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1978-03-29 第84回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年三月二十九日(水曜日)    午後二時六分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         田中寿美子君     理 事                 原 文兵衛君                 矢田部 理君                 小平 芳平君     委 員                 佐々木 満君                 田代由紀男君                 林  寛子君                 森下  泰君                 山内 一郎君                 粕谷 照美君                 坂倉 藤吾君                 広田 幸一君                 内田 善利君                 中野  明君                 沓脱タケ子君                 柳澤 錬造君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  山田 久就君    政府委員        環境庁長官官房        長        金子 太郎君        環境庁長官官房        審議官      石渡 鷹雄君        環境庁企画調整        局長       信澤  清君        環境庁企画調整        局環境保健部長  山本 宜正君        環境庁自然保護        局長       出原 孝夫君        環境庁大気保全        局長       橋本 道夫君        環境庁水質保全        局長       二瓶  博君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○公害健康被害補償法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  公害健康被害補償法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、山田環境庁長官から趣旨説明を聴取いたします。山田環境庁長官
  3. 山田久就

    国務大臣山田久就君) ただいま議題となりました公害健康被害補償法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  公害健康被害補償法は、相当範囲にわたる著しい大気汚染または水質汚濁の影響により健康が損なわれた人々に対して、その迅速かつ公正な保護を図るため、各種補償給付支給等を実施することとしております。これらの実施に必要な費用のうち、慢性気管支炎等非特異的疾患に係るものにつきましては、大気汚染防止法規定するばい煙発生施設等を設置する事業者から徴収する汚染負荷量賦課金を充てるほか、自動車に係る分として、昭和四十九年度から昭和五十二年度までの間におきましては、自動車重量税収入見込み額の一部に相当する金額を充てることとされてまいりましたが、今回、昭和五十三年度及び昭和五十四年度の措置を定めるため、この法律案提案した次第であります。  次に、この法律案内容について御説明申し上げます。  今回の法律案は、昭和五十三年度及び昭和五十四年度において、政府は引き続き、大気汚染原因である物質を排出する自動車に係る費用として、自動車重量税収入見込み額の一部に相当する金額公害健康被害補償協会に対して交付することとしたものであります。  以上がこの法律案提案理由及びその内容であります。何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  4. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  5. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 質問の前に一つだけ、これは御答弁要りませんから、申し上げておきたいことがあります。  それは、当委員会における前回の質問のときもそうでありますが、どうも、私ども一般の市民の方々からのいろんな問題提起に対しまして、疑問に感ずる問題あるいは矛盾に満ちる問題、こうした観点におきまして、幾つ質問を申し上げたい、そうしてただしていかなければならぬ、こういう問題があるわけでありますが、それらの課題について、実は事前の、何といいますか、打ち合わせではありませんが、それらの際に、環境庁として関係する各省庁との思惑がからみまして、むしろ事後の工作を御心配をされてという趣旨合いはよく私わかるのでありますけれどもね、そうした質問等については、当分の間とかあるいは少し差し控えた方がよかろうとか、こうした御注文をいただくわけであります。それは、私はあえてそのことについて、それはそれなりの御注文でありますから、その採否は私ども判断をいたしますけれども、少なくともそういうような形が出てまいりますと、私どもとして、聞きただしたいことにつきまして、現実の前進を心配するがゆえにある程度それを考慮しなければならないという立場が生まれてまいりまして、十分な審査がし尽くせないというような事態も考えられるわけでありまして、少なくとも環境庁姿勢の問題としては、そうした各省庁幾つかの注文がついてくることはよくわかるのでありますが、それをどういうふうに環境保全立場からあるいは公害防止立場から説得をしていくのか。しかもその判断は、環境庁が正しいというふうに認識をしたことを、これを国の責任として全体の関係省庁にむしろ説得をし、その意見でまとめ上げていくということが私は基本であろうと思うのです。そういう意味合いからいきまして、余りそれぞれの質問事項等についていろいろな御注文等は、少し基本をただしていただいて、そうして対処を願うことをまず申し上げておきたいというふうに考えるわけです。  そこで、質問に入りますが、いま議題になりました公害健康被害補償法の一部改正案でありまするけれども、この改正の要点をながめてみますと、中身は全然そのままでありまして、言うならば二年間その法を延長するということになるわけであります。この法がつくられましてから、二年、二年、こういう区切りになっているわけでございまして、今回の延長期限につきましても、五十三年度、五十四年度と、この適用に関するいわゆる二年間の延長であります。そうしますと、二年間この法の延長を図られるという特段の期限を切られたことについて理由が存するのかどうか。期限を切られたということは、五十五年度以降の補償法について、体系なりあるいは内容についてもっと充実したものにしていこう、こういう構想がおありなのかどうか。聞くところによりますと、自動車重量税に合わせまして燃料そのもの賦課金を課すると、これは中公審答申等もありまして当初から検討されてきたところのものでありますが、こうした課題等が具体的に取り入れられて、いわゆる健康被害に対するところ補償法恒久法化というものがその段階で図られるのかどうか。こうした観点につきましてお考えをお伺いをいたしたいというふうに思います。これは事務当局もそうでありますが、大臣の御見解もあわせてお伺いをしたいと思います。
  6. 山田久就

    国務大臣山田久就君) いま御指摘がございましたが、この補償法に充てる税金ということについてはいろいろな考え方がございまして、いま御指摘のような、油自身にというようなことも一つの問題でございます。ただ、非常にこれむずかしい点が——実は、御案内のように油そのものにかけるということが一つ考え方なんですけれども、例のOPECの関係で、油の値の現状維持と申しますか、そういうことを考えているんですけれども輸入国において、これに政府が課税するというような問題じゃ、それは油が高いんじゃなくて、その国で、それをもとにしていろいろなことをやっているんじゃないかというような議論を実は生んでおりまして、ここら辺の対処の仕方というものが、それがずっとそういう態度でいくかどうか、いろんなむずかしい点が加味されておったりいたしまして、そこら辺のところでまだちょっといろいろ考えなきゃならぬ、そういう政治的な理由等もございまして、一応従来どおりのことでこの際はまたいってみるのが客観状態においては現実的じゃないかというようなことで、それに対処いたしたような次第でございまして、今後さらに検討し得る点については検討の余地を残すということで、こういうことにお願いしたような点であるわけでございます。
  7. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 事務的に、細かい点につきまして若干御説明申し上げます。  第一点は、お尋ねの中にもございましたように、この財源といたしております自動車重量税というものが、現行税率特別措置適用期限がさしあたり二年となっておりまして、二年ごとにそちらの方も直りますので一応二年としたというのが一つ理由となっているわけでございますが、そのほかには、本制度発足に当たりまして、いわゆる自動車排ガスによる大気汚染というものに着目して、いろいろな賦課金方法あるいは既存の税制度引き当て方法というようなことで、約十数種類の方法論につきまして検討を、中央公害対策審議会においてお願いしたわけでございますが、考え方といたしましては、一つには徴収費用というものもこれは実はばかにならないわけでございまして、非常に適切な方法でありましても、徴収費用が全徴収額の二〇%も占めるというようなことでありますと、これまた制度の上でいろいろむずかしいというようなこともございましたし、また、汚染原因者負担にのっとるといういわゆるPPP原則というものも踏まえなければなりませんし、また、発生源につきまして公害防除に対する努力が十分反映されるというような、いわゆる公害防除に対するインセンティブというようなものも当然念頭に入れたものでなければならないというようなことから、一応現行におきましてはこの方法を採用させていただいたわけでございますが、今後さらに汚染態様等いろいろ大気汚染状況も変わってまいりますならば、それに応じまして恒久的な方法ということを念頭に置いた検討はいたさなければならないと思っておりますし、その点につきましては、必要に応じまして中央公害対策審議会におきまして御議論をいただきたい、かように思っておるわけでございます。
  8. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 言葉じりをとらえるわけじゃないんですが、いま恒久法等について、それが実現するように検討いたさなければならぬという発言であります。私は、いま恒久法について検討をするというんじゃなくて、当然この課題については恒久法として取り組むんだというきちっとした態度というものが私は必要なんじゃないのか。したがって、いまからするかしないか、それも含めて検討をしていくような形では、少しおくれているというふうに思うのであります。  特に、この健康被害救済の問題につきましては、公害発生、それはもうちょうど高度経済の始まる段階から具体的に住民の間で出ておりました。たとえば、私どもの三重県の場合でありますと、ちょうど昭和三十四年、五年あたりから具体的に住民の声として問題が提起をされてまいりました。したがって、被害者である住民の方から声が発生をして、そうしてそれを追っかけて、後からこうした被害補償措置が順次とられていくという課題であります。そして、いまこれからの先行きを展望してみましたときに、明らかに公害被害というのは、本来ならなくなっていかなければなりませんけれども、少なくともいま人が、子供も含めて、この被害にかかっておる現状からいきますと、その人たちの一生に対して、健康の回復ということを考えてみたときに、相当長期にわたってこの制度については存続をしていかなければならぬ、こういう課題に立っておると思います。したがって、被害者の方の立場に立って物を考えたときは、明らかに、二年、二年の短期間の区切りではなくて、これは継続をしていくであろうということは予測ができたにしましても、その人たち安心感国民生活の安定というものについて考えてみたときに、一日も早く恒久法化をしていくという、こういう基本姿勢というものが明確にならなければならぬというふうに私は考えるわけであります。その辺の御見解はいかがでしょうか。
  9. 信澤清

    政府委員信澤清君) ただいま仰せになりましたように、こういう制度が早くなくなることが望ましいという点は私ども同じように考えております。先ほどのお尋ねは、やや法律的な問題でございますから私から申し上げさせていただきたいと思いますが、この制度の仕組みといたしまして、いわゆる第一種の疾病につきましては二通りの費用徴収方法法律規定されておるということは先生承知のとおりでございます。つまり、固定発生源についてはそれぞれ排出量に応じた汚染負荷量賦課金を課しておりまするし、それ以外については、四十九条の一項で、「別に法律で定める」という規定があるわけでございまして、これがまさに移動発生源等を予定した規定でございます。したがって、先生の御意見のように、本来別に法律で恒久的な制度として自動車等にかかわる費用負担制度というものを考えるというのがこの法律のたてまえでございます。ただ、制度発足のときいろいろ議論がございまして、先ほどまた部長からも申し上げたような事情もございますので、とりあえず移動発生源については自動車重量税を引き当てるということで始まったわけでございまして、その措置を今回もまた継続せざるを得ないという形で御審議をお願いしておるということでございまして、私どもはやはり法律どおり四十九条一項に基づく「別に法律で定める」という、それに見合った法律を本来御提案すべきだというふうに考えるわけでございます。
  10. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 昭和四十九年の九月にこの補償法施行されて今日に至っておるわけでありますが、四十五年の二月に、公害に係る健康被害救済に関する特別措置法、これがつくられて、その当時の感想から申し上げて、画期的で、いわゆる被害者は、さすがにというふうに認識をしたことを、私も地方におってよく知っているわけであります。ところが、この特別措置法でいきますと、その当時そういうふうに法がつくられていったわけでありますから、もうすでに地方公共団体では、住民のそうしたいろんな苦情あるいは要望等にこたえるために、地域指定をある程度展開をしつつ救済に当たるという具体的行動発生をしておったわけでありますね。その後に特別措置法ができ、さらにその後でいまの新法ができ上がっていると、こういうことになるわけでありまして、言うならその間に、実際の救済具体的行動から新法ができるまでの間、相当長期間時間的なものがあるわけですね。その間に新法制定する、制定した当時にすでにでき上がっておった地域指定地方公共団体が行った地域指定ですね、これと新法ができた際に指定をした地域指定、これとの関係矛盾といいますか、枠に入らなかった地域は特定的にないのかどうか、これが一つであります。  それからさらに、新法制定をされましてそして地域指定が行われている、ところが具体的にそれが実情に合わない、こういったような立場で、新法制定以来も地方公共団体が特に独自で地域指定を行っている、こういう動きがあるわけでございますが、これは御承知のとおりだろうと思うんです。それらの関連をながめてみまして、環境庁として、いわゆる国の地域指定とそれから地方公共団体地域指定と、なぜそういうふうに発生をするのか、その辺の要因といいますか、その辺についてお考えをひとつ聞きたいんです。
  11. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 先生お尋ねの中で、旧法ができましたときに、それ以前の地方自治体がやっておりますところとの関係で、地域指定に若干の、何と申しますか、線引きの違いがあったというのは、先生承知四日市等であったかと思います。まあそれにつきましては、一応地方自治体ともよく相談をいたしまして、汚染量等考えながら線引きをしたわけでございますが、旧法から新法に移りますに当たりましては特にそのようなことはなかったと聞いておりますけれども、その後におきまして地方自治体が独自の、まあ救済法に似たようなものをしておるのは御承知のとおりでございます。たとえば、東京都におきまして、十八歳未満の子供たち対象といたしまして、旧法のように医療費自己負担分だけを見るというふうな方式をしているところもございますし、またごく最近におきましては、大牟田市におきまして、この法律によって指定されている地域以外のところ大牟田自身方式を持ち込んで、条例でやっているというところもございます。私どもこの法律の性質からいたしまして、地方が独自にやりますことに対しまして特に国の方がそれに対してとやかく申せないわけでございますが、私どもの方にいろいろと相談がありました段階におきましては、当然のことながらこの法律施行の中で考えてほしいというようなことを指導しているわけでございまして、ただ特に強くこの法律規定の中から地方独自の制度を禁止するというわけにはまいらないというような実情でございます。
  12. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 いまの御答弁それなりにわかるんですね。法ができたんですから、その法で地域指定が的確に行われて、それですべて救済をされるという前提に立てば、私はいまの御答弁はそれはそれなりにわかるんです。もしそれで救済範囲なり救済対象なりが明らかに救済をされているとするならば、それは地方自治体が直接国とのかかわりないと言っても、やっておること自体は、そうしますと過剰になったり、いわゆるサービス過剰ですね、こういう立場になるわけでありますから、国の地方行政を指導する立場からいきましても、当然そこにむだ遣いをするなという話が逆に出てくるわけであります。私は、今日までのこの被害補償のあり方からいきますと、国の法律適用はされないけれども、少なくとも地方公共団体なりあるいは住民立場からながめてみたときに、当然救済をしなきゃならぬ具体的事象発生をしているから、何とかそこに自分たち独自ででも一つ基準を設けて救済をしなきゃならぬという要因が生まれたからこそそういう課題が出ておるんじゃなかろうかというふうに判断をするんです。それに対して、地方自治体ですから、だから国と直接関係ありませんから、地方自治体が勝手に上乗せをしようと、横にふくらまそうと、それは御勝手ですよという答弁は、私は実態を見る立場からいって少し問題ありと、こういうふうに言わざるを得ませんが、その辺はいかがでしょう。
  13. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) まあお尋ねの点、なかなかお答えしにくい点でございますが、私ども地方自治体からいろいろと相談を受けた段階におきましては、やはりこの法の制定されている趣旨をよく説明いたしまして、この法の中に取り込むというようなことを指導しておるわけでございますけれども、一応この法の施行の中では、御承知のように、全国的視野に立ちまして、地域指定要件というものに合致をいたしましたところ指定をいたしますし、それの指定の仕方につきましては、全国的な各地域に当然のことながら整合性のあるような地域指定をしているわけでございまして、その辺先生の御指摘の点もよくわかるわけでございますが、それ以上にきつくこの法の中に取り込む、あるいはまあいま一つ考え方として、地方の声をよく聞いて、もう少し地方の声に合ったような指定をしたらどうかと、まあこういうような御提言かと思いますが、実情といたしますと、やはり他への整合性の問題を考えながら地域指定考えているというような実情でございまして、その辺ひとつ御理解をいただきたいと、かように思うわけでございます。
  14. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 その辺はどうも納得できないんでして、それではお尋ねをいたしますが、そうすると、この法で指定をしている地域以外の、いわゆる地方公共団体が独自で行っておる地域についての実態というものは、環境庁として明確に資料その他整備ができているわけですか。
  15. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) その全部を正確に把握しているわけではございませんが、地方によりましては、たとえば、先ほど申し上げましたように東京都のように年齢を限り、給付内容といたしましてもこの補償法とは違う医療費自己負担分を見るというような形をとっております。また、八戸市あるいは大牟田市等、地方条例の中で国の制度に似たような形のをとっておりますが、そのほか、国の制度と若干、給付状況あるいは補償費の額の違うような形のものをやっているところがそのほかにもあるわけでございます。まあそういったところで、私ども約三十五ほどの地域におきまして、独自な形でやっているのを一応存じております。
  16. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 救済内容そのものが国の一応の基準と異なっておるという課題のものは、それはそれなり一つある。いま私が質問を申し上げておりますのは、むしろそういう救済内容給付内容の重ねの問題ではなくて、地域そのもの指定ですね、これについてきちっと掌握をし、そしてそこの地域大気汚染あるいは水質汚濁関係がどうなっておるかということについて資料を明確にお持ちなんだろうか、こういう点をお聞きをしておるわけであります。これはまあいまここで一々ここがこうだというふうに御説明いただいても時間を食うだけでありますから、それは後でそれの調査の結果があるとするなら、把握状況について資料としてひとつ御提出をいただきたいというふうに思います。  そこでひとつ聞きますがね、東京の練馬、世田谷、中野、杉並、ここはこの法の立場からいくとどうなっておりますか。
  17. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 前段のお尋ねのお答えにも一部かかるわけでございますけれども、御承知のように、現在地域指定をする場合の要件というものを、その地域におきます大気汚染状況、特に硫黄酸化物汚染状況、さらにはその地域における健康状況調査ということで、持続性のせき、たんの症状に着目いたしました有症率調査というものをいたしまして、その両者につきまして中央公害対策審議会の御意見を徴しました一定の基準を設けまして、その基準に合致する地域指定しているわけでございまして、地方が独自にいたしておりますのは、その地域を外れた部分でやっておられるというようなところがございます。これにつきましては、私どもの方でもある程度把握いたしておりますので、後日資料として提出さしていただいて結構だと思っております。  東京都のいまお尋ねの四区につきましても、これは東京都ともよく連絡をいたしておりますし、いま申し上げましたような二種類のデータ等をつぶさに検討いたしました結果、指定要件に満たされていないということで現在まで指定をしておりません。そういったような、東京都の状況につきましても再度重ねて調査をいたしましたデータ等も見ながら、現時点におきまして指定をしていないというような状況でございます。
  18. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 いまのその要件を満たしていないという、満たされていないという、その調査時点というのはいつですか。
  19. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 東京都の場合につきましては四十七、八年のデータでございまして、その後さらに若干の追加データをいただいておりまして、それらを合わせて考えました結論として現在まで指定をしていない、こういう状況でございます。先生承知のように、東京都におきましても汚染状況というのは次第に改善されつつあるわけでございまして、現在までの他の地域指定等におきましては、過去十年ぐらいまでのデータにさかのぼりまして、そのデータの中で汚染のひどかったというようなことが過去にかなりありますと、それを拾って指定をしておるような状況でございまして、最近のデータを見てまいりますと、指定要件にはより一層合っていないというようなところ実情でございます。
  20. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 いま私の手元に、東京都の五十三年三月の「東京地域公害防止計画」、これがあるんです。これによりますと、いま東京都も逐次改善をされているというふうにおっしゃっていますがね、むしろ悪くなっているんです。年々これは悪化しているんです。いま特に私が申し上げましたこの練馬、世田谷、中野、杉並、それぞれの区をとりましても悪化しているんです。いずれもこれは環境基準の適否からいきますと全部バッテンです。しかも、いま御答弁がありましたように、少なくとも大気汚染の問題は、年々今日まで相当社会的関心を持ち、われわれもこの問題についてはたびたび指摘をしてきていると思います。そういう状況の中で、四十七年のデータ、それでだめだったからという、そのこと自体が私は大変問題じゃないかと思うんですよ。そこにいろいろ言われる、いわゆる国の行政の非常に現実離れをしたところが存在をすると思うんですね。  いま申し上げましたこの四区の中に、東京都がいわゆる認定をしている患者の数が四千人。私のところでやかましく言っている四日市にいたしましても、これはこのいただきました調査室の資料によっても数字が明らかなように一千二名です、四日市で。四千人からの方が、東京都が独自認定をしなきゃならない、こういう状況になっているんです。そのことが放置をされていること自体大変問題じゃないかと思うんですがね。これは長官いかがなものでしょうか。
  21. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 私から、若干細かい点につきましてお答えさしていただきたいと思います。  先生いま御指摘の、五十三年三月の、東京都の公害防止計画というものは私見ておりませんけれども、私どもの把握しておりますところによりますと、硫黄酸化物につきましては、東京都は四十二、三年当時から比べまして、最近十年間にかけましては大変地域ごとに改善されつつあるということは事実だと思います。ただ、窒素酸化物におきます汚染につきましては、横ばい、あるいは場所によっては悪くなり、場所によってはよくなっているというのが東京都の測定点におけるデータだと、こう私は理解しておるわけでございまして、現在の地域指定要件といたしまして、硫黄酸化物大気汚染状況把握の代表として考えおりますというようなことから、先ほど申し上げましたような御答弁を申し上げているわけでございまして、窒素酸化物につきましては、現時点のわが国の汚染状況からいたしましては、健康被害に相当するようなものが出ておらないというようなデータを把握しておりますので、現時点におきまして、窒素酸化物による地域指定という条件をとっておらないわけでございます。しかしながら、これは今後のいろいろな科学的な知見というものを踏まえまして、必要に応じて考えていかなければならない、かように思っておるわけでございまして、そういう意味で現在四区を指定していないという形でございます。  また、先生承知のように、この大気汚染によります指定疾病というのは非特異的な疾患でございまして、大気汚染によって起こる方もございますし、ほかの原因でこの四疾病が起こるということもございますが、それを両方あわせ救済対象にするということで、制度の中に地域指定ということを盛り込んでいるというぐあいなわけでございますので、その辺もひとつ御理解をしていただきたいと、かように思うわけでございます。
  22. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 理解せいと言われましても、いまおっしゃられているのは私もそのとおりわかっているんです。問題は、具体的にそのことによって認定患者の数が減っていくのか、大気汚染全体の形が浄化をされていくのか、こういう観点からいきますと、むしろ一つの物質について、たとえば硫黄酸化物等については横ばいをしあるいは改善をされて低下をしてきている、これは全体的に言えることです。これには幾つかの見方がありまして、たとえば最近の経済事情の中で、それぞれの企業活動というものが影響をして少なくなっているという見方の問題もあるでしょうし、いろんな総合的な観点からそういうふうな結果が出てきているということは事実でありましょう。しかし、仮に片方がそうなりましても、たとえば浮遊じんの関係だとか、いま言われましたNO2あるいはNOX、こうした関係等について、むしろ一つのものを規制をすることによっていままで隠されておった新たな被害を与える要素というものが浮かび出してくるわけでありまして、その一つ一つをやっぱり整理をしていかなければ本当の浄化の形になってこない。そうなりますと、そうした流れに合わせながら、現実問題としては、健康を損なわれるという課題については現実に進行している。減っていっていない。むしろこの健康被害補償法の一部改正を行うという場合には、そうした現実的な内容というものが当然検討をされて、改正をするに当たってはそれらがどう取り入れられてくるかというふうになっていかないと、私は少しも前進しないじゃないか。そこの問題がどうもまだはっきりしないからというようなことで、いままでの法案をそのまま延長すればいいという考え方におさまっていっておるようでありまして、とうもその辺が姿勢の問題として——たびたび姿勢の問題を言うようでありますが、私は特に指摘をしておかなければならぬというふうに思います。  時間の関係もありますから次に進みます。  この四十四年の特別措置法段階では、医療費あるいは医療手当あるいは介護手当、こうしたものの要素というのが加わっておったわけであります、いわゆる生活保障的要素といいますか。これが新法になったときに、こうした要素なりあるいは精神というものは、引き継がれておると思うんですが、その点は一体どういうふうに具体的な形として残されておるのか。ちょっと不勉強なものですから、教えてもらいたい。
  23. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 先生指摘のように、旧法の中では、いわゆる医療費の支給、これは医師による診療を受けた場合の医療費の支給の中で、特に個人の負担をなくすというもの、それから医療手当の支給、それから介護を必要とする人についての介護手当と、こういったようなものが柱となっておったわけでございます。御承知のように、新法におきましては七つの給付の種類を挙げておりまして、先ほどの医療費の支給に該当いたしますのは「療養の給付及び療養費」というぐあいに挙げておりますし、「障害補償費」、「遺族補償費」というような、民事に準ずるような形の損害補てんの補償費というものが新しく加わっております。また、亡くなられた患者さんの家族につきましては、「遺族補償一時金」というものを支給いたします。また、児童の場合には「児童補償手当」それから「療養手当」というのが挙げてございますが、これが旧法におきますものにほぼ相当するものと思うわけでございます。そのほか、「葬祭料」というようなものの七種類が今回の新法の中の給付には挙げられているわけでございます。
  24. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 その引き継がれておるというところですが、言うてみますと、級から言えば特級クラスのところに盛られておりまして、余り新法の中でそれらが具体的になっていないというふうに私は見解を持っておるんです。そのためにどういう現状発生をしているかと言えば、いわゆる新法適用されまして、現に私どもの三重の四日市の例等をとってまいりますと、旧法以前、さらに旧法当時、こういった一つ延長等もあって生活保障的な要素のものが、むしろそれが切り取られてしまう形になっていますから、そうしたものに対する差額の負担というものが、これが地方自治体の方に覆いかぶさる。それでなくても地方自治体のいわゆる超過負担的な、あるいは今日の財政状況から見たら大変な問題を抱えておるわけでありますが、さらにそれが上乗せをされるという、こういう現象になってきておるわけでございまして、これらはもう少し私は、一つは、裁判で結論が出たその裁判の判例に基づいて、それを裁判を省略をして大体認定をすればその措置が行えるという趣旨合いの、法律だけでもってやっているところ幾つかの現状の解決のできない種々の問題が発生をしてきておるわけでありまして、もちろんこれは被害者の方からの立場から言えば、前からずっとこう継続になっておるわけでございまして、それぞれの同じクラスの病状、同じクラスの年齢あるいは生活実態、こういうところから見て、前からの人、新しい人によって差のついてくることについては容認のできない一つの要素がある。こうした事柄等もありまして、そのことが地方のいわゆる超過的な負担になっていくんじゃないか、こういう傾向等が相当あるわけでありまして、これは詳しく一遍御調査をいただきたい。そうして、それらについての実態をよく認識をいただいて、具体的な解決策等についてひとつ御相談に乗ってやってもらいたいということを申し上げておきたいというふうに思います。  それから、この法に基づきます健康保健福祉事業の分野ですが、いわゆるこれは健康回復事業等についても含むわけでありますが、今日までの主なこの保健福祉事業としての事業計画、そしてその事業計画がどのように進められてきたのか、あるいは進めてきた結果、一定のこの効果というのはどうなっているのだろうか、いわゆる今日におけるところ環境庁としてのこの事業に対する評価の面についてひとつ御説明をいただきたいと思います。たとえば、まあ今日まで転地療養の事業だとかあるいは機器設備の事業だとかあるいは家庭訪問等の問題、これは地方自治体が大方背負っておるわけでありますが、こうした形の中で、患者の宅を見回りながら具体的に相談に応じて対処をしていく仕事だとか、幾つかこの健康回復に伴う事業というのがあると思うのでありますが、総体的にそれらの指導、これの評価についてお伺いをいたします。
  25. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 先生承知のように、公害保健福祉事業といたしましては、大きく四つの柱があるわけでございまして、第一番目にはいわゆるリハビリテーションと申しまして、回復期の治療の一助となるような仕事をいたしております。それから第二番目には、転地療養事業と申しまして、特に大気汚染の場合には、その地域から空気の清浄なところへいっとき転地することによりまして、非常に回復的な効果があるということが学問的にも言われ、経験的にも言われておりますので、その転地療養事業というのをいたしております。その次には、療養器具、治療用の器具といたしまして、空気清浄器あるいは特殊な寝台あるいは空気清浄器のフィルターの交換あるいは部屋の中の乾燥を防ぐためのいわゆる湿度を与える加湿器、こういったものの支給というようなことをいたしておりますし、さらには家庭における療養の態度についてのいろいろ指導という、家庭療養指導というようなことをいたしております。  先生お尋ねの、これらの事業についての評価という点につきまして、まあどの程度の効果が上がったかということにつきましては、健康を回復する人たちの手助けという形でやっております仕事でございますので、私どもつぶさにそれを評価するような調査をいままでしたことはございません。しかしながら、現在までこの事業の私どもの反省といたしましては、いろいろこの事業をいたしますには、地方自治体においても初めての試みの仕事であったというようなことから、なかなか事業計画がうまく進まない、あるいはそれに参加する人が少ないというようなことがございまして、四十九年度から始めましたが、五十年度、五十一年度、五十二年度と逐年内容的な改善を地方の声を聞きながらいたしておりまして、また事業費の支給等につきましても、事業のしやすいように支給の要綱を書き改めるというようなことを逐次やりつつあるわけでございまして、そういったようなことによって特に健康回復のための大いな手助けになればと、こう思っておるわけでございますが、つぶさな健康回復の面での具体的な効果測定というようなことにつきましては、まだいたしておらないところでございます。
  26. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 この調査室の資料四十八、四十九ページを見ますと、この公害保健福祉事業費の欄でありますが、五十二年度に比較をして、五十三年度は伸び率でマイナス二・九%、金額にして一千四百万減、こういう数字になっているわけですね。   〔委員長退席、理事矢田部理君着席〕 年々充実をし、これからむしろこういう健康回復あるいは保健福祉事業というものを充実をしていかなきゃならぬという時期に、この数字というのは一体何をあらわすんでしょうか。
  27. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 保健福祉事業が五十二年度と三年度と比べますと約六百万ほど減っておるわけでございますが、いまほども申し上げましたように、年々内容的な拡充を図りつつあるわけでございますが、特に五十三年度におきましては、保健福祉事業の中におきまして空気清浄器の支給事業を在宅の患者で特級または一級の人たちに対して行っておったわけでございますが、すでにほぼ支給が終わりになってきたというようなことで、それの減額が事業費ベースで約六千万ほどあったわけでございまして、そのような形から減ったというようなことでございますが、金額的に減りましたけれども内容的にはかなり新しい事業もできるような形で、たとえば加湿器の支給であるとかというようなことを五十三年度から加えておるようなわけでございます。
  28. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 どうも説明聞きましてもよくその辺がわからぬわけですね。この保健福祉事業というのはおおむね地方自治体におんぶしているということじゃないんですか、現に。それで、地方自治体の努力、そこにもう任せ切っちゃって、国として余りこの問題について、予算的な問題あるいは精神的な問題含めて、力を入れてないということじゃないんでしょうか。
  29. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 御承知のように、この保健福祉事業につきましては、その事業費の二分の一は汚染者に負担していただいております。すなわち、補償協会から地方へ流す。それから四分の一につきましては国が負担をいたしまして、さらに四分の一は地方公共団体負担という形でございます。国といたしましてはそういったような形での援助をしているほか、この業務の推進についてのいろいろな指導をしているわけでございますが、先生の御指摘のように、過去におきましても、事業の決算等見てまいりますと必ずしもこの事業がふるっていないということは深く私ども反省をしているわけでございまして、したがいまして、年々この事業内容の改善につきましては——地方公共団体の実施にまつわけでございますが、地方公共団体の担当者の方々とも絶えず相談をいたしながら、事業内容の改善というのを図っていこうという方向で努力しているわけでございまして、   〔理事矢田部理君退席、委員長着席〕 その点をひとつ御了解いただきたいと思うわけでございます。
  30. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 その辺は余り突っ込みませんが、少なくとも、たとえば患者の家庭を一々具体的に回って、そうして相談に乗って健康の回復にというような形の実務を行っていくのは、これはほとんど地方自治体であります。そうした人件費等については、今日までの状況の中で一体どこにどう盛られておるかということになれば、何にもないんです、はっきり申し上げて。そういうことも含めて、私はお考えをいただかなければいかぬのじゃないかというふうに思いますよ。  それから、さらに私は、いろんな事情の中でこれは御提起を申し上げて、ぜひ検討をいただきたいと思うんですが、被害者の要求としては、緊急医療センターといいますかね、そうしたものを特にこの指定地域等については建設をしてほしい。あるいは患者専用の、たとえば先ほど転地療養のお話がありましたが、転地療養といいましても、行く先その他について大変これはもう困るわけでありまして、したがって、そういうふうな転地療養等に含めて、患者が独自に判断をしてやっていって、そこで管理ができるというような形の、いわゆる患者専用の保養所、こうしたものを設置をしてもらえないだろうか、こういう問題等があります。ぜひこれは一遍基本的にこうした課題について御検討の中に入れてもらいたいというふうに思うのです。  それから、さらにもう一つの事情は、特にこの大気汚染等については、いわゆるぜんそくでありますから、室温が低下をしたり何かしたときに、急激な温度の変化等に基づいて発作が起こるわけであります。大体冬季、夜間、いわゆる深夜にかけてぜんそくの発作が非常に多い。そのときに、家庭で療養をしてみえる方々は、これは当然救急車等の利用に基づいて病院に駆けつけるわけです。ところが、病院に行きましても、そこで鎮静をして、そうしてしばらく休んで、いざ家へ帰ろうとしましても、深夜であるがゆえに、なかなかタクシーを呼ぼうといってもタクシーが来ない。で、帰りの時間まで病院の——もう夜中でありますから、大きいところは別としまして、ほとんど暖房もない、そこでしばらく、しばらくというよりも相当の長時間待機をしなきゃならない。こういう現状発生をいたしまして、幾つか、苦情までいきませんですけれども、何とかならないかという声が非常に強いわけであります。患者が病院へ行くのはいいけれども、帰りの問題までめんどうを見てくれるような何らかの措置を、ぜひ講じてくれないかという要望があるわけであります。これらはもう切実な一つの願い事でございまして、ぜひひとつそれも含めて措置方を御検討いただきたいというふうに思います。  いま私が申し上げました緊急医療のセンター、あるいは患者専用の保養所の設置、あるいはいま申し上げました帰りの自動車、家までの帰りの手段方法、こうした課題について御検討をいただけるのかどうか。また、いまここで御回答がいただけるなら、それはどういうふうに実現しましょうという立場で、ひとつ明確なお答えをいただきたい。
  31. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 私どもも患者さんの方々といろいろと接触をいたしておりまして、いま先生の御指摘のそれぞれのポイントにつきましては、要望も承っておるわけでございます。しかしながら、現時点におきまして、専用の保養施設を設けるというようなことにつきましては、いろいろ施設の運用面等の人あるいは費用というようなことで、検討はいたしておりますがなかなかむずかしい面があるということで、しばらく時間をかしていただきたいと、かように思うわけでございます。  また、公害の患者さんだけに対する緊急の医療機関というのは、これはむしろ、厚生省の方と相談をしてみなければならないわけでございますが、私が思いますに、緊急医療機関というものの中で、それぞれの目的を分けてつくるということは、必ずしも地域医療の中では得策であるかどうかというような点もあろうかと思います。これはむしろ私のお答えすることでないかもしれませんが、そのような考え方から、現在まで特にその方法につきましては検討したことはございません。  また、夜間、緊急医療ということで医療機関に行った帰りの交通機関についてのめんどうを見てくれというような話もお聞きしておりますが、これもなかなかむずかしい問題だと思っておるわけでございます。  私ども、この制度運用の中で、いろいろなお尋ねなり御要望なり出てきておりますが、現在私ども中央公害対策審議会の環境保健部会の中で、または保健小委員会の中で、この制度の運用についていろいろと専門の先生方の御意見を聞きながら改善を図ろうとしておるわけでございまして、昨年の秋からときどき開いておるわけでございますが、そういった中の御意見を聞きながら、また患者さんの御意見を反映しながら制度の改善はしてまいりたいと、かように思うわけでございます。  それから、先ほどのお尋ねの中で、家庭の療養指導のためにいわゆる地域の保健婦等の増大というようなことも必要なわけでございますが、五十三年度予算におきましては、地方自治体に対しまして人件費の補助を五〇%、人員としてアップをさせていただきまして、そのようなものの運用の中で地方にはある程度の助成が多くできるのではないかと、かように考えておるわけでございます。
  32. 坂倉藤吾

    坂倉藤吾君 最後の点の、地方自治体への、こうした貢献度を含めて、もっと報いられるようにぜひひとつ今後の努力をいただきたいと思います。  それから、この患者の要望事項についてですがね、検討はしているがという否定的立場じゃなくて、何とかして実現をさしてやろうという立場での検討をぜひひとつお願いをしておきたいというふうに思います。  五十一年の三月二十九日の衆議院の公害並びに環境の委員会で附帯決議が出されておりまして、これはこの資料の中にもいただいておるわけでありますが、この中で、「バス・トラックの排ガス規制の強化」、これはもちろん五十三年度規制も含めてですがね、また、「自動車交通に関する総合的な対策の推進」という、こういう立場が要望をされておるわけであります。ところで、五十三年三月二十日の中公審の報告であります。この報告が、実はいただいてからこれは同時に新聞社にも御発表になったようでありますから、翌日の三月二十一日の各新聞には大々的にこれに対する世論の反応等も含めて記事が掲載をされました。それを見ても、御案内のように、大変この問題にかかわる社会的関心というのは非常に強いわけであります。また、この二酸化窒素につきましては、いままでも委員会の中でも論議をされている、こういう経過等がございまして、ただこの新聞の先行きを見通した立場からいきますと、大変心配をしている向きの方がむしろ多いわけでありまして、そこで、ぜひひとつ安心をさしていただきたいと思うんですが、その意味では自動車排ガス規制につきまして、十二月の二十六日の中公審の答申がございますね。この中公審の答申の内容からいきますと、いわゆる長期設定という立場で、第一段階、第二段階に分けられて、六十年、六十五年ですね、これを一つの到達点にしながら目標値の設定が行われておるわけでありますが、これらの設定をされた目標は、これは、この報告とのかかわりの中で後退をするということにはならないんでしょうね。これだけ一つぜひ確認をして、時間が来たようですから終わらしてもらいたいと思いますが。
  33. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま先生の御質問のございました長期目標設定と申しますのは、審議会の答申の中にもございますように、当面のトラック等の排気ガス低減技術の開発状況及び進歩の見込みというものを基礎にいたしまして、そして、最も厳しいと考えられる許容限度を長期目標として出してきたということでございます。これは直接環境基準あるいは当時並行して審議されておりました判断条件等とは全く直接にリンクをいたしておりません。で、今度この三月二十日の「判定条件等」が出まして、そしてこれはまだ、「判定条件等」という全く科学的な知見だけでございます。ですから、これから先基準をどうするか、あるいは達成をどうするかということは、五月の初めまでにしたいということでございますが、そこで、この打ち出しました長期目標設定は、これはもう絶対後退することばございません。そういうことで、五十四年規制はまず第一段をもうすでに行いました。また、五十年代末に向けまして何とか少しでも早くやらせようということで、やる方向にいたしておりまして、審議会の答申の中でも、あの長期目標を全部クリアしたとしても、一番汚れているところがなかなか中間目標にいかないということでございますから、長期目標を後退させるような意図は全くございません。
  34. 矢田部理

    ○矢田部理君 一問だけ。  この法律ができてから相当の年数を経ているわけです。当初から問題になりましたのが、汚染負担の原則が確立をされていない、費用負担のあり方をめぐる問題が指摘をされておったわけです。それについては、もう三木環境庁長官時代から、改めて検討したい、十分に検討をするという返答を得ているにもかかわらず、二年ごとに期間だけ延長する法案が出ている。この二年間どのような検討をされてきたのか、どう前進させようとしてきたのか、これはやっぱり明確に具体的に答えてほしいと思うし、とりわけ環境庁長官にはそのことを十分に留意してほしいと思っているわけです。私ども、この法案の扱いをめぐっていろんな議論が率直に言ってあります。結論的には、現に被害者が出ておるわけでありますから、何としても救済措置、補償措置を講じなきゃならぬ。しかし、この補償の仕方、あり方で基本的にいいのかどうかということが問われているわけでありまして、そういう点でもその問題について基本的な考え方なり、もう何年もたつのに一体何をやってきたのかということについて、長官からお答えをいただきたいと思います。
  35. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 初めにちょっといままでの過去のことについて……。後で私申し上げます。
  36. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 先ほどからも申し上げておりますように、健康被害補償法費用負担の仕方でございますが、第二種につきましては原因者がはっきりいたしておりますので原因者に負担をさせると、こういう形をとっているわけでございますが、第一種の、いわゆる大気汚染につきましては、これに寄与するのは、いわゆる工場、事業場等の固定発生源でございますし、また自動車の排ガスということでございますので、それらに賦課をするという基本的な考え方で組み立てられ、それで費用をどのように徴収しあるいは引き当てるかということで、徴収の経済的な問題、コスト等も考えまして現行法になっているわけでございます。まあいろいろと、先生の御指摘のように汚染負担の原則というものにのっとりつつ、それをいかに改善するかということで、昨年の六月ごろだと聞いておりますが、公害対策審議会の環境保健部会の中に、この法案についてのいろいろな各方面からの意見を整理いたしましてそれを御検討いただく懇談会を置きまして、一応問題点の整理が進められまして、その後、現在におきましても、特に給付委員会という中でこの制度の改善につきまして御議論をいただいております。まだ具体的な成案は得ておりません。ただ、この五十三年の三月末日以降におきましての自動車重量税からの引き当ての部分につきましてだけ昨年の十二月の二十日に御答申をいただきまして、このような従来の方式延長ということに立ったわけでございますが、そのほかの問題点等につきましては、現在給付委員会の中で御検討を始めていただくという形の会合を数回持っているという段階でございまして、そういった方向で今後各般のお知恵を賜りながらこの内容の改善は図ってまいりたい、かように思っているわけでございます。
  37. 山田久就

    国務大臣山田久就君) ただいま部長から答弁がございましたが、その部会等ではいろんな点で一生懸命になって検討してまいっているというふうに私も報告を受けております。ただ、先ほど来お答え申し上げておりまするように、費用の点その他むずかしい問題がございまして、いま御指摘のようなところで、これがというところにはまだ行きかねて時間をかけているという点、いろいろおしかりを受けて大変恐縮なんでございまするけれども、まだ検討段階というところで、鋭意これのための結論を得るということで努力いたしているようなところでございまして、この点はひとつ御理解いただければと存じているような次第でございます。
  38. 内田善利

    ○内田善利君 法案について質問いたします。  きょうの長官の提案理由説明の中にもありますように、「公害健康被害補償法は、相当範囲にわたる著しい大気汚染又は水質汚濁の影響により健康が損なわれた人々に対して、その迅速かつ公正な保護を図るため」云々と、このように説明されておりますが、この「迅速かつ公正」が果たして現実行われておるかどうかということに私は疑問があると思うんですが、そういった観点から質問していきたいと思います。  まず附則の、自動車重量税の引き当て方式をさらに五十四年度までと時限的な措置がなされるわけですが、この法律制定時附帯決議もなされて、恒久的な方策を確立することが求められておるはずでございますが、重量税の引き当て方式をとるということは合理的で妥当性もあると考えますけれども、恒久的な方法をこの際考えるべきではなかったかと、このように思うんですが、この点いかがですか。
  39. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 先般、昨年の秋に、中央公害対策審議会の環境保健部会の費用負担の小委員会におきましても自動車汚染にかかわる費用負担方式につきまして、いろいろな方法を御検討をいただいておるわけでございます。少し名前だけを列挙させていただきますと、まず大別いたしまして、賦課金とする方式。これには自動車に着目した賦課の方式、それから燃料に着目した賦課の方式、こういうぐあいに大別されます。自動車に着目した賦課方式の中に、自動車の保有者に賦課をする方式自動車の製造者に賦課する方式、あるいは指定地域内の自動車の保有者に特別に賦課する方式。それから燃料に着目した方式といたしましては、自動車燃料特定段階移出者負担方式、あるいは自動車の燃料の製造者負担方式。このような、賦課金とした場合の方式だけでも五種類。それから、既存の税制度の引き当て方式といたしましてやはり九種類ほど。たとえば、自動車の取得税、あるいは自動車の重量税、それからいわゆる地方税としての自動車税、あるいは軽自動車税、それから揮発油税、地方道路税、軽油引取税、石油ガス税、原重油関税というような、いろいろなものに着目いたしまして御検討をいただきました。  で、この検討方法といたしましては、やはり汚染負担の原則に近いものであるということ、それから、その賦課方式によっていわゆる汚染防除のためのインセンティブが働くというようなこと、それから賦課金を集めるにつきまして、経済的な、あるいは徴収事業としての効率性というようなこと、そのようなことを観点といたしまして、それぞれの方法にいろいろと御検討をいただきました。たとえば、石油の販売等に着目した場合、石油がほかの目的にも使用される、あるいは工業原料となるというようなことから、そちらの方へも負担がかかってしまうというようなこと等、いろいろと検討させていただきました。  その結論として、今回もやはり従来の方式が、一つの割り切りではあるけれども、いま申しましたような条件のある程度のものはかなえられるものではないかということで、御答申をいただいたわけでございまして、そういったような、検討した上での結論であるということでひとつ御理解をいただきたいと思っております。
  40. 内田善利

    ○内田善利君 航空機に対する費用負担考えられたことはありませんか。
  41. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 御承知のように、大気汚染の中では、特に陸地では自動車による汚染というのが考えられるわけでございますが、そのほか航空機あるいは船舶というものも考えられるわけでございます。航空機の場合、特に空港周辺の汚染にどの程度寄与しておりますか、私定かに存じておりませんが、当然考えられることでございますし、また船舶というものが入港中というようなときには、やはり港湾都市に対する影響というものもあると考えられるわけでございますが、一応それらのものを推算いたしてみたわけでございますが、中央公害対策審議会の御意見の中にも、これらについても負担を求めることが望ましいが、その汚染寄与度が相対的に少ないというようなこと、及び、これらに負担を求める場合は徴収方法が複雑にならざるを得ないというようなことで、負担を求めないということもやむを得ないのではないかと、こういうぐあいな御意見でございまして、自動車以外の移動発生源から排出される硫黄酸化物、窒素酸化物につきまして、燃料使用量というものを基礎に全国ベースで推定してみましたところ、約五%弱といったような数値でございましたので、一応割り切りましてそれを求めなかった、こういうような経緯でございます。
  42. 内田善利

    ○内田善利君 第二十八条の汚染負荷量賦課金の賦課対象物質として、現在硫黄酸化物だけになっているわけですが、現在NOXが非常に問題になっているわけですが、賦課対象汚染物質にNOXを入れる考えはないかどうか。
  43. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 御指摘のように、現在、汚染負荷量賦課金の算定につきましては硫黄酸化物対象物質としておりまして、窒素酸化物については制度創設時に一応検討が行われましたが、個別の発生源ごとの排出量の把握ということが困難であるというようなこと、そういったような技術的な問題があるために、当面硫黄酸化物排出量をもって、窒素酸化物を含めた汚染物質の排出量を代表させるということとして、窒素酸化物を汚染負荷量賦課金対象物質にしなかったわけでございます。窒素酸化物の排出につきましては、操業の条件というようなこと等に大変かかわってくる、非常に複雑に変化するわけでございまして、排出係数による推定と実測値というようなものを比べますと、どうしてもその数値の把握がむずかしいというようなことがございまして、したがいまして安定したデータが得られないというようなことから、現在までのところ賦課の対象とするのが困難だと判断しておるわけでございます。したがいまして、今後賦課対象物質とするかどうかということは、さらにいま少しいろいろなデータ集積等の問題を進めながら慎重に検討していきたい、かように考えておるわけでございます。
  44. 内田善利

    ○内田善利君 NOXの数値の把握が困難ということはちょっと私は理解に苦しむんですが、硫黄酸化物対策が改善されてきまして、なおかつ第一種汚染による認定患者数がぐんぐんぐんぐんふえているわけですね。私もちょっと資料をいただいたんですが、非常にSO2の方が対策が改善されてきているにもかかわらず、なおぜんそく等の認定患者数がもうぐっとふえておる。昭和四十四年には九百六十二人であったのが四十五年には三千二百十九名、四十八年には一万三千五百七十四名、五十年になりますと三万四千百八十四名、昨年末で六万一千二百七十六名と、このように、SO2対策が改善されてきているにもかかわらず、なおこういった認定患者がふえているということは、結局私は酸化窒素がこの増加に寄与していると、このように思うんです。この間NO2のクライテリアの報告があっておりますが、これも、あの基準以上であれば健康に被害があるということを言っているわけですから、そういった点考えますと、どうしてもこの際NOXの問題を取り上げて健康被害補償法指定物質に入れるべきじゃないかと、このように思うんですが、いかがですか。
  45. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 確かにいま全国的に、認定患者をマクロに見た場合には、非常に急激に増加をしておるわけでございますが、私どもこのような分析をしてみておるわけでございます。  一つには、昭和四十九年以前は旧法でございまして、当時指定地域も少なかったわけでございますが、その後新法に移りましてから、逐年指定地域がふえているというようなことによる対象人口の増による増加というのが考えられるわけでございます。したがいまして、私ども旧法時代から指定された地域、たとえば四日市あるいは川崎というようなところと最近指定された地域というものの内容を比較してみますと、旧指定地域におきましては、たとえば四日市等におきましては、新しく認定患者になるという方の割合は横ばい、あるいは減ってきつつあります。これは地域汚染の改善ということの一つの反映だと見ておるわけでございますが、逆に、最近地域指定を受けたようなところにおきましては、やはりこの制度の熟度が余り達してないというようなこと、新しく制度が発足して間もないというようなことから、新規の認定患者が続々ふえておるわけでございます。そのようなことを見ますと、私ども一つにはこの疾病が慢性的な影響によって起こるものということと同時に、制度の熟度が達してないというようなところにおける増加というものが響いて全国的な増という傾向が見られるのであろうと、かような分析をしておるわけでございます。  また、窒素酸化物につきまして、これを指定要件に加えるかどうかということにつきましては、私ども、現在日本の国内で把握されている程度の窒素酸化物の大気汚染状況におきまして、健康被害というものに相当するものが起こっているかどうかということにつきましては、明らかなデータはないわけでございまして、むしろ現在の汚染程度では起こらないというぐあいに言い切ってもいい程度に見ておるわけでございまして、そういう意味で、窒素酸化物につきまして現時点におきましてこの補償法指定要件に加えるということは考えておらないわけでございますが、やはり資料不足というようなこともございますので、今後そういった点の資料を集めるための調査はいろいろとやってまいりたい、手法の開発も含めてやってまいりたい、かように考えております。
  46. 内田善利

    ○内田善利君 先ほども質問が出ておりましたが、この補償法指定地域から外されている世田谷、中野、杉並、練馬の四区ですね。ここでは年々NOXの汚染は進んでいるわけですね、データによりますと。これは東京都独自のデータでございますが。そして、公害病の患者は、先ほどもありましたが四千人にも上っている。これらの患者の皆さんはそれではNOXの影響は皆無なのか。世田谷では、四十九年に〇・〇三二PPmだったのが五十一年では〇・〇四PPm、これは年平均値です。中野区でも、四十九年は〇・〇二七PPmであったのが五十一年には〇・〇三PPmと、このようにNOXはふえているわけですね。そして、四十七年の指定では外されておる。NOXの影響はそれではないのか。いかがでしょう。
  47. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いまの御質問と先ほどの御質問の問題は、実は、先日出されました判定条件と指針値にも関係のあることでございますので、まずその関連のところだけを私の方からお答えをいたしておきたいと思います。  先生の御質問の中で、あの濃度を超えれば健康被害があるというぐあいに専門委員会が言ったとおっしゃいましたが、そのような形では申しておりません。国民の健康を保護することを考慮してということでございまして、正常の健康の範囲から逸脱していくことを防ぐにはこういう数字であるということでございまして、専門委員会は、死ぬとか病気とかになることをストレートに問題にいたしましてやったものではございません。ですから、影響がないという議論ではございません。影響がないという議論ではございませんが、正常の状態から逸脱していくことを防ぐというような意味とひとつ御理解をお願いをいたしたいと思います。  また、判定条件に出されました資料でいきますと、非常に急性の呼吸器系の疾患の患者がふえてくるのは一体どの辺かといいますと、大体年平均の〇・〇八前後以上のところであるというのが出ておりまして、現在日本じゅうを探しましても年平均〇・〇八以上のところはどこにもございません。それから、もう一つは、非常に問題になります年平均〇・〇五ぐらいのところで、果たして健康被害補償法対象となるような健康被害としての疾病が多発しているかという問題でございますが、これは日本の調査の中でも、確かにどうも不健康だというような状態は沿道調査の四十三号線から見るとあるが、疾病が多発しているとはこれではどうにも断定できない。それから、アメリカの幾つかの論文がございまして、やはり年平均〇・〇五を超えたところとそれから〇・〇三以下のところを比べておりますが、完全にこれで病気が多発しているということを結論づけることはまだできておらないということでございまして、補償法の場合には健康被害としての疾病が多発をしているというのが基本要件でございますが、われわれの方は多発をするようでは非常に困りますので、健康から外れないようにということで出されたものというぐあいに御理解をお願いできればと思っております。
  48. 内田善利

    ○内田善利君 この年平均〇・〇八PPm以上とかあるいは〇・〇五ぐらいとか、こういうのは単独酸化窒素のデータですか、それとも複合汚染データですか。それとも実地のデータでしょうか。
  49. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 年平均〇・〇八のところはSO2とばいじんは少ないところでございます。それから年平均〇・〇五のところは複合のところでございます。
  50. 内田善利

    ○内田善利君 いまの報告と健康被害補償法との関係ですね。NO2を地域指定要件に入れられるのか、入れられないのか。あるいは検討を必要とするのか、この辺はどうですか。
  51. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 御承知のように、現在の健康被害補償法と申しますのは、著しい大気汚染があって、その影響によるいわゆる健康被害というものを念頭に置いて制度ができているわけでございまして、健康被害というほどの汚染状況ではないというぐあいに現在認識しているわけでございまして、いま大気保全局長が申し上げましたようないわゆる不健康な状態というものと、損害を補てんするに足るだけの被害というほどの疾病というものの間には差があるということを私ども考えているわけでございまして、その辺がひとつよく御理解をいただきたいと思うところでございます。
  52. 内田善利

    ○内田善利君 先ほど大気保全局長は、今度の指針は、正常な状態から逸脱を防ぐ、そういう指針だと、こう言われましたが、公害基本法の環境基準は、人間の健康が維持される上で望ましい基準値と、健康に視点を置いているわけですね。いま言われたのは病気にならない濃度の範囲と、このように私は受けとめたんですが、そうしますと、今度の指針と環境基準とは一応関係ないと、指針は一時間値が〇・〇一から〇・〇二、これは短期暴露の場合ですね。年平均値で〇・〇二から〇・〇三PPm、この範囲内ということなんですが、これを、いままでの環境基準の〇・〇二PPmは一時間値の一日平均値ですから、これに直すと〇・〇四PPmですか、そうしますとこれがそのまま環境基準になるということは考えられませんか。
  53. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いまの先生の御質問の中に、病気にならないという御指摘がございますが、専門委員会は六つのレベルを設けておりまして、一番ひどいのが即死ぬ、あるいは死亡率がふえる。その次が疾病として明らかに診断ができる。それからその次が観察された影響が疾病との関連でこれは解釈できる。それからその次が観察された影響が可逆的な、元のところに戻るということが明らかであるかあるいは生体が正常範囲内に、つまり恒常性の保持の破綻、疾病への発展について明らかでないもの。実はこれを防ぐというところであります。ですから、死亡と、病気と、病気の関連のあるものからさらにもう一ついい段階で、何かちょっとわからないぞというところのものを防ぐというような、非常な、どう言いますか、いささかの不健康をも防ぐということで専門家としての現在の判断を下されたものであります。  それから、もう一つの後段の御質問は、これはあくまでも判定条件と指針値として、科学者として出されたことでございまして、そういうことで、この基準の問題はまた別個の問題として、これは行政が責任を持って国民の健康の方は絶対に狂わせないということに基づいて判断すべきものであるということでございます。
  54. 内田善利

    ○内田善利君 それでは、この指針に基づいて環境基準を五月までに検討するということ、先ほど答弁があっておりましたが、環境庁はこのクライテリアの諮問について、環境基準の見直しをするものではないということをこれまで何回も説明してこられたように私は受けとめておりますが、今回そういう見直しをするということになれば、ちょっといままでとは自語相違ではないかと思うんですが、この点いかがですか。
  55. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いま先生の御指摘の点は、ごもっともな点でございます。この点につきまして御説明申し上げます。  四十八年のときの審議会に対する諮問は、環境基準を問うという諮問でございました。それに対しまして今回の諮問は、判定条件等について問うということでございます。ですから、ストレートに環境基準を問うという聞き方をいたしておりません。これは公害対策基本法の九条三項の前段を引いたわけでございます。これは、できないからとか圧力があるから基準を変えるというようなことは、環境基準は一切やるべきことではございませんし、できないことでございます。そういうことで、環境基準に触れることができるときはどういうときかといいますと、九条三項の前段の、定期的に科学的に点検をしてみて、それに基づいて必要な改定を行わなければならないということでございます。そういうことでございまして、従来私は大気保全局長といたしまして、四十八年五月の告示があるわけでございます。その告示を断然これを守ると、それの達成を図るということを一生懸命やるのがこれは環境庁としての責務でございます。ですから、それをもっぱら強調いたしてまいりました。一方で九条三項の前段の検討をいたしておりましたが、これは四十七年までの専門委員会の報告に基づいてやったものでございまして、今回の報告と比べますと非常に乏しい資料でございます。これはもうどう言いましても乏しいことは間違いございません。しかしながら、国民の健康を守るということの観点から、大勇断を持って、物すごい安全率を見込みながら決められたものであることは事実でございます。そういうものでございましたので、いろんな御批判がありましたが、環境庁としては防止の対策を前進させることが第一であるということで、基準は動かせないと、また、それに対してやることはやるということを、これは端的に申せば強弁してまいりました。これ強弁するのが私の立場だと思っております。そういうことで従来やってまいりまして、そして今度は——また、それをいたしませんと、これは変わるような基準ならば、第三次規制にしても、長期目標にしても、乗用車の規制にしても、もうちょっとはっきりしてからしてはどうだということが、これは基準に対する批判者の側に非常に充満しておったわけであります。しかし、そのようなことは一切許されないということで、やるだけのことはやるということをやってまいりまして、そして九条三項の前段につきましての、純粋に科学者としての答申を得たわけであります。その答申を得た暁には、次に新しい時点がまいるわけでございまして、必要な改定を行うか否かということについて次は検討をするという段階でございまして、見込みとしては、数字が違うだろうからこれは改定する方向が大きいだろうという推測はあると思いますが、いろいろなオプションがあり得るわけでございまして、これは十分検討した上で国民の健康の保護ということは絶対に狂わせないようにするというような方針に立っておるわけでございます。
  56. 内田善利

    ○内田善利君 この専門委員会の報告の中に、どうして一時間値の一日平均値を出さなかったんだろうと思うのですが、この点はどうですか。
  57. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 一日平均値につきましては現在世界じゅうにデータがございません。四十七年のときにも一日平均値につきまして世界じゅうにデータはございませんでした。で、四十七年のときにはおよその年平均の〇・〇二ぐらいな見当のところを、これはセーフティを考えて一日平均値を持ち出したというのがその間の事情でございます。今回は、専門委員会といたしまして、一つは判定条件、これは汚染と影響についての知見でございますし、指針値はそれらのものをすべて含めた上での全体の科学者としての判断を下したわけでございまして、これはデータベースの議論でございます。そういうことで、一日平均値というものは今回の答申の中には入っておりません。
  58. 内田善利

    ○内田善利君 このNOXのことについては、健康被害補償法要件にも入っていないほどまだ未解明な面が多いわけですね。たとえば発がん性の問題あるいは複合汚染の問題、あるいは光化学スモッグとの関係性、そういった点、非常にまだあいまいな面といいますか、そういう面が多いわけですが、環境基準の見直しを五月までにされるということですが、環境基準の見直しについては、また再び中公審に諮問をすべきではないかと、このように思うのですが、この点長官いかがですか。
  59. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 長官のおっしゃいます前に一言、審議会で私が申し上げたことを申し上げておきます。これは、今回の諮問は、判定条件等についての諮問をいたしました。これは役所自身が勝手にできる話ではないということで、それについての諮問をいたしたわけでございます。基準を決めるということになりますと、これは行政的な責任で決めるということでございまして、行政的な責任と科学的な検討及び判断ということを截然と分けたわけであります。そういうことで、審議会におきましてそういう御質問がございましたときに申し上げましたのは、新たに審議会に諮問を起こすという考え方はございませんと申し上げております。これに基づきまして、環境庁としての成案をつくりまして、いろいろな方面の意見を聞きます。成案をつくりまして、そしてそれを審議会に御説明しながらいろんな意見を聞くと、あるいは陳情に来られた方にも直接会ってお話しをして、整理をして、環境庁の責任として決めますと、こういうぐあいにいたしております。
  60. 内田善利

    ○内田善利君 行政の責任で行われるということですけれども、先ほども言いましたが、環境基準は、健康を保護するために「維持されることが望ましい基準」と、こういうことになっているわけですが、どうも技術的に達成可能な基準といいますか、そういった方向へ動きつつあるんじゃないかと、このように思うわけですが、あくまでも私は、環境庁自体がこの環境基準設定に当たっては、科学的な、第九条の線に従って行うべきであると、そのように思うんですが、この点大臣いかがですか。
  61. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 今般のきわめて科学的な答申を踏まえて、われわれとしては、国民の健康の問題はあくまでもこれを守り抜くという立場に立って、そして判断を下してまいりたい。このことだけはひとつはっきり申し上げておきたいと思います。
  62. 内田善利

    ○内田善利君 次に、いま問題になっております水俣病について、二、三お聞きしたいと思うんですが、水俣病に対する長官の基本的な考え方といいますか、認識をまずお伺いしたいと思います。
  63. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 水俣病は、御承知のようにいわば公害の原点だとも言われて非常にこれの発見までにかなりの年月を要し、いまなおその的確な対症治療法というものが確定していないというような状況でございまして、われわれとしてはあくまでひとつ患者の立場に立って、そうしてこの認定問題の促進あるいは被害の補償問題についてひとつできるだけのことを努力してやってまいりたいと、こういう立場対処する、そういう決意でやっております。
  64. 内田善利

    ○内田善利君 いま、水俣病は公害の原点と、このように申されましたが、昭和三十一年に厚生省が公式に水俣病の発生を認めたわけですね。そしてもうすでに三十年余りたっているわけですが、被害者数が——患者といいますか、認定申請者が五千六百九十三人と、これは私がいただいたデータですけれども、それから審査にかかって保留された人たちが約九百人、そして現在水俣病に認定された患者数が千九百七十二人と、こういう状況でございますが、先日の報道によりますと、まだこのほかに現地の医師団が、百七十人も診療によって発見されて集団申請をしたと、こういう非常に水俣病の根は深いわけですが、私も聞くところによりますと、熊本県の奥地にも水俣から業者によって運ばれた魚を食べてそういう症状の方々がたくさんおられると、こういう非常に何といいますか、人類始まって以来初めて経験した公害病ではないかと認識しているわけです。  水銀は、結局チッソが廃棄物として水俣湾、不知火海にたれ流したわけですね。これは何回も私はこの委員会の席で言いましたが、私は化学工学の勉強をしてきたわけですけれども、大学あるいは専門学校等の化学教室では、実験室では、水銀化合物の実験をしたときには流しから流さない、流してはいけない、そういう厳しい教授の指導があって、水銀だめに一遍落として、それを工場に持っていって回収する、そういうことが厳しく行われてきた。私もそういう教育を受けてきた。ところが企業が、高度経済成長のためかどうか、その辺はよくわかりませんが、とにかくあの水俣湾にたれ流した、また方向を変えてある時期から不知火海に流した。そういうことで非常に患者数が拡大していった、こういうことが言われているわけですが、このような有害物質を生活環境の中にたれ流した、こういうことで患者が多数できて非常に悲惨な状態になっているわけです。  これは一健康被害補償法だけの問題じゃなくて、やはり国が、また環境庁が、この点については十分手当てをして対策を講じていくべき、国を挙げてやらなきゃならない、対策を講じなきゃならない、そういう公害病だと思うんですね。もちろんPPPの汚染負担の原則は講じなければなりませんが、認定の促進とか、いま長官が提案理由の説明で申されました「迅速かつ公正な」、こういう措置を講ずべきである。ところが、裁判ざたになって熊本県側も敗訴している事実もあります。そういったことで、もう少し行政側でこの水俣病問題に対しては積極的に行って対策を講じなければ、そういう被害を受けながらいつまでたっても自分たちの悲惨な生活がよくならない、また、いまも長官が言われましたように、治療法すら確立されていない、そういう事態の中で悲惨な生活をしている患者の皆さんに対して、もっと積極的な国の行政が行われなければならないと思うんです。  ところが最近、環境庁に陳情に来られた患者の皆さんを、警察を導入してまで排除したということは、私は環境庁の行政姿勢の後退ではないか、このように思うわけですね。なぜもっともっと長官は、二十四日間のうちわずか三十分じゃなくて、もっと話し合いをすべきじゃなかったか、このように思うわけですね。いま成田空港の問題があのような事件を引き起こしておりますが、あの問題もやはり住民との話し合い、これが積極的になされなかった結果、出てきたんじゃないかと思うんです。水俣病の場合も、これは悲惨な、悲しい現実を背負った皆さんに対して、どうやって対策を講じ、救済していくかということが、話し合いによってなされなければならないと思うんですね。そういった点から長官の今後の水俣病に対する具体的な対策をお聞きしたい、このように思います。
  65. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 水俣病患者についてのいろんな点で考えてあげなければならない点、いま御指摘がございましたが、私も全くそういう観点に立っております。ただ、われわれとしても誠心誠意、正常な形においての話し合い、これはむしろわれわれからこれを求めて、実は、話し合いに応じないというのを、話し合いの口火を切ったというような関係でございます。しかしながら、残念ながらそれは話し合いということよりも、非常にいわば集団の圧力と申しますか、そういうものを背景にしての、全く違った形のものになったということ、私はそれを非常に残念に思います。しかも、それから後にもそういう実力行使というような背景での問題が存続しておりましたので、私としては、そんな形じゃなくてちゃんと話し合いでできるじゃないかということで、いまのそのような圧力態勢というようなこと、これはすぐにやめて、健康の上から考えてもいろいろな点から考えてもやめるということを強く何遍か要請して、いま御指摘のような普通の話し合いに入りたいということを念じたわけでございましたけれども、もう二十日過ぎてもそういう関係がなかなかできない。つまり、これは患者の健康ということから考えてみてもまことに好ましくない。しかも、他のいろいろな実力による居座りというようなことであっては、しかも、根本的な問題の解決ということがなければ居座るというようなかっこうでは、これは具体的な話もできないし解決にもならないというようなことで、結局ああいうような結果になったことは本当にわれわれも遺憾であります。  ただ、しかしながら、もう正常な話し合いということはむしろこっちから、そういう形でこそ実りあるものができるんだということは申し入れてあるのでございます。しかしながら、依然としてその連続のような形で正常な点に入っていき得ないような環境になっていることは非常に残念です。ただ、問題解決のことについては、いま私としても御指摘のような角度からもっと積極的にこれを促進していく方法については、いろいろな面についてチッソのPPPの原則でやっているわけですけれども、その対策も含めていま鋭意——しかしながらいまここでしからばどういうことということを具体的にまだ申し上げる段階にはなっておりませんけれども、いろんな法的な改正の面も含めて、ひとつ真剣にこの対策に処していきたい。  それにまた、医者の動員というようなことについても、何かよりよき方法をということでいま検討いたしておる実情でございます。
  66. 内田善利

    ○内田善利君 私は患者の皆さんの立場に立ってみて、いままで何回も何回もお願いしたけれども国や県は何にもしてくれてないと言って私は過言でないと思うんです。認定促進についてもこの委員会を通して何回も何回もお願いしましたが、それこそもう何にも手は打ってない、そういう状態のわけですね。ですから、早く何とかしてほしいという患者の皆さんの気持ちのあらわれが、私は結局座り込みをせざるを得なかったんじゃないかと、こう思うんですね。そういった心情をひとつよく察していただいて、話し合いに応じていただきたかったと、こう思うわけです。  それと、水俣病がもうすでに三十年たちながらいまだに治療法が確立されていない。これは具体的にどうやっていま治療法の確立を計画されておるのか。もう三十年たって、わが日本の医学陣をしても治療法が確立されないということは、どうも不審でならないわけです。  それともう一つは、あれだけの認定申請者がおり、まだまだ隠された水俣病の方々がおるわけですが、そういった意味から認定の促進を急ぐ方法をやっぱり環境庁としては早くつくっていただいて、認定の促進をしていただきたい。  それともう一つは、不知火海の方の島々にまだたくさん隠された水俣病の人たちがおるようですが、何とかしてこの実態の総合調査をする方法を講じていただきたい。  この三点を質問いたしまして、私の質問を終わります。
  67. 山本宜正

    政府委員山本宜正君) 水俣病の治療の問題でございますが、御承知のように、神経系統が有機水銀によって冒される疾病でございまして、御承知のように、神経系統の疾病というのはなかなか回復がむずかしいというのが原則でございまして、したがいまして、機能の面で、機能が悪くならないようにある程度の機能の維持を図るというようなことでのリハビリテーション療法というようなことをいろいろ現地ではそれぞれの病院等でやっておるわけでございまして、一方、私ども一つ期待いたしておりますのは、水俣病研究センターが今後活発に動くことによって病気の原因並びに治療方法の確立ということが進められることを実は大いに期待しているわけでございます。  それから、認定の促進につきましては、私どもも現に熊本県事務当局とは絶えず相談をしながら、どうやったらいいかというようなことの中で、たとえば常駐医をふやすとかあるいは認定審査会の運営が促進されるような問題とか、いろいろと具体的な内容を詰めております。かつまた、検診の応援体制等につきましては、全国的に他の大学研究機関等へも働きかけをすでにしておるところでございますが、しかし、なかなか水俣病専門の医者というのが非常に少ないわけでございまして、今後のことを考えますと、その専門医の養成というようなことも含めて考えていかなければならないと思って、気持ちはあせりつつも、いろいろな方策を講じながら努力をしておるところでございます。  また、不知火方面を含めた地域の総合的な健康調査あるいは実態調査ということにつきましては、当面私ども現在の認定促進ということに重点を置きまして、その中でいろいろと専門の先生方あるいは専門の技術者というものの拡充、増員を図り、その後にやがてはやはりこういった不知火海全般の健康調査というものの必要性ということは考えておりまして、やがてはそういった方向をぜひ必要とするのではないだろうか、かように考えておるところでございます。
  68. 小平芳平

    ○小平芳平君 ちょっと関連しまして一、二質問いたしたいのですが、この問題はまた改めて各党ともいろいろ御指摘がある、また質問もある、御意見もあるところでありますから、別の機会に本格的に審議していただきたいと考えておるわけであります。  で、さしあたってきょうお聞きしたい点は、長官は話し合いに入りたいと、しかし先方が異常状態だと、こういうふうにいまおっしゃっておられますが、環境庁自体も異常状態でありますね、現在。私は何日か前、環境庁へお寄りしようと思って行きましたが、まずあの厳重な警戒、もう入ろうとしたって入る気もしなくなっちゃう。明くる日新聞を見たら川本委員長が逮捕されたという記事を見たわけであります。そこで環境庁長官、代々の環境庁長官は、現地まで行きましてお話し合いをしたいと、あるいはお話し合いを実際になさった、あるいは事態解決への約束をなさった、こういうような経過もあることは長官よく御承知と思います。山田長官としましても何とか糸口を見つけて話し合いに入ろうという御意思がおありならば、東京でお話し合いできる機会があったわけですが、現在はそういう状態にないようでありますが、現地までも行かれる、そういう積極的なお気持ちがあるかどうか。長官御自身が現地へ行って、そして患者さんにお会いをし、また事態打開に努力しようという御意思がおありかどうか、それが一点であります。  もう一つは、何かする、何かするといろいろむずかしいことがある。で、保健部長のお話もいつも同じでありますが、いまの御答弁も同じなんですが、いろいろ手は打ってあるんだと、何とかしようと努力はしているんだということで過ぎてきておりますが、事態が一向に進展しない。少なくとも認定申請なさって待っていらっしゃる方が、なるほど国も本気になってめんどうを見ようという気持ちになったなというふうに納得できるような国の動きがないということ。したがって、何か具体的に話し合いといったって、先方の要求は十分わかっていらっしゃるわけなんですから、それに対して国はどう対応するかということをひとつ具体的に、こういう点はこういうふうに対応するとかあるいは何か法律改正が必要なら法律改正するみたいなことも新聞に出ておりますが、何か具体的な事態解決への方策が環境庁として決まっているか。あるいは検討されていられるか。  この二点についてお尋ねしたい。
  69. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 第一点でございまするけれども、無論正常な形の話し合い、これはわれれからも求めているところでございます。したがいまして、いま東京にいる患者以外にも、広く地元におられる患者、私は将来機会を見てぜひそういう方の意見も聞いて、ひとつ心の込もった対処方法の機をつかみたい、そういうふうに考えております。  第二の点は、私としましては具体的にこの際——これは実は環境庁だけで答えられない問題ですけれども、まあ法的な改正とかいろんな問題というような課題も含めて、ひとつこの際、さらに竿頭一歩を進められないかということについて、いま鋭意努力して、何とか近く一歩前進した結果が出るようにということを考えて努力中でございます。いまはさしあたりその程度でひとつ御理解いただければと念じております。
  70. 小平芳平

    ○小平芳平君 長官、被害者にお会いしたいということは、東京でもお会いしたいし、そして現地へも機会があれば至急行きたいというふうにおっしゃったんでしょうか、先ほど。その点が一つです。  それからもう一点の、具体的なことを鋭意努力中ということで、まあ鋭意努力中という以上に何かもう少し具体的なことがお話しできないかどうか、いかがでしょう。
  71. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 第一の点は、ここにおられる患者ばかりじゃなく、広く患者との話し合いの機会を私は持ちたいと、そういう趣旨のことを申し上げたわけです。患者の方についても、いま異常ということを言われましたけれども、やっぱり実力行使のまま居座られるということ、これが患者自身のみならずいろんなことで、プラスこういろいろな異常な状況が起こってきたものですから、ついにやむを得ないでああいうような結果が起こったことは、私はもう非常にそれは残念でならないわけでございます。ところが、引き続き何かこう圧力を背景にというようなかっこうでやっている、そのためにあんなかっこうになっていることは、これも私は非常に残念であります。そういう環境さえ直して、話のわかる形で、そんなことじゃなくてお話しするなら、われわれとしても、一つ一つの条件、手続によってちゃんと実りある環境というものが保障されるかっこうでひとつ話し合いに入っていきたいと、こう考えております。
  72. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、公害健康被害補償法の一部改正法律案審議に関連をいたしまして、お伺いをしたいと思います。  去る二十二日に、山田環境庁長官に対しまして中公審からNO2の答申がございました。今度の答申の中身というのは、いわゆる今回の指針値というのは、短期暴露の影響の場合には一時間値が〇・一ないし〇・二PPm。長期暴露の影響の場合が年間平均値で〇・〇二ないし〇・〇三PPmという二本立ての指針値として提案をされているわけでございます。で、この指針値の提案は、日平均値、つまり現在の環境基準は日平均値ですからね、これに換算をいたしますと約〇・〇四ないし〇・〇六PPmとなるということから、現在のNO2環境基準との単純比較から見ると、二ないし三倍緩和されたことになるということで、これは発表されて以来非常に論議を各方面に呼んでおるわけでございます。  そこで、従来の経過を見てみますと、橋本局長は、大体従来は、昨年中公審へ諮問をして以来、NO2の環境基準、または中間目標値を五十三年五月までに達成することはほとんどの地域で困難である、それで、五十三年五月以降NO2の規制をどこまで実施するか、どれだけの濃度を確保すればいわゆる医学や公衆衛生学の立場から受け入れられると言えるのか、その濃度は従来の判定条件ではできないのでそれを明らかにしてもらうと、こういうことを三月二十八日に、中公審に対してNO2の判定条件を整理してもらうように諮問したんだというふうに言っておられます。さらにまた、「環境基準がいまあるのだからそれを動かす気はない」と、「だから基準を問う必要はない。」というふうな説明を、これは五月の二十四日の衆議院の公環特でも言っておられますし、また昨年来公害患者組織等の陳情の際にもそういった点を明確にお述べになっておられます。ところが、専門委員会が三月二十日に報告書を発表されて、その同じ三月二十日に橋本局長が記者会見で、専門委員会の報告をもらったと、これをもとにして早速新たな環境基準の設定に取りかかりたいというふうに言われたということを報道されております。で、その後の三月二十二日の中公審の答申の文書の中にも、「政府においては、この報告を参考とし、現在の二酸化窒素に係る環境基準について、公害対策基本法第九条第三項の規定趣旨にのっとり、適切な検討を加えられたい。」との一文が挿入されている。  で、こういう経過を見てまいりますと、これは非常に不思議な気がするんですが、従来から橋本局長がおっしゃっておられたお言葉から言えば、ことしの五月に中間目標値あるいは環境基準値はほとんど達成が困難だと。その後の目標をどこにとりあえず置いていいかわからないので、これを研究していただいているんだと、諮問したんだというふうに言っておられたので、今回のこの専門委員会の報告が提案をしました指針値というのは、五月以降の当面のNOX規制対策のための規制目標値として活用されるべき筋合いのものだというふうに私は理解しているんですが、そうですか。
  73. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 当面の規制目標値として理解されているということでしたら、これはそうではございません。あくまでも専門家としての判断として出された指針値であるということでございまして、報告にも「次の値を参考とし得ると考えた。」という形で出ております。そういうことでございまして、いままでいろいろ御意見ございました。で、私は確かにそのように申しております。この点は、先ほども内田先生の御質問のとき申し上げましたが、報告はあくまでもその前段の、「科学的」に検討してございます。  それから、行政官として最も苦慮いたしましたのは、これは東京、大阪の非常に汚れているところ——全国大部分とは申していません。東京、大阪の非常に汚れているところ、あるいは幹線道路のものすごい交通量のある沿道際、これはどうみても達成できないと。これは五十一年の環境白書ではっきり書いております。これは事実を述べました。私は正直に申しますと、このような問題は、四十八年に環境基準を設定したときに、これは環境基準の設定そのものは基準の達成の可能性、そういうものとは全然関係がございません。しかし、少なくとも責任のある行政としては、どれだけカットしなければならないかということだけではなしに、どの程度までできる見込みがあるかというようなこと、あるいはどの程度大きな安全性が含まれているかということをやはり相当言う責任が私はあると思います。私は局長といたしまして、その責任があるということで、できないことはできないということを申し上げました。できないから緩めようなんという気ではございません。一体どの辺が、現在の科学的な最新の知識によると問題がないんだろうかということは、これはもう非常に切実に考えました。従来の専門委員会の答申では余りにも漠然としております。これは猛烈な大きい安全性をとってあることは事実でございますが、それじゃどこが悪いのかと、こう言われると全く窮してしまうというところであります。そういうところで、行政官としてはそのような切実な希望を持っておりますから申しましたが、しかし、専門委員会には最初と終わりにだけ出席をいたしておりまして後は一切関与しておりません。これはいままで、そのような形式をとったことは初めてでございます。これは出ることによって疑いを生ずるということで関与いたしませんでした。  それから、先生方にお願いしましたのは、従来のいきさつに一切こだわりなくすべての内外の知見を整理をして、そして、専門だけじゃなしにいろんな考えの違う先生方が寄っておられますから、そこで議論をして、最大の合意を示してほしいということで出していただいたわけでございます。そういう点で、この次に九条三項の後段の「必要な改定がなされなければならない」ということについて、改定をするか改定をしないか、あるいはそれを改定をするとしたら一体どういうものか、そういうものをすべて含めてこれから検討しなければならないと思っております。  新聞に、これから必要なことにすぐ取りかかると言ったかどうかは、私は非常に残念でございますが、そこまでの覚えはございません。次は九条三項の後段に入るということを申しまして、そのときには改定するというケースと改定しないというケースと、それには実にいろいろなオプションがあるということを申しております。
  74. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私の問いを逸脱して、大分詳しくお述べになっていただいたんですがね、私どもが伺っていたのは、今年の五月までにできないと、達成困難だと、その後どこへ基準を、目標値を置いていいか、何もないんだから、それを諮問しているんだというふうに伺っていたから——しかしこれは会議録はそういうふうにしか読み取れない内容になっていますよね。これは会議録そのままなんですよね。そういうふうにしか言っておられなかったし、環境基準はいまあるのだから動かす気はないんだと、いまさら基準を問う必要はないんだと、ことしの五月以降についての判定条件というものを諮問しているんだということは、これは私も直接お聞きをしている機会が何回かございます。そういうふうに言われておったのが、これをもとにして環境基準の設定に取りかかりたいと、こういうふうにおっしゃいますと、去年諮問をしたときに、そのいきさつは何のための諮問だという、これは国民的疑問ですよ。ですから、そういう中でいろいろと質疑応答がされているときに環境基準値ではないんだということを繰り返し繰り返し言ってきておられるのに、報告書が出たら直ちに新たな環境基準値の設定に取りかかりたいと、こういうふうに局長がおっしゃられるということになりますとね、これは大きな方針の転換があったのかというふうに私どもは理解せざるを得ないのですが、その点は、行政として重大なそういった点で大きな方針の転換があったのかどうか、変更があったのかどうか、その点ちょっとはっきりしておいていただきたいと思います。
  75. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 前半におっしゃいましたことで、私が申し上げましたのは、アクセプタブルとディザイアラブルというのがほしいと、こういうことを申しました。これがいま先生のおっしゃった——私、議事録ちょっと確認してみなければなりませんが、それがないとどうにも困ってしまうということで申しました。しかし、これは口頭で申しまして、諮問文にはそれは書いてございません。「等」ということで申しております。先生方御議論になって、専門家としては、アクセプタブルとかディザイアラブルとかというようなことは、これは合意をすることはできないと、そういうことで、先ほど申し上げましたような正常な健康からのずれを起こさないということの数字として、これなら、いろんな意見の違う人がいるが、全体として合意をしたということで出されたわけでございます。  それから、後段の、重大な変更があったかということでございますが、九条三項の後段に入るという時点にきたということは間違いございません。九条三項の後段にきたということでございまして、「必要な改定がなされなければならない。」と、その必要な改定をしなければならないか、あるいはそのままでいくのかという両方のケースがあるわけでございますが、その公算としてみれば改定する方向が大きいだろうとおっしゃることに対して、私は別に否定はいたしませんが、現在の段階ではそのような方向をはっきり言っているわけではございません。そういうことで、これは大きな変更があったかということになりますと、新しい知見が出たと、これは非常に大きな違いでございます。私はあのような数字を初めから予測しておりません。予測していない数字が出ましたが、それを中心にして、そのときにはそれに対応するということを、硬直的な姿ではなしにやるべきだと、あらゆる非難があればこれは私は責任を負わなければならない、こう思っております。
  76. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 と言いますのはね、いわゆる中公審に諮問をされた、三月ですね。あのときにも、中公審への諮問の際にも、判定条件については学問的に自由に論議して決めてほしいと、環境基準の見直しとは無関係なんだということを言っておられるということもこれまた報道されているのですね。そうしますと、専門委員会ではそういうつもりで扱っておって、しかも、出されてきた指針値が直ちに環境基準見直しに使われるということになってくるということになりますと、これは学者の皆さん方にとっても不本意になるのではないかというふうにも思うわけです。そこで特に申し上げたわけですけれども。  で、私は特にそういう点で今度答申を受けた指針値ですね、これをもとにして環境基準値を見直すという新たな段階に入りましたというようにおっしゃるなら、これはきわめて重大だと思う。というのは、この報告書には、まだ十分解明をしておりませんが、私ども素人が見ましても重大な問題点の多くが含まれているように考えるわけです。  その一つは、専門委員会の今回の指針値というのは、WHOのガイドラインより相当後退した数値に、水準になっているというように思うのです。その点を少し私ども考え方を申し上げますので後でお伺いをしたいのですが、WHOのガイドラインというのは成人を対象にしたものですね。そして、その健康を守るための最小暴露レベルはNO2最大一時間暴露として〇・一〇ないし〇・一七PPm以下であり——この限りでは指針値は〇・一ないし〇二.一ですから大きな違いはなさそうに見えるのですが——以下であり、この一時間暴露は一月に一度を超えて出現してはならないという制限があるのですね。で、重要なことは、そのWHOガイドラインが成人を対象として定められておって、NO2が単独でなく他の化学的な活性のある物質、たとえばオゾンだとかあるいはSO3ですね、そういうものと共存するような場合には、より大きな安全係数を掛けて、より低い許容濃度レベルが必要であるということですね。さらに高い感受性を有する人、たとえば病人だとか老人、乳幼児などの健康を守るためには、さらに一層安全係数が必要であると、こういうただし書きがくっついているわけでございます。これはもう局長百も御承知のとおり。  ところが、専門委員会の報告の指針値というのは、大気汚染の影響として正常な健康状態からの偏りが見出されず、大気汚染原因で病人の病状の悪化が起こらないレベルであって、しかも複合大気汚染を前提にした場合のNO2一時間値として〇・一ないし〇・二PPmが提案をされている。その限りでは、WHOのガイドラインのただし書きの意味を含めますと、非常に大きな後退になるというふうに思うわけです。そういうふうに認識になっておられますか、今回の指針値というのは。WHOガイドラインとの関係
  77. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) さようには認識をいたしておりません。WHOの結論は一九七六年の八月までの文献でいたしております。今回の文献は一九七七年の内外のすべての文献を網羅しておりますし、七八年の新しいものも中に入れております。そういう点で現在の時点における世界で最もすべてを網羅したデータであるということでございまして、WHOはその時点で物を言っておるということでございます。われわれは専門委員会でいまの時点で物を言っております。  それからもう一点は、WHOが月に一回と申しましたのは、あれは指針よりもさらにもう一歩先に出た立場をとっております。そのような頻度を加えるということは、これはもう基準にストレートに結びつくわけでございます。WHOとしましては、あれはUNEPの方からのあれが出ておりまして、それに基づいてやっておりますから、今回専門委員会のやったものよりももう少し行政的な性格が強いというぐあいにお考えいただきましたら結構でございます。ガイドというよりもむしろガイドラインとして出したというぐあいに私どもは解しております。クライテリアとガイドラインをWHOは出しまして、日本はクライテリアとガイドをいまの時点で出したわけでございます。  そういう点で、数字だけを比べました場合に、確かに先生のおっしゃるようなことがございますかもしれませんが、WHO以降一時間値につきましては三つの人間関係の新しい論文がございます。その論文を踏まえたということと、疫学の論文はWHO時点よりもはるかに進んできたということでございます。そういう点で専門家が総合的に現在の最新の知見で判断すればこうだということを何物にもこだわらず下されたということで後退という御感触は、数字だけ見られたときに生ずることは、これはいたし方ないと思いますが、はっきり論文をいろいろごらんになっていきまして、専門家としての冷静な判断ということを、たとえば、より確かなものになったというぐあいに私ども考えております。
  78. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、あのね、専門委員会の採用された論文だとか調査だとか、そういうものがいまの時点で新しいと、新しいしあるいは広く活用したというふうな点については、それはそうだと思うのですよ。しかし、いま言われているWHOのガイドラインから見れば、今回の報告書の指針値は、ただし書きのところを勘案しますと、後退をしているという判断にならないですか。その数値だけを、条件を見ますと。
  79. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 硬直的な判断ではそのようになると思います。
  80. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、それは、硬直的なというのはおかしいですよ。それじゃ具体的に、そういうただし書きを日本の知見の場合にあてはめてみたら、それじゃどうなるかということになるわけですから、硬直的という、そんな妙な御答弁ありますか。事実に基づいて私は申し上げているんだから。だから、しかし調査内容の違いによってこういう数値が報告書には出ているということの理解と、WHOガイドラインとの比較をすれば結果としては後退になっているという認識はあるかないかという質問に対して、硬直的ななんて、そんな、ちょっと聞けませんよ。もう少しまともに答えてくださいよ。
  81. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 私のいま申し方が非常に悪うございました。これは訂正いたします。  ただ、学問というものは、やっぱり進んで、そしてそれによって判断をするということが学問の立場だということを専門家の先生方は考えておられるということでございまして、数字だけを比べてみた場合に、後退しておるではないかということにつきましては、私は先生のおっしゃるとおりだと思います。
  82. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 だから、当初申し上げておりますように、私もまだ十分検討はしておりませんけれども、私どもが、専門家でもないのが見た限りでもそういうふうに問題点として感じられる、そういう一点がそれだと、こういうふうに申し上げておる。  もう一点は、これは専門委員会の指針値が年平均値〇・〇二ないし〇・〇三PPmという幅を持たせたという答申ですね。これは疫学データ上の制約があるんだというふうに御説明になっているんですが、これも、私ども判断をしますと非常に何か意図的な感じがせざるを得ないんです。これはまあ私ども判断ですから、なぜそういうふうな判断になるかということをちょっと申し上げたいんですが、産業構造審議会のNOX汚染防止対策小委員会の言う社会的経済的費用や技術的実現可能性の限界点として提案されているNOXの仮想環境濃度というのは五〇PPb、つまり日平均値に換算しますと〇・〇五PPmと合うわけですよね。これはうまいこと、ようどんぴしゃりと合うたなという感じがするわけです。というのは、今回の環境庁への専門委員会の報告を見ますと、年平均値〇・〇二ないし〇・〇三PPm。これを見ますと、日平均値に換算をいたしますと、これは〇・〇四ないし〇・〇六PPmになるのですね。これ、足して二で割ったら〇・〇五PPmとなるのですよ。そうしたら、産構審が言うておる数字と全くどんぴしゃりということになるわけです。こういう点で非常にこれは産構審の御要望にどんぴしゃりと合わせるようなことになったなあというふうに受け取れるわけです。  しかもこれは、通産省の産業構造審議会産業公害部会NOX汚染防止対策小委員会というのは、メンバーを見たら、これはいまの公害行政の一つの縮図と思えるようなことなんですね。その小委員会のメンバーを拝見してなるほどなというふうに思いましたのは、そのメンバーは二十一人になっておりますが、電気事業連合会副会長の正親見一さん、それから日本自動車工業会会長の豊田栄二さん、石油化学工業協会副会長の今井善衛さん、それから石油連盟政策委員長の加藤正さん、経済団体連合会環境安全委員長の古賀繁一さん、日本鉄綱連盟立地公害委員長の徳永久次さん、さらに京都商工会議所専務理事の島津邦夫さん、日本開発銀行理事の渥美謙二さん、それから日興リサーチセンター理事長宍戸寿雄さん、そのほか大学教授、新聞論説委員、経済評論家というような方々によって構成をされているわけです。  で、この小委員会が言っておる、経済的、技術的にぎりぎりの限界点まで規制したとしても、限界点は五〇PPbだと、すなわち日平均値〇・〇五PPm、このレベルまでの規制に必要な対策費用は非常に大きくて、限界点における対策費用は、投資額を五十一年から六十年の累計積算で一兆九千億、年間経費で九千四百億。膨大な費用となる。しかもこの限界点五〇PPb前後において、わずか数PPb引き上げるために要する対策費用というのは約三倍に増加する。で、どんなにがんばってみても日平均値〇・〇五PPmのレベルまで下げるのが限界だという報告書を出しているわけですね。これは御承知のとおりです。  こういうふうな、いわゆる産業界そのもののメンバーの網羅された産業構造審議会の小委員会で、資本家側の意見を集約して理論づけたこの報告書、つまり、経済的、技術的に実現可能な限界点は日平均値で〇・〇五PPmのレベルだと、こう言うているわけですが、全くこれとどんぴしゃりになるのですね、今度の指針値を換算していきますと。これは〇・〇四ないし〇・〇六という幅を持った書き方にはなっておりますけれどもね、実際には。しかし、足して二で割ったら〇・〇五、産構審の御要望どおりの数値になる。これは国民はちょっと理解しにくいです、こういうふうにどんぴしゃりとなりますと。こういう点について局長はどういうふうに考えられますか。
  83. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) いまのような推理をなさるというのは、私はもう否定し得ないと思うんです。推理をされる側からごらんになりますと、よくこれだけ合ったものだなあという御指摘は、まあ数字だけを見ると私は成り立つと思います。ただしかし、これは全然そういうものではございません。  で、産構審は、日本の公害対策の政策表現は環境基準にございますので、NOXの問題に触れると当然環境基準に触れてくると、これはもう避けられないことだと思います。けれども、私どもは、それは向こうが言っておるので、これは言論は自由であると。で、環境基準環境庁が決める、健康に基づいて環境庁が決めるということでございまして、産構審が環境基準について言っているいろんな批判は、なるほどそういうことを言っておるかということは私どもは確かに頭にこういまでも持っておりますが、環境基準そのものが産構審の答申に影響されるということは全くございません。どうやって達成するかということについては、産構審の言っている問題は、非常に重要なことをいろいろ言っていると思います。それについては私は産構審の答申は十分参考にしたいと思いますし、部分的には同じ考え、部分的には違う考えを持っております。これは通産省当局と対策としてはよくすり合わせる。そういうことで、環境基準については、産構審が言ったということは確かに事実ございます、数字が余りにもよく合うではないかということは実態上あるかもしれませんが、そのような問題はございません。  それからもう一点は、現在の科学的な知識の確かさに立つとこのような幅でしか合意が成り立たなかったということでございます。ですから、個人としては、もう少しいろんなお考えをお持ちの方がございます。しかし、これだったら合意するなといったところに非常に意味があると思います。ですから、今回の専門家の方はいろんな分野の専門家の方であることは事実でございますし、それから同じ分野の専門家でも全く考えの違う人を配しております。これはある新聞に何かぐあいのいい人だけを集めたと——そんな事実は全然ございません。しかし、少なくとも皆さんれっきとした学者であることは間違いないわけであります。ですからその学者の方が、たとえば何とか学説なんというのがいろいろあると思います。ある人は関西学派なんという人もあります。そういう人が全部でもう非常に激しい議論をなさいました。非常に激しい議論をして、この表現ならということで、いまの知識の確かさではこういう程度にしか物を言えない、これなら全体として合意をするといったところに非常な私は意味があるということを特に強調いたしたいと思います。私は、先生のおっしゃったような推理が起こり得るぞと言われることについては別に否定的に申し上げません。しかし、実態的には全くそういうことはございません。  それから日平均値をとっておりません。これはデータとして日平均値がないということでございます。ですから、足して二で割るなんという考え方一つのオプションとしてはあるかと思いますが、それはあくまでもオプションの一つでございまして、そのような先見的なものは一切ない。なかなか信じがたいことでございましょうが、それだけは申し上げておきます。
  84. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、それはたまたま計算してみたらどんぴしゃりなんでね、これは全く産構審の御要望どおりの結果が出ておるじゃないかと、こんなことになったら国民が納得しないし、前回の委員会でも私申し上げましたけれども、財界は、公害行政に対しては陸海空の総力戦だと、で、空軍の総力戦にさしもの橋本局長屈服したかというふうに思わざるを得ぬほどどんぴしゃりですね。これは国民はなかなか納得しにくいというふうに思うんですよ。まあそういうことになっているということをこれは御承知いただきたい。  さらにもう一つの問題点というのは、これは今回の専門委員会の指針値の中には、いわゆるオキシダントの問題ですね、そういう点が問題にされていない。直接的な暴露による人体影響という点にだけ限定をされているんですね。NO2と炭化水素の共存のもとで、光化学オキシダントの生成を抑えるという見地というのは全く考えられていないというふうに見受けられる。ついせんだって、東京都では生の大気で実験をされた実験成績の発表をしておられましたが、NO2〇・〇二PPmが達成されないと光化学オキシダントの生成は解決しないというふうな研究成果を発表されておりますが、きわめて重要だと思うんですね。この点はどういうふうに考えておられますか。
  85. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) オキシダントのことは考えていないという御指摘でございましたが、複合の実験データにオキシダントが入ったのがございます。そういうことで、オキシダントを無視しているわけではございません。複合の状態の場合にやっております。  それから、もう一つは、光化学汚染物質の前駆物質としての認識を持つということは文面の中に入っております。ただ、本委員会に与えられた役割りは、汚染と健康との関連ということでございまして、そういう意味でオキシダントの問題は入っておりますが、光化学対策のストラテジーに関連して本委員会が控えているわけではないということでございまして、付言の中にはそのようなことも頭に置いてやらなければいけないと言われております。東京都の御指摘になった、オキシダントのことを考えなければだめだと、これはもっともでございます。複合汚染考えなければいけない、これももっともでございます。ただ、一日平均値〇・〇二にしても〇・一何がしのものが出る。これはいろいろのデータでございますが、この点は、私は、東京都の方がちゃんと学会にペーパーを発表して、新聞よりもまず学会にペーパーが出るということが学問的な価値のキーであると思います。そういうことで学会に出していただく。それから、これは私どもにいろんなデータが入っております。日米関係で、日米の光化学共同研究班を持っておりまして、そこでいろいろやっております。確かにオキシダントの問題は非常にむずかしゅうございます。ハイドロカーボンについては五十一年の夏に新値が出ました。で、NOXとハイドロカーボンの関係は、日本とアメリカとの対策が違いますが、われわれのやっていることは正しいと思っておりますし、最近アメリカはわれわれのやった対策の方向に入ってまいりました。そういうことで、両方を抑えていくということは、当然これはこのまま続けていくことでありますし、ただ東京都のおっしゃるように、光化学を減らすために〇・〇二にしなければいけないと、断定的にこのことをおっしゃって議論をするには、まだ非常に問題があると、それまでにどんどん両方を下げなければならないというぐあいに考えております。
  86. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 まだその研究が、たまたま新聞で報道されたという範囲でしょうが、しかし、人体影響として、大気汚染の中で光化学スモッグというのが非常に大きな影響を持つ現象なんですね。で、そのことがNO2との関係でどうなのかということは、これは当然度外視されずに、むしろこれは問題にされるべきではないか。そういう点を抑えていくためには、それじゃNO2ではどうなんだという点が検討されてないという点は、一つのやっぱり問題点だというふうに思うんです。  それから、時間がありませんから、さらにもう一つ問題だなと思いますのは、専門委員会の報告というのは、低濃度長期暴露の場合に、これまでの実験では、腫瘍とかがんの発生は認められない、こう言って、指針値の提案に当たっては考慮しなくてもよいというふうになっているんですね。ところが、別のところでは、窒素酸化物は全身の影響が考えられ、さらに発がん等の遅発的影響の有無が必要としているということで、矛盾しているんですね。遅発的影響の有無が必要だと、全く無視できないんだというふうに言っているんですが、これではちょっと報告の中に矛盾があるのではないかというふうに思うんです。特にがんとか腫瘍という、人間の生命にとって決定的な影響を及ぼすような影響を持つ分野については、これは全く影響が認められないということでなければ、軽々に外してはならないというところだと思うんです。最近の知見では、もう私がちょうちょうと申し上げなくてもよくおわかりのとおりでございますが、呼吸器を通して体内に入った二酸化窒素が発がん物質であるニトロソアミンに変わるということが検討されるべきではないか、将来ね。これは専門委員会の報告が述べているんですね。で、NOXの発がんの可能性について基準を設定する場合の安全係数というのはどのくらいにするかという問題、これはやはり大気汚染の中で、それはぜんそくも大変だし、光化学スモッグも大変だと、しかし、長期の暴露によってがんの発生のおそれがあるという場合には、これはもう最も厳密を要するわけですね。そういう点について報告には相矛盾する個所があると思いますので、これ非常に重要な問題だと思いますが、慎重に取り扱う必要があるんですね、両方の知見が出ているということについて。これについての御見解と今後の対処の仕方ですね。これひとつお願いしたい。
  87. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 発がん性の問題でございますが、その最後の方の文章は、やはり少しこれは誤解が起こるんじゃないかと、矛盾があるんじゃないかという指摘でございまして、その文章はさらに慎重に確認するという意味で整理をいたしております。学問的な完全な否定というのは、これは先生もよく御存じのとおり、非常にむずかしい問題でございます。そういうことでニトロソアミンの問題触れております。ニトロソアミンの問題触れておりまして、NOXはSOXとは違って非常に注意が要るということは、専門委員会も非常に強調いたしております。そういうことで、その場合に、私どもICRA、つまりインターナショナル・キャンサー・リサーチ・エージェンシーの七二年から七七年の八月までの発がん性物質のチェックリストをずっと全部見ております。その中にニトロソアミンは確かに挙がっております。少なくともニトロソアミンにつきましても現在のところ疫学的にはデータがないというものでございます。そういうことで、科学的には、完全否定のためにはもっと研究をする必要があるということは、科学者の良心として専門委員会の方が考えたことは事実でございます。ただこの場合に、NO2を発がん性物質のリスクを中心にして推すかということになりますと、前回非常に恐れておった腺腫瘍の増殖というのは一定のところでとまってしまうということがありまして、その後悪性化した例がないということをもって、なおさらその発がん性を重視しながら、現在、これから対応するという場合に、研究テーマとしては確かに捨て去れるものであるとはだれも考えておりませんが、それをまだ前と同じウエートをもって扱うというような考え方には立っていないということで、さらに確認するという注意書きの意味であるというぐあいに御理解をお願いできればと思います。  それから、先ほどのところで、オキシダントは若干触れておりましたが、問題のテーマが違いまして、光化学スモッグは光化学スモッグでまた別の研究プロジェクトがございますので、あのメンバーの中で光化学スモッグのメカニズムまでは全部解明することは無理であるということで、みんな分けておりますので、その点はひとつ御理解をお願いしたいと思います。
  88. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 こういう形で、私どもが気のついたところを申し上げていけばいろいろあるわけですけれども、最後にちょっとお聞きしておきたいと思いますのは、指針値の根拠にされたデータというのが、これもまあ報告で、私ども、どの範囲でどういうふうにやられたかというふうなことは存じておりますが、これだけのデータではまだ不十分ではないかというふうに思いますが。といいますのは、わが国では大気汚染に係る第一種指定地域というのが現在三十七地域ですか、三十七地域あって、そこでは、地域指定をやる際に、環境庁の御指示で府県にかなり厳密な有症率調査データがそろっていると思うんですね。で、追跡調査も行われているところも出てきているわけです。これらのデータというのは、もちろん現在指定要件の物質というのはSO2ですから組み合わされておりますけれども、この有症率調査が行われているというこの非常に貴重な資料ですね。こういう貴重な資料を、測定局のNO2のデータと組み合わして評価をすることができないものだろうか。十分できるのではないかというふうに思うんですが、この長年にわたって蓄積された、しかも環境庁自身の方針で調査をされた有症率調査を可能な限り活用するというやり方が——そこには患者もおるわけですからね、一番はっきりすると思うんですが、そういうものをお使いになったのかならなかったのか。
  89. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 従来の地域指定のための調査は直接使っておりません。これは学問論文としていろいろ議論する場合に、まだいろいろ問題のところがあるというところでございまして、できるだけのことはいたしておりますけれども、学会誌にはっきり公表されたもの、あるいは政府が責任を持って公表したもの、あるいは専門家が専門雑誌または学会誌に公表予定が明確になっているものという基準で引いておりますので、行政の目的でそのような指定のためにやったという調査は、確かに貴重なものではございますが、それをストレートには使っておりません。むしろ今後の問題として、これは非常に重要な問題であります。今後の問題で、いま健康被害補償法ところ地域の問題あるいは指定地域基準、いろいろな御議論ございますが、それに対しましては少なくともこれから相当長期的にがっちりした新たな取り組みをやらなければ絶対だめだというぐあいに思っております。そういう点で、専門委員会は、また五年ごとに点検をすることということを言っておりまして、いままでの調査等にどこに問題点があるかということも付言の中で触れております。ですから、現在の時点で入手し得る最良のデータということでございますので、完全ではございません。ですから、不確かだという御批判は住民団体の方からもありますし、産業界からもございます。そのような不確かさのもとで言えば、この幅でしか言いようがないということでございますが、不確かさといいましても、いまの円高のような、経験もしていない不確かさとは全然違いまして、全世界の人間がたばことか、屋内とか、いろんなところに暴露されている、あるいは労働衛生の経験があるということの中で、さらにデテールなところになると不確かであるということを頭に置きながら行政としては判断をしなければならぬ、そういうぐあいに考えております。
  90. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 私がごく短時間で、数点にわたって、十分解明も尽くさない段階で、気のついたところを御指摘申し上げたんですけれども、非常に納得のしにくい点というのは幾つかあるわけですね。先ほど御指摘申し上げたように、指定地域指定をしていくための要件として調査をされたというふうな資料というのは、やっぱり局長も認めておられるように、非常に重要なというか、貴重な資料だと思うんですね。そういうものを使ってやり直す必要はないんだろうかというふうに思うんです。というのは、局長もおっしゃったように、東京、大阪というのは特に高濃度汚染地域ですね。そういう高濃度汚染地域にもこういう指針値が、網がかかるわけですからね。そういう点では、全く産構審の要望とどんぴしゃりになるような結果だけで、このやり方だけで、これは国民に納得せよと言われても、あるいはこれをもとにして環境基準値を見直すというふうなことまでいきますならば、これはとてもじゃないけれども、私も大変納得しにくいですが、国民の皆さんからいっても非常に納得しにくいと思うんです。そういう点で、せっかく持っておるデータ、そういったものを十分に駆使して、これはさらにやり直してみる必要はなかろうかと思いますが、どうですか。
  91. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) 指定地域のための行政調査ということで、指定するかしないかということでやっておるわけであります。純粋な学者議論をいたしますと、これは指定されるかしないかという一つのインタレストが加わるわけであります。そういうところの心配を学者の先生は持っておられる。私どももそういう気持ちが若干ございます、これは正直に申しまして。そういうことで、指定地域調査そのものの間では、比較的にいろいろやられると思いますが、学問の基本論文として使えるかどうかというところにはやはり問題点を指摘する向きもあるのではないかと思うわけです。また、指定地域調査の年次から見ますと、NO2のデータがきっちり固まったものが、またNO2データとしては非常に弱い調査でございます、全体といたしましては。そういうことで、今後の調査研究を徹底して大規模に長期にやって、この問題はクライテリアの問題だけではございません、公害健康被害補償法の基礎にも非常に大事な問題であると思います。そういうことで、私どもはこれはまだ後にならなければわかりませんが、五十四年から少なくとも五年計画ぐらいで、臨床から何からいろいろなものを含めて、健康被害補償法関係ところの問題も含めながら、もっともっと皆さんの納得のいくような、もっと確かなデータを五十年代末にはまた得たいというぐあいに考えております。
  92. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 最後に大臣ね、なかなか専門的な話の内容になったので、御理解しにくい点があったかもわかりませんけれども、私、大臣にお願いをしたいと思いますのは、局長からいろいろとお話を伺いましたけれども、今回の答申をそのまま環境基準値の見直しに使っていくというやり方をされるということでは、これは私が納得できないだけではなしに、先ほども指摘しましたような幾つかの疑問、問題点というようなのがありますしね。しかも、資料についてもなかなか不十分だという点は局長もおっしゃっておられますが、そういう点、あるいは新聞等で言われておるように、必ずしも十分その道の専門家を網羅した構成になっていなかったんではないかというふうに言われているような点、これはそうではなかったというふうにおっしゃいますが、これはまたいろいろ問題があろうと思いますので、きょうは時間ありませんし、触れませんけれども、そういう点がすでに報道もされ、あるいは議論続出というかっこうになっているという段階で、さらにやり直しをしてみるという考え方はありませんか。
  93. 山田久就

    国務大臣山田久就君) まあいろんなことは考慮に入れなきゃならぬという点はあろうかと思います。しかしながら、非常に客観的に独立して、その後のあらゆる知見というものを取り入れて、そうして専門的に決められたこと、それは私はそれなりにやはり尊重して、無論、その後にまだいろんな点で調べる点があるのは、また次と申しますか、いろんなことでやらなきゃいけないだろうと思うけれども、いまここでやっていただいた点について、ここでとやかく余りそういう点は私は避けるべきじゃないかと、こういうふうに考えておりますけれども
  94. 橋本道夫

    政府委員(橋本道夫君) この間、住民団体の方から、これを突き返してやり直すべきだという御意見がございましたが、私どもは、現時点では得られる最良の知見であるということで、そのような考え方はないということを申し上げました。完全とは思っておりません。これはまた五十年代の末にもう一回やってみると、それまでにもっといいデータを重ねるということだと思います。で、不完全だからいけないというのは、実は産業界も一方でそういうことを申しておりまして、科学の不確かさの使い方では、私は住民団体の方に、全くその価値体系だけ違って同じではないかということを申し上げております。そういうことで、現在の時点では得られる世界の最新最善のデータであるということで、これをやり直す考えはいまございませんが、五年後あたりにはもう一回またやる。そのためにはいろいろ御指摘のあった弱い点をもっともっと補強して、フォーカスをしぼったことをやっていきたいというように考えておるわけでございます。
  95. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。  本日の審査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時三分散会      —————・—————