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1978-06-02 第84回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年六月二日(金曜日)    午前十時九分開会     —————————————    委員異動  六月一日     辞任         補欠選任      岩上 二郎君     菅野 儀作君      岩崎 純三君     森下  泰君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         田中寿美子君     理 事                久次米健太郎君                 原 文兵衛君                 矢田部 理君                 小平 芳平君     委 員                 菅野 儀作君                 田代由紀男君                 林  寛子君                 藤井 丙午君                 三善 信二君                 森下  泰君                 山内 一郎君                 粕谷 照美君                 坂倉 藤吾君                 広田 幸一君                 中野  明君                 沓脱タケ子君                 柳澤 錬造君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  山田 久就君    政府委員        環境庁長官官房        長        金子 太郎君        環境庁長官官房        審議官      石渡 鷹雄君        環境庁企画調整        局長       信澤  清君        環境庁自然保護        局長       出原 孝夫君        環境庁大気保全        局長       橋本 道夫君        環境庁水質保全        局長       二瓶  博君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        環境庁長官官房        参事官      岩崎 壽男君        運輸大臣官房環        境課長      中島 眞二君        運輸省海運局総        務課長      山下 文利君        運輸省港湾局技        術参事官     久田 安夫君        海上保安庁警備        救難部航行安全        企画課長     渡辺純一郎君        建設省都市局下        水道部下水道企        画課長      高橋  進君    参考人        香川大学農学部        教授       岡市 友利君        入浜権運動推進        全国連絡会議代        表        高崎 裕士君        東京公害局水        質保全部長    田尻 宗昭君        全国漁業協同組        合連合会参事   浜崎 礼三君        日本弁護士連合        会公害対策委員        会委員      水野 武夫君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止  法の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院  送付)     —————————————
  2. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。まず、委員異動について御報告いたします。昨一日、岩上二郎君、岩崎純三君が委員を辞任され、その補欠として菅野儀作君、森下泰君が選任されました。     —————————————
  3. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案議題とし、本法案について参考人の方から御意見を聴取いたします。本日は、お手元の名簿にございます五人の参考人をお招きいたしております。この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。本日は、御多用中のところ、本委員会に御出席をくださいまして、まことにありがとう存じます。  ただいま議題といたしております法案は、ここ数年来、関係府県はもとより各方面から多くの提言や要望がなされるなど、広く国民関心を集めているところでございます。本日は、参考人の皆様に、それぞれのお立場から御意見を承り、本案審査参考にさせていただきたいと存じます。どうぞ忌憚のない御意見をお述べくださいますようお願い申し上げます。なお、御意見の開陳はおのおの十五分以内でお述べをいただき、その後、委員の質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、まず、岡市参考人からお願いいたします。
  4. 岡市友利

    参考人岡市友利君) 岡市でございます。実は、私、香川大学農学部昭和三十九年から奉職しまして、ずっと瀬戸内海海洋観測及びその他赤潮発生に関する研究を続けてまいっております。そういう立場から、本日は時間をいただいて、私の意見を述べさせていただきたいと思うわけでございます。この特別措置法は、当然、前回の臨時措置法を引き継いで、さらにそれを発展して制定されるものだと私たち理解しておりますが、私がこの法案及びその実施計画策定案を拝見いたしまして感じました点を、主に三つの点に要約してお話しさせていただきたいと思っております。ちょっと順序はまちまちになって失礼ですが、一つは、自然海浜保全についてでございます。私は、日本人が、といいますか、われわれが海洋民族であった時代というのは、いまNHKで放送している、呂宋助左衛門時代のような、あるほんのわずかな時代を除いて、恐らく海洋民族であったことはないのではないか。むしろこれからの二百海里時代を控えて、これからこそわれわれが海洋民族として発展すべき時代にきているのではないか。そういう時代を踏まえて、ことにこの瀬戸内海の問題を世界の問題としてもやはり考える必要がある。そういうときに、当然瀬戸内海が漁場として重要なことは法案にもうたわれていることでございますが、さらに、一般市民がそこでどういうふうにして海と接触するかということが非常に重要な問題であろうと考えているわけです。で、策定案の「計画の性格」としまして、「国民に対して瀬戸内海環境保全の目標を示し、その理解協力を得て、」ととうたわれております。いかにして理解協力を得るかというのに、ただ汚染の結果を示すだけでは決して十分ではありませんで、海そのもの市民が接触する機会を大幅に与えるということがきわめて重要になってまいります。  そういう意味で、たとえば環境庁がこの法案参考資料としてこの四月に提出しましたものに、「瀬戸内海海岸線状況」という資料がございます。その中で、瀬戸内海では、自然海岸が四〇%、半自然海岸が二四・一%、人工海岸が三五%として、それで、その純自然海岸と半自然海岸を合わせて六四・七%であるとしてあります。しかし、こういう取りまとめ方に、実は、私はかなり問題があるのではないかと考えております。瀬戸内海では、半自然海岸というのは人工海岸の方にむしろ入れるべき問題であって、自然海岸としての瀬戸内海をいかに保全するかということがもっと明確にならなければならないのではないか。たとえば東京湾では、純自然海岸が一〇%、半自然海岸が九・五%とされて、その合計として二〇%とされております。東京湾のようなところの半自然海岸はそれなりにまた半自然海岸として評価する意味があるわけでございますが、瀬戸内海では、半自然海岸自然海岸の中に入れることにどういう意味があるのか。こういう考え方一つ問題点があるかのように思っております。  二番目には、実はこれは環境行政問題点についてひとつ御指摘させていただきたいと思っております。  これは、瀬戸内海というのは、先日も実は大気汚染の問題、オキシダント問題について新聞で報道されていたことでございますが、たとえば新居浜とか愛媛県の東予地区発生した光化学スモッグ状況を、そのほかの山口、広島、香川状況と対比してみますと、そういうふうな光化学スモッグの起きたときにはやはり他県にも同じような状況が起きているということが報道をされております。こういうふうに、瀬戸内海の問題は決して行政区画で区切られるような問題ではない問題がずいぶんございます。たとえば私たちが面しております播磨灘、それから燧灘というかなり大きな開けた海がございますが、播磨灘調査をするときに、行政区画岡山県、兵庫県、徳島県、香川県と分かれておりますので、各県の水産試験場調査するときに、岡山県の水産試験場岡山の領域であるごく北西の部分だけ、兵庫県の水産試験場の船が来ますと小豆島の南までもなかなか来れませんで、それから南の香川県側は調査しない。香川県の船はもちろん兵庫県側あるいは淡路島寄りには行かない。そういう資料を突き合わせて一つ播磨灘像というものをつくっているわけです。そのこと自体にきわめて無理が一つあります。  そういった意味環境行政というのは、たとえばこの法案にも総理大臣から各府県の長に指導助言ができるというふうに書いてございますが、そういう立場ではなくもっと広い立場から、もし海を対象にするならば播磨灘一つ区域と考え、あるいは燧灘一つ区域と考える、周防灘を一つ区域と考える。そういった広い環境行政実施ということが問題になってきております。  このことは、単に海だけではなくて陸上と海との関係を考える上にもなお重要な問題が出てきているわけでございます。これは諸先生方はもちろん御存じのことで、工場排水都市排水の影響ということが議論されておりますが、最近ではさらに農薬の問題が漁業者の間では大きな問題として出てきているわけでございます。どちらも一次産業でございまして、私たちがこれから瀬戸内海沿岸で守っていかなければならないものですが、そういったものの中にやはりお互いの相互関係が生じつつあるということです。これは農薬使用に関する指導の問題も踏まえていろいろ問題があるということでございます。  そういう意味で、環境問題というのは決して地方行政の個々小さく区切られた中で解決できる問題ではないということでございます。これを考えてみますと、私は、多少きついことを申させていただきますが、現在の環境庁の姿勢と申しますか、そういうものに多少不満の念を禁じざるを得ないわけでございます。というのは、単に環境が調整問題であるのかあるいは行政問題であるのかということをやはりここでお考えいただけたら幸いかと思っております。こういったことが実は私の第三点の論点になるわけでございますが、きわめて研究体制不備につながってまいっているわけです。現在水産試験場研究者たち環境保全の面をかなり受け持っております。たとえば窒素や燐の分析調査というのは水産試験場職員が受け持っているわけですが、すでにそういう人たちのこれは労力的な、能力じゃなくてむしろ労力的な限界に現在達してきているというふうに考えております。その後、臨時措置法の施行に伴いまして、各水産試験場でその方面職員が確かに増強はされましたけれども、本来水産試験場というのは、魚を養殖し、育て、漁業者指導を行うということが本業でございます。そこへいきなりこういうふうな大きな問題が入ってきております。そういうことで、かなり水産試験場の整備というようなことも私たち現場にいてよく考えることです。これにあわせて、瀬戸内海環境総合研究所の設置ということが、これは地元ではかなり大きな問題としていつも考えられておるわけです。すでに昭和四十七年の国会図書館の調査立法考査局が出しました、瀬戸内海における環境破壊に関する報告書の中にも、瀬戸内海環境総合調整研究所を設置することが望ましいという一項が入ってございます。そういうことがなかなか取り上げられないで、現在、国立公害研究所海洋環境室という研究室が一室最近設けられました。それは研究室長がただお一人おられるだけの研究室でございます。こういった問題をやはり今後踏まえていかなければならないのではないか。  最後に、この法案で、問題になっている赤潮発生要因をさらに研究していくということがうたわれておりますが、現在の赤潮研究の方法というのは、私に言わせればいわば対策的、赤潮発生したときにこれを考えるということになるわけです。これは先ほど申しましたような水産試験場その他の調査研究体制不備が当然もたらすものでございまして、むしろもっと、海域の中の生態系がどう組み立てられているのかというようなこと、たとえば海にはバクテリアがおりまして、植物プランクトン動物プランクトン、それを食べる魚がいるわけです。そういった生態系の組み立てがどういうふうに瀬戸内海の各灘で行われているのかというようなことが一つも明らかになっておりません。わずかに燧灘のみでございます。播磨灘ハマチの大きな被害がこの数年間続いておりますが、それがなぜ起きたかということは多少研究者関心を引きますが、それでは、播磨灘がそういうハマチの養殖にどういうふうに適しているのかという答えを出すには、実を言いますと全く資料が欠けているわけでございます。そういうふうな赤潮研究についても、もう一段下がった基礎研究というものが今後必要でございます。  たとえば燐につきましても、燐の規制陸上から考えますと、確かに燐の流入量を減らすということになります。ところが、海の立場から考えますと、燐の循環スピード、これは生物を通じた循環スピードが一体どのくらいなのか、あるいは流れ込んだ燐がその海域にどのくらいとどまるのかという、滞留時間と私たち言いますが、そういった滞留時間の測定も行われていないわけです。これは先ほど申しました基礎研究の全く欠如のもとに行われているわけで、現在これは、私どもの研究者仲間では、国際的に瀬戸内海汚染ということは非常に注目しております。というのは、アメリカでも赤潮沿岸で起きておりますので、そういう共同研究その他の声もあります。そういったときに瀬戸内海をいかに守っていくかというのは、これは私たちの役目でございますし、あるいは世界に対する、二百海里時代を迎えての一つの大きな、何というんでしょうか、曲がり角に立った重要な時期ではないかと考えております。  これで私の意見を終わらしていただきたいと思います。
  5. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) どうもありがとうございました。  では、続きまして高崎参考人
  6. 高崎裕士

    参考人高崎裕士君) 高崎でございます。  私は学者でもございませんし、また法律専門家でもございません。入浜権運動をやっております住民立場から、素朴な感情ということで述べさせていただきたく思います。  入浜権というようなものがまだ熟さないものでございますので、その説明もしなければならないかと思いますが、時間がございませんので、委員長の御許可をいただきまして、レジュメ及び入浜権参考文献等お配りさせていただきましたので御了承いただきたく思います。  私は、その立場から、主として自然海岸保護ということと埋め立て規制などにつきまして意見を述べたいと思います。  自然海岸保護ということについてでございますが、ちょうど五月二十九日、松山地裁におきまして、あの俗に海水浴場訴訟と申しますものの判決が出ました。これは漁港築港差しめ訴訟ということでございますけれども、不幸なことに何か表面的には漁民とおかの住民との利害の対立のように見えておりますけれども、決してそうではございませんで、入浜権本来の考え方といいますものは何よりも漁業権というものが真っ先に尊重されなければならない、そしておかの住民の側からも海に親しむ権利があってよかろうと、その両両相まって海岸を守ることができるのではないかと、こうした考え方でございますので、御了解いただきたく思います。余談になりますけれども、この判決がああした形で出ましたときに、私のところに真っ先に心配して電話をかけてきましたのが、福岡海水浴場組合連合会でございました。この団体ははっきりと自民党を支持している団体でございます。これはなぜそのようなことを申すかと申しますと、入浜権運動と申しますのは、これは自民党を支持なさる方もまたその他すべての政党を支持なさる方、すべての分野のすべての人たちが入っている運動であるということを御紹介したかったからでございますが、そうした電話もかかってまいりました。私は現地とは関係はございませんから、漁港差しとめのああした判決そのものの是非はともかくといたしまして、このたびの特別法自然海岸保護ということに関連をいたしまして、入浜権に対するこのたびの司法判断に関して次のように考えるものでございます。  この判決というものは、全体として申しますならば、大変古い考え方に基づいていると言わなければなりません。これに対しまして各新聞の論調、特に本日は朝日が社説を書いておりますけれども、やむを得ない面はあるけれども、やはり現実はそうではないから、行政措置でありますとか立法措置というものが先行しなければならないだろうということを述べております。それだけに、瀬戸内法というりっぱなものができ上がるということにつきましては住民の期待するところは大きいわけでございます。たとえば自然海岸保護ということを打ち出されたということにつきましても評価はできるのでありますけれども、やはりそこには十分でない点がございます。  話がもとへ戻りますけれども、長浜判決につきまして意見を申し述べますならば、この海や海浜などの自然公物は国の管理であって、住民使用を許されている、すなわち禁止されないでいるにすぎないとしているいわゆる反射利益論というのがございます。本日は日弁連の水野先生おいででございますから、私がこんなことを申し上げるのは大変恥ずかしいんですけれども、あえて住民感覚で申し上げさせていただきたいと思いますが、まずそれにつきましては、明治六年以来、地租改正のときに海岸雑種地という地目で官有地になりますまでは、各地域ごと海浜というものが入会地のようなものとしてみんなの共有財産であり、さまざまに利用されてまいった。そうしたものが明治六年以降官有地になったというような発生の経緯を無視しているのではないかという点が一つございます。それともう一つは、現在では西ドイツ、フランス、アメリカ等では、特に戦後、公物——公の物の住民市民による自由使用権あるいはまたそれはお上のものを住民が使わせていただくという感覚ではなくって、本来国民みんなのものを国や地方自治体がこれを正しく管理するように委託されていると考えること、いわゆる公共信託理論などがだんだんと根づいてまいっているかのように聞いております。したがって、自然公物国民のものではない、国のものを国民使用を許されているんだという考え方でありますけれども、自然公物の「公」という字は一体何を意味するのかということから問われなければならないと存じます。  また、第二の点といたしまして、自然景観などはいつでもだれでも楽しめるから権利とは言えないという判断が出ておったと思いますけれども、反論といたしまして、たとえば空気でございます。空気はいつでもだれでも吸えるけれども、もしきれいな空気が吸えなくなったとしますならば、これは生存権の一部として空気を吸う権利ということが主張できるはずでございます。自然と景観というものは空気のように直接生存関係がないからという議論もあるかと思いますけれども、私はそんなに軽んじられてよいものであろうとは思いません。人間が人間らしく生きるためにどうしてもなくてはならないものであろうかと思います。空気を汚すものが出てきましたから大気汚染防止法が必要になりました。と同じように、海岸というものがむやみに破壊されるというようなここ二十年ばかりの間の状況が出てまいったのですから、いつでもだれでもが楽しめるというふうにのんきなことを言っておれないのであり、そうした実定法がなかった、入浜権なんていうような実定法はなかったということは、逆に昔はだれでもがいつでも楽しめたということをむしろ反映しているのでありまして、今日のようにいつでもだれでもがこの恵みを享受することができなくなった以上は、これをやはり権利として設定をしていかなければならないんではないか。法以前の法であると言っておりますけれども、そうした実情の変化に応じて、法以前の法もまた目覚めなければなりませんし、実定法とされる必要があるのではないか。すなわち、司法判断に先立って立法措置というものが必要になってくるのではないかと思います。  また、第三点としまして、住民海浜に対して権利性を有するとの事実がないと読み取れるような判決でございますけれども、入浜慣行の事例というものはきわめて多くございます。この点につきまして、たとえば昨年十月に、あの福岡県の豊前環境権訴訟中間的総括のためにシンポジウムが開かれました。その中で、立教大学の淡路剛久教授は、入浜慣行の立証が必要かつ有効であるということを述べられました。また、実際にその訴訟団は、それまでの裁判の中で約手名豊前市民を証人に立てて、これまでどのように海や海浜とかかわってきたかを明らかにしています。その締めくくりとして、私自身も福岡地裁小倉支部証言台に立ちまして、海浜を奪われた高砂市民立場から、かつて高砂住民がどのように海浜とかかわって生活していたかという入浜慣行の数々と、それがどのように失われ、いま高砂市民がどのように苦しんでいるかということも立証させていただきました。で、そのときに用いましたものが、昭和五十年九月に私たちが採集して編集いたしました「一〇〇人証言集——高砂の海いまむかし」というものでございます。  そもそも入浜権という言葉自体が、ある会合で古老が語ります、昔は嵐の後などには海岸に出て流木を集めてたき木にして一年不自由しなかった。打ち上げられた貝や魚を拾ったという話から、山林の入会権に似たものが海浜にも存在すると考えて着想したものでございますが、私たちは、それをさらに多くの人々証言によって裏づけようと考えたわけでございます。この聞き取りの作業をいたしましたときに、そうした証言の性質上年配の人々が多かったのですけれども、海岸思い出がそれぞれの人の青春の、また幼い日の思い出と離ちがたく結びついておりますためでしょう、どの人も皆若者のように目を輝かして話をしてくださいました。中には涙ぐんでしまった人もございました。こうしてでき上がりました「一〇〇人証言集」でございますが、これはこのようなものでございますけれども、後でまた委員会の方に提出したく思いますが、民俗行事や古くからの慣習と考えられるものを、合計八種類の民俗行事を四十六人の人が証言しております。また、海水浴、潮干狩り、釣り、散策といった近代的なレクリエーションに関するものを合計百三十七人の人が証言しております。塩田や遠浅の海といった地形、景観に関するものを七十四人。動物植物等生態系に関するものが二十人。海浜というものの精神性、教育的な価値に関するものが二十八人でございました。  実際の証言一つ、二つ紹介したく思います。時間の関係で、私が申し述べたいことの全部がもしお話しできません場合には途中で打ち切らせていただいて、これはまた後ほどの御質問にお答えする形で申し述べたいと思います。やはり具体的な住民言葉というものを紹介する方がいいと思いますので、お許しをいただいて紹介したく思います。——年齢は編集当時の年齢です。  小松正光 四十四歳 高砂神社宮司 高砂町   「神社の古い絵馬にもあるのですが、ずっと昔は鳥居のすぐ先が砂浜で、まわりは松林でした。江戸末期頃には新田ができ海岸線はかなり遠のきましたが、美しい海岸であったことには変りなく、つい十四、五年前頃までは春の潮干狩、夏の海水浴に遠くから大勢の方が見えられ、帰りには高砂神社に参詣されるということも多くありました。なにしろ、相生の松や謡曲で有名でしたから。この頃はそういうことも少くなってさびしいですね。」  野村英夫 六十八歳 理容店店主 高砂町   「そら昔はアンタ、嵐の後なんか楽しみでしたで。広い砂浜のあっちにひとかたまり、こっちにひとかたまり、魚やタコが打ち上げられとりますネン。一人でバケツに一杯二杯と集めて持って帰って親によろこんでもろたもんです。」  奈良きぬゑ 七十三歳 無職 伊保町   「ほらあんさん、昔海があった時分はナ、旧の節句には梅井、高須のもんはナ、たいがい女でっけど、年寄りから娘までみんな弁当持って行って、ほて、広い広い砂ツパでほたえてはしゃいだもんですわいな。土用の丑には、いっぺんアセボなおしに行こかいうて、浴びに行きよりました。」  以下略します。  中本育己 五十五歳 写真店経営 高砂町   「小学校からフンドシ一本で、熱い道をぴょんぴょん跳びながら海へ行ったものです。泳げないと赤フンドシをさせられるので皆よく練習しました。六年生の最終日二時間半の遠泳があり、あとでもらうアメ湯のうまかったこと。教室から見える海岸土手は形のよい松やガマなど茂っていたので、よく時代劇無声映画のロケがありました。片岡千恵蔵なども来て、赤穂浪士早籠の場でしょうか、撮映しているので勉強が手につきませんでした。」  花光徳男 五十四歳 和菓子店経営 高砂町   「土用の丑の日は海水につかると体が丈夫になるといわれていて、夜通し休憩所が開いており、高砂の商人はこの人出で、四月から八月の五ケ月間で一年分のかせぎをしたものです。今の子供となら天国と地獄で、私らのような昔の海を知っている者は、アホらしいてプールヘなんかいけませんな。」  最後に、当時中学一年生でありました正中円さんの昭和四十七年の瀬戸内海汚染防止関連知事賞受賞作文の一節を読ましてもらいますと、   「高砂には昔がなくなったと祖母から聞きました。美しくすきとおった海、どこまでも続いたきれいな砂浜、松の緑、青くすきとおった空が、いまではなくなってしまったのです。昔の高砂は、浜辺に茶店やみやげもの売り場が立ちならび、神戸や大阪など、もっと遠い所からも潮干狩りや海水浴を楽しみに来る人がたくさんいたそうです。   四月三日は、高砂言葉で「しんがさんにち」といって、浜びらきの日だったそうです。この日は、打ち上げ花火の音が町じゅうにひびき、よきょうがあったり、宝さがしがあったり、まんざい師や落語家たちがたくさん来て、せいだいに行なわれたそうです。祖母も子供のとき母に手をひかれ、おべんとうやおやつを持ち、一日中はまぐりやあさり、おお貝をとり、まて貝の穴に塩をいれて、貝が飛び出てくるのをタイミングよくつかまえて遊んだという。」  こうして見ますと、海浜というものは、明治以降海水浴、潮干狩り、釣りなどで民衆に親しまれてきたばかりでなく、数々の民族行事や神事の形で、古来住民の生活と切り離せないものであったことがわかります。海浜というものは、単に生産のためだけでなく民衆の休息、交歓、信仰の場として、物質的のみならず精神的にも海の恵沢にあずかるところであったことがわかります。こうした、海岸というものが失われていこうとしていることに対して入浜権運動というものが起きたわけでありますが、そういう入浜的慣行の事実はきわめて多いということをお話ししたく思ったわけでございます。  さて、本法案の、特に自然海浜につきまして、府県知事の条例による自然海岸保全指定というものは問題があると思います。公有水面埋立法によりまして、埋め立て免許者、調停者が知事であり、多くの場合埋め立て権者もまた知事であるということ。で、住民は、これは言葉は悪いですけれども、博徒が十手捕りなわをあずかるに等しいと批評しています。また、埋め立て規制とも関連しますけれども、瀬戸内海全域を指定してこれ以上の破壊、改変は原則的に規制すべきだろうと思います。その理由の一つとして、瀬戸内海というものはもはや瀕死の状態にあります。どこをさわりましても全体に致命的な影響を与える。特に漁場、魚の産卵場としてのモ場、海水浴場、潮干狩り場への影響が大きいと思います。また、指定制ということになりますと、逆に指定を外された地域の破壊が促されるおそれがございます。そのような、すでに海岸が失われたような地域の住民も、逆になぎさの回復を心から願っています。たとえば高砂では五キロメートルの海岸がすっかり失われておりますけれども、昨年八月制定されました高砂市基本構想にはこう書かれています。「とくに、本市は工場立地によって自然の海浜が失なわれ、「渚を返せ」という住民運動が「高砂」を原点として全国的に展開されている。このため、渚の回復を基調として海に親しむ場の確保につとめる。」、このようなものでございます。どんなささやかな無名の海岸でありましても、その地域で生まれ育った者にとってはかけがいのない自然であります。したがって、ここは継承に値する、保護に値するというような指定ではなく、すべての地域を指定して保護していただきたいと思います。どうしても仮に部分を指定しなければならないのでありますならば、先ほど言いましたように知事さんが指定をなさるのではなく、住民や漁民、地方自治体、海洋学者、生態学者、海水浴場等海浜業者、釣り団体などすべての代表で構成する海浜保全委員会といったものをつくって、その議を経て環境庁長官が、全体を見渡せる目で指定を行っていただきたく思います。  以下につきましては、御質問に答えて申し上げるようにいたします。
  7. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) どうもありがとうございました。  それでは、続いて田尻参考人にお願いいたします。
  8. 田尻宗昭

    参考人(田尻宗昭君) 私は、前職の海上保安庁でタンカーの油について非常に苦労いたしましたので、その体験等も含めて申し上げておきたいと思います。  まず、この瀬戸内海保全措置法の第十七条に、海難等による大量の油の排出の防止及び防除に関しての規定がございますけれども、このこと自体は非常に意義のあることだと思いますけれども、こういうような表現の条項あるいは条文というものは、すでに海上保安庁におきまして非常に古くからもう行っておることでございますので、問題はこの中身であります。どういう対策を具体的に政令、省令等で定めていくかということが一番キーポイントであります。何しろこのタンカーの油対策といいますのは非常にいろんな困難性がありまして、ただ指導、取り締まりを強化するというような言葉だけではとても片づけられない大変な大きな転機に立っておるわけでございます。  海上保安庁の持っております海洋汚染防止法あるいは海上交通法というような一般法では、どうしてもこの瀬戸内海というような特殊な海域の巨大タンカーは律し切れない。どうしてもこういうような特別法の中で特殊な対策を、この際大胆に発想を転換して実効のある対策をとっていただかないと、瀬戸内海で一たび巨大タンカーが油を流しましたときにはもう致命的である。それはもう水質汚濁なんという言葉で言えない非常に致命的な影響を与えるということは、単に私のオーバーな発電ではございません。ことしの三月十六日にフランスのブルターニュ海岸におきましてリベリアの便宜置籍船二十三万トンのタンカーが座礁いたしました。その結果、沿岸二百数十キロにわたって油が流れました。軍隊が数千人、二十四隻の軍艦が出動いたしましたけれども、もうほとんど手がないということで、いまだにこの油の汚染が数ヵ月続くだろうと言われております。しかしながら、御案内のようにこれは英仏海峡でありまして、もし瀬戸内海のように閉鎖された水域ですと、これは傑然たる状況になるのではないかということです。ある学者は、東京湾において二十万トンのタンカーが油を流せば、一昼夜で東京湾はすべて油に覆われてしまうという研究をいたしております。それからこのアモコ・カジス号の流した油が二百数十キロといいますと、ちょうど瀬戸内海の閉鎖性の部分がすっぽりと入るのでございます。これは非常に偶然の数字でございますけれども、これを瀬戸内海に置きかえれば瀬戸内海は全部油になるということでございます。従来の例で言いますと、水島が一万トンそれから新潟のジュリアナ号事件が七千トンでございましたから、二十万トンの油が流れますと水島の二十倍、あるいはジュリアナの三十倍という油が流れるということでございます。国際的にも一九六七年のトリー・キャニオン号というのがイギリスの海岸に座礁いたしました。イギリスはもう何ともはや打つ手がなくて、英空軍が爆撃をいたしました。それから新潟のジュリアナ号事件、水島事件、これはもうよく御存じのように、結局はむしろとひしゃくしか役に立たなかった。これはもう事実でございます。  そういう実態がありまして、世界的にもこの大量の油にはもう手がないというのが本当の事実でございます。たとえばオイルフェンス、オイルフェンスというのは私たちも現場で本当に苦労いたしましたけれども、三十センチの波とか二ノットの潮がありますともうだめなんです。使えないですね。油が下をくぐってしまうし、潮が二ノットも流れていますともう沈没してしまう、いかりで張っておりますから。吸着材というのは、こういうような何か座布団みたいな、吸い取り紙みたいなものをばっと投げるわけですけれども、これを固めてぽっと投げると——海面にきれいに敷き並べるといいんですけれども、固まって落ちるものですから、これはもう油をなかなか取れない。取った後がどうしようもないわけです。だれかが一枚ずつ敷き並べればいいんですが、まあそういうことはできません。そういうことで対策はほとんどない。したがって、何とかこの巨大タンカーの事故をなくすということを未然に考えなければ、現在の海上交通法のように決められた全国で十一の航路だけを、しかも衝突防止だけをやっている、あるいは海洋汚染防止法のように事故が起こってから後始末を考えるというような法律だけではこれはどうしようもないということであります。現在、もともとタンカーにつきましては非常に立法が不備でありまして、タンカー安全法がないのであります。機帆船も漁船も共通の船舶安全法しかない。非常に私たちは不満であります。それから、乗組員に危険物の免状が要らないんですね。これはまた何としたことかということで、いまだにそういうことでございます。  瀬戸内海世界で最大の、一番長い狭水道、一番困難な、まあわれわれ船舶関係にとりましては非常にいやなところでありまして、たとえばデータで申し上げますと、一日平均明石海峡を通る船が千二百隻でございます。千二百隻といいますと一分間に一隻であります。ただこれは二十四時間に全部ならしての話であります。これはわが国最大、最も過密であります。それからタンカーも、瀬戸内海の明石海峡で一日平均二百九隻、これも最高であります。それから海難も瀬戸内海が一年間で、五十一年で六百二十二件、全国の七八%であります。それから海洋汚染が五十一年度で瀬戸内海で五百二十九件も起こっているんです、油で。こういうようなデータが余りにも知られてないんじゃないかということです。  それでは、瀬戸内海で本当に巨大タンカーの海難を防ぐにはどうしたらいいかということを申し上げてみたいと思います。  第一は、やっぱり何と言いましてももう巨大船のトン数を規制をしないといけない。私たち商船学校を出たころは、一万トンの船なんというのは最高でございました。この十年間ぐらいで物すごいスピードでタンカーが巨大化をいたしました。もともと小さい港でございます。瀬戸内海なんというのは小型船がゆっくり走っていた海域でございます。そこへ二十万トンを入れるというようなことは、私たちが学校を卒業するころには常識では考えられませんでした。  そこで、二十万トンタンカーというのはどういう船かといいますと、デッキの長さが後楽園球場の三倍ございます。東京駅が三つ入る。十六階建ての建物と同じ高さであるということをお考えいただければ大体おわかりだと思います。この二十万トンタンカーは、エンジンストップしてブレーキかけましても四千メーターとまらないのであります。そういうような、動く島というようなタンカーが入ってくる。これはもう常識で私たちは考えられない。それでは、その二十万トンタンカーはどこに入っているかといいますと、水島、もうほとんど水島なんです。そして水島で受け入れている企業は何社か。二社である。たった二つの会社のために、瀬戸内海を二十万トンが、すれすれの危険性を持って走っておるということは、私はやはりぜひお考え願いたい。  客観的に申しますと、岡山県が「水島の歩み」というパンフレットを出しました。その「水島の歩み」に、この水島港のことが非常によくわかるように書いてありますので、ちょっと引用してみます。  港湾計画は、会社の要望を入れて次々に大型化されていった。三菱石油の誘致は長い期間を要した。水島が完全ならば、こんな期間はかからなかった。いや完全ではなかった。それは何よりも港湾の条件にあった。昭和二十六年には水深三メーターぐらいの小さな港を七メーター半にしゅんせつする計画であった。そのうちにタンカーの方が二万八千トンから四万トン、六万トン、八万トン、十万トンと大型化していった。水深も十メーター、十二メーター、十三メーター、十六メーターと、だんだん必要になってきた。昭和三十二年十月にアメリカのタイドウォーターの副社長が十五万トンを入れたいが喫水が十五・五メーターあるのでと申し入れたところ、知事が即座に十六メーターに掘りましょうと答えた。ところが、当時十五、六メーター掘る技術がなかった。将来可能になるであろうということで決まった。  こういうようなことが書いてあります。つまり、あの港は河川港でございまして、もともと千トンぐらいの船しか入れない港でございます。そこに二十万トンが入っている。具体的に申し上げますと、実は昭和四十八年の十月十六日に、運輸省の港湾審議会の計画部会で十二万トン以上は入れないことにしようという申し合わせがなされている。いま二十万トンが入っております。それから昭和四十七年の岡山県のパンフレットにも、十万トン級の船舶が入れるというぐあいに書いておりますけれども、水深はその当時から全然変わらないのに、もう二十万トンが入っている。  そこで、なぜこれは入れないかといいますと、第一に水島航路、水島港ともに深さが十六メーターでございます。二十万トンの足の深さというのは二十メーターでございます。四メーター足りないわけです。で、どうしているかといいますと、川崎に行ってちょっと油を揚げて船足を軽くして、あるいは沖繩で軽くして、そうしてセカンドポートとして入ってくるというのですね。ところが、最初に揚げる港というのは、これは商売ですから、そんなに御要望に応じて喫水だかり考えて油を受け入れるわけではございませんので、沖繩なんかでは海がしけてきたらもう中止になるわけです。そうすると多少積み過ぎたまま入ってくるのですね。船長はそれからが頭が痛いんです。満潮を利用して入ってくるというような離れわざをする。満潮ですと少し深くなりますから、そのときをねらって入ってくる。そして油を揚げている間にだんだん潮が引いてくるだろうというような、非常に危険なことをやっている。この一番浅いところでは十四・八メーターというところがあるのですが、同じ十五・八メーターの喫水の船が、昭和四十九年の十二月二十八日に日進丸という船が入っている事実を確認しております。そういうようなことをやっている。  第二番目に、幅が四百メーターでありますけれども、これは運輸省令で、長い航路では船の長さの一倍半をとれ、こうなっている。船の長さが三百六十メーターですから、計算をすると五百四十メーター要る。この航路では四百メーターしかない。運輸省令に百四十メーター足りない。  第三番目に、運輸省令に言う「泊地」、駐車場でございますね。駐車場がない。細長いわけですから駐車場がないわけです。  それから第四番目に、これが問題ですけれども、備讃瀬戸から水島に入るところはこう九十度曲がるんです。大型タンカーは旋回するのに十二分かかります。非常に腰が重い。ですから、九十度、曲がるというのは大変なんです。ここは潮が三・四ノットと非常に速い。しかも、ここへ本四架橋が今度かかるわけです。橋の足がこう立つわけですね。ここで九十度曲がるというのはもう大変なことです。ちょうど高速道路の真ん中でダンプが横倒しになるというような感じです。船の航路でございますから、そういうことでは非常にこれは問題であるということです。  次に、大きな第二番目といたしまして、ぜひ外国船の対策を考えていただきたい。これはアモコ・カジスが座礁しましたときに、EC八カ国が非常にたまりかねて、もう便宜置籍船は入れないと、入港禁止を打ち出しました。この便宜置籍船といいますのは、リベリアとかパナマのような規制の甘いところに籍を移すのです。そうしますと税金がかからない、検査が要らない、おまけに東南アジアあたりの船員を安い賃金で雇えるというようなことで、一種のもぐり船であります。だから、検査がないものですから全く欠陥船ということで、世界では海の無法者ということできらわれております。これが一番世界で海難を起こしております。特にリベリアの便宜置籍船。明石海峡を航行する巨大タンカーの五百六十六隻のうち、二百二隻が外国船であります。この外国船が、便宜置籍船が一番悪質であります。ところが、驚くべきことには、このリベリアに籍を移してもぐりをやっている船の一番大手が、わが日本であります。三百隻。実は、リベリアの船ということであるけれども、ひっくり返せば日本の船であるというのが三百隻もある。したがって、皮肉なことに、EC八カ国からリベリアという形の実は日本船が入港禁止をされている。海運界はこれは大変でございます。そういうことがありますので、瀬戸内海におけるこの便宜置籍船の欠陥船、それを入れるということをもう考え直さなきゃいかぬじゃないか。先進国がやっておるのでありますから、これは瀬戸内海のように世界最大の難所では当然考えるべきことです。  それから第三番目に、水先人。これは瀬戸内海に水先人が義務づけられていない。ぜひ水先人を義務づけるべきであります。水先人に定年制がありませんので、八十何歳という水先人が運航している。これはもう本当に困った話でございまして、戦前は定年制があったのであります。  それから四番目に、アセスメントではいつも煙突と排水口の話ばかり出てくる。タンカーのアセスメントをぜひやってほしいということなんです。いつもこれが忘れられている。水島のときも和歌山の御坊が対立候補であったようですが、このときに瀬戸内海の巨大タンカーの問題を少しでも配慮して水島に企業が立地しなかったならば、今日の瀬戸内海の危険はなかったということであります。  最後に、これは非常にトピックでございますけれども、最近姫路港にLNGタンカーを入れようという計画が進んでおります。このLNGタンカーがまた私ども専門家の中では非常に厄介な船でございまして、十二万五千トンもあるわけですが、まだ日本ではできない。外国が特許であります。フランスや西ドイツであります。実は、この明石海峡ではやっぱり五十年に二十二回、五十一年に十七回と最高の海難が起こっておりますけれども、LNGタンカーというのはマイナス百六十二度という非常に低温の液化ガスでございますので、これが、一万五千トンの船が五ノット以上のスピードで衝突しますと、完全にタンクに破口が生じます。そうしますと、六分間でこの全量のLNGが流出をいたします。LNGというのは、当初は海面で猛烈なあわを立てます。このガスが約一万二千メーターに広がるわけであります。このLNGガスの爆発性は非常に強大でありまして、最高の爆発性を持っております。アメリカのクリーブランドで一九四四年にLNGタンクが爆発をいたしました。死者百三十六名、住宅八十二戸が全壊。一九七二年にアメリカのスターテンアイランドで、やはりLNGの爆発がございまして、それで住民を含む死者が出ております。以後、このLNGというのは余り解明されないまま実はLNGタンカーが入ってこようとしているけれども、非常に問題なのは明石海峡が最大の難所であって、潮が非常に速いということです。ここで衝突事件が起こりますと、一万二千メーターにガスが広がるということは、その中に数十隻の船舶が入ります。この船舶がすべて着火源であります。爆発の源であります。しかも、明石海峡が四千メーターでございますから、残る八千メーターというのは沿岸の住宅がやはりガスに覆われるということでございますので、海も陸もやはりこの爆発の危険にさらされる。もし、爆発をいたしましたならば、このアメリカのような例が起こらないということは絶対に保障できないわけでございます。ところが、二重に困りますのは、LNGというのは鉄を、脆性破壊といいましてひび割れが生じる、瞬時にして。したがって巡視船が近得れない。これは致命的であります。それからオイルフェンスを張りましても、オイルフェンスがぼろぼろになる。つまり全く手がない。油以上に手がないということでありますので、これは非常に問題であります。しかもデッキの上にタンクが載っておりますので、千メーター向こうが見えないんですね。千メーター向こうが見えないような船で明石海峡を走るのは、私ならばもうごめんであります。したがって、このLNGタンカーというものは、この際真剣なアセスメントをやらないと、一たんここで事故が起こると、やっぱり災害につながるということをぜひ申し上げておきたいと思います。  一応これをまとめまして、第一は、五万トン以上のタンカーの瀬戸内海の航行規制をすべきである。第二番目に外国船対策、特に便宜置籍船の入港を禁止すべきである。第三に水先人を義務づけ定年制を実施することである。第四番目、タンカーアセスメントをすべきである。第五に、姫路のLNG受け入れ計画を再検討すべきである。  昨年、米国のカーターがタンカーを二重底にするというような厳しい提案をいたしました。いま国際海事会議等でも検討されていますけれども、一つ申し上げたいのは、このタンカーを二重底にするというあたりまえのことが——昔は小さな船でも二重底でした。乗り上げたときに防御するように二重底でした。それに反対をしているのはわが日本であります。一体海洋国日本に海洋政策があるのかということを、私たちは海洋人の一人として非常に恥ずかしい思いをいたしております。  いま、安全も公害も一体であると思います。そういう意味で、一度やったら終わりだという意味で何とか巨大タンカーの対策を、こういう保全措置法の審議を契機といたしまして、有効な対策をきちっと確立をしていただきたい。それが瀬戸内海を守る最大の大きな方法であることを申し上げておきたいと思います。
  9. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) どうもありがとうございました。  続きまして、浜崎参考人にお願いいたします。
  10. 浜崎礼三

    参考人(浜崎礼三君) 御紹介いただきました全漁連の参事浜崎でございます。  本日、本委員会におきまして、参考人として、漁業関係を代表して瀬戸内海環境保全につきまして意見を開陳させていただきますことに対し、厚く御礼を申し上げたいと存じます。  昭和四十八年、かの水銀、PCB問題が国内を挙げての大きな問題となりました年に、先生方の御努力によりまして、議員立法として制定され、本年十一月期限切れとなります環境保全臨時措置法を、特別措置法として、恒久法として制定していただくということで、今回その改正法案水質汚濁防止法の一部改正案とともに国会で御審議いただき、衆議院を通過いたしまして、現在参議院で御審議いただいている次第でございますが、これに対しまして、私ども漁業者としては大変に喜んでおり、感謝いたしておりますということをまず申し上げたいと存じます。  御案内のように、二百海里問題が非常に深刻化いたしまして、厳しい影響を漁業者に与えまして、漁業種類によっては壊滅的なものになりつつあります。それだけに、いよいよわれわれ漁業者は、わが国の列島周辺の二百海里内の漁場、沿岸海域を大事にし、その生産を拡大することに努力しなければいけない。そのためにも沿岸海域環境というものを保全整備するということが一番大事な現在の急務だということを考えております。したがいまして、本法案の成立いたしますことを、この種問題は単に瀬戸内海関係漁業者だけではございませんで、同じように閉鎖性水域の伊勢湾、東京湾関係の漁民あるいは全国の沿岸漁業者がすべて強い関心を持っており、熱意を持っておりますということを申し上げたいと存じます。  次に、今回の瀬戸内海法に対する改正につきまして、これはもうあらゆる場合に引用されていることでございますが、瀬戸内海を、世界に比類のない美しさを誇る景勝地であり、また漁業資源の宝庫であると位置づけまして、その環境保全し、後世に継承すべしという立法精神が強く引き継がれているということにつきまして、この環境行政の姿勢というものにまず第一に敬意を表さしていただきたいと存じます。  先生方御案内のように、臨時措置法は、施行以来、埋め立てに関する基本方針の調査審議や、産業排水に係りますところのCODの半減等の大きな成果を上げてまいりましたことは事実でございます。しかしながら、このように御努力いただきまして、施策の推進をしていただいたにもかかわりませず、瀬戸内海の現状を見守りますと、すでにもう言われておりますように、播磨灘の大規模赤潮発生、あるいは富栄養化の急速な進行、そして赤潮が多発化していること、さらに悪質化しておりますこと、それによりますところの漁業被害が多発増大いたしておりますこと、さらには大型タンカーや危険物の積載等を含む船舶ふくそうにかかわりますところの漁業操業の支障やその事故、また油汚染、各般の問題というものは山積し、深刻化しておる事態でございます。これもまた先生方御高承のところでございまして、関係の漁民もまた大変心配しておる問題でございます。  臨時措置法は、非常に大きな成果を上げ、環境の悪化を食いとめるという役割りを果たしていただきましたのでありますが、技術的な問題あるいは経過年数等の問題もございまして、広く環境保全し、浄化を図るという意味合いにおきまして、残念ながらいまだしの感を深くするものでございます。その意味で、私どもとしてはこの後継法及びこれに伴いますところの施策につきまして非常に期待しておるところでございまして、その理由また要望の諸点を次に申し上げさせていただきたいと思います。  第一は、水質の汚濁対策、特に富栄養化の防止対策でございますが、この対策として、水質汚濁防止法の一部改正によりまして、従来の濃度規制から総量規制の導入が図られようとしておりますが、これは漁業者のもう十数年来の要望でございまして、この実現ということは非常にうれしく存ずる次第でございます。今回の改正によりまして、瀬戸内海東京湾、伊勢湾を対象とする総量規制方式が実施されることとなっておりまして、特に瀬戸内海はその規制対象水域に指定をされ、指定項目としてCODによる総量規制がさらに行われるのでございますが、この具体的な効果につきましては、要は維持すべき環境上の目標を、すなわちどの程度にきれいな海がいつまでに達成されるかということにつきましては、あくまでもこれは行政の判断にゆだねられているところでございますけれども、現在の瀬戸内海あるいは汚染が進行をしておりますところの東京湾、伊勢湾の水質の状態を考えますとき、総量規制の具体的施策につきましては特に厳しい姿勢を打ち出していただくよう、そして速やかに海域ごとに指定された環境基準が達成維持されますように御要望申し上げたいと存じます。  総量規制にかかわりますところの指定項目につきましては、CODのみならずその他の汚染物質につきましても規制の対象とするよう早急に御検討を願わなければなりませんし、富栄養化対策につきましては、当面燐の削減指導をすることとされておりますけれども、さらに赤潮発生の原因の一つとされております窒素につきましても、除去技術の早期開発といったものを進めていただきまして、指定物質の追加等につきまして特段の御配慮をお願いいたしたいと考える次第でございます。  さらに、伊勢湾、東京湾における豊栄養化対策につきましては、これはなるべく早く、瀬戸内海の経験ともにらみ合わしながら科学的知見を確立していただきまして、その防止対策を導入していただくようお願い申し上げたいと存じます。  それから、水質総量規制の導入に当たりまして、前提となるのはどうしても下水道の整備という問題でございます。積極的な整備計画の推進をお願いいたしますが、反面、下水道整備が逐次できましても、二次処理の段階でとどまりますと、かえて富栄養化の進行を促進するという事態も招く場合もございますので、終末処理場の規模や維持管理の技術的な面等で十分な行政の指導をお願いいたしたいと存じます。われわれといたしましては、下水道の終末処理施設というものは、逐次というよりは急速に三次処理に向ける、その方向を強化するという点につきまして、行政当局の指導の徹底をお願いし、財政援助につきましても大幅な対策をお願い申し上げたいと考えます次第でございます。  第二に、自然海浜保全につきましては、現法案におきましては、先ほど来お話しもありましたように、県条例によって云々ということになっておりますが、すでに瀬戸内海沿岸海域が各種の埋め立てによりまして、魚類の産卵、生育の場としての干がた、モ場が急速に減少いたしております現在、これらの保全のための施策の推進を地方公共団体の努力にのみゆだねるのではなく、国の行政指導の強化というような面について格段の御措置をお願い申し上げたいと存じます。人工のモ場あるいは人工の干がた、さらには魚の保護林、魚つき林というような問題につきましては、この積極的な造成について財政的配慮等特段の措置をお願いいたしたいと存ずるものでございます。  それから、瀬戸内海の油の汚染の問題につきまして、漁業界が要望しておりました大型タンカー、危険物積載船の航行規制や船舶交通の安全対策、船舶からの油の排出規制等の事項につきましては、第十七条に努力規定が盛られております。これは私どもは、船舶交通の安全対策あるいは船舶からの油の排出規制といった諸施策は、まあ海上交通安全法あるいは海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律という現行の法律体系の中で処理されようということについてはわかりますけれども、それだけに、閉鎖性海域としての瀬戸内海の特性にかんがみまして、具体的な措置を一日も早くとっていただくこと、これをくれぐれもお願い申し上げたいと存じます。  最後に、赤潮の多数発生、油汚染事故、原因者不明の漁具損壊事故というような問題について一括して御要望申し上げたいと存じます。  赤潮発生は申し上げましたように、各種の施策推進にもかかわりませず、瀬戸内海でも年々発生件数の増加を見ておりますのみならず、太平洋岸や日本海側に至るまで、わが国の沿岸海域におきまして、発生件数、発生水域というものは年々拡大しておりまして、つい最近でも三浦半島をはさみまして東京湾、相模湾等にその発生が報ぜられているところでございます。この発生機構の解明につきましては、いま一歩というところが究明されませず、これに対しては総合的な研究体制、その整備拡充をお願いするところでございますが、あわせて、私ども漁業者立場からは、被害に対する救済対策の確立についてお願い申し上げたいと思います。  赤潮発生の要因は水の富栄養化にあり、さらにその原因の大きなものは、私どもは合成洗剤にあるというふうに考えております。その追放運動を全国的に展開いたしておりまして、一部の県、一部の漁協におきましては、もう完全に使わないというところまで至っておりますが、この点につきまして、政府に対し、沿岸地域の一部重要地域等では使用販売の禁止というふうな措置もとっていただきたいとお願い申し上げておりますが、この漁業被害につきましては、現在赤潮特約共済を除きましては被害救済対策は確立しておりません。この件につきましてよろしくお願い申し上げたいと思います。  おかげさまで、原因者不明の油濁事故救済につきましては、漁場油濁事故救済基金の設立によって果たされておりますけれども、先ほどの赤潮被害とともに、原因者不明の漁具損壊事故、これは夜などに船舶の当て逃げ等によりまして漁業者の定置漁具あるいは養殖漁具が破壊される問題等でございまして、これらについても効果的な救済制度の確立をよろしくお願いいたしたいと存じます。瀬戸内海の恒久法案が確立した時点で、申し上げましたような諸点について、各般の法体系の整備についてお願い申し上げる次第でございます。  以上、法律案並びに関連する問題について、いろいろと各般の問題に手を広げて御意見を申し上げましたけれども、十一月の期限切れを前にいたしまして一日も早い本法案の成立というものを、連日御審議に御努力をいただいております先生方に御礼申し上げるとともにお願い申し上げる次第でございます。さらに、今後の法運営につきまして、政令の指定等の問題につきまして、厳しい姿勢、早急な推進措置というものを行政当局にお願い申し上げまして、この法案に盛られておりますところの環境保全の精神がさらに広くわが国の沿岸海域に拡大されますことを心からお願い申し上げ、意見陳述を終わらしていただきます。  ありがとうございました。
  11. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) どうもありがとうございました。  それでは、続きまして水野参考人にお願いいたします。
  12. 水野武夫

    参考人水野武夫君) 御紹介いただきました、日本弁護士連合会公害対策委員会の水野でございます。  私ども日弁連公害対策委員会は、従来からこの瀬戸内海の問題について重大な関心を払ってまいりました。臨時措置法ができました昭和四十八年に、私どもは大々的な瀬戸内海調査を行いまして、いまお手元に配付しております「海と国民権利」という形で報告書をまとめておりますし、あるいは昨年の十月に大阪で開かれました人権擁護大会のシンポジウムにおきましては、「海と海岸線の保護」というふうなテーマでこの問題を取り上げ、それらの成果を踏まえまして今度の恒久法の提案の前に、私どもの案といたしまして、お手元にございます瀬戸内海環境保全法試案要綱といったものを公表いたしまして、この問題に取り組んできたわけでございます。そういった観点から今度の瀬戸内法の改正及び水質汚濁防止法の改正案を拝見いたしますと、正直に申し上げて、私どもが期待をしておりましたものとはかなり遠いということを言わざるを得ないのでございます。時間の関係もございますので、四点だけにしぼりまして、今度の法律案についての意見を申し上げたいと思います。  まず第一は、総合的な管理あるいは規制、こういった点から見て、今度の改正案で十分かどうかという点でございます。御承知のように、瀬戸内海というのは一体となっておるものでありまして、瀬戸内海を全体的にとらえて、しかも海域と陸域とを一体としてとらえて総合的な管理規制をしていかなければならないということは、従来から指摘されてきたことでございます。さらには、瀬戸内海国民の利用というのは、さまざまな形で利用されております。そういった国民のさまざまな形の利用、それをどういうふうに調整していくかということについても、総合的に考えていかなければならないということもまた指摘されてきたところでございます。  そういった観点から今度の改正案を拝見いたしますと、まず今度の改正案では、基本計画というものを総理大臣が作成しまして、それに基づいて府県知事が府県計画というものを策定するということになってございます。これは確かに現在の府県ばらばらの行政よりは一歩進んだものであるということは評価できると思います。しかしながら、この基本計画に基づいて府県計画というのがまず一体いつごろまでに作成されるのかということについては、法律的には何ら歯どめがないわけであります。御承知のように、四十八年に制定されました臨時措置法が、政府は速やかに基本計画を策定すべしというふうに規定しておりましたけれども、結局五年近くたって初めて基本計画ができたというふうなこともあるわけでありまして、やはり基本計画はいつまでにつくる、それに基づいて各府県計画というのはいつまでにつくって一斉にそれを出す、そして、その各府県府県計画をさらに全体的な観点から総合して、もう一度全体的な統一した総合計画をつくると、こういうふうな観点が欠けておるのではないかというふうに考えるわけでございます。  さらに、先ほど岡市参考人の御指摘にもありましたように、こういう府県という単位でこういう計画をつくるのが果たして妥当かどうかということについては、非常な疑問があると思います。私どもの案では、岡市参考人の御意見にもありましたように、一定の海域ごとに地方保全委員会というふうなものをつくって管理していくべきではないかということを提案しておるわけでありますけれども、一挙にそこまでいくのはなかなかむずかしいということはあるかと思います。しかしながら、府県計画を最後にもう一度全体的な形で取りまとめる、統一的に取りまとめるということはぜひお考えいただきたいというふうに考えるわけでございます。  それから第二点は、それと関連いたしますけれども、今度の改正案では、自然海浜保全地区を指定することができるというふうな規定が新たに設けられております。これは恐らく今度の改正案の一つの目玉になっておるのではないかと思います。こういうふうな保全地区を指定して保全を図れということは私どもの主張と一致するところでございまして、これについては一応の評価ができるわけでございます。しかしながら、先ほど高崎参考人あるいは浜崎参考人の御意見にもありましたように、これは府県が条例で指定をするということになっておるわけであります。それじゃ現在そういった自然海浜を破壊していっておるのはだれかといいますと、これはほかならない府県なんですね。したがって、府県が果たしてこういった指定をどこまで有効にするだろうかということが非常に疑問なわけでございます。それに対する担保が何もないわけであります。したがいまして、やはり瀬戸内海の全体的な視野から、現に客観的にそういう形で残っているものは、これは府県の思惑にかかわらず環境庁長官なり何なりがそういう指定をしていくと、そういう形で保全を図っていかなければ、せっかく海浜保全地区の指定といった規定を設けた実効が上がらないのではないかというふうに考えるわけでございます。  さらに、自然海浜保全地区はどういうふうな規制がされるかというのを改正法で見てみますと、一定の行為をする場合には届け出をするということになっております。そして、府県知事はこの届け出に対して勧告あるいは助言を行うと、こういうふうな規制の仕方になっておるわけであります。で、こういったことで十分な保全が図られるのかどうかということについては非常に疑問であると言わざるを得ないわけでございます。  さらにもう一点、この自然海浜保全地区は、それじゃ埋め立てはどうなのかと、埋め立ては禁止されるのかということなんです。これについては何ら明確な規定がないわけであります。私は、この法律の解釈から、自然海浜保全地区に指定されれば、これは全面的に埋め立ては禁止されるのだというふうに解釈すべきではないかと考えてはおりますけれども、しかしながら、その点が必ずしも明確ではないということを問題点として指摘しておきたいと思います。  さらに、三番目は、総量規制の問題でございます。これはまた今回の改正案の一つの大きな目玉でありまして、一歩前進という意味で高く評価できるものであります。しかしながら、瀬戸内海関係について考えてみますと、瀬戸内法ではCODについてのみ総量規制を行うというふうに書いてあるにすぎません。しかも、今回の総量規制というのは、本来言われておる総量規制、すなわち一定の地域、海域環境容量を設定しまして、その範囲内で全部の汚染を賄うと、そういった本来あるべき総量規制ではございませんで、現在の状態から汚染物質を削減していこう。しかも、可能な範囲で削減していこうという制度でございます。したがいまして、この制度は現行の瀬戸内海環境保全臨時措置法、この方式と何ら変わらない。したがって、瀬戸内法に関しては一歩も前進したことになっていないのであります。しかも、このCODの削減に関しましては、臨時措置法では少なくとも目標年度と目標量というのが法律に明記してございまして、そのために三年間であの目標が達成できたわけであります。しかしながら、今度の瀬戸内法の改正案では、そういった目標というものは法律的には何ら規定がされていない。内閣総理大臣の方に一方的に任してしまうという形になっておるわけでありまして、もしもその目標の設定の仕方あるいは削減量の設定の仕方が不十分であれば、現行の臨時措置法よりもかえって後退するということにもならざるを得ないというふうに考えるわけでございます。  さらにもう一つ、燐その他富栄養化による被害防止のために、そういった指定物質につきましては、指定物質削減指導方針というものを策定しまして赤潮の防止に努めようというのが今度の臨時措置法の規定でございます。しかしながら、燐その他のそういった物質を削減していくというのであれば、どうしてこういう指導方針といった別の形でやるのか。これをCODと同じように、現行から削減していくわけでありますから、CODと同じ方式の総量規制方式で乗っけて、それと同じ方式でやっていくのに何ら支障がないはずであります。したがって、その点も現行法のこの改正案では不十分ではないかということを言わざるを得ないわけであります。  さらに、水質汚濁防止法の総量規制、これは瀬戸内海のみならずすべての海域について、すべての水域につきまして総量規制が導入されたということで非常に高く評価するわけでありますけれども、一番最後に、各発生源ごとに定められる総量規制基準というものが定められることになっております。で、各事業者は、この「総量規制基準を遵守しなければならない。」という規定があるわけであります。しかしながら、それに違反した場合にそれを処罰する規定がない。これは、現行の水質汚濁防止法の濃度規制については処罰する規定があるわけであります。しかしながら、今度の総量規制の、総量規制基準に違反した場合には処罰する規定がない。これはやはりしり抜けだというふうに言わざるを得ないのでございます。  第四点、埋め立ての問題についてでございます。埋め立てが瀬戸内海汚染の元凶であるということは従前から多くの人に指摘されてきたわけでございまして、埋め立てを何とか規制しなければならないということが瀬戸内海環境保全の第一の目標だと言っても過言ではなかったかと思うのでございます。ところが、御承知のように、臨時措置法は十三条で、埋め立てをする場合には、「瀬戸内海の特殊性につき十分配慮しなければならない。」と、こういう訓示規定が置かれたにとどまりました。これは先生方御承知のように、各党から、全面禁止であるとかいろいろなきつい案が出たわけでありますけれども、最終的にそういう訓示規定に落ちついた。そのかわりと言っては何ですけれども、第二項で、埋め立ての基本的な方針については、「瀬戸内海環境保全審議会において調査審議する」と、こういった二項の規定が設けられまして、妥協的に成立した経過がございます。そこでこの基本方針は、昭和四十九年五月九日に、瀬戸内海環境保全審議会が、埋め立ての運用に関する基本方針というものを答申しております。その埋め立ての基本方針にはこういうふうに書かれています。「瀬戸内海環境保全臨時措置法が全会一致の議員立法として制定された経緯にもかんがみ、瀬戸内海における埋立ては厳に抑制すべきであると考えており、やむを得ず認める場合においてもこの観点にたって別紙の基本方針が運用されるべきである」、このように明確に述べておるわけであります。しかしながら、現実はどうでありましようか。その後各地で埋め立ての免許がおろされております。これはすべてこの基本方針に適合しておるということでおろされておるわけであります。で、適合しておるかどうかの判断はこれはだれがやるのか。これは、免許を申請し免設を許可する府県知事自身が一人でやっておるわけでございます。埋め立ての基本方針には、影響が軽微であること、そういったことを十分検討しなければならないということが規定されております。しかしながら、その埋め立てを考える場合の報告書は、すべて、この点はこういうことで影響が軽微である、この点はこういうことで影響が軽微である、こういった形で作文的につくられて、それがそのまま通って埋め立てが認可されるという形式になっておるわけであります。あるいは、特定の汚染地域につきましては「留意事項」というのがございまして、この「留意事項」に適合しない埋め立てはできないということになっております。その中に、たとえば「公害防止・環境保全に資するもの、」こういう規定があるわけであります。ところが、たとえば陸域の公害工場を移転するために埋め立てをする。これは陸の方は住工が混在しておりまして非常に公害が大きい、それをまとめた形でどこかへ移転させたい。移転させるには海を埋め立てるしかないということで埋め立ての免許が出されて、これはこの「留意事項」に適合するということで認可がおろされるというふうな形になっておるわけであります。そうしますと、われわれいろいろな事例を拝見しておりますと、現在のこの臨時措置法十三条及びそれに基づく基本方針ということにつきましては、四十八年当時先生方が意図されました結果、さらに瀬戸内海環境保全審議会が意図いたしました結果とはかなり違って、まあいわば全然埋め立ての規制にはなり得てないということが言えるのではないかと思うのであります。確かに環境庁から出されております資料は、埋め立て免許の件数、それから埋め立て面積については減少しております。しかしながら、これは基本方針ができたために埋め立て免許が減ったということでは決してないと思います。これは経済的な不況であるとかそういったものの影響でありまして、少なくともこの現行の基本方針は埋め立てには何ら規制的な役割りを果たしてない。そうしますと、今度の改正案ではどうなっているか。この点については、今度の改正案は何ら変わるところがないわけであります。したがって、一番大きな問題点である埋め立てについて、五年前に制定された臨時措置法、しかもそれが十分な役割りを果たしていないということが認識されておるにもかかわらず前進していないというところは、やはり大きな問題だろうと思うのであります。  昭和四十八年九月に、公有水面埋立法の改正に際しまして参議院建設委員会が附帯決議をしております。その附帯決議によりますと、「公有水面の埋立て及び埋立地の利用により、公害の発生等の深刻な社会問題を生じている近時の状況にかんがみ、」「公有水面埋立法を抜本的に検討し、早急に所要の法整備を行なうこと。」という附帯決議をしておるわけであります。これは五年前のことであります。公有水面埋立法の抜本的な見直ということも、当時から言われておりながら一向に進展をしていないのが現状でございます。したがって、その点も今度の改正案については問題があるということを申し上げまして、私の意見を終わります。
  13. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) どうもありがとうございました。  以上で、参考人の方々の意見開陳が終わりました。  参考人に対して御質疑のある方は順次御発言を願います。
  14. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 岡市参考人にお伺いいたします。  岡市参考人は、赤潮発生機構等について非常に御研究していただいておりまして、感謝いたしておるわけでございます。当委員会におきましても、この研究体制の整備強化ということにつきましては、決議もいたしましたし、今後も大いに進めていただきたいと思うんですが、現在まだ赤潮発生機構は未解明であるということが言われておるわけでございますが、未解明の分野というのはどの辺におありになるのか。また、これは研究体制の整備強化とも関係すると思いますけれども、この赤潮発生機構を完全に解明するのに、私は全く素人でわからないんですが、大体何年ぐらいかかるか、いつごろになったら解明できるのかという点について、御感想をひとつお聞きしたいと思うんですが。
  15. 岡市友利

    参考人岡市友利君) 赤潮発生要因の未解明の点でございますが、私は、わかっていると言えばわかっているんだけれども、一体どこまでわかちないのかということ、つまり、一つ国の政策を立てる上でどうすればいいのかということについては、窒素、燐の流入負荷を削減することでかなりの目的は達することができるだろう。ただ、あるこの時期に赤潮がここに発生するんだと、そういうふうないわば天気予報的な意味での予報を出すにはまだまだ時間がかかる。しかし、現在のところ、重要な魚類養殖をしている海域、たとえば播磨灘で、ホルネリアという種類がございますが、この種類が七月の末ごろから出てくるということはもう大体わかっております。そういった現象部面ではかなりわかってきておりますが、先ほど私も申しましたように、これが海の生態系の中のどういった乱れの中で発生するのかというところはちょっと解明がまだできていない。それと、赤潮のプランクトンが要求する栄養素は、よく言われますように、窒素と燐以外にビタミンの——まあ私たちがビタミン飲みますが、ああいったものの中で、ビタミンの恥だとかビタミン島というものが必要なわけです。そのほかに微量の金属、有機鉄が主ですが、こういうものが必要なわけです。そういうものが播磨灘などでどのように分布しているのか、こういった実態が実は測定されていないわけです。これは、現在環境庁瀬戸内海汚濁調査計画が窒素と燐に重点を置いているために、そのほかのいわば必要な微量栄養素の調査が行われていない。この辺が未解明の点でございます。  それから、どのぐらいになったら解明でき、わかるのかという御質問でございますが、瀬戸内海に関して言えば、たとえば瀬戸内海の海水交流の現状がわかり、それから先ほども申しましたような燐の滞留年数がわかり、そういうふうなことを一応解明する必要があるということを考えれば、まあ十年はかかるというふうに私たちも考えております。というのは、現在決定的な研究者不足でございます。こういうことを申していかがかとは思いますけれども、瀬戸内海沿岸で、赤潮のプランクトンを培養できる研究室は現在香川大学しかございません。もちろん、海洋の調査そのものはほかの大学でもやれますけれども、そういう実態で瀬戸内海調査が行われているわけでございますから、最低十年はかかるだろうと考えております。
  16. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 岡市参考人にもう一点お伺いしたいんですが、窒素とか燐、これは一般的には植物の栄養素でもあるということだと思いますが、瀬戸内海で最近ノリの養殖が非常に活発になってきたというかふえてきたということは、反面において富栄養化と関連するんじゃないかと思うんですが、この辺の関係はどうでございましょうか。
  17. 岡市友利

    参考人岡市友利君) この辺について、よく漁業者の間でも、ノリがとれて、シャコがとれて、アカガイがとれるようになると、その次は何もとれなくなるということを言っております。ノリはそういう意味では富栄養化のいわば頂点のところでとれる海草でございますけれども、これに対して、いま御質問のように、富栄養化の進行をとめてしまえばノリがとれなくなるんじゃないかというような行き過ぎた考え方一つございますけれども、もしそういうことが問題になるのであれば、これは私は水産学者あるいは水産研究者の責任において、必要なときに窒素や燐をノリを養殖しているところにまいて、いわば農業で肥料をある時期にまくような技術を開発すること、そのことが必要なので、ノリの生産を陸上から流入する排水に依存するというのは、これは本来本末転倒な考え方でございまして、むしろそういった意味の水産技術の開発が片方でやはり行われなければいけないというふうに考えております。
  18. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 高崎参考人にお伺いいたします。  先ほど高砂住民の方のいろいろな作文とかまた御意見、幾つかの例を読んでいただきまして、私も子供のころは夏になりますとしょっちゅう海水浴に行っておりまして、大変郷愁を覚えるんですけれども、瀬戸内海沿岸をとってみましても、人口もふえておりますし、それから、一方においてまた開発がおくれている地域もあるわけでございますね。そういうようなことで、これは非常に矛盾するので私どもも大変悩むわけでございますが、そういう地域では産業活動も伸ばす必要があるというところもあるわけでございまして、したがって、埋め立ての全面禁止あるいは開発を全面的に凍結してしまえばいいじゃないかということになりますと、いま言ったような開発のおくれている地域等につきましては、やはり地域住民の生活の向上という面から、そういう点を否定してしまうことになりはしないかというようなことで、私は、この法律で、「自然海浜の指定等」を府県知事が条例をもって「指定することができる。」というふうにしてあるのは、ちょうど適当なところじゃないかと思うわけでございますが、先ほど高崎参考人は、開発の方も府県知事なんで、府県知事に条例による指定を任せるのは、何と言いましたか、ばくち打ちに十手捕り縄を持たせるようだという、なかなかおもしろい比喩があったわけでございます。しかし、私は、いまの知事というのはいわゆる公選知事でございまして、やはり住民の側に立って物事を考えるのがこれは当然でもありますし、知事も、それは五十万なら五十万、百万なら百万の住民全部が賛成するというわけにはいかなくても、やっぱり県として住民の意向も参酌しながら、これが一番いいという方向を考えるんだろうと思うわけでございます。そういうような意味ではやはり知事にこれを指定させるということは妥当なんじゃないかと思うのでございますけれども、その辺についての、先ほどそういう比喩を引用しての御発言があったので、もう一回お考えを聞きたいと思います。
  19. 高崎裕士

    参考人高崎裕士君) まず、瀬戸内海全域の人口を養う上での開発も必要ではないだろうかという御指摘でございます。しかしながら、私は狭い高砂という地域のことしか存じませんので、一つの例を申しますと、高砂がああいうふうに臨海コンビナートになりまして決して豊かにはならなかったのでございます。その後の公害を防ぐためのいろいろな持ち出し、あるいは関連した社会投資等から非常に財政的にも苦しくなりました。たとえば、海がなくなりました。では、子供たちがどこで泳ぐか。じゃ高砂市がその結果豊かになってりっぱなプールができたかというとそうではございません。高砂の中学校では、海がなくなって十五、六年になりましてやっとプールが一つできたところです。これは、私もPTAに関係をしておりまして、せめてプールでもつくってくださいということを市長さんにお願いしましても、やはり財政が苦しくてできないということで、決して豊かになっておりません。たとえば、高砂の人口はどんどん減って過疎化しております。高砂中学校の生徒は埋め立て前千三百人おりましたものが、ことしは四百五十人という激減ぶりです。非常に生活環境が悪くなっておる。こうしたことを考えますと、もっともっと、数量化できない面でもいろいろな貧困化がむしろ進んでいるんではないかと思いますので、そうした点は、御質問の御趣旨と少し違うかもわかりませんけれども、豊かさというものをもう一遍、精神的なものまで含めて考え直すべきではなかろうか。  もちろん、じゃ経済の方はどうなるんだという御質問おありかと思いますけれども、やはりそれは経済のあり方全体を、そうした人間のあり方ということも含めて皆さんで考えていただかなければならない時期に来ているんじゃないだろうか。これまでと同じ論理で、やはり開発の必要ということで進めていきますならば、瀬戸内海全体はどうなってしまうんだろうかという心配から申し上げたわけでございます。  それから、知事さんのことでございますけれども、これはもう住民たちがみんな言っている言葉でございます。私の発明ではございません。水野参考人もその点を追及しておられたと思いますけれども、確かに知事は私ども住民が選ぶ方でございます。しかしながら、やはり仕組みの上でもこれは別にしておかなければ、知事も人間でございますから、まずいのではなかろうかと、かように存じます。
  20. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 浜崎参考人にお伺いします。  最近瀬戸内海では、例の赤潮による養殖ハマチの被害というような深刻な問題があるわけでございますけれども、一方において、貝とかエビというような種類の魚が、これはその漁獲量がむしろふえてきているというふうにも聞いております。ということは、臨時措置法等によりまして水質がとにかくある程度改善されたんじゃないかというふうに思うわけでございますが、水産関係者としてはその辺のところをどういうふうにお考えでございましょうか。
  21. 浜崎礼三

    参考人(浜崎礼三君) 原先生御指摘の点につきましては、四十五、六年以降の水質規制、それから臨時措置法のCOD削減措置、それらの環境対策と相まちまして、四十年ごろから国の瀬戸内海栽培漁業センター等による栽培漁業振興の措置もずっと十年来続けられております。それらの環境規制とそれから栽培漁業の振興というものが絡み合って、相乗効果としてできたものと考量いたしております。
  22. 原文兵衛

    ○原文兵衛君 時間ももうございませんので、最後に水野参考人にお伺いいたしたいと思いますが、この間の臨時措置法は相当厳しいへたとえばCOD二分の一カットとか、それも期限つきとかいうようなことであって、これについては非常な努力があって、むしろ一〇〇%以上、一三〇%ぐらい実際には成果を上げているわけでございます。  この法律でございますけれども、私は、やはりあの当時は、とにかく瀬戸内海このままいったんじゃ大変だと、死んでしまうんじゃないかというようなことで、重病人に対する頓服といいますか、カンフルといいますか、もうきわめて強烈な薬を与えたというような感じの、またそういうふうな気持ちでもってあの臨時措置法というものが制定されたかと思うんです。いま浜崎参考人も言われましたように、まあいろんな原因があるでしょう、それ以外の原因もあると思いますが、とにかくCODが相当カットされて水質もある程度改善されてきたということでございますが、そういうことになりますと、——しかしまだ病人は治っていないので、ほっとけばまた大変なことになってしまう。しかし、ある程度よくなったら、これは適当な薬を与えて、そうしてだんだんこれをさらによくしていくというような方法で、いつまでもカンフルあるいは頓服ばかりやっていると、逆に病人を殺してしまうと、いろんな副作用が出てかえって健康を害してしまうというようなことも考えられるので、やはり恒久法としてはこの程度のもので、これをとにかく厳しく、またこれは行政措置でやる面もたくさんあるわけでありますが、ちゃんときちっとやることによってだんだんによくしていくというのが一応妥当な線じゃないかなと私は思うんですけど、これについての御意見を伺いたいと思います。
  23. 水野武夫

    参考人水野武夫君) 一挙に大幅なカットをすぐにやれというのは無理だろうということは十分承知しております。ただ、臨時措置法ができましたときには、四十七年当時のCOD、これは環境庁調査いたしまして、それの二分の一にカットすると、こういう目標だったんですね。この目標はどこから出てきておるかと言いますと、四十七年当時の二分の一にいたしますと、昭和三十年代のCODの値になると、で、そのあたりまで戻そうじゃないかというふうなことからそういう数値が出てきたというふうに記憶しております。  ところが、臨時措置法が三年あるいは五年過ぎまして、確かに産業排水の排出量というのは、これは二分の一カットは達成できたのですね。しかしながら、全体的なCODの値というのは、これは二分の一にはなっていない。これはもちろん産業排水以外のものもありましょうし、すでにたまっておるやつもありましょうから、当然と言えば当然でありますけれども。したがって、全体的にはほぼ横ばい。だから、四十七年当時の、非常に瀕死の状態だと言われた状態から全体的には変わっていない。昭和三十年代まで戻そうという意図はとうてい達成できていない。これが現状でございます。  で、COD二分の一にカットしたのがかなりカンフル剤的な措置であったかどうかということについては、私は必ずしもそれほど、何と言うか、劇薬と言いますか、一時的な劇薬というものではなかったのではないか。二分の一カットはかなり容易に達成できたのではないか。これは当時からいろいろな科学者が、二分の一カットはそれほどむずかしいことではないというふうに言われておりましたので、私は素人でありますけれども、そのように考えておるわけであります。したがって、いまよりもさらに、少なくともいまと同じようなベースで規制をしていくということが、昭和三十年代の海に戻すという当初の発想からすれば当然に必要なのではないか、このように考えております。
  24. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 田尻参考人にお尋ねをいたしたいと思います。  先般の本委員会で、実は私どもの粕谷委員が、水島港に入港いたします大型タンカーの問題について質問をいたしたわけでございます。そのときに、運輸省の省令の関係をとらえまして、二十万トン級の大型タンカーの水島港入港については、現行運輸省令から言っても法律違反ではないのかという指摘をされたわけでございます。きょう田尻参考人の方から大変詳しく御説明をいただきまして、私どもとしてはよく理解ができたわけでありますが、問題は、そのときの運輸省の答弁の中で、現在の、港湾施設の技術上の基準に関するいわゆる省令については、これは違反ではないんだと、こういう答弁と同時に、航行の際の水深あるいは幅員、屈曲ですね、こうしたすべての面から見ても省令の基準に照らして特に問題はない、こういう答弁がありまして、そして、粕谷委員意見とこの答弁とは食い違ったままで、実は田尻参考人に本日お越しをいただくので、その際にひとつ決着をつけようと、こういう立場になって、残された問題になっておるわけでございます。  きょう粕谷委員は所用で出席ができませんので、私、かわってお尋ねをするわけでありますが、先ほどの開陳をいただきました御意見の中で、いま申し上げました観点から、再度ひとつ、法違反であるのかどうかという観点も含めて御説明をいただければ大変ありがたいというふうに思います。  それから、先ほど五万トン以上の船についてはもう航行規制を行うべきだと、こういう御意見がまとめられておるわけでありますが、これは、その航行規制の内容の問題が、田尻参考人としては、本来もう瀬戸内海についてはこれ以上のものは当然航行を禁止をすべきである、こういう立場であろうというふうに私は受けとめたんですが、仮にそういうふうに規制をしようとしたときに、現行法ではこれはできないことになるだろう。そうしますと、その辺の縛りをしていく立場というのはどこに見つけ出していくことが有効になるのだろうか。こうした観点を少しお尋ねをしたいと思います。
  25. 田尻宗昭

    参考人(田尻宗昭君) 運輸省が、省令に全く問題がないとおっしゃるのは、私はよくわからないんです。それは、省令にこういうことになっておりまして、これは昭和五十年の二月に、「港湾の施設の技術上の基準とその運用」ということでありまして、根拠となります省令は、昭和四十九年の、運輸省令第三十号で、港湾局長通達が港建第二百五号、建設課長通達が港建第十四号、それでいずれも出ております。その中で、航路については、「比較的距離が長い航路」「対象船舶どうしがひんぱんに行きあう場合」には、船の長さの二倍、「上記以外の航路」、船の長さの一・五倍と書いてあるわけですね。そうしますと、二十万トンタンカーというのは約三百六十メーター——三百数十メーターありますから、それを一倍半すれば五百四十メーターになるわけでございますから、これは数字の問題でございますから、それがもしも違反でないとおっしゃるならば、船の長さをもっと縮めなければいけない。私はそこはよくわかりません。したがいまして、違反とかなんとかいう言葉でございますけれども、はっきり言いまして、運輸省令というものは時々、何といいますか、こう表現で例外的な表現がとってありますね。たとえば、若干こういう考慮ができるとかこういう措置が行っていた場合にはそれは少しやわらげてもいいような、表現は確かにそれぞれとってありますから、この省令自体が少しやわらかなものだとおっしゃるならそれはもう話は別でございます。しかしながら、私はここに書かれた数値をきちっととらえて物を言っているわけでございますから、具体的な数字で、この省令には満足しているということを聞かなければ私は納得できません。  それから、たとえば泊地の問題にいたしましても、船の長さの一倍半という船舶の泊地が要るということになっております。これは船舶というのはいかりを打つ場所がぜひ必要でございまして、岸壁に着けておって、風が吹いてきたり、だんだん気象が悪くなりますと、岸壁に打ち当てて外板にひびが入るというようなことで、どうしても岸壁を離れていかりを打つ場所が必要なわけでございます。たとえば、前の船が荷役をしているとき、そういう場合もやっぱり必要でございます。そういう意味で、この泊地というものをちょうど駐車場のような扱いで、やはり船の長さの一倍半という泊地を決めているわけです。これが水島港にはないんです。ですから、私は具体的に申し上げておるのであって、そういうような数字をここに書いておられる以上、これは、この省令を満足しているんだということであれば、私の方がその根拠を知りたいわけでございます。  それから、もう一つございまして、こう言うと恐らくこれは港湾区域内の話だと言うでしょうけれども、やはり省令の精神というものは、後向きではなくて前向きにとらえないと、水島港がマンモスタンカーではもうだめだということはもうわれわれ仲間では常識なんです。だから、海員組合でも昭和四十八年に運輸大臣に対して申し入れ書を出しております。もう大型タンカーやめてくれということを再三申し入れている。最近でも非常にいろいろな動きがあるようでございますけれども、船舶操船者がわれわれの同級生でありますから、そういう実感は余すことなく私は聞いております。  そこで、九十度旋回ということを申し上げましたが、運輸省令では、航路は三十度以上曲がってはいけないと書いてあります。なぜ三十度以上曲がっていけないかと言いますと、腰が重いので、三十度以上急に曲がるということは、どうしても風や潮に流されて、その間にのし上がってしまうという危険性を考えて、三十度以上を超えないことと書いているわけですから、いずれもそういうような数値を満足しているとおっしゃるならば、私の方が逆に具体的に聞きたいと思います。  そこで、そういうことは一つの原則であって、いろいろと例外を認めてもいいんだとおっしゃるのならもう話は終わりであります。  それから、水深でありますけれども、水深が足りないと申し上げましたけれども、それは確かに油をちょっと荷揚げして、そうしてつじつまを合わせて入っていることは事実です。しかし、先ほど申しましたように、実態というものは、そう物差しではかったようにここまで揚げてくれと言いましても、受け入れる方も商売でありますから、いや、そんなに要らないと言ったら終わりで、少し大目に入ってくるときは、船長が苦心惨たんしているのが事実でございます。潮を利用して入ってくるなんというのはもう本当に船にとってはサーカスプレーであります。そういうことを考えますと、もともと船足が水深よりも深いような、水深の方が浅いような港に入れるべきではないのであります。どんなことがあるかわかりません。天候や気象に左右されて船の時間というものはまちまちでありますから、そう汽車の瞬間のようには正確にいかないわけでございますから、潮に頼って入ってくるなんということは非常に不安である。とにかくこの港は三千トンクラスの、わずか三メーターの水深の港であったということをよく思い起こしてみたいと思います。ただ船の深さだけを掘りましても、たとえば港の中で四百メーターの幅があるんですけれども、そこで、入るときはそのまま入っちゃうんですけれども、出るときはおしりから出るわけにいきませんから、くるっとこう旋回する。そうすると、四百メーターの中で三百六十メーターの船が旋回しますと、前後二十メーターしか余裕がないんです。そうすると、十六階建てのビルから見ているわけですから、目の前に後楽園球場の三倍ぐらいのデッキがあるわけですから、もう二十メーターなんという余裕水面は見えないわけですね。向こうの山しか見えない。だから岩壁へ衝突しているのかしていないのかもわからないわけです。そういう、単に勘で操船をしているという、そのことを申し上げたいわけです。われわれ仲間の船員がもう本当に全神経を集中して操船をしてやっと事故を防いでいる。  水島港では、港の入り口に四十六年から四十八年に巨大船が四隻座礁しております。これも一つの重要な事例だと思います。そういうことを考えても、ただ単に省令を満足しているというようなことを言っておると、水島で巨大タンカー事故を起こしたときにその責任は重大であって、そういうことをあげつらうべきでない。やはり省令の精神というものをきちっととらえて基本的な対策を打たなければ、取り返しのつかないことになるということを同じ行政官として私はそう感じます。
  26. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 ありがとうございます。  再度お聞きをするわけですが、ちょっとそのときの議事録がまだでき上がっておりませんので私のメモ書きによるわけですが、水深の関係も、実は満載時喫水というのはそれから船底までの深さですが、十五メーター十六、これが後で訂正をされまして、二センチだけ変わりまして、十五メーター十八とこういうふうになりました。それからいわゆる干満の差三メーター。したがって、荷を軽くすることと、その三メーターをうまく組み合わせて入っておるので問題がないんだと、こういう答弁が実はありました。いまのお話を聞いていますと、この答弁自体が、大変現実に合わない、実情を知らない答弁じゃないかという感じがするわけであります。  それと同時に、水先人の関係につきましては、おおむねいま準備がされておりまして、何か強制水先をしなければならない、そういう立場のところに指定をしようと、こういう準備になっておるようでありますのでその辺はわかるわけでありますが、ただ、水先人の養成が問題だというふうに答弁をしているわけです。この辺の、水先人の養成等については、どういうふうにすれば早く養成ができるのか、その辺もお触れいただいてひとつお教えを賜りたいと思います。
  27. 田尻宗昭

    参考人(田尻宗昭君) まず第一に、水深の問題でございますけれども、やはり私感じますのは、港湾関係の方というのは船のことをよく御存じないですね、船のことを。これはまことに残念です。非常に土木的な発想でやられちゃたまらぬですね。船は生きた人間が操船しているということを強調しておきたい。たとえば水島航路の、港内の航路の真ん中に十四・七メーターという浅いところがございます。これは岩盤でございますね。これは非常に危険なんです。現在水島港では十四・八メーターという水深で入港せよという指示をしておるんです。しておりますが、これでも細かく言うと十センチオーバーですね。それから現に昭和四十九年の十二月二十八日に日進丸が十五・八メーター、その浅いところよりもっと深い喫水で入っておるわけです。それはたまたま潮を利用しているんですね。その潮を利用するというのは危ないです、とっても。向こうからはるばるやってくるわけですから、バーレーンあたりからやってきて、まあセカンドポートですけれども、入ってくる船長というのは非常に時間を急いでおりますからね。したがって、こういうようなところを無理して入るということは事実ある。マラッカ海峡でも何度も底をこすりながら走ったという船長は聞くわけです。どうしても無理をする。船長という立場、弱いわけです。そこで、いまの水深の問題というのは、現実に十四・七メーターがあるということを運輸省は御存じなのかどうかということを私は逆に聞きたいと思います。  それから、先ほどのお尋ねで漏れておりますけれども、五万トン以上の船を規制せよと言ったのは、おっしゃるとおり禁止せよということです。五万トン以上の、つまり二十万トンタンカーなどを入れていたんではだれが操船をしても事故は必ずいつかは起こる。これは人間のやることでございますから。だからそこをきちっと禁止をしなければ、仮に水先人が乗りましてもこれは事故は起こるんであります。水島港の入り口で起こしました事故でも水先人が乗っておりました。あるいは室蘭で二十八日間港が燃えましたヘイバルド号事件でも水先人があの事故を起こしたわけです。水先人も同じ人間であります。  それから、なぜ五万トンと言いましたかといいますと、船の喫水、それから航路の幅、それから船がぐうっと旋回をいたしますと旋回圏といいまして、車のように急にくるっと回りませんから幅が要るわけです。この幅をきちっと計算をしますとこれちょうど五万トン当たりになるんですね。衝突を避けようとかあるいは座礁するのを避けようというとき、船は精いっぱいかじを取ってぐるっと回ってもとに戻る以外ないんですね。そういうときにその幅が要るではないか。そうすると、二十万トンでは千メーター要ります。いまの航路幅は四百メーターです。これは足りません。それで四百メーターというとちょうど五万トンぐらいなんですね。そういうことを計算すると、これは数字で出てまいるわけです。  そこで、いま日本の産業界、特に石油産業界も二十万トン、三十万トンという時代はもう転機に来ていると思います。といいますのは、日本のように複雑な海岸線ではもう三十万トンが入れる港というのはほとんどないんですね。ないのにタンカーだけ大きくしていったものだから、もうつじつまが合わなくなっているんですよ。ですから、ここら辺でやはりこれを見直さないと、一度事故が起こったら、恐らくその企業は立ち上がれないほどの打撃を経済的にも受けざるを得ないわけです。そのことを考えれば、やはり企業家というものはこういう事故の際の問題も考えて経営をしませんと、一たん事故を起こしたら企業経営も成り立たないということも考えなくてはいけないと思います。  それから、水先人の問題でございますけれども、水先人は足りないという話はあべこべでございまして、いままで全国で、何年か前までは五つしか水先人を義務づけた港はなかったんですね。これはだれが決めたかというと、占領軍が決めたんです。それから改正されてなかったんです。五つの港以外は水先をとらなくてもオーケーだったわけです。そういうことをやっぱり早く改正して、特に重要な港には水先人を早く義務づけておれば、水先人はどんどん養成もできたと思うんです。それから、今度瀬戸内海で水先人の義務づけを考えていることは私も知っておりますけれども、何といっても水島港でも義務づけるべきだと申し上げているわけです。瀬戸内海だけではいけない、水島港も義務づけるべきだということを申し上げているわけです。
  28. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 ありがとうございました。
  29. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は、水野参考人高崎参考人に、同じ問題について伺っておきたいと思いますが、環境を守ったり公害を防止したりするためには、住民の参加が非常に大事だというふうに考えているわけです。住民権利なり参加なりについて、今度の後継ぎ法には率直に言って何もない。これでは基本的に環境を守り切れるのか、住民の意向が反映できるのかということが非常に大きな視点としてあるわけでありますが、とりわけ日弁連などでも、たとえば環境保全委員会をつくってその中に自然保護団体の推薦する者を参加させるというようなことも考えておられるようですし、あるいはまた国民権利という一章を設けて、いろいろな住民権利についての各般の規定を準備されてきておったようでありますが、この辺についてどのように考えておられるかということを、水野参考人からは法律家としての立場から、それから高崎参考人の方には住民立場から御意見をいただければと思っています。
  30. 水野武夫

    参考人水野武夫君) 先生の御指摘のとおりでありまして、私どもは、環境保全というものは、住民がやはりその中に入って、住民意見を反映しながらやっていかなきゃならないということを前々から強く訴えておるのであります。したがいまして、今度の瀬戸内海環境保全試案要綱、私どもが発表した案におきましても、従来の行政機関ではなくて、「中央保全委員会」あるいは「地方保全委員会」といった別の機関を設けてその中に住民参加をさせる、そして、住民参加のもとでお互いに瀬戸内海をどういう形でどういうふうにして保全、利用していくかというふうな観点から、住民意見を反映さしてやっていこうではないかということを提案しておるわけでございます。  そしてもう一つは、御指摘がありました国民権利を保障するということ。これは高崎参考人から御紹介がありました入浜権、こういった、何といいますか、新しい権利というものはなかなか裁判所では認められない。これは、行政的ないろんな計画が全部決まりましてから、後で司法裁判所の救済を求めるといった場合には非常にむずかしいというのが現状でございます。したがって、そういった権利をこの法律によって明確にして、そしてその権利に基づくいろんな規定をこの法律自体に盛り込んでいくと、そういうふうな観点からこういうふうな案を提案しておるわけでございます。従前の瀬戸内海環境の破壊というのは、これは行政機関が住民の意思を無視しまして、せいぜい漁民に金を払ってやってきたというのが実情でございます。漁民だけに金を払えばたくさんの国民が享受しておる利益は失われていいのかということが大きな問題であります。そういった観点から私どもの案を提案しておるわけでございます。今度の改正案では、もちろんそういう観点が全然盛り込まれておりません。これはまことに残念だと申し上げるほかございません。
  31. 高崎裕士

    参考人高崎裕士君) 住民参加が保障されていないという御指摘のとおりでございまして、今度のこの特別法の中で三つの点を取り上げてみますと、たとえば埋め立てということの規制が十分でない。万やむを得ぬ場合の埋め立てということも、これは住民参加はできません。それから自然海岸保全するという場合も、知事さんが指定をなさるわけで住民は参加できません。また、総量規制等につきましても、これは参考資料のフローチャートに書いてあるように、公害対策会議の議を経て内閣総理大臣が決めるということになっておりますが、これは私の承知しておりますところでは、通産大臣でありますとか、そうした関係大臣の会議だと承知しております。とすればここにも住民参加はございません。  で、私どもは一昨年の夏第一回入浜権シンポジウムを開きましたときに、参考までにお配りをしておりますこの「KOBE提言」というものを採択いたしました。これは住民立場海岸保全するにはどうしたらいいかを一遍考えてみようということで、条文のスタイルをとりまして、海浜保全基本法の案というものをこしらえてみたわけでありますが、ここで私たち意見が出ておるわけでございます。この三枚目の9というところに「海浜保全委員会」というものを考えております。  (1)海浜保全環境庁長官の責任において「海、浜保全委員会」が行う。  (2)「海浜保全委員会」は、海浜保全と復元のための総合的な計画を立案し、海浜にかかわるすべての開発計画をチェックし、「埋立規制法」の許可要件を判定し、」  これは、「埋立規制法」というのは、別途公有水面埋立法を改正して公有水面埋立規制法にすべきであるということを前に書いておるからでございます。その「「埋立規制法」の許可要件を判定し、」——これは万々やむを得ぬ埋め立てということ。これは私どもは基本的には全面的に埋め立ては禁止すべきであると申しておりますけれども、しかしながら、たとえば漁民の生命にかかわるような漁港の建設とかといったものについてはできるんじゃないかということを考えておりますので、そういった意味での、   許可要件を判定し、入浜権者間及び漁業権者との間の調整などを任務とする。  三番目が住民参加を言っているわけでありまして、  (3)「海浜保全委員会」は、沿岸漁業の従事者、水産資源学者、海浜・海洋生態学者、自然保護団体、野生生物保護団体、入浜権運動団体、遊漁者、海水浴業者、一般市民等の代表者から構成する。   これで十分とは決して思いません。私、最初の提案をしましたときには地方自治体の代表等もということも申し上げましたが、そういったようなものでもって、しかも、注に響いてありますように、「海浜保全委員会は中央だけでなく海域ごとあるいは都道府県ごとにも設置さるべきこと」ということでございます。こんなふうに、私どもはこういうことが新しい瀬戸内特別法の中にも入ればいいがというふうに考えております。
  32. 矢田部理

    ○矢田部理君 岡市参考人に一点だけ伺っておきますが、先ほど原委員からも御指摘がありましたが、瀬戸内海環境保全のための総合的な研究体制をやっぱりつくってほしいということは各自治体からも非常に強い要望としてございます。私どもも調査に行って戻ってきましてから環境庁にその点を詰めたのですが、赤潮研究会というようなものがあってそれぞれの学者などに委嘱をして、ときどき集まりをやって対策を立てていますと、あたかもそれで十分であるかのような説明をされておるわけです。それに対して私どもは大変疑問を持ちまして、当委員会でも研究体制の早期の整備拡充というようなことを決議として挙げているわけでありますが、いまの研究体制問題点ですね、どういうところに不十分さがあるのか、どうすればそれが改善できるのか等々について、ひとつ忌憚のない御指摘をいただきたいというふうに思います。
  33. 岡市友利

    参考人岡市友利君) 実は、私もその赤潮研究会のメンバーでございます。それで事実上多少心得ているつもりでございます。そのメンバーの主なのは、水産試験場のかなりの経験者とそれから大学の研究者が数名入っております。  そこで審議されるのは、先日もございましたが、たとえば五十三年度の赤潮研究についての基本的な方向を議論するということで、その議論に従いまして実際的な計画は練られるわけでございますけれども、今年度に関しましては、主に赤潮防除関係研究に重点を置くというようなことになっております。そのほかに、たとえば赤潮発生要因の基礎的な研究であるとか、現在、まことに残念なんですが、赤潮プランクトンがどういう種類であるかという分類学的な面も非常にわが国でおくれているわけですが、そういうことも一応の課題には上がっていたわけですが、これは余りにも基礎的過ぎるということで今年度の研究課題からは省かれているわけです。  しかし、先ほどもちょっと申しましたけれども、われわれのその研究の中で、海洋の全体の生態系の中で赤潮をつかまえると、そういうふうな見方がもう現在すでに必要になってきている。個々の赤潮が起きるたびに一年ぐらいの調整費でもって対策研究を行うという時代ではなくなってきていると考えているわけです。そういった意味で、たとえば瀬戸内海環境保全総合研究所というようなもの、これは単に赤潮研究所ではなくて、もう少し広い意味研究機関が必要なのではないかと考えております。ここには海洋物理関係あるいは海洋科学、海洋生物学の研究者が一体になって、一つの目標を立てて研究を進められるような比較的大型な研究所にはなりますけれども、そういうものがぜひ瀬戸内海に必要なものではないかと考えております。現在、広島に南西海区水産研究所という水産関係研究所がございます。そこにもちろん海洋研究室がありますが、現在五名の研究員もおりますけれども、決してそれでは十分ではなくて、先ほど申しましたように大学の中でいろいろな面で手薄でございます。そういうものが一体化されるということが——そういうものというのは、化学、物理、生物学の研究が一体化されるということが必要であろうというふうに考えております。
  34. 矢田部理

    ○矢田部理君 ありがとうございました。  最後に、田尻参考人に一点だけお伺いしたいと思いますが、今度の瀬戸環法の後継ぎ法を見ますと、法的規制というのは全体的に後退をして、どちらかというと行政措置なり指導なりに重点が置かれるような傾向が全体的にあるわけですね。いまの環境行政全体を見ると、率直に言うと非常に後退現象が顕著である、このままでは環境庁なんか要らないんじゃないかというような議論すら出ているような始末なんですが、そういう中で、法的規制が後退をして行政指導行政措置等が前面に出るということになりますと、どうもやっぱりいまの環境行政状況から見て、非常に私たち心配をしているんですが、自治体の立場なり、現に環境全体にかかわっておる田尻さんの立場としてその辺をどういうふうにお考えになっているか、見解をお聞かせいただきたいと思います。
  35. 田尻宗昭

    参考人(田尻宗昭君) 昭和四十五年のいわゆる公害国会におきまして、公害法令の改正の大変な目玉というのがいわゆる直罰であります。従来、たとえば水におきましても工場排水規制法というようなものがありました。しかしながら、遺憾ながら水質保全法、工場排水規制法というような古い法律では直罰がなかった。先生の申されました行政指導主導型でございました。その結果、非常に水質の汚濁というものが進行をしたわけであります。その反省からこの直罰が取り入れられたということは、やはり日本の公害行政の大きな転機であったと私は思います。したがって、やはり公害行政においては公害というものを厳しく律していくんだと、やっぱり公害というのは犯罪だというような哲学を導入をした公害国会の精神というものが今後とも強化をされていくのでなければ、それを行政裁量にゆだねたりあるいは個々の行政指導というような形に埋没をさせていくことは、非常に不統一を招くし、また、何といいますか、企業に対する影響も厳しさを欠いていくという感じがしてならないわけです。そういう意味では、直罰という制度が現在できましたけれども、残念ながらまだまだほとんどこの直罰を使って告発をしたという事例が少ないわけですね。まあ手前みそですが、私どもの方で一昨年四件の告発をいたしました。それ以外にほとんどないんじゃないかと思います。  したがって、いま問題なのは、そういうやはり規制行政というものを強めることである。その運用を本当に実体あらしめるように、法律を空文化させないように、直罰の精神をもっともっと現場で生かすことが必要なんであって、これを行政指導というような形にまた後戻りをさせてしまうと、非常に、個々の裁量なり判断なりあるいは企業に対する甘い影響を与えてしまうということを私は現場の担当者として感じます。
  36. 中野明

    ○中野明君 岡市参考人にお尋ねいたします。  先ほどお話の中で、農薬の問題に少しお触れになっておりましたが、御承知のように、去年の六月に香川県がマツクイムシの防除の空中散布をしました。それで、仁尾町方面のクルマエビの養殖に被害が出た。そのために県などが見舞い金を払うということになったということを私、承知しておるんですが、   〔委員長退席、理事矢田部理君着席〕 これ、やはり空中散布による原因ということがはっきりしたものかどうかということが一点です。  それからもう一点は、関係の業港がやはり支払うことを内諾しておると伝えられておるわけですが、それにもかかわらず、またことしも六月初旬から三千四百ヘクタールの山林でやはり空中散布をしようと県は計画をしておるということなんですが、その辺、ヘリコプターの業者なんかも見舞い金を払うことを承知しながら、またことしもそれを繰り返そうとするという点について、先生の御意見がありましたらお聞きをしたいと思います。
  37. 岡市友利

    参考人岡市友利君) 香川県で昨年六月に起きましたマツクイムシの問題は、——こういうことをこの席で申しわけないんですが、ちょっとミステリーじみたことがございまして、実は、業者がどうもエビがおかしいと、マツクイムシのための薬剤散布した次の日におかしいということになりまして、すぐ県庁関係者が行きましたところ、確かにエビがまあ狂ったように泳いでいた。一週間後にその池を干し上げて探してみましたら、生きたエビが二万匹いた。業者は最初三十数万匹いたはずだと。大きさは二センチから五センチぐらいのエビでございますけれども、からも一つもかからないということで、香川県でも問題になりまして、業者がいわば、まあ言葉は悪いですが、うそをついているのかあるいは本当にいなくなったのかというようなことになりまして、実は私どもも調査を命ぜられまして、水産試験場で実験しましたところ、水の中に〇・四PPbという、これはPPmのなお一万分の一ぐらいになりますけれども、よく言うのは十万トンの水の中に一グラム入ればいい、それぐらいのごくわずかな農薬がやはり入っていたということでございます。入ったためにエビが死んでしまい、今度は、ちょうど何といいますか、生きたエビも多少残っているという形で、共食いが進行しまして、一週間のうちに死んだエビのからがなくなってしまったと。これは私が算定しまして、恐らく当時池の中に二十数万から三十万ぐらいのエビがいたというのは事実であろうと。そういうことで、香川県側も、まず水の中に農薬が入っていたということを認めまして、その点で業者に見舞い金という形で支払うということになったわけです。  ただ、空中散布した、これは池から散布地域まで約五百メートルも離れております。そういうところで入ったのかどうかということがちょっと疑問になりましたが、当時調査不備もございまして、そのことについては、入った可能性もあるけれども、その辺は明確でないというような、これは学者の方からの意見もございまして、結論になりました。で、結果的には、要するに水の中にはそういう農薬が入っていた。しかし、それが空中散布で入ったのかあるいは作業員が——これは農薬を薄めるような仕事をしてきた作業員が、池の上へ防御用のビニールのカバーその他をかけていた、そういう作業を通じて入ったのかもしれないと、その二つの点から問題になりまして、県、町及びそういう業者がそれぞれ見舞い金を分担するという経緯になったわけです。   〔理事矢田部理君退席、委員長着席〕  これが一つでございまして、その後ことし実際にもう空中散布をしております。この件につきましては、漁業者の間、香川県漁業組合連合会からは知事あてに強い要望が出ておりまして、少くともそれを散布するときには、海水の中の農薬の定量その他について十分配慮するようにというようなことはすでに申し入れられております。その詳しい内容は私現在はっきりしておりませんけれども、実情はそういうことで現在進行しております。
  38. 中野明

    ○中野明君 もう一点、田尻参考人にお願いしたいと思いますが、昨年高知県の足摺沖でアル・サピア号が油を流しまして、私もその回収で非常に苦労したことが記憶に残っておりますが、そのときの私の感じでは、一遍油がそのように海に流れますと、回収できるのは一〇%程度——外洋だったからかもしれませんが、一〇%程度しか回収をようしなかったのじゃないか、先ほどおっしゃったようにひしゃくなんかでやりましたが。そういうふうに私は受け取っておりますが。水島の一万トンですか、あれ、三菱で流したんですが、参考人は水鳥での回収は大体どの程度回収できたというふうにお感じになっておりますか、参考までに。
  39. 田尻宗昭

    参考人(田尻宗昭君) 水島でどれくらい回収をしたかというのは、私、これ非常にむずかしい数字で、いまだに確定した数字はわからないのです。なぜわからないかと言いますと、当時はもうとにかく海岸に押し寄せてきまして、真っ黒い油が。ですから、もう漁民の方も交えてみんなが総力を挙げてやったわけですね。ですから、一体何トン油を回収できたというのは残念ながらわからない。大体流れた油すらも一万トンぐらいだろうという目算なんです。  そこで、いま一〇%とおっしゃいましたけれども、私、海上保安庁時代に一番多くの油を体験したんじゃないかと思いますけれども、私の体験では、まず百トンというのが精いっぱいじゃないかという感じがするんです。これは体験ですから。ですから、千トンあるいは一万トンとなりますともう手がないという、これは正直に実感でございます。水島のときも、流れ出た油が当初二メーターの厚さで奔流となって流れたんです。オイルフェンスの高さが二十五センチでございますから、すぐ乗り越えてしまうんですね。それから、静かなプールですとオイルフェンスというのはきれいに張れるんですけれども、波があるとぐじゃぐじゃになります。それから、潮がありますと曲がりますね。それから、いかりを両方で張っていますから、引き潮のときに張ったオイルフェンスは、海面が二メーター上に来ますから沈没をするわけです。ですからオイルフェンスには頼れない。だから、オイルフェンスが本当に効果があったという例はまだない。ところが、吸着剤、さっき申し上げたとおり。油回収船というのはいまようやくそれぞれ実験していますけれども、これももうせいぜい何十トンの台で精いっぱいだろうと思います。こればくるくるドラムを回して回収していくわけですから、波なんかあった日にはどうしようもないですね。アメリカのロッキード社が二億円かけて一つつくったんですけれども、海上保安庁これ買いましたけれども、いろいろごみが詰まったりなかなかうまくいかない。そういうことで世界的にもまだ決め手がないんです。そういうことで、恐らく水島の場合も、一万トンのうちのさて何割取れたか、ちょっと危ないところじゃないかと思いますけれども。  お答えが雑駁で済みません。
  40. 小平芳平

    ○小平芳平君 大分長い時間になりますので、ごく簡単に、わずかな点についてお尋ねしたいと思います。  第一に、いま田尻参考人からお話しの点でございますが、オイルフェンスは全く効果なかったということは、広がった現実の姿で何よりもはっきりしたわけであります。そこで今度は中和剤と称するものを大量に投入する。最近でも外国のそういうタンカー事故なんかでは中和剤を盛んに投入している。日本でもそのようですが。海上保安庁の方に何を中和するんですかと聞くと、いや、そんなことは知らないと、とにかくわれわれは常識として、油が流れた、そら中和剤投げ込めというのはこれはもう常識なんだというように言っておられます。中和剤についてはいろいろ毒性等のそうした問題提起もあったんですが、現段階ではこの中和剤というのはどういう作用が可能なのか。そのような点についてお話しいただけたらと思います。  それから、岡市先生に、先ほど来もお話がございましたんですが、とにかくいまの最大の関心事が何といっても赤潮だと思います。で、赤潮についての研究についてお話がございましたんですが、十年かかったらどの程度のことがおわかりになるかというような点。あるいは、完全に赤潮発生を食いとめることができないまでも、ある程度の予防措置なり被害を少なく食いとめるというようなことが可能なのかどうか。そういうこうすれば可能だということがわかれば、これは相当な努力をして、もうそれは国も地方公共団体も企業も一体となって努力しなくちゃならない課題だと思いますが、そんな点についてのお話をいただけたらと思います。  それから、研究体制についても、香川大学はこういう点が進んでいるというお話がございましたが、国としていま何をやれと、あるいは周辺の国立大学は何をやれというような点が率直にお話を伺えたらと思います。  以上でございます。
  41. 田尻宗昭

    参考人(田尻宗昭君) 油処理剤の問題は、初期におきましてジュリアナ号事件当時は非常にたくさん使いました。私たちも、もう油が流れると処理剤と、反射的に使いましたけれども、ジュリアナ号あたりから非常に反省が出てまいりまして、実は油の何十倍、何百倍と毒性があるということが問題になったわけでございます。で、とりあえず運輸省は使用の中止を命じました。その後また規格を決めて再許可をしたわけですが、油処理剤は油を化学的に処理するものではございませんで、物理的に形を変えるわけでございます。ただ、見ると黒い色がなくなるというだけでございますから、毒性はやっぱり失われていない。特に、そこに油処理剤の毒性が加わるわけですから、それが生物に非常に悪影響を与えるということはもはや常識的でございます。  それで、非常に私この点を強く感じますのは、公害防止の名のもとに日本全国で三万トンぐらいの油処理剤を使ってきたと思うんです、全国の海で。それは、実は、ひっくり返してみると油の何倍も毒性があったということに気がついたときに、われわれ実際こういうような油処理剤を使うときの無神経さというのを反省すべきじゃないかと思いますね。それで、いまだに企業の倉庫には膨大な油処理剤が残っている。海上保安庁すら持っているわけですが、漁民の方々がもうほとんどそれを知っておりますので、現場では余り使えないというような実情でございます。アメリカはもうほとんど使いません。イギリスが若干無神経に使うようでございます。そこで、油処理剤というのはやはりわれわれは無神経に使うべきでないということが正しいと思います。  そこで、ちょっとつけ加えますが、こういうぐあいに瀬戸内海保全措置法の十七条に、簡単に、「防除体制の整備」とかあるいは「指導取締りの強化」とか書かれるのは結構なんですけれども、問題は、るる述べましたように、こういう実態でございますから、この際根本的な対策を打ち出さないとこれは空文化に等しいと私は申し上げたいと思います。この程度の表現ならもう海上保安庁の通達にいっぱいありますから、こういう文句だけを書いてみたって、私たち実情を知っている者はこのむなしさを感じているわけですから、これを違った実質を打ち出さないと、これは海上保安庁の海洋汚染防止法や海上交通安全法の二重規制ということにもなりかねませんから、ぜひひとつここで違った発想で根本的な対策を打ち出していただきたい。それはやはり海上交通安全法や海洋汚染防止法ではできない、瀬戸内海独自の、巨大タンカーの航行規制、禁止というようなものを打ち出すことであると、私はそういうぐあいに再度申し上げておきたい。
  42. 岡市友利

    参考人岡市友利君) いま御質問三つございましたわけで、十年後に何がわかるかということ、それから被害を少なくするにはどうしたらいいか、それから国としての施策をどうするかということでございますので、まず、国としての施策の問題と十年後特に何がわかるかというようなこと、これを合わせてお答えさせていただきます。  まず、赤潮の起きる場所というのは、やはり潮の流れの非常に緩やかなところでございますから、まず十年かけて各内湾の海水流動を明らかにするということ。その次に、そういうところでたとえばホタテの養殖、ハマチの養殖、そういうことが行われておりますので、そういった養殖との関係をひとつ考えるということ。それから、流入する工場排水がどういうふうな作用を持っているか、特に生物に対してどのような作用を持っているかを明らかにする。これはいままでのような単にCODではいけないわけでございまして、端的に言いますならば、工場排水を持ってきましてそれでプランクトンを培養してみる。そうしますと、濃度が高い場合にはプランクトンを殺しますが、非常に薄めるとかえってプランクトンの増殖を促すというような、そういう工場排水がございます。この点については、実はいままで赤潮研究でほとんど取り上げられていないわけです。環境庁その他で行われている研究におきましても、広い海面の窒素、燐の分析は行われておりますが、もっと、流入する水そのものについての分析が一つ。それから、先ほど申しましたような、そういった非常に海水流動の緩やかであるかもしれない、そういうところで水産増養殖をどういうふうに維持していくか、こういうところを明らかにしていかなければならぬ。そのための国の施策というのが必要なわけですが、われわれの方としては、後継者、特に研究者としての後継者の養成というのが非常に急務であると考えております。実は、十年前から赤潮研究は進んでおりますけれども、十年後にまた研究班を結成しようと思いますと、同じメンバーが集まってくるわけです。その間一つも、新しい後継者、若い研究者がなかなか出てこない、ここに問題がありますので、こういう若い研究者の養成ということを国にお願いしたいということです。そういうことを行っていくことで、先ほど申しましたような内湾の中の全体の生態系の成り立ちというようなものは、大体私は一つの湾については五年でできるだろう。各湾の、かなり大きな湾を考えてもいいわけですけれども、播磨灘ぐらいの規模のところでも研究班を一つずつつくっていくことで、五年ごとに研究は進歩するだろうというふうに考えております。  それから、被害を少なくする方法でございますが、赤潮の被害に実は二つございます。一つは、赤潮プランクトンそのものが魚を殺すこと、このことが一つあります。それからもう一つは、プランクトンは魚や貝は殺しませんが、貝に食べられまして責の中に蓄積して、そうした蓄積した毒が今度は人間に害作用を及ぼす、それを食べた人が中毒すると、そういう二つの被害というのがあるわけでございます。  で、魚に対する被害を防除するのにどうするかという問題があるわけですが、これは、実は、香川県の漁業者では、自分たちが組合単位に顕微鏡を持っておりますので、水をくんできましてプランクトンを実際自分たちが観察して、ある程度の数以上になったらすぐ警報を出し合うというようなことがまず一つ、これはもう具体的な方法としてあるわけです。それでハマチの養殖網を沖合いに出すというようなことがあります。で、もう一つ、貝にたまった毒というのは、一カ月あるいはもう少し置いておきますと毒が減少してきますので、その間きれいなな水の中へ移すような技術を開発するというようなことで被害の減少はできます。  ただ、赤潮発生をどういうふうにして防ぐかという、これが実はやはり根本問題でございまして、私たち赤潮防除ということをまあ早く言えば社会的な課題として感じたときに、赤潮発生を防ぐことがやはり最大の課題であり、前提であるというふうに考えておるわけです。そういう意味で、COD、N、Pの規制を行い、かつ、流入する排水のプランクトンその他に対する直接的な作用を調べることが必要であろう、そういうふうに考えております。
  43. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、大変限られた時間でございますので、お伺いする点をそれぞれ申し上げたいと思います。  まず、水野参考人にお伺いをしたいと思うんですが、これはすでにお述べになっておられますけれども、埋め立ての問題というのが非常に重大な問題です。今回の法案でも規制については何ら現行の臨時措置法とは変わらないという状況になっております。で、この五年間の埋め立ての面積あるいは件数等は減っておりますけれども、現実に見てみますと、ちょうど臨時措置法施行以前からの計画が表面化をしていて、それがそっくりそのまま臨時措置法施行の期間に申請をされあるいは許可をされていると、こういうことになっているわけですね。手続上、確かに申請者と許認可の責任者とが同一人というケースがたくさんございますし、そういう点も問題になろうと思うんですが、そういう点の盲点があると同時に、私どもは特に、臨時措置法十三条一項の埋め立てについての基本方針というのがその機能を果たしていないがゆえに、いわゆる法施行前の計画がほとんど大部分、海田湾等を除いて大規模計画というのはほとんど認可をされているという点で、基本方針がその機能を果たしていないという状況というのが一つあると思うんです。  それからもう一つは、同じように、「特定施設の設置の許可」も、これも非常に問題だと思いますのは、たとえば兵庫県の神戸製鋼加古川製鉄所の三号高炉の問題なんですが、これは「特定施設の設置の許可」との絡みですが、いずれもアセスメントが添付されているという内容ですけれども、その場合に、まあ何というんですか、住民意見というのが十分——十分というより少しも参酌されないという状況が続いてきているわけですね。  ですから、環境保全に経微な影響でしがなかったという、軽微な影響しか与えないという点で認可をされているとは言い条、実際上は、埋め立てのケースでも非常に多くのケースで差しとめ訴訟あるいはその他の訴訟等で現在なお係争中というのが圧倒的に続いているというように思うんです。私どももこれは埋め立て等については瀬戸内海は原則として規制をするべきだと、禁止をするべきだと、特例を除いてそうするべきだと思っていますが、そういった点で、基本方針その他を決めてもまずそれが実施されないと。もっと言えば、法律が決まっても、それがきちんと実施されないで素通りされていくというあたり、この辺等の問題についてのお考えをひとつお聞かせ願いたい。  もう一つは、総量規制の点についてもお述べになられましたが、私どももこの点については、非常に総量規制導入について歓迎をすると同時に、内容について大きく不満を持っております。その点では、総量の設定で、「人口及び産業活動の動向、」とか、「汚水」「処理の技術の水準、下水道の整備の見通し等を勘案し、実施可能な限度」というあたりで決めているわけですね。で、環境庁考え方でも、通産省との話し合いの中でも現在の上乗せ基準より厳しくしないというふうなことが申し合わせられているということになりますと、これは大変なことになりますので、私どもは、こういう考え方というのはまさに伸縮自在で、経済との調和論がもうたやすく入り込む状況を許すという立場で批判をしておるわけですけれども、そういう点で、総量規制実施するに当たっての御見解などを承りましたが、その点をひとつ強化をする上での御意見を少し詳しくお述べをいただきたいと思います。  それからもう一つは、田尻参考人にお伺いしたいんですが、直罰方式をとって、やっと公害基本法が改正されてから一定の実効が上がったと言われているんですが、今度の富栄養化の原因物質である燐の規制ですね、これは指導、助言、勧告という内容なんですね。こういうことで行政上果たして実効が上がるや否やと。私どもは非常に不満だと思っておりますが、その点についての御見解を伺いたいと思います。  それから、岡市参考人に、これはいろいろお伺いをしたいんですけれども、一つだけお伺いをしたいと思いますのは、三菱石油の事故が起こりましてから数年たちますが、その影響ですね、追跡調査等がございますれば、生態系あるいは漁業に及ぼす影響、そういったものについてお伺いをしたいと思います。  あわせて、埋め立てによるモ場あるいは干がた等の破壊ですね、つまり埋め立てによる漁業あるいは生態系に及ぼす影響、そういうものがありましたらひとつお伺いをしたいと思います。
  44. 水野武夫

    参考人水野武夫君) まず第一点の、埋め立ての点についてお答えいたします。  埋め立ての基本方針は、先ほどもお話ししましたように、このとおり運用されるとすればかなりいいことも書いてある。しかし、現実にそれが機能していないというのは、先ほど言いましたように申請をするのは府県であり、軽微であってこの基本方針に合致しておるかどうかということを判断するのも府県である。そして、最終的にそれを認可するのも府県知事であると、こういうふうな、まあ三位一体と申しますか、こういう形で運用されておるわけでありまして、それをチェックするものが全然ない。これでは全く、何といいますか、しり抜けでありまして、これが機能していない最大の理由だと思います。したがって、公有水面埋立法の基本的な枠組みというものを根本的に考えていかないといけないのではないか。これは先ほども御紹介しました公有水面埋立法の改正の際にもそういう附帯決議がなされておって、当時からそういうふうな認識がされておったのでありますから、そういうふうな根本的な考え方の改正が必要である。  それからもう一点、瀬戸内海の埋め立てについて申し上げれば、やはり瀬戸内海の中で埋め立ては全面的に禁止すべきだという意見、これも十分傾聴しなければならないと思いますけれども、仮に、全面的な埋め立て禁止はだめだと、それは行き過ぎだということになったとしましても、全体的な見地からこの部分だけは少なくとも残すべきだという、何といいますか、線引きといいますか、そういったものが、まず総合的な観点から決められなければならないんじゃないか。したがって、少なくとも瀬戸内海のうちこの部分だけは海浜保全地区として埋め立ては一切禁止するということを府県に任さないで、根本的に国の方の立場から、全体的な立場から決めないことには一向に進まないんではないかと思います。  そして、もう一点、それじゃ関係府県がどうしてそういうふうに埋め立てに走るのかということであります。これは従前からのように、ただ単に工場を誘致するために埋め立てをするというふうな埋め立ては減ってきておるように思います。しかしながら、たとえば下水処理場をつくるだとかあるいは屎尿処理場をつくるだとか、そういった場合にすぐに埋め立てに走る。これは、本来なら内陸部でそういう用地がないかということを十分に検討すべきなんです。ところが、行政というのは、往々にしてそういうふうなめんどうくさいことはしない。たとえば陸地内でやるとなりますと、住民の反対運動も起きる、それから買収もしなければならない。そうすると、一番行政として安易なやり方は、海を埋め立ててそこにつくる、こういうふうな安易なやり方に流れると、それが埋め立てを促進さしておる原因だろうと思います。したがって、各府県にそういう埋め立てを抑制させるという機能を期待するのは、これはやはり無理なのではないかというふうに思います。  それからもう一点、総量規制についてでございます。これは、私は非常に残念だと思いますのは、四十八年に御承知のように瀬戸内の臨時措置法ができました。これは、現在これだけ汚濁負荷量があると、それを三年以内に二分の一カットだと、こういう方式でやられたわけですね。これはすぐにでもそういう形で実施ができるいわゆる総量方式でありました。これは私は当時の達見だったと思います。委員先生方が提言された達見だったと思います。それによって一定の成果を上げてきました。ところで、三年たちまして恒久法が考えられたときに、私の仄聞しておるところでは、総量規制の手法を導入するのが技術的に間に合わないということでさらに二年間延長された。それで五年間待ったわけです。しかしながら、五年待って出てきた総量規制というのは、やはり四十八年に議員立法として成立した、現状から削減していくという形での総量規制でしがなかった。これは私は、臨時措置法の中で総量規制を早急に導入しろということが規定されてあったにもかかわらず、五年たってもそういうことが実現できなかったという意味で、行政の怠慢だというふうに申し上げてもいいのではないかと思います。  それから、総量規制を強化するにはどうしたらいいかということでございますが、その点についてはやはり根本的に発想を転換していかなければいかぬのではないかというふうに考えるわけです。つまり、従来は海とか河川に水を流すというのは、これは公物の自由使用だというふうに工学上考えられておりました。しかしながら、河川をある一つの企業が独占的に排水口として、排水路として使用すると、こういったこと、あるいは海域にいろんな汚水を流しましてヘドロをためてしまうと、そういったことになってきますと、これは公物の自由使用というよりは公の公物を独占的に使用しておるんだということになってこざるを得ないわけです。そうしますと、それは本来自由なのではなくて、本来許可を得て初めてその特定の事業場がやれる行為だと、そういうふうに発想を転換しますと、そもそもそういう公共用水域に汚水を流すということは、これはある一定の許可を得て、つまり総量規制に基づく一まあ一年間なり一カ月これだけですよと、割り当てはこれだけですよという許可を得て初めてそれだけが流せるんだと、そういった発想の転換に立って根本的な総量規制の制度を考えなければ実効は上がらないのではないかと、このように考えております。
  45. 田尻宗昭

    参考人(田尻宗昭君) 基本的には助言、勧告、指導なるものはもうやはり卒業したんじゃないかと思いますね。それがやはり先ほど申しましたように四十五年の公害国会における非常に厳しい直罰制度の導入であったと思います。あれ以来私どもは現場で本当に厳しい公害監察をやっております。私自身も、そういう指導助言の実に効果の上がらないために刑事事件としての摘発もいたした経験も持っておりますが、いまも私どもの公害監察はもちろん、警視庁の方でも、相当なやっぱり摘発の成果を上げておられますけれども、直罰のある項目についてさえ今日なおなかなかその後を絶たないという現実を見ますときに、やはり厳しい基準を設定して、そうしてそれを旗印にして行政も企業もそれに対して邁進するということをきちっとやりませんと、なかなか指導助言というのは現場ではどうも甘くなってしまうという、これはもう否めない現象だと私は思います。一番いい例が産業廃棄物でございます。  そこで、燐の問題でございますけれども、なるほど燐についてはまだ科学的な解明、きちっとした対策の解明等がおくれていることは事実でございますので、早くそれを解明をし、基準をつくり、やはりほかの項目と同様に規制を行うということは私は必要だと思いますが、それにつけても、やはり国を中心とするこの研究体制というものをもう少し整備確立をしなければ、いつになっても研究の方がおくれて、特にいろんなこの産廃の処理とかそういうものについてはメーカーが一番知っているというようなことではいつになっても困るわけで、特に自動車排ガス規制でもそうでございましたが、早く国を中心として自前の答えを持ってそして迫っていくということをしなければならぬと思います。手前みそでございますが、私の方ではそういう反省をいたしまして、生産工程そのものについてあらゆる種類の答えを出しました。こういうぐあいに公害を処理すべきだという答えをきちっと今回完成をいたしましたが、やはりそういうような、行政みずからが答えを持って、きちっとした研究体制を総合的に確立して追っていくというのでなければ、やはりいつになっても技術水準に振り回されて、こういうような規制基準がおくれてしまうということになると思いますので、その点は申し添えておきます。
  46. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 時間が大分なくなりましたので、私、お三人の方からお答えいただきたいと思うんです。  第一に、水野参考人、いまも埋め立てのお話が出たんですが、先ほどのいわゆるこの埋め立てというものが一番汚染をしているんだというお話一で、いま水野参考人は、全面規制は無理なんだ、禁止は無理なんだから、ある地域は国か何かでもってここはもう埋め立てをやらないと、そういうことでもやらなくてはというお話であった。で、お聞きしたいのは、埋め立てをやる面積で、何というんですか、ある以上大きくしないで、狭い範囲でやっていけば、それほど大きな汚染を起こさないとか、あるいは水深でもってこれ以上深いところは埋め立てばいけないとか、何かそういう面からの規制をしていくならそれほど汚染をしないでいく方法がないものか。私も、いろいろ言っても、環境の面から考えればもう全面禁止をしてしまえば一番いいんですけれども、現実の問題としてはなかなかそうはいかないので、そういう角度からの御判断といいますかお考えをお聞きしたいと思います。  それから次に、田尻参考人にお聞きしたいんですけれども、あそこの水島港のところ、これは私もあそこへ行きまして航路を見まして、言えば十文字に航路がああいう設定がされて、一日にあそこを走る船の数大変な数で、よくあれでもってぶつからないと不思議に思ったくらいです。先ほどのタンカーですけれども、水島港は夜間の入港、出港は禁止になっているのかどうか、そこ私知りませんのでひとつお聞きしたいということ。  それから、あの油ですけれども、海の上に浮いている時間が、あれ、いつまでも浮いていることはないはずなんで、普通の油と違いますから。そういう点でもって、何時間ぐらいまで浮いておって、それから先は、今度はもうあれ沈むはずなんですが、海面上に浮かんでいる時間がどのくらいなんでしょうかということです。  それから、岡市参考人に、これは御意見開陳されたのと関係のないことをお聞きするので、もし御無理だったら構いませんけれども、ああいう瀬戸内海のような閉鎖性の水域の中、水がかわらないで結局あの中でぐるぐるしているわけなんだけれども、端的に言いまして、今日の技術を持ち出していって、あれを何とかこう水を動かすような方法というものができないのかどうなのか、そういうことをどこか大学か何かで御研究なさっているところないんだろうか。それに関連しての御意見ございましたらお聞きしたいと思います。  以上です。
  47. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ちょっと、失礼しました。先ほどの沓脱委員の御質問に、岡市参考人のお答えをまだ伺っておりませんでしたので、それで岡市参考人から先に、柳澤委員の御質問と両方一緒にお答えいただきたいと思います。
  48. 岡市友利

    参考人岡市友利君) それでは、先に御質問の、三菱石油の流出後の追跡調査の件と、それから埋め立てによる干がた、モ場への影響と、それを先にお答えさせていただきます。  三菱石油が流出したときに、調査にかかわりましたのは、大学の研究班と、それから環境庁を主体とする水産試験場、その他建設省その他の機関も関係しましたが、大きく言うと二つの研究班があったわけでございます。大学の研究班は、昭和四十九年の十二月にできたわけですけれども、四十九年度、五十年度で研究を打ち切っております.それから環境庁関係はもう一年続いたかのように思います。が、その後の影響につきましては、実は私どもで油の分析をしましたところ、これが三菱石油から流れた油だということを同定することは一年後にはなかなかむずかしくなりまして——海水中ですけれども。ただ、確かに周りの岸壁だとか海岸に打ち上げられたものは残っておりまして、それについての研究は、これはまた別な大学の研究班が組織されて続行されております。われわれが心配しますのは、石油成分の中で特に芳香族化合物という、ちょうどベンゼンだとかそういったもの、ベンゼン核のようなものを含んだものは、やはりこれは海底に沈んだような場合には長い間残るであろうと、物によってはそれが発がん性を有する場合があるので、こういったものは海域の中に残るということが非常に重大な問題であり、なおかつ、現在常時タンカーその他から排出される油が瀬戸内海にあるわけでございます。重要なのは、もちろんその残留石油の問題もありますけれども、それよりも常時流されている油に対していかに規制をしていくかということが現在では重要な問題になっております。これがまあ三菱石油の追跡の現状でございまして、現在ほとんどその結果というのはまだ取りまとめられていないと申してもよろしいかと思います。  それから、埋め立ての影響でございますが、本来干がたというところは、われわれは海が呼吸をしているところだと言っているわけですね。干がたの上に砂があります。で、波が引くときには、これは波と一緒に空気を吸い込んで、波が下の方へこう下がって、今度は潮が満ちるときには下の方の砂の中をやはり通りながらだんだん満ちてくる。そういう意味では、どろの悪化を防ぐ場所であるということで、非常な重要な意味があるわけですね。ことにそういうところに具なんぞが生息しておりますと、たとえばアサリやなんかでも、一個のアサリが数十リッターの水をろ過してくれるわけですね。数リッターから数十リッターの水をろ過してくれます。そのろ過によって海水中の有機物が除かれるという作用がある。しかもそれが人間に有用に利用されると、そういう場所をつぶしていくということで非常に問題であるということなわけです。  それからモ場にしましても、モ場は単に魚の生息場所じゃなくて、あるいは稚魚の生息場所というだけではなくて、そこでやはり太陽光線を受けまして、酸素を生産しているわけです。よくこのごろ水の中の酸素がなくなる、海水が無酸素化するというような問題が提起されますけれども、これはやはり一つはモ場などでの溶存酸素の生産が抑えられてくると、そういう現象は十分考えられるわけでございます。で、埋め立ての問題というのは、いろいろ問題点陸上の方からは指摘されているわけですけれども、海の方から言えばそういう問題がございます。  次の御質問にも続けてよろしゅうございましょうか。——閉鎖水域での海水流動というのは、これは実は瀬戸内海で現在非常に問題になっております。これは燧灘というところが、ちょうど香川県と愛媛県に囲まれた水域がございます。新居浜市だとか川之江、伊予三島市に大きな工場がございます。かなりこういうふうに広がった海なんでございますが、その中で、東の約三分の一は非常に海水の流れが緩やかである、ほとんど閉鎖水域と考えてよいというようなところでございます。そういうところでは、表面は非常に酸素が多いんですが、底層ではもう酸素がなくなってしまう無酸素化現象というのがありますので、これを私たちも、水平的にどういうふうに動かすか、あるいは垂直的に水をどう動かすかということが、現在非常な問題になっております。技術的には、たとえば瀬戸内海全体ですと二千三百平方キロメートルもありますのでとうていむずかしいんですが、そういうふうな無酸素化している海域、それでも十キロ掛ける十キロぐらいの広さがありますが、そういうところでいかに水を動かすか、動かすことによって酸素を補給させるかということは確かに重要な問題になっております。いま環境庁一つ今年度計画しているのに、これが非常に小規模なんでございますが、非常に酸素の多い水を酸素の少ない水の中へ押し込もうという計画一つあるようでございます。ただ、私たちがその影響範囲と考えるのはわずか百メートル範囲くらいであろうと。で、十キロのところで百メートルの仕事をするということ、それだけでも実は大変なことでございまして、今後、こういう技術の開発ということはかなり重要かと思っております。  以上です。
  49. 水野武夫

    参考人水野武夫君) 埋め立てに関しましては、先ほども申しましたように、まず禁止地帯というものを決めなければならないと思います。そして、仮に全面禁止でなくて、禁止地帯に外れた地帯がありましても、それはまさしく先生が御指摘になりましたように、一定の規模以上の埋め立てはできないという、そういうことを法律に、瀬戸内法に明記すべきではないかというふうに考えます。さらに、面積以外にも使用目的なんかも考えられると思います。そういったものを瀬戸内法に明記しまして、それ以外の埋め立ては全部禁止であると、そういうふうなことを、まさしく先生のおっしゃるとおりの方法でやるべきではなかったかというふうに考えます。  ただ、水深につきましては、これは岡市参考人のお話にもありますように、浅瀬というのはむしろ浄化とか魚の産卵場とか、そういったところでありますから、浅いから埋め立てていいということにはならないというふうには考えておりますけれども、基本的にはそういう形で、何らかの、現行法とは違った埋め立て規制措置を盛り込むべきではなかったかというふうに考えております。
  50. 田尻宗昭

    参考人(田尻宗昭君) 第一点の、夜間の問題でございますが、海上交通安全法では、明石海峡以外の備讃瀬戸とそれから水島航路、来島海峡については夜間を規制しております。夜間は通れません。明石海峡は除いております。  それから、油の、どのくらいの時間で沈むかというお話でございますが、こういうことがもう実に研究が開発されていないですね。それで、実験験室の中で、限られた量でやるのと違いまして、現場の波、潮、それから拡散、こういうものを含めますと、全然結果が違ってきます。いまわかっておりますのは、たとえば、まず油というのがこう広がっていくわけでございますね。広がっていく中で沈むものもございましょうし、分離するものもございますが、凝固して廃油ボールになるという現象もあるわけでございます。この廃油ボールがまたこれ厄介でございまして、大体数十日で廃油ボールになるだろうと言われているんです。で、廃油ボールになりますと、大体海面から二、三十センチぐらいのところへこう浮遊をしているという状況なんで、これが海岸にやってきますとなかなかキャッチしにくい。しかも、何かですくおうとしましてもすくいにくいということで、数十日といいますとちょうどフィリピンあたりで流した油が日本にやってくるときにそのくらいになりますので、廃油ボールという現象が一つ起こるわけです。とにかく油そのものがかなり長期汚染を呼ぶであろうということは間違いのないことでございまして、特に海岸等に付着した場合には、これは非常に始末が悪いわけですね。磯、それから海岸等に付着しました場合はかなり長期に残るということでございまして、今度の英仏海峡のアモコ・カジス号事件でも、この沿岸汚染で非常に多量の海鳥が死んで大問題になっているということでございますので、いずれにしても瀬戸内海は余り拡散をしませんから、滞留をするために、どのくらいでどうなるかということはちょっと見当がつかない状態でございます。
  51. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 以上をもちまして、参考人に対する質疑は終了いたします。  参考人の方々に一言お礼を申し上げます。  本日は、御多用中のところ、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚くお礼申し上げます。どうもありがとうございました。  午前の審査はこの程度にとどめ、午後二時十五分まで休憩いたします。    午後一時十二分休憩      —————・—————    午後二時三十一分開会
  52. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を再開いたします。  瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案議題とし、前回に引き続き質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  53. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 最初に環境庁長官の方にお聞きしたいんですが、政府が本年度の予算、景気対策をねらって大変な大型予算を組んだわけです。その大型予算の、言うならば景気を起こそうという中心が公共投資に向かっているということはもう御存じのとおりなんです。長官にお聞きをしたいのは、財政投融資と両方含めますとかなりの金額が公共投資におりていくわけだけれども、環境アセスメントの関係については、きちんとその辺の整備がされておるのかどうなのか、その辺からお聞きをしてまいります。
  54. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) 景気対策に、景気波動効果を上げるために公共事業中心の大型予算を組んでいることはいま御指摘のとおりでございますが、公共事業の実施については、これは無論事前にこの評価を行って、つまりそれでその悪影響を未然に防止しようということは既定の方針で、政府の関係の公共事業についてはそういうことをやるということで閣議の了解もできてやっております。  そのほかの面については、いろいろ関係の法令等にそのことを要求しているものもあるわけでございまするけれども、各案件についてこのことを関係省にわれわれの方では要請いたしまして、したがって、その点についての事前の評価ということについては非常に精力的にその体制を現に進めながらやっておる現況でございまして、環境庁といたしましてはこの上ともそういう点について十分意を用いてやっていきたいと、こういう方針をもって臨んでおる次第でございます。
  55. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 長官、むずかしいことだけれども、もうちょっと突っ込んでお聞きしておきたいんですが、いろいろの面で環境行政というものはおくれているわけなんでしょう、現状において。それで、たとえば、いまも瀬戸内法の問題をやっているんですけれども、工場なら工場一つをつくるにしましても、工場をつくる前にそこへ投資をして、一つの工場をつくる前にこれだけのことをやらなきゃいけないんだぞというならば、そのために仮に十億なり二十億なりの金を投資をしてやれるわけなんですね。ところが、えてしてでき上がってしまってから、それでは不十分だからここを改善せい、あそこを改善せいと言えば、初めなら十億でできるものが今度は二十億かかるわけなんです。そういうことがいま至るところで行われているんで、そういう点からも私はお聞きしているわけなんで、その辺が長官として——何だかんだ言っても、この前も言ったように環境庁ができたのが遅かったんですから私は無理はないと思うんです。しかしながら、かなりピッチを上げて環境行政をおやりいただかないと追いつかないと思うんですが、その辺で長官のお感じはどうなんです。無理なことを私は聞くつもりはないんですから。
  56. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) いま御指摘のように、事後ではなくて事前に必要な評価を行うことの必要、そういうことはこれは当然でございまして、われわれもその必要については痛感いたしておりまして、その体制づくりのために実は努力をしてまいったようなわけでございます。にもかかわらず、いまは、現に大型の公共事業につきましては、いわゆる関係当局にわれわれの方としても要請いたしまして、そういう面でこの事前の環境評価ということについてはできるだけそれぞれ努力さしておりまして、現にそういう形で進行しておる現況でございます。にもかかわらず、われわれといたしましてはその既定の方針に従いまして、一層そういう点に留意してもらうように、常にこの点については連絡等を怠らないで努力いたしたい、これがわれわれの立場でございます。
  57. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 じゃ次に、建設省の下水道関係、来ていらっしゃいますですね。  水質汚濁防止ということでいろいろいままでも論議をされてきたんですが、この工場廃液の問題はわりあいに問題点として取り上げられて改善がされていっているが、生活排水の方についてはどちらかというと取り残されてきている方だと思うんです。で、この生活排水の方なんかもかなり私は問題があるのではないかと思うんで、それらを含めましていまのこの下水道の普及率、国際的に比べて日本の場合がどの程度になっておるのか。特に東京湾とか瀬戸内海、伊勢湾、こういうふうな閉鎖性水域に排出をされてくるその辺の府県の下水道の普及率というものがどの程度なのか、その辺をお聞かせをいただきたいと思うんです。
  58. 高橋進

    説明員(高橋進君) お答えいたします。  下水道普及率につきましては、ただいま全国で二四%でございます。五十一年度末の数字でございますが、これは総人口に対します下水道の処理区域内人口ということでございます。これが現在二四%ということでございます。  で、閉鎖性水域の地域別に申し上げますと、東京湾地域につきましては三五・五%、これは埼玉県を含んだものでございます。それから伊勢湾地域、愛知県、三重県、さらに岐阜県を含めまして二五・六%でございます。それから瀬戸内海地域十一府県の普及率を平均いたしますと三〇・五%ということでございまして、まあいずれも全国平均よりは上回ってはおりますけれども、全体的にはまだ非常に十分でないという状況でございます。  ちなみに、諸外国で申し上げますと、最近の数字ではアメリカ七一%、イギリス九四%、オランダ九〇%、西ドイツ七九%というように、欧米先進諸国におきましてはやはり七〇から九〇といった相当高い水準でございまして、そういったところに比べましても非常におくれているということは否めない事実でございます。
  59. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 低いというよりか余りにも差がつき過ぎているわけなんですが、経済大国日本の下水道の普及率というのは情けないと思うんです。建設省としては、その辺についてこれからどういふうにそれを引き上げていくというお考えなのか、その辺の御計画がありましたらお聞かせいただきたいと思います。
  60. 高橋進

    説明員(高橋進君) 現在、建設省といたしましては、下水道整備につきまして昭和五十一年度を初年度といたします第四次下水道整備五ヵ年計画に基づいて事業を実施しております。これは、計画額は予備費を除きまして七兆一千億円ということでございます。五十五年度末の処理人口普及率四〇%を目標といたした計画でございます。これの基本的な目標といたしましては、水質環境基準の達成、あるいは公害防止計画の達成というようなことが大きな柱になっておりますけれども、今後、いま御審議いただいております総量規制制度というものができますならば、そういったものにも沿いながら下水道整備を進めてまいりたいと考えております。
  61. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 じゃ、今度環境庁の方にお聞きをするんですが、この資料の中にもあるんですけれども、「瀬戸内海環境保全臨時措置法第三条の瀬戸内海環境保全に関する基本となるべき計画の基本的な考え方について」、この答申が出されましたのが五十一年の十二月一日。瀬戸内海環境保全審議会から出されているわけなんです。かなりの日数がたっているんですけれども、これについて、その後環境庁がこれをどういうふうにしようとしているのか、そこからまずお聞きをしてまいります。
  62. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 瀬戸内海環境保全審議会から、基本計画の基本となるべき考え方、この御答申をちょうだいいたしましたのが五十一年の十二月の初めでございます。それから現在まで約一年半経過をいたしておりますが、この答申におきましては、今後の瀬戸内海環境保全につきまして非常に多岐にわたる施策が盛り込んでございます。一応水質保全の目標なりあるいは自然環境保全の目標というのを掲げ、それを達成する施策の基本的方向ということで各般の施策が盛り込んであるということでございます。したがいまして、政府として、この答申をベースにいたしまして、正式の基本計画を決めるということにつきましては、やはりこの基本計というものを具体的に実施をしていく十分な裏づけといいますか、手段というものを用意するということが必要であろう、こういうふうに考えられたわけでございます。  そこで、環境庁といたしましては、この答申をちょうだいしまして、この中に盛り込まれております各般の事項につきまして、具体的に検討を行いまして、既存の制度で対応できるというものと、それから、やはり新たな立法措置というようなもので対応しなければならぬものというふうに区分けをし、さらに新しく立法をいたします際にも、瀬戸内海につきましても同じくやはり日本国の法制が適用になっておるわけでございますから、その際に、この瀬戸内海でやります際に、それ以外にどういう新しい特別的な施策がまたつけ加えられるのかと、そうすると既存の制度との調整というものをどうやっていくかというようなことをいろいろ詰めたわけでございます。そういうことで検討をいたしました結果、今回のこの改正法案ともども、ことしの四月二十一日の閣議におきまして基本計画というものを閣議決定をしたと、こういう経緯になっておるわけでございます。
  63. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私は希望的なことだけ申し上げておきますと、いまもお話しありましたこの答申の中でも、「瀬戸内海が、わが国のみならず世界においても比類のない美しさを誇る景勝の地として、また、国民にとって貴重な漁業資源の宝庫として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものであるという認識に立ってそれにふさわしい環境を確保し維持することを目途として、」云々と、こう書かれているわけです。これは私が読まなくたってお読みになったと思うんです。ですから、そういう点からいきまして、こういう答申を受けて、それなりの基本計画がやっぱり速やかに立てられて、そして先ほどお話しのように、既存の法律、新しくつくらなければいけない法律、場合によるとそれらを全部ひっくるめた、もう一回本当の総合的な法律をつくらなければならないということにもなってくると思うんですけれども、そういうことについて、やはりもうちょっとスピードアップをしてやっていっていただかないと、先ほど冒頭に長官にもお聞きしましたように、日本の場合には、環境行政というものが外国から比べると非常におくれておっただけに、ピッチを上げて、そういうものに追いつくようにしていただきたい。ですからいまの点は、一応そういう希望を申し上げて終わりたいと思うのです。  次に、赤潮の問題をちょっと聞いておきたいと思うのです。これはもう前々からもいろいろ赤潮の多発化というものでは委員会でも議論をされてきたんですから、余り細かいことをお聞きはいたしません。ただ、これも御無理なことを言うことになるかと思いますが、四月の十四日の当委員会で、赤潮発生防止に関する決議をいたしました。まだそれから一カ月半しかたってないのだと言ってしまえばそれまでになってしまうのですけれども、あの委員会で採択をされた決議に基づいて、その後環境庁の方でもってどういうことをお考えになり、どのようにしようということをお考えになっているのかということをお聞きしたい。
  64. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 一つは、この前の当委員会で、赤潮に関しまして御決議をちょうだいいたしたわけでございます。で、その際に、赤潮研究体制の整備というような問題の御決議があったわけでございますけれども、この研究体制の整備につきましては、従来も赤潮研究会というようなことで、各研究機関なりあるいは各大学の先生等の赤潮研究についての専門家の方に、十四名の方でございますが、お集まりいただきまして、研究をしていただいておるわけでございますけれども、五十四年度以降、そういう研究体制をどう持っていくべきかという問題が、当然あの決議というものの線を体して詰めていくべき点であろうと、こう思っておりまして、実は赤潮研究会も五月に入りまして開催をいたしまして、第三回目の赤潮研究会でございます。その研究会におきまして、今後の赤潮発生機構の解明等を中心にした赤潮研究といいますものをどう進めていくか、どういうテーマにして、どういうところがそれぞれ分担をして進めていくかということを現在検討を進めておるところでございます。その辺の、先生方の御相談された研究会の線というものを体しまして、五十四年度の予算要求等も、それ以降も——単年度で済む話じゃございませんので——十分考えていきたい。それから五十三年度につきましても、多少その面で研究費がまだ要るということであれば、その辺の不足な部分については手当てをするというようなこともあわせて検討をいま進めておるわけでございます。
  65. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私が聞いている方が無理があればそれはあれだと思うのだけれども、いまもお話しされておりますように、この決議の中で、「赤潮発生機構の解明等を推進するため、大学、研究機関と有機的連けいを図るとともに、総合研究所の設置、国立研究機関の整備・拡充等総合的研究体制の確立を図り、系統的組織的研究を進めること。」と、こういうわけなんでしょう。で、五十四年度の予算にといいましても、皆さん方が本気になってあれだけ赤潮の問題が大きく取り上げられて、年々年々ふえてくる、しかも、どうもはっきりと原因がわからぬといっていま困っているわけです。だったら、少なくとも当委員会のあの決議にのっとって、五十四年度の予算なんていうのんきなことを言ってるんじゃなくて、緊急に、どっちみちこれはもう補正予算を秋には組むんですからね、その秋の補正予算の中に、それだけの問題について、私たちとするならば予算を得てそして早急にそれについてのそういういろいろ研究機関を打ち立てていくことについて考えます、いまのところはこういうものをいろいろ頭の中に描いていま準備をしているんですということがなかったら、私、とてもじゃないけれども間に合わないと思うんです。そうしてまた、今度こうやってこの公害の特別委員会開いて参考人を呼んだり、赤潮の問題がどうなんだこうなんだってここでもって同じように議論を繰り返したって私はしょうがないと思う。いままでもかなりの、参考人意見も聞いたり、またこの場の中でも議論がされて、そういう中から何をしなくちゃいかぬか、ともかくそういうものを国として実態を調べる機関をつくろうじゃないかと。だったら、もうちょっとその辺をスピードアップしてやってくれませんですか。そういうお気持ちになりませんか。
  66. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 赤潮研究会は、昨年の九月以来水産庁と共同で開催をしておるわけでございますが、特に先ほども先生からもお話しございましたように、当委員会の御決議もちょうだいいたしましたので、さらにこの赤潮研究といいますものを組織的に体系的に進めたいということで、その進め方そのもののあり方というものを一体どうやったらいいかというのをひとつこの赤潮研究会の先生方に十分今後の研究の進め方、またその際のテーマ研究体制のあり方といいますか、そういうことも詰めていただこうと。で、五十二年度には当然赤潮研究会でいろいろやっていただいております。特に、播磨灘発生しましたホルネリアを中心にいろいろ検討してもらっているわけですけれども、ただホルネリアだけにとどまらず、またいろいろやっていただかなくちゃならぬので、そういうものはどういうものがいいのかということもございます。  そういうことでいま検討していただいていて、現在が五十三年度でございますから、五十三年度でも、そのための研究費が足りなければそれなりの調整費というのがございますから、そういう面で手当てはできまいか。さらに、五十四年度以降の予算もこういう構想のもとにおいて、五十四年度はとりあえずこの程度までやっていくというようなことも、これも八月末までが概算要求の締め切りでございますから、いまから、そういう先生方の基本的な研究体制のあり方ということを詰めていただいた線にのっとって役所としては進めていきたい、こういうことで水産庁と一緒の取り組みをやる、こういうことでございます。
  67. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 時間がないからあんまり細かく……。  過去の一年間の赤潮の被害というのは、どのくらい起きてどのくらいの損害が起きているのか。私、いま手元にその数字を持ってきていないからそうやってお聞きをしているんだから、それは皆さん方おわかりだと思うんですよ。なまやさしいものじゃないはずでしょう。膨大な損害を受けて、そしていま漁業関係者なんかも大変な騒ぎをし、水産庁も大騒ぎをして、何とかしなくてはって言っているわけです。だったら、それだけの損害を年々年々受けているならば、私がどうしても理解がいかぬのは、そのいまやっている赤潮委員会ですか、その委員会から出てくるのを待って、それで環境庁が物をやるんじゃなくて、そういう先生方のいろいろの意見を十分聞くのばいいけれども、環境庁自身として、今日この実態がかなりのものはわかっている。そして、わかっていながら、莫大な損害を受けているんだけれども、その原因が明確につかみ切れない、だったら、環境庁自身がそういうものをつかむために進んでやって、それでそういうものをやると同時に、いろいろ先生方意見を聞くのもいいですけれども、先生方の御意見を承って、その答申が出てきてからという、それじゃとてもじゃないけれども今日のこの情勢の変化に適応していかないんじゃないんですか。そこが私が、大事なポイントで皆さん方にもうちょっと本気で取り組んでいただきたいというところなんです。
  68. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 赤潮の、特にこのメカニズムの解明という問題はきわめて専門的でございます。また、研究者の中でも、この赤潮関係研究のまあ権威といいますか、そういう方は、相当数がしばられてくるわけでございます。したがいまして、現在十四名——岡市先生等も入っていただきましてやっていただいているわけですが、もう少しこれをさらに研究者をふやそうということがございますけれども、結局、環境庁の現在の行政事務をやっております者といたしましても、赤潮のメカニズムの研究という話になりますと、これはまさに素人でございます。もちろん、赤潮研究会には環境庁の公害研究所の担当の部長も十四人の一人に加えてございます。そういうことで、これは研究という非常に専門的な分野でございますので、そこで先生方の方に、研究体制のあり方なりテーマなりということ、後、そこをやるとすればどういう大学で、どういう研究所で分担したらいいかということもやっていただいているわけでございます。結局、それをあれして、後は事務屋のわれわれとしては、その所要の研究費なり何なりというものを十分供給をするという角度で予算も計上したい、こういうことで考えているわけでございまして、先生方にいろいろ御検討いただいているということで、こちらがまあ責任回避といいますか、引っ込んでいるということではないわけでございまして、積極的にやりたいということで、われわれは余り、その面の知識が疎うございますので、その道の専門家にいろいろ線を出していただこうということで詰めていると、こういうことでございます。
  69. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 素人だということは私はわかりますけれど、赤潮研究会で先生方にやっていただいているんだからといって、こういう形が、いいか悪いかは別問題ですけれども、それが環境庁としての、行政官庁としての、逃げ道になっては私はいけないと。環境アセスメントにつきましても、いろいろこの委員会で皆さん方の御指摘を受けて、それで依然として今度のこの通常国会にもとうとう、いまのところ出し切れないような状態にあるんだけれども、そういうことが、行政官庁として、何かこちらでやっています、私たちは素人ですから、そこから来なければ私らできませんと、それは通用しないんですよ。ですからそういう点について、もうこれ以上私はこの問題申し上げませんが、そういう点で、なるべく早く先生方にお願いして出してもらう。皆さんの方もそれに対応して、出てきたらすぐそれなりの予算も取る、いろいろなことがやれるようにして、そして問題の解明が一日も早く進められるようにしていただきたいという希望を申し上げておきます。  次に、埋め立ての問題で、これはきょう午前に参考人先生方呼んでいろいろ聞いたわけですけれども、いまの臨時措置法ですね、今度の特別になる前の。臨時措置法ができてから埋め立てが、瀬戸内で認可といいますか、許可をして埋め立てられたという面積はどのくらいあるんですか。
  70. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) この臨時措置法の十三条で、知事が免許または承認をする際に、瀬戸内海の特殊性を十分配慮すべしという趣旨の規定があるわけでございます。そこで、免許ベースで見ておるわけでございますけれども、その免許ベースで見ますというと、臨時措置法が四十八年の十一月二日から施行になっておりますので、それ以降昨年の十月の末までのところで見ますと、件数で八百七件、それから面積で二千百五十八ヘクタールになっております。ただ、これは期間をこういう期間でとっていますので、一応年平均ということで、十二ヵ月と、一年の年平均で出しますと、件数で二百二件、面積で五百四十ヘクタール、こういうような実績に相なっております。
  71. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 かなりな面積で、そのことが妥当かどうかといってその辺なんかを私どもが判断するというのは非常にむずかしいと思うのです。  ただ、きょうも午前の参考人先生方の中でもあったんですが、全面禁止といってもそれはなかなか無理なことなんだけれど、少なくとも瀬戸内海のよさを残しておくには、もうここのところとここのところは一切そういうことをやっちゃいかぬという、そういうことを国かなんかでもって指定して、そこはもう一切埋め立てさせない。そのほかのところはいままでと同じように認可というか許可で府県知事がやる云々というふうな、そういう方法でもとらないとなかなかだめなんではないかというような御意見もお聞きして、私もなるほどなあと思ったんです。  で、いま局長が私が聞いたこと、そう言っているわけなんですけれども、環境庁の側からそういうことについてのお考えはどうなんですか。
  72. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 実は、この十三条の規定に基づきまして、瀬戸内海環境保全審議会の方から、四十九年五月に、埋め立ての「運用に関する基本方針」というのをちょうだいいたしておりますが、この基本方針これ自体も、ただいまこの辺は禁止したらというか、そういう禁止までいっていなくて、極力避けろという感じになっておりますが、大ぐくりに言って三つの分類で決めているわけです。  一つは、「各項目毎に十分配慮されたものであることを確認」せよということで、「海域環境保全上の見地」なり、「自然環境保全上の見地」なり、「水産資源保全上の見地」というものを十分配慮されたものであることを確認せよというのが一つ。  それから第二点は、ただいま先生の御指摘のと関連があるわけでございますが、次に示す区域での埋め立ては極力避けるようにというのが第二点でございます。ここで「水産資源保護法による保護水面」、これは非常に今後の水産の面で大事なところでございますから、たとえばそういうところは極力避けろと、こういうふうに例示して出ておるわけでございます。  それからもう一点は、「次の海域については、」と言って、六海域ほどございますが、そういうところは、「留意事項に適合しない埋立てはできるだけさけるように配慮」せよということで、いま先生が御指摘になったような、そういうこともこの審議会の場においては十分議論もされ、そういう形でこの「運用に関する基本方針」というものが決められておるわけでございまして、われわれはこの線を体して、個別ごとに、案件が回ってまいりました際にはこの線で、抑制の方向ということでもって、環境保全に支障のない方向で審査をしておるわけでございます。
  73. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 時間が余り何ですから、海上保安庁の方に。  瀬戸内海でいろいろ衝突だとかいろいろ事故を起こしているわけだけれども、昨年、どこでもいいですけれども、一年間にどのぐらいの事故が起きているか、それ簡単に数字を挙げて説明してくれませんか。
  74. 渡辺純一郎

    説明員渡辺純一郎君) 私どもで把握しておりますのは、瀬戸内海において発生いたしました昨年の要救助海難隻数でございますが、全体で申し上げますと、衝突が百三十五隻、乗り上げが百十六隻、その他が三百十四隻、合計五百六十五隻でございます。そのうち、タンターにつきましては、衝突十一隻、乗り上げ十二隻、その他十四隻、合計三十七隻でございます。  次に、大型船につきまして、総トン数一万トン以上の船舶について、同様の要救助海難発生状況について申し上げますと、全体で、衝突二隻、乗り上げ七隻、その他三隻、合計十二隻。うちタンカーは、衝突一隻、乗り上げその他なしで、合計一隻ということになってございます。
  75. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これは運輸省に聞いた方がいいんですか、海上保安庁かしら。——いまもお話しがありましたように、五百六十五隻といったら大変な数なんですがね、年間に。それで、きょうもいろいろ午前の参考人のお話の中で、あの水島のところに二十万トンタンカーが入ってくるんだけれど、あれがもしものことがあって油の流出やったら、それこそ瀬戸内一面に油でいっぱいになってしまうと。まあそのとおりだと思うわけなんです。ですから、アメリカのカーター大統領ですらも船の二重底の問題だとか、それからいろいろ安全の問題でかなりのことを言っておるわけなんですけれども、日本の運輸省の方として、あるいは海上保安庁の方として、この瀬戸内に入ってくる船の、特にタンカーですね、問題は。その安全性の問題についてのお考えをお聞きしたいんです。
  76. 中島眞二

    説明員(中島眞二君) 二重底の関係のことからお答えいたしますと、一昨日粕谷委員にもお答えしたところでございますけれども、カーター大統領の提案の中に、タンカー規制の項目の一つといたしまして、二重底の義務づけということがございました。この件につきましては、国連の専門機関でございますIMCO——政府間海事協議機関でございますが、そこで審議に付されまして、数回にわたりますワーキンググループの検討を経まして、本年二月に条約会議が開かれました。その間の議論を通じまして、二重底の問題についてはいろいろ技術的な難点があるということになりまして、それから二重底の考え方は座礁時における油の流出をなくするということを目的にしているわけでございますが、それよりもむしろ衝突時においても油の流出が極力少なくなるようにした方がいいんじゃないかということがございまして、今度の条約会議におきましてSBTと申します分離バラストタンクの採択が二万重量トン以上の新造タンカーについて行われたわけでございます。そこで、この分離バラストタンクをできるだけ適正に配置して衝突なりあるいは座礁時において油が流出する量を極力少なくすると、そういう算式を出しまして、分離バラストタンクの適正配置と申しておりますが、そういう義務づけをすることになりました。そういうことで、二重底の問題につきましては、国際会議の場ですでに結論を得ている問題でございます。  それから、一般的な、瀬戸内を航行します大型タンカーの安全の問題でございますが、瀬戸内海におきまして石油基地が立地しております現状、それからその石油がわが国の国民生活に重大な関係があるということからしまして、大型タンカーが瀬戸内海を航行すること自体はやむを得ないのじゃないか。しかし、その航行安全対策については万全を期していく。海上保安庁その他においてそれぞれ諸般の施策を講じておりますけれども、そういうことによって航行安全対策を確保していくと、こういう考え方でやっております。
  77. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 そのIMCOの会議のは、どっちみち条約として批准しなくちゃいけないんだと思うんだけれども、これはあなたの方に聞くのもおかしいけれども、そういうことを早くやれというふうに進めているのですか。
  78. 中島眞二

    説明員(中島眞二君) その条約会議におきまして、別途決議がございまして、この二月にできました新しい条約につきまして、一九八一年六月に発効することを目途に関係国は努力をするということになっております。わが国といたしましても、これまでの経緯を尊重いたしまして、その発効に間に合うように、わが国としても批准の努力をしていきたいと、かように考えております。
  79. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これもさっき環境庁に言ったのと同じで、だから衝突だけでも百三十五隻もあるというわけでしょう。事故が五百六十五隻も一年間に起きている。たしかIMCOの会議で決まったのは、それは八一年というそういう期限があって、まだ先のことだけれど、そういう安全性という点からいったら、一日も早く、そういうことについて批准をするものはする、船の改造をするものはする、そうして万全を期すということが順序だと思うわけなんです。ですから、そういうことについて、これは私は希望だけにしておきます。  それからもう一つ、運輸省に。便宜置籍船の問題、これは私も、日本が最近の数年間でかなり便宜置籍船を持つようになったということは知っておったんだけれど、きょうの午前にこの便宜置籍船の一番多いのは日本だということが参考人の口から出たわけなんです。それがそのとおりなのかどうなのかということが一つ。  それから、いま世界的に事故を起こしているのはその便宜置籍船が一番多いと、これはそのとおりだと思います。で、少なくともこの瀬戸内海の安全性を確保する上から、瀬戸内のあの中に入ってきて事故起こしたら大変なんだから、もう便宜置籍船を入れないというふうな、そういうことを規制する考えがないかどうか。そこのところをお聞きしたい。
  80. 山下文利

    説明員(山下文利君) ただいま御質問のございました二つのうち、第一点目の、わが国でも非常に多く便宜置籍船に進出しているんじゃないかということでございますが、確かに仕組み船とかチャーターバック船のような形で日本船が出ておることは確かでございます。ただ、その実数につきましては十分に把握してございません。わが国に入ってまいります便宜置籍国船が約三分の一ぐらいあろうかと思いますが、そのうちの日本船のウエートはちょっといまのところ調査データございませんので……。  それから、第二点につきまして、便宜置籍国の船は危ないという一般の批評がございまして、この点については三つのポイントでチェックしてございます。第一点は、船自体が安全かどうか。第二点は、乗っかっておる船員さんは大丈夫かどうか。第三点に、彼らにとっては外国でございます日本の海象、気象によくなじんでおるかどうか。そういう三つの点でございます。  第一点につきましては、海上人命安全条約あるいは満載喫水線条約という船の構造の安全を担保する条約がございます。便宜置籍国の船はすべてこの条約を批准して安全証書を持ってございます。その条約を批准し安全証書を持たないと保険に入れませんので、用船市場に提供するというわけにいきませんものですから、まあ当然のことでございますが、安全面については安全証書を持っており、その面では問題は少なかろうと思います。  それから、第二点の、船員さんの技能が大丈夫かという点につきましては、便宜置籍国を含め発展途上国の船員さんについては問題なしとはしない点もございますが、この点につきましては、本年の六月にIMCO——政府間海事協議機構と申しますが、ここで船員の訓練及び資格証明に関する条約というのが採択される予定でございますので、わが国もこれに積極的に参加し、その方向で進む心構えでございます。  それから、第三点の、日本の気象、海象になじんでいないのじゃないか、そのために事故を起こすんじゃないか、そういう点もございますので、この点については、一つは海上保安庁に航法の指導、PR、あるいは取り締まりをお願いし、あるいは水先をできるだけつけるように、あるいは強制水先区をふやすとか、そういう態度をとっておるわけでございます。  それらを含めまして安全対策を講じておりますが、その間に、便宜置籍国であるがゆえに日本の国に入ってくるのを、あるいは瀬戸内海に入れないという差別扱いをいたしますことは、現在のOECDの自由化コードというのがございまして、一般的には禁じられておるわけでございまして、特別の理由で、いわゆる基準以下船であるということが明白なような場合にはチェックしてこれを入れないという方法、あるいは近々採択されるでありましょう船員の資格証明に関する条約、そういうものの発効を待ちまして対応策を考えさせていただきたいと、このように思っておるわけでございます。
  81. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 終わります。
  82. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 私は、きょう水質汚濁防止法法案に触れて質問をする予定で、五十分の時間をいただいたわけでございますが、午前中の参考人の御意見、さらに前回の当委員会の中で粕谷委員が触れられました水島港に関する関係について、どうしてもただしておかなければならぬ項目がございますので、これを含めて御質問を申し上げることになると思うのであります。ただ、そういう関係がございますので、ひとつなるべく時間をかけないで要領よく御答弁をいただきたいと思います。親切丁寧なのは結構なんですが、要点がはっきりつかめなければ、御説明をいただくことがかえってむだになりますので、ぜひともお願いをしておきたいと思います。  初めに、水質汚濁防止法関係から入ってまいりたいというふうに思いますが、まず第一に、第四条の二の条項ですが、この中に、総理大臣が定める「総量削減基本方針」、これが、その内容についてずっと示されて、考え方が出されておるわけであります。その中のまず第一ですが、第四条の二の二項です。この二項に定める基本方針の内容から見ていきますと、削減目標あるいは目標達成年度、こういうことが問題になるわけであります。したがって、この削減目標やあるいは目標達成年度というのは、具体的な形で数値的に言うならば示されるんでしょうか。また、同時に、この基本方針というのは、そういう意味合いからいき、あるいは前回の委員会の経過等を考えていきますと、少し長期的に方針というものがやはり定められるようなふうにも見受けられるわけですが、大体何年間ぐらいというものをめどにしてこの基本方針というのが定められていくのか、こうした関係についてひとつ説明をいただきたいと思います。
  83. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) まず第一に、「目標年度」の方でございますけれども、目標年度は水域ごとに、瀬戸内海なら瀬戸内海の総量削減基本方針におきましては目標年度として大体おおむね五年先ということを予定をいたしております。東京湾の場合も大体おおむね五年先ということを考えております。  それから、第三号の「削減目標量」でございますけれども、これにつきましては、当然量で、具体的な数字で示します。したがいまして、瀬戸内海全体として一日当たりCOD何トンと。その際に、発生源別に生活系が何トン、産業系が何トン、それから県別にも兵庫県分が何トンというような削減目標量を具体的な数値として出します。
  84. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 それからもう一つは、この基本方針が変更される場合の条項が出ているわけですが、この方針の変更というものはどの時点で何を根拠に判断をされて変更が具体的に行われるのか、この辺の説明をいただきたい。
  85. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 変更につきましては、まず最初に、五年先ならおおむね五年先ということで目標量を決めます。で、決めました際に、人口なり産業活動の伸び、それから工場の排水処理技術の水準なり下水道の普及率等の伸びといいますか、こういうものも見込んで一応立てるわけでございます。したがいまして、その線で大体私はいくと思いますけれども、万一いろんな経済変動等もあって、産業活動の伸びが見込んだよりはふえるとか減るとかいうことが大幅にありとすればそれは変更をする、あるいは見直しをするということがあろうと思います。  それからもう一つは、先ほど申し上げましたように、おおむね五年先ということで一応スタートいたします。しかし、五年先で環境基準の完全達成というものがむずかしければ、当然第二段の削減措置といいますか、総量規制の具体的な線がまたスタートをします。そうすれば、従来の線のをもう一度見直しといいますか、変更をいたしまして、また、その後のおおむね五年後にはこの程度まで減らせということが当然あると。その場合は変更というやり方をとるかどうか。もう一回やり直すというかっこうにすると、まあ一応そういう場合には変更ということがあり得ると、こういうことでございます。
  86. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 この前沓脱委員の方からも御指摘がありましたが、この総量削減基本方針の、いわゆる四条の二の二項のさらに二号ですね。この中で、「処理の技術の水準、」それから「下水道の整備の見通し」という立場で、「人口及び産業の動向」が前提にありますが、そういう立場で、今日的可能限度が大体この基本的な方針の一つのめどと、こういうことになるわけですね。ここで考え方が、問題は、「人口及び産業の動向」、それから「処理の技術の水準」、それから「下水道の整備見通し」と、こう三つありますと、特に問題なのは処理技術水準というこの「水準」ですがね。今日、技術的には各方面きわめて大きな発展が遂げられておる。まだまだどんどんこれから新しい分野が開発をされていく、こういう状況の中で、この「水準」という言い方は、これは平均ではなかろうと、もちろんトップレベル、これを指してのことであろうというふうに思いますが、なお公害防除等の観点からいきますと、その技術はこれからもっと発展をさしていかなきゃならぬ、しかも経済性も考えていかなけりゃならぬ、こういう立場で努力をされていく一番大きな眼目にあるわけですね。  ところが、そういうふうに一つの到達目標といいますか、将来もっともっとこう積み上げていかなきゃならぬ課題のところに、今日判断をする場合に、今日的ないわゆる水準という形で判断をしてしまうと、その辺の技術開発水準の向上そのものが遅滞をしていって、結局サボられてしまって、この趣旨と異なってくるんじゃないのか、こういうふうに考えるんですが、その辺はいかがでしょう。
  87. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 第四条の二の二項の二号、ここで、総量につきまして、ただいま先生から申されたような、「人口及び産業の動向」、これは負荷量の増加要因になろうと思います。それから、「汚水又は廃液の処理の技術の水準、下水道の整備の見通し」、これはマイナス要因、そういうプラス、マイナスの要因を勘案して、「実施可能な限度」で削減を図るんだという意欲を込めて目標量を決めようと、こういう話でございます。で、その際の問題は、この「技術の水準」の話でございますが、産業排水という際にも、実はこれは業種によってさまざまあるわけでございます。いろんな業種で処理技術がまた違うというようなことでございます。まあこういうものは日本産業分類等の小分類、物によりましてはその小分類をさらに区分けするところまでやらなくちゃならぬ場面もあろうかと思いますけれども、そういうところの現状技術がどうなっておるか。それから現状の技術におきましても、一般的にいま入っております普通の技術と、それから現在これは最高レベルだということで出ておるけれども、まだほとんど普及されてないというものがあると思います。そういうものは今後五年後に一体どこまで普及させ得るか、またし得るか、そういう見通しを立てるし、それから現在いろんな研究開発をやっておる、その研究開発をやっておるものが、実用的にこれは使えるということになっていよいよ市販をされると、いまの時点ではまだ研究機関の中でやっておる段階だけれども、これが五年後になれば市販されるというものはそういうものを織り込むということでございます。したがいまして、いたずらに今日的判断といいますか、いまの時点に引っ張られたということだけでなしに、やはりその辺の研究所段階のものが精力的に研究をやって、それは五年後でならば市販になり得るというようなものは織り込んでいく、そして五年後の目標を決めると、こういう物の考え方でございます。
  88. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 結局、私どもがこの法案をながめたときに、問題は、この到達目標として基本方針を見ることができないんです。この基本方針は、ここに書かれておる範囲からいえば、いわゆる現状維持ですね。これを法律的に裏づけてしまうんじゃないかという、こういう心配が先行するんです。  で、それはいま私が御質問申し上げましたように、いわゆる努力目標としての技術開発、あるいはその他を含めまして、それを促進をさしていく意味からいえば、少し厳しいと思われる条件、しかもこれは究極の目的としては、人間が人間らしく生きられる、そういう立場での自然に対する挑戦、利用、こうしたものが出てこなきゃならぬわけですから、もっともっと、私はかつての状況がよかったからそれに到達をする以上の、もっと崇高で厳しい到達目標があると思うんです。  で、そういう過程での一つの努力目標ですから、一定の限界のあることは、今日段階これは承知をせざるを得ません。しかし、それにしても、今日段階としてはここに若干の無理があるけれども、この程度の少し厳しい目標というものを設置をしていかないといかぬのじゃないかという形が法案の精神の中に盛り込まれまして、それに各界がやっぱり努力をしていくという、こういうことにならないと私は生きてこないと思うんですが、そういう観点でながめていきますと、この法案は逆に現状のままでどうも停止をしていくような、それをむしろ裏打ちをしていくような、そういう感覚でしかこれ読み取れないんですね。現に、この処理技術の開発につきましても、午前の参考人の御意見の中にもありましたが、たとえば環境庁自体がどこにも邪魔をされないで具体的に完成をさせると、そういう技術開発をしていくのかどうか、こういう観点からいきますと、その設備はない、そういう仕組みになってない。結果的には産業界に技術開発を任さざるを得ない。逆に言いますと、いわゆる産業界に影響されないで処理技術の開発のいわゆる可能性がないとすると、私はここに規定をしている意味合い自体が大変問題にならざるを得ない、こう思うんですが、その辺はどうでしょうか。
  89. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) まず第一点の、現状維持を裏づけるということにとどまるのではないかというお話でございますが、実は、この四条の二の二項の本文の方にも書いてございますように、「当該指定項目に係る水質環境基準を確保することを目途とし、」ということでございまして、私たち考え方としては、水質環境基準の全面的な達成、一〇〇%達成というのが水行政の目標であろうと、こう思っておるわけでございます。ただ、この前も申し上げましたように、瀬戸内海におきましても環境基準の達成率は五十一年度七二%にとどまっておるという状況でございますので、さらにこれを一〇〇%全面達成まで持っていく、これが目標でございます。したがいまして、その目標というものを頭に置きまして、先ほど申し上げたこの二号の際も、これはプラス要因マイナス要因というものを勘案するという勘案事項でございます。そして、それを勘案事項としながらも、削減を図るということにした場合、その目標に向かって減らしていくんだという意欲を込めて目標を決めます。ただ、五年先にこうだといって決める際も、それは手の届かないようなものをぽんと出すというのではかえって意欲をそぐこともあるでしょうから、むしろ「実施可能な限度」というところで、これはとにかく減らしていくんだと、水質環境基準の全面達成に向かって邁進するんだという意欲を込めて目標を決める。で、五年後になった、七二%の達成率が八〇%にとまった、それだったらその次おおむね五年でまたスタートする、何回もトライする。こういうことで、全面達成まではこれは水行政としてはやむことなく続けていかざるを得ない。その考え方でその手法をこの総量規制で、いまの濃度規制のほかにプラスして、濃度規制だけでは非常に困難なものですから、広域的な閉鎖性水域は。それでやっていこうというのがこの総量規制制度のねらいでございます。それから第二点の、「処理の技術の水準」ということの絡みで、処理技術の開発の関係等、これはどうかということですが、もちろん各企業自身におきましていろいろ新しい開発研究というものもやっておられると思いますし、それから、主として産業排水でございますれば、これは通産省関係の工業技術院系統の研究機関の方でも精力的にやってもらっております。もちろん、環境庁が、こういう技術水準をどう判定するか、あるいは将来この総量規制基準というもの——四条の五でございます——これは環境庁の方で、総理府令で定める幅の中でといいますか、線に沿って知事さんが決めるわけでございますが、総理府令で線を大体示します。示すにつきましても、その道の専門家で構成されます中公番の水質部会の傘下の専門委員会等に御審議をいただいて、その辺は単に現状維持というようなことではなしに、将来というその辺の問題も踏まえて、五年後にはなるほどこの辺は努力すればもう実用化したものとして市販に供されるということになるというようなものは織り込んでいく。その辺はわれわれ、技術でございますからわかりませんが、そういう専門の先生方に十分御審議をいただいて決めていきたいと、こう思っておるわけです。
  90. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 結局、「実施可能な限度において」ということが、これが持ち味になるわけですね。それに対する見解が、私どもは心配だし、皆さんはそれでなければ順次繰り返しながら到達をしていく階段が上っていけない、こう言われるわけですから、その相違点はよくわかったんですが、ただ、ぜひとも、この「実施可能な限度」ということが平易な現状維持にならないように、この辺は強く申し上げておきたいというふうに思います。  それから次に、同じ二項の第三号にあります、先ほどもちょっと触れられましたが、「発生源別及び都道府県別の削減目標量」、これが定められますね。しかもこれは数値で定められると、こういうお話なんで、それはそのことは結構なんですが、問題は、たとえばその発生源別目標が定められて、それが違反をしたときですね。目標は定まったけれども、具体的な措置としてそれが大きく破られる、違反が出てくると、こうなったときに、それを是正をしていく措置、これは相当厳しいものになってこなければならぬと思うんですが、これらの関係というのは、罰則規定その他からながめていきまして具体的になってない、こういうふうに思いますし、午前の参考人の御意見の中にもその種の御指摘があったんですが、その辺のお考え方はいかがでしょうか。
  91. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 四条の二の二項の三号でございますが、この「削減目標量」、これは都道府県別、発生源別のもございますが、都道府県別の削減目標量でございます。したがいまして、これは、都道府県の方は四条の三で削減計画をつくるわけでございまして、「都道府県知事は、」「総量削減基本方針に基づき、」削減計画を決めるということでございます。したがいまして、内閣総理大臣兵庫県は一日当たりCOD何トンということを決めました際には、それに基づきまして知事さんが削減計画で何トンとその量を決め、さらに発生源別の削減の方途も決めて基本計画というものを決めていくと、こういうことで、これに対しては、今度は達成をすべく知事さんも国も努力をしていくと。これは四条の四に、「国及び地方公共団体は、総量削減計画の達成に必要な措置を講ずるように努めるものとする。」ということで、努力をするということを明確にしているわけです。  それから、参考人の方からの御意見がありましたのは、そこというよりはむしろ十二条の二という規定がございます。こちらに「総量規制基準の遵守義務」というのがございまして、「指定地域内事業場の設置者は、当該指定地域内事業場に係る総量規制基準を遵守しなければならない。」ということで、企業者の方は一日当たり、〇〇鉄工所のどこどこ工場は一日当たりCOD何キログラムと、こういうのが一応出て、許容量が出るわけでございます。それを守りなさいと、こういう規定が十二条の二にあるわけでございます。ただこれにつきましては、参考人からもお話しありましたように、これに違反をしたからすぐ罰則がかかるということになりますと、罰則はこれは直にはかけてございません。といいますのは、実は、一つは、総量規制のほかにCODについては濃度規制はそのまま存続をいたします。したがいまして、濃度規制の基準に違反すれば直罰がかかります。で、今度は総量規制でCOD一日当たり何キログラムをオーバーした場合にどうなるか。ところが、これは一日当たりでございますので、なかなかこの辺は、監視取り締まりをやります県の方も、ぽっと行ってすぐわかるというものではありません、一日じゅうの量をこうはかるわけでございますから。ですからその辺が、測定記録義務を事業者に義務づけてございますが、どうもこの報告がおかしいとか、あるいは報告と比べるとどうも測定したものをはかるとおかしいということになりますれば、それは施設が悪いんじゃないかというようなことで改善命令等を出します。そして、それに従わなかったというようなことであれば当然罰則がかかるということで、これは一日当たりの量で決めておるということからしてどうも直罰にはなじみにくいということで、実は濃度規制が直罰がCODについてあって、そのほかにオンする総量規制につきましてはなじみにくいのでやっていませんが、これはおかしいとなれば改善命令等は出しますので、これに従わなかった場合は罰則がかけられると、こういう仕組み方をいたしているわけでございます。
  92. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 前段の説明は、まさにそのとおりだと思います。それを承知の上で私聞いているんですがね。ということは、基本方針で、発生源別でしょう、規制値。いわゆるそれが数値であらわされる、こうなりますね。すると、それを受けながら都道府県が具体化をしていくことになるんですが、発生源別にここに定めていくことは、すなわちそのまま上乗せをするところもあるでしょうが、具体的な計画の中にあらわされるということですね。結論としては、そのもの自体が違反をするかどうかにかかわってくることになると思います、組み立てていきますとね。そのことに対して具体的に罰則措置がない。改善命令に従わなかったときしか罰則命令はないんですから。そうすると、果たして効果が上がるのかどうだろうか。大体違反の問題点というのは、言うならば、どこの場合でも監視体制が不足をしていますから、結局、監視体制が不足をし、やっていくときに、いわゆる夜間なら夜間に目がけて排水をするとか、そういう形の違反。施設は施設で持っておって、なおかつそれを動かさない場合の違反。これが現実には相当数あるんです。私どもの四日市の方でもそれがありました。施設をせっかくつくる。つくった施設は、使えばやっぱり金がかかる。しかし、つくってないことには違反として摘発をされる。したがって、りっぱな施設をつくり、それを動かしている限りは基準値きちっと合っている。ところが、金がかかりましたりいろんな事情があるから、たまにそれを手を抜いてしまう、こういう違反が出てくることになりますね。したがって、そういうものが発見をされたときに具体的にどう——これはもう意識的ですから、そういう場合に。これはもう直罰方式を明確にして、そういうことのないように取り締まりを強化をしていく以外にないんじゃないですか。このことを私としてはきわめて現実的に心配をするものですから、それの規制のできるような措置というものをぜひひとつ考えてもらいたいというふうに思います。  話がそこまでいきましたからもう一つ申し上げておきますが、しかも第四条の四に、これは総量規制、いわゆる「総量削減計画の達成の推進」と、こういう項目ですね。この中には、「国及び地方公共団体は、総量削減計画の達成に必要な措置を講ずるように努めるものとする。」、こうなっているんですよね。すると、この条文を読みましたときに、私どもで言えば、「総量削減計画の達成に必要な措置を講ずる」——ものとするというのが好きなようですからそれをひっつけたにいたしましても、たとえば、「達成に必要な措置を講ずる」「ものとする。」と、こうすれば歯切れはいいんです。ところが、「努めるものとする。」と、ここにあえて「努める」という文字を挿入をしているところに、きわめて心配をしなきゃならぬ要素があるんです。それがこう全体の流れになっていますからね。厳しいことを言うようですが。  その辺のこの感覚を、まあ本来なら修正提案をしなけりゃならぬところなんでしょうが、再度ひとつきちっと趣旨を体して明確な答弁をいただきたい、こう思うんですが。
  93. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) この四条の四で、「努めるものとする。」とやっておりますが、総量削減計画の達成ということを考えますと、実はこれは産業系排水の関係が当然あるわけでございますが、そのほかに、生活系排水の関係が相当ございます。そうしますと、下水道の整備だとかあるいは屎尿処理施設の整備とかいうような整備もございますし、それからむしろ各家庭の方でやっておられます浄化槽、こういうものの整備、この辺も織り込んで量を決めますから、そういうようなことで、あらゆる汚染源からのものを全部まとめて決めるというようなことでございまして、その辺のいろんな施策の推進ということを、下水道なら下水道を整備しませんと、この計画に織り込んだようなかっこうで整備をしていただけませんとなかなかこれは何ともならぬわけでございます。  したがいまして、そういう意味では、たとえば公共下水道というものの管理者は市町村長でございます。ここに言う「地方公共団体」というのは県だけではございません。県であれば都道府県というような表現になると思いますが、市町村も当然入れた表現で「地方公共団体」とやっております。したがいまして、総量削減計画というものはこれは知事がつくりますけれども、市町村長さんもこれは努力してもらわぬと困りますというところまで入っておるわけでございまして、それを、「講ずる」と、こうびしゃりやるのはちょっとあれじゃないかと。しかも下水道なり何なりというのは、これはいろいろまあ精力的にやりますけれども、財政的な、国も県も市町村もそういう絡みもございますし、まあ先ほど言ったように家庭自身でやっていただくものもございますので、そういうことからすれば、「努めるものとする。」と。講ずるものとすると、ぴしゃりに言うにはちょっと、という感じを持っておるわけでございます。
  94. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 まあ不満足ですけれども、またこだわりますとこれすれ違いになっちゃって、時間ばっかり食いますので、二瓶さんの戦術にはまってしまうことになります。  で、四条二の第一項ですね。この中で、水域及び地域指定、これが行われることになるんですが、この改正法を施行をいたします時期、大体一年以内とこう考えて妥当であろうと思いますが、これはなるべく早くやっぱりやってもらいたいわけですが、この地域指定あるいは水域指定のときに、従来からちらちら名前は出ているんですが、明確に言い切られておりませんので確認をしておきたいんですが、伊勢湾、東京湾、それから琵琶湖、こうしたところはこれは当然この指定の中に入ると、こういうふうに考えておるんですが、間違いありませんか。
  95. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 政令で水域なり地域を指定するということで総量規制の方が動き出すわけでございますけれども、まず瀬戸内海の方は、これは別途そちらの法律の方で、政令指定を待たずに法律が成立すれば動き出すと、こういう仕組みにしてございますが、東京湾、伊勢湾等につきましては、これはこの「広域の公共用水域であり、」云々というこの要件には当然はまるというふうに考えております。  ただ、問題は、じゃ具体的に、この要件にはまるからということだけで指定できるかといいますと、これは四条の二の三項で、「関係都道府県知事の意見を聴かなければならない。」というのがございます。したがいまして、東京湾であれば臨海県のほかにまあ埼玉県、この辺も入れたいと思っていますし、伊勢湾であればやはり岐阜県抜きにはなかなかこれは、三重県と愛知県だけじゃむずかしかろうと。まあその辺が足並みが完全にいまの時点でそろっているかどうかということにつきましては、特に伊勢湾などにつきましては、そろっているとは胸張れない段階のように考えております。したがいまして、その辺は、今後その辺の県の知事さんの意見も聞き、そして足並みそろって総量規制をやって、伊勢湾をきれいにしようということになりますれば、この法律の該当要件にははまるわけでございますから、指定水域及び指定地域の政令は、法施行後できるだけ早く出したい、こういうことでございます。
  96. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 伊勢湾の場合は、御承知のように岐阜の方は自分のところはもうきれいな水を流すのだと、こういうことで総量規制に反対をしている。愛知、三重の方は、これはもう言うならば伊勢湾で生活しているんですから、何とか早くきれいにしてもらいたいと、こうなって、まだ調整がとれてない。だから私は心配で、胸を張って答えてほしいと、こういうことなんですよ。上の方でおれのところきれいだからと言われましても、現実に下は汚れておるわけですから、その辺の関係を、これ関係の流域全部、近くの府県だからということで、それに左右をされて、もしこれ入らないということになったらですね、何のためにこの法律審議するのか、制定するのか、このこと自体が消えてしまうことになるんですからね。もう一遍ひとつ確約をしてもらいたいんですが、いかがですか。
  97. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 伊勢湾につきまして、まあ岐阜県にの方におきまして、やや総量規制ということにつきましては異論を持っておられるというのは非公式に聞いております。いずれにいたしましても、この法案、御審議を得て成立させていただきますれば、後はいよいよ施行段階ということで役所の方は入るわけでございますから、その辺は岐阜県につきましても、環境庁としても正式にいろいろ意見を聞き、また大いに努力もしたいと思っております。それからまた伊勢湾につきましては、三県一市の協議会をつくってございます、名古屋市まで入れた。ここでやはり伊勢湾の浄化対策はどうしようかというようなことを従来からよりより協議をされたりしておる機関でございます。したがいまして、そういう場におきましてもまた岐阜県の方にも働きかけていただくというようなことで、この法律の方があれになりますれば、そういうことで環境庁の方も、またその協議会の方も動いていただいて、極力先生の御趣旨に沿うように努力したいと、こういうことなんです。確約と言って胸張るところまではどうも自信ございませんけれども、極力努力したいと思います。
  98. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 やっぱりなかなかこう胸張っていただけぬようですが、問題は、環境庁よく言われてますように、問題がこう対立してありましたときに、それの調整役という感覚じゃ、私は環境行政は基本的に曲がってしまうことになると思うのですね。だから、そうじゃなしに、やっぱり環境行政としてその辺はひとつきちっと筋を立てていただいて、その筋に基づいて整理をしてもらいたい。ぜひこの伊勢湾の総量規制、これは——東京もそうでしょうし、きちっとしてもらいたい、こういうふうに申し上げておきたいと思うわけです。  それから次に、四項の中に「公害対策会議」というのが出てきておりますが、この公害対策会議の構成についてひとつ説明いただきたいと思います。
  99. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 公害対策会議の構成メンバーでございますが、これは公害対策関係する各閣僚を網羅しておるわけでございますが、具体的に言いますれば、現在の閣僚の方の中で、外務大臣と郵政大臣、この大臣を除いたすべての閣僚、こういうことでこれを構成されております。
  100. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 そういう、閣僚ですのでね、権威はお持ちだろうと思うんですが、内容をよく御存じなのかどうなのかと、こういう観点からいきますと、この種のものを判断をするのに私は適格であるのかどうか大変疑問を持つんですが、その辺いかがでしょうか。これは長官ちょっと御説明いただけませんか。
  101. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) まあこの種のものについては、やっぱり一つの政策的な審議の推進機関という大きな役割りを持っているものでございまして、したがって、その下には事務的のいろいろ詰めていくものがございます。そういうことで進めていくということがいろんな経験からも実際的でもあるしということででき上がっておりまするので、その点はひとつ御了承をいただきたいと、こう思います。
  102. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) ただいま大臣からお答え申し上げたとおりでございますが、やや事務的に補足いたしますと、公害対策会議、これは公害対策基本法で規定されておる総理府の「附属機関」ということでございます。  そこで、この公害対策会議の任務につきましては、「公害の防止に関する基本的かつ総合的な施策の企画に関して審議し、及びその施策の実施を推進すること。」ということで、「附属機関」ということではいろいろ諮問機関等もあるわけでございますが、この段階では、審議もするわけでございますが、「その施策の実施を推進する」ということが任務になっておりますので、そういうことからしまして、この総量規制といいますものを考えました際には、これは下水道整備を初めとしてよその省とのかかわりの深いものが非常にございますので、むしろこういう場で議を経て決めるということが、今後の総量規制というものの実効を上げる面でもプラスではないかというふうに考えたわけでございます。  もちろんこの公害対策会議は閣僚で構成されてますが、これに付議するまでには、当然その間事務当局間でも話をして、そこは整合性を保ったかっこうで考えられるということがまた一つ、副次的には相当プラスになる面があるであろうということで入れたわけでございます。
  103. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 まだずっとあるんですが、もう一つだけ——真ん中飛ばします。  測定手法の届け出義務というのが第十四条の三項に定められていますね。この測定の届け出義務なんですが、この測定をする機器そのものの精度、こうしたことを考えていきますと、環境庁としてこの辺の測定機器の精度を検定をする等の必要があるんじゃなかろうかというふうに考えるわけですが、その辺はいかがなものでしょうか。  同時に、測定要領あるいは指導指針、測定にかかわるいわゆるポイントを環境庁がきちっと抑えるという立場というものが必要なんじゃないんだろうか、こういうふうに考えるのですが、いかがなものでしょうか。
  104. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 実は、この十四条の三項で、「指定地域内事業場の設置者は、あらかじめ、総理府令で定めるところにより、」「測定手法を」「知事に届け出なければならない。」というふうに規定をいたしております。それから、その前の二項でございますか、こちらの面におきまして、「排出水を排出する者は、総理府令で定めるところにより、当該排出水の汚濁負荷量を測定し、その結果を記録しておかなければならない。」ということで、ここでのはかり方は、この二項におきまして一種の技術的基準みたいなものを総理府令で出そうかと思っております。  たとえば、測定するという場合に、事業場でどこの場所で測定をするのかという、場所はこういうようなところで選んでやるべきだとか、それから汚濁負荷量の方は、先ほども申し上げましたように、一日当たり何キログラムになるわけでございますから、一つは流量と濃度と関係があるわけでございます。そうすると、日積算流量というものをどうやってはかるのか、それから日平均濃度をどうやって出すのか、その結果負荷量というものが一日当たり何キログラムになるのかというような角度のものを、これはこの二項の方の総理府令で出そうかと思っております。  で、問題は、その際に、三項でもって測定手法を届け出るわけでございますが、これも現実問題としては、非常に流量の少ない工場と多い工場と、その多い工場も一日平均的にずっと同じぐらい流すのと、ある時間帯は余り流さずに夜になるとぐっと出るとかという、いろんな工場の操業との絡みもございます。その辺もございまして、その辺の測定のやり方ですね、これが単一にいかないわけでございます。こういうものについては一種のメニューもつくりまして、またガイドラインといいますか、マニュアルもつくって、それで、その中から私のところはこういうことでやりますというのを届けてもらおうと、こう思っておるわけでございます。したがいまして、大企業の場合と小企業の場合とで、非常にその辺も差があろうかと思います。大企業の方は相当測定の精度等も高いものでやってもらうというようなことも必要になろうかと思います。  なお、流量計につきましては、一つはこういう総量規制ということも考えて、通産省におきまして計量法というものを所管いたしておりますが、この一部改正がことしの五月の十八日にされてございます。したがいまして、流量計につきましては、この計量法の関係で精度の確保、検定が可能だというような仕組みになるというふうに考えてございます。濃度計の方につきましても、CODの法定分析法、これはもういま濃度規制やっておりますので、法定分析法は決めてございますから、むしろ問題は流量計の方が問題だったわけでございますが、ただいま申し上げたようなことで計量法の改正をやったと、かようなことでございます。
  105. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 運輸省、それから海上保安庁、お見えになりますか。−粕谷先生お戻りになりましたから、あとは拾っていただくことになろうと思いますが、きょうの参考人の、特に田尻参考人の御意見ですが、いわゆる水島の大型タンカーの関係ですがね、これお聞きいただいていましたでしょうか。——お聞きいただいておりまして、前回粕谷委員が御質問を申し上げましたことに対する御答弁、これは午前、私要約して申し上げましたが、それと明らかに問題があり過ぎると思うんですが、お聞きをいただいた後の御感想としてはいかがなものですか。
  106. 久田安夫

    説明員(久田安夫君) お答え申し上げます。  一昨日お答え申し上げましたとおりで、省令等についての解釈は間違いないものと考えております。
  107. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 海上保安庁。
  108. 渡辺純一郎

    説明員渡辺純一郎君) 私どもの所管といたしましては備讃瀬戸航路の関係があるかと思いますが、私どもは先日はこの点に関してはお答えしておりません。それで、それに関するお答えをただいまからいたします。  備讃瀬戸の北航路から水島へ入る場合でございますが、この場合の曲率半径、これは航路中心線を中心に考えますと、大体おおむね二千五百メートル以上ということでございます。で、巨大船が旋回する場合におきまして、その必要な縦の距離でございますが、船の長さの約三倍ないし四倍というふうに言われておりまして、長さ二百メートルの船舶につきましては六百ないし八百と、長さ三百メートルに対しては九百から千二百メートルという長さが必要でございます。そういった観点から考えますと、先ほど述べました曲率半径を考えますと、九十度変針ということは十分可能でございます。  そういった物理的なことのほかに、私どもとしてはさらに念には念を入れまして、備讃瀬戸航路におきましては一方通航という交通規制をやっておりますし、水島航路におきましては、航路管制によりまして、巨大船と巨大船の行き会いを認めておりません。また、巨大船と七十メートル以上の船舶の行き会いを認めていないといったことで、念には念を入れ細かい規制を行っておりまして、またさらに、巨大船が通りますときには警戒船の配備という措置をとっておりまして、巨大船の航行に特別危険はないというふうに考えておるわけでございます。  なお、御参考までに申し上げますと、水島航路の分岐点付近の海域におきまして、巨大船の乗り上げ海難は、海上交通安全法施行以降一件も起きていないということでございます。
  109. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 保安庁の方にお尋ねをしますが、いわゆる大型船の事前航行予告ですか、ちょっと私きょう資料を持ってこなかったんで何ですが、この事前の届け出がありますね、これは運輸省令に基づいて。あれは、当然航行時間と行き先、それから目的地、いわゆるその目的港ですか、これは届けの中に入るんでしょうか。
  110. 渡辺純一郎

    説明員渡辺純一郎君) 海上交通法に基づきまして規制しておりますのは、航路の航行予定時刻につきまして、航路に入る前日の正午までに航路担当部署の方に航行予定時刻それから仕向け港、その他もろもろの省令に書いてあります事項を届け出させるということになっておるわけでございます。
  111. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 いや、届け出はいいんですが、その届け出のときに、たとえば水島港に入るには、それにこう続いている航路を通ることになりますわね、当然。で、航行についてはそれはいいけれども、たとえば巨大船が入れない港、当然不可能な港、そういうところへ目的がいっておった場合は、これは海上保安としてはどうなりますか。
  112. 渡辺純一郎

    説明員渡辺純一郎君) 港におきまして船舶が果たして入れるかどうかということにつきましては、港湾管理者等と連絡をいたしまして、また私どもの水路部等で測量等を行っておりますので、データを持ってございます。したがいまして、入港、出港の手続がありましたときに、物理的に通れないという場合には、私どもは入港を認めないということになってございます。
  113. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 これは運輸省の方にお尋ねをしますが、田尻参考人は、港の方が違反をしていないという、こういうことに対してむしろ問題あり。じゃ、何が違反でないのか逆に説明を聞きたいと、こう述べられておったわけですね。しかも、そのときに出されておりました一つのこの根拠ですが、これは昭和四十九年運輸省令第三十号、それから港湾局長通達港建第二百五号、それから建設課長通達港建第十四号、こういう御指摘がございました。私これ中身を見ておりませんのでどういう内容であるかということは定かではありません。できればこれはひとつちょうだいをいたしたいというふうに思っておりますが、きょうは、指摘をされておりますそれぞれの通達あるいは省令ですね、これとの絡みで、なおかつ大丈夫という太鼓判を押されるのかどうか。その辺ひとつ。
  114. 久田安夫

    説明員(久田安夫君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘の、運輸省令第三十号、これは、港湾の施設の技術上の基準を定める省令でございます。その中に、一昨日お答え申し上げました、航路の幅員、水深等の件が書いてございますので、ここでちょっと読み上げさしていただきます。航路のまず幅員でございますが、第四条に、「航路の幅員は、」「船舶が行き会う可能性のある航路にあっては対象船舶の長さ以上の、船舶が行き会う可能性のない航路にあっては対象船舶の長さの二分の一以上の適切な幅とする。」、こう書いてございます。したがいまして、この省令によりますと、今回の水島の航路につきましては、二十万トンクラスの船舶の船の長さが大きいので三百数十メートル、標準三百二、三十メートルでございますので、十分これに適合するということでございます。  ただ、これの運用通達、ただいま一度目に引用されました港建第二百五号という、省令に関する運用解釈通達が出ております。これによりますと、航路の幅員につきまして次のように規定をいたしております。「比較的距離が長い航路」とそれから「上記以外の航路」というふうに二つに分けまして、比較的距離が長い航路につきましては、「対象船舶どうしがひんぱんに行きあう場合」幅員は船の長さの二倍。それから「上記以外」、いわゆる対象船舶同士が頻繁には行き会わない場合は一・五L。いわゆる船長、船の長さの五割増し、こういうふうに規定がございます。それからさらに、先ほど申しました「上記以外の航路」、いわゆる「比較的距離が長い航路」「以外の航路」でございます。この航路の場合には、「対象船舶どうしがひんぱんに行きあう場合」は一・五L、船の長さの一・五倍。それからそれ以外の場合は船の長さ、こういうことになっております。  で、水島航路の場合は、港湾区域の境界からいわゆる船が着きます桟橋までの、航路とみなし得る部分の長さは五キロ弱でございまして、この場合には、私どもの運用では、「比較的距離が長い航路」「以外の航路」というふうに運用をいたしております。したがいまして、いま読み上げましたとおり、「比較的距離が長い航路」「以外の航路」につきましては、「対象船舶どうしがひんぱんに行きあう場合」は船の長さの五割増し、それから頻繁に行き会わない場合には船の長さ、こういうことでございますので、航路の幅員につきましては、省令並びにその解釈通達は十分に、水島の場合は満たしておる、かように考えておる次第でございます。  それから、航路の水深の点でございますけれども、やはり運輸省令三十号という技術上の基準を定める省令におきましては、第四条二項で次のように規定してあります。「航路の水深は、」「対象船舶の満載吃水以上の適切な深さ」ということでございます。したがいまして、今回の水島の場合には、「対象船舶の満載吃水以上の適切な深さ」ということになりますと、二十万トン以上、あるいは二十万トン程度の満載喫水は、確かにこの場合海図の水深をオーバーしております。ところが、ここにただし書きがございまして、「ただし、」「特殊な航行の用に供される航路については、この限りでない。」、こういうことがございまして、これを受けまして、港建第二百五号という港湾局長通達におきまして次のように規定をいたしております。「同項ただし書」——いわゆるいま読み上げました省令の方の四条二項でございますが、四条二項「ただし書の「船舶の特殊な航行の用に供される航路」とは、」「二港揚げを常時行う場合の航路等対象船舶の利用時の吃水が常に満載吃水より浅い場合に限るものとする。」ということでございまして、この水島港の場合には、二十万トン級の船舶が入港いたします場合は必ず他港揚げ、これは沖繩、川崎等で他港揚げをしてここに入ってまいりますので、一昨日御説明申し上げましたとおり、一番大きい喫水で五十二年度は十五・一八メートルでございまして、これでありますと、所定の海図の水深に満潮面の水位を加えまして考えますと、省令に定めます技術基準に適合をいたしておる、かように考えておる次第でございます。
  115. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 ちょうど時間になりましてね、まだもう少し質問を重ねたいと思ったんですが、あとできません。  それで、ちょっとお願いをいたしますが、先ほども申し上げましたように、その他こういろいろ省令あるいは通達が出てますね。ひとつ参考になる、五十年二月の「港湾の施設の技術上の基準とその運用」というものも含めまして、ちょっと参考資料としていただけないでしょうか。  それから同時に、これは午前の参考人のお話とどうしても、いまいろいろお読み上げをいただいて大丈夫だと言われましても、実感としてなかなかわきません、残念ながら。これは大型タンカーの入港時あるいは出港時あたりに機をつくっていただいて、私どもぜひ現地も見せていただかないと納得できない。しかも、これはいろいろ論議の中で御指摘ありましたように、万一事故が発生したときに大変なことだと、この点はもう全部一致をしているわけでして、そういう事故を未然にどう防止をするかの大変重要なかかわりの問題でございますから、ぜひこの現地を機会を見つけて見せていただいて、なおかっこの問題については審議をしなければならぬ、こう考えるわけであります。  きょうのところはそういうようなことでございますので、ぜひひとつ資料の提出をいただきますように、再度お願いをして終わりたいと思います。
  116. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は、山田長官に主として伺います。  約半年近く、長官の話をずっと黙って聞いてきました。率直に感想を申し上げますと、最初の半年ぐらいはふなれだからやむを得ないかなと思ってみたりもするのでありますが、山田さんが長官になられて、環境行政の中で何が目玉なのか、在任中何をして、これが山田環境行政だというような柱があるんだろうかというようなことについて疑問を感じるわけです。答弁の中では努力をしますと、検討して何らかの措置を講じますと、抽象的なお話はありますが、どうもきらりと光るものを実は感じないわけです。金のように光らなくても、いぶし銀みたいなものはまたそれはそれなりの味があるわけであります。長官、あなたは環境行政として在任中これだけはやる、これだけは全力を尽くすというようなものが何かございましたら、まずお話しをいただきたいというふうに思います。
  117. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) 大変一般的な点についての御指摘、御叱正でございます。  環境庁の任務は、われわれは何をなすべきかということは規定されておる。公害から生命を守る。自然の破壊を防止するとともに、特に都市生活、この面において、われわれが人工的につくっていかなければならない環境というもの、これを少しでも住みよい、より快適な、つまり環境保全の趣旨に合うようなものにしてやっていくという、この任務に従って、公害の問題、自然の保全の問題、そしてまた都市づくりに対するわれわれの意欲、努力、これを私はやっていきたいと考えております。  どれを目玉にするかというようなお話がございました。私は、感情的でない、よく申しますけれども、つまり理性によって、われわれの環境行政というものを落ちついた、科学的な客観的なものにして、基準をつくり、手法を定め、そうして環境保全するという目的を達していくということのために、私は自分の最善の努力をいたしていきたいと、こう考えております。
  118. 矢田部理

    ○矢田部理君 長官、環境行政をずっと進めてきている中で、多くの懸案事項があるわけですね。水俣病患者の認定業務が大幅におくれている。スーパー林道をめぐる対立もある。何度かアセスメント法を出そうということで、声だけは聞くのですが依然として姿は見えない。姿を隠した中でずっとじりじりと後退をさせられている。瀬戸内法の問題もあるいはその重要な一つかもしれません。NOXの問題もあります。  そういう中で、少なくとも在任中私はこれだけは柱として解決をしますと、一歩でも二歩でも前進をさせますと、こういうことが政治というのはあってしかるべきだと思うのです。とりわけ環境行政は——余り長官にお説教する立場ではありませんが、やっぱり機関車的、牽引車的な役割りを担わなければならない。その最高の地位につかれた長官が、まあ任期がどれほど続くかわかりませんが、何か私は残してほしいと思うんですよ。科学的、客観的に云々というですね、まあ一般論やあるいは役人レベルでやってきたことではなくて、やっぱり政治家山田として、環境行政はこれだけはやりたいというようなことが何かないのでしょうか。
  119. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) 私は逆に、環境行政の中で、何か目覚しい目玉というようなことよりも、水俣病の問題にいたしましても、少しでも大きな意味で前進するために、単なる喧騒怒号、そういうものを越えて、静かに実態に取っ組んで、本当の法になっていく問題を見出そう。それはそんな簡単な問題じゃないと思います。口でただ言うことはやさしい。私の言うのは、事柄自身というものは、相当な歴史と複雑さを持っているものに対しては、冷静に、静かにこの問題に取っ組んで、熱意を持って、客観的に、ここまではできるというものをつくり上げて、そうしてこの問題に対処してまいるつもりです。  アセスメント法の問題についていま御指摘がございました。事前に評価をするというこのアセスメント法というものの必要性、いやというほどわれわれは知っています。しかしながら、これに非常な熱意を持って取っ組んで、最後にできないようになったことは非常に残念だ。しかしながら、静かに今日までの過去の歴史と、今日崩壊したその場面の現実をいろいろ考えてみまして、このアセスメント法というものについての一般的な過大な期待と申しますか、があってもならない。何でもかんでも法で縛ると、あるいは一時期においてそういう考え方があったかもしれないけれども、必ずしもそういう行き方でいくのはこれは適当じゃない。また、それは世界の現実の姿から見てもいろいろわれわれが反省すべき点がある。と同時に、またこれに対しての過大な懸念というもの、そういうものにはいろんな原因があると思います。ついに意見の一致に到達できなかったことは、私は確かに自分の不徳のいたすところであったと思う。あるいは今日まで十分の私の研究というものが得られなかった力の不足というものも感じます。しかしながら、私はどうしてもこれを、新たな経験、今日得られた努力の成果、そういうものをもとにして、ひとつ今度は、あるべき姿においてこの問題をぜひ実現したいという不退転の決意と熱意を持っております。  ただ、いま申し上げましたように、この問題については、非常にむずかしい客観情勢の中で、私は各方面を説得する努力の不足というものがあったと思う。必ずひとつこれは説得し、この問題をやり遂げたいと思う。いま矢田部委員からも後退という言葉がありました。私は単なる後退だ前進だというようなそういう、まあそう申しちゃ申しわけありませんけれども、抽象的な、あるいは浪花節的なことじゃなくて、私は、相当な実態に取っ組んだ上でのぜひ建設的な御批判を賜りたいと思っております。  以上片りんを申し上げたわけでございまするけれども、私は、十分な構え、備え、検討、それをもって環境行政というものを、理性的な合理的な形において、十分ひとつ最近のニードにこたえるようなふうに実現していきたい。こういう所信を持って私は臨んでいる次第でございます。
  120. 矢田部理

    ○矢田部理君 従前より声は大きくなったんですが、率直に言って中身は余り感じませんでした。  もちろん一般論、基本姿勢だけを論じていて済むものではないとは思います。もう大臣に就任されて半年たつわけですから、ウォーミングアップの時期は過ぎたと思うのです。国会も、今国会はいよいよ終盤に近づいておるわけであります。ひとつこれだけはやっぱり環境のために残していくと、長官時代にこれだけは山田さんの業績として残ったというものを一つ私はつくってほしいということを強く希望しつつ、少しく各論的な問題について長官に伺いたいと思います。  今度、瀬戸内法の後継ぎ法がいま審議をされています。この跡継ぎ法の問題をめぐって、たとえば衆議院でも先般附帯決議がなされました。その第一項では、「総量削減基本方針の策定に当たっては、」「水質の汚濁が生ずる以前のような状態に回復することとし、当面、海域ごとに指定された環境基準を達成、維持すること。」というのが第一項に掲げられているわけでありますが、この「水質の汚濁が生ずる以前のような状態」というのは長官自身どういう状態だと、どの時期の状態だというふうに受けとめておられますか。——役人に聞くんじゃなくて長官自身答えてください。
  121. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) 一応、その目標としては、三十年当時というようなことが目標になっておると了解いたしております。
  122. 矢田部理

    ○矢田部理君 その三十年当時の水質に戻すために、いつごろの時期までを目標に、どういう手だてで、まあ手だてその他については今度の立法にもある程度あるわけでありますが、長官のどういう決意でこれに取り組まれようとしているのか、そのために具体的にどういう努力をされるのか、その点を伺っておきたいと思います。
  123. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) その努力の具体的な方向、あり方そのものは、いろいろな客観的な状況その他も踏まえまして、今次後継法の中及び水質汚濁防止法の一部改正、この中にわれわれの具体的な方向と行き方というものがある、こういうように御了解いただきたいと思います。
  124. 矢田部理

    ○矢田部理君 いま指摘をされた後継ぎ法の中には、いつごろまでにこうするということは具体化されていないんですよ、長官。とりわけこの後継ぎ法は、法的規制よりも行政指導、努力目標、行政措置というのが非常にたくさん出ているわけですね、各条項にわたって。それ自身が批判されているわけでありますが、現に成立しようとしている法律であります。それならば、行政の姿勢そのもの、取り組む決意それ自体、これが非常に厳しく問われることになるわけであります。したがって、法律に定めてあるとおりやるというだけでは、私の先ほどの質問には答弁にならぬのです。
  125. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) この後継法においては、積極的に、富栄養化の対策、自然海浜保全を講ずるというような観点から、これらの制度等を盛り込んでございます。それに対して、いきなり禁止してないじゃないか、埋め立てのこと等も含めて。あるいは直接規制してないじゃないか。こういう点がなまぬるいというようなことの理由として挙げられているように思います。  私は、今日のこの対応策というものは、やはり科学の知見、それを越えてやるわけにはいかない、あるいは科学技術の発達というようなことを越えてはいけないと思います。また、複雑なあの地域の情勢というものに対応しながら現実にやっていくということのためには、海浜保全という点を見ましてもすぐ直接規制と、府県の権能を越えて。これは、地域との間の格差、いろんな点十分に考慮して、そうしてこれに対応するということが、私は、一番目的を達成するゆえんだと、そういう現実的な判断というものに基づいてこの法はでき上がっているものであります。  繰り返して申し上げまするけれども、すべてを法によって禁止あるいは規制をする、そのことが進歩的であって、それ以外のことはなまぬるいじゃないかと。私は、この点は、一歩後退して静かにいまの現実がどうなっているか、そういうふうに画一的なことを許すのかどうか、対応すべきあるいは対応を要する客観情勢というものが複雑多岐、そういう情勢においては、これはそれぞれその地域等における現実というものを十分踏まえての行政的対応、これに任せる方がより実際的であり、効果的である。私はむしろそういう考えに立ってこれに対応したのが今度の法律でございまして、これをもって行政の後退というのは、これは見解の相違といいますか、私はそういうふうには考えません。  後継法は、現行臨時措置法に比して、その内容は、そういう意味においては私は非常に実際的に前進しておると、こう考えております。基本計画実施の推進と相まって、瀬戸内海環境保全対策というものが十分現実的に私は拡充強化されてまいると、そういうふうに判断いたしております。
  126. 矢田部理

    ○矢田部理君 端的に伺います。  長官が考えておられる到達目標は、三十年時の水質環境に戻すんだと、それがこの法律のねらいだということであるとすれば、それはいつごろを目途に、何年計画で戻すのかという時期的めどをお示しください。——いや、長官に伺います。
  127. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) あとから言います。
  128. 矢田部理

    ○矢田部理君 長官に……。
  129. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) ちょっと事務的に。  先ほど大臣が三十年当時と言ってお答えしたのは、これは衆議院の附帯決議のこの案文について、「水質の汚濁が生ずる以前のような状態に回復する」というこの「状態」とは、衆議院の先生方がつけられたこの附帯決議のときに、どういうあれを考えておられるかということのお尋ねかと思いまして、大体それは三十年当時の、要するに高度成長時期以前のと、こういう意識でこういう附帯決議をつけられましたということでございます。  そこで、政府は、じゃどうかということでございます……
  130. 矢田部理

    ○矢田部理君 ちょっと、長官に答えさしてよ、あなたに聞いてないんだから。
  131. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) ちょっと、そこは解説だけでございます。
  132. 矢田部理

    ○矢田部理君 解説もいいよ。長官がどう認識しているかを聞いているんだから。長官の問題を私は言っているんだから。
  133. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 政府の方は、環境基準の全面達成というものを当面考えておりまして、それがこの附帯決議でも「当面、」と書いておるのはそこでございます。もちろん、これにつきましては、臨時措置法の三条の関係のあの哲学といいますか、あの思想もございますので、そういう哲学というものとの絡みで、三十年当時とおっしゃったのかというふうに考えておりますが、当時の姿の数値というものはないわけでございます。大体数値は、四十七年からの数値は、水濁法が施行されてからのがありますので、三十年当時の状態というのは、数値的には役所の方も不明でございます。  ちょっとコメントでございます。
  134. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) われわれが具体的に達成しようと、直ちにというわけにはまいらぬけれども目標として達成していこうというのは、環境基準というものを目標にして努力していくと、これがわれわれの立場でございます。
  135. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうも横から口が出るので混線しておるようです。  この附帯決議をあなた方受けたわけでしょう。大臣としても、附帯決議の趣旨を体して努力しますと、こう言ってきたわけでしょう。その附帯決議についてのあなた方の受けとめ方は、三十年ごろの状態に回復すること、回復すべしという附帯決議を受けたわけですから、結構ですと言った以上は、いつごろまでにその目標を達成するのか、今度の後継ぎ法もその手だての一つでありましょうが、長官としてしかるべき見識、考え方があって当然じゃないかというふうに思うわけですよ、附帯決議を受けた以上は。その長官の受けとめ方、考え方を伺っているんです。局長の話は聞きたくない。
  136. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) これは附帯決議でございます。この要望について、これをどのように具体的に達成していくか、その手段、方法、達成の順序、時期、これは今後いろいろな問題を検討しながら、私が申し上げましたように、十分この附帯決議のあれを体しながらと申しましたのは、そういう具体的な条件、方法、そういうことを今後考えてやっていくと、現状においてはそういうところでございます。
  137. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ちょっと速記とめてください。   〔速記中止〕
  138. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 速記を起こして。
  139. 矢田部理

    ○矢田部理君 この議論だけしていると長くなりますから、打ちどめにせざるを得ないんですが、長官、この附帯決議を受けるに当たっても、環境庁は考えたはずです。衆議院の附帯決議がなされてから今日まで、何日か日にちがあったはずです。その間、附帯決議を受けた以上は、これをどの時点で、どういう手だてで自分は達成するかというぐらいのことは考えてもしかるべきだったと思うんですが、いまだ考えていないということになると、すでに衆議院の附帯決議は宙に浮いてしまっている、後は役人的な説明だけが残ると、これではやっぱり長官、困るんですよ。この審議が終わった後に参議院でも附帯決議を用意しておりますから、その時期までにひとつじっくり考えてください。  二番目の質問に入ります。後継ぎ法で問題点になっております重要な柱の一つは、埋め立て規制、これをどう後継ぎ法はやっていくだろうかということで、いろんな要望もあり、関心も高い問題だったんですが、まず長官自身の考え方を伺いたいと思います。ずっとあの瀬戸内海沿岸が埋め立てられてきました。その数値もたくさん出ておるわけであります。あるいは問題点もたくさん提起をされているわけでありますが、あの埋め立てそのものについては、長官どういうふうにお考えですか。
  140. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) すでに御案内のとおり、この埋め立てに関しては、昭和四十九年五月瀬戸内海環境保全審議会におきまして、この埋め立てに関する、「第十三条第一項の埋立てについての規定の運用に関する基本方針」というものによって、この瀬戸内海という環境を十分考慮に入れてのその埋め立てのやり方ということについて、「海域環境保全上の見地」、「自然環境保全上の見地」、あるいは「水産資源保全上の見地」について、十分各項目ごとに配意される条項を掲げ、これを確認してやるということが指摘されておることは御案内のとおりでございます。  また、次の地区、「水産資源保護法による保護水面」……
  141. 矢田部理

    ○矢田部理君 これは書いてあるからいいよ、それは。
  142. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) これらの点について、その埋め立てを極力避け、あるいはこれに準ずるような措置でやるということが指摘されておりまして、これに従ってわれわれも通達をして、それでやれということでまいっております。  私は、この埋め立てについては、十分実情に沿いながらこの方針でやれということ、こういうことでいくと、これが適切な方向であると考えているわけです。一律に、たとえば禁止するというようなことは、私はこれはやはり実情を越えた考え方になるんじゃないか、そういうような考え方において、この方針でいくことを指示し、またこの方針で臨む方針でございます。
  143. 矢田部理

    ○矢田部理君 答申の説明を求めたわけではないんです。答申は答申としてありますが、長官として、埋め立て問題についてどう考えておられるのかとお尋ねをしましたら、この答申の説明があった。しかも、気になりますのは、長官、実情に応じてとか即してとかという言葉が非常に多いんですね。もともと公害基本法ができたときには、そういう実情を乗り越えて、やっぱり命とか自然とかを守らなければならぬ、ととりけ産業調和論を排して冠たる基本法ができたわけでしょう。長官の話は、そういう公害立法、公害国会がいろんな論議をしてきた、住民運動がこれを支えてきた、環境庁もそれなりにがんばってきた、そういう歴史的な経過を踏まえないで、少しずつ後ずさりをしているんじゃないかというような印象が強いんですよ。  そこで、そういう答申に基づいてやってきたということですが、運用はうまくいったというふうに思っていますか。
  144. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) 今回までのいろいろな経過、いろいろなこれについての問題が生じていないわけではないけれども、しかしおおむね、この方針に従って行われている限りにおいては、所期の成果を得ているものではないかと、このように判断いたしております。
  145. 矢田部理

    ○矢田部理君 時間があれば一つ一つ指摘をしたいぐらい、この答申すらも実行されなかった、実態はしり抜けであったということなんですよ。環境庁のデータにも出ています。四十八年十一月から四年間に実に八百七件の埋め立て件数があったわけですね。大変な数ですよ。年間二百件を超える埋め立てが行われている。  ところが、この答申を見ますと、長官の言ったのは例外部分なんですね。一番本文は、埋め立ては厳に慎むべきだと、きわめて例外的にのみ認められるべきだという答申だったにもかかわらず、例外が原則になった、常態化してしまったというのが埋め立ての実態だったんじゃありませんか。その点についての基本的な理解、反省の上に今度の後継ぎ法はつくられるべきであったのでありますが、条項は前の条文と全く同じでした。これではやっぱり後継ぎ法は十分に住民や地域の人たちの期待にこたえていない。基本的に環境保全する立場について前進面が見られないという批判を受けるのもやむを得ないと思うのであります。  少し実務的な問題について、今度は局長に伺います。  この八百七件の件数の内訳を伺いたいのですが、自治体自身から、とりわけ府県から、免許なり承認なりを求められた件数は何件ぐらいあるのでしょうか。
  146. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) この八百七件につきましては、これは非常に小さな、一ヘクタール程度のものから大きなものから全部入っておりますので、全体で申請者が自治体であるかあるいは民間であるかのデータは、実は、申しわけございませんが、ございません。これは、建設省、運輸省等にもその辺の区分けも照会したのですが、そこまでの振り分けをやっておらないということでございます。  ただ、実は、五十ヘクタール以上、または環境保全上非常にこれは大事だというようなものは、十五ヘクタール以上のものが公有水面埋立法四十七条二項の規定によりまして、環境庁長官意見が求められるわけでございます。これにつきましては、環境庁の方にじかに照会があるものでございますので、これについては内訳がございます。で、この臨時措置法が施行になりましてから現在まで、運輸大臣の方から環境庁長官環境保全上の意見を求められましたのは、合計十三件ございます。このうち環境保全上の意見を回答したのが九件、目下審査中というのが四件ということでございますが、全体を含めまして、申請者ということで見ました際に、私企業が申請者になっておりますものが二件ございます。その他につきましては、国と公共団体というのが十一件ということでございます。
  147. 矢田部理

    ○矢田部理君 後継ぎ法を考える場合に、それは環境庁意見を求められる部分もあるでしょうが、この四年間、従来の臨時措置法の運用が実態的にどうなっていたのかというのをつかまえなければならぬのは当然のことじゃありませんか。とりわけ、午前中の問題にも出ておりましたが、自治体の埋め立てが相当多い。府県のですね。ところが、それを認めるか認めないかは知事自身、自治体自身がやると。ばくち打ちに十手を持たせるみたいなものだという午前中の説明がありました。そういう状況から考えてみても、八百何件かの埋め立て件数のうち、どのぐらいが自治体でありどのぐらいが企業であるという内訳を調べないで、次の立法、後継法を考えるというのは、少しく怠慢じゃありませんか。それについての見解。  もう一つは、公有水面埋立法に基づいて埋め立て免許の申請、申し立てをしてくるだろうと思うのですが、そのうちで却下したもの、免許を与えなかったものは何件くらいございますか。
  148. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 八百七件の申請者の、民間なりあるいは公共団体なり、そういう面の振り分けといいますか、状態等を調べてなかったという面につきましては、怠慢ではないかということでございますが、この面は、そこまで調べておりませんではなはだ申しわけないとかように思います。  それから、埋め立ての免許申請を出しまして、これが免許がおりないという件数が幾らかという面につきましてでございますが、これも実は十分調べてございません。はなはだ申しわけございません。
  149. 矢田部理

    ○矢田部理君 長官、そういう実態ですよ。先ほど長官がるる説明をされた、審議会の答申がおおむねうまく運用されていたということがどうして言えるのですか。
  150. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) 細部にわたっていろいろ説明を十分聴取していなかった点は、これは私ども足らなかった点かと思いまするけれども、われわれはそういうものを基礎にしてやっておりました。内容についてはしかし、さらに私は検討してそれではお答えすることにいたしたいと思います。
  151. 矢田部理

    ○矢田部理君 長官は先ほどから、科学的、客観的にやると言っていたんですがさっぱり科学的にも客観的にも、データすらそろっていないじゃありませんか。  私は長官の考え方を伺いたいと思うし、それから、衆議院の附帯決議等にもすでに出ておるわけでありますが、もう工場立地等のための埋め立てというのは、瀬戸内海は前から限界に来ているわけです。先ほど長官が述べられた答申でも、厳に慎むべきだというのを基本方針として打ち出しているわけです。法文は、後継ぎ法も従前のものも変わっておりませんけれども、今後環境庁として、埋め立てについては厳重に規制をしていく、答申の基本原則にのっとってやるということぐらいは、少なくともこのスタートに当たって考えてほしいと思うのですが、いかがでしょうか。
  152. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) 無論、そのとおりにして対処していきたいと思っております。
  153. 矢田部理

    ○矢田部理君 その場のはずみの答弁じゃなくて、真剣に追求してほしいと思うのですよ。  それから、今度の後継ぎ法を策定するに当たって、公害ではしばしば問題になるわけでありますが、住民環境公害問題にどういうふうにかかわるか、住民だけでなくて、その問題に関心を持つ学者や専門家の方々がどういうかかわり合いを持つかということは、環境公害問題を考えるに当たって非常に重要だと考えているのですが、長官はその点についてどうお考えになっているのか。それから、その考え方が、あるとすれば、この法案の中でどういうふうに生かされてきているのか、その点を長官に伺っておきたいと思います。
  154. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) 環境保全に関する問題について、住民意見というものがくみ取られる、つまり住民参加の問題は、これは原則としてはいろんな形においてくみ取られるということは望ましいと考えております。しかしながら、どの場合にもすべて必要かどうかという点については、これはいろいろその事柄の性格の問題ではないかと思っております。すなわち、たとえば後継法による基本計画の策定というような面に至りましては、その性格から見て、個々の住民意見を聞くというようなものではなくて、むしろその意味では私は、住民の参加は、計画という面ではなじみにくい。問題は、事業そのものについての認可、あるいは事業そのものについての実行、着手という面については、これは十分その点は考えていくというふうに行われることが望ましい。事実、いろんな面ではそういうふうに行われています。そういう点でいくように、そして住民意見というものは、適正なものは十分反映するようにということでいくことが望ましいという私は見解でございます。
  155. 矢田部理

    ○矢田部理君 それが今度の後継法にはどこの部分にどういうふうに生かされましたかということも含めて聞いているんですが。
  156. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) 私は、この点については、まあ後継法そのものはこれは従来の後継ぎの法でございまするので、従来のようなラインで実際上行われるというような、行政指導の面として、行われておりまして、この法自身に法文化という形では掲げられておりません。
  157. 矢田部理

    ○矢田部理君 長官の住民の参加についての意見についても、私はいささか別の意見を持っておるわけでありますが、いずれにしてもある程度の参加は考えるのが至当だという御意見でしょう。どうしてこの法案の中にそれを反映させなかったのでしょうか。
  158. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) まあその点では、矢田部委員に端的に指摘されるという点になりまするというと、確かに問題の点であろうかとこう思います。事実は、アセスメント法などというものを考えて、一般的にそういう面というものによって対処したいというような考えから、特にこの問題には触れなかったというようなことであったわけでございます。
  159. 矢田部理

    ○矢田部理君 どうも納得できない意見ですが、衆議院でも、御承知のように「関係住民意見が十分反映されるように努めること。」という決議になっておりますね。しかも、それは長官の言うように、実施、実行段階だけではなくて、「施策の立案及び実施に当たっては、」と、こういう議論になっておるわけです。——長官、いいですか。全会一致でこういう決議になっているんです。これは具体的に運用面でどういうふうにこれから生かしていくつもりですか。
  160. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) 環境アセスメント法が遺憾ながら実現しなかったという状況にかんがみて、これに対応する幾つかの方法があろうかと思って、現在その問題については腹案を検討いたしております。
  161. 矢田部理

    ○矢田部理君 住民参加、住民意見の反映ということになりますと、今後検討するじゃなくて、少なくともこのぐらいは自分の責任で実行したいということがあってしかるべきだと思うんですが、もうちょっと具体的な話になりませんか。
  162. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) まあこれには幾つかの対応策があります。一般的な、いまの段階においての環境庁からの通達あるいはより高い形における決定に基づく通達と、いろんな問題があろうかと思います。いろんな点から見て、一番実情に即して、どれだという点を検討して対応したいと、こう思っております。
  163. 矢田部理

    ○矢田部理君 ひとつ、衆議院でも決議があるし、参議院でもさらに突っ込んだ決議をしたいと思うんですが、単に言葉づらだけではなくて、やっぱり具体的に住民が参加できるような、意向が反映できるような施策を本来は立法上すべきだと私は思うのでありますが、長官の強い決意でこれから考えていってほしいし、具体化してほしいという要望を強く述べておきたいと思います。  それから、そろそろ制限時間でありますので、もう一、二点伺っておきたいと思います。  「自然海浜保全地区の指定」という条項が今度の法案の中に入っています。これについても午前中の議論、いろいろございました。とりわけ、海浜保全地区の指定が府県の条例で指定が行われる、ところが今日までの瀬戸内海の実態を見ておりますと、指定の主体である府県そのものが海浜の破壊を行っているという重大な指摘も午前中ありました。府県海浜の破壊をしない裏づけ、担保がないではないかという疑問も提起をされました。この辺、今後運用をするに当たってどういうふうに計らっていくのか、長官としての見解を伺いたいと思います。
  164. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) いずれにいたしましても、瀬戸内海における国民のレクリエーションの場として、自然海浜の重要性ということにかんがみまして、本法案におきましては、この自然海浜保全制度というものを行政的手法によって、瀬戸内海における自然海浜保全及びその適正な利用確保を図ろう、こういう観点でうたっているものでございます。  いま、いろいろな懸念等が御指摘がございました。しかしながら、現在の段階においては、この点について一番大きな利害関係を持っておる、これは府県というものでございますし、これ以上進むということについては、私はまたいろいろな問題があって、この前にも私の方の局長からも話がございましたけれども、つまりこの保全という趣旨にかえって反するような結果を招くようなおそれもあると、こういうことで、非常に地方行政庁に対する懸念等の御表明がございましたけれども、やはりこの際は、その責任において本法の趣旨、瀬戸内海法の趣旨、それにかんがみて善処してもらうというのが私は最善の道であろうということで、本法によった次第でございます。
  165. 矢田部理

    ○矢田部理君 関係府県に任せるという対応でありますが、だけに任せるべきではなく、とりわけ府県が利害関係を持つような地区等々については、環境行政立場から、環境庁としてもより重大な関心、かかわりを払ってほしいと、これも要望しておきたいと思います。  もう一点だけ関連して伺っておきたいのは、この自然海浜保全地区に指定をされた場合には、その地区は少なくとも埋め立てはやらない、やるべきでないということは当然だと思いますが、長官、いかがですか。
  166. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) 埋め立て問題のわが方の基本的な方針については、先ほど私から御指摘申し上げましたとおりでございます。いまの点は、大体そういうふうにいくんだとは思いますが、具体的な面にこれを照らし合わせてどうなるかという点について、一律に私がどうということはまだちょっとここで申し上げかねますが、方針は、先ほど申し上げた方針によって、なお一層指定のあったものについてはこの趣旨を徹底してやられるであろうと、またやらねばならぬと、こう考えております。
  167. 矢田部理

    ○矢田部理君 法制の上から見ても、海浜保全地区について、指定をした以上はそこは埋め立てをすべきでないと、そこははっきり長官確認していただきますね。
  168. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) 私は、いま御指摘のとおり、極力そういう物の考え方で対処すべきであると考えております。また、していきたいとこう思っております。
  169. 矢田部理

    ○矢田部理君 「極力」が少し余計なような気がするんですがね。そうでなきゃ、との制度を、海浜保全しようということを改めて法文化したわけでありますから、せめてここぐらいは、埋め立てをやりませんというぐらいは、長官、明言してしかるべきじゃありませんか。
  170. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) 「極力」は削除さしていただいて結構でございます。
  171. 矢田部理

    ○矢田部理君 明快になってきました。  そこで、時間がありませんので、建設省に二、三伺っておきたいんですが、私どもも環境整備の重要な柱として、下水道事業を促進をする、普及率を高めることに賛成であります。ただ、同時に、基本的には下水道事業を進めることに賛成でありますが、当委員会でも参考人などに来ていただきましていろいろ貴重な御意見をいただきました。その中で、幾つかの問題点が提起をされております。その重要な一つは、工場排水と生活排水を混合処理するということになりますと、工場排水に対する監督監視体制が、従前も非常に弱かった、それが一層しり抜けになる危険性がありはしまいかというのが第一点であります。それから二番目には、そういうためには当然のことながら監視監督の体制を強化すべきだし、間接強制ではなくて直罰方式をもって臨むべきだという意見もあるわけでありますが、この点の実態と問題の認識について一つは伺いたい。  二番目には、——時間がありませんから続けてしまいますが、もともと工場排水と生活排水を混合処理すること自体に幾つかの問題点をはらんでいる。だから、これは分離処理にすべきであるという議論もありました。私は、全面的にすべての下水道が分離処理がいいかどうかということについてはまだ十分な確信を持っておりませんが、少なくとも地域によって、あるいは条件によってはそういうことも十分検討してしかるべきではないか。とりわけ、自治体がそういう希望を持つような場合については、建設省としてはこれを認めていく立場、これを基本的に確立をすべきではないか。ある自治体のように、そういう方向で決めたにもかかわらず、補助金等をなかなか出さないという対応をしていることについて問題も出されております。それについて見解を伺いたい。  それから三番目には、大型化して、もともと処理しなくてもいいような水まで大きく飲み込む。また、大型化することによって汚濁物質等がそこに集中をする。それが河川や海等に排出をされますと、ある点に集中して汚染が広がる等々の問題もあります。さらには、いまの下水道の処理方式は、重金属そのものに対してしかるべき処理方式が全然ない。そこから汚泥の処理その他にも非常に多くの問題を生じるという議論もありました。等々を考えてみますれば、単なる従前の下水道の普及方式だけではなくて、そのほかにも土壌還元の方式も一つ実験的に提案をされております。そういうあれこれの問題について、今後建設省として十分外側の意見も聞きながら検討をし、対処をしていくということを考えておられるかどうか。  以上の点をまとめて伺っておきたいと思います。
  172. 高橋進

    説明員(高橋進君) お答え申し上げます。  まず第一点でございますが、工場排水を下水道に入れていることに伴う監視体制、その実態はどうかということでございます。これは建設省といいますよりも、それぞれの下水の管理者、第一線でもって、とにかく監視を十分にして、悪質な、処理に適さないような下水を入れないようにしようということで努力を日夜やっております。ただ、いろいろ人員の問題その他等で、実態として、現在十分かと言われますと、これはまだまださらに努力しなければならぬ面があると思っております。これにつきましては、この委員会で申し上げましたように、法律改正もなされまして直罰制度という制度もできておるわけでございますけれども、今後なお一層に努力いたしまして、そういった監視体制の充実強化というものを考えてまいりたい、こういうふうに考えます。  それから、第二点目の、工場排水と家庭排水の混合処理に関する問題点でございます。確かに分離処理すべきではないかという御意見がございます。ただ、私どもは、やはり下水道の整備に当たって考えますことは、単に工場排水を分離すべきだとか一緒にすべきだということ以前の問題として、その都市の環境整備を、下水道によりまして水質保全あるいは環境の整備をやるのに、どういうことでやるのが一番効率的か、効果的か、そういう観点から考えておるわけでございます。たとえば、そういう観点からいいますと、臨海のコンビナート地域で直接海に排出するような工場排水、こういったようなものは、直接そういった企業に、処理して問題がないようにして出してもらうということが適当でございましょうし、また、内陸部等の、地形によりましては工場排水をそのまま出すところもないようなところもあるわけでございまして、まあいろいろ当該整備すべき地域の地形とか都市の整備の現況とか、あるいは将来の予測といったものを考えまして、効率的に効果的に環境整備をやっていくのに何が一番いいのかという観点から計画を立てているわけでございます。そういう原則のもとにやっておるわけでございまして、ちょっとお話に出ました、工場排水を入れないから補助金を出さないとか、そういったようなことからの議論はございません。(「現実にないですか」と呼ぶ者あり)ございません。それはやはりその当該地域にどういった下水道計画が一番いいのかということで、やっぱり工場排水を受け入れて、こうやっていくのがいいという計画ではそれがいいわけでございますし、また先ほど申し上げましたように、臨海地帯などの工場排水を受け入れるのは地形的に問題があるというようなこともございましょうし、そういった場合には外すのも適当でございます。また、冷却用水などの場合には、工場排水といいましても汚濁物質が含まれない場合もございますので、そういうのは下水道法上の許可を受けまして外すこともあるわけでございます。  それから、第三点目でございますけれども、大型化について考えるべきではないかという御意見がございました。これにつきましても、第二点目にお答えしましたように、やはりその地域における下水道のシステムというものがどういう形でやるのが一番合理的であり、効率的であるかということから考えるべき問題でございまして、建設省といたしましても、何もすべて大型の下水道がいいというふうに考えているわけではございません。それは先ほど申し上げましたように、地形とかあるいは都市の状況等に応じまして、ずっと複数の市町村を含めて一括処理するのが合理的である場合にはそういたしますし、そうでない場合はそれぞれの公共団体で、必要な単位でやるというかっこうになるわけでございます。そういった意味におきまして、いろんな地域の実情に応じての計画を現在立てているつもりでございますし、今後もそういった点も配慮しながらやってまいりたいと、こういうふうに考えております。
  173. 矢田部理

    ○矢田部理君 その議論はさらに続けていきたいと思いますが、いずれにしても、地域の実情なり、住民の意向なり、自治体の考え方を十分に組み入れるような方向で、ひとつこの事業を推進していっていただきたいし、とりわけ工場排水等に対する規制、監視等々がその結果弱まるようなことになってはならないはずでありますから、十分に監視体制等についても、これは環境庁ともどもでありますが、強めていっていただきたいというふうに考えるところであります。最後に、環境庁長官に、かなり言いにくいことも率直に申し上げました。後継ぎ法全体を検討してみまして、率直に申し上げてきわめて不十分であります。住民や自治体の要求にも、率直に言ってこたえ切れていない。しかしながら、私どもは、これを土台から崩してしまうことを心配いたしました。で、結果としては賛成の立場をとることになりますが、ひとつ今後運用面で、ここで出たいろんな貴重な意見なり、審議の状況を十分参酌をしていただいて、瀬戸内海の海をきれいなものにしていただきたいし、一刻も早く目標、手だてを考えて、やっぱり昭和三十年ごろのような状況瀬戸内海を取り戻してほしい、そのことを強く要望して私の質問を終わりたいと思います。
  174. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) この後継ぎ法、水質汚濁の、水質総量規制を目的として、われわれといたしましては大いに臨んだつもりでございます。しかしながら、十分御理解いただけなかった点があったことは残念だと思いまするけれども、要は、お互いに共同して、この瀬戸内海というものの環境保全という共同の立場に立っているのでございまして、まあいろいろ御審議をいただきました貴重な御意見等については、十分これを参酌いたしまして、私といたしまして、できる限りこういう目的に向かってひとつ善処いたしてまいりたいと、こう考えております。
  175. 中野明

    ○中野明君 私は、赤潮の問題で重ねてお尋ねをしたいと思いますが、この赤潮の問題は当委員会でもたびたび話が出まして、瀬戸内海にとりましては水質汚濁ではもう非常に重大問題でございますが、   〔委員長退席、理事矢田部理君着席〕 その都度局長からは赤潮研究会ということがたびたび出まして、私どももこの研究会というものに非常に大きな期待というものを寄せておったわけでございますが、けさほど参考人の御意見を聞いておりますうちに、この研究会というのは、研究ではなくして——その人の表現、お聞きになっておったと思いますが——対策、赤潮対策だと、こういう意味の発言がございました。私どもも非常に研究会に期待をしておっただけに、ちょっと驚いたわけですが、この方が赤潮研究会の一員ということでございますから特に驚きましたが、この参考人の御意見にもありましたように、いまの赤潮は、メカニズムを解明するためにはもう個々ばらばらではいかぬと、文部省、農林省、環境庁と、こういうようなところでばらばらにやっておっても、やはり日本の現状から言って役所の横の連携というのはなかなかむずかしい。だから、ぜひ総合的に研究をしてほしいというのは、これは衆議院の参考人の方も、赤潮の権威の方がそういう意味を述べておられたやに私承知いたしております。こういう点で、一体環境庁として、今後赤潮の原因究明に総合的な研究をするという、こういう方向でお考えになっているのかどうか。  また、もう一つは、現在一体赤潮研究にどれぐらい予算が使われているのか。先ほど柳澤委員の方からもお話が出ておりましたが、一体環境庁として赤潮の解明のために、研究のためにどれぐらい予算が使われていると掌握をなさっておるのか、この二点最初に。
  176. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 赤潮研究会でございますが、これは先ほどの岡市先生も御参加いただきまして、現在のところでは十四名の赤潮研究者の方々で構成されて御検討いただいております。それで、実は昨年の九月に第一回を開き、またことしの二月に第二回を開いたわけですが、この段階におきましては、むしろ昨年の播磨灘発生したホルネリア、これを軸にしながら、それとの関連でメカニズムの解明、機構解明というような問題もあわせて検討してもらうということで進んできたわけでございます。  ところが、先ほども御質問ございましたように、過般本委員会からも赤潮研究を組織的、体系的に進めるべきではないかというような御指摘もございました。したがいまして、それをどう進めたらいいかということにつきまして、私たちも真剣に取り組みたい。ただ悲しいことには、私ら自身が、赤潮研究のどういう部分がまだ未解明であり、どういう点をどこの研究機関に分担してやってもらったらいいか、なかなかそこがすぐわからぬわけでございます。そこで、この赤潮研究会というのがいま進行いておりますから、この研究者の方々に、そういう附帯決議の線も体して、今後赤潮研究というものを総合的、体系的に進めるにはいかにあるべきかということをあわせて検討していただこうと、こういうことで五月に第三回の研究会を持ったわけでございます。  その際に、一応南西海区水研の村上先生という方が赤潮研究者にございますが、この方が赤潮研究の今後のプロジェクトということで、テーマを出されたわけでございます。大分類があり、さらに中分類のテーマがずっとございます。大きく申しますれば、赤潮発生機構というのがまず一つ。それから第二点は、赤潮生物種の分類同定、これかホルネリアであるとか、これがギムノデニウムであるとか、いろんなその辺の大きな分け方はできるんですが、さらにそのホルネリアマリーナであるかどうかというような同定の関係などはまだ不十分でございますから、そういう分類同定というジャンルの話。それから第三点は、赤潮発生予察でございます。この辺の研究、これも非常にまだおくれておりますので、その辺の関係。それから第四点が、赤潮による漁業被害の防止という関係の問題。それから第五点が赤潮の定義。赤潮というものの定義とその研究成果の解析でございます。   〔理事矢田部理君退席、委員長着席〕 いままでも赤潮研究いろいろございましたので、その辺の解析というような大きなテーマを出しまして、その中で、さらに中分類といいますか、そういうテーマも出されておるわけでございます。これを土台にしながら一応いま御検討をいただいておるということでございます。  ただ、先ほども申し上げましたように、この研究会は水産庁と環境庁と共同でやっております。そこで、主として赤潮の被害発生の防止ということで、漁業被害に関する防止、この問題というのがやはり水産庁としては非常に急務であるという角度で、非常にそういう角度での防止の問題、防除の問題というのがまたこれも必要でございます。それとともに、わが環境庁の方といたしましては、そういう防除というだけでなしに、さらにこういう発生機構の解明ということも今回の後継法に織り込んだ一つの大きな問題でございますし、また、この解明がなければ基本的な防除というのにも到達し得ないという分野も当然でございますので、そういうことで、この赤潮の問題を単なる水産被害の問題ということだけでなしに、そちらも含めて考えていただきたいということで、両々相まってということで、いままだ研究会の方で詰めてもらっておるという段階でございます。  その結論の出たのを踏まえて、今後、来年度予算以降、どうせ単年度でできるわけじゃございません、数カ年以上かかる話でございますから、そういう長期的な展望を持ってこういうテーマを研究していくと。それにはどういう予算が要るか、どこの研究機関でやってもらうかというようなことをさらに前進していきたいと、こういうことでいま取り組んでいるわけでございます。
  177. 岩崎壽男

    説明員岩崎壽男君) 環境庁赤潮関係の予算がどのくらいあるかというお尋ねでございますが、赤潮それ自体というものをとらえた予算といたしましては、一つ赤潮の予察と言いますか、そういったリモートセンシングというやり方で技術開発ができないかという予算が約二千万ございます。そのほか、昨年度につきましては、八月にホルネリアによる赤潮発生いたしましたので、その調査に直ちに対応するという趣旨から、研究調整費というのがございまして、それが約千二百万ありまして、いまホルネリアの調査をやっているということでございます。  その他、赤潮ということではなくて、富栄養化問題という観点からは、また別途富栄養化の関係の予算であるということでございます。
  178. 中野明

    ○中野明君 衆議院の参考人も、他の省庁の研究費というようなことでおっしゃっておりますが、何か六十万いただいたとか、文部省の関係では途中で打ち切られたとか、まあそういうようなことをおっしゃっておるようでございますが、そういうことを考えていきましたときに、こういう各省庁にまたがる問題こそ環境庁がやはりやるべきじゃないだろうかという考えを私、持つ一人であります。ぜひこれは大幅に予算を組んで、けさほどの参考人も十年というようなことをおっしゃっておりましたが、現状のままでいったら十年たって大体めどがつくんじゃないかというようなお話じゃないだろうかと私受け取ったんですが、もっと環境庁が力を入れて、そうしてしかるべき予算を組んで精力的にやれば、この解明の時期がもっと短縮できるんじゃないかと、このようにも受け取ったんですが、そのお答えをいただいて終わりたいと思います。
  179. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 実は、先ほど申し上げましたように、赤潮研究会の先生方で、今後の研究体制と言いますか、研究テーマというものを決めていただきました際に、これに対する予算といいますのは、実は、環境庁の予算というのが一つあると思います。これは環境庁独自に、環境庁の水局予算に計上するもの。これは先ほどうちの室長が言ったものがございます。そのほか、環境庁の中でも企画調整局の方で緊急的なあれということで、調整費ということでやっているものもございます。それから、各研究機関が各省にございますが、水産研究所なり。その辺の、テーマをとらえてやる、一括計上と普通言っております予算もございます。そういうようなこと。それからもう一つは、水産庁、これがやや防除的なものが中心になる面もございますが、赤潮関係の予算が相当ございます。それから、文部省でございます。科学技術研究費というのがございまして、科研費とわれわれ言っておりますが、これがまたあるわけでございます。要するに、赤潮のメカニズムという問題等につきましても、きわめて学術的にもこれは問題でございますので、文部省としてもそういう予算を考えておるわけでございます。  したがいまして、水産庁の予算、文部省の予算、環境庁の予算もいま言ったような種類ございますが、そういうものを全部含めて、先ほど言ったテーマを見て、これは文部省の予算だと、これは水産庁の予算だと、これは環境庁の予算だと、こういう形で予算を獲得をして、それを体系的な組織的な研究をやるということでの予算でございます。そういう形で精力的に進んでいくということが非常に効率的ではなかろうか、こういうことでいまいろいろ検討もいただいておるところである、こういうことでございます。
  180. 小平芳平

    ○小平芳平君 補足的に若干質問いたすだけでございますので、二瓶局長さん、ひとつ簡単にお願いします。それで、もう長時間になりますので、皆さんもお疲れと思いますから、私もただ長々と申し上げません、質問も簡単にいたします。  立場は、先ほど矢田部理事が述べられましたが、私の立場も、今回の後継ぎ法がないよりもやはりつくっておくべきだという考えであります。そういうことで、先日の委員会でも自然海浜保全地区について基本的な考え方を尋ねましたが、これは新聞の論調でも、あるいは午前中の参考人の方の御意見にもありましたが、そしてまた先ほど矢田部理事の質問にもありましたが、せめてここくらいは埋め立てはさせないということが当然じゃないかという意見があるわけですね。ところが、それに対して環境庁としては、そういう全面禁止というのは実情に合わないんだということを繰り返しておっしゃる。  したがって、それでは具体的に、自然海浜保全地区にあるところが決まったとします。そうすると、そこの自然海浜保全地区を埋め立てようという場合は、これはどういうことになりますか、実際上の手続は。あるいは、全面禁止はあり得ないということでありますならば、一般の海岸を埋め立てる場合と自然海浜保全地区を埋め立てる場合との実際上の手続あるいは条件がどう変わりますか、この点について伺いたい。
  181. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) この後継ぎ法で、実は埋め立てにつきまして、十三条に、「埋立て等についての特別の配慮」の規定があるわけでございますが、この配慮の関係につきましては、これは瀬戸内海全域の埋め立てというものにつきましてこの配慮が当然いくものである。その基準というのは、埋め立ての運用の基本方針ということでいままで対処してきておった、こういうことでございます。  そこで今回は、そのほかに、「自然海浜保全地区の指定」という規定が新たに挿入された。で、この挿入されたときに、指定された地区で工作物の新築等をやるときは届け出をせよ。そして後、助言、勧告というようなことができる。そのときに、いろんなここに例示が、「工作物の新築」等ございますけれども、「その他の行為をしようとする者」という際には、例示としては、その次にすぐ埋め立ての規定も出てきていますので、埋め立てを何回も例示に出すのもどうかということで例示に出していませんが、これは、「その他の行為」というのは当然埋め立ても入る、こういう考え方でございます。したがいまして、詳しいことはこれは府県が条例で決めるということでございますが、これとの運用の方針というものにつきましては、これは埋め立て等も当然入るという考え方指導をするというふうに私たちは考えております。  そこで、一般的なものと自然海浜保全地区の埋め立てとでどう違うかということになるわけでございますが、手続的には、どこの埋め立てであろうと埋め立ての免許申請が当然出るわけでございます。ただその際に、この自然海浜保全地区というものについては「届出」をするというのが出てくるわけでございますね。その届け出というものも、埋め立ての免許申請と同じもので、これは届け出をするということをやることも、これは免許申請者にとっては事務的には同じことでございますから、まあそういうようなこともやろうかと思いますが、ただ、事の考え方としては、自然海浜保全地区というのは、これは自然海浜というものを、しかも、海水浴等に利用している、その利用を、今後とも末永く利用していくべき地域ということで、条例で指定をしてもらおうと、こういう物の考え方でございますから、これは原則的な考え方としては、ここは埋め立ては避けるべきであると、こういう考え方でございます。  ただ、どういたしましても、あらゆることを考えて埋め立てをせざるを得ないという場面が万一あるとすれば、それは条例の方で規定されるかもしれませんが、そのときは海水浴等ができなくなれば、埋め立ての地区指定の変更をやらないとおかしいということになろうかと思います。まあ詳細は条例の方で書くということになろうと思います。考え方としては、よくよくの極端なことがない限りは、ここは末永く自然海浜として、しかも適正な、海水浴なり潮干狩り等に使っていただく地域ということで運用をしてもらいたいというのが環境庁の考えで、そのような指導を県にしたいと、こう思っております。
  182. 小平芳平

    ○小平芳平君 御趣旨はよくわかりました。この自然海浜保全地区に一たん指定になった場合は、そうやすやすと埋め立ては不可能だと、実際問題は。しかし、それは申請を出した場合、手続は全く同じように出すということ。あるいは、実際は、どう決めるかということはそれは条例任せと、そうなりますから、はっきりした歯どめとは言えないわけですね。はっきりした歯どめとは言えないけれども、そういう条例で指定した以上は、恐らく埋め立てということはまずあり得ないと、こういうことですね。
  183. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 一般的な十三条の規定のあるほかに、特に自然海浜保全地区の指定というものを入れたということで、特に埋め立ての面につきましては、いま先生のおっしゃったような、そういうような物の考え方で県を指導したい。具体的には、これは県自体が条例で決めることではございますが、こういう法律を国として提案をし、国会の御審議を得て成立するとすれば、それは国としてそういうことをやるべきであるということを鮮明にしているわけでございますので、そういう線で指導をしたいと、こういうことでございます。
  184. 小平芳平

    ○小平芳平君 国として。
  185. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 国としてですね。これは、県自体でもできるわけですね、「県は、条例で」ということですから。ところが、わざわざそんなできることを法律に盛り込んだと、しかも国会で御審議いただいて、それでこれが成立したと、こういうことは、行政機関も、立法府も、それは非常に推進すべきだということで成り立つわけでございますから、国としては、県がそういう条例でやれることでありますが、その際の埋め立てについての考え方につきましては、こういうことを指定する以上は、一般のその他のところと違って、ここは、埋め立てはまず避けるということで運用をしてもらおうと、こういう指導をしたいと、そういうことであります。
  186. 小平芳平

    ○小平芳平君 次に、建設省から、先ほど、この混合処理がいいかどうかということですね。そういうことを前提として物を考えるのではなくて、その地域の状況によって、どの程度の排水を処理するかと、処理できるものをつくるかということが前提なんだという御説明、それはよくわかりました。  そこで、もう一つ今度は別の観点から伺いますが、それは管理運営の上から言って、どの程度の規模の処理が適当と考えられるか。とにかく流域を集めて巨大なものをつくる方が管理運営にプラスなんだという説明をなさる人がいるんです、実際問題が。しかし、それは管理運営上、そういうことはかえってマイナスじゃないかと、そう言う方もいらっしゃるわけです、実際上。ですから、どういうことを適正規模と考えられますか。あるいは、計画中の流域下水道で、工場排水がきわめて多いという計画のものは、何%くらい工場排水のものが入るようになっておりますか。  以上、二点について伺います。
  187. 高橋進

    説明員(高橋進君) 第一点目、管理運営の上からいきまして、どういった規模が下水道の処理で適当と考えられるかということでございますが、これは正直申し上げて、何万トンぐらいがいいとかいうことは一概には申せられないわけでございます。と申しますのは、基本的には規模のメリットという問題がございますので、大きければ大きいほどいいという要素も一つございます。規模のメリットによりまして、建設費もそれから維持管理費も少なくなるという要素も一つございます。一方、流入下水の性質によりまして、大きくなった場合に、いろいろ、どういったような状態になっているかといったような要素もございます。そういったことで、その都市の、それからまたパイプとの関係、管渠との関係もあるわけでございまして、大きければいいといいましても、遠くから非常に地形に反したような管渠で持ってくること自体が問題がございます。そういったいろんな要素がございまして一概には申せません。  ただ、規模が非常に小さくなりますと、やはり経済的な面で相当維持管理の問題として出てくるということがあろうかと思います。まあこの規模も、流域下水道が必ずしも大きいばかりではございませんで、たとえば東京の公共下水道でございます森ケ崎処理場なんていうのは非常な大規模なものでございまして、これはやはりああいったところでもって東京の相当部分の下水道を受け入れてやることがまた規模の面でもいろんな意味でも効率的という面がございます。ちょっと明確なお答えができなくて申しわけないんですが、実情によっていろいろだということを申し上げるしかございません。  それから二点目の、流域下水道の工場排水がどれだけの割合であろうかということでございますが、これも非常にまちまちでございます。ちょっといま具体的なデータをお持ちしておりませんので数字は申し上げられませんが、三〇%、四〇%というような割合のも計画の面ではあるかと思います。さらに一〇%、二〇%といったような割合のものもありまして、それは地域の実情によりましてまちまちでございまして、ちょっと一概に申し上げられません。なお、必要でございましたら後ほどデータは御提出したいと思います。
  188. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、これで終わりですが、環境庁に伺いますが、下水道法第二条の二の五項ですか、「建設大臣は、」「環境庁長官に協議しなければならない。」という点でありますが、これは環境庁長官は協議を受けた場合にどういう返事をしていくか。どういう点を検討して返事をしていらっしゃるか、これはいかがですか。
  189. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) ただいま先生の御指摘は、第二条の二のくだりかと思います。いわゆる流域下水道なり公共下水道というのがございますが、その上の上位計画といたしまして、流域別下水道整備総合計画というのを建設省が立てるわけでございます。信濃川なら信濃川というのをつかまえまして、総合的な計画を立てて、そして、ここは公共下水道、ここは流域下水道でいくとか、これは——特環下水道と言っていますが、特別環境保全下水道でいくとか、いろいろあるわけでございます。その上位計画でございます。これにつきまして、実は環境庁の方に、建設大臣がその流総計画を承認しようとするときに、協議があるわけでございまして、協議を受けております。で、その際に、この二条の二にもございますように、「水質環境基準が定められた河川」というようなものにつきましては、やはりそういう環境基準というものを達成するというような方向でもってこれいろいろ考えるわけでございますから、われわれの方も、審査する側におきましては、やはり環境基準、そういう信濃川なら信濃川には環境基準が設定されてございます。そういうものの達成という角度から見て、いろいろ生活排水等が汚濁の相当の要因になっておりますから、そういう角度から、特に水質保全という角度で、建設省が計画を立てるときもそういう意識で立てていただいてはおるのでございますが、さらに環境庁というそういう角度でいろいろ御注文もしたりしてやっておると、こういうことでございます。
  190. 小平芳平

    ○小平芳平君 いや、そういうことでありましょうが、私が伺いたい点は、その上位計画は下水道法によって相談を受けますということ、それから五ヵ年計画はこれ閣議決定をいたしますということでしょう。そういう段階で、環境庁環境問題を主眼として検討をし、相談に乗るということ、これはそういうことでありましょう。そこで、局長もずっと参考人意見もお聞きになっていらっしゃったし、またずっと法案審議にも出席をして答弁なさっていらっしゃるわけですが、要するに、この混合処理の環境に及ぼす影響についての非常に危惧があるわけです、現時点で。これが三年、五年たってみれば、いや、そういう危惧は実はなかったのだという結果になるかもしれませんね、それは。かもしれませんが、いま現時点では、混合処理ということに対するそうした一般的な危惧に対して、環境庁はどう対処されますか。
  191. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 現在下水道は、これは生活排水のみならず工場排水といいますか、こういうものも取り込んで、その浄化を図ると、こういうための施設でございます。特にわが国におきましては、工場地帯、住宅地帯というふうに峻別されてないところが多うございます。したがいまして、そういう意味ではこの混合処理といいますか、合併処理ということも、これもそういう意味では当然といいますか、やむを得ぬ話だろうと、こう思っております。  ただ問題は、混合したときに、これが本当に汚水を処理するという、下水の施設から見て不適当かどうかというところの問題でございます。いま下水道の処理の際の一番問題は、やはり有機汚濁、こういうものを活性汚泥法等によりましてBODなりCODを下げるというところの面において非常に機能をいたしております。したがいまして、重金属類というものにつきましては、これはいまの活性汚泥法という手法ではこれは対応できないということになるわけでございます。そこで、いまの下水道法では、下水管の方に排除する際には、除害施設というものを工場等においてあらかじめつくって、そこで公共用水域に設定されております排水基準、これと同じ物差しにした水を下水管に排除する、こういう仕組みにいたしておるわけでございます。有機物の方はそうでないわけでございます。  したがいまして、混合処理ということでも、その基準がそういうことでございますので、いまの合併処理なり混合処理なりが特に問題であるということではないのではないか、こう考えておるわけでございます。所管の建設省におきましても、その面は十分今後とも監視体制等も整備して排水基準と同じ基準で設定しておりますので、重金属についての下水管に排除する水というものも監視をするということでございますので、所管省の方の指導監督というものに大いに期待をかけております。
  192. 小平芳平

    ○小平芳平君 終わります。
  193. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、大変限られた時間ですので、一点だけお伺いをしたいと思います。  今回の総量規制の導入に伴いまして、けさの参考人からも非常に明快な御意見が出されておったわけでございますが、そういう中で、総量の設定というのがきわめて重要だと思います。で、私、一昨日、前委員会でも御指摘をいたしましたけれども、環境基準をたな上げしないでということを、私はそういう表現を用いて申し上げたんですが、確かに四条には、「環境基準を確保することを目途とし、」という表現はお使いになっておられますけれども、各委員からも、また、きょう午前中の参考人からも指摘をされましたように、達成期限が明記されていないという点では、これは環境基準をたな上げにしておるというに等しいという意味でございます。そういう中で、しかも非常に問題だと思いますのは、四条の中に、「人口及び産業活動の動向、汚水」「処理の技術の水準、下水道の整備の見通し等を勘案し、実施可能な限度において」と、わざわざ法案に明記しているというのは、全く問題だと思うんですが、これでいきますと、目標設定というのはまさに伸縮自在で、経済との調和論が公害関係の各分野で問題になっておりますけれども、その論が入り込むすきを十分つくっておるという点できわめて重大だと思うわけでございます。しかも、一昨日もお伺いをいたしましたが、通産省当局の局長との間に、現在の上乗せ排水基準より厳しい規制基準にしないというていの申し合わせあるいは覚書というようなものが交わされているということをお認めになっておりますけれども、そうしますと、やはり今度の総量の設定、いわゆるBですね、Bの総量の設定というのは、これは現状維持と、先ほど坂倉委員もおっしゃいましたけれども、その水準ということになると思うんですが、それはどうなんですか。
  194. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) 四条の二の二項のくだりのお話でございますが、これはあくまでも「水質環境基準を確保することを目途とし、」ということで、水質環境基準の全面的な達成維持といいますものが水質保全行政の究極的な目標でございます。したがいまして、それに向かって、従来からも濃度規制と、ただ一律基準だけでは無理だというので、県の方も指導し、上乗せ規制を強めてやってきた。ところが、なおかつまだ全面達成をしてない。それは非常に広域的な閉鎖性水域なものですから、水の循環が悪いということで非常にむずかしいと、こういう事態になっておる。それを放置するわけにはまいらぬ。したがって、今度は総量規制という手法も新たに導入をしていく、そしてともどもに環境基準の一〇〇%達成に向かっていこうと、こういうことで総量規制を考えたわけでございます。したがいまして、環境基準というものは、これはたな上げはわれわれとしては全然しておらないわけでございまして、あくまでもそれが究極的な目標ということでございます。  ただ、達成期限を明記してないのはおかしいではないかということでございますが、現実問題といたしまして、やはり人口もふえます、それから産業活動も、日本経済というのが今後伸びるとすれば、やはりこれも活発になるわけでございます。したがいまして、人口がふえる、産業活動が活発になるということは、これは汚濁負荷量がふえるわけでございます。しかし、今度はそれをさらに減らしていかなくちゃならぬということで、排水処理技術などもさらに効率的なものを研究開発してもらって、それを企業の方にも導入してもらうと、下水道もどんどん整備して、生活排水の方はそれによって処理してもらうということで、それで結局、究極的な環境基準の達成ということを念頭に置いて、実施可能な限度で削減を意欲的に図ろうということで、「図る」というのは、単に数字が出たからそろばん入れるんじゃなくて、図るんだという意図を込めたつもりでございます。  ただ問題は、「実施可能な限度」というのがけしからぬというお話でございますが、余り、何といいますか、手の届かないものを決めるよりは、手の届く範囲でやっぱりやってもらって、届いたらその次の第二段でまたいくということの方が、着実に一歩一歩進む方がよろしいのではないか、余り高いのをあれしますと削減の意欲がなくなっても困りますので、むしろそういう手法の方が現実的ではなかろうかということで仕組んだわけでございます。  それから、何か覚書での話出ましたので申し上げますが、実は、要するにCODならCODにつきまして、東京湾なら東京湾でいま上乗せやっておるわけでございます。一律濃度規制というものもあるわけでございます。それに総量規制を新たに加える。濃度規制をやめるわけじゃございません、上に加えるわけでございます。そういたしますと、濃度の規制と総量規制との関係いかんということになるわけでございます。で、いままでは総量規制がございませんから、一律基準でどうもこれはまだ相当汚いというところは、上乗せかけて対応するしがなかったわけでございます。それで上乗せをかけてきたわけでございます。今度は、どうも汚いということになれば総量規制ということで対応していくと。総量規制基準というものをつくるわけでございますから、その基準で対応していく。で、どうもまだ汚いというんだったら、総量規制基準をさらに今後の技術の進歩等も見てこれを見直すということをやるべきであろうと、こう思っておるわけでございます。そういうことから、上乗せ基準をさらにかけるということは要らないのではないかということでそうしているわけでございまして、そこは当然の話ではなかろうかということでございます。
  195. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 もう時間がありませんからね、その通産省との申し合わせの文書を資料としていただきたいと思います。  もう一つお伺いいたしたいと思いますのは、産業排水について、これは環境庁からいわゆる技術指針なるものが出されておるようでございます。それによりますと、二百二十八業種に分けて分析をした結果が、六十三業種について現行技術より高水準の処理技術が採用できる可能性というのを分析結果が示しているということが報道されておりますが、こういう、現行技術よりも高水準の処理技術というものを使うという立場をおとりになるのか、これは使うということなのか、あるいはそれを一体いつまでにやらせようということなのか、その辺はどうなんですか。
  196. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) ある新聞の記事に、いわゆる技術指針というようなことで記事が載っておったわけでございますが、実は、工場等の有機汚濁、まあCODとかそういうものに関する排水処理技術の現状がどうであり、また将来の動向はどうであろうかということの調査を、実はこれ五十年度でそれをやったわけでございます。そして、一応排水処理技術ガイドライン調査報告書ということで今回印刷もできたと、こういうことでございます。これにつきましては、ただいまもお話しございますように、二百二十八業種といいますか、各業種ごとに、主としてCODを除去するための処理技術というものについて環境庁がまとめたと、こういうのが今回のガイドライン調査報告の内容でございます。これは、今後やはり有機汚濁に係ります負荷量、これをやはり合理的に削減をしていくということが必要であろうという問題意識を背景に持って、今後技術的な指針というものを環境庁の方でつくることに当然なるであろう、その一つの検討用の部内資料ということで一応まとめたものでございます。で、この報告書の内容そのままが技術指針になるというふうなものではまだございません。内部検討用の資料でございます。  したがいまして、今回総量規制制度の導入について法案の御審議をいただいているわけでございますが、総量規制制度というものが今後できました際に、一体これがどういうことになるかということになりますと、先ほども申し上げましたように、総量削減基本方針を決める際に、排水処理技術の水準という問題が出てまいります。それからまた、具体的に総量規制基準というものはこれは知事さんが決めますが、これは一定のめどを総理府令で示します。そういうことをやります際の一つの基礎というものをつくらなくちゃいかぬ。これはいまのこの報告書の内容を中公審のその道の専門家の方々にも御審議いただいて、そして固めたいと思っております。そういう意.味では、まだ、いまのものは、本当の素材といいますか、部内の検討用の材料ということでございます。
  197. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私はこういうものを、いわゆる技術指針、ガイドラインですか、排水処理技術ガイドライン調査報告書という名前だそうですけど、非常に大事だと思うんですね。ところが、こういうふうに技術革新をすることが可能性がありますよということで、技術的な現行の水準というものを示しておるわけですが、相当経費がかかるわけですね、これをやろうとすれば。で、経団連等ではこういう点についてもう大変シャットアウトなんですよ。産業界は、排水処理対策というのはこれまで相当努力してきているんだから、この不況下ではいま以上の負担は困ると、総量規制を実効あるものにするには下水道の整備の方が先決だということで、これはかねがね意見書も出ているということは私も御指摘申し上げたことがあったかと思うんです。そういう点で、これは経費の問題等のために、そこまで技術水準が上げられるということがわかっておりながら、現状のいわゆる実施可能な技術水準という形で総量の設定というのが低められたら大変だという点があるのでこの点をお伺いしている。その点はやっぱりはっきりしてもらいたいと思いますが、五年間のめどで、そのいまの水準でわかっている技術水準というのはやはりフルに活用させていくという立場をおとりになるのかどうかだけはっきりしておいてほしい。
  198. 二瓶博

    政府委員(二瓶博君) ただいま申し上げましたように、まだこれ内部資料でございますし、さらに専門的な面は中公審の方の先生方の御審議、御検討を煩わそう、こう思っております。したがいまして、そういう前提の上に立って物を申せば、今回の総量規制ということで見ました際には、それは生活系排水対策のおくれという問題もございますけれども、やはり産業系排水につきましても、それは応分に削減に努力してもらわなくちゃならぬだろう、こう思っておるわけでございます。したがいまして、新しく総量規制基準をつくる際には、今回のこういうものが一つの素材になります。先ほど言った前提のもとにおいてですね。ですから、その辺のことを見た上で、総量規制基準の、国が総理府令で決める一つの物差しも決めますし、あるいは排水処理技術のレベル、これをどう見るかという際にも、やはりこういう業種ごとにきめ細かく見ませんとだめですし、五年後というのを目標年度にしますから、それまでにどういう技術が実施可能技術になって入ってくるかと、あるいはいまある技術も、一般技術のほかに最高技術がどう普及するか。また、普及させたいという意欲も入ってくると思います。物の考え方としては、そういう考えを持っております。
  199. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 時間がありませんから、建設省に最後に一つお聞きしたいのは、これは水質汚濁の中で、生活排水が産業排水と比して、まあいま四〇%弱ですけどね、瀬戸内海では。そういう点で、生活排水の対策というのはきわめて重要だということが各委員から言われているわけです。ところが、建設省のお話を伺っておりますと、下水道建設を普及促進をいたしますと、しかし、三次処理については非常に経費もかかることでもあるので、むしろそれよりも地域を拡大することの方が先決でございますと、こういう御答弁がずっと出ておるわけです。ところが、瀬戸内海の場合には、赤潮対策ということで、富栄養化の原因物質である窒素、燐等の除去というのは非常に重大になってきている。そのためには三次処理がどうしても必要になるわけですけれども、建設省のお考えでは、そう簡単に三次処理というのは前進しそうもないという心配を感じるわけです。これはゆえなきにあらずだと思うのですが、そこで、先ほどからも御意見が出ておりますように、下水道の普及率が平均して瀬戸内海が三〇%といいますけれども、大阪で五四%、兵庫県で四十数%、そのほかは二%から一〇%台という状況なんですね。で、地域的な条件の違いによって画一的な下水道建設というのはやはり考えなければならないのではないか。特にこういった、指定地域になります瀬戸内海沿岸地域では、大都市には大都市向きの、あるいは中都市やあるいは小都市、あるいは集落、そういった点では、これは公共下水道あるいは流域下水道という、もういまやられている定式化されたやり方に限らず、すでに建設省でも御検討になり、あるいは農林省等では五十二年度実施されておる土壌浄化法ですか、そういった点の研究開発あるいは運用なども具体的に組み合わせていけば、経費が節減をされて能率が上げられるという状況というのは、私ども素人でも考え得る条件だと思うのですよ。そういう点を、これはあわせてひとつ検討され、処理地域、処理区域の前進のために資するお考えがありやなしやですね、その点だけお伺いをして終わりたいと思います。
  200. 高橋進

    説明員(高橋進君) 三次処理につきまして、建設省といたしまして、絶対考えないとかやらないということではございません。まあ三次処理もいろいろあるわけでございますが、現にBODの環境基準達成のために東京都の南多摩の処理場でやっております。また、霞ケ浦の常南下水道でもやっております。また、大阪においても、地先の環境基準達成のためということで三次処理を計画しております。  また、燐除去のための三次処理はどうかということでございますが、これは一般論としては、お説のように、二次処理をやることによりましてもある程度取れますので、それを一般論としては進めたいと考えています。が、地域によりまして、燐の除去のために、特にこの地域については三次処理が必要なんだというようなことがはっきりする場合には、やはり三次処理というものは考えていかなきゃならぬと、こういうふうに考えておりまして、もう一切合財当面三次処理をやらないということではございません。  また、土壌処理、小さなところの土壌処理といったような問題もございましたが、これにつきましても、一般論としてはいろいろ二次公害とかいろんな問題がありますので、すぐ採用できるかどうかとなると非常に問題がございますけれども、建設省といたしましても、一部調査は進めてまいりたいというふうに考えております。先般来いろいろ参考人あるいは当委員会での御意見等もございます点につきまして、取り入れるべき意見は取り入れてやってまいりたいと考えておりますので御了承願いたいと思います。
  201. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ほかに御発言もなければ、質疑は終局したものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  202. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 御異議ないと認めます。  これより討論に入るわけでありますが、委員長の手元に修正案が提出されています。修正案の内容はお手元に配付のとおりです。  この際、討論に先立ち、本修正案を議題とし、沓脱君から修正案の趣旨説明を求めます。沓脱君。
  203. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私は、日本共産党を代表し、瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案に対する修正案の提案理由とその概要の説明を行います。  政府案は、現行の臨時措置法に対し、CODの総量規制、富栄養化対策、自然海浜保全の三つの対策を新たに導入し、瀬戸内海環境保全を図ろうというものであります。これは現行臨時措置法と比べ一定の改善ではありますが、しかし、瀬戸内海環境が置かれている深刻な現状からいたしますならば、なお不十分なものであると言わざるを得ないのであります。  瀬戸内海自然海岸は、すでに全海岸線の四〇%まで減少しているにもかかわらず、いまなお七千ヘクタールもの埋め立て工事が行われ、自然海岸や漁場の破壊は一層進行しています。さらに昨年は、昭和四十七年以来と言われる赤潮による漁業の大被害が発生するなど、瀬戸内海の富栄養化はますます進行し、また、タンカー等船舶航行の激増に伴い、油による海洋汚染も、昭和四十二年の三十二件から昭和五十一年には五百十四件と飛躍的にふえるなど、水産資源の宝庫として、またその美しい自然で国民の憩いの場として親しまれてきた瀬戸内海環境は、ますます悪化しています。  こうした点からするならば、政府案は次のような不十分な点を含んでいます。  第一に、埋め立て規制強化、タンカー規制が見送られていることです。  第二に、赤潮の原因物質の一つである窒素の規制が見送られ、燐の規制も、指導、助言、勧告にとどまっています。  第三に、自然海浜保全では、保全対象地区が海水浴等に利用され、その利用が将来とも適当であるものと、著しく限定されていることです。  第四に、総量規制は、「産業の動向」等を「勘案」し、「実施可能な限度」で行うとする緩い規制であると同時に、環境保全のための必要な規制を行うという、これまでの規制方式とは違った考え方を含んでいます。  政府案は、以上のような不十分な点を持っており、これでは瀬戸内海環境の悪化を防げないおそれすらあります。したがって、私どもは、これら政府案の不十分な点を是正し、本法案を真に実効あるものとするために、必要最小限の修正を提案したいと思うのであります。  次に、修正案の概要を御説明いたします。  第一は、瀬戸内海環境保全基本計画の目標を、瀬戸内海での環境を工業開発による急激な汚染発生する以前の状態に回復させることに置くとともに、この計画は、国の他の開発計画よりも優先するものであることを明記するという点であります。  第二は、瀬戸内海での、これ以上の埋め立ては原則的に禁止するという点であります。  第三は、自然海岸保全は、自然の状態が維持されている海岸は、すべて自然海岸保全地区の指定可能地区として、同地区での開発行為は許可制とするという点であります。  第四は、赤潮の原因物質である窒素、燐は条例で厳しい排水基準を定めて規制するという点であります。  第五は、タンカー規制は、政府が環境保全上必要な航行の規制を行うべき義務のあることを明記するという点であります。  第六は、総量規制は、「産業の動行」、「実施可能な限度」等の文言を削除し、環境庁長官環境基準を達成維持する上で許容される汚染物質の総量を対象水域沿岸の各県に割り当てる仕組みとする点であります。  以上、慎重に御審議の上、速やかに可決されるようお願いをいたします。
  204. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 以上で趣旨説明は終わりました。  別に御発言もないようですので、原案並びに修正案について討論に入ります。  御意見のある方は賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もないようですから、討論はないものと認め、これより採決に入ります。  まず、沓脱君提出の修正案を問題に供します。  沓脱君提出の修正案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  205. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 少数と認めます。よって、沓脱君提出の修正案は否決されました。  次に、瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案を問題に供します。  本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  206. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  207. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  矢田部君から発言を求められておりますので、これを許します。矢田部君。
  208. 矢田部理

    ○矢田部理君 私は、ただいま可決されました瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党・自由国民会議、日本社会党、公明党、共産党、民社党、各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。    瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当つて次の諸点につき適切な措置を講ずべきである。  一、総量削減基本方針の策定に当たつては、内閣総理大臣は、関係府県意見を十分に聴くとともに、維持すべき環境上の目標を、急速な開発に伴う急激な水質の汚濁が生ずる以後のような状態に回復することとし、当面、海域ごとに指定された環境基準を達成維持すること。  二、瀬戸内海環境保全に関する施策の立案及び実施に当つては、その各段階において関係府県関係市町村及び関係住民の高見が十分反映されるように努めること。  三、総量規制に係る指定項目については、CODのみならず、その他の汚濁物質等についても総量規制の対象とするよう早急に検討すること。  四、自然海浜保全については、地方公共団体の努力にのみゆだねるのではなく、国においてもその目的を達成するため、関係法律に基づく開発行為の規制及び行政指導の強化など運用の適正を図ること。  五、清掃、しゆんせつ及び人工海浜、人工藻場の造成など、水質の回復に資する措置を講ずること。  六、下水道の整備については、工場排水に対する監督、監視体制の強化、中小企業者の除害施設の設置に要する費用についての融資措置の充実を図るとともに、水質保全のための効果的・効率的な下水道整備を行うよう十分配慮しつつ、事業費の重点配分など促進のための措置を講ずること。  七、赤潮発生のメカニズムの解明及び防除に関する総合的研究体制の早急な整備拡充を図るなど、万遺憾なきを期すること。  八、史跡、名勝、天然記念物等の保全に当つては、瀬戸内海の特殊性にかんがみ、その指定、管理等に係る制度の適正な運用を図ること。  九、埋立てについては、瀬戸内海の特殊性にかんがみ、その基本方針の厳正な運用を図ること。  十、油濁による海洋汚染を防止するため、大型タンカー等の航行規制及びビルジ排出規制の強化などについて所要の措置を早急に講ずること。  十一、総量規制の指定水域又は指定地域については、瀬戸内海のみならず東京湾及び伊勢湾を早急に指定するとともに、琵琶湖などの汚濁の著しいその他の水域についても検討すること。   右決議する。  何とぞ御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  209. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいま矢田部君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  210. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 全会一致と認めます。よって、矢田部君提出の附帯決議案は、全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、山田環境庁長官から発言を求められておりますので、この際これを許します。山田長官。
  211. 山田久就

    ○国務大臣(山田久就君) 私といたしましては、本委員会における御審議の内容を十分尊重いたし、また、ただいまの御決議の趣旨を体しまして努力いたす所存でございます。
  212. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 以上をもちまして、本日の委員会は散会いたします。    午後六時二十七分散会      —————・—————