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1978-04-06 第84回国会 参議院 社会労働委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年四月六日(木曜日)    午前十時八分開会     —————————————    委員の異動  三月二十八日     辞任         補欠選任      遠藤 政夫君     片山 正英君      玉置 和郎君     徳永 正利君  三月二十九日     辞任         補欠選任      徳永 正利君     玉置 和郎君      片山 正英君     遠藤 政夫君      柄谷 道一君     三治 重信君  三月三十日     辞任         補欠選任      三治 重信君     柄谷 道一君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         和田 静夫君     理事                 佐々木 満君                 安恒 良一君                 小平 芳平君     委 員                 浅野  拡君                 石本  茂君                 遠藤 政夫君                 亀長 友義君                 斎藤 十朗君                 福島 茂夫君                 森下  泰君                 高杉 廸忠君                 広田 幸一君                 渡部 通子君                 小笠原貞子君                 柄谷 道一君                 下村  泰君    国務大臣        労 働 大 臣  藤井 勝志君    政府委員        労働大臣官房長  石井 甲二君        労働省労働基準        局長       桑原 敬一君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        大蔵省主税局税        制第一課長    矢澤富太郎君        労働省労働基準        局賃金福祉部長  森  英良君        建設省住宅局住        宅計画課長    鴨沢 康夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいまから社会労働委員会を開会いたします。  まず、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。  玉置和郎君が一たん委員辞任されましたため、理事に一名の欠員を生じました。つきましては、この際、理事補欠選任を行います。  理事選任は、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事玉置和郎君を指名いたします。     —————————————
  4. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。藤井労働大臣
  5. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) ただいま議題となりました勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  いまや国民の大部分を占めるに至っている勤労者とその家族の生活の動向は、わが国経済社会の将来に深く関連する問題でありますが、勤労者生活現状を見ますと、賃金水準はこれまでの経済成長のもとで改善されたものの、貯蓄住宅等資産保有の面では、なおいまだ相当の立ちおくれが見られるところであります。  このような勤労者生活実情にかんがみ、勤労者財産形成促進してその生活の一層の安定を図るため、昭和四十六年に勤労者財産形成促進法が制定され、昭和五十年には、同法の一部改正が行われました。  現行制度においては、勤労者の行う財産形成貯蓄及びこれに対する事業主援助としての財産形成給付金について税制上の優遇措置等が講じられるとともに、財産形成貯蓄原資とする勤労者のための持家融資制度が設けられております。財産形成貯蓄を行う勤労者数は、制度発足以来六年余にして、七百四十万人に達し、その貯蓄額は一兆六千億円を超える等、勤労者の本制度に対する期待の大きさがうかがわれるところであります。  このような勤労者期待とその努力にこたえ、その生活を真に豊かで安定したものとするためには、現行勤労者財産形成促進制度内容は、まだ必ずしも十分とは申せません。  政府は、このような観点から勤労者財産形成促進制度を大幅に拡充したいと考え、そのための案を勤労者財産形成審議会諮問し、これを了承する旨の全会一致の答申をいただきましたので、ここに勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案として提出した次第であります。  次にこの法律案内容につきましてその概要を御説明申し上げます。  第一は、勤労者財産形成基金制度創設であります。勤労者財産形成のための事業主援助を一層促進するため、当該事業場労使の合意を前提として、財産形成貯蓄を行っている勤労者加入員として、労使をもって組織する勤労者財産形成基金を設立することができることとしております。  基金は、事業主拠出した金銭について信託会社銀行等勤労者財産形成基金契約を締結し、その加入員である勤労者に対して財産形成基金給付金が支払われるようにすることとし、その給付金について課税上特別の措置を講ずるとともに、基金の設立についての奨励金及び事業主拠出についての助成金を支給することといたしております。  第二は、勤労者財産形成持家融資制度拡充であります。  勤労者持家の取得を一層促進するため、勤労者財産形成持家個人融資貸付限度額引き上げるとともに、融資の対象について、現行新築住宅建設または購入のための資金のほか、中古住宅購入及び住宅改良のための資金を加えることとし、さらに、公務員等に対する融資について、その仕組みを改善することといたしております。  第三は、進学融資制度創設であります。  勤労者の長期的な生活設計を一層容易にするため、雇用促進事業団は、勤労者財産形成持家融資のほか、勤労者またはその子弟進学に要する資金貸し付けを行うことといたしております。  その他、この法律案におきましては、その付則において、所得税法法人税法租税特別措置法等関係法律の所要の整備を行うことといたしております。  以上、この法律案提案理由及びその内容概要につきまして御説明申し上げました。  何とぞ御審議の上、速やかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  6. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 以上をもって趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 私は本法案の審議に際しまして、財形制度現状財形基本方針策定等について労働大臣を初め労働省にお伺いをいたしたいと存じます。  本財形法は、ただいま趣旨説明にもありましたように、昭和四十六年に制定をされ、その後五十年に第一次の改正を経て今日に至っておりますが、その実績として、財形貯蓄趣旨説明の中にもありましたように勤労者契約者は約七百五十八万人、貯蓄残高は一兆八千四百五十一億円と著しい伸展を示しているのに反しまして、これを原資とする還元融資はきわめて不十分なものになっていると思います。このことは、本法案審議に際して衆議院社会労働委員会附帯決議にも明らかになっております。すなわち、諸外国勤労者財産形成促進法等参考にして今後さらに改善に努めること、あるいは一層の充実を図り、もって勤労者財産形成基礎的条件整備することなどが附帯決議としてあることでも明らかであります。また、これは労働省基準局賃金福祉部長さんが、財形という雑誌に書かれている内容を見ますと、たとえば「財形持家分譲融資実績は、昨年11月末までで貸付決定三千八百五十八戸」などとありまして、「財形貯蓄伸びに比して極端に不振であって、融資による還元は順調であるとはいい難い。」こういうことをみずからお認めになっているわけであります。さらに、財形給付金制度等については「勤労者賃金からの事業主の天引きによる」ものである、こういうことについて述べられて、昭和五十年十月制度開始以来の実績というのは「不況の影響もあって、受益勤労者十八万人、資産残高四十二億円と、これまた芳しいとはいえない状況にある。」こういうように労働省部長さんみずからが認められて、不十分なことを指摘しているわけであります。  そこで、まず労働大臣に伺いますが、この財形制度現状について大臣の御所見を承りたい、このように存じます。
  8. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のように、せっかく財形持家融資制度発足をいたしましたけれども、その財形貯蓄に比べて利用率が活発でないというこの現状は、われわれも率直に反省をし、認めなけりゃならぬと思います。ただ、その事情をちょっとお聞きとりを願いたいと思いますけれども、この制度発足して非常に日が浅いということが一つございまして、すなわち財形持家分譲住宅制度というのは、これは四十八年に発足をいたしましたけれども、四十八年は御案内のオイルショックという、こういったことで大変な日本経済が困難な事態に直面をいたしまして、さらに安定成長の路線に現在移行しつつあるという、こういう状態もございまして、そこで、やはり御指摘のような問題もありますから、このたびの制度改定を立案したわけでございまして、やはり財形貯蓄のための貯蓄ではないわけでございますから、やはり持家住宅促進にこれが条件整備されるということが必要でございます。したがって、今度はただ新築の家だけでなくて、中古住宅資金にも融資還元をする、還元融資をやっていくということ。あるいはまた住宅改良のための資金還元融資もやっていく。また貸付限度を、財形貯蓄残高のいままで二倍であったものを三倍に引き上げて、千五百万円まではやっていく、こういったこと。あるいはまた公務員に対して、融資の道を整備して、還元融資が受けやすいような体制を整える、こういったこと。それから、やはりそういう持家住宅促進のみならず、勤労者本人あるいはまたその子弟進学するという場合の進学融資制度も新しく創設、こういったことで工夫をいたしたのが今度の法律案改正の中身でございまして、しかし、これでわれわれは能事終われりとは考えておりません。やはり、今後も引き続き改善方策について、皆さん方の御意見も十分承って前進を図りたい、このように考えております。
  9. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 本改正案は、財形審議会基本問題懇談会で二年有余にわたる検討の結果等に基づいて原案作成をされたと聞いております。昭和五十三年度の予算折衝を経て決定されたものであると言われておりますけれども、その当時の原案と、それから今回改正案とされた決定案との対照表が私の手元にあるわけですが、原案における財形貯蓄税制優遇措置改善が全面的に否定をされているなど、各制度にわたって当時の原案よりも大幅な削減後退がされているわけであります。  そこで、改正原案の四本の柱と言われました、財形貯蓄制度改善二つ目として、財形給付金と同助成金制度拡充三つ目として、財形基金制度創設四つ目として、財形融資制度拡充等について、できればこの原案から改正案に至る予算折衝等の御経緯もあろうかと思いますから、どうして後退をされ、削減をされたのか、このことについて御説明をいただきたい、このように思います。
  10. 森英良

    説明員森英良君) お答え申し上げます。  大抵、政府の新しい策につきましては、八月末までの概算要求を行いまして、その後大蔵省主計当局折衝いたしまして、そこで政府としての本当の結論ができまして、その段階審議会等諮問をするというのが通例なんでございますが、財形施策の運用につきまして、特に財形審議会におきまして非常に御熱心でありまして、概算要求段階でぜひとも新しい制度改善構想を明らかにしてほしいという御要望がございましたので、今回の財形制度改善につきましても、その段階で実は、制度改善の骨子につきまして、諮問じゃございませんが、財形審議会に一応御報告をいたしまして、その御了承を得たというような経緯があるわけでございます。そういうことで審議会にお話ししますと、やはりいろいろ新聞等の取材もございますので、その内容新聞にも発表いたしましてやったわけでございますが、これは、政府施策の進め方としましてはちょっと異例でございまして、その結果、労働省の当初の案と、まとまりました政府の今回の結論としての改善案とが非常に対比されまして、おっしゃるとおり後退というようなことも指摘されまして、その点ある意味では私ども大変つらいわけでございますが、政府部内の議論を余り詳しく申し上げるわけにはまいりませんけれども、一通り要点をかいつまんで申し上げますと、まず財形貯蓄制度につきましては、御高承のようにいろいろな税制面優遇措置改善等要求したわけでございますが、結果といたしましては、今回の改正財形貯蓄伸びが御指摘のように非常に順調に伸びております一方、これに対する事業主援助制度がどうも十分に振わない、さらには財形貯蓄原資とする融資制度がどうも伸び悩んでおりまして、その辺にどうも基本的な問題があるという状況でございましたので、融資制度拡大と、それから事業主援助制度拡充ということに重点を置く方向改正案をまとめることになってしまったというふうに申し上げることができるかと思います。財形貯蓄に関しましても、いろいろ税制要求いたしましたんでございますが、何分にも現下のきわめて厳しい財政状況の中でございまして、そこで減税措置拡大することについて基本的な困難があったわけでございますが、さらに現下経済情勢におきましては、貯蓄促進もさることながら、どちらかと申しますと、貯蓄奨励よりも国内の消費需要の喚起というようなことが当面の緊急の課題になっておるというふうな事情もございまして、さらにつけ加えますと、そのほかのマル優制度あるいは郵貯、国債というふうな他の一般の利子非課税制度がございますが、それとのバランスの問題ということも議論になりまして、いろいろな事情で今回の改正では見送らざるを得なかったというのが財形貯蓄関係実情でございます。  次に、財形給付金助成金制度につきましては、主として年間拠出限度額引き上げと、現在十万円でございますか、これを二十万円に持っていこうというようなことも要求いたしました。  それからもう一つは、これは特に審議会における労働側の御要望もありまして、給付金受益資格といたしまして、現在一年以上財形貯蓄残高を有しておるということを要件にしておりますが、これも撤廃したいというふうなことも考えたわけでございます。しかしながら、限度額引き上げにつきましては、やはり財政状況の中で減税措置拡大が困難であったということに加えまして、まだ実績もなかなか十万の限度額いっぱいというのもございませんので、今回は見送ることになったわけでございますし、それから受益要件の緩和につきましては、やはり財形制度の本旨が本人自助努力ということを前提に、これに国と事業主援助を行うということにございますので、その自助努力のシンボルとして一応財形貯蓄をやっておるということを求めることは意義があるのではないかというような意見が、やっぱり強うございました。この点はもう少し時間をかけて慎重にやってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。  それから次に、基金制度でございますが、当初の構想では事業主拠出金のある限度までは、基金自身が自由に労使意思決定で運用するというようなことを考えておったんでございますが、この点につきましては、そういうことになりますと、これは一種の金融機関であるというような意見もございまして、そういう金融機関としての基金制度を構成することについてのいろいろな問題もございまして、結果的には取り扱い機関拡大に伴いまして、商品の拡大ということがございましたけれども、いずれもやはり金融機関等との基金契約を通じて資産を運用するという形をとらざるを得なかったということでございます。  なお、融資制度拡大につきましては、これは相当程度所期目的を達したと思っておるのでございますが、個人融資につきまして、こちらの要求は最終的には五倍ということにいたしました。しかしながら、いろいろ将来の貸し付け需要等も考慮いたしまして、一応三倍程度が適当であろうということで三倍に引き上げるということで終わったわけでございます。
  11. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 これは労働大臣にぜひ伺いたいんですが、いま経緯について御説明があったように、原案の大幅な削減から改正案に至っているわけであります。このことは著しい財政需要によるものと思われますけれども原案作成の過程で評価されあるいは期待された事項について、私はやはり不十分であるという現状認識はできているわけですから、今後大臣はどういうような充実に向けてこれを促進されていくのか、御見解を承りたいと思います。
  12. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) ただいま政府委員から事情を詳しく御報告をいたしたわけでございますが、私はいずれ五十四年度の予算編成もこれから始まるわけでございますが、すでに審議会意見を踏まえて大蔵省折衝をして改善をしたいと、特にこの住宅貯蓄に関する税制改正、こういう面につきましては、私はひとつぜひこれが前進をするように努力していきたい。そのほかの基金制度もことし新しく創設するわけでございますが、ことしの運営の実態を見て内容を一層整備していきたい、そしてこの住宅貯蓄制度がその所期目的を達成できるように十分配慮していきたいと、このように考えます。
  13. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 大臣からの御見解を承りましたけれども現下の厳しい経済情勢においては今後も財政難というのは続くだろうと考えられるわけです。このような状況のもとで財形制度の積極的な改善を図っていくためには、本法の第四条に規定しております財形政策基本方針早期策定というものがぜひとも必要だと考えます。このことは昭和五十年、本法審議の本院社会労働委員会、五十年四月十六日に社会党浜本委員からその基本政策方針についての策定を当時の労働大臣約束をさせているわけでありますが、この中でも早期策定をお約束をしているわけであります。しかるに、今日まで至っても、その基本方針策定ができてないということはどういうことなんでしょうか、大臣にまず伺いたいと思います。
  14. 桑原敬一

    政府委員桑原敬一君) 財形政策基本方針というのは、実に重要な私どもテーマと思っておりまして、日ごろからこの問題については熱心に取り組んでおるわけでございますが、実は先生も御承知のように、財形制度基本方針というのは労働省限りでなかなかできない問題でございます。税制に関連いたしますし、あるいは金融に関連いたしますし、あるいは住宅関係融資につきましては建設省と、それぞれ所管省財形については権限を持っておるというようなかっこうでございます。私どももそういった関係省十分連絡をとりながらやっておりますが、一番基本におきましては、やはり石油ショック以来日本経済が非常にさま変わりになりつつあるわけでございまして、したがって、その背景となります財政金融見通しというような問題もにわかに即断できないというような状況でございます。したがって、前回の御審議のときにも、私ども早急にそれをつくらなきゃならぬということについて御答弁申し上げておりますが、そういった諸般の情勢の中を踏まえていろいろ財形審議会あるいはその中にございます基本問題懇談会で御審議を引き続きしていただいているわけでございますが、当面、一両年というのは変動の非常に激しい時期でございますが、そういった中において私どもできるだけ早く将来の見通しを持ちながら基本方針をつくり上げたいと、こういう念願を持っておりますけれども、現段階においてこの方針を確定できるという残念ながら見通しをまだ持っていないわけでございます。
  15. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 持ってない。ぜひとも早急に、これは本法第四条で規定しているわけでありますから、大臣特に早期実現を要請をいたします。  また、西ドイツ等外国財形法等参考にして具体的な方策を確立していく、そして計画的に実施すべきである、こういうふうに思うんです。これらについては労働大臣どのような御見解を持っておりますか。
  16. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) やはり、もともとこの財形貯蓄制度あるいはまた勤労者持家住宅促進というものが諸外国、わけても西ドイツ実情などを踏まえましてこのような制度が生まれたいきさつから見ましても、やはり欧米先進国、このような制度充実している国のいい例は積極的に取り入れて、日本社会制度になじむような方向にひとつ工夫をこらして、制度内容改善には今後も着実にしかも前進的に努力してまいりたいと、このように考えております。
  17. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、財形促進のための基礎的条件整備についてお伺いいたしたいと思います。財形持家融資制度における分譲融資及び個人融資が不十分であることは先ほど指摘したとおりでありますが、財形貯蓄残高一兆八千四百五十一億円の三分の一には遠く及ばない、こういうように聞いております。それぞれの実績、これをぜひこの際示していただきたいと思います。いままでの実績ですね。
  18. 森英良

    説明員森英良君) 財形貯蓄実績は、いま先生おっしゃるとおりでありますが、それを原資として財形融資制度があるわけでございますけれども、これまでの実績によりましては、分譲融資が約八百二十三件、戸数にして三千九百八十戸、貸付決定金額で三百四億円ということになっております。このほか個人融資といたしましては、雇用促進事業団が行っております転貸融資とそれから住宅金融公庫が行っております直接融資があるわけでございますが、合計で四百八十戸、十四億四千五百万円の融資決定ということになっております。
  19. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 いま分譲融資個人融資についての御説明がありましたが、昭和五十三年度の建設省所管であります住宅建設計画戸数を見ると、これは公庫住宅が五十五万戸中財形住宅は二万戸で約四百億円、昨年度の一万五千戸を五千戸上回る計画となっているわけですね。まず昨年度の財形住宅建設実績と本年度の財形住宅建設計画の具体的な見通し内容について、私はこの際明らかにしていただきたいとこう思います。
  20. 森英良

    説明員森英良君) 五十二年度の実績でございますが、これは分譲で百二十三件、戸数で千六十八戸貸付決定金額が九十億七千万円ということになっております。  なお、個人融資の件数は、先ほどの五十二年度から始まりましたので、先ほどの実績がそのまま実績でございます。これに対しまして五十三年度の予算融資枠といたしましては、雇用促進事業団の行う転貸融資二万戸分四百億円、住宅金融公庫の行う直接融資が二万戸で四百億、それから共済組合の行います直接融資が千八百五十戸、融資枠で三十七億円ということで、合計で四万一千五百戸ということになっておるわけでございます。これは五十二年度の実績から見まして、これだけの枠を実際に消化しますことにつきましては、相当努力が要ると思っておるのでございますが、幸い今回の制度改正法が実現いたしますと、相当制度拡充がございますので、これをてこにさらに一層の行政努力をいたしまして、何とかできるだけ多くの実績を得ますように推進してまいりたいというふうに考えております。
  21. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 財形政策基本となるものは、私は第一は所得の向上、第二は物価対策、第三は社会保障の充実、第四は住宅土地政策の確立、第五は税制などである、こういうふうに思います。したがって、これらの基礎的な諸条件整備される必要が私はあると存じます。しかるに、わが国は現在長期にわたる経済不況に加えて、急激な円の暴騰等により、企業の倒産や雇用失業情勢の悪化などで事態は深刻となっていると思います。これは御承知のとおりであります。また本年四月一日に、国土庁は土地の公示価格を発表してまいりました。昨年比で二・五%もアップしております。持ち家の希望者は一段と遠のく実情にいま申し上げました情勢からなっていると思いますが、この点について、この財形基礎的条件整備についてどのように対処をされようとしているのか。勤労者財産形成見通しを含めて、いまの深刻な情勢を含めまして、労働大臣の今後の具体的な方針と御見解を承りたい、このように存じます。
  22. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘になりました諸条件、私は全く同感でございます。ただ現在、日本経済が依然として不況続きでなかなか明るい兆しが定かでないという、多少部分的には公共事業をいよいよ発足をいたしますそういう大型積極財政運営によってだんだん明るい方向前進し、経済実質成長率七%程度経済の回復、不況の脱出ができる、こういったものを踏まえまして、私は財形貯蓄制度の理念をまず踏まえまして、やはり勤労者の自主的な努力を国と事業主でバックアップしていくというこの条件を推進したい。ただ、この条件については、労働省だけでは解決のできない、あるいは建設省の問題、大蔵省の問題といろんな関係方面に多岐にわたっていることは御指摘のとおりでありますから、そういった方面と密接な連絡をとって、景気の回復と相まってひとつ勤労者財産形成政策がその名のごとくそれにふさわしい内容整備されるように、先ほども申し上げましたようにあくまで着実にまた一歩一歩前進を図っていきたいと、このように考えるものであります。
  23. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、財形基金制度創設についてお伺いをいたします。  財形基金制度創設は、今回の法改正の目玉とも言われています。そこで、大企業及び中堅企業向けとも言われる基金制度を今回特に導入をされたこの理由というのを、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  24. 森英良

    説明員森英良君) 財形政策と申しますのは、貯蓄とか持ち家というような財産形成のために勤労者がいろいろ努力をしておるわけでございますが、そういう勤労者みずからの努力というものを政策的にも評価いたしまして、これを前提に国及び事業主が特に援助を加えることによりまして促進していくということを本旨とするものでございますが、その場合、国の援助ももちろんでございますが、特に勤労者の社会的な地位からいたしまして、事業主による援助ということが非常に重要な役割りを担うことになるというふうに考えておるわけでございます。  そこで、昭和五十年の第一次改正におきまして、企業努力としての財形貯蓄制度に加えまして、それを前提事業主が特段の援助をする制度といたしまして、財形給付金制度というものが創設されたわけでございます。しかしながら、先ほどからも御指摘いただいておりますように、財形給付金制度実績は、たまたま非常に環境の悪い時期に発足したこともございますけれども、約二年余りを経過いたしまして、どうも芳しいとは言えない状況にあるわけでございまして、しかもその普及の内容も比較的規模の小さい百人以下のような企業の規模において非常に普及を見ておる、普及しつつあるというように偏っておるわけでございます。この主な原因といたしましてはいろいろとございますが、やはり制度面にもなお不備な面があるということで、給付金制度改善につきましても助成金の支給対象企業の範囲を拡大するとかいうふうな改善措置を、今回とっておるわけでございますが、さらに財形給付金制度は双務的な貯蓄契約というものを基本にしております点から、一種の限界がございまして、非常に簡単なそういう意味で特に小零細企業に向いているメリットもございますが、どうも少し工夫の余地がないと申しますか、限定的過ぎるという欠陥もあるように思われるわけでございます。  そこで、財形給付金制度は手続的な簡便さというメリットにかんがみまして、特に比較的規模の小さい企業を主として対象に、これをさらに発展させるべきだと思うんでございますが、さらに、中堅以上の企業においても、この普及を図りませんと、全体としての一つの勢いになってまいりませんので、給付金制度と並んで性格的には若干中堅企業以上の企業に向いたような新しい事業主援助制度をつくりたいというのが、今回の財形基金制度の御提案の趣旨であるわけでございます。この基金制度創設によりまして、第一に拠出金を運用する取扱機関の範囲が、現在の給付金は簡単に申しますと信託と生命保険に限定せざるを得ないんでございますが、さらに預貯金、公社債等を含めましてより幅広い資産運用が可能になるわけでございます。したがって、やや画一的に過ぎる給付金制度とは異なりまして、企業の労使の個々の要請によってそれぞれ御相談の上でいろいろ工夫をこらし、それぞれの労使の人数に応ずることも可能になるという点がメリットの第一点ではないかと思います。  さらに、第二点といたしましては、基金という人格をつくることによりまして、その意思決定機関及び執行機関労使が対等の立場で参加するということも組み込めるわけでございまして、その結果、事業主拠出、その運用等につきまして労働側事業主と対等の立場で参画することができるということでございまして、この点も、中堅以上の労働組織の確立しておる企業においては一つのメリットになるのではなかろうかというふうに考えております。
  25. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 この基金制度も、先ほど指摘しましたように、当初の構想より大分後退をしているわけですね。これは原案決定案との非常に相違があると思うのです、いま説明を受けても。それで、決定案内容についてのそれじゃメリットはどういうふうにお考えになっておりますか。この点について御説明をいただきたい。
  26. 森英良

    説明員森英良君) 先ほどのお答えの最後にとりあえず申し上げたわけでございますが、第一点は、現在行われております給付金制度が実際には信託と生命保険という大別して二種類の商品しか扱えない。したがって、取り扱い機関も限定されるということでございますが、基金制度をとりますことによりまして、そのほかにも預貯金でありますとか、また公社債の取得でございますとかということも広く可能になるわけでございまして、その結果、取り扱い機関も都市銀行、地方銀行さらに労働金庫等も含めまして預貯金の取り扱い機関、さらに長期信用銀行及び信託会社というようなものも入ってまいりまして、およそ金融機関等のほとんど大部分が参入できるということになります。その結果、基金における資金の運用につきまして選択できる商品の範囲が拡大するわけでございまして、それをいろいろ労使で御相談の上組み合わせることによって、工夫をこらし自主性を持って運用に当たることができるということになるかと思うわけでございます。  第二点は、基金という別人格ができますことによりまして、当然執行機関意思決定機関が必要でございますが、そこに労使か対等の立場で参加いたしまして、労使の御相談でいろいろ運営に当たっていただくということで、労働側からも大きく発言権が出てくるという点もメリットではないかと思うわけでございます。
  27. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 基金制度においても、私は財形給付金制度と同様の非課税の措置とか助成の措置がとられることが必要であるし、このことは、指摘しましたように不十分ですね。現下の著しく厳しい経済情勢のもとにおいて、財形制度促進を図るためには、西ドイツ等で行われる大幅な付加金の支給あるいは税額控除等の国の援助措置というものを講ずるべきことが、これはもう御承知のとおり絶対必要だろうというふうに思うのですね。この点についてはどうなんでしょうか。
  28. 森英良

    説明員森英良君) 財形基金制度につきましても、現在の財形給付金と同じように、これを行います中小企業に対しましては、一般に申しまして二十人以下が拠出額の一〇%、百人以下が五%、さらに新しく今度の制度改善で三百人以下百人以上の企業につきましても三%の助成金を支給するということになっております。この点は、これまで百人以下の企業にしか行われてなかった助成金を、とにかく三百人以下の中小企業全体にまで今回及ぼすようにできたわけでございまして、これはこれなりに一つ前進であると考えております。  なお、助成率が一〇%、五%、三%ということでございまして、西ドイツにおける財産形成給付に対する貯蓄付加金の三〇%、四〇%というのに比べますと確かに低いわけでございますが、しかし、一〇%ないし三%でございましても、これは事業主の出したお金についての利回りがそれだけ上がるわけでございますから、そういう利回りのアップという点で考えますと、それはそれなりに十分意味のある助成金ではないかというふうに考えております。しかしながら、私どもも、この助成の内容につきましては、これでもう十分であるというふうに考えておるわけではないわけでございまして、今回の制度改善におきましては財政状況その他を考えましてこの程度にとどまったわけでございますが、この助成の拡充につきましては将来さらに検討課題として引き続き勉強してまいりたいというふうに考えております。
  29. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、法七条の七の「設立の原則」について御説明をいただきたいと思いますが、ことに、二以上の事業主が一定の関係にある場合というのは、具体的にどういうことを言うのか。また、基金設立のための人員規模というのはどの程度とされるのか。  次に、さらに基金制度の設立、管理、業務等の規定から見て、基金のための職員の人件費、事務費等が必要だと思います。したがって、従業員百人程度の企業においては基金の設立は事実上困難ではないだろうか、こういうふうに思われます。本年度どの程度基金というのが設立される見込みであるのか、その予算措置というのはどういうように含んでいるのか、お答えをいただきたい。
  30. 森英良

    説明員森英良君) 基金の設立につきましては、原則は「一の事業主の全部又は一部の事業場」について設立できるというふうに考えておるわけでございますが、「二以上の事業主が政令で定める関係にある場合には、」これらの事業主のそれぞれの事業場を合わせて一つ基金を共同してつくることもできるというふうに法案はなっているわけでございます。この「政令で定める関係」といたしましては、たとえば同一の資本系列にある場合、それから元請下請の関係にある場合、さらに同一の地域内にある場合というようなことを予定しておりまして、特に中小企業の事業主につきましては、非常に規模が小さい場合には単独で基金をつくることは困難でございますので、こういう共同設立の形で中小企業も特に基金を選択される場合には、基金の設立が可能になるように措置いたしたいというふうに考えております。  なお、基金につきましては、やはり独立の法人でございますので、余りに小さい基金というのは問題でございますので、ある程度加入員の最低人員を限る必要があると考えておりまして、その人数は一応百人以上というふうにしたいと思っております。厚生年金基金なんかの場合にはもっと大きな人員規模でございますか、これは同基金の性格上かなり保険数理的な配慮が必要でございまして、そういう多人数を予定するわけでございますが、財形基金の場合には保険数理的な配慮というものは必要ございませんので、百人程度あれば十分ではなかろうかという趣旨でございます。  それから、基金の事務費につきましては、これは法律に規定がございますように、拠出金とはまた別途やはりもっぱら事業主に負担していただくということになっているわけでございます。ただ、基金の実際の事務は、非常にたくさんの取り扱い機関、商品の中からどのように相手方を選択して基金契約を締結するかという問題、それから、その取り扱い機関ごとに事業主拠出金をどういう割合で案分するかということを決定するというようなことが実は大部分の仕事でございますので、それほど大きな事務費を要するものとは考えておりません。したがいまして、非常に大きな基金の場合には、あるいは独自の事務局をつくって独自の負担ということもあるかと思いますが、一般にはその企業の福利厚生関係の部課が基金の事務局を兼務するというような形で実際上処理される場合が多いのではなかろうかというふうに考えます。なお、基金の設立見通しにつきましては、五十三年度におきましては一応二百基金が設立されるというふうに想定いたしまして、これについて基金設立奨励金というものが出ますので、一基金三十万円といたしまして六千万円の予算を計上しているわけでございます。
  31. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 基金制度に参加する小規模企業について、国は特別の税制上の優遇措置やそれから基金設立奨励金の増額等を行うべきではないかと私は思うんです。また、当該基金における事務費に要する費用の一部を補助する等の措置というものは、私は必要ではないだろうか。特に、いまの百人単位としても二百基金というのが見込みをされておるようでありますけれども、これらについて特別のそういう小規模企業に対する措置というものは、いま申し上げた幾つかの点の助成なり補助なりというものは必要だと思うんですが、この点はどうでしょう。
  32. 森英良

    説明員森英良君) 給付金につきましても、また今度新しい基金につきましても、先ほどちょっと申し上げましたように、中小企業につきましては特にいわゆる助成金を支給するということによりまして、中小企業の負担力を補強するという措置をとっているわけでございますが、そのほかにも給付金基金を通じまして同じように税制上事業者損金扱い、あるいは受け取る場合の労働者に対する支出外扱いというふうな税制上の恩典も加えておりまして、とりあえずはこういう形で制度を推進してみたいというふうに考えておるわけでございます。
  33. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 これは大臣からお答えをいただきたいと思うんですが、いま基金制度についても、小企業特に実際上基金設立については困難だと思われる企業というものがたくさんあるわけであります。したがって、幾つか私問題点を提起いたしましたように、非常に幾つかの問題を含めているわけでありますから、今後この基金制度というものを具体的に拡充していくにはどうするのか、そういう点は促進のため、推進のために大臣としての御決意といいますか、御所見を承りたいと、こういうふうに思うんです。
  34. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 先ほども政府委員からお答えをいたしましたように、中小企業財形助成金制度そのものが、非常に力の弱い中小企業と大企業との格差を是正するということで配慮しておるわけでございます。同時に、ことしの改正におきましては、その対象企業の規模百人までを三百人までという、こういった制度改正いたしまして、全体のバランスをとっていったという、こういったことでございますけれども、御指摘のごとく非常に現在日本経済そのものが厳しい環境に置かれておるわけでございまして、せっかくの制度でありますが、それが育たないということでは相ならぬわけでございまして、私は御指摘の問題点、やはりことしの実績を踏まえながら、なおすでにまた実績を踏まえるまでもなく、われわれがこうありたいと思ったことがまだ実現をされておりませんから、こういう問題についてはひとつ今後とも引き続き改善をしてまいりたい。そして、制度の本来の趣旨に十分沿い得るような内容改善をする、それはあくまで着実に前進的にやっていく、全体の整合性を保ちながら推進していくと、このように考えております。
  35. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、財形給付金制度についてお伺いをいたしたいと思うんです。  まず第一に、一定の中小企業を対象としてきた財形助成金について、事業主の規模別の支給件数、これはどういうふうになっておりますか、まずお伺いをいたします。
  36. 森英良

    説明員森英良君) 五十二年度における中小企業財形助成金の支給状況でございますが、支給件数は千二百七十三件、支給額は約二千百九万円となっておるわけでございます。  なお、助成対象は小規模、中規模別に、すなわち小規模と申しますのは一〇%の助成金が出る企業でございますが、中規模の場合は五%でございますけれども、別に見ますと、小規模企業では支給件数が五百七十七件、支給額が八百三十六万五千円、中規模企業におきましては支給件数六百九十六件、支給額一千二百七十二万六千円ということになっております。
  37. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 いま実績から見ても十分なものになっていない助成率の引き上げということも、今回の改正で見送られているわけですね。先ほど大臣も御決意の中で言われましたように、現下の厳しい経済状勢のもとでこの基金制度の確立、それから助成率の引き上げ、こういうことは私は非課税措置というものを拡大していく必要というものがあると思うんですね。そこで、今後の措置については一体どういうふうにされようというのか、これを伺いたいと思うんです。
  38. 桑原敬一

    政府委員桑原敬一君) 基金なり給付金制度が円滑に普及していくことを私どもも期得をいたしておりますし、それに対する国なり関係者の援助努力というものが非常に大事だと思っております。  今回、私どもの素案といたしましては、いろいろ希望を申し上げてあったわけでございますけれども、最終的には予算その他の情勢がございまして、率の引き上げよりもむしろどうも零細企業に偏っているこの給付金制度を広げたいという念願から、規模の拡大、三百万円までに広げるということに重点を置いたわけでございます。結果的に、率の方は私どもの考えどおりいかなかったという面がございます。したがって、そういう残された問題について私ども引き続き努力をしてまいりたいと思いますし、基金につきましては御承知のように税制上の恩典が今度できたわけでございますが、こういう問題につきましても今後の実績なり推移を見ながら改善努力をしてまいりたいと、こういうふうに思います。
  39. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 給付金の非課税はどうですか。
  40. 桑原敬一

    政府委員桑原敬一君) 給付金に対するあれは一応損金扱いになっておるわけでございますね。それから、勤労者に渡りましたときには七年後に実質所得になっておりますから、私ども一応税制上では措置をされていると思っております。
  41. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、財形持家融資制度についてお伺いをいたしたいと思いますが、財形持家融資制度における分譲融資の企業規模別貸付件数及び貸付金額、これはどのようになっていますか、まずお尋ねをいたします。
  42. 森英良

    説明員森英良君) この実績はもう圧倒的に中小企業が多うございまして、恐らく大企業は四十八件、八十一戸、四億二千七百万円、割合で見ますと一・四%を占めるにすぎませんで、あと中小企業が七百二十一件、三千四尺二百四十一億八千百万円で七九・五%ということになります。なお、勤住協——日本勤労者住宅協会によります分が五十四件、八百九十五戸、五十八億一千八百万円で一九・一%を占めているということになるわけでございます。
  43. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 今回、個人融資限度額を先ほどの趣旨説明でも示されましたように、一千万円から一千五百万円に引き上げられたわけですね。償還期間の延長等も行っていますが、じゃ金利あるいはその水準、これはどういうふうになるのか。まずそれをお伺いしたいと思います。金利水準について。
  44. 森英良

    説明員森英良君) 現在六・八三%でございます。
  45. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 労働省の実態調査によりますと、土地家屋の買い入れ等のための借り入れ先は第一に金融機関、第二に住宅金融公庫、そして第三に勤務先の順と、こういうふうに労働省の実態調査によりますとなっているわけであります。そうしますと、金利はいま六・八三%ですね。たとえば、一千五百万の個人融資をいまのように幾つかの機関から借りますね。その場合に、じゃ一人の労働者、金を借りた者は年間に一体どのぐらいの利息を払わなきゃならないのか。いま申し上げた実態調査の金融機関を幾つか挙げましたから、それぞれから借りたということになると一体合計はどのぐらいの利息になるんですか。
  46. 森英良

    説明員森英良君) 前提が問題でございますが、仮に財形貯蓄実施勤労者が千五百万の住宅を新しく新築するか、あるいは購入するという場合を考えまして、やはり五百万程度自己資金で、それから五百万円を住宅金融公庫の一般個人融資によって借りる、残り五百万円を財形持家個人融資によって調達するという場合を想定いたしまして、一応月々の返済額をはじいてみたわけでございますが、これによりますと木造住宅新築するといたしますと、住宅金融公庫の一般個人融資、これは年利現在五・五%でございますが、それから財形融資年利六・八三%で、ともにその償還期間は今回の改正後は最長二十五年ということになりますので、返済期間を二十五年として元利均等毎月払いで算出いたしますと、毎月の返済額は両融資分を合わせまして約六万五千円と……
  47. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 毎月ね。
  48. 森英良

    説明員森英良君) 月でございます。  これは勤労者家計の平均収入約月収三十万四千円、これは五十二年度でございますが、これの一・五%程度になるというふうに一応見られるわけでございます。また、融資額の六〇%を毎月払いといたしまして、残りの四〇%を六ヵ月ごとのボーナス月払いということにいたしますと、毎日の返済額は約三万六千六百円でございまして、ボーナス月の返済額が約十四万七千八百円という試算になります。
  49. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 いまの御説明でもわかるとおりに、勤労者の負担というのは相当重いと思うのです。そこで、事業主勤労者に対して利子補給等の引き上げとか、分譲価格の割引とか、負担軽減の措置というものを、何らかの措置というものを講ずるべき必要があると、こういうふうに思いますけれども、その点はどうでしょう。
  50. 森英良

    説明員森英良君) 財形融資におきましては、分譲融資の場合も、また個人融資の場合も、いま先生ちょっと仰せになりましたような一定の負担軽減措置勤労者にとっての負担軽減措置事業主が行うことを義務づけておるわけでございます。
  51. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 この引き上げですね、先ほども千五百万借りて二十五年払っていく、毎月五万から六万、それからボーナスを入れても相当毎月の返済というのはこれは大変な金額ですから、当然それにはいまの助成とか、あるいは軽減措置があるけれども、これでは十分であるとは言ってないわけですから、これをやはり引き上げていく、そういう負担の軽減というものの施策を講ずべき、それがやはりこの財形基本的な問題の一つであろうかと思うのです。ぜひそういう軽減の方策についても大臣積極的にひとつ講じていただきたい。これはお願いを申し上げます。  それから、また公務員等については、今度の財形制度によって住宅融資を受けた者、これについては先ほども説明にあったかと思うのですが、わずかに二十数件と私聞いているわけです。それを実態、公務員の関係ですね、実態というのはどうなっているのか、実態をお聞かせいただきたいのが一つであります。それで、この非常に少ないという件数についてはどういう一体理由があるのだろうか。この点をお示しをいただきたいと思います。
  52. 森英良

    説明員森英良君) 公務員につきましては、財形を制定当時から、もちろん財形貯蓄はできるようになっておりますし、また、その還元融資である財形持家融資につきましても、一応共済組合事業主の立場で行うというふうになっておったんでございますが、現実にはなかなか、財形貯蓄の方はこれは公務員は非常に熱心にやったわけでございますけれども還元融資である持家融資につきましては、共済組合による融資ということが実際にはいろいろ障害ございましてうまくまいりません。この五十二年度から国家公務員につきまして個人融資の道が具体的に開けました以外は、実際上動いていないというのが遺憾ながら実情であるわけでございます。  そこで、今回の改正におきましては、特にこの持家融資拡充を図る一環といたしまして、公務員についても民間勤労者と同様の立場で何とか還元融資が行われますように、種々な改正を加えようとしておるわけでございますが、そういうことで、昨年度でございますけれども、五十二年度になりましてから、ようやく国家公務員につきまして政令等もできまして融資が始まりまして、その当年度でございますので、その実績がきわめて少ないということが言えると思います。
  53. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 その理由。
  54. 森英良

    説明員森英良君) ですから、五十二年度にようやく政令ができまして、それから募集に入り、融資を始めたわけでございますから、五十二年度の実績は非常に少ないというふうに考えておるわけでございます。
  55. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 今回の改正案においても、公務員に対して住宅分譲及び個人融資について改善措置が講ぜられることになっていますが、じゃあ一体どういうようなメリットとお考えですか。  それからもう一点は、還元融資において最も問題なのは、共済等の貸し付け利子に対して財形の利子が高過ぎる、こういうことにあるんではないだろうか。そうなれば当然これを改善する必要があるわけですね。これは検討すべきだと思うのです。だから、そういうことの理由というのが私はあるんではないだろうか。  両方あわせてひとつ御説明をいただきたい。
  56. 森英良

    説明員森英良君) 今回の公務員関係につきましての持家融資の面での改善は数点ございまして、第一点は、これまで民間労働者に対してのみ分譲を行っておりました日本勤労者住宅協会の仕事の中に、公務員に対しても分譲事業を行えるように措置した点が第一点でございます。  それから、これまた民間労働者に対してのみ行っておりました住宅金融公庫を通じます財形持家個人融資の中の直接融資、これも新たに公務員に対しても直接融資をできるように措置したというのが第二点でございます。  それから第三点は、これは現在、共済組合がなぜなかなか財形融資に取り組めないかという点の問題の一番大きい点なんでございますが、非常に大きな共済組合は、これはあるいは独自に財形貯蓄の取扱金融機関折衝いたしまして、そこから資金を取り入れるということも可能でございますが、共済組合の中には非常に小さなものも含めましてたくさんございまして、これがそれぞれのわずかな戸数について金融機関とそれぞれ交渉するというのでは、これは金融機関の側も非常に大変でございまして、と申しますのは、財形取扱金融機関財形融資資金を提供するにつきましては、財形貯蓄を受け入れておるその実績、シェアに応じまして全体で案分比例で負担するという原則がございますので、余りにたくさんの個々の共済組合から少額ずつばらばらにきたのではどうにも対応ができないということも一つの問題であったわけでございます。そこで、共済組合がみずから資金調達がむずかしい場合につきましては、雇用促進事業団がかわって金融機関等から資金を調達いたしまして、これを共済組合等に資金を流してやるということもできるようにするというのも今回の改正点でございます。  そういうことで、かなり今後は融資のための前提条件整備されたというように思っておるんでございますが、御指摘の金利が高いか安いかという点につきましては、とにかく個人融資も六・八三%でございまして、現在民間で行われておる一般のコマーシャルベースの融資に比べますと、やはり相当程度低い金利になっておるわけでございまして、またこの点は民間の労働者の場合と公務員の場合とまた共通でございます。したがいまして、もちろん金利は安ければ安いほどたくさん出るであろうことは当然でございますけれども、これまた金利体系全体のバランスの問題等もございまして、特に財形貯蓄原資とする資金につきましては、それぞれができるだけ高い金利の商品を選んで貯蓄している関係もございまして、それをカバーするものでなければならないという基本的な原資それ自体の金利の高さということもございまして、それこれ勘案いたしまして、現在の方式で進むということに考えているわけでございます。
  57. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 次に、教育融資について伺いますが、今回、教育融資制度創設することにしておりますけれども、その対象の範囲、具体的にはどういうようになっておりましょうか。それから一般の金融機関融資に比べて、これまた教育融資についてはどれだけのメリットがあるのか、この点もまず伺いたいと思います。いま住宅融資にあるような、この教育融資についても負担の軽減措置というのをお考えになっているのかどうか、あわせてお答えをいただきたいと思います。
  58. 森英良

    説明員森英良君) 進学融資を利用できる勤労者の範囲でございますが、これは一般民間の勤労者公務員あるいは三公社の職員すべて対象になります。そうして、ただ財形貯蓄を行っておるということが要件になっておりまして、そういう勤労者本人またはその子弟というのが進学いたします場合に、その進学に必要な資金貸し付けを行うというのがこの制度の趣旨でございます。なお、この金利関係、まだ決まっているわけではございませんが、とりあえず現在の金利体系を前提といたしまして、八・四%台ということで発足しようということに政府内で一応話し合いがついているわけでございますが、おっしゃるとおり、仕宅融資については、分譲融資では利子補給して分りますし、それから個人融資につきましても、これは雇用促進事業団等の金融機関等からの調達金利のままで、そのままで貸すということで、その資金調達のためのコストは全部別途国が負担して措置しておりまして安いわけでございますが、それに比べまして進学融資の金利は、御指摘のとおり少し高目になっておると思います。しかしながら、民間の金融機関が行います教育ローンの金利は一応八・八八%ということでございますので、それに比べればとにもかくにもかなり安い線にはおさまっておるというように考えるわけでございますが、これはこの種の融資につきましては実はどの程度のリスクがあるのかにつきまして、全く客観的な資料がございませんので、住宅融資は、これは住宅それ自体を担保にすることによりまして非常に安全な融資でございますが、この場合には特段の担保は取らないことになっておりますので、その辺のリスクをどう見るかという点についてかなり危険を考えておかなきゃならない。そのリスクにつきましては相当程度、もちろん国が負担するわけでございますが、ある程度はやはり金利にオンして、金利による自律作用というものも期待せざるを得ないというのが現在の状況でございまして、そういう点でこの融資につきましては、短期資金でもございますので、こういう利率で進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
  59. 高杉廸忠

    高杉廸忠君 以上で私の質問を終わるわけでありますけれども、この際、特に労働大臣にお願いを申し上げたいと思うんですが、質疑を通じて明らかになりましたように、わが国の財形制度というのは今回の改正によってもなお不十分なものであり、また西ドイツ等の諸外国財形制度に比して国の助成等についても非常におくれた制度になっているわけであります。財形制度をめぐる諸条件も一段と厳しさを増しておりますけれども、本制度の趣旨に沿って積極的な措置をこの際、期待するものであります。特に、労働大臣要望いたしますことは、質疑を通じて幾つかの提起もいたしました。この点もあわせ積極的にこの制度充実に向けて推進くださるよう特に要請をし、私の質疑を終わりたいと思います。
  60. 広田幸一

    ○広田幸一君 私は、いま高杉委員が質問しまして、大体同じような問題に関連をすると思いますけれども、これから内容について細かく質問をしていきたいと思います。  先ほど来から、高杉委員の質問に対する労働大臣を初め各局長の答弁を聞いておりまして私が特に感じましたことは、私もこの法案をあれこれ勉強したんですけれども、どうも厳しい言い方でありますけれども労働省は財政当局に対してきわめて姿勢が弱い、そういう感じを残念ながら持たざるを得ません。ざっと見まして、これが四十六年からずっと今日まで続きまして、貯金が一兆八千億円。大臣が先ほどおっしゃいました、この財形というのは家を持つことが目的なんだと、そういうことを先ほども繰り返しおっしゃっておるわけですけれども内容はほんのわずかの、金額にすれば三百四億円、そういうような内容からしまして、一体この法律ができて今日までだれが一番得しただろうか、こう見ますと、後で数字を申し上げたいと思いますけれども、一番金融機関がもうかっておるわけです。そんなに造作なく大量の資金金融機関に集まるような内容になっておるわけです。それから基金制度にしましても、内容を見ますとやっぱり大企業がよくなるようなかっこうにどうもとれるわけです。ですから、先ほどからおっしゃるように、今日の厳しい経済情勢の中で非常にむずかしいとおっしゃるけれども、この法律の精神というのは、最初に書いてありますように、労働者の自己努力に対して、それに国と事業主が協力をして勤労者生活を守っていくということがちゃんと目標に書いてあるわけです。どこに焦点を置いてこの法律を考えていくか、そういうところに私は話を向けていかないとこれはなかなか前進をしないと、そういうふうに感じますので、私はそういう考え方から以下質問をしてまいりたいと思います。  そこで、先ほど高杉委員が、原案から交渉の過程で後退をしている、そういうのはどういうことであったかという質問をしまして、今日のいろんな厳しい財政事情の中でやむを得なかった、将来はこれから五十四年度の予算を編成するに当たって努力するということでありましたけれども、具体的に申し上げますと、この貯金制度の場合、確かに五百万円まで非課税という優遇措置があるわけでありますが、労働省原案としては、これの引き上げ、それから中高年齢者に対しては、四十五歳以上についてはこの五百万円をもっと上げてもらいたい、それから退職した場合これを継続してもらいたいというような要請がされておるんでありますけれども、私はこれは当然なことだと思っておるわけです。特に今日の民間の中小零細企業というのは六十歳の定年といったって現実は五十五歳なんです。五十五歳でやめまして、そして就職はない。年金制度はありますけれども、六十歳にならないともらえないという中小零細企業の実態なんです。そういうことを考えますと、私はこういう優遇措置というのはやってあげなければならない。しかも、零細中小企業の人たちは退職をしましても退職金はほとんどないですよ。最近は特にそういう状況があるわけですね。ですから、私はこういうような問題はなぜ財政当局に向かって厳しく要求してもらえなかったか、その点を私はこの問題について考えます。どうですか。
  61. 桑原敬一

    政府委員桑原敬一君) 財形貯蓄に対する非課税措置の問題につきましては、私どもも当初原案についてはいろいろと検討いたしましたわけでございます。特に、先生のおっしゃいます後段の方の定年退職をされる方についての非課税については、私どもは何らかの形で実現をしたいという気持ちは持っておりましたし、いまも持っております。ただ、最終的には、先ほどおしかりを受けました財政当局から押されて力が弱いんじゃないかという御批判ですが、私ども反省しなきゃならぬ面があると思いますけれども政府部内で最終的にこういった形になった一つの考え方は、私ども今回の制度改善で、特に貯蓄がたくさんたまってその還元というものが十分でないという点、それからまた自己努力に対して非常にその他の援助措置が十分でない、こういう点についてはもう私ども早急に手直しをしなければならない。ただ、五百万の非課税限度額を上げるということにつきましては、まだ貯蓄の実額が五百万円までいってないというような実態もございますし、それから基本的には、やはりいまの日本経済を考えます場合に、貯蓄を奨励することよりも、そういうインセンティブを与えることよりも、やはり消費需要と申しますか、消費の喚起というようなことがきわめて重要でないか、当面。というようなこともありまして、その政策の選択に当たって、私どもは、後段の先ほど申し上げました融資に対する還元、いろいろな魅力をつけることあるいは事業主に対するいろいろな援助措置というものに力を置くというようなことで割り切ったようなわけでございます。
  62. 広田幸一

    ○広田幸一君 苦しい答弁だと思いますが、私たちもこの問題については先ほど大臣が、皆さんの意見も十分に聞いて内容改善を図っていくということでありますから、強く場を通して財政当局にも訴えていきたいと思います。  それから次は、同じこの住宅貯蓄制度でございますけれども、これも実際これをやってみますとこれは個々にいろいろ特典があります。三年以上七年未満の場合は税額の控除が八%、限度額は四万円。七年以上は一〇%、限度額か五万円、こういうような優遇措置があるわけです。このことはいいと思います。ただ問題は、計画がいろいろ変更して、たとえば七年以上たったけれども家が建たない。いろいろな個人的な事情なり、自分が予定しておった土地が案外高かったというような個人的な変化というものは当然起きてくるわけですね。その場合、この優遇措置がこれがほごになってしまう。いままで控除をしてもらったお金を、全部さかのぼって、たとえば七年であれば、四万円を控除してもらっておった場合は四、七、二十八、二十八万円を事業主を通して税務署に返さなければならないというようなことになっておるわけですね。こういうような厳しい条件では、なかなか家を持とうと思いましてもできないわけです、これは。現実にこれは窓口に行ってみられればわかるわけです。貯金の方がどんどん伸び住宅の方が伸びないのは、そういう、将来余りにも厳しい条件があるというところに問題があるわけですね。ですから、労働省の方もそのことを見て、いわゆる控除率をもっと上げよというふうになっておりますし、それからいまの条件の緩和をするために年限を延ばすというふうな原案を持っておられたようでありますけれども、これもぼつになっておるわけですけれども、私はここに問題があると思うのです。こういう制度としてあっても、実際は使えないわけですよ。ですから、先ほど高杉委員か質問をしましたように、まだ設立してから日にちが浅いという理由もあるでしょうけれども、なかなか飛びつけないわけですよ。こんなむつかしいことなら、ほかの方法をして家を建てた方がいいというのが現状なんです。ですから、私はこういう条件をもっと緩和してあげる、そしてこれが利用しやすいようなやり方にしなければならない。労働省もそのことをお認めになって要求されておるではありませんか。私は、こういうような状態だったら預金は伸びるかもしれませんけれども住宅を建てようとする希望者は出ないと思います。この点、どうですか。
  63. 森英良

    説明員森英良君) 先生の御指摘のように、財形住宅貯蓄制度につきましては、利子等の非課税措置に加えまして、さらに勤労者貯蓄額の一定割合を所得税額から控除する、しかもその控除率が一般の住宅貯蓄に比べまして高率でございまして、三年ないし七年以下の場合には八%、七年以上の場合には一〇%ということで、特段の措置があるわけでございます。そういうことで、非常に手厚い優遇がある制度でございますから、やはりそれなりの要件が必要でございまして、貯蓄が継続的に行われているという点でありますとか、また積立額の二・五倍以上を事業主または金融機関融資するという予約があるという点でありますとか、また一定期間内に住宅の取得があるというような要件を求めておりまして、これの要件はやはり税制上の恩典を受けますためには基本的にはやはりやむを得ない面ではなかろうかというふうに思うわけでございます。しかしながら、おっしゃるとおり、この住宅貯蓄制度は非常にいい制度でありながら、なかなか利用しにくいという御指摘はそのとおりでございまして、その点は特に前回の財形制度改善のときにもある程度措置をいたしまして、特に財形住宅貯蓄のうちの七年以上の長期のものにつきましては貯蓄を終了しましてから住宅を取得するまでの期間を二年を三年に延ばしましたり、さらに積み立て満了後どうしても三年以内に住宅または敷地を取得できない場合につきましても、一定の要件を備えればさらに追徴を受けることなくその貯蓄を続けていられるというような改善も加えてあるわけでございます。この点は、一応前回の改正でも措置したわけでございます。なお、今回それをさらにもう一段前進さしたいというのか私どもの当初の希望であったことは御承知のとおりなんでございますが、先ほど来いろいろるる御説明申し上げておりますように、現在の非常に厳しい状況の中で、むしろ増税問題さえも論議されておるような状況の中で、さらに恩典を厚くするということが非常にむずかしかったという結果、実現していないわけでございます。しかしながら、財形住宅貯蓄は一般の住宅貯蓄に比べますと非常に利用され始めておりまして、すでに七百四、五十万の財形貯蓄者のうちの一一%がこの住宅貯蓄をやっておりますので、七十四、五万人、これが住宅貯蓄財形の中でやっておるわけでございまして、いわばそれまでの住宅貯蓄のいろいろなむずかしい点が財形住宅貯蓄の形で相当緩和されまして、その形で普及しつつあるということはお認めいただいていい点ではないかと思うわけでございます。  なお、今回の改正案におきましては、財形貯蓄制度それ自体の改善はついに実現を見なかったんでございますが、ただ先ほど財形持ち家融資制度拡充の一環といたしまして、従来、融資限度財形貯蓄額の二倍でありましたのを三倍に引き上げたわけでございますが、これは先ほどの積み立て額の二・五倍以上の融資予約がなきゃならないという点との関連におきまして、これまでの個人融資はなかなかそれに乗りにくかったんでございますが、三倍まで貸すことになれば財形持家融資とリンクすることによりまして、さらに財形住宅貯蓄促進される要素になり得るというふうに考えておりまして、そういう財形制度全体の中で財形住宅貯蓄もまたより促進されますように、今後ともいろいろと検討してまいりたいというふうに考えております。
  64. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) ただいま御指摘財形住宅貯蓄というのが、貯蓄伸びても住宅というものに、住宅建設に結びつかないという御指摘、私も実は何といいますか、ジレンマといいますか、まことに活路をどう見出すかということについて苦慮しておる一人でございますが、これは他に転嫁するわけじゃございませんけれども、結局土地政策ですね、住宅対策という宅地問題ですね、これがやはり適正な改善がされないとなかなか事が前進しない。税制だけで、税額控除によって財形住宅貯蓄については四万ないし五万、恩典があるわけですから、とりあえず非常にいいことだということでその面から飛びついたと、ところがふん詰まりになっちゃってはけ口がないというこういうジレンマが現状だと思うんです。われわれとしては、いろいろ従来提言している問題の改善はいたしますけれども、やはり全体的な政策を考えた場合に、何といっても土地政策というものを改善をするという、これに強力な推進をせなければ財形持家制度は本来の趣旨を生かすことができないとこのように思いますが、こういう問題も考えながら御趣旨の線を踏まえて努力したいと、こう思います。
  65. 広田幸一

    ○広田幸一君 大臣のおっしゃることわかりました。先ほど高杉委員も土地政策の問題あわせてやらなくちゃならない。ただ私、この制度ができたのが四十六年でございますから、そのころは一応高度経済成長の時代であって、そのころ考えた制度と、それからずっとお話がありましたように石油ショックがあり、いろいろあるわけでしてね、やっぱりそういう変化に対応したようなものを考えないと、周囲の状況が悪くなったからということだけでは私はいけないと思うのです。せっかくこういうものをつくって、本当に労働者の皆さんの生活をよくしてあげようというのが目的ですから、労働大臣のおっしゃることよくわかりました。私たちもそういう面で努力しなきゃならぬと思います。  そこで、いま局長のおっしゃったのは、千五百万円に上げたということは、私は別の場で指摘します、あれは問題があります。ただどうでしょうか、そういう場合にたとえば三年なら三年たったと、その場合に土地が思うように買えなかったという場合には、その期間もっと延ばしてやる、それでそのお金は、家を建てる、土地を買う以外には使わないと、そういうような条件をつけるということになれば、私は少しは幅広い運営ができるのではないかと思うのですよ。むずかしいむずかしいということではなくて、このお金はあと一年待ってくれ、しかしこのお金は絶対に他には使わない、こういうふうな約束をすれば私は非常に伸びると思うのですが、その点簡単に答弁してください。検討の余地があるかないか。
  66. 森英良

    説明員森英良君) 御指摘の点は、先ほどちょっと申し上げましたが、前回の改正の中で相当程度実は措置してあるわけでございます。これは七年以上の財形住宅貯蓄の場合に限りまして、その積み立て期間終了後、通常二年でございますが、三年以内に土地または住宅を取得すればよろしいと、土地と住宅ではございませんで土地か住宅どちらかだけでよろしいということになっております。さらに、それもできない場合につきまして、積み立て期間満了後、償還期間五年以上の貸付信託、長期債券等に積み立てた金を切りかえまして、そしてほかの委託をしている場合にはその間は追徴しない。さらに、そういうことによりまして積み立て開始から十五年を経過した場合には、もはや一切追徴はしないという措置を加えまして、おっしゃるとおり住宅取得の目的で始めたんでございますけれども、その後の状況の変化でどうしてもうまくいかないという場合につきましても、こういう方法をとればその後、税額控除分についての追徴を免れ得るというふうに一応措置してあるわけでございます。
  67. 広田幸一

    ○広田幸一君 次は、これは高杉委員指摘しておったんですけれども、私は特に中小零細企業に対する国の助成の内容をもっと充実をしてもらいたい、こういうふうに思うわけです。  それで、ちょっと数字を申し上げます。私の調べたところでは、今回の制度とって見ましても、貸し付けの金利が六・八三%でございますから、勤住協の場合は五・五%になっておるわけですね。勤住協という性格があるでしょうけれども、ここなんかも何とかならぬものだろうかというふうに考えます。それから、事業主が個人に貸し付ける場合の利子補給が五年間に限って一%義務づけられておりますね、これも一つ。それから、持ち家の分譲の場合は、割賦金に対する分も十年間一・五%見るようになっておるわけですね。こういうように事業主がこうして負担をするようになっておるわけですね。ですから、目的事業主も協力して援助するということになっておりますけれども、私が特にこのことを指摘しますのは、最近の事業というものは本当に厳しいわけです。この十万円を限度にして給付金制度がございますけれども、平均すると二万円でしょう。当時考えた十万円が今日二万円しかできないというのは、それだけ今日の企業が苦しい、その中でもわけて零細中小企業というのは苦しいのだ、だからもっと補助率を上げてあげるべきではないか。しかもこういうふうに内容を見ますと、制度の中でこうして二重三重の負担がかかるようになっておるわけです。そのことは、結局は事業主が負担がえらいからこういうものには乗っからないという、逆にもなってくるわけでございまして、こういう点を私は考えてもらったらどうかというふうに考えます。  それからもう一つは、時間がございませんので一遍に言ってしまいますが、雇用促進事業団から出る資金の出場というのは、いわゆる出資金政府から五億円出ておりまして、これの運用の金とそれから労働保険特別会計から出る金、これが割合として一対九ということで出てくるわけですね。ところが、労働保険特別会計の中身を見てみますと、本当はこれは、ことし、五十三年度から労災も含んでフィフティー・フィフティーになっておりますけれども、これも、言えば、中身は、事業主が出す金が全部これに充てられるようになっておるわけですね。性格が違うといいながら、やはり事業主が出す金がこの資金になっておるわけですわ。そういうことですね。ですから、国の出す分が少なくて事業主が出す分が多いんですよ。私はここに、もっと中小企業を大事にしなきゃならないということを言いながら、こういうところから金が出てくるという、こういう問題についても、もう少し財政当局は考えてもらわなきゃならぬ、こう思うわけです。  以上の点についていかがでございますか。
  68. 森英良

    説明員森英良君) 財形制度の趣旨が、何度も申し上げておりますように、本人自助努力前提として国と事業主援助をするということにございますものでございますから、持家融資につきましても、分譲融資個人融資ともに国もいろいろ金利引き下げのための努力をしておりますけれども、さらに、事業主が利益を受ける、勤労者の負担が軽くなるように一定の援助をする、負担軽減措置と呼んでおりますが、これを義務づけておるわけでございます。しかしながら、先生御指摘のように、最近のような景気の悪い状況になってまいりますと、特に負担力の弱い小零細企業等におきまして、むしろその負担軽減措置を講ずる義務づけ自体が、結果的には融資そのものを始めないということで、かえって勤労者の利益を阻害することにもなりかねないということは確かに先生御指摘のとおりでございまして、一つの問題であるというふうに考えておるわけでございます。  ただ、しかしながら、この負担軽減措置につきましては、やや理想主義的過ぎたのかもしれませんけれども、やはり、先ほども申し上げました財形制度の政策の基本理念に照らして、やはり国も援助すれば事業主にも援助してほしい、共同でひとつ援助しようということで設けた制度でもあるものでございますから、かなり財形制度基本にかかわる問題でもあるというふうにも思うわけでございます。したがいまして、この点はさらに財形審議会で今後とも引き続きいろいろな基本問題の検討をお願いすることになっておりますので、当審議会意見も聞きながら十分検討してまいりたいというふうに考えます。  それから、そういう負担軽減措置事業主に義務づけるよりは、むしろ国がもっと負担して金利を下げたらどうだ、特に中小零細企業についてはそういうことをやったらどうだ、という御質問だと思うんでございますが、確かにそういうことをやれば金利は下がりましてますます利用しやすくなるという点もあるわけでございますが、ただ、逆に申しますと、利子補給の国庫負担というものがやはり将来相当累積してまいりますので、その点で、実際に融資に回せる融資枠というものをかえって制約する原因にもなりかねないという問題もあるわけでございます。したがいまして、これらの点につきましては、もう少し今後の課題としまして検討さしていただきたいというふうに思います。  特に、融資関係が一番大きいのでございますが、国の予算におきましては財形施策関係の国の負担はいずれも特別会計でやっておりまして、一般会計からは国の一般行政事務費及び五億円の出資金という限度にとどまっておるわけでございますが、しかしながら財形制度は、財形貯蓄の利子非課税あるいは税額控除というようなことに関連いたしまして、やはり税制によって措置することが一番行政的にやりやすいということもございまして、その国の援助の面につきましては、その多くの部分を実は税制上の優遇措置によって行っているわけでございます。この減税額がどの程度の規模になるかということにつきましては、具体的な資料もございませんで推計以外にないのでございますが、すでに五十三年度でも数百億の減税をやっておりまして、これはやはり国の一般財源の負担において行っている点におきましては、予算の一般会計負担と全く同じ性質を持っているわけでございます。  そこで、特に事業主財形制度において果たす役割りとしての融資制度等に伴ういろいろの国の負担につきましては、いまのところ特別会計でお願いしているわけでございまして、いろいろ御意見もあるかと思いますが、まあ数百億に対する五十三年度予算が約七億でございますので、その程度につきましては特別会計に負担を求めましてもあながち不当とも言えないのではないかというふうに実は考えておる次第でございます。
  69. 広田幸一

    ○広田幸一君 部長、そういう物の考え方が私はやっぱり違うと思いますわ。この法律の趣旨というのは労働者を守っていく。そして勤労者に持ち家を持たせるというところに法律の精神があるわけで、国の方から、こっちの方から金が出ている、こっちの方から金が出ているということでは伸びないわけでしょう。さっき部長も認められたように、事業主の負担が大きくなればなるほどそのしわ寄せは勤労者に来るわけなんですよ。ですからそれをカバーしていくというのは、せっかく国がつくった制度なんですから、労働省はそのお金をとにかく持ってこいと、そしてこの内容勤労者のためになるような制度に持ってこいという、そういう要請をしてもらわなければ、大蔵省の方は金がないから出すまい出すまいとしますよ。それじゃ結局何のためにこういう制度をつくったかということになるわけでしょう。私は、持ち家を希望する数もたくさんある、内容がどんどん労働者のためになっておれば、勤労者のためになっておれば、私は言わないわけですよ。全く伸びないから、伸びないのは一体原因はどこにあるのかと、そこのところを詰めて財政当局に言ってもらいたいということですよ。労働大臣、どう思われますか。
  70. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 先ほど説明員から答えました内容、これは十分でないという御指摘でございますが、一般会計から出す助成と、税制上税額控除あるいは非課税措置と、こういったことで財形貯蓄並びに持家制度促進をやるという、こういうやり方について、現在やってきた足取りはやはり税制面において推進してきた、そして実質的には、定かでないんですが私の記憶では約四百七十億ぐらいは一応税制面でめんどう見ていると、こういうことなんです。  ただ、御指摘のように、この制度の本来の趣旨というものを踏まえて、勤労者の自主努力を国と事業主でバックアップして、そして持ち家を持ちたいという、そして生活の安定を図りたいという、この勤労者の気持ちを具現をするという面におきましては十分でないという御指摘は私もごもっともだと思います。したがって、今後引き続き財形審議会基本問題懇談会、こういった場において、しかもこれがいろんな面に関連をいたしますから、大蔵省のみならず、土地問題は建設省、国土庁、こういう問題に関連いたしますから、そこら辺と密接な連絡をとりながら、財形貯蓄、わけてもこの勤労者持家制度伸びるように、労働省としては努力すると、中心になって努力すると、このように心得ております。
  71. 広田幸一

    ○広田幸一君 大臣がんばってください。私たちもそういう場で、いろんな場でそういうことは大いに強調したいと思います。  そこで、先ほど局長がおっしゃったこの持家融資の場合の個人融資でございますね、これを従来の二倍を三倍にしたと、限度額を一千万を一千五百万円にしたと、だからかなり前進をしたんだということでございますけれども、実際は、なかなかこれを実際窓口で運用する場合はそうはいかないんですよ。ちょっと例をとってみたいと思います。大体まあいま全国勤労者の平均を、高いかもしれませんけれども、月二十万円にしましよう。そのうちの一〇%、二万円を貯金をします。それが年間には二十四万円だけど、大体二十万円としまして、これが三年間になるわけですから何ぼでございますか、二、三が六、六十万円でございますね。三年間積み上げて、月に実際一〇%貯金できる、二万円貯金できるという人はかなりの余裕のある人だと思いますけれども、まあ一〇%としまして、年間二十万円として、三年間でございますから、それを二、三が六、六十万円とします。今度二倍を三倍にしたわけでございますから、三倍にすると、三、六、十八、百八十万円しか貸してもらえないわけですよ、これは、百八十万円しか。その人を二十万円としましたときに、これを仮に五百万円を限度にするわけですから、これは相当な日時が要るわけですね。ですから、千五百万円といいましても、千五百万円まで到達しようと思ったら、その人はもうそれこそ十何年かかるという計算になってくるわけであります。ですから、見てくれは確かに二倍を三倍にしたと、一千万を一千五百万円にしたと言われますけれども、実際はそうはならないわけですわ。ここらを私は実態を調査した上に立って言ってもらわないと、よくなったから、そういう数字が三倍になり、一千万が一千五百万になったからこの制度前進したということにはならない。これだったら、これを利用するよりも、三年かけて百八十万円しか貸してもらえないというなら、もっとよその方に行って、むずかしい手続をせぬでもいいんだから、そっちの方に走った方がいいという現状に事実なっているわけです。ですから、私はじゃどうしたらいいかということでございますけれども、私はこれをもう五倍から十倍ぐらいに持っていくべきであると、そういうふうに考えます。この限度額を、一千五百万円を一千万でも仮にいいと思うんです、私は。それよりも、貸してやる倍数をもっとふやしていく、それの方が現実的であると、こういうふうに考えますが、この点についていかがでございましょうか。
  72. 森英良

    説明員森英良君) 現在の社会におきまして、現実問題といたしまして住宅を取得するということはやはり勤労者にとっては相当の大事業でございまして、したがって、そのためには、まず自己資金をつくることからこれまた相当努力をいたしませんと、そう簡単に——まあ簡単に取得できればいいに違いはございませんが、実際問題といたしましてなかなかむずかしいだろうと思うわけでございます。現在のわが国の平均的な貯蓄性向と申しますのは、これはたしか二四、五%になっておりまして、これは平均でございますから、まあせめて平均あるいはそれを上回るぐらいの貯蓄努力をしていただきませんと、なかなか年額二十万の三年で六十万でこれを基礎に家を建てるというわけには、非常にむずかしかろうと思うわけでございます。ただ、私ども、実際にどういう形で住宅取得が財形制度を用いまして可能かという点をモデルを使って試算してみたことがあるわけでございますが、それを申し上げてみますと、一応首都近郊の場所を前提にいたしまして七年後の取得住宅——宅地ともでございますか、一応二千二百六十六万円というケースを想定いたしました。これは宅地五十二坪、建物二十六坪ということを前提にいたしまして、現在の価格が一千八百四十六万円相当と、そういう物件、これがその後の物価上昇で二千二百六十六万円に七年後になるという前提でございます。で、七年間の貯蓄総額は一応五百五十九万円ということに想定しておりますが、これは長期財形住宅貯蓄によりまして二十五歳の勤労者が毎年その年収の約二割を七年間貯蓄いたしまして、その間毎年受けます税額控除分も一緒に翌年の預入額に加算するというふうにした場合の七年後の元利合計額に相当するわけでございます。そこで差し引きまして融資必要額が千七百七万円になりますが、この内訳は、住宅金融公庫から五百万円、年利五・五%で借りまして、さらに財形融資によりまして五百万円を超える貯金があるわけでございますから、千二百七万円の財形持家個人融資を受けるということになります。そして返済期間を二十五年間として元利均等毎年償還方式で試算いたしますと、年間返済額が百三十八万円ということになりまして、これは返済開始年齢三十二歳でございますが——における年収の約三割の範囲に入る、とどまるということでございまして、以後次第に年収が増加するといたしますと、その負担率も低下してまいりますので、まあ何とか返済に関しても問題がないというような線でございまして、そういう形で財形制度を御利用いただけますならば、七年後においての住宅取得が可能ではなかろうかというふうに見えておるわけでございます。
  73. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時十分再開することとし、休憩いたします。    午後零時七分休憩      —————・—————    午後一時十九分開会
  74. 和田静夫

    委員長和田静夫君) ただいまから社会労働委員会を再開いたします。  午前に引き続き、勤労者財産形成促進法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  75. 広田幸一

    ○広田幸一君 午前中の終わりに、持ち家の融資の問題で質問をしまして、局長の方から答弁があったんですけれども内容がちょっと私も十分に把握することができませんでしたので、これからまた後で速記録を見て、その問題についてのまた私の考え方をまとめたいと思いますが、いずれにいたしましても、目標に対して現在かなりの目標が達成していないわけですから、私は問題が上ると思っておるわけです。  そこで、これは五十二年の四月から発足しておるわけでございますが、現状住宅の建っておる件数をお聞かせいただきたいと思います。
  76. 森英良

    説明員森英良君) 財形持家個人融資の本年二月末現在における申し込み状況でございますが全体で四百八十戸、約十四億四千万円ということでございます。
  77. 広田幸一

    ○広田幸一君 そこで、大変詰めた言い方をしますけれども、私の手元の調査したところによりますと、雇用促進事業団とそれから住宅金融公庫、これが五十二年度の目標として一万五千戸、同じく両方の事業団とも目標が一万五千戸になっておるわけです。それから、国家公務員共済組合の関係が目標が一千戸になっておるわけです。それに対して、いま部長が答弁されました四百八十戸の実績でございますから、問題にならない数字になっておるわけでありますが、なぜこういうような大きな開きになったのか、ここらのところが、少々の違いならいざ知らず一万五千戸に対して私の方では十件、これは雇用促進事業団でございますが、住宅金融公庫が一万五千に対して四百四十一、国家公務員共済組合関係が一千戸に対して二十五戸、なぜこんなに極端な開きがあったのか、何か私は原因があったと思いますが、そこらの事情をお聞かせいただきたいと思います。
  78. 森英良

    説明員森英良君) 個人融資実績につきましては、全く先生御指摘のとおりでございまして、目標数字に比べまして実績が余りにも少な過ぎるということで、私どもも大変問題に感じておるところでございます。翻ってこの原因でございますが、いろいろのことが考えられますけれども、やはり何と申しましても、まだ五十二年度に始まりましてようやく一年経過した段階でございまして、いろいろ周知のための努力はいたしておりますが、なおやはり依然としてその周知徹底が不十分であるということが一番大きいのではないかというふうに感じております。また、一般的な環境も、安定成長経済への移行というふうな経済の大きな変わり目にたまたま遭遇をいたしておりまして、そういう意味で住宅取得あるいは事業主のいろんな住宅の面での援助ということにつきましても、非常に環境が悪いということも事実のように思うわけでございます。そういうことで基本的な問題がございますが、何とかこの際制度面にも改善の余地が多々ございますので、できるだけ大幅の拡充を図って、何とか将来もっと還元融資が進みますようにいたしたいということで、今回の制度改正におきましても、特に個人融資の貸付要件の緩和でございますとか、また対象資金中古住宅あるいは住宅の改造資金を加えるとか、あるいは限度額財形貯蓄残高の二倍から三倍に引き上げるとか、さらに公務員等についての新たな促進措置も加えまして、一番力を注いで拡充を図った点でございます。
  79. 広田幸一

    ○広田幸一君 責めるわけではないですけれども、そこで五十三年度のそれでは目標の設定をお聞かせいただきます。いま分けたような区分に従って説明してください。
  80. 森英良

    説明員森英良君) 五十三年度の融資枠でございますが、雇用促進事業団の行う転貸融資関係につきまして二万戸、融資枠四百億円、住宅金融公庫の行う直接融資につきまして同じく二万戸、四百億円、さらに共済組合の行います直接融資につきましては千八百五十戸、融資枠三十七億円でございまして、合計四万一千戸という計画になっております。
  81. 広田幸一

    ○広田幸一君 そこで、たとえば雇用促進事業団の関係だけをもって見ましても、五十二年度は一万五千戸に対して実績が十戸であったと。このものが五十三年の場合は五千戸上げて二万戸になっておるわけですが、どうですか、これは自信のある数字でございますか。どうもただ数字を並べたと、こういうふうにしかとれないわけですね。どうですか、これは自信がある数字なんですか。どういうふうにして五十二年度の実績が上がらなかったということを反省というか、どこに問題があったかと。それを解消するから五千戸ふやして二万戸にしても大丈夫だと、そういうようなやっぱり根拠のある数字なのか、お聞かせいただきたいと思います。
  82. 森英良

    説明員森英良君) 御指摘のとおり、五十二年度の実績に比べまして五十三年度の目標が相当大きいものであるということは私どもも感じております。しかしながら、今回の法改正が実現いたしますならば、先ほど申し上げましたような種々の改善が加わりますので、これをてこにしてさらにいろいろな行政努力を行いまして、何とかこの目標にできるだけ近づくように最大限の努力をいたしたいというふうに考えております。
  83. 広田幸一

    ○広田幸一君 これ以上私も詰めませんけれども、余りにも私は実のない計画だというふうに思います。さっき部長の方から、期間もまだ短いし、周知徹底がしてないと、こういうふうにおっしゃるわけですけれども、この予算書を見ますと、財産形成実態調査の関係の予算としてこれが発足した四十六年度からずっと、多いときが八百万、少ないときでも五百万。五十一年度が五百六十六万、五十二年度か五百六十三万、五十三年度が五百四十八万、そういう実態調査の費用が計上されておるわけです。それからまた、制度普及促進関係の費用として、これも五十年度から五百五十六万、これが五十年度でございますが、五十一年度は四百八十四万、五十二年度は四百七十八万、五十三年度は四百五十四万と、こういうように、この額が高いか低いかということはわかりませんが、いずれにしても実態調査をし、あるいは普及促進をするための費用がコンスタントにずっと出ておるわけでございますね。ですから私は、その普及が徹底しないというような言い方ではどうもその点は納得できませんね。まあ、これ以上責めてもいけませんけれども、やっぱり一つの法律をつくるにしても、規則をつくるにしても、実態に合ったようなものにしないと、ただそういうものをつくったと、こういうことだけでは私はいわゆる世に言うところの役所的な仕事に終わってしまう。午前中も何回も申し上げましたけれども、現在の勤労者は厳しい生活の中で本当に苦労をしておるわけです。自分のなけなしの金を預金をしながら、それを積み上げて住宅をつくろうということでございますから、私は、そういう勤労者の立場に立って本当に中身のあるこの予算計画をしてもらわなければならぬと思いますが、大臣どうでございますか。
  84. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘の点、私も全く同感でございます。ただ、余りにも現在の経済情勢、先ほど御指摘申し上げました宅地の問題とかいろいろなことを考えますと、これが一挙にはまいらない。しかしそれだけに、着実に前進的に御趣旨の点を踏まえて年ごとに改善していく、前進していくというふうに努力をいたしまして、およそ勤労者の財産形式持家制度の名にふさわしいような制度内容充実していきたい、このように思います。
  85. 広田幸一

    ○広田幸一君 ひとつがんばっていただきたいと思います。  それから、今度の新しい制度中古住宅貸し付けの対象になっておりますけれども、これはどういう範囲を想定をしておられるのかお聞かせをいただきたいと思います。
  86. 森英良

    説明員森英良君) 財形持家融資の対象となる中古住宅の範囲につきましては、現在既存の公的融資における取り扱いを参考にしながら検討を進めておる段階でございますが、おおむね次のような考え方で処理したいというふうに考えております。貸付対象地域はこれは全国でございまして構造としましては簡易耐火構造及び耐火構造、これを取り上げますが、なお木造につきましては現在折衝中でございます。三番目に、住宅の経過件数、これは建設後十年以内というものを対象に考えております。貸付金の償還期間でございますがこれは簡易耐火構造及び耐火構造いずれも二十年ということでございます。一戸当たり貸付対象床面積、貸付金利、貸付限度額は、従来の新築住宅についての持家融資における貸付条件と同一にいたしたいということでございます。  なお、その他の細目につきましては現在関係省庁と折衝中のところでございますが、できるだけ利用者の便利に資するようにやってまいりたいというふうに考えております。
  87. 広田幸一

    ○広田幸一君 先ほど、私は五十二年度の建設計画を聞きましたが、公務員は千戸だったですかな
  88. 森英良

    説明員森英良君) 五十三年度は千八百五十戸でございます。
  89. 広田幸一

    ○広田幸一君 雇用促進事業団が割り当てをするときには、それぞれ勤住協とか区分があるわけでございますね。それはどこが決めるんでございますか、割り当ては。
  90. 森英良

    説明員森英良君) 特別に割り当てというものはございませんで、それぞれからの事業計画を見ましてそれに応じて決定するということでございます。
  91. 広田幸一

    ○広田幸一君 ちょっと私も不勉強かと思いますけれども、今度は公務員が対象になったわけでございますね。公務員の場合は、勤住協でございますか、これ一本になっておるように聞いておるわけでございますか、そういう特定なところにそういうふうにするというふうに決まっておるのでございますか。
  92. 森英良

    説明員森英良君) 先ほど申しました数字は持家個人融資のうちの公務員対象分でございまして、勤住協における分譲のうちどの程度公務員用として予定するかということにつきましては、これは需要の見通しでございますとか、あるいは財形貯蓄の中に占める公務員財形貯蓄分の割合でございますとか、いろんな点を考慮いたしまして、一応予測をもって枠を組んでおるということでございます。
  93. 広田幸一

    ○広田幸一君 そうしますと、それには、今後の推移によって幅があるわけでございますね。
  94. 森英良

    説明員森英良君) 五十三年度につきましては、公務員関係を四億というふうに組んでおるわけでございますが、もちろん、今後の実際の貸し出しの状況等によりまして、将来につきましてはその都度また考えていかなければならない問題であるというふうに考えております。
  95. 広田幸一

    ○広田幸一君 それから、先ほど高杉委員も質問をしておったんですけれども進学融資制度でございます。高杉委員が言っておったんですけれども、金利が八・四%、局長の説明で言いますと、他の金融機関から借りるものとのバランスを考えると大体八・四%で、まあいいというわけではないけれどもこういう線にしたというお話であったわけでありますけれども、私はこれも、財産形成の全体の枠の中で考えることでございますから、八・四%というのは少し高いではないか、こういうふうに考えるわけであります。他の金融機関からのそれを対象にしなくて、財産形成という目的からしてこういう制度をつくるわけですから八・四%はやっぱり高い、こういうふうに言えると思いますけれども、どうでございますか。
  96. 森英良

    説明員森英良君) この制度改善が実現いたしますと、新たに財形融資の中に持家融資と並びまして進学融資というのが入ってくるわけでございますが、おのずから財形融資の中におきまして住宅の取得の援助のための融資制度と、進学についての融資制度につきましてはやはり若干の軽重の差があるのじゃないかということも考えているわけでございます。そこで、利率につきましても、住宅分譲融資につきましては利子補給も行いまして低い利率にしておりますし、持家個人融資につきましても、これは調達金利そのままで、資金調達にかかるコストあるいは危険負担、全部国がかぶりまして資金の調達金利そのままで貸すということで六・八三というふうな比較的低い率になっておるわけでございますが、進学ローンにつきましては若干これらと同じところまでの取り扱いをすることがいかがかという問題もございまして、なかんずく一番技術的に問題になりますのは、先ほどもちょっと申し上げたのでございますが、住宅融資は非常に担保の面で安定しておりまして、貸し倒れのきわめて少ない融資でございますが、進学ローンになりますと一種の消費金融的なものでございまして、担保も徴しませんので、どこまで貸し倒れ、いやな言葉でございますが貸し倒れのリスクがあるかということについて、いまのところどうもよるべき客観的な資料がないわけでございます。したがいまして、調達金利の上に相当資金コストの面で国も負担いたし、また危険負担の面でも国が大幅に見るのでありますが、ある程度の危険負担分はやはり金利に上乗せして金利による調節作用というものも期待することが適当であろうということで計算いたしますと、八・四%台ということになっておりまして、いろいろまだ不明な面がございますのでこういう形で発足をいたしたいというふうに考えておるのでございます。
  97. 広田幸一

    ○広田幸一君 進学融資ですけれども部長、どういう人を対象にお考えになっておるのですか、これは。これを借りられないような人はかなり私は生活が窮屈な人だと思っておるわけです。別にこれに借りなくても、いろんな市中の金融機関等で借りられる人が多いと思うんですわ。私はこれを借りる人はかなり低いといいますかね、そういった人たちが多いように想定をします。それだけに私が申し上げているのは、八・四%というのは高いというわけです。だって、労働省も高いということで六・七五%と、返す期間は十年が適当だということでいっておるわけでしょう。財政当局がこういう少なくしているわけですから。ですから、私は労働省の気持ちはよくわかるわけですけれども、いずれにしても、私は八・四%というのは財政計画の法律の精神から言いまして高いと、こういうふうに思います。これはこれ以上詰めません。  次は、公務員の関係についてですが、今度公務員がこの制度に乗っかるわけでございますけれども、問題は金利差の問題があるわけでありますね。雇用促進事業団から六・八三%、それから五・五%の差異があるわけでありますが、これはどこが負担をするようになっておるのか。国家公務員の場合は国の予算で、五十三年度にはそれ相応の予算が組まれておるように聞いておりますが、そのことと、それから地方公共団体、県市町村の職員でございますね、こういったものはどうなるのか、そこらのところをお聞かせいただきたいと思います。
  98. 森英良

    説明員森英良君) 財形融資に関します限りは、公務員の場合も民間の場合も分譲融資、あるいは個人融資の別によりましてそれぞれ金利は同一でございまして、民間が六・八三で国が五・五%ということはございません、財形融資につきましてはです。問題は、個人融資の場合に、その資金調達コストをどこが負担するかという問題でございますが、民間の関係につきましては、雇用促進事業団におきまして労働保険特別会計のお金によりましてコストは賄っておりますし、そういう関係で、国家公務員につきましては国の予算で行いますが、地方公務員については、実際にそういう融資を行われるそれぞれの地方公共団体の予算に計上していただいてそのコスト面を負担していただくということになるわけでございます。
  99. 広田幸一

    ○広田幸一君 国家公務員の関係については労働省はそのとおりに把握されておると思いますし、間違いないと思いますけれども、地方公共団体の場合は、いま局長がおっしゃったような方向で話は自治省の関係でついておりますか。地方公共団体が、いや、そういうものはうちはよう持たぬというようなことはありませんか。詰めはどうなっておりますか。
  100. 森英良

    説明員森英良君) 地方公共団体の中にも、そもそも財形貯蓄はまだやってない団体もいっぱいございまして、また、財形融資につきましても、やるところもあればやらないところも出てくるわけでございまして、必ずしも一斉にということにはまいらないと思うのでございますが、一応、地方公共団体でそういう融資を行おうということになれば、予算措置はできることになっておるわけでございます。
  101. 広田幸一

    ○広田幸一君 地方交付税の単位費用の中に七十四円というものか予算化されておるわけですね。それはそういう場合の手数料というように聞いておるわけですけれども、それはそれとして、別に私の言っておりますのは金利差の利子補給の問題ですよ。ですから、時間がありませんので、まず、そのことは地方公共団体でこの制度が四月なら四月から発足する場合には、地方団体は、地方自治体はそれをやってくれると、こういう前提でいまお考えになっておるというふうに理解していいんですか。
  102. 森英良

    説明員森英良君) 何分にもまだ地方自治体、市町村等も加えまして多数あるわけでございますが、財形貯蓄をやっておるのはまだ部分的である。まして財形融資をやるところもまだ全面的にやるという体制になっていないわけでございまして、したがいまして、なかなかその面を国が地方交付税等で勘案するということもちょっとむずかしい段階にあるように聞いておるわけでございます。しかしながら、自治体自身がこういう融資を行うということになれば、その面での予算措置を講ずることについて何の障害もございませんので、そもそも金がないという問題は別にいたしまして、特に勤住協等は公務員への分譲ということに非常に関心を持っておりまして、これはまた勤住協の場合には実際に分譲事業をやる地域がこれまた限定されますので、全部の自治体に及ぶものじゃございませんので、結局はその候補地、いわゆるその近辺の自治体に対して勤住協としては大いに働きかけをして予算措置を講じてもらうようにしたいというお気持ちのように伺っております。
  103. 広田幸一

    ○広田幸一君 結局、地方自治団体の趣旨は、そういうことを労働省としても地方自治団体に要請するけれども、それを決定をするのは地方自治団体の自主的な判断であると、こういうふうに理解してよろしいですね。
  104. 森英良

    説明員森英良君) 仰せのとおりでございます。
  105. 広田幸一

    ○広田幸一君 私はこういう問題をひとつ質問をしてみたいと思うんですけれども基金制度の場合は労使が協議をして内容をいろいろ決めるというふうになっておりますけれども、現在までの給付制度の場合は、事業主が一方的と言うとあれですけれども、大体事業主の考え方ですべて制度を進めるというふうになっておるわけですけれども、私はこれに対していわゆる従業員、組合が、あるときは組合、そういった労使がいろいろ話し合いをしていくという形が、この制度を運用していく上において非常にいいんではないか。基金制度の場合もそういうことが特に考えられておるというふうに聞いておるわけでありますが、給付金制度の場合もそういう考え方をこの法律の中にどういうふうにうたうかということは別としまして、そういうことが確認できるようなぐあいにした方がいいんではないか、その面の利点はいろいろありますから、時間がございませんので省略をしますが、何か労使が話し合いをしていくというようなものが制度の中に盛り込まれるようなことについてどうお考えになりますか。
  106. 森英良

    説明員森英良君) 給付金制度基金と違いまして、これは事業主金融機関の間の双務契約でございまして、しかも、その受益者は勤労者になる、こういう関係でございます。したがって、勤労者契約上の受益者としての立場でございますから、これは法律上、要するに事業主が出したお金を金融機関が運用した成果を受け取るという立場でございまして、その契約自身について余り当事者のように関与する立場にないものでございますから、基金におけるように制度的に労使協議というようなことを繰り込むことは非常にむずかしいわけでございますか、しかしながら、財形法給付金制度を導入するかどうかという点、さらに導入します場合の加入資格をどうするか、また、拠出金の額等の決定、あるいは変更等につきましては、いずれも前もって労使の合意による協定が必要である。その協定に基づいて事業主金融機関に金を払い込んでいくということになっておりまして、一応先生御指摘の点は、そういう形で制度の面でも措置はされておるということでございます。  また、実際の運用面を申しますならば、これはおっしゃるとおり、労使でいろいろ常に話し合いをしていただくことは結構でございますので、そういうことが実際に行われるように、これは指導の面で今後とも配慮してまいりたいというふうに考えます。
  107. 広田幸一

    ○広田幸一君 労使がうまくいっておるところはいいんですけれども労使がうまくいってないところは、やっぱり経営者の方が事業主の先に立つ、おれのところからいろいろ金も出してやっているじゃないかというようなことになりますと、やっぱりそこの使われておる従業員、労働者は弱い立場なんですね。ところが、いろいろ金融機関を指定をする場合に、自分はここにやりたいというのがあるわけですね。いやそうでない、うちの会社はこういうところと取引しているから、この金融機関にしたいんだと、こういうふうに言われれば、なかなかそれに対して従業員は、労働者はやっていけないという実情が実際あるわけです。そういう場合を私とらえて言っておるわけでございまして、局長のいまの答弁からすると、この中にきっちりと労使がこうせいというようなはっきりしたことは言えないけれども、あくまでもこれは労使が話し合いをしてうまくこの制度を運営をしていく、そういう考え方を今後も各事業所に対して指導をしていく、こういうふうに確認をしてよろしゅうございますか。
  108. 森英良

    説明員森英良君) 給付金制度につきましては、先ほど申し上げましたように、給付金契約、これは事業主金融機関の間で結ばれるわけでございますが、そういう契約を結ぶ前提として、やはり事業主側と労働組合、あるいは過半数を代表する労働組合がない場合は従業員の過半数を代表するものとの間に協定が結ばれまして、そもそも事業給付金を導入するかどうか。それから、どういう金融機関を選ぶか。また、拠出金をどのくらいの額にしてどうするかといったような基本的な事項が全部実際上労使間で協定されまして、それが基礎になって事業主金融機関給付金契約を結ぶということになるわけでございますから、基本的な内容につきましては、そういう形ですでに手当てができておるというふうに考えているわけでございます。そのほかにも必要に応じ、常時労使間でいろいろ話し合いをしていただくことは結構でございますので、そういう線で指導をしてまいりたいということを申し上げたつもりでございます。
  109. 広田幸一

    ○広田幸一君 私、最後にお聞きしますけれども、冒頭ちょっと触れましたけれども、どうもこの制度を見ておりますと、労働者が、勤労者が全く利益をこうむっていないということじゃございません。労働者に、勤労者に利益を与えるというのがこの法の趣旨でありますから、ただ足りないところもだんだんあるわけですけれども、ただ一方、この預貯金の面で、かなり金融機関が得をしておるといいますか、資金コストがかなり安くついておるということが言えると思います。それは一兆八千億円の金がいまそれぞれの金融機関に預託されておるわけでありますけれども、私は、この制度が進めば、基金制度がまたできる。それから今度は公務員の場合には適用になる。公務員は現在やっておるところもあるわけですけれども、これが全国的に広がっていけば、それぞれ自治体は指定金融機関等を通してそういう運動をしてくると思うんです。そうなってきますと、金融機関は余り労せずして金がかなり集まってくる、こういうふうに私は思うわけです。  時間がありませんので、本当は私は、いまの一兆八千億円が何年先になると想定した場合に、どのくらいの金が金融機関に預金されるかということも、労働省としても想定をされておるだろうと思うんです。それに対して、実績が御承知のようにああいったかっこうになっておるわけですから、実際は三分の一が雇用促進事業団を通して勤労者還元されるわけでありますけれども、その三分の一もまるまる、ほとんどって言いますか、三分の一を使うまでには相当な日時を要する。それまでにはかなりの利用しやすいような制度改善をしていかなければならない。私はそう思うわけです。そうすると、あとの三分の二というものは、まず三年間というものは絶対動かぬことになっておりますし、金融機関としては非常にうまくできた制度だと、こういうふうに思うわけです。  そこで、私は、次に言いたいことは、そういう金融機関資金コストが安くついて、しかもまとまった金がきちっきちっと入る、しかも固定をしておるという意味からして、金融機関は、これはかなりの利潤が出るというふうに理解するわけでありますが、そういうものを勤労者還元をするというような方途について、労働省は今日までどういうふうにお考えになってきたかということをお尋ねしたいと思います。
  110. 桑原敬一

    政府委員桑原敬一君) 財形貯蓄につきましては、御指摘のように、日本人が非常に貯蓄性向が高いというようなこともありまして、また一面には、税制上その他のインセンティブがいろいろある。それからまた、銀行も非常に勧誘するというようなことで相乗効果もありまして、私どもの予定の足取りで貯蓄はふえてまいったと思っております。その半面、三分の一の還元というものが十分でないということにつきまして、私どもいろいろ制度の不十分さということも反省させられておりまして、そういう関係から、私どもも今回いろいろな面で、不十分ではございますけれども工夫しながら貸付条件の緩和とか、いろいろな面で制度改善をしたつもりでございますけれども、また一面、進学融資等についても新しい道を開いたわけでありますけれども、こういった還元についてのいろいろな道を新しく開く、あるいはその還元についてのいろいろな条件整備というようなものについても、今後も努力していかなければならないというふうに痛感をいたしているようなわけでございます。
  111. 広田幸一

    ○広田幸一君 時間が参りましたので残念ながら終わるわけですけれども、局長が今後努力していくということでございますので、それに私は期待したいと思うんですけれども、やっぱり特別に、普通の一般金利よりも、何か特別の金利を何らかの形で還元をしてやる。金融機関の方はこれは還元していないわけですからね。国の方として、税制上の問題とか、いわゆる雇用促進事業団資金の分とか、そういう面で用立てはしておりますけれども金融機関としてはいまのところ還元をしていない形になっておるわけですね。ですから、私は、この問題は金がどんどんどんどんとふえる、しかも三分の一がなかなか消化できないということになってくると、必ず問題が出てくると思うんです。ですから、そういう意味で、私は、この金融機関に対してやはり何らかの形で勤労者還元をされる、こういうふうな方途を考えてもらわなきゃならぬ、こういうふうに思います。私も機会があればまたこの問題を労働省にただしたいと思いますので、ひとつ、そういう御努力を特にお願い申し上げておきたいと思います。  最後に、労働大臣には、途中二、三回労働大臣の所見も承りましたけれども、同じようなことを申し上げますけれども、この法律というのは、あくまでも勤労者のいわゆる生活を守っていく、特に持ち家をつくるというのが当初からの考え方でございまして、申し上げましたように、本当にいまの厳しい情勢の中でこの持ち家を持つということはますます困難になってきておると思うんです。そのためには、私は、より以上にやはりこの制度改善をする必要がある、労働者が本当に使いやすいような制度改善をしなきゃならぬ、こういうふうに思うわけであります。私は、大臣がおっしゃったように、私たちもそういうことについてはいろんな場を通してやっぱり後ろ盾になっていかなきゃならぬと思います。  そういうことで、これから勤労者生活を守っていくという立場に立って、ひとつ労働大臣の御所見、決意のほどを承って、私の質問を終わりたいと思います。
  112. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘の点、まさに私もそのように認識をいたしておりまして、財形制度基本理念に立脚いたしまして、特に持家住宅制度充実前進ということについては、今後も皆さん方の御意見も十分お聞きし、きょうも貴重な意見を承ったわけでありますが、財形審議会基本問題懇談会の場なども十分活用いたしまして、今後前向きで検討し、そして年ごとに着実に改善前進するように努力をお誓いをいたしまして、答弁にかえます。
  113. 渡部通子

    ○渡部通子君 建設省おいでいただいておりますので、最初に若干お尋ねをしたいと思います。  先ほど労働省の方からのお話はございましたが、昭和五十二年度財形住宅計画実績、これをひとつ建設省の方から、どのくらいであったか御報告いただきたいと思います。
  114. 鴨沢康夫

    説明員(鴨沢康夫君) 五十二年度の計画は、私どもの扱っております住宅金融公庫関係での実績を申し上げますと、計画戸数は一万五千戸を計画をいたしておりました。ところが、実際には非常に諸々の事情があったことと思いますが、実績といたしましては、四百四十一戸にとどまったというのが現状でございます。
  115. 渡部通子

    ○渡部通子君 それは住宅金融公庫の方ですね、雇用促進事業団
  116. 鴨沢康夫

    説明員(鴨沢康夫君) ただいま申し上げましたのは、住宅金融公庫分でございまして、雇用促進事業団分は、同じく一万五千戸の計画でございましたが、十一戸が実績であったというふうに承っております。
  117. 渡部通子

    ○渡部通子君 余りにもかけ離れた実績ですけれども、原因は何だとお考えになりますか。
  118. 鴨沢康夫

    説明員(鴨沢康夫君) これは金融公庫分に関しての……
  119. 渡部通子

    ○渡部通子君 はい。
  120. 鴨沢康夫

    説明員(鴨沢康夫君) やはり、実施の初年度でございまして、私どもの方のPR等が行き届かなかった問題等もございます。それから、現在の財形貯蓄をなさっています方の平均の貯蓄額が、大体労働省からもあるいはお話があったかと思いますが、私ども資料をいただきまして計算したところでは、一人当たりの貯蓄残高二十四万円強ぐらいというふうな現状でございます。したがいまして、住宅を建てるために必要な資金量に達しておられる方がかなりやはり少ないのではなかろうかというふうな感じもいたします。  それから、御参考のために申し上げますが、住宅金融公庫では、持家取得のための郵便貯金という制度を行っております。これは郵便貯金をなさる方で持ち家の取得を目的になさった方、ですから、これはもう全く家を取得するということか目的貯蓄をなさっているという方でございますが、そういう方の現況で申し上げましても、たとえば五十二年度には、その口座数が二十五万九千ございますが、これに対しまして、実際に金融公庫に借りにお見えになる方というのが、現在の実績で大体五千四百戸ほどでございます。こういうふうな実情から推しましても、かなりその辺の算定のところ、もとの数が大きいことと、それから実際に持家取得が実現する率とが、かなりこういう貯蓄の場合に、何か促進策を講じないと、なかなか実現してこないということがあるのではないかというふうに考えております。
  121. 渡部通子

    ○渡部通子君 五十三年度は二万戸で、四百億という計画をお立てでございますね。
  122. 鴨沢康夫

    説明員(鴨沢康夫君) そのとおりでございます。
  123. 渡部通子

    ○渡部通子君 それの積算の根拠を簡単にお示しいただけますか。なぜ二万などという数が出てきたのか。
  124. 鴨沢康夫

    説明員(鴨沢康夫君) 積算の根拠につきましては、大体現在、住宅金融公庫で家をお建てになっています方の平均の建築費等から単価を出しまして、それで所要資金量をはじき出したわけでございます。それで、二万戸という戸数についてでございますが、これは大体ことしの実績を見ましても、これは四百戸強の実績でございますから、断言はできませんけれども住宅金融公庫貸し付けとの合わせ貸しが非常に率が高うございます。現在のところ、七五%程度の合わせ貸し率になっております。そういうことから勘案しまして、それから今回御審議を願っております財形法改正によって、貸付条件その他が非常に有利になるというふうなことを勘案いたしまして、あるいは少し前年度の実績から見て大き目かもしれませんけれども、やはり少ないよりはむしろ大目にしておいた方がよろしいのではないかということで算定をいたしました次第でございます。
  125. 渡部通子

    ○渡部通子君 非常に無責任な決め方だと私は思うのですね。ですから、二万戸、それで四百億などという数をばあんとお出しになるけれども、実際それが、一体ことしは一万五千戸でしょう、それに対して四百、これ見ただけでも唖然とするほどなんですから、それをまたふやすというのは、かなりの根拠がなければ、五千戸もプラスするなどということは、普通の頭では考えられないのじゃないかと、私は素人だからそう思うわけです。そういう目で建設省住宅建設計画戸数などというのを見ますと、やはり財形住宅として二万戸と、こう計上されています。そうすると、やっぱり一年間たって何百万戸を建てるのかわからないけれど、一体建設省住宅建設戸数というものは、いつもこういうまことに根拠薄弱で、建ちそうもない数を平気で計上しているのかと、こう言われてもいたし方ないと思うのです。ですから、実際、実績はどの程度に見込んでいらっしゃるのか、去年の推移からいたしまして、ことしは一体財形でどのくらい建てるおつもりなのか、本気でその点おっしゃってください。
  126. 鴨沢康夫

    説明員(鴨沢康夫君) 五ヵ年計画との関係で申し上げますと、五ヵ年計画とは実は先ほども申し上げましたように、財形で家をお建てになる方の相当部分、恐らくは大半に近いものが金融公庫との合わせ貸しになるというふうに私どもは考えております。したがいまして、まあ私ども予算戸数財形住宅は二万戸と一応書いてございますが、これは五ヵ年計画の数字の外になっております。つまり、住宅金融公庫戸数の中に、ダブルカウントになる数字として別掲してございます。ですから、そういう意味では、五ヵ年計画戸数の方がいい加減な数字ではないかという御指摘は、この点に関しては当たらないのではなかろうかというふうに考えております。ただ今年度、それでは二万戸という計画枠をもって、どのぐらい実績として出る見込みかというお尋ねでございますが、これは実は、私どもこの二万戸という数字を要求いたしましたのは、御存じのとおり、前年度の八月に概算要求をいたします。このときには、まだ財形融資始まった直後でございまして、実際の応募状況がどういうふうになるか、実績がどういうふうになるかというふうなことがはっきりしない時点で、一応一万五千戸という数字で、五十二年が始まった直後でございます。そのために、それをそのまま実はお認めいただいたために、こういうふうな数字になっておりますけれども、これは実際の実績としては、ただいま申し上げたように、住宅金融公庫戸数の大幅増等とあわせまして、かなり今年度よりは状態が格段に改善されるというふうなつもりでおりますけれども、本年度財形の二万戸分のうちどれだけの戸数かという推計は、ただいまのところまだいたしておりません。
  127. 渡部通子

    ○渡部通子君 非常に大ざっぱであるということだけがはっきりしたと思うのです。きょうは建設省が主体ではありませんので、この程度にとどめますけれども、やはり労働省とよくその辺も連携をとっていただいて、条件の緩和に努めていただくと同時に、建設省のサイドとしてもPRをしていただいて、せっかくできた制度であるならば育てていく方向努力を願いたいと思うんです。二万戸などというのは天文学的数字でございまして、私はせいぜい四けたいけばよろしかろうと、今年の建築も。そんな気がいたします。ですから、本当に勤労者のためになる制度としてお育てをいただきたい、これをお願いしたい。午前中ここへおいででございませんから様子はわからなかったかと思いますけれども、ずっと審議を聞いておりましても、なかなか具体的に家が建つということは困難だというのが、この制度のいまだ現時点における実情でございますから、その辺の実態掌握もきちっとお願いをしたいと思います。  労働省にお伺いをいたしますが、先ほどの、午前中の最後のお話の中で、東京近郊に一軒家を建てる具体例をお示しでございました。私はやはり財形を少し勉強してみまして、実際にこれで家は建つのかというのが一番の疑問でございます。貯金ばかりがたまっておりますし、還元融資はなかなかうまくいかない、そのうちに目減りをしてしまうというのが実際のいまの世の中の趨勢でございまして、これに対してお手当てかちびちびしておりましたんでは、家も建たず貯金はたまる、そして年々減価してしまうというような形でずるずるいってしまうんじゃないかなという不安がつのるばかりなんです。実際、家が建つのか。先ほどの森説明員のお話によりますと、二十五歳から始めて七年後に家は建つという数字をお示しになりましたね。あれはあれですか、そうすると月給、年収幾らと見ていて、そして二割の貯蓄をとおっしゃるわけですか。
  128. 森英良

    説明員森英良君) 労働省の行っております賃金構造調査がございますが、それによりまして、現在二十五歳の勤労者の平均年収が二百十八万円と、七年後三十一歳で四百二万円と、ベアが年六・九%という推計を使っているわけですが、一応そういう想定で考えておるのでございます。
  129. 渡部通子

    ○渡部通子君 年収二百十八万円といたしますと、毎月その二割を貯金しますと四十三万六千円、これを一年間に貯金をしていくということになるんですね、二十五歳から七年間。この二割という根拠はどこから出たんですか。私は実際月額にしますと十五万から十三万ぐらいの手取りで、その中から二割を貯金して七年間、二十五歳から続けるというのは非常に困難な数字だと思いますけれども、その二割という根拠はどこですか。
  130. 森英良

    説明員森英良君) わが国の平均貯蓄性向というのは、御承知のとおり大変高うございまして、現在では平均で二四、五%というのが貯蓄性向の数値になっておるわけでございます。まあやはり住宅を取得するということが、現在勤労者にとりまして相当の大事業であるという事実は否定できないところでございまして、したがいまして、もし住宅を取得を計画するとすれば、その平均に近い程度貯蓄努力をやっぱりやっていただく必要があるのではないかという考え方でございます。
  131. 渡部通子

    ○渡部通子君 総理府の貯蓄動向調査を見てみますと、二十五歳から二十九歳までの貯蓄平均額は三十五万から三十八万、そうするとやっぱり、四十三万六千円というのはかなり高額にもなるわけなんですね。二十五歳から三十二歳という年齢は、ちょうど結婚をいたしまして、子供ができたり、アパートの権利金がふえたりというような、一番またお金のかかる時期だし、かといって、奥さんか働けない時期なんですね。こういう時期にコンスタントに七年間二割を貯金する、しかも平均の貯蓄よりもかなり上回った貯金をするなどということは、私の経験から考えて、また、私を取り巻く友だちなんかの生活実態から見ても、非常にこれは私は困難な、幾ら家を建てるからといっても、それだけの努力を積み重ねる勇気に踏み切れるかといったら、結婚当初でこれはなかなかむずかしいことだと思うんです。それを、家が建つんだと御説明をなさる労働省かモデルとしてお使いになるということは、私は妥当ではない、こう考えます。  それから、今度返済の時期ですけどね、まあ三十二歳から二十五年間、五十七歳です、定年過ぎまでです。その間まあスタート時期においては年収の三割。これを返済するに当たっては問題ないと先ほど御説明がありました。しかしね、これがもし三割が、ベースアップ等があって二割になったとしても、三十二歳から五十七歳、子供の教育費に大変お金のかかる時期ですね。しかも雇用不安の時期でもあり、ベースアップが余り考えられないというような現今の社会情勢の中で、二十五年間これ、返済し続けるっていうこと、これは一体無理だとお思いになりませんか。
  132. 森英良

    説明員森英良君) 御指摘のように、いろいろ具体的な例におきましては相当にむずかしいことでもあるかと思われるわけでございますが、私も先ほどのモデルの御説明のときに申し上げましたように、これが楽々とできるプランであるということを申し上げたんではございませんで、当然、現在の状況のもとで勤労者住宅を取得することについての困難さということを前提にいたしまして、相当努力をするということであればあながち不可能な話ではない、というような含みで申し上げたつもりでございます。
  133. 渡部通子

    ○渡部通子君 私は家は建たないと、こう思ってるわけ。ところが、そちらではお建ちになるとおっしゃるわけで、そのモデルとしてお出しになったんで、しっこく聞いてるわけなんですけれども。  大臣ね、二十五歳から七年間、営々として月給の二割取られてですよ、それが終わったと思ったら、今度は定年終わる五十七歳まで、今度は三割近くを返済にずっと充てなきゃならない、一生が家の支払いですよ。しかも、それがかなりの努力を要する額と現におっしゃってもいらっしゃる。そのほかに、もしも万一家庭に病人を抱えたり、不慮の災難でもあったり、子供の数が多かったりといった場合には、もうこれで本当に首つり自殺が出てくるというのが、これが本当のいまの日本の国の勤労者の実態なわけですね。ですから、こういう数字をモデルにして、まことに雇用が安定していて、年々ベースアップもあって、子供は平均しか産まなくって、特定な事故もなくて、人生順調だという家庭で、しかも努力をして、そして建てられるという、これをモデルにして家が建ちますと、財形をどうぞと言うのは、少し説得力が無理があるのではないかと思いますが、大臣いかがですか、お聞きになって。
  134. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 渡部委員の実際の生活体験を踏まえた、現在の財形貯蓄持家住宅制度の御批判、私も聞きながら至極ごもっともな御疑問だと思うんでありますが、ただ、まあ一つのモデルとして説明員からお答えをいたしましたけれども、こういう制度をひとつ軸として、そしてまあこれから財形貯蓄持家制度が一人歩きのできるようにだんだん整備充実していくと、こういうこと以外——それなら、この制度かないのとあるのとどっちがいいかというと、私はあった方がいいと、こう思うんですね。だから、まあひとつ毎年工夫をし、いろいろやっておりますから、決してこの制度が大いに胸を張って皆さんの前で説得力のある完璧な制度ではさらさらないと、全くまだ継ぎはぎだらけであると、このように私も思います。それだけに、今後この制度充実については、財形審議会そのほかの意見も聞きながら、毎年の予算編成において関係方面とも密接な連絡をとって、御指摘の点が少しでも解消するように努力するより以外方法はないと、この程度のお答えしか私はできないと、このように思います。
  135. 渡部通子

    ○渡部通子君 私が例をしつこく申し上げましたけれども、やっぱりこれじゃ余り家が建つというようなモデルとしてお使いいただかないようにお願いしたいんです。こういうのを聞かされるとぴんと反発したくなるわけです、そううまくいくもんじゃないと、こうなりますので、これはもっとも運がよくいっての話と、こういう前提でお聞かせをいただきたい、これをお願いをしておきます。  午前中の質問とダブリも出てまいりますけれども制度の中身について多少お伺いをいたしたいと思います。  先ほどから、財政措置においては後退を認めざるを得ないと、こういうことでございますが、私は、財政措置後退を認めたというんでは制度の中身の前進にはならないんではなかろうか。確かに、世の中か厳しい財政状況にあるということはわかりますけれども、だからこそこういった制度に対しては予算の重点配分、これをしていただきたい。これを前提としてお願いをしたいと思うんです。特に、公共事業という政府の大変な政策の上から見ても、それから労働者の一番の希望という点から見ても、住宅ということは大事な問題でございますので、大臣おっしゃるように、ないよりはそれはあった方がいいに決まっているんですから、それを少しでも財政面で後退をしないという、そこに何とか焦点を当ててもらえないかと、こういう願望を込めての質問でございます。  ダブりますが、退職後の非課税措置の延長について、これはやはり何とか財形貯蓄の有資格者に対しては、退職後においても貯蓄残高に対する税制上の恩典、これを継続すべきではないかと思いますが、重ねての御質問になりますが、いかがでございますか。
  136. 森英良

    説明員森英良君) 先生の御意見と全く同じ気持ちで、労働省といたしましては一応予算要求、是正要求をいたしまして、いろいろ政府部内で関係方面と折衝されたわけでございますが、先ほどから何度も御答弁申し上げておりますように、非常に厳しい財政環境の中で、なかなか減税措置拡大を図ることがむずかしかったということございまして、また、特に最近の景気状況の点から、貯蓄の奨励ももちろん結構でございますが、同時に、現時点について言いますと、むしろ国内の消費需要の喚起ということが景気政策的にもきわめて重要な課題になっておるような状況でもございまして、その他いろいろございまして、どうも貯蓄関係の税制面の諸要求は、いずれも私どもとしましてはもう十分言うべきことを言ったつもりではありますけれども、結果的に今回につきましては断念せざるを得なかったという状況でございます。
  137. 渡部通子

    ○渡部通子君 非課税限度額引き上げの問題でございますか、先ほど他のマル優とのバランスを壊してしまうからというような御答弁もあったようでございますけれども、私は、むしろこういう勤労者が自主努力によって長期貯蓄をする、それを奨励、助長するという見地に立てば、多少他のマル優とのバランスを壊してもこの持家制度財形制度の大きな柱となりますこの非課税限度額引き上げ、これ何とか五百万からもう少し七百万なりあるいは八百万なりに引き上げることができないかどうか、いかがでしょうか。
  138. 森英良

    説明員森英良君) この点も全く同じ趣旨で要求をいたしましたわけでございまして、委曲を尽くして主張はしたつもりでございますが、どうも何度も繰り返すようで恐縮でございますけれども、先ほどのような事情ございましてこれも撤回せざるを得なかったと。ただ、財形貯蓄、最初はマル優がたしか百五十万の利子非課税額のときに百万で発足いたしまして、前回の改正でこれを一挙に五百万に引き上げたわけでございます。その趣旨としましては、やはり現在の状況で、仮に持家取得の頭金ということになりますと五百万程度貯蓄財形貯蓄として利子非課税でやれるというところまで持っていくべきじゃないかということで五百万にいたしまして、そのときにマル優は三百万に上がりました。百五十万対百万が三百万対五百万ということで大きく逆転しておるわけでございます。現在そういう引き上げの要請もございますけれども、平均的に見ますと、先ほどの御質問にもございましたが、財形貯蓄者のそれぞれの貯蓄残高はまだまだ低うございまして、大部分が五百万の枠に張りついてどうにもならないというところまでいっておりませんので、とりあえずの状況としては五百万でも十分やっていけるんじゃなかろうか。しかし、これは長い将来につきましては当然状況に応じましてまた再検討すべき問題ではあろうというように考えております。
  139. 渡部通子

    ○渡部通子君 財形住宅貯蓄控除制度の問題ですけれども、これが住宅貯蓄契約契約した者にだけ偏っている。これはちょっと片手落ちではなかろうかと思うんです。そこで、財形貯蓄を行っている者には、仮に加入の目的住宅取得でなくても、自動的に契約と同等の恩典を受けられるように改善すべきが本当ではないでしょうか。また、その控除額も現行制度よりも拡大すべきではないかと思われますが、いかがでございますか。
  140. 森英良

    説明員森英良君) 現行制度におきましては、一般の貯蓄に比べまして、やはり住宅取得のための貯蓄という点で、住宅取得そのもののむずかしさからくる点を考慮いたしまして、一般の貯蓄には認めていない税額控除という恩典を予定しまして、さらに財形住宅貯蓄の場合にはその控除率を引き上げるという措置をとっているわけでございまして、そこに一般の貯蓄住宅貯蓄とのやはり違いというものを一応考慮いたしまして現在のような制度になっているわけでございます。しかしながら、財形貯蓄全体につきましていまのような利子非課税というような恩典を超えまして、もっと積極的な援助をすべきじゃないかという御議論は、これはもう財形審議会でもきわめて強く出ている御意見でございまして、私どももそれなりに今後検討しなきゃならない点だと思っておりますが、今回の改正につきましては、実はこの財形貯蓄そのものにプレミアムを支給しようというような点につきましては、前回の改正の際にこれを最重点にとらえましていろいろやったわけでございますけれども、当時一兆円減税が二兆円減税になるというような財政状況の中で、なおかついろいろまだ検討すべき問題ございまして実現いたしておりません。したがいまして、今回はもう全く財政状況百八十度違うわけでございますので、今回はあらかじめ財形審議会におきましても御了承を得まして、プレミアムというふうな、あるいはプレミアムと同じような効果を持ちます財形貯蓄全体についての税額控除というような要求はもともといたさなかったわけでございます。
  141. 渡部通子

    ○渡部通子君 次に、現行制度で、財形給付金の受益者は事業主拠出以前一年間、これを通じて貯金をしているということが要件になっておりますけれども拠出時点で一定の残高を保有しておればいいんだと、こういうことにはならないものでしょうか。
  142. 森英良

    説明員森英良君) それも労働省要求事項でございまして、まことにお答えしにくいわけでございますが、給付金制度あるいは基金制度の普及のために、一年を通じて財形貯蓄残高を有しておると、一年以上財形貯蓄をやっているというところまで要求する必要はないんじゃなかろうか。実際拠出時点で財形貯蓄をやっておれば十分じゃなかろうかということで要求をしたわけでございますけれども、これもやはり財形制度の本旨から考えまして、みずからの努力ということを前提にして、それに国と事業主援助していくというのが本来の財形の趣旨じゃなかったかという意見もありまして、その点、財形政策基本的な面にかかわる面もございますので、今回は現行どおりということで終わったわけでございますが、この点は私どももなおいろいろ検討すべき点を感じておりますので、今後さらに引き続いて検討していきたいというふうに考えております。
  143. 渡部通子

    ○渡部通子君 どうも大蔵省の問題が多いようですが、ひとつがんばって予算を獲得していただきたいと思うわけです。事業主勤労者のために拠出する給付金額、これは一人当たり年間十万円という限度額ですけれども、これはいろいろ企業も大変だとは思いますけれども、これを特に家をつくるためということで二十万円程度引き上げるというような施策はいかがでしょうか。
  144. 森英良

    説明員森英良君) その点も、企業の中にはこういうことを本格的に取り組もうとすれば、ちょっと一人当たり十万円の枠というのは小さ過ぎる、もうちょっと広げてほしいというような御意見も一部にございまして、それを踏まえまして今回の制度改善のための予算要求、低成長の中で引き上げについても検討したわけでございますが、やはり税制上の優遇拡大それ自体のむずかしさに加えまして、何分にもまだ実際にやっております給付金状況がとても十万円などという額には至っていないわけでございます。それでも二、三万程度が多いんでございますが、これもしかし財形貯蓄の利回り拡大という点では十分意味があるわけでございます。いずれにしましても、まだ十万円に張りつくような状況でございませんので、いまどうしてもやらなければならないというほどの緊急性は認められませんものでございますから、この際は割愛したわけでございます。
  145. 渡部通子

    ○渡部通子君 中小企業の助成金の問題ですが、現行制度では中小企業財形助成金の支給額は小規模の場合が一〇%ですね。それから中規模になると五%。これですが、何とかもう少し小規模企業で三〇%、中規模企業で一五%くらい——一々お聞きするようですけれども、これもだめですか。
  146. 森英良

    説明員森英良君) 財政状況一般の厳しさを背景にいたしまして、特にこの補助金の引き上げにつきましては一律に非常に厳しい原則がありまして、そのもとで予算編成が行われたわけでございます。その中で何分にも百人以下の企業にしかこういうものが出ないということはいささか中途半端でございまして、やはり中小企業財形助成金と称するからには、通常言われますところの中小企業の範囲——三百人以下、全面的に及ぼすことがまず先であろうというふうに考えまして、今回は特に現在は支給されておりません百人以上三百人以下の企業に対しましても三%の助成金を支給するということを一応実現いたしました。したがって、助成率の引き上げ要求いたしておりましたが、この点については今回はとりあえず割愛せざるを得なかったという状況でございます。
  147. 渡部通子

    ○渡部通子君 いままで財政事情ということでずっと御答弁を伺ってまいりましたけれども、要するに財政的には前進どころかなかなか改善はできないというのが現実だろうと思います。ですから、大臣の午前中の御答弁にもあったように、むしろ制度発足したものの大変困ったというような状況にあるというのが、全くそのような認識だと私も改めて思います。何とかしなけりゃならない、ずっといままで答弁伺っていると、労働省予算獲得能力を伺っているような質問になってしまいましたけれども、ともかくこういう時代だから何もできないと言ってしまえば終わりでございまして、こういう時代だからやらなきゃならないことと、後回しにしていいことということを選別をしていただいて、冒頭に申し上げましたように、この制度のもう少し借りやすくしていただけるように善処をお願いしたいと思います。  もう少し伺いますが、現行持家融資はあくまでも融資を受けた者の一代に限っての返済、こういうことになっておりますが、これ、何とか次の世代に返済がわたってもいいと、こういうふうにお願いできませんでしょうか。非常にこれ、長い期間借りられるというのはありがたいんですけれども、これではかなり年いってから借りるわけにはいかないということになるわけでございまして、この返済が二代——三代とまでは言いませんけれども、これは困難であるならば困難であるという日本状況についても御説明ください。
  148. 森英良

    説明員森英良君) 御指摘のような御意見は、私どもたびたび伺っておりまして、確かに償還期間を長くするということはできれば非常にいいことかと思うのでございますが、何分にもこれはむしろすべての公的融資に共通の問題でございまして、なかなか他の既存のいろいろな融資制度においてそういうことが何も行われていない中で、財形融資についてだけ特にそういう措置を講ずるということは非常にむずかしいのではなかろうかというふうに感じます。  なお、財形持家融資の返済を行っていた勤労者が死亡した場合には、事業主は相続人に対してその返済を継続させるか、または繰り上げ償還を行うことになっておるわけでございますが、そのような措置を講ずることが困難である場合、すなわち事業主が相続人に対してその返済の継続を認めないとか、あるいは相続人が事業主に対して繰り上げ償還を行うことが困難なときにおきましては、雇用促進事業団が旧事業主の債務を死亡した勤労者の相続人に承継させまして、そうして相続人からの返済を可能にするというような措置も講じてまいりたいというふうに考えております。
  149. 渡部通子

    ○渡部通子君 これは局長か大臣に伺っておきますが、先ほどから問題出てまいりまして、私もお金が借りられない、借りられないというか、家が建たない一番ネックになるものは、個人融資の二倍——今度は三倍にするということですけれども、そこがネックになっていると思うんです。ですから積み立てはある程度しても、これがもし五倍六倍借りられれば、むしろ限度額千五百万などと言わなくてよろしいですから、この借りられるこの三倍というのをせめて五倍か六倍にしていただけることの方がありがたい処置ではないかと思うのです。ですからその点、何とかならないかという点と、それから積んでいる間にどうしてもインフレヘッジという問題が出てまいりますが、それに対する何か国でお手当てを考えていただけるかどうか、この二点が大きなネックだと思いますが、いかがでしょうか。
  150. 桑原敬一

    政府委員桑原敬一君) 貸付残高の二倍の現行を三倍にするか五倍にするかというのは、私ども大分議論をいたしまして、五倍という線も一時いろいろと折衝いたした経緯はございます。問題は、この財形住宅融資というものがやはり一つ制度でございますから、一つの成熟した形でどうするかということは、やっぱり十分に見ておかなければいけないのではないかと思います。いま残高が三十万だから、十倍貸したらいいじゃないかということがあるかとも思いますけれども、ある一定の段階に成熟してまいりますと、たくさんな融資残高になってまいります。その場合に十倍貸せば、やっぱり一人で十倍借りるわけでございますから、あと、その十人のうち九人は非常に借りにくいという問題も出てまいりますので、残高をどうするかというのはきわめて制度基本に関する問題でございます。それで、私どもといたしましては、今回はとりあえず三倍に一応割り切りましてやったわけでございます。先ほどもおしかりいただきましたけれども、モデル計算をどうするかという問題ございますが、非常に理想的な形でそれは実態、合っていないのではないかという御議論ございますけれども、もう少し私どももそういった現実にできるだけ合ったモデル計算をしながら、残高をどうするか、あるいは貸し付け、預金をどうするかというふうな工夫はこれからもやっていかなきゃならない問題だと思っています。  それから、インフレに対する目減りの問題でございますが、これも財形貯蓄だけの問題でございませんで、政府全体の問題でございますし、私ども基本は、こういう財産をつくっていく場合に、インフレというのは一番最大の敵であると思っておりますし、そういった物価の抑制というのは政治の基本ではないかと思います。幸いに最近は物価も鎮静化しておりますが、政府全体の中でこういう問題は議論を詰めていかなきゃならぬと思っております。ただ、私ども財形といたしましては、そうは言っても財形の中で何か方法ないもんだろうかということで研究いたしておりますが、たとえば給付金制度とかあるいは今度基金制度事業主援助をいたしますが、そういったものも一つのややもすると目減りする財産に対する一つの付加給付的な形として私ども考えておりますし、そういった面での今後の充実も図っていかなきゃならぬと、こういうふうに思っております。
  151. 渡部通子

    ○渡部通子君 基金について若干伺います。基金設立の原則ということですが、まあ一は「一の事業主の全部又は一部の事業場について設立することができる。」二番目に、「二以上の事業主が政令で定める関係にある場合には、基金は、」「当該二以上の事業主の全部又は一部の事業場について設立することができる。」こうありますけれども、この二の場合の中に業種別、地域別で多数の事業主基金を設立する場合、こういったものが含まれるかどうか、含まれないとするならばその理由とそういったものの救済方法があるかどうかをお示しください。
  152. 森英良

    説明員森英良君) 政令で定める関係につきましては、同一資本系列でございますとか元請、下請というふうな密接な関係等も考えておりますが、やはり御指摘のように中小企業もできるだけ基金をつくりたいという場合にはつくれるように措置する必要があると考えますので、御指摘のような地域別、業種別の中小企業が集まって共同でつくるという道も開きたいというふうに考えております。
  153. 渡部通子

    ○渡部通子君 今回の法改正の中に、労働保険特別会計法の四条が改正されて、労災勘定から雇用促進事業団への交付金を出すようにしてございます。労災保険は法律上労働福祉事業を行うことができるように法はなってはおりますけれども、その福祉事業の範囲は当然労災に関係のあるものになるのではないかと私は思うんですが、一般的な財産形成のための事業に支出するのは筋違いではなかろうかと思いますが。
  154. 森英良

    説明員森英良君) 労災保険法につきましては、五十一年の改正によりましてそれまでの保険施設の規定が整備されまして、労働福祉事業という形でいろいろな付帯的な事業を行うことができるようになりまして、それについて費用支弁もできるということになったわけでございます。その労働福祉事業の内容といたしましては、もちろん労働災害に関連いたします災害の予防の問題でありますとか、あるいは補償後の勤労者のリハビリテーションの問題でありますとか、安全衛生関係あるいは補償に対する付加給付的なものもできるわけでございますが、同時に労働条件の適正な確保のために必要な事業というものも入っておりまして、一つには例の倒産の場合の不払い賃金の立てかえ事業でございますとかいうものをすでにやっておりますし、まあそのほか適正な労働条件の確保のための必要な事業も行えると。財形制度と申しますのは、これは要するに一種の労使関係制度でございまして、財形貯蓄にせよ給付金制度あるいは基金制度にせよ、あるいは財形持家制度にせよ、いずれも労使間においてそういう制度を行うということが約定されて初めて実際に働き出すわけでございます。その意味におきましては広い意味の労働条件の一環をなすものでございますので、法律が特に推進を予定しております財形関係の事業につきましても、この労働福祉事業の一環といたしまして、労災保険から出すことも十分趣旨にかなっておるというふうに考えまして、今回そういう措置をとったわけでございます。
  155. 渡部通子

    ○渡部通子君 福祉事業という範囲を拡大解釈すれば何でもできないことはないとは思うんですけれども、一般会計の方が、予算勤労者財産形成促進制度改善予算を見ると全体では増額はされていますが、一般会計予算は一億一千八百万円から二千四百万円減少しているわけなんですね。私はこういう財産形成政策というものは、福祉事業というよりも労働省の一般政策として扱うのが妥当ではないか、そっちの方が筋ではなかろうか。こっちにお金があるから労災勘定から出しておこうというような安易な政策をとったとは申し上げませんけれども、先ほどからおっしゃっていらっしゃるようになかなか予算がとれない。こうなってみると、そっちを補う方に使われたのではないかと。私は労働者のために使われるんですから、どこから出そうとそれは結構ですけれども、やはり筋として、こういったものには一般会計からきちっと予算を増額して出すのがむしろ本当ではなかろうかと思いますが、いかがですか。
  156. 森英良

    説明員森英良君) おっしゃるとおり財形制度に伴います予算上の支出といたしましては、大部分が労働保険特会から出ておりまして、一般会計からの支弁はもともと少のうございます。特に、昨年度に比べて一億何がし減少ということになりましたのは、これは大分以前に一応限度五億円まで一般会計から雇用促進事業団に出資をするということになっておりまして、毎年大体一億ぐらいずつ出資がついてきたわけでございますが、これが昨年度で一応五億に達しまして、これを原資助成金等の支給の所要費用の一部に充てるということになっているわけでございまして、その出資の終了と同時に若干減ったわけでございまして、それ以外の減少ではございません。  ただ、予算面では、歳出面ではおっしゃるとおり労働保険特会の出資が、支弁が多いんでございますか、財形制度で一番金がかかっていると申しますか、国が費用を負担しておりますのは、実は財形貯蓄に対する利子と、非課税でありますとか、財形住宅貯蓄に対する税額控除というような形で、大宗は税制上の措置によって行われておるわけでございまして、これは減税でございますから的確な数字じゃございませんが、いろいろ推定を設けて推計をしてみますと、すでに五十三年度でも数百億の国の一般財源の負担においてそういう措置がとられておるわけでありまして、これは減税という形でございますが、資金の性格は予算上の一般会計の支弁と全く同じ性質のものでございます。したがいまして、数百億に対する七億何がしの金につきまして特別会計に支弁をしてもらっておるのでありますが、金額の関係から申しまして、あながち不当とも言えないのじゃないかというふうに考えております。
  157. 渡部通子

    ○渡部通子君 やはり、労災保険というものは、特定の目的があって集められたお金ですから、第一には保険給付、第二には保険給付の付帯の事業、こう限るのが私は筋だと思います。やりたい事業があるから、お金があるからそっちへということが感じられないでもないですし、そういった意味でなかなか労働者が予算獲得ができないからというようなことで、安易な考えかちらっとでも入ったとしたら、やはり一線を崩すということはまずいんではないか、これを申し上げておきたいと思います。  それから、審議会諮問していらっしゃらないと思うんですが、その点も抜かりではなかったろうか、これはつけ加えさせていただきます。簡潔に答弁してくださいね、時間がなくなりますから。
  158. 森英良

    説明員森英良君) この労災保険からの支弁につきましては、労災保険審議会諮問をいたしまして、審議会の御了承を得ているわけでございます。ただ御指摘のように、こういう形でやたらに何にでも金が出るということになっては困るという御意向は非常に強くございまして、したがいまして、この労働福祉事業の今後の取り扱いにつきましては、審議会においていろいろ研究していただくということになっておるわけでございます。
  159. 渡部通子

    ○渡部通子君 最後に、事業協同組合について一点伺っておきたいと思います。  なかなか持ち家をつくることが不可能であるという現実の状況の中におきまして、多少でも家をつくっていくためには、やはり個人ではなかなかこれはできない。したがって、事業協同組合を活用するしかないと思うし、もっとこれを有利に活用させてあげることがやはり持ち家の促進につながると思いますけれども、こういう事業協同組合の今後のあり方、方針等についての御所見がまずございましたら、局長なり大臣なり伺わせてください。
  160. 桑原敬一

    政府委員桑原敬一君) こういった住宅分譲その他、こういった持ち家の促進につきましては、確かに中小企業個々の力ではなかなかむずかしいという面がございます。私どもも、この協同組合の認可そのものにつきましては通産省の所管でございますが、通産省とよく連携をとりながらやはりこういった事業協同組合を中心にした持ち家の促進が一番望ましいんではないかということで進めております。現実にはやはりこういった持ち家の促進の大部分はこういった協同組合中心で行われております。
  161. 渡部通子

    ○渡部通子君 そこで、財形融資の資格者は昭和五十四年四月以降財形貯蓄実績三年と、こうなるそうですね。しかし、現在は暫定措置として実績一年間、こういう資格条件として認められているわけです。財形制度の趣旨と現実の中小企業における普及状態を考えてみますと、この一年という暫定措置をもうしばらく延長していただくことが実情に合っているんではないかと私は思いますが、この点ぜひお願いできないでしょうか。
  162. 森英良

    説明員森英良君) 分譲融資融資を受けます要件といたしましては、法律上三年以上財形貯蓄をやっておるということになっておりまして、ただ制度発足早々の間はとても三年に達するまでなかなか実際上動きませんので、暫定措置といたしまして一応一年で足りるということになっておったわけでございますが、その後五十年の財形法改正によりまして、新しく財形貯蓄の範囲が拡大されまして、生命保険、郵便貯金というものが入ってまいりました。  そこで、こういう新種の財形貯蓄を五十年の段階から始めた方につきましては、ちょうど制定当時のほかの財形貯蓄貯蓄者と同じような条件がございますので、さらに期間を延長いたしまして一年で足りるような取り扱いを続けてまいったわけでございます。そして、来年の三月一日でその取り扱いが切れるわけでございますが、来年の三月三十一日になりますと、もう融資を始めましてから五年半を経過する状況になりますし、また、五十年の生命保険等の新しい財形貯蓄を始めた方々も三年を超える状況になりますので、そうなりました場合にはもともと還元融資でございますので、三年程度貯蓄実績をもってそこで恩典を受けるということが一応筋であろうかと思われますので、これをさらに延長するということは三度目の延長になるわけでございますが、考えていないわけでございます。
  163. 渡部通子

    ○渡部通子君 考えていないということですけれども、実態からいくと、まだ財形などというのはまだまだ知られていない。これは初めて知って、入ってそれで何とか家が建てられるものならばという話をいまこう広がっている途中でございますので、これできないという結論のようですけれども、その点もう一度検討をお願いしたいということを重ねて申し上げさしていただきます。  それから、事業協同組合ですけれども、これは利益取得部門がほかにございませんので、非常に活動費等に困っている状態でございます。ですから、水増し融資などということも一部起こったようでございますけれども、現在の融資事務取扱費三%、これを何とかもう少し見直していただいて、この制度充実拡充のために、一%でも多少なりともこれを上げていただくというわけにはいかないでしょうか。
  164. 森英良

    説明員森英良君) 特に、中小零細企業に使用されております勤労者持家融資を及ぼしますためには、どうしても協同組合方式によることが必要でございまして、したがって、これの健全かつ適正な発展ということにつきましては、私ども大きな関心を持っております。そういう意味でなお制度が新しいものでございますから若干の問題も生じておりますが、そういう点につきましてはさらに厳正な指導をいたしますと同時に、これについてのいろんな他の御指摘のような面につきましては、これからよく協同組合の実態を掌握いたしまして、その上に立って今後大いに検討いたしたいというふうに考えております。
  165. 渡部通子

    ○渡部通子君 それから、事業団からの融資の利率の問題ですけれども、大体大企業関係で八%、それから中小企業関係で七・五%、勤住協で五・五%、これが七%、六・五%、それから五・五%と、こういう下がったということでございますが、これ中小企業関係の扱いも勤住協並みの五・五%にならないものか。それから、なぜ大企業、中小企業関係が下がったときに勤住協だけが五・五%の据え置きであったのか、その辺はいかがでしょうか。
  166. 森英良

    説明員森英良君) 五・五%と申しますのは、住金の一般貸付の金利と同じでございまして、勤住協の行います分譲はこれは勤労者個人相手でございますので、そういう点も考慮して同列の扱いをしておるわけでございますが、他の事業主に対する融資といたしましては、これは年金保険等の還元融資におきましても同じような利率になっておりまして、若干その点個々の勤労者に対する場合と扱いが違っておるというのが全体の公的融資制度状況でございますので、これを簡単に中小企業の場合五・五にまで持っていくということはちょっとむずかしいのではなかろうかというふうに思います。  なお、ほかの融資が下がりました場合に五・五%だけが据え置きになったという点でございますが、この五・五%と申しますのはわが国の公的融資の中で最優遇金利でございまして、もともとがきわめて優遇されておりますので、これについては据え置かれたものと理解しております。
  167. 渡部通子

    ○渡部通子君 私はこれで質問を終わりますけれども一つは非常に理解しにくいというややこしいというような印象が一般にも非常に強うございます。私はこの財形貯蓄、確かに貯蓄するだけになっちゃ困るんですけれども、それだけでも勤労者にとっては非常にいいことだと思いますので、ひとつPR方をお願いしたいと思うんですけれども伸びない一つの原因もやっぱりこれは知らないということが大きな原因。それから一つはややこしいということにあると思うんです。これを何とかもう少しわかりやすくして、一般の方たちにお示しいただけるように、この特段の配慮をしていただきたいと思うんですが、この辺を労働大臣から伺って終わりにさせていただきます。
  168. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘の点は、この法律が改正されまして施行ということになりますと、私もぜひわかりやすいパンフレット、こういったものをつくって利用者の便に供したいと、そしてまた逐年御指摘のような問題点を改善をしていくと、こういうことを両々相まって努力いたしたいと思います。
  169. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 まず第一に、個人持家融資制度の問題からお伺いしていきたいと思います。  財形貯蓄一つのねらいは個人持家促進するということにあると思います。そして分譲融資というのは制度発足当時から推進されてきております。いま労働者、働く者は生活を守るために必死になっております。そして、資産を残すというよりも、むしろ収入の中で大きな割合を占める住宅費に苦しめられて、持ち家を何としても持ちたいというような点で努力は大変なものでございます。そういうことから考えると、いまや財産形成などというものにはほど遠いという現状をまず最初に認識をしっかりさせていかなければならないと思います。その上、加えまして不況が深刻でございますし、とりわけ中小零細企業には大きな打撃をもたらしております。中小零細企業というもののよって立つ基盤というのは、非常に脆弱で、福利厚生施設とか制度の貧困というようなことを考えますと、これも中小零細企業の立場を十分に考えていろいろと御検討いただきたいと思います。これが現状の認識という点で、これがしっかりしていませんと、これからの今後の方針にとって問題が残されると思いますので、まずその点をしっかり認識するために、大企業と中小企業とを比較して一体どうなっているのかという点をまず明らかにしていきたいと思います。  五十一年度の労働者福祉施設、制度調査報告というのがせんだって出されました。これを見ますと、持家援助に関する制度を実施しているというのを企業別で見てみますと、五千人以上で九八・七%が何らかの実施をしている。千人から四千九百九十九人、八七・五%、百人から二百九十九人までが三二・七%、三十人から九十九人、これはわずかに一二・八%でございます。また、住宅資金融資制度ではどうなっているかということを見てみますと、これも五千人以上ですと九八・三%、以下三十人から九十九というところに飛びますと、これも一一・八%になっております。  それからまた、融資限度額というのがどうなっているか。住宅資金、社内融資のみで考えてみましても、これまた五千人以上は一千十五万円、小さい三十人から九十九人までのところは二百七十一万円にしかすぎません。また、金利はどうなっているかと見ますと、これまた五千人以上は金利四・九%と非常に低うございます。三十人から九十九人までは五・三%というように、このおたくで調査されました資料というものを見ても非常に格差が大きいわけです。残念ながらここの調査では三十人以下の企業というものについては出されておりません。というところで、三十人以下というものがどうなっているかということを考えてみれば、これ以上に大変劣悪な状態にあるということは想像にかたくないと思います。  これにあらわれました大企業五千人以上と三百人以下の中小と非常に格差が歴然としている。この事実について労働省としてはどういうふうな考えを持って見ていらっしゃるか、まずその点をお伺いしたいと思います。
  170. 森英良

    説明員森英良君) 先生御指摘のように、わが国の大企業と中小企業、さらにその下の零細企業、規模別に見まして、賃金はもとより、労働時間の面におきましても、さらに労働条件、一般福利厚生関係、いずれの面におきましても、大企業においては非常に恵まれておりますのに対しまして、規模が小さくなるほど一般的に劣っておるということは全くそのとおりでございまして、わが国の雇用構造の一つの問題点であるわけでございますが、そういう中で財形制度は、これは財形貯蓄も、また給付金制度も、また財形持家制度も、いずれも中小、特に中小の中でも小さい規模のところから普及しておりまして、その面では、これまで大企業だけが実施可能であったような福祉制度につきまして、中小零細の方にもその可能性を広げていく機能を果たしておるというふうに理解しておるわけでございます。
  171. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 確かにそういうふうになっていると思います。そういうふうになっているというのは、非常にこの格差がひどくて、そして、それでこの財形期待をし、そして、それで助けてもらいたいという立場の中小の立場を示していると思うわけですね。そうしますと、この財形貯蓄というものは中小が本当に助かるような、そういう立場でのいろいろな施策が講じられなければならないと、そう思うわけなんです。  そこで、お伺いしたいのですけれども、個人持家融資制度というのがございますが、この制度では、一%事業主が利子補給をしなければ、当該事業主勤労者融資を受けられないということになっておりますね。そういたしますと、同じように財形貯蓄というものをやっていながら、企業が資金力があって一%の事業主の利子補給ができるところはそれを受けられるけれども、その一%事業主が利子補給ができないというようなところでは、実際にこの制度で活用することができないというようなことは、実質的な不公平さということになるのではないかと、そう思うのですけれども、いかがお考えでいらっしゃいますか。
  172. 森英良

    説明員森英良君) 財形政策の本旨が、勤労者の自主的な努力を踏まえまして、それに対して国と事業主がそれぞれにできるだけの援助をいたしましてその財産形成促進するというところにあるわけでございまして、この本旨を踏まえまして持家融資制度につきましても、分譲の場合、あるいは個人融資の場合、いずれにおきましても国もそれなりの負担を持って、できるだけ有利な資金をつくるようにやっておるわけでございますが、同時に、事業主にも御指摘のような負担軽減措置をやることを義務づけておるわけでございます。この制度の趣旨はそういうことなんでございますが、確かにこのように景気悪くなってまいりまして、企業の環境が厳しくなってまいりますと、かえって、特に小零細企業の場合に、そういう負担軽減措置の義務づけ自体が制度普及のネックになりまして、結果としては比較的有利な条件融資を従業員が受けられないという問題も確かに私ども感じておるわけでございます。  そこで、今後でございますが、何分にも制度の本質からくるというつもりでやった措置でございますので、それなりにやはり慎重な検討をする必要ございますので、この点はさらに財形審議会で引き続きいろいろ御議論いただきまして、そういうことを踏まえながらさらに検討させていただきたいというふうに考えております。
  173. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 財形発足以来の持家分譲融資においては、金利を企業に対して格差をつけて実施していらっしゃいますね。大企業の場合には七%、中小の場合には六・五%、個人融資との違いというのは、事業主がみずから住宅を建てるか、それとも事業主が建てないかというところに違いがあるわけでございますね。そういたしますと、そこだけが違いで、勤労者の立場からすれば、家を建てる、自分の家を持つということについては同じ立場になるわけでございましょう。そうすると、個人融資の一%条項というのはどう考えてもこれは制度的に不公平だというふうに言わざるを得ないと思うのですけれども、その点はもうお認めになっていらっしゃるわけでしょうか。
  174. 森英良

    説明員森英良君) 財形持家融資制度におきましても、最初からありましたのは財形持家分譲融資でございまして、これは事業主雇用促進事業団から金を借りまして、そうして住宅建設する、あるいは取得いたしまして従業員に分けてやるという制度でございまして、事業の主体は事業主になっているわけでございます。  そこで、企業のそういう事業を行います場合の負担能力を考えまして、金利につきましても、大企業は高目に、中小企業では低目に措置をとったわけでございまして、同時に負担軽減措置につきましても、大企業には多目に、中小企業には少な目にいたしまして、結果的には勤労者には大体同じような金利で分譲を受けられるというところを一応基本的にはねらっているわけでございますが、一方、個人融資の方は、この分譲融資の普及状況も考えまして、より広く財形貯蓄原資融資拡大しますために、新しく五十二年度から行っているわけでございますが、これは個人融資でございますので、その場合には大企業の従業員であるか中小企業の従業員であるかという考え方は若干問題ございまして、あるいはその所得の段階に応じて金利差を設けるというようなことも政策論としてはあり得るかと思うんでございますけれども、そういう個人融資につきましては他の公的融資も一切そういうことをやっておりませんで、全く同じ金利で貸しておるわけでございます。中金の一般貸し付けもそうでございます。そういう意味で、個人融資の場合には大企業労働者か中小企業労働者かというような面についての金利差は設けなかったということでございます。
  175. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いろいろ御見解を伺ったわけですけれども、私がここで言いたいのは、財形貯蓄という制度勤労者は乗っているわけですよね。それが事業主が一%の利子補給できるかできないかということによって差別が出てきてしまうと、結果的には。ということは、制度的に見てやっぱりこれは一つの不公平と言えるのではないかというのが私の考えなんですね。それはそう言わざるを得ないんじゃないですか、重ねて。
  176. 森英良

    説明員森英良君) 個人融資の場合の負担軽減措置は、分譲の場合と違いまして、一%と申しますけれども融資額三百万円が限度でございますので年間三万円、最大限度三万円、五年間で十五万円と、融資額が小さくなればもっと小さいわけでございまして、かなり分譲の場合よりは一般的に軽減するような形をとっているわけでございます。それで、本当にやる気になれば相当広範な規模においてその程度の負担はできるのではないかというふうにも思いますが、しかし、御指摘のようにごく一部におきましてはかえってそれが阻害要因になるということも考えられますので、この点は先ほど申し上げましたように、今後の検討課題として財形審議会等においても御議論いただきまして、引き続き検討させていただきたいということでございます。
  177. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 ぜひ御検討いただきたいと思います。一%がいまおっしゃったような年間たとえ三万円ということでありましても、今日の不況の状態から見ますと、零細企業にとっては結構相当な負担ということは事実だと思います。金額も問題なんですけれども、やっぱりさっきも言ったように制度的に不公平だという点で御検討いただきたいわけです。まして、さきの労働省調査によっても明らかになっておりますけれども、厳然として大企業と中小との間の格差が大きいということを頭に入れていただけば、このことはもっと真剣に受け取っていただけると、こう確信しているわけでございます。  さらに大事なことは、住宅資金融資について社内融資のみの企業が、規模が小さくなるに従って多くなっているという事実がございます。三十人から九十九人の企業で他の融資住宅ローンなどを組み合わせている企業は八・八%にしかすぎない。つまり、民間の住宅ローンや年金転貸にしても、資金能力、担保能力がないために社内に頼らざるを得ないというのが現実でございます。その社内融資も、先ほど挙げた数字で明らかになりましたように、中小零細企業の勤労者は非常に苦労な立場に立たされていると思うわけです。そういう本当に困っている勤労者、そして大変不況の中で苦しんでいる中小零細企業という立場から考えてみると、一体こういうところの勤労者はどこに援助を求めたらよいのか。やっぱりここにこそ公的機関が手を伸べる最大の理由があると、私はそのことをまた再び強調せざるを得ないわけなんです。その点についてまた御見解を伺いたいと思います。
  178. 森英良

    説明員森英良君) 御指摘のようにいろんな企業がございまして、その中で小零細企業、一番苦しいところほど勤労者状況もいろいろ問題ございまして、その辺にいろんな政策の一つの重点を置くべきであるという御指摘につきましては私ども全く賛成でございまして、今後の財形政策につきましても、そういう観点を踏まえてできる限りの改善を図ってまいりたいというふうに考えております。
  179. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 その辺のところが問題だということについて検討したいというお答えでございますので、もうこれ以上詰めることはやめますけれども、やっぱりこの一%というものが一体どこが負担をして、そして同じ財形に入っている労働者たちがこの恩典に浴されるようにするのにはどうしたらよいかという点について、ぜひとも具体的に御検討急いでお願いをしたいと思います。  次に、第二番目の問題についてお伺いしたいんですけれども、この財形貯蓄を一生懸命やっておりましても目減りが出てくるということが、これは非常に具体的でかつ深刻な問題になろうかと思います。今日の物価高の折から、財形貯蓄の目減りというのが非常にみんなの頭を悩ましておりますけれども、普通の貯蓄とこれは違うと思うのです。いわば政策貯蓄というふうに考えていいと思いますから、そういうふうな政策貯蓄はその目減りを直接的に回復させるということはなかなか無理だとおっしゃるかもしれませんけれども、そういう無理だというお答えではなくて、こういう政策的な立場での貯蓄に対しては何らかの対策を立てられていいと思うんですけれども、どの程度の目減りが予想されるとお考えになっていらっしゃるか、まずその点をお伺いしたいと思います。
  180. 森英良

    説明員森英良君) 物価上昇による貯蓄の目減りという問題は、確かに一つの大きな問題でございまして、財形貯蓄もある意味でそういう問題の渦中にあるわけでございまして、ただ実際にどのような目減りしておるかという点につきましては、これは貯蓄の開始時期、それから貯蓄形態等々によりましてそれぞれ違うわけでございまして一概に言えないわけでございますが、仮に財形貯蓄制度ができましたときに貯蓄を始めまして、そのままずっときておるということになりますと、これはやはり例の狂乱物価時代の影響が大きく響いておりまして、目減りは、大まかな試算でございますが、財形貯蓄につきましても年平均一・七%ぐらいになるのではないかというような感じでございます。ただし、最近におきましては消費者物価も上昇率が年平均四%という線まで推移してまいっております。これに対しまして金利は、財形貯蓄の場合、一番低い定期預金におきましても五%超えておりますので、現時点においては実質的な目減りの問題は回避されておるというふうに考えます。
  181. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 いろいろなたとえば給付金とか助成金とかというものをやっているし、税額での控除もやっているというようなことが、結果的にはこの目減りの対策に当たるんだというふうなお考えもおありだろうと思いますけれども財形貯蓄がいろんな形で金融機関に散在されておりますし、また現在の経済体制から見て公定歩合に連動していくということ、これまたやむを得ないと私も思うわけでございますけれども、しかし、これがやっぱり普通の貯金と違って財形貯蓄という立場での財形法の本来的な目的、第一条に言うところの勤労者財産形成促進するという立場から考えても、何とかプレミアムをつけるというような方向、これが今後の政府施策基本方向として考えられるべきではないかというふうに考えますけれども、このプレミアム、割り増しというようなことについて、どういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  182. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 物価が上がって目減りするという問題、これはもうすでにわが方からお答えいたしましたけれども、私はやはり御指摘のように財形貯蓄制度を根本から揺り動かすような影響がございますから、これは重大な関心事ではございますが、これはやはり物価の安定という背景で対策をし、そして補完的には事業主に対する援助制度とか、そういうもので支えるという以外には、これを利子補給なり、ストレートにこれを支えるということは、私は全体の金利体系、こういった整合性から見て適当ではないではないかと、このように思いますが、それとこのプレミアムの問題ですけれども、これは新しい発想と受けとめなければならぬと思いますけれども、それだけに検討といいますか、研究せなきゃならぬ問題であり、同時にこれは相当財源がかかるんです。西ドイツ財形制度の中にはプレミアム制度が導入されておるということは聞き及んでおりますけれども日本はやはり財形貯蓄をやって、その財形貯蓄をやる勤労者の自主努力を国と事業主でバックアップする、こういうことで、そのバックアップする仕方も税制面でいわゆる非課税措置ないしは税額控除でやっていくと、こういうふうな仕組みでこれを推進をするということでありますから、研究はさしていただきますけれども、いますぐプレミアム制度について、これが制度として取り入れるという、こういうことはちょっとやはり十分勉強さしていただきたいと、こう思います。
  183. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 本当に住宅を建てたいと、そして建たせてやりたいという立場からこの財形貯蓄というものをお出しになっていらっしゃる。大変ありがたい御提案の法律の改正だと、こういうふうに受けとめるわけですけれども、まあ午前中からずっとるるいろいろ質疑を承っておりましたら、大変いい立場で窓口は開いてくださったけれども、入ったら出口になっちゃいましてね、奥行きがないわけですよ。現実にはなかなか建つということの実際的な効果が出てこないというようなことを考えますと、いま西ドイツの例もお話しになりましたけれども、やっぱりこの財形基本的な立場から考えれば、相当手厚いプレミアムの方向で実施していかなければ解決しないんじゃないか、促進させられないんじゃないか。これは新しい問題としてといまちょっと大臣おっしゃいましたけれども労働省としても昭和四十五年と五十年にわたって予算要求、約十億程度要求をなすったといういきさつがございますですね。そうすると、これは労働省としても、こういうことが必要だというふうに基本的にはお考えになっていらしたのだと思うわけなんです。それがちょっといまむずかしいというお答えになるのは、やっぱり財政事情ということに尽きるわけですか。基本的な姿勢としては前にも要求なすっていらっしゃるんだから、これは基本的に考えが変わったわけじゃなくて、どうも出してもいまちょっと大蔵がむずかしいというところから引っ込めていらっしゃるということなんですか。
  184. 桑原敬一

    政府委員桑原敬一君) 財形制度を私ども検討する場合に、確かに西ドイツその他いろんなヨーロッパの幾つかの先例を勉強しながら引き続き検討してまいっております。やはり私どもは、西ドイツ方式のプレミアムがいいのか、税額控除あるいは非課税措置というような税制面でやっていくのがいいのか、いろいろやっぱりその国の風土に合ったものを考えていかなきゃならぬと思っております。それからもう一つは、いま御指摘のように、取り巻く経済環境と申しますか、財政的な背景というものもそのときの検討の一つの大きなファクターであろうと思います。四、五年前は財政事情も非常にようございましたし、むしろ二兆円減税をやろうかというようなときでもありましたし、ドイツの発想というものは、非常に強く当時は労働省としては刺激を受けておりました。そういった背景の中でそういった提案をしたこともございます。今回は、そういった議論も一応基本問題懇談会の中では出ましたけれども、いまのやっぱり取り巻く環境なり、いろいろ日本的な財形をつくらにゃいかぬというようないろんな御意見もあって、今回はその議論は中心になりませんでした。私どもといたしましては、この問題を含めてやはり忘れずに検討課題にはいたしますけれども、やはりそういった現実を踏まえながら制度改善に努めていっているようなわけでございます。
  185. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 朝からずっと聞いてますと、いろいろと考え方は私たちと同じ考え方に立っていらっしゃるんだけれども、そのネックになりますのはいろいろと経済事情がございましてと、みんな悪いのは大蔵なのよというような形に結論的にはなってしまうわけなんですけれども、やっぱりその辺のところは、大臣も閣僚の一人でいらっしゃるし、まあ家を建てるということで、一生懸命貯金するということで購買力というのは非常に低下しちゃうわけですね、国民の購買力というのは。そういうことから考えても、やっぱりこれをもっと充実させるという意味で、いまお答えいただきましたように、プレミアムの問題についても財政事情がこうだからだめだというんじゃなくて、それをどう乗り切って要求を通していくかということで御検討、御努力をいただきたいと思いますが、まあプレミアム、すぐ無理だということでありましても、給付金の給付開始時に一時金としてオンするような、出すというようなことも考えられてもいいのではないかというふうに思うんですけれども、これも無理でございますか。
  186. 森英良

    説明員森英良君) 給付金制度につきましては、中小企業に関します限りは率は決して高いとは言えませんけれども、一〇%、五%、三%というふうな助成金を支給することにしておりまして、これはある意味で一種のプレミアム的な効果を持っておると思います。ただ、その額をもっと高くすべきじゃないかというような御意見は十分あり得ることと思うんでございますが、とりあえず今回の場合には、財政状況等もございまして支給範囲の拡大ということに限定いたしまして、支給率の引き上げの問題は一応留保したということになっておりますが、これはまたこれから、今後の給付金制度あるいは基金制度の実際の実施の経過を見まして、給付金引き上げの問題については将来にわたって検討させていただきたいというふうに考えております。
  187. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それじゃ第三の問題として、いま大変不況の時代でございますので、事業が倒産したとか、それから失業したというような問題が具体的に非常に出てきていると思うわけです。そういう失業した場合の対策についてはどういうふうに考えていらっしゃるのか。まあその場合には、一般的、には融資残は一括償還、原資のないときは抵当権行使になるが、財形は政策貯蓄に基づく融資であるということから通常の金の貸し借りと同様に考えるべきではないと、私はそう考えるわけです。勤労者保護の立場から特にその対策が十分に立てられなければ、この失業、倒産の問題の多いときですから大変不安だと思うんですけれども、その点について政府としてはどういうふうに御検討いただいていらっしゃいますか、お伺いしたいと思います。
  188. 森英良

    説明員森英良君) 御指摘のとおり、財形融資財産形成促進のための公的融資でございますので、事業主を通じまして転貸している場合、あるいは事業主を通じまして住宅分譲をやっております場合、必要によりまして従来と同じ方法では資金の返済ができないということが起こりました場合につきましても、直ちに全額償還というようなことはしないように、いろいろと措置を講じてまいることになっております。  たとえば、再就職をしました場合に、旧事業主雇用促進事業団に対する債務を新事業主が承継してくれるということがあります場合には、その形で新事業主を通じて返済を続けてもらうということにすることが可能でございますし、それから再就職先が旧事業主の有する雇用促進事業団に対する債務を承継することが困難だという場合につきましては、雇用促進事業団は旧事業主の有する債務を直接勤労者に承継してもらいまして、そうして勤労者から再就職先を通ずることなく直接財形融資の返済を雇用促進事業団に対してしてもらうという道も開いておるわけでございます。そういうことで、決して、失業すれば論理として当然に全額償還ということにはしない方向措置するつもりでございます。
  189. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 大体のところわかりましたけれども、それじゃあ倒産して、それで今度失業して、今度再就職するという場合ですね、再就職の見込みがある場合と、その見込みというのはどういうふうに具体的に判断なさるわけですか。
  190. 森英良

    説明員森英良君) 再就職の見込みのことを申し上げたんではございませんで、再就職いたしまして新しい事業主が旧事業主の債務を承継してやろうという場合には、それを認めて新事業主を通じて償還することも認めますし、そういう趣旨でございます。
  191. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 それは当然のことだと思うんですけれども、そうしますと、再就職して新しい事業主との関係ができなければそれじゃあだめだと、再就職の見込みという段階ではだめだと、はっきり再就職という形にならなければだめだということになるわけですね。
  192. 森英良

    説明員森英良君) 再就職できませんで失業が続いておるという場合につきましても、直ちに全額償還という措置ではございませんで、本人になお返済能力があり、返済意思がある場合につきましては、旧事業主の負っております債務を本人に承継してもらいまして、本人が償還するということも可能になっておるわけでございます。
  193. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 そうしたら、今度また別の場合なんですけれども、倒産して失業したというのはまだ本人が生きているからいいけれども本人が死んじゃったと。いまみたいに交通事故がありますし、それからいろいろ労働災害やなんかで事故が起こって死んじゃったというときにはどうなんですか。
  194. 森英良

    説明員森英良君) その場合には、相続人がその債務を承継いたしまして直接に雇用促進事業団に返済するということも可能でございます。
  195. 小笠原貞子

    小笠原貞子君 まあいろいろとあと、前の議員がお聞きになったので重ねてお伺いをすることはやめますけれども大臣、いろいろ朝からずっとお聞きになっていただいたと思いますけれども、いま非常に不況の中で、こういう問題というのが非常に深刻な事態というのも起こってまいりますので、いまおっしゃったように失業したからすぐ切るというようなことはないよとおっしゃっていただきましたけれども、そういうようなときにはケース・バイ・ケースで十分な手を加えていただくということと、それからやっぱりさっき言ったように、窓口はできたけれどもまだまだ奥行きという点では足りない。検討すると言われても、経済情勢というのが検討して変わるわけでもございませんし、やっぱり経済情勢の大変な中だからこそ、この持家制度というものを充実させていかなければならないという立場で、本当にいまの情勢の中で閣僚の一人としての大臣の御奮闘を重ねてお願いをするということで終わりたいと思います。どうぞよろしくお願いをいたします。
  196. 柄谷道一

    柄谷道一君 まず、いままでの質問にも触れられてきたところでございますが、私は勤労者財産形成促進法につきまして、この制度発足の当初から労働側は割り増し金制度の導入を強く求めてきたことは、大臣以下御承知のところであろうと思います。インフレや物価上昇の中で財形貯蓄が実質的な価値低下、いわゆる目減りを来しているということにつきましては、多くの説明を要しない問題であろうかと思います。私は経済変動や労働者の生活実態に即して財形制度を実効ある制度として発展さしていくためには、割り増し金制度というものはぜひ導入しなければならない課題であろう、こう思っております。  いままでの質問に対する大臣の答弁として、財源もかかることでもあるし、しばらく研究さしてもらいたいと、こういう答弁に終始しておるわけでございますが、さきにも申し上げましたようにこれ制度発足以来の課題でございます。  そこでお伺いしたいわけでございますが、この労働側意見が取り入れられない、今回も見送られたという原因は、財源にあるのか、制度そのものが問題なのか、いずれにあるのかお答えを願いたい。
  197. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) プレミアム制度、すでに西ドイツを初め実例があるわけでございますから、一つの考え方としては十分理解できる非常に勤労者財産形成促進に役立つアイデアだということは私も十分理解いたしますが、ただなぜすでに長年提案をされておりながらこれが実を結ばないのかという、これは私は両方だと思うんです。財源問題とそれから制度論と、両方から来ているというふうに理解いたすわけでございまして、全く新しい発想でございます。したがって、日本制度は先ほどもしばしば話が出ておりますように、非課税措置あるいは税額控除、こういった面で勤労者の自主的努力を誘発して、それに国と事業主がバックアップしていくという、こういう制度勤労者財産形成促進していこう、こういうこと、それとまた新しい発想だけにこれの財源措置というものが現在のような非常に厳しい財政状態の場合にはなかなかむずかしい、両方の事情が前々から検討はされながら結論を得ていないと、こういうふうに私は理解いたしております。
  198. 柄谷道一

    柄谷道一君 いま大臣も触れられましたように、もう御案内だと思いますが、西ドイツでは一九五九年五月五日の貯蓄割り増し金法、一九六〇年八月二十五日の住宅建設割り増し金法及び一九六一年七月十二日の第三次財産形成促進法、これが制定されまして、所得制限、いわゆる低所得者というものを中心としたプレミアム制度というものが実施されていることはもう御承知のとおりでございます。その率も相当高率なものである、こう思います。その他フランス、デンマーク等におきましても同様の制度か存在いたしております。私はこうした諸外国財産形成促進法というものを参考として、少なくともこれは長期の預金でございますから目減りをするということ、それに対する解決策というものを併用しなければ、やはり目減りをするということがこの財産形成促進の大きなネックになっているという事実だけはこれ否定できないと思うわけであります。私は何も西ドイツ制度そのものを日本に即導入せよと言うのではなくて、少なくとも財産形成の意欲を阻害しているこの目減り程度のものを補完する意味における一般財源からの割り増し金制度、こういうものは制度として当然真剣に検討されるにふさわしい問題ではないか、こう思うのであります。大臣の御所見をお伺いします。
  199. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 確かに御指摘のように、せっかく財形貯蓄、そしてこの持家住宅を実現しようという、こういう長期的な計画ですから、物価が安定してはおるものの、また物価の安定はぜひ政治の必要な大前提でありますけれども、長年の年月には目減りをいたしますから、これに対してストレートにプレミアム制度によって補完していくというのは、これは非常にきわめて簡明直截な私は政策手段だと思うんです。ただ、先ほど申しましたように、わが方は税額控除あるいは非課税措置というそういう面でやって積み上げてきておりますから、これが財形貯蓄持家住宅制度促進にこの制度を導入するということになると、他のやはり政策金融、こういったものとのバランスといいますか、そういった面も考えなければならず、また国全体の金融政策との調整、調和という、こういう面もありましょうし、なかなか財源もかかるという昨今の厳しい財政状態でありますから、なかなか前に進まない、確かに検討し研究するに値する制度でありますけれども、いまのところ前進を見るに至らずと、こういう状態でございます。
  200. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は他の制度とのバランス、それから国全体の金利体系との調和、これは大蔵大臣のお考えだと、こう思うんです。そういう金利体系の中に、あえてこの財産形成促進法を設けたというこの立法の趣旨からするならば、他の横並びの金利体系というものとは、いわゆるプラスアルファの政策というのが当然加味されてもしかるべきではないかと、こう思うんですね。それがあえてこの特別立法というものを、特別な立法を制止したゆえんではないか、こう私は思うわけでございます。この点ばかり議論しておっても前に進みませんけれども大臣、余り大蔵大臣代弁者としてバランス論を述べられる前に、財産形成のいわゆる主管大臣でございますから、そこらはやはり強力に大蔵省折衝をして、この法案目的、趣旨というものが生かされるために特段の制度の導入というものについて、これは御努力を願いたいと、こう思うんです。いかがでございましょうか。
  201. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御提案の趣旨は十分了承いたします。ひとつ御趣旨に沿うて今後私も検討さしていただきたいと、このように思います。
  202. 柄谷道一

    柄谷道一君 そこで、その検討に付加して大臣の御見解をお伺いしたいわけでございますが、デンマークの被雇用者投資配当共通基金制度、それからフランスにおける勤労者参加特別準備金制度、またルノー国有会社従業員持ち株制度西ドイツにおける従業員持ち株の促進や国民株式の発行政策、こういったものを見てみますと、私は欧州における財産形成の今後の方向が財産分配構造の是正、なかんずく生産資本への勤労者の参加の促進という方向を指向しているのではないか、このようにも受けとめられるわけでございます。労働組合の中で同盟などがいま参加問題を大きな課題として取り上げておることは大臣御承知のとおりでございます。こういう、いわゆる参加の促進財形制度との結びつき、こういう問題について大臣はいかがお考えになっておりますか。
  203. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 大変御勉強された情報を踏まえて、いま示唆に富んだ御提言をいただきましたが、確かに検討に値する私は御意見だと思います。ただ、私が一つ心配いたしますのは、やはりこの生産資本に参加するといいますか、株などを持つという、これはやはりいい面もありますけれどもまた下がるというリスクがあると、こういう点で果たしてこれが真の勤労者財産形成に十二分であるかというと、私はいま申しましたようなマイナス点がある、だからこれは慎重に検討をしなきゃならぬ。従業員の経営参加の問題、勤労者の経営参加の問題、これは私は非常にその点においてはいい考えであると、このように思いますけれども、やはりリスクを伴うということから考えて、なかなかむずかしい問題が含まれておるんではないかと、このように思います。
  204. 柄谷道一

    柄谷道一君 私はこの参議院の政治経済事情視察の調査団の一員として西ドイツへ伺いましたときに、西ドイツにおける生産的資産の七四%が一・七%のものによって所有されている、ということは、西ドイツは社民党政権でございますが、その社会主義そのものに反しそれが社会不満の根源であると、こういう議論から、広くこの財産形成の一方法としての参加問題ということが議論され、これが、方法論においていろいろ問題はございますけれども西ドイツの健全な労使関係というものに支えられまして、大きくその方向前進していくのではなかろうかという展望を得たわけでございます。このことにつきましても、本日このことに対する議論を応酬しましたら非常に深い問題でございますので、この程度に私はいたしますけれども、ぜひ大臣の、このプレミアムという方法と相並行して、十分基本問題懇談会等においては論議を深めていただきまして、そのことに対する的確な方針が一日も早く打ち出されるようにこれは期待いたしておきたいと思います。  次に、私は、財形貯蓄制度につきましては、税制、財政面からの優遇措置というものについてさらに洗い直されるべきであろう、こう思います。当初の労働省案と対比しますと、先ほども指摘されてきたところでございますが、私は、一つは中高年齢者の非課税枠現行五百万円を七百五十万円とするという点、定年などによる退職者についても非課税措置を講ずるという点、海外転勤者についても同様の非課税措置を講ずるという点、それから、転勤者についても従前の残高により財形貯蓄の預け入れを行うことができるようにするという点、それから、社内預金から財形貯蓄への切りかえができるようにするという点、及び財形住宅貯蓄の税額控除の対象限度額引き上げるという点、合わせて六点が当初の労働省案より消えているわけでございます。いままでの質問によりますと、大蔵の抵抗により大蔵省がなかなか御理解願えなかったというようなニュアンスの御答弁もあったように思うわけでございますが、これも横並びという立場は立場でございますけれども、やはり、労働者財産形成促進という目的をもってこの立法が行われた、この趣旨からいたしますと、余り横並び論に固執すべき問題ではなくて、特段の配慮というものが当然なされてしかるべきではないかと、こう思いますが、主税局としての御見解をお伺いします。
  205. 矢澤富太郎

    説明員矢澤富太郎君) ただいま先生御指摘の御要望は、確かに五十三年度の税制改正労働省の方からいただきまして、真剣かつ具体的に議論をしたところでございますが、総括的に申し上げますと、ただいま先生からお話もございましたように、この財形制度にかかわりまするもろもろの税制上の優遇措置は、勤労者財産形成のための自助努力を誘発するための税制上のあくまで特例、優遇措置でございまして、ということは、課税の公平をある意味では犠牲にしながら特別の措置を講じているということでございますので、どうしてもバランスとか、あるいは執行の厳格を期さなきゃならないわけでございまして、バランスという点で申し上げますと、たとえば、現在少額貯蓄非課税制度、これは三百万円でございます。上がりましたときは、前は百五十万円から三百万円に上がったわけでございますが、当時、財形貯蓄限度額百万でございまして、これを一挙に五百万に引き上げたというようないきさつもございますし、また、財形住宅貯蓄につきましては、現在最高でございますと年間五万円の税額控除が認められることになっております。しかも、預入期間は七年以上十年以内ということでございますから、非常に長い間にわたってかなり高額の税額控除が認められておりますし、その五万円の税額控除と申しますのは、たとえば夫婦、子二人の給与所得者でございますと、年収三百万円というとまあほぼ平均的な水準かと思いますが、その方々の納付する税額は六万六千円でございますから、税額控除の水準としてはかなり高いものではないかと思いまして、いろいろバランスも考えますが、そのバランスの中でこの財形の重要性を考えて、できる限りの措置を講じているというのが私どものいまの考え方でございます。
  206. 柄谷道一

    柄谷道一君 もう一つ、租税特別措置法施行令第二条の五の6には、もう御承知だと思いますが、財産形成非課税貯蓄申告を行った者がいわゆる離職をした、そして再雇用をされる、その場合の継続措置がうたわれているわけでございますが、それは、その解雇から再雇用までの期間が六ヵ月以内という限定があるわけでございます。これは、高度経済成長時代で、比較的失業いたしましても有効求人倍率も高く、再就職というのが比較的容易であったという時代と、いまは減速経済下、しかも産業構造の大きな改革、変化が行われている。一たん失職いたしますと、平均で有効求人倍率が〇・五台、しかも、四十、五十代になりますと〇・二、〇・三という低い実態、昨年末に制定いたしました特定不況業種離職者臨時措置法でも、こうした雇用の現状を踏まえて二年、三年という長期にわたって再就職の努力をすることは当然でございますけれども、これに対する所得保障その他の援護措置がとられている。こういった実態を考えますと、私は六ヵ月以内の再雇用を条件とするというこの施行令は、やや現実の事態というものにマッチしていないのではないか、現在の雇用情勢というものを踏まえて、この施行令の洗い直しというものが行われてしかるべきではなかろうかと、こう思うのでございますが、いかがでしょうか。
  207. 矢澤富太郎

    説明員矢澤富太郎君) 先生の御趣旨はよく理解できるわけでございますが、ただ、いまの制度の成り立ちを考えますと、金融機関の利子の計算期間が通常六ヵ月であるというところから、実は六ヵ月以内という話が出てきておりまして、たとえば、退職直前に預金をされますと、利子の計算期間は通常六ヵ月でございますから、六ヵ月以内の間に転職された場合には、前に預金をされたものの新しい利子の計算期間というのは到来しないわけでございまして、すんなりとその源泉徴収の問題を何も起こさないで引き継ぎが認められるわけでございます。ところが、転職の時期が長くなったりなんかいたしまして六ヵ月を超えてまいりますと、初めの方で預金された貯金につきましては利子の期間が勤労者の地位を失っておる、言うならば失業の期間中に来てまいりまして、そうなりますと、財形制度のたてまえから言って、そこで銀行は源泉徴収をせざるを得ないわけでございます。先生のような御趣旨を生かすとすれば、そのときに特例措置を何か講じたらどうだろうかということになろうかと思うのでございますが、それが金融機関、あるいは源泉徴収の事務か大量の事務を画一的に処理しなければならないものでございますから、なかなか例外措置を設けるということが技術的に、現実的には不可能に近いんではないかというような考え方を私どもとしては持っているわけでございます。  それからもう一点は、これは理屈の上の話になろうかと思いますが、本来勤労者の地位に基づいてこういう特権が与えられているわけでございまして、その方が地位を失うということはこれは確かにお気の毒な話ではございますけれども制度の仕組み全体が勤労者の地位にあるということを前提としてでき上がっておりますもので、その辺の考え方をどう整理していくかというのも一つの問題ではなかろうかと思っております。
  208. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、労働大臣いま答弁をお聞きになっておったと思いますけれども、確かに横並びの税制上の優遇措置に比べてプラスアルファの配慮が加えられているということはもう十分承知しております。しかし、果たしてプラスアルファという程度がこの財形促進という目的に比べて十分であるのかどうかという点には、いろいろ見解の、異なる意見の存するところでもございます。いま主税の方からは技術的な問題が言われましたけれども、これも知恵をしぼって、自己都合で退職したとか、そういう人は別としても、構造不況業種で、働く意思も能力もありながら、産業の大きな構造改善の中で余儀なく離職せざるを得ないという方々の立場を考えますと、私は一工夫、二工夫あって当然しかるべきではなかろうかと、こう思うわけでございます。大臣として、次の改善を目指して税制上の優遇措置の洗い直しと、いま申しました深刻な雇用情勢に対応する特段の特例というものが検討されるべきであると、こう私は信ずるわけでございますが、大臣いかがでしょう。
  209. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 御指摘のように、特に昨今のような厳しい雇用の現実を考えますと、御趣旨はよく理解できますが、先ほど大蔵省からも御答弁がございましたように、やはり、制度論そのものの点と、それから同時に税務の技術面からなかなか困難な問題だというふうに説明を聞いて、私も理解されるわけでございますが、したがって、ひとつこの問題は、きょうすぐどうというわけにもいきませず、大蔵省と今後よく引き続き折衝いたしまして、やはり生きた人間のやることであり、制度はそれに沿わなきゃなりませんから、ひとつできるだけ知恵をしぼって検討さしていただきたいと、こう思います。
  210. 柄谷道一

    柄谷道一君 ぜひ前向きの検討を期待したいと思います。  私、西ドイツばかり例を引くわけでございますが、その視察団の一員として渡航しました際に、西ドイツの実態を詳細調査いたしましたところ、現在西ドイツ勤労者のほとんどが貯蓄割り増し金法、住宅建設割り増し金法及び第三次財形法のいずれか、またはその併用による利益を受けている。そして財形のための国及び地方公共団体における負担は、一九七三年の場合、年七十二・二五億マルクに達しており、この負担額は今後も増大するであろう、こういう展望を把握してきたわけでございます。  そこで、お伺いするわけでございますが、今回の改正を含め、平年度における国の支出はどの程度だろうか。中小企業助成金財形基金設置奨励金その他に分けまして、その数字を明らかにしていただきたい。
  211. 森英良

    説明員森英良君) 五十三年度の財産形成関係の予算について申し上げたいと思うんでございますが、一般行政費を除きまして、次のようになっているわけでございます。  まず、雇用促進事業団への交付金でございますが、これが七億四千八百八十七万七千円ということでございまして、その内訳は、財形持家分譲融資関係の利子補給その他につきまして三億三千六百万円、財形持家転貸融資関係が九千六百六十二万円、財形進学融資関係で千八百二十八万円、財形給付金基金等に対します助成金関係で一億一千四百六十三万円、財形基金の関係で六千四百六十六万円、その他人件費等が一億一千八百六十万円というような内訳になっております。  なお、助成金関係につきましては、以上の交付金のほかに、既存の雇用促進事業団資金といたしまして一般会計から五億円出ておりまして、これの果実もあわせて措置されておるわけでございます。それから、財形持家分譲融資の利子補給につきましては、交付金のほか、既存の雇用促進事業団資金十億円、これは労働保険特会からの出資でございますが、その運用収入も充てられておるという状況でございます。  なお、公務員等日本勤労者住宅協会の行う住宅分譲を受けるための事務費に充てるものといたしまして、雇用促進事業団に対する補助金が四十二万六千円と、これは一般会計で措置されております。
  212. 柄谷道一

    柄谷道一君 いま御説明があったわけですけれども、私は、それらの大部分は労働保険特別会計よりの支出、言いかえれば、使用者の負担によって賄われていると、こう言うべきであろうと、こう思うわけです。一般会計よりの実際の支出というものは、五億円の出資金の果実運用、その他これは一部の支出でございます。私は西ドイツの例をここに引いたわけでございますけれども、私は、本当に国が勤労者財産形成促進努力しているというふうにはこの予算からはとうてい受けとめられないわけでございます。失礼な言葉でございますけれども、経営者の負担というものにおぶさって財形促進というものを図っていると極言されてもいたし方ないような実態ではないだろうか。もっと、私はさきにプレミアムの問題も申し上げましたけれども、国自体が一般財源でこの財産形成促進というものについて本腰を入れる、こういう姿勢が強く求められているのではないかと、こう思いますが、大臣いかがでしょう。
  213. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) この問題、先ほど大蔵省の方からも答弁がありましたわけですが、いわば消極的なと言いますか、取るべきものを取らないで十分見ているという、その面で大いにやっているじゃないかという、西ドイツとはたてまえが違うという、こういう出発点がちょっと違うわけですね。私は、柄谷委員のお考えのように、もともと、党におりました時分、西ドイツの具体的な例なんかを引用しまして相当財政部会あるいは担当の政調会あたりで話をしたんです。ところが、なかなかどうも大蔵省の理論武装の方か固くてこれを突破できなかったという、こういう苦い経験がございます。きょうそんなことをこの場では言うべきではございませんけれども、やはり、いかにして、財形制度の理念というものを踏まえて、本当に家を持ちたいという人間の本能的な、しかも勤労者期待というものをもう少しバックアップできるという、ただ消極的な税制面だけでなくて、これを支えていくということが目減りの問題も踏まえまして検討していくべき問題ではないかと、財政当局の意見もさることながら、やはり国の政治の姿勢として今後検討さしていただきたいと、このように思っております。
  214. 柄谷道一

    柄谷道一君 国務大臣としての努力期待いたします。  そこで、今度は内容でございますが、五十二年十一月末現在の実績を見ますと、財形貯蓄契約勤労者数七百四十万人、実施事業所数六十万ヵ所貯蓄残高一兆六千億円。これに比べまして、十二月末現在の財形給付額は受益勤労者十八万、実施企業五千四百社、資産高四十五億円でございます。財形持家融資制度は四十八年九月開始ということもございますけれども貸付決定件数八百件、貸付決定戸数四千戸、貸付決定金額三百億円にときまっております。さらに、財形持家個人融資は五十二年度に開始されたばかりでございまして、まだ実績が定かでございません。私は、このような実績を考えますと、現行制度貯蓄増強策にとどまっている。勤労者の強い要求である持ち家につきましては融資枠融資条件、金利、融資の償還期間等で勤労者要求というものをまだ十分に満たしていないということをこの実績は物語っているんではないかと、こう思うわけです。いま政府が力を挙げておられます不況克服策にしても、やはり二四%という高い貯蓄性向を、いかにして個人支出に回し、需要を喚起し、それを需給ギャップを埋めていく手段にするか、これが政策の中心としていま論議されているわけでございます。こうした実績を考えますと、私は不況克服策としても現在の財形制度は有効に機能していないということを物語るのではないか。こういう意味における、これまた私は洗い直しといいますか、改善というものが求められている、このように思うわけです。いかがでしょう。
  215. 桑原敬一

    政府委員桑原敬一君) 全く私御指摘のとおりだと思います。財形貯蓄は、非常に高い額で伸びてまいっておりますが、その還元につきましては、はかばかしくないということについて、私どももいろんな制度の不十分さという点に思いをいたさなきゃならぬというふうに考えております。  私ども今回は、そういう面について最重点を置きながら検討し、御提案申したつもりでございます。こういった日本経済の景気浮揚のために、財形融資が持ち家その他で十分活用されることが非常に期待されますし、そのための貸付条件、いろんな面で改善したつもりでございますが、なお、私どもこういった面について、さらに努力をしていきたいと思っております。
  216. 柄谷道一

    柄谷道一君 私は、雇用情勢は依然として厳しいものがあると思います。財形持家融資によりまして、住宅を取得した勤労者が失業して財形持家融資の返済が一時的に困難になる、そういう場合が想定されるわけでございます。このような場合に、財形持家融資に係る抵当権を実行すれば、勤労者は職と住宅の双方を失うという結果になります。ただいままでの質問で、政府としても、少なくとも勤労者が再就職して、財形持家融資の返済の再開が可能となる状況にあると考えられる場合には、財形持家融資の返済の継続を可能にする措置が講ぜられているということは、質問に対する答弁で把握をいたしました。しかし、私はこれに加えて、失業によって財形持家融資の返済能力を一時的に失った場合には、その返済を一時猶予するということを検討すべきではないだろうか。大蔵省の銀行局等も各銀行に指導されたと思うのでございますけれども住宅ローンにつきましても、このような配慮が加えられるべきであるということでの検討が進められているとも聞いております。私は、本当にこの公的な財形促進制度として発足しておりますこの制度については、そういう特段の配慮が加えられてしかるべきである。いま直ちに御回答ができなくても、少なくとも前向きに検討するという御答弁はいただきたいと思います。いかがです。
  217. 森英良

    説明員森英良君) 失業中の財形持家融資の元金につきましての返済猶予の問題でございますが、御承知のように現下情勢にかんがみまして、本年度におきましては、新規分について勤労者の申し出により、一年間の猶予を認めるということも措置されておるわけでございますが、一般的な制度として、元金償還の猶予を行うことにつきましては、これは他の住宅融資制度との関連もございますので、それらとの調整を図りながら今後とも検討してまいりたいというふうに考えます。
  218. 柄谷道一

    柄谷道一君 次に、問題を移しますが、勤労者がその子弟を高校、大学等に入学させた場合には、入学当初はそうでなくても、相当の出費が必要でございます。財形進学融資による貸付金の返済は、当然勤労者相当の負担となることが予想されます。そこで、まあ金利の点は多くの委員から触れられておりますけれども、直ちにその年から返済を開始しなければならぬというたてまえになっているわけですね。私は勤労者の返済というもの、負担というものを緩和する意味においても、私は一定の据え置き期間を設ける。これは勤労者が、希望によりましてその月から開始していこうという人があれば、それは結構でございますけれども、希望すれば一定の据え置き期間を置いた後返済を開始する、こういう制度がとられてしかるべきではないか、こう思います。いかがでしょう。
  219. 森英良

    説明員森英良君) 財形進学融資の償還期間につきましては、一応五年以内ということで考えておるわけでございますが、確かに御指摘のように、融資を借りた直後、相当の負担があるわけでございまして、その点を考慮するという必要も確かに考えられますので、他の進学融資とのバランスも考慮しながら、希望者に対しましては償還期間内において、一年間の据え置き期間を設けることを予定しておるわけでございます。
  220. 柄谷道一

    柄谷道一君 それは一つ前進であると評価をいたします。金利及び償還期間、据え置き期間が果たして一年でいいのかどうか、こういう点につきましては、今回は一歩前進でございますから了承いたしますが、さらに継続した御検討をお願いをしておきたい。  私は以上質問してまいりましたけれども、今回の改正は、勤労者財形促進の政策を一歩前進させるという意味において評価し、これを了承したいと思います。しかし、私がいままで指摘いたしてまいりましたように、割り増し金制度の導入、生産資本への勤労者の参加の促進税制、財政面における優遇措置拡大、解雇、再雇用時における現下の雇用情勢を踏まえた特例の検討、融資条件改善進学融資制度改善など、今後になお改善充実を図るべき問題点は多いと思います。さらに、時間の制限から触れることはできませんでしたけれども、物価政策、土地政策という財形基礎的条件をどう整備していくか。財形法の対象財産をいかに拡大をしていくか。管理運用に関する労使の参加体制をいかに拡大をしていくか。さらには、監督官庁の指導強化の問題やら、財形促進制度の周知徹底と手続の簡素化の問題など、私は継続して前向きに取り組んでいかなければならない課題、かつ多くの問題が依然として残されていると思うわけでございます。財形促進のため今後どのような方針と決意をもって臨もうとしておられるのか、大臣の所見を最後にお伺いいたしまして私の質問を終わります。
  221. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) ただいまは検討に値する重要な問題の指摘、提起がございました。とりあえずわれわれは、この財形法改正が実現をいたしましたならば、この実施並びに趣旨の徹底を図っていきたいということと同時に、引き続きいまの御提案になりましたもろもろの問題につきましては、財形審議会並びにこれが基本問題懇談会、こういった場において検討をさせていただきたい。そうして、これが関連する、たとえば大蔵省の問題あるいは建設省の問題、こういった関係が多岐にわたっておりますから、こういった役所との調整を図って、これで第一次、第二次と一回目の改正でありますけれども、年を追うて着実に前進をいたしたいと、このように考えております。
  222. 柄谷道一

    柄谷道一君 終わります。
  223. 下村泰

    ○下村泰君 ラストバッターでございます。私の前の各先生方がヒットを打ったり、あるいはスクイズをやったり、あるいはバント戦法をやったり全部出尽くしてしまいまして、一打逆転ホームランを打つ以外に私の手はないのですけれども、それほどの資料もございません。まことに残念なことに私はこういう問題に素人でございます。ただ素人としての感覚で一つ二つ質問させていただきたいと思うんですけれども、いままでも諸先生方があらゆる面から、あらゆる角度からいろいろとお話しになりました。この制度は一体だれのために、何のためにあるのかなという一番素朴なぼくは疑問にぶつかったんですが、お答えください。
  224. 桑原敬一

    政府委員桑原敬一君) 勤労者財産形成法、名のごとく私ども勤労者財産形成——勤労者と申しますと、最近は日本経済の発展に伴って、賃金の面では諸外国に比べてもそう遜色のないような形にだんだんと向上してまいっておりますけれども、ストックの面で見ますと、やはり非常に諸外国あるいは他の自営業の方々と比べると、データ的に見ますと見劣りしているというようなことがございます。そういったことで、勤労者財産形成というものを勤労者の自己努力を大前提にしながら、国及び事業主援助というものと相まちながら、そういったストックを持ち、そして生活の安定、いわゆる何と申しますか、社会の安定と、こういうものに寄与したいと、こういう考え方でございます。
  225. 下村泰

    ○下村泰君 それから、またいまの持ち家のことでもございますけれども、何か先ほどからずっとお伺いしていると、努力する者にとっては大変ないい制度である。もちろん、世の中に出まして、実社会に飛び込んで、右見て左見て後ろ向いて前を見たらもう家が建ってたと、こんな甘い世の中であるはずがない。そうしますと、この制度はあくまでも努力する者、つまり、国民としての権利を主張するのもさることながら、国民としての義務を完全に果たす者のみにこの制度が十分に生かされると、こういうふうに感じられるんです。ただ残念なことに、先ほど部長さんですか、おっしゃいましたね、七年たって何ぼ何ぼで、二百十八万が四百二万円になって、そして家が建つようなお話ししてらっしゃいましたが、もし私がこれを民間放送の電波を通じて——悪口を言うばかりが能じゃありませんから、いま日本の国ではこれこれこういうことを一般の皆さま方にしてくれているよと、こういうすばらしいこともあるんだよと、これは皆さん利用しなきゃ損だ、というようなことを電波に乗せた場合、先ほどのこういう話をやったら、途端に放送局の電話のヒューズはぶっ飛びますわ。実際に自分の家を建てようと努力している人たちの前では、これは絵そらごとですね。お認めになりますでしょう。——うなずいていらっしゃるということは、おわかりになってますな、口では言えないでしょうけれども。  私が芸能の仕事をやって、家が満足に建ったのは十八年目ですよ。しかも、ある民間会社を通じましてね。いろんな会社がございます。何年掛けるとこういうふうになりますよと、何年掛けてこれだけの額になりますとあなたは持ち家を建てる権利を取得しました、ここらでそろそろお家を建てなさい。土地かございません、土地もあっせんしましょう。で、土地をあっせんした場合にはこの土地の代がこのくらいになりますから、掛金はこのくらいになります。全部めんどう見てくれます。けれども、もちろん掛金は増大します。こういう方法にして、私は十八年間かかったんですよ。そうしますと、失礼ながら一般のお勤めになってらっしゃる方で、これだけの年数で簡単に家が建つとは、私はとうてい思えません。けれども、この制度がないよりはいいと思います。あってしかるべきだと私は思うんですけれども、先ほどからいろんな先生が、いろんな角度からお話しになりましたけれども制度はあっても何か血が通っていない、こういう感じがするんです。これは大臣、どう思いますか。
  226. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) 確かに御指摘の、せっかく勤労者財産形成促進法という、こういう名前、看板にしてはいささか看板倒れで、中身がまだ十分でないこと、御指摘のとおりでありますが、ただやはり、これで二度目の改正ですけれども、前よりは改善をされておるということは、これまたお認めいただけると思うんでありまして、私はあくまで着実に前進をしたいと、後退はしないと、そうして、勤労者財産形成において積極的な政策をとってる先進国の具体的例もあるわけですから、それを日本の国になじむようないいところはひとつ積極的に取り入れたいと、このように考えるわけでございまして、今度出した案が決して胸を張って誇れるような案ではないということは、担当大臣としても率直に認めざるを得ないと、こう思います。
  227. 下村泰

    ○下村泰君 何ですか、大変私がお話しをすると余りにも正直過ぎて、後で問題か起きるんじゃないかというようなお答えだと思いますけれども、ありがとうございました。  私はね、いままで三十何年という舞台生活で、自民党が政権を担当してる間、気に食わないことはかみついてきました。しかし、全部かみついてきたかというと、そうじゃないんです。必ず、政府がやっていることでいいことは、こういうことがあるんだからこうしなさいとか、あるいは、こういうことをやっているんだからこうしなさい。いま俎上に上がってます橋本登美三郎さんがかつて、私の意向で前橋の方にコロニーを建設する運動をしてくださいました。そのときもちゃんと私はおほめいたしました。いまの外務大臣の園田さんが、水俣病を公害病と認めると、おれは断じてやるんだということをおっしゃったときにも、やはり陰からきちんと私は援助さしていただきました。ですから、少なくとも電波なぞを利用して私どもが喜んでお話しのできるような内容にしていただきたい。——これは私事でありますか、四月の十七日から生放送を担当することになりました。もちろん国会の方には関係のない、朝六時から七時まで。しかし、この朝の六時から七時までという時間帯は、一番の勤労者の時間なんです、聞いてるのが。ですから、その方たちに朗報としてお伝えできるような内容にしていただきませんと、また私は何を言うかわかりませんから、そのおつもりでいていただきたいと思います。(笑声)  それから大臣ね、先ほどもちょっと大臣のお答えの中にも入っていましたけれども、この、いまの制度でまいりますとね、あくまでも土地があって、さて上物を建てるというぐあいなんですね、この制度はあくまでも。これはもうどこの住宅ローンに入りましても、必ず一番悩むものはやはり地べたの問題なんです。そして、安けりゃ安いほど、どんどんどんどんドーナツがふくらんで外へ行く。ちょっと通い切れない遠くへ行きゃ、うんと安いです。ところが、首都圏の中にお勤め先があるとなれば、そうは遠くへも行かれないというような条件ですね。そこで、この制度の中になおかつそういうことの、地べたの方も心配してくださるような、いわゆる建設省とか国土庁とかのよく連係プレイをして、——何か日本という国は、立場が違うとばらばらで、いまもここへ来た大蔵省のお役人さん、私はあの方は個人の人間としての血は通ってると思いますよ、体の中に熱い血がたぎってると思うんです。答えてることは、よくもまあこれだけ爬虫類みたいな冷たいことが言えるな、と思うぐらい、突き放すような物の言い方ですわね、ちょっと銀行の貸付係みたいに。もっとも、あれでなけりゃ勤まらねえんだろうと私は思いますけれども。そうでなくして、もうちょっと、先ほど申し上げました血の通う、本当にこの財形制度をやってよかったと、勤労者が本当に心からよかったと、——もっともまじめな勤労者ですよ、いいかげんな者はだめですよ、これは。そういう人たちが喜べるような、そんな方法を大臣、これから考えていただけますか、いただけませんか、そのお答えで私は終わりたいと思います。
  228. 藤井勝志

    国務大臣藤井勝志君) まあ大変大切な問題提起でございますけれども、なかなかこれが解決には非常に困難な問題が山積をしております。その中でも、いま御指摘のとおり、私は土地問題という、宅地対策という、これが前提であること、御指摘のとおりでありますから、建設省、国土庁、こういったところとも十分連係プレーをやりまして、そうして実質的に勤労者財産形成の柱である持家住宅制度というのがひとつだんだんに成長していくように努力をいたしたいと、このように思っております。
  229. 下村泰

    ○下村泰君 日本大臣はころころおかわりになるんで大変私は残念なんですけれども、少なくともひとつ大臣在任中に、その足がかりだけでもきちんとつけておいていただきたいと思います。  終わります。
  230. 和田静夫

    委員長和田静夫君) 本案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十分散会      —————・—————