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1978-02-22 第84回国会 参議院 公害対策及び環境保全特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和五十三年二月二十二日(水曜日)    午前十時四分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         田中寿美子君     理 事                久次米健太郎君                 原 文兵衛君                 矢田部 理君                 小平 芳平君     委 員                 佐々木 満君                 田代由紀男君                 林  寛子君                 森下  泰君                 粕谷 照美君                 坂倉 藤吾君                 内田 善利君                 中野  明君                 沓脱タケ子君                 柳澤 錬造君    国務大臣        国 務 大 臣        (環境庁長官)  山田 久就君    政府委員        環境政務次官   大鷹 淑子君        環境庁長官官房        長        金子 太郎君        環境庁長官官房        審議官      石渡 鷹雄君        環境庁企画調整        局長       信澤  清君        環境庁企画調整        局環境保健部長  山本 宜正君        環境庁自然保護        局長       出原 孝夫君        環境庁大気保全        局長       橋本 道夫君        環境庁水質保全        局長       二瓶  博君    事務局側        常任委員会専門        員        今藤 省三君    説明員        国土庁長官官房        参事官      北川  正君        水産庁研究開発        部漁場保全課長 伊賀原弥一郎君        労働省労働基準        局補償課長    原  敏治君    参考人        公害防止事業団        理事長      熊崎 正夫君     —————————————   本日の会議に付した案件参考人出席要求に関する件 ○公害及び環境保全対策樹立に関する調査  (派遣委員報告)  (公害対策及び環境保全基本施策に関する  件)  (昭和五十三年度環境庁関係予算に関する件)  (昭和五十三年度各省庁環境保全関係予算に  関する件)  (公害防止事業団事業及び予算に関する件)     —————————————
  2. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を開会いたします。  まず、参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  本日の委員会に、公害防止事業団役員等参考人として出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  4. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 次に、公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題とし、前回の委員会において聴取いたしました山田環境庁長官所信並びに昭和五十三年度環境庁関係予算について、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  5. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、最初に、環境庁長官環境行政に対する姿勢の問題について、いろいろとお伺いをしておきたいというふうに思います。  最近、環境庁の大変な努力にもかかわりませず、国民の間には環境行政が後退しているのではないかという不安の声が高まっております。特に、さきの石原長官公害対策基本法に真っ向から対決するような開き直った問題のある発言だとか、あるいは住民運動等緊張感高まりなどは、そのことを肯定しているというふうに私たち判断をせざるを得ませんが、新長官においては、この公害基本法の法の番人として、他省庁や財界あるいは企業などの圧力に屈せず、断固としてがんばっていかれるおつもりかどうかをまず最初にお伺いいたします。
  6. 山田久就

    国務大臣山田久就君) われわれとしては、この公害基本法に決められたわれわれの任務と責任を、それに従って果たしていくと、そういう決意であります。
  7. 粕谷照美

    粕谷照美君 大変すっきりしたお答えをいただきましたけれども、それでは、長官所信表明に従って若干の質問をいたします。  環境庁は、公害防止あるいは自然環境保護について真剣に取り組んでまいりました、その結果、環境の状態にも改善の跡が見られるようになってきました、というふうにこの情勢を分析しているわけですが、私は、環境行政公害自然環境の現状をどういうふうに把握しているかというのは非常に重要な問題だというふうに思います。先ほどの長官所信表明は大変甘いのではないかという考え方を持っておりますけれども公害対策の結果を全体的にどのように評価をされておりますでしょうか。
  8. 山田久就

    国務大臣山田久就君) まあわれわれの努力によりまして、私は全般としては非常に改善されてきておると、決して甘い考えを持っているのではございませんけれども、客観的に見てそういうことじゃないかと思います。われわれの努力にかかわらず、いろんな技術的な進歩、限界と、こういうものはむろん考慮されていかざるを得ないでしょうけれども、しかし、全般としては、私は、たとえば水質にしても空気の問題にしても、改善方向に向かって前進しておるというふうに御理解いただけるのじゃないかと、こう考えているわけです。
  9. 粕谷照美

    粕谷照美君 長官が、長官におなりになる前に出されました五十二年の白書をお読みだというふうに思いますが、その詳細については長官にお伺いをいたしませんけれども環境庁としては、いまの長官の御答弁があの環境白書の中にどのような形で示されているかということをお聞かせいただきたいと思います。
  10. 信澤清

    政府委員信澤清君) 総論の部分で、概括的に環境浄化と申しまするか、環境行政の跡づけをいたしているわけでございますが、その中でも書いてございますように、たとえば大気汚染の問題につきましては、いわゆるSOxについては、これはグラフでお示ししたように、逐年低下をいたしております。それから浮遊粉じん、そういった問題についてはかなり改善の跡がある。ただし、窒素酸化物については横ばいないし微増と、こういう状況にあるわけでございまして、ここにやはりなお問題が残っているということでございます。それから、水質汚濁の問題につきましては、これは河川あるいは海域、湖沼ごとにそれぞれ問題がございますが、問題は、一つ閉鎖性水域における環境基準の達成あるいは環境基準に近づく道のりというものについてなお問題が残っていると、しかし、河川の一部についてはかなり改善もされていると、こういうようなことを基調にいたしまして、そして、そういう実態を踏まえていまの大臣のような御発言があったというふうに考えます。
  11. 粕谷照美

    粕谷照美君 いまのお答えは、いわゆる公害を封じ込めることができたというふうな判断をしていらっしゃるのか、若干の改善は認められた部分はあっても、なおかつやっぱり公害は大きくなっているんだというふうに判断をしていらっしゃるのか、ちょっとわかりづらかったものですから、もう一度。
  12. 信澤清

    政府委員信澤清君) これは印象の問題でございますから、いろんな受け取り方があるかと思いますが、数字の上で見る限り、ものによってはかなり改善をしているということははっきり出てまいっているわけでございます。しかし、それをもってすべて終わったとかあるいはよくなったというふうに考えるかどうかというのは、これは率直に申していろんな意見があり得ると思います。私どもは、やはり残されている問題といいますか今後やらなきゃならぬ問題を問題として、それは率直にあの白書の中にも書いてございまするし、私ども努力だけではございませんが、それなり改善効果が上った面はそのように御評価もいただきたいと、こういう趣旨であの白書は書いてあるつもりでございます。
  13. 粕谷照美

    粕谷照美君 印象と言われると大変困ってしまうんですけれどもね、そういう答えはないだろうというふうに考えております。しかし、環境庁が非常に甘い考え方環境状況を見詰めているということがいよいよはっきりしたというふうに私は思わざるを得ません。特に、きょうのNHKでもニュースで報告をしておりましたが、全国環境教研集会というのがありまして、そして窒素酸化物がやっぱり非常な影響子供たちの体に与えていると、のどが痛むとかあるいはせきが出るとか、もう胸が締めつけられるようだとかね。だから、光化学スモッグの問題なんかについてだって解決をしていないというふうに判断を私たちはしているわけです。そういう意味で、非常に国民の期待からはかけ離れた点が多いわけです。  しかしながら私もいま信澤さんがおっしゃるように、部分的にはやっぱり改善をされた、その努力というものは認めていきたいというふうに思うわけですが、その改善をされたという力は一体どこにあったんでしょうか。そのことをどのように判断されますか。
  14. 信澤清

    政府委員信澤清君) ひとり行政努力の結果によってお話のような改善効果を上げたというふうには、私ども考えておりません。やはり環境問題についての、特に昭和四十年初めからの世論高まり、またそういう世論に支えられたいろいろな、何と申しまするか、役所の立場を離れた方々の御努力、こういうものも大変あずかって力があるというふうに思うわけでございます。さような意味で、私が先ほど申し上げましたのは必ずしも適切な申し方をしたわけではございませんが、従来は産業公害、つまり事業場についての公害問題というものが非常に大きくクローズアップされてまいったわけでございますが、そういう面での国の施策なりあるいはそれを受けての地方公共団体施策というものは、かなり徹底してまいっていると、これは率直に申し上げて言えるんではないかと思うわけでございます。ただし、一昨年のOECDの環境問題についてのレビューの際にも話が出たことでございますが、ある程度公害問題は解決した、しかし国民不満は解消していないと。これは非常に適切な御指摘だというふうに私は思うわけでございまして、さような意味で、単なる数字の上での問題ではなくて、それによって快適な生活というものが確保されるようになったかどうか、こういう点の不満というものはなお大きく残っていると、こういうふうに思うわけでございます。
  15. 粕谷照美

    粕谷照美君 ちょっとすれ違っているわけですけれども、私はこういう問題点役割りを果たしたのはだれかというふうにお伺いしたわけで、それは環境庁自身姿勢の問題もありましょうし、企業努力あるいは地方公共団体の力、それと同時に、私は、いま信澤さんがおっしゃったように、世論高まりが非常に大事だと、こう言われましたけれども住民運動というものが大きな力を果たしたというふうに考えておりますが、この住民運動についての評価は、長官はいかがお考えでしょうか。
  16. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 環境行政を進めていく上に、特にこの住民の声、つながり、こういうものを率直に聞いていこうと、これがわれわれの方針でございます。今後、いろいろ考えられている環境アセスメント法というようなものについても、そういうような点をはっきりあらわしていこうと、こういうつもりはあります。むろん、われわれやっていく場合に、客観的ないろいろな声というものは、これは率直、素直にどこからのものであろうが聞いていく構えでありまするけれども、とりわけ利害関係者である住民の声、こういうものについてはよく耳を傾けるというそういう姿勢と準備、そういうものをもって臨むつもりでやってきておるつもりであります。
  17. 粕谷照美

    粕谷照美君 先日の長官所信表明の中にも、「国民の声に十分耳を傾けていくとともに、」と、こうおっしゃっているわけで、いまの長官お話も私はまことに心強いというふうに思って聞いているわけです。  それでは、その国民の声に十分耳を傾けるような実際の状況であるかどうかという点については若干の疑問があります。それは、きょうの日程で言えば、先に先日の公害視察報告があって私の質問をするという順序になっておりましたが、ちょっと順序が変わりましたので、読み上げてみたいというふうに思うわけですが、先日の公害委員会視察に当たりまして、特に本四連絡橋児島坂出ルートの問題について、いろいろな実態も見ましたし、そしていろいろな意見ども伺いました。そのときに、この報告書の中にありますけれども住民意見は七百項目、百十一種類に及び、そしてそれぞれの問題点についてまだ住民の側の納得ができない部分もある中で、本四公団側はこういうことを言っているわけですね。「環境庁基本指針には、必要ある場合公聴会を開くとなっているが、これまでの説明会等で十分であるので、改めて公聴会を開くつもりはない」と、こう言っているわけです。そうしますと、その住民の声を十分に聞くといういまの長官所信表明に対して、私はこういう公団側姿勢というのは非常に間違っているのではないか、相反するのではないかというふうに思いますけれども長官いかがですか。
  18. 信澤清

    政府委員信澤清君) 若干その間の経緯の問題だけ私から申し上げたいと思いますが、いまのお話児島坂出ルートにつきましては、昨年の七月に環境庁から公団に対して環境影響評価に関する基本指針というものをお示しをいたしたわけでございます。その中で、これは文章の上でございますのでいろいろ御議論があると思いますが、まず環境影響評価書の案をいわゆる公示縦覧をし、説明会等をやる。同時に、関係知事、つまり岡山県、香川県知事の御意見を聞いて、必要があれば公聴会をやってくださいと、こういうふうに申し上げてあるわけでございます。そこで、いまのお話では公団自身の御判断で決めたようなお話でございますが、私どもが伺っておりますのは、両県の知事公団が御相談された結果、公聴会をやることはなかろうと、こういう御判断であったというふうに伺っているわけでございます。
  19. 粕谷照美

    粕谷照美君 そういうことになると、両県知事態度はいかがなものですか。——信澤さん。
  20. 信澤清

    政府委員信澤清君) 公聴会という形式でやりまする場合は、これは、私どもが従来アセスメント法内容として考えておりましたのは、住民の御意見でなおまた足りない部分があると、そういう場合に関係知事と相談をしてやるやらないを決めると、こういうことが従来私ども考えておりました案の内容になっておったわけでございます。したがって、御判断の基礎は、住民の声はいまお話しのように相当数出ているわけでございますから、したがっておおむね御意見としては出尽くしておると。したがって、このアセスメントの案について地方公共団体としての御意見なり何なりを言うにはそれで十分であると、こういう御判断をされたんではなかろうかというふうに思うわけでございまして、その当否について、実はその実態を私、十分存じておりませんので、ここで云々することは差し控えさしていただきたいと思うわけでございます。
  21. 粕谷照美

    粕谷照美君 しかし、私はそのことは非常に問題だと思いますよ。長官がいまおっしゃったことは、国民の声を十分に聞きますと、こう言っていらっしゃるわけですから。住民側としては、まだ納得できない問題が非常にたくさんあるわけですね。県側納得したとしても、そこに住んでいらっしゃる、特に被害を受けるその地域の住民方々がまだ納得できないという部分があるときに、何で環境庁が、そんなことはもうそちらの方で判断できたんだからいいだろうというような答えを出されるのですか。
  22. 信澤清

    政府委員信澤清君) 私は、住民が御意見を出されたものをただ聞いておればいいんだということが、ああいうたてまえでやった目的ではないと思います。つまり、住民の声として出てきたものを、実際の事業実施に当たってどのように反映させるかということが問題だと思うので、それはこれから環境庁意見を言うわけでございますから、したがって、住民の方の御意見、それから地方公共団体の御意見、それに私ども意見を聞いた上で、そうして公団としてどう対応されるか。公団自身が自分で対応できない問題については、監督官庁である建設省、運輸省がどう対応してくれるかと、こういうふうにつながっていく問題だと思うわけで、あの評価書の案の段階で、一つ一つについて対応する方策をその際御説明できれば、これはベターであろうと思います。しかし、おのずから公団としての限界もあろうかと思いますから、そういうものを中央の段階に持ち上げてきて、そして私ども意見もおおむね住民意見参考にしながら申すわけでございますから、具体的な事業実施の中にどう反映するかと、こういうことになるわけで、したがって、そういう御意見とさらにそれに対応する公団施策というものはもう一度——あれは案でございますから、もう一度環境影響評価書という形で公表して、そうして住民の御納得をいただき、御理解をいただくようにしてくれと、こういうことを申しておるわけでございますから、あの一連の手順で終わっているというふうに考えてないわけでございます。
  23. 粕谷照美

    粕谷照美君 それでは、こういうふうに理解していいんですね。まだまだ住民意見を聞くという条件はつくられる、そのように環境庁としては本四公団に対して指導をすると。いかがですか。
  24. 信澤清

    政府委員信澤清君) 私は、実際問題としてこの経緯を見ておりまして、公示縦覧とかあるいは意見書の提出の期間というようなものも両県知事と御相談してお決めになっておりますけれども、実際問題としては、その期限が来たからもう意見書は受け付けないというふうなことはやってなかったというふうに聞いております。かなり時間を延ばして、後から出てきた御意見も十分取り上げるという姿勢をとっておったように承知をいたしておるわけでございます。それから、説明会につきましても、回数が少ないとか時間が足りないというようなことについては、さらにもう一回説明会をやり直すというようなことも事実上の問題としてはやってきたというふうに聞いておるわけでございますから、したがって、それなり努力はしたと思います。  そこで、いま先生お尋ねの、さらに住民意見を聞くのかというお話でございますが、御意見があれば、いま私ども段階にまで来ているところでございますから、一つ方法としては、私どもにそういう御意見をおっしゃっていただくということも方法ではないかというふうに思うわけでございます。
  25. 粕谷照美

    粕谷照美君 いずれ法律も出ることでありますから、その辺のところで私ども意見も申し上げたいし、一つ一つ反論もしていきたいというふうに考えますけれども、私は環境庁長官がおっしゃることが本当の心の底からの所信であるならば、やっぱりまだまだ問題点は残されているんですから、十分に話し合いを進めるような態度をとらせるべきであろうというふうに判断をいたします。  そればかりに時間をとっておることができませんから次に移りますけれども景気回復のために大規模な公共投資による経済産業活動の刺激が要請されていると、したがって、このような情勢下にあっても、環境保全の基本的な条件が保持されるように十分留意してまいる所存でありますと、こういうふうにおっしゃっているわけですが、「十分留意をしてまいる」では大変心もとないというふうに思います。それは、二年前の五十年白書がこういうことを言っているわけです。不況環境の問題を取り上げて、経済活動は停滞した、汚染物質排出量が減ったと。つまり、不況だから公害が減っている、汚れが減っていると、こういうふうに判断をしているわけですが、いま景気回復のかけ声のもとに多大の公共投資設備投資が行われています。五十年白書でありませんけれども、逆説的に言えば汚染は増大をするというふうに判断ができませんでしょうか。  そうしますと、そういう問題をめぐって本当に性根を入れて公害防止対策に取り組んでいかない限り非常な不安が国民の中に巻き起こるのではないだろうかというふうに考えるわけですが、まず一つ、二つの例を挙げてみれば、たとえば瀬戸内海をめぐっても、埋め立て駆け込み申請が行われているではありませんか。その実態はどのようになっておりますでしょうか。
  26. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 瀬戸内海関係につきましては、瀬戸内海法の十三条の規定によりまして、埋め立てにつきましては、瀬戸内海特殊性を考慮すべしという規定がございます。したがいまして、その線に沿いまして、個別案件ごと審査をいたしておるわけでございます。  ただいま先生からのお尋ねとして、駆け込み申請があるのではないかということでございますが、駆け込みとかいうことではなしに、現在運輸省の方から環境庁の方に、公有水面埋立法四十七条第二項の規定によりまして、環境庁長官環境保全上の意見というものを求められるわけでございますが、これにつきましては、認可権者である運輸省の方で申請があったものを審査をしまして、その上でこちらに回ってくる。したがって、運輸省の方の審査が事務的に済んだものが回るということでございます。したがいまして、現在回っているものが確かにございますけれども、それが駆け込みであるというふうには必ずしもわれわれは見ておらないわけでございます。
  27. 粕谷照美

    粕谷照美君 駆け込みでないとおっしゃるのは、それは判断の問題だと思いますけれども、それでは埋め立てば減少しておりますか。どうでしょう。
  28. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 埋め立てにつきましては、瀬戸内海環境保全臨時措置法、これが施行されましたのが四十八年の十一月以降でございます。したがいまして、それ以前とそれ以降というものと対比をしてみますというと、年間平均ベースでもって比べますと、大体件数におきましては、施行前に比べまして半分、それから面積にいたしまして約四分の一という姿になっておりまして、臨時措置法十三条によります規定が設けられた趣旨は、瀬戸内海埋め立て抑制する方向考えるべきであるという御趣旨考えておりますが、その抑制効果というものは上がっておると、かように考えておるわけでございます。
  29. 粕谷照美

    粕谷照美君 これは内容的にずっと詰めていく問題じゃないと思っていたわけですけれども抑制効果が上がっているというふうにおっしゃっております。私は、抑制効果がないというふうには申し上げないわけですが、それだけなんでしょうか。不況というものが非常に大きな原因になっている、そういうふうに判断されませんですか。
  30. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 埋め立て関係運輸省の方から環境庁に持ち込まれると、それでいろいろ審査をするわけでございますが、大体埋め立て関係につきましては、これは公有水面埋立法によりましていろんな手続関係があるわけでございます。したがいまして、その埋め立て申請者の方でいろいろ検討をして、さらにそれを認可権者である運輸大臣の方に出すと、運輸省でそれを十分審査をして環境庁に持ち込むというようなことでもございます。したがいまして、これには相当前からの手続というものがあるわけでございますので、したがいまして、景気がすぐ、最近不況になったからといって、埋め立て手続は、それじゃすぐストップするというふうに、直にはなかなか関係がないんじゃないか。全然関係ないということは言い切れるかどうか私もわかりませんが、ただ、いま先生のおっしゃるように、不況になったから埋め立てのあれが環境庁に回ってくるのがすぐ少なくなるとかという、そう機械的にそういう現象になるものとも見ておらないわけでございます。
  31. 粕谷照美

    粕谷照美君 非常にややこしい説明で、私はよくわからないわけなんですけれども、大変おかしいと思うんですよね。いま現に非常に問題点が挙げられているわけですが、たとえば、実質的に埋め立てを認可するに当たっては法律に基づいてやらなければならない。ですから、そういう意味考えてみれば、下水道だとかあるいは汚水処理などをやるために埋め立てを認可する、これだったらわかるわけですけれども、実際には、流通センターだとかあるいは都市再開発みたいな、高度成長政策時代のパターンと同じような実態が行われているというふうに私ども調査の中で認識をしているわけです。だからこそ、このような埋め立てに対して住民側からは大変な抵抗が起きているんではありませんか。  いま訴訟問題が起きている埋め立て事件というのは幾つぐらいありますか。
  32. 信澤清

    政府委員信澤清君) 直接埋め立てが問題になっておりますのは水俣、姫路港の埋め立てでございます。それから、埋め立てのみならず港湾計画そのものについて訴訟が起きておりますのは、兵庫県の尼崎・西宮・芦屋港の港湾計画——まだあるかもしれませんが、私の承知いたしておりますのはその三つでございます。
  33. 粕谷照美

    粕谷照美君 ですからね、LNGの問題にしたって、結局景気回復のための大規模な公共投資による経済産業活動の刺激がどんどん要請されていけば、やっぱりたくさんためておかなければならないから、どうしてもこれはやっていかなきゃならないというふうに企業側としては考えていくんだろうと思うんです。ですから、景気を回復するためにというこのかけ声の中で非常な公害が広がっていくんではないか、自然破壊が進んでいくんではないかというこの住民の心配に対して、長官所信表明のように「十分留意してまいる所存であります。」とおっしゃるようなことで足りるのかどうか、こう質問をしているわけなんです。長官、どうでしょう、足りるというふうに御判断なさるでしょうか。
  34. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 抽象的なことではなかなかわからぬわけですけれども、要するに、われわれとしては、具体的には、この前も今般の公共事業投資の増大ということに関連いたしまして、閣議におきましても私要望しておいた次第でございまして、なお具体的な手段、方法ということになれば、こういう問題というものは、いわゆる開発事業というものと公害関係ということになりますというと、あるいは環境関係ということになれば、事前に十分その手を尽くしておくことがいいということで、御案内のように、環境アセスメント法というものを、何とか各方面の了解をいろんな重要問題についての協議を待って取りつけて、そしてやりたいということを努力している次第でございまして、いまその表現がどうも云々というお話でございましたけれども、そこら辺のわれわれの実際の努力で御理解いただきたいと、こう考えているわけです。
  35. 粕谷照美

    粕谷照美君 私は、長官いまおっしゃったこと、非常に重要なことだと思います。ぜひがんばっていただきたいと、こういう気持ちをもってこれからひとつ質問をするわけですが、いま環境アセスメント法についてはどうしてもつくっていきたいということで、閣僚会議においてもそういうことを各省庁にお願いをしているとおっしゃるんですが、これ本当に出せる条件があるんですね。ありますね。私はその辺のところをまずお伺いします。  なぜかと申しますと、長官こういうふうにおっしゃっているんですね。「第二は、環境影響評価の制度化及び実施の推進であります。」と、こういうふうに言っていらっしゃる。まだ法律は出てきていない。それから、「環境影響評価の法制化を図るべく鋭意努力をいたしておるところ」でありますと、こうおっしゃっていますけれども、この辺の見通しはどうなんでしょう。非常に抽象的なんです。で、五十二年の環境白書で言いますと、「むすび」のところに、「環境影響評価実施して、環境汚染を未然に防止していくことは当然のこと」と、こういうふうに述べているわけですね。その「当然のこと」がなぜいままで出されなかったんでしょうか。どこに障害があったというふうにお考えですか。「鋭意努力」とは何か、また、それは日の目を見るのかどうなのかという点についてお伺いします。
  36. 信澤清

    政府委員信澤清君) 私、大臣が御答弁の前に、ちょっと経過的なことだけ申し上げたいと思います。  環境影響評価をやらなきゃならぬ。つまり、一つ事業をやります場合に、それが環境に及ぼす影響について事前に環境影響評価をやらなきゃならぬ、この認識においては政府部内において異論のあるところはないと私は考えております。で、問題は、それを法律にいたします場合に、その影響評価をやるというだけではなくて、先ほど来お話にございましたように、私ども環境影響評価というのは単なる技術的な問題ではないと、こういう理解の上に立っているわけでございますから、したがって、これを公表し、そうして適切な地域住民の御意見等を伺う、それによってまた地方公共団体意見も十分聞く、そういうものを計画の実施の際に十分反映させると、ここに一つの主眼があると考えているわけであります。そこに向かっての手続きの進め方、こういうことについていろいろな考え方があるわけでございます。つまり、環境影響評価をやるということ自身については異論がない。しかし、それを進める手続の問題について異論があると、こう御理解いただきたいと思うわけでございます。
  37. 山田久就

    国務大臣山田久就君) ただいま事務当局から話がございましたように、事前に影響評価を行うということがいろんな点においての予防措置といいますか、とにかく一番いいだろうという意見、これは各方面とも一致しているけれども、それぞれ抱えている事業の主体あるいは形態が非常に違っている。まあそれによって、進めていく場合の手続等、いろいろ重なってみたりあるいは権限が衝突をしたり、そういうようなところ、そこら辺をどういうふうに整理して法文化していくかというところが、ちょっと抽象的になって恐縮ですけれども、実際問題として話し合いがなかなか手間を取っていると、こういうことのためにおくれておるという状況でございまして、まあわれわれとしては、にもかかわらず事前評価ということがいいというこの基本的な立場に立って、何とかこれをひとつつくり上げるために鋭意努力をしておるということは先ほど申し上げたとおりでございます。
  38. 粕谷照美

    粕谷照美君 私が伺っているのは、鋭意努力をしてるということは認めるんです。そして、環境庁自身も、もうそれをやることは当然のことだというふうに言っている。その当然のことがなぜいままでできなかったか、どこに障害があったかということを伺っているのに、信澤さんの答弁は、何とも漠とした答弁でありまして私を納得させていただけません。たとえば具体的にこうこうこういうところに問題があったということにはなっていないじゃないですか。世間にはもう通産省や建設省に環境庁が軽くあしらわれたと、こう言われているんですからね。しっかりした態度を今回は見せていただきたいと思うわけです。そして、本当にそれは出せるという見通しがあるのかどうなのかということについても、鋭意努力をいたしておりますでは私は納得できません。その辺についての長官、もう一遍見通しをお伺いします。
  39. 山田久就

    国務大臣山田久就君) われわれは、もう先ほどから繰り返して申し上げておるように、まとめてこの国会に出すということで努力しておると言う以上に、ちょっといまのところ、より以上はっきりと、見通しとおっしゃられても、これはまあ努力をしていると言う以外に、ちょっとなかなか適当な言いようがないので、そこら辺のところはどうか御推察いただきたいと思います。
  40. 粕谷照美

    粕谷照美君 所信表明のあれとはもう全然違うじゃありませんか。法律の番人になってがんばりますと、こう言われた長官のいままでの態度は、何かぐずぐずっと崩れ去ったような感じがしてなりません。  そうすると、今回の国会には提案できないということもあり得るというふうに長官の見通しが立っていると理解してよろしいんですか。
  41. 山田久就

    国務大臣山田久就君) いや、そんなことはございません。私はこの国会にこれをまとめ上げて何とか出したいということで言っているわけで、(「去年のいまごろもそんなことを言っていたよ」と呼ぶ者あり)何だ、おまえ変な見通しを言ってまただなんて言われてもあれだから、まあこれ、警戒しているといえば警戒しているのですけれども、率直に言って。やりたいという方針でやっているんだということ、まあここら辺のところでひとつ御理解いただきたいと、こういうのが私の訴えでございます。
  42. 粕谷照美

    粕谷照美君 私はあと一分しか時間がありませんから、もうほかの質問もやめましてそのことに終始をしたいと思いますけれども長官、それではまた同じわけですよ。いま不規則発言がありましてね、去年のいまごろもそんなことを言われておったなんて。まあ山田長官ではなくて去年のいまごろの長官が、環境庁がそういうことを言っておられたんだと思いますけれども、非常にもう情けない話だというふうに思います。断固としてがんばるという決意のほどをまず最初にお伺いいたしまして、見通しについては、とにかくこれからも私ども質問をしていきますのでやめますけれども長官の本当の決意をお聞かせください。
  43. 山田久就

    国務大臣山田久就君) もう繰り返しですけれども、この基本方針はあらかじめの環境影響評価というものが望ましいと、そういう点でございまするから、したがって、ぜひこいつをでっち上げていきたいという私は決意で、一生懸命になってやっているわけで、その点はひとつ御理解いただきたいと思います。
  44. 粕谷照美

    粕谷照美君 まあでっち上げていきたいはちょっと問題がある決意表明だというふうに思いますけれども窒素酸化物の問題にしても非常な問題点があるわけですしね。いつも圧力に負けるような環境庁長官であってはいけない。ぜひとも各省庁にとにかく全力を尽くして当たりまして、この問題点が出せるように努力をお願いをいたしまして、私は終わります。     —————————————
  45. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) この際、先般当委員会が行いました瀬戸内海地域の実情調査のための委員派遣について、派遣委員報告を聴取いたします。矢田部君。
  46. 矢田部理

    ○矢田部理君 委員派遣の報告を申し上げます。  去る二月六日から八日までの三日間、久次米理事、原理事、田代委員、粕谷委員、坂倉委員、中野委員、沓脱委員、柳澤委員及び私矢田部は、PCBの保管状況とPCBの処理対策、瀬戸内海水質汚染、赤潮被害の状況とその対策、本四架橋児島坂出ルート建設計画に伴う環境保全対策等の諸問題につき実情調査を行うため、兵庫県、岡山県、香川県を視察いたしました。  二月六日は、高砂市文化会館において県側から、兵庫県の公害環境問題につき説明を、また、住民側からは、PCB、赤潮対策等に関する陳情を聴取した後、鐘淵化学工業株式会社高砂工場及び高砂西港を視察いたしました。  二月七日は、岡山県庁において岡山県の公害環境問題につき説明を聴取した後、本四架橋計画に伴う環境問題及び瀬戸内海水質汚染状況調査のため、児島・坂出海域を海陸より視察いたしました。坂出番の州工業地帯におきましては、アジア共同石油株式会社坂出製油所を視察いたしました。  二月八日は、赤潮による漁業被害等の実情調査のため、香川県引田町を訪問し、引田町当局及び漁業関係者より説明を聴取いたしました。  以上が今回の調査範囲の概要であります。  次に、今回の調査で問題と思われる四つの点を報告し、これに対する政府の善処を要望したいと思います。  まず第一は、PCBの保管と処理の問題であります。  現在回収されました熱媒体用液状廃PCBは、鐘淵化学工業高砂工業所の三つのタンクに五千四百九十二トン保管されております。このほか、同工業所には百七十台のコンデンサー、一万六千本の運搬のために使用されたドラムかん等が、また県下の事業所には四百一トンの感圧紙が保管されております。高砂工業所の保管PCBの監視につきましては、保管者である鐘化が毎月一回自主検査をしているほか、県は高砂市消防本部との共同検査を含め、年六回以上の検査を実施している。タンクの耐震性については、直径三百ミリ、長さ十三メートルのパイルを百二十本、岩盤に突き当たるまで打ち込んだ上に設置してあるので、震度七程度の地震にも耐えられるものである。また、万一に備えて予備のタンクを一つ持っており、ポンプで移送する。防油堤は約六千立米の能力があるので、三つのタンクがすべて漏れた場合でも対応できる。タンクの周りにつくった防油堤の中にたまった雨水は活性炭を通してろ過しているので問題はない等の説明が会社側からありました。しかし、兵庫県としては、住民の不安を取り除く意味からも、液状廃PCBにつきましては、昨年十月設置された国の液状廃PCBの洋上処理調査研究委員会の結論を待って早急に処理したいとのことでありました。政府としては、二次公害を起こさないよう焼却等の処理方法を早急に確立するとともに、県下の事業所に保管されております感圧紙等についても処理方法を検討すべきであります。  第二は、高砂西港のヘドロ処理の問題であります。  高砂西港のPCBヘドロ除去事業は、第一期工事が昭和四十九年九月二十七日から五十年三月十九日、第二期工事が昭和五十年八月十八日から五十一年八月十三日までとなっており、すでに工事は完了しております。しゅんせつしたヘドロの量は三十五万立米、それに含まれる推定PCB量は六・八ないし十トンでありますが、現在六万平方メートルの埋立地にアスファルト工事で封じ込めており、水質の検査を二カ月に一回行っているが、PCBは検出されていないとのことであります。  しゅんせつに要した総事業費は四十一億二千九百万円でありますが、ヘドロのしゅんせつを請け負った株式会社竹中工務店、東亜興発株式会社両者へ支払われた額は十五億九百万円であり、残りの二十六億一千九百万円が未払いとなっております。  当該しゅんせつ事業の費用負担問題については、昭和四十九年九月五日、県、高砂市、関係企業——鐘淵化学工業株式会社、三菱製紙株式会社、三菱重工業株式会社、武田薬品工業株式会社の四社による六者協議会を設置し、四十九年十月五日には六者協議会の合意により、公正な第三者機関として費用負担委員会を設置、五十年十二月二十日、費用負担委員会は各社の分担率を鐘淵化学一〇・二ないし一五・四%、三菱製紙八〇.一ないし八五・九%、三菱重工一・五ないし二・一%、武田薬品二・四%と報告し、三菱製紙を除く三社は了承しましたが、同社はメーカー責任が加味されていないとして報告を了承するに至らなかったとのことであります。現在三菱製紙が鐘化を相手方として、損害賠償等の支払いを大阪簡裁に調停申し立てをしているところであります。県としてはその結果を見守りたいとのことでありました。  当該しゅんせつ事業公害防止事業事業者負担法によらずに行ったものであります。昨年の最高値でPCB一三六九PPmを記録している延長六百メートル、幅員三十メートルの大木曾水路のPCBヘドロの除去の問題が残されております。政府としては、今後のヘドロ処理に当たっては、公害防止事業事業者負担法の適用をも含めて、このような事態に至らないよう万全の施策を講ずべきであります。  第三に、本四連絡橋児島坂出ルート計画に伴う瀬戸内海地域の環境保全の問題であります。  政府は、昨年四月、児島坂出ルート本四連絡橋の当面早期完成を図る一ルートとして内定し、同年十一月、第三次全国総合開発計画においてこれを正式に決定しております。  本四連絡橋事業計画の概要は次のとおりであります。  すなわち、本ルートは、道路・鉄道併用橋とし、道路単独部は、一般国道二号線バイパスと連結される岡山県側の早島インターチェンジを起点に、これより南下して、倉敷市下津井付近から、櫃石島、岩黒島、羽佐島、与島、三ツ子島等の島嶼部、坂出市番の州の埋立地を経て香川県側の一般国道十一号線バイパスに連結される坂出南インターチェンジに至る総延長約三十八キロメートルの路線であります。  鉄道単独部は、倉敷市南部から道路・鉄道共用部を経て香川県宇多津町に至り、東西に分岐して国鉄予讃本線坂出及び丸亀方面に連絡する総延長二十八キロメートルの路線であります。  道路・鉄道共用部は、道路が上部、鉄道が下部の二層構造で、倉敷市大畠において併用区間となり、神道山の東側山腹から鷲羽山の西端付近にかけての山地部を通り、櫃石島等の島嶼部を経て四国側坂出市番の州に至る、総延長約十三キロメートルの路線であります。  これに要する総事業費は、五十年度価格で約六千九百億円となっております。  本四連絡橋公団は、環境庁の「児島坂出ルート本州四国連絡橋事業実施に係る環境影響評価基本指針」及び運輸省、建設省の「本州四国連絡橋(児島坂出ルート)に係る環境影響評価技術指針」に従い環境影響評価実施し、すでに昨年十一月から十二月にかけて岡山県の六会揚で説明会、十二地区で懇談会、また香川県の六会揚で説明会、七地区で懇談会を開催し、三週間にわたり環境影響評価書案を住民に縦覧しておりますが、公団にはすでに岡山県側住民から六十八種類、香川県側住民から四十二種類、合計百十一種類の意見が提出されております。  また、岡山、香川両県及び関係市等からもすでに環境影響評価書案に対する意見書公団に提出されております。  意見書の主なものについて御報告いたします。  まず第一は住民意見であります。  七百項目百十一種類の意見の約半分は路線の変更、側道、防音壁の設置等構造の変更に関するものであります。残りの約半分は、環境影響評価内容に関するものでありますが、その概要は次のとおりであります。  (1) アセスメントそのものに関しては、環境影響評価を第三者機関が行うべきである。  説明会は専門的過ぎてわかりにくい。  評価項目については社会的な変化についても評価すべきである。  (2) 自然環境の保全に関しては、切り取り面の土砂の崩壊防止のために現地に多い樹種で復元を図るべきである。  (3) 自然景観に関しては、新しく橋ができることにより新しい景観がつくり出されるとしているが、評価の仕方としては主観的に過ぎる、もっと客観的な評価をすべきである。  (4) 大気に関しては、NO2の予測は局地的要因、地形的要因を加味した評価を行うべきである。  瀬戸内海に多い霧、夕なぎの発生時のNO2の評価を行うべきである。  道路に面する地域のNO2については、WHOの専門委員会が公衆の健康を守るためのガイドラインとして示した値、「NO2の一時間値が月に一度を超えて出現してはならない値〇.一〇ないし〇・一七PPm」を予測結果の評価に用いているのは疑問であり、慎重にすべきである。  (5) 自動車騒音に関しては、中央値を基準に規制することになっているが、住民の生活環境の保全の見地からは高い値の方を低減させる必要がある。  騒音の予測の基礎として一日当たりの自動車交通量四万八千台を用いているが、これを超えることも考えられる。その場合は車線制限等の交通規制をする必要がある。  (6) 鉄道騒音に関しては、既設の在来線規格鉄道の騒音レベルを環境保全目標としているが、新設される鉄道であるので、新幹線の騒音基準で対策を立てるべきである。  (7) 鉄道振動に関しては、岡山県及び香川県内の計画路線と類似した地質及び構造を有する既設鉄道の振動レベルを基準としているが、路線建設予定地の地質に適合した他のより条件の悪い路線の実測値でやるべきである。  (8) その他として、代替地を確保してほしい。  工事中の苦情処理のための窓口をつくってほしい等でありました。  次に、岡山、香川両県の意見でありますが、岡山県からは、  (1) 生活環境について、窒素酸化物等大気質に係る環境汚染については、その予測手法等が十分に確立されているとは言いがたい面があるので、今後の継続的な調査検討とともに、新たな知見が確立された場合は再検討を行うなど、供用時の環境基準を守るための最善の努力を続けられたい。  (2) 自然環境、景観について、工事に当たっては、地形、地質等の詳細な事前調査とともに、動植物等の貴重種の保護・保存を図るため、地元専門家の指導を受け、工法等に細心の留意を払われたい。  (3) 公害防止に関する協定の締結について、現時点では予測し得ない事項及び予想外の問題点等に適切に対処し、供用時の環境基準を守るため、着工に当たり、本県と公害防止に関する協定を締結することとされたい。  (4) 住民意見の尊重について、環境影響評価書案の周知手続を通じて寄せられた住民意見に対して、これを尊重し、適切に対処するとともに、今後工法協議等に伴う要望についても誠意のある対応を行い、適切な処置をされたい。  (5) 稗田地区について、環境影響評価書案によるルートのうち、稗田地区について再検討し、ルートを確定すること。  香川県からも同様に、生活環境自然環境住民意見の尊重等について意見が出されておりますが、このうち、自然環境につきましては、  (1) 自然の状態で保持されている海岸、島嶼部のウバメガシ、トベラ群集、花樹岩の風化露頭及び三ツ子島周辺の片状ホルンフェルスは、貴重な自然でありますので、工事に伴う改変量の最小化に努めること。  また、島嶼部の当該植生及び自然海岸は、鳥類の繁殖地及び中継地としても重要であるので、その失われる植生の復元・造成、残土処理地の選定等、その保全に十分配意すること。  (2) 三ツ子島と番の州間の海底におけるナウマンゾウ及びシカ等の動物の化石については、橋脚工事に伴う掘削を最小限度にとどめるよう十分留意するとともに、発掘された化石について適切な処置すること。  (3) 自然改変地の緑化については、改変地の表層土を努めて活用するほか、当該改変地の現存自然植生、潜在自然植生を考慮した樹種等を用いるように努めること等となっております。  公団側からは、木見から岡山駅までの鉄道路線約二十キロメートルは、運輸省の承認がまだ得られていない。  架橋による船舶のレーダー等電波への影響については、専門家に予測、評価を依頼している。また、環境庁基本指針には、必要ある場合公聴会を開くとなっているが、これまでの説明会等で十分であるので、改めて公聴会を開くつもりはない等の説明がありましたが、国としては、住民意見関係県等から出された意見等については十分尊重し、今後も住民の意向を積極的に聴取する等、自然環境の保全、生活環境の保全等に万全を期す必要があります。  第四に、瀬戸内海における赤潮被害とその対策の問題であります。  昨年八月、播磨灘に発生した悪性のホルネリアによる赤潮被害は、昭和四十七年七月発生した赤潮被害に次ぐ規模となり、ハマチの大量死等瀬戸内海漁業に重大な被害をもたらしたのであります。  その被害状況は、香川県ハマチ百八十四万六千尾の斃死、被害率八八%、被害額十八億七千万円、徳島県の百十四万三千尾、被害率八二・八%、被害額九億五千万円、兵庫県三十二万六千尾、被害率二二・七%、被害額二億八千万円となっております。今回視察いたしました香川県引田町におきましては、昨年八月二十七日から二十八日にかけて、急激に大量のハマチが斃死をいたしております。  昭和四十七年の赤潮発生のときは、七月上旬に東讃海域に赤潮被害が発生し、その後半月の間、徐々に西へ移っていったのでありますが、昨年の場合は、強い毒性を持ったホルネリアが発生したため、数日の間に引田、相生等六漁協、八十一経営体、百四十五名が、先ほど御報告いたしましたような甚大な被害をこうむったのであります。  引田地区は、昭和の初期から安戸池等においてすでにハマチの養殖を行っており、日本におけるハマチ養殖の発祥の地である。また、潮流、潮汐、沿岸の地形等の点から養殖場として適しているが、その反面汚濁物質が滞留しやすい環境にあるとのことであります。  当該地域のハマチ養殖の方法は、一辺五ないし六メートル、水深四ないし六メートルの網で囲った小割り式の方法で行っておりますが、昨年八月発生しましたホルネリアは、水深十五メートルくらいの深さまで発生したため、多量の酸素を消費する回遊魚でありますハマチは、酸素不足あるいはホルネリアがえらに詰まる等により、多量に斃死したものであります。  このような深刻な赤潮被害の事態に対処するため、香川県では、昨年十月一日、県、県漁連、学識経験者、漁協代表からなる香川県赤潮対策協議会を発足させ、五十三年度漁業養殖にかかわる対応策を打ち出しております。  その主な内容は、第一に、適正養殖の実施であり、赤潮に強く、市場性の高いタイ、チヌ、スズキなどの魚種を選定して、ハマチとの混合養殖を推進する。  第二に、過飼料による自家汚染防止を図るとともに、飼料の効率化を図るため自動えさやり器等の開発を図る。  第三に、過密養殖をやめさせるために、月末ごとに各漁協に養殖数量を報告させる。  第四に、現在養殖場は潮流の遅い、潮が滞留しやすいところに設けられているため、海中の酸素不足、環境汚染が見られる。これを回避するため、漁場を交代する輪番使用や海底耕うんを実施する。  第五に、赤潮の発生と同時に安全な場所へ移動させることのできる金網式小網を採用する。  第六に、一部倒産する漁家も出ているので、能力に合った経営をさせるように指導する。  第七に、万一の際の経営安定化のために、共済制度へ全員加入させる。  第八に、五十三年四月一日から県に常時赤潮対策本部を設置するとともに、各漁協単位で各地に対策本部を設置させる。  第九に、毒性の強いホルネリアに重点的に取り組み、漁協の組合員を集めて顕微鏡でのホルネリア識別研修会を実施する。  さらに、同協議会では五十三年度も検討を続け、潮流の速さ、水深等をもとにして、適正養殖数の基準づくりを行う等であります。  また、現地の漁業関係者からは、赤潮被害による二年物ハマチ一尾の費用が二千五百円かかっているが、ハマチ養殖共済保険からは一尾当たり千七百七十六円しか支払われていないので、せめて二千円くらいに引き上げる等、国の掛金の引き上げを図ってほしい。また、五十三年の着業資金の確保のため融資の面でも特段の配慮をお願いしたい。  赤潮発生機構等を解明するために、国立の瀬戸内海環境科学総合研究所を引田町に設置してほしい等の要望が出されました。  瀬戸内海全域の水質改善を図るため、排水中の汚濁物質の総量規制の早期実施、下水道整備の促進及び処理技術の開発、実用化、赤潮発生の一つの要因と見られている燐の規制、赤潮発生機構の解明を図るため、総合的な研究体制の確立を図る等、国として今後とも万全の施策を講ずる必要があることを痛感いたしました。  以上簡単でございますが、報告いたします。  なお、関係県等から出されました要望書等を、別途報告書として、会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますので、委員長がよろしくお取り計らいくださるようお願いいたします。  以上でございます。
  47. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいま矢田部君からありました要望書等の取り扱いについてお諮りいたします。  関係各県から提出されております要望書等は、本日の会議録の末尾に掲載いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいます。  派遣委員報告はこれをもって終了いたしますが、本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。     —————————————
  49. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 引き続き、山田環境庁長官所信並びに昭和五十三年度環境庁関係予算について質疑を行います。
  50. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 私、きょうおおむね時間の許す限り、地盤沈下の問題、それから水質保全の問題、赤潮対策、この三点についてお伺いをする予定でありますが、いま長官がお見えになっていません。そういう意味で、若干順序を変えて御質問を申し上げます。  その前に、先ほどの粕谷先生の御質問に対しまして信澤さんがお答えになっているわけでありますが、住民意見を十分に尊重をしなければならぬという問題は、いま瀬戸内の調査に行きましたところの報告の中でも、県側も十分にそれを配意するようにという立場が明らかにされておるわけでありまして、もう少し姿勢を正していただいて、十分にその意見を取り入れていただくように、これは言いっ放しになりますが、私からも要望を申し上げておきたいと思います。  そこで、赤潮の対策の関係でありますが、いまの瀬戸内の調査にも絡むわけでありますけれども、たとえば香川県の要望書等を引用してまいりますと、一つは、「排水規制の強化並びに赤潮対策の確立について」の項があるわけでありますが、この中で、「富栄養化対策としての窒素、燐の規制基準の設定及び処理技術の開発」が強く要請をされておるわけであります。これは香川県も同じでありますし、同時に兵庫県側からも提起をされておるわけであります。この窒素、燐の問題につきまして、これは昨年の八十二回国会の中でも相当やりとりが行われておるわけでありますが、環境庁としてこの窒素、燐の問題に対してどういう今日的な態度なのか、まずお伺いをしたいと思います。
  51. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 窒素、燐の関係でございますが、実はこの赤潮の発生のメカニズムといいますか、機構、これは十分解明されておらないわけでございますが、いずれにいたしましても、赤潮発生の要因物質として、栄養塩類というものがあるということはこれは否定できないわけでございます。で、その栄養塩類といたしまして、ただいま先生からお話しございました窒素、燐があるわけでございます。したがいまして、この窒素、燐を除去するといいますか、そういう角度で富栄養化の防止ということを考えていくということが必要なわけでございます。ただ、この窒素、燐といいますものは、これは一つの栄養塩類でございまして、生物にとっては必要なものでございます。さればといって、多くなりますと、これが先ほど言いました、赤潮生物が異常に発生するという一つの要因にもなると。したがって、物そのものは汚濁物質でも有害物質でもないわけでございますが、多過ぎるといろんなひずみが出ると、こういうものでございます。したがいまして、これの排水基準というようなものをつくってくれという要望があるわけでございますけれども、これはどの辺にそういうものを目安に置いたらいいかということは、なかなかこれはいろいろ科学的知見といいますか、そういうものも十分でございませんし、また判断の分かれるところでございます。  それからもう一つは、そういうことが万一わかったにしても、技術的に削減ができるのかという話になるわけでございます。で、窒素と燐と二つございますが、窒素につきましては、これは技術的にも削減の可能性といいますか、この辺がまだ立っておりません。これは窒素固定といいますか、大気中にもございますし、そういうような窒素固定の問題等もありまして、なかなか技術的にこの削減のめどは立っておりません。ただ、燐の方につきましては、やや削減の技術の実用化の見通しが立ってまいっております。したがいまして、排水基準というようなものはまだ設定することはむずかしいというふうに考えますが、何かその排水のガイドラインというようなものを燐については考えられないものか。なお、あわせて、環境水であります公共用水域の環境基準というようなものも、何かめどとしてガイドラインがつくれないものかというようなことで、従来は燐とか窒素の、瀬戸内海なり伊勢湾なりの、どのぐらい流入してきてどのぐらい出ていくのかというような収支挙動調査等を五十二年度までやっておりましたけれども、そういう調査のほかに、五十三年度から燐についての環境ガイドライン、それから排水処理技術のガイドラインの策定、調査に取りかかっていきたいというふうに考えております。
  52. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 こういう立場の中で、たとえば「播磨灘を守る会」、これでは、問題として注目をされますのは、「多量の工場排水中に含まれた窒素・燐による海水の富栄養化」、さらにはまた「合成洗剤の大量使用・農薬の」——これは燐有機物を指すわけでありますが——「大量散布」の関係、これらが明らかに一つの要因として大きく浮かび上がっていることは事実であります。また、香川県側から公式に私どもにいただいた資料によりましても、「窒素、燐の排水基準の検討、合成洗剤の適正使用の徹底、下水の三次処理の検討」、こういう具体的な課題が提起をされておるわけでありまして、ぜひ、それらを含めて、私は環境庁としても早くこれの一つの対策といいますか、基準というものについて設けていっていただきたいというふうに考えるわけでありますが、特に、二月の八日に、愛知県の水質審議会富栄養化部会というのがありまして、これが中問報告を行っているわけであります。この中間報告によりまして、海水汚濁に占めるところの燐、窒素の影響というものは、赤潮発生の大きな原因になっていると、こういう立場でさらに調査研究を進めていくということにしておりますが、この因果関係につきまして、さらに環境庁としても十分にひとつ解明をしていっていただきたい、こういうふうに考えるのですが、よろしいですか。
  53. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) ただいま先生から、愛知県の水質審議会の富栄養化部会の中間報告等を例にされまして、窒素、燐と赤潮発生との因果関係、こういうものにつきまして究明をすべきではないかというお話でございます。もちろん、この愛知県の水質審議会の部会の中間報告にまつまでもなく、赤潮によります諸般の被害、これは先ほどの委員派遣報告にもございましたように、四十七年の大規模赤潮の発生によります被害あるいは昨年の八月の被害等々もございまして、従来からこの赤潮の発生機構、こういうものの究明というものが、環境庁なりあるいは水産庁なりそういうところでの一つの大きな課題になっておるわけでございますし、またその面については積極的に取り組んでまいったつもりでございます。ただ問題は、非常にこれは複雑でございます。先ほども申しましたように、赤潮発生といいますものにつきましては、一つは栄養塩類でありますN、Pというようなものが、これが一つの要因になっておるわけでございますが、そのほか鉄、マンガンとかという成長促進剤的な要因もございます。それにさらに気象・海象が重なるわけでございます。塩分濃度がどうとか日射がどうとか水温がどうとかというようないろんな諸般の条件が重なりまして、それでプランクトンの異常発生というのに好適な条件になったときにぽっと発生をする、これが赤潮だと、こう言われるわけでございます。しかも、赤潮生物というのはこれはまたいろいろございます。先ほども委員派遣報告にございましたように、引田町で発生しましたのは、これはホルネリア属でございます。ノクチルカとかスケレトネマとかいろいろこれございまして、相当の赤潮生物の数になっております。ですから、この赤潮がどう発生するかという機構につきましては、精力的にいろいろ研究者にもお願いをして総合的に詰めておりますけれども、なかなかこの解明がむずかしいということでございます。ただ、問題は、先ほども申し上げましたように、この赤潮発生というものの一つの基礎要因として窒素、燐というものが作用しているということはこれは否定できない。これは否定できないというのが通説になっております。その点はそういうことでございます。今後ともこの赤潮の発生の解明といいますか、この面につきましては努力していきたいと、かように考えます。
  54. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 特に、環境庁直接じゃなくてあらゆる分野でこの赤潮の検討が行われておるわけでありますね、自治体も含めまして。したがって、そうしたところの調査結果等も当然重視をしていただきまして、相当積極的に環境庁として前に出ていただかないと、私は環境庁としての役割りがないと思うんです。  いま、もうすでに、大体言われましたように定説化してきている向きがあるんですね。ただ量の問題だと、こうなってきているわけでありますから、それらについてもっと進んだ私は対策というものが行われていかないと、大騒動になってから、実はこうでしたという話じゃこれは追っつかないわけでありますから、ぜひその辺を踏まえてもらいたいと思います。  そこで、特に燐に大きく関連をしてまいりますのが、先ほど少し触れましたように、合成洗剤の関係であります。これは御承知のように、燐が主成分でありまして、したがって、これについてある程度燐を減らしていくような規制と指導——指導の中で行われておることについてはこれは承知をしているわけであります。しかし、現実問題として、私の出身地であります三重県等におきましても、たとえば県漁連では合成洗剤については追放しよう、あるいは海岸部の地方自治体の幾つかが合成洗剤を使用しないようにという立場の決議まで行っている現状であります。したがって、これらに対して、少なくとも私はいままでも問題になっておりますこの洗剤等について、むしろ問題があるというのなら当然その問題についてチェックをしていく立場というものが必要なんじゃないだろうかというふうに思うわけであります。私がきわめて疑惑を持ちますのは、たとえばこの「日本石鹸洗剤工業会リポート」四の一九七五、ナンバー二〇、この中に、「富栄養化と合成洗剤の消費量の増大とは関係がないというのがイギリスの見解です。」と、こういうところまでわざわざ引き出しまして宣伝をしている。問題がありという一つの観点があり、片方ではそれは大した問題じゃないんじゃないかと、こういう見解がある。すべて世の中はそういうふうに進んではいきますけれども、少なくとも、問題視をされた場合に、これは問題がないんですよと断言をして、それを宣伝にまで持ってくる形については、私は大いに問題がある、そのこと自体に。しかも、そうした問題について、私は環境庁としては一つの責務が発生をしていると思う、これらに対しましてね。一番心配をいたしますのは、そういう業界の方では、私のところのつくっているものは問題はありませんよという形で押し込んできて、何かしようとしたときに圧力が加わらないのか、その圧力に負けておるんではないのかという観点が私が一番心配をするところでありますから、先ほどの長官粕谷先生質問に対する態度の問題だとか、幾つか見ておりますと歯切れがなかなかよろしくない、こういうところも誤解を求めることになりますし、ぜひそうした観点についてはこれから明確に対処をしていってもらいたいというふうに考えるわけであります。  それで、具体的に提起をいたしますのは、ともかく今日それぞれの、現に生活をしている人たちが中心になり、しかも専門に研究をしている人たちが、これは問題じゃないのかというふうに指摘をしている形の中で、非常に大きな役割りを持つこの洗剤の関係であります。いままで種々洗剤の問題については論議をしてきたところでありまして、したがって、私はそういう問題のものについて、製造過程からチェックをしていく体制というものが必要なんではないのかというふうに考えるわけですが、その辺のお考え環境庁として今日どうなんでしょうか。
  55. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 先ほど来燐の問題が出ておるわけでございますが、この燐の発生源といいますものが非常に多岐にわたっております。ただいま先生からお話しございました合成洗剤、これには燐酸塩が含まれておりまして、家庭で消費した後、家庭雑排水という形で、川を通じて海に流れ込むというのがございます。合成洗剤のほかにもちろんいろいろな工場から、燐酸肥料工場なりその他の工場からも出ます。それから田畑に燐酸肥料等をまきます。これからも若干は出ると思います。人間の屎尿、家畜のふん尿、これからも出るということで、この燐の発生源というのは非常に多岐にわたっておるわけです。したがいまして、今後燐を削減をするというようなことでいろいろお願いをする際は、合成洗剤はもとよりその他の面についてもいろいろお願いをしなければ効果が上がるまい、総合的にやらざるを得ないものであろうと、こう思っております。  それはそれといたしまして、合成洗剤についてのお尋ねでございますが、合成洗剤につきましては、これはビルダーといたしまして、要するに補助剤といたしまして燐酸塩を加えております。これは合成洗剤がさらさらして固まらないという効果がもちろんございます。その他洗浄能力を高めるとか、一度出た汚れがまた衣服に再度付着しないというような効果があるというようなことで、燐酸塩が補助剤として使われておるわけでございます。ただ、これが先ほど言いましたように、燐の大きな発生源になるということでございますので、富栄養化対策という角度から、かねてから通産省及び先ほどお話のございました石鹸洗剤工業会等に対しまして燐酸塩の削減について要請をいたしております。その結果、従来は二〇%程度含まれておったものが五十年の一月から一五%以下、五十一年の一月からさらに一二%以下というようなことで、業界として自主規制をやっておるわけでございます。さらに、これを今後また下げてくれということで強く要請をいたしておりまして、現在通産省及びこの工業会におきまして、さらにどう削減するかということをいろいろ検討をしておるということでございます。したがいまして、その削減につきまして、いろいろな規制といいますものは、先ほど燐について申し上げましたように、一般的な規制基準というものはまだつくれませんものですから、これは削減の要請ということにならざるを得ないと思っております。ただ、先生からのお話で、製造過程等のチェックというものをやってはどうかというお話でございますが、環境庁の方としては、むしろこの排出されます水質の問題といいますか、そういうことで考えますので、むしろ製造工程に直にどうするというわけにもまいらぬかと思います。ただ、先ほど言いましたように、燐酸塩を極力減らしたかっこうでの製造をしてくれぬかと、こういう要請というものはこれはやりますし、また所管省の通産省としては、その要請のみならず、これは所管省でございますからいろんな製造工程等の面について立ち入ったことはやろうと思えばやれるということはあろうかと思います。環境庁としては、むしろ通産省、業界、これに対して隣酸塩の削減をお願いする、こういうことではなかろうかというふうに考えております。
  56. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 環境庁の従来の一つの立場の中で水質の問題、いわば排出をされてきた問題をとらえてということでありますが、長官所信表明によりますと、「私たちが今後取り組んでいかなければならない問題として、私たちの日常生活にかかわりを持つ諸方面、すなわち、生産、消費その他の社会的諸活動のさまざまな要因を含め、より快適な、自然とも調和した人為的な環境をつくっていくことがあります。」、こう述べられているんです。したがって、排出をされてきたものは私どもの立場だけれども、ほかの分野はそれは違いますよと、これは通産省でございますよという言うてみりゃ開き直りはね、私は、この大臣所信表明からいって、まさにこれはけしからぬ話じゃないかと思います。そこに、環境庁の、今日までせっかく環境庁がつくられて、なおかつ国民の目から見ますとどうかしておるんじゃないのかと言われる私は問題があると思うんです。しかも、これは経済企画庁——調査目的が違いますけれども、二月の十七日の日に、消費者被害調査、この調査結果というものが発表されていますね。この調査結果によりまして、商品の被害の関係について、人命、身体に関係をする、こういう形の中で、第一位が化粧品、第二位が洗剤だと、こういうはね返りを同じ政府の立場であります経済企画庁が発表しているわけですよ。そうしますと、ただ単に赤潮対策という立場だけではなくって、個人の消費生活そのものにもこの洗剤の問題が実は提起をされてきている、そういう関連が実はあるわけであります。  したがって、私はただ単にこの水の問題として取り上げるんではなくって、環境庁の性格からいけば、そうした全般的な物の見方、しかも私は長官所信表明にあるこの考え方というのはきわめて正しいと思っております。その表明をされたそのことを大きく私は実行してもらいたい、こういうふうに思うんです。これは分野が違うだとか、それはよその問題だとか、そういうのじゃなくって、ぜひ全体の生活環境をどうやっていくのかというところまで進めて、ひとつ対策方をお願いを申し上げておきたいと思います。  余り突っ込んでやっていきますとほかの問題触れられませんから、ぜひいま申し上げました姿勢を堅持をしながら、これらについての対策を、さらにひとつ環境庁としては追求をしていくことをお願い申し上げておきたいと思います。  次に、地盤沈下対策について触れたいと思うのでありますが、この所信表明の中に地盤沈下対策というのは全然意思表明がされていないのであります。これは述べられなかった、触れられなかったことについて、何か理由が存在をするのかどうか。私は、環境保全の観点から見て、最近地盤沈下については全体的に鈍化傾向が出てきた。したがって、そういう今日的な状況から判断をしまして、もう余り問題視をする必要がないのじゃないのかというふうに御判断をされたのではなかろうかと、こう心配をするわけであります。あるいはまた、関係省庁にある程度任せておけば、これはもう地盤沈下対策についてはいいんじゃないのか、こういうふうにお考えになったのか。私は、このいただきました資料等をながめていって、環境保全経費等の説明の中に初めて地盤沈下対策として農林省の地盤沈下対策事業費四十九億五千五百万円、通産省の工業用水道事業費四十億八千七百万円、この四行を初めて見つけただけの話でありまして、この辺について長官はいかがお考えなのか、ひとつ所見をお伺いをいたしたいと思います。
  57. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 御指摘の地盤沈下問題は、これは公害対策基本法におきましても典型的な公害一つとして位置づけられておりますし、また、他の公害と異なって、この問題は、一度地盤が沈下するというようなことになるというともとには戻らないというような特殊な性格を持ったものであると、したがって、これは環境行政の中ではきわめて重要な分野であると、こういう認識を私は持っているのでございまして、いま御指摘のような、これに触れなかったからこれを軽視しているというようなことは全くございません。このことはひとつ御了承いただきたいと、こう考える次第でございます。
  58. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 その重要なものをなぜ書かないのか。  いま全国的に見ますと、この地盤沈下の関係というのはどういうふうになっておるんでしょうか。あるいはまた、今日まで具体的にとられておるもの、工業用水法等、一応のそれに絡まる規制といいますか、対応の法律もあるわけでありますが、大まかに見て、この現況と今日までとられてまいりました対策について、これは要点をひとつ余り時間とらないで御説明いただきたいと思います。
  59. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 全国の地盤沈下の状況並びにその対策等どうなっておるかということでございますが、地盤沈下の現象、これは戦前は東京なり大阪で大いに注目されておったわけですが、戦後は東京、大阪の沈下地域がやや広がるという問題がありますとともに、新たに新潟平野あるいは濃尾平野を初めとしまして、大分全国各地に沈下が認められるようになったわけです。現在では大体地盤沈下が認められておる地域ということで環境庁の方が調査をして集計をしたところでは、三十四都道府県五十八地域というふうになっております。  それで、そういうことになっておりますが、対策としてはどういうものがあるかということでございますが、まず法制面でございますが、これは現在は建築物用地下水の採取の規制に関する法律、通称ビル用水法と言っておりますが、この法律が一つ、それからもう一つが工業用水法という、この二つが地盤沈下関係の実定法になっております。それで、ビル用水法の方では四地域千五百三十平方キロ、それから工水法の方は九地域千三百四十平方キロというものを指定して、地下水の採取の規制を行っておるということでございます。もちろんこのほかに県が条例等で規制をしているということで、最近またこの条例がふえておりまして、現在は県市町村条例合わせまして百以上の規制関係の条例が出ておるわけでございます。  それで、ただいま先生からも、農林省の方で四十数億とかあるいは通産省の方で幾らという予算の記載があるということですが、要するに規制をするということと、もう一つは、地下水のくみ上げを規制する際に、どうしても水がないと困るというところは表流水を持ってくるという必要が出てまいるわけでございます。そこで、たとえば工業用水道というようなものを通産省で、よそから表流水を持ってきまして、それで水を供給するので、いま地下水をくみ上げていたのをストップするというようなことで、その関係予算がただいま先生がおっしゃられたような予算になるわけでございます。そういうことで、代替用水の供給事業なりあるいは一たん沈みましたところに高潮が来ると大変であるということでの堤防のかさ上げの事業なりという各般の事業が行われておるということでございます。
  60. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 いま聞くところによりますと、地盤沈下防止——名前はどうなりますかわかりませんが、その法律案の準備が行われているというふうに聞いておるわけでありますが、これは一体いつ成案をされ、提出をされる予定になっておりますか、お伺いをしたいと思います。
  61. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 実は、環境庁といたしましては、四十九年の十一月に中公審から答申をちょうだいいたしまして、自来、総合的な規制立法を提案すべく、すでにもう五十年のころから案文はできております。で、現在に至っておりますが、その提案はあきらめておりません。  ただ問題は、環境庁は総合規制立法という角度で、典型七公害一つであるという意識で総合立法をやりたいというふうに考えておりますが、他面、法律を出したいという省がたくさんございます。一つは国土庁、これは地下水保全及び地盤沈下の防止に関する法律というのを出したいということで、これは水資源の角度並びに国土保全の見地から国土庁として出したいということでございます。それから建設省でございます。建設省は地下水を公水と見て、いまは民法上私水になっております。これをむしろ公水にして、河川水等の表流水と一体として管理をいたしたいという角度で、地下水法案を提出をいたしたいということでございます。それから通産省でございますが、これは工業用水使用適正化法案を提出をいたしたいと。これはいま言いましたような国土庁、環境庁の、この二つの総合法の姉妹法といたしまして、工業用水使用適正化法、要するに節水的なことを大いに呼びかける角度でやっていきたいという法案を出したいということでございます。したがいまして、建設省もこれは大分昔からの悲願でございます。地下水法案は悲願でございます、建設省は。環境庁は先ほど言いましたような、もう三年ぐらい前から法案はできております。国土庁もりっぱなものができております。というようなことで、皆法案はできておるんです。できておるんですが、いろいろ立場の相違といいますか、まず立脚点が、スタンドポイントが違うわけでございますので、なかなか調整がつかない。  古来水争いというものは簡単にはいかないということでございますので、まだまだ続くかもしれません。われわれとしては、これはただいま先生の出身地の濃尾などは、三十四年の伊勢湾台風と同じクラスの台風が来ますれば、あの辺は全部水浸しでございます。間違いございません。したがいまして、役所といたしましては、その辺はいろいろ立場があろうが、これは調整をして何とか早く法案を国会に出すというか、そういうふうになることを——役人が議論している間でも沈下は進んでおるわけでございます。そういう意識で根強く、あきらめずにいま調整をやっておると、こういう状況でございます。
  62. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 そこで、私はこれはきわめて重大な政府の責任だと思いますね。で、そういうような各省の今日までの努力、それはそれなりに結構でありますけれども、結局決まらなければ一番迷惑をしますのはそこに住んでる人たち、同時に日本の国全体の問題なんですよね。そうしますと、そうした経過を集約をしながら、私はどこかが主管庁になって、それらを総括的に締めくくるような立場で持っていかないことには実現をしないと思うんです。そういう役割りというのは、いままで言われましたそれぞれの省庁というのは、これは縦系列でありますから、自分の立場で物を見ていくというのはあたりまえの話ですね。環境庁の場合は、私はそれを横断をしている組織だと思っております。そうしますと、それは当然私は横断をした立場の中で、それこそ環境庁としての出番じゃないのか、こういうふうに考えるわけなんですよ。したがって、そういうことを踏まえて、長官が政治的にそうしたいままでの問題点をまとめ切って、そうしてきちっと整理をしていくという考え方に立っていただかなくちゃならない、こう思うんでありますが、この辺一体長官として、いま御答弁が事務当局からありましたけれども、それを踏まえながらひとつ明確にお答えをいただきたいと、こういうふうに思います。
  63. 山田久就

    国務大臣山田久就君) ただいまその点に触れましたが、この地盤沈下の問題は非常に重要なわれわれにとっての大きな課題でございます。したがいまして、それぞれいろいろ熱意を持ってきている点、わからぬことはありませんけれども、ひとつ調整して、一日も早くこれに対応すべく、私も非常な決意を持って臨みたいと思っております。
  64. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 それ、調整結構でありますけれどもね、やっぱり具体的にどうでしょうか、この国会で提案のできるように、長官としてひとつ腹を固めていただくようなことにできないでしょうか。
  65. 山田久就

    国務大臣山田久就君) ひとつ大いに腹をくくってがんばりたいと思います。
  66. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 長官自身がよく御承知いただいていますし、先ほども御答弁いただきましたように、本当に一度沈んだらこれはもう手当てをしましても浮かび上がらないことは事実なんですね。したがって、そういう重大な問題でありますから、それぞれの立場をさらに超越をしていただくように、ぜひともひとつ今国会に法案として提案ができるように、最善の努力を御要望申し上げておきたいというふうに思います。  次に、水質保全の対策の関係でありますが、この所信表明のちようど各論の第三に、こういうふうに述べられているわけであります。「単に生産活動に起因する排水のみでなく、広く日常生活等によるものをも含めた総合的な汚濁負荷量削減措置を講ずることが必要であり、」、ちょっと後には触れませんけれども、こういうふうに述べられておるわけですね。そうしますと、法案を準備をされておる様子等もうかがいながら判断をしてみましたときに、水質保全の立場の総量規制が一つの柱になってくると思いますね。そうしますと、この総量規制を行った場合に、総量規制の主要課題というのは、いまの長官所信表明に触れますように、いままでの規制の経過からながめていきまして、大きく生活にかかわる分野、これにウエートが必然的に——おくれておるわけでありますから——かけられてくるというふうに理解をいたしますが、これは間違いありませんですか。同時に、総量規制の課題そのものについて若干お考えをお伺いをしておきたいと、こう思うんです。
  67. 山田久就

    国務大臣山田久就君) いま御指摘のこの水質の総量規制、これにつきましては、去る五十二年の十二月九日に中公審から「水質の総量規制制度のあり方について」ということで答申をいただいておることは御承知のとおりであります。本答申におきましては、基本的な考え方は、水質の総量規制は現行の規制方式のみ、つまり濃度の規制方式のみでは水質保全を図ることが非常に困難な、汚濁の著しい特定の広域的な閉鎖性水域、この閉鎖性水域水質保全を図る、図らなきゃいかぬという、こういう観点から、当該水域に流入してくるところの汚濁負荷量の総量を一定以下に抑えるために、上流県であるとかあるいは内陸部、あるいは生活排水等による負荷を含めて、統一的かつ効果的な削減措置を講ずることが必要であると、こういうふうな考え方に立っているものでございます。  そこで、環境庁といたしましては、この答申に沿って現在総量規制の制度化を図るべく、法案を鋭意進めておるわけでございまして、ひとつ何とかなるべく速やかに成案を得てこの国会に提出したい、こういうことで準備を進めております。  まあいま御指摘のこの生活排水というもの、実は大変大きな部分が野放しになっておりまするが、われわれも特にこの下水道の整備というものを待つほかございませんので、強くこの点も訴え、また予算措置も講じておりまして、現在普及率では二四%、これが二年後には四〇%台にまで持っていけると、一つはそういうことによってこれは対応をしていくというそのステップを講じておるような次第でございます。  その他の面でも、ひとつ行政指導等できるだけいろんな点を加味して、総量規制という点での一つの方式、この導入によって所期の効果を上げたいということで成案を急いでいるようなわけでございます。
  68. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 そうしますと、今国会に一応予定どおりこの法案は提出をされると、こういうふうに理解してよろしいですか。
  69. 山田久就

    国務大臣山田久就君) そのような方針で、ただいま非常に努力中でございます。
  70. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 そこで、私が心配をいたしますのは、生活関係に触れて、閉鎖性の水域地域だけ、たとえばいままで問題になっておりますように、瀬戸内はもちろん後継ぎ法の関係もございますし、それから伊勢湾あるいは東京湾、こうしたところが関連をしてこようと思いますが、いずれにいたしましても、それらのところで下水道整備あるいは河川整備こうした関係がこれにかかわって具体的な事業計画として進んでいかなければ、これはもうどうにもならないというふうに思いますね。それからさきに赤潮の関係のときに触れましたように、さらに問題は終末処理の関係ですね。第一次、第二次はもちろんのことでありますが、場合によってはやっぱり第三次まで進めてもらいたいという気がするわけであります。私どものところで第三次まででき上がっているというのは、たとえば四日市港のヘドロしゅんせつ、それをもって埋め立てをしておりますところの埋立地に第三次処理の仕組みがございまして、これはきわめてすばらしいということで、アメリカまで技術の説明に行ったというようないきさつ等もございますけれども、ともかくこの水質保全の立場から言えば、できる限りじゃなくて、本来なら第三次終末処理まで行わないと本物にならないという、こういう状況にあろうと思います。一度にそこまでいきませんから、いずれにしてもやっぱり計画年次を組みながら進めていくということになろうと思いますけれども、今日の地方財政の状況、あるいは地方公共団体等の財政事情、こうしたことを考えていきますと、これはもう大変その事業自体に大きな問題点というものが出てくるんじゃないかというふうに心配をするわけであります。  たびたび出てきて恐れ入りますけれども、さきの瀬戸内の調査の際の香川県の要望書、これをながめてみましても、「下水道整備の重点的促進について」という項の中でこういうふうに述べられているわけであります。「産業排水に係るCOD汚濁負荷量については、瀬戸内海環境保全臨時措置法に基づくきびしい排水規制によりその半減が図られたところであるが、これに対して下水道整備の進捗は十分とはいえず、生活排水の水質汚濁に占める割合は、近年とみに高まっている。こうした瀬戸内海の現状にかんがみ、その水質改善を図ってゆくためには、生活排水対策としての下水道整備が緊急不可欠の問題となっており、その抜本的対策として次の特別措置を講じられたい。」、こうありまして、そうして一つには、「関係府県区域の緊急下水道整備地域指定及び緊急下水道整備計画の策定」、これは先ほど私が申し上げましたように、ともかく計画をし、計画に基づいて進行していかないことには、幾ら口で言っておったってこれは進まぬわけでありますから、こういう事業が必要になってくるということに関連して出てまいります。同時に、二つ目の問題としては、「事業実施に係る経費の高率国庫負担」、これを要望として挙げられておるわけです。これはもう私が長々と説明をするまでもなしに、今日の地方自治体の状況は、先ほども言いましたように、きわめてむずかしい財政状況になっているわけでありますから、当然これは高率の国庫負担という要望が出てくるのは各県とも同じであろうと思います。そうなりますと、私は先ほどの水争いじゃありませんけれども関係省庁が一致協力をしながら、そういう事業計画に結びついていかないことには、私はせっかく総量規制が法制化をされてまいりましても、こういう開きによって実効がなかなか伴っていかないというような現実が起こるんではなかろうかという心配をするわけでありますが、その辺、関係省庁との連携あるいは法案提出に至るまでに、そうした一つの根回しといいますか、これは完了しておるんだろうかどうだろうか。この辺のひとつ見解をお伺いをしたいと思います。
  71. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 総量規制制度につきましては、先ほど大臣からお答えいたしましたように、今国会に提出をしたいということで、現在法案の作成並びに関係省庁との折衝等をやっておる真っ最中でございます。  それでお尋ねは、総量規制ということになりますというと、当然、東京湾であれば東京湾、伊勢湾であれば伊勢湾、一日当たりCOD流入負荷量四百トンなら四百トン、これを将来目標年次に三百五十トンなら三百五十トンに下げていくと、こういう目標を立てるわけでございます。したがいまして、このCODの伊勢湾に対する流入負荷量一日当たり幾らというときには、これは工場から排出をいたしますCODも当然入りますとともに、生活系の排水、これからのCODの負荷量が当然その中に入ってまいるわけでございます。したがいまして、この総量規制というものの実効を期する、あるいは目標を達成するためには、工場も、それから生活排水対策として下水道も、あるいは屎尿処理施設も、それから各家庭の方にもいろいろ御協力を願いたいと思うんです。そういうことで、結局CODという汚濁を出すものすべてが削減に努力をしてもらおう、そして一定の目標量を達成しようという一つの大運動でございます。したがいまして、その際にこの生活排水のウエートというのが非常に高うございます。伊勢湾等におきましては、五十年の調査では大体産業排水と生活排水はフィフティー・フィフティーの比率になっております。したがいまして、今後この生活排水対策としての下水道の整備というものが非常に重要になってまいります。  そこで、先ほど大臣からお話しございましたように、下水道整備につきましては、現在所管の建設省におきまして第四次下水道整備計画というものを立てておりまして、これにのっとって現在整備を進めておるわけです。これは五十一年から五十五年までが計画年次でございます。その際に、五十一年度末の全国の実績が出ております。これが大臣申し上げました二四%の普及率でございます。これを第四次下水道整備計画の目標年度五十五年度末には、全国ベースで四〇%に持っていきたい、これが建設省の計画でございます。そういうことで、現在、毎年毎年予算措置を、このあれをめどにして講じながら、建設省が補助等をいたしまして下水道の整備をやっておるということでございます。  その際に、現在の下水道の整備計画といいますのは、二次処理ベースで考えております活性汚泥法で処理をする、こういうものでございます。全体で予備費を含めまして七兆五千億という金目になっております。先ほども四日市港の埋立地等において三次処理をやっておるというお話がございましたが、この閉鎖性水域におきましてはあるいは三次処理といいますか、高度処理というものも必要な面が相当あるわけでございますけれども、三次処理になりますと、大体二次処理の五割増しの経費に相なります。建設費がそうでございますが、後の維持費がまた大変というような問題もございまして、今後こういうものをどう考えていくかというのが一つの大きな課題になります。やはり現在ベースでは、一般的には二次処理がむしろ軸でやっていくということにならざるを得ないかと思います。ただ、やはり相当二次処理が進んじゃったところがさらに三次処理をやるとか、あるいは二次処理でやった終末処理場の排水が、PPmは大して高くないんですが、大量に出ますので、その地先の漁業がまいっちゃうというようなところは三次処理でもやらなくちゃならぬと、いろいろ必要な個所は三次処理も必要かとも思います。  それから、もう一つ、高率国庫負担という話もございます。これはもちろん所管が建設省でございますから、こういう補助のあれをどうするかこうするかというのも、これは建設省のやることでございますけれども、ただ、われわれが建設省ともいろいろ折衝をしておりましての感じでは、とにかく現在の下水道の補助率というものは、河川その他と大体肩を並べる段階になっておると、さらにこれを上げるというのはなかなか困難ではないかという感触は持っておるようでございます。いずれにいたしましても、相当この下水道の方は、閉鎖性水域対策という観点からも、強力に整備の方をお願いをしていく、環境庁としては強くそれは要請をしていくということでございます。そして、現在もこの総量規制の仕組み等をめぐりましていろいろ打ち合わせ等もやっておりますが、目標量を掲げて達成する際は、目標量としてはCODで幾らということは出ますけれども、そういう削減の数量を達成するには、削減の方途として生活系については下水道が大きな根幹になるということは確かに間違いございませんので、その辺の両者の間にそごのないような仕組み方を考えたいということで、寄り寄りいま詰めております。
  72. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 あらかたはいまの御答弁で理解はできるわけですね。ただ問題は、その御答弁のように現実問題として進んでいくのかどうか、ここが問題だと思います。いまもおっしゃられましたように、一例を挙げますと、生活排水の関係等になってまいりますと、いわゆるそれぞれの家庭のやっぱり協力が必要だということになりますね。工場排水の場合はそれぞれの工場の出口でもってチェックのできるものです。ところが、この生活排水の場合は、各家庭の出口で全部チェックするなんていうことは、とてもじゃないけれども不可能ですね。結果的にそれをまとめたところで、共用の部分としてここでチェックをする以外にない。これはそれぞれの住民意識の改革その他も含めて私は大変なことだと思うけれども、それはいずれにしてもやっていかなきゃならぬことでありますから、これは当然の話だと思う。当然の話でありますけれども、なかなか今日の事情の中でどこが一つの生活上の基準になるかというと、大変むずかしい問題であります。しかも、先ほどから質疑を交わしてまいりましたような、たとえば洗剤の問題等にいたしましても、どこでどういう洗剤を使うか、どの程度の量を使うか、これはまたさっぱりチェックのしようのない課題でありますね。そうなりますと、最後の施設をしてそこに重点をすべて投じ込んで、そこでチェックをする以外に方法がないわけであります。  そのことから考えていきますと、これを急がないことには、現実にもう閉鎖性水域のところでは赤潮は発生するし、水質は余りよくないしと、こういう形で今日現にあるわけですからね。一日も早くそれをよくしていかなきゃならぬ。保全ならいいんですけれども回復をしなきゃならぬのが今日の状況ですから、汚れてないものをこれから汚さないようにしていこうというんなら、私はいま御説明をいただいたことでおおむね納得をするんです。しかし、現にもういま問題になっているところは、すでに悪化をして、それを回復をしなきゃならぬというのが現状なわけですね。それだけに、特にその計画が少しでもおくれることはそれだけ被害が多くかかるということになるわけでありますから、この関係考えていきますと一歩もゆるがせにできない。建設省の方はそういうふうに計画をしてやってるんだけれどもと言うけれども、じゃあまるまる地方に負担をかけないでそれらの処理がやれるのかどうかというと、今日段階としては相当地方に負担をかけないとできない仕組みになっていますね。ここが問題なわけです。  したがって、私が申し上げたいことは、この総量規制を行うに当たって、たとえば閉鎖性水域だと、こういうと、閉鎖性のところということになれば日本でどことどことこうはっきり出てくるわけでありますから、そこに関係する各県、これもう明らかなはずであります。したがって、建設省の計画と同時に、それがずっと計画どおりに進んでいけるような対策というものは、各県を含めて、このときにはこうなりますよという形がきちっと了解工作として、成り立っておるんだろうかどうだろうか。ここまでいかないと私は完全な根回しとは言えないんじゃないかというふうに考えるわけですが、ちょっとその辺の説明いまいただいてないものですから。
  73. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 先ほど、下水道整備について、現在の第四次下水道整備計画等についてお話し申し上げたわけですが、この総量規制をやります際の仕組みの問題としては、これは十二月九日に中公審から答申をちょうだいいたしております。その答申の線に沿って法制化作業をやっておるということなんでございますが、その答申の中で、国の段階で総量削減基本方針というものを決めるというのが書いてあるわけでございます。で、この総量削減基本方針を決めます際に、当然その目標量を決めますが、その目標量を達成するためにいろんな削減の方途が出てまいるわけです。その際には下水道も出てまいります、屎尿処理施設の整備も出てまいります、あるいは浄化槽の整備もございます、いろんなものが入ってくるわけです。したがいまして、国ベースでこれをつくります際には、単なる今度の法律の仕組み方をどうするかだけじゃなしに、法律ができていよいよこれが動き出すときは、この基本方針をつくる段階で、政府として統一した、瀬戸内海はこう、伊勢湾はこうという基本方針を決めるわけですから、そこでもっと具体的な、いま私が答えているよりももっと具体的なものができると、さらにこれを今度県に示すわけでございます。県ごとに総量削減計画を決めるということになります。で、これも達成の方途を決めますから、県の段階で下水道を、三重県であればどこの下水道をどこからどうするとかいう公共下水道、流域下水道の整備の問題がそれに絡んで入ってまいるということで、そこが逐次こう下水道整備計画とこちらの総量削減計画の削減の方途という形での施策とが整合しないと、これはおかしな話になるわけでございます。まあ物の考え方としては、そういう整合するような角度でのいろんな仕組みをいま考えており、それをベースにして法案づくりをやっている、関係省ともいろいろ話し合っている、こういうことでございます。
  74. 坂倉藤吾

    ○坂倉藤吾君 時間が来たようでありますから、まだ不十分な点がたくさんありまして、私自身もすとんと落ち切っておりませんけれども、法案の審議の際にさらにまたお聞きをいたすことにいたしまして、そうした各関係についてぜひとも十分な合意をいただきますように要請をして、終わらせていただきたいと思います。
  75. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 以上で午前の質疑を終了いたします。  午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時十四分休憩      —————・—————    午後一時三十四分開会
  76. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) ただいまから公害対策及び環境保全特別委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、公害及び環境保全対策樹立に関する調査を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  77. 小平芳平

    ○小平芳平君 私は、この環境庁長官所信表明の中でも、公害健康被害についての問題を質問いたしますが、主として宮崎県の旧松尾鉱山の問題について質問をいたしたいわけであります。  初めに、環境庁では砒素による健康被害検討委員会というものがあって検討をしていらっしゃるようですが、最近開かれましたか。いつ開かれましたか。
  78. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 砒素による健康被害検討委員会を開きましたのは、昭和四十八年の十一月から四十九年にかけまして七回ほど開いております。
  79. 小平芳平

    ○小平芳平君 そうしますと、昭和四十九年に開いたままでその後は開いてないということですか。
  80. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) さようでございます。
  81. 小平芳平

    ○小平芳平君 それは非常に私たちが、あるいは被害者の方々あるいは地域の方々から、砒素による健康被害は、いまの認定基準のように皮膚と鼻と神経だけじゃないと、もっと全身的なものとして取り上げていくべきだという強い要求を何年来やっているんですが、そういうことに対しても昭和四十九年以来何ら検討がなされていないわけですか。
  82. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 慢性砒素中毒の認定要件につきまして、当時専門の先生方を煩わせまして認定要件を取り決めたわけでございまして、皮膚的な病変、それから鼻の粘膜の障害及び末梢神経のいわゆる砒素中毒症に見られる特異的な障害というものを取り上げて考えたものでございまして、肝臓障害等いわゆる内臓疾患につきましては必ずしも特異的な症状ではない、いわゆる非特異的な症状であるというようなことで考えられておりますので、これのみをもって慢性砒素中毒症と診断をすることはできないというような考え方に立って現在の認定要件を決めておるわけでございます。
  83. 小平芳平

    ○小平芳平君 いま言われていることは私は承知しておるのですが、それだけでは、鼻と皮膚と神経ではだめでしょうと、もっと全身的な症状としてとらえるべきでしょうと、こう言っているわけです。これは大いに不満ですがね、昭和四十九年以来検討さえしていないというのは。きわめて怠慢そのものだと思いますよ。  それから、この旧松尾鉱山周辺の地域指定の要請を県に対して何回もやっているんですが、まだ地域指定になっておりませんが、これはいかがですか。
  84. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 現在までのところ地域の指定をいたしておりません。それは松尾鉱山の周辺のことにつきまして当時いろいろ調査をしたわけでございますが、その調査の結果から特に問題のありましたのは、かつての従業員が主でございました。したがって現在周辺の地域住民に砒素の影響による健康被害というのは発生していない、こういう判断に立ちまして現時点におきましては旧松尾鉱山周辺地域を補償法による地域指定とはしておらないというところでございます。
  85. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういうふうに地域住民に砒素による被害がないということで押し通そうとなさるんですが、実際にはそういうことでは承知しかねるというところから、四十九年十月には岡山大学の自主検診、五十一年三月には北九州医師団による自主検診、これが行われている。そして、自主検診ですから希望者の検診をなさったわけですが、十六人の障害のある方が発見されたと報告されております。で、この十六人の方の中でも特に六人の方は皮膚、鼻、神経の症状が認められるとされているんです。そういう報告は受けていますか。
  86. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) そういった話を聞いております。ただ、これに対しまして、宮崎県も調査をすることといたしておりますので、そういった答えを聞いた上で今後の判断をしてまいりたいと、かように思っているわけでございます。
  87. 小平芳平

    ○小平芳平君 特にこの鼻粘膜瘢痕ということは、鼻粘膜瘢痕という診断をされた方は認定されるわけでしょう、条件に合うわけでしょう。いかがですか。
  88. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 現在の認定の要件といたしましては、砒素の濃厚汚染地区に居住しておりまして、長期にわたる暴露を受け、その上で三つの、鼻粘膜瘢痕あるいは鼻中隔せん孔、そのほか皮膚の色素異常、角化というような症状のいずれかがあった場合には認定すると、かように要件を決めているわけでございます。
  89. 小平芳平

    ○小平芳平君 したがいまして、これらの十六人の方——まだ何人発生しているかということは正確にはわからないわけですけれども、自主検診で名前の挙がった十六人の方、特に十六人の中でも六人の方は、いまおっしゃるように、砒素の汚染地域に居住していらっしゃって、そして鼻粘膜瘢痕がある、あるいは神経症状、あるいは皮膚の症状があるということが専門の医師団によって、検診の結果そういうふうに判定されているわけですから、これは至急、県が県がとおっしゃるけれども、県に対しましても至急調べるように。しかも、県の場合でももちろん専門の方が検診をなさることは間違いないわけですけれども、こうした北九州医師団のような自主検診をなさった専門的な先生方に検診をしてほしいということを地元で要請しているんですが、いかがですか。
  90. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) この問題につきまして、いまほどもお答えいたしましたように、宮崎県がこの自主検診の対象であった元従業員及びその家族の方々についての検診を行っていこうとしている段階でございますので、その答えを待ちたいと思います。当然のことながら、宮崎県といたしましても、砒素による健康障害についての専門の先生方ももちろん入れてお願いしているわけでございますので、その答えを待ちたいと、かように思っております。
  91. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、土呂久と笹ケ谷が健康被害補償法の指定地域となり認定をされておりますが、この両地域では何人の方が認定されておりますか。——ではこちらから言います。百九人の方が認定されておりますが、その中に鼻中隔せん孔の方がいらっしゃるかどうか。
  92. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) ちょっといま直ちに、手元にございませんので、後刻お答えさしていただきます。
  93. 小平芳平

    ○小平芳平君 ちゃんときのうのうちにこう書いて渡しておいたのに、困りますね、そういうことでは。
  94. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) お答えいたします。  土呂久地区におきましては九十七名が認定されております。その中で、鼻中隔せん孔及び鼻粘膜瘢痕のみというケースはございません。  それから、笹ケ谷地区につきましては十七名、そのうちで鼻中隔せん孔のみというのが二例、それから鼻粘膜瘢痕のみというケースが一例ございます。
  95. 小平芳平

    ○小平芳平君 そういう点からしましても、私がいま申し上げているように、鼻粘膜瘢痕と診断されていらっしゃる方が数人出ているということは、きわめて重大な問題提起だというふうに受け取っていかなくちゃならないと思いますが、いかがですか。
  96. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 先生の仰せのとおりでございますならば、十分調査をしてまいらなければならない問題だと思います。
  97. 小平芳平

    ○小平芳平君 ございますならばなんていうんじゃ困るですよ。ちゃんとその資料を受け取っているでしょう、県を通じて。
  98. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 県を通じまして資料をいただいております。ただ、現在県が、この対象の方々についての県としての調査を進めたいと、かようにしておるところでございますので、その結果を待ちたいと、かように思っておるわけでございます。
  99. 小平芳平

    ○小平芳平君 県からの結果を待つのがいけないと言っているんではなくて、こういうふうにはっきりとした検診の結果が出されておりますので、この旧松尾鉱山の地区には、そうしたほかの地区と比べて、この公害健康被害補償法による認定指定地域になっているほかの地区と比べて、この松尾地区にもきわめて重大な問題があるという認識を持っていかなくちゃならない。環境庁長官、いかがですか、そういうことは。
  100. 山田久就

    国務大臣山田久就君) まあいろんなそのような情報が出ておるということであれば、その情報を基礎に、また県とも連絡してできるだけ善処すべきではなかろうかと、こう思います。
  101. 小平芳平

    ○小平芳平君 最初の問題ですが、同じくこの岡山大学と北九州医師団の検診の結果の報告によりますと、非常に知覚とか血液障害、呼吸器あるいは肝障害、内臓疾患でもそうした血液、呼吸器、肝、そうした被害を訴えている方が多いと、そういう点も含めて検討をすべきだというふうにこの自主検診の結果の報告がなされております。そのこと御存じでしょう、環境庁も。どうしてそれをもっと検討しないんですか。
  102. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 四十七年、八年にかけまして、専門の先生方による検討を経た上で決めた要件でございます。御承知のように、砒素につきましては過去に労働衛生上の幾多の経験がございますので、それをもとにして当時決めたと、こう言われておるわけでございます。先生のおっしゃるような問題提起でございますし、これにつきましてはひとつ専門の先生方の御意見を聞いてみたいと、かように思っておるわけでございます。
  103. 小平芳平

    ○小平芳平君 山田環境庁長官ね、この砒素による健康障害、そのことについてはよくわからない面が多いわけです、特に慢性中毒に対しましては。したがって、いま部長からも御答弁がありましたが、実際に被害者の検診に当たったお医者さん方がそれこそ口をそろえて、肝臓はどうか、胃腸はどうか、心臓はどうかというふうな全身的障害として受けとめて、検討しなければならないという問題提起をしているわけですから、至急これをやっていただきたい。いかがです。
  104. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 私もこれまでのいきさつをつまびらかにしないので、大変申しわけありませんけれども、いろいろ問題が出ているように考えられますので、ひとつ検討いたすことにしたいと思います。
  105. 小平芳平

    ○小平芳平君 検討をさせてください、すぐ。いいですか。
  106. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 至急検討させます。
  107. 小平芳平

    ○小平芳平君 労働省は、「職業性疾病の予防と補償」、渡邊健二さんが基準局長で序文を書いているんですから大分前のものですね。これによりますと、砒素の項目を見ますと、「第一次健診」これは皮膚、鼻、口の中、そういうことが主ですね。「第二次健診」としては、肝機能、心機能、腎機能、そういうようなものが第二次健診としては必要だというふうになっておりますね、これには。それから、同じく砒素による「慢性障害」としては「胃腸型」とそれから「神経型」がある。胃腸型の方には「心臓衰弱、肝障害、黄疽」というようなことが示されておりますですね。ですから、労働省では——これも専門家が決めたわけでしょう、素人が決めたんじゃないでしょう——そういうように砒素による慢性障害というものは内臓疾患に及んでいるんだというたてまえでやっているんでしょう。いかがです。
  108. 原敏治

    説明員(原敏治君) ただいま御指摘のございました「職業性疾病の予防と補償」という書物でございますが、これは私どもの方の公的な見解の部分と、それから研究の過程でまとめました部分等が一緒になって参考の資料として出ているものでございます。ただいま御指摘のございました「一次健診」と「二次健診」の項目等につきましては、従来から予防衛生の方でそういう検討がなされて、ある面で公的にこれを示しておるものでございます。砒素中毒の症状の部分に関する記述につきましては、実はこれは専門家の御意見等によりまして私的に検討をしてまとめた部分に属するわけでございますが、この中でも言っておるところでは、急性中毒の場合あるいは急性中毒にかかった予後におきましては消化管等の症状があらわれるという表現方式をとっておりまして、慢性中毒一般につきましては皮膚の疾患とそれから多発性の神経炎というものを掲げているところでございます。  私どもの方で、補償の関係におきましても、現在のところ、砒素の中毒関係につきましては四十九年に環境庁が示されました疾病の基準と同じ見解で認定等を進めておるわけでございます。今後も医学的な研究に注目しながら私どもは補償の適正を期していきたいと思っております。
  109. 小平芳平

    ○小平芳平君 「第一次健診」、「第二次健診」はそのとおりだというお話ですね、項目については。要するに、砒素による健康障害が皮膚と鼻と口と、それ以上に、それより体の内部に障害が起きる可能性もあるということでしょう。あるもある、砒素飲み過ぎたら死んじゃうわけですから。ネズミだって砒素で死んじゃうわけですから、あるもある、大ありなんですが、ですから、労働省でも労災の補償をする場合に、ただ鼻と皮膚だけでいいんだということは、いつまでもそれで砒素の健康被害が事足りるという考えはおかしいでしょう。ですから、環境庁でも検討なさるとおっしゃるんですから、労働省でも検討してください、よろしいですか。
  110. 原敏治

    説明員(原敏治君) 砒素中毒につきましては、先ほど環境庁の部長さんからもお答えがございましたように、労働衛生面での従来の積み重ね等がございまして検討しておるところでございますが、専門家が、そういう労働衛生面の人が経験者として出ておりまして、環境庁の方の御検討と私どもの方の検討が、ある面で一致するメンバーになろうかとも思っております。連絡をとりながら今後研究してまいりたいと思います。
  111. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、ちょっと時間の関係で労働省にあとまとめて質問をいたしますからお答えいただきたいんですが、第一に、これも当委員会等で再三取り上げて、労働省が元従業員に対する診断サービスということを実施なさった。ところが、診断サービスを受けられた方が、何十人という方が受けられたんですが、結果がまだ発表になっていないわけです。もういまかいまかと待っているんですが、いつ結果が発表になるのかということ。  それから、せっかく診断サービスをやってくださるんですが、宮崎市まで来いと言われても、なかなか大変なんです、行くのが。大多数の方が日向市に固まっているので、そこで、なるべく地元で検診するように、患者さん——元従業員の方に便宜を図ってほしいということが第二点です。  以上二点について。
  112. 原敏治

    説明員(原敏治君) 診断サービスによりますところの検診を旧松尾鉱山労働者につきまして実施いたしたわけでございますが、これが昨年の三月から十一月ぐらいまでかかって実施しております。その結果がいろいろの関係からまだ出ていないこと、大変申しわけなく思っておりますが、事実でございます。  実は、このおくれました理由は、検査を担当いたしました病院が砒素関係に関する臨床経験が乏しいというようなところから、そこでは評価ができないというような事情もございました。それからまた、これらの方々については、砒素の暴露しておりました、元従事しておりましたときから見まして、職場から離れて大変長い期間、約十年の期間を経過しておりまして、この評価等が大変むずかしいというような問題がございます。それから、専門家のお医者さんの面につきましても、各科にわたりまして御検討いただかなければならないというような事情もございます。  そのような事情からおくれておりましたわけでございますが、実施をしております、取りまとめをしております地元の宮崎労働基準局に対しまして、私の方から早く結果をまとめるよう連絡をしてまいりたいと思っております。  それから、診断サービスにつきまして、場所が限定されておりまして、利用について御不便をかけているという点の御指摘がございましたわけでございますが、実は、この診断サービス制度は私どもの方の労災保険の一つのサービス制度として実施しておりまして、これは職業病の相談室を窓口といたしまして、その専門の先生が相談に乗った上特定の検診を、予約しております病院との問で検診を実施するという形にいたしておりまして、どこのところまでも弾力的に、機動的に進めるというところについては、ちょっと困難な事情がございます。元労働者の方々が主治医のもとであるいは砒素中毒というようなことでの疑いがあるという疾病がございました場合には、あるいは労災の補償請求を出していただきますれば、私どもの方で個別にまた判断をいたす形になりますので、そういう形でのせていただくことがお考えできるんではないかと、こんなふうに考えております。
  113. 小平芳平

    ○小平芳平君 昨年の十一月ころまで診断サービスがかかったというお話ですが、私の受けているお話は、七月十八日で診断は終わっているということですが、そういう点、若干の行き違いがあるかもしれませんが、早く結果を本人にお知らせいただきたいということを要請いたします。  それから次に、環境庁にまた戻りますが、環境庁では、この砒素による旧松尾鉱山地区の環境汚染、これについてはどのように報告を受けておりますか。
  114. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 宮崎県の方におきまして、松尾鉱山問題調査報告書ということで、五十一年の三月、環境上の問題等も含めまして、この問題調査報告というのを公表をいたしております。  この報告書におきまして、特に環境への影響ということで、河川水質なりあるいは飲料水の調査等、その他土壌なり農作物の調査等いろいろやっておるわけでございますが、特に環境上の問題はないというふうに一応なっておるようでございます。
  115. 小平芳平

    ○小平芳平君 環境汚染は水と空気と両方にわたっておりますが、最初水の方の御答弁がありましたので、水について申し上げます。  確かに五十一年三月に県が発表しました結果は、「問題はない」というふうになっております。なっておりますが、水の問題で言いますと、「板谷川の砒素濃度は、〇・〇〇三PPm−〇・〇五五PPmの範囲であり、」となっております。そうしますと、環境としては、〇・〇五五PPmというのは、環境基準を上回っているじゃないですか。何で問題がないんですか。
  116. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) ただいま先生から御指摘がございましたように、この報告書の中に、板谷川の砒素濃度が〇・〇〇三PPmから〇・〇五五PPmという範囲であるということが書いてございます。で、水質環境基準は〇・〇五PPmでございまして、ただいま先生おっしゃいますように、この〇・〇五五PPmといいますものは環境基準を上回っておりまして、これは適合しない値ということになるわけでございます。ただ問題は、この地点におきましては、ここから上水を取っておらないということでございまして、そういう面から見て、利水上の問題が特にないという形でこの報告書も記載をしておるわけでございます。  なお、同報告書には、一応こういう特に「利水上問題はない」ということではございますものの、ただいま申し上げましたように、環境基準を若干上回っておるということがございますので、県の方では、この報告書の中におきましても、「水質調査を継続実施し、水質環境の監視を行なう。」ということを記載をしておるところでございます。したがいまして、環境庁といたしましても、利水上の障害が生じないよう今後とも県に対しましては水質監視の徹底を図っていくように指導をしてまいりたいと、こう思っておるわけでございます。
  117. 小平芳平

    ○小平芳平君 それでは、継続して県がやっておりますならば、五十一年三月以後どういう発表がありましたか。
  118. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 継続してこの水質監視をやるということになっておるわけでございますが、その後の結果は実は把握いたしておりません。
  119. 小平芳平

    ○小平芳平君 やってないということじゃないですか。ですから、環境基準を上回っていると。それは若干です、わずかですが、環境基準を上回っているのに問題ないというのはどういう姿勢ですか、それは。局長もいま御答弁なさるに当たって、五十一年三月の調査の結果問題ないといきなりお答えなさったけれども
  120. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) その後のは、一応申し上げますと、実は五十二年の八月の二十七日に県が採水をいたしまして砒素の濃度を調べたわけでございますが、それは山上、横沢水という、この横沢水でございますが、大体先ほどの地点のところでございます。これが〇・〇四八でございます。ですから、〇・〇五というのをちょっと切ったという姿で、環境基準は一志満たしておるという姿が報告がございました。
  121. 小平芳平

    ○小平芳平君 要するに問題ないと、環境汚染は問題ないというその取り組みは間違いでしょう。しかも——ちょっとこれ持っていてください。(図掲示)見えますか——しかも板谷川で〇・〇五五というのは、この合流地点で〇・〇五五なんです、合流地点で。ところが、このあさひ坑、新大切坑というこういう坑口では、この大切坑というのは五十一年十一月にやったときには二四PPmというものが出ているのですね——ちょっとこの図が変ですが。排水口で。坑口排水ですね、坑口排水の方がはるかに高いわけですね、普通でしたら。ところが、合流地点で〇・〇五五というふうになっているという、そういうところに問題があると思いませんか。
  122. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) ですから、この県の方の報告書にございますように、先生おっしゃるように、その合流点で〇・〇五五PPmということで環境基準に適合しないという値が出たことは事実でございます。ただ、問題は、これを利水の状況から見ますると、特に上水等に現に利用しておらないということで、利水上は問題がないというふうに県の報告書でも言っているわけでございます。出ておることは否定をしておらなかったわけでございます。ただ、問題は、利水上問題がないということでそのままにしておくわけにもいくまいと、したがいまして、これはやはり今後とも、「水質調査を継続実施し、水質環境の監視を行なう。」と、こういう報告書になっておりまして、この報告書に基づきましてさらに県の方で継続的に調査をしておるわけでございますが、そういう面からいたしますと、特にこの合流点というところにぴたり合うところではないわけでございますが、その近辺のところではかりましたものにおきましても、先ほど申し上げましたような山上、横沢水というようなところでも〇・〇四八PPmということで、一応環境基準を満たしておる数値が検出をされておる、こういう姿になっておるということでございます。先生おっしゃいますように砒素は有害物質でもございますので、利水上の問題はないにいたしましても、環境基準を満たすように引き続き県の方に監視等をやらせるように今後とも指導したいと、こう思っております。
  123. 小平芳平

    ○小平芳平君 利水上問題ない、利水上問題ないと言うけれども、仮に工場なら工場がわずかながらでも基準をオーバーしていたら、利水上問題ないで済まされないでしょう。ですから、もっとここに問題があるということで取り組まなくちゃならないというふうに申し上げているわけです。環境庁長官、どうですか。
  124. 内田善利

    ○内田善利君 答弁の前に、私は、いまの答弁を聞いておりまして、そういう答弁ならば環境基準はもう問題でないじゃないか、こう思うわけです。いまの表で示されたのは、工場から直接排水が出てきて、たとえば水銀なら水銀を含む化合物が出てきて河川に流れてくるというんじゃなくて、昔の廃坑から——いま出されているんじゃない、昔の廃坑からこう出てきておるわけでしょう。この水に〇・〇五五PPmの砒素が含まれているということは大きな問題だと思うんです。普通の排水とは違うんです。もう昔の廃坑からそうして水の中に出てきておる。これは大きな問題だと思うんですね。その点は、考え方環境基準を上回っているから、いないからというそういうことなれば、上回っていて利水が問題だと、こういうことなれば環境基準はもう問題にならない。むしろ、私はこういう問題こそ、この水は危険な水だと、こういうふうに環境庁としてはとらえるべきじゃないかと、こう思うのですね。これはどうです。
  125. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 環境基準を満たしていないということは、これきわめて問題だと思うので、その原因の究明を含めて、ひとつよく検討させるように考えてみたいと思います。
  126. 小平芳平

    ○小平芳平君 原因は、内田委員からもいまおっしゃるように廃坑なんですから、これはもうはっきりしている。ここにその石がありますがね、ちょっとごらんください。こういう石がいっぱいいまでもごろごろしてしているので、それで環境基準を上回るような水が流れ出したりしているわけですから、ですからそれこそ問題が大ありなんです。こういうのをいまさらもう処理のしようもないわけでしょう、現実問題。これ山へ行けばいっぱいこうあるわけですから。ですから、ここには問題があるという取り組みを、長官、当然すべきでしょう。
  127. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 御指摘のとおりで、ひとつその問題点検討することにいたしたいと思います。
  128. 小平芳平

    ○小平芳平君 それから、次は家屋ですね。ハウスダストということで県も検査をなさった。この県の発表によりましても、ハウスダストは一四八〇PPm、天井裏から。一四八〇PPmあるいは五九〇PPmというようなものが、天井裏のダストから砒素が検出をされているわけです。これがその当時の写真ですから、いまそちらへお持ちいたしますから。——ここの黒木と書いてある家がありますが、そのお宅の天井裏から、県の発表によっても一四八〇PPmという砒素が検出されているということ。したがって、昭和三十三年に操業は中止になっているわけですから、もうすでに二十年もたっている。二十年もたっている今日、なおかつハウスダストからそういう砒素が検出されているということからしても、当時の環境汚染はひどかったんじゃないかというふうに思いませんか。環境庁はいかがですか。
  129. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 確かに、ハウスダストの調査を行いまして、その中で二十三カ所にわたりまして、調査した中から三PPmから一四八〇PPmというようなのが見られたわけでございますけれども、これ、現在の浮遊粉じん中の砒素の調査をいたしましたところ、〇・〇〇二五マイクログラム・パー立米から〇・〇〇五二マイクログラム・パー立米と、通常の範囲であるわけでありまして、このハウスダストがどういつだところから由来したかということにつきましては、なかなかその解釈がむずかしいわけでございます。
  130. 小平芳平

    ○小平芳平君 二十年問も操業はしてないわけですよ、ですから、二十年前の環境汚染がどうだったかということはいまここで実現することができないわけでしょう。しかし、いま申し上げるような水、それからハウスダスト、それから最初に申し上げたような鼻粘膜瘢痕、そういうような点から考えて、この地域が十分砒素の汚染のおそれがあったと、今日もそういうおそれがあるということがどうして推定できませんか。想像できませんか。
  131. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) いろいろな条件なり、二十年以上たちましたその以前のいろいろな生活の習慣なり、そういったようなことをつぶさに調べてみなければ、なかなか判断がしにくいのではないかと私ども思っているわけでございまして、このハウスダストが、過去の焙焼炉等の仕事をしておった時期のものだともしいたすならば、旧焙焼炉からの路離とかそういったようなことに関係のある、ある種の分布をするというようなことも予想されるわけですが、そういったことでもなかったというようなことからいたしまして、直ちにこのハウスダストからして、過去の汚染がひどかったということの証明はなかなかむずかしいんではないだろうかと、かように思うわけでございます。
  132. 小平芳平

    ○小平芳平君 じゃ、ハウスダストが過去の焙焼炉に関係ないということがどうして言えるんですか。
  133. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 二十三カ所にわたりまして、各家の距離というもの、それから建物の建築年数と、こういったようなものに関係して、古い家で近い家というのは当然高いわけでございますが、必ずしもそうでなかったように私は聞いておるわけでございまして、そういった意味から一つのそういう推定ができるんではないだろうか、こう思うわけでございます。
  134. 小平芳平

    ○小平芳平君 部長、そういうように、砒素による環境汚染がないということをもう決めちゃっていることが、きわめて私は間違っていると言っているんです。どうして砒素の汚染がないと言えるんですか。
  135. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 私どもの観点からいたしますと、過去に汚染がなかったとは言えないわけでございますが、それを直ちに健康の影響という形で考える場合に、いま少し調査をしてみないとわからないのではないかということを特に申し上げたいわけでございまして、いまある調査報告書の中から読み取ってみますと、いま私が申し上げましたように、このハウスダストにつきましても、本来ならば焙焼炉からの距離なり家の古さというものがある一つのファクターとして影響してくるだろうと、こう考えるわけでございますが、それが必ずしも整合していないというようなことから、このハウスダストがどういうところから由来しているかということをもう少し詰めてみなければいけないんじゃないだろうか、かように私は考えているわけでございます。
  136. 小平芳平

    ○小平芳平君 あと長官に要請しておきたいことは、私もこれで一切調査が終わっているから結論出そうと言っているんじゃないわけです。そうじゃなくて、県の報告書といい先ほど来の部長、局長の答弁といい、問題ない問題ないと言うから、それは間違いだと言っているんです。利水上問題がないとか、あるいはハウスダストが焙焼炉に関係ないみたいな言い方をしてみたりですね。そうじゃなくて、ただ問題ないと片づけられない、いま申し上げるように、ずっと説明してきましたように、自主検診の健康診断で提起された問題、そうして県自体がやったところの水とダストの分析の結果、そういう点から考えて、頭から問題ないという取り組みは間違いじゃないかと、もっと幅広くといいますか、しっかりやらなくちゃいけないということを申し上げているんですが、そう思いませんか。
  137. 山田久就

    国務大臣山田久就君) いろんな材料等も出ているようでございますので、そういう状況にもかんがみて、ひとつなお調べるようにさせるようにいたしたいと思います。
  138. 内田善利

    ○内田善利君 私もいまの質疑聞いておりまして、環境行政が最近の経済不況などから少し後退してきたような感じがするわけですね。この環境公害委員会にずっと出てまいりまして、最近はどうも環境行政が後退している、少数の限られた人たちの問題だと、そういうふうな考え方が出てきているんじゃないか、被害者が出たら解決していこうという姿勢が出ているんじゃないかと思う。未然に公害をどうやって防止するかという考え方がだんだん薄くなってきたように思うのです。今度の環境庁長官所信表明の中を見ましても、どうも解せない点があるわけですね。まず第一は、「環境影響評価の制度化及び実施の推進」というところですが、環境庁はこの環境アセスメントの取り組みに少し後退してきたんじゃないかと、そういうふうに感ずるわけですが、この点どのようにお考えですか。
  139. 山田久就

    国務大臣山田久就君) その点はどうも誤解ではないかと、こう思いますけれども、事実われわれとしては、わが方の責任と任務は十二分にこれを果たしていきたいという決意と態度で臨んでいるつもりでございまして、ただいまの環境アセスメントの点につきましても、どう表現して言ったら一番わかりやすいのかわかりませんけれども、まあちょうど去年ぐらいまでは、関係省の方が土俵に上がってこなかったわけです。土俵へ上げるだけで……それで上げられなくてとまったのが、今度はとにかく土俵へ上がってきて、それでとにかく相撲をとって一生懸命になってやっていると、こういう状況だということで、われわれの方、一生懸命になってやっているのでございまして、どうかその点、われわれの基本的な行き方、態度、これにはどうか誤解のないように、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  140. 内田善利

    ○内田善利君 長官が、環境影響評価制度は必要だということは言っておられるように思います。しかし、過去の環境アセスメントの法案提出については、土俵になかなか上がってこないということですが、土俵に上げる上げると言いながら、もう過去、昨年の通常国会、臨時国会、また今度の通常国会、ずっとこう通して見まして、その重要性を認めながら、土俵に上がってこない。この土俵に上がってこない理由はどうなんでしょう。
  141. 信澤清

    政府委員信澤清君) 環境影響評価をやることの必要性は、私の見たところ、どこの役所も否定はしてないわけでございます。また、事実やっているものもあるわけでございます。問題は、技術的な意味での環境影響評価をやるということはもちろんでございますが、私ども考え方は、やはりその結果を公にして、そうして関係住民意見を聞くと、あるいは地方公共団体意見を聞くと、そういう意見をその評価書の記載の上につけ加えて、反映させて、そうして事業実施する、この点にあると思っておるわけでございます。  問題は、その後の方のいろんな手続の面につきまして、先ほども大臣御答弁申し上げたと思いますが、いろいろな態様の事業があるわけでございまして、これも先ほどどなたか先生お話ございましたように、いわば横断的にその制度を組み入れていくと、ここに一つ問題点があるわけでございます。したがって、いま大臣申し上げましたように、その入り口のところの土俵へ上がってきたと申しますのは、環境影響評価をやらなきゃならないと、それからある程度そういうような手続をとっていかなきゃならないというところまで、各省の御理解は進んでいるということを申したわけでございます。
  142. 内田善利

    ○内田善利君 その環境影響評価制度ができないから、いまあちこちで開発が行われ、推進されておるわけですが、先ほども本四架橋の問題がありましたけれども、むつ小川原の問題にしても、いま言われました住民との話し合い、そこが十分行われていないわけですね。行われないまま、いま環境アセスメントは当事者がやりながら、自分で環境影響評価をやりながら、しかも住民との話し合いはもうわずかの期間で進めていく。これは、国会でこの法律ができないから、これが支障となって各地の環境アセスメントはそのまま、住民との懇談も十分にされないまま進んでいっている。こういう状況にあるわけですけれども、私はそのように認識をしておりますが、この点どのようにお考えですか。
  143. 山田久就

    国務大臣山田久就君) まあ環境問題は事前の評価を行うことにおいて、つまり、あらかじめその予防措置を講じておくということ、これが必要であればこそ、いまのアセスメント法というようなものをつくるべきだと、こういう立場に立っておりますし、したがって、先ほど事務当局の方からもいろんな説明がありましたけれども、それぞれの官庁その他で抱えている事業の態様や何かが非常に違うものですから、にもかかわらず、われわれとしては何とかこれについて、結局一つのルールというものを敷いておく方がかえって、つまり問題というものの合理的、客観的、また能率化という上でいいんじゃないかという、そういう立場をわれわれがとっておればこそ、とにかく何とかこの問題をつくり上げてひとつ変えようという熱意をわれわれが持ってやっている点ですね、どうかその点御理解いただきたいと思うのです。まあ政治的な面では、われわれも政治的な方面でそういう点の必要性というものはおのおの首脳部にも話してまいりましたし、また事務当局としてもいまいろいろそれなり努力をやっておる。ただ、これは関係方面がいろいろあるものですから、環境庁一人だけで相撲をとっていたんじゃ、一人だけ土俵に上っているんではどうにもならないので、それで努力を払っていて、そこに時間がかかっている点、しかし、環境庁自身の熱意についてはどうか御理解賜わりたいと、こう思うわけであります。
  144. 内田善利

    ○内田善利君 熱意を認めたいのですけれどもね、それじゃどの程度いま作業が進んでいるわけですか。前国会でも、通産省あるいは建設省の反対があって国会の土俵に上がってこなかったわけですが、どういう話し合いが具体的に進められているのか、作業が進められているのか、これをお聞きしましよう。
  145. 信澤清

    政府委員信澤清君) 当然のことでございますが、環境庁が案を用意し、各省にこれでどうかという打診をいたしているわけでございますが、これに対して、昨年はその入り口のところでとまってしまって、意見をなかなか出してこられなかった役所があるわけでございますが、おおむねいま私ども考え方に対する各省の意見あるいは質問事項というものが出てきております。そういう段階でございます。
  146. 内田善利

    ○内田善利君 どの機関とどのような折衝が行われているわけですか。これは言えませんか、具体的に。
  147. 信澤清

    政府委員信澤清君) 折衝の内容につきましては、これをいずれ法案として御審議いただく際、いろいろ御批判なり御意見をいただきたいと思います。私どもが当面、何と申しますか、この法案について関心並びに関係があるという役所は十省庁あるわけでございまして、いま十省庁と先ほど申し上げたような話し合いをしている。で、話し合いの方法としては、全部一堂に集まってもらって、そして議論したこともございます。それからまた個別にこちらから出向き説明し、あるいは向こうから来てもらって相談をするというようなこともやっているわけでございまして、その進捗状況なり、対応の仕方については、ややニュアンスの差はございます。ニュアンスの差はございますが、ともかく法案をつくるという前提で議論をしようと、審議をしようと、こういう状況になっているわけでございますので、もうしばらく時間の余裕をいただきまして、先ほど来大臣が申し上げておりますように、今国会で御審議をぜひいただけるようにいたしたいというふうに思うわけでございます。
  148. 内田善利

    ○内田善利君 いまの答弁では、とても国会には上がってこないなあという感じがするわけですよ。前国会のこの環境アセスメントの法案の問題をお聞したときも、大体いまと同じような答弁だったと思うのですが、どれだけ進展しているのか進展がうかがえないわけですが、それじゃ今国会もまただめじゃないかと、こういう感じがしますが。
  149. 信澤清

    政府委員信澤清君) たしか昨年の九月だと思いますが、閉会中の御審査の際にもお話が出まして、通産省なり建設省もこの委員会でそれぞれ御答弁をされたことがあったと思いますが、実は、あの二つの役所だけが問題ではないのでありまして、特に昨年非常に大きな問題を提起されたという意味で、いかにもあの二つの役所が反対しておって他は全部賛成と、こういう印象を与えた面があったと思います。しかし、今回はほぼ同じようなレベルで、いろいろ細部について、自分たちの仕事のたてまえから言うとこの手続についてはこういうふうにやりたいと、こういう考え方ではどうだろうかとか、かなり具体的な問題を提起してもらっているわけでございますから、したがって、内容を逐一申し上げるのは差し控えさしていただきたいと思いますので、先ほど来内田先生がおっしゃったように、去年と同じ状態じゃないかという御批判もあろうかと思いますけれども、私は昨年のことは存じませんが、もうしばらく余裕を持たしていただきますれば、法案の形で御審議いただけるような形になり得るんではないかと、また、そうしなければならないということでいま取り組んでいるわけでございますので、この程度で御了承をいただきたいと思います。
  150. 内田善利

    ○内田善利君 むしろ私は後退していると思うんですよね。というのは、昨年の石原長官の通常国会での所信表明は、初めの方は略しますが、「そのための法律案を今国会に提出いたすべく、鋭意努力している」と、このように所信表明に述べてあるわけです。今国会に提出すべく鋭意努力中であると。ところが、山田長官のは、先ごろの所信表明で、「環境影響評価の法制化を図るべく鋭意努力」と、相当トーンが落ちているわけですね。石原長官は今国会に提出すると、そのために鋭意努力していると。ところが山田長官の場合は法制化を図るべく鋭意努力している、こういう所信表明ですが、どうもトーンが落ちているような感じがいたします。これに対してどのようにお考えなのか。  それから、「環境影響審査体制の充実強化等その実施の推進を図ってまいりたい」と、これはどういうことを言っているのか。この二点お伺いしたいと思います。
  151. 山田久就

    国務大臣山田久就君) まあ余り私は比較の点、特にそれを考えているというわけじゃなかったわけですけれども、実際問題としては、いま申し上げましたように、この前より大分私は実質的にはいろんな意味で前進してきていると考えております。ですから、あるいはおしかりをこうむるかもしれませんけれども、わが事務当局も非常な熱意を持ってとにかくやっておりますし、おしかりをいただくというと意気阻喪しちゃ困るので、むしろひとつ御鞭撻を賜りたい。大分土俵の上に上げて一生懸命になってやっておりますので、どうかその問の事情をおくみ取りいただきまして、よろしくひとつ御鞭撻のほどをお願いいたしたいと思います。
  152. 内田善利

    ○内田善利君 環境庁の鋭意努力されていることはよくわかるわけですが、大きな障害がありますので、その障害に対して毎国会毎国会同じことでは、どうも環境アセスメントがいつ出てくるのか見当がつきませんので、少し声を大きくしてお願いしているわけですが、この環境アセスメント法案ができないと、この後にある、「環境影響審査体制の充実強化等その実施の推進を図ってまいりたい」と、これがいま先行しているような感じがするわけです。  というのは、昨日鹿児島の新大隅計画のアセスメントが発表になったわけでありますが、このアセスメントが発表になった段階で、この大隅開発の場合は非常に地元住民の反対が強くて、これはもう一度たな上げになったわけですけれども、この地元住民に対する了解を得るということが一番私は大事な問題だと思うんですね。ところが、このアセスメントによりますと、鹿児島の発表によりますと、「環境庁の指針に基づいて」——もう県が勝手にやっているんだと言われると困りますので、環境庁の指針に基づいてやっているわけですね。それここに書いてあります、「環境庁の指針に基づいて」って。また、環境庁は出しているわけですから。県が勝手にやっているんだと言われるおそれがありますから前もって言っておきますけれども環境庁の指針、これはむつ小川原の場合の指針ですね、五十一年九月に出されておる。それから、本四架橋の場合も、先ほど本委員会質問がありましたが、これも環境庁が指針を出していらっしゃる。これはみんな住民に対して説明会はもちろん公聴会も開くと、あるいは開くべきであると、こういう指針があっているわけですが、先ほどの質問にもありましたように公聴会は開いてない。今度新大隅開発の場合も公聴会を開く予定はない。こういう状況ですが、この公聴会を開いて住民の声を十分聞いてやるということは、いまからの開発を進めていく場合に一番大事な問題だと思うのですね。また住民の了解を得られるのです。得られぬようにしているからなかなかむずかしい。その点どのようにお考えでしょうか。
  153. 信澤清

    政府委員信澤清君) 新大隅の開発について先般県がアセスメント内容を公表し、これから公示縦覧等の手続をとるということは、私ども報告は受けております。しかし、先生、お言葉を返すようでございますが、このアセスメントの性格は何だということに対する県の方の御説明は、いま県の段階ではあれは案になっているので、県の計画として確定をするためのいわば前段階アセスメントであると。こういう説明をされているわけでございます。その限りにおきまして、私ども今回の鹿児島県の一連のアセスメントについて、指導、助言をしたことは一度もございません。ただ、恐らく、そこで引用されておりますのは、お話のようにむつ小川原あるいは本四架橋についていろいろな指針を示しておりますが、直接そのことではございませんで、昭和四十九年に中央公害対策審議会から「環境影響評価の運用上の指針について」と、中間報告でございますが、いわば環境影響評価をやる場合の一般的な事項、項目、それから評価の場合の基準、こういうものを答申いただいているわけでございまして、そこで引用されている「環境庁の」云々というのは、私どもの理解では、この四十九年の中公審の答申のその項目に従ってやったと、こういうふうに理解をしているわけでございます。
  154. 内田善利

    ○内田善利君 そのとおりですね。四十九年の中公審の防止計画部会の中間報告、それから昭和五十年の「環境影響評価制度のあり方について(検討結果のまとめ)」、それから昭和五十二年の環境庁から出された「環境影響評価の共通基本技術指針」、それからむつ小川原のこういう指針、こういうのを参考にして実施しているわけですね。県はこの環境庁のこの指針をもとにしてやっているわけです。これはもう事実です。環境庁は出されたわけですから、こういう指針を。その場合に国土庁がこれを、三全総から新大隅開発を推進しておるわけですが、国土庁と、あるいは鹿児島県が環境庁の指針に基づいてこの環境影響評価案をつくったわけですけれども、何か相談があったかどうか、まずお聞きしたいと思います。
  155. 北川正

    説明員(北川正君) 御説明いたします。  ただいま先生質問のありました、新大隅開発計画案につきまして、鹿児島県が昨日環境影響評価を公表されておりますが、新大隅開発計画案につきましては、従来の経緯、私どもも伺っております。そして、アセスメントを県独自で、県案の段階で行うということも聞いておりましたが、ごく最近になりまして、その経過、概要を私どもの方に事務的に報告を受けるとともに、昨日公表の段階において、環境影響評価報告書そのものを御送付受けたわけでございます。そういうことでございまして、進め方その他につきまして、環境アセスメント内容的なものについては、私ども従来のところ特に相談等にはあずかってはおりません。ただ先ほど先生がおっしゃいましたように、県から受けております報告では、従来の環境庁の中公審等の中間報告等を十分参考にしながら、そういう方式にのっとって行ったものであるというふうに聞いております。
  156. 内田善利

    ○内田善利君 そうしますと、鹿児島のこの案は、だれがこれを検査し、チェックするわけですか。
  157. 信澤清

    政府委員信澤清君) まずその前に、三全総であの開発というものは一体どう位置づけられているかということから申し上げたいと思いますが、御案内のように、三全総の中で、今後の計画的な地域開発の問題として、「西日本においては志布志湾地区等について環境影響評価を含め調査検討を進め、その結果を踏まえ、相当規模の工業基地を数地区建設するものとする。」と、こうなっておるわけでございます。したがって、いまも国土庁からもお話があり、私どもから申し上げましたように、いま県がやっておりますのは、県独自に、その計画の主体である鹿児島県が県案を決めると、県の案を計画として決めるという段階でのアセスメントでございます。したがいまして、これを仮に三全総の考え方に従って国レベルで何らかの形でこれをオーソライズすると申しまするか、扱っていくという事態になりますれば、これは恐らく関係各省、国土庁中心に集まりまして、いろんな連絡なり調整をいたすことになろうかと思います。  私どもとしては、今回のアセスメント関係なく、いま読み上げましたような三全総の趣旨にかんがみまして、当然改めて私どもの、政府の示す考え方に従った環境影響評価をやってもらうと、こういう考え方でおります。この点は、私、今回のことに関連いたしまして、国土庁の担当局長ともお打ち合わせ済みでございます。
  158. 内田善利

    ○内田善利君 環境庁長官はあの大隅の志布志湾に行かれたことございますか。——私は、あそこが三全総の対象になったということは、美しい自然環境を維持すると、子孫に伝えていくという意味においては、あそこが三全総の対象になったことは、後世の人たちに非常に相済まないという思いでいっぱいなんです。というのは、あそこは自然公園であり、日南国定公園になっているわけですね。環境庁長官が国定公園として指定されたところなんです。枇榔島という島があり、ちりめんじゃこがたくさんとれる。そういう環境で、文化財の宝庫でありますし、ああいうところが開発されていくということについては、十分政府がこれは考えておかないと、取り返しのつかないことになっては申しわけないと、そういう思いがしますから質問をしておるわけですが、一遍行っていただいて、あの国定公園をどう考えられるか。また、長官は、この鹿児島の案が出て、上がってまいりまして、政府でこれを検討され、審査され、これを推進されていかれる段階で、国定公園の解除をされなきゃならないと、この国定公園の解除については長官はどのように考えておられるのか、この点をお聞きしておきたいと思います。——長官に聞いております。あんたが解除するんじゃないんですよ。
  159. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) 長官の前に事務的に状況をということでございますが……
  160. 山田久就

    国務大臣山田久就君) じゃ、ちょっと初めに状況説明さして、それから私が発言します。
  161. 出原孝夫

    政府委員(出原孝夫君) 御指摘のように、いま私どもも詳しいことはまだ承知をいたしておりませんが、鹿児島県が発表いたしました開発計画の地区は、日南海岸の国定公園の部分に該当しておるようでございます。で、日南海岸国定公園につきましては、宮崎県及び鹿児島県にわたる公園でございまして、非常にすぐれた景観を持っておる所でございます。ただ、申し上げましたように、宮崎県と両県にまたがっておる問題でもございますので、宮崎県の意向等もまだ十分承知をいたしておりませんし、鹿児島県におきましても、宮崎県との御調整もあるかと思いますので、現段階において私ども意見を申し上げるまでにはまとまっておりません。
  162. 山田久就

    国務大臣山田久就君) その点につきましては、いま事務当局から説明がございましたが、御指摘のように国定公園になっておる所でございますし、地元としてはいろんな考えからあの開発というものを望んでいるのかと思いまするけれども、しかしながら、なぜあそこでなければ——まあいろいろ地方といたしましてはやっぱり生活上の問題、経済活動の問題、いろんなことでの要求が出てくるんでございましょう。にもかかわらず、一体なぜあそこでなければならないのか等、まだ私のところにいろいろなものが出てきておりません。したがって、そういうような点がはっきりし、そして全般のことで判定して、ひとつ態度を決定していきたいと、こう考えております。
  163. 内田善利

    ○内田善利君 いままでの長官は、山中長官から大石環境庁長官、小山長官、各長官が皆あの国定公園は地元の住民の了解がない限り解除はしませんと言い切ってこられました。長官いかがですか。
  164. 山田久就

    国務大臣山田久就君) いま申し上げましたように、私は、無論国定公園に指定した十分の理由があるわけでございまして、これについては地元の住民意見、及び関係方面の意見を冷静に評価いたしまして、それでひとつ態度を決定していくということにいたしたい所存でございます。
  165. 内田善利

    ○内田善利君 いままでの長官ははっきり言明されてまいりましたが、いまのような答弁でまことに残念でございますが……。  それから、時間がありませんので、水俣病のことについてお聞きします。  いまチッソが非常に問題になっておるようでございますが、私は、公害問題は被害者の立場に立って対策を講じていかなければならないと思うんですね。私は、経済と、人間の命を損傷した、健康をあやめた、この問題とは別だと思うのですね。人の命が公害——工場から出てきた汚染物質によって損傷を受けたということについては、やはりPPPの原則に従って全面的なこれに対する償いをしていかなきゃならないんじゃないかと、こう思うんです。たった少数者の被害だからといって、これを見逃していってはならないと思うんです。水俣病は世界的な問題として大きな被害が起こっているわけですけれども、水俣病患者、特にあの胎児性水俣病患者の姿を見ますと、これは長官もぜひひとつ胎児性水俣病患者に会っていただきたいと思いますが、本当に加害者に対する憤りを感じます。私は特に化学系統を勉強してきた関係で、大学では、水銀化合物を取り扱った場合には水洗から流さないんです。そのように教えてあるんです。水銀化合物を実験したら、必ず水銀だめに持っていって捨てる、それを工場へ持っていって回収する、あるいは処置すると、こういうふうに教えてありながら、チッソはあのように水銀化合物をたれ流してきた、こういうことに対して私は憤りを感ずるわけですが、そういった被害者の救済ということについて、私は政府がもっともっと力を入れるべきじゃないかと、こう思うんですが、何かチッソの支払い能力がどうの、救済能力がどうのということを言っておられますけれども、そんな問題じゃなくて、被害者をどうやって認定し、どうやって救済していくかと、これが一番環境庁のやるべき第一義じゃないかと思うんですけれども、これが少しそれてきているように感ずるんですが、この点いかがでしょう。
  166. 山田久就

    国務大臣山田久就君) いま内田委員の御指摘のように、水俣病はいわば公害の原点とも言われているもので、まさに被害者の立場に立ってこれを考えるならば、これは私は大変なことであると、そういう意味において、及ばずながら私なんかも真剣にその身になって考えたい、また考えなければならないと、そういうふうに思っておりますし、そういう考え方で対処してまいるつもりでおります。  したがいまして、今回この治療というものに少しでも役立っていくようにということで、われわれ症例研究班というものを設けまして、有効な、被害者の発見ということに役立つような、研究成果というものを反映しようという措置も考えてやっておりますし、また水俣病の研究センターというものも設置いたしまして、まだ明らかとなっていない治療上のいろんな原因、問題点ということの解明にもひとつ力をいたして、被害者というものの非常な苦痛というもの、こういうものを少しでも早く軽減するようにという努力を払って、ひとつ善処していきたいというつもりでございます。
  167. 内田善利

    ○内田善利君 いま症例研究班のお話が出ましたが、国の症例研究班がいま熊本県でやっている認定作業の促進のために、判定困難な事例等については国が肩がわりしてやっていくということですね。
  168. 山田久就

    国務大臣山田久就君) これは、肩がわりということよりも促進のためのお手伝いという形で臨もうと、これ、話し合いの結果によってそういう態度で臨んでいるわけです。これについてはもっとさらに、患者が現地におるんですから、ひとつ出かけていってさらにそういう方面のいろんな点のアドバイスの上の必要な便宜が得られるようにという、そういうふうにもさせたいというようなことを考えています。  ただ、こういう点に触れていいのかどうかわかりませんけれども、なかなかやっぱりお医者さんの中にはお医者さんのいろんな関係か何かがあって、そういう問題についてもうまく何とか話し合いができて、そしてプラスが出るようにと思っているんですけれども、まあ何とかうまくいくようにということを——変なこう持って回ったような話で恐縮なんですけれども、実際上、医師内部の中のいろいろな従来からのかかわり合いというような点も克服して、つまり実際に被害者というものの便宜のために、ひとつ少しでも促進されるようにということを念じて、努力を払っているような次第でございます。
  169. 内田善利

    ○内田善利君 水俣病はもう発生してから二十数年を経過しているわけですから、しかも認定申請者がまだ認定すらできないで苦しんでおる、こういうことがこのまま放置されていいわけはないわけでございますから、ひとつ環境庁におきましても、県がもう非常に困っている状況でございますから、認定促進、そして救済ということについては全力を挙げていただきたい、そのように要望いたします。  それから、公害防止事業団お見えですか。——北九州市の城山地区なんですが、ここは小学校ももうついに移転いたしました。それほど大気汚染のひどい、降下ばいじんのひどい、浮遊粉じんのひどい地域であったわけですが、だんだん住宅の移転が行われておりますけれども、集団移転ということが行われるという計画があったわけですけれども企業の方でその負担ということになかなか承諾がなくて、今日まで実施が思うようになされないままきているわけですね。このことにつきまして、昨年十二月、北九州市は計画を変更して、洞海緩衝緑地事業をもって公害防止計画とするように聞いておりますが、環境庁及び公害防止事業団はこの件について報告を受けておられるかどうか。また受けておられるならば、事業実施は可能なのかどうか、この点、まずお伺いしたいと思います。
  170. 信澤清

    政府委員信澤清君) ただいまの北九州の問題につきましては、北九州地域の公害防止計画、この中で触れているわけでございまして、現在ございます計画、これはことしで切れてしまうわけでございますが、この中で、お話のように住工分離ということで、住宅の移転等を中心に計画を考えておられたようでございます。  最近、この見直しをやるということでお持ちになりました県を含めての御意見、あるいは関係省庁とも詰めた結論でもあるわけでございますが、お話のように、洞海緩衝緑地事業というんでございますか、緩衝緑地帯をつくることによって公害防止と快適な生活環境の確保に資するようにしたいと、こういうふうなことでございますので、その線に沿って計画自身の見直しをただいまやっているところでございます。  具体的な事業につきましては、事業団の方にもお話があると思いますので、事業団の方から御説明させていただきたいと思います。
  171. 熊崎正夫

    参考人(熊崎正夫君) 御質問ございました、北九州市の城山地区の件でございますが、昨年のたしか夏ごろだと思いましたけれども、北九州の谷市長が私のところにおいでいただきまして、その際に計画の概要の御説明をいただいたわけでございます。  ただ、この計画は、実は昭和五十四年度からやりたいということでございまして、詳細につきましては、正式に私の方で計画のヒヤリングをやりますのが五十三年度の、本年の四月ごろになると思いますので、その際に詳しく内容をお聞きした上で、ぜひ私ども事業一つであります共同福利施設建設事業といたしまして、正式に五十三年度にお申し込みがいただければ、関係各省の御認可をいただきまして、私どもとしては積極的に取り組んでまいりたいと、このように存じておるところでございます。
  172. 内田善利

    ○内田善利君 そうしますと、計画とか予算とか、そういうことはまだ決まってないわけですね。
  173. 熊崎正夫

    参考人(熊崎正夫君) いま申し上げましたように、四月ごろヒヤリングをやりますので、そのときに全体の計画が出てまいると思います。しかし、アウトラインは私は承っております。
  174. 内田善利

    ○内田善利君 その場合、幅員どれぐらいのグリーンベルトになるのか決まると思いますが、この城山地区は、これをもっと広げるとか、そういうことは可能ですか。
  175. 熊崎正夫

    参考人(熊崎正夫君) その辺も実はまだ詳しい中身の事務的な書類が出てまいっておりませんので、四月ごろになりまして詳しく検討いたしまして、できるだけ地元の御要望に沿うような形で、私どもは取り組んでまいる所存でございます。
  176. 信澤清

    政府委員信澤清君) いまの問題、御答弁する前に、先ほどの答弁間違っておりましたので、若干訂正させていただきます。  北九州地域の公害防止計画は四十七年にできたものでございますが、計画が切れますと申し上げましたが、これは十年の計画でございまして、中間の見直しというふうに訂正させていただきます。  それから、いまのお尋ねの、規模の問題でございますが、私どもの方に見直しの計画として出てまいっておりますのは、規模といたしましては全体で二十五ヘクタールと、こういう数字が出てきております。
  177. 内田善利

    ○内田善利君 それでは、時間の関係で、もう一つ質問したいと思いますが、これは公害健康被害補償制度についてでございます。  昭和四十九年にこの制度が発足して三年幾らとなったわけですが、当初、公害による被害者を迅速かつ適正に救済することを目的としてこの制度は発足したわけですが、現在に至っていろんな問題点ができてきておるわけです。たとえば、制度の対象範囲の問題あるいは指定地域の問題、あるいは汚染負荷量の賦課金の問題、いろいろな問題が出てきておりますが、そのうちの、第一種地域における汚染負荷量の賦課金の賦課料率の問題ですね。地域別に非常に格差があるわけですが、この点についてお伺いしたいと思うんですけれども環境庁は、この地域の格差について、昭和五十二年四月から賦課料率を一部修正して格差是正を図ったわけですが、その実績はどのようになっているかお伺いしたいと思います。
  178. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 各ブロックごとに、いわゆる地域収支差ということが問題になりまして、中公審の御答申を得まして、地域ごとの一部是正を図っていったわけでございまして、数学的に申し上げまして、若干ややこしくなりますが、ブロックごとにそれぞれ見てまいりまして、若干率の修正が期待され、かつそれがなされたわけでございます。
  179. 内田善利

    ○内田善利君 昭和五十二年三月十二日の中公審の答申を見ますと、賦課料率の地域格差が「健康被害発生の可能性に応じた地域の別に、必ずしも十分に従っていないためであり、このような事態は制度の基本的考え方である汚染者負担の原則からも望ましいものではないと考えられる。」と、このように答申が出ているわけですが、その具体的な是正策として、「収支差の二分の一程度を調整の対象とし、」とあるわけですが、五十二年度はこの収支差の四分の一を調整対象とされたわけですね。五十三年度はこの二分の一調整を実施される予定があるかどうか。できればこれ二分の一でも調整すべきではないかと思うんです。これ見ますと非常に差がひどいわけですね。たとえば五十一年度大牟田市の場合は、賦課金と給付金の差が三億九千十二万八千円、そうすると、大阪市になりますと差が九十八億四千四百十万八千円と、非常に、PPPの原則からはずれるような、せっかく大牟田の企業が賦課金を出しても、大牟田市が救済のために支出される金は、給付金は三億九千万も差があるわけですね。七億八千五百二十七万出して、それがプールされて、大牟田市に入ってくる金は、救済のために入ってくる金は三億九千万しかない。非常に賦課金と給付金の差が多いわけですね。これを答申どおり二分の一程度までとすることはできないかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  180. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) いま先生が事例に挙げられたようなことでございますが、制度の発足のときにおきましては、全国的に事業者全体として共同の責任を負うと、そういったたてまえで賦課金が計算されたんですが、やはり地域ごとのいわゆる補償を受ける人の数というものが当時なかなか予見できなかったというようなことからこういった実態が出てきたんだと思いますが、その後、そういった著しく乖離が起こっているということから、五十二年度から四分の一を是正するという方向をとったわけでございますが、中公審の答申には「二分の一程度」というような一つの御意見が出ておりまして、私どもこの格差の是正と申しますか、そういったことにつきましては、費用負担者、そのほか関係の人たち意見の調整を図りつつ中公審の線に沿った方向へと向けてまいりたいと、かように思っておるわけでございまして、いま直ち、に五十三年度につきましていかがいたしますかについての結論は得ておりませんが、部内におきまして検討を図っているところでございます。
  181. 内田善利

    ○内田善利君 時間が参りましたので、これで終わりますが、まだNOxの問題も聞きたかったんですが、時間が参りましたのでこれでやめますが、環境行政として長官所信表明についての質問をさしていただいたわけですけれども環境行政は、被害が起こったらどうやって解決していくというんじゃなくて、被害をどうやって防止していくかということがやはり人間の健康を守る環境庁としての役割りじゃないかと思うんです。この点についてお聞きしまして私の質問を終わります。
  182. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 内田委員御指摘のように、われわれの健康にしろ自然環境にしろ、要するにこれを事前に、未然にこれを防止するという措置、これが必要なことは全く私も同意見で、そういう方針で対処してやっていきたいと、こう考えております。   〔委員長退席、理事原文兵衛君着席〕
  183. 中野明

    ○中野明君 長官所信並びに予算の中にも、かなりの部分を割いて瀬戸内海閉鎖性水域における水質汚濁の問題で触れておられますが、私、きょうは赤潮問題についてのみお尋ねをしてみたいと思います。  けさほど来議論が出ておりましたが、御承知のように瀬戸内海の中でも特に播磨灘一帯が大規模な赤潮発生地域としての様相を持ってきたということが明らかになってきたわけです。四十七年に続いて昨年の大量発生で、もうこの播磨灘地域が常襲地帯とまで言えるような地域になってきたわけですが、最初に、環境庁においてこの播磨灘水域の状況、これをどのように認識をしておられるかということをお尋ねしたいわけですが、すなわち、あの地域で、特にハマチを養殖しているから赤潮が発生したことがわかるのであって、赤潮は瀬戸内海全域なんだけれども、あの地域に特にハマチがおるからわかるというふうに認識をしておられるのか、それとも播磨灘一帯が赤潮発生の地理的な状況のもとにあると、このように判断をされておるのか、その認識を最初お尋ねしたい。
  184. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 赤潮の関係でございますが、実は、午前中の御質問の際にも申し上げましたように、赤潮生物、これはたくさんの種類がございます。したがいまして、赤潮が発生しているという話につきましては、これは、たとえば大阪湾は年がら年じゅう、一年じゅう発生をいたしております。播磨灘も大体年間通じて発生をいたしております。で、赤潮とよくいわれますのは、春先から秋ごろまで発生するというのが普通でございますが、大阪湾等は年間通じて発生をいたしております。特に、養殖のハマチ等に被害をもたらすホルネリア属というものの発生がよく騒がれるわけでございます。といいますのは、ホルネリア属は、ハマチを養殖しておりますと、ハマチのえらにその粘性の部分が付着いたしまして呼吸困難になって斃死をすると、こういうことでございます。タイや何やは死にません。したがって、現象面としては、非常にティピカルに出てまいりますのは、ハマチの養殖の斃死でございます。したがいまして、赤潮はどう発生しているかということになりますと、全般的に見ますとそういう状況でございます。
  185. 中野明

    ○中野明君 おっしゃるように、いま赤潮は内水面にも、ダムのある地域なんかで発生している時代にもなってきまして、これは非常に水質については大事な問題になってきたわけですが、けさほど来もお話が出ておりましたように、この赤潮の発生のメカニズムがまだまだ解明されていない。ここに非常に地域の、影響を受けている住民の人たち、あるいはいまのハマチの養殖で言えば漁業者がこの対策に苦慮するところでございますが、いまお話が出ておりましたように、養殖の方も、赤潮に強いタイとかそういうものを養殖してみたらどうかというような、まことに消極的な意見も出ているような始末なんですが、いずれにしましても、国としてはこの発生のメカニズムの解明がもう先決問題だと、このように思うわけですが、   〔理事原文兵衛君退席、委員長着席〕 いま環境庁の方で、昨年の赤潮でハマチが大量に斃死した事件に刺激されて、赤潮研究会というものがつくられてあるように聞くんですが、その構成と、そして研究会はどういう会合をお持ちになっておるのか、その辺を少しお聞きしたいのですが。
  186. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 昨年の八月末に播磨灘におきまして赤潮の大規模発生を見たと、そして大量のハマチの斃死を来したということでございます。そこで、その赤潮がホルネリア属であるということは一応わかったわけですが、なぜそういうホルネリア属が大量にあの時期に発生をしたのか。それから、ホルネリア属ではございますが、ホルネリア属の何というホルネリアかはまだわかっておらないわけであります。したがいまして、そういうことの同定をやるということも必要でございます。また、いろんな培養試験等もやって対策も考えなくちゃならぬ。いろんなそういう問題もございまして、水産庁の方と共同でもって昨年の九月二十日に赤潮研究会というものを開催することにいたしましたわけでございます。  それで、これの構成でございますけれども、国立の水産研究所、これは水産庁の方の関係で、南西海区水研なり東海区水研なりございます。そういう国立の水産研究所の研究者の方、それから各府県に水産試験場等々の研究所、試験場がございます。そういうところ、それから香川大学なりあるいは三重大学なりたくさんの大学でやはり赤潮の研究者がおられます。それから環境庁の方の関係では、国立公害研究所というのがございます。そういうところの赤潮関係者の方々にお集まりいただいて、合計十四名になりますが、この赤潮の総合的な研究といいますか、共同研究をやっていただくということにいたしたわけでございます。
  187. 中野明

    ○中野明君 昨年できてから会合はどういう形で、場所はどこでお持ちになったのか。
  188. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) この研究会は九月二十日に開催をしたということを申し上げたのですが、その第一回の会合がただいま申し上げました昨年の九月二十日でございます。このときは、香川県なりあるいは徳島県、兵庫県等々で赤潮の発生の状況等も調査もいたしました。そういうような赤潮の発生状況、またそれによります養殖ハマチ等の被害状況等の実態報告をこの第一回にやりましたし、それから、ホルネリア属ということはわかっておりますが、その辺の発生メカニズム、これをどう解明していくかということのやり方なり、その辺の分担の、どういうテーマで詰めていったらいいかというような打ち合わせを第一回として九月二十日にやったわけでございます。それからその後、第二回といたしまして今月の九日、もちろん東京でございますが、東京で開催をいたしました。そうして、大阪湾なり周防灘の赤潮の発生の状況等につきまして報告をし検討していただいた。それから、ホルネリア属赤潮の調査の進みぐあい等も報告もし、さらにいろんな話し合いの中から、今後研究をやっていくためにはこの十四名の方だけでなくて、やはりテーマを決めまして、分科会をさらにつくってボーリングしていく必要があるのではないかと、そういう方向でさらに詰めようという話し合いを持ったわけでございます。  なお、申し上げますと、実はこの赤潮の問題につきまして、五十二年の播磨灘の赤潮の問題につきまして、ただ研究で集まるのでなくて、いろんな、集まったこの先生にお願いするのもございますし、そのほかいろいろ研究者の方に詰めていただく関係で、環境庁に計上してあります研究促進調整費という、いわゆる調整費の枠予算がございます。これを水産庁の方に千二百万ほど移しかえをいたしまして、これを、水産庁の方から各研究者の方に研究を頼んであるわけでございます。いまいろいろやってもらっておりますから、その結果がいずれだんだん——問題は、その結果が出ますと、この研究会にその結果を持ち上げまして、ここでいろいろまた詰めてもらうと、こういう段取りでございます。いままでのところは二回ということでございます。
  189. 中野明

    ○中野明君 ことし発生しないという保証はないわけです。起こらないことを私どもは心から念じるわけですけれども。そういうことで、けさほどもお話がありましたように、先日も現地に参りましたときに、やはりいまおっしゃっているように、せっかく研究会をつくっていただいても、わずかに二回ぐらいしか会合ができないというようなことで、それぞれの分野では研究をなさっていると思いますが、結局ばらばらで研究をしておられて、横の連携といいますか、話し合いといいますか、それがやはり、こういうむずかしい問題になりますと総合的に究明をしなければならぬということが急務だろうと思います。現地でもこういう要望が出ております。緊急を要するので、総合的な科学的見地からこの問題に取り組む一つの窓口といいますか、機関といいますかそれをつくって鋭意取り組んでもらいたいと。もっともな要望だと私も思いますが、この辺についてどういうお考えをお持ちになっていますか。
  190. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 赤潮の関係の研究者といいますか、これは実はある程度これぞという方は限られております。それが先ほど申し上げましたように国立の水産研究所なり、それから県の水産試験場なり大学なりにばらばらにおるわけでございます。しかし問題は、それでは新しい機関をつくってといいましても、その機関をつくるために機構を新しくつくるというのは、なかなか行政改革の時代にこれはむずかしゅうございますし、土地を買うのに時間がかかって、建物を建てるのに時間がかかって、機械を買って入れるのにあれしまして、それから研究者を養成するのにまた十年ぐらいかかりますと何ともなりませんので、むしろただいま申し上げましたような研究者の方がばらばらに研究するのでなくて、それぞれお互いに連携と分担関係を持ちながら研究をしていくと、その総合的な研究をやっていくのに必要な経費は環境庁等の経費で御援助もするというようなことでやっていった方が効率的であろうと、こういうことで、先ほど申し上げましたような赤潮研究会ということで、その道の、赤潮の権威者にお集まりいただいて詰めてもらう。この研究はどこに頼んだらいいとか、ここはだれがいるからあすこがいいとか、分析機械はあすこがどうだからどうというのは皆先生わかっておりますから、それがための必要なお金は環境庁の方で用意をするというようなことで、水産庁ともども取り組んで、こういうことでやっておるわけで、いまの赤潮研究会のやり方、これが実現的なしかも総合的なやり方であろうと、こういうふうに考えております。
  191. 中野明

    ○中野明君 確かにおっしゃることもわかるんですが、何かこう第一回で現地の実態を聞いて、二回目に東京で集まってもらったと、こういうことなんですが、もう少し充実して、そして確かにお金の要ることでしょうけれども、これに精力的に取り組んでいただきたいと、私はこのことを強く要望いたします。そうしないと、ことし起こらないという保証もないし、大変地元にとっては、沿岸各県にとってはこれは大変な問題で、先ほど申しましたように内水にも赤潮が出てくるというような時代にもなっておりますので、この研究は急を要すると思いますので、もう少し内容を充実して、鋭意努力をしていただきたい。これは特に要望しておきます。  それからもう一点、この赤潮の予察に対する研究、これもやはり同じようにそこで、その研究の中で進めておられるのですか。
  192. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 赤潮の予察の方の関係でございますが、この面につきましては、この赤潮研究会で直に取り上げておりません。赤潮の予察の調査につきましては、これは環境庁もやっておりますし、また、別途の予察の手法につきまして、水産庁がやっておるということでございます。  まず環境庁でやっておりますことを申し上げますと、環境庁は四十九年度から航空機を使いまして広域的に赤潮情報を集めたいということで、いわゆる光学的リモートセンシング手法というものを導入をしたいということでの予察調査をやっておるわけでございます。そういうことで、まず最初、四十九年度からやりましたときは、マルチバンドカメラというカメラでやったわけです。飛行機の上から写すわけです。ところが、これはカメラでございますので現像するという問題が出ましてちょっとその辺が、赤潮の方はもう刻々と動きますから、現像をするのでは間に合わないということで、五十二年度からマルチスペクトルスキャナーという電磁波を使ってすぐわかるやり方、これでもって赤潮の予察をやるということで、五十二年度からやっております。当然五十三年度もやりたいと思って、所要予算を御審議いただく予算案の中に入れて国会に出しておるわけでございます。そういうやり方を環境庁の方はやっております。
  193. 伊賀原弥一郎

    説明員伊賀原弥一郎君) 赤潮の予察関係につきましては、予察というのは現在、御承知のように、何かキーポイントになります現象をとらまえまして、それがあると次に何か起こると、こういうことで、そういう現象関係のキーになるところを一応基礎資料として相当集めませんとできないという問題でございますけれども、そういう観点から、瀬戸内海の府県の水産試験場に金を出しまして、赤潮が起こりました前後の状況を逐一調べてもらう。プランクトンもございますし、水温もございますし、そういうものを調べてもらう事業を片一方でやっております。そういう事業が四十八年でございましたかくらいから続けておりまして、大分資料が集まってまいってきております。現在の段階では、その資料の中で、どういう現象の次に、たとえばある種のプランクトンの次にこういうプランクトンが出てくるとか、そういう問題の検討と申しますか、お互いの検討をやっている段階でございます。こういうものを続けていきまして予察に役立てようというぐあいに考えてやっております。
  194. 中野明

    ○中野明君 最後にお尋ねしておきたいのは、現在メカニズムが解明されてない段階としては、この予察というのは非常に重要な意味を持ってくると思いますが、昨年香川県でも十数万尾、徳島県でも十数万尾ですか、大変なハマチが斃死をしたわけですが、そういうことが不幸にして起こりましたときの後始末ですね。斃死した魚の処理ですか、これがまた大変なもので、地元の人たちもショックの上にまたショックということで、去年は穴に埋めて捨てたりあるいは細かく粉粋するといいますか、切断して太平洋にほかしましたね。これもまたいろいろ問題のあるところだろうと思うんですが、そういうことを考えてみますと、一部の意見も出ておるわけですが、せっかくの大事な食糧なんです。たん白源でございますし、わが国も二百海里時代を迎えて魚というのがますます締め出されてきているというような現状から、せっかくの大切な食糧を、みすみす赤潮が来たために死なしてしまう。死んだ後の始末でまた金がかかって大変と、そういうことなので、予察との関係になってくるわけですが、赤潮が大量に発生してハマチが斃死しそうだということがわかったときに、網を切ってでも逃がすわけにいかぬか。そうすれば、魚が自分で遊泳する力を持っているわけですから、赤潮から逃げて斃死するのが少なくなるだろう、そうしたらその魚はどこかで食糧になると、こういうことについての検討はされたことがありますか。——水産庁の方。
  195. 伊賀原弥一郎

    説明員伊賀原弥一郎君) 非常に先生むずかしい話でございまして、網を切りますと大体一週間とか二週間の間に、一部はその付近にまだうろうろしておるという話もあるんでございますけれども、まず、もう危ないから網を切るというのをだれがやるかという問題がありますし、そして、死ぬ場合はそういう指示というのが当たったということになるわけでございますけれども、もしも全然死なない場合に、魚だけはずっと瀬戸内海にこう泳ぎまして、どこか釣りの人だとか、そんな人がいろいろやるとなると、その損害をだれがするかというような問題もございます。また、そういうものを制度的にどうするかということになりますと、さらにむずかしい問題が出てまいりまして、まあ話としては出たことはございますけれども、行政的な問題として検討したことはまだないという状態でございます。  それから、つけ足して大変恐縮でございますが、訂正さしていただきたいと思うんでございますが、先ほど私、予察調査事業を四十八年からやったという話を申し上げましたけれども、間違えておりまして、情報交換事業というのは四十八年からやっておりますが、予察調査という詳しい調査は五十一年から開始しておりますので、ひとつ御了承いただきたいと思います。どうも失礼いたしました。
  196. 中野明

    ○中野明君 ハマチの共済もありまして、死んだ魚に対してお金が出るわけですね、共済では。死んだ魚に対してお金が出たりするわけですから、私は問題提起としてお尋ねしているわけですが、そういう共済との関係とかいろいろあるわけですので、いま申し上げましたように、予察に対する研究が進んでくれば、将来こういうことも、やはりせっかくのたん白資源ですから、みすみすそれを何十万尾も殺してしまう必要はないんじゃないかということを考えて、いろいろの意見が出ているわけです。それはひとつ将来の検討課題の一つに一応考えてみて——非常にむずかしい問題だと思います、私も。網を切れと言った人が補償をしなければならぬということになってくると、非常に問題がその辺からも出てくると思いますが、しかし、資源を保護するという上から考えても、どうせハマチが大量に斃死したらそれに対して共済から金が出るわけですから、そういうことを考えると一つの検討課題になるんじゃないだろうか、このように思って問題を提起しているわけですので、参考までに聞いておいていただきたいと思います。  時間がございませんので、以上で終わりたいと思いますが、けさほど来いろいろ聞いておりましたが、新しく環境庁長官に御就任になったわけですので、どうか環境影響評価の法制化を含めまして——何か御答弁を聞いていると、先ほど内田先生も指摘されておりましたが、環境庁はよっぽどしっかりしていただかないと大変だという感じがいたしますので、どうかひとつ長官を先頭にして鋭意環境保全、このことについてはがんばっていただきたい、このことをお願いし、長官の決意だけもう一度お尋ねして終わりたいと思います。
  197. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 私としましても、環境庁に課せられた役割り、責任、任務、これはもう不退転の決意で完遂したいということで臨んでおりまするので、また御理解いただいて、ひとつ御鞭撻のほどをお願いいたしておきたいと思います。
  198. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それでは、長官所信表明に対しまして若干の質問を行いたいと思います。  実は、きょうはもう朝から、環境行政大変だから環境庁しっかりしないとどんどん後退をしていくじゃないかというふうに各委員からもすでに御指摘がございました。長官所信表明でこうおっしゃっているんですね。「現在景気回復のため大規模な公共投資による経済産業活動の刺激が要請されているのでありますが、このような情勢にあっても、環境保全の基本的条件が保持されるよう十分留意してまいる所存であります。」と、ここが非常に大事だと思うわけでございますが、御承知のように、五十三年度予算案ですね、国全体の予算案は、公共投資の伸びというのがもう超大型でございますね。これ、予算案、私申し上げなくても御承知のように、予備費を加えますと一般会計で三九・八%公共事業の伸びが見られます。しかも、金額的に言いますと、これは財投を含めますと十兆四千億を上回るという膨大な公共投資が予定をされ、そうして、その中身というのは、これはいろいろお話しになっておりますように、いわゆる大型開発のプロジェクト、あるいは道路、港湾、本四架橋などということが出てきているわけでございます。これは昭和四十八年のいわゆる列島改造型予算として大問題になりましたときの公共投資の伸び率というのを比べますと、あのときでさえも二四・六%だったんですね。はるかに大型の公共投資が五十三年度予算案には盛られているわけでございます。しかも、その中身というのは、これは従来からの報道関係を見ましても事実明らかになっておりますが、昨年の暮れ以来、経団連だとか、経団連の土光会長自身が政府に対する要求、要望というのが次々出されていて、その中身というのは新幹線だとか高速道路、空港、港湾整備など、景気対策としての効果の大きい大型プロジェクト、この予算を重点的にやってもらいたいということを政府に要請をされてきた、そっくりそのままの御要望どおりの予算案が出てきているわけです。  で、五十三年度予算案を見てみますと、環境庁予算ですね、これは伸びが九・八%なんですよ。公共投資は先ほど申し上げたように三九・八%、それから環境庁予算の伸びというのは九・八%でございまして、これはちょっと驚きましたけれども環境庁設置以来もう最低でございますね、九・八%というのは。一般会計の予算の伸びよりも低い。こういう状況が客観的に出てきているわけです。そうしますと、五十三年度予算の執行上考えられますことは、これは公共投資は超大型の公共投資、しかも大型プロジェクトということになりますと、環境破壊も超大型に起こってくるのではないかということが予測をされるわけです。ところが、環境庁予算というのは九・八%の伸びということになりますと、これは予算の上から見ますと大変なことになってきたなというふうに思うんです。まさにこういう状況の中で、長官所信表明の中でおっしゃっておられますように、こういう中で、環境庁環境保全の基本的条件が保持されるようにということのためには、なまやさしいことではやっていけないだろうというふうに思うわけでございます。  そこで、まず最初大臣の決意をお伺いをしておきたいと思います。
  199. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 繰り返しで恐縮でございますけれども環境行政の任務というものは、とにかく国民の健康と生活を公害から守って、国民生活をはぐくむ自然環境、こういうものを破壊から守って保全していくと、さらにこの都市生活においては、われわれの人間生活により快適なそういう一つの人為的な環境づくり、こういうものにわれわれが十分の責任を果たしていくというところにある、これはもう言うまでもなく非常に重要視している点でございます。  わが国が不況脱却、そしてまた国際的ないろいろな責任というような問題から、このたび非常に大きないわば開発というものに取っ組んでいこうというようなことに相なったわけでございまするので、われわれといたしましては、これは特に総理の演説の中にも、環境というものをちゃんと考えていくということをひとつはっきりこの点を明らかにしておいてもらいたいと要望もいたしまして、そのようになっておりますが、私どもといたしましては、いまの景気回復ということでどうしてもやらなきゃいかぬというこの公共投資でございまするけれども、われわれの方としてその開発事業に対しては、まあでき得べくんば先ほどの環境アセスメントの法というようなものをひとつ何とかつくり上げて、いわゆる自然環境の保全その他、この環境保全ということについてあらかじめ十分の対策を講じておきたいということで、一生懸命に努力をいたしておりますし、事実、現に大型のものについては、環境庁のいろいろな要望、指針、条件というようなものを示しまして、これと取っ組んでまいっておることも御理解いただけておるんじゃないかと思いまするけれども、私の所信の中に表明いたしましたのは、このような客観条件の中において、できるだけ先ほど申し上げましたこの環境行政の課せられた任務、これを遂行していきたいと、こういう決意を表明さしていただいたわけです。  予算の問題になりまするというと、これは一般的に言っての経常費の節減というようなことで、意のごとくなっておらないような点はありまするけれども、これはまた補足的に事務当局に説明をさせますけれども、十分にひとついまの要請に応じて活動の成果を上げ得るようにやっていきたいということで対処をするつもりでおります。
  200. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや私はね、長官就任されて新たな決意で取り組んでおられるということはわかるんですよ。しかし、予算配分の姿から見ると、物理的に、徒手空拳とまでは申しませんけれども、大型破壊が起こるであろうということだから、予算もこうして、こういうふうに伸ばしてということになっていない。だから、いよいよ本腰を据えてかかっていただかなければならないであろうというふうに思って、特にそういう観点でお伺いをしたのでございます。  すでにその大型予算の、特に公共投資が財界の要請どおりになっておるということはもう客観的事実でございますが、そういう中で環境庁と財界との攻防というのはこれはもうこの数年来続き出して久しいわけです。私も昭和四十八年以来ずっと本委員会に参加をいたしておりますけれども、この両三年来特にその攻防は激しゅうございます。最近ある新聞にこういうふうに書いております。これはまた全く言い得て妙だと思うのですが、「環境庁と産業界との〃攻防戦〃が相変わらず激しい。五年がかりのNOx(窒素酸化物)基準論争はいよいよ天王山を迎えようとしているし、環境アセスメント法案の成立に環境庁は三たび力こぶを入れている。さらに、水の総量規制をめぐって新たな激突の動きもあり〃戦局〃は予断を許さない波乱含みの情勢となっている。こんな緊迫した情勢をたとえて、ある大手鉄鋼メーカーの環境管理部長氏は対環境庁戦について「アセスメントは陸軍、水の総量規制は海軍、NOx基準論争は空軍の戦い。これからは、この陸、海、空の総力戦だ」と。さしずめ、緒戦を飾りそうなのがNOx論争の空中戦か。近代戦では制空権を握った方が勝ちといわれているが、この部長氏も「NOxで押し切った側が後の戦いも有利」と解説する。」。——この後が問題なんです。——「この部長氏のたとえ話を耳にした環境庁のある担当者「なかなかうまい表現だ」。感心して見せたあと、口をついで出たのは「わが方は各軍の兵の動員力では決して負けない。が、なにしろ、ウチは総司令部が弱体だからネ……」と、ため息まじり。総司令部とは言うまでもなく、大臣、政務次官クラスの政治力のこと。」と、こういうふうに、全く言い得て妙だというふうに書いているわけですね。こういう記事を読みまして、私はやっぱりいまの環境庁の置かれている状況というのは、産業界あるいは経済の動向、そういう中では、まさに環境庁長官——総司令部ですね、総司令部のかなえの軽重が問われる時期に来ている。まあ「政治力」という表現で新聞は表現をしておりますけれども、その点で、そういったかなえの軽重を問われるという段階に来ておるわけでございますし、こういうふうに言われている。そういう状況の中で、長官、断じて本腰を据えてやるのだという立場なのかどうかというのを簡潔に、長官にも政務次官にも御決意を最初に聞いておきたい。こういうふうに言われているのだということを知っていただいて……。
  201. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 私は、そういういろいろな評論、ああいうことは余り気にしない。問題は、この環境行政の任務、私はこれを貫徹するということを申し上げている。この問題は、そういうおもしろ半分の話じゃなくて、常にこれは客観的であり科学的である、忠実に基本問題を守っていく、いかなければいかぬ、情緒的な問題じゃない、こういう角度でこの問題を取り扱っていこう、こう考えているわけです、あくまでも。どうかそういう点について、まあかなえの軽重なんという話は私は一向興味を持ちませんけれども、自分は自分の力と決意と行動をもって科学的、客観的、これにひとつのっとってやっていきたい、こう考えております。
  202. 大鷹淑子

    政府委員(大鷹淑子君) 環境問題は、私考えますのは、私たちの健康と生活に最も密着した問題でございますので、大変重要に考えております。国民の皆様の健康と生活を公害から守って、また国民生活をはぐくむ自然環境を保全していくという重大な使命が環境行政に与えられております。私は、自然保護憲章を心として、長官の補佐役として、微力でございますけれども闘っていくつもりでございます。
  203. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いま余り時間がありませんので、次に、それじゃ具体的に一つずつ聞いていきたいと思うのですが、いわゆる財界の言う、陸、海、空軍戦略と言われているんですが、その陸軍と言われている環境アセスメント、これは朝以来何人かの先生方からお話がございました。私、端的に聞いておきたいと思いますけれども、これは環境庁設置以来の悲願でございますし、何が何でも成立させるんだと言って、去年あたりは相当な馬力も見せておられたわけでございますが、過去二年間、結局財界や関係各省の圧力で流産をさせられた。これはその経緯を私ども存じております。しかも財界は、これは私昨年もお聞きをしたと思いますが、「経団連週報」で繰り返して言っているように、あくまでも法案を国会に出さないうちにつぶすんだと、何よりもそれが大事なんだということを繰り返し繰り返し昨年来言っているんですね。そういうことで、財界が必死になって、これを上程をされたらとにかく委員長は衆参ともに野党だ、だから中身が少々折れ合っていても、国会へ出たらどうなるかわからぬから、上程させないのが最も重要だということで必死になってきたわけでございます。  そういう中で、大臣所信では「法制化を図るべく鋭意努力いたしておる」というふうにおっしゃっておられますし、また午前中以来の御答弁でも、つくりたいと、何とかしてというふうにおっしゃっておられるんですけれども、私は一つだけその中で聞いておきたいと思いますのは、こういう財界挙げて法案上程阻止というところに死力を尽くしてきているという攻防戦の中では、本当に上程に踏み切るということなら、この財界とのこういう攻防戦を抑え込まない限りこれは上程不可能ですよ、過去のいきさつから見ますと。そこで、こういう情勢を切り開いて、本当に妥協なく、おっしゃられたように、客観的に、科学的な立場に立って任務を全うするんだという決意を貫かれるのかどうか、そういう段階に来ているというふうに思いますので、その点どうですか。
  204. 山田久就

    国務大臣山田久就君) もう繰り返しになって恐縮ですけれども、私はきわめて冷静に、客観的に、科学的に、環境行政の任務はこれを完遂していくと、そういうつもりでやっているので、いまいろいろの点のお話がありましたけれども、この間において、それは先ほどアセスメント法のときに申し上げましたように、これは関係地元民を初めとして利害関係者意見というものは、これは率直にわれわれはむろん聞く用意を持っておりますし、また聞いていかなくちゃいかぬだろうと思います。にもかかわらず、それをどういうふうにしていくかということは、いま申し上げたような冷静に、客観的に、それによって一つのわれわれの指針を考えて、それに従ってやっていくと。これについては、繰り返すようでございますけれども、私はちっとも変わっていない方針でやるつもりです。
  205. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 これは環境庁歴代の長官がもう必要であるというのはわかっておられますし、法案だって去年もおととしも恐らくおつくりになっておられたと思いますし、必要性は環境庁が主張されておられるんで、何とかしてと思っておられるんですからね、これはもう本当にそういうぎりぎりのところに来ていると思うので特にお伺いしているわけです。  私は、この環境アセスメントというのは、国民の中でも非常に強い要求になってきているという点もひとつはっきりしておかなければならないと思うんです。これは幸いにして「五十一年度・環境モニター・アンケート」というのが、これは五十二年二月付で環境庁から出されているんですが、これを拝見いたしますと、開発による環境破壊防止のために環境アセスメントが必要と答えているのが全体の中で七八%ですね。しかもその中で、人口二十五万以上の市におきましては八一%が必要だとお答えになっている。つまり、住民の非常に強い要求というか、必要性というのが非常に高いわけです。そういう住民の強い要求に押されて、すでに地方団体でも川崎市の条例化を初め、御承知のように、東京都、京都、北海道、その他次々に条例化の動きが出てきているわけです、地方団体は。ですから、今日国民の中で、開発前には環境アセスメントはどうしても必要だというのは、やらなけりゃならぬというのは常識化してきている。そういう段階なんです、国民の意識もね。そういう点で環境庁の決意や姿勢というのが決定的に大事な段階に来ていると思う。だから繰り返し申し上げたんですが、そういう点で、これは科学的に、冷静に、客観的にとおっしゃったけれども、客観的に、科学的にと最初はおっしゃっておられたんです。そういう立場でぜひ貫徹をしていただきたいというふうに思うんです。もう非常に大事な関頭に来ていると思うし、今国会に必ずお出し願えるようにやっていただきたい。どうでしょう。
  206. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 先ほど来繰り返し申し上げておりますように、そういうめどでわれわれはいろいろ努力をしておる。いまいろんな御指摘がございましたけれども、私は、これの必要性ということは、かなりその認識は私は徹底——徹底といいますか、浸透してきていると思っているんです。いま財界について特にお話しがございましたけれども、そういう意味での圧力といいますか、それはわれわれとしてはそういうことを意識しておりません。まあこれはどこかの袞竜の袖になっているのかどうかわかりませんけれども、とにかく私としては、さっき申し上げましたように、ひとつ科学的、客観的に任務の遂行に当たっていきたいと、こういう方針でいまのアセスメントに対しても対処して、がんばってやっていくつもりです。
  207. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 財界の動きを意識していませんとおっしゃいますけれども、私は昨年も指摘しましたけれども、前長官にだってやっぱり経団連がいろいろ話をしに来ているんですよ。そのことが「経団連週報」にだって報告されているんだから。また長官にも来る可能性だってあるんですよ。だから、そういう働きかけがあっても断固としてやってくださいよということですから、これは念のために申し上げておきます。  次に、いわゆる財界の言う海軍です。水質保全対策について、これは大臣も「総量規制の制度化を図りたい」と、こういうふうに所信では述べておいでになるわけです。ところが、経団連は昨年の暮れに常任理事会で、水質総量規制反対決議をなさって関係各省に提出をしてきているんですね。それは報道されております。経団連の環境安全委員長の古賀繁一という方は、新聞記者のインタビューでこんなふうに言うてるんです。これは一月三十一日付の「日経産業新聞」に出ている。「年末に政府関係者に申し入れをしたし、環境庁首脳もわれわれの言い分を一応理解してくれたように思う。」と、そういうふうに言っているんです。しかも財界の本音は何かと言ったら、やっぱりその同じ古賀さんという方が言っているんですがね——これは時間がないから省略しますけれども、今日の経済事情では、設備さえもやれない時期に、最新の排水処理設備などというのはとても無理だということを言って、まあ本音はとてもじゃないけどやりたくないというふうに言っているわけです。ですから、長官、朝以来の御答弁で、総量規制の法制化もというふうに言っておられますけれども、これとても財界の猛反対を抑えない限りは実現が不可能だというぎりぎりのところへきているというのが客観情勢なんです。で、そういう情勢だということをつかんだ上で、私はぎりぎりのところをやっぱりはっきりしてもらいたいというのが私どもの念願なんですよ。やらにゃならぬというのは、環境庁わかっているのはあたりまえなんですよね。環境庁わからんかったらこんなもの、政府はどこもやりませんがな。ところが、思うようにいかぬところに問題があるわけだから特に申し上げているんで、この水質の総量規制につきましても——まあ総量規制いったってCODだけですよね、CODの総量規制について今国会で法案提出に踏み切れるように固まっているのかどうか、その点について明確にひとつ御見解を伺っておきたい。
  208. 山田久就

    国務大臣山田久就君) この総量規制、これをひとつ、わが環境庁の方針といたしましては、もう先ほど来いろいろ繰り返しお話しがあったと思うんですけれども、この際、瀬戸内海の臨時立法の後継ぎ法とともに、ひとつ総量の規制ということを加味した法案をぜひこの国会に出そうということで進んでいるわけであって、それはまあ財界もいろんな意見はあるでしょう。しかしながら、逆に、つまりわが方のいろいろ考え方、行き方ということに対して、むしろ財界の方がその認識というものをだんだん深めてきたというところじゃないかと私なんか感じているくらいです。
  209. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 まあ余り時間がたくさんありませんから……。その水質の総量規制、これはぜひやっていかなければならないのと、同時に、先だっても委員派遣で瀬戸内海視察をいたしましたけれども、赤潮問題も、同僚委員から提起されておりますように、そこの実情を見てみましたら、何としてもそれは後継ぎ法が恒久法としてりっぱなものになり、水質の総量規制をやらないと大変だと。というのは、香川県は、自分のところでは工業排水というのはもうちゃんと規制が十分、上回るほどできているわけです。実際、よその府県の汚れが、たまたま地形と潮流の関係で被害を全部受けているというかっこうになっているわけです。まさに閉鎖性水域の、一衣帯水の海のなす実情ですね。自然というのは、本当に一カ所で汚したら関係のないところまでそれの悪影響というのがざあっといっているという実情を見れば、これは一日たりともなおざりにできないという点をしみじみ感じましたし、これはいろいろと困難はあろうと思いますが、瀬戸内海の後継ぎ法と一緒にお出しになるということですから、ぜひ上程をしていただきたいと思っております。  で、さらに赤潮対策、もういろいろお話が出ておりますのでごく簡単に触れておきたいんですが、窒素、燐の問題ですね。これは朝ほど御説明を伺っておりますので私はるる御説明は要りません。特に赤潮の発生機序が明確になっていないとは言いますけれども、窒素、燐と無関係だとだれも言っていないんですね。窒素、燐と非常に深い関係があるということは通説になっているわけなんで、これは少なくとも窒素、燐については環境基準、排出基準ですね、まずそこを決めるというところからいって、閉鎖性水域については総量規制をとっていくというふうなことで進めるべきではないかと思いますがどうですか。
  210. 二瓶博

    政府委員二瓶博君) 先ほども説明申し上げましたように、赤潮の発生のメカニズムはわからぬわけでございますが、赤潮発生の要因物質として栄養塩類というのが機能をしておるということが通説でございまして、この栄養塩類の主たるものとして窒素と燐があるわけでございます。で、問題は、この窒素と燐につきまして排水基準なりあるいは環境基準、これを設定すべきではないかという御意見は多々寄せられてございます。ただ問題は、これも午前中申し上げましたように、窒素も燐も汚濁物質ではないわけでございます。栄養物質でございます。したがいまして、これは必要なものではございますが、多過ぎますと、過ぎたるは及ばざるがごとしという角度でいろんな悪影響が出る。その辺をどうあれするかというのは、これはなかなか容易な話でございませんので、簡単に環境基準なり排水基準をいま決めるというところまでの科学的知見なり実態上の把握等ができておりません。したがいまして、まず環境基準なり排水処理技術のガイドライン、こういうものをつくれまいかどうかということで、五十三年度からこの面の調査研究に取りかかりたいと、こう思っておるわけでございます。で、特に問題は、窒素と燐と比べますと、窒素の方が、窒素固定等の問題もございまして処理技術等の面においてまだ研究段階でございます。で、燐の方が、先ほど申し上げましたように、削減技術の実用化のめどが立っております。したがいまして、この燐の削減、こういうものにつきまして何とか行政指導等で削減対策をやっていけまいかと。で、現在、後継法の中に何を盛り込むか、これを検討しておりますが、その際に、瀬戸内海につきましては、先ほど来引田町のハマチの被害等の話もございましたように、あるいは大阪湾は年間赤潮が発生しておるというのが調査の結果わかっております。そういう事態等から考えますというと、やはりこの行政指導でやる燐の削減対策の根拠規定を後継法の中に盛り込めないものかどうかということで、現在鋭意検討中でございます。
  211. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 次は、財界の言う、空軍と言われてる窒素酸化物。実は、これは私どもも昨年の九月以来何回か取り上げて問題にしてまいりましたし、また各界で非常に注目を集めている窒素酸化物対策についてでございます。で、複合大気汚染健康影響調査環境庁がおやりになっておられますが、あれに対する専門家による新しい検討結果がまとまったというふうに報道をされております。報道によりますと、これは研究班の班長の鈴木武夫先生は、昨年の二月の分析のときとは違って、昭和四十七、四十八、四十九、三年間連続して窒素酸化物と呼吸器症状との間に関連を示したと、また、四十五年当時のあの硫黄酸化物、ばいじんが呼吸器症状の主役になっていたけれども、四十七年度以降はNOxが主役に置きかわっているというふうに、まあ一口に言いますとそういうふうなことがまとめられたというふうに報道をされています。これは私どもが従来から主張してきた論でございますけれども、この研究班の新しい解析が改めてこれを明らかにしたものではないかと思うんです。  私はたまたま新聞報道によってこの研究班の成果がまとまったということを知ったわけでございますが、環境庁はすでにこれは報告をいただいておられますか。
  212. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 複合大気汚染健康影響調査につきましては、御承知のように環境庁の手で昨年二月に報告として取りまとめたわけでございます。これは先生内容的にはよく御存じのように、いわゆる統計的な解析といたしまして、いわゆるポピュラーといいますか、基本的といいますか、基礎的な解析を行った報告であったわけでございます。これにつきましては、御承知のようにこういった窒素酸化物、硫黄酸化物、浮遊粉じん、そういったいろいろの大気汚染の複合したそれぞれの要素と健康影響についての調査を過去五年間にわたってやったものでございます。これは世界にも珍しい調査でございますし、学問的に専門家の手でさらに深い統計的な解析なりあるいは他の文献的な考察との評価なりというようなことを進めたいということの希望がございましたので、鈴木武夫先生に委託をいたしまして専門家の間における評価をお願いしておるわけでございます。実はどのような形で新聞にその内容が載ったのか、私経緯をつぶさにしないところでございますけれども、先週の時点におきまして評価報告のドラフトが、原稿ができまして、その原稿について各委員の問で討論を行いたいという集まりがあったことは存じております。鈴木先生からのお話しによりまして、ディスカッションの末、若干の修文あるいは内容の修正等があるかもしらぬと、その上で報告を正式に提出したいと、かようなことになっておりまして、私ども最終的に取りまとめられたものは現在手にしておらないわけでございまして、近く手に入れたいと、報告としていただきたいと、かように思っておるわけでございます。
  213. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それじゃ報告は正式にはもらってない。——しかし時間の問題ですね、もらうのは。
  214. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 日にちの問題でございます。
  215. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 日にちの問題ですか。(笑声)それはおっしゃるとおり日にちの問題です。それはきょうはまだもらってないかしらぬけれども、あしたもらうかもわからぬのだから。しかし、事は笑い事ではなくて、複合大気汚染というのは、すでに昭和四十七年以来NOxが主役に置きかわっているということがまとめられているという報道がされていますし、私どもも私どもなりの単純な解析もやった結果を昨年の九月以来言っておりましたし、それが再度改めて証明されたというふうに思うわけですが、従来公害の健康被害補償法でNOxを対象物質にという問題というのは当初から問題になっていたんですけれども、NOxと健康影響との関連というのが明確でない等の財界あたりからの意見もあってなかなかできなかったわけですが、こういう点が明確になった以上は、これは御報告を正式におもらいになったら直ちにNOxを健康被害の対象物質に加えるべきだと思いますけれども、どうですか。
  216. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 報告書を正式にまだちょうだいいたしておりませんので、どのような内容評価しているかつぶさには存じませんが、鈴木先生と私電話で、どのような解析をしておられますかと内容を聞きましたところ、先ほど申し上げましたように、統計的な新しい手法も導入しておるよというようなことでございまして、いわゆる窒素酸化物が主役であるというような内容お話は伺っておりませんで、従来も、いわゆる硫黄酸化物、浮遊粉じん、それから窒素酸化物、こういった複合した形でいろいろな健康影響があると、ただ従来よりも硫黄酸化物が減ってきた、窒素酸化物は変わらないと、その辺が内容として出てきているよと、こういうお話でございますが、主役を演じているというような表現での答えになっているかどうかにつきましては、最終報告を私ちょうだいしておりませんので、それを見てからと思いますが、御承知のように、窒素酸化物による健康影響という問題でございますが、この複合大気汚染報告書を見ましても、いわゆるせき、たんというような初期症状と申しますか、そういったことの一つの指標による健康の影響評価をこの方法としてやっているということでございまして、健康被害との因果関係という点についての明らかなデータというのは、御承知のようにいまのところ十分そろっていないわけでございまして、したがいまして、先般のお尋ねのときにも窒素酸化物による健康影響というものにつきまして、また健康被害というものにつきましての調査の手法の開発あるいは動物による暴露実験あるいは内外の調査データ等の収集ということによって評価をし、今後の方針を考えてまいりたい、かように申し上げておるわけでございます。
  217. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 まあ報告を見てないんだから余り長々おっしゃる必要もなかったと思うんですがね。ちょっと皮肉を申し上げたら、あんな大事な報道が新聞記事に出たら、私が環境庁の担当役人だったら直ちに先生に見せてもらいに行きますよ。重大な内容ですよ、あの報道は。そんな電話でちょろちょろと聞いて、いや主役やと聞きませんでしたなんていうのはね、そんなの怠慢ですよ。まあ、そのことだけ申し上げておきます。どうせ日にちの問題ですから。また改めて別の機会にやらせていただきたいと思う。しかしね、この結果が明らかになればいろいろと矛盾が出てくるんです。  私、あんまり時間がありませんので、あと二つの点について矛盾があるから解決をしてもらいたいという点を申し上げたいと思います。  窒素酸化物、これはまあ日にちの問題で健康影響が明らかになるわけですが、現在の健康被害補償法の費用負担のあり方というのが非常に問題がある。その一つは、窒素酸化物が有害物質だから規制をしているんですね。規制対象は、移動発生源では自動車メーカーに対し五十一年規制、五十三年規制あるいはディーゼルエンジンと、こういうふうに発生源に規制をしてきている。ところが、健康被害補償法に基づくあれは、賦課金を発生源者である製造元から金を取らずにユーザーから取っているんですね。これは一つの矛盾ですわ。発生源を規制する言うて、自動車の製造に五十一年規制、五十三年規制言うてやっているわけでしょう。そうだったら発生源を規制しておるんだから、その発生源から賦課金を取るのがあたりまえなのに、これはユーザーから取るというシステムになっているわけです。ユーザーはそれじゃ選択の自由があるかいうたらないわけでしょう、欠陥商品の自動車しか売っていないんだから。いま規制中でね。そういう状況なのにユーザーにかかっているというのは、これは一つの大きな矛盾だと思う。もう一つ大きな矛盾は、現在の健康被害補償法には、窒素酸化物は地域指定の指定要件に入っていない。ところが、窒素酸化物の排出分として汚染賦課金をかけて金を集めているんですね。そうでしょう。大きな矛盾だと思うんですよね、この二つの点は。  だから、この二つの矛盾を解決するためには何をせないかぬか言うたら、まず今度お出しになる健康被害補償法の一部改正案、これで解決が全部つくと思いますから、自動車メーカーから賦課金を正当に徴収するというふうに内容を改めるべきです。その前提として、これは前提としてですよ、窒素酸化物も指定要件の中の対象物質に加える。これをやったら、いわゆる行政上も現行法上も矛盾はきれいになくなるわけです。これは非常に重大な矛盾ですからね。今度の一部改正案を国会に上程をされる際にぜひ全部解決をなさるべきだと思うんですが、これは長官、御意見簡単にお答え願いたい。
  218. 信澤清

    政府委員信澤清君) 事務的にちょっと申し上げます。  先生おっしゃるように、いわゆる固定発生源を規制対象にしていると、同じように自動車メーカーを規制対象にしているじゃないかというお話ですが、私は法理的には違うように考えております。つまり、自動車の場合にはいわば製品に対する基準でございまして、自動車そのものを規制しているわけじゃございません。したがって、汚染者が負担するという立場から考えますれば、やはり買った自動車を使っている、先生のお言葉をかりれば、ユーザーが負担するというのが法律的には筋であろうということで、従来そういう考え方をとってきているわけでございます。  それから、お話のように、現在地域指定その他についてSOxしか使っておりません、SO2しか。しかし、これは中公審の答申にもございますように、NO2等は有害物質であることはこれはもう十分わかっているわけでございますが、技術的に把握をしにくいと。したがって俗な言葉で申しますれば、SO2で代表さしていると、こういうことでございますから、したがって科学的に十分その点がつかめるような段階になりますれば、おっしゃるような方向汚染負荷量賦課金も徴収すると、こういうたてまえにすべきものだと、このように考えております。
  219. 山田久就

    国務大臣山田久就君) この問題は、先ほど申し上げましたように、いろんな点を私はあくまでこう科学的に、客観的に考えていこうと、NOxの問題もいま中公審で答申がどんなふうになってまいりますか、目下慎重に審議されている段階でございまするけれども、それを見て、それを踏まえて、繰り返し申し上げますように、科学的、客観的な立場でひとつこれに対処していきたいと、こう考えております。いずれそれによって、法案の出た段階でいろいろ御意見を承りたいと思います。
  220. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 いや、これはちょっと了承しがたいんですが、時間の都合がありますし、また法案も出てくることですから、この問題はその機会に、ちょっとお預けにしておきます。  もう時間がありませんので最後に一つだけ宿題になっている問題をお伺いをしたいんです。  それは、保健部長にお聞きをしたいんですが、例の水俣病の認定患者で森本與四郎さんという方です。これは生きているときには水俣病ではないといって棄却をされていたんだけれども、亡くなって解剖をしてみたら明確に有機水銀中毒であるというので、生きていたときの診断は間違っていたということで、死亡をされてから解剖をした結果によって水俣病として認定をされた。で、この方は、棄却をされたので、非常にこれは不思議だというので裁判を起こしておられたんだけれども、認定をされて県知事が処分をされたので、もう争点がなくなったということで裁判を取り下げて和解をしたいというふうにチッソに申し入れたんですね。ところが、チッソはこれをけって、すでに認定をされたのは九月の五日なのに、水俣病被害者の会とのいわゆる協定ですね、慰謝料とか終身特別調整手当などの支払いをいまだにやらずに、和解にも応じないという態度をとっているということでございますが、余りにもひどいと思うので、これは昨年の暮れに遺族の方と御一緒に部長にお願いをしたのですね。そしたら、部長は調査をしておきますと言うたんですが、どうなっていますか。
  221. 山本宜正

    政府委員(山本宜正君) 昨年、私本件をつぶさに存じなかったところに御陳情をいただきまして、早速調査をしてみたわけでございますが、先生御承知のように、現在訴訟の係争中だという事実でございますので、私どもといたしまして意見を申し上げることが適当でないということで差し控えておるわけでございます。
  222. 沓脱タケ子

    ○沓脱タケ子君 それで、詳しくちょっと見解をただしていきたいんですが、時間がありませんので、長官、最後に、これはひとつぜひやってもらいたいと思うのですね。というのは、いまいきさつ申し上げたように、生きているときは患者であるということが認められなかったんですよ、認定患者だということを。亡くなって解剖して初めてこれは有機水銀中毒だということがわかって、生きているときの診断は間違っていたということで認定審査会が認定をし、これを認めて知事が処分をしたんです。いわゆる認定患者として認めた。それで、認定患者である以上は、これはあんた、チッソは当然協定書のとおりきちんと補償をするべきですよ。それをサボっているのです。サボっているどころか、裁判を起こしたんだから、和解をしてちゃんとやりたいといって遺族から申し立てをしているのにそれを拒否しているのですよね。そういうふらちなやり方をやっておるということを許していたら、これは長官環境行政そうでなくても財界との攻防戦の激しい中ですわ、これだけでも——もう認定患者であるかないかというのは、生きているときにはいろいろむずかしいんです、水俣病でも、だからなかなか認定されなくて、いまだに五千人近い人が残っている。亡くなって解剖して、病理解剖で検査をしたというたら、いまの医学の水準ではこれ以上確かめる方法がない確かさで認定が決定されているのですよ。それに対してさえも決められた補償金等を払わぬ、その義務を負わないというやり方をチッソがとってるんです。こんなことは直ちにやめさせるべきで、長官、ひとつこんなことは早いこと片をつけなさいと言うべきです。ひとつやってください。頼みますよ。
  223. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 私、この事態をいま初めてお聞きしたわけで、早速それを調べて善処いたしたいと思います。
  224. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 長官、就任されて余り日がたってないですから、少し無理な質問が出るかと思うんですけれども、私は環境行政の基本姿勢についてお聞きしたいんです。  この前の長官所信表明の中でも「環境行政の推進に当たりましては、国民の声に十分耳を傾けていくとともに、環境の分野における国際的な連帯と協調を図る活動にも積極的に意を用いてまいりたいと考えております。なお、現在景気回復のため、大規模な公共投資による経済産業活動の刺激が要請されていますが、このような情勢にあっても、環境保全の基本的条件が保持されるよう十分留意してまいる所存であります。」と、具体的にそういう長官の基本認識に立って、本州四国連絡橋の問題なんですが、長官はあの橋はかけられた方がいいとお考えなのか、かけない方がいいとお考えなのか、それをまずお聞きをしたい。しかも、最終的にはあそこに三つ橋をかけると言っているんですから、それについての御見解を聞きたいんです。
  225. 山田久就

    国務大臣山田久就君) この問題は、昨年の七月わが方で示したアセスメント基本指針ですね、これに基づいて御承知のように本四連絡橋公団環境評価案を作成いたしまして、すでに現地において公示縦覧説明会を終わって、また環境問題について地域住民意見書も提出されていると聞いております。また、岡山、香川両県知事意見も提出されておりまして、現在公団においてはこれらの意見に対して構ずべき措置について検討中であると承知いたしております。  なお、環境庁においても、本年一月上旬、公団から評価書案の内容について説明を受けておりますが、なお必要な資料の提出を求めて本件についての意見を取りまとめ中であります。したがって、これらのいろいろ評価意見、その決定を待って、それで結論を出すことにいたしたい、こう考えております。
  226. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私が聞きたいところを先走って言っちゃったんで、そこのところまた後で入りますから。  次に私が聞きたいのは、四十八年の十月の二十六日に建設大臣運輸大臣の御両名でもって工事実施計画というものを認可をしているわけなんです。この認可をするときは環境庁はどういう態度をとられたんですか。タッチをしたんですか、しないんですか。
  227. 信澤清

    政府委員信澤清君) 認可そのものについては環境庁は何の関係もございません。ただ、四十八年にいまお話のような認可があったわけでございますが、いわゆる本四架橋と申しますのはかなり沿革的に古い歴史を持っているわけでございます。しかも、あそこは瀬戸内海国立公園の中でございますから、さような意味で、あの橋をかける前の調査のための若干の工作物の設置とか、こういう問題も過去いろいろ出てきたわけでございまして、さような意味合いで、現在の自然環境保全審議会、その前身の自然公園審議会等々におきましてかなり議論をしてきた経緯がございます。そこで、四十八年に基本計画というものを建設大臣あるいは運輸大臣がお決めになったわけでございますが、そのときのお約束で、その基本計画を決めるときにはひとつ環境庁に相談してくださいと、こういうことを申し上げた経緯がございます。その基本計画をいただいた上で、審議会の御意見も伺った上で、基本計画そのものについては了承したと、こういうふうに承知をいたしております。
  228. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 もう一つ。その次は昨年の四月の二十六日に、いよいよ今度は児島坂出ルートを、ここのところを先に着工してこれを完成しようじゃないかと政府がお決めになった。そのときはどうだったんですか、環境庁は。
  229. 信澤清

    政府委員信澤清君) その前の話がございまして、四十八年お話のような認可があったわけですが、石油危機その他で工事がとまった。それで五十年にいわゆる一ルート三橋という形でやると、こういうことをこれまた関係大臣問で決めたわけです。これも環境庁関与いたしておりません。それからお話の四月の際も、いわば五十年の閣僚間の協議では三全総において一ルートを決める、こうなっておったはずでございますが、それではルートを決める前には当然環境影響評価が必要だと、そこで環境影響評価をやるためにも当面三全総以前にそのルートを決めておきたいというお話であったようでございます。これも正式には御相談にはあずかっておりません。ただ、そのお話が閣議で出ました際に、環境庁長官から発言いたしまして、そこで、環境影響評価をやってもらうことは当然でございますが、それについては環境庁が指針をお示ししますと、これによってやってくださいと、こういう趣旨の御発言をされております。
  230. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 認可をするのは、それは建設、運輸大臣の方で、何ら関係がないんですと言う。私はそういう答えの出てくるところにやっぱりいまの政府の内部の問題があると思うんです。  先ほどもほかの先生方の御質問のときもありましたように、環境アセスメント法がどうして出ないんですかと。前の大臣もこの国会に必ず出しますと言ったのが出されなかった。そういうことは結局通産なり他の省庁とのそういう話し合いの中からいろいろとあれやこれやがあったからゆえに私は出されなかったと思うんです。環境庁だけで環境アセスメントの問題を国会に出そうというなら、そんなことはもう前の国会でもできたことだ。皆さん方が主管をしている仕事については、他の官庁とそういうあれがあるわけです。だったら、この橋をかけようということについても、いまあれだけ大きな問題が起こってくるんだから、当然それはわかっていることであって、それを認可をするについては私たち意見も少しは聞いてくれよ、われわれの言い分も聞いて、その上で最終的な決定を下してくれと。認可する権限持っているのはそれは建設大臣なり運輸大臣かわからぬけれども、政府の中でそれを決めることについては当然皆さん方もそれくらいのことを言っていいんじゃないでしょうか。その点についてお聞きしたいんですよ。
  231. 信澤清

    政府委員信澤清君) お話のような御意見もあろうかと思いますが、事実関係は私が先ほど申し上げたとおりでございます。ただ、まあ弁解がましく申し上げますれば、いずれにいたしても、さっき申し上げましたように国立公園の中でございます。したがって、国立公園の特別地域について、本四架橋のような工作物を設置いたします場合に、一般的には環境庁長官の許可が必要だということは先生御承知のとおりでございます。公団の場合にはこれは国の行政機関でございますので、環境庁長官と協議をしてまいるというかっこうになるわけでございますが、そういう環境保全上の問題についてはもう一つチェックの関門が残っているということもあって、その段階ですべてを決めてしまうというような決定には、環境庁としては参画しなかったと、こういうことではないかと思うんです。
  232. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 私、余り言葉じりをとらえて何か言いたくないですからね、お答えの方も余りそういう言い逃れのようなことは言わないで、そのものずばりでお答えをいただきたいです、私も時間とりたくないんで。  次にお聞きしたいことは、先ほどから長官の言われました、昨年の七月の二十日のときのことなんですけれど、児島坂出ルート、これを決めるということになって、本州四国連絡橋事業実施に係る環境アセスメント基本指針公団にお示しになった。先ほど長官言われたとおり。そのときに、それをお示しになって、後環境アセスメントについては公団がやりなさいということを指示なさったはずなんです。公団はあすこに橋をかけるためにつくられたものだと思うんですよ。民間の企業だったならば、ここに工場を建てようかといっていろいろやっていくときに、そこの地元の住民といろいろこうごたごたして、なかなか条件が厳しくて、それだけの投資をしてまでそこに工場を建てていいかどうかということを判断をして、じゃやめようかならやめようかでもって撤収してよそへ行くことも可能だと思うんです。あの公団というものには私はそんな権限はないと思うんです。あすこは橋をかけるために国でつくった公団なんですから、あの公団は橋をかけることを念願として一生懸命やろうと、それに一番大事な環境アセスメント、それはおまえたち公団がやりなさいと言って、現実にそれから後あのとおりやって、きょうもここにいろいろ提出されているわけなんですよ。公団がそれ始末できるんですか。そこの点をどういうようにお考えかお聞きしたいんですよ。——長官に聞きたいんですよ。
  233. 山田久就

    国務大臣山田久就君) これは実施をする公団が、わが方の示したところに従って意見を求めて、それで公団がこれに基づいてやって、わが方からも先方の評価案、これを見て、それでこれについて意見を言うという段階になっているわけです。
  234. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 これは私も岡山県の方にも聞いたんだけれども、答弁が出てこないんだけれども、恐らく皆さん方も岡山県なり香川県から出されている意見書をごらんになっていると思う。これ公団が受け取ってどうできるんですか。特に私がどう考えても理解がつかないのは、岡山県知事長野士郎から公団の総裁あてにして幾つか掲げられているんですが、この中でこういうのがあるんすでよ。「供用時の環境基準を守るため、着工に当たり本県と公害防止に関する協定を締結することとされたい。」現状の環境をちゃんと保持するだけのことを前提にして、それで公害防止協定を結んでからやってくださいよと言われている。橋をかけるといって世界でも有数のあれだけの大工事をあそこにやろうとするならば、現状の環境の基準はそのままでそんなことはできるわけはないんですよ、これは。当然それは、私から言わせるならば、公団おまえらが環境アセスメントをやれじゃなくて、この橋をかけるについては最低限これだけのことは守れと、それは環境庁公団に指示をして、そうしておまえたちはこの枠の中で工事はやるんだぞということは、私は環境庁がやるべきことだと思うんです。それを公団に任せてというので、公団がみんな聞いて、こうやって出されてきて、そうして出されたものは、今度は県知事公団の総裁に向けて出されて、しかもいま言われたような、供用時現状の環境の基準をと言われて、それで橋をかけることができるんですか。これをのんだとするならば、公団がのんだら、それは橋はやめるということになると思う。その辺について環境庁がどういうお考えをしているかですよ。
  235. 信澤清

    政府委員信澤清君) お言葉を返すようでございますけれども、先ほど申し上げた四月の閣議の際に、私ども大臣から、環境影響評価をやっていただきますよと、したがってだれにやっていただくかということを事務的に公団監督官庁である建設省、運輸省と御相談した結果、これは公団にやってもらいますということでございますから、私ども環境影響評価に関する基本指針というものを公団に対してお示ししたわけでございます。それからまた技術上のいろんな問題については、これも監督官庁である建設省、運輸省公団に対してお示しになって、その結果今日あるような環境影響評価が行われてきたと、こういう経緯があるわけでございます。
  236. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 いや、私が知りたいのは、きょうはたまたま本四架橋をテーブルに乗っけて——それじゃないとどうも話が抽象的になっちゃいかぬから——聞いているだけなんです。問題は、いまのようなお話ならば、じゃ環境庁要らぬじゃないかということになるんです。それだったら、そんなものは、いよいよ事をやろうというときに、運輸省と建設省がおまえら環境アセスメントについてもきちんとやれよと、そのことも十分住民と話をしてトラブルの起きないようにやれよと言ったら済むんです。何のために環境庁をつくられたんですかということです。ですから、私が一番知りたいのは、これ橋をどうこうじゃないんですけれども環境行政の基本姿勢はどこなんですかと、知りたいのはそこなんです。それで、あなた方に無理を言っているんじゃないんですよ。  私は、ですから、この前の視察に行ったときに岡山県の人にも聞いたんです。あなた方は橋をかけてほしいんですか、それとも橋なんか要らないから環境を現在のままにしておいてくれと言んですか、どっちかはっきりしなさいと聞いたんです。橋をかけてほしいときは、あなたたちは橋をかけてくれ橋をかけてくれと言っていたんですから。夢のかけ橋ということまで言って、一生懸命あそこに橋をかけてくれという陳情をやってきたわけでしょう、政府に向かって。国会に向かって。いよいよ橋がかかると決まったら、今度は膨大なあれだけのものが出てきて、あれもやっちゃいかぬ、これもやっちゃいかぬ。私たちも知らないようなことを、ここにはこういうものがあるのだ、あそこはああいうものがあるのだ、海の中にはこれがあるのだ、これも手をつけちゃいかぬと言っているわけですよ。あれだけの注文をきちんと守ろうとするならば、それはもう橋をやめて、それで、きょうのここに出てきているこの中にもあるのだけれども、もう一回根本的に全部やり直して、もうトンネルにするしかないですよ。そうじゃなければやめてしまうしかないわけなんですよ。  じゃ、その辺の断をだれが下すんだといったならば、私はそれは環境庁、そのためにつくられた環境庁の皆さん方のところで、それについてここまでは何としてもそれは守らなければいけないぞと言って公団に指示をし、それから先のことは、それは地元の人たちにもここまでは——そのかわり橋ができりゃこれだけ皆さん方も便利になるんだからがまんをしてくださいよといったことの、言うならばその行司役というか、何というか、それをやるのが私は環境庁、あなた方の仕事だと思うんですけれども、そこがはっきりしない。
  237. 信澤清

    政府委員信澤清君) 先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、いまお話しのような状況になっているわけでございますから、これから私ども意見を申し上げようということでございます。その申し上げる意見の中には、先生お話しのように、住民の方が御心配になっている点について、たとえばこのように計画を変えてみたらどうでございましょうかとか、あるいはこの問題については、とにかく供用されるのは十年先の話でございますから、したがって、その問の技術開発の状況等を考えた場合に、いまの状態では問題があるかもしらぬけれども、十年後についてはこういう予測が立つとか、こういうようなことを、私どもが持っているいろんな過去の知見によりまして判断をいたし、そういう意見を申すつもりでおるわけでございます。
  238. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 長官お答えいただきたいです。  もう現実に工事は進んでいるんですよ、いま。あの鳴門海峡のところどんどんどんどんやっているわけですよ。もう現実にどれだけの金をあそこにつぎ込んでいるかということもおわかりのとおりなんです。いまの答弁のようなかっこうで、そういう形で、これからわれわれの意見を申し上げるところですなんてね、それじゃ、皆さん方のそれでもっていろいろやっていったら、あれはぐあいが悪いから、じゃあの本州四国架橋を中止だなんということになり得るんですか。もしもそんな権限を皆さん方がお持ちなら、さっきからずっと、けさから出ているように環境アセスメントのそんなものなんか、とうの昔に国会に出されておるはずなんです。なぜそれも出ないかということも、それだけのいろいろの事情があるわけなんですよ。私はむずかしいこともわかるんですよ。ただ、一方では、どんどんどんどんああやって工事が進んでいって、工事が半分も進んでいった、そこになってきて、ああこの島こんなに削っちゃいけない、こんなにそこ掘っちゃいけないなんて言ってね。  しかも、私さっきも言ったが、もう一つこれは言いますけれども、これは香川県の知事から出されている、「三ツ子島と番の州間の海底におけるナウマンゾウ及びシカなどの動物の化石については、橋脚工事に伴う掘削を最小限に止めるよう十分留意するとともに、発掘された化石について適切に処置すること。」、私もあそこにそんなナウマンゾウの化石があるなんて知らなかった。それは大事にしなければいかぬと思う。しかし、あれだけの大きな橋をかけるときに、その橋脚を、あそこにくいをぶち込んでやるのに、最小限のものでやってなんて言って、そしてやるだけの工事をやらせなかったとするならば、それは今度後で何かの、地震かなんかのときに、がたがたといったときに、そのときになって、工事の関係者にするならば、いやあのときにそういう注文が出されて、本来ならばこれだけのものをしなければいけなかったが、それだけ小さくしたからということになって、そんなことになったときにだれが責任負うんですか。過去にだってそういう形で橋が事故を起こしたことが現実にあるんですから。  そういう点からいくならば、そういういろいろの化石の問題、何の問題もきちんとしなくちゃいけない。また同時に、工事をやる以上は、将来ずっと使う橋になるんですから、それだけのことをやらせなければいけないわけなんですよ。ですから、その辺について、私たちが言うんじゃなくて、これだけたくさん出てきているんですから、かけさせるのかやめさせるのか早いところ決めて、私はやっぱりきちんとさしてあげなくちゃいけないと思うし、その点について最後に長官からお答えを聞かせてください。
  239. 山田久就

    国務大臣山田久就君) 環境アセスメントということは、これは必要なことでございます。それについては、むろん地元の利害関係者、また両方の県の意見を徴する、これもわれわれが指示したとおりに当然なことだろうと思うんです。ただ、いまお聞きしますと、その出している意見内容という点、その内容が一体行き過ぎか行き過ぎじゃないか、どんなものかという点、実は私もまだ報告を受けておりませんでした。したがって、そこら辺のことと、それからわが方の責任という点、さらにいろいろ事務当局から報告を受けまして、そしてこれが合理的な線をもっていろんなことが行われるようにひとつ善処してまいりたいと思います。いまのところではちょっとこれ以上、内容についての報告を詳しく見ておりませんし受けておりませんので、そういうことで早速意見を徴して善処してまいりたいと思います。
  240. 柳澤錬造

    ○柳澤錬造君 もう時間があれですから……。わかりました。それで、その結論をお出しになったら、それまたお聞かせをいただきたいことを最後にお願いして、終わります。
  241. 田中寿美子

    委員長田中寿美子君) 以上をもちまして、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会      —————・—————