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1978-06-07 第84回国会 参議院 公職選挙法改正に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月七日(水曜日)    午前十一時二十五分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         秦野  章君     理 事                 金丸 三郎君                 小林 国司君                 宮之原貞光君                 多田 省吾君                 内藤  功君     委 員                 上原 正吉君                 小澤 太郎君                 郡  祐一君                 竹内  潔君                 中西 一郎君                 中村 啓一君                 栗原 俊夫君                 戸叶  武君                 市川 房枝君                 円山 雅也君    衆議院議員        公職選挙法改正        に関する調査特        別委員長     久野 忠治君    国務大臣        自 治 大 臣  加藤 武徳君    政府委員        自治省行政局選        挙部長      佐藤 順一君    事務局側        常任委員会専門        員        伊藤  保君    衆議院法制局側        第 二 部 長  斎藤 義道君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公職選挙法の一部を改正する法律案衆議院提  出)     —————————————
  2. 秦野章

    委員長秦野章君) ただいまから公職選挙法改正に関する特別委員会を開会いたします。  公職選挙法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、提出者から趣旨説明を聴取いたします。衆議院公職選挙法改正に関する調査特別委員長久野忠治君。
  3. 久野忠治

    衆議院議員久野忠治君) ただいま議題となりました公職選挙法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  選挙に関し候補者の氏名を連呼して投票を勧誘する行為は、選挙民に対し直接に投票を勧誘するものであって、その行為に従事した者は選挙運動員認定し、これに報酬を支給することは現在認められておりません。  本案は、選挙の実情にかんがみまして、「専ら選挙運動用自動車又は船舶の上における選挙運動のために使用する者」についても一定額報酬を支給することができるように改正しようとするものであります。  なお、ここで「専ら選挙運動用自動車又は船舶の上における選挙運動のために使用する者」とは、選挙運動用自動車等の上において連呼行為等選挙運動を行うことを本務として雇用された者を言うものであります。  したがって、このような者が一時的に停止した自動車等の周囲において演説を行うことがあっても、車上の選挙運動本務としていると認められる場合は報酬を支給することができます。  しかし、本来の選挙運動員が一時的に車上の選挙運動に従事した場合には報酬を支給することはできません。  本法律は、公布の日から起算して一月を超えない範囲内で政令で定める日から施行しようとするものであります。  何とぞ、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  4. 秦野章

    委員長秦野章君) 以上で趣旨説明は終わりました。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 衆議院特別委員会におきまして、ただいま提案をされたようなことが全会一致可決決定をされましたことについて、わが党としても基本的には賛成をするのにはやぶさかでございませんが、一、二これらの問題及び関連をしてお尋ねを申し上げておきたいと思います。  恐らく本法案は、去る一月の最高裁判決の線に沿いまして、いわゆるうぐいす嬢を公選法百九十七条の二の言う「選挙運動のために使用する労務者」ではないという物の考え方から、このように特別引き出したものだと判断をするわけでありますが、ただ、私が若干疑問に思う点は、それならば、この現行法の二の二項の「選挙運動のために使用する事務員」でない、この枠の中には入らないという物の考え方ですね、どう違うのか、そこらあたり議論をされたことがありますならばお聞かせをいただきたいと思います。いわゆる現行法の二の一項には入らないにしても、広義の意味の二項の中に当然含めてもいいのではないだろうかとさえ思うので、かくお尋ね申し上げておるところです。
  6. 久野忠治

    衆議院議員久野忠治君) お答えを申し上げます。  いわゆるうぐいす嬢の問題につきましては、ただいま宮之原委員指摘のとおり、最高裁判決の際に、選挙運動員として認定をされたわけでございます。そのためには、やはり法律うぐいす嬢報酬を支給しようとするためには何らかの明文の規定が必要ではないか、かようなことから、ただいま御指摘の百九十七条の二の二項の「選挙運動に従事する者」、いわゆる事務員とすることはこれはできない、かような考え方から今回の法案提出になったような次第でございます。
  7. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 実はその点ですが、これは三十七年の第四十回国会で、これまた衆議院特別委員会議論をされたようでございますけれども議事録を拝見いたしますと、当初政府原案は、選挙運動に使用する事務員労務者範疇の中に一応含めておった。それを、国会での議論の中で、いわゆる第二項の事務員といっても、機械的に事務を行うところの者、あるいはいわゆる選挙運動一般的な事務を行う者というふうに大体類推される。しかし、両者を峻別することは非常に困難性がある、問題もあるので、特別に政府原案にプラスをしてこのような条項を設けたような形に相なっておるようでございますが、そこで、いま委員長の御答弁のように、それならば、うぐいす嬢仕事は何かと申しますと、これは私はやっぱり選挙運動一般的な一つの任務を受け持つものだと、こういうふうに単純に解釈できないこともないんじゃないだろうかと思うんです。言うならば、選挙事務所一般的な仕事をやる者と、ただ宣伝カーの上でやるという違いはあるにしても、本質的には、何も選挙演説をやるわけじゃないですから、提案説明によりますと、その場合は選挙演説をやっても仕方がないんだ、それはいいんだというような説明のようでございますけれども、本来からいえば、やはりこの枠の中で当然考えられていいのではないだろうかとさえ思うのでございますけれども、そうでもないという趣旨でございますが、そこらあたりは、委員会等議論をされた場合の分け方というのはどういうような解釈の仕方をされたんでしょうか、お聞かせいただければありがたいと思います。
  8. 久野忠治

    衆議院議員久野忠治君) 御承知のとおり、最高裁判決の中に、「選挙に関し候補者のために行われる行為は、たとい機械的な労働であっても、一般には、当該候補者のため投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為であることを否定しがたく、その行為目的いかんによっては選挙運動にあたるものといわなければならない。」と、かように判決の中で明記されておるわけでございまして、そうした意味から、このうぐいす嬢につきましては選挙運動員認定をされたわけでございます。さよういたしますと、現在の法制上のたてまえからいきますと、報酬を支払うことができなくなりますので、先ほど報告を申し上げましたような措置を講じたわけでございます。  その際、これらの最高裁判決をめぐりまして、衆議院特別委員会の中でどのような議論がなされたかという御質問でございますが、各党とも一致して、このような最高裁判断が下された以上は、その決定に基づいてやはり何らかの法制上の改正措置を講ずべきである、かように意見一致をいたしまして、このような法文化の作業が進められたわけでございます。
  9. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 もう一点、この問題についてお伺いをしたいと思いますけれども、いま久野委員長がおっしゃったように、確かに最高裁判決は、選挙運動のために使用するところの労務者ではない、言うならば、もっぱらそれ以外の労務に従事する者だと解しておるわけでございますが、さらばといって、二の二項の「選挙運動のために使用する事務員」でもないという判断のもとに、こういう特別別記をされておるものだと思うのでございますが、そうしておるとするならば、この二の二項とも違うんだというものの解釈だとすれば、今度はいわゆるうぐいす嬢だけ別枠人員配置をするというならわかりますけれども人員配置だけはこの二の二項の言うところの、たとえば衆議院選挙参議院選挙なら三十人の枠内にこれを押しとめると、こういう改正案ですね。そういたしますと、実際上として、選挙運動にあるところの事務員に数のしわ寄せをするということに私はなると思うんです、この問題は。そうすると、実際三十人なら三十人だと決められたところの枠の中で、たとえばうぐいす嬢が二人か三人かあったということになれば、逆に、二の二項にあるところのいろいろな選挙に従事するところの事務仕事にむしろしわ寄せを来しはしないか。もしずっと別だという解釈に立つならば、むしろうぐいす嬢別枠に二名なら二名、三名なら三名とこうやって、選挙運動がより活発にできるような形でやるのが筋じゃないだろうかとも思うのでございますけれども、その点、衆議院段階におきましては依然として枠の中に入れようというお考えのようでございますけれども、そこは一体何か議論されたことでもありましたら御答弁をお願いしたいんですが。
  10. 久野忠治

    衆議院議員久野忠治君) ただいまの御指摘はある程度理解できるところではございますが、しかし、衆議院特別委員会においてはそのような議論はございませんでした。  そこで、まあ事法律の中の解釈の問題でございますので、政府委員にその点につきましては答弁をさせたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
  11. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) ただいまお尋ねの件につきましては、たまたま私ども衆議院公職選挙法特別委員会議事に参与いたしておりましたので、伺っておった点について申し上げるわけでございますが、やはりいま久野委員長から御説明のありましたような趣旨によりまして、現行制度のもとでは、しかも最高裁判所判決によれば、選挙運動員としてとうてい報酬が支給することができないという範疇に属するいわゆるうぐいす嬢につきまして、これを法制化することによって報酬一定範囲内で支給することができるということにすることが、これが意味があるのであって、いたずらに人数をふやすというようなことについては今回の論議の趣旨とするところではない、こういうことからいたしまして、人数をふやす、あるいは別枠にするということにつきましては、そのような考え方はむしろ採用しないと、こういう御意見の方が強かったわけでございます。
  12. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 政府委員、その点は、衆議院段階議論はそれでいいんですけれども、しかし本当は筋が合わないんですよね。労務者でもない、二の二項のいわゆる選挙運動に従事するところの事務員でもない、もう一つ別にとらえておるわけでしょう。そうすれば、当然やっぱりそれ専用の報酬を払うことの対象にするのを二名あるいは四、五名は置くということが、これはおたくのこの修正をされたところの趣旨から言えば筋が通るのじゃありませんか。二の二項にも入らないというのですか、一般事務にも。しかも、選挙運動というものについてできるだけオープンにやろうというお考えに立つとするならば、そのことは私は必要だと思うのですよ。余りにもこれは、変えながら現行法人員の中に詰め込もうとするところに私は本当に無理があると思うのです。これは今後の一つの課題でございますけれども、一応この点は今後の検討に値するところの問題点じゃないだろうかと思うので、その点だけは御指摘申し上げておきたいと思います。  それで、続いて質問をいたします。これは投票権行使拡大の問題でございますから、大臣並びに政府委員の皆さんにお尋ねしたいのですが、五月二十四日の、在宅投票事件札幌高裁判決、これをどういうふうに理解をされておりますか。
  13. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 御承知のように、札幌高裁におきます判決は、在宅投票の事案でございまして、経過的には、昭和四十六年に佐藤さんとおっしゃる方が国家賠償の請求の提訴をされまして、一審では被告である国が敗訴、そして五月二十四日に第二審の判決がございまして、判決の結果といたしましては、被控訴人敗訴、すなわち国が勝訴いたした、かような結果でございます。  ただ、結果といたしましては第二審において国が勝訴いたしたのでありますけれども、端的な言い方をいたしますならば、その中身といいますか、判決の要旨につきましては、果たしてこのことは正しいのかというような懸念を持たざるを得ないような点も二、三あるのでございます。そして、きょうが上告期限最終日に相なるのでございまして、被控訴人上告なさるかどうかはうかがい知る余地もないのでありますけれども判決の結果の内容について疑念を持ちながらも、しかし訴訟それ自身は控訴人の勝訴、すなわち国が勝った、かような形が出ておりますので、法的には上告は不可能である、かように判断をいたしておるところでございます。
  14. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 具体的にお聞きしたいのですが、たとえばこの判決文の中に、「昭和四十四年以降の本件立法不作為は、被控訴人選挙権を侵害したものとして違憲、違法であった」云々というのがございますね。このことと、いわゆる四十九年の第七十二国会改正をしましたところの現行法ですね、在宅投票の。これとの関連でこれを見ますれば、ここに言わんとするところの趣旨は、札幌高裁で示されたところの趣旨は、この四十九年に改正をされたところの現行法で十分生かされておる、こういうふうにお考えですか、どうですか。
  15. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 御承知のように、在宅投票制度はかつては非常にその範囲が広かったのでございますけれども、たしか昭和二十六年の地方選挙であったと記憶をいたすのでございますが、あの地方選挙経緯にかんがみまして、昭和二十七年に、在宅投票制度を閉ざしてしまう、かようなことで廃止に相なりましたまま十数年を経過いたしました。そして昭和四十九年の法改正が行われて、五十年三月の選挙からこれが適用に相なって今日を迎えておる、かようなことでございます。そこで、その間の小樽地裁並びに高裁におきましての今回のこの事件でございますので、いま宮之原議員の御指摘にございましたように、判決理由の骨子をながめてみますと、「昭和四十三年以前の本件立法不作為は、違憲、違法ではない」けれども、「昭和四十四年以降の本件立法不作為は、被控訴人選挙権を侵害したものとして違憲、違法」である、かように示されておるのでございますけれども、しかし、訴訟を提起されました佐藤さんとおっしゃいます方は、現在は法改正によりまして在宅投票権利をお持ちである、かようなことでございます。そこで、在宅投票が禁止されておりました段階での訴訟でありますだけに、現時点におきましてはかような複雑な判決にならざるを得なかった、かように考えております。  そこで、在宅投票行使拡大についての御質問でございましたけれども、私ども昭和四十九年の法改正による現行制度で足れりと、かようなきつい考え方を持っておるものではございませんで、今後拡大につきましては検討いたしていくべきだ、かような考えでございます。
  16. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 いま大臣から御答弁いただきましたように、これはやっぱり憲法の保障するところの選挙権というのは国民の基本的な権利の中でも一番重要な権利だという私ども理解に立っておりますし、また、その点、この基本的権利行使のために、在宅投票の問題についても今後拡大をする方向で積極的に努力をしたいということでございますが、御承知のように、現行在宅投票権はその対象者がきわめて限られておるわけですね。いろんな統計を見ましても、いわゆる重度の身障者が十二カ三千人もおるんだけれども、たとえば前の総選挙のときの実際の在宅投票者は一万三百人か四百人前後だという統計しか出ておらない。だとするならば、まだまだ一割前後しかやはり適用されておらないという点では、これはこの法文の中に明記され政令の中に出ておるところのいわゆる二つの条項をもっともっと広めるところの方策というものを積極的にとらない限り、幾ら今後拡大をしていきますとこう言われても、私はこの問題については十分な処置ができておるものだと思わないんです。これは四十九年の法改正のときにも議論をされたようでございますけれども、その対象者をもっと具体的に広げるところの方策というものを検討しておられるのかどうか。  それと、いま一点は、時間もありませんので引き続いてお尋ねいたしますけれども在宅投票ということだけでは、この選挙権の問題を十分に国民行使してもらうというためには不十分じゃないか。たとえば寝たきりの人が三百万人おる、こうなりますと、いわゆるこの自署名主義郵便投票方式だけではなくして、たとえば、これまたそのとき私ども社会党としても修正案を出した経緯もあるわけでありますけれども巡回投票という方式もやはりこの際積極的に検討して、そして国民選挙権拡大をしていくという方策をやらなければならない時期に来ておると判断をいたしておるわけでございますが、その点、自治省当局としてどういうような検討をされているか、お聞かせいただきたいと思います。
  17. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) まず、現行制度運用面について御説明いたしますと、仰せのとおりこの現行制度、つまり重度身体障害者方々について新たに昭和四十九年に道が開かれました在宅投票制度事由に該当される方々と申しますと、おおむね十一万人から十二万人の程度というふうに当時承知しておったわけでございます。それに対して、選挙の実績はどうかということになりますと、これもまたいま御質問中に御指摘がありましたとおり、大体最近におきます大きな選挙におきまして、一万三千人ないし一万四千人程度方々がこの手続によって投票されているわけでございます。ただ、この手続によって投票された方だけが投票された方というわけではございませんで、統計的に見てみますと、実はこのほかにも、これらの対象方々が、仮に指定病院等に入院中でございますと、指定病院病院長不在者投票管理者とする投票という道がございまして、そういった方で別の不在者投票をなさっている方がある。それからまた、いままでの投票の仕方になれていらっしゃる、その延長ということでございましょうか、親戚や知人の方々の介添えによりまして、選挙の当日投票所に赴かれまして投票されるという方もありまして、選挙の際に一部の市について抽出の調査をいたしてみますと、こういったようなこの制度以外の制度を利用して投票されました事由該当方々というものを合わせますと、実は相当のいわゆる投票率になっているわけでございます。しかし、そうは申しますものの、これは一般方々投票率にはまだ及びませんで、これをもってもちろん十分ではございませんで、もっともっとこれらの方々投票というものを可能にしなければならないと思うわけでございます。  そこで、現行制度運用といたしましては、さらにこの制度についての周知徹底、PRを図りまして、一段とこの制度が利用されるように図りたいということが一つでございます。  それから、今度はこの現行制度対象になっておられません方々、まず考えられますことは、いわゆる寝たきり老人といわれる方々考えられるわけでございますが、実は寝たきり老人という方々につきましても、昭和五十二年度の厚生白書におきましては、推計調査結果といたしまして約三十三万人程度ということに相なっております。しかし、これらの方々につきまして何らかの道を開こうということで検討をいままでもいたしましたところ、これにつきましては、寝たきり老人という方々の定義と申しますか、どういう方々がこの範囲に該当されるかというようなことを見ます場合に、非常に各府県あるいは各市町村におきます扱いというものはまちまちでございまして、現在のところとうてい、全国的な制度に持ち上げるに足ると申しますか、そういう一方では事実の把握、一方では公の証明という手段が見当たりませんで、さらにそのほか、投票の際の公正確保手段などについてもまだ踏み切るというところまでまいりませんで、現在のところここまで制度を拡張することができないで今日に至っている、こういう状況でございます。  それからさらに、巡回投票というような制度考えたらどうかというお尋ねでございますけれども、これも、やはり制度として採用します場合には全国的な制度になりますので、たとえば大都市における状況とか、あるいは離島における状況というようなことをお考えいただいただけでも御理解いただけるのではないかと思うのでありますけれども、現在の選挙管理委員会の持てる能力をもってはとうていこれを処置することが困難であるというようなことからいたしまして、なかなか巡回投票という制度にも踏み切ることができないでおるというのが現状でございます。
  18. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 時間がありませんから……。  いまの答弁にしても、私は非常に問題点を感ずるんです。ただ、相当数が別な救済でやられたとか、困難があるという、そういう抽象論では私は片づかないと思うんですね。だから、いずれ機会を改めてその問題はお尋ねしますけれども、もっとやっぱり積極的に、こうこういう方法があるけれどもここに問題があるとか、これを解決するためにはどうすればいいか、言うならば国民選挙権をいかにして拡大をして行使させるかという立場に立って御検討をいただきたいと思うんです。  最後に、海外在住者投票権という問題が大きな問題になっていますが、その問題についてどの程度検討をなされておるかという点をお聞かせ願いたいと思います。  同時に、これは大臣お尋ねしますけれども、総理は、先般の参議院予算委員会で、参議院選挙制度の問題について改革するんだ、特に全国区の問題など、積極的な意欲を見せておられた。ところが、その後ナシのつぶてですね。新聞にはいろいろ報道されておりますけれども、与党の中でもまとまらないようでございますが、一体政府としては、今度の国会に出しますとあれだけ約束しながら、もう会期もあと十日前後しかないという段階の中でいまだにその徴候さえ見せておらないんですがね、あれは空約束なんですかね。一体どうされるのか。そこらあたり、私はやっぱり所管大臣として責任もあると思いますから、この点を明確にしていただきたいことを特に御要請申し上げて、質問を終わります。
  19. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 海外在住者投票の問題でございますが、こういった場合に話題になります海外在留法人の数といたしましては、外務省の調査によりますと、いわゆる永住者の方、永住権を取得されております永住者方々、これは五十一年十月の調査でございますが、約二十六万人おられます。それに対しまして、永住者を除きまして三カ月以上海外に滞在する方々、これを長期滞在者というふうにくくっているわけでございますが、これが約十五万人いる。合わせまして約四十一万人という数字があるわけでございます。そこで、これらの方々投票権行使についてしばしば国会においても話題になりますし、私どもといたしましてもかねてから検討は続けているわけでございますけれども、何分にもこれらの方々につきまして、どういう範囲方々について、それからどのような名簿登録の仕方によってこれらの方々投票資格というものを考えていくかという問題が一つ。それから、これらの方々につきまして公正な手続投票というものをしていただくのにはどういう仕方があるか。つまり、不在者投票の方法によるのか、それとも在外公館に行っていただいて、その現場で、ちょうど投票所で行います投票のような、投票というような方式をとるのかどうか、その場合に、全世界に散在します在外公館でこのような仕組みを採用していただけるかどうかという問題。それから、さらに、限りあります選挙の期間の中で、投票用紙を送ることから、あるいは投票から、そうしてさらにその投票を内地の方に送致をするというようなこと、こういったようなことが、この限りある期間の中に可能かどうかというようなこと、非常に検討すべき問題が多うございまして、まだこれらの点について踏み切るというところまで至っていない状況でございます。
  20. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 参議院選挙制度の問題につきましては、これまでもしばしばお答えをいたしてまいっておるところでございまして、政府といたしましては、参議院選挙制度改正につきまして決して熱意を失っておるわけではございませんで、むしろ各党間の合意が早くできますことを期待をいたしましてじっとしんぼうして待っておる、かような心境でございます。  申すまでもなく、参議院選挙制度はきわめて重要でありますし、かつまた非常にむずかしい問題でもございますから、なかなか円滑に進行いたしてまいらない。相撲で言えばいわば土俵づくりのようなものでございますから、一党だけが先行いたしまして他の党が全くその反対の考え、かようなことでありましても土俵づくりとは言いがたいのでありますから、各党間のあらかたの合意を得ますことが最も必要であろうかと、かように考えております。昨年の第八十国会におきまして各党から案が国会に上程され付議されたのでありますけれども、御承知のような、合意を得ないままに相なってしまっておると、かようなことでございます。政府といたしましては、その熱意を失うどころか、この機会に改正をいたしませんと、次の参議院議員の選挙には次第次第に間に合わなくなってくる、かような焦りさえ持っておるのでございまして、各党におかれましても早く論議を煮詰めていただきまして、そして御審議願えますような、さような御配慮をいただきたい、かように思う次第であります。
  21. 宮之原貞光

    宮之原貞光君 質問を打ち切るつもりでしたけれども、それぞれの政党にみんな責任をなすりつけるというのはおかしいじゃないですか。これはやはり政府がイニシアをとって、一つのたたき台でも示して、それぞれ各党の合意を得るように努力するというのならいざ知らず、御自分の方は何も出さぬでおって、各政党が出してないからと言うのは、私は責任転嫁もはなはだしいと、これだけ申し上げておきますよ。  終わります。
  22. 多田省吾

    ○多田省吾君 最初に、議案に対して質問をいたしますが、これは本年の一月の二十六日の最高裁判決に基づいた法案であると思います。それで、いわゆる最高裁判決について、その理由を見ますと、連呼行為というものを、「機械的労務行為ではなく、」て、「正しく選挙運動」であるとした理由を見ますと、「通行人や場所的状況に応じてその呼びかけの回数、方法、演出等にも裁量の余地がないわけではないから、」「たとい機械的な労働であっても、」より積極的に「当該候補者のため投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」を行う目的で「当該行為に出たと認められる場合」は「選挙運動にほかならず、」というような趣旨であると思います。私は、これに対して非常な疑問も多数ございますけれども一つには、この最高裁判決に従って、もう報酬は全然支払わないというやり方もあるわけです。ただ、こういう法案にして報酬を支払うようにした理由というものを衆議院委員長はどう考えているのかですね。  それからもう一つは、「専ら」車上「における選挙運動のために使用する者」とありますけれども、実際的な行為としては、車上の流し連呼もあるでしょうし、車上の街頭演説もあるでしょうし、車上の街頭演説の場所における連呼、こういった三つの行為考えられますけれども、「専ら」ということで、この三つだけに区別できるものかどうかですね。  それから三つ目は、この車上の連呼行為そのものは「機械的労務行為」と見たのか、それともはっきり選挙運動と見たのかですね。私は、この法案を見ますと、車上の選挙運動に限っては運動員たる事務員報酬を支払うというような趣旨に思いますが、どう考えておられるのか。この三つを衆議院委員長質問したいと思うんです。
  23. 久野忠治

    衆議院議員久野忠治君) ただいま御指摘のように、この法案提出をいたしました理由は、最高裁判決によるものでございます。お話しのように、最高裁判決には、「選挙に関し候補者のために行われる行為は、たとい機械的な労働であっても、」「その行為の目的のいかんによっては選挙連動にあたる」としているわけでございます。「候補者の氏名を連呼して投票を勧誘する行為は、選挙民に対し直接に投票を勧誘するものであって、」「選挙連動にほかならず、」と言っておるわけでございますから、本改正案もまた、車上の連呼行為選挙運動に当たることを前提といたしまして、このような立案をいたしたものでございます。  それから、現行公職選挙法におきましては、選挙運動に従事する者のうち、選挙運動のために使用する事務員に限って、一定人数範囲内で報酬を支給することが認められていることは御指摘のとおりでございます。今回の改正案には、この選挙運動のために使用する事務員とは別に、「専ら」選挙運動用自動車等の上「における選挙運動のために使用する者」についても報酬の支給を認めようとするものでございます。  そこで、「専ら」というこの用語の意味についていろいろ御質問がございました。この点につきましては、先ほど提案理由説明で申し上げましたように、車上におきまする連呼行為本務とする者を主としたものでございまして、そのような際に、ただいま御指摘のような連呼行為以外の運動を行う場合が私は選挙運動の実態からいきまして間々あると思うのでございます。たとえて申し上げますれば、車上において演説をする場合もありますし、あるいはまた演説をする者を紹介する場合もございます。これは連呼行為ではございませんが、紹介する場合もございます。あるいはまた、桃太郎と称しまして、標旗を持って街頭を歩いて連呼行為をする場合もございます。いろいろの選挙運動の実態いらいきまして、そのような実態に即して、これらの選挙運動者が選挙運動を行うことにつきましては、やはりその本務を主体にすべきである、かような意味から「専ら」という用語を使ったような次第でございまして、御理解を賜りたいと思うのでございます。
  24. 多田省吾

    ○多田省吾君 私もわからないわけじゃありませんが、政府委員に対して御質問しますけれども、こういう法案ができますと、連呼行為がはっきり二つに分かれてしまって、質の上で差が生ずることになりはしないかと思うんです。一つは、いわゆる車上の連呼行為、流し連呼は、選挙運動であっても報酬を支払うということ。それからもう一つは、今度は演説会場や街頭演説の場所におけるいわゆる連呼行為ですね、これはもう報酬を支払えない選挙運動たる連呼行為ということになりますから、同じ連呼行為であっても、報酬を支払うもの、支払わないものということで、質的な差を生ずることになるんじゃないかなと、このように思いますが、この点はどう考えていますか。
  25. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) いまのお尋ねについてお答えいたします場合には、やはりただいま委員長からお話のありました、「専ら」選挙運動用自動車等の上「における選挙運動のために使用する者」、つまり、言いかえますと、選挙運動用自動車等の上において連呼行為等選挙運動を行うことを本務として雇用された者という、この今回加わりますいわゆるうぐいす嬢の定義、これが関係してまいると思うのでございます。これらの、本務として車上の選挙運動等に従事する方々についてのみ今回新たに報酬の支給が認められたことになるだけでございまして、いま多田委員から御質問のありましたような、これが認められると連呼というものが異質になるのではないかというお話でございましたけれども、連呼行為に関する考え方というものにつきましては、従来と同じ考え方で進んでまいるというふうに考えるわけでございます。つまり、運動の形態が異質になるのではありませんで、いろいろあります中で、車上の連呼行為等選挙運動に従事することを本務とする人に対してのみ報酬が支給されることになるというだけでございまして、運動形態が異質化するということは考えられないわけでございます。
  26. 多田省吾

    ○多田省吾君 それからもう一つ心配なのは、もし改正した後に、やはり、もっぱら車上における連呼行為というものは選挙運動であるとしても、これはもう報酬は支払うことができるんだということになりますと、選挙運動なんだからということで車上の連呼行為が、演出を含めたところの演説まがいの連呼行為になるおそれ、その流行のおそれが多分にあるんじゃないかと思いますが、それはどうお考えになりますか。
  27. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) これにつきましてもただいま申し上げたとおりでございまして、うぐいす嬢報酬が支給できることになるというだけでありまして、運動形態については変化があるとは考えておりません。すなわち、この今度の改正法の定義におきまして、車上において選挙運動に使用する者という言葉が使ってございますけれども、本来でございますと、うぐいす嬢の最も典型的な例は車上において連呼行為をするという場合でございますけれども、しかし、また、停止した車上におきまして若干内容のあります演説にわたることをすることもありますので、それもまた含めますと、結論的には幅広い方の車上の選挙運動という言葉に相なったことと思う次第でございまして、あくまで定義しようとするものはうぐいす嬢ということでございますので、この規定が入りましたことによりまして連呼行為が演出を伴う演説まがいのことになるということはこれは許されないわけで、あくまで車上において流しで行えるのは、これは連呼行為に限るということに相なるわけでございます。
  28. 多田省吾

    ○多田省吾君 じゃ、いまおっしゃったような、車上において連呼行為にとどまらず演説まがいを入れたいわゆる純然たる選挙運動のようなことをすれば、結局違反ということですか。
  29. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 連呼行為として許される範囲のものをやるのが連呼行為であると考えます。
  30. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、在宅投票制度について一、二質問したいと思います。  先ほど大臣から所見が述べられましたけれども昭和五十二年九月十日現在の有権者で見ますと、在宅投票できる有権者は六百九十八人に一人、ほぼ七百人に一人でございますが、在宅投票制度復活について非常に啓蒙が少ないように思えるんです。東京の荒川区の調査によりますと、該当者百九十四名のうち証明書の交付を受けた者は四十二人しかいない。それから、この郵便投票は、該当者全国で十一万三千人のうちわずか一万三千人しか投票していない。しかも次第に減ってきている。ですから、私は、いわゆる政治不信ということも多分に影響していると思いますが、やはり啓蒙の仕方がおろそかになっているということもありましょうし、また先ほど宮之原委員の御質問にもあったように、私ども昭和四十九年の在宅投票制度復活の際に巡回投票も実施するようにという主張をしたのですが、入れられなかったわけでございます。ノルウェー等を見ますと、一九〇七年の記録によれば、選挙人の六二%が郵便投票をやったそうでございますが、四十九年の改正のときの附帯決議にも、状況の推移を見てさらに拡充を検討するとあったはずでございますし、この今度の高裁判決を踏まえて、私は、啓蒙のあり方あるいはこれを拡充する方向で検討すべきではないか、またある場合にはこの巡回投票も加味した方がいいんじゃないか、このように考えますが、大臣はどう思いますか。
  31. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 先ほど宮之原委員にお答えをいたしたのでございますけれども、今回の在宅投票事件判決の中にもいろいろ示されておるのでございまして、選挙権という基本的な権利が尊重されなければならぬことは申すまでもないのでございまして、この考えはまさにそのとおりでございますけれども、同時にまた、選挙が公平に行われ、公正、公明な選挙を確保しなければならぬこともこれまたきわめて重要なことでございます。  そこで、昭和四十九年の復活に当たりましては、従来の経緯にかんがみまして、いわばきわめて慎重な復活であったと、かようなことが言えようかと思うのでございます。しかし、今後十分に検討をしていかなければならぬのでございまして、先ほど選挙部長から、検討してまいるに当たりましてのいろいろむずかしい点などの指摘がございました。しかし、現在の制度におきまして十一万人を超えますような資格者がいらっしゃるのに、実際はその十数%の投票者しかございませず、かつまた、四カ年間有効の証明書を交付されております数もまたきわめて低いという状況からいたしまして、やはり御指摘のように啓蒙運動が必要でありますことを痛感をいたします。拡充につきましては、いま申し上げましたように、今後十分に検討をいたしてまいりたい、かように考えておる次第であります。
  32. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に、参議院地方区の定数是正について二問だけ質問しておきます。  新聞報道によりますと、自民党は参議院選挙制度改正案を今国会提出することはもう事実上見送ったというように報道をされております。だが、私は、全国区の改正については見送りは当然の措置であると思いますし、福田総理に対しましても、やはり審議会を再開するとか、あるいは国民の幅広いやはり討議が必要である。ですから、拙速に陥らずに十分時間をとって検討すべきであるということを主張したわけでございます。しかし私は、地方区の定数問題は憲法にかかわる問題でありますし、他の改正問題と切り離して、次の五十五年度通常選挙から新定数で実施すべきである、このように当然思います。代々の自治大臣は、第六次選挙制度審議会の報告のときもあるいは第七次のときも、定数是正はやりますやりますと、このようにしょっちゅうこの委員会で答弁したのに、全然行われていないわけです。  それから第二番目に、自治大臣はこの前の参議院の予算委員会で、参議院地方区の現在の定数状況は憲法違反ではないというような答弁をなさいましたけれども、私は憲法違反であると思っておりますし、また、正確に言えば憲法違反の疑いが非常に濃厚であると、このように思うわけでございます。昭和四十九年の最高裁判決では、「極端な不平等を生じさせる場合は格別、」云々、——まあその程度では極端な不平等には当たらないということで、四・〇九倍のときには憲法違反ではないということで、そういう判決でございましたけれども、御存じのように、その後の昭和五十一年の判決では、やはり衆議院の定数問題を憲法違反としておるわけですね。それに対して、そのときの内閣法制局長官吉國長官とか、あるいは、その当時は次長であった真田次長等は、この判決は衆参両院にまたがるものだと。また、真田次長も私の質問に対して、現在の参議院地方区の配分規定というものを「最高裁判所はやはり違憲だと言うかもしれません。」ということも答弁しているわけです。これは最高裁答弁がない以上は、はっきりした、であるとは言えませんけれども、でないということも言えないわけですよね。私は非常に濃厚だと思うんです。しかも、衆議院判決は、四・九九倍でも違憲判決だと。参議院の場合は、神奈川と鳥取の間は五・五〇倍ですわ。私は、そのほかのいろいろな条件はあろうとも、これは違憲の疑いが非常に濃厚であると、このように思うわけです。大臣はどう思うのか、この二点に関して御答弁をいただきたいと思います。
  33. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 先ほど答弁をいたしましたように、選挙制度改正はぜひやらなければならぬという基本の考え方につきましては各党のほぼ一致した合意があろうかと思うのでございますし、また、ただいまの定数是正につきましては、定数是正をしなければならぬという方向でもほぼ各党の考え方一致していると思うのでありますけれども現行定数内における是正を行うか、あるいは定数増を含めての是正を行うかと、この点で各党の意見一致を見ておらない現況でございます。したがいまして、政府といたしましても、先ほど申しましたように、各党間の合意ができるだけ出てまいりますることを待っておると、かような心境でございます。  それから、二番目の御指摘の、憲法違反の疑いがある、現行定数は憲法違反ではないか、かような御意見や御指摘でございました。昭和四十九年の判決のことにもただいまお触れになったのでありますけれども、あの最高裁判決衆議院選挙のことに関することでございました。が、しかし……
  34. 多田省吾

    ○多田省吾君 四十九年は参議院ですよ、五十一年が衆議院
  35. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 失礼しました。五十一年が衆議院選挙のことに関することでございました。——しかし、衆議院の場合と参議院の場合では別表への付記の書き方が違いますことはここで議論せぬでも御承知のとおりでございまして、人口の変動があれば必然的に更正をなすのが常であるという考え方衆議院の場合は明確に示しており、したがって憲法違反だと、かようなことでございましたが、参議院の場合は、やはり地域的な性格をも加味いたしまして、半数改選の制度からいたしまして二人ないし八人、かような現行制度でございまして、私は直ちにこのことが憲法違反になるとは考えておらないのでありますけれども、しかし、衆議院のあの判決の中に一票の重さにつきましての指摘があるのでございますから、さような精神は当然くみ取っていくべき性格のものだと、かように考えております。
  36. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、いまの御答弁、どうしても納得できないんですがね。衆議院の場合は、いわゆる国勢調査のたびごとに改正するのを常とすると規定があるからと言いますけれども、代々の自治大臣は、これは訓示規定であって義務規定じゃないんだということで、それをもって必ずこの定数是正をしなくちゃいけないということにはならないということを答弁してきたわけですよね。その規定を盾にとって、衆議院の場合は憲法違反になるけれども参議院はその規定がないから憲法違反にならないなんて、そんなばかなことはないですよ。だから自語相違するじゃありませんか。参議院にそういう訓示規定はなくとも、私は精神の上からあると同じだと思うんです。やはり五・五〇倍のような不均衡がある以上、衆議院の場合は四・九九倍でもう違憲になっているわけです。四十九年の参議院判決のときだって、もう大きい不均衡の場合は違憲であるという旨の判決があるわけですよ。まだ小さいから違憲じゃないと言っているたけで。五・五〇倍にも大きくなって——いろいろそれは面積とか、まあ衆参の違いも若干ありますよ。しかし、投票価値の平等ということにおいてはこの判決は同じ精神だということは、法制局長官も次長もはっきりこの場所で言っているんですから、私は納得できない。ですから、私は憲法違反の疑いが濃厚であると言っているわけです。それで、真田次長も、その当時、最高裁判決があれば違憲という判決が出るかもしれないと、はっきり言っているわけです。  もう一度御答弁願いたい。
  37. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 最高裁判決にも一票の重さに関しまして記載がなされており、そのことは、記載があると否とにかかわらず、当然重いことは申すまでもないことでございまして、その点私はいま最後に申し上げたようなことでございますが、だからといって、現在の参議院の定数が直ちに憲法違反であるかどうかにつきましては、私は、さような判決があるわけでも現在はないのでございますから、憲法違反ではないと言わざるを得ない現状でございます。しかし、疑いありと、かような多田委員の御指摘でございましたら、それは最高裁判決をまたなければならぬと、かように言わざるを得ないのでございます。
  38. 多田省吾

    ○多田省吾君 じゃ、参議院の予算委員会でおっしゃった憲法違反ではないという御答弁は、これは撤回されますね。
  39. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 私は、憲法違反ではないという言い方をいたしたかどうか、いま正確には記憶をいたしておりませんけれども、少なくも最高裁が憲法違反なりという判決を下さない限り、形式的には憲法違反という事実はないと、かように言わざるを得ないと思います。
  40. 市川房枝

    ○市川房枝君 私は、いま議題となっております公職選挙法改正については、最高裁判決の結果に従ったものであり、その内容は、現状のままで特に費用がふえるわけではないので、賛成をするつもりでございます。ただ、念のために提案者及び政府当局に対して一点何っておきたいと思います。  私は、いわゆるうずくい嬢の行動は、最高裁解釈どおり、労働者ではなく選挙連動者だと前から考えております。この判決に対して、衆議院選挙法改正特別委員会がいち早く改正案提案されたことに敬意を表しますが、これは政府当局、自治省当局提案をなさるべきじゃなかったのかとも思いますけれども、その辺の経緯がどういうことになっておりますか、提案者並びに自治省当局から伺いたいと思います。
  41. 久野忠治

    衆議院議員久野忠治君) 選挙制度そのものは、私がいまさら申し上げるまでもなく、やはり各党共通の土俵であることが望ましいと思うのでございます。そういう意味から、やはり各党それぞれでき得る限り合意を得た上で選挙制度改正するのが好ましいと私は判断をいたしております。さような意味合いから、今回の改正に当たりましては、各党に呼びかけをいたしまして御意見を伺いました。そして、皆さんにお諮りをいたしましたところ、各党とも、この際このような最高裁判決があった以上はやはり改正する必要がある、かように合意がなされましたので、その合意に基づいて、私は、五月十二日と五月二十五日の二回にわたりまして公選法特別委員会の理事懇談会を開かしていただきました。そうして、その懇談会の席上で、各党とも案文の作成等につきましては委員長に一任をされたわけでございます。  以上のような経過で委員長提案として成文化したものでございます。よろしく御理解をいただきたいと思います。
  42. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 公職選挙法におきましては、「選挙運動のために使用する労務者」に対しましては報酬支給を認めますものの、選挙運動員については無報酬を原則としていることは御承知のとおりであります。ただ、選挙の実情にかんがみまして、昭和三十七年の改正で、「選挙運動に従事する者」の中でも竹に例外といたしまして、「選挙運動のために使用する事務員」についてだけ報酬の支給が認められておるということでございます。そのようなことからいたしまして、したがって、それ以外の選挙運動員について報酬を支給することは違法であるということに相なるわけでございますが、今回の判決におきまして、いわゆるうぐいす嬢はいわゆる選挙運動員範疇に属するということが明確にされたわけでございます。一方におきまして、選挙運動員報酬という大きな原則というものはございまして、これを一方では堅持する必要があるわけでございますが、しかし、他方、いわゆるうぐいす嬢につきまして、選挙の実情を考えます場合に、報酬支給を要するうぐいす嬢があるという実態も私どもは伺っておるわけでございまして、この点について今回改正が論議されることは十分理解できるわけでございますけれども、しかし、私ども政府側からいろいろと物を考えていきます場合には、いろいろとまだこれに隣り合わせになるものと申しますか、機械的労務かのごとく見えるけれども、しかし、事柄の性質上選挙運動と定義されるというようなものもあるわけでございます。これらの点について、どのような範囲の方について報酬支給に踏み切るかということは、多分にこれは選挙のルールといたしまして、やはり各党間である程度の申し合わせとか合意とかいうものが成立するものでなければ、範囲を限定するということが困難でございます。そこで、各党のお話し合いにより、今回、うぐいす嬢に限って、車上の選挙運動本務とする人に限って報酬支給を可能にしようではないか、こういう合意に達しられたわけでございまして、そのようなものを議員側の御提案として論議されることはむしろ適切ではなかろうかと、こう思った次第でございます。
  43. 市川房枝

    ○市川房枝君 次に、この最高裁判決関連してでございますけれども政府の当局に伺いたいのは、この衆議院の定数のはなはだしいアンバランスは憲法違反だとの判決がありまして、政府国会もむしろ怠慢を最高裁から責められたと解釈をするのでありますが、これはそのままに放置されていることを、いま多田さんからいろいろと御意見がありましたが、私も非常に不満に思っているわけでございます。もっとも、あのときの判決衆議院に対する判決、これは大臣もいまおっしゃっておりましたけれども、ところが、あの判決の前に衆議院は二十名増員したということで逃げてしまったと言いましょうか、ところが、その後アンバランスはまたひどくなっているんですけれども、そのままに放置されている。それから、この判決衆議院なんだ、参議院は関係ないというような御意見がいま大臣からありましたけれども、あの当時国会で、当時の法制局長官ははっきりと、これは参議院にも適用されるべきものだということを言明しておられます。まあ参議院の地方区は委員会で検討しておりますけれども、まだそのままになっておるんですが、大臣、特に自治大臣、先ほどから答弁がありましたけれども、簡単にちょっとお考えをおっしゃっていただきたいと思います。
  44. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 私は多田委員の御質問にお答えいたしましたけれども、もし私の答弁が、定数是正の最高裁判決衆議院のみのことであって参議院には関係がないと申したような御理解でございましたら、それは私の真意とは違うのでございまして、私は、あの判決の中で一票の重さについて十分に述べておられるその精神は尊重しなければならぬと、かように申したのでございます。そこで、定数是正につきましては早い機会になさるべきであることは各党ほぼ一致した考え方でございますけれども、ただ、増員の方法によって定数是正を行うか、現行定数内において定数是正を行うか、この点で必ずしも各党の意見一致しているとは言いがたい、かように申したのでございまして、関係ないというのではございませんで、一票の重さは云々と、このことを御理解いただきたいのであります。
  45. 市川房枝

    ○市川房枝君 時間が短くなりましたので、最後の一つだけで終わりますが、これは改正案とはちょっと別になりますけれども、先般の予算委員会の一般質問で、私は、正式に規正法で規定をしておりまする第一号の団体、つまり、地方の都道府県の選管の所管になっておりまする地方の政党支部あるいは地方の政治団体の五十一年度の収支報告を調査した結果、一部に百五十万円という規定を超えた個別寄付がありまして、それを具体例を二、三申し上げたんですが、そのとき選挙部長から、それは調べてみるというお話しでございましたので、その結果がどうなったのかをお伺いしたいと思います。  それから、あのときは、まだ私ども調査、一部の調査だと申し上げたのでありますが、全都の調査ができましたのですが、それによりますと、総計だけいま申し上げますと、一道二十一県で五十九件違反があるわけであります。そして、違反分の合計の金額は一億二千六百五十三万円という数字が出ております。御入用でしたら、その具体的なのを書いたのを差し上げますけれども、その経過をちょっと簡単に。
  46. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 市川委員から、さきの予算委員会におきまして御指摘もありましたので、私どもの手元にありますところの各都道府県の県公報の点検から始めまして、それから各都道府県選挙管理委員会保管の収支報告書との照合あるいは事実の確認など、実情の把握に努めている次第でございます。ただ、言いわけになりますが、ちょうど昭和五十二年分の収支報告書の要旨の公表事務、これに追われておりまして、これと重なっております関係で、現在まだ約半分の都道府県について調査をした段階であることをお断りせざるを得ないわけでございますけれども、これは引き続き調査を行ってまいりまして、まとまり次第御報告したいと考えております。  そこで、これまで一応の調査を終えました約半数の都道府県の状況を申し上げてみますと、都道府県の公報上寄付制限額を超える寄付が記載されておりますものが、これは記載されているわけでございますが、六十件あったのでございます。しかし、これらのうちには、寄付者が実際には百五十万円の制限がない政治団体であるのに、過って会社等からの寄付として記載してしまったという申し開きがあったものが五件ほどございました。それからまた、先日の予算委員会で具体的に金額を挙げられましたところの北海道医師連盟に対する北海道医師会からの寄付の例について見ました場合には、同連盟が会員である個々の医師に呼びかけて個人の寄付を集めたところ、医師会がまとめて持参したために医師会からの寄付というふうに記帳してしまったと、こういう申し開きがあったようなものもありまして、これらに類するものが約二十七件ございました。といたしますと、合わせまして六十件中三十二件がいままでの間に申し開きがあり、しかも訂正報告を出したいというようなことを言っているそうでございます。といったふうに、政治資金規正法の違反に当たりませんことがすでに判明したようなものもあるわけでございまして、したがいまして、残る件数についても一体どのような実態なのかということも当たります反面、残っております府県分についてもこれからさらに調査を続けたい。まとまりましたら、また御報告さしていただきたいと考えています。
  47. 市川房枝

    ○市川房枝君 ちょっと大臣に一言だけ。  いま政治資金のお話をしたんですが、自治省では、地方の政党及び政治団体、それから政治資金団体ですね、これは第二号、第三号団体として届け出を受け、それの集計を発表しておいでになると、こういう状態なんですが、第一号団体ですね、地方の政党支部あるいは政治団体の調査は実はおできになっていなかったんですが、いまお話を聞きますとそれをやっておいでになるようで、大変だろうと思うんですが、私はやっぱり、自治省としては、その全部を調査するということに次の年からは方針をお変えになって、というか、そのためにやっぱり人手が要るでしょうから、政治資金課といいますか、選挙部の人手もふやして、そして調査して国民にわかりやすく知らせていただくということをお願いしておきます。  ありがとうございました。これで終わります。
  48. 内藤功

    ○内藤功君 まず、衆議院法制局にお伺いしたいと思いますが、改正案の中で、「専ら」「選挙運動のために使用される自動車又は船舶の上における選挙運動のために使用する者」と、こうあるわけですね。「専ら」それから「上に」と、こういう文脈になるわけです。アナウンサーの仕事は車の上また車の中が中心ですが、状況によって車の外におりてアナウンスをする、路地に入っていくとかあるいは路上での演説候補者について行くとかいう行為がありますが、こういう行為が付随し、またこういう行為をやることがあっても報酬支給は妨げるものではないと、こういうふうに解釈すべきだと思いますが、この点をひとつ明確にしていただきたい。
  49. 斎藤義道

    衆議院法制局参事(斎藤義道君) ただいまの問題につきましては、すでに久野委員長が御説明されたところと存じますけれども、なお私から申し上げますと、法文的に申し上げますと、いま言われましたとおり、「専ら」「自動車又は船舶の上における選挙運動のために使用する者」、こういうふうになっておるわけでございます。したがいまして、使用する目的はあくまでも自動車上等における選挙運動のためでございます。したがって、使用されておられる方々、この方々は当然のこととして車上の選挙運動をされるわけでございます。これがいわば本務でございます。しかしながら、この本務を逸脱しないという範囲、たとえば車上から時におりて街頭演説をされる方の御紹介をするとか、あるいは車上からおりて連呼行為をするとかあるいは演説をする、こういうことがございましても、いま申し上げました本務を離れるものではない、本務性を害するものではない、こういうことで、すでに委員長の御説明もありましたとおり、こういうことをたまに、あるいは時にやられても、それはこの報酬を支払う対象の方であるということで問題はない、こういうことでございます。
  50. 内藤功

    ○内藤功君 自治省にも、当然のことだと思いますが、一応確認のため御答弁を求めたい。
  51. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 私も、先ほどから委員長趣旨説明と同様に御説明しておりましたとおり、「専ら」ということの考え方は、車上の選挙運動等を本務とするという、本務として雇用された方と、こういうふうに理解いたしますので、ただいまの衆議院法制局の御説明のとおりと考えております。
  52. 内藤功

    ○内藤功君 次に、この法案を出されたことを誤解する向きがあるといけないので、私の方から、この法案の精神といいますか、という問題についてひとつ聞いておきたい。  私は、政党間の選挙戦については、党員、後援会、それから支持者というものが自発的な意思で選挙戦に参加をして、そして支持を競うというのが民主政治の基本だと思うんです。しかし、同時に、この国政の選挙や知事の選挙など比較的長い期間にわたる選挙戦では、アナウンスのような一定の技術を持った、技術を備えた人に長期間協力してもらっているというのも、日本の現実として存在する。従来「報酬を支給することができる。」とされている事務員方々と同様の扱いをするということには、私はそれなりに理解ができると、こう思うんです。ただ、この法案は、本来選挙というのは手弁当で、そうしてやっていかなきゃならぬ、これが私はやはり本当の姿ではないかと思うんですね、本当の姿。なるべく選挙というのは金がかからないように手弁当でやっていくと、こういう風潮が逆の方向に、何でも金を払う方向に持っていく——今度のこれは私ども賛成ですけれども、次に、今度はここに報酬拡大しろ、あそこに拡大しろというような風潮がこの選挙制度選挙法の立法の中に流れていくと、これは私はよくないのではないかと思う。この法案は、そういうできるだけ手弁当で、みんなが自発的に参加していくというよい意味の民主制度、民衆の参加の選挙測度を失わない、むしろそれはできるだけ手弁当でいくという、そういう風潮は今後も奨励していくんだと、こういうようなお気持ちが背後にあって、なおかつこれは、最高裁判決が出たからその矛盾を直していくんだというふうにわれわれは理解をすれば賛成することができると、こう思うんですが、ここらあたり、これは自治省の方からお答え願いたいんですがね。
  53. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 全く仰せのとおりでございまして、今回の改正は、従来報酬を支給することができなかった選挙運動員のうち、いわゆるうぐいす嬢についてだけ報酬支給の道を開こう、報酬を支給することができるようにしようという態勢であるわけでございまして、決して報酬支給を一般化するとか、あるいは義務化するとかという趣旨でないことは仰せのとおりであろうと思います。したがいまして、うぐいす嬢といえども、無報酬、手弁当で選挙運動に参加される方があるであろうことは、今後も同様であると思うわけでございます。したがいまして、今回の改正がそのような限定的なものでありますので、それ以外のものに広がるということはこの改正に当たっては考えておらない、こういうふうに理解するわけでございます。
  54. 内藤功

    ○内藤功君 次に、残された時間で関連した問題をお聞きしたいと思うんですが、五月の二十四日に、札幌高等裁判所が、在宅投票制度復活訴訟の控訴審の判決におきまして、昭和四十四年以降という限定はつけておるようですが、この制度を廃止したままにしてその復活のための立法化を怠ったのは、そういう国の行為は憲法に違反する、選挙権の侵害であるという趣旨判断を示したのですが、これはやはり国会としても重大な受けとめ方をしなければならないんですが、政府・自治省としては、これについてどういうお考えを持っているか。私は中座したので、前に御質問があるいはあったかもしれないが、あったとしても重大な問題なので、確認をしておきたいと思います。
  55. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) ただいまお話のありました五月二十四日の札幌高等裁判所の判決におきましては、在宅投票制度昭和二十七年に廃止をしたこと、そしてその後において復活立法がされなかったこと、こういうことにつきましての違憲、違法の判断につきまして、昭和二十七年八月に在宅投票制度が廃止された当時は、被控訴人——原告の方でございます。被控訴人、原告は投票所へ行って投票することができたから、在宅投票制度の廃止は、被控訴人に対する関係において違憲、違法ではなかったと、こういうふうに言われまして、そしてなお、昭和四十三年以前の本件立法不作為については違憲、違法ということは言わないけれども昭和四十四年以降の本件立法不作為は被控訴人選挙権を侵害したものとして違憲、違法であったと、こういう要旨の判決をされているわけでございます。  私どもといたしましては、在宅投票制度の廃止が、その以前の選挙の実態にかんがみまして、廃止自体がやむを得なかったというふうに判断をされ、しかも、いま申し上げましたように、被控訴人に対する関係でも違憲、違法ではなかったという御判断がありながら、その後におきまして、ある時期から違憲、違法になるということにつきましては、なお判決理由で言われております立論について、いろいろとまだこれについては重大な問題をはらみ、検討されなくてはならない問題があるのではないかというふうに感じておる次第でございます。  しかしながら、本件全体は、結論におきまして、判決は、「被控訴人の請求を棄却する。」、言いかえますと、国側の勝訴ということになっておりますので、この点については、もし仮に本日中に原告側、被控訴人の側におきまして特に上告ということをされませんと、これは確定してまいるわけでございます。政府側は、先ほど申しましたとおり、結論が国側勝訴ということでございますので、これはもう上告のすべがないことは御承知のとおりであるわけでございます。そういう考え方を持っております。しかし、別の角度から申しますと、本件の発端となりました原告の方あるいはそのような方の投票につきましては、これもまた御承知のとおり、昭和四十九年に新たに設けられましたところの、と申しますか、復活をいたしましたところの重度の身体障害者の方についての在宅投票制度によりまして、この方は投票が可能になっているわけでございまして、いまやその問題は解消していると思うわけでございます。もっとも、この新制度によりましてもなお投票することのできません方々につきましては、引き続き検討を続けていかなくてはならない、こう考えておる次第でございます。
  56. 内藤功

    ○内藤功君 高裁判決は、上告されないと確定するわけでしょうね。恐らく国は上告は不可能だろうと私は思います。そうすると、判決文の中の理由も、その訴訟では覆されないまま確定判決として残る。非常に権威のあるものになりますね。それで、いまも答弁の中にあったけれども国民が首長、議員を選ぶ権利というのは、これはもう国民権利の中で一番大事なものであり、しかも平等にこれは扱わなきゃならぬ、体の状態などで左右されちゃならぬ、これはもうあたりまえのことであります。いま選挙部長が答えたように、昭和四十九年六月に在宅投票制度の一部が復活しましたけれども、その適用を受ける有権者はどうですか。下肢、体幹の障害一、二級の人など約十一万人ぐらいにすぎないと思うんですね。私どもの党は、この四十九年六月の改正のときにも、すべての選挙人に平等に選挙権行使させるという立場から、これに対して修正案を出したのです。また、一般不在者投票手続がきわめて簡素化されているという点もあわせて勘案して、修正案を出しまして、対象範囲を、入院または自宅療養の一時疾患者、妊産婦、寝たきり老人にも拡大すべきだということを当時修正案提案した次第でございます。現に、疾病のために投票所に行くことができない在宅者は全国で三百万人にも上るということが言われておるわけであります。まあ、この制度に対する一部の悪質な行為がずっと昔にありましたが、それ自体はきわめて厳しく糾弾されなければならないけれども、そういう過去においての悪用の事例を唯一の理由として、三百万人という大台に上る選挙権行使の機会の平等を奪い続けるということは、私はこれは速やかに改めなきゃならぬと思うのです。もちろん、これは国会の問題でもありますが、同時に、これは政府・自治省の大きな課題でもあると思うんですね。緊急な課題だと思う。  それで、いま選挙部長はいろいろ判決の立論についての難点を御指摘されましたけれども、そういうことも大事ですけれども、同時に、やはりこれは頂門の一針というか、裁判所が裁判所の判決という形をかりて、民の声、天の声を言うという場合もぼくはあると思うんです。裁判所はそういう機関じゃないんだけれども判決という機会をかりて、判決の結論はこっちが負けでこっちが勝ちだけれども理由の中で、民の声をかわって言うということがあり得ると思う。私は、やっぱりそういうふうにこの事件は受けとめていかなくちゃいかぬと思うんです。やっぱり国会自身の、公職選挙法委員会自身の立法努力ももちろんのことですけれども、同時に、これは大局的立場で、どの方向に行くのか、これはもう判決で、結論はこうで、理由にも難点があるからというだけじゃなくて、これはもう大臣の問題になると思うんですがね。大臣いかがでしょう、こういう問題について、これからどういうふうに日本の選挙民の皆平等という精神に立つかという抱負をお聞かせ願いたいと思いますね。私はやっぱりそういう御決意をここで聞きたいと思う。
  57. 加藤武徳

    国務大臣加藤武徳君) 今回の在宅投票事件判決の内容をしさいに検討いたしますならば、結論がどうであったという、控訴審においては被控訴人敗訴であって控訴人の勝訴であったという、かような結論だけにとらわれた見方ではございませんで、やっぱり判決の内容をなしておりますものを詳細に検討すべきものであろうと、かように考えております。ただ、内容を検討いたしますと、やや疑念を持ちますような中身が、端的に言って、ないでもないのでありまして、たとえば国の選挙投票権と地方の選挙投票権の場合にどうもその重さに差をつけておるのではないかと、かような感じがいたしますような表現が見られたりするのでありますし、それから、制度の悪用はもう全くない時代に入ったんだ、かような見方をしていらっしゃるのでありますけれども、果たして制度を乱用したりすることが皆無かと申しますと、現在の状況におきましては、やはり心配が残らざるを得ないのでございますから、さような幾つかのことはありましょうとも、しかし、今回の判決をしっかり踏み締めて検討していかなければならぬと、かように考えます。  それから、この原告は、被控訴人は、すでに現行制度におきまして投票権行使が可能である制度改正ができておるのでございますから、この点は先ほど選挙部長が申したとおりでございます。が、しかし、十一万幾らの現行制度におきまする該当者の方々のうち、証明書を持っていらっしゃる、四年有効の証明書の交付を受けていらっしゃる方が四十数%、五〇%前後しかないのでありますが、実際の投票に当たりまして郵送による投票を行います方は、証明書を持っていらっしゃる方すべての方が投票していらっしゃるとは言いがたい現況等があるのでありますから、ですから、先ほども宮之原委員にお答えをいたしたのでありますけれども、やはりもっと広報、宣伝等に選挙管理委員会が力を入れまして、証明書のない方にもどんどん証明書の交付ができ得ますような、そういう努力もしなければならぬのでありますのと、同時にまた、これが拡大について検討いたしてまいらなければならぬ、このことを、先ほど申し上げたようなことでございますから、さようなことを包括いたしまして、自治省といたしましても最大の配意と努力をしていきたいと、かように基本的に考えておるところでございます。
  58. 内藤功

    ○内藤功君 やはり、いまの答弁の中の判決の結論ですとか、それから法律の論理の立て方に問題があるというような点は、これは大臣余りおっしゃらなくても、私は、考えてくれる人がほかにたくさんいる、法制局もいるし、選挙部長もいるんだから、問題は、この中に政治的に一番大事なのは何かと、できるだけ民主政治を発展させるための要素はこの判決の中にないかという意味で、その趣旨をよくくみ取って前向きに生かしてもらいたい、こういうことをお願いしておきたいと思うんです。  最後の質問になりますが、最近都道府県選管連合会及び市区選管連合会からの要望のうちで、不在者投票指定施設の拡充の問題というのが出されてきておる。労災リハビリテーション、精神薄弱者援護施設及び原爆養護ホームを加えるような所要の政令改正ということを求めておるのでありますが、いま挙げましたような施設は、いずれも、現行指定病院、身体障害者更生援護施設または養護老人ホームと実質的には何ら異ならないところの施設だというふうに思うんです。不在者投票制度がとにかく拡大の方向にということが一つの大きな流れであり、さっきの判決もそういう流れの上で受けとめなければならぬと思う今日、投票所へ出向くことのできない、介護を受けている入所者が、投票ができるように必要な政令を整えるということは、これは自治省の当然おやりになるべき仕事ではないか。ぜひともこれは、こういう要望に対処して前向きに積極的に努力をされてしかるべきものと思います。この点についての自治省のお考えを伺いたいと思います。
  59. 佐藤順一

    政府委員佐藤順一君) 結論を先に申し上げまして、これは私どもにとりましては検討課題であるわけでございます。  で、現状を申し上げますと、病院とか老人ホーム等、不在者投票を行うことができる施設といたしましては、公職選挙法の施行令五十条二項に挙がっておるわけでございまして、いずれも法令に根拠を有する一定の施設に現在は限定しているわけでございます。しかも、病院とか老人ホームになりますと、これは収容人員がおおむね五十人以上のものを指定するということにしているのが現状でございます。  このように不在者投票を行うことができる施設を限定的にいたしております趣旨と申しますのは、やはり選挙の公正を確保するために不在者投票の諸手続を適正に執行できるような体制、つまり選挙管理の体制というものが確保し得るということが、一定の客観的な基準によりましてその範囲を画することができるようなものについてこれを定めておるというのが現在の状況であるわけでございます。したがいまして、いま列挙されましたような施設について、この指定の範囲拡大する、また政令の規定の範囲拡大するということにつきましては、結局、いま申し上げました適正な管理が可能かどうかという見地からすることが必要でございまして、一方では、当該施設に対しますところの法令上の管理監督というようなものが制度的に保障されているかどうかなんということがやはり検討の材料になるわけでございます。  冒頭申しましたように、このことについては引き続きの検討課題といたしてまいりたいと思います。
  60. 秦野章

    委員長秦野章君) ほかに御意見もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 秦野章

    委員長秦野章君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べ願います。——別に御発言もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  公職選挙法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  62. 秦野章

    委員長秦野章君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 秦野章

    委員長秦野章君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて敬会いたします。    午後一時七分散会      —————・—————