場合には御指摘のような問題がございます。それで、高齢で離婚をいたしますと、被養者の妻であった期間は空期間ではございますけれども身がつきませんので、年金が出てもごくわずかなものになってしまうわけでございます。  それから、後段で御指摘の障害の場合には全く無保障と言ってもいいと思うわけでございます。それで、婦人の年金の取り扱い、私ども非常に重要な問題と考えておるわけでございますが、基本懇でもこの点を御審議いただきまして、離婚の場合には、アメリカ等でとっておりますような、夫の年金の半分を妻に与えるというような方法と、それから、国によりましては民法的な処理をしておる、離婚した場合の夫婦の共有財産の分配という問題でやっておるところもあるわけでございますが、そこら辺の是非を見きわめまして、この点につきましては措置をしたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  132. 安恒良一

    安恒良一君 それから逆の場合、御夫人がお勤めで御主人がうちで家庭の仕事をしておったと、その場合の年金権、遺族年金その他ですね、それはどうしますか。
  133. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) その場合には、まあ結論から先に申し上げて、現状でいいんじゃないかというふうに思っておるわけでございますが。と申しますのは、妻が働いておって夫がうちにいる場合でございますけれども、夫が働いています場合には、夫に早く死なれますと子供のいる母子家庭になります。そういう意味で、遺族年金とかあるいは国民年金で言えば母子年金ということを考えなければいけない。一方、働いておる妻が死にまして夫が残った場合に、夫子世帯ということになる可能性は非常に少ないんじゃないか。したがいまして、老齢になっておる、もう新しくかせげない夫だけかん夫年金という形でカバーしていけばいいんじゃないかというふうに思っておるわけであります。
  134. 安恒良一

    安恒良一君 私は、そう単純に割り切れないんじゃないか。というのは、普通男というものは奥さんに養ってもらうなどということは考えないものですよ。それでもいろんなことがあって本人が働けなくて奥さんが働いているという場合が往々にしてあり得るんですよ、これは。そしてその人が民間の職場で働いておって厚生年金の適用を受けておる。ところが、残念ながら奥さんが亡くなるという場合、私はあり得ると思うんですね。いや、それは奥さんが亡くなったから本人が働けばいいじゃないかという、そうはいかないんだ。本人が働けるなら、何もそんな肩身の狭い思いをして奥さんだけ働かしているようなばかな男はいないですよ。日本人は特に働きバチと言われているんですからね。そういうやっぱり何らかの事情がある。まあ一々事情を細かく言いません。だから、やむを得ず、うちで家庭の仕事をやりながら奥様の方がお勤めに出ているという場合は、これは私は数としてあり得ると思う。そういう場合に、いやそれは本人が働けばいいじゃないかと。まあ六十歳以上になると働けないから遺族年金。そこのところも、これ宿題にしておきますから、ぼくはそういうケースの場合があり得ると思いますから、ぜひこれは検討してみてください。私は公平を期すという意味でどうするかということの一つの問題だとこの点は思います。これは検討課題ですから私はあなたの意見を聞こうと思っていません。そういうことは検討課題として、そういうレアケースといいますか、そういう問題があり得るんです。本来、男というものは、奥さんに働かして自分がうちで割烹着を着て働く、こんなばかなやついないですよ。それはそれなりの理由があって働けないんですよ。そういう場合のことを私は言っているわけですから、ひとつ研究課題として、ぜひ大臣これもいろいろの研究課題の一つとして研究していただきたいと思います。  そこで最後に、労働省もお見えになっていますが、私は支給開始年齢という問題は、これは非常に大きな問題だと思っています。というのはなぜかというと、官民格差の中でいろんな議論をされるのに、ざっくばらんなことを言って、共済年金、これは厚生年金と発足の歴史が違いますが、資格条件を満たせば五十五歳からもらえるわけですね。しかも、これは在職老齢年金制度というのはないわけです。一方、民間の場合は六十歳からで、しかも在職老齢年金がある。六十五歳になっても高所得者については二〇%の制限がある。一方、国民年金は六十五歳なんです。私は、国民年金の六十五歳と民間の被用者年金の六十歳は一つの理論的な根拠があると思うんです。それはなぜかというと、国民年金の場合には、ざっくばらんに言って、自営業者ですから本人が健康であれば働けるんですよ。ところが被用者年金というのは、本人がいかに健康であろうと、いまわが国の場合には定年制度というのがある。そして、そこで首になっちゃうんですよ。ですからそういう点について、制度審に帰ってもらいましたけど、私は、制度審が「60歳−65歳の老齢者雇用市場との結び付きの濃度を考え」「ヨーロッパなみの「働く」生活と結び付くことの可能性を展望したうえで」と、六十五歳に全体をと、こう制度審の答申に書いてあるけど、ここらはやはり学者は学者だなと思うんですがね。現実に、これは労働省にちょっとお聞きしたいんですが、わが国の定年制の現状はどうなっているのか、今日。さらにまた、ここに書いてあるように、「60歳−65歳の老齢者雇用市場との結び付きの濃度」というのは、本当にそんな濃度があるのかどうか、こういう点。  それから、大臣にお聞きをしておきたいんですが、やはり私は、自営業者の国民年金と、それから雇用された労働者、しかもわが国における定年制という現状があるときに、その開始年齢が何か六十五歳でなければ、外国でこうなっているかということ、私は間違いじゃないか。いわゆる労働の形態が違う。雇用の形態が違う。こういうような点についてどうお考えになるか。まず労働省側から現状。  それからいま一つは、労働省側に聞いておきたいのは、雇用問題についてと年金と結びつけるというなら、具体的な定年延長についてどうするのか。たとえば、アメリカは今日雇用対策の一つとして、不況対策の一つとして七十歳定年法というのを国会が法律で決めておりますね、七十歳定年法というのを。わが国の場合でも何かそういうのを具体的に持たないと、これも精神訓話的に定年年金に結びつけるために延ばしなさい延ばしなさいという行政指導だけでは、私は延びないと思うんです。しかし一方、どうも年金の支給開始年というのはいろんな審議会の答申を見ると、何か六十五歳に持ってきたらいかにもいいような書き方になっておるんですが、これはこれから大きな問題になりますから、きょうは労働省にもお見え願ってます。と同時に、定年制の問題と年金のあり方ということについて大臣の所見も承っておきたい。
  135. 谷口隆志

    政府委員(谷口隆志君) まず、わが国におきます定年制の現状でございますけれども定年年齢が一律に設定されております企業、一番最近の調査は五十一年の調査でございますが、七四・一%の企業定年年齢が一律に設定されておるわけでございます。それらの企業のうち、年齢別定年状況を見てまいりますと、五十一年時点では五十五歳の定年制をしいております企業が四七・三%、それから六十歳以上の定年制をしいております企業が三五・九%ということでございます。そこで、過去の経緯で見てまいりますと、大体この調査は三年おきにいたしておりますけれども昭和四十三年の時点では五十五歳で六三・二%でございましたが、逐次改善されてまいりまして、四十九年、五二・〇%が、五十一年に初めて過半数を割ったという状況でございます。一方、六十歳以上の定年につきましては、四十三年調査では六十歳だけのくくりがございませんが、四十六年で見ますと二三・一%であったのが、四十九年に三五・四%、それが五十一年では三五・九%と、こういう状況でございます。なお、定年年齢と支給開始年齢の関係でございますけれども、私どもとしましては当然のことながら、原則としてはこの年金支給開始年齢定年がリンクすることが望ましいわけでございまして、したがいまして、現状ではこの点も先生十分御承知のとおりでございますけれども、当面六十歳の定年制が一般化することを目指して、各種の施策を進めておるわけでございます。その点につきまして、ただいま御指摘ございました、何か具体的に施策を講じていくべきではないかということでございます。これも十分先生御承知のとおりでございますけれども定年制は当然のことながら賃金とか雇用慣行と非常にうらはらの関係で密接な関係があるわけでございます。わが国の定年制がまだ五十五歳が五十一年で初めて過半数を割った状況だということは、年功序列賃金等の賃金制度が背景にあるわけでございまして、こういうこととのうらはらの関係で、その制度改善しながら実施していく必要があるわけでございます。この賃金制度自体につきましては、いろいろ私ども考え方をはっきりし、また賃金研究会等の意見も承っておりますけれども、基本的にはまあ労使で決定される問題でございますので、そういう考え方もとに、関係労使の方の理解を深めながら、実現に向かって努力をしていただくような働きかけをするというのが、やはり基本ではなかろうかと思います。具体的施策につきましては、もう十分これも御承知のとおりでございますけれども、やはり一昨年中高年齢者雇用促進に関する特別措置法が改正されまして、五十五歳以上の高年齢者の雇用率が定められておりますし、そういうものを軸といたしまして、先ほど言いましたような、賃金制度等の賃金雇用慣行改善の指導と、それから定年延長奨励金というような制度もございますが、こういうものを活用して労使に広く指導、働きかけを努めてまいりたいというふうに考えているわけでございます。
  136. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 昭和八十五年になりますと、厚生年金の給付、これが大体国民総所得に対する割合が一三ぐらいになるという計算でございます。国民年金を含めて年金全部がですね。そういたしますと、ドイツで一一ぐらいでございますから、日本の国民所得に占める割合というものは年金の給付額、非常に負担額が多いということになりますんで、したがって、相当先の問題ではありますけれども、支給開始年齢というものはやはり検討していかなきゃいかぬのじゃないだろうかと思っておりますが、しかし一方、理想的にはやっぱり退職年金がつながっていくという状況でなければ、本当の老後の安定というものはないわけでございますから、私ども雇用状況等を十分見ていかなきゃいけませんし、望むらくはやっぱり年金とちょうどリンクするような定年制というものが一般社会において行われることが望ましいと考えております。しかし、現実問題として、なかなかそこまで考えられるかと言うと、これはなかなかちょっと考えられないんじゃないかと思いますので、したがって、支給開始年齢を引き下げる場合には、その間の手だてをどうしていくのか等の問題を含めて、慎重に検討していかなきゃいかぬだろうと思うのです。将来の雇用のあり方等も十分検討しなければなりませんし、そういう意味で、まだ今日いつごろから支給開始年齢の引き下げをやらなきゃいかぬかということまで至っておりませんけれども、当然この昭和八十五年にそういう推計ができるとすれば、支給開始年齢等についてはこれはやはり年金財政全般あるいは国民の負担の限度から見ますと、向上していかなきゃいけない、その場合の雇用状況の問題、それとのつなぎの問題等について十分問題点も御指摘をいただいておりますから、検討をしていかなきゃいかぬ問題ではないかと、かように考えております。
  137. 安恒良一

    安恒良一君 これは私はやっぱり労働省にもお願いしておきたいんですが、なるほど、いままでの調査時点においては、私は定年制の延長がだんだん延びている時点調査なんですね。しかし、昨今の雇用状況というのはかなり変わってきているわけです、率直なことを言って。むしろ、いろんな民間企業においては、定年制の延ばしたものを再度短縮するという方向すら積極的な形で——いい意味じゃありませんが、出ているときですから、その意味から言うと、やはりいま言われたように、私はどうしてもこれはもしもいわゆる支給開始年齢を引き下げるとすれば、定年制とリンクしなくてそんなことできっこないです。いまですら民間の場合に、五十七、八歳でやめて六十歳までという制限が、しかも在職老齢年金というのがあって問題がある。ですから、その意味から言うと、どうしても私は雇用拡大という意味から言っても、定年制を積極的に延ばす指導というもの、たとえばアメリカの例を私は一つ挙げましたが、国家の法律として一つ定年制というものを決めた、私は一つの勇気ある制度だと思いますが、そういう問題についてもぜひひとつ検討をしてもらいたい、このことを労働省にも申し上げておきますし、厚生大臣も、どうしても将来財源のことを考えると支給年齢をと、こう言われる、開始年齢。そんならそのように、そっちが見合う政策をあわせてやられないと、幾ら研究されたって結論は出ません、これは。ですから、そのことを申し上げておきたいと思います。  それから、もう時間があと数分になりましたから、最後に二つお聞きをしておきたいんですが、在職老齢年金、これは同僚の広田委員から詳しくやられましたから、私はこのことをあえて避けたんです。ただ一つだけ提起をしたいんですがね、今度十三万幾らに引き上げられました理論根拠というのは、これも衆議院の議事録で読みましたから、そのことをあえてここでまたお聞きする気はありません。ただ、大臣ね、私は六十歳以上の在職老齢年金はなくした方がいいと思っておるんですが、そのことの論議は時間が足りませんから、少なくとも在職老齢年金の十三万何がしというのは、今日における雇用労働者の、平均賃金から見ますと、これは労働省お見えになっていますが、十三万ということじゃない、たしか十五、六万になっております、十五万何ぼ。そこまでぐらいはとりあえず上げるという、上限を今度十一万が十三万何ぼになったんですが、そういう本当は在職老齢年金というのはなくしてもらいたいと思うんですが、それが一遍にできなければ、せめていまの民間の労働者平均賃金、たしか十五万幾らだと、約十六万ちょっと切れていると思いますが、そういうようなところまで上げるという考えをお持ちになぜなれないのだろうか。これは在職老齢年金についてはもう何回も何回も、また附帯決議がついたり、いろんなことをしていますからね。今回は十三万何ぼにしたということは聞いています。聞いていますが、やはりいままでの若干の引き延ばしにしかすぎないわけですよ、この衆議院の議事録を見る限りにおいてはね、そういう点が一つ。  それから第二番目、これまた大臣聞いて御検討願いたいと思いますが、民間の厚生年金昭和十七年、時の軍部のいろんな思惑等があって発足したことは事実です。当時、満鉄その他に働いておった人が戦後帰ってまいりまして、日本でいわゆる私の鉄道であるとか、私のバスであるとかもしくは民間の厚生年金を適用した工場に入った。ところが、その人は満鉄なんですから厚生年金制度というのはないわけですね。この間はもう全然これは新しく復帰して、その復帰したのは昭和二十年に復帰した人もあれば、いろんな事情でおくれて二十三年や二十四年になった人もあるわけですね。その人のその間はいわゆる満鉄、これは一つの国の国策として設けられた鉄道でもあったわけですね。その人がたまたま帰ってきて国有鉄道に入ればこれは通算がある。こういう問題について、私は何らかの救う方法を考えてしかるべきだろうと、こう言ったら、きのう関係課長来てもらったら、いやいろんなケースがありますからなかなかと、こういうことでした。しかし、私は少なくともはっきりしているわけですね、満鉄なら満鉄というところで勤めておって、そして帰ってきて片っ方は国鉄に入った、片っ方は私鉄道に入った、こういうような問題について、私は何らかの、特に厚生年金が十七年発足して以降の問題、その前のやつ全部見ろと、こう言っているわけじゃないですから、そういう点について私はぜひひとつ考えてもらいたいと、こう思うんですが、以上の二点についてひとつ。
  138. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 在職老齢年金の十三万円の刻みを、少なくとも平均賃金までするようにというお話でございますが、これも先生よく御存じでくどくど申し上げることははばかられるわけでございますけれども、やはり退職年金という形で原則ができておりまして、退職をした方に年金を出すというたてまえなわけでございます。ただし、現在の高齢者の就労の状況から見まして賃金が余り高くない、退職をすれば年金がもらえるのに働いておられるわけですし、働くことが御本人にとって非常にいいことであろうと思いますし、または保険財政からも結構なことで、そういう場合にはせめて年金額一つ目安として、賃金在職老齢年金を合わせまして年金額一つ目安にするということにどうしてもならざるを得ないかと思うわけでございます。ただ、その場合も現実に出ております年金平均は七万五千円でございますが、やはり制度が目指しておるモデル年金のところまではいいんじゃないかということで、改正ごとにその当時のモデル年金にリンクをさせるということをしてきたわけでございます。五十一年改正では、そのモデル年金にさらに一歩を進めまして、当時のモデル年金が九万円でございましたけれども、十一万円までということをいたしたわけでございますが、この辺が限界ではなかろうかというふうに考えておる次第でございます。  それから、満鉄の問題でございますが、厚生年金の場合には昭和十七年に十人以上の事業所に働いておる男子労働者から適用をしたわけでございますが、現在五人に引き下げたわけでございますので、われわれも昭和十七年にさかのぼって五人以上のところは見てほしいとか、後から女子職員も取り入れたわけでございますが、女子職員も見てほしいというような希望がいろいろあるわけでございます。国民皆年金の発足の時点で、どなたにも年金を受けられる可能性がありますように、当時の年齢で支給資格期間を特例を設けておるわけでございまして、そういう意味では全部年金に結びつくようになっておるわけでございますので、満鉄の方だけさらに特段の措置をとるということは、公平の原則からして困難であるというふうに考えております。
  139. 安恒良一

    安恒良一君 ぼくは満鉄を例に挙げて、だからどうもあんた、私はそういう政治的なことを事務屋のあんたに答えてもらうと、そんな答えが返ってくるから、大臣に聞いているんだ。それをあんたすぐ出しゃばるわけよ。そして、満鉄の例だけど、私は満鉄は一つの例だと、いろんなことをきのう事務屋から聞いた。あんた事務屋だから話してもらわんでいいんだよ、そんなことは。私は大臣に、そういう厚生年金が当時発足をした。ところが、本人がたまたま内地で勤務しておれば全部入れた。満鉄に行っておった、これは一つの例だ。そういう場合に、いわゆる外地等に行っておって、そして帰ってきて同じようなところに働いている場合の救うケースについて研究をしてもらいたいと、こう言っている。年金局長研究してもらいたいと言った覚えはないんだ、大臣に研究してもらいたいと言っている。あんたたちは事務屋だからそういう答えがすぐ返ってくることは、もうきのう呼んでわかっておるから、あんたたちに聞いてないんだから。私はそういう何らかのレアケースがあるでしょうと、そういう場合に、いわゆる厚生年金の場合にも、やはり一定の二十年なら二十年という問題があるわけですよ。だから、若干の年齢の特例もありますよ。しかし、そういうことでたくさんの人から私は陳情ももらっているもんだから、そういうことについてもぜひひとつ研究をお願いをしたい、こういうことですから、大臣、一遍研究してみてください。事務当局のように、すぐ、いやこれはこうだ、あれはこうだと、こういうやりとりを幾らしたってあれじゃないですか。——いいですよ。そういうやりとりをするなら、幾らでもやって、まあ法案上げるのにいつまででもそんなやりとりばかり繰り返しますか、これから。何日間も何日間も質問に。研究すべきものは研究する、課題に挙げるものは挙げて整理をしていかなきゃいけないんじゃないでしょうか。だから、私は問題点があるところは、研究してもらいたいものは研究してもらいたいとか、これは実施してもらいたいとか、こういうかなり言葉を使い分けながら御注文を申し上げているつもりです。  ですから、あえてもう一遍大臣に聞きますが、そういうような問題についていろいろなことがありますから、研究された結果こういうふうに、これはこうしたいとか、これは不公平の原則でこうだというなら、私はいただきますよ。それなのに、私がいま質問しているのに、それを横から、質問の当事者でない人間がとって一つ一つ反論をしていく。結構です、そういうことでこれから厚生省の法案というのはやるんですか、あなたたちは。それだけ聞いておきましょう。
  140. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 年金局長は、やっぱり年金制度全体をあずかる事務当局の責任者ですから、いろいろ私が答弁する前に事務的な問題をお答えを申し上げているわけでございますから、そうひとつ安恒先生あれしないでいただいて……
  141. 安恒良一

    安恒良一君 だから、年金局長に答えにくかったら、年金局長を指してないんだよ。大臣が答えた方がいいものはわざと私はえり分けて質問している。
  142. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) よくわかります。わかりますが、やっぱり私もなかなか細かい点までよくわからぬもんですから、その点は御了承願っておいて、衆議院でもいろいろ御指摘がございましたんですが、なかなか聞いてみますと、困難な問題が多いようでございますけれども、どうもおっしゃるように、国民側から見ますと、帰ってきた人から見ますと、どうもおれの友だちは国鉄へ行っておって全部通算になる。おれだけは同じたとえ民間会社であってもならない。国の制度としての厚生年金じゃないかと、片っ方は共済だからといってなるというのはおかしいなあという感じを持たれることは、これはもう本当にもっともだと思うんですね。それをそれじゃどうやったら救えるのか、理論的に言えばこれは厚生年金というものはみんな会社へ勤めている人が相扶共済のあれでやっておるわけですから、全然自分と関係のないところにおった人が——まあ国家、満州国はあの当時の、たしか法的性格は外国の企業だと思うのですよ。やっぱり満州国という一つの、これは日本がでっち上げたと言えばそれまでですけれども、一応日本から見れば外国ですね。外国の企業の勤務員だった期間を入れることになるわけでございますから、戦時中の特殊な——われわれもそういう経験ありますけれども、よく事情は、そう砂をかむように割り切って、外国の企業だと言うとは何事だと言われると思うんですけれども、それを全部入れますと、今度相扶共済の制度で、自分たちの内地の企業が一生懸命になって、被保険者のためにと思って半分も負担をしてやっているわけでございますから、そういう問題等もあって、これは政治的にすっぱり言って、どうも同じ国民が、同じところの人が気の毒じゃないか、やれよと言いたいところなんですが、この辺のところをどこで線を引っ張って、どういう整理をするかということを、少し検討さしていただきたいんです。それによってお答えを出します。
  143. 安恒良一

    安恒良一君 いや、だから私も検討してみてくれと言っているんですよ。
  144. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) はい、検討します。
  145. 安恒良一

    安恒良一君 それから、私はこの際あえて言っておきますけれども、五人未満の適用の問題が出てきたら大変だと。五人未満の適用については、われわれはもう数年前から、私なんか議員になる前から審議会でも常に言っているじゃないですか。失業保険については五人未満の適用になったときに、なぜここを適用しないのかと。附帯決議も次から次ついているじゃないですか。そういうときに、今度はこういうときになると、五人未満の事業が未適用になっているからと、そんな使い分けされたらかないませんな、年金局長。だから、私はそういうことについては、ちゃんと指摘をされていることについてはやっぱり努力をしてもらわなきゃいかぬ。五人未満の適用についても、すでに失業保険が五人未満の適用をやったとき、当時の審議会から、いわゆるこういうものについても五人未満の適用の方向にやっぱりいくべきだというのが審議会の意見でもあるし、それから附帯決議の中にもいろいろついているわけですよ。ですから、そういうアンバランスがあることは知っている。あるなら、そういうものを一つ一つ直しながらそれを反論に使うなら、私はうんと言いますよ。ところが、五人未満のことはいまもって解決していない。だから、今回も五人未満の事業所に対する厚生年金の適用問題について具体的な方策を確立し、その適用の促進に努めることということが、あえてまた同じようなことが衆議院の付帯意見としてついているし、われわれもまたこれつけざるを得ないんですよ。ですから、いま少し政治というものはそういう問題があったときには一つ一つをできるだけ温かく、やっぱり中身を取り入れるものは取り入れると。しかし、そうは言いながらも、基本的な公平の原則が崩れるという場合に、公平にしたいということがあってしかるべきであって、ただ単に人が満鉄の場合を出せば、すぐそれじゃ五人未満の問題もあるじゃないですかと。あることは知っている。知っているからこういうふうにしろという決議をしているのに、それをサボっているのはそっちの方じゃないか。五人未満のことをいまもって厚生省はやり切らない。労働省の方は同じ保険でもやっているじゃないですか。そういうような問題がありますから、どうか少し答弁に注意してもらいたい。そのことだけ申し上げておきます、大臣。
  146. 木暮保成

  147. 安恒良一

    安恒良一君 質問をしていません。答弁に注意してもらいたいということを大臣に言っているんです。  以上をもって終わります。
  148. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、私は児童手当について最初若干質問をいたします。  児童手当については、新聞では、予算編成の過程等でいろいろ、むしろ児童手当は廃止の方向へいくだろうとか、あるいは減額するとか、いろんなことが伝わったわけでありますが、そういうようないきさつについて見た場合に、中央児童福祉審議会の意見具申、昨年十二月十二日、これなどを見ますと、むしろ「児童手当制度の目的としている児童のいる家庭の生活安定、次代をになう児童の健全育成・資質向上を図るということは、国の政策目標として、今日ますますその必要性を増してきているものといえよう。」と、こういうふうに意見を述べているわけでありますから、したがって、何となく児童手当というものはだんだん攻められて縮小を余儀なくされて、何かよけいなものをつくってしまった、福祉のばらまきの見本みたいな、そんなふうな感覚でとられるのは根本的に間違っていると、こんなふうに考えますが、いかがですか。  とともに、厚生省がこの児童手当について考えている基本的な考え方と、それから今回の改正案提案するに至った経過について、簡単に御説明いただきたい。
  149. 石野清治

    政府委員(石野清治君) ただいま御指摘ございましたように、昨年の十二月には中央児童福祉審議会の方から、特に児童手当制度につきましては、その持っている目的からしましてきわめて重要なので、さらにその整備、拡充をすべきだと、こういう御意見がございました。これに対します厚生省の基本的な考え方でございますけれども、御案内のように児童手当制度の目的としている点は二つございまして、一つは家庭生活の安定と、それから児童の健全育成あるいは資質の向上という、二つの大きな目的があるわけでございます。この二つの目的は、またいずれの時代におきましても非常に大切なことであると思うわけでございますが、特に昨今のように人口の老齢化が急速に進んでまいります段階におきましては、ますますこの老人対策の問題と並行して、児童の健全育成というものを進めていかなければならない、こういう認識に立っておるわけでございまして、そういう意味で、この目的とするところはますます重要性を増している、こういうことが言えると思うわけでございます。  ただ一方、国民各層のいろいろの御意見を五十一年の十二月から五十二年の二月にわたりまして意識調査をやりましたわけでございますけれども、その結果を見てもありますように、国民の間にはかなりの児童手当制度に関しましては御意見がございます。積極論からあるいは現状維持論、あるいは消極論、そういうものを含めまして、かなりの意見がございました。  そこで、私どもは、この児童手当制度の目的とするところは非常に重要なことでございますので、これを推進するわけでございますけれども、その際にはこういう国民の意識というものも十分頭に描いて、より合理的な児童手当制度にすべきだと、こういう基本的な考え方もとに、実は中央児童福祉審議会に御意見を求めたわけでございます。  その際に、中央児童福祉審議会の方の御意見の中でも、現在児童の健全育成施策についてはいろいろやっておりますけれども、そういう他の児童健全育成施策との合理的な調整の問題、あるいは税の面で扶養控除制度がございますが、その扶養控除制度との関連をどうするかという問題、それからさらには各企業で行っております家族給付、賃金制度に含まれております家族給付との問題、そういう関連性を十分考慮しながらこの問題については進めていかなければならぬだろう、こういう御意見がございました。  しかしながら、現時点では、そういう基本的な問題はともかくといたしまして、とりあえず現在児童手当制度の持っております目的のうちで、所得保障の機能をより重視すべきだと、こういう考え方も強く出まして、そこで今度の改正案におきましては、いわばその所得保障の機能を充実するという意味で、所得の低い階層につきましてはこの際、従来据え置きましたものについて金額を上げる、五千円を六千円にするという改正案をとったことが一つと、それから同時に、これは所得保障の機能を重視してまいりますと、所得制限を果たして現在のままでいいのかという問題がございました。所得制限の機能につきましても、やはりある程度これを抑えて、そしてより低い階層の方にその金を回すべきではないかと、こういう御意見もございました。そういうことも踏まえまして、所得制限については、五十三年度におきましては一応現状据え置きにいたしましたけれども、将来はこれについては考え直す、こういう基本的な考え方をとったわけでございます。  法案に出ました経緯、考え方につきましては以上のとおりでございますが、基本的には児童手当制度をどうするか、基本的に大きな問題でございますので、さらに中央児童福祉審議会の御意見を聞いて検討してまいりたい、こう思っているわけでございます。
  150. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣に伺いますが、厚生省の施策の中でいま石野局長が説明したように、何かこの児童手当制度をやっていっていいのか悪いのか、何か追い詰められ追い詰められているみたいなお話をするわけですが、厚生省一つの国の施策として法律が制定され推進しようという施策について、そんなにおっかなびっくりやっていたんじゃしようがないじゃないですか。
  151. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 厚生省の中で児童手当制度を、先生おっしゃるような非常に消極論あるいは迷いあるいはまた何か余り効果がないからやめてしまおうかというような、そういうあれはございません。ただ、率直に言いまして、限られた中で効果的にやるにはどうしたらいいか、特に所得保障のやはり機能というものを重要視しまして、できるだけ低所得者の方の、私なんか三子以降となっておりますが、低所得者の方だけに、できるだけ三子と言わず二子にまで持っていって、それ以外の方はもうやめてそっちへうんと厚くした方が、児童の健全育成の目的から見てもいいんじゃなかろうかというような考えを持っておるのでございますが、しかし、従来の既得権を一遍に否定をするということもとてもできませんし、この千数百億の金を使ってもっと効果的なものを考えていきたいという議論でありまして、決してこの制度についての迷いだとかあるいは消極的な態度で厚生省がいまいるわけではございませんので、そういう趣旨にひとつ御了解願いたいと思います。
  152. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣のきわめて積極的な姿勢に対しまして、私も大変心強く思うわけでありますが、ひとつ石野局長もそんなにあっちこっち気を取られないで、よく目標をちゃんと決めてやっていかなくちゃならないと考えます。ということは、先ほど在職老齢年金の場合もそうですが、ちょっと話が横道へそれますけれども、働き手がなくなった場合、その社会はどうなるかということですね。それはお年寄りでも働きたいというなら、じゃ生きがいのために働いていただきましょうかなんという、そんな問題じゃないと思うんですね。働き手がぐっと減っていった場合その国はどうなるか、社会はどうなるか、世界はどうなるかということ。したがいまして、児童の健全育成ということも、現在の情勢から考え、また将来にわたって考えた場合に、考えられなくてはならないきわめて重要な課題だというふうに考える一人であります。そこで、社会保障制度審議会の答申は、まさしく制度本来のあり方についての基本的な考え方の確立を図るべきであり、この基本的な考え方に基づき、本来の給付改善に格段の努力をなすべきものであってということでありまして、本来の給付改善に努めるべきである。したがって、厚生大臣がお述べになったように、むしろ第二子から実現するということも検討課題になるというふうに、こういう積極的な私は趣旨と理解しているわけであります。  ところで、今回の福祉施設に着手することには疑問もあるので慎重に対処されたい、これの答申は十分厚生省も御理解の上で提案をなさっていらっしゃると思います。この辺についての考え方はいかがですか。
  153. 石野清治

    政府委員(石野清治君) 御指摘のように、制度審議会では本来の給付改善に努力すべき段階で、新たに福祉施設に着手することについては疑問もあると、こういう御指摘でございまして、恐らくこの意味は当然いまおっしゃったように、本来的な給付改善に全力を投球すべきだという御趣旨でございまして、そういうものを怠ってしまってはいかぬぞという警告と理解いたしておりますし、同時にまた反面ではそういうことを忘れないでやるならば、福祉施設について必ずしも不賛成ではないと、こういうふうに理解をいたしておるわけでございます。ただ、その福祉施設をやるにつきましては十分な配慮を加えませんと、せっかくの制度が目的に反してしまうということもございますので、これは慎重にやらざるを得ない。そういう意味で、私どもの方は児童手当制度の効果が十分上がるような形でこの福祉施設の制度というものを考えてまいりたいと、こういうように考えております。
  154. 小平芳平

    ○小平芳平君 具体的に、福祉施設の厚生省の計画としまして、初めに計画をお述べいただきたいわけです。中におきまして、児童手当資金からそういう施設をつくるのは疑問があるという、児童手当制度資金をそういう施設に回す、そこに疑問があるという点と、そうでない、いや、福祉施設のそういう面については、確かに児童福祉の推進に役立つであろうという面と両面があるように表現されておりますが、そういう点についての御説明をいただきたいと思います。
  155. 石野清治

    政府委員(石野清治君) 最初に、施設の具体的な計画でございますけれども、あくまでもこの福祉施設は児童手当法の目的達成の一環というふうに考えておりますので、その事業内容につきましても児童の健全育成なりあるいは資質の向上が図られる事業が一番適していると考えておるわけでございます。五十三年度におきまして考えておりますのは、事業所内保育所の施設整備費、それから各人口中都市におきます児童センターに対しまする助成、それから大型の児童館でございます子供の城の設置準備、こういうものにつきまして実施を行うために、約三十七億の予算を計上いたしておるわけでございます。問題は、こういう児童の健全育成の資金児童手当勘定の方から支出するについてどうかという御意見も、確かにあるわけでございますけれども、実は御存じのとおり、この資金と申しましても事業主の拠出金というのがございまして、これが率にいたしまして千分の一・二というのが決められております。千分の一・二の保険料と申しますか、拠出金と申しますか、その拠出金の額の範囲内で、しかも若干の剰余が生ずるわけでございますので、その剰余の資金をこの福祉施設に回すわけでございますが、あくまでもそれは児童の健全育成に資することが、結局その企業としてもプラスだ、こういうふうな考え方で、いわば企業に還元されるものであるという理解のもとに事業主の拠出金を健全育成の資金に充てておるわけでございまして、これについては必ずしも企業側については確かにそれが将来のプラスになるならばという形で御了解を得ておるわけでございますので、できるならばこの施策を伸ばしていきたい、こういうことでございます。
  156. 小平芳平

    ○小平芳平君 局長はきわめて納得をして答弁をしておられますが、なかなか福祉施設についてはいろいろ論議のあるところでありますので、私としてはこの答申にあるように、児童手当本来の給付改善に努力をする、そこに重点がある、福祉施設については慎重な配慮が必要だということ、この答申のとおりに意見を述べて次へ参ります。  次に、同じく社会保障制度審議会の、先ほど来お話に出ておりました五十二年十二月十九日「皆年金下の新年金体系」について、この内容について総括的な点で、若干厚生大臣の御意見をお聞きしたいわけであります。  よく御承知のように、この制度審議会の新年金体系についてというこの建議は、いわゆる二階建て年金ですね、基本年金がまず基本部分を成し、その上に、仮に現在ある年金をすべてひっくるめて社会保険年金と呼ぶことにいたしますと、基本年金の上に社会保険年金が乗るという二階建て年金制度、こういうものをつくることによって皆年金が実現できるんだということ、いままで皆年金、皆年金ともうこれこそ何回言っているかしれませんが、いまだに皆年金が実現できておらないけれども、この二階建て年金制度によれば間違いなく皆年金制度が実現できるのだということ、したがって五十五年に発足する、六十五年には再編成を完了するということが望ましいということを述べております。五十五年といいますと、先ほどのお話で五十四年度ですね、この一年で何か検討して結論を得て、五十四年度からということもお話がありましたが、五十五年にはこの基本年金を発足することが望ましいという、こうした具体的な建議についてどのようにお考えになりますか。
  157. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私はこの基礎年金構想という構想自体は、たしか小平先生の党のトータルプランの中にもそういう構想を拝見しておるわけでございまして、一つの私は貴重な考えといいますか、私個人から見ますと非常に賛成の方でございます。  ただ、この案で目的税を創設して全額国庫負担でやれと、それで昭和五十五年からとこうなっておるわけでございますが、まず業務処理体制やあるいはその目的税の税の問題やらいろいろ考えてみますと、五十五年から実施ということはとうてい私できないと思うのでございまして、この点は十分時日をいただきたいという気持ちを持っております。  ただ、この案はそれだけでなくて、そこへ各種社会保険の年金を全部積み上げていくということ、あるいは支給開始年齢等にも触れておられる。非常に私はそれと合わせて見ますと、相当のこれは過剰給付になるんじゃないかと。一方、基礎年金部門は、とにかく目的税で別に取るんだからという御構想かもしれませんが、相当私は国民所得全体の中の年金の比重というものが、このままでこれずっとこの案をやっていきますと、八十五年でいまの国民年金厚生年金合算した考え方でずっと大体五十二年の価格で計算をしてみましても、国民総所得の一三%にもなろうというのに、相当過剰な給付になりはせぬだろうかという、それから負担に一体たえられるのだろうかという問題等を考えますと、少しその辺のところは非常にユニークな構想だと思いますが、また私としては個人的には非常に基礎年金構想というものに引かれるわけでございますけれども、全体の骨組みとしてはもう少し検討さしていただきたいと思っておるわけでございますので、いまのところはそれぐらいしか、まだ深く検討してこれに対する一つ一つの——私どもは何もただこの点がこうだという批判ばかりじゃいけませんので、将来どうするかということの案が、まだ時間的な余裕がなくてつくっておりませんけれども、十分よくいろんな角度から検討さしていただきたいと思っておるわけでございます。
  158. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣としまして、いまこの場でそれ以上にこの点についてどうするというふうには御答弁なさるわけにはまいらないというふうに思います。ただ、内容的な検討が実際厚生省当局はやったのかどうか。たとえば、いま大臣のおっしゃる年金の給付額が膨大になりはしないかという趣旨のことをちょっとおっしゃったようですが、むしろこの社会保障制度審議会の論点は、年金制度がいまのままでは立ち行かなくなるのじゃないか、これは財政的に立ち行かなくなるのじゃないかと。厚生省局長なり課長さんはよく審議会に出てきておられましたから。年金制度が将来立ち行かなくなるのじゃないか、非常に危機感を持って早く次の手を打たなくちゃならないというのが出発なんでありますね。ただ、漫然と給付がふえればいいんだという、そういうことじゃなくて、現在のままで国民年金もあるいは厚生年金も、特に共済組合などは現実の課題としてそういう危機が来るのじゃないかと、しかも経済成長はきわめて低率だということしか予想ができないというときに、そういうときに国が滅びても年金は残るということわざがあるんですが、そのくらい長期にわたる年金計画というものを立てていくためにどうすればいいかというようなところから、私たちは所属する党としてもあるいは個人的にも、こうした支給開始年齢六十五歳というようなことについては、きわめていろいろ意見があるわけですが、とにかく大局的に現在の制度が早晩行き詰まるだろう、行き詰まらないうちに次の手を打たなくちゃならないと、そのためにはこうした発想を転換した新しい構想に取り組まなくちゃならないというような点について論議があったように思いますが、厚生省はそのような点を踏まえて何か検討されましたですか。
  159. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 厚生省の検討は、基本構想懇談会の先生方を煩わしましていたしておるわけでございますが、その点では制度審議会の認識と全く同じと申し上げていいんじゃないかと思うわけでございます。現在の八つの年金がばらばらでまいりますと、一つ一つ年金が持ちこたえられなくなるという御認識でございまして、それを打破していくためには、一つは、全部の年金を一本にすることが考えられるわけでございますけれども、その点につきましては、年金が過去の沿革がいろいろございますので無理ではないだろうか。しかし、個別の制度では将来の人口老齢化にはたえられないわけでございますので、そこで基礎年金なり財政調整ということをいたしまして、部分的に年金制度を統合し財政的な共同をしていこうということで御審議をいただいておるわけでございますが、基本懇の場合には十二月の中間報告の段階では、財政調整がいいのか、基礎年金がいいのか、どちらかに軍配を上げるまでには至らなかったわけでございます。この点につきましては、制度審議会も十年をかけて既存の社会保険年金の再編成を考えろということを言っておられるわけでございますが、基本懇の方でも沿革のある八つの制度をどうしていくかということが大きな問題でございますので、基礎年金でいくか財政調整でいくかにつきましては、さらに時間をかけて掘り下げたい、これが中間意見の段階でございました。
  160. 小平芳平

    ○小平芳平君 先ほど来お話が出たことは省略をいたしますが、たとえば先ほどのお話しの無業の妻の国民年金への任意加入ですね、この場合なんか現在すでに六百六十万人くらいを超えているというわけですね。むしろ、現在の遺族年金がきわめて低過ぎる、とても御主人が亡くなった後、遺族は生活を支え切れないというところから、やむを得ず、少しでも将来の保障をつかんでおこうというところから任意加入の方が大量に、六百六十万人というふうにふえたんだというふうに私は理解しているわけです。ところが、先ほど局長の説明だと、何か遺族年金に加えてそういう国民年金の給付を受けると給付が高くなり過ぎやしないかという問題点が起きてくる、なんて言っているわけでしょう。給付が高くなり過ぎやしないかという問題が新たに起きるなんていうことを、年金局長は言う立場にありますか。とにかく、任意加入の方もどしどしお申し込みくださいって宣伝しているのはどなたですか、一体。それから、申し込めば何の疑いもなく受け付けて保険料をどんどん徴収しているのはどなたなんですか。そういうふうに、徴収する方は何らお構いなくどんどん徴収はいたします、加入も受け付けます。ところが、皆さん両方給付を受けると給付が多過ぎてそれが新たな問題ですよなんて、それ一体どういうことですか。そんな人をばかにしたような国の制度があり得るんですか。それは、あり得るからそういうことになるんでしょうけれども、そういうのはほっておけないでしょう。いかがですか。
  161. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 現在、被用者の妻の任意加入制度がございまして、それに対しまして行政的にも促進をしたことは事実でございます。それは、先ほど来の議論もございましたように、遺族年金が五割というようなことでもございましたし、また、被用者の妻の場合には離婚というようなこともございまして、そういう意味合いで制度ができ、また利用していただくのがいいというふうに考えておったわけでございますけれども、現実に厚生年金等の遺族年金改善するということになりますと、将来の問題ということにはなろうかと思いますけれども改善された遺族年金と、被用者の妻が任意加入しております国民年金の妻自身の老齢年金ということを合わせますと、国民負担としましてはかなり大きなものになる可能性があるのではないかということを考えまして、将来に向かっては何らかの措置をとらなきゃならないというふうに考えておるわけでございます。
  162. 小平芳平

    ○小平芳平君 厚生大臣、物は言いようかもしれませんけれどもね、そういう言い方はちょっとひどいじゃないですか。国の制度として遺族年金がある、それは低いから将来のために任意加入の国民年金も選んでおきましょうと、これは国の政策なんですから、それは。しかし、それもそうだと思って入った人に対して、あんたたちは多過ぎるから問題だぞって、こういう言い方はないでしょう。どうですか。
  163. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) ちょっと説明が足りませんでしたが、妻の任意加入という制度を見直ししなければならないということでございますが、その児直しの仕方でございますが、基本懇等で御提案いただいておるのは、一つは、むしろ強制加入にしてしまえと、国民年金に被用者の妻を強制加入にし、そして被用者保険の方の遺族年金の方を別な形に変えていく、それからもう一つの案としましては、被用者の妻でございますから、やっぱり事業主負担のある被用者年金で、十分その遺族の給付を充実すべきではないかということでございまして、単純にやめてしまうということではなく、従来の掛金の実績等も踏まえた経過措置を考えながら、将来に向かって改正をしていかなければならないのではないか、そういうことでございます。
  164. 小平芳平

    ○小平芳平君 大臣いかがですか。
  165. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) おっしゃるように、老後の所得保障制度の中でございますから、遺族年金の方が少しよくなると、おまえさん所得保障がよ過ぎるからだめだというような考え方は、これはもうおっしゃるようにとるべきじゃないわけでございまして、決して私どもそういうふうな考えで言っているわけじゃございません。ただ、妻の年金権というものをどちらの系統で保障をして、そして国民としての所得保障、老後の所得保障を確立したらいいかという議論の中でいろいろ行われているわけでございますので、この点はおっしゃるように、おまえ多過ぎるからこれを少し、というような気持ちではありませんので、どうぞ御了解願いたい。
  166. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう、どう対処するかということについては、社会保障制度審議会の建議では、これはやめるべきだとなっているんですね。こういうふうな、ある段取りをしてやめるべきだとなっておりますから、それは検討課題として、いま御答弁がありますようなことを進めていくのが緊急課題だというふうに私も考えております。考えておりますが、いま大臣がおっしゃるように給付が多くなり過ぎるから君たちは、というふうな言い方は、これはとるべき態度じゃないと思って言ったわけであります。  それから次に、これもかねがね問題にされている点ではありますけれども保険料が四月から二千七百三十円、来年四月からは三千三百円、五十五年四月からは三千六百五十円に物価スライド分と、こういうふうになるわけでありますが、そうなりますと、とても払い切れないというんですね。そういう点も厚生省としては十分御承知なんだろうと思いますが、厚生年金のように報酬比例ならば低所得者には低所得者なりの保険料金が決まるわけでありますけれども、こういうふうに定額で毎年毎年どんどん上がっていく、それは保険の財政上から上がらざるを得ないという計算なんでしょうが、とてもこれじゃついていけないという層が拡大してくるおそれが出てきているんじゃないかという点はどのように考えますか。
  167. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 国民年金が定額保険料を取っておるわけでございますが、所得比例制にすべきであるという御意見がたくさんございまして、私ども国民年金の将来の大きな問題点だというふうに思っておるわけでございます。ただ、国民年金の場合には対象者の方が非常に多く、さまざまな業態にわたっておりますので、これを所得比例にするという場合には、所得の把握というような点が非常にむずかしいわけでございまして、事務体制もかなり変わったものにし、また職員等も増員をしていかなければならないというふうに思うわけでございます。  一方、その所得比例制にいたしますためには、給付の方も厚生年金が定額制と報酬比例制という二本立てになっておるわけでございますので、給付の方もそれ相応の改変をしなければならないということになろうかと思うわけでございます。それで、国民年金をできるだけ充実したものにしていくためには、保険料をできるだけ確保していくということが必要なわけでございますが、定額制の保険料の場合にはかなり無理のある階層は出てこようかと思いますが、所得比例制にいたしますと、事務的な困難が仮に解消されました場合に、今度はその給付の面で定額の方の給付が必ずしも十分でなくなるというようなことも出てこようかと、ここら辺が非常に困難な問題があるわけでございまして、私どもとしましては将来の大きな問題として検討を続けていかなければならないというふうに思っております。それで、現段階でございますが、厚生年金保険料と比較をいたしますと、平均の問題になってしまうわけでございますが、御提案をいたしておりまする五十五年度の三千六百五十円までは、厚生年金平均的な標準報酬の方の本人負担分と比較をいたしまして、国民年金は夫婦で納められるということでございますので、御提案をしておる保険料を二倍にいたしますと、一応の比較ができると思うんでございますけれども厚生年金平均的な場合よりも保険料が低いと、これはまあ給付との関連とか成熟度の問題がございますので、単純な比較はできませんけれども、現在のところでは総体として国民年金保険料はまだ負担をしていただけるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  168. 小平芳平

    ○小平芳平君 私たちは国民年金が、保険料がこうどんどん上がってはとてもついていけないという声もずいぶん聞きますので、これは局長はこの程度の保険料なら十分というふうにいまおっしゃったけれども、それだけでいけるかどうか、よろしいかどうか、それはもう一番緊急の課題として研究していただきたいと思います。  先ほどの、特例納付によって無年金者をなくすという点ですね。これはずいぶん先ほどいろいろ質疑応答があったので、詳しいことは繰り返す必要ありませんので、ただ、確かに五十何万円を二年間で払うという方は特殊な例だと思うんですね、相当特殊な例だと思うんですね。まあしかし、そういう五十何万円というものを払うとなると、これは借りて払うにしたってよほどの決心が必要ですね。借りたものは返さなくちゃいけないわけですから。ですからそういう点、実施状況を見てということなんでしょうか、貸付制度をつくるかどうかは。ここで、私がちょっと伺ってみたいと思いますことは、第一に前回の特例納付の際に市町村で貸付制度をおやりになったかどうか、そのような実情はどう把握していらっしゃるか。  それから第二、これは保険局の関係になりますが、高額療養費の貸付制度、これも高額療養費の貸付制度は今度の薬剤の問題でずいぶんこれから問題になるわけですが、こういう点も恐らく市町村が中心で高額療養費の貸付制度もやっているように思いますが、以上二点についてどのように把握しておられますか。
  169. 大和田潔

    政府委員(大和田潔君) 前回の特例納付の際に、市町村が独自で行いました貸付状況、これは市町村の資金による貸し付け、これが実施市町村、百二十六市町村ございます。なお、これに対する貸付状況といたしましては千二百四十二件、四千九百五十万、一件当たり平均貸付額は四万円、かような結果が出ております。  以上でございます。
  170. 八木哲夫

    政府委員(八木哲夫君) 現在の高額療養費の問題でございますけれども、医療保険制度におきましては被用者保険では本人は十割でございますけれども、家族は三割の負担、国民健康保険におきましては本人、家族とも三割ということでございます。従来におきましては、医療費が人によりまして変わると思いますけれども、幾らかかっても三割は負担せねばいけないということであったわけでございますけれども、家計に対します脅威を緩和するというような意味から、高額療養費の制度ができまして、現在は三万九千円ということになっているわけでございまして、そういう意味におきまして、従来と異なりまして四十八年の改正以後、そういう面から高額療養費三万九千円以上はすべて保険で見るというような仕組みになっておるわけでございます。ただ、保険としましてそういうような家計の脅威を緩和するということで、先生からただいまお話ございましたように、現在、医療審議会に御諮問をしております健康保険法の改正におきましても、薬剤費の負担は行いますけれども、家計に対する負担という面から、現在の三万九千円をさらに世帯で月二万円程度にしたいという改善を考えている次第でございます。ただ、保険の範囲内でできますのは、やはりこういうような限界というものがあるわけでございまして、そういうような意味で低所得者等に対します当然現在でございますと三万九千円、今後の健康保険では二万円以上は一時窓口で支払っていただいて、あと償還するという形で一時の立てかえの問題でございますが、その意味におきまして、現在市町村等におきまして住民福祉という観点から、そういう面につきましての市町村が行っているという例はございまして、現在全市町村のうちの一六%ほどの五百三十二市町村が、何らかの形の貸し付けというような制度を現在は実施しているわけでございます。なお、健康保険法の現在御諮問申し上げております案につきましては、三万九千円を二万円に改善したいということでございますし、さらに世帯更生資金等の活用という問題につきましても、十分研究していかなければならないというふうに考えている次第でございます。
  171. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまの課題といたしましては、先ほどの貸付制度を検討するという、実施状況を見て検討するという点について私が質問をしている趣旨は、やりたくないのを仕方がない、うるさいからやるんだっていう考えじゃなくて、取り組もうというお考えならば、いまの二つの点、前回の特例納付のときの経過、このときは金額も低かったですね。現在想像するような金額じゃなかったようにいまお話しなさっておられますし、また高額療養費の場合も、これは全く市町村もしくは国保連合会ですね、市町村独自で制度を持っているかあるいは国保連合会、これらがほとんど貸付制度をやっているわけであります。国の制度、たとえば世帯更生資金の利用というのはごくわずかでしょう、局長。ですから、そういう点で、全くこれから出発をしてみなくちゃ見当がつかない貸付制度っていうものは、将来の動き出してみなくちゃ検討のしようもないんだっていうことじゃなくて、現在の段階でもそうした市町村がやっている貸付制度、実際どのくらいの人がどのくらいの負担を強いられるか。この高額療養費の場合ももっと細かいデータがあるわけですが、ちょっときょうの課題でないから細かいことは申しませんし、お聞きいたしませんが、そういう点から、もっと具体的な年金局としての検討が可能じゃないですか、いかがですか。
  172. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 今度の特例納付三回目をやるに当たって、いろいろ検討いたしましたわけでございますが、私ども一番心配をいたしましたのは、国民年金全体の運営に支障が出るといけないということなんでございます。  先ほどもちょっと申し上げましたが、国民年金というのは非常に変わった制度でございまして、大ぜいの被保険者の方に自主的に保険料を納めていただくということがないと運営ができないわけでございます。厚生年金の場合には、国会で保険料をお決めいただければ、事業主を通じまして強制徴収する方法もあるわけでございますけれども国民年金の場合には、一人一人の方が自発的に保険料を納めていただかなければ財源が確保できないと、こういう制度になっておるわけでございます。  それで、特例納付を一回目、二回目とやってまいりまして、三回目ということになりますと、どうしても一定期間を置いて特例納付というのは繰り返されるに違いないと、こういうことになろうかと思うわけでございまして、そうしますと、やはり若いときから苦しい収入の中から保険料を納めるよりも、老齢年金がもらえる近くなったときの特例納付に乗ればいいということになりかねないのではないか。その際、貸付制度までやりますと、もう先に行けば特例納付もあり、一回目、二回目と違って、国が積極的に貸付制度もやってくれたということであれば、いよいよまじめに保険料を納めるということに支障が出てくるのではないかということを考えたわけでございまして、御提案の当初、貸付制度はむしろ考えないでいこうという判断をいたしたわけでございます。
  173. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうふうに貸付制度をやらないという、その理由を聞いているんじゃないんです。やりたくないという理由はさっき一時間くらい聞きましたから、やりたくないということをいまさら聞いているんじゃなくて、じゃ、前回も、公平に客観的に考えた場合、前回の特例納付のときも市町村では貸し付けをやらざるを得なかったと、金額は今回に比べたらきわめて低いわけですけれども、にもかかわらず貸し付けを市町村は独自にやったわけですよ。年金局長がいやだいやだと言っているうちにも、市町村はやむにやまれずやったわけですから。今回はそれ以上の大きな金額を負担しなければ年金権を取れないとなれば、いずれ貸付制度というものが各市町村で議題になるのは目に見えているわけです。にもかかわらず、ただそんな貸し付けなどというのはけしからぬ制度だと言って腹を決め込んでいるんですか、厚生省は。市町村がどんなに困ろうと、あるいは団体から押しかけられて市町村長さんが、あるいは市町村議会でどんなに工夫しようとも、国はそういうことは考え方が間違っているんだというふうに決め込んでいるんですか、いかがですか。
  174. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 私は、やっぱり政治家と事務当局の考え方の違いだと思うんですね。事務当局としては、いま申し上げたような気持ちで、より慎重に慎重にと、こう言ったんだろうと思います。国会の審議で、先生方はやっぱり政治的に考えると、この前だって、わずかあれは、いま平均四万円と言いましたが、あれは保険料として十万円ぐらいだったと思うのですね。今度五十万円ですから、そうなれば、もうこれは入りたくとも入れない人に何らかの措置をすべきじゃないかとおっしゃる政治的な見解というものは私は当然だと思って、衆議院においては、じゃ、貸付制度に踏み切りましょうと、こう申し上げたわけでございます。  そこで、ただ様子を見ながらと申しますのは、先ほども言ったように、人数がどれぐらいになるのか、そういう資金手当てをどこからどういうふうに市町村にしてやったらいいのか、そういう点もございますので、実施を見てからと言うのは、もう最後まで行って、いよいよ困ったのをしぼりにしぼってというような意味じゃなくて、法律が施行になりましてこれが実施に移りますと、いろいろ市町村でもどれぐらいの人がどの程度ということはだんだんわかってまいりますんで、そういうことを見ながらという意味でございますから、そうシビアに考えて、私ども実施を見ながらということで、逃げての意味で申し上げているわけじゃございませんので、この点は十分、この法案の御協賛をいただきましたら、早速いろいろなやり方を検討してみまして、関係市町村とよく連絡をとってやっていきたいと思っております。
  175. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは次に、所得制限について。  これはいろんな制度が全部所得制限に関係するわけですが、児童手当でしたら、先ほど局長の御答弁で、所得制限の限度額年収四百九十七万円、それを四百八十五万円に下げますと。ただし、五十三年度は四百九十七万円に据え置きますと、こういうわけですね、先ほどのお話では。これは児童扶養手当にしましても、扶養義務者所得制限は八百七十六万円、これは同じですね。昭和五十三年は据え置きますが、昭和五十四年から引き下げますと。何か普通でしたら、物価も上がる、賃金も上がるから、所得制限の限度額というのは上がっていくのが普通なんですが、今回の厚生省提案は、五十三年は五十二年と同じですが、五十四年からは引き下げて、それで所得制限に該当するものをふやしますという方針なんですね、これは。これはどういう意味ですか、ちょっと御説明いただきたい。
  176. 石野清治

    政府委員(石野清治君) 児童手当の所得制限でございますが、おっしゃるように、五十三年度につきましては一応四百九十七万で据え置いたわけでございますが、これはほかの制度と違いまして、児童手当制度につきましては、比較的所得の高い階層まで児童手当をもらっておる、そのために児童手当趣旨が生きてないじゃないかと、こういう御意見もかなり実はあったわけでございます。現に、一番卑近な例で申しますと、本省の課長さんでも、新任課長さんくらいでございますと、三人子供がおりますと児童手当が支給できる。これも世間一般の相場から見て少し高過ぎはしないかと、こういう率直な御意見もございます。  そこで私どもは、ただそれを引き下げるということじゃなくて、むしろ所得の高い方の階層には御遠慮願っていただいて、そうしてその所得の低い方により厚くと、こういう考え方で整理したわけでございまして、児童手当制度につきましての据え置きの考え方はそういうことでございます。  それから、児童扶養手当ないしは特別児童扶養手当の扶養義務者の所得制限につきましては、これは福祉年金の所得制限にあわせて改定をいたしておるわけでございますけれども、相当ゆとりのある世帯に扶養されている者よりも、むしろ夫婦だけで生計を立てている方により厚くという、やはり福祉措置がより重点的に及ぶことを考えまして、扶養義務者の所得制限につきましてやや引き下げた。こういうことでございまして、おおむね平均の家計収入の二倍程度であろうと思われます八百五万というふうにいたしたわけでございます。
  177. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 福祉年金の所得制限につきましても、今回は若干の手直しをいたしたわけでございますが、五十三年度の予算を組みます際に、国民年金審議会に御意見を伺ったわけでございますが、福祉年金の所得制限につきましても、生活実態をよく見て必要なところに厚くという形で見直しをするようにという意見をいただいたわけでございます。私ども検討いたしました結果、扶養義務者の所得制限は八百七十六万円でございます。これは本省の部長の古い人ぐらいの給料に当たるわけでございまして、息子は本省の部長、次長というような場合にも福祉年金が出るのは若干行き過ぎではなかろうか。一方、御自分が働いております場合には、所得制限が若干厳しいのではないかという議論になりまして、扶養義務者の所得制限は据え置くと同時に、本人の所得制限を実質緩和をいたしまして、数で申しますと一万四千人ぐらいの方が新たに本人の場合には福祉年金がもらえるようになったわけでございます。扶養義務者の方はことしは据え置いたわけでございますが、考え方といたしましては、勤労者世帯の二倍程度の収入まで出したらどうだろうかということでございまして、五十三年度の予算編成当時の考え方でございます八百五万になるわけでございますが、それを八百五万に一挙にするのは影響も多いということで、八百七十六万に据え置いたわけでございますけれども考え方としましては、そんなことでやっていきたいというふうに思っております。
  178. 小平芳平

    ○小平芳平君 いまの御説明の中で、高額所得者は御遠慮願おうという御趣旨はよくわかります。その考え方は私も同感です。  私がいま伺っている趣旨は——政令事項になりますか、これは。児童手当は政令事項じゃないですか。
  179. 石野清治

    政府委員(石野清治君) 政令でございます。
  180. 小平芳平

    ○小平芳平君 政令事項とはいえ、五十二年度予算を編成し、国会へ提案をする段階で、あるいは五十三年度予算に合わせた法律改正案を国会に提案するという段階で、五十四年からこの限度額を下げますということを決めておいて提案するというのが、きわめて見通しのいい措置だということですね。わりあい経済状態が落ち着いているようなものの、五十三年度どういうことが起きるかまだわからないのに、ついでに五十四年の所得制限まで、しかも大体一〇%くらいですか、所得制限を下げますと決めておかなければならない、そういう理由でどこかにあるのですか。
  181. 石野清治

    政府委員(石野清治君) 児童手当について申し上げたいと思いますけれども、現在の四百九十七万円というのは少し高過ぎやしないかという意見がございました。これは国民の意識調査の上におきましても、所得制限は現状ないしはそれより厳しくした方がいいという御意見が圧倒的でございました。したがいまして、本来ならば、五十三年度におきまして制度改正する際に、四百九十七万を四百八十五万にまずしておいて、そしてその五十四年度以降については、さらに物価の上昇とか、いろいろ所得水準の問題とかございますので、検討すべきだと思いましたけれども、そういたしますと、一挙にかなりの数字の減が出てまいります。せっかくいままで受けております人たちの国民感情というものもある程度考えなくちゃなりませんので、そういう意味で据え置くことによりまして若干の減は出てまいりますけれども、その減をできるだけ小さくしたいと、こういうことで据え置いたわけでございます。
  182. 木暮保成

    政府委員木暮保成君) 福祉年金の場合にも、いま児童局長から申し上げたことと大体同じでございまして、本人所得制限は厳し過ぎるのではないかという観点に立って緩和すると同時に、扶養義務者所得制限の方は若干余裕のある人に行き過ぎているきらいがあるということで、先ほど申し上げましたような考え方に立ったわけでございますが、政令の段階では、一挙に八百五万にいたしますとかなり影響が出てまいりますので、その影響を最小限度に抑えるという意味で八百七十六万に据え置くというような改正を考えているわけでございます。
  183. 小平芳平

    ○小平芳平君 結局、昭和五十四年度から所得制限はこのように引き下げます、昭和五十四年四月一日から所得制限はこういうふうに引き下げますという政令を、この法案が通過、成立した場合は、そういう政令を出すわけですか。それが情勢が、一年先のことで、すごく変わっちゃったらどうかなさるのですか。
  184. 小沢辰男

    国務大臣小沢辰男君) 実は先生、私が着任をいたしまして、この問題はまあ大体前年どおりということで、事務当局はこれ予算の最終段階まで保留予算でございまして、十二月のぎりぎりのときに私は着任しましてから、予算要求という問題にぶつかったわけです。私は前から、たとえば目の不自由な方が夫婦でおられまして、七十過ぎた方でも、マッサージ業なりなんかに一生懸命になって働いている人がありました場合に、ちょっとこの制度を聞いてみましたら、月十三万ちょっとになりますと、もう福祉年金もらえないということになっておったわけでございます。そこで、それはおかしいじゃないか、一生懸命に働いて、わずか十三万夫婦でかせいで一生懸命になって働いている人が、福祉年金をもらえないで、そして八百七十六万円と言いますと、世帯として月大体七十一万円以上になるわけでございますが、その方が福祉年金をもらうというのは、これはおかしいじゃないか。そこで、今年度は三七%も国債を発行するようなときだから、片っ方は既得権だから据え置いておいて、片っ方をできるだけ所得制限の限度額を引き下げまして、そしてうんとやるようにしようというには、とても——三七%も赤字公債を出しているときだから、それはいまのような設例のときにうんとひとつ福祉年金をみんなにやれるようにしようじゃないかというので、私が大分事務当局から、この問題いろいろ既得権のあれでもって、予算もう目の前だというのに、いろいろな問題が起こりますよと言われたんですが、提案をして大蔵省と折衝を始めたわけでございます。そうしましたら、そっちの方はいい考えだけれども、減らす方はちょっというので、やっぱりいろいろな問題が起こりまして、そこで率直に言いますと、三役との調停まで持っていきましたわけでございます。その際に、いろいろございましたが、予算は単年度編成でございますので、ひとつことしはこれでいくんだ、据え置くのだ、それで低所得の方はよけいにする、限度額を引き下げてやるということで、このけりをつけていただいたわけでございますので、したがって予算が単年度主義であるということから見ますと、私どもは来年度の所得制限をどうするかは、これが御協賛を得まして通過した後に、今度、来年度の予算編成等がございますので、そのときに改めて来年度のことは考える、こういう考えでございまして、直ちに政令改正をやって、来年は今度八百万円も下げるぞということになりますか、あるいはいろいろな情勢を見てそれがまた同じようになりますか、あるいはもっと給付を厚くしなきゃいかぬ階層についてどういうあれをやるかという検討をいたしましてから、全体的に検討して決めさしていただきたい、こう思っております。
  185. 小平芳平

    ○小平芳平君 終わります。
  186. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十分散会      —————・—————