○柳澤錬造君 わかりました。
長官、最初に私も言いましたように、私
たちも非常にこういう点については認識の足りない点がたくさんあると思うんです。それで、
環境庁の皆さん方にしても、ここへお出しになっているこれは、
昭和四十七年の十月十三日に
諮問をしたのがやっとことしの一月に
答申をされているわけなんですね。ですから、
環境庁長官から
諮問されて、それが五年以上もたたなければ
答申が出てこないというところに、私はやはり
日本の国のこういう種の問題におくれがあるのだと思うんです。
それで、これは私自身が、
答申が出た後に出た新聞で非常に感銘を受けたんで、若干、その点を私読んでみたいと思うんです。で、
長官もそれお聞きになっていただいて、どういうお感じを抱くか、もし御返事がいただければと。私は無理にこれは申し上げませんけれ
ども。財団法人
日本野鳥の会の理事をしている山口正信さんという方が新聞に投稿している
内容なんですけれ
ども、
環境庁は、わが国の野生生物の
生息調査を
全国的な規模で行うことになったと伝えられた。
この計画は、その成果によっては、
環境行政にある程度の評価が期待できるかも知れないが、従来の国の
姿勢からみると、これが自然
保護行政に機能し、発展して行くとは考えられないし、その扱い方によっては、採集屋や密猟者へのデータ提供になりかねないとの危惧(きぐ)をもたざるをえない。
私ほ、
昭和四十七年に来日したアメリカ・ウィスコンシンの国際ツル
保護財団(I・C・F)のG・アーチボルド博士から、北海道根釧原野に
生息する国の特別天然記念物タンチョウの
生息域の将来性について、先見性にとむ科学的な提言をうけ、四十八年一月、三木
環境庁長官(当時)に
日本野鳥の会の中西悟堂会長とともに会い、釧路湿原におけるタンチョウの
保護について、当時まだ健全であった原生自然
環境ぐるみの保全を要望した。
それによって、現地
調査のための
予算措置がとられ、
調査だけはおこなわれた。しかし、国は
調査のしっぱなしで、今日まで保全についての
行政的手だてはなされていない。見さかいのない
開発がすすみ水位は乱れ、原生自然は失われつつあり、タンチョウの
生息域は狭められる一方にある。
調査だけをなんどおこなっても、乱
開発は止められない。
昭和五十年、G・アーチボルド博士は再び来日し、さらに極東
地域のツル類の
調査と
保護を目的に訪韓し、三十八度線非武装地帯に小群ながら越冬中のタンチョウをはじめ、わが国では現在十羽にまで減り、絶滅の悲運にあるトキ四羽の
生息を確認し、韓国に渡来するツルの
保護対策を提言した。
これをうけて韓国
政府は、ツル
保護委員会を発足させ、非武装地帯以外のツルの
生息地三千三百平方キロメートルを天然記念物地区に指定し、ツルのサンクチュアリー(聖域)を創設した。
韓国のその後の実情を調べた同氏は、二百六十羽のタンチョウ、二千羽のマナヅル、十万羽を超すガンの
生息を確認し、韓国
政府の自然
保護行政を称賛していた。
間は飛ばしまして、最後にこの山口さんが言っているんですけれ
ども、
全地球的感覚で各国の湿原を
保護しようとするラムサール条約、各国の貴重な生物の輸出入をチェックしようとするワシントン条約など、わが国はすべて加盟していない。
円が高い安い、の論議も結構だが、それらを超えた永遠の
日本の姿はどうあるべきかを私
たちは政治の場で選択する権利と、そのうらに義務があることを忘れてはならないと思う。
私は読みまして非常に感銘を受けたんです。いかにも
日本の国がこういう問題についておくれているんだなと。そういう
意味においては、今回のこの
法案についても早いところ成立をさせなければいけないし、先ほどからの条約なんかの加盟もお進めをいただきたいと思うんで、そういうことを要望申し上げて、もし
長官から何かあればお答えいただきたいと思います。