○
政府委員(
木暮保成君) 遺族
年金の七割の問題につきましては、ただいま
先生の御指摘のとおりの経過でございまして、私
どもも国会や関係審議会の御意向を体しまして、遺族給付の七割ということで五十一年度の予算折衝をいたしたわけでございます。
その過程で、いろいろ問題が出てまいりまして、また後で申し上げますが、
厚生年金だけを考えましてもいろいろ問題がございますが、共済組合等との御協力をいただいて前提条件を整備しなければならないことがあるということで、遺族七割は
昭和五十一年度の
改正では断念をいたしたわけでございます。しかし、遺族の
年金を
充実するということはゆるがせにできない問題でございますので、
寡婦加算という形で遺族給付の
充実を図ったわけでございます。私
どもこの
寡婦加算のやり方で遺族給付がもうこれでいいんだというふうには思っておりませんで、今後とも遺族七割給付というようなことの実現に向かって努力をいたしたいと思っておるわけでございますが、この遺族七割給付が実現できませんでした問題点というのは、
三つばかりございます。
一番簡単な方から申し上げますと、外国の遺族給付に比べますと、日本の遺族給付は五割という点では給付率が低いわけでございますけれ
ども、いわゆる子なし若妻と言われておる若い未亡人の方にも
年金が出るというようなことがあるわけでございます。外国の例では、
子供のない若い未亡人には
年金が出ないとか、あるいは遺族の方が被
保険者とどのくらい結婚期間があったかとか、そういうことをわりあい細かく条件をつけた上で高率の遺族給付をしておるわけでございます。この遺族給付の
充実を図るということにいたしますと、将来
老齢者がふえまして
年金給付が非常に財源的に大変になっていく折からでございますので、重点的な財源配分をするということは必要でございまして、その点整理をしていかなければならないというふうに考えておるわけでございます。
第二の問題点でございますが、これは基本懇の中間意見でも御指摘をいただいておるわけでございますが、
年金給付をいたします際に、単身者に対する給付と、世帯の方、夫婦に対する給付というものの
考え方がはっきりいたしておらないわけでございます。十万円というのが大体現在の
標準年金でございますので、十万円に例をとって申し上げますと、現在は
老齢年金十万円というのは、夫の部分が五万円、妻の分が五万円、合わせて十万円というような
考え方でございまして、夫が死んで遺族
年金のある場合には、妻の分の五万円が出るという形になっておる。これは五割給付の
考え方だと思います。しかし、夫婦で十万円で暮らして、夫に死なれたから五万円で済むかと言いますと、家賃とか、あるいは新聞代、電気代等を考えますと半分にはならないわけでございまして、世帯共通経費というようなものがどうしても考えられるわけでございます。仮に、十万円のうち四万円が世帯共通経費で、残りの六万円の半分の三万円が夫の分、その残りの三万円が妻の分ということでございますと、夫が死んだ場合には夫の三万円だけがなくなって、残りの世帯共通経費の四万円と妻の分の三万円、七万円が遺族
年金として出るというのが七割給付というものの
考え方だろうと思うわけでございます。そういう観点からいたしまして、
年金給付の単身者に対する場合と夫婦に対する場合の分化というものを考えなければならないと思うわけでございます。言ってみれば、日本の場合には単身者の
年金がわりあい優遇され、夫婦あるいは後に残されました妻の
年金が余り優遇されてないという結果になっておると思いますが、そういう
年金の組み立て方を考え直していかなければならないということでございます。
三番目が一番大きな問題でございまして、被用者の妻が
国民年金に任意加入を現在いたしておるわけでございます。その数が六百六、七十万になるというところまできておるわけでございますが、現在、
年金水準が必ずしも高くないわけでございますので、
年金水準を高める役割りを一方では果たしておると思いますし、また離婚した場合の妻の
年金権の確保にも役立っておると思うわけでございますが、だんだん
年金の
保険料も上がってくるというようなことになりますと、被
保険者からいたしますと
保険料の二重負担ということにもなる面がございますし、また夫の
老齢年金と妻の任意加入の国民の
老齢年金を合わせますと、将来の問題といたしましては給付水準が高くなり過ぎるというようなこともあるわけでございます。これも
制度審議会あるいは基本懇の中間意見にも御指摘をいただいておるわけでございますが、この妻の任意加入の
制度をどうするかということをどうしても片づけなければならないということがございまして、五十一年度に見送ったわけでございます。その後、私ど
もといたしましては基本懇を
中心といたしまして御審議をいただき、この考え、いまの問題点につきましての
考え方をかなり突っ込んで整理をしていただいておるわけでございますが、今後、中間意見を出しました基本懇が再開していただける予定でございますので、その場をかりましてこういう問題を詰めて遺族七割給付ということを実現したいというふうに考えておるわけでございます。