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1978-05-12 第84回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年五月十二日(金曜日)    午前十一時九分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         田中寿美子君     理 事                久次米健太郎君                 原 文兵衛君                 矢田部 理君                 小平 芳平君     委 員                 田代由紀男君                 林  寛子君                 山内 一郎君                 粕谷 照美君                 坂倉 藤吾君                 広田 幸一君                 中野  明君                 沓脱タケ子君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  山田 久就君    政府委員        環境庁長官官房        長        金子 太郎君        環境庁水質保全        局長       二瓶  博君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止  法の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院  送付)     —————————————
  2. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、政府から趣旨説明を聴取いたします。山田環境庁長官
  3. 山田久就

    国務大臣山田久就君) ただいま議題となりました瀬戸内海環境保全臨時措置法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  瀬戸内海環境保全につきましては、その美しい景勝地、貴重な漁業資源の宝庫としての特殊性にかんがみ、昭和四十八年に瀬戸内海環境保全臨時措置法議員提案により全会一致で制定され、同法に基づいて産業排水に係る化学的酸素要求量で表示した汚濁負荷量を四十七年当時の二分の一程度に減少させる措置特定施設設置等許可制埋め立て免許等に際しての瀬戸内海特殊性への配慮等の特別の措置が講じられてきたところであります。  さらに、同法により政府策定すべきものとされていた瀬戸内海環境保全に関する基本計画は今般閣議決定を見、今後この基本計画に沿って、各般にわたる環境保全施策を実施に移してまいる所存でありますが、同法は本年十一月に期限が到来することとなっており、これを引き継ぐ立法措置を講ずることが強く要請されてきているところであります。  他方、全国の公共用水域水質状況は、総体的には改善の傾向にあるものの、瀬戸内海を初めとして伊勢湾東京湾等広域閉鎖性水域においては、水質環境基準達成はなお困難な状況にあり、一層の水質保全対策を講ずることが緊要の課題となっております。  このような情勢にかんがみ、政府といたしましては、瀬戸内海環境保全対策の一層の推進を図る観点から、新たに富栄養化による被害発生防止自然海浜保全等措置を盛り込むとともに、瀬戸内海を初めとする広域閉鎖性水域についての新たな水質保全対策として、汚濁負荷量総量一定量以下に削減するいわゆる総量規制制度を設けることとし、この法律案を提出した次第であります。  次に、法律案の主な内容について御説明申し上げます。  まず第一に、瀬戸内海環境保全臨時措置法改正であります。  現在同法に規定されている事項で今後とも必要と認められる施策はこれを引き続き講ずるとともに、新たな観点に立った施策を追加し、また、失効規定を削除して法律の題名を瀬戸内海環境保全特別措置法とすることといたしております。  新たな施策の一は、府県計画策定でありまして、関係府県は、基本計画に基づいて府県計画を定めるものとし、国及び地方公共団体は、基本計画及び府県計画達成推進に努めることといたしております。  その二は、富栄養化による被害発生防止でありまして、燐その他の政令で定める物質につき、関係府県知事は、環境庁長官の指示により定める指定物質削減指導方針に従って、指定物質を排出する者に対し必要な指導等を行うことができることといたしております。  その三は、自然海浜保全でありまして、関係府県は条例で定めるところにより、海水浴等に利用されている自然の海浜地等自然海浜保全地区として指定し、地区内で行われる工作物新築等の行為を届け出させ、これに対し必要な指導等を行うことができることといたしております。  その四は、海難等による油の排出の防止赤潮発生機構解明等でありまして、政府は、このため必要な措置を講ずるように努めるものといたしております。  第二に、水質総量規制制度化するための水質汚濁防止法改正であります。  まず、内閣総理大臣は、水質環境基準の確保が困難な広域閉鎖性水域水質汚濁関係のある地域として政令で定める地域について、政令で定める水質汚濁項目に係る汚濁負荷量総量削減に関する基本方針を定めるものとしており、特に瀬戸内海については、改正後の瀬戸内海環境保全特別措置法において総量規制を導入することを明文化し、法律基本方針を定めるべきものといたしております。  次に、都道府県知事は、基本方針に基づいて総量削減計画を定めるとともに、総量削減計画に基づき、指定地域内の一定規模以上の工場または事業場が遵守すべき総量規制基準を定めなければならないことといたしております。  また、総量規制基準を遵守すべき工場または事業場以外の者に対しても、都道府県知事は、総量削減計画達成のために必要な指導等を行うことができることといたしております。  このほか、この制度実効性を担保するため、計画変更命令改善命令汚濁負荷量測定記録義務等規定を設けることといたしております。  なお、この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することといたしております。  以上が、この法律案提案理由及び内容概要であります。  何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  4. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) これより本案の質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 粕谷照美

    粕谷照美君 長官お尋ねをいたします。  長官、私は小学校のころ文部省唱歌を習いまして、その幾つかの心に残る歌の中で、「のどけき春の朝ぼらけデッキに立ちてながむれば朝日きらめく波の上」というこの瀬戸内海の歌を何度も何度も歌いましてね、そのときに、ああ私も死ぬまでのうちには一度瀬戸内海へ行ってみたいものだと、こういうことを思っておりました。それだけに、いまの瀬戸内海を見まして本当に幻滅を感じております。そしてまた、その幻滅があればこそ、いままでのこの瀬戸内海環境保全臨時措置法の第二章の第三条というものは非常に心を打たれて、りっぱな崇高な精神を盛り込んだ法律であるということをいつも思わないではいられませんでした。そういうことを考えてみますと、この臨時措置法が三年間の期間を区切って、本来ならば改正されるべきであったにもかかわらず二年間延長された。二年間延長されて、今回の改正案が出されるということについては、長官の御努力を高く評価をしたいと思います。したいと思うんですけれども、もう会期末も実質的に審議ができる日にちというのは二日間しかない。そんなときに参議院にこの法律が回ってくるというような、何か駆け込み的な状況に陥っているということは、大変な圧力が環境庁に対してあったのではないか。それをはねのけはねのけしたのかどうなのかということについても非常な危惧を持っているものですから、長官、これは臨時措置法よりはうんとりっぱな法律なんだと言うことができるかどうか、その所信についてお伺いをしたいと思いますし、こんなにおくれたその理由というのは一体どこにあったのかということについてもお伺いをしたいと思います。
  6. 山田久就

    国務大臣山田久就君) この後継法策定ということについては、その基本的な精神を受け継いでいく、また措置を受け継いでいくというほかに、できるだけいろんな点の考慮から、さらにつけ加えるものはつけ加えてということで一生懸命に努力してまいったつもりでございます。  率直に言って、各方面にこれがまたがっておりまするので、いろいろそういう方面の抵抗が足を引っ張ってあったのじゃないかというような御懸念もあろうかと思いまするけれども、そういうことよりも、やっぱり環境保全ということについては、御案内のとおり、水質汚濁防止法を初めとしていろいろな基本的なそのための法制度というものがございまして、その法制度との調整を図りながら、しかもこの瀬戸内海特殊性というものを生かしてこの法というものをつくり上げていくということは、これは相当なやっぱり検討努力を要する面でございまして、そういう面でかなりの日時を要したということ、この点は、まあわれわれ言いわけを申し上げるんじゃないけれども、みんなも非常に苦心してやってもらって、少し時間もかかったという点もあったと思っております。  さらに、御案内のように、ちょうどこの瀬戸内海の法制のほかに、東京湾伊勢湾その他の閉鎖性水域水質保全対策というものをこれと同時に考えていくと、この点は同時に瀬戸内海に対しての問題でもあるけれども、他の、一般的に生活に密着した、ことに都市に非常に関係の深いところの閉鎖性水域というものをきれいにしていくということを制度化していこうと、われわれも非常な決意を持ってその体制をとにかくつくり上げていくということに努力しようとしたわけでございまして、実際問題として、日本下水道普及率というような問題等にかんがみて、その実効性とかいろんな点は議論がある中ではございまするけれども、しかしながら、実情を踏まえながら、しかもそういう大事な面に進んでいく一つ体制づくりという努力をしようというようなところに、われわれの熱意努力も買っていただきたいと思いまするが、同時に、なかなかこれは大きな問題でございまするので、やはりその点の調整にも時間がかかったと、このような事情であった点、ひとつ御理解いただきたいと思うわけでございます。
  7. 粕谷照美

    粕谷照美君 実態は理解はしますけれども納得しないんですよね、私は。どうしても納得ができないと思います。環境庁熱意努力、そのものもわかりますけれども、しかし、やっぱり押し切られた部分が大変ある、こういうことを思わないわけにはまいりません。けれども、やっぱりその努力部分評価をするということにはやぶさかではありません。具体的な問題については、きょうに限らずまた後でずっと審議をしていきたいというふうに考えておりますので、きょうは幾つかの点に限って質問をいたします。  最初に、現行瀬戸内法は、経済成長の中で瀬戸内海が死の海になっては大変だと、こういう危機感が高まって議員立法という形を踏んだのだと思います。これ、制度的には必ずしも十分ではありませんですけれども、それでも運営の仕方によっては十分効果が上がるようになっていたと思いますが、今回出されておりますこの改正案を見ますと、現行法に比較して、制度としては非常に整備をされている形をとっております。たとえば、提案理由で説明された、府県計画をつくっていく、富栄養化被害発生防止、あるいは自然海浜保全、こういういままでになかった制度が盛られたということでは評価をしています。しかし、現行法をつくったときに、私が先ほど申し上げました第二章の第三条、この情熱というものが盛り込まれた法律ではないという感じがいたします。  具体的にいろいろと申し上げますけれども、たとえば総量規制についてであります。この総量規制は今回の法律のエースといいますか、切り札と、こういう評価を受けているようでありますけれども臨時措置法は、産業排水CODを四十七年汚濁負荷量の二分の一に削減するということを目標にしておりました。この二分の一というものは、決して化学的にも正しいとは言えないと思います。疑問もいろいろと出されていたものでありましたが、それでもなおかつ成果は、環境庁がおっしゃるように一三一・七%上がったと。それから透明度についても、五から六・九メートルと具体的に数字が上がっているようです。この数字というのは、なるほど大きな成果は上げておりますけれども環境庁COD基準というものに対しては、達成をしているのでしょうか、達成していないのでしょうか。いかがでしょう。
  8. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 瀬戸内海環境基準達成状況CODということで見た場合どうなるかということでございますが、瀬戸内海につきまして、いわゆる環境基準を当てはめこれをやっておるわけでございます。この当てはめた水域の中で環境基準達成した水域、これがどのぐらいあるかと、こういう比率を見ますと、一番新しい数値として五十一年度の数値がございますが、それによりますと七二%というのが達成率に相なっております。
  9. 粕谷照美

    粕谷照美君 七二%達成したということは、達成をしていないところもあるということで理解をしてよろしいですか。
  10. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) さようでございます。
  11. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、今回この総量規制を取り入れたことによって、なぜこの達成目標というものを削ったのかということがわからないわけですね。その辺はいかがでしょう。
  12. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) ただいま申し上げましたように、瀬戸内海は七二%の達成率でございます。われわれ水質保全行政をやっております際の目標といたしましては、この環境基準完全全面達成、これが行政目標でございます。したがいまして、今回総量規制制度を実施するに当たりましても、究極的な目標、これは水質環境基準全面達成、一〇〇%達成ということをねらいにいたしております。  そこで問題は、そういうことを究極的な目標として考えていくわけでございますけれども、それでは、一足飛び全面達成ということができるのかということになりますと、一足飛びにはなかなか困難であろうと。しかし、この全面達成というものに向かって着実に一歩二歩と前進を続けていく、こういうことが必要であろうということで、今回の総量規制制度におきましては、目標年度というものも決めます。総量削減基本方針、これは内閣総理大臣が決めますが、これで目標年度というものを決めます。大体五年先程度のものになるのではないかと思いますが、そういう目標年度において達成すべき目標量、これをまた決めるわけでございます。それを達成すべく努力していく。努力して、それを達成をして、また次の目標というものが第二段にあろうかと思います。  そういうことで、段階的に、先ほど申し上げましたCOD一〇〇%全面達成という水質保全行政目標というものに向かって邁進をしていくと、こういう考え方でございます。
  13. 粕谷照美

    粕谷照美君 いまのお言葉で一〇〇%達成というのはわかるわけですけれども、しかしその許容限度量、つまり総量というものをだれが計算をするということにこの法律ではなっていますか。
  14. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) この法律におきましては、総量削減基本方針といいますもの、これは内閣総理大臣が決めるということにいたしております。で、この総量削減基本方針の中で、いわゆる目標年度あるいは目標量というものを決めることにいたしておるわけでございます。この目標量を決めるのは、法律的に内閣総理大臣が決めるということでございますが、実務的なことは当然これは環境庁の方でやるわけでございまして、この法律にも書いてありますような、流入現状総量というものを把握して、そして今後の人口なり産業活動伸びという増加要因を見、さらに排水処理技術レベル、それの普及度、それから生活排水については下水道普及度等々を見きわめまして、流入現状総量を決め、それがどこで発生しているかという発生ベース目標量を決めまして、この決めたものを県別に割り当てていく、こういう手法を考えておる次第でございます。
  15. 粕谷照美

    粕谷照美君 おっしゃることはわかるんですけれども、非常に私ども危惧を持ちますのは、たとえば、この限度量というものを行政が勝手に決めることができるのではないか。それも、産業の動向などの将来の見通しのとらえ方で増減できるのではないだろうか。それだったらしり抜けになるんじゃないかという心配を持っているんですが、その点については心配ありませんか。たとえば、具体的に二分の一とか三分の一にしなさい、あるいは四分の一に、この目標をきちっとしておくというようなこととの比較においてはどういうものでしょうか。
  16. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) CODをたとえば二分の一なら二分の一と、えいっとこうやるという手法がどうかということでございますが、実は、臨時措置法段階におきまして、四十七年当時の二分の一にという線があったわけでございます。それで、これがその後三年たって調査をしたという段階におきましては、一三〇%の達成率ということで達成を見たわけでございます。で、問題は、私は瀬戸内海につきましても、この二分の一カット措置ということにおきまして、産業系排水につきましては言うなれば相当ぜい肉は落ちたと、こういう見方に立つものでございます。じゃ、ぜい肉が落ちたから、あとは肉から骨までえいっと切るというかっこうで、二分の一なり三分の一というものをアプリオリに決められるかということになりますと、今後はむしろ、そこはやはりいろいろな要因というものを十分に見きわめた上で決めるべきものではなかろうか。アプリオリ的に決めるということはこれは適当でないのではないか、こういう判断に立ったわけでございます。  そこで、先ほど申し上げましたように、いろいろな要因という際に、今後やはり人口伸びるでございましょう。日本経済もいまよりは伸びるわけでございます。安定成長ということではございましょうが、伸びるわけでございますから、やはりそういう産業活動伸びも見込まぬとおかしいであろう。さらに、排水処理技術というものも今後高度なものが開発されるでありましょうし、また、最新の、いま一部にしか導入されてないものがさらに広く普及していくという普及度というものもよく見きわめる、下水道の方の整備も見きわめる、そういうものを勘案しまして、法律にも書いてありますように、「実施可能な限度において削減を図ることとした場合」ということで、削減を図るんだよと、COD一〇〇%全面達成というのが将来の目標であるということを念頭に置いて、瀬戸内海をきれいにするということを念頭に置いて、削減を図るという意欲を込めて、五年後の目標を決めるのだということでございまして、アプリオリに二分の一とか三分の一とかいうふうに決めるのはいかがかと、こういう考え方に基づいていまのような仕組みを考えたわけでございます。
  17. 粕谷照美

    粕谷照美君 いま二分の一目標達成できたとおっしゃっていますけれども、先ほどは、数字的には達成できたけれどもCOD基準から言えば達成できないところも非常に多くあると、達成できたのは七二%だという答弁もいただいているわけなんでね、やっぱり私たちは、きちんとした目標というものを定めておく、それに向かって努力をするということの方が大事ではないかということを心配したからお伺いしたのでありまして、やっぱり三分の一ないし四分の一に強化をするという方が正しいという考え方に立っています。でも、いま御答弁のように、総量削減をしていくんだと、この基本線を確認をいたしますので、これからうんと努力をしていただきたい、こういうお願いをいたします。  長官、いかがですか。その削減は必ず守るんだと。人口もふえるだろう、産業伸びるだろう、そうするとまた増もあり得るなんていうようなことになったら大変なんですから、必ず目標削減の一途をたどっていくんだということをおっしゃっていただけますか。
  18. 山田久就

    国務大臣山田久就君) もう全くそのとおりでございます。削減を図るという基本方針によって量を決定していくという、これは基本方針でございます。
  19. 粕谷照美

    粕谷照美君 では次に、総量規制対象COD以外にも拡大をしていくというこの方針についてお伺いをします。  瀬戸内海その他の閉鎖性水域汚染は、必ずしもCODで表示されるものに限られていないわけです。総量規制指定項目について、窒素や燐を検討課題に加えていくべきだということをいままでもずいぶんいろいろな団体からも言われてきましたし、私どももそういうことで話をしてまいったわけですが、ことしの二月、当特別委員会瀬戸内海汚染状況を視察に行きましたときに、私も一員として参加をいたしましたが、去年もやっぱり赤潮による被害が大きく出ているわけです。ことしも出てもらいたくないと、こう思いますけれども、出ないという保証は現実にはない。赤潮発生のメカニズムがはっきりしていないということもこれは確かに事実です。そうかといって、窒素や燐がそれに関係がないんだということもだれも言っていないわけです。そういう考え方からしてみると、今回は燐が行政指導対象にはなっておりますけれども、具体的に規制対象になっていないという、それは一体どういうことなんですか。
  20. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 燐につきまして、今回富栄養化被害防止という角度でこの削減対策行政指導でやる、その際の規定法律的にも織り込んだわけでございます。問題は、燐というものにつきまして行政指導ということでやっているわけでございますけれども、これが規制というわけにはまいらぬのかというお尋ねでございます。  まあ燐につきましては、これは汚濁物質というものでもないわけでございます。一つ栄養物質といいますか、そういうものでございます。したがいまして、完全に、これは少なければ少ないほどいいというふうにも言い切れないものでございます。したがいまして、環境水質瀬戸内海なら瀬戸内海の水の中に燐というものは幾らあればよろしいのか、望ましいのかというまずレベルを、これを決めないとおかしいのではないか。ところが、このどの程度がいいのかというそのレベルは、これは現在の知見では、遺憾ながらまだ決める段階にまで行っておらないということでございます。  それから、一応環境水質の望ましいレベルはわからないが、それだったら工場なり生活排水、そういうものに燐が非常に含まれておるわけですが、これを落とす、除去する技術というものは相当進んでおるかと、またどの程度のところからこういう燐を含んだものを出すのかということに、次になると思いますが、これはCOD等と違いまして、まずどの程度のものがということになりますと、瀬戸内海を考えます際は、産業系生活系では生活系の方が大体七割ぐらいになろうかと思います。産業系の方が三割ぐらい。これはCODと逆転いたしております。生活系の方が圧倒的に多いわけでございます。したがいまして、そういうものに対していきなり規制という手法でやって本当に効果的な措置ができるんだろうかという問題もございます。それから、技術的には、これは相当燐の削減技術については実用化めどが出てきている。従来の活性汚泥法というああいう二次処理では余り落ちませんけれども、それをさらに落とす手法がないかということでいろいろいま検討をやっておるわけですが、凝集沈でん法等によりまして相当落ちるではないかという一応のめどが立っておりますので、一応今回は削減措置ということでやっておりますが、これも完全に技術的にぴしゃり必ずこうだというところまで、まだ十分はっきりしていない向きもございます。その辺は技術的に若干まだ詰める点もあろうかと思います。そういう点もございまして、燐を、水質汚濁防止法の排水規制等いろいろあるわけでございますが、そういうものの中に組み込むというのはまだ早いのではないか。  しかし、さればといって、ただいま先生からお話がございましたように、瀬戸内海赤潮というのは非常に多発いたしておりますし、またその範囲も広域化しております。そういうような状況下におきまして、何もしないと、放置しておくというわけにはまいらぬということで、今回考えたのがこの行政指導による燐の削減指導ということでございます。
  21. 粕谷照美

    粕谷照美君 おっしゃることはわかるんですけれどもね、しかし、やっぱり瀬戸内海をもとのように戻していきたいというのがこの法律の願いである以上、科学的によくわからないとか、あるいは技術的にそこまで進んでいないとかということが大きく前面に出てくるようであっては困る。やっぱりきちんと整備をしてもらって、それに対して努力をするという、こういう姿勢が非常に重要なのではないかというふうに私たちは考えておりますし、住民の方々も考えているわけで、もっときちんと規制対象にするというふうに努力をしてほしいわけです。しかし、原因物質として指定をしたということについては、私は環境庁努力を認めておきます。  しかし、燐だけではなくて窒素ですね、窒素がなぜ対象そのものから外されているんですか。あるいは、産業排水中の窒素の量というものはここ十数年伸びているというふうに思いますけれども、その辺は削減されているのでしょうか。その辺と絡まって、なぜこの対象の中に入れなかったのかということについてお伺いします。
  22. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 富栄養化の問題というのが出ますと、いつも燐と窒素というふうに対になって出てまいるのでございますけれども窒素の方は、燐と違いまして非常にむずかしい問題が多々ございます。一つは、存在形態からいたしまして、燐の方の場合は大体全燐——トータルPでございますが、全燐と燐酸態燐と二種類ぐらいで大体分けられます。窒素の場合は非常に複雑でございまして、普通われわれ考えていますのでは大体四種類ぐらいに分かれております。トータル窒素、それからアンモニア態窒素、亜硝態窒素、硝酸態窒素というようなことで、非常に存在形態が燐と違いまして多様でございます。  それから、除去の技術は、先ほど申し上げましたように、燐の方は凝集沈でん等によりまして、二次処理のほかにそういうことによりまして、薬剤処理等で相当落ちるめどができておりますけれども窒素の方につきましては、これはそういう凝沈等の措置で簡単に落ちるというしろものではございません。非常にこれは大変な問題でございます。したがいまして、技術的な面につきましてはまだその辺のめどというものが残念ながら立っておらない、こういう段階でございます。したがいまして、今回は法律の書き方としては、「燐その他の政令で定める物質」ということで、将来窒素がという場合も政令措置できるような法文にはいたしておりますが、当面それではやれるものは何かということになりますと、それはやはり当面は燐ということになります。もちろん窒素につきましては、今後とも研究開発というような問題につきましては努力をしていきたい、かように思っております。
  23. 粕谷照美

    粕谷照美君 さっきから私言っているんですけれども、科学的に明確でない、それから技術的にできないと、こうおっしゃっているけれども、科学的にはある程度窒素というのは原因なんだということがはっきりわかっているわけでしょう。それなのになぜ対象から外したかということを聞いているわけで、窒素はその他の中に入るという程度の軽いものであるのか、ウエートとしては。その辺はどうなんですか。
  24. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) まあ軽いものかどうかという問題につきましては、これはいろいろ見方がありますけれども、必ずしも軽いからという意味ではございません。むしろ落としたい。落とすことはむしろ望ましいことだと思っておりますが、いまの科学的知見では、これを除去する技術の面、さらにこれを除去するためのいろいろな経済的な問題、これも先ほど言ったような凝集沈でんのような簡単なやり方ではできませんので、望ましいとは思いますが、そういうような面で、いまの段階ではそこまではまだいっておらないと、こういうことでございます。
  25. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは恒久法なんていうものじゃなくて、非常にやっぱり臨時的な法律だというふうに思えますけれども、どうですか、それは。環境庁としては、臨時措置法にかわる後継ぎ法としてはもうりっぱなものなんだと、こう言えるような状況ですか、それでは。
  26. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 技術的には、先ほどの燐にしろ窒素にしろ遺憾ながらそういう段階でございます。  ただ問題は、今回この後継ぎ法というものをどういう内容法律にするかということでわれわれいろいろ考えた際に、瀬戸内海水質は、COD二分の一カットの措置等によってCODなどは非常に改善の兆しが出てきている。あるいは透明度がよくなったと、そう言っているやさきに、八月の末に大規模赤潮がばっと出たと、何がきれいになったのかという批判が非常にあったわけでございます。もちろん、この富栄養化による被害というのは、大規模赤潮発生による養殖ハマチの斃死というのが非常に大々的に報道されますけれども、それ以外に、海水浴場などが、赤潮が出たということで遊泳禁止の日が相当続くとか、あるいは赤潮プランクトンが斃死することによってその悪臭に悩まされて住民がなかなか夜も寝れぬというような、いろんな苦情もあるということでございますので、これは何かそういう富栄養化による被害防止という角度のものを、今回後継法というものを提案するのであればこの中に、それはそれほどばりっとしたものは期待できないわけです、いまの科学的ないろいろな状態からすれば。しかし、何らかの手を先駆的にでも、これは不十分だというおしかりもあるかもしれませんけれども、やれるぎりぎりのものは何とか織り込んでみようということで、行政指導ベースのものではございましたけれども、これを織り込んだと、こういうような次第でございます。
  27. 粕谷照美

    粕谷照美君 では、環境庁としては、もう精いっぱいの努力をして、行政指導ではあるけれども窒素規制についても努力をすると、今後も努力をすると、こう御答弁をいただいたというふうに理解をしてよろしいんですか。
  28. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 燐につきましては、この新しい条項、十二条の三によりまして当面実施をしていきたい、こう思っております。  で、窒素の方につきましては、先ほど来申し上げておりますように、まだこれを落とすといいますか、除去するための技術的なめどがまだ十分ございませんので、これは将来の問題になりますが——しかしこれはむずかしいからとほうっておくというのではございませんで、この面の技術開発等につきましては十分今後とも努力をしてまいりたい、こういうことでございます。
  29. 粕谷照美

    粕谷照美君 努力をするということについては、ぜひ、本当にもう誠心誠意がんばっていただきたいと思います。  それでは、赤潮の研究会について、二月の段階では二回の会合を持ったというお話を伺っているわけですけれども、その後の研究というものは——三カ月にしかなりませんけれども、どのようになっておりますか。  あるいは、五十二年度においては研究促進調整費を使ったということですけれども、五十二年度の研究というものはどのような体制でやられていくのか。それから、そのようなめどというものは一体どの辺のところでつけられるものなのかということについてお伺いいたします。
  30. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 昨年の八月末の大規模赤潮発生というようなことも踏まえまして、ただいま先生からお話しございましたように、水産庁と共同で、まあ一種の赤潮研究のプロジェクトチームというようなものになろうかと思いますが、その道の権威者の方十四名の先生方にお願いいたしまして赤潮研究会というものを昨年の九月開きまして、その後、ことしの二月また開いたわけでございます。  そこで問題は、五十二年度、ただいま先生からお話しございましたような調整費というものをもちまして研究を進めておるわけでございますが、この研究の成果がどうであるかということの検討と、さらにそれを踏まえて今後どういうものをテーマにしてさらに突っ込んだ研究をやっていくかということについて、近々第三回の研究会を開いてもらおうと、そしてそれを踏まえて、これに要する経費につきまして、五十三年度も引き続き調整費等によりまして措置をしていきたいということで、現在その準備等をやっておる段階でございます。
  31. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、この点についてももう少し突っ込んで質問をしたいのですけれども、実は、衆議院で私が提案した事項が議決される時間が来ましたので、そちらに出なきゃなりませんから、あと二、三点別の問題についてお伺いをいたします。  瀬戸内海の浜を、自然をそのまま残しておいてもらいたいという住民の方々の運動というものが非常に大きく盛り上がっているんですけれども、前にも私この委員会で質問をしたことがあるんですけれども、埋め立てというものは、年々抑制はされてはおりますけれども、やっぱり進んでいるという実態があるわけですね。この埋め立ての願いを出す者、埋め立てさしてくださいとこう願いを出す人はだれで、それは埋め立ててもよろしいですよとこう答える人はどなたなんでしょうか。
  32. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 現在の公有水面埋立法等々によりましては、たとえば県の方で埋め立てを、企業局等でやるという際には、これは当然埋め立ての申請者というのは、企業局を全体的に統括いたしております知事になるわけでございます。しかも、公有水面埋立法ということにおきまして免許をするという場合には、これは当然埋め立て権者ということで、これまた知事でございます。
  33. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうすると、申請をする者と許可をする者が同一人物ということになりますね。どうでしょう。
  34. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) ただいま申し上げましたような例の場合には同一人物に相なります。
  35. 粕谷照美

    粕谷照美君 そうしますとね、まあこれはこの問題ではありませんけれども、競艇ですか、モーターボートの収益金、この管理をする人の団体が、自分が理事になっているような団体に自分でこのお金を振り込んでいくということが国会の中でも問題になったということと同じようなことがその点では起きるのではありませんか。だから、なし崩しになるという心配が私たちには非常に強いわけです。そういうときに、申請をするのは県知事であっても、許可をするのは環境庁だと、特にこの瀬戸内海に限ってはね。あるいはそういう特別の立法をされるような場所については。そのくらいの法律というものが必要じゃないかと思いますが、いかがですか。
  36. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) ただいま埋め立てのお話なので、その場合の一つの例として申し上げたんでございますが、いわゆる都道府県知事といいますのは、これは県ということにおきまして総合行政を行う立場にあるわけでございます。したかいまして、いろんな任務、権限、これは与えられておりますので、その立場から見ますというと、まあ重複するといいますか、そういう場面はいろいろあるわけでございます。環境行政やる場合においても、県の段階では生活環境部等がございまして、あるいは道路を引っ張るとかいうようなのは土木部があるわけでございまして、そういうものがすべてこの知事さんの段階で十分調整されるのではないかということでございます。  それからもう一つは、環境庁がそういう際に何か権限を持つべきではないかということでございますが、埋め立てにつきましては、これは当然主務大臣が認可権を持つわけでございます。主務大臣とは、港湾区域につきましては運輸大臣でございますし、その他は建設大臣ということで、免許権者は知事でございますけれども、それには認可が要る。この認可は、それぞれ一定の条件の場合には建設大臣なり運輸大臣の認可が要る。それからまた、その運輸大臣なり建設大臣が認可する際に、これもまた一定の条件以上のものでございますが、四十七条第二項という規定がございまして、環境庁長官環境保全上の意見を求めるということでございます。したがいまして、たとえば五十ヘクタール以上のような埋め立てにつきましては、運輸大臣なり建設大臣から環境上の意見がどうであろうかと。その際に、環境庁の方ではアセス等をやりまして、ここはこういう面で環境上いかがかと思うとか、こういう点は気をつけろとかいうような意見を回付していることは御案内のとおりでございます。そういう面で環境庁も関与はいたしております。
  37. 粕谷照美

    粕谷照美君 埋め立てについては当分これを見合わせるべきだという意見なども公式に出ているわけでしょう。ところが、現実には埋め立てがどんどんどんどん進んでいると、これからもそれが抑制をされるということの保証がないわけですし、現にいろいろな意見を環境庁に聞きますと、環境庁は意見を述べることができるというけれども環境庁の述べた意見がそのまま通るんだと、もう圧倒的な重みを持つんだということでもないから、現にこの埋め立てかどんどん行われている。だから、瀬戸内海の海は環境庁や国のものだというふうに言われていますけれども、まさに運輸省の浜だと、あるいは建設省の浜じゃないかという批判なんかも大きく出ているわけですから、この辺についての指導というもの、環境庁の発言の重みをきちんと位置づけるような項目というものを私は法律の中に入れるべきだというふうに考えるのです。指導するということだけではやっぱり足りないわけです。  時間がありませんので、そういう意見だけを申し上げまして、私はきょう質問を終わります。
  38. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午前十一時五十八分散会